小悪魔村雨の秘密の日記 (fire-cat)
しおりを挟む

日記世界における世界観
世界観について


※ここの設定、ほとんど使いません(こういうの設定するの大好きなもので。ただ本編に影響ほとんどなし。追記:2018/05/18)
2018/05/24 正式に日記世界共通設定にしました。山風の日記もこの世界観に沿って進めていきます。

 読まなくても問題ない筈の設定集です。読まれる方も、こんなものかという軽いお気持ちで読み流してください。文章量が多いですが。
 世界観についてですが、歴史や経済状況など、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()になります。

 本編第1話(12月1日から15日)前書きにおいてありましたが、前書きにあると読み難いらしいので2018/01/02に別話として移動しました。ついでに鎮守府や艦娘について各話後書きに記述していたものをここに纏めました。

2018/02/24 初めてメッセージ頂いてドーム何個分の面積を追記。卵やコメの物価について返信(文章に纏められなかったので後書きに内容を追記)

2018/03/02 村雨の鎮守府の間取り等を追記。

2018/05/18 歴史や都市計画や経済関係を大幅追記。

2018/05/24 更に電力事情や交通関係を追記。

2018/07/05 指摘を受けて村雨の鎮守府該当部分と世界の説明を分割しました

2020/02/02 3万文字を超える世界観は長かったので艦娘と鎮守府の項目を分割しました(山風の日記を再開し始めましたが、自分で世界観読むの疲れたので)


1.終戦前後の日本情勢 

 連合国との和平交渉の術を探っていた小野寺信を長とする日本の諜報組織『東』部門やシェレンベルクを長とするドイツ国家保安本部第VI局の活躍とポーランド亡命政府やフィンランド政府等の支援により2月8日から始まったヤルタ会談の内容が2月25日に暗号の解読により発覚。日独政府が中立国を通じポーランド問題やドイツ問題、外モンゴルや極東の日本領の扱い、ドイツ降伏後2~3ヶ月以内のソビエト連邦の参戦といった会談の内容を全世界に暴露した。この暴露直後ルーズベルト大統領が急死。急遽昇格したトルーマン大統領がこの事件を契機に国内の防諜体制の見直しと間諜の再捜査を行った結果、南京虐殺を報道したアグネス・スメドレーがコミンテルンの工作員であった事、ローゼンバーグ夫妻、トーマス・アーサー・ビッソン、クラウス・フックス等のスパイ行為やケンブリッジ5人組の存在が早期に発覚。中でもハリー・ホプキンス前大統領顧問のスパイ行為が発覚したことでソビエト連邦に対し不信感を抱いた米英とソビエト連邦の対立が早まった為、ヤルタ会談の協定は白紙に戻された。

 新たな協定の必要に駆られた連合国が調整を行う最中にスウェーデン公使ウィダー・バッゲを仲介者とするイギリスと日独の和平工作の折衝が成功している。

 英独間で水面下の和平工作折衝が行われた事で西部戦線が一時的に停戦状態となり、この間にドイツは西部戦線から東部戦線への戦力の移動と集中を行い包囲されていたケーニヒスベルクを開放。再度戦線を構築し直しソビエト連邦が行ったヴィスワ・オーデル攻勢を大幅に遅滞させ5月の英仏米連合軍との休戦協定調印(*1)とその後のベルリン進駐(*2)に繋げた。

 日本でもバチカンのバニョッツィ司教と米国戦略情報局を通じ和平交渉の折衝が行われた。米国戦略情報局ドノバン長官とアレン・ダレスを中心とした本格的な交渉は6月上旬からスイスで進められた。国体護持の確認、朝鮮・台湾や南洋諸島・南樺太の扱い等について、また自衛戦闘を除く停戦から休戦協定文書調印までの日程を交渉し、交渉が進展し始めた6月下旬以降は夜間空襲の回数が急激に減少した。日本軍も勅命により南方戦線から徐々に撤兵を開始した。撤退した部隊は順次、対中国の前線や満州・朝鮮や樺太・千島の国境部隊として再編成・配属されている。

 米英からの援助打ち切りや対独講和に至る経緯、南樺太の返還は有るものの千島の領有は認められず日本への無条件降伏勧告も方針転換された事等に不満を表明したソビエト連邦は、戦争の早期終結を目的としたルーズベルト前大統領の対日戦参戦要求を利用し、参戦を9月以降に遅らせることを表明し英米へ圧力をかけようとしたが、7月下旬に交渉の進捗状況を掴み急遽参戦準備を早め8月中旬に対日宣戦布告を行った。

 ヤルタ会談の内容暴露事件後、危機感を抱きソビエト連邦の9月以降の参戦表明後も速やかに引き揚げ準備を行っていた満州や朝鮮半島にいた民間人や開拓団は関東軍の増員もあり大多数は無事に引揚を終えているが、ソビエト連邦の参戦は表明通り9月と考え撤退準備を行っていた開拓団や民間人は8月中旬の対日宣戦布告により撤退が間に合わず葛根廟事件などに代表される悲惨な事件が生じている。

 南樺太においても樺太庁が9月以降の参戦を見越して撤退計画を立てていたが、撤退準備中の8月中旬にソビエト連邦軍が宣戦布告。布告の10分後には侵攻が開始された為、国境付近の民間人に犠牲者が出ている。ソビエト連邦侵攻の連絡を受け、偶々千島に向けて宗谷海峡を航行中だった第五十三駆逐隊が樺太に向かい、ソビエト連邦海軍との海戦を行い一定の打撃を与え侵攻を遅らせるとともに、陸上では転用直前で待機命令を受けて樺太に留まっていた第77師団と第88師団が奮戦し、両師団壊滅と引き換えに大多数の民間人は大泊港に停泊していた小笠原丸、第二号新興丸、泰東丸や能登呂丸、東春丸等に分乗し北海道への撤退に成功している。その際大泊からの船団が国籍不明の潜水艦から雷撃を受けたが護衛していた柳、橘のうち橘が船団と潜水艦の間に割り込み被雷し大破するも柳が爆雷により潜水艦を撃沈している。

 8月下旬に千島列島の占守島に侵攻したソビエト連邦上陸部隊は、ソビエト連邦の参戦が遅れてた為アリューシャン列島から千島列島に侵攻していた米英軍を視界3m未満の濃霧で日本の守備隊と誤認し武力衝突を起こした。米英軍と判明した後も停戦命令がない事を理由に米英軍主力を避ける形で占守島以南の千島各島で侵攻を続行し占守島の他、占守郡に属している各島と新知郡に属している雷公計島を占領している。占領していた占守島から自軍が退去させられた事でソビエト連邦の目的が講和締結前に千島列島を実効支配し自国領への組込にある事を察した米英はソビエト連邦に抗議するもソビエト連邦軍が停戦に応じない為に止むを得ず、降伏して武装解除中であった第一飛行師団を極秘に米英軍指揮下で再武装させ応戦させた。その結果ソビエト連邦上陸部隊は上陸用舟艇を悉く失い松輪島以南の占領を行うことなく退却に追い込まれている。

 8月31日正午に玉音放送により、大陸戦線・北方戦線を含めた全戦線で連合軍との休戦協定締結を発表。放送から翌々日の9月2日には東京湾で調印が行われた。玉音放送は協定締結の発表であったこともあり、日本でも世界でも、第二次大戦の終結は9月2日と認識されている。

 調印式から2日後には朝鮮半島全土に米英軍が展開し日本の降伏後に独立を叫び暴動を起こしていた暴徒を鎮圧。現地の混乱は最小限に収まった。

 1950年(昭和25年)9月2日に締結されたサンフランシスコ条約を持って正式に南洋諸島・南樺太は日本領ではなくなった。

 サンフランシスコ条約の主な項目は次の通り。

①日本と連合国との戦争状態の終了

②朝鮮の独立を承認し、半島と日本の合邦を如何なる形でも永久に行わない。済洲島・巨文島及び欝陵島を含む朝鮮に対する全ての権利、権原及び請求権の放棄。なおすべての条約承認国は1905年に編入した竹島が日本の施政権が及ぶ地であることを承認する。

③澎湖諸島・南樺太・南洋諸島・スプラトリー諸島・パラセル諸島・南極(大和雪原など)の権利、権原及び請求権の放棄

④戦前の国際協定に基づく権利等の放棄

⑤連合国は全ての賠償請求権、戦争の遂行中に日本国及びその国民がとった行動から生じた連合国及びその国民の他の請求権、占領の直接軍事費に関する連合国の請求権を放棄する。賠償は役務賠償のみとし、賠償額は個別交渉とする。

⑥日本国が個別的自衛権または集団的自衛権を有し、集団的安全保障取り決めを自発的に締結できることの承認

⑦休戦協定後に締結されている国際協定の受諾

 

 

 

2.日本領

 カイロ宣言後に日本陸軍が大陸打通作戦を成功させ、また1945年6月以降大損害を被りながらも四川作戦の一部成功や延安を陥落寸前にさせるなど一時期は重慶政権が危うくなる事態も生じた為中華民国は連合国としての影響力を極端に低下させた。その為にヤルタ会談破局後に改めて調整を行なった第二次マルタ会談で、カイロ会談の合意事項を改め、日露戦争前の国土に戻る事を基本条件としてポーツマス条約以前に国境が確定された領土は基本的に日本領とする事が決定された。

 カイロ会談合意事項と緩和後の違いは次の通りである。

①【日本は暴力と貪欲で奪取した全ての領土から排除され、朝鮮は適当な時に自由と独立を得る】とされた合意事項は、【嘗て独立国であったが国乱内変に因て大日本帝国と合邦し大日本帝国の一邦を形成する朝鮮は、全ての連合国の名の下に適当な時に再び自由と独立を得る事を認める。大日本帝国が朝鮮に保有する全ての国有資産はこれを朝鮮に譲渡しこれを以て総ての清算とし、以後官民を問わず如何なる責も負わない】とされた。また「韓国併合ニ関スル条約」の有効性についても検討されたが、【締結当時の国際法に従えば合法であった】と連合国最高司令部が連合国の総意として発表している。

②【日本が中国人から盗んだ、満州、台湾、澎湖を含む全ての領土は中華民国に返還される】とされた合意事項は【台湾・澎湖については日本が清との戦争で得た結果であり、その根拠となった馬関条約は英米露の調停下で締結された条約である】とされ、英米両国のみならずソビエト連邦も【台湾・澎湖については一方的に日本が中国人から盗んだとは認められない】と表明した。

 なお【日本は1914年の第一次世界大戦開戦以来太平洋で奪取、占領した全ての島嶼を没収される】とされていた合意事項はそのまま承認されている。その結果南洋諸島は国際連合の太平洋諸島信託統治領とされた。 

 

 

3.明治以降の海外領土・保護国について

3.1 樺太・千島

 南樺太は第二次マルタ会談の取り決め通りソビエト連邦に邦人資産も含め引渡された。千島列島の扱いはソビエト連邦が最後までヤルタ協定での履行を求めていたが完全な占領を行えなかった事もあり千島樺太交換条約の有効性を渋々ながら承認し千島列島は日本領と認めた。占領下にあった占守島以下占守郡に属する島と新知郡に属する雷公計島の扱いについてはサンフランシスコ条約締結後に日本が買収する事で決着した。

 

3.2 台湾・澎湖

 カイロ会談合意事項は中華民国が影響力を極端に落とした事で大幅に変更された。

 この事項の発端となった馬関条約は英米露が調停に携わった日清戦争の講和条約であった事から英米とロシア帝国の継承国家であるソビエト連邦により条約の効力を再度検討するとされ、その結果講和条約としての有効性と継続を認められ、台湾は日本領となっている。

 日本が馬関条約で獲得した領土のうち澎湖諸島は日本の大陸打通作戦成功で影響力を落とした中華民国が戦勝国としての面子を保つ為、米英に対ソビエト連邦・中国共産党封込の拠点として海南島を引き渡す事と交換に澎湖諸島の返還を求めた秘密交渉を経た結果、対日戦時賠償の全面放棄と引き換えに中華民国に引渡された。

 なお日本の大陸打通作戦により既に戦力の大半を失っていた国民党政権が終戦直後に再発した国共内戦で崩壊し米英の本格的な駐留前の1946年8月に大陸本土から海南島と澎湖諸島近辺に撤退した結果、海南島引渡の協定は反故にされ、米英の反発を招き新たな砦として日本の再建が急がれ日本に対し大規模な援助が行われた。1946年12月に台南州沿岸に連合軍駐屯地が中華民国との不要な軋轢を避ける為に中華民国澎湖島駐留艦隊と台南州内陸部を遮る形で設置され、サンフランシスコ条約と同時に締結された日米英相互防衛協定を経て1988年に澎湖諸島が日米華協定で日本の官民企業連合に払い下げられるまで米英台南基地として続いた。日米華協定締結により、米英台南基地は役割を終えたとされ、日本軍に引き渡されているが、引き続き日米英相互防衛協定により米英軍が規模を縮小しながら1998年まで駐留していた。澎湖諸島買収により台湾において五州三庁が復活したが、1995年に廃庁置州により台東庁・花蓮港庁・澎湖庁が庁から州になり八州に改編されている。

 

3.3 朝鮮半島

 日本と連合国の講和条約締結後、朝鮮では英米軍が全土に展開したが暴動が相次ぎ無政府状態であった為1945年12月に一旦国際連合の信託統治に置かれた。その後国連監視下で時期を見て朝鮮全土を対象とする総選挙を実施する事となり、1949年10月に総選挙を実施し1949年12月に独立政府が樹立した。

 

3.4 南洋諸島

 日本の委任統治領であった旧委任統治領・南洋諸島は国際連合によりアメリカ合衆国を施政権者とする信託統治に付される事になった。当初は太平洋諸島信託統治領全域をひとつの連邦国家として独立させる計画であった。だが米国がビキニ環礁においてマンハッタン計画で製造された原爆を用いた史上初の投下実験を行い、その後、初めての水素爆弾実験場にも選ばれるなど、ビキニ周辺は幾度となく核兵器の実験場となった。実験に際して多くの住民がほかの島々へ強制移住させられ、元からいた住民と新たに移住させられて来た住民の軋轢も増えた。自分達の島を実験場にする住民の間に米国に対する不満も高まっていたが、被害を受けていない地域と被害を受けた地域の地域間対立も見え始めた為一つの連邦国家としての独立は難しいものとされた。1970年代後半より紆余曲折を経ながらも一つの連邦国家としての独立に向けた準備が進められていたが、1993年の深海棲艦出現により太平洋諸島信託統治領全域は深海棲艦の勢力下におかれ独立の目途は立っていない。

 

3.5 満州

 参戦時期の読み違いにより日本から領土をほとんど得られなかったソビエト連邦は、中華民国の戦争貢献の少なさを理由として占領した満州についての返還を拒否し、抗議した中華民国に当てつけるように崩壊した満州国の存在をさかのぼって正式に承認し、満州国の占領は国土を失わない為に満州国皇帝溥儀の依頼で保障占領しているだけであると表明した。

 この直前にソビエト連邦は溥儀の身柄を確保しハバロフスクに連行している。中華民国はこれに抗議し英米に提訴したが当時ソビエト連邦との関係が開戦直前まで悪化していた米英が関係の改善を模索していた為、ソビエト連邦が馬関条約の有効性を承認する事と引き換えにソビエト連邦の保障占領を追認し旧満州国はソビエト連邦の保障占領下にあるとされた。後に満州国は1951年に満州族主体の満州共和国として再独立し、直後にソビエト連邦に加盟している。

 

 

4.周辺諸国(極東)について

4.1 中華民国

 国共内戦に敗れた中華民国は海南島への南遷を契機に海軍を再編し西沙諸島、東沙諸島、太平島、澎湖諸島、馬祖列島、金門群島を勢力圏にしたが、東沙諸島と並ぶ海軍の軍事拠点であった澎湖諸島は1988年に日米華間の協議で12桁後半から13桁前半の間の金額(円)で日本の官民企業連合に、日本への帰化を望まない現地の住民と資産・設備を海南島に移動させた上で正式に全島売却し、日本政府が翌年に官民企業連合から買取時の価格で買い取り国有地として日本領に編入した。同時に1979年の米中国交樹立による砲撃停止以来、停戦はしているものの砲撃が再開されると自力での守備が困難になった馬祖列島と金門群島を米国に企業進出拠点として全島貸与し、中華人民共和国も媽祖・金門に軍事拠点を設けない、軍艦を寄港させない、島外から生活物資を購入する際は中華人民共和国から優先的に購入する等条件付きながらこれを認めた。

 澎湖諸島の売却で日本から得た資金をもとに中華民国は軍備増強と産業投資を行い深海棲艦出現後の混乱期には湛江市(旧広州湾租借地)まで勢力を拡大している。

 深海棲艦の侵攻により太平島を失陥し、米国が租借地であった馬祖列島や金門群島を放棄しているが、2005年頃には海南島を拠点とし右江から鬱江を経て西江、珠江に至る河川南岸、西沙諸島、東沙諸島を勢力圏にしている。

 中華民国の立法上の首都は未だ南京であるが、暫定首都が瓊海市に置かれていた。雷州半島と旧広西省、広東省の大部分を勢力下に収めたことで暫定首都を湛江市に移す計画が上がっている。

 

4.2 中華人民共和国

 内蒙古は中華民国の影響力が極めて衰えていた為、満州国崩壊時にモンゴル人民共和国とソビエト連邦が侵攻し占領した際に汎モンゴル主義もありそのまま併合された。統一後はモンゴル人優先政策により内蒙古に居住していた漢族の多くが内蒙古より退去し、周辺の省で難民化している。中華民国時代に比べ領土が減少した為、中ソのイデオロギーを始め満州国・東トルキスタン共和国の扱いや技術無断模倣等に依る相互非難(*3)・一部地域での武力衝突が生じた。また毛沢東の権威を高める為の文化大革命が発生し長期化した為、宗教的な施設・文化財が数多く破壊されたり郭沫若・周光召・華羅庚・彭桓武・趙九章・老舎・呉晗を始めとする知識人階級、彭徳懐・華国鋒・賀竜・劉少奇・姚依林・鄧小平・胡耀邦・趙紫陽・習仲勲・李鵬と言った党重鎮や次世代の党幹部と目された若手が次々と『病死』するなど人的な被害も大きくなり国内の大混乱と経済の深刻な停滞が齎された。

 また、海南島に親米の国民党政権が存在する為、海南島を後方兵站拠点とした米国とホーチミン政権との間でベトナム戦争が長期化し、最終的には米国が撤退したものの中華人民共和国の北ベトナムへの援助負担が大きかった為、文化大革命の影響もあり経済への影響は深刻な物があった。その後の中越戦争や中越国境紛争において中華人民共和国側が大敗を喫し国威発揚に失敗する一方、ベトナムでは厭戦機運が醸成されたものの対中強硬姿勢は変わらず、1990年代も中越国境は緊張状態が続いている。

 清代より北の首都を意味する北京と名づけられていた都市は、南京を首都と定めた中華民国政府により北平とされたが、中華人民共和国成立により新中国の首都とされ再び北京と改称された。中ソが対立した為、ソビエト連邦による首都占領を恐れた当時の政権が1965年に首都を国境から遠い開封に移転し、この都市は政治の中心地から外れることになった。この都市が再び脚光を浴びたのは1989年6月4日に故宮天安門前に民主化を求めて集結していたデモ隊に対し、軍隊が武力行使し多数の死傷者を出した弾圧事件である。

 なお、深海棲艦出現後は開封から許昌への再遷都が計画されている。中華民国には艦娘が顕現しているが、中華人民共和国には顕現していない。

 

4.3 チベット

 チベットには1947年1月1日に「チベットの平和的な解放」を名目に人民解放軍が侵攻を開始したがチベットの中央政府であるガンデンポタンの要請を受けた国際連合が国連軍を組織し介入した為、7月にはカムのダルツェドからも撤退することになり、戦線は中華民国時代の西康省から青海省と四川省から甘粛省の境付近で膠着状態となった。

 1951年5月23日にチベット・国連軍と中華人民共和国の間で十七か条に渡る協定が締結され、チベットは独立国家(*4)として国際連合に加盟している。

 

4.4 朝鮮

 朝鮮の初代大統領は当初、呂運亨が就任する予定であったが就任式前夜に急死した為、次点の李承晩が繰り上げ就任した。李承晩政権は国号を朝鮮共和国と定めると共に政権発足直後に竹島を賠償として不法占拠し、周辺国との間の水域区分と資源と主権の保護のための海洋境界線(通称:李承晩ライン)を一方的に設定した。李承晩は1957年に革命により殺害され、革命を主導した金日成による体制が成立した。金日成体制下の朝鮮共和国は国号を朝鮮民主主義人民共和国と改め、各国と国交樹立交渉を行ったが西側諸国とは最短で国交を樹立した国であっても1985年まで国交断絶状態にあった。日本とは1989年に日朝国交正常化交渉を開始し、【日本国と朝鮮民主主義人民共和国との間の基本関係に関する条約】が1993年に締結寸前になったが深海棲艦の出現等で締結には至らなかった。

 朝鮮民主主義人民共和国では戦前からある大日本帝国の遺産を使い、深海棲艦が出現するまでは鉱工業の北部と農業の南部とそれなりに発展を遂げていた。1988年の五輪招致を目指していたが社会的基盤の不足により実現していない。

 なお、朝鮮半島に艦娘は顕現しない。これは第二次大戦後に日本から独立している為である。

 

4.5 東トルキスタンと満州

 中華民国新疆省と満州国は中華人民共和国に引き渡されずソビエト連邦を構成する共和国(*5)として存在している。

 ソビエト連邦が満州国承認とその保障占領を行った後、中華民国との間に満州国の保障占領とモンゴルの独立を認める代わりにソ連は物資を国民党のみに援助する事と新疆省の分離運動や中国共産党を積極的には支持しないとした協定が締結された。但し後の国共内戦時に国民投票による独立運動までは抑圧できないとして1946年1月に生じた新疆での投票運動を黙認し、投票の結果独立賛成派が多数となると民意が明らかになったとして1946年2月、新疆省の中華民国からの独立と東トルキスタン共和国成立を承認。同年5月の東トルキスタン共和国のソビエト連邦加入も中華民国・中華人民共和国の侵攻を回避する為として承認している。

 

4.6 台湾近辺と大陸租借地

 馬祖列島と金門群島は1988年以降多くの米国籍企業による中国進出の拠点となった。その為、深海棲艦が出現し航路が遮断され始めた1994年1月には中華人民共和国承認の下で米国太平洋艦隊が分派され駐留している。しかし1995年から始まった深海棲艦の大攻勢により1998年に全島放棄が決定され、進出していた企業や駐留艦隊は日米安保条約に基づき日本の護衛で設備資産ごと千島・アリューシャン・アラスカ経由で帰国している。

 広州湾租借地は中華民国が連合国としての影響力を極端に落とした為、国共内戦を経ても長らく返還されなかった。香港や澳門も同様であったが、1990年の中英連合声明により1999年の香港返還が発表された為、時を同じくしてフランスとポルトガルによる広州湾租借地と澳門行政権の1999年返還が公表された。

 1993年の深海棲艦出現により治安の悪化と本国との連絡が取り難くなったことで1994年2月に早期返還交渉が行われたが、返還は大量の貴金属と引換であった為中華人民共和国との交渉が難航し、1995年から始まった深海棲艦による大攻勢の混乱期にフランス・英国・ポルトガルが1995年12月に広州湾租借地・香港・澳門の放棄を決定し住民保護の為に三国の依頼を受けた日本が一時的に占領した。この時中華人民共和国が強い非難を行ったが住民と資産の保護、設備を確保した後に速やかに日本は撤退し、保護された住民で帰国を希望する者は資産(*6)と共にロシア経由で本国に帰還した。その後香港・澳門・広州湾は中華人民共和国に併合され、広州湾租借地は湛江市と改名された。湛江市は中華民国が大陸本土に侵攻した際に占領し勢力下においている。馬祖列島と金門群島も中華人民共和国が占領したが、程なく深海棲艦の襲撃により撤退に追い込まれ現在は無人となっている。

 

【挿絵表示】

 

 

【挿絵表示】

 

 

4.7 ソビエト社会主義共和国連邦

 1991年12月26日にソビエト連邦が崩壊し独立国家共同体(CIS)が成立したが、1993年から深海棲艦や艦娘の顕現などで社会的に大きな変動が生じた結果、紆余曲折を経て1998年に共産党が政権を獲得しソビエト連邦が再設立されている。

 

 

5.政治

 休戦協定締結後、連合国との講和条約を締結するにあたり南樺太・船山群島・澎湖諸島・新南群島・西沙群島・南洋諸島・朝鮮半島の放棄、軍の解体と再軍備の恒久的禁止、指導的財閥の解体、大日本帝国憲法と関係諸法の改定の必要が生じた。

 憲法改定に当たり、当初は天皇の地位を神聖なものから至尊なものにする等大日本帝国憲法の軽微な修正で良いと考えられていたが、各国との調整で大幅な改定を行う必要があり、もはや改定とは言えず、新たな憲法を制定すると考えた方が良いことが判明した。実質的に新憲法を制定するに当たり、当初は援助と引き換えに進駐を認めた連合国軍総司令部参謀第2部が草案骨子の作成を行い、それを基に日本政府が憲法を作成する予定であったが、大規模な人事異動や外国人犯罪に対応するため、民政局共々余裕がなく、半年以内に限り、国体を外見的立憲君主制から議会制立憲君主制に改める事と政治的主権が国民にある事、戦争の恒久的放棄を明記する事を条件に憲法草案の作成を日本人の自主性に委ね、不十分な草案の場合は改めて参謀第2部の指導下で作成するという事となった。

 政府は、憲法を新たに制定するに当たり、範とするべき国家を選択する必要があった。赤色革命を招くような人民政府の形成や個人主義が強すぎる民主主義を押さえると同時に、その制定直後から既に「無為徒食の輩」との批判があった華族制度を倫理の師表としての華族制度へ転換し、明治維新の際、勅令により還俗した奈良華族のうち爵位を有していた20家と神職・僧職から華族に奉じられ爵位を有していた19家、地下官人之棟梁と称された押小路家・壬生家の堂上格と堂上家に華族を限定する方針や戦中に銃後を支えた女性への配慮もあり、諸外国、取分け停戦に際し恩恵を受けた北欧諸国や敵対したとはいえ元は同盟国であり現在も帝国、王国である英国やオランダにその範を求めた。

 また、かつて大日本帝国憲法を巡り、民間から発表されていた憲法草案にも再び脚光が当てられ、新たな憲法の条文に反映されたものもあった。

 天皇のすべての国務上の行為は全て大臣が責任を負うとされ、権限も限定的なものとなった。

 皇位は皇室典範の定めに従って、皇統の男系の男性子孫が継承することとなった。また、天皇を含む皇族の結婚相手は、同族又は勅旨により特に認許された華族に限ると条文も加筆され、男女同権の条項と矛盾するのではという意見があり皇配の地位など国会で激しい議論が生じた為、英国など王室を戴く国家に意見を求めた。各国から皇配の権限などについての回答と同時に女系継承は王朝の交代を意味する事を承知かと問い合わせもあり、その結果、満場一致で皇統に属する男系の子孫がこれを継承すると明記することが決定された。

 また、皇族の結婚についても同族又は勅旨により特に認許された華族に限るのは法の前の平等に反するのではないかという意見が一部に生じたが、皇族、華族以外が入内し、様々な伝統や格式のなかで、祭祀や国事行為にすべて対応できるのかという議論と皇室の伝統と格式の維持の為にはやむを得ないとされた。

 日本国憲法は昭和22年の5月3日に施行された。

  

5.2 政治

 国政選挙への参政権は一定の年齢に達した日本国民にあること並びに地方選挙への参政権は日本国籍を有する当該地域の住民にある事がそれぞれ明記された。

 投票には義務投票制を採用しており罰則適用は厳格であるが秘密投票制の為、世情によっては主として白票による無効票もかなり存在する。無効投票率による選挙無効の規定が選挙各法で規定されている為、国政選挙においても複数の選挙区で度々複数回やり直し選挙が行われた。

 大日本帝国憲法の改定により貴族院は参議院に名称が変更された。参議院議員の被選挙権は制限があるが、選挙権は参政権を有する国民にもある。投票は参議院が制限連記投票、衆議院が優先順位付連記投票で行われている。

 喫煙や飲酒については従来あった未成年者喫煙禁止法と未成年者飲酒禁止法が二十歳未満ノ者ノ喫煙並ビニ飲酒ノ禁止ニ関スル法律に改定され従来通り20歳未満は禁止されている。

 

5.3 教育

 教育制度も改められたが戦前からの師範学校や各種学校等の分岐型学校体系や初等教育六年・中等教育五年の教育期間は変更されていない。

 小野寺大佐を長とする『東』部門やドイツ国家保安本部第VI局の活躍とポーランド亡命政府やフィンランド政府から齎された情報が講和の足掛かりとなった事で改めて情報の大切さに気付いた政府により、中野学校・特高警察出身者の一部を講師として各地で情報戦への教育(*7)の実施、外国人による土地取得制限や政府が指定する企業の株取得制限を定めた法令の制定、機密保持法の制定等が昭和20年代後半には行われている。

  

5.4 農地改革

 農地改革もGHQの支持の下、農林官僚が主体となり実施された。

 農業構造の民主化を図り農業生産力の増大と並んで農業の経済力拡大、資本蓄積によって海外市場を失った工業に対する国内市場の拡大、経済の再建を目標とし、水田・畑作地・林野を含めた不在地主の全小作地・賃地の他、在村地主であっても北海道では5町歩・都府県では1町歩を超える全小作地、また小作地以外に所有する土地の合計が北海道で30町歩(所有地に林野を含む場合は林野1000町分は含まれない)・都府県で20町歩(所有地に林野を含む場合は林野500町分は含まれない)を超える場合(*8)に超えた分の所有している全ての小作地等(貸地含む)が政府に強制的に安値で買い上げられ実際に耕作していた小作人に売り渡され、買い手がなかった小作地等は国有地となった。国有地となった小作地は元の地主による買戻しも可能となった。

 小作料は金納制が原則とされ小作料の物納制(*9)は禁止された。なお農地・林野の所有権の移動には公選で定められた市区町村農業委員会の承認(同一都道府県内で複数の自治体に農地が跨る場合は都道府県農業委員会、都道府県を跨ぐ場合は農林水産省農村振興局の承認)が必要とされる。

 また、小作地の引き渡しに依る新たな地主層の出現を防止し、農業生産力の増大と並んで農業の経済力拡大を確実なものとするために農地の宅地等への転用売却制限なども定められた。

 

5.5 外国人の地位

 戦前・戦中に本土にいた在日外国人、特に旧外地出身者は戦後人数が大幅に減っている。これは日本の休戦協定調印を無条件降伏と勘違いした輩の起こした暴動による混乱で治安悪化が生じ進駐してきた連合軍将兵、特に非番時に外出した東洋系WACに多数の被害があり(*10)、激怒したホイットニー民政局長を始めとするGHQ民政局が極めて珍しい事に参謀第2部と協調しながら指揮を執り、正規の手続きを経ずに日本に渡航した者は出身地への即時送還処分とし、正規の手続きを経ても外国人居留者名簿に記載がなく日本への帰化を希望しない者は夫々の祖国に一定の財産を持たせた上で強制的に帰還させた為である。旧枢軸国出身者や旧連合国出身者で、戦前に外事警察が作成していた外国人居留者名簿に記載がある者はGHQ民政局の認可により引き続き居留が承認されている。

 更に戸籍法の改定がGHQ主導で行われる過程で旧戸籍簿から新戸籍簿への移行時に皇族・華族以外の身分事項記載の取締や二重戸籍などの防止の為徹底した調査が行われたが、その過程で空襲などにより戸籍簿が消失したことを利用し戸籍の偽造や背乗り行為等を行って帰還しなかった在日外国人の存在が明らかとなり、これらを徹底的に取り締まった上で国外退去処分又は法に基づいた正規の手続きで日本国籍を取得・帰化させた上での法的処罰等が行われている。住民基本台帳法の外国人住民に係る事項の区分では中長期在留者・一時庇護許可者又は仮滞在許可者・出生による経過滞在者又は国籍喪失による経過滞在者となる。学校教育法において国際学校は教育施設の種類およびその教育施設に該当するが民族学校は該当しない。

 尚、指紋押捺制度は国籍を問わず全ての住民が対象であり、正当な理由なく登録を拒む者に対しては罰則規定がある。

 

5.6 休日と祝祭日

 国民の休日は日曜日の他に休日ニ関スル件(昭和2年勅令第25号)を改訂した、国民の祝日ならびに祭日に関する法律(昭和23年法律第178号 通称:祝日法)に基づく祝祭日がある。祝祭日は時代を経るごとに追加され、2010年の祝祭日は25日(*11)とされている。また1990年に国民の祝日ならびに祭日に関する法律が改正され土曜日も休日とされたことで完全週休二日制が実施された。改正された国民の祝日ならびに祭日に関する法律では休日は祝祭日の他に土曜日・日曜日・振替休日・法律で定められた日とされている。

 この1990年の改正時に大晦日と正月三ヶ日が完全休業日となった。元々官公庁は12月29日から1月3日までを休日として定めていたが、警察・消防・救急・医療・国防・国営放送等最低限の公共機関と法で指定された公共性を担う法人以外の法人組織についてもGS(ガソリンスタンド)CVS(コンビニエンスストア)も含めた法人(露天商や個人商店等の個人事業主や神社仏閣は対象外)が12月31日から1月3日まで完全休業日の対象とされた。違反法人は1月の総売上が罰金として没収され、店舗名だけでなく会社名も公表される。また、公共機関等の勤務でこの期間に出勤した者に対しては松の内(1月15日迄)に勤務者が望む日程で代休を(複数日出勤した場合は出勤日数分を平日に連続させて)取得させる義務がある。

 地域によっては慣習で事実上の祝日(該当する地域の法人組織においても多くの場合、社内規定等で休業日とされている)とされている日もある。この他に労基法で有給休暇制度が定められているが、企業が取得させる義務のある有給休暇が個人に付与された有給休暇の半数と有り、違反企業に対する罰則は極めて厳しいものがある。

 なお、深海棲艦が出現した1993年以降CVSやGSの24時間営業は行われていない。

 

5.7 婚姻関係

 休戦協定を締結した日本が道徳的に劣っていたから休戦条約を締結した訳ではないと国内外に宣伝する為に憲法に定め、当時では革命的とされたり政府が自棄を起こしたと評された男女同権(()()()()()()()())の考えは昭和22年の刑法改定時の姦通罪相互適用や昭和25年に制定された罰則規定付雇用機会均等法にも反映され、欧米諸国の女性運動家達にも一定の影響を与えた。当時の日本政府は、男女同権について板額御前や尼将軍の事例を引き合いにしている。

 婚姻制度は深海棲艦との最初期の戦いと艦娘の顕現により17~35才の成人男女比率が1:6とあまりにも大きくなりすぎ、一夫一妻制の厳守は却って男女間の不平等を助長するとされた為に比率が1:5に近付くまでの間に限り成人男性1人に対し成人女性(現役艦娘には成人規定はない)5人までの婚姻を可とし、1:1に近付くにつれて次第に妻の数を減らしていく変動一夫多妻制度が適用された。但し姦通罪の廃止は男女共に反対意見が圧倒的多数であった為、相互適用が維持されている。

 2010年代になり深海棲艦戦役が膠着状態になった為、合計特殊出生率は3.82と戦前の水準になりつつあるが、17~35才の男女比は1:5.98とあまり変化がない。

 婚姻制度を支える為一定の収入に満たない人が結婚するときに平均年収の半年分の資金を低利息長期返済で貸し付ける結婚資金貸付法が施行されている。結婚貸付金は、現金ではなく日用品の購入や家屋の建て替え・医療機関受診など、歓楽街や性風俗施設・社交飲食施設以外で使える非換金証券として支払われている。この貸付金は一夫多妻制度下の夫婦が子供を1人産むごとに返済金の4分の1が免除される為、4人以上産んだ夫婦は全額返済免除になるが、不妊に悩む夫婦からの強い反発も生じている。

 また、貸付金の返済前に離婚となった場合に自己破産が認められない一括返済義務がある事も一定の反発を招いている。

  

5.8 軍備

 第一次大戦以降日本が引き起こした戦争は軍部の暴走が原因とされたことから、講和条約締結条件の一つとして軍は完全に武装解除され連合国の命令でいかなる種類の再軍備計画も禁止し、軍備も恒久放棄する予定であった。しかし大戦終結前後からソ連と英米の関係が急速に冷却化し大陸で中国共産党による中華人民共和国が早期に成立した為、英米は日本の再軍備を真剣に検討し始め、憲法にも反映する様に圧力をかけ始めた。その結果、新憲法から軍備の放棄事項は削除され文民統制と国際紛争を解決する方法としての戦争放棄を明記することで国防軍としての再軍備が認められた。

 軍部大臣はその特性から不名誉除隊者を除く佐官以上の退役武官が望ましいとされているが、国務大臣たる軍部大臣の席が空白の場合はその罷免権を持つ総理大臣が兼任できるように憲法に定められている。

 

 軍備の恒久放棄に纏わる話として連合国総司令部(GHQ)が全国に古火縄銃も含めた銃器類や脇差、鎗、薙刀などを含む刀剣類の提出を命じた事件がある。日本の武装解除の一環として全国に刀剣などの武器類の提出を命じたものであるが、当初の予定ではそれらの大部分が海洋投棄などの廃棄処分となる予定であった。だが処分直前に明治の帯刀禁止令の由来、日本刀を心の鏡とする哲学、抜かざるの剣の道、日本刀の平和的美術価値観等の説明をGHQに毎日訴え続けた関係者の努力により接収品は全て学術調査を行った後に廃棄すると改められた。

 その後も関係者が粘り強く交渉を行い、1945年12月に銃器刀剣類の接収終了と持ち出しの禁止、許可を受けた狩猟用火器及び狩猟用ナイフの所有と歴史的・美術的価値ある銃器刀剣類の博物館での保管が許可されている。その間、連合軍兵士により許可なく日本国外へ持ち去られた日本刀の数は数万に及び、その中には本庄政宗や国俊の様に国宝や重要美術品も相当数含まれていた。

 国防軍としての再軍備が認められると、軍備の恒久放棄の一環として接収された銃器刀剣類の返還活動が始まり、海外に流出した本庄正宗や豊後正宗、備前国宗や長船兼光、相州秋広といった国宝や重要美術品であった銃器刀剣類が返還された。その後国内で保管されていた銃器・刀剣類が学術調査を終えたものから元の所有者への返還されたが、返還に当たっての条件は厳しく所有者から地元自治体へ寄託の申し出が相次いだ。美術品と認められ所有者不明のまま国の博物館で保管されていた銃器刀剣類も多数あり、寄託の申し出を受け内務・文部の両省は国宝や重要美術品であった銃器刀剣類は国立博物館に寄託、「刀匠の出身地や所縁の地でなら、十分展示に値する」と評価されたが所有者不明の銃器刀剣類は所有者不明のまま出身地或いは所縁のある地の博物館・美術館に寄託している。

 各地の博物館・美術館での公開中に所有者が判明した銃器刀剣類は所有者に返還して自己で保管するか寄託を継続するかを選択させたが、ほとんどの場合は継続して寄託されている。また、講和後20年を経過し尚所有者不明の銃器刀剣類は、国へ所有権を移し、広く公開・活用を図るため、転売せず一般公開することを条件に全国の公立博物館に無償譲与された。

 

 深海棲艦出現以前、満17歳以上の男子には兵役義務があった。国防軍発足当初は志願兵制の導入を予定していたが、第二次大戦の後遺症で国民の反軍反戦感情は根強く志願制に頼っていては人員を確保できない情勢であった為、憲法に兵役義務を記載した。徴兵制の施行にあたっては、各国の流れを踏まえて書類審査対象時に良心的兵役拒否を申請することが認められ、良心的兵役拒否の代替義務として病院や社会福祉施設で兵役義務と同じ期間だけ社会貢献することになっていた。徴兵対象者のうち書類審査等を経て実際に兵役に就くのは6分の1程度であり、最も気力と能力のある者が兵役に就く事となっていた。

 1990年代前半に廃止予定だった徴兵制度は深海棲艦出現により廃止が無期延期となり満17歳以上の女性も徴兵の対象とされた。男女同権と艦娘との協同を考慮し訓練中は訓練内容だけでなく部屋も男女混合であるが特に大きな問題は生じていない。女性が徴兵対象になった当初は【危険な戦闘地域へ女性を派遣することは云々】という意見もあったが、男女同権の考えから2000年代になると一顧だにされていない。

 深海棲艦戦役下での徴兵制は前線に立つ提督資質保持者の発見・密入国者や犯罪者を取り締まる沿岸警備・艦娘がいない近隣諸国からの物資強奪を防ぐ為の護衛や領域侵犯行為などに対処する為にされている。

 対深海棲艦戦を目的とした提督には軍学校で艦娘指揮幕僚課程を修了した者が就任する。徴兵制で発見された提督資質保持者も原則軍学校で艦娘指揮幕僚課程を修了してからの就任となる。徴兵・志願(軍学校卒業者)で兵役に就いている間、下士官までは衣食住・尉官以上は食住が国家負担(尉官以上の軍服は最初の支給以外は自費購入)となり食事内容や日用雑貨の品質・酒保での購入価格等は民間水準より多少良好なものとなっている。深海棲艦戦役下での徴兵制においても良心的兵役拒否が認められているが代替義務は生じない。なお家族・四親等以内の親族に良心的兵役拒否者がいる軍人家庭では嗜好品の酒保購入や保養施設の利用に一部制限がある場合がある。但し酒保や保養施設の利用以外に身内に良心的兵役拒否者がいる事を理由とした不当な差別は禁じられている。これは昇進速度等で差別を行っている余裕がない情勢も影響している。

 

 

6.日本の都市

 太平洋戦争末期の大空襲や艦砲射撃により大都市が廃墟となったため、休戦協定調印後に連合国軍の進駐受入と引き換えに物資と復興資金を獲得した政府は戦災復興院を設け、戦災復興都市計画を政府主導で実行した。この計画は降伏・講和論争(*12)や資金難での計画見直し(*13)、計画見直し直後に生じた国民党の海南島・澎湖諸島への撤退により対ソビエト連邦・中国共産党封込の為に国民党に代わる新たな砦として日本再建を図る参謀第2部の各政策で大陸特需と呼ばれる好景気が生じた為に計画が再実施される等の紆余曲折を経て完遂され、名勝地や古墳や城下町を含む城郭跡等の名所旧跡を除いた地域の区画整理の実施や防災計画の一環として環状・放射線や100m道路の設置・電線の地中化、艦砲射撃や空襲で破壊された線路の復旧工事に伴い都市と地方を結ぶ長距離路線を中心に狭軌の三線軌条を用いた標準軌への改軌、都市の職住分離を目的とした帯状緑地の設置や都市の無秩序な拡大と都市中心部の空洞化を防止する為の都市郊外の農地・森林等の保全等が実施された。

 温暖化の警告が相次いで発表され、建物の緑地化に対し補助金が支払われた1980年代には屋上にミニ森林園を造園する企業などもあり、首長の政策によっては緑地面積の市街地面積に占める割合が60%を越える都市も現れている。1993年に深海棲艦が現れてから、都市では地域の気候に合わせた果樹を緑地帯に植える事が一戸建ての家庭菜園設置や共同住宅・オフィスビル・工場の屋上への菜園設置と併せて流行している。この緑地帯の果樹については住民であれば誰でも規則に従えば自由に収穫を行えることになっている。

 庶民の娯楽施設として居酒屋や喫茶店と言った飲食店や料亭、碁会所・将棋道場、孔雀茶屋と言った昔からの施設以外にも昭和40年代になると財閥系企業により遊園地や美術館・博物館、プラネタリウムや天文台、動植物園(水族館を含む)、映画館や本格的な歌劇も行える歌劇場や演奏等を行う音楽堂、多目的ホール等が相次いで建てられ娯楽の拡大に繋がった。

 また都市計画に基づき歓楽街に指定された地区にはカラオケやゲームセンター、屋内競技場等のレジャー施設や健康ランドのような娯楽を目的とした入浴施設があるが、講和直後に繁栄しかけたパチンコ屋は殆ど見られず、昔ながらの雀荘や楊弓場が繁盛している。

 また、スポーツは野球、蹴球、排球、羽球、撞球、洋弓など舶来のスポーツの他に相撲や空手、拳法、或いは武芸十八般のような伝統武道も男女を問わず行われている。

 なお性風俗施設は姦通罪の存在もあり接待料亭(クラブ)・接待飲食店(キャバレー)等の社交飲食店も含めて一都市における店舗数は極少数となっている。

 二十四節気や雑節などの行事は時を経るごとに廃れていたが、深海棲艦出現と艦娘顕現後は社会情勢などにより復活しつつある。

 2010年代、都市の雰囲気は都会の華やかさと不安感が混在した社会思潮および退廃的で和洋折衷の雰囲気をまとった文化が盛んであった昭和初期に似ている。

 

 

7.経済

7.1 日本経済

 当初は連合国との講和条約を締結するにあたり指導的財閥の解体を求められ、鮎川・浅野・古河・中島・野村・大倉等24の財閥の全資産並びにその家族の保有する株式及び財産を、20年間譲渡禁止の国債に改変する事と、「私的独占、取引制限、好ましからざる経営者の重複及び好ましからざる証券保有関係を排除、防止し、また銀行の勢力を商工農業から分離することを確保し、また商工農金融の全ての業者に競争の平等の機会を与えるような法律」の制定の他に、四大財閥本社の他、鮎川・浅野・古河・中島・野村・大倉等24の中小財閥本社を解散、その他の現業部門を有する持株会社は、株式・社債を処分し、再建計画を提出する。また、必要を上回る重化学工業設備及び在外資産を賠償に振り向け、賠償指定に際しては財閥系企業を優先的に選定され、指定持株会社以外の企業の持株処分、企業間の役員兼任禁止が命令され、財閥家族56名が好ましからざる経営者としての認定と追放があり、所有有価証券の持株会社整理委員会への譲渡が行われた。

 また、財閥の持株会社から子会社あるいは孫会社を切り離し、その所有株式を処分、人的兼職を禁止し、取引の自由競争を系列間で制限する行為や契約などを禁止され、財閥解体後の日本経済の民主化を恒久的なものとするために、独占禁止法が成立することとなる。

 だが、1946年8月に大陸本土から国民党政府が海南島と澎湖諸島近辺に撤退した結果、海南島引渡の協定が反故にされると、米英の反発を招き新たな砦として日本の再建が急がれ日本に対し大規模な援助が行われ、その一環として財閥の解体条件が緩和された。

 24の財閥の全資産並びにその家族の保有する株式及び財産を、20年間譲渡禁止の国債に改変することは、すでに国債に改変された分を除き、三井・三菱・住友・安田・鮎川・浅野・古河・中島・野村・大倉の10財閥の全資産並びにその家族の保有する株式及び財産を10年間譲渡禁止の国債に改変する事に緩和され、「私的独占、取引制限、好ましからざる経営者の重複及び好ましからざる証券保有関係を排除、防止し、また銀行の勢力を商工農業から分離することを確保し、また商工農金融の全ての業者に競争の平等の機会を与えるような法律」の制定を行う事を条件に1935年の国民生活水準を考慮し自給自足に足る経済を残す方針に改められ、賠償とされた「必要を上回る」とされた重化学工業設備及び在外資産の移転が中止された。但し、休戦直後の混乱期を乗り越え生き残った財閥各社はサンフランシスコ講和条約締結後、自主的に重化学工業設備をフィリピン・インドネシア・ビルマ・マレーシア・シンガポール・ブルネイ向けに設備更新に伴い廉価で、或いは在外資産の一部を援助という形で譲渡している。

 貨幣の単位は円と銭と法律で定められているが戦後すぐに行われた新円切り替え等により銭を使用する機会はほぼ存在しない。

 尺貫法は計量法の施行により1962年に公式の取引や証明に用いることは禁止されたが、計量単位の規制が日本の伝統や文化の中で著しく不便を生じさせている場合は柔軟な運用がされ、取引や証明に当たらない計量で使用されている。例として尺相当目盛り付き長さ計は検定品として販売が認められている。

 戦後のハイパーインフレーションを切り抜けた後、1950年代に締結した米英との安全保障条約により締結初年度の国防費はGDPの15%を占めた。この国防費が国家財政の再建の足かせとなったが、中華民国南遷による米英の援助や財閥主導による技術革新・技術革新により1970年代後半に高度成長期を迎えた。この間、尖閣や長崎沖の天然資源の早期採掘が可能となり海外からエネルギー資源の輸入が減少し石油危機の影響等が最小限に抑えられた。公害問題も重工業に力を注いだ朝鮮で先に問題になったため重金属による水質汚染や煤煙(ばいえん)等の大気汚染は最小限の問題で回避している。(*14

 物価は、1993年の深海棲艦出現以降、海外からの原料の輸入がほぼ途絶えた為に様々な製品の価格が高騰している。特に食料品は、1980年代後半から深海棲艦出現により経済の高度成長期が崩壊するまでの不動産価格の高騰と地価上昇の影響で、戦災復興都市計画により保全されていた農地や緑地の転用の転用が相次ぎ食料自給率が急速に下落している中で海外からの輸入がほぼ途絶えた為、深海棲艦出現直後は太平洋戦争同様の配給制が敷かれていた。その為、効率の良い水耕栽培技術の開発、省エネ技術の導入や電気動力自動車や水素動力自動車、燃料電池搭載自動車の実用化などが研究機関等で進められ、現在では食料の配給制は一部の嗜好品を除き解除されている。

 しかし、農業委員会の書類では農地として登録されていた土地が実際は無許可で住宅地や工業用地に転用されていた事例などが発覚し強制的な農地への再転換を行うなどの事件が市区町村単位で複数件あり、結果として農業生産量が政府の立てた予測の60%に達しない等の影響があった。その為、国産うるち米1kgが6,000円・Lサイズパック詰め(10個入り)の鶏卵1パックが950円・ビール大瓶1本が1,500円と、国民生活安定緊急措置法(*15)や暴利行為等取締法(*16)の改定後も価格高騰は収まっていない。その為、政府が半年間都会の有志を農業支援に赴かせ、農家は宿泊場所と食事だけを提供し有志には政府から若干の給料が支払われる援農や自宅の庭で養鶏等を行う家庭も見受けられる。

 また原油等少なくない量の資源が対深海棲艦戦役へ廻されている為、更に少ない資源を効率的に利用するべく廃棄物等の発生抑制と再使用・再生利用、焼却施設・廃棄物発電施設等からの廃熱の回収・再利用等を推進する低炭素循環型の社会システムが成立している。

 発電所は火力発電所・原子力発電所が共に深海棲艦により操業停止に追い込まれたままで、発電量は深海棲艦が出現する直前の1980年代後半から1990年代前半と比べ大幅に低下している。工場やオフィス、各家庭では節電に努めているが昼夜を問わず計画停電が行われている為、共同住宅やオフィスビル・工場では自家使用を目的として配管内を循環する水流を利用したマイクロ水力発電や屋上への太陽光発電設備や風力発電設備の設置が盛んになり、農村地域でも用水路や水車小屋等、至る所にマイクロ水力発電用の発電設備が見られる。(*17

 また、原油の輸入がほぼ途絶えた為、自家用車の保有率は激減し貨物輸送も鉄道や船舶が中心となっている。水素動力車や燃料電池搭載車もあるが一般大衆では気軽に手を出し難い価格であるため、速度は遅いもののソーラーパネルと鉛電池の代わりにリチウムイオン電池を搭載した電気自動車が再び脚光を浴びている。尖閣沖の原油は対深海棲艦戦役を担う艦娘や鎮守府へ廻され、天然ガスは軍事用施設向の発電施設に優先的に廻されている為、艦娘に対し否定的な態度をとる団体も存在するが極少数で大多数の国民から一顧だにされていない。構成員は危険思想の持ち主としてあからさまな不利益こそ被らないものの市民が自主的に監視する対象者となっている。

 なお、1993年の深海棲艦出現後、東海道や太平洋航路など太平洋岸の主要幹線が深海棲艦により崩壊した事で中山道や北陸道も利用した西回り航路が復活した。その為、経済の中心は太平洋側から日本海側に移りつつある。

  

7.2 地球規模の情報通信網

 1982年、インターネット・プロトコル・スイートが標準化され、TCP/IPを採用したネットワーク群を世界規模で相互接続するインターネットという概念が提唱された。営利目的のインターネットサービスプロバイダが1980年代末から1990年代に出現しはじめ、次にインターネットの完全な商業化が期待された。営利目的の利用についての制限がなくなれば多くの情報がインターネット経由でやり取りされ、やがて様々なモノがインターネットに接続されるようになると考えられ、特に期待されたのが学習データが豊富に集まることで、そうなれば高度な情報社会の実現も夢ではないと思われた。それは1993年の深海棲艦出現後も変わらず、むしろ1994年7月のタイム誌で、「インターネットは核攻撃下でのコミュニケーションの生き残りを想定して開発された。今話題の近代兵器が通用しない人類に敵対的な新生物からの攻撃・占領下でのコミュニケーションの生き残りについても役に立つであろうことが予測される事から全面的に一般への開放を望む」という記事が掲載されたようにその普及に大きな期待が寄せられた。

 だが、深海棲艦の攻勢が著しくなり国家間交流も途絶えがちになるとインターネットは対深海棲艦用の学術研究目的と政府の外交目的での国家間通信の使用に限定され、大規模な普及には至らなかった。インターネットが一般に開放されていない為、国家間通信網をインターネットが国内通信網をパソコン通信が担っている。また遠距離の画像送信などではテレックスが使用されている。

 学術研究やコミュニケーション支援、学習・業務支援ツールとしてパーソナルコンピュータが製造されている。高価ではあるが政府からの助成金により各世帯に平均1.53台の割合で普及している。

 2010年代に民生用CPUの性能は駆動クロック周波数が1GHzを突破している。但し、軍事用CPUは払い下げられているCPUであっても民生用と比較にならず、詳細は軍機のベールに包まれているが現在使用されているCPUは駆動クロック周波数は2.1 GHz から 5.0 GHz、コア数は10以上あるとされている。

 基幹システムは世界規模の物は無く、米国ではMacintoshやWindows3.x系・OS/2が、日本ではTRONが主流となっている。

 PCのCPUに代表される軍民に格差があることで艦娘に対し不平等であると否定的な態度をとる団体が存在する。

 

7.3 主要各国のGDP

 2018年現在、主要各国のGDPに国防費(艦娘関連費用も含める)が占める割合は次の通りである。

①アメリカ合衆国   :15%

②ソビエト連邦    :25%

③大英帝国(*18)  :35%

④欧州連合(*19)  :35%

⑤日本国(*20)   :30%

⑥アラブ連合(*21) :45%

⑦中華民国      :55%

 

 

8.日本の気象

 原因不明の気候変動により黒潮の流れが大幅に蛇行している為、北緯30度付近でも希に50cm前後の降雪が記録されることがあるが沖縄や小笠原諸島では今のところ降雪記録はない。一時期叫ばれた温暖化現象は鳴りを潜め、真夏の時期でも東京の日中平均外気温は25(真夏の日中快晴時の日蔭)~30度位(真夏の日中快晴時の日向)で多治見や熊谷、甲府の様な内陸盆地でも真夏の日中快晴時の日向の気温が35℃を超すことはない。冬季の積雪量は年々増え続け、富士山の万年雪も夏季でも溶けず次第に面積が増えている為に小氷河期到来ではないかと疑われている。

