RESIDENT EVIL 好奇心はダリオ・ロッソの息子を殺すか? (nassyusan)
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第一章 『嵐の前の静けさ』
目覚め


 コンテナの中に残された手記 その1

 

 9月18日

 

<<辛うじて読める走り書きだ>>

 

 なんてこった!

 

 未だに自分でも状況を整理しきれていない、なんでこんなことになっちまったんだよ。

 ラクーンシティー、そして今は1998年の9月18日(バーキン博士襲撃二日前)と来てやがる!

 親父の母親と母さんがアークレイで行方不明になってから、親父は人が変わったようになった。

 とりあえず情報が混乱してる……。少し整理する必要があるかもしれない。

 

 

 まず俺はあの()()()()()()()の息子で、アナスタージア・ロッソという名前であり長女に姉のルチア・ロッソが居るということ

 そして二日後にはクソッタレラクーン事件の発端の一つであるバーキン博士の襲撃事件が起きるということだ。

 親父と姉貴の運命をわかっている身としては、とにかく最悪の状況だ。

 

 

 バイオハザードの世界、そうB級映画さながらの地獄絵図が繰り広げられる俺にとっては最高のホラーゲームだった。1はSTARSの洋館事件の調査から始まり、おそらく次は3、アウトブレイクに繋がる時期なのだろう。

 このシリーズは特にやり込んだ覚えがある。今でも攻略本抜きに何でもくぐり抜けれる。ゲームの中通りなら、の前提付きだが

 だが生憎とそうは行かないらしい、生憎と抗体持ちでもなけりゃちょっとしたかすり傷でも()()に連中の仲間入りが保証されてやがる。

 その上、時と場合によりゃあの執念深いデクノボウと楽しい追いかけっこを演じなきゃならん可能性すらある。

 

 

 だがこの街から脱出するのも無理そうな話だった。

 まず前述の行方不明から書いたとおり親父はうってかわって『責任感の強い』性格に目覚めちまったってのと、ゲームと違い観光客ではなくラクーンのちょっとした倉庫の管理者になっててとてもじゃないが事件が起きたところでまず従業員の安全と俺達子供の安全を考えるだろうから脱出が容易であると思える23日までに脱出するのは難しいだろう。

 あぁ……悪いことじゃないがどうにも設定改変が逃げ道の無い方向に方向にと俺を追い詰めてきている気がしてならない。この分だと俺のバイオジャンキーな知識を活かす場面もさほどないかもしれねぇ。

 

 

 とにかくなんとかして

 

<<ここから先だけ日本語で書いてある>>

 

 

 汝等此処に入るもの一切の望みを棄てよ……か。

 

 

 リベレーションズで聞いたが、案外ラクーンのがアッチよりこの言葉に近いかもしれねぇ。

 なによりラクーンの市民達が招いた結末とも言えるからな。案の定大半の奴らは屍になっちまう訳だが

 

 とにかく助けられる連中だけはなんとか助けねぇと!親父の姉貴の運命が決まってるなんて信じたくもない。

 

 

 前世がヘビーなゾンビゲーマー、ミリタリーマニア、ゾンビ映画愛好家で糞ガサツな色々と世間一般でいうと()()な女だったとしても

 記憶を取り戻すまでの期間の記憶と現時点での自身の記憶が混ぜ合わされるに進んで益々、そう思いたくなってくる。俺にとっては大事な肉親だし、親父は少しドジしやすいし、姉貴はなんだかんだで気が強くて、世話焼きだけど。俺の存在が()()のあるものなら少なくともこの二人くらいは助けられるハズだろう。

 少なくとも今はそう信じておこう、じゃなきゃこれからの地獄に耐えられそうにない。

 

 気休めでも良い、とにかく今はできる範囲の事を……

 

 

<<小さな紙切れが挟まれている>>

 もし、ジル・バレンタインがこれを見てたら忠告するまでも無いだろうが警察署には近づかないように、とだけ書いておく。

 もし出会う機会があれば協力を願い出るであろうことも…

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 9月19日 12:00 ケンド銃砲店

 

 

「言っとくけどコレ、パパにバレたらただじゃすまないからね」

 

 

 黒いセミロングの髪に青の澄んだ瞳の活発そうな雰囲気の女性が、釘を刺す様に言った

 わかった、わかったと三度目だろうか返事を返すと彼女、いやルチア・ロッソが「全然分かってないのね」と呆れと観念したように車を停める。

 やっぱり非日常(バイオハザード)と違う平時のラクーンは印象がぜんぜん違うな……。

 迫る惨劇のイメージから少しでも逃げたいのか、ふとそんな考えに浸る。裏のバスケットコート、健康な汗飛沫を散らしながらボールをシュートする子供達を傍目に少し憂鬱な気分になる。

 

 

「アナ?聞いてるの?」

 

 

 ふと気付くと姉貴(ルチア・ロッソ)が足を止めて此方を覗き込んでいた。

 流石に140cm未満が170cm代の人に話しかけられると、受ける迫力が違う。もっともこんな低身長に生まれたのは男じゃなくても少しショックになるところではあるが……

 体力と力と元気さ()()がアンタの取り柄なんだから。と姉貴が言いながら更に顔を近づける。

 

 いくら弟だからって自覚がなさすぎだろ……。おそらくと言うかほぼ確実に俺を異性として見てないであろう姉貴の距離感に少しだけ困惑しながらも、動揺する。(前世)では全く気にかけてなかったけど、接してきた男の子みんな一度はそう思ったんだろうなぁ、と昔の経験と今の経験を比較しながら思う。

 

 第一、そんな格好(Tシャツにジーンズ)で汗で若干透けつつある胸を特に気にもせず、堂々と歩く姉貴には少しだけ心配になってくる。まるで昔の自分の格好を見ているようで少しだけ恥ずかしいと思いつつ

 

 

「だけは余計だっての……。姉ちゃん。俺だって()()男なんだぜ」

 

 と少しだけ不機嫌になった素振りをしながら銃砲店の入り口を開く、身長の所為かケンドのおやっさんに気づかれなかったのを少しだけショックに思いながら。

 

「ダリオの所の坊やと、お嬢さんか。いらっしゃい」

 

 姉貴が見えると俺の存在にもやっと気付いたみたいで、特に焦る様子も感じさせずすかさず接客に切り替える辺りは流石に接客業やってるだけあると感心する。

 と同時に姉貴を連れてきた俺の意図に少なからず気付いた様で「用立ててやれるモノがあるぜ」とでも言いたそうに此方に視線を向けた。

 

「最近ちょっと物騒でね。親父からちょっと事務所に置けそうな扱いやすくて、()()()()軽い銃器が欲しいって頼まれたもんでね。何か、うってつけのヤツ無い?」

 

 

 そんなおやっさんの意図を見透かしながらもわざとらしくもっともらしい理由付けをして聞いてみせる。……ほんとはちょっと前に店の手伝いをしてる時に触らせてもらったイサカ(フェザーライト)を売ってもらう約束してたから、ただ姉貴にそれらしくやり取りをしてみせただけなんだが。あれなら素人の姉貴や親父でも扱えるだろうし。

 

「おぉそりゃあ良かった!丁度おあつらえ向きの銃があるぜ。イサカM37(フェザーライト)なんてどうだ?此奴は軽くて扱いやすいし何より散弾だからあまり良く狙わなくても的には当てられるぜ、それに」

 

 おやっさんの怒涛のセールストークにさらされる前に言葉を断ち切るように姉貴が

 

「じゃあそれで」

 

 と特に関心を示すでもなく言う、当たり前だよな。特に知識も関心もない人間からしてみればまったくもって分からんだろうし。

 

 

 自慢のセールストークを止められたおやっさんは少しだけ悲しそうな顔を一瞬だけ見せたが、これまた直ぐに接客に切り替え手続き用の書類を出しサインを促した。

 これでいいのね、とおやっさんに言われたとおりに姉貴が書類を書き込んでいく。性格が結構豪快だが、これで意外に字は綺麗だし、成績も良いと来た、ルックスも良いし()()()()()()()()与えるのになんで俺は身長()()は手に入らなかったんだろうな……とカウンターにしがみつきながら手続きを見ながら改めてそう思った。

「ちゃんと代金も貰ったし、あとの手続きは此方でやっておくから持って帰って構わないよ」と、イサカを三丁と12ゲージの箱を3つカウンターに広げる。

 

 

「60発ポッチ?俺個人としては是非この倍位の弾数は売ってもらいたいんだけどなぁ~」とジト目気味に見ながらごねてみる。男とはいえどちらかと言えば中性的、それも黒髪のロングサイドポニーで自分で言うのも何だがどちらかと言えばかわいい系な俺の様子は恐らく向こうから見れば俺と同年代(14)の娘が駄々をこねてる様に見えるのかもしれないが、とりあえずやっておいて損はないから出来ることはしてみる。

 

 

 お前さんのそういう所は恐れ入るよ、とでも言いたげにケンドのおやっさんが少しだけ苦笑いしてみせるとさらに12ゲージを三箱カウンターに置いた。

「お前さんには参ったよ……。まぁ忙しい時なんかは手伝ってもらってるから今回、今回だけ特別だからな!」と、どちらかと言えば姉貴に聞かせるように言い、実はもう一つだけイイヤツがあるんだ。と姉貴の隙を伺っておやっさんはこっそりと教えてくれた。

 

 

「ホントに大丈夫?とりあえず明日になる前には帰ってくるのよ?」と心配してくれながらも俺の意思を尊重し、信じてくれた。面倒だから仕方なく、ではないと信じたい。姉貴なら本当に思ってそうだからな……と、一抹の不安を持ちながらも「わかってるよ。」と返事を返す。

 姉貴を見送ってから、再びおやっさんの所に戻るとまってましたと言わんばかりに()()()俺が入ってきた事に気付いたみたいで一丁のシルバーのボディーを持つ拳銃を此方に見せながら此方に来るよう促す。

 

 

「此奴を見てくれ……いい出来だろ?50口径ながらイーグルみたいな無骨さが無くて、なおかつ手が小さいヤツでも扱えるようにシングルカラムを採用、余分なふくらみをなくし、なおかつ本体重量は2kg前後だから反動の制御もある程度しやすい。」

 

 

 それってもうガワが違うだけのデザートイーグルじゃん。とおやっさんの大口径信仰に呆れながらも手に取らせてもらう、……成程確かに見かけはベレッタのシルバーモデルだがずっしりとしたイーグルさながらの重量感、構えてみれば若干イーグルより握りやすいグリップに……ベレッタ特有の狙いやすいアイサンサイトか。確かに悪くはない……悪くはないと思うんだが

 

 

「強度は大丈夫なのか?おやっさん。ベレッタって本来ショートリコイル式だからイーグルのガス圧式にするのは結構無理があったと思うんだけど……」

 と半信半疑で聞いてみると、よくぞ聞いてくれたとでも言わんばかりの自信満々の表情。人生楽しんでるなぁ、と思いながら話すように促す。

 

「此奴は肉厚に作ってあるから強度に不安はないさ、おかげで重量はイーグルと同じになっちまったが、ステンレス製で整備もし易いオートマグ(オートジャム)の二の舞いを踏まないように専用の潤滑油を馴染ませ、なおかつマガジンは7発入れても傷まない様にしてあるから強度は心配いらんよ」

 と言いながら撃ってみたいだろ?と言わんばかりににこやかに此方を改めて見てくる、実のところを言えばこれから起きる事態を考えるとこんな化物銃(大口径拳銃)を使う事態も多々あるであろうから、おやっさんの御機嫌取りついでに試しておいても損はないか、と考え

 

「是非、試してみたい!」と多少オーバーに反応する。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 リンダ・パールの手記 

 

 9月12日

 

 皮膚の壊死、うっ血から始まり進行すると定期的な意思混濁、そして最終的に人間の理性も失ってしまう。

 この段階での回復は絶望的で最後の手段である安楽死も通用しなくなる。

 当たり前ね。医学的にはもう死んでるも同じなのだから。

 この病の恐ろしい点はもう一つ、患者は理性を失うと末期の中毒患者の様に暴れだし、飢えた虎の様に生肉を欲して人間を襲うようになる点だ。

 こうなると完全にお手上げで、現状こそ数が少ないおかげで隔離病棟に隔離することで抑えているが事態がさらに進んでこの状態の患者が爆発的に増える事を想像すると身が震える。

 なぜならこの病を治療する手段は確立されてない上に感染した患者から僅かなかすり傷を負うだけでも感染してしまうのだ。

 おかげで今日に至るまでに知っているだけでもロン、メアリーが犠牲になってしまっている。

 

 

 9月18日

 

 今日もまた発病者が運ばれてきた。まだ症状はかるいようだけど……。

 医院長はもう何日も睡眠を取っていないようでやつれていく様子が目に見えて分かってきている。

 

 初めて人を撃った。いやあれは人を言って良いのだろうか?

 赤い瞳と赤みを帯びた褐色の肌、何よりあの素早い動き……

 ジルの話を聞いた時点では到底信じられなかったけれど、流石に信じざる負えない。

 用心の為に大口径のパイソンを選んでおいて正解だった。廊下から聞こえる悲鳴、周囲に広がる血の海とあの赤く綺麗な瞳……

 

 私がヤツの頭を吹き飛ばせたのはある意味ラッキーだった。だけどあの時の自分は自分でも驚くほど冷静だった。

 幼馴染のジルの話を聞いてから、私はそれを半信半疑に思いながらもそれでもジルを信じた。

 

 時間を見つけては射撃訓練に行き、ジルにも時間さえあれば練習の手ほどきをしてもらった成果なのだろうか。

 こんな時にジル……ジル・バレンタイン、貴方がそばに居てくれれば安心出来るのに

 

 医院長は銃器を持ち込んだことは不問にしてくれたけど、あの表情は何かを知っているようでもあった。

 あの赤頭……、クリムゾンヘッドとでも言えば良いのかアレに関してさほど驚いているようには見えなかった。

 

 ラクーン総合病院の方でも此方と同じような状況らしい、あっちはアンブレラの資金援助がある分設備はかなり近代的であると聞いているが、その総合病院でも治療法が確立できていない辺り、事態は益々悪化するように思えてならない。

 

 一応エドと警備員のジャックに頼んで警備室に銃火器を常備しておいて貰った方が良いかもしれない。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 ダリオ・ロッソの手記

 

 9月19日

 

ビアンカとお袋を失ってからもう四ヶ月近くになる。今でもあの時のショックは忘れられない。

よくお袋が「お前の人生は長いのだから」と言っていたが、こんな事になるならもっと熱心にお袋と話しておくんだったと後悔する。

なんであの日にアークレイに行くことを許してしまったんだ!仕事が多忙だからとついていかなかった自身に腹が立つ。

 

残されたのは二人の子どもと()()ちょっとしたでかい倉庫だけだ。それでも何十人と抱えている従業員が居る、彼らの面倒を見なければならない以上きな臭くなる事態を知っていながらもこの街(ラクーン)に残っている。

だがあの子達に何かあったら俺は……二度目の後悔をしないためにも二人だけでも街を出るように手配しておくべきだろう。

親としては心苦しい限りだが、今の俺に出来ることはこれくらいしか無いんだ。

 

許してくれ。ルチア、アナスタージア、お前たちにもしもの事があったらビアンカに申し訳が立たないし俺も生きていく意義を失ってしまうだろうから……

偉大な小説家として賞賛される事を夢見てはいたが、そんな事はどうでもいい、遥かに重要なのは子供達を護ることだ。

 

多忙な身ながら射撃訓練に通い、護身用のライフルも買い揃えた……。

勿論家族には教えていない。

心配をかけたくないからだ。

 

ルチアはビアンカに似て気も強い、面倒見も良い良い子だ。きっとこれを知ったら断固として街を出たがらないだろう。アナスタージアもだ、よく考えればアイツには直接名前のことで謝ったことが無かった……、女の子と早合点して女の子の名前を付けてしまってそれでもアイツは笑って許してくれた、男なのに女の名前を付けてしまったのにだ。

 

親ながら子供に世話をかけていることを重々承知だ。だからこそ、最後になるかもしれないが親としての役目を果たしたい。

とりあえず非常時に備えて倉庫に最低限の食料、水も蓄えた。20日にはケンドの店から散弾銃が届く。

 

杞憂に終わってくれるならソレでいい。だが、嫌な予感がしてならない。そう、アークレイでビアンカとお袋を失った日の様に……。

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 9月20日 6:00 

 

「大尉!大尉!」

 

「もう少しだ、そっちに行くから先に行け!カンバンか……!」

際限なく追いかけてくる民兵共に1マガジン、フルオートをくれてやりながら予備弾倉まで撃ち切ったライフル(M4A1)を手放すとスリングに吊られたライフルは体に密着するようにぶら下がる、息もつかずサブアームのベレッタをホルスターから引き抜くと、一発、二発と正確に連中の頭に叩き込む、叩き込んだ途端に糸の切れた人形のように崩れ落ちるクソ民兵共に構わず此方に突っ込んでくる生き残りに悪態をつき、咄嗟にベレッタを落としM4A1に着剣してあった銃剣で突き刺す、突き刺しては抜き、突き刺す、突き刺す、突き刺す、突き刺す……死ね、死ね、くたばれ、なんで立ち上がれる、来るな、来るな、来るな、来るな……

 

 

 

「アァアアアアアアアアアアアッ!!」

夢であった事を自覚した時には、ベレッタの引き金を引き続けていた。もっともこんな事がしょっちゅうなので弾は最初から入ってはいないが、それでも気分の良いものではない。あぁ、クソッタレのモガディシュを思い出す……

 

デルタフォースを抜け、退役した後でもこの悪夢からは逃れられなかった。いくら殊勲やメダル・オブ・オナーを受け取っても兵士としての名誉を受け取ってもこの悪夢は不定期的に私を悩ませた。

 

「クソッタレが……」

黒とブロンドが入り混じった前髪をかき揚げ、憂鬱な気分を紛らわす為にマリファナを巻いた煙草を咥え、火をつける。

煙が吐き出される度に次第に気分が落ち着いていくような気がした。気休めではあるが、こうでもしてないと直にライフル片手に通りで虐殺でもおっ始めかねない……とにかく悪夢にうなされた日は特に何もかもが嫌になってくる、何もかもが終わってしまえばいいのにとすら思ってしまう程に。

 

Fカップはあるであろう豊かな胸にシャツのみという()()すぎる格好を気にすることもなく彼女は煙を吐き出す。

 

「英雄は皆、墓標の下に埋まってんのさ……」

 

誰に聞かせるでもなくまるで自身に言い聞かせるように独り言を呟く。そんなやり取りが彼女の悪夢を見た日の日常だった。

誰に打ち明けれるわけでもない、共感出来る戦友達は大体アーリントン(墓の下)に行っちまった……

全く、こんな糞ビッチを()()殿()は真っ先に連れて行ってくれないのか、全く世の中クソッタレな出来事ばかりだ。

憂さ晴らしに射撃場にでも行くことにしよう。と思い立つとベッドを後にした。

 

 

 9月20日 12:00

 

 

的を打ち抜いても撃ち抜いても、気分は晴れない。何時もとは何か違う、何がとは言えないがナニかが違う。

いつもなら30枚もぶち抜けば気が晴れるもんだが……

 

「全部ど真ん中とは、アンタやるねぇ」

ヒュゥと口笛を鳴らし、隣の男が賞賛を送る。チラリと見てみれば180以上はありそうな屈強な男だ、筋肉質だし恐らくは警察か軍隊の関係者だろう。と値踏みしながら

 

「簡単だ、動かないからな」

と少し皮肉交じりに返してやる。が、男は特に気にもせず、じゃあ此方はどうだい?とベレッタを抜き片手で構え撃ってみせる。

的は見事に真ん中といったところで、どうだい?とでも言わんばかりに此方に射撃を促す。

 

9mmコルトを手放すと代わりにガバメントを構え、こう言ってやった。

「男なら此方(45口径)だろ?此奴の手応えを知ったら9mmなんかじゃ満足出来なくなるぜ?」

と男がやったのと同じように片手で構え、バンッと一発撃ちど真ん中、二発、三発、最後の一発まで全部真ん中、しかもほぼズレもなく穴は一つ。

 

「アンタ結構負けず嫌いだな?恐れ入るよ。俺はレン・アルダーソン、ラクーンSwatの隊員さ。」

とやっぱりまるで応えてないように握手を求めてくる。

オマエ……正直言って鈍いとか言われたことないか?と思いつつ、逆に此方が恥ずかしくなってしまう。

照れ隠しに目を逸らしながらも握手に応えてやり投げやりにブンブンと振ってまでやった。

 

「コレでいいだろ、私はケビン、ケビン・クラリッサ・ミヤバシ・クロス。お前さん何を思って私に話しかけてきたんだ?ナンパなら生憎とお断りだぞ、オマケに処女でも無いからな」

照れを隠すように苦虫を噛み潰した様な表情になり、嫌そうに皮肉を交えて拒絶感を出してやるが……

やっぱり此奴は応えない、ここまで来ると底抜けのバカじゃないかとも思えてくるがそこに思いがけない一言で不意を付かれる。

 

「憑き物が取れたみたいだな、アンタさっきまですごい何かに憑かれたようだったから、放っとけなくてね。お節介だったのは認めるよ、悪かった」

とホントに自分に非があるように此方をまるで咎めもしない、本来なら私の方が悪いに決まってるってのに。

 

じゃあな。と立ち去ろうとするソイツ(レン・アルダーソン)の右腕を思わず掴み引き止める。……力加減を忘れたために危うく、腕をへし折りそうになったがとりあえず取り繕って一言。

 

「とりあえず昼でも奢らせな」

 

そういったクロスの表情は少し恥じらいを含んでるように見えた。

 

 




処女作です、正直文章が結構ガバガバなのはご容赦を
本作を書き始めた動機としてはバイオハザードの二次創作物を読んでいて、やっぱりダリオ・ロッソというキャラは出てこないか、出てきてもやっぱり原作通りの末路を迎えちゃうんだね、仕方ないね。といった事ですかね。

後はボツボツ考えてたオリジナルキャラの使いドコロォ、とか。
正直言うとバイオは3まで、アウトブレイク、FILE2とかまでな古典主義者です、ラクーンシティが一番盛り上がりそうだし、設定も多いしなぁ。と思って、実のところ群像劇だし、場面切り替えが上手くないとか主人公ポジションのアナが出番少ないぞ、とかは極力気をつけたいと思っております。

あとなんで盛り上がりにかける20日から始めたのかはコレもう分かんねぇな?多分キャラの関係性を少しでも書きたかったとかその辺ですね。

ちなみにリンダ・パールは バイオハザード 運命のラクーンシティvol2で出てくる女性医師で設定的にはジルの幼馴染とかいう美味しい設定がありながら劇中だとあんまり活かすこと無く退場する悲しいキャラです、元の設定が少ないから自分で補填していった結果ほぼオリジナルに近い二次創作物と化してしまってるけど、ドラマCD限定キャラ特有の現象だし、仕方ないね。

一応会話枠が多くなり過ぎないよう(単調に見えないよう)努力はしていますが、代償として見やすさが大幅に犠牲になっていると思われます。

原作キャラは大体出したいと思ってます、あと一部原作死亡キャラがオリジナルキャラ恩恵で助かったり助からなかったりするかもしれない。

(基本的に投稿しながら悩むタイプなので投稿速度はあまり期待できないかも)といった惨状ですが。よろしければ見てくだされば幸いです。


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侵食

製材所に遺された遺書

 

 

 9月20日

 

 

あぁ、なんでこんな事になってしまったのか……。

 

 思えば、アニタがアークレイで消息不明になってから気付くべきだったのか……、それともホワイトさんの家で巨大蜘蛛を見つけた時だろうか?

