挟み結ぶ鉄鋏使い (葵・Rain)
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設定的なもの
マテリアル 橘・優頼


橘・優頼(たちばな・ゆらい)

・男

・18

・180㎝、60㎏

・マテリアル

 転生前はオルガたちが率いる三番隊でユージンたちと同期。喧嘩は強く、三日月と同じくらい強い。鋭い目付きで怖いと見られるが、年下や女性には優しい。だが、仲間に手を出すやからは潰すと決めている。旧名は優頼・ダルトンでアイン・ダルトンの腹違いの弟。姿は銀魂の坂田銀時の髪の色を白から黒に変えて、若くさせている。

 

 三日月と明弘を撤退させるために殿を勤め、その場にいた敵モビルスーツを破壊し尽くした。後一歩のところで敵機に自爆特攻をされたため大きな損傷を負わされ、その影響で敵を巻き込んで爆発し死亡した。

 転生時爆発の影響で記憶を失い、三河にいた酒井たちに拾われ育てられた。その後、橘・優頼の身分と一般常識を覚えて武蔵へ引っ越した。

 武蔵に引っ越して間もない頃、トーリやホライゾンたちと友達になる(なってしまう)。

 高等部三年時総長連合に入り副長の地位につく。

 武装は神格武装、血華鋏。普段は分離し刀として使うが、合体しハサミとして使う。その他に、各種刀剣類が入った大型レンチメイスも使う。契約神は不明。術式はサタナニズム、阿頼耶識。戦種は機体術師(マイスター)

 

 FILE.1

 嗜好はドが付くほどの甘党。阿頼耶識の影響で常に甘いものを欲しくなる。

 好物は超濃イチゴミルクと宇治金時パン極。

 

・ASW-G-10 ガンダムブエルアスタリスク

・18.3m

・30.8t

・武装

 ハサミ型可変ブレード:血華鋏

 大型流体剣×2

 小型流体剣×2

 弓矢型シザーシールド:ステラ(未)

・橘・優頼

・データ

 ソロモン72柱の10柱、ブエルをモデルにしたガンダム・フレーム。

 この機体の特徴はエイハブリアクターの他に獅子炉という機関があること。獅子炉というのはGNドライブのことである。三つの機関を同時に起動させ機動力と速度の底上げを図っている。当然、トランザムを使うことができる。(なお、本編ではトランザムは未だ使えていない)厄祭戦後は廃棄されたため、獅子炉は整備されていないため劣化した。だが、スラスター要らずのためガスの補給はいらない。

 本人の希望により遠距離武器よりも白兵戦を主体とした武器が多い。

 専用武装は神格武装血華鋏。ブエル側にある血華鋏と優頼が持つ血華鋏は同じもの。なお詳しい説明は下記にて説明する。

 オルフェンスでの世界ではエイハブリアクターと不完全な獅子炉を使って動いていた。境界線上では機関のほかに血華鋏と流体剣で使うため流体もある。

 

・神格武装 血華鋏(けっかはさみ)

・データ

 松平元信最後の神格武装であり、分離し鉄血と鉄華という二つの準神格武装にもなる。

 鉄血は右片刃の武器。能力は切断。効果は自分の視認する方向30mにいる物体や敵味方問わず切断する。

 鉄華は左片刃の武器。能力は結合。効果は半径10mで刃に写した物を強制的にくっつける。

 血華鋏はその二つを合わせた武器。別名結果鋏。通常駆動は30mにいる刃に写る対象を一つ切り結ぶ。上位駆動は物体や空間、術式すら切り結ぶことができる。その分、流体燃料の消費が激しい。

 なお、機体の時はその五倍である。




 わからないところ、疑問がありましたら言ってください。
 因みにブエルのモデルはエクシアです。


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一巻 境界線上の整列者達
境界線前の整列者達


 実は昔境ホラ二次を書いていました。昔の設定を思い出しながら、アニメと原作を見て、新しいのを書きました。では、見てください。


 荒れた大地、破壊されたむき出しの機械が広がっていた。夕暮れの空から機械片が降り注ぐ中、空からまっすぐと黒い何かが大地に着陸した。

 姿は黒い鎧を着た人型の機械。黄色のカメラアイを光らせ、辺りを見渡した。そこには姿や形は違えと顔つきが同じロボットが二機。一機は白く、大きな機械の爪と大型メイス。もう一機はベージュで両肩についた大きなアーマー、そこから生えている二本の腕が特徴。

 

「大丈夫か○○○○、○○○○?」

「ああ」

「問題ないよ」

「そうか。なら、ここは俺に任せてもらおう」

「何言ってんだよ」

「○○○○、お前には守りたいものがあるんだろ。そして、○○○○もだ。いいからここから離脱しろ」

「○○○○は?それに俺は○○○から言われたんだ。背くわけにはいかないよ」

「てめぇら、てめぇらはもう手に入った幸せを手放す気か⁉そんなことさせるわけにはいかない。だから行け!」

「……わかった」

「○○○○」

「だけど、○○○の命令は守らないと駄目だ。もし、破ったら死んでも殺すから」

「ああ!」

 

 白とベージュの二機はブースターを噴き、この場を離脱した。その二機を追いかけようと多くのロボットは飛ぼうとしたが、五本のワイヤーブレードに貫かれて、爆発した。

 黒いロボットは二本の大剣を構えて、ワイヤーブレードを元に戻した。

 

「き、貴様⁉」

「うるせぇな」

 

 緑色のロボットがライフルを撃ちながら向かってきた。黒いロボットは二本の大剣で防ぎ、緑色のロボットを剣でなぎ倒し、二本の剣を合わせて大型のハサミになり、その緑色のロボットを切り挟んだ。

 爆発から五本のワイヤーブレードで敵をなぎ倒した。

 

「ここから一歩でもあいつらを追いかけたら切る」

 

 三角柱から緑色の何かを噴きだしながら、ロボットの大群へ突っ込んだ。

 

 

 

 

 

 ーー通りませ 通りませ

 行かば 何処が細道になれば

 天神元へと 至る細道

 ご意見ご無用 通れぬとても

 この子の十の 御祝いに

 両のお札を納めに参ず

 行きはよいなぎ 帰りはこわき

 我が中こわきの 通しかなーー

 

「はー、朝かよ」

 

 ここは準バハムート級航空都市艦武蔵。格納庫の中には青い人型のロボットが入っていた。そのロボットは片腕がもがれており、黒い布を巻いて隠していた。毎朝流れる通し道歌を聞いて目覚めるのが日課のその人はロボットの中から現れた。黒のタンクトップを着た少年がその中から出てきた。薄汚れた服を着替えて、黒と白の袴に履き替えて、立て掛けてある巨大レンチを背中に背負い、格納庫から出た。忘れていた、と部屋に戻りハンガーに掛けている緑色の足までの長さのコートを着た。格納庫を後に武蔵アリアダスト教導院へ向かった。

 

 場所は変わり、武蔵アリアダスト教導院校舎側に教師と生徒が集まっていた。白塗りの長剣を背負い朝でも響く大きな声で生徒に喋った。

 

「では、これより体育の授業を始めまーす。ルールは簡単です」

 

 先生は顎をしゃくって艦群の先を示した。

 

「いい?先生、これから品川の先にあるヤクザの事務所まで、ちょっとヤクザ殴りに全速力で走って行くから、全員ついてくるように。そっからは実技ね。遅れたら早朝の教室掃除でもしてもらおうかしら。ハイ返事は?Jud.?」

「Jud.」

 

 全員が了解の合図を言うと、一人の生徒が手をあげた。

 

「教師オリオトライ、体育と品川のヤクザとどのような関係が?金ですか?」

「馬鹿ねえシロジロ、体育とは運動することよ?そして、殴ると運動になるのよ。そんな単純なこと、知らなかったとしたら問題だわ」

 

 少し怒っている表情を見せる先生、オリオトライ・真喜子。質問をした男子生徒、シロジロ・ベルトーニの制服の裾を引っ張る女子生徒ハイディ・オーゲザヴァラーはそのわけを話した。

 

「割り当てられていた一軒家が最近表層で地上げにあって、最下層行きになってお酒飲んで暴れて壁割って教員課にマジ叱られたから。つまり報復よ」

「違うわよ。ただ先生は腹が立ったんで仕返しに行くだけよ」

「同じだよ」

 

 オリオトライの発言に全員が突っ込んだ。しかし、気にしないで、出席を取り始めた。

 

「今居ないのは……ミリアム・ポークウは仕方ないとして、あと東は今日の昼に帰ってくるとして、他には?」

「ナイちゃんが見る限り、セージュンとソーチョウ後、フクチョーもいないかなあ」

「正純は初等部の講師をして、午後から三河に降りて酒井学長を送り出してくるから今日は自由出席のはずよ。トーリは知らないわ。優頼はいつもの寝坊よ。誰か知らない?」

 

 金髪の髪と同じ翼を持つ女子生徒、マルゴット・ナイトが言うと、トーリと言う生徒以外の所在を言う。

 そこへ茶色のウェーブヘアーの女子生徒はハイテンションにトーリのことを話し始めた。

 

「うちの愚弟のことね。聞きたい?聞きたいの?聞きたいよね!だって武蔵の総長兼生徒会長だものね。けど、教えないわ!」

 

 だって、と一拍置いて。

 

「私が八時に起きたときはもういなかったもの!」

「お前、朝からテンション高いのに遅いんだよ!」

「ふふふっ、メイクはしたから、大丈夫よ!この、ベルフローレ・葵は常に余裕をぶちまけているのよ!」

「あのー、喜美ちゃん」

 

 ハイテンションな女子生徒、ベルフローレ・葵もとい葵・喜美へ聞いたのはマルゴットだった。

 

「マルゴット、その名前で呼ばないで。青い黄身みたいで嫌だわ!そして、前の名前はお隣の仲村さんの犬に付けたからなしよ!」

 

 そんなハイテンションを聞き流して、オリオトライは今の極東のことを話し始めた。

 約百六十年前に起きた重奏世界崩壊によって、重奏世界の神州と合体してしまい、重奏世界対神州と争いが起きた。その争いは重奏統合争乱と呼び、この戦いに勝利した重奏世界はこの神州を暫定支配をした。そして、神州は極東と名を変え、政治や経済などに制限を設けられた。

 

「さて、皆、君らはこれが最後の年の学園生活、色々面倒ごとがある国けど、君らはこれからどうしたいかわかってる?」

 

 オリオトライの発言に皆は考えなしか、それとも不安から来る沈黙なのか。違っていた、とオリオトライは思っていた。全員が何かしら持った確かな者が顔から読み取れた。それに対し笑っていた。

 

「今年で最後かもしれないし、進路とかどうなるのかわからない。けど、何とかなるものよ。それまでにテキトーにやっておきなさい」

 

 自分の経験談を混ぜたことを言うと小さく笑い、戦闘態勢に入った。それに反射的に反応した生徒たちがいた。

 

「いいねぇ、戦闘系技能者は今ので来ないと。今から死んだ気で来なさい。ルールは簡単、今から品川のヤクザの所へ行くわ。その道中で私に攻撃を通した人は、出席点五点、つまり五回サボれるわよ」

 

 帽子を被った忍者っぽい男子生徒、点蔵・クロスユナイトと竜の姿をした男子生徒、キヨナリ・ウルキアガが、攻撃は通すではなく当てるでもいいのか?、と聞いてきた。それに対し、オリオトライは問題ないといった。

 

「それでは、どこでもいいで御座るのなら自分は胸でも」

「なら、拙僧は尻に行くか」

「はははっ、二人ともやる前に死にたいのか?」

 

 軽い脅しは二人にすると、みんなが反応する前に後ろへ跳び、後悔通りを横切り、色々と思い出していた。一人の少女が始まりであり、まだ始まっていない者への片道切符になるだろう。

 

 戦闘音を聞きながら、青雷亭の中で朝食を頼んでいる男子生徒へ一人の同じ年ぐらいの少女がパンを渡していた。

 

「優頼様、ご注文のサンドウィッチです」

「ん、Jud」

「教導院のほうはいいのかい?」

 

