先輩、ATMはカルデアにありません! (れべるあっぷ)
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先輩、100連ガチャのお時間です

これは女性サーヴァントしか召喚できない先輩の愉快痛快カルデアドラマを記録したものです。

暖かい目でよろしくお願いします。


 皆さん、こんにちは。

 

 私はマシュ・キリエライト。

 

 ひょんなことからサーヴァントと融合したデミ・サーヴァントです。

 

 そして、

 

「フォー!! フォフォーーー!! マーリン・ピックアップ・ガチャが来ている!!」

 

 それは一年に一度あるかないかの運命の出会い。

 

「俺の読みどおりだ!! マシュ!! 言ったとおりだろ!!」

 

 そんな奇跡に歓喜している先輩がいた。子供みたいに、はしゃぐ先輩がいた。先輩が手を振ってきました。意味がわかりません。一応、手は振り返しましたけど。

 

「石溜めといて良かった~!! 300個!! 100連!! 今日この日のこの時のために頑張って集めた甲斐があった~!! コイツさえカルデアに来てくれたら勝ち組なんだ!! コイツさえパーティに組み込めば特異点の攻略も捗るんだ!! だから、是が非でもお願いします!! 何卒、お願い致し申します!! カルデアの希望の光になってくれ!! ポチっとな………………………ッ!!」

 

 先輩の名は藤丸立香。

 

 一般人男性。

 

 年齢:16歳。

 

 血液型:B型。

 

 性格:マイペースで我が強い。

 

 最近、女難の相により女性不審に陥りがち。

 

 そんな彼は、焼却された人理を修復するため、未来を取り戻すべく特務機関カルデアに選ばれた48人の内の1人、そして、ただ1人生き残った悪運の強いマスターである。

 

 でも、テンション高めで、私ちょっとついていけてません。

 

「あ、ハズレ。メドューサさん、いらっしゃい。まぁ、10連だしな、これからだよな」

 

 先輩。嘘でも、ハズレとか言ってはいけません。石にされても知りませんよ。

 

「20連目。ブーディカ・ママ、お久しぶりですねー」

 

 先輩。握手が雑です。ローマ以来の再会なのですが……胸に目がイってるのも減点です。

 

「30連目、そろそろ金鯖来て下さいよ~。マーリン来て下さいよぉ~。キャスター枠!? しかし、メディアさんだ。しょんぼり、あ、ウソですよ。うそうそ、超うれしー」

 

 先輩。心に篭ってません。嘘でも、もっと喜ばないと……せっかく召喚に応じてくださったサーヴァントに失礼ですよ。

 

 これも先輩の悪い癖です。

 

「40連目、召喚サークルが光った!??」

 

 召喚システム・フェイトが金色に光るとレアなサーヴァントが召喚される仕組みです。

 

 星5サーヴァントが召喚される演出には虹色に光ることがあるそうですが、まだ見たことはないです。はい。

 

 しかし、

 

「バーサーカ!? 大事なことだからもう一度言うけど、バーサーカだとっ!? 俺が欲しいのはキャスターだ!! わかるかね!! キャスターが欲しいのー!! バーサーカはいらないんだワン!! 痛いのだワン!?? 噛むな噛むな!! 実は俺、タマモキャットも欲しかったんだ!!」

 

 寧ろ、先ほどのお三方に殴られなかっただけでも、それこそ奇跡かと。

 

 仮にも召喚されるサーヴァントは古今東西、時を越えていくつもの時代に名を馳せた英雄たちなのですから、先輩はもっと相手へ敬意を払うことを覚えた方がいいです。

 

 これは教育が必要です。ブーティカさんとか喜んで協力してくれそうですね。

 

「さあ、気を取り直して50連目だ…………………………………おいおい、俺のカルデアは10連で一体のサーヴァントしか召喚に応じてくれないのかよ!? あぁ、牛若丸ね、知ってる知ってる…………………………………………すーはー。やべ、石無くなってきた」

 

 徐々に焦りの色を見せる先輩。

 

 ちらっ、ちらっ、とこちらに振り返る先輩の挙動不審さはいつものことだった。

 

「60連目は百貌のハサンか。はいアウトー!! ぷぎゃ!?」

 

 はい、百貌さんから鼻フックいただきましたー。当然の報いです。

 

「な、70連目だ……………おい、マーリン………頼むぞ、マーリン………………………いや、マーリンじゃなくてもいいや。男だったら誰でもいいや」

 

 先輩、それは聞き手が間違えると誤解されかねない発言かと!!?

 

 誤解されやすい先輩の変わりに代弁しますと、先輩は男性サーヴァントを召喚したいだけなのです。

 

「でも、やっぱりマーリンが欲しい。君に夢中~セパセーン……と、ほら!! ヤバイ!! 本当にヤバイ!! 来た!! 来た来た!! キャスター枠!! これは勝った!! 金鯖!! フォーーーーーーー!! ニトクリスゥゥウウウウウウウ!!?」

 

 ズコーッ、と先輩は大袈裟にこけました。

 

 別にお笑いを取るとかそういうわけでもなく、純粋に? 素でと言いますでしょうか。もうそれは本当に予想外のサーヴァントの召喚にズッコケるしかなかったようです。

 

 さて。

 

 顔を真っ赤にしてぷるぷる震えるニトクリスさんを他所に、先輩は何かに取り憑かれたかのようにガチャを回していきます。

 

「あ、マシュ。ATM行く準備しよっか。俺の財布用意しといて」

 

 先輩、カルデアにATMはありません!

 

 皆まで言わずもながら、『外』も世界が消失されてますので近くのコンビニまで足を運ぶこともできません。

 

 そもそもここは年中吹雪に覆われた標高6000mの山なんですけども。

 

 さあ、気を取り戻して、80連目。

 

「80連目。ははっ、エウリュアレか。いえ、鼻で笑うなんてとんでもない。貴女はいつ見てもお美しい……ッ!!」

 

 怖いもの知らずな先輩。

 

 時にはその無謀さも必要なのでしょうか。私にはよくわかりません。

 

「90連目…………………あれ? 金鯖なのに涙が出てきた。ジャンヌさん、ハンカチありがとね」

 

 先輩。神引きしているんですけどね。

 

 お久しぶりです、ジャンヌさん。フランスではたいへんお世話になりました。

 

 そんなジャンヌさんが先輩の涙に戸惑い、こちらに説明を求めてきました。他のサーヴァントの方々も先輩を放置して私に詰め寄っては説明を一から要求してきました。

 

 後輩だから仕方がありません。

 

 人理を修復するために共に過ごしてきた時間が一番長い私の役目でもあります。

 

 ため息のひとつぐらい出してもバチは当たらないでしょう。

 

 あれです。

 

 先輩は男性サーヴァントが喉から手が出るほど欲しいだけなんです。

 

 そう告げたら皆さん、顔を引きつってました。

 

 あ、ホモじゃないですよ、とフォローはしませんでしたけども。

 

 さあ、ラスト100連目です。

 

 もうオチは見えていますが、先輩は諦めていないようです。

 

「俺は諦めないぞ。何故、最後の10連で諦められる? ここまで頑張ってきたんだ。諦めれられるはずないだろうが。いつだってそうだっただろうが。苦しい時、辛い時、ピンチの時、何もかも投げ出して死んで楽になりたい思う気持ちもあったけども、俺は結局諦めなかった。だから、今の俺があるんだ。絶望のどん底から這い上がってきたんだ。今までもこれからも……そうさ、もう希望しかないじゃん!!」

 

 くどいので早く回してください。

 

 諦めない姿勢は大事ですが、できればガチャ意外でお願いします。

 

「マーリン、カモン!!」

 

 オチがあれなので先に言っておきますね。

 

 先輩の本当の望みはマーリンじゃなかった。

 

 先輩が切望しているのは男性サーヴァントなら誰でもよかった。

 

 とにかく男性サーヴァントがカルデアに来てほしかった。

 

 そうじゃないと、ここカルデアがさらに魔境と化すから。先輩はそれを危惧して、抗うことのできない運命に必死に抗い続けただけなのです。

 

 しかし、先輩がいくら抗っても男性サーヴァントもマーリンも出ない。

 

 召喚に応じるのはいつも女性サーヴァントのみ……

 

「………」

「………」

 

 金鯖。クラスはキャスター。

 

 しかし、先輩は喜びはしなかった。

 

 何故なら、ニで始まってスで終わるサーヴァントだったから。

 

「………」

「………」

 

 口を一文字にした先輩と口を一文字にした女性サーヴァントが対峙する。

 

「………」

「………」

 

 真顔の先輩と真顔のファラオの視線が交差する。

 

「………」

「………」

 

 長い沈黙が続き、それを先に破ったのは先輩でした。

 

「お~の~れ~ニトクリスゥゥゥウウウウッ!! マーリンを寄越せぇええええええええええええええええっ!!」

「こ、ここここの不敬者ー!! そんなに私のダブりが不満なのですかー!? 私、自慢じゃありませんが一応周回のできるファラオですけどー!!」

 

 私は確信しました。きっと先輩たちは仲良くやっていけるでしょう。なんたってニトクリスさんの宝具レベルが2に上がるのですから……

 

 2人が仲良く取っ組み合いに発展し、頃合を見計らっては、あとはニトクリスさんに先輩を任せて、私は他に召喚されたサーヴァント方をカルデア内へ案内するのでした。

 

 魔の桃源郷カルデアへ、ようこそ。

 

 そして、これからも先輩の観察は続くでしょう。

 

 まる。




ご質問、ご感想等あれば、カルデア窓口まで(>_<)


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先輩、令呪は大切に使いましょう

 とある日の朝。

 

 今日は目覚めの良い朝でした。

 

 外は生憎の悪天候ですが、何か良いことが起こる予感がしました。

 

 そう、それは先輩との距離も縮まるような何かが起きる予感です。

 

「令呪を持ってニトクリスに命じる! 俺と一緒にオジマンを召喚させるぞ!!」

 

 あ、前言撤回です。

 

 先輩との距離が縮まるのは、まだまだのようです。

 

 まずは説教が必要でしょうか。

 

 教育も必要でしょう。

 

 先輩、またなのですか?

 

 例え今日がオジマンディアスさんのピックアップの日だとしても、令呪はガチャをするために使うものじゃありません。

 

 いえ、先輩からしてみれば令呪一画など気にも止めないでしょうけども。

 

 日付が変われば一画復活するチートでしょうけども。

 

 特異点で有効的に使ってください!

 

「じゃあ、ニトクリちゃんもご一緒に。おいでませ~オジマンオジマン!」

「お、おいでませ~………オジマンディアス様」ボソッ

「声が小さい! 恥ずかしがらずに!!」

「は、はいぃっ!」

 

 ………。

 

「おいでませ~オジマンオジマン!」

「お、おいでませ~オジマンディアス様!」

 

 ………。

 

「なんか語呂が悪いぞ! オジマンを様付けするな!! オジマンにディアスも付けるな!!!」

「で、ですが……っ!!」

「いや、皆まで言うな! お前の言いたいことはよくわかる! しかしな、いいか、よく聞けニトクリス! 一字一句でも詠唱を間違えればオジマンディアスはカルデアに来てくれないぞ!」

「そ、それは困ります!」

 

 ………。

 

「というか、オジマンも英霊の座で寂しくお前の呼びかけを心から望んで待っているはずだ。そうに違いない!」

「あの方が、私を……っ!!?」

「そうさ、お前の声が必要なんだ。だったらオジマンも呼び捨ても今回ばかりは許してくれるだろう。不敬も承知で俺の後に続け! リピート・アフター・ミー!!」

「はいぃっ!!」

 

 ………。

 

「はい、オジマンオジマン」

「申し訳ありません! オジマンオジマン!」

「もっと声を上げてー、オジマンオジマン!」

「オジマンオジマン!!」

 

 ………。

 

「おいでませ~オジマンオジマン!」

「おいでませ~オジマンオジマン!」

「手の動きが弱い。波を打つワカメの様に! しなやかに!!」

「こうですかマスター!?」

 

 ………。

 

「腰をもっとエロくクネらさせろ!!」

「こ、こうでしょうかー!?」

「脚も!! もっと!! その生脚はうねうねと海に生えるワカメのようにだー!!」

「物理限界を超えることはできませんー!!」

 

 ………。

 

「おいでませ~、オジマンオジマン!!」

「おいでませ~、オジマンオジマン!!」

「でませい、オジマン!!」

「でませい、オジマン!!」

「でませい、でませい!!」

「でませい、でませい!!」

「おいでよ、オジマン!!」

「おいでよ、オジマン!!」

「イケメン、オジマン!!」

「イケメン、オジマン!!」

「オジマン、アゲマン!!」

「オジマン、アゲッ!??」

 

 ………。

 

「ところでマスター! コレはいつまで続けるつもりですかー!!」

「ずっとだよ!!」

「ずっとぉ……っ!??」

「ピックアップ期間中はずっとだ!! 最終日になけなし呼符1枚で一発逆転狙いだ!! 当然だろーが!!」

「」

 

 あ、ニトクリスさんが白目剥いてしまいました。

 

 白目剥いたままワカメ踊りしています。

 

 正直怖いです。

 

 そして、ご愁傷様です。

 

 先輩はたとえ相手がファラオであろうとも容赦しないでしょう。

 

 いつものことです。

 

 先輩の気分次第ですが、男性サーヴァントを召喚しようとするその無駄な労力と滑稽なまでの執念さで、当分の間は、暇を見つけては踊り続けるでしょう。

 

 私も騙されて踊ったのがもう遠い昔のように思います。

 

 まる。

 

「フォウ」

 

 あ、フォウさんだ。

 

 どうしたのでしょう。先輩を怪訝そうな目で見ながら私を呼んでいます。

 

 というか、ナイスタイミングです。

 

 一刻も早くこの場から離れましょう。

 

 私はフォウさんに導かれるようにその場を後にしました。

 

 ふう、助かりました。

 

 

 

 

☆―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 ネコともリスともよくわからない小動物、それがフォウさんです。

 

 私はフォウさんに導かれてやってきたのは、先輩の部屋前の廊下でした。

 

 そこに聖女が佇んでいました。

 

 先輩の部屋へ尋ねようとして、その手前あと一歩の勇気が持てず、扉をノックしようとした手を引っ込める、もうそれは聖女じゃなくただの恋する乙女がいました。

 

「あ、マシュさん」

 

 あ、ジャンヌさんがこちらに気がつきました。

 

 赤面しています。

 

 もじもじするジャンヌさん、ばっちり映像いただきました。

 

「ジャンヌさん、何か先輩に用事ですか??」

「あ、いえ、大した用事ではないのですが……今度、私をレイシフトに連れて行ってくださるとおっしゃっていたので、その……方針とかいろいろ話さなくてはと思いまして」

「打ち合わせは大切ですもんね。わかります」

「は、はい、そうなんです」

 

 このヒトは絆レベも1にすら満たない新人さんです。

 

 本当はもっと先輩との絆を求めているのは私にもわかります。

 

 フランスでの一件もありましたが、あのガチャ100連事件で召喚されたジャンヌさんは今日まで、ロクに2人きりで話し合うことすらなかったのでしょう。

 

 わかりました。ここは一つ、このマシュ・キリエライトがひと肌脱ぎましょう。

 

「先輩、失礼します」

「あ、え、マシュさん!? ノックもせず入っては……っ!??」

 

 確かに無作法ですが、無人ということは承知の上でした。

 

「どうやら、留守のようです」

「そ、そうみたいですね……」

「おや? どうかされましたジャンヌさん? 顔だけそっと覗いてるだけじゃなくて、早く中へ入ってください」

「で、ですがマスターは留守にしています。留守なのに勝手に入ったら怒られませんか? それも、まだ数日しか経っていない新入りをこんな神聖な場所へ……きっと怒りますよ」

「そんなことないですよ。私や他の方々もよく先輩の留守中に部屋にお邪魔してくつろいだりしてますけど」

「えぇ!? それは本当なのですか!?」

 

 あ、今のは失言だったでしょうか。

 

 ですが、私はちょっと先輩のベットでごろごろして先輩のニオイを嗅ぐだけですから問題ないでしょう。

 

 先輩の秘蔵書を漁るような真似はしてないのでセーフです。

 

 ノーカンです。

 

「ジャンヌさんは先輩と仲良くなりたくないんですか?」

「そ、それはもちろん仲良くしたいです! もっとお話ししたいです!! お食事もっ!!」

「じゃあ、勇気を出して一歩踏み出しましょう!」

「ちょっと、マシュさん!? それはまた話しが違うんじゃ……っ!!」

 

 らちが明かないので手を引っ張ってでも部屋へ招き入れるまでです。

 

 もうこれで私たちは共犯みたいなものですね。

 

「ここが、マスターのお部屋……」

 

 あ、もじもじジャンヌさんが深呼吸ジャンヌさんに変身しました。

 

 両手を胸の前に組んで祈り始めました。

 

 主よ感謝します、とかぶつぶつ言ってます。緊張をほぐすためだろうと思うことにしました。

 

 というか、先輩の部屋へ訪れるのも初めてだったんですね。

 

 絶対に私の口からは言わないですけど、珍しくも先輩に気に入られたニトクリスさんは召喚二日後には部屋へ招かれてましたけども。

 

「ジャンヌさんはここで待っていただけませんか?」

「べ、ベットの上で、ですか……??」

「難易度が高いのならそちらの椅子に腰掛けてもらっても構いません。くつろいでいてください。私が先輩を連れてきますので」

「私1人ここに残るんですか?」

「えぇ、セッティングはこのマシュ・キリエライトにお任せください!」

「そ、そんな張り切らなくても! 私も一緒に行きます!! お話しは別にマスターの部屋じゃなくてもいいんじゃないですか!!」

「それはできません!!」

「何故ですか!?」

 

 今現在、先輩によりニトクリスさん弄り真っ只中な光景を目にするのは、この聖女様にはあまりにも目が毒でしょう。

 

 いろんな意味でショックを受けるでしょう。

 

 いや、令呪をくだらないことに使った先輩をジャンヌさんに叱ってもらうのは効果ありかもですが、それ以上に面白いことがきっとこの部屋で起こるはずです。

 

「フォウさん、しっかりとジャンヌさんを見張っててください。すぐ戻りますから」

「ちょっとマシュさん!!」

「フォウ……」

 

 フォウさんは「やれやれだぜ」と言わんばかりのため息をつきましたが、私は先輩の元へ来た道を引き返すことにしました。

 

 

 

 

☆―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 そして、私はジャンヌさんを先輩の部屋に置いてきたことを後悔しました。

 

 一緒に連れてくるべきだったのです。

 

 説教してもらうべきでした。

 

 私は先輩を侮っていたようです。

 

 ここまで本気で馬鹿だとは思いもよりませんでした。

 

「令呪を持ってクレオパトラに命じる。お前も一緒に踊れ!」

「この無礼者ー!?」

 

 さらに令呪一画使って古参のクレオパトラさんが犠牲になりました!?

 

 しかし、3人になったことにより、先輩達の立ち位置をそれぞれ線で結べば三角形ができ、それはエジプトのシンボルであるピラミッドをも想像させられます。

 

 なるほど、ピラミッドパワーを利用するつもりですか。

 

 まさか、ここまで計算されているとは……

 

 これなら、あるいはワンチヤン無きにしも非ずです。

 

「おいでませ~オジマンオジマン!」

「おいでませ~オジマンオジマン!」

「パトー!」

「でませい、オジマン!」

「でませい、オジマン!」

「パトーー!!」

「でませい、でませい!」

「でませい、でませい!」

「パトーーー!!!」

 

 あ、クレオパトラさんは合いの手入れるだけなんですね。

 

 知ってました。




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先輩、いつもの三人衆からは逃げてください

 まだ正午を少し過ぎた頃。

 

 眩暈がしてきました。

 

 2人のファラオに令呪を使ったあの愚行を思い出すと立ち眩みさえします。

 

 ちょっと私、疲れてるんでしょうか。

 

 えぇ、疲れましたとも。

 

 あの後、オジマンディアスさんを召喚する儀式を終えた先輩は、ファラオ達にリンチされたのは言うまでもありませんが、それの仲介とかで私疲れました。

 

 そして、先輩はイジけてどこかへ去って行きました。

 

 とてもめんどくさい展開になりました。

 

 いつものことですが、先輩を探し当てるまでイジけて出てきませんから……お昼ごはん、ちゃんと摂っていたらいいのですが。

 

 今はニトクリスさんとクレオパトラさんに協力してもらい手分けして先輩を探してもらってます。助かります。

 

 まぁ、彼女たちが負い目感じることないのですが。なんだかんだマスター想いの良きサーヴァント達です。ちゃんと先輩も彼女たちと真正面から向き合わなければなりません。

 

 今後の課題がまた一つ増えました。

 

 ただ、何か見落としているような……何か用事を忘れてるような……まぁいいでしょう。それより先輩が最優先事項です。

 

 早いこと先輩を見つけてあげなくては、小鹿のような先輩は震え上がって肉食系サーヴァントに拾われ食べられてしまいます。

 

 とりあえず、まずはいつもの三人衆のところへ向かってみるとしますか。できれば手遅れになる前にあの三人衆の誰かが先輩を拾ってくれていると話は早いのですが……

 

「あら? マシュさん。マスターとご一緒されてませんでした?」

「あ、頼光さん……」

 

 言ってるそばから、あちらから登場してくれました。三人衆の1人、源頼光さんです。

 

「いえ、それがですね頼光さん、先輩はいつもの発作といいますか、いつものをアレを発祥させまして。はぐれてしまいました」

「あらあら、いつものですか。それは母として心配ですね。早く探し出して抱きしめてあげなくては……うふふっ」

「そ、そうですね」

 

 この方も古参サーヴァントです。先輩のためなら溶岩だろうがすいすい泳ぐ恐ろしいサーヴァントです。母(バーサーカー)のハグは小鹿な先輩にはちとダメージ大です!

