柔らかく、そして濡れているデク (海棠)
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番外編
聖なるクリスマスに口づけを


弱い人たち、強い人達、金持ちの人達、貧しい人達、世界はこれでいいとは思わないが、ともかくハッピークリスマス。
                 ジョン・レノン


これはクリスマスということで急遽書き上げた番外編です。作者が書いている別の小説のキャラクターたちが一部出てきますが別に世界観が一緒ってわけじゃないです。番外編だけ特別みたいなものです。時系列はあまり考えていませんが少なくとも体育祭よりかは後です。







僕は夜の街を歩いていた。人がにぎわってカップルも多い。

今日はクリスマスだ。皆がワクワクして聖夜を過ごすことなのだろう。僕は雪が舞い降りてくる空を眺めながらそう思った。

そして今日は麗日さんと待ち合わせをしている。早くいかないとね。

すると道端でサンタコスをした女性を見つける。それをぼーっと見ていると歩いている女の子4人が話しているのが聞こえた。

 

「私思うんですけどね…、なんで漫画やアニメじゃああんなにサンタのコスチュームが寒そうなんだろうなぁ、と思うんですよ。おしゃれのために寒さを我慢するっていう考えが少し理解できないんですよね」

すごくわかる。思わずうなずいてしまった。

 

「・・・気持ちはすごくわかる、というよりあそこにいるじゃん」

「あら、本当ね。というよりあれは宣伝かしら」

「寒くないんでしょうか…?」

「さぁ、どうなんでしょうかね?」

「ちょっと聞いてみる?」

「ええ、訊いてみましょうよ!」

「それは名案ね」

すると4人はそのサンタコスをした女性に話しかけていく。・・・あれ?あの女の子、もしかして麗日さんじゃね?

すると麗日さんは少し困ったような表情をしながら話し合っていた。・・・。

 

「あの・・・」

「あ、はい、なんでしょう?」

「その子、僕の連れなんですが・・・」

「あぁ、そうだったのですか。てっきりどこかのお店の宣伝してる人だと思っていました。すいません」

「いえ、私こそ、紛らわしい恰好をしてすいません」

「では、私たちはこれで。行きましょう」

すると4人はそのままどこかへ歩い於ていきました。

 

「ねぇねぇ、ゆかりさん」

「はい、なんでしょう?」

「も、もしも、もしもだよ?私がサンタコスしてゆかりさんの前に現れたらどうする?」

「・・・どうしましょうかねぇ?(ニヤッ) 簪ちゃんはどうされたいです?」

「ふぇ、ふぇええええええええ?!!」

「な、なかなかやるわね、ゆかりちゃん」

「???」

「あなたはそのままでいていいのよ」

・・・あの人たち、同性愛者(レズビアン)なのかな?・・・というより。

 

「麗日さん」

「なに、デク君?」

「その恰好、どうしたの?」

「じ、実は…デク君とデートすること、A組とB組の女の子にばれてしもうて・・・それでなし崩し的にこうなったん・・・。それに・・・」

「それに?」

すこし麗日さんは恥ずかしそうにちょっとうつむくとか細い声でつぶやいた。僕の耳にはしっかりと聞こえてたけど。

 

デク君のサンタさんになっちゃえって皆が言ってもうて・・・

「(絶句)」

マジかありがとうございます。皆さんマジでありがとうございます。・・・というより。

 

「麗日さん」

「なに?」

「寒くない?」

「・・・実を言うとちょっと寒い」ブルッ

「・・・」

僕は上着を脱ぐと麗日さんの肩にかける。

 

「・・・えっ」

「無茶はよくないよ。それに」

「?」

「麗日さんの素肌をあまり人目にさらしたくないな、僕は」

・・・や ば い。緊張して変な言葉しか出てこない。何言ってんだ、自分。

 

「/////」

あぁ、麗日さんがトマトみたいに赤くなってる!

すると後ろの方から声が聞こえてきた。

 

「オイオイオイオイあれ見ろよ、代表に吉井に土屋。お前らもあれくらいのことしてみたらどうだ?」

「ウェ?! ぼ、僕たちにはまだ早いかな…なんて」

「余計なお世話だ。それにそんな機会なんてねぇよ」

「・・・俺はもうしてる」

「・・・本当にそうだと思うか?」

「どういうことじゃ?」

「今からクリスマスパーティーだろ? 間違いなくサンタのコスプレをしてるわけだ。つまりどういうことかわかるな?」

「・・・肩を出していたら上着をかける口実になる…!」

「それだけじゃねぇ。厚着をしてても同じことだ」

「・・・なるほど、行くぞ」

「行こう!」

「・・・」コクッ

「やれやれ、仕方ないのう」

「ま、いいんじゃね? 言い出した俺が言うのもなんだけどさ、彼女にご執心ってのは悪いことじゃねぇだろ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

「…ねぇ、麗日さん」

「な、なにかな?デク君」

「ちょっと、遠くに行かない?」

「え・・・?」

「少し、見せたいものがあるんだ」

そして僕は麗日さんの手を引こうとした次の瞬間、悲鳴が上がった。

 

「フハハハハハハハハ!! このクリスマスをこの俺の個性を持って破壊してくれるわぁああああああああ!!!!」

なんだ、ただの子悪党か。その実行力の高さは褒めてあげたいよ。だけどね

 

「それを悪事に使った時点で貴様は(ヴィラン)なんだよ…!!」

僕はそううめくようにつぶやくと一気にその敵に向かって走り出した。それに続いて麗日さんも走ろうとする。僕は手で止めた。

 

「ソフト&ウェット!!」

僕はS&Wを呼び出すとさらに勢いをつけて走る。そして相手の懐に飛び込んでアッパーをたたきこんで空中に浮かせるとラッシュを繰り出そうとした次の瞬間

 

「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」

なんと敵は空中で体勢を変えるとこっちに向かって異様に発達した両腕を叩きつけるように振り下ろしてくる。こいつ、もしかして両腕の筋肉を異様に膨張させる個性でも持ってるのか・・・?!!僕はとっさにS&Wに両腕でガードさせる。しかし防ぎきれず僕たちは吹っ飛ばされてしまう。

 

「ガ、ガァ・・・・!!!」

「で、デク君!」

僕は麗日さんに大丈夫だよと言いながら立ち上がる。両腕から出血してるけどまだ殴れる範囲だ。足はまだ大丈夫。

 

「こっち来い!!」

「え、あ、私?!」

すると敵は女の子を呼ぶと羽交い絞めにして叫んだ。

 

「てめぇがどこのヒーローか知らねぇがそれ以上近付いてみろ! この娘を殺すぞ!!」

「「・・・ッ!!!」」

「ゼハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」

「・・・」

すると拘束されている女の子はニット帽を脱いだ。あ、よく見たら耳郎さんじゃん。

 

「『エコーズ』!!」

すると敵は地面にたたきつけられるようにうつぶせになった。たぶん耳郎さんのスタンドがなんか音でも八つけたんだろう、例えば「ズシンッ」とか。

 

「テンメェ耳郎ニ何シテクレテンダゴルァアアアアアアアアアアアア!!!!」

すると人ごみから上鳴君の個性であるレッド・ホット・チリ・ペッパーが飛び出してきた。

そして敵の上に乗っかると拳を握りしめる。

 

「地獄ニ行キヤガレコノ野郎ォオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

そしてぼこぼこに殴り始めた。ヒーローも集まってきているようだ。・・・って。

 

「上鳴君、それ以上いけない!!!」

それ以上は死んじゃうから!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後僕たちはプロヒーローに注意されたけど同時に褒められた。そして今4人で移動している。

 

「・・・なぁ」

すると上鳴君が話しかけてきた。

 

「お前らはなんであの場にいたんだ? 俺たちはデートしようと思ってあそこにいたんだが・・・」

「ちょ、上鳴・・・!」

「いやいや、事実だろうがよ。で、どうしてあそこに?」

僕と麗日さんは顔を見合わせた。そしてコクッと二人でうなずくと答える。

 

「「じ、実は・・・あ」」

「う、麗日さんからどうぞ」

「い、いや、デク君が言っていいよ。たぶんウチと同じだろうから」

「・・・わかった。実を言うと」

そして僕たちはなんであそこにいたのかわけを話した。

 

「あぁ、なるほどなぁ。デートだったのか」

「そ、そんなはっきり言わんといて・・・!」

「でもそもそも私は知ってたけど」

「え?!なんで教えてくれなかったんだよ!」

「私が言うことでもないと思ってさ、それに」

「そういうのは本人から聞くもんじゃない?」

「・・・確かにそうだな」

そして目的地に到着すると僕は町の方を指さした。そこには宝石をちりばめたかのような美しい景色が広がっていた。

 

「見て、あそこ。僕たちがさっきまでいた町だよ」

「うわぁ、綺麗やねぇ」

君の方がきれいだよ。なんてきざなセリフをここぞというときに言えない自分を呪いたい。

 

続く







本当はそれぞれの小説にクリスマスエピソードを書きたかったのですがうまくまとまらなかったため、ここにゲスト出演させました。


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本編(第一期)
覚醒


天下に水より柔弱(じゅうじゃく)なるは()し。

(しか)堅強(けんきょう)なる者を攻むるに、(これ)()く勝つこと莫し。

其の()って之を()うる無ければなり。
                          「老子」第78章より抜粋





人は生まれながらに平等ではない。時間は平等だとか言うが長い目で見れば平等じゃない。

4歳にして彼、こと緑谷出久が知った現実だ。

世界総人口の約8割が何らかの特異体質となった超人社会において、それらの特殊能力は『個性』と呼ばれ、当たり前のものとして存在している。

個性が前提となった社会では、生まれ持った個性によって人生の成功が約束されている場合も少なくない。そして逆に無個性は差別される運命であることも少なくない。

少なくとも、緑谷出久は個性を持った人間だった。

ただし・・・人よりも個性が覚醒するのが遅かったが。

 

「な、何するのかっちゃん」

「うっせぇ!! このクソナードがッ!! こんなきめぇことやってんじゃねぇ!!!」

いつものごとくノートを奪い去って爆破するかっちゃんこと爆豪勝己。そしておろおろするクソナードこと緑谷出久。

クラスの皆はいつものことだと思って周りからその光景を眺めていた。

 

しかし、今日は違った。

どこからかシャボン玉が飛んできた。

全員が不思議に思ってそのシャボン玉を見つめる。爆豪と緑谷も動きを止めてそのシャボン玉をじぃっと見つめている。そしてそのままシャボン玉は爆豪の目の前までふわふわと移動するとパチンッとはじけた。

次の瞬間、異変が起こった。急に爆豪が目を押さえたのだ。

 

「グァアアアアアアアアアッ?!!!」

全員に動揺が走る。もちろん出久も例外じゃなかった。

 

「み、見えねぇ!!」

「な、なにが?」

「急に真っ暗になりやがったッ!!! なんにも見えねぇ!!!」

「えぇええええええええええ?!!!」

さらに次の瞬間、爆豪は吹っ飛ばされた。上に吹っ飛ばされ、机やいすを巻き込んで床に落ちた。そしてピクリとも動かなくなった。周りにいた生徒の一人が駆け寄って様子を見た。どうやら伸びているだけらしい。

すると皆が一斉に緑谷の方を見ていた。

・・・え、えぇ?! もしかして僕、疑われてる?!!

そう思った彼はさっきの出来事は僕じゃないと言おうとした時、クラスメイトの一人が声をかけてきた。

 

「お、おい、緑谷」

「ぼ、僕じゃないよ?!!」

「違う違う! ・・・お前の後ろにいるソレ、なんだ?」

そう言いながらクラスメイトは彼の後ろの方を指さした。彼はどっと冷や汗を噴出した。そしてぎぎぎ・・・と首を後ろの方に向ける。

 

そこには壁から半透明的に浮き出るようにして『白い人型のなにか』が姿を現していたのだ。

 

「うわぁああああああああああああああああ?!!!」

彼は思わず後ずさりして叫んだ。するとその来訪者は彼が自分を認識したことに呼応したのか壁からその全貌を現した。

 

その姿は人間のようだった。白い体の上半身には紫色の錨のマークが刻み込まれていた。肩には己を象徴するかのようなが描かれており、細く長い腕は少し広げられていた。下半身は鉄の棒が入り組んだようになっており、恐らくそれらが骨組みとして駆動しているのだろう。単純なようで難しそうな感覚を緑谷は受けた。そして関節部はすべて球体でそれらが人形っぽさを際立たせている。面長な顔には左右それぞれに5つの穴があり、円を半分に割ったような目は緑谷のことをジィっと見ていた。たぶんここにいる生徒たちに訊いたら別々に印象を持っているだろう。それほどまでにその来訪者は不可思議な存在だった。

 

「ギャァアアアアアアアアアアアアアアアアア?!!!!!!!」

そして緑谷は叫び声をあげた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・この場にいた誰が予想したであろうか。

これは彼こと緑谷出久がヒーローになる物語の序章(プロローグ)だということに。




ジョジョの奇妙な冒険Part8「ジョジョリオン」より「ソフト&ウェット」


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彼の名前は『ソフト&ウェット』

濡れている者は雨を恐れない。
              ロシアのことわざより抜粋






あの後は大変だった。僕は泣き叫びながら家まで全力疾走だったし、その横を人型の何かはスーッとついてきてさらにパニックを起こすわお母さんがそれを見てびっくりするわで散々だった。次の日学校が休みだったのでお医者さんや専門家の人のところまで尋ねるとどうやら『個性』だということがわかった。どうやら皆よりも遅く発現したらしい。だしても遅すぎである。ふざけんなと言いたくなった。お母さんは泣きながらよかったねと僕を抱きしめてくれた。

 

「・・・」

「・・・」

「「・・・」」

そして今、僕は自分の部屋の椅子に座って対面していた。ご丁寧にも彼(?)はベッドにきっちりと座っていた。膝に拳を乗せて正座で座っていた。

 

「あの・・・」

「・・・」←少し顔をあげる

「君って…やっぱり、僕の『個性』、なの?」

「・・・」コクッ

「そ、そうなんだ・・・」

沈黙。

 

「な、名前とか・・・あるの?」

直後、僕は後悔した。何バカみたいなことを言ってるんだ。この人(?)僕の個性じゃないか、と。

すると、彼(?)は左の手のひらを右の人差し指でなぞり始めた。

 

「・・・?」

すると彼はペンを持つようなしぐさをした。ここで僕は理解した。あぁ、この人(?)はペンと紙が欲しいのか、と。

僕は紙とペンを用意すると彼に手渡した。すると彼は慣れたような手つきでノートにさらさらと何かを書いた。

そして書き終えると僕にノートを手渡した。そこには英語の筆記体でこう書かれていた。

 

「・・・Soft(柔らかく)(そして)Wet(濡れている)…? これは、君の名前?」

「・・・」

すると彼は僕の本棚というよりCDの入ってる棚から一枚のアルバムを取り出してきた。見るとプリンスのフォー・ユーだった。そのうちの一つを指さしてくる。そこに書かれていたのはソフト&ウェットだった。

 

「・・・あぁ、なるほどねぇ。そっから名前をとったんだ」

「・・・」コクッ

「・・・いいよ!

「・・・?!」

僕が急に大声を出したのか彼は少したじろぐような動作を見せた。僕は慌てて次の言葉を紡ぐ。

 

「ご、ごめん。・・・でも、その名前いいよ! すごくいいと思う! なんていうんだろう…すごく印象に残りやすいよね!! それにシャボン玉って柔らかくて(?)濡れてるし!! ピッタリの名前だと思うよ!!」

「・・・」コクコクコクコク

僕がそう言うと彼は興奮した表情(たぶん)と動き(明白)でうなずいた。

 

「・・・ところでさ」

「・・・?」

「僕は君のことをまだよく知らないんだ。どういう『個性』、なの?」

「・・・」シュッシュッビシッバシッ

すると彼は空中に向かって拳を突き出したり足を突き出したりした。なんとなくだけど言いたいことは伝わってくる。

 

「殴る蹴るはできると…」

ぼくはこのことをすぐにノートに書き込んでおく。自分の個性を把握しきれてないのは大問題だからね!!

 

「あと他には何かできる…?」

「・・・」

すると彼は手のひらからシャボン玉をぷくっとだすと壁の方に飛ばした。そしてパチンッとはじけた。

 

「・・・」

「・・・」

「「・・・」」

再び沈黙。

 

「・・・」スッ

すると彼は壁の近くによると壁をノックするように叩くような動作をする。

僕はそっと壁に近づくと壁を手の出っ張っている骨の部分でコンコンと叩く。

 

「・・・アレ?」

僕は違和感を感じてもう一回叩いてみる。しかし起こるべきことが起こらなかった。僕はその事実に気付いて思わず壁に拳を叩きつける。しかし、起こらなかった。

 

「『音』が、ない・・・!!」

僕は思わず彼の方を見る。彼は空中でふよふよと浮きながら僕の方を見ていた。

 

「音を奪う能力なの?! ・・・いや、違う。あの時シャボン玉がはじけたとき、かっちゃんの目が見えなくなっていた・・・。・・・ん、『奪う』? いや、まさかそんなことがあるのか・・・? でも、これくらいしか考えられない…」ブツブツ

僕はぶつぶつとしばらくつぶやくとある一つの結論に達した。そして恐る恐る彼の方を見る。

 

「・・・もしかして、君の能力、いや、僕の個性ってシャボン玉がはじけたときにそこから何かを『奪う』能力なの?」

少し間をおいて彼はコクリ、と頷いた。僕は目を見開かざるを得なかった。

 

「ということは・・・、様々なものを奪えるって事かい?!! さすがに個性は難しいだろうけど…」

僕はそう言って彼の顔を見る。そして気づいたことがあった。

 

「・・・顔、変わってない?」

そうなんだ。顔がいつの間にか変わってるんだ。いつの間にか顔に穴がなくなって耳(?)が長くなってるんだ。

 

「・・・?」

どうやら本人も自覚がなかったみたいである。僕は手鏡を彼に手渡す。すると彼は驚いたようなしぐさをした。そして耳(?)をしきりに触っている。あとは顔をペタペタと触っている。

すると急に眠気が襲ってきた。僕はふわぁとあくびをする。すると彼は鏡を机の上において僕をベッドまで運んだ。

 

「・・・おやすみ」

「・・・」コクッ

僕の意識は闇に落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日

 

僕はゆさゆさと揺さぶられる感覚を感じた。僕は布団の中に閉じこもる。するとバサッと布団を剥がれた。

僕が目をこすってぼーっとあたりを見渡すとそこには顔をのぞきこんで来る白い人がッ!!

 

「ファッ?!!」

僕は驚いて跳び起きた。眠気なんか吹っ飛んでいた。再びその白い人を確認するとソフト&ウェットだった。

 

「・・・なんだ、君か。なんかびっくりして損した・・・」

僕はそう言いながら服を着替え始める。するとドアがノックされた。

 

『出久~、勝己君が来てるわよ~?』

「え、あ、うん」

なんでかっちゃんが?

僕は疑問に思いながら玄関まで歩いていく。

そしてドアを開けるとそこには今にも爆発しそうなかっちゃんがたたずんでいた。

 

「・・・」スッ

僕はそっとドアを閉じようとした次の瞬間

 

ガッ

 

「・・・え?」

僕は恐る恐るドアの下の方を見る。

何とかっちゃんは一瞬のスキをついてドアの間に足を置いてしめれなくしたみたいだ。

 

「?! ?!!」

僕は一心不乱にガンガンとドアをかっちゃんの足に割と勢いをつけてたたきつけ始める。

 

「なにしやがる、クソナードォ!!」

「どうか、どうかお帰りくださいッ!!」

「テメェに話があるんじゃゴラァ!!」

「どうせろくでもないことだとわかるからしなくていいよ!!」

「早く開けねぇと爆破するぞゴラァ!!」

「やめろぉおおおおおおお!!!」

「こら勝己ぃ!!」

「ゲェ!! BBA!!」

「だからババァって言うなって言ってるでしょうが!!」

その後、かっちゃんの声は離れていった。

・・・まるで嵐みたいだったな、と僕は思った。

 

 

続く






最近洋楽のCDを買い集めています。

とくにエミネムはいい買い物だったなぁ、と思っています。


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ヘドロ事件と雄英試験

柔弱は剛強に勝つ。
         「老子」第36章より抜粋






次の日から僕は一人で暇な時間があったら山や裏路地に行って個性の研究や実験をした、ついでに僕の肉体改造も。自身の個性を知らないことには何もできないからね。

それから2年後のある日のこと、僕が町中を歩いていると何か人だかりができていた。気になって近くの人に声をかけてみる。もちろんソフト&ウェットはしまっておく。

 

「すいません・・・、何かあったんですか…?」

「あぁ、実は、子供がヴィランにつかまっていてヒーローが手を出せなくて・・・」

僕はそれを聞くと急いで人の群れをかき分けた。そして視界が開けるとそこには、泣き出しそうな表情をしているかっちゃんの姿が!!

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」

僕はその顔を見た瞬間、走り出した。いつの間にか現れたソフト&ウェットもついてくる。僕は走りながらシャボン玉をヘドロの敵に向かって飛ばした。シャボン玉はスーッとヘドロ状の敵に近づいてそしてはじけた。

すると水がじょろろろと噴き出し始めた。そしてどんどんヘドロ状の敵はカサカサになっていく。

 

「お前の体から水分をほとんど奪った。ヘドロということは元は有機物を多く含んだ泥だ。つまり水分を抜けば乾燥する。今、お前は動けないはずだ」

「が・・・がぁ・・・!!」

「ソフト&ウェット!!」

「・・・!」シュバッ

ソフト&ウェットはかっちゃんをつかむと一気に引っ張った。するとボロボロとヘドロ状の敵は崩れ始めた。

 

「かっちゃん、大丈夫?」

「・・・おい、クソナードォ」

「?」

「なんで俺を助けやがったぁ!!!!」

「・・・ないよ」

「あ”ぁ?!!」

「わからないよ。いつの間にかさ。気づいたら、だよ。気づいたら体が動いてたんだ」

「・・・ケッ」

するとソフト&ウェットがかっちゃんを軽くどついた。

 

「なにしやがるてめぇ!!!」

「な、何してるの?!」

「・・・」

すると彼はプイっと顔をそむけた。どこか怒っているようにも見える。

 

「もしかして、怒ってる?」

「・・・」コクッ

「なんで?」

「・・・・」ビシッ

彼はかっちゃんを指さした。どうやら彼が悪いと言いたいらしい。

 

「んだとゴラァ!! やんのかゴラァ!!!」

「・・・」

すると彼はシャボン玉を飛ばすとかっちゃんの足元ではじけた。するとかっちゃんがステーンっと転ぶ。

 

「?!!!」

かっちゃんはいきなりすぎて何が起こったのか理解できなかったようだ。

そして僕もシャボン玉で転がされるとそのまま滑らされた。

 

「うわぁああああああああああああああああ?!!! WRYYYYYYYYYYYYYYYYYィーーーーー?!!!!」

僕はくるくると回りながら叫んだ。そしていつの間にか帰路についていた。

まぁ、そのあとプロヒーローが訪問してこってり注意されたけどね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まぁ・・・、そんなこともあったわけだけどそれから何か月か経った今日。

今日はついに雄英高校の試験日だ。

 

「うわ~~~~マジで緊張するなぁ~~~~」

「おいデク。道どけや」

「うわ・・・」

「何だテメェ!!!」

「まさかこんなところで遭遇するなんて…」

「俺も嫌だわ!」

「・・・だったらかみついてこなけりゃいいのに

「アァ?!」

「何でもないよ」

するとかっちゃんは舌打ちして先に進んでいった。やれやれ、彼の性格は一生治らないかもしれないな。すると何かにつまずいた。そして重力に従って顔が地面のタイルに近づいていく。あぁ、これ転んでるわ。ソフト&ウェットも間に合わないや。畜生、なんて日だ。

するとふわっと、不思議な感覚が起こった。わかるかな、ジェットコースターとかで急降下したときに感じるあの感覚と似ている、さすがにあれよりかは穏やかだけど。そして気が付くと僕の目の前にはタイルなんて無機物ではなく、可愛らしい女の子の顔があった。

 

「ご、ごめん。勝手に個性使っちゃって。だけど、転んだら縁起悪いから・・・」

え・・・?たったそれだけのために僕を助けてくれたの? まさかこの人、天使かッ!!

僕は顔が熱くなって思わず顔を背ける。ソフト&ウェットはキャーとでも言いたげに顔を隠していた。

 

「ところで、そこに浮いてる人(?)って君の個性?」

「そんなとこ・・・です」

「へぇ・・そうなんだぁ・・・」

そう言いながら彼女はソフト&ウェットを眺めるように見ると言った。

 

「かっこいいね!」

「そ、そうかな?」

「・・・」テレッ

「・・・緊張するよねぇ」

「・・・そうですねぇ」

「お互い頑張ろ?」

「は、はい!」

すると女の子は離れていった。・・・。

 

「今時あんな天使みたいな子がいるんだなぁ」

世界は広いなぁ、と僕は思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、筆記試験が終わり、講堂でプレゼント・マイクからルール説明を聞くことになった。それまでに

 

~☆~

 

「おい、クソデクゥ!! 俺の前にいるんじゃねぇ!!」

「やかましい! うっとぉしいぞ!!」

『『『?!!!』』』

・・・ハッ、駄目だ駄目だなんかきんちょうで変なテンションになってる…。で、誰に向かって話しかけたんだっけ…?

