弱小国家は栄光を夢見る (チンチン電車)
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ヌルゲーは二度目からが本番

初投稿なので頑張りたいですが不定期更新です。


この世界は一騎当千の忍びが闊歩するNARUTOな世界である。

その中の一つの国の大名の子ども。

それが俺である。

 

特に特典とかは無いものの、転生者としてNARUTOの内容も覚えてるし、はっきり言ってヌルゲーだと思っていた。

 

そう思っていたのは1歳までだった。

俺は親父に売られてしまったのだ。

 

話はこの国の位置、そこに問題があった。

北に雷の国、西には草や雨に土、そして南には火の国果ては東には水の国と五大国の内四つに囲まれているという詰まれている位置にある。

 

それでもこれまでやってこれたのは緩衝材となる隣国という名の生贄がいたからだ。

この度似た立地に有った隣国が滅ぼされました。

 

今は世に言う大戦の真っ最中。

緩衝材の無くなったこの国が次に狙われるのは必然だった。

 

とりあえず強そうだし水の国と同盟(親父はそう思っているが力関係はジャイアンとのびたである…)しとこうやと言うことで、大名の一人息子である俺に白羽の矢が立ったのだ。

 

それからの生活は正に筵の上に寝るようであった。

元々陽気で後先考えない性格の多い国柄だからか、良く約束に遅れたり破ったりする。

そうすると俺の首がマッハでピンチになるのだ。

 

その時はそれがしも首になりますぞ!

自称国一番の知恵袋である爺はそう言っていた。

うちの人間は確かに気概と度胸はあるんだけど。

死んだら基も子も無いと思うぞ?

 

さて、そんな俺の今の家を紹介しようと思う。

なんと十LDKの屋敷にボディーガード付きの安全物件だ。

そして注目してほしいのは俺の部屋。

なんと回転式で中から血走った忍びが出てくるという素敵使用。

思わずハローと言って閉めたのは仕方が無い。

しかし素晴らしい特典もあるぞ! なんと時々あの桃地再不斬さんが夜中庭先に現われるのだ。

トイレに行った時は丁度包丁の手入れをしていたのでびびった。

あれか? 山を斬れる人を知ってる的な事を言ったのがいけなかったのかもしれない。

でも君もあの剣士も似たようなもんだろ? 多分できると思うんだけど。

そんな目で見たらぷんすか怒り出して帰っていった。

それからだ。俺の安眠を妨害しに夜な夜なやってくるのだ。

晩酌ならするから俺で切れ味を確かめるのはやめてほしい。

え?酒だけ置いていけ? …なんだろうね、この猫に餌を与えるようなこの感覚は。

 

 

…真面目な話をしよう。

とりあえず馬鹿な振りをしながら油断をさせつつ、今は時が来るのを待っている感じだろうか。

今逃げ出しても連れ戻されるので何か大義名分が必要だし、戻ったところであの国が弱小のままでは結局強国に靡くしかない。

今は雌伏の時なのだろう。

出来れば忍者の技の一つでも手に入れたいものだが、生憎俺に許されている運動は軽いジョギングぐらいだ。

仕方が無いので本を読みこの世界の知識を付けるしかあるまい。

 

例えば最近いちゃいちゃパラダイスに嵌っている。

いや、知的好奇心としてだけど! この本について語れる同好の士が欲しいものだ。

爺はこういうものはアカーン!とかいうタイプなのでダメなのだ。

年を取って頭が固くなっているから信念です!とかいって折れないし。

特にする事の無い日は俳句でも作ってます。

 

ふるけやー あー ふるいけやー ……ふるいけやー

 

 

 



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汚い子供を見つけたので確保した

良い話を書こうとすると落とそうとしたがる私がいる。


「いつか見つければいい」

「その時まで俺がお前の生きる目標になってやる」

その言葉はバラバラに崩れ落ちた僕の心に染み込んでいくようで

あの時僕はもう一度生まれたんだと

あの方と出会ったことは

運命なんだと

そう思いました。

 

ーーーー

 

「爺、今日は晴れた気持ちの良い日だなあ」

 

「そうですなァ」

 