 

 

*1
条件は国民社会主義ドイツ労働者党と類似団体の永久解散。1932年の領土から東プロイセン・東ブランデンブルク・ポメラニア・北シュレスヴィヒを放棄。シレジアの帰属を住民投票に委ねる事(結果ドイツ領として維持)。オーストリアの再独立と合邦の永久禁止。ミュンヘン協定の無効。軍の解体と50年間の再軍備禁止・軍事における新技術の無償公開(この項は後に冷戦の発生で削除)。ホロコーストや戦争被害者への補償。ワイマール憲法を改定し大統領と首相の兼任禁止・大統領権限の制限と首相権限の強化を定める事であった。

*2
当初は英米蘇仏連合国管理理事会の統括による占領統治を行うであったが講和を受け諮問委員会を設けるに留まった

*3
この時南京大虐殺についてソビエト連邦が犠牲者は民間人では無く便衣兵が大半である事を公表し、人数にも大幅な誤りがあるにも拘らずそれを認めないとして中華人民共和国には信義誠実がないと非難している

*4
チベットの国土は戦前の中華民国西蔵地方に西康省+青海省+雲南省と甘粛省の一部で主張通り

*5
東トルキスタン共和国の国土は戦前の中華民国新疆省相当地域。満州共和国は満州国(中華民国遼北省+遼寧省+安東省+嫩江省+松江省+吉林省+興安省+合江省+黒竜江省+熱河省)に察哈爾省烏珠穆沁旗を加えた地域。モンゴル人民共和国は戦前の国土(中華民国主張の蒙古地方)に綏遠省、寧夏省、察哈爾省から張家口市と烏珠穆沁旗を抜いた地域(張家口市は中華人民共和国領)を加えた地域

*6
広州湾租借地・香港・澳門を保護占領した際に現地に在った当時から希少であった艦娘建造設備の核は全て日本経由で本国に送られているが、これ以降欧州艦娘が日本領海内で発見されることが年を経る毎に多くなった

*7
当初は暗号の改革と解読、外国人による皇族や華族、政治家・官僚や民間技術者への買収工作やハニトラ・ロミオ工作への対策が中心。後に仮想敵国や中立国へのロビー活動並びに自国への反政府系ロビー活動とその背景組織の特定活動も行われている。

*8
北海道の山林地主は最大1030町歩、都府県の山林地主は最大520町歩までの所有が認められる計算となっていた

*9
直接種籾等を収める行為以外に地主が種籾等を買取りその合計から小作料を差し引いて残金を渡す制度なども含める

*10
非東洋系WACの被害は憲法草案起草を行っていたベアテ・シロタ・ゴードンが戦前住んでいた乃木坂に外出した際に暴行され殺害された事件が代表的な事例

*11
1/1元旦(旧:四方拝)・1/3元始祭・1/5新年宴会・1/7先帝祭・1/30孝明天皇祭・2/11建国記念の日(旧:紀元節)・3/10陸軍記念日・3/20春分の日(旧:春季皇霊祭)・4/3神武天皇祭・4/29昭和節(旧:天長節)・5/3憲法記念日・5/5こどもの日・5/27海軍記念日・7/20海の日・7/30明治天皇祭・8/31大正節・9/2終戦記念日・9/5日露戦争戦勝記念日・9/15敬老の日・9/23秋分の日(旧:秋季皇霊祭)・10/17神嘗祭・11/3明治節・11/23新嘗祭・12/23天長節・12/25大正天皇祭

*12
連合国軍総司令部(GHQ)へ都市復興計画を提出したところ一部将校が「これは戦勝国の復興計画だ。敗戦国の復興計画には相応しくない」と発言し、「実態はどうであれ形式的には日本は降伏したのではない。休戦協定に調印したのだ。公的には敗戦国というものは存在しない」と反論を招き論争となり、ある将校の「もう一度やるか、猿。次はリョコウバトの様に狩りつくしてやる」との発言が本国でも報道された為、ホロコーストを連想させる発言であると問題化し、国内外の批判を鎮静化させるために計画の無条件承認と一部資金の援助を行わざるを得なかった事件

*13
資金難で計画実現の困難を知った伏見宮系皇族による一部財産の下賜があった

*14
水俣や神通川、阿賀野川で発生した奇病は朝鮮で生じた重金属によるものと同類であることが早期に判明し対策と被害者への補償が速やかに実施された。なお、最初に被害が明らかとなった朝鮮は「朝鮮は全てにおいてアジアの次兄たるべし。長兄に至らざる処あらばそれを補佐すべし」との方針もあり公害が発生しても経済優先政策を採った為、被害が拡大している。

*15
国民生活との関連性が高い物資及び国民経済上重要な物資の価格及び需給の調整等に関する緊急措置を定め、国民生活の安定と国民経済の円滑な運営を確保することを目的とした法律

*16
抱合せ販売・売惜しみ・押買等の値引強要・買占め、無資格者の指定物資の転売を禁止する法律

*17
深海棲艦出現から艦娘顕現までの時期は原子力発電所や火力発電所が砲撃により完全破壊される等で電力不足が深刻になり比較的被害が少なかった水力発電が見直された。その為、農業用水に関する規制や慣行水利権に係る水使用許可の手続き等が次々と緩和され低価格で設置できるマイクロ水力発電が隆盛となっている

*18
英連邦を構成していた国家が2000年に、英国に大英帝国としての再併合を求め、艦娘が顕現した1995年に英連邦王国を構成していた国家に限り大英帝国として再併合した

*19
安全保障防衛が目的の西欧同盟と経済・社会・環境政策分野での統合を目的とした欧州共同体が2000年に英国を除き再編成され設立された

*20
太平洋戦争終結により大日本帝国の国号を変更した

*21
深海棲艦出現後の1993年に石油産出国の利益を守る為にアラブ連盟加盟国と、イスラム革命事変(半年後鎮圧)を経て立憲君主制に移行したパフラヴィー朝イラン帝国、1958年7月のバグダードクーデター事件(10日後鎮圧:首相と侍従が身代りとなった皇太子を除く王族の半数が死亡)を経て立憲君主制に移行したイラク王国が加盟して設立。艦娘不在




殆ど設定倒れ。
2018/02/24 東京ドームと甲子園球場何個分も出してという方がいらっしゃいましたので追加。多分あっている筈。

 国産うるち米1kgが6,000円は高いのではとの事ですが、これは総務省統計局の小売物価統計調査から鶏卵価格を参考にしてその他を決めたからです。飼料関連の穀物輸入自由化前の価格ってこんな物でした。そんなところに輸入が止まる事態があったらどうなるかなって……。多分一気に輸入自由化ではなかった昭和30年代の価格になるのではと考えて昭和30年代の水準に。
 卵の1959年の価格が887円、1958年が1,013円でしたのでその中間辺りで950円。
 米をその前後で1959年が5,000円、1958年が5,371円で5200円前後にしようかと思ったんですが、バブル期直後ってまだ田圃とかって埋め立てが多かったんですよね。で、こちらはもう少し被害がありそうという事で30年代も初期の頃の価格にしました。
 1956年が5,339円、1955年が6,719円なので中間辺りを取って6,000円。
 序でにビール大瓶の価格も1956年が1,493円で1955年が1,541円。中間辺りの1,500円に。
 給料は1956年の大卒公務員と高卒公務員の給与を現在の価値に直してみただけです。艦娘も人間も変わらないよってことでこの金額に。……経済ボロボロですな。


追記:
 えっと、メッセージは歓迎ですが、できれば次からは感想欄で指摘していただけるとありがたいです。


20200401追記:鄧小平・胡耀邦・趙紫陽・習仲勲が文革で『病死』している為、改革開放政策は完全に否定され、広東省の経済特区構想は生じていません。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

この世界の日本国憲法

ついやってしまった……。
世界観の一部を描き直さなくては……。
あ、そうそう。大切なことを書き忘れてました。
※ここの設定、ほとんど使いません
日記だと選挙や憲法記念日、終戦記念日の話題で触れる程度です。
と言うか、この設定が必要になる話って……^^;


日本国憲法

 

 

上諭

  

 日本国は先の悲惨なる戦争を省み、今、未曾有の改革を為さんとす。朕自ら先んじ、維新の誓文に立ち還り日本の国是を定め復興の道を求めん。日本国民は共に心を一つにし日本の復興と繁栄のために努力すべし。

 朕は、日本国民の総意に基いて、新日本建設の礎が定まるに至ったことを、深く慶び、枢密顧問の諮詢及び帝国憲法第七十三條による帝国議会の議決を経た帝国憲法の改正を裁可し、ここにこれを公布せしめる。

 

 

前文

 

 日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、連綿と続く皇室を戴く国家であって、民族の長い歴史と伝統を受け継ぎ、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。

 日本国民は、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治され国家の意思を最終的に決定する。国政は、正当に選挙された国民の代表者が、天皇の委託によってこれに当たる。

 日本国民は、内外に甚大なる被害を与えた先の悲惨なる戦争を深く反省すると同時に世界の恒久平和を希求し、国際協調の精神をもって、国際社会の平和と繁栄と安全の実現に向け、不断の努力を続ける。

 日本国民は、個人の自律と相互の協力の精神の下に、基本的人権が尊重され、国民の福祉が増進される、自由で活力があり、かつ公正な社会をめざす。

 我々は、自由と規律を重んじ、美しい国土と自然環境を守りつつ、教育や科学技術を振興し、活力ある経済活動を通じて国を成長させ、国際社会において、名誉ある地位を占めることを念願する。

 

 

 

第一編 国家の大原則

 

 

第一章 国家の大原則

 

第一条 

 日本国は、国民の総意により天皇が統治権を統合して掌握し、憲法の規定により統治を行う立憲君主国である。

 

第二条

 日本国の統治権は立法、行政、司法の三権に分立される。

 

第三条

 天皇は立法権を、憲法で別段の定めない限り、全て立法府に委託する。

 

第四条

 天皇は行政権を、憲法で別段の定めない限り、全て行政府に委託する。

 

第五条

 天皇は司法権を、憲法で別段の定めない限り、全て司法府に委託する。

 

第六条

 日本国の領域は、不可分とする。立法府の同意を得ずに国境を変更することはできない。

 

第七条

 国旗は日章旗とし、国歌は君が代とする。また、国章は菊花紋章並びに五七桐とする。国旗及び国歌並びに国章の詳細は法律において定める。

 

第八条

 日本国民は、自国或いは他国を問わず国旗及び国歌並びに国章を尊重しなければならない。国旗及び国歌並びに国章はその国を象徴し尊厳を表すものであり、教養ある者はこれを冒涜或いは侮辱してはならない。

 

第九条

 元号は、皇位の継承があったときに制定する。

 

第十条

 憲法、法律、勅令、批准された国際約束及び政令が、日本国の一般的拘束力のある法源である。地方自治体において、定められた条例は一般的拘束力のある法源として扱う。

 

第十一条

 法律、勅令、政令及び条例の発効のための条件は、その公布である。法規の公布の原則及び手続は、法律で定める。

 

 

第二編 天皇および皇族、摂政、華族制度

 

 

第一章 天皇及び皇族の特権

 

第一条

 天皇は、不可侵であり国務上の行為に責任を負わない。

 

第二条

 皇族は、刑事訴訟を受けることはない。

 

第三条

 皇族が日本国憲法に基づき定められた刑法の罰則規定に該当する行為を犯したときは勅裁を経てこれを執行する。量刑は皇族会議によって議決される。

 

第四条

 皇族への民事訴訟は大審院で秘密会で行われる。但し皇族は代理人を立て自ら裁判に出る必要は無い。

 

第五条

 皇族は、税を負担しない。

 

第六条

 皇族は、参政権を有しない。

 

第七条

 皇族は国民生活の模範を示し、行いや態度を改めて、身を慎まねばならない。

 

 

第二章 天皇の権限

 

第一条

 天皇のすべての国務上の行為は大臣が責任を負う。

 

第二条

 天皇のすべての国務上の文書は大臣又は副大臣の副署によりその効力を生じる。

 

第三条

 天皇は元号を定め発布する。

 

第四条

 天皇は立法府の決議を経た法令を裁決し、裁可した法令を発布する。

 

第六条

 天皇は国民投票の結果を受け、憲法改正を公布する。

 

第七条

 天皇は内閣が締結し立法府の承認を経た批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証し公布する。

 

第八条

 天皇は立法府召集の詔書を発布する。

  

第九条

 天皇は立法府の開会、延長、停会、衆議院の解散若しくは参議院の通常選挙の施行について其々詔書を発布する。

 

第十条

 天皇は立法府の指名に基づいて内閣総理大臣を任命する。

 

第十一条

 天皇は両議院の指名に基づいて大審院長並びに検事総長を任命する。

 

第十二条

 天皇は内閣における大臣、地方自治体の首長、法律の定めるその他の公務員の任免の認証を行う。

 

第十三条

 天皇は華族の家督継承の認証を枢密院の議決を経て行う。華族の家督継承については別に法律を定める。

 

第十四条

 天皇は栄典を枢密院の議決を経て授与することができる。栄典に関する条規は法律に定める。

 

第十五条

 天皇は政府に対して、恩赦の実施を提議することができる。

 

第十六条

 天皇は直接国民の篤行を賞し又は政府にその賞賜を提議することができる。

 

第十七条

 天皇は外国からの義務を伴わない位階勲章その他の栄典を受け取る権限を有する。

 

第十八条

 天皇は外国に対し儀礼的に国家を代表する権限を有する。

 

第十九条

 天皇は大使、公使、領事の接受を行う。

 

第二十条

 天皇は全権委任状及信任状若しくは外交文書の認証を行う。

 

第二十条

 天皇は儀式及び宮中祭祀を執行する。

 

第二十一条

 天皇は国又は地方自治体その他の公共団体が主催する式典への出席その他の公的な行為を行う。

 

 

第三章 皇位の継承

 

第一条

 皇位は皇室典範の定めに従って、皇統の男系の男性子孫が継承する。

 

第二条

 皇位の承継に関する手続は、皇室典範に定める。

 

第三条

 皇位継承順位第一位の皇族を皇嗣と称する。皇嗣は立皇嗣の礼を以て国の内外に示す。

 

第三条の二

 皇嗣たる皇子を皇太子と称する。皇太子在らざるときは皇孫を皇嗣とし皇太孫と称する。皇太子並びに皇太孫在らざるときは皇弟を皇嗣とし皇太弟と称する。

 

  

第四章 天皇の即位と退位

 

第一条

 天皇は即位礼及び大嘗祭を以て皇位を継承したことを国の内外に示す。即位礼は行政府、立法府、司法府の代表が参集して京都で行う。やむを得ざる事情により京都で行えない場合は法律の定めた場所で行う。

 

第二条

 天皇が精神もしくは身体に不治の重患を発し、国務に当たり特に重大な支障があるとき又はその任を全うできないと断じ自ら譲位を希望した時は、皇族会議及び枢密院に諮問し、譲位を行う事が出来る。

  

第三条

 皇嗣に精神もしくは身体に不治の重患があり、又は重大な事故がある時は、天皇は皇族会議に諮問し、継承の順序を換えることが出来る。

 

第四条

 天皇が譲位した時は退位礼を行う。

 

第五条

 退位した天皇の地位その他は皇室典範に定める。

 

第六条

 天皇が崩じたときは大喪礼を行う。

 

第七条

 即位礼及び大嘗祭、立皇嗣の礼、退位礼、大喪礼の費用は国家予算として扱い特別会計に計上する。

 

 

第五章 皇族の婚姻並びに縁組

 

第一条

 天皇並びに皇族の結婚相手は、同族又は勅旨により特に認許された華族に限る。

 

第二条

 天皇の結婚は、立法府の議決と枢密院の議決を要する。

 

第三条

 皇族の婚姻は、勅許に依る。

 

第四条

 皇族の結婚を許可する勅書は、宮内大臣がこれに副署をする。

 

第五条

 皇族は同族間を除き、養子若しくは猶子を取る事が出来ない。

 

 

第六章 皇族の収入

 

第一条

 皇室における諸般の経費は、特に常額を定めて国庫より支出される。

 

第二条

 皇族は、法律の定める規則に従い、毎年、国庫から給付金を受ける。当該法律は、給付金が支給される皇室の他の構成員の範囲について定め、及び当該給付金について規律する。

 

第三条

 国庫から受領した給付金及びその職務の遂行のために使用する財産については、個人課税が免除される。さらに、皇族が相続権に基づき又は贈与により他の皇族から受領したものについては、相続、譲渡及び贈与に関する法の適用を受けない。

 

第四条

 更なる課税の免除は法律で認めることができる。法律の可決は通常法の可決の手続きによる。

 

 

第七章 皇族の成人

 

第一条

 天皇及び皇太子、皇太孫は、満十八歳で成年とする。

 

第二条

 前条以外の皇族は、満二十歳を成年とする。

 

第三条

 皇族の成人に関する手続は、皇室典範に定める。

 

 

第八章 摂政

 

第一条

 天皇が成人に達しない時、又は天皇が長期間に亘り政務をとることができないときは、皇族会議及び枢密院の議決を経て摂政を置く。

 

第二条

 摂政は、成年に達した皇太子又は皇太孫を任命する。皇太子又は皇太孫が成人していない時は他の男性皇族が摂政の地位に就く。

 

第三条

 摂政は天皇の名において政務を執る。

 

第四条

 摂政に関する手続は、皇室典範に定める。

 

 

第九章 皇族会議

 

第一条

 皇族会議は成年以上の皇族男子九人、枢密院議長及び副議長、衆議院並びに参議院の議長評議会議長及び副議長、内閣総理大臣、内閣総理大臣が任命する国務大臣二人、宮内大臣並びに大審院長及びその他の裁判官一人を以て、これに充てる。

 

第二条

 議員となる皇族及び大審院長以外の裁判官は、各々成年に達した皇族又は大審院長以外の裁判官の互選による。

 

第三条

 天皇は皇族会議に親臨し統理する。自ら統理を行わない時は、枢密院議長が議長を務める。

 

第四条

 皇族会議は、皇族男子六人を含む十三人以上の議員の出席がなければ、議事を開き議決することができない。議員は、自分の利害に特別の関係のある議事には、参与することができない。

 

第五条

 皇族会議は、予備議員十人を置く。議員に事故のあるとき、又は議員が欠けたときは、その予備議員が、その職務を行う。予備議員の員数は、各々その議員の員数と同数とし、予備議員の選出は別に法令を定める。

 

第六条

 皇族会議は、皇室及び皇族に関係する事項を扱う。

 

 

第十章 華族

 

第一条

 華族のうち諸侯或いは勲功を持って華族に封じられた家は、これを廃す。また、これに代わる新たな華族を設けることはない。

 

第二条

 華族の地位については無秩序な拡大を排するため男系の嫡長子世襲とし、嫡長子以外の兄弟姉妹並びに庶子が新たな分家をたてることは出来ない。

 

第三条

 華族の嫡長子以外の兄弟姉妹並びに庶子の地位は一代華族とし世襲は許されない。

 

第四条

 爵位は終身であり、原則として生前に譲ることはできない。やむを得ず生前譲位を行う為の規定は法律で定める。

 

第五条

 一代華族は全て継承権を有しない男爵位保持者である。

 

第六条

 華族は、一代華族も含め、皇室の藩屏として国民生活の模範を示し、倫理の師表として行いや態度を改めて身を慎まねばならない。

 

第七条

 華族は、一代華族も含め、皇室の藩屏としての品位を保持する義務を負う。

 

第八条

 華族は、一代華族も含め、参議院議員の被選挙権並びに選挙権を有する。

 

第九条

 華族は、一代華族も含め、衆議院議員若しくは地方自治体議会の議員資格、並びにそれらの選挙権を有しない。

 

第十条

 華族は、一代華族も含め、子弟には相応の教育を受けさせる義務を負う。

 

第十一条

 皇族との結婚資格を有する者は皇族または一代華族を除く華族の出身である者若しくは一代華族当主に限られる。

 

第十二条

 一代華族を除く華族の結婚については皇族、華族又は一代華族、国外の世襲貴族との婚姻に限られ、その結婚は枢密院の決議を経た後に天皇の裁可によって認められる。

 

第十二条の二

 前条に当てはまらない婚姻を成す者は華族籍を喪失する。参議院議員である者は議員たる資格を喪失する。喪失に対する手続は法律で定める。

 

第十三条

 華族の養子は同族から迎えるに限り認める。但し、男系五親等以内の血族で届出があった時点で華族または一代華族に封じられてる家の出身に限られる。

 

第十四条

 華族の爵位の世襲は枢密院の決議を経た後に天皇の裁可によって認められる。

 

第十五条

 華族の家範の制定は、日本国憲法並びに憲法に基づく法律の範疇においてのみ認められる。

 

第十六条

 華族は宮内官制服令に定める爵服の着用を許可する。

 

第十七条

 華族の世襲財産は日本国憲法並びに憲法に基づく法律の範囲内において認められる。

 

第十八条

 皇族と婚姻した華族は、皇室服喪令の対象である。

 

第十九条

 有爵者若しくは有爵者の嫡長子は位階令により成人に際し宮中席次にて第四階に相当する従五位に叙せられる。

 

第二十条

 華族は、一代華族も含め、民事裁判は代理人を立てる事ができ、自ら裁判に出る必要は無い。

 

第二十一条

 憲法に別段の定めがない華族の事項に付いては法律を別に定める。

 

   

第三編  日本国民の権利と義務

 

 

第一章 日本国民の定義

 

第一条

 国民とは正当な手段を持って日本国籍を有している自然人である。

 

第二条

 日本の国籍は、法律で詳細を定めるところにより、出生及び両親の国籍に基づき取得される。国籍は、法律に規定する基準に従い、届出又は申請に基づき付与することができる。

 

第三条

 法律に規定する基準により、かつ、外国の国籍を保有し、又は取得することを条件とするのでなければ、国籍を失うことはない。

 

 

第二章 日本国民の権利と義務

 

第一条

 何人も、この憲法に別段の定めが無い限り、法律の前において平等とする。

 

第二条

 何人も、合理的な理由なく、年齢、出身、言語、信仰、信条、意見、健康状態、障害又はその他の個人的事情に基づいて異なる取扱いをされてはならない。

 

第三条

 男女は、同じ権利を有する。この権利は生理学的根拠に依らずに異なる取扱いをされてはならない。男女の、性的、政治的、経済的、文化的、或いは婚姻を含む社会的活動における同権については必ず保障されなければならない。労働並びに社会的活動において、男は外で働くことが当然、女は家を守ることが当然という概念は陋習であり、国はこれを改めさせなければならない。賃金及びその他の労働条件に関する決定においては法律で詳細を定める。

 

第四条

 何人も生命並びに個人の自由、不可侵性及び安全に対する権利を有する。

 

第五条

 何人も、個人の不可侵性は侵害されてはならず、また、恣意的に、又は法律で定める理由なく自由を剝奪されてはならない。自由の剝奪を伴う刑罰は、裁判所が科する。その他の自由の剝奪の合法性については、裁判所の審査に付することができる。自由を剝奪された者の権利は、法律により保障される。

 

第六条

 何人も拷問され、又は人間の尊厳を侵害するその他の取扱いを受けてはならない。特に公務員による、拷問又は人間の尊厳を侵害する取扱いは決して行ってはならない。

  

第七条

 何人も、実行の時点において法律で可罰的であると定められていない行為に基づいて、有罪とされ、又は刑を宣告されてはならない。犯罪に対して、実行の時点における法律の規定よりも重い刑を宣告してはならない。また、法律は犯罪に対して残虐で異常な刑罰または過重な罰金を科してはならず、過大な額の保釈金を要求してはならない。

 

第八条 

 何人も、不合理な捜索および押収に対し、身体、家屋、書類および所有物の安全を保障される。また、現行犯として逮捕される場合を除いては権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。令状は、宣誓または確約によって裏付けられた相当な理由に基づいてのみ発行され、かつ捜索すべき場所、および逮捕すべき人、または押収すべき物件を特定して示したものでなければならない。

 

第九条

 何人も、同一の犯罪について重ねて生命身体の危険にさらされることはない。既に発効した裁判所の判決を科された行いによって、再び立件され、捜査され、公訴され、公判に付されることはない。

 

第十条

 何人も、抑留され、又は拘禁された後、裁判の結果無罪となったときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。

 

第十一条

 何人も、その関係する事件が法律に基づき管轄権を有する裁判所又はその他の公的機関において適切に、かつ、不当な遅滞なく審理される権利並びにその権利及び義務に関する決定が裁判所又はその他の独立の司法機関で審理される権利を有する。審理の公開並びに審問を受ける権利、理由を付した裁判を受ける権利及び上訴の権利並びにその他の公正な裁判及び良好な運営の保障は、法律で確保される。

 

第十二条

 何人も、裁判所及びその他の公的機関において、日本語若しくは国際公用語のいずれかを使用し、並びに当該言語による公的文書を交付される権利を法律で保障される。

 

第十三条

 何人も住居の平穏を保障され、平和裏に生活を営む権利を有する。居住者の同意のない住居への立入りは、法律に定められた場合において、法律で指定された者による限り、認められる。立入りのためには、事前の身分証明及び立入りの目的の告知を要する。

  

第十四条

 何人も、個人的な生活領域の尊重に対する権利を有する。個人の記録及び提供に関わる個人的生活領域の保護のための規則は法律で定める。

 

第十五条

 何人も、信書、通話及びその他の内密の通信の秘密は、侵害されない。個人若しくは社会の安全又は住居の平穏を脅かす犯罪の捜査、訴訟及び保安検査並びに拘禁中において不可欠の通信の秘密に対する制限について、法律で定めることができる。

 

第十六条

 何人も、信仰及び良心の自由を有する。信仰及び良心の自由は、信仰を告白し実践する又は告白しない権利、信条を表明する又はしない権利並びに宗教的共同体に所属し、又は所属しない権利を含む。何人も、その良心に反する信仰の実践に参加する義務を負わない。

 

第十六条の二

 国はいかなる宗教団体にも特権を与えてはならず、宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。

 

第十七条

 何人も、法律により自ら選択した労働、法令に反しない職業又は生業によって生計を立てる権利を有し、法律に基づく理由がなければ解雇されてはならない。日本国の公的機関は労働力の保護に配慮しなければならない。

 

第十八条

 日本国民及び合法的に国内に滞在する外国人の子供は、個人として同等に扱われなければならず、また、その成長に応じて、本人に関することに影響を及ぼすことができなければならない。

 

第十九条

 日本国民及び合法的に国内に滞在する外国人は、国内の移動及び居住地選択の自由を有する。この権利に対して、国防上又は公共の利益を確保するため若しくは心身に対する危険から守るために不可欠の制限を法律で定めることができる。

 

第二十条

 日本国民及び合法的に国内に滞在する外国人は、出国の権利を有する。この権利に対して、訴訟の遂行若しくは刑の執行又は兵役義務の履行を確保するために不可欠の制限を法律で定めることができる。

 

第二十一条

 日本国民及び合法的に国内に滞在する外国人は、表現の自由を有する。表現の自由は、事前に誰にも妨げられることなく、情報、意見及びその他の伝達事項を表明し、公表し、及び受け取る権利を含む。表現の自由の行使について、詳細は、法律で定める。子供の保護のために不可欠な制限について法律で定めることができる。

 

第二十二条

 日本国民及び合法的に国内に滞在する外国人の財産は、保障される。公共の必要のための財産の強制収用については、補償を法律で定める。

  

第二十三条

 日本国民及び合法的に国内に滞在する外国人は、無償の基礎教育に対する権利を有する。教育を受ける義務については、法律で定める。

  

第二十四条

 日本国民及び合法的に国内に滞在する外国人は、資力の欠如のために妨げられることなく、その能力及び特別の必要に応じて、基礎教育以外の教育を受け自らを発達させるための平等な機会を保障される。また、学問、芸術及び高等教育の自由は、保障される。

 

第二十五条

 日本国民は、帰国を妨げられ、国外に追放され、又は意に反して外国に引き渡され、若しくは移送されてはならない。ただし、日本国民は、犯罪を理由として、若しくは訴訟のため、又は子の監護若しくは養育に係る決定の執行のために、人権及び法による保護が保障される国に引き渡され、又は移送されることがあること、並びに検疫を理由とした入国制限があることを法律で定めることができる。外国人の日本に入国及び国内に滞在する権利は、法律で定める。

 

第二十六条

 日本国民は、許可を得ないで集会及び示威行動を組織し、並びにこれらに参加する権利を有する。集会及び示威行動の自由の行使についての詳細は、法律で定める。

 

第二十七条

 日本国民は、結社の自由を有する。結社の自由は、許可なく団体を結成する権利、団体に所属し、又は所属しない権利及び団体の活動に参加する権利を含む。職業上の結社の自由及びその他の利益を擁護するために団結する自由も、同様に保障される。結社の自由の行使についての詳細は、法律で定める。

 

第二十八条

 日本国民は、定められた年齢に達したとき、国政選挙及び国民投票において投票する権利と義務を有する。

 

第二十九条

 日本国民で、法律で指定された罪を犯したため、裁判所の確定判決により少なくとも1年の自由刑を宣告され、かつ、これと同時に選挙権を剥奪された者並びに精神障害を理由とする裁判所の確定判決に基づき法律行為を行う能力を有しない者は、選挙権が排除される。選挙権を排された者は当然投票の義務を免ぜられる。選挙権の回復については法律で定める。

 

第三十条

 選挙権は国籍を有する日本人で選挙区に居住する住民であり法律で定められた年齢に達し、かつ、選挙権が排除されていない者にある。被選挙権については、この憲法の個々の規定が適用される。

 

第三十条の二

 住民とは地域に正当な手段を持って一定期間居住し法令を遵守し生活を営んでいる国民と日本国憲法を遵守し法令に従って生活を営む外国籍を有する者である。

 

第三十条の三

 前条に関わらず外国籍を有する住民は国民投票に参加する権利及び国又は居住する地方自治体への参政権を有しない。

 

第三十一条

 日本国民で人間の尊厳のある生活に必要な保障を得ることができない全ての者は、不可欠の生活手段及び保護に対する権利を有する。失業、疾病、負傷、労働能力の喪失及び老齢並びに子の出産及び扶養者の喪失による基本的生活手段の保障に対する権利は、日本国の国籍を有する何人に対しても法律で保障される。

 

第三十二条

 日本国民が社会的活動に参加し、及び本人に関する決定に影響を及ぼす機会を促進することは、公権力の責務とする。

 

第三十三条

 日本国の公的機関は、就業を促進し、及び労働に対する全ての人の権利の保障に努めなければならない。就業訓練に対する権利については、法律で定める。

 

第三十四条

 日本国の公的機関が保有する文書及びその他の記録は、やむを得ない理由のためにその公開が法律で個別に制限されている場合を除き、公開される。何人も、公文書及び公記録から情報を得る権利を有する。

 

第三十五条

 日本国の公的機関は、基本権の保障及び犯罪の捜査のために不可欠の住居の平穏に触れる措置について、法律で定めることができる。

 

第三十六条

 日本国の公的機関は、方言を含む国内の言語について文化的及び社会的な必要性に等しく配慮しなければならない。

 

第三十六条の二

 日本国に居住する北海道並びに千島又は台湾における原住民の集団は、自らの言語及び文化を維持し、及び発展させる権利を有する。言語及び陋習とされた民族の文化は、日本国憲法及びそれに基づいた法律に反しない限り尊重される。公的機関において自らの言語を使用する権利については、法律で定める。

 

第三十六条の三

 日本国に居住する手話を使用する者並びに障害のために通訳及び翻訳の補助を必要とする者の権利は、法律で保障されなければならない。

 

第三十七条

 この憲法に一定の権利を列挙したことを根拠に、他の諸権利を否定し、または軽視したものと解釈してはならない。又、この憲法のいかなる規定も、憲法の掲げる権利及び自由の破壊を目的とする活動に従事し、又はそのような目的を有する行為を行う権利を認めるものと解釈してはならない。

 

第三十八条

 本章に掲げる規定は、軍の法令又は紀律に抵触しないものに限り、軍人に準用する。

 

 

第三章 日本国民の義務

 

第一条

 定められた年齢に達した日本国民は投票の義務を負う。日本国民の選挙及び国民投票においての投票は義務である。日本国の公的機関はこれを履行できる環境を整える義務を負う。また特段の理由なく投票を怠るときは罰則を以て当たらねばならない。但し罰則を適用するには十分な配慮をなさねばならない。

 

第二条

 全ての日本国民は、法律に基づき、日本国の防衛に参加しこれを支援する義務を負う。信念に基づき軍事的な国防への参加の免除を受ける権利については、法律で定める。

 

第三条

 日本国民は法律に基づき無償の基礎教育を受ける義務を負う。

 

第四条

 日本国民は、法律の定めるところに従い、納税の義務を有する。

 

第五条

 全ての日本国民は憲法並びに憲法に基づいた法令を遵守しなければならない。

 

 

第四編 立法権に関する諸規則

 

 

第一章 立法権に関する大原則

 

第一条

 日本国に関する立法権は立法府が有する。

 

第二条

 天皇は、立法権に携わることができる。

 

 

第二章 立法府の構成及び選挙

 

第一条

 立法府は衆議院と参議院で構成される。

 

第二条

 衆議院は、公選された議員により構成される。衆議院の議員定数は有権者百万人に付き十五人を下回ってはならない。

 

第三条

 衆議院議員は4年の任期で選ばれる。但し、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。

 

第四条

 参議院は華族、退職官吏及び退役軍人による団体、民間職能団体、日本学士院が其々の代表を選出する代表議員選挙法に基づき選出された議員により構成され専門的審議に当る。参議院の議員定数並びに代表議員の定数は法律でこれを定める。

 

第五条

 参議院議員の任期は第一期の議員の半数に当たる者の任期を除き6年とし、3年毎に議員の半数を改選する。

 

第六条

 立法府の任期は、立法府選挙の結果が確定した時に始まり、次回の立法府選挙が実施された時まで継続する。

 

第七条

 立法府議員は、男女平等、直接、秘密選挙で選挙される。全ての投票権者は、選挙において平等な投票権を有する。

 

第八条

 天皇は、理由を付した内閣総理大臣の発案に基づき、かつ、立法府の会派の意見を聴いた上で、立法府の会期中に任期満了前の立法府選挙を実施することを決定することができる。この後、立法府は、選挙の実施前にその任務を終える日を決定する。

 

第九条

 任期満了前の立法府選挙の後、立法府がより早い集会の日を決定した場合を除き、選挙の決定が行われてから90日が経過した後の最初の月の初日に、立法府は集会する。

 

 

第三章 被選挙権及び議員の資格

 

第一条

 軍務に従事している者は、衆議院議員に選挙されることができない。また、憲法で別段の定めある者を除き参議院議員に選挙されることもできない。

 

第二条

 衆議院の議員は単一の選挙区で複数の候補を選択する制度にて公選される。

 

第三条

 衆議院議員の公選に関する条規は法律によって定められる。

 

第四条

 選挙は選挙区で有権者数の四分の一以上の無効投票があるときは無効となりその選挙区では再度の選挙を行わなければならない。

 

第五条

 参議院の議員たる資格は、華族、元帥府に列せられた者、三権の長経験者、市町村の首長を二期以上経験している者、官或いは民の要職を5年以上務めた者、日本学士院で選出された有識者の何れかに該当し執行猶予の有無に関わらず禁固以上の刑に処せられたことがない者が有する。

 

第六条

 参議院の各代表議員選挙法に関する条規及び官民の要職についての定義は法律によって定められる。

 

第七条

 立法府は、その新たに任命された議員の当選証書を審査し、当選証書又は選挙自体に関して生じた争訟について、法律の定める規則を遵守して判定する。

 

第八条

 立法府議員は、就任に際して法律の定める方法により、廉潔性の宣誓又は宣言及び誓約を行う。

 

 

第四章 議員の職の中断並びに辞職及び解職

 

第一条

 立法府議員が妊娠及び出産並びに負傷疾病による療養の間、議員の職の遂行は、中断する。その間は、その代理議員が、議員の職を遂行する。議員の職の遂行は、兵役義務を果たす間においても中断する。

 

第二条

 立法府は、免職の許可に合理的な理由があると認める場合には、立法府議員の申出により、申し出た立法府議員の免職を許可することができる。

 

第三条

 立法府議員が本質的かつ反復的に議員の職の遂行を怠った場合には、立法府は、当該案件について憲法委員会の意見を得て、総議員の五分の四以上、且つ有効投票の三分の二以上をもって支持された議決により、任期の全期間又は一定の期間議員の職を解くことができる。

 

第四条

 立法府議員に選挙された者が、故意の犯罪による拘禁刑又は選挙に関する犯罪に係る刑に処する旨の執行可能な判決を受けた場合には、立法府は、その立法府議員としての留任の可否について調査することができる。犯罪が、判決を受けた者が議員の職に必要な信用及び尊敬に値しないことを示す場合には、立法府は、委員会の意見を得て、総議員の五分の四以上、且つ有効投票の三分の二以上をもって支持された議決により、その者の議員の職の終了を宣言することができる。

 

 

第五章 立法府議員の地位

 

第一条

 立法府議員は、その職において正義及び真実に従う義務を負う。立法府議員は、憲法を遵守する義務を負い、その他の指示に拘束されない。

 

第二条

 立法府議員は、その議員の職の遂行を妨げられてはならない。

 

第三条

 立法府議員は、総議員の五分の四以上、且つ有効投票の三分の二以上をもって支持された議決により立法府が同意した場合を除き、会期において表明した意見又は議案の審議中の行為のために、訴追され、又は自由を剝奪されてはならない。

 

第四条

 立法府議員の逮捕及び拘禁は、直ちに衆議院又は参議院の議長に通知されなければならない。立法府議員は、現行犯、又は重大な理由により法定刑の下限が六箇月以上の拘禁刑に相当する犯罪を行ったことが疑われる場合を除き、立法府の同意がなければ裁判の開始前に逮捕され、又は拘禁されない。

 

第五条

 立法府議員は、議院において討論に付されたあらゆる案件及びその審議において自由に発言する権利を有する。

 

第六条

 立法府議員は、冷静沈着かつ品位をもって、かつ、他人を傷つけないように行動しなければならない。立法府議員がこれに反した場合には、議長は、そのことを指摘し、又は議員に発言を続けることを禁ずることができる。立法府は、繰り返し秩序を乱す議員に対して警告し、又は当該議員を最長十四日に渡り立法府の会議に出席させないことができる。

 

第七条

 立法府議員は、本人に個人的に関係する議案に関する委員会審査及び議決手続に参加する資格を有しない。ただし、本会議において、当該議案に関する討論に参加することができる。立法府議員は、また、委員会において、自らの公務の調査に関する議案の審査に参加することができない。

 

第八条

 立法府議員は、良く身を修め、道徳的・倫理的に国民を感化し、品性を高く保ち、国民の代表として相応しい人格を身につけなければならない。立法府議員はその所属する団体又は選挙区の為に委任使となって委嘱を代行する者ではない。

 

 

第六章 立法府の会期

 

第一条

 立法府は毎年二回常会を開会する。常会の召集は、召集詔書の公布によって行う。

 

第二条

 常会は一回を予算中心に、一回を決算中心に開会して、政府の統治権行使を監督する。

 

第三条

 常会の会期は、各七十日とし、両議院同一の日数とする。但し政府において必要と認めたとき若しくは各議院の決議があった時は詔書の公布によって延長する。常会の延長は一度限りとする。

 

第四条

 内閣が臨時の必要があると認める場合、臨時会を召集する。臨時会の招集は内閣の決定又は議院の総議員の四分の一以上の要求又は衆議院議員の任期満了による総選挙若しくは参議院議員の通常選挙後に召集詔書の公布によって行う。

 

第五条

 臨時会の会期は常会を超えてはならない。会期は両議院同一の日数とする。臨時会は二度の延長を認める。

 

 

第七章 立法府の議長及び議長評議会

 

第一条

 立法府は両院議員の中から会期ごとにそれぞれ議長及び二人の副議長を選挙する。

 

第二条

 両院の議長及び副議長の選挙は、秘密投票により実施される。選挙においては、投票の過半数を得た議員を当選人とする。最初の二回の投票において投票の過半数を誰も得なかった場合には、第三回の投票で最も多くの票を得た議員を当選人とする。

 

第三条

 議長及び副議長並びに委員会の委員長は、議長評議会を組織する。議長評議会は、立法府の任務の調整のための指示を発し憲法又は議事規則で個別に定めるところにより、会期において議案の審議に当たって遵守すべき手続について決定する。議長評議会は、議院職員に関する法律及び議事規則の制定又は改正の発議並びに両議院の活動に関するその他の規則についての提案を行うことができる。

 

第四条

 両院の議長評議会は各々の議院を代表して天皇に上奏することができる。但し、天皇は法案について上奏された場合、立法府の決議が未完了の場合は裁決は行えない。

 

 

第八章 委員会

 

第一条

 立法府は会期に、大委員会、憲法委員会、法務委員会、外務委員会、財務委員会、監査委員会及び議事規則で定めるその他の常任委員会を設置する。また、立法府は、特定の議案について審査し、又は調査するための特別委員会を設置することができる。委員会には、必要な数の代理委員を置く。

 

第二条

 委員会は、特定の議案について、より多くの委員数を個別に定める場合を除き、委員の三分の二以上が出席する時に議決することができる。

 

第三条

 大委員会は政治的な議論を扱い、その他の委員会は原則として掌管する分野についてのみを議論するものとする。

 

第四条

 立法府は、法律で詳細を定めるところにより、国民年金機関の運営及び活動を監督するための委員を選挙する。

 

第五条

 立法府は、この憲法、その他の法律又は議事規則で定めるところにより、その他の必要な機関を選挙する。

 

第六条

 委員会及びその他の立法府の機関は、この憲法、議事規則又は立法府が定めた機関の細則で別に定める場合を除き、最初の会期において全会期を通じて設置される。ただし、議長評議会の提案により、会期の途中で、機関を再び設置することを決定することができる。

 

第七条

 立法府は、委員会及びその他の機関の選挙を実施する。全会一致による選挙の場合を除き、選挙は連記制により実施される。

 

 

第九章 法案の審理

 

第一条

 法律の制定は、政府の提案又は立法府議員の法律の発議により衆議院委員会において開始され、立法府議員の法律の発議は、立法府の開会中に行うことができる。

 

第二条

 議案は、内閣が提出した政府の提案若しくは立法府議員の発議又はこの憲法若しくは議事規則で定めるその他の方法により提出される。

 

第三条

 立法府は総議員三分の一以上の所属議員が出席できない時は議事を開き議決を行うことは出来ない。

 

第四条

 政府の提案は、新たな補足提案の提出によって補足され、又は撤回されることができる。補足提案は、議案を審査する委員会がその報告書を提出した後には、提出することができない。

 

第五条

 立法府議員は、法律の制定に関する提案を内容とする立法発議を行う権限を有する。

 

第六条

 立法府議員は、予算又は補正予算に計上されるべき経費又はその他の決定の提案を内容とする予算発議を行う権限を有する。

 

第七条

 立法府議員は、法律の起草又はその他の措置の開始の提案を内容とする措置発議を行う権限を有する。

 

第八条

 立法府議員は、夫々政府若しくは国務大臣に対し問責又は不信任を発議し総議員の五分のニ以上且つ出席議員の過半数の多数によって議決できる。

  

第九条

 両議院が一致して不信任を決議した内閣は総辞職する。但し衆議院のみが不信任を決議し政府が所信が正しいと考える時は内閣は一回に限り衆議院の解散を行うべく天皇の裁可を受けられる。この場合は直ちに総選挙を行い遅くとも四十日以内に衆議院を招集せねばならない。

 

第十条

 政府の提案、立法府議員の発議、立法府に提出された報告書及びその他の議案であって、この憲法又は議事規則で定めるものは、本会議における最終的な審議の前に、委員会において審査されなければならない。

 

第十一条

 法律案及び議事規則案は、本会議において二回の審議に付される。ただし、前会期において未決となっている法律案又は認証されていない法律は、本会議において、一回の審議に付される。前会期において未決となっているその他の議案は、本会議において一回限りの審議に付される。

 

第十二条

 本会議における議決は、この憲法に別に定めがない限り、総議員の五分のニ以上且つ出席議員の過半数の多数によって決定する。可否同数の時は議長が決裁を行う。投票の手続については、議事規則で詳細を定める。

 

第十三条

 否決された法律案及び議事規則案は翌会期を経過するまで再び提出することは出来ない。

 

第十四条

 会期中に終了しなかった議案の審議は、閉会中に選挙が行われた場合を除き、次回の会期に継続される。立法府に付議された国際的な議案の審議は、必要な場合には、選挙の後の会期に継続することもできる。

 

第十五条

 立法府は、条約その他の国際義務であって、立法の領域に属する規律を含むもの若しくは極めて重要であるもの又は憲法に基づくその他の理由により立法府の同意を必要とするものを承認する。立法府の承認は、これらの義務の破棄にも必要とされる。

 

第十六条

 国際義務又はその破棄の承認は、投票の過半数で可決される。ただし、義務の承認についての提案が立法府に関わる場合若しくは国の領域の変更に関わる場合、又は国際組織若しくは国際機関に対する権限の移譲であって、日本国の主権の観点から重要なものに関わる場合には、総議員の五分の四以上、且つ有効投票の三分の二以上をもって支持された議決により可決されなければならない。

 

第十七条

 国際義務は、憲法の民主主義の原理を損なってはならない。

 

第十八条

 法律案は、当該議案を審査した委員会がその報告書を提出した後、立法府の本会議において二回の審議に付される。

 

第十九条

 法律案の第一回の審議では、委員会の報告書が上程され、それについて討論が行われ、法律案の内容について議決される。この審議の終了後三日目以降に行われる審議においては、法律案の可否について議決される。

 

第二十条

 法律案は、第一回の審議の間、大委員会の審査に付することができる。

 

第二十一条

 法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決し、天皇が裁可し、公布したとき法律となる。

 

第二十二条

 法律案及び予算案を含む財政法案は衆議院にて先決される。

 

第二十三条

 参議院は衆議院において削減された予算案の復活を決議することはできない。

 

第二十四条

 参議院は衆議院が採決した法律案を審議し付帯事項を付けて差し戻すことができる。

 

第二十五条

 衆議院において可決され参議院にて差し戻され、再審査された後に総議員の五分のニ以上且つ出席議員の三分の二以上の多数によって再び可決された法律案は、天皇の裁決を受ける。

 

第二十六条

 参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を差し戻したものとみなすことができる。この規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。

 

第二十七条

 立法府の本会議は、特に重大な事由により両議院が特定の議案について異なる議決をする場合を除き、公開とする。立法府は、議事規則で詳細を定めるところにより、議事録を公表する。出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。

 

第二十八条

 委員会の会議は、公開としない。ただし、委員会は、委員会が議案の審査のための情報を収集する限りにおいて会議の公開を決定することができる。委員会の議事録及びこれらに関連するその他の文書は、やむを得ない理由のために、議事規則で異なる定めをしている場合又は委員会が特定の議案について異なる議決をする場合を除き、公開とする。

 

第二十九条

 委員会の委員は、委員会がやむを得ない理由により議案について特に必要と認める秘密保持を遵守しなければならない。ただし、日本国の国際関係に関する議案の審査中は、委員会の委員は、外務委員会又は大委員会が内閣の意見を聴いた上で当該議案の性質上必要と認めた秘密保持を遵守しなければならない。

 

第三十条

 議事規則で、会期において遵守すべき手続並びに立法府の機関及び立法府の任務について詳細な規定を定める。議事規則は、本会議において、法律案の審議手続に従って可決され、法令集において公布される。

 

第三十一条

 立法府は、内部運営、両議院が実施する選挙及びその他の立法府の任務の詳細を整備するために必要な規則を発することができる。また、立法府は、その選挙した機関のために細則を可決することができる。

 

第三十二条

 諮問的国民投票の実施については法律で定め、当該法律には、投票期日及び投票者に提示される選択肢が規定されなければならない。

 

第三十三条

 国民投票において遵守すべき手続については、法律で定める。

 

第三十四条

 選挙権を有する日本国民は、法律で定めた一定数以上の賛同者の署名により、立法府に法律の制定の発案を行うことができる。この法律案の審議については、議事規則で詳細を定める。

 

第三十五条

 法律が憲法所定の手続で制定された場合には、法律にその旨を明記しなければならない。

 

第三十六条

 立法府が可決した法律は、裁決のために天皇に提出される。天皇は、法律が認証のために送付された時から三箇月以内に、法律の裁決について決定しなければならない。天皇は、法律についての意見書を大審院から得ることができる。

 

第三十七条

 天皇はできる限り速やかに、立法府に対し、可決された法律案を承認するか否かについて通知する。承認の場合は「朕は、法律案に同意する」とし、非承認の場合は「朕は、法律案を憂慮している」と通知する。

 

第三十八条

 天皇が法律を認証しなかった場合には、法律は、審議のために立法府に返付される。法律は、委員会がその報告書を提出した後、本会議における一回の審議で、総議員の五分の二以上、且つ二分の一以上により、内容を変更することなく可決され、又は否決されなければならない。立法府が内容を変更することなく法律を再可決した場合には、法律は、認証を得ないで施行される。再可決しなかった場合には、法律は、無効とみなされる。

 

第三十九条

 認証された法律又は認証を得ずに立法府で再可決され施行される法律は、天皇によって署名され、かつ、所管の大臣又は副大臣によって副署されなければならない。施行される法律について、天皇は署名を拒んではならす、副署も速やかに行われなければならない。内閣は、この後に遅滞なく法令集において法律を公布しなければならない。

 

第四十条

 法律は、施行期日を明らかにしなければならない。特別な理由により、施行期日については命令で定める旨を法律に定めることができる。法律は、定められた施行期日までに公布されない場合には、公布日に施行される。

 

第四十一条

 天皇、内閣及び省庁は、この憲法又はその他の法律で定める権限に基づき命令を発することができる。ただし、個人の権利及び義務の原理その他憲法に基づき法律事項とされる事項については、法律で定めなければならない。命令の発令者が個別に定められていない場合には、命令は、内閣が発する。

 

第四十二条

 規律の対象に関連する特別の理由がある特定の事項及び規律の実際の重要性に照らし、法律又は命令で規定することを要しない特定の事項について、規則を制定することを法律で他の公的機関に委任することができる。この委任の適用範囲は、明確に限定しなければならない。

 

第四十三条

 命令及びその他の規則の公布及び施行に関する通則については、法律で定める。

  

 

第五編 特別法

 

 

第一章 特別法の原則

 

第一条

 法律は、国内外の安全の維持のため、法律により指定される非常事態を緊急勅令又は参議院の緊急集会で宣言することができる場合について定め、効果について定める。

 

第二条

 非常事態の宣言に伴い、地方自治体の権限は制限される。また、個人の信仰と生活信条の表明の権利、表現の自由、結社の権利、集会及び示威行動の権利、住居の不可侵、信書及び電話・電信による通信の秘密、司法権による刑事裁判及び自由刑について規定する基本権から逸脱することができる。基本権について、法律又は法律において特別な理由について定められ且つ適用範囲を厳格に限定された授権に基づいて発せられた政令で、一時的な例外を定めることができ、この例外は、日本国に対する武力攻撃時及び国民を深刻に脅かすその他の非常事態であって、法律で定めるものの際に不可欠なものとする。ただし、一時的な例外の基準は、法律で定めなければならない。一時的な例外に関する政令は、遅滞なく立法府の審議に付されなければならない。立法府は、政令の効力について決定することができる。

 

第三条

 非常事態の宣言後、当該宣言が廃止されるまでの間、立法府は必要であると判断する都度、当該宣言の更新について決定し、立法府は両院合同会議においてこれについて審議及び議決する。

 

 

第二章 緊急勅令

 

第一条

 天皇は公共の安全を保持し、その災厄を避けるため緊急の必要があり、且つ衆議院が解散され、且つ参議院が改選中の場合は、枢密院の助言と承認により法律に代わる緊急勅令を発することができる。この勅令は即時施行され、責任は内閣が負う。

 

第二条

 この勅令は、次の会期開会の後十日以内に立法府に提出しなければならない。もし、立法府において承認されなければ、政府は将来その勅令の効力が失われることを遅滞なく公布しなければならない。

 

第三条

 緊急勅令において採られた措置により法律又は他の緊急勅令を改正又は廃止したときは前条の失効公布の時よりその法律又は緊急勅令はその効力を回復する。

 

 

第三章 緊急集会

 

第一条

 内閣は天皇が緊急勅令を発する前に参議院の緊急集会を一回に限り求めることができる。緊急集会において議員は、参集に支障をきたす心身の負傷疾病の他尊属妻子の不幸等やむをえざる事情を除き参集の義務を負う。参議院が改選中であった場合、改選中の議員も参集の義務を負う。

 

第二条

 参議院の緊急集会は召集の日から十日を超えて開会されてはならず、会期の延長は認められない。

 

第三条

 参議院の緊急集会開会中は天皇は緊急勅令を発することができない。

 

第四条

 緊急集会において採られた措置は、即時施行の緊急法令としての効力を有し、責任は参議院が負うものとする。

 

第五条

 緊急集会において採られた措置は、臨時のものであって、次の会期開会の後十日以内に、衆議院は緊急集会において採られた措置に対し十日以内に衆議院として採決を行わなければならない。衆議院の同意がない場合には、政府は将来その効力が失われることを遅滞なく公布しなければならない。

 

第六条

 緊急集会において採られた措置により法律又は他の緊急勅令を改正又は廃止したときは前条の失効公布の時よりその法律又は緊急勅令はその効力を回復する。

 

  

第六編 行政権に関する諸規則

 

 

第一章 行政権に関する大原則

 

第一条

 日本国における行政権は、行政府が有する。

 

第二条

 天皇は、行政権の行使に携わることができる。

 

第三条

 行政府は内閣と省庁から成立する。

 

第四条

 内閣は、基本権及び人権の実現を保障しなければならない。

 

第五条

 内閣は、就業を促進し労働に対する全ての人の権利の保障に努めなければならない。就業訓練に対する権利については、法律で定める。

 

第六条

 内閣は、法律で詳細を定めるところにより、国民に対し十分な社会保障を行い健康を増進しなければならない。

 

第七条

 内閣は、子供の保護に当たる家族及びその他の者が子供の福祉及び個人の成長を確保できるように支援しなければならない。全ての国民が住居に対する権利を促進し、及び居住の主体的な確保を支援することは日本国政府の責務とする。

 

第八条

 全ての公務員は、公共の奉仕者であって一部の利益授受者の為の奉仕者ではない。良く身を修め、品性を高く保ち、公共の奉仕者として相応しい人格を身につけなければならない。

 

 

第二章 内閣

 

第一条

 内閣総理大臣及び必要な数のその他の大臣は、内閣を構成し、内閣総理大臣はその首席となる。内閣総理大臣及びその他の大臣は、誠実かつ有能と認められた日本国民でなければならず、現役の軍人であってはならない。

 

第二条

 内閣総理大臣及びその他の大臣は、その公務について立法府に対して責任を負う。内閣において案件の審議に参加した各大臣は、議事録に記録される形で異議を表明した場合を除き、決定について責任を負う。

 

第三条

 立法府は、内閣総理大臣を選挙し、天皇は、選挙された者をその職に任命する。その他の大臣は、内閣総理大臣に選挙された者が行う提案に従い、天皇が任命する。内閣総理大臣の指名は他のすべての案件に先立って、行わなければならない。

