仮面ライダーエグゼイド 大我の大冒険 (ぽかんむ)
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前編
雲一つない青空の下に、草原が広がっている。ときどき吹く風が、草むらを揺らす。そこに白衣を着た男が、目を瞑って立っていた。彼の名は花家大我。職業は闇医者だ。
「どこだここは?」
まぶたを開く大我。周りはすべて始めての景色。彼の最後の記憶は、自宅のベッドで眠りについたこと。つまり一切の心当たりがなかった。
すると彼を取り囲むように、三匹のポケモンが現れた。彼の正面にはピカチュウ、右にはフシギバナ、左にカメックスが位置している。
「新種のバグスターか?」
襲いかかる三匹のポケモン達。大我は彼らの攻撃を避けつつ、ゲーマドライバーを腰に巻いた。
それからバンバンシューティングを、白衣のポケットから取り出そうとする。
しかしガシャットは何一つ入っていなかった。三方向から迫ってくるポケモン。彼はそれらを防ぐ術を持たない。
カメックスには殴られ、ピカチュウから十万ボルトを受け、フシギバナに踏みつけられた。
そのとき少女の声が、彼の耳に届く。
「大我さん! しっかりしてください!」
彼女は、右手にガシャットを持っていた。そしてそれを、大我に投げつける。
「どうして奴が持っている? いや、まずはこいつらをぶっ潰すのが先か」
バンバンシューティング!
ガシャットのトリガーを引き、ゲームエリアを展開させる大我。
ドラム缶型のアイテムボックスが、多数現れる。
「第二戦術、変身」
ガシャット! ガッチャーン! レベルアップ! ババンバン! バンババン! イェイ! バンバンシューティング!
スナイプが起き上がると、フシギバナは横転させられる。彼は次にガシャコンマグナムを召喚。それをピカチュウに向かって発砲。弾を脳天に受け、ピカチュウは倒れた。
肩の二門の砲台から、大量の水流"ハイドロポンプ"を繰り出すカメックス。彼はそれを、左に回転しながら避ける。カメックスにとっての死角に入り込んだスナイプ。
彼はマグナムを連射。まだ放水のやめないカメックスの、腹を傷つけていく。
フシギバナが起き上がる。するとそれは、花から二本の太いツルを伸ばす。スナイプの足にそれが巻き付けられる。彼は宙吊りにされてしまった。
「これで勝ったつもりか?」
彼はドライバーからガシャットを抜く。次にそれを得物のホルダーに挿す。
ガシャット! キメワザ! バンバン! クリティカルフィニッシュ!
放たれた光弾は、フシギバナを吹き飛ばす。ツルの力が抜けたことで、自由を取り戻すスナイプ。
迫ってきたカメックスが、右手を握ってパンチ。彼はマントをはためかせつつ、左の方向に身を翻した。
それからガシャットを、右腰のホルダーに挿す。
バンバン! クリティカルストライク!