この国は大抵雨が降るのでこんな晴れ空が覗くのは稀だった。

通りは賑わいを見せている。

果物を売っているおばさんに一つリンゴを貰う。良い香りがして寄って行くと店主が串焼きを三本くれた。ありがとうと言うと頭を撫でられたので威嚇すると髪をくしゃくしゃとされる。露天で片目が潰れている商人に民芸品だろう木彫りの人形を押し付けられた。

普段監視付きの座敷牢で暮らしているので、楽しみと言えば爺が持って来てくれる本ぐらいだから週に一度の外出は何よりも楽しいものだった。

やはり市場は活気があっていいなあと思いながらうろついていると市場の端に行き着いた。

 

日が出るところに陰が出来る様に市場を少し過ぎると陰鬱とした雰囲気の漂う貧困街が広がる。

この国は弱肉強食を是とする所がある。

富裕層にのみ職と金が回る国政の影響か此処を通る富裕層の者は道端にゴミを捨て人に唾を飛ばす。

それが当たり前と言うのか貧困層の者はゴミを漁り日々の糧を得ていた。

そこには異様な活気があるのも確かだった。今日はどういう訳か、その貧困街へ足を踏み入れた。

後ろで爺が心配をしているものの、俺は心配をしていなかった。

なぜならこうした一時の外出でさえ俺は監視されているのだから。忍びだろう。

なんでお前は分かるんだと言われると困るが、生まれつき何となく人の存在を察知できるんだとしか言いようがない。

まあそういうわけで人がいるのに分かってしまうのだ。

俺に危害が加えられる可能性は低いのだ。颯爽と貧困街に歩を進めると爺は感心したように流石!流石!とさすさす言い始めた。こうなるとよいしょが長くなるので放って置く。

 

進むほどに細くなる道は貧困街の特色だろう。

進んでいると前方で甲高い声が聞こえてきた。物がぶつかる音と罵声だった。

 

少しするとその正体が分かった。

ぼろきれを纏った俺と同じくらいの背丈の子どもがお椀を持って歩いてくるのだ。

子どもの頭上からは住人が窓を開けて汚物と罵声を浴びせ掛ける。

死ね!碌でない!、鬼の子! 等と言いたい放題だった。

 

その子の顔が見える距離に近づいた時俺はハッとさせられた。

その顔はどことなく俺に似ていたのだ。

爺も驚いて目を大きく見開いていた。

ドッペルゲンガーというやつだろうか、それとも年が近いからか。

 

その子が傍を通り過ぎようとした時、俺は立ち止まりその子の腕を掴んだ。

その子は驚きはしたものの掴んだ腕をジッ見ていた。

 

一時止んだ罵声が再開する。

なにしてる!そいつは戦争で大勢殺したあの血継限界の者なんだよ!殺せ!殺せ!

 

聞こえてくる単語からすると、この子は血継限界を持っているのだろう。

 

血継限界、前世で読んだ知識だと忍者の中でも特異な力を持つ一族を指す言葉だ。

しかしそれ以上に彼らは悪意の捌け口としての役割が擦り付けられている。

そこには拒絶できないからと言ってそれを必要悪と黙認する社会があった。

これはこの世界に転生してから得た知識だった。

本来彼ら血継限界を持つ者は保護という名の管理下に置かれるのだろう。

しかし貧民街を摺り歩いている所を見るとこの子は先祖返りか隠していたのがばれたのか、そこだろう。

 

動きを止めた俺が自分達が望んだ行為をすると思ったのだろう。

罵声は俺に同意を求めるように大きくなる。

 

俺は改めてその子を見た。

髪が閉じた傘のように伸びており目元の髪は何か刃物で切ったのだろう。

ギザギザの切り口だった。

その顔に張り付いた笑顔はある種この子の生き様を表しているかのようで

汚れて煤黒い顔はやはり、よく知った顔だった。

というか俺だった。

 

俺が何もせずただ顔を見ているだけだったのに制裁を加えるつもりか。

罵声が再び始まり今度は俺も標的とされていた。

服と顔を隠しているのでバレてはいないだろうが、良い所の坊ちゃんと思われているのかもしれない。

特に隠すつもりもないのか、罵声と共に汚物を降りかけようとしてくる。

爺が降ってくる物や汚物から俺を守ろうと前に立っていた。

それでも罵声と物のぶつかる甲高い音が響き辺りは一気に騒々しくなっていく。

 