 

 私は見てしまった……、死んだはずのホワイトさんの死体は消えてしまって警察にもまるで信じてもらえなかったが、今なら確信を持って言えるホワイトさんは生ける屍に……ゾンビになってしまったのだ。

 

 ダムの管理所でマーカーさんが言っていたように、ゾンビに傷付けられた人はいずれは同じゾンビになってしまうのだ。そしてダムの管理所に居た変わり果てた人々達、濁りきった眼で此方を見ていたその光景は今でも目に焼き付いて離れない。

 

 街の人々に言って回ったが……アルさんも、ロバートさんも、誰一人として街にゾンビの群れが迫って居ることを伝えても信じて貰えない。

 

だからせめて街の郊外にある、この製材所で奴らを、ゾンビ達を食い止めようと思う。

 

ジェーン、許してくれ……。多分私はお前の元に戻れそうにない。

 

せめてアニタお前だけでも、私の手で……

 

<<此処から先は血で汚れて読めない>>

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 9月20日 20:00 ラクーン郊外の製材所

 

 

 9月も終わりに近いというのにまだまだ空気が暑い……。それに、心なしか蒸し暑くもある。

アニタ、お前が変わり果てた姿で彷徨っているのを想像するだけで私は心底恐ろしい、だからお前の最後はせめて俺の手で決着を付けてやる。

 

 レミントンのグリップを握る手が白くなるまで力を入れていることに気付くと、苦笑いする。

思えば、デトロイトで事故が起きてから周囲の目に耐えられなくなってアニタの故郷の此処、ラクーンシティに戻って来たが今思えばデトロイトの事故の時からこの悪夢は定め付けられていたのかもしれないな。あの時部下からの報告をちゃんと上に伝えてさえいれば……

 

 今更悔やんでも仕方ない。全ては私が巻いた種だ。アニタがゾンビになったのもジェーンが両親を失うことになるのも、私のせいだ、私の……

そんな私の失意を打ち消すように、不快な呻きが木霊する。そしてそれは徐々に此方に近づいてくる、製材の影から目の前から右から左からと濁った瞳と腐った腕を此方に伸ばしながら、更に呻きが大きくなったように思える。

 木々がざわりと一段大きくざわめく、まるで決心しきらず飛び出してきた私を脅かすように、嘲笑っているかのように思えた。

 

数は10か、20か?それとももっとなのか。

 

「此奴ッ!此奴!此奴らぁッ!!」

 

 二発、三発と撃ち続け何体もの血の海を作ってやるが、まるで数が減っているようには見えない。むしろ銃声に釣られ増えているようにさえ見える、ならばと用意してあったジェリ缶を蹴り倒しガソリンを撒いてやる。ジッポを取り出し、ゾンビの群れの中にアニタの姿を見つけると呟く。

 

「サヨナラだ……。アニタ!」

 

 火の付いたジッポが、地面にキスすると同時にガソリンが勢い良く燃え上がりゾンビ共を景気よく焼き払っていく。アニタも……

泣いているのか俺は、目頭が熱くなり視界が霞む。アニタとの日々、家族三人で過ごした日々が炎の中に消えていく。何もかも燃え尽きていく製材も、何もかも。

ジェーンの元に戻らなければ、これからはジェーンの為に生きてやらなければならないのだから。

 

「英雄ゴッコはそれまでにしてもらいたいものね。お馬鹿さん」

 

 誰だ?と視線を背後に向ける前に背中に熱さを感じた。と同時に体が重くなり激痛が走り回る。

痛みに耐え切れず悲鳴をあげる。地面に倒れないように片膝と片手を地面に付き辛うじて体を支える、何故だ?何故、こんな事をと問いながら視線をあげる。

 その姿を見て、私はギョッとした……なぜなら、なぜならそれはジェーンの同級生、腰まで届くであろう艶やかな黒髪を後ろに束ねた少女だったからだ。

おまけにその容姿におおよそ不釣り合いであろう、ボウ・ガンを構えてまるで此方を狩りの獲物を見るような冷ややかな感じと、熱を帯びた眼差しを此方に向けていた。

 

「何故?何故かって?私がそうしたいからよ、それで十分すぎる理由でしょ?」

 言ってから彼女はアハハと笑う、その表情だけ見ればジェーンみたいに無邪気な少女が見せるソレであっただろう。だが、相手の生命の主導権を握りクスクスと笑う彼女の姿はまるで悪魔のそれとしか思えなかった。

 

「心配しないで……?ジェーンも先に行って待っているわ、あの世でね」

 ふざけるな!と虚勢を張ってみせるが少女はクスッと一笑する、そしてボウ・ガンを再び装填すると

 

「おやすみなさい。哀れなラクーンの愚者達」

 それが私の聞いた最後の音だった。

 

 少女がボウ・ガンを男性の額に撃ち込み、トドメとした。男性が力なく地面に倒れ伏すと、少女は男性の亡骸を踏み躙りながら悦に浸る。

それは狩人が哀れな獲物の最後を改めて確認する様、そのままである。

「ホントに馬鹿ね……。所詮ラクーンなんてスペンサーの玩具に過ぎないというのに、貴方達は所詮アンブレラにモルモットとして生かされていたに過ぎないの。今回はそれが()()()()大きくなりすぎただけ。貴方達の命なんて虫けら同様なのよ」

 

 アハハハハと狂気に満ちた声が響き渡る、それはまるでこれからの地獄の到来を教えるかのように。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 リンダ・パールの手記

 

 9月21日 

 

 ここ数日で運び込まれてくる患者の数は増える一方、皆の疲労の色も日に日に強くなっているのがわかる。

重度、軽度に関わらず皮膚の腐敗には活性剤もまるで効果が無い……

 

隔離病棟も満員になりつつある、このラクーン記念病院の対応機能はパンク寸前だ。

そうでなくても医院長が謎の拳銃自殺を遂げて、病院は混乱しているのに。医院長は恐らく、この事態の真相を一部であるが知っていたに違いないと勘ぐりたくなるが、今ではもう確かめる術も無い。

 

兎に角、ローズとボビィが心配ね。後で病室に様子を見に行かないと。

 

<<書き足した跡がある>>

 

今日もまた赤頭を一匹仕留めた、今度は危うくあの長く鋭い爪で切り裂かれる所だった。

でも、代わりに……代わりにローズとボビィが犠牲になった。私の為に、盾になって……

 

あとでエドの所に行ってレミントンを調達しておかないと。

 

<<震えた文字で書かれている>>

 

許して……ローズ、許して……ボビィ。貴方達の無念はかならず晴らすから。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 9月21日 12:00 ケンド銃砲店 地下試射場

 

 

 凄まじい発砲炎と発砲音が射撃場に響き渡る。遅れて手に衝撃が伝わってくる。

もっとも初回は50発程度でジャム、原因をケンドのおやっさんと探して見つけて、唖然とする、やはり無理な改良のせいか僅かなスライド肉厚の狂いがジャムにつながっていたというのだから驚きだ。それを改良しての二回目。

 だが、此奴は良い銃だ。イーグルと同じ口径ながら、銃身は14インチの長銃身で頑丈でメンテナンスの容易なステンレスのボディに尚且つ若干肉厚さによる無骨さが出ているがそれでも艷やかで美しいベレッタのフォルム。コストを度外視した、熟練のガンスミスによるまさに「作品」と感嘆の息を漏らす。

 

「おやっさん、確かに此奴は最高だよ!この威力とこの美しいフォルム!そして何と言っても確実な動作性、100発撃ってもビクともしやしない」

 

俺は心からの賞賛と驚きを隠しもせずにおやっさんに話す。

 まぁもっとも試作銃器のテストの為に、店の地下に小規模とはいえこんなしっかりとした地下射撃場を作っちまうんだから。酔狂だよなぁ。

少しジメッとしてはいるが、コンクリートの空間は適度に広く銃声を適切に拡散する。流石に銃器の専門家だけあって、こういう設備もしっかりと作ってある。

 

「そりゃそうだ。サムライエッジの時の経験も参考にしたからな、バリーの化物エッジを作った時は特に苦労したもんだがな」

ハハハと照れたように笑う。

 

バリーか、バリー・バートン。「洋館事件」を生き残ったSTARSの5人の生き残りの内の一人で、愛妻家で大口径信仰者のガンマニアで釣り好き。ケンドのおやっさんとも良く釣りに行った仲だったか。俺自身もケンド銃砲店に入り浸る機会が多かったから、良く話もした。温厚な人物で気の良いおっさん、洋館事件が起きてからも度々来ていたが。ある日を境にパッタリと来なくなってしまった。

 「洋館事件」では、家族愛をアルバート・ウェスカーに利用されたが、最終的には背いてクリス、ジルを助けた。個人的にはかなり好みの人ではあるな。今頃多分、家族をカナダに送り届けている頃だろうな……そして、3のEDではジルを助けに単身ヘリで駆けつける。

 

 もっともゲーム通りに流れが進むならの話、下手をすれば州軍の包囲網のお陰で駆け付けられない可能性もある。恐らくは23日遅くても24日には州軍による包囲網が敷かれ戒厳令が出ることだろう。

展開通りなら26日にはもう街の機能はほぼ完全に麻痺し、警察もゾンビ共を抑えきれなくなる。そして27日にはラクーン選抜警官隊が全滅する……

 

 全くもって()()()未来予想図だぜ。泣けるよ、全くもって。

 

 

「アナ、聞いてるのか?」

おやっさんが心配そうに此方を覗き込む。

お前さん()()()の撃ち過ぎで、頭にまで反動が来たか?と少しおどけて見せるおやっさんに少し呆れて

 

「ちょっと考え事してただけさ」と返す。

 

それよりとおやっさんが話を変える。

「お前さん、学校の休憩時間大丈夫なのか?」と

 

「あ、ああああああああああああああああ!」

 

少年の絶叫が地下に響き渡った。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 作戦指令所

 

 

 

αチーム隊長ハンクに以下の指令を伝達する

 

 

ラクーン市に存在する我が社の研究施設、ウィリアム・バーキン博士の研究エリアに侵入、博士の所持していると思われるGウィルスのサンプルを奪取せよ。

 

 

サンプル入手の為に、あらゆる手段を用いてでも確保せよ。

 

 

尚、現地のUBCS部隊はバーキンの息のかかった部隊であり容赦は一切不要である。

 

 

また米軍特殊部隊がバーキン博士の保護に動いているとの情報もある、研究所侵入には細心の注意を図ること。

 

 

アンブレラ・ヨーロッパ支部長

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 9月21日 同時刻 ラクーンシティ下水道・アンブレラ偽装研究所

 

 

 

 

一方でラクーンの地下ではUSSと呼ばれるアンブレラの私兵が、異形の右肩に巨大な眼を持った怪物を相手取り命がけのサンプル回収を行っていた……

 

「βチームは二人1グループに別れろ!3方向からヤツを包囲して攻撃する、失敗は許されない!」

ガスマスクと黒の防弾チョッキに身を固めた男達が三方向に別れ、そして正面から側面から背後から銃弾を浴びせにかかるが、まるで効果はなくむしろソレの怒りを活性化させる。

地を割くような咆哮をあげソレは右の巨大な爪を振りかざし側面を、背後に綺麗な血飛沫とグロテスクな肉塊を創り上げる。

 

そして正面に残った二人に突進する。

 

「撃て!撃つんだ!!」

男は恐慌に襲われ、短機関銃(MP5)の引き金を引き絞り怪物に鉛弾を浴びせるが、恐怖からかそれはスプレーショットとなり怪物に雑把な弾痕を残していく。

 

そして当然行き着く末路。つまり「弾切れ」に至る。

カチン。と音が鳴り弾切れを知らせる。

男は追いつめられるように通路端に追い詰められ……そして怪物の爪が振りかざされた。

 

 

 

そして、その影響でネズミ達が破壊されたサンプルケースの中身を摂取し、感染。

 ラクーンの惨劇が表面化するまであと2日……。

 

 




ゆっくりながら時間軸的にはバーキン博士襲撃→Gサンプルの回収に失敗したUSSチームがGバーキンと死闘を繰り広げ、その戦闘の中でウィルスサンプルが破損、それを摂取したネズミによるウィルス拡散が爆発的に始まる。


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予兆

署長の手記

 

 

9月22日

 

 うお仕舞いだ。アンブレラの奴ら私の街をメチャクチャにしやがった!!

直に街はゾンビだらけになる。私だって感染しているかもしれない。

こうなったら街の人間は、一人残らずぶっ殺してやる!!

 

ウィリアム・バーキンは確かに天才だ、だが奴は敵を作りすぎた……

奴のために散々手を尽くしてやったのに、その仕打ちが()()だと言うのか。

忌々しい『STARS』の連中め!元はといえば奴等が、生きて帰ってきさえしなければ

 

そしてあのクソッタレ女の『ジェシカ・E・マッカン』

あの女め、私が「洋館事件」の証拠隠滅の事実をどこで嗅ぎつけたのかしらんが……それをダシに脅迫してきやがった!!

 

幸いRacoon Swat入隊の便宜を図る程度の『軽い』対価で済んだが、奴め私が秘書を『解雇』した事実の真相、私の()()まで知っていやがる。

 

だがそれももうどうでも良い事だ。選抜警官隊も役立たずの警官共も皆殺しにしてやる!!

各署員の配置を分散させ、副署長のアイアンに「余計な」指示をさせないように釘を刺しておけば十分だろう。

無能なアイアンの事だ、私から直接指示があればそれに盲従することだろう。奴が副署長になれたのも私が手を回したお陰なのだから。

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

9月22日 6:00 ラクーンシティ モーテル「Little Mermaid(リトルマーメイド)

 

 

 リガリと吸い殻を灰皿に押し付け

 

「片田舎の街にしては大した規模だな。全く糞田舎のネバダとは大違いだぜ」

 

と呟きながらウォッカを呷る。

 

何時間も掛けた旅路を終えて、彼女がラクーンに着いたのが先程。旅路の疲れを労うように、一杯、二杯とウォッカをあおっていく。

 言葉遣いにしてはどこか知的な雰囲気を持った彼女、ロベッタ・ハロウェイはラクーンシティの繁栄ぶりに驚きながらも、一抹の気持ち悪さも感じていた。

 

「一見、平和に見えるが……キナ臭そうな匂いをプンプンさせていやがる」

 

 特に街の所々で、アンブレラ関連の広告に関連企業などどこを見てもアンブレラ、アンブレラ。まるで街自体がアンブレラ社の所有物であるかのような印象すら受けた。

 ロベッタが受けていた依頼は、極めて簡単なもので「とある重要な物品を()()()()の人達に渡すだけの簡単なお仕事」であり、その仕事のついでにラクーンシティに立ち寄ったもののこの街の異様な空気に、少し辟易としていた。

 

「アークの奴め。アイツには後でタップリお返しをしてもらわないとな」

 昔の後輩であり、今でも交友がある「アーク・トンプソン」から友人に、あるものを渡して欲しいと頼まれて、着いたのがほんの1時間前、チェックイン予定を聞いて改めて後悔したのが先程……

 

「レオン・S・ケネディ殿、到着は9月27日予定だと……はぁ、泣けるぜ。」

 要するにはこの気味の悪い街に、最低でも後5日間はいなきゃいけないって事になる。

 

 仕事が終わってる訳だし、ちょっとした休暇みたいなもんでゆっくりするのは良いとして、この街は()()気に入らない。何が気に入らないかと聞かれれば、答えられる訳ではないが、長年の自身の経験から培われた()()が違和感を伝えてきやがる。

 募る不安と苛つきを誤魔化すように、酒浸りになり、クソッタレ煙草に腹いせのように火をつけ、僅かに吸うとフィルタを噛み潰しさっきしたように灰皿に押し付けた。

 

「あと5日どうすっかなぁ……」

 アーク・トンプソンに頼まれた贈り物、少し大きめの木の小箱に眼を向ける。

 

「アイツもイイヤツなんだが……ちょっとズレてるよなぁ……」

 

 箱の中身には、鈍い銀色に光る無骨な大型拳銃(デザートイーグル)()()()を除けば世界最強の大型拳銃ってか?

ロベッタは自身のジャケットの下のホルスタに収まった「ボーンコレクター」に意識を向ける。

 もっとも……、.500S&W弾 マグナム弾を使用する()()()には及ばんだろうがな、まぁコイツみたいなハンドメイド銃を除けば、間違いなく世界最強か。

 

だからってよ、警官の就任祝いに軍用大型拳銃、送るか普通?

 

 ロベッタは再び思案して、苦笑する。もうちょっと()()()なもの送ってやれよと思うものなのだが、もしかしたらアイツ(アーク・トンプソン)みたいに銃器に興味がある奴なのかもしれんがな。アイツみたいに呑んだくれて()()()かますような大馬鹿野郎じゃなきゃどうでもいいんだがな……

 

彼女はふと何か嫌な予感がしたが、その考えを振り払うように、二本目のウォッカ壜に手を掛けた。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

アビー・ダフの手記

 

 

9月22日

 

 

 

 僚のショーンズが、行方不明になった。

奴の事だから心配ないと思うが、それにしても妙だ。ここ最近における怪奇事件の連発は、ただ事ではない。

 

略奪、暴行事件の多発は街の治安の観点から考えても対応すべき課題なのだが、アイアンズ署長は未だに対策どころかまともに取り合う気配すらない。

 思えば「STARS」の連中が言ってた「ゾンビ」騒ぎってのもあながち的はずれな話でもないのかもしれねぇ、「人喰い病」だとかでそこら中大騒ぎになってる。

 

それに郊外の製材所で起きた「集団殺戮」もどうにも引っかかる、普通一人に対して50人前後が何も抵抗せずただ向かっていって殺されるか?おまけに焼き殺されてるときてやがる、その上で首謀者のニック・アンダーソンは自殺したらしいがこれも妙だ。

 

ソイツはどうやって50人もの人間をあんな辺鄙な場所に集めたんだ?というのと、そいつらが揃いも揃って「行方不明」になっていた連中ってことだ。

 バカバカしい仮設だが、もし正しいなら(ニック・アンダーソン)は何かの拍子で「ゾンビ騒ぎ」に関わり、単独で屍の群れと対峙した。という事になる。

 まぁ、こんなことテイラーかメイヤーくらいしか信じそうに無いから黙っておくが……。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

9月22日 11:00 ケンド銃砲店

 

 

 

「9ミリパラの箱を、120発分。あと12ゲージのダブルオーバック弾を二箱、20発分。それと5.56のライフル弾を120発ほどと、あぁそれに()()の棚に飾ってあるスカウト・ライフル(ステアー・スカウト)を一つ貰うよ」

 

 

腰まで伸びた金髪が印象的なRPD(ラクーン市警)の制服に身を包んだ女性が、あれとこれと、とブティックで服を買い漁る女性のように目当ての商品を買い求める風景はここ(ケンド銃砲店)ではわりかし、日常的な風景であった、が今回は少し様子が違うようで彼女の顔には若干の真剣さと不安が感じられた。

 

「ハンティングにしては、随分と()()()だな?今度はアークレイの噂の怪物退治にでも行くのかい?アリッサ」

 ケンド銃砲店の店主、ロバート・ケンドは普段とは違う彼女、アリッサ・メイヤーの様子に思わず、探りを入れる。

 すると、彼女は急に辺りに警戒し、誰も居ないことを確認すると、ケンドに一際近づき小声で話す。

 

「実はな……店長も最近の怪奇事件というか行方不明事件が増えてるのは知ってるだろ?あれ、署内の一部ではSTARSの生き残り連中が言ってた歩く屍(ゾンビ)の仕業なんじゃないか?って話になってるんだがこの間、遂に同じ職場のショーンズまで行方不明になってな……。このままじゃやばいってんで、知り合い連中は皆自分の身を守るために銃器を買い漁ってるって訳さ」

 私もな。と付け加えると彼女はカウンターに代金を置いた。

 

「警察も案外頼れないって状況は、あんまり知りたい事実じゃ無かったなぁ」と、地下試射場の入り口から声が聞こえた。

 全く、耳の早いボウヤだぜ……とケンドは内心関心しつつ半分呆れながら、スカウト・ライフル(ステアー・スカウト)を棚から降ろす。

「あー……ダリオの所の()()()()坊やか。アナ、下級高等学校(中学校)はどうした?あんまりサボってると留年するぞ?気をつけな。経験者が言うんだから間違いないさ。」

 

 メイヤーは自身の昔を思い出したのか、くすりと微笑しながらアナを脅かしにかかる。あんまり親父さんを困らせるなよ。と一言加えると少年(アナスタージア・ロッソ)がすかさず

 

「今日は休みだよ、メイヤーの姐さん。」と返すが、勿論この場にいる二人の大人はそれがいつもの嘘であることも知っていたので、あえて深く聞かないことにした。

 

それで、とメイヤーが話題を変える。

 

「学校をサボらない()()()が、こんな早くからなんで銃砲店なんかに居るのかな?私としては是非、その理由を聞きたいんだけど?」

 

 メイヤーが、分からないフリをしてアナに疑問を投げる。といったのも、アナとメイヤーが出会った時は良く行われるやり取りであり、ついこの間は二日前(9月20日)の20時頃に同じようなやり取りをしていた覚えがある、とケンドは年齢差と立場の違いを殆ど気にせずまるで()()()であるかのように、やり取りする二人を見ながらそう思案していた。

 

 いつも思うことなのだが、やはりこの可愛らしい少年(アナスタージア・ロッソ)は、子供であるのだが子供であると思えない。訳の分からない事を言ってるかもしれないが、実際驚いたものだ、最初見た時は140cmにも満たない、まるで女の子の様な外見の子供が大人顔負けの知識と技能を持ってるなんて、誰が考えられる?

