遊戯王 超融合 時空を越えた絆Ⅱ (ミスタータイムマン)
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Scene1 新たな脅威

手の形を模した巨大な暗い色の雲が渦巻く。

その中央部分には不気味に輝く光の点が見える。

それは様々な場所世界からも見ることができた。

 

 

―アストラル世界―

なんと強大なカオスの塊だ。

アストラルはそれに近づけば近づくほど濃くなっていくカオスに戦慄を感じていた。

 

そこへ ―――、

 

「アストラルー!」

 

天空の巨大な光から放たれたのは 懐かしい顔ぶれー私たちの希望。

 

「遊馬!」

 

「アストラル! この雲みたいなのがそうなのか」

 

「ああ、この雲は強大なカオスを宿している。しかもどこからか力を取り込んでどんどん巨大化している」

 

突如巨大な雲の掌の光点からカッと光を放たれ、私と遊馬、シャーク、カイトはスポットライトのような光に照らし出される。

 

「なんだ・・・これは」

 

訝しむシャーク。

 

「なんか、みんなから離れていってねぇか?」

 

その言葉が引き金かのように、急激な加速度が私たちを襲う。

 

「ぐっ、トラクタービームか」 

 

 

「遊馬ー!」

 

小鳥の悲痛な叫び。

 

「みんなー!」

 

私達の声は深い雷鳴が響く雲に消えていった。

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

「痛てて・・・」

 

雲の内部には驚くことに黒色の大地が広がっていた。

 

「まんまと敵の罠にはまっちまうとはな」

 

私たちの前には巨大な幾何学の白亜の城がそびえ立っていた。

 

「ハートランドよりも高ぃぜ。ん、小鳥からだ」

 

遊馬のDパッドに小鳥から通信が入る。

 

「遊馬!みんなでそっちに入ろうとしてるんだけど、バリアがあって近づけないの。みんなでエリファスさんの所に行って作戦を練りなおそうって話しているの。ベクターは別の作戦があるからってどこかに行っちゃったわ」

 

「わかったぜ、小鳥」

 

「遊馬、気をつけてね」

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

ガシャンガシャン

 

鋼を打ち付けるような鈍い音。左を黒、右を白で染め上げられた3体の鎧甲冑がやおら姿を現す。

 

「排除する」

 

合成したような歪な機械音を発しながら右腕のデュエルディスクを構える。

 

「早速おでましか、いくぞ!」

 

 

「「「デュエル!」」」

 

所詮は機械仕掛け。門番程度で我々の相手になると思っているのか?

 

だが、我々の予測は甘かったのだとすぐに知る事になる・・・。

 

「くっ」

 

天城カイトLP1300 手札2枚 場 伏せカード1枚

 

機械騎士C LP3500 手札4枚 場 伏せカード3枚

 

「こいつら・・・!」

 

神代凌牙LP900 手札1枚 場 ビッグジョーズ

 

機械騎士B LP3000 手札5枚 場 伏せカード2枚

 

 

「強ぇえ・・・!」

 

九十九遊馬&アストラルLP1000 手札3枚 場 ガガガガードナー

 

機械騎士A LP4000 手札5枚 場 伏せカード1枚

 

彼らはただただ純粋に強い。まるで格上を相手にしているようだ。一方でデュエリストとしての気迫は全く感じられない。何だ、このチグハグさは?

 

 

そして―――、

 

「―――、シンクロ召喚!《スターダスト・ドラゴン》!」

 

「―――、特殊召喚!《E・HEROネオス》!」

 

「―――、特殊召喚!《ブラック・マジシャン》!」

 

あれは、伝説の・・・!

 

 

 

遊☆戯☆王

 

超融合!時空を超える絆Ⅱ



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Scene2 イマジナリーナイツ

「くっ!」

天城カイトLP1300 手札2枚 場 伏せカード1枚

機械騎士C LP3500 手札4枚 場 伏せカード3枚

 

「こいつら・・・」

神代凌牙LP900 手札1枚 場 ビッグジョーズ

機械騎士B LP3000 手札5枚 場 伏せカード2枚

 

「強ぇえ・・・!」

九十九遊馬&アストラルLP1000 手札3枚 場 ガガガガードナー

機械騎士A LP4000 手札5枚 場 伏せカード1枚

 

 

アストラルは思う。

彼らはただただ純粋に強い。まるで格上を相手にしているようだ。一方でデュエリストとしての気迫は全く感じられない。何だこのチグハグさは?

 

カイトの前の機械騎士がカードを引く。

 

「私はレベル3のチューナーモンスター《スチーム・シンクロン》にレベル5の《ターレット・ウォリアー》をチューニング。シンクロ召喚!《スターダスト・ドラゴン》!」

 

「シンクロ召喚だと・・・?!」

 

カイトの前に現れたのは、輝く翼をもつ水色のドラゴン。しかも未知の召喚法に驚きを隠せない。

 

 

 

「私は手札から《O-オーバーソウル》を発動。特殊召喚!《E・HEROネオス》!」

 

「これは、伝説の?!」

 

シャークの前に現れたのはアカデミアの英雄の象徴たるヒーロー。

 

 

「私は手札から《古のルール》を発動。特殊召喚!《ブラック・マジシャン》!」

 

遊馬とアストラルの前に現れたのは伝説の初代決闘王(デュエルキング)が従えたとされる黒き衣に身を包んだ魔術師。

 

「六十郎のじいちゃんの所で見た木の像?!」

 

「そうだ遊馬。《ブラック・マジシャン》に《E・HEROネオス》、デュエルモンスターズに関わる者ならば知らない者はいない伝説のカード達だ」

 

「あのドラゴンは?」

 

「私も初めて見る。だが、他の伝説のカードにも勝るとも劣らないオーラを持っている!」

 

それにシンクロ召喚。恐らく未知の伝説のカード!

 

何故、カオスから伝説のカードが・・・。

形勢はこちらが圧倒的に不利。

まるで伝説のデュエリストそのものを相手にしている感覚だ。

 

 

ブワン

 

 

「首尾は順調のようだな。さて後は・・・」

 

突如空間が開き、中から黒と白の仮面を被った金髪の男が姿を表す。

 

「お前が元凶か!」

 

「いかにも、私はパラドックス。カオスを求める者」

 

パラドックスと呼ばれた男は傲岸不遜な態度のまま、指をさしている遊馬を見下ろす。

 

更に空間が歪み、オレンジの髪の人影が飛び出る。

 

「よっ、と。パラドックスの旦那。目的のヤツ、連れてきたぜ」

 

「ベクター!」

 

ベクターの腕にはぐったりとした青い髪の幼い少女が抱えられていた。

 

「イリス!ベクター、貴様!」

 

その言葉に口元を三日月のように歪める。

 

「怖い顔すんなよ、ナッシュ。俺もこのカオスが欲しいのさ。 バリアン領は守りが手薄だったから簡単だったぜぇ」

 

イリスは、生前のシャーク―ナッシュに従うバリアン世界の残留思念の1つだったと記憶している。アストラル世界と融合したバリアン世界はバリアン領としてアストラル世界の端に存在している。おそらく、皆と別れた後向かったのだろうと推測できる。

 

「ベクター、なぜ彼女を捕らえた?彼女は凌牙に従うただのバリアンのはずだ」

 

「さぁな、旦那が言うにはカオスの力を得るために必要らしいぜ」

 

「ベクター!」

 

パラドックスの叱責にヒョイと肩をすくめるベクター。

 

「ま、そういうこった」

 

「死にゆく者に対して話しても無駄だな。やれ!『イマジナリーナイツ』達よ!」

 

黒き魔術師、光の戦士、風のドラゴン3体の『伝説』が攻撃を放とうとする。

 

 

絶体絶命の窮地。そこへ―――――、

 

 

 

「ちょっと待ったー!」

 

 

バリィイン!!

 

 

燃えるような赤と緑の髪の少年が赤、黒、白、紫の4体のドラゴンとともに空間の裂け目から飛び出す。

 

4体のドラゴンはベクターたちの近くに降り立ち、威嚇するように咆哮を上げた。

 

「ムッ!」

 

「パラドックス!お前の思い通りにはさせない!」

 

眉を吊り上げながらパラドックスを指差す少年。

 

「榊遊矢か。だが一足遅かったようだな。我々の目的は既に達している」

 

少年が従えているドラゴンによく似た4枚のカードを見せつけるようにかざす。

 

「よくも覇王眷龍たちを!そのカードを返せ!さもなくば、俺のドラゴンたちがお前を砕く!」

 

「フム、デュエル外の形勢はこちらが不利なようだな。行くぞ。ベクター、ナイツ達よ。 今こそ儀式を完遂させるのだ」

 

ゆらりと陽炎のように消え失せるパラドックスとベクター達。

 

「あのまま続けていたら、我々の敗北は可能性が高かった」

 

「助かった・・・ということか」

 

カイトは唇を噛み締める。

 

暗雲が立ち込める白亜の城の彼らとの実力差であるかのように壁のように高くそびえ立っていた。

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

「ところでお前は何者なんだ?パラドックスのことを知っていたみたいだったし」

 

「俺は榊遊矢。ペンデュラム次元から俺のドラゴン達を奪ったパラドックスを追って来たんです。ええと、あなた方は?」

 

遊馬たちは手短に自己紹介を行った。

カイトはすぐにDパッドを操作して城の構造を調べ始める。その様子を遊矢はジッと表情で見つめる。

 

「どうした?」

 

カイトは、作業がひと段落すると遊矢に振り向く。

 

「ああいえ。あなたが友人にそっくりだったから、つい」

 

遊矢は何でもないとパタパタと手を振る。

 

「そうか?みんな、あの城の構造がわかったぞ」

 

カイトはDパッドに虚空に城のデータが表示させる。

 

「あの城はどうやら階層構造になっているようだ。最上階が最もカオスの濃度が高い」

 

「モンスターを実体化させて直接行くのはダメなんですか」

 

「それは難しい。カオスの中央部分から周囲に空間の歪みが見られる。城を登るしかない」

 

「1階ずつ上がるしかないってことか」

 

顎に手を当て眉を寄せるシャーク。

 

「それなら早く行こうぜ!」

 

「待て、遊馬。おそらく1階ごとあの機械の騎士―『イマジナリーナイツ』が守っているはずだ。何かしら情報を集める必要がある」

 

「けどアストラル、あいつらのことを知ってるやつなんて・・・あっ」

 

アストラル達は遊矢に視線を向ける。

 

「遊矢、キミは奴らの情報を何か知らないか?」

 

「はい、あのイマジナリーナイツが使っているデッキ。あれは他の世界、異なる時代の伝説の決闘者たちのデッキのコピーなんです」

 

「何だと!」

 

「詳しいことは、ええと・・・、零児」

 

遊矢のデュエルディスクを操作するとノイズ混じりの画面にメガネをかけた青年が映る。

 

『では私から説明しましょう。事の発端は3日前、様々な時代、様々な世界に強大な混沌の力がエネルギーが出現しました。その影響によって我々の世界はいくつかの世界と部分的なつながりができてしまいました。一部の場所で電波や回線が混線している状況にありましたが、他の世界の決闘者達と連絡をとることができました。我々は情報を交換していく中で“パラドックス”という決闘者が背後にいることが分かったのです』

 

「あの白と黒の仮面のヤツか」

 

『パラドックスは別の世界で倒されたはずですが、カオスの力を受けて復活したようです。さらに奴はデュエルモンスターズのほぼ全てのカードを所持。更にデッキから元々の使い手のデュエリストのデュエル人格の再現まで可能にしています。伝説の決闘者のデュエル人格とそのデッキをもつアンドロイド、それが“イマジナリーナイツ”です』

 

「なるほど、つまり我々が戦っていたのは文字通り伝説の決闘者そのものということだな」

 

「はい。ですが、オリジナルと異なるのは決闘者としての気迫がない。この一点が我々を勝利に導く鍵だと考えています」

 

「必要以上に臆することはないということだな。 どんな相手だろうと鮫のように引きちぎるまでだ」

 

掌を拳に打ち付けるシャーク。

 

「説明助かるよ、零児。本当はもっとたくさんのデュエリストを連れて行きたかったんだけどね。ここの座標はうまくセットできなくてさ。ちなみに俺は、俺のドラゴン達が奴らに奪われた覇王眷龍との繋がりがあったから追ってこれたんです」

 

「そうとわかれば行こうぜ、みんな」

 

「「「ああ!」」」 「はい!」

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

城の階段を駆け上がる5人。階段の壁をオーロラのような光が照らしていた。

 

「扉が3つあるぞ」と、遊馬。

 

扉には左には戦士が、真ん中に魔術師が、右にドラゴンが描かれていた。

 

「おそらく、それぞれの扉の先は扉と対応したイマジナリーナイツがいるはずだ」

 

凌牙は左、遊馬は中央、カイトは右を選んだ。

 

「俺はどれを選ぼうかな?」

 

「遊矢は我々と来てほしい」

 

「俺は大丈夫だぜ?アストラルもいるし。シャークかカイトの方がいいんじゃ」

 

「魔術師の扉、我々が戦うのはおそらく初代決闘王、武藤遊戯のデッキだろう。このメンバーの中でも別格だ。最も戦力が必要になる筈だ」

 

アストラルの言葉に遊馬はハッとなる。

 

「いくぞ」

 

扉に手をかける遊馬達。

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

遊馬と遊矢が扉を開けるとそこには砂漠が広がっている。

 

「どうやら内部には異空間が広がっているようだな」

 

周囲に金色の砂埃が舞う。

 

「そういうこった。ようこそ俺たちのフィールドへ」

 

目の前に現れたのは黒い翼を生やしたバリアンの姿のベクターとイマジナリーナイツ。

 

「ベクター!」

 

「お前ら1対2でやろうなんて考えてるみてぇだから、俺様が来てやったぜ!これで2対2。タッグフォースルールでタッグデュエルだ!」

 

「カオスを取り込んでバリアンの姿を取り戻したのか。やるぞ遊馬、遊矢」

 

「「「「「デュエル!」」」」」

 

遊馬・アストラル&遊矢:LP4000 Ⅴ.S. ベクター&イマジナリーナイツcode Y.M.:LP4000

 




今回の敵はパラドックスとベクターでした。
特殊な理由により蘇ったという設定。
ちなみに伝説の決闘者たちのデッキは、パラドックスの時代の物です。スターダスト・ドラゴンに関してはZ-ONE経由です。
イマジナリーナイツの疑似人格も遊星の人格を作り上げたZ-ONE由来です。
ベクターはいつもの芸風。


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Scene3 ペンデュラム召喚

「「「「「デュエル!」」」」」

 

遊馬・アストラル&遊矢:LP4000 Ⅴ.S. ベクター&イマジナリーナイツcode Y.M.:LP4000

 

1st turn

 

「私のターン、モンスター1枚セット、リバースカードを1枚セット。ターンエンド」

 

静かな立ち上がりのイマジナリーナイツの第1ターン。

 

 

2nd turn

 

「俺のターン、ドロー!手札を1枚捨て、《ペンデュラム・コール》を発動。魔術師モンスターを2枚を手札に加える。レディース&ジェントルマン! 今から皆様に未知の召喚法をお見せしましょう。俺はスケール8の《時読みの魔術師》とスケール1の《星読みの魔術師》でペンデュラムスケールをセッティング」

 

フィールドの両端に2体の魔術師が2本の光の柱と共に現れた。

 

「何だ?!この現象は?!」

 

ベクターに限らず誰もが眼前の光景から眼が離せない。

 

「これでレベル2から7のモンスターが同時に召喚可能。 揺れろ、魂のペンデュラム。天空に描け光のアーク! ペンデュラム召喚!現れろ、俺のモンスター達。《EMウィップ・バイパー》(レベル4 ATK1700)!全てを焼き尽くす2色の(まなこ)《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!」

 

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》レベル7 ATK2500

 

シルクハットを被ったコブラと黄と緑の眼を持つ紅のドラゴンが上空の光の円から降り立つ。

 

「一気にモンスターを2体も特殊召喚だとっ!」

 

「ペンデュラム召喚だって?!すげーぜ、遊矢!」

 

「バトルだ!《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》でセットモンスターを攻撃。『螺旋のストライクバースト』!」

 

《岩石の番兵》DEF2000

 

岩の戦士像が炎を浴び、弾け飛ぶ。

 

「続けてウィップ・バイパーでダイレクトアタック!」

 

侵略する炎のような怒涛の攻め。だが、決闘王を模したこのデッキはそう簡単に崩れない。

 

「罠カード、《カウンターゲート》を発動。ダイレクトアタックを終了し、カードを1枚ドロー。引いたカードは《電磁石の戦士β》。《カウンターゲート》の効果で《電磁石の戦士β》(レベル3 ATK1500)を特殊召喚。 《電磁石の戦士β》の効果を発動。デッキから《電磁石の戦士α》を手札に加える」

 

デフォルメされた岩の戦士が飛び出す。

 

「ターンエンド!」

 

 

3rd turn

 

「ペンデュラム召喚には驚いたが、こっちには初代決闘王がついてるんだぜぇ。俺のターン、ドロー。 自分フィールドのモンスターが岩石族モンスターのみの為、《岩石の番兵》(レベル3 ATK1300)を特殊召喚。さらに《ゴルゴニック・ ケルベロス》(レベル3 ATK1500)を召喚。岩石族モンスターが召喚された事で《ゴルゴニック・ガーゴイル》(レベル3 ATK1500)を特殊召喚するぜ。タッグフォースルールはフィールドだけじゃなく、墓地も共有できる。さすがは決闘王、完璧な仕事だぜ」

 

「レベル3のモンスターが4体も揃ってしまったか」

 

モンスターエクシーズが来る!アストラルは視線を鋭くする。

 

「俺はレベル3の《電磁石の戦士β》と《ゴルゴニック・ガーゴイル》をオーバーレイ!《岩石の番兵》と《ゴルゴニック・ケルベロス》もオーバーレイ!レベル3のモンスター2体ずつでダブルオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚! 現れろ!ダブル《ゴルゴニック・ガーディアン》(ランク3 ATK1600)!」

 

伝説の魔獣ゴーゴンを元にした石像が2体同時に出現した。ペンデュラム召喚の意趣返しだろうか。

 

「一気にモンスターエクシーズを2体も!しかもこいつの効果って確か!」

 

「1体目の《ゴルゴニック・ガーディアン》で《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の攻撃力を0に!更に効果を無効にするぜ」

 

石像の1つ目が煌々と怪しく輝く。

 

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》ATK2500→0

 

《ゴルゴニック・ガーディアン》は生前からベクターが操る強力なモンスター。岩石族は元来、展開力が乏しい。ゆえにこのモンスターは存在が許される。だが、決闘王とベクターのコンビネーションはその課題をたやすくクリアしてしまった。

 

「更に更にぃ、2体目の《ゴルゴニック・ガーディアン》で《EMウィップバイパー》の攻撃力と効果を0に!」

 

「なら、《ゴルゴニック・ガーディアン》の効果にチェーンして《EMウィップバイパー》の効果を発動。《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の攻撃力と守備力を入れ替える!」

 

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》ATK0→2000

《EMウィップバイパー》ATK1700→0

 

「ち、エースを守ったか。《ゴルゴニック・ガーディアン》で《EMウィップバイパー》を攻撃!」

 

遊馬・アストラル&遊矢LP4000→2400

 

「まあいい、ターンエンドだぜ」

 

 

4th turn

 

「俺のターン、ドロー」

 

俺の手札に特殊召喚できるモンスターはいない。ここは守るしかないか。

 

「遊馬さん!俺たちはフィールドが共有しています。今なら遊馬さんは手札のレベル2から7モンスターをペンデュラム召喚で特殊召喚できます!」

 

「俺もペンデュラム召喚できるのか?!」

 

「はい、ペンデュラム召喚を宣言してください」

 

「わくわくするな、アストラル」

 

「ああ!いくぞ遊馬!」

 

遊矢とアストラルはこんな状況だが自らも未知の召喚法を使えることに興奮を抑えきれない。

 

 

「「かっとビングだ!()ペンデュラム召喚!現れろ、俺のモンスター達!《ガガガマジシャン》(レベル4 ATK1500)!《ガガガガール》(レベル3 ATK1000)!」」

 

天空の光から学生服を着た男女の魔術師が飛び出てポーズをとる。

 

「《ガガガガール》の効果でそのレベルを4に変更。 レベル4の《ガガガマジシャン》と《ガガガガール》でオーバーレイ!レベル4のモンスター2体でオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!来い!《No.41泥睡魔獣バグースカ》!」

 

お銚子から黒い団子のような塊が飛び出る。その手に持っていた升から酒をグビッと飲み干す。

アストラルの記憶の力の化身ナンバーズ。始めて使うカードだが、この状況にこそ相応しい。

 

 

《No.41泥睡魔獣バグースカ》

ランク4/地属性/獣族・エクシーズ・効果/ATK2100/DEF2000

レベル4モンスター×2

このカードのコントローラーは、 自分スタンバイフェイズ毎にこのカードのX素材を1つ取り除く。 取り除けない場合、このカードを破壊する。

①:このカードは「No.」モンスター以外との戦闘では破壊されない。

②:攻撃表示のこのカードは相手の効果の対象にならず、相手の効果では破壊されない。

③:このカードがモンスターゾーンに守備表示で存在する限り、 フィールドの表側表示モンスターは守備表示になり、 フィールドの守備表示モンスターが発動した効果は無効化される。

(ゼアル風)

 

 

「オーバーレイユニットになった《ガガガガール》の効果で《ゴルゴニック・ガーディアン》の攻撃力を0にする」

 

《ゴルゴニック・ガーディアン》ATK1600→0

 

「バトルだ。バグースカで攻撃力が0になった《ゴルゴニック・ガーディアン》を攻撃!攻撃表示のバグースカは相手の効果の対象にならず、効果では破壊されない!」

 

ベクター&イマジナリーナイツcode Y.M.:LP4000→1900

 

「ペンデュラム召喚はパートナーの展開力も高めるのか、厄介だぜ」

 

「俺はモンスター1枚セット。《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を守備表示に変更(DEF2000)。リバースカードを1枚セット。ターンエンドだぜ」

 

遊馬・アストラル&遊矢

LP:2400

手札:2枚(遊馬・アストラル)&2枚(遊矢)

場:《No.41泥睡魔獣バグースカ》(ATK2100)、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》(DEF2000)、裏側守備モンスター1枚、伏せカード1枚

Pゾーン:《時読みの魔術師》(スケール8)、《星読みの魔術師》(スケール1)

 

 

 

ベクター&イマジナリーナイツcode Y.M.

LP:1900

手札:4枚(ベクター)&4枚(イマジナリーナイツcode Y.M.)

場:《ゴルゴニック・ガーディアン》(ATK1600)



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Scene4 『伝説』の洗礼

11/16構成ミスがあり、一部描写を変更しています。
・ラクダウン→セカンドンキー
・六芒星の呪縛→セキュリティ・ボール
・バグースカに戦闘破壊される描写を追加。
・セカンドンキーの効果で墓地におくったEMコンでライフ回復


遊馬・アストラル&遊矢

LP:2400

手札:2枚(遊馬・アストラル)&2枚(遊矢)

場:《No.41泥睡魔獣バグースカ》(ATK2100)、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》(DEF2000)、裏側守備モンスター1枚、伏せカード1枚

Pゾーン:《時読みの魔術師》(スケール8)、《星読みの魔術師》(スケール1)

 

 

 

ベクター&イマジナリーナイツcode Y.M.

LP:1900

手札:4枚(ベクター)&4枚(イマジナリーナイツcode Y.M.)

場:《ゴルゴニック・ガーディアン》(ATK1600)

 

 

6th turn

 

「私のターン、ドロー。私は《電磁石の戦士α》(レベル3 ATK1500)を召喚。効果で デッキから《電磁石の戦士 マグネット・ベルセリオン》を手札に加える。 墓地から《岩石の番兵》を自身の効果で特殊召喚。そして手札から魔法カード《二重召喚》を発動。 《電磁石の戦士α》と《岩石の番兵》をリリース」

 

「まさか、あの伝説のカードが来るのか?!」

 

まざまざと思いだされる初代決闘王の象徴たる黒魔術師。

 

「アドバンス召喚!《ブラック・マジシャン》!」

 

《ブラック・マジシャン》レベル7 ATK2500

 

再来する伝説。カードが放つオーラは伝説そのもの!