ふと腕が震えていたので何だろうと見ると、あの子が体を震わしていた。

顔は笑っている。

だが俺にはそれが泣いているようにしか見えなかった。

まるでこの場の嬌声がこの子の鳴き声であるかのように思えた。

 

-ああ、煩い…人を否定することでしか己を見いだせず、社会的に弱いからと、人と違うからと、お門違いの八つ当たりはうんざりだ。綺麗事を言うつもりは無い。時には汚い事だって認めよう。しかし人の持つべき尊厳を汚し、生きることを否定されるのは許せなかった。そしてそれ以上に

 

 

ガラスの破片が落ちていたのでそれを拾い左手を刺す。

 

 

「見ろ! 俺の血は何色だ!?赤いだろう! お前等の血は何色だ! 何故血は赤い!? 何故この子にも俺と同じ赤い血が流れている!?俺達が生きているからだ!生きたいと思うからだ! それを否定することを俺は否定する! どんな生も受け入れよう! 生きる意味が欲しければ俺がそれになってやろう! 」

 

「お前は生きたいのか」

 

言い聞かせるようにまた言う。

 

まるで夢のようだった。

初めこの世界に生まれた事が、俺には現実とは思えず俺はこの世界にいてはいけないと感じていた。

だが俺が前世の記憶を持っていることを伝えてもなんだそんな事と笑って吹き飛ばされた。

親父は俺の前世よりも妹に好かれる方法を知りたいらしい。

国が侵略された時、親父は糞にまみれた。爺は髪を無くした。

そうしてまで自分の国と家族を守ろうとした。

そんな奴らが、無性に好きになった。馬鹿だが。

だからこそ俺は俺に出来る事として人質となった。

俺はそれを決めた時に初めて生きたいと思った。

誰かを助けるなんて凡人である俺には不可能だが

それでも俺が生きる事が誰かを生かすのなら

俺は生きたい。

 

 

「いきたい」

 

途切れ途切れに、それでも言った。

 

「でも…ぼくにはいきるいみがない、です

 

そう呟きながら言った。

 

「俺と来い」

 

「え?」

 

「生きる意味はいつか見つければいい」

 

「見つかるまで俺がお前の生きる意味になろう」

 

自分が生きる事で生きる力となるのなら…

 

「言っておくが俺はしぶといぞ?」

この時ばかりは言葉を失い、顔に張り付いた笑顔が崩れていた。

そこには間の抜けた自然な顔があった。

 

「クク・・・クァーハッハッハ!!」

 

気付いたらそこでは俺の笑い声と、俺につられて笑った爺とその子の声だけが響いていた。

 

――――

 

行きは爺と二人だったが帰りは同行者が一人増えた。

ちなみに同行者は俺に負ぶられている。

歩く速度が遅いので仕方が無かった。

わしがわしが!と爺が背負おうとしたが、遠慮させた。

さっき花瓶をぶち当てられていただろう。ばれてないと思ったのか?

 

 

「あ…ゆき」

 

貧困街を抜けると空が見えた。

貧困街の通路は空を仰げない。

背中から聞こえた声は感慨深げだった。

雪の名前を呼んだのだっていつ振りなんだろうか? 

名前で思い出したが、まだこの子の名前を聞いていなかった。

本当に今更だった。

 

「なまえ…なまえ…」

 

忘れているのか、忘れようとしているのか。答えは返ってこない。

いつか名前を思い出すと良い。そんなことを思いながら言う。

 

「白、お前は白だ」

 

安直だが良い名前だろう。覚えやすいし。

俺の幼名も親父が便秘の時に考えた名前らしいし。

俺の名前は政だし。そんなものだ。

 

 

…はく…はく…ぼくは…はく

そんな風につぶやく声が後ろから聞こえる。

もしかしかして不味っただろうか。と思っているとポツポツと水滴が落ちてきた。

雨か…?と思い顔を上げる。

しかしどこまでも空は青く、その中を雪が花びらの様に舞っているばかりだった。

 

……

 

おいしょ、とおぶり直す。

なんだか今の表情を見られるのはこそばゆく感じた。

 

 

 

あれ? 白ってあの再不斬とペアの白じゃあないよね? まさか。出会い方とか憶えてないけど多分違うよな? まああれだ、名前が被ったら白団子とか後になんか付ければ大丈夫。きっと。

主人公は一応転生者である。

 



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