 青雷亭の店長の葵・善喜は由頼へ聞いてきた。

 

「Jud。浅間から品川に向かうと聞いたからそのまま授業へ参加するよ。仕事頑張って」

 

 袋からサンドウィッチを取り出して、食べながら品川へ向かって歩いていった。

 

「浅間殿!」

 

 点蔵の叫び声を聞きながら、サンドウィッチを食べ終えると、次のパンへ手をつけた。

 

「ん、やっぱメンドーだな。しかし、五回も遅刻を許されるのは魅力的だな」

「おいおい、何店の前でサボりか?」

「馬鹿か。お前こそエロゲーの包みを持つ奴のセリフか」

「痛いとこつくなぁお前」

 

 常に笑っている男子生徒、葵・トーリはそのまま言われた。

 

「ちょうど、十年だがするのか?」

「まあな、覚えていなくても俺はホライゾンのことを覚えている。他人だとしても、記憶がなくてもあれはあいつだ」

 

 青雷亭の中にいる少女、ホライゾン・アリアダストへ目を向ける。トーリの目には十年前のことを思い出されていた。

 

「さて、俺はそろそろ行くがどうする?」

「朝飯を買ってから行くわ」

「Jud」

 

 その身体のみで屋根まで跳び、オリオトライへ向かって行った。前にはなんか落ち込んでいる弓を持っている女子生徒、浅間智がいたが無視して行くことにした。

 

「ちょっと無視しないでくださいよ!」

「向井、ペルソナおはよう」

「お……おは、よう」

 

 ペルソナと呼ばれる巨体男子生徒と目元まで髪を伸ばした向井・鈴へ挨拶した。

 

「あと浅間も」

「遅いです!」

「ん、じゃあな」

 

 さらに走る速度を上げて、多摩と品川の繫がる太縄へ向かった。忍者顔負けの速度で向かっているが、周りの被害は一つもない。ただ、ほかの生徒が出した被害しかない。

 太縄でオリオトライと箒に乗っているマルゴットそして、マルゴット同じ翼を生やしている黒髪と黒い翼の女子生徒マルガ・ナルゼが戦っていた。通信越しに二人へ連絡した優頼。

 

「白黒援護しろ俺が行く」

「Jud。フクチョー」

「まったく名前ぐらい呼びなさいよ!」

 

 息を吸って、背中にある巨大レンチを取り出し、オリオトライへ行った。

 

「武蔵アリアダスト教導院副長戦種未定、名乗らなくてもいいよな?今から潰すし」

「おいおい、一生徒がここを殺人現場にするのか?」

「なに、先生がアマゾネスって言うんだから、本気でいかないと俺は死ぬし」

「何気に挑発してくるわね」

「すいませんね。挑発しないといけないんでね。それが俺の戦い方なので」

 

 巨大レンチもといレンチメイスをオリオトライへ振るった。簡単に避けられるが、その反動を利用をして跳び蹴りを喰らわせる。だが、それも避けられてしまう。

 

「やっぱ、当たらないな」

「副長が当たらないでどうするのよ」

 

 その言葉に対して怒ったのかレンチメイスの振る速度を上げた。それでもオリオトライには届かない。オリオトライは跳び、品川へ行こうとしたが、マルゴットとナルゼのコンビが空中にいるオリオトライへ向けて術式を展開し援護をする。援護に感謝しながら、優頼はレンチメイスの中に隠していた刀を取り出し、斬りにかかった。

 

「それあり!?」

「ありですよ。去年まで刀剣類オンリーの俺がメイスを使い始めたからって、剣がないとは言ってませんよ!」

 

 刀を投げつけて、レンチメイスで振りかぶるが、当然弾かれ、避けられる。しかし、そこへ梅組が揃った。時間稼ぎ、そう思ったとき遅かった。品川の方へ何人かいて、多摩側にも何人かいる。さらに太縄にも。

 

「覚悟はできましたか先生?」

「ここを抜け出せば、問題ないわね!」

 

 レンチメイスをオリオトライへぶん投げてる。屈んで避けると、そこへ点蔵が足元へ苦無を投げ、ウルキアガが空中から突撃してくる。それを後ろに飛んで躱すとウルキアガは太縄を揺らした。バランスを崩そうとしているが、崩れなかった。向きを変えながら、品川の方へ走っていく。マルゴットとナルゼの術式をも躱して強引に突破した。品川の方へいた拳に包帯を巻いた男子生徒、ノリキと大きな槍を持った女子生徒、アデーレ・バルフェットが止めに行くが止まらず、そのまま、合気道のような返し方をされてリタイアした。

 

「ちっ、少し本気出すか」

 

 足裏に青い術式を出して飛んだ。空中に術式を展開し、それを足場にして一気に飛んだ。

 

「さすがに来ていないわね」

 

 安心しているオリオトライ。だが、風を切る音が響いた。その方向を見てみると、剣を投げている優頼の姿を見つけた。それを背負っている剣で弾くと、目の前に優頼がいた。その手には苦無が。その苦無で斬りつけた。だが、避けられた。

 

「ちっ、あ~げんっかい!」

「いやいや。当たったよ」

 

 オリオトライは腕を見せながら、優頼に言った。腕からは赤い一筋の線が垂れていた。

 

「橘・優頼は出席点追加ね。お、みんな遅いぞ」

 

 出席簿に書いていると生徒全員が到着した。

 

「殴り込みの前に優頼、君は去年よりは戦い方はよかったわ。だけど、遅刻は頂けないな」

「Jud」

「生きているのは優頼と鈴だけ?」

 

 そんなことを言っていると扉から赤い巨体の異形の男、魔神族と言う種族が出て来た。気にせずに、寝ている生徒全員を起こし、授業を開始した。生物の特徴と魔神族の特徴を説明し倒してしまった。

 

「さて、実践よ」

「できるかあ!?」

 

 扉が閉じるとともに入ろうとしている時、陽気な声が後ろから聞こえた。

 

「あれ?おいおいおいおい、皆、何やってんだ?」

 

 トーリが出てくると共にオリオトライはイラつきながら聞いてきた。ここへ来たのはエロゲーを買いにきたと。まあ、それを聞かされたら怒るわけなんだが、そんな事を気にせずに普通にオリオトライの胸を揉んでいた。それと感想だが、どうやら柔らかいと。

 

「まあ、それよりも聞いてくれ。俺告ろうと思う」

「おい、馬鹿脈絡がなさ過ぎて全員が混乱している」

「おいおい、俺が急に言ったからって全員知っている子さ」

「ねえ愚弟、あんた画面にいる女の子に告るなら、○○○にコンセント刺して痺れるといいわ!ステキ!」

「おいおい、違うぜ姉ちゃん。ホライゾンだよ」

 

 ホライゾン。その名前を聞いて周りは静かになった。

 

「馬鹿ね。あの子は生きているわ。けど、あんたの知っているあの子ではないことぐらいわかるよね」

「ああ。それでも俺は逃げない。たとえ、俺のことを忘れていても俺は覚えているからな!」

 

 そんな告白の話を終わった後、トーリの肩にオリオトライが手を置いた。そのまま、ヤクザの入り口に投げ飛ばした。全員の口が開いたまま、唖然している。

 

「これがこいつらなんだよな」

 

 そんなことを呟いて優頼は投げ飛ばされたトーリの回収に向かった。




 タグにそんなこと書いているのに、ネタバレしていますよね。(作者の文才が伝わっていれば)
 あと、文がひどいですよね。
 では、感想などあったらお願いします。


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階段上の哲学者たち

 あけましてございます!今年もよろしくお願いします。
 昨日?昨年?FateProject2017は驚きでしたね。主に、最後が。
 では、「挟み結ぶ鉄鋏使いをお願いな!」ちょ!?


 朝はトーリの告白騒動からオリオトライのヤクザへの八つ当たりが始まり昼に近い時間、梅組では……。

 

『脱ーげ!脱ーげ!』

 

 全裸コールが各校舎を、廊下を、響かせていた。

 なぜ、全裸コールは起きたのか。それはトーリの余計な一言が原因であった。自業自得であるが。

 

『やあー⁉先生⁉先生⁉へ、変態が⁉変態総長が回転して⁉』

 

 トーリがオリオトライに吹っ飛ばされ、壁をぶち壊しながら隣のクラスまで巻き込んでいるが、この男には関係ない。普通に起き上がり、怒鳴り始めたが、周りから特に女子生徒からの悲鳴が響く。

 

『落ち着いてくれよ⁉ほらここ見てご覧!』

 

 トーリは腰を突きだし、見せびらかしてきた。腰、正確に言えば股間に四角い光の群れが見えた。

 

『こいつはゴットモザイクって言うんだぜ!今回、大量に買いまくったから、いつでも脱ぎネェェェェタァァァァ⁉』

 

 廊下を歩いていた優頼がレンチメイスを振り投げてトーリを沈めた。

 

「すまない。うちの馬鹿が迷惑をかけた。謝罪等は馬鹿とオリオトライ先生が解決するガァァァァァア⁉」

「おい、優頼私も加害者対象に入れないで。まったく、三紀ごめんね。この穴をすぐに覆うから」

 

 そう言って、潰れたトーリと優頼のメイスを回収し教室に帰った。

 自分の教室に戻り、トーリの開けた穴を隠しているのを見ながら、何があったのか智に聞くことにした優頼。

 

「鈴さんのご高説の時、トーリ君が鈴さんが間違えた場合自分が罰を受けると言ったのです。まあ、その前に軽い授業妨害をしたのでそれも入るのでしょうか」

「自業自得かよ」

 

 ため息を吐きながら騒ぎの原因が教室に戻り、ギャーギャーと騒がしくなっているとき、廊下から二人の男性の声が聞こえてきた。

 一人は特徴的な声と貴族口調の中年男性。

 もう一人は女性の声ぐらいの高い声が特徴で一人称は余の男子生徒。

 

『全く学長は何を考えているのか。東宮の君が入る学級と先生は先年と同じとは』

『規則ですし、それに余は東宮ではなく』

『そうであったな東君。全く東君が来たと言うのに武蔵の民は冷たいである』

『聖連から騒ぎを起こすなと言われているのでヨシナオ教頭』

 

 廊下からヨシナオと東が会話をしながら歩いてきた。

 

「先生、東が来ましたよ」

「えっ、マジで?優頼少しだけだけど、時間稼いでちょうだい。私は保身のために走るから」

「では、三点で」

「ぬかりないわね。一点よ」

「俺も嫌なんですけど。二点」

「それでいいわよ。お願いね!」

 

 廊下を出て、東とヨシナオに接触した。

 

「おはようございます教頭。それと、東おかえり」

「ただいま優頼くん」

「コラぁ!橘君目の前にいるのは!」

「ヨシナオ教頭いいですよ。それより教室いきましょう」

「そのことなんだが、今馬鹿が暴走しているから入らない方がいいぞ」

「トーリくんまた何かやらかしたの?」

「まあな。そうそう午後から俺いないから」

「麻呂は知らないのだが?」

「今日言われましたので」

 

 静かになったと思い教室を開けたらトーリが全裸で教卓の上で踊っていた。

 ドンッと閉めた。中からオリオトライの声が聞こえたが、知らんぷりした。

 

「どうしたの?」

「東、お前は向井同様純粋でいてくれ。決して、穢れるんじゃないぞ」

「?」

 

 あまりの状態に優頼は頭を抱えた。そして、そのまま口に出てしまった。オリオトライが戸を開けて、出てきた。

 

「ごめーん!東、今取り込んでいて。後、優頼もありがとう」

「お久しぶりですオリオトライ先生」

「それと先生、いい忘れていたんだが、今日学長に呼ばれたので三河に急遽出ることになったんで、午後休みます」

「おいおい、マジかよっ!優頼俺の告白への作戦考えてくれないのかよ⁉」

「そういうこった。後、夜まで帰ってこないぞ」

「クソォォォォオ!放課後、肝試しもするのによ!お前いないと楽しくないじゃん!」

「なんだ?去年みたく学校中を恐怖にばら蒔くのか?」

「お前が作るトラップ楽しみにしていたのに!」

「そうかいそうかい。とりあえず、服着ろォォォォ!」

 

