仮面ライダーエグゼイド 大我の大冒険 (ぽかんむ)
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前編

時系列としては23話の極限のdead or alive!と24話の大志を抱いてgo together!のあいだです


 雲一つない青空の下に、草原が広がっている。ときどき吹く風が、草むらを揺らす。そこに白衣を着た男が、目を瞑って立っていた。彼の名は花家大我。職業は闇医者だ。

 

 

「どこだここは?」

 

 

 まぶたを開く大我。周りはすべて始めての景色。彼の最後の記憶は、自宅のベッドで眠りについたこと。つまり一切の心当たりがなかった。

 すると彼を取り囲むように、三匹のポケモンが現れた。彼の正面にはピカチュウ、右にはフシギバナ、左にカメックスが位置している。

 

 

「新種のバグスターか?」

 

 

 襲いかかる三匹のポケモン達。大我は彼らの攻撃を避けつつ、ゲーマドライバーを腰に巻いた。

 それからバンバンシューティングを、白衣のポケットから取り出そうとする。

 しかしガシャットは何一つ入っていなかった。三方向から迫ってくるポケモン。彼はそれらを防ぐ術を持たない。

 カメックスには殴られ、ピカチュウから十万ボルトを受け、フシギバナに踏みつけられた。

 そのとき少女の声が、彼の耳に届く。

 

 

「大我さん! しっかりしてください!」

 

 

 彼女は、右手にガシャットを持っていた。そしてそれを、大我に投げつける。

 

 

「どうして奴が持っている? いや、まずはこいつらをぶっ潰すのが先か」

 

 

バンバンシューティング!

 

 

 ガシャットのトリガーを引き、ゲームエリアを展開させる大我。

 ドラム缶型のアイテムボックスが、多数現れる。

 

 

「第二戦術、変身」

 

 

ガシャット! ガッチャーン! レベルアップ! ババンバン! バンババン! イェイ! バンバンシューティング!

 

 

 スナイプが起き上がると、フシギバナは横転させられる。彼は次にガシャコンマグナムを召喚。それをピカチュウに向かって発砲。弾を脳天に受け、ピカチュウは倒れた。

 肩の二門の砲台から、大量の水流"ハイドロポンプ"を繰り出すカメックス。彼はそれを、左に回転しながら避ける。カメックスにとっての死角に入り込んだスナイプ。

 彼はマグナムを連射。まだ放水のやめないカメックスの、腹を傷つけていく。

 フシギバナが起き上がる。するとそれは、花から二本の太いツルを伸ばす。スナイプの足にそれが巻き付けられる。彼は宙吊りにされてしまった。

 

 

「これで勝ったつもりか?」

 

 

 彼はドライバーからガシャットを抜く。次にそれを得物のホルダーに挿す。

 

 

ガシャット! キメワザ! バンバン! クリティカルフィニッシュ!

 

 

 放たれた光弾は、フシギバナを吹き飛ばす。ツルの力が抜けたことで、自由を取り戻すスナイプ。

 迫ってきたカメックスが、右手を握ってパンチ。彼はマントをはためかせつつ、左の方向に身を翻した。

 それからガシャットを、右腰のホルダーに挿す。

 

 

バンバン! クリティカルストライク!

 

 

 スナイプのライダーキック。受けたカメックスは爆発した。

 

 

「ミッションコンプリート......」

 

 

ゲットオン ガッシューン

 

 

 ドライバーのレバーが閉じられ、ガシャットが抜かれる。変身を解いた大我。すると彼のもとへ、先程の少女がやって来る。

 

 

「流石ですね。私に力を貸してください!」

 

「断る、俺には他にやるべきことがある。早くここから出せ!」

 

「あなたを連れてきたのは私です。つまりあなたをここから出せるのも私だけです」

 

「てめぇに協力しないと元の世界に帰れねえってことか」

 

「はい! 一緒に頑張りましょうね!」

 

「てめぇは何者だ?」

 

「私はリーリエ。よろしくお願いいたします」

 

 

 この世界で起こっていることを、話し始めるリーリエ。彼女によると、元々この世界では、ポケモンと呼ばれる生き物と人間が平和に暮らしていたらしい。しかし別世界からの来訪者の出現によって事態は一転。

 リーリエ以外のすべての生物は、来訪者によって洗脳されてしまう。

 そこで彼女は敵を倒すため、別世界から味方を連れてくることを計画。そして送り込まれたのが、仮面ライダースナイプ・花家大我だった。

 

 