 

第四条

 立法府の会派は、内閣総理大臣の選挙前に政府の綱領及び内閣の構成について協議する。これらの協議の結果に基づき、両院の議長の意見を聴いた上で、天皇は、立法府に内閣総理大臣の候補者を複数名通知する。立法府において実施される記名投票において投票の過半数が候補者の当選を支持した場合には、候補者は、内閣総理大臣に選挙される。

 

第五条

 候補者が当選に必要な過半数を得なかった場合には、同一の手順で新しい内閣総理大臣候補者が指名される。新しい候補者も投票の過半数を得なかった場合には、立法府において記名投票により内閣総理大臣の選挙が行われる。この場合には、最も多く票を得た者を当選人とする。

 

第六条

 衆議院と参議院の投票の結果が異なった時は両院協議会を設ける。両院協議会において内閣総理大臣候補者が統一できなかったときは、参議院の結果が優先される。

 

第七条

 内閣総理大臣は副大臣を任命及び解任することができる。副大臣は、大臣が必要と認める場合において、かつ、大臣の指示を遵守して、大臣職を代行する。副大臣は、これを理由として責任を負うが、大臣の責任を免ずるものではない。

 

第八条

 内閣が任命されるとき及びその構成が著しく変更されるときは、立法府が開会中でなければならない。

 

第九条

 内閣は、その綱領を、声明の形で立法府に遅滞なく提出しなければならない。内閣の構成が著しく変更されるときも、同様とする。

 

第十条

 内閣を構成する大臣は在任中、大臣の職責を遂行することを妨げ若しくは内閣の構成員としての活動への信頼を損なうおそれがあるものを遂行してはならない。

 

第十一条

 大臣は、その任命後遅滞なく、その営利活動、会社の株式保有及びその他の重要な資産について、並びに大臣の公務外の業務及びその他の利害関係であって、内閣の構成員としての活動を評価するに当たって重要である可能性のあるものについて、立法府に報告を提出しなければならない。

 

第十二条

 天皇は、内閣又は大臣に対して、申出により免職を承認する。天皇は、また、内閣総理大臣の提案により、大臣の免職を承認することができる。

 

第十三条

 天皇は、内閣又は大臣が立法府の信任を失った場合には、これらに対し、申出がなくとも免職を承認しなければならない。

 

第十四条

 大臣が衆議院若しくは参議院の議長に選挙された場合には、選挙された日にその職責を解かれたものとみなす。

 

第十五条

 この憲法に個別に定められた職責並びにその他の政府事項及び行政事項であって、内閣若しくは省庁が決定するものと定められたもの又は天皇若しくはその他の公的機関の権限に当てられなかったものは、内閣に帰属する。

 

第十六条

 内閣は、天皇の決定を実行する。

 

第十七条

 内閣総理大臣は、内閣の活動を指揮し内閣に属する案件の策定及び審議の調整に配慮する。内閣総理大臣は閣議において案件の審議を指揮する。

 

第十八条

 内閣総理大臣に事故があるときは内閣総理大臣の代理に指定された大臣が、この大臣に事故があるときは最も在職年数の長い大臣が、内閣総理大臣の職責を遂行する。

 

第十九条

 内閣に属する案件は、閣議又は所管の省庁において決定される。閣議においては、広範な案件及び原則的に重要な案件並びにその重要性から閣議における決定が必要とされるその他の案件が決定される。内閣の決定権限を調整する基準については、法律で詳細を定める。

 

第二十条

 内閣の審議案件は、所管の省庁において策定されなければならない。

 

第二十一条

 内閣に案件の策定のため、政務委員会を置くことができる。

 

第二十二条

 閣議は、五人の構成員が出席する時に決定することができる。

 

第二十三条

 内閣総理大臣その他の国務大臣は、いつでも議案について発言するため議院に出席することができる。内閣総理大臣その他の国務大臣は、答弁又は説明のため議院から出席を求められたときは、職務の遂行上やむを得ない事情がある場合を除き、出席しなければならない。

 

 

第三章 省庁

 

第一条

 内閣に、必要な数の省庁を置く。各省庁は、その所管分野において内閣に属する案件の策定及び行政の適切な運営について責任を負う。

 

第二条

 省庁の長は、大臣とする。省庁の数の上限及びその設置の一般的な基準については、法律で定める。省庁の所管分野及び省庁間における案件の配分並びに内閣のその他の組織については、法律又は政令で定める。

 

第三条

 国家公務員の勤務条件に関する協約に立法府の同意が必要な場合には、議長評議会が立法府を代表して、これを承認する。

 

第四条

 内閣に、法制局長官及び副長官を附置する。これらの者は、天皇により任命され、優れた法律専門家でなければならない。さらに、天皇は、法制局長官に事故があるときにその職責を遂行する代理人を、五年以内の任期で任命する。副長官及びその代理人については、法制局長官に関する規定を準用する。

 

第五条

 内閣及び天皇の公務の適法性を監督することは、法制局長官の職責とする。また、法制局長官は、裁判所及びその他の公的機関並びに公務員、公法人の職員及び公的業務を遂行するその他の者が法律を遵守し、及びその義務を履行することを監督しなければならない。法制局長官は、その職責の遂行に当たって、基本権及び人権の実現を監督する。

 

第六条

 法制局長官は求めに応じ、天皇、内閣及び大臣に対して、法的問題に関する情報及び意見を提供しなければならない。

 

第七条

 法制局長官は、毎年、その公務及び法律の遵守に関する所見について、立法府及び内閣に報告書を提出する。

 

第八条

 法制局長官は、内閣若しくは大臣又は天皇の決定又は措置の合法性について指摘の必要を認めるときは、理由を付して指摘をしなければならない。当該指摘が顧慮されることなく放置された場合には、法制局長官は、その意見を内閣の議事録に記録させなければならず、また、必要なときは、その他の措置を講じなければならない。

 

 

第四章 枢密院

 

第一条

 枢密院は、枢密院官制の定めるところにより、天皇の諮問に応え、国務を審議する。但し、枢密院は、自ら法案を作成し可決する権利を有しない。

 

第二条

 枢密院の長である枢密院議長は、内閣の指名に基づき天皇が任命する。

 

第三条

 枢密院は、譲位について天皇の諮問を受ける。

  

第三条

 枢密院は、元号について天皇の諮問を受ける。

 

第四条

 枢密院は、天皇が長期に亘る故障によって摂政を置くべき場合の決定について、内閣の諮問を受け議決する。

 

第五条

 枢密院は、摂政または摂政たるべき者の順序の変更について、内閣の諮問を受け議決する。

 

第六条

 枢密院は、立法府召集について天皇の諮問を受ける。

 

第七条

 枢密院は、立法府の開会、延長、停会、衆議院の解散若しくは参議院の通常選挙の施行について天皇の諮問を受ける。

 

第八条

 枢密院は、華族の家督継承の認証について天皇の諮問を受け議決する。

 

第九条

 枢密院は、栄典の授与について天皇の諮問を受け議決する。

 

第十条

 枢密院は、天皇の結婚について立法府の諮問を受け議決する。

 

第十一条

 枢密院は、法律案及び法規命令案並びに立法府による条約の承認に係る提案について天皇の諮問を受ける。法律で定める場合には、諮問を省略することができる。

 

第十二条

 枢密院の構成員は、勅令により、終身で任命される。

 

第十三条

 枢密院の構成員は、自ら願い出ることにより解任される。

 

第十四条

 枢密院は、法律で指定された場合に構成員を停職し、又は解任することができる。

 

第十五条

 枢密院の構成員の、憲法に記載されていない法的地位に関する事項並びにその他の事項については法律で定める。

 

第十六条

 枢密院の組織、構成及び権限について憲法に別段の定めがないものは法律で定める。

 

 

第五章 常設の助言機関

 

第一条

 国の立法及び行政に関する事項についての常設の助言機関は、法律により又は法律に基づき、設置される。

 

第二条

 これらの機関の組織、構成及び権限については法律で定める。

 

第三条

 この章に規定する機関による助言は、法律で定める規則に従って公表される。

 

第四条

 提出された法律案についてなされた助言は、法律で定める例外を除き、立法府に提出される。

 

 

第七編 司法権に関する諸規則

 

 

第一章 司法権に関する大原則

 

第一条

 日本国に関する司法権は、司法府が有する。司法府は、立法府の制定した法令に異議を唱え、また解釈を要求する訴訟事例、被告人が法律違反を理由に告発された民事、刑事両方の訴訟の裁判に対し責任を負う。

 

第二条

 司法府は裁判所並びに付属する事務局からなる。

 

第三条

 司法府は、憲法と憲法に基づく法律に従う外はいかなる制約も受けず、他の機関の管轄を受けない。

 

第四条

 特別の定めのない民事・刑事の裁判訴訟は、司法権の管理下とする。

 

第五条

 非常若しくは臨時裁判所を設け、非常若しくは臨時裁判官を選任して臨時に司法権を行使することはできない。

 

 

第二章 裁判官

 

第一条

 天皇は、両議院の指名に基づき、大審院の長を任命する。

 

第二条

 天皇は大審院の長の推挙に基づき、法律で定める手続に従い大審院の裁判官を任命する。その他の裁判官の任命については、法律で定める。

 

第三条

 裁判官は、裁判所の判決によらずに失職を宣告されることはない。裁判官は、また、司法部門の再編による場合を除き、その同意なく他の職に異動させられてはならない。事務局に属する官吏もまたこれに準じる。

 

第四条

 裁判官は給与を与えられる職業・任務を兼ねることができない。立法府又は行政府の議員、官吏を兼ねることもできない。事務局に属する官吏もまたこれに準じる。

 

第五条

 定年又は職務遂行能力が失われた場合における裁判官の退職の義務については、法律で定める。

 

第六条

 裁判官の在職の基準については、法律で個別に定める。事務局に属する官吏もまたこれに準じる。

 

 

第三章 裁判所

 

第一条

 裁判所は、大審院及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する控訴院、地方裁判所、家庭裁判所及び区裁判所とする。

 

第二条

 行政裁判所は大審院、控訴院である。行政機関は、終審として裁判を行うことができない。

 

第三条

 軍事に関する裁判を行うため、法律の定めるところにより、下級裁判所として、軍事裁判所を設置する。軍事裁判所の決に不服がある場合は大審院に抗告を行える。

 

 

第四章 裁判

 

第一条

 裁判は民事、刑事の訴訟については、地方裁判所、家庭裁判所及び区裁判所に提訴を行える。地方裁判所、家庭裁判所及び区裁判所に提訴し決が下された訴訟は控訴院に控訴を行える。控訴院に控訴し決が下された訴訟は大審院に抗告を行える。

 

第二条

 裁判の対審及び判決は、公開法廷で行う。裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行うことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又は国民の権利が問題となっている事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。

 

第三条

 天皇は、個々の事案において、大審院から意見を得た上で、内閣に対し裁判所により科された刑又はその他の刑事制裁の全部又は一部について恩赦を提議することができる。但し、一般恩赦については、法律で定めなければならない。

 

 

第五章 大審院

 

第一条

 最上位の司法権は、民事事件及び刑事事件、行政法が適用される事件においては大審院が行使する。

 

第二条

 大審院は、その自らの管轄分野で司法を監督する。これらの裁判所は、立法作業の着手について内閣に提案をすることができる。

 

第三条

 大審院に、長官及び必要な数のその他の構成員を置く。

 

第四条

 大審院は、法律で個別に異なる構成人数を定める場合を除き、五人の構成員によって開廷することができる。

 

 

第六章 弾劾裁判所

 

第一条

 弾劾裁判所は、公務における違法な処置に関し、内閣の構成員若しくは法制局長官、大審院の構成員に対して提起される訴追を処理する。

 

第二条

 弾劾裁判所は、大審院長官を裁判長とするほか、大審院長官及び最も在職年数が長い控訴院長官三人並びに四年の任期で立法府が選挙した五人の構成員で構成される。

 

第三条

 弾劾裁判所の構成、開廷に必要な構成員数及び活動については、法律で詳細を定める。

 

 

第七章 検察庁

 

第一条

 検察官は、刑事について、公訴を行い、裁判所に法の正当な適用を請求し、且つ、裁判の執行を監督し、又、裁判所の権限に属するその他の事項についても職務上必要と認めるときは、裁判所に、通知を求め、又は意見を述べ、又、公益の代表者として他の法令がその権限に属させた事務を行う。

 

第二条

 検察官は、検事総長、次長検事、検事長、検事及び副検事とする。

 

第三条

 天皇は両議院の指名に基づいて検事総長を任命する。その他の検察官の任命については、法律で定める。

 

第四条

 検察官は、法律で定められた場合を除いては、その意思に反して、その官を失い、職務を停止され、又は俸給を減額されることはない。但し、懲戒処分による場合は、この限りでない。検察官は、また、検察庁の再編による場合を除き、その同意なく他の職に異動させられてはならない。検察事務局に属する官吏もまたこれに準じる。

 

第五条

 検察官は給与を与えられる職業・任務を兼ねることができない。立法府又は行政府の議員、官吏を兼ねることもできない。検察事務局に属する官吏もまたこれに準じる。

 

第六条

 定年又は職務遂行能力が失われた場合における検察官の退職の義務については、法律で定める。

 

第七条

 検察官の在職の基準については、法律で個別に定める。事務局に属する官吏もまたこれに準じる。

 

第八条

 検察庁は、検察官の行う事務を統括するところとし、最高検察庁、高等検察庁、地方検察庁及び区検察庁で構成される。

 

第九条

 最高検察庁は大審院に、高等検察庁は控訴院に、地方検察庁は各地方裁判所に、区検察庁は区裁判所にそれぞれ対応してこれを置く。地方検察庁は、各家庭裁判所にも、それぞれ対応するものとする。

 

第十条

 検察庁の組織、構成及び権限については法律で定める。

   

 

第七章 法律の監督

 

第一条

 裁判所の審理に付されている事件において、法律の規定を適用することが明らかに憲法に反する場合には、裁判所は憲法の規定を優先しなければならない。

 

第二条

 命令又は法律よりも下位のその他の法令の規定が憲法又はその他の法律に反する場合には、裁判所又はその他の公的機関においてこれを適用してはならない。

 

 

第八編 安全保障

 

 

第一章 日本国の安全保障に関する政府の義務

 

第一条

 日本国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない。

 

第二条

 日本国は、国外において緊急事態が生じたときは、在外国民の保護に努めなければならない。

 

 

第二章 侵略戦争の放棄

 

第一条

 日本国は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、他国民の自由に対する攻撃の手段としての戦争及び国際紛争を解決する手段としての戦争を放棄する。諸国民の平和的な共同生活を妨げ、とりわけ侵略戦争の遂行を準備するのに手助けとなり、かつそのような意図をもってなされる行為は、憲法違反である。

 

第二条

 日本国は、自らの平和と独立を守り、その安全を保つため、自衛のための軍隊を持つことができる。

 

第三条

 日本国は、国家間の平和と正義を保障する体制に必要ならば、他の国々と同等の条件の下で、軍隊の制限に同意する。

 

第四条

 日本国は、国家間の平和と正義を保障する目的を持つ国際組織を支援する。

 

 

第三章 国防軍の保有と運用

 

第一条

 日本国の軍は、日本国の防衛及び利益の保護並びに国際的な法秩序の維持及び促進のために存在する。

 

第二条

 日本国の軍は、政治的問題における中立性を保持し統制に服する。

 

第三条

 天皇は内閣の輔弼を受け自衛のための軍を統帥する。

 

第四条

 天皇は軍の指揮権を内閣総理大臣に委託する。

 

第五条

 内閣総理大臣は軍務を主管する国務大臣に指揮権を委任することができる。

 

第六条

 軍務を主管する国務大臣には不名誉除隊者を除く佐官以上の退役武官が就任する。但しその席が空白の場合はその罷免権を持つ内閣総理大臣が兼任する。

 

第七条

 軍の編成と予算は法律をもって定める。

 

 

第九編 会計に関する諸規則

 

 

第一章 会計に関する大原則

 

第一条

 新たに租税を課し、及び税率を変更するときは、法律でこれを定めなければならない。ただし、報償に属する行政上の手数料及びその他の収納金については、この限りではない。

 

第一条の二

 国債を起こし、及び、予算に定めたものを除き、国庫の負担となる契約をなすには、立法府の議決を経なければならない。

 

第二条

 現行の租税は、更に法律をもってこれを改めない限りは、旧来通りに徴収する。

 

第三条

 立法府は、法律で会計年度を定める。

 

第四条

 国税については、納税義務及び納税額の基準並びに納税義務者の法による保護に関する規定を含め、法律で定める。

 

第五条

 国の機関の公務、サービス及びその他の業務の手数料負担及び手数料額の一般的な基準については、法律で定める。

 

第六条

 通貨並びに度量衡の制度は国家の専決事項である。制度の詳細については法律で定める。

 

第七条

 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

  

 

第二章 国家予算

 

第一条

 立法府は、一会計年度につき1 回、国の予算を議決し、国の予算は法令集において公示される。

 

第二条

 予算の政府の提案及びこれに関連するその他の政府の提案は、会計年度の開始前の適切な時期に立法府の審議に付される。

 

第三条

 立法府議員は、予算案を受けて、予算発議により、国の予算に組み入れる経費又はその他の決定の提案をすることができる。

 

第四条

 国の予算は、立法府の財務委員会がその報告書を提出した後、本会議における一回の審議において承認される。立法府における予算案の審議については、議事規則で詳細を定める。

 

第五条

 国の予算の公示が会計年度を越えて遅れる場合には、立法府が定める方法により、政府の予算案が予算として暫定的に遵守される。

 

第六条

 国の予算には、歳入の見積及び歳出に充てる経費並びに経費の使途及びその他の予算の根拠が組み入れられる。相互に直接関連する収入及び支出について、それらの差額に相当する収入見積又は経費を予算に計上することができる旨を法律で定めることができる。

 

第七条

 予算に計上される収入見積は、予算に計上される経費を満たさなければならない。経費の充当に際しては、法律で定めるところにより、国の決算における余剰又は不足を考慮することができる。

 

第八条

 相互に関連する収入及び支出に対応する収入見積及び経費は、法律で定めるところにより、複数の会計年度の予算に計上することができる。

 

第九条

 経費は、確定経費、概算経費又は繰越経費として国の予算に計上される。法律で定めるところにより、概算経費は、超過することができ、また、繰越経費は、会計年度の後で使用するために繰り越すことができる。法律で認められている場合を除き、確定経費及び繰越経費は、超過することができず、確定経費は、繰り越すことができない。

 

第十条

 経費は、予算において認められている場合を除き、別の予算項目に移してはならない。ただし、使途が密接に関連する項目に経費を移すことは、法律で認めることができる。

 

第十一条

 翌会計年度以降の予算に必要な経費が計上される支出を会計年度の間に約束する権限は、金額及び使途を限定して、予算において付与されることができる。

 

第十二条

 予算を変更することに正当な必要がある場合には、政府の補正予算案が立法府に提出される。

 

第十三条

 立法府議員は、補正予算案に直接関連する予算の修正のために予算発議を行うことができる。

 

第十四条

 国の継続的な任務の遂行に当然に必要とされる場合には、国の基金を予算外に置くことについて法律で定めることができる。予算外の基金の設置又は当該基金若しくはその使途の本質的な拡張を目的とする法律案の可決には、立法府において総議員の五分の三以上、且つ有効投票の三分の二以上の多数を必要とする。

 

第十五条

 何人も、法的にその者に帰属するものを、予算に関わりなく国から受け取る権利を有する。

 

 

第三章 国家財産

 

第一条

 国営企業の業務及び財務の一般的な基準については、法律で定める。国営企業に関する収入見積及び経費は、法律で定める範囲内でのみ計上される。立法府は、予算の審議に関連して、国営企業の主要な事業目標及びその他の業務目標を承認する。

 

第二条

 国が支配権を有する民間会社において国が株主権を行使する際の権限及び手続については、法律で定める。同様に、国が会社における支配権を取得し、又は放棄することに立法府の同意が必要とされる場合についても、法律で定める。

 

第三条

 国の不動産は、立法府の同意又は法律で定めるところによってのみ譲渡することができる。

 

 

第四章 会計検査院

 

第一条

 会計検査院は、国の収入及び支出の検査に責任を有する。

 

第二条

 国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査する。内閣は年度の中間期と次の年度にその検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。

 

第三条

 会計検査院の構成員は、自ら願い出ることにより、及び法律で定める年齢に達したことを理由として、解任される。

 

第四条

 法律で指定された場合には、最高裁判所は、会計検査院の構成員を停職し、又は解任することができる。

 

第五条

 会計検査院の組織、構成及び権限については法律でこれを定める。

 

第六条

 会計検査院の構成員の法的地位に関するその他の事項については法律でこれを定める。

 

 

第十編 国土保全

 

 

第一章 国土保全に関する大原則

 

第一条

 自然及びその多様性、環境並びに文化遺産に対する責任は、何人にも帰属する。

 

第二条

 何人も環境状態を配慮する義務があり、自らの責任で招いた環境の悪化に対し責任を負う義務がある。この責任の原則は、法律で定める。

 

第三条

 立法府並びに行政府は、国土の居住適性並びに生活環境の保護及び改善に努めなければならない。この目的を達成する為、適切な法令を制定し施行しなければならない。

 

第四条

 地方自治体は、法令に基づき、自治体の居住適性並びに生活環境の保護及び改善に努めなければならない。

 

第五条

 国、地方自治体を問わず公的機関は、国民の健康の増進のための措置を講じなければならない。

 

第六条

 国、地方自治体を問わず公的機関は、十分な居住機会の促進に配慮しなければならない。

 

第七条

 国、地方自治体を問わず公的機関は、社会的及び文化的な発展並びに余暇活動のための条件を創出しなければならない。

 

第八条

 国、地方自治体を問わず公的機関は、日本国古来から受け継ぐ文化及び遺産を保護しその価値を守り高めなくてはならない。

 

第九条

 国、地方自治体を問わず公的機関は、何人に対しても、健康な環境に対する権利及び自らの生活環境に関する決定に影響力を及ぼす機会を保障するように努めなければならない。

  

 

第二章 土地の利用と制限

 

第一条

 立法府並びに行政府は、国土保全並びに都市計画について法律を制定し、無秩序な開発を抑制しなければならない。

 

第二条

 地方自治体は、法律に基づき都市計画を作成し施行しなければならない。

 

 

第三章 農業

 

第一条

 国、地方自治体を問わず公的機関は、農業が持続可能な市場志向の生産により、住民への供給の保障、自然的な生活基盤の維持及び農村風景の保存、国土における人口分散に本質的に寄与するように配慮する。

 

第二条

 国、地方自治体を問わず公的機関は、農業に通常求めることができる共助措置を補完して、及び必要な場合には経済的自由の原則から逸脱して、行政府は、土地耕作の農業経営を促進する。

 

第三条の一

 国、地方自治体を問わず公的機関は、農業が多機能的な任務を果たすように措置を講じなければならない。

 

第三条の二

 地方自治体を問わず公的機関は、生態学的な要求を満たしていることの証明を条件として、提供された給付に見合う報酬を支払い農家の収入を補完しなければならない。

 

第三条の三

 国、地方自治体を問わず公的機関は、経済的な利益をもたらす刺激策により、特に自然に調和し、環境及び動物に配慮した生産形態を促進するように努めなければならない。

 

第三条の四

 国、地方自治体を問わず公的機関は、食料品の生産地、品質、生産方法及び加工方式の明示について法令を制定し、地域の伝統に基づいた作物を保護し、又はこれを用いた名産品又は特産品を保護するように努めなければならない。

 

第三条の五

 国、地方自治体を問わず公的機関は、肥料や薬品の濫用による侵害から国土と住民を保護する法令を定めなければならない。

 

第三条の六

 国、地方自治体を問わず公的機関は、農業に関する研究、相談及び教育を促進し投資を支援するよう努めなければならない。

 

第三条の七

 国、地方自治体を問わず公的機関は、農家の土地所有の強化のための法令を制定しなければならない。

 

第四条

 立法府並びに行政府は、使途を特定した農業分野の資金及び一般財源を用いることができる。

 

第五条

 消費者は、農業に関する理解を深め、農業に関する消費生活の向上に積極的な役割を果たすものとする。

 

 

第四章 林業

  

第一条

 国、地方自治体を問わず公的機関は、森林及び林業に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、林業従事者の生活の安定向上及び国民経済の健全な発展を図らなければならない。

 

第二条

 国、地方自治体を問わず公的機関は、森林について森林の有する多面的機能が持続的に発揮されることが国民生活及び国民経済の安定に欠くことのできないものであることにかんがみ、その適正な整備及び保全が行われるよう法律を定める。

 

第三条

 国、地方自治体を問わず公的機関は、定住の促進等による山村の振興が図られるよう配慮する。山林は多様性と収益性を両立させなければならない。

 

第四条

 国、地方自治体を問わず公的機関は、森林開発の基本計画を制定しなくてはならない。

 

第五条

 国、地方自治体を問わず公的機関は、林業の持続的かつ健全な発展に努め、地域の伝統に基づいた作物を保護し、又はこれを用いた名産品又は特産品を保護するように努めなければならない。

 

第六条

 国、地方自治体を問わず公的機関は、林産物の供給及び利用の確保に対し法令を定めなければならない。

 

第七条

 国、地方自治体を問わず公的機関は、林業従事者の土地所有の強化のための法令を制定しなければならない。

 

第八条

 消費者は、林業に関する理解を深め、木材加工品に関する消費生活の向上に積極的な役割を果たすものとする。

 

 

第五章 水産業

 

第一条

 国、地方自治体を問わず公的機関は、水産業について水産物を供給する使命を有するものであることにかんがみ、その健全な発展を図らなければならない。

 

第二条

 水産物は、健全な食生活その他健康で充実した生活の基礎として重要なものであることにかんがみ、将来にわたって、良質な水産物が合理的な価格で安定的に供給されなければならない。水産物の供給に当たっては、水産資源が生態系の構成要素であり、限りあるものであることにかんがみ、その持続的な利用を確保するため、水産資源の適切な保存及び管理が行われるとともに、環境との調和に配慮しつつ、水産動植物の増殖及び養殖が推進されなければならない。

 

第三条

 水産業の発展に当たっては、漁村が漁業者を含めた地域住民の生活の場として水産業の健全な発展の基盤たる役割を果たしていることにかんがみ、生活環境の整備その他の福祉の向上により、その振興が図られなければならない。

 

第四条

 国、地方自治体を問わず公的機関は、水産に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、水産基本計画を定めなければならない。

 

第五条

 国、地方自治体を問わず公的機関は、水産に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。水産に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

 

第六条

 消費者は、水産に関する理解を深め、水産物に関する消費生活の向上に積極的な役割を果たすものとする。

 

 

第十一編 地方自治

 

 

第一章 地方自治体の権限

 

第一条

 地方自治体は法律で廃止、合併及び新設することができる。但し、廃止、合併及び新設の権限は日本国政府に有り、その地方自治体の住民の投票においてその総有権者数の二分の一以上の同意を得なければならない。

 

第二条

 地方自治体の境界の変更については法律で定める。 

 

第三条

 地方自治体について、その内部事項に関する規則の制定及び執行の権限は、その行政機関に委ねられる。

 

第四条

 地方自治体に対し、法律により又は法律に基づき、行政機関の規則の制定及び執行を要求することができる。

 

第五条

 地方自治体の首長は、立法府の奏上に基づき天皇が任命する。

 

第六条

 地方自治体の首長は自治体の行政機関の一部をなす。

 

第七条

 地方自治体の首長が政府により発せられる職務上の指示の執行に責任を有することを、法律で定めることができる。

 

第八条

 地方自治体の最高機関は議会とする。その会議は、法律で定める例外を除き、公開とする。

 

第九条

 地方自治体議会は、憲法又は法令が定める例外を除き、地方自治体の条例を定める。

 

第十条

 地方自治体が内部事項に関する規則の制定及び執行の権限を他の機関に対し付与することは、合併及び新設の場合を除き、地方自治体議会によってのみ行うことができる。

 

第十一条

 地方自治体議会の議員は、その地方自治体議会の住民である国民であって、法律で定められた選挙に適用される要件を満たすものにより、直接選挙される。議員の資格についても、同一の要件が適用される。

 

第十二条

 地方自治体議会の議員は、法律により定める範囲内において、単一の選挙区で二つ以上の候補を選択する制度に基づいて選挙される。

 

第十三条

 地方自治体議会の議員選挙は、秘密投票により行われる。

 

第十四条

 地方自治体議会の議員選挙は、選挙区で有権者数の四分の一以上の無効投票があるときは無効となりその選挙区では再度の選挙を行わねばならない。再選挙については法律でこれを定める。

 

第十五条

 地方自治体議会の議員選挙及び選挙権に関するその他の全ての事項については、憲法に別段の定めがない限り法律で定める。

 

第十六条

 地方自治体の議会の議員の妊娠及び出産並びに病気を理由とする一時的な代理については法律で定める。

 

第十七条

 地方自治体議会の任期は、法律で定める例外を除き、四年とする。

 

第十八条

 地方自治体議会議員と立法府議員に同時に就くことはできない。

 

第十九条

 地方自治体議会議員資格と同時に遂行することができない職の種類については法律で定める。法律は、親族関係又は婚姻から議員資格への障害が生ずること及び法律で指定された行為を行うことにより議員資格を喪失し得ることを定めることができる。

 

第二十条

 地方自治体議会議員は、指示を受けることなく投票する。

 

第二十一条

 地方自治体の組織並びにその運営機関の構成及び権限については法律で定める。

 

第二十二条

 地方自治体の運営機関により課することができる租税の種類並びに地方自治体と国の財政関係については法律で定める。

 

第二十三条

 地方自治体が法律により又は法律に基づき要求された規則の制定及び執行を行わない場合の措置については法律で定める。地方自治体の運営機関がその職務を著しく怠っている場合には、法律で措置を講ずることができる。

 

 

第十二編 雑則

 

 

第一章 法律・栄典

 

第一条

 法律は、個別法において特定の事項について定める権限を除き、民法、刑法、民事訴訟法及び刑事訴訟法、商法、その他必要な事項に付いて定める。

 

第二条

 法律は、行政法の一般的な規則を定める。

 

第三条

 法律は、公務員の法的地位について定める。法律は、さらに、公務員の労働の際の保護及び共同決定に関する規則を定める。

 

第四条

 栄典は、国家・公共に対し功労のある人を幅広く対象とする。叙勲は、人を評価するものではなく国家・公共に対する功績の大きさを評価するものである。叙位は、国家・公共に対して功績があった者に「位」を授与する。「位」は、宮中の席次を決定する。勲章は、法律で制定される。

 

 

第二章 公務

 

第一条

 公務員は、その公務の適法性について責任を負う。公務員は、また、合議制の機関の決定であって、当人が当該機関の構成員として支持したものについて責任を負う。

 

第二条

 公務の提案者は、その提案に基づき決定されたことについて責任を負うが、その者が当該決定に異議をとどめた場合は、この限りでない。

 

第三条

 公務員又は公的業務を遂行するその他の個人の違法な作為又は不作為により、権利侵害又は損害を被った全ての者は、法律で定めるところにより、当該公務員等を刑に処すること及び公法人又は公務員若しくは公的業務を遂行するその他の者からの損害賠償を要求する権利を有する。ただし、この項に規定する訴追権は、訴追が憲法に基づき弾劾裁判所において処理される場合には、認められない。

 

第四条

 特定の公職又は公的任務には、日本国民のみが任命されることができる旨を法律で定めることができる。公職の一般的な任命基準は、技能、能力及び証明された国民としての適性とする。

 

第五条

 内閣は、省又はその他の公的機関の職責と規定されていない国家職への任命を行う。

 

第六条

 天皇は公共の利益を考慮して、宮廷を組織する。宮廷の事務は宮内府が行う。その責任者として宮内府の長を任命し職務に任ずる。宮内府の長は、大臣とする。

 

第七条

 職業及び産業に関する公的団体及びその他の公的団体は、法律により又は法律に基づき設立し、又は廃止することができる。

 

第八条

 法律は、当該団体の任務及び組織、その運営機関の構成及び権限並びにその会議の公開について定める。法律により又は法律に基づき、その運営機関に対して規則制定権を付与することができる。

 

第九条

 法律は、当該運営機関の監督について定める。当該運営機関の決定の破棄は、違法であること又は一般の利益に反することを理由としてのみ行うことができる。

 

第十条

 法律は、二以上の公的団体が関係する問題について措置するための規則を定める。その際には、新たな公的団体の設立の措置を講ずることができる。新たな公的団体は法律により又は法律に基づき設立し、又は廃止することができ、運営機関に対して規則制定権を付与することができる。

 

第十一条

 公的団体間の紛争は、当該紛争が司法権の審査に服する場合又はその解決が法律で他に委ねられている場合を除き、立法府の議決により解決される。

 

 

第十三篇 最高法規

 

 

第一章 憲法の最高法規性

 

第一条

 この憲法は、日本国の最高法規であり、日本国に居住する全ての民はこれを遵守しなければならない。

 

第二条

 天皇は即位に際し、この憲法に対する忠誠及びその職務の誠実な執行を宣誓し誓約する。誓約に関する手続は、皇室典範に定める。

 

第三条

 内閣総理大臣及び国務大臣並びに副大臣及び政務委員会委員、又、法制局長官及び副長官は就任に際して、憲法に対する忠誠及びその職務の誠実な執行を宣誓し誓約する。法律は、より詳細な規則を定める。

 

第四条

 行政府及び立法府並びに司法府に所属するすべての公務員、又は地方自治体に属する全ての公務員がその職に就いたときは、就任に際して、憲法に対する忠誠及びその職務の誠実な執行を宣誓し誓約する。法律は、より詳細な規則を定める。

 

第五条

 この憲法は、国の最高法規であって、現行の法令はこの憲法に矛盾しない限り、法律、規則、命令又は何らの名称を用いているに関わらず、すべて遵守すべき効力を有する。日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。

  

 

第十四編 憲法改正の原則

 

  

第一章 憲法改正の原則

 

第一条

 憲法は、両議院の何れかが選挙などにより機能を停止している間、これを審議し採決する事は出来ない。

  

第二条

 領土の一体性が侵害されているときは、いかなる改正手続も、着手され、あるいは継続されることはできない。

 

第三条

 皇室典範の改正は、立法府の議決を経る必要はない。皇室典範をもって憲法の条規を変更することはできない。

 

第四条

 この憲法に定められている手続きに依らずに、憲法の条規を変更する事は出来ない。変更された条規は効力を有しない。

 

  

第二章 改正に関わる諸手続き

 

第一条

 憲法改正の法案については、内閣の発議、衆議院の憲法に定められた議員定数の五分の三以上の議員の賛同又は参議院の憲法に定められた議員定数の三分の一以上の賛同により衆議院の憲法委員会に提出できる。

 

第二条

 憲法改正は、衆議院の憲法委員会の審査及び決議を経た後に、衆議院本会議の可決と、衆議院の可決後六十日以内に参議院の憲法委員会の審査及び決議を経た後に、参議院本会議により同じ文言で決議された法律により行われ、憲法改正の詔勅の発布後、国民投票に掛けられる。

 

第三条

 憲法改正に関する法律について衆議院は、憲法に定められた議員定数の五分の四以上の出席の下で三分の二以上の賛成により決議する。衆議院において否決された法案は廃案となる。

 

第四条

 憲法改正に関する法律について参議院は憲法に定められた議員定数の五分の四以上の出席の下で三分の二以上の賛成により決議する。参議院において否決された法案は廃案となる。

 

第五条

 憲法改正に関する法律については参議院の議決後、天皇の認証の後に憲法改正の詔勅を発布し、選挙権を有する国民による投票を行う。

 

第六条

 憲法改正に関する法律が国民投票の結果、五分の四以上の賛成を得た場合、憲法改正に関する法律は承認されたとみなし、天皇は直ちに憲法が改正されたことを公布する。

 

第七条

 憲法改正に関する法律が国民投票の結果否決された場合、衆議院は即時解散し、新たな衆議院議員の選出を行う。

 

第八条

 前条の規定により新たに選出された衆議院議員は、憲法改正に関する法律について同一の内容で決議を行ってはならない。

  

 

第二章 経過規定

 

第一条

 旧華族令の廃止と新華族令の施行に伴い既存の華族で新華族令上の華族に該当しない家は華族の地位を失う。但し、憲法施行の際現に華族の地位にある者については、その地位は、その生存中に限り、これを認める。将来、華族の地位にあったことにより、いかなる政治的権力も有しない。

 

第二条

 憲法が発効する以前に選出もしくは任命された公権力機関及びその構成に入る者の憲法上の任期は、憲法発効の日に効力のある規則に定められた期間の終了と共に終了する。

 

第三条

 憲法発効日の前に選出された貴族院議員で法律で定められた年齢未満の貴族院議員は、選出された任期の終了まで参議院議員の地位を維持する。

 

第四条

 衆議院議員もしくは参議院議員の地位とその他の兼職の禁止が該当する職務の兼職は、憲法発行の日より1ヶ月後に議員の地位を喪失をもたらす。但し、衆議院議員もしくは参議院議員がその職務を従前に辞職もしくは離職すればこの限りではない。

 

第五条

 憲法は、公布の日から六箇月後に発効する。

  

 

 




 

 

参考・皇室典範法制定案(昭和二十一年案 廃案)

 

 未曽有の改革に依り、憲法施行に際し、皇室典範を議会の議に諮り、以て皇室典範を法律と為す。

 

第一章 皇位継承

 

 

第一条

 日本国の皇位は祖宗の皇統であり、男系の男子がこれを継承する。皇祚を践むのは皇胤の男系に限る。皇祚は一系であり分裂してはならない。

 

第二条

 皇位は天皇の長男に伝える。天皇の長男がいない時は、長男の子に伝える。長男及びその子孫がいない時は、天皇の次男及びその子孫に伝える。以下すべて之を例とする。

 

第二条の二

 皇子孫が皇位を継承するのは、嫡出子が優先される。皇庶子孫が皇位を継承するのは、皇嫡子孫が絶えた時に限る。

 皇子孫が絶えた時は、皇兄弟及び其の子孫に伝える。

 皇兄弟及び其の子孫が絶えた時は、皇伯叔父及び其の子孫に伝える

 皇伯叔父及び其の子孫が絶えた時は、それ以外の最も近親の男系皇族に伝える。

 嫡出の皇女およびその直系に受け継がれる。

 以上の血統の者がいないときは、庶皇女に受け継がれる。

 もしも以上の血統の者がいなければ、立法院の議決によって皇族の中より後継者を定める。

 兄弟以上は同等内において嫡子を優先し庶子を後にし、年長者を先に年下を後にする。

 

第三条

 天皇が精神もしくは身体に不治の重患を発し、又はその任を全うできないと断じ自ら退位を希望した時は、皇族会議及び枢密顧問に諮問し、退位を行う事が出来る。

 

第四条

 皇嗣に精神もしくは身体に不治の重患があり、又は重大な事故がある時は、皇族会議及び枢密顧問に諮問し、前数条により継承の順序を換えることが出来る。

 

第五条

 女性天皇の皇配は天皇の権限に干渉することができない。皇配の親族血族もまた同様である。

 

 

第二章 退位並びに践祚即位

 

 

第一条

 天皇が退位若しくは崩御されたときは皇嗣は、直ちに践祚し祖宗の神器を継承する。

 

第二条

 天皇が退位された時は退位の礼を行う。

 

第三条

 天皇が崩じたときは大喪の礼を行う。

 

第四条

 皇嗣が践祚した時は即位の礼を行う。

 

第五条

 即位の礼及び大嘗祭は京都で行う。

 

第六条

 践祚の後に元号を建てて、一世の間に再び改めない事は、明治元年の定制に従う。

 

 

第三章 成年立后立太子

 

 

第一条

 天皇及び皇太子、皇太孫は、満十八歳で成年とする。

 

第二条

 前条以外の皇族は、満二十歳を成年とする。

 

第三条

 退位した天皇は、上皇とするものとする。

 

第四条

 上皇の后は、上皇后とするものとする。

 

第五条

 世継である皇子を皇太子とする。皇太子がいない時は、世継ぎである皇孫を皇太孫とする。

 

第六条

 皇后・皇太子・皇太孫を立てる時は、詔書をもってこれを公布する。

 

 

第四章 敬称 

 

 

第一条

 天皇・上皇・太皇太后・皇太后・上皇后・皇后の敬称は陛下とする。

 

第二条

 皇太子・皇太子妃・皇太孫・皇太孫妃・親王・親王妃・内親王・王・王妃・女王の敬称は殿下とする。

 

 

第五章 摂政 

 

 

第一条

天皇が成人に達しない時、又は天皇が長期間に亘る故障によって、大政を自ら行う事が出来ない時は、皇族会議及び枢密顧問の議を経て摂政を置く。

 

第二条

 摂政は、成年に達した皇太子又は皇太孫をこれに任命する。

 

第三条

 皇太子・皇太孫がいない場合、又は未成年である時は左の順序により摂政に任命する。

 第一 親王及び王

 第二 皇后

 第三 皇太后

 第四 太皇太后

 第五 内親王及び女王

 

第四条

 皇族男子を摂政に任じるのは、皇位継承の順序に従う。それは女子に於いても之に準じる。

 

第五条

 皇族女子を摂政に任ずる場合、配偶者がいない者に限る。

 

第六条

 最近親の皇族が未だ成年に達しないか、又はその他の事故により他の皇族を摂政に任じた時は、後に最近親の皇族が成年に達し又は事故が既に除かれても、皇太子及び皇太孫に対する以外は、摂政の任を譲る事はない。

 

第七条

 摂政又は摂政たるべき者が精神もしくは身体に重大な病気があり、又は重大な事故のある時は、皇族会議及び枢密顧問の議を経て其の順序を換える事が出来る。

 

第八条

 摂政となる順位にあたる者が、成年に達しないため、又は前条の故障があるために、他の皇族が、摂政となったときは、先順位にあたっていた皇族が、成年に達し、又は故障がなくなったときでも、皇太子又は皇太孫に対する場合を除いては、摂政の任を譲ることがない。

 

第九条

 摂政を置く事由がなくなったは、皇族会議及び枢密顧問の議により摂政を廃する。

 

第十条

 摂政は、その在任中、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は、害されない。

 

 

第六章 太傅

 

 

第一条

 天皇が成年に達しないときは、太傅を置き保育を掌らせる。

 

第二条

 太傅は専ら保育教導の任に止まり、大政に関与する事は無く、摂政は大政を摂行するが保導及び天皇の私事に干渉しない。

 

第三条

 先帝が遺命により太傅を任命しないときは、摂政が皇族会議及び枢密顧問に諮詢し、これを選任する。

 

第四条

 太傅は摂政及びその子孫をこれに任ずることは出来ない。

 

第五条

 摂政は皇族会議及び枢密顧問に諮詢した後で無ければ、太傅を退職させることが出来ない。

 

 

第七章 皇族

 

 

第一条

 皇族と称するのは、上皇・太皇太后・皇太后・上皇后・皇后・皇太子・皇太子妃・皇太孫・皇太孫妃・親王・親王妃・内親王・王・王妃・女王をいう。内親王・女王というのは、未だ結婚していない女王をさす。

 

第二条

 皇子より皇玄孫に至るまでは、男を親王、女を内親王とし、五世以下は男を王、女を女王とする。六世以下は男嫡子と男嫡子孫を除き姓を得て皇族の身分を離れる。

 

第三条

 天皇が支系より入って大統を受け継いだ時は、天皇の皇兄弟姉妹の王・王女は特に親王・内親王の号を宣賜する。 

 

第四条

 皇族の誕生・命名・婚嫁・薨去は宮内大臣がこれを公告する。

 

第五条 

 天皇及び皇族の身分に関する事項は、これを皇統譜に登録する。

 

第六条

 天皇・上皇・皇后・上皇后・太皇太后及び皇太后を葬る所を陵、その他の皇族を葬る所を墓とし、陵及び墓に関する事項は、これを陵籍及び墓籍に登録する。

 

第七条

 皇統譜及び前条に関する記録は、図書寮に於いて保管する。

 

第八条

 皇族は天皇がこれを監督する。

 

第九条

 摂政在任の時は、前条の事を摂行する。

 

第十条

 皇族男女が幼年で父親が居ない者に対して、宮内の官僚に命じて保育を掌らせることは宣下により、天皇は其の父母の選挙する後見人を認可し又はこれを勅撰すべし。

 

第十一条

 皇族の後見人は、成年以上の皇族に限る。

 

第十二条

 皇族の結婚相手は、同族又は勅旨により特に認許された華族に限る。

 

第十三条

 皇族の結婚は、勅許による。

 

第十四条

 皇族の結婚を許可する勅書は、宮内大臣がこれに副署をする。

 

第十五条

 皇族は同族を除き養猶子を取る事が出来ない。

 

第十六条

 皇族が国外に私的に旅行しようとする時は、勅許を請わなければならない。

 

第十七条

 皇族女子が皇族以外の者と結婚した場合は、皇族の身分から外れる。但し、特旨によりその内親王・女王の呼称を持つ場合がある。その子孫は女子が皇后となる場合及び皇族男子と婚姻する場合を除いては、皇族となることがない。

 

第十八条

 年齢二十年以上の内親王、王及び女王は、その意思に基づき皇族会議及び枢密顧問の議により、皇族の身分を離れることができる。

 

第十九条

 皇太子及び皇太孫を除く親王、内親王、王及び女王は、やむを得ない特別の事由があるときは、皇族会議及び枢密顧問の議により、皇族の身分を離れる。

 

第二十条

 皇族の身分を離れる親王又は王の妃並びに直系卑属及びその妃は、他の皇族と婚姻した女子及びその直系卑属を除き、同時に皇族の身分を離れる。但し、直系卑属及びその妃については、皇族会議及び枢密顧問の議により、皇族の身分を離れないものとすることができる。

 

第二十一条

 皇族以外の女子で親王妃又は王妃となった者がその夫を失ったときは、勅許により皇族の身分を離れることができる。

 

第二十二条

 皇族以外の女子で親王妃又は王妃となった者が、離婚したときは皇族の身分を離れる。

 

第二十三条

 皇族以外の者及びその子孫は、女子が皇后となる場合及び皇族男子と婚姻する場合を除いては、皇族となることがない。

 

第二十四条

 皇族の身分を離れた女系の子孫は、女子が皇后となる場合及び皇族男子と婚姻する場合を除いては、皇族となることがない。

 

 

第八章 世伝御料 

 

 

第一条

 土地・物件で世伝御料と定めた物は、皇族会議及び枢密顧問の議の依らざるときは分割・譲与する事は出来ない。

 

第二条

 世伝御料に編入する土地・物件は枢密顧問に諮詢し、勅書を以てこれを定め、宮内大臣がこれを公告する。皇室の常産に編入された物は、更に分離して私産とする事が出来ない。

 

 

第九章 皇室経費 

 

 

第一条

 皇室における諸般の経費は、特に常額を定めて国庫より支出させる。

 

第二条

 皇室経費の予算・決算・検査及びその他の規則は、皇室会計法の定める所による

 

 

第十章 皇族訴追及懲戒

 

 

第一条

 皇族相互の民事訴訟は、勅旨により宮内省において裁判員を命じ裁判をさせ、勅裁を経てこれを執行する。

 

第二条

 人民より皇族に対する民事の訴訟は、大審院でこれを裁判する、但し皇族は、代人を立てて訴訟に当たらせ、自ら裁判に出る必要は無い。

 

第三条

 皇族は勅許を得るので無ければ、拘引し又は裁判所に召喚する事は出来ない。

 

第四条

 皇族に其の品位を辱める所行があり、又は皇室に対し忠順を欠く時は、勅旨を以てこれを懲戒し、その懲戒の重い者は皇族特権の一部、又は全部を停止若しくは剥奪する。

 

第五条

 皇族に蕩産の所行がある時は、勅旨を以て治産の禁止を宣告し、その管財者を任ず。

 

第七条

 前二条は皇族会議に諮詢した後に、これを勅裁する。

 

 

第十一章 皇族会議

 

 

第一条

 皇族会議は成年以上の皇族男子八人、枢密院及び衆議院、参議院の議長及び副議長、内閣総理大臣、内閣総理大臣が任命する国務大臣二人、宮内大臣並びに大審院長及びその他の裁判官一人を以て、これに充てる。

 

第二条

 議員となる皇族及び大審院長以外の裁判官は、各々成年に達した皇族又は大審院長以外の裁判官の互選による。

 

第三条

 天皇は皇族会議に親臨し統理する。自ら統理を行わない時は、内閣総理大臣が議長を務める。

 

第四条

 皇室会議は、皇族男子五人を含む十二人以上の議員の出席がなければ、議事を開き議決することができない。

 

第五条

 議員は、自分の利害に特別の関係のある議事には、参与することができない。

 

第六条

 皇室会議に、予備議員十人を置く。

 

第七条

 議員に事故のあるとき、又は議員が欠けたときは、その予備議員が、その職務を行う。

 

第八条

 予備議員の員数は、各々その議員の員数と同数とする。

 

第九条

 予備議員の選出は別に法令を定める。

 

 

第十二章 補足

 

 

第一条

 現在の皇族五世以下で親王の号を宣賜した者は、旧による。

 

第二条

 皇位継承の順序は、総て実系による。現在、皇養子・皇猶子又は他の継嗣であることをもって、これが混乱する事は無い。

 

第三条

 親王・内親王・王・女王の品位は、これを廃止する。

 

第四条

 皇族の財産・歳費・諸規則は、別にこれを定める。

 

第五条

 将来、この典範の条項を改正し、又は増補すべき必要がある時は、皇族会議及び枢密顧問に諮詢してこれを勅定する。

 

 

結論

 衆議院における審議により賛成少数により法案化は否決。

 

主旨

 皇室典範は皇室が自ら皇室の事を定め、言わば家範に過ぎない。君民相互の権利義務に亘るものではなく、個々の家範に対し介入することは議会の役割ではない。

 




100%趣味です。
2年越しの完成品なので、埋もれさせるのももったいないのでここにあげました。

疑問点があったり矛盾点を見つけたら是非感想欄かメッセージで!

