Re:絶望の戦士から始める異世界生活 (スーパーサイヤ人)
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プロローグ
というわけでプロローグです。
その日は突然訪れた、何の前触れもなく姿を現した二体の人造人間のよって世界は瞬く間もなく恐怖に支配された。
人造人間にZ戦士は勇敢に挑んだ。しかし、人知を超えた修行により、かの宇宙の帝王フリーザを打ち破ったスーパーサイヤ人へと化したベジータでさえも、あまりの実力差になすすべもなく殺された。その時唯一生き残ったのはまだ十歳も満たない、ウィルス性の心臓病により亡くなった孫悟空の息子、孫悟飯ただ一人であった。
晴天の下に、数えきれない戦闘により強化された聴覚は騒音を捉える。それは、現代社会の高性能の機械のよるものではなく、あの怪物たちの破壊活動によって生じたものに違いない。
「くっ! 人造人間め!!」
怒声を轟かせたのは今年で二十四歳となる孫悟飯だった。十数年の修行と人造人間の死闘により、フリーザを倒した父と肩を並べることができるほどに成長した彼が視線を飛ばした先には、廃墟に化そうとしている巨大な都市があった。
「悟飯さん行きましょ! このままじゃあそこの人達は!!」
その悟飯に向け、焦燥と怒りが混じる意見を放つのはまだ少年期を抜け出せないトランクスだ。ベジータが殺される前に、ブルマとの間にできた息子であり、サイヤ人の血を引くからにはいずれはれっきとした戦士に育つだろう。人造人間を打ち破るほど。
しかし、まだ時は早い……
「ダメだ、まだお前には早い!」
「僕だってサイヤ人だ、戦うんだ!」
少年の抗議に悟飯当惑の眉をひそめると、こうなったら言うことを聞かない、こうしている間にも人造人間たちは人々の命を蹂躙している、ここまで思考を巡らせた彼はある決断をした。
「……わかった、いこう」
「! はい!」
若い師匠の意外にあっさりとしてくれた許可に、トランクスは僅かに驚きながら笑顔で勢いよく返事すると、出撃すると言わんばかりに両腕を沈ませた腰に添え、戦場に視線飛ばし凝視する。
しかし、これが孫悟飯の狙いであった。
「っぐ! 悟飯……さ」
首筋に走る衝撃、濁る言葉と共にトランクスは倒れた。
「トランクス……すまない」
穏やかな表情でそう呟きを落とすと、舞空術で飛び上がり音速を優に超える速度で、悟飯は人造人間のもとに向かった。
「キャァァァァァーーーー!!」
「アハハハ! ほらほら。逃げないと死んじゃうよ!?」
「ハハハ! もっとだ! もっと喚け!!」
響き渡る途絶える予兆が無い断末魔。それを享受するように破壊の嵐を振りかざす二つの人影。
中の一つの光の玉が一人の少女に向かう時、一寸の光現る。
「はっ!!」
短い気合いと共に、光は片腕でエネルギー弾を彼方へ弾き飛ばす。
「来たか……孫悟飯」
あらかじめ知っていたように黒い長髪の青年、17号はそう呟くと、それに反応し金髪の少女、18号は作業をやめこちらを見定める。
「へぇー、あんたまだ来たんだ。懲りないねぇー」
侮る18号のセリフに、悟飯は「くっ」と歯を食いしばり、叫ぶ。
「今日こそ貴様らを倒してやる!! 人造人間共目ぇぇぇ!!!」
黄金の気を爆散させ、スーパーサイヤ人と化した孫悟飯は勇敢に怪物たちに挑んだ。
「……」
行きわたる異様な人々と、竜に似た生物引っ張られ横断する馬車を呆然と眺める悟飯はそこにいた。
未来悟飯のしゃべり方がよくわかんない。
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王都での一日
第一話 見知らる場所
ここからが本編になります。
中世風の景色が広がる中、悟飯は呆然と立ち尽くしていた。
久に聞く人の足音や車の騒音が奏でる「生活」の騒音。まだ暑いに届かない心地良い久を浴びながら、悟飯はただ目の前を横断する人々を呆然と眺め続ける。
唐突過ぎて事情が飲み込めない一方、颯爽と自分の脳内にある疑問が横切った。
――ここは、なぜ無事なんだ!?
一瞥すれば、西の都にも匹敵するだろうの面積をもつこの都市?は、人造人間に襲われてない。この事実は収拾の見込みのない更なる混乱を招くになる。人造人間によって世界人口は凡そ数百万人までに減らせられた中、その数にも相当する人口が住むここが無事でいられていることはとてもじゃないが、信じられない話だ。
それだけじゃない、ここの住民は臆している様子が全くない、警戒心が皆無だ。あの二人組が今も尚殺戮を繰り返しているというのにどうしてこうも平気でいられるんだ!?