「奴等の居場所を教えろ。さっさとぶっ潰す」

 

「ダメです。敵を倒すにはすべてのガシャットを集めなければなりません」

 

「なぜだ?」

 

「敵は皆、特定のガシャットでないと倒せないのです。逆に言えば特定のガシャットさえ手に入れば、簡単に倒せます」

 

「バンバンシューティングはお前が見つけたのか?」

 

「はい......なんとか奪い取りました」

 

「どこにガシャットがあるんだ?」

 

「これにすべてのっています」

 

 

 そういうと、彼女は鞄から地図を取り出した。ガシャットの名前が、手書きで書き込まれている。

 彼が入手しなければならないのは

 

マイティアクションX

タドルクエスト

爆走バイク

激突ロボッツ

ドレミファビート

ジェットコンバット

ギリギリチャンバラ

シャカリキスポーツ

ドラゴナイトハンターZ

 

の合計九本だ。

 

 

「まずはここだな」

 

 

 大我がある場所を指差す。そこにあるとされるのはジェットコンバットのガシャット。

 その地点は、現在地からもっとも離れている。そのため、リーリエは他のガシャットから狙うように提案。けれども大我に、意見を変える気はなかった。

 今ここに、彼らの冒険が始まる。

 

 

────────────

 

 

「この先か......」

 

 

 長い長い道程を、やっとの思いで踏破した二人。彼らの前には、そびえ立つ大きな山が。

 リーリエの体力はもう限界。見かねた大我は、リーリエを背中に担ぐ。そして少しずつ登り始めた。

 

 

「絶対に離すなよ」

 

「はい!」

 

 

────────────

 

 

 敵のアジトはこの世界の中央に位置している。かつては宮殿であったが、今では来訪者達に支配されている。

 そこにやって来たアロハシャツ姿の男。門の警備に当たっていた者が、彼の応対をする。

 

 

「この世界に仮面ライダーが現れたぜ」

 

「誰だお前は?」

 

「自分九条貴利矢。あんたらに危機を伝えるためにやって来た」

 

「何が目的なのだ?」

 

「侵入者を倒す代わりに、ライダーガシャットをいくつか渡しな。具体的には......そうだな、爆走バイクとギリギリチャンバラとドラゴナイトハンターZで頼むわ!」

 

「わかった、管理者達にその事を伝えておく。地図を渡すから受け取ってこい」

 

「りょーかい、じゃあな」

 

 

────────────

 

 

 大我はその頃、ゴツゴツした岩肌をよじ登っていた。手をかける位置を一回間違えるだけで、彼らは真っ逆さまに落ちてしまうだろう。少しのミスが命取りとなるのは山登りも治療も同じだ。

 しかしそんな苦行もあと少し。気が付くと彼は、頂上まで手をのばしていた。最後の力を振り絞り、体を乗り出す大我。

 

 

「着いたぞ......はぁはぁ......」

 

「お疲れさまです、大我さん」

 

「アイツが......ジェットコンバットの管理者か?」

 

「はい!」

 

 

 山の頂上にいたのはボーマンダ。そしてその奥にあるのはガラス製のケース。中にはオレンジ色のライダーガシャットが見られる。

 間違いない。あれは確かにジェットコンバットだ。

 

 

「第二戦術 変身」

 

 

ガシャット! ガッチャーン! レベルアップ! バンバンシューティング!

 

 

 スナイプはガシャコンマグナムを召喚。Bボタンを三回押して、マシンガンのように連射。ボーマンダがそれを、飛行して避ける。

 

 

ズッキューン!

 

 

 彼はマグナムのAボタンをタッチ。すると砲身が展開され、ライフルモードに変形された。サイトを覗きつつ、狙いを定めようとするスナイプ。

 するとボーマンダは動きを止め、雄叫びを挙げた。彼は敵の行動の意図が読めずに不審がる。

 一瞬後、青空から大量の隕石が降り注ぐ。

 

 

「大我さん!」

 

 

 屈指の威力を誇るドラゴンタイプの技"流星群"

それは辺りを瞬く間に、焦土と化させる。土煙が舞い、リーリエの視界が閉ざされる。

 地上に降り立つボーマンダ。その際、翼のはためきによって砂塵が払われる。地面には大小様々な穴が、無数に空いていた。スナイプの姿はどこにもいない。

 

 

「嘘......そんな......」

 

 

 

 ボーマンダが、次なる獲物を決める。ポケモンは彼女に、牙を向けて威嚇。彼女は恐怖から、足をガクガクと震えさせられた。

 

 

「まだ終わっちゃいねぇよ」

 

 

 どこからか、大我の声が聞こえる。彼がどこにいるのか、リーリエには知るよしもない。一方でボーマンダは、声の主が何処にいるのかを瞬時に悟った。

 しかしもう手遅れ。既にボーマンダは、彼の射程圏内にしっかりと収まっていたからだ。

 

 

キメワザ! バンバン! クリティカルフィニッシュ!