 

「私は墓地の《電磁石の戦士α》と《電磁石の戦士β》 、手札の《電磁石の戦士γ》の3体をゲームから除外。《電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン》(レベル8 ATK3000)を特殊召喚!」

 

カードの無駄なく繋がるコンボ。コストが別のカードの召喚条件を満たす。アストラルは敵ながら美しいコンボだと、感嘆する。

 

「なんて無駄がないんだ!」

 

「《ブラック・マジシャン》で《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を攻撃!『黒魔導』!」

 

構えた杖から紫の光弾が放たれ、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》はかき消える。

 

「《電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン》で《No.41泥睡魔獣バグースカ》を攻撃。『電磁剣(マグネットソード)』!」

 

岩石でできたケンタウロスは電気を纏ったブレードでバグースカを切りつける。

 

「No.はNo.でしか破壊されない!」

 

遊馬・アストラル&遊矢LP2400→1500

 

「カードを1枚セットしてターンエンド」

 

 

7th turn

 

「俺のターン、ドロー。スタンバイフェイズ時に、《No.41泥睡魔獣バグースカ》のオーバーレイユニットを1つ取り除く。更に墓地から、トラップカード《ブレイクスルー・スキル》を発動。《ゴルゴニック・ガーディアン》の効果を無効にする!これで厄介なゴルゴニック・ガーディアンは封じた!」

 

《ゴルゴニック・ガーディアン》から目の光が消える。

 

「ちぃ」

 

ゴルゴニック・ガーディアン2体の強力な布陣がこうも簡単に瓦解するとは。

 

「メインフェイズ!セッティング済みのペンデュラムスケールを使い、ペンデュラム召喚!現れろ俺のモンスター達。《EMシルバークロウ》(レベル4 ATK1800)!《EMセカンドンキー》(レベル4 DEF2000)!」

 

天空の光から、2体の四足獣が現れる。

 

「特殊召喚した《EMセカンドンキー》の効果で俺は《EM コン》を墓地に送る。《EMシルバークロウ》と《EMラクダウン》でオーバーレイネットワークを構築!漆黒の闇より愚鈍なる力に抗う反逆の牙!今、降臨せよ!エクシーズ召喚!ランク4!《ダークリベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!」

 

 

《ダークリベリオン・エクシーズ・ドラゴン》

ランク4/闇属性/ドラゴン族・エクシーズ・効果/ATK2500/DEF2000

レベル4モンスター×2

①:このカードのX素材を1つ取り除き、 相手フィールドのレベル5以上のモンスター1体を対象として発動できる。このターンのエンドフェイズ時まで、そのモンスターの攻撃力を半分にし、 その数値分このカードの攻撃力をアップする。

(アニメ版)

 

 

「オーバーレイユニットを1つ取り除き、《ダークリベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の効果を発動。『トリーズン・ディスチャージ』!《磁石の戦士マグネット・ベルセリオン》の攻撃力を半分にして、その数値分、攻撃力をアップ!」

 

黒き翼から幾重もの雷が発生し、《磁石の戦士マグネット・ベルセリオン》を取り囲み、《ダークリベリオン・エクシーズ・ドラゴン》はその力を吸収する。

 

《ダークリベリオン・エクシーズ・ドラゴン》ATK2500→4000

《磁石の戦士マグネット・ベルセリオン》ATK3000→1500

 

「もう一度《ダークリベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の効果を発動。今度は《ブラック・マジシャン》の攻撃力を半分にして、その数値分、攻撃力をアップする。『トリーズン・ディスチャージ』!」

 

今度は伝説の魔導師の力を取り込んだ。

 

《ダークリベリオン・エクシーズ・ドラゴン》ATK4000→5250

《磁石の戦士マグネット・ベルセリオン》ATK2500→1250

 

「攻撃力5000オーバーだとぉ!」

 

ベクターの言葉にアストラルも同感だ。

下準備もなしに一気にワンショットキル射程圏内にランク4モンスターの領域を越えている。ナンバーズでも、ここまで強力なカードは殆んどいない。

 

ダークリベリオン・エクシーズ・ドラゴンはレベル5以上の攻撃力3000以上のモンスターが場にあれば、即座にゲームエンドまでもっていく、四天の龍、随一のアタッカー。鋭い刀のようなアギト()が雷光を帯び、飛翔する。

 

「《ダークリベリオン・エクシーズ・ドラゴン》で、《ブラック・マジシャン》を攻撃!『反逆のライトニング・ディスオベイ』!」

 

これが決まればデュエルは決着してしまう。本来なら焦る場面。だが、相手は初代決闘王そのもの。当然、想定圏内。

 

「トラップカード、《セキュリティ・ボール》を発動。攻撃モンスターの表示形式を変更する」

 

《ダークリベリオン・エクシーズ・ドラゴン》ATK 2500→DEF2000

 

「《No.41泥睡魔獣バグースカ》で《ゴルゴニック・ガーディアン》を攻撃!」

 

ベクター&イマジナリーナイツcode Y.M.:LP1900→1400

 

 

「カードを1枚セットして、ターンエンドだ」

 

 

8th turn

 

「俺のターン!やるじゃねぇか。ならこいつはどうかな?」

 

ベクターの手が紫に輝く。

 

「そいつは!」

 

ベクターのこの現象に遊馬とアストラルは見覚えがあった。かつてのバリアン七皇に許されたシャイニングドローと対をなすカオスの極地。

 

「行くぜ。バリアンズカオスドロー!」

 

「俺が引いたカードは《RUM 七皇の剣(ザ・セブンスワン)》!!」

 

引いたカードを意気揚々と掲げるベクター。一気にオーバーハンドレッドカオスナンバーズを場に出す最強のランクアップマジックの1つ。

 

「エクストラデッキから、《No.104仮面魔踏士(マスカレード・マジシャン)シャイニング》を特殊召喚。《No.104仮面魔踏士シャイニング》でオーバーレイネットワークを再構築!カオスエクシーズチェンジ!現れろ!混沌より生まれしバリアンの力が光を覆うとき、大いなる闇が舞い踊る。《CNo.104仮面魔踏士(マスカレード・マジシャン)アンブラル》!ありがとよ、ナッシュ。やっぱ使えるモンはしっかり使わねぇとな」

 

赤い死神がその鎌をクルクルと回し、辺りを睨めまわす。

 

「アンブラルの効果を発動!相手フィールド上の魔法・罠カードを破壊するぜ」

 

デュエルディスクのモニターを確認して、満足気に頷くベクター。

 

「ほほぅ、ペンデュラムカードは魔法カード扱いなのか。なら、まずはそのうざってぇペンデュラムカード、《時読みの魔術師》を破壊だ。『デストロイドステップ』!」

 

《時読みの魔術師》がいる光の柱ごと砕け散る。

 

「行くぜ。アンブラルで、《No.41泥睡魔獣バグースカ》を攻撃!!」

 

遊馬・アストラル&遊矢LP1500→600

 

「マグネット・ベルセリオンで《ダークリベリオン・エクシーズ・ドラゴン》(DEF2000)を攻撃!『電磁剣(マグネットソード)』!」

 

「カードを2枚セットしてターンエンド」

 

「ターン終了前に墓地の《EMコン》の効果を発動。墓地からこのカードと《EMセカンドンキー》を除外する事でライフを500回復する」

 

遊馬・アストラル&遊矢LP600→1100

 

 

9th turn

 

「俺のターン、ドロー。《ゴゴゴゴースト》(レベル4 ATK1900)を召喚し、《ゴゴゴゴーレム》(レベル4 ATK1800)を反転召喚」

 

2体の巨像が遊馬の元に召喚される。それらのレベルは4。

 

「《ゴゴゴゴーレム》と《ゴゴゴゴースト》でオーバーレイ。 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築。 エクシーズ召喚!夢と希望の使者《No.39希望皇ホープ》!」

 

《No.39希望皇ホープ》ランク4 ATK2500

 

 

一対の翼をもつ光の戦士は遊馬の絶対的なエース。久しぶりの召喚に、熱いものがこみあげてくる。

 

「《RUMヌメロン・フォース》を発動!」

 

「させるか!手札を1枚捨て、《マジックジャマー》 を発動!ヌメロン・フォースを無効にする」

 

ヌメロン・フォースはカオスナンバーズを呼ぶだけでなく、相手の表側表示のカードを全て無効にする強力な効果も備える。

 

「まだだ!俺は希望皇ホープでオーバーレイネットワークを再構築!カオスエクシーズチェンジ!混沌を光に変える希望の使者。《CNo.39希望皇ホープレイ》!」

 

《CNo.39希望皇ホープレイ》ランク4 ATK2500

 

その黒き姿は第1のホープの進化系、ホープレイ。いつもピンチを勝利に変えてくれた。

 

「カードを1枚セット。オーバーレイユニットを1つ取り除き、ホープレイの効果を発動。『オーバーレイチャージ』!」

 

「アンブラルの効果を発動。相手ライフを半分にし、モンスター効果を無効にし、手札を1枚捨てさせる。『ダークブランター』!」

 

遊馬・アストラル&遊矢LP1100→550

 

「俺の手札は0枚。ハンデスは不発!ホープレイのオーバーレイユニットは残ってる。残り2つのオーバーレイユニットを使い、『オーバーレイチャージ』!」

 

《CNo.39希望皇ホープレイ》ATK2500→3500

《CNo.104仮面魔踏士アンブラル》ATK3000→1000

 

 

「ちょっと警戒しなさすぎなんじゃねーか、遊馬君よぉ!罠カード《次元幽閉》を発動!ホープレイを除外!残念だったなぁ!」

 

「くっ、ホープ!さっき伏せたリバースカード《貪欲な壺》を発動。《No.39希望皇ホープ》、《No.41泥睡魔獣バグースカ》、《ガガガマジシャン》、《ガガガガール》、《EMウィップ・バイパー》をデッキに戻し、2枚ドロー!カードを2枚伏せ、ターンエンド!」

 

 

遊馬・アストラル&遊矢

LP:550

手札:0枚(遊馬・アストラル)&1枚(遊矢)

場:伏せカード2枚

Pゾーン:《星読みの魔術師》(スケール1)

 

 

 

ベクター&イマジナリーナイツcode Y.M.

LP:1400

手札:1枚(ベクター)&1枚(イマジナリーナイツcode Y.M.)

場:《CNo.104仮面魔踏士アンブラル》(ATK3000)、《電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン》(ATK3000)、《ブラック・マジシャン》(ATK2500)



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Scene5 イマジナリーナンバーズ

遊馬・アストラル&遊矢

LP:550

手札:0枚(遊馬・アストラル)&1枚(遊矢)

場:伏せカード3枚

Pゾーン:《星読みの魔術師》(スケール1)

 

 

 

ベクター&イマジナリーナイツcode Y.M.

LP:1400

手札:1枚(ベクター)&1枚(イマジナリーナイツcode Y.M.)

場:《CNo.104仮面魔踏士アンブラル》(ATK3000)、《電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン》(ATK3000)、《ブラック・マジシャン》(ATK2500)

 

 

10th turn

 

「私のターン、ドロー。《ブラック・マジシャン》でダイレクトアタック。『黒魔導』!」

 

「《ピンポイントガード》を発動。《ゴゴゴゴースト》(DEF0)を守備表示で特殊召喚。この効果で特殊召喚されたモンスターはこのターン、戦闘で破壊されない!」

 

「バトルを終了。メインフェイズ2。《疾走の暗黒騎士ガイア》(レベル7 ATK2300→1900)をリリースなしで召喚」

 

騎乗兵が2本の槍を構え、出現する。

 

「何をする気だ・・・。いや、これは?!」

 

あまりにも不自然なタイミングでの召喚にアストラルは一瞬、眉を寄せる。

 

そう、場にはレベル7のモンスターが2体。

 

 

「私はレベル7の《ブラック・マジシャン》と《疾走の暗黒騎士ガイア》でオーバーレイ。 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築。 エクシーズ召喚!《iNo.(イマジナリーナンバーズ)-1リバーサル・マジシャン》!」

 

《iNo.-1リバーサル・マジシャン》ランク7 ATK3000

 

 

六面体のキューブがパタパタと展開し、ヒトの形をとる。その姿はまるで深い闇に堕ちたブラック・マジシャンそのもの。

 

「イマジナリーナンバーズだと!?」

 

思い出すのはドンサウザンドが使った、カオスイマジナリーナンバーズ。このカードは、それに類するものなのか?

 

「ウッヒヒヒ。これこそが、イマジナリーナイツの所以。イマジナリーナンバーズ!その力は伝説の決闘者そのものに上乗せされる。つまりこいつらのデッキはオリジナル以上ってことよ!」

 

「カードを1枚セットして、ターンエンド」

 

 

11th turn

 

「伝説のモンスターの進化系なんて。俺のターン、ドロー!」

 

恐らくは今までに見た中で最強クラス。今ある最強の手段で対応する。

 

「俺は《EMドクロバット・ジョーカー》(レベル4 ATK1800)を召喚。デッキから、《EMオッドアイズ・ユニコーン》を手札に加える」

 

シルクハットをかぶった紳士が愉快な笑い声が響く。

 

「遊馬さん、モンスターを借ります。手札からマジックカード《オッドアイズ・フュージョン》を発動!」

 

呼び出すのは、毒を持つ融合の龍。

 

 

しかし―――、

 

「お前が発動したカードは《オッドアイズ・フュージョン》なのかぁ?」

 

ベクターの嘲りに、デュエルディスクに遊矢は目を向けた。

 

「え?」

 

《オッドアイズ・フュージョン》のカードにノイズが走り、黒炎が遊矢の周囲を包む。

 

「うわっ?!」

 

 

遊馬・アストラル&遊矢LP550→50

 

 

「一体・・・。何が、起こったんだ?!」

 

発動したカードが全く違うカードに置き換わっている。

 

「これは・・・テキストの書き換え。まさか!」

 

アストラルの発言を肯定するかのようにイマジナリーナイツは淡々とテキストを読み上げる。

 

「相手が通常魔法または速攻魔法を発動した場合、《iNo.-1リバーサル・マジシャン》のオーバーレイユニットを取り除いて発動。その効果は『自分のライフに500ダメージを与える』に書き替わる」

 

 

《iNo.-1リバーサル・マジシャン》

ランク7/闇属性/魔法使い族・エクシーズ・効果/ATK3000/DEF2500

レベル7モンスター×2

①:このカードは「No.」と名のついたモンスター以外との戦闘では破壊されない。

②:このカードが「ブラック・マジシャン」をエクシーズ素材としている場合、以下の効果を得る。

●相手の通常魔法または速攻魔法発動時にこのカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動する。 その時相手が発動したそのカードの効果は、「自分は500ポイントのダメージを受ける」となる。

③:1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。 自分の墓地の「ブラック・マジシャン」1体を選び、 このカードの下に重ねてX素材とする。

(オリカ)

 

 

「フ、それこそがイマジナリーナンバーズの力よ。ウワッハハハハハハハハフーハハハハハハハ!」

 

「くっ・・・!《EMオッドアイズ・ユニコーン》をペンデュラムスケールにセットして、ターンエンド」

 

ペンデュラムスケールは揃ったが手札はなく、ライフはたったの50。しかも1度でも魔法カードを使った時点で敗北。どう立ち向かえば。遊矢の胸には暗い影がよぎった。

 

 

遊馬・アストラル&遊矢

LP:50

手札:0枚(遊馬・アストラル)&0枚(遊矢)

場:《ゴゴゴゴースト》(DEF0)、《EMドクロバット・ジョーカー》(ATK1800)

伏せカード2枚

Pゾーン:《星読みの魔術師》(スケール1)《EMオッドアイズ・ユニコーン》(スケール8)

 

 

 

ベクター&イマジナリーナイツcode Y.M.

LP:1400

手札:1枚(ベクター)&1枚(イマジナリーナイツcode Y.M.)

場:《CNo.104仮面魔踏士アンブラル》(ATK3000)、《電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン》(ATK3000)、《iNo.-1リバーサル・マジシャン》(ATK3000)




オリカはブラックマジシャンのナンバーズでした。
アストラルのナンバーズには多分いないと思うので別口のナンバーズです。


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Scene6 希望のバトン

遊馬・アストラル&遊矢

LP:50

手札:0枚(遊馬・アストラル)&0枚(遊矢)

場:《ゴゴゴゴースト》(DEF0)、《EMドクロバット・ジョーカー》(ATK1800)

伏せカード2枚

Pゾーン:《星読みの魔術師》(スケール1)《EMオッドアイズ・ユニコーン》(スケール8)

 

 

 

ベクター&イマジナリーナイツcode Y.M.

LP:1400

手札:1枚(ベクター)&0枚(イマジナリーナイツcode Y.M.)

場:《CNo.104仮面魔踏士アンブラル》(ATK3000)、《電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン》(ATK3000)、《iNo.-1リバーサル・マジシャン》(ATK3000)

 

 

手札もなく、ライフはたったの50。しかも1度でも魔法カードを使った時点で敗北。この状況、どう立ち向かえば。遊矢の胸に暗い影がよぎった。

 

 

12th turn

 

「これで終わりみてぇだなぁ。俺のターン、ドロー!《iNo.-1リバーサル・マジシャン》の効果を発動するぜ。墓地から《ブラック・マジシャン》を1枚選び、このカードのオーバーレイユニットにするぜ。バトルだぜ。仮面魔踏士アンブラルで《EMドクロバット・ジョーカー》を攻撃!」

 

死神の鎌がドクロバット・ジョーカーを捉える。

 

「負けるわけにはいかない!トラップカードオープン!《威嚇する咆哮》!このターン、相手は攻撃宣言できない!」

 

「いい加減、しつけぇぜ。カードを1枚セットしてターンエンド」

 

ベクターは攻めても攻めても土壇場で防がれている状況に苛立ちを感じていた。

 

 

13th turn

 

「俺のターン、ドロー!」

 

このカードは!逆転の一手になるが魔法カード。今は使えない。おそらく罠を張っているはずだ。

ドローカードと伏せたカードから遊馬は戦略を立てる。

 

「遊馬さん、俺の《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》は遊馬さんのエクストラデッキにいます。エクストラデッキのオッドアイズはペンデュラム召喚できます!」

 

「ペンデュラムモンスターにそんな特性があるのか!遊馬!」

 

アストラルは遊馬と視線を交わす。

結論は互いに同じ。次のターンの遊矢にバトンを託す。

 

「俺はエクストラデッキから《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》をペンデュラム召喚!」

 

再び現れる榊遊矢のエースカード。ペンデュラムモンスターの真価はペンデュラムゾーンさえあれば何度でも甦る不死性にある。

 

「レベル4の《ゴゴゴゴースト》と《EMドクロバット・ジョーカー》でオーバーレイ!レベル4のモンスター2体でオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!来い!《No.41泥睡魔獣バグースカ》(DEF2000)!」

 

貪欲な壺でエクストラデッキに戻したこのカード。《No.41泥睡魔獣バグースカ》は攻撃表示と守備表示で効果が変わる珍しいモンスター。守備表示の効果はナンバーズの中でも最高峰の高い防御能力を発揮する。

 

「バグースカは守備表示の場合、フィールド上のモンスターをすべて守備表示にして、効果も無効にする。『ドランクエクゾーション』!」

 

バグースカのいびきに敵味方関係なく、ガクッと地面に膝をつくモンスター達。

 

「カードを1枚セットして、ターンエンド!次の攻撃は俺が何とかする!勝つぞ、遊矢!」

 

遊矢への激励。自分は何度この言葉で立ち上がってきたことか。

 

「遊馬さん・・・」

 

「他人任せで勝つなんてのは、おかしくねぇか、遊馬君よぉ」

 

「それは違うぜ、ベクター!俺達は遊矢にしっかりとバトンを託すんだ!」

 

「遊馬、次こそ終わりにするぜ。やっちまいな!イマジナリーナイツ!」

 

 

14th turn

 

「私のターン、ドロー!リバースカードオープン、《ブラックイリュージョン》。《iNo.-1リバーサル・マジシャン》を対象にする。このターン、このカードは他のカードの効果を受けない。バトルフェイズに移行」

 

「《iNo.-1リバーサル・マジシャン》で《No.41泥睡魔獣バグースカ》を攻撃。『ヴァニシング・マジック』!」

 

リバーサル・マジシャンの虚無の魔力の塊がバグースカを一瞬で塵へと変える。

 

「《CNo.104仮面魔踏士アンブラル》と《電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン》を攻撃表示に変更。ターンエンド」

 

「ターン終了時に、罠カードオープン!《マスター・ピース》。墓地から、バグースカと《ダークリベリオン・エクシーズ・ドラゴン》を効果を無効にして特殊召喚!」

 

一気に2体ものモンスターエクシーズを遊馬。《マスターピース》の真価はこの先にある。

 

「これが遊矢に託す希望だ!マスター・ピースの更なる効果。特殊召喚したモンスターでさらにエクシーズ召喚する!《No.41泥睡魔獣バグースカ》と《ダークリベリオン・エクシーズ・ドラゴン》でオーバーレイ!モンスター・エクシーズ2体でオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!今こそ現れろ! 天馬、今ここに解き放たれ、縦横無尽に未来へ走る。これが俺の、天地開闢! 俺の未来! かっとビングだ、俺! 《FNo.0未来皇ホープ》!」

 

 

《FNo.0未来皇ホープ》

ランク0/光属性/戦士族・エクシーズ・効果/AT0/DEF0

モンスターエクシーズ×2

このカードは戦闘では破壊されず、その戦闘によって発生する戦闘ダメージは0になる。

このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ中のみ、自分はこのカードと戦闘を行ったモンスターのコントロールを得る。

このカードのエクシーズ素材1つを取り除き、以下の効果から1つを選択して発動できる。

●このカードは戦闘及びカードの効果では破壊されない。

●カードの効果によって発生する自分への効果ダメージは0になる。

(アニメ版)

 

 

「エクシーズモンスター同士でエクシーズ召喚だって!」

 

エクシーズモンスター同士のエクシーズ召喚は遊矢も初めて見る。

 

「遊矢、お前のかっとビングを見せてくれ!」

 

 

15th turn

 

「はい!俺のターン、ドロー!」

 

遊矢は遊馬が残した伏せカードと未来皇ホープの効果を確認する。

そういう事か!遊馬さん、サポートありがとうございます。

 

「俺はセッティング済みのペンデュラムスケールでペンデュラム召喚。現れろ!チューナーモンスター《EMオッドアイズ・シンクロン》!このカードはペンデュラムゾーンのカードとシンクロ召喚できる!俺はレベル2のチューナーモンスター《EMオッドアイズ・シンクロン》にレベル5の《星読みの魔術師》をチューニング。その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!シンクロ召喚!現れろ。レベル7!《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》!」

 

透明なライムグリーンの翼をもつ白いドラゴンが、シンクロ召喚のエフェクトをカタパルトに大空を舞う。

 

「これがシンクロ召喚!」

 

「それだけではないはずだ、レベル7のモンスターが2体。来るぞ、遊馬!」

 

「レベル7の《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》でオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!全てを氷結する2色の眼。現れろ!ランク7《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》(ATK2800)!」

 

「ペンデュラム召喚からシンクロ召喚、エクシーズ召喚まで一気につなぐなんて!すげぇぜ、遊矢!」

 

「これが遊馬さんが残した希望だ!バトル!《FNo.0未来皇ホープ》で《iNo.-1リバーサル・マジシャン》を攻撃!『ホープ剣・フューチャー・スラッシュ』!」

 

未来皇ホープとリバーサル・マジシャンが互いの剣とロッドで殺陣のように切り結ぶ。

 

「このカードと行う戦闘ダメージは0になり、戦闘を行ったモンスター、《iNo.-1リバーサル・マジシャン》のコントロールをバトルフェイズ中、得る!」

 

「相打ち狙いか。無駄なんだよぉ!」

 

「《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》で仮面魔踏士アンブラルを攻撃!」

 

「なんのつもりだ?」

 

遊矢はスッと指を立てる。

 

「お楽しみはこれからだ!俺は《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》のオーバーレイユニットを1つ取り除き、効果発動!このカードの攻撃を無効にする!」

 

「この攻防!まさか!」

 

これは遊馬が得意とする、希望皇ホープの必殺戦術。

 

「速攻魔法発動。《ダブルアップ・チャンス》!攻撃を無効にしたモンスターの攻撃力を2倍にし、もう一度、バトルする!『アブソリュートゼロ』!」

 

《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》ATK2800→5600

 

未来皇ホープでリバーサル・マジシャンを奪い取り、魔法カードを使えるようにして、必殺の一撃を見舞う。これが遊馬が残した戦略。そのためには、リバーサル・マジシャンを何とかする必要があった。

遊馬達は城に乗り込む前に、互いのエースカードについて話していたのだ。その中で出てきたのがホープとダブルアップ・チャンスのコンボ。遊矢もホープに似たカードを自分も所有していると《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》を見せたのだ。それがこのタッグデュエルで活きた。遊馬のバトンは、しっかりと遊矢は受け取り、この状況を作り上げた。

 

 

 

しかしーーー、

 

「リバースカードオープン。《聖なるバリア-ミラーフォース》を発動。相手フィールド上のモンスターをすべて破壊する」

 

「ハハハ!砕け散ったか!」

 

相手の場のカードは全滅。次のターンの総攻撃で勝利を確信するベクター。

 

「それはどうかな!未来皇ホープはオーバーレイユニットを1つ取り除く事で破壊を無効にする。さらに!」

 

《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》が砕けた粒子が再構成し、次第にドラゴンの形をとる。

 

「二色の眼の竜よ!光り輝く翼を得て。覇道の頂へ舞い上がれ!烈破の慧眼輝けし竜!レベル8《覇王白竜オッドアイズ・ウィング・ドラゴン》!」

 

クリアブルーの翼を煌めかせ、咆哮とともに舞い降りる。其は世界を滅ぼした覇王龍の半身。

 

 

《覇王白竜オッドアイズ・ウィング・ドラゴン》

レベル8/闇属性/ドラゴン族・シンクロ・ペンデュラム・効果/ATK3000/DEF2500

【Pスケール:青10/赤10】

①:1ターンに1度、モンスターの効果が発動した場合に発動できる。

その効果はターン終了時まで無効になる。

【モンスター効果】

チューナー+「クリアウィング・シンクロ・ドラゴン」

①:1ターンに1度、自分のメインフェイズ及びバトルフェイズに、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。

相手フィールドのモンスターを全て破壊する。

その後、このカードの攻撃力はターン終了時まで、対象のモンスターの攻撃力分アップする。

②:1ターンに1度、自分のメインフェイズ及びバトルフェイズに、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。

このカードがモンスターゾーンに存在する限り、対象のモンスターの効果は無効化される。

③:自分フィールドの「オッドアイズ」モンスターが戦闘で破壊される場合、

代わりにこのカードを自分のPゾーンに置く事ができる。

(アニメ版)

 

 

「行くぞベクター!これで決着だ!《覇王白竜オッドアイズ・ウィング・ドラゴン》の効果を発動!《電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン》の効果を無効にする!この効果は対象カードが墓地に行っても効果の発動を阻害する!更にもう1つの効果を発動。《電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン》を選択し、相手フィールド上のモンスターをすべて破壊する。オッドアイズ・ウィング・ドラゴンはその攻撃力分、攻撃力をアップする!」

 

巨大な烈風が相手フィールドを襲い、モンスターが全て砕け散る。

 

《覇王白竜オッドアイズ・ウィング・ドラゴン》ATK3000→6000

 

「全体破壊効果持ちの攻撃力6000だとぉ!」

 

覇王龍全てに共通するオーバーキル。カードを使いきった終盤では抗う術はない。

 

「《覇王白竜オッドアイズ・ウィング・ドラゴン》でダイレクトアタック!『神風のストライク・スラッシャー』!」

 

光輝く翼はまるで巨大な剣のよう。

大質量の鋭い一撃は巨大なクレーターを穿った。

 

 

ベクター&イマジナリーナイツcode Y.M.:LP1400→0



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Scene7 シンクロ召喚

道路が蜘蛛の巣のようにはりめぐらされているハイウェイ。遊馬達と別れたカイトは、この場所でイマジナリーナイツの1人と対峙していた。

 

 

天城カイトv.s.イマジナリーナイツcode Y.H.

