元ウサギの異世界記 (ラーカー)
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バカとウサギと罰ゲーム

『バカとテストと召喚獣』の世界にゲントがいたら?


 文月学園。

 オカルトと科学と偶然で出来た召喚獣(どこの神が協力してるんだか)を用いた試験召喚戦争というクラス間で設備の奪い合いをするという社会の醜い面を象徴するような学校だ。

 俺、黒月(くろづき)玄兎(げんと)はその学校に学費が安いという理由で通っていた。

 そんな学校で俺は

 

「これで上がりっと」

「くそおおおおおおおおおおおおお!」

 

 大富豪でクラスメイトを虐めていた。

 

「五月蠅いぞ明久」

 

 こいつは坂本(さかもと)雄二(ゆうじ)

 クラスメイト兼悪友である。

 元・神童と言う話だが神格持ちではなく単に頭が良かっただけの普通の人間のようである。

 

「これで10連続で大貧民じゃのう」

 

 変な爺言葉は木下(きのした)秀吉(ひでよし)

 演劇部所属の美少女(笑)である。

 初見だと大体の人間が女だと見間違う程度には女顔(あと自然な仕草)の男である。

 

「……驚異的な弱さ」

 

 こいつは土屋(つちや)康太(こうた)

 趣味は盗撮、特技は盗聴という寡黙なる性識者(ムッツリーニ)とあだ名される変態である。

 

「こんなに負けるなんてありえない!雄二に玄兎!イカサマしてるだろ!」

 

 こいつは吉井(よしい)明久(あきひさ)

 一年の中でバカといえばこいつを指す代名詞となっている程度にはバカな男である。

 大富豪を10回やって10回大貧民になる程度には運がない。

 

「そんな事するわけないだろ」

「イカサマする前にボロ負けする人間初めて見たわ」

「玄兎!?イカサマする気だったの!?」

 

 バカがギャーギャーうるさいが

 

「罰ゲーム回避するためならやるつもりだったけど普通にずっと大富豪だったからなあ」

 

 イカサマする理由がないんだよなあ。

 

「あの時、革命なんかしなければ!」

「今後悔しても無駄だからな。さてと嬉し恥ずかし罰ゲームタイムだぜ!」

「秀吉。罰ゲームの箱を」

「ほれ明久。一枚引くのじゃ」

「うぅ……変なのにあたりませんように」

 

 そう言いながら引いたのは

 

「ちょ!?誰これ書いたの!?」

 

 どうやら良くないモノを(罰ゲームなんだから当然だが)引いたらしい。

 さてさて、何を引いたのかな?

 

『本気女装で校内一周』

 

「うわぁ。俺に当たらなくてよかった」

「雄二の見た目だとある意味拷問じゃのう」

「……確かに」

 

 ことごとく不評なようだ。

 

「俺が書いたのだな。秀吉かムッツリーニに当てたかったんだが。期待外れだな。本当に明久は期待外れだ」

「玄兎それ僕をバカにしたいだけだよね?」

 

 気のせいだろ。 

 

「秀吉準備。雄二とムッツリーニは取り押さえろ」

「了解じゃ」

「任せろ」

「……撮影も任せろ」

 

 俺も準備しておくか。

 

「ねえ冗談だよね!?秀吉と雄二?特にムッツリーニ!?」

「覚悟を決めろ明久」

「安心しろ。女装好きの変態ってみんなに思われるだけだから」

「それ致命的なんだけど!?明日から学校に来れなくなるんだけど!?」

 

 明日は土曜日なんだが学校へ行くのかこいつ?

 

「ねえ聞いてる?なんで逃げないように抑え込むの!?いやぁーーーー!?助けてえーーーーーー!!」

 

 次の月曜日。

 学校に謎の美少女が現れたと噂になっていた。

 解せぬ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうした久保?話って?」

「ちょっと聞きたいことがあるんだ」

「聞きたいこと?」

「君と話していた女性が誰か教えて欲しい」

「……?秀吉の事か?」

「秀吉くんじゃ無くて先週の金曜日に現れたという謎の美少女だよ」

「…………………………あ。アキちゃんの事か」

「アキさんというのか!頼む!紹介して欲しい!」

「別にいいけど?ちょっと待ってろ」

「ああ。頼む」

「もしもしアキちゃん?『――――』叫ぶなよ五月蠅い。今すぐ一年校舎裏にまで来い『――――』いや違うけど?何かアキちゃんに告白したい奴が『――――』だから五月蠅いって。今すぐ来いよリア充『―――』だから五月蠅いって……ん?切れてる……」

