とりあえずキバって行こうか (ゴランド)
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プロローグっぽいもの

悪魔、天使、堕天使

 

これらの種族は古来より長く争ってきた。

その戦争は三つの勢力に多大な被害を出し、ありとあらゆるモノに影響を与えていった。

 

しかしその戦争の最中とある種族は言った。

 

 

━━━我等こそ頂点に立つべき種族。それ以外は全て下等な存在だ

 

 

その種族は王を筆頭にあらゆる生物の命を奪っていく。

 

悪魔、天使、堕天使、魔獣、幻獣、伝承の生物、そしてドラゴンまでもありとあらゆるモノの命を奪ってった。

 

その中には"二大龍"【赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)】と【白い龍(バニシング・ドラゴン)】までも。

 

双龍は"闇の鎧を纏った王"と争う。肉を裂き、血を流し、骨を砕き、臓器を潰し、ただ殺し合い続ける。

 

そして長い長い闘いの果てに双龍と王は跡形も無く消えた。

その闘いは戦地を灰に変え、あらゆる種族を巻き添えにして戦争は終わったのだ。

 

 

それ故に三大勢力はその種族を恐れた。

世界各地にあらゆる伝承を残したその存在は正に畏怖を形にしたような種族だった。

その種族は生きてはいけない。

いや、生かしてはいけない存在なのだ。

 

いつしか、その種族は王の死により王位を狙ったモノ達による殺し合いと、三大勢力の手によって滅んだ。

 

 

その種族の名は【ファンガイア】

命を奪い取る怪物だ。

 

 

 

▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

「…………」

 

 

月の光が眩しい夜の廃棄された工場。

そこに一人少年が立っていた。その少年は不気味という程静かだった。

少年の目は壊れた天井から漏れた月の光に反射されているのか不気味に輝いていた。

 

 

『お兄ちゃん……どうしたの…?』

 

 

すると廃工場の奥から一人の女の子が歩み寄ってくる。

 

『こんなところにいると危ないよお兄ちゃん………』

 

「…………」

 

『こんなところにいたら危ないよ……危ないよ 危ないよ 危ないよ危ない

危ない危ない危ない危ない危ない危ない危ない危ない危ない危ない危ない危ない危ない危ない死ね危ない危ない危ない危ない危ない死ね危ない危ない殺す危ない危ない危ない危ない危ない危ない食わせろ危ない危ない死ね危ない危ないない死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね危ない危ない食わせろ食わせろ食わせろ死ね死ね死ね死ね殺す』

 

 

しかしその女の子の背中から肉が溢れて出てくる。巨大な腕が脚が鋭い牙が爪が尾が出てくる。

 

『あ、あ、あ、あ亜あああnAああ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!!!!!』

 

その女の子の正体は醜い化け物だった、その化け物は暴れるかのように爪を振り回す。

恐らく化け物はその鋭い爪で少年の体を引き裂いた後、肉の一欠片、血の一滴も残さず全てを喰らい尽くすつもりなのだろう。

 

化け物は雄叫びを上げながらその少年に飛びかかる。

 

 

「オラオラッーーーーー!!!勝手に食おうとしてんじゃねーーっ!!」

 

瞬間、化け物の周りに金色の蝙蝠が飛び交う。

その蝙蝠が化け物に体当たりすると小さな体格に似合わない力で化け物を怯ませる。

 

「可愛い顔して化け物とは、綺麗な花にはトゲがあるってか⁉︎

まぁ、いいか。キバって行くぜ!!」

 

金色の蝙蝠が少年の周りを飛んでいると少年の手によって鷲掴みにされる。

 

「ガブッ!!!」

 

少年はそのまま掴んだ蝙蝠を片方の手の噛みつかせる。すると噛みつかれた手から顔にかけて謎の紋様が浮かび上がる。それはまるで植物のような、ステンドグラスのような美しくも怪しげな神秘さを感じさせる。

 

 

━━ジャララララララララッ!!!

 

 

瞬間、少年の腰に鎖が巻かれメタリックレッドカラーのベルトへと変化する。

少年は蝙蝠を掴んだまま化け物に向かいながら叫ぶ。

 

 

「変身ッ!!!」

 

 

少年が蝙蝠を赤いベルトに装着すると全身が異形の姿へと変貌を遂げる。

黄色いつり上がった複眼に血のような真っ赤な胸部、そして肩、右足に付けられている鎖がジャラリと音を立てる。

 

「ハァッ!!」

 

異形の存在は化け物に駆け足で近づくと飛び膝蹴りを食らわせる。怯んだ化け物の隙を見逃さずそのまま腹部にパンチのラッシュを浴びせる。

 

『グッ……アァァァァ』

 

殴る、蹴る、殴る、殴る、蹴る、蹴る、殴る蹴る蹴る殴る殴る殴る殴る殴る殴るそして蹴る

 

一方的だった。化け物は成す術なく異形の存在の攻撃を受けるばかりだった。

 

『グ、グアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!』

 

化け物も負けじと激しい攻撃を無理矢理押し退けるように反撃に出る。

 

「ハァッ!!!」

 

ズドン!!!

 

『グォオォォッ!!!??』

 

しかし化け物の反撃は軽々と避けられ化け物の腹部に蹴りが深く入る。まるでバズーカ砲が当たったのではないかという程の音が廃工場内に響く。 異形の存在の蹴りによって化け物は壁に叩きつけられ、あまりの衝撃だったのか化け物の身体は壁にめり込んでいる。

 

『あ、が……ゴポッがっ………………』

 

しばらくして化け物は口から血を吐き出し、ガクリと意識を失う。

 

気絶したのを確認した異形の存在はベルトについているモノを取り出し、ソレを━━━━━

 

 

「あなた………一体何者なの?」

 

「!」

 

異形の存在が振り向くとそこには、紅い髪の毛をした美しい女性、黒髪ポニーテールの正に大和撫子と言うべきに相応しい女性、金髪の泣き黒子を持つ整った容姿の少年、小さな体格をした可愛らしい白髪の少女、茶髪の情に熱そうな少年、そしてその少年の背後にいるお淑やかな金髪の少女。

 

その集団は常人よりも優れた容姿を持つ者ばかりだった。そして全員は同じ服装、学生服を見に纏っている。

リーダー格であろう紅い髪の毛の女性は再び異形の存在である少年に問いかける。

 

「聞こえていないのかしら?もう一度言うわ……あなたは一体何者なの………?」

 

「…………」

 

異形の存在は黙ったままだ。お互いにしばらく睨み合った後、少年は集団に背を向け歩く。まるで見逃すように、いや、最初から眼中に無いように異形の存在である少年は歩を進める。

 

「ッ!!待ちなさい!」

 

紅い髪の毛の女性は呼び止めるが異形の存在の足は止まらない。

 

「朱乃!!」

 

「えぇ!!」

 

 

バチバチッ!!!

 

 

黒髪ポニーテールの女性の手から電撃が発生する。その電撃は異形の存在へ一直線に向かう。

 

「ハッ!!!」

 

「!」

 

しかし少年は電撃を地面へと難無く振り払う。すると火花が飛び散りその場に煙が立ち込める。

 

煙が晴れたその場には気絶した化け物を残して異形の存在は姿を消していた。

 

「………逃したわ」

 

「リアス、さっきのは一体………」

 

紅い髪の女性と黒髪の女性が話し合っていると金髪の少年が二人に駆け寄る。

 

「部長、これを見てください」

 

「これは⁉︎」

 

部長と呼ばれた紅い髪の女性を筆頭にした集団は化け物が壁にめり込んでいる光景を目にする。

金髪の少女と茶髪の少年がその光景に大きく驚いている様子だがそれ以外の者達は冷静にその場を分析している様子だった。

 

「すっげぇ……これってアレがやったのか」

 

「イッセー君、驚くところはソコじゃ無いんだ。はぐれ悪魔じゃなくて、はぐれ悪魔がめり込んでいる壁をよく見てほしい」

 

茶髪の少年が言われた通りに化け物がめり込んでいる壁を確認すると「なッ⁉︎」と言いながら驚愕を露わにする。

 

化け物を中心に"蝙蝠のが翼を広げたような紋章"が壁に刻まれているのだ。その紋章からは只ならぬ力を、おぞましさを感じる。全員はその紋章を前に冷や汗を流す。

 

「間違いない………やっぱりアレが例の"コウモリ男"なんですよ!部長!!!」

 

「えぇ、その通りねイッセー。だけどアレの名前はコウモリ男なんかじゃ無いわ」

 

「え?」

 

イッセーと呼ばれている茶髪の少年は腑抜けた声が漏れる。

紅い髪の女性は少年に向かって話す。女性の瞳には決意と不安、そして今も尚襲いかかって来ている恐怖に打ち勝とうとする力強さが見られる。

 

「あなたを度々救って来たアレは都市伝説でコウモリ男と呼ばれている。だけど違う」

 

 

━━アレの名前は【キバ】ファンガイアの王よ。

 

 

 




ここら辺でOPが入りそう(小並感)


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1章 旧校舎のディアボロス
1話 友人は変態ばかり


他に書いている小説がスランプに陥ったので気分転換に執筆しました。
そんな訳で気軽に見てください。


僕の名前は【東崎 莉紅(とうざき りく)

毎日ご飯を食べ、学校に行き、風呂に入り、ベットで寝るそんな日常を過ごし、名前が何故か女の子っぽい事以外は普通の高校二年生!

 

 

……と言うのは冗談で本当の事を言うと最近流行りの異世界転生系の被害者です。

 

 

最近異世界転生が流行ってるだって?だったら乗るしかない、このビッグウェーブに!!!と言う感じのノリした神様(?)に強制的に転生させられました。

 

神様の話では遠くから飛んで来た野球ボールが後頭部に当たって死んだらしいのだ。ド◯えもん時空ならば日常風景のソレが原因に滅茶苦茶ショックを受けました。ちなみに死んだ本当の原因は神様が投げたボールが現世の自分の頭に当たったかららしい。

 

 

お 前 が 原 因 か よ

 

 

異世界に転生させるので特典言ってネーって感じに言われたが、特に欲しいモノなんてすぐに決まるわけも無く、神様にどんな世界なのか聞いてみると

 

 

━━『ん?そりゃ、悪魔や堕天使、天使がドンパチやってすんごい魔法や技が飛び交って幻獣やら神話の生物やら次元ぶっ壊すレベルのドラゴン等が存在する【たのしい(多延死異)】世界だよ?』

 

 

━━━「お う ち か え る!!!!」

 

 

━━━『いや、そもそも帰れないよ』

 

 

そんな感じに色々ありました。とにかくマジで死にたくないので

 

「安心に生きられるようにしたください」

 

と土下座しながら頼んだ。

ラノベの主人公ならチート系の能力やら技やらを頼み、苦労系主人公ならここで役に立たない能力または物を貰い、マイナー系ならば役に立つかどうか微妙な能力、物を貰う。

まるでどこかの手フェチ殺人鬼のような願いだが、これでいい。

 

ん?チート系能力をもらって俺TUEEEEはやらないのかだって?

 

やめとけやめとけ。

チート系主人公は大体その力を敵やら何やらに狙わるのが関の山だ。確実に面倒臭い事になる。

それにご都合主義展開のように簡単に物事が運ぶ訳でもない。

 

死ぬ前は大学生だった理由もあったのか、そのような最強無敵無双系なんて夢も冷めてしまっている僕は愚かな選択はしない。僕は確実にのびのびした平和な人生を送る為に神様にそれ相応の態度を見せるのだ。

と言うかラノベの主人公で神様に対してタメ口する主人公いるけどある意味尊敬するよ……。

俺の願いが届いたのか神様はウンウンと頷く。どうやらこれで俺の第二の人生は安息の日々を過ごせるらしい。

 

 

━━━『成る程ー。安心安全に生きられるような凡ゆる敵を退ける物凄い力が欲しいのかぁ。OK面白い。気に入った』

 

 

━━━「違うそうじゃn」

 

 

だが現実は非情だ。

全知全能の筈である神様がまさか勘違いするとは、いや、そもそも神様自身のミスで異世界転生されている時点でアウトなのだが。

 

 

 

そんなこんなで今や僕は高校二年生。町でかなり有名な私立高校に通っており、高校生活をエンジョイしている。

 

勿論、友達もしっかりと作っているし成績も大体真ん中辺りをキープしている。

だが元大学生だからと言ってしっかり勉強しないと危ない感じだ。

流石は偏差値が高めの私立校。恐ろしい校!!!

 

そんな僕ですが特典の方に色々と問題がありそうな感じがします。

 

『……い……っい………オイッ 莉紅!!そろそろ出て大丈夫か⁉︎』

 

「あ、ごめん。えっと……大丈夫だよ」

 

「っと!ふぃーーー、外の空気は美味いぜ」

 

と僕の学生バックからスポンッと金色のボディ、赤い瞳をしたコウモリが出てくる。ちなみに声は【杉田◯和】さんだ。

もう分かっている人もいるだろう。

 

 

どう見ても【キバットバットⅢ世】だ。

 

 

どうやら神様は僕に仮面ライダーキバのキバの鎧を授けてくれたようだ。

 

と言うか何故仮面ライダーなのだろうか。

確かに本格的に見た初めての仮面ライダーで必殺技もカッコよかったから印象が強く残っているけど、何故これになったのだろうか。

 

せめてウィザードならば瞬間移動や透明になったりとかで物凄く便利だったのに。欠点は変身音が凄くうるさい事だけど。

 

「おいおい、なんかシャキッとしねぇ顔だなオイ。なんか悩んでんのか?」

 

「いや、大丈夫だよキバット」

 

「そうかー?にしても【駒王学園】って言ったか?相変わらず凄げぇ所だよなぁ」

 

キバットが言っている駒王学園と言うのは僕が通っている私立高校の事だ。駒王学園は小中高大の一貫の進学校であり元々は女子校だったのが最近になって男女共学になったのだ。

その為か女子の比率が多い高校となっており、ソレ狙いで入学する生徒もいるのだ。

 

ちなみにその生徒は━━━━

 

 

「おーい、こんな所で何やってんだ?」

 

「⁉︎」バッ

 

「お━━━むぐっ」

 

僕は急いでキバットを鞄の中にしまい、声が聞こえてきた方へと向く。そこには茶髪の男子高校生がいたのだ。

 

彼の名前は【兵藤 一誠(ひょうどう いっせい)】先程言った女子生徒の比率に目が眩んで入学した生徒だ。

 

「や、やぁイッセー君。君もこんな所でどうしたの?」

 

「悪りぃ、匿ってくれ!!詳しい話は後!!」

 

と一誠君はそれだけを言うとそこらの茂みに身を隠してしまう。

……うん、大体どう言うことか理解できた。

そう思っていると一誠君がやって来た方向から数人の女子生徒がやって来たのだ。

 

あぁ、やっぱりか。

 

「あ!東崎君!こっちにイッセー(変態)は来なかった?」

 

「うん来たよ。話しかようとしたけど、そのままあっちに走っていったよ」

 

と明後日の方向へ指をさすとそのまま全員はその方向へと走り出して行った。完全にいなくなったのを確認すると一誠君に「もういいよ」と話しかける。

 

「悪いな。助かったぜ」

 

「いい加減、覗きはやめなって。それってただ好感度下がるだけだよ?」

 

「ぐ、い、いや!だけどな東崎!そこに穴があったら覗くのが男だろ!!!」

 

「いや、覗くのは変態だと思うよ」

 

一誠君はこのようにとにかく思考が変態だ。

その所為で股間と脳が直結し、全身が海綿体と言われる始末だ。顔は整っているのにそのエロさで駄目になっている。+-=0どころか+-=ーという評価となっている。

 

他にも松田君と元浜君と言う一誠君の同類がいる。その三人はこの学園でもとても有名であり、変態三人組と呼ばれているのだ。

 

一誠君が一人だけのところを見るとおそらく囮にでも使われたのだろう。

 

「はぁー、しょうがねぇか。あ、そういえばこれから元浜達と一緒にエロDVD観賞するんだけど、東崎もどうだ?」

 

「い、いや、いいよ」

 

何が悲しくて男四人でエロDVDを観なくてはいけないのだろうか。そもそも僕は人前でそんな物を見る勇気さえ持っていない。

 

「ちぇっ、付き合い悪いな。男なら見るだろ普通!」

オープンになって見る方がおかしいと思うのは僕だけだろうか?

 

 

 

 

▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

〜〜〜あっという間に放課後

 

 

「オイオイ、相変わらず付き合い悪いな。たまには男同士でそういうのも悪くないと思うんだけどな?」

 

「やめてよ。僕はそんな勇気無いし。それに今日は帰ったらすぐにやらなきゃいけない事があるんだから」

 

「誤魔化しやがって〜〜♪このチェリーボーイめ」

 

うわぁ殴りたい。このコウモリ物凄く殴りたい。と、まぁそんな事はさておき何事もなく家に着く。

 

帰るときは殆ど一人で帰る。その理由はあまりキバットを見られたく無いからだ。キバの鎧は一応誰でも変身する事は可能だがファンガイアでなければ負担が凄まじく死んでしまう可能性もあるからだ。

 

そのような事が起きないようにキバットは家に置いておきたいのだが、キバット自身が町は危険だらけだから自分がいないと危ないと言っていつも鞄の中に紛れ込んでいるのだ。

 

そんなことを考えながら玄関のドアを開く。

 

「ただいまー」

 

「あっ、お帰りーお兄ちゃん」

 

と出迎えてくれたのはメイド服を着た可愛らしい子だった。

 

「おうバッシャーか、そりゃあメイド服か?いいねぇ。それでおかえりなさいませご主人様だったら尚更OKだったぜ?」

 

「うん。変な事を吹き込まないでねキバット。まぁ、似合っているんじゃない?ラモン君」

 

そう。ラモン君だ。

ラモンちゃんでもラモンさんでも無い。彼は"男の娘"なのだ。と言うかメイド服なんていつの間に買ってきたのだろうか?

 

「あ、コレ?今来ているお客さんに貰った物なんだー♪」

 

お客さん?………あ、もしかしてあの人だろうか?

僕は鞄をラモン君に預け、すぐさまリビングへと向かう。

リビングの扉を開けるとそこには赤髪の柔らかそうな物腰をしている男性がソファに座っていた。

 

「やっぱりサーゼクスさんだったんですね。いつもラモン君に女の子用の服をプレゼントするのやめてもらえませんか?」

 

「ハハハ、済まないね。喜んでもらえているようだったから妻の服の予備を持って来たのだがメイド服は嫌いだったのかな?」

 

「そういう問題じゃないですよ。てか、妻の服って………」

 

全くこの人は…お得意様だけど色々ダメなんだよなぁ。この前だってゴスロリ服をラモン君にプレゼントしていたし………。と言うかこの人は妻にメイド服着せてんのか⁉︎

 

「で、今日は何用で来たんですか?と言っても何しに来たかは大体分かりますが」

 

「うん。その通りだよ。私の妹の可愛さついてn━━━」

 

「次狼さーん、力さーーん。お客さんが帰りますよーー」

 

「冗談だよ冗談。もちろん受け取りに来たよ」

 

「やれやれ全く……」

 

そう言いながら僕はすぐ側に置いてあったケースをテーブルの上にそっと置く。そしてサーゼクスさんにもしっかりと見えるようにロックを解除しケースを開き中身を見せる。

 

「しっかりと直しましたよ。一応確認してください。それにしても中々いいバイオリンですね」

 

そう、バイオリンだ。

僕は転生した後、音楽に多少興味があった為なのか物凄く音楽に夢中になってしまい殆どの楽器の仕組みや使い方を僅か小学生五年生で理解してしまったのだ。

 

おそらくそこら辺は神様が色々と自分の才能を弄り回した結果なのだと思う。そうでもなければこうやってバイオリンを修理したりできないのだ。

ちなみに一からバイオリンを作ることも出来るがここまで本編に似せなくてもいいと思う。

 

「フフフ、そうだろう?少々、力んでしまって妻にバレないように頼んだが僅か一日で直すとは流石だよ」

 

「いや、そんなことより気になったんですがどうやったら1/3が消滅してるんですか⁉︎なんか空間ごと削られた感じだったんでビックリしましたよ!!!」

 

「色々とあったんだよ。それじゃあ今回の修理費用はこれくらいで良いかな?」

 

サーゼクスさんは僕の前に分厚い封筒を置く。

 

………………………

 

とにかく中を覗いてみる。

そして、すぐさま封筒をサーゼクスさんに返す。

 

「どうしたんだい?これは私のささやかな感謝の気持ちさ。受け取ってくれないか?」

 

「いや、いいですから!!!なんか覗いた瞬間、諭吉という諭吉がビッシリ入っててヤバイですから!!!受け取れませんから!!!ていうか何ですかコレ!20万⁉︎20枚の諭吉さんがチラッと見えた!」

 

「100万じゃ足りなかったかな?」

 

「やめて下さい!!受け取れませんから!!!せめて2、3万でお願いします!」

 

僕は何度も何度も頭を下げた。物凄く怖かったからだ。調子乗って始めた楽器の修理でそこまでの金額を渡されたとなると後々で呪われそうなイメージがあるからだ。

というかマジで勘弁して下さい。高校生(心は大人)の僕はそんな大金を受け取る度胸なんてありません。

 

「……やれやれ、仕方ない。それじゃあ少し金額を減らしておくよ」

 

とサーゼクスさんは封筒から何十枚もの諭吉を抜き取る。

 

「それじゃあ私はこれで失礼するよ。次もまたよろしく頼むよ」

 

「は、はい……ラモン君、サーゼクスさんを玄関までに連れて行くのお願い」

 

「はーい」

 

ラモン君は元気よく返事をするとトタトタと玄関の方へと走って行きサーゼクスさんは笑いながらついて行く。

 

あー、物凄く疲れた。マジで疲れた。

そんな僕の元にキバットがパタパタと羽を動かしながらやって来る。

 

「お前いっつも疲れてんな。お得意様なんだろ?」

 

「そうだけどさ、あんな人相手にするといつも疲れるに決まってるよ」

 

マジで色々と吹っ飛んでいるからなあの人。これじゃあ奥さんも苦労しているんだろうなぁ。

そもそもサーゼクスさんの奥さんってどんな人なんだろう……

 

「て言うか次狼さんと力さん呼んだのに来てないんだけど……もしかして出かけてる?」

 

「ん?あぁ。ガルルはメイド喫茶に、ドッガは焼き芋の屋台を追いかけてる筈だぜ?」

 

「え?何やってんのあの二人……じゃなかった二匹は」

 

もしかしてサーゼクスさんがメイド服持ってきたのって、次狼さんの所為なのか?

何やってんだよ誇り高きウルフェン族の生き残り………。

 

と僕が心底呆れているとキバットがテーブルの上に降り現金の入った封筒をガサゴソと漁っている。

 

「ぐへへへへへ儲かりましたねぇ〜莉紅の旦那ァ。これだからこの商売はやめられねぇんだよなぁ〜」

 

時々キバットが中の人そのまんまになる気がする。

何というか坂◯銀時っぽい感じがしてならない。基本的にキバットはいいヤツだが、時々イラッとするような声を出すのだ。

 

…いや、時々じゃなくてしょっちゅうだな。

 

「……おぉう、あの兄ちゃんすげぇ金額置いていきやがったな。これなら半年は生きていけんじゃねぇか?」

 

「え?」

 

そう言いながら封筒をキバットから奪うように取り、中身をすぐさま確認する。

 

およそ、諭吉の枚数80枚!!! 圧倒的金額ッ!!!

 

「わーーーーーーーッ!!!」

 

 

バァン!!!

 

 

あまりの金額に驚いてしまったのか80万の入った封筒を床に叩きつけてしまう。

 

「おいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃ!!!折角の大金を何してやがんだ!!!なに害虫扱いするかのように叩きつけてんだ!!!??」

 

「そうじゃないよ!!!中を見たら無数の諭吉さんと目が合ってびっくりしたんだよ!!!高校生(心は既に大人)の未熟なハートに悪いんだよ!!よりにもよってなんで4/5置いていくの⁉︎ラモーーン!!ちょっとラモンくーーーーん!!!」

 

と僕がラモン君を大急ぎで呼ぶとまるでニンジャの如く、目にも留まらぬ速さでやって来る。

 

「どうしたのお兄ちゃん?」

 

「お兄ちゃん言うのやめなさい。サーゼクスさんにコレ(80万)返してきて)」

 

「オイオイ!莉紅⁉︎お前気でも狂ったんじゃねぇーのか!何いかにも当然のように金を返そうとしてんだよ!」

 

「いや、だってこんな大金持っていると逆に呪われそうで怖いんだよ!」

 

ガタガタと震えながら僕は答える。マジでやめてくれ。チキンの僕には荷が重すぎる。

「あ、そういえば、さっきの人からお兄ちゃん宛に手紙貰ったよ?」

 

「え、僕に?あとお兄ちゃんと呼ぶのをやめなさい」

 

僕はラモン君から手紙を受け取ると、おもむろに手紙に書いてある内容をキバットとラモン君にも聞こえるように読み出す。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

東崎君へ。

 

 

この手紙を読んでいる頃にはきっと封筒の中身にビックリして可愛い妹君を呼んで僕にお金を全額返そうとしているだろう。

 

とりあえずそのお金は返してもらう必要もないので、残しておいた金額を使うかどうかは学生である君の自由だよ?

 

ここから本題だけど実は息子の為に世界で一つだけのバイオリンを作って欲しい。

君の実力ならば世界一のバイオリンなんて簡単だろう?

 

80万は先程の修理費用も含めた前金と思ってくれ。

それでは君の実力に期待しているよ。

 

 

 

【最高のバイオリンを作ってくれ】

↑何故か物凄く強調されている。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「グッサリと釘を刺されたああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」

 

「わぁ!凄いよ!これが前金なら物凄い額のお金貰えるんじゃないの?」

 

「オイオイオイオイ、莉紅ゥ〜ものすっごい期待されてんじゃねぇか?こりゃあ答えなきゃ駄目だなぁ〜(ゲスい声で)」

 

「ああああああああああああああああああああああああああああッ!物凄いプレッシャーが襲いかかって来る!手紙から物凄いプレッシャーがガンガン襲いかかって来る!」

 

あの人ヤバイって!そして手の平で踊らされた感がして物凄く腹が立つ!

 

 

「にしても、ずっと前から感じていたが………あの兄ちゃん只者じゃねぇな。莉紅もそう思うだろ?」

 

「当たり前だよ。あんな物凄いお金とプレッシャーをPONと置いて来る人なんて只者じゃないよ」

 

「そうじゃねーよ!!!確かにそこもそうだがアイツの髪の毛!!!そこ注目しろ!

あの髪の毛は普通のヤツじゃねぇ。それに、俺の予想が正しければアイツは………」

 

キバットはそこまで言うと、何かを考えるように口を濁す。

……全く、キバットはしょうがないんだから。僕はそんな様子のキバットに対して溜息をつく。

 

 

「キバット………そのくらい僕でも分かるよ。普通なら気付かないと思うけどさ」

 

「な、莉紅、お前!気付いてんのか!」

 

キバットは激しい動揺を見せる。まるで何かに怯えているようにも見える。

 

 

「だってあんな赤い髪の人、普通じゃないよ」

 

「そ、そうか……だ、だったら!」

 

 

「うん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの人、調子に乗って髪を染めているくらい分かるよ。

駒王学園にもそんな感じの髪の毛の色をした人達結構いるしね」

 

 

 

 

「ちげええええええええええええぇよ!!!」

 

 

 

 

▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

「ふわぁ、眠………」

翌日の朝。

 

キバットに散々噛みつかれ、やや気怠さが残っている東崎は眠そうに通学路を歩いている。

 

ちなみに今回キバットは鞄に入っておらず家でお留守番をしている。

 

「今日のうちに材料を揃えておかないと…あ、学校でいらない木材があったっけ?………そうだ。旧校舎の壁とかを使おう」

 

眠いからなのか、東崎はやや思考がおかしくなっている。終いにはそうだチェーンソー買ってこよう。と言う始末だ。

 

「勝手に校舎を破壊しようとしないでください」

 

「ん、ぁ?……あ、搭城さん?」

 

東崎は急に聞こえてきた声の場所を辿り、すぐ側に後輩である【搭城小猫(とうじょう こねこ)】さんがいたのだ。

 

「いつの間に………いやさ旧校舎って全然使われていないから、ちょっとくらいイイかなって」

 

「よくありません。そもそも破壊すると言う思考がおかしいと思います」

 

「で、ですよね………」

 

東崎はガックリと項垂れてしまう。余程ショックだったのか物凄く暗いオーラを出している。

 

「………もし良かったら美味しいお菓子のお店を教えますよ」

 

「え?本当に⁉︎」

 

先程までの暗い雰囲気が嘘のようにパアァァと明るくなる東崎。実はこの二人同じ甘党だったりする。和気藹々とお菓子の話で盛り上がる二人。しかしそんな二人の後ろから二つの影がやって来る。

 

 

ババッ

 

 

その二つの影はそれぞれ東崎を挟む形で前方と後方に位置する。

東崎はそんな二つの影に見覚えがあった。それぞれ特徴を持つメガネと坊主頭。エロ三人組であり、イッセーと東崎の友達でもある元浜と松田だ。

 

 

「あれ、二人共どうしt━━━━━━」

 

 

「「クロスボンバーーッ!!!」」

 

 

「え、なんd━━━━━━━グフッ⁉︎」

 

 

━━ドゴォッ!!!

 

 

元浜と松田のコンビネーション技を喰らい地に伏せた東崎。しかしまだ二人のターンは終わっていなかった。

倒れている東崎に追撃をかけるように二人は畳み掛ける。

 

「東崎貴様ァ!!!学園のマスコットである搭城小猫ちゃんとなに仲良さげに会話したんだァ!!!」

 

「許すまじ!!何という、けしかr羨ましいことを!!!」

 

「…い、いやだって…実際、仲は良い方だと•••思うけど?…それにこの前だって…一緒に同じ店に行ったことだったあるし……」

 

しかし東崎のその一言が二人の怒りの炎に油を注いだ。

 

「「死ねぇ!!!」」

 

ドゴォッ!!!

 

「直球!!!??」

 

嫉妬の炎に燃える元浜と松田のボディーブローが東崎の腹部にヒットする。

 

 

「……それでは失礼します」

 

小猫はそんな二人を呆れたようにジト目で、いや、いつも通りの目で見ながら一言だけ言うとそのまま駒王学園へと歩いていく。

 

すると搭城小猫と入れ違いになるように兵藤一誠が通学路を歩いて来る。なにやら鼻の穴を膨らませ目をキラキラと輝かせている。

 

「おお!同士イッセーよ!今裏切り者の東崎に制裁を加えているところだ!」

 

「お前も一発殴っておくがいい」

 

元浜と松田はダウンしている東崎に関節技をかけたままイッセーを誘う。ちなみに東崎は先程から地面をバンバン叩きギブアップのサインを示しているが無視されている。

 

「ハァ…全く、これだから非リア充共は」

 

すると余裕の表情を見せるかのように一誠はやれやれとポーズをとる。

 

「なんだと!それはどういう意味だ!!!」

 

「その通りだ!その発言は完全にブーメランになって突き刺さるぞ!」

 

「い、いやそんな事より早く関節技解いてくれないかな……」

 

一誠はフッとカッコつけるように笑ったと思うとチラリと後ろへと視線を向ける。

そこには長い黒髪をした学生服を着た女の子がいた。

 

「突然だけど紹介するぜ。俺の彼女の【天野夕麻(あまの ゆうま)】ちゃんだ」

 

 

━━━ピシリ

 

 

瞬間、その場にいた三人は時が止まったような感覚に陥った。

 




???「ぼ、僕は神器を使ってませんよ!!!」

知ってる。


東崎 莉紅(とうざき りく)

本作の主人公。異世界転生の被害者。元々前世では大学生だったが飛んできたボールが頭に直撃し死んでしまう。

転生特典に仮面ライダーキバとしての力を与えられる。

争いを好まない性格であり根っからのお人好し。身体能力はあるがその性格故に宝の持ち腐れとなっている。
キバの鎧の装着者であり、人間とファンガイアのハーフ。

キバットとは転生して生まれた時から側におり、家族同然の仲。家臣(仮)としてアームズモンスター達がいるが性格がかなりアレなので色々と苦労している。

転生してからは音楽にのめり込んだのか全ての楽器を使用したり、修理する事が可能となっている。特にバイオリンは一から製作することも可能。

実は生前から東崎が持っている才能であり神様から貰った転生特典に深い関係があった為か自身の才能だと気付いていない。

好きな食べ物は甘いもの全般。

ちなみに名前の漢字が女の子っぽい事を気にしており、その事を指摘されると脊髄反射的に襲いかかる。


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2話 通り魔にご用心

早く変身させたいのに変身できない。
コレも全部ディケイドって奴の仕業なんだ。なんだって!それは本当かい?

おのれディケイドォォォォォォォォォォ!!!

???「俺のせいにするな」



なんだコレは幻術か⁉︎………イヤ幻術じゃない!………イヤ……幻術か?また幻術なのか⁉︎………いや幻術か?

 

 

━━━なんだコレは!!!???

 

 

 

ざわ ざわざわ ざわ

 

 

三人は目の前の光景に混乱していた。

あの兵藤一誠に彼女ができた。そんな天変地異の出来事を目の当たりにした三人はSANチェックのお時間です。

 

東崎 SANチェック0/1d6→成功

 

元浜 SANチェック1/1d6→失敗 SAN値5減少 一時的狂気『気絶あるいは金切り声の発作』

 

松田 SANチェック1/1d6→失敗 SAN値6減少 一時的狂気『肉体的なヒステリーあるいは感情の噴出』

 

「お前らな!!!オーバーリアクションすぎるんだよ!!」

 

「ありえん!!!あのおっぱい魔神と称されたイッセーが!!!あのイッセーがああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 

「ま、まさか!神は死んだと言うのか!!!??それともそれが原因で聖と魔のバランスが崩れてしまったと言うのかああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 

ぐにゃあと何故か元浜と松田がいる空間が湾曲しているように見えるのは気のせいだろう。

イッセーはそんな二人を無視して東崎の元へ歩み寄る。

 

「イッセー君おめでとう。夢が叶ってよかったね」

 

「おう、サンキューな。………ところでちょっといいか」

 

イッセーは彼の彼女である夕麻に聞こえないよう東崎に耳打ちをする。

 

「彼女はできたが、これからどうすればいいんだ⁉︎マジで今も手が震えてんだよ!」

 

「えっと…やっぱりデートじゃない?よくゲームとかアニメとか漫画でありそうな展開だけど」

 

「デート………デートか………よし!わかった!!!俺は必ず夕麻ちゃんをデートに誘ってみせる!!!」

 

イッセーはいつになく張り切っている様子だ。そしてしばらくすると表情はいつも通りのエロい事を考えている顔となった。

東崎は「あー、いつも通りで安心した」と安堵する。

 

「それじゃあまた学校でな、行こう夕麻ちゃん」

 

「はい、それでは」

 

「うん。今後ともイッセー君をよろしくね」

 

イッセーと夕麻はそのまま手を繋いだ状態で通学路を走っていく。その姿はまさに学園で青春のアレだ。

東崎は未だに「あああああ」と叫んでいる元浜と松田の二人を見る。

 

 

>そっとしておこう

 

 

東崎はあえて何も言わずその場を立ち去ったのだった。

 

「あ、搭城さんから美味しいお菓子の店聞いてなかった」

 

そして美味しいお菓子の店を聞けなかった事を悔やんだのだった。

 

 

 

 

 

▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

〜〜〜風呂場

 

サービスシーンかと思った?残念だったなぁ東崎の入浴シーンだよ!

 

 

 

東崎は湯船に浸かり、キバットはお湯が入った桶に浸かってまるでゲゲゲの親子のような構図となっている。

 

 

「〜〜〜♪」

 

「おっ?随分とご機嫌じゃねぇか。なんかいい事あったか?」

 

「うん。今日は搭城さんから美味しいお菓子の店を教えてもらったし、それにイッセー君に彼女ができたんだよ」

 

「へぇ〜………………………ファッ!!!??」

 

ザプンッ!!!

 

するとキバットは驚愕の表情を見せ、桶から湯船へと落ちてしまう。

ブクブクと泡が出てしばらく経つと湯船からキバットが飛んで出てくる。

 

「ぶっはっ!!ゲホッゲホッ!!う、嘘だろ⁉︎あのイッセーがか⁉︎冗談はやめてくれ!!!」

 

「嘘じゃないよ。天野夕麻さんって名前でさ、黒髪のロングヘアーの綺麗な子なんだよ」

 

「オイオイオイ、天地がひっくり返っても起きる事じゃねぇだろソレ………」

 

キバットは再び桶の中の湯へ浸かる。しばらく温かい風呂で癒されていると「あっ!」とキバットが突然叫ぶ

 

「まさかだと思うが………イッセーの中にあるヤツを狙ってんのか⁉︎」

 

「どう言う事?」

 

キバットがうむむむと唸り何か言うのを躊躇っているのを東崎は感じる。するとキバットは意を決したように口を開く。

 

 

「仕方ねぇ、正直話すぜ。いいか、イッセーの中にはな"ドラゴン"が宿ってんだ!!」

 

 

 

 

 

「うん。イッセー君が前、『俺のマグナム♂はドラゴン級だ』って言っていたよ」

 

 

「そうそう、それで子作りが捗r━━━違げぇよ!!!!そう言う意味のドラゴンじゃねぇ!!!」

 

キバットはウガーッと叫ぶ。風呂場なのか声が反響し、東崎は思わず耳を塞ぐ。

 

「ったく……人間には稀に【神器(セイグリッド・ギア)】ってのが宿るんだよ」

 

神器(セイグリッド・ギア)?」

 

「そう。神器ってのは特殊能力が使える力、又はアイテムだ。種類は色々あるが中にはドラゴンを閉じ込めた神器も存在するんだ」

 

キバットの説明を受けた東崎は「本当に異世界なんだなぁ」と呟く。自分が前世で暮らしていた世界と瓜二つ、いやほぼ同じの世界じゃないのだと東崎は改めて実感したのだ。

 

「もしかすると、それに関係してくんじゃねぇのかって思ったんだよ」

 

キバットは眼を怪しく光らせる。少なくともキバットは東崎の友人であるイッセーを心配しているのだ。

もしかしたらソレを狙ってイッセーの身に何かが起こるのではないか?と推測したのだ。

 

 

「いや、流石に無いでしょキバット」

 

 

ソレをバッサリと切られる。キバットはやれやれと言いながら再び風呂に癒される。

 

「ま、お前が言うんなら仕方無いけどよ」

 

こんな状態のキバットを見るともしかしたら東崎の優しさに影響されているのかもしれない。

 

 

 

 

▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

ある日の駒王学園。

女子生徒の比率がやけに高い駒王学園では色々と有名な生徒が存在していた。

東崎はいつも通り自分の教室へと向かっていた。

 

「うぅむ…………神器か…………」

 

東崎は色々と悩んでいた事があった。おそらくこの前キバットと話していたイッセーの事についてだろう。

本格的に異世界なのだとわかり東崎も悩み始めたのだろう。

 

 

「バイオリンの材料にでもなるのかな…………」

 

 

あ、いや違った。コイツ全然そんな事考えてねぇや。

 

 

東崎の頭の中はバイオリンの制作についていっぱいなのだろう。神器の事は全く頭の中に入っていないようだった。そもそも覚えているかどうかも怪しいところだ。

 

 

 

<キャー!キャー!キャアアアアァァァァキバクンヨーーーッ!!

 

 

 

女子生徒達の黄色い声が後ろの方から聞こえてくる。

 

「あーらら、王子様のご到着だぜ」

 

鞄からキバットが少しだけ顔を覗かせる。周りの生徒から見えないように東崎は自分の身体を壁にする。

そして女子生徒達の声が聞こえる方は向くとそこには金髪イケメンの泣き黒子を持った男子生徒が歩いていた。

 

「おはよう木場君」

 

「やぁ、おはよう東崎君」

 

彼の名前は【木場 祐斗(きば ゆうと)

才色兼備文武両道のイケメンであり、彼が通れば女子生徒達は黄色い声を上げ、彼が口を開けば女子生徒達は黄色い声を上げる。

まさにイケメンを体で表したような存在であり男子生徒達の目の敵である。

 

「今日もいい天気だね」

 

<キャー!東崎クンと木場クンがハナシテルワ!!

 

「うん、そうだね。どちらかと言うと僕は晴れている昼よりかは夜の方が好きかな?何という月が照らしてくれる感じがいいんだよね」

 

<ヨ、夜デスッテ⁉︎コレハ、ハカドルワ!

 

「奇遇だね。僕も夜の方が好きなんだよ」

 

<ッシャア!!キマシタワーーーー!!

 

さっきから外野がうるさいが東崎は敢えて無視するかのように、いや存在しないように振る舞う。木場も同じだろう。

二人はクラスが一緒というか訳でも無いので木場は「それじゃあね」と言った後、自分のクラスへ向かって行く。

 

「いやぁ、夜が捗るってよ。こりゃあ夜のオカズは決定されてしまったな」

 

「>そっとしておけ」

 

キバットにからかわれながら東崎は自身の教室へと歩いて行く。すると反対方向の廊下から三年生の生徒が歩いてくる。全員女子生徒だ。

 

一人は赤というより紅の長い髪の毛をたなびかせ歩いている美人。

もう二人は黒い髪をしているが、一人は黒い髪を伸ばしポニーテールにしている大和撫子と呼ぶのに相応しい美人。

片方は黒髪のショートヘアーで眼鏡をかけている知的な美人だ。

 

結果 全員美人である。

 

 

「おっ、綺麗なねーちゃん達じゃねぇか。いつ見ても飽きねぇ容姿してんなぁオイ」

 

「うん、そうだね。それにもはやアレは"人外"レベルだし」

 

「おまっ、気付いてんのか………!!」

 

キバットの声から察するに明らかに動揺しているのが分かるだろう。おそらく東崎の人外と言う言葉に反応している。

 

「うん。全員少なくともAPP20はありそうだし」

 

APP=容姿

人間の限界APPは18である。

 

「あー、うん。知っていたよ。お前がかなりの能天気だって事をな。チクショー……」

 

東崎はキバットが何やら元気がない事に対し気をかけながら自分の席に座る。すると、遅れてイッセーが来たので挨拶を交わす事にする。

 

「おはよう。イッセー君」

 

「あぁ、おはよう………」

 

「どうしたの?なんか元気無いみたいだけど?」

 

何故か元気が無い様子のイッセーに対し東崎は心配する。イッセーは苦虫を潰した表情をしながら口を開く。

 

「あのさ夕麻ちゃん……って流石にお前も知らねぇよな………」

 

「………あぁ、そう言えば夕麻ちゃんとのデートどうなったの?」

 

東崎が質問するとイッセーは目を大きく見開きガッと東崎に詰め寄る。

 

「覚えてんのか!夕麻ちゃんのこと!!」

 

「え、ええ?何が⁉︎覚えてるも何もついこの間紹介してくれたばかりじゃん」

 

イッセーはハッと我に返ると「わりぃ」と東崎に謝る。先程から黙ったり詰め寄ったりなどいつもと様子が違うイッセーに東崎は心配になり、話しかける。

 

 

「一体どうしたの?何かあったの?」

 

「………実は━━━━」

 

 

とイッセーが話しかけた瞬間、ガララッと教室の扉が開く音が聞こえる。時間を確認するともうHRの時間だという事に東崎は気づく。

そして担任である若い男性の先生が教卓につく。

 

「お前ら、さっさと席につけ……今日は珍しい事もあるんだな。兵藤のヤツがいつになくクールだとは………明日は隕石でも降るんじゃないのか?」

 

「門矢先生!マジでやめてください!ソレ洒落になっていません!」

 

「その通りですよ!明日にもなればイッセーは元の変態に戻ります!」

 

「成る程な、大体分かった」

 

「お前ら俺をなんだと思ってんだ!!!」

 

 

東崎は思ったよりもイッセーが元気そうだったので一安心した。

 

 

 

 

▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

〜〜〜昼休み

 

イッセーと東崎は二人で先程の会話の続きをする事になった。

 

「えっと、つまり夕麻さんに殺されたと思ったら生きてて皆に話を聞いたら夕麻さんの事を誰も知らない………」

 

「そうなんだよ!!信じられないかもしれないけど本当だ!!」

東崎はうーむと唸り考える。

にわかに信じられないことだ。しかし皆が知らないと言う事は無いだろう。

イッセーが夕麻と言う彼女ができた日は駒王学園は一時期、世界が終わる〜やらアルマゲドンが起こる〜やらとんでもない混乱を巻き起こしたのだから。

 

すると東崎はある一つの結論に至った。

 

「イッセー君………大体分かったよ」

 

「な、なんだよ。門矢先生みたいな台詞言って……」

 

イッセーは汗を掻きながら東崎の言葉に耳を傾ける。

 

「多分、イッセー君は夕麻ちゃんにフラれたんだと思う」

 

「は、はぁ?何言って………」

 

「……多分だけどさ夕麻さんにフラれたショックで殺されるイメージの夢でも見たんじゃないの?」

 

「え?ゆ、夢なのか?で、でも夕麻ちゃんの事を皆が覚えていないのは⁉︎」

 

「………皆、気を遣ってくれてるんだよ。イッセー君のトラウマを抉らない為にも………」

 

「………えっと………夕麻ちゃんの情報が無いのは………」

 

「察しなよ………皆、イッセー君の為に夕麻さんの事を引きずらないように色々やってくれたんだよ」

 

 

すると何故だろうか、イッセーの目元に涙が沢山溢れ出ており、釣られるように泣きそうになった東崎は目頭を押さえている。

 

「………」

 

「………今度、お菓子の詰め合わせでもプレゼントするよ」

 

「………ありがとう」

 

二人は涙を流しながらこの会話をやめる事にした。これ以上話せば精神的に立ち直れなくなると察したのだった。

 

 

 

 

 

▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

「はぁ………本当にアレは夢だったのかな……」

 

俺、兵藤一誠は駒王学園から家に帰っているところだ。だが、俺の頭の中はモヤがかかったようにスッキリしなかった。

天野夕麻ちゃん。東崎が言うにはフラれたショックで記憶が曖昧なんだろうと言っていた。

 

……本当にそうなのか?夕麻ちゃんに殺されるイメージ、アレは夢でも何でも無い。本当に起こった事なのだと思う。

 

「……此処は!」

 

気付くと俺は見覚えのある場所に足を運んでいた。そこは公園の噴水前。

夕麻ちゃんに殺された場所…………。

 

「ハハハ、俺いつまで引きずってんだろうなぁ……」

 

あれ?おかしいなぁ。目からなんか熱いものが……何だろう?俺の性欲が溢れ出てんのかな?

 

それにしても、なんだか今日は目がハッキリとするな。不思議と力も湧いてくるし……風の音も不気味に聞き取れる。

 

…………おかしい。

おかしいぞ?どうなっているんだ俺の体。最近何故か夜になると体の奥底から何かが湧き上がってくる。

 

…………性欲じゃないよな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう、これは数奇なものだ。こんな場所で貴殿のような存在と出会うとはな」

 

 

━━ゾクリ

 

 

振り向くとそこには帽子を深く被りコートを見に包んだ男性がいた。

 

なんだコイツは?いつの間に背後にいたんだ?いや、それよりもなんだこの嫌悪感は⁉︎

コイツを見ていると、よく分からないけど嫌な予感がする!

 

「逃げ腰か?主は誰だ?」

 

 

やばい

 

やばい

 

やばい

 

やばい

 

やばい!

 

やばいッ!!

 

やばすぎるッ!!!

 

俺はとにかく逃げる。

アイツと関わってはいけないと俺の体が叫んでいる!俺はとにかく走る。とにかく家まで走らないと!

 

 

「逃すと思うか?」

 

 

男はカラスのような黒い翼を広げながら俺の前に立つ。だが、それ以上に空中に散っている黒い羽が俺の記憶を刺激する。

 

「この羽……あの時の夕麻ちゃんと同じ………⁉︎」

 

「主の気配も無い。やはり『はぐれ』か。なら殺しても問題はあるまい」

 

すると男はニヤリと笑う。

オイオイオイ、この展開どっかで見たことある!ガッツリと最近見たことあるぞ⁉︎

 

「死ぬがいい」

 

男はそう言いながら手から光る槍を形成した。

や、やっぱり槍来たーー⁉︎

俺はとにかく逃げる。このままじゃあ本当に殺される。そう確信したのだ。

 

 

━━ドスッ!!!

 

 

だが、男が放った槍はそのまま俺の脚に突き刺さった。そして俺の脚に鋭い痛みが走る。

 

 

「ぐああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!」

 

 

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いッ!!!

脚の内側から焼くような鋭く熱い痛みが走る。その痛みは脚の感覚と力を奪い、もはや俺は動けない状態になってしまった。

槍を引き抜こうと考えたが、槍に触れた瞬間焼けるような熱さを感じた。

 

「ぐっ………何なんだよ……コレ………」

 

「ほう外したか、まぁいい。次はひと思いに楽にしてやろう」

 

 

俺はこのまま訳も分からず殺されてしまうのだろうか?俺はまだ女性の胸も裸体も見ないまま死んでしまうのだろうか?

東崎からお菓子の詰め合わせを貰わず死んでしまうのだろうか。

 

ハハハ………悪いな東崎。

俺、先にあの世で待ってるわ………。

 

 

「どうやら改めて己の死を受け入れたらしいな。ならば━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死ぬg━━━━━━」

 

 

 

 

ドゴォッ!!!!!!

 

 

 

「グボォア!!!??」

 

 

 

ザパァン!!!

 

 

 

「………え?」

 

 

死にそうになった間際に俺が見たのは謎の赤いバイクに撥ねられ錐揉み回転しながら噴水に突っ込んだ男の姿だった。

 

 

「………え?な、何が」

 

 

混乱している俺の目に映ったのは赤いバイクに跨り、血のような赤い胸部と体の至る箇所に拘束具のような鎖と鎧をつけた黄色い複眼の、まるでコウモリのような男だった。

 

「え?えっと………」

 

 

『忘れて欲しい』

 

 

コウモリのような男は仮面越しに喋る。その口調は穏やかであるがどこか危険を感じさせるような声だった。

 

 

『先程見たことは忘れてくれ』

 

 

そう言うとコウモリのような男はバイクを走らせていく。まるで嵐の如く過ぎ去っていった。ソイツはまるで俺を守ってくれたかのようにも見えた。

 

すると、俺の背後から謎の赤い光と共に紅い髪の毛をたなびかせた見覚えのある美しい人が現れる。

 

「怪我をしているようだけど大丈夫かしら?」

 

俺はその人を見て安堵すると共に全身の力が抜けるように倒れる。そして最後に目にしたものは

 

「く…黒………」

 

俺はそのまま意識を手放した。

 




(ピロロロロロ……アイガッタビィリー)
「兵藤一誠ェ!!!何故君が夕麻さんに殺されたイメージを見たのか!何故皆が夕麻さんの事を覚えてないのか!」(アロワナノー)

「何故夕麻さんに関する情報が消されているのかァ!」
『それ以上言うな!』
↑謎の外野の声

(ワイワイワーイ)「その答えはただ一つ…」
『ヤメロー』
↑謎の外野の声その2

「兵藤一誠ェ!!!君が天野夕麻さんに……フラれた男だからだああああぁぁぁ!!!」(ターニッォン)

「アーハハハハハハハハハアーハハハハ(ソウトウエキサーイエキサーイ)ハハハハハ!!!」

イッセー「俺が……フラれた………?」
ッヘーイ(煽り)


ムシャクシャしてやった。後悔はしてない。


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3話 通り魔の真実

今回はかーなーり短いです。


カァカァとカラスが鳴き、日が傾き空がオレンジ色に染まる時間帯。東崎莉紅は学校が終わり帰路についていた。

 

友人の"祝!失恋"で何故かこちらも色々と精神的に辛かった為か東崎の顔には疲れが見えていた。

 

「あ゛ぁ゛ーただいま………………」

 

「おう、帰ってきたか。随分と疲れているみたいだな?」

 

すると出迎えて来てくれたのはライダースーツとジーパン、サングラスと如何にもワイルドそうな男性だ。

 

「あぁ、次狼さん。今日もメイド喫茶?飽きないね」

 

「違う。今日は桃園モモのグッズを買いに行って来ただけだ」

 

「なんだ。いつもの次狼さんか」

 

東崎は何故か納得したような表情だ。そんな中キバットは二人のやり取りに呆れている。

 

「ったく、俺達が学校に行ってる間コイツらはマジで何やってんだよ………」

 

「まぁまぁキバット。これくらいは大丈夫だよ」

 

「鞄くらいは運んでやる。お前はやる事をやれ」

 

「お、ありがとうございます!」

 

東崎は鞄を持ってくれた次狼にお礼を言うと靴を脱ぎ出し、そのまま走っていくように自分の部屋へと行く。キバットも遅れて東崎の自室へ向かう。

 

東崎が自室を開けるとそこには大きなテーブルを中心とした作業室が広がっていた。

ここが東崎莉紅の部屋であり楽器の修理、製作をする為の作業部屋だ。

 

「よし………」

 

「相変わらず散らかってんな。掃除くらいしておけっての」

 

キバットはそう言うと、壁に飾ってあるバイオリンのようなオブジェの中に入りコウモリらしくぶら下がる。

どうやらこのオブジェがキバットの部屋の役割を果たしているらしい。

 

東崎はテーブルの上にある工具を使い木材を削る。

バイオリンを製作する為の準備であり、バイオリンの形にしているのだ。

 

「にしても、全部独学とは莉紅の才能には惚れ惚れするぜ」

 

キバットはそう一言呟くと「クー」と息を立てながら寝てしまう。本来コウモリというのは夜行性の為なのか、それとも単に疲れていただけなのかキバットはぐっすりと寝ている。

 

東崎はキバットの寝息がまるで聞こえてないかのようにバイオリンを作るのに集中している。

しばらく作業が進むと東崎はふぅと息を吐き、"出来上がったばかりのバイオリン"をその場に置く。

 

「………なんか駄目だな」

 

と一言。

東崎は出来上がったばかりのバイオリンをそのまま天井に吊るしてある大量のバイオリンに紛れるように引っかける。

 

「最高のバイオリンって………そう簡単に出来るわけ無いんだよなぁ………」

 

と言うと東崎はガクリと項垂れる。すると丁度良くキバットは目を覚まし、東崎の頭の上にとまる。

 

「オイオイ、これで何度目だよ。いい加減にしないと木材を切らしちまうぜ?」

 

「そう言ってもさ………」

 

「ったく……あー、アレだ。一旦気分転換しようぜ?ほらイッセーの奴にお菓子の詰め合わせプレゼントすんだろ?もう決まってんのか?」

 

とキバットは落ち込んでいる東崎を励ますように言う。

長い付き合いの為、話題を変えればすぐに立ち直るという事を知っているキバットはイッセーの事を話した。

 

「うん勿論だよ。前に搭城さんから教えてもらったお店でさ、あそこ閉店時間が早いから夜になる前に行かないt━━━━」

 

と、東崎の言葉が途中で止まる。キバットはなんぞや?と東崎の周りをグルグルと飛んでいるが、次の瞬間

 

━━ガタッ!!

 

東崎は急に立ち上がりその勢いでキバットを吹っ飛ばしてしまう。

 

「っで⁉︎……何すんだよ!」

 

「やばい………閉店時間って……もうすぐじゃん!!」

 

東崎はそう言うと玄関へと走り出す。行ってきますと言いながらガチャリと玄関のドアを開け、そのまま庭へ向かい意図的に隠されているようにシーツが被された物の元へ駆け寄る。

 

シーツをバサリと取るとそこには真紅に輝くバイクが設置されていた。

このバイクの名前は【マシンキバー】

キバット族の工芸の匠・モトバット16世によって産み出されたという『鋼鉄の騎馬』と呼ばれるキバ専用のオートバイだ。

 

東崎はバイクと共に置いてあったヘルメットを被り、エンジンを起動させる。するとキバットが遅れてやってくる。

 

「ハァ⁉︎まさか今から行くのか⁉︎」

 

「時間が無いんだよ!明日になって『ごめーん、お菓子の詰め合わせはまた今度ね☆』なんて絶対に言えないよ!!」

 

「いや、別に明日でもいいだろ!!」

 

と東崎はキバットと言い争いながらもバイクのアクセルを回し、発進させる。キバットは苛立ちながらも東崎について行く事となった。

 

「やばいやばいやばい!これ間に合わないかも!」

 

「だーかーら!明日でもいいったってんd「変身!」………うん?」

 

「だからキバット、変身だって!」

 

キバットは数秒、思考が停止した。

 

「え、いや莉紅お前何言ってんの?頭おかしくなった?」

 

「いや改めて考えると高校生が暗い時間帯でバイクに乗ってるのおかしいじゃん」

 

「うん、それで?」

 

「正体がバレないように変身しよう」

 

「ふっざけんじゃねぇぞ!!!キバを軽々しく使おうとしてんじゃねぇよ!!」

 

東崎の言葉にキバットはツッコミを入れる。

このままではキバの初変身がまさかの買い物目的という仮面ライダーにあるまじき事態になってしまう。

頑張れキバット、お前だけが頼りだ!

 

「お願いだよキバット!!好きなもの沢山食べさせてあげるから!!」

 

「いや、ンなこと言われてもだな………」

 

「トマト!トマトジュースでどう?」

 

「え、いや………」

 

「1ヶ月分!!1ヶ月分でどう⁉︎」

 

 

 

………………………………

 

 

 

………………………………

 

 

 

………………………………

 

 

 

………………………………

 

 

 

………………………………

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

「ガブッ!!!!」

 

キバットが折れた!!!この人でなし!!!

まさかのトマトジュースで折れてしまったキバット。そんな事を無視するかのように東崎は出現したベルトにキバットを装着する。

 

 

「変身!!!」

 

 

そして、東崎の姿はみるみる内に仮面ライダーキバへと変身したのだった。

キバとしての、ファンガイアとしての実力が発揮された状態でのバイクアクションを駆使し狭い道路や路地をスイスイと進んで行く。

 

「よしっ!!!間に合うこれなら絶対に間に合う!!」

 

「あーあ、俺達何やってんだか」

 

「あ、そうだ。確かこの公園を突っ切ればかなりの近道になるんだっけ?」

 

「おいおい、誰かいたら危ねぇぞ?」

 

「大丈夫だって。流石にこんな時間に遊んでいる訳無いと思うよ?」

 

「まっ、確かにな」

ハハハと一人と一匹は笑いながらバイクに乗っていると公園に入った辺りだろうか何処からともなくチラシが飛んでくる。東崎はそれに気付くと体を傾け難なく回避する。

 

「ナイス回避!!!」

 

「ありがとう」

 

とキバットに褒められた東崎は気分を良くする。

 

しかし調子に乗ってしまった所為なのか、それとも飛んできたチラシを避けバランスを崩してしまった所為なのか一人と一匹は目の前にいた人物に気付かなかった。

 

 

 

 

「どうやら改めて己の死を受け入れたらしいな。ならば死ぬg━━━━」

 

 

 

 

ドゴォッ!!!!!!

(バイクがおっさんに衝突する音)

 

 

 

「グボォア!!!??」

 

 

 

「「あ」」

 

 

 

ザパァン!!!

(おっさんが噴水に突っ込む音)

 

 

「「あ」」

 

 

 

東崎達が目にしたのは謎の中年男性が東崎が運転していたバイクに撥ねられ錐揉み回転しながら美しく噴水に突っ込んでいる姿だった。

 

そして東崎とキバットは汗をダラダラと流し始める。

 

(これってヤバい奴だよね…………)

 

(ヤバい奴だな…………)

 

(え、えっととりあえず見ている人はいない見たいd━━━)

 

東崎達の目の前には何故か足から血を流し、混乱している状態の兵藤一誠の姿があった。そして、東崎は仮面越しに一誠に話しかける。

 

 

「え?えっと………」

 

 

『忘れて欲しい(ものすごい低音)』

 

 

『先程見たことは忘れてくれ(念には念を入れて二回目)』

 

 

それだけを言うと東崎はバイクを走らせる。公園を抜けた後、東崎はすぐさま携帯電話を取り出し叫ぶ。

 

 

 

「メディーーーーーーーック!!!」

 

 

 

とにかく救急車を呼ぶことにした東崎であった。

 




今回、こんなに短くなってしまったのは私の責任だ。
だが私は謝らない。


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4話 変態と聖女と通り魔(犯人)

最近、小説を書く時間が取れなくてツライ。



先日イッセーくんが何やら夜中に自転車を漕いでいるのを見た。

よく分からないけど「ハーレム王に俺はなる!!!」と叫びながらMAXハイテンションになっていた。

 

夕麻ちゃんにフラれて壊れたのか?と思ったけど、どうやら立ち直れたみたいだ。そういえば、黒い翼の生えたおっさんを轢いてしまった事件だがキバットに聞くところによるとアレは堕天使らしくあの程度では死ぬ事はない為、大丈夫らしい。

いやぁ良かった良かった。

 

「ねぇ、天倉知ってるかしら?」

 

「え、どうしたの桐生さん」

 

と思っていると僕の元にクラスメイトの【桐生藍華(きりゅう あいか)】が来る。彼女は良く色々な情報を持ってくる事が多く、男女問わず仲良くしてくれる良い人格者だ。

 

今回は何の用だろうか?

この前は翼の生えた人間が出没する〜や

白い鎧を着た不審者〜やら

魔法少女コスした巨漢〜とか

光の巨人〜などだった。

あれ?最後のってM78星雲出身の戦士じゃね?

 

「知ってるかしら?最近夜中に赤いバイクを乗り回してるコウモリ男が出没するらしいのよ」

 

へぇー、コウモリ男か。そんな迷惑極まる輩がこの町いるのはちょっとやだなー。そんなのが本当にいたら軽蔑するわー。

 

 

 

……………………………………

 

 

……………………………………

 

 

……………………………………

 

 

 

「どうしたの?頭なんか抱えて?」

 

「いや、なんでもないよ………(僕だそれーーッ!!!)」

 

え、何?見ていた人いたの⁉︎てかヤバかった!変身していなかったら確実にアウトだった!

いや、見られている時点でアウトだよ!

 

「ふーん?まぁいいけど。最近物騒だからあんたも気を付けなさいな」

 

「う、うん」

 

あ、ヤバイ。全身からものすごい量の汗が……。うん。とにかく自分だという事がバレていないけどものすごくドキッとした。次、変身する時は周囲を気にしてからにしておこう。

 

あ、お菓子の詰め合わせ買っておくの忘れていた。

 

どうしよう。イッセー君立ち直っているから大丈夫だと思うけど、なんか悪いことした感じがなぁ………よし、次こそ買うとしよう。

そういえばイッセー君がオカルト研究部に入ったって言っていたし、その記念として贈るのもいいかなぁ?

 

 

「ナニイイイイイイイィィィィィィッ!!!」

 

「嘘よ!!!あの兵藤が!!!」

 

「リアスお姉さまが汚れてしまうわぁぁぁぁぁ!!!」

 

「くそう!!またか!またなのか!」

 

 

あぁ、イッセー君が登校してきた感じだな。この声の反応は。

チラリと窓の外を覗くとそこには駒王学園の有名人の二大お姉さまの1人である【リアス・グレモリー】がイッセー君と共に登校してきた光景が広がっていた。

 

夕麻さんにフラれた後、急に共に登校してきたのだから何が起こったのか良く分からなかった。

しかし、イッセー君のとある言葉によって色々察したのだ。

 

「なぁ、女の生乳って見たのとあるか?(無駄にイケボ)」

 

立ち直ったどころか、新しい女性に切り替えた。

おそらくだが先日イッセー君がハイテンションになっていたのはリアス先輩に関する事ではないか?と思ったのだ。

 

なんと言うか色々と納得ができた。精神的に弱ったところにリアス先輩のオーラが直撃しイッセー君は骨抜きにされてしまったのだろう。うん、僕がその立場だったら確実にリアス先輩にゾッコンになる。

だが、それと同時に噂でオカルト研究部に所属している木場君となんかアレの関係にあると言うのを耳にした事がある………。

うん、やっぱりこの噂は聞かなかったことにしよう。あり得ない。と言うかあってほしくない。

 

て言うかバイオリン製作もなんとかしておかないと。そもそもサーゼクスさんもいつまでに作っておけばいいのか言ってないからなー。

やる事が多過ぎるんだよなぁ。

 

 

 

▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

「はぁ……」

 

兵藤一誠は落ち込んでいた。彼は堕天使という存在に殺された後、悪魔であるリアス・グレモリーに命を救われ転生悪魔として蘇ったのだ。もちろんその事を東崎は知らない。

悪魔としての仕事で何度も契約を取れずにいた一誠は酷く落ち込んでおり、このままでは愛しのリアスグレモリーからの好感度が下がってしまうと思っているからだ。

 

「どうすっかなぁ。いっそのこと東崎に全部話して契約してもらう!!ってのはさすがに駄目だな。アイツを巻き込むことはできねぇからなぁ」

 

一誠は東崎を悪魔に関する事に巻き込みたくないと思っており、今でも自分が悪魔だという事を黙っているのだ。

 

「どうかしたんですか?」

 

「あ、いや何でもないよ」

 

一誠に話しかけてきたのは金髪のシスターだ。彼女の名前はアーシア・アルジェント。先程ギャルゲーの如く出会いを果たし、目的地である協会に案内しているところだ。

 

「そうなんですか?先程、東崎という言葉が出たらお顔がその……少し固くなっていたので」

 

「え?……あ、あぁその………」

 

一誠はアーシアの問いに頭をかきながらポツリポツリと答える。

 

「東崎ってのは俺の友達でさ、色々と世話になっているんだよ。色々と変わっているところもあるけどさ」

 

「そうなんですか?」

 

一誠は「あぁ」と答える。その表情は先程とは打って変わって柔らかく優しい表情だ。

 

「なんていうか、アイツを見ているとこっちまで頑張れるっていうか、自分の力を生かして人を幸せにするようなヤツなんだ」

 

一誠はニッとアーシアに向かって笑う。

 

「だからさ、さっき見せたアーシアの癒しの力みたいに東崎も人を幸せにできるすげぇヤツなんだぜ!」

 

「凄いです!そのような素晴らしいお方と是非あって見たいです!」

 

一誠とアーシアがお互い笑いながら話していると、ガサガサと何かが揺れる音が聞こえてくる。

なんだろう?と2人が音の聞こえる方へ視線を向けると

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅむ、カタツムリ………だけじゃなくて他にも何か試してみないとかなぁ?あ、カブト虫やクワガタのサナギとかいいかも!いや、待てよ?赤も必要だから………血とか使ってみようかな?あ、でも木材も最近少なくなってきたからなぁ。どこかでいらなくなった木材でも無いかなぁ?っと、ここら辺のミミズもいい感じだなぁ」

 

 

「」

 

 

一誠は思った。なんでこんなタイミングでコイツと会ってしまったのだろうか。せっかくいい感じに説明したのにどうしてソレをぶち壊しにくるんだろうか?

 

するとそのガサガサと何かを漁っていた人物はこちらに気づく。

 

「あれ?イッセー君こんなところで何してるの?」

 

「それはコッチの台詞だよ。東崎こそ何やってんだよ」

 

そう。変な事をしていた不審者の正体は東崎莉紅であったのだ。東崎はバックの中から謎の液体の入った瓶を取り出す。

 

「僕は新しいニス作りをしているんだよ。現段階よりも質の高いニスを作るために実験してるんだけど中々材料が揃わなくてさ。ところでそっちの……シスター?」

 

「ん?あぁ。彼女はアーシアって言ってな、教会に案内してるんだよ」

 

「へぇ、そうなんだ。東崎莉紅です。よろしくお願いしますします」

 

『アーシア・アルジェントと申します』

 

「………?」

 

「……あ!」

 

一誠は東崎がアーシアの言っている事が理解出来ていない事と同時にとある事を気づく。悪魔はあらゆる言語を瞬時に翻訳、理解できる力を持っており転生悪魔である一誠もその1人なのだ。

しかし人間である東崎には外国人であるアーシアの言語を理解できていないのだ。

 

『一誠さんからとても素晴らしい方と聞いていました!』

 

「………うんうん。成る程」

 

「あれ?」

 

すると一誠は2人のやりとりに違和感を覚える。

 

『直接会ってみてわかります。あなたは心が清らかな人ですね』

 

「いやいや、それほどじゃあ」

 

「え?わかるの?2人ともお互いに言ってる事わかるの⁉︎」

 

一誠は言語の垣根を越えた2人のコミュニケーションに驚愕を露わにする。すると2人は一誠に一言話す。

 

『「いえ、何言っているのかは分かりません」』

 

「いや、わかんねぇのかよ!え?逆にすげぇんだけど!!!」

 

『はい、東崎さんが言っている事が言葉ではなく心で感じるんですよ』

 

「何というか、この人が言っている事と同時に身振り手振りするからものすごく分かりやすいんだよね」

 

「そ、そうなのか………」

 

一誠は顔を引攣らせながら苦笑いをする。もしかしたらこの2人は色々と気が合う部分があるのだろうか?と一誠は思った。

 

東崎を含めた3人が話しながら歩いている内にアーシアの目的地である協会に到着した。

 

「案内ありがとうございます。もしよければお礼させて欲しいのですが………」

 

「あ、あぁいや大丈夫だよ!もう暗いし!そろそろ帰らないとな東崎!」

 

「え?僕は大丈b「あ、思い出したー!!!これから俺と東崎で大切な用事があったんだった!!!それじゃ俺たちはこれで!!!」え?ちょ⁉︎」

 

一誠がここまで帰ろうとしているのは目の前にある教会が原因だ。教会は悪魔と対を成す者達の本拠地であり、もし一歩でも教会に踏み込めば光の槍が飛んできてもおかしくはないのだ。

その為、アーシアや東崎に危険が及ばないように一誠は逃げるという選択肢を選んだのだ。

 

「で、ですがお礼は!」

 

「じゃあ、俺の事はイッセーって呼んでくれ!それだけでいいさ」

 

「はい!またお会いしましょう!イッセーさん!東崎さん!」

 

別れの挨拶をするアーシアに背を向けながら一誠は少々逃げるように帰路に就くのであった。

また彼女と会えるのを願って。

 

 

「………なにこれぇ?」

 

約1名、途中から話についていけなくなっていた。

 




僕の中で東崎=通り魔と定着しつつある。
これも全部ディケイドって奴の(ry

よろしければ感想、評価をよろしくお願いします。


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5話 彼女の為に俺は死ねる

新年明けましておめでとうございます。
かなり日数が空いてしまい申し訳ありません。ぶっちゃけ楽しみに待ってくれている人がいるかどうかも分からない小説の続きを書いております。



「………………」

 

東崎莉紅はファンガイアと人間のハーフである。彼の趣味はバイオリンの製作と共にバイオリンの演奏である。

彼はキバットバットⅢ世と共に人間の為、世の中の魑魅魍魎、悪鬼羅刹と戦うのだ!!