スナイプのライダーキック。受けたカメックスは爆発した。
「ミッションコンプリート......」
ゲットオン ガッシューン
ドライバーのレバーが閉じられ、ガシャットが抜かれる。変身を解いた大我。すると彼のもとへ、先程の少女がやって来る。
「流石ですね。私に力を貸してください!」
「断る、俺には他にやるべきことがある。早くここから出せ!」
「あなたを連れてきたのは私です。つまりあなたをここから出せるのも私だけです」
「てめぇに協力しないと元の世界に帰れねえってことか」
「はい! 一緒に頑張りましょうね!」
「てめぇは何者だ?」
「私はリーリエ。よろしくお願いいたします」
この世界で起こっていることを、話し始めるリーリエ。彼女によると、元々この世界では、ポケモンと呼ばれる生き物と人間が平和に暮らしていたらしい。しかし別世界からの来訪者の出現によって事態は一転。
リーリエ以外のすべての生物は、来訪者によって洗脳されてしまう。
そこで彼女は敵を倒すため、別世界から味方を連れてくることを計画。そして送り込まれたのが、仮面ライダースナイプ・花家大我だった。
「奴等の居場所を教えろ。さっさとぶっ潰す」
「ダメです。敵を倒すにはすべてのガシャットを集めなければなりません」
「なぜだ?」
「敵は皆、特定のガシャットでないと倒せないのです。逆に言えば特定のガシャットさえ手に入れば、簡単に倒せます」
「バンバンシューティングはお前が見つけたのか?」
「はい......なんとか奪い取りました」
「どこにガシャットがあるんだ?」
「これにすべてのっています」
そういうと、彼女は鞄から地図を取り出した。ガシャットの名前が、手書きで書き込まれている。
彼が入手しなければならないのは
マイティアクションX
タドルクエスト
爆走バイク
激突ロボッツ
ドレミファビート
ジェットコンバット
ギリギリチャンバラ
シャカリキスポーツ
ドラゴナイトハンターZ
の合計九本だ。
「まずはここだな」
大我がある場所を指差す。そこにあるとされるのはジェットコンバットのガシャット。
その地点は、現在地からもっとも離れている。そのため、リーリエは他のガシャットから狙うように提案。けれども大我に、意見を変える気はなかった。
今ここに、彼らの冒険が始まる。
────────────
「この先か......」
長い長い道程を、やっとの思いで踏破した二人。彼らの前には、そびえ立つ大きな山が。
リーリエの体力はもう限界。見かねた大我は、リーリエを背中に担ぐ。そして少しずつ登り始めた。
「絶対に離すなよ」
「はい!」
────────────
敵のアジトはこの世界の中央に位置している。かつては宮殿であったが、今では来訪者達に支配されている。
そこにやって来たアロハシャツ姿の男。門の警備に当たっていた者が、彼の応対をする。
「この世界に仮面ライダーが現れたぜ」
「誰だお前は?」
「自分九条貴利矢。あんたらに危機を伝えるためにやって来た」
「何が目的なのだ?」
「侵入者を倒す代わりに、ライダーガシャットをいくつか渡しな。具体的には......そうだな、爆走バイクとギリギリチャンバラとドラゴナイトハンターZで頼むわ!」
「わかった、管理者達にその事を伝えておく。地図を渡すから受け取ってこい」
「りょーかい、じゃあな」
────────────
大我はその頃、ゴツゴツした岩肌をよじ登っていた。手をかける位置を一回間違えるだけで、彼らは真っ逆さまに落ちてしまうだろう。少しのミスが命取りとなるのは山登りも治療も同じだ。
しかしそんな苦行もあと少し。気が付くと彼は、頂上まで手をのばしていた。最後の力を振り絞り、体を乗り出す大我。
「着いたぞ......はぁはぁ......」
「お疲れさまです、大我さん」
「アイツが......ジェットコンバットの管理者か?」
「はい!」
山の頂上にいたのはボーマンダ。そしてその奥にあるのはガラス製のケース。中にはオレンジ色のライダーガシャットが見られる。
間違いない。あれは確かにジェットコンバットだ。
「第二戦術 変身」
ガシャット! ガッチャーン! レベルアップ! バンバンシューティング!
スナイプはガシャコンマグナムを召喚。Bボタンを三回押して、マシンガンのように連射。ボーマンダがそれを、飛行して避ける。
ズッキューン!
彼はマグナムのAボタンをタッチ。すると砲身が展開され、ライフルモードに変形された。サイトを覗きつつ、狙いを定めようとするスナイプ。
するとボーマンダは動きを止め、雄叫びを挙げた。彼は敵の行動の意図が読めずに不審がる。
一瞬後、青空から大量の隕石が降り注ぐ。
「大我さん!」
屈指の威力を誇るドラゴンタイプの技"流星群"
それは辺りを瞬く間に、焦土と化させる。土煙が舞い、リーリエの視界が閉ざされる。
地上に降り立つボーマンダ。その際、翼のはためきによって砂塵が払われる。地面には大小様々な穴が、無数に空いていた。スナイプの姿はどこにもいない。
「嘘......そんな......」
ボーマンダが、次なる獲物を決める。ポケモンは彼女に、牙を向けて威嚇。彼女は恐怖から、足をガクガクと震えさせられた。
「まだ終わっちゃいねぇよ」
どこからか、大我の声が聞こえる。彼がどこにいるのか、リーリエには知るよしもない。一方でボーマンダは、声の主が何処にいるのかを瞬時に悟った。
しかしもう手遅れ。既にボーマンダは、彼の射程圏内にしっかりと収まっていたからだ。
キメワザ! バンバン! クリティカルフィニッシュ!
