やはり俺が提督なのは間違っている。 (無名戦士)
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やはり彼は女性教師に呼び出される

突然思いつき書いてしまいました。
書きたい所である文化祭編まで進めるのを目標にしています。
以前全く同じのを書いたのですが何度か消してしまう蛮行を行いましたので今回はこの小説を消さないようにします。


 

『青春とは嘘であり、悪である。

 

青春を謳歌せし者たちは常に自己と周囲を欺き、自らを取り巻く環境のすべてを肯定的にとらえる。

 

彼らは青春の2文字の前ならばどんな一般的な解釈も社会通念も捻じ曲げてみせる。

 

彼らにかかれば嘘も罪とがも失敗さえも青春のスパイスでしかないのだ。

 

すべては彼らのご都合主義でしかない。

 

結論を言おう。

 

青春を楽しむ愚か者ども………

 

爆撃されろ』

 

「比企谷、現国の宿題で出した作文の内容を覚えているか?」

 

多少イラついているタバコを吸う白衣を着た長髪の女性教師である平塚静が俺事比企谷八幡に聞いてきた。

 

「『高校生活を振り返って』というテーマでしゅたよね?」

 

ヤバい緊張しすぎて噛んでしまった。

 

「そうだ比企谷、この作文の内容はなんだ?貴様はテロリストにでもなるつもりか?」

 

先生、ちょっとそれは流石に傷付くからやめてくれないですかね?ハチマン泣いちゃうよ?

 

「特に高校生活を振り返ることはありませんからね、強いて言えば入学式の日に事故にあった位です」

 

俺の言葉を聞いた平塚先生は小さなため息をつく。

 

「貴様は目が腐っていても軍人であろう?もっとこうマシな作文を書いて欲しかったのだが」

 

俺はたしかに海軍の軍人だ、それゆえ青春をしない………する暇すら無い。

 

数年前、深海棲艦と呼ばれる謎の敵の出現により人類の制海権が失われ、俺が中学2年の頃両親の出張先が深海棲艦の空襲により死んでしまった。

 

妹と共に途方に暮れていた頃、軍関係者が俺の家に訪ねてきた。

 

曰く俺は艦娘を指揮する適正があるとかで推薦を受け、入隊した。

 

あの時から丁度4年が経ち、今や千葉鎮守府の提督で階級は少将にまで上り詰めていた。

 

「比企谷にはなにかしらの罰を与えなければな……、比企谷は確か部活に所属していなかったよな?」

 

「軍務が忙しく部活には入っていませんでしたが」

 

「なら貴様に奉仕部に入部させることにした。貴様のその捻くれた性格を更正させる」

 

部活に入れって、この人俺の話聞いていたのかね?それ以前にめんどくさい。

 

「と言うのは建前で奉仕部に入部して欲しい、入部してくれるのなら現国の成績と内申点をあげてやる。それにあの部活は暇な時間多いから、その時間を利用して勉強するのも良いぞ?」

 

「そこまで言うなら入りますよ、俺の用事を優先させますからね」

 

成績が上がるなら入るしかないな、しかも勉強する時間が増える。

 

だが俺にも軍の仕事がある、だから俺の都合に合わせられないと困る。

 

「勿論そのつもりだ、それと書き直しは無しにしておく」

 

平塚先生はそう言うと吸い終わったタバコを灰皿に押し付け、立ち上がる。

 

廊下へと続くドアの前で立ち止まりこちらに顔を向ける。

 

「付いて来たまえ」

 

平塚先生はそう言うとドアを開き、廊下へでる。

 

俺もそのあとに続き、奉仕部とやらの部室に向かう。

 

 

 

 

俺が通う総武校は上空から見るとカタカナのロの字に見え、その下に少し視聴覚楝を付け加えると俯瞰図が完成する。

 

教室楝と向かい合うように特別楝がある、俺達が向かうのはどうやらその特別楝のようで、そこに奉仕部の部室があるらしい。

 

今さら気が付いたのだが、奉仕部と言う名前は何らかの奉仕活動なのだろうか?

 

まるで主人を奉仕する部活のように聞こえなくも無い、もしそうだったら俺はすぐに退部してやろう。流石に成績が上がるだけでは入部する気が出ない。

 

まぁ、そんなことはあり得ないが。

 

「着いたぞ」

 

平塚先生が立ち止まったのはなんの変哲もない教室だった。

 

「入るぞ」

 

平塚先生がそう言うとガラリとドアを開け、教室の中に入り俺もその後に続く。

 

教室内は特に内装が無く、強いて言えば隅に椅子と机が無造作に積み上げられている。

 

元々倉庫に使われていたのだろうか。

 

一見いたって普通の教室だが、そこがあまりにも異質だった。

 

異質と感じたのは傾陽の中本を読む少女だった。

 



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やはり雪ノ下雪乃は毒舌少女でまちがっていない。

短時間でかなりの人がお気に入り登録してくださったので嬉しいです。
嬉しい余り一気に書きました。
今後とも宜しくお願いします。
それとヒロインは翔鶴の予定です。


教室に入ると、なんの変哲も無い部屋に少女が斜陽の中で本を読んでいた。

 

少女が俺達に気が付くと本に栞を挟み込み、平塚先生に顔を向ける。

 

「平塚先生、入るときはノックをしてくださいとお願いしたはずですが?」

 

「ノックをしても君は返事をした試しがないじゃないか」

 

平塚先生の言い訳に少女は少し呆れた顔をする。

 

「返事をする前に入ってくるじゃないですか」

 

俺はこの少女を知っている。

 

2年J組、雪ノ下雪乃。

 

俺は名前と顔を知っているだけで話はしたことがない。

 

基本的俺は同じ高校に通っている鎮守府の艦娘しか話したことがないからだ。

 

この高校には普通科が9クラスに国際教養科というクラスがある。

 

このクラスは普通科よりも偏差値が高く、優秀な生徒が多い。

 

その国際教養科の中でひときわ異彩を放つのが雪ノ下雪乃である。

 

彼女の成績は常に学年トップで、容姿が優れており常に注目の的になっている。

 

「そこでヌボーっとした目が腐っている人は?」

 

自分でも目が腐っているのは自覚しているが、流石に初対面の人をディスるのは良くないと俺は思うぞ。

 

「彼は比企谷で、入部希望者だ」

 

平塚先生は俺の紹介をし、会釈する。軍にいたお陰で今後の展開は自己紹介だろう。

 

「2年F組、比企谷八幡です。たくっ、入部ってなんだよ…」

 

平塚先生は確か捻くれた性格を更正させることを建前としていたはずだ。

 

「君にはペナルティとしてここの部活に入部してもらう。意義反論抗議質問口答えは一切認めん」

 

平塚先生は一瞬ニヤつきまるで事前に用意していたかのように俺へと判決を下す。

 

もし間違っていたらとてつもなく恥ずかしい。

 

話を聞いていた雪ノ下は平塚先生のニヤつきに気付かなかったようだ。

 

「彼は人との付き合いを苦手としている。彼の孤独体質の更正が私の依頼だ」

 

「お断りします。彼の下心に満ちた目を見ると身に危険を感じます」

 

雪ノ下は襟元を掻き合わせるようにしこちらを睨み付ける。

 

少なくとも俺はそんな目で見ていないぞ、鎮守府で鍛え上げられた410mmのヴィッカース非滲炭で作られた理性は伊達では無いぞ。

 

「安心したまえ、雪ノ下。比企谷は目と性根が腐っているのであってリスクリターンの計算と自己保身に関してはなかなかのものだ、刑事罰に問われるような事は決してしないぞ。比企谷の小悪党ぶりは信頼してくれないか?」

 

平塚先生は俺を擁護するような発言をする。

 

先生、俺からしたら全然擁護出来ていないんですけど…。

 

「小悪党……、なるほど」

 

雪ノ下は納得しないでくれ、八幡泣いちゃうぞ?

 

俺が泣いても誰も得しないな……、解せぬ。

 

「先生がそう言うならその依頼、承りましょう」

 

雪ノ下は嫌そうな顔しながら渋々受け入れる。

 

ヤメテ!ハチマンのHPはもうゼロよ!

 

「すまないな、後の事は頼むぞ」

 

平塚先生はそう言うと職員室へと戻って行く。

 

そして突如訪れた静寂。

 

まるでラブコメのような展開になったが、この間金剛が俺の軍服を嗅いでいるところに出くわしてしまったときよりまだマシのはずだ。

 

だが何故あの時金剛は俺の軍服を嗅いでいたのだろうか、まさかあれか?この間食べているときに溢した海軍カレーの匂いがまだ残っていたのか?

 

どちらにせよ謎のままである。

 

「机と椅子、借りるぞ?」

 

俺はただ突っ立っている訳にもなく雪ノ下に断りを入れ、机と椅子を用意する。

 

そして俺はバッグから勉強用具を取り出し勉強を始める。

 

 

俺が勉強を始めてから10分程経過した頃俺はふと気になった。

 

「なぁ、雪ノ下一つ聞いても良いか?」

 

俺はシャーペンを机に置き、雪ノ下に聞く。

 

「何かしら?」

 

雪ノ下は明らかに不機嫌そうな顔をしながら顔を向ける。

 

「このほ、奉仕部だったか?この部の活動内容は一体なんだ?」

 

雪ノ下は少しため息をつき、俺に提案してくる。

 

「はぁ、先生は何も説明してなかったのね。まあ良いわ、ゲームをしましょう?」

 

「ゲーム?」

 

ゲーム?もしかして活動内容を当てろと言いたいのか?

 

「そう、奉仕部がなんの活動をするか当てるゲームよ」

 

やはりか、ヒントは奉仕部と言うふざけた名前。

 

教室を見ると特に機材は無かった、それに平塚先生は依頼とか言っていたはずだ。

 

もしかしたらこの部はジャンプで言うところの銀魂のよろず屋と似たような活動をするのではないか?