 

「…………違うな……」

 

そんな彼は今、バイオリンに塗るためのニスを作っている。グツグツと鍋の中で煮えるナニかを東崎はじっくりと見た後、溜息をつく。

そんな落ち込んだ様子の東崎の元にキバットがパタパタと飛んでくる。

 

「おーい、何溜息ついt━━━臭っ!!??くっせッ⁉︎お前何を煮込んでんだよ⁉︎」

 

「うん?昨日集めて来たものを全部混ぜて見たんだよ。そしたらいいニスができるかなー?と思ったんだけど………」

 

「馬鹿か⁉︎………って、うわっ⁉︎なんだコレ⁉︎カタツムリにワームに………血なのかコレ⁉︎うおっ!糞はいくらなんでも駄目だろ⁉︎」

 

鍋の中にある出来上がったばかりの暗黒物質(ダークマター)にキバットは顔の表情を歪ませる。

 

「お前アレだぞ……最近、ニス作りがヤバイ方向になりつつあるぞ?」

 

「………そうか……確かに部屋に入ってきた次狼さんも一瞬で気絶したからなぁ」

 

「どうりであの狼が泡を吹きながら痙攣を起こしていたと思っていたらその所為かよ………」

 

キバットは家臣の情け無い姿を思い出し、呆れながらバイオリンの形をしたの寝床(定位置)でいつも通りぶら下がる。

 

「そういや、聞いたぜ?昨日は教会に行ったんだってな?」

 

「そうだよ。と言っても教会には入らないですぐに帰っちゃったけど。にしても、なんだったんだろあのイッセー君の焦り方……アーシアさんにしっかりと挨拶しておきたかったんだけどなぁ…………」

 

「やれやれ………いいか莉紅?教会はな、堕天使共の住処なんだぞ?一歩でも踏み入れていたらどうなるか分かったもんじゃねぇ。それに加えてお前は一度、堕天使とキバとして接触した。唯一救いなのは後ろ不意打ちしたおかげで顔も見られてない事だな」

 

すると、東崎はバイオリンにニスを塗る手を止め、キバットと向き合う。

 

「そう言えばさ、なんでキバってバレちゃ駄目なの?悪魔にも、堕天使にも」

 

「そりゃあ、キバは三大勢力に喧嘩を売ったファンガイア族の王の証でもあるからな。もしもファンガイアが生き残っていると知られたら莉紅………お前、消されるかもしれねぇんだぞ?」

 

とキバットは莉紅を脅迫するかのように強めの口調で言う。コレは彼なりの東崎への気遣いだ。彼は良くも悪くも人を信じやすい。

だからこそ相手を疑わなければいつか彼の身に危険が迫ってしまう。そうキバットは思った。

 

「うーん、でもなぁ………実感が湧かないと言うか何というか……まぁ、何とかなるんじゃない?」

 

「………ハァ、とにかくそのクセー物質を何とかしてくれよ?てか、そんなものニスに使おうとしてんじゃねぇよ」

 

「駄目なの⁉︎」

 

「当たり前だ!この馬鹿!!アレか⁉︎お前はあの魔王様に暗黒物質まみれのバイオリンをプレゼントする気か⁉︎」

 

 

 

 

▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

「って感じにさ、上質なニスに良さげな材料を知らない?」

 

「うん。ていうか、それをニスにしようとしてる時点で頭おかしいんじゃねぇのか?」

 

「同感って言うか、まずマトモな材料だけ集める事をオススメするんだが………」

 

翌日の学校。元浜、松田の2人に相談する東崎だが、逆に頭がおかしいんじゃ無いか?と指摘されてしまう。

というか至極当然だろう。虫や血、ましてや排泄物を材料に使っているなんておかしいにも程があるだろう。

 

「そう言えばイッセー君、今日休みっぽいけど……大丈夫かな」

 

「もしかしたら腰痛めたーとかそういう理由で休んだんじゃ無いのー?」

 

と3人が喋っていると、桐生が近づいてくる。

 

「え?腰?なんで?」

 

「そりゃあ、綺麗な女性と一緒に登校してくるなんて………どう考えても"朝チュン"でしょ」

 

 

「「あ、【朝チュン】………だと………⁉︎」」

 

 

ガタリと元浜、松田は立ち上がる。彼等に困惑、嫉妬、激情、憎悪、殺意が湧いてくる。

一誠への嫉妬、自分たちへの悲しみ、抜け駆けした一誠への殺意。

約9割がイッセーに対する悪意なのは気にしないでほしい。

 

「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッッ!!!!!!」」

 

そして、2人は血涙を流しながらその場で膝をつく。一誠が憎い。だが惨め自分達がもっと憎い。そんな思いが彼等の中でグルグルと回り続ける。

 

「うわぁ………惨めね。ところで、さっきニスの材料って言ってたけど、アンタ自身はどう言ったのが理想なの?」

 

「うーん………何というか………艶々とした……綺麗な……羽とか?」

 

桐生が「羽……?」と困惑していると何かに気付いたように「あ」と声を漏らす。

 

「そう言えば最近、教会の近くで黒い羽が沢山落ちていて掃除するのに大変だーって噂で聞いたような………」

 

「黒い羽………いい」

 

「え?」

 

「ありがとう!!!桐生さん!!おかげで上質なニスが作れるかも!!!」

 

東崎は桐生の眼前に近づき、手を握る。東崎は興奮した状態でさらに桐生に近付く。

 

「で?で?で⁉︎場所は⁉︎」

 

「ち、近いって!!え、えっと……ほら!〇〇番地の!」

 

「あ、あそこか!ありがとう!」

 

とウキウキした様子で東崎は自分の席に戻る。それに対して桐生は顔を赤らめ、心臓をバクバクと鳴らせていた。

 

そんな、目の前でドキッとするような光景を見せられた元浜と松田はと言うと

 

 

「「━━━」」

 

 

真っ白に燃え尽きていた。

 

 

 

 

▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

「お願いします‼︎行かせてください!」

 

兵藤一誠の声がオカルト研究部の部室に響き渡る。

これで何度目だろうか、紅い髪の女性に何度も何度も頭を下げる。

 

「何度言ったら分かるの?駄目よ」

 

だが紅い髪の女性、リアス・グレモリーは何度も却下する。何故、このような事になってしまったのか、それは兵藤一誠が学校を休んでいる時の事であった。

 

彼はアーシア・アルジェントと再び会った。その出会いは2人にとって喜ばしい事だった。

一昨日の事である。兵藤一誠はいつも通りの悪魔の仕事をしていたのだが一誠の依頼主の家に悪魔の天敵である悪魔祓い(エクソシスト)がいたのだ。

 

依頼主はその悪魔祓いに惨殺され、一誠も命の危機に陥れられた。だが、そこには悪魔祓いの神父だけでなく、シスターアーシアも居た。

 

殺す事に快感を覚えた悪魔祓い。"はぐれ悪魔祓い"と癒しの力によって追放されてしまった"異端の聖女"。

 

どちらも同じ追われる身となった神に仕える存在だが、アーシアは敵《悪魔》である一誠を庇った。

 

一誠は彼女と約束した。"絶対に迎えに行く"と

 

 

 

そして、彼等は再開し束の間の休息を楽しんだ。

 

だが、それを堕天使(天野 夕麻)は許さなかった。

天野夕麻はアーシアの癒しの力の源である神器【聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)】を求め、アーシアを連れ去ろうとした。

 

勿論、一誠は抵抗したが成す術無く負け、アーシアは連れ去られた。

彼は彼女を守れなかった。彼は彼女の涙を見たくなかった。

 

だからこそ!彼は何度も頭を自分の主人に下げる。

 

「何度言ったら分かるの!貴方の行動が悪魔と堕天使の関係に多大な影響を与えるのよ!」

 

リアス・グレモリーの言う通りだ。

現在、三大勢力はお互いに冷戦状態にある。仮に一誠が堕天使と争いを起こしてしまえば、ソレが戦争の火種になる可能性がある。

だからこそ。

 

「お願い……貴方には死んで欲しくないの……イッセー……」

 

彼女は涙目+上目づかいで一誠にお願いをする。そして、

 

「〜〜〜〜〜〜ッ!!!???」

 

一誠の胸に大きい2つのポヨンポヨンしたモノが押し付けられる。一誠はグググと理性をギリギリと保っている状態だ。

 

「…………くっ」

 

ソレを見ている搭城小猫はギリギリと自分の主人の大きな"たわわ"に憎しみの篭った視線を送る。

 

「〜〜〜〜〜〜ッッッッ!!………お願いします!!!もしかしたら今日の儀式とやらでアーシアが殺されるかもしれないんです!!!」

 

彼は耐えきった。リアス・グレモリーの涙目、上目づかい、ボインボイン作戦を見事に破ってみせたのだ。

 

 

━━ポタ…ポタ………

(鼻から血が垂れ落ちる音)

 

が、彼にはかなりのダメージが入っていた模様。

 

「リアス、さっきの"儀式"というのは……」

 

「………えぇ、調べてみる価値があるわね。一誠、私と朱乃は大事な用事が出来たから出掛けるわ」

 

「部長!まだ話g「イッセー、あなたに言っておく事があるわ」

 

「え?」

 

「あなたの中にある悪魔の駒(イーヴィル・ピース)の【兵士(ポーン)】は

騎士(ナイト)】、【戦車(ルーク)】、【僧侶(ビジョップ)】、【女王(クイーン)】に比べれば弱いように見える。だけど違うわ」

 

一誠は唐突に悪魔へと転生を果たす為のアイテム悪魔の駒の説明をする。これは初めてはぐれ悪魔狩りをした時にオカルト研究部の部員達の戦いを実際に見て説明を受けた。

 

騎士(ナイト)は俊敏な機動力によって敵を倒す剣士タイプの役割を持つ。

戦車(ルーク)はその防御力と圧倒的な破壊力によって敵に大きな一撃を食らわせる。

そして次に僧侶(ビジョップ)これはまだ該当する人物を一誠は知らないが魔力に長けるタイプである。

最後に女王(クイーン)は機動性、攻守、魔力の3つのタイプの特性を合わせ持つ最強の駒。

 

その中で兵士(ポーン)は最弱の駒。下っ端の部類なのだと一誠は認識していた。

 

「兵士には他の駒には無い能力【昇格(プロモーション)】が存在するわ」

 

「昇格?」

 

「えぇ。実際のチェスと同様に敵の陣地の最深部に赴いた時、【(キング)】以外の駒に変化する事が出来るの。例えばイッセー、あなたが私の認めた敵地である【教会】の重要な所へ辿り着けば王以外の駒に変化する事が出来るのよ」

 

「……それって!」

 

「だけど、今のイッセーの力では最強の駒である女王になるのは負担が大きすぎて昇格には耐えられないでしょうね」

 

「小猫ちゃんと木場の力…………」

 

「そして、もう一つ」

 

リアスは強調するようにイッセーに告げる。

 

「神器は想いの力で動き出す。想いが強ければ強いほど比例するように神器は応えてくれるわ。

最後に、兵士(ポーン)でも(キング)を取れる。チェスの基本よ」

 

そう言うと、リアスと姫島は魔法陣によって何処かへと移動して行った。

その場に残されたのは一誠、木場、塔城の3人だけだった。

 

「兵藤君、行くのかい?」

 

「ああ。止めたって無駄だからな」

 

「無謀だ。君1人では死ぬよ?」

 

「それでも、アーシアを逃がすくらいの時間は稼いでやる」

 

木場の言葉に一誠の信念は揺らがなかった。恐らく、今のイッセーには何を言っても止まる事は無いのだろう。

 

━━シャキン

 

イッセーの首筋に冷たいものが触れる。鋭く長い鉄で出来た剣。いつの間に抜いたのかわからない剣を木場は構えていた。

 

「感動的な台詞だ。だが、無意味だ。君1人では逃す事も出来ない」

 

「じゃあ、アーシアを見殺しにしろってのかよ!!!」

 

激情に駆られたイッセーが剣を押し退け木場に掴み掛かる。そして木場は再び口を開く。

 

「僕も行こう、仲間を見殺しには出来ない」

 

「木場………!」

 

イッセーは思いがけない木場の言葉に驚愕する。

彼ならば強引にでも止めてくるだろうと思っていたが、予想よりも仲間思いの木場にイッセーは感激する。

 

「お前、結構いい奴だったんだな………イケメンって顔だけしか取り柄がないただのゴミ屑野郎だと思ってた」

 

「ハハハ、これくらい当然のこt……ちょっと待って?なんか思ったよりディスられたのは気の所為かな?」

 

「私も行きます」

 

スクッと小柄な塔城小猫が立ち上がる。

 

「小猫ちゃん……!」

 

「2人だけでは不安です。それに……」

 

「「それに?」」

 

塔城はその場でボクシングの構えをする。そして

 

 

━━ブォンッ!!!

 

━━バァンッ!!!

 

━━ビシュンッ!!!

 

━━バシュンッ!!!

━━ドオンッ!!!

 

 

音を残して、騎士(ナイト)顔負けのラッシュを見せる。

 

「ちょっとだけイラついていますから……」

 

「「………」」

 

戦闘する時はなるべく塔城の前には立たないようにしようと思ったイッセーと木場の2人であった。

 




個人的にもう1つの小説よりギャグ調で執筆出来ているので嬉しい。

よろしければ感想、評価をよろしくお願いします。


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6話 堕天使達は犠牲になったのだ……

多少のキャラ崩壊注意。と言うか合っているかこう言う性格で合っているのかどうかも心配。



「ハァ〜何でウチが見張り役なんて〜〜〜」

 

ゴシック・アンド・ロリータ縮めてゴスロリの服を見に纏った堕天使の1人であるミッテルトは退屈していた。

今夜は堕天使レイナーレが大事な儀式を行う日であり、悪魔や人間などの侵入者を入れない為にミッテルトは見張り役を任されていたのだ。

 

「様子を見に来たが……随分と退屈しているようだな?」

 

「確かにな。こんな裏口よりかは表口の見張りの方が退屈しないで済むと思うが?」

 

すると、ミッテルトの背後からコートを着込んだ男性の堕天使【ドーナシーク】、ボディコンスーツを見に纏った女性の堕天使【カラワーナ】

 

「なーに言ってんのドーナシーク。腰痛だけで無く頭までイっちゃったの?」

 

「ミッテルト……!言葉に気を付けろ!アレは……う〝ッ⁉︎」

 

するとドーナシークの身体は固まり腰をさする。もの凄く痛そうなのが分かる。

 

「分からないかなぁ……"堂々と正面から乗り込んでくる馬鹿共"なんていないっしょ。悪魔共なら裏口からコソコソと忍び込んでくるに違いないっすよ?」

 

「成る程。忍び込んで来た所を我々で八つ裂きにするという事か」

 

「フフフ……その通り。例え悪魔だろうが魔王だろうがドーナシークが言っていた謎のコウモリ男って奴だろうとウチがこの手で始末してやるっすよ。ハーハッハッハッ!!!ウチって頭いぃーーーーーーッ!!!」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

一方その頃、堂々と正面から乗り込んで来た馬鹿共というと

 

「なんか蔑まれたような気がしたけど、とにかく一気に駆け抜けるよ?」

 

「あぁ、それにしてもすげぇ悪寒だ……この中に堕天使達が、アーシアが居るのか」

 

「悪魔祓いもきっと……」

 

イッセー達は協会の正面入口にいた。そして、木場は手元に剣を呼び出すと一閃。

門の鍵を破壊する。門を開けるとすぐさま3人は協会へと侵入する。

 

「いいかい?1番怪しいのは【聖堂】だ!堕天使や悪魔祓い達は今まで神聖視していた場所を穢す事によって自分達を追放した神を冒涜し、それに酔いしれるんだ」

 

「趣味悪ぃなオイ!!!」

 

そして3人は大きな扉を開けると、そこは目的の場所である聖堂に辿り着いた。

しかし、そこには堕天使や悪魔祓いの姿は1人も見当たらない。静か過ぎるのがとても不気味だ。

しかし塔城小猫は何かの気配を察知したのかとある一点を指差す。

 

「あそこに誰かいます……」

 

━━パチパチ…パチパチ……

 

突如として聖堂内に拍手の音が響き渡る。柱の物陰からイッセー達が一度会った人物が出てくると全員は顔を顰めた。

神父の格好をした白髪の男。はぐれ悪魔祓いのフリードがそこに居たのだ。

 

「いやぁ、お見事さん。そして感動的な再会だねぇ〜〜〜〜〜」

 

「フリード!!!」

 

「俺としては?二度と会う悪魔はいないって事になってんだけどさ、ほら俺めちゃくちゃ強いんで?悪魔なんて初見でチョンパなわけですよ」

 

すると、フリードは懐から一丁の拳銃。剣の柄を取り出す。そして見る見る内に不機嫌そうな顔になっていく。口調はアレだが明らかに殺意のある顔だ。

 

「お前らのおかげで俺のポリシーが傷ついたわけでしてね?ムカつくんだよねぇ〜〜〜〜クソ悪魔共が……死ねと思うわけで!!つーか死ねよ!!!クソ雑魚悪魔共がよォ!!!」

 

「うるせぇ!!!アーシアは何処へやった!!!」

 

「あっ、そこの祭壇の下に地下祭儀場に続く隠し階段がございますぞ?そこにお求めの悪魔に魅入られたクソシスターちゃんもございま〜〜〜〜す」

 

「え?以外と……親切………なのか?」

 

3人は呆気なくアーシアの居場所を教えてくれたフリードに対して目を点にしてしまう。

それに対してフリードは剣の柄から光の刃を形成する。それはまるでジェダイの有名な武器だ。

 

「まっ、どうせキミタチは此処で死ぬんだから教えたっていいよねぇ〜〜〜〜〜?」

 

「随分と余裕だね」

 

「ふざけやがって!セイグリッド・ギア!!!」

 

イッセーの呼び掛けに反応したかのように左腕に赤い籠手が出現する。しかしイッセーと木場、2人の背後からゴゴゴという謎の音が聞こえる。

振り向くとそこには聖堂に設置されてある横長の椅子を持ち上げていた小猫が居た。

 

「潰れて」

 

「うおおおおおぉぉぉぉぉっ!!??」

 

「危ねっ!!」

 

イッセーは小猫が投げた長椅子を避ける。それに対してフリードは光剣で長椅子を真っ二つに切る。

だが、その椅子の陰から剣を構えた木場がフリードに斬りかかる。

 

「ハッ!!!」

 

「ッテメェ!しゃらくせぇッ!!!」

 

パァン!パァン!パァン!パァン!パァン!

 

フリードは木場の剣を防ぐと光の弾丸が込められた銃を木場に向けて発砲する。

木場は弾丸を聖堂内で縦横無尽に駆け回り躱し続ける。しかしフリードは木場の動きに慣れてきたのか徐々に光の弾丸が木場の身体を擦り始めたのだ。

 

「木場先輩!!!」

 

カンカンカンカンカンッ!!!

 

「すげぇ!!!全く効いてない!これが戦車(ルーク)の防御力か!!」

 

「……痛い」

 

「無理は駄目だよ?小猫ちゃん」

 

しかしダメージは少し入っていたのかプルプルと身体を震わせていた。イメージするならデコピンされたくらいのダメージだろう。

 

「ありゃりゃ?小さい癖して以外と固いんだねぇ。特に胸辺りが」

 

「………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━バキバキバキバキィ!!!

 

 

 

「こ、小猫ちゃん!!!??」

 

「待って小猫ちゃん⁉︎ソレヤバイ奴だから!」

 

小猫は聖堂入口の扉を無理矢理外し、そのままフリードに向けて放り投げる。

だがフリードはソレを軽々と光剣で切り裂く。

 

「……っと!ざーんねーん!そんなもの俺にとっては━━━」

 

 

━━ブンブンブンブンブンブンブンブンブンブン

 

 

長椅子、無造作に転がった像、長椅子、長椅子、扉、剥がした床、何故かそこにあった岩、そこら中に落ちているモノを小猫はフリードに向けて投げつける。

 

「うおおおおお!?何コレ千本ノック⁉︎」

 

「貴様は嬲り殺す」

 

「「⁉︎」」

 

彼女から発せられるとは思えない台詞に驚くイッセーとフリードの2人。しかしフリードは途中でもう1人悪魔が足らない事に気付く。

 

「僕を忘れてもらっちゃあ困るよ」

 

「っと!!!やるねぇ!その機動力【騎士(ナイト)】か!」

 

「君もやるじゃないか…かなり強いよ」

 

何故か奇妙な友情的なモノが芽生えかけている2人。2人の剣戟はさらに激しさを増していく。

 

「いいねぇ〜〜久々に心が滾るバトルだよ。んっふっふ〜〜〜ぶっ殺す!!!!!!」

 

「それじゃあ僕も本気を出すとしようか……!!」

 

すると木場の持っている剣の刀身が黒く染まっていく。そしてフリードの持つ光剣に触れた瞬間、ズルズルと光剣の刀身が木場の剣に飲み込まれていく。

 

「なっ、なんじゃあこりゃあ!!??」

 

光喰剣(ホーリー・イレイザー)。光を喰らう魔剣さ」

 

「テメェも神器持ちかよッ!!……って、あ。あー…こりゃ駄目だ動かねぇ……結構高かったんだけどナー……」

 

光剣が機能しなくなった瞬間、イッセーはチャンスが来たのを確信し、自身の神器に力を込める。

 

「動けぇぇッ!!!」

 

『BOOST』

 

「さらに昇格(プロモーション)!【戦車(ルーク)】!!」

 

「テメェ!兵士か!このッこのッ!」

 

パァン!パァン!

 

フリードはすかさずイッセーに向けて弾丸を飛ばすが、イッセーの身体は戦車の特性である圧倒的な攻撃力と防御力が追加され、更に神器の力によって2倍されている為、光の弾丸は通用しない。

 

「うそーん!祓魔弾を弾くか⁉︎」

 

「フリード!テメェに教えてやるぜ!今の俺は昇格によって力は2倍!更に神器の力によって4倍!!」

 

イッセーはそのまま体勢を低くし、脚に力を込める。回転を加えるようにフリードの顎を捉える。

 

「そして!いつもの倍のジャンプに回転も加えて……!16倍の力だァーーーーーーーッ!!!!!」

 

「ガッ!!??」

 

((その理論はおかしい!!!??))

 

イッセーは東崎に教えてもらったウォー○マン理論アッパーをフリードにおみまいする。そのままフリードは美しい放物線を描きながらガシャンと音を立てながら落下する。

 

「ってえええぇぇぇぇぇぇぇッ!!!ざけんなよこのクソ悪魔があぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」

 

「まだ生きていたんですね。今すぐ楽にしてあげましょう」

 

小猫はフリードがまだピンピンしているのを確認すると祭壇を持ち上げ、トドメを刺そうとしている。

 

「っと!残念ですが?俺的に殺されるのはNGなんですよねぇ。それじゃあねぇ〜〜〜」

 

━━カッ!!!

 

フリードがそう言うと懐から取り出した玉を床に投げつけると眩い光が全員を襲う。

そして光が収まった頃にはフリードの姿は無かった。

 

「クソッ逃げられた!」

 

「次に会った時はコロス……」

 

「2人共落ち着いて(特に小猫ちゃん)!とにかく、先に急ごう!!」

 

木場は2人を抑えながらアーシアが居るであろう祭儀場へ続く隠し階段を下りて行った。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「…………来ないっす」

 

堕天使ミッテルトは退屈していた。かれこれ1時間くらい木の上で待っているが侵入者が来る気配が無い。

と言うか協会から色々な音が聞こえるが、もしかしたら裏口では無く本当に表から堂々と侵入して来たのかも知れないとミッテルトは思った。

 

「おい、やっぱり表の方に侵入者が来ているんじゃないのか?」

 

「そうね、そこら辺はどうなのかしら頭のいいミッテルト?」

 

「う〝っ…それは………」

 

ドーナシークとカラワーナの質問に対してミッテルトは返答に詰まる。

ミッテルトは自信に満ちた作戦が見事に失敗した上に『失敗しちゃった♪すんませーん☆』なんて今更言える訳でも無く、もしもアッサリと侵入されたのがレイナーレにバレてしまえば、どうなるかは目に見えている。

 

(お、落ち着け!落ち着くのよウチ!この窮地を脱する方法は3つ!

①.レイナーレ様が儀式をすぐに終える。

②.新しい侵入者がやって来る。

③.現実は非情だ。この後レイナーレ様にお仕置きされる)

 

「さて、我々も侵入者の始末に当たるとしようか」

 

「そうね。ついでにミッテルトの所為で侵入を許してしまったとレイナーレ様に報告しましょうか」

 

(あっ……ウチ終わった……………)

 

ミッテルトが絶望してぐったりしつつも堕天使達がレイナーレの元へ移動しようとすると

 

 

━━ォォォォォォォ…………

 

 

「!!きっ、来た!侵入者が来たっす!!!」

 

「ミッテルト、あなた気の所為か喜んでないかしら?」

 

突如として聞こえて来た謎の音に対して喜びを見せるミッテルト。やれやれと言いながら光の槍を構え侵入者の迎撃に当たるカラワーナ。

その中でドーナシークだけは冷汗を掻いていた。

 

「ま、まさかこの音は………!!!まずいッ!!逃げるぞミッテルト!カラワーナ!」

 

「ハァ?一体どうしたって言うの?」

 

「奴だ………!奴が!あのコウモリ男が!赤い鉄馬を引き連れて!!来てしm━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━ドゴォッ!!!!

 

 

 

「ブッ!!!??」

 

「ゴッ!!!?」

 

「ひでぶッ!!!???」

 

 

 

「「あ」」

 

 

堕天使三人組は赤い鉄馬(マシンギバー)に乗ったコウモリ男(キバ)にガッツリと轢かれた。

 

「………き、キバットォォッ!!!」

 

「だから言ったじゃねぇか行くのはやめとけって!!!て言うかなんで変身してるんだよ!」

 

「やっぱり夜中出歩くのは不味いし……それにもう噂になってるならいっそのこと【キバ】の状態で出歩いて良いかなって……」

 

「開き直ってんじゃねぇよ!!………ってコイツら堕天使じゃねぇか。あの眼鏡の嬢ちゃんが言ってたのはコイツらの羽の事かよ……っておい、何してんだ?」

 

そこら中に落ちている堕天使の羽を拾い集め始めるキバ(東崎)にキバットは何をしているのか尋ねる。

 

「え、だって見た感じ良い色しているし……ニスの良い材料になりそうだよコレ?」

 

「………あー、うんわかった。もういい。それにしてもコイツ(マシンキバー)いきなり、別方向に動き出しやがって……堕天使に恨みでもあんのか…?」

 

キバットがそう言いながらキバ(莉紅)は満足気に羽を集め終えるとマシンキバーに跨り、再び動き出す。

 

次に通り魔(キバ)が何を仕出かすのか神のみぞ知る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キバ……だと……⁉︎レイナーレ様に………ゴフッ…報告を……!」

 




ドーナシークにキバの顔を見られてないと思っていたら、ガッツリとキバの姿を見られていたという。



【マシンキバー】
別名『鋼鉄の騎馬』『真紅の鉄馬』

キバット族の工芸の匠・モトバット16世によって開発された【仮面ライダーキバ】の専用バイク。
アッパーカウルの内部に馬のモンスターの脳が埋め込まれており、意思を持っている為セミオート運転が可能であり大気中に存在するエネルギーを吸収して走行する。
最高時速は"520㎞"で、高速走行時には、シャドウベールという見えないバリアが車体の周囲を覆い、運転するキバをあらゆる衝撃から防御する。 如何なる悪路も走行し、キバと超音波で交信して無人走行も可能。

実は開発には堕天使の総督であるアザゼルが関わっており身体中を弄られ、挙げ句の果てには変形合体するようなギミックを無理矢理取り付けられた為に堕天使に突っ込む癖を持っている。


よろしければ感想、評価をよろしくお願いします。


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7話 Wake up Dragon

仮面ライダービルド18話視聴前
→音也生きとったんかワレェ!!!

視聴後
→まんま音也じゃねーーか!!!

キバ好きの僕には嬉しい回でした。



「アーーシアァァッ!!!」

 

兵藤一誠は叫ぶ。

木場、搭城と共にアーシアを堕天使から救うべく教会へ乗り込んだのだが目の前には磔にされた少女であるアーシアと堕天使レイナーレに大勢のはぐれ悪魔祓いの神父達が居た。

 

「イッセーさん……あっあぁぁ、いぁぁぁああああああああああああ!!!」

 

「あら、感動の対面を邪魔してごめんなさいね。安心して、もうすぐで儀式は完成するわ」

 

アーシアの声は途中から絶叫へと変わり、すぐ隣にいるレイナーレはそれを嘲笑うかのような表情を浮かべる。

アーシアの美しい金髪と翡翠色の眼は生気を失ったかのように悲壮感が漂い、彼女が危険な状態だと言うことが嫌にでも理解できる。

 

「フフフ、もうすぐよ……もうすぐでこの子(アーシア)の神器は私の物になるわ」

 

神器を抜く。

 

そもそも神器はそれ自体が持ち主の生命力や魂と密接に結びついている。

それは即ち、持ち主の死を意味する。

 

「アーシアを死なせるかよ!!!」

 

イッセーは迷わずアーシアの元へと走るが、それを神父達が黙っている筈も無くフリードが持っていたものと同じ光剣を振りかぶる。

 

「邪魔をッ!」

 

キィン!!

 

「イッセー君!早く行くんだ!」

 

しかし、そこへ木場がイッセーを守るように光剣の攻撃を自身の剣で受け止める。

更にそこへ身体の小さな小猫が神父の懐へ飛び込み鳩尾に拳を叩き込むと神父は吹き飛ばされる。

 

「早く先に行ってください。ここは私達が食い止めます」

 

「サンキューな!皆!」

 

イッセーは2人にお礼を言うと、そのまま神父達の間をスルリと抜いて行きレイナーレの前へと辿り着く。

 

「あら、来たのね。イッセー君」

 

「イッセー……さん……」

 

「アーシアを返して貰うぞ……!!!」

 

『BOOST』

 

イッセーは左手の神器を構える。

1人の少女を助ける為に優しい悪魔は堕天使へと立ち向かう。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「お、この樹液もいい感じだな。中々のツヤを出せるかも……お、この葉……エキスを使えば中々……お、コッチのもいいかも」

 

「なぁなぁ、もう良いか?さっきの堕天使共は縛ったし、羽もあらかた回収し終わった。更に樹液やら落ち葉やらを拾い集めてかれこれ30分近くだ。そろそろ帰ろうぜ?」

 

「そう言ってもなぁ。キバの状態で集めるのと人間の状態で集めるのって全然違うんだよ?キバになると五感がいつもより研ぎ澄まされるから良いニスの材料なんかを集めやすいんだよね。こんなチャンス滅多に無いから━━っと!おおおおっ!この木の色合いなんかいい感じ!」

 

「ったく………こうなると手がつけられねぇな」

 

気絶した堕天使達を縛った後、東崎とキバットは教会の直ぐ隣に生えている木々で材料集めをしていた。

もはや東崎は材料を集めるのが趣味なのでは無いか?と言うほど夢中になっている。

更に変身したままの姿で彼は子供のようにはしゃいでいる為、他人から見ればどう見ても変質者だろう。

 

「さーて、次は━━━━━━」

 

━━ドクン

 

 

すると、東崎はピタリと作業を止めると教会の方へと視線を向ける。

 

「どうした?東崎」

 

「なんだか……教会から…こう、ビビッと来るような何かがいる気がする」

 

「……!成る程。ようやくお目覚めって所か?」

 

「お目覚めって………?」

 

東崎が首を傾げるとキバットはニタリと微笑む。

 

「まぁ、そろそろだぜ【赤い龍】が目覚めるのは………んじゃま、帰るとするか!」

 

「うーん………分かったよ」

 

 

━━ドクン

 

 

そう言うと彼は歩み始める。

だが、彼は気付かない。

無意識だろうが、キバの鎧はまるで龍の目覚めに対して、笑うように、応えるように【魔皇力】を放っている事を。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「はぁーっ……はぁーっ……」

 

「あら?まだ生きているの?しぶといわねぇ」

 

「イッセーさん!」

 

兵藤一誠は既に満身創痍だった。

全身はズタズタにされ、着ていた服の所々は血によって赤く染まり、足元には血だまりができている。

 

こんな状態になっても立っていられるのは、アーシアを助けたいと言う一心で立っている。

だが、イッセーの目に光は無くブツブツと何かを呟いているだけであった。

 

「アーシアを……助け……ないと……」

 

「ッ!もういいんです!もうやめてください!イッセーさん!」

 

アーシアが叫ぶ。イッセーが傷付く姿をこれ以上見たくないのだろう。

そして自分の所為で目の前にいる人が傷付くのが何よりも辛いのだろうアーシアは目に涙を浮かべている。

 

「どうやら限界みたいね。さて儀式をさっさと済ませましょう。安心しなさい貴方もしっかりとあの世へ送ってあげるわイッセー君」

 

そう言うとレイナーレはアーシアの胸に手を当てると、翡翠色の光が溢れるとアーシアは苦しそうな表情を見せ、声が漏れる。その様子をレイナーレはニヤリと笑う。

 

(あぁ、いよいよだわ。遂に私は癒しの力を手にする!癒しの力を手に入れた私の地位は盤石となるの!あぁ、シェムハザ様、アザゼル様。私はお二人の祝福を受けられるのよ……!)

 

遂に望んでいた力が手に入るとレイナーレは高揚感に溢れ、頰を赤らめる。

だが、その時レイナーレに連絡用の魔法陣が展開される。

 

「何か用かしら?ドーナシーク。今忙しい所なの後にしてくれるかしら」

 

『レ、レイナーレ様……気を付けて下さい。ヤツが……キバがすぐそこまで………!』

 

「どう言う意味かしら?ドーナシーク。……?ドーナシーク!」

 

何度も呼ぶが応答が無い。

一体どうしたのだろうか?ドーナシークならミッテルトやカラワーナ達と共にいた筈だ。それなのにやられたのだろうか。

 

ならば一体誰に?

 

レイナーレは考える。そして、先程の会話を思い出す。

 

「そう言えば、キバって……………!!!!」

 

 

 

瞬間、謎の魔力を感じた。

 

 

 

レイナーレだけでは無い。その場に居た木場、搭城も、イッセーも感じた

圧倒的な魔力。まるで押し潰されるかのようなプレッシャーがその場に居た全員に襲いかかったのだ。

 

 

「この魔力は一体………!」

 

「分かりません。ですがとてもヤバイと言うのは分かります!」

 

その場の全員はとある感情に支配された。

 

 

【恐怖】

動物や人が感じる感情の一種であり、有害な事態や危険な事態に対して有効に対処することが難しいような場合に生じるものであり、生きる体験の中で必ず感じるものだ。

 

 

レイナーレは気付く。いや、気付いてしまったのだ。

 

 

 

━━何故⁉︎

 

 

━━そんな馬鹿な‼︎

 

 

━━どうして!

 

 

━━あり得ない!

 

 

━━何で⁉︎

 

 

━━嘘だ

 

 

━━嘘だ

 

 

━━嘘だ

 

 

━━嘘だ‼︎

 

 

━━嘘だ‼︎

 

 

━━嘘だ‼︎

 

 

これから命を吸う化物が自分を狙って来たのだとレイナーレは思った。

死神が徐々に自分に近づいて来ているのを感じる。

 

何故だ!まさか、あの種族が!"ファンガイアの王"が生き残っていると言うのか!

 

レイナーレはアーシアから神器を抜く儀式を止める、彼女がやる事は1つ。

 

「悪いけど、貴方達を殺して逃げさせてもらうわ」

 

この悪魔共を殺し、生きる事だ。

幸い、悪魔の数はたった3人。更に目の前の悪魔は満身創痍。容易に殺す事が出来る。

レイナーレは光の槍を形成すると目の前にいるイッセーに目掛けてその槍を放つ。

 

「バイバイ。イッセー君」

 

 

━━ドスッ!!!

 

 

光の槍がイッセーの腹部を貫き、イッセーは血を吐き出す。

だが、彼は倒れなかった。むしろ前へと進んでいる。

 

「この程度……アーシアの痛みに比べたら……ッ!」

 

「へぇ、思ったより頑丈ね、まぁ良いわ。さっさと死んで頂戴」

 

レイナーレは更に光の槍を放ち、イッセーの身体中に突き刺さる。全身から血が流れ、それでも尚彼は進むが、限界が来る。

 

「アーシア……クソ……動けよ……」

 

「貴方しつこいわね。さっさと死になさいと言ってるでしょ!」

 

「イッセーさん!やめてください!お願いします!やめてください!」

 

レイナーレはトドメの一撃を放とうとしている。イッセーは全身に力が入らずもはや指すら動かせない状態だった。

これから死ぬ。その筈なのにイッセーに恐怖と言う感情は不思議と無かった。

 

(クソ、動かねぇよチクショウ。せっかくアーシアを助けに来たのに、こんなのって…………)

 

 

━━ドクン

 

 

(そういや、アーシアに連れて行かなきゃいけないところ沢山あったな。カラオケに遊園地、ボウリングも。そうだ、ゲーセンでラッチュー君をもっと取ってあげないとなぁ)

 

 

━━ドクン!

 

 

(ダチも紹介しなきゃだよな。松田と元浜ってスケベだけど良いヤツなんだよな。それに桐生もからかって来るけどアーシアと良い友達になれそうだな)

 

 

━━ドクン‼︎

 

 

(そういや、東崎にもしっかりと紹介しねぇとな。アイツってバイオリンの天才なんだ。弾くことも作ることも出来るし、アーシアと気が合うんだよな)

 

 

━━ドクン!!!

 

 

「アーシアもしっかりと貴方の後を追わせてあげる。だから安心して死になさい」

 

レイナーレの光の槍がイッセーに向けて放たれる。

 

「イッセーさぁぁぁぁん!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━バギン!!!

 

 

「なっ!!!」

 

だが、光の槍はイッセーには当たらなかった。いや、イッセーがその光の槍を掴んでいたのだ。

 

「イッセー……さん!」

 

「どう言うこと⁉︎何で立っていられるの⁉︎それに下級悪魔が光の槍を掴んでいるなんて……!いや、私の光の槍にヒビを入れるなんて!」

 

「さぁな。こっちだって訳わかんねぇよ」

 

『BOOST』

 

イッセーはボロボロの身体を無理矢理動かし、一歩踏み出す。イッセーから滲み出る威圧感にレイナーレはたじろぐ。

そして虚ろだった目はだんだんと光を取り戻して行く。

 

「神様、じゃダメか。やっぱ、悪魔だから魔王か?いるよな。きっと、魔王」

 

『BOOST』

 

天井を見上げ独り言のように呟く。

 

「俺も一応悪魔なんで頼み、聞いてもらえますかね?」

 

当の昔に限界を迎えた体に力を入れる。

 

「頼みます」

 

『BOOST』

 

少しでも体を動かそうとすれば全身を激痛が襲う。

それでも一誠は前へと進む。

 

「あとは何もいらない、ですから…」

 

拳に力を込める。

 

「だから、あいつを…一発殴らせてください!」

 

叫ぶ一誠の背中に悪魔の羽が広がった。

その姿が威圧感を放ち、レイナーレに恐怖を与える。

 

「う、ウソよ!体中を光が内側から焦がしてるのよ?光を緩和する能力を持たない下級悪魔が耐えられるはず…」

 

「ああ、痛ぇよ。超痛ぇ。今にも意識がどっかに飛んでっちまいそうだよ……」

 

『BOOST!!』

 

「でもそれ以上にテメェがムカつくんだよ!!!

 

『EXPLOSION!!!!』

 

イッセーの左手の籠手である神器が機械的な音声と共に変形して行く。

神器は肘を超す位までに伸張し、露出していた指も赤い装甲に覆われ、まるで龍の爪のようになる。

そして何よりも神器の宝玉から放たれる輝きが凄まじかった。その輝きは。まるで【何か】と共鳴するかのように強く溢れるような波動。

更に籠手から溢れんばかりの力がイッセーに流れ込む。

 

「う、嘘よ!この波動は中級……いえ、それ以上⁉︎あ、あり得ないわ!ただの龍の手(トゥワイス・クリティカル)がどうして⁉︎」

 

レイナーレは咄嗟に光の槍を投擲する。

 

━━バギン!!!

 

だが、その槍はイッセーの殴りの振り払いによってアッサリと破壊される。

それを見たレイナーレの表情は青ざめる。

 

「そ、そんな!」

 

「何だよこの力……負ける気がしねぇ!!!」

 

イッセーは限界を既に迎えている身体を無理矢理動かし、レイナーレとの距離を一気に縮める。

 

 

「この力は……赤い龍⁉︎それだけじゃない!これは【キバ】の━━━━」

 

 

「吹っ飛べ!!!クソ天使!!!!!!」

 

そしてイッセー、いや兵藤一誠は持てる力の全てを込めた左拳をレイナーレに叩き込む。

 

「ぐあぁぁぁぁああああああああああああああああッ!!!!!!」

 

レイナーレは一誠の拳を受け、斜めの直線を描きながら地下室から教会までも突き抜け、吹っ飛んで行った。

 

 

「……へっ、ざまぁ見ろ……」

 

 

イッセーがそう呟くとフッと身体の力が抜けて行く。もはや限界を超えた身体だ。倒れてしまうのは無理もないだろう。するとイッセーの身体を支える者が現れる。

 

「お疲れ様イッセー君。まさか1人で堕天使を倒すなんてね」

 

「遅えよイケメン王子。相変わらず余裕な笑みを浮かべやがって……」

 

イッセーはいつものスマイルを浮かべる木場に毒づく。木場は苦笑いしながらイッセーをその場に座らせる。

 

「ごめんね。君の邪魔をするなって部長に言われたんだ」

 

「部長に?」

 

「その通りよ。あなたなら倒せると信じていたもの」

 

声のした方へ向くと部長であるリアスと副部長の姫島の2人がこちらに歩み寄ってくる。

 

「用事が済んだからここの地下へジャンプしてきたの。そしたら祐斗と小猫が大勢の神父たちと大立ち回りしてるじゃない?」

 

「部長のおかげで助かりました」

 

イッセーは部長であるリアス達が来てくれたおかげか、ホッと一息つく。

すると姫島は磔にされていたアーシアの拘束を解除し、彼女は自由になる。そしてそのままアーシアはイッセーに抱き着く。

 

「イッセーさん!大丈夫ですか!」

 

「あ、あぁこれくらい大丈夫だって」

 

とイッセーは元気そうに振る舞うが実際は既に限界を迎えているので無事ではない事が一目瞭然だ。

アーシアは神器を使いイッセーを回復させる。

 

「さて……後は堕天使だけ……と言いたい所だけど、皆油断しないで」

 

リアスの顔が先程までと打って変わって真剣な表情となる。

 

「上に……何かが居るわ」

 

 

 

 

 

 

▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 

教会すぐ近くにレイナーレは居た。ボロボロになりながらも彼女は壁を伝いながら歩いていたのだ。

 

「ふ……ふふ」

 

レイナーレは不敵に笑う。気絶してもおかしくない程のダメージを負いながらも彼女は笑っていた。

 

「ハーッハッハッハ私は生きてる!生きてるわ!」

 

外へと吹っ飛ばされたレイナーレは口から血が出ているにも関わらず高笑いし続ける。

これは余裕なのか、はたまた頭が狂ってしまったのか。

 

「ハーッハッハッ━━グッ……だけど【聖母の微笑】が手に入れられなかった事だけは残念だわ。仕方ないけど今は傷をゆっくりと治すしか無いわね」

 

レイナーレは教会を見つめながらボロボロの翼を広げる。その表情からは喜悦と同時に安堵を読み取ることができる。

ドーナシークが寄越した連絡にレイナーレが教会の外から感じた恐ろしい魔力。

 

「まさかだと思うけど本当にキバが居ると言うの……?いや、今はここを離れる事だけを考えましょう」

 

そしてドーナシークの連絡の中から出てきた単語である【キバ】。

彼女の推測通りであれば逃げるというか選択肢は正しいだろう。あの場に居れば自分は確実に殺されていた。

他の仲間達がどうなったのかは予想がつくだろう。

 

そして笑みを浮かべながら彼女は呟く。

 

「また会いましょうイッセー君。次こそは必ず殺してあげr━━━━」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だがレイナーレは気付いていなかった。その恐ろしい魔力の持ち主が今、目の前に迫って来ている事を。

 

 

そしてこの世にはこんな言葉がある。

 

 

 

━━ガシャアンッ!!!!!!

 

 

 

 

「「あ」」

 

 

 

 

 

『気をつけよう‼︎バイクは急に止まれない!』

 

 




イッセーが万丈のように熱血っぽくなったのは私の責任だ。だが私は謝らない。
同じドラゴン繋がりでイッセーが万丈の台詞を言って以外と違和感無くて驚いた。
これも全て乾巧って奴の(ry
おのれディケィ(ry

堕天使を全員轢いていくスタイル。そして主人公のちゃんと戦闘シーンが無い……。


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8話 King of Vampire

第1巻『旧校舎のディアボロス』編はこれにて終了となります。
主人公の活躍は如何でしたか?

え?材料集めや堕天使を轢く位しかやってない?
さっさと戦闘シーン出しやがれゴミカス野郎?

…………すみませんでした。次回からはできるだけ戦闘シーンを出して行きたいと思います。



俺は駒王学園2年生でハーレム王を目指す男、兵藤一誠。

ある日、天野夕麻ちゃんと言う子に告白され、幼馴染で同級生の東崎莉紅と言ういかにも名前が女っぽ…ゲフンゲフン。親友に喝を入れてもらい、デートする事となった!

 

夕麻ちゃんとデートに夢中になっていた俺は、堕天使である夕麻ちゃん、もといレイナーレに光の槍で貫かれ、目が覚めると俺は悪魔になっていた!

俺はなんやかんやでオカルト研究部の部長であり悪魔でもあるリアス先輩の眷属となり、悪魔の仕事をしていると神器の所為で追放されたシスターのアーシアと運命的な出会いを果たして、そんでもって………ああーっもう!面倒くせぇ!

 

とにかく俺は堕天使に捕まった友達のアーシアを救い出し、レイナーレを一発ブン殴ってやった!!!!

 

 

そして俺達は外へ飛んで行ったレイナーレを探しに教会の外へ出ていた。もしアイツを逃したらまたアーシアみたいに誰かが襲われるかもしれない!

 

その為にも早くレイナーレを捕まえないといけないんだ!それなのだが、アーシア以外の皆は何やら深刻そうな顔をしている。

 

「どうしたんですか部長。さっきも言ってましたけど『何かがいる』ってどう言う事ですか?」

 

「イッセー貴方はレイナーレと戦っている最中、何か感じなかったかしら?」

 

そう言えば、レイナーレと戦っている時なんかこう、ピリピリするようなものを感じたな。

そしてソレを感じた後、何故か不思議と力が湧いたんだよな。何でだ?

すると部長の隣にいる朱乃さんが口を開く。

 

「先程、他の堕天使が気絶した状態で捕縛されていました。おそらくその『何か』がやったのでしょう。堕天使達の状態を見るからに、ほぼ同時に加え一撃で堕天使達を倒したのでしょう」

 

な、何だそりゃ⁉︎そんなヤバイ奴が居るってのか⁉︎俺、堕天使に殺されかけたってのに……。

もしも戦うとなると、俺とアーシアじゃあ敵わないかもしれない。

クソッ!俺は足手まといかよ!

 

「イッセー、貴方今、自分が足手まといと思わなかったかしら?大丈夫、貴方の左手には神や魔王すらも屠るとされる13の神器の内1つの【赤龍帝の籠手(ブースデッド・ギア)】の持ち主なのよ。もっと自信を持ちなさい」

 

そ、そうだった!俺は神器はメチャクチャ強い神器を持っていたんだった!

よし!こうなったら腹をくくるしかねぇ!!!

この力を使って俺は!ハーレム王になる!!!

 

 

━━カチャン…カチャン…カチャン……

 

 

「「「「「「 ! 」」」」」」

 

俺がそう意気込んで居ると謎の音が響いて来た。金属がぶつかり合うような音に聞こえるが、不気味さを感じさせる。

まるで、死神が歩いてくるような音だ。俺達はその音が聞こえてくる方向に対して戦闘体勢となる。俺は勿論アーシアの前に立つ。

 

その音は徐々に近付き、そして音の正体が現れる。

 

ソイツは赤と黒と銀の身体をしており、右脚には謎のグリーブが装着されてあり、満月のように輝くソイツの複眼はまるでこちらの全てが見透かされているような印象を受けてしまう。

 

俺はソイツを知っている。

 

だが、それ以上にソイツは見覚えのある長い黒髪の黒い翼を持つ女性を抱きかかえていたのだ。

 

「お前は……ってレイナーレ!!??」

 

そう、頭から血を流しているレイナーレだった。どうやら気絶している状態で死んではいないようだ。

部長は俺達の前に立ち、ソイツに話しかける。

 

「あら、誰だか知らないけれどわざわざ堕天使を運んで来てくれてありがとう」

 

『……………』

 

「取り敢えず、その堕天使をこちらに渡して貰えないかしら?」

 

『……………』

 

す、すげぇ息苦しい………!

てか、アイツだんまり決め込んでやがる!アイツの圧倒的なプレッシャーがヤバイけど、ソレに屈しない部長もすげぇ!!

 

だけどアイツって………俺を助けてくれた………

 

「あら、いつまでだんまりを決め込むつもりかしら。それとも━━━」

 

『この人を渡したとして、貴方達はどうするつもりだ?』

 

「「「「「「 ⁉︎ 」」」」」」

 

シャ、シャァベッタァァァァァァァァァァァァア!!??

 

…………って、普通喋るわ!アイツ俺を助けてくれた時も喋ってたし!!

部長は冷汗を掻きつつも平静さを保つ。

 

「あら、それは貴方のご想像にお任せするわ………と言いたいところだけどその堕天使は私の可愛い兵士を痛めつけてくれたわ。それに加え悪魔の領地で好き勝手してくれたからそれ相応の罰を与えないといけないわ」

 

部、部長!!!俺の為にありがとうございます!

それに……レイナーレはアーシアの神器を抜こうとしたんだ。俺も部長の言う通りだと思う。

 

『……成る程。大体分かった』

 

「分かってくれたのなら話は早いわ。堕天使レイナーレをこちらに━━」

 

『だが断る』

 

なん………だと…………⁉︎

 

「あら、どう言う事かしら?返答次第では私達は貴方と戦わなければいけないわ」

 

部長は強気で言う。

アイツ何のつもりなんだ⁉︎レイナーレを庇うなんて!俺を助けてくれたのには何か理由があったのか?

 

『僕は誰かが死ぬ事に対して悲しむ事が出来ない。それは僕自身が()()()だからだろう。命に対して何も思わないんだ』

 

ど、どう言う事だ?命に対して何も思わないって………何が言いたいんだアイツ?

 

『ハッキリ言えば堕天使の1人や2人、死んだところで何も思わない』

 

「………それで、何が言いたいのかしら」

 

『……僕のような化け物は誰かが死ぬ事に対して何も思わない。だがそこの2人はこの堕天使が死んで欲しいか聞きたい』

 

ソイツが指差したのは俺の背後にいるアーシアと……俺ェ!!??

お、俺達がどう思うのかだって⁉︎そんなの急に言われても……。

 

すると部長はこちらに振り向く。

 

「イッセー、アーシア。貴方達に聞くわ、貴方達はレイナーレを許すのかしら?それとも罰を与えるか。どうするのかしら?」

 

部長は俺達にレイナーレをどうするか聞いてくる。レイナーレを生かすも殺すも俺達次第って事か。

 

俺は………

 

「…………俺は、アーシアも助けられたし一発殴れたんで気が済みました………でも、ぶっちゃけで言うと許せないっす。もしレイナーレがまた誰かを襲うと思うと、気が気でなりません」

 

「そう………アーシアはどう思うのかしら」

 

部長は俺の言葉に対して頷くと次はアーシアの方に向き直った。

 

「私は……イッセーさんが生きてくれて充分です。それに少しの間ですがお世話になったお礼です。どうかレイナーレさんを殺さないであげてくれませんか?」

 

アーシア………あんな目に遭ったのに……。

 

「………ふふ、分かったわ。朱乃」

 

「はい。堕天使達は魔王様の方で引き取ってもらいましょう。それに色々な事も聞かなければなりませんし」

 

魔王様が引き取ってくれるのか。色々あったけどこれで終わりなのかな?

 

………ってアレ⁉︎アイツの姿が見当たらない⁉︎レイナーレを置いて何処に行きやがった⁉︎

 

『それは安心した』

 

するとアイツはいつの間にか教会の屋根の上に立っていた。

アイツ!俺達が見ていない隙にあんな所に移動したのか⁉︎

 

アイツはそのまま俺達に話しかけてくる。

 

『シスターの前で誰も殺さずに済んだ』

 

……アイツ⁉︎もしかしてアーシアを気遣ったのか⁉︎やっぱり良い奴なのか⁉︎俺の事も助けてくれたし。

 

 

『それに……赤龍帝が初めて恋した女性だったから……』

 

 

!!!

 

 

そう一言呟くと、アイツ……コウモリ男は何処かへと飛んで行った。

 

 

………そうか。言われてみればその通りだったな。

 

 

 

━━━バイバイ俺の初恋。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

東崎宅前

 

そこにコウモリ男は周囲を見渡しながら歩いていた。そして家の庭へと入ると力が抜けるかのように尻餅をつく。

 

「………あぁ〜〜緊張した〜〜〜〜〜ッ!!!」

 

そう一言呟くと、キバは変身を解除するの元の人間の姿へと変わる。そしてベルトに装着されていたキバットがキバ、もとい東崎の周りを飛びながら話しかけてくる。

 

「いやぁ、相変わらずお前はお人好しだねぇ。良いのか?堕天使共を生かしたままにしてよ」

 

「いや、だってさ。夕麻さん……じゃなくて、レイナーレさんが飛び出してきたとはいえ、思いっきり轢いちゃったからなぁ。て言うかアレ(マシンキバー)って絶対に堕天使に対してなんか恨み持ってるよね⁉︎」

 

「あぁー、そういや堕天使の総督に色々弄られたからなぁ。そのせいだろ」

 

「組織に改造された復讐って感じ?いつからバイクがライダーの設定を引き継いだんだろ………」

 

東崎は頭に手を当てながら呟く。

するとブルンブルンと音を立てながら庭に赤いバイクが入ってくる。だが、そのバイクには誰も乗っておらず、1人でに動いていたのだ。

 

「よしよし良い子だ。もう勝手に堕天使に体当たりするのは駄目だからね」

 

東崎はそう言うと、置いてあった布のシートをマシンキバーに被せる。

 

「それにしても、わざわざバイクとは別に帰るって…んな事しなくても良いだろ」

 

「でもさ、レイナーレさんを轢いた事がバレたらいけないから……」

 

「……ハァ、まぁいいか。とにかくもう夜も遅いし飯にしようぜ?家臣共が腹を空かせて待ってるぜ?」

 

「そうだね。今日はシチューにでもするかなぁ」

 

月に照らされながら東崎とキバットは玄関へと向かって行った。

 

彼の名前は東崎莉紅。

この物語は駒王学園の生徒にしてファンガイアと人間のハーフであり、King of Vampire(キバ)でもある存在が悪魔、堕天使、天使達と交わりながらキバって行く少し変わったお話。

 

 




とある場所。
紅の髪を持った男性とまるで雪のような白髪の男性が話していた。

「いやぁ、済まないね。わざわざ呼び出してしまって」

「御託はいい、それよりもレイナーレ達はこちらで預からせてもらう、そして適当な処置を与えておく」

「そうか、それは助かる。……ところでアザゼルはどんな感じだい?」

「相変わらず神器の研究に没頭している。どうせ後々に黒歴史になるのだからやめとけと言っているんだがな」

「ハハハ君も相変わらずだね。だが『君の相棒』もそのアザゼルによって作られた物だろう?」

「フン……キバが現れたそうだな?」

「あぁ、それに赤龍帝もだ。まるでお互いが共鳴し合うように現れたね。と言っても2人共先代の様にはならないと思うよ?」

「そうか…………忠告しておいてやる。最近コカビエルがコソコソとしている。そちら側に何か仕掛けてくる可能性がある。気を付けておけ」

「ご忠告ありがとう。それじゃあまたの機会に会うとしよう」

紅の髪の男性の足元に魔法陣を展開されたと思うと既にその男性の姿は無かった。
白髪の男はフンと鼻を鳴らすとその場を後にする。

すると彼の周りを白いコウモリがグルグルと飛ぶ。

「帰るぞ。アザゼルが待っている」

『行こうか、華麗に激しく!』









こんな幼稚な文章力をした作品を見てくださり、ありがとうございます。
よろしければ感想、評価をよろしくお願いします。


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2章 戦闘校舎のフェニックス
9話 プロローグに繋がっているお話


読者の皆様のおかげで一瞬でしたがランキング入りを果たせました。 評価をしてくださった方々ありがとうございます。
ですが、僕のようなクソ文才のゴミ作者の作品がランキング入りして良かったのでしょうか?
評価バー自体も最近は赤色だったですが、一気にオレンジ色となり、物凄く安心しました。

こんな僕の小説ですが、皆様のご期待に添えるよう努力していきたいと思います。

ここからプロローグの『プロローグっぽいもの』に繋がります。プロローグを見てない方はそちらも見てもらうと良いかもしれません。
でもプロローグであるプロローグっぽいものを見てなくても多分大丈夫かもしれません。
まぁ、こんなクソ作者が書いたプロローグ紛いのものなんてプロローグでは無いと思います。
そもそも1章自体がプロローグよりもプロローグしていると思います。と言うかプロローグと言う単語を出しまくった所為でプロローグがプロローグのゲシュタルト崩壊を起こし、プロローグのループに陥っているのですが、そもそもプロローグのループって何でしょうか?プロローグって言うのはプロローグでプロローグがプロローグでプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグにプロローグプロローグをプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグしてプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグがプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグプロローグ


















はい、茶番はこれくらいにして本文をどうぞ。



とある一室に音色が響く。

なだらかな弦楽のメロディが風のように律動を生み出す。

高い音と低い音が二度、急に続き響いた。その音楽は身体の芯に突き刺さり聴いた者を魅了させる。

 

そして、何十分が経過しただろうか?いや、自分自身では数秒の出来事だった。

 

灯に照らされ、美しく輝く鼈甲色のバイオリンから出る音色はピタリと止め、弦楽器での演奏を終えた僕は「ふぅ…」と息を吐く。

 

すると周囲から拍手喝采が嵐のように捲き起こり、僕を褒め称えるいくつもの声が響く。

 

 

何故、こうなってしまったのか。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

とある日、いつものように僕は鞄の中に入り込んだキバットと共に学校へ行っていた。

だが、その日はいつもの朝とは違った。今日はどうやら転校生が来るようなのだ。クラスの皆は朝からその話題に夢中で、桐生さんや松田君、元浜君も可愛い女子が来るんじゃ無いかと期待しているようだった。

 

イッセー君と転校生についての話をしていると、門矢先生と共に見覚えのある金髪の女の子が教室に入って来たのだ。

 

「お前らに勿体無い程、新しいクラスメイトを紹介するぞ」

 

「アーシア・アルジェントと申します。よろしくお願いします」

 

なんと、シスターである筈のアーシアさんが転校して来たのだ。

と言うか、いつの間に日本語をマスターしたのだろうか?

 

すると周りの生徒(主に男子)の歓声が凄かった。つーか物凄くうるさい。オーバーリアクション過ぎね?

 

「歓迎!歓迎しようぜ!」

 

「歓迎しよう……盛大な!」

 

「アーシアたぁぁぁぁぁん!!!」

 

「僕と契約して魔法少女になってよ」

 

いや、まぁこんな二次元みたいな展開、そうそうお目にかからないかなぁ。分からなくもないけどさ。

 

「それじゃあ東崎、 お前のバイオリンの演奏で歓迎してやれ」

 

あれーーーーーーーーー!!??

いつの間にそんな話に⁉︎何で僕やんなきゃならないの⁉︎この先生って自己中の俺様キャラだからなぁ……何で教師になったんだろ。

 

「どうした?お前の女っぽい名前は伊達なのか?」

 

ハハハ、よろしいならば戦争だな。

 

「おい、東崎を取り押えろ!!!暴れだしたぞ!」

 

「コイツ。名前の事に関してはスッゴイ繊細なんだよ!」

 

うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!

HA☆NA☆SE!!!おのれ、ゆ゛る゛さ゛ん゛‼︎

リボルケインで爆発四散させてやる!!!

 

「東崎の所為で遅れたが授業を始めるぞ。ほらお前ら、さっさと席に着け」

 

誰の所為だコラァァァァァァァァァアッ!!!

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

と言う感じで昼休みにアーシアさんにバイオリンの演奏を披露する事となった。

だが気が付くと大勢の生徒が集まっていて、いつの間にか大規模なバイオリンの演奏会となっていた。

 

いや、マジでどうしてこうなった⁉︎

アーシアさんの為にやってたのに何でこんな集まんの⁉︎おかしいでしょ!

すると桐生さんは眼鏡をクイッと上げて一言呟く。

 

「いやぁー、以外と噂って早く広まるのね」

 

 

……………

 

 

……………

 

 

……………

 

 

……………

 

 

……………

 

 

……………

 

 

 

あんたの所為かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああッ!!!

 

いや、まぁ?途中から「あ、なんか楽しくなって来た」的な事は思ったけども!って、桐生さん僕の演奏で何お金取ってんの⁉︎いや、これアーシアさんの歓迎会だったよね⁉︎

 

………え?お金は山分け?

 

……………今回だけは見逃してあげよう。

 

 

 

 

▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

放課後、旧校舎

 

 

「東崎さんの演奏素晴らしかったです!」

 

「そうだろ?アイツあんな才能持ってるのにソッチの道に興味が無いみたいでさ。いっつも家でバイオリンばっか作ってんだよな……」

 

歓迎会を終えたイッセーとアーシアは2人で廊下を歩いていた。

ちなみに東崎はいつも通り真っ直ぐ家に帰る直前、別れの挨拶の際に「夜は焼肉っしょ!!」と謎のポーズを残しハイテンションで走り去って行った。

 

「やぁ、イッセー君。東崎君の演奏聞かせてもらったよ」

 

「はい、とても素晴らしかったです」

 

すると廊下を歩いている途中に、木場と塔城と会う。

どうやら2人もバイオリンの演奏を聞いていた模様だ。そして扉を開けるとそこにはリアスと姫島の2人が優雅に紅茶を飲んでいた。

 

「アーシア。学園生活初日はどうだったかしら?」

 

「はい!とても楽しめました。東崎さんのバイオリンの演奏も素晴らしかったです!」

 

「あらあらフフフ。確かにあのバイオリンの技術はとても素晴らしいと思いましたわ」

 

「えぇ、とても美しい音色だったわ。あんな音色を出すにはバイオリンそのものを知り尽くし、何年もの鍛錬を積まなければ辿り着けないわ」

 

「え⁉︎そんなに凄いんすか東崎って⁉︎」

 

「えぇ。悪魔側にも数多く存在しない。まさに100年に一度の天才と言っても過言では無いわね」

 

イッセーは自分の親友がそんな才能の持ち主だとは思わず、驚愕を露わにする。

 

「ま、マジか……子供の頃からやけに上手だなーーとは思ってたがそこまでとは……」

 

「あぁ、これも神による導きなのですね━━うぅっ!!」

 

するとアーシアは突如として頭を抑える。

それもその筈、彼女は既に悪魔なのだから。堕天使の一件からリアスはアーシアの魔力に長けた才能と神器、そして彼女自身の居場所を作る為に自身の眷属にならないかと招き、アーシアはそれを承諾し悪魔へ転生を果たしたのだ。

 

それからアーシアはイッセーの家に居候する事となったのだが、悪魔へ転生を果たしたと言う事は今まで彼女の馴染み深い聖書や、聖水、神へのお祈りは全てダメージとなってしまうのだ。

 

だが、不便ながらも彼女は幸せそうに赤龍帝であるイッセーの隣で毎日を過ごしている事には変わりない。

 

イッセーはそんなアーシアに対して苦笑いする。

 

(ははは……まぁ、確かにアイツは色々と凄いからなぁ。バイオリンのニスの為にハイテンションで山奥へ突っ込んだ事もあるし。俺の相談に乗った事もあるし。レイナーレの件だって勿論━━)

 

 

突如としてイッセーの頭の中に疑問が浮かび上がる。

 

 

(あれ、待てよ?今更だけど何でアイツだけ夕麻ちゃん(レイナーレ)の事を知ってたんだ?他の皆は記憶を操作された筈なのに何故⁉︎)

 

「イッセー先輩……?」

 

その様子をおかしく思った塔城はイッセーに声をかけるがイッセーはブツブツと何かを呟くだけで何も答えなかった。

 

「……イッセー。………イッセー!!!」

 

「う、うわぁ!!?は、はい!部長!」

 

「どうしたのかしら貴方らしく無い」

 

「え、えっと……実は……」

 

イッセーは東崎が堕天使の記憶操作に影響されていなかった事をリアスに打ち明けた。

その場の全員は驚愕の表情を露わにする。

 

「それは本当なのかしら?」

 

「は、はい。今まで気にも止めてなかったんすけど……」

 

「成る程………確かめる必要があるわね…………」

 

そうリアスが呟くと魔法陣が展開されそこから一匹の蝙蝠が出現し、窓の外へと飛んで行く。

リアスはその蝙蝠、自身の使い魔を見送るとオカルト研究部メンバーの面々を一通り眺めた後、口を開く。

 

 

「さて………皆。はぐれ悪魔の討伐依頼が来ているわ」

 

 

そして彼女達(悪魔達)の夜が近づく。

 

 

 

 

▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

オッス!俺兵藤一誠!俺達は今はぐれ悪魔を退治しにずっと昔から使われていない廃工場に来ているんだ。

 

前の俺は皆のお荷物だったけど今の俺は違う!それにアーシアの前で情け無い姿を見せられないからな!

よーし!ハーレム王目指して頑張るぞおおおおおおお!!!

 

「そういえばイッセーさん。あの人は誰だったんでしょうか?」

 

「あの人って……あのコウモリ男の野郎か」

 

アーシアが言ってるのは俺を窮地から救ってくれたコウモリ男のことだ。

悪魔である俺を助けたり、堕天使であるレイナーレを助けたりと目的は不明の謎の存在だ。

 

本当に何者なんだろうな?部長や木場達もあのコウモリ男見てから妙に様子がおかしいんだよな………。

 

「さぁ、着いたわよ。この工場をはぐれ悪魔が根城にしているとの情報だわ」

 

部長がそう言うと俺達はすぐさまフォーメーションを組む。木場、小猫ちゃんを前衛に、部長、朱乃さん、アーシアを後衛に、俺はサポート役として臨機応変の中衛の役割となっている。

 

よーし、今回は部長達の為に役に立ってやるぞ!!!

そう俺が意気込んでいると

 

 

━━ドクン!!!

 

 

刹那、謎の魔力を工場内から感じる。

な、何ださっきの魔力は………!!!い、いや俺はこの魔力を知ってる!!!

 

「ぶ、部長!」

 

「分かってるわ!!皆、慎重に行きましょう……!」

 

部長の言葉に俺を含めた全員は頷き、工場の中へと侵入する。そして、そこに居たのは蜘蛛のような、鬼のような、額には小さな女の子の顔が出ているはぐれ悪魔だった。

そしてその悪魔に対峙するのは所々に鎖を巻き付け、月のような金色の複眼が輝くコウモリ男だった。

 

そしてその2体の戦いは一方的なものだった。

コウモリ男は木場のスピードには劣るものの、その俊敏さを生かし飛び膝蹴り、パンチのラッシュ、回し蹴りなどの高度な技を次々と繰り出しはぐれ悪魔を追い詰めていく。

 

な、何だよコレ……!あのコウモリ男、強い………!!!

 

 

はぐれ悪魔はコウモリ男の攻撃を無理矢理押し退けると攻撃に転じ、鋭い爪をコウモリ男に向かって振りかぶる。

 

あ、危ない!!!

 

そう思った俺だったがコウモリ男はその攻撃を軽々と躱し、カウンター気味にはぐれ悪魔の腹部に蹴りをお見舞いしたのだ!

 

「ハァッ!!!」

 

ズドン!!!

 

『グォオォォッ!!!??』

 

まるでバズーカ砲が当たったのではないかという程の音が廃工場内に響く。

コウモリ男の蹴りによって化け物は壁に叩きつけられ、あまりの衝撃だったのか化け物の身体は壁にめり込んでいた。

 

『あ、が……ゴポッがっ………………』

 

そしてはぐれ悪魔は口から血を吐き出し、そのままガクリと意識を失った。

 

う、嘘だろ?あんなに強いなんて……。もしもあの時、俺達がヤツと戦っていたらどうなっていたんだ?