誤字、脱字、誤用、変な改行等、見つけたらよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

鎮守府と艦娘について

世界観が3万字を超えるのは長かったので分割しました。ついでに少し文章を追加。
分割後の世界観は2万字弱、此処は1万弱です。
2021/02/03:再分割したので8000~9000文字に落ち着きました。


※この設定も地の文ではほとんど使いません


1.鎮守府について

1.1 鎮守府

 日本の鎮守府は軍令・軍政を行う大本営の下で横須賀・佐世保・呉・舞鶴・大湊・高雄の6つの海軍管区が設けられ、隷下鎮守府の監察・業務指導・表彰・大規模侵攻への対応・輸送・通信事務などを行う海軍区鎮守府(通称:直轄鎮守府)と実戦を行う隷下鎮守府(通称:管区鎮守府)に分類されている。そのうち横須賀海軍区鎮守府司令長官は大元帥が就任する為、副司令長官を実質的な長とすることが慣例である。

 

1.2 海軍区鎮守府と管区都道府県

①横須賀海軍区鎮守府

 東京・千葉・茨城・埼玉・栃木・群馬・神奈川・山梨・長野・静岡・愛知・岐阜・三重

②舞鶴海軍区鎮守府

 京都・福井・石川・富山・新潟・滋賀・兵庫・鳥取・島根

③呉海軍区鎮守府

 広島・山口・岡山・兵庫・大阪・和歌山・奈良・香川・徳島・高知・愛媛

④佐世保海軍区鎮守府

 福岡・宮崎・佐賀・長崎・熊本・大分・鹿児島

⑤大湊海軍区鎮守府

 青森・秋田・山形・岩手・宮城・福島・北海道・千島

⑥那覇海軍区鎮守府

 沖縄・台湾島(*1

 

 本土や台湾以外にも千島・伊豆・小笠原・火山・隠岐・大隅・吐噶喇・奄美・沖縄・先島・尖閣・大東(*2)・澎湖らの各諸島や礼文、佐渡、対馬、壱岐、竹島と言ったある程度の大きさで陥落すると困る離島に、規模の大小は異なるがほぼ確実に設置され、沿岸も灯台がある岬・半島には鎮守府が設置されている。また、台湾本島の南東沖にあるかつて原住民の保護を目的として開発を禁止し、文化人類学の研究区域として駐在所のみが設置されていた紅頭嶼は深海棲艦出現後に隣島の小紅頭嶼と併せて根拠地が設置されている。

 かつて船舶の往来があった河川や運河には大きさ・艦種の違いはあるもののPT小鬼等の小型深海棲艦が侵入するが国際河川などの大河では巡洋艦以上の大型深海棲艦の侵入も記録され、黄河では軽巡洋艦型深海棲艦が蘭州まで侵入して砲撃を行った事件も発生している。日本においても和船が往来していた内陸の街がはぐれPT小鬼(群ではなく一体か二体)に被害を被ることがあり、小規模な鎮守府(*3)が設置されている地域がある。

 鎮守府は軍内部の正式書類では鎮守府・警備府・要港部・根拠地として区分けされ、その中でも軍部から見た重要性や管轄区域の人口・面積によって甲乙丙丁の四種に区分けされている。外部には解り易さを重視し纏めて鎮守府と呼称し、提督や艦娘も公の場以外は鎮守府と呼称している。

 南鳥島や沖ノ鳥島にもかつては甲種警備府が存在していたが、1990年代後半の深海棲艦の大攻勢により陥落した。

   

1.3 鎮守府の経済

 鎮守府(とその周辺地域)では貨幣・記念コインなどの臨時補助貨幣及び日本銀行券の他にコインと呼ばれる軍票が使用される。

 コインは貨幣・日本銀行券と交換可能で、レートは1コイン=20円となる。

 艦娘への初年度一ヵ月基本支給額(初号俸)は7500コインで、これは円換算だと150,000円になる。艦娘にも基本支給額の他に佐官や将官待遇の場合に加算される階級手当や秘書艦や参謀などに就いた際の役職手当と言った諸手当が別途支給される。

 少佐待遇の佐官提督への初年度一ヵ月基本支給額(初号俸)は10000コイン(200,000円)となり、一階級上がるごとに5,000コイン上乗せされる。

 少将待遇の将官提督への初年度一ヵ月基本支給額(初号俸)は25000コイン(500,000円)となり、一階級上がるごとに7,500コイン上乗せされる。

 提督・艦娘共に年間の手取りは国家公務員総合職を1.5~2倍以上上回る額になる。

 ちなみに、国家公務員一般職(高卒)の初年度一ヵ月基本支給額(初号俸)は118,000円で、国家公務員総合職(大卒)の初年度一ヵ月基本支給額(初号俸)は174,000円である。

 

 

2.艦娘について

2.1 艦娘とは

 艦娘は、深海棲艦が確認された後、暫く経った1995年に弩級戦艦を最初に建造した英国で初めて顕現が確認され、その後一月程で仏・露・独・米・日etcの順番で軍艦を自力で建造していた国家で確認された。但し、宗教的概念・文化的背景などで艦娘を自勢力に組み込めたのは日本が最初である。

 現在まで艦娘は第二次大戦終了までに正式に計画または建造された艦(未完成艦含む)が顕現している。

 艦娘の顕現については一定の資材を投入する建造、海域で艦娘と出会うドロップの2種類が存在する。これは顕現した艦娘との初接触の時に聞かされたことであったが、その事で各国では艦娘を人とするか生体機械とするかで大混乱が生じ、日本でも国民とは正当な手段を持って日本国籍を有している()()()である事と憲法に定められている事から議会で艦娘の地位と権利について大論争が生じた。混乱を速やかに解決する為、戦後初の緊急勅令により【艦娘は自然人でも生体機械でもない人類とは異なる知的生命体】とされ国民と等しい権利・地位を備えているとされた。1990年代後半から多くの国民の間では【艦娘とは先の大戦で散っていった英霊が再び祖国を守る防人として還って来た姿】とされ、女性の姿であるのは【古来より船は女性の象徴であったから当然】の事とされている。

 なお、現在大国となっていたり独立国となっていても第二次大戦中に海軍がなかったり独立していない国家、革命等で戦後に第二次大戦中の国家を倒して成立した国家には旧宗主国や当時の国の海軍の艦も含めて艦娘は顕現する事はない。これは当初ソ連崩壊後に成立した独立国家共同体(CIS)が旧ロシア帝国で建造されていた艦娘は顕現したにも関わらず、ソビエト連邦時代の艦娘が顕現しない理由を探求した結果判明した。この結果を基にCISでは共産党が政権を獲得し、再度ソビエト連邦を成立させ、旧ロシア帝国の継承国家たるソビエト連邦の復活を宣言し国内外に承認された。その結果ガングート級、アドミラル・ウシャコフ級、スヴェトラーナ級のみならずソビエツキー・ソユーズ級、マクシム・ゴーリキー級、キーロフ級、チャパエフ級、クロンシュタット級、スターリングラード級、レニングラード級、グネフヌイ級、ストロジェヴォイ級、タシュケント級やオピトヌイ、キエフ級、SC型、M型、S型、オクチャブリスカヤ・レヴォリューツィヤといったソビエト連邦時代の艦娘も顕現する様になった。しかしナチスドイツを否定した筈のドイツ連邦においてライプツィヒ級やケーニヒスベルク級の艦娘以外に、ナチス・ドイツ成立後に計画・建造されたビスマルク級やシャルンホルスト級、H級、ドイッチュラント級、アドミラル・ヒッパー級、グラーフ・ツェッペリン級、ヤーデ級、Z型、Uボートの艦娘が顕現する理由は不明である。

 この事から第二次世界大戦までに戦艦や空母を計画・建造していなければ戦艦娘や空母娘は顕現せず、後から第二次大戦中に計画されていた艦で証拠は云々などと言われていてもその艦は顕現しない事が明らかとなっている。某国では、この艦は第二次大戦中に計画されていた艦で証拠は云々であるから何れ必ず顕現する。等と言われているが1995年以来その艦は顕現していない。なお、某国で言われている艦について、某国が示した『証拠』ではその当時の軍指定用紙に図面が記載されているが、その『証拠』が示されたのは2000年代であり、終戦時の記録には該当する艦は記載されておらず、当時の連合国・枢軸国の記録をあたっても建造或いは計画されたという証拠は挙がっていない。

 艦娘は拉致などによりその意に反して母国以外の国家に所属させられると、その顕現する力を失い粒子となって消滅する。日本の竹島防衛戦(朝鮮名称:独島奪還戦)(*4)や中華民国の広州防衛戦(中共名称:湛江解放戦)に見られるように非合法手段による建造を行い奇跡的に成功した場合においても母国の艦娘と遭遇した場合や母国と異なる集団に属していたと艦娘が察した場合、同様の現象が生じている。以上の事から艦娘欲しさに再併合を求める国家もあるが再併合された事例は1995年に英連邦王国を構成していた国家が2000年に大英帝国として再併合された以外に存在しない。また、仮に再併合されてもその地域で嘗て艦艇を建造していないとその地域で艦娘が顕現する事はないとされ、艦艇を建造している場合であっても顕現する艦娘はそこで建造された艦種のみであることは大英帝国での事例から間違いないと言われている。但し再併合した旧宗主国はこの限りではなく、英国本土で顕現した水上機母艦アルバトロスの様に本国で建造を行わず植民地で行っていた艦種が旧宗主国で顕現する事例が多数報告されている。

 建造時の艦娘の艤装と生体は同じ場所に分かれた状態で顕現する。その為顕現直後の生体は裸体であり、男性提督は建造に立ち会わない等何らかの配慮が必要となる。生体と艤装の結び付きが安定するまでの2~3日は艤装は使用できず、その間の出撃は行えない。艦娘の艤装は纏っている最中も艦娘の意識に合わせて展開または収納することが可能である。艤装が損傷した場合は取り外して修復し、肉体は専用施設で治療する。

 生体のみ顕現し艤装が未発見の艦娘も稀に存在するがすでに他の鎮守府で建造され当該鎮守府では艤装がない艦娘は全て候補生扱いで事務方として活動し、艤装が発見され次第艦娘として活動する。また、歴史上建造または計画されているにも拘らず、艤装が未発見の艦娘も同様に候補生として事務方として活動している。*5

 艤装を纏わなければ艦娘はその身体の頑健さも精神も人間の女性と何ら変わらず、指紋・虹彩・耳紋もそれぞれ異なる。また、身体が傷つけば痛みも恐怖も感じる。艤装を纏う事で『艦』娘として活動できるが、生体の状況によっては艤装に纏う事を拒絶され出撃不能になる場合がある。何故このような現象が生じるのかは不明である。

 一般に艦娘はボーキサイトや燃料・弾薬を主食とするという話が流布されているが、これは艤装への補給と艦娘本人の食事が混同された結果生まれた都市伝説に過ぎない。艦娘本人は空腹になれば一般人と同様の食事を摂り、ボーキサイトや燃料・弾薬を食べることはできない。また、生理現象として排泄もあり便秘などにもなる。但し艤装の展開時に機関で宿便などの余分な排泄物等を燃やす事もできるので肉体的にはあまり影響はないとされている。

 また、ある程度の外見の艦娘は生殖能力もあり、人間化せずとも子供を産むことが可能である。

 艦娘の子供が生まれた際、艤装が顕現することはない。親の艤装を使用する事は理論上可能だが2017年現在、成功した事例はない。生まれた子供の成長速度は一般人と変わらず、成人以降の老化速度は若干遅くなるが人間化した艦娘程ではなく、40代が20代に見える程度と想定される。

 現役の艦娘が姓名を必要とする際は婚姻・養子関係にある艦娘を除き所属鎮守府名を苗字として艦名を名として使用している。例を挙げると、鹿屋鎮守府の瑞鶴であれば鹿屋瑞鶴。直轄鎮守府の場合も大湊信濃など鎮守府名+艦名を使用している。異動の内示があり異動するまでの間に姓名を必要とする際は異動先鎮守府名が苗字となり、研修・出向中は元々所属している鎮守府名が苗字となる。

 

2.2 艦娘の引退とその後の生活について

 艦娘の引退は、解体や近代化改修による強制的な人間化であり、人間化の際、纏っている艤装は現役艦娘の艤装資材となる。

 引退(=人間化)した艦娘は、人間と比べてかなり緩やか(書類上は70代だが外見は20代後半にしか見えない等)であるが、同じように年を取る。老化速度が人間の3分の1くらいの速度と非常に遅いので寿命は理論上は300歳位まであるとされている。

 引退した艦娘は外見に応じた年齢の一般人と同じ扱いとなり、記録はそれまでの艦娘簿から戸籍簿に移され正式に日本国民とされ、年齢に応じ参政権も与えられる。また指紋の押捺も艦娘時代から変わらず行われる。元艦娘であることは、参考事項として記載されるが日常生活に支障はほぼ生じない。戸籍を作る際には学力テストがあり、その結果を元に卒業能力(高等小学校卒業相当〜)が決定される為、艦娘にとってそれまでの教育は非常に大事である。

 提督の任務の一つに艦娘に対する一般教育もある為、教職免許を持たない提督の多くは師範学校の通信教育も着任と同時に受けている。

 

2.3 艦娘の結婚と養子縁組について

 結婚(仮)(カッコカリ)と結婚(真)(カッコガチ)がある。

 女性提督や海防艦娘や駆逐艦娘等との結婚(仮・真)に抵抗を覚える人用に、養子縁組(仮)(カッコカリ)と養子縁組(真)(カッコガチ)もある。結婚(仮)と養子縁組(仮)の能力向上効果は同じものである。

 法律的には(仮)は事実関係的なもの、(真)は戸籍に登録された正式なものとされている。

 前述の通りこの世界では艦娘の存在がある為、大凡1:6位で女性の割合が高くなっている。その為、婚姻は男性1人に対し女性(一般人の他艦娘・元艦娘を含める)との結婚が5人まで認められている一夫多妻制になる。

 尚、親告罪ではあるが姦通罪が存在し、男女ともに婚約関係の者から対象となっており、公娼制度も存在していないので事実上の婚約(結婚(仮)を含む)関係にある者が居る者が風俗系の店に行っている最中に店が風営法違反で摘発された場合は、罪状に買春容疑等の他に姦通罪も加わる事がある。

 艦娘との結婚については年齢規制は存在しない。従って提督の中には海防艦娘と結婚(真)(カッコガチ)の関係にある者もいる。引退後の艦娘と()()()婚姻関係を結ぶ場合については民法上の婚姻と同等の扱いとなる為、元海防艦娘や一部の元駆逐艦娘との婚姻が違法(不適齢婚)とされる場合もある。

 養子縁組(仮)(カッコカリ)と養子縁組(真)(カッコガチ)についての制限は特にないが、元艦娘を養子として迎える際は経済状況・家庭状況など虐待を防ぐため厳しく吟味される。

 結婚(仮)(カッコカリ)または養子縁組(仮)(カッコカリ)にある艦娘が引退する際は届出を行い法的に正式な関係(真)(カッコガチ)になるか、関係を解消して鎮守府とは別の場所で新たな生活を送るか選択する必要がある。

 結婚艦と養子縁組艦は関係解消後以外、如何なる場合でも提督の手元から動かさない事が明記され、出向や派遣は士官教育・武装指導等限定された目的且つ当事者(提督・艦娘)合意の下で安全に配慮して行われる。派遣されて来た艦娘に別提督の結婚艦や養子縁組艦がいる場合、深海棲艦の襲撃時には該当する艦娘に護衛をつけて最優先で逃がす義務がある。

 

2.3 艦娘の異動について

 艦娘の異動は通常4月と10月に行われ、内示はその一月程前に鎮守府に伝達されるが、提督の昇進や戦死による鎮守府再編が行われた場合や緊急事態発生時には臨時に異動辞令が出る事もある。

 異動してほしくない艦娘に対して、提督は艦娘の同意の下でロックと呼ばれる鎮守府専属登録を行える。鎮守府専属登録を行うと、該当する艦娘の異動は行われなくなり、解除を行えるのは実行した提督の他は大元帥と大元帥が許可した側近3名のみとなる。ただし、登録できる艦娘は大本営直轄の海軍区鎮守府(横須賀・佐世保・呉・舞鶴・大湊・高雄)でも50名が限度で、例えば伊豆諸島にある横須賀管区利島鎮守府(乙種根拠地)等では秘書艦(2名まで)を除いて10名~20名程度である。また秘書艦として指名した艦娘も異動は行われないが、指名できるのは2名までで一度指名すると取り消す事はできない。多くの鎮守府で、秘書艦の扱いは正規の秘書艦ではなく、秘書艦業務を行う権限を有する艦娘という扱いであるが、この場合は異動の対象となる。

 姉妹艦や仲の良い艦娘同士などで提督が部隊を崩したくない場合、固定編成登録と呼ばれる部隊単位での登録をすることも可能である。この場合異動先には登録された部隊を丸ごと異動させる必要が生じる。固定編成部隊の艦娘を異動させる際、その部隊に鎮守府専属登録されている艦娘がいる場合は異動先鎮守府に専属登録されている艦娘と同じ艦娘がいないと固定編成されている艦娘は全て異動されない。例を挙げると夕立・村雨・春雨・五月雨の第二駆逐隊を固定編成登録していた場合、その夕立に異動の内示が下りたと仮定する。この時固定編成登録されている第二駆逐隊に練度70の春雨が専属登録されている場合は異動先に同練度以上の春雨がいなければ夕立を異動できない。また、春雨がいたとしても夕立が異動する際は夕立以外に専属登録されている春雨を除く村雨と五月雨も第二駆逐隊として固定編成登録されているので一緒に異動となる。異動対象の艦娘を異動直後に解体したり近代化改修で人間化することは艦娘を自勢力に組み込む際の条件として挙げられて以来禁じられている。禁を犯した鎮守府も過去には存在したが、その鎮守府にいた妖精と艦娘が一夜にして消失し、深海棲艦に対抗できずその地域が廃墟と化したことがあり、以後その禁を犯す鎮守府はない。その為、人数制限(海軍区鎮守府でも350名が限度)の事もあり、一定以上艦娘がいる鎮守府からの固定編成登録されている艦娘の受け入れは殆ど無く、固定編成登録された艦娘も異動対象からは外れがちである。

 

 

3.深海棲艦について

 深海棲艦は1993年8月にビキニ環礁において初めてその存在が確認された。人類に敵対的な生命体と判断され、当初は米国沿岸警備隊、後に太平洋艦隊が【駆除】に当たったが、多機能レーダーやミサイルの無効化等により大損害を被り撤退している。その後、10月には南極海やチャゴス諸島近海、12月にはバレンツ海でも確認され、海上交通網が各地で寸断された。深海棲艦に対しての衛星を使用した探査や電子誘導装置を使用する火器類は無効にされ、有効な索敵方法は衛星を使用しない探査に限定されている。また攻撃は近接戦闘や電子誘導装置を使用しない照準射撃か艦娘による戦闘行為のみ有効となっている。通常艦艇や航空機からの攻撃も電子誘導装置を使用しない照準射撃であれば有効であるが対費用効果が極めて悪い為、艦娘が顕現している国家では通常艦艇は密入国者や重武装の犯罪者を取り締まる沿岸警備、艦娘がいない近隣諸国からの物資強奪を防ぐ為の護衛などに徹している。また気象衛星等の地球観測衛星は運用されているが通信衛星等も含めて本来の用途以外には用いられていない。

 

 

4.妖精

 艦娘が顕現した際に同時に確認された生命体である。艦娘の艤装を動かしたり鎮守府各所で活動している為、妖精との意思疎通ができることが提督となる最低限の資質となる。艤装妖精(航空兵や整備兵・陸戦隊も含む)以外の妖精(事務員や医師・看護師の他、軍楽隊・憲兵隊・警備隊に所属する妖精)の姿は提督の素質がない一般人にも見え日常会話程度ならある程度行えるが、完全な意思疎通は、妖精同士を除けば提督と艦娘以外に行えない。

 妖精は男性型と女性型の二通りの外見を有し、男性型妖精は矮躯でありながら屈強で豊かな髭を蓄えている。女性型妖精は髭のないトランジスタグラマーである。艦娘の艤装を担当している妖精はその大きさに合わせた姿であるが、廃棄や近代化改修などで艤装が資源化すると本来の身長に戻り、鎮守府で様々な活動を行う。鎮守府各所にいる妖精は本来の身長の90cm位で活動している。

 艦載機や甲標的に搭乗している妖精は母艦となっている艦娘が健在な限りは撃破されても艦娘の下で復活するが艦娘が轟沈すると艤装を担当している妖精も含め共に轟沈する。工廠や施設にいる妖精は鎮守府が健在で提督が艦娘を自勢力に組み込む際の条件を遵守する限りは姿を消すことはない。

 

*1
台北州・新竹州・台中州・台南州・高雄州・台東州・花蓮港州・澎湖州

*2
沖大東島は1995年に所有企業からの買取が行われ甲種警備府が設置されている

*3
丁種鎮守府外観例

【挿絵表示】

 

上記丁種鎮守府の鳥観図

1階

【挿絵表示】

 

【挿絵表示】

 

2階

【挿絵表示】

 

【挿絵表示】

 

3階

【挿絵表示】

 

【挿絵表示】

*4
深海棲艦によって占領された竹島を日本が奪還したものの朝鮮が日帝の不法占領として艦隊を派遣し再占領を狙った戦い。親朝鮮的な日本人により非合法に国内から持ち出された艦娘建造設備の核を元に工廠を建設した朝鮮は手始めに朝鮮に自ら渡って来た日本人女性を媒体に天龍型艦娘の建造に成功しこれを独島・馬羅と命名した。この成功を基に党と国家に忠誠を誓う日系2世や3世の女性を媒体として駆逐艦娘や海防艦娘の建造に成功。この艦娘達は通常艦艇と共に竹島占領を図る艦隊に組み込まれるが竹島鎮守府の艦娘達に遭遇し砲火を交えることなく消滅。艦隊は通常艦艇にも被害が生じた為撤退したが、撤退途中に中規模な深海棲艦の艦隊に遭遇し文字通り全滅した。また、時を同じくして建造設備も建造された艦娘達とともに消滅し、地域の戦力は消滅した。その直後に深海棲艦の大規模襲撃が発生。前線の防衛を艦娘のみに頼っていた為、後方からの戦力展開が間に合わず大被害を被る結果となった。なお朝鮮政府からは艦娘建造設備の核を持ち出した日本人と持ち出し作戦を策定・指揮した士官はともに銃殺に処した(だから援助と日朝基本条約を締結してくれ)と発表されている。

*5
「清澄丸型特設巡洋艦、清澄丸で……艤装がまだ見つかっていませんので、候補生として頑張ります。早く艤装が見つかって欲しいなぁ~」




 艦娘を建造する工廠は培養槽(SFでありがちな、人一人が入れる筒)と艤装製造機が組み合わさった通称【人工子宮】と呼ばれる機械が2台(最大で4台)設置されている。
 資材を機器に投入することで培養槽の中で生体が赤子から次第に成長するが、どの艦種になるかは培養槽に顕現した【核】と呼ばれる細胞状物質に影響される。【核】は培養液とともに保存することはできるが人工的に生産することはできず、その【核】の種類を確実に指定することもできない(*1
 艦種と型は核の種類と投入された資材の配分によって決定される。
 該当する艦種に育つと培養槽の壁が開き培養液ごと排出される。これを通称【破水】と呼ぶ。【破水】が起こると建造が終了したことを意味する。
 戦艦娘や母艦系娘を建造すると赤子の身体から大人の身体に成長するため時間がかかるので「見ているだけで近所の子供の成長を見守るような気分を味わえる」とは、とある女性提督の談。

艦娘で大鯨から龍鳳のように艦名が変わった艦娘は別人として顕現している。

*1
艦娘が生まれない国では艦娘が生まれる国の女性を培養槽に生きたまま投入することで核の代わりとして艦娘を建造させる研究を行っていたこともあった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

日本の艦娘と誕生日

故障したHDDにあった日記世界での日本艦娘の誕生日を(また無くさないように)2月3日に追加して再作成したものです。
日記世界の日本艦娘はここに掲載しています。山風~や矢矧~のように他の日記世界を書く時はここを参考にします。

注意
※此処で掲載している艦娘は、日記世界の日本で顕現した艦娘です。ご注意下さい。
※大鯨から龍鳳のように類別も艦名も変わった艦娘は別人として顕現しています。
※能登呂の様に艦名はそのままで類別が変わった艦娘も別人として顕現しています。


Ⅰ.日本の艦娘

1-1 軍艦娘

1-1-1 戦艦

 金剛・比叡・榛名・霧島

 扶桑・山城

 伊勢・日向

 長門・陸奥

 大和・武蔵・信濃

 紀伊・尾張

 

1-1-2 重巡洋艦

 古鷹・加古

 青葉・衣笠

 妙高・那智・足柄・羽黒

 高雄・愛宕・鳥海・摩耶

 最上・三隈・鈴谷・熊野

 利根・筑摩

 伊吹(*1)・鞍馬(*2

 

1-1-3 軽巡洋艦

 天龍・龍田

 球磨・多摩・北上・大井・木曾

 長良・五十鈴・名取・由良・鬼怒・阿武隈

 川内・神通・那珂・加茂・木津・名寄(*3

 夕張

 阿賀野・能代・矢矧・酒匂

 大淀・仁淀

 

1-1-4 航空母艦

 鳳翔

 龍驤

 赤城

 加賀

 蒼龍

 飛龍

 大鳳

 翔鶴・瑞鶴

 雲龍・天城・葛城・笠置・阿蘇・生駒・鞍馬(*4

 祥鳳・瑞鳳・龍鳳

 千歳(*5)・千代田(*6

 隼鷹・飛鷹

 伊吹(*7

 

1-1-5 護衛空母

 大鷹・雲鷹・冲鷹

 神鷹

 海鷹

 

1-1-6 水上機母艦

 能登呂(*8

 神威(*9

 瑞穂

 日進(*10

 秋津洲・千早

 千歳(*11)・千代田(*12

 

1-1-7 潜水母艦

 駒橋

 大鯨

 迅鯨・長鯨

 剣埼(*13)・高崎(*14

 5034号型

 ※5034号型の艦娘は未顕現。

 

1-1-8 敷設艦

1-1-8-1 機雷敷設艦

 常盤

 嚴島

 八重山

 沖島

 日進(*15

 津輕

 箕面・乾進丸

 ※艤装は未発見。

1-1-8-2 急設網艦

 白鷹

 初鷹・蒼鷹・若鷹 

 ※艤装は未発見。

 

1-1-9 練習巡洋艦

 香取・鹿島・香椎・橿原

 

1-1-10 練習兼警備艦

 八雲

 出雲・磐手

 

1-1-11 駆逐艦

 峯風・澤風・沖風・灘風・羽風・汐風・秋風・夕風・太刀風・帆風

 野風・波風・沼風

 神風・朝風・春風・松風・旗風・追風・疾風・朝凪・夕凪

 若竹・呉竹・早苗・早蕨・朝顔・夕顔・紫苑・芙蓉・刈萱・沢瀉・牡丹・芭蕉・撫子

 睦月・如月・弥生・卯月・皐月・水無月・文月・長月・菊月・三日月・望月・夕月

 吹雪・白雪・初雪・深雪・ 叢雲・東雲・薄雲・白雲・磯波・浦波

 綾波・敷波・朝霧・夕霧・天霧・狭霧・朧・ 曙・漣・潮

 暁・響・雷・電

 初春・子日・若葉・初霜・有明・夕暮

 白露・時雨・村雨・夕立・春雨・五月雨・海風・山風・江風・涼風

 朝潮・大潮・満潮・荒潮・朝雲・山雲・夏雲・峯雲・霰・霞

 陽炎・不知火・黒潮・親潮・初風・雪風・天津風・時津風・浦風・磯風・浜風・谷風・野分・嵐・萩風・舞風・秋雲

 夕雲・巻雲・風雲・長波・高波・藤波・沖波・朝霜・早霜・清霜・妙風・清風・村風・里風・山霧・海霧・谷霧・川霧

 山雨・秋雨・夏雨・早雨・高潮・秋潮・春潮・若潮

 秋月・照月・涼月・初月・新月・若月・霜月

 冬月・春月・宵月・夏月・満月・花月

 清月・大月・葉月・山月・浦月・青雲・紅雲・春雲・天雲・八重雲・冬雲・雪雲・沖津風・霜風・朝東風・大風・東風・西風・南風

 北風・早風・夏風・冬風・初夏・初秋・早春

 島風

 松・竹・梅・桃・桑・桐・杉・槇・樅・樫・榧・楢・桜・柳・椿・檜・楓・欅・橘・早梅・飛梅・藤・山桜・葦・篠竹・蓬・葵・白梅・菊・柏

 柿・樺・蔦・萩・菫・楠・初桜・楡・梨・椎・榎・雄竹・初梅・八重桜・矢竹・葛・桂・若桜・梓・栃・菱・榊・黄菊・初菊・茜・白菊・千草・若草・夏草・秋草・薄・野菊

 

1-1-12 潜水艦

1-1-12-1 航洋型潜水艦

1-1-12-1-1 伊号潜水艦

 海大型

 巡潜型

 伊400型

1-1-12-1-2 呂号潜水艦

 海中型

 呂51型

 呂53型

 呂57型

 呂60型

 呂35型

 呂100型

 第2981号艦型

1-1-12-2 水中高速潜水艦

 伊201型

 波201型

1-1-12-3 機雷敷設用潜水艦

 伊121型

1-1-12-4 輸送潜水艦

 伊351型

 伊361型

 伊373型

 波101型

 第2968号艦型

1-1-12-5 接収・譲渡艦

 伊501

 伊502

 伊503

 伊504

 伊505

 伊506

 呂500

 呂501

 ※海中型・呂51型・呂53型・呂57型・呂60型・第2981号艦型・第2968号艦型の艦娘は未顕現。

 

1-1-13 砲艦

1-1-13-1 航洋型砲艦

 安宅

 鳥羽

 嵯峨

 興津

 ※上記艦娘の艤装は未発見。

 橋立・宇治

1-1-13-2 河川用砲艦

 勢多・比良・保津・堅田

 熱海・二見

 伏見・隅田

 舞子

 多々良

 唐津

 須磨

 鳴海

 

1-1-14 海防艦

 占守・国後・八丈・石垣

 択捉・松輪・佐渡・隠岐・六連・壱岐・対馬・若宮・ 平戸・福江・天草・満珠・干珠・笠戸

 御蔵・三宅・淡路・能美・倉橋・屋代・千振・草垣

 日振・大東・昭南・久米・生名・ 四阪・崎戸・目斗・波太・大津・友知

 鵜来・沖縄・奄美・粟国・新南・屋久・竹生・神津・保高・伊唐・生野・稲木・羽節(はぶし)・男鹿・金輪・宇久・高根・久賀・志賀・伊王・蔚美・室津

 丙型

 丁型

 五百島

 八十島

 ※丙型海防艦・丁型海防艦・五百島・八十島の艤装は未発見

 

1-1-15 輸送艦

 第1号型

 第101号型

 第103号型

 ※上記艦娘の艤装は未発見。

 

1-1-16 水雷艇

 千鳥・眞鶴・友鶴・初雁

 鴻・鵯・隼・鵲・雉・雁・鷺・鳩

 川蝉

 山蝉

 ※上記艦娘の艤装は未発見。

 

1-1-17 掃海艇

 第1号型

 第5号型

 第13号型

 第17号型

 第7号型

 第19号型

 ※上記艦娘は未顕現。

 

1-1-18 駆潜艇

 第1号型

 第13号型

 ※上記艦娘は未顕現。

 

1-1-19 敷設艇

 燕・鴎

 夏島・那沙美

 猿島

 測天・白神・巨濟・成生・浮島・平島・澎湖・石埼・鷹島・濟州・新井埼・由利島・怒和島・前島・諸島

 網代・神島・粟島・彦島

 ※上記艦娘の艤装は未発見。

 

1-1-20 哨戒艇

 第1号型

 第31号型

 ※上記艦娘は未顕現。

 

1-2 特務艦娘

1-2-1 工作艦

 朝日

 明石・三原・桃取

 

1-2-2 運送艦

1-2-2-1 給炭油艦

 知床

 ※上記艦娘の艤装は未発見。

1-2-2-2 給油艦

 神威(*16

 能登呂(*17)・襟裳・佐多・鶴見・尻矢・石廊

 隠戸・早鞆・鳴戸

 足摺・鹽屋

 洲埼・高崎(*18)・剣埼(*19)・神埼・聖埼

 大瀬

※上記艦娘の艤装は未発見。

 針尾(*20)・稲取(*21)・韓崎(*22)・龍舞(*23

 風早・韓埼(*24)・稲取(*25)・雁来・釣掛・雲見・神須・野間

1-2-2-2-1 特1TL型給油艦

 しまね丸・大滝山丸・大邱丸(たいきゅうまる)大社丸(おおやしろまる)

1-2-2-2-2 鷹野型給油艦

 鷹野・潮見・高浜・大須・大間・龍舞(*26)・塩瀬

1-2-2-2-3 風早型航空機搭載給油艦

 速吸

1-2-2-3 給炭艦

 野島 

 ※上記艦娘の艤装は未発見。

1-2-2-4 給糧艦

 杵埼・早埼・白埼・荒埼・清埼・大埼・部埼・樫埼・呉埼・三埼・藤埼

 野埼

 鞍埼

 間宮

 伊良湖・久須見

 針尾(*27)・高磯

1-2-2-5 給兵艦

 樫野

 ※上記艦娘の艤装は未発見。

1-2-2-6 雑用艦

 宗谷

 室戸

 ※上記艦娘の艤装は未発見。

 

1-2-3 砕氷艦

 大泊

 恵山

 

1-2-4 測量艦

 勝力

 筑紫・三保

 ※上記艦娘の艤装は未発見。

 

1-2-5 標的艦

 摂津

 矢風

 波勝

 大浜・大指・矢越・安乗・大畠

 

1-2-6 練習特務艦

 吾妻

 春日

 富士

 敷島

 淺間

 ※上記艦娘の艤装は未発見。

 

1-3 特務艇娘

1-3-1 敷設特務艇

 江之島・黑神・黑島・片島・戸島・葦埼・黑埼・加德・圓島・似島・鷲埼

 ※上記艦娘の艤装は未発見。

 第1号・第2号・第3号・第4号

 ※上記艦娘は未顕現。

 

1-3-2 掃海特務艇

 第1号型

 ※上記艦娘は未顕現。

 

1-3-3 潜水艦母艇

 ※艦娘は未顕現。

 

1-3-4 駆潜特務艇

 第1号型

 ※上記艦娘は未顕現。

 

1-3-5 哨戒特務艇

 第1号型

 ※上記艦娘は未顕現。

 

1-3-6 電纜敷設艇

 初島・釣島・大立・立石

 ※上記艦娘の艤装は未発見。

 

1-3-7 魚雷艇

 1号型魚雷艇

 甲型魚雷艇

 乙型魚雷艇

 ※上記艦娘は未顕現。

 

1-3-8 海防艇

 第1号型

 第101号型

 ※上記艦娘は未顕現。

 

1-4 特設軍艦娘

1-4-1 特設巡洋艦

 能代丸

 淸澄丸・金剛丸

 赤城丸・淺香丸・粟田丸

 金城山丸

 浮島丸

 盤谷丸・西貢丸

 金龍丸

 報國丸・愛國丸・護國丸

 ※上記艦娘の艤装は未発見。

 

1-4-2 特設敷設艦

 日祐丸

 新興丸

 高榮丸

 辰春丸

 辰宮丸

 天洋丸

 最上川丸

 永城丸

 光隆丸

 ※上記艦娘の艤装は未発見。

 

1-4-3 特設急設網艦

 須磨の浦丸

 西安丸

 ※上記艦娘の艤装は未発見。

 

1-4-4 特設航空母艦

 春日丸・八幡丸・新田丸

 あるぜんちな丸

 

1-4-5 特設水上機母艦

 衣笠丸・香久丸

 神川丸・聖川丸・君川丸・國川丸

 相良丸

 讃岐丸

 山陽丸

 

1-4-6 特設航空機運搬艦

 葛城丸

 五洲丸

 富士川丸

 小牧丸

 りおん丸

 加茂川丸

 慶洋丸

 關東丸

 ※上記艦娘の艤装は未発見。

 

1-4-7 特設水雷母艦

 首里丸

 日本海丸

 神風丸

 神祥丸

 ※上記艦娘の艤装は未発見。

 

1-4-8 特設潜水母艦

 りおでじゃねろ丸

 靖國丸

 さんとす丸

 名古屋丸

 日枝丸・平安丸

 筑紫丸

 

1-4-9 特設掃海母艦

 いくしま丸

 射水丸

 永興丸

 ※上記艦娘の艤装は未発見。

 

1-4-10 特設砲艦

 ※上記艦娘は未顕現。

 

1-5 特設特務艇娘

1-5-1 特設捕獲網艇

 ※上記艦娘は未顕現。

1-5-2 特設防潜網艇

 ※上記艦娘は未顕現。

1-5-3 特設敷設艇

 ※上記艦娘は未顕現。

1-5-4 特設驅潜艇

 ※上記艦娘は未顕現。

1-5-5 特設掃海艇

 ※上記艦娘は未顕現。

1-5-6 特設監視艇

 ※上記艦娘は未顕現。

 

1-6 特設特務艦船娘

1-6-1 特設運送艦

 極東丸

 尾上丸

 神津丸

 第十二日正丸

 山東丸

 河北丸

 第二號桂丸

 華山丸

 豊國丸

 第一雲洋丸

 長運丸

 千歳丸

 第四日立丸

 ※上記艦娘の艤装は未発見。

 

1-6-2 特設運送船

 ※艦娘は未顕現。

 

1-6-3 特設工作艦

 靖州

 松榮丸

 山彦丸

 浦上丸

 八海丸

 山霜丸

 慶昭丸

 飛渡瀬

 早瀬

 ※上記艦娘の艤装は未発見。

 

1-6-4 特設港務艦

 白山丸

 筥崎丸

 ※上記艦娘の艤装は未発見。

 

1-6-5 特設測量艦

 白沙

 播陽

 第三十六共同丸

 朝陽

 平陽

 浦陽

 ※上記艦娘の艤装は未発見。

 

1-6-6 特設碎氷船

 白陽丸

 千歳丸

 

1-6-7 特設電線敷設船

 山鳩丸

 春島丸

 王星丸

 ※上記艦娘の艤装は未発見。

 

1-6-8 海軍特設病院船

 朝日丸

 氷川丸

 高砂丸

 天應丸

 牟婁丸

 菊丸

 

1-6-9 特設救難船

 祐捷丸

 ※上記艦娘は未顕現。

 春田丸

 尊條丸

 新鳩丸

 寳嶺丸

 寳辰丸

 桂川丸

 ※上記艦娘の艤装は未発見。

 

※一般徴傭船と地方徴傭船だった艦娘は殆ど顕現していない。

※海軍配當船・臨時配當船だった艦娘は殆ど顕現していない。

 

 

2-1 陸軍船娘

2-1-1 陸軍特殊船

 神州丸

 摩耶山丸・玉津丸・吉備津丸

 摂津丸

 日向丸

 高津丸

 あきつ丸・にぎつ丸

 熊野丸・ときつ丸

 

2-1-2 陸軍特殊油槽船

 山汐丸・千種丸

 

2-1-3 大型重量物揚陸運搬船

 蜻州丸

 ※上記艦娘の艤装は未発見。

 

2-1-4 陸軍防空基幹船

 ありぞな丸

 善洋丸

 靖川丸

 熱田山丸

 ※上記艦娘は未顕現。

 佐倉丸

 佐渡丸

 宏川丸

 ※上記艦娘の艤装は未発見。

 

 

2-1-5 陸軍通信船

 帝海丸

 香椎丸

 ※上記艦娘の艤装は未発見。

 

2-1-6 陸軍工作船

 おれごん丸

 東寶丸

 民領丸

 ※上記艦娘の艤装は未発見。

 

2-1-7 航空工作船

 彌彦丸

 おりんぴあ丸

 ※上記艦娘の艤装は未発見。

 

2-1-8 陸軍電線敷設船

 曉鷹丸

 曉鷲丸

 ※上記艦娘は未顕現。

 第一多聞丸

 大榮丸

 大新丸

 ※上記艦娘の艤装は未発見。

 

2-1-9 陸軍病院船

 うらる丸

 亞米利加丸

 まにら丸

 龍興丸

 ばいかる丸

 しあとる丸

 北辰丸

 瑞穂丸

 さいべりや丸

 湖北丸

 しかご丸

 あらびあ丸

 扶桑丸

 ぶゑのすあいれす丸

 吉野丸

 三笠丸

 橘丸

 和浦丸

 有馬山丸

  

2-1-10 陸軍油槽船

 ※艦娘は未顕現。

 

2-1-11 陸軍輸送船

 ※艦娘は未顕現。

 

2-1-12 陸軍水船

 甲水船

 乙水船

 ※上記艦娘は未顕現

 豐水丸

 神水丸

 明水丸

 碧水丸

 ※上記艦娘の艤装は未発見。

 

2-1-13 陸軍碎氷船

 伸洋丸

 高島丸

 ※上記艦娘の艤装は未発見。

 

2-1-14 強力曳船

 第壹扇海丸

 第貮浦賀丸

 輪島丸・津島丸

 照海丸・映海丸

 南海丸・北海丸・東海丸

 ※上記艦娘の艤装は未発見。

 

2-1-15 三式潜航輸送艇(通称:まるゆ)

 ゆI型

 ゆII型

 

※陸軍押収船や陸軍配當船と臨時配當船だった艦娘は殆ど顕現していない。

 

 

 

Ⅱ.日本艦娘の誕生日

 

01月01日:

01月02日:

01月03日:満月

01月04日:

01月05日:

01月06日:伊504

01月07日:沢風、目斗

01月08日:楠

01月09日:

01月10日:雲見、神須、波109

01月11日:三埼

01月12日:波110

01月13日:椎、慶昭丸

01月14日:大滝山丸

01月15日:第一多聞丸

01月16日:藤埼、加茂川丸

01月17日:日向、梨

01月18日:妙風、三原、伊400、辰春丸

01月19日:葛城

01月20日:冬月、雁、金輪、風早

01月21日:伊183

01月22日:草垣、天洋丸

01月23日:清風、豐水丸

01月24日:初風、香椎丸

01月25日:白鷹、鳩、伊20

01月26日:雉、呂110、呂111

01月27日:榎、鞍埼、第二號桂丸、輪島丸、津島丸

01月28日:保高、熊野丸

01月29日:択捉、伊368、野間

01月30日:鷺、韓崎*28、鳴戸

01月31日:

02月01日:片島

02月02日:秋潮

02月03日:蒼鷹、松、野島、寳嶺丸

02月04日:平陽、神水丸

02月05日:壱岐、伊11

02月06日:

02月07日:伊180

02月08日:峯風、讃岐丸

02月09日:志賀

02月10日:多摩、初桜、高津丸

02月11日:

02月12日:伊王、日枝丸

02月13日:高根、蜻州丸

02月14日:伊良湖

02月15日:由良、早苗、伊169、伊205、伊364

  〃  :靖國丸、南海丸

02月16日:名取、文月、屋代、宗谷、

  〃  :大指、聖川丸

02月17日:

02月18日:雁来、靖川丸、北海丸

02月19日:龍舞*29

02月20日:播陽

02月21日:山風、黑神

02月22日:伊唐

02月23日:狭霧、夏潮、伊2、華山丸

02月24日:伊21、伊178、伊351

02月25日:古鷹、沼風、電

02月26日:韓崎*30

02月27日:天霧、初春、樺、荒埼、映海丸

02月28日:鳴海、波太

02月29日:清霜

03月01日:稲取*31、圓島、立石

03月02日:村風、新井埼、波111、筥崎丸、

  〃  :浦陽、高島丸

03月03日:高磯、りおん丸

03月04日:夕月、涼月、朝陽

03月05日:夕張、長波、友知、伊44、新興丸

03月06日:伊45、呂39、呂40、大邱丸(たいきゅうまる)

03月07日:伊15

03月08日:鹽屋、曉鷹丸

03月09日:伊369、亞米利加丸

03月10日:里風、雄竹

03月11日:天龍、涼風

  〃  :生野、伊401、君川丸、

03月12日:涼波

03月13日:朝日、伊31

03月14日:最上、伊14、神洲丸

03月15日:旗風、満潮、舞風、伊154

03月16日:伊吹(航空母艦)、阿武隈、夕雲、高波、

  〃  :最上川丸、大榮丸

03月17日:八重櫻

03月18日:若葉、釣掛

03月19日:筑摩、刈萱、伊123、扶桑丸

03月20日:白雪、対馬

03月21日:春潮、淺間

03月22日:稲取*32

03月23日:冲鷹、疾風、伊156、相良丸

03月24日:長鯨、羽黒、那珂、名寄、雪風、比良、夏島

03月25日:皐月、桃、伊159、呂112

  〃  :さいべりや丸

03月26日:伏見、那沙美、伊206

03月27日:靖州

03月28日:扶桑、竹、伊174、日本海丸

03月29日:磐手、伊366、大浜

03月30日:熱海、伊121、摂津、盤谷丸、あらびあ丸

03月31日:太刀風、伊6、富士

04月01日:千鳥、波211

04月02日:龍驤、大淀、福江、護國丸、大社丸(おおやしろまる)

04月03日:初月、妙風

04月04日:清風、黄菊、初菊

04月05日:鳥海、白露

04月06日:伊172、村風、里風

04月07日:大鳳、霜月、波太、伊67

04月08日:山霧、海霧、網代、伊506、佐渡丸

04月09日:酒匂

04月10日:矢風、加古、浦風、八丈、山雨、秋雨

  〃  :六連、日振、伊26、波212、

  〃  :初島、善洋丸

04月11日:安宅 、秋雲、夏雨、早雨

04月12日:高潮、秋潮、乾進丸、伊15

04月13日:春潮、若潮

04月14日:夕顔、茜、白菊

04月15日:千草、若草、夏草、秋草、

  〃  :伊38、伊39、波112、西安丸、

  〃  :富士川丸、山東丸

04月16日:妙高、薄、野菊、平安丸

04月17日:満月、矢竹、葛、梓、菱、榊

  〃  :伊207、伊208、伊374、呂101、呂102

04月18日:浜波、前島、香久丸

04月19日:大潮、早潮、浦風、若宮、保津

04月20日:藤波、伊55、河北丸、照海丸

04月21日:朝凪

04月22日:赤城、足柄、嵐

04月23日:夕凪、伊352、呂46、呂55、

  〃  :波201、波202

04月24日:梅、燕、伊60、呂113

04月25日:長良、初梅、鴻、愛國丸、白沙

04月26日:早梅、飛梅

04月27日:藤、山桜、葦、鷗、測天、菊丸

04月28日:初鷹、望月、篠竹、蓬、葵、

  〃  :伊123、伊367、西貢丸、有馬山丸、

  〃  :千歳丸、關東丸、千歳丸

04月29日:白梅、菊、柏

04月30日:鷹野、潮見

05月01日:伊33

05月02日:伊181

05月03日:能登呂*33、高崎*34

  〃  :ときつ丸、志あとる丸

05月04日:迅鯨、伊54

05月05日:鞍馬*35、青雲、紅雲、天雲、八重雲

  〃  :冬雲、雪雲、沖津風、霜風、朝東風

  〃  :大風、東風、西風、南風、北風

  〃  :早風、夏風、冬風、初夏、初秋

  〃  :早春、呂41、三保、矢越、安乗、大畠

  〃  :名古屋丸、三笠丸

05月06日:夕暮、国後

05月07日:暁、明水丸

05月08日:高浜、大須、大間

05月09日:竜舞*36、塩瀬

05月10日:大津、宏川丸、ばいかる丸

05月11日:若櫻、ぶゑのすあいれす丸

05月12日:高雄、夕霧、早埼

05月13日:紫苑、箕面、高磯

05月14日:伊503、波205

05月15日:菊月、沢瀉、牡丹、芭蕉、撫子、

  〃  :鵜来、葛城丸

05月16日:瑞穂、足摺、ゆ II

05月17日:若潮

05月18日:金剛、時雨、栃

05月19日:昭南、白山丸

05月20日:冲鷹、伊9、伊182、新田丸

05月21日:伊吹*37、鞍馬*38、駒橋

05月22日:興津、嚴島、伊4、ありぞな丸

05月23日:山霧

05月24日:諸島、釣島

05月25日:水無月、桑、波203、波204

05月26日:荒潮、夏雲、蔚美、伊370、波207、波208

05月27日:桐、神津丸

05月28日:夕風、多多良

05月29日:龍田、鬼怒

05月30日:伊182、呂106、呂107、第四日立丸

05月31日:陸奥、三隈、波209

06月01日:翔鶴、祥鳳、伊吹*39

  〃  :鞍馬*40、神威*41

  〃  :能登呂*42、剣埼*43

06月02日:伊165、伊166

06月03日:伊46

06月04日:檜

06月05日:如月、津輕、呂43、まにら丸

06月06日:漣、平島、伊27、韓崎*44

  〃  :龍舞*45、赤城丸

06月07日:伊176

06月08日:伊3、伊25、伊502、神威*46

06月09日:呂35、神祥丸、長運丸

06月10日:槇、神島、波210

06月11日:海霧

06月12日:伊152、似島、國川丸

06月13日:剣埼*47

06月14日:伊70

06月15日:那智、室津、波215、波219

06月16日:愛宕、響、樅、黑埼、金龍丸、おれごん丸

06月17日:香取

06月18日:萩風

06月19日:瑞鳳、高崎*48、磯風、沖縄

  〃  :伊5、呂114、呂115、波216

06月20日:村雨、伊73、春田丸

06月21日:羽風、夕立

06月22日:敷波、光隆丸

06月23日:桂

06月24日:飛鷹、波風、大東、吾妻

06月25日:白神

06月26日:隼鷹、灘風、深雪、粟島、

  〃  :伊168、伊372、波217

06月27日:杵埼、波勝、浦上丸

06月28日:不知火、能代丸、北辰丸、高津丸

06月29日:新月、巨濟、明石、

  〃  :瑞穂丸、摩耶山丸

06月30日:平戸、勢多、伊56、呂37、

  〃  :淸澄丸、おりんぴあ丸

07月01日:須磨

07月02日:秋月、波218

07月03日:北上、杉、伊7

07月04日:由利島

07月05日:呂56、報國丸

07月06日:常盤、五月雨

07月07日:伊404、呂501、淺香丸

07月08日:八雲、伊16、小牧丸

07月09日:神埼

07月10日:波206、安南丸

07月11日:仁淀、眞鶴、弥生、呂104、

  〃  :呂105、山陽丸

07月12日:若鷹、帆風、三日月

07月13日:

07月14日:球磨、射水丸

07月15日:大井、春島丸

07月16日:御蔵、堅田、伊179

07月17日:知床

07月18日:沖波、朝霜、島風、吉備津丸

07月19日:能代、伊17

07月20日:伊8

07月21日:伊371、呂45

07月22日:伊201、野埼

07月23日:睦月

07月24日:山雲

07月25日:秋津洲、千早、楓

07月26日:稲取*49

07月27日:彌彦丸

07月28日:谷霧、山彦丸

07月29日:波213

07月30日:榧、寳辰丸

07月31日:雲鷹、滿珠、怒和島、桃取

08月01日:金城山丸

08月02日:高潮

08月03日:春月、樫、伊12、呂49

08月04日:波221

08月05日:伊153、石廊、粟田丸、日向丸

08月06日:聖埼

08月07日:干珠

08月08日:大和

08月09日:

08月10日:山雨

08月11日:彦島、永城丸

08月12日:帝海丸

08月13日:大波、石埼

08月14日:春雲

08月15日:舞子、久米、王星丸

08月16日:山月

08月17日:清波、波214、波220、波222、波223

  〃  :波224、波225、波226、波227、波228

  〃  :波229、波230、波231、波232、波233

  〃  :波234、波235、波236、波237、波238

  〃  :波239、波240、波246、波247

08月18日:浦月、波241、波242、波243、玉津丸

  〃  :波244、波245

08月19日:岸波

08月20日:呂47

08月21日:東寶丸

08月22日:川霧、波101、波102

08月23日:慶洋丸

08月24日:若竹、日祐丸、第三十六共同丸

08月25日:伊171

08月26日:湖北丸

08月27日:

08月28日:成生

08月29日:白陽丸

08月30日:三宅

08月31日:

09月01日:早蕨

09月02日:伊155、伊202

09月03日:高榮丸

09月04日:生名

09月05日:屋久、新南、さんとす丸

09月06日:桜

09月07日:

09月08日:澎湖、清埼

09月09日:

09月10日:第貮浦賀丸

09月11日:

09月12日:早雨、唐津

09月13日:呂116、呂117

09月14日:石垣、鷲埼、辰宮丸

09月15日:稲木、伊402

09月16日:伊19、伊175、伊185

09月17日:野分、伊30

09月18日:

09月19日:大鷹、出雲、春日丸

09月20日:大埼

09月21日:春雨、粟国

09月22日:呂500

09月23日:芙蓉、有明

09月24日:伊34、伊35、筑紫丸、あきつ丸

09月25日:雲龍、青葉、矢矧、鹿島、神風、

  〃  :宵月、江之島

09月26日:風雲、宇治、首里丸

09月27日:嵯峨、叢雲、陽炎、伊405

09月28日:伊63

09月29日:初雪、伊10、伊29、伊47、鶴見

09月30日:椿、欅、天草、日進(敷設艦)、波104

10月01日:紀伊、尾張、友鶴、野風、伊157

10月02日:

10月03日:沖風、伊158、大泊

10月04日:針尾*50

10月05日:綾波、伊164、針尾*51、勝力、永興丸

10月06日:長月、伊505、葦埼

10月07日:

10月08日:信濃、八十島

10月09日:伊58

10月10日:花月、五百島

10月11日:極東丸

10月12日:楢、和浦丸

10月13日:碧水丸

10月14日:橘、呂36、五洲丸

10月15日:天城、熊野、香椎、卯月、倉橋、

  〃  :八重山、伊1、呂48

10月16日:

10月17日:部埼

10月18日:常盤、鷹島、摂津丸、熱田山丸

10月19日:笠置、天津風、戸島

10月20日:早霜、隠岐、伊203、民領丸、東海丸

10月21日:呉竹、波103、隠戸

10月22日:阿賀野、汐風、雷、伊37、春日

10月23日:室戸

10月24日:衣笠、第十二日正丸

10月25日:黒潮、鵯、伊43、呂42、加德、早瀬

10月26日:間宮、呂108、呂109

10月27日:

10月28日:隼、鵲、襟裳、佐多、志かご丸

10月29日:五十鈴

10月30日:川内、加茂、松風、隅田、淡路

  〃  :伊361、波106、祐捷丸

10月31日:日進*52、四阪、波105、

  〃  :ゆⅠ、八幡丸

11月01日:武蔵、阿蘇、江風、谷風、伊36、

  〃  :敷島、曉鷲丸

11月02日:蔦、宇久

11月03日:山城、黒島

11月04日:朝顔、初霜、峯雲

11月05日:朝雲、巻雲、白埼

11月06日:恵山

11月07日:鳥羽、曙、樫埼、大新丸

11月08日:摩耶、橿原、朧、伊122、新鳩丸

11月09日:長門

11月10日:時津風、伊40、伊41、伊42、伊52

11月11日:呂44

11月12日:伊勢、伊18、伊24、尻矢、八海丸

11月13日:鳳翔、松輪、奄美

11月14日:いくしま丸、山汐丸

11月15日:吹雪、沖島、濟州

11月16日:飛龍、大鯨、霰、飛渡瀬

11月17日:加賀、生駒、潮

11月18日:朝霧、霞

11月19日:千代田*53、久賀、りおでじゃねろ丸

11月20日:鈴谷、羽節(はぶし)、二見

11月21日:比叡、利根、照月、龍興丸

11月22日:呉埼

11月23日:

11月24日:磯波、若月、竹生、伊23

11月25日:浜風、柳、楡

11月26日:東雲、尊條丸

11月27日:瑞鶴、追風、海風、萩、呂50

11月28日:佐渡、にぎつ丸

11月29日:千歳*54、浦波、親潮、崎戸、

  〃  :伊162、伊362、筑紫

11月30日:龍鳳、日進*55、千振、

  〃  :伊13、伊373

12月01日:霧島

12月02日:夏月

12月03日:能美、豊國丸、吉野丸

12月04日:久須見、早鞆

12月05日:秋霜、桂川丸、伸洋丸

12月06日:秋雨、呂100、呂103

12月07日:金剛丸

12月08日:神通、木津、朝風

12月09日:海鷹、浮島、笠戸、あるぜんちな丸

12月10日:

12月11日:柿、大立

12月12日:伊48、伊124、伊184、伊363

12月13日:占守、神川丸、佐倉丸

12月14日:榛名、神鷹、木曾、秋風、清月、大月、葉月

12月15日:千歳*56、千代田*57

  〃  :大瀬、うらる丸

12月16日:朝潮、猿島、伊204

12月17日:菫、伊28、伊32、伊365

12月18日:春風

12月19日:早波、初雁、しまね丸

12月20日:伊177、伊407、波107、第一雲洋丸

12月21日:

12月22日:子日

12月23日:蒼龍 、橋立 、伊22

12月24日:伊53、呂38、松榮丸、山鳩丸

12月25日:速吸、第壹扇海丸

12月26日:薄雲、玉波、浮島丸、衣笠丸、

  〃  :須磨の浦丸、尾上丸、

12月27日:白雲、巻波、神風丸

12月28日:波108、洲埼

12月29日:千種丸

12月30日:男鹿、伊501

12月31日:夏雨、神津

 

 

 

Ⅲ.艦娘の外見年齢

  駆逐艦:10歳から18歳位

 軽巡洋艦:13歳から18歳位

 重巡洋艦:15歳から20歳位

  潜水艦:10歳から18歳位(まるゆ含む)

  戦艦系:18歳以上

  母艦系:18歳以上 (体型がどうであれ)

  海防艦:12歳以下

  運送系:15歳以上

  揚陸艦:14歳から20歳位

  工作艦:18歳以上

  砕氷艦:18歳以上

  病院船:25歳以上

 

*1
改鈴谷型重巡洋艦だが艤装を展開していないと航空母艦の伊吹によく間違えられる。その為同じ鎮守府に双方の伊吹がいる時は類別を付けて呼ぶ必要があるらしい

*2
改鈴谷型重巡洋艦だが艤装を展開していないと雲龍型航空母艦の鞍馬によく間違えられる。その為同じ鎮守府に双方の鞍馬がいる時は類別を付けて呼ぶ必要があるらしい

*3
川内姉妹のうち加茂・木津・名寄は名前の来歴からか夕張と仲良しで、特に名寄は夜戦より兵装実験に興味津々で工廠大好きな研究派。また、名寄は夕張がいる鎮守府では夕張にべったりで姉妹扱いをされることが多い。