 

 あ、でもそれはありかもしれません。

 

「ですが頼光さん、あまり先輩を甘やかさないでください。今回のことの発端は先輩の暴走から始まったのですから。キツいお灸を据えてあげないと先輩のためにもなりません」

 

 令呪二画を無駄に使用した件はまだ話が終わってませんから。このヒトはたまに暴走しますが息子を叱ることもできる母親(バーサーカー)です。

 

 私は頼光さんに今回の経緯を説明しました。

 

「わかりました。今回は息子を見つけ次第、マシュさんのところに連れて行きましょう。そして、私もマシュさんと一緒になって叱ってあげますわ」

「たいへん助かります」

「はい。それで反省したら思いっきり抱き締めてあげてお風呂に入れてあげて一緒のお布団に入って親子の絆を深めなければ」

「え、何故そうなるのですか……!?」

「うふふ、凄く昂り………いえ、楽しみですわ♪」

 

 言い換えた意味とは。

 

 やっぱり逃げてください先輩。頼光さんから逃げてください!

 

 鼻歌を歌うほどに上機嫌な頼光さんよりも先に先輩を見つけ出さなくては……私はダッシュで次の目的人物を探し回りました。

 

「もしかしてマスター……??」

「………」

 

 あ、いました。

 

 いつもの三人衆の1人、静謐のハサンさんです。

 

 彼女は今、廊下の端に置かれた段ボール箱を先輩と呼んで声をかけていました。え、なにこのヒト怖いです。

 

「静謐さん? どうかされました??」

「マシュさん……別に何も問題ありません」

「いや、今先輩を呼んでませんでした?」

「きっと気のせいです」

「………」

 

 このヒト、怪しいです。目が泳いでいます。何か隠してます。それも先輩絡みで。

 

「名探偵マシュはこう推理します。

 静謐さんが先輩と声をかけた大きめのこの段ボール箱はなんなのか………よく観察してみると、表記された文字はひっくり返っています。

 誰かが段ボール箱を運んでうっかり落としてひっくり返ったようにも見えますが、うっかり落としてソレに気付かないはずがありません。

 気付かないのであればその人は馬鹿です。優秀なカルデアのスタッフがそんなバカなはずがありませんから。

 では、これは明らかに誰かが故意に置いたのでしょう。誰かわざと置いたとも言え変えれます。

 例えば、女性サーヴァントにリンチされてイジけてしまった誰かさんとか!」

「………っ!?」

「先輩とか!!」

「な、なんのことでしょー………」

 

 あ、このヒト、シラをきるのが下手です。口笛吹くのが物凄く下手くそです。

 

 挙動不審です。

 

 そして、まさかこんな新手なイジけかたがあるとは思いませんでした。

 

 呆れて言葉もでません。

 

 とにかく世話のかかる先輩です。

 

「先輩、こんなところでイジけてどうするんですか。とりあえず説教のお時間です」

「あっ」

 

 静謐さんの制止もスルーして、私は段ボール箱を取っ払いました。

 

「………」

 

 でも、先輩は中に入っていませんでした。

 

 私の名推理は見事にハズレました。恥ずかしくて私が段ボール箱の中に隠れたいぐらいです。

 

 代わりに段ボール箱の中に入っていたのは加藤段蔵さんでした。

 

「こ、こんなところで何してるんですか段蔵さん?」

「あ、いえ、これはマスターの指示でして……」

「あ、それは言っちゃ駄目なやつ……」

「せ、静謐さん、どういうことか説明してくれますか?」

 

 なるほど、この2人は先輩の手先でした。

 

 先輩に飼いならされた忠犬ハチ公でした。失念してました。

 

「あの、いじけたマスターは段ボール箱を廊下に置いてその中でイジけたいとおっしゃったんですけど、それで廊下の端に一つ置いても怪しくてバレるだろうから、私達にも同じようなことを命令しまして」

「撹乱作戦ですね、わかります。それで? まさか令呪は使ってないですよね?」

「それはないです。というか、マスターがそんなくだらないことで令呪使うはずないじゃないですか」

 

 いや、そんなくだらないことにも令呪を使うヒトですよ。あの先輩は……

 

「でも、静謐さんは段ボール箱をかぶってないのですね??」

「それは……マスターから大切なミッションを受けた私は指定位置に着きました。けれど、マシュさん達を撹乱させるために、もっと効果的な場所があると思い、マスターに報告しようと思ったら……もう、マスターいなくて」

「そうなんですか……」

「だから、私は片っ端から廊下に落ちてる段ボール箱に声を掛けていきました。でも、マスターは返事してくれませんでした」

「そりゃそうでしょうけど……」

 

 ドジっ子、静謐さん。需要はあるのでしょうか。

 

 それよりも、今の会話に引っかかりを覚えました。

 

「ちょっと待ってください。静謐さん、今の言い方だとデコいの段ボール箱は先輩や段蔵さんが隠れているやつ以外にもあるということになりませんか!?」

「ぎく……っ!!」

「ギク……ッ!?」

「2人揃って擬音で返答しないでください」

「うっ、そうです。もう白状しますけど、私や段蔵さんの他にもマスターに協力したサーヴァントがいます」

「というか、あの子供たちはコレが新手のかくれんぼってことになってますけど」

「もしかしてもしかしなくてもジャックちゃん達ですか!?」

「「はい」」

 

 めんどくさい話になってきました。

 

 とりあえず、先輩を探そうにもカルデア内にある段ボール箱を片っ端から探すハメになるとは思いもよりませんでした。

 

 そして、その段ボール箱はヒトが見ていないと動くものもあるそうです。

 

「たとえば、あんな感じで廊下を通り過ぎていきます」

「もしかしたら、先輩かもしれません! 失礼します!!」

 

 段蔵さんが指差した十字路で横切っていった動く段ボール箱を追いかけることにしました。

 

 そして、追いかけて、結構早い速度で動く奇妙な段ボール箱をキャッチしては取っ払いました。

 

「貴女まで何してるんですかニトクリスさん!?」

「あの不敬者がまた令呪を使ってきたんです!!」

 

 やっぱりこんなくだらないことにも令呪使ってしまったんですね、先輩。

 

 知ってました。

 

 ニトクリスさんは、涙目になりながらことの経緯を説明してくれました。

 

 曰く、ニトクリスさんはイジけていた先輩を見事発見したそうですが、捕まえようとして令呪を使われたそうです。

 

 余談ですが、その時、クレオパトラさんも名指しされて、きっと今頃はデコイの段ボール箱の中にいるだろうとのことです。

 

 もう、カオスです。

 

 令呪三画も使ってしまってどうするんですか。敵が攻め込んできたらどうするんですか。

 

 私は最後の望みを託すために、あのヒトの元へ向かいました。

 

「ますたぁ? あぁ、ますたぁーはどこへ行かれてしまったのですか……」

「清姫さん、流石にダストボックスの中にはいません!!」

 

 いつもの三人衆が1人、バーサーカである清姫さんがゴミ箱の中を漁ってました。まさに狂気です。そして、アテが外れました。

 

「あぁ、マシュさん。ますたぁが私のすとーきんぐを振り切ってしまいました。どこへ行ったのでしょう……」

 

 それはたいへん喜ばしいことでもあるのですが、今回だけは困りましたね。清姫さんのストーキング術を期待していたのですが。

 

 こうなってくると、自力で探すのがさらに面倒になってきました。

 

 あまり騒ぎを大きくすると他のサーヴァント達が我先にと先輩を探し出してしまう恐れがあります。それすなわち、先に見つけたサーヴァントが先輩を好きにしていいという謎のルールによって、哀れ先輩は肉食系サーヴァントの餌食になるのでした。

 

 めでたしめでたし。

 

「しかたありません。今日はますたぁのお布団を暖めて帰りを待つとしますか」

「いや、一緒に探してください」

 

 お布団というかベッドを暖めるのも、できればこのマシュ・キリエライトにお任せください。

 

 あ。

 

 今、たいへんなこと思い出しました。

 

 添い寝→お布団→先輩のベット→先輩の部屋で思い出したことがあります。

 

「ジャンヌさんのこと忘れてました」

「ジャンヌさんがどうかしたんですか?」

「すみません清姫さん! 先輩はきっと段ボール箱の中でイジけているはずです! デコイには気をつけて!」

「ちょっと、それはどういう意味です……っ!??」

 

 すっかりジャンヌさんのこと忘れてました。

 

 放置してました。

 

 どれくらい時間たったんでしょうか。

 

 そこは考えることをやめました。

 

「あ……」

 

 駆け足で先輩の部屋へ戻りましょう。

 

 ジャンヌさんが可哀想なので戻りましょう。そして、一緒に先輩を探してもらいましょう。

 

 そして、そして………

 

 目の前に不自然すぎるほどに怪しいダンボール箱がずりずり動いてました。

 

「もしかして先輩ですかー!!」

 

 勢いよくダンボール箱を取っ払ってみました。

 

 が、

 

「クレオパトラさんー!?」

「パト~」

 

 ファラオたちにとっては「今日はなんて日だ!」になったに違いないです。

 

 まる。

 

 

 

☆―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 ジャンヌさんには開口一番に謝罪しましょう。

 

「ジャンヌさん、遅れてすみませんでした。これには海より深い事情が………」

 

 ジャンヌさんのことを忘れていただなんて、決して口が裂けても言えませんけども。

 

 しかし、先輩の部屋に戻ってみるとその謝罪の言葉は杞憂に終わったみたいです。

 

「あら?」

「マシュさん、マスターはどうやらお疲れみたいです」

「ぐっすり眠ってますね」

 

 先輩がいました。

 

 普通に。

 

 ベッドの上で、ジャンヌさんに膝枕してもらって、すやすやと眠っています。

 

 ジャンヌさんに頭撫でてもらってます。

 

 こちらの苦労も知らないで、憎らしいほど穏やかな寝息を立ててます。

 

 なんだか、あっけなく見つかりました。

 

 あぁ、私は先輩に嘘の情報を掴まされたわけですか。結果的に見れば苦労することなく先輩を見つけることができましたが、本来であればデコイの段ボール箱をひたすら探し回って取り越し苦労になっていたのでしょう。

 

 まあ、今回はいつもの三人衆ではなくジャンヌさんの手元に置いてあるので安心できるでしょう。

 

 ジャンヌさんには先輩を任して、私は三人衆や子供たち、ついでにファラオ達にかくれんぼ終了のお知らせを伝えるために、またカルデア内を探し回るハメになるんだと思います。 

 

「それではジャンヌさん、先輩のことよろしくお願いします」

「え、あ、はい。任せてください!」

 

 邪魔者は退散するとしますか。

 

 全てが片付いたら説教ですよ、先輩。

 

 それまで、しばし甘い時間を。




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先輩と恋の物語事件その1

それはモヤモヤする事件でした


 最近、やたらとカルデアを這いずり回る段ボール箱を見かけるようになりました。

 

 暇をもて余した子供たちが遊んでいるのでしょう。

 

 こうして、イタズラに段ボール箱を取り払うと、

 

「アタランテさん、貴女も子供たちと遊んであげているのですか。たいへんですね」

「子供たちの相手ができるのだ。あのロリコ………マスターには感謝しないとな」

 

 今、貴女、先輩のことロリコンと言いかけましたよね?

 

 でも、それは正解です。

 

 この前も先輩は言ってました。子供たちが最後の癒しだそうです。

 

「ところでアタランテさん。そのロリコンをこよなく愛する先輩を見かけませんでしたか?」

「見ていない。一つ言えることはこの遊びに参加していないということだな」

「わかりました。他を当たってみます」

 

 四六時中、一緒にいてるわけではありませんからね。

 

 今日も今日とて、私は先輩を探す旅から始まるのでした。

 

 先輩の愉快痛快カルデアドラマを記録するため、いざゆかんですっ!!

 

 

 

 

☆―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 などと、意気込んでみたものの、関わらなければよかったと後悔しか残らなかった事件が起きるのでした。

 

 そもそも、「先輩あるところに事件あり」という諺があるぐらいです。

 

「貴女は何してるんですか、謎のヒロインXさん?」

「しっ、静かに。セイバーを射ち損ねてしまうじゃないですか」

「またですか………」

 

 セイバーを抹殺するためにカルデアに送りこまれたアサシンこと謎のヒロインXさん。

 

 毎度のことですが、クラス・セイバーのサーヴァントにつっかかる面倒なヒトです。

 

 今回も獲物を廊下の角から狙っています。

 

 それもいたいけな少女を………

 

「流石にリリィさんは駄目ですよ」

 

「何言ってんですか? 弱者から始末するのがプロのアサシンってもんですよ」

 

「せめて、成長したアルトリアさんにしてください」

 

 返り討ちにされるでしょうけど。

 

 弱い者イジメ、ダメ、反対です。

 

「と、まあ冗談はさておき」

 

「貴女の場合、半分本気でしょうけど」

 

「あのセイバー・リリィ、さっきからため息ついて、私と同じように角に隠れて覗き見してるようですよ。相手は言わなくても一目瞭然だと思いますが」

 

「先輩を、ですか」

 

「そのようですです」

 

 アルトリア・ペンドラゴン・リリィさん。又の名をセイバー・リリィさん。

 

 かの有名な誉れ高き騎士王の成長する前の、謂わば未成熟系サーヴァントです。

 

 純粋無垢で一辺の穢れもなく大食らいでもない少女。

 

 もし、自分のクラスに転校してきて席が隣同士になって、次の席替えでも隣同士になった日には恋に落ちていただろうと先輩に言わしめたほどのお方です。

 

 そんなリリィさんが憂いを含んだため息を吐いてました。

 

 切なそうな眼差しを曲がり角の向こう側へ向けていました。

 

 恋する乙女のように。

 

 先日のジャンヌさんのように。

 

 デジャヴです。

 

「あ、セイバー・リリィが諦めて引き返してきます」

「そうですね。私はただの通りすがりを装って先輩の様子を見に行ってきます」

「それだと私は同行できないじゃないですか!?」

「何故です? 一緒にただの通りすがりを演じればいいじゃないですか?」

「それができたら苦労しません。セイバー・リリィを煽ってマスターに告白してこいとけしかけたのは、何を隠そう私なんですから!」

「そんなどや顔で謂われても……」

 

 自らゲロりよったとはまさしくこの事です。

 

「なので身を隠さないと!」

「いやいや、リリィさんのアフターケアをお願いします」

「いやいや、セイバーが弱ってる時こそが好機です。マシュさん、一緒に隠れましょうよ」

「えー」

 

 もう言うてる間にリリィさんがやってきます。

 

「そこに段ボール箱が2つあるでしょ?」

「………」

 

 まさか私まで段ボール箱に隠れる日がくるとは思いもよりませんでした。

 

 

 

 

☆―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「はぁ、マスターのバカ………」

「「………」」

 

 なんだか、雲行きが怪しくなってきました。

 

 リリィさんがため息を吐いて、不自然にも置かれた段ボール箱(私たち)をキレイにスルーして通り過ぎて行きました。

 

 一度の見向きもしません。

 

 私は一体全体何してるのでしょうか。

 

 何故、謎のヒロインXさんと仲良く隊列を組み、いえ、この場合は段ボール箱2つ並んで先輩の元へ向かっているのでしょう。

 

「謎のヒロインXさん、もう段ボール箱から出てもいいのでは?」

 

 ただの通りすがりAとBじゃ駄目なのでしょうか。

 

「これこそ好機というやつですよ。セイバー・リリィが勇気を出せなかった理由を解明できるチャンスです。このまま前進あるのみですよ」

「これ、何でバレないんでしょう………」

 

 今世紀最大の謎かもしれませんね。

 

 ダ・ヴィンチちゃんに解析してもらい、次回の特異点に活かせないでしょうか。

 

 絶対にバレる距離です。

 

 セイバー・リリィさんが勇気を持って告白できなかったロリコン先輩が目前に迫ってきました。

 

 しかし、先輩は気付きません。

 

 どうやら、お取り込み中みたいで、それどころじゃないようです。先輩がジャンヌさんを壁ドンしていました。

 

「ジャンヌ。素敵だよ」

「うふふ、もうマスターったら。からかわないでください///」

「いやいや本当に素敵だ。君はまるでエビフライバター炒めのように美しい。今すぐ食べてしまいたい」

「まだお昼ですよ。子供たちも遊んでます。夜まで我慢してください///」

「じゃあ、今夜は寝かさないよ」

「はい///」

「「………」」

 

 ツッコミどころ満載なんですけどー!

 

 なんですか、胸焼けしてしまうこの甘ったるいシーンはー!

 

 たかが廊下の出来事なのにー! ガラス張りで見え外の景色は猛吹雪が吹き荒れる悪天候なのにー!

 

 なんですか、このバカップルはー!

 

 いつの間にそこまで進展してたんですかー!

 

 それに何なんですか、エビフライバター炒めって。先輩はジャンヌさんのことそんな目で見てたんですかー!

 

 しかも、ジャンヌさんも今夜ベッドインする気満々ですねー! 良かったですねー!!

 

「ここは冷えるよ、ジャンヌ。少し場所を変えよう」

「はい、立香///」

 

 うおーい、ジャンヌさんが先輩のこと名前でしかも呼び捨ててまーす!

 

 私もまだ先輩を下の名前で呼んだことないのにー!

 

 そんな私の心情などつゆ知らず、この場に、いえ、このカルデアの世界には自分たち二人しかいないものだと思い込んだバカップルが立ち去って行きました。

 

 手を繋いでます! それも恋人繋ぎで!