 

流石に金は取らないはずだからボランティアだろうな。

 

「ボランティアの活動、もしくはその類いの活動だよな?」

 

俺は少しドヤ顔を作り答える。

 

「驚いたわ、ヒントも無しにここまで答えられるとは。ここは素直に誉めるわ」

 

雪ノ下は心底驚いた表情で俺を誉める。

 

俺ってそこまで馬鹿に見えるのか?だが先ほどまでディスられていたが誉めてくるとは…。

 

「だけど外れよ、惜しいわね」

 

雪ノ下は勝ち誇った顔で俺を見る。

 

前言撤回、こいつうぜぇ。

 

そして少し喜んでいた俺をぶん殴りてぇ。

 

「降参だ、答えを教えてくれ」

 

俺は少しやけくそに答えを聞く。

 

「比企谷君、女子と話すのは何年振りかしら?」

 

唐突に俺の事を聞いてきやがった。

 

確か……。

 

「確か昼に話したな」

 

霧島と偶然ベストプレイスに向かっている途中に会ったな。

 

「意外だわ。貴方にみたいな人と話せる知り合いがいるとは驚きね、そしてその人に同情するわ」

 

雪ノ下が心底驚いた顔をし霧島に同情する。

 

こいつ本当に毒舌しか吐かないのか?普段どうやって生活しているんだよ…。

 

「ここは持たざるものに自立を促す部活。ホームレスには炊き出しを、途上国にはODAを、モテない男子には女子との会話を……。

 

ようこそ奉仕部へ、歓迎するわ」

 

うん絶対歓迎してない態度だ、そして最後は絶対俺だろ。




本当はもっと書きたかったのですが納得できなかったのです。
次回はとうとう鎮守府の話です!

評価、感想待っています!


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やはり比企谷八幡は鎮守府の提督でまちがいない。

今回は思いの外難産でした。
特に前半に手間取り、いつもより遅くなりました。
今のところ失踪するつもりはありませんので安心してください。


下校時間となり奉仕部の活動は終了するし、俺は雪ノ下に別れを告げ学校の駐輪場へ向かう。

 

部活を終えた生徒達が俺の横を走り抜け、青春の花を咲かせるなか俺は自転車に乗り千葉駅へ自転車を走らせる。

 

駅は学校帰りの生徒達がホームで電車を待つ間、最近話題のゲームで盛り上がり、電車来るとその一部が別れを告げ列に並ぶ。

 

稲毛駅で降りると稲毛海岸行きのバスに乗る、稲毛海岸の近くには俺の職場でもある千葉鎮守府がある。

 

稲毛海岸に到着した俺は千葉鎮守府へ向かう。

 

鎮守府は停留所から見える位置にあり、レンガ造りの建物と鉄筋コンクリートで作られた壁が見えていた。

 

海へと目を向けると海上をスケートのように移動する艦娘達が6人程見える。

 

丁度遠征から帰って来たようだ、沖合いには彼女達が護衛していた輸送船の群れが見える。

 

鎮守府の入り口を潜ろうとすると出入り口を警備していた小銃を持つ兵士が俺に対し敬礼する。

 

俺は兵士に対し、いつもお疲れ様ですと良いながら答礼する。

 

鎮守府はそれぞれ本館、艦娘寮、工廠の3つの建物が建てられており本館は執務室、食堂、資料室、警備室があり、艦娘寮はその名も通り艦娘達が生活する場で浴場があり、それぞれ駆逐艦組、巡洋組、戦艦組、空母組とわけられている。

 

工廠は修理ドック、特殊兵装備技術廠、装備保管庫があり、装備開発が得意な艦娘がよく出入りしている。

 

俺は本館の階段を上り、2階の廊下を歩いていると後ろから声をかけられる。

 

「あ、提督じゃーん。チッース!」

 

薄緑色のセミロングの髪に黄緑が特徴の最上型重巡洋艦3番艦である鈴谷がいた。

 

「おう。鈴谷か」

 

「提督今日来るの遅かったじゃん、どしたの?」

 

「平塚先生の、頼みで部活に入ることになってしまってな。それで遅れてしまった」

 

鈴谷は俺が部活に入ったことを知ると手を口に当て心底驚いた様子で言う。

 

「え、マジ!?あの提督が入部したの!?」

 

「おい、あのとはなんだあのとは」

 

流石に驚くことなのか?わりと傷付くぞ。

 

「提督ってあれじゃん?学校だといっつもボッチじゃん。それと前に部活には入るつもり無いって言い張っていたじゃん」

 

一瞬失礼だなと思ったがここは水に流すことにした、いちいち小さなことを気にしてたら切りがない。

 

「あ、やっばー。最上と一緒にサイゼに行くんだった!今頃怒っているじゃん!ごめん提督、私行くね!」

 

鈴谷はそう言うと廊下を小走りで移動する。

 

いくら急いでいるとはいえ走るなよ、ぶつかったらどうするんだ。

 

階段から5部屋離れたところに俺が普段仕事している執務室がある。

 

「うす」

 

「提督、こんばんわ」

 

俺が執務室に入ると、銀色のロングヘアーの髪をした少女が俺を出迎えた。

 

彼女の名前は翔鶴、翔鶴型航空母艦1番艦で俺の秘書艦でもある。

 

彼女は鎮守府の中でトップレベルの実力を持っており、現在の日本国防海軍の最高戦力の一人でもある。

 

「提督、廊下で鈴谷さんと話を聞いていたのですが部活に入ったんでですね」

 

「聞いていたのか。平塚先生の頼みでな、成績をあげるのを条件に入った」

 

「偶然耳に入ったので、提督は何か条件が無いと部活に入らないとおっしゃっていましたね」

 

翔鶴はそう言うとクスクスと笑う、俺も翔鶴につられて少しだけ笑う。

 

俺はこういう時間は嫌いではない、やはり俺の居場所は千葉鎮守府だと実感した。

 

「さっさと給料分の仕事をするか」

 

俺は山積みの書類を見て言った。

 

 

俺の仕事である書類仕事は、遠征成果報告書や艦娘装備の開発状況、日本近海哨戒報告、消費資材の確認などの書類を確認し、判子を押す仕事である。

 

「提督、失礼するで」

 

あと少しで書類整理が終わる頃、執務室の扉がノックされツインテールの髪型をしサンバイザーを付けた少女が入ってくる。

 

「第4哨戒艦隊、只今硫黄島から帰投したで!」

 

「おう、お疲れ。早速だが報告してくれないか?」

 

俺が龍驤に言うとムスンと胸を張る。

 

「敵潜水艦を4隻撃沈したで!しかもその内2隻をうちが沈めたで!誉めて誉めて~!」

 

龍驤はそう言うと俺の近くまで歩いて来ると頭を突き出す。

 

俺は溜め息を突き、仕方がなく龍驤の頭を撫でる。

 

「お前なぁ。高校生にもなって、俺に撫でられるとか恥ずかしくないのか?」

 

「えへへ~♪やっぱ提督の撫で方は病みつきになるでぇ」

 

幼さが少し残る龍驤だが、実は千葉鎮守府初の空母である、俺としては古参としての自覚が欲しいのだが。

 

「おおきに。ほな提督、うちは食堂に行くで」

 

龍驤はそう言うと執務室を出ていく。

 

そして何かが俺の裾を引っ張り、見ると翔鶴が恥ずかしそうにもじもじしていた。

 

え、何この状況……。

 

そして、この可愛い生き物は……。

 

「て、提督………。失礼を承知で言いますが、わ、私も撫でてくれませんか?」

 

くっ、なんだこの破壊力は!?上目遣いは卑怯だぞ翔鶴……、だが可愛いから許す!

 

俺は翔鶴の頭を撫で始め、翔鶴は顔を赤らめながら気持ち良さそうに目を細める。

 

硫黄島に敵潜水艦4隻……。

 

ふと龍驤が報告した内容を思い出す。

 

以前まで敵の潜水艦は1隻だけだった、だが何故急に数を増やした?

 

硫黄島は今現在、要塞化が進められている。国防上硫黄島は非常に重要な島で、もしそこが陥落された場合深海棲艦は日本本土侵攻の足掛かりを得ることになる。

 

潜水艦は偵察だろうが、深海棲艦は近いうちに硫黄島を攻めに来るかもしれない。

 

上層部には報告するが、恐らく上は気にもしないだろう。

 

硫黄島の哨戒は俺が任されている、暫くの間様子見で哨戒部隊の数を増やすか。

 

「あ、あの。提督、頭を撫でる力が強すぎです」

 

あ、翔鶴の事すっかり忘れてた。

 

「すまん、少し考え事をしてしまった」

 

俺は慌てて翔鶴の頭から手を退かした。

 

「さて、あと少しで書類が無くなる。続きをするか」

 

翔鶴は用事があると言い執務室を出ていき、俺は残りの書類を片付け始めた。




次回はとうとうガハマさんが登場しますが、どうしてもアンチ・ヘイトの展開になりそうです。


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やはり由比ヶ浜結衣はすぐキモいと言う(前編)

思ったより良いのが書けませんでした。
本当に申し訳無いです。


午前五時半に目を覚めた俺はジャージに着替え、洗面所で寝癖を治し顔を洗う。

 

そしてジョギングへ出かける。

 

少し肌寒い早朝の空気は美味しく、俺は好きだ。

 

車の数が少なく、昼間のような騒音は聞こえず代わりに雀の鳴き声がする。

 

俺のジョギングコースは坂道が多い道で、だいたい30分程だ。30分程度と軽く見ない方が良い、なぜなら二ヵ所程急な坂があるあるからだ。

 