*4
雲龍型航空母艦だが艤装を展開していないと改鈴谷型重巡洋艦の鞍馬によく間違えられる。その為同じ鎮守府に双方の鞍馬がいる時は類別を付けて呼ぶ必要があるらしい

*5
航空母艦だが艤装を展開していないと水上機母艦の千歳によく間違えられる。その為同じ鎮守府に双方の千歳がいる時は類別をつけて呼ぶ必要があるらしい

*6
航空母艦だが艤装を展開していないと水上機母艦の千代田によく間違えられる。その為同じ鎮守府に双方の千代田がいる時は類別をつけて呼ぶ必要があるらしい

*7
航空母艦だが艤装を展開していないと改鈴谷型重巡洋艦の伊吹によく間違えられる。その為同じ鎮守府に双方の伊吹がいる時は類別を付けて呼ぶ必要があるらしい

*8
水上機母艦だが艤装を展開していないと能登呂型給油艦の能登呂によく間違えられる。その為同じ鎮守府に双方の能登呂がいる時は類別を付けて呼ぶ必要があるらしい

*9
水上機母艦だが艤装を展開していないと給油艦の神威によく間違えられる。その為同じ鎮守府に双方の神威がいる時は類別をつけて呼ぶ必要があるらしい

*10
水上機母艦だが艤装を展開していないと機雷敷設艦の日進によく間違えられる。その為同じ鎮守府に双方の日進がいる時は類別を付けて呼ぶ必要があるらしい

*11
水上機母艦だが艤装を展開していないと航空母艦の千歳によく間違えられる。その為同じ鎮守府に双方の千歳がいる時は類別をつけて呼ぶ必要があるらしい

*12
水上機母艦だが艤装を展開していないと航空母艦の千代田によく間違えられる。その為同じ鎮守府に双方の千代田がいる時は類別をつけて呼ぶ必要があるらしい

*13
剣埼型潜水母艦だが艤装を展開していないと洲崎型給油艦の剣埼によく間違えられる。その為同じ鎮守府に双方の剣埼がいる時は類別を付けて呼ぶ必要があるらしい

*14
劍埼型潜水母艦だが艤装を展開していないと洲崎型給油艦の高崎によく間違えられる。その為同じ鎮守府に双方の高崎がいる時は類別を付けて呼ぶ必要があるらしい

*15
機雷敷設艦だが艤装を展開していないと水上機母艦の日進によく間違えられる。その為同じ鎮守府に双方の日進がいる時は類別を付けて呼ぶ必要があるらしい

*16
給油艦だが艤装を展開していないと水上機母艦の神威によく間違えられる。その為同じ鎮守府に双方の神威がいる時は類別をつけて呼ぶ必要があるらしい

*17
能登呂型給油艦だが艤装を展開していないと水上機母艦の能登呂によく間違えられる。その為同じ鎮守府に双方の能登呂がいる時は類別をつけて呼ぶ必要があるらしい

*18
洲崎型給油艦だが艤装を展開していないと劍埼型潜水母艦の高崎によく間違えられる。その為同じ鎮守府に双方の高崎がいる時は類別をつけて呼ぶ必要があるらしい

*19
洲崎型給油艦だが艤装を展開していないと剣埼型潜水母艦の剣埼によく間違えられる。その為同じ鎮守府に双方の剣埼がいる時は類別を付けて呼ぶ必要があるらしい

*20
針尾型給油艦だが艤装を展開していないと針尾型給糧艦の針尾によく間違えられる。その為同じ鎮守府に双方の針尾がいる時は類別を付けて呼ぶ必要があるらしい

*21
針尾型給油艦だが艤装を展開していないと風早型給油艦の稲取によく間違えられる。その為同じ鎮守府に双方の稲取がいる時は艦型を付けて呼ぶ必要があるらしい

*22
針尾型給油艦だが艤装を展開していないと風早型給油艦の韓崎によく間違えられる。その為同じ鎮守府に双方の韓崎がいる時は艦型を付けて呼ぶ必要があるらしい

*23
針尾型給油艦だが艤装を展開していないと鷹野型給油艦の龍舞によく間違えられる。その為同じ鎮守府に双方の龍舞がいる時は艦型を付けて呼ぶ必要があるらしい

*24
風早型給油艦だが艤装を展開していないと針尾型給油艦の韓埼によく間違えられる。その為同じ鎮守府に双方の韓埼がいる時は艦型を付けて呼ぶ必要があるらしい

*25
風早型給油艦だが艤装を展開していないと針尾型給油艦の稲取によく間違えられる。その為同じ鎮守府に双方の稲取がいる時は艦型を付けて呼ぶ必要があるらしい

*26
鷹野型給油艦だが艤装を展開していないと針尾型給油艦の龍舞によく間違えられる。その為同じ鎮守府に双方の龍舞がいる時は艦型を付けて呼ぶ必要があるらしい

*27
針尾型給糧艦だが艤装を展開していないと針尾型給油艦の針尾によく間違えられる。その為同じ鎮守府に双方の針尾がいる時は類別を付けて呼ぶ必要があるらしい

*28
(風早型)

*29
(針尾型)

*30
(針尾型)

*31
(針尾型)

*32
(風早型)

*33
(給油艦)

*34
(洲崎型)

*35
(雲龍型)

*36
(鷹野型)

*37
(改鈴谷型)

*38
(雲龍型)

*39
(雲龍型)

*40
(改鈴谷型)

*41
(水上機母艦)

*42
(水上機母艦)

*43
(劍埼型)

*44
(針尾型)

*45
(針尾型)

*46
(給油艦)

*47
(洲崎型)

*48
(劍埼型)

*49
(針尾型)

*50
(給油艦)

*51
(給糧艦)

*52
(水上機母艦)

*53
(水上機母艦)

*54
(水上機母艦)

*55
(水上機母艦)

*56
(航空母艦)

*57
(航空母艦)




一覧で未顕現の艦娘以外は全員誕生日も載せたとは思いますが、一覧に載っていて誕生日に載っていない艦娘or誕生日に載っていて一覧に名前のない艦娘を見つけたら連絡ください。

追記
艤装が未発見:艦娘は顕現しているが艤装が見つからない
艦娘が未顕現:艦娘が一度も現れていない。当然、艤装もない。

※特設運送艦と特設運送船の違いは軍艦旗が揚がっているかいないか。

艦娘の一覧表と誕生日付けたら1万文字超しました……^^;


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

村雨の鎮守府について
村雨が配属された鎮守府について【 ネタバレ有 】


説明分割です。




村雨が配属された鎮守府について※詳しい設定、あまり使いません

 

1.鎮守府の位置

 北緯30度29分02秒 東経140度18分11秒にある島(ぶっちゃけ鳥島の位置)

 提督は移動手段として、OV-10Aブロンコを私的に所有しています。

 

 

2.鎮守府近辺

 鎮守府のある島に火山があり火山活動度ランクAとされていますが、北側に形成されている海底カルデラが1998年噴火したことにより付近に火山活動度ランクAの火山を有する火山島が出現したことで、マグマ溜が移動したとみられ2000年以降噴煙の量が急速に減少する等活動度が急速に衰えています。

 島には河川がない為、農業用水・生活用水・飲料水は天水タンク・井戸の他、RO造水機により賄っています。

 島の面積は元々約5.0平方kmでしたが、深海棲艦出現後に鎮守府が設置された為、埋め立て・メガフロート設置等により凡そ8.5平方km程に拡張されています。

 また、島には鎮守府関係者以外に民間人も居住している為、人口は艦娘や憲兵などの鎮守府関係者を併せて約500人程です。田畑や果樹園、商店街など生活に必要な施設の他、神社仏閣なども揃っています。

 

 

3.鎮守府

 横須賀海軍区鎮守府に属し、豆南諸島の海域を担当している書類上は甲種根拠地に当たる鎮守府です。

【挿絵表示】

 

 鎮守府全体の敷地面積は約0.53平方km(約16万坪=53ha)で、これは東京ドームでは11個分、甲子園球場では13個分となります。上野恩賜公園の面積に等しい広さで、千葉のネズミの国以上USJ以下です。直線にして一辺凡そ730mと子どもの足でも10分もあれば端から端にたどり着く小規模な鎮守府です。

 艦娘寮敷地面積は凡そ5000坪、執務棟敷地面積は凡そ7600坪、工廠棟敷地面積は凡そ10000坪、事務棟敷地面積は凡そ12600坪となり、これらの主な建物と執務棟前にある平面幾何学式(フランス式)を模した小庭園・艦娘寮付近にある池泉回遊式庭園・薔薇園を含めた敷地面積は、東京国立博物館の敷地面積とほぼ同じの0.125平方km(約37500坪=12.45ha)になります。鎮守府敷地のその他の部分には妖精の詰める電探施設や長さ350m前後の滑走路、砲塔や高射砲・銃塔等の防衛施設や艤装以外の兵器弾薬を開発・製造する地下工廠の他に小さな田園・果樹園・竹やぶや広葉樹林の小さな丘(里山的なもの)があります。

 主な建物の配列は寝殿造をイメージしてください。

 憲兵等が駐在する治安施設や広報などの渉外施設が西の対に、艦娘の建造や艤装開発を行う工廠と艦娘医療施設が東の対、執務棟が寝殿、艦娘寮が北の対となり、それぞれの建物は渡殿の様な通路で結ばれています。執務棟のイメージは東京国立博物館本館です。

 

【挿絵表示】

 

 土塁と堀の外側は防衛施設で囲われているため、鎮守府に要件のある民間人は定められた道路を通って訪問します。道路は高さ5mの金網と目隠し代わりの生垣(*1)で囲われており、金網の内側に侵入した場合地雷で吹き飛びます。

 

 

4.艦娘寮について

 この鎮守府では、海防艦娘や暁型等の容姿の幼い駆逐艦娘を除き、艦娘は個室が与えられています。

 海防艦娘や暁型等の容姿の幼い駆逐艦娘には提督が個室か共同部屋かを選択させていますが、部屋の大きさは変わりません(ベッドがセミダブルから2段ベッドや3段ベッドに変わるだけです)

 

【挿絵表示】

 

【挿絵表示】

 

【挿絵表示】

 ※【参考】村雨の部屋(赤線より半分)

 

【挿絵表示】

 ※艦娘の居室は8畳の洋室と1.5畳の洗面所・浴室と1畳のトイレ・玄関スペース、0.5畳のクローゼット・廊下から成ります。村雨の洋室は中に自費で1.5畳の防音室を設置した為、他より狭いです(6.5畳)

 

【挿絵表示】

 防音室購入前の村雨の部屋

 

【挿絵表示】

 ※村雨が5月に買った防音室付(防音室のモデルはヤマハのMy Room:1畳タイプです)

 

※艦娘寮外観

【挿絵表示】

 台風や嵐を避けるために平屋です(屋根は急勾配ですがその分部屋の高さが有ります。部屋を壊さなければ提督は咎め立てしませんので家具を組み合わせてロフトスペース作る子もいます)

 

※艦娘寮間取り

【挿絵表示】

 大雑把な間取りです。飛龍の部屋は村雨が来る前に無くなりました(提督居住棟にあります)

 提督居住棟は離れの日本家屋(平屋)をイメージしています。渡り廊下とポーチで寮からも往来可能です。

 この提督、週に2,3日に1日程度しか居住棟に帰ってきません。残りは執務室に併設された専用仮眠所で寝泊まりして、時々夜遅くに飛龍たちが執務室に入っていくのを夜間警備中の艦娘や妖精に目撃されています。

※横須賀管区鳥島鎮守府長官(村雨の提督)イメージ画像

【挿絵表示】

 

*1
境を明確にでき威圧感を与えない木立性のローズマリーやモッコウバラやハゴロモジャスミンなどが用いられている




※小悪魔村雨の秘密の日記における世界観に記載している間取りは【せっけい倶楽部】を使用しています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

村雨の日記帳(本編)
村雨の日記――12月01日(配属初日)~12月15日――


※この作品は村雨が記している日記です。前話までの世界観等については村雨が生活している世界にとって常識なので当たり前の事として特に本編中に断りは入れていません。



のんびり気ままに書く見た目小悪魔村雨の日記(モドキ)

読む前の注意書き

※何かでか使えるかもと計画のみに終わった艦が名前だけ出て居ることがあります。

以上です


12月1日(金)

 また新しい鎮守府でお世話になることになった。

 戦争中だから仕方ないとはいえ、私、提督運ないのかなぁ。

 私が良いなぁって思った提督ってすぐに出世して異動しちゃうか戦死しちゃうのよね。

 そのうち悪名が立っちゃうかも。

 それにしても毎度のこととはいえ、配属初日はやっぱり緊張しちゃうな。

 新しい提督がどんな感じの人なのか、ぜんぜん知らないわけだし。

 所謂ブラックだったら最悪だよね。

 でも、仕方ないか。ウジウジしてたって、なんにもはじまらないものね。

 この鎮守府でも迷惑をかけないよう、がんばらなくっちゃ!

 ここの鎮守府って白露型いないのね。早く皆に会いたいな。

 

 

12月2日(土)

 今度の提督、すっごく私に気をつかってくれてるみたい……。

 最初はどこの鎮守府でもこんな感じなんだけど、それにしてもちょっと恐縮しちゃうよ。

 相手の緊張がほぐれるよう、まずは私の方から早く馴染まなくっちゃね。

 そうそう、ここの鎮守府って一人一部屋なんだね。

 よそと比べて随分恵まれている感じ。私に与えられた部屋も居心地よさそうだし。

 そうだ、明日はこの部屋をしっかりと掃除して、自分がリラックスできる居場所になるよう模様替えしちゃおう!

 別にいいわよね?

 

 

12月3日(日)

 さっそく部屋の掃除と模様替えを決行した。

 配属されていきなり部屋の模様替えっていうのも、提督達にしてみればなんだか気分の悪い話かもしれないんだけど、早く自分をこの鎮守府に馴染ませたいから、ちょっと目をつぶっててもらおう。

 それに模様替えといったって、もともと持ち物が少ないんだからお気に入りの風景画を飾ったりしたぐらいで、それほど無茶したわけでもないしね。

 

 

12月4日(月)

 昨日に引き続き持ち物の整理をしていたら、建造されてから3か所ぐらい後に配属された鎮守府の写真が出てきた。

 沖田提督と二駆と一緒に写ってるやつ……。

 なんだか懐かしい気分になっちゃった。みんな、どうしてるんだろう。

 沖田提督も戦死しちゃったって聞いてるし、いずれお墓参りも行きたいな……。ここにもう少しなれたら提督にお願いしてみようかな。

 それとあそこの二駆とはなんとかして会いたいなぁ……。

 ずいぶん雰囲気変わっちゃったんだろうなぁ。

 

 

12月5日(火)

 今日は鎮守府のある街の探検にひとりで盛り上がっちゃった。

 けっこう食べ物屋さんが多くって、周辺はゴチャゴチャしてる。

 食べ物屋さんの人に艦娘さんかって声かけられて素直に答えちゃったけど……。良かったのかな? 過ぎたことは仕方ないよね。内緒にしろともいわれなかったし、皆さん好意的だったし。

 大通りの商店街は普通なんだけど、2軒ほど気になるお店を発見!

 かわいらしい雑貨屋さんとお花屋さん。

 給料が入ったら行ってみようっと。

 あとなぜか電気屋さんと金物屋さんが多いのにビックリした。

 全体的にみた感じでは生活しやすそうな街って気がする。

 深海棲艦から絶対に守り抜くんだ! 

 

 

12月6日(水)

 自分の部屋だけ掃除してるのもなんだかなぁ……なんて思ったから、今日は鎮守府の建物の掃除に汗を流す1日。ちょっとさしでがましいかな、とも思ったけど、私、家事とかかなり好きだから。

 それに厨房の雰囲気もよくわかったから、今度は料理にもチャレンジしてみよう。なんて思っていたら、暁型の雷ちゃんとばったり。雷ちゃんはどこの鎮守府でも変わらないなぁ。思わず頬ずりしちゃった。

 この鎮守府の提督、好きな料理ってなんだろ? お世話になってる身だし、今度つくってあげようかな。なんて雷ちゃんに聞いたら複雑な顔されちゃった。駄目なのかな?

 

 

12月7日(木)

 ビックリした。大本営に異動した提督からアコーディオンが届いたんだもん。

 いらなくなったからって私にくれたみたいなんだけど、すごくうれしかった。

 忘れずにいてくれたんだ、あの頃私がずっとこれ弾いてたのを……。

 新しい提督に煩がられないよう小さな音で我慢しながらになっちゃうかな。

 でも、今日からまた弾けるかと思うと、すごく幸せです! 最高の宝物にします。

 あ、この鎮守府にも那珂さんがいたから、普通に弾いても大丈夫かも。明日確認して見よっと。

 

 

12月8日(金)

 さっそく部屋でアコーディオンを弾きまくっちゃった。久しぶりだから指が思うように動かなかったな。

 那珂さんにアコーディオンの事で弾いても大丈夫か確認に行ったら、ライブに参加させられそうになって焦っちゃった。

 何とか参加は免れたけど、後ろで神通さんと川内さんがごめんねって手を合わせてた。

 また誘われるんだろうな……。

 誘われる前に勘を取り戻さないと。

 それにしてもうれしいなぁ。自分のアコーディオンが持てるなんて。

 夢みたい。よし、給料に余裕ができたら楽譜を買いにいこうっと!

 そうそう、提督から明日から遠征任務への参加も言われてたから、その準備もしないとね。明日の旗艦は香取さんか。水着も準備しちゃおうかな?

 

 

 

12月9日(土)

 アコーディオンの話からうっかりしてて前の提督にお礼の手紙書くのを忘れてた事を思い出しちゃった。

 慌ててさっき「アコーディオンありがとうございます」ってお礼の手紙を書いたんだけど……。

 あれだけお世話になって、さらにアコーディオンまでいただいたっていうのに、こんな大事な事忘れちゃうなんて、ダメだなぁ私って。

 白露たちにも言われてたのにね。

 こういうことはキチッとしとかなくちゃね。反省、反省。

 旗艦が香取さんだったからてっきり南の遠洋練習航海だと思い込んじゃってた。

 実際は防空射撃演習と対潜警戒任務だった。遠くまで行かなくてよかったような、残念なような複雑な気分。

 

 

12月10日(日)

 今日でこの鎮守府にきて10日が経った。

 朝から秘書艦の飛龍さんと五月雨ちゃんから呼び出し。

 五月雨ちゃん、居たんだね。普段見かけないから白露型って誰もいないと思ってたよ。

 何か失敗しちゃったかなとおっかなびっくり出頭したら、意外なこと聞かされちゃった。

 提督の事、公の場では提督って呼んでもいいけど、私的な場ではお父さんって呼べって……。

 どうしてか聞いたら、此処の鎮守府が目指しているものって寝食を共にし互いに困ったことや心配事を相談をする家族みたいな存在だからだって。

 理想的を通り越して夢想的すぎないかな、それって。

 でも、なんかいいよね。私もそこに加わるのか……。

 お父さんて今まで縁がなかったから、改めて呼ぶと気恥ずかしいね。

 なんの面識もない人に向かってお父さんって言うのはどうなんだろ。

 何回か経験すれば慣れるかな?

 

 

12月11日(月)

 提督、私がお父さんって言い出したら、ちょっと恥ずかしそうだったな。

 練習したから、顔に出てないと思うけど、私も未だ恥ずかしいのよね。

 なんだかぎくしゃくしちゃった。ま、仕方ないか。

 そのうちお互い意識しなくなるでしょ。

 だって、これからずっと一緒に暮らしていくんだから。 

 

 

12月12日(火)

 提督って私の事、どう思ってるんだろう。

 今のところ、特に迷惑をかけてはいないし、たぶん煙たがられてはいないと思うんだけど……。

 変に優等生すぎるかな? 私というか、白露型ってよくそう言われるらしいんだけど、本当は外見年齢相応の娘なのに。なんてね。

 ま、いいか。それよりも、早く鎮守府の一員として自然に振る舞っていけるよう頑張らなくっちゃね。

 今日はひたすら座学だった……。身体動かしたいよ~。

 

 

12月13日(水)

 今日も部屋にいる間はアコーディオンを弾く1日。

 曲を弾いてるときって無我夢中っていうか、他のこと忘れて集中できるから、すごく気持ちイイの。もっと提督とコミュニケーションとらなくっちゃいけない……とは思うんだけど。

 あ、提督ってアコーディオンかオルガン弾けないかな?

 士官学校出身なんだからそういった楽器演奏も嗜みの一つだったよね?

 

 

12月14日(木)

 

 

 

12月15日(金)

 昨日は朝から大変だったよ。食堂でいきなり秘書艦仰せつかっちゃった。

 戻ったらバタンキューで日記も書けなかったよ

 今日も秘書艦やらされて、開発建造に追われちゃった。

 建造したら陽炎ちゃんがきたけど、どうせなら夕立か時雨がよかったな。

 

 




長編放り出して新たな物書く。

長編も最後のシーンは書けたのに、そこまでが進まない……。

こっちは何とかなる……と良いな。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

村雨の日記――12月16日~12月31日――

書いていてなんですが、

村雨が日記書いている様子――雨空を見上げアンニュイな雰囲気でため息を吐きながら書いている様子以外に思い浮かびません……。


12月16日(土)

 やった~! 秘書艦で建造したら、夕立と時雨が来た~。この鎮守府でも巡り会えたよ~。

 でも、我らが白露型長姉とは、いつ会えるのかなぁ。

 前の鎮守府だと会えなかったのよね、二ヶ月しか居なかったけど。

 

 

12月17日(日)

 なんか建造当初頃からのクセで、ついつい身の回りのことって言うか、掃除、洗濯、炊事……と家事全般に手出ししちゃうのよね。

 別に悪いことじゃない筈なんだけど、その鎮守府にはその鎮守府のやり方っていうか、規則みたいなものがあるから……イヤミだと思われてたら、ちょっとツライなぁ。

 提督って、どんな風に思ってるんだろ? 気になるなぁ。こういう家事の相談は雷ちゃんにするのが一番よね。

 

 昨日の曜日見て吃驚。曜日間違っちゃった。2人に会えて(はしゃ)いでたのかなぁ。日記は万年筆で書いてるから消せないのよね。線引いて修正しちゃおっと。

 

 

12月18日(月)

 今日は他所の鎮守府との演習を想定した紅白戦で汗を流す。なんだか調子よくって、雷撃がおもしろいように決まっちゃった。

 でも、実際はもっとキツくなるだろうから、こうすんなりとはやらせてもらえないだろうなぁ。

 無駄打ちしたり誤射しないよう、みんなと連携して動かなきゃね。

 それにしても皆私ばっかり狙ってくるのよね。なんで? おかげで中破しちゃったよ。

 提督がたまたま居なくなってたからよかったけど、見られてたら恥ずかしかったろうなぁ。

 由良さんや愛宕さん達と相談してフォーメーションも考えなきゃ。

 

 

12月19日(火)

 右腕がはっちゃって、すごく痛い! こんなんじゃ実戦でこてんぱんにやられちゃうよ……。

 暫く大本営で事務仕事しかしていなかったから、未だ勘が取り戻せないのかな?

 我ながら練度35とは思えないよ、確かに30台は高練度とは言えないけどさ……。とにかく頑張るしかないよね。

 

 

12月20日(水)

 今日、目覚まし時計がこわれちゃった! 総員起こしの前に目が覚めてよかったよ。起きてなかったら鳴らなくてあせっちゃったろうな。

 ずっと前に人見提督から貰ったやつだから、もう寿命がきちゃったんだよね、きっと。

 近所の雑貨屋さんでみつけたかわいいやつ、買ってこようっと。もちろん貰った目覚ましは大切に保管します。

 

 

12月21日(木)

 街で大きいトマトが3つで10コインだったから、買って帰ってトマトゼリー作っておいしくいただきました。

 私、野菜には目がなくって、みんながおやつを買って食べる感覚で食べちゃうの。

 甘いお菓子食べるよりは絶対に良いはずよね。美容にも良いはずだし。

 明日は久々の遠征。香取さんが旗艦だから今度こそ遠洋練習航海かな?

 

 

12月22日(金)

 

 

 

12月23日(土)

 今日は鎮守府もお休み。私も遠洋練習航海終わったからごろごろしよっと。

 提督お父さんもごろごろしてるんだって。とか言ってたら、お父さん、島風ちゃんと雪風ちゃんに引っ張られてどこか行っちゃった。

 夕方になってクタクタな様子でご帰還。満足気な2人との差がすごかったなぁ。金剛さん達も苦笑いしてたし。

 夕食は私と雷ちゃんが当番。2人でお疲れのお父さんに特別な料理をプレゼント。

 メインは雷ちゃんが担当、私がデザート担当。

 何作るのか聞かれたから、作る予定のデザート答えたけど、それに合わせられる雷ちゃんってすごいね。

 キュルビスブロートからシュパーゲルクレーメズッペにウィンナーシュニッツェルまで作れるなんてホントすごいなぁ。どこで勉強したのかな。

 私はずっと前にいた鎮守府のオイゲンちゃんから教わったローテグリュッツェを作ってみました。フランク・フルター・クランツとどっちにしようか迷ったんだけどね。

 

 昨日は日記書けなかったよ。まったく、遠征だからって日記帳忘れちゃうなんて、村雨不覚でした。おまけに冬至のゆず湯にも入りそびれちゃった。これは仕方ないか。

 

 

12月24日(日)

 今日はクリスマス・イブ。

 食堂でクリスマスパーティをする。こんなに盛り上がったクリスマスパーティは脇田提督の鎮守府以来かな。

 最高だったのはプレゼントの交換。ひとり200コイン以内で好きなものを買ってきて、あみだクジで交換したんだけど、名取さんには天龍さんが買ってきたご当地木刀セットがいったり、愛宕さんには私が選んだ美顔ローラーがいったり……。

 私は摩耶さんの買ってきた白色のベレー帽が当たって、かぶってみたんだけど……春雨のようにはいかないね。

 

 

12月25日(月)

 今日が本当のクリスマス。トナカイさんも大活躍中かな。9頭全部のトナカイさんに名前がついているって教わったのはどこの鎮守府だったかなぁ。

 そういえば脇田提督の鎮守府でサンタ役になってみんなにプレゼント配ったことがあったっけ。

 困ったのは島風ちゃんの「妹かお姉さんをちょうだい」っていう一言だったなぁ……。

 あの時は夕張さんと名寄さんがお姉さんになってくれてたけど、元々あの二人って名前の由来が影響しているのか姉妹みたいに仲が良いのよね。名寄さんも夕張さんみたいに開発好きだし。だから島風ちゃんもどこか寂しげだったのよね。

 そう言えば、ここの島風ちゃんは言わないのね。これも家族的な鎮守府の影響なのかな。

 

 

12月26日(火)

 今日は朝から鎮守府がバタバタしている。

 遠征の指示を飛龍さんに任せて提督は五月雨ちゃんと夕張さんを連れてどこか行っちゃうし……。

 工廠で明石さんと桃取さんが頭を寄せて何かしているし……。

 

 

12月27日(水)

 昨日から鎮守府がバタバタしてると思ったら、餅つき大会だった。

 毎年恒例で、皆で臼と杵で作るんだけど臼に罅が入っちゃって、今年は諦めかけていたんだって。

 昨日、提督が出かけていたのは、心当たりがある長野の更科で臼を探していたみたい。

 無事購入出来たみたいで今日は朝から鎮守府で採れたもち米を蒸したり、乾燥させていた青大豆や小豆から餡子を作ったり、きな粉を作ったり、裏から大根収穫してすり下ろしたり……。どれも美味しそうだけど、でも、アオサと納豆を混ぜていた時はちょっと引いちゃった。

 私もお手伝いしたけど、餅を搗くのって意外と大変。

 搗きたてのお餅はおいしかったな。

 

 

12月28日(木)

 今日は鎮守府近海の対潜哨戒作戦や遠征で皆出払っちゃったから、鎮守府がとても静か。秘書艦の飛龍さんの他は、金剛さん姉妹と由良さん、愛宕さんと大井さん。駆逐艦は私と浜風さん、浦風さん、潮ちゃんがお留守番。工廠の明石さんや夕張さん達もお出かけ中。

 こんなに出払っちゃって留守を襲われたらどうするのかしら? 

 

 

12月29日(金)

 鎮守府近海の対潜哨戒作戦に私も初参加。散々だったよ。中破しちゃうし、提督に色々見られちゃったし。

 今日で仕事納めだって。艦娘が仕事納めって、変なの。警戒態勢は解かないらしいけどね。

 

 

12月30日(土)

 ゆっくりと入渠して出てきたら、お正月の飾りつけの真っ最中。

 明石さんと桃取さんが製餅機(大福号)を修理していたみたい。雑煮のお餅と鏡餅はこれで作るんだって。

 鏡餅見てるともうそんな時期なんだって、一年が経つのが早く感じちゃう。

 提督にお話ししたら、年を取った証拠だって。

 もう、艦娘は年なんか取りません。何時までもピッチピチなんです。

 

 

12月31日(日)

 今日で今年もおしまい! お蕎麦も食べ終わったし、後片付けも終わり。年越し蕎麦は、年が変わるまでに食べ終わらないと幸運を逃しちゃうのよね、みんな片付け終わったのかしら。

 あ、大晦日の除夜の鐘が聞こえてる。明日からはじまる新しい年は、なにかいいことがあるといいな。

 あ、そうだ。艦内神社持ってる人たちの所に行ってこよっと。二年参りはそこで済ませて、明日はしっかりと初詣に行かないとね。

 




村雨の提督変遷史

脇田⇒近野⇒南⇒沖田⇒人見⇒末永⇒日向⇒黒井⇒法政⇒種子島⇒金田⇒杉野⇒広瀬⇒横井⇒緒方⇒浜中⇒瀬尾⇒山上⇒西野⇒萩原⇒現提督





後で文字数追加して長編(予定)の日常編に投入予定の箇所があります。何処になるかは予想通りだと思いますが。



12/16夕

12月23日(土)のシーン、シュタインオーフェンブロート(石窯パン)からキュルビスブロート(かぼちゃの種のパン)に変更。

……薪を使った底面が石の窯でパン生地を直焼きするパンを焼くのは有能すぎる妖精さんがいないとさすがに短時間では無理だわ。
 


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

村雨の日記――01月01日~01月15日――

ネタが……。
ちょっとだけ日が足りませんが、投稿します。


12/21 1/15分まで追加


1月 1日(月)

 新年、あけましておめでとうございます!

 今日はお正月。昔だと歳旦祭って言ったの。それにしても書くこといっぱいあったなぁ。振り返りながら書いていこっと。

 朝起きて真っ新(まっさら)な和装用下着をつけてから着物に着替えるとなんだか気持ちがシャキッとしたなぁ。

 初日の出を拝んだ後、食堂に行ったら今日の食事は終日広間だって張り紙が。

 広間って、あんまり行かないから緊張するのよね。

 広間に行ったら、大きな神棚の前に、大きな長火鉢があってびっくり。

 真っ赤な炭火でむっとするほど暖かかったな。

 皆が揃ったところでお屠蘇を一盃頂きました。銀朱塗りの三ツ組盃と銚子が綺麗だったなぁ。

 でも、年少者から年長者へと盃を回すのが昔からの作法だからって、金剛さんが提督にお屠蘇を注いで飲み干した盃を、提督が伊401(しおい)ちゃんに注いで、伊401(しおい)ちゃんが伊58(ごーや)ちゃんにって就役年の若い順でまわし飲みするのはちょっと……。

 そこまで厳格にしなくてもいいのにね、提督の方が見た目年長なんだから。

 なんか複雑な気持ち。

 あ、そうそう、提督も初めて見る黒羽二重五つ紋付羽織袴姿で新鮮でした。

 近くでまじまじと見つめちゃったけど、今時、縫紋じゃない染め抜き紋なんて初めて見たわ。

 それと、提督の家紋って変わり対い揚羽蝶*1だったのね。

 お屠蘇の後は祝い膳として御節とお雑煮を頂きました。

 ここの鎮守府のお雑煮はしょうゆのすまし汁に里芋、牛蒡、鶏肉、青菜、しいたけに焼いた角餅が入っているのね。

 前に居た鎮守府には、いりこだしの白みそ汁に里芋、大根、金時人参、餡子餅が入っていたところもあったなぁ。

 他にも塩鰤と野菜たっぷりの味噌汁に茹でた丸餅が入ってた鎮守府とか。

 お雑煮とか鎮守府ごとに違っていて、こんな時だけは異動も良いなって思っちゃう村雨です。

 お雑煮の後は提督からお年玉を手渡されました。コインの額は皆バラバラだったみたい。

 戦前はお正月に歳をとるからその年齢の数だけのお年玉だったのよね。

 後は……元旦式がありました。提督の簡単な挨拶の後は皆で一月一日を二番まで歌って。

 ここの鎮守府もそこは変わらないのね。なんか昔を思い出しちゃうな。

 でも、誰? あの替え歌教えちゃったのは! 小さい子に変なこと教えちゃダメでしょ。

 今年も忙しい年になりそう。精一杯がんばって良い戦果が残せるように努力していかなくっちゃね。

 提督にも迷惑かけないようにしていかなくっちゃ。

 今年も村雨の、ちょっといいとこ、見せてあげるからね♪

 

 あ、今になって思い出したけど、小・中・大の盃で呑むのって式三献の儀式だよね。三々九度……。

 

 

1月 2日(火)

 今日は吉書始め。昨日に続いて、広間に集合。

 菅公の掛け軸を掛け、新しい筆と墨を準備して提督が昨日汲んでお供えしていた若水で墨をすり、恵方に向かって書を認めました。

 ここの鎮守府、お正月も行事多いのね。

 

1月 3日(水)

 今日は元始祭だったのよね。皇室祭祀令はなくなっちゃったけど、元始祭は祝日としてあるのよね。だからゆっくりしたいなぁ。と思ってたけど、街のお寺さんで新春特別大護摩あるって聞いて来た夕立達と一緒にお出かけ。

 すごい人だったけど、無事に初護摩も済ませて来ました。民間人は余り意識しない人もいるけど、戦っている私達にとってはこういった事も欠かせないからね。

 午後からは装備の点検をしてゆっくり過ごせたよ。

 

 

1月 4日(木)

 まだ松の内だけど鎮守府は仕事始。

 三箇日中も警戒は怠らなかったけど、積極的な攻勢も行わなかったしね。対潜警戒任務や警備任務で近海の安全を確保しておかないとね。

 皆で護衛任務と近海の対潜哨戒に精を出しました。

 

 

1月 5日(金)

 今日は新年宴会。新年の到来を祝う宮中の宴会で皇族の方々や、親任官の皆様や外国の公大使の方々と宮中で宴が催されているはずなんだけど、ここは関係ないみたい。長良さん達と羽根つきしていました。松の内だから良いよね。

 結果、真っ黒にされました。百人一首だと大勝利なのに……。

 

 

1月 6日(土)

 今日は朝から裏の薬草園で七草摘み。遠征や出撃している皆の分も私たち留守組が摘んでおかないとね。

 夜はしっかりと七草をまな板に乗せて囃し歌を歌いながら包丁で叩きました。

 でも、私が知っている七草ばやしとはちょっと違ったみたい。私が知っているのは、『七草なずな 唐土の鳥が 日本の土地に 渡らぬ先に ストトントントン ストトントントン』なんだけど、この鎮守府では「七草なずな 唐土の鳥と 日本の鳥が 渡らぬ先に 七草はやす おてこてんてん」なのよね。

 色々と種類があるんだなぁって、改めて感心しちゃった。

 

 

1月 7日(日)

 今日は先帝祭。朝からテレビ番組も亡き昭和帝の特集一色でした。私達が艦だった時の先の大戦と切っても切り離せなかった御方です。色々と考えさせられました。

 そして今日は七草でもあるのよね。

 鳳翔さんや間宮さん達が朝から大忙しでした。手伝った方がよかったのかなぁ。

 鳳翔さんから昨日教わったんだけど、七草って人日の節句で五節句の一つなのよね。

 人日の日に「七種菜羹(ななしゅさいのかん)」という7種類の若菜を入れた汁物を食べて、無病息災を願うようになったのが最初で、日本に来てから7種類の穀物でお粥を作る「七種粥」の風習などと結びついて「七草粥」に変化したのよって。村雨、頭の中もパワーア~ップ! 鳳翔さんには感謝です。

 

 

1月 8日(月)

 寒いと思ったら、外が真っ白。松の内だったら瑞雪だったのに。これは淡雪かな。

 島風ちゃんたちがもっと積もってなんて言ってたけど、提督は寒そうにしてた。

 明日はどうなるかな。楽しみ。まだまだ外は細雪。

 

 

1月 9日(火)

 垂り雪で起こされて、窓を開けたら銀雪! 私の部屋から見える松も綿帽子被ってる。

 あ、松の枝葉に積もった雪って松の雪っていうのよね。

 雪風ちゃんや吹雪型の皆が大はしゃぎしてたわ。

 ところで、玄関の40個以上の雪ダルマと雪ウサギどうするのかな?

 

 

1月10日(水)

 髪留めなくしちゃったから新しいの買っちゃった。

 私っていっつもこういう小物買うとき、地味系の色を選んじゃうんだよね。

 見た目から想像するのと違うって言われるけど、失礼しちゃうわ。 

 まだまだ雪は解けてないわね。提督が滑って捻挫しかけてたけど、大丈夫なのかしら。

 

 

1月11日(木)

 今日は鏡開き。私が前にいた鎮守府では1月20日のところもあったんだけど、東日本では今日が鏡開きなのよね。

 鏡開きが20日だと15日まで松の内だったから、のんびりとできたんだけどね、大規模作戦がなければ。

 鏡餅ってこの頃飾らなくなってきた家庭も多いけど、鏡に似せた餅を飾って神様と共に新年を祝うという意味があるから、鎮守府ではみんな飾るのよね。古来から神様にお供えした物を食べるのは、神様との繋がりを強め、神様のパワーを頂けるって言われてるし。

 ここの鎮守府の一番大きい鏡餅、直径が180cmで高さは90cm。

 当然包丁などの刃物で鏡餅を切り分ける事は禁忌だから木槌でコツコツと割るのかと思ってたら、長門さんが拳で一撃。すごかったなぁ、さすがビックセブン。

 陸奥さん達も直径が110cmで高さが80cmの鏡餅を粉砕してたし。

 鏡餅はおしるこにして正門前で街の人に振る舞ったり、小さいものは、かき餅にして頂きました。

 それにしてもこの鎮守府、玄関の東側の梅と言い、西側の橘と言い、鏡餅に飾っていた橙と言い……。南西と北東には桃の木も植えてあったし。

 あ、そうそう、昨日は十日戎だったのよね。東日本だとあまり戎神社を見かけなかったから忘れがちになっちゃうけど。また二駆の皆と行ってみたいな……。

 昨日提督が滑って捻挫しかけたので飛龍さんの号令で大規模な除雪作戦! 雪だるまと雪ウサギは明石印の雪室に隔離。残りの雪は別の氷室に全部納めちゃった。あの雪は夏に使うんだって。残っているのかな?

 

 

1月12日(金)

 お餅がまだまだあるということで、時雨が皆に島原具雑煮を作ったのよね。おなか一杯食べちゃいました。でも時雨は丸餅じゃなかったからお気に召さなかった様子。今度は丸餅を用意するって言ってたけど、私はあれでも良いのよね。

 

 

1月13日(土)

 久しぶりの遠征だったんだけど、ちょっとポカミス。

 カ級の魚雷2本喰らっちゃって大破しちゃった。魚雷を喰らってから意識が朦朧としちゃっててよく覚えてないんだけど、一緒の艦隊だった吹雪ちゃんの話では、戻ってきたら提督が真っ青になってて、私を抱っこして入渠施設に駆け込んでいったらしいんだけど、施設で赤城さんたちが丁度着替え中だったらしいの。赤城さん達も突然入って来た提督にびっくりしちゃって大騒動だったって。

 起きてからこの日記書いているんだけど、本当にみんなに迷惑かけちゃったな。

 

 

1月14日(日)

 左義長に向けた準備で、広場に大きなやぐらが組まれているのよね。明日は左義長か。私も書き初めとかいろいろ用意しないとね。私は今日はお休みで自室療養を厳命されちゃった。

 

 

1月15日(月)

 今日は小正月。女正月ってことで大晦日(おおつごもり)・お正月に続いて出撃なし。私達が休んでいる間は妖精さん達が警戒してくれました。

 朝食は小豆粥。朱色の小豆は災いを避ける力や邪気を祓う力があるって言われているし、一年の家族の健康を願う意味を込めてっていう意味でも良いわよね。

 深海棲艦っていう邪気を祓って、鎮守府の家族が欠けたりしませんように……。

 お正月に門松を飾ったから、小正月は餅花を飾らないとね。

 鎮守府では昔ながらの、白いお餅とクチナシの実で色付けした赤いお餅の二色を柳の枝につけました。クチナシの実でも赤くなるのは初めて知ったなぁ。エビを使って赤くしたことはあったけど、ほとんど食紅だったし。あ、柳の枝につけるのって邪気払いの意味あったのね。何となくは知っていたけど、提督に教わっちゃった。

 東北地方の鎮守府にいたときは庭田植えもしたけど、これって他の地域ではあまり見なかったのよね。雪原を田んぼに見立てて、稲わらや松葉などを植えることで秋の豊作を祈願するなんて、風流だと思うんだけどね。

 あとは、左義長。鎮守府の敷地に竹や藁などで作ったやぐらを組んで、正月飾りや書初めや古いお札をくべて燃やしたのよね。街の人たちも参加して、賑やかだったわね。

 灰を持ち帰る人も多くて気になっていたんだけど、しめ飾りなどを燃やした灰を持ち帰り自宅の回りに播くとその年は病気にかからないって言い伝えがあったのね。左義長の火でお餅や団子を焼いて食べると一年間健康でいることが出来るのよね。もちろん提督や私達も頂きました。炎や煙に乗って歳神様も天にお帰りになって今年のお正月も残り僅か。




お年玉の額
駆逐艦は1000コイン、軽巡洋艦は2000コイン、重巡洋艦は3000コイン、戦艦と航空母艦は4000コインでした。

一月一日の替え歌
豆腐の始めは〜ではなく、年の始めの肥担ぎ〜の方です。


ここでの村雨の誕生日は進水日。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

村雨の日記――01月16日~01月31日――

1月11日から15日までの分は前話に書きました。


1月16日(火)

 今日は薮入りだって。藪入りって何だったか忘れちゃったから、香取さんに尋ねたら、江戸時代に奉公人が主家から休暇をもらって実家に帰り休息する宿下がりの日の事って教えてもらいました。大人や遠くから来ている人は帰れないから芝居見物や買い物などをして休日を楽しんだそう。今では新婚のお嫁さんが結婚後初めて実家に里帰りする日でもあるんだって。ところで、艦娘の実家ってどこなのかな? やっぱり艦時代の船渠が実家なのかな? 今度飛龍さんにも里帰りする所ってどこか聞いてみよっと。

 午後から街のお寺さんで十王図や地獄変相図が掲げられてたから参拝にお出かけ。

 賽日でもあるから、戦死された提督方のご冥福もお祈りしに閣魔堂に参詣しました。

 

 

1月17日(水)

 今朝、提督と飛龍さんが一緒に歩いているのを見て、昨日の縁日の事思い出しちゃった。

 参詣帰りに閻魔様の縁日だったからにぎわっていた屋台を見てたら、五月雨ちゃんを発見。声をかけようとしたら飛龍さんと提督が一緒だったから声かけそびれちゃったのよね。3人揃うと家族みたいだったな……。

 

 

 

1月18日(木)

 今日は陽炎ちゃんが皆に黒糖雑煮を作ったのよね。何で小浜の雑煮なのか聞いたら小浜って舞鶴のすぐ近くだったから覚えたんだって。良いなぁ。私は大阪出身だからあきない雑煮位なのよね。兵庫の焼アナゴ雑煮と奈良のきな粉雑煮は作れるけど、きな粉雑煮はともかく、焼きアナゴ雑煮はちょっと、ね。鎮守府に熊野さん居るし。でも色々と楽しめるから、いっか。

 

 

1月19日(金)

 日中はいつも通り遠征と主力部隊の出撃。夜になって皆が戻ってきてから、鎮守府が大忙し。明日は二十日正月だから前の晩に尾頭付きのお膳や、小豆御飯をお供えするんだって。

 今晩から出撃・遠征は禁止。夜戦夜戦って言っている川内さんも今日は仕方ないよねって言って騒がないし。伝統ってすごい。

 

 

1月20日(土)

 今日は二十日正月。神様方がそれぞれの場所に早朝にお帰りになった日。

 お正月飾りなどを全て片付けて、小正月に飾った餅花などを片付けたり、お正月のごちそうも食べ納め。ここの鎮守府、お雑煮は別らしいけど。

 昔の軍人とも言えるお武家さんは二十日(はつか)という言葉にかけて、刃柄(はつか)を祝うなんて言ったそうだけど、今の軍人さんも言うのかしら。

 お正月の祝い納めとして仕事を休む物忌みの日ということで出撃・遠征もお休みです。

 ここの鎮守府お休み結構多いのよね。大丈夫なのかしらね? ホントに。

 

 

1月21日(日)

 今日からまた出撃の日々。私も不覚を取っちゃって皆に迷惑かけちゃったから名誉挽回しないとね。

 

 

1月22日(月)

 お昼前に提督がバラの冬剪定をするって言ってたのでついて行きました。

 薔薇の手入れってホントに久しぶり。黒井提督が顔に似合わない趣味でやってたの思い出すな。

 株元から30センチ位の高さまでバッサリやっちゃったときはびっくりしちゃった。切り過ぎかもって思ったんだけど、提督の話では、春には丁度良い位置で花が咲くんだって。

 土のリフレッシュもお手伝い。株元から30㎝位かな? 離れた所に深さ30㎝位の穴を3~4か所掘り、その穴に堆肥を入れました。掘り起こした土を戻して混ぜ合わせたのよね。

 提督のお話では、堆肥を土に混ぜることで土に栄養分が増すだけでなく微生物も増えて活発に動きだすから根が生長しやすいフカフカの土になるんだって。今更ながらバラの種類を聞いたら、ロサ・ケンティフォリア、ロサ・ガリカ、ロサ・ダマスケナ、ロサ・カニナ、アルバ・マキシマだって。強香性の品種が多いからいまから楽しみ。ロサ・ダマスケナがあるならジャムを作ってみようかな。

 あ、『ヴィーナスの誕生』のバラってロサ・ガリカなのよね。私も花が咲いたらモデルになって秋雲ちゃんに描いてもらおうかしら。なんちゃって。

 

 

1月23日(火)

 遠征から帰ってきたら鎮守府裏の里山にハイキングに行こうって誘われて、ついて行ったんだけど絶対ハイキングと違うと思ったわ。でも楽しかったから良いかしら。皆で籠をもってふきのとう摘みしてたのよね。時雨たちも誘えばよかったかな?

 

 

1月24日(水)

 今日は北方の鼠輸送作戦に行ったくらいで特に何にもなかった1日。

 この季節の北方は寒かったっていうより痛かったよ。

 あ、そういえば日焼け止めがもう少なかった。買っとかなきゃ。 

 

 

1月25日(木)

 最近、みんなで料理を作ってた影響で、木曜日が料理を自分たちで作る日みたいになってる。今日は由良さんが鯨肉のフーカデン、神通さんが玉ねぎの肉詰め、暁ちゃんがチキンマカロニを作ってたわ。今後も色々と楽しめそう。私も前に教わった呉汁作ってみたけど、なんか見栄えが悪いのよね。

 

 

1月26日(金)

 今日は他の鎮守府との演習。ふぇー。疲れました。1回目はA判定、2回目はS判定で勝ったんだけど、3回目はC判定で負けちゃった。

 なんか1日中緊張しながら演習してたって感じ。

 

 

1月27日(土)

 今日は昨日の演習の反省会。

 1日皆で討論して、今後の訓練に活かさないとね。

 反省会の後は、皆でカラオケ大会! みんな、演習や出撃の時より活き活きしてる。私達、深海棲艦と戦うために生まれてきたのよね? こんなので良いの? なんて言っても、私もずいぶん燥いじゃった。おかげで声がつぶれちゃったかも。

 

 

1月28日(日)

 頑張った自分にご褒美として、近所の商店街にあるおしゃれな雑貨屋さんで、かわいいシャーペンとソープ・ディッシュを買っちゃった。洗面台の石鹸を置くところが、ちょっと汚れてるからちょうど良い感じ。

 

 

1月29日(月)

 昨日は夜間警備だったんだけど、夜遅くに飛龍さんがキョロキョロしながら素早く執務室の隣にある提督の私室に入るの見ちゃった。

 二人の関係には憧れているから、春雨みたいに、不潔です! なんて言わないけどね。春雨、ここには居ないけど。それよりも、あの後どうなったのか気になっちゃって寝付けなかったのよね。

 おまけに朝から二人の顔見ると色々と想像しちゃって、返事がしどろもどろ。おかげで二人から変な顔されちゃった。

 

 

1月30日(火)

 今日は孝明天皇祭でお休みなんだけど、運悪く深海棲艦が見つかっちゃったのよね。ここに来ると危ないからって南西諸島方面に出撃。帰還後、秋雲ちゃんに今流行の漫画をまとめて借りて、部屋に戻ってからずっと漫画漬けの日。たまにはこんな日も良いよね。なんて自分で言い訳しちゃう私。

 でも、秋雲ちゃんってオータムクラウドって名前で、その……アレな漫画も描いているのよね。借りた漫画の中にアレな漫画を紛れ込ませるのやめて欲しいなぁ。うっかり読んじゃって、慌てて返しに行ったら、提督と村雨のアレな話の感想聞かれて。もう、本当に困るんですけどぉー。

 夕張さんとばったり会って怒ってたら、秋雲ちゃんってこの鎮守府の艦娘全てのアレな話描いて、漫画借りに来た娘に見せるのが趣味なんだって。ホントに嫌がる娘のお話は描かないから他の娘も強く言えないし、金剛さん達みたいに喜んでいる娘も多いらしいの。私は困るんですけどぉーって言ったら満更でもなかったでしょだって。他の村雨と提督のお話だって割り切っちゃえばいいけど、返事に困っちゃうよ。

 そんな私を見て笑ってる夕張さん。ほんとに悪趣味なんだから!

 

 

1月31日(水)

 今日で配属されてから2ヶ月なのよね。

 昼過ぎに飛龍さんと五月雨ちゃんからお呼ばれ。前に大破しちゃって迷惑もかけちゃったし、その辺の話かなって思ったら、何処かで聞いたようなお話でした。

 う〜ん、どうも提督の事お父さんって呼べないのよね。非番の時も意識しないとつい提督って呼んじゃう。

 2ヶ月もいると非番の時はお父さんと呼ぶのがここの流儀というのは分かるし、私もそういうの段々好きになって来たし。

 他のみんなと話していると、提督って呼んでいる娘って本当に少ないのよね。妙高さんと矢矧さんくらいしかいない。あの長門さんや那智さんも「父上」って呼んでるし。

 妙高さん達は、軍事組織である以上誰かは役職で呼ばないといけないからって意識して提督って呼んでいるって聞いたから、私も早く「お父さん」って呼べるようにしないとね。郷に入っては郷に従えとも言うし。

 うん、日記でもお父さんって書いてみようかな。そうすれば、自然にお父さん呼びができるでしょって前にも似たようなこと書いたわね。明日から意識して書こっと。




現実では12月なのに日記では1月も終わり。
……ちょっと急ぎ過ぎたかも。
イベントあったらその辺も紛れ込ませる予定です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

村雨の日記――02月01日~02月15日――

2月 1日(木)

 今日から2月。さっそく昨日の事、心掛けながら書かなくちゃ。

 今週もみんなで料理作り。

 今日は初春ちゃん、子日ちゃん、若葉ちゃん、初霜ちゃんの第21駆逐隊によるチキンライスとポタージュ。

 これって献立調理特別努力週間のアレよね。伊勢さんもアサリのホワイトシチュー素麺……。

 美味しいから良いか。

 昨日は皆既月食があったんだけど、それを見るのに夜更かししちゃって。まだ、少し眠いのよね。

 

 

2月 2日(金)

 ちょっと前からあちこちの艦娘の間で通販が静かなブームになっているんだけど、ここの鎮守府でも通販が流行中。

 私もよく利用するんだけどね。カタログとか見ると、意外と安いし可愛いものが手に入るし。

 下着、特にブラとかって私のサイズだとお店にはあまり可愛いものがないんだけど、通販だと可愛いものがあったりして便利なのよね。

 前にいた鎮守府だと、浜風さんや潮ちゃんたちとセットで買ってわけたり、まとめて買って割引してもらったりしてたんだけどな。ここの浜風さんや潮ちゃん達って実用性と価格重視で通販の下着にはあまり興味ないみたい。一人で注文すると割高だし、時雨や夕立もちょっとサイズが違うし。

 こればかりは提督お父さんに相談するわけにもいかないし……。どうしようかな。

 いっその事、私も愛宕さん達と一緒の仲間に入れてもらおうかな。

 

 

2月 3日(土)

 今日は節分。前にいた鎮守府では柊鰯を小正月から飾っていた所もあったけど、ここは今日だけ飾るのよね。

 京都の近くにいた頃は「追儺」の儀式の見物に行けたんだけどなぁ。

 朝から鎮守府の垣根になっている柊から葉の付いた枝を取ってきて飾り付け。柊の枝に、こんがりと焼いた鰯の頭を刺して、入口に飾りました。

 でも、なんで節分に柊と鰯を飾るのか前から疑問だったのよね。

 香取さんとお父さんに聞いてみたら、面白い答えが返って来たの。

 鰯みたいな臭いの強いものや松の葉や柊のように尖ったものが魔除けや厄除けとになっていたのは教えてもらってたんだけど。

 鰯の生臭い臭いと柊の痛いトゲが、鬼の苦手なものとされていたのね。鰯の頭を焼くのは、その臭いと煙で鬼が近寄る事が出来ないようにする為なんだって。

 他には鰯の頭を焼いた煙で鬼をおびき出し、柊のトゲで鬼の目を刺して追い返すという説もあるのね。

 防御と攻撃か。私達には後の説の方が似合っているかも。

 元々は「門守」といって、御守の類を門口に飾り、魔物や災難などをよけるおまじないとする風習から来ていたのね。

 勉強になりました。

 お昼に節分そばを食べて、遠征。お蕎麦の具はネギ・しいたけ・豚肉・かまぼこに菜の花。二種類の汁があって違いを聞いたら、煎酒と煮貫。何処かで聞いたと思ったら、種子島提督の鎮守府だ。懐かしいなぁ、あの好々爺然としていた姿。種子島艦長のお子さんだったから相性も良かったんだけどね……。あ、お蕎麦はもちろん両方の汁で頂きました。

 そっか、煎酒と煮貫も、もうあまり見かけないもんね。村雨は教わったから作れるんだけど……そっか、今度料理に使ってみようかな。ちょっといいとこ見せてみよっと。

 あ、そうそう、夜にはしっかりと、豆まきもしました。

 豆をまくのは、昔から家長の役目とされてたけど、鎮守府だと長って提督だから、ここはお父さんよね。

 お父さん、よく声が通るから桟橋で「鬼は外! 福は内!」と声を掛けると港の外まで聞こえるんだって。

 鬼役は、あの人だったのよね。夕立と朝潮ちゃん達が全力で投げるから、最後は本気で怒っちゃって……。

 お父さんや金剛さん達も苦笑いしていたし。

 豆まきが終わった後は、皆で恵方巻とけんちん汁に福茶。

 柊鰯は白紙で包んで塩で清めて海に流したけど、川じゃなくてもよかったのかしら?

 

 

2月 4日(日)

 今日、お父さん提督から「元帥麾下の艦隊と演習に参加せよ」って命じられちゃった。

 本来は、駆逐艦は島風ちゃんと満潮ちゃんが参加するはずだったんだけど、大規模作戦の応援で大破しちゃって今回は出られないらしいのよね。

 他の娘はレベルがまだまだなんだって。私も未だ60台前半なんだけどな……。もう一人は夕立。夕立ももう56になってるのよね。あと少しで追い抜かれそう。

 でも、お姉ちゃん、まだまだ抜かれないからね。

 それにしても、本当に困っちゃった……。私って最近遠征がほとんどで演習に参加していないのよね。

 いくらなんでもあの二人の代わりなんて、私にはムリだよ。

 命令だから承知するしかなかったけど、あと半月程しかないみたいだし、何とか足を引っ張らないように頑張らないと。

 

 

2月 5日(月)

 玄関でばったり会ったお父さん提督に、無理していないか聞かれちゃった。

 命令にしちゃったから少し気にしているみたい。

 もう。提督、ううん、お父さん。任せておいて。

 一度引き受けたからには全力を尽くします。って、朝潮ちゃんみたいかな?