「すまないね」

「じゃ、ここで待っといてくれ。俺はこれで」

「ありがとう」

「ん」

 

 翌日、何かに葛藤する久保の姿があったという。

 




元凶はゲント







活動報告の方で書いてほしい要望があったら参考にします


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魔王城にてお姫様と

元ネタ『魔王城でおやすみ』


 人と魔が交わる世界。

 通常の世界と程遠い世界。

 

 勇者とか魔王とかが普通にいるファンタジーな世界で俺は

 

「魔王様が姫様を攫ってきたらしいぞ」

「スヤリス姫だっけ?なんで攫ったんだ?あ、もう少し上だ」

「なんでも勇者と戦うためだとよ。この辺か?」

「ふーん。そこだそこ」

 

 魔王城の修理をしていた。

 魔物の一種でムーンラビット(なんか腹立つ種族だ)として魔王の配下として生まれ、金払いが良いので魔王城に就職した。

 

「今日の仕事はこれくらいで良いだろ。お疲れ」

「そんじゃお疲れー」

 

 同僚の魔物と別れて仕事終わりの惰眠を貪ることにする。

 

「仕事終わりにはやっぱり隠れ場での惰眠だよなあ」

 

 魔王城の修理をしているうちに見つけた死角に寝床を作り勝手に寝てたりする。

 個人部屋はあるが俺がこういう場所で寝るのが好きなだけである。

 

「問題は……」

「ZZZzzz……」

 

 どう見てもただの人間が勝手に俺の寝床に居るという事だ。

 誰だこの女の子?

 良い生地の服――人間の中では貴族などの金持ちしか着ない様な服だ。

 頭に冠のようなヘアバンドをしている――冠なんかつけれるのは王族だけだと聞く。

 傍らに大きなハサミ――これシザーマジシャンの大ばさみじゃね?なんでここに?

 姫が脱走したと騒ぎまくる魔物達――話を聞いてみると姫が脱走したらしい。

 

 結論、この子はたぶん攫われた姫だろう。信じたくねえけど。

 

「君だれ?」

 

 あ、起きた。

 

「人のベットで寝てる君に言われたくないんだけど?」

「だれ?」

 

 人の話聞かないタイプだ彼女。

 

「俺はゲント。ムーンラビットって種族だ」

「でも君には人間みたい?」

「そういう風に化けてるだけだ。元の姿が嫌いだからな」

 

 元の姿はただの兎が人のように動くという違和感満載の種族だ。

 違和感がすごかったので人型になるために色んなことを試していたら本当に人型になった変な魔物として有名だったりする。

 

「それでえーと姫様?」

「なに?」

「なんで俺の寝床に居るの?」

「良き眠りを求めて」

 

 それ何の答えにもなってないんだけど。

 

「いいベッドがあった」

 

 そこ満面の笑み出す場所じゃないと思うんですけど?

 いい寝床と言われて悪い気はしないな。

 

「まあ寝るだけなら別にいいや。他の奴らにバレると撤去されるからばらすなよ?」

「わかった。おやすみ」

 

 すぐに寝やがった。

 ……それにしても。

 

「ZZZzzz……」

 

 可愛い寝顔だな。

 元・妹の方がかわいいけどな。

 

 

「姫ー!どこだー!」

「……騒がしいけど別にいいか」

 

 後日、姫がまた侵入したせいで寝床の存在がバレ、寝床が撤去された。

 姫にばれない様に新しい寝床作らねえと……。




ムーンラビット
実力☆☆☆☆☆☆☆
やる気☆☆

月の影と呼ばれる場所に住まう魔獣族の魔物。
ゲントは人型だが兎型を基本とする。
種族としては臆病で戦いを嫌う性格だがキレると体当たりで大柄な男ですら吹き飛ばしてしまう。体当たりをくらった人の感想は『ダンプに轢かれたかと思った』だそう。
ゲント個人の性格は社交的で様々な部署に友人がいる。
魔王城の修復を主な仕事にしてるが壁の修理からトラップの製作設置まで何でもできるタイプなので手伝いとして他の仕事もしてたりする。
やる気はないが仕事はキッチリやるので監督する上司は困っていたり。
寝床のレベルが高かったので姫には良き眠りの先輩だと思われたりする。