 

「・・・かっちゃん?」

「テメェ・・・余程死にてぇらしいなぁ‥‥」

「物騒だねかっちゃん?!」

「テメェのせいだろクソナードォ!!」

「かっちゃんまた人のせいにする・・・。それに今更だけど僕の名前はクソナードじゃないよ」

「どっちでも同じだろ!!」

「同じじゃないよ! ナメクジとカタツムリくらい違うよ!それかもしくはポッキーとトッポ!!」

「うるせぇどうでもいいわ!」

「二人とも静かにしろ。二人とも落とされたいか?」

「やめてください! かっちゃんは別に落としてもいいですけどせめて僕は落とさないでください!」

「てめぇ人を勝手に売るんじゃねぇ!!」

 

~☆~

 

・・・みたいなことがあったけど別に気にすることはないと思う。

 

「今日は俺のライブにようこそー!!」

「YEAH!!!!」

・・・返事僕だけか。せめてだれか一緒に返事してよ!←無茶ぶり

 

「お!そこにいる緑のリスナー!あんがとよ! ま、それは置いといて受験生のリスナー!!実技試験の概要をサクッと説明するぜ!! ・・・おぉ?皆誰だって聞きたそうな顔してんぜ? 俺はボイスヒーロー『プレゼントマイク』!! 今日が受験日だって聞いてすっ飛んで来たぜ!!」

あ、あれはプレゼントマイク!いつもラジオ聞いてます!うわぁ、現役ヒーローから直々に説明してもらえるのかぁ…、感激だなぁ。

 

 その後の説明は少し省くけど実技試験は10分間、各自指定された演習会場で1P、2P、3Pの架空(ヴィラン)を出来るだけ多く戦闘不能にするというシンプルイズベストを真正面から体現したようなルールだ。なお、他の受験生を邪魔する行動は禁止とのこと。・・・たぶん他人を邪魔してくる子いると思うんだよねぇ。

 

 「質問よろしいでしょうか!」

するとその時、四角い眼鏡をかけた真面目そうな男子学生が手を挙げた。

 

「受験番号7111のリスナー! どうしたんだ?」

「プリントには4種(・・)の敵がいると書かれていますがこれはどういうことなのでしょうか?」

「あぁ、なるほどな!お便りサンキュー!! それはな、いわゆるお邪魔キャラってやつだ。マリオで例えるならブラックパックンだな! ちなみにぶっ倒してもポイントにはなんねーぞ!」

「わかりました。ありがとうございます」

そう言いながら受験番号7111さんは座った。

 

「他に誰かお便りのあるやつはいねーか?・・・いないな。俺からは以上だ!最後にリスナーへわが校の校訓をプレゼントしよう!

かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った!『真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者』と!Plus Ultra(さらに向こうへ) お前ら、いい受難を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・ところかわってここは実技試験会場、移動はバスだった。僕は軽く準備運動をする。そしてんーと背伸びをしていると

 

『はい、スタート』

 周りが「え?」「ん?」と困惑する中、僕は一人走り出した。スタートと言われてるんだったら駆け出してもいいはずだ。

僕はソフト&ウェットを出現させると出現した仮想敵に向かって同時に思いきり殴りつけた。

 

「ナンダ、コノ攻撃ハ・・・。効カナイナァ!!」

あ、やばっ、と思った。忘れてた。ソフト&ウェットの破壊力のなさを。だったら・・・!!

 

「オラオラオラオラオラオラオラアラオラオラオラオラァ!!!」

今度は高速でラッシュをたたきこませる。すると仮想敵は内側から破裂するように破壊された。

 

「研究してた成果がここに出たか…」

僕はそうつぶやいた。シャボン玉を内側にもぐりこませて破壊力を上げる方法だ。残骸に「1」って書かれてるから今僕は1ポイント稼いでるってわけだ。

そう思いながら僕は周りを見ると皆他の敵を破壊しまくっていた。

 

「・・・ゑ」

嘘やん。みんな早すぎやん。

 

『あと6分だぞお前ら~~~』

僕は急いで駆け出した。

そしてたどり着いた場所は仮想敵と受験者で埋め尽くされていた。

 

「うわぁ?!!」

すると大きな声が聞こえてきた。僕が後ろを向くと髪の黒い子が壊れかけの仮想敵に攻撃されそうにあっていた。僕は走りながら跳び上がって思い切りソフト&ウェットで殴りつけた。すると仮想敵は部品をまき散らしながらきりもみ回転をかけつつ吹っ飛んでいった。よく見ると残骸に「1」と書かれていた。

 

「君、大丈夫?」

「あぁ、うん・・・」

僕はそれを聞くと足にS&Wを重ねて跳び上がった。そしてビルの上に着地する。

 

「やばい・・・僕今2回しか敵を倒せてない・・・。しかもどっちも1ポイントだし、片方は壊れかけを沈黙させただけだし‥‥」

ビルの屋上から僕はぼやいた。いっそのこと他の人の足でもひっかけようかな(禁止行為でもしようかな)と思い始めたその時、ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴという地からうなるような音が響いた。

 

「え? 何が…」

 

それはとてつもなくデカかった。大きく重く、余りにも大雑把な作りだった。まさに、でかぁい!説明不要ッ!!本当に「デカい」としか言いようのない仮想敵だった。

僕の脳の片隅に、あるものが浮かぶ。多分、いや、絶対だ。あいつは……

 

「0(ポイント)敵・・・」

どうしよう、と僕は思った。ここで戦ってもリスクが大きすぎるしそれになにより得点にならない。無視して逃げるか。そんなことを思っていた。しかし・・・

 

「いったぁ…」

彼女だった。僕を試験前に助けてくれた人だ。それでも僕は悩んだ。今あの子は仮想敵に近くにいる。僕が助けに行ってもいいけど、二人とも死ぬ可能性がある。僕だって人の子だ。自分の命は大事だ。だけど・・・。

 

「恩は、返さなくちゃ…!!」

僕は決意すると倒れている彼女に向かって走り出した。

 

「き、来ちゃダメ…」

「いや!僕は君に助けられた! これはかっこつけに聞こえるかもしれないけど、今度は僕が君を助ける番だ!」

僕はそう叫んで彼女をおんぶすると一気に跳び上がってビルの屋上に上がってさらに連続で移動する。そして少し離れた場所に彼女を下ろすと僕は再び仮想敵に向かって走り出した。

 

僕はビルの屋上を連続で移動しながら算段を立てる。

あんだけ大きいということはどこかしらに弱点が露出してるはずだ。ゲームだってそう決まってるし、試験者だって鬼じゃない。・・・いや、あんなものを出してくる時点で鬼だけど。

そして僕は0P仮想敵にすぐ横にビルまで移動し終わると仮想敵に向かって跳び上がった。そして着地すると鉄板を無理矢理はがしたりして弱点を探し始める。そしてなにか回路みたいなものを見つけた。

 

WRYYYYYEEEEAAAAAAAA(ウリィイイイイイイイアアアアアアア)ッ!!!」

僕はソフト&ウェットに巨大仮装ヴィランの回路らしきものにラッシュをたたきこませた。機能停止に追い込めてしまえば(おん)の字だよね。

すると0P仮想敵はがくんっがくんッとなると動きを停止した。どうやらかけは成功したみたいだ。

 

『試験終了~~~~!!!!』

 

「あ」

・・・終わった、僕の雄英試験。

 

 

続く





緑谷君の性格は少し改変しています。分かりやすく例えるなら原作のデク君が1部の主人公、ジョナサン・ジョースターなら僕の小説のデク君は7部の主人公、ジョニィ・ジョースターです。



平成ジェネレーションズFINAL見に行きました。
いやいやいやいやいや、最高でしたよ。あれは映画館で見るべき映画だと思いましたね。


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試験結果と雄英入学と除籍の危機

セトモノとセトモノと ぶつかりッこすると すぐこわれちゃう
 どっちか やわらかければ だいじょうぶ
 やわらかいこころをもちましょう。
                   相田みつを





試験が終わってから数週間くらいはもうほんと生きた心地がしなかった。ソフト&ウェットもそれは同じだったのか、デザインが狂ったかのように顔がしょっちゅう変わっていた。ときには左右非対称になることもしばしばだった。

 

そして、運命の日。

僕はドキマギしながら封筒を開けた。こんな表現は少しおかしいかもしれないがとにかくそういう風にしか表現ができないから仕方ない。僕は一回深呼吸して封筒から中身を引き抜いた。

中に入っていたのは何かの機械だった。少しいじくりながらじろじろ見ると何かスイッチみたいなものがあることに気付いた。

ほい、ぽちっとな。

 

『私が投影された!!』

 

「ファ?!!」

僕は思わず叫んで手から投影機を床に落としてしまった。そしてさらにはベッドの上に飛び乗ってしまった。そしてさらには勢いあまって頭を壁にうってしまった。ビビりすぎだろ、自分。ひくわ。

 

「・・・」フワフワ

そしてソフト&ウェットも出現していた。ちょっと、なんで? もしかして心配だったから?

僕は恐る恐る近づいていく。ちなみにS&Wは顔の右半分は穴が5つ空いていて左半分は耳の形状と色がいつもと違っていた。

 

『雄英高校に私が教師として赴任(ふにん)することになっているのでね、サプライズとしてこういう風に皆それぞれに投影機で試験結果を発表しているのさ!!』

マジですか。そこまでするなんてさすがだと思います。

 

『緑谷君、君の試験結果は・・・』

「・・・(ゴクリ」

「・・・」グッ

 

合格だ!!!』

 

「・・・へ?」

『君が同じ受験生二人を守った行動に皆感銘を受けたのさ! 撃退ポイントはたったの2ポイントしかないが、救助ポイントは全受験生徒の中でもダントツで1位だった! そして会議の結果、君は合格ということになったんだ! 来たまえ、ヒーロー科に!』

「僕が・・・雄英に・・・?」

夢が現実になったという実感がじわじわと僕の体の中に広がっていく。そして内側の核に触れた瞬間、嬉しさが一気にこみあげてきた。

 

「っしゃぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!! やったぞぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!!!! 僕は勝ったんだぁああああああああああああああああああああああああ!!!!!! ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオム!!!!」

「」ビクッ

 

僕は思わずのどが裂けんばかりに叫んだ。あとでお母さんが心配してきたうえに近所から緑谷君どうしたのと騒がれた。うん、すいませんでした。(がら)にもなく叫んでしまいました。すいません。本当にすいませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、僕の首にかけているネクタイをソフト&ウェットは妙に慣れた手つきで(むす)んでぎゅっとしめた。・・・君、いつの間にそんな技術を?

 

「出久・・・超カッコイイよ・・・」

お母さんが涙を瞳にためながら僕にそう言ってくる。ソフト&ウェットがそこら辺にあったティッシュの箱を渡す。すごい気が利くね、君。

拝啓(はいけい)。目の前にいらっしゃるお母様、今どこにいらっしゃるかわからないお父様。僕はめでたく雄英高校の1年生になりました。しかもヒーロー科として合格だそうです。うれしくてここ数日間頬をつねりまくってしまいました。おかげでお母さまには少し心配をかけてしまったかなと思います。ですが僕は今すごい胸の高鳴りを覚えています。

僕はドアを開けて外の空気を思いきり吸った。

・・・うん、何とかなりそうな気がする!

 

「ソフト&ウェットさん・・・、出久をお願いしますッ・・・」

「・・・(コクッ」

お母さん、この人(?)僕の個性だよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして僕は雄英高校に到着した。ではここで軽く説明しようと思う。

 

国立雄英高等学校。

特徴はなと言っても広大な敷地に膨大な生徒数のマンモス校。そしてヒーロー、もしくはそれに関した職業に()くことが約束されていること。

しかしその中で、ヒーロー科は僅か2クラス、30~40人くらいしかいない。そして途中で除籍になる人も含めたらもっと少なくなるだろう。

つまり足場はいつでもなくなるかもしれないってことだ。僕はパンっと顔をたたいて気合を入れると教室のドアを開けた。掛札(かけふだ)には1-Aと書かれている。

 

「机に足をかけるな! 雄英の先輩方や机の制作者方に申し訳ないと思わないか!?」

「思わねーよ!てめーどこ中だよ端役(はやく)が!」

「ボ…俺は私立聡明中学出身、飯田(いいだ)天哉(てんや)だ。」

「聡明~? あぁ、めちゃくそエリートなとこじゃねえか。ブッ殺し甲斐(がい)がありそうだなぁ、ア"ァ?」

「ぶっ殺し甲斐?! 君ひどいな?!本当にヒーロー志望?!」

 

「・・・」

・・・うん、どうしよう。実を言えばこっから一気にUターンして全力疾走で帰りたい。だけど僕の野次馬根性がそれを許さない。・・・しっかし。

 

「かっちゃんの性格、高校に上がったら多少にマシになるかなって思ったけど、全然そんなことはなかったな…」

僕はそうつぶやくとやれやれ、あれじゃヴィランとそう変わんないな。いや、かっちゃんの方が凶悪かも。と思いながらと首を横に振った。

 

「あ、その地味そうな顔とそのモサモサ頭は!」

何だって? 僕の髪がまりもみたいだって? とか言って喧嘩は売らないし、買わないけど。

 

「あ!君は!」

「同じクラスやったんやね!あ、私麗日(うららか)お茶子!よろしく!」

「あぁ・・・えっと・・・僕の名前は緑谷(みどりや)出久(いずく)です。こちらこそ、よろしく。あの後大丈夫だった?どっか後遺症とかは・・・」

「ううん、全然! あの時助けてくれてありがとね!」

「いや、僕は当然のことをしたまでだよ。恩は返さなくちゃって思って」

「あ、君は!」

すると僕に話しかけてくる人が一人。さっきまでかっちゃんと口論しあってたメガネ男子こと、飯田天哉君だ。

 

「あ、あの時避難しろって誘導してた眼鏡君!」

「君はあの実技試験の構造に気づいていたのだな。俺は気づけなかった! 君を見誤っていた。あのとき、上から避難などと言ってすまなかった。いや、まさか0P仮想敵にの上に跳び乗ってまで弱点を探してさらには見つけて機能停止にまで追い込むなんて…」

すると周りに人たちがわちゃわちゃと集まってきた。

 

「え?!それマジで?! すごいね、あんた!」

「すげぇぜ!そんなに漢らしいことをするなんてなぁ! 気に入ったぜぇ!!」

皆に褒めちぎられることに慣れてない僕は少し顔がへにゃりってなった。まずい、皆に変な顔になってるとか思われてないかな?

 

「お友達ごっこしたいなら他所(よそ)でやれ」

 

『『『ッ?!!!』』』

全員が急に聞こえた声にびっくりして廊下の方を見る。

するとそこには寝袋に収まっている小汚いおっさんがいた。え、誰?!!

 

「ここは」

そしてウィダーを懐から取り出すと

 

「ヒーロー科だぞ」ジュッ!

一気に吸い込んだ。え、あれどうやってやるの?!あれどうがんばっても一気に吸い込めないんだけど?!(経験談)

そしておっさんはするりと寝袋から出ると教室に入ってきた。僕たちはサササッと道を開ける。ちなみに寝袋は引きずっている。あたりに緊張が走る。

そして教壇の上に立つと再び口を開いた。

 

「ハイ、静かになるまで8秒かかりましたね。時間は有限。君達は合理性に欠けるね」

なんか嫌味を言われた気がするけど僕たちの気持ちはたぶん皆一緒だったはずだ。

 

『『『(誰だ・・・コイツ)』』』

いや、だってそうじゃん。いつの間にか廊下にいてしかも寝袋に収まっていた。そして飲料材を一気に吸い込んでの登場だよ? 第一印象が大事なんだよ、人間って。性格なんてその次なんだよ。だけどその第一印象ともいえる風貌は少し小汚いおっさんときた。怪しさ百点満点でしょう?わかる?

 

担任の、相澤消太だ。よろしくね」

『『『(担任かよ・・・!!)』』』

・・・ん?あれ?この人、どっかで見たことあるような・・・誰だっけ…?

そんなことを僕が思っていると寝袋から何かを取り出した。それは雄英高校の体操服だった。

 

「早速だが、コレ着てグラウンドに出ろ。今から迅速(じんそく)に、な」

体操服?なんで体操服?あれ?入学式は?ガイダンスは?しかし僕らの疑問はあれよあれよという間に流されていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『『『個性把握テストォ⁉︎』』』

 

「あぁ」

「え?! 入学式はどうなるんですか?!ガイダンスは?!」

「そんなものないよ。ヒーローになるなら、そんな悠長な行事に出る時間なんてないしね」

「え、でも・・・」

「これ以上は合理性に欠けるから切るぞ。雄英は"自由"な校風が売り文句だ。そしてそれは"先生側"もまた然り。つまりはそういうことだよ」

いや、だからといってそれはどうなんだ。今例えるなら僕らはチュートリアルをすっ飛ばしていきなり本番に駆り出されているみたいなそんな感じだ。最近の鬼畜ゲーでもこんなことはないはず…、ないよね?

ちなみに作者は任〇堂とH〇L研以外のゲームはほとんどしたことがないからそこんとこよくわからないんだ。間違ってたらごめんね?

 

「時間は有限だ、とっとと始めるぞ。おい、爆豪」

「はい」

「お前中学の時ハンドボール投げ何(メートル)だった?」

「67」

「それは個性なしだな。じゃあ今個性を使って投げてみろ」

そう言われるとかっちゃんははソフトボールを持ち、投げると同時に個性を使用する。

 

「死ねぇ!!!!」FABOOOOOM!!!!!

 

ヒーロー志望としてその掛け声はどうなんだとは思ったけどかっちゃんはどうせ直す気ないだろうからスルーしておくことにした。こんなとこにまで意見したらこっちが持たない。肉体的な意味でも精神的な意味でも。

 

「まず、自分の【最大限】を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」

 

【705.2M】

 

すると皆が沸いた。

「なんだこれ! すげー面白そうじゃん!!」

「705mってマジかー」

「個性思いっきり使えるんだ! さすがヒーロー科!」

・・・なるほど8種目の個性使ってもOKなテストをすることによって自身の個性の限界を知って、自分が今どれくらいのレベルなのか、自分がどれほどの成長の余地があるのかを知ることができる。なるほど、確かに合理的だ。

 

「・・・面白そう、か。なるほど。では、君たちはヒーローになる為の3年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?」

『『『え?』』』

「よし、決めた。トータル成績で15より下の者は見込み無しと判断して【除籍処分】としよう」

『『『ハァアアアアアアアアアアアアアアアア?!!!!』』』

すると皆が口々に叫んだ。理不尽だ、職権乱用だ、非常識だ、スクールハラスメントだとかその他もろもろ。

しかし、先生はそんな僕らに対してこう言った。

 

「この国は理不尽にまみれてる。そういう理不尽を、覆していくのがヒーローだ。放課後マックかケンタッキーで談笑したかったならお生憎(あいにく)。これから三年間、雄英(俺達)は全力で苦難を君たちに与え続ける。

 

ようこそ【雄英高校ヒーロー科】へ。

 

Plus Ultraさ。全力で、乗り越えて来い」

こ…この人、除籍すると言ったら絶対に除籍するという…『凄み』があるッ…!!

僕たちは表情を引き締めた。

 

 

続く




書き忘れていましたが緑谷はヒーローに尋常じゃない興味があるだけでオールマイトにあこがれているわけではありません。雄英もタダ入りたかったっていうふわふわな理由です。


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個性把握テストとその後

雨を感じられる人間もいるし、ただ濡れるだけの奴らもいる。
                         ボブ・マーリー






まずは50Ⅿ走だ。皆がどんどん走っていく。そして最後は僕とかっちゃんの番だ。

その前に僕は先生の傍まで寄って少し話しかける。

 

「・・・すいません、先生」

「なんだ、緑谷」

「これは走るというか、とりあえず50Ⅿ進めばいいんですよね?」

「・・・そうだな」

「わかりました。それだけ聞けば十分です」

そして僕はスゥと息を吸うと叫ぶようにして僕のパートナーの名前を呼んだ。

 

『ソフト&ウェット』!!」

「・・・!(ズアッ」

するとポーズを決めながらS&Wは出現した。周りの皆が騒ぐ。

 

「おい、あれ・・・」

「人、なのか…? それとも異形系…?」

「ふむ・・・俺の個性、『黒影(ダークシャドウ)』によく似ている」

「私たちとそっくりの個性だな…」

「あぁ・・・」

 

「・・・ケッ」

「かっちゃん・・・」

「・・・」ビシィ

かっちゃんは僕の方を見ずに軽い準備運動をし始めた。ソフト&ウェットはかっちゃんの背中に向かって中指を立てていた。コラコラ、人を(あお)るのはやめなさいって。

実を言うとソフト&ウェットはかっちゃんのことを極端に嫌っていてしょっちゅう中指を立てるんだ。かっちゃんもそんな彼を嫌ってるんだよね。

ま、そんなことは置いといて僕も体を伸ばしておく。・・・よし。

僕は少しクラウチングスタートの体勢をとる。かっちゃんも舌打ちしながらクラウチングスタートの形をとった。

 

「よーい・・・」

「「」」グッ

「ドンッ!!」

 

BOOOOOOOOOM!!!!

 

うわ、周り無視の爆速ターボ。やりやがったな、コの野郎。僕はひるまずに走り出した。そしてシャボン玉を僕の足元に打ち込む。するとつるっと滑ってそのまま地面をスケート場のように滑り出した。

 

『『『えぇえええええ?!!』』』

「つるつるだぁ―――――ッ」

そして僕はそのままゴールした。そして再びシャボン玉を地面に打ち込む。すると勢いは少しずつなくなって最終的に止まった。

僕はすぐに立ち上がると先生に訊いた。

 

「先生、タイムはいくつですか?」

「あ、あぁ。4秒16だ」

よし、高成績。次行こう。

 

 

 

 

 

 

次は握力測定だ。

皆それぞれ記録を出している。

すると気になった男子生徒がいた。

金色の髪の毛に黒色のアクセントが入った人だ。握力計を握る瞬間に何か金色の腕が重なって見えた。

 

「・・・もしかして、あの人」

僕はある一つの考えに至ったが後で確かめることにした。今は個性把握テストなんだ。

僕は握力計をS&Wを重ねるように握ると一気に力を込めた。

そして出し切ると(はか)りのメモリを見る。

 

【127kgw】

 

おぉ、結構数値出たな。よしよし、いい感じだぞ。

 

 

 

 

 

 

3つ目は走り幅跳びだ。50M走と同じく個性を工夫し、全員が記録を伸ばしている。

僕はS&Wを足に重ねるようにして走り出すと一気に前に跳んだ。

 

ボスッ

 

【12M】

・・・やっぱり重ねると全体的に記録上がるなぁ。

 

 

 

 

 

 

4つ目は反復横跳びだ。

これはまぁまぁ普通の記録だ。言うまでもないと思う。

ただ一つ言うことがあるとすれば、髪の毛が特徴的な男子が自分の髪をもぎ取ってはねまくってたってことぐらいかな。

 

 

 

 

 

 

5つ目はボール投げだ。

みんな個性を使って投げていた。その中でも気になった二人がいた。一人はさっきの金色の髪の毛男子。もう一人は受験の時に助けた黒髪の子。

なんと二人は僕と同じような個性持ちだったんだ!!

一人は尻尾が生えた奇妙な形の姿で、もう一人は人型だけど僕の個性よりかずいぶん小さくて頭がパキケファロサウルスみたいな感じの姿だ。どっちも結構高い記録をたたき出していた。

最後に僕の番になった。

僕はボールをS&Wに持たせると全力で投げさせた。ボールは飛んで行ってどんどん地面に近づいていく。だけど、地面に着く直前でふわっと浮き上がった。よく見るとシャボン玉がボールをふわふわと持ち上げている。・・・いつの間にシャボン玉を?

そう分析している間にもシャボン玉はどんどんボールを遠くへもっていっていた。そしてしばらくすると割れて地面にぽてんぽてんっと落ちた。

 

【705.3M】

 

「おいクソデクゥ!」

するとなぜかかっちゃんがかみついてきた。

 

「なんだよかっちゃん」

「お前俺と同じ距離飛ばしてんじゃねぇぞゴラァ!!」

「それだったら他の人に言いなよ。なんで一々僕にかみついてくるんだよ、君には関係ないだろ」

「うるせぇ!! デクの癖に口答えするんじゃねぇ!!」

プチンッ

 

「・・・ハァ」

「アァ?!」

「いつも思うけどさ、今言わさせてもらうよ。うるさいんだよ!

すると皆が急な大声に驚いたのかたじろいだ。かっちゃんも例外じゃなかった。

 

「なんでいつもいちいちかみついてくるんだよ! 君には関係ないだろって何回も言ってるじゃないか!! なんで君はいつもそうなんだよ!! 僕が趣味で書いているヒーロー分析ノート爆破したりしてくるしさぁ!! いい加減にしろよこの自己中がッ!!! もううんざりなんだよ!!!」

僕はそう言い切るとかっちゃんから数歩離れる。勝っちゃんは少しの間呆然としていたけど、しばらくしたら見る見るうちに目を吊り上げた。

 

「言いてぇことはそれだけかよクソデクゥ・・・」

「それを聞いて何になるのさ」

「質問に答えろやゴルァア!!!」

「わかったよ、答えるよ。言いたいことはそれだけだよ。『これ以上僕にかみついてくるな』って言いたかったんだよ」

「んだとゴラァアアアアア!!!!!」

すると勝っちゃんは僕の胸倉をつかんできた。僕はその腕をつかむと跳び上がって空中で腕ひしぎ十字固めを決めようとする。すると何か白い布みたいなものが僕たちを縛り上げるとそのまま拘束した。

 

「そこまでにしとけよ」

拘束具をたどってみるとそこには相澤先生がいた。なるほど、あのマフラーは拘束具だったのか。・・・ん?あのゴーグルは・・・!