地中から噴き上げた怒濤の光線。ボーマンダは打ち上げられた後に爆発。多くの肉片が、一帯に散らばった。
「流星群によって作られた穴を利用して、地中に潜んでいたのですね。そしてボーマンダの真下から、必殺技を撃ち込んだと」
「あぁ、何はともあれ、これで一つ目のガシャットは俺のものだ」
二人が奥へ進む。彼はそこにあったガラス製のケースを、マグナムで破壊。
その中に入っていたジェットコンバットを、見事獲得した。
ゲームクリア!
「早速使うか。第三戦術」
ガシャット! ガッチャーン! レベルアップ! ババンバン! バンババン! イェイ! バンバンシューティング! アガッチャ! ジェット!ジェット!インザスカイ! ジェット!ジェット!ジェット! ジェットコンバット!
「これでこのあとは目的地まで、ひとっ飛びで駆けつけることが出来る。戦力アップにも繋がったしな」
「流石です! 大我さん」
「次はドラゴナイトハンターZが眠っているとされる洞窟に向かう。しっかりと掴まっておけ」
「はい!」
圧倒的な機動力を得たスナイプ。これにより、どこへでも短時間で行けるようになった。
彼らがひとっ飛びで、洞窟の入り口まで辿り着く。
「ここから先は歩きだな」
「待て」
少年が後ろから、二人を呼び止める。彼らが振り向くと、彼はゲーマドライバーとライダーガシャットを取り出した。
「兄様......!」
少年の名はグラジオ。リーリエの兄に当たる人物だ。戦いの果てに出来たものなのか、多少の傷が見受けられる。彼も来訪者による洗脳を受けているようだ。
ところで彼の持っていたガシャットは、なんとガシャットギアデュアルβ。
「変身!」
グラジオはダイヤルを回して、タドルファンタジーを選択。それをゲーマドライバーに差し込む。
ガシャット! ガッチャーン! デュアルアップ! タドルメグル RPG タドルファンタジー
一度ブレイブクエストゲーマーになるグラジオ。そこにファンタジーゲーマが飛来し、アーマーとして装着される。
「兄様が変身!?」
「レベル50だと......」
スナイプのレベルは現在3。一方、ブレイブファンタジーゲーマーのレベルは50。正攻法で挑めば、どちらが勝つかは明白だ。
「実戦は初めてとはいえ、俺はこれまで厳しい訓練を積んできた。お前なんかには負けない」
実戦は初めて。スナイプはこの言葉に、一筋の光を見いだす。経験の差というのはなかなかバカに出来るものではないからだ。
それにレベル差があっても勝てるということは、永夢や飛彩が過去に実証してきたこと。
キメワザ! ジェット! クリティカルストライク!
いきなり必殺技を放つスナイプ。弾丸やミサイルが、四方八方から撃ち出される。
「そんな攻撃、とても効かん」
「狙いはてめぇじゃない」
バンバンシューティングは起動させると、ドラム缶のようなものがゲームエリア内に配置される。
中に入っているのはエナジーアイテム。自分が取れば、戦いを有利に進めることが出来る。しかし中身を知るには、実際に壊してみるしかない。
今回のスナイプの攻撃の意図はドラム缶の破壊。これにより、中に仕舞われていたエナジーアイテムの種類を、瞬時に見切られるようになる。
コウソクカ!
彼は使用したアイテムの効果で機動力を強化。洞窟とはいえそこはだだっ広い場所。従って彼は思う存分、飛行というアドバンテージが使える。
ブレイブの周りを素早く移動しつつ、バルカン砲の攻撃を浴びせるスナイプ。
「......これでいくか」
ブレイブを倒すための作戦を、思い付いたスナイプ。彼が、辺りをよく見回す。すると彼の探していたアイテムが、すぐに目についた。
「ならば俺もアイテムを使わせてもらおう」
コウテツカ!