少し前までの悩み
『なんか幹部に昇進しないかってウザい』

最近の悩み
『姫のせいで隠れ家的寝床が皆にバレた』


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カードキャプターの兄

アニメ記念
元ネタ「カードキャプターさくら」


「ほぇえええええ!?」

 

 朝、隣の部屋の妹の奇声で目が覚めた。

 時計を見るあと30分は「ほぇえええ!」眠れる(そのかわり遅刻ギリギリになる)な。二度寝する――バタンッ――べきかしないべ――ドタドタドタ――ドタバタうるせえし起きるか……。

 どっかの急いでる誰かさんと違い急ぐ理由がないのでゆっくり仕度する。

 ネクタイってしなくていいと思うんだけどなあ。首元苦しいしゆるくしとくかメンドイし。

 

「さくら怪獣じゃ無いもん!」

「確かに怪獣じゃないなこんなちっちゃいしな」

 

 階段を下りると高校生が小学生と遊んでいた。

 どうやら桃矢(とうや)兄がさくらをイジメてるらしい。

 毎朝毎朝飽きないな。

 

「おはよー」

「おはよう。いつもより早いな?」

玄兎(ゲント)兄おはよう!」

「朝から大騒ぎする誰かさんに起こされた。あと30時間は眠りたい」

「う……」

「怪獣も少しは反省しろ。あと寝すぎだそれは」

 

 そうかねえ?

 なんか寝ても疲れが取れないんだよなあ。集団生活とか面倒くさいことこの上ない。中学校とか行かなくてもなんとかなると思うんだけどねえ。

 でも常識掴むのに苦労してるし、行った方がいいかなあ?

 

「おやゲントさんおはようございます。ご飯食べますか?」

「おはようございます。食べます」

「いってきます」 

「あれ?早いね?」

「部活の朝練なんだよ」

 

 サッカー部だっけか。バイトと掛け持ちしながら部活するとか俺には無理だな。

 それよりも金儲けしたいがこの時代情報機器少ないんだよなあ。小遣い少ないし地道にバイトしようかな?でもうちの中学校バイト禁止だしなあ。まあ勝手になんかすればいいや。

 

「待って!」

 

 そう言って朝飯を早食いする妹。

 兄の友人である雪兎と会いたいから桃矢兄さんの登校によくついて行っている。

 正直、あの人は苦手なんだけどなあ。

 なんていうか、仮の姿って感じがすんだよな。それにあの人は人間じゃないし、かかわらないのが一番だと思うのだが妹はアレの事が好きなようだ。

 人の感情と嗜好はよくわからんな。

 

「あんまりかっこむと喉に詰まらせるぞ」

「ん!?」

「おい!?だから言っただろ!?」

 

 大したことなかったらよかったものの危ないんだよ。

 説教しようと思ったが逃げた。

 ……帰ってから説教だな。

 

「まったく」

「ゲントさん出来ましたよ?」

「すぐ行きます」

 

 とりあえず飯食ってから俺も学校行くか。

 

 

    ☆   ★   ☆

 

 夕方に学校から帰ろうかとしていたら、家の方から強力な力の塊があっちこっちへ飛んでいくのを感知、目撃した。

 この力は魔術系かな。うちの書庫にあった魔力と酷似してる気がするがたぶん気のせいだろう。あの封印力任せに解けるの恐らく兄さんぐらいだろうし、兄さんはそこまで命知らずじゃないだろう。

 飛んできたカード?(よく見えなかった)を一度避けたらそれ以降、現象は収まった。

 

 あとで確認したことだが、あの目立つ花火と流星群を足して二で割ったような派手で目立つ現象はほとんどの人に見えていなかったようだ。

 例外は霊感が強いとされる魔力持ちくらいだろう。もっとも見える人は余計な波風を好まないから聞き出すのには苦労したけどまとめると見えたことは見えたがよくわからない自然現象だと思って気にしてなかったらしい。

 いいのかそれで。

 

 話はそれたがあれは自然現象ではなく故意か偶然かは知らないが人為的なものだろう。

 帰ってから書庫を確認してみたら魔導書の一つがなくなっていたし、なぜか妹の部屋から散らばった魔力の残り香みたいなのが感じられるが(あと関西弁の声が聞こえる)、気のせいだと信じたい。

 

 あ、今日の夕飯の当番俺だな。

 材料あるし、コロッケでいいかな。というかコロッケを食べたい。

 

    ☆   ★   ☆

 

 本日あったこともあって、一応寝る前に町の観察でもしようと窓から街並みを観察していたら、妹がローラースケートで玄関が飛び出していった。パジャマで。

 なにやってんだあいつ?