 

1st turn

 

「私のターン。モンスターを1枚セット。リバースカードを2枚セットして、ターンエンド」

 

 

2nd turn

 

「俺のターン、ドロー!」

 

カイトは先程のデュエルから相手の戦略を思い出す。

鉄壁の布陣でこちらの消耗を狙い、隙をついて疾風のように攻めてくる。応用性・対応力がずば抜けて高い。

恐らく、このイマジナリーナイツのオリジナル―不動遊星はかなり、理知的なデュエリストなのだろう。

故に、守りを固めきる前に速攻で鉄壁の布陣を突き崩す!

 

「《フォトン・ケルベロス》を召喚。このカードをリリースし、モンスター効果を発動!このターン、相手は罠カードを発動できない」

 

相手のデッキで最も厄介な防御カードは《くず鉄のかかし》。

 

「《フォトン・サンクチュアリ》を発動。2体のフォトントークンを特殊召喚、そしてリリース!」

 

カイトの手に巨大な十字架が出現し、上空に投擲する。

 

「闇に輝く銀河よ、希望の光になりて我が僕に宿れ!光の化身、ここに降臨!現れろ!《銀河眼の光子竜》!」

 

《銀河眼の光子竜》レベル8 ATK3000

 

天城カイトのエースカード。銀河眼を写すその瞳には何が写るか。

 

「バトルだ。《銀河眼の光子竜》でセットモンスターを攻撃!『破滅のフォトン・ストリーム』!」

 

ギャラクシーアイズから七色に輝く閃光が放たれた。

 

その瞬間、

 

「ダメージステップ時に、速攻魔法《フォトン・トライデント》を発動。ギャラクシーアイズは攻撃力が700アップし、貫通能力を得る!」

 

《銀河眼の光子竜》ATK3000→3700

《シンクロン・トレーダー》DEF1500

 

イマジナリーナイツcodeY.H.:LP4000→1800

 

「墓地へ送られた《シンクロン・トレーダー》の効果で1枚ドローし、手札を1枚墓地に送る」

 

 

《シンクロン・トレーダー》

レベル2/闇属性/機械族・効果/ATK300/DEF1500

①:このカードがフィールドから墓地に送られた場合、自分のデッキの上からカードを1枚ドローし、手札を1枚選んで、墓地に送る事ができる。

(オリカ)

 

 

「《フォトン・トライデント》の更なる効果。相手フィールドの魔法・罠カード1枚を破壊する」

 

破壊したカードは《くず鉄のかかし》。よし、とカイトはグッと拳を握る。

 

「カードを1枚セットしてターンエンド」

 

 

4th turn

 

「私のターン、ドロー。チューナーモンスター《ジャンク・シンクロン》(レベル3 ATK1300)を召喚。その効果で墓地から《シンクロン・トレーダー》を効果を無効にして、守備表示で特殊召喚。更にチューナーがフィールドに存在するため、墓地から《ボルト・ヘッジホッグ》(レベル2 DEF800)を守備表示で特殊召喚」

 

先程のターン、カイトにとっては理想的な先制攻撃といえた。イマジナリーナイツの守りを崩された格好。だが、この攻防はイマジナリーナイツにとって全て展開のための布石だったのだ。

 

「一気に3枚も展開してきたか。狙い通りだ!リバースカードオープン!《裁きの天秤》!互いの手札とフィールドの差の分、カードをドローする。差は3枚。3枚ドロー!」

 

カイトも負けていない。前のターンの速攻は初期手札にこのカードがあったからこそ。

 

「レベル3のチューナーモンスター《ジャンク・シンクロン》にレベル2の《シンクロン・トレーダー》をチューニング。シンクロ召喚!《ジャンク・ウォリアー》(レベル5 ATK2300)!」

 

「《シンクロン・トレーダー》の効果を発動。カードを1枚ドローし、1枚墓地に送る。《ジャンク・ウォリアー》の効果、このカードは自分フィールドのレベル2以下のモンスターの攻撃力の合計分、攻撃力がアップする。『パワー・オブ・フェローズ』」

 

《ジャンク・ウォリアー》ATK2300→3100

 

「《ジャンク・ウォリアー》で《銀河眼の光子竜》を攻撃。『スクラップ・フィスト』!」

 

《ジャンク・ウォリアー》はマフラーを靡かせながら拳を構え、突撃する。

 

「無駄だ。ギャラクシーアイズはバトルする時、互いのモンスターをゲームから除外する!」

 

ナンバーズキラーと呼ばれるこのカードだが、その性質上、擬似的な戦闘耐性をもつ。

それはシンクロモンスターといえども例外ではない・・・

 

 

 

・・・はずだった。

 

「リバースカードオープン、《王宮の鉄壁》。互いのプレイヤーはカードをゲームから除外できない」

 

 

天城カイトLP4000→3900

 

「何だと!」

 

何故、そんなピンポイントなカードを。疑問が尽きない。今までの理路整然としたデュエルとまるで異なっていた。

 

 

「カードを1枚セットしてターンエンド」

 

 

 

天城カイト

LP:3900

手札:4枚

場:なし

 

 

 

イマジナリーナイツcode Y.H.

LP:1800

手札:1枚

場:《ジャンク・ウォリアー》(ATK3100)、《ボルト・ヘッジホッグ》(DEF800)、《王宮の鉄壁》、伏せカード1枚



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Scene8 エクシーズ熱戦!!

天城カイト

LP:3900

手札:4枚

場:なし

 

 

 

イマジナリーナイツcode Y.H.

LP:1800

手札:1枚

場:《ジャンク・ウォリアー》(ATK3100)、《ボルト・ヘッジホッグ》(DEF800)、《王宮の鉄壁》、伏せカード1枚

 

 

5th turn

 

相手の場には攻撃力3100のモンスターか。このデッキには高攻撃力のカードは幾らでも用意できる。

 

「俺のターン、ドロー!《銀河の魔導士》(レベル4 ATK0)を召喚。マジックカード《銀河零式》を発動。甦れ、《銀河眼の光子竜》!」

 

「《銀河の魔導士》の効果でそのレベルを8にする。レベル8の《銀河眼の光子竜》と《銀河の魔導士》でオーバーレイ!レベル8のモンスター2体でオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!現れろ!銀河究極龍! 宇宙にさまよう光と闇。その狭間に眠りし哀しきドラゴンたちよ。その力を集わせ真実の扉を開け!銀河眼の光子竜皇!《No.62銀河眼の光子皇竜》!」

 

ギャラクシーアイズにナンバーズの力が宿った姿。カイトとシャークはアストラルから相性が良いナンバーズを何枚か受け取っていたのだ。

 

 

《No.62銀河眼の光子皇竜》

ランク8/光属性/ドラゴン族・エクシーズ・効果

/ATK4000/DEF3000

レベル8モンスター×2

このカードは「No.」モンスター以外との戦闘では破壊されない。このカードがフィールド上に表側表示で存在する場合、 フィールド上に存在するモンスターエクシーズ以外の全てのモンスターは、 そのレベルと同じ数値のランクを持つ。1ターンに1度、フィールド上に存在する全てのモンスターのランクを1つ上げる事ができる。 このカードが戦闘を行う場合、このカードの攻撃力は フィールド上に存在するモンスターのランクの合計×200ポイントアップする。フィールド上に存在するこのカードがフィールド上から離れる時、以下の効果を発動できる。 発動後α回目の自分のスタンバイフェイズ時にこのカードを自分フィールド上に特殊召喚する。 この効果でこのカードを特殊召喚したターン、このカードが攻撃する時の攻撃力はα倍になる。

(α=このカードがフィールド上から離れた時の、このカードのエクシーズ素材の数)

(アニメ版)

 

 

「バトル!プライムフォトンの効果により、プライムフォトンの攻撃力は3000ポイントアップ!『エタニティ・フォトン・ストリーム』!」

 

《No.62銀河眼の光子皇竜》ATK4000→7000

 

プライムフォトンから北斗七星を象った7つの光が《ジャンク・ウォリアー》の周囲を灰塵に変える。

ダメージが通ればイマジナリーナイツは敗北。

だが、防御策を握っていない筈がない。

 

 

「リバースカードオープン。《ガードブロック》。この戦闘ダメージを0にし、カードを1枚ドロー」

 

「この程度は防がれるか。カードを1枚セットして、ターンエンド」

 

防がれはしたが、このまま押しきる!

 

 

6th turn

 

「私のターン、ドロー。手札を1枚捨て、墓地からチューナーモンスター《ジェット・シンクロン》(レベル1ATK500)を特殊召喚。更に《キャノン・ソルジャー》(レベル4 ATK1400)を召喚」

 

ジェットエンジンに手足が生えたモンスターとキャノン砲を背負った機械兵が召喚される。

 

「ここで《キャノン・ソルジャー》だと?」

 

今まで使っていたモンスターと趣が異なることに疑問を覚える。

 

「《キャノン・ソルジャー》の効果。《ボルト・ヘッジホッグ》をリリースし、500ダメージを与える」

 

天城カイトLP3900→3400

 

「何のつもりだ。その程度のバーンなど無意味」

 

シンクロ召喚した方が有益だろうに、とカイトは心の中で、一人ごちる。

 

 

この現象が何度も繰り返されなければの話だが。

 

「自身の効果で特殊召喚された《ボルト・ヘッジホッグ》はゲームから除外されるが、《王宮の鉄壁》があるため、ゲームから除外されず、墓地に送られる。フィールドにチューナーが存在するため、墓地から《ボルト・ヘッジホッグ》を再び特殊召喚」

 

「まさか、無限ループだとぉ?!」

 

こんなに容易くだと!ありえない!

 

 

このイマジナリーナイツのオリジナル―不動遊星は自身の名前の由来である遊星歯車のようにカード同士のシナジーを組み合せる事を得意としている。彼のコンボ構築能力は常軌を逸している。時として無限ループを自然と組み込むことさえある。

 

このままではカイトの敗北は必定。

 

「トラップカード《砂塵の大竜巻》を発動!《王宮の鉄壁》を破壊する!」

 

「再び《キャノン・ソルジャー》の効果。《ボルト・ヘッジホッグ》をリリースし、500ダメージを与える」

 

天城カイトLP3400→2900

 

「レベル1のチューナーモンスター《ジェット・シンクロン》にレベル4の《キャノン・ソルジャー》をチューニング。シンクロ召喚!《ジェット・ウォリアー》(レベル5 ATK2100)!シンクロ召喚された《ジェット・ウォリアー》の効果。《No.62銀河眼の光子皇竜》を手札に戻す」

 

バウンスならば、プライムフォトンの効果は発動しない。

 

「《ジェット・ウォリアー》でダイレクトアタック」

 

ジェット機のフォルムの機械戦士がエンジンをふかしながらカイトに突撃する。

 

天城カイト:LP2900→800

 

 

「カードを2枚セットして、ターンエンド」

 

 

7th turn

 

「俺のターン、ドロー。《銀河眼の雲篭》(レベル1 ATK300)を召喚。このカードをリリースし、三度、現れろ!《銀河眼の光子竜》を特殊召喚!」

 

小竜が大きくなり、ギャラクシーアイズが咆哮とともに現れる。

 

「バトルだ。《銀河眼の光子竜》で《ジェット・ウォリアー》を攻撃!『破滅のフォトン・ストリーム』!」

 

「リバースカード発動、《亜空間物質転送装置》を発動。《ジェット・ウォリアー》をターン終了時までゲームから除外する」

 

「ダイレクトアタックを受ければ、ライフは0だぞ?!」

 

罠か?ここは踏み込むしかない。

 

「《銀河眼の光子竜》でダイレクトアタック!」

 

「《星墜つる地に立つ閃王光》を発動。攻撃を無効にし、カードを1枚ドロー。更にエクストラデッキから《スターダスト・ドラゴン》を特殊召喚!」

 

翻すはスカイブルーの翼。羽ばたきと共に光の粒子が大空に舞い上がる。

 

《スターダスト・ドラゴン》レベル8 ATK2500

 

ギャラクシーアイズと同等のオーラにカイトは身構える。

 

「スターダスト・ドラゴンっ!カードを2枚セットしてターンエンド」

 

「ターン終了時に《ジェット・ウォリアー》はフィールドに戻る」

 

8th turn

 

「私のターン、ドロー。《戦士の生還》を発動。墓地から《ジャンク・シンクロン》を手札に加え、召喚。更に《シンクロン・トレーダー》を守備表示で特殊召喚」

 

 

 

「レベル3のチューナーモンスター《ジャンク・シンクロン》にレベル5の《ジェット・ウォリアー》をチューニング。シンクロ召喚!《ジャンク・デストロイヤー》(レベル8 ATK2600)!」

 

「特殊召喚された《ジャンク・デストロイヤー》の効果を発動。《銀河眼の光子竜》を破壊する」

 

「させるか!《スキル・プリズナー》を発動。《ジャンク・デストロイヤー》の効果は無効だ」

 

防げたか?!

 

「私はレベル8の《スターダスト・ドラゴン》と《ジャンク・デストロイヤー》でオーバーレイ。 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築。 エクシーズ召喚!《iNo.(イマジナリーナンバーズ)-3リバーサル・スターダスト》!」

 

星雲のような天上から黒い柱が現れると、柱に亀裂が走り、黒色に輝くドラゴンが翼を広げ、咆哮する。

 

《iNo.-3 リバーサル・スターダスト》ランク8 ATK 3000

 

「このタイミングでエクシーズ召喚だとぉ!だが、ギャラクシーアイズには悪手だ!」

 

「《iNo.-3リバーサル・スターダスト》で《銀河眼の光子竜》を攻撃!『ヴァニティ・ソニック』!」

 

リバーサル・スターダストは昏い色の光線を放つ。

イマジナリーナイツは先程の攻防を覚えていないはずはない。

 

「馬鹿な・・・!ギャラクシーアイズの効果。自身とバトルするモンスターをゲームから除外する!」

 

「《iNo.-3リバーサル・スターダスト》のオーバーレイユニットを全て取り除き、効果を発動」

 

リバーサル・スターダストが2色の光を取り込むと、胴体のクリスタルが爛々と輝く。

 

2体のドラゴンの姿が薄れ始めるその時!

 

 

ドォオオオォン!!

 

 

「ギャラクシーアイズが爆発した?!何故だ!」

 

《銀河眼の光子竜》と《シンクロン・トレーダー》が突如として、閃光に包まれる。

それこそが《iNo.-3リバーサル・スターダスト》の恐るべき効果。

 

「相手がカードを破壊する効果かモンスター効果が発動した場合、《iNo.-3リバーサル・スターダスト》の効果。相手がカードを破壊する効果かモンスター効果が発動した時、オーバーレイユニットを全て取り除いて発動。その効果は『iNo. 以外のフィールド上のモンスターを全て破壊する』に書き替わる」

 

 

《iNo.-3 リバーサル・スターダスト》

ランク8/風属性/ドラゴン族・エクシーズ・効果/ATK3000/DEF2500

レベル8モンスター×2

①:このカードは「No.」モンスター以外との戦闘では破壊されない。

②:このカードが「スターダスト・ドラゴン」をエクシーズ素材としている場合、以下の効果を得る。

●モンスター効果かカードを破壊するカードの効果が発動した場合、このカードのエクシーズ素材を全て取り除いて発動する。 その時相手が発動したそのカードの効果は、「「iNo.」モンスター以外の全てのモンスターを破壊する」となる。

③:1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。 自分の墓地の「スターダスト・ドラゴン」1体を選び、 このカードの下に重ねてX素材とする。

(オリカ)

 

 

「な・・・!」

 

「《シンクロン・トレーダー》がフィールドから墓地に送られた事でカードを1枚ドローし、手札を1枚墓地に送る。バトルの巻き戻しにより、《iNo.-3リバーサル・スターダスト》でダイレクトアタック!」

 

再び放たれる黒い閃光。だが、リバーサル・スターダストはシグナーの竜とナンバーズ2つの異なる力が混ざった存在。その衝撃波は三幻神にも迫る。

 

「カウンタートラップ!《攻撃の無力化》を発動!バトルフェイズをスキップする。ぐぅううう!」

 

攻撃は亜空間に飲み込まれるが、その余波は圧倒的。

カイトは吹き飛び、地面に叩きつけられる。

 

「《iNo.-3リバーサル・スターダスト》は1ターンに1度、墓地から《スターダスト・ドラゴン》を1枚選び、このカードのオーバーレイユニットにする事ができる。その効果を発動。カードを1枚セットして、ターンエンド」

 

 

天城カイト

LP:800

手札:0枚

場:なし

 

 

 

イマジナリーナイツcode Y.H.

LP:1800

手札:0枚

場:《iNo.-3リバーサル・スターダスト》(ランク8 ATK 3000)、伏せカード1枚



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Scene9 『伝説』との邂逅 新たなる力

※Scene8でリバーサル・スターダストの攻撃を受け、カイトが吹き飛ぶシーンを追加しています。


天城カイト

LP:800

手札:0枚

場:なし

 

 

 

イマジナリーナイツcode Y.H.

LP:1800

手札:0枚

場:《iNo.-3リバーサル・スターダスト》(ランク8 ATK 3000)、伏せカード1枚

 

9th turn

 

リバーサル・スターダストの攻撃によって吹き飛ばされたカイトは荒い息を吐きながら立ち上がる。

 

「俺のターン、ドロー!手札から《逆境の宝札》を発動!相手フィールド上に特殊召喚されたモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合にこのカードを発動できる。デッキからカードを2枚ドロー!」

 

 

《逆境の宝札》

通常魔法 

相手フィールド上に特殊召喚されたモンスターが存在し、 自分フィールド上にモンスターが存在しない場合に発動できる。 

自分のデッキからカードを2枚ドローする。

(アニメオリカ)

 

俺の手札は今からドローする2枚のみ。このドローに全てを賭ける!

 

1枚目は《死者蘇生》。

2枚目は・・・!

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

同時刻―――、

 

覇王白龍の攻撃を受けたベクターは立ち上がるのもやっとの状態だった。バリアルフォーゼも解けてしまっている。

 

「ベクター!」

 

「ここまで派手にやられるとはな。流石は覇王龍の一端だぜ。ナイツも粉砕されてるし、この辺りの監視モニターも粉砕してやがるぜ」

 

イマジナリーナイツは体が弾け飛んでいて、デュエルディスクが墓標のように地面に突き刺さっていた。

 

「何が言いたいんだ?」

 

「つまり・・・」

 

空中にスクリーンが写し出される。

 

「彼は我々の味方だという事だ」

 

「零児?!」

 

突然の赤馬零児の登場に遊矢は驚きの声をあげる。

 

「我々はカオス本体の発生源を特定していたが、厄介なことにその場所はアストラル世界、物質世界ではなかった。その影響からか、遊馬さん達の世界へのアクセスも困難を極め、僅かなシグナルしか送信できなかったのだ」

 

「俺様はそれを受け取って、奴さんの話に乗ったスパイって事さ」

 

「なるほど。ならなぜ我々に、その事を伝えなかった」

 

アストラルの疑念はもっとも。

それに答えたのは零児。

 

「この城の外側の暗雲。あれは内側からの手引きがないと入れないようになっていたんです」

 

「ついでに俺様がこっそりと、雲のシールドにミクロの穴を開けておいたのさ」

 

「そのおかけで、こうして我々との情報のやりとりが可能になり、計画が次の段階に移りました」

 

「次の段階?」

 

「こちら側からデュエリストを送り込めるということだ!」

 

新たなスクリーンが展開する。

傲岸不遜な物言い、彼は・・・。

 

「あなたは伝説の決闘者、海馬瀬人!」

 

青眼の白龍を操る初代決闘王の永遠のライバル。デュエルの貴公子。

 

「だが忌々しい事に、ゲートを繋ぐにはカード同士のネットワークを利用しなければならない。それも数十枚単位のな!」

 

「そうです。イマジナリーナイツのデッキを媒介にして、決闘者を転送します」

 

「まさ、か・・・!」

 

「俺自ら、奴に引導を渡したいところだがな」

 

パラドックスは未来の世界の《青眼の白龍》を使用している。海馬瀬人にとっては許しがたい暴挙なのだ。

 

「まーわーるんーですー!こちらの準備はできました、海馬総帥!まさか、伝説の貴方様と仕事ができるとは、この阿久津、感無量であります!」

 

新たにスクリーンに映るのはハイテンションで体をグルグル回している男。

 

「ふぅん。準備ができたようだな。デュエルリンクスシステム ビヨンド・ザ・ワールド起動!」

 

それぞれのモニターの背後のガラスが虹色に光輝く。

 

座標確認・・・

アストラル界 トラジェントキャッスル

ゲート開放、デュエリスト転送開始

武藤遊戯

遊城十代

不動遊星

 

転送!