 今だ全裸のトーリを吹っ飛ばし、教室に叩き込んだ。いつもの光景だと、梅組は呆れた。

 

 トーリの騒動から昼頃。優頼は学長室にやって来た。隣には銀髪の縦ロールの女子生徒、ミトツダイラがいる。

 優頼の肩ぐらいしか背のない彼女はなぜ三河に行くことになったのかを聞いてきた。

 

「学長がよ、本多のおっちゃんに呼ばれたらしくついでに俺もつれてこいと言われた」

「忠勝公にですか?」

「ああ、何でも会ってないから顔ぐらい見せに来いって。ってく、通神をつかえばいいのに」

「実際に会わないといけない理由があるのではないかしら」

「学長、橘とミトツダイラ入るぜ」

 

 おうっと、入ると本や資料しかない簡素な部屋なのだが、酒の臭いがした。椅子に痩せ型の老人がいた。その隣にはメイド服をきた黒髪の自動人形が立っていた。

 

「お迎えに上がりましたわ酒井学長」

「悪いな。んじゃ、武蔵さん後はお願いね」

「jud、気を付けて」

 

 酒井は席を立ち、上着を羽織り部屋を出た。その後ろを二人は歩いていると、酒井が優頼に話しかけてきた。

 

「優頼お前さんと会い十数年くらいか?」

「ん?ああ、それぐらい経つのか」

「まだ、思い出せないのか?名前とあれ以外」

「あれ?あれってなんですか?」

「ミトツダイラには関係ないことだ。と言うか、直政やおやっさんぐらいの人じゃないとわからないやつだよ」

「そうなのですか」

 

 そうだよっと言い、校舎を出た。階段の下にいたのは梅組の連中。会話の内容は話題のトーリの告白だった。

 

「まだやっていたのか?」

「あ、優頼君」

「お、ゆらーい!そこで何してんだよ!お前いないと進まないだろ。」

「黙れ馬鹿。それで何してんだ?大方、相手の特徴とかだろ?」

「そうなんだよ!で、どうするかって話していた!」

「だってさ、ミトツダイラ?」

「そ、そうですね!このミトツダイラ、胸を貸しましょう!」

 

 それに対して、梅組からウオォォォォっと、歓声が響いた。ミトツダイラは驚きはしたが、すぐさま冷静になり、胸を張った。

 

「俺し―らねぇ」

「なあ、トーリお前さん。告白する相手って誰だ?」

「ホライゾンさ」

「ホライゾンね。本当にいいんだな?」

「ああ、俺は後悔はしねーよ。それはそれで、区切りだからな!」

 

 トーリの覚悟を聞いた酒井は階段を下りながら、感傷に浸っていた。

 

「それじゃあ、ミトツダイラ本当にいいのね?」

「はい?確かに告白の稽古をする相手をする女性に対して失礼ですわ。ですが、総長の為ですもの告白する確率を上げるためならネイト・ミトツダイラがお相手しますわ!」

 

 相互の考えの違いはよくあることだが、この場合はどちらも悪いとしかいいようがない。お互い確認取るのがいいのだが、だが、このクラスには不要なのだった。

 

「じゃあ、ネイト。いくぜ!」

「ええ!」

 

 トーリの正面に立ち、告白の言葉を待っていた。だが、この男葵・トーリと過ごしていた者たちならどのような行動を取るのかは、予想できない。

 ミトツダイラはその可能性を捨て切れたわけではない。だが、告白がまじめなものだから、それはないと思った。

 だから、胸を触られたのは予想外だった。だが、触るほかに揉んだ。ムニュっと、擬音が聞こえるぐらい揉んでいた。さらに顔を胸に擦り付けてさらに感触を確かめていた。

 肝心なミトツダイラは、顔を赤くしていた。元が色白だから真っ赤になっているのがわかりやすい。

 終わったのか、顔をどかし、考え出した。

 

「ど、どうで御座るか!?」

「うん!ノーブラ!」

 

 ミトツダイラの叫びと共に、拳がトーリの顎を的確に狙い、本日四回目の吹っ飛びを見た。



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谷底の疑問者

 ネイトが胸を触ったトーリのことを吹っ飛ばして、酒井と優頼の三河入りの手続きを男装?女装?の格好をした生徒、本多正純に任せた。

 手続きを終え、武蔵と三河の通りを三人は歩いていた。今夜行われるトーリ告白前夜祭を酒井が話していた。

 

「行きませんよ。これが聖連にバレたらどうするのですか⁉」

「大丈夫だ。同類と見られるだけだ」

「それは嫌だ!大体、総長兼生徒会長が告るとか、教導院で騒ぐとか。前回だってアルコールランプとフラスコで闇鍋して、マグネシウムが爆発したじゃないですか」

「闇鍋ならぬ光鍋ってな」

「あそこにマグネシウムを置いているのが悪い」

「理科室でやるな⁉」

 

 この事件により正純の仕事が増えた。会計のシロジロとハイディは金だ金だ!って、騒いでいたが。

 正純は先日あったネイトの話を話始めた。

 

「先日あったミトツダイラの取引相手にも迷惑をかけたと」

「その話ね。実はミトツダイラ家が欲していたと聞いたか?」

「 え?」

 

 正純から驚きの声が聞こえた。

 

「その取引相手ね。襲名狙いで言い寄り、あわよくば婚姻関係を結ぼうとしたらしい。ネイトもさ、結構家のことを考えるタチでね、俺に相談していたんだよ。

 俺を疑わないでくれよ。ただ、誰かが気づいたんだよ。なあ、優頼?」

「俺も知らねえぞ?ただ、全裸相手に特性悶絶クリームをかけるところしかしてないぞ。鰻を突っ込んだり,

BLのネタにしたりしたのアイツらだからな」

 

 それを聞いて、疑いの目と言うより、引いている正純を無視して、この現状を見て酒井は口を開いた。

 

「やっぱり変だよな」

「変、というと?」

「三河からの荷はあるんだが、武蔵からの荷がないんだよ」

「そういえば……、武蔵からの買い付け発注が少ないような」

「こっちからのにはあるはずなんだが、今日は少ないだよ」

 

 そうなのだ。いつもなら同じくらいの荷物なのだが

、今回はいつもより多くの荷物が三河より送られているのだ。まるで……。

 

「三河が形見分けしているみたい」

「おいおい、物騒なことを言わないでくれよ。確かに、鎖国状態だし、武蔵から距離を置いているからって、だがまあよく分からねぇ」

 

 空から武蔵よりは小さいがそれでも大型の航空戦艦がコバンザメみたいに複数の小型船を引き連れて通りすぎた。

 

「ヨルムンガンド級ガレーの栄光丸」

「まあ、授業で習うところか?乗っているのはK.P.A.Italia所属、教皇総長インノケンティウスだな」

「ええ、P.A.ODAは浅井攻めの最中ですし、大罪武装の開発要求にでもきたのでしょう」

 

 大罪武装とは神各武装の一つでこの世に八つしかない都市破壊級個人武装。七大罪の原盤とされる人間の八想念をモチーフにしてある。

 暴食、淫蕩、強欲、悲嘆、憤怒、嫌気、虚栄、驕りの大罪武装は作られ 、P.A.ODA以外の国に送った 。

  暴食はM.H.R.R.(神聖ローマ帝国)、淫蕩はK.P.A.Italia、強欲は英国(イギリス)、悲嘆と嫌気はトレス・エスパニア(三征西斑牙)スヴィエート・ルーシ(上越露西亜)は憤怒、エグザゴン・フランセーズ(六護式仏蘭西)は虚栄と驕り。

 トレス・エスパニアとエグザゴン・フランセーズになぜ二つあるのかは一纏めになっている怠惰と驕りに含まれている虚栄があるから。だが、威力は抑えられている。

 

「トレス・エスパニアが新大陸に攻略の際、使ってみたところ、機獣たちを全滅に追い込んだらしいけど、威力と例は自由に使える聖譜顕装だとよ」

「そう言えば、大罪武装には人間を素材にしているときいたことはあるかい?」

 

 それを聞いた優頼と正純は驚愕した。あまりにも不道徳的で非人道的なことだから。酒井は噂だよっと一言言った。

 

「けど、三河の人払いはそれによるものだとか」

「それはありえませんよ。当時、私もその場にいて、三河の住人は一人たりとも減っていませんでした。それに行方不明なら大騒ぎですよ」

「だよね。けどさ、これに関しては噂で済ませるの?」

「え?」

 

 正純は酒井を見た。酒井は続けてしゃべった。

 

「俺さ、正純君もさこっちにこれると思うけどな?」

「こっち?」

「俺の過去を平気で語れる側さ」

 

 過去、それを言ったとき、正純は少し俯き、どう言うことですかと言った。

 

「例えばさ、俺が左遷された理由、殿の嫡子襲名した人を聖譜記述通りに自害させたこと。それを笑って語れる側にさ」

 

 松平・元信には弟がいた。その弟に聖譜記述に書いている元信の嫡子、松平・信康を襲名させたこと。

 記述通りだと織田家とのトラブルで死ぬのだが、当時、織田・信長を襲名した人物はいなかったため、拡大解釈で切り抜けようとしたらしい。だが、P.A.ODAの包囲により、暫定同盟を結ばれてしまい、恭順の証として嫡子を殺せと言われたのだ。酒井は弟公の後見人として自害は止められなかったため、左遷させらた。 噂だと信康公は死を望んでおり、酒井がついた時には遅かったと。

 三河住人が知っているとおりならこのような理由。

 だが、軽々と言えない正純。それに気づいた優頼。

 

「本多は知っているか?昔、三河に住んでいたことを。たぶんさ、本多も東も知らないと思うけど、記憶ないんだ。名前とあれの名前しかわからないし、不気味だと思われていたんだと」

 

 今回三度目の驚きだった。酒井ほど思い過去ではないが、それでもインパクトはあったらしい。

 

「実はさ、元信公には内縁の妻がいるのは知っていたかい?それに子供もいることも」

 

 どうやら四度目の驚きだった。

 

「その子供は何をして、どうしているのですか?」

「だからさ、こっち側に踏み込んできなよ。俺はさ、いじめられるのは好きさ」

「おい、ドM発言かよ」

「うるさいなぁ。とりあえず、踏み込んできなよ」

 

 もう少しで三河側の関所に着きそうだった。そこへ、正純に証書得たらどうするのかを聞いた。

 

「後悔通りに行こうかと」

「へえ、いいね。だとしたらあと一歩だ」

「どういうことですか?」

「まあ、みんなを知れるのはいいことだしな」

 

 うまいぐらいにはぐらかせられたが、通る前に本多忠勝の息女、二代によろしくとお願いされた。

 酒井は思い出したように帰る正純に言った。

 

「後悔通りを知ることがみんなに近づく近道だ。例え、悲しい出来事だしても。俺や優頼、トーリ達の側に来ることを、俺は祈っているよ」

 

 関所を越えて、目に入ったのは新名古屋城を中心に建物が広がっている三河の地。

 三河の入り口に三人組が待っていた。一人は小柄で眼鏡をしている中年男性、もう一人は大柄でガタイのいい中年男性、その後ろにいる優頼ぐらいの歳のポニーテールの少女。

 酒井は目を凝らす動作でしゃべりだした。

 

「おぉ、そこにいるのは松平四天王の内、榊原・康政と本多・忠勝の二人がお迎えとはね。俺もまんざらじゃないってことか。井伊はどうしたよ?榊原、ダっちゃん」

 

 聞かれたので榊原が答えようとしたが、それを忠勝が止めた。

 

「見せろ」

 

 一言。その言葉を聞いた途端、酒井と優頼は身構えた。

 

「おいおい、お前が見せろって言葉大体ろくなことがないじゃないか」

「まさか、歓迎されていないとか。なに十年ぶりの俺らに対する言葉ですか?」

 