エナジーアイテム・鋼鉄化の効果は身体を頑丈にすること。防御力が上がり、応用すれば攻撃にも利用できる。
彼は漆黒のマントを右腕に巻き付ける。するとそれがドリルのように回転。彼はそれを、スナイプに伸ばした。
硬化したマントが、スナイプの胸をえぐる。そして彼は地に落とされる。
「とどめだ」
ドライバーのレバーを一度閉め、再び開けるブレイブ。
キメワザ! タドル! クリティカルスラッシュ!
召喚されたガシャコンソード。その刀身に、紫色のエネルギーが蓄積。
彼が剣を二回払う。X字状と化した斬撃が、スナイプに襲いかかる。
「それを待ってたぜ」
ハンシャ!
アイテムをバルカン砲で撃つことで、それの効果をゲットしたスナイプ。そのエナジーアイテムは、彼が事前に置場所をマークしていた物だった。
跳ね返された攻撃が、一直線にブレイブを襲う。意外な攻撃に対応できないブレイブ。
攻撃をまともに受け、彼の変身が解かれた。
「ガシャットギアデュアルβは俺がいただく」
グラジオのドライバーから、ガシャットを奪い取ったスナイプ。
これは敵アジトで繰り広げられる戦闘では役に立たない。だが管理者達を倒すには、これ以上無いくらいの強力なガシャットだ。彼とリーリエは先に進む。
「実の兄が死んだというのに、随分と冷静だな」
「どういうことですか?」
「悲しいとかないのか? まぁ言われたところで、俺からしたらどうでもいいことだけどな」
「彼は洗脳されていたのですよ。所詮兄様の姿を模しているに過ぎません」
やがて二人は、最奥地まで辿り着いた。しかしそこにポケモンの姿はない。代わりにいたのは、スナイプにとって見覚えのある人物。
「レーザー......てめぇは死んだはずじゃ......」
「久し振りだな、大我」
「ここで何をしている?」
「自分はガシャットを集めているんでね。悪いことは言わない、早く帰れ」
「あいにくだが俺もガシャットを集めている。持っているならよこせ」
「どうせ自分は一度死んだ身だ。いいから早く帰れ」
そう言うと貴利矢は、アロハシャツのポケットに手を突っ込む。取り出されたのはガシャットではなく、三つのモンスターボール。それらが投げられた。
「いけ、アギルダー、キリキザン、ガブリアス!」
ボールより繰り出された三頭のモンスター。それらが一斉に、スナイプに襲いかかってくる。
彼はバルカン砲をぶっぱなす。だがアギルダーとガシャットにはかわされ、キリキザンには弾かれてしまった。
「だったらこれだ。第伍拾戦術!」
彼はギアデュアルβのダイヤルを回し、バンバンシミュレーションを選択。それからそれを、ドライバーに差し込む。
ガシャット! ガッチャーン! デュアルアップ! スクランブルダ! シュツゲキハッシン バンバンシミュレーション ハッシン!
戦艦を身に纏い、強化されたスナイプ。レベルは先程のグラジオと同じく50だ。
彼はまず、両手の大砲を発射して、キリキザンを吹き飛ばした。
ガブリアスが地中に潜る。彼が意識を地下に集中していると、やかましい音が鳴り響いた。それはアギルダーの技"虫のさざめき"
発声源を止めるため、左肩横の砲台を、アギルダーに発射するスナイプ。しかしその虫は"先取り"を発動。光弾は、撃った本人に直撃。
地中のガブリアスが、彼の両足首を掴む。身動きの取れなくなった彼に、キリキザンの"アイアンヘッド"が繰り出された。
最後に、ガブリアスが地上に勢いよく飛び出す。もちろんスナイプを掴んだまま。
彼は洞窟の一番上に叩きつけられた後、地面に投げ飛ばされた。
「早くここからログアウトしろ」
貴利矢がこう伝えるが、スナイプには届かない。しかしその原因はダメージではない。事態を打開するための策を思い付いたからだ。
勢いよく降下するガブリアス。必殺の一撃"ドラゴンダイブ"を繰り出そうとする。
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後編
キメワザ! バンバン! クリティカルファイア!