 

 

 地中から噴き上げた怒濤の光線。ボーマンダは打ち上げられた後に爆発。多くの肉片が、一帯に散らばった。

 

 

「流星群によって作られた穴を利用して、地中に潜んでいたのですね。そしてボーマンダの真下から、必殺技を撃ち込んだと」

 

「あぁ、何はともあれ、これで一つ目のガシャットは俺のものだ」

 

 

 二人が奥へ進む。彼はそこにあったガラス製のケースを、マグナムで破壊。

 その中に入っていたジェットコンバットを、見事獲得した。

 

 

ゲームクリア!

 

 

「早速使うか。第三戦術」

 

 

ガシャット! ガッチャーン! レベルアップ! ババンバン! バンババン! イェイ! バンバンシューティング! アガッチャ! ジェット!ジェット!インザスカイ! ジェット!ジェット!ジェット! ジェットコンバット!

 

 

「これでこのあとは目的地まで、ひとっ飛びで駆けつけることが出来る。戦力アップにも繋がったしな」

 

「流石です! 大我さん」

 

「次はドラゴナイトハンターZが眠っているとされる洞窟に向かう。しっかりと掴まっておけ」

 

「はい!」

 

 

 圧倒的な機動力を得たスナイプ。これにより、どこへでも短時間で行けるようになった。

 彼らがひとっ飛びで、洞窟の入り口まで辿り着く。

 

 

「ここから先は歩きだな」

 

「待て」

 

 

 少年が後ろから、二人を呼び止める。彼らが振り向くと、彼はゲーマドライバーとライダーガシャットを取り出した。

 

 

「兄様......!」

 

 

 少年の名はグラジオ。リーリエの兄に当たる人物だ。戦いの果てに出来たものなのか、多少の傷が見受けられる。彼も来訪者による洗脳を受けているようだ。

 ところで彼の持っていたガシャットは、なんとガシャットギアデュアルβ。

 

 

「変身!」

 

 

 グラジオはダイヤルを回して、タドルファンタジーを選択。それをゲーマドライバーに差し込む。

 

 

ガシャット! ガッチャーン! デュアルアップ! タドルメグル RPG タドルファンタジー

 

 

 一度ブレイブクエストゲーマーになるグラジオ。そこにファンタジーゲーマが飛来し、アーマーとして装着される。

 

 

「兄様が変身!?」

 

「レベル50だと......」

 

 

 スナイプのレベルは現在3。一方、ブレイブファンタジーゲーマーのレベルは50。正攻法で挑めば、どちらが勝つかは明白だ。

 

 

「実戦は初めてとはいえ、俺はこれまで厳しい訓練を積んできた。お前なんかには負けない」

 

 

 実戦は初めて。スナイプはこの言葉に、一筋の光を見いだす。経験の差というのはなかなかバカに出来るものではないからだ。

 それにレベル差があっても勝てるということは、永夢や飛彩が過去に実証してきたこと。

 

 

キメワザ! ジェット! クリティカルストライク!

 

 

 いきなり必殺技を放つスナイプ。弾丸やミサイルが、四方八方から撃ち出される。

 

 

「そんな攻撃、とても効かん」

 

「狙いはてめぇじゃない」

 

 

 バンバンシューティングは起動させると、ドラム缶のようなものがゲームエリア内に配置される。

 中に入っているのはエナジーアイテム。自分が取れば、戦いを有利に進めることが出来る。しかし中身を知るには、実際に壊してみるしかない。

 今回のスナイプの攻撃の意図はドラム缶の破壊。これにより、中に仕舞われていたエナジーアイテムの種類を、瞬時に見切られるようになる。

 

 

コウソクカ!

 

 

 彼は使用したアイテムの効果で機動力を強化。洞窟とはいえそこはだだっ広い場所。従って彼は思う存分、飛行というアドバンテージが使える。

 ブレイブの周りを素早く移動しつつ、バルカン砲の攻撃を浴びせるスナイプ。

 

 

「......これでいくか」

 

 

 ブレイブを倒すための作戦を、思い付いたスナイプ。彼が、辺りをよく見回す。すると彼の探していたアイテムが、すぐに目についた。

 

 

「ならば俺もアイテムを使わせてもらおう」

 

 

コウテツカ!