 

「マシュさん、今の見ましたか?」

 

 えぇえぇ見ましたとも。見たくもないものを見てしまいましたとも。

 

「マシュさん、マスターどうしちゃったんですか?」

「今までに類を見ないぐらいベタ惚れでしたね」

 

 私は段ボール箱から出て、もう段ボール箱に八つ当たりをするしかなかったのです。

 

「そう、そこなんですよ。マスターちょっと変でした」

「先輩が変なのは今に始まったことじゃないでしょうに」

「ですけど、変です。だって、マスターってロリコンなんですよ。聖女に壁ドンして愛を囁くなんておかしいです!」

「確かに言われてみればそうですね」

 

 謎のヒロインXさんの言葉に私は冷静になれました。

 

 確かに先輩は変でした。

 

 いつもと違う様子だったとも言えるのです。

 

 何故なら先輩から女性サーヴァントを口説くなんて、無自覚以外でありえないのですから。

 

 先輩もそんなことすればどうなるか理解しているはずです。やぶ蛇みたいなものです。

 

 だから、変です。

 

「マシュさん、何だかキナ臭いですね」 

「ええ、そのようで」

「なので、なんとかしてください」

「なんとかしてくださいって………あの、何故私が?」

「何故も何も、数々の難事件を解決してきた名探偵マシュさんだからこそお願いしてんじゃないです」

 

 いやいや、名乗った覚えはありませんよ。いや、名乗ったこともありました。探偵気分に浸ったことがあります……

 

「いやー、お噂はかねがね聞いておりましたが、ついに私もワトソン役ポジションに抜擢されましたかー。これは照れますね」

「助手役を貴女に抜擢もしていませんが、何故……」

「だってマシュさん、かの有名なシャーロック・ホームズ先生のお弟子さんなんでしょう?」

「どこ情報なんですか、それ?」

「情報元は秘密です。しかし、彼の意思を継いだのなら助手も必要ですよね?」

「その理屈はおかしいと思うのは私だけでしょうか」

 

 何故、助手役にそこまでこだわるのでしょうか、このヒト。

 

「言っておきますが、今回のワトソンポジションだけは誰にも譲れませんからね。アサシンネットワークを駆使して頑張ります、マシュ先生!」

「えー」

 

 私、先生になってしまいました。

 

 とても面倒なことになってきましたが、先生と言われるのはそう嫌ではないようです。

 

 でも、もうオチが見えてます。

 

 先輩絡みの事件に首を突っ込んで後悔しなかった日はないです。

 

 ため息しか出ません。

 

 されど、この事件、私たちが予想していた以上の結末が待っていただなんて誰も思いもしない事件でした。

 

「ささ、はじめのお客さんが訪ねてきましたよ、マシュ先生」

 

「はあ、どうなってもしりませんからね。ワトソンXくん」

 

 前からやってくるのはブーティカさんでした。

 

 フォウさんに導かれやってきました。

 

 続く。




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先輩と恋の物語事件その2

 バカップルのせいでいろいろと騒ぎは起こっているようです。

 

 私こと名探偵マシュ・キリエライトと謎のヒロインXさん改めて謎のワトソンXくんは、この珍事件に巻き込まれた被害者ブーティカさんに連れられて食堂を目指しました。

 

 エビフライバター炒めが何か関係しているのかもしれません。

 

「カルデアはいつもこうなんだね。賑やかなのはいいんだけどさ、流石に食堂が使えなくなるのは困るよ。今日の晩御飯を抜きにするなら話は別なんだけどね」

 

 それは流石にまずいですね。

 

 食堂はカルデアの生命線とも言えます。

 

 日々、忙しく働いてくださるスタッフの皆さんの動力源です。栄養面を考慮してくれた食事を取ることによって活力を養います。なので、今晩はインスタントラーメン等でその場しのぎをすれば明日の業務に影響与えること間違いありません。

 

 それに腹ペコサーヴァント達が暴動など起こしでもしたら大変です。

 

 急いで食堂へ向かいましょう。

 

「マシュ先生、これは………」

「ワトソンXくん。皆まで言わなくてもわかります。私たちの手に負える案件ではなかったようです」

 

 食堂に到着しました。

 

 そして、心のどこかでブーティカさんの依頼は諦めようと決めたのでした。

 

「アレ、どうにかできそう?」

「どうにもできません。ムリです」

 

 本当に無理です。

 

「「「マスターをたぶらかす女はブッ殺す」」」

 

 ………。

 

 アレはヒトの力を超越した災害みたいなものです。だからムリなんですー。

 

 いつもの三人衆が厨房を占拠していました。物騒な言葉で物騒な獲物を持ってまさに修羅の世界が広がっていました。

 

「うふふ、うふふふふふ………マスターが泥棒猫に取られました……だから母は切り刻むのです………」

 

 頼光さんが何やら怪しい薬草をスパッスパパーンッと切り刻んでいました。まな板ごと。台の所の表面さえ切り刻むのです。

 

「フシュー………頼光さん。切り刻むだけじゃもの足りません、捻り潰して掻き回さなくては………」

 

 清姫さんは、その切り刻んだ薬草たち(まな板と台所の一部)をミキサーの中にぶち込みました。

 

「マスターは私が助け出します………私は毒しか出せませんが………聖女絶対殺すサバーニーヤ……」

 

 静謐さんが宝具を展開しました。

 

 ミキサーの中に入れていきます。

 

 なんだか恐ろしいおドロおドロした液体が混ざってしまいました。

 

 これで紫色の謎のドリンクが完成です。

 

 絶対飲みたくないです。

 

「さて、お次は………」

 

 まだ作る気ですね。

 

 次は何を作る気でしょうか。知りたくもありません。

 

 これは当分の間止められそうにありません。

 

 彼女達の気が済むまでやらせるのが一番でしょう。

 

「それができたら苦労はしないんだけどね」

「確かに、三人衆の愛と憎しみのポイズンクッキングがいつまで続くかもわかりませんし」

「なるほど、ポイズンクッキングのフルコースが出来上がるのが先か、厨房が壊滅するのが先か……どちらにしろ、私たちの手に負えないのは変わりません」

「名探偵マシュに助手のワトソンXくん、深刻な問題は何もそれだけじゃないんだ」

 

 まだこれ以上に何かあるのでしょうか。

 

 あのポイズンクッキングで出来上がったドリンクを見るだけでもう心が折れそうだというのに。

 

 尚、頼光さんが特性ドリンクを3つのグラスについでお盆に乗せてこちらへ運んできました。

 

 微笑んでらっしゃいまふ。

 

 私たちは恐怖で顔が引きずっていまふ。

 

「うふふっ、何をこそこそお喋りしてらっしゃるか知りませんが、お暇でしたら味見をしていただけませんか? 息子に効く母親の愛情が沢山詰まったじゅーすなるものです」

 

 母の愛というより毒ですよね、それ。

 

 頼光さんは私たちにも死刑宣告を告げるかのようでした。また微笑んで厨房へ下がって行きました。

 

「さて、ワトソンXくん、帰りましょうか。事件は迷宮入りです」

「そうですね。完璧な推理などこの世に存在しません。帰りましょう」

「いやいや少し待ってくれ!」

「私、用事を思い出したんです! このキャメラのバッテリーを交換しないと! あー忙しー! 探偵家業はハードスケジュールなんですからー!」

「あ、じゃあ私が代わりにバッテリー換えてきましょうか、マシュ先生。こういう時こそ助手をコキ使ってくださいよー」

「裏切るつもりなんですかワトソンXくん!?」

 

 もう既に内輪揉めに発展しました。

 

 バカップルの影響力、計りしえない恐ろしさがあります。

 

 少しだけ見苦しいですが、ワトソンXくんとは殴りあってでも、話し合いをしなくては駄目のようです。バッテリー交換は私が行くのです。

 

 などと、そんな見苦しい言い争いを止めたのはブーティカさんでした。

 

 肩を掴まれました。ワトソンXくんも同じく。

 

「タマモキャットが犠牲になったんだ」

「「………」」

 

 ブーティカさんの一言で時間が止まったかのように私たちは大人しくなりました。

 

 もう既に犠牲者が出ていただなんて。

 

 キャットって名前が付いてるのに語尾にワンがつくキツネさんのことですね、わかります。

 

「私は止めたんだけどキャットの奴、言うこと聞かなくて味見したんだ」

 

 それはキャットさんが悪いですね。

 

「いや、キャットの気持ちも汲んであげた私が悪かった。キャットもバカップルへの嫉妬でテンションおかしくなってしまったんだ」

 

 やっぱりキャットさんが悪いですよね!

 

「今はドクター・ロマンの指示の元、マハタリに看病してもらってるよ。私は倒れてうなされる彼女を見てこう思ったんだ。仇は必ず打ってみせるってね」

「でも、相手はあの三人衆です。いくら、ブーティカさんでも荷が重すぎます」

「だからマシュに頼んでるんだよ。今日の私は勝つために手段を選ばない女だよ」

「いやいや、私が加わった所で勝ち目ないですよ、ほんと」

 

 いつから推理小説ものがバトルアクションになったのでしょう。

 

 そもそも勝ち負けの問題じゃないかと。

 

「マシュ先生、ワトソン役の私がいるじゃないですか」

 

 数の問題じゃないんですけど。

 

「わかりました、ブーティカさん。こういうのはどうですか? この際あの三人衆のことは一旦諦めてください」

「それじゃ、キャットの仇が取れないじゃないか」

「いえ、あの三人衆よりも、彼女らをあんなんにした元凶をどうにかした方が健全的です。それがキャットさんのためにもなるでしょう」

 

 私たちの身の安全にも繋がるでしょう。

 

「なるほど、大元を断つってわけですね。流石、マシュ先生」

「用はあのバカップルをどうにかするってことよね? しばくの?」

「はい。あのバカップルには痛い目をみてもらいましょう」

 

 どうシバくかはこれから話し合えばいいのです。

 

 なに、簡単です。

 

 いつものように、いつも通りにシバいたら問題解決しそうな気がします。

 

 なのに。

 

 あともう少しで話がまとまるはずだった、それなのにです。

 

 どうして先輩はアホなのですか?

 

「ハニー、ここでお茶していかないかい?」

「はい、ダーリン/// 小腹も空きましたね」

「じゃあ、エビフライバター炒めを頼もうか。ウェイター! エビフライバター炒め二人前と何かお茶的なものを二つ!!」

「「「………」」」

 

 おーのーれーこのバカップルー!!

 

 何がハニーだ! 何がダーリンですかー!

 

 あと少しで話がまとまりそうだったのにー!

 

 これでは火に油を注ぐようなもんですー!

 

 どこまでアホなのですかー!

 

「あらあらー。バカップルからオーダー入りましたよ清姫さん」

「ええ、あの幸せオーラをエビフライバター炒めと共にぶちのめしましょう!」

「NP溜まりました。いつでも宝具展開します!」

 

 聖女絶対殺すマンがまた宝具を展開しました。

 

 ヤバいです。

 

 もう止まれません。

 

 止められません。

 

 しかし、これはこれでアリかもです。

 

 ここでバカップルをぶちのめしさえすれば事件は解決するような気がします。

 

 ブーティカさんもワトソンXくんもそう悟ったに違いないでしょう。

 

「先にお飲み物を持って参りました。ごゆっくりどうぞ」

「まあ、美味しそうなジュースですね」

「あぁ、まるで母の愛とかいろいろ詰まっていそうなだ。ふっ、やはりこの店を選んでよかったぜ」

「「「…………」」」

 

 バカップルは空気を読めないどころか視力まで低下するようです。

 

 先輩、ここは店じゃありません。食堂です。

 

 そして、キザな台詞と共に乾杯するのでした。

 

「それじゃ、今日という記念日に、君の瞳に乾杯」

「か、乾杯です///」

 

 ………。

 

 うわー、ベタですね。

 

 カルデアキッチン内、キンとグラス同士接触する音だけが聞こえました。

 

 そこにいたものは誰もがその一部始終を固唾を飲み込んで見守りました。

 

 なんとまあ、甘ったるい最悪の一時なんでしょう。

 

 私は何故………私は誰………などと、危うく自我さえ蕩けて無くなってしまいそうな瞬間です。

 

 そして、そのポイズンドリンクを飲んだのは先輩だけでした。

 

「まっずぅーーーーーーッ!?」

 

 いや、不味いでしょうけど。

 

 

 

 

☆―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 毒を盛られても死なない先輩はさて置いて。

 

 いえ、毒を盛られてクレーマー化した先輩は聖女様に連れられ食堂から退場しました。

 

 そんな見るに見かねない光景に唖然とする中、視界の端に一人の少女の姿を捉えました。

 

「マスターのバカ………」

 

 誰にも聞こえない小さな声で切望して呟いてました。




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先輩と恋の物語事件その3

「先輩が惚れ薬を飲んだのですか?」

 

 話がもう推理とか関係ない方向へ飛んで行きます。もう探偵はいらないんじゃないですか? 帰っていいですか? というのが本音でこの事件はさらなる進展を迎えました。

 

 惚れ薬とはなんともまたベタですね。

 

 聖女様に絶対飲まされたに違いないというのが、いつもの三人衆の見解でした。

 

 だから先輩を正気に戻そうとして暴走したそうです。

 

「でもあの奥手の聖女様がそんな真似しますかねー?」

 

 というのは、私の助手を志願した謎のヒロインXさん、もとい、ワトソンXくんです。

 

 アルトリアさん顔のサーヴァントです。

 

「奥手なんてとんでもない、アレはこういうチャンスを狙っていたんですよ。いつ私のますたぁを奪い取って独り占めして食ってやろうかと腹の底で算段してたに違いないですわ」

「清姫さん、我らの盟約をお忘れですか? マスターは貴女1人のマスターではありませんよ? まぁ、マスターの母は1人で十分ですが」

「マスターの影の労働者は私ですけど」

 

 と、このようにお三方の言い分を全て聞いていると日が暮れそうなので、要点だけを抑えて解散してもらいました。

 

 とてもやる気も出なくなってきましたが、後のことはこの名探偵か怪しいマシュ・キリエライトにお任せください。

 

 あと、静謐さん。労働者という表現はやめときましょう。

 

「それではマシュ先生、少しの間別行動と洒落込みますか。被害はここだけじゃ終わらないでしょうし」

「わかりました。アサシンネットワークに期待してます」

 

 こうして私たちは調査に乗り出すのでした。

 

 

 

 

☆―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 さて。

 

 調査開始と行きましょう、などと悠長に言ってる場合ではないのでしょう。

 

 しかし、予想していたよりも事は大きくなっていませんでした。

 

 ある者は……「はん。あんな白い聖女様のどこがいいのやら。ジル! ジルはいませんか! ワイン持って来なさい! え? ジルはいない? あぁ、もう! いいわよ、私ちょっとジルを召喚してきます!」

 

 などど、黒い聖女様がヤケを起こして聖星石をかき集めに行きました。

 

 ある者は……「ジャンヌもついに大人の階段を登るのね。良かったわ。本当に良かったわ。おめでとう。ずっと心配してたのよ。あんなに良い娘を放ったらかしにするマスターもマスターなのよ。普通、召喚したその日に済ますものでしょ? 私の時もそうよ? ということは、今日は赤飯かしら?」

 

 などと、数少ないバカップル肯定派かと思いましたが、ただ友達を出し抜いて自分だけ先輩とアレをピーしたのに後ろめたかっただけなんですよね、フランスの王妃さま?

 

 ある者は……「余は全然気にしてなどおらん。本当だぞ? 妬いてもおらぬ。まだ、何も焦ることはあるまい。何故そう言いきれるかって? 勿論、余が一番可愛がってもらってるからに決まっておるからだ! 先日も愛を語ったばかりだから、な!」

 

 などと、自信に道溢れている皇帝さまもいるようです。凄いポジティブです。このヒト多分まだ処女です。

 

 ある者は……「女神の私を差し置いてイイ気なものね。いえ、別にあいつに魅了が効かなくなったからってイジけていないわ。別に怒ってもいないわ。ただちょっとイラっとしただけ。ストレス発散は済ましたもの」

 

 妹さんに八つ当たりしたんですね。わかります。

 

 ある者は……「お姉さまにあんなことやこんなことされました。カルデアっていつもこうなんですか? マシュも大変ですね。とりあえずマスターを石に変えれば問題は解決しませんか?」

 

 私的にはあんなことやこんなことが気になります。

 

 ある者は……「主殿はアレですね、アレですよ。英雄などと呼ばれる者はワイフを沢山抱え込むとかなんとか。そんなアレですよね。産まれたての小鹿に蹴られて死ねばいいのに」

 

 その気持ちはよーくわかりますよ、牛若丸さん。

 

 そして、ある者達は……「先ほどモードレット卿が騒いでいたな」「全く目障りな……そろそろまたシバきに行くか?」「まあまあ、下の乳が成長した黒い私、モードレット卿もリリィを気にかけているのでしょう。今回は多目に見てあげましょう」「青い私は丸くなったな。だかしかし、その手は悪手だ。ロン!」「ふっ、やるな………」

 

 いや、ふっやるなじゃありません。

 

 アルトリアさんが4人も揃って麻雀してる場合じゃないんですが。

 

「マシュ、そう荒れるな。落ち着け」

「マシュ、こういう時こそ我慢が必要ですよ」

「マシュ、それよりもモードレット卿を私の代わりにシバいといてくれ」

「マシュ、モードレット卿は私がシバいておきますので代わりにドンジャラやっておいてください」

 

 あ、それドンジャラだったんですね。

 

 代役はいたしませんが。

 

 獅子王さんの代役はまた今度にして、私はここから早々立ち去るのでした。

 

 というか、地の文だと誰が誰だか見分けが付きにくいですね。

 

 なので、ヒントです。

 

 上から、黒、青、下乳、上乳です。

 

 というか、どうでもいい証言ばかりが集まりました。参考になりません。

 

 

 

 

☆―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 さて、いろいろ回ってみましたので、そろそろ事件のおさらい、もとい整理してみましょう。

 

 事の発端は先輩が惚れ薬を飲んだせいで事件が起こりました。

 

 これも日頃の行いのせいでしょう。

 

 聖女ジャンヌ・ダルクさんに惚れてしまい、まんまとジャンヌさんの策略にハマってバカップルが誕生してしまったのです。

 

 このカルデアには「マスター独占禁止条例」なるものがあります。要は独り占めをしてはいけないというルールです。

 

 それをジャンヌさんは破ってしまいました。

 

 当然、ルールが破られ不満を漏らすサーヴァント達で溢れ返りました。やけ酒するサーヴァント然り、他の者に八つ当たりするサーヴァント然り、食堂で暴走するサーヴァント然り、失恋するサーヴァント然りです。

 

 タマモキャットさんが犠牲になりました。

 

 モードレットさんも直にアルトリアさん達にシバかれるでしょう。

 

 もうこれ以上の犠牲者を出さないためにも先輩を正気に戻すのが最善の策なのです。

 

 だから、私はダ・ヴィンチちゃん工房へ足を運ぶのでした。

 

「なに、簡単推理ですダ・ヴィンチちゃん。貴女は先輩からのアプローチがまったく無いジャンヌさんを不憫に思い、惚れ薬を作り渡してあげました。これが今回の事件の全貌です。まる」

「今、さらっと酷いことを2つぐらい言わなかったかい?」

 

 はて、なんのことでしょう。

 

「まあ、いいさ。私が真っ先に疑われるのは心外だったけど、確かに惚れ薬を作ったのは他でもないこの天才な私だよ」

 

 ほら、やっぱりです。

 

「では、答え合わせも済んだことですし、元に戻りそうな解毒剤をとっとと渡してください」

 

 これにて一件落着です。

 

 勿論、抵抗するなら力ずくでも奪い取るのみです。

 

 しかし、天才はこう告げました。

 

「解毒剤は渡す気はないさね。だって、彼に解毒剤を使う必要がないもの」

「………」

 

 この天才は何を言ってるのでしょう。

 

 しかし、それこそ少し考えれば何を告げられたか分かったも同然です。

 

 ダ・ヴィンチちゃんはこの事件の共犯者です。

 

 事件の全貌たるや知る人物です。

 

 故に、私の推理が間違っていることは明白なのです。だから、話しが噛み合わなくもなる。暗に推理ミスを指摘されているのです。

 

 そう、これが私の推理の限界。

 

 他のヒトたちよりも劣る私は、これまでの難事件も全て偶然が度重なって、そういうのが上手いこと行って解決できたものばかりです。

 

 だから、少し女の勘を働かして探偵の真似事をしたぐらいじゃ、今回は真実にもたどり着けなかったのです。

 

 私の想像力はなんて貧相なのでしょう。

 

「マシュ、君の推理を訂正しよう。私は惚れ薬を作ったけど、それは聖女様のためじゃない。そして、ぐだ男くんは惚れ薬を飲んでやしないよ」

 

 なん……ですと……っ!?