それを速度を落とさず一定の速度で走るのは結構辛いのだ。

 

日課のジョギングを終え、俺は簡単な朝食を作る。

 

この家は両親が遺した家で、二階建ての一軒家だ。だが今は妹である小町と二人だけで生活している。

 

正確には猫も飼っているのだが、ここはまた別の話。

 

朝食を作り終わった俺は、小町の部屋に向かう。

 

小町はまだ寝ており、俺は彼女を起こさないようにベッドに座る。

 

小町の寝顔は少し不安な表情をしていて、俺は小さな手を軽く握る。

 

すると小町の表情は安心仕切った顔になる。

 

これが俺の日課である。

 

小町は両親が死んだ影響により、精神が崩壊しかけた事がある。

 

それ以降小町の目は俺みたいに目が腐り、内気な性格になってしまった。

 

今は目の腐りがだいぶ取れ、以前のような明るい性格に戻った。

 

精神もだいぶ安定はしているが、ちょっとしたことですぐ不安定になる。

 

去年、俺が犬を助ける為に起きた事故も学校を抜け出し、泣きながら走って病院まで来たのだ。

 

兄である俺を心配してくれるのは嬉しいのだが、小町は俺に依存しているところが心配だ。

 

「俺は何一つ兄らしいことしてないな」

 

せめて小町だけは幸せになって欲しいと思う。

 

「ん……お兄ちゃん?おはよう」

 

小町は眠そうに目を擦りながら体を起こし、背伸びをする。

 

どうやら独り言で小町を起こしてしまったようだ。

 

「あぁ、おはよう」

 

俺は優しく返事をする。

 

 

小町を学校へ送り届け、俺は総武高へ自転車を走らせる。

 

総武高の駐輪場に自転車を止め、俺が教室へ向かう。

 

教室へ向かう途中、翔鶴と会った。

 

「比企谷君、おはようございます」

 

翔鶴とは同じクラスだが、俺と席は離れている。

 

「あぁ、おはよう。眠いな」

 

「授業ではちゃんと起きてくださいよ」

 

流石に授業は寝るわけにはいかない、平塚先生の拳が俺の頭に直撃する事は避けたい。

 

あの先生のパンチは結構痛いぞ、そこそこ鍛えている俺でももがき苦しむレベルだ。

 

翔鶴は少し恥ずかしそうにこちらを見る。

 

「あ、あの。今日は一緒にお昼を食べませんか?比企谷君の為にお弁当を作って来ました」

 

うん、やっぱり可愛いな翔鶴は。この場で告白して振られちゃう程可愛い、てか振られるのかよ悲しいな。

 

「あぁ、わかった。いつもの場所で良いな?」

 

翔鶴は俺に頭を下げると、先に教室へと向かった。どこか嬉しそうだった。

 

教室のドアを開けると、一瞬だけ視線が俺に集まるが周囲はすぐに興味を無くしそれぞの会話に戻る。

 

俺は自分の席に座り、イヤホンを耳に付け寝たフリをする。

 

 

 

 

 

 

俺はなんとか授業中に居眠りをせず、昼を迎えられた。

 

え、時間経過が速すぎだと?むしろ授業風景は誰得なのだ?

 

はっきり言って何も需要がないと思うのだが。

 

「あれ、ヒッキー?」

 

翔鶴との待ち合わせ場所に向かっていると後ろから金剛似の声が聞こえた。

 

ヒッキーってなんだよ、まるで引きこもりみたいな名前だな。変なあだ名だな、そのヒッキーとやらが不憫だ。

 

ヒッキーに同情していると急に俺の肩が引っ張られる。

 

「ヒッキーなんで無視するし!?ヒッキーマジキモい!」

 

右の頭に団子ヘアーを付けた少女が怒っているような顔していた。

 

よく初対面相手にあだ名付けるな、つか誰?

 

「俺はヒッキーと言う名前ではないんだが…」

 

俺は思わず呟くとだ彼女は何言ってんのこいつといった顔をする。

 

「ヒッキーは、ヒッキーでしょ!何言ってんの、もしかして馬鹿?」

 

「つうかお前誰よ」

 

初対面に対しキモいとか馬鹿とか普通無いだろ、摩耶や曙ですら俺と会って1ヶ月の間は敬語使ってたぞ…。

 

「あたしの名前は由比ヶ浜結衣!クラスメートだからちゃんと覚えてよね!ヒッキーマジあり得ないし!」

 

あー関わりたくないタイプと会ってしまった。

 

適当な理由をつけて逃げるか。

 

「あー、俺用事あるから行くわ」

 

俺はそう言うと、すかさず近くの曲がり角を曲がる。

 

予想道り由比ヶ浜が追いかけてくるが俺はまたまた曲がり角を曲がり外に出る。

 

どうやら由比ヶ浜は俺がまだ校内にいると思っているらしく、外には来ない。

 

「はぁ。翔鶴を待たせてしまったな」

 

俺は溜め息をつき待ち合わせ場所に急いで向かう。

 

待ち合わせ場所は俺がいつも昼食を食べているいる場所で、ベストプレイスと呼んでいる。

 

ベストプレイスの近くにはテニスコートがあり、いつも昼休みになると女テニの子がいつもテニスコートで練習している。

 

テニスコート近くまで来るといつも道り女テニの子が練習しており、特別楝に入る扉の階段を見ると風に流される銀髪の髪を押さえている翔鶴がいた。

 

「すまん遅れてしまった」

 

翔鶴の元へ駆け寄り、謝る。

 

「大丈夫ですよ比企谷君、これはあなたのお弁当です」

 

俺は翔鶴から渡された弁当の蓋を開ける。

 

「サンキューな、翔鶴」

 

弁当の中身は半分がシソを振りかけた白ご飯で、おかずは煮物と漬物、焼き魚が入っていた。

 

「いただきます………、旨い」

 

翔鶴が作る弁当は本当に美味しく、翔鶴は将来良い嫁さんになるだろう。

 

「翔鶴の作る料理はいつも美味しいな、将来良い嫁になるぞ」

 

俺が素直に言うと、翔鶴は顔を赤くする。

 

「えっと、ありがとうございます。それに良いお嫁さんだなんて……」

 

翔鶴はそう言うと両手を頬に当て恥ずかしがる。

 

うん、やっぱ翔鶴は可愛いな。

 

松原さん、翔鶴を俺にください!

 

「え、えっと別にあなたのお嫁さんになっても構い……ませんが」

 

「え……」

 

翔鶴がの発言により俺は驚きのあまり、声を失う。

 

「じょ、冗談ですよ!さ、先に教室にいきますね」

 

翔鶴はそう言うと弁当を片付け、教室へ戻る。

 

残された俺はただ座っているだけだった。

 

やっぱ冗談だよな………、あまり驚かせんなよ。

 




今回も呼んで頂き、ありがとうございます。
松原さんは翔鶴最後の艦長です。

感想・評価よろしくお願いします。


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やはり由比ヶ浜結衣はすぐキモいと言う(後編)

EVEオンラインにハマってしまい、投稿が遅れてしまいました。
最後は睡魔に負けてしまい、適当に書いてしまい申し訳ないです。


今日の授業が終わり、奉仕部の部室へ向かう。

 

部室へ続く廊下は静まり返り、ひんやりとした空気が流れる。

 

奉仕部の立地の影響なのか他に活動している部活があるのだが、どうやら喧噪は届かないようだ。

 

「うっす」

 

部室に入ると先日来たように雪ノ下は本を読んでいた。

 

雪ノ下はこちらに気が付くと、不思議な顔を作る。

 

「あなた、もう来ないかと思っていたわ」

 

「うっせ、働いたら負けと言う理論と同じで部活に来なければ負けだと思ったんだよ」

 

「ならあなた、マゾヒスト?」

 

「いやちげぇよ…」

 

「それともストーカー?」

 

「そもそも何故俺がお前に好意を抱いている前提で話しているんだ?」

 

流石に会ったばかりのやつを好きになるほどでは無いぞ俺は。

 

「違うの?」

 

「自意識過剰にも程があるだろ、流石に引くぞ」

 

どこからそういう自信が出てくるんだか。

 

「てっきり私のこと好きかと思ったわ」

 

雪ノ下は真面目な顔で平然に言う。

 

まぁ、雪ノ下の思っていることはわからんでもない。

 

なんせ彼女はそれなりの美少女だ、小学校の頃からかなりのモテていたはずだ。

 

「お前さ、友達いんの?」

 

俺はふと疑問に思ったことを聞く。

 

「そう、まず友達という定義はどこからなのか教えてくれないかしら?」

 

それ友達いないやつのセリフだは、ソースは俺。

 

「もういいわ、お前に友達いないのは分かった。だいたい一人でいることしかいないイメージしかないから別に気にしないがな」

 

「小学生の頃、上履きを60回程隠された事があるけれど、そのうち50回は同級生の女子に隠されたわ」

 

雪ノ下はうんざりした顔におれは若干同情する。

 

なんせ、俺にも似たような事があった。

 

「残り10回はあえて聞かないようにしておく、それに隠した女子とやらの器量が知れる」

 

そいつら自分の負けを心の奥底で感じて、それを認めたくないが為にそういった行動を取ったのだろう。

 

鎮守府の子達はそんなことしないはずだ……、しないよね?