 

 

 エナジーアイテム・鋼鉄化の効果は身体を頑丈にすること。防御力が上がり、応用すれば攻撃にも利用できる。

 彼は漆黒のマントを右腕に巻き付ける。するとそれがドリルのように回転。彼はそれを、スナイプに伸ばした。

 硬化したマントが、スナイプの胸をえぐる。そして彼は地に落とされる。

 

 

「とどめだ」

 

 

 ドライバーのレバーを一度閉め、再び開けるブレイブ。

 

 

キメワザ! タドル! クリティカルスラッシュ!

 

 

 召喚されたガシャコンソード。その刀身に、紫色のエネルギーが蓄積。

 彼が剣を二回払う。X字状と化した斬撃が、スナイプに襲いかかる。

 

 

「それを待ってたぜ」

 

 

ハンシャ!

 

 

 アイテムをバルカン砲で撃つことで、それの効果をゲットしたスナイプ。そのエナジーアイテムは、彼が事前に置場所をマークしていた物だった。

 跳ね返された攻撃が、一直線にブレイブを襲う。意外な攻撃に対応できないブレイブ。

 攻撃をまともに受け、彼の変身が解かれた。

 

 

「ガシャットギアデュアルβは俺がいただく」

 

 

グラジオのドライバーから、ガシャットを奪い取ったスナイプ。

 これは敵アジトで繰り広げられる戦闘では役に立たない。だが管理者達を倒すには、これ以上無いくらいの強力なガシャットだ。彼とリーリエは先に進む。

 

 

「実の兄が死んだというのに、随分と冷静だな」

 

「どういうことですか?」

 

「悲しいとかないのか? まぁ言われたところで、俺からしたらどうでもいいことだけどな」

 

「彼は洗脳されていたのですよ。所詮兄様の姿を模しているに過ぎません」

 

 

 やがて二人は、最奥地まで辿り着いた。しかしそこにポケモンの姿はない。代わりにいたのは、スナイプにとって見覚えのある人物。

 

 

「レーザー......てめぇは死んだはずじゃ......」

 

「久し振りだな、大我」

 

「ここで何をしている?」

 

「自分はガシャットを集めているんでね。悪いことは言わない、早く帰れ」

 

「あいにくだが俺もガシャットを集めている。持っているならよこせ」

 

「どうせ自分は一度死んだ身だ。いいから早く帰れ」

 

 

 そう言うと貴利矢は、アロハシャツのポケットに手を突っ込む。取り出されたのはガシャットではなく、三つのモンスターボール。それらが投げられた。

 

 

「いけ、アギルダー、キリキザン、ガブリアス!」

 

 

 ボールより繰り出された三頭のモンスター。それらが一斉に、スナイプに襲いかかってくる。

 彼はバルカン砲をぶっぱなす。だがアギルダーとガシャットにはかわされ、キリキザンには弾かれてしまった。

 

 

「だったらこれだ。第伍拾戦術!」

 

 

 彼はギアデュアルβのダイヤルを回し、バンバンシミュレーションを選択。それからそれを、ドライバーに差し込む。

 

 

ガシャット! ガッチャーン! デュアルアップ! スクランブルダ! シュツゲキハッシン バンバンシミュレーション ハッシン! 

 

 

 戦艦を身に纏い、強化されたスナイプ。レベルは先程のグラジオと同じく50だ。

 彼はまず、両手の大砲を発射して、キリキザンを吹き飛ばした。

 ガブリアスが地中に潜る。彼が意識を地下に集中していると、やかましい音が鳴り響いた。それはアギルダーの技"虫のさざめき"

 発声源を止めるため、左肩横の砲台を、アギルダーに発射するスナイプ。しかしその虫は"先取り"を発動。光弾は、撃った本人に直撃。

 地中のガブリアスが、彼の両足首を掴む。身動きの取れなくなった彼に、キリキザンの"アイアンヘッド"が繰り出された。

 最後に、ガブリアスが地上に勢いよく飛び出す。もちろんスナイプを掴んだまま。

 彼は洞窟の一番上に叩きつけられた後、地面に投げ飛ばされた。

 

 

「早くここからログアウトしろ」

 

 

 貴利矢がこう伝えるが、スナイプには届かない。しかしその原因はダメージではない。事態を打開するための策を思い付いたからだ。

 勢いよく降下するガブリアス。必殺の一撃"ドラゴンダイブ"を繰り出そうとする。



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後編

キメワザ! バンバン! クリティカルファイア!