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先輩と恋の物語事件その4

 ダ・ヴィンチちゃんは言いました。

 

「君の推理は根本的間違ってるよ、マシュ。そもそも、ぐだ男くんは惚れ薬なんか飲んでやしないんだから」

 

 私の推理が間違っている。

 

 にわか探偵はまた推理を外してしまった。

 

 私の聞き間違いでなければ、先輩は惚れ薬を飲んでいないそうです。

 

 ジャンヌさんに骨抜きされてないそうです。酒呑童子さんも笑って転げる待ったなしです。

 

 そうですか。

 

 そうだったんですね。

 

 驚きの、驚愕すべき真実です。

 

 だから、大事なことなのでもう一度驚きましょう。

 

 なん……ですと……!? と、驚かざるを得ません。

 

 え、じゃあ、あのバカップルは……導き出される答えは一つしかないじゃないですか。アレが演技だっただなんて信じられません。

 

 本当に、先輩が関わるとろくでもなく、事件はどんでん返しに予測不可能です。

 

「アレが演技にしても、先輩もジャンヌさんも悪ノリが過ぎます。どれだけの人達に迷惑をかけたと思っているんやら」

「まぁ、普段奥手の聖女様にも夢を見させてやらないとね。おかげでいいものが見れたよ」

 

 まぁ、確かに先輩をダーリンと呼ぶジャンヌさんなんてレアな光景を見れましたが。

 

「私は今回の事件を『恋の物語事件』として人理修復した後には本を出そうかと思うんだけど。あとでそのビデオ拝借していいかい? 勿論売り上げの何割かは君の懐に入れてあげるよ。それにこの『恋の物語事件』の全貌を明かそうじゃないか」

「わかりました。それで手を打ちましょう」

「オーケー、交渉成立だね」

 

 英雄をダシに使う天才ダ・ヴィンチちゃん。抜け目ありません。

 

「さてさて、では私が誰から惚れ薬調合の依頼をされたのか、そして、何故ぐだ男くんと聖女様がバカップルを演じていたのか、順を追って説明しようじゃないか」

 

 さあ、始まります。

 

『恋の物語事件』の幕開けです。

 

「とある朝。

 何気ない、味気ない、いつも通りの朝。

 私の工房に珍しい来客が訪れた。

 それは儚げで憂いの帯びた白い少女であった。

『ダ・ヴィンチさん、おはようございます』

『やあ、おはよう。こんなに朝早くから君が訪ねてくるなんて珍しいね。何か良いことでもあったのかい?』

 彼女がここに訪れた時、私は悟った。

 もう彼女は限界なのだとーーーーーーーーーーー」

 

 などと、話が長くなるのでばっさりカットします。

 

 このダ・ヴィンチちゃんは作家には向いていないこともわかりましたし、もういいです。

 

 

 

 

☆―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 ダ・ヴィンチちゃんの話しによると、その白い少女さんが犯人にあたる人物です。

 

 いえ、犯人だなんて言い方は失礼ですね。

 

 ダ・ヴィンチちゃんに惚れ薬を依頼した依頼主です。

 

 彼女は自分の気持ちに鈍感な(他の癖の強いサーヴァントに脅かされてそれどころじゃない)先輩を振り向かせようと、もう何ふり構っていられない状況まで恋焦がれてしまっていたのです。

 

 だから、惚れ薬を依頼しました。

 

 やっとこれで先輩に振り向いて貰える。ただそれだけの想いだったのです。

 

 ですが、白い少女さんはドジをやらかしました。

 

 惚れ薬をどこかへ落としてしまったのです。

 

 探しても見つかりませんでした。

 

 気付いた時はもう既に時遅しです。

 

 惚れ薬は聖女さまが拾ってしまった後でした。

 

 こうして、白い少女の片想いの恋物語は終わりました。もう諦めて踏ん切りをつけようとしました。

 

 ですが、できませんでした。

 

 先輩と聖女さまが熱々のラブカップルになっていたからです。白い少女はショックでなりませんでした。

 

 そう騙されたのでした。

 

 聖女さまが先輩に拾った惚れ薬をどうするべきか相談されたとも知らずに、惚れ薬の持ち主を炙り出すために敢えてバカップルのフリをしていたとも知らずに……

 

 あの子はずっと先輩を尾行していたのです。

 

 これが、ダ・ヴィンチちゃんから聞いた話しです。

 

 オチがありません。

 

 そう、まだ完結していない物語だったのです。

 

 そして、モードレットさんが先輩を連れてやってきました。先輩をボコボコにしたようです。

 

「マシュ、マジやべえぞ。父上たちが……!」

 

 はい、モードレットさん。ついにアルトリアさん達にシバかれる時がきましたか。

 

「いや、そっちのじゃない! 謎の父上が白い父上に決闘を申し込んだんだ! このままだと白い父上が殺される……っ!」

「もうモードレットさんったら……何の冗談ですか?」

「冗談じゃねーよ! 惚れ薬なんて不正は正義をかざすための格好の大義名分だろうが! 謎の父上はそれを狙っていたんだよ! セイバーを抹殺するための絶好のチャンスだ!」

 

 あぁ、だからあのヒトは尾行して、時に煽っていたんですね。

 

 まったく、アサシンネットワークなんて使って何しているかと思えば……

 

 初めからこれを狙っていたんですね。

 

「オレじゃ落ち込んだ白い父上をどうすることも出来なかった。元気付けることも勇気付けることも……それに! コイツに頼んでも止めてくれないし、あとはマシュに頼るしかねーんだよ! 頼むよマシュ!」

「俺は……何もできない役立たずです……」

 

 はい、先輩は役立たずです。

 

「わかりました、モードレットさん。急ぎましょう!」

「サンキュー、マシュ!」

 

 最終決戦の地はカルデア・シミュレーションルームです。

 

 さあ、『恋の物語事件』はクライマックスです。

 

 

 

 

☆―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 ですが、時既に遅しでした。

 

 私の助手であるワトソンXくんが白い少女を完膚なきまでに叩きのめしていました。

 

 セイバー・リリィさんを竹刀で滅多うちにしていました。

 

 竹刀であろうとやり過ぎるとどうなるかは目に見えてます。

 

 獲物が竹刀での決闘ならリリィさんも受けるでしょう。竹刀程度ならリリィさんを亡き者にすることも可能でしょう。

 

『どうしたんですか? もう終わりですか? 貴女の本気ってこんなもんなんですか?』

『ま、まだ終わっていません……っ!!』

 

 モニター越しで行われるやり取り。その光景に焦燥し早くリリィさんを庇ってやらないと、もう命がありません。

 

 ですが、

 

「全令呪を持って全サーヴァントに命じる。この決闘は黙って見守れ……頼む」

「マスター、てめぇ……っ!?」

「先輩、何故でですか!?」

 

 これでは助けに入ることができません。

 

 三画も使ってしまえば、いざという時に謎のヒロインXさんを止めることができません。

 

 ですが、裏を返せば先輩は謎のヒロインXさんを信じているということになりませんか。

 

『言っておきますけど、貴女がいくら頑張ろうとも私には勝てませんよ』

『そんなことやってみないとわからないじゃないですか……っ』

『本当に? まだそんなこと思えるだなんてめでたい頭してますよね。あぁ、そうでないとマスターの気を引こうとしませんよね。可哀想に、再基霊臨も三段階で忘れられるようなサーヴァントでセイバーで同じ顔をしてるだなんて同情でもしてあげましょうか?』

『そんな同情はいりません』

『ですけど、私は聖杯を使われてレベル100ですよ。この差が何を物語っているかわかりますか? 周回さえ連れて行って貰えないお荷物サーヴァントさん』

『そ、それは………』

 

 サーヴァントが増えて育成が追いきれないのは、よくある話しです。

 

 ですが、リリィさんには堪える事実でしょう。

 

 あの課金中毒者はリリィさんそっちのけでガチャを回していたのですから。

 

 謎のヒロインXさんはショックを受けて動けないでいるリリィに突きを放ちました。

 

 それも顔面にです。

 

 リリィさんは反応が遅れて思わず尻餅をつきました。

 

 そこへ容赦なく腹部に強烈な一撃が入ってしまいました。

 

 勝負は決まりました。

 

 本当に決まりました。

 

 だから、これ以上彼女を傷つけないでください。

 

『レベルも違う。実力もレイシフトに連れて行って貰った回数も違う。女としての価値も違う、マスターからの寵愛も受けて無い。貴女はサーヴァント以下のサーヴァントですよね。誰が見たってそう言いますよ。カルデアに残る意味あるんですか? もう楽になった方がいいんじゃないですか? このままじゃ貴女、ずっと辛い思いしますよ?』

『ですが、私はマスターを信じます……』

『いやいや信じきれなかったから惚れ薬なんかに手を出したんでしょうが! こんな騒動を起こせばマスターが気にかけて同情でもしてくれると? 冗談じゃない! そんな考えだからマスターに相手されないんですよ! 引っ込み思案のこのネクラ女!』

『わ、私がネクラ……っ!?』

 

 ………。

 

 ワトソンXくん。貴女、まさか……

 

『あーあ、残念ですよ。最初に葬るセイバーがこんなつまらないセイバーで本当に私はつまらない』

『………』

『もう貴女の負けです、私の顔をしたリリィさん。ゲームオーバーってやつですね。せめて、私と同じその顔は綺麗なままにして死んでくださいっ!!』

『まだ、私は……ッ!!』

 

 助手のワトソンXくんは宝具を展開しました。

 

『無銘勝利剣エックス・カリバー―――――――ッ!!』

 

 2本の竹刀によるダブルカリバーといったところでしょう。

 

 ただ竹刀であろうとワトソンXくんが放出した魔力によってコーティングされた獲物です。凶器です。もはや兵器ですらあります。

 

 もれなくセイバー特攻も付加されるでしょう。

 

 最早、リリィさんに残された勝利の可能性すら奪い取るセイバーは絶対殺すマンでした。

 

 リリィさんのその華奢な体は吹き飛ばされ壁に衝突して力なく倒れました。

 

『私は……まだ、終わりません…………』

 

 ですが、リリィさんはHP1で耐えてみせました。

 

『あ、ありえない……な、なんで……何でライフ残ってんですか?』

『私は、ここで終わっちゃいけないんです……』

『いやいや、私は手を抜いていない。竹刀だけど全力で全急所を狙った。なのに……貴女、まさか…………っ!?』

『私、まだ……マスターに自分の想いをちゃんと伝えてないんです……だから……こんなところで、ふざけた格好をした貴女に殺されるだなんて死んでも死にきれないんです!!』

 

 リリィさんが立ち上がりました。

 

 あんなボロボロの身体なのに、最後の力を振り絞り竹刀を握りしめました。

 

 なるほど、霊装によるガッツの付与持ちだったのですか。

 

 これは私も予想していませんでした。

 

 私たちは本当に彼女を下に見ていたのかもしれませんね、ワトソンXくん。

 

 彼女は最後の最後まで勝利を諦めていませんでした。

 

 宝具の展開を確認しました。

 

『私はマスターのことが大好きです! もっと私のことを見て欲しいんです!! もっとお話しもしたいんです!! 一緒に修練したりレイシフトにも連れて行って欲しいんです!! 私はもっともっと、マスターと一緒にいたい!! だから、選定の剣よ、力を! 邪悪を断て! 勝利すべき黄金の剣カリバーン―――――――――ッ!!』

 

 その姿は、あの「騎士王」そのものでした。

 

 ワトソンXさんもニヒルに笑い向かえ撃ちます。

 

『お見事です! ですが、それでも私の方が強い……星光の剣よ。赤とか白とか黒とか消し去るべし! ミンナニハナイショダヨ!  無銘勝利剣 (エックス・カリバー)…………ッ!!?』

『いえ、私の勝ちです!!』

 

 はい、その通り。セイバー・リリィさんの勝ちです。

 

 ワトソンXくんは魔力切れで宝具が撃てません。少し見栄を張っていただけ。というか、最初の宝具に全力の魔力を費やしたのが敗因だったのです。

 

 貴女は恋する白の少女に負けたのです。

 

『あはは、まさか本当に私が負けるとは……凄くショックです』

『ご、ごめんなさい』

『別に謝ることではないですよ。寧ろ私に勝ったんですから胸を張ってください』

『で、ですが……っ!!』

 

 ワトソンXくん、改め直しまして、謎のヒロインXさんが粒子になって消えそうなんですが……

 

 リリィさんの宝具を喰らった打ち所が悪かったんですか。本当に全魔力使い切ったんですか、貴女は。

 

 確かに、カルデア内で起きた問題視すべき事件になってしまいました。

 

『あぁ、それよりも……やっと言えましたね、セイバー・リリィ。やっと、自分の気持ちを言葉にしたんです。後はアタックし続けるのみです。ガンバッ』

『謎のヒロインXさん……!!』

『ふっ、私のことは気にしなくて結構。あいるびーばっくですから』

『え?』

 

 こうして、私の助手は謎の言葉を残して、座へ帰って行きました。

 

 え? あいるびーばっく?? もう嫌な予感しかしません。

 

 

 

 

☆―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 さて、今回の『恋の物語事件』の後日談というかオチです。

 

「リリィ、今まで放ったらかしにして、ごめんよ。もうお前に寂しい思いなんてさせないから。今度一緒に冒険へでかけよう。フランスでワイバーン狩りデートとかどう? というか、今日は一緒に寝ような……うん、そうしよう」

「あ、え、いきなり急展開過ぎませんかマスター!!?」

 

 ロリコンも大概にしてほしいですが、どうやらセイバー・リリィさんは先輩とちゃんと話し合って絆を深めていくようです。

 

 私は、私の心の中に住まう大怪獣モヤモヤXが暴れ出しそうです。

 

 というか、モヤモヤが止まりません。

 

 別に目の前でイチャつかれて妬いているわけではありませんから。

 

 ジャンヌさんはほっぺたを膨らまして芋を焼いていますが、貴女は昨晩随分とハッスルしたんでしょうが。

 

 だから、文句は言えません。

 

 勿論、今回の騒動で迷惑を被り犠牲になった方たちも、皆さんが納得のいく形で先輩と話し合いいろいろ交渉にありつけたみたいですから。

 

 そんなことよりもです、先輩。

 

 私がモヤモヤしているのはカルデアからいなくなった謎のヒロインXさんのことです。

 

 別にもういなくなったヒトのことでとやかく言う事ではありません。一応、リリィさんも罰を受けて、先輩はいつも通りお仕置きされたのですから、あまり強く文句も言えませんが……

 

 いえいえ、そうじゃなくて!!

 

「じゃあ、リリィ。ガチャの時間だ! 張り切って行こーう!! マシュ、財布の準備だ!!」

 

 先輩、カルデアにATMはありません!!

 

 先輩、たとえ謎のヒロインXさんピックアップ期間中だからといって、狙って引き当てれるはずがありません!!

 

 そんな上手い話があっていいはずがありません!!

 

 ですが……

 

 まさか……

 

 そんな……

 

 そういえば先輩は女性限定でしたサーヴァント召喚できませんよね? 男性サーヴァントが召喚されない分、確率は2%ぐらいはあるかもですが……

 

 というか、その聖晶石もどこから入手したのか気になります……

 

「コードネームはヒロインX。昨今、社会的な問題となっているセイバー増加に対応するために召喚されたサーヴァントです……という前置きはもういいですかマスター? こうなることも私は計算済みでした! そして、マスターの横でアホみたいに口を開いて呆けているセイバー・リリィ!!」

「は、はい!!」

「私が再び参上したからには貴女には頑張ってもらわねば!! 1人でも多くのセイバーを抹殺……もとい彼らの実力を超えるよう、本物の『騎士王』になれるようビシバシ行きますから!! 覚悟しといてください!!」

「はい、X師匠!!」

 

 いや、もう勝手にしてください。

 

 ですが、もしかしたらの話、本当の彼女たちの物語は始まったばかりなのかもしれません。

 

 宇宙的なアレですよ。

 

 まる。




ご質問、ご感想等はカルデア窓口まで(>_<)


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先輩はアルトリア・ルームにいる

 私はアルトリアさんが好きです。

 

 いえ、アルトリアさん達が大好きです。

 

 あ、いえ、愛の告白とかではなく、ただ単純に記録するのが楽だからとでもいいますでしょうか。

 

 初めは先輩との絡みを記録するのは面倒だなと思ってました。

 

 だって、あの人達が一度話し出すと誰が何を喋っているのか分からなくなってしまいます。

 

 それを記録するのが面倒でした。

 

 ですが、ある方法を使えば記録するのがとても楽になるのです。

 

 もうずっと永遠に継続的にずっとアルトリアさん達のターンでいいのではないでしょうか……と本気で思うぐらいに楽なのです。

 

 では、さっそくアルトリア艦隊が跋扈(ばっこ)はびこる『アルトリア・ルーム』へ潜入してみましょう。

 

 失礼しまーす。

 

「あぁ、マシュか……入れ。マスターならコタツで寛いでいるぞ」

 

 オルタさん、こんにちは。

 

 先輩もいらしてたんですね、コタツでくつろいでいます。

 

「マスター、次の特異点ですがこの我々をお使いになってください」

 

「セイバー。次ねえ……」

 

 ここはビリヤードやらダーツ等、一昔前に流行った娯楽が集められた部屋ですが、今やアルトリアさん達に占領されアルトリア・ルームと改名された娯楽部屋です。

 

 まぁ、どうでもいいことですが、アルトリア・ルームってなんだかアルトリウムと語呂が似てませんか?

 

「左様。マスター命名のこのアルトリア艦隊を持ってして確実に攻略するのが無難だ。誰一人被害なく他のどのサーヴァントよりも連携が取れる」

 

「まあ、同一人物だしな」

 

「正確には違いますが……思想も体質も個人を作る情報も違う私達ですが、確かにチームワークは良い方だと思います。今の我々にとって人理修復などヌルゲーです」

 

「獅子王の口からヌルゲーとか聞けるとはな。でも、なー」

 

「何を迷っておられる。マスターのそういう優柔不断なところ余は嫌いだもん」

 

「お前誰だよ……」

 

 皆さんが一斉に話し出すと個性が消えそうで怖いのはわかりますが、変にキャラ作らないでください、アルトリア・ペンドラゴン・オルタ(ランサー)さん。

 

 余計に話しをややこしくしないでください。

 

 そして、貴女にぶりっ子キャラは似合いません。

 

「ランサー・オルタ、優しいマスターのことだ。きっと、お使いになってくれますよ」

 

「そうだな。そうするしかできないような状況に追い込めばいいんだな」

 

「まずはマスターのマスターをロンゴミニアドするのはどうだろう。きっと、もうロンゴミニアドが欲しくて堪らなくなるはず」

 

「なにそれ怖いんだけど、マジで怖いんだけど。」

 

 それで言うこと聞くようになれば誰も苦労しませんが。

 

 コタツを四人で囲む先輩達はくっちゃかめっちゃかお喋りをして、手は忙しそうです。

 

 テーブルの上の稗をじゃかじゃかかき混ぜています。

 

 本当に好きですね、ドンジャラ。

 

「マスター、いますかー? お邪魔しますよー」

 

「し、師匠Xさん、いきなり本丸に攻め込むのは愚の骨頂ですよ」

 

「いいんですよ、ここはアルトリア・ルームなんですから私が入っても文句言われる筋合いはありませーん」

 

 話しがややこしくなってきましたね。

 

 謎のヒロインXさんとセイバー・リリィさんが訪ねて来ました。

 

「待て。貴様、何をイケイケシャアシャアと上がり込んでさも当たり前のようにマスターの横を座ろうとしている?」

 

「狭いんだけど……」

 

「まーまー堅いこと言いっこなしですよマスター。ほら、リリィはマスターの膝の上です」

 

「いいんですか、マスター?」

 

「うん、物理的に無理……無理だけどXをどかしてそこに座りんしゃい」

 

「そんな、マスター……っ!?」

 

 無慈悲にXさんを突き飛ばしてリリィさんを横に座らせる先輩は流石です。

 

 気の毒なXさんと気後れするリリィさんの登場で、そろそろキャパの限界が訪れかけようとしています。

 

 もう皆さんは誰が何を話しておられるか判らないじゃないですか?