そうやって自己整理を必死に繰りかえしているなか、作業を中断させたのは、何者かによる声だった。
「兄ちゃん、どうしたよ――呆けた面して。リンガいるか?」
音源をもとに振り返ると、果物屋と言わんばかりに果実をずらりと並べ、行きわたる人々に身を晒すそれらの隣に、店長らしき厳つい顔立ちの中年が腰を下ろして此方に視線を向けていた。その手には、リンゴに酷似した赤く小さな可愛らしい果実が乗せられていた。
「はい?」
いまだ混乱から完全に抜け出してない所為か、悟飯は人の親切を間抜けた声で返してしまう。
「おい――何かあったのか? 視線が定まってないぞ」
こちらの異変を察したのか、店長は顔に汗を張り付けさらに気をかけた言葉を口にする。
彼の人間性ある言動のおかけか、穴を見つけたモグラのように俺は徐々に落ち着きを取り戻す。動揺が完全に収まった頃、自分は改まって彼の質問に答えた。
「いえ、大したことは――すみません迷惑をかけさせてしまって」
「なあーに、謝ることはねぇよ。ほれ!」
大したことじゃないっと会話は終わりを迎えると、店長が何かを乱暴に抛ってきた。
「うおっとっと!」
誤って握りつぶさないようそれを掴み取らずに手のひらに乗せようとすると、何度も跳ね上がる果実に自分もそれに合わせて大袈裟に動作をとっていしまい、店長に苦笑いを作らせることになる。そんな情けない自分を恥じながら、手に乗せられているものに目を通すと、
――これは
目に映ったのは先ほど店長が商品をしてあずかっていた「リンガ」と呼ばれる果物だった。あの動作と言葉からその意思は容易に読み取れるが、売り物をタダでもらうなんてことを、良心が簡単に許してくれなかった。初対面の人にこれはいけない、とは言えはっきりと断るわけにもいかない。
「え、これ、もらっていいんですか?」
とりあえず一度本人の意思を確認する。万が一に備えて。
「ああ、もらっていけ! その代わり、次は今回あげたやつの倍買ってもらうからな!」
予想を裏切らない返事のほかに、まさかの販売宣言に悟飯は若干笑みを引きずりながら。果実をもらうことにした。
――そういえば……
「あの、少し時間を頂けませんか?」
「ん? なんだ?」
ついさっきまで自分が抱いた疑問を思い出し、それをこの人に問おうとすると。
口を開き声帯を振動させようをした刹那ーー
「っ」
――風が揺れた
何によってそれが起こったのは定かではない、が、長年の戦闘経験により磨かれた鋭い五感が確実にそれを捉えた。行きわたる人々から生じる布同士の微かな摩擦音。それらをかき消すように風を駆け抜ける何かが確かにいた。
気を感じない敵との戦闘によりそうなってしまったのか、必要以上神経質にその正体を探る。しかし、自ら答えを導き出そうとする前に響く鈴のような声がそれを阻止する。
「っ! 待ちなさい!」
その声をもとに、俺は視線を向けると、
白いロープを羽織り、何かを追うように銀髪を揺らし駆け出す少女がそこにいた。
奇妙な焦燥に駆り立てられるその顔には、何故か必死さも現れていた。
瞬く間も無く、彼女は人ごみにかき消されそのまま姿を消した。
「今のは……」
急な出来事に、口から零れ落ちた独り言を店主は拾う。
「さー、盗みじゃねぇーか? あれ」
久し振りぶりに耳にしたからか、その言葉の意味の理解には数瞬の時が要用された。
人造人間の出現のより、時間があれば全て修行に打ち込んでいたから、日常の犯罪の感覚が鈍くなってしまうのも仕方がないかもしれない。
「盗み……か」
銀髪の少女の横顔が過る。
余程大事なものが盗まれたのだろう。
彼女の『気』は、乱れていた……
どの生物にも、必ず『気』という潜在的エネルギーが身に潜んでいる。
それは、個体の強さによって大きさが変化するなど、感情の動揺などによって乱れが起きる。
そのコントロールを極めつければ、他人の気を探知することもできる。
悟飯は、気で彼女の感情を読み取ったのだ。
その結果が上の通り、盗まれたものは財布なんかよりもよっぽと大事な何かだ。そして、それの持ち主はそれを探している。
ここまで分かれば、次のとるべき行動は何?