 刹那、後ろいた少女が消えたのだ。会話しているたった数秒でその場から消えてしまったのだ。

 ガキンっと、金属同士がぶつかり合う音が酒井の後ろから聞こえた。

 先程いた少女が刀を振り回し、斬ろうとしたところを、優頼が止めたのだ。

 少女が止められたことには驚いていなかった。逆に怒っていた。それもそのはずだ。優頼が刀を止めるために使ったのは……。

 

「釘で止めるとは、それは抜かないので御座るか!」

「うん。手元にあったのがこれだから。それにアマゾネスより遅かったし」

 

 バカにされていると思ってもしょうがない。だが、油断していた少女は、酒井の動きに気づいていなかった。

 そして、滑り込むように少女の強調されている下半身を揉んだ。

 

「やっぱ、若い子はいいねぇ」

「この変態が!」

 

 少女の悲鳴と酒井の頬を叩く音が響いた。



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酒房の大人達

 酒井がセクハラ行為をしている時、武蔵では梅組の生徒が今日の幽霊探しとトーリ告白の準備をしていた。

 武蔵右舷の艦多摩の商店街には浅間と直政、鈴とアデーレの四人が買い物をしていた。周りにはK.P.A.Italiaやトレス・エスパニアの学生たちがいた。

 

「人数分とはいえ、少し買いすぎたじゃないかねぇ?」

 

 直政の言う通り、肘にかけたり、ハードポインターにもかけているほどの大荷物。女子四人が運ぶのにはきつい量だ。

 

「が、ガッちゃんやゴっちゃんとか、いてくれると、よ、よかった」

「ナイトもナルゼも運送の仕事がありますからねぇ。あ、ミトに飛ばされたトーリくんの事を頼んでおけばよかったですねぇ」

 

 アデーレが浅間に浅間神社の話を振った。

 

「そうですね、やはり春先の契約関係の仕事が多くて。特に過激な術式の注文が多くて、月間発注量がヤバイですねぇ」

「そりゃあ、浅間神社に行けばそういうのが貰えるからじゃないかね」

 

 直政は去年あったことを言い出した。

 去年の学園祭の時、弓道部の人間射的に出て、道場から逃げ出した部員まで撃ち抜きそうであったのだが、偶然通りかかった優頼が矢を切り落とした。そこから浅間・智対橘・優頼の曲芸じみた戦いが始まった。ちなみに勝ったのは優頼。そして、浅間の言い分は、『加速系を入れていない人を射つのは鴨を射つより楽なんだからしょうがない』らしい。

 話題を変えて直政は今日の幽霊探しのことを聞いてきた。

 

「私らに付き合ってこのまま幽霊探しに参加だろ?あたしもチーフの泰造爺さんから休み貰いにいくけど……。少し手伝ってからになるけど」

「たまにやっているゴンドラごっこやブランコ遊びしていますねぇ」

「一応、実験だから。それにしても監視が無くなったからのか空が騒がしくなってきたな」

 

 空を見上げてみると、白い線が直線や曲線で空に絵を描いているかのように見える。

 

「配達業者たち監視が終わったからってレースや模擬戦をやり始めたね」

「あ、ナルゼたちが行きましたよ。あの二人、二人一組では最強クラスなんだとか」

「ホント、あたしの周りはろくなのがいないわね」

「マサ、それ鏡を見て言いなさい」

 

 直政気にしないのか、話を変えた。

 

「こんな世の中なのに、一人の男の告白が通るかどうか、通し道歌じゃあるまいし」

「通し道歌で思い出しましたけど、副長って酒井校長の息子じゃないですよね?」

 

 アデーレの唐突の話題に食いついたのは直政だった。

 

「それは違うねぇ。あいつ本人が言っていたのだから間違いない。天涯孤独って聞いたさね」

「優頼くんのことなんですが、彼武蔵来てから契約した術式以外に三河で契約した術式がありましたね」

「副長って脚力系や加速系、足場系を契約していると聞きましたが、他にあったのですか?」

「封印されている状態ですから」

 

 橘・優頼。三河出身なのだが、記憶喪失で経歴がいまだ不明。唯一の手がかりが名前と傍に落ちていた一機の重武神だけ。術式はサタナニズム、つまり悪魔教のみ。そして、三河にいたのは僅か一年。

 

「唯一わかっているサタナニズムは封印されていますし、残り一つはわからず仕舞いですし」

「まあ、少しづつ記憶を思い出してきているって本人が言っていたから大丈夫さ」

 

 自分の話をしている頃、本人とは言うと……。

 

「ぶっあっくしょんっ!なんだ風邪か?」

「おいおい、唾が飛ぶだろ唾が!」

 

 木造の店で酒を飲んでいた。窓側に優頼と酒井が座り、向かいに忠勝と榊原、少女がいた。

 

「父上、出来れば改めて自己紹介を」

「自己紹介?俺の隣にいる人は酒井・忠次。エロ親父だから気をつけろ。そんで俺が武蔵の副長の橘・優頼。一年位ここに住んでいたぜ」

「エロ親父って?お前こそ調教師が」

「はっはっはぁ、誰が調教師だ。相手を挑発し、相手を脅し、あとは甘い言葉で堕落させ、俺の下僕にしているだけだが?」

「同じだよ!」

「ち、調教?」

「ああ、二代は聞くな」

 

 頭を掻きながら後にいた少女、二代に言う忠勝。それを聞いて、腹を擦る榊原。酒井が井伊・直政のことを聞こうとした時、話を折るかのように襖が開いた。そこにいたのは鹿の角に似たカチューシャをしている女性が現れた。

 

「鹿角様」

「げっ、鹿角!?」

「judーー下らないと思ったら、酒井様ですか。左遷からのこのこやって来て、酒飲みをしている他に未来ある少女にサービスもせずにいたのですね。まったく、大した大人です。ささ、二代様お屋敷にお戻りを」

 

 開口一番に酒井に対して毒舌を吐く鹿角。自動人形特有の感情のない言葉で心に傷をつけていく。

 

「ダッちゃん相変わらずお前のとこ?」

「ああ、一番飯が女房に似ていて、剣筋もあるし、礼儀作法もできるからなぁ」

「それにお久しぶりです橘様」

「ははは、お久しぶりですね。では、これで」

「どこに行こうとしているのですか。そこの座りなさい。貴方と言う人は会った当初は可愛げがあったというのに、武蔵に行ってからというもの連絡は寄越さない、私が出ようとしたら切る、あげくの果てに逃げ出そうとする。やはり、もう少しここで色々と教えておけば良かったと思います」

 

 心配しながら説教をする母のような姿だと、優頼は思った。本人は母がいたのかはわからないらしいが。

 それを見て笑う酒井と忠勝、ポカーンとしている二代、眼鏡を拭き始める榊原。

 焦り始める優頼は鹿角に二代を呼びに来たのだろ?と話した。鹿角は名残惜しながらも、二代に船の準備が出来たと話し、二代と忠勝は立ちあがり部屋からさった。

 

「あれ、これって全部俺が払う感じか?俺一文もねぇよ」

「私が奢りましょう」

「榊原のおっちゃん、ここは俺が払うよ。ただ、聞きたいことがある」

「聞きたいこと?」

「そこは学長、聞きたいんでしょう?忠勝のおっちゃんと二代の分、それに榊原のおっちゃんのを奢れば三つ分聞ける」

「全く、いい心意義してるぜ。榊原、まずは井伊のことだ。さっきは聞けなかったが、何かあったんだろ?次にホライゾン・アリアダストのことだ。数年前、ここからばったり消えたことがある。神隠しに会ったと思ったが、一年前に戻ってきたんだが、何の秘密がある」

「最後にあんたら何をしようとしているんだ?」

 

 榊原は口を閉ざしていた。重い腰を上げながら、その場を立ち上がった。

 

「まあ、外に出ましょう。話しやすいことがありますし」

 

 目を閉じながら言った。




 どの作品も必ず月一を目指していますが、ランダムで月に数回投稿することがあります。何が言いたいのかと言うとノルマは達成しているからいいよね?
 それと何気に矛盾が生じたので設定を見直し中です。
 感想等お待ちしてまーす。


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夜天下の暗躍者

 FGO第二部、残り4日。未だに第一部が人理修復が終わってないけど……では、どうぞ!


 武蔵では、正純がトーリの後悔の話を聞かされていた頃、ここ三河では忠勝達が用事で席を立ったあたり。

 外には優頼、酒井、榊原の三人が店を出ていた。空はもう少し綺麗な夕日が見られるころ。

 軽い雑談をしながら目的地まで歩いていた。話題が少なくなってきたころ、酒井から本題を話出してきた。

 

「井伊はどうした?あいつは国政や開発担当だったよな?」

「神隠しにあったんですよ」

 

 神隠しにあった。ここ三河は怪異が多く出現していると。その時にやられたんだろう。だが、酒井にはあり得ないと思った。仮にも一緒に戦った仲間であり、その強さも衰えたからといってもあり得ない。次に榊原の口から言われたことによってさらに頭を悩ませることになる。

 

「その神隠しを起こした者達のことを、公主と呼ぶことを」

「公主だと?」

「聞いたことがありますか?三十年くらい前に言われるようになった存在。子供たちの間では都市伝説として広まっていることを」

「聞いたことがあります。ここ最近、少しづつ噂になっていますね」

「公主ってあれだな。中国における王家の娘のことだよな。正純の母がそれにあっているしな」

「話ははやいです。二人とも今の三河は昔と大きく変わっています」

 

 榊原は息を吐き、言葉を出した。

 

「公主を追ってください。それが全てを知る答えです」

「どういうことだよ?」

「公主があった場所ではこんなマークが見られます」

 

 榊原は足を使ってそのマークを書きはじめた。円を書きはじめて真ん中に一本の線を引いた。

 

「二境紋。血で描き、メッセージも血で書いています。井伊君のところには“もう遊べないと”これが消えたものたちの所にあるものです」

「待ってください。霧に隠れるというより、ダメージを与えてその場にヒントを残すって、あきらかに誰かやったということですよね。それに公主ってどういう存在なんですか?」

「そうですね、誰か名付けたのか、それに誰が犯人なのか数多にあります。それに個人犯なのか複数犯なのかわかりません」

「ちょっと待てよ。それだと、公主は神隠しじゃないのか?」

「ええ。井伊君の書斎には争った形跡はなく、そのままの状態でした」

「どうやって、拐ったんだよ?自動人形はいたんだろ?」

「ええ。ですが、死角に潜りこめばいいですし、酒井君や本多君のような早さで動けるならいけるはずです」

 

 納得してしまった。だが、目的はなんだ?と二人は考えた。神隠しと言う名の誘拐。それになんのメリットがあるのかが分からなかった。

 

「知っていますか?公主達は人を拐うことで世を救おうとしていることを。そして、二境紋はその警告。人好んで誰が証拠を残しますか?彼らは好んで印を落とすのです」

 

 まあ、井伊君が調べたことですけどね、と付け加えた。酒井は次の質問をした。

 

「なら、どこの教導院や教譜なんだ?そいつらと三河の現状どこに関係ある!?」

「少し待っていてください。その資料を持ってきます」

「おいおい、だったらお前の家で待たせてもらえればいいじゃねえか?」

「私の家は本多君の近くなんですよ。ただでさえ本多君、君に今回のこと知られたくないんですよ」

「俺だけのけ者かよ。一緒に四天王した中なのに」

「心配させたくないからですよ。では、八時半にここで」

 

 そう言って榊原は自分の家に向かおうとしたとき、優頼が止めた。

 

「行く前に一つ、ホライゾンのことを聞かせてくれ。あいつの背中に俺と同じものがあった。ずっと聞けなかったことだが、なんで記憶と感情を消し、名前まで変えたんだ?」

「私にはわかりません。ですが、感情なら大方考えている通りでしょう」

「そう、か。なら、最後だ。今日何をするんだ?」

「それについては今夜、殿が話すでしょう。では」

 

 榊原は家に向かっていった。

 

 優頼と酒井は茶屋でお茶を飲みながら、ゆったりと待っていた。

 

「優頼、お前さんその背中のものは何か知っているのか?」

 

 酒井が聞いてきた。

 