 

「というか、番犬は何をしているというのだ? 侵入者を素通りさせたのか?」

 

「番犬ですか? 番犬は席を外していましたよ?」

 

「やれやれ、あやつは何をさせても駄目だ……番犬失格だな」

 

 酷い言われようですね、モードレットさん。

 

「あっ、そういえば今朝、ここを通りかかった時にモードレットさんに好きなお菓子は何か聞かれたんです。もしかして、お菓子買いに行ったのかも……気をつかわせてしまいました」

 

「モードレット卿をパシリに使うとは流石だな、リリィ」

 

「パ、パシリなんてとんでもない! 私、モードレットさんを呼んで来ます!」

 

「まぁ待てリリィ。ここはこの場にいる皆でドンジャラをし、パシリを呼び行くパシリを決めようじゃないか?」

 

「それは名案だな、槍オルタ」

 

「じゃあ、席を外している私とセイバー・オルタとリリィはシード権ということで」

 

「いや、アサシンの貴様はシードどころかプレイヤーとしても認めておらんぞ」

 

「ここにいる皆と言ったじゃないですか!」

 

「貴様はアウトオブ眼中ということだ」

 

「そんな酷い!?」

 

「み、皆さん、師匠Xさんも仲良く参加させてください。お願いしますっ」

 

「リリィにお願いされたら仕方ないですね。それでよろしいのでは、マスター?」

 

「まぁアレだ。じゃんけんしてシード権を決めようぜ。Xも拗ねてないで、ほらやるぞ」

 

「ちっ、マスターがそういうなら仕方ありませんねー。まあ私も大人ですし許してやりましょう」

 

「何様なんだ貴様は……」

 

 と、もう私の手に負えません。

 

 あぁ、駄目です。

 

 同じアルトリア顔のアルトリアさん達が揃いも揃って同じ声で話すんじゃありません。

 

 もう駄目です。

 

 こうなったら裏技を使うしかありません。

 

「じゃあ、お前ら行くぞ? じゃんけん……」

 

 これはマスター。

 

「「「「「ぽん」」」」」

 

 これは皆さん。

 

「はい、私の勝ちー! やっぱりセイバーは私に負ける運命だったのです!」

「「ウザ……」」

 

 Xさんにセイバーのお二人さん。

 

「私も負けてしまいました」

 

「リリィはもっと修行しないと駄目ですよ!」

 

 これはリリィさんにXさん。

 

「運は修行でどうこうできるものではないと思うのですが」

 

「はいはい細かいことは言いっこ無しですよ! じゃあ、勝った者でもう一度じゃんけんです!」

 

「いや、丁度4人に絞られたんだ。この4人で1回戦を始めようか。それでいいな、マスター?」

 

「はぁ!? 意味がわかりません! 敗者がシード権を得るなんて聞いたことがないですよ! じゃんけんの勝者がパシりの可能性がおるだなんておかしいです!」

 

「何を言っとるんだ、貴様。対局数が増えて嬉しいだろう」

 

「あぁ、貴様は対局の数が増えるのが恐れているんだな?」

 

「なにをー!?」

 

 上から順に、リリィさん、Xさん、槍オルタさん、Xさん、槍オルタさん、セイバーオルタさん、Xさんです。

 

 もうですね、こうやって描写を省略していくしか処理できないんです。

 

 先輩、ポンコツな後輩でごめんなさい。

 

 しかし、売り言葉に買い言葉。

 

 ただ描写を省略するだけじゃ芸がありません。

 

 次は少し遊んでみましょう。

 

「私が何を恐れているですって? えぇ、上等ですよ! 1回戦から対局してやりますよ! 誰が一番のアルトリア顔なのか、格の違いを見せてやります!」

 

「一番のアルトリア顔って何だ……?」

 

「じゃあ、決まったな。一回戦は俺、乳上、槍オルタ、Xで。二回戦はセイバーにオルタ、それとリリィと一回戦の勝者。ルールは、対局をしてそれぞれの点数が一番少ない奴がパシりで」

 

「シード権だからといっても一回戦目の奴より点数が低ければそいつがパシりになる。そういうことか、マスター?」

 

「そういうこと。一回戦、親一周でいいから四回勝負な」

 

「むっ、それは一回戦で4回対局してその合計の点数を競うのですか?」

 

「まぁそんな所だ」

 

「なるほど、よくわかりません」

 

「わ、私はわかりました。師匠Xさん、頑張ってください! 何かわからないことがあれば私がお応えします!」

 

「リリィ~……っ!!」

 

「リリィは良い娘じゃー」

 

「ふっ、無駄に足掻け」

 

「言われ無くても! とりあえず、リリィ。ドンジャラの基本的なルール説明お願いします」

 

「え、そこから?」

 

 上から順に、X→オルタ→先輩→オルタ→先輩→X→先輩→X→リリィ→先輩→オルタ→X→リリィ。

 

 なんだか、コマンド入力ぽくて私は楽できます。はい。

 

「やれやれ、これでは先が見えたな」

 

「リリィからしてみれば先が思いやられるな、だかな」

 

「では、Xの私がリリィに説明を受けている間にもう1つ取り決めを決めましょう。マスター、我々の誰かが勝者になったあかつきには次回のレイシフトはアルトリア艦隊で行きましょう」

 

「それってセコくね? 6対1じゃね?」

 

「5対1の間違えでは? Xは戦力としてカウントしていませんよ」

 

「リリィも初心者だな」

 

「なら、いつもの我々だけで4対1です、マスター。さらにマスターが勝者になればマスターのマスターをロンゴミニアドしないと誓います」

 

「いやいや、ちょっと待て。それはおかしいだろ……」

 

「あぁ、私も誓おう。我がロンゴミニアドも少しの間だけ封印してやろう」

 

「いや、封印しちゃったら、いざという時に宝具撃てないじゃん。いや、敵と戦った時の話しだぜ?」

 

「マスター……私も負けたらマスターのエクスカリバーは諦めます」

 

「アルトリアさん? あのですね、誉れ高い騎士王共が揃いも揃って下ネタぶっこんでくるもんじゃありませんよ? しれっと目を反らすな、自分で言ってて恥ずかしかったんだろ?」

 

「そ、そんなことありませんよ」

 

「ほほーん……」

 

「うっ、なんですかその目は? 本当に恥ずかしくありません!」

 

「どうだか」

 

「マスター。私はだな……そうだな…………」

 

「オルタまで何? 考えるな考えるな、別に面白い事言ったもん勝ちじゃねーんだからな」

 

「ふっ、面白いというより下ネタをどうやってシレっとぶっ込むかだがな」

 

「なに、そのドヤ顔? ムカつくんですけど。お前の、その、俺の肩にかける肘もムカつくんですけど。あと、話の流れで寄るな触るなまさぐるな!」

 

「そう固いこと言うなマスター。いや、マスターのエクスカリバーは硬くなってきたがな」

 

「やっぱりそのドヤ顔ムカつくんですけど!! やっと言えたって顔だな!!」

 

 上から順に、黒王→下乳→青王→先輩→乳上→黒王→乳上→先輩→下乳→先輩→青王→先輩→青王→先輩→青王→先輩→黒王→先輩→黒王→先輩→黒王→先輩です。

 

 格ゲーで宝具を放つ裏コマンド入力中です。

 

 え、わからりずいですか?

 

 私は楽できるからいいのです。はい。

 

 ですが、次はもう少し工夫してみましょう。

 

「マスター、貴様は先ほどから何を渋っておるのだ? 二つ返事で我らをレイシフトさせればいいだけの話だろうに」

 

「ん~、でもなー……」

 

「マスター、ロンゴミニアドとエクスかリバーはどちらが好みなのです? 両方イッときますか、それもいいでしょう」

 

「ん~そう言われてもな~~~………」

 

「強情なマスターだな。余はそういう所もキライだもん!!」

 

「だからお前のそれ、誰キャラなんだよ………」

 

「マスターがここまで渋るとは……何かワケありなんですか? あぁ、そういうことですか。我々よりレイシフト優先させたいサーヴァント達がいると?」

 

「………。」

 

「おい、貴様そこで何故黙る?」

 

「黙ってねーし。現に今喋ってるしっ!!」

 

「声が裏返ってますが? 動揺してますね??」

 

「あーそーそんな風に見えるー? 俺は至って普通だよー??」

 

「挙動不審だぞ、マスター」

 

「見るからに怪しい首の振り方だ。何か疚しいことでも隠している時のそれはまるでロボットダンスのようだ」

 

「いやいやいやっ! いやいやいやいやいやっ!! 別に隠し事とかしてねーし!! というか、別に隠し事の一つや二つぐらい、いいじゃねーか!!」

 

「おい。開き直ったぞ、このマスター」

 

「まぁ、待て。お前ら、オオカミの群れに囲まれた子豚の話を知っているか? 知らないなら耳の穴をかっぽじって良く聞け。令呪使うぞコノヤロー」

 

「「「「………」」」」

 

「さて、オオカミ達は狩りのプロだ。子豚的に絶対絶命のピンチだ。だがしかし、本当に子豚は弱いのか? 弱者なのか? いや、美味しいのか?? 旨みのある部位はちゃんとあるのか? オオカミ達は相談するだろ? 子豚にそんな価値があるか? 襲ってまで食べたいと本当に言えるのか? 何故、この子豚が美味しいと言えるのだ? その根拠は? もっと太らせてから食べるのがベターだろ? 仮にどうしても食べたいとしても、子豚は本当に弱者なのか? 弱いフリをしているだけなのかもしれなくない? 実はオオカミ達を服従奴隷にさせてしまう恐ろしい特殊能力があるかもしれなくなーい? それってチョーうける~。だから、答えはノーだ!」

 

「いや、よくわからん」

 

「話をすり替えるな」

 

「もういい、時間の無駄です。ドンジャラ始めましょう」

 

「そうですね、どうせ我々の誰かが勝つに決まっているのですから」

 

「ふははー、最後に勝つのは俺だけどねー!!」

 

「あの、とても言い辛いんですけど……」

 

「どうしたリリィ? Xの躾は終わったか??」

 

「誰が躾ですって?」

 

「あ、いえ、皆さんに謝らないといけないと思いまして……そのマスターに口止めされていたことがあります。実は次回のレイシフト、アルトリア顔の中で私だけが呼ばれているんです」

 

「なんと……」

 

「それは本当ですかリリィ!?」

 

「貴様ぁ………」

 

「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやっ!! 落ち着けどうどうどう!! え、リリィ、なんで今?? ホワイ?? このタイミングでゲロんちょすなっ!!」

 

「最早、貴様に喋る資格無し! リリィ、全て吐け!」

 

「ノーーーーー!!」

 

「往生際が悪いぞマスター! 静かにしていろ!!」

 

「仕方ない。私の谷間で沈めてやろう」

 

「んんんゆーーーー!??」

 

「さっ、リリィ。五月蝿いマスターが大人しくなったところで、話してください」

 

「は、はい。次回のレイシフトですが、呼ばれるサーヴァントは……私にジャックちゃん、ナーサリーちゃんにジャンヌ・サンタ、あと小学生のあの2人です。名づけて『我がカルデアが誇る最強ロリ艦隊』です。ですが、私は皆さんを裏切ることができませんでした!! ごめんなさいマスター!!」

 

「リリィ、何も貴女が謝る必要ないのです。そして、裁かれるべきは……」

 

「「「「「「このロリコンだ!!」」」」」」

 

「マスター、お覚悟!!」

 

「だから言いたくなかったんだよチクショー!!」

 

 もう勝手にやってください。

 

 あと、モードレットさんのことも忘れないでやってください。

 

 では、今回はここまで。

 

 次回からは真面目に実況しようかと思いました。

 

 そして、最後のコマンド入力をして締めくくろうかと思います。

 

 それではポチっとな……

 

 スタート

 ↓

 黒王

 ↓

 先輩

 ↓

 上乳

 ↓

 先輩

 ↓

 下乳

 ↓

 先輩→青セイバー→先輩→黒王→先輩

                ↓

                上乳

                ↓

                先輩

                ↓

                黒王

                ↓

 先輩←全員←先輩←黒王←先輩←下乳

 ↓

 黒王

 ↓

 下乳

 ↓

 上乳

 ↓

 青セイバー

 ↓

 先輩

 ↓

 リリィ

 ↓

 黒王

 ↓

 X

 ↓

 リリィ

 ↓

 青セイバー

 ↓

 X

 ↓

 黒王

 ↓

 先輩

 ↓

 黒王

 ↓

 先輩

 ↓

 黒王

 ↓

 下乳

 ↓

 先輩

 ↓

 青セイバー

 ↓

 リリィ

 ↓

 青セイバー

 ↓

 全員

 ↓

 青セイバー

 ↓

 先輩

 ↓

 ゴール




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先輩はロリコンの血を騒がせる

 とある朝。

 

 先日、アルトリア艦隊をもってして特異点を修復し終えてたばかりの朝のこと。

 

 先輩をハンサムに映すために付き添い廊下を歩いていた時の出来事でした。あぁ、先々日の記録で手を抜いたことが先輩にバレて叱られたので、心機一転して業務に励む私でした。

 

 何やら上機嫌な先輩。

 

 鼻歌を歌ってます。

 

 スキップもしています。

 

 くるりとターンまで決めています。

 

 えぇ、キモいです。

 

 その奇行はハンサムで格好良く撮れたものではありません。

 

 まぁ、勝利の美に酔いしれるその気持ちはわからなくはないのですが、あまりハメを外さないように。

 

「あぁ、人理を修復する最後のマスター。それは誰?」

 

 え?

 

「魔人柱だろうが不適に笑い飛ばし、その頭脳明晰な作戦で完全勝利をもたらすのは……それは誰?」

 

 えっ?

 

「女性サーヴァントしか召喚できなくてもハンデとは思っておりません! それは誰?」

 

 えっ??

 

「マーリンも諸葛孔明もいないパーティーでもへっちゃらだよ! それは誰?」

 

 えぇっ!?

 

「日本が生んだスターだよ。それは誰??」

 

 と、言いますと……??

 

「藤丸立香だよ! そう、俺こそが最強のマスター♪」

 

 うわー。

 

 うわー。

 

 えーと、うわー。

 

 自分に酔ってます。

 

 慢心王以上に慢心しています。

 

 天狗になってます。

 

 こういう輩は先ず調子乗りますよねー。

 

 ウザさマックスです。

 

 すれ違うスタッフやらサーヴァント達が怪訝な顔して通り過ぎていきます。

 

 いや、まぁ今日くらいは多めにみてあげましょうか。

 

 先輩も頑張っているんです。

 

 確かに馬鹿です。阿呆です。怠け者です。駄目な人間です。何股も余裕でこなすゲス野郎です。しかし、それでも一癖も二癖もある女性サーヴァント達と上手く関係を結んでいるものです。

 

 男性サーヴァントという抑止力がいないここカルデアで本当に良くやってくれています。

 

 身体一つでよくもまぁあの人数を相手にしてきているものです。

 

 敵サーヴァントや魔人柱が微笑ましく見える時すらあります。

 

 先輩に降りかかる不幸を見ていると人理修復も可愛く見えます。

 

 先輩は強い人です。

 

 だから私は先輩を応援しています。

 

 だからもっと調子に乗らせてみましょう。

 

「先輩は最強です♪」

「そうさ、俺が最強ー♪」

「先輩、最強ー♪」

「おれ、最強ー♪」

「へい、最強ー♪」

「へい、最強ー♪」

「ユー・アー・ナンバーワン?」

「オーイエ~! イッツ・ミー・オンリーワン!」

「「フォーっ!!」」

 

 もうこのままベッドインしますか、先輩。

 

 まだ朝ですが、私はやぶさかでも満更でもありません。

 

 たとえ、目の前から誰かが歩いてきても私たちは止まれません。

 

 いざ、夢の国へ。手を2人で繋いでゴールインです!

 

「おかあさ~~~ん!!」

 

 あ、ジャックちゃんです。

 

「ジャーックちゃ~~~ん、おはよ~~~!! 会いたかったよー」

「おかあさん、おはよ~~~!! わたしたちも会いたかった~」

 

 先輩の中のロリコンの血が騒ぎ出しました。

 

 なので夢の国は今度にしましょう。

 

「ねーねーおかあさん。おかあさんに聞きたいことがあるのー」

「おやおや、何を聞きたいのかなー? おやつは持ってないぞー」

「ん~ん、いらなーい」

「なら、あれか。ナーサリーのオママゴトでやりたいポジションは母親役じゃなく父親役だぜ? 残業でへとへとになって帰ってくるサラリーマン風ジャンタが羨ましいって言ってたなー。まぁ、ジャックちゃん達の前では遠慮してみたいだけど、今度役代わってあげてね」

「それもちがーう」

「じゃあ、ジャンタのあの槍と合体した旗。実はアレ、野宿の時は寝床になるだけじゃなく、かじると林檎アメみたいな味するんだぜ~。この前、確かめてみたらマジだった」

「かじっちゃダメだよ? もう、そうじゃなくってー」

「ふっ、わかった。赤ちゃんはどこから来たか、ついに知りたくなったんだな。ジャックちゃんのおませさん!」

「んーん、それはもう知ってるー」

「し、知ってるんだ……」

「おかあさんのお腹からドバーって生まれてくるんだよね」

「それだと俺の腹からエイリアンが誕生しちゃうじゃねーか!?」

「えーちがうのー?」

「ちげーよ、こえーよ、それだとこの世から妊婦さんいなくなっちまうぜ? つーか、誰だよジャックちゃんにテキトーなこと教えた奴? 絶対許さねぇ……ジャックちゃん! 誰から教わったんだ!! そいつの名前を言えぇ!! あとでこらしめてやる!! ついでに言うと、赤ちゃんはコウノトリさんが運んできてくれるんだよ!!」

「もーそんなことよりー……ねぇ、なんでレイシフト連れて行ってくれなかったの、おかあさん?」

「あっ………」

 

 あっ、そういえばそうでしたね。

 

 そんな話してましたよね。そして、先輩は完全に忘れていた、と……今思い出した顔してますね。

 

「おかあさん、わたしたちを連れて行くって言ってくれてたじゃん。うそつき」

「ごふっ…………ご、ごめんごめん、これには海よりふか~い事情があってだな~。今度は絶対に一緒に行こうね。それに、今日は一日ずっと遊ぼう。皆で遊ぼう!」

「ふーん、そうやって大人は子供の機嫌を取ろうとするんだね。もうおかあさんなんて知らな~い」

「ガビーン……ッ!?」

 

 あ、先輩のメンタルにダメージが……凄いショックを受けてます。

 

 さらに……

 

「というか、嘘つきなおかあさんなんてだ~っいキラ~~イ! 此よりは地獄。“わたしたち”は炎、雨、力――カンチョーをここに。『 解体聖母(マリア・ザ・リッパー)』!!」

「ぎょええええええええ~~~!??」

 

 あっ、宝具展開からのカンチョーです。

 

 なんという恐ろしいカンチョーでしょうか。

 

 先輩はたまらず奇妙な叫び声を上げ飛び跳ねました。

 

 漫画のように両手でお尻を押さえて目ン玉が飛び出るぐらいに目見開くほどの威力だったのです。

 

 嘘つきにはもってこいの罰ですね。

 

 忍法カンチョーの術の印を結んだままでポーズを決めているジャックちゃん、なんて恐ろしい子。

 

 というか、カンチョーを教えたのも先輩でして自業自得なのですが。

 

 こうして、先輩は医務室に運ばれるのでした。

 

 まる。




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先輩は天使とボラギノ〇ル

 天使―――。

 

 それは翼が生えているアレです。

 

 天使―――。

 

 それは神の使い。

 

 或いはヒトが作りだした偶像。

 

 もしくはヒトの願い。

 

 または希望……

 

 神代が終わり人の時代になり神々は姿を消しました。

 

 だから、神は天使を使い人々とコンタクトを取ろうとしたのかもしれませんね。

 

 神の存在は信じるのに天使の存在を否定することはできません。

 

 天使―――。

 

 カルデアで天使といえばあのヒトですよね。

 

 白衣に身を包んだ天使。

 

 クリミアの天使。

 

 先輩曰く、戦慄の天使。

 

 ですが、それも踏まえて素敵な女性です。

 

 では、ナイチンゲールさん、先輩のお尻をどうにかしてください。

 

「婦長、婦長~」

「はい、私はここにいますよマスター」

「あぁ、ありがたや~。おめーさんの手は冷たいが心がホカホカするんじゃ~。と、とにかくケツがいて~んでよぉ、どうにかしておくんなせい」

「あぁ、これは重傷ですね。ここまで絞まりが悪いと排便も垂れ流しの末路を辿るでしょう」

「そんなのおらは嫌だ~……っ!?」

「まったく、どうしたらこんな開き方に……あれほど毎晩イジるなと言ったでしょうに」

「いやいや、毎晩どころかクソしてケツ拭くしかしてねーんですけど!?」

「ウソおっしゃい……」

「いやいや、何その反応? その目は冷た過ぎません?? ねぇ、婦長。田舎っぺキャラやめるからちゃんと聞いて。真剣に聞いて。俺、イジってないからな??」

「あぁ………指じゃ物足りなくなったのですか。その気持ちはわからなくもないです」

「おい誰かこの婦長を止めろ……っ!! 哀れな子アザラシを見る目もやめろっ!!」

 

 先輩、ナイチンゲールさんは平常運転(バーサーカー)ですよ。それと何故に子アザラシをチョイス?

 

「そもそもロマンの奴はどうしたんだ? 俺は婦長じゃなくロマンを所望する!」

「マスター、やっぱりそっちの気が……」

「ちげーよ、俺のケツの一大事だぜ? 医療トップに見てもらうのが妥当だろ?」

「確かに一理ありますがドクターは現在、生牡蠣を大量に食べて絶賛ゲリです」

「ロマーン!!?」

「ではダ・ヴィンチ女史に助力求めますか?」

「婦長、貴女だけが頼りです……っ!!」

「なら黙って私に全てを委ねなさい」

「お、おう……」

 

 天使とは、美しい花をまき散らす者でなく、苦悩する者のために戦う者である。これ、ナイチンゲールさんの言葉です。憧れて痺れますよね。

 

「では、まずはケツを切開しましょうか。マシュさん、メスを……」

「何故に……ッ!!?」

 

 ナイチンゲールさんにメスを要求されましたが、流石に渡すことはできません。

 

 命拾いしましたね、先輩。

 

「ケツを切り開く必要はないと俺は思うんだけどな!!」

「いえいえ、マスターは発想が貧相だから困ります。ここは一度切って縫った方が治りも早いというものですよ」

「そ、そんなもんか?」

 

 そんなもんでしょうか……早く治療できるなら渡すのもやぶさかですが。

 

「いや、やっぱりおかしいぜ。たかがカンチョー如きで開いたケツにメスを入れるのはおかしいぜ??」

「そのたかがカンチョー如きでマスターはケツがヤバいんでしょうが!! だから私はケツを引き裂いてでも治してみせます!!」

「ちょーいちょいちょい本気で待て!! 引き裂くとか考えちゃいけねーよ!! マジでこえーよ!!」

「マスター。私はマスターのために言ってるのです……だというのに、あれは嫌だ怖いから嫌だとはなんですか!! 本気でおケツを治す気はあるのですか!!」

「え、なに、俺が怒られてるの? おかしくね??」

 

 先輩のためを思っての言動ですよ。

 

 ナイチンゲールさん、やっぱり良いヒトです。

 

「まったく……貴方は駄々をこねまくる子供ですね」

「だってまだ未成年だもーん」

「ふんっ」

「あだ、婦長に殴られた……っ!?」

「はぁ、仕方ありません。治療するのにも看護婦と患者は信頼関係がなくてはなりません。なので、もう少しお話してみましょうか」

「………」

 

 手術台にケツを突き出して伏せた先輩と、その正面に椅子を置いて座りなおした婦長が対面しました。そして、私は先輩の背後に回って、お尻丸出しの姿を撮っておきましょうか。

 

「ふっ、対話したって無駄だぜ婦長。俺のケツは1㎜たりとも切らせん」

「何を格好つけて言う事じゃないでしょうに。痛いのが怖かったら麻酔撃ちましょうか?」

「そういう問題でもねえ」

「ならどういう問題が残ってるのでしょう? 最早、貴方が大事に守ってきた貞操は奪われたのですよ」

「ごふっ………」

「本当は男性サーヴァントに捧げたかったのでしょうけど諦めたらどうですか?」

「婦・長・は・何・か・誤・解・し・て・い・る」

「私が誤解? そんなはずありません。確かに私は聞きました。とあるカルデアスタッフの方から、いつも熱い視線を感じるって」

「本当に誤解されてるな!!? 俺をゴマアザラシのタマちゃんだと間違って襲ってきた獰猛なシャチ共から助けてもらおうと、たまたま通りがかった奴らにアイコンタクトしただけだっつうの」

「何故にタマちゃんなのです?」

「例えはどうだっていいだろ。それよか誰だよ、誤解してるそいつはぁ……」

「それは言えません」

「いや言えよ。令呪使うぞコノヤロー」

「マスターのケツにメスを入れさせていただけるなら」

「なら言わんでよし。あとでスタッフ全員に言って誤解を解けばいいだけの話だ」

「ちっ、いらんことを……」

「婦長が舌打ちしてたら俺との信頼関係を築くなんて夢のまた夢だな。ふはははー」

「ムカッ………!!」

 

 ナイチンゲールさんも失策ですが、先輩もそれでは困るのでは?