部長達なら負けないと思うけど……もし俺が戦っていたら確実に負けていた。

すると、俺達はコウモリ男は腰に巻き付いているベルトから何かを取り出そうとしているのに気付いた。

 

すると部長はその場から急に動き始めた。

 

「……接触して見る必要があるわね」

 

そう言うと部長はそのコウモリ男に近付いて行く。

木場達も部長に着いて行くようだ。お、俺だって部長をお守りするんだ!!!

俺は兵士だけど木場だけに騎士役を勤めさせてたまるか!!

 

部長はコウモリ男に話しかける。

 

「あなた………一体何者なの?」

 

「!」

 

こ、こっちに気付いた!!!コウモリ男の複眼がギラリと輝く。

うぅ、やっぱり威圧感がヤバイ!

あ、あれ?だけど何だろう?なんか懐かしいような感覚が……。

 

一向に喋らないコウモリ男に対して部長は苛立ち始めたのか、部長はもう一度コウモリ男に話しかける。

 

「聞こえていないのかしら?もう一度言うわ……あなたは一体何者なの………?」

 

「…………」

 

コウモリ男は黙ったままだ。本当に何を考えているのか分からねぇな………。なんて言うかハナから俺達が眼中に無いって感じだ。

するとコウモリ男は背を向け、歩き出す。

なっ、結局だんまりかよ!……ってか逃げる気か⁉︎

 

「ッ!!待ちなさい!朱乃!!」

 

「えぇ!!」

 

部長は朱乃さんに指示を仰ぐと朱乃さんの手から電撃が放たれる!!

流石のコウモリ男も朱乃さんの電撃を避けれまい!

そう思った矢先、コウモリ男は朱乃さんの電撃を振り払ったのだ。

アイツ電撃を防ぎやがった!?

つーか背を向いていたってのにジャストタイミングで電撃を振り払うって……どんな反応速度したんだよ⁉︎

 

振り払われた電撃により火花が飛び散り、その場から煙が発生する。

そして煙が晴れた時にはコウモリ男の姿は消えていた。

 

マジで何だったんだよアイツ……。俺がそう思っていると木場が部長達に何かを伝えているのに気付く。

 

「部長、これを見てください」

 

「これは⁉︎」

 

俺達が見たのは先程のコウモリ男が倒したはぐれ悪魔だった。はぐれ悪魔は見事にダウンしており、コウモリ男の攻撃力がどれ程のものか一目瞭然だった。

 

「すっげぇ……これってアレがやったのか」

 

「イッセー君、驚くところはソコじゃ無いんだ。はぐれ悪魔じゃなくて、はぐれ悪魔がめり込んでいる壁をよく見てほしい」

 

ハァ?はぐれ悪魔がめり込んでいる壁ってどう言う事だ?

そう思った俺はその壁を良く見ると、木場の言いたいことをすぐ理解した。隣にいるアーシアも俺と同じく驚いているだろう。

 

「なッ⁉︎」

 

そう、化け物を中心に"蝙蝠のが翼を広げたような紋章"が壁に刻まれているのだ。

そして、その紋章からは只ならぬ力を、おぞましさを感じ、俺は冷汗が止まらなかった。

 

「間違いない………やっぱりアレが例の"コウモリ男"なんですよ!部長!!!」

 

例のコウモリ男。

それは俺達オカルト研究部でも話題となっており最近、駒王町で都市伝説と化けていると存在であり、何やら紅いバイクを乗り回しているというものであり、俺を助けてくれた、堕天使を助けたコウモリ男と同じなのだと分かる。

部長はそんな俺の言葉を頷くと口を開く。

 

「えぇ、その通りねイッセー。だけどアレの名前はコウモリ男なんかじゃ無いわ」

 

「え?」

 

俺は不意にそんな声が出てしまった。そんな俺を見ながら部長は話を続ける。

 

「あなたを度々救って来たアレは都市伝説でコウモリ男と呼ばれている。だけど違うアレの名前は【キバ】。ファンガイアの王よ」

 

 

「ファ、ファンガイア?キバ?な、何ですかそれ」

 

「説明するのは難しいけど……そうねファンガイアは【滅びた筈の種族】いえ【命を喰らう化物】。【吸血鬼の真祖】でもあるかしら?でも分かりやすく言うと……【人類の天敵】ね」

 

人類の天敵……!!!

そう言われた俺はゴクリと唾を飲み込む。先程、俺達の前にその人類の天敵が居たと思うとゾッとしてしまう。

 

 

「そして【キバ】と言うのはそのファンガイアの頂点に君臨する存在。LORD(君主)よ」

 

 

 

 

 

 

 





とある場所に2人の男性が居た。
1人は金色の翼を持つ金髪の美男子。そしてもう1人は黒髪の熟練の戦士と言っても過言では無い目つきをしており、金髪の美男子に対して膝をついている男性だ。

「それは本当ですか?」

「えぇ、間違いありません。カトリック側で保管されていた聖剣の1つ盗まれました」

黒髪の男性は驚愕の表情を露わにする。

「……まさかエクスカリバーが⁉︎」

「えぇ、犯人は未だ逃亡中でありその居所が掴めておりません」

「くっ…まさか教会の管理する聖剣6本の内1本を……!」

「落ち着いて下さい。それで聖剣に関して何か心当たりはありませんか?」

黒髪の男性は金髪の男性に激情を鎮められ、落ち着く。

「……異端とされ追放された大司教バルパー・ガリレイ。あの者は『聖剣計画』首謀者。何らかの関与をしている可能性が高いと思います」

「確かにその通りですね。……貴方にお願いしたいことがあります」

「ハッ、今すぐバルパーの捜索を……!」

「いえ、貴方にお願いしたいのはエクスカリバーを捜索する人材を育成する事です」

「育成……ですか?」

「えぇ。実は日本で【キバ】が現れたとの情報が」

黒髪の男性は先程以上の驚愕を露わにする。

「ッ!!??【キバ】が!」

「はい、その為にも未知への脅威を迎え撃つ戦士。『Intercept X Attacker』の完成を急がねばなりません。試作品(プロトタイプ)では人体に影響を及ぼしてしまいます。来たる日の為にもどうか、貴方の力を貸して貰えないでしょうか?」

「……ハイ、勿論ですとも。一刻も早く完成させる為にも戦い続けてみせます。そしてその人材なのですが私に心当たりがあります。今はまだ未熟な部分がありますが、どうか私にお任せ下さい」

「ありがとうございます」

そうお礼を言った後、金髪の男性はその場所を後にする。
そしてその場に残った黒髪の男性は呟く。

「【エクスカリバー】それに【キバ】……嫌な予感がする。果たしてあの2人に『IXA』を任せられるのだろうか……」





一方その頃

「何ですってぇぇぇぇえ!!!この異教徒!!」

「何をこの異教徒!!これだからプロテスタントは!!」

「何ぉぉぉぉおおおおこの古臭いバ カトリック!!!」

「言ったなこのおっぱいオバケ!!!」

「それはアンタも同じでしょうが!このおっぱいオバケ!!!」

青髪ショートと栗毛ツインテールが喧嘩していた。






こんなオチになってしまったのは私の責任だ。だが私は謝らない。

よろしければ感想、評価をよろしくお願いします。


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10話 この後、滅茶苦茶(ry

ランキングを見たら3位に自分の小説の名前が載っていたでござる。
同じ名前の作品なんてあるんだなーと思いきや自分の小説じゃねーか。
どうして軽い気持ちで投稿した自分の作品なんかがランキングに入ったのだろうか?
そもそも評価が橙から黄に変わっている時点で自分の力はそこまでだと思うのですが。

…………荷が重過ぎる。

うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああっ!!!
プレッシャーがヤバイィィィィィィィィィィイイイイイイイイッ!!!

タダでさえ指摘コメントや誤字報告だけで心が折れそうになるってのにもぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおッ!!!

……よし、頑張ろう。



うーん、今更ながら金貰った所為でハイテンションになったのは良くなかったよね。

何というか、転生を果たして既に精神年齢は30歳を超えている筈なのに何でだろうな?やっぱり肉体に精神年齢が引っ張られてる〜〜とか?

……もしかして前世ではロクに友人がいなかったからとか?

 

ハッハッハッ。いやいやまさかそんな事有るはず無いよなぁ。

だって前世じゃあ友人の1人や2人………あ、あれ?おかしいな?僕の記憶に該当する人物が居ない……。

 

「…………」

 

「おい、項垂れてるところ悪いがさっさと起きてくれねぇか?」

 

「あ、うん。さっきまで辛い現実と直面していてさ……」

 

「ハァ?よく分からねぇが、確かに辛い現実ってのは否定出来ねぇな」

 

「確かに……いつの間に僕達って此処に来ていたんだっけ?」

 

僕達ご歩いているこの知らない道、謎の街灯、そして廃棄されたであろう工場が目の前にあった。

確か僕はハイテンションで家に帰ってた筈なんだけどなぁ。いやぁその場のノリに身を任せるってのは怖いもんだな。

 

「ふぅん……こりゃあ俺達は無意識に誘い込まれたのかも知れないな」

 

「無意識?」

 

「何らかの微弱な魔力影響され、此処に来るように自分達の足で来ちまったんだよ。ったく……金に目が眩むってのはこの事か?お得意様からのお金は受け取らないって言ってた癖に」

 

しょうがないでしょうが。僕はアレだぞ?数万円とかならいざ知らず数十万円とかスケールが大き過ぎるんだよ。

そもそも、高校生が数十万円持つ事自体がおかしいと思うんだよ。

 

話が逸れたけどその微弱な魔力の正体って何だろうか?

異世界って感じだからもしかするとクトゥルフ神話系のモンスターじゃないよね(震え声)

いきなりショゴスとか出て来たら嫌なんだけど。

 

あ、でもニャル様には会ってみたいかm━━あ、やっぱりやめておこう。SAN値ピンチになる。

 

「取り敢えず、その魔力?の正体を突き止めてみる?」

 

「おっ、乗り気か莉紅?悪くないな。俺達を誘ったていう愚者の姿を拝見させてもらうとするか」

 

……なんかキバットって相変わらず僕や自分以外の種族見下してるな。

まぁ、人だって人種差別するし前世で見た仮面ライダーキバだって、ファンガイアは人間を見下していたからな。

生物が他の種族を見下すって言うのは言っちゃ悪いけど当たり前の事かも知れないな……。

 

「んお?おい、莉紅。あそこに誰かいるぜ?」

 

キバットに言われ、視線を移すとそこには小さな女の子が居た。

何処にでも居そうな女の子。だがそれが逆に不気味、異常だった。普通の女の子がこんな所に居るのだろうか?更にあの女の子から魔力を感じる。

 

「おい莉紅、どうやらあの嬢ちゃんが俺達を此処に誘い込んだらしいぜ?」

 

キバットもその魔力を感じたのだろう。あの女の子が只者では無い事をすぐに理解した。

でも今は、そんな事はどうでもいいんだ。重要な事じゃない。キバットは無意識に誘い込まれたと言っていた。

 

僕はあの小さな女の子に魔力によってホイホイ着いて来てしまった。

 

何が言いたいのかと言うと━━━

 

「あぁー………成る程。僕って意識してなかったけどロリコンだったんだなぁ………」

 

「え?お前いきなり何言ってんの?」

 

「いやだってさ、微弱な魔力を感じてあんな小さな女の子の所に行くなんて天性のロリコンだよ?ははは……コレで僕も元浜君と同士……いや、エロ三人組改めエロ四人組かー………」

 

「おいおい、元気出せって……お前は誇り高きファンガイアの王!キバなんだぜ?別にお前がそんな幼女愛好家のペドフェリア変態ロリコン野郎だったとしても俺は別に気にしねぇよ」

 

「絶対フォローするつもりないでしょソレェ!!!」

 

あーあ、マジでショックだよ……。僕自身ロリコンって自覚無いんだけど……ハッ⁉︎ま、まさか塔城さんと色々甘い物たべて行く内にロリコンと化していったと言うのか………⁉︎

 

…………もういいや。どうにでもなぁ〜〜れ。

 

俺はその小さな女の子の元へ歩いて行く。

天井のあちこちにが壊れている為なのか月の光が漏れ出し神秘的な光景となっている。

ちなみにキバットにはそこら辺で待機してもらう事にした。

だって急に喋るコウモリなんて現れたら確実に怖がるじゃん?

 

とりあえず、小さな女の子の元に来たものの……。

 

「……………」

 

どうしよう。どうやって女の子に声をかければ良いんだろうなぁ……。

 

 

━━お嬢ちゃん、こんな所でどうしたんだい?こんな所にいたら危ないよ?

 

……なんか声を掛けているこっちの方が危ない気がする。

 

それじゃあ、

 

━━グヘヘ、お兄さんと一緒に遊ばないか?

 

ハイ、アウトー。完璧に事案ですよコレ。

それじゃあ………これはどうだろうか?

 

━━ンフッフフ、お菓子好きかい?

━━うん、大好きSA!

 

あ、頭の中に爆弾があるなコレ。ダメだ、話しかけた瞬間人生が破綻しそうだ。あー、どうしようかな……。

 

僕がそう悩んでいると、女の子がこちらを振り返る。

 

『お兄ちゃん……どうしたの…?』

 

女の子の方がこちらへと歩み寄ってくる。

うわぁ、凄いなこの子。見ず知らずの人にしっかり話し掛けてくるなんて……。

 

『こんなところにいると危ないよお兄ちゃん………』

 

え?もしかして逆に心配されてるの?

………えぇー、マジか。物凄くショックだ…。見た目は高校生だけど精神年齢は大人だから尚更ショックなんだけど……。

 

『こんなところにいたら危ないよ…危ないよ 』

 

あー、うん。分かった。分かったからもうやめてくれ。その言葉は傷口に塩を塗る行為と同じなんだよ。

やめて、そんな目で僕を見るのはやめて!!!

 

『危ないよ 危ないよ危ない』

 

アレ?なんか……おかしく無い?

凄くイヤーな予感がするんだけど……気の所為?

 

 

 

〜〜bgm【旧支配者のキャロル】

 

 

『危ない危ない危ない危ない危ない危ない危ない危ない危ない危ない危ない危ない危ない危ない死ね危ない危ない危ない危ない危ない死ね危ない危ない殺す危ない危ない危ない危ない危ない危ない食わせろ危ない危ない死ね危ない危ないない死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね危ない危ない食わせろ食わせろ食わせろ死ね死ね死ね死ね殺す』

 

 

 

すると女の子の背中からグジュルグジュルと不快な音を出しながら肉が溢れて出てくる。そして女の子は「アッ…アッ…アッ…」と声を出しながらその肉に取り込まれて行き、その肉からは巨大な腕が脚が鋭い牙が爪が尾が出てくる。

 

 

 

 

( ゚д゚)

 

 

 

 

 

SANチェック0/1d6→成功

 

 

 

……え、マジで?もしかして僕クトゥルフ神話が関わってる世界に来てるの?

なんかSANチェックされたんですけど?

て言うか何なの?こんなとんでもない神話生物(幼女)を目撃したのに、イッセー君に彼女が出来た時と同じって………。

 

そう思っていると目の前の幼女(神話生物)が巨大な爪を振り回してくる。えぇー、まさかの戦闘に入るパターン⁉︎これって"逃げる"を選択できないの?

 

そう僕が呑気に思っていると何処からともなくスタンバっていたコウモリのキバットがやって来る。

 

「オラオラッーーーーー!!!勝手に食おうとしてんじゃねーーっ!!」

 

キバットは幼女(神話生物)に体当たり、キック、噛みつきをお見舞いする。アレ、結構怯んでるな?もしかして見かけによらず弱いパターン?

 

あれ?そう言えばキバットバットⅢ世のスペックって爪の握力は500㎏、顎の力は1tだったような………。

 

今更だけどキバットだけで倒せるんじゃない?この神話生物。だってキバットの顎の力って1tだよ?クウガやG3のパンチ力並だよ?

 

「可愛い顔して化け物とは、綺麗な花にはトゲがあるってか⁉︎」

 

うん、まぁ確かにそこは否定しないよ。その化物を倒せそうなコウモリが今目の前でパタパタと飛んでるんだよなぁ……。

 

「まぁ、いいか」

 

まぁ、いいか。

とにかくこの幼女(神話生物)を何とかしないとだよね。

 

とりあえず

 

 

「キバって行くぜ!!」

 

━━キバって行こうか!

 

 

僕はキバットの1t顎の力によって手が噛みちぎられるんじゃないかとヒヤヒヤさせられながら、キバットの牙を手に食い込ませる。

 

「ガブッ!!!」

 

 

 

━━ドクン!!

 

 

キバットから起爆剤である魔皇力『アクティブフォース』が注入される。そして僕の身体の奥底から"ファンガイアとしての力"が沸々と湧き出てくる。

恐らく僕の身体中にはビキビキと植物のの様な、ステンドグラスのような紋様が浮き出て来ているだろう。

 

━━ジャララララララララッ!!!

 

更に僕の腰に鎖がまかれ、メタリックレッドカラーのベルトへと変化する。

…さて化け物、見せてやる。

これが僕のファンガイアとしての姿だ。

 

 

「変身ッ!!!」

 

 

キバットをベルトに装着し、全身が異形の姿へと変貌を遂げる。

黄色いつり上がった複眼に血のような真っ赤な胸部、そして肩、右足に付けられている鎖がジャラリと音を立てる。

 

これが僕の姿。これがキバだ。

 

 

━━さぁ、絶滅タイムと行こうか。

 

「ハァッ!!」

 

僕は化け物に駆け足で近づくと飛び膝蹴りを食らわせる。

……以外と柔らかいな。

 

怯んだ化け物の隙を見逃さずそのまま腹部にパンチのラッシュを浴びせる。

 

『グッ……アァァァ』

 

……弱い。弱すぎる。あぁ一方的だなつまらない。

これじゃあただ苦しませるだけで味気ない。可哀想だからちょっとだけ手を抜いてあげるか……。

 

『グ、グアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!』

 

あぁ、大振り過ぎるな。これじゃあカウンターをしてくれと言っているようなものじゃないか。

つまらな過ぎるなコイツ……。

 

もう良いや、終わりにしてあげよう。

 

ズドン!!!

 

『グォオォォッ!!!??』

 

化け物の大振り過ぎる攻撃を避け僕は蹴りを入れる。すると化け物は後ろの壁に叩きつけられる。

どうやら僕の蹴りの威力がアレだったのか壁にめり込んでいる。

 

『あ、が……ゴポッがっ………………』

 

しばらくして化け物は口から血を吐き出し、ガクリと意識を失う。

何だこの程度か。

こんな実力で戦いを挑んでくるなんて呆れて言葉も出ないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………あーー……やり過ぎたかな?

何というか化け物になる前が女の子だと思うとなんか罪悪感みたいなものが……。

て言うかヤバいな。キバの状態で戦闘になるとファンガイアの側面って言うか、ファンガイア特有の残虐性とか凶暴性が湧き出てくるんだよね。

 

あーあ、どうしよう。しかも月夜に照らされている所為か、なんか化け物が吐いた血が無駄に美しい赤色を醸し出しているし…。

 

 

………あ。キバットちょっと良いかな?

 

(あ?どうしたよ。莉紅いきなり話しかけてくるなんてよ)

 

(いやさ、この化け物の血ってさ……バイオリンのニスに使えそうじゃない?)

 

(……ハァ………)

 

(え?何?思いっきり溜息を吐かれたんだけど⁉︎)

 

(お前さ、よくこんなヤバそうなヤツの血をバイオリンの材料に使おうと思ったな……)

 

えぇー?なんか不服なのかなぁ。バイオリンのニスにはキリン血が使われているからいける筈なんだけどなぁ……。

 

(まさかコイツ、キリン血を動物のキリンの血と思ってんのか?それは麒麟竭(きりんけつ)だっての!竜血樹から取れる貴重な樹脂なんだよ!!血じゃねぇんだよ!)

 

キバットが何か言ってるみたいだけど気にしない。気にしない。

とにかくこんな時の為に日頃から常備している"注射器型のスポイト"〜の出番だな。

 

えーと?確かフエッスルのホルダーに空きがあったからそこにセットしていた筈なんだけど………。

 

 

「あなた………一体何者なの?」

 

「!」

 

え?誰?どちら様?

 

声を掛けられた僕は後ろを振り向く。そこには紅の髪をしたAPPが20あるんじゃないかぐらいの美貌を持つリアス・グレモリー先輩、そして黒髪の大和撫子である2人揃って2大お姉様と言われている姫島朱乃先輩。

そしてその後ろに木場君、塔城さん、アーシアさん、イッセー君が居たのだ。

 

(やべっ!悪魔共とまた鉢合わせる事になるとは……!)

 

(え?悪魔……あの人達全員悪魔なの⁉︎)

 

(前から言ってたろ!!全員悪魔だってよぉ!!教会の時でも分かるだろそれくらい!!)

 

(え、えぇー……あの時はてっきりリアス先輩がイッセー達を引き連れて夕麻さんをボコボコにしに来たと思ってたんだけど……)

 

(この……能天気バカがーーーーーーッ!!!)

 

「聞こえていないのかしら?もう一度言うわ……あなたは一体何者なの………?」

 

あ、ヤバイ。リアス先輩の事忘れてた。ここは『はーい、いつもニコニコ貴方の隣で命を喰らう化け物(ファンガイア)。東崎莉紅です!』なんて今更言えないからなぁ………って、何か忘れてるような。

 

……あ!!こんな事してる場合じゃ無い!!あの幼女(神話生物)の血ィ!!アレ早く回収しなきゃ(使命感)!乾く!早くしないと乾く!

 

俺は振り向き、幼女(神話生物)

って言うか幼女の体液(血)を回収するって……どう見ても危ないヤツじゃ無いですかやだー。

 

……っと、まだ乾いてないな。良かった良かった。

 

 

バチバチッ!!!

 

 

え?何このバチバチ?なんか嫌な予感がするんですけど……。

 

(莉紅ー!後ろ!後ろーッ!!!)

 

(え?後ろって何g)

 

 

すると僕の眼前に電撃が迫っていた。

 

え?なんで電撃?what?何故?why?

 

…………いやいやいやいや!!??危ないィィィィィッ!!??

 

俺は咄嗟に腕で電撃を振り払うとそこらに火花が飛び散り、煙が発生する。

て言うか、危な⁉︎確かに名乗らずに別の事に夢中になってた僕も悪いけどイキナリ過ぎるよ⁉︎危ないよ⁉︎

 

つーか腕が滅茶苦茶ビリビリするんだけど!!??

もうやだ!!こんな所にいられるか!!僕は帰らせてもらう!!(死亡フラグ)

 

逃げるんだよぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおッ!!!スモーキーーーーーッ!!!!!

 

 

 

 

 

▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

〜〜東崎宅 玄関

 

「ハァー……疲れた。キバの状態で家まで全力疾走するのって久しぶりだなぁ」

 

「お疲れさん、いやぁ今日は濃い1日だったねぇ」

 

変身を解いた東崎はその場で尻餅をつく。それもその筈、今日はアーシアの為のバイオリンの演奏会だった筈が大規模な演奏会となり、幼女(はぐれ悪魔?)に遭遇し、悪魔(本物)と再び鉢合わせたのだから仕方ないだろう。

 

東崎はヨロヨロと自宅のリビングへと足を運ぶ。

 

するとリビングから芳しい匂いがしてくるのに気付く。何だろうとリビングを覗くとそこには人間態の次狼(ガルル)ラモン(バッシャー)(ドッガ)が鍋を囲んでいる姿があった。

 

「やっと帰って来たか莉紅。もう少しで食っちまう所だったぞ?」

 

「これで皆食べれるね!」

 

「いただき━━━もs」

 

バッ!!ドゴッ!!ガッ!!

 

力が鍋ごと持ち上げ食べようとするのを次狼とラモンは防ぐ。

東崎はしばらくポカーンとしていたが「やれやれ」と一言呟くとテーブル席に着く。

 

「あー、ハイハイ。それじゃあちゃんと分けてあげるから喧嘩しないの。えっーと……ところで鍋の材料は何なの?」

 

「今から投入する所だ」

 

次狼がそう言うと足元から1匹の"コウモリ"を取り出した。

 

「「…………」」

 

「家の周りをウロチョロ飛んでいたからなぁ……食っちまおうと思ってな」

 

 

 

この後、滅茶苦茶止めるのに苦労した。

 

 




成る程。つまり東崎はロリコンだったんだよ!

<なっ……なんだってーー!!

………あ、もしもしポリスメン?ちょっとそこに幼女を痛めつけたペドフェリアの変態がいるんですけど……。

東崎「⁉︎」


この作品ではキバに変身している時はキバットと思考を共有する事が可能となっております。
そこら辺はご了承をお願いいたします。

とりあえず僕自身のんびりと小説を投稿させてもらいます。
読者の皆様もこんな作者の戯れ事に付き合ってくださると幸いです。
よろしければ感想、評価をよろしくお願いします。


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11話 プライドの高いもの同士

うわぁ、最近滅茶苦茶忙しい。試験続きで小説を書く時間も取れない。
だけどめげずに頑張って続けて行きたい。
あと、誰か僕にギャグのセンスをくれぇーーーーっ!



いやぁ、昨日は危なかったなぁ。次狼さん、何で鍋にコウモリ入れようとするかな…。一応コウモリって病原菌とか運んでくるから半分人間の僕にとって毒を入れるような物だぞ?

 

キバットも同じコウモリとしてかなり複雑な心境だった筈だろうに。

一応、あのコウモリは逃しておいたから後は無事を祈るだけだろう。

 

さて、今日は吹奏楽部に頼んで音楽室借りれるかな?

やっとバイオリンの製作が終わったけど、音の確認とかしておかないといけないし…。

 

すると、廊下の方から黄色い歓声が聞こえてくる。

あ、うん。誰が来るか大体予想がつく。

 

「「キャァァーーーッ!!木場くぅぅぅん!」」

 

「こっちよ!!こっち向いたわ!!!」

 

「ハァ…ハァ…木場きゅぅぅぅん……」

 

やっぱり木場君だ。

最近イッセー君となんかアレな噂が立っている為、距離を置こうと考えている。と言うか僕もその内、木場君とイッセー君と関わっていく内にヤバイ噂が立ってしまう可能性がある。

 

とにかく、木場君は無視して吹奏楽部に行ってみようかな?

 

「東崎君。ちょっと良いかな?」

 

oh……。

帰ろうとした矢先に肩を掴まれてしまった。と言うか顔近くない?

 

「ちょっと、僕と一緒に来て欲しいんだけど良いかな?」

 

「⁉︎」ガタッ

 

おーい、そこの女子ー。

反応しないでー、頼むから変な噂が立つような事はやめてくださいお願いします。

 

「大丈夫だよ。イッセー君も一緒だからさ」

 

「漫画部との連絡は⁉︎」

 

「えぇ!勿論よ!これで東崎君を含めた新シリーズの製作は完璧よ!」

 

「気を付けて!生徒会に気付かれたら一巻の終わりよ‼︎」

 

「うっ!……ふぅ…」

 

あ、駄目だ。逃げられない。

と言うか、イッセー君も一緒なのか……。仕方がない。尻は何としてでも死守しよう。ついでに生徒会の方に色々と報告もしておかないとな。

 

 

そしてホイホイとイケメンに着いて行くと、そこは旧校舎だった。

目の前には古そうな豪華な扉があり、オカルト研究部と書かれていた。

そして木場君が扉を開けるとそこにはリアス先輩、姫島先輩、イッセー君、アーシアさん、塔城さんと言ったうちの学園の有名人が集まっていた。

 

て言うか、塔城さんってオカルト研究部だったんだ…。

 

「ようこそ東崎莉紅君、歓迎するわ。さぁ、適当に腰掛けて」

 

「あ、はい」

 

そう言いながら僕がソファに座ると、目の前に紅茶が置かれる。

隣に姫島先輩がニコニコしながら紅茶を出してくれたのだ。しかし何故だろうか、その笑みがその……女王様って感じの…サディストのアレだ。怖い。

 

「ミルクと砂糖、どちらが良いですか?」

 

「砂糖で(即答)」

 

「先輩、砂糖ならここに」

 

すると塔城さんが角砂糖の入ったポットを渡してくれた。お、気がきくなぁ……それじゃあ遠慮無く。

 

(ねぇイッセー。気のせいかしら?彼、紅茶にあり得ない量の角砂糖を投入してるのだけれど?)

 

(部長…。コイツ極度の甘党なんですよ。多分ファンガイアだからとかそう言うのじゃなくて……)

 

んぐんぐ……あーーー…………糖分が身体中に染み渡る………。

 

「で……僕を呼んだ理由って何なんですか?」ムグムグ……

 

あ、このクッキーおいしいな。もう一枚もらおう。

 

「え、えぇ。貴方に確認したい事があってね……」

 

確認したい事って何だろう……あ、チョコチップ入りのクッキーも美味しい。

 

「東崎君。昨日、私達と会わなかったかしら?」

 

「ムグムグ……会いましたよ……」

 

アーモンド入りも中々……。

 

「そ、そう……よく夜は出歩くのかしら?」

 

「ムグムグ……はい、バイオリンのニスの材料を集めに良く外に出ますよ」

 

バニラ風味も……美味すぎる!!!

 

「あらあら〜〜クッキーはいかがですか?」

 

「美味しいです。もっと甘くても良いくらいですよムグムグ……」

 

さて、もう一枚……。

 

「ね、ねぇ?話聞いてるかs━━」

 

バシン!!

 

痛ッ!!??え?何?叩かれた⁉︎

すぐ隣を見ると塔城さんがクッキーに手を伸ばしていた。

 

「先輩……食べ過ぎです……私の分も……」

 

「ちょ、ちょっと…聞いてるかs━━「あらあら〜〜〜〜〜、小猫ちゃん大丈夫よ。こんな時の為にクッキーを沢山焼いて来たのよ。アーシアちゃんもどうかしら?」

 

「い、良いんですか?」

 

アーシアさんが目をキラキラさせている。

あ、何だろう。見ていてかなりホッコリする。

 

「イッセー君もご一緒にどうかしら〜?」

 

「い、いいんですか⁉︎ご一緒にさせていただいても⁉︎」

 

「えぇ、イッセー君には是非、私が作ったクッキーをいただいて欲しいの」

 

「いやっほぉぉぉぉぉおおおおおおッ!!!兵藤一誠!朱乃さんのクッキーを全身全霊で食べさせてもらいます!!」

 

イッセー君がハイテンションでクッキーに食いつこうとすると、塔城さんがイッセー君にグーパンを叩き込む。

そこへアーシアさんと木場君が駆け寄り「野郎の介抱は要らねぇんだよ!」と言いながら起き上がる。

 

何と言うか……有名人が集まると残念な感じになるんだなぁ……。

さてと、とりあえずソレは放っておいて、目の前の先輩をどうするか何だよなぁ……。

 

 

「うっ…うっ…どうせ私なんて……どうせ私なんて王のくせに役に立たない無能姫よ……うぅっ……」

 

あぁ、可哀想に……。何と言うかアレだ。身勝手な家臣に振り回される王って感じだ。

 

「先輩も苦労してるんですね。あの、クッキーどうぞ」

 

「うぅ……ありがとう。優しいのね」

 

あ、何だろう。ギャップ萌えって言うのかな?なんかキュンと来た。

 

「あ、リアス。食べるなら東崎君との話を済ませてからにしてね」

 

「もう、いやこの女王……」

 

バタン!!!

 

リアス先輩ィィィィィィィィィイイイイイイイイイッ!!??

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「単刀直入に言わせてもらうけど……貴方、何者なのかしら?」

 

立ち直ったリアス先輩は険しい目つきで話しかけて来た。すみません、リアス先輩。涙痕がクッキリと残ってます……。

何と言うか、アレです。不憫過ぎで笑えないです。とりあえず、さっさと話を済ませてリアス先輩がクッキーにありつけるようにしてあげよう。

 

「ファンガイアです」

 

「…!すんなりと正直に言うのね」

 

「えっと、まぁ……今更隠すものじゃ無いですし……」

 

うん。今更何だよなぁ。別に隠していてもいつかバレるんじゃないかなぁーとは思っていたし。

 

「ふぅん……貴方。ファンガイアが一体どのような存在か知ってるかしら?」

 

「……?」

 

「知らないの?……いえ、そもそもファンガイアがどんな種族か知る機会が無かったのかしら?」

 

……あぁー、成る程。

確かに、前世ではファンガイアはどんなキャラクターなのかは知っていたけど、こっちの世界でのファンガイアってどう言う存在なのか知らなかったわ。

そもそもキバットに聞いても同盟の種族〜としか言ってなかったからなぁ……。

 

「いい機会ね。イッセー、貴方も良く聞いておきなさいファンガイアがどのような種族なのかを」

 

「は、はい!」

 

「えっと……よろしくお願いします」

 

「えぇ、とりあえず悪魔、天使、堕天使の三大勢力による戦争から話すわ」

 

あ、コレ絶対長くなるパターンだ。とにかく頑張って聞くとしよう

 

「私達悪魔、堕天使、天使は大昔から長い間争って来たわ。その争いは三大勢力や他の種族、人間果てにはドラゴンを巻き込んだ戦争となっていった。だけど、それに乗じて全ての種族を滅ぼし我等こそが頂点だと言い張る種族が現れたわ。それがファンガイア。ファンガイアは命そのものを糧とし、三大勢力だけでなく他の種族の命も喰らっていったの。その中でも一際目立った出来事がファンガイアの王"キバ"と二大龍の争い。その争いでキバは死に、龍は封印されたわ。三大勢力はこのような危険な種族を生かしてはおけない。そう考え、ファンガイアは全滅した……こんな感じね」

 

あ、あぁー。成る程。うんそう言うことね。はい…うん。

 

「えっと…東崎……大丈夫か?さっきの話聞いてて?」

 

「確かに…昔の事とは言え自分の種族が殺された話なんて気分が悪いわよね……」

 

「あ、いや別に気にしてないんですけど」

 

「その、ごめんなs━━ゑ?」

 

何故かリアス先輩が固まった。というか周りの皆もポカンとしてる。

えーとつまりさっきの話をまとめるとこうでしょ?

 

「つまり……調子に乗って周りに喧嘩売って返り討ちにあった残念な種族……って事ですよね?」

 

「ゑ……あ………そうなる……わね……」

 

なんか滅茶苦茶戸惑ってる。アレ?なんかおかしい事言った?

すると、僕のバックからキバットが顔面に飛びついて来た。

 

「馬ッ…鹿!じゃねぇのお前!!」

 

「え、何?いきなり何⁉︎」

 

「そりゃあ、相手側も困るに決まってんだろ!少しは空気読みやがれこのボケッ!!!とりあえず死ねッ!!!」

 

「死ね⁉︎」

 

「キバット族……!」

 

「おや?誰かと思えば忌々しい悪魔のグレモリー家次期当主じゃあありませんか。わざわざ監視してご苦労なこった」

 

なんか、キバットが猛烈に嫌味ったらしい喋り方をしてるんだけど。

あ、リアス先輩が怒ってる。なんか赤いオーラ的なものが溢れてる。

 

「あら?1匹じゃ何も出来ないキバット族が偉そうな口を叩くじゃない……」

 

「へっ、お前のような無能姫よりかはマシだがな…!」

 

(イ、イッセーさん!怖いです!部長さん怖いです!)

 

(アーシア!その気持ち分かる!スッゲェ分かるけど我慢するんだ!ほら、東崎を見ろ!アイツあんな近くに居るのに微動だにしてないぞ⁉︎)

 

あー、成る程。なんか2人がいがみ合っている理由が分かった気がする。多分だけど、2人(正確には1人と1匹)はお互いにプライドが高いんだ。

簡単に言うと同族嫌悪って感じだ。とにかく喧嘩を止めよう。後ろの2人が震えているんだよなぁ。

 

「やめて下さいよ。こんな所で喧嘩なんて」

 

「止めんなよ莉紅。コイツのプライドは1度折ってやらねぇと気が済まねぇ」

 

「その通りよ。自分以外の者を見下すような輩にはキツイお仕置きが必要なのよ」

 

あー、もう。面倒臭いなプライドの高い奴らって……。

 

「あーもう。やめて下さいよ喧嘩なんて同レベルじゃないと起きない物ですし、それにそんなだから仲間達に舐められるんですよ」

 

「「グッ⁉︎」」

 

アレ?なんか2人共、よろけたんだけど。え?まさか図星?

 

「くっ……ま、まぁ良いわ。貴方とはいずれ決着を付けさせてもらうわ」

 

「ハッ、やってみやがれ」

 

「フフフ……東崎君。やはり貴方は私と同じ……」

 

アレ?何だろう。姫島先輩の目が異様に怖いんだけど……と言うか何故か悪寒が……。

 

「……もしかして貴方が"今のキバの鎧"を体内に封じてるキバット族なのかしら?」

 

「ご察しの通りだ。俺が今のキバの装着の最終決定権を持ってる」

 

「と言う事は東崎君。やっぱり君は……」

 

すると皆がこちらに注目してくる。まぁ、既にファンガイアってバレてるから隠しても意味無いな。

 

「はい。キバです」

 

「なんて言うか当たり前のように言う辺り、相変わらず素直だよなお前」

 

アレ?これって褒められてるのかな?それとも罵られているのかな?僕の中ではとりあえず褒められたって事にしておこう。

 

「それじゃあ聞くけど、貴方の目的は何?」

 

「いえ、特にありませんけど」

 

「イッセー、これって嘘ついてるかしら?」

 

「いえ、付いてませんね。嘘ついているとコイツ異様にパニックになりますから」

 

うっさい。正直者で何が悪いんだコラ。

 

「……ハァ…困ったわね」

 

「アレ?これってもしかすると馬鹿にされてるんですか?」

 

「部長。溜息を吐くと不幸になりますよ」

 

「分かってるわ小猫……東崎君。貴方の行動は軽率過ぎるわ。もっと己の立場を理解してくれないかしら」

 

己の立場って……あー、ファンガイアとかキバとかそこら辺の話かな?

 

「東崎君。貴方は独断とは言え、堕天使達に危害を加えた。一応生かしたとは言え、キバが存在している事を三大勢力の上層部に知られたら……」

 

「え、どうなるんですか?」

 

「貴方は悪魔であるイッセーに堕天使であるレイナーレの命を守ったから、大丈夫だと思うけど……下手をすれば殺されるわ」

 

まじかぁ……それは勘弁して欲しいなぁ……。

 

「でも他の勢力に刺激を与えない、もしくは有効な関係を結ぶ。これなら貴方の身は保証出来るわ」

 

「えっと……つまり?」

 

「どうかしら?悪魔に転生してみる気は無いかしら?」

 

「あ、すみません。そう言うのはちょっと……」

 

「即答かよ⁉︎」

 

「うーん、悪くないと思うわよ?と言うか、天使は基本的に魔の存在として認識しているファンガイアを目の敵にしてるし、堕天使の場合は色々と危険な研究をしてると聞いてるし、実験材料として扱われる可能性があるの。でも、悪魔なら三大勢力の中でもマシな類に入るわ。それに、私の眷属となれば堕天使、天使はこちら(悪魔側)に容易に手を出せなくなるから安全だと思うわ」

 

「そうだぜ、東崎。悪魔は良いぞ?夜は快適だし身体能力は高くなるし、まさに超人になれるんだぜ!」

 

うーん、でもなぁ……。悪魔の契約って怖いし、それに悪魔になるってデビ◯マン連想させられるし。アレってヒロインが生首になるヤバイ奴だよね。

そもそも人じゃなくて悪魔なんだよなぁ。

 

「えっと……すみません。上半身だけにはなりたくないので勘弁してください」

 

「なんで、そんな考えに行きたくのか理解できないけど分かったわ」

 

「え?それじゃあ、東崎……お前俺達と敵対……」

 

え?もしかしてそういう流れになるの?マジで⁉︎

 

「それじゃあ、オカルト研究部に入るのはどうかしら?そうすれば一応、悪魔側と証明出来ると思うからちょっとは安全になると思うけどどうかしら?」

 

「あ、じゃあそれでお願いします」

 

とりあえず断る理由も無いので、承諾する。旧校舎の一部、貸してもらうこと出来ないかなぁ……バイオリン用の木材に利用できそうなんだよね。

 

「フフフ……それじゃあ、ようこそ。こちら側の世界へ」

 

すると、全員がバサリと黒い翼を広げた。

 

 

 

 

……………

 

 

……………

 

 

……………

 

 

……………

 

 

……………

 

 

……………

 

 

 

 

「いだだだだっ!!??羽引っ張んな!何すんだよ!」

 

「イッセー君。片方で良いからソレ(悪魔の羽)貸して。それなら絶対に良いニスが作れるから」

 

東崎はおもむろにイッセーの悪魔の羽を掴む。

 

「ふざんけんな!シャレになってねぇよ!」

 

「先っちょ!先っちょだけでも良いからッ!!」

 

「おい、バカ!千切れ……ギャァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

 

「「「イッセェェェェェェェェエエエエエエエエエエエエ(くん/さん)!!!??」」」

 

 

 

こうして、僕はオカルト研究部に入る事となったのだった。

 

 

 




オカルト研究部、リアス・グレモリーは頭を悩ませていた。

「はぁ、朱乃ったら絶対にわざとやってるわよね……それに加えてキバ……はぁ、何故か問題が増えた気がするわ……それにクッキーも結局食べ損ねたし……あぁ、もう。こうなると木場が1番の良心よね……」

するとリアスの元にパタパタと使い魔のコウモリが飛んでくる。

「あら、監視に行かせた使い魔じゃないの。どうしたの?」

『━━━━━』

使い魔は人間態へ化けると、リアスの耳元で囁く。

「…え?東崎君に助けてもらって恋心を抱いた⁉︎」

『━━━━』コクリ

すると使い魔は恥ずかしそうにモジモジした後、コクンと頷く。

「…………………」






「……もう勝手にして……」

そう言うとリアス・グレモリーは机の上に突っ伏した。




現在の東崎君は

『羽置いてけ。なぁ
ニスの材料だろ‼︎
ニスの材料になるだろう‼︎
なぁ、羽置いてけ‼︎』


多分こんな感じ。


この小説では比較的リアス部長は苦労人、良識のあるポジションとします。キバットとはお互いにプライドが高いもの同士仲良く(笑)させて行きたい。
あと、出来るだけ無能呼ばわりされないように頑張っていきたいと思います。



だけど、無能と罵られて涙目になる可愛いリアス部長も見てみたいな(真顔)


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12話 ウンメイノー

皆さんの好きな仮面ライダーは何ですか?
僕ですか?

W(ファングジョーカー)
オーズ(プトティラ)
ドライブ(デッドヒート)
ビルド(ハザード)
クローズチャージ
アマゾンズ系
ですかね。

何故か僕自身、暴走する危険なライダーが好きなようです。


ちなみに連続投稿2話目ですよー。
あと、今更ながら……キャラ崩壊注意。



「俺、昨日部長に夜這いされたんだ……!」

 

「…え?何だって?」

 

東崎はイッセーの言葉を疑った。

 

━━夜這い

 

それは夜中に性交を目的に他人の寝ている場所を訪れる事であり国文学関係の研究者の間では、一般には夜這いは古代に男が女の家へ通ったと言われ語源は、男性が女性に呼びかけ、求婚することであると言われる。

 

「と言うわけで……どう思う?」

 

「とりあえず、チェーンソーでバラバラにされれば良いんじゃないかな?」

 

「最近俺の親友が冷たくて辛い……」

 

「そりゃあ……アーシアさんが居るって言うのに浮気って……」

 

「え゛っ━━!!??べ、べべべつに、あ、アア、アーシアとはそそそ、そう言う関係じゃねねねねねね」

 

「いや、戸惑い過ぎだよ」

 

イッセーの反応を見るからにアーシアの事もちゃんと思っているらしいがリアスの事はどう思っているのだろうと考えた。

 

とりあえず東崎は今、一番気になっている事を聞くことにした。

 

「まぁ、とにかく……童貞は卒業できたの?」

 

「それ聞くか⁉︎…銀髪のメイドさんが乱入して来たので出来ませんでした」

 

「うん。……うん?………銀髪?……メイド?」

 

「……それにしても部長の様子おかしかったなぁ」

 

「話題すら変えんなコラ」

 

イッセーの一言に東崎は疑問を持ちながら旧校舎へと足を運んだ。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「部長のお悩みならグレモリー家に関わる事じゃないかな?」

 

「朱乃さんなら何か知ってるよな?」

 

「朱乃さんは部長の懐刀だからね。もちろん知ってると思うよ?」

 

「家柄の悩みかー……結婚とか?」

 

木場、東崎、イッセー、アーシアの4人はと言う順で並び廊下を歩いていた。

そこにキバットが無理矢理話題に入ってくる。

 

「おぉ、あの悪魔が結婚か。ありゃあ性格の悪い奴と結婚してその後、性的な酷い仕打ちを受けるパターンだな」

 

「せい……てき……?」

 

「テメェェェェェ!!!キバットォォォォォオオオ!!そんな事あるわけねぇだろうがぁぁぁぁああああ!!部長の処女は俺のもんなんだよぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「しょ……じょ………?」

 

「あぁ、うん。アーシアさんはまだ知らなくて良いよ」

 

「んだよ興奮出来るシチュエーションだろ?笑えよ」

 

「興奮するけど笑えねぇよ!!!」

 

取っ組み合いを始めたキバットとイッセーを尻目に3人はオカルト研究部に入ろうとする。

すると木場が扉を開けようとする直前、動きが止まる。

 

「……僕がここまで来て初めて気配に気付くなんて……」

 

━━ガチャリ

 

扉を開けるとそこには豪華なオカルト研究部の部屋なのだが、見知らぬ銀髪の女性が立っていた。

 

「……誰?」

 

「あの人は昨日の……!」

 

東崎はイッセーの反応から察し、昨日の銀髪のメイドと特徴が一致している事に気付く。

東崎は銀髪のメイドを「あ、弾幕シューティングの時止めナイフ使いのメイドにそっくり」くらいにしか思っていた。

すると、銀髪のメイドが東崎に挨拶をしてくる。

 

「こうして会うのは初めてですね私の名前はグレイフィア。グレモリー家に仕える者です。よろしくお願いしますね」

 

「あ、えっと?はい。こちらこそよろしくお願いします」

 

東崎はメイドの「こうして会うのは」と言う言葉に引っかかりながらも礼を返す。そもそも東崎はこうして生のメイドを見るのは初めてなので戸惑っている節がある。

 

「…全員揃ったわね。部活をする前に少し話があるの」

「お嬢様。私が」

 

グレイフィアの言葉をリアスは手を向けて制止させる。必要ないという意思表示だろう。リアスはそのまま口を開く。

 

「実は━━」

 

彼女が喋ろうとした瞬間、床に書かれた魔法陣が輝く。

もしかして転移魔法だろうか?

そう思った東崎だが、グレモリーの魔法陣の形が違う紋様へと変わったのだ。

 

そして魔法陣が一層輝きを増すと次の瞬間、部屋の温度が急激に上昇する。魔法陣からはゴォ‼︎と炎が溢れ、熱気が室内に溢れる。

 

そして、その炎の中から人影が姿を現す。炎の中で佇む人影は己の腕を薙ぎ払い炎を掻き消す。

そこに現れたのはパッと見チャラい格好をした男。赤いスーツを来て、胸元を着崩している金髪の男性だ。

 

(うわぁ、カッコいい演出……)

 

「人間界は久しぶりだ……会いに来たぜ、愛しのリアス」

 

(……子安ボイスだと⁉︎)

 

その男は口元をニヤリと吊り上げる。それに対してリアスは愛しと言っている男性に対し半目で見つめていた。

 

「さぁて、リアス。早速だが式場を見に行こう、日取りも決まってる早いほうがいいだろう」

 

男はリアスの腕を掴むが、リアスは腕を振り解く。

 

「━━離してちょうだいライザー」

 

彼女にしては珍しく、低い声音で完全にキレている事が目に見えて分かる。ライザーと呼ばれた男は特に気にする様子もなく苦笑いするだけである。

 

「おい、あんた部長に対して失礼だぞ。女の子に、その態度はどうよ」

 

するとイッセーがその様子を見るのに耐え兼ねなかったのか、口を開いていた。しかし男はイッセーを軽く一瞥すると

 

「…お前誰?」

 

そう言って来た。まさしく興味が無い顔と声だ。

 

「俺はリアス・グレモリー様の【兵士】兵藤一誠だ!」

 

「あっそ」

 

完全にスルー。

全く興味のなさそうな顔であり、イッセーはその態度に対して完全に怒っている様子だ。

 

「あの野郎……ッ!!無視するなんて…例え男でもやっていい事とやって悪い事があるんだよぉ……ッ!!」

 

「イッセー君。それブーメランだから」

 

はっきり言うとお前が言うな発言だった。イッセーも男に全く興味が無い1人である。

東崎は溜息をついてから男に向けて口を開く。

 

「すみません。えっと…どちら様でしょうか?」

 

「なんでこんな所に人間がいる?……いや、待て半分人間では無いなお前」

 

すると東崎と金髪の男の間に先ほどの銀髪のメイドであるグレイフィアが介入する。

 

「この方はライザー・フェニックスさま。純潔の上級悪魔であり、古い家柄を持つフェニックス家のご三男であらせられます」

 

東崎は「フェニックス……鳳凰幻魔拳使えるかな?」と呟き驚いている様子ではなかった。

だが、イッセーはフェニックスと言う単語よりも、その後の発言に酷く驚かせられる事となる。

 

「そして、グレモリー家次期当主の、婿殿にあらせられます」

 

「…婿?」

 

「リアスお嬢様とご婚約されているのです」

 

「…え?」

 

 

 

 

 

 

 

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええてええええええええええええッ!!!!!?????」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「いい加減にして!」

 

やや大きめなリアスの声が部室内に響き渡る。そこには立ち上がったリアスがライザーを睨んでいた。しかしそれに対するライザーは顔色を1つ変えず落ち着いた様子だった、

 

「前にも言ったはずよ! 私は貴方とは結婚しないと!」

 

「あぁ、聞いたさ。だがそういうわけにもいかないだろう? 君のところのお家事情も。結構切羽詰っていると思うんだが?」

 

「余計なお世話よ! 私も次期当主である以上、相手は自分で決めたいの。父も兄も一族も皆性急過ぎる! 当初では、私が人間の大学を出るまでは自由にさせてくれると!」

 

「あぁその通りだ。君は基本的に自由だ。大学に行っても構わないし、下僕も好きにするといい。だが君の父親もサーゼクス様も心配なんだよ。家が途絶えるのが怖いんだ。先の戦争で大勢の純潔悪魔が亡くなったし、堕天使、神のとの両陣営とも拮抗状態。純潔の悪魔同士がくっつくのは、これからのことを考えてなんだ。純潔悪魔、その新生児が貴重なことを君だって理解してないわけじゃないだろう」

 

東崎はまるっきり話が頭の中に入ってこなかった。

要約すると『七十二柱の悪魔達がほぼ居ないのでさっさと結婚して子供作ろうぜ』と言う感じだろう。

 

「なんか、面倒臭い話になって来たね」

 

「そうですね。部長の兄様が既に家を出ているので残っている部長が必然的に家を継ぐ事になっているんです」

 

「政略結婚ってヤツかー……」

 

塔城とお菓子を食べながらその様子を見ている東崎。

その様子を睨みながらもイッセーも少しは冷静になっているようだ。

 

「私は家を潰さない。婿養子だって迎え入れるわ」

 

「なら話は早い。早速俺と━━━」

 

「けどそれを決めるのは私よ! 私は私が良いと思った者と結婚する。古い家柄の悪魔にも、相手を選ぶ権利はあるわ」

 

「チッ」

 

(うわっ舌打ち……)

 

見るからに機嫌が悪そうなライザー。東崎は胃に穴が空きそうな状況から抜け出したい気分だった。

 

「…俺もな、フェニックス家の看板を背負ってるんだ。この名前に泥をかけるわけにもいかないんだ。こんな狭くて汚い人間界の建物になんて来たくなかったしな。…この世界の炎と風は汚い、炎と風を司る悪魔としては、耐え難いんだ!」

 

ボウッ!とライザーの周囲に炎が巻き起こり、周辺をチリリ、と火の粉が舞った。

さらに、部屋の所々から炎が発生する。

 

「━━俺は君の下僕全てを燃やし尽くしても、君を冥界に連れて帰るぞ」

 

殺意と敵意が部室全体に広がり、更なる炎とライザーから放たれた敵意が、部員全員を包み込む。

全員はいつでも対応できるように戦闘態勢に入る。

 

そして

 

 

 

━━━ブワァァァァァァアアアアッ!!!

 

 

 

白い煙が部屋の中を包み込んだ。それはまるで吹雪が襲い掛かってきたのではないか?と言うほどの煙の量だ。

煙が晴れる頃には、1人の人物が何かを構え立っていた。

 

「すみません……流石に室内では火気厳禁なので勘弁してもらえませんか?」

 

と消火器を構えた東崎が真っ白になったライザーに向けて喋った。

その様子にリアス達は笑いを必死に堪えている様子だった。もちろんライザーはそれに対して完全にキレている。

 

「ライザー様。落ち着いてください。…これ以上やるのでしたら、私も黙っているわけに参りませんが」

 

静かだが、迫力のある声色だったその声を聞いたライザーはわずかに表情を強ばらせる。

 

「…最強の〝女王〟と呼ばれる貴女にそんなこと言われたら、さすがに俺も怖いよ。化物揃いと評判のサーゼクス様の眷属とは絶対相対したくない」

 

と、真っ白なライザーは落ち着きを取り戻す。

 

「…こうなることは重々承知でした。正直に言いますと、これが最後の話し合いの場だったのです。…この結果を予測されていた旦那様たちは、最終手段を用いることにしました」

 

「最終手段?」

 

「お嬢様、意見を押し通すのなら、ライザー様と【レーティングゲーム】で決着をつけるのはいかがでしょうか」

 

「━━━⁉︎」

 

レーディングゲームと言う聞き慣れない単語に東崎は首を傾げる。

 

「レーディングと言うのは爵位持ちの悪魔が下僕同士を戦わせ競うゲームの事です。公式なゲームは成人した悪魔でなければできないという制限がありますが非公式な純潔悪魔同士のゲームなら、半人前の悪魔同士でも参加が可能です」

 

「へぇ、知らなかった。ありがとう塔城さん」

 

「…つまり、お父様たちは私が拒否した場合を考えて、最終的にゲームで娘の人生を決めようというの。…まったく、どこまで私の生き方を弄れば気が済むのかしら」

 

完全にリアスは怒っている。いや、怒りを通り越して呆れているのだろう。それもその筈、自分の人生がゲームで左右されてしまうのだから、本人としてはたまったものではないだろう。

 

「では、お嬢様はこのゲームを拒否すると?」

 

「まさか。絶好の機会よ。いいわ、ゲームでケリをつけましょう」

 

「ほう……受けるのか。構わないが俺は既に成熟しているし、公式なゲームもいくつかこなしている。今のところは勝ち星の方が多い。…それでもやるのか?」

 

「やるわ。貴方を消し飛ばしてあげる」

 

「いいさ。そっちが勝てば好きにすればいい。しかし俺が勝てば、リアスは俺と即結婚してもらうぞ」

 

(ゲームなのに凄い物騒……)

 

東崎はゲームの話から消し飛ばす〜やら結婚〜やらの展開に若干引いていた。

 

「承知しました。お二人のご意志、このグレイフィアが確認させていただきます。両家の立会人として、私が指揮を取らせていただきますが、構いませんね?」

 

「えぇ」

 

「あぁ」

 

グレイフィアの言葉に二人が同意する

 

「承知しました。両家には、私からお伝えします」

 

そう言って彼女はぺこりと頭を下げる。

 

「ところでリアス…ソイツは別として、そいつ以外のメンツが君の下僕なのか?」

 

その一言にリアスは片眉を吊り上げた

 

「だったらなんなの?」

 

「話にならないぜ? 君の女王くらいしか、俺の可愛い下僕たちに対抗できそうにないな」

 

そう言ってライザーはパチンと指を鳴らした

すると部室の魔法陣が光り出し、フェニックスの魔法陣が映し出され、ライザーの眷属であろうモノ達が出てくる。

その数おおよそ15名。

 

しかし、全員女性だった。

 

(うわぁ、ハーレムなんて初めて見た……)

 

すると隣で見ていたイッセーが涙を流し始めた。その涙は感動か嫉妬なやどちらか、いや恐らく両方なのだろう。

 

「…おい、リアス。どうしたんだコイツは」

 

「あー、すみません。イッセー君の夢はハーレムなんです。…ぶっちゃけ羨ましいんじゃないかと思います」

 

額を抑えて困っているリアスに代わって東崎が返答する。その様子にライザーの眷属達はクスクスと笑う。

 

「ライザー様ーこの人、気味悪いですー」

 

「えーマジ、ハーレム?」

 

「キモーい」

 

「ハーレムが許されるのは上級悪魔だよねー」

 

「「キャハハハハハハ」」

 

 

イッセーはその場で膝から崩れ落ちる。

ライフは既に0であるイッセーに対して追い討ちをかける眷属達。

 

東崎はその様子を見て思った。

 

 

(それはひょっとしてギャグで言ってるのか⁉︎)

 

 

「そう言うな。上流階級のものに羨望の眼差しを向けてくるのは、下賎な輩の常だ。俺たちがアツアツな所を見せつけてやろう」

 

そう言うとライザーは眷属の一人と唇を重ね━━━━

 

 

 

「あーあーあーあーーーーッ!!!2人には何も見えないし聞こえませんーーーーーッ!!!」

 

「先輩…前が見えません」

 

「えっと東崎さん、何が起こってるのでしょうか?」

 

「まだ早いから!!!2人にはまだッ!!早いからッ!!!」

 

まだ綺麗な小猫とアーシアを穢さないよう東崎は2人の目元を手で隠し、声を張り上げ、聞こえないようにする。

ちなみにイッセーはその様子を見て股間を抑え始めた。

 

「お前じゃあこんなことできまい、下級悪魔くん」

 

「俺が思ってることそのまま言うんじゃねぇ! ちくしょう、【ブーステッド・ギア】!」

 

イッセーはライザーに向けて手を突き出し、己の神器である【赤龍帝の籠手(ブースデッド・ギア)】を発動させる。

 

「お前みたいな女ったらし、部長には不釣り合いだ!」

 

「その女たらしにイッセー君は憧れているんだけどネー」

 

「うっせぇ!!!そんな事あるわけねぇだろ東崎!」

 

「本当は?」

 

「滅茶苦茶羨ましいぞこの焼き鳥野郎!!!」

 

本音をブチまけると同時にライザーを侮辱するような事を喋るイッセー。

とてもくだらないが、『焼き鳥』と言う単語に反応するライザー。

 

「なッ!焼き鳥だとぉ⁉︎調子こきやがって!リアス下僕の教育はどうなってやがる⁉︎」

 

「ゲームなんか必要ない! ここで全員倒してやる!」

『BOOST』

 

イッセーが神器の能力を発動させ、ライザーに向かって走り出す。

 

 

 

 

 

━━そのとき不思議な事が起こった。

 

 

 

 

 

〜〜♪【LORD OF THE SPEED】

 

 

(この歌は⁉︎)

 

イッセーが走り出した瞬間、謎の曲が流れ始めたのだ。

しかも東崎はその曲がどのような曲か知っている。そしてその曲が流れるとどうなるのかもだ。

 

「ミラ、やれ」

 

「はい、ライザーさま」

 

「マズイ!イッセー君ダメだぁーーーーーッ!!!」

 

小猫位の小さな女の子が棍を手にし、構える。

そして、2人が激突する。

 

結果は━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

<ウンメイノー

 

 

「ウワアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 

「…うん。知ってた」

 

 

イッセーが耐えた時間、およそ3秒弱。

爆死用BGMが流れてきた時からこの予想はできていた東崎。

爆死しなかっただけでも充分である。

 

 

「弱いなお前」

 

はっきりとその事実を告げる

 

「ミラは俺の【兵士】。下僕の中では一番弱いが実戦経験も悪魔の質も上だ。ブーステッド・ギア? ハッ」

 

ライザーはわざわざイッセーの近くへ歩き、その神器を軽く足で小突いた。

 

「確かにコイツは凶悪無比、無敵の神器だ。使い方じゃあ神も悪魔も倒せるさ。過去にも使い手はいたが、未だに神も魔王も退治されてない。ソレは何故か?」

 

ライザーは嘲笑い、イッセーを見下す。

 

「この神器(セイクリッド・ギア)が不完全だからだよ。使い手も弱者ばかりだったて事だ、お前も例外じゃない。人間界の言葉で例えるなら『豚に真珠』、『宝の持ち腐れ』。そうだお前だよリアスの兵士くん?」

 

言い返したいのだろう、しかし残念だがライザーの言っている言葉は正論であり、言い返せないのだ。

そこで、ふとライザーの視線が東崎へ向かう。

 

「…ところで、お前は一体何なんだ?」

 

「東崎莉紅と言います」

 

「名前じゃない。お前の種族だ。人間以外にも不思議な魔力を感じる。お前は何者だ?」

 

質問するライザーだが、グレイフィアが東崎の代わりに答える。

 

「彼は人間とファンガイアのハーフ。そして今代のキバでもあります」

 

「何ッ⁉︎コイツがあの【キバ】だと⁉︎」

 

ライザーは驚愕の表情を露わにする。そして、何やら考え事をしているらしく、しばらくしてライザーは東崎に詰め寄る。

 

「おい、リアス。どうせ非公式のゲームだ。コイツの参加も認めても良いぜ?」

 

「ふざけないで!彼は関係無いわ!!」

 

リアスはライザーの発言に怒りを露わにするが、ライザーは気に留めず喋り続ける。

 

「関係?関係ならあるぜ?そもそも俺達が結婚するハメになったのは元々【ファンガイア】が俺達、純血の悪魔をほとんど殺したからだろう?」

 

ライザーは自身の顔を東崎の顔に近づけ、その鋭い眼光で睨みつける。

 

「つまりだ……お前の責任でもあるんだよ。ファンガイア……!」

 

「……えぇー……マジですかその話」

 

「……えぇ、七十二柱の悪魔達は戦争によってその命を落とした。だけど、その大半の悪魔はファンガイアによって殺されたのよ」

 

リアスは複雑そうな気持ちで東崎の問いに答える。

 

「でも、東崎。貴方には関係の無い事よ!貴方はそもそもファンガイアと三大勢力の関係を知らなかった!だから!」

 

「あぁ、ハイ。分かりました。それじゃあ参加します」

 

「ねぇ!人の話聞いてた⁉︎」

 

リアスはレーディングゲームの参加を即答する東崎に思わずツッコミを入れる。

そしてそのまま東崎に詰め寄る。

 

「良い⁉︎貴方は関係無いのよ!!もしレーディングゲームに参加したら、真っ白焼き鳥野郎のライザーの事よ!事故と見せかけてわざと貴方を殺す可能性もあるのよ!!」

 

「おい、リアス。サラッと俺を馬鹿にするんじゃあない。それに安心しろ最強の女王の前でそんな事はしない」

 

ライザーはこめかみに青筋を立てながらリアスに言う。

 

「でも、あっちの眷属は15人、それに対してコッチはリアス先輩を含めて6人ですよ?ハッキリ言って現時点では勝ち目無いと思うんですけど……」

 

「ぐぐぐぐ……」

 

「確かにソイツの言う通りこのままでは俺の圧勝は間違いない。リアス、このゲームは十日後でどうだ?」

 

「⁉︎…私にハンデをくれるというの?」

 

「感情だけで勝てるほどレーティンゲームは甘くないぞ。下僕の力を引き出してやらねば敗北は確実だ。才能があってもなくても、初戦で実力を出せず負けた奴らを俺は何人も見てきた」

 

ライザーはコチラを真剣な表情で見つめてくる。

 

「十日もあれば君なら下僕をなんとかできるだろう」

 

ライザーの視線がそのままイッセーに映る。

そしてイッセーに対して一言添える。

 

「彼女に恥をかかせるなよ。お前の一撃はそのまま、彼女の一撃になるんだ」

 

その言葉が、確実にライザーの実力が見た目だけではないということを表していた。嫌味ったらしい彼だが、彼なりにリアスを想っての言葉なのだろう。

 

「じゃあな。次はゲームで会おう」

 

そう言うと、彼等は魔法陣の中へ消えて行く。

その場にはオカルト研究部の全員とグレイフィアが残された。

 

 

 

▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

「何を考えているの!!」

 

部屋の中でリアスの声が響く。

 

「全く……良いかしら?非公式と言ってもこのレーディングゲームが誰かに見られたら貴方は命を狙われる可能性が高くなるのよ!」

 

「え?そうなんですか」

 

東崎の腑抜けた声にリアスは額を抑える。

 

「あぁ……もう。これじゃあ胃薬がいくつあっても足りないわ……」

 

「あ、あのー、部長。コイツ昔からこんな性格なんすよ。気にしたら負けと言うか……」

 

リアスは東崎の親友であるイッセーの苦労を知り、ある意味で尊敬した。恐らく昔から大変だったのだろう。あとで膝枕をしてあげようと思った。

 

「ったく…おい莉紅。グレモリーの嬢ちゃんが言ってんだから別に参加しなくても良いだろ」

 

「うーん、でも僕もオカルト研究部の1人だから…」

 

「………ハァ、分かったわ。参加を認めるわ」

 

諦めたかのようにリアスは溜息をつきながら喋る。

このままだと話は平行したままだと察したのだろう。それに、自身の政略結婚を防ぐ事ができる為、良かったとリアスはプラス面に考える。

 

「まぁ、でも。無理矢理参加する事になったのだから私ができる事なら何でもするわよ」

 

「ん?今何でもするって言いましたよね」

 

「え?」

 

「え?」

 

「……え?」

 

東崎がそう言うとイッセーはハッとなり東崎の胸倉を掴む。

 

「……て、テメェもかぁぁぁぁああああ!!テメェも焼き鳥野郎と同じく部長の処女狙ってんのかぁぁぁぁああああッ!!」

 

「いや、別にソレは興味無いです」

 

「あれ?何故かしら?紳士的な言葉の筈なのに複雑な気持ち……」

 

「で、何を要求するんですか?」

 

騒いでいるメンバーを尻目に小猫は東崎に質問する。小猫の一言に周りの皆は真剣な表情となる。

もしかしたら彼かリアスの代わりに王となる〜〜的な事を言うのでは無いか?と心配なのだろう。

そして東崎の口が開かれる。

 

「旧校舎の一部をください」

 

 

「……うん?」

 

 

リアスは首を傾げた。一部をくださいとはどう言う事なのだろうか?もしかすると、部屋を貸して欲しいと言う意味なのだろうか?

 

「……まぁ、良いわよ?そらくらいなら」

 

「ありがとうございます!それじゃあ僕はこの辺d━━━」

 

「東崎様」

 

グレイフィアは東崎を呼び止める。

 

「?…どうかしたんですか?」

 

「リアス様の為にありがとうございます」

 

彼女はそう言うとペコリとお辞儀し、魔法陣の上へと立つ。

そして魔法陣が輝きを帯び始める。

 

「あと、部屋の掃除はお願いしますね」

 

「……え?マジですか」

 

そう一言だけ喋るとグレイフィアの姿は消えていた。

そして東崎は真っ白になり所々焦げ付いている部屋をグルリと見渡す。

 

すると、背後から小猫が箒を持ちながら話しかけてくる。

 

「それじゃあ先輩。お願いします」

 

「そうね。汚したのは東崎だけですものね」

 

「あはは、頑張ってね」

 

そして、気付くとオカルト研究部に残ったのは東崎だけどなって居た。

 

「……おのれディケイドォォォォォォオオオオオオオッ!!!」

 

そして意味もない八つ当たりの声が旧校舎内に虚しく響き渡っていった。

 

 

 

 

 




旧校舎のとある一室。
暗い部屋でキーボードをカタカタと打っている1人の女のk━━いや、男のk……とにかく中性的な人物がパソコンの画面と向き合っていた。

「……ふぅ、契約完了です。やっぱり1人は落ち着きますぅ」

この子の名前はギャスパー。旧校舎の一室に引きこもっている吸血鬼である。

「んんッ!ふぅー………あれ?」


〜〜〜♪


ギャスパーが背伸びをしていると、ふと彼女(?)の耳に綺麗な音色が届く。

「綺麗な音色だなぁ……」

最近になって本校舎、旧校舎から綺麗な音色が聞こえてくるのだ。
引き篭もりのギャスパーにとって最近の楽しみになりつつある。

「どんな人が演奏してるんだろう……」

ギャスパーは窓の外を覗き、外は自分にとって眩しすぎる世界である。だが、そんな彼女(?)は外に出てみたいと言う気持ちが強くなっていた。

(今日の夜、ちょっとだけ…外出てみようかな?)


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


(部長ごめんなさい。だけど僕少しだけ勇気を出してみます)

ギャスパーは魔術による封印を解除し扉を開ける。
扉には簡易的な魔術が施されており普通の人間は入れないようになっている。
そして部屋から出たギャスパーの目の前には真っ暗で長く続いた廊下があった。

(い、以外と大丈夫なのかな?)