 

 

 

地面に刺さったイマジナリーナイツのデッキが青い数字の羅列の光が灯り、天に昇る。

 

そこに顕現したのは青のラインが入った白いゲート。

 

 

ゲートが開き、淡い光が辺りに溢れる。現われたのは1人の決闘者。

光が次第におさまると輪郭がはっきりしてくる。逆だった赤い髪。ノースリーブの青い服装。

 

「みんな、よく頑張ったね」

 

優しげだが、どこか安心感を与える声。彼こそが初代決闘王。

 

「「武藤遊戯さん!」」

 

「事情は聞いているよ。急ごう!」

 

「「「はい!!」」」

 

「行けよ、お前ら。俺はひっそりと、逃げさせてもらうぜ。全く、損な役回りだぜ」

 

座り込みながら、ため息を吐く。

 

「ベクター・・・。わかったぜ」

 

彼らの視線の先には、次の階へと走り出した。

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

一方、カイトがドローした2枚目のカードは・・・。

 

《ギャラクシーサーペント》

レベル2 ATK1000 DEF0

通常モンスター・チューナー

 

「このカードはあの時・・・!」

 

カイトは道中、遊矢とのシンクロ召喚についてのやり取りを思い出していた。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

「シンクロ召喚についてですか?シンクロ召喚はシンクロモンスターのレベルになるようフィールドからチューナーモンスター1体とチューナー以外のモンスターをリリースして行うものです」

 

「なるほど、レベルの合計が重要になるのか。ところでチューナーとは何だ?」

 

「ユニオンとかみたいなカードの種類の一種です。例えば、この《調律の魔術師》みたいな効果モンスターだけでなく、通常モンスターにもチューナーがいます。確かこないだ買ったパックに・・・、あった」

 

遊矢は懐からもう1枚カードを取り出す。

 

「《ギャラクシーサーペント》?興味深いな。俺はギャラクシーのカテゴリーを使うんだが。まさか、チューナーもいるとはな」

 

「良かったら譲りましょうか?」

 

「いいのか?」

 

「俺のデッキと合わないですし、これも何かの縁だと思います」

 

「ならば、受け取っておこう」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

まさか、このタイミングでこのカードを引くとはな。しかし、俺はシンクロモンスターを所持していない。ここまでか・・・!

 

その時―――!

 

イマジナリーナイツのデッキが輝き天空にゲートが開かれる。

 

フォオオオン!

 

そこから、赤いバイクが飛翔し、着地。

 

 

「あなたは・・・!」

 

ヘルメットを外すと現れる金のメッシュがかかった左右に跳ねた髪。

 

「俺の名は不動遊星。パラドックスを止めにきた!」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

「スターダスト!」

 

不動遊星の眼に映るのは闇に染まった未来のスターダスト・ドラゴンの姿。

自らの手で止めるしかない。遊星はデュエルディスクを構えようとすると、懐から光が漏れている事に気づいた。

それはアクセルシンクロを可能にする白紙のカード。

目の前には白き衣の決闘者。

 

「キミ、名前は?」

 

「天城カイトです」

 

「カイトか。これを受け取れ!」

 

遊星はカードを投げ渡す。このカードは今、彼が必要としている筈だ。

 

「これは?」

 

カイトはカードをまじまじと見つめる。

 

「そのカードにはシンクロモンスターのデータが詰まっている。君なら使いこなせる筈だ」

 

白紙のカード。何が起こるかは分からないが、今はこの可能性にかけるしかない。

 

「感謝します。俺はマジックカード《死者蘇生》を発動。墓地から《銀河眼の光子竜》を特殊召喚!」

 

ギャラクシーアイズが場に出ると白紙のカードが更に光輝く。

 

「チューナーモンスター《ギャラクシーサーペント》を通常召喚」

 

淡い光の竜が姿を現す。それは新たな可能性の萌芽。

 

「俺はレベル2のチューナーモンスター《ギャラクシーサーペント》にレベル8の《銀河眼の光子竜》をチューニング。渦巻く銀河よ。数多の星々と1つになりて新たなる力を示せ!」

 

シンクロ召喚の光のゲートに向かって、カイトは手にした一振りの日本刀を投擲する。

 

 

「シンクロ召喚!光来せよ!レベル10!《銀河眼の(ギャラクシーアイズ・)光子剣竜(フォトン・セイバー・ドラゴン)》!」

 

《銀河眼の光子剣竜》レベル10 ATK3200

 

ギャラクシーアイズの装甲が鎧武者のように変化した姿。

今ここにエクシーズ世界、初のシンクロモンスターが降臨した。

 

 

「これがギャラクシーアイズのシンクロモンスター・・・!」

 

カイトは素早くテキストを確認する。この効果ならば対抗できる。

 

「《銀河眼の光子剣竜》の効果を発動。1ターンに1度、このカード以外のフィールドのモンスターをゲームから除外し、フィールドに戻す!」

 

モンスターエクシーズは一時的でも場を離れると、オーバーレイユニットを失い、ほとんどが無力化する。これこそが、銀河眼の光子竜から受け継いだエクシーズキラーの能力。

 

「オーバーレイユニットを全て取り除き、《iNo.-3リバーサル・スターダスト》の効果を発動。相手のモンスター効果か破壊効果を、イマジナリーナンバーズ以外のモンスターを全て破壊するに書き換える」

 

「スターダストが破壊の効果を?!」

 

スターダスト・ドラゴンは守護の龍。破壊とは対極の姿に遊星は愕然となる。

 

「フォトンセイバーはカードの効果では破壊されない!バトルだ!《銀河眼の光子剣竜》で、《iNo.-3リバーサル・スターダスト》を攻撃!『インフィニティ・フォトン・スラッシュ』!」

 

フォトンセイバーは光に包まれ、リバーサル・スターダストに殺到する。

 

イマジナリーナイツcode Y.H.LP1800→1600

 

「イマジナリーナンバーズはナンバーズでしか戦闘破壊されない」

 

「《銀河眼の光子剣竜》の最後の効果!このカードが相手のカードを戦闘によって破壊できなかった場合、このカードをリリースし、墓地から《銀河眼の光子竜》1体を特殊召喚する!」

 

都合五度も現れるギャラクシーアイズ。今までと違いその体はオーロラのような輝きに包まれている。

 

「フォトンセイバーの効果で特殊召喚された《銀河眼の光子竜》はこのターン、戦闘を行うモンスターの攻撃力分、攻撃力がアップ!加えて攻撃時に魔法・罠カードの効果を受けない!」

 

 

 

銀河眼の(ギャラクシーアイズ・)光子剣竜(フォトン・セイバー・ドラゴン)

レベル10/光属性/ドラゴン族・シンクロ・効果/ATK3200/DEF2800

光属性チューナー+「ギャラクシーアイズ」モンスター1体以上

①:1ターンに1度、このカード名以外のフィールド上のモンスターをゲームから除外し、フィールドに戻す。

②:このカードは特殊召喚されたターン、戦闘または相手のカードの効果では破壊されない。

③:このカードが戦闘でモンスターを破壊できなかった場合、このカードをリリースして発動する。自分の墓地から《銀河眼の光子竜》1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターはターン終了時まで以下の効果を得る。●このカードが特殊召喚されたモンスターと戦闘を行う場合、このカードはダメージステップ終了時まで魔法・罠カードの効果を受けず、このカードの攻撃力はそのダメージ計算時のみ、 戦闘を行う相手モンスターの攻撃力分アップするモンスターの攻撃力分、攻撃力がアップする。

 

 

「懺悔の用意はできているか!《銀河眼の光子竜》(ATK3000→6000)でリバーサル・スターダストを攻撃!『破滅のフォトン・エクストリーム』!」

 

イマジナリーナイツが伏せたカードは《炸裂装甲》。発動はできない。

 

巨大な光の渦がイマジナリーナイツを呑み込んだ。

 

イマジナリーナイツcode Y.H.LP1600→0




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

やっぱりベクターは味方でした。裏切りが持ち味の彼のキャラを最低限出せたかなぁと思います。
今回はストーリーの中間地点ですので、伝説の決闘者の登場にギャラクシーアイズのシンクロ体と話を進めました。
ちなみに各シリーズの時間軸についてですが、
DM・GX組:GXから2年後
5Ds組:5Dsから2年後
ZEXAL組:ZEXAL最終回直後
ARC-V:ARC-Vから1年後
となっております。

ストックが尽きたので、次話以降の投稿には時間がかかると思います。


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Scene10 堕ちた英雄

お待たせしました。超融合Ⅱ、更新再開です。

更新はこれまで通り、1~2日おきに行う予定です。

今話はシャーク対十代デッキです。

※追記
VS 遊星デッキのラストシーンを入れ忘れていたので追加します。


 

イマジナリーナイツcode Y.H.LP1600→0

 

何とか勝てた。

カイトは安堵すると同時に急激な脱力感に襲われる。

 

「限界か・・・」

 

イマジナリーナンバーズの攻撃に、ブレードフォトンを召喚した影響。身体中にガタがきている。

 

「カイト、立てるか」

 

「すまない。何とか立てるが、これ以上ついていけば、足手まといになる」

 

「・・・わかった。赤馬、何とかできるか」

 

端末を取りだし、赤馬零児に呼び掛ける。

 

『わかりました。ベクターと脱出させます』

 

数秒で空間が歪み、ニヤニヤとした表情でベクターが現れる。

 

「随分、ボロボロみてぇだなぁ」

 

「ベクター!貴様、敵に回ったのでは?!」

 

思わず、目を丸くする。

 

「大丈夫だ。彼はスパイ、味方だ」

 

「それじゃ、トンズラさせてもらうぜ」

 

カイトを背負い、ベクターは空間の歪みに飛び込んだ。

 

遊星はそれを見送り、イマジナリーナイツが敗れると同時に現れた坂道にDホイールを走らせた。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

模した絶海の孤島。

三ツ又をもった海神が膝をつきながらも溢れんばかりの闘志を空中の2体の英雄(ヒーロー)に向けていた。

 

 

神代凌牙

LP:2200

手札:1枚

場:《No.73 激瀧神アビス・スプラッシュ》(ランク5 ATK2400、ORU1)

 

 

 

イマジナリーナイツcode J .Y.

LP:2100

手札:1枚

場:《E・HEROシャイニング・フレア・ウィングマン》(レベル8 ATK2500→5200)、《E・HEROフレア・ネオス》(レベル7 ATK2500→4800、インスタントネオスペース装備)、伏せカード1枚

 

 

「これがアカデミアの英雄か・・・!」

 

ナンバーズの耐性がなかったら、負けていた、と神代凌牙はひとりごちる。

 

手札消費の激しい融合デッキを怒濤のドローと、墓地効果を駆使する事で補っている。遊城十代を模したこのアンドロイドは間違いなく格上。

 

「それでも俺は勝つ!俺のターン、ドロー!」

 

「《ダブルフィン・シャーク》(レベル4 ATK1200)を召喚。その効果で墓地から《サイレント・アングラー》(レベル4 ATK800)を特殊召喚!」

 

二つの頭を持つ鮫とアンコウが水面から躍り出る。

これでフィールドにレベル4モンスターは2体。

 

「バリアンではなくなったが、俺にはこのカードがある! レベル4の《ダブルフィン・シャーク》と《サイレントアングラー》でオーバーレイ!レベル4のモンスター2体でオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!満たされぬ魂を乗せた方舟よ。光届かぬ深淵より浮上せよ! 《No.101 S・H・Arc Knight》!」

 

 

《No.101 S・H・Arc Knight》

ランク4/水属性/水族/ATK2100/DEF1000 

レベル4モンスター×2 

このカードは「No」と名の付いたカード以外では戦闘破壊されない。 

このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、相手フィールド上に表側攻撃表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。 

選択したモンスターをこのカードの下に重ねてエクシーズ素材とする。 

この効果は1ターンに1度しか使用できない。 

また、フィールド上のこのカードが破壊される場合、代わりにこのカードのエクシーズ素材を1つ取り除く事ができる。

(アニメオリカ)

 

 

「《No.101 S・H・Arc Knight》の効果を発動。このカードのオーバーレイユニットを1つ取り除き、《E・HEROシャイニング・フレア・ウィングマン》をこのカードのオーバーレイユニットにする!」

 

この除去効果の前に攻撃力は無意味と化す。バリアン七皇だった頃のエース。破壊と再生の不沈艦は失われることなく、陵牙に付き従う。

 

「《No.73 激瀧神アビス・スプラッシュ》の効果発動!攻撃力を2倍の4800にする。バトルだ!《No.73 激瀧神アビス・スプラッシュ》で《E・HEROフレア・ネオス》を攻撃!『ファイナルフォール』!」

 

オーバーレイユニットを吸収した黄金に輝く銛がフレア・ネオスを穿つ。

 

「《E・HEROフレア・ネオス》が戦闘で破壊された時、トラップカード《ヒーロースピリッツ》を発動。そのダメージを0にする。更に《インスタント・ネオスペース》の効果でデッキから《E・HEROネオス》を特殊召喚」

 

現れるは遊城十代の象徴。白銀のヒーロー。

 

《E・HEROネオス》レベル7 ATK2500

 

 

「またネオス・・・!」

 

今までの攻防にネオスは何度も出てきた。

相手の場はネオスのみ、手札は1枚だけ、このまま押しきるってやるぜ。

 

「カードを1枚セットして、ターンエンド!」

 

 

―――――

 

 

「私のターン、ドロー。手札からマジックカード《HEROの遺産》を発動。墓地の《E・HEROフレア・ネオス》と《E・HEROフレイムウィングマン》をエクストラデッキに戻し、カードを3枚ドロー」

 

融合デッキの手札消費の荒さを早速リカバリーする。

 

「墓地の《E・HEROネクロダークマン》の効果を発動。その効果により、手札から《E・HEROエッジマン》(レベル7 ATK2600)をリリースなしで召喚」

 

金と銀のヒーローが並び立つ。

レベルはともに7。

 

「レベル7の《E・HEROネオス》と《E・HEROエッジマン》でオーバーレイ!レベル7のモンスター2体でオーバーレイネットワークを構築! 」

 

「ここでエクシーズ召喚だとぉ!!」

 

黒い球体がひび割れ、割れたひびが連なり、ヒトガタが形成される。

 

「エクシーズ召喚!《iNo.-2 リバーサル・ネオス》!」

 

「ネオスがナンバーズの力を・・・!」

 

どんな効果を持っている!陵牙は更なる驚異に身構える。

 

「《リバーサル・ネオス》に装備魔法《アサルトアーマー》と《ライトイレイザー》を装備」

 

構えた拳に宝玉がついたプロテクターが現れた。

 

「《アサルトアーマー》の効果を発動。このカードを墓地に送る事でこのターン、装備モンスターは2回、攻撃する事ができる。バトルフェイズに移行。《iNo.-2 リバーサル・ネオス》で《No.73 激瀧神アビス・スプラッシュ》を攻撃。『ラス・オブ・リバーサル』」

 

 

プロテクターの宝玉から伸びた光の剣が海神を一閃。

 

神代陵牙LP2200→1600

 

 

「《ライトイレイザー》を装備したモンスターがモンスターを攻撃したバトル終了時、そのモンスターをゲームから除外する。続けて《No.101 S・H・Arc Knight》に攻撃。『ラス・オブ・リバーサル』」

 

リバーサル・ネオスはアークナイトに光剣を翳す。

 

「アークナイトの破壊耐性を対策してきたか。だが甘い!トラップカード発動!《ポセイドン・ウェーブ》!相手モンスターの攻撃を無効にし、800ポイントのダメージを与える!」

 

この局面を乗り切ればアークナイトの吸収能力で勝てる。

 

しかし―――、

 

 

《iNo.-2 リバーサル・ネオス》ATK3000→3500

 

《ポセイドン・ウェーブ》から大波のエフェクトは発生せず、代わりに、リバーサル・ネオスにどす黒いオーラが発生していた。

 

「馬鹿な!何故リバーサル・ネオスの攻撃力が上がってやがる・・・!」

 

「罠カードかこのカードを対象とするカードの効果が発動した場合、《iNo.-2リバーサル・ネオス》の効果を発動。発動したその効果は『フィールド上の「iNo.」モンスターの攻撃力は500アップする』に書き替わる」

 

「カード効果の書き換えかっ!」

 

 

《iNo.-2 リバーサル・ネオス》

ランク7/光属性/戦士族・エクシーズ・効果/ATK3000/DEF2500

レベル7モンスター×2

①:このカードは「No.」モンスター以外との戦闘では破壊されない。

②:このカードが「E・HEROネオス」をエクシーズ素材としている場合、以下の効果を得る。

●罠カードかこのカードを対象とするカードの効果が発動した場合、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動する。 その時相手が発動したそのカードの効果は、「フィールド上の「iNo.」モンスターの攻撃力は500アップする」となる。

③:1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。 自分の墓地の「E・HEROネオス」1体を選び、 このカードの下に重ねてX素材とする。

(オリカ)

 

 

刹那、不沈艦は真っ二つに切り裂かれた。

 

神代陵牙LP1600→200

 

「メインフェイズ2へ移行。《iNo.-2リバーサル・ネオス》の効果を発動。墓地から《E・HEROネオス》を1枚選び、このカードのオーバーレイユニットにする。カードを1枚セットし、ターンエンド」

 

淡々とカードの処理を行うイマジナリーナイツ。機械ゆえの、こちらを歯牙にもかけないのは、陵牙はある意味でプレッシャーを感じていた。

 

神代凌牙

LP:300

手札:0枚

場:なし

 

 

イマジナリーナイツcode J .Y.

LP:2000

手札:0枚

場:《iNo.-2リバーサル・ネオス》(ランク7 ATK3000→3500 ORU2)、伏せカード1枚



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Scene11 英雄の帰還

神代凌牙

LP:300

手札:0枚

場:なし

 

 

イマジナリーナイツcode J .Y.

LP:2600

手札:0枚

場:《iNo.-2リバーサル・ネオス》ATK3000→3500 ORU2、伏せカード1枚

 

 

場にも手札もカードがないこの状況。時間稼ぎしか手はないってのか。嫌な汗が陵牙の頬を伝う。

 

その時―――、

 

 

 

パァアア!

 

 

 

突如、イマジナリーナイツのデッキが輝き出し、虚空に円形の光を写し出す。

 

 

カッ!

 

 

円から大地に閃光が走った。

 

閃光の後には赤い服装の茶髪の男性。彼は・・・、

 

「貴方は・・・、遊城十代さん?!」

 

「助太刀にきたぜ!」

 

陵牙のデュエルディスクにタッグデュエルの承認画面が表示される。

 

 

 

 

神代陵牙(手札0枚)&遊城十代(手札5枚) LP300

 

 

「へへっ、行くぜ!俺のターン、ドロー!(十代:手札5→6枚)」

 

海馬社長からイマジナリーナイツのデッキを媒介に次元跳躍を行うと聞いていたが、まさかこんなタイミングとはな・・・。

 

眼前には漆黒に染まったネオスの姿。

 

『十代・・・!』

 

半身であるユベルがソッと、十代に寄り添う。

 

「大丈夫だ」

 

十代は真っ直ぐネオスを見据える。

 

「十代さん、あのモンスターは対象をとるカードとトラップカードを無効にして、攻撃力を上げる効果を持っています。気をつけてください」

 

十代は陵牙から送られたカードのデータを確認する。戦闘耐性までついてる極めて強力なカードだ。

流石、ネオス。ワクワクする強さだぜ。

 

「助かるぜ。ええと・・・」

 

「神代陵牙です。十代さん」

 

「行くぜ!《強欲で貪欲な壺》を発動。自分のデッキを裏向きで10枚除外し、2枚ドロー!」

 

「よし、マジックカード《死者蘇生》を発動。凌牙の墓地から《No.32海咬龍シャークドレイク》(ランク4 ATK2800)を特殊召喚するぜ!」

 

凌牙がこのデュエルで最初のターンに召喚したナンバーズ。十代はナンバーズによる戦闘破壊が狙い。

だが、ナンバーズには厄介な特性がある。

 

「十代さん!ナンバーズは使い手にとり憑いてしまう!」

 

鮫を模した海竜が現れると十代に赤いオーラが纏わりつく。

だが、遊城十代は歴史上、最強クラスのサイコデュエリスト。

瞳を黄と緑に変色させ、言い放つ。

 

「邪魔だ」

 

同時に赤いオーラは霧散した。

 

「ナンバーズの支配を打ち消した?!こうも簡単に」

 

シャーク・ドレイクの行為は1人の逆鱗に触れていた。

 

『十代に取り憑こうなんて、ふざけた真似を。許さないよ!』

 

ユベルだ。シャーク・ドレイクは蔦に絡まれ、締め上げられる。

苦しそうに悲鳴をあげるシャーク・ドレイク。ナンバーズが精霊に倒されそうになっている異常事態に凌牙は目を丸くする。

 

「あー、ユベル。コイツいないとデュエルできないから離してやってくれないか?」

 

『コイツは十代を傷つけようとしたんだよ。けどまぁしょうがない。駄鮫、後で覚悟するんだよ』

 

ユベルは蔦を引っ込めて下がる。シャーク・ドレイクはガンガン頭を地面にぶつけていた。

それが、平謝りだと分かるのは十代だけだったが気にせずデュエルを続ける。

 

「陵牙、ヒーローの力を見せてやるぜ。《E・HEROスパークマン》(レベル4 ATK1600)を召喚。手札から装備魔法《スパークガン》をスパークマンに装備!」

 

雷をあしらったスーツを纏うヒーローの手にレーザーガンが出現する。

 

「《スパークガン》の効果発動!リバーサル・ネオスを守備表示にする!」

 

レーザーガンを反転したネオスに向け、引き金を引く。

 

「このカードを対象とするカードの効果が発動したため《iNo.-2リバーサル・ネオス》の効果を発動。《iNo.-2リバーサル・ネオス》は攻撃力が500アップ!」

 

 

《iNo.-2 リバーサル・ネオス》ATK3500→4000

ORU2→1

 

「十代さん、一体何を!?」

 

このままでは攻撃力が高くなるだけでは・・・?!

 

「へへっ、見てろって。《スパークガン》は後2回、効果を発動できる!行けっ!スパークマン!」

 

ビッとピースサインを陵牙に向ける十代。

 

《iNo.-2 リバーサル・ネオス》ATK4000→4500→DEF2500

ORU1→0

 

 

「うまい。オーバーレイユニットを使い切らせたのか」

 

「そういうこと。更に手札からマジックカード《融合》を発動!スパークマンと手札のエッジマンを融合!融合召喚!表れろ!《E・HEROプラズマ・ヴァイスマン》!」

 

《E・HEROプラズマ・ヴァイスマン》レベル8 ATK2600

 

十代は十八番の融合召喚で勝負を決めにかかる。

 

「《E・HEROプラズマ・ヴァイスマン》の効果!手札を1枚墓地に送り、リバーサル・ネオスを破壊する!」

 

プラズマ・ヴァイスマンは巨大化した両手の間から雷球を生み出す。

 

しかし―――、

 

「リバースカード《エフェクト・シャット》を発動。モンスター効果の発動と効果を無効にして、破壊する」

 

プラズマヴァイスマンが両手に集めついた雷球が爆発し、砕け散った。

 

「くっ、やるなぁ。だけど、シャーク・ドレイクでリバーサル・ネオスを攻撃!」

 

「この攻撃でリバーサル・ネオスを破壊できる!」

 

エースカードが破壊されそうになるこの局面。遊城十代なら防ぐのは容易である。

 

「墓地から《ネクロ・ガードナー》を除外して、攻撃を無効にする」

 

「ホントにそっくりだな。カードを1枚セットしてターンエンド!」

 

十代さんの力を持ってしてもここまでとは。

 

 

―――――

 

 

「私のターン、ドロー。《iNo.-2リバーサル・ネオス》の効果、墓地の《E・HEROネオス》をオーバーレイユニットにする」

 

また、書き換え効果が使えるように・・・!