 

 

 スナイプは両腕をくっつけ、戦艦のようにする。それから、ガブリアス目掛けて全砲門で一斉放火。

 ガブリアスは打ち上げられ、終いには洞窟の天井を突き破った。

 その際に作られた破片が降り注ぐ。

 

 

「大我さん! このままだと生き埋めになってしまいますよ!」

 

「逃げるぞ」

 

 

 割れ目が広がり次々と、連鎖的に崩壊していく洞窟。スナイプはリーリエを脇に抱えると、全速力で逃げ出す。

 その間、彼は貴利矢のことについてずっと考えていた。なぜここにいるのか、なぜガシャットを狙うのか、なぜポケモンを使役できるのか、などなど。

 間一髪で逃げ切ることができた二人。リーリエが振り向くと、既に洞窟は塞がっていた。

 

 

「危なかったですね......」

 

 

────────────

 

 

 その後大我は激突ロボッツ、ドレミファビート、シャカリキスポーツ、マイティアクションXを獲得した。

 現在二人は、タドルクエストが眠っているとされる森に来ている。

 次々と襲いかかってくる野生ポケモンの群れ。スナイプシミュレーションゲーマーは、それらをひたすら砲撃していく。

 森を抜けるとそこには大きな滝が。そして最後の管理者であるラグラージが潜んでいた。

 マッドショットを口から、マシンガンのように吐き出すラグラージ。スナイプはそれを正確に撃ち落としつつ、間合いを詰める。

 ラグラージが、地面を拳で殴る。すると地震が発生。揺れにより、標準の合わなくなるスナイプ。

 その隙に放たれた"ハイドロポンプ"。彼は強烈な一撃を受けて転がされた。

 

 

「俺達は......遊びでやってんじゃねぇんだよ!」

 

 

 立ち上がるスナイプ。水流を纏ったラグラージが、彼に突進を仕掛ける。

 

 

「あれは滝登り! 気を付けてください!」

 

 

 リーリエの助言を無視し、微動打にしないスナイプ。彼はラグラージの攻撃を、両腕を体の前に突き出すことで受けきる。

 それから、素早くドライバーのレバーを操作。

 

 

キメワザ! バンバン! クリティカルファイア!

 

 

 零距離から放たれた高出力なビーム。まともに喰らったラグラージは、粉々に砕け散った。

 彼らはタドルクエストを無事に回収。貴利矢が持っているものを除けば、大我達は全種類のガシャットを集めきった。最後に向かうのは敵のアジトと化した宮殿。リーリエの実家だ。

 

 

────────────

 

 

 宮殿に入るためには、門を潜る必要がある。そこには門番が一人、配置されている。

 大我とリーリエは今、その近くまで足を踏み入れていた。彼の作戦は、物陰から門番を狙撃して安全に浸入すること。

 彼はガシャコンマグナムを召喚。ライフルモードに変えて、標準器を覗きこむ。

 しかし見えたのは貴利矢。二人は予定を変更し、彼のもとに近づいた。

 

 

「ガシャットを集めきったみたいだな。自分に渡しな」

 

「どうしてお前がここにいる?」

 

「自分、ここに所属してるんで。あんたと自分は敵通しなわけ」

 

「俺はもうお前には乗せられねえ。レーザー、この世界は......ゲームの世界。違うか?」

 

 

 大我がこう考えた根拠としては、何日間歩こうと空腹にならなかったことが第一に挙げられる。

 他にはリーリエの兄に対する無頓着さ、地図があまりにも簡単すぎることなどがある。

 

 

「その通り。これは檀黎斗が万が一死んだとき、自分を甦らせるために作ったゲーム。ランダムで送り込まれたライダーが死んだ瞬間、代わりに奴がバグスターとして復活する仕組みなのさ」

 

「当然ゲンムは不死身。マキシマムマイティXもない。つまりこのゲームは、絶対にクリア出来ない無理ゲーってこと」

 

「なんだと!?」

 

「自分に出来ることは、送られてくるライダーにこの事を伝えることだけ。だけど自分だって、いつシステムにバグとして処理されるかもわからない」

 

「お前が未来を託した男なら、こんなとき何て言うだろうな」

 

「永夢のことか? あいつなら絶対に諦めな......そうか!」

 