 

「抹消ヒーロー『イレイザー・ヘッド』…!」

すると僕はするすると拘束がとかれた。S&Wがへたばっている僕に手を貸してくれる。ありがとね、ほんと。

ちなみに先生はドライアイらしい。抹消するためには敵を見続けなくちゃいけないため何ともミスマッチである。

 

 

 

 

 

 

6つ目は上体起こしだ。

S&Wに手伝ってもらってなかなかにいい記録が出た。・・・これは上体起こしと言っていいんだろうか?

 

 

 

 

 

 

7つ目は長座体前屈。

これはS&Wを使ってこっそり距離稼ぎをした。こらそこ、せこいなんて言わない。

 

 

 

 

 

 

最後は持久走だった。かいつまんでいくと

 

「君のバイクのタイヤから空気を奪った。これでバイクはパンクしたも同然だ」

「な、なんということですの・・・」

 

 

「どけやクソナードォオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」

「どくのは貴様だかっちゃァああああああああああああああん!!!!!!」

 

 

「どけ。邪魔だ」シャーッ

「ごめん。これ利用させてもらうよ」ツルツルーッ

「ゑ」

「じゃあお先にぃ――――ッ」ツルツルーッ

「ゑ」

 

 

 

 

そしていよいよ結果発表、トータル成績で15以下の人たちは除籍される。皆緊張したような表情をしていた。かという僕もその一人である。

「これが始まる前…、君たちに成績が15以下の生徒は除籍すると言ったな?」

「そ、そうです先生…。ど、どうかお慈悲を…」

「あれはウソだ」

『『『・・・へ?』』』

「君たちの全力を引き出すための嘘だ。ま、『合理的虚偽』ってやつだな」

『『『ハァああああああああああああああ?!!!!』』』

「いえいえ、あんなのちょっと考えればすぐに分かることじゃないですの・・・」

いやいや、違うよお嬢さん。あの人除籍するって言ったらマジで除籍するっていう『凄み』があったからね。たぶん皆見込みがあるって判断していまウソになっただけだよ。

ちなみにこの時麗日さんの顔はムンクの叫びのような表情になっていた。すごい表情だ・・・。

ソフト&ウェットは動揺したのか顔のデザインが左右非対称になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

放課後、僕が学校から帰っていると後ろから飯田君に声をかけられた。

 

「緑谷君!」

「君は確か・・・飯田君だったっけ?」

「おーい!お二人さーん!駅まで?待ってー!」

「君は、(ムゲン)女子!」

「麗日お茶子です!えっと……飯田天哉君に、緑谷…デク君!だよね!」

「へ?! なんで?」

「え?だって、教室で爆轟君が悩まし気にデクって見つめながら言ってたし、しょっちゅう緑谷君のことをデクって呼んでたから…」

「・・・あのね、麗日さん。それはかっちゃんが僕のことを木偶(でく)の坊のデクからちなんでつけた名前であってね…」

蔑称(べっしょう)ということかい? ひどいあだ名をつけるんだな、彼は」

「…まぁ、そんなとこかな」

「そうなの?ごめんね」

「…いや、大丈夫だよ。僕の個性は発現しなかったのもあるし、あの頃の僕はすごいなよなよしてたから…」

「・・・・んー・・・」

「? どうしたの?」

「ウチね、個人的に思うんだけど『デク』ってさ・・・なんか・・・頑張れって感じがして、好きやで」

「・・・そうかな」

僕は思わず微笑んでしまった。うわじぶんちょろい。

 

「ところで緑谷君! 君の個性はすごいな!」

「うんうん! テストでもつるつるーって滑ってたし、すごいやん!」

「そうでもないよ・・・。まだ個性が発現してから3年もたってないんだ・・・。まだまだ追求しなくちゃいけないよ…」

「しかし・・・それにしても相澤先生にはやられたよ!まさか先生が嘘で生徒を鼓舞するとは…」

いや、あの目はマジだったよ。あの時ウソになっただけで。

 

「おーい、3人ともー。ちょっと待ってくれよぉ」

「「「へ?」」」

急に後ろから声をかけられたので僕たち3人が後ろを向いたらそこにはあの金髪男子と黒髪女子と頭が鳥みたいな人がいた。よく見ると女の子の方は耳にイヤホンみたいなものがついている。

 

「君達は・・・?」

「あぁ。忘れてた忘れてた。俺の名前は上鳴電気。で、こっちが」

「耳郎響香。よろしくね」

「麗日お茶子だよ!よろしく!」

「僕の名前は緑谷出久。よろしくね」

「飯田天哉だ」

常闇(とこやみ)踏陰(ふみかげ)

自己紹介が終わると二人は僕に詰め寄ってきた。一人はスッと寄ってきた。

 

「なぁ、あんた俺たちと同じような個性なんだな! 今まで同じような個性の人がいなくて寂しかったんだよ!」

「雄英に来てよかった!! まさか私たちと同じ個性が二人もいるなんて!」

「・・・(コクッ」

「え、えぇっと・・・」

僕は戸惑った。

 

 

 

続く







この小説では電気君と耳郎さんは中学の時からの付き合いと設定します。


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ヒーローコスチュームはまじめに決めましょう

雨の中、傘をささずに踊る人間がいてもいい。 自由とはそういうことだ。
                            ロジャー・スミス







「うーん・・・、どんな感じの服装にしようかな…」

「・・・」ウーン←顎に手を当てて考えているポーズ

僕は一枚の紙に向かって悩んでいた。ヒーローコスチュームの要望書だ。

 

雄英高校には「被服控除」という、要望する機能とデザインを学校に提出すると各生徒専用となる最新鋭の戦闘服を学校のサポート会社が用意してくれるという、なんとも素敵な制度がある。しかも無料だ。

 

しかし、僕みたいな個性と自分が分離していたらどんな服装にしても戦えるから極論を言うとコスチュームなんていらないわけなんだ。とか言ってふざけた格好はなんか失礼だし、一人だけ体操服なのはなんかアレだろ。なんか、アレじゃん。うまく言葉にできないけどアレなんだよ。・・・結局何が言いたいんだ、自分。その先を言えよ自分。

 

「え?コスチュームで悩んでる?」

というわけでとりあえずお母さんにいいアイデアがないか聞いてみることにした。

 

「うん、そうなんだ。ほら、僕の個性って僕自身と分離してるじゃん? だからどんな服装でも戦えちゃうからどんなコスチュームにするか悩んじゃって…」

「・・・」コクコクッ

「う~~~~ん、そうね・・・。あ、そうだ。出久の第一にイメージした服をもとにコスチュームを考えたらいいんじゃないかしら?」

「イメージした服?・・・」

僕はふよふよと服をイメージしてみる。う~~~~~~~~ん、ソフト&ウェットに合いそうな服と言えばなんだろうな‥‥。・・・あ。

 

「・・・水兵服」ボソッ

選ばれたのは水兵服、分かりやすく言えばセーラー服でした。

 

「・・・い、いいと思うわよ、お母さんは」

「・・・よし、お母さん。相談に乗ってくれてありがとう。おかげでなんかできそうな気がする」

「そう。それはよかったわ」

うん、本当になんとかできそうな気がする。なんか創作意欲がムンムンわいてくるぞ。

 

次の日、僕は要望書をきちんと提出した。なぜか相澤先生が何とも言えない顔をした。なんでだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~数日後~

 

この日の午後の授業はヒーロー基礎学だ。どんな先生が来るのか皆楽しみにしている。とか言ってる僕も少しワクワクしている。

 

「わーたーしーがー!!」

 

こ、この声は・・・。

 

「普通にドアから来たー!!!」

 

オ、オールマイト、だとぉ…。これは完全に予想外だ。

 

「オールマイトだ…!」

「すげえや、本当に先生やってるんだな…!」

銀時代(シルバーエイジ)のコスチュームだ…!」

「画風が違い過ぎて鳥肌が…!」

皆も口々に騒いでいる。そりゃそうだろうね。『平和の象徴』がこうして自分たちの目の前にいて授業をしてるんだから。

 

 「ヒーロー基礎学!ヒーローの素地をつくる為、様々な訓練を行う種目だ! 早速だが今日はコレ!戦闘訓練!!

するとさらに教室が沸いた。

 

「さらにはそいつに(ともな)ってこちら!入学前に送ってもらった『個性届け』と『要望』に沿ってあつらえた……」

すると壁から何かが出てきた。

 

戦闘服(コスチューム)だ!!」

『『『おぉ!!!』』』

すると皆が教壇にわらわらと集まっていく。そして各自コスチュームの入ったスーツケースを持ち帰っていく。

僕のは・・・あぁ、これか。うん、結構ワクワクしている。胸がドキドキする。

ワクワクを胸に秘めながら僕はスーツケースを開けた。

・・・うん、注文通りだ。半袖が長袖になっているぐらいしか違いがない。

その後、僕たち男子は急いで更衣室に移動した。あ、その前にお手洗い行こ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

途中でお手洗いに行っていたこともあって僕以外の全員が集合場所に集合していた。

 

「すいません、遅れました」

「いや、かまわ・・・ない・・・よ」

するとオールマイトが急に言葉が詰まった。あれ?なんかおかしな部分あるかな?ぼくはS&Wにどこかおかしいところはないか聞いてみる。しかし彼はフルフルと首を横に振った。・・・アレェ?

 

「デク君デク君、デク君のコスチュームってそれ?」

「え?あ、うん。そうだけど・・・。ところで麗日さん、そのコスチュームすごく似合ってるよ」

「要望をちゃんと書けばよかったよ・・・。パッツパッツんなっちゃった」

確かに体のラインがくっきり見えてる。確かにダメージを軽減してくれなさそうな感じを受ける。遠くで峰田君が「ヒーロー科最高!」とか叫んでいる。

 

「いや・・・確かに個性が分離型だし、コスチュームは自由だけどよ・・・」

「さすがにそれは・・・」

なんか上鳴君や耳郎さんもなんか言いづらそうな顔をしている。

 

「なんだよ。セーラー服のどこが悪いってのさ」

僕のコスチュームはセーラー服と水兵帽に少し装飾をつけたものだ。

昔からシンプル(Simple)イズ(is)(the)ベスト(best)っていうだろ?

 

「ま、まぁ格好から入るってのも大切な事だぜ少年少女! 自覚するのだ! 今日から自分は……ヒーローなんだと!良いじゃないか皆、カッコいいぜ!! それじゃあ、始めようか有精卵共!! 戦闘訓練のお時間だ!!」

全員が期待に目を輝かせた。

 

 

 

続く






次回は戦闘訓練です。

実を言うと本当はこの回で戦闘訓練もやる予定だったのですがきりの良さを考えてここまでにしました。


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戦・闘・訓・練

とにかく、考えてみることである。
工夫してみることである。
そして、やってみることである。
失敗すればやり直せばいい。
            松下幸之助







「そんなふざけた服着やがってぇええええええええええええええ!!!!! 俺をなめてんのかぁああああああああああああああああああああ!!!!」

「うるせぇええええええええええええええええ!!!!! かっちゃんに指図(さしず)されるいわれはないわこの野郎ォおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

そんなことをかっちゃんは吠えながら、僕は叫びながら追いかけっこしていた。ことは数分・・・いや約十分前くらいにさかのぼる…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日の授業の内容は、屋内での対人戦闘訓練。

2人1組で敵とヒーローに分かれて戦闘をシミュレートするというものだ。

 

そしてくじ引きで僕は見事麗日さんとペアを組むことができた。・・・ここまではすごくよかった。そう、ここまでは、だ。

 

相手のペアにかっちゃんさえいなければ。

 

この時僕はすごく嫌そうな顔をしていたと思う。麗日さんが少し僕の方を見てびくっとしてたから間違いない。

 

そして訓練が始まって僕たちは建物への進入に成功したところで作戦会議を開く。

「麗日さん、君が核兵器の方に行ってほしい」

「え?! なんでウチ?!」

「たぶんかっちゃんは嫌なことに僕の方を集中的に攻撃してくると思う。僕と麗日さんが一緒に行ったらかっちゃんは核兵器ごと爆破する可能性がある。こうなるとミッションは失敗だ。だから、(ぼく個人としてはすごく不本意だけど)かっちゃんを僕がひきつける。その間に麗日さんは核兵器まで走ってほしい。たぶん飯田君が相手すると思うよ。だけど、かっちゃんが相手するより何十倍もマシだ」

「・・・わかったよ、デク君」

麗日さんはコクッとうなずいた。

 

「・・・僕がかっちゃんを倒せたらすぐに援護に行くからそれまで耐えててくれないかな? もしもやられたときは連絡するからさ」

「うん」

「よし、行こう。敵を待たせちゃ悪いからね」

そう言った次の瞬間

 

「見つけたぜクソナードぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

かっちゃんが襲い掛かってきた。ぼくは麗日さんを突き飛ばす。そして僕も反対方向に跳ぶ。目の前に爆発が巻き起こった。

僕は叫ぶ。

 

「麗日さん!! 先にいって!!」

「え、でも・・・!!」

「いいから早く!!」

「逃がすかよぉ!!」

するとかっちゃんは麗日さんの方に矛先を向けようとした。僕はそんなかっちゃんに向かって叫ぶ。

 

「来いよ、かっちゃん」

するとピタッとかっちゃんの動きが止まった。そしてギギギと音を立てながらこっちを向く。

 

「今なんつったぁ…?」

「来いよかっちゃん。麗日さんなんか相手にせずかかってこい。目的は僕だろう! この僕を、完膚なきまで叩き潰すのが君の目的なんだろう? 来いよかっちゃん、個性なんか捨ててかかってこい」

そう言いながら僕は個性を発動する準備をする。

 

「いい度胸だなぁ、クソナードォ…。だったら望み通り完膚なきまで…ぶっ殺してやるよぉ!!!!

「来いやゴラァああああああああああああああああああ!!!!!! てめぇなんざ怖くねぇぞゴラァああああああああああああ!!!!!」

そう言いながら僕はシャボン玉を大量に生成してその場を走り出した。

 

「そんな小細工なんか効くと思ってんのかよぉ!!」

するとかっちゃんが爆破してくる。ぼくはそれをわきをすり抜けてよけるとシャボン玉を大量に生成しながらさらに勢いをつけて走り出した。

 

「逃げるんじゃねぇ!!!」

「これは逃げてるんじゃない!! かっちゃんに勝つための布石だ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

一方モニター室では。

 

「お、おい。あのシャボン玉は何だ?!!」

「あんなに大量のシャボン玉、一体どうやって・・・」

「いえ、あれは緑谷さんの手のひらから出ているように見えましたわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は階段を駆け上がりながら後ろをチラッと見る。すると勝っちゃんがちらりと見えた。それを見ると僕はソフト&ウェットを出現させると階段の踊り場でわざと少し待つ。かっちゃんがこっちを視認した瞬間、反対側に回って壁をS&Wで蹴り壊す。そして僕は再び階段を駆け上がる。後ろをチラッと見るとかっちゃんと目が合った。さすがかっちゃんだ。あれくらいじゃ妨害にすらならないか。僕はそう思うと再び廊下を走り出した。もちろんシャボン玉を大量に生成することは忘れないでおく。後ろで爆発音が聞こえる。

 

「そんなふざけた服着やがってぇええええええええええええええ!!!!! 俺をなめてんのかぁああああああああああああああああああああ!!!!」

カチンッ

 

「うるせぇええええええええええええええええ!!!!! かっちゃんに指図(さしず)されるいわれはないわこの野郎ォおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 

 

 

 

 

・・・そして今に至る。僕は廊下の端まで走りきると後ろを振り向いてかっちゃんと対峙する。僕の方はさすがに爆破を完全によけたり防いだりすることはできないから少し服が焦げてしまっている。まずいな、防火性と注文には書いていたけど防ぎきれてないみたいだ。クレームをつけておかないと…。

 

「おい、クソデクゥ…。よくも俺の手をこんなに(わずら)わせやがったな…」

おっと、そんなことを言ってる場合じゃなかったね。

 

「お前をぶっ殺してやるからよぉ・・・、そこで止まってろよぉ・・・」

「お断りだね。僕は勝てる可能性があるんだったらなくなるまで戦うつもりだけど?」

「じゃあ今すぐなくしてやるよぉ・・・しねぇ!!!」

次の瞬間、爆破が襲ってくる。僕はものすごく体勢を低くしてよけるとシャボン玉を空中に大量に散布しながら横に回り込む。

 

「逃すかよぉ!!」

かっちゃんはこっちに向かって手のひらを向ける。いや、僕の行く先に向けて手のひらを向けている。

その時、かっちゃんの目の付近でシャボン玉が一つはじけた。

次の瞬間、僕は急ブレーキして、かっちゃんは後ろを爆破した。僕は少しタイミングを遅らせて床にシャボン玉をうちこみながら爆破した方向に回り込む。そして僕はシャボン玉を口から出すとかっちゃんから見て後ろの方へ飛ばした。

 

『くらえかっちゃああああああああああああん!!!』

 

すると僕の声が再生された。かっちゃんは叫びながら後ろの方に思い切り爆破する。僕はその隙を逃さず走り出してラッシュをたたきこんだ。

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!」

「グッ・・・?!」

かっちゃんは殴られたと同時にこっちを向いてガードの態勢をとる。だけどS&Wはアッパーでガードを崩すと再びラッシュをたたきこんだ。

 

「オラオラオラオラアラオラオラオラオラオラオラオラオラオラアラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ、アラァアアアアア!!!!

そして思いきり最後の一発をたたきこんでかっちゃんを壁際まで吹っ飛ばす。かっちゃんは壁に激突するとそのまま動かなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方モニター室では。

 

「お、おい。なんなんださっきのは?!!」

「というより問題なのは爆豪だ! なんで急に後ろを爆破したりなんかしたんだ・・・?」

「・・・私には、シャボン玉がはじけているように見えましたわ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は拘束テープでかっちゃんを縛るとすぐさま核兵器のある所へ向かった。今たぶん麗日さんが必死になって足止めしてるとこだろう。急がないと…!

僕は階段を駆け上がる。そしてドアをたたき破ると核兵器のある部屋に侵入した。

 

「デク君!」

「フハハハハハハハハ!!何人来ても同じことよぉ!!」

ノリノリだね、飯田君。あと麗日さん、遅れてごめんね。

 

「ソフト&ウェット!!」

「・・・」ヒュオンッ

僕はS&Wを呼び出すと飯田君に向かって走り出した。

 

すると飯田君は拘束テープを発射してくる。僕はS&Wを前に出して防ぐ。その間に僕は一気に前に出て飯田君の懐に飛び込むと思い切りみぞおちに拳をたたきこんだ。しかしスーツの装甲に阻まれる。

 

「かてぇえええええええええ・・・・・・!!!」

僕はうめきながらすかさず太ももの付け根に思い切り膝蹴りをたたきこむ。ここで身長差が生かされるとは思わなかったよね。あとごめん。

 

「ぐぁあああ・・・・?!!!」

すると飯田君は太ももの付け根を押さえながら体勢を崩す。僕は拘束テープですぐさま縛ると麗日さんに声をかける。

 

「さわって」

「え?」

「核兵器。触って」

「あ、うん」

麗日さんは核兵器に触れた。コールド勝ち。僕たちの勝ちだ。

 

 

 

続く




緑谷(みどりや)出久(いずく)
パワー:C
スピード:B
知力:A
持続力:C
精密動作性:B
成長性:A
今作の主人公。
個性は「ソフト&ウェット」
原作のデク君より目つきが少し悪く、口はすさまじく悪い。特にあこがれているヒーローはおらず雄英にもただ入りたかったというふわふわした理由。正直言って何のために雄英にいるのか自分でも理解できていない感じ。たぶんこれから見つけてくれることだろう。
母親がミュージシャン「プリンス」が好きでそれにつられてよく聞いている。

ソフト&ウェット
破壊力:C
スピード:B
射程距離:D
持続力:B
精密動作性:C
成長性:A
スタンド像:人型
パワー分類:近距離パワー型
緑谷の個性。身長は高め。体重は無し。
爆豪勝己を毛嫌いしており、何かあるとすぐさま彼に向かって中指を立てたり親指を下に向けたりする。
基本的な能力はシャボン玉がはじけたとき、そこから何かを奪う能力。自立意思があるが基本的に緑谷に忠実。どちらかというと作者としては保護者兼相棒的立ち位置をイメージしている。



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戦闘訓練が終わった後の放課後の話

No I won't be afraid, no I won't be afraid.
べつに僕は恐くなんてないよ

Just as long as you stand, stand by me.
きみがそばにいてくれたらね
                  「スタンド・バイ・ミー」の歌詞より抜粋





あの後諸々の訓練が終わって放課後、僕は(保健室で寝ているかっちゃん以外の)全員に囲まれていた。うわ、圧迫感がすごい。苦しい。誰か助けて。

僕はちらっと助けを求めるように麗日さんを見る。すると麗日さんはキラキラした目で僕を見ていた。やめろ。そんなにきれいな目で僕を見るのはやめろ。やめてくれ。やめろください(懇願)

 

「あれモニターで見てたけどよ、どんなトリックだったんだ?」

「あれについてはは私も気になっていましたわ。どういう原理ですの?」

・・・やっぱりひ・み・つで通すのは無理かぁ。話すしかないか。

 

「あ、うん、そうだね。説明するよ。・・・僕の個性の名前は『ソフト&ウェット』。姿形の通り,

基本的に殴ったり蹴り飛ばしたりすることが攻撃方法だよ。だけど、S&W自体の攻撃力はそこまで高くないんだ。どちらかというと強力なのはこの個性が持つ能力の方だね」

『『『・・・(ゴクッ』』』

「能力は基本的に『シャボン玉が割れたとき、そこから何かを奪う能力』だよ」

『『『・・・は?』』』

やっぱりみんなこういう反応するよね。お母さんにもこの能力のことを行ってみたら呆然とした顔してたもん。

 

「あの時、僕はかっちゃんから"視力"を奪ったんだ。だけどかっちゃんは戦闘のセンスがすごく高いからそれだけじゃばれてしまう可能性があったんだ。だから次に床から"音"を奪った。次に僕の声を仕込んだシャボン玉を後ろに飛ばして僕の声を遅れて再生した。そしてかっちゃんが後ろを向いた直後にラッシュをたたきこんで吹っ飛ばした。・・・これがあの時僕がやったトリックだよ」

『『『・・・ハァアアアアアアアアアアアアアアアア?!!』』』

すると皆が騒然となった。うるさい。

 

「え?! 奪うってなんでも奪えんのか?!」

「ある程度のものは奪えると思うよ?

 僕が個性把握テストで滑ってたのは僕の体操服や靴から『摩擦』を奪ったからだし、八百万さんのバイクがパンクしたのもタイヤから『空気』を奪ったからだからね。

 ・・・もしかしたらもっと何か奪えるものはあるかもしれないけど、今でも大概のものは奪えるからあまり不便はしてないかな?」

「え、でも、基本的には奪うんだよね? なんで声を仕込むことができたの?」

僕は考える仕草をとると口を開く。

 

「んー・・・、僕の個性が発現したのは中学1年生の時だよ。そして2年間研究を重ねてたから、いつの間にか成長してたんじゃないかな。もともとシャボン玉も一個ずつしか出せなかったからね。これからも研究を重ねる予定だよ」

「しっかし…、強すぎじゃね? その個性」

「いや、自分にはシャボン玉の効果は適用されないからさ、強すぎってわけじゃないよ。・・・まぁ、傷口にシャボン玉を詰めこんで応急処置することぐらいはできるけど…」

「いやいやいや、それでも十分強ぇだろ・・・」

「それを使いこなしてる緑谷もすげぇよ・・・」

「私なんかいまだに自分の個性制御しきれてない部分あるのに、緑谷君ってすごいね!!」

「・・・」ドヤッ

するといつの間にか僕の後ろに出現していたS&Wがうれしそうな表情(多分)と態度(明白)をとりながら胸を張っていた。

・・・・・・・・・。

 

「いや、なんで君が胸張ってるのさ・・・」

すると皆がソフト&ウェットをじろじろと見始めた。

 

「こうしてみると…すごく細いね」

確かに。僕もたまーにそう思うし。

 

「俺の個性よりはすげぇ大きいけどパワーがなさそうだな」

「俺ナラコイツヲ小指一本デブッ倒セル自身ガアルゼ!!」

「おいこら!」

覚えてろよ黄色い奴。絶対報復してやる。

 

「これで爆豪君を殴り飛ばしたり0P仮想敵を破壊してたりしたのか・・・」

個性は使いようだよ、飯田君。君の個性だってキックやパンチと組み合わせればすごく強くなると思うよ。

 

「私の個性と全然違う・・・」

そりゃ違う人間だからね。

 

「ふむ・・・何か拳の威力をあげるような仕組みは見受けられないな…」

君喋れたんだ、常闇君。まぁ、シャボン玉を内側にもぐりこませて破裂させるって戦法ならあるけど。

・・・ふむ。

 

「ねぇ、上鳴君」

「おん? なんだ?」

「今日マック寄ってかない? 僕たちの個性についてたっぷり話したいし」

「おぉ、いいなそれ! なぁ、耳郎も一緒に行こうぜ!」

「おう」

「ねぇねぇ、うちも一緒に来ていい?」

「いいよ。麗日さんには今日だけでなく試験日にもお世話になったからこちらからお誘いしたかったんだけどね」

「え、うぇ?!」

「・・・俺もいいだろうか?」

「うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところでよ」

僕と麗日さんが注文したものを持って帰って席に座ると上鳴君が話しかけてきた。

 

「俺や耳郎、常闇に緑谷だな。俺たちの個性ってよ、今までない例じゃねぇか?」

「うーん、確かにねぇ。個性って普通は本体にくっついてるはずだからねぇ」

「じゃあさ、俺たちが新しくジャンル作ろうぜ。そしたら呼びやすいじゃん」

「・・・名案」

「そうだね。どんな名前にする?」

「あーん、そうだな・・・。言い出しっぺの俺が言うのもあれだけど、どんな名前がいいんだろうな?」

「分かりやすい名前の方がいいよね」

「そばにいてくれるからそれにちなんだ名前とかどう?」

「それいいね」

「・・・Standや」

「「「へ?」」」「…?」

僕たちは思わず麗日さんに訊き返す。すると麗日さんはカッと目を見開きながらこう言い切ったのだ!