 

陵牙は先程の光景が頭によぎる。

 

「それを待ってたぜ!チェーンして、トラップカード発動!《ヒーローズルール1 ファイブフリーダムズ》!自分または相手の墓地を除外する。俺は《E・HEROネオス》を含む5枚のカードをゲームから除外する!」

 

 

《ヒーローズルール1 ファイブ・フリーダムス》

通常罠 

自分と相手の墓地から、合計が5枚になるようにカードをゲームから除外する。

(アニメオリカ)

 

 

「これで書き換え効果は完全に封じた!」

 

陵牙は勝機が見えた気がした。

 

「《iNo.-2リバーサル・ネオス》を攻撃表示に変更し、バトルフェイズに移行。《iNo.-2リバーサル・ネオス》で《No.32海咬龍シャークドレイク》に攻撃。『ラス・オブ・リバーサル』」

 

リバーサル・ネオスは十代に向かって腕を振り上げる。

万事休すの状況だが、十代はニッと笑みを浮かべ、デュエルディスクを操作する。

 

「さっき言ったろ。そっくりだって。俺も墓地の《ネクロ・ガードナー》を除外して、攻撃を無効にする!」

 

勢いよく振りだされた光剣は見えない壁に阻まれた。

コピーにできてオリジナルにできない筈はない。

 

 

「カードを1枚セットし、ターンエンド」

 

「ヨッシャ、耐えたぜ。後は頼んだぜ陵牙!」

 

 

―――――

 

 

「はい!俺のターン、ドロー!《No.32海咬龍シャークドレイク》でオーバーレイネットワークを再構築!カオスエクシーズチェンジ!現れよ!暗黒の淵より目覚めし最強の牙よ!《CNo.32 海咬龍シャークドレイク・バイス》!」

 

シャークドレイクは混沌の力を受け白く染まり、真の姿を表した。

 

 

「《アクアジェット》を発動し、シャークドレイク・バイスの攻撃力を1000アップ。更にシャークドレイク・バイスの効果を発動!リバーサル・ネオスの攻撃力をダウンさせる!これで終わりにする!バトル!《CNo.32海咬龍シャークドレイク・バイス》で《iNo.-2リバーサル・ネオス》を攻撃!『デプス・カオス・バイト』!」

 

波濤の波動がリバーサル・ネオスに突き刺さり、その衝撃でイマジナリーナイツは大きく吹き飛ばされた。

 

イマジナリーナイツcode J .Y. LP2600→0

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「十代さん、助かりました」

 

「決めたのは凌牙さ。俺はお膳立てしただけだよ」

 

その時である。

 

『十代、すまなかったな』

 

「な?!」

 

イマジナリーナイツが倒れても、リバーサル・ネオスは宙に浮かんでいた。

しかし、足元から光になって消えつつある。

 

「ネオスなのか・・・!」

 

『ああ、私はかつて、君と共に戦ったネオスだ。十代、本当に久しぶりだ。あんなにも昔のことなのに、今でも昨日のことのように思い出す』

 

「パラドックスの時代から来たのか」

 

納得したように呟く遊城十代。

 

『そうだ。私はキミと別れてから各地を転々としてきた。そしてあの時、私は世界の終焉を見た』

 

「「世界の終焉だって?!」」

 

『あの時、私は何もできなかった。瓦礫に埋もれてしまうだけだった。あれ程までに十代がいない事を、悔しく思った事はない』

 

燃え盛る世界に空を多い尽くす巨大なロボット、ネオスの脳裏には、あの光景が焼きついている。

 

「そんな・・・、ネオス・・・!」

 

『瓦礫に埋もれてから、どれだけ時間が経ったのか。ある時、掘り起こされたのだ』

 

「それが、パラドックス・・・!」

 

『そうだ。彼もあの地獄を見たはずだ。彼は何かを決意したような眼差しだった。十代、陵牙、彼に向き合ってほしい』

 

「わかったぜ、ネオス」

 

ネオスはもう首元まで消えていた。

 

『十代、久しぶりにキミに会えて良かった』

 

「ネオスーッ!」

 

後には光の粒子が空を纏っていた。同時に空間の一部が剥かれ階段が出現した。

 

「行きましょう、十代さん」

 

「ああ」

 

ネオス、お前の思い受け取ったぜ。



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Scene12 復活と真実

いよいよ最終決戦です。


遊馬、アストラル、遊矢、遊戯が螺旋階段を抜けた先にはビルのように高い白亜の構築物がいくつも並んで広がっていた。

まるでハートランドみたいだと遊馬は思った。

 

 

「他にも入り口があるね。あと少しでみんなとも合流できると思うよ」

 

遊戯は来る前に支給された端末で十代や遊星と連絡をとりあっていたのだ。

 

 

ダッダッダッ キィ―――ン

 

 

「みなさん!」

 

遊矢が振り向くと遊城十代、Dホイールに跨がった不動遊星、神代陵牙の姿が。

 

「これは壮観だな」

 

武藤遊戯、遊城十代、彼らと同等のオーラを持つ不動遊星。

時代も世界も異なる英雄達にアストラルは畏敬の念を感じた。

 

「パラドックスはあの高い搭の所かな?」

 

一際、高い搭の天辺に巨大な闇の塊が渦巻いていた。

 

「遊戯さん、俺もそう思います。前の時も高い所にいましたし」

 

「前も、って遊戯さん達はパラドックスと戦ったことがあったんですか?」と、遊馬。

 

「うん、パラドックスは昔、ボクの時代の童美野町を襲ったことがあったんだ。十代君と遊星君と共に戦って倒したんだ。まさか、復活しているなんて」

 

遊星はコクッと頷き、後に続ける。

 

「パラドックスは破滅した未来から来たデュエリストだ。俺は彼の仲間とも戦った事がある。彼らの目的は破滅した未来の救済。俺は彼らに誓った。世界を破滅の未来に進ませないと。俺はもう一度、彼に会わなければならない」

 

「遊星さん・・・」

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

高い高い搭の最上部、暗黒の球体が照らしていた。その下に計器を操作するパラドックスと椅子にグッタリともたれかかり俯く少女―イリスの姿があった。

 

カオスのエネルギーは制御され、デュエルディスクに流れ込んだ。

後は最終段階だけ。もう少しで私の願いが叶う。脳裏にはかつての仲間の姿が浮かぶ。

 

パラドックスにとってカオスの球体は希望の光。

 

 

そこへ―――、

 

「パラドックス、イリスは返してもらうぞ!」

 

陵牙は、一直線にイリスのもとに駆け寄っていた。

 

続けてやってくるデュエリスト達。

 

「待ちわびたぞ、歴戦のデュエリスト達よ!」

 

「パラドックス!お前の野望はここまでだ!」

 

遊矢の眼には囚われの覇王眷竜達が映る。

 

「これからだよ。私の計画は!今こそ私の計画は最終段階に入る!」

 

パラドックスが腕を下から上に振り抜くと、黒い炎がデュエリスト達の間を割くように真っ直ぐ伸びる。

 

「くっ、みんな!」

 

遊戯、遊馬、アストラル、陵牙と十代、遊星、遊矢に分断されていた。

 

「1対6は流石に厳しいのでな。1対3ずつといこうじゃないか」

 

 

 

 

「1対3ずつ?なら私達は誰と・・・」

 

戦うのかと、言おうとした時ハッとアストラルは気づく。

イリスに駆け寄っているシャークを視界の端で捉える。

 

「イリス、無事か?!」

 

「王様・・・」

 

ゆるゆると顔をあげるイリス。

 

「まさか!シャーク、気を付けるんだ!」

 

一瞬、アストラルに振り向く陵牙。

 

 

 

ドォオオン!

 

 

 

その瞬間、陵牙は壁まで弾き跳ばされる。

 

「ゲホッ!」

 

息を整えながら立ち上がろうとする陵牙は見た。

 

冷たい眼差しをしたイリスがデュエルディスクを構え、見下ろしている姿を。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「何故だ!イリス!」

 

愕然とするシャークを見て遊馬は炎の向こうのパラドックスに詰め寄る。

 

「てめぇ、一体なにをしたんだ!」

 

「私は彼女を通してカオスの制御を行っただけだ。フハハハ!恐らくそれが彼女の本来の姿だ」

 

「なん・・・だと・・・!」

 

精一杯に眼を見開く陵牙。

 

「何が制御を行っただけだ。私のカオスの半分を掠めとったではないか。忌々しい。万全の状態なら塵にしていたものを」

 

年端もいかない少女にはあまりにも似つかわしくない怨嗟。

そして、カオスの制御。アストラルは恐ろしい可能性に思い至る。

 

「ドンサウザンド・・・なのか?!」

 

「流石はアストラル。この姿でははじめましてになるわね。私はドンサウザンドの半身、イリス」

 

ドンサウザンド、かつて遊馬達が戦ったバリアン世界の神。

 

「イリスがドンサウザンド?どういうことだよ、アストラル!」

 

戸惑う遊馬。あまりの展開に理解が追い付かない。

 

「仮説でしかないが、ドンサウザンドはバリアン七皇を仕立てるために各地に分身を送って暗躍していた。恐らく、彼女も・・・」

 

「そんな・・・」

 

シャークはイリスと親しい関係。大丈夫なのか・・・。

 

「イリス、どうしちまったんだよ」

 

陵牙は泣きそうな表情に顔を歪ませている。

 

 

「これが私の本当の姿よ。そもそも、妹に瓜二つな女の子が戦場にいるなんて、おかしいと思わなかったのかしら?まぁいいわ。王様いえ、あなた。本当の真実を知りたければ私とデュエルをしましょう」

 

イリスの持つデュエルディスクが怪しく輝く。

 

 

「しっかりするんだ陵牙君!こうなったらデュエルに賭けるしかない!デュエルを通してどうにかする手立てがあるはずだ」

 

根拠はない。伝説の決闘王の声に、希望を抱く。

 

「やってやるさ!イリスを戻して見せる!」

 

 

「「「「「デュエル!!」」」」」

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「地面が・・・」

 

地面は2つに分かれ、宙に浮く。

地面と同じく、浮かび上がったカオスのエネルギー体を中心にゆっくり、回り始めた。

 

 

「ナッシュ、まずはあなたのターンからよ」

 

「っ!俺のターン、《セイバー・シャーク》(レベル4 ATK1600)を召喚。手札から自身の効果で《サイレント・アングラー》(レベル4 ATK800)を特殊召喚!」

 

赤い鮫とアンコウが現れる。レベルはともに4。

 

「レベル4の《セイバー・シャーク》と《サイレントアングラー》でオーバーレイ!レベル4のモンスター2体でオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!満たされぬ魂を乗せた方舟よ。光届かぬ深淵より浮上せよ! 《No.101 S・H・Arc Knight》(ランク4 ATK2100)!ターンエンドだ」

 

まずは破壊耐性を持つこのカードで様子をみる。

その様子をイリス=ドンサウザンドは可笑しそうに口元に手を当てている。

 

 

「フフッ、オーバーハンドレッドナンバーズ、ドンサウザンドの力の一部。あなたはどうやって、そのカードをどうやって手に入れたのかしら?」

 

「どうやってだと」

 

眉をひそめる陵牙。

 

「オーバーハンドレッドナンバーズは人間だったバリアン七皇の死の直前にカードを挿して作り上げていた」

 

アストラルはドンサウザンドの所業を思い返す。

 

「その通り。それで当の本人にはその記憶はあるのかしら?」

 

「俺の記憶はドンサウザンドに書き換えられていない。ベクターと相討ちになって死んだ筈。そのタイミングで作られたはずだ」

 

「なるほど。それも一理あるわね。ところで神代陵牙、人間のあなたはポセイドン王国の末裔よね。あなたは誰の子孫なのかしら?」

 

生家にポセイドン王国の紋章があったことが凌牙の頭を掠める。

そこへ、半透明の青い戦士の影、No.73の化身であるアビスが現われて、口を開く。

 

「王よ。あなたは紛れもなくポセイドン王国、国王ナッシュの直系の子孫です。そうでなくては、王の魂は体に定着しません」

 

冷や汗が陵牙を伝い、イリスに顔を向ける。

 

 

「フフッ。私のターン、ドロー!私は《RUM サウザンド・フォース》を発動。相手のエクストラデッキに宣言したナンバーズがあれば、それを自分フィールドに特殊召喚し、カオス化させる。私は《No.73 激瀧神アビス・スプラッシュ》を宣言!」

 

海神がイリスの前に頭を垂れ、大地に降り立つ。

 

「《No.73 激瀧神アビス・スプラッシュ》でオーバーレイネットワークを再構築!カオスエクシーズチェンジ!《CNo.73 激瀧神アビス・スープラ》」

 

《CNo.73 激瀧神アビス・スープラ》ランク5 ATK3000

 

 

 

「相手のナンバーズをカオス化させるってNo.96の!」

 

No.96はドンサウザンドの力を受けていた。今回の事象はまるでドンサウザンドを思い起こさせる。

 

「そうだな。だがそれだけではないぞ遊馬。No.101にNo.73、対応する遺跡のナンバーズとオーバーハンドレッドナンバーズが揃っている」

 

遺跡のナンバーズがオーバーハンドレッドナンバーズを倒すと、ドンサウザンドの記憶の書き換えを無効にすることができる。

かつてはバリアン七皇の洗脳を解くために使った手段。

 

「だが、アークナイトには破壊耐性がある」

 

それでも何かあるはずだと凌牙は警戒し、手札を持つ力が強まる。

 

「私は《禁じられた聖杯》をアークナイトに対して発動。アークナイトは効果が無効になり、攻撃力が400アップ」

 

 

《No.101 S・H・Arc Knight》ATK2100→2500

 

 

 

「あなたが受けていたのは記憶の改竄でなく、封印。今からあの時の真実を見せてあげる!《CNo.73 激瀧神アビス・スープラ》で 《No.101 S・H・Arc Knight》を攻撃!」

 

トライデントが箱舟の側面に突き刺さる。

 

 

凌牙・遊戯・遊馬LP4000→1000

 

 

アークナイトの穿たれた装甲から大きな白い光が爆発し凌牙の視界を白く染め上げる。

 

 

「ぐわぁあああ!」

 

精神に凄まじい衝撃が走る。咳き込んだように流れ込んでくる記憶。

 

そうだ。俺はベクターと相討ちになった後、何故か生きていた。埋まった遺跡から這い上がった時、出迎えてくれたのは・・・。

 

 

「イリス・・・?」

 

「思い出したかしら?あなたはあの戦いでは亡くなっていない。あの後、あなたはポセイドン王国を再建を果たした。私と私の子ども達と共に」

 

いとおしそうに、お腹をさするイリス。

 

「思い、出した・・・!」

 

刹那、黒い風がイリスを包むと妙齢の女性が姿を表す。その姿は妹の理緒を大人にした感じに似ていた。

 

 

「私はあなたの妻よ、ナッシュ」

 



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Scene13 混沌の極致

今話は前半が、VSパラドックス。後半がVSイリスになっています。


イリスが凌牙にデュエルディスクを構える様子を見て、パラドックスは口元をゆがめる。

 

「悪趣味だぜ、あんた」

 

非難する十代をよそになおも不敵に笑う。

 

「フフ。では此方もはじめようか」

 

パラドックスが指をパチンと鳴らすと床が2つに割れ浮かび上がる。

 

ともに浮かび上がったカオスのエネルギー体を中心にゆっくり、回り始めた。

 

 

「「「「デュエル!」」」」

 

 

 

 

「私のターン、《Sin World-Chaos》を発動。このカードがフィールドに存在する限り、Sinモンスターはモンスターが無効になり、互いに2回しか攻撃できない」

 

赤黒い近未来的なビル郡が周囲に広がる。

 

「新しいSin Worldか。攻撃制限なんて、随分警戒してくれてるんだな」

と、十代。

 

「私は自身の効果で《Sin サイバー・エンド・ドラゴン》(レベル10 ATK4000)と《Sin レインボー・ドラゴン》(レベル10 ATK4000)を特殊召喚。更にマジックカード《トレード・イン》を発動。手札から《Sin青眼の白龍》を墓地へ送り、2枚ドロー。ターンを終了する」 

 

 

―――――

 

 

「遊星、遊矢、俺から行かせてくれ。俺のターン、ドロー!」

 

「新たなHEROの力を見せてやる!《E・HEROブレイズマン》を召喚!」

 

炎のボクサーを象ったヒーローが現れた。

 

「ブレイズマンの効果発動。デッキから《融合》を手札に加える」

 

「ほぅ、歴史上の遊城十代のデッキにはなかったカードだな」

 

「このカードは遊矢の世界にあったカードを海馬コーポレーションが再現したカードだ。言っとくがこいつだけじゃないぜ。手札からマジックカード《融合》を発動!!《E・HEROブレイズマン》と手札の《E・HEROバブルマン》を融合!融合召喚!現れろ。絶対零度のヒーロー!《E・HEROアブソルートZero》!」

 

《E・HEROアブソルートZero》レベル8 ATK2500

 

 

輝くエフェクトとともに出現したのは白銀のヒーロー。十代がデッキに入れた新しいヒーローの中でもトップクラスの実力を持つ。

十代は更に手札に手をかける。

 

「まだだぜ!更に速攻魔法《マスク・チェンジ》を発動!」

 

アブソルートZeroが紺碧の仮面を顔にかける。

 

「《E・HEROアブソルートZero》で変身融合!毒持つヒーロー!《M・HEROアシッド》!」

 

《M・HEROアシッド》レベル8 ATK2600

 

 

小銃を持った青黒いヒーローが現れるとパラドックスのドラゴン達が足元から凍り始めていく。

 

「Zeroがフィールドを離れた場合、相手フィールド上のモンスターを全て破壊する!『freezing at moment』!」

 

「これが十代さんの新たなヒーローの力!これなら!」

 

グッとこぶしを握り締める遊星。

 

 

しかし――、

 

 

「無傷・・・!」

 

 

天へ嘶く2体のドラゴンは健在。

 

「《Sin World-Chaos》の効果を発動させてもらった。自分フィールド上のSinカードがフィールドから離れる場合、代わりに手札のSinカードを送る事ができる。私は《Sin覇王眷竜スターヴ・ヴェノム》を墓地へ送らせてもらった」

 

「覇王眷竜を捨てた?!」

 

「フフフ、Sin覇王眷竜の効果は強力だが、このフィールドと相性が悪いのでな」

 

 

《Sin World-Chaos》

フィールド魔法

①:自分フィールド上の「Sin」モンスターはモンスター効果が無効になる。

②:お互いのプレイヤーは、バトルフェイズにモンスター2体までしか攻撃する事ができない。

③:自分フィールドの「Sin」カードが相手のカードの効果でフィールドから離れる場合、代わりに手札から「Sin」カード1枚を墓地に送る。

④:???

 

 

「まだだ!アシッドの効果。このカードが特殊召喚に成功した時、相手フィールド上の魔法・トラップカードを全て破壊し、相手フィールド上のモンスターは300攻撃力がダウンする!『Acid rain』!」

 

酸の雨が近未来的なビル郡とドラゴンを襲う。

 

《Sin サイバー・エンド・ドラゴン》ATK4000→3700

《Sin レインボー・ドラゴン》ATK4000→3700

 

 

「チィ!《Sin World-Chaos》の効果で手札の《Sin トゥルース・ドラゴン》を墓地へ送り、破壊を無効にする」

 

「これで手札は1枚だ。カードを2枚セットして、ターンを終了する」

 

 

遊城十代(手札1枚)、不動遊星、榊遊矢

LP:4000

手札:1枚

場:《M・HEROアシッド》ATK2600、伏せカード2枚

 

 

 

パラドックス

LP:3700

手札:1枚

場:《Sin サイバー・エンド・ドラゴン》ATK4000→3700、《Sin レインボー・ドラゴン》ATK4000→3700、《Sin World-Chaos》

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「私はあなたの妻よ、ナッシュ」

 

あまりの衝撃的な発言。呆然となる一同。

 

凌牙は記憶の混乱からか、頭を抱えうずくまっている。

 

 

眼下には巨大な暗黒の球体を見下ろしながら続けるイリス。

 

「あのカオスはドンサウザンドの打倒とともに放たれたものが集合したものよ。私はアイツによってカオスを取り込んだことで記憶が戻ったの。デュエルを続けるわ。永続魔法《つまづき》を発動。カードを1枚セットして、ターンエンド」

 

 

 

神代凌牙(手札3枚)、武藤遊戯、九十九遊馬&アストラル

LP:1000

場:なし

 

イリス=ドンサウザンド

LP:4000

手札:1枚

場:《CNo.73 激瀧神アビス・スープラ》ATK3000 ORU1

《つまづき》、伏せカード1枚

 

 

 

「行くぜ、俺のターン、ドロー!」

 

シャークはかなり動揺してる。俺が何とかしないと。

 

「俺は《ガガガ学園の緊急連絡網》を発動!《ガガガマジシャン》(レベル4 DEF1000)を特殊召喚。《ガガガガール》(レベル3 DEF700)を通常召喚するぜ」

 

2体のガガガ達。最大の特徴はアクセスできるモンスターエクシーズの豊富さ。

 

「俺は2体のガガガのレベルを7に変更。レベル7となった《ガガガマジシャン》と《ガガガ》でオーバーレイ!レベル7のモンスター2体でオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!表れろ《No.11 ビッグアイ》(ランク7 DEF2300)!」

 

「ナンバーズ。アストラル、あなたを倒し、ナンバーズとヌメロンコードを手に入れてみせる!」

 

「ドンサウザンド!貴様にナンバーズもヌメロンコードも渡さない。ビッグアイの効果を発動。オーバーレイユニットを1つ取り除く事で相手モンスター1体のコントロールを得る。『テンプテーショングランス』!来い、アビス・スープラ!」

 

アストラルの指示に合わせて、巨大な円錐の瞳が怪しく輝く。

直後、海神はイリス=ドンサウザンドへと向きなおる。

 

「これなら攻撃できるぜ。アビス・スープラでダイレクトアタックた!」

 

 

「甘いわね。永続トラップ発動。《六芒星の呪縛》!相手モンスターの攻撃を封じる」

 

六芒星の魔法陣が海神にまとわりつき、動きを停止させる。

 

「くっ、カードを1枚セットしてターンエンド」

 

 

―――――

 

 

「私のターン、ドロー。きたわね。永続魔法《トライアングルフォース》を発動。デッキから同名カード2枚を発動するわ」

 

場には5枚の魔法・罠カード。これで魔法・罠ゾーンは埋まり、新しいカードを使うことができない。

 

「効果がない永続魔法?今、そんなカードを使ったところで、何が?」

 

「これで条件は揃ったわ。私は《つまづき》、《六芒星の呪縛》、と3枚の《トライアングルフォース》でオーバーレイ!」

 

大地に銀河が広がり、5つの光が吸い込まれる。

 

「魔法・トラップカードでエクシーズ召喚だと?!」

 

「5枚の表側の永続魔法・トラップカードでオーバーレイネットワークを構築! 運命の華よ、我が願いを受け入れ、咲き誇れ!エクシーズ召喚。顕現せよ。ランク0。《CNo. ∞(カオスナンバーズインフィニティ)極姫神ニルヴァーナ・ロータス》!」

 

 

CNo.∞(カオスナンバーズインフィニティ) 極妃神ニルヴァーナ・ロータス》ランク0 ATK0

 

 

 

「カオスナンバーズ・・・、インフィニティだと?」

 

赤黒く輝く巨大な一輪の蓮の花。周囲には5つの赤い星が廻っている。

 

「そう、これこそが究極のカオス。極姫神ニルヴァーナ・ロータス。あなたたちは耐えれるかしら」

 

花の中央部に黒い暗黒の光を湛える。

 

「《CNo.∞ 極姫神ニルヴァーナ・ロータス》で《No.11 ビッグアイ》を攻撃!この瞬間、ニルヴァーナ・ロータスの効果。このカードが攻撃対象を選んだ時、相手フィールド上のカードを1枚選択して墓地に送り、1000ダメージを与える!」

 

闇の波動にビッグアイが触れると、溶け始めていく。ライフは残り1000。

 

「これが決まるとまずい。遊馬君!」

 

 

「リバースカードオープン。《神秘の中華鍋》!アビス・スープラをリリースしてライフを3000回復する!くっ!」

 

遊戯・遊馬・凌牙LP1000→4000→3000

 

 

除去にダメージ。厄介なカードだがダメージは1000ずつ。まだ余裕があると思っていると――――、

 

 

巨大花に再び黒い光が収束する。

 

 

「馬鹿な!攻撃は終わったはずでは?!」

 

「アストラル君!ニルヴァーナ・ロータスは攻撃途中で2体のモンスターが墓地に送られている。だから攻撃の巻き戻しが発生しているんだ!」

 

「流石は初代デュエルキング、その通り。ニルヴァーナ・ロータスはまだ攻撃していないわ」

 

「そうか!ニルヴァーナ・ロータスは攻撃対象を選択しただけ。だから攻撃が可能なのか!」

 

つまり相手のモンスターは必ず全滅し、その数に1を加えた数の1000倍のダメージを与えるということ。

 

「ニルヴァーナ・ロータスでダイレクトアタック!『カオスアセンション』!」

 

「うわぁあああ!」

 

 

遊馬はあまりの衝撃に吹き飛び、床をゴロゴロと転がる。 

 

遊馬・遊戯・凌牙LP3000→2000

 

 

「《強者の苦痛》を発動。更にカードを1枚セットしてターンエンド」

 

 

 

九十九遊馬&アストラル(手札3枚)、武藤遊戯、神代凌牙(手札3枚)

LP:2000

場:なし

 

 

 

イリス=ドンサウザンド

LP:4000

手札:0枚

場:《CNo.∞ 極姫神ニルヴァーナ・ロータス》ATK0 ORU5、《強者の苦痛》、伏せカード1枚



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Scene14 再誕の日

前半がVSイリス、後半がVSパラドックスになっています。


九十九遊馬&アストラル(手札3枚)、武藤遊戯、神代凌牙(手札3枚)

LP:2000

場:なし

 

 

 

イリス=ドンサウザンド

LP:4000

手札:0枚

場:《CNo.∞ 極姫神ニルヴァーナ・ロータス》(ランク0 ATK0、ORU4)、《強者の苦痛》、伏せカード1枚

 

 

 

「ボクのターン、ドロー。確かにニルヴァーナ・ロータスは強力なカード。だけど穴はある。例えばそう、《帝王の烈旋》を発動するよ」

 