ギャスパーは周囲を見渡した後、歩き始める。
深夜の学校。人の気配は一切しない。
何故か「おのれディケイドォォォォォォ」と言う声が聞こえていたがおそらく気のせいだろう。
対人恐怖症であるギャスパーにとってとても良い環境となっており、ギャスパーは安心して一息つく。

━━………ィィィィン

「⁉︎」

ギャスパーの耳に謎の音が入って来た。何か刃のような鋭いものが空を切るような音だ。

━━……キィィィィン

「な、なんなの…⁉︎」

ギャスパーが戸惑い、一歩、二歩下がるとドン!と何かにぶつかる。

「あたっ⁉︎うぅ、一体なんなんで…す……か………」

ギャスパーが後を振り向くとホッケーマスクを被りチェーンソーを構えた人物が立っていた。

「」

「………」






━━ギィィィィィィィィィィィィィィン!!
(チェーンソーの刃が回転する音)


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!???!!?!!!」

ギャスパーは走った。己の持つ神器を忘れる程、ギャスパーは真っ直ぐ自身のいるべき場所へ逃げていった。
その速さはまるで時を止めたかのような速さだった。





「速いなぁ、なんだったんだろう…さっきの子」

「ねぇ東崎。マスクを被ってチェーンソーを片手に何やってるのかしら?」

「あ、部長。言ったじゃないですか旧校舎の一部をくださいって」

ホッケーマスクを被り、チェーンソーを片手に持った東崎はそう答えた。

「………物理的な意味で!?」

後日、ギャスパーの引き篭もりが一層悪くなったと言う。




〜オリ設定

七十二柱の純血の悪魔は戦争によってほとんどが滅んでしまったが、実際には戦争に乗じてファンガイアが大半の純血の悪魔がライフエナジーを喰らった事が原因となりヤバイ状況となっている。

ぶっちゃけ、ライザーの東崎(ファンガイア)に対する態度は当たり前かもしれない。




ギャスパーの引き篭もり悪化

最初の頃は扉には魔術による封印がされているが、普通の人間では入る事ができないだけの簡単な魔術となっている為、ギャスパーでも簡単に解除できるようになっている。
その後、トラウマ(ジェイソンもどき)によって引き篭もりが悪化。リハビリの為に魔術による封印はやめ、ギャスパーの引き篭もり問題を解決すべく、旧校舎内のみで歩けるように改善した。

涙目のギャー君かw……ゲフンゲフン。




不定期更新の小説ですが、楽しんでいただければ何よりです。
よろしければ感想、評価をよろしくお願いします。


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13話 合・宿・修・行


仮面ライダービルドのハザードが文字通りの意味でヤバイ。
淡々とした感じに殺しにかかるところが凄く怖かった……。

そして、かませと化しているクローズェ……。
クローズに少しでもいいから活躍の場を……




「ひーっ…ひーっ…ひーっ……」

 

お、おっす俺、い、イッセー……。は、ハーレム王になる…男だ……。

今俺は、いや俺達は打倒ライザーの為に強化合宿しに来てるんだが…。

い、一体どれくらい登ったんだ?

別荘に行く為、登山しに来ているが坂がキツくてキツくて…。しかも部長達の分の荷物を何故か運ぶ羽目になってるし……。

そりゃあ、修行の一環って事は分かりますけど、つ、辛い…。

 

すると先にいるアーシアがこちらを見つめ喋りかけてくる。

 

「あ、あの、私も━━━」

 

「大丈夫よアーシア。これくらいこなさないとイッセーは強くならないわ」

 

お、鬼だ…あ、いや違った悪魔だ……。

でも、確かに部長の言う事にも一理ある。俺は皆と比べて弱っちい。

だからこそ、鍛えて鍛えて鍛えまくって強くならなきゃダメだ。

 

よぉーーしッ!!やってやるぞ!打倒ライザー!そして目指せハーレム王!!

 

「お先にイッセー君」

 

ケッ!!イケメンは常にスマイルってか!

しかも汗1つ掻かずにスイスイ登るなんて……!!クッソ!あいつだけには負けてらんねぇ!!

 

って、アレ?そういや小猫ちゃんはどうしたんだ?

俺が後ろを向こうとした瞬間、横に巨大な何かが通り過ぎる。

 

「失礼します」

 

「」

 

小猫ちゃんは木場や俺以上の荷物を持ち、余裕のある表情で登っていく。

……クソォ……目から熱い何かが溢れ出て来やがるッ!!

 

「イッセー君大丈夫?」

 

「お、おう。なんとかな」

 

東崎はマイペースで歩いてるって感じか。

小猫ちゃんを見た後だからなんかインパクトに欠けるな……。

でも東崎も余裕そうに歩いてんな。

 

「ング……ふぅ……で、おっと空孫悟のドラゴン波が炸裂した。やっぱり空孫は強いなぁ」

 

しかもお茶飲みがら漫画を読みつつ後ろ歩きなんてするなんて…俺も負けてられねぇな。

 

 

 

……………

 

 

……………

 

 

……………

 

 

……………

 

 

……………

 

 

……………

 

 

 

 

いや、マイペースってレベルじゃねーぞコレェ!!??

え?なんで漫画?なんでお茶?なんでわざわざ後ろ歩きしてんだよ⁉︎

 

凄いインパクトとあったわ!!つーかツッコミどころあり過ぎだろ!!

しかも読んでるのドラグソボールかよ⁉︎

あれ?ちょっと待て

 

…………その巻、俺が貸してるヤツじゃねぇか!!

 

 

「あ、イッセー君お構いなく。僕は次の巻を見ながら行くよ……お、やっぱり空孫悟とデルの戦闘シーンはいつ見ても燃えるな……本家とはまた違う熱さがあるんだよなぁ…」

 

 

……………

 

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおッ!!!」

 

 

コイツだけには負けらんねぇ!!!

 

負けて、たまるかぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「さて皆が着替えたところで早速修行を始めるわ。……イッセーどうしたのかしら?」

 

「はははは……いやぁ、お茶を悠々と飲みながら漫画を読みつつ後ろ歩きをしているヤツに負けるなんて流石に心が折れかけているって言うか………」

 

「あらそうなの?(東崎にイッセーのやる気を出させる為に刺激して欲しいと頼んだのだけれど…やり過ぎたかしら)」

 

リアスはやや反省しながら、朱乃、アーシアと共に別荘へと戻って行く。 彼女らは他の特訓の為の準備をするべく別行動となる。

 

そして残ったイッセー達でそれぞれ2組に分かれ組手をする事となった。

 

イッセーと木場は互いに木刀を手に剣術のトレーニングを行う。

戦う度にイッセーは木刀を喉元に突きつけられる。木刀を叩き落される等で負け続けている。

騎士としての特性による速さもあるが、経験、剣術と言ったあらゆる要素がイッセーを上回っている事がわかる。

 

 

「痛ッ!」

 

「ほらほら!気を抜かない!まだまだ行くよ!」

 

「くっそ!全く勝てそうにねぇよ…」

 

「何言ってるんだい。アッチを見てみなよ」

 

 

 

 

「えい!」

 

「!」

 

ブォンッ!

 

「ハッ!」

 

「ッ!」

 

ドッ!!

 

「たぁっ!!!」

 

「よっとッ!」

 

シュンッ!!!

 

「東崎先輩、普通に防ぎますね」

 

「小猫ちゃんの攻撃をまともに受けたらヤバイからね。あくまでもいなしているだけ」

 

先程から小猫の方が優勢であり、怒涛のラッシュで攻めているが小猫の攻撃は全ていなされダメージは全く無いようだ。

しかも、先程から東崎は"その場から一歩も動いていない"事から東崎の実力が生身の状態でどれくらいの強さなのかを思い知らされる。

 

そんな光景をイッセーはその様子をのめり込むように見ている。

 

 

「すげぇ……」

 

「どうする。一旦休憩にでもするかい?」

 

「いや、アイツの戦い見てたら負けてられなくなって来たぜ!」

 

「そう来なくちゃ!」

 

親友の実力を見て心に火がついたのか、イッセーは木刀を手に再び木場に立ち向かって行く。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「えい」

 

「ぐぉぉぉぉぉぉおおおおお!!??」

 

「やぁ」

 

「あだだだだだだだだだだだだーーーーーーッ!!ギブギブギブーーーーッ!!関節技はヤバい!ヤバいから!」

 

「情け無い……」

 

一発一発の攻撃が木を破壊する程の威力を持つ戦車の特性を持つ小猫との組手だが、まともに喰らえば吹っ飛ばされ、攻撃されれば、反撃で関節技を喰らう。

小さい女の子に手も足も出ない状況にイッセーは心が折れかけそうになっていた。

 

「うぅ……東崎はこんな攻撃を難なく受けていたのかよ……悪魔になってもアイツに勝つなんて無理なのか……?」

 

「そんな事ありません」

 

「小猫ちゃん?」

 

落ち込んでいるイッセーに小猫は声をかけ、タオルを手渡して来る。

小猫もタオルで汗を拭きながらイッセーに話しかける。

 

「確かにイッセー先輩はこの中でも最弱です。ですが将来性、成長力、爆発力に関しては群を抜いています」

 

「えっ⁉︎そうなのか⁉︎」

 

「さぁ?東崎先輩がそう言ってたので」

 

「えっ⁉︎」

 

 

イッセーは木場と東崎の方へ視線を向ける。

 

そこには人間離れした動きをする東崎と驚異の機動力で翻弄する木場の姿があった。

 

「━━シャッ!!」

 

「━━ハッ!!」

 

ガッ!!ゴッ!!ガンッ!!

 

互いの得物がぶつかり合う。

木と木がぶつかり合う音が響き、折れてしまうのではないか?と言うほどの衝撃だ。そして東崎が木場の振り下ろした木刀を踏みつけ、喉元に木刀を突き付ける。

 

「━━━ハァーー……やっとこれで3対1か……やっと1勝かぁ」

 

「いや、だけど驚いたね。あんな戦い方をするなんて。まるで獣の如くの勢いだった。剣を使うのは本当に初めてかい?」

 

「僕自身が使うのは初めてだけどね。一応知り合いの戦い方を真似しただけだよ」

 

ハハハと愛想笑いしながら木場は落ちている木刀を拾い上げる。

 

「成る程ね、だけど次は負けないよ。そう言えばイッセー君の実力どう思う?」

 

「うーん……多分だけど、すぐに追いついて来るのかな?」

 

「へぇ、思った以上に彼を期待してるんだね」

 

東崎「うーん」と頭を掻きながら喋り出す。

 

「期待とかじゃなくて……イッセー君は必ず強くなる。絶対にね……それじゃあ続きよろしく。僕も負けてられないから」

 

それは人間やファンガイアなど関係無く、ただ負けられないライバルとして言葉だった。東崎は木刀を改めて構える。

木場もその思いが伝わって来たのか、応えるように木刀を構え直す。

 

 

イッセーはその光景を見た後、すぐに小猫と向き合い構える。

どうやら再び熱が入ったようだ。そして小猫とイッセーの組手は再開した。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああッ!!」

 

「気合いがあるのは良いけど、入れ過ぎは空振りするよ!!」

 

━━ドッ!!

 

「う゛ッ!??」

 

水平チョップが首に命中し、イッセーから苦しそうな声が漏れる。

 

「隙を見せると、容赦無く攻撃されるからね。ほら顎ッ!喉元ガラ空き!そして膝カックンからの鳩尾ッ!!」

 

ガッ!ドンッ!ズンッ!!!

 

「ほら、とりあえずこうやって……」

 

「」

 

「あ……流石にやり過ぎだった?」

 

気を失っているイッセーに東崎は反省の意思を見せる。木場も思わず苦笑いをしてしまう。

 

「と、東崎君……、流石に人体の急所を続けて狙うのは……」

 

「うん、流石にやり過ぎたと思う……」

 

「先輩方お疲れ様です。……どうぞ」

 

すると、そこへ小猫が水分補給用の水を持ってくる。イッセーの方をチラリと見た後、何も見ていないような表情を見せる。

 

「お、ありがとう」

 

「先輩は……どうして私達の為に特訓に付き合ってくれたんですか?」

 

「確かに。何か理由でもあるのかい?」

小猫と木場が東崎に質問をする。

本来、彼はこの合宿に参加する予定は無かったのだが、東崎本人が自分から特訓に付き合うと志願した為、それが不思議だったのだろう。

 

「ん?あー……最初はね、イッセー君が頼んで来たんだよね。強くなりたいってさ」

 

「イッセー君がかい?」

 

「んーとさ、イッセー君は昔からあぁでさ。曲がった事が大嫌いと言うか……主人公気質なんだよね。だから断るにも断れないと言うか……」

 

木場は東崎とイッセーの間に存在する確かな友情に驚く。

目の前にいるのは人間だが、ファンガイアでもある。自分達が知っているファンガイアのイメージとは全く違う。

 

いや、そもそも先入観のみで誤った認識をしていた自分達が間違っていたのだろう。

 

「成る程。君とイッセー君は……」

 

「あ、でもさ……それ以上に先輩がライザーさんみたいな、他の女性とイチャついている人と結婚するのは……」

 

ポリポリと頭を掻きながら東崎は間を置いてから喋り始める。

 

「まぁ、アレだよ。イッセー君と同じ考えって事だよ」

 

「……ふふ」

 

「え?何か笑われたんだけど。もしかしてバカにされた?」

 

「いえ、先輩はファンガイアでも先輩なんだなって」

 

「……?」

 

塔城は自分達と変わらない目の前の人物に不思議と笑いが込み上げて来る。

警戒していた自分達がバカバカしく思えてきたのだろう。

小猫は滅多に露わにしない顔を東崎に見せていた。

 

「…………ハッ⁉︎い、今、東崎の親父を名乗る謎のいけ好かない野郎が⁉︎」

 

「あ、起きた」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「魔力は体全体を覆うオーラから流れるように集めるのですよ」

 

「〜〜〜〜〜ッ!!クッソ!これ難しいな。なぁ、アーシアはどうd」

 

「あ、できました!」

 

「━━━ま、まぁ、アーシアなら出来て当然だよな(震え声)」

 

「そうですね……魔力の源流はイメージの具現化。得意なもの、いつも想像しているものなら比較的簡単に出来る筈ですよ?」

 

続いて、姫島による魔力のトレーニング。

東崎も隣で魔力操作に長けたキバットと共にトレーニングをしている。

 

「成る程。イメージか……」

 

言われた通りに頭の中でイメージを思い浮かべながら集中してみるが、集まった魔力は精々ビー玉程度の大きさだった。

その隣でアーシアは魔力の性質を変化させる特訓に入っており、再び落胆してしまう。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

続いても修行と思いきや、リアスに厨房へと連れられて行き魔力を使った夕飯作りとなった。

 

「りょ、料理……?」

 

「えぇ。日常生活の中で魔力を扱うことによって、次第と魔力の集め方も覚えることもできるし、応用の仕方も身に付いていくのよ」

 

アーシアは言われた通りに鍋の中に入った水に魔力を送ると、ものの数秒で沸騰を始めた。

 

「魔力、便利すぎやしませんか……?」

 

「とにかく、今日の夕食は貴方達にお願いするわね」

 

リアス部長にそう言われ、残ったイッセー、アーシア、東崎の3人はそれぞれ準備に取り掛かる。

東崎が慣れた手つきで野菜の皮を剥いていると、イッセーが野菜の皮を一瞬で剥くというか光景を目にする。

 

「なんだよ……結構出来んじゃねぇか」

 

「止まるんじゃねぇぞ……」

 

するとイッセーは調子に乗り始め、片っ端から野菜の皮を魔力で剥き始めた。

そして、気付くと厨房はジャガイモと玉ねぎの皮だらけの空間と化していた………。

 

「げっ‼︎やり過ぎた⁉︎」

 

「何やってんだミカァ‼︎じゃなかった。イッセェ!!」

 

「と、とりあえず、皮の処理をしますね……」

 

「あ、それじゃあ夕飯は僕が作っておくからイッセー君はアーシアさんと一緒に後片付けお願いね。これイッセー君がやったから拒否権は無いからね」

 

東崎の言葉にイッセーはげんなりとするが、アーシアの笑顔に元気を貰いながら皮の処理を始める。

東崎はそんなイッセーの様子を苦笑しながら夕食を作り始める。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「まぁ、美味しい」

 

「あぁ、マジで美味い! うお、美味ぇぇぇっ!」

 

「…美味しい」

 

その日の晩。

その日の修行を終えた一行はテーブルで夕食を頂いていた。

目の前にあるのはコロッケ、ポテトサラダ、肉じゃが、オニオンスープ、etc、etc……

 

ジャガイモ、玉ねぎを中心とした料理ばかりだが、どれも全員の舌を納得させる程の美味しさであり、家事をこなす姫島にも美味しいと言わせる程、東崎の料理のスキルが高い事を証明している。

 

「まさかこれ程とは思わなかったわ東崎。いつも料理を作ってるのかしら?」

 

「はい。大体の家事は僕が」

 

「成る程ね……ところで、イッセー。今日特訓してみてどうだった?」

 

イッセーはその言葉を聞くと、箸を止め複雑な気分でうつむき答える。

 

「…俺が一番弱かったです」

 

「……そうね。それは今、確実ね。特にイッセーとアーシアは経験が足りないわ。せめて、最低限でも相手から逃げきれる力をつけて欲しいわ」

 

「逃げる…ですか…」

 

イッセーは自身の弱さを改めて実感し、逃げる力もない事を知り落胆してしまう。

すると、料理をパクパクと口に運んでいるキバットが喋り出す。

 

「おいおい、そんな顔すんなって。それに逃げきれると逃げるは同じように見えて全く違うんだぜ?」

 

「どういう事だよ」

 

「相手から逃げきれるってのは、格上を相手にして生き延びるって意味だ。無闇に背を向けてやられる逃げる事とは全然違うんだ。逃げるっていうのも戦術の一つ。だが、一度相手に背を向けて逃げるということは倒してくださいって言っているようなもの。実力が拮抗しているならともかく、力の差がはっきりしてるなら尚更な。ムグムグ…」

 

イッセーはキバットの言葉に感心する。

いつも東崎と共にいるキバットからまさかこんな助言を貰えるとは思ってもなかったのだろう。

 

「フフ、そういう事よ。もちろん戦う術もしっかり教えるから覚悟しなさい」

 

「了解っす!」

 

「はい!」

 

(良かったね。イッセー君、アーシアさん)

 

料理を頬張りながら東崎は元気そうな2人を見て東崎は負けてられないと心の中で思った。

 

「━━━さて真面目な話はここまでにして、ご飯を食べたらお風呂に入りましょう。ここは温泉だから素敵なのよ」

 

「へぇー温泉か、いいなぁ」

 

東崎はこう見えて温泉や風呂が好きであり合宿の間、毎日温泉に入れる事に嬉々とする。

それに対してイッセーは見るからにだらしない顔をしており、どう見てもエロい事を考えている事が分かる。

 

「あ、ちなみに僕は覗かないからねイッセー君」

 

「僕も東崎君と同意見だね」

 

「ばっ⁉︎馬鹿!お前ら!!」

 

すると、女性陣達の視線が一斉にイッセーへ突き刺さる。

ちなみにイッセーと一斉をかけたギャグでは無い。

いや、マジで。

 

「あら、イッセー。私達の裸を見たいのかしら?なら、一緒に入るかしら?」

 

「マジで⁉︎」

 

(マジで⁉︎)

 

リアスの言葉に驚くイッセーと東崎。

 

「うふふ…殿方のお背中を流してみたいですわ」

 

「わ、私も……」

 

そしてイッセー共に入る事に抵抗が無い女性陣に東崎は唖然とする。

 

「私は嫌です」

 

「じゃあ、一緒に入るのは無しね」

 

期待していたのか、その言葉にバタリと倒れるイッセー。

そもそも男性に裸体を晒らすリアス達がおかしいだろう。

 

「そ、そんなぁ……」

 

「イッセー君。僕の体でよければ好きなだけ━━」

 

「殴るぞテメェーーー!!!」

 

取っ組み合う木場とイッセー。それを微笑みながら観戦しているリアスと姫島。

東崎はそんな光景を尻目に皿を片付け、呟く。

 

「…さて、温泉行くかな」

 

「それじゃあ、私も行きます」

 

「うん?……あぁ、いいよ塔城さん」

 

こんな感じで1日は過ぎていく━━━。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『感じるぞ━━俺の力を━━━返しても貰うぞ━━━キバ━━‼︎』

 

 

 






次回 『狂気』


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14話 狂気

投稿が遅れてしまったのは私の責任だ。

MHWが楽しくて執筆が出来なかった。
つまり全部私のせいだ!ハハハハハハハハッ!!!


ポタ…ポタ……

 

これで何度目だろう。殺しても殺しても無数に湧いてくる。

 

嗚呼、鬱陶しい。

手を赤く染め、首を飛ばし、四肢を引き裂いても、終わらない。

何回、何十回、何百回、この世界で人を殺したのだろう。

 

いや、目の前いる存在は人と言うにはあまりにも禍々しい存在だ。

 

 

『ファンガイア……殺す……』

 

『殺せ……コイツは生きてはいけない存在だ……』

 

『貴様は忌むべき存在……‼︎』

 

 

血のような赤い鎧を纏った存在が襲い掛かってくる。

 

 

━━━ブチャッ

 

 

手を振り払うとそこに新たな血溜まりが出来る。

 

いい加減慣れた。

命を奪う事に躊躇が無くなった。

 

勿論、最初は命を奪ったと言う事実に頭の中がグチャグチャになるような感覚に襲われた。

だが、その感覚もすぐに消えた。

前世では人間だった僕だが、今ではファンガイアとしての精神と成り果て、人間としての思考が残っているに過ぎない。

 

そんな僕の目の前には次々と自分を殺しにかかる生き物が無数に湧いて出てくる。

 

『こ……ろす…ぁあ……』

 

『ファンガ…イア…は……敵……!』

 

『憎め……全てを壊せ……!』

 

さらにゾンビの如く赤い鎧を纏う存在は蘇り性懲りも無く襲い掛かってくる。いくら砕いても、八つ裂きにしても、肉塊にしてもコイツ等は挑んでくる。

 

すると背後からコツコツと足音が聞こえて来る。

ソレは先程と同じく赤い鎧を纏った存在だ。

 

 

『ファンガイアは全て倒した……お前が最後だ、キバ!!』

 

 

………誰だろうか、聞き覚えのある声だ。

 

いや、そんな事はどうでもいい。どうせいつもと同じく目の前に移るモノは全て殺せば夢が覚める。

 

僕とその存在は互いに殴り合う。

血反吐を吐き、身体中からボキリと嫌な音を出しながら殺し合う。

 

そして僕の拳が目の前の存在の鳩尾に深々と突き刺さり

 

━━ボキャッ!!

 

自分の手が相手の腹から背にかけての内臓、肉、骨を砕きながら貫通した。

 

カラン………

 

『ガフッ……どう……して……』

 

目の前にいる相手の頭部装甲が外れる。

そこに居たのは茶髪の見覚えのある顔だった。

 

 

……………

 

 

何故だろうか。

 

 

━━━グチャッ!!ブチブチブチッ!

 

 

『ガッ……!ゴブォッ!……ガハッ……とう……ざ……き』

 

 

親友と同じ顔のヤツを殺す事に躊躇いが無くなっているのは。

 

おそらく、僕自身がファンガイアに染まって来たのだろう。

 

 

…………だが、 なんだろうこの虚無感は

 

 

親友と同じ顔なのに何も感じる事が出来ないなんて、嫌だ。

僕は人間の筈なのに。

 

 

これじゃあまるで化け物じゃないか

 

 

《ほう、これは驚いた。怨霊と化した歴代の魂の呪縛に囚われながらも精神を保っていられるとはな》

 

 

……?誰だ?

 

 

《ふむ、これは厄介だな。今の相棒ではとてもじゃないが正気を保っていられないな。貴様には悪いがしばらく、その魂を留めてもらおうか》

 

 

………まぁ、いいか。簡単に言えば、コイツ等と気が済むまで殺し合えばいいだけの話だ。

 

 

 

《……忠告しておこう。アイツ等と殺し合うのはやめておけ。人間としての魂を削る事になるぞ?》

 

 

決めるのは僕だ。

 

 

《そうか。それじゃあな今代のキバよ。また会う機会があれば話し合うとしよう》

 

 

 

最終的に誰だったのだろうか。

まぁ、いい。

 

それじゃあ、殺し合いの続きを始めようか。

 

 

 

 

 

 

 

『だめ………て………』

 

 

「……誰?」

 

 

『駄目……莉紅……それ以上はやめて………』

 

 

 

「……母さん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

………………眩しい

 

 

カーテンの隙間から漏れ出す光が顔に射すのを感じる。

重い瞼を擦りながら上体を起き上がらせる。

 

「ん……ふぁわ………よく寝た」

 

のそりのそりと布団から抜け出し、カーテンをシャッと開ける。

そこから一気に日光が僕の身体わ照らし脳を覚醒させる。

 

 

「ん━━━━━━っ!今日も良いてん……き………」

 

 

外を見ると、そこはまさに楽園だった。

緑豊かな自然が生い茂り、透き通った湖が日に照らされ輝き美しい光景を醸し出していた。

 

 

……アレ?まだ夢の中にいるのかな?

 

頬っぺたをつねってみる……痛い。

うん。現実だ。

 

「あ、そう言えば合宿に来てたんだっけか……」

 

そう呟くと先程まで寝ていた寝室を見渡す。

自分がいつも使っているベットと比べ、とても豪華であり高級ホテルのスイートルームで使われるベットなのでは?と思ってしまう。

 

と言うか相変わらずリアス先輩の別荘すげー。

何度同じ事を僕はやってるんだろう。

そう関心していると不意に空腹感が襲ってくる。時間を見てみると朝の6時。

いつもアームズモンスター達の朝食はいつも僕が作っている為、早起きが習慣となっているのだ。

 

さて……キバットは………。

 

「ぐごごごごごーーーーーzzZZZ……」

 

「……朝食でも作ろうかな?」

 

ぐっすりと寝ているキバットを起こさないよう、こっそりと台所へと向かって行った。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「えーと?冷蔵庫に入ってるのは……じゃがいも、玉ねぎばっか………」

 

そういえば最初の夕飯の支度でイッセー君がじゃがいも玉ねぎの皮を剥きまくったんだっけ。

 

それにしてもあの時は何故、団長ネタが出て来たのだろうか。

確かに始めて全話見た機動戦士だったけども。

 

そう言えばこの世界で機動騎士ダンガムと言うドール・アーマーと呼ばれるロボットを操って戦う有名ロボットアニメをイッセー君に勧められたっけか……。

本家もそうだけどOVAが面白かったな。

そう言えば、新シリーズで鉄骨のドルフィンズが出るんだっけか……。

 

よし、絶対にリアルタイムで見よう(断言)

 

 

そんな事を思いながらも冷蔵庫からじゃがいも、玉ねぎ、そして卵や肉と言った材料を取り出していく。

 

「お、ミックスチーズやほうれん草もあるな……ふむ、スパニッシュオムレツでいいかな。あと朝はコーヒーにすべきか……それともお茶を出すべきか……」

 

「何をしているんですか?」

 

背後から声が聞こえてくる。この声の感じは塔城さんだろう。

とりあえず手を動かしながら塔城さんに飲み物のリクエストを聞いておくとしよう。

 

「あ、塔城さん。塔城さんって、朝はコーヒー派?それともお茶派?」

 

「……ミルクです」

 

成る程、確かにカルシウムは大事だよね。

待てよ?ホットが良いか、それとも冷たいままが良いのだろうか?

 

………まぁ、そのままでも良いかな?

 

「そっか。それじゃあさ、これから朝食作るからちょっと待ってt━━━━」

 

 

「……?」

 

 

 

…………

 

 

 

━━ピョコン

 

 

 

 

( ゚д゚) ………

 

 

(つд⊂)ゴシゴシ

 

 

あっ、あれぇ?

 

き、気の所為かな?何故か塔城さんの頭から猫耳で生えているように見えたぞー?多分幻覚だろう。そうだ。きっとそうに違いない。まさかそんな異世界お馴染みケモミミ萌えパーツが装着されている訳無いよね。ハハハハハー

 

 

 

 

 

 

 

━━━ピョコピョコ

 

 

 

 

 

 

 

 

(;゚д゚) ………

 

 

 

(つд⊂)ゴシゴシゴシ

 

 

 

(;゚Д゚)………!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え?何これ。確かにここは異世界だけども何?学園のマスコットって本物の猫耳が生えるもんなの?

 

て言うか既に耳が2つあるのにさらに増えて耳が4つっておかしく無い?

どんな構造になってんの?なんで頭頂部から耳生えてんの?どんな骨格してんの?

内耳神経とか蝸牛神経とかどうなってんの?

 

まて、落ち着け。クールになれ、東崎莉紅。

『萌えの伝導師・K』のように冷静になれッ‼︎いや、待てウッディは流石にダメだ。しかもあの作品の登場人物達ほぼ死ぬやんけ。

 

 

 

「……どうしました?」

 

 

 

 

………………

 

 

 

このまま猫耳の事をストレートに質問するか、それとも別の言い方で猫耳の事を気付かせるか?と僕は考えるが

 

ぶっちゃけ、悪魔とか堕天使とか天使がいる世界だから気にしなくて良くね?と結論に至った為

 

 

 

「………ミルクはホット?それともそのまま?」

 

 

 

━━僕はそのまま考えるのをやめた。

 

 

 

 

「……ホットでお願いします」

 

「うん。それじゃあお皿用意して、それからポッドも一応……えっとそれから……ん?」

 

僕の背中に何かが寄りかかってくるようなものを感じる。

後ろの方へと視線を移すとそこには僕に寄りかかってうたた寝している塔城さんが居た。

 

 

「すぅ……すぅ……」

 

 

 

…………………

 

 

 

「………不覚にもキュンとしてしまった………」

 

 

 

あー、ヤバい。本格的にロリコンと化して来たよ……マジか。

まぁ確かに何というか塔城さんは小動物って感じの可愛さだけど、見た目は小学生くらいの見た目だからね?

うわぁ……イッセー君に毒されたのかな………。

 

とにかくこのままでは色々と危ないので移動させる事にした。

 

「ん………先輩……」

 

「…………せめて、ソファで寝かせてあげよう」

 

そう一言呟き、ソファに寝かせ風邪をひかせないよう布団をかけてあげた。

 

「……ハァ………こりゃロリコン確定だなー。コレで僕もイッセー君と同じく犯罪者予備軍の仲間入りかぁ……」

 

今の僕はきっと死んだ魚の目をしているのだろう。

だが、きっと修行の疲れが抜けていないのだろう。塔城さんが寝てしまうのも無理もないと思う。

しかもまだ朝早い為、眠いのも仕方ない事かもしれない。

 

とりあえず、全員分の朝食が出来上がりそうなところでそろそろ起こしに行くとしよう。

 

ちなみに最初に行くのはイッセーの部屋だ。

なんだかんだで女性の部屋へ行く事に抵抗があるので1番の友達の部屋から行く事にしたのだ。

木場君は……入った瞬間、尻がやばい事になる気がするのは何故だろう。

 

 

「さてと……イッセー君。おはy━━━」

 

僕の言葉はそこで止まってしまった。

そこは僕の親友が使っている部屋だった。別にそこら辺にガチガチになったティッシュが落ちていた訳ではなかった。

 

ただ、イッセー君の部屋には別の部屋に居るはずのアーシアさんがイッセー君と同じベッドで寝ているのだ。

 

しかも、アーシアさんの服が別の物に変わっている。

しばらくするとイッセー君とアーシアさんは目を覚まし、こちらに気がつく。

 

「ん?……東崎か。お前はぐっすり眠れたか?」

 

「━━━━」

 

「ん?東崎一体どうしt……!」

 

イッセーは君は僕の視線を辿り自分の状況を瞬時に理解した。

 

「ち、違ッ!こ、コレは!秘密の特訓で……!」

 

すると、イッセー君の大きな声で起きたのか、アーシアさんが目を覚ます。

そして、僕とイッセー君を交互に見てニコリと挨拶。

 

「おはようございます」

 

「う、うん。おはようアーシアさん。ところで服はどうしたの?」

 

「じ、実は……夜中、イッセーさんの特訓で服が破けてしまい……」

 

僕はそのまま部屋を出て行こうとするとイッセー君が僕の服を掴んでくる。

 

「ちっ、ちげーよ!!えっ、えーと、アレだ!外で!夜中の外でやったから!!」

 

「青姦!!??え、マジで⁉︎ヤったの⁉︎ちょっと引くわ……」

 

まさか幼馴染(悪魔)が居候のシスター(悪魔)が一線を越すなんて………赤飯の用意をした方が良いかな?

 

「イッセーさん、青姦って……?」

 

「良い加減にしろよテメェェェェェェッ!!!」

 

 

朝早くからイッセー君の絶叫が響き渡る。

ちなみに、この後、部長にめちゃくちゃ説教された。

 

 

合宿も終わりに近づき、いよいよライザーさんとの決戦の日が迫って来たのだ。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「ブーステッド・ギアを使いなさい、イッセー」

 

本日の修業を始める前にリアスが一誠に言った。

 

「え?でも、この合宿中は使っちゃダメだって、部長が…」

 

「私の許可無しでは、ね。相手は……東崎お願いしていいかしら?」

 

すると戦う相手が東崎と聞き、イッセーは一層と気を引き締める。

東崎も少し驚きはしたが、すぐに返事をしてイッセーの前に立つ。

 

「いいですよ」

 

「ええ。神器の発動から2分後に戦闘開始よ」

 

リアスに促され、東崎が一誠と対峙する。

 

「へっ、最初の方はボロ負けだったけどな、あん時と一緒にすんなよ!」

 

「勿論。そのつもりだよ」

 

構える東崎の答える形でイッセーが自身の神器であるブースデッド・ギアを発動させる。

 

「ブーステッド・ギア!」

 

【BOOST】

 

一誠の言葉に反応した神器が音声を発することで力が倍になる。

 

「もう一度よ。イッセー」

 

「ブースト!」

 

【BOOST】

 

何回も何回もリアスに言われるまま倍加を繰り返し、すでに10回目の倍加を迎えようとしていた。倍加を繰り返すといえば聞こえはいいが、実際は能力の増大に限界が存在する。

増大する力と、宿主にかかる負荷が比例するためだ。

 

簡単に言えばトラックが許容量を遥かに超える荷物を運べない事と同じである。

 

そして何回も何回も倍加を続け、リアスは目を見開く。

 

 

「ど、どういう事イッセー!これで20回目の倍加よ⁉︎」

 

「へへっ……実は部長には内緒で特訓してたんすよね。やっぱり東崎には負けてらんないっすから」

 

「……予想以上の修行の成果ね……」

 

リアスはイッセーの神器を見つつも東崎に声をかける。

 

「東崎。キバとしてイッセーと戦ってくれないかしら?」

 

「……いいんですか?」

 

「えぇ。それにイッセーもそれを望んでいると思うわ」

 

イッセーは無言で東崎を見据えている。

どうやら覚悟は出来ているようだ。

 

「キバット!」

 

「っしゃあ!久々にキバって行くぜ!」

 

それに応えるように東崎は手元にキバットを呼び寄せる。

そしてイッセーはブースデッド・ギアを前に突き出す。

 

「変身!!」

「ブースデッド・ギアァ!!」

 

【EXPLOSION!!】

 

初めて聞くその音声を引き金に、ブーステッド・ギアの宝玉が光を放つ。

直後に一層強い輝きが一誠を包み、東崎の身体は異形の姿へ変貌を遂げる。

 

 

「あれは…?」

 

初めて目撃する光景にアーシアは疑問を抱いた。

 

「あの音声によって、イッセーは一定時間、強化された力を保ったままで戦えるのよ……それじゃあ始め!」

 

ヒュンッ!!

 

「がっ⁉︎」

 

合図と共に東崎は飛び膝蹴りをイッセーに喰らわす。

騎士である木場と比べて劣るが、素早い攻撃を腹部にダメージを受けたイッセーはすぐに体勢を整える。

 

「ってぇな!」

 

「!さっきのを受けてピンピンしてるとは……」

 

「お返しだ!!」

 

 

ドンッ!!!

 

そう言うとイッセーは物凄い勢いで走り出す。

まるで大砲の弾のようなスピードで一直線に進むイッセーに東崎は防御の構えをする。

 

が、

 

「ちょっ、速ッ⁉︎」

 

ズテンッ!!ズザザザッ!!

 

イッセーは東崎の横を通り過ぎ転んでしまうが、すぐさまスライディングの要領で止まる。

 

「隙ありッ!!」

 

イッセーの背後に回りチョップを喰らわそうとする東崎。

だが、イッセーは左腕の籠手を盾代わりにして防御。そのまま東崎の足を掴み、

 

「オッラァ!!!」

 

ブォンッ!!!

 

投げ飛ばす。

軽々と投げ飛ばされた東崎はそのまま着地の体勢を取るが、着地点を読んだかのようにイッセーは着地するタイミングと共に殴りかかる。

 

「オラァッ!!!」

 

ブンッ!!

 

「なんのッ!!」

 

「━━ッととっ⁉︎」

 

だが東崎は着地する瞬間、身体を捻りイッセーの攻撃は虚しく空を切る。

すると攻撃を空振りしたイッセーの体勢が崩れてしまう。

 

それを見ていた小猫は呟く。

 

「イッセー先輩の身体がパワーに振り回されています」

 

「うん。イッセー君は僕達の予想以上の成長を見せた。だけどイッセー君自身、倍加されたパワーに慣れていないみたいだ」

 

先程から何度も何度も攻撃を外しては腹パンをされ、攻撃を外しては腹パンをされている。

 

「ッくそ……おい東崎!ちまちまやるんじゃねぇ!正々堂々と戦いやがれ!!!」

 

「えぇー、そんな事言われても……しょうがないなぁ」

 

そう言うと東崎は地面に手をつける。

そしてそのまま地面に魔力を流し紋章の形へと変化させる。

 

「ハアッ!」

 

「な、なんだこれ━━━」

 

バチバチバチッ!!!

 

「があぁっ⁉︎」

 

するとイッセーの背に紋章が触れるとイッセーは縛り付けられたように動きが止まる。

そして東崎は

 

 

「ハッ!!」

 

ズドッ!!

 

「グアッ⁉︎」

 

サイコキネシスのようにイッセーを引き寄せるとタイミング良く蹴りつける。

そのままイッセーは背後の紋章に衝突する。

 

バチバチバチッ

 

「ぐああッ!」

 

またもや紋章のダメージを喰らったイッセーは謎パワーによって東崎の元に引き寄せられ

 

「ハッ!!」

 

ズドッ!!

 

「グアッ⁉︎」

 

紋章にぶつかり

 

バチバチバチッ

 

「ぐああッ!」

 

謎パワー+蹴り

 

「ハッ!!」

 

ズドッ!!

 

「グアッ⁉︎」

 

紋章にぶつかり

 

バチバチバチッ

 

「ぐああッ!」

 

謎パワー+蹴り

 

「ハッ!!」

 

ズドッ!!

 

「グアッ⁉︎」

 

これぞ東崎が魔力の特訓によって開発してしまったキメ技ならぬHAME技。

もはやイジメである。

 

 

「やめて下さい東崎さん‼︎イッセーさんのライフはゼロです!!」

 

「東崎君⁉︎流石にやめてあげて⁉︎イッセー君が某究極生物のように考えるのをやめた状態になってるから!!」

 

「酷いハメ技を見ました」

 

「あらあらウフフ(流石、東崎君。やはり貴方と私は同類……!)」

 

 

上から順にアーシア、木場、小猫、姫島がそれぞれの感想を述べる。最後に至っては感想かどうか分からないが東崎はハッと我に返り、ハメ技を中止すると、イッセーがバタリとその場で倒れてしまう。

 

「し、死ぬかと……思った……」

 

だが、数分も経たずにイッセーは立ち上がる。

全員は東崎の強さに驚いていたが、それ以上にイッセーのタフネス、根性っぷりに驚愕を露わにする。

 

「へへっ……仕方ねぇ。こうなったらとっておきのアレを使うしかねぇようだな……!!」

 

「い、イッセーさん!もしかして服を破くあの━━!」

 

「いや、違うから!それじゃ無くてもう1つの方だから!」

 

「もう1つ?と言うか服を破くって何?」

 

「何でもねぇよ!とにかく!俺の特訓の成果の1つ見せてやるぜ!!」

 

するとイッセーは神器を真上に掲げて目を瞑り集中する。

 

「集まれ〜俺の全身に存在する煩悩〜じゃ無かった魔力ーーーッ!!」

 

そして手の平からビー玉程度の魔力の塊が出現する。

 

「ちっさ⁉︎無理無理‼︎こんなんじゃ必殺技無理!」

 

「大丈夫よイッセー!ブースデッド・ギアは倍加の能力を持つ神器!小さな魔力でも大きなものへと変化するわ!」

 

「と、とにかく分からんが、喰らいやがれぇぇぇええええッ!!」

 

イッセーは魔力の塊を握り潰し、そのまま東崎に向けて手を突き出す。

 

「いっけぇぇぇぇぇえええええええ!!!」

 

【STRIKE VENT】

 

 

「⁉︎」

 

 

━━ドゴオッッ!!!!!

 

瞬間、イッセーのブースデッド・ギアの音声と共に巨大な火球が放たれる。

東崎は目の前に火球が出現した事に驚いたのか、すぐさま火球の真下へスライディングする要領で回避を行う。

 

巨大な火球はそのまま先にある隣の山へと飛んで行き

 

 

 

━━━ドォォォオオオオンッ!!!

 

 

そして巨大な爆発(エクスプロージョン)

全員がその圧倒的な熱量と凄まじい爆音に怯んでしまう。

 

爆音が止み、イッセーは恐る恐る顔を上げるとその光景に言葉を失った。

 

「わお…」

 

「あらあら…」

 

「山が…」

 

「なくなってしまいました…」

 

彼らの目に、イッセーの一撃で大きく抉られた山の全容が飛び込んできた。

 

「ま、まじかこれが俺の……ちか……ら……」

 

ドサリ

 

呆気にとられるイッセーだったが、一秒もしない内に全身にかつてないほどの脱力感を覚えると同時に彼はその場で倒れていた。

 

「イッセーさん!」

 

すぐアーシアが死んでしまったように地面に倒れるイッセーの元に駆け寄る。

 

「……さすがに力を使い切ったみたいね。東崎。彼はどうだった?」

 

「流石に死ぬかと思いました……」

 

「い、生きた心地がしなかったぜ…」

 

変身を解いた東崎はぐったりとした表情を見せ、キバットも予想外のパワーに驚いたのか東崎同様に疲れた表情を見せている。

 

その様子にリアスは安心したかのように微笑むとそのままイッセーの元へと歩いて行く。

 

「イッセー。貴方は私の予想を遥かに超える成長を見せたわ。先程の攻撃はまさに上位悪魔クラス、いえ、下手をすると魔王クラスに匹敵するかもしれないわね」

 

リアスはそのままイッセーに肩に手を乗せる。

 

「あなたはゲームの要。恐らくイッセーの攻撃は状況を大きく左右するわ。私たちを、そして何より自分を信じなさい」

 

「みんなを…。自分を…」

 

一誠は言葉を噛みしめながら、自分の中に自信が満ちていくのが分かった。

 

「あなたをバカにした者に見せつけてやりましょう。相手がフェニックスだろうと関係ないわ。私達がどれだけ強いか、奴らに思い知らせてあげましょう!」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

「東崎。今更言うのも何だけど……こんな私達に手を貸してくれないかしら。悪魔やキバは関係無く、オカルト研究部の1人として、駒王学園の生徒リアス・グレモリーとして私達に力を貸して欲しいの!」

 

「……勿論ですよ。当たり前じゃないですか!」

 

東崎はリアスの言葉に笑い返すようにグッとサムズアップをする。

その場の全員の気持ちが一つになるのを感じる。

 

 

決意を新たに結束を深め合った山籠もり修行は順調に進んで行き、ライザーとのレーディングゲーム決戦当日を迎えたのだった。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「はぁーー……久しぶりの我が家だ……」

 

「何て言うかアレだな。安心感があるな」

 

自宅に帰って来た東崎とキバット。

手元には山で採って来た山菜が沢山詰められたタッパーが入っている袋を持っている。

 

ドアに手を掛けようとした東崎だったが彼はとある違和感を感じる。

「そういえば……何か忘れてない?」

 

「……確かに……まぁ、いいじゃねぇか。さっさと部屋に戻ってゲームまでゆっくりしようじゃねぇか」

 

「それもそうだね。それじゃ、ただいまー皆!お土産買って来t

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウワァァァァァァァァァァァッッ!!!!!!!!!!!!!」

 

「待て!待つんだアモンーーー!」

 

「ザヨゴォォォォォオオオオオオオオオッ!!!」

 

「俺の身体はボドボドダ!!!」

 

「イッテイーヨ!」

 

「馬鹿かリキ!無闇にアモンを刺激するなぁぁぁ危なぁぁァァッ!!??」

 

「出してぇぇぇェェェェェェェええええええええッ!!!ここから出してぇぇぇぇぇッ!!!」

 

 

 

そこには斧をぶん回し発狂しているアモン(バッシャー)に、壊れたかのように謎の声を出しているリキ(ドッガ)。

そしてそのアモンを止めようと奮起している次狼(ガルル)が居た。

 

家中のガラスは割れ、椅子やテーブルはボロボロ。

冷蔵庫の中身もスッカラカンで目の前にはただ混沌とした空間が広がって居た………。

 

 

「「忘れてた!!??」」

 

 

そう、東崎とキバットは忘れていた。このアームズモンスター達は家臣の癖に全く家事が出来ない奴らだったという事を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アームズモンスター

 

ガルル、バッシャー、ドッガ。

特にバッシャーが狂気となった為、レーディングゲームに不参加決定。

 




悲報、ライザー戦にてフォームチェンジ不可。

そもそもインフレ率のヤバいハイスクールd×dでバンバンとフォームチェンジすると言うのはどうかなぁ?と思った結果です。


【イッセーの新必殺技】

徐々にイッセーが熱血化しているが、これも全部万丈龍我ってやつの仕業なんだ!!

「なんだってそれは本当かい!」

「俺はやってねぇ!!」

今回、イッセーには仮面ライダー龍騎から《ストライクベント》をやらせていただきました。
個人的にイッセーにやらせてみたかった技の一つです。

一応、イッセーがストライクベントを使った理由としては東崎がまだ小さい頃にイッセーと良く遊んでいたヒーローごっこ的なナニカで
「すとらいくべんとー!」って感じに言ってたのをイッセーの心の中で印象に残っていたからです。

子供は影響を受けやすいと言いますが、イッセーも小さい頃にあの紙芝居の影響でおっぱい魔神に………




ついでによく感想等で主人公が能天気と呼ばれますが間違っていません。
ただ自身の危機感が鈍いんです。
何というか、ファンガイアと人間のハーフという感じなので人間と比べて狂っているんじゃないかな?と思いました。
今はまだソフトで、ジワジワと侵食して行ってる感じ。

人間としての思考を持っているが心はファンガイアという感じです。

初期のムッコロさんもといロリコンジョーカーのような人間の心、アンデットとしての思考を持っている逆パターンだと思ってくれるとありがたいです。



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15話 開戦

今回はいつもと比べて短いかもしれません……




レーディングゲーム当日。

 

ゲームは異空間で作られた駒王学園のダミーで行う。

そして修行を終えたメンバー達は各々レーディングゲームの準備をしていた。

 

だが、開始時刻の10分前になっても東崎は現れなかった。

 

「何やってんだ東崎のヤツ……」

 

リアスの未来がかかっている一戦だと言うのに東崎が来ていない事に内心不安になるイッセー。

 

すると部室の魔方陣が光りだし、グレイフィアが現れる。

 

「皆様、準備はよろしいですか?」

 

「ええ、いつでもいいわ」

 

「え?でも、部長!まだ東崎のヤツが来てないんですけど…?」

 

「大丈夫よ」

 

慌てる一誠に対しリアスは余裕の笑みで返した。

しかし、グレイフィアが冷静に告げる。

 

「ですがゲーム開始の時間は変更できません。残念ですが、現時点で東崎様は失━━」

 

 

 

ガッシャァァァァンッ!!!

 

 

「「「「「「⁉︎」」」」」」

 

 

「すいませーーん!遅れましたッ!」

 

 

失格と言いかけたグレイフィアの言葉を遮る声が聞こえた。

いや、声と言うよりも窓ガラスを壊す音に遮られた。

 

最後のガラスをぶち破れ〜〜と言う感じに東崎が窓から突入してきたのだ。

 

「あ、いや東崎?なんで窓から?」

 

「すみません。ちょっと、家にいるペット?達の世話をしていて遅れてしまいました……あれ?なんか頭から熱いナニカが…」

 

リアスが頭にガラスの破片が突き刺さりドクドクと血を流しながらも呑気な東崎の行動に呆れ額を抑える。

 

グレイフィアは少々驚きながらも淡々とレーディングゲームの説明をする。

 

「開始時間になりましたら、この魔方陣から戦闘用フィールドに転送されます。ゲーム用に異空間で作られた使い捨ての空間ですから、どんな派手なことをされてもかまいません。存分に修行の成果を発揮してください」

 

「痛てて……異空間って凄いな……あたた、塔城さんもう少し優しく……」

 

「東崎先輩、ジッとしていて下さい。まだガラスの破片が頭に刺さってます」

 

「あわわわ!血が!血が出てます!」

 

東崎は先程の窓を壊した拍子に負った怪我を小猫とアーシアに治療してもらいながら説明を聞き、悪魔の技術に関心する。

ちなみにその隣でイッセーが恨めしそうに睨んでいる。

 

「ちなみに、この戦いは魔王ルシファー様もご覧になられますので」

 

すると部室の緊張感はさらに高まるのが分かった。

特にリアスが心底驚く様子を見せる。

 

東崎も魔王ルシファーと言う名前に聞き覚えがあった。

合宿の時、リアスから教えてもらった四大魔王の1人だ。

 

「そう。お兄様も…」

 

その言葉にイッセーは一瞬、耳を疑った。

 

「え?あ、あの。今、お兄様って…」

 

「部長のお兄さんは魔王様だよ」

 

戸惑うイッセーに裕斗がさらりと答えた。

それに対してリアスの表情は複雑そうに見える。

 

「魔王!?ホントですか、部長!?」

 

「…ええ」

 

「キバット、知っていた?」

 

「知ってた」

 

「教えてくれても良かったのに……」

 

東崎はそんな事実を隠していたキバットに対しむっと口を尖らせる。

 

紅髪の魔王(クリムゾン・サタン)こと、サーゼクス・ルシファー。それが今の部長のお兄さんさ。サーゼクス様は大戦で亡くなられた前魔王、ルシファー様の後を引き継いだんだ」

 

祐斗の説明で、魔王の名前は現在では個人名ではなく役職として機能していると理解した。

 

「それでリアスさんはグレモリー家の跡継ぎに…」

 

「そうだったんだ…」

 

「…………」

 

イッセーが納得している隣で東崎の表情が先程と比べて引き締まっている事が分かる。

 

東崎はおそらく四大魔王がリアスの身内と言う事実に納得出来ていないのだとイッセー達は考える。

それもその筈、本人は気にしていないと言っていたが魔王と言えば悪魔の頂点。

 

同族を殺した仇なのだ。

グレイフィアもその事を察知したのか東崎を見つめている。

 

そんな風に思われている東崎本人と言うと

 

(サーゼクスってあれ……?どっかで聞いた事のあるレベルじゃないんですけど。なんて言うか、すっごい聞き覚えのある名前なんですけど……確かに部長と同じ髪の色してますし……まさかね……)

 

 

当たらずとも遠からずだった。

 

 

しばらくして彼らの目の前に新たな魔方陣が現れた。

それを見て全員が一層気を引き締める。

 

「そろそろ時間です」

 

グレイフィアに促され、リアスが立ち上がる。

 

「行きましょう」

 

リアスを先頭に全員が魔方陣に集結する。

そして光が彼女たちを包み込む。

 

「東崎」

 

リアスが東崎に呼びかける。

 

「好きなように動いて頂戴」

 

 

レーディングゲーム開始。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

転移した先は駒王学園を模した疑似空間だった。

 

そして、リアス達の拠点となる旧校舎の森の中に4つの人影が現れた。

ライザーの“兵士”、シュリヤー、マリオン、ビュレントの3人だ。

 

「ふふふ、まさか誰もいないなんてね」

 

「これはチャンスね。一気に攻め落とすわよ」

 

彼女達の目に旧校舎が映り始める。

レーティング・ゲームのルールでは“兵士”が敵本陣に到着すると“昇格”することが可能になる。

攻め込むチャンスだと思った彼女達は足を進める。

 

「ん?何かしらアレ?」

 

すると"兵士"の1人マリオンが視界の端に何かが落ちている事に気づく。

彼女は勝手にその落ちているモノを探りに足を進める。

 

「ッ⁉︎コレはッッ!!」

 

彼女はソレに目を離すことができなかった。いや、どうやれば目を逸らす事が可能だろうか?

 

だが、彼女は気付かなかった。

 

 

背後から近づいて来る人影に━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

「━━━羽を出せ」

 

 

「へ?」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

その頃、体育館にてイッセーと小猫はライザー眷属の"兵士"3名、"戦車"1名と激闘を繰り広げていたッッ!!

 

「先輩は"兵士"をお願いします。私は"戦車"を」

 

「あぁ!【ブースデッド・ギア】スタンバイ!」

 

【BOOST】

 

「「解体しまーす!」」

 

「行きます!」

 

チェーンソーを構える双子のイル、ネルと棍使いのミラの"兵士"達がイッセーの前に立ち塞がり、小猫の前には同じ"戦車"の雪蘭が対峙する。

 

イッセーは敵を前にしてニヤリと笑う。

 

「それじゃリベンジも兼ねて、行くとするか!」

 

「バラバラになっちゃえーーーッ!」

 

「よっと!」

 

「このーーっ!」

 

「危なっ!」

 

イッセーは危なげに2人のチェーンソーによる攻撃を避ける。

そして、ミラがイッセーの背後から襲いかかる。

 

「貰った━━━!」

 

「よっ!」

 

ガシッ

 

しかしミラの攻撃は楽々と防がれる。

 

「なっ⁉︎」

 

「東崎と比べれば大した事ねぇな!!!」

 

【BOOST】

 

二段階目の強化によってイッセーは掴んだ棍を手刀で折り、そのまま掌底をミラに叩き込む。

 

「ぐっ!」

 

「このーーッ生意気!」

 

「次はお前等!!」

 

イッセーは2人の攻撃を楽々と躱しながら2人の身体に触れる。

イッセーがチラリと小猫の方へ視線を向けると小猫はマウントを取り雪蘭を拘束していた。

どうやら、既に決着がついたようだ。

 

イッセーも自身の勝負に決着をつける事にした。

 

「さて、こっちもフィニッシュと行くか!」

 

イッセーは左腕を上に掲げる。ニヤリと悪い顔をしながら叫ぶ。

 

「喰らえ俺の新必殺技!『洋服崩壊(ドレス・ブレイク)』ッ!!」

 

 

━━パァンッ!!!

 

 

刹那、彼女達の服が破け裸体が露わとなる。

 

 

「「「イヤァァァァァァァアアアアアアアアアッ!!!」」」

 

全裸となってしまった彼女達は思わず叫びながらその場で蹲ってしまう。

というか、これはしゃーない。

そんな光景をイッセーはいやらしい目をしながら高笑いする。

 

「どうだ見たか!俺の少ない魔力の才能を女の子を裸にする為だけにつぎ込んだ新必殺技!その名も【洋服崩壊だ】ッ!!」

 

「最低!女の敵!」

 

「ケダモノ!性欲の権化!」

 

「……見損ないました」

 

「最っ低………」

 

敵味方問わず全員から冷たい目で見られるイッセー。

その時、アナウンスが鳴り響く。

 

 

『ライザー・フェニックス様の"兵士"三名リタイア』

 

 

その場のライザー眷属は仲間3人がやられた事に驚きを隠せなかった。

小猫も少々驚いている中、イッセーはニヤリと笑みを浮かべる。

 

(お前ならやってくれると信じてたぜ!東崎!!)

 

イッセーと小猫は動けないライザーの眷属を放置して体育館から出る。

 

そして

 

 

━━ドガガガガガガガガガッ!!!

 

 

雷撃が体育館に襲いかかる。

雷撃が止むとそこには見るも無残な体育館の姿があった。イッセーが上空を見上げるとそこには姫島が飛んでおり、彼女の雷撃による攻撃だと分かる。

 

ちなみにイッセーは心の中で姫島を怒らせないように誓ったのは言うまでもない。

 

「やったな小猫ちゃん」

 

「……触れないで下さい」サッ

 

ハイタッチしようとしたイッセーだったが先程の洋服崩壊を見た所為か、小猫は一瞬でイッセーから遠ざかる。

 

「な、なんでそんな態度取るんだよ⁉︎」

 

「最低な技を使われたら困ります」

 

「んな訳無いだろ!!」

 

イッセーがそう言っていると、リアスから全員に配られたイヤホン型の通信機から連絡が入る。

 

 

 

その瞬間

 

イッセーがリアスからの連絡によって気を取られた一瞬、小猫から目を離したその一瞬、イッセー達は小猫に迫る攻撃を気付く事が出来なかった。

 

 

━━ドオォンッ!!!

 

 

「ッ⁉︎小猫ちゃんッ‼︎」

 

小猫が居た場所に爆発が起きた。

イッセーは何が起きたか理解できなかったが、上空にライザーの"女王"がいる事を確認し、攻撃を受けてしまった事を一瞬で理解した。

 

撃破(テイク)。フフフ、足掻いても無駄。貴方達にライザー様を倒す事は不可能よ」

 

「テメェッ!!降りて来やがれ!!俺が相手だ!!」

 

「威勢のいいボウヤね。貴方もさっきのお嬢ちゃんのように爆発してみる?」

「上等だ!!返り討ちにして━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫だ」

 

「「!!」」

 

 

爆煙が晴れていくとそこには、コウモリを模した甲冑を纏った仮面の戦士が小猫を抱きかかえていた。

 

 

「せん……ぱい……」

 

「僕が居る」

 

 

「東崎!お前いつの間に!!」

 

「………キバか!」

 

キバ改め東崎は小猫をその場で降ろすと、ファイティングポーズを取る。

東崎を加えて、三対一と言う状況となった。

"女王"のユーベルーナは苛つきながらも東崎へ言葉を投げかける。

 

「"兵士"達を倒したのはキバ……貴方なのかしら」

 

「えぇ、勿論ですよ。話にもなりませんでしたが…」

 

「ッ!貴様……!」

 

2人の間に互いのオーラがぶつかり合う。

一触即発の雰囲気にイッセーは圧倒されるが、その間に姫島が割って入る。

 

「東崎君、イッセー君、小猫ちゃん。貴方達は木場君と合流を!」

 

「朱乃さん……分かりました。行こうイッセー君」

 

「お、おう。分かった……あれ?小猫ちゃん?」

 

その場から離れようとしたイッセー達だったが、小猫は手にグローブをはめ直しながら姫島の隣に立ち、ファイティングポーズを取る。

 

「私も戦います……先程の仕返しです」

 

「あらあら、フフフ……しょうがないですわね。後でリアスに説明しておかないとですわね」

 

「……東崎先輩、いえ莉紅先輩」

 

「?」

 

小猫は東崎に背を向けながら話しかける。

 

「私の名前は小猫です。いつまでも塔城は嫌です……」

 

「……負けないでね小猫さん」

 

「む……」

 

小猫は東崎の名前の呼び方が気に入らなかったのか頰を膨らます。

そんな事を知る由も無く東崎とイッセーはグラウンドへと向かって行った。

 

 




東崎は一体どうやって三名の兵士を倒したのか!

ネクストコナ◯ズヒント!!

【勘違い要素ダグ】

期待せずに次回をお楽しみに。



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16話 仇


見逃したァーーーーーッ!!!
先週のビルド見逃したァーーーーーッ!!!
ラビラビ見たかったのに!!!
初の挿入歌だったのにィーーーーーッ!!!


…と言うわけで投稿。




ここは体育用具倉庫。そこに3人の男達が居た。

 

「ここに居れば……ひとまず安全なのか?」

 

「2人ともお疲れ様。特に東崎君は兵士達を相手に1人で良く頑張ったね」

 

イッセー、東崎、木場の3人だった。いや、正確にはキバットを含め+1匹なのだろう。

彼等はリアス・グレモリーの指示の元、合流し倉庫の中で身を潜めていた。

 

 

「ま、あの程度…俺達の敵じゃ無いって所だな……で?グレモリーの騎士様よ、この状況どう見る?」

 

「………犠牲(サクリファイス)

 

 

木場がポツリと呟く。

イッセーは聞き慣れない木場の一言に疑問を抱き、キバットが答える。

 

 

「自身の駒を犠牲にして状況を有利にする戦術さ。簡単に言えば自身の眷属を捨て駒にしてるのさ」

 

「チッ……気に入らないね、僕の最も嫌う戦術だ……」

 

(……え?舌打ち……?コイツがっつり舌打ちしなかったか⁉︎)

 

 

木場の舌打ちにイッセーは冷汗を掻きながら思う。

そしてイッセーは雰囲気を変える為、東崎に話題を投げかける。

 

 

「そ、そう言えば兵士達を簡単に倒すなんて流石だな東崎!」

 

「……え?あ、うん」

 

「あぁ、そうだね。兵士達を倒したにも関わらず(ライザー)が挑発に乗ってこないのは残念だけどね」

 

「おっ、なんだ?さっきまでの腹黒そうな面はどうしたんだよ?」

 

「えっ?僕、そんな顔していたかい?」

 

「んだよ、気付いてなかったのかよ!」

 

 

イッセーと木場がじゃれ合っている中、東崎は黙っていた。

と、言うよりも先程、質問された兵士達との戦いの内容について彼は何も言えなかった。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

━━今から数十分前。

 

 

 

 

"兵士"の1人マリオン。

彼女は旧校舎の裏側に存在する森で1冊の本を見つけた。

 

 

「こ、これは……⁉︎人間界のジャパニーズカルチャーから発祥され、その中でも禁忌の領域に存在すると言う、伝説の……ウ=ス異本⁉︎」

 

 

 

【ウ=ス異本】

 

 

それは独立した多くの書物の総称である。

 

近代技術を駆使する事で急速に広まり、読み続ける事で少しずつ正気を失い混沌に引きずり込まれてしまう禁忌の書物。

 

悪魔、天使、堕天使達の中でもその書物の存在は知られている。

今も尚、常に増え続けており彼女の主人であるライザー・フェニックスもその書物に魅了されてしまった者の1人だ。

 

 

 

しかもその書物の表紙には半裸の2人の男性が写っている事に加え

彼女のパトス的なナニカを刺激する━━━━ッ!

 

 

 

「おおおお、落ち着きなささい!わわ、私!しし深呼吸……フーッフーッフーッフーッフーーーーッ!状況を見る限り、これは罠……!くっ!おのれファンガイアめッ!(歯ギリィッ」

 

 

戸惑ったと思えば急に冷静になり、何故か東崎に逆恨みもとい、敵意を抱く。

しばらくして彼女は書物を手に取り、呟く。

 

 

 

「ウ=ス異本なんかに負けたりしない」キッ‼︎

 

 

 

 

〜〜〜そして数分後

 

 

 

 

「………(ウ=ス異本には勝てなかったよ…)」

ペラッ

 

 

黙々と本を読み続けるマリオン。

先程までの威勢はどうしたのだろうか、混沌(びーえる時空)に引きずり込まれてしまい、彼女はレーディングゲームそっちのけで次のページをめくる。

 

「………」

 

 

そんな腐った女性を仮面の下で悲しい者を見るような目をする【仮面ライダーキバ】こと東崎莉紅。

 

彼の手には()()()()()の羽が握られていた。

 

 

(あぁ、この人"も"なのか………)

 

 

東崎は心の中でそう呟くと彼女の背後に立つ。

彼はこのような女悪魔を2人見てきた。

………ついさっきの事だが。

 

彼は合掌を行い、ガシリと悪魔の羽を掴む。

 

 

 

 

「━━━羽を出せ」

 

 

「へ?」

 

 

 

 

 

━━ブチッ!!!

 

 

━━ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!?

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

〜〜〜回想終了(酷い回想だった)

 

 

「恐るべき敵だったなぁ(遠い目」

 

「あぁ、俺達の敵じゃなかったがな(遠い目」

 

東崎達が酷い回想にやや逃避し、その後ろでイッセーは「流石、東崎!」と言っている。

真実と言うのは時に辛いモノだ。

 

 

「それにしてもあの本、まだ絶版にされていなかったのか……」

 

 

前に漫画部が作り出し、生徒会に没収された筈の本。

まさかあんな所(旧校舎辺り)に隠されていたとは思ってもいなかった。

 

まぁ、結果的に勝てたので東崎は何言わない事にした。

後ついでにレーディンゲームが終わったら生徒会に漫画部を廃部してもらえるよう申請しようと思った。

 

 

「……イッセー君、東崎君。僕は歓喜と共に恐怖を感じている。僕はこの手の震えを忘れたくない。この緊張も張り詰めた空気も全て感じ取って自分の糧にする……お互いに強くなろう」

 

「木場君……」

 

 

東崎は改めて木場の強くなりたいと言う確かな思いを認識させられる。

リアス・グレモリーの騎士として恥じぬよう彼はこの戦いをも自身の経験値にしようとしているのだ。

 

 

「……あぁ、そうだな」

 

 

イッセーも東崎の思いに便乗するように肯定する。

 

 

「んじゃ、女子が見て興奮するようなコンビネーションでも展開すっか」

 

「……⁉︎」

 

「ハハハ!僕が『攻め』でいいのかな?」

 

「!!??」

 

 

だが、東崎の目の前でとんでもない光景が広がる。

しかも木場自身、無意識なのだろう。イッセーと距離がもの凄く近い。

 

東崎に謎の悪寒と共に尻がキュッとするような謎の感覚が襲いかかる。

 

 

「それじゃあ…東崎君は………」

 

「やだッ!!!絶対に嫌だねッ!!僕にそういう趣味は無いからッ!!」

 

 

東崎はブンブンと激しく首を横に振りながら後退りを行う。

その様子に木場は目を見開いた後、目を閉じ口を開く。

 

 

「そうか…そうだよね……。僕は、いや僕達、悪魔はファンガイアを敵視していた」

 

「うん………うん?」

 

「それに加えて僕の主人は君の同胞を殺した仇である魔王様と血縁関係だ。今更僕達を信用しきれないのは分かっているさ」

 

 

木場は東崎の言葉を尻目に口調を強くしていく。その場に居たキバットもその様子に引き気味だ。

 

 

「その気持ちが理解できる……なんて言っても信じてくれないかもしれない。だけど、僕と君は同じなんだ。同じ復讐鬼なんだ」

 

「……え?あ、うん」

 

「だからこそ、僕は君の信頼における友人として戦うよ」

 

「……へっ、水臭いじゃねぇか木場。俺もだぜ」

 

「イッセー君………!」

 

 

いつの間にか凄く盛り上がっているイッセーと木場。

それに対して東崎は「えぇ…」と困惑の声を口から出すしかなかった。

 

 

「なんか色々と勘違いされて無いか?」

 

「これ以上言ったら更に面倒臭そうな事になると思うから黙っていようか」

 

 

東崎とキバットが黙り込み、しばらくして倉庫の中がなんとも言えない雰囲気となりつつあるこの状況をぶち壊す者が現れる。

 

 

「私はライザー様に使える"騎士(ナイト)"カーラマイン!」

 

「……見つかったみたいだね」

 

 

3人と1匹が扉の隙間から外を見ると剣を携えた女性がグランドの真ん中で堂々と名乗りを上げていた。

彼女は騎士道精神が高いのだろう。

近くに仲間らしき人影も見えるが戦闘態勢では無いように見える。

 

すると、木場が「ふっ」と笑みを浮かべる。

 

 

「な、なぁどうする?コレって罠じゃねぇのか?」

 

「仕方ない……キバット。毒を塗った吹き矢でも使って眠って貰おうか」

 

「莉紅って時々、怖い事言うよな」

 

「コソコソと腹の探り合いをするのも飽きた!リアス・グレモリーの騎士よ!いざ尋常に剣を交えようではないか!」

 

 

敵側の騎士、カーラマインの言葉に木場は嬉しそうに頷くと扉に手を掛ける。

すると彼はガラッと言う扉を開ける音と共に外へ出て行ってしまう。

 

 

「……名乗られてしまったら隠れているわけにもいかないか…騎士として」

 

「お、おい⁉︎」

 

「ありゃ駄目だな騎士道精神がご立派な事で」

 

 

イッセーの制止を振り切り敵の前へ向かう木場。

そんな彼を止めても無駄だと言うキバットに東崎は苦笑いをする。

 

 

「僕の"騎士"の木場祐斗」

 

「俺は"兵士"の兵藤一誠だ!」

 

「誇り高きキバット族の名門、キバットバット家の3代目。キバットバットⅢ世!」

 

「えっと……以下省略。東崎莉紅」

 

 

それぞれ自己紹介を行うメンバーに対してカーラマインは「ハハハ」と急に笑い出す。

 

 

「堂々と真正面から出て来るとはな、お前達のような戦士がいてくれて嬉しく思うぞ。私はそう言う馬鹿が大好きだ!」

 

「…お前が言うかよ」

 

 

カーラマインの言葉にイッセーがツッコミを入れる。すると東崎はポンと手を叩く。

 

 

「あっ、さては貴女……馬鹿だな!!!」

 

((ストレートに言った⁉︎))

 

「ハハハ!よく言われる!!」

 

((こっちは誇らしげ⁉︎))

 

 

堂々と笑いながらカーラマインは腰に携えた剣を手に取り切っ先をこちらに向ける。

それに対し木場も剣を構え、切っ先を向ける。

 

 

「騎士同士の戦いを僕も待ち望んでいた。尋常じゃない斬り合いを演じてみたいものだね」

 

「よく言ったリアス・グレモリーの騎士よ!」

 

 

━━ギィンッ!!!