「さあな、これといって使ったことがないどころか使い方がわからない」

 

 優頼はそう答えると、注文した団子を食べた。続け様に話した。

 

「さて、と。学長、いや酒井のおっちゃん。思い出したこと話すよ」

「ほう、珍しいな。進展でもあったのか?」

「まあね。結局、戦闘だけだけどね」

 

 優頼は見た夢を話した。

 優頼は何故夢を話始めたのか。それは、記憶に繋がる大事なヒントだから。それが確信になったのは、優頼の近くに落ちていた武神の特徴が似ていたから。所詮、子供の夢だと関心は持たなかった。松平・元信公以外は。

 夢がどんどんと現実みを帯びてきたのは、武蔵に来てからだった。子供にはない体力と戦闘能力が現れ、成長していくうちに力を取り戻していったように思えたのだ。夢を見終えたときに、そう言った普通の人間ではあり得ない成長と力の解放が起きた。

 

「今回は何も起きない?」

「ああ、いつもなら戦い方を叩き込まれるんだけど、今回は何か違った。今回の夢はブエルに乗って仲間を助けると言う何時ものと大体似ていた。似ていただけで、戦闘が終わるまでじゃなくて、戦っている最中に目が覚めたんだ」

「そうか。別に気にしなくてもいいんじゃないか?今日はそう言った夢を見たってことで」

 

 酒井の言葉で渋々納得した頃、自動人形がこちらへ向かってきていた。

 

「酒井様、旦那様からの資料をお持ちしました」

 

 自動人形から渡された資料を見たのだが、何も書かれていなかった。いや、薄くではあるが何かかが書かれていた。

 

「二境紋を追え、だと。それに創世計画?なんだこれは」

「酒井のおっちゃん、なんかヤバイ気がするんだけど」

「いくぞ!」

 

 走り出した酒井の後ろを優頼は追い、榊原の屋敷へと向かっていった。門をくぐり、部屋を目指すと、扉が開いている部屋を見つけたので、そこに入ると壁には赤い円に横に一本線を引いたマーク二境紋と血文字で、なにをしてるのと書かれている壁を見つけた。荒らされた形跡はなく、人だけが取っ払った感じだった。

 

「おいおい、榊原の奴危ない道には行かないだろ」

「松平四天王が二人、公主隠しっておっちゃん、急いで殿のおっちゃんところに行こう」

「いや、下手に動くとこっちが危なくなる。だが、情報だ!いくぞ」

 

 二人は、榊原の屋敷を後にして、武蔵へ向かう時、関所のあたりの山で爆発音が聞こえた。そこへ急いで向かった。山に入り、隆起している木の根や藪を走りぬけ、そろそろと言うところで妨害を受けた。酒井は足を払われたが、うまく避けた。優頼は藪から見える影を殴ろうとしたが、地面に叩きつけられていた。

 

「がはっ⁉」

「大丈夫か⁉」

「老いたな。優頼成長したな。だが、少しは落ち着いて行動しろ」

 

 そこにいたのは忠勝と鹿角がいた。その手にはシンプルながら機械的な槍があった。酒井は気づいた。

 

「蜻蛉切、神格武装じゃねぇか!」

 

 空からは武神と警護艦の飛行音、そして、地中からも音が聞こえてきた。

 

「地脈が暴走しているのか⁉」

「ああ」

「そんなことをしたら、三河が消滅するぞ⁉」

「それが殿が求めていたことだ。榊原には何も聞いていないのか?」

「公主隠しにあった。そこまでして、なにがしたいんだ本多のおっちゃん!いくら、殿のおっちゃんが望んだことだからって」

「創世計画のための一歩だ。それによって救えるかもしれないと」

 

 酒井は小太刀を、優頼は足に術式を展開した。だが、先に忠勝が蜻蛉切を突き出した。

 

「結ぶぞ」

 

 ドスの効いた声で言った。

 

「そういうことか。事象すら割断する蜻蛉切。番屋という事象を割断し、騒ぎが大きくなる前に制圧したのか」

「ああ。お前ら、早く立ち去れ。こっから聖連の奴ら迎撃するからな」

「死ぬぞ」

「殿の命だからな。それに、殿が望みを守り、ただ勝つのが我の忠義だ」

 

 そういって、立ち去って行った。

 

「おっちゃんいくぞ」

「……ああ」

 

 二人は急いでその場を去った。



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生前の記憶を持つ少年

 とうとう、優頼の過去が今語られます。そして、タグの追加も!一部読者にはバレていましたが。
 では、どうぞ!


 ただ会話もなく酒井と優頼は関所のところまで来ていた。その時、二人の後方から轟音がなった。振り向くとそこには光の柱が立っていた。

 

「消滅したか」

「それよりも急いで、っ!?」

「どうした優頼って、なんだあの武神は?」

 

 武蔵へ向かっている三機の武神がいた。色はトレス・エスパニアの赤と白、隊長機らしきものには頭部に一本の角、肩に二重の金色の輪が印されていた。だが、優頼が驚いていたのはその姿だ。一般的なトレス・エスパニアの猛鷲(エル・アゾォル)とは違い人型で丸みがある鎧を着た武神。黄色のモノアイが武蔵に向き、手には片手持ちのバトルアックスとライフル持っていた。

 

「グレイズ」

「グレイズ?知っているのか、っおい!しっかりしろ!?」

 

 優頼はグレイズと言った途端この場を倒れた。酒井が支えて応答を続けたが、反応しなかった。それに気づいた関所の人間に酒井共々連行された。

 それと同時に武蔵ではホライゾン・アリアダストの捕縛。明日の夕方に自害が決定した。

 

 優頼はどこかの部屋で目覚めた。簡易二段ベットの上で薄い布一枚を羽織っていた。服装はぼろぼろの黒のタンクトップに灰色の作業ズボン。

 優頼は夢だと感じた。たまに見る夢、自分が無くしたかもしれない記憶の夢、決して忘れてはいけない大切な夢。

 

「起きろぉぉおユージン!」

 

 朝から騒がしい声で階段を下りたそこには、茶髪を短く切った髪で優頼と同じ背丈の青年が下のベットで寝ている青年、ユージンを起こしていた。

 

「優頼おはよー!」

「朝から騒がしいぞシノ!」

 

 怒鳴り声を上げながら下からユージンはベットから起き上がってきた。金髪の癖っ毛があり、これまた身長も同じくらいだった。

 

「おう、おはよ」

 

 ――シノとユージン、知っている名前だが、どういった人物なのかはわからない。

 優頼はかけていたいつものジャケットを羽織った。だが、違和感を感じた。原因は体だった。今の自分より少し筋肉質な体でちょっとした違和感だが、なんか気味が悪かった。

 優頼は廊下を出てどこかに向かっていた。自分は動かしていない、体は知っているかのように動いていた。一つの扉の前にいた。そこの扉を押し開けた。

 最初に感じたのは暗いところにいたせいで目の前が眩しいことだった。肌に感じる乾いた風に乗る砂埃、血と汗、火薬の焼いた匂い、喧騒と金属同士がぶつかり合う音。目を開けた先には……。

 

「こんな所じゃぁあ、終われねぇえ!だろ?ミカぁぁぁぁあ!」

 

 その叫び声とその名前、そしてその武神いや、ロボットは。

 

「ガンダムバルバトス」

 

 地面を割り、巨大な鈍器を振り回し敵ロボット、グレイズを潰した白を主体とし赤と青が部分的にある機体、ガンダムバルバトスがエメナルド色のツインアイを光らせて産声を上げた。

 優頼はバルバトスを見ていると、後ろに気配を感じた。そこには貝やサンゴなどがへばり付いているロボットがいた。よく見渡すと何かに乗っていた。無線から声が聞こえた。

 

『しっかりしろ優頼!』

 

 誰かが叫んでいる。反応を返そうが声が届かなかった。バゴッと凹む音が聞こえた。

 ――終わるのか?夢なのに現実だと思ってしまった。死への行き道、永遠の孤独、会うことはない仲間たち、会えない人たち、だけど、心が落ち着いていた。あ、そうか言っていたな兄貴たちがまた会えるって。なら、会うまで生きないとな、この世界で。

 優頼は思いっきり扉を蹴飛ばして、中に入ってくる海水を押しながら泳ぎ、海中にいるロボットへ近づいた。開いているコクピットへ入りこんだ。

 

「いくぞブエル!」

 

 ブルーのツインアイを光られせて海中から飛び出した。

 

『オルガ手を離して!』

 

 戦車に近い機体、茶色のモビルワーカーへ近づくグレイズの上位互換のライトグリーンの機体へ右手に持っていた剣で切りつけた。

 

『なにぃい!?』

「やらせない!」

 

 剣は錆びていたため半ば壊れてしまった。そばに落ちているロングソードに持ち替えて、敵に向けた。

 海中にいた成果動きは鈍い。逆上した敵がこちらに近づいてくるが、そこへ装いを新たにしたバルバトスが止めた。

 

『こいつは俺がやる!』

 

 敵はミカが持っているレンチ型メイスでふっ飛ばした。それを見届けて優頼は気を失った。

 場面が変わった。場所は平原、バルバトス、ベージュ色の機体グシオンリベイク、黒い機体漏影が二機、その目の前には黒いグレイズだが、名残があるのは顔ぐらいですべて一回り大きく赤いモノアイでこちらを見ている。

 その上から白を基準に青い鎧を着た大きな大剣を持った機体が空から降ってきた。

 

「うおりゃゃやあ!」

 

 ブエルに乗っている優頼は大剣でグレイズ否グレイズ・アインへ斬りつけた。

 

『邪魔をスルノカ優頼!』

「ああ、あんたを止めるためだくそ兄貴!」

 

 優頼は自然と兄貴といっていた。優頼には家族がいないはず。なのに、言っていた。

 グレイズ・アインは阿頼耶識の恩恵を受けたかのような速さでブエルを圧倒していく。加勢に行く仲間たち。だが、全員が吹き飛ばされた。

 

『あれが阿頼耶識の力』

 

 誰かが言った。この時、優頼は感情が昂ぶった。

 

「許さない。てめえぇら許さない!」

 

 ブエルは答えるかのように目の色をブルーからレッドに変えた。

 左手に背中にマウントしている太刀を持ってグレイズ・アインへ斬りにかかった。二つの斧で対抗しようとしたが、早すぎた剣戟により両腕を両断した。次に両足、頭と斬っていく。残ったのは胸のみ。

 

「兄貴さようなら」

 

 コクピットがある辺りに大剣で突き刺した。グレイズ・アインは身震いを起こさず機能を停止した。コクピットあたりを力ずくで引き千切り棺桶みたいな物を取り出した。その中には四肢を切断された死んだ優頼の兄貴だった。

 

「三日月、後は頼んだ」

 兄貴の入っている入れ物を大事に抱えブエルのブースターを吹かして、その場を後にした。

 場面は少し発展した町の丘にいた。丘の上には英語でアイン・ダルトンと書かれていた。その前に優頼は手を合わせて拝んでいた。

 ――これが兄貴の、アイン・ダルトンと言うのか。その人との記憶は曖昧だけど、これは言える逃げ出した俺と違い、逃げなかった。己の力を見せつけたんだ。

 優頼はその場をあとにした。

 事務室では、丸い体型の青年が壮年の男と激論を繰り広げていた。外は子供たちが多く、周りを走り込みや箱に入っている物資を運んだりしていた。優頼は慣れない机作業を勤しんでいた。

 場面は変わり、一つの部屋にいた。そこに座っている老人に見覚えがあった。蒔苗東護ノ介と呼ばれるここアーブラウの代表者。

 

「先生少し失礼します」

 

 優頼は机に置いてあった花瓶から蒔苗を遠ざけた。外にいる警備員に蒔苗を頼み、腰の刀で花瓶を切り落とした。そこにあったのは一部屋は吹っ飛ばすことができる爆弾だった。だが、爆発はしなかった。運よく線を切れていたため、大事には至らなかった。