対象をとらず、破壊されない効果は最高クラスの耐性だがデュエルモンスターズには対象をとらない破壊以外の除去方法はいくつもある。

 

「させないわ。リバースカードオープン。《禁じられた聖槍》!ニルヴァーナ・ロータスはターン終了時まで魔法・トラップカードの効果を受けない」

 

 

「なら、ボクは《マジシャン・ズロッド》(レベル3 ATK1600→1300)を召喚し、《ブラックマジシャン》がテキストに書かれている魔法カード、《ブラック・スパイラル・フォースⅡ》を手札に加えるよ」

 

魔法の杖が浮かび上がるように現れた。

 

「カードを3枚セット」

 

「でもこれは予想できたかしら?この瞬間、ニルヴァーナ・ロータスのカオスオーバーレイユニットを1つ取り除き、効果発動!相手はバトルフェイズをスキップできず、このカードを攻撃対象にしなければならない!」

 

紅の十字星がニルヴァーナ・ロータスに吸収される。

掌からブラックホールが現れ、魔術師の杖が引きずり込まれた。

 

遊戯・遊馬・凌牙LP2000→1000

 

 

「く、攻撃強制効果も持っているのか。ターンエンド」

 

 

―――――

 

 

「あと少しで終わりになるわね。私のターン、ドロー」

 

「それはどうかな。リバースカードオープン《戦線復帰》、《黒魔術復活の棺》!墓地から《マジシャンズロッド》を特殊召喚。更に《マジシャンズ・ロッド》と《CNo.∞ 極妃神 ニルヴァーナ・ロータス》を生け贄に!」

 

赤い棺が開くと、《マジシャンズ・ロッド》と《CNo.∞ 極姫神ニルヴァーナ・ロータス》が閃光になり、吸収される。

 

「何ですって?!」

 

再び棺が開くと露わになる伝説の黒き魔術師の姿。

 

「デッキから最上級黒魔族を特殊召喚する!現れろ!《ブラック・マジシャン》!」

 

《ブラック・マジシャン》レベル7 ATK2500→1800

 

「これが、武藤遊戯さんの《ブラック・マジシャン》!イマジナリーナイツのよりも迫力が違う!」

 

切り札は倒した。後はこのまま、片をつける。遊戯はイリスに視線を向ける。

 

 

彼女は―――、

 

 

 

三日月のように口元をゆがめて笑っていた。

 

 

「アハハハ。倒せたって思った?ここからが絶望の始まりよ!《CNo.∞ 極姫神 ニルヴァーナ・ロータス》がフィールドから離れた事で最後の効果を発動!このカードを特殊召喚」

 

地面からニルヴァーナ・ロータスが浮かび上がり――、

 

「《CNo.∞ 極妃神 ニルヴァーナ・ロータス》でオーバーレイネットワークを再構築!イマジナリー・カオスエクシーズチェンジ!」

 

 

―――光となって天に輝く銀河に飛び込み爆発が起こる。

 

 

「夢幻の果てに真の世界を映し出せ!ランク13《|CiNo.∞《カオスイマジナリーナンバーズ インフィニティ》 極妃神マハーパリニルヴァーナ・ロータス》!」

 

 

《CiNo.∞ 極妃神 マハーパリニルヴァーナ・ロータス》ランク13 ATK0

 

 

花を基調にした衣装を身に纏った長い髪の女神の姿。その姿とプレッシャー。

遊戯はまるで《光の創造神ホルアクティ》に似ていると思った。

 

「これこそが私の真の力にして私の化身!《CiNo.∞ 極妃神 マハーパリニルヴァーナ・ロータス》で《ブラック・マジシャン》を攻撃。『スターリー・ヘヴン』!」

 

優雅に手を軽く振るう女神。

手を振るった先の空間がバラバラと崩壊していく。

 

「マハーパリニルヴァーナ・ロータスが攻撃宣言を行った場合、相手フィールド上のカードを全て墓地に送り、相手に10万ポイントのダメージを与える!さらにこのカードは相手の効果を受けない。他の効果は持っていないけど、これで十分ね」

 

 

《CiNo.∞ 極妃神マハーパリニルヴァーナ・ロータス》

ランク13/光属性/天使族・エクシーズ・効果/ATK0/DEF0

このカードは「CNo.∞ 極姫神ニルヴァーナ・ロータス」の効果でのみX召喚できる。

①:このカードは戦闘で破壊されず、カードの効果を受けない。

②:このカードが攻撃対象に選択されるか攻撃対象を選択した時、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動する。相手フィールド上のカードを全て墓地に送り、相手ライフに100000ポイントのダメージを与える。

(オリカ)

 

 

「なんて無茶苦茶なカードだ!」

 

「手札を1枚捨て、《ホーリーライフバリアー》を発動。このターン、受けるダメージを0にする」

 

 

遊戯達以外のあらゆるものが崩壊する。その様はまるで世界の崩壊。その光景に思わず遊戯達はゾッとなった。

 

 

「カードを1枚セットしてターンエンド」

 

 

 

《ホーリーライフバリアー》がなかったら敗北していた。何とかギリギリ切り抜けることができた綱渡りのようなデュエル。

向こうの地面に目をやると三つ首の機械竜と鈍く虹色に輝くドラゴンの姿があった。両方とも神クラスの攻撃力を持つモンスター。

十代君たちは無事だろうか。

 

 

 

武藤遊戯(手札2枚)、九十九遊馬&アストラル(手札3枚)、神代凌牙(手札3枚)

LP:1000

場:なし

 

 

 

イリス=ドンサウザンド

LP:4000

手札:0枚

場:《CiNo.∞ 極妃神 マハーパリニルヴァーナ・ロータス》(ランク13 ATK0、ORU1)、伏せカード1枚

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

遊城十代(手札1枚)、不動遊星、榊遊矢

LP:4000

場:《M・HEROアシッド》ATK2600、伏せカード2枚

 

 

 

パラドックス

LP:4000

手札:1枚

場:《Sin サイバー・エンド・ドラゴン》ATK4000→3700、《Sin レインボー・ドラゴン》ATK4000→3700、《Sin World-Chaos》

 

 

 

「私のターン、ドロー!」

 

「《Sin レインボー・ドラゴン》で《M・HEROアシッド》を攻撃。『オーバー・ザ・レインボー』!」

 

ドラゴンの体の宝石が光輝き、虹色の光線がアシッドを包もうとする。

 

「待ってたぜ!リバースカードオープン《ハーフ・カウンター》!攻撃モンスターの攻撃力の半分、自分のモンスターの攻撃力がアップする。アシッドの攻撃力は1850アップだ!」

 

 

《M・HEROアシッド》ATK2600→4350

 

 

アシッドはビームを抜け、Sinレインボー・ドラゴンの首元に迫る。

至近距離から青黒い光線を放つ。

 

 

パラドックスLP4000→3350

 

 

「カウンターか、だがその選択は失策だ。自分フィールド上のSinモンスターが破壊された事で墓地の《Sinトゥルース・ドラゴン》の効果を発動。ライフを半分にし、特殊召喚する。顕現せよ。《Sin トゥルース・ドラゴン》!」

 

 

 

《Sin トゥルース・ドラゴン》レベル12 ATK5000

 

パラドックスLP3350→1675

 

 

「あれはパラドックスの切り札!」

 

 

遊星には覚えがあるカード。こんな早くに出てくるのは想定外だ。

 

「《Sinトゥルース・ドラゴン》でアシッドに攻撃!」

 

巨大な黄金のドラゴンがブレスを放ち、アシッドを消し飛ばす。

 

 

十代、遊星、遊矢LP4000→3350

 

 

「カードを1枚セットして、ターンエンド」

 

 

――――――

 

 

「俺のターン、ドロー!フィールド魔法《天空の虹彩》を発動。スケール7《EMキングベアー》をペンデュラムスケールにセッティング!」

 

7の数字が描かれた青い柱が現れる。

 

「《天空の虹彩》を発動。ペンデュラムゾーンの《EMキングベアー》を破壊し、デッキから《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を手札に加える」

 

手札に加えたのは遊矢のエース。

 

「スケール8《竜穴の魔術師》とスケール2《EMドラネコ》でペンデュラムスケールをセッティング!」

 

2つの青い光の柱が浮かぶ。左の柱には2、右の柱には8の数字。

 

「これで3~7のモンスターが同時に召喚可能!揺れろ、魂のペンデュラム。天空に描け光のアーク!ペンデュラム召喚!現れろ俺のモンスター達!」

 

天空の幾何学模様の魔法陣から灰と赤の光が降り注ぐ。

 

「《EMユーゴーレム》(レベル4 DEF1000)!全てを焼き尽くす2色の(まなこ)《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!」

 

 

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》レベル7 ATK2500

 

 

「一気に最上級レベルのモンスターが2体。ペンデュラム召喚!すげぇ展開力だぜ!」

 

「《EMユーゴーレム》の効果を発動。このカードがペンデュラム召喚に成功した時、このカードと自分フィールド上のカードを素材に融合召喚を行う!」

 

「融合魔法を内蔵したモンスターがあるのか!」

 

融合にも更なる進化があったのか、と驚く遊星。

遊星の時代のエクストラデッキのモンスターは殆どがシンクロモンスター。融合モンスターは廃れてしまっているのだ。

 

「《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と《EMユーゴーレム》で融合。龍のまなこよ。土より生まれし巨人と1つとなりて、新たな道を指し示せ!融合召喚!現れろ!レベル8!《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》!」

 

 

《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》

レベル8/闇属性/ドラゴン族・融合・効果/AT2800/DEF2000

闇属性モンスター×2

(1):このカードがフィールドのモンスターのみを素材として 融合召喚に成功したターンに発動できる。 このカードの攻撃力はターン終了時まで、 相手フィールドの特殊召喚されたモンスターの攻撃力の合計分アップする。

(2):1ターンに1度、相手フィールドの レベル5以上のモンスター1体を対象として発動できる。 ターン終了時まで、その相手モンスターの効果は無効化され、 このカードはその対象の相手モンスターの効果を得る。

(3):このカードが破壊された場合に発動できる。 相手フィールドの特殊召喚されたモンスターを全て破壊し、 その攻撃力の合計分のダメージを相手に与える。

(アニメオリカ)

 

 

現れたのは紫色の禍々しいドラゴン。

 

「融合の四天の竜!」

 

眼を見開くパラドックス。眼前のドラゴンは四天の竜の中でも最強の力を有するカード。予め調べた時、その圧倒的な力に身震いを感じたものだ。

 

「《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》の効果。このカードがフィールド上のカードのみで融合召喚に成功した時、ターン終了時まで、相手フィールド上に特殊召喚されたモンスターの攻撃力の合計分、8700攻撃力がアップする!」

 

 

《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》ATK2800→11500

 

 

「攻撃力11500?!」

 

召喚条件の安易さと比較して桁外れの攻撃力に唖然とする十代。

《パワー・ボンド》で融合した《サイバー・エンド・ドラゴン》ですら攻撃力8000止まりなのだ。

 

「これで終わりだ!《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》で《Sinトゥルース・ドラゴン》を攻撃!」

 

全身から幾数の紫の光球が放たれ収束。螺旋を描くレーザーが黄金のドラゴンを貫いた。

これが決まれば勝利。

 

 

 

―――それは呆気なさすぎる。

 

 

「おのれぇ!トラップカードオープン。《ガードブロック》!戦闘ダメージを0にし、1枚ドロー!」

 

とらざるを得ない防御。ハイビートを得意とするパラドックスがパワー負けをする。どれ程、屈辱的か。

 

「これで俺はターンエンド。スターヴ・ヴェノムの攻撃力は元に戻る」

 

 

―――――

 

「私のターン、ドロー。墓地の《Sin 青眼の白龍》と《Sin レインボー・ドラゴン》を除外してマジックカード、《Sin Selecter》を発動。デッキから《Sin覇王眷竜 ダークリベリオン》と《Sin覇王眷竜 オッドアイズ》を手札に加える」

 

 

《Sin Selecter》

通常魔法

自分の墓地に存在する「Sin」と名のついたモンスター2体をゲームから除外する。

自分のデッキから「Sin」と名のついたカード2枚を手札に加える。

(アニメオリカ)

 

 

「カードを1枚セットして、ターンエンド」

 

パラドックスは苦々しい表情のまま、エンド宣言を行う。

 

「パラドックスが攻撃をしない?」

 

不可解な行動に遊星は頭を捻る。

 

「不動遊星。そのドラゴンは破壊時に、相手フィールド上のモンスターを全て破壊し、その攻撃力の合計分の与える効果があるのだ。おいそれと攻撃できるものか」

 

「やっぱり知ってたか」

 

遊矢は舌打ちをする。

 

あまりの凶悪さに十代も遊星も驚いていた。

 

 

―――――

 

 

「俺のターン、ドロー」

 

 

遊星は考える。《スタ-ヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》の自爆特攻でも終わってしまう状況。

だがパラドックスのこの余裕はなんだ。恐らく何か手を打っているはず。見極めてみせる。

 

「遊星さん。俺のペンデュラムスケールを使ってください」

 

ペンデュラム召喚、赤馬零児とのコンタクトで知った新たな召喚法。ルールはある程度理解している。

 

 

「ああ!俺はセッティング済みのペンデュラムスケールでペンデュラム召喚!来い!俺のモンスター達!」

 

「現れろ!レベル3《ガントレット・ウォリアー》レベル5チューナーモンスター《クイック・シンクロン》!」

 

大きな手甲を持った小さな戦士とデフォルメされたガンマンが現れる。

 

「レベル5チューナーモンスター《クイック・シンクロン》でレベル3《ガントレット・ウォリアー》をチューニング!集いし闘志が怒号の魔神を呼び覚ます。光さす道となれ!シンクロ召喚!粉砕せよ!《ジャンク・デストロイヤー》!」

 

《ジャンク・デストロイヤー》レベル8 ATK2600

 

 

「《ジャンク・デストロイヤー》がシンクロ召喚に成功した時、このカードのチューナー以外のシンクロ素材の数までフィールド上のカードを破壊する!俺は《スタ-ヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》を破壊する!『タイダル・エナジー』!」

 

機械の巨人のコアから放たれたソニックブームが紫のドラゴンを捉えた。

 

「《スタ-ヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》の効果を発動!このカードが破壊された時、相手フィールド上のモンスターをすべて破壊し、その合計分のダメージを与える!」

 

 

攻撃を無効にするカードが伏せられている可能性があるため、遊星は能動的にスターヴ・ヴェノムの効果を発動させたのだ。

 

爆散するドラゴン。そこから紫色の液体がパラドックスのフィールドに飛散した。

 

「甘いぞ!不動遊星!《Sin World-Chaos》の効果で手札の《Sin覇王眷竜ダークリベリオン》を墓地に送り、《Sinサイバー・エンド・ドラゴン》の破壊を無効に!更に手札の《Sin覇王眷竜オッドアイズ》を捨て、トラップカード《レインボー・ライフ》を発動!効果ダメージを回復に変更する!4000ライフを回復ゥ!」

 

 

パラドックスLP1675→5675

 

「伏せたカードはライフ回復カードか!だが、これで手札は使い切った。パラドックス、ひとつ聞かせてくれ!お前は俺達に倒された筈。何故生きているんだ!」

 

「確かに私はお前達に敗北し、命を落とした。私の体は機械でできているのだ。歴戦のデュエリストと闘うにあたり、保険として、もう1つ体を造って置いた。最も、この体1つしか作れなかったがな」

 

「そうか、未来の世界ではゾーン以外のメンバーはサイボーグ。だから可能だったのか」

 

「覚醒には時間を要してしまったがね。しかし、私は幸運にも恵まれていた。私の体は干渉を避けるため、時空の狭間であるこの場所に保存していたのだが、ちょうどカオスがここに流れ込み、我が血肉となったのだ」

 

「パラドックスがカオスの力を」

 

「その力を使い、試しにイマジナリーナイツとイマジナリーナンバーズを作り上げたのだ。最も、私には未知数だったので、協力者が必要だった。ベクターの知識は中々興味深かったよ。私の味方でないことは気付いていたがね」

 

 

「っ!お前は何故、こんなことをしたんだ!このままでは世界は破滅するだけ!Z-ONEもそんなことは望んでいないはずだ!」

 

「知った風な口をきくな!不動遊星!」

 

「俺はZ-ONE、アポリア、そしてアンチノミー、彼らの思いを受け取った。彼らは世界を救おうと全てを賭けていた。お前はこの世界をしいてはすべての世界とその未来を破滅させようとしている!」

 

「黙れ!私は止まるわけにはいかないのだ!おしゃべりはここまでだ!デュエルを続けろ、不動遊星!」

 

 

やるしかないと、遊星は手札に目をやる。

 

 

「《セカンド・ブースター》を召喚!」

 

飛行機の形をしたモンスターが飛来した。

 

「《セカンド・ブースター》をリリースして効果を発動。《ジャンク・デストロイヤー》の攻撃力を1500アップ!更に装備魔法《ジャンク・アタック》を《ジャンク・デストロイヤー》に装備!」

 

《ジャンク・デストロイヤー》ATK2600→4100

 

「《ジャンク・デストロイヤー》で《Sinサイバー・エンド・ドラゴン》に攻撃!『デストロイ・ナックル』!」

 

四つ腕の拳が三つ首の機械竜に炸裂した。

 

パラドックスLP5675→5275

 

 

「更に《ジャンク・アタック》の効果で破壊したモンスターの攻撃力の半分1850ポイントのダメージを与える!」

 

パラドックスの頭上に人工衛星が降り注ぐ。

 

「ぬぅ!」

 

パラドックスLP5275→3425

 

 

「ターンエンド!」

 

 

―――――

 

手札はなく、場にモンスターがいない状況。パラドックスは追い込まれていた。

 

「私のターン、ドロー!」

 

引いたカードを覗き込む。

望んでいたカード。まさに運命を感じる。

 

「フハハハハハ。《竜の霊廟》を発動。私はドラゴン族モンスター、《Sin覇王眷竜クリアウィング》を墓地に送る!」

 

何か良くないことが起こる気がする。遊星は悪寒めいたものを感じていた。しかし、セットしたカードは魔法カードを無効にする効果のカードはない。

 

「墓地に4種類のSin覇王眷竜が揃ったとき、《Sin World-Chaos》は真の姿になる!歴戦のデュエリスト達よ!見るがいい!」

 

赤黒い街並みが捻じれ、幾何学模様の円を描く。

それぞれの円の中心から2本の針が伸びる。

それはまるで時計の様。

 

「これこそが、《Sin World-Chaos》の真の姿、《Sin World-Chaos Chronograph》だ!」

 

 

クロノグラフ。聞き覚えのある言葉の響き、確かあれは・・・。

その時、遊矢の脳裏にかつての光景がフラッシュバックした。

 

 

『時空を司る《アストログラフ・マジシャン》よ!その深淵なる力で我らの望みを重ね合わせよ!今こそ、ひとつに!』

 

 

顔面が蒼白になる遊矢。

 

 

「まさか・・・。そんな・・・覇王龍を誕生させようとしているのか?!」

 

「覇王龍?」

 

「そうだ。覇王龍とはかつて、榊遊矢の世界を2度にわたって滅ぼしかけた存在だ。流石に榊遊矢は気付くか。かつての自分がしたことが覚えていないはずがない」

 

「覇王龍はドラゴンたちが望まなければなれないはずだ!お前にドラゴンたちと心を通わせられるはずがない!」

 

ドラゴンたちは覇王龍になることはもう望んでいない。

 

 

「それはどうかな!私は既にカオスの力を完全に扱えるようになっているのだよ」

 

「カオスの力?」

 

「彼女、ドンサウザンドの力さ!彼女の本体はかつて、混沌を司る神だったのだ。その力は人の欲望に関するものだが、副次的に面白いものがあってね。それが記憶と感情の書き換えだ」

 

 

浮遊している大地同士が交錯する。

イリスを視界に入れると恭しく、礼をするパラドックス。一方でイリスは不機嫌そうな表情だ。

 

 

「そう、私は覇王眷竜の願いを『私に従い、1つとなること』に書き換えたのだ。これで計画は最終段階へと至る!」

 

「そんな・・・」

 

ドラゴンたちはパラドックスの都合のいいように感情を書き換えられる。あまりの所業に遊矢は言葉を失う。

 

 

「私は《Sin World-Chaos Chronograph》とデッキ・EXデッキの「覇王眷竜」モンスター4種類をゲームから除外する!」

 

 

赤、黒、白、紫の覇王眷竜がパラドックスの四方に姿を現し、咆哮。

 

遊矢と十代には彼らの虚ろな声を聞き取ってしまう。

 

 

『全てを1つに』『全てを1つに』『全てを1つに』『全てを1つに』

 

 

あまりにもおぞましい。思わず耳を塞ぎたくなる。

 

 

 

「四天の龍を統べ、全てに破滅をもたらす究極龍よ!今こそ私と一つに!統合召喚!」

 

 

「やめろおおおぉぉぉおお!」

 

 

「出でよ!《覇王龍パラドックス》!」

 

 

《覇王龍パラドックス》

レベル12/闇属性/ドラゴン族・融合・シンクロ・エクシーズ・ペンデュラム・効果/ATK4000/DEF4000 スケール13/13

このカードはルール上、ランク12のモンスターとしても扱う。

このカードは「Sin World-Chaos Chronograph」の効果でのみEXデッキから特殊召喚する事ができる。

P効果

①:???

モンスター効果

①:???

②:???

 

《Sin World-Chaos》

フィールド魔法

①:自分フィールド上の「Sin」モンスターはモンスター効果が無効になる。

②:お互いのプレイヤーは、バトルフェイズにモンスター2体までしか攻撃する事ができない。

③:自分フィールドの「Sin」カードが破壊される場合、代わりに手札から「Sin」カード1枚を墓地に送る。

④:自分の墓地に「Sin覇王眷竜」モンスター4種類存在する場合、このカード名は「Sin World-Chaos Chronograph」となり、以下の効果を得る。●このカードとデッキ・EXデッキの「覇王眷竜」モンスター4種類をゲームから除外して発動する。EXデッキから「覇王龍パラドックス」を特殊召喚する。



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Scene15 救済

不動遊星(手札1枚)、遊城十代(手札1枚)、榊遊矢(手札2枚)

LP:3350

場:《ジャンク・デストロイヤー》ATK2600

伏せカード1枚

Pゾーン:《竜穴の魔術師》(スケール8)、《EMドラネコ》(スケール2)、

 

 

 

パラドックス

LP:3425

手札:0枚

場:《覇王龍パラドックス》ATK4000

 

 

《覇王龍パラドックス》

レベル12/闇属性/ドラゴン族・融合・シンクロ・エクシーズ・ペンデュラム・効果/ATK4000/DEF4000 スケール13/13

このカードはルール上、ランク10のモンスターとしても扱う。

このカードは「Sin World-Chaos Chronograph」の効果でのみEXデッキから特殊召喚する事ができる。

P効果

①:???

モンスター効果

①:???

②:???