 

 

2人は駆け出し、剣と剣がぶつかり合い火花を散らす。

騎士達は激しい剣戟を繰り広げ、イッセー達はあまりの迫力に近づけない様子だった。

 

すると、後ろから2人の女性が近づいて来る。

顔の右半分に仮面を付けた女性と金髪縦ロールの女性だ。

 

 

「暇そうだな」

 

「全く…泥臭くて堪りませんわ。剣の事しか頭に無いんですもの」

 

「残りの奴等か!ブースデッド・ギアスタンバイ‼︎」

 

「あら、私はやりませんわよ。イザベラお相手してあげたら?」

 

「と言う事で彼女は観戦するだけだ。私が相手をしよう」

 

 

金髪縦ロールの言葉にイザベラと呼ばれた女性は前に出て来る。

するとイッセーは彼女の傲慢そうな態度に怒りを覚える。

 

 

「なんだそりゃ!大事なゲームなのに!」

 

「あの方はレイヴェル・フェニックス。ライザー様の実の妹君で特別に観戦している」

 

「……え?妹?」

 

「は、はぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああ!!?妹を眷属にするとかアリかよ⁉︎」

 

 

東崎とイッセーはライザーの妹が下僕に属していると言う事実に驚愕を隠せなかった。

するとイザベラが口を開き説明をする。

 

 

「ライザー様曰く、『妹をハーレムに入れる事は世間的に義務がある。ほら?近親相姦っての?憧れたり羨ましがる者は多いじゃん?まぁ俺は妹萌えじゃないからカタチとして眷属悪魔って事で』…だそうだ」

 

「いや、普通にクズじゃん!特に妹萌えじゃ無いって所‼︎」

 

「あの鳥は本当の変態で馬鹿だったか!!俺も欲しいぞ!」

 

「イッセー君、本音漏れてるから」

 

 

イッセーの言葉に東崎はツッコミを入れる。

するとイザベラは拳をこちらに向け構える。

 

 

「話は終わりだ……では行くぞ!」

 

「くっ!やってやるよ!!」

 

 

そのままイッセーもイザベラとの戦闘を始める。 そしてその場には東崎とキバットだけがポツンと残されていた。

 

 

「さて……どうしよう」

 

「貴方は戦わないのですか?」

 

 

すると、上空で炎の翼をはためかせ優雅に飛んでいるレイヴェルが話しかけて来る。

 

 

「ファンガイアは危険だから野蛮で危険な種族━━と聞いていましたが……実際に見るとそうとは思えませんわね」

 

「いや、まぁ…そう言われてもなぁ。レイヴェルさんは参加しないの?」

 

「先程も申しましたように私はあくまでお兄様のレーディンゲームを観戦するだけ。それに私が居なくとも結果は既に見えておりますわ」

 

 

レイヴェルの高圧的な態度に気が触ったのか、キバットが言い返す。

 

 

「これはこれは既に勝ったつもりか?フェニックスの妹君」

 

「えぇ、性格はアレですがお兄様の実力は本物。それに……貴方は()()()()()()()()()()

 

 

ザザッ

 

 

すると、東崎とキバットの周りには残り全ての眷属達が揃っていた。これはおそらくレイヴェルを使った罠だったのだろう。

 

レイヴェルに気を取られ、他の眷属の気配に気付けなかったのだ。

 

 

「やべっ!莉紅囲まれた!」

 

「見れば分かるよ……キバット!」

 

 

東崎はキバットを掴むと自身の手に噛ませベルト出現させる。

 

 

「変身ッ!」

 

 

そして仮面ライダーキバへ変身を遂げ、前後左右の敵に警戒するように構える。

 

 

「くそっ!最初からヤツ(ライザー)の狙いは東崎かよ!」

 

「今更知った所でもう遅いッ!」

 

 

イッセーが東崎の加勢に入ろうとするがそれをイザベラが阻止する。

木場も敵である騎士と戦い、助けに入れない状態だ。

 

 

「実質、僕1人でこの人数を相手か……」

 

「おい、俺もいるぜ!」

 

「安心してください。先程も申し上げた通り私はあくまでも観戦するだけ……ですが」

 

 

瞬間、前後左右4人の眷属が東崎に襲いかかる━━ッ!

 

 

「どこまで耐えられますかね?」

 

「くっ」

 

 

東崎はその場で転がり込むようにして回避。

だが、そこに猫耳を付けたセーラー服の女の子2人が追撃をして来る。

 

 

「にゃ!」

 

「にゃぁっ!」

 

「っ!」

 

 

2人の蹴りを腕をクロスして防ぐが、背後から他の女性が攻撃を仕掛けて来る。

それを回避してもまた別の者の攻撃を喰らってしまう。

 

1人を相手にするならば苦戦する事は無いが、流石のキバも1対4では防戦一方、反撃に転じるのが困難だった。

 

 

「おい莉紅、こりゃキツい!戦い方を変えるぞ!」

 

「分かった」

 

 

東崎がそう言うとベルトに装着されているホルダーから手の平サイズの青い笛を取り出す。

そのまま青い笛《フエッスル》をキバットに咥えさせる。

 

 

「次狼さん、月光の力…お借りします!!」

 

「行くぜ……『ガルルセイバーーッ』!」

 

「ッ!何ですの⁉︎」

 

 

笛の音色がレーディンゲームの空間内で響き渡る。

空高くまでその音色は届く。

そして、しばらくしてからキバは空に向けて手を掲げる。

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

…………

 

 

 

…………

 

 

 

…………

 

 

 

 

 

「あ、あれ?」

 

「ありゃ?どうしたんだ?『ガルルセイバー!』『ガルルセイバーーーッ!』おいどうして来ないんだ!アホ狼!」

 

 

東崎達がガルルを呼んだ筈なのに全く変化が無いことに対して混乱し焦り始めていると、東崎の耳元でふと誰かの声が聴こえて来る。

その声の主は今、呼んでいる次狼(ガルル)の声だった。

 

 

━━莉紅、すまないがラモンの空腹による発狂が未だ治っていない。悪いがそっちに行くのは無理だ。

 

 

「えぇ!無理なの⁉︎」

 

「ふざけんじゃねぇよ!さっさと来い!クソ狼!」

 

 

━━良いのか?俺が抑えていないとラモンが何を仕出かすか分からn、ちょっと待てラモン何をやってる!何?『大いなる闇』の召喚?馬鹿やめろ!おいリキ!ラモンを止めr

 

 

「え?何、どうしたの⁉︎なんか物騒な単語が出てきたんだけど!家で何やってんの⁉︎ねぇ!」

 

 

━━グッ、悪いが莉紅、そっちは任せた!こっちはなんとかラモンを止めてみせるッ!うぉぉぉおおおおおおおおおおッ!!

 

 

そのまま次狼の声は一切聴こえなくなってしまった。

東崎は「えぇ…」困惑した声を漏らすが、敵は待ってもくれず攻撃を仕掛けて来る。

 

 

「くそっ!あの3バカは使えねぇ!とにかく何でもいい!連携を崩せ!」

 

「えっと……!」

 

「ファンガイア!討ち取ったり!!」

 

「くっ!どうにでもなれッ!」

 

 

ライザーの騎士が東崎に向かって剣を振りかぶる。

東崎は咄嗟にホルダーから1つのフエッスルを取り出すとキバットに吹かせる。

 

 

「くそっ!『ブロンブースターッ』!!」

 

「何をしようとしても━━

 

 

 

 

 

 

 

………ヒュゥゥゥウウウウウウウ

 

 

 

 

 

 

 

 

「無駄d━━━ぎゃふっ⁉︎」

 

 

 

ズドンッ!!!

 

 

すると、目の前に居た眷属の1人が空高くから降って来た金色のモアイのような像によって押し潰される。

 

 

「………え?」

 

「ふ、不覚………」

 

『ライザー・フェニックス様の騎士一名リタイア』

 

 

「…………ええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!???ブロンってこんな使い方できんの!!?」

 

 

東崎は目の前で起きた惨事に対して驚愕を露わにする。

と言うか、予想外の事が起きたのでたいそう驚いた。

とにかく驚いた。

 

 

「流石じゃねぇか東崎!俺も負けてらんねぇッ!!!」

 

【BOOST】

 

「オラッアッ!!!」

 

━━ドゴッ!!!

 

「ぐっ…⁉︎急に力が増しただと!」

 

 

東崎の活躍?を見てイッセーもギアを上げ、イザベラを押し始める。

そして、そのまま左手を上に掲げると緑色の宝玉が光を帯びる。

 

 

「いくぜ必殺!弾けろッ!『洋服崩壊』ッ!!」

 

━━パァンッ!!!

 

 

瞬間、イザベラが羽織っていた服が一瞬の内に弾け飛ぶ。

突然の出来事に彼女は自身の身体を腕で隠す事しか出来なかった。

 

 

「なっ、なんだコレは⁉︎」

 

「更にッ!新必殺技!(脳内保存完了!ご馳走さまでしたッ!)」

 

 

イッセーはそのまま目の前に魔力の塊を形成すると、それを左手で殴りつける。

 

 

「ドラゴンショットォッ!!!」

 

 

すると魔力の塊はみるみる内に大きくなっていき、そのままイザベラを飲み込んでいった。

 

 

『ライザー・フェニックス様の戦車一名リタイア』

 

 

「っしゃあ!見たか東崎!俺の新・必・殺・技ッ!!!」

 

「…………うわぁ……」

 

「な、なんて破廉恥な技!」

 

「あの……ウチのイッセー君が本当にすみません……」

 

「何でお前が謝ったんだよ!つーか新必殺技の方の感想を言えよ!」

 

 

周囲のリアクションにイッセーは文句を言う。

と言うか当然、文句を言われる必殺技を使っていた。

 

 

 

━━ドゴォォオッッッ!!!

 

 

 

すると、ライザーの拠点である本校舎の屋上から爆発音が響いて来る。

その場に居た全員は爆発が起きた場所へ視線を向ける。

 

そこには倒すべき王であるライザー・フェニックスとリアス・グレモリーが対峙していた。

 

 

「一騎打ち…!」

 

「お兄様ったら私達の勝利は確実なのに、情けをかけたのかしら?」

 

「ざっけんな!!部長は強い!今すぐにお前等を倒して加勢しに行く!!」

 

 

するとイッセーの左腕に装着されている神器か眩しい光を放つ。その光はレイナーレを倒した時と同じ大きさだ。

イッセーは更に叫ぶ。

 

 

【DragonBooster‼︎】

 

「もっとだ!もっと寄越せ!!!あの時はアーシアだったが、今度は部長だ!もう負けたくない!俺の想いに応えてやがれ!!!」

 

『━━━いいだろう』

 

 

左腕の籠手は更にパーツが展開され刺々しいフォルムへと変化していく。

そして、宝玉から溢れ出るかのように緑色の波動が強く放たれる。

 

 

【DragonBoosterSecondLiberation‼︎】

 

「す、すげぇ!形状が変わった……!木場ァ!お前の神器を解放しろ!」

 

「え………分かった!」

 

「東崎!そこから離れろ!すげぇのいくぞ!」

 

「!」

 

東崎はキバの身体能力を生かした跳躍を行う。

その場から東崎が退くのを確認した2人は一斉に神器の力を解放する。

 

 

赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)‼︎」

 

【Transfer】

 

魔剣創造(ソード・バース)‼︎」

 

 

━━キィィィィィィィィンッ!!!

 

 

 

瞬間、眷属達の足元から無数の剣が創造される。

木場の神器《魔剣創造》は所有者の思い描く魔剣を創造すると言う強力な神器だ。

その力をイッセーの神器《赤龍帝の籠手》の倍加能力で木場の魔剣を創造する範囲、量を一瞬の内に倍加させたのだ。

 

そしてアナウンスと共にその場に居た眷属達はレーディンゲームの空間内から消えていった。

その様子を見ていたレイヴェルは驚愕を露わにする。

 

 

『ライザー・フェニックス様の兵士二名、騎士一名、僧侶一名、リタイア』

 

「これもドラゴンの力だと言うの……⁉︎」

 

 

「「よしっ!」」

 

 

イッセーと木場は互いに拳を拳を合わせる。

そして、東崎もタイミング良くその場で着地を行う。

 

 

「2人共、さっきのは一体……」

 

「へっ!籠手の力で木場の神器を強化したのさ!どうよ俺の!新・能・力!!!」

 

「ハハハ……でもコレは凄いよイッセー君。流石はドラゴンの力…」

 

 

戦いを乗り切った3人は一息つく。

が、それを壊すかの如くアナウンスが鳴り響く。

 

 

『リアス・グレモリー様の女王リタイア』

 

 

「なっ!」

 

「そんな!朱乃さんがッ⁉︎」

 

 

「待てよ……塔城さんは━━━

 

 

 

 

 

 

 

━━ドォンッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、イッセーの隣で爆破が起きる。いや、正確には先程まで東崎が居た場所が爆破されたのだ。

その光景を見た事のあるイッセーはその威力を知っていた。

 

 

「と、東崎ィィィィィ!!!」

 

「…え?イッセー君?」

 

「……ありゃ?」

 

 

しかし、爆破されたと思われた東崎はイッセーのすぐ隣で尻を地に付け、傷も負っていない様子だった。

そして、爆煙が晴れるとそこにはボロボロになって倒れていた木場の姿があった。

 

 

「木場ァ!!!」

 

「まさか…僕を助ける為に……」

 

 

そして、木場は東崎の方へ視線を向けながら「フッ…」と笑みを浮かべながら消えていく。

 

 

『リアス・グレモリー様の騎士一名リタイア』

 

「……女王と騎士撃破(テイク)

 

 

上空には手をこちらに向けた状態で悠々と飛んでいるライザーの女王ユーベルーナが存在した。

 

 

「テメェェェッ!!!よくも木場と朱乃さんを良くもッ!!!降りて来やがれ!!今すぐぶん殴ってやる!!!」

 

「フッ…そう怒らないの。それに騎士の方はただの事故なのよ」

 

「事故……?どう言う事だテメェ!」

 

「分からないのかしら?私はファンガイアを狙ったのに騎士が庇ったのよ。元から眼中に無いわ」

 

 

イッセーはユーベルーナの挑発じみた発言に対して更なる怒りを覚える。

だが、怒りで我を忘れかけているイッセーを東崎は手で制する。

 

 

「ざっけんな!!!木場を!!!」

 

「やめるんだイッセー君……塔城さんはどうした?」

 

「トウジョウ……?あぁ、あの生意気なガキなら……」

 

 

すると、ユーベルーナの目の前に魔法陣が現れると同時に、魔法によって作られた鎖によって縛られている塔城が出現した。

 

 

「小猫ちゃん⁉︎」

 

「ほら、返してあげるわ」

 

 

ユーベルーナは小猫をそのまま放り投げる。

東崎は地面に激突する前に彼女を優しくキャッチする。

 

 

「塔城さん!」

 

「うぅ、すみません。東崎先輩……勝てませんでした」

 

「もう喋らないで、大丈夫、もう大丈夫だから」

 

 

小猫は虚な目で東崎に視線を向ける。だが、小猫は役に立たなかったと言う事実からなのか、涙が流れる。

 

 

「ごめん……なさい……」

 

 

そう呟くと小猫はその場から消え、アナウンスが鳴り響く。

 

 

『リアス・グレモリー様の戦車一名リタイア』

 

「……」

 

 

東崎はマスク越しで顔を伏せる。

ユーベルーナはそのままライザーの元へ飛んで行く。

 

 

「待てよ!!逃げる気かテメェ!!!」

 

「あら、貴方の相手なんてしてられないわ兵士君」

 

「待ちやがれ!」

 

「フッ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「臆したのか……残念だ」

 

「……何ですって?」

 

 

東崎の一言にピタリとユーベルーナはその場で停止する。

イッセーは東崎の様子に少しだけ ビビる。

 

「所詮は口だけか…上級悪魔も大した事無いな……僕をまともに倒す事も出来ず、逃げてばかりとは……」

 

「……気が変わったわ。貴方と遊んであげる」

 

「イッセー君、僕はコイツを倒す。今の内にライザーの元に」

 

「け、けど…………わかった!」

 

 

イッセーは一瞬、躊躇うが東崎を信じてそのまま校舎の屋上へ向かって行く。

その様子を悠々と眺め東崎に挑発を行う。

 

 

「あら……友情ごっこはもう良いのかしら?そうすればもっと楽しめたのにね……」

 

 

「御託は良いからさっさとかかって来い。今の僕はかなり苛ついている」

 

 

━━ドクン!!!

 

 

「⁉︎」

 

 

ユーベルーナは東崎から発せられる強大な魔皇力に目を見開き驚愕する。

そして仮面の下で沸々と怒りを燃やす東崎は目の前の悪魔に向け口を開く。

 

 

「仇を取らせてもらう………木場君、姫島さん、塔城さんの仇をな!!」

 




【ウ=ス異本】

題名は『野獣兵藤×木場きゅん』
駒王学園の漫画研究部が制作している。イッセーと木場がくんずほぐれつの行為をしているアーッな漫画。
現在、『野獣兵藤×木場きゅん6』まで出回っている。

※原作では15まで出回っている。(公式が病気)

度々毎シリーズごとに生徒会によって絶版にされそうになるが、不死鳥の如く復活を遂げている。
攻めに入ったライザーの眷属達が旧校舎の森の中に隠されていたのを運良く?見つける。
ちなみにリアスはその事を全く知らない。

生徒会長「その本は絶版だぁ……」

漫画研究部部長「私達の本は…不滅だぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

多分こんな感じのやり取りがされている。
あと、個人的にイラついている時の木場って仮面ライダー鎧武の黒ミッチに似ている気がする。

木場「黙ってろよクズ」

あ、結構違和感無いかも……。
そんな君にヨモツヘグリアームズ。



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17話 Double-Action


取り敢えず、今までのあらすじを簡潔に。

鳥「さてはファンガイアだなオメー」

〜〜あれから十日が経った

【開戦ッ!!】

爆破魔「ジワジワと嬲り殺してくれる、あの小娘のように!」

羽毟り「塔城さんのことかぁぁぁぁああッ!」


大体こんな感じ。




 

 

「私を倒せると思って?」

 

ユーベルーナは手から球状の魔力を撃ち出す。

仮面ライダーキバ、東崎はその場からバックステップするように飛び退く。

 

 

━━ドゥンッ!!!

 

 

瞬間、魔力が着弾した場所で爆発が起きる。

 

 

「フフフ……私は炎の魔力の扱いに長けてるの。少し工夫をすれば爆破だって可能なのよ?」

 

 

不敵な笑みを浮かべながら次々と魔力の弾丸を放つ。

東崎はそれを淡々と躱していく。

 

 

━━ドドドドドドドドドドドドドッ!!!

 

 

反撃に転じ無い東崎、いや反撃する事が出来ないのが正確だろう。

キバの鎧は身体能力と共に跳躍力も優れている。

だが、飛行能力を一切持っておらず触れれば爆発する魔力が雨のように降り注いでいる為、反撃に転じる事が出来ないのだ。

 

 

(厄介だな…)

 

「ハハハ!!!ファンガイアと言うのも大した事無いわね!あの小娘が言ってた割には逃げてばかりじゃない」

 

「…?」

 

 

東崎はユーベルーナの台詞に疑問を覚える。彼女の言う小娘というのは恐らく小猫の事なのだろう。

だが、言ってた割という意味が特に分からなかった。

 

 

「あら、知りたそうな顔をしているわね、良いわ教えてあげる。あの小娘はね『あの人は()()()()()()()()()()』と言ってたのよ」

 

「同じだけど強い……?」

 

「けど、これじゃあ拍子抜けね。これじゃあ何度も何度も私に挑んで来ては返り討ちにされた小娘の方が良いサンドバックをしていたわ」

 

「………」

 

 

東崎はユーベルーナの言葉に不快感を覚えた。

別に自分がどうと言われても構わない。ライザーも自分に嫌悪の眼差しを向けて来たが、アレはそれ相応の理由があったからこそであり自分は憎まれて当然なのだろう。

だが、後輩であり友人でもある塔城小猫をサンドバッグと言われる事はどうしても許せなかった。

 

東崎は友人が悪く言われるとすぐに激怒するイッセーの気持ちを理解する。

 

 

「言いたい事はそれだけなのか?」

 

「あら、随分と冷たいわね。ファンガイアというのは全部そうなのかしら?」

 

 

そんな事は無い。東崎の腹の奥底は沸々と怒りで煮えたぎっている。

だが、東崎は確実に相手を倒す為に堪える。

 

 

「さっきから魔力を1発も当てられない癖によく言う……」

 

「何ですって?」

 

 

すると、東崎はピタリとその場で停止すると両腕を大きく広げる。

 

 

「……何のつもり?」

 

「撃って来い。まさか止まっている的に当てられないと言う事は無いだろう?それとも…ご自慢の爆破はその程度の威力なのか?」

 

「……ッ!!良いわ…!そんなに私の爆破を受けたいのなら味あわせてあげる……!」

 

 

東崎の挑発により激昂したユーベルーナは巨大な魔力を形成する。

そして笑みを浮かべたままその魔力を東崎に向けて放つ。

 

 

「後悔する時間も与えないわ……ハァッ!!!」

 

 

━━ドォンッ!!!

 

上空から地上に向かって強大な魔力が放たれる。

その魔力の強さは恐らく、姫島と同等……いやそれ以上だろう。

 

それに対して東崎は何もせずただ魔力を見てるだけだった。

 

 

「おい莉紅!流石の強固なキバの鎧でもこりゃ不味い!」

 

「分かってる……挑発に乗りやすい人で本当に良かった」

 

 

東崎はそう言うと、その場で屈み、大きく跳躍する。

 

 

━━バッ!!!

 

 

キバの鎧には様々な形態が存在するが、現時点で変身しているこの姿の名称はキバフォームキバの鎧の基本形態であり、()()()()()()()形態だ。

 

キバフォームの長所はオールマイティな戦いと、その驚異の跳躍力だ。

東崎はキバフォームの跳躍力を生かし、魔力が着弾する直前にユーベルーナの元へとジャンプをする。

 

 

「あら、コッチよコッチ、届いていないわよ?」

 

 

だが、ユーベルーナはその場から上昇しキバの跳躍では届かない距離まで離れてしまう。

ユーベルーナはしてやったりと言う愉悦に近い表情を顔に浮かべる。

 

 

━━ドゴォォオッッッ!!!

 

 

刹那、彼女が放った強大な魔力が着弾し大爆発が起こると同時に爆風が吹き荒れる。

 

すると、東崎は爆風によって背を押される形で加速し一気にユーベルーナとの距離を詰める。

 

 

「しまっ!!?」

 

「ハッ‼︎」

 

 

━━ガッ…ドゴッ!!

 

 

「ぐっ…⁉︎」

 

 

そして顎にアッパーを叩き込んだ後、そのまま拳を振り下ろしユーベルーナを地面へと叩きつける。

だが、彼女も負けじと無数の魔力弾を撃ち込み、東崎は爆炎に包まれる。

 

 

━━ボウッ!!!

 

 

ニヤリと笑うユーベルーナだが次の瞬間、その表情は一気に崩れ去った。

 

 

「羽……寄越せぇッ━━━!!!」

 

 

炎に包まれても尚怯まない姿はまるで不死身のゾンビの如く、効いているようには見えなかった。

 

彼女がその姿を見て動揺している隙に東崎は羽を掴み、ユーベルーナの背に足を当てる。

 

 

━━ズゥンッ!!!

 

 

そのまま2人は地面に激突し煙が舞う。

 

しばらくして、砂の煙が晴れる頃には東崎が羽をユーベルーナを踏み付けながら羽を掴んだ状態となっていた。

 

 

━━ブチィッ!!!

 

 

「ぐぁぁぁあああああッ!!?」

 

「羽寄越せ……」

 

(ぐっ……機動力を削いだ⁉︎ヤツの狙いは最初からコレか……!)

 

 

ユーベルーナは手だけを東崎に向け、魔力弾を連発する。

それを察知した東崎はすぐさま飛び退き、回避を行う。

 

ボタボタと背から血を流しながらユーベルーナは立ち上がり、怒りを露わにする。

 

 

「くっ……!この生意気な小僧が!!!」

 

「ハァーー…………ッ!!!」

 

 

すると東崎は足元に紋章を象った魔力を形成する。そのままユーベルーナにぶつけると電撃が彼女を襲う。

 

 

「ぐぁぁぁあああああ!!?」

 

 

そして、そのままこちらに引き寄せると東崎は蹴りを叩き込み魔力で出来た紋章にぶつける。

 

すると紋章にぶつかったユーベルーナはそのままこちらに跳ね返り→蹴りを叩き込む→紋章にぶつける→跳ね返る→蹴りを叩き込む→紋章にぶつける→跳ね返る→蹴りを叩き込む→紋章にぶつける→跳ね返る。

 

永遠にループするかのようなHAME技がユーベルーナを襲う。

 

 

(……え?コレいつまで続くの………)

 

 

ユーベルーナがそう思っていた頃には既に彼女はレーディンゲームの空間から消え失せていた。

 

 

『ライザー・フェニックス様の女王一名リタイア』

 

 

アナウンスが鳴り響く中、東崎は作られた空間の偽の空を見ながらポツリと呟く。

 

 

「……仇は取ったよ皆」

 

 

そう言うと、東崎はそのまま校舎へと足を運ぼうとする。

すると彼の目の前に1人の少女が立ち塞がる様に現れる。

 

 

「ユーベルーナを倒すとは…流石キバと言ったところ。ですが、貴方行った所で負けは確実ですわ」

 

「………あ、居たの忘れてた」

 

「な、何ですって!」

 

 

東崎の前にライザーと同じ金髪の縦ロールの髪型をしたお嬢様風の女の子、レイヴェル・フェニックスが現れる。

だが、東崎自身は彼女が居ると言う事をすっかり忘れていたらしい。

 

 

「なんだ?フェニックスの妹君。今度はアンタが戦うのか?やめとけ、やめとけ。コイツは容赦無く相手の羽を毟る妖怪ニス(の材料)寄越せだぞ?」

 

「フン、私とて不死身のフェニックス。あの程度ではやられませんわ。それに……」

 

 

するとレイヴェルは中に液体が入った瓶を取り出す。それを見た東崎はポツリと呟く。

 

 

「フェニックスの涙……」

 

「よくご存知で。如何なる傷も癒す力を持つアイテム。コレを私とユーベルーナが持っていましたの」

 

「どうりで姫島さんと塔城さんに勝てた訳だ」

 

「えぇ、それに最早、リアス様の滅殺の力もドラゴンの神器の力も残り僅か。お兄様の勝利は既に決まったも同然、それなら私とお喋りしていた方が良いのではなくて?」

 

 

悠々と勝ち誇った表情を見せるレイヴェル。ベルトでぶら下がって居るキバットは東崎に話し掛ける。

 

 

「良し、それじゃあコイツを人質にライザーを叩きのめすとするか」

 

「な、何ですって⁉︎人質なんて卑怯と思わないですの⁉︎」

 

「はっ!知るか卑怯もラッキョウも俺の好物さ。ついでに莉紅の作るラッキョウは絶品だ」

 

 

互いに言い争うキバットとレイヴェル。東崎は「ハァ…」とため息を吐いた後スッとレイヴェルに手を伸ばす。

すると「ひっ」とレイヴェルは呟き後退りをする。

 

 

「わ、私に乱暴しますの⁉︎お兄様が読んでいた本みたいに!やっぱりファンガイアは穢らわしい野蛮な━━━

 

 

「それじゃあ、僕はそろそろ行くから」

 

「お、おいおい良いのかよ無視して……?」

 

 

ポンとレイヴェルの肩に手を置いた後、そのまま屋上に向かって進む東崎。

すると「待ちなさい!」と、後ろに居たレイヴェルが叫ぶ。

 

 

「どうして貴方は平気なのですか!貴方は散々罵られ、種族の誇りを踏み躙られたのでしょう!なのにどうして怒らないのですか!」

 

「……なんで?それくらいで怒る理由なんてあるの?」

 

「それくらい……⁉︎」

 

 

レイヴェルはそのまま顔を伏せ、呟く。

 

 

「分かりませんわ……何故、貴方は種族を誇りに思わないのですか……何故、馬鹿にされても平気なのですか……」

 

「………」

 

 

東崎はそのまま何も言わず、屋上に続く階段を駆け上がって行った。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「部長ォォォォォオオオ!!!兵藤一誠、只今到着しました!」

 

「イッセー!!」

 

「イッセーさん!」

 

 

イッセーは屋上の扉を思い切り開く。

そこには我が主人であるリアス・グレモリーとアーシア・アルジェント、そして倒すべき王であるライザー・フェニックスが居た。

 

ライザーはイッセーの姿を確認すると同時に眉をひそめる。

 

 

「ドラゴンの小僧か……その感じからすると女王に昇格したのか」

 

 

「ハァ…」とため息を吐くとやれやれと言うようなポーズを取る。

 

 

「いい加減にして欲しい所だ。たかが眷属の1人や2人……増えた所で何かが変わると言う訳では無いのn━━━

 

 

━━ボシュウンッ!!!

 

 

瞬間、リアスの手から放たれた魔力がライザーの首から上を消し飛ばす。

 

 

「いい加減にするのはそっちよ。私は諦めないわ」

 

「━━リアス……投了(リザイン)するんだ。これ以上は観戦されている君の父上にもサーゼクス様にも格好がつかないだろう」

 

 

だが、首から上が炎に包まれたと思った直後、ライザーの顔は元通りとなっていた。

怒る……と言うよりはそれを通り越して呆れた様子のライザーは淡々とリアスに告げるが、イッセーがリアス達の前に出る。

 

 

「まだ終わりじゃねぇ!俺が居る!治療が終わったらアーシアは下がってくれ」

 

「え……分かりました」

 

 

やや寂しそうな表情を見せるアーシアだったが、神器を使いイッセーの怪我を治そうと試みる。

が、アーシアの周りを囲むように炎で出来た柵が現れる。

 

 

「コレはッ⁉︎」

 

「悪いな、あんまり長引いてもキミらが可哀想だからな回復を封じさせてもらった」

 

 

ニヤリと不敵な笑みを浮かべるライザー。だがイッセーはそのままライザーに殴りかかる。

 

 

「だからどうした!!!回復出来なくてもッ!俺がぶっ飛ばしてやる!!」

 

【BOOST】

 

「フン、その程度か?」

 

━━ドッ!!!

 

「かはッ⁉︎」

 

 

強化した拳を軽々と受け止めるとライザーはそのままイッセーの腹を殴り飛ばす。

 

 

━━ボシュウンッ!!!

 

「チッ、リアス……いい加減にしてくれないか?」

 

「言ったでしょ……諦めないって」

 

「ッ!まだまだァ!!!」

 

【BOOST】

 

「まだ起き上がって来るか……!」

 

 

ライザーは再び立ち向かって来るイッセーに苛立ちながらも、リアスの魔力を躱しながらイッセーを返り打ちにする。

だが、それでも尚立ち向かって来るイッセーの姿に驚きを隠せなかった。

 

 

「まだ……終わってねぇぞ!!!」

 

【BOOST】

 

「コイツ……まだ……⁉︎」

 

 

「俺はッ!!!」

 

━━ガッ!!!

 

「まだッ!!!」

 

━━ドッ!!!

 

「戦えるッ!!!」

 

━━ゴッ!!!

 

「部長の為なら俺はッ!!!」

 

【BOOST】

 

 

何度もライザーを殴り付け、更なる強化を果たし徐々にライザーを押し始めるイッセー。

 

 

「……ッ!!いい加減にしろ!!!」

 

 

━━ゴオオオォォッ!!!

 

 

「ぐぁぁぁあああああッ!!?」

 

「イッセー!!今助けるわ!!」

 

 

だが、反撃に転じたライザーはイッセーを炎で出来た竜巻に閉じ込める。

強大な炎に飲み込まれたイッセーの身を案じたリアスは自身の魔力でライザーの炎だけを消そうと試みる。

 

 

「無駄ァ!!!」

 

「キャッ!!!」

 

「イッセーさん!部長さん!!」

 

 

だが、ライザーはそんな隙を与えないようにリアスに攻撃を加える。

その様子に思わずアーシアは叫ぶ。

 

 

「無駄なんだよ!!お前達は既に詰み(チェックメイト)なんだよ!!潔く負けを認めろリアス、そうすればお前の眷属をあまり傷付けずに済む」

 

「ッ!!……私は」

 

 

リアスは拳を握り締めた後、力が抜けるように膝から崩れ落ちる。

そして、そのまま口を開き「投了」の一言を呟こうとする。

 

 

「━━━━━━まだ終わってねぇッ!!!」

 

【BOOST】

 

「何ィッ!!!?グォッ!!」

 

━━ドゴォッ!!!

 

 

だが、炎の竜巻の中から突き破るようにイッセーがライザーに1発、拳を打ち込んだ。

すると先程とは比べ物にならない威力だったのか大きく吹き飛ばされる。

 

 

「ぐっ……馬鹿な……!アレを打ち破るとは……!」

 

「へへ……1発ぶちかましてやったぜ。まだ終わってないっすよ部長」

 

「イッセー……どうしてそこまで……!」

 

 

リアスはイッセーがそうまでしても戦う理由が分からなかった。

するとイッセーは無意識なのか笑みを浮かべながら口を開く。

 

 

「ンなもん……アイツも今でも戦ってるからっすよ。それにダチを馬鹿にされて黙ってるほど俺は頭良く無いですから……」

 

 

フラフラとしながらもイッセーは間を置いて、ライザーに向かって叫ぶ。

 

 

「だけど……1番の理由はこんな変態に部長を渡せるかって事だよコンチクショォウがぁぁぁぁああああああッ!!!」

 

【BOOST】

 

「貴様も変態だろうがッ!!!」

 

 

イッセーとライザーは互いに殴り合う。口から血を流しながらも2人は殴り合う。

 

 

「オッラァッ!!!」

 

【BOOST】

 

━━ドゴォッ!

 

 

優勢に見えるのは徐々に力を増していくイッセーの方だろう。

 

 

「無駄ァ!!!」

 

━━ボウッ!!!

 

 

しかし、神器の強化をも超える再生能力を持つライザーの方が一枚上手だ。

最初は押していたイッセーは逆に押され始めている。

 

 

「さっきまでの威勢はどうしたッ!!!」

 

「ぐっ!!?」

 

「所詮、ドラゴンの力はその程度!最後の最後で勝利を収めるのはこの、ライザー・フェニックスだッ!!!」

 

━━ゴォォウッ!!!

 

「イッセー!!!」

 

「イッセーさん危ないッ!」

 

 

体勢を崩された無防備なイッセーに炎を纏った拳を叩き込もうとするライザー。

その光景に2人は思わず叫んでしまう。

 

 

絶体絶命━━━と思われた瞬間アナウンスが鳴り響く。

 

 

 

『ライザー・フェニックス様の女王一名リタイア』

 

 

 

「何ッ!!??ユーベルーナがッ!まさかキバの……⁉︎」

 

【EXPLOSION‼︎】

 

 

アナウンスによって気が逸れてしまったライザーはイッセーに最大の隙を与えてしまう。

イッセーは自身の拳をライザーの胸に当て、力を込める。

 

 

「感謝するぜ、東崎ッ!!!喰らいやがれ必殺!!」

 

「しまっ━━━━━

 

 

 

昇龍突破(ドラグクローファイヤー)ッ!!!」

 

 

【STRIKE VENT】

 

 

 

━━ドゴォォォオオオッ!!!!!!

 

 

「ぐぁぁぁぁぁぁあああああッ!!??」

 

 

大爆発がライザー・フェニックスを呑み込む。

強大な魔力による爆発の為かイッセーは反動で後方へ大きく吹き飛ばされる。

だが吹き飛ばされたイッセーをリアスは受け止める。

 

 

「へ、へへ部長やりましたよ」

 

「えぇ、良くやったわ……本当に……良く…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっきのは危なかった………」

 

「「「⁉︎」」」

 

「まさか、この俺にここまでの傷を負わせるとはな……」

 

 

突如として、聞こえてきた声に3人は驚愕のあまり目を見開く。

そこにはボロボロになりながらもライザー・フェニックスは立っていたのだ。

しかし再生が間に合っていないのだろうが所々に傷を負っており着ていた服もボロボロになっている。

 

 

「く……そっ!!まだ立つのかテメェッ!!」

 

「それはお前も同じだろう……"赤龍帝"」

 

 

ライザーがイッセーの事を赤龍帝と呼んだ。

それは即ち彼は目の前にいる下級悪魔をそれに値する程の相手と認めたと言う事となる。

 

だが、そんな意味も知らずイッセーもフラフラと立ち上がり構える。

 

 

「だったら……もう1回ぶちのめして━━━

 

【BURST】

 

「え………?ガフッ!!?」

 

━━ブシャッ!!!

 

 

「やはりか………」

 

 

瞬間、イッセーは口から多量の血を吐き出し倒れる。そこにリアスが駆け寄るが、ライザーはまるで予想していたかのように呟く。

 

 

「先程の魔力は魔王級のものだ。フェニックス再生能力が追いつかない程のな……だが、神器が発現したばかりの低級悪魔が耐えられると思っていたのか?」

 

「イッセーしっかりして!」

 

「リアス、もう一度言う投了しろ。そうすればソイツは助かる」

 

「たす……かる………」

 

 

リアスの頭の中には激しい後悔の念でいっぱいだった。

自分の身勝手な行動によって仲間達が次々と傷付いていった。

 

 

━━自分が結婚を拒まなければ

 

━━じゃあ、どうすれば良い?

 

━━簡単だ。今この場で投了すれば良いだけだ。

 

 

「ありがとう……皆……不甲斐無い私の為に……」

 

 

リアス・グレモリーの頰に涙が伝う。

それは悔しさから来る涙では無く、戦ってくれた皆への感謝、そして自身の無力さへの涙だった。

 

 

「ようやく投了する気になったかリアス━━━

 

 

 

 

━━ガチャン

 

 

 

甲高い音を鳴らし1人の人物が遅れて屋上にやって来る。

その人物を見たライザーは不快を示すように眉をひそめた。

 

 

「…今更何しに来たファンガイア。いや……キバ」

 

「東崎さん……!」

 

「東崎……」

 

 

今ここに、仮面ライダーキバ東崎莉紅は拳を握り締めライザー・フェニックスと対峙する。

 

 

 






『HAME技』

HAME技は万能。

初登場は合宿時のイッセーとの戦い。
キバットとの魔力(魔皇力)のコントロールの特訓の末に()()()()()()()()()凶悪技。
個人的に、この戦法ってフェニックスに凄く有効だと思う。

元ネタは仮面ライダーダークキバの魔皇力で形成された紋章による拘束→謎パワー引き寄せからの蹴り→紋章にぶつかり跳ね返る→蹴りを繰り返す攻撃。

最終決戦でも仮面ライダーキバとダークキバはラスボスのバットファンガイアにこの戦法を使用していた。
これを見ると最大の被害者はバットファンガイアだと思うの。

ミンチよりひでぇや。


いつの間にか原作では小物でヘタレだったライザーが(中の人繋がり)某吸血鬼の悪のカリスマっぽく見える不思議!だが、変態だ。


最近、東崎と戦う相手って殆どが羽毟られている気がする。
もうコイツ妖怪『羽寄越せ』で良くね?



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18話 Time of Victory

VS綺麗な焼鳥

何故だろう。
このライザー、多分DIO様と英雄王に乗っ取られている気がする……。




………勝てなかった。悔しい……。

あと、少しでライザーを倒せたと思ったのに………。

 

俺、兵藤一誠は後悔の念に押し潰されるかのような感覚に陥っている。

 

 

「ありがとう……皆……不甲斐無い私の為に……」

 

 

部長の声だ……違います部長………部長は不甲斐なくなんか……ありません………。

 

お願いします。まだ、俺は戦う事が出来ます……。

 

だから、泣かないで下さい………。

 

 

━━ガチャン

 

 

 

甲高い扉が開く音と共に霞む視界に親友である姿が映り込む。

 

……はは、やっぱり女王を倒して来たのか……。

流石だよ、お前は。

 

 

『………なんだ?悔しくないのか?』

 

 

あれ?なんだろう幻聴かな?何処からか声が……。

 

 

『どうした?お前はこのままで良いのか?あの不死鳥に勝てないままで良いのか?』

 

 

誰だ?……もしかして天国から来た可愛いおっぱいのデカイ天使様……?

 

 

『誰が天使だ!……俺はお前の側に常に居た。もっとだ、もっと力を求めろ……』

 

 

力……?

 

 

『そうだ。戦え……!あの不死鳥に勝ってみせろ。そして貴様が求めるものを手にしてみせろ……!!』

 

 

俺が求めるもの………それは………!

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「さて……莉紅、まだ行けるよな」

 

「うん……リアス先輩、後は僕達がやります」

 

「……何故だ」

 

「?」

 

 

ライザーは東崎に向け語りかける。その表情は初めて会った頃の下等生物を見下すような顔では無く、ただ純粋に何かの答えを求めるような表情を見せていた。

 

 

「お前は何故、そこまでしてリアス達に肩入れする?何故ファンガイアであるお前が悪魔の為に戦おうとする?理解出来ない……何故だ?何故なんだキバ……」

 

「……なんだ、そう言う事か………」

 

 

東崎はマスク越しに何か落胆するような、安堵したような表情をする。

しばらく間を置いてから東崎は答える。

 

 

「友達……だからですよ」

 

「何?」

 

 

頰をポリポリと搔くような仕草を見せながらも東崎は答え続ける。

 

 

「なんか、くさい台詞なんですけど……ただ純粋に僕はイッセー君、リアス先輩、塔城さん、木場君、姫島先輩、アーシアさん……皆の助けになりたかったから……ただそれだけです」

 

「なんだ、その理由は……?」

 

 

くだらない。

ライザーはそう思った。だが、それと同時に彼から強い信念を感じた。

 

 

「くだらない……かもしれないと思います。だけど、僕はイッセー君と出会ってから、誰かの為に戦う事を誇りに思ってます。だから……」

 

 

東崎は構える。

 

 

「貴方をここで倒す……ファンガイアでも、人間としてでも無く……キバとしてでも無く……僕は僕としてライザーさん、貴方を倒す‼︎」

 

「……そうか。そう言う事か……赤龍帝のあの力……少しは理解出来た気がするな」

 

 

対するライザーの背中から激しい炎が噴出する。

その炎は先程とは比べ物にならない熱量だ。ライザーは高らかに声を発する。

 

 

━━ゴウッ!!!

 

「だがッ‼︎最後の最後に勝つのはこのライザー・フェニックスだ!上級悪魔として‼︎キバ!貴様に負ける訳にはいかんのだ!!」

 

 

「お兄様!」

 

 

すると、遅れてレイヴェルが炎の翼をはためかせやって来る。

するとライザーは彼女の姿を見ずに手で制す。

 

 

「レイヴェル手を出すな。ここからはこの俺、1人で戦う。お前はそこで見ていろ」

 

「お兄様⁉︎」

 

 

レイヴェルは自分の知っているいつものライザーと比べて熱血化している姿に困惑を隠せなかった。

 

そしてジリジリと互いを睨み、一触即発の空気が流れる。

 

 

━━そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「━━待ってくれよ……」

 

「!」

 

 

その空気はイッセーによって壊される。

なんとイッセーは立ち上がっていた。ボロボロになりながら、血を吐きながらも、産まれたての子鹿のような足取りになりながらも彼は立ち上がり、東崎の肩を掴んだのだ。

 

 

「イッセー⁉︎何をやってるの!」

 

「すみません部長……だけど……コイツにだけいい格好はさせたく無いです」

 

 

今にも倒れそうになるイッセーを東崎は支え、声をかける。

 

 

「イッセー君、大丈夫。ここからは僕が……」

 

「なぁ、頼むよダチ公。俺、悔しいんだよ。あんだけ部長を守るって言ったのに……泣かせちまったんだよ」

 

 

イッセーは東崎の手を払いのけるように前へと出る。

 

 

「俺は……ハーレム王になるって言ったのにさ……情けねぇよ。そう思うと俺自身への怒りが込み上げてくんだよ……だから……頼むよ」

 

 

イッセーは虚ろな目で東崎を見つめる。

 

 

 

「今は俺を信じてくれ……」

 

「………」

 

 

東崎はグッと拳を握り締めるとそのまま━━

 

 

 

「えっ?」

 

 

━━ドゴッ!!!

 

 

 

イッセーの顔面を殴りつけた。

 

 

「………ごめん」

 

 

東崎がそう呟くと共にイッセーはバタリと言う音と共に倒れる。

親友を殴った彼はリアスの方へ向く。

 

 

「ごめんなさい……勝手な真似をしてしまって」

 

「いえ、東崎……ありがとう」

 

 

リアスは東崎を許す。

 

 

「イッセーをこれ以上、苦しませない為にわざと……ごめんなさい。私が不甲斐無いばかりに……」

 

「………」

 

 

東崎は何も言わず、イッセーの側で地に膝を付ける。

その様子にライザーは口を開く。

 

 

「さっさと赤龍帝を隅の方に置いてやれ。目を覚ます頃には俺達の決着はついているだろうよ」

 

 

ライザーは東崎にそう告げる。

それはライザーなりの赤龍帝であるイッセーへの敬意だった。

 

だが、彼は少し、ほんの少しだが……彼との決着を付けたいと心の奥底で思った。

 

 

 

「……何勘違いしてるんだ?いつ、僕が戦うと言った……?」

 

「………何?」

 

 

そんなやり取りがされた直後、ガバッとイッセーが起き上がった。

 

 

「ッでぇぇぇぇぇぇぇええええええッ!!?東崎テメー!結構、本気で殴りやがったな⁉︎」

 

「い、イッセー⁉︎」

 

「イッセーさんが……起き上がりました!」

 

 

元気な姿を見せるイッセーにリアスとアーシアは驚愕と共に歓喜の声を上げる。

 

 

「テメー!いきなり何すんだコラァ!!!」

 

「いや、手加減したし……」

 

「嘘つくなッ!!絶対悪意のある拳でしたー!まじでふざけんなよ!!」

 

「えぇ……」

 

 

先程の思い雰囲気が嘘のようにイッセーと東崎のやり取りがされる。

そんなやり取りにレイヴェルはポカンと口が開いたまま唖然としていた。

 

だが、ライザーはとある事に気付く。

 

イッセーの身体にあった筈の傷が無くなっている。

しかも、ライザーと戦う前と比べて疲労が回復している。まるで、最初と戦う以前の、フェニックスの涙を使ったような。

 

 

「ッ⁉︎まさか!フェニックスの涙か⁉︎」

 

「……え?あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁああああああッ⁉︎有りませんわ⁉︎まさかあの時に掠め取ったと言いますの⁉︎」

 

「うん。使わなそうだから…勿体無いなぁと思って……」

 

「だからって殴った瞬間にソレを飲ませたって事かよ‼︎つーか俺を殴った意味は⁉︎」

 

「キバットがやれって……」

 

「このクソ蝙蝠ィィィイイイイイイッ!!!」

 

 

レイヴェルとイッセーはナチュラルに犯罪めいた行為をした東崎に詰め寄る。

さらにイッセーの怒りの矛先はキバットへ向く。

しかも東崎自身、悪気が無いのが恐ろしい。

 

 

「それじゃあ……後は頼むよ」

 

「……あぁ!」

 

 

イッセーは東崎とすれ違いざまにバトンタッチをし終えるとライザーと対峙する。

それに対するライザーは腕を組みながら冷静に告げる。

 

 

「何故、キバと共に戦わない?キバ、お前も分かっている筈だ。今の赤龍帝では俺に勝つ事は不可能に近いとな……」

 

「確かにそうかもしれない。だけど、イッセー君を甘く見ないでください。イッセー君は……誰かの為に馬鹿になれる人…いや、悪魔だから」

 

 

東崎がそう言うとイッセーは目を瞑り、自身の左手に語りかける。

 

 

「なぁ、俺の中に居るドラゴンさんよ……、聞こえてるんだろ?聞こえてるならもっと寄越せ、部長をこれ以上泣かせない為にも……力を貸してくれッ!!」

 

 

するとイッセーの頭の中に炎に包まれた赤い龍のイメージが浮かび上がる。

その赤い龍はまるでこちらに語りかけてるかのように喋る。

 

 

『力を求めるか……代償はそれなりのモノになるぞ?』

 

「構わねぇよ……ただ俺は……アイツを、部長を泣かせたあの野郎をブン殴るだけだッ!!」

 

『ハハハハハッ!!!女の為に戦うか!今代のキバも変わっているがお前も変わっているな!いいだろう━━━━くれてやる」

 

 

瞬間、イッセーの左手の籠手《ブーステッド・ギア》から尋常の無い眩い光が溢れ出す。

 

 

 

「うぉぉぉぉおおおおおおおおッ!!見ていて下さい!部長!これが俺の……!」

 

 

━━変身ッ!!!

 

【Welsh Dragon Over Booster!!!!】

 

 

イッセーの身体が赤い龍を模した鎧に包まれる。

だが、変わったのは容姿だけでは無い。イッセーから発せられる力が先程とは比べ物にならない位に強さを増している。

彼がそこに居るだけで周囲の者がピリピリとその強さが伝わってくる程だ。

 

 

「馬鹿なッ⁉︎禁手(バランス・ブレイク)だとッ⁉︎コイツの成長力は化け物か⁉︎」

 

 

ライザーの顔から驚愕が露わとなる。

すると、イッセーに神器から聞こえる声が語りかけて来る。

 

 

『相棒、この状態を維持できるのは10秒が限界だ』

 

「上等ッ!!10秒間だけ相手をしてやる……‼︎」

 

「ほざけッ!!!フェニックスの力を舐めるなァッ!!!」

 

(テン)

 

 

2つの影がぶつかり合う。

炎が舞い、赤き光が交差する。

 

 

 

━━ドォンッ!!!

 

 

 

━━ドォンッ!!!

 

 

 

━━ドォンッ!!!

 

 

 

━━ドォンッ!!!

 

 

 

 

凄まじい轟音が鳴り響く。不死鳥と赤い龍は空を駆けながら激闘を繰り広げる。

 

 

「ぐっ……!馬鹿なッ!フェニックスの再生能力が追いつかないッ⁉︎いや、この力が抜けるような感覚は………聖なる力ッ!?」

 

「ご名答だッ!!十字架を使って、ジワジワダメージを蓄積させた!」

 

「だとしても貴様も無事では……待てよ、まさかお前…!自身の腕を⁉︎」

 

(ナイン)

 

 

驚愕の表情を見せるライザーに対してイッセーは更なる攻撃を加える。

 

 

「その通りだ!!俺の左手は正真正銘のドラゴンになってる!これで聖なる力は効かない!」

 

「2度と元に戻らないのにかッ!!」

 

━━ドゴォッ!!!

 

(エイト)

 

 

それぞれの拳が相手の顔を捉える。だが、2人は一歩も譲らない。

 

 

「腕一本で部長を守れるなら……ッ!本望だ!!」

 

「イカレてる……だからこその迷いのない一撃か。キバと同等、いやそれ以上の純粋さ……怖いな。初めて俺は貴様に畏怖した。だがッ!!!」

 

 

━━ボゴウッッ!!!!!!

 

 

「ぐぉおおッ!!!」

 

(セブン)

 

 

ライザーの炎を纏った拳がイッセーを吹き飛ばす。

その際に、顔を覆っていた外装が割れる。

 

 

「最後に勝つのはこのライザー・フェニックスだ!!そしてリアスを貰い受けるッ!!!」

 

「ンな事……させるかよぉぉぉぉおおおおおッ!!!」

 

【BOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOSTBOOST】

 

(シックス)

 

 

音声と共に輝きを増し、イッセーは更なる力を見せる。

そして一瞬でライザーの背後へ回るとそのまま拳のラッシュをお見舞いする。

 

 

━━ガガガガガガガガガガッ!!!

 

 

「ぐぁぁぁぁぁぁあああああ⁉︎ば、馬鹿なッ⁉︎更に力を上昇させただと⁉︎」

 

(ファイブ)

 

「まだまだぁぁぁぁああああああッ!!!」

 

 

━━ドガァァァァアアアアンッ!!!

 

そのままイッセーはライザーと共に校庭に激突し、砂塵が舞い上がる。

 

その中からイッセーは飛び出すとゴソゴソと中に透明な液体の入った瓶を取り出す。

 

 

「ぐっ……この俺が手も足も出ない……だとッ!」

 

「まだまだいくぞオラァッ!!!」

 

 

 

(フォー)

 

 

イッセーは自身の左手に収められた十字架に聖水を振りかける。

 

 

「アーシアが言っていたッ!悪魔は十字架や聖水が苦手だって!」

 

 

イッセーは左手にある聖水で濡れた十字架を握り締める。

 

 

「木場が言っていた!視野を広げて周囲を見ろと!」

 

 

イッセーはライザーに向かって駆け出す。ライザーの手から放たれる炎を躱しながら腕を大きく振りかぶる。

 

 

「朱乃さんが言っていた!魔力は体全体から漂うオーラから流れるように集める!」

 

【Transfer】

 

イッセーは聖水によって濡れた十字架の聖なる効力を高める。

 

 

「小猫ちゃんが言っていた!打撃は身体の中心線を狙って的確かつ抉り込むように打つ!」

 

(スリー)

 

イッセーは身体を捻りながら腰に重心を乗せ腕に力を込める。

ライザーは叫びながらも手から炎を撃ち出す。

 

 

「ぐっ!おのれおのれおのれおのれぇッ!!!」

 

 

━━ドゥン!

 

 

━━ドゥン!

 

 

━━ドゥン!

 

 

━━ドゥン!

 

 

(ツー)

 

 

炎に包まれながらもイッセーは止まらない。

それどころか逆に勢いを増しながら突き進む。

 

 

「ぐっ……!赤龍帝………ッ!!!!!」

 

「そして……!お前を殴る理由は部長を泣かせた事だッ!!!」

 

 

(ワン)

 

 

「今の俺はッ!!!負ける気がしねぇぇぇぇえええええええッ!!!」

 

 

━━ドッ!!!!!!

 

 

「が……はっ…………」

 

 

イッセーの拳がライザー・フェニックスの鳩尾を捉える。

そのままライザーは膝から崩れ落ち、ドサリと倒れ込む。

 

 

【Time Out】

 

「……っハァ……ハァ……そして、てめーの敗因は…たった1つだぜ……たったひとつの単純(シンプル)な答えだ………」

 

 

 

 

「てめーは俺のダチを馬鹿にした……!」

 

 

瞬間、イッセーの全身を覆っていた赤い鎧である赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)は音も無く消え去って行く。

 

 

『まさか、ここまでやるとはな……今代はやはり面白そうだ。それじゃあ今後ともよろしく頼むぞ相棒』

 

「あぁ、よろしく……な……」

 

 

━━ドサリ

 

 

イッセーはそのまま前へと倒れ込む。そこにリアス達が駆け付ける。

 

 

「イッセー!しっかりして!イッセー!」

 

「イッセーさん!今すぐ回復を!」

 

 

リアスとアーシアはイッセーの側で声を上げる。必死に声をかけるがイッセーは何の反応も示さない。

 

東崎は変身を解除した後、イッセーの顔を覗き込むと安堵したような表情を見せ、口を開く。

 

 

「リアス先輩、アーシアさん今はそっとしておきましょう。こんなに気持ち良さそうな顔で寝ていますから……」

 

 

イッセーはまるで母親の夢でも見ているかのような顔で眠っていた。

親友である東崎はそんな彼を起こす事は出来なかった。

 

そして彼等を祝福するようにアナウンスが鳴り響く。

 

 

『ライザー・フェニックス様の脱落を確認。よってこのゲーム、リアス・グレモリー様の勝利です』

 

 

 




とあるシーン1

「おい莉紅。フェニックスの涙は飲ませると効果がいいみたいだぜ?」

「OK!(イッセーの口の中へシューッ!)」ズドン!!
↑イッセーの顔面へパンチ

「ごぶっ⁉︎」
※一応、口の中に涙を突っ込ませてます。



とあるシーン2

「……zzZZ」

「リアス先輩、アーシアさん今はそっとしておきましょう。こんなに気持ち良さそうな顔で寝ていますから……(どうせ夢の中で乳に囲まれてんだろぅなぁ……)」

「…うへへ……おっぱいが一杯………」




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



某所、そこに1人の銀髪の男が居た。


「ふふふ……ようやく目覚めたのか。いよいよだ……」

『ほう、随分と楽しみにしているな』

「当たり前さ。お前も歴代二天龍達も争って来た。ならば俺と相反する赤龍帝は俺と同等に戦える奴なんだろう」

『今はまだ目覚めたばかりだ。力は弱いが爆発力は凄まじい所だな』

「早く会ってみたいな……そう言えば、赤龍帝の側にはキバも居るんだっけか……奴とも是非戦ってみたい……」







「それを俺が許すと思っているのか?」


すると銀髪の男の元に軍服の上にマントを羽織った男性が現れる。
銀髪の男はフッと笑うと再び口を開く。


「なぁに、あくまで手合わせさ……それに此方側へ引き込んだ後は幾らでも戦えるからな」

「許さん。例え貴様であろうとも同族に手を出すつもりなら……」

『▽☆仝━━△○=£◆……』

男は縦笛のような物を懐から取り出す。
それと同時に彼の側に宙に白い無機物のような生物が浮かんでいる。


一触即発の雰囲気を壊すように声が響き渡る。


「ねぇねぇー……そんな事でいちいち争うのやめてくんない?」


すると、着物を着崩し猫耳を生やした女性が一触即発の雰囲気を壊す。
更にその後ろから棒を担いだ活発そうな男性が現れる。


「止めるだけ無駄だぜ?どうせすぐにでも喧嘩を始めるさ……で?お前さんは参加しないのかい?」

「…勝手にやってろ。オレは知らん」


全身が重厚な鎧に包まれた剣士は興味が無さそうに呟く。
銀髪の男と軍服の男の睨み合いは続く。

そして……


━━スッ


「いつもお前がやる手段だ。わざと挑発し俺と戦う魂胆なんだろう……さっさと堕天使達の元へ行け。俺達の存在は既にバレている」

「そうか……それは残念だ」


軍服の男は縦笛のような物を仕舞うと銀髪の男に背を向ける。
すると鎧の剣士がチッと舌打ちをする。


「旧魔王の奴等か……気に入らねぇ」

「最近、好き勝手にしてるわよねぇ〜〜。ま、私達には関係無いけど」

「好き勝手なら俺達も負けちゃいないがな」


周りの人物達の言葉を無視するかのように軍服の男は手を上に向けながら呟く。


『待っていろ……今すぐに(キング)がお前を迎えに行く……』



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19話 戦いの末に

アマゾンズ完結編の主題歌を聴いて平成ライダーらしい曲だなと思った。
今更ながらアマゾンズって仮面ライダーなんだよなぁ。

内容がアレだったから仮面ライダーって事忘れていた……。



「……つ、疲れた……」

 

 

レーディンゲームでの勝利を飾り、部室に戻ったリアス達は押し寄せる疲労感を感じていた。

先程までぐっすりと眠っていた筈のイッセーまでも疲労に悩まされている程だ。

 

 

「ハハハ……イッセー君お疲れ様」

 

「イケメンに言われても……って、もう良いか。サンキューな木場」

 

 

イッセーは木場に返答すると、木場自身予想外の返事だったのかやや驚いた後、すぐにいつもの笑顔となる。

 

その隣で東崎がソファに座っていると小猫が目の前に饅頭とお茶を出して来た。

 

 

「……あれ?これって塔城さんのだよね…」

 

「私なりの先輩へのお礼です………嫌ですか?」

 

「ううん、嬉しいよ。それじゃあ有り難く頂きます」

 

 

饅頭を頬張る東崎の横で小猫は微笑む。

それを見ながら姫島は頰に手を当てながらフフフと笑う。

 

 

「あらあら、まぁまぁ小猫ちゃんったら……フフフ」

 

「っ!そ、その……そういうのでは……」

 

 

姫島の言葉にモジモジとしながら顔を赤らめる小猫。

だが、その態度から小猫が東崎に対してどんな感情を抱いているのかは既に明白だった。

 

それを見ていたキバットはお茶を飲んでいる東崎に面白半分で告げる。

 

 

「なぁなぁ莉紅、莉紅」

 

「どうしたのキバット?」(お茶ズズズッ

 

「とりあえず、お前ロリコン確定な」

 

「………え?」

 

 

すると、突如として全員の居る部屋に魔法陣が出現し、そこから2人の人物が現れる。

 

 

「皆様、レーディンゲームお疲れ様でした」

 

 

1人は銀髪のメイドであるグレイフィア。彼女は労いの言葉を送りながらお辞儀をする。

 

そしてもう1人はリアスと同じ紅の髪をなびかせる男性であり姫島達はすぐさま膝をつく。

イッセー達は姫島達の行動に疑問を持ち、その姿を確認したリアスは困惑を隠せずにいた。

 

 

「お兄様⁉︎」

 

「お兄様って……もしかして⁉︎」

 

「この人が、魔王サーゼクス・ルシファー様⁉︎」

 

 

「ブーーーーーーッ!!??」

 

 

イッセー達が困惑している中、東崎はお茶を吹き出してしまった。

 

それもその筈、目の前にいる男性はリアスの実兄であり、現四大魔王の一人、サーゼクス・ルシファーなのだから。

 

 

「お、お兄様どうして……⁉︎」

 

「妹の勝利を祝いに来た以外に何があると思う?リアス、レーディンゲーム初勝利おめでとう」

 

「い、いえ…そんな」

 

 

にこやかな微笑みを浮かべるサーゼクスに対しリアスは珍しく動揺している姿を晒している。

 

 

「私の父も、フェニックス卿も反省していたよ。当然この縁談は破談が確定した。これも全て君達のおかげだ。兄として礼を言わせてもらいたい。本当に、ありがとう」

 

 

そして、魔王であるサーゼクスはリアス達に頭を下げる。その行為に対してリアス達が対応に困るのは必然だった。

 

 

「あ、頭を上げてください、お兄様!魔王であらせられるあなたがこんなことで頭を下げられたら!」

 

「ハハハ、私は魔王としてではなく、ひとりの兄として今私はここにいる。兄が妹の幸せを喜んで何か問題でもあるのかな?あ、それとも昔みたいに『リーアたん』とでも呼んd━━」

 

「お、に、い、さ、ま?」

 

「━━━と、とにかく皆、良くやってくれた。心から感謝するよ」

 

 

一瞬、リアスの顔が般若のような顔になった気がするが、おそらく気の所為だろう。

サーゼクスは改めてイッセー達に感謝の言葉を送る。

 

 

 

(え、リーアたん…?)(部長がリーアたん…?)

(…リーアたん)(リーアたんか…)(あらあらリーアたん…ふふふ)

 

 

だが、彼等の頭の中は既に『リーアたん』と言う言葉で一杯だったのは言うまでも無かった。

 

そして、サーゼクスはとある人物に視線を向ける。

 

 

「………」

 

「………」

 

「……これは不味いね」

 

「あぁ、お前の言う通りだな木場」

 

 

魔王サーゼクスとファンガイア東崎莉紅、互いの視線がぶつかる。

その場の全員はただならぬ雰囲気に圧倒されてしまう。

木場の言葉にイッセーが肯定する。

それもその筈、東崎にとってサーゼクスは同族の仇だ。

 

これから何が起きても不思議では無い。

 

 

「………」

 

「………フフ」

 

 

━━スッ

 

 

「「「「「「‼︎」」」」」」

 

 

サーゼクスは東崎に手を伸ばし、肩に手を置いた。

 

 

「ファンガイアの王の証を持つキバ……いや東崎莉紅君。今回は元々と言えば私達、悪魔が引き起こした事だ。それを関係の無い君を巻き込む形になって()()()()()()……」

 

「お兄様が……」

 

「ま、魔王様が東崎さんに……!」

 

 

サーゼクスの行動にその場にいた殆どの者達が驚愕を露わとなり、イッセー、アーシアの順に声が上がる。

 

それに対する東崎は笑みを浮かべた後、手を差し出して来る。

 

 

「大丈夫ですよ、これは僕が決めた事ですから。後悔なんてしてません。だから顔を上げてくれませんか?魔王様が僕なんかに頭を下げちゃ駄目ですよ」

 

「ふ……そうか。いや、君だからこそか……ありがとう」

 

 

応じるようにサーゼクスは東崎が差し出して来た手を握る。その光景にオカルト研究部の面々はホッと肩をなで下ろした。

 

すると、隣にいるグレイフィアは口を開く。

 

 

「サーゼクス様、そろそろ…」

 

「おっと、もう時間か……済まない。これから私は行かなくてはならない所がある。それじゃあリアス、そして皆…レーディンゲーム実に見事なものだった。いずれ近いうちに会おう」

 

 

サーゼクスはそう言い残すとグレイフィアと共に魔法陣の中へと消えていった。

 

 

 

 

 

▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

リアス達と別れ、東崎とキバットは自宅への帰路に就いていた。

 

 

「……魔王様……がっつりと見た事あったね」

 

「あぁ」

 

 

東崎の言葉にキバットが応える。

 

 

「リアス先輩のお兄さんだったんだね」

 

「そうだな……」

 

 

キバットの言葉を聞いた東崎はその場で膝から崩れ落ちる。

そして両手を地に着け叫ぶ。

 

 

 

「忘れてたぁぁぁぁああああああああああああああああああああああッ!!!!!バイオリンの製作すっかり忘れてたぁぁぁぁぁぁああああああああああッ!!!!!!」

 

 

「いや、そっちィ!!?もっと驚く所あるだろ!知人が魔王だった事!」

 

 

東崎の言葉にツッコミを入れるキバット。

 

 

「いや別にそれはいいよ!ただ、バイオリン職人?としてのプライドが許さないんだよ!バイオリンの為のニスの材料集めはしていたねど、目的と手段が入れ替わってる事に気付かなかったちくしょーーーーーーッ!!!」

 

「あぁ……そう言う事か……忘れてた、莉紅ってこう言う奴だったよなぁ」

 

 

キバットが哀愁漂うオーラを出しながら遠目に夜空を眺める。

何でコイツがキバの鎧を継いで閉まったのだろうかとキバットは時々思う。

 

そんなやり取りをしている内に彼等は自宅へと到着する。

家の中は家臣であるアームズモンスター達が何やら激闘を繰り広げている事以外は比較的平和だった。

 

 

そして、東崎がいつも通り風呂に入る準備をしていると家の中に見覚えのある魔法陣が出現する。

 

 

そして━━━

 

 

「やぁ、東崎君。来たよ」

 

「げぇッ!魔王⁉︎」

 

 

東崎のすぐ目の前に魔王が現れた。

それも、馴れ馴れしい感じの友人が「あ、おはよー」って位のテンションでだ。

 

しかも、側にいるメイドのグレイフィアも額を抑え困惑している様子だ。

そんな彼女を尻目に魔王サーゼクスは話し続ける。

 

 

「ハハハ、なぁに今回のレーディンゲームでリアス達が世話になったんだ。ちゃんとお礼をしなければ駄目だろう?」

 

「……と、言うわけでコチラに好きな金額を書いてください」

 

 

と、グレイフィアは小切手を無理矢理。押し付けるように渡してくる。だが、東崎も負けじと小切手を受け取るのを拒否する。

 

 

「いいですって……!なんか悪魔と契約してる感じで後が怖いんですよ」

 

「いいえ、最低でも今までのサーゼクス様から依頼されたバイオリンの修繕、製作費の正式な金額を受け取って欲しいだけですので、そもそも私達は悪魔です」

 

「あ、そうなんですか……いやいやいやいや!僕、バイオリンに関してはあまりお金は取らないって言うか……!ウチは『安くて質も高い』って言うのがモットーですから!」

 

 

そんな光景をハハハと笑いながら眺めるサーゼクス。

そして、その後ろから3体の影が現れる。

 

 

「……何しに来た?ルシファー」

 

「…久しぶりに会うねウルフェン族の生き残り。ガルル」

 

「ふん、いつも俺達が居ない時を狙ってここに来ていた事は知っている……何しに来た?返答次第では………」

 

 

そう言うと、ガルルを中心にアームズモンスター達はそれぞれ、本来の姿を露わにする。

そこにグレイフィアがサーゼクスを守るように前へ出るが、サーゼクスはそれを手で制す。

 

 

「身構えなくても大丈夫だよ。東崎君には手を出したりしないさ」

 

「………その言葉に嘘偽りら無いな?」

 

「勿論さ、それに……東崎 緋彩(とうざき ひいろ)の実の息子に手をかける事なんて私には出来ない……君もそうだろう?」

 

「………チッ」

 

 

サーゼクスの言葉を聞いたガルルは舌打ちをするとその場でドカッと座り込む。

その様子をバッシャーとドッガは不思議に思う。

 

 

「ねぇねぇ?どう言う事?実の息子ってなんの事?」

 

「次狼、説明を……」

 

「うるさい、今はそんな気分では無い」

 

 

不機嫌となったガルルはバッシャー達の言葉を無視してプイッと明後日の方向へ向く。

それはまるで飼い主の言う事を聞かない犬、そのものだろう。

 

サーゼクスは懐かしい友人を見ているような表情を見せながら口を開く。

 

 

「それで、今日来たのは他でも無い。久しぶりに東崎君のバイオリンの演奏を聴きたいと思ったんだよ」

 

「え?」

 

 

東崎はサーゼクスの意外な言葉に呆気に取られる。

彼はてっきり、バイオリンに関して「いつになったら完成するのかな(ニッコリ)」と圧のかかった笑顔を向けて来ると想像していたからだ。

 

なんだかんだでそういった上司オーラが吹き出ている人が苦手な彼はサーゼクスに返事をする。

 

 

「えっと……、サーゼクスさんは魔王…なんですよね?だったら凄い腕前のバイオリニストでも雇えば良いんじゃないですか?」

 

「君だからだよ。確かに君以上の腕前の持ち主は探せばいくらでもいるだろう……だけど、君のバイオリンの……いや音楽に対する熱意に勝る者はそうはいないだろう」

 

 

サーゼクスの言葉に東崎は考え込んだ後、部屋を出て行く。

そしてしばらくすると東崎は()()()()()()()と弓を持ってくる。

 

 

「それは……?」

 

「これは、サーゼクスさんに頼まれて制作している息子さんへのバイオリンでまだホワイトバイオリン(塗装前)なんですが……もし宜しければ試奏を聴いていってくれませんか?」

 

 

グレイフィアの言葉に応えるように東崎はバイオリンを構える。

それを見たサーゼクスは何も言わずコクリと頷いた。

 

 

「それじゃあ………こんな見窄らしい部屋ですみませんが、聴いてください」

 

 

 

 

月が輝く夜の下、ホワイトバイオリンから奏でられる高く鋭いエチュードが響き渡る。

 

その腕前はプロのバイオリニストと比べれば粗い部分もあり未熟だろう。

だがサーゼクス、グレイフィア、アームズモンスター達は癒されるような感覚を覚える。

 

━━不思議と心が安らぐ音楽だ。

 

 

彼の演奏はまだまだ続く。

 

 




序盤でバイオリンの値段について指摘されたので、ここで補足と言う名の後付け設定を紹介。

東崎はバイオリンを製作する際、値段はあまり気にせずに安価で質が高い事をモットーにしています。

質の高いバイオリンは作る。だけど値段は安い。
それに加えてアームズモンスター達の食事代もあるのでお金がヤバイ。


あと、ついでにサーゼクスの金銭感覚は一般の者に比べてズレているので今までの分の金額をグレイフィアが払う事に。


この作品のサーゼクスはソフトな感じになっていまs……なんか原作を見るとあんまり変わらない気がする。



これでフェニックス編は最後になります。
次回は番外編を挟んでからエクスカリバー編に入ります。


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20話 ex.使い魔って?←あぁ!