 

Stand_by_me(そばに立つ)からとってStand(スタンド)や!」

 

するとその場にいる僕含む全員はすごい納得したような表情になった。

 

「いいな、それ!」

「私は賛成だよ」

「・・・(コクッ」

「採用」

「じゃあ僕たちの個性は『スタンド』ってことで」

僕がそう言うと4人はハンバーガーにかぶりついた。僕も遅れてかぶりついた。

 

 

続く





個人的に欲しいスタンドはTHE_WORLDですかね。


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いつの世の中でもマスコミは迷惑なもの

マスコミは、ペンで人を殺せる。
              野村克也






「オールマイトの授業はどんな感じですか!?」

「えっ?えっと・・・実戦を交えた素晴らしい授業ですわ」(八百万さん)

 

「『平和の象徴』が教壇に立っているということで、様子などを聞かせてください!」

「様子!? えーと……筋骨隆々のマッチョマンです!」(切島君)

 

「教師オールマイトについてどう思ってます?」

「最高峰の教育機関に自分は在籍しているという事実をさらに意識させられますよ。威厳や風格はもちろんですが他にもユーモラスな部分等、我々学生は常にその姿を拝見できるわけですから。トップヒーローとは何をもってしてトップヒーローなのかを直に学べるのもまたいいところだと思います」(飯田君)

 

 

 

・・・皆クソまじめだなぁ。僕は少し離れてその光景を見ていた。目線の先にはマスコミにもみくちゃにされて質問に答えているクラスメイトの姿が!

 

・・・これはすごく個人的な話だけど、僕は元来マスコミというものがあまり好きじゃない、というより嫌いだ。奴らは真実を曲げて(脚色して)全国民に伝えるからだ。情報の信憑性(しんぴょうせい)で言うとツイッターやラインの方がまだ高い方だ。ま、ネットの情報も丸のみにしちゃいけないけど。しかもインタビューするとき本人の意思を無視して話しかけてくる。そして断ったらまるで悪い者扱いだ。言論の自由とかほざいてずかずかと言いたくない部分にも上がりこんでくる。これだからマスコミは好きじゃないし、むしろ嫌いなんだ。

と言ってても仕方がない。行くしかないかぁ・・・。うわぁ・・・、やだなぁ・・・。

 

「オールマイトの授業はどんな感じですか!?」

ほら来た。

 

「すいません。急いでいるので後にしてもらえませんか?」

「そこをなんとか・・・」

「いや、ほんと。急いでるんで・・・」

「お願いします!一言だけ!一言だけでいいんです!」

 

イラッ「やかましい! うっおとしいぞこのアマァ!!」

 

『『『?!!!』』』

よし、みんなビビったな。今のうちに学校に入ろう。

 

 

 

 

 

 

 

そんなことはあったけど、僕は教室に先生が来るまでソフト&ウェットと指相撲をしていた。今のところ50回中25回が僕の勝ちである。友達がいなかった僕にとっては中学校はまさに格好の個性を研究できる時間だった。そして個性と一番向き合える時間が長かったともいえる。

 

「緑谷・・・、何してるんだ・・・?」

するとそこに上鳴君が話しかけてきた。後ろには耳郎さんも一緒だ。

 

「指相撲してる」

あ、指押さえ込まれた。これはまずい。

 

「なんで・・・?」

「これ意外とトレーニングになるんだよ。指先の動きも細かくなるしね」

あ、これなかなか外れねぇ。

 

「WRYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!!!!」

「「?!!」」

あらやだ。思わず叫んでしまった。あ、負けた。

 

「・・・」ドヤッ

「・・・」

なぜかむかついたので軽くペチンとビンタしてやった。するとそこに相澤先生ことイレイザーヘッドがやってきた。

 

「お前ら席につけー」

すると皆ガタガタンと席についた。

 

「突然だがお前らに学級委員長と副委員長を決めてもらおう」

『『『よっしゃあああああああああああああああああ!!!!!』』』

すると教室が沸いた。

そして口々に叫ぶ。峰田君が破廉恥(ハレンチ)なことを言っていたが女子に制裁されていた。

 

「静かにしないか!」

全員が静かになった。ぅゎぃぃだくんつょぃ。

 

「人を牽引(けんいん)する重大な仕事だぞ。やりたい者がやれる仕事ではないだろう!真のリーダーを皆で決めるというのなら、これは投票で決めるべき議案のはずだ!」

そうだね、確かにその通りだよ。だけどね、だからこそ僕はあえて言わさせてもらうよ?

 

「・・・なんで手ぇ挙げてんの、君」

やりたいって気持ちが行動に駄々洩れだよ。それさえなけりゃあかっこよく決まってたのに・・・。

結局、多数決で決めることになった。投票制だ。資本主義の典型例だな。そんなことはどうでもいい。それよりも・・・。

 

 

 

「すいません・・・。僕、辞退してもいいですか…?」

この状況をどげんかせんといかん。

 

「だめだ」

「だめぇ?!」

「・・・仕方がない。非合理だがなんか理由を言え」

「へ?」

「理由次第では保留ということにしておいてやる」

「あの・・・、学級委員長は飯田君が言うようにホントに責任重大な仕事なんだってことは僕も理解しています。だからこそ、僕じゃ力不足だと思うんです。それに」

「それに?」

「まだ個性の研究をしなくちゃいけませんし・・・」

「・・・」スッ

するとS&Wが僕の頬を後ろから軽く撫でた。

 

「・・・なるほど、いいだろう。保留にしておいてやる。ただし、下校時刻までに委員長を譲る人は決めておくように」

そう言うと相澤先生は授業に移った。というよりあんな理由で本当に大丈夫だったのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして授業も終わって昼休み。

 

「今朝のデク君すごかったねぇ」

「見てたの?麗日さん」

「うん、見てたよぉ」

「その、何があったんだい?僕はよく知らないんだが」

「あ、俺も俺も」

「私も気になる」

「・・・(スッ」←手をあげる。

すると麗日さんは話し始めた。

 

「マスコミのリポーターさんがねぇ、デク君に話しかけるんや。それに対してデク君あまり乗り気やなかったんやけど話を聞かずに詰め寄ってなぁ・・・そん時なん言うたと思う?」

「「「「?」」」」

『やかましい! うっとぉしいぞこのアマァ!!』って言うたんよ~」

すると皆が僕を見た。キャッ、恥ずかしい。

 

「マジで?!すげぇ漢らしいなお前!!」

切島君、いつの間に隣に座ってたの? あと顔近いよ。むさくるしい離れろ。

 

「それなかなか言えないよぉ? 私なんか個性使おうって考えたもん」

君は警察やプロヒーローにお世話になりたいのかい?少なくとも僕は嫌だよ。

 

「私もそれくらい言えるようになれたら…」

八百万さん、別に目指さなくていいと思うよ。

 

「ところでさ、飯田君」

「?なんだい?」

「さっき自分のこと『僕』って言ってたけど・・・飯田君って坊ちゃんなん?」

その言い方だと僕も坊ちゃんってことになるんですかねェ…?

 

「ウッ?!そ、その言い方は少しやめてくれないかな…?」

本人にとってはけっこう図星だったみたいだ。

 

「ゴメンゴメン。ウチ、思ったことがつい口から出ちゃうけん、許してな?」

「いいよ、大丈夫。隠してたのは僕の方だしね」

すると飯田君は話し始めた。自分がかの有名なヒーロー『インゲニウム』の弟であることを。

まぁ、少しテンション上がるよね?まさか近いところにヒーローの身内がいるって聞いたら誰だって少なくともテンション上がるだろう?

 

「わっわっ! そんな! こんな身近に有名人の親族の方がいるなんて! 流石雄英やね!」

「良ければ今度、遊びに来るかい?」

「え、いいん?! うわぁ、緊張するわぁ…!どんな服で行けばええんやろぉ…」

「自然体でいいんじゃないかな? 兄さんも結構フランクな人だしね」

「ねぇ、デク君!」

「ん、え、なに?」

「デク君も一緒に来てや!」

「えっ?」

なんで僕に?

 

「うちだけじゃ不安やし、それにデク君も行ってみたいって顔してたで?」

「せやろか・・・」

「せやせや!」

するとサイレンが鳴り響いて放送が流れる。

 

『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難してください』

 

・・・・・・は?

僕がそうして少し呆然としている間にも皆は大混乱に陥っている。

 

「で、デク君」

「へ?なにかな?」

「ど、どないすればええん・・・?」

「さぁ・・・」

「皆、ここにいたのか!」

するとなぜかこっちに戻ってきた飯田君が僕たちに話しかけてきた。ついでに上鳴君と耳郎さんは人ごみに流されていた。

 

「この騒動の原因はマスコミだ! マスコミが流れ込んできたんだ!」

・・・そうか、ふむ・・・。

 

「・・・飯田君」

「なんだい?」

「この場を収めるいい方法を思いついた」

「え?!」

「それは本当かい?! それでいい方法って言うのは・・・?」

「麗日さん」

「ヘッ、ウチ?!」

「君の協力が必要不可欠なんだ」

僕は手を取りながら言った。

 

 

その後、飯田君は非常口(のポーズ)になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕、飯田君を委員長に推薦します。もともと飯田君に票を入れていましたし、それに彼なら委員長にふさわしいと考えたからです」

飯田君なら規律を重んじてくれるだろうと考えた結果でもあるけれど、もっともいうべきところは飯田君の声で皆が収まったということだ。

 

「・・・いいだろう。飯田」

「はい!」

「やれるか?」

「やってみせます!」

「・・・お前らの中で異論は?」

「あ、良いんじゃね?! 非常口飯田なら大丈夫!!」(上鳴君)

「いいぞガンバレ非常口!」(耳郎さん)

「大丈ー夫!! 飯田くんならどんな非常時も非常口になってくれる気がする!」(芦戸さん)

こうして飯田君は委員長の地位と非常口という非常に分かりやすいあだ名を手にしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして放課後、僕と麗日さんと上鳴君と耳郎さんでマックに寄っていた。

 

「今回のあの騒動、僕は何か裏があると思うんだ」

「え?裏?」

「うん。平面の紙に表や裏があるように物事にも『裏』『表』があるんだ。だからたぶん今回の騒動、何か裏があると思うんだ」

「例えば、どんな?」

「んー・・・、例えばって言われてもなぁ・・・思いつくもので言ったら何者かがセキュリティーを破壊してマスコミを誘導した、とか?」

「・・・それってありえるのかぁ?」

「ありえないことはありえないだよ、上鳴君。今は個性が普通に社会でてんやわんやしてる時代なんだ。それくらいあっても不思議じゃないよ」

「でも・・・、雄英のセキュリティーは世界的に見ても最高クラスやろ?それを破るなんてできるん?」

「それによ、誰が誘導したんだよ、マスコミを。それにその理由ってなんだ?」

「そこなんだよねぇ・・・」

「マスコミダロウガナンダロウガ結局ハ倒セバイイダロ!!」

「・・・」パチンッ

「――――――」パクパク

「ちょっと君は黙っててくれるかな」

「え、今なにしたん?」

「声を奪っただけだけど?」

「・・・やっぱりその個性強すぎるよ」

せやろか?

 

 

 

続く




上鳴(かみなり)電気(でんき)
パワー:C
スピード:B
知力:D
持続力:D
射程距離:D
精密動作性:D
成長性:A
個性は「帯電」と「レッド・ホット・チリ・ペッパー」。二つとも使いようによってはなかなかに強い個性だが同時に使うことはできないという欠点がある。
尊敬しているバンドは「レッド・ホット・チリ・ペッパーズ」。
作者的に彼を見た瞬間、このスタンドを持たせようと決めた。

レッド・ホット・チリ・ペッパー
破壊力:A
スピード:A
射程距離:A(少なくとも町一つ分は余裕)
持続力:A
精密動作性:C
成長性:A
スタンド像:人以外の生物型
パワー分類:遠距離操縦型
上鳴の個性。電気が主食。取り込めば取り込むほど強くなる。
お調子者でひょうきん者だが一度反省するととことん慎重になる。
塩分の入った水が苦手。理由は電気が分散してしまうから。



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バスの中での出来事

去年までのあなたは、どんな人でしたか?
去年までのあなたは、何をしていましたか?
きっと他人は、あなたの過去を見て、あなたを判断しようとします。
けれど、あなたまでそういう見方で自分を見てはいけない。
あなたは新しい。あなた自身を過去から引き離せば、きっと感じ方も変えられる。
羨ましく、憎らしいとばかり見えていたものが『素晴らしい』と思えるかもしれない。
                                マイケル・J・ロオジエ






僕の朝は早い。午前4時には起きて準備運動をした後、山に登って個性の研究をする。おかげで(みき)がボドボドになってるけど気にしない方向で。

 

「アラァ!!」

すると幹からバキィッといい音が鳴るとそのまま崩れ落ちた。

・・・・・・・・。

 

「さて、帰るか」

僕はそそくさと帰宅することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして学校に言って授業を受ける。

 

「次々ッ次の問題はぁ―――ッ!!!みどみど緑谷君!!!」

「③です」

するとマイク先生は数秒間円盤(?)を動かすと急に平坦な声でこう言った。

 

「違うな。答えは②だ」

傷つくわぁ・・・・・・・・。

 

「・・・」ナデナデ

あ、慰めてくれるの?ありがとう。でも今はそれが一番傷つくなぁ…。

 

「・・・」アワアワ

うん、ごめんね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでもって昼休み。麗日さんや耳郎さん、そして上鳴君に常闇君(いつものメンバー)で昼食をとっていると上鳴君が口を開いた。

 

「ふぉろふぉでさ」

「まずは口の中を(から)にしてからしゃべろうか」

そういうと上鳴君はもぐもぐと咀嚼(そしゃく)してから飲み込むと再び口を開いた。

 

「俺たちの個性ってよ、なんでこんな個性になったんだろうな」

「・・・僕は何でこんな個性になったのかわかんないなぁ。だってさ、中学の時だよ?個性が発現したの」

「え、嘘、マジで?!!」

「マジマジ、(おお)本気(マジ)よ。それから2年間で必死に研究したんだから。さては聞いてなかったな?」

すると上鳴君は少し焦ったように弁解し始めた。

 

「あ、あん時は能力の方に意識が向いてたからよ、ごめんな。ていうか、え?たった二年間でそこまでもか?!」

「いや、ここまで『しか』まだできてないんだ。もっと研究しなくちゃいけないと思ってるよ。ところで話ずれてるけど」

「あぁ、そうだったな。俺がこいつが発現したのが小学校の時だったんだよ。いつの間にか俺の隣にいた。そして話しかけてきたんだ」

「私は幼稚園の時に来たよ。その時はだったけど」

「卵ぉ?!」

「うん、卵。家に帰ったらこれくらいの(※手を広げながら大きさを示す)大きさのがドンっておいてあるんだよ。叩いてもびくともしないわけ。気味悪がってお母さんに訊いてみても全然わからない。怖くなって庭に捨てたんだけど次の日にはもう私の部屋にいた!いや、あれだよね。びっくりするしかないよね。そんなこともあって小学校6年生になったら卵が割れてたんだ。びっくりするしかないわな!!それd「長い長い、次」えっ・・・」

ちょっとショックを受けた耳郎さんに対して放課後改めて聞くからとフォローを入れておいた。

 

「・・・俺か」

「そう、君」

「・・・俺の分身(個性)が生まれたのは今から10数年前のことだった・・・。というより女神(母さん)が言うには赤子の時にはすでにいたらしい」

あ、これは話が長くなりそうだな、と僕たちは思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休みが終わって今は午後の授業。

あの後全部常闇君がしゃべってくれたおかげで麗日さんから話を聞くことができなかった。

 

「今日のヒーロー基礎学だが……俺とオールマイト、そしてもう一人の三人体制で見る事になった。内容は災害水難なんでもござれの人命救助(レスキュー)訓練だ!」

そして今教壇には相澤先生が立っており、雰囲気もオールマイトの時とは違って少し締まってるような、そんな感じがする。

 

「今回の授業でコスチュームを着るか着ないかは個人の判断に任せる。中にはかえって活動を邪魔するようなコスチュームもあるだろうからな。訓練場は少し離れた所になるからバスに乗っていく。以上だ。準備開始」

するとクラスの皆はケースをもって教室から出て行った。僕も急いでケースをもって教室を出ようとする。

 

「おい、緑谷」

「へ、あ、はい。なんですか?」

すると相澤先生に呼び止められた。なんでだろ、僕の覚えでは何か後ろめたいことをした覚えなんてないけどなぁ。

 

「・・・お前は何でここ(雄英)に来た?」

「…はい?」

思わず聞き返してしまった。

 

「お前は確かに個性を完全に使いこなしている。そしてそれを幅広く利用している。ソレはいい。それはすごくいいことだからな。だがな、お前自身は空っぽに見える」

「・・・?」

「・・・言い方が悪かったな。緑谷、今お前に『夢』はあるか?」

「夢、ですか?もちろんヒーローn「嘘だな」」

せめて最後まで言わさせてくれてもいいんじゃないですかねぇ…?

 

「知ってるか?人間は嘘をつくとき、絶対に目が左に一瞬だけむくんだ」

そうなのか、知らんかった。

 

「・・・緑谷、もう一回聞くぞ。今のお前に『夢』はあるか?」

「・・・ッ」

僕は答えれなかった。そして先生に何か言われた気がするがいつのまにか更衣室にいた。

 

「あ、着替えないと」

僕はすぐに服を脱いでコスチュームに着替える。

 

「あ―――――!!!」

すると急に峰田君が声を上げた。

 

「どうした、峰田」

上鳴君が話しかけると峰田君は何やら興奮したような顔つきでしゃべり始める。

 

「なんで緑谷が女じゃねぇ~んだよぉ~~~~~~!!」

何を言ってるんだ、こいつ。

 

「普通よぉ、セーラー服は女が着るもんだろぉ?! なんで男の緑谷が来てるんだよぉ!!!!」

何言ってるんだ、こいつ。

 

「セーラー服は巨乳の女が着ると非常においしいんだよぉ!! なんたって胸で服が押し上げられてへそが見えるからなぁ!!それがまたいいんだよぉ!!!」

何言ってんだ、こいつ。

・・・というより。

 

「おい、誰かこいつを締め上げろ」

こいつ、言いたいこと言わせておけば僕のコスチュームにケチつけやがって(※違います)、もう許せんぞオイ!

 

「おいらは悪くねぇ! 性別が男のこいつが悪いだけだい!」

・・・もう面倒だ。こういう奴は無視するに限る。

 

「くたばれ変態」

僕はそう吐き捨てると集合場所へ急ぐことにした。後ろからの視線が少し痛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕が集合場所について少しゆったりしていると麗日さんが僕に話しかけてきた。

「・・・デク君、どうしたの?」

「えっ、なにが?」

「なんか眉間にしわ寄せてるけど・・・なんか悩みでもあるん?」

「あぁ、そんな顔してたんだ、僕」

「なんかあったん?」

「・・・麗日さん」

「なんね?」

「変態には気をつけてね」

「???」

ああいう変態は抹殺すべきだと僕は今思った。人のコスチュームに文句なんぞつけやがって(※違います)。あの野郎、事故に見せかけていつか絶対()ってやる。

 

「このバスに乗って移動するぞ」

いつの間にか合流していた相澤先生がバスを親指で指しながら言った。僕たちは次々と乗り込んでいく。なんか飯田君が嘆いてる気がしたが気のせいにしておいた。

 

「しっかし、爆豪もそうだけど、蛙吹みたいな生物型の個性も良いよな。一つの個性で色々な事が出来るからよ。俺の個性の『硬化』は対人じゃ強えけど、いかんせん地味なんだよなー」

「地味とか地味じゃないとか関係あるの?」

「あるに決まってるだろぉ? 派手だったらその分だけかっこつけやすいじゃねぇか」

「・・・僕はそう思わないけどな」

「え、なんでだ?」

「ここで例えさせてもらうけど轟君やかっちゃんの個性は確かに強力だよ。だけどね、派手なんだ。それがダメなんだ」

「んだとゴルゥアッ!!」「・・・」

「話は最後まで聞いた方がいいと思うよかっちゃん。別に君自身についてなんか言ってるわけじゃないし。まぁ、話を戻すけどあまりにも派手だとさ、いざこっそり動きたいときに動けないじゃん」

「・・・アー、なるほど」

「動けるわゴラァ!!」

「あぁ、そう(無関心)。それに、ただ単純に破壊力が高い個性だとそのあとの損害賠償とか馬鹿にならないと思うよ?」

するとかっちゃんは沈黙した。あぁ見えてかっちゃんは案外みみっちいからこういうことを言えば黙ってしまうのを僕は知っている。

何年幼馴染してると思ってんだこの野郎。

 

「爆豪はなんで急に黙ったんだ?」

「かっちゃんは意外とみみっちいからね。損害賠償のことをちらつかせば大概黙るよ」

「・・・ケッ」

「すげぇよな、緑谷」

「なにが?」

「よくこんな奴と幼馴染でいられるよな」

「しょっちゅう面倒くさい奴だなとは思ってたけどね。今でも思ってるよ」

「だよなぁ。こんなクソを下水で煮込んだような性格だもんなぁ」

「お前のそのボキャブラリーは何だよ、死ね!!!」

すごいね、端的にかっちゃんの性格を表してる。やっぱり君はすごい奴だよ上鳴君。

 

「ねぇねぇ、緑谷君」

「ん、なにかな。蛙吹(あすい)さん」

「梅雨ちゃんでいいわ。・・・ところでお願いがあるんだけど」

「うん?」

「峰田君の処理を頼まれてくれないかしら?」

するとそこにはもう見るに無残な峰田君の姿が!!

 

「何があったの?!」

「聞かないでほしいわ」

OK、寒気が走ったんで聞かないことにします。

・・・しっかし、どうすっかなぁ。今ここで殺ってもいいと個人的には思うんだけどまだ犯罪者になりたくないからなぁ・・・。

 

「おい、緑谷の目がガチだぞ」

「アイツ、殺ると言ったら殺るという『凄み』がある…!!」

なんか外野が騒いでるけどスルーしておく。・・・あ~、どうしよっかなぁあああ~~~。

・・・あ。

 

「僕にいい考えがある」

「うん」

「ヒーローになったら事故に見せかけて殺すというのはどうだろう」

すると皆がドン引きしたような表情になった。なんでだ。

 

「お、おおおおおおい緑谷ィ」

「なんだい峰田君」

「お前それマジなのかよぉ??!!!!!」

「まっさか―――、冗談だよ、じょ・う・だ・ん☆…2割くらいは

「お前さっきぼそって言ったけど聞こえてっからなぁ?!!」

「言っとくけどさ」

「おう」

「僕君に恨みしかないんだけど」

「」

「君にコスチューム馬鹿にされたのまだ根に持ってるからね。これは大人になっても忘れないよ」

「いやいやいやいやいやいや、コスチュームは馬鹿にしてねぇって! おいらはなんで緑谷が女じゃないのかっていう愚痴を叫んだだけであってだな…」

「最ッ低ですわ・・・」

「うわ・・・」

・・・・・・・・・。

 

「なんだそんな話か」

「へ?」

「僕はてっきりコスチュームを馬鹿にされたのかと思ってたけど、なんだ。僕の性別に文句言ってたのか。それくらいなら僕もここまで怒る必要性なかったね」

「いやいやいやいやいやいや、おかしいだろ?! ふつうそこは怒るとこだぜ?!!」

「僕にとってはこのコスチュームはお母さんがいてこそのコレだからさ、わかるでしょ・・・?」

『『『・・・あぁー・・・』』』

すると皆が納得したような表情になった。峰田君はほっとしたような表情になった。

 

「つまりおいらは将来殺されずに済むんだな…」

「今殺されそうだけどね、主に女子に」

「た、助けてくれぇ・・・」

「峰田君」

「?」

「僕、詳しいことは知らないけどさぁ」

「おう」

『身から出た錆』ってことわざ、知ってる? つまりそういうことだよ」

「自業自得とも言うな」

「そうそう、それそれ」

 

「もう着くぞ。そろそろいい加減にしろ」

『『『ハイッ!』』』

相澤先生の言葉に、峰田君以外の全員が元気よく答えた、もちろん僕も含む。峰田君は絶望したような表情になっていた。

 

 

続く





耳郎(じろう)響香(きょうか)
パワー:C
スピード:C
知力:C
持続力:D
射程距離:左右それぞれ6m
精密動作性:A
成長性:A
個性は「イヤホンジャック」と「エコーズ」。どちらも「音」に関係する個性であるが併用できない。上鳴と仲が良く、バンドや洋楽で話が盛り上がったりする。ちなみに彼とは中学からの付き合い。
尊敬しているバンドは「ピンク・フロイド」。
作者は「イン・ア・サイレントウェイ」と「エコーズ」のどちらにするかすごく迷った。

エコーズ
Act1
破壊力:E
スピード:E
射程距離:B
持続力:B
精密動作性:C
成長性:A
スタンド像:人間以外の生物型
パワー分類:遠距離操縦型
音を相手にしみこませることによってその人だけに音を聞かせ続ける。主に精神攻撃や集中力の妨害に使う。

Act2
破壊力:C
スピード:C
射程距離:B
持続力:B
精密動作性:C
成長性:A
スタンド像:人間以外の生物型
パワー分類:遠距離操縦型
擬音をはっつけることで音通りの効果を発揮する。なかなかに汎用性(はんようせい)に長けた能力である。




皆様、新年あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします。
今回の『柔らかく、そして濡れているデク』はどうだったでしょうか?皆様のご意見、ご感想をお待ちしております。


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悪意襲来

「ある人が言った‥‥‥。『俺達は【正義】のために戦うんじゃない。俺達は【人間の自由】のために戦うんだ』と」
             仮面ライダーウィザード第53話より仮面ライダーディケイド/門矢士






僕たちがバスから出るとそこには巨大なドーム状の施設があった。そして中に入ると宇宙服のようなものを装着した人が立っていた。

 

「自己紹介をしましょう。僕の名前はスペースヒーロー【13号】。主に救助などを専門としています。そして、この施設はあらゆる事故や災害を想定し僕が作った演習場です」

すごいな。これ全部先生が作ったんですか?