 あれ以来妙な魔力があっちこっちで感じられてうまく感知が効かない。同系統の魔力だからか全方位から魔力を感じて近いのか遠いのかすらわからない状態だ。

 とりあえずさくらが帰ってきたら説教だな。

 

「でっけー鳥だな」

 

 視線をあげたら空に鳥が飛んでいるのが見えた。

 なんだあの鳥?

 地球上の生物ではないな。宇宙人でもないだろう。そもそも生きているのだろうか?魔力でできた疑似生命というのが一番近いか。

 姿形は東洋系の神話生物に似ている気がするが、あれは東洋系の魔術なのだろうか?

 あんな生物を生み出すのはむしろ西洋魔術だと思うが、考えても仕方ない。

 被害が出る前に退治するか。

 あんなのが一般人に見つかったら大騒ぎだ。

 変な収束点になっても困るだろう。

 

 適当な道具を作っていざ出かけようと鳥の現在地を確認したら。

 妹が空を飛んでいた。

 

 ……見間違いかな?

 双眼鏡を使ってよく確認する。

 

・パジャマ姿

・ローラースケート

・ピンクの杖

・ぬいぐるみみたいなのが一緒に飛んでいる

・妹そっくりの顔

 

 ……なにやってんだあいつ?

 とりあえず準備しとくか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかえり。何かいうことは?」

「た、ただいま……」

「……なんでこんな時間に帰ってきたんだ?」

「えっとえっと(クロウカードの事は言えないしどうしよう!?考えてなかった……)。ちょっとお散歩に……」

 

 聞こえてるよ。

 

「はぁ……。風呂溜まってるから入ってこい。明日寝坊しても起こさないからな」

「ほえ?」

「なんだ?あ、そうだ」

 

 ずいっと顔を近づける。

 

「次は夜中の無断徘徊なんか許さんからな。あと汗かいてるからさっさと風呂入れ風邪ひくぞ」

 

 そういって自分の部屋に戻る。

 眠たいし寝よ。

 気がつかない振りも大変だしな。




あんな大事件関係者以外動かないのはおかしいですよねえ。

災厄が精神操作にあたりますしね。似たような力が発生してると好意的に解釈してみる。


感想募集中
こんな話をという要望は活動報告にお願いします


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人類最強の友愛

系列作品読んで思いついた
元ネタ『人類最強の初恋』


 『人類最強』と呼ばれる彼女と出会ったのは偶然であると俺は断言する。

 偶然じゃなければ路地裏で『殺し名』匂宮の分家である薄雲姉妹とやらに襲われているときに、ビルの壁をぶち抜いて(・・・・・・・・・)人を轢き殺しかけるわけがないだろう。

 第一声が「あれ?なんか轢いた?」だったし、轢かれた衝撃で地面の染みになりかけてた虫の息の俺を見て「お、生きてるな。よかったー無関係の奴を事故で殺したなんてあたしの評判に関わるからな」と言うくらいには荒事の世界の住人だったのだろう。

 なぜ「だろう」という推測系なのかって?

 そうだねえ正直な話、その時の俺は財力の世界である『四神一鏡』の連中とマネーゲームで遊んでいて暴力の世界には全く興味のなかった時期だったからねえ。彼女自身は暴力の世界の住人ではないとはいえ『人類最強』という称号がら暴力の世界とはかなり近い所にいたみたいだし、彼女の仕事柄暴力でケリをつけるのが多く、またそういう方法をとったら有名になりがちだしねえ。

 ……話は逸れたがケラケラ笑ってた彼女が薄雲姉妹を軽くぶん投げて(比喩ではない)俺を病院に連れて行ったのが俺と彼女の出会いだ。

 

 ……何を期待してたのか知らんが本当にそんだけだぞ。

 

 因縁?

 何の話だ?