 後にも先にも50口径の大型拳銃をバコバコ撃って、翌日もケロッとしてる奴が子供なんてとても思えないし、時にあざとかったり妙にやり取りが上手かったりと()()子供なのは外見だけで、中身は結構いい年の大人なのでは無いかとすら思っていた。

 

 そうでもなきゃあ、14ぐらいのその手の稼業(少年兵)でもない、()()()家庭で育った子供がフィールドストリッピングをいきなり出来るか?

 

 と考えるのも一度や二度ではないのだが、その度に馬鹿馬鹿しいとその考えを振り払う。

 

「まさかな」

ケンドは自身の考えをありえないと思うと、それを再確認するように小さく呟いた。

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

エド・サンダースの日記

 

 

9月22日

 

 

 クーン記念病院は今やこの世の生き地獄同然になっている。

例の「奇病」にかかった連中は遅かれ早かれ「屍肉喰らい(グール)」になっちまう。

 

だから「手遅れ」になったと判断された奴から、隔離病棟にぶち込んでいるが……それも限界だ。

リンダの疲労の色も強い、「例の」1件以来リンダは更に思いつめる様になっちまった。

 

ボビィ坊にローズの婆さんが死んだのはリンダの責任じゃないと、本人もわかっているからいるからこそ彼女の決意は尚更堅かった。

 

くそ!!こんなヤバイ所さっさとおさらばしちまおうってのに、リンダが此処(ラクーンシティ)を離れる気がない以上、俺も覚悟を決める他ないようだ。

ああ、くそったれがこれも「報い」なのだろうか?

 

だが、俺だけじゃない皆依存していたんだ。アンブレラ(庇護の傘)に、奴等の庇護を受けることに依存しきっていた、そして今その報いを受けつつあるとでも言うのだろうか、だとしたらこのクソ事態を招いたのは言うまでもなくこの街(ラクーンシティ)全部の人間の責任だ。

 

恐らくこのこの自体はもう差し引きならない状況にもう()()()()なっている、なっちまっている。

 

その中で個人がどれだけ、足掻こうとも無駄なことなのだろう。だが、リンダせめて君と街を生きて出る。そんな細やかな願いくらいは運命の女神も認めてくれるだろう、いや()()()()()()()ならない。

 

クソ売女のクソッタレ女神様に運命の()()を認めさせる為に、いざというときの備えは万全にしておきべきだろう。

 

あぁ、全くこの時()()はバカが付くほどのミリタリーマニア、銃器収集家のジャックが友人であった事に感謝する。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

9月22日 13:00 ラクーンシティ 某所

 

 

「では取引どおりに、確かに商品は受け取りました。」

辛気臭いとある場所、殺風景な地下室。サングラスと黒服に身を固めた、()()()()()男がアタッシュケースを此方に渡す。

 

「今後共お互いに良き関係を維持したいものですね?六山殿」

 

 それは今後、利益になるかどうか次第だな。と六山と呼ばれたトレンチコートに身を包んだ男性は、そう言うと懐から煙草を取り出し火をつける。

 

 六山・春助(ろくやま・はるすけ)は、とある()()()商品を主に扱う貿易商である。

ただそれがあまりにも一部の人々に()()がある為に、その特別な商品を主に取り扱っているに過ぎない。

 それが使われ、ちょっとした痛ましい事件が起きようと彼の知ったことではなかった。

 

「それにしても……やはり、六山殿の納入される()()は、量といい、質といい、我々のニーズを的確に掴んでおられますな」

サングラスの男が、木箱の中に入った商品を手に取り感嘆するように話す。

 

 彼が手にとっているのは一部の()()()地域では需要の極めて高い、突撃銃。それも劣悪なコピー品ではなく、正真正銘のアサルトライフル(カラシニコフ AK47)である、この手の真っ当な商品が、いかに供給するのが難しいか、()()はそれを知っていたからこそ改めて貿易商(武器の密売人)として()()な、六山に敬意と多額の代金を支払ったのだ。

 

「よしてくれ、所詮はただの金に汚い死の商人さ……。オタクらが金さえ出すなら、たとえ地獄でも商品を売るさ。」

 六山は、そう言うと辛気臭い地下室を後にする。一人の()()を後に連れて。

 

 ()()()の稼業では、時に相手が商品のタダ取りを試みることが多々ある。それも一度や二度ではない、今回の取引相手(チャイニーズマフィア)は幸いにして道理の分かる連中だったから無駄骨折にならずに済んだ。

 しかし、商売を長く続けるにはやはりリスク管理が最も重要な課題と言える時には賄賂、脅迫、暗殺、の手法に頼らざる負えない時もある。だから紛争地域で、眼を付けた少年兵を引き取っては育てる。教育を、マトモな飯を、奴等に安定した生活を保証してやる代わりに、俺は奴等に取引を手伝ってもらう。

 慈善でも何でもない、ただお互いにとってそれが最も望ましいからそうしているに過ぎない。そう思案しながら、六山は背後の女性との出会いを回想する。

 

 

 

 

 

 「コロセ!!端から命など惜しくはなイ!!」

 そう、それはとある紛争地域に武器の密輸を行っていた頃だった。戦力の薄い後方地域襲撃とはいえ、襲撃してきた連中は僅かに3人。おまけの3人共、クソガキの少年兵ときてやがった。特にその中でも松田・リコ、いや()()は勇敢だった。倍以上の体格の屈強な男達が、的みたいに次々と撃ち倒され……そして、ヤツが突撃銃(カラシニコフ)を、ヤツ自身の身長のほぼ半分ぐらいもあるソレに付けた銃剣を振りかざして、俺を獲物に選んだ。

 その時俺は本能的に理解する、コイツこそが俺の求めていた()()()なのだと。だから、わざわざガバメント(ハードボーラー)に頼らず律儀に銃剣の脅威に立ち向かって、最終的には()()()()()()()()()()()()()手に入れた。

 引き取って以降も、ヤツは隙あれば俺の命を狙った。当然だ。ヤツの家族が死んだ遠因は俺の稼業のせいなのだから。だから、その度にあしらい力関係を()()してやる。骨は折れたものの長い年月(ほぼ10年近い期間)をかけて、ようやく()()は、松田・リコに()()()

 

 

 

 

 

 そんな六山の視線を感じたのか、彼女、セミロングの黒髪に赤眼が印象的な女性。松田・リコは、六山に視線を向けた。思えば、リコにとっても俺との関係は何か特別なものであるのだろう、()()から()()へ、()()から()()()()から尊敬へ。

 

 感情というのは時に道理というものを、度々無視する。だからこそ、人間が人間足りうる。リコが、憎悪を尊敬に変えたのは俺にとってもリコ自身にとっても幸いな事だった。お陰で、()()()()()を迎えずに済んだ。だが、リコにとって「ヤツ」だった頃の「自身」は、()()遠くない存在らしい。

 闘争がリコの中の「ヤツ」を呼び覚ます、生命のやり取りだけが「本来の」リコを呼び戻す。だからこそ、リコは憎悪を尊敬に変えることが出来たのだろう。「ヤツ」を「松田・リコ」で抑えることによって、「感情」を「理性」が抑える事を認めたお陰で、リコはとりあえず社会に適応出来ている。

 これも「ヤツ」の生存能力の一端が発露したものなのかもな。と六山は自分なりの結論を付けると、もう一本煙草を取り出して咥えた。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

9月22日 22:00 ラクーンシティ アップタウン某所

 

 

「呑んだくれてなきゃ、こんな辛気臭い街にあと4日も居られるかってんだよ」

 ラクーンシティの南部、エナーデイル通りを挟んだラクーンシティの中央市街地の南側であるダウンタウンを当てもなく、ロベッタ・ハロウェイは歩いていた。

 9月の終わり特有の暑くも、湿っぽくない風がロベッタの酔いを和らげる。

 

 ウォッカ特有の癖の少ない、引きずらない酔いは彼女の思考をより鋭いものに変える。つまるところ今の彼女にとって気になるのは、モーテルに付くまでに感じた街全体の違和感であった。

 

 確かに街自体は規模に対して過剰であるほどに繁栄している、10万人規模の街にしては整備された主要な幹線道路に、大規模なフリーウェイまで。ソレに対して、市外へはハイウェイ一本といった交通の便の悪さも気になる。なにより、極めつけは「原子力発電所」である。こんな小規模で、他の都市に電力供給をしている訳でもないのに、だ。少なくとも片田舎の都市にしては充実しすぎている、これが産業の主要地ならわかるが、ラクーンにおいてはアンブレラの工場を誘致した程度で、その他に目立った産業があるわけでもない。

 

 では、その「投資元」のアンブレラ・コーポレーションが、この片田舎の町(ラクーンシティ)にここ迄過剰な投資をする理由は?アンブレラの様な「ガリバー企業」にとって、ラクーンの様に誘致を受け入れる街は多くある筈、その中でも特にラクーンを重視するのは何故なのか?

 

 そしてそんな多大な恩恵を与えているアンブレラの事に対して、街の人間が総じて深くを話したがらないのは?

 少なくとも、この街にはアンブレラに対して一概に感謝の感情のみを抱いている人間は少ないと感じた、それに加えて、街の各所で噂になってる「行方不明」と「歩く死者」の噂……。

 

 この街で何が起きようとしているのか、ロベッタの興味は自然とラクーンに渦巻く事件性に惹き付けられた。

 考えれば考える程、彼女の意識は街の不快さよりラクーンシティの持つ、()に惹きこまれて行く。彼女自身は気が付かなかったが、事実としてロベッタは、彼女自身が本能的に望む闘争へと自らその身を飛び込ませたのだ。

 

 薄暗く、人気のなさそうな裏路地にロベッタはふと眼を凝らした。僅か、ほんの僅か、意識しなければ見逃してしまう様な変化。薄暗闇の中で人のような()()が動いた事に気がついた。

 

「よくあるホラー映画なら、コトの始まり前の()()()犠牲者ってか?」

 

 ロベッタはふと最近見た、歩く死者の映画の内容を思い出し笑う。現実は小説より奇なりとはよく言ったもんだが、そうそう台本で決まった通りに事件が起きるかよ。と、ジャケットの懐、「手前の方の」ホルスターに手を伸ばすと手慣れた手つきで拳銃を取り出す。

 

 ベレッタM92F、9ミリパラベラム弾を使用するこの拳銃は官民問わず、アメリカの幅広い人々に知られた傑作拳銃である。

 9ミリ拳銃弾の威力は十分に対象を無力化しうるものであり、さらにベレッタ自体も信頼性が高く何より弾薬の入手が比較的容易であり、反動も控えめな為扱いが容易である事が、バックアップガンとしてロベッタがこの拳銃(ベレッタ)を信用する理由であった。

 

 .500S&W弾 マグナム弾を使う「ボーンコレクター」では基本的にオーバーキル、レミントン・デリンジャーはあくまで取り回しが効かない場所での使用、44マグナム(S&W M29)やパイソンはどっちも過剰威力、そして45口径のガバメントをバックアップガンにするとなると今度は()()という装弾数の少なさが、心配どころになる。

 そこで目を付けたのがベレッタという訳である。別にブローニング(ブローニング・ハイパワー)でも良かったのだが、2発の差は案外バカに出来ないものであると考え、ベレッタに行き着いたのである。

 

 フォルムの美しさならブローニングも悪くは無いんだがな。と、抜き放ったベレッタを見ながら思う。

 

「誰か居るのか?」

 

 ロベッタは、ベレッタを構えながら薄暗い裏路地をゆっくりと進む。

 

「あぁ……糞が、こんな事ならマグライト(警棒)を持ち歩く習慣を付けとくべきだったな」

 

 薄暗く視界も禄に確保できない裏路地の不快さを実感しながら、ロベッタは毒づいた。実際、相手が敵意ある襲撃者なら彼女が相手を認識しずらい環境にある今の状態は、極めて好ましいものであったから。

 

 そして路地の中間辺りまで来たところでようやく()()に気付く、何かを啜るような音と暗闇で複数の何かが地面にかがみこんで何かをしている場面に。

 丁度その時だ、雲に覆われた満月がその暗闇から開放されて明るい月光を照らしだしたのは。

 ロベッタの持つベレッタを満月の光が照らし、その漆黒の滑らかなフォルムに一際の美しさを付与する。

 

 そして、同時に路地にいる異様な集団の全ても照らしだした。少なくとも事態の大まかを判断するようにするには十分すぎる光だった。

 

「オゥ……Holy Fuck(マジかよ、糞ったれ)

 それはまごうことなき人間だった。顔の半分が爛れ腐ったようになっていて尚且つ、口に地面に倒れているであろう哀れな犠牲者の内蔵、肉を詰め込み、その上で口の周りどころかシャツの前面に乾きかけの血をこびり着かせていた事を()()()

 

 アゥゥと此方に気付いた亡者が、呻き声をあげながら此方に手を伸ばす。それに釣られるようにそばに居た()()の亡者も立ち上がると、此方に手を伸ばしながらゆっくりと歩みを進めて来る。

 

「オーケー……。そこまでだ!止まりな、糞ったれのヤク中ども!!」

 

 ロベッタは状況を再確認するように、まず警告をしつつベレッタを構え直す。幾ら、幾多の()()をやってきたロベッタでも死者が歩くなどといった現実を見たまま、信じることなど出来なかったからだ。いや、信じたくなかった。理性がそれを拒否した。真っ当な常識から考えてありえないからだ。

 

 そして一発を先頭の禿げた頭の亡者の左足に、続いて右足に撃ち込む。ベレッタが銃弾を吐き出す度に遅れて9ミリの排莢がカランと壁に跳ね返り地面に落ちる。

 が、亡者は一瞬だけ足を止めたものの再び何事も無いかのように歩みを再開する。まるで痛覚が存在しないかのように。ただ、目の前の新鮮な()()を捕まえ、貪る事以外には全く興味がないかのようにすら思えてくる。

 

 実際に目にする「非現実的な現実」をようやく飲み込むと、ベレッタを三発。亡者の腹に素早く撃ち込み、それでも変わらず此方に歩みを進めるのを()()した彼女は、遂に照準を頭に向け、確実に一撃を撃ち込み、ハゲ頭の亡者が頭に開けられた銃創を理解しない内に力なく倒れると、ロベッタは直ぐにこの「不愉快な居住者」に対する対処法を理解した。

 

 7発、8発。と続いて後ろに居た歩く屍(ゾンビ)に永遠の安眠を与えてやり、ふぅと安心した様にロベッタは息をついた。

 

「アークの野郎……。頼みのお返しは2倍返しにして返して貰うからな」

 自身を落ち着かせるように、()()()()事を呟き、懐のスキットルを取り出すと一気に煽るようにして飲む。ウォッカのアルコールがすっかり覚めた彼女の酔いを再び呼び覚ます。だが、発砲したベレッタの感覚が先ほどの出来事が現実であったと教えていた。

 

 先程の「出来事」に釣られたのか、十字路のおおよそ中央に居るロベッタを囲むように、()()()()のある低く不快さを煽る呻き声が何十にも重なる。

 

 「今日はツイてる、好きなだけぶっ放してもお咎め無しってのは最高だぜ」

 明るい青の瞳と肩まで伸ばした黒髪が印象的な女性、ロベッタ・ハロウェイはもう一丁のベレッタをホルスターから抜くと、両手をそれぞれ異なる路地に向けながら愉快そうに呟く。

 それは、彼女がこの狂った事態に対して「いつもの荒事」と大差ないと、今起きているこの状況が現実であると受け入れた証明である。

 

 ベレッタは右が残り8、左が16……。糞ったれのゾンビ共はおおまかに考えても2,30……?予備のマガジンがそれぞれ1つずつ、予備弾は30発。

 少なくとも重機関銃を持ったイカレチャイニーズマフィア相手に、単身戦った事を考えれば楽勝すぎる状況だな。

 

 そして彼女は狂った現実に対応するために、両手に握ったベレッタの感覚に身を委ねた……。

 

 

 この日、ロベッタ・ハロウェイは恐らくラクーンシティで生きている誰よりも早く、この事態に直面し理解した。そう、STARSの生き残りである「ジル・バレンタイン」、ダリオ・ロッソの息子である「アナスタージア・ロッソ」を()()()

 

 

 

 ラクーンの夜は、平穏な日々に縋り付く人々を、嘲笑うように深くなり、そして明けていく。

 ラクーンシティの惨劇まであと一日……。

 

 




ようやくバイオらしい(?)
ゾンビとのマトモな初遭遇です。正直戦闘描写は、稚拙も良いところなので描写が上手くできているかどうかは不安な所であります。

ちなみに作中でも、度々かいてあるように。登場する二丁拳銃スタイルのロベッタ女史は、アーク・トンプソン(GSの主人公)の先輩分として位置づけています。アーク自身、かなり謎の多いキャラなので、ボイスCDキャラ共々設定をオリジナルを関連付けやすいといった利点は良いですね。

あとこの時代(1998年)では、まだ本来.500S&W マグナム弾を使用する「S&W M500」は存在しないので代わりにロベッタさんの「ボーンコレクター」はガンスミスによって作られたオーダーメイド品、ワンオフ品(二丁あるけど)といった位置づけで存在しており、マグナム弾自体もロベッタのハンドロード弾といった扱いです。

威力的にはデザートイーグルも上回る威力と反動を持つ、大型回転式拳銃ですね。絵柄的に大口径の大型拳銃を撃たせたい(個人的性癖)といった願望で生み出したキャラと代物ではあります。

(ORCだとステルスまであるゲームで時代検証で登場する銃器に制限をかける事に意義があるのか自体は、ぶっちゃけ自分なりのこだわりです。)

更新は比較的遅めであると思いますが、暇があればみていただければ。幸いです。では


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第二章『ラクーンの日没』
発生


―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

9月22日 23:00 ラクーンシティ ダウンタウン  ダリオ・ロッソのウェアハウス(倉庫)

 

 

 「いよいよ、明日か。」

 TシャツにGパンのラフな格好の少年が、ガンオイルで手を汚しながら呟く。

 長い黒髪をサイドポニーに纏めた。一見少女のような外見、そして140cm未満という年齢(14歳)に不相応な低身長から無力な子供といった印象が拭えないが、その内情は「その手の稼業顔負け」の銃器に関する知識、「年齢不相応」な冷静な状況判断力、「見かけ」と釣り合わない持久力・身体能力である。

 

 少なくとも「身体能力」の面においては低身長から起因する極端なコンプレックスが大きな要因の一つであったろう。と、()()昔の記憶を持っていなかった頃の自身の記憶を回想しそう結論づけていた。

 事実、「俺」が「私」になる前から「異常な」負けず嫌いと向上心が存在しており、お陰で「異常事態の訪れる未来」が分かっていても()()()人々に比べて、冷静でいられる。その点に関しては、「俺」の資質に感謝してもしきれない。

 

 異常な低身長を除けばな。と付け足す、アナ(彼女)にとって「前世」では比較的高身長でありどちらかと言えば「見下ろす側」だった彼女にとって常に「見下ろされる側」になるのは、異様な経験であり、尚且つ屈辱でもあった。

 ただ「住めば都」とでも言うのか、()()()が「出会うと」身体能力を伴った低身長はそこまで深刻なデメリットでは無い。と再認識した。

 

 特に大人では入れない場所に自由に入れるのは大きなメリットであるし、基本的に手傷を「受けてはいけない」事になるラクーンシティ事件においては()が小さくなることは願ってもない利点である。そして、小さな体にありがちな非力さが解決されているというのは実にありがたく、またパワー厨(45口径信者)であるアナにとっては、大口径の銃器を、「非力」といった制限で扱いづらいという()()()()欠点が無いことは極めて好ましいことであったからだ。

 

 やっぱり低身長による、小銃等の扱いづらさはついてまわる訳だが……。と、最終的には低身長のデメリットに立ち戻ると、アナは首を振ってその考えを振り切る。

 

「デメリットはオツムを使って解消するもんだし……まぁ、困難は目標(生存)を素晴らしくするための香辛料みたいなもんだ、ろっと。」

 

 水平二連の散弾銃の銃身を適度に切り落としながら、アナは独り言を呟く。

 ソードオフ・ショットガン(ブームスティック)の個人作製は()()犯罪なのだが、今は法律だの四の五の言ってる余裕はない。生き残ったら、州法の順守くらい()()しよう。

 

 のこぎり(糸ノコギリ)で切り落とした銃身先端のバリをとりながら、楽観的に考えようとするアナ。今の()にとっての救いは、銃器が入手しやすい合衆国に生まれた事であったろう。……最も、合衆国(ラクーンシティ)に生まれなければ現在のような苦労を払わなくて良いのだろうが。

 

 親父(ダリオ・ロッソ)が、倉庫の経営者であったのも幸いだった。お陰様で、今行っている様な内職(悪巧み)が易易と行えるのだから。

 そう思いつつもアナは反面、父親が実は気付きつつも見逃しているのではないかとも思う。自分の子供が、毎日毎日夜遅くまで戻ってこないなどといった現象にいつまでも気付かない親など、居るはずがないからだ。それが、片親なら尚の事である。

 

「……それにしても。」

 

 それにしても、こうして過ごしてみれば非日常(バイオハザード)前の世界(ラクーンシティ)にも中々良いところがある。

 

 少なくとも「生きている」ロバート・ケンドのおやっさんや、「生きている」姉貴(ルチア・ロッソ)親父(ダリオ・ロッソ)()()、その人柄を知るなどと「この世界」に生まれ落ち(転生)なければ一生縁の無い事だったろう。

 

 カシャリとベレッタのスライドを引いては、離し、引いては離しを何十回程繰り返しながらアナは考えた。

 パルクールはウンザリする程やり込んで、身長以外なら身体能力に不安はない……。ゲーム内知識のお陰でどんな糞クリーチャー相手でも立ちまわってみせる自信もある。

 だが、この根底に残る不安感は何だ?……いや、分かっている。

 

 最悪の事態。つまり親父や姉貴が、歩く死者の仲間入りをした時……()は、それを撃てるのか?引導を渡せるのか?家族として、ゲームプレイヤーでは無い「リアル」の身で、動揺せずに。確実にトドメを刺さなければならない、出来なければ、覚悟がなければ生き残れない……!!