スナイプは両腕をくっつけ、戦艦のようにする。それから、ガブリアス目掛けて全砲門で一斉放火。
ガブリアスは打ち上げられ、終いには洞窟の天井を突き破った。
その際に作られた破片が降り注ぐ。
「大我さん! このままだと生き埋めになってしまいますよ!」
「逃げるぞ」
割れ目が広がり次々と、連鎖的に崩壊していく洞窟。スナイプはリーリエを脇に抱えると、全速力で逃げ出す。
その間、彼は貴利矢のことについてずっと考えていた。なぜここにいるのか、なぜガシャットを狙うのか、なぜポケモンを使役できるのか、などなど。
間一髪で逃げ切ることができた二人。リーリエが振り向くと、既に洞窟は塞がっていた。
「危なかったですね......」
────────────
その後大我は激突ロボッツ、ドレミファビート、シャカリキスポーツ、マイティアクションXを獲得した。
現在二人は、タドルクエストが眠っているとされる森に来ている。
次々と襲いかかってくる野生ポケモンの群れ。スナイプシミュレーションゲーマーは、それらをひたすら砲撃していく。
森を抜けるとそこには大きな滝が。そして最後の管理者であるラグラージが潜んでいた。
マッドショットを口から、マシンガンのように吐き出すラグラージ。スナイプはそれを正確に撃ち落としつつ、間合いを詰める。
ラグラージが、地面を拳で殴る。すると地震が発生。揺れにより、標準の合わなくなるスナイプ。
その隙に放たれた"ハイドロポンプ"。彼は強烈な一撃を受けて転がされた。
「俺達は......遊びでやってんじゃねぇんだよ!」
立ち上がるスナイプ。水流を纏ったラグラージが、彼に突進を仕掛ける。
「あれは滝登り! 気を付けてください!」
リーリエの助言を無視し、微動打にしないスナイプ。彼はラグラージの攻撃を、両腕を体の前に突き出すことで受けきる。
それから、素早くドライバーのレバーを操作。
キメワザ! バンバン! クリティカルファイア!
零距離から放たれた高出力なビーム。まともに喰らったラグラージは、粉々に砕け散った。
彼らはタドルクエストを無事に回収。貴利矢が持っているものを除けば、大我達は全種類のガシャットを集めきった。最後に向かうのは敵のアジトと化した宮殿。リーリエの実家だ。
────────────
宮殿に入るためには、門を潜る必要がある。そこには門番が一人、配置されている。
大我とリーリエは今、その近くまで足を踏み入れていた。彼の作戦は、物陰から門番を狙撃して安全に浸入すること。
彼はガシャコンマグナムを召喚。ライフルモードに変えて、標準器を覗きこむ。
しかし見えたのは貴利矢。二人は予定を変更し、彼のもとに近づいた。
「ガシャットを集めきったみたいだな。自分に渡しな」
「どうしてお前がここにいる?」
「自分、ここに所属してるんで。あんたと自分は敵通しなわけ」
「俺はもうお前には乗せられねえ。レーザー、この世界は......ゲームの世界。違うか?」
大我がこう考えた根拠としては、何日間歩こうと空腹にならなかったことが第一に挙げられる。
他にはリーリエの兄に対する無頓着さ、地図があまりにも簡単すぎることなどがある。
「その通り。これは檀黎斗が万が一死んだとき、自分を甦らせるために作ったゲーム。ランダムで送り込まれたライダーが死んだ瞬間、代わりに奴がバグスターとして復活する仕組みなのさ」
「当然ゲンムは不死身。マキシマムマイティXもない。つまりこのゲームは、絶対にクリア出来ない無理ゲーってこと」
「なんだと!?」
「自分に出来ることは、送られてくるライダーにこの事を伝えることだけ。だけど自分だって、いつシステムにバグとして処理されるかもわからない」
「お前が未来を託した男なら、こんなとき何て言うだろうな」
「永夢のことか? あいつなら絶対に諦めな......そうか!」
「自分に乗れ、ウィニングランを決めるのは自分達だ」
宮殿に乗り込んだ三人。中には九体のバグスターが、敵を待ち受けていた。
大我はここで始めて来訪者=バグスターだということを理解。もちろん、同じ姿をしているだけだが。
「どういうことだ? 九条貴利矢! 裏切ったのか!?」
騙されたことに気付いていなかったバグスター達。彼らの非難を、貴利矢が一言で一蹴する。
「あれ? 乗せられちゃった?」
「おのれ! かかれ!」
襲いかかってくる九体のバグスター達。もしこれが現実世界での戦いならば、大我達はあっという間に打ち負かされるだろう。
しかしここでは、そんなことは起こらない。
「ここは自分が引き受ける」
バクソウバイク! ギリギリチャンバラ!