 

「慣れたから仕方がないでしょう。私、可愛いから」

 

自傷気味に少し笑う。

 

「人間は完璧ではないから。醜く、すぐ嫉妬で蹴り落とそうとする。優秀な人間ほど生きずらいのよ、だから変えるのよ、人ごとこの世界を」

 

「人を変えるのは難しいことだぞ?」

 

「あら、やってみないと分からないじゃない」

 

雪ノ下は絶対やり遂げてみせるという目をしていた。

 

「勝手にしろ、俺には関係無いことだからな」

 

人を変えるのは簡単ではない、雪ノ下はやってみないと分からないと言っていたが彼女には到底できないことだろう。

 

「あら、あなたなら何か言いそうだけれど」

 

俺が何か変なこと言ったら面倒なことになるからな、こういうときは何も考えない方が良い。

 

そんななか来訪者による弱々しいノックが教室内に響き渡る。

 

「どうぞ」

 

雪ノ下は栞を挟んであった本を鞄の中にしまう。

 

「し、失礼しまーす」

 

少し緊張しているのか、来訪者は声を低くする。

 

入ってきたのは、俺の中で二度と関わりたくないランキングダントツ1位に輝いた由比ヶ浜結衣だった。

 

由比ヶ浜は何かを探るように教室を見渡し、俺の姿を見つける。

 

「な、なんでヒッキーがここにいんのよ!」

 

入ってきて早々、大きな声を出されたので俺と雪ノ下は耳を押さえる。

 

「俺がここの部員だから仕方がないだろ」

 

こいつとは関わりたくないのだが、一応客なので椅子を用意する。

 

「あ、ありがとうヒッキー…」

 

こいつは親しくもない相手にあだ名で呼ぶ癖を治した方が良いと思う。

 

「由比ヶ浜結衣さんね」

 

「あ、あたしのこと知ってるんだ」

 

由比ヶ浜はは雪ノ下に名前を言われて顔を明るくする。

 

どうやら由比ヶ浜は雪ノ下に名前を覚えられていることがステータスらしい。

 

「よく知ってるな、もしかして全校生徒全員の名前覚えてるのか?」

 

「えぇ、流石にあなたのことは知らなかったわ」

 

そりゃそうだ、昨日あったとき俺のこと知らなかったし。

 

「そう言えばヒッキーなんでお昼休みのとき無視したの?だからクラスに友達がいないんだよ?あとなんかキモいし」

 

この馬鹿にした目線覚えがあるなぁ、たまに俺を汚物を見る目で見てたし。

 

サッカー部のリア充所々つるんでいるやつの一人だと思っていたがこいつか。

 

「このビッチめ…」

 

リア充は俺の敵だ、容赦はしない。

 

「はぁ!?ビッチって何よ、私はまだ処──って何言わせるんだし!」

 

由比ヶ浜は顔を真っ赤にし、口にだしかけた言葉を取り消そうと手をバサバサと降る。

 

「別に処女で恥ずかしがるような事だろ、遊びで散らすような馬鹿共の影響に乗るな」

 

俺は極普通のことを口にする。

 

むしろ普通じゃなかったら、最近のリア充はビッチだらけということになる。

 

「それで由比ヶ浜さん、あなたの依頼は何かしら?」

 

「え、えっと……その…」

 

雪ノ下は依頼の事を聞くと、由比ヶ浜がこちらチラチラ見てくる。

 

どうやら俺がいては話せないような内容らしい。

 

「少しマッカン買ってくるわ。雪ノ下は?」

 

「私は野菜生活100いちごヨーグルトミックスをお願いできるかしら」

 

俺はさりげなく席を立ち、自販機に向かう。

 

状況把握してさりげなく行動する俺マジパネェっすわ。

 

 

 

 

 

ウォンウォンとUFOが出しそうな音を出す自販機で金を投入し、マッカンのボタンを押す。

 

雪ノ下の分も買い、誠に遺憾ではあるが由比ヶ浜の分も買う。一瞬暖かいブラックコーヒーを買おうとしたが、流石に可哀想だと思いやめておいた。

 

部室に戻ると話は終わっていたようで、二人は俺を待っていた。

 

「遅い」

 

帰って来て早々、雪ノ下からのありがたいお言葉を頂く。

 

「ほれ、お前の分だ」

 

由比ヶ浜に買ってきた飲み物を渡す。

 

「えっと、お金は…」

 

由比ヶ浜は慌てて財布を取り出し、小銭を探し出す。

 

「別にいらねーよ。で、依頼はなんだ?」

 

俺がそう言うと何故か由比ヶ浜がえへへとはにかむが、無視。

 

「家庭科室に行くわ」

 

好きな人とペアを組む部屋の事か?そもそも好きな人とペア組むなんてなんの拷問だよ、小中学生のときいつも俺だけ余ったような記憶しかないわ。

 

「結局そこで何すんだよ、大体何をするか予想できるが」

 

「由比ヶ浜さんは手作りクッキーを渡したい人がいるそうよ、けれど自信が無いらしいわ。それを手伝うのが由比ヶ浜の依頼よ」

 

手作りクッキーねぇ、正直言って由比ヶ浜が作っても大丈夫なのかね?こいつは比叡と同じ匂いがするぞ。

 

家庭科室に着くと早々、冷蔵庫を開けてクッキーの材料を持ってくる。他にもお玉や他のわけわからん調理器具をカチャカチャと手慣れた手つきで用意する。

 

準備を終え、雪ノ下と由比ヶ浜はエプロンを着るが由比ヶ浜は慣れていないのか手間取る。

 

ようやく由比ヶ浜がエプロンを着る。

 

「あ、あのさヒッキー…。家庭的な女の子ってどうかな?」

 

「あー、別に良いんじゃね?」

 

俺はそう言いながらエプロン姿の翔鶴を思い浮かべる。ヤバい、物凄く可愛い…。

 

「そ、そっか……。よーしっ、やるぞー!」

 

由比ヶ浜は何かを決心し、袖を巻き卵を割ってかき混ぜる。

 

だがその卵は卵の殻がマジっており、当然殻は溶けない。由比ヶ浜はそれを気にしないでバニラエッセンスや牛乳、小麦粉などの材料をボウルに投入し、かき混ぜる。

 

かき混ぜ終わるとボウルの中身は酷い有り様だった。小麦粉はダマになっていて、バターはいまだに個体の形を維持していた。

 

しかも砂糖と思っていた物は実は塩で、バニラエッセンスは入れすぎたのか溶けきってなく、牛乳はたぷたぷしている。

 

「さて、と……」

 

由比ヶ浜は何を思ったのかインスタントコーヒーを取り出し、ドバドバとボウルの中へ入れる。

 

当然インスタントコーヒーの山ができる訳で、由比ヶ浜は更に砂糖ではなく塩を追加するという蛮行にでる。

 

どうやら由比ヶ浜は言うまでもなく、どうしようもない不器用で大雑把でさらに無駄に独創的なので、到底料理に向かない人間のようだ。

 

化学の実験でこいつは必ず監視していないといけない、下手したら死人がでるレベルだ。

 

そして到底クッキーとは呼べない物が出来上がる。

 

「な、なんで?」

 

「むしろどうやったら上手く出来ると思ったんだよ。出来たとしてもそれこそ天文学的確率だ」

 

由比ヶ浜はショックを受けているが、驚くのはそこではない。

 

「どうやったら、信じられないほどのミスを犯すのかしら?」

 

雪ノ下は頭を押さえ悩む。

 

「見た目はあれだけど……、食べて見れば美味しい……のかなぁ?」

 

見た目で判断してはいけないというが流石にこれは見た目で分かるだろう。

 

なんせ見ただけで俺の本能がこれを食べるなと警告しているのだ。

 

「早速だけれども比企谷君、試食してちょうだい」

 

「雪ノ下、これは毒味と言ってだな。しかもこいつはジョイフル本田で売っている木炭と変わらないぞ」

 

磯風が作る料理を越えなければ少なくとも俺は食中毒になるだけだ、だが雪ノ下が食べると下手するとショック死ものだ。

 

「木炭とは失礼な!……木炭?やっぱり木炭なのかなぁ?」

 

由比ヶ浜は徐々にトーンを落とす。

 

クッキーを口に入れるが、味は酷いもので不幸中の幸いなのか磯風が作る料理よりいくらかマシだったが、下手したら気絶するレベルだ。

 

まだ飲んでいなかったマッカンを開け、一気に胃へ流し込む。

 

その後雪ノ下と結衣もなんとか物体Xを食べる。

 

「苦いよぉ。不味いよぉ」

 

「なるべく舌に触れないで飲み込んだ方が良いわ、劇薬みたいなものだから」

 

さりげなく雪ノ下は酷い事を言うが、由比ヶ浜は気づかなかった。

 

その後雪ノ下が紅茶を入れ。一息つき、雪ノ下が空気を引き締めるように口を開く。

 

「さて、どうすれば良くなるか考えましょう」

 

「由比ヶ浜がもう二度と料理しないこと」

 

「それで解決されちゃうの!?」

 

「比企谷君、それは最後の手段よ」

 

むしろそれ以外に何か解決する方法はあるのだろうか?