 

「名付けて、ウソの()災害や()事故ルーム()!!

オイ、さすがにアウトだろそれ。もしも某夢の国だったりしてみろ。全面戦争不可避だぞ。

そんなことを僕が思っている間にも13号先生は話をつづける。

 

先生が言うには、僕達は相澤先生の体力テストで『自分が秘めている可能性』を知り、オールマイトの対人訓練で『それを他人に向ける危うさ』を知る。その上で今回の授業で、『そんな力を人命の為にどう活用するか』を学んで欲しいとの事だ。

・・・すごい。この人は自分の個性が人のためにどう役に立つのかをしっかり考えた上でヒーローをしてるのか。そういえば最近巨大化できる個性のヒーローが爆誕したらしいけどその人はそんなことを思ってんのかな?

 

「君達の力は人を『傷つける為』にあるのではない。『助ける為』にあるのだと心得て今回の授業やこれからの授業を受けてください。以上! ご静聴有り難うございました」

すると賞賛の嵐と大きな拍手が先生を祝福した。

この人を見てるとなんとなくだけど、自分のヒーロー像がつかめそうな、そんな気がする。

僕たちは大きな期待に胸を膨らましていた。

 

――鬼気迫る相澤先生の声が聞こえるまでは。

 

一塊(ひとかたまり)になって動くな!13号、お前は生徒を守れ!」

相澤先生の背後に見える中央広場の噴水付近に突如発生した黒いもやの様な物体(?)の中から、ゾロゾロと大勢の人間が出てきていた。

僕は少し嫌な予感がして麗日さんの前にかばうようにして立つ。

 

「デク君・・・?」

「嫌な予感がする」

「何だアリャ? また入試ん時みたいな、もう始まってんぞってパターンか?」

「・・・いや、違う。あれは違う」

「デク君、どういうこと?」

「人の目を見れば悪意が『ある』か『ない』かなんて大体わかるんだよ。奴らには悪意が『ある』ッ!」

「緑谷の言う通りだ!奴らは(ヴィラン)だ!!」

すると上鳴君が声をあげる。

 

「敵?!! いくらなんでもヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホ過ぎるぞ!?」

その通りだ。いくらヒーローの『個性』にしか興味がない僕でもわかる。

そもそも雄英高校は多数のプロヒーロー、しかも全員実力ぞろいの精鋭たち、いわばプロの中のプロの連中だ。そんな学校にわざわざ堂々と昼間から乗り込んでくるなんて正気の沙汰(さた)とは思えない。となると・・・。

 

「それだけの計画をもうすでに練っているのか…?!!」

何か『目的』があってこその『計画』だ。つまり奴らには、もうすでにここに乗り込むほどの『計画』と『目的』が確立されていることになる。

 

「チッ・・・、昨日のあれはやっぱりクソ()どもの仕業(しわざ)か」

相澤先生が吐き捨てるように言う。

 

「先生、侵入者用センサーは⁉︎」

「もちろん、ありますが...?!」

「・・・なるほど。現れたのは『ここだけ』かそれとも『学校全体』か・・・どっちにしろセンサーが反応しねぇんなら向こうにそういうことができるヤツ(個性持ち)がいるってことだな。しかも校舎外で少数が入る時間割に対しての奇襲…馬鹿だが、アホじゃねぇ。これは何らかの目的があって用意周到に画策されたモノだ」

轟君、よく言った。僕は心の中で拍手を送った。・・・ん、待てよ?ということは・・・。

 

僕が恐ろしい事実に気が付く前に声が聞こえた。若い声だった。

 

「どこだよ...せっかくこんなに大勢、引き連れて来たのにさ…オールマイト・・・『平和の象徴』がいないなんて.....」

 

「子供を殺せば来るのかな?」

 

その声は純粋だった。純粋すぎてあまりにも大きすぎる巨悪。

 

正直に言おう。怖い。ただ純粋に、怖い。足が少し震える。

ヘドロの時はあんな恐怖を覚えなかった。もちろんかっちゃんの痴話げんかでもあんな恐怖は覚えなかった。

思わず声がこぼれる。

 

「やっぱり、オールマイトのことを・・・」

「なんだ、緑谷。何か聞こえたのか?!」

「聴こえたんです。あいつらオールマイトを探し(殺し)に来たって・・・。『僕たち(子供)を殺せば来るのかな』って・・・」

「ッ!!!! 13号、避難開始!学校に連絡を試せ!電波系の個性が妨害してる可能性がある!上鳴!」

「ッ?!!」

「お前も個性で連絡試せ!」

「ハイッ!」

すると上鳴君は耳に手を当てて通話をしようと試みている。あれ、通信機だったのか。

その間に相澤先生はゴーグルを装着すると敵に突っ込んでいこうとする。

・・・って。

 

「相澤先生、危険です! 先生の能力は多数対一だとあまりにも不利じゃないですか!!」

「わかっている、そんなことは。だがな、生徒を守るのが教師の使命だ。そしてどんなにリスクを負ってでも守るのがヒーローの使命だ。それにヒーローは一芸だけでは務まらん。おい、13号!あとは任せたぞ!」

そう言うと相澤先生は一気に敵に突っ込んだ。そして個性や技術を駆使して敵をバッタバッタとなぎ倒していく。その間にも僕たちは13号先生につられてゲートへ走り出した。しかし目の前に再び黒い(もや)が現れる。するとそこから黒い靄にスーツを着た男(?)が現れた。

 

「初めまして、我々は『(ヴィラン)連合』。僭越(せんえつ)ながらこの度、“ヒーローの巣窟(そうくつ)”たる雄英高校に入らせて頂いたのは……『平和の象徴』たるオールマイトに息絶えて頂きたいと思っての事でして・・・」

するとそんな男に無謀にもかっちゃんと切島君がとびかかった。

・・・って。

 

「あんのバカ共…!!」

「レッドホットチリペッパー!!」

「オウヨ!」

すると上鳴君はスタンドを呼び出すと切島君をつかませて後ろに放り投げた。

 

「うぉおおおおお?!!」

その間にもかっちゃんがお得意の爆破で攻撃を試みるが全て黒い靄に阻まれている。

 

「その前に俺達にやられるって事は、考えなかったのかぁ!?」

「危ない、危ない……。そう、生徒とは言え優秀な金の卵……」

「駄目だ! どきなさい、爆豪君!」

しまった・・・!かっちゃんがいるから13号先生が攻撃できないんだ…!!

 

「散らして……(なぶ)り殺す」

すると黒い靄の男は巨大な渦を作り出す。そして僕たちはその中に引きずりこまれた。

 

 

 

続く





常闇踏陰(とこやみふみかげ)
パワー:C
スピード:C
知力:B
持続力:A
精密動作性:C
成長性:C
黒いカラスのような頭をしている男子生徒。クールなたたずまいと中二的な言動は何とも言えないアトモスフィアを感じさせる。
個性は黒影(ダークシャドウ)

黒影(ダークシャドウ)
破壊力:A~E(普段はB)
スピード:A~D(普段はB)
射程距離:A~E?
持続力:A
精密動作性:C~E
成長性:?
スタンド像:人間以外の生物型
パワー分類:遠距離操縦型
正確に言えば『スタンドにすごくよく似た』個性だが、ここではスタンド型個性として扱う。
特にこれと言った特殊能力がないせいか非常に使い勝手がいい。ただし閃光などのに弱いという弱点が存在する。後、夜は暴走しやすいようだ。
個人的に思うことだがジョジョ本編にいたら真っ先に途中退場させられそうな能力である。


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緊急作戦:敵連合を撃退せよ!①

子供に殺しを教えることだけはごめんだ。
世界中の子供が正義だといって殺しを教えられたら、いつか世界中の人間は全滅するだろうな。
                                 手塚治虫






気が付くと僕たちは船の上にいた。

近くを見ると峰田君や梅雨ちゃんさんもいる。そして船の周りには敵がたくさんだ。・・・敵がたくさん?!

 

「二人とも!起きて!早く!」

「う、うぅ・・・」「ぐ、ぐぅ・・・」

僕は体をゆすりながら二人に呼びかけると二人は少しうなって目を開けた。

 

「」ビュンッ

「グェッ!!」

その間にもいつの間にか現れたソフト&ウェットが船に這い上がろうとしている敵を殴り倒していた。容赦ないね、君。容赦する必要性もないけど。

 

「お、おおおおおおいどうすんだよこれぇ!!」

「ケロ・・・・」

すると峰田君が状況を把握した瞬間泣き叫び、梅雨ちゃんさんは少し諦めの色が見えていた。

 

「二人とも、まだあきらめないで!」

「で、でもどうすんだよぉ?!!俺たちまだ対人訓練しかしてないんだぞぉ?!!マジモンの敵なんて相手したことなんかねぇんだぞぉおお?!!!!」

「悔しいけど、その通りよ。緑谷ちゃん。こんなにたくさんの敵に囲まれてるし、救助の見込みも薄い…。はっきり言って八方塞がりよ」

「・・・」

確かにそうだ。だけど、そんなにあきらめていいのか?僕だって心のどっかであきらめているのかもしれない。妙に冷静な部分がそれなのかもしれない。だけど、諦めたらそこでおしまいなんだ。

だからこそ言ってやるんだ。

 

「いや、策はある!」

「「?!」」

「ほんとかよ緑谷ァ!」

「あぁ、一つだけいい策がある!峰田君、君がキーなんだ」

「・・・へ?」

「梅雨ちゃんさん」

「なにかしら?」

「人をおぶって潜水することはできる?」

「一応できるけど…、何するの?」

「とりあえずおぶって!策はおいおいその時に説明するから!」

「ヘェアッ?!!」

「・・・わかったわ」

そう言うと梅雨ちゃんさんは僕をおぶって水中に飛び込んだ。そしてどんどん潜っていく。敵もそれにつられてどんどん潜水してくる。

僕はシャボン玉を一個口からポコッと出すと上で待機している峰田君に向けて飛ばした。そして次に大量のシャボン玉を敵に向かって放つ。すると敵の口からどんどん泡がこぼれていく。そして耐え切れなくなったように上へどんどん上がっていく。僕は梅雨ちゃんさんの肩をたたいて合図を送って離れたところから水面に上がるとモギモギの実をがむしゃらに投げつけている峰田君の姿が!

 

「峰田君!」

「あぁ、緑谷!終わったのか?!」

「うん。そっちもうまくいったみたいだね」

僕がそう言いながらボートに上がると峰田君が不思議そうに声をかけてきた。

 

「よし、逃げよう」

「チョ、ちょっと待ってくれよ!い、一体な、何が起こったんだよぉ!」

「私もよくわかってないわ。何をどうしたのか教えてほしいわ。ケロッ」

「あぁ、あれはね・・・」

そう言いながら僕はボートの操縦席をいじる。

 

「・・・なにしてるのかしら?」

「とりあえずボートを動かそうと思って。これ使えば岸に早く着くでしょ?」

「ボート操縦したことあるの?」

「いや、全然」

「ゑ」

「そもそもボートに乗ったこともほとんどないし仕組みもさっぱりわかんない」

「え、それ大丈夫なのかよ・・・」

「峰田君に梅雨ちゃんさん」

「「?」」

『背に腹は変えられない』ッてことわざ、知ってる?」

「・・・おい、まさか」

するとエンジンがかかった。

 

「おぉ、かかった。案外やってみるもんだな」

「おい、本当に大丈夫なのかよ?!!」

「適当にいじくってれば何とかなるさ。もしも危ない時はすぐに船から脱出するよ」

「えっ」

「・・・あぁ、そうだ。あの時について説明するよ。

①まず潜って敵をおびき寄せて

②僕のシャボン玉で肺から酸素を奪って上に上がらせる。

③そのタイミングで事前に峰田君に飛ばしたシャボン玉で峰田君に指示を送る

④峰田君が捕まえる。

こんな感じ。おっ、動いた」

するとボートはすごい勢いで岸に向かって走り始めた。

 

「すごいな、緑谷!よくそこまで思いついたよな!」

「私もすごいと思うわ」

「いや、僕がすごいんじゃないよ。君たちがいてくれたおかげさ。この作戦は誰か一人でも欠けてたら実行できなかったからね・・・」

「ところでよ」

「?」

「これ本当に大丈夫なのかよ」

「速いわね」

「オ、もうすぐ岸につきそうだ。ブレーキを…ブレーキを…」

「どうしたんだ緑谷?」

「・・・ねぇ、二人とも」

「「?」」

「ブレーキってどうかけるの?」

「「えっ」」

「全然止まらないんだけど」

そんなことを言ってる間にも岸が目の前だ。・・・って。

 

「逃げろぉおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!」

「うわぁああああああアあああああああああッ?!!!!」

「ケロォオオオオオオオオオオオオオオオオッ?!!!!」

僕たちは急いで水の中に飛び込んだ。ボートはそのまんま勢いを殺さずに岸に派手に突っ込んで見事に大爆発、大破した。

・・・・・・・・。

 

「まるで大ヒットだ」

「言ってる場合か緑谷ァ!!」

「ボートがなくなっちゃったわ…」

「だったら泳げばいいだろう! 岸はすぐそこだ!」

「そんなぁ・・・損害請求されたらどうすんだよぉ・・・」

「そん時はよく訓練された敵がやりましたって言えばいい。これはやむを得ない犠牲だったんだ。コラテラルダメージってやつだよ、峰田君」

「・・・お前って結構えげつないよな」

さて、なんのことだか。そう心の中で思いながら岸に這い上がると近くにあったマップを見た。

 

「最短ルートはここをこうしてこうだね」

「そうなると私の苦手なエリアを通ることになるわ」

「俺は気体と液体以外なら何でもくっつくからあまり関係ねぇな」

「風が吹いてる場所はあまりいただけないなぁ」

「ケロッ、なんでかしら?」

「シャボン玉がどっかヘ飛んじゃうことがたまーにあるから」

「ケロッ、納得したわ」

「とにかく、弱点がどうこうとか言ってられないよ。オールマイトがいつ来るのかもわからないし、それに相澤先生もどこまで持つかわからないからね」

「なんでそう思うんだよ。先生を信用してないのか?」

「してるよ。してるさ。だけどね、疑いの目は必要最低限持つべきだと僕は思ってるんだよ。そんなことはどうでもいいからさっさと行くよ」

「え、そっちに行くのか?こっちの方が近いだろ?」

「・・・僕のゴースト(スタンド)がささやくんだよ。こっちの方に行けってさ」

「?!」

「いや、お前の個性素で驚いてるみたいなんだが・・・」

「そんなこと言ってる場合か。さっさと行くよ」

僕たちはこの場をあとにした。後ろで再び爆発が起こった気がしたけど気のせいにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして各々(おのおの)走っていると山岳ゾーンにたどり着いた。するとそこには人質にされている上鳴君とそれに対して手を挙げている八百万さんと耳郎さんの姿が!

 

「ど、どうする?」

「ここは僕に任せて」

「ゑ」

僕は靴の裏にシャボン玉を撃ち込んで『音』を消すと敵の後ろにこっそりと回り込む。よし、どうやら気づいていないみたいだ。八百万さんと耳郎さんは少し驚いたような表情をしていた。僕は口元に人差し指を当てながらソフト&ウェットを出現させると一気に首を締め上げながら拘束する。

 

「グェッ」

なんか蛙がつぶれたような声がした。僕は正面に回り込むと上鳴君と敵を引きはがす。

 

「大丈夫?!上鳴君」

「ウ、ウェ~~~~~~~~~~~~イ」

「?!!」

はっきり言って異常だった。どこが異常かってまず垂れ下がった両目は焦点が全く合ってないし、口はだらしなく開いた状態を常にキープしてるし、鼻水と涎を延々と垂らしてるからばっちぃし、サムズアップした両手をひたすら前後に動かし続けているし、とりあえずまぁとにかく異常だった。

 

この時、緑谷出久に電流走るッ!!

 

まさか・・・コイツの仕業かッ!僕はそう思いながらいまだに拘束している敵を見る。間違いない、こいつの仕業だ!(※違います)こいつのせいで上鳴君は頭がおかしくなってしまったんだ!

絶対(ぜって)ぇ許さねぇ…!!

 

僕は拘束されている敵の胴に思い切り蹴りを入れる。

「グェエッ?!!」

「「「「?!!!」」」」

「貴様だな!貴様が上鳴君をこんな風にしたんだな!!」ゴッ

「ち、違う!俺じゃない!」

「キ・サ・マ・だ・な!」ドガッ

「違う違う違う!!!」

「じゃあなんでこんな風になってるんだ!恐怖のせいで頭がおかしくなったんだぞどう責任を取ってくれるつもりだこの野郎!!」ユサユサ

「違うんだ!俺が来た時にはあいつはすでにあんな感じだったんだ!!」

「言い訳するなぁアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!」

僕は怒りに任せて思い切り左フックを顔面に叩き込んだ。

 

「グェエエエエエエエエエエエ?!!!」

「正直に吐けこの野郎!!今ならとりあえず半殺しで済ましてやる!!」

「こ、この、クソッタレがぁあああああああああああああああああああああああああッ!!」

次の瞬間、僕の体に思い切り電流が走った。

 

「うがぁああああああああああああああああああッ?!!!!!」

僕は思わずふらついてしまう。だがしかし!僕は踏ん張った!S&Wも耐えてるんだ!僕も耐えなくちゃ意味がない!そして僕には上鳴君の仇をとる使命がある!(※死んでません)

 

「これは上鳴君の分だ!!」

「グボァ?!!」

「これも上鳴君の分だ!!」

「ゲボォ?!!」

「これもこれもこれもぉ―――――――――ッ、ま・と・め・て・返すッ!!」

「ヤッダーバァアァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」

そのまま敵は上空に打ち上げられて地面にべちゃっと落ちた。僕はそっと口元に手をかざす。よし、息はある。

 

「仇はとったぞ上鳴君!」(※もう一回言いますが死んでません)

僕はそう言いながらウェイウェイ言ってる上鳴君に駆け寄る。

 

「あ、あの・・・」

「なに?八百万さん」

「あの・・・非常に申し上げにくいのですが、上鳴さんは本当に敵の仕業でこうなってるわけではありませんわよ・・・?」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・。

・・・・・・。

 

「は?」

「だから、上鳴さんは自分の“個性”を使った後で、反動で自然にそうなってしまったんですわ」

「そうそう。オールマイトの授業でもまだ『ウィける』とか言ってて少し怪しかったし。まぁ、あの時はスタンドがカバーしてくれたんだけどさ」

「じゃあなんで今はいないの?」

「一人一人に攻撃するより全体に一気に攻撃した方が効率がいいからじゃない?」

・・・。

 

「えっと・・・、つまり・・・僕のあれは無駄手間だったと…?」

「・・・言いづらいですけど、そういうことになりますわね」

・・・・・・。

 

「・・・ロープ」

「え?」

「八百万さん、ロープ」

「え、あ、はい。すぐにお創り致しますわ!」

すると八百万さんのおなかからするするとロープが出てきた。僕はそれを使って敵を拘束すると腹いせに蹴りを一発入れておく。

 

「「「「?!!!」」」」

「このこのこのこのこのこのこのこのこのこの」

僕はそのままゲシゲシと蹴りつけておく。この、二度手間三度手間かけさせやがってこの野郎。ややこしいことしやがってコイツ。

・・・ふぅ。

 

「よし、行こう」

「「「「え?!」」」」「ウェッ?!!」

「ここでぐずってても仕方がない。早く先生のところに行かなくちゃ」

「え、他のクラスメイトは?!」

「大丈夫でしょ。僕信じてる」

「聞こえ『だけ』はいいよね、それ」

アーアーキコエナーイ。すると誰かが肩をポンッとたたいた。

 

「誰だぁ!」

僕は思わず後ろを向く。

 

「ご、ごめん!私だよ、私!」

するとヒーロースーツがスゥ…と現れた。

 

「もしかして・・・葉隠さん?」

「そうそう。私だよ、葉隠だよ!」

「そうなんだ。そっちは無事だった?」

「一応、ね。一人でここまで来ちゃった❤」

「ほかに誰かいた?」

「轟君がいたよ。危うく凍らされそうになっちゃった。しばらく一緒にいたんだけど分かれて行動することにしてさ。私たち他のエリアの増援に行くことにしたんだ!」

「葉隠さんの個性って詳しく知らないんだけど教えてくれない?」

「あぁ、そうだね。なんていえばいいのかなぁ・・・『自分も入れた周りのものを透明化する個性』と言えばいいのかな?」

「あぁ、なるほど。透明にして敵の裏をかくってことだね」

「そうそうそう!」

聞いてみるとなかなかに便利そうな個性じゃないか。

 

「談議に花咲かせてるとこ悪いんだけどさぁ」

「あぁ、うん、ごめん。早く行かないと、ね」

僕たちは走り出した。行き先はただ一つ。集合場所だった広場だ。

 

 

 

続く





葉隠透(※Ctrl+A推奨)
パワー:?
スピード:?
知力:C程度?
持続力:A
精密動作性:?
成長性:?
個性は『自分も入れた周りのものを透明化する』個性こと「アクトン・ベイビー」
とても明るく、元気な性格。ちなみにここの彼女は後述の能力のおかげで脱ぎ癖はない。

アクトン・ベイビー
破壊力:E
スピード:E
射程距離:なし
持続力:A
精密動作性:E
成長性:A
スタンド像:無像型
パワー分類:近距離特殊型
周りのものを透明化する個性。本人の感情の高ぶりにおうじて透明化する範囲も拡大・縮小する。一度半径内に入って透明になったものは、能力が解除されない限り透明のままである。
小さい頃は制御が一切できず本当に困ったようだ。
ちなみに彼女はスタンドを持っているという自覚がない。




実を言うと今回でUSJ襲撃編は終わらすつもりでした。ですがあまりにも長すぎるため分割することにしました。


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緊急作戦:敵連合を撃退せよ!②

強いやつは笑顔になれるぞ!
   仮面ライダー響鬼よりヒビキ/仮面ライダー響鬼






僕たちが広場に到着するとそこには倒れている相澤先生と徐々に近づいている黒い怪物の姿があった。

 

「まずい…!」

僕が走りだそうとした瞬間、赤いひもが相澤先生をぐるぐる巻きにすると一気にこっち側まで引っ張ってきた。そのヒモをたどるとなんと梅雨ちゃんさんの舌だった。意外!それは舌ッ!

 

「ケロッ、相澤先生は保護したわ」

「ありがとう。よし、これで気兼ねなくやれる」

「あぁ、そうだな」

あぁ、上鳴君復活したんだ。えがったえがった。

 

「行くよ、上鳴君」

「おうよ!」

僕たちは走り出した。僕と上鳴君が前衛、梅雨ちゃんさんや峰田君、そして耳郎さんは中衛、葉隠さんは後衛だ。

 

僕は跳び上がって怪物の振り下ろした拳をよけるとついでに黒い怪物の露出している脳みそにS&Wの拳をたたきこませておく。

上鳴君はスタンドを使って拳をいたるところに叩き込んでいる。耳郎さんは音をしみこませて妨害に徹している。

僕が着地して再び怪物にとびかかろうとした次の瞬間、後ろから殺気を感じた。思わず後ろ回し蹴りが炸裂(さくれつ)する。するとそこにはこっちに向かって手を伸ばしていたハンドマン(仮称)の姿が!

 

「さすがヒーローの卵だけある…忌々(いまいま)しい…」

「お褒めの言葉どーも。だけどね、こっちとしては全然嬉しくないんだわ、これが」

僕は首をゴキッと鳴らす。

 

「・・・」ジリッ

「・・・」ジリッ

僕とハンドマンはお互い向かい合ってじりじりと間合いを(はか)る。

 

「・・・」バッ

先に動き出したのはハンドマンの方だった。僕は構えなおして攻撃を(さば)きにかかる。

しかし、捌き切れずに何発かは命中する。すると不思議なことが起こった。触れられた部分の服がボロボロと崩れ始めたのである。

 

「お前…、まさか触れたら何かを分解できるのか…!」

こいつ、手をいつも開いたまま攻撃している…。つまり、5本の指すべてが触れないと個性が発動しないタイプか…!なら話が早い…!

僕は再び突き出してきたハンドマンの腕をつかむ。そしてもう片方の突き出された腕もつかむとクロスするようにして拘束する。

 

「グッ…?!」

僕は少しうなった敵を蹴って一旦弾き飛ばすと怪物の方に思い切り走りだす。狙いはうなじの奥にある延髄(えんずい)だ!