 その日は記念行事だったが当然中止。

 その夜、優頼はある場所へ向かっていた。そこには髭面の男たちが数十人いた。優頼は問答無用に切り始めた。刀に付いた血を持っていた布で拭き取りその場をあとにした。

 夜とは違う黒い空間、宇宙に優頼はいた。そこには半壊したブエルが漂っていた。そこへ一隻の宇宙船がやって来て、ブエルを回収した。一人の女性が近づいてき、ブエルから優頼を取り出し、ベットに寝せた。

 目が覚めた優頼は格納庫にいた。正面には黒い鎧と背中に五本の棒のようなものがある機体。隣に現れた女性は優頼に話しかけた。

 

『これが改装したブエル、ガンダムブエル鬼武者。一応言っておくけど、今までより反射反応はもちろん、各部性能は強化されている。だけど、エイハブ粒子のほかに○○粒子もあるから、どんなことが起きても自己責任だから』

 

 女性に対してお礼を言い、新しくなったブエル鬼武者に乗り宇宙船を後にした。

 場面は今朝と同じところ。肩パーツは壊れ、背中の武装もなくなり、全体が傷しかなかった。持っているのは一本の大剣のみ。

 

「あと少しだ、あと少しでお前らを倒せる」

 

 目前には、数多のグレイズやその強化機が斧やライフルを構えていた。その先頭にグレイズとは違う機体が一機いた。

 

『今こそ討つとき、覚悟しろ化け物』

 

 その機体はブースターを吹かせてブエルに突撃した。その後ろから続くように襲いかかってきた。ブエルは唯一の武器を構えて、襲いかかってくる機体に向けた。

 そこで途切れ、場面は自分がいる場所。幼い自分がブエルといる三河近郊だった。



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後悔求める力

 自分が生まれ落ちた土地、自分が知らない土地、自分がいた土地、自分が覚えていない土地。記憶をなくした優頼にはわからなかった。

 それが幼少期の出来事。

 自分が何者で、どこにいたのか、何をしていたのか、家族はいたのか。

 すべてが不安で、それこそ子供用に毎日泣いていた。いくら、構ってくれる人がいたからと言っても自分はいつも不安だった。何かが違うとしかわからないまま、過ごしていてた。それがあったせいか、優頼はここ準バハムート級航空戦艦武蔵で住むことになった。

 子供一人で武蔵で暮らすとか、正気の沙汰ではなかった。だけど、―――一人で暮らすとかはしていた気がすると思っている。

 そう思ってしまう優頼。

 場面が変わり、武蔵の地に足を着けた優頼の姿が見えた。軽装ながら羽織っているのは鉄華団のマークが描かれた緑色のコート。だが、その花はまだ白いままだった。―――三河にいたのは一年ぐらいか?と思っている。

 階段の上にいたのは青ジャージを着た一人女性。

 

『待っていたわよ君が橘・優頼だね。私はオリオトライ・真喜子よ。担任じゃないけどよろしく!』

 

 若い頃のオリオトライの案内の元、自分の部屋に入った。生活するのに最小限の物しかなかったため買い物しに行く時だった。優頼はある店の前にいた。いつも世話になっている青雷亭(ブルーサンダー)で出会った。そこで遊ぶ三人の少年と少女に。

 

『お前どこから来たんだ?』

 

 イタズラ坊主のような笑顔がいい少年が話しかけてきた。最初は戸惑っていたが、意を決して話した。

 

『橘・優頼、三河からここ武蔵で住むことになった』

『三河から?仕事とか何か?あ、私はホライゾン。ホライゾン・アリアダスト。こっちが』

『俺は葵・トーリ!好きなように呼んでくれ!』

『私は葵・喜美。トーリの姉よ』

『ううん、親はいない。今日から初等部の寮で暮らすことになった』

『そうなの?なら、遊ばない!』

『いいよ』

 

 優頼はその場を離れようとしたが、それを引き留めたのはトーリ。

 

『まあ待てよ。俺たちが買い物手伝うよ!』

『俺は買い物とは言っていない』

『橘くんだけなんでしょう?』

『そうだけど。それなりのことはできるし』

『なら、うちで食べて行かない?』

『そうだぜ!なら、さっさと済まそうぜ!かーちゃんに買い物を頼まれるからわかるぜ!』

『……ならお願いするよ』

『『『Jud!』』』

 

 これがトーリと喜美、ホライゾンとの最初の出会いだった。

 その日から優頼には多くの仲間ができた。三人の共通の友達浅間智、人狼とのハーフネイト・ミトツダイラ、色々残念な忍者点蔵・クロスユナイト、拷問官志望の半竜キヨナリ・ウルキアガ、紹介ができないほどまだいるが優頼には始めてできた友達。

 ―――こいつらに会ったのはその時だっけな。忘れていたわけではないが。

 そして場面はあの日になっていた。忘れていけない葵・トーリ()後悔(始まり)。どの人物よりも強くどの仲間よりも王を守れる力を欲した者たち(馬鹿の仲間)

 それは事件は起きないじゃないかと思うほど晴れ晴れしていた。その日優頼は自分を拾った人物、松平・元信公のパレードを見に来ていた。そして近況報告もしようと考えていた。聞きなれた声が聴こえたので振り向くとホライゾンを追いかけているトーリを見つけた。ホライゾンは目を赤くし泣いていた。トーリは必死に追いかけている。優頼はそんな二人が気になって追いかけた。トーリはホライゾンを泣かすことは絶対にしないことは周知の事実。

 その時だった。目の前で大きな影が二人を襲ったのは。優頼は二人を助けようと飛び出した。だが、間に合わなかった。そこには血を流す二人の姿だった。

 

『あ、あ、ああああああああ!?また、助けられなかったのか?』

 

 また、助けられなかった。それは一度も助けたことがない優頼が言う言葉としては不適切なものだった。

 二人の周りに大人たちが駆け寄り、三河へ運んだ。

 優頼その場で泣くことしかできなかった。キューっと目の前に一体の生物が現れた。ライオンみたいだが鬣が星のようになっているマウスがいた。そのマウスの案内の下、優頼は覚束ない足取りで歩いて行った。どれくらい歩いたのだろうか武蔵を離れ三河の森の中にいた。マウスはそこに止まり、また泣いた。優頼は暗くなった目でそこを見ると光っている草を見つけた。マウスは地面に右足で器用に薬草と書いた。優頼の目に再び光が宿った。急いで集めて三河の病院へ持っていった。病院に着くとそこで気を失ってしまった。

 三度優頼はブエルの傍にいた。ブエルの近くには元信がいた。ただしホログラムみたいな存在として。元信はしゃべりだした。

 

『そうか、どうも手が付かないわけだ。このシステムはもしかしたら救えるかもしれない。だが、その前に私はやることがある。なら、私がするべきことは決まった!誰が救うのかわからないが、そのための教材を準備しよう。そして、供えようではないか!来るべき、君と君の主人が戦うために。私は先に行く!さらばだ、異世界から来た少年橘いや優頼、ガンダムブエル!』

 

 その場には半壊されたブエルがいた。

 優頼はゆっくりと近づき触った。撫でるように傷ついたその体を労わるように撫でた。

 

「いつもいつもそばにいたのはお前だったのか。ありがとう。だけどさ、お前から見せてもらった記憶は覚えていない。だけど、その世界で俺は守りたいもののために死んでいったんだな。

 なあ、もう一度俺に力を貸してくれないか?もう後悔はさせたくない相手がいる。もう悲しませたくない人がいる。もう一度俺にいや、俺のすべてを持っていっていい。力を寄越せよブエル!!」

 

 緑色の粒子がブエルから溢れて風のように吹き荒れていた。その目は紅く輝いていた。

 辺りが光り輝き、優頼はその世界から消え去った。

 目が覚めると、ベットの上に寝かされていた。傍に掛けているコートを取り、部屋を出た。今何が起きているのかわからなかったため、ネシンバラに連絡した。

 

「ネシンバラ、今どうなっている?」

『起きたのかい。では、簡潔に説明する。今武蔵は大罪武装の所持と三河の消滅のため聖連の管理下に一時的に置かれている。消滅した三河の責任を三葉ことホライゾン・アリアダストが自害すること。そして、僕たち元総長連合及び元生徒会が相対戦を行っている。今、こちらを試そうとしている三河警護艦艦長本多・二代と葵くんの姉さんが戦っている』

「了解。今、そちらに向かう」

『来ない方がいいけど、言っても来るんでしょう?』

「もちろん、それに『ピ、ピ、ピ、ピ、ピ!』やっぱいけなくなった!だけど、あいつが勝つのはわかる」

『自信があるんだね』

「これでも付き合いは長いからな。切るぜ、あともう少しで動かせるから、頼むぜ指揮官殿」

『ふっ、ああ完璧な戦略のもと、武蔵の完全勝利を導くよ!』

 

 通神を切り、ブエルが格納されている機関部へ向かった。

 

「おせぇぞ!」

「今行く!」

 

 数人の機関士がいそいで組み立てをしていた。優頼もその作業に入った。

 ホライゾン・アリアダスト処刑まで半刻を過ぎていた。



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雄叫びを挙げるもの

 投稿を遅れてすみませんでした!?
 いいわけは……色々です。ええ、色々。
 更に遅れながら感想、評価、お気に入り登録ありがとうございます!
 出来が悪いですが、どうぞ!


 武蔵の艦船上で指揮を執るネシンバラ。その周りには各場所が映っている通神群があった。

 

「さて、作戦は至ってシンプル。一直線だよ」

 

 それを作戦と言えるのか全員は思ったかもしれない。だが、全員真面目に聞いていた。あの聞いていてあの笑うトーリすら笑わなかった。

 

「地にはK.P.A.Itailaとトレスエスパニアの合同部隊、空には武神と航空艦。もはや、どの国も僕ら武蔵を戦闘力を持つ国として注目を得ている。さあ、主人公たち今どうだい?」

 

 一つの通神に優頼が出てきた。

 

『あ、悪いんだけどなんかまだ終わっていない』

 

 気が抜けたひと言が聞いていた者全員が呆けた。

 そもそもブエルの改修の話があったのは一週間前のこと。そして、陸港の地下に運んだのは昨日の朝。大至急で壊れている部分の転換、装甲と武装の取り付け。残りは心臓部となる機関の同期のみ。

 作戦開始は夕刻。

 正午に優頼が目覚める間に大部分は機関部の一部の連中が改修し終えた。

 そして操縦者の優頼が来たことで残りは心臓部のみ。

 そこでアクシデントが起きた。

 心臓部になるエイハブ・リアクターと獅子炉と呼ばれる推進機の調子がおかしいのだ。

 その前にエイハブ・リアクターと獅子炉について説明。

 エイハブ・リアクターとは、優頼がいた世界の動力源。原子力のように危険がなく、体にも害がない半永久的に使える動力。しかし、ある組織しか作れないため希少。

 獅子炉とは、ブエルのみがつけている固有武装。こちらも動力源なのだが、どちらかと言うと推進機の働きが大きい。

 ブエルには実質動力源が三つあることになる。片方が強すぎたり弱すぎたりすると起動しなくなる。それだけならまだいい。両方が強すぎたりすると小規模の爆発が起きてしまう。

 そして動力源の同期は外部ではなく内部で行う。外部ではメーターを見て確認するだけ。調整は操縦者本人か阿頼耶識を持っているものではいけない。

 調整まで時間がかかることをネシンバラに伝えた優頼。

 つまり武蔵最大の個人戦闘力が当分出れないことを。

 そのために優頼は作業の片手間に副長代理と話していた。そのあたりはトーリが話を通していたお陰で。あとは副長代理と話すだけ。その代理とは……。

 

『おいおいオマエら、遅えよ!』

 

 トーリが先に敵の方へ行っていた。

 

『「あんのバカァアアア!?なにしてんだぁあああ!?」』

 

 全員がそう言っていた。

 後先考えず、人の苦労を考えず、なのに問題ばかり起こしていく。

 それがこの男、葵・トーリ。

 だが、それでもついていく。武蔵にいる葵・トーリに関わってきた者たちの考え。

 例えメリットがなくても作ってしまえばいい。それこそトーリを使うことであっても。

 武蔵と合同部隊との間に設けられた門を開けてしまった。その向こうには当然構えたトレスエスパニアの陸上部隊。僅かに見つめ合う両者。

 