 

「解決方法が分かったわ。努力あるのみよ」

 

努力あるのみねぇ。ま、単純明快ではあるが当の本人はどう思っているのやら。

 

俺はそう思いながら由比ヶ浜を見る。

 

「やっぱりあたしって料理向いてないよね。ほら、才能ってゆーの?そんなのあたしには無いし」

 

由比ヶ浜は落ち込みながら言う。

 

「由比ヶ浜さん、そういう考えをやめなさい。努力もしないで才能がある人間を羨む権利は無いわ」

 

由比ヶ浜は言葉を詰まらせる。彼女の経験では雪ノ下のように正論を突きつけられた事が無いだろう。

 

だが由比ヶ浜は誤魔化すように笑う。

 

み、皆は最近こんなことやらないって言うし。きっとあたしには合わないんだよ、きっと…」

 

由比ヶ浜の言葉を聞くと雪ノ下は急に立ち上がる。立ち上がるときに生まれた音は酷く凍っているようだった。

 

「由比ヶ浜さんその他人に合わせること止めてくれないかしら?」

 

雪ノ下の言葉にははっきりとした嫌悪が混じっていて、由比ヶ浜は気圧されていた。

 

由比ヶ浜は黙り混み、俯く。

 

「か……、かっこいい!」

 

帰ると言うと思ったが急に変な事を言う由比ヶ浜。

 

雪ノ下も驚いており、少し固まる。

 

「「は?」」

 

このとき俺はこいつひょっとしたらドMじゃねとと思った。

 

「建前とか全然言わないんだ…。なんだか、その……かっこいい!」

 

「何を言っているのかしらこの子。これでも私は結構キツイことを言ったはずだけど」

 

雪ノ下の顔は明らかに困惑しており、由比ヶ浜に対して若干引いていた。

 

俺も同感で由比ヶ浜から物理的に離れる。

 

「確かに酷かったし、ブッチャケ軽く引いてたけど。でも本音って感じがするの。だからごめん。次からはちゃんとする」

 

雪ノ下は初めてのことであっただろう、いつもなら顔を真っ赤にし逆ギレするのが落ちだ。

 

雪ノ下は由比ヶ浜に少し微笑む。

 

「お手本を作るから、それに合わせて作って頂戴」

 

「う、うん!」

 

雪ノ下はそう言うと作業に取り、由比ヶ浜もそれに続く。

 

由比ヶ浜は雪ノ下になんとか従おうとするも、何かしらのミスを起こす。

 

何度か隠し味を入れようとするが、勿論雪ノ下に止められた。

 

なんとかオーブンに入れたときには雪ノ下は肩で息をしていた。

 

「なにか違う…」

 

オーブンから取り出すと、なんとかクッキーと呼べる代物が出来上がっていた。

 

食べて見ると先程の物体Xより確実に成長していた。

 

「えっと、ありがとう!家でもう一回作ってみる!」

 

そう言うと由比ヶ浜は駆け足で廊下に出ていった。

 

「これで良かったのかしら」

 

雪ノ下は不安そうに呟く。

 

「本人が納得しているなら別に良いだろ」

 

俺はそう言うと、調理器具を片付け始めた。

 

 




後日

翔鶴「あ、あの提督。この焦げた物は一体……」

比企谷「部活のお礼だと。どう処分するか困るな」

翔鶴「提督、虐められているのならこの私に話してください。私が力を貸しますよ?」

比企谷「いや、別に良い虐められてはいない」

比企谷「………捨てるか」




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やはり戸塚が男の娘なのは間違っている。(前編)

相変わらず最後のらへんが雑になってしまいました。誠に申し訳ないです。
それと材木座の事を忘れてました。



制服を着替え終え、リビングに向かうと小町がバターを塗った食パンを見ながらファッション雑誌を必死に読んでいた。

 

『ラブ活』『激モテ』といった非常にムカつく単語を並べた記事は実に頭が悪そうだ。

 

そんな小町は俺の考えに気づかず、なにやら感心していた。

 

小町が読んでいる『ヘブンティーン』という雑誌は、最近の女子中学生の間では一番熱い物だとか。

 

これを読んでいなかったら虐められるらしく、どうやら最近の女子中学生は俺が中学生の頃より更に怖くなっているらしい。

 

時間は既に7時半を回っており、雑誌に夢中になっている小町を肘で小突く。

 

「おい、時間」

 

「え、やっばぁ!」

 

寝起きのテンションとだいぶ違うこの子は食べかけのパンを頬張り、パジャマを俺の目の前で脱ぎ散らかしながら上着を俺の顔に投げつけ、その隙にリビングから出ていく。

 

「お兄ちゃん準備できた!」

 

小町がそう言うと玄関に向かい、俺も小町のあとを追う。

 

外に置いてある俺の自転車を跨がり、小町も荷台に乗り俺に抱き付く。

 

「レッツゴー!」

 

「このガキ…」

 

自転車の二人乗りは道路交通法によって禁止されている。

 

本来軍人である俺が違法行為をして良いかと言うとそうでもないが、こいつの思考は幼稚なのでそこは勘弁しては貰いたい。

 

自転車をを走らせると、後ろにいる小町が話しかけてくる。

 

「そう言えばお兄ちゃんさ、最近翔鶴さんとの関係はどうなの?」

 

「翔鶴との関係?ただの友人だろ」

 

俺は素っ気なく答える。

 

少なくとも俺は翔鶴を大切な友人だと思っている。翔鶴が俺に対する気持ちは分かる訳がない。

 

「はぁ、これだからごみぃちゃんは…」

 

小町はごみとお兄ちゃんを合体させた造語を呟く。

 

「いいお兄ちゃん!?翔鶴さんはね、小町にとってお義姉ちゃん最有力候補なの!翔鶴さんの気持ちをちゃんと考えてよね!」

 

「翔鶴の気持ち……ねぇ。翔鶴が俺のこと好きになるわけないだろ」

 

目が腐って捻くれた性格である俺の事を好きになる訳がない。

 

「もし翔鶴さんが他の男に取られたらどうするの?」

 

俺は小町の言葉を聞き、少し考える。

 

翔鶴が俺の知らない男と腕を組み幸せそうな顔をするのを思い浮かべる。

 

複雑だ、よく分からないが複雑な気持ちになるな。

 

「ちょっ、お兄ちゃん!行き過ぎ、行き過ぎ!」

 

どうやら中学校を通り過ぎていたようで、俺は自転車を止める。

 

小町が自転車から降り、鞄を片手に敬礼する。

 

「では、行ってくるであります!」

 

小町はそう言うと小走りで校門へ向かった。

 

翔鶴の事は考えないでおこう、もしかしたら俺が血迷って翔鶴に告白する蛮行起こすかもしれん。

 

それに、翔鶴にはあまり迷惑させたくないからな。

 

 

「うし、じゃあお前ら打ってみろ。二人一組で端と端に散れ」

 

体育の教師である厚木がペアを組めと指示を出す。

 

俺の周りにいたいた奴等はそれぞれ仲が良い同士でペアを組む。そんな中俺は当然ペアを組む相手がいないので俺はこういう時の為に秘策を用意してある。

 

「あの。俺今、調子が悪いので壁打ちしていても良いですか?迷惑かけたくないので」

 

「お、おう」

 

厚木の許可を貰い、俺は壁際で壁打ちを始める。

 

完璧過ぎる、これぞ俺が編み出した究極のペア組め対策だ。

 

俺の他にある原因で友人ができない奴がいるが、そいつは今日サッカーの授業を受けている。その内あいつにも教えてやろう、あいつが泣いて喜ぶ姿が容易に思い浮かぶぞ。

 

ボールを壁に打ち、帰ってきたボールをまた壁に打ち出す。

 

「うらぁ!うぉ!?今の良くね?ヤバくね?」

 

偶々俺の近くでテニスをしていたリア充共が派手に打ち合い、まるで子供のように騒ぐ。

 

「今の球まじやベー!葉山君マジヤベーって。さっき曲がった?マジパネー!」

 

リア充共は本当に煩すぎる。特にあの金髪野郎、あいつベーベーしか言わないぞ。

 

「偶々打球がスライスしただけだよ。悪い、ミスした」

 

葉山は片手をあげ、金髪に謝り金髪はそれを遮るかのように騒ぎ出す。

 

「葉山君マジパネー!魔球っしょ!マジ葉山君尊敬するわー!」

 

金髪がそう言うと周りのモブが集まりだし、葉山にスライスのやり方を聞き出す。

 

モブが集まった結果、葉山王国へと変貌する。

 

葉山のグループは基本的に煩いが、葉山自信が積極的に声を出さない、むしろ声を出しているのは大臣役を買って出た金髪が煩い。

 

「スラーイスッ!」

 

金髪が葉山のスライスを真似ようとしたが、まったくスライスすることなく葉山達がいるコートから大きく外れ、俺にボールが落ちてくる。

 

一応想定していたので俺は難なくボールを葉山グループへ軽く打ち返す。

 

「えっと…。ひ、ヒキタニ君?ヒキタニ君ありがとう!」

 

俺はヒキタニという名前ではないのでお礼を言ったのは別の奴に言ったのだろう。

 

 

午前中の授業が終わり、俺はいつ通りベストプレイスで購買で買ったパンとおにぎりを食らう。

 

テニスコートからポンポンとリズムよい音が俺の眠気を誘う。

 

俺がうとうととしていると、後ろの扉が開く音がした。

 

「あら、比企谷君でしたか」

 

よく聞き慣れた声が聞こえた。振り向くとそこには千葉鎮守府の艦娘であり、金剛型四姉妹の一人である榛名がいた。

 

「榛名か、どうした?」

 

榛名は俺の隣に座り、髪が風により飛ばされないように手で頭を押さえこちらを見る。

 

「食後のお散歩で偶々通っただけですよ」

 

榛名はそう言うと微笑む。

 

「ここ、良い場所ですね。とこで提督、風の噂で聞いたのですが焦げたクッキーを渡されたらしいですが本当でしょうか?」

 

榛名が心配した顔で俺を見つめる。

 

由比ヶ浜が作ったクッキーの事だろうな、後日由比ヶ浜が感想を聞いてきたが適当にはぐらかした。

 

「部活で受けた依頼のお礼だと。あいつ何一つ変わってなかったけどな」

 

「その子の事提督はどう思っているのでしょうか?」

 

榛名が真剣な表情でグイっと目とはなの先まで顔を近付ける。

 

ちょっ。近い、近い!ヤバい髪の毛が滅茶苦茶良い匂いなんですけど。って、今の俺相当キモいな。

 

「い、いや俺も会ったばかりだからよく分からないぞ?初対面の相手に対して暴言を言うのは止めて欲しいがな」

 

俺は少緊張して、榛名から視線をそらしながら答える。

 

すると榛名からの視線がいきなり冷たくなった。俺は何事かと思い、榛名を見る。

 

「提督?その子の名前を教えていただけないでしょうか?」

 

なにこの子、目のハイライト消えていて滅茶苦茶怖いんですけど!