 

「そもそもです。そもそも、貴方が子供たちにカンチョーごっこを教えなかったら済んだ話では?」

「………」

 

 ナイチンゲールさん、もう過去の過ちを掘り起こすのはやめてやってください。もうどうしようもないことですよ、それは。

 

「いえ、ここははっきり言っておかないとマスターのためになりません」

 

 と、言いますと……??

 

「お昼からどこぞの人妻サーヴァントとお楽しみしていた所をうっかりジャックちゃんに見つかり、見苦しい言い訳にカンチョーごっこをしていたと言ったのが失策でしたね、とでも少し言い方を変えてみましょうか」

「ごはっ……」

 

 もう弁解の余地もありませんね、それは。

 

 私の知らないところでそんなイベントが起きていただなんて! こんな大スクープを撮りこぼした私はなんてポンコツなんでしょう!!

 

 それにしても、その人妻サーヴァントが誰なのか気になります!!

 

 先輩、相手は誰ですか?

 

「マスター、白状したらどうなのです……?」

「ふっ、なんというか取り返しのつかない情熱的なお昼を過ごしてしまった。このぐだ男、あの日のことは墓場まで持っていくだろう」

 

 いや、何を言おうともサイテー野郎には変わりませんが……

 

「まぁ、マスターの気持ちも察してもうこの件に関してはこれ以上は追求しません。ですが、次からは……その、ドアの鍵はロックしておくように。うっかり私まで参戦しかねませんから///」

「………」

 

 あ、先輩のライフが0です。

 

 ナイチンゲールさん……貴女ってやっぱり凄い人ですね。尊敬します。

 

「とにかく、マスターの自業自得でそんなケツになったのですから、私が責任もって切らさせていただきます!」

「切らせん!」

「切ります!」

「いやじゃー!」

「じゃあ、こうしましょう。なけなしの策ですがボラギノ〇ルを塗っときましょう。それで様子みましょう」

「そ、それで……治るのか?」

 

 確か、あれは痔に効く薬なんじゃ……口に出して言いませんが。

 

「マ、マシュは……なんで笑ってるんだ??」

 

 別に……私は笑ってませんよ……ぷふっ。

 

「ふ、婦長……それって本当に効くのか?」

「さて、どうでしょう」

「おい」

「ですが、試してみる価値はあるとは思いませんか?」

 

 ないです。

 

「塗って、数日様子見て、もし治らなかったら、その時はお覚悟を……」

 

 要するに先輩はこの間に他の策を見つけてお尻を治さなくてはならない、ということです。

 

 ナイチンゲールさんの言葉を信じるか。己自身に問いかけるのか……見ものですね。

 

 さて、あとはソレを患部に塗って、今日の診察はおしまいです。

 

「ど、どうした婦長?」

「……………………………」

 

 ナイチンゲールさんがフリーズしています。

 

 手に持ったボラギを見つめています。

 

 なにやらよからぬことを考えてそうな顔です。

 

「これ、中へちゅうっと注入することもできるんでしたね」

「は?」

「いえ、マスターのケツの症状から察するに外を塗るだけじゃ効果得られないんじゃないかと思いまして」

「塗るだけで十分だろ?」

「ですが、中も相当ダメージいってるはずです。これ一本で足りるかどうか……」

「いやいや、そんな深刻そうな顔しやんとって!?」

「まぁ足りなければ足せばいいだけの話ですしおすし」

「婦長はおすしとか言わないからな!?」

「私にツッコんでくるだなんてあの日の続きですかマスター」

「そ、その話はやーめーろーーー!!」

「ふっ隙あり……っ!!」

「ぎょえええええええええええええええええっ!??」

 

 とりあえず、一本いっときますか先輩。




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先輩はバイト1日でクビになりました

ネタバレになったらすみません


 カルデアの外は年がら年中、冬です。

 

 猛吹雪で覆われています。

 

 というか、外の世界は滅亡していますが。

 

 まあ、寒いです。

 

 暖房器具は必須不可欠です。

 

 コタツとミカンが恋しくありませんか?

 

 そんな時はAMZOMESプライムでご検索してください。

 

 きっと、貴女が求める一品が見つかるはずです。

 

 というか、何故私が番宣しなくちゃならないのでしょうか、先輩。

 

 

 

 

☆―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 何故か先輩の指示によりAMZOMESプライムさんを追いかけることになりました。

 

「ごめんくださーい、AMZOMESプライムでーす! お荷物届けに来ましたー!」

「待ってました、マーちゃんのフィギュア!」

 

 はあ、やる気出ませんが記録していきましょうか。

 

 AMZOMESプライムのプレミアム会員No.1の常連客、刑部姫さんです。

 

 引きこもりさんです。

 

 今日も先輩のフィギュア頼んだんですか?

 

「月に一度に新作を出すダ・ヴィンチちゃんの傑作品をいち早くお客様へお届けするのがCEO! 仕事は選びません!」

 

 はい、それは良い心がけだと思います。

 

「今回のもクオリティが高いのよ~。首輪を付けたマーちゃんがカーミラさんの人間椅子とか誰得って感じー!」

 

 カーミラさん得って感じでしょうね。

 

 そんなこんなとAMZOMESプライムはお客様のご注文をお待ちしております。

 

 本当に私が取材する必要性が感じられませんが、先輩。

 

 次へ行ってみましょう。

 

「ごめんください、AMZOMESプライムです!」

 

 世界が滅亡しているのにAMZOMESプライムは稼働しています。

 

「今日も待っていました。いつも貴女は早いですね」

「それが我が社の強みでありますから! 品揃え豊富! 低価格だが良品質! そして、即日届け! はいここに、印鑑かサインお願いしまーす」

「せ・い・ひ・つ・の・ハサンと……」

「ありがとうございましたー! 次回もまたご利用ください! では!」

「ふふっ、マスターの隠し撮りコレクションがまた増えました」

 

 そんな物まで売ってるんですね。

 

 凄いですね、AMZOMESプライム。

 

 先輩には知られてはならない逸品です。

 

 今度、私も注文してみましょう。

 

 次、行ってみましょう。

 

「ちわーっす! お届け物でーす!」

「あらあらまあまあ、お待ちしておりましたよ。ささっ、どうぞ中へ。今日は一段と冷えますから……」

「いえ、ここで結構です! それよりも印鑑オナシャス!」

「はい。」

「あざーっす!」

「うふふっ、大人のオママゴトセット、マスターは喜んでくださるかしら」

 

 ………。

 

 現実から目を背けてはなりません。

 

 頼光さんはもう我が道を可能な限り突き進めばいいと思います。

 

 私は先輩のお父さん役で出演しましょう。きっと、カオスです。

 

 次です次!!

 

「AMZOMESプライムでーす!!」

「はいはい、今お開けしますね」

「マスターの脱ぎたてパンツをお届けに参りましたー! コレ、貴殿が盗んできた方が安上がりなんじゃないですかー!?」

「何をおっしゃるやら…お金をはたいて購入したモノに勝るものなどありません! 血印でいいです?」

「ありゃーしたっ!」

 

 先輩はよく入浴時に下着を盗まれます。

 

 清姫さん、貴女が盗んだ方が安上がり且つ鮮度も良いと思いますよ。

 

 口に出して言いませんが。

 

 いつもの三人衆はいつもこんなのばっかりでした。

 

「あ、1つ言い忘れてましたが、明日、野暮用で臨時休暇を取ろうかと思っております」

「そうなのですか?」

「ええ、その代わり明日1日私に代わって新入りのバイトを入れますんで何卒よろしくです」

「まあまあ、それはそれは楽しみですね。うふふ………」

 

 カルデアスタッフさん、忙しいのに、たいへんですね。

 

 そして、いろんな意味でショックを受けるんでしょうね。

 

 

 

 

☆―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 さて、翌日です。

 

 エルラルドのバーサーカーさんが臨時休暇を取りましたので、その代わりのバイトが配達するとのこと……心配なので様子を見に行くとしますか。

 

「三蔵法師さーん、いらっしゃいませんかー? 留守ですかー?」

 

 新入りさんを発見しました。

 

 元気のある、やる気の感じられる新人さんです。

 

 どこかで聞いたことのある声です。

 

 当然です。

 

 日々私達のバックアップをしてくださるカルデアスタッフの面々を忘れるはずがありません。

 

 わ、私はこの声の主をよーくわかっていますとも。

 

「いるよーいるいる! って、キミはなにしてんの?」

「社長が1日ボイコット宣言によって稼ぎ時だと踏み、1日アルバイトすることになったわたくし藤丸立香です!」

 

 おまえかーい!?

 

 いろんな意味で心配するわーい!!

 

 あ、いえ、失礼しました。

 

 ビックリしました。

 

 仰天しました。

 

 本当に何してるんですか先輩!

 

「キミ、私の弟子な癖して煩悩まみれだよね」

「日給1万です! つーか、前金で貰った」

「うん。前金で貰ったのに真面目に働いているだけでも偉い偉い。言ってて悲しくなるけど」

 

 こうやってちょっとずつ真人間になってくだされば私は何も言うこと無しです。

 

 言っていて悲しくなりますけど。

 

「一応聞くけど、その1万円の使い道は?」

「課金するに決まってるじゃん」

「キミ、さも当たり前なように言ってるけど、それおかしいから。課金で聖晶石が貰えるシステムなんて聞いたことないから」

「ふっ、三蔵ちゃんはまだこのカルデアの闇を知らないだけさね」

「なにそれ怖い!?」

 

 三蔵法師さん、カルデアの闇は深いですよー。

 

「まーなんでもいいや。ほら、荷物だ。判子」

「んー、まだ納得いってないけど仕方ないね。印鑑はちょっと待って、取りに行ってくるから」

「そういうのは先に用意しとけよバーロ」

「キー!! 弟子のクセに生意気……っ!!」

 

 お客さんに対しての態度もなっておりませんが。

 

 普通、印鑑用意していないお客さんにはペンを貸してあげるとか、気遣いが全然です。

 

「いや、ちょっと待って……」

「もーなにー? 次がつっかえてるんだからさー、スムーズに行こーぜ?」

「いや、ソレ!!」

「ん? コレ??」

「それ、荷物! どう見たって私が頼んだのと違うから! 大きさが違うもん!」

「中身も確認してないのにクレームかよ!? クレーマー法師かよ!? 言っててつまらんギャグだけど、中身はぎっしりコンパクトに詰まってるんだぜバーロ!!」

 

 先輩、中身確認してみた方がいいのでは?

 

 雲行きが怪しくなってきました。

 

「いやいや、中身を確認しなくても私にはわかる! 仏のご利益の欠片もないよね、それ!」

「ちっ、やっぱりあのデカブツが三蔵ちゃんのだったとはな、どうりで……」

「あっ、なんか言ったよね、今?」

「い、言ってねー……」

 

 ………。

 

 先輩、まさか………

 

「さ、三蔵ちゃんが頼んだのはコレだろ? 尾張で空前の大ブームになった『儂の名は?』のDVD12巻セットだろ?」

 

 それっ、絶対"お"から始まって"が"ど終わるヒトが頼んだやつですよ!

 

 パッケージがそう物語ってます。

 

「誰も見ないよそんなもの……っ!!」

 

 この場に本人がいなくてよかったです。

 

 事実ですが、聞かれていたらショックでふて寝していたでしょう。

 

「まー普通なら見ないよなー」

 

 先輩も、ソレを配達しておいて否定は駄目でしょうに。

 

「だが、よく考えてみるんだ。何故三蔵ちゃんに届いたのか、を……」

「それはキミが手配ミスをしたからでしょうに!」

「それは、本当にミスなのか……」

 

 いや、ミスですよね、確実に。

 

「そこに何か尾張なにがしなメッセージ性が隠されていないだろうか」

「………」

 

 先輩、往生際が悪過ぎます。

 

「まーアレだ。お前にとって今一番必要なのはお釈迦でも仏でもねー……ヒトの過ちを許せる心さ」

「ふーん」

「まー待て落ち着けその拳は納めろ暴力では何も解決しない。そうだろ?」

「キミがいらんことを言わず誠意をもって謝罪すれば何も問題なかっただろうね。どうせ、荷物重そうだからテキトーに違うやつ選んだんでしょ?」

「弊社はそんなテキトーなこと致しません! だけど今回のミスはなかったことに!」

「できるわけないでしょ! ちょっと中に入ってO・HA・NA・SHIをしましょうか!」

「そのネタも古いぜ三蔵ちゃん。そして、俺は悪に屈しない。負けない。へこたれない」

「オーケーわかった、10時間コースに延長だね」

「ま?」

 

 残りの配達は私が代わってあげますから、どうぞこってり絞られてきてください。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――☆

 

 

 

 

 さて、今回のオチはタイトルに書いていた通りなので、三蔵法師さんの荷物の行方がどうなったのか、そっちのオチが私気になります。

 

「沖田、何じゃこれはー?」

 

「えーと、革新的阿弥陀如来ホログラムEX……これであなたも極楽浄土へ一歩前進……って書いてありますよ」

 

「儂、こんなもん注文しとらんぞ?」

 

「これじゃノッブも安らかに成仏できませんよね」

 

「是非もないよね!」

 

「可愛く言っても駄目ですよー」

 

「儂が頼んだのは『儂の名は?』DVD12巻セットじゃがのう」

 

「マスターもドジですねー。あ、沖田さんの土方さんセットはちゃんと届いてるみたいですよ。よかったー」

 

「はしゃぎおって……いいのう…………」

 

「ノッブも抗議の電話入れてマスターにDVD持って来させたらいいんじゃないですか」

 

「いや、儂はもうコレでいいんじゃ。今度は極楽浄土へ行けるといいのう………」

 

「ありゃりゃ、この人スネちゃいましたよ」

 

「ところで、それは沖田が着るのか? ここに土方は呼べんだろうに」

 

「んなわけないじゃないですかー。ここカルデアは女性サーヴァントしか召喚できないんですから、土方さん来るのは諦めてますよーだ」

 

「儂らがマスターに内緒でガチャ回しても男性サーヴァント召喚できんしのう」

 

「なので、マスターに着させて土方さんごっこしてもらうんですよ」

 

「その手があったか!?」

 

 そんなプレイがあったとは盲点です!?

 

 後日、AMZOMESプライムは改めて短期バイトを募集するほどに忙しくなるのでした。

 

 まる。




ご感想、ご質問等はカルデア窓口まで( ゚Д゚)ウマー


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先輩と竜の魔女EX

邪竜百年戦争オルレアンをクリアしていないマスターはネタバレ注意。


 突然ですが、先輩は家出をするそうです。

 

「もうこんなカルデアなんて家出してやる!!」

「は?」

 

 これを言われる度に「は? 何言ってるんだコイツ」とため息しかでません。

 

 毎度毎度のことです。

 

 先輩の悪い癖です。

 

 最早、持病と言ってもいいでしょう。

 

 ダッダッダッと先輩は私の横を通り過ぎて廊下を駆けて行きました。

 

「ちょっと待ちなさいよ、まだ話しは終わってないわよ! それにアンタ、ここ以外に行く宛とかないんでしょ!? 戻ってきなさい!!」

「誰が戻るかバーカ!!」

「子供かアンタは!!?」

 

 初めて見る方は皆口を揃えてびっくりされますよね。

 

 だだっ子の如くもう姿が見えなくなりました。

 

 特異点よりもめんどくさい問題です。

 

 一体全体今度は何が原因で喧嘩したんですか、ジャンヌ・オルタさん。

 

「私は何も悪くないわ。くだ男が私を無視したのが悪いのよ」

 

 痴話喧嘩もホドホドにしてほしいものです。

 

 さて、ジャンヌ・オルタさんに話を聞きながら管制室へと向かいましょうか。

 

 ドクターがいません。

 

 代わりにダ・ヴィンチちゃんがいました。

 

「ロマニならシャトル積み上げ記録に挑戦中だよ。ほら、バドミントンの打つ羽のやつ。あれを確か1000個積み上げるのを目標にしていたなー。だから、代わりに私が要件を聞くよ」

 

 最近ドクターの使えなさすぎが目につきます。先輩に影響されたのでしょうか。

 

 弛んでます。

 

「どうせ、アンタが今回の黒幕でしょ?」

「まだ事件すら起こってないのに黒幕扱い!? おかしいよね、それ。このジャンヌは絶対おかしい!!」

「日頃の行いでは?」

「マシュも辛辣!? あ、いつも通りの展開だ!!」

「なら白状してください」

「いや、白状も何もぐだ男くんをレイシフトさせただけだから」

 

 家出にレイシフト使わせないでください。

 

「アイツ、サーヴァントも連れないで家出したの!?」

「咄嗟のことだったから(面白そうだったから)仕方ないよね」

「格好の餌食じゃない!」

 

 ジャンヌ・オルタさんは心配なんですね。

 

「べ、別に心配してないわよ……まだ許してやってないし、だけど、アイツがいなくなったら私の存在事態消えてしまう訳だし? これはアイツじゃなく自分の心配してるの!!」

「「はいはい」」

「うぐっ、二人揃って見透かした目は何なのよ!?」

「じゃあ、先輩を呼び戻しに行ってきてください。宜しくお願いします」

「今回は邪ンヌ回かー。私だって、いつかメインヒロイン宜しくお願いします」

 

 ダ・ヴィンチちゃんのお願いはひとまず置いといて。

 

「あれ、私1人だけ? アンタ達は?」

「私はぐだ男くんのバイタルをチェックしないといけないからパス~」

 

 私は面倒……もとい、遠慮しときます。

 

「今めんどくさいって言わなかったかしら?」

「邪魔者は退散って言ったんですよ。邪ンヌさんは先輩と仲直りしてきてください。まだ喧嘩の途中でしたよね?」

「あっ……うん、そうね…………」

「よし、決まったね。ほら、行った行った。レイシフト先は……」

 

 先輩の家出先はフランスでした。

 

 

 

 

☆―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 ここはフランスにある、とあるバー。

 

 邪竜百年戦争が終わり修正されつつあるフランスです。

 

 修正されつつある状態を維持している特異点です。

 

 そんな特異点で、ひっそりとこじんまりとしたバーに先輩はいました。

 

『だから~邪ンヌが悪いんだって。こっちは忙しいっつってんのに邪魔してきた邪ンヌが悪い』

『それはあの子が構ってほしいからじゃないかな?』

『いやいや、エリちゃんのライブ前日に俺がどれだけ神経質になってるかわかってる? アイツの歌聞いたことないからそう言えるんだぜ、デオン』

 

 先輩、やっぱりそっちの気が……

 

 あ、いえ、デオンさんは女性にも男性にもなれるサーヴァントです。

 

 まったく、先輩は……家出してレイシフトして何処へ逃げるかと思えばフランスで小汚ないバーで性別不明なサーヴァントと逢瀬して太ももをスリスリしてもらってるとかセクキャバですかー!?