『う、撃てーーー!?』

 

 小隊長クラスの人物からの号令とともに横に隊列を組んだ銃隊がトーリへ撃ってきた。当然避けられるとは思えない。足が一番速い点蔵がトーリを庇う。遅れらがら武蔵の部隊が防御用の符で攻撃を防ぐ。

 ホライゾン・アリアダスト救出の戦いの火ぶたは門を開けると同時に始まった。

 

「始まったか」

 

 場面はブエルに乗っている優頼に変わる。

 網膜投影から見る外の景色。通神から見る武蔵の状況。

 丁度、浅間が警護艦を撃ち落とした場面を見ていた。そして、残り一機の武神が射出された。

 

「白黒が出たかぁ」

 

 黒嬢(シュバァルツフローレン)に身を纏ったマルゴットと白嬢(ヴァイスフローレン)に身を纏ったナルゼが武神と相対。

 地上にいる陽動部隊は絶対絶命のピンチに陥っていた。

 その場にいることしかができない優頼。

 

『お前はもう一回同調試せ』

 

 再度レバーを握り、同調を開始した。二つの同調率を見比べながら、50%までいったのを確認した。そこからさらに上げようとレバーを握り安定させながら、グリップを上にした。60、70、80、90と先ほど同じ値まできた。そこから気を抜かずに慎重に上げていこうとしたが、99%のところで危険表示が出て、エンジンが急停止した。

 

「あと一歩なのに……っ」

『ネシンバラ、とりあえず、向こうの武神は対処したわよ』

 

 マルゴットとナルゼのコンビが武神を倒した。通神からキセルを噴かした直政が話しかけてきた。

 

『あたしは行くよ。別にすべて潰して構わないさね?』

「おい、いきなり通神してきたと思えばいきなりパクリ宣言か?」

『そこで指を加えて待っていな』

「へいへい」

 

 通神を切り、また同調を開始。そして、あと一歩のところで切れてしまった。それを繰り返すこと二十回くらい。

 そして、事態は急変した。

 

『敵将、立花・宗茂、討ち取ったり』

 

 それは優頼の副長代理として立花・宗茂と戦った本多・二代が勝利したことと武蔵が飛び立つ準備をしていたことから合同部隊はそれの阻止としてグレイズを三機、武蔵へ差し向けたのだ。

 

「もういい!俺を出せ!」

『馬鹿垂れ!みすみす死に行かせる真似できるか!?』

「いいから、出せ!片方さへ使えればっ!?」

 

 銃撃音が聴こえ、それを防ぐ障壁の音が聞こえた。時間がない。

 

『クソっ!?カタパルトが誤作動だと!?』

 

 優頼の頭の中にはある場面が映し出されていた。

 こことは違うコクピットの中、自分がいた元の世界とは違う別のハッチの中だった。

 そこにブエルがいた。自分のブエルとは違い姿が似ているだけで別のガンダムだった。そこへ一人の男が話しかけていた。会話は変わらないが、たぶん労わっているのだろう。次の瞬間、謎の爆発と共にブエルもどきは謎の渦へ入り、大地に横たわっていた。そこへ一人の初老の男性がブエルもどきを運び、ガンダムフレームの一機の前に置かれた。

 謎の場面に驚く優頼。再度同調を開始した。

 

「なあ、ブエル。お前がこれを見せたってことは俺を信用しているのか?ならさ、動いてくれ、頼む!?」

 

 99%まで行った。だがまた、消えようとしていた。

 武蔵の出向を阻止しているグレイズ三機。なかなかでることができなかった。そこへ一機が手榴弾を投げてきた。それにより、品川の先端付近を爆破された。

 

『制圧開始!』

 

 桟橋へ乗り込もうとする。それを防ぐ自動人形の武蔵。

 

「ネシンバラ様、このままでは侵入を許してしまいます、以上」

「そうだね。だけど、それはないよ」

『ああそうだ。こんなところで終われない!』

「『ユライ!』」

 

 武蔵野を狙う射撃を土煙とともに防ぐ人影が現れた。手には大剣を握り、目の前のグレイズへ振り落とした。首はあらぬ方向へ曲がり、コクピットに相当するところは無残にも破壊された。

 土煙が晴れるとそこにいたのは、青と黒の装甲に包まれた武神。

 

「ここにいるやつらよーく聞きやがれ!ガンダムブエルアスタリスク、武蔵アリアダスト教導院副長、橘・優頼、堂々復活だ!」

 

 青い黄色のツインアイを光らせて、悪魔は三度己の復活の叫びを挙げた。



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境界を挟み結ぶ者

 第一巻終盤のところ、ガンダムブエルアスタリスクの力を表現できたらいいな~。
 では、どうぞ!


 砂煙の中から現れた一機の重武神。叩き潰したグレイズから大剣を引き抜き肩に担いだ。

 

『う、嘘だろ!?武蔵には作業用武神しかいないはず!?』

『デルタは援護に徹しろ!俺が出る!』

 

 一機のグレイズが腰にマウントしているバトルアックスを手に持ち、突撃してきた。ブエルアスタリスクは大剣で防ぎ、押し返した。倒れこんだグレイズに向かって突撃、持ち上げた大剣で振り落とそうとしたところをもう一機のグレイズの妨害射撃により振り落とすタイミングがズレてしまった。そのおかげで立ち直り後退したグレイズ。

 

「そう簡単にやらしてくれないか」

 

 優頼は考えを巡らした。今自分ができる最大の攻撃で後ろにある武蔵を守りつつ相手を引き付ける方法を。僅かな時間で作戦を見出した。

 ブエルアスタリスクは妨害されたグレイズに向かって突撃していった。

 それを見ていて行動しないわけがない。妨害したグレイズデルタは向かっているブエルアスタリスクへライフルを向け撃つが気にせずに向かってきたブエルアスタリスクは持っていた大剣をグレイズデルタに向けて投げた。グレイズデルタは左手に装備しているシールドで大剣を上へ弾き飛ばした。

 

「武器を投げるとかやはり総長共々馬鹿だな!」

 

 ライフルを向けたがそこにはブエルアスタリスクいなく辺りを探した時、接近戦を仕掛けていたグレイズのほうにブエルアスタリスクがいた。そこに目を向けると両腕を綺麗に切断されたグレイズと二本の青いエネルギーブレードを持っているブエルアスタリスクがいた。

 ブエルアスタリスクはエネルギーブレードこと流体剣でグレイズの胴体を刺し、機能停止させた。

 次はグレイズデルタに狙いをつけてた。当然、グレイズデルタは後退しながらライフルで撃っていく。二本の流体剣で向かってくる弾丸を切りながら、後退するグレイズデルタへ向かって行く。

 約五メートルの所でグレイズデルタはライフルを投げた。その奇怪な行動に不思議がる優頼。次の瞬間、全面で大きな爆発が起きた。

 機体ダメージは軽微なものの黒煙が晴れると二丁のライフルを向けているグレイズデルタがいた。狙いを定めてこちらへ撃ってきた。ブエルアスタリスクは流体剣を仕舞い、後ろへ後退した。

 後退をしたのを確認するとライフルを一丁仕舞い、盾に仕舞われていた手榴弾を武蔵へ投げた。

 自動人形武蔵はそれを確認すると広大に障壁を広げ爆発の防いだ。グレイズデルタは素早く二つ投擲し、障壁との間から今やられている品川の方へ投げられた。

 最大にまでスラスターを噴かしたブエルアスタリスクが大剣を投げて空中で一つ防ぎ、もう一つは己で防いだ。

 ダメージは蓄積されているがまだ動ける。

 

『なんだよさっきから邪魔ばかりして、さっさと降伏しろよ!』

 

 グレイズデルタの操縦者が癇癪を起しながらバトルアックスを持ってブエルアスタリスクへ向かってきた。ブエルアスタリスクは大剣を回収し、振り落とされるバトルアックスを防ぎそのまま薙ぎ払った。地面に倒れこんだグレイズデルタは急いで体勢を立て直そうとしたところ馬乗りになったブエルアスタリスクがいた。

 手には先ほどの大剣がない代わりに鋏型の武器でグレイズデルタを挟み込んでいた

 

「降参はするか?」

『毛頭ない!するぐらいなら自ら首を切る!』

「そうか。案外楽しかったぜ」

 

 鋏の刃に赤色が集まっていく。その赤色は血のように見える。

 その様子を通神から武蔵が、トレスエスパニアが、K.P.A.Italiaが、各国の要人たちがその輝きを見ていた。

 

「切り結べ血華鋏!」

 

 グレイズデルタの胴体を上下に真っ二つにした。鋏型の武器、血華鋏を引き抜くブエルアスタリスク。

 そこで不可思議な出来事が起きた。真っ二つにしたグレイズデルタの胴体が綺麗にくっついていたのだ。しかし消滅反応が見られたはず。なのに操縦者共々傷一つなかった。

 血華鋏、または結果鋏。右片刃は鉄血、左片刃は鉄華という一つずつで準神格武装、二つ合わせて神格武装と言う異色の武器である。

 鉄血は蜻蛉切や悲嘆の怠惰の割断に似た切断を有する。その能力は自分から半径三十メートル周囲の物体は切断するというもの。対象を限定に写すわけではなく、自分が視認できる数の半径三十メートルに入っている物のみ。しかも、無差別に行うため敵味方関係なく巻き込む恐れがある。

 鉄華は結合。その能力は十メートル範囲を結合する。それはまるで針で縫うような感じである。これは対象を刃に移す蜻蛉切や悲嘆の怠惰と同じである。

 そしてその二つを合わせたのは血華鋏。刃に写る対象を切って結ぶだけ。だが、一つしか写せない鋏特有の弱点がある。しかし、それは通常駆動の時。上位駆動は物体の他に空間や現象すらすべて切り結ぶ。その対象は自分が認知できる範囲にいるすべてさえも切り結んでしまう。その分、流体燃料の消費が激しい。

 

「こちら優頼、終わったぞ」

『ありがとう、では最終段階へ向かおうか。目標は……』

「ホライゾンの所だろ。そして、派手に暴れるぜ!」

 

 スラスターをふかしてホライゾンがいる戦場へ行った。



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境界線上の整列者達

 約三が月間投稿遅れてすいませんでしたァアアアアアアアアア!?
 次で一巻終わります!ではどうぞ!