 

 あー、あの女あの事を話したのか……。

 

 バレてるなら隠す意味もないか。話すのが面倒くさいだけで本当に大したことじゃないし。一応言っとくが俺もここに勤めてる関係上、あの女と交流があるのはあんまり広まると困るんだよ。

 下手したら『哀川潤担当係』とかされかねねえしな。

 いや窓口にされるのが嫌なんじゃなくて今やってる新しく都市創るっていう遊びに集中できなくなりそうだし。

 いや結構面白いんだぜ?都市育成シュミレーションゲームなんか比にならんぐらい交渉に工作と俺の全力で当たれるからな。今は『四神一鏡』との交渉が一段落したから『匂宮』と交渉してるところだし。都市の警備に使えないかなって思ってよ。金さえ払えば何でもやってくれんだろ?え?違う?

 

 彼女たちが睨んでる?気にしなくていいよ。あの二人なんだかんだ言って俺には絶対服従だからあんたが俺を殺そうとしない限り害はないよ。

 

 話を戻せって?

 そうだねえ。やっぱり『玖渚機関』に就職して機関の政治力を利用して遊んでる身だからあんまり政治力を利用できる立場から切り離されたくないんだよねえ。

 

 え?違う?

 

 ……あー。因縁の話ね。……チィ。

 なんでもねえよ。

 話は戻って病院に入院した俺は数日ほど生死の境を彷徨って残念なことに命を取り留めたってわけだ。

 そこで目覚めてすぐに見舞いに来たあの女と多少話したんだよな。その時に名乗りを受けて『人類最強』ってフレーズにイラッとして喧嘩吹っ掛けた。

 ……今考えても狙ったようなタイミングで見舞いに来てるなあいつ。やっぱ狙ってやったんじゃねえか?

 考えてもきりがねえから話を進めると当時の俺も似たようなこと疑ったわけだ。依頼がダブルブッキングしたんじゃないかって。『四神一鏡』とのマネーゲームでそこそこ勝ってたところの襲撃だから全方位が敵に見えてたんだよね。

 

 え?それで俺が勝った?

 あの女よくそんなこと言えたな……。嫌味かよ。

 

 実際にはまだ勝負中だよ。俺は基本的に最強とか最悪という振り切った称号を持ってる奴嫌いだからな。イライラマックスの時だったから余計にイラついてかなりおかしなこと吹っ掛けたんだよな。今考えてもまともじゃねえんだけど。

 

 ああ、そこは聞いてねえのか?

 

 俺に聞けって……俺、忙しいんだけど……。

 で、俺は「お前を1万の手段を使ってぶっ潰してやる!最強を名乗っていようが俺が勝つ!」ってな?

 

 そん時のあの女?

 呵々大笑して勝ったら俺が『人類最強』を名乗れとかアホなこと言ってたよ。

 退院してから『四神一鏡』なんて完全に無視して『哀川潤』を潰すために今まで積み上げてきたものから、無関係の組織まで使えそうなものは全部使ったよ。

 ……もっとも1000の手段は薙ぎ払われて2000の手段は蹴り飛ばされた。

 一番うまくいったのはあいつのファンを集めて『哀川潤の支援組織』を作った時かな。

 

 お前も知ってるか。まあ有名だしな。

 やったことは単純にあの女のファンを集めて扇動し、支援組織として世界中に支援組織がある状態にしたからな。あの時は世界の組織という組織が腹の底から震撼したみたいだからな。

 単独でなんとか対応できる『哀川潤』が組織を持ったらパワーバランスが崩壊して、『哀川潤』を頂点とした世界になりかねないって。

 比喩でも冗談でもなくありえたからな。

 俺が煽ったのもあるけどあの『組織』には予想以上に有能な狂信者と扇動者があの女もある程度浮かれさせたからな。そのまま『世界』を巻き込んで戦争で倒そうとしたけど、結果は知っての通りあの女自身に『組織』が潰されて残党も残らず怖がるようになっちまったからな。

 

 なんでかって?

 俺も詳しく知らんが依頼があったらしいぞ?

 『組織』を潰してほしいって。

 

 狂信者と信仰者の違いって感じかな。

 狂信者は『哀川潤に仕える』自分に酔ってたし、信仰者は『自由気ままな哀川潤』を信仰してたって感じか。

 何で知ってるかって?さあなんでだろうねえ?

 

 こんな風にいろんな方法であの女を潰すために行動しまくってその過程で『玖渚機関』に拾われて……話はそこで終了だよ。

 

 え?1万の手段?

 9999の手段が返り討ちにあったから最終手段『なにもしない』を実行中だけど?