僕はソフト&ウェットを出現させると思い切りうなじにラッシュをたたきこむ。そして内側からくぐもった破裂音がした。

するとガクンッと怪物の体勢が崩れる。しかしすぐに立ち上がると今度は僕の方に襲い掛かってきた。

 

「なんだ、こいつ…!延髄を破壊したはずなのにすぐに立ち上がってきやがる…!」

ここで一旦説明しよう。

延髄とは、うなじの奥(より少し上付近?)にある脳の一部のことである。これには血液の循環や呼吸など自律的なことを勝手にやってくれる機能が備わっており、はっきり言ってしまえば生きるためにはとても重要な部分なのだ。もしここを破壊、傷をつけられたならばたちまち呼吸は止まり、血液は循環を停止し、死に至るであろう。それくらい重要な部分なのだ。

そして話を戻すが今さっき確かに延髄を破壊したはずだ。くぐもった破裂音が確かに聞こえたのだ。しかし、こいつはいったん体勢を崩しただけですぐさま襲い掛かってきた。こっから導き出されるのはたった一つ。

 

「こいつ、再生系の個性か…?!」

そうでもないと説明がつかないのだ。そう言ってる間にも怪物は僕に向かって拳を振り上げてくる。しかし、その拳が振り下ろされることはなかった。急に腕が地面にたたきつけられるように落ちたのだ。地面が少し陥没する程度には。

そしてよく見るとその腕には『ズシンッ』という音が張られていた。

 

「こ、これは・・・!」

耳郎さんのスタンドがやったのか…!擬音を張り付けてそれと同じ効果を発揮するなんて…改めて思うけどなんて汎用性の高い能力なんだ…!

すると僕の体がスゥ…と透明になっていく。

 

「えっ・・・」

「私だよ、私」

すると耳元で声が聞こえてきた。もしかして僕を透明化してるのか…?!いざ体感するとほんとにすごい能力だな…。

そして完全に透明になると怪物が僕を見失ったかのようにあたりを見回し始めた。よし、このすきにこっそりと…。

次の瞬間、僕と葉隠さんは衝撃で吹っ飛ばされた。そして葉隠さんが気絶したのか僕の透明化が解除された。

 

「?!」

姿は完全に消えていたはず…!なんで・・・!

僕は怪物をもう一回よく注意して『観る』ことにした。『観る』ということはとても重要である。

見る(Watch)』んじゃくて、『観る(Look)』んだ。

よく見るとクンクンと何かをかいでいるようなしぐさをしている。もしかして・・・。

 

「匂いか…!」

こいつ、『におい』でどこにいるのか判断してるのか…?!しかしそれだと『個性』が必要になってくるはず…!個人個人の『匂い』を正確に識別するためには特に(きゅう)(かく)に関する『個性』が必要になるはず…!ま、まさか・・・!!

 

「複合型か…!」

そうでもないと説明がつかない。あの異常なほどの再生能力も、この異常なほどの嗅覚も、あの異常なほどのパワーも…!

次の瞬間、僕の目の前に何かが着陸した。

僕は再び衝撃で軽く吹っ飛ばされる。土煙が巻き起こる。僕が地面をごろごろ転がってすぐに立ち上がった。そして着地した何かを見る。

 

「嫌な予感がしてね・・・校長のなg…いや、ありがたいお話を振り切ってやって来たよ。来る途中で飯田少年とすれ違ってね、何が起きているかあらかた聞いたよ。もう大丈夫だ。

 

私が来た!

 

それは『平和の象徴』、『吐き気がおさまる絶対的正義』とうたわれる男、オールマイトだった。

というより、飯田君はいつの間に抜け出してたんだろう? あの時見えなかったけど。

 

「...来たか、社会のゴミめ」

するとハンドマンは恨めしそうな声でうめいた。すごいこと言うな、こいつ。

次の瞬間、爆風が起こる。どうやら怪物とオールマイトの拳が激突したみたいだ。なんてパワーだッ・・・!

それはさておき・・・!

 

「お前の相手は僕だ」

「邪魔だな、ヒーローの卵…!特に厄介なのはお前だ…!」

そううめくようにつぶやくとハンドマンは僕に襲い掛かってきた。僕は指先に注意しながら攻撃を捌いていく。

その横ですさまじい衝撃波がしょっちゅう起こる。僕にはわかる。オールマイトは本気(マジ)だ。

 

「ところでさ」

「?」

「あの怪物、絶対にこのために用意したやつでしょ?『超再生』に『嗅覚』とか、こんなにハチャメチャな個性持ちがいてたまるかって話だし」

「・・・お前、観る目があるな。その通りだ。脳無はオールマイト(ヤツ)の100%にも耐えられるように改造された超高性能サンドバック人間さ。ちょっとやそっとじゃびくともしない」

「マジか」

改造された人間にちょびっとだけ同情するよ。

次の瞬間、風が巻き起こった。周りにある木々はその風により激しく揺れ、そこには気絶している葉隠さんがいた場所に殴った体勢をした怪物がいた。

そしてオールマイトが葉隠さんをかばっていた。口から血反吐を吐いている。

・・・なるほど。

 

「『馬鹿力』も個性に入れておくべきか…」

僕がそんなことを言っている間にもハンドマンはすごいニタァ…と笑いながら叫んだ。

 

「俺はなオールマイト、怒っているんだ。同じ暴力が『ヒーロー』と『ヴィラン』でカテゴライズされ善し悪しが決まる世の中に、何が『平和の象徴』だ!!所詮(しょせん)抑圧のための暴力装置なんだよお前はァ!!暴力は暴力しか生まないのだとお前を殺すことで世に知らしめてやる!」

すごいこと言ってるな、こいつ。

一方オールマイトはその叫びを無視して怪物の後ろに回り込むとバックドロップを決めた。すさまじい衝撃波が起こる。

しかし、土煙が晴れるとそこにはわき腹をつかまれて拘束されているオールマイトの姿が!どういう仕組みか知らないけど怪物の上半身がオールマイトの下から出てきている。

 

「目にも止まらぬ速度のあなたを拘束するのが脳無(のうむ)の役目、そしてあなたの身体が半端に留まった状態で"ゲートを閉じ引きちぎる"のが私の役目」

 

黒い靄の男がそう言った次の瞬間、僕と上鳴君は同時に走り始めた。僕たちの考えていることは同じだろう。あの怪物、のうむ、だっけ?それの筋繊維(きんせんい)をぶっち()って拘束を(ゆる)めるのが目的だ。すると目の前に黒い靄が現れた。

 

「浅はか、ですね」

そんな声が聞こえた。むかついたので僕は思い切りその靄の中に飛び込む。すると目の前に黒い靄をまとった男がいた。

 

「なっ・・・?!」

「浅はかなのはお前だ」

そう言いながら僕は思い切り奴の顔面を殴りぬく。

 

ベキィッ

 

入った!手ごたえが確かにあった!

 

「ぐぅ・・・!なかなかやりますね…!」

すると黒い男は殴られた部分を押さえながら少しうめいた。ざまぁみろ。

僕が怪物の方をチラッと見ると氷漬けにされていた。どうやら轟君が来たようだ。

すると拘束が緩んだのかオールマイトは脱出した。しかし怪物は無理やり起き上がる。すると凍らされた部分は粉々になり、再び新しい肉体が生えた。うぇ、気持ち悪・・・。

 

「なるほど・・・ショック吸収に超再生…、その他もろもろの個性が混ざり合ってるのか…!」

僕は再び戦慄した。あれは間違いなく無理な改造をされている可能性が高いと。ふつう天然であそこまでキチガイじみた個性の組み合わせは存在しないからだ。

 

「おや、あなたはなかなかに見る目があるようですね」

すると黒い靄の男はそう言ってくつくつ笑う。なんだよ、なめてんのか。

僕はそう思いながら再び殴りにかかる。しかし直前に目の前に再び靄が出現する。僕はソフト&ウェットを出現させると靄の上から思いきり殴りに行かせる。しかし、これはぎりぎりガードされた。ここでパワーのなさが露呈するか…!!

 

「あなたのソレ、なかなかに速いですね…!」

「誉め言葉どうもありがとう。だけど今はうれしくないかな…!」

そう言いながら僕はいったん距離をとる。しかし後ろからまた殺気を感じた。

 

「ッ?!!」

僕が跳び退くとそこには黒い靄から手を伸ばしているハンドマンの姿が!

 

「まさか気づくなんてな…忌々しい…」

「チッ・・・!」

僕は思わず舌打ちする。さすがに2体1じゃあ分が悪すぎる…。いや、正確に言えば2対2(?)だけどS&Wは基本的に僕から離れれないからどうしても動きに制限がかかるんだ。

 

そうしている間にオールマイトが黒い怪物を吹っ飛ばして勝っていた。何なんだ、あの人。正統派ごり押し戦法を直球ストレートど真ん中で行ったぞあの人。

 

「・・・あーあ、ゲームオーバーだ」

そう言ってハンドマンは首をがりがりとかきむしると黒い靄の人に何かを話しかける。すると黒い靄の人が靄を発生させてそのまま中へ入って行った。

・・・終わったのか。あまり実感わいてないけど。

すると僕は膝から崩れ落ちた。あれっ・・・?

僕は地面を見る。すると血がしたたり落ちていた。まさかあの時、僕の肉体も崩壊されかけてたのか…?!

 

「デク君!」

 

あ・・・、麗日さん・・・。

僕は意識を失った。

 

 

 

続く




爆豪勝己
パワー:B
スピード:B
知力:A
射程距離:A
持続力:C
精密動作性:D
成長性:C
個性は「爆発」
傍若無人な性格で興味のない人間を「モブ」扱いし、緑谷を「デク」「クソナード」呼びしている。
当初作者としてはキラークイーンを持たせたかったがかっちゃんは絶対スタンドを使わないだろうし宝の持ち腐れになると判断してやめた。


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襲撃のその後

というのは、不断の寛大なる行為である。
つまり、いついかなる時にでも、決して柔和な表情を失わぬことである。
                       ピーター・ユスティノフ

襲撃の後の職員室での会話
「ところで相澤君」
「なんです?」
「今だからこそいえなかったことがあるのだがね、私はあの時、あの怪物に拳を叩きこんだだろ?」
「はい、聞いたところによればそうらしいですね」
「あの後怪物の死体を確認してみたところ明らかに私が殴っていないところにも殴られた跡があったんだ」
「・・・どういうことです?」
「その言葉通りの意味だよ。それに私の拳が届いてないはずなのに拳が叩きこまれたりもしたんだ」
「それって本当なんですか?」
「あぁ。戦った私が言うのだから間違いない」
「・・・なんででしょうね?」
「さぁ・・・」








「コォォォォォォォォォォ・・・波紋!」チュッ

「ギャァアアアアアアアアアアアアアアアッ?!!!!」バチバチィ

保健室に僕の叫び声が響いた。

 

「ビリッてきた・・・!」

「はい、これで安静にしておくんだよ。治癒力回復にも限度があるんだからね」

「さ、さっきのはいったい・・・?」

「『波紋』さね。これで治癒力を高めたり年齢をごまかせたりするよ」

「・・・・・・・・・・今おいくつですか?」

「私がヒーローを始めたのが40年前さね。あとは分かるだろう?」

「・・・・・・・・」

年齢詐欺ってこういうことを言うんだろうなぁ・・・、と僕は思った。

そんなこんながあって教室に戻ると教室に残っていた麗日さんがすごく心配したような表情をしながら声をかけてきた。

 

「デク君大丈夫なん?!」

「うん、大丈夫だったよ」

「ほんとにぃ?うち心配したんやからね?」プンスコ

「ごめん…。次からは気を付けるよ・・・」

「ほんとに無茶したらあかんよ?」

「ごめん・・・」

すると僕の胸の中がすごくポカポカしてきた。・・・アレ?なんだろう、この感じ。すごい不思議な感覚だ。

 

「? どうしたん?」

「いや、なんでもないよ」

僕はこの感覚を帰ったらお母さんに聞くと誓って麗日さんと一緒に教室から出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、僕はご飯を食べながら口を開く。

 

「ねぇ、母さん」

「なぁに?」

「僕、友達ができたんだ」

「あら、よかったじゃない!」

「そのね、友達に麗日お茶子って子がいるんだけど」

「うんうん」

「その子に話しかけられるとすごい胸がポカポカするんだ。そして今すごい会いたい。この気持ちって何だろう?」

すると母さんはすごくほほえましいものを見るような目をしていた。

 

「出久、それはね、恋って言うのよ?」

「恋…?」

「そう、『恋』よ。例えばそのお茶子さん、だっけ?その子が他の男の子と一緒にいるところを想像してみたら?今あなたはどんな気持ち?」

・・・。

 

「すごい、もやもやする」

「そうよ、それが恋なの」

「これが、恋…」

「うんうん。でもよかったわ、出久が恋をしてて」

「・・・?」

「恋はね、すごく大切なことなのよ?」

「そう、なんだ」

これが・・・恋って感情なのか。

僕は顔が熱くなっていくのを感じた。

 

 

 

 

 

次の日から少しの間、学校がお休みとなった。まぁ、あんなことがあったら休みになるよね、仕方ないね。さて、どう過ごそうか・・・。

すると電話がかかってきた。僕はガチャッと受話器を取ると耳に当てる。

 

「もしもし、緑谷です」

『あぁ、緑谷少年かい?』

「・・・オールマイトですか?」

『あぁ、そうさ!私が来た!』

「えっと・・・、なんの用事です…?」

『今日からしばらくは学校が休みになる。君も知ってるだろう?』

「えぇ、はい。そうですね」

『そこで、お花見をしようと思い立ったわけだ!』

どういうわけだ。

 

『もちろん、見晴らしがいいところでお花見をしようと思ってるよ!そこでだ。君には少し食材を持ってきてほしい!』

「あ、はい」

『もちろん今すぐじゃなくていい!花見は明日だからね!機材は八百万さんに作ってもらうことになったし、ビニールシートとかは他の子たちが用意することになってね!君には食材を用意してもらおうと思ったんだ!』

「はい、わかりました」

『では健闘を祈ってるよ!』

すると電話はプツンっと切られた。・・・。

 

「・・・さて、買いに行くか」

僕は財布とケータイをもって家から出た。

 

 

 

 

 

~次の日~

 

「さぁさぁみんな、お花見の時間だ!」

『『『YEAHEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!!!』』』

テンション高いね、君達。特に男子側、かっちゃんまでテンションが高いとは思わなんだ。まぁ、笑顔はヴィラン顔負けなんだけどね。

・・・しっかし。

 

「きれいだな」

「せやね、綺麗やね!」

そう言いながら麗日さんはにこにこしていた。

 

「・・・君の方がきれいだよ」

「え、なんて言ったん?」

「え、あ、なんでもないよぉ」

危ない危ない。思わずぽろっと口から出てきてしまった。気ぃ付けないと。

 

「おーい、誰でもいいからポッキーゲームやろうぜー!!」

なんか峰田君が騒いでるけど無視することにした。

 

「ねぇ、デク君」

「ん、なにかな?麗日さん」

「・・・うちね、今一人暮らしなんよ」

「え、そうなの?!」

「うん。上京して安いアパートの部屋借りて暮らしてんねん」

「さらって言ってるけどさ、それってすごく大変なことじゃない?」

「まぁ、『住めば(みやこ)』って言うやん?それにな」

「?」

「いつまでも父ちゃんと母ちゃんに甘えてちゃいけないと思うて、な?」

天使かよ。天使だわ。

 

「そっか・・・。あ、そうだ(唐突)」

「?」

「何か困ったことがあったら僕に頼ってよ。僕にできることがあれば何でもするよ」

「え、今何でもするって言うたよね?」

「いや、それは言葉のあやっていうかなんていうか…」

「フフッ、冗談やで」

「あぁ、そう…」

「びっくりした?」

「…ちょびっと、ね」

その後峰田君のくわえたポッキーをS&Wがポキッと折って峰田君が血涙を流したり、たかが甘酒に酔ったかっちゃんが桜の上によじ登って怪獣みたいに()えたりとかしたが無事花見を終わることができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして(ゴールデン)(ウィーク)の初日、森の中で立体運動を一時間ほどして何気にケータイを見ると大量に電話がかかってきていた。

僕はスライドすると耳に当てる。するとつながった。

 

「…もしもし、緑谷です」

『あぁ、緑谷少年かい?』

「・・・オールマイトですか?」

『あぁ、そうさ!何回かけても電話に出ないから何か起こったのかと心配したよ!』

「・・・えっと、用件は何ですか?」

『今から学校に来てくれないかね?用件はそこで話すよ』

「あ、はい。わかりました。あ、あと」

『ん、なんだい?』

「私服で行ってもいいですか?」

『あぁ、構わんよ!』

「わかりました」

僕は電話を切って汗を拭くとそのまま走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

~しばらくして~

 

僕がガラガラと教室のドアを開けると僕以外の皆とオールマイトがそろっていた。

「やぁ、緑谷少年!よく来たね!」

「えッと…、みんな揃ってる感じですか?」

「あぁ!」

「そうですか・・・。遅れてすいません…」

「いやいやいや、急に言い出したのは私だからね。遅れてもしょうがないことさ。じゃあ、席に座って」

「はい」

僕は席に座るとオールマイトは話し始めた。

 

「実を言うとね、君達のPRのために遊園地でショーをやることになったんだ!」

『『『何だってぇええええええええええ?!!!!』』』

ノリがいいね、君達。

 

「しかもヒーロースーツを着てショーをすることになった!」

『『『何だってぇえええええええええええええ?!!!!』』』

マジか。これは予想外。

 

「で、シナリオはなんですか?」

僕はそう言うとオールマイトはニヤッと笑ってこう切り返した。

 

「それは…」

『『『(ゴクッ』』』

 

「自分たちで考えるのさ!!!」

 

・・・。

・・・・・・。

・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・。

 

『『『ハァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ?!!!!』』』

僕たちの叫び声が上がった。

 

 

~しばらくして会議室~

 

「やっぱりここは王道で行こうよ!囚われたお姫様をヒーローが助けに行って悪い奴らをバッタバッタとなぎ倒していくんだよ!」(芦戸さん)

「いや、ここは趣向を凝らして自分の個性に苦しんでる奴がヒーローに目覚めていく物語をやろうぜ!」(切島君)

小学校の時から思ってたけど、なんでみんなこういう企画になったらすごく白熱するんだろうか。

 

「・・・」スッ

(。´・ω・)ん?なんでS&Wが手をあげてるの?

 

「え、あぁ、どうぞ」

ほら、飯田君も少し戸惑ってるし。

するとS&Wはどっから用意したか知らないホワイトボードを取り出すときゅぽッとマーカーのふたを開けてキュッキュッと書きだした。そして書き終わると皆に見せる。するとそこにはこう書かれていた。

 

『芦戸さんに賛成』

 

「・・・それは君自身の意思かい?それとも、緑谷君の意思かい?」

するとさらにキュッキュッと書くと再び見せた。

 

『これは自分の意思。ご主人は関係ない』

・・・僕のことご主人様呼びかいな。

 

「しっかし、それちゃんと意思があるんだな」

「うん。たまーにいたずらしてくるんだけど」

「どんなだ?」

 

コンナカンジ( ´_ゝ`)σ)´_ゝ`)ハハハ

      ↑     ↑

      僕    上鳴君

 

するとソフト&ウェットが僕のほっぺたをつついてきた。

 

ツンツン( o|o)σ)´_ゝ`)ハハハコヤツメ

    ↑    ↑

   S&W   僕

 

すると今度は麗日さんがS&Wのほっぺたをつついてきた。

 

ツンツン(*´Д`)σ);o|o)<?!

   ↑    ↑

  麗日さん S&W

 

・・・なんだ、この無限ループ。僕はこんな無限ループを終わらせるためにS&Wをしまう。すると支えを失った麗日さんの指が僕のほっぺたに突き刺さった。

 

...(;´Д`)σ);´д`)...

 

・・・えっと、何だこの空気。すごく気まずい。早々(そうそう)に終わらさないと。

そう思って僕は麗日さんの手を取るとそのまま麗日さんの膝の上に乗せた。

そして僕は満足してうなずくとゲンドウポーズ+精一杯のきめ顔で口を開いた。

 

「さて、話の続きをしようか。で、どこまで進んでたっけ?」

「おめぇそのままスルーしようたってそうはいかねぇぞゴラァ!!」

なんで峰田君はキレ気味なんだろうか。怒ると血圧上がるよ?

 

「その『マジで理解できません』みたいな表情するのやめろや!!めっちゃ腹立つ!!」

「峰田君、静かにしようよ。今叫ぶ時間じゃないよ、ね?」

「その(さと)すような言い方もやめろ!!殺したくなるくらい腹立つから!」

「そんなに怒ってたらはげるよ?」

「まだはげねぇよゴラァ!!つかはげたらそれこそ俺の個性死ぬじゃねぇか!!」

「それ髪の毛だったのか・・・」

「おい誰だ今さっき言ったの!!地毛だわゴラァアッ!!」

これではらちが明かないと思ったので僕はシャボン玉を一つ峰田君に向けて飛ばす。そしてシャボン玉がはじけると峰田君の口から声が出なくなった。

 

「よし、続き話そう」

「あ、あぁ、そうだね」

しっかりしろよ、飯田君。君がしっかりしなくちゃ誰がしっかりするってんだい。

 

「まぁ、多数決しようじゃないか。切島君と芦戸君の意見で問題はないね?」

全員何も言わなかった。

 

「じゃあ、切島君の意見がいいと思う人は手をあげて」

瀬呂君やその他男子の多くが手を挙げた。

 

「では、芦戸君の意見がいいと思う人は手をあげて」

女子全員と男子数人が手を挙げた。そしていつの間にか現れていたS&Wやレッドホットチリペッパー、更にはエコーズや黒影も手をあげていた。

 

「あ、えっと、多数決で芦戸君の案を採用します」

「マテやゴラァああ!!!!」

どうしたんだ、かっちゃん。

 

「どうしたの、かっちゃん」

「どうしたもこうしたもねぇよゴラァ!!なんで個性のこいつらがてぇあげてんだゴラァ!!」

「ナンダヨ、俺達ニハ手ェ挙ゲル権利ガネェッテ言ウノカヨゴラァ!!」

「そんなこと言ってねぇだろうがよぉ!!」

「だったら叫ぶ必要性ないじゃん」

「・・・チッ」

一体何なんだ一体。

 

「数えてみたところ芦戸君の方に手を挙げている人が多いので芦戸君の案を採用します!」

女子から拍手が巻き起こった。

 

その後話し合いの結果、敵組織の名前は『ファウスト』になり、メンバーは切島君に常闇君、それに芦戸さん、そして(かしら)役はかっちゃんに決まった。この後、滅茶苦茶荒れたけどうなじにチョップを叩きこんで黙らせたので多分大丈夫だろう。

 

 

 

・・・その後を簡潔に言おう。なんだかんだあったけどまさかの大成功だった。

木の役だった峰田君が摩天楼を登って梅雨ちゃんさんに制裁されていたり上鳴君が限界を突破して馬鹿になったりレッチリが乱入してきたりしたが無事に終わることができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみにそのショーを撮影した動画は驚異の10万再生超えだった。

 

 

 

続く

 





リカバリーガール
パワー:D
スピード:C
知力:A
持続力:C
精密動作性:B
成長性:D
・この作品の彼女は波紋のおかげで原作よりも30~40年くらい若く見える。年齢詐欺だとよく言われている。
・彼女の個性である『癒し』と波紋のおかげで傷はたちまち治ってしまう。

波紋
才能のある者が特殊な訓練と呼吸をすることで発することができる生命エネルギー。そのエネルギーはなんと太陽のエネルギーに匹敵するという。
ここでは波紋は『個性』ではなく『技術』として扱う。



皆様お気づきかもしれませんがこの小説の緑谷君は原作と比べるとけっこうクソ野郎です。
自分で書いててアレですが将来眉間(みけん)にしわ寄せながらタバコ吸ってそうです。


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いざ新たな舞台へ

「真の『失敗』とはッ! 開拓の心を忘れ!困難に挑戦する事に無縁のところにいる者たちの事をいうのだッ!
このレースに失敗なんか存在しないッ!
存在するのは冒険者だけだッ!」
ジョジョの奇妙な冒険Part7『Steel(スティール)_()Ball(ボール)_()Run(ラン)』よりスティーヴン・スティール







(ゴールデン)(ウィーク)が明けた次の日、僕たちが教室で座っていると相澤先生が入ってきた。

・・・って。

 

『『『えええええええええええええッ?!!!』』』

僕たちは叫んだ。

なんと相澤先生が包帯でぐるぐる巻きだったからだ。

 

「もう復帰かよ…!」

「なんてプロ意識なんだ…!!」

「先生無事だったのね、よかったわ」「いや、あれ絶対無事って言わないと思う」

「相澤先生には何が何でも授業をするという『凄み』を感じる…!」

僕たちが先生の凄みに圧倒されていると先生は口を開いた。

 

「お前ら」

『『『は、はい!』』』

「俺のことなんかどうでもいい。戦いはまだ終わってねぇ」

「ま、まさかまた敵連合が…!」

「ちげぇ」

なんだ、違うのか。

 

「じ、じゃあなにが・・・」

「・・・」ゴゴゴゴゴゴ

『『『(ゴクッ)』』』

 

「雄英体育祭が迫っている!」

 

「クソ学校っぽいの来たあああ!!」

切島君が大声で叫んだ。

 

「チョ、ちょっと待ってください!つい数週間前に敵連合が襲撃したんですよ?!」

「いや、むしろ、らしい。どうやら今年は警備員を倍以上に増やして雄英のセキュリティーを見せつけるらしい」

「そんな滅茶苦茶な…」

思わずそうつぶやいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雄英体育祭。

それはオリンピックが(すた)れたこの個性社会において、かつてのオリンピックに代わる大規模行事だ。全国のトップヒーローまでもがスカウト目的に訪れ、進路にも割とマジで大きくかかわってくる。

なんとしてでも、いい結果を残さなくちゃあいけない。もしくは強烈なインパクトだ。

・・・とはいっても…。

 

「特に目標がないんだよなぁ…」

「デク君どしたん?」

「いや、特に何もないよ」

そう言いながら僕らは食堂で昼食を摂っていた。うん、相変わらずおいしい。

 

「ところでさ」

「?」

「麗日さんはなんでヒーローを(こころざ)そうと思ったの?よければ教えてほしいんだけど・・・」

「あぁ、それはね」

すると彼女は僕に対してなんでここ(雄英)に来たのか教えてくれた。

 

「・・・つまり、すごく端的に言えばお金が欲しくてヒーローに?」

「うん、そういうことになるね…」

「でも、ヒーローになってもすぐにお金が入ってくるわけじゃねぇだろ?さすがにお給料はもらえると思うが…」

「うん。確かに上鳴の言う通り、ヒーローになったらまずはグッズやイベントの展開までこじつけて行かないとお金はそうそう入ってこないよ」

「うん、それはわかってる。だけどね、ヒーローになったら個性の使用許可も取れるやろ?」

「うんうん」

「・・・これ、あんまり言わん方が良いと思うんだけどうち(実家)、建設会社やってんねん。でも仕事全然来なくて…えっと、その、なんていうか、まぁ素寒貧(すかんぴん)なんよ」

「あ、そっか。麗日さんの個性なら使用許可が取れればその分の費用がかかんないのか」

「せやろ?!それ昔お父さんに言うたんよ!そしたらお父さん、『気持ちはうれしいけど、お茶子が夢をかなえてくれる方が何倍もうれしい』って言うてくれたんよ!」

めっちゃいいお父さんじゃん。今度あいさつしに行かなあかん。←?