そんなの決まっている。
「すみません、用件を思い出しました。 リンガ、ありがとうございます!」
「ん? おう、次はなんか買って行けよ!」
「はい! ありがとうございました!」
もらったリンガを掴んだまま腕を振り、未だに乱れる大きな気を目標に俺は駆け出した。
悟飯の姿が見えなくなった後、八百屋の店主は憐れみが伴った目で彼が向かった先を凝視していた。
しばらく経つと、彼はつぶやいた、
「皮肉だな――若いのに……隻腕だなんて……」
次からは、悟飯の一人称視点で書いていきたいと思います。
改善点などがあれば、質の向上につながりますのでできれば直ぐに知らせてください。
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第二話 『剣聖』との遭遇
これから受験のため忙しくなるから、投稿のペースは落ちます。
俺は人気がない路地裏で狼狽えていた。
――うんーどうしょう……
あれから、既にかなりの時間が経っていた。
予定では既にあの女の子を見つけ出しているはずだが……
「まさか迷子になるなんてなー」
気は感じとれるから、彼女の居場所はしっかりと把握している。ので、このひとごみのからでも彼女を探し当てることに時間をかけるつもりはなかったが。
「俺としたことが、まさか道に迷うことになってしまうだなんて……」
いつもなら、こういう人探しの類は空を飛んで行うものだが。今回は異郷の地というのもあり、騒ぎを起こしたくなかったので歩行で足跡を追うことにした。その結果がご覧の通り、土地勘皆無が原因で目的地がわかっても、そこにたどり着くための道がわからず、と言った状況に陥ってる。
「このままじゃーまずそうだね」
それらに加え、目的の人物の気が段々と落ち着いてきていることが、何よりも自分を急かしていた。先程までは動揺で乱れていたものの、時間経過によって彼女の気は段々と落ち着きを取り戻している。もしそれが盗品を取り戻したのであればよいのだが、あの時の風を起こしたものが犯人だと仮定すれば相当の手慣れだ、この短時間で捕まえるのは無理があるだろう。
「いっそのこと飛んでしまおうかな、人目を避けて行けば騒ぎを立てることもないだろうし……いや、屋根の上を進めば」
この手で行くかっと膝を折り、俺は飛び上がろうとする。しかし、行動に移す前にとらえた三つの気によってやむを得ず中断した。人目を避けるための行動を見られては意味がない、ここは通り過ぎるまで一旦待つとしよう。
「ん?」
気が十数メートル先まで迫った所で、俺は異変に気付く。
三つの『気』には、邪念があった。
「おい! なにぼさっと突っ立ってんだよああん!?」
「命ほしけりゃ持ってるもん全部出せ!」
出会い頭に暴言を放ったのは、道をふさがるように立っている男三人組だ。
面だけで判断できるほど、悪人の雰囲気を漂わしている。
これはまためんどくさいことなった、と俺はため息を漏らす。
「見てる通り何も持ってはいませんよ」
見せつけるように、俺は胴を開く。何も持っていないのは本当だが、それがわかった所で大人しく下がってくれるわけがない。
「ああん! どうせ服のどっかに隠してんだろ! 隠しても無駄だ!」
「隻腕の癖に調子こぎやがって! やっちまえ!」
そう言って、俺に向かって男二人が飛び掛かる。一般人には手を出すわけには行けないが、こういう連中なら少し乱暴に扱っても問題ない。
止まっているようにしか見えない二人の攻撃を、俺は難なく躱し、手加減に手加減を重ねた拳をお見舞いする。
「かはっ! て、てめぇ!」
「うぐっ! こ、こいつ!」
殺さないように威力を殺しすぎた所為か、二人とも倒れなかった。若干身を引きずりながらも、懲りずに再び襲い掛かる。
――パターンは変わってない。
同一の攻撃対しこっちは手刃を作り、二人の気絶を図る。
「そこまでだ」
躊躇の欠片もない声が静かに響く。凛とした声色にもかかわらず、その存在感は凄まじく、同時に強者である代弁ともなるほどだ。
視線と声の元に移すと、騎士剣を下げている青年がいた。異常なまでに整った顔たちに勇猛以外の譬えようがないほどに輝く青い双眸、何よりも目を惹くのは、燃え上がる炎のように赤い頭髪だ。