 

それに榛名が深海棲艦と戦うときの顔をしているんだけど!

 

「ゆ、由比ヶ浜結衣っていう名前なんだけど…」

 

「提督、榛名はその由比ヶ浜さんと少々お話をしてきます」

 

「榛名少し落ち着け、別に俺は気にしていないからな?」

 

榛名が由比ヶ浜の元へ向かおうとするのを止める。

 

むしろ止めなくてはならない、艦娘が一般人に手を出したことが世論に知られたら不味いことになる。

 

「提督がそうおっしゃるのならば榛名は何もしませんよ」

 

榛名が元の表情に戻り、俺の隣に再度座る。

 

「榛名が俺の為に動いてくれるのは嬉しいのだが、一般人に危害を与える事は絶対にやらないでくれ。ま、いざとなったら俺が無理矢理命令したと言っておくが」

 

俺は内心、安堵しつつ榛名に注意する。

 

無理矢理命令したと言うのは最後の手段だ、これで鎮守府の評判が下がるまい。

 

「提督は冗談がお得意のですね」

 

榛名はそう言いながら少し微笑む。

 

それ本気で言っていいたんだけどなぁ。

 

榛名は俺の思いを知らずに、立ち上がり教室に戻る。

 

飲みかけだった飲み物を一気に飲みほし、教室に戻るべく立ち上がる。

 

「あれ?比企谷君ここでなにしているの?」

 

後ろを向くとそこにはテニスラケットを持ち、ジャージを着た女子がいた。

 

「誰?」

 

俺は思わず呟いてしまった。俺が飯を食べているときに昼練をしていた女子の事を思い出す。

 

彼女は俺の「誰?」発言により少し落ち込む。

 

「あ、あはは。やっぱり僕の名前覚えてないよね……。同じクラスの戸塚彩加です」

 

「名前覚えてなくてすまん。俺は特定の女子と話さなかったからな」

 

今までクラスメートの名前なんて覚えようともしなかったから、罪悪感が凄まじい…。

 

「僕、男なんだけどなぁ。そんなに弱そうに見えるのかなぁ…」

 

え…、戸塚って男なの?それって俗にいう男の娘だというのか?




艦娘との絡みが少ないと感じる今日この頃、自分にもう少し文才があれば艦娘との絡みがたくさんできるのですが…。

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やはり戸塚が男の娘なのは間違っている。(後編)

相変わらず最後が適当な仕上がりになってしまいました。


戸塚と出会って数日が経ち、再び体育の授業を受ける。

 

度重なる壁打ちの結果、俺は壁打ちをマスターしつつあった。既に一歩も動かずにラリーを続けられるようになり、明日からは暫く試合を行う。つまり今日で最後の壁打ちとなる。

 

壁打ちを始めようすると、右肩がちょんちょんとつつかれる。

 

俺に声をかける物好きは誰かと思い振り返るが、右頬に指が刺さる。

 

「あはっ、引っ掛かった」

 

振り向くとそこには戸塚がいた。戸塚は俺が悪戯に引っ掛かった事に少し喜ぶ。

 

戸塚は男なので、勿論男制服を着ているがいざジャージに着替えると男女共通なので一瞬勘違いしてしまう。

 

「どした?」

 

「いつもならペアを組んでいる子がいるんだけど、今日はその子が休みでさ。比企谷君と組もうかなって……、駄目かな?」

 

男のはずなのに何故か頬を染め、上目遣いを習得している戸塚。

 

そこまで上目遣いされると俺は断り切れないので、思わず了承する。まあ、別に構わなかったが。

 

戸塚はホッとした表情となり「緊張した…」と呟く。君本当に男ですかね?

 

戸塚とラリーを始めると思いの外ラリーが続く。

 

「比企谷君ってテニス上手だよね!」

 

少し戸塚との距離が離れているのか声が少し間延びする。

 

壁打ちの成果なのか、それとも俺がなんとか戸塚に打ち返そうと必死になったのかは分からない。

 

その後もラリーが続き、他の連中は打ちミスをする。

 

戸塚がラリーを止め、跳ねたボールをキャッチする。

 

「少し休憩しよっか」

 

「おう」

 

俺は近くにあったベンチに座り、戸塚も俺の隣にちょこんと座る。

 

ラリーで顔から出た汗をタオルで拭き取り、水分を補給する。

 

「あのね、比企谷君。相談があるんだけどさ」

 

戸塚が真剣な顔で口を開く。

 

相談はできれば誰にも知られたくはないからな、だから俺の隣に座ったのか。

 

「テニス部の事なんだけどさ、うちって物凄く弱いでしょ?今年の三年生が抜けるともっと弱くなると思うんだ。一年生は今年からテニスを始めた人が多くてまだあまり慣れてないし、僕達が弱いせいでモチベーションが上がらないらしいんだ」

 

なるほどねぇ、確かに上級生が強くないと部活全体の士気が上がらない。

 

「その…、比企谷君さえ良ければテニス部に入ってくれないかな?」

 

「は?」

 

戸塚は体育座りの姿勢でこちらをすがるような目で見てくる。

 

だが残念なことに俺は奉仕部に入っていて、更に軍の仕事もある。心苦しいが戸塚の頼みには答えられそうにもない。

 

「悪い戸塚、入れなさそうだ」

 

「そっかあ」

 

戸塚は本当に残念そうな声を出し落ち込む。

 

「まあ、その代わりに何か方法を探してやるよ」

 

戸塚を安心させようと苦し紛れに言った言葉と同時に今日の授業が終わる。

 

 

戸塚に何か方法を探すとは言ったものの、何も良いがでないまま放課後を迎える。

 

「やっはろー!」

 

由比ヶ浜が教室に意味不明な挨拶をしながら入ってくる。

 

あの依頼以降何故か由比ヶ浜は奉仕部にくるようになってしまった。

 

俺としては関わりたくない奴が来て正直鬱陶しいったらありゃしない、早く飽きて元のグループに戻って欲しいものだ。

 

「ひ、比企谷君!」

 

突然教室のドアから俺を呼ぶ声が聞こえ、目を向けると戸塚が明るい顔で俺を見ていた。

 

「あたしだって奉仕部の一員じゃん?だから、ちょっと働こうとしたわけ。そしたら偶然さいちゃんが悩んでいたからここに呼んだの!」

 

そもそも由比ヶ浜っていつ奉仕部に入ったんだ?真に遺憾ではあるが、由比ヶ浜のお陰でなんとかなりそうだ。

 

「由比ヶ浜さん、あなたは別に部員ではないのだけれども」

 

「違うんだ!?」

 

どうやら由比ヶ浜は勘違いしていたようでショックを受ける。

 

むしろ何故、既に入部した気になっていたのだろうか?こいつの思考回路は一体どうなっているんだ?

 

「入部するには入部届けを貰っていないし、平塚先生能力承認がないからあなたは部員ではないのよ」

 

「書くよ!入部届けは何枚も書くから入部させて!」

 

由比ヶ浜は涙目で雪ノ下に訴えると、ルーズリーフを取り出し平仮名でにゅうぶとどけと書き始める。

 

入部してくんなよ、そして諦めて元のグループに戻れ。

 

「それで戸塚彩加君だったかしら、何かご用かしら?」

 

由比ヶ浜がシャーペンを走らせるのを他所に雪ノ下は戸塚に目を向け、戸塚は少し体を震わせる。

 

戸塚の依頼は恐らくテニスの事だろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の予想どうり戸塚はテニス部を強くして欲しかったらしいが雪ノ下が奉仕部の理念に反すると言い、断ったが戸塚も退かず、自分が強くなれば他の部員も頑張ると言いなんとか雪ノ下を説得した。

 

由比ヶ浜が戸塚に奉仕部は何でも屋みたいな事を戸塚に吹き込み、その事で雪ノ下に注意されたが俺には関係ない。

 

「なあ雪ノ下、まさかこれをやるのか?」

 

雪ノ下が作ったトレーニング表はハード……、いや地獄と言って良い程の内容だった。

 

まず手始めに死ぬまで走り、その次に死ぬまで素振り、死ぬまで腕立て伏せをするらしい。

 

「何を言っているのかしら、勿論やるわ?」

 

「さいですか、せめて死なない程度でお願いしますよ」

 

こいつ絶対、人に何かを教えるのは向かないだろ。

 

 

生徒会からテニスコートの使用許可を貰い、俺はテニスコートに向かう。

 

テニスコートに着くと既に俺以外全員が集まっていた。

 

「では、始めましょうか」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

戸塚は雪ノ下に対し頭を下げる。

 

「まず戸塚君は致命的に足りてない筋力を鍛えましょう、まずは死ぬ一歩手前まで腕立て伏せをやってみて」

 

戸塚は雪ノ下の指示に従い腕立て伏せを始める。

 

初日だからもう少し楽なやつにしとけよ。

 

俺は内心そう思いながら戸塚の腕立て伏せを見守る。

 

「んっ…、くっ、ふぅ、はぁ」

 

戸塚は汗を垂らせ息を切らしながら細い腕を曲げる。

 

「俺もやるか…」

 

流石に俺だけ見ているわけにもいかず、腕立て伏せに参加する。

 

雪ノ下は俺の行動が意外だったのか少し驚いた顔をする。

 

由比ヶ浜はと言うと、基礎代謝を上げる為に腕立て伏せに参加していた。

 

 

 

 

戸塚の依頼を達成すべくトレーニングを始めてから数日が経った。

 

基礎トレーニングは先日終わり、今日からボールとラケットを使った練習に入る。

 

由比ヶ浜は始めのうちは戸塚と共に練習していたが、飽きたらしく雪ノ下の隣で寝息をたてている。

 