「自分に乗れ、ウィニングランを決めるのは自分達だ」

 

 

 宮殿に乗り込んだ三人。中には九体のバグスターが、敵を待ち受けていた。

 大我はここで始めて来訪者=バグスターだということを理解。もちろん、同じ姿をしているだけだが。

 

 

「どういうことだ? 九条貴利矢! 裏切ったのか!?」

 

 

 騙されたことに気付いていなかったバグスター達。彼らの非難を、貴利矢が一言で一蹴する。

 

 

「あれ? 乗せられちゃった?」

 

「おのれ! かかれ!」

 

 

 襲いかかってくる九体のバグスター達。もしこれが現実世界での戦いならば、大我達はあっという間に打ち負かされるだろう。

 しかしここでは、そんなことは起こらない。

 

 

「ここは自分が引き受ける」

 

 

バクソウバイク! ギリギリチャンバラ!

 

 

「3速 変身!」

 

 

ガシャット! ガッチャーン! レベルアップ! バクソウドクソウゲキソウボウソウ! バクソウバイク! アガッチャ! ギリギリギリギリチャンバラ!

 

 

 貴利矢が仮面ライダーレーザーチャンバラバイクゲーマーレベル3に変身。

 彼はギリギリチャンバラを、ガシャコンスパローに差し込む。

 

 

キメワザ! ギリギリ! クリティカルフィニッシュ!

 

 

 大量の小さい矢が、カイデンに放たれる。敵は堪らず爆発。

 

 

キメワザ! バクソウ! クリティカルストライク!

 

 

 ライダーキックがモータスに決まる。これも爆破させる。

 

 

「そして、俺がゲンムをぶっ潰す」

 

 

 その隙に大我が、奥に駆け出した。彼を襲おうとするバグスターを、身を呈して防ぎきるレーザー。

 彼の活躍もあり、大我は無事に突破した。

 

 

「ノリに乗ってるぜ!」

 

 

 レーザーが敵に取り囲まれる。彼はガシャコンスパローを分割。鎌を両手に持って戦う。

 

 

ガシャット! キメワザ! ゲキトツ! クリティカルフィニッシュ!

 

 

 ガットンの右パンチ。それを、上体を後ろに屈むことで、避けきる。

 そして彼は、敵の腹部に重い一撃を与えた。

 

 

 次に彼は、ガシャコンブレイカーとガシャコンソードを召喚。それに二本のガシャットを挿入。

 

 

キメワザ! マイティ! タドル! クリティカルフィニッシュ!

 

 

 レーザーの二刀流での攻撃。ソルティとアランブラが斬り落とされた。

 

 

「少し気が引けるが、お前は姿が同じだけの別物。容赦はしねえぜ!」

 

 

キメワザ! ドレミファ! クリティカルフィニッシュ!

 

 

 ガシャコンソードに、ドレミファビートを差し込むレーザー。遠心力をつけての一撃は、ポッピーピポパポを倒すにはオーバーキル。

 その後も彼はバーニア、チャーリーを立て続けに惨殺。その場にいたバグスターはすべて切除された。

 

 

「隠れてないで出てこいよ。ドラゴナイトハンターZの龍戦士さんよ!」

 

 

 すると、とある扉が開いた。レーザーがその中に入る。そこにいたのはグラファイト。

 

 

「お前は俺への挑戦権を得た。どこからでもかかってこい」

 

「そうさせてもらうぜ、5速!」

 

 

 ギリギリチャンバラとドラゴナイトハンターZを交換。初のフルドラゴンでの戦闘に挑む。

 

 

ガシャット! ガッチャーン! バクソウバイク! アガッチャ! ドドドラゴナナナナイト! ドラドラドラゴナイトハンター! ゼット!

 

 

「培養」

 

 

 グラファイトが、ガシャコンバグヴァイザーのAボタンを押す。そしてそれを、右手のグリップパーツにはめ込む。

 

 

インフェクション! レッツゲーム! バッドゲーム! デッドゲーム! ワッチャネーム? ザ・バグスター!

 

 

 グラファイトが怪物に変わる。その体色は体の中心が黒、四肢の末端と首から上は赤い。ダークグラファイトとグレングラファイトの中間形態のような感じだ。 

 

 

「超絶進化を遂げた今の俺のレベルは50」

 

「自分には荷が重いかもしれないな。とはいえお前もバグスター。ゲームシステムからは逃れられないぜ?」

 

 

 レベルで上回るグラファイトは、レーザーを一撃で倒せるだろう。一方でレーザーも、敵に対する特攻持ちだ。つまり先に攻撃が当たった方が勝利し得る戦い。

 

 

「ドドドドド紅蓮黒龍剣!」

 

 

キメワザ! ドラゴナイト! クリティカルストライク!