 

 ちなみに、エリザベートさんの歌を聞くと世界が3つぐらいぼやけて見えます。

 

『マスター! カルピスピーチをソーダ割のロックで!』

『もう、ホドホドにしときなよ?』

『これが飲んでいられずにいられるかってんでいっ!』

『ソーダで割ったりしてるけど、ただのジュースだよね』

『うるせーやい!』

『まあまあ、今日ぐらいはいいじゃないでしょうか。私はジャンヌゥの話しをもっと聞きたいですから』

 

 ちなみに、バーのマスターはジルさんです。

 

 目玉が飛び出てるジルさんです。

 

 いくら叩いても復活するジルさんです。

 

 カルデアと違って特異点にはジルさんぐらい、いますよ。

 

『そう、わたくしが「お義父さん、目玉飛び出しているから明日参観日だけど来なくていいからね、と言われたけどこっそりお忍びで行ったらバレてしまい口を利いて貰えなくなる」ジル・ド・レェでございます!』

『いきなりどうした、頭打ったか?』

『いえ、唐突ですが改めてカルデアのマスター・ぐだ男に自己紹介しなければと思いまして』

『そんなことよりピーチソーダのロックまだか?』

『おっと、失礼。はい、こちらがカルピスピーチのソーダ割ロックでございます』

『ほほう。俺の注文を間違えずに出したか。coolだ』

『お褒めにいただき恐縮千万』

 

 先輩が久しぶりの男性サーヴァントに興奮しています。

 

 イキイキしています。

 

『しかし、珍しい組み合わせだよね。偶然、私が居合わせていなかったらどうなっていたやら』

 

 はい、デオンさんの言う通りです。

 

 ジルさんはフランスで敵対していた黒幕です。聖杯に願って特異点を作り出した張本人です。しかし、先輩によってその野望は消え去さりました。

 

 贋作騒動もありましたし、少なからずとも因縁があります。

 

 オルレアン攻略をヌルゲーと言った先輩を恨んでいてもあってもおかしくありません。

 

 デオンさんがその場に居合わせていなければ、下手したら殺されていたかもしりません。

 

 嫌がらせに毒入りジュースの1つでも提供しそうです。

 

 まあ、先輩は毒で死なないチートですけど。

 

『おほほ、確かに因縁のある好敵手ですが、マスター・ぐだ男を殺してしまえば二人のジャンヌゥのお話しが聞けなくなります』

 

 なるほど。

 

 人理焼却はジルさんにとっても死活問題になったということですね。

 

『今度、連れてきてやるよ』

『おほほ、是非ともお願いします』

『つーか、お前らがカルデアに来てくれたら話しは早いんだけどよー』

『それができれば苦労しません』

『今回のもアレだ。お前が邪ンヌの相手さえしていれば喧嘩なんてしなかったさ。アイツ、中途半端な絆レベのせいで脛狙ってくるだぜ? 構ってちゃんにも程があるだろうが……』

『それはそれは、なんとも羨ましいですな』

『羨ましがんな!!』

 

 私、思ったんですけど、今回の喧嘩の元凶はエリザベートさんにあると思います。

 

 突如、明日にワンマンライブを開催すると宣言し出したエリザベートさんに先輩はもう既にオコでした。

 

 どうやってライブを潰すかカルデア中を走り回っていたのです。

 

 そんな時に邪ンヌさんの呼び掛けを先輩はスルーしました。

 

 邪ンヌさんもカチンと来たのでしょう。

 

 執拗に先輩を追いかけ脛蹴りを試みました。

 

 先輩も大人気ないと思いますが、脛蹴りからの大転倒でマジギレしてしまい喧嘩へと発展して家出をしてしまったのです。

 

 というのが、二人の証言を客観的に総合的にまとめた感想です。

 

 ほんと、めんどくさい二人です。

 

『とりあえず、この後ホテルへ行こうか、デオン』

『え、なに、いきなりホテルは困るんだけど……』

『これこれ、邪ンヌとの仲直りが先ですよマスター・ぐだ男』

『もういいよ、アイツのことなんて』

『coolじゃありませんね。わかりました、僭越ながら「お義父さんの靴下と洗濯なんて死んでもやめてよね」でお馴染みのわたくしことジル・ド・レェが二人の仲を取り持って差し上げましょうぞ』

『え、それで何故に攻撃体制?』

『マスター下がって……っ!!』

 

 しかし、デオンさんはあと一歩足りませんでした。

 

 完全に油断していた先輩も愚かでした。

 

 こうなんだか不気味な色した光線が先輩を包みこんでいきました、

 

『ぐだ男はいるー? 迎えに来たわよ……って、ジル!? アンタ、そこで何をしてるのよ!! ぐだ男に何をしたっていうのよ!!』

 

 あぁ、ジャンヌ・オルタさん、遅いですよ。

 

 もう手遅れです。

 

 先輩が奇妙な態勢で苦しんでいます。

 

『おほほ、まさかここでジャンヌゥと会えるとは……眼福眼福』

『ぐっ、来るな邪ンヌ……つーか、誰が迎えに来いなんて言った? 俺は頼んでねーぞバカ……』

『はあ? 誰がバカですって? 別にアンタなんか迎えに来てないわよ、アタシはここに用事があってきただけですー。アンタなんてそのまま奇妙な倒れ方したらいいわ!』

『ふむ、今の二人は本当にcoolではありませんね。致し方ありません、「お義父さんは悲しい。いつ如何なる時も苦難を共に乗り越えようとしない若き二人に幸せが訪れるはずがない! だったら一肌脱ぐしかありません!」なので、覚悟してくださいジャンヌゥ……っ!!』

『え、どうしちゃったのジル……って、何でアタシにも攻撃してくるのよ!?』

 

 ジャンヌ・オルタさんも謎の光線に包まれてしまいました。

 

『ちょっと、うそっ、ちょっとこれ何よっ!? 復讐の魔女の威厳なんてあったもんじゃないわ!?』

『ぎゃははー、邪ンヌに猫耳とか誰得なんだよ!』

 

 あ、モニターの調子が……

 

 一体邪ンヌさんに何が起きたんですか!?

 

 先輩、もっと詳しく!!

 

『もう駄目だ笑かすな出る出る出るなんかやべぇ、キモチわりぃ……オロゲェェェェェェェ』

『ぎゃー!? アンタなんてモンを吐き出すのよ!? サイテー!!』

 

 先輩がゲロんちょしました。。

 

 モニターが不調で良かったのかわかりませんが、ビチャビチャビチャビチャってなんか聞こえてきます。

 

『今、お二方に呪いを掛けました。これからいつ如何なる時も恋人繋ぎをしなければそうなる呪いです。二人はこのまま明日フランスの街でデートして仲直りしてください。できなければ、その呪いは解けませんので悪しからず』

『『な、なんだってー!?』』

 

 雲行きが怪しくなってきたのは午後9時のこと。

 

 いろいろ状況把握しないといけませんが、今夜二人はホテルに泊まり、険悪のままイチャラブすることもなく就寝に就くのでした。

 

 勿論、朝起きれば大惨事になっていたのは言うまでもありませんよね。

 

 続く。




ご質問、ご感想はカルデア窓口まで( ゚Д゚)ウマー


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先輩と竜の魔女EXⅡ

 これは2人の愛を取り戻す物語。

 

 これは人類が焼却された未来とヒトの笑顔が絶えない過去の狭間で、ちっぽけな人間がちっぽけな理由から家出して発展させた事件です。

 

 開けた窓から差し込む木漏れ日と、水飛沫が床のタイルを飛びはね立ち上らせる白い湯気のコントラストが、2人の男女のシルエットを浮かび上がらせます。

 

 シャワールームで、一糸纏わぬ姿で肌を密着させ、お互いの身体をまさぐり合ってます。

 

 時おり喘ぎ声を押し殺すような、くぐもった声が洩れます。

 

 女は久しぶりでした。

 

 たわわな果実を何度も押し潰され、その度に戸惑いと恐れと憤りとそれを上回る喜びを相手に悟らせないよう強がってみせています。

 

 微熱で身体が敏感に反応するのです。

 

 熱い吐息が男の耳にかかり、ナニかを懇願してしまうのでした。

 

 ナニかが擦れ脳内でシナプスが迸ります。

 

 ナニかが別の生き物かのように蠢き、その後を追おうとしてしまいます。

 

 女は、女の喜びを思いだしました。

 

 コレが欲しかったのだ、と渇望しているのです。

 

 しかし、この男はロリコンです。

 

 発情しません。

 

 できません。

 

 真顔です。

 

 残念でした。

 

『クソッタレガ、ニオイが取れねえ……おい、手を止めるな。もっと擦れよ』

『うっさいわね、ちゃんとやってるわよ! というか、アンタさっきからどこ触ってのんよ、この変態……そっちこそ、ちゃんと洗いなさいよこのバカ』

『あ? お前こそちゃんと洗えよ……背中、右の方がかいーんよ』

『は? 何が「かいーんよ」よ。キモっ……ていうか、アンタの粗末なモノが当たってんのよ。マジキモいんですけど……』

『うっせーな、当てたくて当ててるんじゃねーし。つーか、なに、顔赤くしてんの? え、なに期待してんの? え、キモっ……』

『は? してないしっ……自意識過剰なんじゃないの? キモっ』

『あ?』

『は?』

 

 当時のフランスにシャワーがあったかどうかはさて置いて。

 

 現在、先輩とジャンヌ・オルタさんは宿泊したホテルの一室の、シャワールームにいました。

 

 先輩は右手、ジャンヌ・オルタさんは左手を封印されているので、お互いの背中を洗いっこしてあげなくてはなりません。

 

 というのも、目玉が飛び出してる方のジルさんによって、先輩とジャンヌ・オルタさんは呪いを掛けられました。

 

 恋人繋ぎしてフランスをデートして仲直りしないと解けない呪いです。

 

 もし、恋人繋ぎをしなかったらジャンヌ・オルタさんは猫耳が生えて笑い者になってしまいます。竜の魔女の威厳なんてあったものじゃありません。

 

 先輩へのペナルティは猫耳が生えるなんて生ぬるいモノでなく、何かヤバいものを下呂されるそうです。

 

 何か、というのもこちらモニター越しからは確認できませんでした。残念です。

 

 そんなこんなと、取り敢えず寝床に着いた二人でしたが案の定、朝には恋人繋ぎはほどけており、ベッドの上が大惨事になっていたことはシャワーを浴びて身体を洗いっこしているお二人を見るから想像するに、皆まで言わなくてもわかりますよね。

 

 ただ、冒頭のような官能的でエロスは一切なく、アレは私の妄想で、実際は喧嘩の最中というのもあって、睨み合いといがみ合いが続いております。

 

 嫌々、仕方なく、こいつ匂うから、洗ってやってるのよ……です。

 

『ちっ』

 

 先輩が大きく舌打ちをしました。

 

『ふん』

 

 それに対してジャンヌ・オルタさんが鼻を鳴らしました。

 

『ブスっ』

 

 先輩が低レベルで頭の悪そうな暴言で煽ります。

 

『ぺっ』

 

 ジャンヌ・オルタさんがお返しに唾を先輩の顔面に吐きました。先輩が悪いです。

 

 しかし、この二人仲直りする気あるのでしょうか。

 

『汚ぇなっ』

『アンタがね』

『あ?』

『アンタのゲロまみれのその口臭の方がよっぽど匂うし汚いわ、つってんのよ。公害って知ってる?』

『オーケーわかった……キスしてやろうか?』

『絶対イヤっ!!』

『だったらこれでも喰らえ。はぁ~』

 

 先輩は千年の恋も近隣近辺の小さな恋もまとめて、ゲシュタルト崩壊待ったなしの恋人公害兵器・息を吹き掛けるを放ちました。

 

『ちょっとホントやめてよ!』

『ガチで泣くなよ!?』

『だから臭いつってんでしょうが!!』

『あべし!?』

『大体アンタが私をスルーしなかったらこんな大事にならなかったのよ!』

 

 さて、ここからは真面目な話し。

 

 今回の喧嘩の元になった話し合い。

 

 二人が話し合わなければ仲直りもできない問題です。

 

 何故、先輩がジャンヌ・オルタさんを無視したのか彼女は知りません。

 

 先輩も、忙しい時に妨害されましたが、ジャンヌ・オルタさんの気持ちを汲み取ってあげないと駄目だと思います。

 

 だから、公害レベルの悪臭は一旦我慢してください。

 

『じゃあさ……お前、俺の代わりにエリちゃんのライブ行くか? お前が責任取るか? 死ぬのか? お前、死にたいのか?』

『ぜっ、絶対行きたくないわよ……』

『じゃあ、俺の邪魔するな。意見もするな。脛を蹴るな』

『だけどスルーはありえないでしょ。あんまりよっ!』

『お前はアイツがどんなにライブ楽しみにしてるか知ってるのか? どれだけ練習してきたか知ってんのかって!』

『そ、そんなキレなくていいじゃない………』

『いや、キレるぞそりゃ。エリちゃんの、前回のライブ観客動員数を知ってるか?』

『し、知らないわよ……』

『俺とマシュの二人だけだ』

『嘘っ……』

 

 嘘ではありません。

 

 事実です。

 

 ライブは成功とは言い難い形になりました。

 

『エリちゃん、いっぱい練習したからってギャラリー増えるはずもないのにバカみたいに夢見て俺に嬉しそうに話してくるんだぜ? 今度は成功させるって』

『………』

 

 ………。

 

『なっ、可哀想だろ?』

『だからアンタはあんなに走り回ってたんだ……今回のライブ、成功させようと……それを私、邪魔しちゃったんだ』

『あ、それは違う。どうやってライブ潰そうか考えながら走り回ってたのをお前が邪魔したんだ』

『は?』

『お前、いきなり明日ライブやります。マスターどうにかして、と頼まれて、はいわかりました、貴女のために死ぬ気で客集めますとか無理だろ』

『それをなんとかするのがマスターじゃないの』

『阿呆か。4、5人頼み込んで悟ったわ。こいつら、人が下手に出れば搾れるものは搾り取ろうとする血も涙もないサーヴァント集団だったってことをな!』

『あっそう……』

 

 先輩が身体を差し出せば全て交渉成立したんですけどね。

 

『だから俺はライブを潰すことに決めたんだよ。誰もがみんな笑顔になれる最高のハッピーエンドってやつをな!』

 

 格好いいように聞こえますがサイテーな事しか言ってません。

 

『いや、アンタだけがハッピーになるの間違いなんじゃ?』

『バカいえ、ライブを潰さなきゃまたエリちゃんが可哀想だろ。誰も来なかったら惨めな気持ちになるだろ。じゃあさ、何はともあれ何かトラブルあってライブなくなった方が納得いくだろうが。残念だけど、また今度って………諦めてくれるかもしれねーじゃねーか』

 

 やはりサイテーです、このヒトでなし。

 

『ん? であれば、私のおかげでライブ中止になったんじゃない? アンタはカルデアを家出してフランスにいるんだし』

『あれ、本当だ!?』

 

 盲点でした。

 

 まさか、もう既にライブの問題は解決しつつあるのでした。

 

 先輩が家出して帰れなくなった状況をカルデアにいるエリザベートさんに説明して諦めてもらうのです。

 

 あとは私の説得次第という訳です。

 

 先輩の言う通り、誰もが笑顔になれるハッピーエンドってやつは、もう目の前まで来ていたのです。

 

『よかったじゃない。これでアンタはハッピー。エリザベートも現実を受け入れずにハッピー。感謝しなさい』

『ありがとう、助けかったよ邪ンヌ。怒鳴って悪かったな、仲直りしよう』

『私も悪かったわよ。脛、痛かったでしょ?』

『んな、ことねーよ。アレ、実はお前に蹴られてじゃなく躓いて転んだだけだから』

『どんくさいマスターね』

『まぁ、これにて一件落着だ』

 

 外からはを二人を祝杯するかのような、リヨンの街の喧騒が聞こえてきました。

 

 露店を開く店主の怒鳴り声。

 

 果物を盗んで路地裏を駆けていく子供達の笑い声。

 

 陽気な音楽家が奏でる音色。

 

 キャンキャンうるさいワンちゃん。

 

 先輩たちにおめでとうと言ってくださっているような気がします。

 

 ほら、あの建物の上にあるフランスの国旗を見てください。

 

 旗が強風に煽られはためき喝采が…………あっ、旗折れてしまいました。

 

『じゃあ俺たち仲直りしたってことで、手を離してもいいよな?』

『ええ、私たちは見事ジルの試練を乗り越えたわ。手を離しましょう』

『じゃあ、せーの………で、オロゲェェェ……っ』

『ヽ(;゜;Д;゜;; )ギャァァァ!?』

 

 はい、知ってました。

 

 相変わらずモニターの調子が悪いですが、先輩が下呂しただけはわかりました。

 

 見せかけの仲直りは認められなかったようですね。

 

 先輩。とりあえず、呪いが解けるまで帰ってこなくて結構です。




ご感想、ご質問はカルデア窓口まで(゜ロ゜)


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先輩と竜の魔女EXⅢ

 先輩、ちゃっちゃとデートして仲直りしてください。

 

 お二人を見ていると、もどかしくなってきます。歯痒いです。

 

 不器用なんですね。

 

 自分の気持ちに素直になれないだけなんだと思います。

 

 先輩、ちゃんと歯磨きしましたか?

 

 口臭バッチリですか?

 

 いざという時は絶対くると思いますよ、マジです。

 

 バッチリであればラブホを出ましょう。

 

 デートに出掛けましょう。

 

 リヨンの街へ繰り出しましょう。

 

 これって誰にでもできるようなことじゃありませんよ。

 

 当時のフランスでデートなど、誰もが羨む特権です。

 

 どれだけ功績を残した著名人もできません。

 

 莫大な富を持ったセレブだろうとできません。

 

 タイムマシンを作れない天才にはできません。

 

 人類最後のマスターである先輩だからこそ可能にさせた物語です。

 

 さて、長いプロローグは終わりました。

 

 本編を楽しみましょう。

 

 そう、ホテルをチェックアウトして、足取りは軽やかに、露店で賑わう広場を通りすぎ、お天気ネタで談笑して、町外れの桟橋を渡って、リヨンの町が小さく、あんなに小さく離れちゃって………

 

『ぐだ男、海魔が出たわ!』

『じゃあ、ひと狩り行こーぜ!』

『ふん。アンタにしては上出来なデートプランね……っ!!』

 

 ………。

 

『邪ンヌ、右から3体親子連れが来るぞ! いや、アレは歳の離れた兄弟だ!』

『何言ってるかわかりませーん。とりま、燃やすわよ?』

 

 ………。

 

『いいから俺の言う通りにしろ。まずは小さい奴。弱者から、チビを狙えば奴らキレるだろ? そこで小学生時代4番エースだった俺が石で一匹煽ってやるから、次はそいつを狙え!』

『うっさいわねー。あんな雑魚共に指示もクソもないでしょうに』

『おいおい、あんまり動くな。俺がついていけないって! そこから一歩も動くな! もう、動くな!』

『はあ!? そんな命令ありえないんですけど!!』

『いいからチビから殺れ。ほら、ファイアーボールだ!』

『そんなダサい技ありませーん! えぇい、メンドクサイ!』

『お前、俺の作戦無視して全部燃やしてんじゃねーよ。俺の存在意義が無くなるだろうが!』

『あぁ、アンタただのお荷物だもんね?』

『そ、そそそそんなことないもん!!』

『まっ、どちらにしろ戦闘終了よ。あんな海魔でも何かドロップしたわ。拾いに行くわよ、付いてきなさい』

『あ、はい』

 

 ………。

 

 ドクター、緊急事態です。

 

 私には処理できません。

 

 私の知ってるデートではありません。

 

 もしかすると、私の中にあるデートの知識が間違っていたのでしょうか。

 

 デートとは男女が一狩りするためにあったんじゃ……

 

 近くにいるダ・ヴィンチちゃんが現実逃避して鼻歌歌って目を合わせようとしてくれませんでした。

 

 あ、また魔力反応多数。

 

 例のタコさんが、1、2、3、4、5…………どんどん増えていきます。わんさか増えております。

 

 その数、ざっと100………大量発生し過ぎです。

 

 先輩達は囲まれました。

 

『や、やべぇ、こいつはやべぇ。何がやべぇってやべぇしか言えない俺のボキャブラリの無さがやべぇ』

『どうするつもりなのよ!?』

『取り敢えずアレだ。コイツら皆殺しにして今日はたこ焼きパーティーしよう。シェフを呼べ』

『あのタコ不味そうなんですけど! それ以前に私たちだけで捌ききれる数じゃないんですけど……っ!!』

『こんな時、ピンチになった時に助けてくれるデオンが登場してくれたらいいなー』

 

 いいなー……じゃないでしょうに。

 

 デオンさんはあの後別行動で、ジルさんの動向を探りに行ったじゃないですか。

 

 今回だけは万に一つあのヒトが現れることはないと思われます。

 

 先輩、とにかく死に物狂いで生き延びて、またカルデアでお会いしましょう。

 

『実はデオンが物陰からこっそり登場のチャンスを窺ってるかもね!』

『そんな都合の良い展開があるわけないでしょうが! ほら、手薄な所を突破するわよ!』

『と、見せかけて罠じゃねーか……っ!?』

『うそ……っ!?』

 

 どうやらタコさんの知能指数は先輩達を上回るようです。手薄と見せかけて包囲網を固めてきました。

 

 ジリジリと近付き、タコさんの触手が先輩の頬をビンタしました。

 

『ぶへっ!? ダイレクトアタックされたぁ……ッ!?』

『ぐだ男、大丈夫!?』

『ごばっ!? って、ちょっと待って。今のは待て。お前、どさくさに一発俺を殴らなかった? 殴ったよな?』

『あっ、ごっめーん。アンタがあのタコみたいな顔してたから、ムカついてつい殴ってしまったわ』

『見間違いではなく……っ!?』

『殴り足りないわ』

『あだっ!?』

『今のは私じゃないわよ? タコさんよ』

『クソッタレガ!!』

『あぁ、仲間割れかしら?』

『んなわけあるか!!』

 

 幾度となく特異点を攻略してきた者たちの余裕というものでしょうか。

 

 これぐらいのピンチはピンチの内に入りません。

 

 ましてや、海魔にビンタされた程度でへこたれる先輩ではありません。

 

 普通のヒトなら首の骨折って終了ですけど。

 

 ジャンヌ・オルタさんだって先輩の人間強度ぐらい把握されているでしょう。

 

 先輩を囮に使うやよし、タコさんの注意を反らして、その隙を付け入れ旗で突きを入れるのです。

 

 突き刺すのです。

 

 振り回しては叩き上げ、凪ぎ払うのです。

 

 でも、どうやらここまでのようです。

 

『ちっ、数が多すぎ……』

『うげー、俺の股間まさぐってきた!?』

『くっ、旗を奪われたわ。もう、私達……おしまいね……』

『そう思えば、俺たちは出会ってからずっと、いがみ合ってばっかりだったよな』

『そうね……あんまりいい思い出がなかったわ……』

『………』

 

 ………。

 

『あーあ、どこかの誰かさんがもっとイケメンでゲロ臭くなくて理解あるマスターが良かったわー』

『悪かったな、ゲロマスターで』

『だけど、ぐだ男……私が囮になるからアンタだけででも逃げなさいな。ゲロは相変わらずでしょうけど、生きてればなんとかなるわ…アンタだけは死なせるわけにはいかないもの……』

『ばーか、フラグを建てるにはまだ早すぎるぜ。これが終わったらちゃんとしたデートしよう。お前と行きたい所は山ほどあるんだからな』

『バカ。アンタの方がよっぽどバカよ……』

 

 ありがとう、マスター……と聞こえないほどの小さな声でジャンヌ・オルタさんは呟きました。

 

 フラグ建っちゃいましたよね。

 

 先輩、近くでサーヴァント反応です。

 

 助っ人です!