 明日っから訓練開始。村雨頑張ります。

 

 

2月 6日(火)

 今日から2週間後の演習に向けて訓練開始。久しぶりの訓練場にちょっと緊張しちゃったな。

 今日は初めってこともあったので長時間対潜警戒と防空射撃演習で終了。やっぱり勘が少し鈍ってる……。

 

 

2月 7日(水)

 今日は初午。って言っても、ここに来るまでは稲荷神を祭る祭事ってくらいであまりよく分からなかったのよね。でも、ここでは畑と田圃と果樹園がすごいから、重要なお祭りの一つになるのかしら……。

 全国各地の稲荷神社で豊作、商売繁盛、開運、家内安全を祈願するのよね。

 鎮守府でも午前中は訓練していたんだけど、午後からは皆で裏山の稲荷社に参拝。

 前にフキノトウ摘みに来た時にお社さんがあるなって思ってたんだけど、鎮守府の稲荷社だったのね。

 和銅4年2月の最初の午の日に宇迦御霊神が伊奈利山の三箇峰に降りたという故事から、稲荷神を祭る祭事が行われるようになったんだって。京都の近くにいたときは伏見稲荷に見物に行ったけど、他には大阪の玉造稲荷、愛知県の豊川稲荷も有名どころ。どっちも行ったなぁ。

 お稲荷さんといえば、いなり寿司よね。

 西日本ではきつねの耳に見立てた三角が主流なのに東日本では米俵に見立てた俵型なの。初めて見たときはその違いが面白かったなぁ。

 ここの鎮守府では、いなりずしの他に、しもつかれと初午団子も食べるのよね。

 しもつかれってここに来て初めて食べたんだけど、鮭の頭と、鬼おろしって道具ですった大根やにんじん、油揚げ、大豆を酒粕と煮る煮つけの事。おいしかったなぁ。

 後でお父さんに作り方聞いてみよっと。

 

 

2月 8日(木)

 事八日に六質汁(むしつじる)を頂きました。別名お事汁って言って、芋、大根、にんじん、ごぼう、小豆、こんにゃくの6種類の具を入れて作ったおみそ汁なのよね。事納めだと思っていたんだけど、東日本では事始めなのよね。いつもの通りお父さんに教えて貰っちゃった。

 事八日ってコトノカミという神を祭るお祭りってことは私も知ってたんだけど、このコトノカミが「年神様」か「田の神様」かで、事始めと事納めの時期が逆転するんだって。東日本だと農作業が始まるから事始めで、西日本だと年越しの「神事」が終わる日だから事納めなんだって。難しいなぁ。

 

 

2月 9日(金)

 今週もみんなで料理作りをするつもりだったんだけど、昨日は行事食だったから今日に変更。

 まだまだお餅があるので、お昼は揚げ餅玉ねぎ雑煮を作ってみました。

 煎り酒とサバ節、ホタテで作った汁と水で玉ねぎを煮込んで砂糖で味を調えたら、じっくり揚げたお餅をお椀に盛り付けて完成です。オニオンスープに揚げ餅いれたの? って言われちゃったけど、北海道のお雑煮です。

 夜は雷ちゃんと電ちゃんがくるみ雑煮とワカサギや筋子などをトッピングしたクルミ醤油だれ雑煮を作ってくれたのよね。

 あの時の縁で岩手県のお雑煮を覚えていたんですって。

 

 

2月10日(土)

 まだまだ右腕が張って痛い! こんなんじゃこてんぱんにやられてしまいそう……。

 このままじゃ皆の足引っ張ってばかりだよ。

 やっぱり引き受けるんじゃなかったかな。っていけない。早くも弱気になっちゃった。

 いまさら取り消すわけにもいかないから、とにかく頑張るしかない。

 故障してる島風ちゃんと満潮ちゃんも訓練につきあってくれてるし。

 こうなったら少しでも良い評価を狙わないとね。

 

 

2月11日(日)

 今日は紀元節。じゃなくて、建国記念の日。今年から名前が変わったの忘れてたわ。

 日本の建国そのものが不明となっていることから、正確な建国日というのがわからないからって理由で「の」が入っているって聞いたけど。

 日本はあの戦争で北千島と沖縄県と台湾が一時期占領された以外に植民地になったことなかったから、正確な建国日というのがわからないのも仕方ないよね。

 

 

2月12日(月)

 連続訓練1週間にして、早くもダウン気味。ペース配分間違ったのが祟っちゃったみたい。

 今日も部屋に戻ってきたら墜落睡眠で、夕ご飯食べ損ねちゃった。

 おなかすいて酒保へ買い出しに向かう途中、お父さんにばったり。

 話し込んでたら、運悪くお腹の音聞かれちゃった。

 お父さん、苦笑いして厨房で夜食を作ってくれた。

 お腹の鳴る音聞かれちゃったのは恥ずかしかったけど、ご飯作ってもらえたのはラッキー。皆には内緒にしちゃおっと。

 でも、まだ眠いよぉ。お休みなさい。

 

 

2月13日(火)

 明日はバレンタインデー。

 ……チョコレートなんかつくったりしてみたんだけど、お父さんに上げられるのかしら?

 

 

2月14日(水)

 今日はバレンタインデー。やっぱり朝から執務室に入れ代わり立ち代わり、すごい人。

 村雨の、ちょっと良いチョコ、食べてみる? 甘くて、すこーし苦い大人のお味なんです。なんてね。

 夜遅くになって、ようやく渡せたよ~。

 感想は後で聞けばいいよね。お休みなさい。

 

 

2月15日(木)

 夕食はまたまたお雑煮。間宮さんの、しょっつる雑煮。艦の時の料理人さんに作っていた人がいたんだって。

 えっと、前に食べたのは、確か……男鹿半島の鎮守府で、だったかなぁ。具だくさんで美味しいのよね、ちょっと味が濃いけど。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

村雨の日記――02月16日~02月28日――

2月16日(金) 

 今日は訓練がお休み。

 私も休んじゃおうかな……と思ったんだけど、せめてB評価くらいは取りたいから1時間程自主訓練しちゃった。

 私の他にも飛鷹さんと扶桑さんと山城さんが訓練中。航空機の誘導かなり上手だったなぁ。

 

 

2月17日(土)

 ここ最近、みんなと訓練終了後に鳳翔さんの所でお茶して帰ってくるのが日課になってるんだけど、この鎮守府の良い所ってこれかなぁ? 

 他愛もない事話してるだけなんだけど、みんなで楽しめる理由はこんなところにもあるんだろうな。

 それに、みんなも練度の低いガチガチの軍人さんじゃないから、締める所とそうでないところの区別はしっかりとついているし。鎮守府の雰囲気も軍隊然としていないから雰囲気も全然違うのよね。皆も委縮しないで力を十分に発揮できている様子だし。

 気になるのは、出世していった提督達の鎮守府の雰囲気とよく似ている事なのよね。ひょっとするとお父さん、すぐに出世して鎮守府が再編成されちゃうかも。

 もっとこの鎮守府に居たいんだけど、お父さんの出世は良い事だし、悩ましいなぁ。

 

 

2月18日(日)

 演習まであと1週間。元々差があり過ぎるからか「駄目で元々。C判定なら上々」って感じになっちゃっているのが気になるのよね。

 私も変に緊張しなくて済んでるんだけど、お父さんに指名されて艦隊に入ったからには迷惑かけないように頑張らなくっちゃね。

 

 

2月19日(月)

 今日、深夜のTV番組でリシャール・ガリアーノさんの演奏会があって、眠たい目をこすりながら見ちゃった。でも、すごくよかったなぁ。

 さすが、世界3大アコーディオニストの一角よね。すっごく上手で、私もあんな風に弾けると良いのになぁ……。

 あ、今日は24節気の雨水だったから、ひな壇を飾り付けたのよね。何で、今日なの? ってお父さんに尋ねたら、雨水に雛人形を飾ると良縁に恵まれるんだって。艦娘にとっての良縁って何だろ?

 

 

2月20日(火)

 遠征から戻ってきてTVを付けたら、外国で深海棲艦の攻勢が強まったらしくって、日本にも大きな影響が出るかもしれないって。

 最近、いろんなことがあるのよね。私は轟沈もせず、平和(?)な日常を送っているけど、ブラックなところでは死と隣り合わせ。

 お父さんや今までお世話になった提督達に感謝しなくちゃって、こういうことがあるたびに思っちゃう村雨です。

 

 

2月21日(水)

 訓練帰りに工廠で武装の交換と整備をしてもらった。

 丁度居合わせた島風ちゃんに色々とアドバイスをもらう。

 かなり気合の入ったアドバイスだったけど、やっぱり自分が演習に出たかったんだね。

 何かプレッシャー感じちゃうけど、鎮守府の為にも頑張ろっと。

 

 

2月22日(木)

 昨日から座学になったから、今日はいつもより早く部屋に戻れた。

 久しぶりにアコーディオン弾いたな。前に見たTV番組を思い出しながら弾いてみたけど、気分転換にはもってこいだね。

 今日の食事会は秋月ちゃん達が牛肉を使ったカツサンドを作ってくれました。なんでカツサンドって思ってたら、明後日が演習だから験を担ぐんだって。豚より牛の方が高級で効果ありそうだからだって言ってるんだけど、手が震えていたの。秋月ちゃん達にしてはかなり頑張っちゃったんだね。ありがとう。

 

 

2月23日(金)

 いよいよ明日だ。余計なこと考えないで、一生懸命頑張るだけ。

 結果は後からついてくるでしょ。なんて思ってたら、皆も気合が入っているのか、今日の夕食に勝栗(かちぐり)が出てきた。

 ここの鎮守府らしく、栗を殻付きのまま干して臼で搗ち、殻と渋皮を取り除いた本格的なもの。

 打ち鮑・昆布もついて、三献の儀まで。気合入ってるなぁ。

 明日も出陣式やるからねだって。

 明日は万全な体調にしなくちゃ。今日はもう早く寝ちゃおっと!

 

 

2月24日(土)

 はぁー。疲れました。初回はA評定、2回目はC評定、3回目はC評定で負けちゃった。

 でも1回MVPをとれたし、一回は艦隊が勝利できてよかったよ。

 白露型駆逐艦の力も夕立と一緒にお父さんに見せられたし、侮れないって思ってもらえたかな? 

 何とか助っ人の役目は果たせたと思うけどね。

 

 

2月25日(日)

 昨日のお疲れ会で大浴場が大根湯に。

 干した大根の葉っぱが、ぷか~って浮いているのはシュールだけど、これが温まるのよね。

 1月の松湯も良かったけど、大根湯も意外といいかも。

 ため息が出ちゃって、休まりますねぇ。何て言ってたら、飛鷹さんに笑われちゃった。飛鷹さんも同じような声出してたんだけどね。

 やっぱり温まるのって塩化物や硫化イオンが含まれるからなのかな? お父さんの受け売りだけど。

 ミネラル成分と無機成分も多いから保温効果を高める働きや新陳代謝を促進する働きがあって冷え症や婦人病治療にも使われてきたんだって。

 入渠とは違ってのんびりと浸かって、村雨のお肌もパワーア~ップ! なんてね。

 

 

2月26日(月)

 今日は鎮守府の庭でうぐいす餅を食べながら、お花見。桜じゃなくて、梅の花なんだけどね。

 梅は、「花よし、香りよし、果実よし」と三拍子揃った花だから私も好きなのよね。紅白の梅も良いけど、私が特に好きなのは蝋梅。時期外れで花も散りかけだけどまだ微かに香りもあるし、みんなと離れてゆっくり見てたら、お父さんも蝋梅の所にやってきて一緒に梅見。お父さんは素芯蝋梅が好きなんだって。私は満月蝋梅かな。

 一日優雅な気分で楽しめました。

 

 

2月27日(火)

 映画でも観にいきたい気分。突然そんな風になることって、なぜか私の場合、よくあるのよね。

 今回は雑誌を読んでたら、ふとそんな気持ちになっちゃった。

 ん~見るなら洋画かな。それも台詞の少ない淡々としたロードムービーみたいなもの。

 一緒に行ってくれるような人がいたら、もっといいんだけどね。

 昨日の梅見で、今まで勘違いしてたんだけど、蝋梅と梅って違う種類だったんだね。お父さんと話していて指摘されちゃった。

 

 

2月28日(水)

 今日で2月も終わり。そう言えば、そろそろ異動の内示が出る頃よね。

 私の場合、異動が12月だったから、今回の異動はない筈だけど……。

 どうなるのかはちょっと不安。

 せっかく慣れてきたんだけどね。異動になったらどうしよう。

 荷物は念のため直ぐに異動できるように纏めておこうっと。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

村雨の日記――03月01日~03月15日――

鎮守府に春の嵐が。
事態が風雲急を告げます。


3月1日(木)

 朝から鎮守府が慌ただしい気がする。

 飛龍さんや五月雨ちゃんが急ぎ足になってたり、お父さんが朝から電話をかけまくっていたり……。

 何かあったのかな?

 今日は金剛さんが薩摩汁を作ってくれた。すっごく意外。金剛さんの事だから英国料理だとばかり……。スターゲージ・パイとかハギスとかだったらどうしようって思っちゃった。言わなかったけど。

 金剛さんもそれは感じてたらしく、笑いながらブレックファーストや紅茶とお菓子は英国の方が良いけど夕食は日本食の方が評判が良いって説明してくれました。あと、金剛さんのお茶会に誘われちゃいました。楽しみ。

 

 

3月2日(金)

 今日もお父さんの声が執務室から聞こえてくるんだけど、昨日よりピリピリしていて話しかけづらい。時々、潰す気か。なんて聞こえてくるし。飛龍さんや五月雨ちゃんですら顔が強張っているし。本当にどうしちゃったの?

 

 

3月3日(土)

 今日は上巳の節句。一昨日からのピリピリ感も気になるけど、行事は全力で楽しむのがうちの鎮守府よね。ってすっかり染まっちゃったなぁ。

 玄関前の雛飾りをみんなで見て楽しんだり、庭にひな壇を置いてみんなでお雛様になったり官女になったりで記念撮影。

 長門さんと武蔵さんは何故か皆にせがまれてお内裏様だったのよね。

 後からお父さんが積極的に参加して二人ともお雛様になったけど、顔を真っ赤にして新鮮でした。

 敷地の桃から枝を切って花を生けたり、ちらし寿司、蛤のお吸い物、菱餅、引千切、白酒、ひなあられももちろん頂きました。

 もともとは、男女関係なく邪気を払う季節の節目の行事だったのね。何で白酒なんだろって前から気になってたんだけど、香取さんに教えてもらいました。身の穢れを洗い流すという意味合いから白酒が飲まれるようになったんだって。

 昔、大蛇をお腹に宿してしまった女性が三月三日に白酒を飲んだ途端、胎内の大蛇を流産させることができたという言い伝え、面白かったなぁ。胎内に悪い子が宿らないように厄除けと厄払いの意味を込めて白酒を飲むことになったのね。お話を聞いて、じゃあ私達って沢山飲まないとって言ってたら、メッって窘められました。香取さんの嗜める顔、意外と可愛いのよね。

 他の説には、白酒は中国の桃香酒のことを指していたって説があるんだって。桃香酒って前に飲んだ事あるけど桃の香りのするお酒なのよね。その説だと桃は邪気を払う効果と百歳(ももとせ)まで生きるという長寿の意味もあって上巳の節句に飲まれていたのが白酒へと変わっていったらしいのよね。

 他にも、菱餅の意味とか金屏風の由来とか、白酒なのに甘酒なのかとか、白酒作っちゃっていいの? とか桃の花を浮かべたワイン片手に色々と朝まで盛り上がっちゃいました。

 

 

3月4日(日)

 突然、大本営から資材が400万づつ、開発資材と高速建造材が500づつ送られて来ました。

 大本営がこんな大盤振舞いなんて、絶対何かあったよね? お父さんや秘書艦の皆は驚いていないし、むしろ当然って顔してる。

 もしかして……。

 

 

3月5日(月)

 今日から一週間、遠征と出撃組の五月雨ちゃんに代わって私が飛龍さんと一緒に秘書艦。

 お父さん提督からの指示は久し振りの建造。でも駆逐艦と巡洋艦狙いでそれぞれ40回に大型建造30回(!)なんて絶対おかしいよ。大きな異動があるのかな? あとで飛龍さんに聞いてみよっと。

 

 

3月6日(火)

 飛龍さんに疑問に思ってる事ぶつけてみました。色々と分かったけど、日記にも書けないことでした。

 うっかり書かないように気をつけなくちゃ。

 

 

3月7日(水)

 夜中のTVって、何であんなB級やC級の映画を流してるんだろう? こんなの誰が観るんだろ……何て思いながらついつい観ちゃう自分が情けない。

 今日もなんだかおもしろそうだなって思いながら最後まで観たら、超つまんない映画でした。ものすごく夜更かししちゃった。

 あ〜あ私の貴重な睡眠時間を返せ! って言いたい。でも、ときどき良い映画に出会うことがあるから、やめられないのよね。

 そういう人って、けっこうたくさんいるんだろうな。

 

 

3月8日(木)

 まだまだ冷凍しているお餅が……。って、どれだけ搗いたのよ、これ。

 私がここに来る前にも沢山搗いていたみたいなんだけど。

 秋までには食べきりたいってお父さんの希望なんだけど、お米の量を指示したのってお父さんでしょ? って思わず聞いちゃった。

 桁一つ書き間違えたんだって。何で9と0を間違えるかな? 選りにもよって千の桁に書き間違えるなんて。10000と19000って随分違うよ……。

 私が作ったのは豆腐餅。茨城県久慈郡のお豆腐を使った真っ白なお雑煮の事なんだけど、お砂糖で甘く仕上げているから、ちょっとしたスイーツ気分で食べられるのよね。後は、山陰地方名物の小豆雑煮も作ってみました。

 まだまだお餅は減りません……。

 

 

3月9日(金)

 今日は花屋さんで小さな花束を買って帰る。玄関に花を飾りたい気分だったから。

 でも、ちょっとムダ使いだったかなぁ。でも、綺麗だね、いい香りだねって、通りがかる皆の評判は良いから良いよね。

 

 

3月10日(土)

 今日は陸軍記念日でお休み。澎湖の南嶼鎮守府はあきつ丸さんがいたから大きなお祝いになってたんだけど、ここにはあきつ丸さんいないから、特別な式典もなくいつも通りのお休みでした。

 昨日買った花束の件で、お父さんに御呼ばれ。ドキドキしていたら、レシートを渡すことになって気が付いたら私の手元にコインがあったの。

 今後は消耗品で落とすから私物用以外に購入したものは速やかにレシートを出すようにだって。自分で勝手にやっているだけなんだけどね。

 ありがと、お父さん。

 

 

3月11日(日)

 可愛い茶色のスカートが15コイン! 商店街の春のバーゲンで売られているのを発見したから、即購入。

 普段スカートは余り買わないんだけど、このプライスにはかないません。

 早速鎮守府に戻って穿いて見たんだけど良い感じ。得しちゃったな。

 

 

3月12日(月)

 昨日のスカート、雪風ちゃんにあげちゃった。

 昨日のスカートを穿いてお父さんの前で一回りしたら、その……翻った時に見えちゃったみたいなの。

 丈が私には短かったみたい。色々とショック。

 

 

3月13日(火)

 なんだか1日中、頭痛が痛いって感じ。

 なんだろう? さえないなぁ。早めに横になって身体を休めることにします。

 

 

3月14日(水)

 皆も色々と疑問を抑えきれなくなってきたみたい。飛龍さんや五月雨ちゃんの他にも3月に秘書艦を務めた娘に聞きまわってて、私の所にも。

 えっと、私に聞かれても困るんですけどぉ~。って逃げ切ったけどね。

 お父さんも流石に抑えきれなくなって来たらしく、明日説明会だって。私も詳しく聞いていないから気になります。

 それと、昨日の日記、本当に調子悪かったんだなって。頭痛が痛いって何?

 

 

3月15日(木)

 説明会、やっぱり荒れちゃった。原因は3月1日の鎮守府大異動の内示。

 前に外国で深海棲艦の大攻勢があったんだけど、そのせいで日本各地の前線鎮守府からの大規模な増援が決定されて、その穴埋めに比較的後方の鎮守府から艦娘が大異動されるんだって。私も飛龍さんから聞いた時に、なにそれ! って思っちゃったからよく分かるな。

 ウチからも大規模な異動があって、残るのは三分の一以下。

 幾ら近海で戦闘がないって言っても、うちは後方じゃないのに。

 ここが陥ちると小笠原が完全に孤立するんですけど大丈夫なの?

 それに工廠関係者と酒保・医療関係者は鎮守府専属登録していなくても異動させないっていう不文律を破って開発担当の三原さんと補佐の名寄さん、医師の高砂丸さん、牟婁丸さん、天応丸さんまで異動!

 明石さん、桃取さん、夕張さん、間宮さん、伊良湖さん、朝日丸さん、氷川丸さんの異動が無かっただけでも良かったよ。どうなっちゃうんだろ、この鎮守府。

 来週から半月の間、遠征担当の名取さんと残る駆逐艦娘で練度上昇を兼ねた建造・開発用の資源集め。

 名取さんって練度20の頃から一貫して遠征担当で今では練度95。香取さんや異動する遠征組の天龍さん・龍田さんも師事していたんだって。よそでは天龍さんが務めることが多い遠征責任者もここでは名取さんが務めてるのよね。名取さんまで異動だったらこの鎮守府崩壊していたよ。

 だって、残る駆逐艦娘の練度って私と夕立、時雨、秘書艦の五月雨ちゃん、秋雲ちゃん、リハビリ中の島風ちゃんと満潮ちゃんを除けば皆30届いていなかった筈だよ。

 私はその他に那珂さん達と一緒に送別パーティーの準備もだって。

 皆もさすがに今日は食事を作るどころじゃなくて食堂で普通に食事しました。

 

 




3/1の時点で内示がない(残る)艦娘
金剛・比叡・榛名・霧島・扶桑・山城・蒼龍・飛龍・鳳翔・龍驤・祥鳳・瑞鳳・龍鳳・千歳・千代田・大鯨・青葉・衣笠・羽黒・高雄・愛宕・最上・三隈・鈴谷・熊野・香取・長良・五十鈴・名取・川内・神通・那珂・能代・大淀・時雨・村雨・夕立・五月雨・神風・春風・旗風・満潮・島風・綾波・狭霧・陽炎・浦風・磯風・浜風・谷風・秋雲・夕雲・巻雲・長波・択捉・松輪・あきつ丸
夕張・明石・桃取・間宮・伊良湖・氷川丸・朝日丸

3/1の時点で内示が出た(異動予定)艦娘
伊勢・日向・長門・陸奥・大和・武蔵・赤城・加賀・雲龍・天城・葛城・大鳳・翔鶴・瑞鶴・隼鷹・飛鷹・大鷹・神威・瑞穂・秋津洲・長鯨・古鷹・加古・妙高・那智・足柄・鳥海・摩耶・利根・筑摩・伊吹・鞍馬・天龍・龍田・球磨・多摩・北上・大井・木曽・由良・鬼怒・阿武隈・名寄・須磨・速吸・阿賀野・矢矧・酒匂・仁淀・神州丸・にぎつ丸・熊野丸・ときつ丸・(残る方に名前のない神風型、特型、朝潮型、睦月型、陽炎型、夕雲型、秋月型、海防艦、潜水艦)
三原・高砂丸・牟婁丸・天応丸


因みに、この鎮守府の場所は鳥島(伊豆諸島と小笠原諸島の中間)で、一応前線ではありません。
……大本営の考えでは。
一番近い隣の鎮守府は青ヶ島と父島です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

村雨の日記――03月16日~03月31日――

3月16日(金)

 そう言えば、ここ最近のバタバタ騒ぎで忘れてたけど、お父さんバレンタインデーのお返し考えているのかしら? 色々あってホワイトデーの14日は過ぎているけど、みんなも楽しみにしてるんだから。

 そ、れ、と、飛龍さん達がいるから大丈夫だとは思うけど、お返しの意味もちゃんと考えてね。

 村雨、ちょっと期待しちゃうなー♪

 

 

3月17日(土)

 お父さん。やっぱりやっちゃったのね。

 飛龍さんと五月雨ちゃん、ものすごく怒ってる。

 何贈ったの? ってお父さんに確認したら、飛龍さんと五月雨ちゃんにあげたのが、チョコマシュマロ! もう。そして金剛さん達にはお茶会に呼ばれるから、紅茶に合いそうなものあげたって、マカロン! それは怒るでしょ。金剛さん達が大喜びな理由はわかったけど。

 飛龍さん達が怒っている理由を聞かれたんだけど……。

 知らないって見捨てたいけど、そうもいかないよね。

 何でマシュマロを贈ったのか聞いたら、「チョコマシュマロは、女性から貰った気持ち(チョコ)を、男性が、純白な愛(マショマロ)で包んで、お返しをする意味だって聞いた」って。だからあげたのに怒られる理由がわからないって。

 それ、大昔の話。他のお菓子の意味と一緒に今の意味を教えたわよ。

 お父さん飛んで行って平謝り。まったく世話の焼けるお父さんです。

 村雨にも後でお返しがありました。で、キャンディー。選りにもよってイチゴ味とリンゴ味とレモン味の詰め合わせ。

 お父さん、色々と意味も説明したのに何でこれを贈るかな……。意味深に取っちゃうぞ♪ なんちゃって。いっぱいいっぱいで聞いてなかったんだろうなぁ。どうせ回収に来るから2、3日取っておこっと。

 全く、マドレーヌとかキャラメルとかって贅沢は言わないから、せめてラスクとかケーキにして欲しかったよ。上司と部下としてならクッキーでもいいけど。

 

 

3月18日(日)

 今日から春の彼岸。なんだけど……朝からお父さんが飛龍さんと一緒に気まずそうに昨日のお返しの回収に来ました。

 その時にしっかりとキャンディーの味の意味も確認したんだけど、やっぱり昨日は聞いていなかったことがわかりました。

 ちょっと反省してもらおうと思って顔を伏せて、駆逐艦の言う事なんて云々なんてやったら表情変わっちゃって本気の謝罪モード。びっくりしちゃって飛龍さんに助け求めちゃった。飛龍さんも苦笑いで助けてくれました。改めてお返しがあるんだって。今度こそ期待していいのかな?

 お彼岸だからお昼は牡丹餅。

 なんと、長門さん手作り。長門さんの牡丹餅、すっごく美味しい。

 でも、これが最後なのかな? お別れまでにもう一回食べたいけど。

 

 

3月19日(月)

 那珂さんから送別会の件で打ち合わせ。3月30日に最初の異動組が出発するから、29日に送別会するんだって。

 その時に舞台やるからアコーディオンの演奏をお願いされちゃった。

 練習曲のデータを那珂さんから渡されたんだけど、大変かも。

 完コピできるように頑張らなくっちゃ。

 

 

3月20日(火)

 1週間後の音合わせのときまでにある程度できるようにしとかなくっちゃいけないから、もう必死で練習する。

 だいたい音はとれるんだけど、ノリっていうか、リズムにあわせて弾くのがうまくいかない。

 指の動かしかたとかも全然違うもんね。こんなので大丈夫かなぁ……と、ちょっと不安になってきた。

 

 

3月21日(水)

 今日は春分の日。昔は春季皇霊祭って言ったのよね。いつもはお休みの鎮守府も事が事だけに異動組を除いてフル稼働中。

 名取さん直卒の遠征部隊が今日も資材集めに、香取さん直卒部隊も南へ長期遠征。

 私は送別会の準備中。

 今日も一生懸命練習したんだけど……。音はあってると思うんだけど、なんか曲にあってないっていうか、イマイチきちんとリズムにのって弾けてない。

 それに、馴れない指の動きにつまづくことが多い。悪い予感が的中。マズイなぁ。こんなんじゃ異動する皆にもガッカリされちゃうよ。

 今日の大浴場は蓬湯。末永提督の鎮守府でも入ったなぁ。確か……蓬の香気は邪気を祓うって言われて古くから魔よけに用いられたのよね。後は確か、蓬湯は血行を促進させるから肩こりや腰痛、神経痛などをやわらげる働きがあるって教わったなぁ。蓬の葉の香りはストレス解消や安眠にも良いって言われてるんだっけ? 今の鎮守府には丁度良いのかも。

 

 

3月22日(木)

 今日は私も名取さんと一緒に南方への輸送任務。途中でカ級2隻と遭遇したけど今度は撃退できました。名取さんも前に私が不覚とっていたこと知っていて、敵取れたねって、頭を撫でてくれました。子ども扱いみたいだけど、なんだか嬉しくって、涙が出ちゃったのよね。あの時一緒だった吹雪ちゃんも喜んでくれて。心配させたまま異動にならなくて本当に良かった。

 帰ってきたら異動する長門さんと鳥海さんが料理。長門さんは茶碗蒸しと鯨カツと前に食べた牡丹餅。鳥海さんは枇杷の蜜豆。私も含めて皆で涙ぐみながらの夕食になっちゃった。仕方ないよね。

 

 

3月23日(金)

 今日は近海の対潜任務。戻ったら川内さん、神通さん、那珂さんに会って音楽のことをいろいろ話しする。

 それにしても3人ともすごく音楽のこと、詳しかったなぁ。

 リズムにあわせよう、あわせようとすると、かえって不自然になりがちだから自然に馴染むようになるまで練習すること、あと間違ってもそこでとまらないでとにかく1曲通して弾くこととかいろいろアドバイスしてもらって、うれしかった。もうちょっと気楽にやってみよっと。

 

 

3月24日(土)

 今日も名取さんと一緒に南方への輸送任務。今日は今までサポートについていた吹雪ちゃんや雷ちゃんたち異動組が不参加の遠征部隊。途中でへ級とホ級中心の部隊に遭遇しちゃって名取さんと私で何とか撃退。陽炎ちゃんと建造直後の白雪ちゃんが小破。このままじゃまだ危ないか。

 鎮守府に帰還後は、送別会の練習。今までR&Bなんて意識して聴いたことなかったけど、練習したりして聴いてみたら結構格好良いんだなって思えてきた。

 メッセージの込められた曲とかもあって、聴き込むほどに好きになっていくっていうか。

 最近アコーディオンばかり弾いてるから、五月蠅がられたりしていないかな? ちょっと心配。

 

 

3月25日(日)

 まぁ、なんとか弾けてる気がする。明日の音あわせでもミスさえしなければ。

 だけど、はじめて人前で演奏するって思うと、不安な気持ちと面白そうって気持ちが交互にやってきて、すごく興奮しちゃって……。

 なんだかドキドキしちゃうな……。はやく明日にならないかなぁ。 

 午後から香取さんの補佐で、南方へ遠征。帰ってきたらすぐに音合わせ、か。ちょっと不安だなぁ。

 

 

3月26日(月)

 今日、みんなとはじめて一緒に練習したんだけど……。すっごく気持ちよかったなぁ。

 何度がやってるうちにピタッと決まるときがあって、そのときの感激って言ったら、もう言葉じゃ言いつくせない……。

 みんなも私のことほめてくれたりして、最高の1日でした。明日からもみんなと練習があるから、もっと頑張らなくちゃ。

 

 

3月27日(火)

 名取さんとの遠征。名取さんとも色々お話しできるようになって、送別会の話も。皆楽しみにしているから頑張って、だって。期待されているからには頑張らなくちゃ、ね。それにしても、皆未だ動きがぎこちないなぁ。

 遠征から帰って、昨日の録音データを聞きながら午後は部屋でひとりで練習に励む。

 冷静になって聞いてみると、まだまだ甘いのがよくわかった。こんなんじゃ、皆の前でやれない。まだまだがんばらなきゃ!

 

 

3月28日(水)

 大勢の人の前でやることの心配と、ちゃんとできるかどうかっていう不安で、なにも手につかない状態。

 あーぁ、大丈夫かしら。いまからこんな風に緊張してたってしょうがないんだけど……。でも、あれだけ練習したんだから大丈夫だよね。うん、大丈夫!

 気合い入れていたら心配されたのか、那珂さんが隣に座って色々話してくれた。

 那珂さんも最初のライブじゃ緊張したこと、舞台にあがっちゃえばプレッシャーなんて感じてるヒマなんてないこと、事前に必ず立ち位置をチェックしておくこと……。なんか、いろいろアドバイスしてもらっちゃったみたい。そのおかげでなんか楽になったみたい、村雨感謝です!

 

 

3月29日(木)

 今日は送別会。全員出撃無しで勢ぞろい。今日、深海棲艦が空気も読めずに攻めてきたら一寸刻みの膾にしてやるんだから。

 送別会、すごかった。料理も異動する娘が皆で自分の料理や秘蔵のお酒とかを出して、大盛り上がり。

 演劇も大盛り上がりで、それ見て他の娘が緊張しちゃって、私も舞台にあがるまではやっぱりメチャクチャ緊張しちゃったんだけど、始まったらもう無我夢中でそれどころじゃなかった。

 けど異動する皆が異常に盛り上がってくれて、演っててものすごく楽しかったの。あんなの、はじめて。

 最後は異動組残留組全員で、最近話題になっている『提督との絆』を提督(あなた)を父様(あなた)って代えて大合唱して、ものすごく気持ちよかった。

 人前で演奏したり歌ったりするのって、こんなに楽しいことだったんだって感じ。

 

 

3月30日(金)

 昨日の写真を見ていたら、多くの娘が居なくなっちゃうんだって実感しちゃった。

 遠くに配属になる娘たちが手を振って出発しているんだけど、……今更だけど、嫌だよ。

 突然異動中止とかで帰還、なんてならない、よね。

 

 

3月31日(土)

 今日で異動する娘とはお別れ。

 隣の鎮守府に配属になる娘とは遠征中に会えるかもしれないけど、他の多くの娘とは中々会えないんだろうな。

 また異動になった時に同じ鎮守府になったら宜しくね。って言ったけど……。

 今までの鎮守府じゃこんな気持ちなんてほとんど抱かなかったのに。

 今更ながらこの鎮守府での出会いって大きかったなぁ。

 井伊大老の独座観念って言葉じゃないけど、今日はこれまでの出来事をもう一度振り返って見たいと思う村雨です。

 

 




3月17日(土)のお返しの意味
キャンディー:あなたに好意があります
  イチゴ味:恋・結婚・子孫繁栄
  ブドウ味:酔いしれる恋
  バナナ味:結婚話をしたい
 オレンジ味:幸せな花嫁
  メロン味:デートに誘いたい
  リンゴ味:運命の相手
  レモン味:真実の愛

その他
   クッキー:あなたとはこれからもサクッと後腐れのない友人でいよう
  マシュマロ:あなたのことが嫌いです
   マカロン:あなたは特別な人
  キャラメル:一緒にいると安心する
  マドレーヌ:もっと仲良くなりたい
バームクーヘン:幸せがずっと続きますように
ケーキ・ラスク:このプレゼントに特に意味はない
 チョコレート:あなたの気持ちは受け取れません
ホワイトチョコ:あなたは好きだけど清い関係でいたい
    金平糖:あなたと甘い関係を長く続けたい
     グミ:あなたのこと嫌いなのを理解して

ついでに、食べ物以外
   ハンカチ:あなたと別れたい
     香水:心も体も繋がりたい
     指輪:将来に渡ってずっと親密になりたい
     靴下:あなたは心を許せる相手
  ネックレス:いつも側にいたい
  テディベア:いつでも側にいる
 ブレスレット:あなたを束縛したい


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

村雨の日記――04月01日~04月15日――

1/7 青ヶ島鎮守府と父島鎮守府修正しないまま投稿してしまったので修正。


4月1日(日)

 朝起きて食堂に行くとガランとしていて、ホントに皆居なくなっちゃたんだなって、ちょっとしんみり。

 食堂の中でも皆寂しげにしている。

 元気印の島風ちゃんも、遊び仲間だった天津風ちゃんや雪風ちゃんが居なくなって寂しそう。

 戦力的にも相当落ちちゃってるんだろうな。練度70以上の人たち随分居なくなっちゃったんだもん。

 落ち込んでばかりもいられないから、大ニュースも書いておこっと。五月雨ちゃんが提督お父さんの正式な養子になりました! 五月雨ちゃんに、もうちゃん付けは不味いかなってさん付けしたら同じ白露型なのに他人行儀すぎるって泣かれちゃった。呼び方は今まで通りでいいって。ここの白露型の自慢です。「村雨」の方が姉だからできれば呼び捨てでっと言われているけど、それはダメかな、色々と。五月雨ちゃんは村雨姉さんって言ってくれるから心苦しいんだけどね。

 

 

4月2日(月)

 朝、提督から当面の方針が発表される。

 名取さん、神通さん、香取さんを旗艦に復帰した満潮ちゃんと私と秋雲ちゃんがその補佐で3月初めの建造で出てきた娘達の育成兼遠征部隊。哨戒任務に扶桑さんと川内さん、山城さんと五十鈴さんを中心に部隊編成、海域開放は飛龍さんや金剛さんを中心に行うのか。大規模作戦への参加は当分無理だって。だよね……。

 私も遠征部隊の補佐頑張らなくちゃ。

 

 

4月3日(火)

 今日は神武天皇祭。いつもは御休みなんだけど、事情が事情だからね、遠征で少しでも練度を高めないと。って遠征に行ったのは良かったんだけど、ね。遠征から帰ってきたら、名前は伏せるけど3月に建造された夕雲型の娘に告白されちゃった……。

 前にも1回あったんだけど、困っちゃうなぁ。提督や男の人からならともかく、年下(?)の娘からそんなこと言われても……。

 丁寧に断わったんだけど手紙だけでもって渡されちゃった。読まないわけにもいかないから読んでみたんだけど、ヘビーな気分になっちゃった。

 ちょっと、こういうのは本当に困るのよね。特にこんな時は。

 

 

4月4日(水)

 告白してきた彼女にその気はないことを、できるだけ丁寧に書いて返事の手紙を出しておく。

 ホント疲れるなぁ。どうしたら言い寄ってくる娘が居なくなるんだろ。これから遠征だけど、遠征から帰ってきたらお父さんに相談しようかなぁ。

 

 

4月5日(木)

 先月までは木曜日は皆で食事準備してたんだけど、今月から無くなるのかな。って思ってたら、愛宕さんがハムと野菜のカレー煮、浦風ちゃんが鰤と蛤の雑煮を作ってくれた。伝統を絶やさないようにだって。伝統って、前に瑞穂さんから聞いたけど艦娘が料理するのって今年からじゃなかったの? まぁ野暮なことは言いっこなしよね。

 あ、そう言えば、今日は清明だった。前に沖縄の鎮守府にいたときは清明祭やってたけど、本土じゃこのお祭りってほとんど見かけないのよね、残念。

 

 

4月6日(金)

 陽炎ちゃんに告白されたことを言ったら、村雨って人気あるもん。仕方ないよねって言われちゃった。そうかなぁ? 私はそんな風に感じたことないんだけど。

 そしたら、私も村雨に告白して爛れた関係狙っちゃおうかなぁだって。やめてよね! 冗談でもそんなこと言うの。これでもちょっとナーバスになってるんだから、それ以上言うと演習でやっちゃうからね。ホントにもう!

 今日も遠征。件の娘とは一緒になってないから良かったよ。もうちょっと経てば気にならなくなると思うけどね、お互いに。

 

 

4月7日(土)

 今日は皆でお花見。大島桜や八重桜が珍しく未だ満開。でも、曲水の宴やるなんて聞いてないよぉ。道理で小袿なんかに着替えさせられた訳だよ。私以外の小袿姿の娘は神通さんと川内さんに扶桑さん。小袿以外の娘もいるけど、その娘達はとっさに和歌なんて詠めなかったらしく罰杯で大分酔っちゃったみたい。襟元や裾が乱れちゃって、襦袢もちょっと危ない感じ。

 えっと、お父さんもしかして狙った? だとしたら、「提督、お主も男よのぉ~グフッグフッ」なんて前にTVで見たお代官様みたいに言っちゃうかも。ほんと村雨軽蔑しちゃうなぁ~、なんちゃって。まっそんなことありえないけどね。

 村雨? 村雨は広瀬提督に確りと和歌や漢詩、華道も茶道も書道も基礎教養の一部として叩き込まれてましたからバッチリ。広瀬提督ってあの広瀬中佐の子孫なのよね。ありがとうございます、広瀬提督。あの時は不満ばかり言ってごめんなさい、今日はおかげさまで助かりました。……そういう訳で村雨の力、あなどれないでしょ? 

 宴の後は桜餅と花見団子が出たのよね。お父さんの手作りだって。桜餅ってクレープ状のお餅の長命寺とまんじゅう状のお餅の道明寺の二種類があるんだけど、ここでは長命寺。長明寺の餡は漉し餡。道明寺は粒餡だったのよね。初めて違いがあるって知った時は驚いたなぁ。皆と思っているものが違うんだもん。

 花見団子って花見団子の三色って桜色、白色、緑色って決まっているけど何でか気になったので酔っ払い気味のお父さんに確認しました。

 お父さんは、桜色と白色が紅白の縁起物、緑色は蓬で邪気を払うからって言ってた。私は桜色は桜で春を表現。白色は雪で冬。緑色は蓬で夏を表していて秋が無いのは「飽きない」お団子で商売繁盛という洒落なんだって教わったのよね。お父さんに話したら、私が教わった方が定説だって。どっちにしても日本らしい粋な縁起物の和菓子ってことよね。

 味は桜色が赤紫蘇を使った梅味で白が砂糖を混ぜた素甘、緑が蓬の草団子風。ご馳走様でした。

 今、日記書いていて思い出したけど、京都だと確か小豆色が加わって四色団子の所もあったけど、あれはどうして? 明日聞いてみよっと。

 

 

4月8日(日)

 今日は花祭り。灌仏会ともいうんだっけ? 街のお寺さんの境内には花御堂(はなみどう)がつくられて、中にお釈迦さまの誕生仏が安置されてたのよね。

 私達も参拝に来た人達と一緒に、誕生仏の頭上に竹の杓で甘茶を(そそ)ぎました。そう言えば、甘茶をお釈迦様にかけるなんて失礼よ。何て怒っていた人を前に見かけたけど、甘茶をかけるのは、お釈迦さまが生まれた時に九つの竜が現れて生まれたばかりのお釈迦さまの体に清浄の甘い水を注いで産湯にしたからってこと知らないのかな? ま、江戸時代以降の事らしいけどね、甘茶灌ぐのって。

 お寺さんの花御堂って、お釈迦さまが生まれたルンビニの花園を表しているから綺麗よね。桜、連翹、木蓮とか花々で美しく飾ってあって。

 鎮守府に戻ったら甘茶が用意されていました。甘茶を頂きながら異動した皆は今頃何しているんだろ? って考えちゃった。

 昨日の疑問の四色団子、香取さんが遠征中だったので丁度暇してたお父さんに聞いてみました。

 京都の四色団子の小豆色は秋、京都の商売人は商いよりも風流を大切にするって理由みたい。お父さんの聞いた説だと小豆色は運気を育む色だからって事みたい。やっぱり色々あるんだね。

 

 

4月9日(月)

 部屋の掃除と整理整頓をする。別にそんなに汚れてたり散らかってたりする訳じゃないんだけど、ついついやっちゃうんです。潔癖症なのかなぁ? でも、掃除機かけたりモップで拭いたりするの、好きなんだもん。楽しいし。

 建造された頃からそうだったよなぁ……。よく脇田提督や近野提督に「いい秘書艦になれるよ。お嫁さんにもね」って言われたりしてたっけ。でも、まだまだこんなんじゃダメだよね。もっと頑張んなきゃ!

 

 

4月10日(火)

 朝から提督が広間に皆を集めて何事かと思ったら、練度上げの訓示があったのよね。皆も分かっていることだから今更だなって思っていたら、お父提督、大本営からの命令で小笠原航路護衛の任務から外されちゃったみたい。確かに今の娘の練度だと不安があるのも分かるのよね。

 提督は結構反対で青ヶ島鎮守府と父島鎮守府の負担が大きすぎる事と潮流の関係で慣れていない護衛部隊だとこの付近で狙われるかもしれないって航路防衛の懸念を表明したらしいんだけど、護衛に復帰したいならさっさと艦娘を増やして練度を高めろって言われたらしいの。近海の哨戒は鎮守府の担当だから大丈夫だとは思うけど、飛龍さんや五月雨ちゃん、金剛さん達はピリピリモードなのよね。

 

 

4月11日(水)

 前から観たかった映画を借りてきて、ひとりで鑑賞会をする。なんかほのぼのとして、最後は泣いちゃった。よかった。感動しちゃった。

 素直に感情移入できる良い映画でした。でも、皆と一緒に観なくてよかった。だって、泣いてるところなんか見られたくないもん。

 

 

4月12日(木)

 今日はもはや伝統となった食事会。今日は桜ごはんを鳳翔さんが、4月6日がコーンビーフの日だったからってコンビーフとじゃがいものお餅を大鯨さんが作ってくれました。秋月ちゃんや照月ちゃんが居たら喜んだんだろうな……。

 

 

4月13日(金)

 遂に飛龍さん達が恐れていた事が起きちゃった。今、飛龍さんや金剛さん、川内さん達が向かってるんだけど、小笠原航路の大型輸送船2隻が須美寿島の辺りで深海棲艦の襲撃を受けて沈没。乗り組んでいた人も亡くなった人はいなかったけど重傷者がすごい数だって。艦娘も父島鎮守府から護衛に就いていた加茂さん、朝凪ちゃん、夕霧ちゃん、冬月ちゃん、南風ちゃんが大破。海鷹さんと千早さん、伊吹さんが中破。今まではうちからも護衛が出てたんだけど、大本営からの命令で護衛任務は青ヶ島鎮守府と父島鎮守府で行う事に変えたばかりなのよね。うちは先に練度を高める事を優先しろって。提督は大反対だったんだけど、このままでは戦力にならないって大本営の意見も当然だったし。うん、それもこれも深海棲艦の侵攻が悪い。って当たり前か。

 

 

4月14日(土)

 今日と明日は私が秘書艦。午前中に昨日被害を受けた娘達が、緊急出撃した金剛さんや川内さん達に付き添われて入渠。輸送船の人たちは病院に収容されて治療中。この後内地からの救難機で搬送されるんだって島中大騒ぎだったのよね。飛龍さんや山城さん達が掃討戦に移っているけど、大丈夫かな?

 午後に青ヶ島鎮守府と父島鎮守府から連絡があってうちの救援に対しての感謝の言葉と同時に大本営に対して鬱憤が爆発。うちの護衛が出せなくなったのもあの異動が原因だったからね。

 ……さらに言うと無謀な攻撃して反撃喰らった某国が一番の原因だと思うんだけど、それは言っちゃいけないわよね。

 さすがに今日は建造と開発を行えませんでした。

 

 

4月15日(日)

 今日の午前中に入渠を終えた父島鎮守府の娘達が出航。あそこには確か鬼怒さんと伊8ちゃんが異動してたのよね。あの二人は今回の護衛にいなかったけど、どうしているのかな? ってまだ異動して一月経ってないか。私と同じように色々近くを探索しているのかしら?

 今日も建造を行ったんだけど、なんと、雪風ちゃんと我らが長姉の白露が出てきました。島風ちゃんが早速雪風ちゃんを外に誘っていました。良かったね、島風ちゃん。

 白露、やっと会えたよ~。夕立と時雨が遠洋練習航海の付き添い中だから帰ってきたら紹介するからね。

 

 




小笠原航路の護衛
今まで
青ヶ島←(青ヶ島艦娘+鳥島艦娘①の海上護衛任務)→鳥島(補給・整備・引継)←(父島艦娘+鳥島艦娘②の海上護衛任務)→父島

鳥島大異動後(4月15日時点)
父島行⇒父島艦娘が青ヶ島までの遠洋練習航海+青ヶ島からの海上護衛任務(鳥島での補給・整備無し)
内地行⇒青ヶ島艦娘が父島までの遠洋練習航海+父島からの海上護衛任務(鳥島での補給・整備無し)
鳥島:警備任務


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

村雨の日記――04月16日~04月30日――

4月16日(月)

 遠征から帰って白露と街に遊びに出かけたんだけど、本屋さんで「10コインでできるおかず特集」の載ってた雑誌を買う。

 なんかお年寄り臭いんだけど、けっこう便利なのよね。そのほかにも暮らしの情報が載ってるから、結構重宝しそう。

 今度、お父さんにも何か10コイン料理を作ってあげようかな。

 白露が、お父さんて誰? って聞いてくるから前に飛龍さん達から聞いた此処の鎮守府が目指しているものについて話したんだけど、夢想的すぎないかな? だって。前の私と同じこと言ってる。確りと説明したけど、首傾げてたのよね。そのうち慣れるでしょ。

 

 

4月17日(火)

 今日から春土用なんだって。流石に聞いたことなかったから、お父さんに質問。4月17日から5月4日までらしいんだけど、土用の期間は土を司る土公神(どくじん)という神様が支配するから、土を動かしてはいけないって言われているんだって。今も基礎工事とかは避けられるんだって。へぇー。でも農作業は? って聞いたら4月の19日、20日、23日と、5月の1日、2日は問題なしだって。今時建築業界の人以外に知っている人いるのかな?

 

 

4月18日(水)

 今日は特になにもない1日。精々白露が大浴場で滑って大淀さんを押し倒した位。

 平穏無事で良かった、良かった。

 

 

4月19日(木)

 今日は土用の間日ということで畑でトマトの苗床準備。

 明日は穀雨だから雨でも降らないかなって思ってたらホントに午後から土砂降り。この時期の雨は瑞雨だからって、これはねぇ。

 今日の食事は陽炎ちゃんと浦風ちゃんが電ちゃん達から教わっていた汁錦火窩と牛肉の支那そばを作ってくれたのよね。陽炎ちゃん達は又聞きだから上手に作れなかったなんて言ってるけど、しっかりと作れているじゃない。六駆は銚子にいるんだから会いに行こうと思えば行けるしね。

 

 

4月20日(金)

 今日は穀雨。昨日の雨でタケノコがたくさん出ている筈だって、朝から留守番組でタケノコ掘り。

 京都にいた時だったかなぁ、残酷焼きでタケノコ食べたの。あれは美味しかったけど、残酷焼やると根が焼けちゃうから付近にタケノコ出なくなっちゃうのよね。あの時は鎮守府の基礎近くに来ていたから根焼も兼ねていたんだろうけど。

 ここでは、普通に地面から顔を出すか出さないかのタケノコを掘って、タケノコの刺身で食べました。

 

 

4月21日(土)

 この鎮守府に配属されて、そろそろ5ヵ月近くになるのかぁ。随分目をかけてもらっちゃったな。

 本当に私は周りの人に恵まれてここまでこれたんだなぁ。すごいラッキーだよね。こんな事滅多にないと思う。

 この幸せな暮らしを、これからもずーっと続けられればいいんだけど……。

 でも、そんなに甘えてばっかりじゃ駄目よね。古参の人が随分居なくなっちゃったから、早く後輩を支えられるようにならなくちゃ。きちんと一人前になって今度は私がお返しをする番なんだから。

 もちろん、いままでお世話になった提督達や先輩達にも。

 

 

4月22日(日)

 今日のお風呂は桜湯。本当は葉や樹皮を使うらしいんだけど、うちでは他に桜の花を湯船に浮かべるのよね。そう言えば樹皮を使う桜茶って鎮咳、去痰の他に食中毒や食あたりにも良いんだっけ? 浸かる方の桜湯は湿疹、打ち身などの炎症にも良いし、お湯から微かに甘い香りを感じることができるし、身も心もリラックスできそう。見て良し、嗅いで良し、浸かって良し。日本に居て良かったわよねぇ、白露?

 

 

4月23日(月)

 今日はホワイトアスパラガスの収穫。前にオイゲンちゃんに、ドイツ人はこれに目がないって聞いたなぁ。あの娘、今どこにいるんだろ? 前と同じようにホワイトアスパラガス収穫しているのかな?

 

 

4月24日(火)

 いつも行ってる喫茶店の娘さんがベリーショートの髪形にしててビックリ! 彼女、よく髪形を変えるんで有名なんだけど理由を聞いてみたら「カットモデルになってるからね」だって。

 カットモデルになると、ある程度自分の要望もきいてもらいながらカット代がタダになるらしいから、少し羨ましい。私もカットモデルになってみようかしら。でも、艦娘って極端に髪形変えると艤装を展開したときに一定の髪形に戻っちゃうのよね。私の場合ショートとかにすると、ツインテールになっちゃう。でも、髪型変わったままだったら、みんな吃驚しちゃうんだろうな。

 今日は春の土用で戌の日。土用ってそれぞれ食べると良いものって違うんだって。冬の土用は未の日で1月27日だったんだけど、あの時はそんなこと考えてなくて、トマトとヒラメなんて変な組み合わせ、なんて考えてたけど……。だから食堂のメニューが色々と違っていたのね。春は戌の日に「い」の付くものや白いものを食べると良いって教えられちゃった。ん~と、今日の夕食は苺パフェとか鰯のカンピオーネとかインゲン豆の和え物とかあるけど……見事に「い」の付くものや白いものだけね。

 日替わり定食がイカフライ定食だったからそれにしよっと。

 

 

4月25日(水)

 今日のお給料日で念願の防音室を購入できる資金が溜ったよ~。税抜きで29900コイン。サイズが縦1.3m、横1.7m、高さ1.9mで組み立てキットになっているの。部屋の半分近くが占拠されちゃうけど、やっと気兼ねなくアコーディオン弾きまくれるよ。

 

 

4月26日(木)

 今日は収穫したホワイトアスパラガスでホランデーズソースかけとチーズリゾット、クリームスープを作ってみました。う~ん、なんか反応がイマイチ? やっぱり肉系の方が良かったのかも。

 ようやく白露もお父さんって呼び始めた。でもお父さんって呼ぶ度に顔を赤くしてる。可愛いなぁ、私もこうだったのかな?

 明日はホワイトデーのお礼に、お父さんと一緒に二人で内地でお買い物。なんてね。実際には補給物資にないものを購入しに行くだけなんだけど。でも、久しぶりだなぁ、内地に行くの。そう言えば、前の鎮守府で一緒だった冬月ちゃんが横須賀にいるんだっけ。時間が合えばお話ししたいなぁ。

 

 

4月27日(金)

 今日は色々と大変でした。買い出ししてたら大本営にお父さんが急遽お呼ばれ。時間かかりそうだということで、護衛も要らないだろうからって私は自由時間になっちゃって。その間に横須賀にいた冬月ちゃんと色々とお喋り。提督をちゃんと提督って呼べてよかった、うっかりお父さんなんて言っちゃったら大変だったよ。結局お父さんが戻ってきたのが2030。もう飛行機飛ばせないからって今日はお父さんと豪華なホテルで宿泊。大本営の宿舎も一杯だったってついてないよね。

 本当は青ヶ島鎮守府で一泊して朝には着くはずだったんだけどな。お土産の生菓子や野菜の種とか苗木って大丈夫かなぁ。

 

 

4月28日(土)

 夕方に無事鎮守府に帰還。 

 昨日泊まったホテルで私が勘違いしてダブルルームを申し込んじゃったからキングサイズベッドが1台入った部屋に案内されちゃって、慌ててお父さんがツインルームを取り直そうとしたんだけど満室だったのよね。お父さんはソファーに寝るって言うし、私のミスだからそんな訳にもいかないしで結局一緒のベッドで寝たのよね。

 ……一緒のベッドで寝たのは皆には黙ってよっと。何もなかったけど、緊張しちゃって寝不足。ちょっと飛行機の中で寝ちゃいました。

 

 

4月29日(日)

 今日は昭和節でお休み。先帝陛下の御生誕(ごせいたん)日よね。私が艦だった頃は天長節だったけど。

 そういえばちょっと前から、私の周りで心理テストが流行ってる。絵をみてどう思うかとか、ある言葉から何を連想するかとかで、その人の心理状態を当てるってやつなんだけど、それが見事に当たるからビックリ! 