「3速 変身!」
ガシャット! ガッチャーン! レベルアップ! バクソウドクソウゲキソウボウソウ! バクソウバイク! アガッチャ! ギリギリギリギリチャンバラ!
貴利矢が仮面ライダーレーザーチャンバラバイクゲーマーレベル3に変身。
彼はギリギリチャンバラを、ガシャコンスパローに差し込む。
キメワザ! ギリギリ! クリティカルフィニッシュ!
大量の小さい矢が、カイデンに放たれる。敵は堪らず爆発。
キメワザ! バクソウ! クリティカルストライク!
ライダーキックがモータスに決まる。これも爆破させる。
「そして、俺がゲンムをぶっ潰す」
その隙に大我が、奥に駆け出した。彼を襲おうとするバグスターを、身を呈して防ぎきるレーザー。
彼の活躍もあり、大我は無事に突破した。
「ノリに乗ってるぜ!」
レーザーが敵に取り囲まれる。彼はガシャコンスパローを分割。鎌を両手に持って戦う。
ガシャット! キメワザ! ゲキトツ! クリティカルフィニッシュ!
ガットンの右パンチ。それを、上体を後ろに屈むことで、避けきる。
そして彼は、敵の腹部に重い一撃を与えた。
次に彼は、ガシャコンブレイカーとガシャコンソードを召喚。それに二本のガシャットを挿入。
キメワザ! マイティ! タドル! クリティカルフィニッシュ!
レーザーの二刀流での攻撃。ソルティとアランブラが斬り落とされた。
「少し気が引けるが、お前は姿が同じだけの別物。容赦はしねえぜ!」
キメワザ! ドレミファ! クリティカルフィニッシュ!
ガシャコンソードに、ドレミファビートを差し込むレーザー。遠心力をつけての一撃は、ポッピーピポパポを倒すにはオーバーキル。
その後も彼はバーニア、チャーリーを立て続けに惨殺。その場にいたバグスターはすべて切除された。
「隠れてないで出てこいよ。ドラゴナイトハンターZの龍戦士さんよ!」
すると、とある扉が開いた。レーザーがその中に入る。そこにいたのはグラファイト。
「お前は俺への挑戦権を得た。どこからでもかかってこい」
「そうさせてもらうぜ、5速!」
ギリギリチャンバラとドラゴナイトハンターZを交換。初のフルドラゴンでの戦闘に挑む。
ガシャット! ガッチャーン! バクソウバイク! アガッチャ! ドドドラゴナナナナイト! ドラドラドラゴナイトハンター! ゼット!
「培養」
グラファイトが、ガシャコンバグヴァイザーのAボタンを押す。そしてそれを、右手のグリップパーツにはめ込む。
インフェクション! レッツゲーム! バッドゲーム! デッドゲーム! ワッチャネーム? ザ・バグスター!
グラファイトが怪物に変わる。その体色は体の中心が黒、四肢の末端と首から上は赤い。ダークグラファイトとグレングラファイトの中間形態のような感じだ。
「超絶進化を遂げた今の俺のレベルは50」
「自分には荷が重いかもしれないな。とはいえお前もバグスター。ゲームシステムからは逃れられないぜ?」
レベルで上回るグラファイトは、レーザーを一撃で倒せるだろう。一方でレーザーも、敵に対する特攻持ちだ。つまり先に攻撃が当たった方が勝利し得る戦い。
「ドドドドド紅蓮黒龍剣!」
キメワザ! ドラゴナイト! クリティカルストライク!