 

 アナにとっての一番の懸念は「家族」がゾンビ共の仲間入りを果たした時の事だった。それが、執念深いデクノボウ(ネメシス)に目を付けられた時の事でもなく。または、生きとし生けるもの(依り代)全てを「自身」に置き換えれるイカレ女科学者に出会った場合でもなく、もしくはレオン・S・ケネディの様な「主人公」がラクーンに降り立たなかった場合の事でもなく。

 

 

 「それ」を懸念したのは、アナがゲームプレイヤーとしてではなく「この世界の住民」として生まれ変わった証明なのだろう。「家族」の存在が、たとえアナ自身を過酷な死地に招こうとも、絶望を突き付けようと、()()がその小さな歩みを止める事は無い。ダリオ・ロッソの()()として「アナスタージア・ロッソ」として、生を受けた以上は、それが()()()の与えられた役目なのだろう。例え糞ったれの神様が、胸クソ悪い企みを企てていようとそんな事は些細な事だ。

 

 諦めが人を殺す。だから、諦めない。諦めない事で、死地に活路が開けるのなら。喜んで、死地でも何でも駆け抜けてやる。

 

  

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

9月22日 24:00 ラクーンシティ アップタウン某所 裏路地

 

 

 

「腐れゾンビ共め!俺を食いたきゃ、1()()()単位で来るんだったな!!」

 

 常軌を逸した事態に気力を保つ様に、彼女(ロベッタ)は吠えた。

 最後の一体に対して、走り、そして大きくジャンプすると同時にゾンビの顔面に向かって強烈なハイキックを叩き込む。衝撃に堪らずそのまま倒れたゾンビの頭部を間髪入れず、勢い付けた右足が追撃すると、グシャリといった鈍い音と()()感触と共にゾンビの体が二度三度大きく痙攣すると「二度と動かない」屍となった。

 

「くそっ!!くそっ!!」

 裏路地に所狭しと、横たわる()()を見回して毒づく。

 何が、何が楽勝だ。コイツはとてもじゃないが割に合いそうにない()()だ。少なくとも二丁拳銃(トゥーハンド)にはちと荷が重すぎる仕事だな。

 

 汗でぐっしょりと濡れたTシャツを指で肌から引き剥がすように引っ張る。額にも大粒の汗が流れ、疲労の色を強く伺わせる。そして、肩まで伸びた黒髪もボサボサと乱れ無残な姿を晒す。

 

「あぁ……兎に角、ここから離れなきゃな……。ポリ公に()()()時間をとられる訳にはいかねぇしな。」

 ボサボサの後ろ髪を、ジャケットから取り出したヘアゴムで一本結びに纏めた彼女は自身に言い聞かせるように歩き出した。相手が例え死者であっても、このアクシデントの説明はかなり労力を割く事になる。

 頼りの二丁拳銃をとりあげられ、せせこましい留置場で亡者共の群れに取り囲まれる「楽しい」未来を迎えるなどロベッタにとっては論外であった。

 ただ、この(ラクーンシティ)が「今更」捕らえた獲物を逃してくれるとは到底思えなかった。

 

 ……だから、だから彼女はさらなる悪夢に立ち向う為にまずは「相棒」の()()()()()をする事に決め、フラワー通りを目指して歩き出した。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

9月23日 0:30 ラクーンシティ フラワー通り ケンド銃砲店

 

 

拗なブザー攻撃に、ロバート・ケンドの睡眠は「制圧」された。こんな非常識な時間に訪ねてくる来客など、大抵ロクでもない類に違いない。

 ケンドは、睡魔で閉じそうになる目蓋に言い聞かせるように目を擦る。非常識な時間に訪れる相手に、対しても接客を忘れないのがケンドの「信条」の一つだった。

 

 2階の住居スペースを降り、1階店舗スペースへと降りると電灯のスイッチを入れ店の正面入口を解錠し、開ける。

 

「生憎とこの時間帯は、営業時間外なんだがね」

 ケンドは睡魔を隠すようににこやかな表情を作りつつも、「非常識だぞ。」と遠回しに言い釘を刺す事も忘れなかった。

 

「悪いね……。少しワケアリなもんで、なりふりかまってられないのさ。」

 疲労の色を隠しつつも、体をドアに半分預けながらもはっきりとした声で非礼を詫びながらその黒髪の一本結びと、ジャケットの下に覗いた重圧な二丁の回転式拳銃が印象的な女性、ロベッタ・ハロウェイはそう告げた。

 

 確かに、ワケありって訳だ。ケンドは、店内に入るよう促し彼女が入ると周囲を確認し、再び扉を施錠する。

 

「コイツが、腹ぺこなんでね……。」

 ガチャと音を立てて、弾切れ(ホールドオープン)した二丁の拳銃(ベレッタM92F)がカウンターに置かれる。

 

「……」

 ケンドは、大体の事情を察した。ここ最近の治安の悪さと、目の前の女史の疲労度合いから考えるに恐らくその想像は間違っていないだろうと思えた。

 弾薬棚から9ミリ弾を取り出すと、4箱を置いた。

 

「それと……、連射が効くうってつけの拳銃が欲しい。……できれば二丁。」

 カウンターに置かれた9パラ箱を乱雑にひっくり返し、ベレッタのマガジンに装填しながら彼女はそう続けた。

 

「厄介事でもおっ始めるのかい。それとも、()()体験済みか?」

 ケンドはそれとなくだが、遠回しに彼女が体験した事を探る。だが、彼女はフフと微かに笑うのみで答えなかった。

 そのかわりに、()()()()()()分厚さの細長く、小さな封筒をカウンターに置き、再び

「あまり時間をかけたくない。詳しくは詮索しないでくれると助かるんだが……」

 やんわりと言いながらも彼女の瞳の鋭さが増す。

 

 やっぱりワケありって所だな。ケンドは大方予想通りの反応に多少満足して、ソレに応えるように店内奥から二丁の拳銃を持ってきた。

「元は()()()特殊部隊向けに、納品する予定だったんだがね……。生憎と納品予定が無くなったもんで、処分に困っていた所さ」

 その二丁の拳銃は、グリップの部分に真新しい木製グリップがはめ込まれておりベレッタをロングバレル、ロングマガジン化したような見かけにフォアグリップを備えた造形にロベッタは、直ぐに気付いた。

 

「M93Rとはね……、さしずめ納品先はこの街の特殊部隊、だろ?確かSTARSとか言ったか」

 察しが異様に良い来客に驚きながらも、そうだ。と返し9パラ箱を何個かと、M93Rの予備ロングマガジン2つをカウンターに置いた。

 

「フルオートモデルだ。そのじゃじゃ馬を上手く使ってやってくれ?」

 ケンドはそう言いながら、それとなく裏口を示す。

 その忠告を聞くと彼女はニィと笑い、心配ないといった仕草をすると()が済んだ店内から鍵の()()()()()裏口から店舗を後にした。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

9月23日 10:00 ラクーン高等学校 

 

「知ってまして?()()昨日、大勢人死が出たそうですわよ。」

 各クラスルームに隣接する廊下を二人の少女が歩きながら、腰まで届くであろう後ろに束ねた艶やかな黒髪が印象的な少女は、愉快そうに金髪の少女に話す。

 

「人の不幸を、喜ぶのは品性が下劣な証拠でなくて。」

 

 煩わしそうに黒髪の少女に返事を返す金髪の少女は、尚も距離を詰めようと身を寄せてくる黒髪の少女から距離を離すように身を捩る。

 

「宮子、貴方のコミュニケーションは毎回距離が()()()()の。残念ながら私、そっちの気は無いのですの。」

「あぁ……そう言わないで。私の愛しのアンナ、貴方がどう思っていても私の最愛の人よ。」

 

 構わず、距離を詰めてくる宮子の手を掴むと自身から逸らすように引き剥がす。

 

「私はしつこい人は好みじゃないの、お解りかしら?」

 チッチッチッと人差し指を振ってみせると、アンナが歩き出す。

 すかさず後を追いかける宮子が、話題を変えるように再び話しだす。

 

「聞く所によると、今度は人気の無い路地で30人以上の人達が死んでいたとか」

 アンナが、興味を惹かれるように視線を宮子の方に向けると、宮子は満足して続ける。

 

 曰く、その殆どが行方不明になっていた人々である事、そして大部分の死体が「腐乱死体」の様に、腐敗していたこと。

 それが本当ならば、腐敗臭で誰もが気付くだろう。ましてや何十人規模の腐乱臭である、気付かないはずもないだろう。場所は、アップタウンの大通りから少し外れた路地である。尚更、おかしいのだ。

 もし、現実であるなら「腐乱死体」が歩いていた事になる。ありえない話だが、かといって一晩の内に誰かがそんな大人数の腐乱死体を放置するのも「非現実的」だ。

 

 「―――っ!」

 尋常ではない様子の悲鳴が、飛び込んでくる。場所から察するに、階段側の……三年クラス(先輩クラス)の方だ。

 

 アンナは、上着の下に隠したホルスターの中身に意識を向ける。本来なら、当然持ち込み禁止だが最近の物騒さから護身用に携帯していたのだ。

 

「アンナ?」

 宮子は、その紅い瞳を不安そうに歪めながらアンナの方を見ている。

 そんな宮子の様子に少しだけ可愛げを感じたのか、宮子を安心させるように微笑し

「大丈夫よ、宮子。貴方は、何があっても護るから」

 宮子に軽いウィンクをすると、アンナは宮子を後ろに悲鳴のした方へと急いだ。

 

 

 

 地獄だ。形容しがたい惨状を目にしたアンナが、第一に感じた事はそれであった。

 

 

 比喩ではない「文字通りの」血の海に浮かぶ、指、耳、内蔵または体の一部。あたり一面に、広がる「何か」に食い散らかされた肉片と、人()()()肉塊。そして、ソレらを食い散らかしたであろう、犯人である生徒の姿……いや、どろりと濁った瞳と口を始め衣服前面にべっとりとこびりついた血、それに構わず一心不乱に人肉を食い散らかす姿は、人と言うのは憚られる程。そのような「食人鬼(グール)」と化した多数の生徒がクラス内での惨劇を()()()()()いていた。

 

 あるものは逃げようとする男子生徒に後ろから追いすがり、背骨諸共内蔵を引き出しては美味しそうに頬張り、またあるものは女子生徒に馬乗りになると目玉を抉り取り「ぐちゅり」と音を立てながら咀嚼している。

 

 そして最もおぞましいのは、食い荒らされて間もない一部の生徒の亡骸が「食人鬼」達と同様に血肉を求め、動き出した事だった。

 

 上半身だけの男子生徒の成れの果てが、此方の血肉を啜ろうと這いながら呻き声を発する。

 その呻き声に釣られるようにして、他のグール達も此方に視線を寄せ始めた。

 

「ヤバイわね」

 宮子の手を引いて走りだし、手慣れた手つきでホルスターから銀色が特徴的な愛用の拳銃(Cz75)を取り出すと宮子に追い縋ろうとする食人鬼の頭部に二発、撃ち込む。眉間に的確に命中した二発に満足しつつ、走り続ける。

 やはりチェコ製は良いものね。共産主義者は嫌いだけども……。

 祖国の現状に不満を抱きつつも、自国製品の優秀さには素直に感動していた。

 

 教室にさえ戻れば。アンナは自身の大きな()()()()()の事を考える。

 ()()さえ持てれば、なんとか切り抜けられる。

 

 先程の()()はどうやら多くのクラスルームで起きているようで、廊下越しに()()にされる生徒たちの姿が見えた。

 中には、此方に気付き救いを求めて手を伸ばす生徒も居たが、それも直ぐに力尽きる。

 

 行く手を遮るように()()のグールが硝子を突き破り、飛び出す。

「ええい!次から次へとッ!」

 

 宮子を庇うように、アンナが前に立ちしっかりと拳銃(Cz75)を構えると、二発、三発と素早く射撃しグールを倒していく。

 しかし、銃声に誘われるように集まってきた生徒の()()()()()達に前後を塞がれだした。アンナだけなら兎も角宮子を連れた状態ではとてもではないが切り抜けられそうに出来ない。

 

「万事休すか……だが、匙は投げねぇ!!」

 Cz75を右手に、左手で腰元のナイフケースから大きなファイティングナイフ(刃渡30cm程のナイフ)を取り出したアンナが、周囲のグールに向かい構える。

 

 伸ばされる手をナイフで切り落とし、宮子を庇うアンナに対してグール達が一際大きく呻く。まるで食事を邪魔された事を非難するかのようだ。

 多勢に無勢と、アンナが押され始めると、あっという間に宮子と袋小路に追いつめられてしまう。

 

 パァン!

 

 突然、先頭のグールの頭が弾ける。遅れて銃声が響き、同じように続けて、次々とグールの頭が弾け飛びグール達の群れに割れ目が出来上がる。

 

「走れ!!」

 

 赤のウルフショートの少女が、大声で此方に叫んでいる。手にはボルトアクションライフル(レミントンM700)が、握られている。

 

 すかさず宮子の手を引いて抜けようと駆け出すアンナ。しかし、不注意からか先程流れだした血に足を滑らせバランスを崩す。普通の人にとってはそれは気付かない程、些細な事であったが今この状況においては、()()だ。

 

 

 グールの一人が、アンナの首めがけて噛み付こうと飛びかかり、バランスを崩した態勢から立ち直ったばかりのアンナにはそれを避ける余裕は無かった。

 しかし、噛まれたのはアンナではなくアンナを庇った宮子だった。直ぐに噛み付いたグールの首をナイフで切り飛ばすと、宮子を抱きながら走り抜ける。

 宮子の首の傷は深く、鮮血が次々と流れだしアンナの上着を赤く染めていくが、構わずアンナはウルフショートの少女に続いた。

 

 とりあえずは屍肉喰らい共を撒き、人気の無い場所に着くとゆっくりと宮子を地面に降ろす。

 宮子の白く美しい肌は、更に白さを増し血の気が殆ど無くなっていた。どう見てももう手遅れだ、アンナは悔しさに歯を食い縛る。

 

「アンナ……泣かないで……。私は……貴女の事……」

 残った僅かな力で伸ばしてくる手をアンナは両手でしっかりと掴む。その反応に満足したように、宮子は息を引き取った。

 

「気の毒だが……。悲しんでる暇は無いぜ」

 ウルフショートの少女が、感傷に浸っている暇は無いと言わんばかりに此方を見る。

 分かってる。そんな事は、言われなくても。反発したい気持ちを抑えて彼女の提案に頷きつつも、教室に寄りたいと伝えた。

 

 

 

 ひしめくグールの眼をかいくぐりながら、アンナの教室までたどり着くと他のクラスと()()惨状に見舞われた教室には目もくれず、自身の楽器ケースに走り寄る。

 

「ジョーダンだろ?んなモンとるために命賭けてたってのか」

 呆れた様子の赤髪の少女に目もくれず、アンナは楽器ケースの鍵を開け始める。

 

「あぁ!糞が、やっぱり見つかったじゃねぇか!!」

 赤髪の少女が盛大に毒づきながら、左肩に掛けたショットガン(モスバーグ)をぶっ放す。散弾になぎ倒されるゾンビに構わず更に後ろから新たなゾンビが前に進んでくる。

 

 弾切れしたモスバーグの代わりにベレッタを構えようともたつく少女にゾンビが飛びかかる刹那、ゾンビが盛大に後ろに吹き飛ばされる。

 

「イカれた相手にはイカした武器で立ち向かわねぇとな!!」

 背後に近寄るグールを手にした剣のようなモノで切り裂くと、アンナはそう叫ぶ。本来剣には備わっていない()()から立ち上る硝煙を伴いながら、堂々と銃剣(ガンブレード)を構えたアンナはグールの群れに突っ込んでいく。

 

 高振動粒子の刃が、ゾンビ達をバターの様に切り刻みながら、内蔵されたショットガンによる射撃で、その後ろのゾンビもミンチに仕上げる。宮子を失った怒りに身を任せたアンナは、そのガンブレードでまたたく間にゾンビの集団を肉塊の()()につくりかえた。

 

「なるほど……大した楽器だな。」

 赤髪の少女はゾンビ達()()()肉塊の山を作り上げたアンナを見ながら、率直な感想を放った。

 

 そしてアンナの闘志を打ち砕かんと、アンナ達の居る教室を取り囲む様にゾンビの群れが続いて来襲する。

 だが、彼女の闘志は萎えるどころかむしろ益々増していく。

 

「かかってきな!腐れゾンビ共!!」

 彼女が、ゾンビ達に向かって吠えるのと彼ら(ゾンビ達)が二人を貪り食わんと突進したのはほぼ同時だった。

 

 




はい、今回も趣味全開の話構成です。

強気な銃剣使いのお嬢様出したくてわざわざ高校視点をパンしただけです(無計画)

デザイン的にはPE2のガンブレードをイメージしてもらえれば。
とりあえずやっとこさラクーン崩壊への序章らしく、ゾンビ達の出番も増えてきますね。文章力の無さ、浮き彫りにならないかヒヤヒヤしながら文章書いてますが、楽しんでもらえれば幸いです。では


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発生『活気に満ちた街で』

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 の日は、前日(22日)の陰鬱な雰囲気とは異なり、ラクーンシティは活気に溢れていた。

 この日ラクーンシティの有名フットボールチーム「ラクーンシャークス」がラクーンスタジアムにおいて、試合を行なうからだ。市外からも多数のファンが、到来しスタジアム全体が活気と熱気に包まれ、人々は一時の不安を忘れていた。

 

 市内の各所で発生し始めた、狂乱がスタジアムに伝播するまでは。

 

 発端はほんの些細な出来事だ。観客の一人が突如「暴徒化」し、多数の観客を負傷させた。これだけならば、よくある「熱心な」ファンの行き過ぎたチーム愛が招いた不幸な事故だったかもしれない。だが、現実には……

 

 

 

 

 

 

 

9月23日 12:00 ラクーンスタジアム

 

 

 

 の日、アリッサ・メイヤーはラクーンスタジアム・市庁舎付近のパトロールに駆りだされていた。

 本来は殺人課の彼女が、市内パトロールに駆りだされたのは20日以降からの急激な治安悪化によるR.P.D.(ラクーン市警)の人員不足に依るものである。ただ、アリッサには不審に思う点が幾つかあった。

 まず第一に署長の後手後手に回り続ける対応、ラクーンシティ全体で考えて非番警官も総動員して事態の収拾に当たって然るべき事態である。ましてや、市内の各所で()()()()が流行している今の状況で、でだ。