キャラ崩壊注意!

基本的に番外編は色々とおかしい所があります。そこら辺は頭を空っぽにして楽しんでくれると幸いです。



 

「……うん、と言うわけで……そうそう、次狼さんお願いね」

 

 

ピッと言う音と共に電話を切る東崎。

彼は今、オカルト研究部として使われている旧校舎の一室にあるソファに座り寛いでいる所だ。

 

ライザー・フェニックスとのレーディンゲームが終わったが10日間も学校を休んでいたので、それを補う為の勉強会を先程まで行っており丁度終わった所だ。

 

 

「あらあら、皆お疲れ様」

 

 

そこに、副部長である姫島が粗茶を全員に行き渡るように出してくる。

 

 

「あ、朱乃さん。ありがとうございます!」

 

「フフフ、勉強頑張っていますね」

 

「はい!少し大変ですけど、皆さんとご一緒に勉強が出来て嬉しいです!」

 

 

イッセーが姫島に礼を言った後、眩しい笑顔を浮かべたアーシアが答える。

 

 

「ハハハ…そう言えば東崎君、さっき誰かと電話していたみたいだけど…?」

 

「ん、うちの……居候的な……ペット?」

 

「え?」

 

「ま、まぁ、とにかく気にしなくて良いよそんな大した事じゃないからさ」

 

 

東崎はこれ以上言うと色々と誤解されると思ったのか、話を有耶無耶にしつつ話題をすり替える事にした。

 

 

「ところで、木場君の方は勉強はどうなの?」

 

「うん、特に問題はないかな。小猫ちゃんの方はどうかな?」

 

「はい、私も特には……お菓子を用意しますね」

 

 

小猫がソファから立ち上がり、お菓子を用意しようとするが、東崎の目の前にコトリと羊羹が乗った皿が差し出される。

 

 

「お、ありがとうございます……って、どちら様?」

 

『(ニコッ)』

 

 

そこにはリアスとは違った赤髪長髪の頭と背に羽を生やした白いシャツに黒のベストを着用した女性が居た。

 

その女性は笑顔で東崎にお辞儀をした後、そのままイッセー達の目の前にも羊羹が乗った皿を置いていく。

 

 

「………誰?」

 

「さ、さぁ…私にも分かりません」

 

「……いいおっぱいだ」

 

「彼女は私の使い魔よ」

 

 

東崎達が疑問に思っていると部屋に入って来た部長のリアスが答える。

イッセーはリアスの言葉に大層驚く。

 

 

「えっ、えぇ⁉︎使い魔⁉︎あんなに可愛い娘が⁉︎」

 

「その通りよ、彼女は私の使い魔の1体でね。基本的に彼女は身の回りの世話をしてくれるのよ」

 

「とても助かっていますわフフフ」

 

 

リアスと姫島の反応に東崎は深く関心する。

 

 

「へぇ、ウチの居候的なサムシング(アームズモンスター達)に見習わせたいな……あ、粗茶のお代わりって貰えますか?」

 

「先輩、それなら私g━━

 

 

私がやりますと言う直前にリアスの使い魔が素早く新しい粗茶を用意する。

 

 

「おっ、ありがとうございます。流石リアスさんの使い魔だなぁ」

 

『♪♪』

 

「……」

 

 

リアスの使い魔は頭の羽をピコピコと動かし喜びの感情を表現する。

それをジッと見る小猫。

 

すると、リアスの使い魔は小猫の方を向いたかと思うと

 

 

『……フッ(見下すような目)』

 

「ッ⁉︎」

 

 

ニヤリと小猫に不敵の笑みを浮かべた。そして小猫は目の前の使い魔の意図を直感した。

 

 

『《ねぇねぇ、今どんな気持ち?ねぇねぇ、今どんな気持ち?好意を持っている人を目の前にして無能を曝し出すのってどんな気持ち?》』

 

 

「…………ッ!!!」

 

 

「こ、小猫ちゃんの顔か凄い形相になっている……⁉︎」

 

 

小猫はまるでプライドを貶された獅子の如く、使い魔を睨み付ける。

そんな彼女の迫力に押されながらもリアスは咳払いをした後、イッセー達に話しかける。

 

 

「と、とにかくイッセーとアーシアはまだ持っていなかったわよね」

 

 

すると、リアスの手元にポンと手品のような音を出しながら赤いコウモリが出現する。

 

 

「これが私の使い魔の1体よ。東崎、そっちの使い魔なら見た事があるんじゃないのかしら?」

 

「そっち……?」

 

 

東崎が怪訝に思っていると、隣に居た使い魔もポンと音を出しながらコウモリの姿へと変化する。

すると、その姿を見た東崎の記憶が刺激される。

 

 

「あ!あの時の次狼さん達に食べられかけたコウモリ⁉︎」

 

 

そう、彼は一度この使い魔と会った事がある。

その時は「こら!コウモリは病気を移すんですよ!狂犬病になっても知りませんよ!」と言った感じに逃がし、無事でいるといいなぁ。と思っていたが、まさかこんな所で再開するとは思ってもみなかったのだろう。

 

そして、その使い魔が種族の垣根を越え東崎に好意を向けられている事も彼は知らない。

 

 

「フフフ、私はこの子ですわ」

 

「……シロです」

 

 

すると姫島の足元には小鬼が、小猫は白い子猫を抱いていた。

何故か小猫の機嫌が悪そうに見えるのは気の所為だろう。

 

 

「僕のは━━━━

 

「あ、お前のはいいや」

 

「つれないなぁ」

 

 

即刻否定するイッセーの反応に苦笑する木場だが彼の肩に1匹の小鳥が止まっていた。

 

おそらく木場の使い魔なのだろう。東崎は物珍しそうにジッと小鳥を見つめる。

 

 

「どうしたんだい東崎君。もしかして君も使い魔が欲し━━━」

 

 

 

 

「ニス」

 

 

 

 

「「「!!??」」」

 

「あらあら、フフフ」

 

 

 

その場にいた殆ど者が東崎の発言に対して耳を疑う。

コイツ、今なんて言った?まさかこんな可愛い使い魔をニスの材料にするわけないだろうな?とイッセー達は考える。

 

そんな中、姫島だけは余裕そうに笑っているのは気にしない方向で。

 

 

「ねぇ、キバット……使い魔ってさぁ……良い色を出しs━━━━」

 

「とにかく!使い魔をゲットしに出発よ!異論は認めないわッ!!」

 

 

東崎の発言を遮るようにリアスが叫ぶと魔法陣が輝きを放つ。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

魔法陣の光が止むとそこには見知らぬ森だった。

だがその森はイッセー達がよく知っているような緑が生い茂る自然豊かな場所では無く、日の光が背の高い巨木に遮られた不気味な雰囲気をした森だった。

 

 

「此処は……」

 

「まさしくなんでも出てきそうな森って感じだね……ん?」

 

『───』ギュッ

 

「ッ⁉︎」

 

 

イッセーと東崎が喋っていると、いつの間にかついて来たリアスの使い魔が東崎の腕にしがみついていた。

 

その光景を目の当たりにした小猫はギリッと奥歯を噛み締めながら睨みつける。

それに対して使い魔は勝ち誇ったような表情を小猫に見せつける。

 

 

もし、現在のお互いの心情を簡単に表現するなら……

 

 

━━『勝ったと思うなよ……』

 

 

━━『もう勝負ついてるから』

 

 

こんな感じだろう。

 

 

「ゲットだぜィ!!!」

 

「「「⁉︎」」」

 

そんなやり取りをしている突然の大声にイッセー達は驚いてしまう。

すると木の陰から帽子を深く被り、ラフな格好をした男性が現れる。

 

……と言うよりは虫取り少年の格好をしたおっさんと言う、どう見ても不審者だった。

 

 

おそらく彼が先程の声の主なのだろう。

だが、東崎は別の意味で驚いている様子だった。

 

 

「俺の名前はマダラタウンのザドゥージ!使い魔マスターを目指して修行中の悪魔だ!」

 

「彼は使い魔のプロフェッショナルの悪魔さ。使い魔の事なら彼が1番なんだよ」

 

「アウ……え?せ、セーフ……?い、いや……セウト!」

 

「お、おいどうしたんだよ莉紅⁉︎」

 

 

色々と危ない事を悟ったのか東崎は混乱している様子だった。

キバットは彼を落ち着かせようとする。

 

そんな東崎達を尻目にザドゥージは話を続ける。

 

 

「さて、どんな使い魔がご所望かな?強いの?速いの?それとも毒持ち?俺のオススメは龍王の一角天魔の業龍(ティアマット)!伝説のドラゴンだぜ!龍王唯一のメスでもある!」

 

「へぇ、良いじゃない。ドラゴンなんて……イッセー」

 

「無理無理無理無理!!部長!無理っすよ!どうのつるぎを装備した状態でデスタ◯ーア倒すくらい無理っすよ!」

 

 

断固として拒否するイッセーの態度にリアスは頬を膨らませる。

 

 

「情けないわよイッセー、そんなのじゃあ王を目指すなんて夢のまた夢よ?」

 

「で、ですけど部長………東崎の奴が……」

 

 

リアスの言葉に対してイッセーは後ろへと指を指す。

そこには虚ろな目でブツブツと何かを呟いている東崎が居た。

 

 

「伝説のドラゴン……龍王……鱗……翼……ニス……ニス…上質なニス……いや、伝説の……ニス……フフフ」

 

「こんな感じなんで、合わすのがとても怖いんですけど…」

 

「そうね、やめておきましょう。東崎と龍王を合わせたらどうなるか分からないわ、と言うより合わてはいけないわね」

 

 

冷汗を掻きながらリアスは先程の発言を取り消す。

その後、リアス達はザドゥージと共に使い魔の森の中を歩いて行く。

 

すると彼等の眼前に透き通る様に綺麗な泉が広がっていた。キラキラと輝き、まるで女神がいてもおかしくない程の神聖な光景だ。

 

 

「この泉には精霊が集まるんだ。特にこの泉に住み着く水の精霊『ウンディーネ』はあまり人前には姿を現さないんだぜ」

 

「ウンディーネ……」

 

「東崎君?多分ウンディーネは君が求めている材料なんて落とさないよ?」

 

 

ゴゴゴと目を光らせる東崎の肩をガッシリと掴む木場。

いつでも拘束できるように剣を既に創っているのは言うまでもない。

すると、イッセーが鼻の下を伸ばしながらリアスに問う。

 

 

「部長!使い魔なんですから俺の好き勝手にしていいんですよね⁉︎」

 

「えぇ、好き勝手にしなさい。あなたの使い魔なのだから」

 

「ですが部長の使い魔が主人よりも東崎君に懐いているのは……」

 

 

木場が今も尚、東崎の腕にしがみ付いている使い魔を指で指す。

するとリアスはハイライトが失った目で呟く。

 

 

「アラ?ナニヲイッテルカワカラナイワネ……」

 

「あ、いえ……なんでもありません」

 

 

これ以上詮索するのはヤバイと思ったのか木場は口を塞ぐ。

 

そんなやり取りをしていると目の前に広がる泉が輝き始める。その様子を興奮した様子のザドゥージが口を開く。

 

 

「おぉっ!泉が輝きだした、ウンディーネが姿を現わすぞ!」

 

 

そして泉から現れたのはキラキラと輝く水色の髪、透明な羽衣を身に纏った…………筋骨隆々な存在だった。

 

その上腕と脚は丸太の如くの筋肉量、鉄板を何枚も重ねたような胸板、歴戦の格闘士(グラップラー)の如く顔中に無数の傷を負っていた。

 

 

そう━━━その精霊は、筋肉(マッスル)だった

 

 

 

「な、なんじゃありゃぁぁぁぁああああああああああッッ!!??」

 

 

イッセーの叫びが森の中を木霊する。

それもその筈、目の前にいるのは精霊と言うにはあまりにも体格がおかしかった。

 

いつからこの世界は『オーガ』=『水の精霊(ウンディーネ)』と定義されるようになったのだろうか?

 

そんな目の前の出来事にイッセーはつい叫んでしまう。

 

 

「あぁ………成る程ね………あれがウンディーネか………」

 

「東崎ィィィイイイイイ!何納得してんだよ!考えるのをやめるな!どう見てもアレは━━━━━

 

 

「アレはウンディーネだぜぃ」

 

 

残酷な言葉がイッセーに告げられる。

イッセーはその場で膝をつきガクリと項垂れる。

 

 

「う、嘘だ……ウンディーネってのはもっとこう…回復とか水とか……癒しの力に優れた美しい女性だろうがぁぁぁぁッ!どう見ても水を浴びに来た修行中の格闘家だろ!どう考えても人間の肉体を破壊する為に鍛え込んだ腕回しじゃねぇか!」

 

「ウンディーネも縄張り争いが絶えないからなぁ…精霊の世界は実力主義なんだよ。しかし、アレは強そうなウンディーネだ。アレはなかなかレア度が高いぜ?打撃力に秀でた水の精霊も悪くない」

 

「悪いわ!癒し系じゃねぇよ!殺し系だよ!打撃力の高い癒し系精霊なんていらねぇよ!」

 

「だが、アレは女性型だぞ?」

 

「知りたくない事実でしたぁぁぁああああああッ!!」

 

 

ザドゥージの言葉にイッセーが悔しがっていると姫島が何かに気付く。

 

 

「あ、もう1体現れましたわ」

 

「今度こそ━━━━━」

 

 

 

やせいの ウンディーネ(物理特化)が あらわれた!

 

 

「うぅ、うおおおおおおぉぉぉぉぉん」

 

「イッセー君……」

 

「東崎ぃ……頼むからその可愛い使い魔で俺を慰めてくれぇ……」

 

『─────』

 

「あ、なんか本人が嫌がってるっぽい」

 

「殺せよチクショウッ!!!」

 

 

イッセーは地拳から血が滲み出る程の勢いで地面を殴る。東崎はそんな哀れな親友を見守るしかなかった。

 

 

「どうしよう……塔城さん……」

 

「そうですね、まず先輩の腕にしがみ付いている邪魔な使い魔を始末しましょう……!」

 

「え?どうしたの塔城さん⁉︎」

 

 

リアスの使い魔に敵意を向ける小猫に東崎は驚く。

そんな中、ザドゥージは「見ろ!」と指を向けた先には水の精霊(物理特化)が2人、睨み合い両者の間の空間が闘気によって歪んでいた。

 

そして━━━━

 

 

2人の水の精霊(物理特化)の壮絶な殴り合いが始まる。

 

 

「え?何アレ?何やってんの?キバット状況説明お願い」

 

「あ?どう見たって……縄張り争いだろ?」

 

「所詮、腕力と言う事です……」

 

 

イッセーの言葉にキバット、小猫が返す。そして本日2回目の項垂れ。

 

 

「もうやだ……お家帰りたい……」

 

 

徐々に幼児退行をしていくイッセーの肩に東崎は手を乗せると優しく語りかける。

 

 

「大丈夫、イッセー君。確かに目の前で起きている事は君にとってショッキングだ。だけど大丈夫、まだ使い魔探しは始まったばかりだよ。ほら見て、目の前にいるウンディーネだって慣れれば━━━」

 

 

そう東崎が視線を戻すと、そこには3体目のウンディーネ(物理特化)が存在していた。

 

しかも、その水の精霊は漆黒の体長2m程の馬に跨りマントを羽織り猛牛のように前へ突き出た鋭い角が付いた兜を被っていた。

 

 

「」

 

「」

 

 

東崎とイッセーはソレを見て固まった。

だが、ザドゥージはその水の精霊?を見て驚愕の表情を見せた。

 

 

「な、なんてこった……!アイツは使い魔の森の主とも言える水の精霊!まさかこの目で拝める日が来るとは……!」

 

「どこがたぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!いい加減にしろよ!どう見ても精霊じゃねぇよ!どう見ても世紀末の覇者って感じだろうがァ!!!」

 

 

イッセーの叫びも虚しく、2体の水の精霊は互いを見るとコクリと頷く。

先程まで激闘を繰り広げていた精霊達は目の前の困難な壁を越える為、精霊はその力を目の前の存在に知らしめる。

 

が────

 

 

 

━━ゴオッ!!!

 

 

 

 

水の精霊(覇者)はウンディーネ達に()()()()()()()()()。そして2体はイッセー達の眼前を凄い勢いで通り過ぎた。

 

イッセー達は今、何が起こったのか理解出来なかった。

だが、その場にいた小さな存在は何が起こったのか見ていた。

 

 

「あ、あれは……仙術⁉︎い、いや……正確には気を手から放出して吹き飛ばした……⁉︎」

 

「え?そ、それだけ……?」

 

「はい。それだけの事をあの精霊はノーモーションかつ短時間で強力なウンディーネ2体を吹き飛ばしました。ただ純粋(シンプル)な気の放出であそこまで……!」

 

「塔城さん?おーい戻って来てーーー」

 

 

何かのスイッチが入ってしまったのか小猫は先程までの事を解説し始める。

そして気がつくと、圧倒的な力を見せつけた精霊は巨大な馬の足跡を残し姿を消していた。

 

 

「……先程の精霊、凄まじい強さだったわね」

 

「部長、さっきのを使い魔にするんですか?」

 

「それだけは勘弁して」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「コワクナイヨー、コワクナイヨー。だから良い素材落とせー」

 

 

気を取り直し、俺達は森の奥へと足を運んでいた。

そんな中、東崎が斧を担いで棒読み気味に何か喋っているのは気にしない事にしよう。

 

 

……いや、気にするわ!なんで片手に斧持ってんだよ!どう見てもコイツ、なんか見つけたら素材を剥ぎ取る気だぞ⁉︎

 

コイツのバイオリン製作に対する執念ってなんなんだよ!

怖えよ!!

 

 

「おぉっ!見ろ!」

 

ザドゥージさんが声を荒げる。今度はなんだ⁉︎また精霊なのか⁉︎

俺がそんな風に怯えていると、木の上に蒼い輝きを放つ鱗を持つ小さな竜が佇んでいた。

 

 

「アレは……蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)の幼体だね」

 

「ドラゴン族の中でも上位クラスの筆頭だ。ゲットするなら今がチャンスだ」

 

 

アレがドラゴンか!リアルに見た!小さいけどカッコいいな!

可愛い使い魔もいいけど、レアなドラゴンでも十分だ!

 

よし、スプライト・ドラゴン!君に決めた!

 

 

……と決意を胸に秘めると同時に、東崎が斧を片手にスプライト・ドラゴンへと突っ込んで行く。

 

 

「って、待て待て待てーーーーーッ!!??」

 

 

何やってんだアイツ!

あんな可愛い生き物を生き物も思わない行動に俺は驚愕する。

 

すると、木場は己の神器で剣を創造する。

そしてグサリと東崎に剣を突き立てた────⁉︎

 

 

って、おおぉぉぉぉぉいッ!!?お前も何やってんの⁉︎

再び俺が驚愕していると刺された東崎はその場で倒れ込んでしまう。

 

 

「大丈夫さ、これは斬った相手を殺さず眠らせる『いざないの剣』。東崎君が暴走した時に使おうと思ったんだけど、意外と出番が早くてびっくりしたよ」

 

 

あー、うん、成る程ね。分かった、うん分かった。

つっこまないぞ。

俺は絶対につっこまないからな!!!

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

それから俺はそのままスプライト・ドラゴンを捕まえようとしたが、部長達がとある生き物に襲われた。

 

そう、服を溶かすスライムと女性の分泌液を養分とする触手だ!!!

コイツ等は俺が使い魔にするしか無い。

 

いや、コイツ等以外にありえるだろうか?

早速部長達の姿を堪能しながらスライムと触手を捕まえようとするが、そこにスプライト・ドラゴンがスライム達を蒼い雷で焼き払ってしまったのだ!

 

 

スラ太郎ォォォォォォ!!触手丸ゥゥゥゥ!!

 

何故だ!何故コイツ等を⁉︎ふざけるなぁぁぁああああッ!!!

 

 

「落ち着きなさいイッセー」

 

「うぅ、ですけど……」

 

「スライム達はしょうがなかったけれども、貴方の使い魔はこれからよ?」

 

 

た、確かに……。もしかしたらスラ太郎達よりもいい使い魔に巡り会える可能性もある。

ちなみにアーシアはスプライト・ドラゴンに懐かれ『ラッセー』と名付け自身の使い魔とした。

 

そう思った俺はその場に立ち上がる。

そうだ!俺だけの使い魔!次は可愛い女の子がいいなッ!!

 

 

「急に元気になったね……」

 

「はい、そうですね」

 

「………zzzZZ」

 

「……てか東崎の奴、まだ寝てんのかよ」

 

 

木場の創った……いざないの剣って言ったか、効力が強すぎたんじゃないのか?

それにしても小猫ちゃんにおぶって貰いながらよく寝てられるな。

 

 

 

『──━━━ッ!!!!!!』

 

 

俺が呑気にそう思っていると、森の奥から低く重みのある声が響いて来た。

なんだこの声⁉︎よく分からねぇけど、体中がビリビリ来やがる⁉︎

 

 

俺達はその声の正体を突き止める為、森の奥深くへと足を運んでいった。

そしてそこに居たのは、いや存在していたのは一言で表せばドラゴン。

 

 

紫色の鱗を持った巨大なドラゴンだった。

だが、そのドラゴンの身体はまるで城のような鎧を纏い亀のようにも見える。

使い魔マスターを目指すザドゥージは声を荒げる。

 

 

「こっ、これは⁉︎レア中のレアどころのものじゃないぜ!!」

 

「ど、どういう事?」

 

「コイツの名前は剛猛の翼龍(グレート・ワイバーン)純粋なパワーは五大龍王を遥かに凌ぐと言われている!」

 

「えっ……えぇぇぇぇぇぇえええええ!!??デス◯ムーアどころかダーグド◯アムが来たぁぁぁああああッ!!??」

 

 

え、マジで?じゃあコイツ、ティアマットって奴よりも強いって事か!?

嘘だろ⁉︎こ、こんなの絶対無理!!!使い魔になんてできねぇよ!

 

 

「いや……だけど本来のグレート・ワイバーンはあんな外殻なんて備わってなかった筈だけど?」

 

「そりゃそうだ。アレはファンガイアがグレート・ワイバーンを改造して造った生きる館城『キャッスル・ドラン』だ」

 

 

ふ、ファンガイアが⁉︎マジで⁉︎東崎の同族がドラゴンを改造って、そんな事できんのかよ⁉︎

 

すると、俺の神器に宿る赤龍帝ドライグが俺に語りかけて来た。

 

 

『あぁ、その通りだ。ファンガイアの技術は恐ろしいものだぞ?二天龍である俺達の一部も奴等によって改造されてしまったからな』

 

「か、改造されたってどう言う━━━━」

 

 

 

 

 

「おい、お前等。こんな場所で何をしている?」

 

 

すると、俺達の前にそれぞれ青い狼、緑の半魚人、紫のツギハギだらけの大男と言ったモンスター達が現れる。

な、なんだコイツ等⁉︎

 

 

「なっ⁉︎ウルフェンにマーマン、そしてフランケン⁉︎どれも絶滅した筈の種族じゃない!」

 

「どうしてこんな場所に……⁉︎」

 

 

部長達が驚く。

そんなに驚くと言う事はそれほど珍しいって事なのか?すると目の前の3体は戦闘態勢を取る。

 

 

「キャッスル・ドランを見てタダで返すワケにはいかん」

 

「ちょっと大人しくしてもらうよ?」

 

「お前達を捕まえる」

 

「私達とやる気なのかしら……?」

 

 

その3体に対して部長は強気だ。

……ま、マジか、この流れから察するに俺も戦わないといけないよな!

俺はそのままブーステッド・ギアを構えいつでも戦えるようにする。

 

 

「───ん?なに?なんか新しい素材見つかった?」

 

 

あ!東崎の奴、このタイミングで目を覚ましやがった⁉︎

て言うか今の今まで寝てたのかよ!

あのグレート・ワイバーンの咆哮でよく寝ていられるな⁉︎

 

 

「………ッ⁉︎莉紅!」

 

「あれ?次狼さん。何やってんの?」

 

 

え?………………。

 

まさかの知り合い!!??お前、あいつ等と知り合いなのか⁉︎

恥ずかしそうにしながらも東崎は小猫ちゃんから降りる。

 

まぁ、女の子に背負って貰うなんて、そりゃ恥ずかしいよな。

 

 

「……あ、あーー。成る程ねキャッスル・ドランの住処って使い魔の森だったのか。どおりで見た事あると思ったよ」

 

「どう言う事?もしかしてあのキャッスル・ドランは貴方の使い魔なの⁉︎」

 

「え?……あ、はい」

 

「それじゃあ、目の前の3体も?」

 

「あ、あれは……穀潰し的なナニカ」

 

「「「⁉︎」」」

 

 

酷え!!?さすがに酷くないか⁉︎

あいつ等、凄いショック受けてんぞ!!

 

 

「い、いや莉紅!俺達は誇り高き種族の生き残り……」

 

「だって次狼さん、仕送りのお金をメイド喫茶で使う癖に働かないニートだしラモン君は美味しいもの食べさせないとすぐに暴れだすし、力さんは飯を沢山食べる癖に外に出かけているだけで……居候の癖してよく大層な事言えるよね」

 

 

すると次狼と呼ばれたウルフェンは黙り込む。

それにつられるようにマーマン、フランケンも気まずそうにしている。

 

 

「………東崎。私、貴方が製作したバイオリンを高値で買い取るわね」

 

「すみません……本当にすみません……」

 

 

部長が東崎を慰めるように声を掛ける。やべぇ、俺も可哀想に見えてきた。

 

 

「まぁ、いいや。キャッスル・ドランの世話はちゃんとしているみたいだし」

 

「あ、あぁ。勿論だ」

 

「でも、キャッスル・ドランが改造される前は凶暴性の高いグレート・ワイバーンだった筈……大丈夫なんですか?」

 

 

小猫ちゃんが東崎に尋ねる。

あ、確かに。こんなところでコイツを飼っていて大丈夫なのか?暴れ出したらとんでもない事になると思うけどな。

 

 

「大丈夫。改造された後、すっごい大人しくなってるから。それに定期的に身体の掃除しておかないとストレスが溜まるから次狼さんに頼んでいるんだよ」

 

「まぁ、使えないこいつ等にはピッタリな仕事だな」

 

「なぁキバット。お前は俺達に辛辣過ぎないか?……まぁいい。ところで掃除している時、こんなモノを見つけたんだが」

 

 

するとウルフェンは何かを取り出した。

緑色のブヨブヨとしたモノとウネウネとしているモノだった。

俺はそれを見て目を大きく見開く。

 

 

「そ、それは………!」

 

 

スライムに触手じゃないか!!!いやっほう!!天はまだ俺を見捨ててなかった!

是非、スラ次郎と触手丸2号を俺の使い魔に!!!

 

 

「イッセー!まだ諦めてなかったの?」

 

「諦めきれませんよ部長!スラ次郎!触手丸2号!ゲットだぜ!」

 

 

俺はそのまま2体に手を伸ばし━━━━━

 

 

「お、次狼さん良いの持ってんじゃん」

 

 

が、俺の手は虚しく空を切った。

って、東崎?スライムと触手を持って何を━━━

 

 

━━グシャリ

 

 

刹那、東崎はスライムを潰した。

 

 

「あ、ああああああああああああああああああッ!!??」

 

「よし、次に……」

 

 

すると、次なる標的を触手丸に変えた東崎は触手を手に持つと絞るように捻り始める。

 

や、やめろぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!!

 

俺はそのまま東崎に向かって駆け出す。

 

 

━━ミチミチブチブチブチィッ!ブチュルルッ‼︎

 

 

「うわぁぁぁぁぁああああああああああああああああッ!!!」

 

 

俺の目の前に雑巾絞りの如く体液を滝のように垂れ流す触手丸の姿があった。

やめてくれぇ!!!触手丸をそれ以上虐めないでくれぇッ!!!

 

 

「ふぅ…スライムと触手の素材ゲットだぜ……っと」

 

「うわぁ…コレは酷いね」

 

「悪魔以上の悪魔の所業……まぁ別にスライムと触手ですから構いませんが」

 

「あらあらフフフ、さすが東崎君」

 

 

……ふざけるな。

ふざけんじゃねぇぞ、東崎……ッ!!ぜってぇ許さねぇッ!

 

 

「東崎ィィッ!今ここで強靭!無敵!最強!のドラゴンの力でテメェをブッ飛ばすッ!!」

 

「イッセー……」

 

「イッセーさん……」

 

「イッセー君……」

 

 

なんか周りが可哀想なものを見るような目なのは気の所為だろう。

俺は東崎と対峙し、ブーステッド・ギアを構える。

 

 

「今の俺は負ける気がしねぇッ!例えドラゴン相手でも俺はテメェに勝つッ!」

 

「分かったよ。やっちゃえキャッスル・ドラン!」

 

「え?」

 

 

すると静かに佇んでいたキャッスル・ドランは前足を振り上げそのまま俺に向かって振り下ろして来る。

 

 

「って!それはさすがにズルッ──!!??」

 

━━ズシン!!

 

 

「ほぉ……キャッスル・ドランを従えるとは…流石はキバといったところだぜぃ」

 

「いやぁ、それほどでも無いですよ」

 

『♪♪♪』

 

「え?『東崎さん素敵です。憧れちゃいます』?いや、それ程じゃあ……」

 

「東崎先輩ッ!!その悪魔は危険です!」

 

 

俺の目の前には部長の使い魔、小猫ちゃんが東崎とイチャイチャしている光景が広がっていた。

 

俺はキャッスル・ドランに踏まれながら拳を握り歯を噛みしめる。

ふざけるなッふざけるなッ!馬鹿野郎ッ!!!

 

だけどそれ以上に使い魔が……

 

 

「くそぉ……スラ次郎……触手丸2号ォォォォォォオオオオオオッ!!!」

 

 

俺の悲痛な叫びは虚しく使い魔の森に響き渡っていった。

 

 

 




キャラ紹介

【リアスの使い魔】

東崎の家を監視していたら次狼に捕まって喰われそうになった使い魔。
東崎に助けられた後、惚れてしまったチョロい使い魔。

おい気を付けろ、お前の惚れている男は天然鬼畜の妖怪ニス寄越せだぞ?

戦闘力は皆無だが、基本的に身の回りの世話を担当する。


小猫とは東崎を取り合うライバル的存在。
多分出番は番外編だけ。本編には出ないと思う。

イメージは東方projectの小悪魔。名前は特に無い(公式)



【水の精霊(世紀末の覇者)】

水の精霊ウンディーネの中でも凄い力を持つ精霊。
巨大な漆黒の馬《ケルピー》に跨っている。

イメージは北斗の拳からラオウ。

何故か仙術まで習得しており、使い魔にしたら凄い戦力になると思う。
ウンディーネ2体に対して出した技は多分、剛掌波的なナニカ。


ただしメスだ。



東崎がキャッスル・ドランを放し飼いしていた理由としてはキャッスル・ドラン内部には時代を渡り歩ける禁断の扉が存在し「あれ?キャッスル・ドランの力って過去を改変できるんじゃね?」と気付き、使い魔の森の奥深くに誰にも見つからないように隠している。


本当に過去を改変できるのでヤバイ。



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月光校庭のエクスカリバー
21話 おい、テニヌしろ……じゃなかった。サッカーしようぜ!



ハイスクールD×Dheroの始まりと同じくエクスカリバー編を投稿。
まだ0話だけど覇龍の場面を原作通りに直してくれたのはスタッフナイス!
3期も楽しめたけど……せめてちゃんと原作通りにして欲しかったなぁ……。




 

 

リアス先輩の婚約が白紙に戻ってから数日、リアス先輩はイッセー君の家に住む事になった。

だが、それ以来リアス先輩はファッション雑誌を読んだりイッセー君へのスキンシップが多くなったり、イッセー君の性癖について相談されたり……。

 

要するにアレだ。

先輩、イッセー君に惚れました。

 

なんだろう。友人としては喜ぶべき場面なんだろうけど……。

イッセー君自身、アーシアさんとリアス先輩の好意に鈍感らしく、見ているこっちがイライラして来る。

 

お願いだからどっちかと付き合ってくれないかなぁ。

甘党の僕でも口の中が砂糖だらけで辛くなる。

 

 

まぁそれは置いておいて現在、僕達オカルト研究部は旧校舎の清掃により部室が使えない為、イッセー君の自宅で部活動を行う事となった。

 

 

「で、こっちが小学生の時のイッセーなのよー」

 

「あらあら、全裸で海に」

 

「ちょっと、朱乃さん!?って母さんも見せんなよ!」

 

「…イッセー先輩の赤裸々な過去」フッ

 

「小猫ちゃんもみないでぇぇぇッ⁉︎」

 

「ふふふ、可愛いわね」

 

「部長さんの気持ち分かります!」

 

「ああああああああああああああああああああッ!!やめてくれぇぇぇぇぇぇッ!!!」

 

 

の筈が、気付くとイッセー君の過去を暴露と言う名の公開処刑が行われていた。

 

あれ?僕達って部活動をしていた筈なんだけどなぁ……。

と言っても菓子を食べて茶を飲みながら駄弁るだけの活動なんだけどネ。

 

 

「あら?これって東崎かしら?」

 

「ん?そうですね………お、懐かしいなぁイリちゃんの写真も残っているのか」

 

 

イリちゃん今頃どうしてるかな?

小さい頃はよくモケポンで通信対戦しまくっていたな。

………できればあの頃よりも女の子らしい格好になってると良いんだけどな。

 

 

「……東崎君、イッセー君。これ」

 

 

すると、木場君は小さい頃の僕、イッセー君、幼馴染だった友達イリちゃんがヒーローのようなポーズをとっている写真を見せて来た。

そう言えば小学生に上がる前に外国へ行ったんだっけか……。

 

 

「これに見覚えは?」

 

 

すると木場君は小さい頃の僕達の後ろに設置されていた剣を指差し━━━

 

 

 

 

……………

 

 

……………

 

 

……………

 

 

 

 

「うーん、ガキの頃すぎて覚えてないな……東崎h──って!どうした⁉︎凄い汗の量だぞ⁉︎」

 

「これの事を知ってるのかい?」

 

「えっ⁉︎あ、あははハハハハハハハハハハ!ワ、ワカラナイナー。ウン、ごめん何のことかサッパリだよーハハハハハハーー」

 

 

 

 

嘘だ。

僕は覚えている。

 

そう、アレは僕達がまだ子供だった頃の話だ。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

『わーっ!本物の剣だ!かっこいい!』

 

『………触ってもいいよね?』キョロキョロ

 

 

東崎は周りに誰も居ない事を確認すると鞘から剣を引き抜く。すると刀身が銀色にキラリと輝きまるで鏡のように自分の顔を映し出していた。

 

 

『お、おぉぉぉおおお!凄く綺麗だ!……ふ、振るだけなら許されるよね?』

 

 

東崎は誰も居ない部屋で言い訳しながら剣を上段に構える。

 

 

『ひっさーつ!あ、重…』

 

 

━━ゴトン、パキンッ!

 

 

『………あ』

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

そう、イリちゃんの家にあった剣にヒビを入れてしまった出来事は今でも覚えている。

その後、すぐに剣は鞘に収めたのでバレていないと思う。

 

………バレてないよね?(震え声)

でも、その剣が一体どうしたのだろうか?

 

すると木場君は目付きを鋭くしながら口を開く。

 

 

「思いもかけない場所で見かけるなんて、これは───聖剣だよ」

 

 

 

 

 

 

 

……………

 

 

……………

 

 

……………

 

 

 

 

聖剣が簡単にーーーーーーーーーーッ!!

 

 

 

 

 

 

▼▼▼▼▼

 

 

 

 

 

 

 

球技大会が迫って来ている中、 オカルト研究部に見慣れない姿があった。

眼鏡をかけた知的な女とそれに付き添う男だ。だが、東崎達はその人物達に見覚えがあった。

リアスは彼女の隣に立ち紹介を始める。

 

 

「改めて紹介するわ、こちらは支取 蒼那(しとり そうな)知っての通りこの学園の生徒会長よ」

 

「よろしく、兵藤君、アーシアさん、東崎君」

 

「あ、ご親切にどうも」

 

「そ、それで会長さんがどうしてここに?」

 

 

イッセーは悪魔の関係者である者しか立ち入らないオカルト研究部に学園の生徒会長が居る事に疑問に思う。

すると、後ろの方で待機していた男子学生が口を開く。

 

 

「なんだリアス先輩、もしかして兵藤達に俺達の事を話してないんですか?」

 

「支取蒼那様の本当の名前はソーナ・シトリー上級悪魔シトリー家の次期当主ですわ」

 

 

生徒会長がリアス達と同じ悪魔と言う事実にイッセー達は驚く。

それもその筈、男女問わず全生徒達からの人気が高い彼女が悪魔なのだ。驚くのも無理はないだろう。

 

 

「この学校は実質グレモリー家が実権を握っていますが、『表』の生活では生徒会つまりシトリー家に支配を一任し、昼と夜で学園の分担を分けてます」

 

「会長と俺達シトリー眷属の悪魔が日中動きまくっているからこそ平和な学園生活を送れているんだ。それだけは覚えてもバチは当たらないぜ?」

 

 

彼女の言う事に対してイッセー達は更に驚き、生徒会長の支取は眼鏡の縁をクイッと上げた後、側にいる男子生徒を紹介し始める。

 

 

「彼は生徒会書記の2年、匙 元士郎《さじ げんしろう》。シトリー眷属の"兵士"よ」

 

「って、事は生徒会メンバー全員……」

 

「シトリーの眷属悪魔よ」

 

「(………うちの学園って悪魔に支配されてるんだなぁ)」

 

 

東崎は学園での知り合いの大半が悪魔と言う事実に顔を引攣らせる。

そして彼の頭の中にこの学園を支配するシスコン魔王のイメージが浮かび上がってくるが、すぐに搔き消す。

 

するとイッセーは同じ兵士である匙に握手を求める。

 

 

「同学年に同じ"兵士"がいるのは嬉しいな、よろしくな」

 

「…俺としては変態3人組の1人であるお前と同じなんて酷くプライドが傷付くんだけどな………」

 

「んだとテメェッ!!」

 

「(………当たり前の反応なんだよなぁ)」

 

 

喧嘩腰になる2人の"兵士"をまるで子供の成長を見守る保護者の如く東崎は呑気に眺める。

ちなみに今現在までに覗きを繰り返している変態のイッセーと同じにされたくないと言う匙の言う事には一理ある。と言うか東崎は彼の気持ちが良く分かる。

 

そんな2人は更なる口論を繰り広げる。

 

 

「やるかこのエビフライ頭!」

 

「エビフライのどこが悪いんだよこの野郎!」

 

「悪くねぇけどお前、ソースぶっかけんぞこの野郎。こう見えて俺は駒四つ消費した兵士だぜ?最近悪魔になったばかりだがお前に負けるかよ!」

 

「おぉ、兵藤君の丁度半分なんだ」

 

「は、半分⁉︎」

 

 

自信満々な匙に東崎の言葉が突き刺さる。

東崎の言葉が信じられないのか彼は自身の主人である支取に顔を向ける。

支取は眼鏡を押し上げた後、匙に説明をする。

 

 

「東崎君の言う通り。フェニックス家の三男を倒したのは彼なのよ。駒を八つ消費したのは伊達では無いと言う事です」

 

「そ、そうなんですか?俺はてっきりキバがやったものだと……」

 

 

困惑する匙を横目に支取は東崎にチラリと視線を移す。

 

 

「彼が……今代のキバ」

 

「えぇ、その通りよ。だけど貴方が思っている程では無いわ」

 

「そう……改めてよろしくね、東崎君。ソーナ・シトリーよ」

 

「あ、いや。人間の時の名前でいいですよ。僕は別にファンガイアとか人間とかそう言うの気にしてないですし」

 

 

すると東崎の言葉に少し驚いたのか彼女は目を見開いた後、微笑みを見せる。

 

 

「確かに……リアスの言う通りね」

 

「今更なんですけど、僕を何だと思ってるんですか……」

 

 

東崎はリアス達を含め、彼女達の自身へのイメージがどうなっているか気になって仕方がなかった。

 

 

「イッセー君、アーシアさん。うちの眷属はあなた方よりも実績が少ないので失礼な部分が多いですが新人の悪魔同士、仲良くしてあげてください」

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

「アーシアさんなら大歓迎だよ!」

 

 

アーシアの手をギュッと握りしめる匙。

東崎は「あ、イッセー君と似てる」と心の中で思った。

すると、イッセーはアーシアと匙の間を割って入り匙の手を目一杯の力で握る。

 

 

「ハハハ!匙君!俺の事もよろしくね!つーかアーシアに手を出したらぶっ殺すからね!」

 

「うん、よろしくね兵藤君!独り占めかい?本当にエロエロ鬼畜だね!天罰に遭って死んでしまえ!」

 

 

表では笑顔を保つ2人だが、言葉は本心を隠しきれていない事に彼等の主人はハァと溜息をつく。

互いの下僕がこれ以上仲を悪くしないよう支取は声を掛ける。

 

 

「私はこの学園を愛してます。1人の生徒として、悪魔としても。ですから学園の平和を乱した者は誰であろうと絶対に許しません」

 

「「うぅ……」」

 

「それと東崎君、伝えておきたいことが」

 

 

すると支取は東崎の方へ向き直る。

 

 

「球技大会、荒れますよ」

 

「……はい?」

 

 

そう一言呟くと、彼女は部屋を出て行った。そして遅れるように匙も部屋を出て行く。

 

 

「………もしかして、支取さんって痛い人?」

 

「東崎、それ以上駄目よ」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

球技大会当日

 

いきなりだがテニス決勝戦ッ!沢山の生徒達が注目している。

それもその筈、今回の対戦カードはリアス・グレモリーvs支取蒼那と言った学園で人気のお姉さま方だ。

沢山のギャラリーで賑わっているのは当たり前の事だろう。

 

 

「部長ォォォォォ!頑張れぇぇぇぇええええ!!!」

 

「会長ォォォォォ!勝ってくださぁぁぁぁいいぃ!!!」

 

「ふふふ、上級悪魔同士の戦いはこんな所で観れるなんて素敵ですわ」

 

 

眷属達が応援する中、いよいよ試合開始。

リアスの球を支取が打ち返し、それを更にリアスが打ち返す。

しばらくラリーが続いた後、支取が仕掛けてくる。

 

 

「支取流……スピンボール!!!」

 

 

━━ギャルルルルルルルルルルルッ!!!!

 

 

支取が打つボールに急激な回転が加わる!

その螺旋エネルギーは多大なパワーを生み出し、黄金回転の如く!リアスのラケットを破壊したッ!!!

 

 

「え?………あれ、魔力使わなかった?」

 

「使いましたね」

 

 

東崎の言葉に小猫が頷く。試合に熱くなってしまったのか支取は生徒達の前で魔力を使ってしまったのだ。

 

生徒達は勿論、会長の力に対して━━━

 

 

「ま、魔球だ!」

 

「すげぇ!初めて見た!」

 

「やべぇよ!コレ!」

 

「……あるぇー?」

 

 

━━何も思ってなかった。

生徒達のリアクションに東崎は呆気にとられる。

 

 

「え?あ、あのー桐生さん?さっきのどう思う?」

 

「は、はぁ……?まぁ、会長だからおかしくないんじゃないの?」

 

「あ、そうですか」

 

 

会長達に対する生徒達のイメージがどのようなものか気になってしまうがグッと堪える。

 

 

「そ、ソーナ!さっきのはズルくないかしら!」

 

「あら?どうしたのかしらリアス。負け惜しみはあなたらしくないわね」

 

 

フフフと悪い笑みを浮かべる支取。

 

 

「……会長ってあんなキャラでしたっけ?」

 

「フフフ、この学園には良くも悪くも問題を抱える生徒が多いですわ。だいぶストレスが溜まっているみたいですわ」

 

「あぁー、漫画研究部の事もたまに報告する時『絶版にしてやる』って呟いていたなぁ……」

 

 

色々と納得した東崎を他所に再びリアス達の試合が再開される。

しばらくラリーが続いた後、次はリアスが仕掛ける。

 

 

「魔動球ッ!!!」

 

━━ドォンッ!!!

 

 

轟音と共にリアスの球が放たれる。シュウゥゥゥと煙が新しいラケットから出ているがリアスの方に得点が入る。

 

 

「す、すげぇ!魔動球だ!」

 

「あれがリアスお姉さまの奥義"魔動球"!」

 

「だけど、会長にはかなわないわ!」

 

「何を言ってやがる!リアスお姉さまの魔動球は百八式もあるんだぜ!」

 

 

何故リアスの打つ球が百八式もある事を知っているのかはどうでも良いが、いよいよリアスまでも魔力を使ってしまう。

心配になってきたイッセーはリアスに声を掛ける。

 

 

「ぶ、部長!流石にそれは……!」

 

「馬鹿野郎!イッセー!あの人達の勝負にケチをつける気か!」

 

「あの領域には俺達はついて行けない!俺達はただ見守るしかないんだよ!」

 

 

どこからともなく現れた松田、元浜はガッシリとイッセーの腕を掴んで離さない。

悪魔以上の力を見せる2人にイッセーが驚く中、部長と会長の戦いは激しさを増して行く。

 

 

「フフフ、やるわねソーナ!流石は私のライバル!」

 

「えぇ、負けた方が小西屋のトッピング全部乗せたうどんを奢る約束、忘れてないわよね」

 

「勿論よ!喰らいなさい!獄炎魔動球ッ!!!」

 

「甘いわね!支取ゾーンに入った球は全てを打ち返すわ!」

 

 

賭けの対象がショボ過ぎるお嬢様方のテニスは更に激しさを増し、挙げ句の果てには空を飛び、竜巻が発生し、召喚獣が出現し殴り合いが始まるという事態となって行った。

 

それを観ている生徒達も盛り上がりテニスコート内の熱がどんどん上がって行く。

無数の歓声の中、東崎は心の奥底から叫ぶ。

 

 

「おい、テニスしろよ!!!」

 

 

テニスでは無くテニヌと化した試合は続いていく。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

球技大会、部活対抗戦。

 

テニスでは結果的にリアスと支取の同時優勝となった。

しかし、彼女等の試合の影響は一般生徒達のハートに火をつけてしまった。

 

 

「いくぜ!『突風ダッシュ』!!!」

 

「行かせるかッ!!!『the・障壁』ッ!!」

 

「必殺ッ!!『フレイムタイフーン』!!!」

 

「止めてみせる!『バーニングキャッ──ぐぁぁぁあああああ!」

 

「部長ォ!!!大変です!グラウンドで超次元サッカーが起きてます!」

 

「どうしてこうなったの⁉︎」

 

「十中八九、部長達がノリノリでテニスやったからだと思います!」

 

 

あらゆる種目で物理法則を無視した出来事が発生する。

テンションが上がってしまった人は本当に恐ろしいものだ。

そして、いよいよオカルト研究部vs吹奏楽部の試合。種目はドッジボールだ。

 

試合前た互いの部長達は握手を交わす。

 

 

「いい試合にしましょう」

 

「えぇ、ですが……リアス・グレモリー貴女には負けられません。私には負けられない理由が3つあるのですから」

 

「何ですって?」

 

 

吹奏楽部の女部長の言葉にリアスは眉をひそめる。

そんなリアスに対して彼女は不敵な笑みを浮かべる。

 

 

「1つ、前回の球技大会では貴女に負けてしまった。2つ、私はそのリベンジを必ず果たす!」

 

 

そして、ためるように彼女は最後の理由を口から出す。

 

 

「3つ、東崎莉紅を取り戻す為!」

 

「……え?僕?」

 

「東崎を?何故かしら?」

 

「覚えてないかしら?あの時の東崎君の演奏を!」

 

 

あの時とは恐らく、アーシアが転校して来た際に東崎の意思とは別に始まってしまった演奏会の事だろう。彼女はさらに喋り続ける。

 

 

「彼の才能は貴女達オカルト研究部では発揮出来ませんが私達、吹奏楽部でなら貴女の才能を十二分に発揮できる!この勝負に勝ったら東崎君を私達の部に転部して貰います!」

 

 

ΩΩΩ<な、なんだってーーーーー!!!

 

 

観客達がざわつき始める。

東崎自身、いつの間にか賭けの対象になっている事に驚きを隠せない様子だった。

 

 

「えっ、あの?」

 

「いいわ、受けて立ちましょう!」

 

「僕の意思は!!?」

 

「勝てば良いのよそんなもの!」

 

 

ドンドン話が進んでいく部長達。

そして話に置いてけぼりにされている東崎を他所にドッジボールは始まった。いや、始まってしまった。

 

 

ボールを投げる東崎。

 

吹奏楽部からの集中砲火のボールを避けるイッセー。

 

試合中ボーっとしている木場。

 

「先輩は渡しません」と呟きながら鬼神の如く圧倒的強さを見せる小猫。

 

ボールが来ない為、ほぼ観戦となっているアーシアと姫島。

 

意気込んでいるもののボールが全く飛んで来ない為、涙目になるリアス。

 

ボールを避けるイッセー。

 

ボールを更に避けるイッセー。

 

木場にボールが当たりそうになった為、庇おうとするイッセー。

 

股間にボールが命中し、生々しい音が響くイッセー。

 

そのまま更衣室に連れて行かれるイッセー。

 

 

以上、ドッジボールの様子。

結果的に犠牲は出たがオカルト研究部の勝利となった。

 

 

 

 

▼▼▼▼▼

 

 

 

 

球技大会から数日。

木場の様子がいつもと比べて違うのが東崎は分かった。

 

力になれないだろうか?と思ったがリアス達から木場は聖剣を憎んでいると聞いた東崎は無闇に人の過去を詮索するのはやめようと、そっとして置くことにした。

 

 

今日もいつもの通り学校に登校しているのだが、東崎の目の前に謎の光景が広がっていた。

 

 

「だから、何度も言ってるだろう!私達にはとある目的で動いていると!それについては何も言えない!」

 

「ほーう…つまりはだ、やましい事だらけで言えないって事か」

 

「私達にやましい事なんて神に誓ってあるわけ無いわ!!そうよ、これはきっと神からの試練に違いないわ!これを乗り越えて真の教徒になれるのね!」

 

「成る程な……とにかくお前等が不審者って事は分かった」

 

「違う!神に誓ってそんな訳無いだろう!」

 

「それじゃあお前等が持っている布の中身を見せてもらおうか」

 

「ぐっ……こうなればこの男を斬り捨ててでも……!」

 

 

ローブを羽織った2人組に煽るような言動で言い争っている担任の門矢先生。

東崎は放っておいたら絶対にロクな事が起きないと判断したのか、仲介する事にした。

 

 

「何やってるんですか先生。お願いですからそんな挑発するような言い方はやめてくれませんか?」

 

「お前は相変わらず女々しい言い方だな。女らしい名前は伊達じゃないって事k」

 

「それ以上言ってみろ……俺は貴様をムッコロスッ!」

 

『おい、バカやめろ』

 

仲介する側の東崎が逆にされる側に回ってしまう時間、およそ3秒弱。

バックの中からキバットが隠れながら声を掛けるが彼の耳には全く届いていない。

 

 

「……あれ?ねぇもしかして」

 

「あ゛?」

 

 

そんな中、ローブを羽織った2人組の内1人が東崎に声を掛けて来た。荒れている東崎に向かってその人物はフードを外す。

 

するとオレンジがかった茶色の髪の毛がパサリと露わとなり、その人物が女性だと言う事が分かる。

 

 

「あー!やっぱりリッ君だ!」

 

「……あれ?イリちゃん?」

 

 

これが『残念系幼馴染』と『妖怪ニス寄越せ』の再開だった。

 

 






東崎はイリナの事をイリちゃんと呼んでますがヒロインじゃありません。
ただの幼馴染です。………今の所。(ボソッ



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22話 約束された勝利の剣(笑)


どうしよう。おっぱいドラゴンの歌が頭から離れない……。

これも全部、乾巧とディケイドって奴の仕業なn
<これはゴーストの仕業に違いありませんぞ!

……成る程。大体分かった。




 

 

放課後、いつも通り僕は旧校舎のオカ研に来ていたが今回はいつもと違い校門付近で先生と言い争いをしていた長いオレンジがかった茶色、栗毛をツインテールにしている娘と肩まで伸びた青い髪に緑のメッシュを入れた娘が居た。

更に生徒会長である支取まで居る為、只事では無いと直感できる。

 

 

「…………」ギリギリ

 

「ほら落ち着けって。なぁ、東崎。イリナが女の子って……知ってたか?」

 

「知ってた」

 

 

彼女達を怨念のこもった目で睨み付ける木場をイッセー君が抑える。

と言うかやっぱりイッセー君って紫藤 イリナ(しどう いりな)こと、イリちゃんの事男だと思ってたのか……。

 

それにしても昔別れた幼馴染の女の子が悪魔と敵対関係にある教会の戦士になってるなんて……運命って凄いなー。

 

さて…どんなタイミングで小さい頃に聖剣を誤ってヒビを入れてしまった事を謝ればいいのだろうか。

と言うか聖剣って簡単に壊れるもんなの?脆すぎない?

 

そんな事を考えていふと青髪の女の子は口を開く。

 

 

「先日、『神の子を見張る者(グリゴリ)』にカトリック教会本部ヴァチカン及び、プロテスタント側、正教会側に保管、管理されていた聖剣エクスカリバーが奪われた」

 

 

その言葉にその場に居た全員は目を見開く。

 

………ん?ちょっと待って。

今、凄い単語が出てこなかった?

 

 

「堕天使の組織に聖剣を奪われたの?失態どころの騒ぎではないわね。でも、確かに奪うとしたら堕天使ぐらいなものかしら。悪魔わたしたちにとって、聖剣は興味の薄いものだもの」

 

「あ、あの?ちょっと!今、エクスカリバーって言いませんでしたか?」

 

「?……あぁ、そう言うこと。キバット、貴方説明してないの?」

 

「元々、俺達はお前等悪魔に接触するつもりが無かったんだ。そんな情報、普通は教えねーよ」

 

 

リアス先輩はキバットの言葉に額を抑える。

まぁ、確かに。リアス先輩達と本格的に知り合う前までは普通の生活を送ろうとしてたからなぁ……。

 

するとリアス先輩は僕の心の中を察したのかイリちゃんに声を掛ける。

 

 

「ごめんなさいね。彼らの中には悪魔に成りたての子がいるから、エクスカリバーの説明込みで話を進めてもらってもかまわないかしら?」

 

「イッセー君、リッ君。エクスカリバーはね大昔の戦争に使われたの」

 

 

 

ベディヴィエーーーーールッッ!!!???

 

 

 

 

ちょっと!ベディヴィエールが湖に返還したのに酷くない!?

型月世界では円卓の中でも常識人だったのに!

いや、確かにあの神造兵装は戦争に持ってこいだけどさぁ……。

 

 

 

「そして、戦争の最中にバラバラに砕け散ってしまったの」

 

 

 

 

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー)ーーーーーーーッ!!?

 

 

 

なんで聖剣ってそんな簡単に折れるの!!??脆すぎない⁉︎耐久E−どころじゃないよ!

ヒロインXさんに刺されても文句言えないんだけど⁉︎

 

 

 

 

「しかも、エクスカリバーを折ったのがファンガイアの頂点に立っていた初代キバなの」

 

 

 

 

何やってんだ初代ィーーーーーーーーッ!!!!

 

セイバー=スレイヤーの標的が僕になったじゃないか!!

ふざけんなよ初代!!!

 

 

「大昔の戦争で砕け散ったエクスカリバーだが、折れた刃の破片を拾い集め、錬金術で新たに7本の聖剣を作り出したのさ」

 

 

すると青髪の女の子が呪術らしき文字が綴られた布が何重にも巻きつけられている得物を取り、彼女はそれをスルスルと解きはじめた。

そして隠されていたそれが姿を現す。

 

それは鈍い黒をした大剣だった。

その美しくも冷たい存在に目を奪われると同時に何かゾワゾワするものを感じる。

 

……え?ナニコレ。

 

 

「コレは『破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)』7つに分かれた聖剣のひとつだ。カトリックが管理している」

 

 

………は?

 

 

「私のは『擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)』。こんな風にカタチを自由自在にできるから、持ち運びにすっごく便利なんだから。このようにエクスカリバーはそれぞれ特殊な力を有しているの。こちらはプロテスタントが管理しているわ」

 

「イリナ…悪魔にわざわざエクスカリバーの能力をしゃべる必要はないだろう?」

 

「“ゼノヴィア”。いくら悪魔だからと言っても信頼関係を築かなければ、この場ではしょうがないでしょう?それに私の聖剣は能力を知られたからといって、悪魔の皆さんに後れを取ることはないわ」

 

 

……成る程。

まぁ、別に形とかはどうでもいい、重要な事じゃない。

それにしても青髪の女の子はゼノヴィアって言うのか。

 

………よし。とりあえず確認しておこう。

 

 

「あのさ、2人とも。ちょっと確認したいんだけどいいかな?」

 

「………なんだファンガイア。気安く私に話しかけるとはいい度胸だ」

 

「ほら、落ち着いてゼノヴィア。一応、私の幼馴染の1人なんだし。それに私達2人ならキバなんか簡単に倒す事なんて朝飯前「ビームは?」………うん?」

 

 

これだけは譲れない。

 

これだけは確認しておきたいッ!!

 

 

「ビームは出るの!?風で剣を透明にしたり、魔力放出でブッパは!!??」

 

 

「………な、なぁイリナ。エクスカリバーはビームなんか出るのか?破壊の聖剣ではそんな事をできないぞ?」

 

「うーん、風じゃないけど透明の聖剣(エクスカリバー・トランスペアレンシー)なら……」

 

 

「なんだ………ただの劣化品(デッドコピー)か。期待して損した……」

 

「よし、イリナ。コイツを今すぐに斬り捨てる!!」

 

「ま、待ちなさいってゼノヴィア!」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「それで、奪われたエクスカリバーがこんな極東の国にある地方都市にあるのかしら?」

 

 

リアスは真摯な態度で敵対組織と会話を再開させた。

 

 

「現状、聖剣はカトリック、プロテスタント、正教会に2本ずつ管理し、残る一本は大昔の戦争も折に行方不明となった。そのうち、各陣営にあるエクスカリバーが一本ずつ奪われた。奪った連中はこの国に逃れ、この地に持ち運んだって話なのさ」

 

 

やっと落ち着いたゼノヴィアは額を抑えながらリアスに説明を行う。

だがそんな彼女達を憎悪、嫌悪、殺意といった悪感情で睨む木場がプレッシャーを放つ。

 

そんなピリピリした空間で臆する事もなくゼノヴィアとリアスは話を続ける。

 

 

「なんともまぁ、私の縄張りは出来事が豊富ね。それで、エクスカリバーを奪った連中に心当たりは?」

 

「奪った連中は 『神の子を見張る者』その主犯格は堕天使幹部、コカビエルだ」

 

「コカビエル…。古の戦いから生き残る堕天使の幹部。まさかこんなところで聖書にも記される者の名前が出てくるとはね…」

 

 

コカビエルと言えば堕天使の幹部と言っても過言ではない者だ。

そんな相手に協力の要請だろうか?とイッセーは予想するがゼノヴィアはハッキリと述べる。

 

 

「私たちの依頼、いや要求とは私たちと堕天使のエクスカリバー争奪の戦いにお前たちは一切介入しないこと。つまり、今回の事件に関わるなと言いに来た」

 

 

的外れな内容にその場のほとんどが驚くがリアスは眉をひそめ言葉を投げかける。

 

 

「ずいぶんな言い方ね。それは牽制かしら?もしかして、私たちがその堕天使と関わりもつかもしれないと思っているの?」

 

「生憎、本部は可能性がないわけではないと思っているのでね。上は悪魔と堕天使を信用していない。神側から聖剣を取り払うことができればそちらも万々歳だろう?だから先に牽制球を放つことにした」

 

 

確かに彼女達の言うことは一理ある。いや、そもそも三すくみとなっている現状では当たり前なのだろう。彼女は淡々と述べる。

 

 

「もしもコカビエルと手を組むようなことがあれば、たとえ魔王の妹君であっても我々はあなたたちを徹底的に殲滅する。…これが私たちの上司からの言伝だ」

 

「私が魔王の妹だと知っているということは、あなたたち自身も相当上に通じているようね。ならば、こちらも言わせてもらうわ。私は堕天使と手を組んだりはしない。グレモリーの名に懸けて、魔王の顔に泥を塗るようなマネは絶対にしないわ」

 

 

しばらく両者の間に拮抗状態が続いたが、ゼノヴィアがフッとニヒルな笑みを浮かべる。

 

 

「その言葉が聞けただけでもいいさ。一応、コカビエルが盗んだエクスカリバーを持ってこの町に潜んでいるという事実をそちらに伝えておかなければと思ってね。でないと何か起こった時に教会本部わたしたちがさまざまなものに恨まれることになるからな。まあ、協力は仰がない。仮にそちらも神側と手を組んだとしたら、三すくみの均衡状態に影響が出るだろうからな。それが魔王の妹なら尚更だ」

 

 

ゼノヴィアの言葉にリアスはハァと息を吐いた。おそらく彼女達なりの優しさなのだろう。

 

 

「正教会からの派遣は?」

 

「上は今回の話を保留にした。それどころか私とイリナが奪還に失敗した場合を想定して、最後に残った1本を死守する魂胆なのだろうさ。せめて教官も来てくれればよかったのだが……」

 

 

ゼノヴィアの言葉にとにかく呆れた様子でリアスが問う。

 

 

「2人だけで奴らからエクスカリバーを奪還するつもりなの?無謀ね。死ぬわよ?」

 

「でしょうね」

 

「私もイリナと同意見だが、できるなら死にたくはないな」

 

 

イリナとゼノヴィアの両名は真剣な眼差しで平然と言い切った。

リアスは頭を抱えながら彼女達に再び問う。

 

 

「まさか死ぬ覚悟で日本に来たというの?あなた達の信仰は常軌を逸しているわね」

 

「私たちの信仰をバカにしないでちょうだいリアス・グレモリー。ね?ゼノヴィア」

 

「まあね。それに教会は堕天使に利用されるぐらいなら、エクスカリバーがすべて消滅してもかまわないと結論を出した。私たちの役目は最低でもエクスカリバーを堕天使の手からなくすことだ。そのためなら、この命など惜しくはない」

 

 

2人の覚悟を目の当たりにした東崎は内心で彼女達の信仰心が末恐ろしいと思った。

何故、こう言った信仰するキャラクターは頭がおかしい者ばかりなのだろうか。

東崎は信仰心を理解したくないと心の奥底でそう思う。

 

そして、イリナとゼノヴィアが目で合図を送りあうとおもむろに立ち上がる。

 

 

「それでは、そろそろお暇させてもらうかな。イリナ帰ろう」

 

「そうね。それじゃ、おじゃましました」

 

 

そのまま部室を去ろうとした2人だが、ふとゼノヴィアの視線が一ヶ所に止まる。

そこにはイッセーの隣にいるアーシアが居たのだ。

 

 

「兵藤一誠の家で見かけた時、もしやと思ったが『魔女』アーシア・アルジェントか。まさか、この地で会おうとはな」

 

 

彼女が口にした『魔女』という言葉にアーシアはビクッと体を震わせる。それに気付いたのか、イリナもまじまじとアーシアを見つめ始めた。

 

 

「へえ~。あなたが一時期噂になっていた『魔女』になった『聖女』さん?悪魔や堕天使を癒す力のせいで教会から追放されたと聞いていたけれど、悪魔になっていたとは思わなかったわ」

 

「…あ、あの…私は…」

 

 

2人に言い寄られ、対応に困ってしまうアーシア。そしてニコリとイリナは彼女に向け笑顔を見せる。

 

 

「大丈夫よ。ここで見たことは上には伝えないから。聖女さまの周囲にいた方々が今のあなたのことを聞いたらショックを受けるでしょうからね」

 

「…」

 

 

イリナの言葉にアーシアは、今度は複雑極まりない表情を浮かべた。

 

 

「しかし、悪魔か。聖女と呼ばれていた者が堕ちるところまで堕ちたものだな。まだわれらの神を信じているのか?」

 

「ゼノヴィア、悪魔になった彼女が主を信仰しているはずないでしょう?」

 

 

呆れた様子でイリナは言うが、ゼノヴィアは即座に否定した。

 

 

「いや、彼女から信仰の匂いが感じ取れる。抽象的な言い方かもしれないが、私はそういうのに敏感でね。背信行為をする輩でも罪の意識から信仰心を忘れない者もいる。それと同じものが彼女から伝わってくるんだよ」

 

 

ゼノヴィアが目を細めると、イリナは興味深そうにまじまじとアーシアを見つめる。

 

 

「そうなの?アーシアさんは悪魔になった今でも主を信じているのかしら?」

 

 

イリナの問いかけに、アーシアは暗い表情でぽつりぽつりと呟き始めた。

 

 

「…ただ、捨てきれないだけです。ずっと、信じてきたものですから…」

 

 

それを聞いたゼノヴィアは布に包まれた聖剣を突き出し、見下すような視線で言った。

 

 

「そうか。ならば今すぐ私たちに斬られるといい。今なら神の名のもとに断罪しよう。罪深くとも、我らの神は救いの手を差し伸べてくださるはずだ」

 

 

彼女の目はもはや人を見る目では無い。そこら辺に居る虫でも見るような目でアーシアを見つめているのだ。

そのままアーシアに近づこうとするゼノヴィアだが、そこに東崎は呟く。

 

 

「うわぁ、引くわ。信仰してるからって何でもしていいって感じに勘違いしているの引くどころか痛すぎる……」

 

「……なんだと?」

 

 

東崎の言葉にピクリとゼノヴィアが反応する。

そしてイッセーは東崎の言葉に便乗するようにアーシアの前に立つと怒気を含んだ口調で告げる。

 

 

「あんた、さっきアーシアのことを『魔女』だといったな?」

 

「ああ。少なくとも今の彼女は『魔女』と呼ばれるだけの存在ではあると思うが?」

 

 

平然と言ってのけるゼノヴィアへの怒りでイッセーは奥歯をギリギリと噛み鳴らすと彼女達に向かって叫ぶ。

 

 

「ふざけんな!自分たちで勝手に『聖女』に祭り上げておいて、少しでも求めていた結果が違ったら今度は『魔女』呼ばわりして見捨てんのかよ?そんなのおかしいだろッ!?」

 

 

激高するイッセーは腹からこみあげてくる感情を吐き出すかのようにさらに続ける。

 

 

「アーシアの苦しみを!アーシアの優しさを!誰もわからなかったくせに何が神様だ!現にその神様だってアーシアが助けを求めた時に何もしてくれなかったんだぞ!?」

 

「神は愛してくれていたよ。それでも何も起こらなかったとすれば、彼女の信仰が足りなかったか、もしくはそれが偽りだったというだけだ」

 

 

だが怒りを露わにするイッセーに、ゼノヴィアは悪びれることはなく、冷静に、淡々と、さも当然だと言わんばかりに返答した。

その態度がさらに彼の沸点を上げる。

 

 

「君はアーシア・アルジェントのなんだ?」

 

 

今度は向こうが聞いて来ると、正面から鋭い目つきを睨み返しハッキリと告げた。

 

 

「家族で、仲間で、友達だ!だからアーシアは俺が守る。もしお前たちがアーシアに手を出すって言うなら、俺はお前ら全員を敵に回してでも戦うぜ!!!」

 

「それは我ら教会への挑戦か?一介の悪魔に過ぎないくせにずいぶん大きな口を叩く。まるでしつけがなっていないな。教育不足もいいところだ。良いだろう相手をしてやる」

 

「ちょ、ちょっと?イッセー君、落ち着いt───」

 

「ちょうどいい。なら僕も相手になろう」

 

 

今にも一触即発しそうな両者を東崎は落ち着かせようとしたのだが遮るように祐斗が前に出て来る。

 

 

「誰だ、キミは?」

 

 

問いかけるゼノヴィアに、祐斗は特大の殺気を放ちながら不敵に笑った。

 

 

「キミたちの先輩だよ。最も、“失敗作”だけどね」

 

 

その瞬間、部室全体に無数の魔剣が出現した。その様子を危険と感じたのか東崎は木場を後ろから組み付く。

 

 

「ちょっと、落ち着きなって!こんな所で争っても危ないだけだよ!」

 

「それじゃあ別の場所でエクスカリバーを破壊する事にしよう」

 

「そう言う問題じゃないから!」

 

 

落ち着かせようとする東崎にゼノヴィアは布がまかれた聖剣を突き付ける。

 

 

「丁度いい。ファンガイア……いや、キバ。貴様をここで殺しておくのも悪くないだろう」

 

「あ、そう言うのいいですから」

 

「何!貴様、バカにしてるのか!」

 

 

ゼノヴィアは挑発的な言葉を東崎に投げ掛けるが東崎はすぐに断る。

ゼノヴィア自身、彼の言葉に『貴様は眼中に無い。失せろ』と勝手に解釈して勘違いしているが勿論、東崎にそんなつもりは無い。

普通に拒否しただけである。

 

東崎莉紅は寛大な心を持っている心優しい(は?)少年だ。

そんな挑発に易々と乗る訳ないだろう。

 

 

「ゼノヴィアやめときなさい。リッ君は名前が女の子っぽいように女々しい性格だからそんな事を言っても意味は───」

 

 

 

「よろしい、ならば戦争だ。ジワジワと嬲り殺しにしてやる!」

 

 

 

訂正。易々と挑発に乗る東崎であった。

 

 







要約すると

イッセー「さてはアーシアのアンチだなオメー」

トウジャキ(東崎)「ステイッ ステイッ、まだだ まだだ」

木場「さてはエクスカリバー使いだなオメー」

トウジャキ「ステイッ ステイッ、まだだ まだだ」

エクスカリバー使い達「えーマジ女みたいな名前!?」「キモーイ」「女みたいな名前が許されるのは小学生までだよねー」


トウジャキ「オ゛オ゛ア゛ア゛ァ゛ーーッ!」


大体こんな感じ。


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23話 蒼き狼牙

更新遅れてすまない……。

そこにいるエタると思った読者さん?
怒らないから手を挙げてみ?