 ここで1万手目を打ったら負けるから、『なにもしない』ことで勝てはしないが結果が出てない=引き分けを維持してるのさ。

 千日手ならぬ万日手ってね。

 

 おい姉妹。小声でつまんないとか言うな。傷つくぞゴラ。

 

 それからのあいつとの関係?

 んー。強いて言うなら友人かな。

 

 意外か?

 俺も意外だ。さっきのことを説明したら気に入ったらしくてな。依頼するなら友人価格で引き受けてやるよみたいなこと言われたし友人なんじゃないか?

 俺にまともな友人なんぞいなかったからあんまりわかんねえが。

 今じゃ週刊誌の漫画の感想で殴り合う程度の中だ。下手すれば一日に数回は電話で話してるな。忙しいときは無視してるけど。

 

 あいつが?

 いやいや、あの女は誰よりも人間だよ。

 スペックがぶっ飛んでるだけで、基本的にはお人好しの寂しがり屋さ。

 請負人とか人類最強とかそうでもしないと誰もかまってくれないから名乗ってるんじゃねーの?

 まあ、俺の偏見だろうけどな。

 

 ……改めてなんだよ。

 そもそも仕事の話って言うから呼び出しに応じたのに結局雑談しかしてねえし。今までの会話関係ないよな?

 なんか嫌な予感がするんだが。

 

 『哀川潤担当係』への就任?

 なるほど。

 まあ機関長は妹さん関係で関わりあるだろうけどそれ以外にちゃんとした窓口を作っとこうと。前回の包囲網もgdgdに終わったから必要に駆られてねえ。

 

 

 あっはっはっはっは。

 断る。他当たれ。




西尾維新っぽさって難しい


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ヒーロー研修あるいはヤクザの生きざま

元ネタ『僕のヒーローアカデミア』

二種類書き上げました。


version【HERO】

 

 とある日、俺はとあるヒーローの事務所に向かっていた。

 

「たく、一応俺は学生だぞ?なんで意味もないのバイトなんてしなくちゃいけないんだよ」

 

 ぶつくさ言いながら事務所の扉を開くと

 

「おいジジイ。いきなり呼び出したと思ったらこれはどういうことだ?」

 

 ボコボコにされた少年とグラントリノ(ジジイ)がいた。

 

「よく来たな。さっそく組手の相手をしてやれ」

「あー、実践修行?ジジイがいれば俺なんかいらんだろ。つか、誰そいつ?」

「継承者だ」

「ちょっ!?グラントリノ!?」

 

 それだけでだいたいの事を察した。

 そうかこいつが『ワン・フォー・オール』の継承者か。

 

「問題ない。こいつは見つからなかった時の保険(・・)だからな小僧より詳しいぞ」

「一応、俺も増強型だしな。俺は黒月(くろづき)玄兎(ゲント)。利勝高校3年、ヒーロー名は『ゲント』だ」

「あ、緑谷(みどりや)出久(いずく)です。ヒーロー名は『デク』です。……あの保険って」

「オールマイトが継承者を見つけられなかった時につなぎとして継承し、候補を見つけて育てる予定だったんだ。もっともお前が継承したから役割はなくなったがな」

 

 嘘である。

 こいつがふさわしくないと判定されたり、途中離脱(リタイア)した時の保険でもある。

 こいつに教える気もないし、継ぐつもりもないけどな。

 

「オールマイトが認めたからといって、使いこなせなきゃ意味がない。意味は分かるな?」

「!!」

 

 目を見開いている。

 どうやら俺の見下す目を認める気がないとうまく勘違いさせることが出来たようだ。

 

「ジジイ。ここでやっても?」

「構わん。あまり壊すなよ」

「はいはい」

 

 そう言って半身になり、手招きする。

 

「とりあえず今は組手だけだ。遊んでやるよタマゴちゃん」

「胸をお借りします!」

 

 ふむ、個性を全身に巡らせるのが遅いな。

 最近まで全身につけることがなかったのかな?

 

「先手は譲ってやるよ」

「お言葉に甘えて」

 

 あっちこっち飛び回って後ろを取る。

 誰かの動きの借り物か?