 

 それに、今日だけでも行方不明者の集団発見、例のごとく「腐乱死体」となった状態で。

 メイヤーは個人的に、一つの結論を出していた。……つまりは「ゾンビ」の発生である。

 

 馬鹿馬鹿しい考えだが、メイヤーにとっては大真面目で導き出した結論である。STARSの生き残り連中が、必死となって捜査の「真相」を署長に主張していた時から。

 メイヤーにとっては、とてもではないがSTARS(洋館事件の生存者)が絵空事を声高に主張する程、愚かな集団とは考えられなかった。特に、アルファチームの「バリー・バートン」とは個人的に仲良くしていただけあって、尚更。バリー・バートンの人柄から考えて、そんな「馬鹿げた」事を()()()の事故を隠蔽する為だけに「洋館事件の真相」などを、つくり上げる必要性がない。

 

 家族をカナダに移住させる。バリーの真剣な面持ちから、それを告げられた時にメイヤーの疑惑は確信に変わっていた。

 

 元々ゾンビ映画の熱狂的なファンであり、愛好家である彼女にしてみれば「歩く屍(ゾンビ)」の存在は受け入れ難いものではなく。どちらかと言えば、ある意味では信じやすい存在ではあった。

 それが、個人的趣味から起因するものであって周囲から()()変わった人として見られていたとしても。彼女としては自身の信条を変えるつもりは無く、それ故にSTARSの生き残りの面々の言葉を信じるに至っている。

 

 また、重度の銃器ユーザーである彼女の収拾志向はゾンビ映画好きとの相乗効果も相まって小さいものは大型拳銃から、重火器ではグレネードランチャー(M79)までを揃えるに至る。それと「対ゾンビ」グッズなる極めて馬鹿げた代物も。

 お陰様で「フルオート・30発ドラムマガジン・ポンプアクションにも切り替え可能な重量()()()前後のショットガン」なるものを極めて厚意にしていただいているケンド銃砲店に発注したことすらある。

 署内の射撃大会に持ち込んだ所、苦笑の末に「M16小銃(署内装備の)」の使用を求められた事もあった。結果は、惜しくも4位だったが……

 

 現状、単独のパトロールを求められた事は意外にも彼女にはメリットであった。臨時パトカーとして利用している彼女のキャディの後部座席、及びトランクにはこれでもかと言わんばかりに、銃火器が積み込めたからだ。

 見れる限りでも、M16小銃にベネリM3、イングラムM10に、M79にと暇がない。彼女としては、町中で盛大に重火器を使うことはあまり望んでいなかったが場合によっては、やむおえないと考える程度には事態を重く考えて銃器をチョイスしていた。

 

 それに……それに現状、非番の警官に招集をかけていない現状でもパトカーの数が不足する程度には事態が混乱している。アイランズ署長が、わざわざ署員の市内への配置を少人数、小規模で分散させているのが一番の要因なのだが……。

 

 

 そんな思案をしていると、車内に強引に()()()()()警察無線に通信が入る。

 

「了解、現状地点から近い本車も急行する。」

 

 入った無線によると、近辺のラクーンスタジアムで暴徒が暴れており鎮圧の為に近辺の警察官の応援を要請するとの事だ。「暴徒」という響きに妙に嫌な予感を感じた彼女は、悪夢の様な事態の予感を感じながらも車をスタジアムへと向けた。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

9月23日 11:00 

ラクーンスタジアムの悲劇から1時間前に遡る。

 

 

 

 ナスタージアの現在の心境は複雑なものだった。

 そうだ。姉貴(ルチア・ロッソ)は熱心なスポーツファンなんだから、何故ラクーンスタジアムで行われる人気チームの試合観戦に行く事なんて分かっていた筈なのに。

 

 前日に準備を行っていたアナは、鈍器で頭を殴られた様な衝撃を受けていた。そう、彼は失念していた。「本来のラクーンシティ」とは、細部がかなり異なる「バイオハザードのラクーンシティ」である事に。大まかな事柄は、同じである。しかし、その内実はまるで異なることに。

 

 そもそも本来ならラクーンスタジアムにおける「大暴動」は24日に起きるもので、姉であるルチア・ロッソはそもそもラクーンスタジアムには赴かない筈であった。

 最も、それは「本来の」バイオハザード世界においての事であり、このバイオハザード世界においてはまるっきり異なっていた。

 

 「神様は残酷だ」といったありきたりな言葉が脳裏に浮かぶが、素直に運命を受け入れることは出来なかった。

 

 「くそったれの神様、祈ってやるから姉貴を助けやがれ!!」

 

 アナは当て付け同然に叫ぶと、ラクーンスタジアムに向かうために倉庫を飛び出した。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

9月23日 11:50 ラクーンスタジアム

 

 

 

 ン・アルダーソンは、多少不思議な状況に対面していた。女性の退役軍人、それもとびきり腕の立つ。

 ただ、少しだけ精神的に参ってそうな感じだ。

 非番でもなきゃ、わざわざ試合観戦になんか誘ったりしないな。

 

 レンは隣の金髪の女性、ケビン・クラリッサ・ミヤバシ・クロスに目線を向け思案した。

 気の強そうな鋭い目つき、女性ながら力もあるし背はそれ程でもないが筋肉質で黒混じりの金髪の長髪を結んだ姿も中々に良いもんだ。

 これが、同性()だったらなぁ……。レンは、溜め息を付いたがそれでもほっておけないの一心から、当り障りのないスポーツ観戦に誘ったのだ。過去に訳有りで憂いのある表情を時折見せるクロスの様子に、()()()ながらレンは興味を持ち始めていた。

 

 街の治安が日々悪化するにも関わらず選抜警官隊員であるレンは、中々出動命令が出ないのを疑問に思ったが、同時にこの期間の非番を利用してこのミステリアスというか訳有りそうな退役軍人と交友を持ってみるのも面白いと思ったのだ。

 とはいえいきなり異性を食事に誘った挙句、自宅に連れ込むとは随分と大胆というか不用心というか……。彼は、今日までの一連の流れを思い出しながら苦笑した。

 酒に酔って眠っていた時なんか襲ってくれと言わんばかりな格好、つまりはシャツとパンツである。健康的な日に焼けた褐色肌、誘うような艷やかしい吐息に、アルコールの酔いの心地よさから生じるやや紅潮した頬。

 

 様々な要素が重なった結果、更に酔いの回ったクロスの()()にレンが乗らなかったのは、彼が筋金入りの同性愛者だったからである。同性なら直ぐにベットイン(楽しい夜を始めて)してるところだ。世の中、中々上手くいかない。

 

 試合の雰囲気を楽しむクロスの様子に安心しながら、レンは自身の不幸を考えていた。

 強さを感じさせてくれる()()が、強さを感じさせてくれる()()でなかった事に対してである。女々しい様だが、レンにとっては現状最も重大な悩みだ。

 

「レン?」

 

 悩みの元凶である彼女、クロスが此方の心中を察したのか心配そうに様子を伺ってくる。若干鋭さを失った目付きだが、やはりゾクリとする眼だ。

 とりあえず彼女を心配させない様に無難に答えておく。同性愛者であっても、女性をぞんざいに扱えないレンはそれ故に女性からの評価は概ね良いものであった、がそれ故に彼は少々困っていた。

 つまりは、身近に同性より異性が居る時間の方が長くなってしまう事。

 異性同士の友情なんて成立しない、但し片方が同性愛者だった場合は除く。といった状況をレンは体現していた。実際、何度か危うい場面はあったもののその都度、彼は相手を傷つけない程度にはやんわりと避けてきた。近年ではその努力が実ったのか周囲にもそれとなく同性愛者である事が知れつつあるような気がする。

 同時に、同性愛者であることで信用されているのか余計に異性との関わりが増えるといった矛盾的事態も起こっていたが。

 

 ただ、先に断っておくと恋愛対象として女性を見ないだけであって友人としての関係なら、歓迎していた。人と関わるのは、愉快であるし、新しい発見もある。

 脳筋らしいレン・アルダーソンは、そのガッシリとした肉体に似つかわしくない程、多趣味で柔軟性を持った男である。友人の誘いで料理に精を出してみたり、編み物に挑戦してみたりと友人となった異性達の誘いで多種多様な趣味を持つに至った。

 他人が喜ぶ顔を見るのは好きだし、知らないことに挑戦して理解することも好きであった。

 多少勤務態度に不まじめな面を除けば、レン・アルダーソンは面倒見がよく、相手をよく気遣え、尚且つ精神的にも肉体的にも強い男性だ。

 だからこそ、同性より異性に近づかれ易いのだが、彼には知る余地もない。そもそも、世間には同性愛者(ホモ)より異性愛者(ノンケ)の方が多いのだから、当然の結果といえば当然なのだが、残念ながら彼にはそこに気付く程客観的に自身を見ていない為に、それに気付く事は無いのだ。

 

「天気が良すぎて寝かけてただけさ。」

 両手を軽く広げておどけたポーズをとりながら、とぼけるレンの様子にクロスは少し笑う。

 

「タフガイの警官さんでも、太陽の光には勝てないって?」

 にぃと笑いながら意地悪そうに話す彼女の表情は、笑いながらも肉食獣の様であり、やや幼さを残す顔つきから小悪魔的でもある。

 

 ほんとは見惚れてただけさ。と小声で呟くレンに彼女が更なる興味を抱いたのと、反対側の観客席で「乱闘」が始まったのはほぼ同時だ。

 一人に襲われた他の観客が、同じく他の観客に襲いかかりその観客席周辺が「暴徒」だらけになったのは、あっという間であった。首を噛まれた、観客が失血死せずに立ち上がり周囲の観客に襲いかかっているのだ。見るからに異様な光景は彼らが人間では無いことを理解させるのに十分だった。

 

「アリッサ先輩の冗談がホントになるとはね。」

 

 ホルスターから愛用のベレッタを取り出しながら嘆く。よりによって非番の時に出くわすなんてついてない。

 

「仕事かい?お巡りさん」

 隣の彼女が肉食獣特有の鋭い瞳に戻り、45オート(M1911)を手にしている。その表情は、やはり戦いを忘れられない軍人特有の闘争への歓喜を感じさせた。

 

「即席コンビってとこだな。宜しく頼むぜ、クロス。」

 同意の代わりに此方を見る彼女を側に伴うと、レンは混乱の渦中へと向かい始めた。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

9月23日 12:10 ラクーンスタジアム

 

 

 合への熱狂に包まれていたスタジアムは一転して悲劇の舞台と変貌していた。

 観客の中の一人が暴徒化し、周囲の観客へと襲いかかり襲われた観客も次々と暴徒化したからである。

 

「撃てっ!!構わず、撃ちまくれ!!」

 警備員達が何発と9ミリ弾を暴徒に対して発砲するが、効果は薄い。通常なら9ミリ弾でも数発も撃ち込めば無力化あるいは、殺害できるレベルである。

 それがまるで効かないと言わんばかりに押し寄せてくる暴徒達に、警備員達は後ずさりし始める。

 

 既に、スタジアムの各所で同じような光景が繰り広げられている。散り散りになった警備員達が、貪られ「暴徒化」するのにそう長い時間は要さなかった。

 

 

「何なの、何なのコレ!!」

 ルチア・ロッソは地獄絵図が繰り広げられるスタジアムの中を逃げ戸惑っていた。周囲の観客達が貪られ、次々と暴徒の仲間入りを果たす中で恐怖を抑え必死となって逃げ出したのだ。

 

 こんな事なら、試合観戦に来るんじゃ無かった。

 ルチアは、自身の判断を呪いつつひとまず立ち止まると息を整える。スタジアムの2階部分、食堂部分にルチアは居た。

 周囲にはトレーや食器が散乱しており、椅子や机も無残に倒されている。そして各所に多量の出来て間もない血痕と引きずられた跡が付いていた。

 

「ここもそこまで安全じゃなさそうね……」

 ルチアは息を潜めると、()()に見つからないように壁を背にすると地面に座り込むと片膝を抱える。状況さえそうでなければ、汗だくの肉感的な少女(18歳)が片膝を抱える中々に刺激の強い風景となっただろう。

 

 死にたくない。ルチアが第一に考えたのはそれである。考えたというよりは本能的に感じた恐怖からであるが。

 それが、生きたまま人喰らいに食われるとなれば尚更だった。同じ死ぬなら、自分で頭を撃ち抜いた方がはるかにマシに思えただろう。

 

 ガタン

 そんなルチアに追い打ちをかけるように、食堂の奥から物音が聞こえる。その後に、ガラスが砕ける音が聞こえた。

 

 侵入られた(入られた)。入ってきた食堂のドアはガラスである、ガラスが破られたということはそこから()()()が入って来たという事。

 ガチガチと体が震えだす。嫌だ。イヤだ。食われたくない、死にたくない!!

 

 反対側から新たにガラスを踏みしめる音が聞こえてくる。その音はルチアの精神を更に追い詰めるのに十分すぎた。

 ふと足元に血塗れた拳銃が落ちているのに気付く。恐怖に追い込まれたルチアは、一転して逆に冷静になっていた、アナに教えてもらった通りにまずマガジンを引き抜き残弾を確認する。そして、安全装置を外すと近づいてくる足音の方向に向けてベレッタを構える。

 

 足音の主が現れた瞬間、引き金を引き絞る。1発、2発、3発。

 4発目を撃とうとし、カチリとホールドオープンしたベレッタが弾切れを知らせる。

 

「――っ!!」

 撃っている時には気付かなかったが、相手が何か叫んでいた。よく見ればゾンビではない。

 黒の長髪に健康的な褐色肌、小さな身長。切り詰めた散弾銃を握ったアナスタージアがそこには居た。

 

「姉ちゃん!!俺だ!俺、アナスタージアだよっ!!」

 ルチアが間髪入れず撃ち込んだ三発の銃弾を間一髪で避けたアナは、慌ててそう叫んでいた。

 緊張の糸が一気に切れたルチアは思わずアナに抱きついた。小さな少年に縋り付くようにして泣き喚く少女の図は、()()()()逆ならしっくりきていただろう。

 泣きじゃくるルチアをなだめながら、アナはそう思いふけった。

 

「間に合った……」

 アナは姉の熱を肌に感じながらそう呟いた。姉貴に3発も銃撃されて殺されかけたのは予想外だったが、とりあえずは結果オーライってとこか。

 

 あとは、このゾンビの囲いからどうぬけ出すかだけか。

 アナは銃声に釣られて食堂周囲に集まりだしているゾンビ達をガラス越しに見ながらそう感じた。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

9月23日 12:30 ラクーンスタジアム

 

 

 

 「状況は?」

 現場に到着したアリッサは、スタジアム周囲を囲む選抜警官隊の一人に状況を尋ねた。

 

「現状スタジアム内部は多数の凶暴化した暴徒が発生しており、内部突入は危険な状態です。巡査部長殿。」

 短機関銃(MP5)を手にした重装備の警官はそう答える。メットのバイザーが下がっているため表情は伺えないが、深刻そうな声色から事態はかなり重いことが分かる。

 

 アイランズ署長が積極的に選抜警官隊の出動を命じるとは思い難い、この迅速な警官隊の対応は恐らく兄が手を回したのだろう。

 アリッサは自身の兄であり、警部である「ジョン・メイヤー」が恐らくは警官隊の迅速な対応を計画したのだろうと考えていた、アイアン副署長辺りに無理強いでもしたのだろう、と。

 

「メイヤー警部の指示です。」

 

 アリッサの様子から察した警官がそう告げる。

 

 やっぱりか。兄は不正は許せないし、正義感の強い性格だ。元々STARSの連中の証言を信じて、「ラクーンSWAT」の結成を強く主張したのも兄だった。

 年齢こそベテラン連中に比べれば若かったけど、別段若いからとキャリアに胡座をかいているわけでもない質実剛健な人間だ。

 STARSの副隊長だったエンリコ・マリーニとも友人関係で、度々一緒にゴルフに行くぐらいには仲が良かった。だからこそ「洋館事件」を生き残ったSTARSメンバーの証言を強く信じていた。

 

 周囲が心なしか接触を避けていた中でも、積極的にメンバーと交流を持ちアイランズ署長に疎まれる程度には自身の信念を強く持つタイプの人間。最近の治安の悪化に、特に対策を講じようとしないアイランズ署長の指示をほぼ無視して、アイアン副署長に「行動の裁量権」を半分強制的に認めさせ「ラクーンSWAT」を機動的に運用している。

 

 「ラクーンSWAT」はSTARSの後釜を目指した、いわば「重武装のテロリスト」などの深刻な脅威に対する為に結成された選抜警官隊である。

 当初は「ラクーンSWAT」ではなく第二のSTARSということで現存のSTARSを併合して「新生STARS」とする案もあったが、兄の猛烈な反対にアイランズ署長の反対もあり廃案に。

 そして「ラクーンSWAT」が結成される運びになった。

 

 兄が反対したのは「STARS」が形でも存在すれば、署長の企みで組織機能が弱体化されたとはいえ「署の指揮系統」から半ば独立したSTARSは独自に活動が可能な点に眼を付けたからだ。

 

 ……勿論、STARSの生き残ったメンバーへの感情もあっただろう。ただ、署長の企みに対峙するために兄はあらゆる手段を尽くしていた。

 

 

 第一に、バリー・バートンの「ツテ」を利用したM79(グレネードランチャー)などを始めとする「通常の警察」には必要ないであろう重火器の調達。勿論名目上はSTARSの装備として、しかし()()()に備えて兄のジョンを始めとした一部の警察署員はその備品の配置を把握しており、いつでもその装備を使うことが出来た。

 

 第二に、非常事態においての指揮系統の確立である。妙な話だが、STARSメンバーの証言を握りつぶした時点で彼らとの交流を続けていた兄は署長への疑心を増々強め、非常時に置ける臨時の指揮系統を構築するに至っていた。要は、小規模だが信用できる署員メンバーで対策本部を固めれるようにそのメンバーは常に署内に留まらせていた。勿論署長による、出動命令には書類上出動したことにしておいて、実際は署内に留まらせていたのだ。

 こんな横暴とも言える行動が取れたのは兄がキャリア組であり、アイアン副署長に次ぐ権限を持つ「警部」であったからである。正確にはキャプテンと呼ばれる階級に位置しており「警部長」なのだが、「チーフ」だったり「警部」だったりと呼びやすい名称で呼ばれている。

 

 

「中に健在な市民も居る以上、いつまでも突入を長引かせる訳にもいかないわね……」

 少なくとも現状のままスタジアムを包囲しておけば確実に「ゾンビ」共を封じ込めれるだろう。しかし、同時に中にいる市民達を見捨てる事にもなる。

 幸い、配置に付いている警官隊は「αグループ(ラクーンSWATの最精鋭)」だ。兄達が心血注いで、鍛え上げた部隊である以上心配はないだろう。

 

 現場での裁量権を階級上担うアリッサは思案して、そして決心する。

 

「αグループの内、6名は私と共にスタジアム内に突入。残りのαグループは後続の警官隊(一般警官達)の到着を待つように、到着後は警官隊と共にスタジアム周辺の閉鎖を続けて」

 スタジアム内の混乱を想定し、最小限の人員のみで突入する。

 

「よし、やるぞ!αは私に続け。ラクーンSWATの実力を見せるいい機会だ」

 ストックとピストルグリップを取り外して「マスターキー」にしたショットガン(ベネリM3)を装着したM16を持ち、フルオートドラムマガジンのショットガン(ファイアフライ)をスリングで吊り肩から掛けると、スタジアムの正面入り口から堂々と突入を開始した。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

9月23日 12:40 ラクーンスタジアム

 

 

 

「くそっ!!混乱する市民を庇いながら戦うには、多すぎる量だぜ!!」

 レンは観客席から()()()()()市民達を逃がすために善戦していた。二階部分から一階に避難させなければならないが、逃げる市民に釣られてゾンビ達も出入り口に殺到する。

 出入り口付近に陣取りクロスと共に、四方から殺到してくるゾンビ達を撃ち倒すが、多勢に無勢。数が多すぎる。

 生存者達の退避を確認しつつ、レン達も通路内部まで後退し再度そこで防衛線を張る。

 

 四方からではなく入り口だけから殺到するゾンビの処理はあっさりするほど容易だ。……弾薬さえ持てば。

 レンは二本目(30発分)のマガジンを抜いて、三本目のマガジンを装填し尚も殺到するゾンビ連中にヘッドショットを叩き出す。

 平静さえ保っていれば、射撃大会より楽勝だな。ワンショットワンキルを達成しながらも、まだ数を減らさないゾンビ達に対しレンは楽観的に考える。

 

 レンに負けじとクロスも的確な射撃で頭を撃ち抜いている。ただ、45オート特有の7発といった装弾数の少なさを14発入りのロングマガジンで解決しているとはいえ、それでもロングマガジンの携行性の悪さから、レンより一足先に弾切れを起こしかねない。

 

「このマガジンでカンバンだ!!」

 彼女は、3本目のマガジンを装填するとそう叫ぶ。

 

「あと十匹大人しくさせたら、撤退しよう!!」

 レンはそれに答えるように、撤退の目安を提示する。

 

 了解。とクロスが言い、哀れなゾンビ達の頭部に弾丸をお見舞いする。

 拳銃のキルレートよりも多くのソンビが、殺到しクロスに掴みかかろうとするが「第三者」の援護でゾンビ達が吹き飛ばされる。

 