大丈夫、僕もだから。


と言うかレポートやら試験やらでツライ……
だけど、めげずに更新していきたい。




気がついたらイリちゃん達と戦う事になった。

な、何を言ってるのかわからねーと思うが(以下略、と言うか前回参照)

 

イッセー君達の話によるとどうやら怒りで我を忘れていたらしい。

マジか、テンションが高くなる事が怖いのは球技大会で身をもって味わった筈なのに。

 

とりあえず今、僕達は旧校舎裏の空き地に居る。

リアス先輩の話によると僕を含めたこれから戦う木場君、イリちゃん達は一般人には中の様子が見えない結界の中で戦うらしい。

 

チラリと横にいる木場君を見るとイケメンがしてはいけない顔になっている。

そんな木場君に対してゼノヴィアさんは顔色一つ変えない。

 

すっげぇ。

 

 

「笑っているのか?」

 

「うん。倒したくて、壊したくて仕方なかったものが目の前にあるんだ。嬉しくてさ」

 

 

ククク、と漫画で言う復讐系主人公の如く悪そうな笑みを浮かべている。まるで悪魔だ…いやそう言えば既に悪魔だった。

 

そして目の前にいるイリちゃんに視線を向けると彼女はこちらに声を掛けてくる。

 

 

「リッ君…………」

 

 

イリちゃんは悲しそうな表情を浮かべる。

 

それもそうだ。小さい頃の幼馴染とこんな形で戦う事になるなんて僕だって納得出来ない。

せめて、彼女とはモケポンで戦いたかった。僕もイリちゃんに声を掛けようとする。

 

 

「イリちゃ──「ああ、なんて運命のイタズラ! 聖剣に適正があってイギリスに渡り久々の故郷の地で昔のお友達を斬らねばならない。なんて過酷な運命♪──さぁ、リッ君!このエクスカリバーであなたの罪を裁いてあげるわ!アーメン!」……ゑ?」

 

 

あ、あれ?なんか予想と違って凄い開き直ってる?

なんか声が踊ってるし、身体くねらせてるし……。

 

………あるぇー?

 

 

「東崎さん来てます!!」

 

「東崎ーーーっ!前前前ーーーー!」

 

 

アーシアさんとイッセー君の声により眼前に白銀の刃が迫って来てる事に気付く。

 

あ、やば。

 

このまま上半身と下半身が真っ二つになるのは御免なので人間離れした(ファンガイア)柔軟さでブリッジを行なった後、その場から飛び退く。

 

 

「気持ち悪⁉︎」

 

「人に気持ち悪いと言ってはいけません!すごく傷つくから!キバット!」

 

「よっしゃ!出番だな!」

 

 

イリちゃんの斬撃による攻撃を躱しながらキバットを呼び出す。

呼ぶと大体3秒足らずで来るのはいつも不思議に思うが、とにかく変身するとしよう。

乗り気はしないがこのままでは確実にやられてしまう。

 

危なっ⁉︎白刃どりぃ!

 

 

「おぉ!あん時の幼馴染の女の子か。『ないすばでぃー』なネーチャンになりやがって……」

 

「キバットォ(怒)!」

 

 

ドスの効いた声でキバットを呼ぶ。

早く来い!こっちは幼馴染に斬られそうなんだよ!

なんで教会側のキャラってこう頭のおかしい奴等ばっかりなの⁉︎

 

 

「わーったよ!キバって行くか!ガブリッ!」

 

「変身!!」

 

 

みるみる内に僕の身体が変化していく。よし、これで一先ず斬撃は大丈夫だろう。

とりあえず殴る蹴るは控えて先ずは動きを抑えるとしよう。

 

 

奥義──HAME技(波動結界)

 

 

「ハッ!」

 

「なんの!」

 

 

━━ザシュン

 

 

「!!?」

 

 

な⁉︎HAME技(波動結界)を切り裂いた⁉︎

現時点での最強技をこうもアッサリと!!!??

 

 

「いや、違うぞ莉紅!聖剣だ!邪な力を退ける聖なる力で魔皇力が掻き消されたんだ。分裂したエクスカリバーだとしてもその力は普通の聖剣と比べて並みじゃないからな!」

 

 

マジで!!??

 

 

「むぅぅぅ……!避けないでよリッ君!」

 

 

つまりソレは自分に死ねと言いたいのか!?

イギリスで何があった!!??

 

 

「これでどうかな!」

 

 

するとイリちゃんは居合の構えをした後、大振りでエクスカリバー(刀)を振るって来る。

その程度の斬撃は難無く避けられ──⁉︎

 

 

━━ガギィン!

 

 

「ぐ⁉︎」

 

 

一体何が起きた⁉︎エクスカリバー(刀)の間合いからはかなりの距離があった筈⁉︎

するとイリちゃんは続けて攻撃を仕掛けて来る。

 

 

「まだまだ行くよーー!」

 

「くっ………!」

 

「そこっ!」

 

 

━━ガギィン!

 

 

再び命中。

イリちゃんは僕達のような人外とは違い、れっきとした人間だが普通の人間とは比べ物にならない身体能力で次第にこちらの動きに追いついて来る。

 

だが、攻撃が当たり始めている理由は恐らくそこじゃない。

7本に分裂したエクスカリバー固有の能力だ。確かイリちゃんの持つエクスカリバー・ミミックだっけ?

エクスカリバーの形を使い手のイメージで変幻自在に変えられる能力だった筈。

 

だとするなら考えられるのはエクスカリバーを振るった直後、瞬時にエクスカリバーの刀身を更に伸ばす事によって遠心力としなりの力で鞭のように瞬間的な威力を上げているのだろう。

 

 

それだけなら良いんだけど……、身体が次第に重くなっているのを感じる。

ファンガイアの血を継ぐ僕も恐らく邪な存在なのだろうか?いや、もしかしたらキバの鎧自体が邪な存在なのだろう。

エクスカリバーの斬撃を喰らう度に身体がだるくなっていく……。

 

 

「悪魔程では無いがファンガイアもエクスカリバーの聖なる力には弱いか……」

 

「余所見している暇あるのかい?」

 

 

アッチはアッチで激しい剣戟を繰り広げている。

なんか僕だけ素手で戦っているからか浮いている気がする。

 

………よし、それじゃあコッチも『剣』を使わせて貰うとしよう。

 

先ずはイリちゃんの斬撃を……。

 

 

「アーメン!!!」

 

 

───受け止めるッ!!

 

 

━━ガッ!

 

 

「──!そんな⁉︎」

 

「すげぇ!膝と手首の鎧を纏った部分で挟み込むように受け止めやがった!」

 

「イッセー先輩にはとてもできない芸当です」

 

「小猫ちゃぁん⁉︎」

 

 

イッセー君お願いだから静かにしてくれないかな……。

一応、幼馴染相手だから手加減はしているけど、力を調節しながら攻撃躱したり防いだりするのって結構疲れるんだよ!

とにかく、ホルダーからフエッスルを取り出しキバットに噛ませる!

 

 

「ガルルさん、月光の力お借りします!」

 

「よっしゃ『ガルルセイバーッ』!!!」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

「………呼ばれたか……」

 

 

男は頭の中から響いて来る声に眉をひそめる。

何時もならば彼の呼びかけに応じすぐさま駆けつけるのだが、男はその場から一歩も動かない。

いや、動けないと言った方が正しいだろう。

 

 

「さて……困った。どうするべきか………」

 

 

男は人の皮の裏側で獲物を定める。早く喉を潤したい。早く腹を満たしたい。

その欲求に耐え続けた男はギラリと目を光らせる。

 

 

………来た。獲物だ。

 

 

「ご主人様、メニューはお決まりでしょうかにゃん♪」

 

「コーヒーだ。美味いコーヒーを1つ」

 

 

男、もとい次狼は現在、猫耳メイド喫茶でメニューを頼んでいた。

次郎はふらりと行きつけの店(メイド喫茶)でコーヒーを味わいに足を運んだのだが、後数分早く呼び出していれば『お帰りなさいだにゃん♪ご主人様』と言わせておいて何も頼まずそのまま出て行くというアウェーな感じにならないようにその場で留まる事は無かっただろう。

 

とにかく莉紅の呼び出しに応じなければ。

そう思った次狼は頼んだコーヒーが来るまでの時間に苛立ちを覚える。

 

 

「ご主人様。ご一緒に『にゃん♪にゃん♪オムライス(ハートマーク付き)』はいかがですかにゃん♪」

 

「いや……悪いが───」

 

「お願いだにゃん……(上目遣い+涙目のあざといコンボ)」

 

 

「……………」

 

 

この後、オムライスも頼んだ。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

〜〜その頃

 

 

 

「ほらほら!この程度なの?リッ君!」

 

「ぐっ、本当に容赦無いなこの幼馴染!」

 

「次郎さーーん!早くーーー!」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「お待ちどうさまですにゃん♪コーヒーとにゃんにゃんオムライスですにゃん♪これからご主人様のオムライスにケチャップで愛を込めてハートマークを付けちゃうにゃん♪」

 

「あぁ、たっぷりと頼む」

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

〜〜その頃

 

 

「いっくよ〜〜〜!」

 

 

━━ズガガガガガガガガガッ!!

 

 

「くそっ!木の陰に隠れて何とか攻撃を凌いちゃいるがこのままじゃマズイぞ!」

 

「次郎さぁぁぁぁぁぁぁぁああああん!!!何やってんだぁぁぁぁああああああッ!!!」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「行ってらしゃいだにゃんご主人様!」

 

「さて………」

 

 

支払いを済ませると次狼の姿はみるみる内に蒼の獣人へとと変貌したと思うと今度は彫像へと姿を変え、その場から消えてしまう。

 

 

 

そして場所は変わり、旧校舎裏にて━━

 

 

「………来た!」

 

「やっとかよ、来るのが遅いんだよ!」

 

「何を言っ───⁉︎」

 

 

イリナは驚愕する。

東崎、キバの手元には青い狼を模した一振りの剣が握られていた。

更にキバの左手、胸部が鎖に隠されたと思うと流線形の青の鎧へ変化していき、複眼も黄色から海のような深い青へ変わっていく。

 

そして、彼女の見間違いだろうか蒼の獣人がキバに重なるようなイメージが見える。

 

 

「これは……⁉︎」

 

 

イリナだけでは無い。周りに居たイッセー達、木場やゼノヴィアまでもその変化に驚いた。

だが変化したのは姿だけでは無かった。

 

 

「ヴオ゛オ゛オオオオォォォォォォォォォォッッンッ!!!」

 

 

さっきまでとは打って変わって、動きまでもが変わっていた。

先程までイリナを冷静に対処していた動きとは全く異なり、それは獣の如く荒々しい動きをしていた。

 

腰を深く落とし剣を担ぎ吼えるその姿は彼等の知っているキバでは無かった。

 

 

「このッ!」

 

 

イリナはすぐに我に返ると自身の得物をキバに向かって振るう。

 

 

━━ガギィン!

 

 

だが、キバは自身の剣『ガルルセイバー』でエクスカリバーを難無く受け止める。

 

 

「な⁉︎」

 

「ハァ゛ッ!!」

 

 

━━ギィン!ギィン!ギィン!ガギィン!!

 

 

そしてお返しと言わんばかりにキバの反撃が始まる。

荒々しいその斬撃は力強く、的確な攻撃だ。イリナはなんとか防御するのが精一杯だった。

 

お互い鍔迫り合いになるとキバがイリナに声をかける。

 

 

「ほう……いい女だ。しかも身体付きがとても良い。安産型だ」

 

「り、リッ君⁉︎まさか悪魔に乗っ取られてちゃったと言うの⁉︎って言うか私の事そんな目で見て居たの!!?」

 

 

キバの言葉にイリナは思わず後退りしながら自分の身体を隠そうとする。

 

 

「はっ……!そんな格好で誘っておいて何を言っている?」

 

「違うわよ!これは由緒正しき協会の戦士に送られるスーツなのよ!上層部がちゃんと考えて作ったものなんだから!」

 

「ありがとうございます!教会の方ァッ!!!」

 

 

後ろの方でイッセーが叫ぶがそこに小猫が無言の腹パンを入れる。

ちなみに感動的な台詞では無いので悪しからず。

 

顔を赤らめたイリナは居合の要領でエクスカリバーを振るう。

キバは彼女の間合いに入っている為、避けるのは至難の技だろう。

 

 

「この……!」

 

 

━━ブォン!!

 

 

先程までのキバならば。

 

 

「……⁉︎いないですって⁉︎」

 

「遅いぞ」

 

 

青のキバは一瞬でイリナの背後に回り、剣を振りかぶる。

 

 

 

「弱い女は要らん。死ね」

 

 

「あ……」

 

 

 

青のキバに一言告げられたイリナはこのままだと斬られてしまう事に気付く。

防御も回避も反撃もできない状況で彼女は、

 

ならばどうする?

 

いや、突破口があるはずだ。

 

ダメだ避けれない。

 

このままだと死んでしまう。

 

あぁ、私死んじゃうんだ。

 

 

 

彼女は素直に目の前の現実を受け入れる事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「危なッ⁉︎」

 

 

━━ガシュッ!!!

 

 

瞬間、東崎は剣を持っていない方の手で振りかぶった剣を止めていた。鮮血が飛び散るがギリギリのところでイリナに剣が当たらずに止まった。

 

そのまま剣を端々を持つとグググと力を込め始める。

 

 

『ぐぉぉぉぉぉぉ⁉︎な、何をする!莉紅!やめろ折れる!折れる!』

 

「それはコッチの台詞なんだけど何人の幼馴染をサラッと殺そうとしてんのさ」

 

『……何?幼馴染の女だと?ククク、莉紅。お前も隅に置けな──あ、すまない。謝るから力を強くするなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!??』

 

 

目の前で起こっている事態にイリナは何がどうなっているのか理解できていない状態だった。

 

 

「え?えっと…」

 

「あ、この勝負イリちゃんの勝ちでいいよ」

 

「えっ⁉︎そんなアッサリと⁉︎」

 

 

 

東崎の言葉にイリナは驚くが、それ以上にアッサリと相手に勝ちを譲る東崎の考えにイッセーは詰め寄ってくる。

 

 

「おい!いいのかよ⁉︎あのままならお前の勝ちだったのによ!」

 

「うーむ……いや別に負けても勝っても、これは『手合わせ』だからね。勝敗は関係ないでしょ?」

 

「そ、そりゃあ……まぁ、確かに」

 

 

イッセーは東崎の言葉に納得してしまう。

いや、そもそも考えてみれば彼女達は天使側の者だ。もしも彼女達に危害を加えてしまったならば戦争の火種になる可能性もある。

 

頭を冷やしイッセーは彼はそこまで考えて結果的に勝ちを譲ったのだろうと言う考えに行き着く。

 

 

「つーか、なんか青くなってるけど大丈夫か?」

 

「大丈夫。ただ武器に宿っている魂に身体を乗っ取られていただけだから」

 

「いや、本当に大丈夫か⁉︎」

 

 

知らない間に幼馴染が可愛い女の子で教会の戦士になっていたと思ったら親友の方は色々とアウトな事になっていた。

自分も大概だがコイツ等はどうしてこうなった?とイッセーは心の中で呆気に取られる。

 

 

「随分と余裕だな。私達は眼中に無いと?」

 

 

気がつくと木場とゼノヴィアとの戦いも終わりを迎えていた。

ゼノヴィアの持つエクスカリバーが木場の喉元に突きつけられており、この状況から察するにゼノヴィアの勝ちなのだろう。勝負が付いたと確信したゼノヴィアは得物を収め木場に背を向ける。

 

 

「ま、待てッまだ勝負は……!」

 

「ステイステイ、木場君。勝負はついたから……」

 

「まだだ…まだ僕は負けて……!」

 

「いや、キバの言う通りだよ」

 

 

未だに戦おうとする木場と彼を抑える東崎にゼノヴィアは声を掛ける。

 

 

「先程戦って分かったが君の本来のスタイルはスピードを生かした戦い方だろう?だが君はあえて私のエクスカリバー・デストラクションと同じパワータイプの魔剣で挑んで来た。それが敗因だ。もし君がスピードを生かした戦いをしていれば私に勝てたかもしれないな……まぁ頭に血が上った状態で私に勝てるとは思えないが」

 

「……だまれ」

 

 

挑発を混ぜたであろうその言葉は反論する事が出来ないくらい正しかった。

だが今の木場にとって、それは火に油を注ぐ事と同じであり彼の耳にゼノヴィアの言葉は届かず、ただエクスカリバーの破壊しか頭になかった。

 

ゼノヴィアはそんな彼の心情を見抜いたのか溜息をついた後、イリナと共にその場を後にしようとする。

だが、何かを思い出したのか彼女はこちらに振り向く。

 

 

「ひとつだけ言っておこう。『白い龍(バニシング・ドラゴン)』はすでに目覚めているぞ」

 

「白い龍……?」

 

「それじゃあな赤龍帝に私達の先輩、そしてキバ。もう2度と会う事はないだろう」

 

 

そう言うとローブを纏った彼女達はそれ以上は何も語らず彼等の前から立ち去って行く。

イッセー達はそんな彼女達の後ろ姿をただ茫然と見るだけであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あの女達……将来は有望だな』

 

「あ、これから一週間、次狼さんの飯は犬の餌だからね」

 

『⁉︎』

 

 

 




東崎君が身を呈して剣を止めなかったらイリナがヤバかったと言う事実。
まぁ、そもそも人を生のままムシャムシャしていた次狼さんが人を殺す事に抵抗なんて無しネ。

ここだけの話、もしイリナが知り合いじゃなければ東崎君は

「あ、ヤバくね?この娘、死ぬんじゃない?……ま、元々玉砕覚悟で来たんだし別にいっかー。次狼さん、やっちゃっていいよ」
 ↓
からのイリナ真っ二つでした(笑)


初めてのフォームチェンジだと言うのにこの始末……。
次狼ファンの皆さん本当にすみませんでした。

ちなみに待遇は特に変わらない模様。


『HAME技の弱点』
独自設定として魔皇力は邪な力が宿っている為、光による攻撃に対して弱い。

Q.なんで弱点なんか付けたの?

A.HAME技がチートすぎるから。



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24話 くっころ



最近、もう一つの作品をリメイクして投稿するか、あるいは全く別の新しい作品を投稿しようか迷っているクソな作者がここに1人。

せめてエクスカリバー編を終わらすまでには決めておきたい所存。






 

 

 

あれから木場はオカルト研究部に顔を出していなかった。

詳しい事は知らないがリアスが言うには主人である自分の言う事も聞かず去っていったらしい。

 

友達が真剣に悩み出した結果を咎める事は気が引く為、何も言わなかったが、もしかしたらバッタリと会うんじゃないかと思いながら街中を歩く。

流石の東崎も改めて今までの事を考えてみる事にした。

 

 

 

『聖剣』『エクスカリバー』『失敗作』

 

 

 

東崎は木場とこのワードに必ず関係があると確信する。

 

まず『聖剣=エクスカリバー』の構図で合っているだろう。木場は聖剣の中でも特にエクスカリバーを憎んでいる。

だが、分からないのは『失敗作』だ。

 

イリナ達に向けたこの言葉。

失敗作とは一体なんなのだろうか?

 

 

「……あ、やな予感がする」

 

 

緊張感の無い声がふと、口から漏れ出す。

異世界で聖剣、エクスカリバー、失敗作。それ等が頭の中でピースが合わさるように組み上がっていく。

 

 

そもそも何故、現代を生きる人間にエクスカリバーを使いこなすことが出来るのだろうか?

伝承ではエクスカリバーは湖の乙女がアーサー王の為に渡した剣であり、アーサー王の為に作られた聖剣なのだ。

つまりエクスカリバーはアーサー王専用ウェポンである為、現代を生きる一般ピーポーが使える物とは思えない。

 

ならば何故、イリナ達にはエクスカリバーを使いこなせたのか?そして何故、木場は自身を失敗作を称したのか?

 

 

「まぁ、木場君に聞けば分かるか」

 

 

東崎はそれ以上考えるのをやめた。おそらく近いうちに会えるだろう友達に全てを丸投げして彼は歩き続ける。

 

 

話は変わるが東崎が街中を歩いているのには理由がある。

と言ってもニスを求めて歩いている訳ではなく、前回の戦いで遅刻した上に大惨事を引き起こそうとした犬用のドックフード(夕飯)を買いに来たのだ。

 

現在、それを買い終え来た道を歩いていると……

 

 

 

「えー、迷える子羊にお恵みをー」

 

「天の父に変わって哀れな私達にお慈悲をォォォォォォオオオオオオオ!!!」

 

「うわぁ……」

 

 

 

哀れな子羊達が路銭を求めメーメー鳴いている光景が視界に映り込んで来たのだった。

とりあえず東崎はしばらくその様子を眺める事にした。

 

 

「えぇい!こうなったのもイリナ!君が怪しい絵画なんて買うからだぞ!」

 

「怪しくなんてないわよっ!いいゼノヴィア!これは聖ペトロの絵画でとてもありがたーい物なのよ!」

 

「こんなムンクの叫びのような阿鼻叫喚な絵画のどこがペトロだ!君の目は節穴か!!」

 

「何ですって!この異教徒!」

 

「なんだと異教徒!!!」

 

「……フフッ」

 

 

不思議と笑いが込み上げて来る東崎だが、吹き出すのをなんとか抑える。

すると彼女達の腹から不意にグゥ〜と腑抜けた音が聞こえる。

 

 

「……なぁ、いっそこの地の神社や寺を襲って金品を奪うと言うのはどうだ?」

 

「いいわね。手段は選んでいられないわ」

 

「……よし、警察呼ぶか」

 

 

目の前で犯罪が起きるかもしれないので110番をいつでもかけられるようにスタンバイする。

だが、突如として彼女達の様子がおかしくなる。

 

 

「……あ、いや待てイリナ⁉︎そんな事してみろ!教官にバレたら何をされるか……!」

 

「………ああああああああああああああああああああああッッ!!忘れてたぁぁぁぁぁああああああああッ!!!???教官のシゴキから解放されてすっかり忘れてたけど、私達色々とヤバイわ!!そこらの露店で絵画を買って路銭が無くなりましたって!言える訳無いわ!ど、どうしましょう!!!私達ピンチよ!」

 

「お、落ち着け!あ、あれだ!JAPANでは芸をすると金が向こうからやって来るらしい!」

 

「そ、そうだったわ!猿よ!猿を回すと周りの人達がお金をくれるのよ!」

 

「わ、わかった!猿……は居ないな。よし!イリナ!回すぞ!」

 

「えぇ!……って回すってなにがぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!???」

 

 

すると何を血迷ったのか青髪の娘ゼノヴィアは茶髪のイリナの両足を脇で挟みジャイアントスイングをし始めた。

しかしそんな事で金が入ってくる筈もなく、それどころか周りにいた人達が離れていく。

 

 

「…もうちょっと見ていきたいんだけどなぁ」

 

 

流石にこのままだとマズイと思ったのか東崎は後ろ髪が引かれる思いをぐっと抑えながら彼女達の元へ行く。

そして東崎は手に持っていたソレを投げ、ドサリと彼女達の足元に重い音が響く。

 

 

「おぉ!本当に来た!流石はJAPAN!《お・も・て・な・し》精神は伊達では無いのだな……⁉︎き、貴様は!」

 

「ぐえっ⁉︎」

 

 

すると、ゼノヴィアは東崎の存在に気付くとイリナを放り投げその場から飛び退き布に包まれた剣を手に取る。

 

 

「フフフ、私達が弱っている所を狙ってくるか。まぁ野蛮なファンガイアが考えそうな手だな」

 

「弱っているのは自業自得だと思うんですけど。まぁいいやソレはこの前のお詫びって感じで」

 

「だ、黙れ!お、お前の慈悲など……う、受け取る訳……な、ないだろう!」

 

 

ガッツリと足元にある重厚な袋に視線をチラチラと向けるゼノヴィア。

その様子を見た東崎はハァと溜息をつく。

 

 

「そっか、じゃあ受け取らないって事で──「あ、いや……ソレはソレで受け取っておこう」あ、そう?」

 

 

野蛮なファンガイアの慈悲を受け取るゼノヴィア。

するとどうしたのか、彼女が袋の中を覗き込むとプルプルと身体を震わせるながら彼に問いかける。

 

 

「おい……、なんだコレは?」

 

「何が?」

 

「袋の中には金の代わりに茶色の小さい物体が大量に入っているんだが?」

 

「え?そりゃそうでしょ。ドックフードなんだから」

 

 

ドックフードだった。お金では無く、犬用の餌を目の前のファンガイアは与えて来たのだ。

そんな彼の慈悲(笑)に対して彼女はプルプルと肩を震わせながら額に青筋を立てながら呟く。

 

 

「フフフ、よーし殺す」

 

 

至極当然の反応だった。

 

金色の瞳を輝かせながら布に包まれた剣を構えるゼノヴィア。

一触即発の雰囲気が辺りを包み込み始める。

 

ナチュラルに馬鹿にして怒らせたという事実を理解していないこの男は「え?なんで怒ってんの?牛乳飲んでる?」と呟き戸惑うばかりである。

まさか先程の言動で相手の癪に触らないと思っていたのか?コイツは……。

 

 

「私達への侮辱、天使側への宣戦布告とみなしていいんだな。イリナ殺るぞ……」

 

「………」

 

「……おい、イリナ。何を黙ってドックフードなんかを見つめている。目の前にいるのはファンガイアだぞ?しかもその頂点に君臨するキバの鎧を受け継ぎし者だ!」

 

 

ハイライトの消えた瞳でドックフードを見つめるイリナにゼノヴィアは喝を入れるが、反応が無い。

どうしたのだろうか?とゼノヴィアがしばらくイリナの様子を眺めているとおもむろに袋の中に手を突っ込みドックフードを一掴み。

 

 

「ねぇ知ってるかしら?……ドックフードって人間でも食べられる物もあるのよ」

 

 

そのままイリナはドックフードを自身の口へ運ぼうとする。

 

 

「待てイリナ!早まるな考え直せ!それはそれとしてちゃんと食べられるかどうかは私が確認しよう、ソレを寄越せ!」

 

「渡すもんですかこの異教徒!」

 

「なんだと異教徒!!」

 

 

今度はドックフードの為に争い始める2人。

そんな彼女達を前に彼の中きら沸き立つ感情は呆れでも哀れみでもなければ怒りでも無い。喜悦の感情だった。

もし手元に白飯があれば余裕で5杯はいけるなぁと言う感情がフツフツと東崎の中から溢れ出て来ようとする。

 

と言うか、未知の領域に足を突っ込もうとしている感じだった。

 

いいぞ!そこの娘達。もっとやれ。

 

 

「いや、お前は何やってんだよ」

 

 

東崎が視線を後方に向けると、見慣れたオカルト研究部の仲間であり友達でもあるイッセーと後輩の小猫、そしてそんな2人とは関係が無さそうな生徒会の一員でもある匙元士郎が呆れた表情でこちらを見ていた。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「うまい!うまいぞコレは!!!」

 

「やっぱり私にとっての日本のソウルフードはファミレスの料理よね!!」

 

 

目の前に並べられた料理が次々と彼女達の口の中に消えていく。

余程空腹だったのか料理を完食したと思ったら次の料理に手を付けるの繰り返しであり、ゴリゴリとイッセー達の財布の中身が減っていく。

 

 

「あ、チョコレートマウンテンパフェのクリームマシマシお願いします」

 

「頼むのかよ⁉︎ったく……あ、すみません。ササミお願いしまーす」

 

「お前も食うのかよ⁉︎」

 

「私も東崎先輩のと同じで」

 

「小猫ちゃん⁉︎」

 

 

上から東崎、イッセー、小猫の順でオカルト研究部の面々も料理を頼む様子に匙は唖然とする。

 

 

「くっ……悪魔達に飯を食べさせてもらうなんて、何という屈辱……ッ!」

 

「あぁ、私達は悪魔に魂を売ってしまったのね……」

 

 

「コイツらいけしゃあしゃあと…」と呟くイッセーを他所に東崎は彼女達が手を付けている料理の皿をおもむろにこちら側に引き寄せる。

 

 

「あ、それじゃあいらないんだね。まぁ屈辱なら仕方ないよね」

 

「──だが料理には罪は無い。うん罪は無いぞ」

 

「その通りね!だからハンバーグを食べさせてください。お願いしますリッ君ッ!」

 

「なぁ、お前この2人の扱い上手くなってないか?」

 

 

頭を下げる2人の姿に匙は呆れたような表情を見せる。

東崎は何やら不満そうな表情で皿を戻すと2人はすぐさま料理にがっつき始める。

するとゼノヴィアは満足したのか手を付けていた料理を食べ終えるとこちらに質問をして来た。

 

 

「……それで?私達に接触して来た理由はなんだ?」

 

「あぁ、エクスカリバーの破壊に協力したい」

 

 

イッセーが言う事を要約すると木場はエクスカリバーに復讐する為にグレモリー眷属から離れたらしく彼を連れ戻す為に否、彼を助ける為にエクスカリバーの破壊に協力したいという事だ。

 

 

「破壊するのかエクスカリバー……ヒロインXに『人様の宝具をぶち壊そうとしてんじゃねぇカリバァァァァァッ!!』されても知らないよ?」

 

「いや、ヒロインXってなんだよ⁉︎」

 

「……成る程。言いたい事は分かった」

 

「それじゃあ!」

 

「その話は難しいな」

 

 

ゼノヴィアはイッセーの言葉を遮るように呟く。

 

 

「元々、この使命は私達に与えられたものだ。先日言った通り悪魔が介入するべき事では無い」

 

「なっ⁉︎お前!死ぬかもしれないんだぞ!」

 

「それでもだ。私達はエクスカリバーを回収する、それだけだ」

 

 

ゼノヴィアは自身の意思の固さを見せつけるように腕を組みながらそう告げる。

イッセーは納得できずにゼノヴィアに対して口を開こうとすると東崎が手で制する。

 

 

「まぁ、しょうがない潔く諦めようか」

 

「東崎!お前木場の事がどうでも良いってのか⁉︎」

 

「うーん、まぁ。人の過去を散策するのは決して良い事じゃないからなぁ。それにイリちゃん達も僕達と協力するのは嫌なんでしょ?」

 

「当然よ、だって三大勢力間は未だに緊張状態が続いているんだもの。勝手にそんな事をしたらダメに決まっているじゃない……あ、ストロベリーパフェお願いしまーす」

 

「と言う感じだよイッセー君」

 

「ぐっ……」

 

 

東崎の言葉に押されるイッセー。確かに彼の言う事も最もだろう。

しかし納得できなかった、いや納得できるはずがない。

すると先程まで静かにしていた小猫が口を開く。

 

 

「東崎先輩は……祐斗先輩が心配じゃないんですか?」

 

「いや?心配だよ勿論。だけど木場君自身が僕達に協力する姿勢を見せない限りはなぁ……。無理矢理お世話を焼くのは本人に失礼だからね」

 

「……そう…ですか」

 

 

東崎の言葉にどこか悲しそうな表情を見せる小猫。

この件に乗り気じゃない態度を見せる彼はゼノヴィアに話しかける。

 

 

「と、言うわけだよ」

 

「成る程。思ったより話が分かるじゃないか」

 

「まぁね。と言うわけで引き止めてごめんなさい。僕達はもう帰るよ」

 

「なっ⁉︎おい勝手に決めんなよ!まだ話は終わって……!」

 

 

 

「と言うわけで()()()()()()()

 

 

 

「……え?」

 

 

ゼノヴィア達の目の前に一枚の紙を出す。

イッセー達は東崎の行動に疑問を持つがそのまま東崎の話は続く。

 

 

「いや、支払いだよ支払い。オムライス、ハンバーグ、ミートソーススパゲティ、グラタン、その他諸々でざっと◯◯万円(人には言えない額)だね」

 

「「……え?」」

 

 

ゼノヴィアとイリナは東崎の言葉の意味が分からなかった。

その横でイッセー達は嫌な予感を察知する。

 

 

「もしかして僕達が払うと思った?え?何言ってんの?馬鹿なの?そう簡単にお金をポンと渡してくれると思ってたの?え?金が無い?自業自得でしょ?僕達には関係無いんだから。で?お金が無い貴女達はどうするの?あーあー、もしもこの事が教会の方に知られたらどうなるのかなーー?」

 

 

━━もしかしてコイツ……

 

 

「……で協力してくれるよね」ニッコリ

 

 

 

━━ハメやがった⁉︎

 

 

 

悪魔の目の前で悪魔的所業が行われた瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

▼▼▼▼▼

 

 

 

 

 

 

公園の噴水近くにイッセー達とゼノヴィア、イリナ。そして木場祐斗が集まっていた。

 

 

「……まさかエクスカリバーの破壊をエクスカリバー使いに承認されるとは癪だね」

 

「ふん、そう言う貴様こそ今は主人の元を離れているそうじゃないか。別に今ここではぐれ悪魔として貴様を排除する事も可能だぞ?」

 

 

一触即発の雰囲気にイッセーは内心ハラハラするが、東崎がポケットからとある物を突きつける。

 

 

つ『伝票』

 

 

「──と思ったが仲良くしようじゃないか。よろしく頼むぞ先輩」

 

 

弱みを握られた教会の戦士が手のひら返しする様子に木場は可哀想な者を見るような目をゼノヴィア向ける。

 

 

「……あぁ……うん。よろしく頼むよ」

 

 

そして、何かを察したのかいつもの爽やかな笑顔を向ける。

そんな悪魔からの優しさに気付いたのか、屈辱的な思いに囚われたゼノヴィアは膝をつく。

 

 

 

「くっ……殺せぇッ!!」

 

 

 

この光景を見たイッセーが「くっころ」を本当に言う女性がいて驚愕すると同時に歓喜しているのは言うまでもなかった。

 

 

 

 

 






愉悦の道に足を突っ込み始める東崎……。



返還されたエクスカリバーが戦争に使われ、バラバラにされ、堕天使に利用され、木場の復讐の対象にされてベディヴィエール涙目。


まぁ、つまるところ……。



マーリンがエクスカリバーを管理しなかった所為じゃね?(突然の責任転嫁

マーリン「⁉︎」


あと、イリナの扱いをヒロインにするか、色物残念系親友兼幼馴染にするかメチャクチャ迷う。
まぁ、高確率で後者になるんですけどね。

イリナ「⁉︎」



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25話 聖・剣・破・壊



今回はちょっぴり東崎が反省します。人は反省して強くなるんだと思います(自分勝手な意見)





 

 

あれから数日が経ち、東崎達は悪魔側と教会側の二手に分かれ、エクスカリバーの捜索を行っていた。

 

そして現在、東崎達はと言うとローブを羽織り謎の集団神父の格好をしていた!

 

 

「迷える仔羊にオメグミヲー迷える仔羊にオメグミヲー」

 

「先輩、途中から飽きてませんか?」

 

「そうだぜ?もうちょっと真剣にやろうぜ?」

 

「えー……我らは神の代理人。神罰の地上代行者 我らが使命は我が神に逆らう愚者を、その肉の最後の一片までも絶滅する事……AMENッ!!!」

 

「怖ぇぇえええ⁉︎何なのお前の神父に対するイメージ!殺伐とし過ぎてねぇか⁉︎」

 

 

早速、東崎の口から悪魔と異教徒ぶっ殺す宣言を聞いた匙はイッセーの背後に隠れる。どうやらイッセーと匙はどこか気が合ったらしく、東崎に対し仲が良い事を見せつけて来る。

 

 

「と言うかさ、本当にこんな作戦で来るの?その……フリードって人は?」

 

「あぁ、多分来ると思うよ………ところで、東崎君ちょっといいかい?」

 

 

東崎の問いに木場が答えるとお返しと言わんばかりに今度は木場が問いかける。

 

 

「どうして君は何も言わずに手伝ってくれるんだい?」

 

「?」

 

「あの時、君は皆と違ってファンガイアとしての立場がある。何故関係の無い君が手を貸してくれるんだい?君には他にも目的があるって言うのかい?」

 

「えぇ……、そう言われてもなぁ」

 

 

東崎は苦虫を噛み潰したような表情を見せる。

 

 

「えっと……ハッキリ言うと僕はに関係無い事だしぶっちゃけどうでもいい事だよ」

 

「………」

 

「でもさ、別に僕は復讐が悪い事って言いたいわけじゃないよ。過去の自分と向き合う事でもあるし……それに復讐を果たすんなら他人の力もあった方が効率的でしょ」

 

 

そう言うと東崎はフードを深く被りブツブツと「オメグミヲー」と呟き始める。

そんな様子を見ていた木場の顔にフッと笑みがこぼれる。

 

 

「やれやれ……素直じゃないんだね」

 

「東崎ってさ、意外とツンデレな所があるんだぜ?」

 

「へぇ、それは意外だね」

 

神よ(黙れ)この悪魔達に祝福を与えたまえ(十字架打ち込むぞ)!!」

 

「「頭がァッ⁉︎」」

 

 

イラッと来たのか東崎がお祈り+十字架(手作り)を投げつけるコンボによってイッセーと木場の2人は頭を抑えながら悶絶する。

 

「……バカばっか」

 

そんな様子を呆れるように見る小猫だがすぐにその表情は笑みへと変わる。先日までのギクシャクした関係が嘘のように見せるその光景は小猫にとって喜ばしいものであった。

 

 

「……あ、あれ?もしかして笑ってる?」

 

「………! 来ます」

 

 

匙が無自覚に笑みを浮かべていた小猫に問い掛けるがそれを遮るようにとある人物が彼等の前に訪れる。

 

 

「上から来るぞ気を付けろ!!」

 

 

その人物から殺気を感じ取ったのか東崎が叫ぶとその場の全員は戦闘態勢に入る。 すると上空から白髪の男が歪んだ笑みを浮かべながら剣を振るって来る。

 

 

「神父の一団にご加護があれってネ!!」

 

 

そこに木場が魔剣を創造しその者の初撃を防ぐ。その男の正体にグレモリー眷属であるイッセー、木場、小猫が目を見開く。

 

 

「フリードッ!」

 

 

この男の正体はフリード。はぐれ神父であり、ある意味イッセー達の因縁深い相手である。

 

 

「おんやぁ?その声はもしかするとイッセー君かい?よくよく見るといつぞやののイケメン君にチビのペチャパイ────

 

 

瞬間、小猫から怒りのオーラが溢れ出す。

 

 

───じゃなかったお嬢さん!……ったく今夜も楽しく神父狩りだと思ったのに……いや、ソイツは本物か?まぁ首チョンパしちゃえばどいつもこいつもおんなじだけどねぇッ!」

 

 

するとフリードは後方にいる東崎に向かって剣を振りかぶる。

 

 

「東崎!変身前のお前でも直撃を喰らえばタダじゃすまねぇ!避けるォ!」

 

「松岡さん……⁉︎」

 

「お前何言ってんの⁉︎」

 

 

うわ言のように何かを呟きながらボーっとしている東崎に対しイッセーはツッコミを入れる。

するとギリギリのところで東崎は白刃取りでフリードの剣を受け止める。

 

 

「………あれ?」

 

 

するとどうしたのだろうか、ガクリと東崎はその場で膝をついてしまう。

そこに木場が創造して魔剣でフリードを攻撃するが軽い身のこなしでその場から飛び退き斬撃を難無く躱してしまう。

 

 

「これはイリちゃんと戦った時と同じ力が抜ける感覚……聖剣?」

 

「だとするとアレは……!」

 

「その通りでござんす!こちらの聖剣ちゃんは天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッド)!その能力は──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────速さを向上させる力!」

 

 

 

──ザシュッ!

 

 

「……ッ⁉︎」

 

「東崎君!」

 

 

一瞬の内に東崎の肩が斬られ鮮血が空に舞う。「ぐっ」と苦しそうな声を漏らしながら東崎はその場で膝をつき、木場が駆け寄るがそんな隙を見逃してくれないだろうフリードは更なる追撃を行う為、聖剣を振りかぶる。

 

 

「ハッハッハーーー!1人脱落ゥーーー!!」

 

「伸びろラインよ!……そして────」

 

 

すると匙の手元から謎の黒いラインが伸び、フリードの脚に絡みつく。そのままグッと力を込めてラインを引っ張るとフリードは弧を描くように地面に叩きつけられる。

 

 

「────らぁッ!!」

 

「ガッ……⁉︎くそっ……ウゼェなコレっ!」

 

 

フリードは脚に絡みつくラインを斬ろうとするがまるで実体が無いように聖剣による斬撃はすり抜けてしまう。

 

 

「どうだ兵藤!これが俺の神器(セイグリッド・ギア)黒い龍脈(アブソーション・ライン)』だ!この神器は拘束した相手のパワーを吸い取る事が可能だ!」

 

 

ニッと笑いながらイッセーに自身の黒いトカゲを模した籠手を見せつける。

 

 

「クッソ!ざけんじゃねぇぞこのクソ雑魚悪魔が!テメェらの自主規制(ピーーー)を引き裂いて自主規制(ピーーー)してから自主規制(バギュゥン!!)してやるッ!!」

 

「あのさ、なんでこう教会の戦士って頭がバグっているような人材ばかりなの?」

 

 

怒りに我を忘れているフリードの様子に東崎は呆然とする。

この短期間で出会った教会キャラが色々とネジが紛失している性格をしている為、そう思うのも仕方ないだろう。

 

すると東崎はハッととある事に気付く。

 

 

「って事はアーシアさんも……」

 

「東崎ィ!何言ってんだアーシアがそんないけない娘になる訳ないだろうが!と言うかそんなの俺が許さねぇ!」

 

イッセー君(性欲の権化)が1番危なっかしいんだよ!」

 

「なんだとこの野郎!」

 

「やるか?この性犯罪者予備軍!」

 

「先輩達、今は喧嘩しないでください」

 

 

──ドッ×2(腹パン)

 

 

ギャーギャーと口論をし始める東崎とイッセーに小猫が物理で仲裁を行う。「おごご……」と腹を抑えその場に崩れる赤龍帝とキバ。とても哀れな姿である。

 

 

「テメェら仲良く漫才ですか?アハハハウケるーーーーと言うわけでさっさと死んでちょーだい!」

 

 

とフリードはこの中で最も弱いと判断したのだろう。再び東崎に狙いを定め聖剣を振りかぶる。

それに対して東崎はフリードが迫り来るなか空に向かって叫ぶ。

 

 

「キバットォ!!!」

 

「おう!キバって───(ガシッ」

 

「コウモリガード!!!」

 

「えっ、何g─────危ねぇッ⁉︎」

 

 

──ガギンッ!!

 

 

東崎いつものようにキバットを呼び出し、それに応じたキバットを鷲掴みにすると盾代わりにする。

驚愕するキバットは自前の顎の力でフリードが振りかぶる聖剣を受け止める。

 

そこへ小猫が蹴りを繰り出すが天閃の聖剣によってスピードが向上したフリードに命中することは無かった。

 

 

「───何しやがる莉紅!いきなり盾代わりってそりゃねぇだろ!つーかどんな状況だよコレ!」

 

「エクスカリバーを破壊する為に戦ってる」

 

「成る程、単純明快で分かりやすい───って馬鹿!お前、俺の知らない所で何やってんだよ!」

 

 

キバットが自分の待遇に対して莉紅に申し立てるが、本人はそれを尻目にフリードと木場の戦いに視線を向けている。

 

騎士の特性によりスピーディーな戦いを行える木場だがフリードも天閃の聖剣により木場以上のスピードで戦っている。

更に悪魔は聖なる力に弱い為、フリードが優勢となっている事が分かる。

 

匙が先程から神器によりフリードの力を吸い取っているがそれを含めて優勢となっている事からフリードの実力がどれ程のものかを語っている。

 

 

「……行くよキバット変身だ」

 

「〜〜と言うわけで俺は──っておい!俺の話ちゃんと聞いてたか?……って聞いてる風には見えねぇなチクショウ!」

 

 

半ば諦めたようにキバットは東崎の手にガブリと噛み付くと、紅のベルトにぶら下がる。

 

 

「変身」

 

 

すると東崎の姿は紅と銀の異形の姿へと変身を遂げる。それを間近で見た匙はギョッと驚き目を見開く。

 

 

「そ、それが……キバの姿か?」

 

「キバ……へぇーーーーーっ?お前が噂のファンガイアの生き残りってヤツ?」

 

 

するとフリードは聖剣をベロリと舐め、新たな獲物の登場に対して笑みを浮かべる。新たな獲物に定められたキバは接近戦を行う為、フリードに向かって駆け出す。

 

 

「それじゃあ第2ラウンド開始といきますかねぇ!」

 

「僕も忘れるn「邪魔なんだよ悪魔君!!」

 

 

隙を見せたフリードに木場は魔剣を振りかぶるが、フリードは懐に隠していた銃を取り出し木場に向かって発砲する。

光の弾丸を魔剣で防ぐ木場を尻目にフリードはキバに向かって聖剣を振るう。

 

 

「莉紅!エクスカリバーを直で触るのは避けろよ!力が抜けていくから面倒くせえぞ!」

 

「分かった」

 

 

キバットの言葉にキバはそう返すと器用に聖剣による攻撃を腕輪、肩当て、膝といった鎧の部分で防いでいく。

ガギン!ガギン!と剣と鎧が激しくぶつかり合い火花を散らす。

 

そしてキバはフリードの攻撃のを防ぎながら反撃を加えていくが───

 

 

──ブォン!

 

 

「どこ狙ってんだぁ……っとぉぉおっ!」

 

 

キバの攻撃はフリードに当たる事はなかった。フリードの持つ天閃の聖剣は持ち主のスピードを格段に上げる能力を持つ。

フリードは人間だが、聖剣の能力によって木場と同等、もしくはそれ以上のスピードで戦闘を行う事が可能となっている。

 

キバの鎧の基本形態(キバフォーム)はスピードよりのスペックとなっているがそれすらをフリードは上回っている事となる。

 

 

「先輩!」

 

 

──ブォン!

 

 

すると小猫はコチラに向かって何かを投げて来る。おそらく援護のつもりなのだろう。

東崎はそれを確認した後、すぐさま飛び退こうと───

 

 

「───………ぁぁぁぁぁぁあああああああああッ!!?」

 

「⁉︎」

 

 

以外ッ!それは人!と言うかイッセー!

それはまさしく南斗人間砲弾の如く、真っ直ぐコチラに向かって叫びながら突っ込んで来るその姿を思わず二度見してしまう。

 

このままではイッセーはフリードへと成す術なく聖剣で斬られるのがオチだろう。

ここは親友として東崎は彼を助け─────

 

 

「あ、無理だコレ受け止められないや」

 

 

──るのは諦める事にした。

 

 

「ふぜけんな東崎コラァァァアアアアアア!!?」

 

 

そのままイッセーはフリードの元へ飛んでいくがフリードは難無くその場から数歩動き、砲弾と化したイッセーを避けるとフリードの後方に居た木場の方へと真っ直ぐ飛んで行く。

 

 

「くっそ!木場、俺の力を受け取れぇぇぇええええええ!」

 

【Transfer】

 

「……!ありがたく使わせて貰うよ!」

 

 

木場は手に持つ魔剣を地面に突き刺し神器の名を叫ぶ。

 

 

「魔剣創造!」

 

 

すると溢れんばかりのオーラを放ちながら沢山の魔剣が生きているかのように地面から生える。更にその魔剣は徐々にフリードが居る場所へと範囲を広げていく。

 

フリードは手に持つ聖剣で生えてくる魔剣をガラス細工のように粉々にするが地面から次々と新たな魔剣が生え、いや創造されていく。

 

 

「チッ、鬱陶しいなコレッ!!」

 

 

舌打ちしながら聖剣を振るう。例えフリードが持つ聖剣が自身の素早さを大幅に飛躍させたとしても人間には限界がある。

それに加えて匙の神器によって力を徐々に吸い取る事によってフリードの身体能力は最初の方と比べて落ちている事が分かる。

 

 

「東崎君、僕が足止めをしている内にフリードを倒してくれ。ただし聖剣は傷つけないでくれよ。それ(聖剣の破壊)は僕の役目だからね」

 

「──やれやれ、注文が多いな……ガルルさん!獣人の力お借りします!」

 

 

「よし、『ガルルセイバーーーーッ』!!!」

 

 

肩をすくめながらキバは青のフエッスルをキバットに吹かせる。

すると空の彼方から落ちて来た狼を模した彫像が青い剣『魔獣剣ガルルセイバー』へ変形する。

 

ガルルセイバーを掴んだキバの身体は青を基調とした姿へと変わり、スピードを特化させた形態『ガルルフォーム』へとフォームチェンジを行った。

 

 

「………今回はちゃんと遅れずに来たね」

 

『…………』(ドキドキ)

 

「それじゃあ、この活躍次第でドックフード生活を免除する事にしようか」

 

『FOOOOOOOOOOOOO!!!!』

 

 

雄叫び(狼郎側)を上げながらフォームチェンジを終えたキバ。月光に照らされながらキバはガルルセイバーの刀身をキバットに噛ませる。

 

 

「キバット、いきなりだけどトドメと行こうか」

 

「っしゃあッ!『ガルルバイト』!!!」

 

 

刹那、辺りが赤き霧に包まれる。一瞬何が起きてるのか分からなかったイッセー達だが、その中で匙はとある事に違和感を覚える。

 

 

「……?(あれ?今日って()()()だったけか?)」

 

 

そんな匙を尻目にキバは手に持っていたガルルセイバーを自身の口に運ぶと腰を低くしながら構える。

 

キバは獲物を見据えるとそのまま駆け出し始め───

 

 

 

「何をしているフリード」

 

 

 

キバの動きが止まった。

不意に聞こえて来た声に反応してしまい、足を止めてしまったのだ。その場にいた全員もその声が聞こえて来た所へ視線を向ける。

 

そこには神父の格好をした初老の男性が居た。見覚えの無い人物の登場に困惑するイッセー達だったがその中で木場だけは憎悪を抱いた表情でその者の名を呟く。

 

 

「──バルパー・ガリレイッ!!」

 

「いかにも私がバルパー・ガリレイだ」

 

 

その者、バルパーは木場の言葉に肯定するように頷くとフリードに視線を向ける。

 

 

「何をしている、貴様に渡した因子をもっと有効に活用したまえ。体に流れる因子をできるだけ剣に込めろ。さすればさらに聖剣の切れ味は増していく」

 

「なっほど……そらよぉッ!」

 

 

フリードはバルパーの言う通りにすると匙の籠手から伸ばされていたラインがブツリと断ち切られてしまい、拘束から抜け出されてしまう。

 

 

『チッ……莉紅!このまま決めるぞ』

 

「逃したらエクスカリバーの破壊も全部パァか……仕方ない。エクスカリバーごとフリードを斬るッ!!」

 

 

おそらく聖剣も折ってしまうだろうが、逃しては元も子もないと判断したキバはフリードとバルパーに向かって口に咥えたガルルセイバーを振り下ろす。

振り下ろされた刃は確実にフリードの首を捉えた。

 

 

────筈だった。

 

 

 

━━━ブォンッ!!!

 

 

「⁉︎」

 

「外れた⁉︎」

 

「い、いや、当たった筈だ!でもフリード達が()()()()()()()()⁉︎」

 

 

振り下ろされた刃は空を切っただけで、そこには誰も居なかった。先程までフリードとバルパーが居たのをその場の全員は目撃している。それならば何故か?

 

 

「ざんねーん!答えはもう一つの()()()()()()()ちゃんでしたぁ!」

 

 

離れた場所からフリードの声が聞こえて来る。全員が声の聞こえてきた方向へ視線を向けると、そこには"2本の聖剣"を手に持ったフリードとバルパーの姿があった。

 

 

夢幻の聖剣(エクスカリバー・ナイトメア)!』

 

「次狼さん知ってるのか?」

 

『あぁ、アレは幻覚を生み出す聖剣でな、どうやら俺達はまんまと奴等の幻影によって惑わされていたという言うワケか……!』

 

 

「そう言う事!もっと遊びたいんだけどー、そろそろ行かなきゃならないんでバイチャ────

 

 

フリードは懐から手の平サイズの球体を取り出し、そのまま地面に叩きつけようとする。

が、フリードに向かって影が飛び出し月の光によってキラリと輝く刃が振り下ろされる。

 

 

「チッ……仕留め損なったか」

 

「ぐっ、テメェ等何もんだ……?」

 

 

間一髪のところ、フリードは振り下ろされた刃を聖剣で防いでいた。そこに現れた影の正体は東崎達が良く知っている聖剣を構えたゼノヴィアだった。

 

 

「やっほー、イッセー君。私も来たわよ!」

 

「えっ⁉︎イ、イリナ!お前等どうして此処に……!」

 

「元々、彼女達と協力する手筈でしたから」

 

 

そう言う小猫の手元にはケータイが収められており、彼女がフリードと遭遇した時にゼノヴィア達に連絡したのだろう。

 

 

「反逆の徒め、神の名の元に断罪してくれる…!」

 

「ハッ!俺の前で神の名前なんて出すんじゃねぇよ!」

 

 

そう言うとフリードは二本の聖剣を振るい、ゼノヴィアを払い除けた直後手元にあった球体、閃光玉を使用する。

すると目の前の視界が真っ白に染め上げられ、気がつくとフリードとバルパーの姿は何処にも無かった。

 

 

「くっ、追うぞ、イリナ!」

 

「えぇ、行きましょう!」

 

「ちょっと⁉︎深追いは危険─────」

 

「大丈夫よリッ君!神の名の元に絶対に失敗はしないわ!」

 

「いや、何言っt─────」

 

「逃すが聖剣!」

 

「君もか!!?」

 

 

止めようとする東崎の言葉を振り切り、2人はそのままフリード達を追いかける。木場も2人の後を追うような形で走り去ってしまう。

 

 

「くそっ!何やってんだよ木場の奴!俺達も追うぞ!」

 

 

舌打ちしながらイッセーも走り出そうとするが、変身を解除した東崎は彼の襟首を掴み走り出すのを抑える。

 

 

「何すんだよ!木場の奴を放っておくのかよ!」

 

「うん、それも大事だけどさ。まずはアッチにどんな言い訳をするか考えたらどう?あと匙君も」

 

「「はぁ?何を言って────」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イッセーこれはどう言う事かしら?」

 

「匙。状況を説明しなさい」

 

 

 

 

ギギギギと首を動かしながら後方の聞き覚えのある声へと視線を向ける。

そこにはオーラを放出させながらコチラを見る主人達が居た。

 

 

「ぶぶぶぶ部長ォォ⁉︎」

 

「かかかか会長ォォ⁉︎」

 

 

「あ、こんばんは先輩方。今夜は良い月ですね」

 

「いや、お前は何しれっと挨拶してんだよ!」

 

 

呑気な東崎の態度にイッセーは思わずつっこんでしまうが、リアス・グレモリーと支取蒼那の眼光が鋭くなる。

 

 

「「何か言う事は?」」

 

 

「「すみませんでしたァッ!!!」」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

それから匙君とイッセー君のダブル土下座を見た後、僕達は別の所へ移動した。

さっきから匙君は土下座したままプルプルと震えており、その姿がとても面白────いや、見てて哀しくなってくる。

 

 

「匙、貴方がこんな勝手な真似をするなんて困った子ですね……絶版にしますよ?」

 

「ヒェッ」

 

 

そんな匙君の横でリアス先輩はイッセー君に事件の顛末を聞き出しているようだ。

 

 

「ようするに、祐斗はそのバルパーを追って行ったのね?」

 

「はい、多分イリナとゼノヴィアも一緒だと思います。何かあったら連絡をよこしてくれると思うんですが…」

 

「復讐の事で頭がいっぱいになっている祐斗が悠長に連絡をよこすかしら」

 

 

確かにリアス先輩の言う通りだ。あの木場君の様子じゃバルパーとエクスカリバーの事しか考えてないんだろう。

……折角、和解出来たと思ったんだけどな……。

 

 

「小猫」

 

「…はい」

 

「どうしてこんなことを?」

 

「…祐斗先輩がいなくなるのは嫌です」

 

 

搭城さんは静かに彼女の思いを口にした。それについても同感だ。僕だって友人がいなくなるのは嫌だ。

するとリアス先輩の表情が困惑の色に変わる。

 

 

「過ぎたことをあれこれ言うつもりはないけれど、ただ、あなたたちがやったことは大きく見れば悪魔の世界に影響を与えるかもしれなかったのよ?それはわかるわね?」

 

「すみません、部長」

 

「…ゴメンなさい、部長」

 

 

……この人、いや悪魔はやっぱり非情になりきれないんだよな。

迷惑をかけちゃったな……。

 

 

「ごめんなさいリアス先輩。エクスカリバーの破壊に便乗した僕にも責任があります」

 

「……えっ?」

 

「少なからず調子に乗っていたんだと思います。心の中で何処か『どうにかなるだろう』と他人事のつもりで手伝っていたんだと思います」

 

 

僕にはファンガイアの血が流れている。その影響なのか他種族を見下してしまい、まるでテレビの外側から覗いているような感覚で他人と接してしまう。

だからこそ、エクスカリバーをすぐに破壊できなかった。

 

 

────いや、しなかったのだ。

 

 

「だから、大半の責任は僕が受けます。どうぞ煮るなり焼くなり好きにしてください」

 

「………そう、それじゃあ"アレ"と同じ事をさせて貰うわ」

 

 

リアス先輩が視線を横に移す、僕もリアス先輩と同じ方向へ視線を向けると

 

 

━━━バシンッ!バシンッ!

 

「あなたには反省が必要ですねッ!」

 

「うわぁぁぁんッ?!ごめんなさいィッ!許してください、会長ォォォッ!アヒンッ⁉︎イッタイ尻ガァァァァアアアアッ!!?」

 

 

匙君が支取会長に尻を叩かれていた。よく見る手には青い魔力がこもっている。

 

………マジか。

 

 

「すみません。せめて他のヤツは………」

 

「ダメよ尻叩き1000回は絶対よ」

 

「………分かりました」

 

 

仕方ない……か。甘んじてリアス先輩の罰を受けるとしよう。

 

あぁ、嫌だなぁ……。あんな辱めを受けるのは色々な意味で傷が残るだろうな……。

と言うかリアス先輩の魔力って滅びの力宿ってんだよなぁ。尻が消滅しなきゃいいけど。

 

 

「待ってください部長!そもそもの責任は俺にもあります!」

 

「……私もイッセー先輩と同じ考えです。だから罰の半分は私が受けます。だから………」

 

 

イッセー君、搭城さん………。

 

 

「………分かったわ。小猫お尻を突き出しなさい。東崎もよ」

 

「ッ!部長!コレは俺が考えた計画なんです!せめて小猫ちゃんだけは……!」

 

「いくわよ2人共」

 

 

さて……そろそろ覚悟決めないとな。これから1ヶ月はまともに座れる生活は送れないだろうなぁ。

 

 

「ごめん、搭城さん」

 

「大丈夫です東崎先輩。それに……私、嬉しかったです」

 

「え?」

 

 

それってどう言う………。

そう言おうとした直後、リアス先輩の手が上から下へと搭城さんの尻に向かっていくのが視界に映る。

 

そして────

 

 

「……んっ!」

 

「終わりよ小猫。さて、東崎キバっていきなさい」

 

 

あ、あれ?思ったより痛くなさそう?と言うか搭城さん一瞬だけど感じていなかっt─────

 

 

━━━バシンッ!!!

 

 

「あッーーーーーーーー!!?」

 

 

なんで!!??なんか搭城さんと僕の差おかしくなかった!!?物凄く痛いよ!尻叩きで出しちゃダメな音が出たんだけど!!??

なんかアレだ。ガ◯使の罰ゲームを思い出した!人間って恐ろしい事思いつくなぁッ!!

 

 

「あらあらフフフ、リアスったら優しいのね」

 

 

優しいの!!?アレで!!?

 

 

………………

 

 

………………

 

 

………………

 

 

 

「って言うか居たんですか姫島先輩……!」

 

「えぇ、とても面白s───皆が心配で来てしまいました」

 

 

あれ?なんだろう。一瞬変な言葉が聞こえたような気がする。

 

 

「小猫、東崎。貴方達の自分の行いに反省する態度に免じてこれくらいで勘弁するわ」

 

「部長………なんか僕だけおかしくなかったですか?」

 

「あら?東崎。貴方だって男でしょ?女の子の前で弱音吐いちゃダメじゃない」

 

 

えぇーーー………そうなると横で現在進行形の形で弱音吐いている匙君はどうなるんだろう。

 

 

「ふふ、でも自分のやった事に責任を感じ反省する事はとても立派な事なのよ」

 

「部長、ありがとうございます……」

 

「さすがリアス部長だ。厳しくて優しいお方だ」

 

「さて、イッセー。次は貴方の番よ」

 

「うっす!それじゃあお願いしまーす!」

 

 

なんか喜んで尻を叩かれに行ってるのってどう見てもマゾのそれしか見えない。

でも……なんだろう。自ら尻を突き出してるイッセー君を見ているとなんか心の底から変なものが湧き出てくるような……。

 

 

「それじゃあ残り998回、全部受けて貰うわね」

 

「えっ」

 

「あら?そもそもの責任は貴方にあるんでしょう?それに───男の子が弱音を吐いちゃダメでしょ?」

 

 

イッセー君の顔がみるみる内に青ざめていく。

するとコチラに顔を向けて助けを求めるような表情を見せてくる。

はそれに対してニッコリとサムズアップ。イッセー君はキラキラとした表情で笑みを浮かべる。

 

………直後、僕は親指を下に向け首を切るような動作をする。

 

 

「おい東崎この野郎!!なんか反省して好感度アップさせるような事言って、どう言う了見だテメェッ!!?」

 

 

 

ごめんイッセー君。やっぱり人の本質って言うのは変えられないものなんだよ(笑)

 

 

 

 

 

 

……だけど少なくとも今回の事件、僕は真面目に取り組むつもりだよ。

 

 

キバの鎧、そしてキバット………これは僕の本来の力では無い。だけど神様、リアス先輩達の為に使わせて貰います。

 

 

 

 

 

「それじゃあ行くわよイッセー」

 

「えっいや、あの、ちょっ、待っ───────

 

 

 

この後、無茶苦茶イッセー君の尻が腫れた。

 

 




〜〜おまけ〜〜


━━バシンッ!バシンッ!

「あっ!ちょっ⁉︎痛ッ!!!」

「…………!」(ゾクリ)


━━バシンッ!バァンッ!!!

「いったぁぁぁぁぁぁぁあああッ!!?」


「…………ゴクリ」

「東崎君」

「は、はい、何ですか⁉︎姫島先輩⁉︎」

「フフフ、分かってますわ。貴方は私と同じ素質を持っている」
 ↑
ガサゴソと何かを取り出す。

「今、貴方が求めているものはコレでしょう?」

つ『鞭と蝋燭』


「えぇ、分かってますわ。でも頭で否定しても身体は正直。さぁ!今すぐ私と共に世にいる豚共にご褒美を授ける為【S道】を歩んで行きましょうッ!!さぁ!今すぐに!さぁッ!!!」


この後、全員から止められた。



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26話 愚者

 改めてハイスクールd×dを見返したけど、これってギャグ作品に分類して良いよね(唐突)アンチ・ヘイトを否定するわけではないんですけど、それ以上にその作品の良さを見つけて楽しむのも大事だと思う。


現在、活動報告の方でアンケートを取っております。興味のある方は気軽に参加して下さい。


「痛ッ〜〜〜〜〜!!まだ尻がいてぇ……!」

 

「いやぁ、部長の尻叩きって本当に怖いね。一回叩かれただけでも尻が破裂しそうな勢いだったし」

 

「……俺としてはお前と朱乃さんの絡みが物凄く怖かったよ」

 

 

 現在、お仕置きが終了し、オカルト研究部のメンバー全員はイッセー宅へ向かっている。これはエクスカリバーをどのように対処するかの意味合いも含めての事だ。

 

 

「フフフ、イッセー君ったら……私はただ、悪魔らしく欲望に忠実に……ね?」

 

「何が欲望に忠実よ…、いいかしら東崎。貴方はこのオカルト研究部において比較的、良識のあるキャラクターを保って欲しいの」

 

「……? 部長、自分で言うのもなんですけど僕は悪魔問わずニスになりそうなモノがあればホイホイ着いて行くような……アレですよ?」

 

「よく理解してるじゃない。それじゃあそれを治すように努力して欲しいのだけれど」

 

 

 リアスがそう言うと、背後にいる姫島が不敵な笑みを浮かべる。

 

 

「あらあらフフフ。ところで東崎君、ニスの材料になりそうなモノに心当たりがありまして……一緒に鞭を振るってくれればソレをお譲り致しま────

 

「やめなさいって言ってるでしょうが!これ以上、問題児(私の心労)を増やす訳にはいかないわ!」

 

「部長、もしかしてその問題児って俺カウントされてます?」

 

「イッセー君。逆に何故、君はカウントされてないと思った」

 

 

 そんなこんなで会話をしながらイッセー宅に到着したリアス一行。イッセーがただいまと口にしながら玄関の扉に手を掛ける。

 

 

「あ、お帰りなさいイッセーさん!」

 

 

 そこに明るい表情で皆を幸せにするようなアーシアが全員を出迎える。

 

───ただし裸エプロンだ。

 

それを見た東崎はすかさずイッセーにチョークスリーパーを掛ける。

 

 

「ぐぅ────⁉︎な、何を……⁉︎」

 

「何をじゃないから。なに純粋な娘に悪影響与えてんだコラ。なにを吹き込んだら裸エプロンで出迎えるのが常識みたいになってんだ?」

 

「ち、違────あ、アーシアが勝手に……!」

 

「……ほら、東崎そろそろやめなさい(どうしよう、私がアーシアに吹き込んだって言えない……)」

 

 

 リアスの心の中のカミングアウトを東崎達は知るよしも無く、エプロンだけを羽織っているアーシアをそのままにする訳にもいかないのでその場にいた全員はイッセーの家へ上がる事となった。

 

 

(……裸エプロン。そう言うのもあるのか───!)