 私なんて「今、心から頼れる人を必要としている」とか言われちゃって、ちょっとドキッとしちゃったぁ。本当にそうなのかなぁ……。

 

 

4月30日(月)

 今日は半年に一回の特別教育の日。香取さんと氷川丸さんが講師で、社会モラルと自分たちの日常生活についての座談会と、一部の駆逐艦と軽巡以上の艦娘に性教育の講義があった。と言っても殆どが対象なんだけどね、初春型や暁型とかまだいないし、雪風ちゃんと島風ちゃん、満潮ちゃんを除いた位かな? 海防艦娘は当然除外。

 それで、性教育の時間に映像を観たんだけど、建造間もない駆逐艦の娘が収拾つかなくなっちゃって。際どい質問する娘もいたりして、聞いてて照れちゃうわよ、本当に。大事なことなんだから、茶化しちゃいけないのに。流石に軽巡以上の人たちは真面目に聞いているけどね。一緒にしなかった方が良かったんじゃないかな?

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

村雨の日記――05月01日~05月15日――

5月1日(火)

 今日から5月。皐月ともいうけど、この皐月って早苗月(さなえづき)を略した物なんだって。

 皐月ちゃんの皐には、神に捧げる稲って意味もあるんだって。

 前に執務室で、本人にお父さんが話してたのを聞いたんだけどね。

 それはそうと提督お父さん、この頃疲れてるんじゃないかなぁ? 練度の高い娘が随分と居なくなって代わりに建造した娘もまだ練度が上がってないから全体的に練度が落ちている訳だからね。その分、責任も増えて負担になってないと良いんだけど。……私も自分の練度だけじゃなく他の娘の練度上げにも頑張らないとダメかも。

 私はできることをキチッとやって、少しでもフォローできるようにしとかなくちゃ。

 

 

5月2日(水)

 今日は八十八夜。こういう記念日的なものがあると当然うちの鎮守府では、ね。

 やっぱり提督が茶摘み衣装を用意してるし。紺の絣に前掛け、手甲、脚絆に裾避け、足袋に赤鼻緒の草履に茜色の襷に菅笠まで。みんなで楽しみながら着替えて、鎮守府裏の茶畑まで遠征。茶摘みの唄を歌いながらお茶摘みしました。ホントは温暖差によって茶摘みの時期は異なるんだけど、ここでは確りと摘み時を調整していたみたい。手摘みだとおいしい部分だけを集めることができるから極上のお茶ができるのよね。京都にいたときに教わっって茶揉みも体験したから、懐かしかったな。午後は当然、摘んだ茶葉を荒茶に加工。疲れた~。八十八夜に摘み取られるお茶は、不老長寿の縁起物だから良いけどね。

 夕方、注文してた防音室の組み立てキットが到着。思ったより早く届いたなぁ。早速組み立てようとしたら、お父さんから呼び出し。

 もう、早く組み立てたいのにって思ってたら、15000コインも払ってくれた。私物なんだけどって思ってたらバレンタインのお返しだって。やったぁ。

 

 

5月3日(木)

 今日は憲法記念日でお休みか。私達が先の大戦で沈んだ後の事は勉強してきたけど、あの犠牲の上に今の憲法ができたのよね。主権在民と他国民の自由を侵害する手段と国際紛争を解決する方法としての戦争放棄か。交戦権や軍備の否定はしていないのよね。一部の人は戦争放棄は軍備の放棄まで行わねばならないって叫んでるけど、そんな妄言はさて置き、深海棲艦との戦いの時も色々とあったみたいだけど、戦争放棄って難しい問題よね。提督も含め私達があれこれ主張するのもサイレントネイビー(沈黙の海軍)の伝統に反するからね……。

 端午の節句も近いから、今日は皆で粽と柏餅を作って食べたのよね。そしたら陽炎ちゃんから何か他にないか聞かれたので羊羹粽の話をしたら、食べたいって言われたんだけど、さすがに作るのは無理だよぉ。

 

 

5月4日(金)

 今日はみどりの日。休日になるとかならないとか言われていたけど、来年から祝日になるんだって。祝日の間だから鎮守府も今日は半分お休みみたいな感じ。私も午後から街にお出かけしちゃいました。

 前から気になってたんだけど、街にハンバーガー屋さんができるみたい。

 大手チェーン店じゃないんだけど、今日店を見てみたらアルバイト募集の張り紙がしてあった。

 艦娘可なんて書かれてなかったけど、戦争が終わったら、艦娘可のアルバイトも増えるのかな。なんてね。

 

 

5月5日(土)

 今日は端午の節句でお休み。世間一般では男の子の節句に思われているけど、元々女性が行っていたのよね。

 もともとは、田植えの時期である5月になると稲の神様に豊穣を祈願する為に若い娘達が小屋や神社に籠って田植えの前に穢れを祓う「五月忌み」という風習があって、古くから邪気祓いの力があるとされていた菖蒲と薬草の蓬を軒に挿すことで、厄災を祓って穢れを浄化できると考えられていたんだって。これが、中国から伝来した端午と結びつき、端午の節句となったらしいわ。それが菖蒲が武道を重んじるという意味の尚武と同じ読み方だから、武士の間では縁起がよいって言われて盛んになったらしいわね。そこから逞しく成長することを願って男の子の行事になったみたい。でも、私たち艦娘にも尚武って言葉は縁起が良いからどこの鎮守府でも端午の節句は盛んにお祝いされているのよね。私も花菖蒲を買ってきたんだけど端午の節句に使われる菖蒲は花菖蒲とは違うんだって。

 邪気を祓う菖蒲はサトイモ科で花菖蒲はアヤメ科。鮮やかな花をつけるのが花菖蒲で、菖蒲の花は地味な花なんだけど、強い香りがあって、それが邪気を祓うらしいの。勘違いしてたよ。ちゃんと調べてから買うんだったなぁ。ま、花菖蒲はお父さんの執務室に飾っておこっと。

 端午の節句という事で、今日の夕食には菖蒲酒が付いてきました。飲めない娘も縁起物って事で口だけは付けたのよね。

 部屋に戻ったら、私たちの枕が菖蒲枕に代わっていたの。妖精さんが頑張って作ってくれたらしいわ。菖蒲枕って枕の下に菖蒲を敷いた物だと思ってたけど、菖蒲で作るのが本式なのね……。

 

 

5月6日(日)

 来週は母の日かぁ。私たち艦娘にとって、母親って誰だろね? 今まで過ごした鎮守府を思い出すと大抵は鳳翔さんがお母さん役、たまに金剛さんだったけど……。

 ここだと簡単なのよね。提督はお父さんだから、提督と結婚している飛龍さんがお母さんということで。そんな話を皆でしてたら島風ちゃんが飛龍ママって呼び始めちゃった。そしたら、那珂さん達まで飛龍ママって。……那珂さん達が呼ぶのは止めた方が良いと思うな、私。

 それで、皆と相談して赤いカーネーションの他に個人で一品何か贈ることになったんだけど、何贈ろうかなぁ。

 今日のお風呂は、昨日の菖蒲枕を使った菖蒲湯だったの。使いまわし? って思ったけど、菖蒲枕に使った菖蒲を菖蒲湯にするのって伝統なんだって。

 

 

5月7日(月)

 母の日のプレゼント、那珂さんは自分で選んだ飛龍さんのイメージに合わせたベストCDにするんだって。

 一緒にCD作らないかって誘われたんだけど、私はクラシック一辺倒で、後は流行曲を少し聴く位だから遠慮しちゃった。

 そんな話しをしてたら、今度私にもイメージに合わせたベストCDを作ってくれるって。那珂さんから見た私のイメージってちょっと興味あるかも。

 贈られたらお返しに私もなにかつくらないとね。

 

 

5月8日(火)

 南への輸送任務と八丈島鎮守府との演習以外特に変わったこともなく過ごせた1日。

 日記にも書くものなかったなぁ。

 

 

5月9日(水)

 提督の為に仕事するのは楽しいな。

 掃除、洗濯、料理……やっぱり、してあげたいって思う人がいてこそ、張り合いも出るってもんだよね。雷ちゃんの気持ちわかるなぁ……。

 もう、ずっとこのままで良いなぁ。私、戦果を挙げるのは難しいけど、家事とかの日常的な作業なら自信あるもんね。

 

 

5月10日(木)

 今日から香取さんと一緒に南へ遠洋航海。戻ったらプレゼント届いていると良いけど……。

 

 

5月11日(金)

 遠洋航海から戻って任務のない日だったから、かるく自分の部屋を掃除したりしてノンビリ過ごしちゃった。

 なにか壁にかける絵とかポスターが欲しいなぁ。最近ずっと模様替えしてないから……。ポストカードをコラージュして飾り付けるっていうのも、イイかもね。

 部屋の模様替えって、実際やってるときも楽しいんだけど、頭の中であれこれ考えたりしてるときの方が楽しいんだよね。

 今日はプレゼント届いてなかったのよね。間に合うかなぁ。

 

 

5月12日(土)

 やっと明日飛龍ママに贈るプレゼントが届いた。なんてね。

 飛龍ママなんて言ったら怒りそうだなぁ、飛龍さん。

 

 

5月13日(日)

 今日は母の日。皆から飛龍ママにってカーネーションとプレゼントを贈られる飛龍さんの困ったような笑顔ってとても新鮮。私もカーネーションと最近見つけたハンモックウォレットっていうレディース用二つ折りレザー財布をプレゼント。喜んでもらえたみたい。え? 私は、飛龍ママなんて……言っちゃいました。

 午後になって、飛龍さんと桟橋でばったり。文月ちゃんとか養子になった五月雨ちゃん辺りからママって呼ばれるのは良いけど、時雨ちゃんや那珂ちゃん辺りからママと呼ばれるのは複雑なのよねだって。判るなぁって頷いていたら、言い出したの誰かしらって、えっと村雨を見つめないで欲しいんですけどぉ。飛龍ママって言い出したの私じゃありませんからね? 目が笑っているから、飛龍さんの冗談っていうのは解ってますけどぉ。

 ところで、お父さんも母の日だって言って飛龍さんにカーネーションを贈ってたけど、飛龍さんの頬が微かに引き攣ってたのを見ちゃった。金剛さん達も見てて、女心が判ってないネって呆れてたけど、今日ってメイストームデー(5月の嵐の日)って呼ばれてるのって知っているのかな? 「八十八夜の別れ霜」って言葉にちなんで「バレンタインの88日後」に定められた記念日なんだけど、カップルが別れ話を切り出すのに最適な日とされるのよ? 余り燥ぎすぎると春の嵐を招いちゃうんだから。春の嵐とお嫁さんのご機嫌には気をつけましょうね、お父さん。

 

 

5月14日(月)

 何気なく本屋さんで立ち読みしてたらアコーディオンの雑誌が売られてて吃驚したよ。

 最近はこんな雑誌まで出てるんだね。すごい初心者向けに作られてて、わかりやすい。

 そんなに値段も高くなかったから思わず買って帰っちゃった。

 流行曲とかの楽譜も載ってて息抜きに弾いてみたりして、なかなかおもしろかった。

 

 

 

5月15日(火)

 今日は短波ラジオで内地の放送が入ってきて丁度やっていたクラシック番組を録音。

 欲しいCDとかいっぱいありすぎて、なかなか買えないのよね。それに、知らなかった曲とか作曲家を聴くチャンスも増えるから、良くラジオは聞くんだけど、

 こんなことしてる艦娘って、まわりにはあんまりいないのよね。私って、ちょっとズレてるのかなぁ……?

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

村雨の日記――05月16日~05月31日――

5月16日(水)

 明日から単位認定試験。

 私は年末にここに異動になったからもう一度受けなおさないといけないのよね……。

 艦娘といえども教育は大切ということで通信教育があるんだけど、鎮守府内学習でのレポート提出と大本営が指定する時期に行うスクーリングさえしっかりとしておけば単位認定のためのテストは多少試験の点数が低くても問題ないのよね。おまけに試験教官は鎮守府の提督だし。でも、白露じゃないけど狙うなら一番よね。

 後は、スクーリングか……。前は占守島への派遣だったけど今回はどうなるのかなぁ? 近場だと良いけど。今月末に発表だから、怖いのと楽しみが半々だよ。

 

 

5月17日(木)

 今日からいよいよ単位認定試験がはじまった。単位認定試験の間は遠征や出撃は免除されるのが慣習なのよね。艦娘の成績も意外と提督達の評価に繋がったりするから上昇志向の強い提督で艦娘の人員にゆとりがある鎮守府だと試験の半月前位から合宿したりして結構大変なの。うちはどうなんだろう? ここに来て初めての試験だからちょっと気になっちゃうのよね。

 初日の今日は数学と日本史。どっちもまあまあだったかな。

 今日の夕食は、黒潮ちゃんと浦風ちゃんの浜子鍋。浜子鍋って久しぶり。貝やタコの他に新鮮な魚介類を野菜と一緒に味噌で煮込んだ土鍋料理なんだよね。やっぱり二人の作った鍋、美味しい。

 

 

5月18日(金)

 今日は時雨の誕生日なのよね。時雨の誕生日ケーキは作ったけど、プレゼントって手作りの日焼け止めで良いかなぁ? ホホバオイルとペパーミントで作ってみたんだけどね。気に入ってくれるといいな。

 今日の単位認定試験は地理と現代文。どっちもまあまあだったかな。今回も国語が難しくてちょっとあわてちゃったけど。

 

 

5月19日(土)

 昨日、時雨の誕生日を白露型のみんなでお祝いしたんだけど、プレゼントは無事気に入って貰えたみたい。でもそれを夕立も気に入ったらしくて、来月の夕立へのプレゼントは手作りの日焼け止めをおねだりされちゃった。夕立のイメージか……どうしようかなぁ。

 今日の単位認定試験は古典と物理のテスト。物理は楽勝って感じだったけど古典がイマイチだったかなぁ。

 

 

5月20日(日)

 今日の単位認定試験はお休み。ちょっと街にお出かけ。夕立の肌質ならシアバターが良いはずなんだけど、オイルは、どうしようかなぁ。目ぼしいものは絞っているんだけど、絞り切れないのよね。

 帰ってきて一寸苦手な外国語を集中的に予習したんだけど、イマイチ乗らないのよね。

 

 

5月21日(月)

 今日の単位認定試験は外国語と生物。生物は昨日やったところが出てて余裕の出来。外国語もヤマを張ったところが出てきて何とかなったわ。ヤマが当たると気持ち良いわよね。

 夕立のオイル、フランキンセンスを考えているんだけど、ラベンダーやジャーマンカモミールも捨てがたいのよね。夕立に選んでもらっちゃおっと。

 

 

5月22日(火)

 最終日は艦娘の単位認定試験らしく砲撃と索敵。どっちも鍛えられているから楽勝でした。

 午後から夕立を連れて街に買い物。オイルはやっぱり絞り切れないから、夕立の好きな匂いを選んでもらう事にしたのよね。何点か嗅いでもらったんだけど、フランキンセンスが良いみたい。

 

 

5月23日(水)

 遠征からの帰り道で、異動した鬼怒さん達と偶然再会。ちょっと父島に寄り道して帰りました。もちろん連絡は入れてね。あの送別会の話になっちゃって、また機会があったらライブ見たいって話しで盛り上がった。あと、鬼怒さん達も演奏バンドを組んだんだって。なんだかあのステージを見て刺激されたらしい。ということは、私の演奏も一役買ったって事かな!? ちょっとだけ鼻高々な気分。

 

 

5月24日(木)

 いつもは食事会の日なんだけど、今日は食事作法の講習会があったからお休み。

 食事作法ってキチンとしたルールで食事したりお茶飲んだり挨拶したりするから、実は初めのうちは苦手でした。

 食事作法も西洋料理ならまだ良いんだけど、今日は茶事。それも今居る白露型が皆で正午の茶事(しょうごのちゃじ)に当たっちゃったのよね。正午の茶事に当たった事を聞いた途端夕立と時雨が嫌そうにするの判るよ。陽炎ちゃんみたいに飯後の茶事だったら良かったんだけどね……。前礼は省略されたんだけど、席入から拝見物の問い、退席まで4時間も掛かったのよね。

 

 

5月25日(金)

 先週建造された不知火ちゃんの買い物につきあって私もウインドウ・ショッピングに精を出す1日。

 帰ってきたら夕立と時雨がチラシを持ってニコニコしてるのよね。気になったら、鬼怒さん達が舞台演奏を母島で2週間後にするみたい。一緒に行こうって誘われたけど、この際白露型のみんなで観にいってみようかな? 提督が許可出してくれるかな?

 

 

5月26日(土)

 先週まではバラが満開だったんだけど、そろそろ散り始め。そんなバラ園を散歩中に秋雲ちゃんからモデル頼まれちゃった。特に予定もないから軽い気持ちで引き受けたのは良いけど、題材がボッティチェッリの【ヴィーナスの誕生】だったの。秋雲ちゃんったらいきなり「脱いで」なんて言うんだもん。びっくりしちゃって慌てて逃げようとしたんだけど捕まっちゃって外なのにヴィーナスのあの格好させられちゃった。誰か来ないかビクビクだったけど誰にも見られないでよかったよ。秋雲ちゃん、絵は誰にも見せないでよね。約束だからね。

 

 

5月27日(日)

 今日は海軍記念日。午前中は式典に出席した位で何事もなく終わったんだけど、午後青葉さんに取材されたのよね。

 何かと思ったら、昨日のヴィーナスについてだって。秋雲ちゃん、見せないって約束だったわよね! 

 インタビュー中に分かったんだけど、秋雲ちゃん青葉さんに唆されて提督に見せちゃったらしいのよね。って、うそ! ちょっ、まっ…! 本当に困るんですけどぉー。どんな顔して明日の秘書艦すればいいのよぉ。

 

 

5月28日(月)

 案ずるより産むが易しって言葉もあるし。ということでいざ執務室。提督、私の顔を見るなり女神さまの御成り。だって。恥ずかしくって顔を俯けていたら色々と慰めて貰っちゃった。丁度居合わせた五月雨ちゃんも困ったような笑顔で、スタイル良いから似合ってたって……えっと、フォローして貰ってるのよね? 改めて言われると恥ずかしいんですけどぉ。あーぁ何で題材を確かめる前に引き受けちゃったんだろ? ちょっと微妙な空気で一日終わりました。うぁあん。

 

 

5月29日(火)

 紅白戦で秋雲ちゃんと対戦。唆されたとはいえ、秋雲ちゃんが約束を破っちゃったのは間違いないから、一発大きいのお見舞いしちゃった。本当にこの一件は恥ずかしかったんだから。

 

 

5月30日(水)

 スクーリングの内容決定。なんだけど父島への修学旅行だって。

 スクーリングの内容は全国統一だから仕方ないといえば仕方ないんだけどなんか納得いかないよ……。

 近場なら良いなって思ってた自分を叩きたい気分。

 

 

5月31日(木)

 明日は衣替え。夏服の準備しておかないとね。

 水着とかも準備するつもりで街にお買い物。

 帰ってきたら父島鎮守府から差し入れだって。何かなって思ったら生きている青海亀。どうするのかなって思ってたら、古参の人たちが何時の間にか雲隠れしちゃって、提督から私と先月末に建造された長門さんに召集が掛かったのよね。何故か工廠に、艤装を展開して来るようにって言われたから行ったんだけど古参の人たちが雲隠れした訳が良く分かった。私も今度から逃げよっと。

 何があったかというと艤装を展開して工廠に行ったら、そこでウミガメの解体。提督が肉とタマゴと内臓と甲羅と爪に解体したのを食糧庫に運んだんだけど……臭いが凄いのよ、身体に沁み込んじゃったみたいに纏わりついっちゃって。艤装を展開してくるようにって言われた理由がよく判ったわ。私服じゃ二度と着られ無かったな、多分。色々運び終わって艤装を収容したら二人でお風呂に直行しました。

 夕食は、私達じゃなくて提督が振る舞うって連絡があったんだけど、古参の人の顔見ただけで何が出てくるか何となく予想できるのが不安よね……。

 出てきたのは今日捌いていた亀の内臓(モツ)煮込みとお刺身、去年から漬けていたって言ってたウミガメのタマゴの味噌漬と父島の提督から送られてきたタコノミを漬けたラム酒。どれも初めて食べるんだけど……。

 亀の煮込みは脂がすごかったのが印象的。味は……生姜やレモングラスが効いていたから牛とかのもつ煮に近かったかな? でも人によって好き嫌いある味なのは間違いないけどね。私はちょっと苦手かも。

 味噌漬けは……何て言えば良いのかな、濃い味なんだけど味噌の味じゃなくて甘みがあって……食べてみないとわからないよね。私はこの味大好きかも。今日分けた卵はみそ漬けにするらしいのよね。また食べられるのかな? あ、亀のお刺身、恐々食べたんだけど馬刺しみたいで美味しかったのよね。これはもう少し食べてみたいかも。でも、もうそろそろ産卵時期だから禁漁なんだって。 

 ……取り敢えず、遠征中、もし食料が切れたところにアオウミガメ見かけたら今までとは別の見方しちゃうかも。と思っちゃった村雨です。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

村雨の日記――06月01日~06月15日――

投稿し直し…まさか前のを上げていたとは。


6月1日(金)

 今日から衣替え。六月の最初の日は氷の朔日(こおりのついたち)って呼ばれてるんだっけ? 熊本県の鎮守府にいた頃は八代神社に行って雪餅を頂いたり、大阪にいた時は難波神社で7月だったけど、かちわり氷を頂いたり。

 ここだとどうするのかなって思ってたら、冬に氷室に入れていた雪を街の神社に寄付して街を挙げての氷室祭に参加。南国で氷室祭って何か面白いよね。

 鎮守府では氷餅やあられ、煎り豆のような歯ごたえのある食べ物が出てきました。氷餅って何かなって思ったら、正月に家の軒先に吊るして凍らせ乾燥させた餅のことだったのね。

 そう言えば私がここに配属になってから半年が経ったのかぁ。この半年、随分色んなことがあったなぁ。初めの頃は風変わりな鎮守府で不安だったけど、今では提督の事をお父さんって呼ぶのにも全然抵抗がなくなっちゃった。公の場では提督って呼んでいるけど、何処か出かけた時、他の鎮守府の艦娘がいる場でお父さんって呼ばないか不安なのよね。半年しかいない私がこれだから異動した皆は提督呼びに戻すの大変だったろうなぁ。ここで建造された娘なんかどうしたんだろ? 提督イコールお父さんの呼び方で育ってきたんだし。

 

 

6月2日(土)

 そう言えば、前に飛龍さんとのお話で提督からのプロポーズのお話になっちゃって提督からのプロポーズの言葉を尋ねたら、なかったのよ。なんて話になったのよね。その時は冗談だって思ったから流しちゃったけど、本人達から本当になかったって聞いてびっくり。金剛さんや青葉さんはカンカンになっているし提督にもう一度プロポーズからやり直させないと。って意気込んじゃってる。

 明日はプロポーズの日だって思い出して、その事話したらみんなが俄然やる気になっちゃった。

 提督、飛龍さん本当にごめんなさい。

 

 

6月3日(日)

 昨日の話から、提督と飛龍さんの公開プロポーズが鎮守府の庭で行われることになっちゃったみたいで朝から鎮守府が大賑わいでした。

 確かに今日はプロポーズの日だけど、青ヶ島鎮守府や父島鎮守府の提督も来るし、街のケーブルTVの中継まで入っちゃって、すごい大盛り上がりだった。暫くはこの話題で持ちきりなんだろうな……。

 

 

6月4日(月)

 ところで、六月って水無月っていうけど、雨がたくさん降る時季なのに何で水の無い月って言うのかな? 変なの。なんて言ってたら、香取さんに聞かれちゃった。

 早速執務室に連れていかれて提督と一緒に国語の特別授業。水無月の無って、~のって意味だったのね。だから水無月は水の月って意味なんだって。試験終わった直ぐ後にこの体たらく。……反省しま~す。

 

 

6月5日(火)

 明日は鬼怒さんが母島で舞台演奏をする日。どうしても見に行きたかったから、ミッドウェー海戦の追悼式の後に那珂さんとか希望者全員で提督におねだりしちゃった。提督が困ったような顔をしていたけど、最後は、仕方ないって許可してくれたの。提督、ごめんなさい。

 

 

6月6日(水)

 鬼怒さん達の舞台演奏最高だった。地元の父島だけじゃなくて母島の人達ともすっかり仲良くなったみたいで、会場の北村小学校がすごい盛り上がり。北港まで人が溢れててあちこちにモニターが設置されていたのよね。私達は北港から上陸したんだけどなかなか進めなかったから隣の山を越えて会場に入ったのよね。

 母島の提督とは会えなかったけど鬼怒さんや伊8ちゃんとも久しぶりに会えたし、他のバンドのメンバーも紹介して貰えたし。今回は父島の鬼怒さん達の舞台だったけど母島でもその内、艦娘の舞台演奏が始まるかもだって。鬼怒さんの言う事にはあの送別会が発端らしいから那珂さんの影響ってすごいよね。そんな舞台に参加できたんだから、改めて那珂さんには感謝です。

 帰りは北港を避けて反対側の沖港から出発して長距離練習航海を兼ねながら無事鎮守府に戻ってきました。

 

 

6月7日(木)

 もう恒例の食事会。今日は亀肉とトマトのホットサラダにチャレンジ。我ながら無謀とは思ったんだけどね……。意外といけたみたい。

 肉に塩と胡椒をしっかりふって、生姜がパリパリになるまで熱して、生姜を分けて亀肉を加えて片面3分ずつ焼き、フライパンから取り出してアルミホイルに包み温かい場所で10分待つの。それを斜めそぎ切りにしたら、紫玉ねぎを軽く炒めてトマトを加えて全体を混ぜ合わせたらボウルに移したのよね。

 ナンプラーとレモン果汁をまわしかけて香菜とピーナッツを加えて混ぜ合わせて器に盛り生姜をふりかけて出来上がり。金田提督の鎮守府にいた大鯨さんに教わったレシピのアレンジなんだけどね。

 

 

6月8日(金)

 商店街で久しぶりにフリマをやってたからチェックしてみたんだけど、あんまりたいしたことなかった。

 売ってる物もどれもこれも私たちの外見には合わないのよね。でもそんな中に可愛いスカートが25コイン! で売られているのを発見したから購入。

 前に買ったスカートは丈が短すぎて大変な目にあったけど、これは大丈夫そう。早速穿いてみたんだけど良い感じ。得した気分。

 

 

6月9日(土)

 一日何もなくてのんびりしていたら、夕立から明日は父の日じゃなかった? って言われたのよね。夕立に聞いたらもうプレゼント用意しているって言うし。もう、もう少し早く言ってよ、夜に言わなくても良いじゃない。どうしよう……。

 

 

6月10日(日)

 今日は父の日って言われて慌てて色々準備してたら、榛名さんが不思議そうな顔しているのよね。

 父の日の話してたら、来週じゃないの? って。よく確認したら、榛名さんの言う通り。夕立に言ったら惚けられたし、もう。お姉ちゃんを揶揄ったわね。後で覚えてなさいよ!?

 冷静になってプレゼント見たら、慌てて用意したからとんでもないものになっちゃってる。でも、これで 父の日のプレゼント落ち着いて考えられるよ。取り敢えず慌てて準備した、お背中流し券は燃やしておかないとね。何でこんなの作っちゃったんだろ? 恥ずかし。

 ……でも、こんなの私が渡したら提督、どうしたんだろ? 六駆や七駆の娘達とは違うから困っちゃうだろうけどね。

 

 

6月11日(月)

 この時期だともう内地は梅雨入りの頃なんだけど、ここや父島鎮守府は梅雨がないのよね。梅雨がないのは北海道や千島も同じなんだけど亜熱帯の父島なんかにもなかったのは意外だったなぁ。何て言ってたら、5月が梅雨の時期だったみたい。言われてみれば、雨が多かったかも。全然気が付かなかったけど。

 

 

6月12日(火)

 街で赤いオープンカーを素敵に乗りこなしている女の人がいた……カッコイイなぁ。って思ったら神通さん! 凄いなぁ……。

 私も車の免許、取れるかなぁ。取れたら私もオープンカーか、小さくて可愛いお気に入りの愛車を手に入れたいな。最初に乗せるのは……もちろん長姉の白露よね。

 

 

6月13日(水)

 ちょっとショックなことが……。練度、夕立と時雨に抜かれちゃった。

 沖田提督の鎮守府でもそうだったけど、二人とも成長速度が速いのよね……。

 後から建造された姉妹に抜かれたのはさすがにショックです。

 

 

6月14日(木)

 今日は食事会なんだけど、ちょっと試してみたいものがあって私は飲み物だけ準備。

 まず冷やした甘酒とココナッツミルクを良く混ぜ合わせて、上にホイップクリームを絞り出してみたんだけど、一味欲しかったのよね。それで用意しておいた鎮守府のシナモンと黒こしょうとオリーブオイルをかけてみたんだけど大成功。あっという間になくなっちゃった。

 

 

6月15日(金)

 今日の浴場はドクダミ湯でした。特有の臭気から敬遠されがちなんだけど、新陳代謝を高めて皮脂分泌を活発にするからお肌もツルツルになるって聞いていたから少し期待しちゃってたのよね。あとはニキビや吹き出物などのお肌のトラブルの予防にもなるらしいんだけど、艦娘には関係ないか。

 

 




この世界の小笠原諸島は戦後直ぐに疎開から戻れたので母島も戦前と同じ様に栄えています。なので、戦前に栄えていた北港一帯もそのまま栄えています。
硫黄島にも住民は戻ってきていましたが、深海棲艦出現で不安を覚えた大多数の住民が再度小笠原諸島や伊豆諸島、本土に疎開しています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

村雨の日記――06月16日~06月30日――

2018/05/03 こっそり写真付けてみた。


6月16日(土)

 今日は大広間にお饅頭・羊羹などの菓子が沢山並べてあって吃驚。すっかり忘れていたけど、今日は嘉祥の日だったのよね。嘉祥の日って16個の餅あるいは菓子を神様に供えてから家族揃って食べ、招福・厄除けを願う日なんだけど、その由来から鎮守府でも重要視されている日の一つよね。何で嘉祥って言うのか気になったら、仁明天皇の御代の元号の嘉祥から来ているって説と室町時代に使われていた嘉定通宝から来ているって言う説があるのよね。嘉定通宝の説は「嘉」と「通」が「勝つ」に通じることから縁起がよいとされていたなんて面白い語呂合わせから来ているらしいの。鎮守府ではこっちの説を採用しているのよね。名前の由来はともかく、私達にとっては和菓子をたくさん食べられる日でもあるからそれを楽しみにしていた娘も多かったな。鎮守府でもあまりお菓子とかでないところもあるし、そういうところではこの日は結構楽しみだったのよね。

 前にいた福島の鎮守府で6月16日の未明に梅を採って梅干を作ってたんだけどその梅干しを遠征や出撃前には必ず食べる義務があったんだ。鎮守府を離れてから知ったんだけど、旅立ち前にこの梅干を食べて災難を逃れると言う嘉祥の梅から来ていたのね。

 ところで大広間に合ったお菓子って阿古屋(あこや)金飩(きんとん)熨斗操(のしくり)平麩(ひらふ)鶉焼(うずらやき)、羊羹、大饅頭、寄水(よりみず)って書かれてたけど、熨斗操・平麩って、お菓子なの?

 それぞれ1個づつ配られたから食べてみたんだけど、気になった熨斗繰って短冊状に切った鮑をお酒で柔らかくしたものなのね。それと平麩って生麩を甘く煮染めただけ……。

 ま、私達には他にも茹で饅頭や水羊羹、くるみ味噌餅、椿餅の他に抹茶が入ったお饅頭も配られたんだけどね。

 今日はお菓子だけでお腹いっぱいになっちゃった。

 それにしても、この日を忘れているなんて、私もここに来てすっかり贅沢覚えちゃったみたい。昔はあれほど楽しみだったのにね。……反省しないと。

 

 

6月17日(日)

 先週は夕立に担がれちゃったけど、今日は本当に父の日。前に聞いた話だと、お父さんが本当に贈ってもらいたいものは一緒に過ごす時間らしいんだけど、それは飛龍さんと五月雨ちゃんが贈るから私は別のプレゼントを用意しないとね。

 先週から色々探してたんだけど、Mini Brewという、家庭用ビール醸造マシンを発見してプレゼント。提督、意外と物作りも好きだから丁度良かったかもって思ったんだけどね。提督、すごく喜んでくれて、良かった。

 あれ? 日記を書いてから思ったんだけど、酒税法ってクリアしているのかな、アレ。……市販されているし、ま、良いか。

 

 

6月18日(月)

 遠征から帰って久しぶりに那珂さんのバンドの練習に参加。

 みんなで演奏するのは、やっぱり楽しい。正式なメンバーじゃないんだけど、みんなも五月蠅くは言わないので、よかった。でも、他の人達になにか言われたら参加しちゃおうかな。那珂さん達に迷惑かけたくないしね。

 

 

6月19日(火)

 今日は個人的なんだけど、とっても嬉しいことがあったの。遂に練度が90になったのよね。90になったから私の目標を改めてこの日記に書いて置きます。

 私が建造された脇田提督の鎮守府にいた峯風さんが私の目標。艦娘としても1人の女性としても、あの人のようにありたいと心がけて来たんだ。練度が90になって練度だけはやっとあの時の峯風さんに追いつけた。ここが私の新しいスタートライン。

 峯風さんは大本営参謀部に異動した後直ぐに脇田提督と結婚して退役しちゃったけど、脇田提督を最初期から支えて第一艦隊旗艦も何度も務めて自分は勿論随伴艦にも小破以上の傷を負わせなかった歴戦艦でもあったし、普段はお淑やかで鎮守府の母とも姉とも慕われてたの。

 今の私じゃまだまだ背中は遠いけど、何時かは追いつき追い越していきたい目標。

 峯風さんには成長した姿を見て貰いたいから何時か絶対に会いに行くって決めてるんだから!

 

 

6月20日(水)

 今日は私の誕生日だったのよね。特に知らせていなかったんだけど、やっぱり姉妹よね。しっかりとお祝いしてもらっちゃった。陽炎ちゃん達や提督からもしっかりとプレゼントがあったし。この鎮守府に来られて良かったなぁ。今までもお祝いしてもらえたけど、こんなに大勢から祝ってもらえたのってあんまりなかったのよね。

 

 

6月21日(木)

 今日は夕立の誕生日。白露型で誕生日のお祝いをしたんだけど、いつの間にか大人数になっちゃったのよね。序でに食事会も一緒にしちゃったみたい。

 夕立が希望していた手作りの日焼け止めをプレゼントしたんだけど、ちょっと物足りなかったからこっそりヤシの葉で作っていた帽子もプレゼント。見ていた白露や時雨が拗ねちゃったから、二人の他に五月雨ちゃんも含めて白露型の皆にも作ることを約束しちゃった。ま、何とかなるでしょ。

 誕生日のケーキは白露と時雨が作ってくれたので、私は飲み物作り。甘酒でシュワシュワのカクテルを作ってみたのよね。

 グラスに甘酒とラム酒を均等に入れ、金柑を加え、炭酸水を注ぐだけなんだけどね。夕立も満足していたんだけど1週間前に建造された隼鷹さんや那智さんから人気があったなぁ。

 あ、そうそう、今日は夏至でもあったのよね。朝からあいにくの空模様で太陽が出ていなかったからあんまり実感わかなかったんだけどね。

 

 

6月22日(金)

 いよいよあさってから旅行。色々と準備しておかないとね。提督にお土産は何が良いか尋ねたら、コーヒーと蜂蜜、それにラム酒とパッションリキュールとグアバ酒だって。お酒の要望が随分多いじゃない。メって言ったら、真面目な顔で妙に男臭い笑みを浮かべて、お前が無事に帰ってくるのが何よりの土産だって私の頭を撫でながら急に言うんだもん、ちょっとドキッとしちゃったよ。

 飛龍さんもこの表情にコロッと行っちゃったのかな? どことなくあの人と似た雰囲気だったしね。

 明日の今頃は船の中か……艦娘が船に乗るのも変な感じよね。一寸寝付けないんだけど、船酔いの原因に寝不足もあるって言われてるし艦娘が船酔いなんて笑い話にしかならないよね。今日は早く寝ちゃおう。

 

 

6月23日(土)

 明日の今頃は宿なのよね。どんなところかなぁ。提督からは色々と買い物のコツも教わったけど、遠征の補給地点とは違う視点で同じ場所を見るのって新鮮だよね。補給場所はいつも三日月山の麓だから宿の場所は近いんだけど、あそこの鎮守府の外って出た事ないから、楽しみ。

 そろそろ船も来る頃だし出かけよっと。

 

 

6月24日(日)

 今日から修学旅行で父島へ! 艦娘なのに船に乗るって変なの。でも、私にとって初めての体験だから楽しい。父島って、うちの鎮守府からでも結構長い間乗船するんだ。自分達で良く行く遠征や海図だと近く感じるのにね。

 真夜中に出発してお昼頃に烏帽子岩を通過して二見湾に到着。いかにも南の国の島って感じで内地との気候の差にビックリしちゃう娘も多かったの。私達はいくつかの宿に分かれて泊まるんだけど、私が泊まる所は港からすぐのガジュマルが目印のペンション。

【挿絵表示】

 喫茶店とお土産屋さんも併設していて提督の定宿なんだって。近くに神社もあるし、色々聞いているから楽しみだなぁ。言われていた通り、荷物を置いたらすぐに蜂蜜を買って序でに農協さんを覗く。南国フルーツが販売してたから色々買っちゃった。近くの商店で亀缶見つけちゃったからこれもお土産に買っちゃおう。喫茶店のサメバーガー美味しかったよ。一寸お腹すいてたから二軒隣でポキ丼も食べちゃった。

 あ、そうそう、面白い標識があったから一緒に撮って貰ったんだ。それが、これ。

【挿絵表示】

 東京や南硫黄島までの距離とかが描かれていて面白かったよ。父島から東京まで1007kmで、南硫黄島までは330kmあるんだ。因みに深海棲艦のいる沖ノ鳥島までは963kmだって。ここにはないけど、鳥島までは422kmなんだ。

 後、提督に言われた神社にもお参りに行ったんだけど、結構階段が急だったのよ。これが麓からで、

【挿絵表示】

 これが上から見たところ。

【挿絵表示】

 ここから110段ほど上がったところに神社の本殿があるの。ここの手水舎は囲いがあって使うときは扉を開けるんだよ。扉には小鳥が水浴びをするから扉は閉めてくださいって書いてあったのよ。写真撮ってみたんだ。

【挿絵表示】

 上の展望台にも上ってみたんだけど、良い眺めだったな。

 

 

6月25日(月)

 今日は1日中、山へのハイキングと買い物に明け暮れる。午前中、自転車を借りて小港海岸って所までお出かけ。小港海岸で自転車を停めて中山峠ってところを通ってジョンビーチまで片道2時間掛けていったんだけど、峠も浜辺もすっごい絶景が広がってるの。彼方此方色々見てきたけど、提督が絶対に行けって言ってたのも納得。小港海岸に行く坂の途中から自動販売機がなかったのには閉口したけどね。提督に聞いてたから艤装の中に4リットル分の飲み物入れといて良かったけど、すっかり温くなっちゃって。

 午後はガイドの人と一緒に自転車でお出かけ。農業センターから笠山って所と中央山って所に行ったんだけど、中央山は結構楽だったわね、階段もあって。山の上で輪になって石を拝んでいた人がいたのよね。話を聞いたらパワースポットなんだって。ガイドさんも初耳らしく、色々と聞いたら某所から広まったらしいの。ただ、提督がここに旅行に来ていろいろやらかしていた時期とぴったり。おまけに提督がうっかり踏み殺しちゃって埋めたグリーンアノールのお墓作ってた時に吐いたって言う法螺話とそっくり。若しかして……? ち、違うわよね。

 近くの長崎展望台から写真撮ったんだけど、

【挿絵表示】

ここから見た風景や初寝浦展望台にはあの戦争の跡が合って色々とあの頃を思い出しちゃった。

【挿絵表示】

 ここって初寝浦展望台に行く途中の森の中にあった倉庫なんだけどね。ここも弾痕とかあって……。

 あと、そこから宿に帰るときの坂は怖かったよ……。長崎展望台寄ってから帰ったんだけどね。どう怖かったか口で言うのは難しいけど坂の角度とカーブと下までの風景でジェットコースターより怖かった……。坂道行く直前に撮った写真がこれ。この写真撮った直後にスコールになっちゃって皆ずぶ濡れになっちゃったんだ。

【挿絵表示】

 それにしても濡れた急な坂道を自転車で降るのってあんなに怖いものなんだね。中央山の緩やかな坂から帰ればよかった。

 夜はちょっとお出かけして扇浦って所で星空観察。みんなで満天の星空と夜の海をみながらとりとめもないお喋りに耽っていたら騒がしくなって来たのよね。そっちに行ったら丁度ウミガメの産卵。良いもの見ちゃったなぁ……。

 

 

6月26日(火)

 今日も一日ハイキング。ハートの形をした千尋岩って所にお出かけ。途中のガジュマル林を通っていたら、赤ポッポに出会ったのよね。正式名称はアカガシラカラスバトっていうんだけど、可愛いの! ここにしかいない鳥で大体40羽くらいなんだってガイドさんのお話。提督は何度か神社で出会っているらしいんだけど、私の泊まっている近くの神社とは別の神社なんだよね、残念。その事話したら、娘さんの提督さんってあの人かってすぐに判るのって、すごくない? 千尋岩って父島の南端の断崖から南島、母島の眺望を楽しむだけじゃなくって、調べたら恋人と一緒にハートの窪みの部分で「サモトラケのニケ」の格好をすると幸せになれるらしいのよね。いない場合は思い人の名前を叫ぶと叶うんだって。そんな話をしていたら、ガイドさんが複雑な顔をするのよね。その話って皆既日食後に広まったんだけど、提督が日食の日に千尋岩に来ているのよね。その時のガイドが今日のガイドさんだったんだけど、他の観測ツアーの人たちと一緒につくった話らしいのよ……。悪気はなかったらしいんだけどね、ツアーに参加して実際にする人も多いらしいし。話通りにして幸せになっている人たちもいるから良いんじゃないの? せっかくだし千尋岩で撮って貰っちゃった。

【挿絵表示】

 

 夕方、三日月山展望台で海に沈む夕日を見ていると、沈む瞬間に緑色になったのよ。見たって人と見えなかったって人がいたんだけど、後でペンションの人に聞いたら年に片手の指で足りるほどの貴重な瞬間だったのよね。

【挿絵表示】

 

 写真撮ってみたんだけど、やっぱり写ってなかった。残念。写真の撮り方、青葉さんに習おうかな。

 あ、そうそう三日月山にも呉で作られた高射砲がまだあったんだよね。そういうのを見ると色々と考えちゃうなぁ。

 夜間の星空見学ツアーに出かけたんだけど、農業センターのお手洗いの脇でグリーンペペっていう緑色に光るキノコを見たり、オオコウモリを見たり。星空を楽しんだんだけど、遠征中とかに見る星空とどことなく違って見えたのよね。提督は夜に浜辺でラム酒飲みながら星空見るのが好きだって言ってたけど、何となく判るかも。

 明日はいよいよ帰宅。……振り返ると、島の人がみんな親切でとってもフレンドリーな気がした。

 最後にペンションに戻って寝る前に、みんなで堤防に腰かけて結構語り明かしちゃった。港の明かりと夜の海っていうシチュエーションに嵌ったかなって感じです。

 

 

6月27日(水)

 無事、鎮守府に帰って来られてホッとする。お土産で一袋だけ残っていた珈琲豆の他に蜂蜜やラム酒ゼリーに、提督から言われていたラム酒とパッションリキュール。グアバ酒はなかったのよね。後はタコノキの苗木とパッションフルーツや島レモン、アテモヤやシャカトウ、スターフルーツにジャボチカバ、グアバ、島バナナ、シャシャップ、モンステラの実といった南国フルーツとその苗木を買ってきたけど喜んでくれるかな? タコノキって綺麗な実が付くのね。写真がこれ。

【挿絵表示】

 ね? 綺麗でしょ?

 それにしてもなんだか慌ただしい3日間の旅行だったけど、満喫できてよかった。鬼怒さん達とは会えなかったから、遠征以外で機会があったらまた行ってみたいなぁ。帰りにイルカも追いかけてきてくれたしね。

 今度はもうちょっとゆっくりしたいわね。だけど、そんな贅沢は当分できそうにもないよね。

 そうそう、今日は新箸の祝いの日だったのよね。帰ってきたら皆うどんや団子をススキや茅の青茎で作った箸で食べているから吃驚しちゃった。

 私が前にいた鎮守府は赤飯にススキの穂と青竹の箸を添えて神棚に供えるだけだったからね。

 

 

6月28日(木)

 食事会。ちょっと疲れちゃったから私は軽めの準備でした。苺と甘酒にホワイトチアシードを混ぜてプディングを作ったのよね。大きめの容器に甘酒とチアシードを入れてよく混ぜ合わせて冷蔵庫で30分ほどおくの。それを綺麗なガラス容器に灌いだら苺を飾って出来上がり。簡単でしょ? チアシードのプチプチ感といちごの甘酸っぱさが良く合って我ながら感心する出来だったのよね。

 

 

6月29日(金)

 今日、提督に執務室に呼ばれて、鎮守府の参謀として中部太平洋方面艦隊の演習計画策定会議への参加を命じられた。

 嘘でしょって言いたい。大本営に異動した杉野提督からの推薦もあるって聞いたんだけど、困っちゃったなぁ。私、参謀教育なんて殆ど受けてないよ……。提督に甘えて返事は保留させてもらったけど。

 

 

6月30日(土)

 今日は夏越しの節句。夏越しの節句では神社で夏越の祓っていう今年前半の穢れを祓って無事に過ごせたことに感謝して後半も元気に過ごせるよう祈る行事があって、私達艦娘にとっても大切な節句なんだ。でも、私は昨日の事が頭から離れなくて、ホント、どうしたらいいんだろ? なんて色々考えてたら鳳翔さんに、半年の間に積もった穢れを流す大切な行事だから漫然と参加しちゃダメって窘められちゃった。昔は6月って悪疫の流行期だし、農作業が終わって体に疲れが溜まっている時期だったから禊をすることで健康維持や除災を祈願したのよね。

 そんなわけで、私達も街の神社で茅の輪くぐりをして、形代による祓を行ってもらったの。人形代に罪や穢れや災いなどを移し、祓い清めて海に流したんだ。

 鎮守府に戻ってきたら、酒まんじゅうと水無月があったの。水無月なんて、京都以来だからとっても懐かしかったなぁ。

 用意された酒まんじゅうって今は酒かすや日本酒を利用して作られるのが一般的なのに、態々米麹で作ったみたい。

 水無月ってういろうの上に小豆がのった三角形のお菓子で、それぞれに意味があるのよね。確か……三角形が氷室の氷、小豆は悪魔払いの意味を表していた筈なんだけど、ちょっと自信ないかも。後でこっそり誰かに聞いてみよっと。

 もう過ぎちゃったけど、6月1日に氷室の氷を口にすると夏痩せしないらしいのよね。それにあやかったとも言われてたけど、どうなんだろ?

 夕食は、比叡さんと磯風さんお手製の夏越ごはん。他所の鎮守府だとメシマズ勢なんて言われているらしいけど、そんなことないのにね。……うちの鎮守府だと。




 写真は全部私が2005年から毎年行っている小笠原旅行で撮ったものです。今では無くなっているものもあります。
 サモトラケのニケ云々は、タイタニックの有名なアレ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

村雨の日記――07月01日~07月15日――

7月1日(日)

 参謀教育用の資料を提督執務室から借りて一読してみたんだけど、ちょっと荷が重いような気がする。

 正直にそのことを提督に言ってみたんだけど、参謀の扶桑さん達は大規模作戦の策定会議で不在なんだって。演習計画だから名取さんが主任参謀としての参加で私はその補佐っていうけど、私は参謀教育殆ど受けてないんだから。私にできるわけないよぉ……と思ったんだけど言い出せなくって、なんだか引き受けることになっちゃった。我ながら損な性格だなぁ。

 

 

7月2日(月)

 今日はうどんの日。じゃなくて、暦では半夏生(はんげしょう)って言って夏至から数えて11日目の事よね。

 毎年7月2日頃から七夕の頃頃までの5日間を半夏生っていうのは知っているんだ。岩手とか福島とかの鎮守府にいた時は、近くの農家さんにお手伝いにも出かけたしね。確か田植え終了の目安の日よね。

 後は、半夏生の頃は天から毒気が降るという言い伝えがあって井戸に蓋をしたり、お酒や肉を断ったり、野菜や筍を食べるのを控えたりする風習もあるのよね。

 実際、深海棲艦の動きが活発になるのもこの頃だし、天から毒気が降るっていうのも合っているかも。

 うどんの日の方は、前に香川の鎮守府にいたことがあったけどあそこの農家ではこの頃にうどんを打って食べる風習があったのよね。それでうどんの日になったんだっけ?

 関西の方だと蛸を食べてたなぁ。甘露煮に柔らか煮に酢だこ、天ぷら。どれも美味しかった。

 確か、田に植えた稲の苗が蛸の足のように大地にしっかりと豊作になるようにってことで食べたんだよね。タコ料理また作ってみようかなぁ……。黒潮ちゃんがこういうタコ料理は上手なんだけど、今度コツを聞いてみよっと。

 

 

7月3日(火)

 名取さんと演習計画の打ち合わせをする。とりあえず作らないといけないんだけど会議は10日後なのよね。

 名取さんと念入りに打合せしている途中で、何で補佐が私なのか聞いてみたんだけど、名取さん、笑うだけで教えてくれないのよね。忌避されて居たり、目が笑って居ないわけじゃないから虐められているわけでもないし……何だろ? 判んないよぉ。

 

 

7月4日(水)

 今日も資料と首っ引きで要綱の纏めを書く。色々な視点から纏めないといけないから結構な量よね。

 名取さんと打ち合わせをして、今の鎮守府が置かれている状況も確認しながら無理のない演習計画の骨子を纏めるんだけど何度も行き詰まって……。

 戻ってからも纏めようとしてみたんだけどどうも上手く纏まらないのよね……。

 いい加減嫌になってきたから、気分転換に日記を書きだしてみたんだけど、今日はもういいや。

 おしまいにしちゃおう。もう、考えが纏まりそうで纏まらないんだもん。

 

 

7月5日(木)

 今日の食事会は鎮守府にいる白露型総出で作ってみたの。題してライムマリネカジキステーキ。近くの海で捕まえてきた旨みたっぷりのカジキマグロをステーキに仕上げてライムの酸味が軽やかに引き立てる様にしたんだけど、なんか足りないから黒豆の煮込みとサフランライスを作ってみたわ。

 白露には黒豆の煮込みを作ってもらったのよね。鍋にオリーブオイルと玉ねぎ、にんにくを入れて中火で炒め、白ワインビネガー、クミンパウダーを入れて水気を飛ばし、豆と同量の水を入れて弱火で豆が少し煮くずれるまで煮たら塩とこしょうで味を調えてお終い。

 時雨と五月雨ちゃんにサフランライスを作って貰ったんだけど、サフランを湯につけて色を出して炊いてお終いだったから私がライムマリネカジキステーキを作っていいる間にサフランライスと黒豆の煮込みの盛り付けもお願いしたの。器にサフランライスとブラックビーンズの煮込みを盛ったらライムをのせてイタリアンパセリを振ってお終い。

 私はライムマリネカジキステーキを作ったの。夕立と一緒にカジキを捌いてカジキの切り身を並べたら塩・こしょうを振ってライムを絞ってオリーブオイルをかけて少しもみ込んだらラップをかけて室温で30分~1時間おくのがコツよね。

 白い煙が上がるまでしっかり熱したグリルパンに下ごしらえしたカジキの切り身を広げて焼くのよ。焼く量が量だったからみんなで手分けして。焼き上がったら盛り付けた黒豆の煮込みとサフランライスにのせて食べるんだけど、大成功だったわね。白露型って料理の腕も侮れないのよ?

 今日はいい気分転換になった気がする。

 

 

7月6日(金)

 明日は七夕で、今日は鎮守府も賑やか。今日って五月雨ちゃんの誕生日なんだけど、パーティーする雰囲気がないの。気になって提督に聞いたら毎年七夕と一緒にするんだって。それって酷いと思ってたら五月雨ちゃんから言い出したらしいんだ。でもそれを真に受ける提督もどうかと思うな、私。

 夕方、夕立と時雨から七夕の飾り付け手伝ってって言われたんだけどね。計画書書いているからちょっと難しいかなぁ……。計画書、明日には1回出すから今日中には仕上げなくちゃ。この日記書いてからまた計画書書かなくちゃ。

 少し心配だから後でちょっとだけ顔出すけどね。

 

 やっぱり顔出しておいて良かった。まったく二人とも白露に乗せられちゃダメでしょ。止めるの間に合ったから良かったけど。

 ちょっと遊んじゃったから、大急ぎで仕上げないと。

 日記書いてる時間も勿体無いと思えるくらい。

 この分だと徹夜かぁ……。

 

 

7月7日(土)

 今日は小暑(しょうしょ)。そして七夕。浴衣の日でもあるわね。

 小暑を迎えたから部屋を夏用に模様替えしようかな。それに食器なんかを夏用に替えないとね。でも、会議が終わってからよね。

 七夕って新暦で行う所と旧暦で行うところがあるのよね。ここは旧暦でのお祝いか。

 皆で浴衣に着替えて笹竹に短冊をつるしているんだけど、此れって江戸時代からの風習なのよね。

 サトイモの葉に溜まった夜露を集めて墨を磨ってその墨で文字を綴って手習い事の上達を願うんだっけ? 確かサトイモの葉は神からさずかった天の水を受ける傘の役目をしていて、その水で墨をすると文字も上達するといわれているのよね。でも、そうすると短冊に書くのって技術の上達や夢の方が良いのかな? 私の夢はもちろん……。

 夕食は天の川や織姫の織り糸に見立てた素麺。色がついているのを幼い駆逐艦と海防艦の娘たちで取り合い。……そこの白露と夕立。小さい子たちに交じって参加するなんて大人げないわよ、時雨も笑ってないで止めなさい。

 五月雨ちゃんの1日遅れの誕生祝いも盛大に行いました。何ってたって提督の娘だもんね。私達白露型一同からの誕生日プレゼントは……内緒。でも五月雨ちゃんにとても喜んでもらえたものだったから良かった。

 そうそう昨日、徹夜で計画書を書いたの。途中でちょっとだけ寝たりして、ようやく完成。

 ほんとに、疲れちゃった。今日、名取さんに預けて確認してもらう。きっと不足箇所だらけなんだろうな。恥ずかしいよ……。

 でも、今の私じゃあれが精一杯。これから色々学んでいかないとね。

 峯風さんに追いつくためにも、こんな事で弱音はいてちゃダメだよね。

 あ、そうだ、今日はポニーテールの日でもあったのよね。なんでポニーテールなんだろ?