「たとえどんな事情があろうと、それ以上、彼への狼藉は認めない。そこまでだ」
尋常でない威圧感を放つ騎士剣に手を掛け、青年はこっちに歩み寄る。
その際俺が感じ取ったものは、地球人のものとは思えないほどの大きな気だった。通常状態の自分にも後れを取らないほどの。
「ま、まさか……」
何故か顔から血の気が失い始める連中の一人が声を上げる。
どうやら、このチンピラたちは目の前の青年について何かを知っているみたいだ。未だに震える紫色になりつつ唇に構わず、声を上げたチンピラは青年を指差した。
「燃える赤髪に空色の瞳……それと、鞘に竜爪の刻まれた騎士剣」
確認するように各所を指差し、最後に息を呑んで、
「ラインハルト……『剣聖』ラインハルトか!?」
――『剣聖』
「自己紹介の必要はなさそうだ。……もっとも、その二つ名は僕にはまだ重すぎる」
ラインハルトを呼ばれた青年は自嘲げに呟くと、チンピラたちを一気に震えだし、それぞれの顔を見合わせ始める。逃走のタイミングでも探っているのか、しかし、この人を相手にすれば考えるだけ無駄だろう、レベルの差はあまりにも違いすぎる。その気であればきっと体が動いた瞬間にとらわれるに違いない。
仕立てがいいかっこから衛兵だと思われる彼は、このまま目の前の三人を捕まえると思いきや、発されたのは意外な言葉だった。
「逃げるのならこの場は見逃す。そのまま通りへ向かうといい。もしも強硬手段に出るというのなら、相手になる」
『剣聖』という聞くからに重い二つ名を裏腹に意外に甘いようだ。
腰に下げた剣の柄に手を当てて、ラインハルトは鋭い眼光を飛ばす。
「その場合は三対二だ。数の上ではそちらが有利。僕の微力がどれほど彼の救いになるかはわからないが、騎士として抗わせてもらう」
「じょ、冗談っ! わりに合わねーよ!」
捨てセリフもなく、チンピラともは一目散に逃げ出す。この前の青年の規格外さが知れているということか。
奴らの姿が完全に見えなくなった頃、俺は『剣聖』に深く一礼する。
「この度は助けていただき誠にありがとうございます」
「礼はいらないよ、君ほどの腕を持っていれば今の状況も容易く切り抜けられたでしょう。寧ろ謝らないといけないのは勝手に割り込んだ僕だよ」
先程の威圧感がまるで嘘のように、『剣聖』は微笑む。
さすがは『剣聖』というべきか、あっさりと自分の実力を見抜いている。
二つ名があるくらいだ、下手に口を利くわけには行けない。
「い、いえ、そんな滅相も!」
「『剣聖』という二つ名を気にしないでもらいたい。さっきも言った通り、まだ僕には重すぎるんだ。砕けた話し方で構わないよ」
どうか普通の人のように接してもらいたいと告げる『剣聖』に、俺も表情を緩め、改めて言葉を紡ぐ。
「わかりました。えっと、ラインハルトさん?」
「呼び捨てで構わないのだけれど。君はそっちのほうが呼びやすいみたいだね」
「ハハハ……」
あっさりと見抜かれて、俺は笑みを引きずいてしまう。
そういえば名乗ってなかったと、今度は相手の要件通りに自己紹介をする。
「お、俺の名前は悟飯、孫悟飯です」
「孫悟飯か、いい名前だね」
どうやら今のでよかったらしい。ラインハルトさんも気軽に接したからか嬉しそうだ。
話しやすい環境になったところで、俺はちょっとした質問を切り出す。
「えっと、ラインハルトさんは、そのー、衛兵なんですか? とてもじゃないですけどその風には……」
「よく言われるよ。まあ、今日は非番だから制服を着ていないのも理由だろうけど」
そう言ってラインハルトは苦笑いしながら両手を広げる。
そのコミュニケーションの高さに僅かな憧憬を抱くと同時に、その一挙一動からまるで、言葉遣いに修正をかけたお父さんのようにも見えた。
「珍しい髪と服装、それに名前だと思ったけど……悟飯はどこから? 王都ルグニカにはどんな理由できたんだい?」」
「王都……ルグニカ?」
質問を質問で返すというドジにはんすんする前に、聞き慣れない単語に俺は首をひねる。
――ん、待てよ……
そこで、俺の中にある仮定が成立した。
「まさか……」
そう呟いた矢先、俺はそれの真偽を確かめるべく、口を開いた。
「ラインハルトさん、人造人間という存在をご存知ですか?」
おかしなところがあれば指導お願いします!