「レン兄ちゃんか!!」

 別の通路から現れたのはレンにとっては馴染みのあるアナスタージア・ロッソだった。それと背後に伴われたルチア・ロッソ。

 

「アナか、こんなところでなにやってんだ!!」

 レンは驚きながら、まだ殺到してくるゾンビを間引く。

 事情としては、ルチアは試合観戦でスタジアムを訪れていてアナは姉の身に危険を感じて助けに来たらしい。まったく、この坊やのカンの良さはどうなってんのやら。

 

「ボーッとしてる暇はないぜ、レン兄ちゃん!!」

 言われるまでもない、こんな所に長居する気はない。

 

「撤退するぞ!!」

 アナがソードオフをぶっ放し、三人を援護しながら殿を務める。手慣れたものだ、姿さえ大人なら何も違和感を感じさせない。

 

 ふとレンは、ぶちまけられたゴミ箱に目線が止まった。何の変哲もないゴミ箱、のはずだ。ゴミの中に赤い点滅を繰り返す機械が入っている他は。

 受信機らしき機械が、固形の物体に固定され色とりどりのコードが繋がれている。固形の物体の正体はプラスティック爆弾だろう。

 

「オイオイオイ!!ゾンビの次は爆弾テロなんて洒落になんねぇぞ!」

 レンが爆弾の存在を知らせるのと、突入してきたアリッサ達と遭遇したのはほぼ同時だった。

 重武装のαグループの隊員を引き連れて手早くゾンビを片付ける様は、頼りになるどころではない。この時ばかりは、ゾンビ映画オタクの先輩の存在に心から感謝していた。

 

「爆弾!?なんでそんなものが?」

 爆弾の存在に混乱するアリッサを落ち着かせながら、スタジアム内から退避する様に勧める。どちらにせよ、いつ爆発するか知れない爆弾が仕掛けられた場所に居るなんて幾ら楽観主義者のレンでも耐えられそうにはなかった。

 

 アリッサが退避を決意し、アリッサ達を先頭にしゾンビ達を蹴散らし、スタジアムの正面入口から全員が退避すると()()()様にスタジアムの各所から爆発が起こりスタジアムが倒壊する。

 

 「間一髪か」

 アリッサは、汗でまとわりつく前髪を手櫛で整えながらそう言った。

 タイミングとしてはいささか出来過ぎてはいたが、兎に角今は無事であることを幸いだと思うべきだろう。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

9月23日 13:00 ラクーンシティ某所

 

 

「やぁ、御機嫌如何かしら?大佐。」

 倒壊するスタジアムを屋上から見ながら、黒髪の少女はインカム越しに話す。

 

「この感染の広まり、恐らくは上層部連中が考えている速度の二倍、ううん、三倍以上は早いわ。U.B.C.S.なり何でも良いけど……。手は早く打ったほうが良いんでなくて?」

 

 

 インカム越しの男性の話に少女はしばし耳を傾けると、愉快そうに嗤った。

 

「当然ね。それにしても可哀想に、U.B.C.S.も元はといえば貴方も創設に関わった組織でしょう?……あぁ、そうね。死は()()()では無く、()()()ね。マゾヒストの貴方らしい価値観ね。えぇ、私も好きよ。最も私は傷めつけるのも好きなのだけど。」

 

 話している内容を除けば少女の様子は電話で笑いながら楽しそうに会話している少女のそれだ。最も、話の内容は最悪極まり無いものだったが。

 

「えぇ、全ては順調。()()にもそろそろ狩りを始めさせましょうか。それと、署内のジョーカーも動かさないとね。」

 

 ラクーンに介入するU.B.C.S.を派遣するアンブレラ北米支部の意図はアンブレラ系列の幹部、従業員の救出。

 一方で本社直属のアンブレラ第6研究所(ヨーロッパ支部の連中)は、新型タイラント「ネメシス-T型」の実戦テストを主目的に副次目的としては新型BOWの試験運用程度にしか考えていない。

 

 インカム越しの男は、特に驚くでもなく少女の話に耳を傾けていた。全ては計画通りなのである、ラクーンスタジアムにおける「暴徒の大量発生」も急速なラクーン各所における「歩く屍」の出現も。寧ろ彼らにとってはそうなってもらわなければならなかった。新たな段階へと歩むために。

 

「では、良い狩りを。()()ミヤコ」

 男の言葉は純粋に猟友の()()を期待するものであったが、裏を返せば羨ましがってもいただろう。こんな楽しい事はそうそうないのだから。

「えぇ、成果を期待してなさい。()()セルゲイ」

 

 艶やかな髪を纏めた姿が印象的な少女は、屋上から周囲を見つめ此れから起きる惨劇を想像し軽い絶頂感を感じた。

 頬に両手を当て、頬を紅潮させる様子はさながら恋する乙女の様と似通っていた。

 ……最も、その内容は常人には到底理解し難いものだが。

 

 永遠だと思っていた日常がある日突然崩壊し、隣人が怪物となって襲い掛かってくる。地獄と化したこの場所(ラクーンシティ)で、多くの人々が()()()()()()死ぬ。

 生きたまま食われて、絶望の内に死ぬ。永遠に訪れる事のない夜明けを待ち望みながら、誰もが力尽きるのだ。

 これに恍惚としないで、何にするというのかしら。少女は改めて微笑み、佇んでいた。

 

 

 

 

 

 

 






独自設定の方が圧倒的に多くなっている様な気がするけど気にしない。()

 実際問題、副署長とかの存在が不明なのでその辺を設定したり。
ジョン・メイヤーの設定なんて、ご都合設定も良いとこですし(あ)

ラクーンSWATにおける最精鋭チームの「αグループ」は実力的には、STARSの両チームと同等かソレ以上の実力があると想像してもらえれば良いかと。

この世界軸のRPDはさぞ重火器に恵まれている事かと思います。
 しいて言うなら、アンブレラサイドへの協力者も増えているからそこまで楽勝でもない……気がする。



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発生『最後の晩餐』

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

9月23日 16:00 ラクーン警察署

 

 

 

 

 ョン・メイヤーは、先程(本日13時)に起きた『ラクーンスタジアムの悲劇』の把握に労力を割いていた。

 ()()()した一部の観客による「乱闘」は、負傷した他の観客を次々と「暴徒化」させ最終的にスタジアム全体が「暴徒」で溢れかえった。

 

 「STARSの連中の危惧する通りの事態になってきたな……」

 

 ジョンはデスクに溢れかえった報告書からスタジアムでの悲劇の実情を察する。「暴徒」は歩く屍入りした市民、ねずみ算式に「暴徒」は増え瞬く間にスタジアムは地獄と化した。

 しかも人気チームの試合とあって、市外からの観戦者も合わせてスタジアムは満員状態だった。少なくとも5000人前後の観客が訪れていた。一人の感染者から一時間足らずでスタジアムは感染者で溢れかえった。レン達が生きて帰ってこれたのは奇跡に近い。

 

 しかし、疑問なのはスタジアムの「爆破」だ。スタジアム全体を倒壊させるレベルの爆薬を仕掛けるのは個人では不可能だ。では、どこの組織が何を目的に仕掛けたのか?

 

 スタジアムが爆破されたお陰で感染者の多くは生き埋めになっただろうが、同時にまだ居たであろう「生存者」も生き埋めにされた。オマケに周囲を包囲する警官隊の増派は署長の()()で遅れ、スタジアムの崩壊から逃れた感染者達の掃討も間に合っていない。そもそも、スタジアムの悲劇の後署長の指示で人員の再配置という名目で、警官隊の多くが無意味な再配置を行われている。

 

 今やるべき事は、有力な警官隊を編成して街の各所に潜んでいる感染者の掃討であるはずなのに。署長は、むしろそれを妨害し続けている。

 オマケにスタジアム崩壊をテロリストの仕業として、「非常時対策」と称して署内の武器弾薬を武器庫から分散配置するべし。とまで伝達してきている。

 

 明らかに署長の指示は不審なモノばかりだ。取り返しのつかない事態に陥る前に「信用できる」対策本部メンバーと共に署長を強制的に拘束するしかなさそうだ。

 

 ジョンはデスクの署内電話を取り、本部メンバーへ連絡を取ろうとする。が、不通、繋がらないのだ。電話線が切断されている。

 

「そこまでです。チーフ。」

 

 ジョンは咄嗟に愛用の拳銃(ブローニングHP)に手を伸ばそうとするが、デスクに二発の弾痕が開けられるとやむおえず動きを止めた。

 

「懸命な選択ですね。私もチーフを手にかけたくはありませんから」

 

 ブラインドが降ろされているオフィスの扉越しに続けて声が聞こえてくる。同時にブラインド越しに発砲されて無残に割れたガラスを踏みしめながら扉が開かれる。

 ジョンは現れた人物の姿を見て、絶句する。

 

「リタ……。まさか君が署長の手先になっていたとはね……。」

 ジョンには信じられなかった。マービン・スタナーと並んで信頼できるとして本部メンバーにしていた「リタ・プール」が内通者だったのだから。

 

「人聞きの悪いですね。私はただ、署長の指示に従っているだけですよ。階級制度(ヒエラルキー)に従ってね。」

 リタは特に気分を害するでもなく、加虐的な微笑を浮かべる。

 

「ラクーンの危機を救えるのは今、この初期段階においてだけだ。君も分かっているだろう。署長が正気で無いことは、()()()ブライアン・アイアンズは間違いなくラクーンを破滅させる、我々を皆殺しにする。後で必ず後悔することになるぞ、リタ。」

 

 リタは動じない。わかりきっている事だと言わんばかりにジョンに減音器(サイレンサー)を付けたP229の鈍く光る銃口を向けている。

「重要なのは私自身の利益、生存だけですよ。ラクーンの命運なんて些細な事じゃないですか?チーフ」

 

 リタは的はずれだと言わんばかりにジョンの主張を嘲笑する。今の彼女には普段の正義感の面影は少しも無かった。

 そして、ジョンはリタに促されるようにオフィスから連れだされた。

 

 

 

「えぇ、署長。予定通り()()しました。では留置場に放り込んでおきます。勿論監視つきで。」

 リタは無線越しにアイランズ署長に報告を送りながら、ジョンに先頭を歩かせている。

 留置場へと向かって歩かされるジョンは、自身よりほかのメンバーの安否を心配していた。他のメンバーも同じように確保されたのか、それとも処分されたのか。

 

「心配しないで良いですよ。チーフ。マービンも、エリオットも無事ですから。最もこれから先も無事かどうかは、保証出来ませんけどね。」

 ジョンの不安を察したリタは、他の本部メンバーが無事であることを教える。が、ジョンは署長が本部メンバーも分散して市内に配置するだろうと一言言うと、黙りこむ。

 

「どちらにせよ、チーフにはもう関係の無いことですよ。」

 留置場の檻に入れられたジョンは簡易ベットに腰掛けると唖然としたように天井を見つめる。

 

「監視の目をそらさないように」

 留置場入り口に立っている一人の警察官にそう告げると、リタは留置場を去っていった。

 

 

「よぉ、お巡りさん。アンタもなんかしでかしたクチかい?」

 ジョンは隣の檻に入れられている男に注意を向けた。

 

「署長の身の回りを嗅ぎまわってぶち込まれたジャーナリストか?」

 ジョンには一つ心当たりがあった。マックリーズ(銃砲店)で強盗やらかした二人組の他に一人ぶち込まれたヤツが居たと聞いていたからだ。

 

 随分と有名になったもんだな。と男は言うと、ジョンと同じように簡易ベットに腰掛けるとジョンに向き直る。

「その様子だとアンタも署長の邪魔になったから、ココ(留置場)に放り込まれたんだろ?外の状況はどうなってんだい。」

 

「状況は最悪さ。生憎と状況鎮圧の為に動いてたんだがね……。」

 

「先手を打たれたってトコロだろ?」

 男は肩を竦め両手を挙げ()()()()といったニュアンスの格好をしてみせる。

 

「オレは見張りの男に()()()()()()貸しがあるから自由に出入りできるし、欲しいものも手に入れられるが……アンタはちょっと厳しそうだな。」

 そう言いながら男は留置場出入り口に居る見張りの警官の様子を見ながら「此方に来い」と手招きする。

 

 男を信用していないジョンはゆっくり用心深く男に近づく。鉄格子越しに差し出された拳銃には覚えがある。

 

「コイツをどこで!?」

 男は口に指を当て、静かに。といった感じでジョンを落ち着かせる。

 

「いったろ?ヤツには貸しがあるんだって」

 男はニヤニヤとしながら見張りの警官を指差す。どうやら、随分と重要な貸しがあるらしいな。

 ジョンは手元に戻ってきた自身の拳銃、ブローニングハイパワーを手に取るとコッソリと自身の上着下のホルスターに戻す。

 

「まだ名前を聞いてなかったな。アンタ名前は?」

 ジョンは名前を聞いていなかった事に苦笑しながら尋ねる。

 

「オレかい?オレはベン、ベン・ベルトリッチ。しがないフリーのジャーナリストさ。」

 ベンはニヤリと企みを込めた笑みでジョンに答えた。

 まだ、諦めるには早いか。ジョンは自身に思いがけず訪れた転機に新たな希望を見出していた。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

署長の手記

 

 

 

 

9月23日

 

 の内部を混乱させる事に成功した。外部から支援が来る心配もない。

 厄介なジョン・メイヤーの無力化にも成功した。もう私の邪魔をするものはいない。

 選抜警官隊も市内に無造作に分散配置されれば、その真価を発揮することは出来ないだろう。

 

 署内の武器弾薬の分散配置もまもなく完了する。仮にジョン達が事態の沈静化に再び動き出したところでもはや手遅れだ。

 

 街の各所でゾンビどもが現れ始めているが、RPDを壊滅させるにはまだ足りない。

 

 仮に事態を鎮圧したところで、私の裏の顔を知られている可能性がある以上誰も生きて此処から出すわけにはいかない。

 

 それにしてもリタ、リタ・プールは私の指示通り良く動いてくれている。ジョンの奴もまさか信用しているメンバー内に内通者がいるとは夢にも思っていなかっただろう。

 

 ミヤコの書いた筋書き(シナリオ)とはいえ、私にとっては魅力的な話だった。お陰でリタ・プールの様な有能なコマを手にしている。

 まったく、彼女(ミヤコ)の先見性には驚かされる。スタジアムの爆破に、リタの本部メンバーへの潜りこませ……

 

 だからこそ、私も失敗は許されない。

 「G」さえ手に入れれば、生きてこの街を出るための手段を彼女は用意してくれるだろう。

 

 だが、失敗すれば容赦なく切り捨てられる。私が生き残るためにも、必ずラクーンは崩壊させる必要がある。

 

 しかし、不審なのはバーキンの「G」の内実がどこから漏れたかだ。署内で知っているものは私を含めてもごく少数。あとはリタぐらいなものだ。

 だが、リタが裏切るとは考えづらい。ミヤコが用意してくれたコマなのだから、ミヤコの不利益になるような事はしない筈。

 

 となればバーキンの研究所の所員からでも漏れたに違いない。

 バーキンめ。お陰で何処までも呪われる。せっかく、お互いに蜜月の関係を維持していたというのに!!

 

 

<<ここから先のページは破られている>>

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

9月23日 22:00 Jack's BAR

 

 

 

 リッサ・アッシュクロフトはその日、猟奇事件の取材に追われていた。

 ノートパソコンに取材内容を纏めつつ、TVニュースに耳を傾けている。

 

「ラクーンスタジアムの爆破テロ、街の各所で起こる猟奇殺人……。全く、時間がいくらあっても足りないわね。」

 取材のネタに困らないことを喜びながらも、あまりにも多発する事件に不安も感じてしまう。

 

 これだけの大事なのに警察の対応は後手後手、「市民の安全の維持、安心できるラクーンシティ。」を掲げるブライアン・アイアンズ署長にしてはあまりにもお粗末な対応である。幾ら事件が多発するからといって、話題のラクーンSWATすら禄に活用していないようでは先が思いやられた。

 

 署内の対立に依るものか署長の自暴自棄による現場の活動妨害か。それとも、事実としてラクーン市警の対応能力をとっくにオーバーしてしまっている事態なのか……。

 どの可能性もあるからこそ、結論を出すのを控えたアリッサは再びタイピングの指を走らせる。カタカタと軽快な音を立てるキーとは裏腹にアリッサの心中は不安と懐疑が入り混じったものとなっていた。

 

 

「お仕事忙しそうだね。」

 店員のウィルが注文したスープをテーブルに置きながら、此方に話しかけてくる。

 

「そうね。今日なんて寝てる暇もないわよ。」

 アリッサの表情には若干疲れを感じたが、それでも確固たる意思で仕事に打ち込んでいる事は分かった。

 

「たまには一息付くのも肝心さ。ウチの豆スープでも飲んでリラックスしなよ。」

 ウィルはアリッサのタフさに驚きながらも心配するように、自慢の豆スープを勧めた。

 

「此処の豆スープは好きよ。醤油が効いてて、あまりしつこすぎないし。」

 言いながら、スプーンを摘みスープを掬うと口に運ぶが、アリッサの片手はまだキーを叩いていた。

 

 

「ボブっ!!大丈夫か?」

 ガタリと派手に転んだ初老の禿頭の小柄なボブと呼ばれた男性を心配するように大柄のガタイの良さそうなスキンヘッドの黒人男性がボブを助け起こす。

 

「心配ない……。ちょっと飲み過ぎただけさ、すまんマーク。」

 マークと呼ばれた黒人男性は、気にするなと言うとボブに肩を貸しながら元のように戻した椅子にボブを座らせた。

 

 

 

 少し間を置いてガチャリとドアを開けて客が店内に入ってくる、が、その足取りはふらつき気味でありその上顔は俯いており表情は伺えなかったが、体調が悪そうである様に思えた。

 

「客にしては妙だな……」

 ウィルは店内に入ってきた「奇妙な」客に対応しようと歩み寄っていく。しかし、近づけば近づくほど強く漂う()()に思わず顔をしかめた。

 丁度客の目の前近くまで近寄ると、その客が顔を挙げる。その顔は半分爛れ、崩れかけており、腐敗しているように見えた。

 

「ひぃッ!?」

 ウィルがおもわず短い悲鳴をあげ、思わず尻もちを着いてしまう。目の前の男(招かれざる客)がウィル目掛けて歩み寄り、覆いかぶさろうとした瞬間

 

 BANG!