 

 

 グラファイトファングを天高く掲げ、雷のようなオーラを現すダークグラファイト。

 レーザーは四肢のドラゴンクローに、橙色のエネルギーを纏う。

 駆け出す両者。しかしグラファイトの方が素早い。彼の双刃が、圧倒的スピードで振り落とされた。

 両腕を頭の上で交差させ、敵の攻撃を受け止めるレーザー。

 

 

「しまった!」

 

「これでもくらえ!」

 

 

 がら空きになるみぞおち。そこに、彼の貫くようにキックが炸裂した。

 

 

「レーザー......貴様も我が敵として記憶に留めておこう......」

 

 

 グラファイトファングが、音をたてて落下。彼は力尽き、仰向けに倒れた。そして爆発。

 

 

「そんじゃ始めるか、大我がやられる前にな」

 

 

 彼はリーリエに、マイティアクションXとタドルクエストを渡す。

 そしてとあることを願った。

 

 

────────────

 

 

 一方で大我はその頃、ラスボスまで辿り着いていた。彼がここまで来るとは思っていなかった檀黎斗。だが不測の事態というほどではないようだ。

 

 

「てめぇを復活させるわけにはいかない。俺がぶっ潰す!」

 

「九条貴利矢から聞いていないのか? このゲームは攻略不可能だと。君を殺して私はコンティニューしてみせる」

 

 

バンバンシミュレーション! アユレディ! フォーザバトルシップ!

 

 

「第伍拾戦術」

 

 

デンジャラスゾンビ!

 

 

「「変身!」」

 

 

 ガシャットをそれぞれのドライバーに差し込む両者。

 

 

ガシャット! バンバンシミュレーション! ハッシン!

 

ガシャット! バグルアップ! デンジャ! デンジャ! ジェノサイド! デスザクライシス! デンジャラスゾンビ! フー

 

 

 変身が済むや否や、すべての砲門から攻撃を加えるスナイプ。

 ゲンムはそれをかわさない。何故なら不死身だから。致死量のダメージを受けて倒れようとも、すぐに立ち上がってしまう。

 

 

「これでわかっただろ? 唯一私を攻略できるリプログラミングもこの世界にはない。君に勝ち目はない」

 

「ないなら作ればいい! あいにくそのための布石はすべて揃っている」

 

「ハッタリを......」

 

 

 スナイプが再度発砲。それをものともせずに近づくゲンム。スナイプは彼の回し蹴りを、左砲台で受け止める。

 ゲンムの素早い連打。徐々に防御が追い付かなくなるスナイプ。

 ゲンムの右ストレートパンチによって、吹き飛ばされたスナイプ。間合いが空いた隙に、すかさずゲンムがドライバーのボタンを押す。

 

 

クリティカルエンド

 

 

「俺は......倒れるわけにはいかねぇんだよ!」

 

 

キメワザ! バンバン! クリティカルファイア!

 

 

 黒いオーラを纏って宙へと浮かぶゲンム。彼は縦に高速回転しながら、スナイプに迫る。

 迎撃体制を整えたスナイプが一斉放火。二つの攻撃が真っ向からぶつかった。

 なんとか踏ん張るスナイプだが、威力はゲンムの方が上。このままではいつか押しきられてしまう。

 だが運命は、とある音声によって、変えられた。

 

 

マキシマムマイティ! クリティカルフィニッシュ!

 

 

 突如放たれた光線。それがゲンムに当たり、彼を吹き飛ばす。すると彼のライダーゲージが回復した。

 

 

「......間に合ったか」

 

「大丈夫か? スナイプ!」

 

「皆さん! どうですか?」

 

 

 そう言いながら、駆け寄ってくるエグゼイド。後ろにはブレイブ、レーザー、リーリエの姿もある。

 状況の理解が追い付かないゲンム。彼がスナイプに尋ねる。

 

 

「なぜだ? マキシマムマイティXはこの世界に存在しないはず!」

 

「バンバンシューティングを集めたことで俺が呼び出されるのなら、マイティアクションXがあればエグゼイドを呼び出せるはず」

 

「加えてここにはレーザーもいる。あいつらがいればマキシマムマイティXを複製することが出来る」

 

「花家大我......! だが私が一人でも君達を消滅させれば、コンティニュー出来ることに代わりはない!」

 

 

 ゲンムがドライバーを操作。

 

 

クリティカルデッド!