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第三話 盗品の行方
人造人間……それは、世界を瞬く間も無く地獄に変えた二人組の総称であり、今やその名を知らぬ者はいない、恐怖の代名詞である。
――そう、その筈だが
「人造人間? 何だいそれは?」
――それは、俺がいた世界に限ることでしかない。
「くっ、やはり……か」
ラインハルトさんの返答に、俺は奥歯を噛み締める。
事の異変には事前に気付いていた。中世期風の街並み、見覚えがない文字と地名に平穏に日常を過ごす星の数ほどある人々。ここまで来たら、最早否定する余地もないだろう。
「でも、なぜ異世界に……」
「ん? 異世界?」
心中に留めるはずだった疑念を思わずこぼしたところを、ラインハルトさんは見事に拾い上げ、此方に問いかける。それに俺は無意識に疑念を口にしていたことに気づき、「あ」と声を漏らし、反射的に口を手で塞いてしまう。
何かを隠そうとしている人の仕草の見本である。それを見てラインハルトさんは、笑みを漏らし苦笑いを浮かべ、
「何か、困ったことでもあるんかい? 悟飯?」
「い、いえ。そんな大したことじゃ」
何とか誤魔化そうとしつつも、この人相手では適当な嘘は通用しないだろう。明確な理由はないが、肌に触れる彼から漂うオーラが自分にそう告げる。
「本当かい悟飯、必要であれば手を貸すよ」
予想通り真っ先に疑ってくるか、まぁ先程のあの動揺ぶりじゃ、一般人でも疑念を抱かないほうが可笑しいだろう。それよりも、『剣聖』と聞くからに、重任を背負われ忙しいだろうにも関わらず、見ず知らずの俺にここまで関与を携ろうとする所、この人、ラインハルトさんはかなりのお人よしに違いない。
「分かりました」
誤魔化しても無意味。ならば素直にこの人を頼ればいい。
「実は人探しをしていまして……」
ただ、別の目的で。
「人探し? どんな人を探しているのかい?」
脳裏に蘇るのは、ついさっきまで自分が追っていた耳が尖った少女。
「えっと、そうですね。白いローブを羽織った銀髪の女の子ってところですかね」
「白いローブに、銀髪……」
「?」
――気が……
ほんの一瞬だが、俺は確かに感じた、強烈且つ静かな気の歪みを。
それの意味を吟味する前に、
「……その子を見つけて、どうするんだい?」
「あ、心当たりがあるんですか!?」
期待できると踏んで、顔を綻ばせてしまう。それにラインハルトさんは一瞬にして、僅かに目を見開くと、瞼を閉じすまなさそうに口を開いた。
「ううん、すまない。ちょっと心当たりはないな。もしよければ探すのを手伝うけど」
「あ、いえ、そこまでしなくでも」
実際人探しの目的が達成したとしても、その後の予定は全く立てていない。あの銀髪の少女の捜索に出たのは、単に力になりたかっただけで、言い方を変えればただの『余計なお世話』だ。最終目的である盗品の奪還の作戦の検討もないこの状況で、救助を要求するわけにはいかない。とは言え、ここまで来て人の好意を無駄にするわけにも……
そんなことを考えていた時だった。
――! 待てよ……
「すみません、ラインハルトさん。質問を変えてお聞きしたいことが――」
「? なんだい?」
夕日の日差しが愛着の山吹き色の道着と同化し、現在の時刻を告げている。
此処は貧民街。盗品をさばくとすれば、治安の悪いところで行われる可能性が高い、と推測し、ラインハルトさんにスラム街のような法律機関が働きにくい、地域の在り処を尋ねた結果、俺はこの場にいる。
個人の気を分別することができなくなったため、盗品の主の捜索は仕方なく断念したが――
「取り合えず、進歩はあった……か」
貧民街の方々の協力も得て、俺は主に盗品を中心にお金のやり取りをしている、とある場所の情報を入手した。そして、俺は今その場を目的地にし、この地を歩いている。
十数分の時が経ち、俺はある平屋の前で足を止めた。
「これが盗品蔵か、印象と少し違うな」
情報では、フェルトという名の女の子が盗品を
「気は一つ……か」
扉の前に立ち、とりあえず木造のそれをノックする。
「すみませんー、何方かいらっしゃいませんか?」
一応中の人に呼び掛けてみるが、もし必要の場合は強行手段にでる。もとい、法に反して経済活動を行っているから、多少乱暴に扱っても問題ないだろう、と思ったところで気が動き出し、こちらに近づいてきた。警戒心を抱きながら、これからの展開に注目したところで、
「大ネズミに」
「はい?」
先ほどの呼びかけに応じ帰ってきた返事に、俺は素っ頓狂な声を上げる羽目になった。
悟飯は、片腕を失っていることから、貧民街の人達に同情されているから、聞き込みは協力的だった。
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