 

 

 

「現われてしまった・・・」

 

遊矢は絶望に膝をつきそうになる。

 

「覇王龍・・・!パラドックス!」

 

赤と緑の線で紋様が描かれている黄金のドラゴン。100メートル近くある黒と白の左右異なる翼をバサリと羽ばたかせる。

 

「フハハハハハ!素晴らしいぞ!これこそが私が求めていた力!」

 

「パラドックス、何故こんな事を!」

 

「覇王龍は破壊と再生を併せ持つ。私はこの力で崩壊しない完全な世界を作り上げる!」

 

「崩壊した世界・・・!ネオスが言っていた・・・」

 

ネオスとのやり取りを思い出す。世界の終わりとは想像を絶するものだと改めて思う。

 

「未来の崩壊の原因は人々の欲望の増長によるモーメントの誤作動。ゾーンが命をとして俺たちに伝えてくれた。暴走しないモーメントも完成している!」

 

「モーメントだけが崩壊の要素ではない。大邪神に、ダークネス、破滅の光、覇王龍。私はカオスに触れることで様々な世界が崩壊する可能性を見てきた。ならばこそ、神となった私が天に立ち、全てを管理することで真の幸福が訪れるのだ!」

 

「それでも、今ここにいる人達を犠牲にして不幸にするなんてお前がやっていることは絶対に間違っている!絶対に止めてみせる!」

 

トラウマと向き合いながらも、遊矢は吠える。

 

「ほざけ!我が力の片鱗を見るがいい!1ターンに1度、相手フィールド上のモンスターを全て墓地に送り、ライフを半分にする!」

 

その顎から幾重にも分かれた光線が放出される。

 

「うわぁあああああ!」

 

遊星・十代・遊矢LP3350→1675

 

 

あまりの衝撃、それだけではない。

 

光の軌跡は空間に裂け目を作っていた。

 

「あれは、ハートランド?!」

 

「ネオドミノシティまで?!」

 

裂け目から映し出されるのは自分たちの世界。更にビル群から小さなドローンが裂け目へ飛び立つ。

 

「そうだ!お前たちの世界だ!そして今飛び立ったドローンはここの映像を映し出している!全ての世界の人々に新世界の誕生を見届けさせるのだ!これでフィナーレだ!ダイレクトアタック!」

 

「くっ!トラップカード発動!《トゥルース・リインフォース》!デッキからレベル2以下の戦士族モンスターを特殊召喚する。現れろ!チューナーモンスター《ジャンク・アンカー》!(レベル2 DEF0)」

 

丸い体のマシーンが出現し、腕を交差させて壁になる。

 

「遊星さん!ペンデュラムゾーンの《EMドラネコ》のペンデュラム効果を発動。自分フィールドのモンスターは1ターンに1度、戦闘では破壊されない!」

 

「遊矢、助かる!」

 

遊矢のアシストに遊星は親指をたてる。

 

「ターンを終了する!」

 

 

―――――

 

 

「俺のターン、ドロー!」

 

覇王龍、自分と同じ覇王を関する存在。見極めさせてもらうぜ。

 

「早速ペンデュラムを使わせてもらうぜ!」

 

俺はセッティング済みのペンデュラムスケールでペンデュラム召喚!来い!俺のヒーロー達!」

 

「現れろ!レベル3《N・グランモール》!レベル7《E・HEROネオス》!」

 

「《E・HEROネオス》と《N・グランモール》をコンタクト融合!現れろ!《E・HEROグラン・ネオス》」

 

《E・HEROグラン・ネオス》 レベル7 ATK2500

 

 

「《E・HEROグラン・ネオス》の効果を発動!手札に戻れ!《覇王龍パラドックス》!」

 

ドリルを地面に突き刺し、衝撃波が覇王龍を襲う。

 

「ぬぅうう!」

 

辺りに砂ぼこりが舞った。

 

 

 

しかし―――、

 

青い光の柱に悠然と浮かぶ覇王龍の姿。

3人の決闘者を睥睨するパラドックスは悠然と言い放つ。

 

「《覇王龍パラドックス》、この私がフィールドを離れる場合、ペンデュラムゾーンに送られる。そしてぇ!」

 

光の柱が怒号とともに砕け散り、覇王龍は再びフィールドに降り立つ。

 

「ペンデュラムゾーンに送られた場合、攻撃力を500アップさせ、再びフィールドに特殊召喚するのだぁ!(《覇王龍パラドックス》 ATK4000→4500)」

 

 

《覇王龍パラドックス》

レベル12/闇属性/ドラゴン族・融合・シンクロ・エクシーズ・ペンデュラム・効果/ATK4000/DEF4000 スケール13/13

このカードはルール上、ランク10のモンスターとしても扱う。

このカードは「Sin World-Chaos Chronograph」の効果でのみEXデッキから特殊召喚する事ができる。

P効果

①:このカードがPゾーンに送られた場合、このカードの攻撃力を500アップさせ、自分フィールド上に特殊召喚する。

モンスター効果

このカードがの①の効果は1ターンに1度しか発動できない。

①:相手フィールド上のモンスターを全て墓地に送り、相手のライフを半分にする。

②:このカードが相手のカードの効果でフィールドから離れた場合、このカードをPゾーンに置く。

(オリカ)

 

 

「そんなの無敵じゃないか・・・!だけど、それでも覇王龍を倒さないと!」

 

遊矢は膝をつきそうになるが、歯を食いしばり覇王龍を見据える。

ドラゴン四体を統べ、一体化しようなどという発想を最初にしたのはズァークである自分自身。

自分が何とかしなければならない。強い気迫で堪えていた。

 

 

 

一方で―――、

 

「おもしれぇ、疑似的な不死に強力な強烈なモンスター破壊。どうやって倒そうかワクワクするぜ」

 

「十代さん・・・?!」

 

ありえない発言に耳を疑う。

 

「フ、遊矢君。それが十代さんさ。どんな時でもデュエルを楽しむ、それが信条なんだ。デュエルは争いの道具ではないのだから」

 

『デュエルは争いの道具ではない』、かつて自分も言ったことだ。

あの時は何も知らなかった。世界の命運をかけた負けられない戦いがあることも。

そんな中で自分のデュエルを貫くことはとても難しいことだ。

 

「遊矢、困難な状況をどうやって切り抜けようか。どうやって強大なモンスターを倒そうとするか考えてみるんだ。その答えが出た時のこと、キーカードをドローした時のことを思うんだ」

 

《覇王龍パラドックス》はどんな強力な除去も無意味で自分のターンに強力な破壊効果を持つカード。

そこから導き出される弱点は。自分のターンに妨害されることはない。

そのために必要なのは・・・。

 

 

「な、ワクワクするだろ」

 

頬に手を当てると口角が緩んでいるのがわかる。

 

「俺はマジックカード《コンタクトアウト》を発動。グランネオスの融合素材を特殊召喚する。現れろ!ネオス(DEF2000)!グランモール(DEF300)!更に、マジックカード《HEROの遺産》を発動。《E・HEROアブソルートZero》と《M・HEROアシッド》をデッキに戻し、カードを3枚ドロー!カードを1枚セットして、ターンエンド!」

 

 

―――――

 

 

「私のターン、ドロー!《貪欲な壺》を発動。4体のSin覇王眷竜と《Sinサイバー・エンド・ドラゴン》をデッキに戻し、2枚ドロー!」

 

「《ハーピィの羽箒》を発動!相手フィールド上の魔法・トラップカードをすべて破壊する」

 

大嵐が巻き起こり、次々にカードを粉々にしていく。

 

「手札を1枚捨て、リバースカードオープン。《超融合》発動!」

 

遊城十代が持つ究極の融合魔法。その力が今、解放される。

 

「《E・HEROネオス》と《N・グランモール》を融合!融合召喚!現れろ!大地のヒーロー!《E・HEROガイア》(レベル6 DEF2600)!」

 

ガイアから草の蔓が伸び、覇王龍を絡めとる。

 

「ガイアの効果!ターン終了時まで相手モンスターの攻撃力を半分にして、その攻撃力分、このカードの攻撃力をアップする」

 

《覇王龍パラドックス》ATK4500→2250

 

 

「新たなヒーローか!だが所詮はこのターンまで無駄なことだ!相手フィールド上のモンスターを相手フィールド上のモンスターを全て墓地に送り、ライフを半分にする!」

 

十代・遊星・遊矢LP1675→838

 

 

「砕け散れ!ダイレクトアタック!」

 

「墓地の《ネクロガードナー》を除外して効果を発動!戦闘ダメージを0にする」

 

戦士の幻影が光線を受け止めた。

 

「いつまで抗うか!私はターンを終了する!」

 

 

―――――

 

 

「パラドックス、十代さんは勝利のための道を示してくれた。俺は覇王龍を打ち倒す!」

 

先ほどの十代さんの《超融合》はネクロガードナーを墓地に送るだけではない。《覇王龍パラドックス》の耐性を確かめてくれたんだ。俺が導き出した戦術はこれだ。そのためにはあのカードが必要だ。引くことができるかどうか、プレッシャーを感じるとともに高揚する。

 

 

「俺のターン、ドロー!来たぜ、《EMチアモール》(レベル2 ATK600)を召喚」

 

ボンボンを持ったピンク色のモグラが登場する。しかし、この状況での召喚はあまりにも場違いな雰囲気のモンスター。慌てて、遊矢の足元に隠れる。

 

「なんだ、そのカードは」

 

単体では何もできない弱小カード。例え効果を発動しても対したことがないカードだ。

 

「このカードこそがお前を倒すためのピースの1つ。スケール8《EMオッドアイズ・ユニコーン》とスケール2《EMドラミングコング》でペンデュラムスケールをセッティング!」

 

2体の獣がペンデュラムゾーンに送られる。

 

「これで3~7のモンスターが同時に召喚可能!揺れろ、魂のペンデュラム。天空に描け光のアーク!ペンデュラム召喚!エクストラデッキから現れろ。俺のモンスター達!」

 

「《EMキングベアー》(レベル8 DEF1000(ATK2200→2600))!全てを焼き尽くす2色のまなこ《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》(レベル7 ATK2500)!」

 

遊矢は、長年の相棒、オッドアイズの背に飛び乗る。

 

「行くぜ、バトルだ!《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》で《覇王龍パラドックス》を攻撃!」

 

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンは覇王龍に突進、大きくジャンプする。

 

「オッドアイズ単体で攻撃だと?その程度でこの《覇王竜パラドックス》に敵うものか!」

 

 

「お楽しみはこれからだ!《EMオッドアイズ・ユニコーン》と《EMドラミングコング》のペンデュラム効果を発動!攻撃力が3200(2600+600)アップ。更にオッドアイズの攻撃力がアップしたことでチアモールの効果!更に攻撃力が1000アップ!オッドアイズの攻撃力は6700!」

 

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》

ATK2500→6700

 

「『螺旋のストライク・バースト』!」

 

ジャイロ回転する焔の閃光がパラドックスの至近距離から放たれた。

 

 

「攻撃力6700!だが、戦闘ダメージは2200。まだライフを削るには程遠い!」

 

交錯する遊矢とパラドックス。

 

「《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の効果を忘れてないか。このカードがレベル5以上のモンスターとの戦闘ダメージは倍になる!ダメージは4400だ!『リアクションフォース』!」

 

火焔の勢いがさらに増す!

 

 

「覇王竜たる私が破れるだとぉ!馬鹿なぁあああ!」

 

 

パラドックスLP3400→0

 

 

 

榊遊矢(手札2枚)、不動遊星(手札1枚)、遊城十代(手札1枚)

LP:838

場:《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》ATK2500、《EMキングベアー》DEF1000、《EMチアモール》ATK600

伏せカード1枚

Pゾーン:《EMオッドアイズ・ユニコーン》(スケール8)、《EMドラミングコング》(スケール2)



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Scene16 希望の先

武藤遊戯(手札2枚)、九十九遊馬&アストラル(手札3枚)、神代凌牙(手札3枚)

LP:1000

場:なし

 

 

 

イリス=ドンサウザンド

LP:4000

手札:0枚

場:《CiNo.∞ 極妃神 マハーパリニルヴァーナ・ロータス》ATK0 ORU1、伏せカード1枚

 

 

 

 

「俺のターン、ドロー」

 

はぁはぁと荒い息を吐きながらカードを引く。記憶の混乱に頭は痛み、立つのもやっと。

マハーパリニルヴァーナ・ロータスが召喚されてからイリスが纏うカオスが顕在化して強くなってきたように思う。

このカオスを取り除けば、イリスは元に戻るのではないか。希望の光明が見えてきた。

だが、その前に聞いておくことが1つある。

 

「イリス。生前のお前はカオスに支配されているように思えなかった。いつからドンサウザンドの干渉があったんだ?」

 

「それを聞いて何になるの?まあいいわ。あなたの死の直前よ、ナッシュ。デュエルを続けなさい」

 

 

 

「っ!《ダブルフィン・シャーク》(レベル4 ATK1200→800)を召喚。その効果で墓地から《セイバー・シャーク》(レベル4 ATK1600→1200)を特殊召喚。手札から速攻魔法《地獄の暴走召喚》を発動。デッキから現れろ、2体の《セイバー・シャーク》!」

 

一気に4体の鮫軍団が現れた。

 

「流石、シャーク。《強者の苦痛》をうまく利用したぜ」

 

《セイバー・シャーク》はレベル変更効果を持っている。柔軟なエクシーズ召喚が可能。

マハーパリニルヴァーナ・ロータスと戦闘を行った瞬間に敗北。

これを潜り抜けてみせる。

 

 

「《セイバー・シャーク》2体の効果を発動。効果を無効にした《セイバー・シャーク》と《ダブルフィン・シャーク》のレベルを3に、2体の《セイバー・シャーク》のレベルを5に変更する」

 

「レベル5となった《セイバー・シャーク》と2体でオーバーレイ!レベル5モンスター2体でオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!海を切り裂け!猛々しき鮫の巣よ!現れろ!《シャーク・フォートレス》(ランク5 ATK2400)!」

 

連続攻撃能力を与える能力を持つサメ型の戦艦が現れる。

 

「レベル3となった《セイバー・シャーク》と《ダブルフィンシャーク》でオーバーレイ!レベル3モンスター2体でオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れろ!《No.47ナイトメア・シャーク》(ランク3 DEF2000)!」

 

次に現れたのはサメの半魚人のナンバーズ。

アストラルから相性が良いナンバーズとして受け取った1枚だ。

 

「そんなもので何ができるというの?」

 

「《シャーク・フォートレス》の効果を発動。このターン、このカードは2回攻撃できる。更にナイトメア・シャークのオーバーレイユニットを1つ取り除き、効果を発動。『ダイレクトエフェクト』!このターン、《シャーク・フォートレス》は相手に直接攻撃できる!」

 

「これはまさか!」

 

目を見開くイリス。

 

「そうだ!ダイレクトアタックなら、2600の2回攻撃。5200のダメージだ!これならばマハーパリニルヴァーナ・ロータスの効果を受けない!行けっ《シャーク・フォートレス》!ダイレクトアタックだ!『メイヘムミサイル』!」

 

鮫型空母のハッチが開き、ミサイルが無数に射出される。

狙いはイリス。

 

 

イリスLP4000→1600

 

 

「確かにそれなら影響を受けないわね。その程度、対策してなかったと思う?リバースカードオープン!永続トラップ《千年妃の間》を発動!自分がダメージを受けた場合、ライフを4000にする」

 

 

《千年王妃の間》

永続罠

①:自分が相手によってダメージを受けた場合、自分のライフポイントを4000にする。

②:このカードは1ターンに1度、相手のカードの効果を受けない。

③:自分はモンスターを召喚・特殊召喚できず、ドローフェイズ以外でカードをドローできない。

(オリカ)

 

 

 

天井が高い豪華な水色を基調にした部屋が広がった。

 

 

イリスLP1600→4000

 

 

「これは、新生ポセイドン王国の・・・」

 

 

「そう、これは私達が晩年を過ごした部屋、思い出した?」

 

「ああ、思い出した。病床に臥せた俺はこの部屋のベットで横たわっていた。この部屋は気温が一定であの時の俺には都合がよかった」

 

「その通りよ。あなたの死の直前、私はあなたの枕元に行った」

 

「そうだ、イリスは俺の胸元に手を置いて・・・」

 

彼女の手の中にあったのは・・・、

 

 

 

《No.101 S・H・Arc Knight》 

 

 

 

あの時のイリスの顔には凶器を湛えた笑みが広がっていた。今までのイリスからは考えられない表情に愕然となり、そして・・・。

やはり、俺をバリアンにしたのはイリス。

凌牙にとっては認めたくない事実に思わずゴホッゴホッと咳き込む。

 

「カードを2枚セットして、ターンエンド」

 

 

―――――

 

 

残る手札は2枚。遊馬が持つあのカードなら対抗できる筈だ。遊馬、頼んだぜ。

 

「私のターン、ドロー。マハーパリニルヴァーナ・ロータスで、ナイトメア・シャークを攻撃『スターリーヘヴン』!」

 

再び崩壊の波動が迫る。

 

「墓地の《超電磁タートル》の効果を発動し、バトルフェイズを終了させる!」

 

遊戯が《ホーリーライフ・バリア》の手札コストとして、墓地に送ったカード。

電磁シールドが空間の崩壊を食い止めた。

 

「まだ耐えるというの?!カードを1枚セットして、ターンエンド」

 

 

―――――

 

武藤遊戯(手札2枚)、九十九遊馬&アストラル(手札3枚)、神代凌牙(手札3枚)

LP:1000

場:なし

 

 

 

イリス=ドンサウザンド

LP:4000

手札:0枚

場:《CiNo.∞ 極妃神 マハーパリニルヴァーナ・ロータス》ATK0 ORU1、《千年王妃の間》、セットカード1枚

 

 

―――――

 

 

次は遊馬のターン。

遊馬は毅然とイリスを見据える。

 

「なぁ、イリス。お前、本当はシャークといたいだけなんじゃないのか?」

 

「遊馬?!」

 

「シャーク、私もその可能性を考えていた。彼女はドンサウザンドの分身だ。しかし《千年妃の間》、あれは生前の記憶を基にしたカード。その効果はプレイヤーを不死身にする事だ。つまり、彼女はカードに表れる程、君に生きて欲しかったという事ではないか」

 

「違う。私はドンサウザンド!私の目的は、あなた達を倒し、アストラルからヌメロンコードを手に入れること!」

 

被りを振って必死に否定するイリス。

 

「お前はドンサウザンドだけどシャークとの絆がある筈だ!お前とシャークが過ごした日々に嘘はない筈だ!俺達はその絆を引き出してみせる!アストラル!ZEXALだ!」

 

「ああ、遊馬!」

 

遊馬とアストラルは互いに示しあう。

 

 

 

「「俺と私でオーバーレイ!!!」

 

遊馬とアストラルは赤と青の光となって天に昇る。

 

「「()達、二人でオーバーレイ・ネットワークを再構築!遠き魂が交わる時、語り継ぐべき力が現れる!!エクシーズ・チェンジ!ゼアル(ZEXAL)!!」」

 

 

 

かつての宿敵の真の姿に苦々しい表情のイリス。

 

 

「デュエリストが合体した・・・?!」

 

これまで非現実的な出来事を幾つも経験してきた遊戯だったが、流石にデュエリスト同士が合体して変身する事に唖然とするしかなかった。

 

「「遊戯さん、これが()の真の力、ゼアルです」」

 

「う、うん。スゴいね。遊馬君、アストラル君」

 

 

 

「「()のターン!最強デュエリストのデュエルは全ては必然!ドローカードさえも、デュエリストが創造する!全ての光よ!力よ!我が右腕に宿り、希望の光を照らせ!」」

 

デッキトップが光り輝く、ゼアルの代名詞。

 

 

 

「「シャイニング・ドロー!!」」

 

 

引いたカードの光の軌跡はまさに希望の光。

 

 

 

「「勝利の方程式は全て揃った。まずはマジックカード《死者蘇生》を発動。甦れ!《ブラック・マジシャン》(レベル7 ATK2500→1800)!」」

 

黒き魔術師は大地に光の粒子が舞い、再び現れる。

 

 

「「()は手札を2枚捨て、セットしたカード、《魔法石の採掘》を発動。墓地から《ブラック・スパイラル・フォースⅡ》を手札に加える!」」

 

「「《ゴゴゴジャイアント》を召喚。効果により、墓地から《ゴゴゴゴーレム》を特殊召喚!」」

 

2体の巨像がゼアルの左右に現れた。

 

 

「「レベル4の《ゴゴゴジャイアント》と《ゴゴゴゴーレム》でオーバーレイ!レベル4のモンスター2体でオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!現れろ! 《No.39 希望皇ホープ》(ランク4 ATK2500)!」」

 

白銀の鎧を纏う白き戦士、遊馬のエースモンスター、希望皇ホープ。その真の力はランクアップにある。

 

 

 

「「かっとビングだ、()!《RUMアストラル・フォース》を発動!」」

 

これこそが遊馬達の切り札。シャイニングドローで呼び込んだカード。

 

 

 

しかし―――、

 

 

「させない!リバースカードオープン!《フォースフィールド》!対象をとる魔法カードの効果を無効にする!」

 

《フォースフィールド》は汎用性が低いカードだが、対象をとるランクアップマジックに対してカウンターになる。

 

 

「イリス!俺は諦めねぇ。ゼアル、最後のリバースカードだ!」

 

イリスに手を伸ばす凌牙。

 

 

 

「「ああ、カウンタートラップ発動!《神の宣告》!ライフを半分払い《フォースフィールド》を無効にするぜ」」

 

 

遊戯・ゼアル・凌牙LP1000→500

 

 

うっと、呻くイリス。

 

 

「「《No.39 希望皇ホープ》でオーバーレイネットワークを再構築!ランクアップエクシーズチェンジ!限界を超え、その手に希望をつかめ!!!現れろ!!希望の星!《No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》!」」

 

 

《No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》

ランク6/光属性/戦士族/ATK3000/DEF2500

レベル6モンスター×2

このカードは「No.」と名のつくモンスター以外との戦闘では破壊されない。 このカードが自分フィールド上に存在する限り、 自分フィールド上に存在するカードは相手のカードの効果を受けない。 このカードが「No.39 希望皇ホープ」をランクアップして エクシーズ召喚に成功した場合、以下の効果を得る。 ●自分のバトルフェイズの間だけ、相手フィールド上に存在するモンスターの攻撃力は0になる。 ●このカードのエクシーズ素材1つを取り除いて発動する事ができる。 自分フィールド上に存在するモンスターエクシーズ1体をゲームから除外する。 その後、自分の墓地から「No.39 希望皇ホープ」1体を特殊召喚し、 自分はその攻撃力の半分のライフポイントを回復する。 (この効果はお互いのバトルフェイズ中に発動する事ができる)

(アニメオリカ)

 

 

ビヨンド・ザ・ホープ、ホープの最強進化形態。2つの強力な攻防の能力が最強足らしめる。1つは相手フィールドのモンスターの攻撃力を0にする能力。そして、もう1つは・・・。

 

「「ビヨンド・ザ・ホープが存在する限り、自分フィールド上のカードは相手のカードの効果を受けない!」」

 

これこそが、イリスが警戒していた能力。絶対耐性。三幻神を上回る圧倒的な防御性能。

 

これはメッセージ。どんな力で傷つけようとも、俺達が受け止めてみせるという。

 

 

「《千年妃の間》はライフを即座に回復してしまう強力なカードだけど一度に4000以上のダメージには耐えられない。今だよ!」

 

「はい、遊戯さん。《ブラック・スパイラル・フォースⅡ》を発動。ビヨンド・ザ・ホープの攻撃力は2倍になる!」

 

 

《ブラック・スパイラル・フォースⅡ》

速攻魔法

自分フィールド上に「ブラック・マジシャン」が表側表示で存在する場合のみ発動する事ができる。

「ブラック・マジシャン」以外の自分フィールド上に存在するモンスター1体を選択して、

エンドフェイズ時までその攻撃力を倍にする。

このカードを発動するターン自分の「ブラック・マジシャン」は攻撃する事ができない。

(オリカ)

 

 

ブラック・マジシャンのロッドから螺旋の輝きがビヨンド・ザ・ホープを包みこむ。

 

 

 

《No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》ATK3000→6000

 

 

 

「攻撃力6000!」

 

 

「バトルだ!《No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》で《CiNo.∞ 極妃神 マハーパリニルヴァーナ・ロータス》を攻撃!『ビヨンド・ザ・ホープ剣スラッシュ』!」

 

「甘いわ!《CiNo.∞ 極妃神 マハーパリニルヴァーナ・ロータス》の効果ダメージの方が先に発動する!10万ポイントのダメージを受けなさい!」

 

 

ゼアルの手札は0枚、伏せカードもない。最後の勝負に勝利したとイリスは思った。だが同時にナッシュと過ごしてきた日々が走馬灯のように頭によぎる。

 

 

イリスが知らないカードが1枚だけ墓地にある。

 

「「俺は墓地の《プリベントマト》の効果を発動!このターン受ける効果ダメージを0にする!」」

 

どんなに拒絶されようとも手を伸ばす。それが九十九遊馬。

 

 

「「イリス、シャーク達と帰ろう!行けホープ!」」

 

 

ビヨンド・ザ・ホープがマハーパリニルヴァーナ・ロータスを爪で切り裂かれた。

光が爆発し、空間のカオスを吹き飛ばした。

 

 

 

イリスLP4000→0

 

 

 

衝撃にあおられ、イリスは後方に倒れこむ。

姿も元の少女の状態に戻っている。

 

 

「イリス!」

 

「ナッシュ・・・。離れて、私はドンサウザンド、あなたをずっと騙してきた」

 

駆け寄り、抱きしめる。

 

「いいや、離さねぇ。どれだけ拒絶しようとも手を伸ばす。ドンサウザンドなんて関係ねぇ。イリスは俺の大切な仲間だ」

 

「どうして・・・」

 

ゼアルをちらりと見てから答える。

 

「遊馬から教えてもらった。どんなことがあっても手を差し伸べる、なにがあってもあきらめない、かっとビングってやつさ」

 

「かっとビング・・・」

 

イリスの胸に温かいものがあふれていく。

 

「そうだ!かっとビングだぜ、イリス」

 

ゼアルから元に戻った遊馬は歩み寄る。

 

「そういうことだ。イリス=ドンサウザンド、君はバリアン世界とは関係なく好きに生きるといい」

 

「アストラル・・・。みんな、私はここにいていいのかな?」

 

「もちろんだぜ」

 

「一件落着だね。さあ、早く戻ろう」

 

 

遊戯が言った直後―――、

 

 

ガクン!