 その映像が通神に流れたのはガンダムブエルアスタリスクが見せた赤黒い血の光から僅か一瞬の出来事。

 トーリと抱き合うホライゾンの二人。取り戻した現実とそこから始まる未来が見てとれた。

 

「時間さね!」

 

 直政が輸送船に乗ってその場に現れた。

 撤収と叫び、輸送品の網を投げ込んだ。投げられた網に地上にいた武蔵の学生たちは一斉に駆け出した。次々と乗り込む中、トーリはその場を走り出すインノケンティウスを追い出した。それに続いてホライゾンも後を追う。

 

「おい、ちょっと待てオッサン!?」

「トーリ様、状況的に見てもう一つの大罪武装は無理かと思います」

「ごめんな淫乱に出来なくて!」

「「「そうじゃねぇえから!?」」」

 

 全員から違うと突っ込まれた。

 

「どちらにしろ時間切れだ、来い!」

 

 正純に言われて垂らされた網を掴もうとしたところ、そこにインノケンティウスが現れた。その後ろにK.P.A.Italiaの部隊が隊列を組んで立っていた。

 

「行かせるかよ!」

「だいだい姫の推薦入学だと!?帰るまでが遠足だと言うことを忘れたか!」

 

 インノケンティウスが術式が纏められた紙を取り出し、輸送艦へ撃った。

 

「武蔵に戻るまでは受理無効だ!馬鹿者がぁぁぁぁぁぁ!」

 

 術式を撃った衝撃で輸送艦が上下に激しく振られた。そのせいで網に捕まろうとしたトーリたちが置き去りになった。

 形勢逆転から一気に大ピンチに陥ってしまった。

 

「やばくねこれ……!?」

『なら、そこから動かないことだな!』

 

 優頼からの通神が聞こえると、武蔵が停泊している陸港から砂煙を巻き上げながらブエルアスタリスクが現れた。そして、K.P.A.Italiaの部隊に囲まれる寸前、兵ごと突っ込んでいった。

 その巨体に突っ込まれたらいくら屈強であろうと高い防御術式であろう、塵に等しかった。

 

『早く乗れよ』

「さっすがだな優頼!」

 

 手を差し出し二人を乗せて、一気に空へ飛び立った。

 後方に離れていたお陰で難を逃れたインノケンティウス。苦々しい顔をしてブエルアスタリスクの姿を見ていた。

 その時だった。後ろに待機させてある栄光丸が勝手に離陸し始めたのだ。

 

「え、栄光丸!?何をしておる!」

「か、艦長や先輩たちが自分たちで追うと」

 

 振り向くとそこにいたのは皆若い学生ばかり。代表して一人の学生が言い出した。

 

「若者ばかり降ろしただと!?」

『聖下船をお借りします!』

「どういうことだ!?」

『聖下がご健在であればK.P.A.Italia、旧派は敗北したと言えません』

「返す気はあるのか?」

『Tes!テスタメントに謙譲しているのであれば!』

「ならば行け!貴様ら時代を刻め!俺は不断を担当する!」

『気遣い、至福を!』

 

 艦長は応え、武蔵へ向けて栄光丸を飛ばした。

 二人を回収したブエルアスタリスクは輸送艦へ向けて飛んでいた。

 センサーに大型航空艦の反応があった。

 

「ちっ、なにがなんでも逃がさないわけか!おい、副会長とおっさんの娘!馬鹿と姫の回収を頼む」

『了解したで御座る』

 

 二人を輸送船の上に降ろし、向かってきている栄光丸に向く。血華鋏を分離し鉄血と鉄華にした。

 

「さてと、どうしたものか……な!」

 

 船橋へ向けて攻撃を加えた。連続で同じ箇所へ的確に打ち込んでいくが、ビクともしない。

 

「硬すぎるだろ!?」

 

 血華鋏の上位駆動を使いたいが、先ほどの起動とグレイズの時に流体を使ったため使えない。

 

「ならよ、これならどうだ!!」

 

 鉄血と鉄華を背中に仕舞い、腰から二本の流体剣を引き抜き船橋付近へ刺した。内部で爆発しているのが流体剣から伝わってきた。

 

『急いで戻ってきてくれ、今からアリアダスト君が悲嘆の怠惰を撃つ』

「了解!」

 

 流体剣を船橋から引き抜き、栄光丸から離陸した。

 その直後、武蔵側から黒い手を表した光線が撃たれた。遅れながらも栄光丸からも白い光線を撃った。二つの光線がぶつかり合い拮抗し始めた。若干ながらも悲嘆の怠惰が押され始めた。

 

『オイ馬鹿押されているぞ!?』

『え?じゃ、じゃあ、お、押し返し』

『疑問しますが、何故ホライゾンの尻をこね始めるのですか?』

『危険なんですってば!?』

 

 そんなときでも通常通りである。優頼は生きていたら殴ると心の中で決めた。ふと、通神に顔を向けると浅間が此方を見ていた。

 

「どうした?」

『いえ、こんなときによく笑っていると思いまして』

「笑っている?」

 

 浅間に言われて、自分の口許を触った。確かに上がっていた。こんな状況の時でも笑っていたのだ。それがおかしくて、懐かしくて、それでいて悲しくて。

 

「そうか。そうだったな」

『どうかしましたか?』

「浅間ありがとな」

『えっ?』

『『『優頼がお礼を言っただと!?』』』

「よしてめぇら帰ったら武蔵艦内の甘味処買ってこい。それで許してやる」

 

 そうこうしているうちにトーリ話し出した。

 

『お前らいまカッコいいことしゃべってんだから邪魔するなよ!』

 

 悲嘆の怠惰の出力が上がった。黒い光線から黒と金の光線に変わり栄光丸の光線を飲み込み始めた。

 

『歌えよホライゾン、通すための歌を!!』

 

 涙を流しながらホライゾンは歌い始めた。

 毎朝聞いていたPー01Sの通し道歌ではなくホライゾンの通し道歌。己を通すための歌を歌い出した。

 

 通りませ 通りませ

 行かば 何処が細道なれば

 天神元へと 至る細道

 御意見御無用 通れぬとても

 この子の十の 御祝いに

 両のお札を納めに参ず

 行きはよいなぎ 帰りはこわき

 我が中こわきの 通しかな

 

 悲嘆の怠惰から撃たれた光線は金色の光線に変わり、栄光丸の光線を飲み込み、その船体を破壊していく。栄光丸から撤退にしていく船員はいたが間に合わず、船橋を破壊し船体を半分破壊した。

 操縦不能になった栄光丸はそのまま墜落し爆発した。

 

『どうして、感情とは、こんなに、こんなに辛いものですか』

『泣けよホライゾン。俺がここにいるから。辛い感情を吐き出せよ』

 

 悲嘆の怠惰を投げて、トーリに身を預けた。そんなホライゾンを優しく抱く。声を殺しながら感情が辛いのかを問った。

 

『どうして!?』

『そりゃ簡単だ』

 

 そっと肩に手を置き、ホライゾンの目線に合わせた。

 

『……すべてを取り戻した後のオマエには、もはや、嬉しいことをたくさん得ることしか、残ってねんだからさ。だったら、楽しんでいこうぜ、俺と二人で』

 

 いいかと、小さく笑いながら話し出した。

 

『もう、俺は泣くことができねぇ。だから俺の代わりに泣いて、叫んでくれ、そして……』

 

 梅組や教師、警備隊などが集まった。

 そこには夕日の逆光を浴びながら唇を会わせた二人の姿だった。

 ブエルアスタリスクから降りた優頼はその光景に、良かったと思った。昔見た光景が脳裏に浮かぶ。

 優頼と浅間と喜美、トーリそしてホライゾンの五人でまた過ごせる。

 

「すべての感情を従えて、俺と一緒に笑ってくれ、ホライゾン」



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夢現の鉄の華

 これで最後です!
 では、どうぞ!


 K.P.A.Italiaとトレスエスパニアを退けた武蔵はステルス飛行間中にP.A.ODAの鉄甲艦と航路接触があったこと以外問題はなかった。

 ブルーサンダーでホライゾン・アリアダスト救出作戦の成功を祝い、宴をしていた。

 そんな中、宴の中には優頼の姿がなかった。

 優頼はブエルアスタリスクの格納庫で寝ていた。

 本日二度目の夢を見ていた。場所はいつもの赤い大地に夕日の光景だった。ただ違うのは自分の服装が普段の服装であること、もう一つは二人の青年がいることだった。

 一人はワインレッドのシュトールを首に巻いている前髪が特徴的な青年。

 もう一人は青年の頭一個分小さい無表情の青年。

 

「……オルガ、三日月」

「よお久しぶりだな」

 

 優頼が二人の名前を言うとシュトールの青年オルガが声をかけてきた。それに釣られて腕を上げた小柄な青年三日月。

 二人の方へ歩き出した。二人も歩き出した。近くまでによるとオルガが覚悟しとけと、拳を引き優頼を殴った。殴られた反動で尻餅を着くと次に三日月が殴った。

 

「なんで殴ったかわかるか?」

「まあな」

 

 仰向けになりながら答えた。

 

「悪かった守れなくて」

「それはいい。あの状況でお前以外が助かったのは良かった……わけねぇえだろ!?」

「言ったよね。オルガの命令は絶対だ」

「引き摺りすぎだろ」

「けじめはついた。だが、ミカがまだって言っているからな」

 

 その言葉と共に三日月が優頼を殴り始めた。顔を腫らすどころではすまされない顔になった。死んでいても殺すとは思いもよらなかったと心の中で思った優頼だった。

 

 三日月からの殴りの応酬からなんとか生き残れた。優頼は自分が死んでからどうなったかを聞くことにした。

 

「お前が死んでからか。とりあえず言えることはお前とギャラルホルンで死んだ奴等以外は無事だ。

 あの後の顛末を話すとな、マクギリスが率いる革命軍残党がラスタルたちアリアンロッドへ特攻をして両者死亡した。それによってガエリオが俺たちに停戦を求めてきた。それに応じた俺たちはアーヴラウで終戦の話し合いをし、各経済圏と話し合いもした。それによってギャラルホルンは解散。各経済圏も平等とまではいかなかったけど改善はした。そして火星も一つの国として認められた。火星の王にはなれなかったけど、鉄華団は火星の軍になった。

 あの戦いの話はこれで終わりだが、お前はどうだった?」

「俺は、記憶を無くした。お前らの記憶を戦いの記憶も、名前すら忘れた。怖かった、自分が何者なのか。寂しかった一人だと思ったから。だけど、お前らみたいな仲間に会えた。夢でお前らに会えた。それに無くしてもこいつがいてくれた。だがらだろな、お前らにまた会えた」

「優頼……」

「ねえ優頼、俺たちみたいな仲間って?」

「一人は馬鹿だ。お前らとは違う馬鹿だ、だけどあいつは王になりたいと言った。王になってみんなの夢を叶えられる、そして夢を持てない女のために王になりたいとな。

 もう一人は優しいやつだ。自分よりも他人に優しさを振りまく。だけど、そいつは夢を持つことができない。だから、みんなの夢を叶えてほしいってほど優しすぎるんだ。

 まだいるけど、全員が馬鹿の夢を叶えたいと動いている」

「ふ~ん」

 

 興味無さそうな反応をするが、それが三日月だと改めて思う。オルガは少し複雑そうな表情を見せていたが、それがお前の進む道なんだなと思っている。

 優頼は立ち上がり、着くずれた服を直した。そして、二人に向かってお辞儀をした。

 

「世話になった」

「もう行くのか?」

「ああ、また会おう」

 

 優頼は後ろに向き歩き出した。後ろにいるオルガが喋りだした。

 

「俺たちはここで道を別れる。けどな、その道には俺はいない。戻ってきたくなったら戻ってこい。行くも去るも俺は気にしねえ。俺は俺たちはまた何れ会う。会うまでは止まれねえ。だからよ、止まるんじゃねぇぞ!」

 

 オルガの声が、応援が聞こえた。それが道を違える優頼に向けて喋った言葉だった。

 

「ああ、分かっている。じゃあな、鉄華団!じゃあなオルガ、三日月!」

 

 歩きながら後ろに手を降る優頼。

 少し歩くと地面に膝待ついているブエルアスタリスクに手を触れる。すると、白く光、ホワイトアウトした。

 

「行っちゃった」

「ああ。よし帰るか」

「そうだね、アトラとクーデリア、それに暁が待っている」

 

 二人も光の粒子になってその世界から消えた。

 赤い大地には一輪の鉄で出来た花と白い布を縛った刃こぼれした刀が突き刺さっていた。

 

 

 

 戦いが終わってからの朝は自然とホライゾンの歌では目覚めず、それでいて機嫌がよかった。制服は袴のみ着て、黒のタンクトップに白の着物を右腕のみ開いていた。そして棚に立て掛けたいた血華鋏を二つに分離し腰に付けた。

 行ってくると鎮座されているブエルアスタリスクに言うと倉庫から出ていった。

 朝食を買うためブルーサンダーへ向かう。道行く人々にはその格好に驚くが本人は気にしていなかった。

 ブルーサンダーに着くと面白い光景が目に入った。

 隅の窓際にトーリとホライゾンが朝食を食べていた。二人揃って首を傾げながら不味いと食べていた。

 

「早起きはなんととかと言うが面白いものを見せてもらったよ。

 宇治金時パン極を一つ」

 

 全員がこちらを向きながら。

 

「「「前から思っていたけどそれ人の食いもんじゃねぇよ!?」」」

 

 多数のツッコミを貰いながら買ったパンを一口食べた。

 

「この濃厚な甘さ格別だ」

 

 また、日常が始まりを告げた。



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