 誰かの動きを参考にしたような動きだ。

 少なくともジジイの動きではないし、妙に洗練されているから近くにいる人間の動きといった所か。

 

「甘い」

 

 不意打ちの拳を避け、腕を取りそのまま投げる。

 

「かはっ」

 

 そのまま追撃で拳を振り下ろすが、避けられた。

 反応は悪くないな。

 

「ブツブツ……グラントリノの動きで翻弄するタイプじゃない……ブツブツ……カウンターで……ブツブツ……」

 

 なんかブツブツ言ってるな。

 なんだこいつ?

 

「なら!」

 

 さっきより激しい動きで動いてからソファを持ち上げ!?

 

「すみません!」

 

 そのソファを俺に投げつけてきた。

 危ないのでソファを掴んで床に置く、ように見せかけそのまま逆立ちして飛びかかってきたタマゴの顎を蹴り上げる。

 

「そこまで!」

「俺の勝ちだな。……これ気絶してね?」

「軟弱だな。お前はこいつをどう見る?」

 

 どう見るって。

 

「オールマイトみたいなとりあえず殴るタイプとは違って解析して戦うタイプだな。『ワン・フォー・オール』を使いこなせてねえのは時間がなかったからいいとして、全体的に動きが借り物っぽい」

「それだけか?」

「個性の併用した戦いをしなかったから元・無個性かな。正直『ワン・フォー・オール』を継承するほどのセンスはなさそうだ」

「……お前は納得できないか?」

 

 ジジイまで騙されてるのかよ。

 面倒くさいなあ。

 

「俺は誰が『ワン・フォー・オール』を継承しようと構わないんだけど。俺は『平和の象徴』なんて称号受け継ぎたくねえから今の立場を選んでるんだけど」

「だろうな。自力でオールマイトの正体を掴んだのはお前だけだ」

 

 『平和の象徴』の正体を暴いたら良い金になると思って、いろいろ調べたらまさかあんな骸骨が正体だとは思わなかった。

 

 

「掴んだせいでここまで道が捻じ曲がるとは思わなかったわ」

 

 俺は金稼ぎするためにしか活動してなかったのに、脅迫したせいでヒーローを目指す破目になるとは思わなかった。

 脳筋だけならうまくいったのにあのリーマン優秀すぎる。

 

「お前また副業してたそうだな」

「別に非合法なことしてないだろ」

 

 せいぜい経営難のヒーロー事務所を買収してほかの事務所と協調させるように仕向け、名を上げたら株の持ってる企業のCMなどに出させて利益を出してるぐらいだ。

 あとは経営指南で指導料貰ってるくらいか?

 

「保護者代理の俺に連絡来たからな。やるなら学校にバレないようにやれ」

「はいはい。養父のジジイには感謝してるよ。『無個性』な俺を見捨てないでよ」

 

 少なくとも孤児の俺がこんな金稼ぎできたのはジジイのおかげだ。

 リーマンとは趣味が合わないので引き取られることを拒否しまくって最悪の事態だけは避けれた。

 増強系に見せかけるために無理矢理火事場の馬鹿力で誤魔化すのも結構大変だがうまく誤魔化せている。

 

「ん?起きたか?」

「やり過ぎだ!脳を揺らす程度にしとけ!」

「それ今更じゃね?」

 

 こいつが『平和の象徴』となるのなら、いい金蔓になりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

version【Villain】

 

 無個性として生まれた俺は親に捨てられたらしい。

 らしいというのは昔の記憶なんぞほとんど覚えてないし、気がついたら死穢八斎會とか言う組織に拾われた。

 同時期に拾われた治崎とは兄弟みたいに育った。

 もっとも俺は舎弟頭なんて役職だが、治崎は若頭だだいぶ格が違う。

 

「それで壊理(エリ)だったかの個性はわかったのか?」

「ああ。組長(オヤジ)は俺の個性に似てるとか言ってたがとんでもない。時代すら変えかねない個性だ」

「時代すら?『平和の象徴』みたいな?」

 

 (ヴィラン)が跋扈していた個性を持つ人間が多数派になってからの騒乱期を終わらせた傑物にして、新たな時代を築いた化け物である。

 

「違うね。個性がなかった時代まで巻き戻せる」

 

 巻き戻せる(・・・・・)

 治崎らしくない比喩だ。

 いくら個性でもそんなでたらめな個性はあり得ない。

 

「個性因子のキラー細胞みたいなものか?」

「やはり理解できないか。エリの個性は『巻き戻す』個性だ」

「『巻き戻す』?時間をか?」

「ある意味そうだ。エリの個性は人を受精卵にも人を猿にまで巻き戻せる」

 