ボールとラケットの練習をするのは戸塚だけで壁打ちをするだけなのだが、雪ノ下が付いているため打ち方が悪いと何か言われる。

 

俺はというと、アリの行列を眺めていることしかなかった。

 

あまりにも暇過ぎたので戸塚へ目を向けると、いつの間にか起きていた由比ヶ浜が雪ノ下の指示のもとボールをかごの中に入れ、それを投げ捨てては戸塚が食い付いていた。

 

20球目あたりで戸塚は転び、膝を擦りむく。

 

雪ノ下は何も言わずに校舎の方向へ歩いていく。

 

「怒らせるようなこと、言っちゃったのかな?」

 

隣では何やら不安そうな顔で雪ノ下が歩いていった校舎を眺める。

 

「それはないと思うよー。ゆきのん、頼ってくれた人を見捨てないもん」

 

ボールを拾っていた由比ヶ浜が近づきながら戸塚を安心させようとする。

 

「練習の続きするか?」

 

「うん」

 

戸塚は頷き、立ち上がる。

 

俺は由比ヶ浜からかごを受け取ろうとすると、異変が起きた。

 

「あ、テニスしてんじゃん、テニス!」

 

振り向くと、縦ロールがなんかはしゃいでいており葉山とその縦ロールを中心としたグループがこちらに歩いてくる。

 

「ねえ、戸塚。あーしもここで遊んでもいい?」

 

「三浦さん、僕は別に遊んでる訳じゃなくて……練習を……」

 

「え?何?聞こえないんだけど」

 

戸塚の小さすぎる抗議が耳に入らなかったのか、縦ロールこと三浦の言葉で押し黙る。

 

「練習だから…」

 

「ふーん。でもさ、部外者混じってるじゃん。ってことは別に男テニだけでコート使ってる訳じゃないでしょ?」

 

縦ロールはそう言うと戸塚が困ったように俺を見てくる。

 

雪ノ下はどっか行ったし由比ヶ浜は使えそうにもない、俺しかいないかぁ。

 

「あー、ここは生徒会の許可を貰って使っているもんだから他の人は無理だ」

 

「生徒会……」

 

三浦はそう呟き、考え込む。あともう少しで、追い返せると思ったが、そこで思わぬ事態が起きる。

 

「まあまあ、あまり熱くなるなって」

 

俺達を黙って見ていた葉山が、別に熱くもなっていない雰囲気に割り込んでくる。

 

「ほら、みんなでやった方が良いじゃないか。こうしようよ、部外者同士で勝負。勝った方が昼休みテニスコートを使えるってことでどうかな?」

 

こいつ人の話聞いてた?俺達は生徒会の許可を貰ってテニスコート使っているのにあいつら別に許可を貰っているのではなく、試合しようとする。俺、怒っても大丈夫だよな?

 

俺が葉山に文句を言おうとしたとき、思わぬ奴が葉山に対して異論を言った。

 

「ねえ葉山、あんたのせいでややこしくなったし!そもそもヒキオが言ったよね?生徒会の許可を貰って使ってるって言ってたじゃん」

 

「優美子、それはだな……」

 

三浦が葉山に言うと、葉山は思わず黙りこみ三浦は戸塚を見る。

 

「あー、戸塚さっきはゴメン。生徒会の許可貰ってからテニスして良い?あんたの練習に付き合うからさ」

 

「え、あ、うん。ありがとう」

 

戸塚も呆気にとられており、返事をするしかなかった。

 

 

 

三浦が生徒会から許可を貰い、テニスコートに戻ってくる。

 

三浦以外の葉山グループは既に教室に戻っていた。

 

雪ノ下は医療箱を持ってきて戸塚の治療を行い、俺はさっきの出来事を伝える。

 

雪ノ下も最初は三浦が参加するのに戸惑ったが、次第に慣れていき何も言わなくなった。

 

三浦は中学生の頃、県大会に出場したことがあるらしくテニスは結構上手だった。

 

「ほら、こう構えて…そうそう。あんたやればできるじゃん」

 

更に三浦は面倒見も良く、戸塚にちょくちょくアドバイスする。

 

もう俺達必要無いんじゃ?と思いながら戸塚の練習に付き合う。

 

一端休憩をする事になり、俺はベンチに座る。

 

「なあヒキオ、隣空いてる?」

 

タオルで汗を拭き取り、スポーツドリンクを飲んでいたら三浦が俺の隣に座る。

 

「ヒキオってなんだよ」

 

「んー?比企谷って呼ぶのメンドイからヒキオって呼んでいるだけだし」

 

まあ、ヒッキーよりかは大分マシだな。今更だが、由比ヶ浜の命名センス無さすぎだろ。

 

「三浦は葉山と吊るんでいなくて大丈夫なのか?」

 

俺が三浦に聞くと、三浦は顔を暗くし答える。

 

「あーしさ、別に好きでグループに入った訳じゃないし。気が付いたらグループに入ってただけだし」

 

つまり出たくても出れない状況なんだな、リア充ってのはやはりよくわからん。

 

「まあ、久し振りにテニスやったから最近のストレスが発散できた」

 

そう言うと、三浦は少し笑う。




次は鎮守府の話になりますので楽しみにしてください。

感想・評価よろしくお願いします!


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やはりこの二人が揃うと色々危ないのはまちがっていない。

遅くなって本当にすみませんでした。



-追記-
後半の内容がどうしても納得出来なかったので書き直しました。


戸塚の依頼を達成した次の日は土曜日、授業という呪縛から解き放たれた学生達が個々の趣味に没頭する。

 

物凄く帰りたい。

 

帰りたいと思ったのは俺が、入隊したとき以来だろうか。

 

そう思うと俺も立派な社畜に成り下がったのだろう。

 

早く帰って小町が作るご飯を食べたい。いや、今日は小町が友達の家に泊まるって言っていたな。解せぬ。

 

俺が何故現実逃避をしているというと、今、調理室でエプロンに着替えている二人の女の子が原因だ。

 

「比叡、今回は何を作る」

 

「前は和食を作りましたから、今度はカレーとかどうでしょう」

 

そう、比叡と磯風である。

 

この二人の作る料理はもはや料理とは呼べない。

 

「帰りたい」

 

俺は元々腐っていた目を更に腐らせ、帰りたいと呟くもあの二人の耳には届かない。

 

 

 

もはやこの調理室は処刑場に変貌してしまった。

 

「準備ができた、では作るぞ」

 

「気合、入れて!行きます!」

 

ああ、とうとう始まってしまったのか。あと比叡、別に気合を入れなくても良いんだぞ?

 

磯風はまず手始めに米を水をいれた容器の中に入れ、研ぎ始める。

 

まずここまでは問題無く、磯風は思いも寄らないことを始める。

 

「米には雑菌が多いと聞く、ならば洗剤で洗うのが正解であろう」

 

正解ではないです、むしろ間違ってます。

 

ああ!そんなに洗剤を入れないで!

 

俺の願いも虚しく、磯風は洗剤を米が入った容器にドバドバと投入する。

 

比叡はというと、冷蔵庫からカレーの具を取り出していたがその具の内容が可笑しかった。

 

内容はジャガイモ、豚肉、人参、玉葱まずここまでは良かったが問題はこれからだ。

 

ゴーヤ、鮭、いつのか分からない冷凍しじみetc…。

 

何故冷凍しじみなんだ、さっきチラッと見えたが消費期限が去年のやつだぞ。

 

「変な臭いがするけど問題ないですよね?」

 

大丈夫ではい、むしろ問題大有りだ比叡。

 

あ、磯風がジャガイモを洗剤で洗い始めた…。

 

誰かこの状況をなんとかしてくれ。

 

 

 

 

 

その後、二人は着々と調理を進めとうとうカレーが出来上がってしまった。

 

カレーは本来の色に若干ゴーヤの色が混じり、異臭を放つしじみがカレーにあった。

 

因みにしじみはカレーが出来上がる直前に、磯風が思い出したかの様にしじみをカレーの中に投入した。

 

磯風、せめて火を通して欲しいのだが…。

 

「さあできたぞ司令、食べてくれ」

 

「提督!私達が作った料理の中で最高傑作のカレーが出来上がりました!」

 

「お、おう」

 

眼前に出されたカレーをどう食べるか迷う、むしろ食べても大丈夫なのだろうか?