 

「……あれ、何故か悪寒が?」

 

 

 背後で獲物(東崎)を狙うハンター(小猫)は目を鋭くさせる。謎の悪寒の正体に気付かないまま東崎はイッセーの家へ足を運んでいく。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「料理なら僕手伝いますよ」

 

「あら、ありがとう莉紅君。イッセーも彼を見習って欲しいんだけどねぇ」

 

「余計なお世話だっつの……そういやさ、東崎は家の……居候的な奴等に飯とか作らなくて大丈夫なのか?話を聞くには何か『家事をろくにしない穀潰し共』って愚痴ってだけど」

 

「ん?……まぁ、カップ麺とか家にあるモノを勝手に食ってるダロウから大丈夫だと思う」

 

「そんな適当でいいのかよ……」

 

「良いんだよ適当で、今までロクに家事をしてこなかった罰みたいなもんだからな」

 

「………そうなるとお前(キバット)も穀潰しって流れになるぞ?」

 

「───ッ!?」

 

 

 コソコソとイッセーの服の中に隠れながらショックを受けるキバット。無駄にプライドが高い分、ショックが凄まじかったのだろう。シュンと大人しくなる。

 

 

「ハハハ、まぁ料理に関しては女性陣に任せて私達はここで見守っておこうじゃないか」

 

「そうよ。アーシアちゃん達が料理を手伝ってくれるんだからね」

 

「うーん……まぁ、それじゃあ御言葉に甘えて」

 

 

 東崎はそう言うと渋々とテーブル席に着く。

 

 

「……でもなぁ、やっぱり駄目だと思うんだけどなぁ」

 

「まだ言うのかよ。ここは母さんの言う通りにしておこうぜ?」

 

「あー、いやそうじゃなくてね。イッセー君の母さんを除く女性陣が何故、裸エプロンなの?」

 

 

 東崎達の目の前には裸エプロンを着用した女の子達がキャッキャッフフフと楽しそうに料理を作っているのだ。

 

 

「なぁ一誠……私はアーシアちゃんを引き取って本当に良いと思った」

 

「俺もそう思う。けど、アーシアだけでなく部長や小猫ちゃんも着てくれるとは……ッ!クソッ!朱乃さんは報告(エクスカリバーの件)の為に帰っちゃったからなぁ。もし居てくれたら最高だったのになぁ!……ところで東崎はこの光景どう思う?」

 

「今すぐに尻を引っ叩いて服を着せた後、説教したい」

 

 

 東崎は「比較的、良識のあるキャラクターを保って欲しいの」と言っていた数分前のリアスにこの光景を見せてやりたいなぁ……と考えながらテーブルに突っ伏す。

 

何故、こうもイッセーに関わった者は変態に染まってしまうのか。コレガワカラナイ。

 

 

「すみません、ちょっと前通りますね」

 

「………」

 

 

 特に、エロに関して厳しい筈の小猫まで裸エプロンを着ている事が分からない。

 

 

「すみません、また通ります」

 

「………」

 

 

 先程から小猫が東崎の前を数分置きに横切っている事に対し、まさか狙ってやっているのか?と一瞬考え込むが「…そうか既に僕はイッセー君に毒されていたのか」と自分が自覚無しのロリコンと一方的に思い込み、軽い絶望感を味わう。

 

スッと席を立ち上がった東崎は小猫の肩にポンと手を乗せる。ビクッと小猫は驚いた後、少し期待したような恥じらっているような表情を見せる。

 

 

「え、えっと…せんぱ「ごめん搭城さん。僕ちょっと横になってくる」………ゑ?」

 

 

 ソファにドサァと崩れ落ちるように東崎は倒れ込む。その様子に小猫はガクリとその場で項垂れ、アーシア、リアス、イッセー母達に慰められる事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

▼▼▼▼▼

 

 

 

 

 

 

「……ぱい…ぱい………先輩!」

 

「……ん?何……?」

 

 

 目を覚ますと搭城さんが視界に映って来た。と言うか身体中が痛いしお腹も空いた。どうやらあのまま眠っていたらしい。すると急いで来たかのようにキバットも飛んで来る。

 

 

「おい、やべーぞ莉紅!」

 

「ん?どうしたの穀潰し」

 

「やめろ莉紅。その言葉は俺に効く」

 

「ハイハイ…で、どうしたの?こっちは微妙な時間に起きたから凄く眠いんだけど」

 

 

 いやぁ、眠い。凄く眠い。フカフカのお布団に入ってすぐさま夢の中へGOしたい。

 

 

「コカビエルがやって来たんだよ!」

 

「……コカビエル?」

 

 

 コカビエルってあの………あの………?あれ?コカビエルって誰だっけ?眠気で頭が回らないんだけど。

 

 

「おら、いいから早く来い!ここで対処出来るのはお前くらいしかいないんだよ!」

 

「先輩、行きますよ」

 

「あだだだだだ!分かった、分かったから襟首持って引っ張るのやめて!千切れる!首が千切れるから!」

 

 

 そのままバァン!と玄関のドアを塔城さんが開けるとそこには大きな黒い翼を生やした男が宙に浮いていた。よくよく見るとすぐ近くにフリードも佇んでいるのが分かる。

 

 そんな謎の男達の前にイッセー君達が立ちはだかっていて、イッセー君の腕の中には服がビリビリに破け、どう見ても事後(意味深)にしか見えない格好のイリちゃんが───────

 

 

「……あ!東崎か!よく来てくれ……あ、あれ?おい東崎。なんでお前は俺んちの自転車を担いでこっちに向かって来るんだ?…おい黙ってないで何か言ってく────うぉっ⁉︎危ねぇッ!?何すんだお前!」

 

「君の腕の中を見ればすぐ分かる」

 

「こ、これは誤解だ東崎!弁明を!」」

 

「女の衣服をひん剥く事を考えている君からどんな弁明を聞けと……?ま、とりあえず殴る」

 

 

 よく分からないけどなんかムシャクシャするので一発殴っておかないと気が済まない。

……いや、もう何発かは殴っておこう。

 

 

「落ち着きなさい東崎!」

 

「リアス先輩どいて、ソイツ殴れない!」

 

「いや、ホントに落ち着きなさい⁉︎」

 

 

 とにかく、イッセー君がこれ以上罪を重ねない内に抹消しておいた方が色々な意味で彼の為になると思う。とにかく死ねぇやイッセェェェェェ───ッ

 

 

「先輩落ち着いて下さい」

 

 

──ズドン!!(凄まじい衝撃が腹部に響く音)

 

 

「おぶ」

 

「落ち着きましたか?」

 

「うごごごごごご……お、落ち着きました……」

 

「あぁ、コレが今代のキバなんて悲しくなって来るぜ……」

 

 

 おい、穀潰しコウモリ。自分がキバだと言う事に不満があるなら聞こうじゃないか。

 

 

「……キバだと?」

 

 

 あれ、どうしたんだろう?キバと言う単語に反応を示す…コ、コカビエルさんだっけ?

なんかこっちをジッと見つめているんだけど……。

 

 こう言うのは男女が見つめ合って恋に落ちると言うありがちな少女漫画パターンだけど相手は堕天使で男。すみませんが野郎はお引き取りください。

 

 

「そうか……クク、お前が!お前がッ!キバが!!クククハハハハ!!ハーハッハッハッハ!!!会いたかったぞ!!会いたかったぞキバァ!!!俺は新たなキバの誕生を待っていた!!!さぁ殺し合おう!すぐに殺し合おう!!!いや待て!魔王共も呼んで戦争を始めよう!!グハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!どうする!どうやって殺し合う?そうだ!舞台を用意しよう!!!舞台はこの町だ!!お前はどうやって俺を殺してくれる⁉︎翼を千切るのか⁉︎それとも肉を引き裂くのか⁉︎あぁ、楽しみだ!凄く楽しみだ!!サーゼクスゥ!!!セラフォルゥゥ!!!そしてキバァ!!!早く早く早く!早く!早く!早く!殺し合おう!!キバ!キバ!今代のキバよ!!俺はお前を愛しているぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!

 

 

「「「「「「⁉︎」」」」」」

 

 

 その場にいたコカビエルを除く全員(フリードも含める)はコカビエルの告白に驚愕を隠せなかった。

 

……え?告白?

 

え?え?え?

 

 

「えっと……ごめんなさい!タイプじゃないんです!!」

 

「無理矢理でも押し通るッ!!!」

 

「お前ホモかよ⁉︎」

 

「ホモでも一向に構わんッ!!」

 

「ヒェッ」

 

 

 や、やばい!!こいつ(コカビエル)ガチホモだ!!え?マジで?嘘だろ!!??嘘だと言ってよバーニィィ!!

 

 

「先輩どいて下さい。アイツ殺して来ます」

 

「落ち着いて小猫ちゃん⁉︎」

 

「いやぁ、ウチのボスの告白されるとは羨ましいねぇ……ドンマイ

 

 

 敵である外道神父からも同情される始末だよチクショウ。

……あ、あれ?おかしいな。足が言う事を聞かないぞ?こっ、この!動けこの足め!

 

 

「ヤベェ、あのサディストに目覚めかけた東崎が産まれたて子鹿のように小猫ちゃんの背後でガグブルしてる……」

 

「あ、アレがコカビエルの本性だと言うの……!」

 

「部長、堕天使の幹部の本性がヤンホモって……」

 

「言わないでイッセー!」

 

 

 うるさいぞソコォ!!

 

 

「フフフ……首を長くして待っているぞキバァ!!!」

 

「んじゃ、そゆことで!……まじかぁ。ウチのボスってホモかぁ……」

 

 

 そう言うとコカビエルは翼を羽ばたかせ、漆黒の空へ消えていく。そしてフリードは手に持っていた閃光弾を使い、視界が白く塗り潰された後、姿を消していた。

 

……あ、これチャンスじゃね?

 

 

「クソッ!コカビエルの野郎……部長!」

 

「えぇ!好きにさせるワケには行かないわ。東崎、貴方の力を貸してくれるかしら……………あれ?小猫、東崎はどこに行ったのかしら?」

 

「…?先輩なら私の後ろに……あれ、居ない?」

 

「どこに行きやがった……って、なんだこれ?手紙か?」

 

 

『ちょっと木場くんとゼノヴィアさんを探しに行ってきます。ついでに僕の事は探さないで下さい by東崎莉紅』

 

 

「………アイツ逃げやがった!?」

 

 




 東崎莉紅は種族問わず平気で見捨てる事が出来るクソ野郎であり神様に特典を貰った癖に自分は平穏に暮らしたいとほざき、他人の命を何とも思っていない哀れな転生者。
培った訳でもない力を他人に振るうその姿はまさに滑稽である。

 彼は一体何の為に戦うのだろうか?



今回文字数が少なかったのは乾巧って奴のしわz…って、ジオウにたっくん本人出演キターーー!o(^o^)o

草加ァ!生きとったんかいワレェ!


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27話 自分らしくない事を

 うーん、どうしてもモチベーションが上がらない。小説とかアニメとか見返してはいるが、執筆速度が徐々に下がっていく始末。


と言うわけで現在、活動報告の方でアンケートを取っています(急な話題転換)興味のある方は気軽に参加して下さい。



「あー、知らない!知らない!あんな所なんか居られるか!」

 

 

 そう叫びながら自宅の庭で耳を塞ぎながら座り込む東崎。

 

 

「おい、莉紅!なんか前までは友達の為に頑張る〜とか意気込んでたじゃねぇか!」

 

「えー、何のことー⁉︎全く覚えが無いんですけどォ!」

 

 

 元々、自分には関係の無い事だ。自分が居ても居なくても世界は回る。

 そうだ、自分のやっている事は正しい。自分は間違っていない。そう自分に言い聞かせる。

それに、仮にも自分が助けに行ったとして、

 

 

「……あぁ、クソ。逃げ出した自分がどうやって顔を出せって言うんだよチクショウ!」

 

 

 彼等に失望されるだけだ。理由は何であれ自分は友人を見捨てた事となっている。

こんな自分が助けに行く資格なんて無いだろう。

 

 

──ブゥゥゥゥンッ!!ブゥゥゥゥンッ!!

 

 

「あぁっ!!うるさいな!何でこのバイクは堕天使の位置なんか察しているんだよ!」

 

 

 隣で鎖に繋がれたらマシンキバーがエンジンを吹かしている。に舌打ちする東崎。これでは、本当に自分が助けに行く流れになってしまうではないかと思い悩む。

 

 

「…あぁクソ、キバット!そもそもコレは僕に関係の無い事だろ?だったら放っておいても良くないか?」

 

「お前な、木場の奴の復讐を手伝ってやるって言っただろ」

 

「……ハァ、こんな時こそ悪魔達なんて放っておこうぜって言って欲しいのに」

 

 

 キバットの言葉にガクリと項垂れる。

 ここまでして、東崎が急に事件と関わろうとしないのは、ファンガイアと人間の混ざり合った不安定な価値観によるものだ。

 

 東崎はファンガイアと人間のハーフだが、精神的はどちら寄りなのか?

 

答えはどちらもだ。

 

例えば、目の前で死にかけている人が居たとして、見捨てると言えば簡単に見捨てる事が出来るし、助けようと思えば助ける事も出来る。

 キバの鎧を身に纏えば精神はファンガイア寄りに傾き、相手を殺す事も躊躇わないだろう。

 

しかし東崎はキバの鎧を自分の知る『ヒーローが身に付けていたモノ』として認識している為、東崎がキバの鎧を『ヒーローが身に付けていたモノ』と認識しているまでは、ファンガイアの精神に染まり切る事は無いのだ。

 

 

つまり、東崎莉紅とはファンガイア、人間どちら片方の味方をし続ける事が出来ない半端な愚者なのだ。

 

 

「……なぁ莉紅。これでも俺はお前に友人が出来た事を嬉しく思ってるんだぜ?」

 

「…いきなりどうしたの?」

 

 

 そんな東崎にキバットは急に話を始めた。

 

 

「いやさ、お前はファンガイアと人間のハーフで、ファンガイアの命を軽く見る所や、人間の脆い部分とかを継いでいる面倒な奴だよ」

 

「え?何、喧嘩売ってんの?」

 

 

 東崎は不快に思いながらもキバットの言葉に耳を傾ける。

 

 

「まぁ、聞けよ。だけどさ、キバの鎧を纏うお前が今まで一線を越える(誰かを殺す)事が無かったのはお前の友人達が居たからじゃねえのか?」

 

「……どういう事?」

 

 

 キバットは理解していた。東崎莉紅はファンガイアにも人間にもなれない者だと。だからこそ、悪魔達と接触すれば何が起こるか分からない。

最悪、三大勢力の戦争の時のようにまた新たなキバとして東崎が君臨してしまうかもしれないからだ。

 

……だが、今まで見てきて確信した事がある。

 

 

「別に……けど、お前がコカビエルと戦わなければ誰が代わりに戦うと思う?」

 

「……万じy」

 

「イッセー達だ。今のコカビエルはキバと言う名の《破壊の象徴》に囚われている。そんな状態のコカビエルにリアス・グレモリー達が勝てる確率は0に近い。確実に殺されるだろう」

 

 

 東崎莉紅は友人の為にキバとして戦う事が出来る。ただ、彼は素直になれない捻くれ者なのだ。

 

 

「現時点でコカビエルと渡り合えるのはお前だけだ!それともなんだ?イッセー達が戦っている間、お前はガクガクと震えてばかりか?テメェは戦えるだろ!いつまでも捻くれてんじゃねぇぞ!お前の───」

 

 

だからこそ、本心を出させる為にキバットは

 

 

「───女々しい名前は伊達じゃないってか!」

 

 

起爆剤を投与する事にした。

 

 

「───やってやるよチクショォ!!後で覚えておけよ!」

 

 

爆発するように東崎はその場から立ち上がり、バイクを繋いでいた鎖を解き、ヘルメットを着用した後バイクに跨る。

 

 

「待ってろコカビエル!ヤられる前にヤってやるよチクショォ!」

 

「お、おう。が、頑張れよ?」

 

 

 起爆剤の効果が予想以上だったのかキバットは引き気味に応援をする。

東崎はそのままバイクのエンジンを吹かし、アクセルを全開にして走り出す。

 

 

───ガシャンッ!!!

 

「ぶッ!」

 

「「……え?」」

 

 

 が、バイクを走らせた直後、謎の声が聞こえると共に車体に衝撃が伝わる。東崎は恐る恐る、目を凝らしながら前方を確認すると見覚えのある青髪緑メッシュの娘が倒れていた。

 

 

「………」

 

 

 何だろうかこのデジャヴは……?

東崎は合掌を行った後、イッセー達の元へ急ぐ為にバイクに跨る───

 

 

「まぁ、待て。丁度良かった。お前コカビエルが何処に居るか知らないか?」

 

 

──前に肩を掴まれる。ぶっちゃけ生きていた。

教会の戦士は轢かれた程度で死ぬような脆さは持ち合わせておらず、しっかり訓練されているのだ。

 

 

「知ってるけど……ゼノヴィアさん、今まで何処に行っていたの?」

 

「潜伏していそうな場所を片っ端から調べていてな、243個目を調べようとした所にお前に轢かれた」

 

「あー成る程ね、さては脳筋だなオメー」

 

「貴様ァ!お前も教官やイリナと同じように脳筋と呼ぶかァ!」

 

 

 どうやら東崎の感想は周りと同じらしく、目の前の脳筋娘ゼノヴィアはふぅーふぅーと怒りを落ち着かせるように深呼吸を行う。

 

 

「まぁ、いい。コカビエルの元へ行くのなら私も乗せていけ……ほう、コレがバイクと言う物か……」

 

「ねぇ、何で勝手に乗ってるの?ちょっと!勝手に後ろに乗らないでくれる⁉︎せめて聖剣を仕舞って!聖なるオーラが微妙に熱いから!」

 

 

 無理矢理乗ってくるゼノヴィアを押し退けようとする東崎だが、それに夢中でコチラにやって来るもう1人の存在に気付けなかった。

 

 

「丁度良かったよ東崎君。僕も乗せて行ってもらうよ」

 

「木場君……お前もか」

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 俺達は現在、駒王学園でコカビエルが差し向けて来たケルベロスと戦っている。

 

 被害を最小限に抑える為に、会長達は学園に結界を張ってくれているので動けない。

木場は合流出来てないし、東崎の奴は逃げ出しやがったし!

とにかく今は俺たち部長の眷属だけでやるしか無い。

 

 部長が言うにはこの戦いはあくまでも魔王様が来る間の時間稼ぎに過ぎない。

……けど、イリナをやったコカビエルには一泡ふかしてやんねぇと気がすまねぇ!

 

 

「グォォォオオオオッ!!」

 

「滅びなさい!」

 

 

 けど、俺の神器の本領を発揮するには時間がかかる為、今は部長達の戦いを見守る事しか出来ない。

クソ!こんなのじゃ負ける気しかしねぇ………⁉︎

 

 

「アーシア!」

 

「えっ……きゃあっ⁉︎」

 

 

 俺はアーシアを抱きかかえながら、その場から飛び退く。その理由として、ケルベロスがもう一体居たからだ!もう一体いんのかよ!双子か⁉︎

 

 

「イ、イッセーさん……!」

 

「安心しろアーシア。俺が囮になって!」

 

「い、いえイッセーさん!ケルベロスがもう2体……!」

 

「…は?」

 

 

 よく目を凝らしてみると、奥の闇の中からケルベロスが2体現れたのだ。はぁ⁉︎なんて嬉しくねぇ追加だよ!

 

 

「アーシア、お前は隙を見てここから離れてくれ」

 

「イッセーさんは?」

 

「俺はあの2体…いや、3体をなんとかする!……おら!俺はこっちだついて来い!」

 

 

 そう言いながら俺は挑発をしつつ、校庭を走り回る。現状俺に出来る事と言えば囮になってケルベロス達の隙を与える事くらいだ。

 

 

「ガァァァァアアアアアアアアッ!!」

 

「危ねぇッ!」

 

 

 問題なのは俺の神器ブースデッド・ギアの倍加の途中に攻撃する。もしくは、攻撃されてもリセットされてしまう。

 俺はその場で跳躍、ケルベロスの頭の上を踏み台にする、脚の下をくぐり抜けるといったように攻撃をかわし続ける。

 

……こんなんじゃダメだ…!

東崎ならさっさとケルベロスを倒せるに違いない。俺とアイツの間に出来ている差がこうも実感できるのはとても辛い事だ……!

 

 

「グォォォオオオオッ!!」

 

「ッ!しまっ────」

 

 

 思考で頭がいっぱいになっており、ケルベロスの爪が迫って来ている事に気が付かなかった俺は咄嗟に両腕をクロスさせ防御の体勢を取る。

 

 

 

 

 

 

「アアアアアアアアアアァァァッ!!?」

 

 

 

 いつまで経っても痛みが襲って来ない事に疑問を覚えた俺が目を開くと、そこには見覚えのある2つの紋章に挟まれ悲鳴を上げているケルベロスの姿があった。

 

 

「コレは……!」

 

──ガッシャァァァァァァアアアンッ!!

 

<結界がぁぁぁぁああ⁉︎

 

<会長が倒れたぞー⁉︎

 

 

 次から次へと何なんだ⁉︎

 校門側から何かが割れるような音と、聞き覚えのある人達の声が響いて来る事に驚愕していると、謎の影が通り過ぎる。

 

 

──グシャッ

 

 

 俺達が気が付いた頃には、紋章に挟まれていたケルベロスの上半身が吹き飛ばされ血の雨が降っていた。

………グロッ⁉︎って言うか、俺の目の前に変なのがもの凄いスピードで駆け抜けて行ったんだけど!

 そんな事を喋っている間にケルベロスを吹き飛ばした影はそのまま、コカビエルの方へ───え?

 

 

「……!来たか!キ──ばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっ!!??」

 

 

………え?

ええええええええええええええぇぇぇぇぇええッ⁉︎そのままコカビエルごと校舎に突っ込んで……って、駒王学園がぁぁぁぁッ⁉︎

 

 

「───ふぅ、鎧を纏っていなかったら即死だった」

 

 

 その声と共に、ケルベロスの頭上から何かが落ちて来る。上空からの不意打ちによりケルベロスのの体勢が崩れる。

 

 

「東崎!お前…「『魔剣創造(ソード・バース)』ッ!!』」…!」

 

 

 俺の声を遮るかのように、声が響く。すると、体勢が崩れたケルベロスの下から巨大な剣が幾つも創造されケルベロスは串刺しにされる。……この技は間違えねぇ!

 

 

「東崎!木場!来てくれたのか!」

 

「やぁ、おまたせイッセー君。迷惑をかけちゃったようだね」

 

 

 キバの鎧を纏った東崎と、いつもと変わらないような笑みを浮かべた木場がそこに立っていた。

 

 

「お前ら………来るのが遅ぇんだよ!ったく、こんな奴ら俺1人で充分だったっての」

 

「それにしては苦戦しているように見えたけどね」

 

「うっせ!……でも、サンキューな」

 

 

 有難い援軍が来てくれた。いつも憎たらしく思うイケメンの木場だが、今回はとても心強いと思う。

 

……けどな、

 

 

「東崎危ねぇだろ!!俺ごと轢くつもりかよ!」

 

「いやいやいやいや、違うから。バイク自身と彼女の所為だから」

 

 

 そう言いながら指をさした方向には……ッ⁉︎

ケルベロスがアーシアに狙いを定めている!クソ、目を離した隙にいつの間に……!

 

 

「アーシ……!」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああッ!!」

 

 

 刹那、叫びと共にアーシアを狙っていたケルベロスの首がストンと落ちる。更に、銀色の一閃がケルベロスの身体を真っ二つに切り裂いた!

 

 

「怪我は無いか?」

 

「ゼ、ゼノヴィアさん……!」

 

 

 なんと、アーシアを助けたのはあのゼノヴィアだった。すげぇ、人間なのに悪魔以上のパワーでケルベロスを真っ二つにするのかよ……。

 

 

「無事のようだな」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

「礼を言われる程、私は大した事をした覚えは無いさ。アーシア、下がっていろ此処は私達が引き受ける」

 

 

 アーシアにそう言い施すと手に持った剣を改めて握り直し、構える。………なんだろう。ゼノヴィアって俺達よりもカッコいいって言うか何というか。おっぱいのついたイケメンと言うか……。

 

だが、今の俺達にとって、頼もしい援軍とも言える。

 

「ありがとな東崎。俺達はお前が逃げ出したんじゃないかと思っていたけど……やっぱりお前は」

 

「違う!」

 

 

 東崎は否定する……東崎?お前、何を言って……。

 

 

 

「勘違いしないでよね!別に助けに来た訳じゃない!ただ僕は2人に無理矢理、此処へ連れて行くように言われただけなんだからねッ!」

 

「……………」

 

 

 いや、何だそのテンプレなツンデレ発言ーーー⁉︎

 

 

「そう言う事にしておいてあげるよ東崎君。君達には色々と迷惑をかけちゃったからね……すまない皆」

 

「……」

 

「木場……」

 

 

 木場は俺達に頭を下げて謝る。

 

 

「……はぁ、それじゃ今後そうならない用に僕達に相談してよね」

 

「え?」

 

 

 東崎の言葉に木場は驚いたような声を出す。

 

 

「だからさ1人で全部抱え込んで問題に起こすんだったら、皆に相談してスッキリした方がいいでしょ」

 

 

 そう言いながら東崎はトンと拳を木場の胸に当てる。

 

 

「ほら一応、僕等は友達……?的な奴だからさ」

 

「……東崎…君」

 

 

 東崎の言葉を目を見開く木場。しばらくすると木場はフッと微笑んだ表情を見せる。

 

 

「ありがとう……君は、君達は最高の友達だ」

 

「全く……こう言うのはイッセー君のやる事なのに何でやらないかなぁ」

 

「俺の所為かよ!」

 

「だって、こう言うのは僕がやる事じゃないし………!」

 

 

 すると、校舎の壁を突き破りこちらへ何かが飛んで来る。東崎は俺達の前に出るとジャンプしながら身体を捻り、ソレを跨るように受け止め着地する。

 ソレの正体は東崎達が乗って来た赤いバイクだった。すると、そのバイクはロデオマシンの如く暴れ始める。

ど、どうなってんだアレ?1人でに暴れてんのか?

 

 

「うぉぉっと……!ほ、ほらほら落ち着いて。そりゃ堕天使幹部相手にバイク一騎ってのはなぁ……」

 

 

 そう東崎が呟くと同時に校舎の壁をぶち壊しながらコカビエルがこちらに向かって来る。

 

 

「ハハハハハ!待ち侘びたぞキバァ!!!」

 

「ヒェッ……イッセー君。任せても良い?」

 

「俺に押し付けんなよ!」

 

 

 いや、確かに気持ちは分かるぞ東崎。俺だって、クレイジーサイコホモ野郎とは戦いたくねぇよ?でも押し付けんなよ!ハッキリ言うと今の俺はお前より弱いからな⁉︎

 

 

「えー……ハァ……分かったよ。それじゃあこっちはコカビエルと戦って来るよ……やだなぁ……」

 

 

 愚痴を言いつつもハンドルのグリップを握りながらコカビエルに向き合う東崎。そこに部長達が駆け寄って来る。

 

 

「東崎!相手は堕天使の幹部、1人で戦うのは流石の貴方でも危険よ!」

 

「分かっています。けど…そうもいかないみたいです」

 

 

 瞬間、一筋の眩い光が立ち昇り校庭全体が輝きに包まれた。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 光の発生源に目をやるとそこには一本の剣が存在した。その剣は悪魔達だけではなく、ファンガイアである東崎にも悪寒を与えるオーラを放っていた。

 

 

「遂に…遂に完成したぞ!これが7本の内4本の聖剣を統合したエクスカリバー!」

 

 

 バルパーの呟きと共にエクスカリバーの下に描かれた陣の光が一段と強く輝き、校庭全体に光が走る。その光景にキバットは声を上げる。

 

 

「やべぇな。エクスカリバーが一本に統合された所為で光で下の術式も完成しちまった……後20分もしないうちにこの町は崩壊するぞ!」

 

 

 リアス達は出されたタイムリミットに焦りを露わらにする。キバットの言葉が本当ならば自分達の愛するこの町が、無関係の人々が犠牲となる。

 

 

「アレってどう見てもヤバイ奴ですよね。俺の知っているエクスカリバーと大きくかけ離れてますよ」

 

「残り20分……魔王様が来るまでに間に合わないわね」

 

 

 一刻一刻と迫る崩壊までのカウントダウンを前に東崎は前に出る。

 

 

「リアス先輩、今のコカビエルは僕にしか眼中に無い状態です。ここは僕1人で戦った方が最適だと思います」

 

「……本当に1人で戦うつもりなの?」

 

 

 リアスの言葉に東崎は無言で頷くが、イッセーは東崎の肩を掴む。

 

 

「待てよ!俺達にだってやれる事はあるだろ?1人で戦おうとしたんじゃ───」

 

「ハッキリ言って今のイッセー君達じゃ足手纏いなんですよ」

 

 

 東崎の言葉にイッセーは驚愕する。今、自分の目の前に居るのは人間としての東崎莉紅ではなく、ファンガイアとしての東崎莉紅だ。

今の彼はただ、コカビエルと言う名の障害を取り除く為に闘う化物(モンスター)として、圧倒的な王の力で蹂躙するキバ(兵器)として戦う─────

 

 

──ガンッ!!

 

 

 突如として東崎は自身の頭をバイクに打ち付ける。

 

 

「どうした⁉︎」

 

「……いや、間違えた」

 

 

 仮面越しに額を抑えながら話す東崎の姿は先程のものと比べて一瞬だけ、焦っている様子が見られた。

 しかし、そこに居るのはイッセー達が知る何時もの東崎莉紅。多少の違和感を覚えはしたが東崎の話に耳を傾ける事にした。

 

 

「キバットの話から察するに現状、アイツとマトモに渡り合えるのは僕しかいないんです……僕にやらせてください。いや、僕がやらなくちゃいけないんです」

 

「……先輩」

 

(──危なかった。思考が乗っ取られかけた)

 

 

 小猫が心配する中、東崎は内心で凄まじい焦燥感に駆られていた。イッセー達に向けたあの言葉は紛れもなく東崎莉紅自身の言葉。

 

──だがそれはあくまでファンガイアとしてのだ。

 

一瞬だけ、人間としての自分を見失った東崎が最初に抱いた感情は恐怖だった。自分が自分で無くなった事実に東崎は畏れてしまったのだ。

キバの鎧に施されているファンガイアの王として証の力により、思考、精神はファンガイアとして傾き、いつしか東崎莉紅と言う名の人格は別の物に変貌を遂げてしまう。

 

 このキバの鎧は東崎莉紅が知るモノとは"似て非なる物"だ。

 

異世界転生してチート特典で無双?巫山戯るな。

このチート特典(神から与えられた反則の力)の代償はそれ相応のモノとなる。

この力を使い続ければ、東崎莉紅と言う名の自分の存在は自分自身でも気が付かない内に別の者になっているのだろう。

 

 

──【力を手に入れるってのは、それ相応の覚悟が必要なんだよ】

 

 

(……誰の言葉だっけか?)

 

 

 ふと東崎の頭の中にそんな言葉が過ったが、どうしても誰が発した言葉なのか思い出す事が出来ない。

 

東崎はそんな事を思い浮かべ───

 

 

──ブォオンッ!!

 

 

「ッ!」

 

 

 エンジンを吹かし、前輪を軸にコマを回すかの如く車体を回転。コカビエルが投擲して来た光の槍を後輪で弾いた。

 

 

「それに───今のコイツ(マシンキバー)は機嫌が悪いですし」

 

 

 東崎は考えるのをやめた。今、やるべき事は目の前の敵を倒す事だ。この町の為、罪の無い人々の為、友達の為に───自分らしく無い事を行う。

 

 

「キバット、陣の解除方法は?」

 

「コカビエルを倒す。以上」

 

「成る程、だいたい分かった」

 

 

 キバットと言葉を交わした東崎はこちらに対してニタリと笑うコカビエルと視線が絡む。

 

 

「来いッ!キバァァァァァァァアアアアアッッッ!!殺し合いの始まりだぁぁぁぁぁぁああああッ!!!」

 

 

 その叫びと共に東崎、ことキバは真紅の鉄馬をコカビエルに向けて走らせた。

 




オリジナル設定紹介


【キバの鎧】

この世界(ハイスクールD×D)におけるキバの鎧であり、東崎莉紅の知る仮面ライダーとしての変身ツールと似て非なる物。
ファンガイアが戦争の際に赤龍帝の鱗、甲殻等の素材を使用し制作した"3つ目"の鎧型兵器。

 ファンガイアの王を象徴する証であり、身に纏った者をファンガイアの王として相応しいモノへ変貌させる精神を汚染させる力が宿っている。
ヘルズゲートに装着された倍加の宝玉(コア)によってウェイクアップ時の力を何倍にも増加させる。

 他にもキバの鎧には夜を象徴する月の光によって力が増大され、ウェイクアップ時に展開する結界内に擬似的な月を作り出す事によって本物と比べて抑えめだが、力を更にブーストさせる事が可能となる。

 しかし結界を張らず、満月時にウェイクアップなんかをした時には地形がやべー事になる。


実は赤龍帝以外にも黄金龍君の力が封じられていると言うが……?










〜〜『おまけ』〜〜

学園に来る前の出来事。


青髪緑メッシュ「ほう、コレがバイクと言う物か……どれ少しだけ」

トウジャキ「何触ってんの?ちょ、ちょっと⁉︎勝手に動かそうとすんな!」

木場♂「ははは、良いじゃないか。後ろ少し座らせてもらうよ?」

トウジャキ「コラ勝手に座んな!騎士の力で速いんだから普通に走って……ねぇ、なんかお尻に硬い物が当たってるんだけど?」

木場♂「ハハハ、それは僕の魔剣だよ。気にしない気にしない」

トウジャキ「え、いや……この感触ってどう考えてm───」

青髪緑メッシュ「えい」

アクセル全開


この後無茶苦茶、爆走独走激走暴走した。





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28話 ダークネスムーンブレイク

「エターから蘇った男…スパイダーマ(殴」

と、言うわけで読者の皆様お久しぶりです。こちらでは2019年初の投稿になります。
遅れた理由としてはもう一つの小説を書いていた事、追加で新しい小説を書くと約束してしまった為、話の構成を考えている事、更にもう一つ新しい小説を書くと約束してしまうと言う倍プッシュにより大幅に更新が遅れてしまいました。

小説を4つ同時に書けって……。




 

 紅き鉄馬が駆け抜ける。駆けた跡には光の槍が突き刺さる。黒と紅がぶつかり合う。王は槍を物ともせずに鉄馬を巧みに操る。

 

「そうだ……!今は僕に従え…キバの鎧…!」

 

 精神をファンガイアの王として相応しいモノに変える力を持つ鎧を羽織る彼はそう呟きながら鉄馬を走らせる。

 

「ハハハハハ!楽しいなぁ!キバァッ!!これならどうだッッ!」

 

 黒き翼をはためかせ堕天使のコカビエルは光を圧縮させ、両手に納めた巨大な槍が投擲される。

 

「ッ!」

 

キバである東崎はソレを片手で掴み、握りつぶした。キバの鎧は悪魔程では無いが聖なる力に弱い部分がある。だからこそ東崎は考えた。

 

もう面倒臭いから真正面からぶっ壊した方が早いんじゃね?

 

…と。一々逃げるより、自分自身にその程度の攻撃は通用しないと言う警告も兼ねての選択を東崎は選んだ。

 

 

(熱ッ⁉︎)

 

 

 熱された鋼鉄を素手で触れたような感覚が襲って来た。

しかしすぐに握りつぶしたので、一瞬で元の体温に下がる。未だに手の平はヒリヒリするが、自身の顔の半分以上が黄色い複眼で占められている為、表情は全く変わらない。

 

 

「やるなァ!これならどうだッ!」

 

 

 空中で静止し、両手を上に向けると東崎を中心に360度、半球のように展開された無数の光の槍がキバである彼に狙いを定める。光の槍が一斉に射出される。それに対して彼は

 

 

「…あっ、駄目だコレ」

 

 

 捌き切る事を不可能と察した。直後、彼は眩い光に包み込まれる。

 

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 

 天然のデュランダル使い、イレギュラーの禁手である双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)の出現により5本の統合されたエクスカリバーは破壊された。

 

 その際、木場が握る聖魔剣を見たバルパーは何かに気付くが、その事を口にする事は永遠に無かった。バルパー・ガリレイはコカビエルの放った光の槍によって亡者と化したのだ。

 

キバと戦いを繰り広げていた筈の堕天使の介入に驚愕を露わにするグレモリー達。強力だった筈の木場の聖魔剣、ゼノヴィアのデュランダルの攻撃は難なく捌かれ、姫島の雷撃も通用する事は無かった。

 

 木場達は決して弱くない。ましてやデュランダルはトロイアの英雄ヘクトール、シャルルマーニュ勇士のローランが扱ったとされる不滅の刃だ。

 

……が単純な話、使いこなせてないのだ。

 

木場は禁手の聖魔剣を発現させたばかり。

ゼノヴィアのデュランダルは四つの聖遺物が秘められた悪魔にとって危険な力を持ち、迂闊に払う事が出来ない。

 

 姫島は本来の力を引き出せてない為にコカビエルにダメージを与える事ができない。

 

 グレモリー眷属達は将来性に優れているが、まだだ。まだ、本来の力を引き出せていないのだ。

苦戦する眷属達を前にコカビエルは

 

 

「……飽きた」

 

 

 そう吐き捨て、両手を上空に掲げる。

すると、先程まで使っていた光の槍と比べて数十倍はあるであろう光が収縮され、巨大な矛が現れる。

それを見てリアスは咄嗟に側にいた一誠に声を掛ける。

 

 

「イッセー!私に譲渡を!」

 

「ッ!分かりました!」

 

『Transfer!』

 

 

 直後、コカビエルが放った矛とリアスの滅びの魔力がぶつかり合う。激しい閃光と紅がスパークを起こし、周囲の景色を抉っていく。

 

攻撃の余波によってグラウンドは無残な姿と化し、校舎も所々が崩壊していく。

 

 

「……選択を誤ったな。グレモリーの娘」

 

「……ッ!部長!」

 

 

 すると、腕を突き出していたリアスはその場に崩れ落ちる。すぐさま一誠が駆け寄り、彼女を抱きかかえ呼びかける。

その様子にフンとつまらなそうにコカビエルは鼻を鳴らす。

 

 

「先程の攻撃は素晴らしかった……が、後先考えずに最大出力の"滅びの魔力'を使うとはな。滅びの魔力は、文字通り対象滅ぼす魔王の力。それと俺の光の力がぶつかり合った余波で自分の身を傷つけるとは……愚かな女だ」

 

 

 そうでもしなければ、眷属を助ける事は出来なかった。

彼女は王として未熟だ。……しかし、誇り高き魔王の妹としてリアス・グレモリーは眷属達を守ると言う選択したのだ。

 

 

「魔王の妹とはいえ所詮この程度か……赤龍帝、貴様に問おう、敵わないとわかっていても、なお私に挑む気か?」

 

「……るせぇ……」

 

「あ?」

 

「うるせぇって言ってんだよ!この野郎!愚かだと!?ふざけるのも大概にしやがれ!」

 

「そうか……」

 

 

瞬間、コカビエルは一誠の背後に立ち、光の槍を構える。

 

 

「ッ⁉︎(コイツ…!いつの間にッッ!)」

 

「その台詞を吐くと言うなら、この女を守るぐらいの実力はあるんだろう?」

 

「───っ」

 

 

そう、呟くコカビエルは一誠の側に居たリアスに向け、槍を握る腕を振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……が、リアスに光の槍が突き刺さる事はなかった。

鎧を身に纏った()が槍を握り、寸前で止めていたのだ。一誠の目には自分が惚れた彼女を救う親友の姿が映っていたのだ。

 

 

「やはり、生きてるよなぁ……!」

 

「………」

 

 

鎧を纏った東崎は何も答えず、光の槍を握り潰した。

 

 

「そう来なくてはなぁ!キb「いい加減にしろよ」……ほう?」

 

「アンタは……何で戦おうとするんだ?付き合わされるコッチの身にもなれよ?……いい加減、うんざりなんだよ」

 

「戦う理由だと……そんな事、決まっているッ!戦う事が俺の生き甲斐だからだ!それが俺の存在意義だからに決まっているッッ!」

 

「……趣味悪っ。大量の光の槍放たれた時は地面の中に隠れて奇襲を狙ったけど……このまま地面に埋まっていた方が良かった……」

 

「クク…、やはり面白いな……。どうだ?キバ、俺と一緒に来る気は無いか?世界を気ままにさすらい、好きな国を破壊し、旨いモノを食い旨い酒に酔う。こんな楽しい生活は無いぞ?」

 

「…いや、結構です」

 

「まぁ、そうだよな……赤龍帝はどうだ?」

 

「はぁ?そんなもんに乗るわけ……!」

 

「好きにさすらい、大量の女に埋もれ、抱き放題だぞ?」

 

 

「……っ!そ、そそそそそんなもんに「どうでも良い」……」

 

「そんなのどうでも良いからさっさと、堕天使達の所に帰れ。そんなに戦いたいなら身内同士で堕天使一武道大会でも開いてろ」

 

「あっ、うん。……テメェなんかにつくもんかよこの野郎!(ヤケクソ」

 

 

 

「キバの言う通りだ。貴様はさっさと退場してもらう」

 

「全く……実に哀れだなデュランダル使い」

 

「……何の話だ」

 

「仕える主が居ないのに、教会の犬としてこの戦場に死ににきたんだ。それを哀れと言わずに何と言う?」

 

 

だが、次に発した言葉はそれ以上の衝撃をゼノヴィアは愚か、この場の全員に与えた。

 

 

「お前らの仕える聖書の神は、旧き戦争で前魔王達と同じく命を落とした。つまりは死んだのだよ」

 

 

 

 その事実に聖職者だったアーシアは意識を失ってしまう。ゼノヴィアはその場で膝をつく程にショックを受ける。

 

イッセーとしては、何故そこまで落ち込んでしまうか理解出来なかった。だが神を信じていた彼女達にとって、生まれた頃から信じていたモノに裏切られたと言う意味となる。

 

 

「………(神死んでる扱いになってんぞ!?え、どういう事?アレか!僕が転生された直後、ショック死したって事なのか!?マジで!?)」

 

 

 

 実際の話、1番ショックを受けてるのは東崎本人だったりする。神ってそんな簡単にポックリ逝くものだろうか?

 

しかし、コカビエルが言っているのはこの世界における聖書の神であり彼の知る"神"とは赤の他人である。

 

 

 

(………あれ?)

 

 

 

 

 

 

 

(転生って……何の事だっけ?)

 

 

 

 

 彼は記憶の中にポッカリとできた空白に疑問符を浮かべた。自然と出てきた単語が何なのか、何故自分がその言葉を思い浮かべたのか原因を思い出そうとするが答えがすぐに答えか出る事は無かった。

 

 

 

「(転生って……輪廻転生とか今流行りの異世界無双系…ぐらいしか分からないけど……)まぁ、いいか」

 

 

どうせ、自分に関係の無い事だろうと頭の隅に追いやった。

……最早、()()()()すら思い出せないであろう彼は前に踏み出す。

 

 

「神が居ようが居まいが、僕にはどうする事も出来ない。……けど、耳障りなアンタを黙らせる事は出来る」

 

 

 ボコリと足元の地面が隆起すると、紅のバイクが地上に現れる。ソレがコカビエルを捉えるとタイヤを激しく回転させ突進を仕掛けようとする。

マシンキバーに施された拘束具カテナの鎖を引き抜き、ジャラララと金属が擦り合う音が響き渡る。

 

 

紅騎馬、wake(ウェイク)up(アップ)

 

 

『gi───◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️ッッ!』

 

 

 バキバキと装甲が割れるような音と共に不快な絶叫にその場の全員は思わず耳を塞ぎこんでしまう。

彼の側にあったであろうバイクは徐々に姿を変えていく。

 

骨と皮しかないような脚部がパーツの隙間から姿を現し、フロントのディフェンダーから黒い毛の間から赤く輝く瞳が印象的な頭部が起き上がり、無機物だった鉄馬は瞬く間にモンスターへと変貌を遂げていた。

 

 

「アレは……」

 

「……亡霊(ファントム)

 

「え?」

 

 

 木場が呟いた言葉に一誠は思わず声が漏れてしまう。

 

 

「アレは僕と同じ、憎悪の念だ。アレは……憎しみで現代に復活した亡霊だよ」

 

 

 マシンキバーはキバット族の工芸の匠であるモトバット16世、堕天使の総督であるアザゼルが意気投合して製作されたと言われる。

その際にライト周囲のカウリング内部にはとある馬の脳を、装甲の下には神経と人工骨が組み込まれた。

 

 

偶然か、はたまた必然か。

現世に再び蘇った鉄馬のかつての名を『ラムレイ』と呼ぶ。

 

 

『◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️ッッ!』

 

 

かつての主人である王が手にした剣。ソレを穢された。

自分をこんな姿にした堕天使が目の前に居る。

 

 

 

───許せるものか……

 

 

───己の魂をこのような箱に詰め込んだ事を……

 

 

───そして何よりッ!今存在する民達の命を!かつての主人の剣で壊そうとするか……ッ!

 

 

 

『◼️◼️ッ!◼️◼️◼️◼️──━━ッ◼️◼️◼️ッッ!』

 

 

 

 耳を覆いたくなる奇声を発しながら鉄馬は駆け、それと同時に見計らったように東崎は背に跨り手綱(ハンドル)を手にする。

前輪を激しく回転させ火花を散らしながらマシンキバーは跳躍する。脚部には筋肉が無い事が嘘のように一瞬の内にコカビエルとすれ違う。

 

 

「ぐッ──おッ!」

 

 

 コカビエルは自身の肩を抑える。突如として襲って来た熱量と痛みに思わず声を漏らしてしまった。視認すると、自分の肩が大きく抉れ焼けている事に気付く。

 

どうやら鉄馬の回転するタイヤがチェーンソーのように堕天使の肉を刈り取ったのだろう。赤く染まった車輪を駆動させ、キバと鉄馬は再び堕天使に向かって襲いかかる。

 

すぐに手元に光の槍を形成するとコカビエルは槍を盾代わりにして攻撃を防ぐ。ガリガリと車輪と槍が火花を散らす中、バイクに跨っていた東崎は跨っていたシートを踏み台にすると宙で身体を捻り、コカビエルの背後に回る。

 

 

「堕ちろッ!!」

 

「ぐぁぁぁぁあああああッッ!」

 

ブチブチ!と無防備な背から生えた鴉のような黒い翼をもぎ取り悲痛の叫びを上げる堕天使はそのまま地へ落ちていく。

 

 

「ハァ……ハァ……!ぐぉっ……ッ流石だァ…キバァ……!それでこそ殺し甲斐があるッ!」

 

「しつこいなぁ!」

 

 

 口から血を吐きながらもコカビエルは光の槍を手に立ち上がる。何度も攻撃をしたと言うのに立ち上がる目の前の存在に東崎は苛立ちを見せる。

 

 

「ハハハ、だが、お前と会えて本当に良かった!やはりあの茶髪の女の雑魚とは全く違う!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「茶髪の女の……雑魚?」

 

 

 

 瞬間、頭が冴え渡った。直後、体の内から熱いナニカが炎のように侵食するのを感じた。

 

 

 

「ん?もう1人の教会の戦士だ。まぁ、良いだろう、あんな女の事はどうでも良い!さぁ!さっさと戦いを始めようじゃ無いかッッ!さぁッッ!」

 

 それに対して確実に息の根を止めようと鉄馬は車輪を激しく回転させる。

 

 

「…あとは僕がやる」

 

 

 しかし突如として鉄馬はバイク形態に姿を戻した。東崎の手にはカテナの鎖が収められ、これ以上の暴走を許す事は無かった。

 

 

「不満だろうけど、これ以上暴れたら皆にも危害を出すかもしれないんだ。だからココは我慢して」

 

 

 今にもボディの内側から出てきそうなモンスターを宥めると、納得したのか次第とエンジン音が小さくなる。

 

 

「まぁ、我慢できないのは僕なんだけどね……」

 

 

震える手でホルダーからフエッスルを取り出す東崎。

恐らく、これは怒りだ。

 

怒りで我を失いそうになるのをギリギリの所で踏ん張りがついたのは奇跡だった。

 

 

「よし、…行くよキバット。…殺さないように」

 

『あぁ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……莉紅…」

 

 

皆が見守る中、一誠の左手から声が響く。

彼の内に眠る龍のドライグが話しかけてきたのだ。

 

 

『相棒、キャッスルドランを覚えているか?二天龍である俺達の一部も奴等によって改造されてしまったと言う事を』

 

「改造されたって……何で今、そんな話をするんだよ」

 

『俺の鱗や皮膚、更には歴代の赤龍帝の神器その物がファンガイアが作り出した兵器に組み込まれたのさ』

 

「そうなのか⁉︎でも、一体どう言う……」

 

『見ろ、相棒。奴が俺の力を扱う様をな』

 

 

 あらゆる物語で月の光は怪物に力を与える魔力を持つ。ファンガイアはそれに目を付けた。

月の満ち欠けにより強さが増減されるウルフェン族の特性をキバの鎧に組み込む事が出来れば……その結果、闇のキバの鎧が造り上げられた。

 

結果、キバの鎧は擬似的に月相が存在する結界を張る能力が備えられ、これによりSafe(新月)からDanger(満月)と調節が可能となった。

 

 

『いくぜ……wake(ウェイク)up(アップ)‼︎』

 

 

更に、鎧に二天龍の一角の力を取り入れる事にファンガイアは成功したのだ。

厳重に拘束具カテナで封じられた右脚か解き放たれた。赤龍と赤龍帝の神器の一部である宝玉で作られた【ヘルズゲード】が姿を現した。

 

 

「アレは……ッ!」

 

 

 両腕をクロスさせるように構えると紅い雲の隙間から三日月が姿を現した。

力を溜め、月を背に大きく跳躍する姿は正しく伝承に出てくる吸血鬼の如く。宙で身体を捻り、右脚のヘルズゲートが堕天使に向かって落下を始める。

 

 

「ハァァァァァァアアアアアッッッ!!!」

 

 

 赤龍の力により何倍にも増幅された魔皇力を纏う急速落下による蹴り【ダークネスムーンブレイク】が光の槍を難なく破壊し、コカビエルの腹部を捉える。至近距離から砲撃を喰らったような衝撃が全身に伝わると同時に更に魔皇力が全身を駆け巡り、凡ゆる箇所から一気に血が溢れる。

 

 

「ゴァッッッ!!」

 

 

ズガンッ‼︎とグラウンドが割れたと錯覚してもおかしくない程、地を揺らす着撃と同時に、己の存在を知らしめるように校庭のグラウンドにキバの紋様がクレーターとして刻まれた。

 

 

「校庭が……!」

 

「……やったのか?」

 

「……っ! まだです」

 

 

先程の一撃で倒した。

そう思ったのも束の間。小猫はコカビエルにまだ意識がある事に気づく。

 

 

「……ッ、がはっ!い、生きてる…だと……?そうかっ!キバッ!お前はまだ戦い足りないのだなッ!待っていろ!今すぐに貴様を殺しt「あのさぁ……」

 

 

コカビエルの側で同じ高さに合わせるようその場で屈む。

 

 

「いい加減にしなって。コカビエル…さんだっけ?戦い足りないって冗談じゃ無いよ。誰が好んでヤンホモと戦うかっての……」

 

「……は、はは!何を言ってるキバ!お前は!」

 

「僕は東崎莉紅。人間とファンガイアのハーフ。別に好きでファンガイアの王になりたい訳じゃないし、なる気もないから。ハイ、以上!」

 

 

よっと…と呟きながら、東崎はコカビエルをその場に放ってグレモリー眷属達の元へ歩いて行く。

 

 

(何故だ……?)

 

(俺の何がいけなかった?)

 

(俺の何処が不満だったのだ?)

 

 

コカビエルの脳裏に刻み込まれたあの言葉が蘇る。

 

 

『コカビエル……面白いな貴様。暇つぶしに戦うとしよう』

 

 

 金色の剣を手にした、黒の鎧を纏い翠色の瞳を輝かす異形の戦士が自分にそう言った。

目の前に現れた、破壊の象徴は自分を見ている。自分だけを見てくれている。

 

かの存在は消え失せた。……が、こうして再び現世に蘇って来てくれた。

 

歓喜した。目の前にこうして己と向き合ってくれた事にコカビエルは歓喜したのだ。

 

 

……なのに、何故だ。

 

 

何故、コイツはファンガイアとしての誇りを……キバとしての誇りを蔑ろにする?

 

 

「……がぁぁぁぁぁぁあああッッ!認めんッ!認めんぞッ!キバァァァアアアッ!!貴様はァ……!貴様は!ファンガイアなんだぞッッ!俺を殺せッ!戦争を起こせッ!他の生命を糧にしろォ!世界を種族の死体で埋めつくせェッッ!」

 

「やだよ。何でそんな事しなきゃ駄目なのさ」

 

 

 コカビエルの叫びは一蹴される。何の興味も示さず、飽きた玩具のようにこちらを見向きもせずに答えた。

 

 

「なん……だと……ッ⁉︎」

 

「だって、僕は趣味で楽器を作っていたいし。駒王町の甘い物だって未だ制覇出来てないし」

 

 

しばらくして、東崎は考え込む素振りを見せる。

 

 

「……可哀想な人、じゃなかった。可哀想な堕天使だ。世界には…そんな事よりも、素晴らしいモノに溢れてるのに……」

 

 

 落胆したような、呆れ果てたような。彼の声色からそのような様子を読み取る事は容易い事だった。

 

 

「……きッ」

 

 

 だからこそなのだろう。その言葉はコカビエルの逆鱗に触れてしまったのだ。

 

 

「きぃぃぃぃぃいいいいいいさぁぁぁぁぁぁあああああまぁぁぁぁぁぁぁああああッッッッ!!貴様はッッ!キバでは無いッッ!貴様はぁぁぁぁぁぁああああッ!!紛いモノだぁぁぁぁぁぁッッッ!!」

 

「知ってる。ホラ、いい加減に奇声をあげるのはやめなさいって。もう夜なんだし、周りの迷惑だよ?」

 

「黙れッ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れッッ!!俺はァ!俺はァッッ!」

 

『コイツ!気を付けろ莉紅!立ち上がってくるぞ』

 

『◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️ッ!!《特別意訳:おっ、やんのか?やんのかクソ堕天使?立てよ。今度こそボッコボコにしてやんよ》』

 

「ほら、落ち着きなって!殺しちゃ駄目!駄目だからッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「キィィィィィバァァァァ──

 

 

 

 

 

 

 

「鬱陶しい」──ア」

 

 

 

 

 

それ以上コカビエルの声を聞くことは無かった。

突如、コカビエルが凍り付いた。文字通り、全身が氷像の如く凍結したのだ。

 

それと同時に全員はこの場の空気が冷たくなっている事に気付く。徐々に気温が下がるのでは無く、冷蔵庫内に入ったような。冷たい空気のドーム囲まれているような感覚だ。

 

しかし、そんな事を悠長に考える暇は彼等には無かった。

何故なら、目の前にコカビエルを一瞬で凍結させた存在がいるのだから。

 

 

「な、なんだッ⁉︎何が起きた!?」

 

「アレは……?」

 

 

 それは白銀の世界に存在すると言われた未確認生物である雪男(イエティ)を連想させる姿をした戦士。白と金が美しく、この駒王町には似合わない風貌のソレは不気味とも言える。

 

皆が困惑する中、ソレに見覚えのある東崎は───

 

(……アレは……何だ?)

 

 

……失礼。かつて東崎莉紅はその存在を()()()()()。だが、今となってはもう思い出す事も困難だろう。

 

ギラリと輝く青の瞳と月の光が反射する金の瞳が交差する中、一誠が呟く。

 

 

「キバ……?」

 

「え?……いやいや、似てないでしょアレ」

 

「どうして⁉︎キバが2人⁉︎」

 

「リアス先輩?大丈夫?疲れてない?」

 

 

 コカビエルとの戦いで頭を打ったのだろうか?どう見ても姿が違う筈なのに変なことを言い出す2人に東崎は額を抑える。

 

 

「……いや、キバの言う通り、良く見ると違う」

 

「だよね!似てないよね!」

 

 

木場の言葉に東崎は嬉々として応える。

 

 

「キバは血のような紅をしているが……奴は対照的だ。雪のように冷たい白の姿をしている。それ以外はキバとそのまま同じだ」

 

「……」

 

 

コイツもかよ……と東崎は無言で頭を抱える事となった。

 

 

コイツ(コカビエル)は連れて帰る……ついでに死体とはぐれの神父もだ」

 

「なっ!待ちなs──「リアス先輩!触らぬ神に祟り無し!放っておきましょう!」──むぐっ」

 

 

 このままでは自分の時みたくリアスが喧嘩を売り攻撃を仕掛ける可能性があった為、この場は去って貰うように東崎は彼女の口を塞ぐ。

 

 

「……そうだ」

 

 

と、何か思い出したようにソレはこちらを向き呟く。

 

 

「……レイ。俺の名だ……」

 

 

 直後、激しい吹雪が吹き荒れ、その場の全員は思わず顔を腕で覆う。気がつく頃にはレイと言う存在はコカビエルと共に姿を消していた───。

 

 

「レイ……エヴァ◯ゲリオン?」

 

「男のボイスだったから多分、綾波じゃ無いと思うよ?」

 

「少しは夢を持っても良いだろ!」

 

 

 変身を解き、元の姿へ戻った東崎と一誠がいつものような漫才?を始める。しばらくして、危機が去ったのだと確信したのか、一誠は「ハァ〜」と溜息を吐き東崎のこめかみをグリグリとし始める。

 

 

「お前なぁ!!最後にはコカビエルを倒せたけど!最初から戦えよ!初っ端から逃げてんじゃねぇよ!」

 

「痛だだだだ!?だってあんなクレイジーサイコホモと戦いたくないし!」

 

「でも…僕達を乗せて来てくれたよね?本当は僕達も戦うべきだと思って連れて来てくれたんだろう?」

 

「えっ、」

 

 

木場の発言に思わず声を漏らす東崎。

……実際の話、木場とゼノヴィアを乗せて来たのは本当に偶然だった為である。

本当はキバットに『行け!』と言われた為、渋々了承しただけである。

 

 

「全く貴方は……いえ、ここは素直に礼を言うべきよね」

 

「えっ?」

 

 

「私達の為に戦ってくれてありがとう。悪魔を代表として礼を言います」

 

「───」

 

 

彼女の言動に思わず言葉を失う。

 

 

「───別に、そう言うのじゃ……ないです」

 

 

 彼はただ、ガムシャラに自分の為にやった。最初だって悪魔と堕天使の問題だから無視しようとしていた。

 

 

「なんか……こう、コカビエルの発言にイライラしたと言うか……」

 

 

でも、途中で気がついた。…いや、そもそも最初から見て見ぬ振りをしていたのだろう。

キバの鎧は精神を汚染する力を持つ。

 

……が、それに負けじと1つの信念で彼は戦った。

 

 

「ッ〜〜〜〜!あぁ、もう!イライラするなぁ!僕はファンガイアだけど、人間でもあるんだ!友達とか知り合いが危険な目に遭ってるってのに!放っておける程、外道じゃないんですよ!」

 

「……!」

 

 

 何かに吹っ切れたように叫ぶ東崎を見て、リアスは愚かその場の殆どこ者が面食らったような顔になる。

そして、何かを察したのか次第とニヤニヤとした表情へ変わっていく。

 

 

「部長、コイツはこう言った属性も持ってるんですよ」

 

「成る程ね……、そう言う……」

 

「あらあらウフフ。お可愛い事」

 

「やれやれ東崎君は……」

 

「先輩最高です」

 

 

 皆がそれぞれ呟く中、(約1名可笑しな者も居るが…)東崎はその様子に少しイラッとしながら口を開く。

 

 

「おい、ちょっと。何で皆して僕に対して生温かい目を向けてるのか理由を聞こうじゃないか」

 

「別に?……さて、悠斗。お尻を出しなさい」

 

 

 すると、リアスは手に魔力を込め始める。どうやら彼にもお仕置きと言う名の地獄が決定されたようだ。

 

 

「えっ、部長!?」

 

「さぁ観念して尻叩きを味わいやがれ!」

 

 

 先程までピリピリした空気が一変、元の日常に戻った事を感じさせる彼等の光景に東崎とキバットは安堵する。

 

 

「これで一件落着って事だな。あー、疲れた疲れた。お前が力抑えろって言うもんだから」

 

「仕方ないでしょ、死なせでもして戦争起きたらシャレにならないんだから「………なぁ、キバ。教えてくれて」…ん?」

 

 

そんな彼等の元にゼノヴィアが語り掛ける。

 

 

「君は……この世界をどう思う?」

 

「……何が?」

 

「何がとは……、勿論!神が居ない世界だ!神が居ないんだぞ⁉︎お前はそれでもどうでも良いって言うのか!答えろ!」

 

 

恐らく限界だったのだろう。アーシアのように失神はせずとも、神の不在によるショックは凄まじいものだった。

 

 

「今まで信じて来たモノは紛いものだった!いつか救われると…!祈り続けて来たのに……!私や、イリナ……そして、アーシアもッ!!裏切られたんだッ!」

 

 

 だからこそなのだろう。敵である筈のファンガイアである彼に彼女は縋りつこうとしている。

東崎は考える素振りを見せた後、彼女に疑問を投げかける。

 

 

「……今まで祈り続けて来たの?」

 

「……そうだ」

 

「じゃあさ……、後は頑張れば良いんじゃない?」

 

「……は?」

 

「うん、例えばイッセー君。モテたいから神様にお願いするだけじゃなくて、頭悪いのに勉強を頑張ってわざわざ駒王学園に入学したからね?」

 

 

ワイワイと笑顔で仲間達に囲まれる彼を指指しながら東崎は言う。

 

 

「うん……まぁ……敵対してる僕の言葉なんか簡単に信じる事は出来ないと思うけど……とにかく!今まで祈りをし続けたなら、今度は思い切って行動してみれば良いと思う。ゼノヴィアさんは良い人だ。馬鹿正直で頭は固いけどそれだけは分かるよ」

 

「………」

 

 

 彼の言葉を聞いた直後、この国に訪れる直前の出来事が脳裏に浮かんだ。

 

 

 

『なぁ、イリナ。その"りっくん"?とやらはお前にとってどんな人なんだ?』

 

『え?そりゃあ、勿論……私のー、幼馴染でー?カッコよくて?紳士でー……って、もう!何言わせるのゼノヴィア〜♪』

 

『あー、うん。やっぱり何でも無い。忘れてくれ……』

 

『うーん、でもそうね……会えばきっと、気に入ると思うわ。だって……リッ君だもの!』

 

 

 

「……あぁ、そうか。コイツがそうなんだな……」

 

 

 イリナの言う"りっくん"とは人間もファンガイアも関係無い、目の前にいる存在の事だ。

最初は色々と文句をつけて不満ばかり漏らす嫌な奴だったが、気に入ると言う彼女の言葉がやっと納得できた気がする。

 

ゼノヴィアは笑みを浮かべると、

 

 

「イリナの仇を討ってくれて感謝するぞ"リク"」

 

「は?何言ってんの」

 

「む?」

 

 

 

「終盤、そのつもりでコカビエルを倒したんだから当たり前でしょ」

 

「………ブッ」

 

「さっきのどこに笑うポイントがあったのか教えてもらえませんかね、ゼノヴィアさん?」

 

 

その問いに答えず、彼女はエクスカリバーの破片を手に彼に背を向ける。

 

 

「……イリナに伝言はあるか?」

 

「うん、今度来たらモケポンの対戦をしようって伝えておいて」

 

「あぁ、そうだな。伝えておこう」

 

 

教会の戦士は1人、悪魔達の前から姿を消す。

 

 

「フフ、イリナ。お前の言う通り私は彼を気に入ったよ」

 

 

願わくば、もう少し悪魔達の事を知りたいと名残惜しい気持ちを胸に秘めたまま駒王町の夜から姿を消したのだった───

 

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 

 駒王学園にて。いつも通りの日常か戻ってきたのも束の間。僕達のクラスに転校生が来るらしい。

つい前にはアーシアさんが来たのにまた新しい転校生ですか……。

 

 

「お前ら、お待ちかねの転校生だぞ?……全く、何でこうも転校してくる奴らばかりなのか……」

 

「転校生のゼノヴィアだ。よろしく頼むぞ」

 

 

どう見ても見覚えのある女子生徒です。ありがとうございま……?

あるぇー?マジで見覚えのあるどころじゃ無いんだけど。

 

 

 男子生徒達が騒ぎ出す中、僕は一緒に騒いでいるイッセー君に目配せをする。

 

 

(*´∀`)<ヤター

 

( ・ω・)…

 

( ´・_・`)?

 

( ・Д・)<あれ?

 

( ゚д゚)

 

( ゚д゚ )彡

 

 

 

こっちみんな。

て言うか、今気が付いたのか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、言うわけで3行で説明をお願いします」

 

 

「悪魔になりたいと言われた

ナイトの駒を渡した

眷属GETした。ハイ以上」

 

 

ホントに3行で説明しちゃったよ……。

 

 

「て言うか、いいのソレで!?」

 

「何を言う。思い切って行動してみたら良いと言ったのはリクだろう」

 

「思い切りすぎィ!」

 

 

 するとお前の所為かよ……と言う視線がグサグサと突き刺さるのを感じる。いや、だってこうなるとは予想もつかないでしょフツー。

 

 

「しかし、私もついに悪魔か……フフ、教会の戦士でイクサ装着者候補と言われた私も地に堕ちたものだ……(白目」

 

 

 あぁ、ムシャクシャしてやった後悔はしているですね。分かります。

……ん?イクサ?

なんか、聞き覚えのある単語が出たような……。

 

 

「ま、まぁともかく。私は君達に失礼なことを言った。幾ら謝罪してもしきれないと思う。望むなら私を殴っても構わない」

 

「そ、そんな事言わないでください。確かに教会に異端認定され、追放された時は悲しかったです。でも今は教会にいた頃は見ることも聞くこともなかった大変をできますし、大切な人達と出会えました。お陰で今は毎日が幸せです。ですから…ゼノヴィアさんも気にしないで下さい」

 

「ありがとう。そう言ってもらえると助かる」

 

 

どうやら、アーシアさんとゼノヴィアさんは仲直りできたようだ。

 

 

「さて、リク。君にも酷い事をした。君が望むなら殴っても構わない」

 

 

………よし、それじゃあ助走を付けて……。

そう思いながら彼女から距離を取ろうとすると周りの皆が急に僕の体を押さえつけ始めたのだ!?

 

 

「なっ、何をするだぁーーっ!」

 

「それはこっちの台詞だ!空気を読め空気を!」

 

「そう言うとこだぞリク!」

 

「キバットまで!」

 

 

くそっ!流行らせコラ!

 

 

「3人に敵うわけ無いだろ!」

 

「馬鹿野郎お前!勝つぞ僕は!……って、そう言えばイリちゃんは?」

 

「……彼女は私のエクスカリバーも含めた全てを持って帰っていったよ。彼女は運が良かった。真実を知っていたら宗教心が強いからね。心を崩したかもしれない」

 

「……そっか」

 

 

そうか、……もう少し日本に滞在していれば良かったのに…。

そう思っているとゼノヴィアさんが何か思い出したように口を開く。

 

 

「それとだ。『勝負には負けちゃったけど、モケポン通信対戦は負けないんだから!』……だ、そうだ」

 

 

……そうか、……そうか……!

 

 

「よーし!帰ったら急いで新作の進めて殿堂入りしないと!僕のトライゴンが火を噴く事になるなぁ!」

 

「レート1500以下が何言ってんだよ」

 

「絶許」

 

 

こうして、新しい仲間を加え日常は過ぎて行く……。

だが、僕達は知らなかった。

 

まさか、あんな事が起こるだなんて……!

 

 

 

「おい、地の文で何言ってんだお前」

 

 

 

……映画化しそうな雰囲気を醸し出せたらいいなぁ。とキバットを無視して1人、こっそりと呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

 

「成る程な、"仮面ライダー"じゃないのか。それに似たナニカって所か……。この世界は他と比べてワケが違うみたいだな」

 

 

 彼はレンズ越しに彼等を覗く。その場を後にしようと足を運ぶと、彼の前に見慣れない男性が立ち塞がる。

 

 

「よぉ、初めましてだな。世界の破壊者さん」

 

「……誰だお前」

 

「俺か?俺は堕天使の総督。アザゼルって言うもんだ」

 

「……成る程、大体分かった」

 

 

 

幾多もの世界を回り、その瞳は何を見る───

 

 




用語説明〜〜


【キバの鎧】

 ハイスクールd×dの世界における仮面ライダーキバのポジションを獲得した鎧。あくまで仮面ライダーキバに似た何かでありイメージ的にはアナザーライダーもどきのサムシング。
カメラを持った男には全く別の存在に見えるらしい。


必殺技の威力を調節可能としており、扇風機の強、中、弱とイメージしてくれれば良いかなと思います。

理由としてはガルルフォームの必殺技の設定にてフルパワーでやると丸々一個の山を斬る事が可能と知り

「被害が尋常じゃねぇ!」

と面白そうだったので月の満ち欠けで必殺技の調節可能と言う設定を付け加えました。
キバ本編の方ではフォーム毎に三日月、満月など決まっていましたがこの小説では月の形はバラバラになっているのでご了承ください。




【マシンキバー】

生前の名前がラムレイと言っていましたが、東崎君はそんな事知りません。だってバイクが喋れるわけ無いし。

マシンキバーの内部には馬のモンスターの脳が埋め込まれている設定から龍騎に登場するミラーモンスターのドラグランザー、ダークレイダーみたく変形させる案は前々から考えてありました。


『裏設定のラムレイ(マシンキバー)』

ドゥン・スタリオンと並ぶアーサー王を乗せていた名馬。
ゾンビのようなモンスターとして蘇ったが、ヤンチャ(厨二病を発症)してた頃のアザゼルが捕獲し、工芸の匠であるモトバットⅩⅥ世と共にファンガイアに対抗し改造を施した。

彼等が言うには

「「あんな心躍る物見せられて燃えないワケ無い。ちなみに後悔はしていない」」

との事らしい。
これについてラムレイさん感想をどうぞ。


ラムレイ「(#^ω^)堕天使ぜってぇ許さねぇ!」


との事らしい。
これについてアーサー王代表のセイバーさん感想をどうぞ。

セイバー「かまわん」

えっ

セイバー「正直言って馬は時代遅れだ」

あっ、え?でも…貴女の馬ですよね?

セイバー「いや…既にキュライッシェで事足りてる。時代はマシンだ!勝手に改造したのは許されんが、多目に見てやる。……そんな事よりバーガーを所望する!それも一つや二つでは無い。全てだ!」


よく見たらコイツ青いのじゃなくて黒い方だったわ!




【レイ】

綾波じゃない方。
アギトとアナザーアギトの関係みたく皆の目にはキバとレイがそっくりに見えるそうです。

元々レイはキバを模したらしいので、それっぽく出来ればなと思いグレモリー眷属達にはそんな反応をさせてもらいました。

彼等の目が節穴と言うワケではありません。そう言う仕様なのです



【白龍皇】

綾波じゃない方に出番を奪われた人。

遅れた理由:ラーメン食ってた。













転生とは全く別の存在へ生まれ変わる事。
ならばそれは身体だけでなく、記憶も例外ではない。
彼は徐々に東崎莉紅と言う存在に変わりつつある。前世と言う存在は薄れ、元々無かった事となる。

だが、それは良い事なのかもしれない。
前世と言う足枷に縛られる事なく、元の家族への愛情も気にしなくても良い。

新しい存在に生まれ変わるよ。
やったね東崎君。


……転生が完全に仕上がる日はそう遠くない。









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