 ……マジか。

 無茶苦茶な個性だ。

 だが、確認しておくことがある。

 

「それは空間に干渉できるか?」

「可能だ。角を起点に何らかの波長を出し、物体に作用する。一応言っとくがタイムマシンみたいなことは不可能だ」

「それは残念だ。だが、それが本当ならエリの個性制御は必須だな」

 

 そういった時、治崎が不気味な笑いをした。

 いや、口元を隠してるからそんな雰囲気を感じたというのが正しいが。

 

「それはしない」

「なんでだ?」

 

 どうせろくでもない理由だろうけど。

 

「エリの肉片を使って瞬間的にに個性が消せるのがわかった」

「それが事実なら世界がひっくり返るな……いや、無理か」

 

 どのくらいの肉片が必要なのかは知らんが、たとえごく少数でも時代を変えるほどにはならない。

 使い方によっては大儲けできそうだが、人間由来だからあまり母数が用意できない。

 いや、治崎の個性なら可能か?

 

「賢いなゲント。病気に罹ってないだけはある。確かに今のままなら不可能だ。だが、研究していけば永久的に個性を消せる」

「それができれば裏社会で成り上がれるだろうがそんだけだな。出来れば対になるものが欲しい」

「対?」

「個性を消せる薬――仮に『デリート薬』とするなら、個性を復活させる『特効薬』だな」

「それは俺も考えていた。ヴィランに『デリート薬』・ヒーロー共に『特効薬』を売り捌く――マッチポンプを利用して世界を牛耳る」

 

 大儲けできるだろうがそれも一時的だろうなあ。

 対策されない自身でもあるのだろうか?

 ……あるんだろうなあ。

 組長(オヤジ)に心酔してるが、思想は対極に等しい二人は良く対立していた。頭はいいけど視野が広いとは言えないし、組長(オヤジ)を眠らせてやらかしそう(・・・・・・)ではある。

 まあ治崎が仕切ってくれた方が金稼ぎとしては楽な部類だけど。

 思想としては組長(オヤジ)よりの俺は治崎との折衷が主な活動だったりする。

 

「治崎。100%組長(オヤジ)の許可はおりねえぞ。俺も反対だしな」

「ほう?」

 

 想定内なのかいつでも動けるように重心を移動させる。

 マズいな。

 俺が消されかねない。

 

「早まるな。このまま(・・・・)なら俺も反対だが、もっと効率的な方法はある」

「話せ」

 

 よし、食いついた。

 

「個性の影響で移植なんかの技術がかなり進んでいる。エリの個性因子を動物に移植して増やす。お前の個性を使えば比較的楽にできるだろう。人由来であろうと動物から使ってるなら文句は出にくいし、増やすのも比較的楽だ。オリジナル(エリ)を押さえておけば品質は維持できるし、盗めてもオリジナル(エリ)がないから劣化品が限界だろう」

「なるほど。劣化品をあえて出回らせれば俺たちの使用する『デリート薬』と『特効薬』がプレミア効果がつくと言った所か。『特効薬』だけはオリジナルから作ることにすれば問題はないか」

 

 元々は臓器移植のための臓器を動物から作ろうという技術の応用だ。

 交配させても劣化していくだけでオリジナルには届かない。

 それどころか詳しくなければ個性因子を見失う可能性だってある。

 

「使える程度に個性因子を弱らせれば暴走もしにくいな。組長(オヤジ)には個性を調べるための実験の一環で移植してみたとでも言っておくか」

「まだ話してないのか?」

「当然だ。そういう事には厳しいし、もう少し研究がしたかったからな」

 

 それならそれでいいけどよ。

 口止めにはやはり酒かな。

 樽で貰っとけば後でいろいろ使えるし。

 

「あとで奢れよ?」

「後でクロノに持っていかせる」

「そらどうも。エリの個性制御は?かわいい孫なんだ説得するなら必要だろう」

「エリに知識を与えるのはマズい」

「そうでもねえよ。組織への帰属意識を精神安定につかうとかよくある手口だしな」

「……一段落着いたらお前に任す」

「了解」




893とバイオ関連の知識はあまりありませんが、これくらいはあり得そうだと思います。
自身じゃ組長よりとか言ってるけど実際には若頭より

このルートだと死穢八斎會編は凶悪かつ最悪な組織になってそうですね


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