 

 映像と音声、確認取れました。

 

 アタランテさんとマルタさんです。

 

『ロリコンマスターはどこだ?』

『あきれた、気味悪いタコさん達の中心で今にも愛を叫びそうな勢いで邪ンヌと見つめあってるわ。何してんだか……』

『今日、アイツは子供達と遊ぶ約束していんだ。それをアイツは放棄したんだ……アイツが子供達の願いを叶えてやらなければ、これじゃ子供達があまりに可哀想だ』

『うん、もう何だか論点ズレてるよね。目が血走ってて怖いんですけど……だから心配だったんだよ、付いて来て正解だった。だけど、ごめんマスター。止められそうにないかも』

 

訴状の矢文(ボイボス・カタストロフェ)……ッ!!』

 

 あっ、と言う間もありません。

 

 何しに来たのかよくわからない……いえ、目的はハッキリしていて、先輩を亡き者にしに来た暴走したアタランテさんの宝具が展開されました。

 

 星が瞬くかのような無数の矢の雨が降り注ぎました。

 

 タコさん達が一掃されます。

 

 ロリコン先輩も死滅したでしょうか。

 

 邪ンヌさんが庇っていれば、或いはですが……

 

『チッ、外したか……』

 

 どうやら凌いだみたいです。

 

 尻餅を付いた先輩の股下に矢が刺さってました。

 

 アタランテさんの舌打ちはスルーしときましょう。

 

『あ、危なかった~……』

『ア、アンタじゃなきゃ死んでたわね。どんだけ強運なのよ……』

『アタランテの奴、粋な登場の仕方しやがって……』

『ポジティブなのはわかるけど、今までに見たことない凄い形相でこっちに来るわ。逃げるわよ』

『いや、待て、その前にドロップした素材と具材をだな……』

『アンタ死にたいの? 死ぬの? いっぺん死んでみる?』

『おっ、レア具材発見~。モツだ!』

『うぇっ……』

 

 ………。

 

 呑気に具材拾ってる場合じゃありませんよ、先輩。

 

 このあと、狂化されたアタランテさんに追い付かれたのは言うまでもありませんでした。

 

『ロリコンゴラァァァァアアアアー……ッ!!』

『ギャー……ッ!?』

 

 なんだかアタランテさん、イキイキしてます。

 

 まる。

 

 

 

 

 ☆―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 拝啓、ドクター。

 

 シャトル積み上げ記録は順調ですか?

 

 不眠不休で積み上げていると伺ってます。あまり無理をなさらずに記録目指してください。

 

 わたくし、マシュ・キリエライトは「狩り」について考えさせられました。

 

 デートで狩りに出掛ける現代人はいません。

 

 まぁ、テレビゲームの「狩り」で恋人と協力プレイするのもデートというのなら、本人達がそう主張するならそうなのでしょうけども。

 

 人類がまだ石を削った武器を握りしめ狩りをしていた時代なら、狩りでデートもあるのかもしれないと想像させられます。

 

 これは先輩からの何らかのメッセージなのでしょうか。

 

 一見、現代人にとって、常識的に考えて、私の中にあるデータベースと照らし合わせて、デートとかけ離れた「狩り」ですが、先輩は私に何を伝えたかったのでしょうか。

 

 ダ・ヴィンチちゃんは鼻歌歌って雑誌読んでばかりです。

 

 スルーされてます。

 

 使えない天才は先輩以下です。

 

 カルデアきっての頭脳が現実逃避されると困ります。

 

 先輩たちの愛を取り戻すための物語は難航しています。

 

 今回のデート一つとして、場所がフランスというのも望ましくありません。ジャンヌ・オルタさんの機嫌を損ねるだけなのは明らかだというのに、ジルさんはとんだ試練を用意したものです。

 

 試練というのならば、「狩り」が第一の試練でアタランテさんを第二の「試練」としましょうか。

 

 先輩は現在進行形でアタランテさんに馬乗りされてボコボコにされています。

 

 仲介役のマルタさんは先輩の限界値を見定めて、取り敢えず静観しているようです。

 

 邪ンヌさんに至っては「スッキリするまで殴らせてあげたら?」と先輩の隣に腰を下ろして、事の成り行きを見守っています。

 

 恋人繋ぎのままです。

 

 あとは、先輩がアタランテさんをどう説得するかです。

 

 ………。

 

 ですが……これは…………ちょっとまってください。

 

 そんなことがあっていいのでしょうか……

 

 私、今もの凄く混乱しています。

 

 開けてはならないパンドラの箱を開けようとしているのです。

 

 だから、先輩は「狩り」のメッセージを私に伝えたかったのでしょうか。

 

 この物語、ただ愛を取り戻すようなハートフルでハッピーエンドで終わる話しではないのかもしれません。

 

 確証はまだありません。  

 

 ですが、ここでのんびりお茶を啜っている場合ではないのは確かなようです。

 

 私にできることをしなくてはならなくなりました。

 

 やはり先輩には頼れる後輩が必要ですね。

 

 ふぅー、やれやれです。

 

 本当にやれやれなので、私は駆け足でドクターの元へ向かって、シャトルを蹴散らしてやりましょう。

 

「ドクター! いつまで現実逃避してるんですかー! カルデアのため、人理継続のため、社会復帰する時間ですよー!」

「ああー!? 血と汗と努力の結晶が……っ!? マシュ、僕はそんな悪い子に育てた覚えはないぞー!!」

 

 私は人理を守るために悪い子になっても構いません。

 

 かしこ。




ご感想、ご質問はカルデア窓口まで( ̄▽ ̄)


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先輩と竜の魔女EXⅣ

 先輩が何故「狩り」を行ったのか、どんなメッセージを届けたかったのか、その謎解きをしましょう。

 

 謎を解くキーワードは言わずもながら「狩り」です。

 

 かつて、ヒトは狩りをして暮らしていました。

 

 私達の遠い祖先に当たるヒトに限りなく近いお猿さん達は石を削って武器を作り獲物を狩っていたのです。

 

 そんな情景を想い描くきっかけが「狩り」だったのです。

 

 勿論、それだけでは類で猿な人が生きていた時代なんて思い描くことはできなかったでょう。

 

 ですが、ジャンヌ・オルタさんは憤怒の炎で敵を燃やしました。

 

 先輩はアタランテさんを会話というコミュニケーションツールで説得を試みたのです。

 

 重要なキーワードは他にも隠されていたのです。

 

 ヒトは火を起こし、狩りをして、会話を確率しました。

 

 それが人類の始まり、すなわち人類史の始まりであり、最初の試練をそれになぞらえばこそ、先輩はそれを伝えたかったんじゃないでしょうか。

 

 ジルさんの与えた試練が、歴史の再現であれば、次の試練も歴史の続きで、そこにも何らかのキーワードが隠されているはずです。

 

 それを予想すれば、そこに1つの真実が浮かび上がってきます。

 

 ジルさんの真の目的です。

 

 先輩とジャンヌ・オルタさんへ試練を与えた仲介役は偽りの姿でしかなかったのです。

 

 愛など取り戻させる気なんてミジンコたりともありません。

 

 あの方は、渇望していたのです。

 

 あの方は、まだ世界を恨んでいたのです。

 

 あの方は、カルデアに呼ばれなかったことを怨んでいたに違いありません。

 

 スネちゃったんですね。

 

 だから、あの方はもう一度戦争を起こすことに決めたのです。

 

 歴史をなぞらえて、もう一度、ジャンヌ・オルタさんをダークサイドに堕とし、フランスを火の海に変えようとしているのです。

 

 試練によって、駄目なマスターぐだ男に愛想つかせたいのです。

 

 ジルさんの真の狙いは邪竜百年戦争のリベンジで間違いありません!

 

「今日のマシュはぶっ飛んでるな~。通りで僕の生涯に一度のチャレンジを邪魔する悪い子なんだ」

「ロマニのアホはさて置いて。マシュ、その推理はいささか強引すぎやしないかい? 確かにレイシフト先であのジル・ド・レェがいたことには驚きはしたけど、たまたまだよ。そう、たまたま、偶然そう見えただけだ。そんなこと絶対にありえないよ」

 

 え、否定されました。

 

 この給料泥棒達は何を呑気なこと言ってるのでしょう。

 

 もっと、危機感を持ちましょうよ。

 

 人類史を脅かすあらゆる可能性は排除すべきです。

 

「君の推理が破綻している点は三つ。

 まず一つ、ジル・ド・レェは敗北者だ。たまたま家出したぐだ男くんと遭遇して、ついでに邪ンヌと運命の再開をしたとして、それがきっかけで邪竜百年戦争へリベンジを燃やすにしろ、もっと慎重に、まともな計画を立てるだろう。そう、彼の言葉で言えば、この計画犯罪はcoolじゃない、だ」

 

 ま、まだ論破されたワケではありません。

 

「一つ、歴史の再現とやらだが、たまたま、気まぐれで、ツンデレか何かで、ぐだ男くんは狩りをしただけかもしれない。ぐだ男くんの中でデート=狩りだったかもしれない。その一連のやり取りが歴史の再現だとこじつけるには無理がある。それと、まだ試練があるにせよ次もソレだとは限らない」

 

 あばばばばばばば……私の推理が破綻していく。

 

「一つ。ははっ、君は推理小説の読みすぎだ」

 

 ………。先輩、私も家出していいですか?

 

 というか、します。

 

 

 

 

☆―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 さて、家出してきました。

 

 ヴィヴ・ラ・フランスです。

 

「あの、マシュさん、何がなんだかワケワカメなんですけど、何故突然私はフランスに連れてこられたのでしょう?」

「フランスのピンチだからですよ、ジャンヌさん」

 

 別に一人で家出するのが寂しかったとかじゃありません。

 

 別に誰かを道連れにしたかったワケでもありません。

 

 まだ私の推理が破綻したワケじゃありませんので。

 

 私の推理を鼻で笑ったダから始まってチで終わるサーヴァントと、こ○亀1巻から読み始めたドクターをギャフンと言わせるためにも彼女の手は必要でしょう。

 

 そう、彼女こそがこの事件に最も相応しい助手役というワケなのです。

 

 だから、ジャンヌさんを拉致……もとい、連れてきました。

 

「では、早速ですが先輩達の張り込みといきましょうか」

「本当に何が起こってるんですか……?」

 

 かくかくしかじか、ジャンヌさんにこれまでの経緯を話しました。

 

 微妙な顔をされました。

 

 誰かさんみたいに鼻で笑わなかっただけでも良しとしますか。

 

 ただ、あまり気乗りしていないみたいですね。

 

「ただの痴話喧嘩に私達が介入していいものなのでしょうか……」

 

 野暮だといいたいのでしょう。

 

 ですが、それは違いますよジャンヌさん。

 

「違う、のですか?」

「介入でも仲裁でもなく、これはあくまで静観です。先輩達を見守るだけです。パレない距離からこそっと覗いているだけです」

「ストーカー行為では……」

「清姫さんと一緒にしないでください」

「それ、ご本人の前で正直に言えるのですか……」

「とにかく、今は私達の手が届く範囲で先輩達を尾行するのです。尾行という名の護衛です」

「えー………」

「ふっ、仕方ありません。私の秘蔵コレクションの1枚、先輩の寝顔写真を差し上げますよ」

「はぅっ……………………………………………………わかりました。コレで手を打ちましょう」

 

 ジャンヌさん、貴女も随分カルデアに染まってきましたね。

 

 取り敢えず、よだれを拭いてください。

 

 

 

 

 

☆―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 さて、気を取り直して先輩達の張り込みをしましょう。

 

 もう既にリヨンの街へ引き戻ったであろう先輩を探すことなど容易いです。

 

 この時代にGPS機能が無くても、それは後輩属性がカバーしてくれます。

 

 ましてや、ジャンヌさんがいます。

 

 フランスはジャンヌさんの庭みたいなものです。

 

 どこがデートスポットくらいわかるでしょう。

 

「いえ、田舎女な私ではわかりませんが、マスターを見つけました。そ、そんな、ここは……」

 

 そこは、ラブホ街……ではなく。

 

 先輩達の距離感ほんと計りかねますが、いつの間に仲直りしたのでしょうかと思いましたが、どうやらそういうワケではないようです。

 

 見慣れない看板が立て掛けてあるお店の中へ入っていきます。

 

 ギルドと書かれています。

 

 意味不明です。

 

 私達はいつの間にかゲームの世界へ迷い混んでしまったんじゃないでしょうか。

 

 カウンターの受付をされているマリーさんに何やらモツをお渡ししていました。

 

 そう、あのタコさんのモツと通貨を交換していました。

 

「ヴィヴ・ラ・フランス♪マスター、貴方達のギルドランクがEからDに上がったわ。これでより難易度の高いクエストを受けられるようになったわよ。おめでとう」

「ぐだ男、さっそく『海魔を飼い始めました。子供が生まれて手がつけられません』を受けるわよ」

「だべ」

 

 その依頼人はアホなのですか。

 

 そして、そんなアホなクエストを引き受ける先輩達もアホなんですね。

 

 お願いですからデートしろよーマジで~、です。

 

 歴史の再現とかアホみたいな推理どうでもよくなりましたよ。

 

「だけど、今の俺達はこんな状態だ。二人でクエストするのは危険だよな」

 

 だったら先にデートして仲直りしたらいいじゃん~。

 

「マスター、鯖が足りないのなら石を割って召喚すればいいじゃない」

 

 マリーさんも上手いこと言いますね。というか、随分カルデアに染まりましたね。

 

「石を持ってない不甲斐ないマスターちゃんはどうしたらいいのよ?」

「聖晶石が手元にないロリコンマスターでも大丈夫。ギルドで登録している鯖を紹介できるわ……って、仕様書に書いてあるわ」

「それがお前の本音だったら大事件だったよな」

「か弱い私は今夜、マスターに乱暴されてすすり泣き調教されるのでした」

「まーそれだと邪ンヌとセットで最悪だ」

「ちょっとアンタそれどういう意味よ?」

 

 そのままの意味だと思いますけど。

 

「ともあれ、今、ギルドで紹介できる鯖は………………………キャスターにアサシンはどうかしら?」

「ビミョーなとこ突いてくるわねー」

「アマデウスにサンソンかよ……」

「チェンジした方がいいんじゃない?」

「うん、チェンジで」

 

 組み合わせが最悪ですね。

 

「あら? 男性サーヴァントと触れ合える機会を作ってみたのだけど?」

「どちらか1人にしておくれよ。マリー」

「ごめんなさいね、それはできないみたいだわ。大人の都合とかでギルド条例に反するらしの。それに、彼ら、1人だとDランクのクエストもビミョーなのよ」

「結構酷いこと言ってるわ、この王妃様」

「他は? 他にも鯖いるだろ? できれば男がいいです。」

 

 先輩は男に飢えているのです。

 

 あ、マリーさんと目が合いました。が、先輩達には内緒にしてくれるみたいです。

 

「ジルはいないの?」

「アイツは今回の黒幕だろうが、いるわけないだろ」

「白い方でいいかしら?」

「黒い方がいいわ」

「ワガママ言うなよ」

「紹介できる鯖はこのリストに載っている方々しかいないのだけど」

「フランス組ばっかだな」

 

 マリーさんに差し渡された、メニュー表みたいなものにパーティー編成可能なサーヴァントが載っているそうです。

 

 ですが、

 

「つーか、なに、アマデウスにサンソン以外の鯖は待ち時間がございます? 他の鯖を選んだら待たされるの?」

「えぇ、基本彼らは暇じゃないでしょうに……白い方のジル・ド・レェも、今は別のクエストに出払っているのよ」

「裏を返せばアマデウス達は難易度の高いクエストには行けず手持ちざたってことか」

「それは違うわ。彼らが暇してそうだったから私がお願いしてマスターのために待機してもらってるのよ」

「マリー、お前……俺のためにそこまでしてくれたのか。ありがとな」

「勿論、マスターの希望が最優先よ。少し時間を潰して待って貰えば、出払っていた鯖もギルドに戻ってくるでしょうし、紹介もできるわ」

「じゃあ、どこかで時間潰すとするか……」

「なら、ここでお茶していきなさいな」

 

 さて、誰が先輩のパーティーに加入するのでしょうか。

 

 先輩達はごろつき紛いの傭兵やら戦士やらが集う酒場席で、お茶するそうです。

 

 ホントにロマンチックのロの字もないですね。

 

「ですけど、マリーの淹れる紅茶は美味しいですよ」

 

 ジャンヌさん、心の浄化できるお茶だといいのですけど。

 

 そんなこんなと見張りを続けること五分。

 

 やっと、お茶が出ました。

 

 ウェイターの格好をしたジークフリートさんが持ってまいりました。

 

「すまない」

 

 開口一番、お決まりの言葉です。

 

「いや、その『すまない』は少し遅れて『すまない』なのか、ウェイターの格好が似合い過ぎて嫌み的な感じで『すまない』なのか……はたまた、カルデアに来れなくて『すまない』なのかどっちだよ」

「アンタ、仮にも竜殺しの英雄でしょ? 威厳とかプライドとかないわけ?」

「すまない……」

 

 先輩、これ以上ダメ出ししてあげないでください。

 

「まあいいや……とにかく、メンバーの一人がジークフリートかー」

「やれやれ、最低でもあと一人は欲しいわよね」

 

 メンバーが見つかってよかったですね、先輩。

 

 しかし、ところがどっこいでした。

 

「すまない………今回の俺はただバイト役を命じられただけのサーヴァントだからクエストには行けない」

「お前が何言ってるのかわからない」

「ぐだ男、私もわからないから大丈夫よ」

「ギルド条例がなんとやらで………詳しくはマリー王妃に聞いてくれ。とにかく、お茶を淹れるだけの鯖で、すまない………」

「「あ、うん……なんか、こちらこそ、ごめんなさい」」

 

 と、とにかく、私達もギルド登録しましょう。ジャンヌさん。




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