 

 一発の銃声の後にソレが、ウィルの目の前に力無く崩れ落ちる。

 

「な……」

 目の前に倒れた噂の()()()に驚いたまま固まるウィルは、突然肩を掴まれやや強引な形で立たされる。

 ボーッとしてんなよ?と女性の声に振り向くとウィルの一回りは大きい(174cm)肩まで伸びた黒髪の女性がにこやかに佇んでいた。

 

「あ、あんたは?」

 そんなことより、と彼女は言うとウィルの視線を店外へと向ける。

 

 いつの間にやら店外には硝子越しに十人前後の歩く屍達、どころか更に増えている。どうやら、さっきの客だと思っていた男は()()の仲間だったようだ。

 

「う、うわぁああああっ!!」

 目の前の現状を理解したウィルは恐怖に絶叫する。周囲の客もようやく事態を飲み込めたようで、店内には困惑と恐怖が入り混じった空気が漂い始めている。

 半開きの扉に気付いたゾンビ共が、我先にと店内になだれ込み始める。勿論標的は、入り口に最も近いウィルを獲物にして。

 

「突っ立ってんじゃねぇよ!!下がれ!!」

 先ほどの女性が、怒声と同時にウィルを後ろに引き離すと左手にも拳銃を引き抜き雪崩を打つゾンビ共に対して銃撃を始める。

 変わった取っ手(フォアグリップ)が特徴的な拳銃(M93R)を両手に彼女は次々とゾンビ達の頭をまるで的でも撃つかのように撃ち抜いていく、それもバースト射撃ではなく指切りだけで射撃するフルオート射撃で。

 

 数分と立たずゾンビ達の屍が積み上げられる、大まかな数でも20はいるように見える。そして吐き出されたばかりの熱を持った空薬きょうが店内にバラ撒かれていた。

 

「全く……、最後の晩餐くらい静かに食わせやがれよ。」

 女性はカリカリに焼きあげられたウィンナーを齧りながらそうぼやく。まるで、この手の状況には慣れっこだと言わんばかりに。

 

「おい、ボウイ。遅れたが……ロベッタ・ハロウェイだ。短い間かもしれんが、ヨロシクな。」

 突き飛ばされる同然で後ろに庇われた所為で、再び尻もちを付いていたウィルの方に振り返ったロベッタは手を差し伸べていた。

 

 

 

 

 店舗入口を施錠し、樽で塞いだ市民達はとりあえず状況を把握する。

 噂が事実であったこと、街にゾンビがあふれる程度には警察機能が麻痺していること、まずは自分たちだけで生き残るために努力しなければいけないこと。

 

「じょ、冗談だろっ!?」

 ウィルは動揺を隠し切れないといった感じで嘆きながらも店外の様子を伺っている。

 

「どうやら、思っているより事態は深刻みたいね。」

 アリッサはそう言いながら、ノートパソコンの入ったバッグを大事そうに抱えた。

 

「兎に角、此処もいつまで安全か分からん……。とはいえこのまま正面から出て行く訳にもいかんだろう。」

 警備員の格好をした黒人男性、マーク・ウィルキンスは動揺するでもなく冷静に意見を述べつつも相棒のボブの体調を気にしていた。

 

 ウィル曰く2階のスタッフルーム、3階の酒倉庫を抜けて屋上から隣のビルに移動できるとのこと。移動中に危険がないとは言えないが、此処(1階)に居れば確実に死が待っている以上は、先に進む他ない。とロベッタは考え、ウォッカ壜を掴み一気に飲み干すとアリッサ達に移動するよう促す。

 

「そ、そうだ!!確か、カウンターの下に」

 ウィルが思い出したようにカウンターの下を探りだし、あるものをゴトリと音を立ててカウンターの上に置いた。

 

「オイオイ……。BARに()()()()()要るのかよ?」

 モスバーグ、12ゲージ。迷惑客を追い払う用にしても、過剰威力だこんなモン。

 モスバーグを手にとったロベッタは、用が済んだか?といった風にウィルを見、そうだと聞くと改めて全員で2階のスタッフルームへ進みだした。

 

 扉が破られ、先程より多くのゾンビ達が店内に雪崩れ込んできたのは僅かに数分後の事であった。

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

緊急指令書A

 

 

 

掃討作戦指令

 

内容:中央通りへの爆薬設置 及びバリケードの敷設

 

時間:本日午後7時より60分

 

作戦人員:6名

 

補足1:基本的には人命救助を優先するが、対象が呼びかけに呼応しない場合は殺傷を目的とした発砲を許可する。

 

補足2:爆薬敷設後は作戦区画から直ちに撤退し、本部からの指令を待て。

 

責任者:シェルビー・H(ハロルド)・アイアン

 

 

 

緊急指令書B

 

 

避難勧告指令

 

内容:封鎖指定区域からの市民避難誘導

 

時間:本日午後7時

 

作戦人員:3名

 

補足:避難勧告に従わない市民に対しては安全を保障しない旨を伝えよ。

 

責任者:ジョン・メイヤー

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

9月23日 22:10 Jack's BAR前通り

 

 イモンド・ダグラスは目の前で繰り広げられる惨状に驚きと憤りを持って立ち向かっていた。

 通りで行った避難勧告、多くの市民たちが我先にと此方に向かってくる一方でそれを追うようにゾンビ共が群がってきたのだ。

 

 

 短機関銃(コルト9mm)を手にした警官が、逃げ惑う市民達に追い縋るゾンビを的確に撃ち抜いていく金髪の警官に裏路地から現れた歩く屍が、2体、3体と群がり彼に襲いかかる。

 

「エディー!」

 

 レイモンドは彼の名前の名前を叫ぶと、ショットガン(スパス12)を連射する。ポンピングする度に、熱を持ったシェルが吐き出され()()()と地面にキスし音を立てた。

 

「感謝します、巡査部長。」

 エディーと呼ばれた童顔の警官は、窮地を救ってくれた上司に感謝しながらコルトのマガジンを取り替える。

 

「こいつら、どれだけ湧いてきやがるんだ!!」

 細身の警官が拳銃(P220)を連射しながら狼狽する。既に2個目のマガジンを撃ち切ってしまったようだ。

 

「アーサー!!赤頭が来るぞ。」

 アーサーと呼ばれた細身の警官目掛け、立ち上がった俊敏な動きの紅頭(クリムゾンヘッド)が跳びかかる。

 慌てて、発砲するアーサーだが5発と撃たない内にカチンザウエル(P220)が弾切れを知らせた。

 

「アーサーさん!!」

 エディーがコルトを速射するが、器用に腕で頭部を防ぐ紅頭はそれをもろともせずアーサーをその長く鋭利な爪で切り裂く。

 直後にエディーの的確な一撃が、紅頭の頭部を撃ち抜くとようやく紅頭は唯の骸となる。

 

 エディーの援護を受けながら、レイモンドはアーサーを引きずりパトカーを背に体を預けさせる。

 アーサーの出血は酷く傷口から夥しい量の血が制服を赤く染めていく、それに比例するように顔色を白くしていく。どう見てももう助からない、レイモンドもエディーも分かってはいるが理解することを拒否したかった。

 

「れ・・・レイモンド……。す、すまん。しくじちまった。」

 息も絶え絶えに言葉を絞り出すアーサーの姿は見るからに痛ましい、レイモンドが思わず止めようとするがアーサーの懇願にそれを諦めた。

 

「良いいか。俺は後悔してはな……ぜ。自分からのぞで志願したんからな……。えでぃをたののむ、ジョんに顔向けできなないからよ……。」

 ところどころ呂律が回らなくなりながらも、言葉を紡ごうとするアーサーの姿にエディーは涙を堪えられなかった。少なくとも、気のいい先輩分の一人であったアーサーの死を前にして冷静でいられるほど精神が強い訳ではない。

 

「じょンのやつ、きとエでぃのしんぱいしてル。れいもド、たのむジョんの約束まもて……」

 言い終わらない内にアーサーは力尽きる。いや、正確には新たな屍として立ち上がる。歩く屍の仲間として。

 

「あぁ……くそっ!!」

 レイモンドが嘆きながらスパスを構え、そして……通りに銃声が響き渡った。

 

 

 




やっとOB時間帯(23日晩から発生シナリオ)です。

発生であっさりしんだアーサーさん(OBで避難勧告をメガホンでする人)
レイモンドおじさん(ショットガンでドア破る人)をちょっと出番を多くしました。

シンディ?さぁなんのことやら(すっとぼけ)


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発生『死地を跨いで炎の川を越えて』

―――――――――――――――――――――――――

 

 

9月23日 22:05 Jack's BAR「2階 スタッフルーム」

 

 

 

「これでよし……」

 念入りに通路を板で塞いだ一同はとりあえず安堵する。ソファーなり、ロッカーなりを手当たり次第に板で塞いだ上から更に立て掛けたりしてほぼ完全に塞いだ。とりあえずは時間が稼げるだろう。

 

「んで……。ソイツは大丈夫なのかよ?」

 M93Rを弄びながら具合が悪そうな初老の男性、ボブの様子をロベッタは気にしている。勿論歩く屍の仲間入りしないか?といった意味でだが。

 

「とりあえずは大丈夫そうだ。だがあまり急いで移動するのは無理そうだな……。」

 マーク・ウィルキンスはボブの様子を見ると、一安心したようだ。最も、素早く移動したい現状でボブの調子は足手まといでしかないのだが……。

 

 最低でも三人は戦力になるってとこね。とアリッサ、どこから調達したのか手製のヤリを手にしていた。

 

「オイオイ……。やる気は認めるがソンナモン素人が使ったところで碌な事にならねぇよ。」

 気概は買うがね。ダクトテープ(粘着テープ)でグルグル巻きして手頃な長さの棒に付けられた包丁。即席としては良いが、何十回と使わない内に折れるか穂先が取れるかのどちらかだろう。

 ロベッタは少し考えてからホルスターから黒光りする拳銃、M92Fと1つのマガジンを取り出す。

 

「コイツの使い方は分かるか?ソンナモンよりはるかにマシだろ?」

 ロベッタの差し出したベレッタとマガジンを受け取ると心配はいらないとばかりに手慣れた手つきで、ベレッタのマガジンを引き抜き残弾を確認する。

 

「多少はね?ジャーナリストも楽な仕事じゃないのよ。」

 気の強そうな女性だ。1階をぬけ出す時に拝借してきたモスバーグを片手に、柱に背中を預けながらウィスキー壜を開けると煽るように飲む。

 これでかれこれ2本、いや3本か?

 

 アルコール臭を漂わせるロベッタを尻目に一同は一時の安息を得ていた。無論それが長続きするものではないとこの場の誰もが分かっていた。

 ただ、今この瞬間だけは絶望的な現実を忘れたかったのだ。

 

 

 

 

 「んで、この糞シャッターをぶち破れば良いってわけかい?」

 ロベッタは屋上への道に立ちふさがるシャッターに毒づく。

 

 各人は逡巡している間にとある強引な手法を思いついたロベッタが、フォークリフトで強引にシャッターをこじ開けた。

 メシメシとひしゃげるシャッターに構わず、リフトの爪を思い切り上げながら前進するロベッタが数分と掛けず。無残な姿のシャッターが不本意ながら屋上への道を開けたのだ。

 

 急げ急げ!と急かしながらロベッタが殿を務める。屋上へとたどり着くと、ウィルが直ぐに屋上へと続くドアに鍵をかける。

 

「うぅ……」

 ボブが苦しそうにうずくまり、マークが気遣うように肩を貸す。

 

 ロベッタは()()()に備え、いつでも撃てるようにM93Rを右手に抜いていた。

 

「マーク……すまん、俺は……」

 マークはまさかといった悲痛な面持ちでボブの最後を予感する。

 

 しかし……

 

「やっぱり飲み過ぎた……。頼む……。吐かせてくれ」

 言うが早いか盛大にゲロを吐くボブに「よけきれなかった」マークは若干の異臭を漂わせるズボンを気にしながらも、ボブが感染していなかったことに心底喜んだ。

 

「マジかよ……」

 盛大にゲロを吐くボブの様子に呆気にとられながらも、悲劇的な結末を避けられた事にロベッタは微笑する。血の気が多いと言っても他人の不幸を望むほど人格破綻してはいない。

 安堵からか、懐から取り出したスキットルの蓋をあけるとウォッカを口に流し込んだ。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

9月23日 22:10 中央通り(エナーデイル通り)

 

 

 

「増援が送れないとはどういうことなの!?」

 カーリー・ダフは1時間前に要請した増員が認められないことに強い憤りを感じていた。

 確かに指令書では要員は6名となっていたが、大通りのバリケードを破らんとせんばかりに殺到するゾンビの群れを抑えるにはとてもではないが要員が足りないと増援を求め対策本部に通信したのがほんの1時間前。

 

 そして本部から増援は送れないと来たのだから、カーリーの怒りは最もであった。1時間前に要請した時には確かに応諾した上で、である。

 やはり……、裏で署長が策謀しているのではないか?

 

 カーリーはスタジアムに増派を送らなかった対策本部の対応に不審感をつのらせていた。

 少なくとも我々のしっているチーフ、ジョン・メイヤーはこのような後手後手の対応を嫌う筈。

 であるならば間違いなくチーフの存在を目障りに思っているアイランズ署長の仕業に違いないと、カーリーは確信していた。

 その上αグループに送られてきた指令書の内容がこれまた謎であった。指令書通りなら、αグループの隊員は12名それぞれが市内に分散し一般警官の指揮官として事態に当たらせるといったものであり、とてもではないが精鋭部隊を機動的に運用し、事態の早急な対応を求めるチーフの方針とは真逆であったのだから。

 

「一度署に戻るべきでは?」

 といったカーリーの意見に、あくまで指令には従うといった考えの隊員とカーリーと同じように指令に不審を持つもので割れた挙句に本部に行動を気取られないためにメンバーの殆どは市内の任務に従事し、隊長のみが密かに署に戻るという事で各自納得し市内の任務に参加した訳なのだが……

 

 想像以上に酷い現実に思わず絶句するカーリーは、署長が確実にαグループメンバーの息の根を止めに来ているのだと理解した。

 でもなければ、戦闘のプロフェッショナルである選抜警官隊であるラクーンSWATを分散配備するはずなど無いのだから……。

 

 

 とりあえずドリアンには護送車で避難する民間人を運んでもらうとして……。

 封鎖指定区域に派遣したレイモンド巡査部長をリーダーとした3人、誘導班は今だに戻ってきていない。

 

 大通りはエリック、エリオット、ハリーで爆薬の敷設はほぼ完了しているが、バリケードの強度には不安が残る。心なしかゾンビ達の動きも活発になっている様だし、爆破の時期を早める事も必要かもしれない。

 

 カーリーは護送車に積まれた通信機器で市内各所の情報を可能な限り収拾することに始終していた。

 ある場所では、警察ヘリによる市民の回収が行われまたある場所では大型輸送ヘリによる定期便が予定されている事を掴み、現場の努力を知ると同時に反比例的にアイランズ署長に対する怒りは高まっていた。

 

「生きて戻ったらケツを蹴りあげてやる……!!」

 静かに怒りながら、カーリー・ダフは再び別のチャンネルに周波数を変えていった。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

9月23日 22:10 |アップタウン『ラクーンプレス社』付近

 

 

 

 

「子供、病人から優先して避難させます。市民の皆さんは、誘導員の誘導に従って下さい!!」

 ラクーンプレス新聞社付近では、臨時に設定された避難場所に市民たちが集められ警察ヘリによる避難活動が行われていた。

 慌ただしい雰囲気のなか、軽装備の一般警官達に混じりタクティカルベストを着込んだ選抜警官が周囲の警戒を行っているのが見れる。

 

 

「大型の輸送ヘリは空いていないの!?一般の警察ヘリじゃとてもじゃないけど……警察署への避難もままならないわ。」

 黒髪に金色の瞳を持つ女性警官、ジェシカ・E(エノーラ)・マッカンは一向に進まない避難活動に苛立っていた。病人、子供から優先してはいるものの少なくとも30人以上はいる市民たちを警察署まで避難させるにはとてもではないが時間と労力がかかりすぎだ。

 ヘリコプターによる避難は現状確実ではあるものの、一度に僅か2、3人程度しか運べないため往復だけでもかなり時間をとられてしまう。

 

「といっても近くに開いている護送車もありません。それにアイランズ署長の指示でもあります。この付近の市民はヘリで避難させるようにと。大型ヘリは、動物園方面の定期便として使われるようでして……」

 若年の警察官が、マッカンの疑問に答えるものの事態が解決するわけでもなくマッカンは頭を抱えるばかりである。

 

「慌てたってしゃあない。のんびり行こうや。」

 バーミリオンオレンジの髪をベリーロングポニーテールに纏め、帽子を被った女性警官がマッカンに落ち着くよう諭す。楽観的ではあるが、現状出来ることといえばそれだけである。

 タクティカルベストのポケットから煙草を出すとマッカンに勧めるように差し出した。

 

「吸うかい?」

「生憎といまはそんな気分じゃないの、ドリス。事態は深刻よ……こんな所に集まっていたら一網打尽にしてくださいっていってるようなものよ。」

 そっけない態度で断るマッカンがそう言うのと、背後で離陸しようとする警察ヘリが撃墜されるのはほぼ同時だった。

 

 バランスを崩し死のダンスを踊るヘリが、そのローターで周囲のものを切り裂き、周囲の警官や市民を切断しそして墜落。激しい激突音の後に引火した燃料による爆発。

 激しい爆発による火炎が夜の暗闇を昼間のように明るく照らしだす。悲鳴と怒号の入り混じった空気、音、そして混乱の最中ながらマッカンはヘリの墜落の原因を理解する。

 

「ドリス!アレよ!」

 マッカンが指差す先にはアパートの2階、ロケットランチャー(RPG-7)を持った真っ黒な服装の「双子」がいる。ヘリをやったのは長い黒髪の方だ。

 そして笑っている、人が死ぬことを、人達が恐怖するのを。心から愉しんでいる。見上げる此方に気付いたのか、視線を此方に向けるとおもむろに銀髪の方が長い筒のようなものを此方に向ける。

 

「やべェッ!!伏せろぉ!!」

 ドリスが叫ぶのと、ドリスに後ろから蹴り飛ばされるように物陰に蹴りこまれたのはほぼ同時。それから僅か後に、銃撃音が響き渡る。

 永遠とも感じられる間が過ぎた。(マッカン)とドリス以外には血塗れの市民や警官達の死体が転がっているだけだった。

 

 ほんの10秒たらずの間に何十人もの人間が物言わぬ屍と化した。先程まで歩いて生きていた人々が、だ。

 

 

「あら?もうオシマイかしら。これではつまらないわ」

「これはまだ始まりさ。ユーリ、これからもっともっと殺すんだ。彼等は()()()()()みたいなものさ。」

 

 物陰に隠れているから姿は伺えないが、声の様子からして幼い少年あるいは少女だと思えた。時折、重苦しい銃声が響く。双子がトドメを刺してまわっているのだろう。

 実際、ヘリの爆発や銃撃から逃れたごく一部の人は、逃げようとして撃たれるか死んだふりをしていて至近距離からマシンガン(ドロール軽機関銃)で撃たれるかのどっちかだった、ドリスに物陰に蹴り込まれたマッカンは極めて幸運だったといえる。

 

 

 

「マッカン……。走れるか?」

「この状況で彼等に背を向けて走れと?(運試ししろと?)

 

 ドリスの提案に冷静なマッカンも思わず正気を疑う、先ほどの掃射の精度からして数メートルも走らない内に物言わぬ骸になるに違いない。

 

 カシンとライフル(レミントンM700)のボルトを押し込み、弾丸を装填したレミントンを構えドリスが身を乗り出すのとマッカンがかけ出したのはほぼ同時だ。

 

「あぁ……、糞ったれ!!今日は厄日だ。」

 悪態を付きながら走るマッカンの背後でレミントン特有の軽い銃声が4発聞こえ、思わず耳を疑ったが振り向かずそのまま通りを走り抜ける。予想された背後からの射撃は最後までなかった。

 

 

 

 

 

 

 素早くボルトを後退させ排莢口(エジェクションポート)から7.62弾(7.62x51mm NATO弾)を素早くねじ込み装填、カチリと一発ずつ装填し所要時間は4秒あまり。最もその4秒ですら、今の状況では隙になりうる。どうあがいても装填中に周囲の状況の変化を全て把握しきれないからだ。

 

 奇襲気味に仕掛けた初弾は弾かれ、次弾は手持ちのマシンガンで防がれ、三発、四発も全て手傷すらあたえられていなかった。

 

「あぁ、レフ。存外に狩り甲斐のある獲物が居たみたいね。」

 銀髪の方の子供が、ライフル弾を防いだドロール軽機関銃を用済みと言わんばかりにその場に投げ捨てながらモスバーグ(モスバーグM500)()()両手に持つ。携帯性を少しは重視したのかストックは外されている。

 

「そうだね。ユーリ、それに今日は満月だ。獲物を狩るには最高の夜だ。」

 黒髪の子供もRPGを落とすと、両手に肉切り包丁(ブッチャーズナイフ)を握る。

 

 

「イカレた双子と地の果て迄、鬼ごっことはついてねぇや」

 ドリス・ロングフェローが咥えた煙草の灰が自重で落ちるのと、双子が獲物目掛けて距離を瞬時に詰めようと走りだしたのは同じ。

 遅れて5秒も立たない内に3発、それから直ぐに1発の銃声が。……鬼ごっこの結末は誰も知らない。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

9月23日 22:15 Jack's BAR「屋上」

 

 

 

「さっさと先に行け!!」

 

 ロベッタがモスバーグを連射しながら群れを成して迫ってくるゾンビを蹴散らしながら怒鳴る。

 

「貴方はどうするの!?」

 アリッサ・アッシュクロフトは怒声に怯まず、ロベッタの身を案じる。が、それも他の逃げるマーク達に半分無理やり連れて行かれる形で隣のビルのドアに消えていった。

 

「それで良い……。」

 ロベッタが誰に聞かせるでもなく満足したように呟くと、ジャケットに忍ばせているダガーナイフを素早く抜き放ち至近に迫るゾンビの首を切り飛ばし、強烈な蹴りを入れ蹴り倒す。紙一重の状況を3分あまり続けた後、ロベッタは逃走を決意する。

 

 退路にするはずだった隣のビルへの道となる足場板はロベッタ自身が先程落とした。飛べる距離ではない。となると選択肢は下。

 そして下を見たロベッタにはおあつらえ向きの大きなゴミ収集箱が大口を開いて待ち構えていた。

 

 

 

 

 

 ケツに残る痛みとゴミの臭いが命の救いとなるならまだマシだ。

 彼女が疾走しながら、尻目に転がる食い荒らされた市民の骸、子供でも容赦はない。クマのぬいぐるみを傍らに落とし、無残に食い破られた金髪の少女。首は特に損傷がひどく、壁に寄りかかっている少女は僅かに皮一枚でつながった首が両目を抉られた顔を支えているといった有様だ。

 

 細い路地から躍り出るゾンビ野郎にダガーナイフで一撃を加えてやりながら、銃声のする方角にひたすら駆ける。

 

 そして薄汚い裏路地を抜けるとスパスを持った年配の警官と、コルトをもった若年の警官がゾンビ相手に必死の抵抗をしている場面に出くわす。

 ロベッタは盛大な溜め息を付きながらモスバーグのグリップをガシャリと動かし、押し切られそうな二人の警官の側面からモスバーグの盛大な歓迎をゾンビ共に浴びせかけた。

 

「諦めるのはまだ早いぜぇ!オマワリさんよぉ!!」

 モスバーグを脇に抱えリロードしつつ、右手に握ったベレッタで的確にヘッドショットを決めていく「離れ業」をこなしつつ、自然と三人はじんわりと後ろに後退していく。

 

「もう後がないです。巡査部長!」

 若年の警官が、タンクローリー車で塞がれた道路を見ながら悲痛に叫ぶ。

 

「いや、まだ手はある。あんたらは脇の用水路に飛び込みな」

「あれなら土管を通じてアップルイン前に移動できる!」

 年配の警官は、幸運にも用水路の繋がる先を知っていたために素直にその提案に賛同する、しかし彼女はどうするのか?