 

 

「落ちるぞ!」

 

十代達の方を見ると、巨大な竜が地面に落ちていくのが見えた。

 

「脱出しよう!頼んだぜホープ!」

 

白銀の戦士の背に乗り込み地上へと降下していった。




書いてから《ブラック・スパイラル・フォース》がトラップカードに気づいた模様。


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Scene17 記憶と絆

榊遊矢(手札2枚)、不動遊星(手札2枚)、遊城十代(手札1枚)

LP:838

場:《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》ATK2500、《EMキングベアー》 DEF1000、《EMチアモール》ATK600、

伏せカード1枚

Pゾーン:《EMオッドアイズ・ユニコーン》(スケール8)、《EMドラミングコング》(スケール2)

 

 

覇王龍ごとライフを0にすること。これこそが《覇王龍パラドックス》の対処法。

攻撃力の上昇を得意とするエンタメイトならではの戦い方にオッドアイズのダメージ倍加。両方がなければ勝てなかっただろう。

 

 

ガクン

 

 

急な浮遊感に襲われる遊矢たち。

パラドックスを失ったことで重力に地面が落ちていく。

 

「何とか脱出しよう!乗ってくれ」

 

遊星は十代と遊矢をDホイールに乗せ、エンジンをかける。

 

「遊星、どうするんだ」

 

「このまま飛びます!」

 

「飛ぶって・・・え?!」

 

普通に考えてバイクは空を飛ばない。

 

Dホイールのタイヤから赤い光を放ち、宙を舞う。

 

「すげぇ」

 

「降下します」

 

パラドックスが墜落したと思われる地面に降り立つと頭上から遊馬の声が聞こえてきた。

 

 

「みんなー、無事かぁー」

 

頭上から声。白銀の戦士が降下する。

 

 

「遊戯さん、終わったんですか?」

 

「うん、それから彼女も」

 

視線の先には凌牙に抱えられている少女の姿。

 

「ナッシュ、みなさん。すみません。私がカオスを集めたばかりにこんな事を」

 

イリスを救出し、パラドックスを倒した。

後は帰るだけ―――――、

 

 

 

 

 

―――――のはずだった。

 

 

「フ。ドンサウザンドは力を失ったか。これで、私に並び立つ者はいなくなる」

 

「パラドックス?!ライフが0になったはずじゃ!」

 

「私はライフが0になるとき、デッキのカードを発動していた。このカードは《覇王龍パラドックス》が戦闘で破壊され、自分のライフが0になる場合、その戦闘ダメージを0にし、ライフを4000にしたのだ」

 

 

パラドックスLP3400→4000

 

 

突如、強烈な風が吹きすさび、パラドックスの姿を露わにした。

 

「そして私は究極の存在、《覇王無限龍ディバニティ・トゥルース》となったのだ!」

 

 

 

《覇王無限龍ディバニティ・トゥルース》レベル12 ATK5000

 

 

それは漆黒を塗り重ねたような光さえ飲み込むほど真っ黒なドラゴン。

 

 

「私の前ではあらゆるものが無力になる。私以外のフィールド上のモンスターの攻撃力は0になる。更に私はダメージを受けず、三幻神と同等の耐性を得る!」

 

「三幻神と同等の耐性だって!」

 

 

 

《覇王無限龍ディバニティ・トゥルース》

レベル12/闇属性/ドラゴン族・特殊召喚・効果/ATK5000/DEF5000

このカードは通常召喚できず、「覇王龍パラドックス」が自分モンスターゾーンを離れて自分のライフが0になる場合、自分のライフを4000にすることで手札またはデッキから特殊召喚できる。

①:このカードがフィールド上に存在する場合、このカード以外のフィールド上のモンスターは攻撃力と守備力は0になり、自分はダメージを受けない。

②:このカードがモンスターに攻撃した時、300ダメージを与えて、続けて他のモンスターに攻撃できる。

③:このカードは戦闘またはカードの効果で破壊されず、他のカードの効果を1ターンのみ受けつける。

(オリカ)

 

 

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》ATK6100→0

《EMキングベアー》DEF1000→0

《EMチアモール》ATK600→0

 

 

「まずい、俺は《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と《EMチアモール》を融合!融合召喚!出でよ!野獣の眼まなこ光りし獰猛なる龍!レベル8!《ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》(DEF2000→0)!ターンエンド!」

 

 

「ドロー!フハハハハハ!私の時代が今始まるのだ!《覇王無限龍ディバニティ・トゥルース》は全てのモンスターに攻撃できる!更に攻撃する度に300ポイントのダメージを与える!」

 

翼から無数の黒い光が遊矢たちに突き刺さる!

 

 

十代・遊星・遊矢LP838→538→238

 

 

「うわぁぁぁぁぁ!」

 

「フハハハハハ。カードを1枚セットしてターンを終了する!」

 

 

 

 

―――――

 

 

「俺のターン、ドロー!パラドックス!今こそ決着をつけよう!マジックカード《逆境の宝札》を発動!デッキからカードを2枚ドロー!」

 

 

《逆境の宝札》

通常魔法

相手フィールド上に特殊召喚されたモンスターが存在し、 自分フィールド上にモンスターが存在しない場合に発動できる。

自分のデッキからカードを2枚ドローする。

(アニメオリカ)

 

 

これで手札は3枚。遊星の脳裏に幾つもの展開パターンが浮かぶ。時間稼ぎなら何とか可能だが、敗北の可能性が高い。もし展開後に、あのカードを引く事ができれば勝機はある。ここは直感を信じる!

 

 

「手札からチューナーモンスター《アンノウン・シンクロン》(レベル1)を自身の効果で特殊召喚。チューナーモンスター《ジャンク・シンクロン》(レベル3)を召喚。その効果で墓地からチューナーモンスター《ジャンク・アンカー》(レベル2)を特殊召喚。墓地からモンスターが特殊召喚されたことで手札から《ドッペル・ウォリアー》(レベル2)を特殊召喚!」

 

怒涛の展開で一気にモンスターを4体並べる。

遊星のコンボはここからが真骨頂。

 

 

「レベル3チューナーモンスター《ジャンク・シンクロン》でレベル2《ドッペル・ウォリアー》をチューニング!集いし思いが更なる加速を呼び起こす!光指す道となれ!シンクロ召喚!シンクロチューナー!《アクセル・シンクロン》(レベル5)!」

 

シンクロチューナー、更なるシンクロ召喚の足掛かりにして、アクセルシンクロへと至るキーカード。

 

「墓地に送られた《ドッペル・ウォリアー》の効果でドッペル・トークン(レベル1)を2体特殊召喚する」

 

2体の小人の兵隊が降り立つ。

 

「《アクセル・シンクロン》の効果を発動!デッキから「シンクロン」モンスターを墓地に送ることでレベルを増減させる。俺はレベル2の《ニトロ・シンクロン》を墓地に送り、《アクセル・シンクロン》のレベルを2つ上げ、レベル7に!」

 

《アクセル・シンクロン》レベル5→7

 

 

「レベル7となったシンクロチューナー《アクセル・シンクロン》でレベル1のドッペル・トークンをチューニング!集いし願いが新たに輝く星となる。光さす道となれ!シンクロ召喚!飛翔せよ!《スターダスト・ドラゴン》!」

 

《スターダスト・ドラゴン》レベル8 ATK2500→0

 

 

遊星のエースモンスター、《スターダスト・ドラゴン》。

弱体化しているが、主を護ろうと雄々しく咆哮する。

 

「レベル1チューナーモンスター《アンノウン・シンクロン》でレベル1のドッペル・トークンをチューニング!集いし願いが新たな速度の地平へ誘う。光さす道となれ!シンクロ召喚!希望の力、シンクロチューナー!《フォーミュラ・シンクロン》!」

 

 

これこそが不動遊星の代名詞、高速シンクロ。

 

 

「いくら展開しても無駄だ!例えアクセルシンクロをしようともな」

 

場にはシンクロチューナーの《フォーミュラ・シンクロン》とシンクロモンスターの《スターダスト・ドラゴン》。アクセルシンクロ体である《シューティング・スター・ドラゴン》の召喚条件は揃っている。

 

「今回はアクセルシンクロは行わない。《フォーミュラ・シンクロン》の効果を発動。このカードがシンクロ召喚に成功したため、デッキからカードを1枚ドロー!」

 

このドローに懸ける!

 

 

「来たか!俺はレベル2のチューナーモンスター《ジャンク・アンカー》でレベル8の《スターダスト・ドラゴン》をチューニング!」

 

2つの緑のリングが《スターダスト・ドラゴン》を包みこみ、8つの星が現れる。

 

 

「集いし願いが新たな時空の扉を開く!光さす道となれ!シンクロ召喚!」

 

 

前方に光の柱が伸び、細長い硝子の四肢が露になる。

 

 

 

「現出せよ!《時械神祖ヴルガータ》!」

 

 

《時械神祖ヴルガータ》レベル10 ATK0

 

 

 

「時械神・・・だとぉ!それはゾーンの!何故貴様が!」

 

しかもシンクロモンスターになっているだと!

困惑し驚愕するパラドックスに遊星は答える。

 

 

「《時械神祖ヴルガータ》、このカードはカオスの現象の調査の際、偶然入手したものだ」

 

遊星はその時のことを思い返す。

 

「あの時、俺はカオスの中心地に行くためにアクセルシンクロを応用してたどり着けないか、実験していた」

 

 

「《時械神祖ヴルガータ》はアクセルシンクロで空間を越えた先の神殿にあった」

 

奥へ進んだ壁は凸に11個、ブロックが浮き出ていて、中央に1枚のカードが祭られていた。

 

「カードを手に取った時、ゾーンの思いが流れ込んできた。ゾーンはお前が1人で背負い、逸ったことをしないか心配していた。我々は未来を救うための同士。ともに進まなければならない、と」

 

「ぬぅう・・・」

 

 

「《時械神祖ヴルガータ》で《覇王無限龍ディバニティ・トゥルース》を攻撃!ヴルガータは破壊されず、戦闘ダメージは発生しない!」

 

「時械神の効果の発動を狙うか。だが、私は三幻神と同等の耐性を持ち、ダメージを受けない!」

 

「《時械神祖ヴルガータ》は攻撃終了時、相手フィールド上の全てのモンスターをエンドフェイズまでゲームから除外する」

 

「何だとぉおおお!」

 

 

《時械神祖ヴルガータ》

レベル10/闇属性/天使族・シンクロ・効果/ATK0/DEF0

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

(1):このカードは戦闘・効果では破壊されず、このカードの戦闘で発生する自分への戦闘ダメージは0になる。

(2):このカードが戦闘を行ったダメージステップ終了時に発動する。ターン終了時まで相手フィールドのカードを全て除外する。

(漫画オリカ)

 

 

 

「パラドックス!お前の心の鎧を引き剥がす!」

 

機械仕掛けの神が光を放つと、黒い巨大なドラゴンは霧散し、パラドックスは元の姿に戻る。

 

「私の神たる力が・・・!だが攻撃はこれまでだ!」

 

その両手を見て何の力も持っていないことに驚くが、一時的なものと自分に言い聞かせる。

 

「まだだ!手札から速攻魔法《リミットオーバードライブ》を発動!場のシンクロモンスター同士でシンクロする!」

 

「何ぃ!」

 

遊星はDホイールのアクセルを踏み、天へと加速する。

 

「トップクリアマインド!レベル2シンクロチューナー《フォーミュラ・シンクロン》とシンクロモンスター レベル10《時械神祖ヴルガータ》でチューニング!」

 

黄金の輝きが遊星を包む。

 

「光指す道となれ!リミットオーバードライブ!招来せよ!《コズミック・ブレイザー・ドラゴン》!」

 

 

《コズミック・ブレイザー・ドラゴン》レベル12 ATK4000

 

 

「不動遊星の最強の切り札!《コズミック・ブレイザー・ドラゴン》!」

 

パラドックスの世界では伝説のモンスター。

その輝きはゾーンと会った頃を思い出す。

 

「《コズミック・ブレイザー・ドラゴン》で、パラドックスにダイレクトアタック!」

 

躰を蒼く輝かせ、飛翔する。

そうだ、あの光に私は救われた。

 

パラドックスLP4000→0

 

 

「パラドックス、大丈夫か・・・!」

 

吹き飛ばされたパラドックスに向かう。

 

 

「不動遊星。私は間違えていたのか・・・」

 

パラドックスは上半身がちぎれ、切断面からコード類がのぞく。

 

あの時を思い出す。

1人だけ生き残り、辺りはがれきしかない。

虚無感に支配され、黒いものが渦巻く。

その時に見たのがあの、青いドラゴン。

あれを見て、近くまで行けば生き残れると希望を持った。

 

「パラドックス・・・」

 

「《コズミック・ブレイザー・ドラゴン》を見て思い出した。世界が滅びたあの時、私は見たのだ。その青い輝きを」

 

「パラドックス、人は間違えてしまう。間違えても正しくあろうと努力することがより良い世界を作っていくことにつながるんじゃないかと思う。全てが管理された世界ではそれもできない」

 

ズァークとしてしてきた罪を償い、二度と同じようなことにならないようにすることはみんなを笑顔にすることとともに遊矢が誓っていること。

 

「榊遊矢・・・。ああ、思い出した。君たちのように希望を求めていたのだな」

 

 

バキッ・・・バキバキ

 

 

「空間が・・・!」

 

「私が敗北したことで、この空間は崩壊する。その前に君達を外に送ろう」

 

「パラドックス、お前・・・!」

 

 

パラドックスを中心に斥力が広がり、デュエリスト達はこの空間から弾き飛ばされた。

 

「パラドックスー!」

 

「さらばだ。歴戦のデュエリスト達よ」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「行ったか」

 

活動限界時間も後僅か。目を閉じる。

 

ゾーン、アンチノミー、アポリア。私は既に君達に救われていたのだな。

 

本当に長い道のりだった。




ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

明日、18:00にエピローグを投稿したいと思います。

評価をいただけると嬉しいです。


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Last Scene みらいいろ

ー舞網市 LEOコーポレーション・社長室ー

 

「遊矢、帰ってすぐ呼び出してすまない」

 

赤馬零児は机に肘をつき、遊矢の返答を労う。

 

「良いさ。覇王眷竜だ。零羅に渡してくれ」

 

机に4枚のカードが扇状に並べられる。

零児は一瞥してから、遊矢へカードを差し出す。

 

「覇王眷竜は零羅が大きくなるまで、キミが持っておいた方が良い」

 

覇王眷竜はズァークの魂が宿っている零羅が所持していたものだ。

浄化されたとはいえ、未だに強大な力を持つため厳重に管理していたが、パラドックスに奪われてしまった。元々、四天の竜をもつ遊矢ならば安全だろう。

 

「でも・・・」

 

「キミ達もそう思うだろう?」

 

と、遊矢の背後にいる3人に呼びかける。

 

「俺達が居ないんだ。この際だし、貰っとけよ」

 

「キミは今のままだと、弱すぎですからねぇ」

 

「お前達・・・。遊矢が持っていた方が安全なのは確かだ。オレは遊矢の判断を信じるよ」

 

ユーゴ、ユーリ、ユート。1つだった存在が再び分かれていた。

 

「覇王竜は分割の力を持っている。カオスの力と合わさって、君達と彼女達を分かれた状態に戻すとはな」

 

柊柚子は遊矢の帰りをディメンジョンムーバーの前で待っていたのだ。遊矢が出てくる時の光に彼女も触れていた。

柚子、セレナ、リン、瑠璃は体に異常がないか検査を受けている。

 

「零児、分かったよ。俺が持つ」

 

「頼む。そろそろ彼女達の検査も終わる頃だ。迎えにいってあげるといい」

 

遊矢達は慌ただしく、部屋から出ていった。

 

遊矢達が戻ってきてから、異世界との連絡はできなくなっている。

 

「異世界と通信が可能な海馬社長が発案したデュエルリンクスシステム。再現してみようじゃないか」

 

これからの事を考えると思わず笑みが浮かぶ。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

ーアストラル世界・エリファスの城ー

 

カオスの塊が突如、消失した直後隣でドーンという爆音が響いた。

 

敵襲かと警戒し、その場に近づく。

 

「いてて・・・、あっ小鳥!」

 

「遊矢・・・!」

 

遊矢にアストラル、シャーク、カイト。それから姿を消したベクターと璃緒さんに似た女の子。

誰だろうと聞いてみる。

 

「その子は?」

 

「彼女はイリス。敵に囚われていたが、救い出すことができた。因みに彼女はドンサウザンドでもある」

 

「「「「えーーー!!」」」」

 

辺りに一同の叫び声がこだました。

 

イリスはギューっとシャークにしがみついている。

 

それが気にくわないのが1人。

 

「ちょっと、あなた!凌牙から離れなさい!」

 

クイッ、と身を屈めて詰め寄る璃緒。

 

「私とナッシュは永遠を誓いあった夫婦なの。メラグの出る幕はないわ」

 

「なんですってぇ!デュエルよ!」

 

「ドンサウザンドである私に挑もうなんて無謀ね。【ペンギン】デッキのサビにしてあげるわ」

 

「ハッ、私が凌牙の前でアリえないわ」

 

凌牙はそんな状況にオロオロしている。

 

 

「何なの、この状況・・・」

 

「アッハッハハ!流石、遊馬君だぜ」

 

ベクターは隣で笑い転げている。

 

「どういう事?」

 

「いつも通りの事さ。ドンサウザンドまで救っちまったのさ」

 

「そっか、遊馬だもんね」

 

てんやわんやの騒ぎはエリファスが怒鳴りこむまで続いた。

 

 

―――――――――――――――

 

 

ー海馬コーポレーションー

 

「漸く戻ったか。遊戯、遊城十代!こちらは面倒な事になった!」

 

「どういう事?海馬くん」

 

「お前達のデュエルが世界中に写し出されていた。その件でわが社とI2社に電話が鳴りっぱなしだ。ずっと対応に追われている!」

 

2人は異世界の光景を思い出す。

 

「お前達のデュエルは未来や異世界、未知のカードで繰り広げられた。シンクロ、エクシーズ、ペンデュラム、どこも新しい召喚法のカードの詳細を知ろうと躍起になっている」

 

まさか、そんな事になっているなんて。

 

「アハハ。そうなるよね」 

 

「全く。予定が狂うではないか」

 

赤馬零児からサンプルを解析して、発表計画を立てていたが不意うちで計画を変更しなければいけないことと今回の事件の対応に苛立たしさを感じている。

 

 

「その割には海馬くん、にやけてるけど」

 

長い付き合いの遊戯にはまた、違ってみえるのもある。

 

「やかましい!だが未来と異世界のカードが解放された事で、未来は変わる事になるだろう」

 

「て、事は遊星は・・・」

 

存在が消えてしまうのか・・・!

十代はやるせない気持ちになる。

 

「安心しろ、シンクロモンスターが発展した未来と分岐するだけだ。異世界と化したようなものだ」

 

だが、と続ける。

 

「完全に会えなくなったという訳ではない。1度はつながった世界。既に不動遊星と赤馬零児と協力して、時空間に目印をつける事に成功している。再びやりとりをすることも可能になるはずだ」

 

「海馬社長・・・」

 

「まずはシンクロ、エクシーズとペンデュラムの実用化からだな。忙しくなりそうだ」

 

「ペガサスも乗り気だもんね」

 

「ああ、お前達の後に来る予定だ」

 

「フットワーク軽いな。ペガサス会長」

 

「そうだ、お前達に1つおもしろい可能性を話してやる。未来で開発されるシンクロが今開発される訳だが、そのままシンクロ、エクシーズ、ペンデュラムを受けとるだけになると思うか?」

 

「つまり、それぞれの発展形が開発されるだけでなく・・・」

 

「そう、我々はいずれ、それらとは全く異なる召喚法のモンスターを作り出す可能性が高いという事だ!」

 

「新しい召喚法!スゲェ。ワクワクします!」

 

「僕もだよ、十代君」

 

全く新しい召喚法の開発。

数年後に結実することになるが、それは別のお話。

 

 

―――――――――――――――

 

 

ーネオドミノシティ・遊星の自室ー

 

あれから1週間が過ぎた。

事後処理が大変だったが、久しぶりの休暇でもの思いに耽っていた。

 

パラドックスの警告。モーメント以外にも滅びの要因があること。

物事に完全はないとは言ったものだが、何とかできないかとつい考えてしまう。

 

「駄目だな」

 

 

PiPiPi

 

そんな時にテレビ電話が届く。

 

思わずトラブルかと身構える。

 

 

「ジャック、クロウ!?久しぶりだな」

 

出てきた相手はかつてのチームメイト達。

 

「聞いたぜ!大変だったな」

 

パラドックスはあのデュエルを始めから全世界に流していた。勿論、遊星の姿も出ている。

 

「ああ、しかしよく俺が家にいるのが分かったな」

 

「アキから連絡があってな。落ち込んでいると話していたが、やはりか。随分と腑抜けているな」

 

「おい、ジャック!」

 

空気を読まない発言にクロウはジャックを小突く。

 

「遊星、パラドックスとのデュエル、あれは何だったんだ!」

 

ああ、と遊星は経緯を話す。

 

「確かに・・・、破滅の未来の要因はいくつもあるってのは、心にくるな。だがよぉ、それはいつだって同じだろ?俺達はやれることをやる。そうだろ?肩肘はってんじゃねぇよ」

 

「クロウ・・・、そうだな。気を張りつめていたのかもしれないな。パラドックスのような存在が生まれてほしくないんだ」

 

ふぅ、とため息をつく。

 

「フン、やはり貴様は甘すぎる。割り切るものは割り切れ。できないものは次の世代に託せばいい。それこそが絆だろう」

 

ハッ、となる遊星。

 

「確かにその通りだ。次の世代に絆を託せばいい。考えすぎていた。すまない、ジャック、クロウ」

 

気にするな、といっているような表情。

 

「そんなことよりも、エクシーズにペンデュラム!あれは何だ!」

 

画面に詰め寄るジャック。

クロウは隣で、ため息を吐いている。

 

「まぁ、俺も気になるんだけどな、空気ぶち壊しだけど」

 

「いや、俺達はデュエリスト。未知のカードに引かれない筈はない。現在、解析中だ」

 

そのまま、エクシーズモンスターとペンデュラムモンスターの簡単な説明を続ける。

 

「スゲェな異世界のカード」

 

「ああ、こちらでも作るのか?」

 

「エクシーズは近々、公式発表を予定している。年内には実装予定だ」

 

「ほぅ、待ち遠しいな」

 

「ペンデュラムはどうなるんだ?」

 

「ペンデュラムはデュエルディスクの構造的に難しいが、いずれ作られるだろう」

 

「そいつは、楽しみだ」

 

未来は明るい。

良いバトンを次代につないでいこう、と違った。

 

 

 

―――――

 

 

 

それから時は巡りーーー、

 

路地裏を年の頃7、8歳位の少年が逆立てた黄金に輝く髪を揺らしながら走っていた。

 

少年は始めて参加するデュエルモンスターズの大会に遅れまいと大慌てで走っているのだ。

 

ドンッ!

 

急に出てきた人影にぶつかり、尻餅をつく。

デッキの一部が地面に散らばった。

 

「大丈夫か?」

 

眼前にはフードを被った人影。

手を差し出す人の表情はよく見えない。

 

「大丈夫です」

 

「随分と急いでいるようだが」

 

「デュエルモンスターズの大会に参加する予定なんです」

 

「それは、すまないことをしたな。俺も手伝おう」

 

男は白い枠のカードを拾う。

 

 

「シンクロモンスターか?」

 

「はい、エクシーズやペンデュラムとか、色んなのがあるけど、俺はシンクロが一番好きなんです。1番の友達のジョニーもそうです」

 

「俺もシンクロが1番、好きだ。・・・そうだ。キミにこのカードを渡そう。ラッキーカードというやつだ」

 

スッと、1枚のカードが差し出される。

 

「せんこうりゅう、スターダスト?スゲェカッコいいドラゴンだ!」

 

「そうだろう。ところで急がなくてもいいのか、大会に出るんだろう?」

 

「ヤベッ。カードありがとうございます。ずっとずっと大切にします」

 

頭を下げ再び走り始めた。

 

この出逢いに胸を躍らせながら。

 

世界は廻り続ける。

 

 

 

未来の彼方までずっと僕らは描いていく。

 

 

 

 

 

Fin




これにて完結です。

読んでくださったみなさま、ありがとうございます。

「超融合 時空を越えた絆Ⅱ」は、いかかがでしたでしょうか。

文章力はまだまだですが、自分なりのアフターストーリーは書けたと思います。

投票や感想、お待ちしています。


P.S.本作は拙作の遊戯王CWの前日談にあたります。CWの方も読んでいただければ嬉しいです。





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