 

「司令、食べないのか?」

 

「あ、ああ。い、いただきます…」

 

逃げても捕まるので、俺はスプーンでカレーを口に運び食べる。

 

味はゴーヤを相当煮込んだのか、カレーの辛さとゴーヤの苦味が混じり合い、辛さがなんとか勝っていた。

 

俺は吐き出しそうになりながらも、それをなんとか我慢して食べる。

 

「ご、ごちそうさま」

 

「提督、味はどうでしたか!?」

 

比叡が目の前まで一気に顔を近付けさせ、感想を聞いてくる。

 

これはカレーではない、むしろ一種の科学兵器の域まで達していた。それも由比ヶ浜が作るクッキーの方が断然旨いと声高らかに言えるだろう。

 

だが俺は彼女らに対し不味いと言えない。俺の為に作ったのかは分からないが、彼女達を傷付ける訳にはいかない。

 

「う、旨い……ぞ?」

 

「やはりそうか司令、今度浦風や谷風、浜風に食べさせようか」

 

「感想ありがとうございます提督!金剛お姉様にも食べさせてあげます」

 

磯風と比叡は喜び、俺は次の犠牲者に対し凄い罪悪感を感じた。

 

 

今日の執務作業を終わらせ、俺はホテル・ロイヤルオークラの屋上に位置する『エンジェル・ラダー天使の階』に向かっている。

 

何故そこに向かっているかと言うと、俺が磯風と比叡と別れた後に同期であり友人でもある佐藤からLINEが来たからだ。

 

佐藤は沖縄の那覇鎮守府の提督であり、基本的に南方海域を担当している。

 

「比企谷、こっちだ」

 

エンジェル・ラダーの店内に入るとカウンター席に佐藤が俺に手を振っていた。

 

「久し振りだな比企谷」

 

「あぁ、一年振りだな」

 

俺は佐藤の隣に座り、再生の言葉を交わす。

 

「久し振りにあった事だし比企谷、何か飲むか?奢るぞ?」

 

佐藤はクイっと飲む仕草をする。

 

「んじゃ、マッカンで」

 

俺は即答でマッカンに決め、佐藤は呆れた顔をする。

 

「お前本当にマッカンが好きだな。マスター、ウイスキーひとつとマッカンひとつ」

 

佐藤は店員に注文し、俺はその店員に何故か違和感を覚えた。

 

あのポニーテールの店員、どっかで見たような…。

 

「お、比企谷。なんであの店員を見てるんだ?」

 

「いや、どっかで見たような気がしてな。気のせいだわ」

 

俺が気のせいとはぐらかすと佐藤は、ニヤついた顔をする。

 

「比企谷は翔鶴という美人さんがいるのに浮気ですか。フ~ン」

 

「何言っているんだよ佐藤。…って、その指輪どうした?」

 

佐藤の左手の薬指に銀色に輝く指輪を嵌めていた。

 

佐藤は指輪を右手で擦り、若干ニヤつく。

 

「あぁ、これか。最近やっと大井にこれを渡してな、晴れて恋人同士になってよ」

 

とうとう佐藤もリア充になってしまったのか…。

 

「ケッ、リア充が」

 

俺が佐藤に対し毒づくと、佐藤は呆れた顔をして俺に言う。

 

「お前には翔鶴がいるだろ」

 

「それ小町にも似たような事言われたのだが…」

 

本当、なんで皆して俺には翔鶴がいるって言うのかね?

 

翔鶴が俺の事好きになるわけが無いのにな、そう考えると悲しいな。

 

佐藤は店員から渡されたウイスキーをチビチビと飲み始め、真剣な表情をする。

 

「比企谷、深海棲艦との戦争はいつからやっていたんだろうな」

 

佐藤は飲んでいたウイスキーを入れたコップをカタンと、カウンターに置く。

 

「そりゃぁ、6年前だろ?」

 

俺が当然とばかりに言うと、佐藤は頭をかきむしり『やはりそうだよなぁ』と呟く。

 

「あんまりここだと言えない事だが…、これだけは言えるな」

 

佐藤は残りのウイスキーを一気に飲み干し、小声で俺が思いも寄らないことを言った。

 

「少なくとも………。少なくとも第二次大戦はまだ終わっていねえ」

 

「!?」

 

「ま、それが普通の反応だわな。俺もそうだった、後の事は元帥閣下に聞け」

 

佐藤はそう言うと立ち上がり、帰って言った。

 

 



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やはり由比ヶ浜はうざいのは間違っていない。

お久しぶりです。
なんとしてでも年内にあげたかったので
このような酷い内容になってしまいました。誠に申し訳ありません。
後、前話の後半を大幅に修正しました。既に読んでいる方もいるかもしれないですが、読んでいない方は読んだ方が良いです。修正した部分は今後の物語に影響しますので。


二限目と三限目の間である休み時間。俺は何時ものごとくイヤホンを耳に付け、そして寝る。

 

むしろそれ以外やることが無い。この学校にはうちの鎮守府の艦娘がいるが、そこまで関わらない。

 

今更ではあるが、翔鶴は俺と同じクラスに所属しているが、今日は硫黄島の哨戒任務に就いていているため学校に来ていない。

 

もしクラスの連中に俺が提督だと知られたら、必ず面倒なことになるだろう。

 

特に誰とは言わないが、ピンク頭の馬鹿が一番騒ぐだろうな。

 

「失礼しまーっす」

 

俺が変な事を考えていると、教室のドアから薄緑色のセミロングの女子が入ってくる。

 

「おい、あの子って確か艦娘だったよな?」

 

「あぁ、重巡洋艦の鈴谷さんじゃないか?」

 

クラスの連中は鈴谷を見るとザワザワと戸惑いを見せ鈴谷に視線が注がれる。

 

鈴谷はクラスの連中の反応は既に慣れているのか、気にも留めず教室を見渡し俺の顔を見るや否や、パタパタと駆け寄って来た。

 

「比企谷ぁ。現国で分からない所があるから教えてー」

 

鈴谷は俺に対し手をあわせながら近づく。

 

「比企谷って奴うちのクラスにいたっけ?」

 

鈴谷は俺の前の席に座り現国のノートを取り出し、俺の机の上に置く。

 

鈴谷が俺がいるクラスに来た時点でこうなる事は、分かっていたから諦めるしかない。

 

「あいつが比企谷?鈴谷さんってあんな奴とつるんでいるのか?」

 

「つかあいつってヒキタニじゃね?もしかして鈴谷さんを脅しているかも」

 

「マジかよ、ヒキタニ最低だな」

 

周囲の目線がすごく痛い、俺の予想通りクラスの連中は俺の陰口を叩きながら俺を睨んできた。その中で一際物凄い形相で俺を睨む女子がいる。

 

由比ヶ浜である。彼女は「ヒッキー、鈴谷さんを脅すなんてマジキモい!死ねば良いのに」と言いながら騒いでいる。

 

中学時代に似たような事があったため別に気にはしないが、やはり良い気には慣れない。

 

鈴谷は由比ヶ浜の発言に一瞬眉間に皺を寄せるも、すぐに元の表情に戻す。

 

「お前なぁ。俺じゃなくて他のやつに頼めば良いだろ?」

 

俺が呆れた顔で鈴谷に言うと、鈴谷は少し照れくさそうに人差し指でポリポリと頬を掻き俺の問いに答える。

 

「いやぁ、私ってあれじゃん?現国が苦手だし、友達にもあまり知られたくないし…。だから比企谷、ほんとお願い!」

 

鈴谷は手をパチンと手を合わせ、懇願してくる。時折こちらをチラチラと見てくるのは少々ムカついて来るが気にしなようにしておく。

 

「はぁ…。それで、何処が分からないんだ?」

 

「ありがとう!えーっとね………」

 

俺は周りからの視線を感じながら、鈴谷に勉強を教え始めた。

 

 

鈴谷に勉強を教え終えた以降も、クラスの連中から陰口を叩かれながら授業を受け、放課後になる。

 

鞄に荷物をしまい、奉仕部の部室へと向かう途中に事件は起きてしまった。

 

「ねえヒッキー!鈴谷さんとどんな関係なんだし、教えてよね!」

 

後ろからドカドカと歩いて来た由比ヶ浜によって俺の肩を、そこそこ強い力で引っ張られ強引に俺と顔を向けさせられる。

 

「ただの友人だ。それがどうした?」

 

「な!?この事ゆきのんにも言うからね!」

 

素っ気なく答えながら、肩を掴む由比ヶ浜の手を振り払う。しかし由比ヶ浜は俺の答えに納得せず、明らかに不機嫌そうな顔をしながら奉仕部の部室へ歩いて行った。

 

「はぁ、めんどくせぇ」

 

俺は溜め息をつき、帰りたい気持ちを押さえながら部室へと向かう。

 

 

 

 

 

「比企谷君、由比ヶ浜さんから話を聞いたわ」

 

奉仕部の部室に入ると雪ノ下が腕を組み、部室のドアの前に立っていた。

 

「はぁ、雪ノ下。鈴谷とはただの友人だ」

 

俺が溜め息混じりに雪ノ下の問いかけに答えると、雪ノ下はクスリと笑う。

 

俺は疑問に思うが、雪ノ下は俺の疑問に答える様に言った。

 

「貴方は目の腐り具合で相手を脅迫出来そうな男ではあるけれども、仮に鈴谷さんが脅されていたのなら、わざわざ貴方がいる教室には来ないわね」

 

雪ノ下の発言に俺と由比ヶ浜が数秒間絶句する。そして俺より先に再起動を果たした由比ヶ浜が雪ノ下に掴みかかる。

 

「ゆきのん!?ヒッキーはすz「♪~」え?」

 

由比ヶ浜の言葉を遮る様に電話の着信音が鳴り響き、由比ヶ浜と雪ノ下は周りを見渡し、やがて俺の鞄に視線が集まる。

 

「すまん、俺のだ」

 

俺はそう言うと鞄からスマホを取り出し、発信者の確認をする。発信者を確認すると俺は一瞬だけ目を細める。

 

「少し出てくる」

 

俺はそう言い教室から出る。俺が廊下へ出るとき、由比ヶ浜が俺を止めようとするが、雪ノ下に制止される。

 

俺は雪ノ下に感謝しながら、階段へ小走りで向かう。

 

今更ではあるが、俺の携帯は実は二つあり、プライベートに使うスマホと軍と連絡を取り合う為のガラケーの二種類を持っている。

 

 

 

階段にたどり着き、俺は直立不動の姿勢を取り電話に応答する。

 

「はい、比企谷です」

 

『やっと出たか比企谷』

 

「申し訳ございません。加藤元帥閣下」

 

加藤元帥。その名の通り彼は日本国防海軍の元帥であり、海軍上層部の一員でもある。

 

『話したい事がある。今すぐ来てくれ』

 

加藤元帥はそう言うとすぐに電話を切った。

 

「はぁ…。あの人は」

 

俺は溜め息をつき部室へ荷物を取りに向かった。




本当は元帥との会話も入れたかったのですが、どうしても年内に投稿したかったので次話にすることにしました。
それと、俺ガイルの原作は数話後になる予定です。
良いお年を。


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