グラファイトファングを天高く掲げ、雷のようなオーラを現すダークグラファイト。
レーザーは四肢のドラゴンクローに、橙色のエネルギーを纏う。
駆け出す両者。しかしグラファイトの方が素早い。彼の双刃が、圧倒的スピードで振り落とされた。
両腕を頭の上で交差させ、敵の攻撃を受け止めるレーザー。
「しまった!」
「これでもくらえ!」
がら空きになるみぞおち。そこに、彼の貫くようにキックが炸裂した。
「レーザー......貴様も我が敵として記憶に留めておこう......」
グラファイトファングが、音をたてて落下。彼は力尽き、仰向けに倒れた。そして爆発。
「そんじゃ始めるか、大我がやられる前にな」
彼はリーリエに、マイティアクションXとタドルクエストを渡す。
そしてとあることを願った。
────────────
一方で大我はその頃、ラスボスまで辿り着いていた。彼がここまで来るとは思っていなかった檀黎斗。だが不測の事態というほどではないようだ。
「てめぇを復活させるわけにはいかない。俺がぶっ潰す!」
「九条貴利矢から聞いていないのか? このゲームは攻略不可能だと。君を殺して私はコンティニューしてみせる」
バンバンシミュレーション! アユレディ! フォーザバトルシップ!
「第伍拾戦術」
デンジャラスゾンビ!
「「変身!」」
ガシャットをそれぞれのドライバーに差し込む両者。
ガシャット! バンバンシミュレーション! ハッシン!
ガシャット! バグルアップ! デンジャ! デンジャ! ジェノサイド! デスザクライシス! デンジャラスゾンビ! フー
変身が済むや否や、すべての砲門から攻撃を加えるスナイプ。
ゲンムはそれをかわさない。何故なら不死身だから。致死量のダメージを受けて倒れようとも、すぐに立ち上がってしまう。
「これでわかっただろ? 唯一私を攻略できるリプログラミングもこの世界にはない。君に勝ち目はない」
「ないなら作ればいい! あいにくそのための布石はすべて揃っている」
「ハッタリを......」
スナイプが再度発砲。それをものともせずに近づくゲンム。スナイプは彼の回し蹴りを、左砲台で受け止める。
ゲンムの素早い連打。徐々に防御が追い付かなくなるスナイプ。
ゲンムの右ストレートパンチによって、吹き飛ばされたスナイプ。間合いが空いた隙に、すかさずゲンムがドライバーのボタンを押す。
クリティカルエンド
「俺は......倒れるわけにはいかねぇんだよ!」
キメワザ! バンバン! クリティカルファイア!
黒いオーラを纏って宙へと浮かぶゲンム。彼は縦に高速回転しながら、スナイプに迫る。
迎撃体制を整えたスナイプが一斉放火。二つの攻撃が真っ向からぶつかった。
なんとか踏ん張るスナイプだが、威力はゲンムの方が上。このままではいつか押しきられてしまう。
だが運命は、とある音声によって、変えられた。
マキシマムマイティ! クリティカルフィニッシュ!
突如放たれた光線。それがゲンムに当たり、彼を吹き飛ばす。すると彼のライダーゲージが回復した。
「......間に合ったか」
「大丈夫か? スナイプ!」
「皆さん! どうですか?」
そう言いながら、駆け寄ってくるエグゼイド。後ろにはブレイブ、レーザー、リーリエの姿もある。
状況の理解が追い付かないゲンム。彼がスナイプに尋ねる。
「なぜだ? マキシマムマイティXはこの世界に存在しないはず!」
「バンバンシューティングを集めたことで俺が呼び出されるのなら、マイティアクションXがあればエグゼイドを呼び出せるはず」
「加えてここにはレーザーもいる。あいつらがいればマキシマムマイティXを複製することが出来る」
「花家大我......! だが私が一人でも君達を消滅させれば、コンティニュー出来ることに代わりはない!」
ゲンムがドライバーを操作。
クリティカルデッド!