 

「だから、うち絶対ヒーローになってお金稼いで、お父さんとお母さんを楽にさせてあげるんだ!」

「(´;ω;`)ブワッ」

「緑谷どうした?!まさか泣くほど感動したのか?!!」

なんて健気なんだこの人は…!!感動した!ものすごい感動した!今心から「ブラボー!おお・・・ブラボー!!」と叫びたくなった。

 

「で、デク君?大丈夫?」

「うん、大丈夫。感動しただけだから…」

「そ、そうなん?なんかつらいことがあったらうちに言ってな?」

「うん、ありがと」

うん、僕トーナメントで3位以内に入ったらしたら絶対に麗日さんに告白する。絶対する。これはもう決定事項だ。絶対告白してみせる。

 

「・・・よし!」

「どしたん?」

「僕、今目標ができた」

「え、何々?」

 

「僕、絶対3位以内に入る」

 

次の瞬間、食堂の空気が静まり返った。

 

「え、マジかよ?! そんなでかすぎる目標持ってていいのかよ?!」

「目標はでかい方がいいって昔母さんが言ってたんだ。だから僕は3位以上を目指す」

「え、でも・・・」

「耳郎さん。僕は、今まで何も目標なんてなかったんだ。だけど、今の僕に初めて『らしい』目標ができたんだ。だからこそ、僕は、その目標に挑戦する。そして、到達してみせる」

「か…」

「?」

「感動したぜ、緑谷!俺もお前みたいに雄英祭に挑戦するぜ!」

「私も!」

「うちもうちも!」

するとその場にいたA組全員(かっちゃんを除く)がワイワイと騒いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして放課後…。

僕は背伸びをしてふと廊下の方を見るとなんか人だまりができていた。

 

「何だこれ。何しに来たんだよ、出れねーじゃん」

「敵情視察だろザコ」

あ、峰田君涙目になった。なんだよ、たかがザコって言われたぐらいで。僕なんかクソナード(キモオタ野郎)だぞ。

 

「しっかし、なんで敵情視察なんかに…」

「考えりゃわかるだろうがバカ。俺たちはほかの誰よりもいち早く本物の敵共と交戦したんだぞ。そりゃあ視察ぐらい来るだろうが、脳みそあんのか」

あ、今度は切島君が涙目になった。何だよたかがバカって言われたくらいで。僕なんかデクの坊のデクだぞ。笑えよ。

 

「意味ねぇからどけモブ共」

「知らない人の事を取り敢えずモブって言うのやめないか!」

実際その通りだと思う。興味のない人をモブ呼ばわりなんて実際どうかしてると思う。

 

「どんなもんかと見に来たが、随分と偉そうだなぁ」

「あ”ぁ?!!」

「こういうの見ちゃうと幻滅しちゃうなぁ……。そういえば普通科とか他の科ってヒーロー科落ちたから入ったって奴、結構いるんだって。知ってた?」

勝手に幻滅してろ。あと自分語りはよそでやれ。

 

「敵情視察?いや、違うな。オレは調子乗ってると足元ごっそり(すく)うっていう宣戦布告のつもりで来た」

それこそマジでよそでやれ。なんでA組を敵視するんだ、ふざけんな。

 

「僕たちB組なんだけどね、敵と戦ったA組の話を聞こうと思ってたんだけど調子乗り過ぎじゃない?本番で恥ずかしい事になるよ?」

知るか馬鹿野郎。少なくとも僕は調子づいてねぇよ。あれで調子づいてたらマジであほだわ。

というよりなんでこんなに喧嘩売られてるわけ?あ、かっちゃんのせいか。

 

「おい、爆発さん太郎」

「誰が爆発さん太郎だクソナード!!」

「君のせいでなんかA組全体が敵視されてんだけど、どう責任とってくれんのよ。いっつもそうじゃないか。君の傍若無人(ぼうじゃくぶじん)な振る舞いでどれくらい僕や当時のクラスメイトが迷惑こうむってきたか知ってるでしょうに」

「知らねぇよ!!」

「あっそ。で、それくらい言うんなら何か考えでもあるんじゃあないの?」

「・・・チッ、上に行けば問題ねぇだろうが」

・・・あぁ、なるほどねぇ。

 

「あぁ、そう。じゃあ帰るわ。バイバイ髪の毛爆破野郎」

「うるせぇ髪の毛まりもが!!」

「なんだとゴラァ!!」

「そこ?!怒るとこそこ?!」

見てろ。明日絶対あいつの髪の毛シャボン玉で奪って10円ハゲつくってやる。そう決心して廊下に出るとなんか見ててクソむかつくキザ野郎につかまった。放せバカ。

 

「ちょっと、君。調子乗ってるんじゃないのかい?」

「眼科かもしくは精神科行け」

「そんな調子だと足元すくっちゃうよ?」

「足元をうかがってる暇があるんならその前に上に行く努力でもしたら?そもそもこんなことに時間つぶす暇なんてあるの?正直言って時間の無駄だと思うよ?」

そう言って僕は腕を振り払うとその場を立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰り際に人があまり来ない池によるとなぜか気絶している梅雨ちゃんさんを棒で引き上げようとしている耳郎さんの姿があった。ついでなので手助けしておいた。

 

 

続く

 




峰田実
パワー:D
スピード:C
知力:B
射程距離:B
持続力:A
精密動作性:D
成長性:A
 「性癖はゆりかごから墓場まで」を豪語している。個性は「もぎもぎ」。健康状態によるが最大で約1日はくっつく。ただし自身にはくっつかない。
エロにかける情熱がすさまじい。皆さまも高校の時のクラスに一人や二人はこんな人がいたのではなかろうか。少なくとも作者には「いた」。



今回の話いかがだったでしょうか?
自分で書いてて言うのもあれですがこの作品のデク君は普通に性格が悪いです。たぶん中指くらいは普通に立てると思います。




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周りはライバル!始まるサバイバル!①

「勝つ」ことではなく「負けない」ことにホンモノの強さはある
                           桜井章一







あれから1週間が経過した。

宣言(言ってない)通りかっちゃんの頭に個性で10円ハゲを作ったのがばれて悪鬼のような形相で追いかけまわされたり(その日は逃げ切り成功。次の日出会い頭に爆発をおみまいされた。許すまじ)、なぜか再び池の真ん中で気絶して浮かんでいた梅雨ちゃんさんをその場にいた上鳴君と一緒に引き上げたり、皆の個性や性別が反転するという珍事が起こったり、皆が幼児化したりもしたがおおむね何事もなく過ぎて行った。

そしてその間にも僕は色々個性を研究した。その中で新しい発見もあったりしたがここで説明するのは面倒なので省略させてもらおう。

そして今日は雄英祭当日。皆控え室で様々な反応を示している。皆それぞれすごく緊張しているようだ。

 

 

(かれ)ぇ?!!なんだコレ!!!」(切島君)

「オイ!勝手に俺のジンジャー飲んでんじゃねぇ!」(かっちゃん)

 

「飲むか?」スッ(砂藤君)

「いや・・・いい。大丈夫だ」(障子君)

 

「この緑茶、味薄くない?」(耳郎さん)

「ケロッ、それは私の池の水よ」(梅雨ちゃんさん)

「ブフゥッ?!!!」

 

 

・・・あれ?一周回って案外いつも通りじゃね?

 

「おい、緑谷」

すると轟君が話しかけてきた。

 

「?」

「お互いの“個性”の相性や、客観的な視点から考えてみても、実力はお前より俺の方が上だと思う」

マジで何言いだしてんだ、コイツ。

するとクラスの皆が少し騒がしくなった。どうやら個性的な意味で多分クラスの1、2位に入る轟君が僕に対して吹っ掛けてきたせいだろう。

だからこそ僕はこう返させてもらおう。

 

「いや、何言ってんの?」

「なに…?」

「僕と戦ったこともない癖によくそんなことが言えるよね、君。恥ずかしくないの?」

「・・・」

「確かに君の個性は強いさ、強いと思うよ。だけどさ、それが勝ちに直接つながるかって言われたら、それは違うと思うよ」

「なに?」

「勝負は時の運。もしかしたらどんでん返しがあるかもしれないだろ?僕ばっかり見てたら誰かに抜かれるかもよ?例えば、かっちゃんとか」

「ア"ァン?!!」BBBBB...

「ヒュー、怖い怖い」

僕たちがこんなことをしている間にもだんだんと舞台(戦場)が近づいてくる。

するとかっちゃんが緊張のせいか手から小規模の爆発を連鎖的に起こし、切島君の皮膚がパキパキと音を立てながら硬質化していっている。そしてなぜか八百万さんは緊張と不安のせいか仏像とマトリョーシカをポコポコと作り続けるだけの機械になってしまった。とりあえず仏像を一つ拝借して拝んでおこう。あ、梅雨ちゃんさんが擬死状態になった。ちなみにマトリョーシカをぱかっと開けると中は空っぽだった。なんだ、中身手りゅう弾だったらちょっと面白かったのに。

・・・ん?待てよ。これはもしや様々な個性を見れるすごいいい機会になるんじゃないか?!実を言うと僕はほかクラスの戦闘訓練の映像記録も見させてもらっているがやっぱり映像と生で見るのとじゃあ全然違うよねって話。

するとスピーカーからプレゼント・マイクの声が聞こえてきた。

 

『雄英体育祭ッ!! ヒーローの卵達が、我こそはと(シノギ)を削る年に一度の大バトルッッ!! てゆーか、どうせテメーら、アレ(・・)だろ!?コイツ等だろ!? ヴィランの襲撃を受けたにも拘らず、鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星ッ!! ヒーロー科の、1年A組だろぉおおおおおおッ!?』

 

僕たちが入場すると歓声がさらに大きくなった。僕はふぅと軽く息を吐いて手をぶらぶらとさせる。

 

「デク君?」

「ん、なに?」

「緊張するねぇ…」

「・・・そうだね」

そんなことを話していると次々とB、C、Dと入ってくる。そして全員が入場を終えると18禁ヒーロー『ミッドナイト』が台の上に鞭をポンポンとしながら上がってくる。

というよりあの人、風俗店で共働きした方がいいんじゃないかな?そっちの方がよっぽど稼げそうな気がするけど。

 

「(ギロッ)」

「ヒエッ」

なんかすごい剣幕でにらまれた。やべぇよ、やべぇよ…。おとなしくしとこ。

 

「ミッドナイト先生…、なんて格好してんだよ…」(上鳴君)

「さすがは18禁ヒーロー…」(耳郎さん)

「18禁なのに高校にいて良いのか?」(常闇君)

「いい!!!」(峰田君)

「こらそこ、静かにしなさい!」

「「「「(ピシッ)」」」」

やーいやーい怒られてやーんのー。

 

「「「「(チラッ)」」」」

「・・・」プイッ

なんでみんなわかるんですかねぇ・・・。もしかしてみんな読心術会得(えとく)済みだったりする?

 

「選手代表!雄英試験仮想(ヴィラン)撃退ポイント一位、1年A組爆豪勝己!」

「ハイ!」

あぁ、やっぱりかっちゃんか。

 

「雄英試験救出ポイント一位、同じく1年A組緑谷出久!」

 

・・・。

 

「え?」

「おい、緑谷。呼ばれてるぞ」

「え?え?え?」

「おら、さっさと行け」

「えぇ・・・?」

僕はなされるがままに前に出た。

 

「・・・ケッ」

何だよ、かっちゃん。そんな親の(かたき)のような目で僕を見おってからに。別に君のお母さんは今でもぴんぴんしてるじゃないか。

しかも見た目すごく若いし。

見た目すごく若いし。←(大事なことなので二回言いました)

 

「では宣誓の言葉を」

「「せんせー」」

僕たちは大きな声でその次の言葉を言った。

 

「俺が1位になる」「僕が優勝する」

 

おっと・・・、どうやら考えていることは同じようだね。

 

『『『お前ら何言ってんだぁ?!!!』』』

そしてA組の面々が叫び、周りから非難が飛ぶ中かっちゃんと僕は続きを言った。

 

精々(せいぜい)俺のいい踏み台になれ、クソナード」

「かっちゃんだけは絶対に僕がぶっつぶす」

 

次の瞬間、僕たちはお互いの胸倉につかみかかった。

 

「なんだとクソナードォ!!やってみやがれぇ!!」

「おう!やってやろうじゃねぇかゴラァ!!!」

そしてじりじりとお互い譲らない。おう、こっちだって毎日筋トレやジョギングで鍛えてんだぞゴラァ。昔のもやしみたいな僕とは違うんだぞオラァ。

 

「そこまでよ!」

そう言いながらミッドナイト先生は鞭を僕たちの間にふるう。僕たちはとっさに胸倉をはなしてよけた。

 

「「チッ」」

僕たちは舌打ちするとすごすごと元の場所に戻っていった。

周りからのブーイングがすごいが相手するだけ面倒なので無視することにした。

 

「さーて、それじゃあ、早速第一種目行きましょう!」

「?!」

僕は少しびっくりした。なんて切り替えの早さなんだ…!

 

「運命の第一種目!! 今年は……コレ!!」

するとデデンとモニターに文字が浮かぶ。

 

『障害物競走』!! 計11クラスでの総当りレースよ!ここで皆涙を呑むわ(ティアドリンク)! コースさえ守れば基本的に何をしても構わないわ!! それを理解したら位置につきまくりなさい!!」

僕はそれを聞くと人をかき分けて無理やり先頭に立つ。

そして全員が並び終わったのか再びミッドナイト先生が口を開く。

 

「では行くわよー!!

3!!

2!!!

1!!!!

スターーーーートォ!!!!!

次の瞬間、僕は後ろの方に大量のシャボン玉を飛ばした。するとどんどん後ろの奴らがすっ転んでいく。それをチラッと確認すると全速力で走った。

 

続く







蛙吹梅雨
パワー:B
スピード:B
知力:B
射程距離:舌が20m先まで届く
持続力:?
精密動作性:C
成長性:C
個性は「カエル」。カエルっぽいことはなんでもできる。通称「ケロイン」。
「ケロッ」が口癖。


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周りはライバル!始まるサバイバル!②

ずっと勝ち続けられるわけがない。負けたとき、どん底から這い上がれるのが強さだ
                                 アニマル浜口


とある日のエピソード
「あら、出久。どこに行くの?」
「あぁ、母さん。今から裏山に行ってトレーニングでもしようかと思って」
「あら、そうなの。行ってらっしゃい」
「行ってきまーす」ガチャッ バタンッ
「・・・私もダイエット頑張ってみようかしらねぇ…」
そう言いながら彼女は出久のトレーニング内容を書いたノートを手に取った。そしてページをパラパラと開けていく。

「これはやれそうね。あ、これもいけそうだわ。・・・出久、結構大変なのね…」

この後、彼女の肉体が超劇的ビフォーアフターするのはまた別の話。









ほとんどの人間が滑ってこけたのを確認すると彼は一気に走り出した。そしてそのまま足元にシャボン玉を撃ち込む。するとシャーッと足の裏が滑り出した。

すると緑谷の後ろから冷気が襲ってきた。ソフト&ウェットが急に表れて跳び上がるとそれにつられて彼の体が浮いた。跳び上がった後の地面は氷漬けになっていた。

 

「これは・・・、轟君か…!」

「よくわかったな」

彼が上の方を見るとそこには作った氷の道を滑走している轟君の姿があった!そしてそのすぐ後ろを彼の最大のライバル、爆壕勝己が爆破で飛んできている。

「(・・・チッ、こんなところでこの個性の弱点が出てきたか。確かに僕の個性は自他ともに強力だとは思う。だが、移動スピードにかけるのが難点だ。コスチュームの改善案は出しておいたからたぶんこれ(雄英祭)の後にある職場体験までには届くんだろうけど…!)今はこの状況をどうにかしなくちゃな…!」

緑谷はそうつぶやきながら思考を加速させる。

 

(・・・ん?あれ?待てよ?轟君、あの足場、溶かしてたっけ?)

彼がとっさに上を見上げると足場はそのまま残っていた。

 

「これは、チャンスじゃないか…?!」

するとそんな彼の目の前に巨大なロボットが現れた。

 

『おぉっとぉ!いきなり障害物だぁ!! まずは手始め...第一関門ロボ(ROBO)インフェルノ(INFERNO)‼︎』

 

「これってあの時の…!」

彼は心の中で舌打ちしながらそれを見上げた。そしてすぐに考えを張り巡らせると彼はシャボン玉を大量に生成する。

 

「まともに相手はしない!だが無力化はする!そしてそのための最善の行動がこれだぁ!!」

そう叫びながら彼は生成したシャボン玉をロボの足元に放つ。するとロボットはぐらりと揺れる。その間に彼は走り出した。地面にシャボン玉を撃ち込んでつるっと滑るとそのまま地面を滑走するように滑っていく。

彼が通った後、巨大ロボットは地響きを立てて土煙をあげながら倒れていった。

 

『おぉい!緑谷の奴個性使って思い切り倒したぞぉ?!!いいのかそれでぇ!!』

『別にまともに相手しろなんて一切言ってないし、書いていないしな。合理的に判断したんだろ』

『しっかし、自分の後ろの奴も転ばせて邪魔するなんてすげぇことするよなぁ!!』

『あいつは個性把握テストの時からあんなんだぞ』

『マジで?!!』

放送席もにぎやかに解説と実況を放送する。

 

「「俺じゃなかったら死んでたぞぉ!!!」」

そんな叫び声が後ろから上がったが、緑谷は完全に無視した。どうやら彼は今は目の前のことに集中したいらしい。

すると今度は目の前に巨大な奈落に続く穴と張り巡らされた綱が待ち構えていた。緑谷は思わず足がすくんでしまう。そして同時に思った。

こんなしかけ、どうやって作った。

 

『さぁさぁ次の障害物だぁ!! 落ちれば即アウト!それが嫌なら精々綱の上で這いずるんだな!! 第二関門(THE)フォール(FALL)!!!』

そんな実況が続く中、皆は次々と緑谷を追い抜かして綱を渡ろうとする。しかし、なぜか真ん中付近で止まってしまった。

緑谷が不思議に思う中、更に実況が響く。

 

『一見普通の綱渡りだが、様々な誘惑があるから気を付けろよぉ~~~? 俺の見立てによれば特に13号の素顔が入った封筒が熾烈(しれつ)を極めてんなぁ!!!』

「・・・」

すると緑谷はいったん後ろにバックすると一気に走り始めた。

 

『おぉっとぉ!緑谷がいきなり走り出したァ!!一体何をするつもりだぁ?!!』

「ソフト&ウェットォ!!」

「!」ズアッ

彼は自分のスタンドを呼び出すとロープをつかませて着地点を調整する。そして、綱に足が着いた瞬間その反動とともにスタンドを足に重ねて思い切り大ジャンプした。その時の衝撃に揺さぶられて何人かの人が奈落の底に落ちて(リタイアして)いった。その間にも緑谷は氷の道の端をスタンドとともにひっつかんで無理やりのぼると走り始めた。

 

『うぉおおおおおい?!!!!今思い切りとんだぞぉおおおお?!!!!!!』

『そして周りの奴らはことごとく無視か…これは本気で1位を取りにいってるな』

『しかしあれ大丈夫なのかよ、将来的に』

『今は守る対象なんていないだろう?つまりそういうことだ』

『ほんとにそんなんでいいのかよぉ?!!』

ごもっともである。

その間にも緑谷は氷の上を疾走していく。しかし、それに気づいた轟が右手を後ろの方に向けた。

 

「くらえ」

次の瞬間、緑谷は体勢を崩しながら飛び降りた。そして緑谷のいた場所が巨大な氷で覆われる。その間にも彼は背中から地面に落下していく。

 

『おぉおおおおおおい?!!あのままじゃ緑谷重力に引っ張られて地面にたたきつけられちまうぞ?!!』

プレゼントマイクが叫ぶ。しかし緑谷は極めて冷静に対処した。何と背中に大量のシャボン玉を滑り込ませて落ちたときの衝撃を緩和したのだ!しかもこの時顎を少し引いて後頭部をうつのをガード!

 

「グェッ」

緑谷はつぶれた蛙のような声を出したがすぐに立ち上がると走り出した。

 

『あ、あれってなにしたんだぁ?!!俺にはシャボン玉をクッション代わりにしていたように見えたが…!』

『実際クッション代わりにしたんじゃないか?』

『たかがシャボン玉であんなことまでできんのか?!!』

『シャボン玉だからこそ、じゃないか?あいつの個性で作るシャボン玉は少し特殊だからな』

そんなことを話している間に上位の人間は次のエリアにたどり着いていた。

 

『さぁさぁさぁ!!このリレーも佳境を迎えてきたってところだなぁ!!最後の障害物は一面地雷原(・・・・・)!!!地雷がたくさん埋まってるから気ぃ付けろよ!!よく見たら埋まってる場所は見えるようになってるがな!!!』

『これいつか死者出るんじゃないか?』

実況席がそう言っている間にも彼は必死に策を巡らしていた。

 

(どうする?!このままじゃ僕は二人に負けたままだ!それじゃだめだ!3位じゃダメなんだ(・・・・・・・・・)!!とにかく何かを利用して二人を追い越さないと…!・・・そうだ!)

すると彼は少し膝を立ててしゃがむ。

 

『ん?緑谷は何する気だ?』

「『ソフト&ウェット』!!」

そう叫びながら彼はシャボン玉を地面に打ち込んだ瞬間、大量の地雷がシャボン玉に包まれて掘り起こされた。

 

『おっとぉ?!!シャボン玉で地雷を掘りおこしたぞぉ?!!一体何する気だぁ?!!』

すると緑谷はスタンドを出現させて自分の前で腕の組ませてガードの体勢を取らせると集めた地雷原に飛び込んだ。

次の瞬間、すさまじい爆発と炸裂音が鳴り、緑谷とスタンドは思い切り前に吹っ飛ばされた。

 

『おおおおおおおおおおおいぃいいいい?!!!!緑谷の奴集めた地雷原に突っ込んで思いきり吹っ飛ばされたぞぉ?!!!大丈夫かあれぇ?!!』

『・・・なるほど、個性が自分と分離しているからこその芸当か。だが、地雷が他の方向にとばなかったのは幸いだったな』

緑谷は前を進んでいた轟と爆豪の前にごろごろと着地すると走り出した。

 

「クソナードがぁ!!俺の前を走ってんじゃねぇええええ!!!!!」

「・・・!!!」

二人はさらに加速しようとする。すると目の前が大量のシャボン玉に覆われた。

 

「目隠しのつもりかぁ?!こんなもの・・・ッ!!」

「氷けt・・・!!」

すると二人は急に失速して地面にごろごろと転がった。そして呻きながら立ち上がろうとするが再び崩れ落ちてしまう。

 

「う・・・ぐぁあ・・・」

「地面が・・・回る・・・」

「ごめんね、二人とも。これも勝つためなんだ。僕のためにやられてくれ」

彼はそう言うとそのままゴールに走って行った。そして見事ゴールラインを踏み越えた。

 

『なななななななななななんとぉ!!!ゴールしたのは爆豪でも轟でもねぇ!!!!ゴールしたのは一目見てもパッとしねぇ男、緑谷出久だ!!』

すると大きな歓声が沸いた。彼は実況席をにらんだ。

 

「おい、あの個性で1位なんてすごくねぇか?!!」

「予想外!全くの予想外!!」

「しかもしっかりと自分の個性を把握して動いているように見えるぞ!あの年であれはすごい!!」

プロヒーローたちも次々に叫ぶ。

それに乗じてプレゼント・マイクも叫んだ。

 

『下見に来ているプロヒーローども!よく耳をかっぽじってよくきけぇ!! 今!現在!1位で通過した男、緑谷出久の個性は俺たちのように一体化してるわけじゃねぇ!!あの傍にいる亜人だぁ!!その名前は”スタンド”!!