 

 

 このゾンビの大群を前に彼女は単身留まるというのだ。見捨てられはしなかったものの「三人」が全員ここで倒れるよりはマシだとレイモンド・ダグラスは若年の警官エディー・メイヤーを引き連れ

 

「幸運を祈る!!」

 と残し用水路に飛び込んだ。

 

 事故の衝撃の際にぶっ壊れたのだろうバルブから流れ出る燃料に気付き、ロベッタはにやける。

 

「あぁ、全くもって幸運だ。」

 点火したオイルライターを掲げ、ゾンビの大群を目前にし動じない彼女。

 

「とっとと失せな。ウスノロ共。」

 吐き捨てるように言うと、流れ出している燃料にオイルライターを軽く投げ捨て燃え上がるゾンビ達を見つめながら呟く。

 

「この地獄でどれだけ生きていられるかな?」

 ロベッタの関心は変わらず「この街の真相」に注がれている。燃え盛りながらも彼女に掴みかかろうとする亡者の頭にベレッタの鉛玉を撃ち込み、スキットルを開けてそして毒づく。

 

「んだよ……。空っぽじゃねーか。」

 

 

 ラクーンの地獄の黙示録はまだ始まりを告げたばかりだ。

 



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設定集てきなもの
【設定集】キャラ設定まとめ的なもの


とりあえず現時点までで出してるキャラの設定を。

本当は小説内である程度描写しておくべきなのですが、力不足でくどくならない程度(描写不足)にしか書けてないので正直さっぱりだと思って

(需要があるかどうかは分から)ないです。


主人公枠:アナスタージア・ロッソ

 

名前:アナスタージア・ロッソ

性別:男性(前世は女性)

年齢:14

 

身長:137cm

体重:40kgくらい

 

性格:とにかくガサツで乱暴者(前の頃から、少年になってからは力がついてるから余計にたちが悪い)

   が、心根自体は面倒見は良い姉貴肌(今では兄貴肌だが)あと悪気はないが辛辣で一言多め。

   ジェンダリティーにはとことん無頓着であり、前世通りのロングサイドポニーにしていることからもどちらかと言うと性別の「らしさ」には無関心。

 

詳細:ダリオ・ロッソ(営業マン・事務職(営業事務職))の息子で長男。(ルチア・ロッソは姉(18))

   家族と異なり褐色の肌を持つ、運動神経バツグンで体力お化け、怪力だがものすごくガサツ。

 

 身体面は身長こそ芳しくなく伸びなかったが代わりに当て付けのように運動、トレーニングを熱心にしていた事から(前世の記憶が戻る前から負けず嫌いなのは変わらず)

 誇張ではなく文字通り苛烈なトレーニングを重ねており、一時期それが原因で死にかけたことも。(それぐらい極端な低身長はショックだったらしい)

 

 ラクーン崩壊事件の数日前に記憶(前世の)を取り戻す。(時間的には1998.9.18)

 外見に見合わず行動力に長けた少年。(中身はかなり残念&アレではあるが……)

 外見は姉と同じ黒髪、髪型はロングのサイドポニー。眼の色は赤色。

 

 名前が女性名なのは父親のダリオが女の子と早とちりして命名したため。

(アナ自体は気にもしていないが、ダリオは表にあまり出さないが気にしており、その為かアナには一段と甘い)

 

 前世は女性(ガサツ、強気な重度のコアゲーマー・古典派的バイオハザード愛好者(一応4以降もヤルが基本的に酷評する・ゾンビ、B級映画マニア、ミリタリーマニア、Killing Floorシリーズ、DOOMシリーズなどのモンスターもののFPSゲーム中毒者)

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 退役軍人

 

名前:ケビン・C(クラリッサ)・ミヤバシ・クロス

 

年齢:38(ラクーン事件時)、23(グレナダ侵攻時)

 

身長:162cm

体重:56kg前後

 

性別:女性

 

家系:ww1からの軍人の家系。本人も戦歴は「グレナダ侵攻」、「パナマ侵攻」、「モガディシュの戦い」、「湾岸戦争」

 ハーフであり家系の中にはアメリカ「日系人部隊」所属していた者も居た。クラリッサ自身は日系人とのハーフ。

 父親は健在であり「ベトナム戦争」経験者。

 

性格とか癖:基本的に有事以外は弾倉を「空」にする癖がある。(PTSDによる錯乱経験から)

 愛煙家、冷静沈着すぎる(PTSDによる影響あり)、口が悪く、現実主義者。

 「高所恐怖症」(PTSDによる感情鈍麻の影響で表面上は平気な様に見える)、「犬嫌い」

 

技能戦闘能力:デルタフォース出身、研修プログラムを短期間で修了した秀才。

 射撃技能は卓越している、近接技能も素晴らしく。爆発物に関する知識を持つ。拳銃射撃は「50m」(実戦では30m)、小銃射撃(アサルトライフル)は当てるだけなら「400m」

 授与勲章は「パープルハート勲章」、「レジヨン・オブ・メリット勲章(レジオヌール)」2回、「シルバースター勲章」2回、「名誉勲章(メダル・オブ・オナー)」1回、「殊勲十字章」2回を授与されている女傑。

 

 「モガディシュの戦い」では墜落したブラックホークのパイロットを救出するなど英雄的行動が多く見られるが、PTSDによる影響で異常とも言える冷静沈着さと激戦をくぐり抜けた経験と戦闘能力がそれをなさしめているものの本人は度々「悪夢」にうなされるなど外面的なイメージとは裏腹にかなり内面は薄暗く退廃的であり、悲劇的である。

 

 退役し、都会の喧騒から離れ田舎町のラクーンシティーを訪れたために「ラクーン崩壊事件」に巻き込まれる。

 

 「トレンチガン」を愛用し、「M60機関銃」を単独で扱ったりとその小柄な体格とは裏腹にかなりの怪力。

愛用するサブアームは大口径の大型拳銃。

 

 (この世界軸の経緯は多分(確実に)史実の戦争結果と異なる箇所があります(モガディシュの戦いは本来はパイロットも救助に向かったデルタフォース隊員も生存者なしなど))

 

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 ラクーン・SWAT隊員

 

名前:レン・アルダーソン

 

 年齢:27(ラクーン事件時)

 性別:男性

 

 身長:184cm

 体重:94kg前後

 

詳細:ラクーン選抜警官隊「Racoon・Swat」の隊員。

 署内で1位2位を争う程の拳銃射撃の名手であり、極めてタフでリーダーシップに長ける、が致命的な遅刻グセが欠点。

 

 「ラクーン崩壊事件」の際にも遅刻し、結果的に初動の署内壊滅に巻き込まれずにすんだ。

 性格は、外見と異なり意外に沈着冷静。不良警官である「ケビン・ライマン」とは悪友。

 

 女性からの受けは良いが彼女は居ない。(異性に興味が無いため)

 面倒見が良く、女性への下心が無い為に異性とは友達以上にはならない模様。

 

 選抜警官隊の出動に間に合わず(遅刻の為、市内の混乱に巻き込まれたため)選抜警官隊の全滅後に署内にたどり着く。先輩であるアリッサ・メイヤーの影響で銃器に関する知識は豊富で、市内を突破するさいにも重武装(自費で揃えた趣味用の装備)でゾンビを始めとするクリーチャーと交戦している。

 

 アリッサ自身が過度ともいえる銃器ユーザーな為に、レンの所有していた武装も「ベネリM3」、「M16小銃」、「ベレッタM92F 2丁」といった重武装であった。

 

 下水道への脱出ルートを確立後、度々ウィリアムGと交戦している。

 またアイアンズ署長の実態を知り生きて捕らえ裁きを受けさせようとするなど正義感にあふれた好漢でもあった。

 

 性格:楽天家で精神的に強いタフガイ。細かいことにはあまり拘らない性格。

 

 

 キャラ的にはクリス(ゴリスではない)に近いキャラデザインです。ただしホモ。気のいい兄貴分で面倒見が良いし頼りがいがあるが、ホモ。

 

 

 

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 ラクーン記念病院 女性医師

 

 

 名前:リンダ・パール

 

 年齢:25(ラクーン事件時)

 性別:女性

 

 身長:172cm前後

 体重:63kg前後

 

詳細:ラクーン市病院(ラクーン記念病院)の医師。

 植物状態の母親を安楽死させた過去を後悔している。

 どんなに絶望的な状況に対しても立ち向かうメンタリティを持つ。

 S.T.A.R.S隊員である「ジル・バレンタイン」とは幼馴染。

 

 少し向こう見ずなところがあるが、基本的に自分以外の安全を願う根っからの良識人。

 頭がよく周り状況把握能力に長ける。

 「ローズ・ホワイト」は彼女の担当の患者。

 「エド・サンダース」とはNYへ共に行く約束をしている。

 

 パンク寸前の病院機能の中感染した市民に最善の治療を施すものの隔離していた感染者達がほぼ同時期に発症、ゾンビ化し隔離病棟から雪崩れ込んでくる感染者によって記念病院の職員、医師達の殆どが犠牲となり彼女も命からがら一部の生存者達と記念病院を脱出。

 27日にはラクーン警察署にたどり着くが、その惨状を目の当たりにし、生き残った警官たちと協力して警察署脱出の為に奔走する。

 

 女性であり荒事に縁遠い人物だが、非常時と肝の座った性格からか銃器を手に戦う事を決意する。

 ジルと親密な関係からかアークレイ事件後は僅かな時間を使っては射撃訓練に勤しんでいた甲斐もあってか、大口径の拳銃も扱える様だ。

 

 性格:気丈で勇敢だが激情的

 

 おそらく(じゃなくても)くっそマイナーであり無かった事にされたボイスドラマ「バイオハザード 運命のラクーンシティー Vol2」で出てくる主人公的な人。最終的には生きて生還は出来ません(運命のラクーンシティーだと)

 

 ジル・バレンタインの幼なじみとかいろいろ活かせる設定を盛り込みながらあっさり死んじゃうあたりB級映画テイスト的だけどなんだかなぁって感じでしたねぇ。

 

 

 

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 私立探偵

 

 名前:ロベッタ・ハロウェイ

 

 性別:女性

 年齢:?

 

 

 身長:174cm

 体重:75kg前後

 

詳細:私立探偵。頭の回転がよく、言動とは裏腹に聡明な女性。

 経歴は不明だが、二丁拳銃のスタイルを難なく使い、コルトパイソン、44マグナムといった大口径の大型拳銃も軽く使いこなす程度には技量と力に優れている。

 

 基本的にはコルトパイソン、44マグナムの2丁拳銃スタイル。

 

 バックアップガンとして、ベレッタM92Fを2丁、44マグナムを使用するレミントン・デリンジャーを1丁。切り札としてデザート・イーグルを1丁。(の予定だったけどデザートイーグルをM500ベースの「ボーン・コレクター」の二丁に変更したり、M93Rを追加で携帯したり描写映えしやすいように変更。)

 

 基本的に補充の利きやすい9パラのベレッタの所持弾は少なく各1マガジンの2。ボーン・コレクターが12発と強装弾が6発。デリンジャーは予備弾は無く、44マグナム、コルトパイソンはそれぞれ12発ずつ所持している(スピードローダーは無し)

 

 旧友の依頼でラクーンシティーに来ていた所「ラクーン崩壊事件」に巻き込まれる。

(後輩のアーク・トンプソンの頼みでレオン・S・ケネディに会い、あるものを渡す事を引き受けるが、あくまで仕事のついで)

 

 重度の愛飲家であるが、嫌煙家。

 肉弾戦能力はかなり高く、軍役経験者であるかもしれない。

 

 9月23日では「J'sBAR」において飲んでいた所を事件に巻き込まれる事となる。

 居合わせていた、マーク・ウィルキンス、マークの同僚のボブ、ウェイターのウィル、アリッサ・アッシュクロフトらと協力して脱出を目指す。

 

 口調は荒いが、足手まといのボブを助けるために殿を務めたり、バックアップガンのベレッタを1丁アリッサに渡すなど可能な限り他者を助けようとする意思を感じられる。

 

 戦闘面に関してはややトリガーハッピー的一面を感じさせるものの、J'sBAR内に雪崩れ込んできたゾンビ達を一時的にとはいえ一掃し、二丁拳銃という命中率に難があるスタイルながら一発も狙いを外さず片手毎に異なる目標に命中させるなど神業じみた腕前を見せている。

 

 

 趣味全開キャラその2。基本的に女性キャラ多めなのは性癖なのでご容赦を。

 

 私立探偵なのに色々あれなのはガンサバのアークくんが超武闘派なのが悪い(責任転嫁)。アーク・トンプソンの先輩文の設定で色々教えたりもした設定なのでアーク・トンプソン以上には戦闘のプロフェッショナル。(の予定)

 

 

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 上品さと激情を秘めたお嬢様

 

名前:アンナ・パルツァロヴァー

 

 年齢:16(ラクーン事件時)

 性別:女性

 

 身長:160cm

 体重:52kg前後

 

詳細:ラクーン高等学校に通うお上品なお嬢様。

 適度な長さだが、ボリュームのあるさらりとした金髪。

 

 親はかつてのオーストリア=ハンガリー二重帝国の貴族の家系で、ww2が起きるまではチェコスロバキアの()()()()()()実業家であり、親の影響からかチェコスロバキアを自身の母国の様に思っている(生まれは合衆国)。

 そのためか、チェコスロバキア解体の遠因となった共産主義が大嫌いだし、ロシア人とドイツ人も嫌い。祖国の現状に納得しておらず民主化しスロバキアと分離したチェコを共産主義者と軽蔑している。

 

 面倒見がよく、上品であり、容姿端麗なためもあってか性別問わず人気。

 

 文武両道を地で行き、肉体面においてもかなり優れている。

 

 

 両親の裕福な経済環境に起因するのか、チャレンジ精神旺盛であり自身で銃剣(ガンブレード)を設計、金に糸目をつけずにその道のプロフェッショナルを動員した結果、高振動粒子を備え12ゲージショットシェルを使用するショットガンを備えたシロモノが誕生した。

 

 

 

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 R.P.D.署員

 

 名前:アリッサ・メイヤー

 年齢:32(ラクーン事件時)

 

 性別:女性

 

 身長:163cm

 体重:58kg前後

 

詳細:ラクーン市警の警察官。殺人課所属。階級は巡査部長。

 射撃が得意であり、署内の射撃大会にて上位に入る程度には実力者。

 趣味はハンティングであり、熱心なガンマニア。ケンド銃砲店のお得意様でもある。

 

 『ラクーン崩壊事件』ではアイアンズ署長の意図的な妨害工作によりラクーン市内(市庁舎方面)に配置され、命からがらラクーン警察署内への避難に成功する。

 選抜警官隊の全滅後も署内の武器弾薬の収集、署内の安全エリアの確立、対ゾンビ戦闘など奔走した。

 

 大の映画好きでもあり、特にゾンビ映画の大ファン。皮肉ながら「ラクーン崩壊事件」においてその知識が役立つ時が来てしまった……

 言動は真面目だが、底抜けに楽観的であり遅刻魔の「ケビン・ライマン」とは飲み仲間。

 

 

 

 マジメだけど大真面目故に大好きなゾンビ映画の影響を諸に受けてる人。お陰でラクーン崩壊事件ではその要素が有利に働くことに。

 基本ゾンビマニアってゾンビ映画に出ると早々に退場すること多いから、なんかなぁ……。って思って考えたキャラだったような気がします。

 

 

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 R.P.D.チーフ

 

 名前:ジョン・メイヤー

 性別:男性

 年齢:36(ラクーン事件時)

 

 身長:175cm

 体重:70kg

 

経歴:RPDのキャリア組。階級は警部。

 アリッサ・メイヤーの兄。

 

詳細:RPDの警部(正確にはキャプテンと呼ばれる役職で、警部長だが、呼びやすく「チーフ」や「警部」と呼ばれている。)

 趣味は筋金入りの銃製作。

 妹のアリッサ・メイヤーの過度な銃器愛好は、兄の影響大。

 

 性格は正義感の強く、誠実だが、抜け目の無い人物。キャリア組だが、スタッフや現場のやり方に理解を持っている理想的な上司。

 

 妹の影響でゾンビ映画に熱中し、普段は生真面目で厳し目な堅物なイメージ

 だが、意外に思い切りのいい部分やぶっ飛んだ部分が多くある。

 

 見かけは、どちらかと言えばかわいい系。なので自身も少し気にしている。(職場の「その手」の層からは、目を付けられている(意味深))

 警官としての職務に誇りを持っており、その技能の修練を怠った事はなく、個人能力はかなりなもの。

 

 体格の華奢さからくる筋力不足には少し悩みを抱える。

 

 愛用する銃器は命中精度を重視しカスタマイズした「ブローニングHP Jタイプ(いわゆるハンドメイド銃)」

 競技銃並の精度を誇り、ボディは高耐久性を求めたステンレス製。

 凝り性のジョンが心血注いでカスタムした銃であり、そのクオリティの高さはSTARS向けに製作、納品されているサムライエッジに勝るとも劣らない品質と性能を誇る。

 

 STARSの副隊長でありブラボーチーム隊長であった「エンリコ・マリーニ」とは深い仲であり、一緒にゴルフにも行く程度には親密。

 

 「洋館事件」で生き残ったSTARSメンバーとの交流を保ち続け、むしろ以前より距離を近めていたためにアイランズ署長には疎まれるが、バリー・バートンのツテを利用して「STARS備品」として非常事態用に重火器を充実させたり、「ラクーンSWAT」の設立に大きく関係しラクーンSWAT内最精鋭である「αグループ」を一から鍛え上げた。(バリー、ジル、クリス達の協力を得ながらではあるが)

 

 不良警官である「ケビン・ライマン」を「αグループ」メンバーとして迎えようとしたものの、ケビンには辞退されている。ケビンの勤務態度には少し頭を悩ませているが能力自体は認めている。

 

 アイランズ署長、アイアン副署長に次ぐNo.3でありアイランズ署長が治安の急速な悪化に対して特に手を打たない事を知ると「行動の裁量権」をアイアン副署長に認めさせ、「ラクーンSWAT」を機動的に運用し事態の沈静化に務めた。

 

 

 RPDって署長以外のメンツが謎なんですよねぇ。って事で副署長に次ぐNo.3といったポジションのひと。

 本編だと早々に拘束されて今のところ良いとこなしなキャラです。

 

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 αグループ隊員

 

 

 名前:カーリー・ダフ

 年齢:28(ラクーン事件時)

 性別:女性

 

 

 身長:170cm

 体重:62kg前後

 

 詳細:アビー・ダフの妹。

 射撃技能に秀でており、αグループ内ではRS(リアセキリティ)、通信機器関連の扱いに長けている。

 姉と同じく強気な性格であり、姉に憧れて警官になり、資質的には優れておりジョン・メイヤーの推薦で新設されたRacoon・Swat内でも最精鋭の「αグループ」の一員となる。

 

 主に扱う銃器は「レミントンM700(5.56x45mm弾仕様)」、「アーウェン37グレネードランチャー」、「ベレッタM92F(αグループ仕様)」など

 

 署長の陰謀によりジョンが拘束され、ジョンの名で無謀な任務が指示された際に真っ先に不審を感じた人物。行動力に長け、死地と化したラクーンでの生存の道を模索する。

 

 

 姉と違って女性らしい体型だが、やはり体格的にはややがっしりしており、筋力もそれ相応にはある。

 伊達にαグループの隊員を務めている訳ではないのだ。

 

 ラクーンSWATの最精鋭部隊「αグループ」の隊員の一人。練度・装備的に正式なSTARSの後釜と言える部隊。

 

 バイオにおける警察の不手際は全部署長の仕業だってソレ一番言われてるから。

 

 

 

 βグループ隊員

 

名前:ドリス・ロングフェロー

 

年齢:35(ラクーン事件時)、20(グレナダ侵攻時)

 

身長:161cm

体重:56kg前後

 

性別:女性

 

外見:バーミリオンオレンジの髪をベリーロングポニーテールに纏めた。活発そうな白人女性。

 

概要:元「第75レンジャー連隊」所属。

 戦歴は「グレナダ侵攻」、「パナマ侵攻」、「モガディシュの戦い」、「湾岸戦争」

 

性格とか癖:底抜けに楽観的だが、狡猾で冷静沈着。好きなものは「ハンティング」。極度のヘビースモーカーであり、癖として手持ち無沙汰の際に利き手で7.62を弄ぶ変わった仕草をする。

 

 

技能戦闘能力:陸軍出身、第75レンジャー連隊に最年少で選抜され、以降「グレナダ侵攻」から始まる各戦争で目覚ましい戦果をあげる。

 其の結果「フェザーライト(羽のような軽さ)」の二つ名で呼ばれることになる。

 

 その技能は神懸かっており、教本でも紹介されるほど。

 

 ボルトアクションによる射撃速度の速さに比例するものはおらず、レミントンM700(7.62mmモデル)を4秒未満で装填、発砲まで可能にし

 1000メートル以内の標的に対して30秒間に「10発」の的確な命中弾を出した事は驚異的の一言。

 

 前述の通り射撃技能は卓越しており、爆発物に関する知識を持つ。拳銃射撃は「50m」)、小銃射撃(アサルトライフル)は「500m」、ライフルに至っては「1000m」以上を難なく撃ち抜けるレベル。

 授与勲章は当人が語りたがらないため不明。

 

 

 退役し、退役軍人会のつてでラクーン市警に赴任する。

 

 「βグループ」のオムニマン(機器の操作や重火器の整備・運用などを行う。)、リアセキュリティ(ヘリコプターの操縦や警護、後方警戒が主な任務で、状況によっては狙撃手を担当する。)

 人数不足と時間不足の為にまだ3名しかいないβグループで最も戦闘能力が高いと評される。

 




 その他も本編を進めていく内に追加する予定なので気長に待っていただければ。あ、あと感想とか貰えれば励みになります(迫真)


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