増殖した大量のゾンビゲーマーが襲いかかる。エグゼイドが、スナイプの前に立つ。ゾンビは彼に触れた瞬間、一斉に爆発。しかしエグゼイドは無傷。
「レーザーから事情は全部聞いた! お前の運命は、俺達が変える!」
「永夢、久し振りに四人協力プレイで行かねえか?」
こう呼び掛けるレーザー。彼がドラゴナイトハンターZのガシャットを、ドライバーから取り出す。
するとそれが四つに分裂。エグゼイド、ブレイブ、スナイプのもとに送られる。
リーリエから渡されていたマイティアクションXを使い、エグゼイドはレベル2に変身。これで準備が整った。
「術式レベル5」
「第五戦術」
「5速!」
「大大大大大」
「「「「変身!」」」」
ガシャット! レベルアップ! ドドドラゴナナナナイト! ドラドラドラゴナイトハンター!
レーザーからドラゴンファングが分離。それがエグゼイドに装着される。
エグゼイド!
ドラゴンブレードとドラゴンガンが分裂し、二人のライダーに送られる。
ブレイブ!
スナイプ!
レーザー!
スナイプはジャンプして、左腕のドラゴンガンを放つ。ドラゴンファングから炎を吹き出すエグゼイド。
ブレイブが近づきつつ、右腕のドラゴンブレードで斬り上げる。
同時攻撃は、ゲンムに反撃の隙を与えない。さらに畳み掛けるように、右足で回し蹴るレーザー。
「不死身ではなくなったとはいえ、レベル5ごときに......」
「それは俺達が最強の医療チームだからだ!」
エグゼイドが尻尾を伸ばして、ゲンムの胸を突く。動きを止められた彼に対し、スナイプの砲撃が炸裂。
横に斬り払うブレイブ。レーザーが両腕のドラゴンクローを大きく振り上げ、素早く下げて叩きつけた。
「フィニッシュは必殺技で決まりだ!」
ガシャットをキメワザスロットホルダーに挿入する四人。
キメワザ! ドラゴナイト! クリティカルストライク!
「私は......不滅だ!」
四人の必殺キックが、ゲンムに決まる。彼は絶叫とともに爆発した。
「何も起こらない?」
疑問に思う永夢。彼は日頃ゲームに興じているが、クリア条件を満たしてもなんのギミックもないものなど、これまで見たことが無かったからだ。
「言っただろ? このゲームは攻略不可能。つまり檀黎斗を倒したあとのデータなんて存在しないのさ」
「僕たちはどうなるんですか?」
「お前達はこの世界からしてみれば異物だ。勝手に放り出され、精神は元の肉体に戻るはずだぜ」
「貴利矢さんは?」
「自分は謂わばバグ。巻き添えは避けれないかもな」
「そんな......せっかくまた会えたのに......」
「永夢、世界の......人類の運命は任せたぜ」
永夢達三人の身体が、末期のゲーム病患者のように透けていく。それを笑顔で見送る貴利矢。
永夢の叫び声は、もはや貴利矢に届かない。それだけ透明化しているということ。
貴利矢が最後に、右腕を前に突き出して銃を撃つように手を動かした。それは大我が変身するときの、パネル選択の仕方に酷似。
唯一真意を悟った大我。そして彼らは、ゲームフィールドをあとにした。
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目を覚ます大我。時計は七時を指している。いつものベッドに戻ってきていた。
ゲーム世界では何日間か過ごしたが、現実ではわずか数時間でしかなかったようだ。
今彼の知らないところで、とある計画が着々と進んでいる。その名は仮面ライダークロニクル。バグスター達が人類を攻略し、人類を滅ぼすゲームだ。
さらに彼の宿敵の復活も、刻一刻と迫っていた......
お読みいただきありがとうございました。
ちなみに最後の方にリーリエの台詞がまったく無いのは、彼女にもデータが無いからです
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