Stand_up_to(困難に立ち向かう)と書いて、Stand(スタンド)だぁああああああああああああ!!!!!』

歓声がさらに大きくなった。

 

 

 

続く







岸辺露伴は動かないエピソード10「ザ・ラン」見ました。荒木先生らしい、ミステリアスな雰囲気の作品だったと思います。あと筋肉しゅごい・・・


芦戸(あしど)三奈(みな)
パワー:C
スピード:C
知力:D
持続力:?
精密動作性:B
成長性:C
個性は「酸」。様々な種類の溶解液を出すことができる。
作者はこの子を初めて見たとき、バオーを思い出した。
バオー・メルテッディン・パルム・フェノメノン!!!



キャラクターのパラメータは割と作者の主観で適当に書いてる部分が多いので多少は目をつむってくれればうれしいです。


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騎馬戦①

「カチドキアームズ!! いざ出陣! エイエイオー!」
           仮面ライダー鎧武より仮面ライダー鎧武カチドキアームズ変身音






緑谷がゴールした後、他の選手も次々とゴールしてきた。

 

「うっしゃあ!!第一競技は突破したぜぇ!!」

「この“個性”で遅れをとるとは……やはりまだまだだ。僕は……俺は……!」

「クソデク後で覚えとけよぉ・・・!」フラフラ

「・・・ッ」フラフラ

「あー悔しかったなぁ」

「つーか、緑谷ぁ!!」

「ウェ?」

「お前あの時俺たちのこと落とそうとしただろぉ!!」

「いや、わざとじゃないよ」

「それでも落とそうとしたことには変わりねぇだろうがよぉ!!」

「それはあれだ。致し方ない犠牲(コラテラル・ダメージ)ってやつだ」

「この野郎!!」バッ

「ははは、どうどう」ヒョイッ

そんなことをしていると麗日が緑谷に話しかけてきた。

 

「デク君1位おめでとう!」

「ありがとう麗日さん。君も第一競技突破したみたいだね」

「うん!でも、後ろで見てたけどすごかったねぇ!!」

「そうかな?」

「そうだよ!」

二人が話しているとミッドナイトによるアナウンスが響いた。

 

『第一競技からものすごく波乱万丈ね!!だけど、それがいい!!それじゃあ、結果をご覧なさい!』

そう彼女が言うとモニターに映像が移された。予選の結果がハイライトとともにスクリーンに映し出される形で発表される。

ちなみに緑谷のハイライトは地雷で思いきり吹っ飛ばされているシーンだった。

 

『予選通過は上位44名!! 残念ながら落ちちゃった人も安心しなさい! まだ見せ場はたっぷり用意されてるわ!!・・・ところであなたたちは、いつからさっきの競技が本番だと思っていたのかしら?』

『『『なん・・・だと・・・?!』』』

ノリいいね、君達。

 

『ここからが本番よ!!今までのは肩慣らしに過ぎないわ!!』

こんなおっそろしい肩慣らしがあってたまるか。彼は人知れずそう思った。

 

『さぁさぁさぁさぁ!!!!次は第二競技、『騎馬戦』よ!』

すると彼らにざわめきが走った!

 

「え、騎馬戦…?」

「あれ複数でやる奴だよな…?」

「???」

「個人競技じゃないけど、どうやるのかしら…?」

 

『ルールは簡単よ!みんな2~4人のチームを作って競い合うのよ!!しかーし、それだけではつまらないわ!そこで順位に従ってポイントをつけることにしたわ!!44位の5ポイントから始まって一つ上がるごとに5ポイントずつ増えていく!』

(つまり僕のポイントは220ポインt『しっかぁーし!!!』・・・?!)

『ここの校風はプラス(さらに)ウルトラ(前へ)!!上位の人ほどより多くの困難を与えなければならないわ!!というわけで1位、緑谷出久のポイントはなんと100万ポイント!!!上であればあるほど狙われる下剋上サバイバルよ!!』

「どうやら神様は僕のことがとことん嫌いらしいな」

彼は死んだ魚のような目でそう言った。そんな彼を周りの人間はまるで獲物を狙うかのような目つきでにらみつける。

 

『制限時間は15分!その間にチームを作りなさい!!』

そう言うと皆は次々とチームを作り始めた。もちろん緑谷もチームの中に入れてもらおうとするが断られたり、目を背けられたりしてなかなか入れてもらえない。

 

「Hey!緑谷の奴全然入れてもらえてねーな!」

「・・・妙だな、あんなに強力な個性をあそこまで使いこなせてるんだったら入れた方が強みになるだろうに」

その光景をプレゼント・マイクとイレイザー・ヘッドはマイクを切ってはなしていた。

これには一応の理由がある。

 一つ目は彼が真っ先に狙われやすいこと。100万ポイントと言うカモがネギ背負ってやってきているような状態をやすやすと逃すものがいるであろうか?いや、いない。彼らは狙われる危険性を少しでも低くしたいのである。

 二つ目は彼の個性にある。シャボン玉という一見無害そうなものだが中身は何かを奪うという凶悪な個性である。少なくともA組はその実力を知っているし、B組もさっきの競技で恐ろしさを目の当たりにしている。しかもシャボン玉をばらまくことで周りの人間を一網打尽にできるのだ。

そんな凶悪な個性はとっととここで落ちてほしいのである。これが皆の総意だった。

しかし、捨てる神あれば拾う神あり。そんな緑谷を拾う人間もいるわけで・・・。

 

「デク君!」

「あ、麗日さん」

「くも!」

「・・・えッ?」

そう、彼に声を変えてくれたのは麗日お茶子だった。

 

「い、いいの?僕、真っ先に狙われると思うけど・・・」

「別にええよ!逃げればええやん!」

「そ、それもそっか・・・」

「それに・・・」

「?」

すると彼女は緑谷の服の裾を少しつまみながら少し恥ずかしげに言った。

 

「うちが組みたいから、じゃダメかな…?」

「」

彼は一瞬心臓が止まったんじゃないかという錯覚に落ちた。女神は本当にいたんだ!と彼は心の中で叫んだ。

 

「え、え?!デク君どうしたん?!メッチャ泣いとるで?!!」

「ご、ごめん・・・。うれしいと清らかさのWパンチくらっただけだから・・・」

「???」

「ちょっと待ってて。・・・よし、じゃあ、誰と組もうか・・・」

「飯田君とかええんちゃう?」

「・・・なるほど、飯田君ならあの足の速さで有利に立ち回れるよね」

そう言いながら二人は飯田に駆け寄ると同じチームに入らないかと誘いをかけた。

 

「・・・すまない、緑谷君。俺は今回、君に挑戦しようと思っている」

「?」

「君のことは素晴らしい友人だと思ってるし大切なクラスメイトだとも思っている。だけど、俺は未熟者のままでは痛くない…!君をライバルとしてみているのは僕だけじゃない。爆豪君や轟君も多分君のことをライバル視していることだと思う。だから僕は君に挑戦する!!」

すると緑谷は深くうなずいて口を開いた。

 

「わかった。飯田君の意思を尊重するよ」

「緑谷君・・・」

「でも、来るからには全力で来てほしいんだ。そっちの方がお互い気分がいいだろうし」

「・・・わかった!」

そう言うと飯田君はほかの場所へ行ってしまった。

そして残された二人にそろりと近づく一つの影。

 

「フフフフ……お困りのようですね?」

「「?!」」

「あぁ、すいません。まずは自己紹介。私の名前は発目(はつめ)(めい)!サポート科に所属しています!あなたのことは知りませんけどその立場、利用させてもらいますよ!」

「り、利用?」

「あなたは今一位ですよね?」

「うん」

「つまり必然的に注目されるわけですよね?」

「不本意だけどそうだね」

「つまり私がそこに加われば私のドッかわいいベイビーたちも注目されるってことですよね?!」

「まぁ、そうなるね」

「というわけで組みませんか?!!」

この時、緑谷は思った。

こ、この人・・・、何がなんでも自分の発明品を紹介したいという、凄みがある…!と。

 

「・・・乗った」

「はい?」

「利用されてやろうって言ったんだ。その代わり、その発明品、僕に使わせてくれる?」

「えぇ、もちろん」

「よし、交渉成立」

そう言いながら二人は腕をピシガシグッグッと組むとすぐさま残りの一人を探すべく行動に出た。

 

「え、今の流れなんなん?」

そんなツッコミを放置して。

 

 

 

 

 

~しばらくして~

 

『よし、みんな決まったようね!!』

ミッドナイトのアナウンスが響く。

 

『あなたたち、鬨の声を上げなさい!!』

『『『WOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!』』』

『よし、気合は十分のようね!!』

「いくよ、麗日さん」

「うん!」

「発目さん」

「えぇ!」

「常闇君!」

「・・・うむ」

『よぉし、準備はできてるな?!なんて言わねぇぞ!!覚悟はできてるか?!!俺はできている奴だけ個々の残れい!!!!よっしゃあ、カウントダウン行くぜぇええええええええええええ!!!!!

3!

2!

1!

試合開始じゃぁアアアアアアアアアアアア!!!!

全員が動き出した。

 

 

 

続く









轟焦凍
パワー:C
スピード:B
知力:A
射程距離:A
持続力:B
精密動作性:B(炎はD)
成長性:D
個性は「半冷半燃」。左が炎で右が氷。家庭事情にななり。彼の心に雪解けが来るのはいつだろうか…。




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騎馬戦②

「信念さえあれば、人間に不可能はない!人間は成長するのだ!してみせるッ!」
    ジョジョの奇妙な冒険Part1「ファントムブラッド」よりジョナサン・ジョースター



今回は出来が悪いと思います。


試合開始じゃぁアアアアアアアアアアアア!!!!

次の瞬間、全員が動き出し、一つの目標を狙い始める。その目標は・・・。

 

「デク君、こっちきたで?!」

「うん、見ればわかる」

「追われし者の宿命……選択しろ、緑谷!」

もちろん緑谷チームだった。

 

「って、ちょちょちょちょっとぉ!!地面が沈み始めましたよぉ?!!」

「うわわわわわわわ床が柔らかくなっとるぅ?!!」

すると急に床が沈み始めた。まるで極限まで柔らかくなっているみたいに。

 

「麗日さん、発目さん、跳んで!!」

「わかりました!よぉし、スイッチオン!」

次の瞬間、ジェットパックから火が噴き出て一気に緑谷チームは上空へ跳び上がった。

 

『ゴ主人、取リ逃ガシテシマイマシタ!』

「大丈夫だ、まだチャンスはある!こっからだぞ、スパイス・ガール!」

『ハイ!』

下でそんな会話が聞こえたが緑谷は次の標的に視線が向いていた。その標的とは…。

 

「くたばれクソナードォおおおおおおお!!!!!!」

 

皆さんご存知爆豪勝己ことかっちゃんである。

彼は爆破で緑谷を吹っ飛ばそうとするが常闇の個性である黒影に防がれてしまった。

 

『・・・ッ!』ビュッ

次の瞬間、緑谷のスタンドであるソフト&ウェットが思いきり爆豪のこめかみに拳を叩きこんで吹っ飛ばした。

 

「え?! 今君結構強めに殴ったよね?!!」

『・・・』プイッ

「強めに殴ったよね?!!!」

そんな会話をしている間にも吹っ飛ばされた爆豪は同じチームの瀬呂にテープで回収されていた。

 

『オイオイオイオイオイオイ、今騎馬から離れたぞぉ?!!あれいいのかぁ?!!』

『テクニカルだからセーフ!セーフよ!』

『いいのかそれでぇ?!!!』

「おい、爆豪!お前跳ぶんなら跳ぶって言えよ!!」

「・・・」

「おい聞いてんのか爆豪!」

「・・・聞こえとるわ、今大きな声出すんじゃねぇ。・・・頭にガンガン来る」

そう言いながら爆豪は頭を上げた。その眼には殺意が10割増しでこもっていた。

 

「クソデクゥ・・・、アイツ絶対に殺してやる・・・!

「おぉ・・・こぇえ・・・」

次の瞬間、爆豪の頭から鉢巻がすっぽ抜けた。

 

「ア”ァ?!!」

「簡単に取れちゃった…。単純なんだよ、A組」

「このくそ野郎がぁ!!!」

「「「絶対お前にだけは言われたくないぞ?!!」」」

「うるせぇ!!先にあいつだ!あいつを先にぶっ殺す!!!!!!」

「ハッ、やれるものならやってみることだね」

「その鼻づらぶっ潰してやる…!!!!」

その間にも緑谷は着地してほかのチームの相手をしていた。

しかし緑谷の横から腕が伸びてきた。

 

「・・・ッ!!」

彼は思わずスタンドを使ってその手を払いのける。しかし、その姿は少しぶれたかと思うと紫色の亜人に変化した。

 

「これは、スタンド…!だけどいったい誰のスタンドなんだ・・・?!」

彼がそんなことを考えている間にもソフト&ウェットは徹底的にぼこぼこにしていた。紫色のスタンドも応戦していたがスピードの差でS&Wの方が上回っているらしい。

そして蹴っ飛ばすとなぜか物間が叫んだ。

 

「あぁ、僕のムーディー・ブルース!」

アイツか、と緑谷は思ったが物間はたぶんかっちゃんが相手してくれるだろうと判断したので無視することにした。

 

『さあ! 残り時間は半分を切ったぞ!』

そんなアナウンスが響いた次の瞬間、緑谷の周りが氷漬けになった。

 

「うぇ?!」

「な、なんですかぁ?!」

「緑谷、この個性は・・・!」

「うん、この個性を駆使する人は僕の思い当たる人間だと1人しかいない。・・・轟君」

すると彼らの目の前に轟チームが現れた。

 

「緑谷、そろそろ奪わさせてもらうぞ…」

「何その余裕そうな言い方。すっごい腹立つんだけど?」

「それはお前もだろう」

「それもそっか。・・・そうかな?」

「まぁ、そんなことはどうでもいい。それよりも・・・お前から鉢巻を奪うことが先決だからな」

「やってみろ」

・・・実を言うとこの時緑谷は内心肝を冷やしていた。原因は目の前にいる轟チームのメンバーにある。

帯電とスタンドの両方を使い分けながら攻撃できる上鳴(かみなり)電気(でんき)、なんでも創造することができる個性を持つ八百万(やおよろず)(もも)、エンジンを個性に持ち、高速に動くことができる飯田(いいだ)天哉(てんや)、そして氷結と火炎を両方使うことができる(とどろき)焦凍(しょうと)

正直言って一人だけでも相手するのが億劫なのに4人も集まったら肝を冷やすどころじゃなくまずいと思うのは普通のことだろう。

そう思いながら緑谷は轟とにらみ合いを続行している。

次の瞬間、上鳴が放電を開始した。

 

「・・・!黒影!!」

『オウヨ!』

常闇が黒影を行使するが防ぎきれず装備していたジェットパックに電流が走る。

そしてジェットパックはブスンッと煙を上げる。

 

「こ、壊れたで?!」

「ベイビー!改善の余地ありですね!」

『ウ、ウググ・・・』

「黒影、無事か?!」

緑谷チームが阿鼻叫喚になっている間にも轟チームは何かを行動に移そうとしていた。

 

「みんな、何か来るよ!!」

「レシプロバースト!!!」

「・・・ッ!オラオラオラオラオラオラオラ!!!」

緑谷はスタンドですかさずラッシュをくりだす。しかしその拳に手ごたえは一切なかった。その代わり、頭に縛っていたはずの鉢巻きの感覚と目の前にいたはずの轟チームがいなくなっていた。

 

「やられた・・・!」

彼はうなるようにつぶやくとすぐさま後ろを向く。彼の視線の先には100万ポイントの鉢巻きを握りしめている轟焦凍の姿があった。

 

『おぉっとぉ! ライン際の攻防を制したのは轟チームだぁ!!100万Pを制したのは轟チームだぁ!! そして緑谷チームは2位に転落! このまま轟の勝利で決着なるかーー!?』

緑谷チームの3人は少しの間呆然としていたがすぐに立ち直ると3人は緑谷に目を向けた。

 

「で、デク君・・・」

「緑谷、どうする」

「緑谷さん、どうしますか?!」

「・・・もう一回挑戦する」

「えっ?」

「もう一回100万ポイントを奪い返す」

「「「?!!!!」」」

すると3人全員の顔に驚愕の表情が写った。

 

・・・ここであえて言わさせてもらうが実際問題かなり無理難題なことを緑谷は言っているのである。

轟チームのメンバーはさっき記述したので詳細は省かせてもらうが対して緑谷チームはシャボン玉を使って何かを奪うことができるスタンド、『ソフト&ウェット』を持つ緑谷(みどりや)出久(いずく)、触ったものを無重力化する個性を持つ麗日(うららか)茶子(ちゃこ)、自身の影を半身とし、自在に操ることができる常闇(とこやみ)踏陰(ふみかげ)、そして5㎞先のものも繊細に見ることができ、発明に没頭する系女子、発目(はつめ)(めい)

どちらが有利かどうかは火を見るよりも明らかである。

 

「え、でも、あと2分しかないんやで?!!」

「それでも!!」

「ッ!」

「それでもやるしかないんだ!ここでやめたら、僕はたぶん絶対後悔する!!そんなことをするくらいなら最後まで挑戦し続ける!最後まで戦う!そして勝ってみせる!!」

すると麗日はスーッと息を深く吸うと一気に吐いて叫んだ。

 

「わかった!デク君の言ってることが、言葉じゃなくて、心で理解できたで!」

「麗日さん・・・」

「ウム、我らが大将よ・・・。我らの運命、大将に託してもよいだろうか?」

「常闇君・・・」

「ドっ可愛いベイビーがなくなったのは痛いですが・・・それはそれ、これはこれです。それに、ここで勝ったらいろんなヒーローから注目される…。やりましょう、緑谷さん!」

「発目さん・・・あぁ!」

彼はスッと息を吸って吐くと轟チームをにらみつけた。どうやら相手の騎馬は止まっているようだ。轟や八百万、上鳴が周りに集まってくる騎馬の相手をしている。彼は思った。

 

今こそチャンスの時だと!

 

「よぉし、今から100万ポイントを奪い返す!作戦はその場その場で決める!気合い引き締めていくぞぉおおおお!!!!」

「「「はい!/…うむ!/うん!」」」

次の瞬間、彼はシャボン玉を大量にばらまきながら前進した。

 

 

 

 

 

 

 

俺は、左腕が嫌いだ。左は親父の象徴だからだ。俺は左は使わないと大会前から決めていた。

 

だからこそ、俺は今個性を使えば使うほどどんどん自分の体が冷たくなっていることは自覚している。だが俺は愛している母親の象徴ともいえる右腕(氷結)しか使わねぇ・・・!!

そして俺は緑谷がこっちに向かってくることを視認すると氷結を繰り出した。これで足止めをしてやる…!

 

その時、何かがはじける音がした。次の瞬間、()から緑谷たちはやってきた。

 

「「「「?!!!!」」」」

俺たちは驚いた。そして俺は左腕を振りかぶろうとした次の瞬間、

 

ガチィ

 

何かが俺の腕をつかんだ。見ると黒い何かだった。

 

『今ノ俺デモ、コレグライノ足ドメハデキラァ!!』

こいつは、常闇の個性…!!

しかし俺はこの時少し呆然としていた。

 

「左腕、だと・・・・?!」

今さっき俺は左腕を使おうとしていたのだ。自分が嫌っていた、左腕の力を…!!

 

「レッド・ホット・チリ・ペッパー!!」

『オウヨッ!! 死ニサラセヤゴラァアアアアアアアアアアアアア!!!!』

その間にも上鳴が個性で常闇の個性を殴り飛ばそうとする。しかしそこに乱入者が入った。

 

緑谷の個性だ。

 

拳と拳がぶつかり合う。緑谷の個性の腕にひびが入る。しかし緑谷の個性はひるまずに上鳴の個性を遠くに蹴り飛ばす。

 

『グボァアアアアアアアアア!!!!』

「チリペッパー!!」

次の瞬間、俺の頭から何かがすっぽ抜ける感覚が走った。触って確認すると鉢巻がなくなっている。

 

『あ、あれはぁ!! 100万ポイントのハチマキだぁ!!! 緑谷チームが鉢巻を奪い返したぞぉおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!』

会場が一気に沸きあがる。しかし、俺の頭の中が一瞬真っ白になった。あいつ・・・、さっきどうやって俺たちを…?!!俺はきっとにらみながら緑谷に訊く。

 

「今のは、どうやりやがった・・・」

すると緑谷は俺たちを見るとこういった。

 

「君たちは・・・、エロDVDの隠し場所を友達や家族に言ったりするの?」

何言ってるんだ、こいつ。

 

『クタバレヤオラァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!》

するとそんな緑谷にすごい勢いで上鳴の個性が襲い掛かった。それに対して緑谷は体操服のポケットからシャボン玉を取り出すと後ろに軽くほうる。するとそれは上鳴の個性の目の前ではじけた。中から水があふれ出してくる。次の瞬間

 

『ギャァアアアアアア?!!』

 

上鳴の個性が悲鳴を上げた。どこか苦しんでいるようにも見える。

 

「予想通りだ。いや、それ以上だな」

しかしそれに対して緑谷はさも当然と言った態度をしていた。

 

『何ヲ…、シタンダ・・・?』

すると上鳴の個性が苦しそうにうめき声をあげた。

 

「終わったら教えてあげるよ」

すると緑谷の個性が上鳴の個性に思い切り張り手をくらわした。またしても水があふれ出した。そしてさらに上鳴の個性が苦しみ始めた。

 

『・・・あぁ、なるほどなぁ…』

『H、Hey?いったい何が起こってるってんだ?俺にも分かりやすく説明Please!』

『すぐに見てわかれよ・・・。・・・上鳴の個性は電気が主体なんだ。電気が通りやすいのは何だ、言ってみろ』

『み、水か?』

『いや、正確に言えば塩分の入った水だ。それを覚えた上でマイク、轟チームを見てみろ。どうなってる?』

『いや、何ともなってねぇだろ?』

『・・・言い方が悪かったな。あいつらの汗はどうなっている?』

『汗だろ?そんなもん流れて・・・流れて・・・流れてないだとぉ?!!』

『代わりに轟と緑谷チームは大量に流れている。これがどういうことかわかるか?』

『汗でも奪ってんのかぁ?!』

『大当たりだ。あいつの個性の能力はシャボン玉を介してそこから何かを奪う能力だ。おそらく汗でも奪って集めたんだろう。だが轟の汗を奪っていないのはあいつの個性のせいだな。あいつは非合理なことになぜか氷結しか使わねぇからな、そこをついたんだろう。大量に汗を流させて体温を落とす方を選んだみたいだな』

『さりげなく奪うっておいおいおいおいオイオイオイオイ、それって何気にとんでもねぇことしてんじゃねぇか!!! 確か汗って人の体温を下げるための重要なアレだろ?! それを奪われてるってことは・・・』

『あぁ、体温調節がうまくいかないだろう。体力は熱で段々と下がるし、脳も熱に浮かされて正常な判断もできなくなるだろうな。知ってるか?人間は熱くなると段々イライラしてくるんだ』

 

「・・・オイ!オイ!」

「・・・なんだ」

「あと20秒あるんだぞ?!もう一回挑戦しようぜ?!」

「そうですわ!ここで終わってしまっては絶対にいけませんわ!!」

「俺も同意見だ!轟君、指示を!レシプロバーストは出せないがそれでも足手まといになるつもりはない!」

「・・・おう!」

ここで終わるわけにはいかねぇ!俺は絶対に1位にならなきゃいけねぇんだ!!!

 

「うぉおおおおおおおおおお!!!!」

俺は叫びながら氷結を緑谷に向けて放つ。しかし、よまれていたのか緑谷チームに難なくかわされてしまった。俺はすかさず指示を出そうとした次の瞬間、目の前でシャボン玉がはじけた。

すると急に声が出せなくなった。

 

「・・・!・・・・!」

「え?!轟、なんか言えよ!」

「違いますわ、上鳴さん!轟さんは今声が出なくなっているのですわ!」

「そういえば、緑谷君の個性って声も奪えてたよね・・・」

「たぶんそれですわ!指示が出せなくなるというのはあまりにも単純で司令塔をつぶすには効果的ですわ!」

その間にもカウントは進んでいた。緑谷は爆豪の相手をしていた。

畜生、俺はここで終わってしまうのか…?!騎馬戦ですら1位を取れないのか…?!俺は、俺は‥…!!

 

『TIME UP!!!』

次の瞬間、試合終了のブザーとアナウンスが響いた。

 

 

 

続く




物間(ものま)寧人(ねいと)
パワー:C
スピード:C
知力:C?
持続力:コピーした個性を使用してから5分間
精密動作性:C
成長性:C
・個性は「コピー」と「ムーディー・ブルース」
・嫌味を言って拳藤に制裁されるまでが様美式。

ムーディー・ブルース
破壊力:C
スピード:C
射程距離:A(再生中に限る)
持続力:A
精密動作性:C
成長性:C
スタンド像:人型
パワー分類:遠距離操縦型
過去の出来事、記憶を再生する能力を持つ。しかし、その間は攻撃・防御が一切できない上に、素の戦闘力やスピードは本当に人間並みでしかない。
物間には思うところがあるようでたまに拳藤を再生して物間を制裁することがある。


個人的に彼のスタンドはサーフィスにしたかったがあのスタンドは人形が必須なため没にした。個人的にサーフィスは強いスタンドだと思う。やり方が少し回りくどいけど。




骨抜(ほねぬき)柔造(じゅうぞう)
個性は「柔化」と「スパイス・ガール」。
雄英には推薦で入ったらしい。

スパイス・ガール
破壊力:A
スピード:A
持続力:B
射程距離:D
精密動作性:D
成長性:C
スタンド像:人型
パワー分類:近距離パワー型
女型の人型スタンド。
物体を柔らかくする能力を持っており、柔らかくしている間はその物体を破壊する事ができなくなる。



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