 

 

 増殖した大量のゾンビゲーマーが襲いかかる。エグゼイドが、スナイプの前に立つ。ゾンビは彼に触れた瞬間、一斉に爆発。しかしエグゼイドは無傷。

 

 

「レーザーから事情は全部聞いた! お前の運命は、俺達が変える!」

 

「永夢、久し振りに四人協力プレイで行かねえか?」

 

 

 こう呼び掛けるレーザー。彼がドラゴナイトハンターZのガシャットを、ドライバーから取り出す。

 するとそれが四つに分裂。エグゼイド、ブレイブ、スナイプのもとに送られる。

 リーリエから渡されていたマイティアクションXを使い、エグゼイドはレベル2に変身。これで準備が整った。

 

 

「術式レベル5」

 

「第五戦術」

 

「5速!」

 

「大大大大大」

 

「「「「変身!」」」」

 

 

ガシャット! レベルアップ! ドドドラゴナナナナイト! ドラドラドラゴナイトハンター!

 

 

 レーザーからドラゴンファングが分離。それがエグゼイドに装着される。

 

 

エグゼイド!

 

 

 ドラゴンブレードとドラゴンガンが分裂し、二人のライダーに送られる。

 

 

ブレイブ!

 

スナイプ!

 

レーザー!

 

【挿絵表示】

 

 スナイプはジャンプして、左腕のドラゴンガンを放つ。ドラゴンファングから炎を吹き出すエグゼイド。

 

【挿絵表示】

 

 ブレイブが近づきつつ、右腕のドラゴンブレードで斬り上げる。

 同時攻撃は、ゲンムに反撃の隙を与えない。さらに畳み掛けるように、右足で回し蹴るレーザー。

 

 

「不死身ではなくなったとはいえ、レベル5ごときに......」

 

「それは俺達が最強の医療チームだからだ!」

 

 

 エグゼイドが尻尾を伸ばして、ゲンムの胸を突く。動きを止められた彼に対し、スナイプの砲撃が炸裂。

 横に斬り払うブレイブ。レーザーが両腕のドラゴンクローを大きく振り上げ、素早く下げて叩きつけた。

 

 

「フィニッシュは必殺技で決まりだ!」

 

 

 ガシャットをキメワザスロットホルダーに挿入する四人。

 

 

キメワザ! ドラゴナイト! クリティカルストライク!

 

 

「私は......不滅だ!」

 

【挿絵表示】

 

 四人の必殺キックが、ゲンムに決まる。彼は絶叫とともに爆発した。

 

 

「何も起こらない?」

 

 

 疑問に思う永夢。彼は日頃ゲームに興じているが、クリア条件を満たしてもなんのギミックもないものなど、これまで見たことが無かったからだ。

 

 

「言っただろ? このゲームは攻略不可能。つまり檀黎斗を倒したあとのデータなんて存在しないのさ」

 

「僕たちはどうなるんですか?」

 

「お前達はこの世界からしてみれば異物だ。勝手に放り出され、精神は元の肉体に戻るはずだぜ」

 

「貴利矢さんは?」

 

「自分は謂わばバグ。巻き添えは避けれないかもな」

 

「そんな......せっかくまた会えたのに......」

 

「永夢、世界の......人類の運命は任せたぜ」

 

 

 永夢達三人の身体が、末期のゲーム病患者のように透けていく。それを笑顔で見送る貴利矢。

 永夢の叫び声は、もはや貴利矢に届かない。それだけ透明化しているということ。

 貴利矢が最後に、右腕を前に突き出して銃を撃つように手を動かした。それは大我が変身するときの、パネル選択の仕方に酷似。

 唯一真意を悟った大我。そして彼らは、ゲームフィールドをあとにした。

 

 

────────────

 

 

 目を覚ます大我。時計は七時を指している。いつものベッドに戻ってきていた。

 ゲーム世界では何日間か過ごしたが、現実ではわずか数時間でしかなかったようだ。

 

 今彼の知らないところで、とある計画が着々と進んでいる。その名は仮面ライダークロニクル。バグスター達が人類を攻略し、人類を滅ぼすゲームだ。

 さらに彼の宿敵の復活も、刻一刻と迫っていた......




お読みいただきありがとうございました。
 ちなみに最後の方にリーリエの台詞がまったく無いのは、彼女にもデータが無いからです


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