 

 

7月8日(日)

 計画書の添削が返ってきたんだけど、案の定、指摘箇所が多い。

 最後まで指導するからって名取さんがひとつひとつ説明してくれたおかげで、ちゃんと必要事項を把握しながら計画書作れて、ものすごく助かっちゃった。

 名取さん、ありがとうございます、勤務時間後も一緒に居残ってくれて。

 自分の仕事もあったはずなのに……。

 

 

7月9日(月)

 名取さんの他に飛龍さんや香取さんの前で計画書の説明を行ってみる。

 緊張してるからどうしても早口になるのよね。頭ではわかってるんだけど、なかなかうまくいかない。

 ゆっくり確実に語彙を明確にしながら話す事を練習したほうがいいって香取さんから指摘を受けちゃった。

 とにかく、なんとかしなくちゃ。

 

 

7月10日(火)

 今日も名取さんと一緒に説明の練習。

 飛龍さんや香取さんの他に川内さんも聴きにきてくれて、あれこれアドバイスしてくれる。

 緊張しないでゆっくり話すようにしたら、何とかなりそうなんだけど。

 それだけじゃなくって、川内さんからは説明中の目線とか表情、姿勢、身ぶり手ぶりも大事だって。

 急に言われてもなかなかできません、そんなこと。難しすぎるよ。

 

 

7月11日(水)

 明後日はいよいよ会議。

 会議での説明方法は何とか纏まってきたと思う。

 川内さんから指摘のあった身ぶり手ぶりっていうのは、イマイチなんだけど。本番で上がりさえしなければ、何とか出来る筈。

 当日はどんな雰囲気で会議があるのか判らないけど、これだけやったからなんとかなると良いなぁ。

 一段落して日記書いていてカレンダーを見て気が付いたんだけど、昨日は納豆の日だったのね。だからおやつに甘納豆、夕食が納豆ご飯に納豆汁と納豆だらけだったのね……。

 

 

7月12日(木)

 今日は朝からかなり暑かったぁ。皆もぐったりしちゃってあまり食欲もないみたい。

 明日の会議に備えて今日は最後の訓練だったのよね。目線とか表情、姿勢、身ぶり手ぶりも意識しながら説明するのって結構大変。

 色々準備もあるから今日の食事会への参加はどうしようかなって思ったけど、父島で買ってきたレモングラスと島唐辛子でそうめんつゆ作ってみました。

 レモングラスをペーストにして島唐辛子と味を調えるのにコリアンダーを混ぜあわせてみたのよね。後は薄めためんつゆと合わせてお終い。

 簡単に済ませちゃおっと。

 レモングラスをペーストにするのは外側の皮が硬い場合は取り除いて、根元をきり落としてやわらかい白い部分をぶつ切りにしてフードプロセッサーで細かくするのがこつよね。

 そうそう、7月7日が何でポニーテールの日か香取さんに聞いたら、織姫ってポニーテールだったって言われているんだって。……まぁ、確かに女性のポニーテールは日本の古い髪形の呼び名だと総髪(そうがみ)って言うから織姫の髪形であっても不思議じゃないんだけどね。それと、この日は七夕で浴衣の日だからポニーテールが似合うという事で1995年に日本ポニーテール協会って所が言い出したんだって。はぁ……そうですかとしか言いようがなかったわ。

 

 

7月13日(金)

 なんとか無事に名取さんの補佐を果たせたみたい。

 大本営から杉野提督がオブザーバーで参加していたのを見つけた時はすっごい緊張しちゃった……。

 途中から予定通り名取さんに代わって説明していたんだけど資料が見つからなくて、その瞬間、頭が真っ白になっちゃた……。

 他の資料の下にあってすぐに見つかったんだけどね。でも、それが却って良かったみたい。説明中の目線とか表情、姿勢、身ぶり手ぶりも大事だって言われていたけどそこから開き直れて、名取さんと一緒に打ち合わせしたことや私たちの鎮守府の現状と今後の課題もしっかりと話せた。

 名取さんからも褒めてもらえたし、見守っていた杉野提督も喜んでくれてたみたいだし。推薦してくれた杉野提督に恥をかかせなくて良かった。

 そして、何より取り敢えず終わって良かった!

 

 

7月14日(土)

 昨日から緊張の糸が切れてボーッとしてる。やっぱり馴れないことすると疲れるのよね。

 また部屋のことがお留守になってたから、久々に大掃除大会しようかな。と思ったら、明日は用事があるんだった。

 掃除大会は延期だね。

 

 

7月15日(日)

 今日は盆釜。盆釜は、お盆に川原・道端・寺の前などの野外に竈(かまど)を築いて煮炊きし、共同で食事をする行事よね。盆の14日に行われるのが一般的だったはずだけど、15日に行う地域もあるのよね。ここは15日か。浜辺や山から街や鎮守府へ通じる道の草刈りをしたんだけど何でかなって思ったら、昔から故人は山や水辺に居るって言われているの。その彼岸からお還りになる故人が通りやすいように行うってことなんだって。

 そう言えばこの時期はドロップ艦が多くなる時期なんだけど、これって……。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

村雨の日記――07月16日~07月31日――

7月16日(月)

 今日から後の薮入り。

 冬の藪入りの時もそうだったけど、後の薮入りでも街のお寺さんで十王図や地獄変相図が掲げられてたから、遠征から帰ってきたら参拝にお出かけ。戦死された提督方のご冥福もお祈りしに閣魔堂にも参詣しました。帰りの縁日で前みたいに五月雨ちゃんいないか探したけど、今回は会えなかった、残念。

 

 

7月17日(火)

 久しぶりになんにも予定のない1日。

 部屋に帰ってきて後片付けに精を出す。どんなに疲れてても家事だけはやっちゃうのよね、好きだから。

 さ、明日の遠征に備えてさっさと寝よっと。

 

 

7月18日(水)

 遠征から帰ってきたら久しぶりの鎮守府内演習。

 演習中に突然紅白戦をやることになって、途中でちょこっとだけ参加させてもらう。

 たまにはカラダを動かすのもイイよね。提督から貰った新装備で攻撃を回避していたら、相手チームの松輪ちゃんが「ズルーイ!」なんて怒ってたなぁ。松輪ちゃんも本気じゃないとは思うけど、大人げなかったかなぁ? ちょっと反省です。

 

 

7月19日(木)

 そろそろ夏真っ盛り。今日は皆で涼しいものという事で色々作ったのよね。私はドライプルーンの赤ワイン煮とヨーグルトアイス作ってみたんだけど、意外と人気でした。

 バニラアイスクリームにヨーグルトと酸味のあるベリーを加えて冷凍したら、ドライプルーンの赤ワイン煮を作ったんだけど、鍋に材料をすべて入れて中火にかける時が暑いのよ。煮立ったら弱火にしてプルーンがふっくらするまで煮て器に盛り着けしてお終い。

 

 

7月20日(金)

 今日は海の日でお休み。そう言えば、昔は海の記念日って言われていたのよね。今日から8月6日まで夏の土用。土いじりは禁止で、南西方面への出撃も土用殺だからダメだって。

 間日っていつだったかなぁって確認したら7月は22日と23日に27日、8月は3日と4日か。じゃあこの日に出撃……って間日でも土用殺の方角への出撃は駄目だった。

 そして今日は土用丑の日。今日だけじゃなくて8月1日もそうなんだけどね。うの付くものを食べて病気の予防をしないとね。

 土用の丑の日には夏バテ防止や疲労回復の為に薬草を入れた丑湯に入る風習もあるけど、これはどこの鎮守府もやっているのよね。他所の鎮守府だとドクダミや緑茶とかの丑湯もあったけど、ここは桃の葉を煮出した汁を入れた桃湯。

 桃の葉には、お肌のトラブルを抑える消炎効果があるほか、毛穴をキュッとひきしめる収れん作用もあるんだって。この頃海の照り返しとかきつくなっているから肌のお手入れも大変だったのよね。丁度良かった。

 今日は土用の虫干しでもあるのよね。大切なものを風に当てて湿気をとる虫干しなんだけど、ここは湿気も多いから私達も服を虫干ししないとね。艤装も虫干ししちゃおうかな。なんちゃって。

 提督は掛け軸や本、書類も虫干しするって言ってたけど、飛ばされないように気を付けてね。

 

 

7月21日(土)

 今日はゆっくりお風呂に入ってリラックスタイムを楽しんじゃった。昨日の疲れもゆっくりと取らないとね。

 ちょっとぬる目のお風呂に自分で作ったアロマのバスボムを入れてゆっくり浸かりながら文庫本とか雑誌を読むのが趣味な私。

 贅沢だなぁ。建造された頃はカラスの行水で、どっちかっていうとシャワー浴びて済ませていた方だったのにね。ここに来て遂にアロマのバスボムまで作っちゃった。

 おかげでお気に入りの文庫本は湯気でシワシワになっちゃってる。まずそんなことないとは思うけどだらしない娘だと思われると、ちょっと嫌だなぁ。

 

 

7月22日(日)

 突然の発表で混乱しているんだけど、提督が結婚(仮)と養子縁組(仮)を行うことになったみたい。

 相手は予想通り金剛さんと榛名さん。後予想外だったのが鳳翔さん。鳳翔さんもう結婚(仮)しているものだと思ってたけど違ったのね。

 発表直後に思わず飛龍さんの顔見ちゃったんだけど、納得はしているみたい。

 養子縁組の方は満潮ちゃんに島風ちゃん。それに五十鈴さんと名取さん。……う~ん、正直、五十鈴さんと名取さんは意外だったわ。あるとしたら結婚(仮)だと思っていたのに。

 ところで、まだ夏の土用で結婚や結納は避けるべきって言われているんだけど……今日は間日だから大丈夫なのね。

 

 

7月23日(月)

 今日は大暑。最も暑い頃という意味でも実際の暑さのピークはもう少し後なのよね。でも、もうこの暑さって限界に近いよね。

 そんな中、提督から発表があって大規模作戦にここの鎮守府も参加することになったんだって。

 あの異動で夏の大規模作戦には参加無理だって話だったから、良く間に合ったわよね。

 参加すると決まったら私達もフル回転よね。前線も大事だけど後方の守りや物資の補給も大事。先の大戦の二の舞はごめんよ。

 そうならない為にも四水戦の実力見せつけるわよ! 良いわね、皆。

 

 

7月24日(火)

 今日は部屋のお風呂とトイレの掃除、台所の整理整頓をしてから、防音室で思いっきりアコーディオンを弾きまくったの。

 大規模作戦やその前の前線への補給作戦なんかが始まったらこんなにノンビリしてられないだろうから、今のうちにね。

 ……好きなアコーディオンを心行くまで弾ける一日。う~ん、幸せだなぁ……。

 

 

7月25日(水)

 大阪だと天神祭かぁ。大阪の天神祭は東京の神田祭や京都の祇園祭とともに日本三大祭りの一つに数えられているのよね。宵宮が7月24日で本宮が7月25日。

 菅公の御神霊に見て祭りを見て頂いて繁栄を祈願するために氏神様を巡行するんだけど、本宮の日に行われる陸渡御と船渡御が有名なの。私たち艦娘も船渡御に参加して鳳神輿と玉神輿を担ぐのよ。その後の花火も良いのよね。暗くなって来た頃に神様にご奉納する華麗な打上げ花火が上がるんだけど、大川を航行する船渡御列を照らし出すから私達もライトアップされて、那珂さんなんかすっごくご機嫌なのよ。行列は神聖なものだから燥いだりはしないけどね。

 もう一度あの行列に参加してみたいなぁ。来年あたり一寸お願いしてみようかな、なんちゃって。

 

 

7月26日(木)

 大暑も過ぎたからお世話になっていた鎮守府に暑中見舞いを書かないとね。昔はお盆の前に贈り物を持って直接訪問したらしいけど、さすがに直接訪問なんてできないよね。訪問するかわりに挨拶状を出すようになったのが始まりだって聞いたけど、そうなってよかったなぁ。

 今日の食事会は土用だし一品は「う」の付くものにしたかったのよね。で、梅があったからいわしの梅煮を作ってみました。鍋の中にいわしと昆布を並べて火にかけて沸騰したら弱火にして15分位煮たら梅干しとしょうゆを加えて水分がなくなるまで煮上げていくのよね。昔失敗しちゃったんだけど、加熱するときには強すぎる火力は駄目なのよね。いわしの皮がはがれて見栄えが悪くなっちゃったのよ。

 もう一品欲しかったのでヨーグルトチキンカレーも作ってみました。

 比叡さんが作りたがっていたから一緒に作ってみました。比叡さん、他の料理は大丈夫なんだけどカレーは駄目なのよね。

 金剛さんや霧島さんが青くなって止めていたけど、しっかり準備すれば大丈夫よ。味付けは私が担当するけどね。

 まず鍋にバターを入れて中火にかけて玉ねぎを少し色づくまで炒めるのを比叡さんにまかせて、私は出来上がったのに唐辛子とカレー粉、クミンシードを加えて粉っぽさがなくなるまで炒めてトマト缶を加えて汁気が少なくなるまで炒めたのよね。

 下ごしらえをした鶏手羽元に水と鶏がらスープの素を加え、沸騰したらふたをして弱火で15分ほど煮る。あとは塩少々で味を調えてお終い。

 比叡さん、熱心にメモ取っていたけど頑張ってくださいね。

 今日はお隣の父島で貞頼祭りっていう大きなお祭りがあるんだけど、さすがに明日の事もあるし行けないよ……。

 鬼怒さんからもお誘いあったんだけど、事情を説明したら伊8ちゃんと一緒に披露宴からでも出席したいって……。金剛さんや提督に確認したら大丈夫って返事だったから、父島の提督の許可があれば大丈夫って言ったけど来れるのかなぁ?

 

 

7月27日(金)

 今日は結婚式。平日なんだけど、縁起を担ぐ鎮守府だと7月中の結婚式って今日ぐらいしかできないわよね。土用の間は間日以外、結婚式ダメらしいし。

 金剛さん達との結婚式の発表以来、神前式・仏前式・人前式・教会式のどれになるか私たちの間で話題になってたんだけど、人前式になったみたい。

 飛龍さんの時も人前式だったって聞いていたから同じにしたのね。

 参列者の私たちは桜湯を鎮守府の中庭で飲みながら来訪者にも応対していたんだけど、所謂島の名士さんがひっきりなしに来訪。他にも父島の提督や初めて会った硫黄島や母島の提督、青ヶ島や八丈島といった伊豆諸島の諸提督も来訪。予想以上の人数になったのよね。

 式は提督の入場の後で金剛さん・鳳翔さん・榛名さんが揃って入場。村長さんの開式の辞があって、金剛さんは飛龍さんの時と同じ水合わせの儀、榛名さんと鳳翔さんは貝合わせの儀を行ったのよね。

 水合わせの儀は新郎新婦の互いの実家の水を汲んできて一つの杯に注ぎ合わせた水を飲むという古来からある儀式なんだけど、金剛さんの実家の水って何処かな? そんな事考えていたら、ちょっとアレンジしたみたいで金剛さんはアッサムの茶葉を、提督はキーマンの茶葉を混ぜてイングリッシュ・ブレックファスト・ティーを作って振る舞ったのよね。これには参加者皆で吃驚。誰も知らされてなかったみたい。

 その後の貝合わせの儀も、斬新。普通の貝合わせの儀は蛤を使うんだけど、二人の貝は大きなアコヤガイ。二枚貝ならどんな貝でも貝合わせは出来るけど……。あの貝はすごく重そうだったな。貝の装飾は鳳翔さんの貝が自然の風物で、榛名さんの貝が公家の女性を描いたものだったのよね。それと貝を納める貝桶も吉兆の八角形をした黒漆塗で螺鈿細工と蒔絵が施してある二個一対になっていたし。その辺は提督、抜かりないわよね。時々ポンコツになるけど。

 誓いの言葉をお互いに述べて、指輪の交換と誓約書に署名して閉式の辞。その後提督と金剛さん・鳳翔さん・榛名さんが退場して広場でライスシャワーとブーケトス。3つのブーケのうち1つは予想通りの人でもう一つは意外なあの人だったけど、最後の一つは私の所に来ちゃったのよね。思わず受け取っちゃったけど……周りの視線が怖いの。

 受け取ったブーケは花瓶に挿して鎮守府の玄関に飾っておこっと。

 あ、そうそう、引き出物は鎮守府関係者には高速修復材か開発資材が一つづつ。一般の人たちには各務水晶硝子舎の四角籠目に麻の葉紋が彫刻された冷茶碗揃だったみたいね。他に引き菓子が亀鶴梅の三つ盛和菓子、縁起物が3匹の最中のタイ焼きの中に更に小さいタイ焼きが31個入った詰め合わせだったみたい。持って帰るの大変なんじゃないかな……。

 

 

7月28日(土)

 そろそろ本格的な海水浴シーズン。

 この近くは潮の流れとかで遠泳は出来ないけど、ちょっとくらいならお休みの時に泳ぎたいなぁ。新しい水着も新調したいし。出来たら一緒に選んでくれる人も欲しいなぁ……。なんちゃって。

 

 

7月29日(日)

 最近、訓練や遠征にかまけて部屋の掃除とか、何にもしてなかったから埃が少し溜まってきちゃった。

 慌ててモップ掛けやキッチンとトイレの掃除をしました。こういうところは常にピカピカにしておかないとね。

 万が一のことがあって、部屋に入ることになった提督とかの目に、散らかった様子が様子が入っちゃうかもなんて思うと、色々と綺麗にしておかないと気がすまないのよね。特に洗濯ものとかね。

 片づけ終わって、気分爽快。

 

 

7月30日(月)

 今日は明治天皇祭でお休みの日。明治帝が身罷られた日よね。先帝以前三代の例祭という事で宮中でも小祭として斎行されているらしいの。

 世間は御休みなんだけど夏の大規模作戦に向けて、第一艦隊と四水戦の面々で紅白演習を行ってみたの。

 色々とフォーメーションとかで問題が発覚しちゃった。

 う~ん、フォーメーションを一から見直さないとダメかも。扶桑さん達に相談しよっと。

 

 

7月31日(火)

 明日からの前線への物資輸送作戦に備え、英気を養う。

 今日くらいは許してもらえるよね?

 

 




金剛との水合わせの儀で茶葉を混ぜましたが、別々の水で育った新郎新婦が苦難を乗り越えて一つとなり、二人で新たな家庭を築いて行けるようにと言う古来からの伝統を、違う茶葉を混ぜて別の茶にすると言うアレンジで表現しました。紅茶好きの金剛ですし。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

村雨の日記――08月01日~08月15日――

8月1日(水)

 今日は土用の二の丑。ちょっと提督の元気がないので労宮と足三里にお灸をすえてみたのよね。労宮は不眠や動機なんかのストレスのツボ。足三里は胃腸の不調や夏バテ防止のツボ。提督、いつの間にか寝ちゃったけど大規模作戦とかでお疲れなのかしら? お灸で疲れが取れると良いけど。

 今日の夕食は土用の二の丑でうの付く食事。ウナギかなって思ったけど、出てきたのはウミガメ肉。確かに「う」がついているけど……。というか、まだ残ってたのね、あれ。ウミガメ肉と土用卵や近海のお魚で海鮮丼でした。

 

 

8月2日(木)

 青森はねぶた祭なのよね。

 昭和の終わり頃はもっと勇壮だったって聞いているけど、この御時世だから年々ねぶたの大きさは小さくなっているみたい。

 毎年8月2日から6日間開催されるんだけど最後の日の夜には場所が港になってるの。そこで私たち艦娘のねぶたの運行や海上花火大会もあるのよね。

 暫く行ってないなぁ。あそこの多摩さんとか曙ちゃんとかお祭り好きな娘たち、今でも出撃とねぶたに頑張っているのかなぁ。

 あ、そうそう。今日の食事会のおやつは皆で土用を乗り切るために土用餅を作ってみたの。土用餅は、土用に食べるあんころ餅。お餅を小豆あんで包んだシンプルな和菓子よね。お餅には力持ち、小豆には厄払いの意味があって、暑気や厄を払い無病息災をお願いするのよ。やっとお正月のお餅が少なくなって来たわね。

 夕食は冷やしうどんと豚の梅肉冷しゃぶでした。

 

 

8月3日(金)

 今日は夏土用の間日。畑や果樹の手入れは今日と明日にしないと大変。出撃・遠征組以外は総出で草むしりと収穫に大わらわだったわ。

 あ、そう言えば今日から秋田の竿燈まつりか……。お祭りの時に馬刺しとかご馳走になっちゃったけどあそこの秋田杉って居酒屋さん今頃どうして居るのかなぁ。あそこの鎮守府の那智さんや隼鷹さん達の行きつけだったのよね。

 

 

8月4日(土)

 夏土用の間日で、昨日に続いて畑や果樹園とかの手入れ。後は門扉が傷んでいたから、それの修理。特に門は今日中に直さないとね。夏の土用は門に土公神(どくじん)様がいらっしゃると言われているから。

 気にする必要はないなんて言われるけど出撃や遠征先で大破なんてことになったら、ひょっとしてなんて気持ちになっちゃうかもしれないし。少しでも不安な事はしない方が良いよね。

 そんなこんなで明石さんや桃取さんは大忙しだったみたい。

 

 

8月5日(日)

 山形は花笠まつり。東北地方はこの時期お祭りが多いのよね。七夕における睡魔を払うねむり流しやねぶり流しに関連するらしいけどね。山形の鎮守府には前にお世話になったけど、私が行ったことがないのよね、この花笠まつり。いつかは参加してみたいなぁ。

 

 

8月6日(月)

 やっと夏の土用が明けたよ。さぁ、いよいよ本格的な出撃。最前線は呉や横須賀の最精鋭に任せて私たちはしっかりとそれを支えないと。

 一歩でも確実に海域を奪還していくわよ。って、進捗はこの日記には書けないんだけどね、軍機とかに触れることも多いし。

 あ、そうそう。今日初めて教えられたんだけど、提督の誕生日が13日なのよね。知ってると思われていたみたいなんだけど、結構知らなかった娘もいてざわついてた。

 私もそのクチなんだけど、もう少し早く教えてもらいたかったなぁ。大規模出撃と提督の誕生日、ここ数週間忙しそう。

 さっそく今日から那珂さん達と一緒に提督のお祝いの舞台演奏の練習を行う予定。音合わせにはいつも気を使うんだけど、だいぶ慣れてきたかなぁ。

 

 

8月7日(火)

 今日は立秋。今日は街で花火大会があったんだ。

 私もとっておきの浴衣を着て、時雨や白露たちと一緒に夕涼みを兼ねて見にいってきたわ。

 昔居た鎮守府にお世話になってた時に提督に作ってもらった物で、大事にしてるの。

 浴衣を着られるこの季節には必ず1度は袖を通すことにしていて、ちょうどいい機会だから着てみたんだけど、みんなからも好評で、ちょっとうれしかったな。

 花火も盛大に打ち上がって、ものすごくきれいだった。貰った団扇とか仰ぎながら「玉屋~」とか大声で言ってたら、近くで見ていた多摩さん達が振り向いちゃって、多摩さん達も大笑い。日本の夏って感じでよかったな。

 

 

8月8日(水)

 朝から提督が「残暑が厳しいざんしょ」なんて言うオヤジギャグ? を連発。壊れちゃった? って、よく考えたら昨日からもう暦の上では秋。暑中見舞いじゃなくて残暑見舞いになったのよね。

 そんな事はどうでも良いけど、今日は皆で釣りしのぶ作り。竹や針金を芯にして山苔を巻いた上にシノブの根茎を巻き付けて、さまざまな形に仕立てるんだけどね。作っているうちに夕立が失敗しちゃったみたいで私が代わりにある程度まで作ったのよ。

 何で吊りシノブっていうのか聞いたらシノブがもとになっているのね。シノブって山地の樹木や岩肌に着生して育つシダらしいんだけど、強健で乾燥に強くて水がなくても「耐え忍ぶ」ことからこの名がついたんだって。それでシノブを吊るすことから「吊りシノブ」って言っていたらしいし戦前もそうだったはずなんだけどいつの間にか縁起がいいからって「釣りしのぶ」になったんだって。

 作った後で、提督から吊るすときは直射日光を避け、乾いたら毎日バケツにどっぷり浸けることとか、秋になって葉が枯れてしまったら、2~3日陰干ししてから新聞紙に包み、ビニール袋に密封保存することとか色々注意がありました。色々大変そうだけど、手入れを怠らなければ3年は楽しめるそうだし、ちょっとお得かも。

 それにしても暦では秋なんだけど、気温は夜になっても28度。寝付けなくて散歩していたら神通さんに誘われて、一緒に桟橋でワイン飲んじゃった。 

 

 

8月9日(木)

 この頃昔居た鎮守府の事を思い出すのよね、お祭りがあったところが多いけど。徳島にいた頃はこの時期だとよさこい祭りに参加させられていたな。出撃や遠征に出られなくて、いつかは。とか思っちゃった時もあったっけ。

 秋雲ちゃんが珍しく鎮守府にいるからどうしたのか聞いたら今年はコミケ落選しちゃったから他の鎮守府の秋雲ちゃんに委託したんだって。だからここ最近内地への発送物が多かったのね。私も前に連れられて行ってみたけど、地面が見えています。もっと詰めて下さい! とか言われてびっくりしたなぁ。

 皆で食事会の日なんだけど、今日は暑気払いも兼ねて甘酒とゴーヤとバナナのジュースを出してみました。甘酒には変な顔されちゃったけど、ゴーヤジュースは評判良かったから良かったわ。

 

 

8月10日(金)

 あまりの暑さで今日も暑気払いを計画したんだけど、今日のお風呂が薄荷湯の風呂。

 薄荷には血行促進や保温などの体を温める効果があるんだけど、汗が直ぐに引くから夏の風呂にはピッタリなのよね。

 提督は暑がりで執務室の中は冷房がガンガン効いていて寒かったりするんだけど、これなら体を温めながらもサッパリとした湯上がりだから良いわよね。

 和薄荷は裏の薬草園にたくさん植えられているし、何回か楽しめそう。

 暑気払いは麦汁や葡萄汁でいろいろ盛り上がりました。

 

 

8月11日(土)

 今日も近所の神社で夏祭があったから、浴衣を着て鎮守府の白露型みんなで遊びに行ってきたの。涼風もつい最近来たから交流を深めないとね。

 白露なんか「浴衣もってない!」って言ってたのに、どうやら買って貰ったのか作ったのか得意げに着て来ていて、みんなに冷やかされてた。

 でも、ちょっとお姉さん気分になって歩けたから、いい感じ。定番の金魚すくいから射的とか、いろいろ遊んじゃったなぁ。

 春雨とか海風とか早く来ないかしら。

 

 

8月12日(日)

 今日は徳島ではとても大事な日。お隣の鳴門市と併せて大規模な催し物があるんだ。私も四国にいた頃は漣ちゃん達と一緒によく参加していたけどね。

 そう、もちろん阿波おどりの日よ。今日から3日間開催かぁ。さすがにここからは参加できないわね。

 華やかなポスターが多いけど、戦前からポスターとかあったのよね。あの頃は、阿波盆をどりって書いていたけど。

 明日は提督の誕生日。色々と準備もしたし早めに休んじゃおっと。

 

 

8月13日(月)

 今日は提督の誕生日。朝からお祝いムード一色。

 金剛さんはシムネルを作っていたり、飛龍さんも提督の趣味に合わせたプレゼントを贈ったり。

 私は手作りのナンバンアカアズキのブレスレッドをプレゼント。ナンバンアカアズキは父島で初めて見て綺麗な実って思ってたんだけど、此処の街外れにもあったの。早速実を回収してブレスレッドを作って見たんだ。作り方は父島でタコノハ細工のブレスレッドを作った時に教えてもらってたし。

 もう一つの候補は北欧の腕時計で、シンプルなデザインと洗練された機能性で人気だからこっちにしようかとも思ったんだけど、なんとなく手作りの物を渡そうかなって思っちゃった。

 あとは、那珂さん達と一緒にアコーディオンを舞台で弾いたのよね。飛び入り参加の娘たちも多くて提督も大喜び。後は、鬼怒さんが父島への輸送中に立ち寄ってお祝いしていったなぁ。

 

 

8月14日(火)

 一昨日料理するときに気が付いたんだけど包丁の刃が欠けてたのよね。

 砥石で研いだけどもうダメそうなので、桃取さんに包丁作ってもらえないか訊きに行ったんだけどやっぱりダメでした。

 訊いたら包丁とかの金物は街の金物屋さんが良いもの扱ってるから、間宮さん達はそこから調達しているみたい。

 そう言えばここに来た頃に金物屋さんがたくさんあるなって思ってたんだけど、ちょっと見に行ってみよっと。

 

 

8月15日(水)

 昨日は金物屋さんが何件もあったから包丁見つけるのに迷っちゃった。

 でも青鋼本焼の包丁セット見つけられてよかったなぁ。これからはちょくちょく覗いてみよっと。

 

 




 この世界、終戦記念日は8月15日ではありません。9月2日に講和文書調印が行われました。ソ連の南樺太侵攻は守備隊の全滅と引き換えに民間人と軍属の撤退が辛うじて成功しました。


 村雨が提督に贈ったナンバンアカアズキはトウアズキではなく海紅豆の方です。相思樹とも言われ、詩仏王維が若き日に「紅豆南国に生じ、春来たりなば幾枝を発す、君に願う多く採りて襭せよと、此物最も相思なり」と告白したことから、これを贈る行為は独身の人から意中の人へ「貴方を想う」という、異性間で贈ると色々問題を起こしかねない意味もあります。
 これを贈った村雨はこの意味を知りません。ちなみに提督は意味を知っていますし飛龍達もブレスレッドを複雑な目で見ている提督から聞かされて知りました。但し、村雨が意味を知らないだろうと言うことも察していて苦笑いしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

村雨の日記――08月16日~08月31日――

ちょっと苦戦しました……。


8月16日(木)

 久しぶりに香取さんと組んで遠洋練習航海に行くことになりそう。提督から指示があったんだけど今は大規模作戦中だからいつになるかはわからないけどね。今回見つかった追風ちゃんや冬月ちゃんの他に仁淀さんや香椎さん、橿原さん達とも部隊を組み合わせるみたいね。香取さんがいつになく張り切っているのが可愛い。

 今日は皆で精進料理を作ってみました。沢山採れるトマトを丸ごと素揚げして生姜とエノキダケの餡をかけてみたり、トマトのスープを作ってみたり、寒天寄せにしてみたりリゾット風雑炊を作ってみたり。追風ちゃん達を交えて皆でワイワイやると色々作れるもんなんだよね。

 

 

8月17日(金)

 遠洋練習航海がはじまっちゃうと部屋の事が疎かになっちゃうだろうから、今のうちに掃除をやっておく。

 もう部屋中ピッカピカにしちゃった。なんだか言い訳してるみたいで、ちょっとイヤミかなぁとも思ったんだけど、提督はそんな風にはとらないもんね。気分転換に部屋の掃除をヘトヘトになるまでやっちゃった。こういうときは体を動かすのが一番! しかも何にも考えないですむようなことをやるのが良いんだよね。

 

 

8月18日(土)

 前に提督が疲れているんじゃないかなとか考えてたけど、一人で考え込む前にまずはやれることから着実にやらなくちゃね。下手に気合い入れても空回りして迷惑になるだけ。今までみたいに自然体で提督の助けになれば良いんだから。

 

 

8月19日(日)

 南方への遠征から戻ったら那珂さんや神通さん達と一緒にレコード店巡り。神通さんって実はかなりの通で、今まで行ったことないようなお店にも連れていってもらったんだけど、そこは中古のCD専門で特にR&Bばっかり置いてあったの。

 狭いお店にいっぱいCDが置いてあって、ちょっとビックリ。帰りにお茶して「これからもちょくちょく一緒にやろうね」って那珂さんに言われ、すごく嬉しかった。

 ただの助っ人じゃなくって、メンバーの一員って思ってくれてたんだ。もちろんOKの三連呼! ちょっと癖になっているからね。

 

 

8月20日(月)

 本屋さんでR&Bの雑誌を買って帰る。

 いろんなバンドのインタビューとか記事が載ってたんだけど、前後関係っていうか流れを知らないから、よくわからないのよね。

 でもアルバム評とか読むとおもしろそうなバンドがあったり、インタビューで思想的なことを言うバンドがあったり、なかなか奥が深そう。

 私はアコーディオンの演奏ってクラシック中心だったんだけどクラシックとはまた違う面白さがあって、当分嵌りそうな気もするのよね。

 

 

8月21日(火)

 今日は久しぶりの出撃。

 大規模作戦中だと私達駆逐艦は遠征なんかの後方支援が多いんだけど、海域によっては出撃することもあるのよね。今回の出撃は潜水艦が多い海域みたいで五十鈴さんから頼まれちゃった。練度99になっている夕立や時雨とかは他の海域に行っちゃっているから残っている駆逐艦娘で練度が高いのは練度96の私位しかいないのよね。海防艦の娘達はまだ60台だからフォローしないと。戻ってきたら遠征にもいかないとね。

 

 

8月22日(水)

 昨日は久しぶりの出撃だったから、最初はちょっと仕留め切れていなかったのよね。今日も引き続き出撃で五十鈴さんの補佐。潜水艦を沈めているうちになんだか楽しくなっちゃって後半はもうノリノリ。だけど、何処かに慢心があったみたいで五十鈴さんから厳しく注意されちゃった。何度か危なかったらしいんだけど気が付かなかった。前みたいに轟沈寸前の大破なんてしちゃったら、とんでもないことになっちゃう。ちょっと最近浮かれ気味になっちゃったのかな、反省しないとね。

 

 

8月23日(木)

 今日は処暑。暦の上では暑さが和らぐらしいんだけどね。実際は……。そうそう、京都では地蔵盆なのよね。関東だとあまりないんだけど、近畿地方や北陸の鎮守府では行ってたなぁ。多分北陸のは戦国時代辺りの小京都の影響だと思うけどね。8月の23日と24日が地蔵菩薩の縁日だから町内のお地蔵様をお祀りして子どもたちの健やかな成長を願う催しなのよね。

 京都の鎮守府だと街の町内毎に地蔵尊の前に屋台を組んで花や餅とかお供えして、子ども達がゲームをしたりお菓子を貰っていたのよね。海防艦の娘や六駆や七駆の娘達も一緒に楽しんでいたっけ。

 今日の食事会は気温が32度越えだったから、素麺とかき氷だったのよね。私達が艦だった頃のかき氷といえば、削った氷に砂糖をふりかけた「雪」か、砂糖蜜をかけた「みぞれ」、小豆餡をのせた「金時」だったんだけど、今じゃかき氷専用のシロップがあるのよね。ほんと便利な世の中になったなぁ。おまけに全国でいろいろと味があるし。かき氷に赤福の餡と餅を入れて、抹茶仕立てのシロップをかけた赤福氷とか小豆や金時豆を甘く煮て冷やした上にかき氷をかける沖縄のぜんざいとか。そうそう熊本県の蜂楽饅頭って所から出ているコバルトアイスは衝撃だったなぁ。あの色は凄かった。あと個人的に気になっているのが酢だまり氷っていう山形に有るかき氷。私食べたことないから気になっちゃうのよね。……山形に異動した神威さんに聞いてみようかな。

 

 

8月24日(金)

 久しぶりになんにも予定のない1日。

 遠征から帰ってきて後片付けに精を出したのよね。どんなに疲れてても家事だけは好きだからやっちゃうんだ。

 さ、明日に備えてさっさと寝よっと。

 

 

8月25日(土)

 気分転換をしたくて精油を売ってる雑貨屋さんへ買い物にいってきた。この頃寝付きが悪いって話を陽炎ちゃん達としていたら、通りがかった熊野さんが「精油買いに行きましょう!」って誘い出してくれたから。そういうときは精油をブレンドするのが良いんだって。

 この日記を書き終わったら、さっそく試してみよう。前に提督に聞いたらラベンダーとオレンジスイートの香りが良いって聞いたから丁度いいかも。

 

 

8月26日(日)

 今日はレインボーブリッジの日なんだって。深海棲艦が出現する直前にできた橋よね。あの近くは要塞になっているけど橋ができた頃は何もなくてタヌキやキツネが居たんだって提督のお話。ウィンドサーフィンとかも盛んだったって言ってたけど、ほんとかな? 想像もつかないわね。平和だったら遊園地とかできていたのかもね。海が見える浜辺って風景よさそうだし。

 

 

8月27日(月)

 取り敢えず今回の大規模作戦はある程度の目途がついたみたいで鎮守府も通常体勢に戻るんだって。

 そうなると今回見つかった追風ちゃんや冬月ちゃん達の錬成がいよいよ始まるのよね。まずは遠洋練習航海からか……。さっさと荷物纏めておかないとね。

 

 

8月28日(火)

 大ニュース! 春風と海風、江風が見つかったって提督からのお知らせ。一緒にいた白露や時雨達も大喜び。もうすぐ来るらしいんだけど見つけてくれた飛龍さん達には足向けて寝られないよね。提督から白露と時雨と私で居室を整えるように言われたからこれから準備しないと。春雨の部屋には何飾ろうかなぁ。街の花屋さんと雑貨屋さんに遠征しなくちゃ。

 

 

8月29日(水)

 明日というか今日の深夜というか微妙な時間から遠洋練習航海に出発予定。今回は香取さんを旗艦にして私と追風ちゃんに冬月ちゃん、香椎さん、仁淀さんで出発。取り敢えず南硫黄島付近まで遠征するんだって。帰りに父島のイルカに逢えると良いな。明日の夜遅くには戻れるはずなんだけど、台風が近づいているのがちょっと不安よね。

 

 

8月30日(木)

 何とか無事に戻れた……。沖縄の台風の影響で波が10メートル。10メートル上から下に一気に落ちるって、中々味わえないわよね。和歌山で味わったバンジー以来の怖さだったよ。冬月ちゃんと追風ちゃんがすっかり参っちゃったみたい。香椎さん達も大丈夫なのかな。台風は九州に上陸してから日本海に抜けるみたいでこっちには来ないみたいだけど、向こうは大変だなぁ。そう言えば今日は食事会だったのよね。何食べたんだろ? 後で夕立に聞いてみよっと。

 

 

8月31日(金)

 明日から9月。内示の季節よね。う~ん、この内示前日ってホントに落ち着かないのよね。せっかく春雨に会えたんだけど、あまり話せてないし。ここ最近良くも悪しくも大きな事件はないし、まだ1年経ってないから私の異動はない筈なんだけどね。飛龍さん達の様子を見ると提督の異動もなさそうだし。荷造りはいいかなぁ。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

村雨の日記――09月01日~09月15日――

そろそろネタ切れ……。
後半はきつい。


9月1日(土)

 今日から9月。別名は長月とか菊月とか言われているわね。そう言えば、時々手紙が提督宛に来るけどあの娘達も竹島の鎮守府で頑張っているらしいし、私も頑張らないと。

 そして今日は防災の日。1923年に起きたあの大震災の惨事を教訓として、防災の意識を高める為に設けられたのよね。そして何の因果か立春から数えて210日目の二百十日でもあるのよね。台風が相次いで襲来し農作物が被害を受けてしまうことがよくある荒れ日。つい最近私も痛い目見たし。江戸時代に伊勢の船乗りたちが長年の経験によって凶日としたって提督から教えられたけど、先人の経験ってバカにできないのよ。

 風雨の被害から守るという事で街の神社でも風鎮めの儀式が行われていて、非番の艦娘全員で参加してきました。鎮守府でも風宮や風日祈宮の剣祓を頂いてお祀りしているから此方にもお参り。ここの鎮守府は天照大御神と豊受大神の他に別宮のお札もお祀りしているから神棚も大きいのよね。七社造で天津神と国津神も分けて、大国主命や建御名方神、八坂刀売神まで祀っているし。

 今日の夕食は風鎮めの祀りでもお供えしていたキノコご飯と焼き味噌。デザートはキウイと小豆の日だからってキウイと小豆にラムレーズンを加えたゼリー。焼き味噌を供えるのは、焼き味噌を食べると風神はより一層の力がついて、あっという間に吹き抜けてしまうと信じられているからなんだって。それを聞いてた島風ちゃんがうずうずしてたなぁ。でもきのこはなんでなのかなって思ったら特に意味はなかったみたい。

 あ、そうそう皆の様子を見ていると今回は鎮守府からの異動はなさそう。

 

 

9月2日(日)

 今日は終戦記念日。日露戦役で獲得した南樺太とか、第一次大戦で得た南洋諸島を失ったのよね。そして200万を超える戦死者。……避けられない道ではあったけど、私達がもう少し頑張っていれば、なんて思っちゃうのよね。お昼から今上陛下の黙祷に合わせて鎮守府にいる皆も黙祷を捧げました。

 いよいよ大規模作戦も佳境に入っているらしいんだけど、ここの鎮守府はもう半分以上通常体制になっているのよね。提督、そんなことしちゃって大丈夫なのかしら? 私は春雨と一緒に遠征に行けて嬉しいけどね。

 

 

9月3日(月)

 6月過ぎてから色々と思う処があって日記はお父さんから提督に戻して書いているのよね。

 別に提督の事をお父さんって呼べなくなった訳じゃないし、むしろお父さんって呼ぶのが当たり前ですっかりなじんで、この頃は時々街でやっちゃったりするのよね。他にもやっちゃう娘がいて街の人は皆知っているから冷やかされるだけなんだけど、外ではやるなよって注意されたりもするんだ。

 私が提督からお父さんって書き始めたのをまた提督って書き直したのは、艦隊旗艦の補佐になったからなのよね。何時までも鎮守府の雰囲気に甘えてられないしね。ちょっと心構えを新たにしようって。って誰に言い訳しているんだろ。

 

 

9月4日(火)

 言わんこっちゃない。通常体制に戻しちゃったから提督に大本営から指導が入っちゃった。同規模の鎮守府に求められている倍以上の戦果は挙げているんだけど、他の鎮守府に示しがつかないから形だけでも最後まで任を果たせだって。取り敢えず今回だけはお咎めないらしいけど、流石にまずいわよね。

 もう一度体制を整えて解放した海域の維持に向かうんだって。私も支援艦隊に配属されたから頑張らないとね。

 

 

9月5日(水)

 飛龍さん達が向かった海域で潜水艦の大部隊が発見されたみたい。五十鈴さんと4月に建造されてから急速に練度を上げた(上げさせられたのかな?)阿武隈さんが旗艦で2個艦隊を編成して海域に向かうのよね。私も支援艦隊から阿武隈さんの指揮下になったんだけど、阿武隈さんと組むのって初めてなのよね。大丈夫かなぁ……。

 

 

9月6日(木)

 夕方に潜水艦狩りを終えて戻ってきました。阿武隈さんとは初めてだったからちょっと不安だったけど杞憂でした。流石一水戦旗艦、加賀さんじゃないけど鎧袖一触。10隻以上沈めたんじゃないかな。あまり話したことなかったから帰路は色々と話し込んじゃった。もちろん警戒はしていたけどね。阿武隈さんもR&Bが好きだったのね、意外だったわ。那珂さんに話したら喜んでくれそう。早く帰ってこないかな、那珂さん達。

 今日の食事会は名取さんが黒豚の日だからってキウイと豚シャブのキウイソース和えにチャレンジ。キウイフルーツと茹でた豚肉にパプリカを入れて混ぜたものを器に盛り、キウイソースを回しかけて完成。さっぱりして最高! 

 

 

9月7日(金)

 一大事! 飛龍さんと金剛さんに那珂さんが大破。神通さんが中破で満潮ちゃんと夕立に守られながら帰還。どうしちゃったの? あの人達が不覚とるなんて。

 

 

9月8日(土)

 今日は白露。私達にとってとっても馴染みがある日よね。朝から白露が大はしゃぎで……。でも無理して燥いでいるのが見え見えよ。

 それに鎮守府が全体的に暗くなっちゃっている。ムードメーカーが全員療養中だもんね……。

 提督から雰囲気を変えるようお願いされたけど、断っちゃった。私もアコーディオン弾く気分じゃないよ……。

 

 

9月9日(日)

 昼頃提督が大広間に皆を集めて報告。大破した皆も意識を回復して自室で安静中だって。無理は出来ないらしいけど、まずは一安心ね。その知らせの後は鎮守府の雰囲気が明るくなって、やっぱりあの人達の影響ってすごいんだなぁ。

 そして今日は重陽の節句。何で重陽っていうのか気になって調べたら奇数を陽の数として陽の極である9が重なるからなんだって。昔は陽の気が強すぎるため不吉とされ、それを払う行事がいつの間にか御目出度い日になっちゃったのね。

 旧暦の9月9日って10月頃だから菊が綺麗な時期よね。それで菊の香りを移した菊酒を飲んだりして邪気を払い長命を願うという風習があったのね。北九州にいた頃は、太宰府天満宮の秋思祭に参加していたけどこれも観菊の宴が由来だったわよね。そう考えると大事な行事の筈なんだけどね。なんで廃れちゃったんだろ?

 今日のお昼は栗おこわ。重陽の節句は栗の節句とも言われているからね。夕食は、菊酒に菊の酢の物・お浸し・辛子和え・おすましと菊ご飯。何故か茄子もあったんだけど、あれは何でだろう。7月に建造された電ちゃんがすっごい顔してたんだけど、嫌いなのかな?

 そして、お風呂が竜脳菊を浮かべた菊湯。仄かな菊の香りですっかりリラックスしちゃって思わず声が出ちゃった。

 

 

9月10日(月)

 今日は八朔。田の実の節句ともいうのよね。「たのみ」を「頼み」って読み替えて日頃頼み合っている人に、その恩を感謝する意味で贈り物をするようになったんだって。

 果物のハッサクは八朔の頃から食べられるようになるから八朔ってついたんだって提督のお話。初めて知ったわね。

 あ、そうそう。昨日部屋に戻って日記を書いて寝るときに気が付いたんだけどまた枕が変わっていたのよね。替えたのは妖精さんだけど提督の指示のはず。干した菊の花が詰まった枕だったんだけど、菊枕って言うんだって。重陽の日に摘んだ花を陰干しにしてよく乾かし枕の中味にするらしいのよね。お風呂上がりの温かさと夜の涼しさで気持ちが良かったんだけど、そこに仄かに香る菊でぐっすり寝ちゃった。朝起きてからほんと調子良くって今日は遠征や出撃も前より成果が上がったみたい。 

 

 

9月11日(火)

 今日は二百二十日。立春から数えて220日目。この日も厄日と考えられているのよね。

 あ、9日にナスが出た理由が分からなくて提督に教えてもらったんだけど9月の9日と19日、29日の3回の9の日は、三九日(みくんち)って呼ばれているんだって。9のつく日に茄子を食べると中風にならないって言い伝えられていて、なす料理を食べる習慣があるんだって。

 艦娘には中風なんてないのにね。

 前々から気になってたんだけど、ここの鎮守府って結構こういった行事に合わせて色んな事やるのよね。気になったから聞いてみたんだけど提督の話では、艦娘を引退してから次の世代に命を繋ぐときにこういった伝統も引き継いで欲しい。日本各地の風土や文化にも興味を持って欲しいし、行事には色々な由来があって、歴史って一握りの人の物じゃなくって一人一人の生きた証が撚り合わさったものだってことを分かって欲しいし私達もその一部だって事も覚えていて欲しいからだって。

 う~ん引退かぁ。引退した後の事なんて考えたこともなかったなぁ。

 

 

9月12日(水)

 今日は宇宙の日。今じゃとても考えられなくなっちゃったけど、深海棲艦が出現する前の1992年って国際宇宙年って呼ばれていたんだって。スペースシャトルっていう宇宙船に日本人が搭乗して初めて飛び立った日が9月12日だったからそうなったらしいんだけど、決まってすぐに深海棲艦が出てきて宇宙開発どころじゃなくなっちゃったんだって提督がしんみりしていたの。そっか、提督は1970年代生まれだから深海棲艦が居なかった時代も知っているのよね。今度色々聞いてみようかな。

 

 

9月13日(木)

 乃木大将の日か。乃木神社が創建された日よね。乃木大将は毀誉褒貶相半ばする方だけど立派な志を持った軍人だったのは間違いないと思う。203高地での指揮は色々言われてはいるけど、その功績は実に素晴らしいものなのは否定できないわよね。

 今日の食事会はナスとピーマンの味噌炒め煮。誰よこれ作ったの。駆逐艦で眉をしかめて食べていた娘が何人もいたんだけど……。

 

 

9月14日(金)

 今日はメンズバレンタインデーなんだって。どんなイベントか聞いたことなかったから香取さんに尋ねたんだけど、困った顔されちゃった。飛龍さんに聞いたら「男性が女性に愛を告白する日があってもいいじゃないか」って日本ボディファッション協会って所が決めたらしいんだ。それでちょっと調べてみたら男性が女性に下着をプレゼントして愛の告白をする日らしいんだけどそれって絶対通報ものだよね。……まさか提督はそんなことしないわよね? いくら提督でも村雨の正確なサイズ知られているなんて怖いんですけどー。

 

 

9月15日(土)

 大阪では岸和田だんじり祭。一度見に行ったけど、すごい迫力だったなぁ。

 五穀豊穣を祈願し、行われた稲荷祭がその始まりだってあそこの鎮守府の黒潮ちゃんが言っていたっけ。「やりまわし」が大迫力だったし、彫物もきれいだったなぁ。今の御時世、珍しく観光客が大勢いたし。もう一度見に行けるかなぁ。

 昨日のメンズバレンタインデーの話を提督に冗談交じりにしたら、提督カンカンに怒っちゃった。やっぱり変態さんじゃなかった。安心安心。

 さて、午後から香取さんと一緒に遠洋練習航海だ。頑張ろっと。

 

 




9月初頭で別宮(わけみや)の話題出しましたが、外宮内宮と14か所の別宮をお参りさせて頂いたことがあります。また行こうかなぁ……。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

村雨の日記――09月16日~09月30日――

初期の頃と書き方と内容が大分違ってきてしまいましたが、最後まで書ききるぞっと。


9月16日(日)

 昨日は敬老の日だったのよね。うちの鎮守府、悪乗りする()がいるから金剛さん大激怒。巻き添えになった神風ちゃん達も大激怒でした。

 提督が出かけたのと同時に香取さんと遠征に出かけて戻ってきたら、未だ金剛さんがご機嫌斜め。

 昨日の午後から出かけていて今日の夜に戻ってきた提督がその話を聞きつけて、関係者全員呼び出し。悪乗りした娘は暫くの間、休日なしの資源獲得任務従事だって。当然と言えば当然なんだけどさすがにちょっと厳しいかもね。

 

 

9月17日(月)

 久しぶりにクラシックの曲を弾きまくった。R&Bとかも昔よりは聴くようになったし、好きなバンドや曲もできてきたんだけど、やっぱり私はクラシックの方が性にあってるのかも……っていうか、ついつい炎と森のカーニバルとかサーカスのアコーディオン弾きとかアコーディオンの曲ばかり好んで聴いてしまうのよね。

 うん。やっぱりアコーディオンを弾いてると落ち着けるな。欲を言えば前に行った富良野のラベンダー畑みたいな広々とした草原みたいなところで風に吹かれながら思いっきり弾きたいな。

 

 

9月18日(火)

 大規模作戦も終わって本格的な訓練も開始。海域の哨戒や通常作戦も行っていかないといけないから皆で手分けしていかないとね。私は邀撃任務で普段は遠征と演習が主になるみたいなんだけど、夕立や時雨達は暫く中部海域へ出撃みたい。武運を祈っているからね。

 夕方、提督からお知らせがあって榛名さん、扶桑さん、山城さん、羽黒さん、島風ちゃん、私の6名で南大東島鎮守府の長門さん陸奥さん日向さん達と演習をするらしいの。それって4月に異動になった長門さん達? って尋ねたらそうだって。後の3人はこれから連絡があるそうだけどここにいた娘達だって。もちろんその場でOKしちゃった。また忙しくなるけど、やっぱりあの人達とは会いたいよね。バランス考えてスケジュールをちゃんと立てないとバタバタになっちゃうけどね。

 

 

9月19日(水)

 今日は久しぶりに父島鎮守府での演習。最近演習に参加してなかったから勘を取り戻すまではできるかぎり訓練しなくっちゃね。演習が終わった後皆でお茶して帰ったんだけど、色々な話で盛り上がってストレス発散しちゃった。うちは余り不平を聞かないけど何処も大変なんだなぁ。

 それとボーッとしてたら、うつらうつら寝ちゃったよ。恰好悪いったらありゃしない。夜はダラダラ起きてないで、さっさと寝るようにしなくちゃね。

 

 

9月20日(木)

 今日から彼岸の入りだから、食事会は当然彼岸団子とおはぎ。彼岸団子は衣笠さんが、おはぎは長門さんが作ってくれました。衣笠さんの彼岸団子は上新粉を使った生地で粒餡を包んできなこをまぶしたもので、長門さんのおはぎは道明寺粉を使った生地を粒餡で包んだもの。おはぎと牡丹餅って同じはずなんだけど微妙に味が違うのよね。春の牡丹餅も長門さんが作ってくれたけど、あの時の長門さんと今の長門さん、同じ顔立ちなのに違う長門さんなのが意識されちゃうな……。

 そうそう、今日は戦前に帝都を飛行機が一周した航空の日でもあるのよね。毎月20日は私にとって大事な日。そう、ワインの日。仏語のワインがvinで数字の20がvingt。どちらもヴァンで発音が似ているから1994年の2月に日本ソムリエ協会が制定したんだって。ワイン大好きな村雨としては、いい仕事したわよね、ソムリエ協会さんって言っちゃうかな。そんな話をしていたら、この日にワインをいつも飲んでいるのがバレちゃった。

 

 

9月21日(金)

 今日は春雨の誕生日なんだけど、今日から香取さんの指揮下で今回の大規模作戦で見つけた娘と遠洋練習航海が始まるのよね。春雨の誕生日のお祝いは改めてだね。今回は香取さんと私と追風ちゃんと冬月ちゃんの他には海風と春雨が一緒。二人とも、白露型の名を辱めないようにビシビシと行くからね。そして時雨や夕立も出発。逢えるのは一ヶ月後か。……気をつけてね、ホントに。

 特に夕立、お姉ちゃんはあなたが一番心配です。どんな状況になっても「死ぬ直前まで生きて、生きて、闘いぬき、そして死ぬ。これが軍人の義務というものだ」って言ってた貴女の吉川艦長の教えをしっかりと守って少しでも生き足掻いてよね……。

 

 

9月22日(土)

 練習航海から戻ったら扶桑さん指揮下で三宅島鎮守府との合同演習。秋雲ちゃんや満潮ちゃんと一緒の部隊になるのも久しぶりだったなぁ。結果は2勝1敗でした。フォーメーションに慣れてなかったから足を引っ張っちゃったかも。もう少し演習参加の機会を増やしてもらえるかお願いしようかな? 

 なんて考えて部屋に帰って掃除してから寝ちゃう。昼寝っていうか夜寝っていうか。さっき起きたとこなんだよね、実は。それでもまだ眠たいや……。いくら寝ても足りないって感じ。寝る子は育つってところかな。さっさとお風呂に入って寝直ししよっと。

 

 

9月23日(日)

 今日は秋分の日。でも私たち艦娘にとっては秋季皇霊祭って言った方が分かりやすいのよね。街の神社でも朝方に秋季皇霊祭遥拝式があったから参加してきたの。ちなみに春分の日は春季皇霊祭。珍しく提督が知らなかったようだから香取さんと一緒に戦前の祝日についてお勉強。

 そして今日は中日だからね、午後遠征から帰ってきたら夕方に鎮守府にいた提督や娘達で夕日を拝んだんだ。秋分の日って真東から太陽が出て真西に沈むから、今日夕陽を拝むのは西方にある浄土に向かって拝むことになるからね。だから今日夕陽を拝むと特に功徳があるんだよね。私も白露型の皆の武運と無事を祈りました。

 

 

9月24日(月)

 今日は十五夜。遠征から帰って来たのがちょうど夕方。十五夜はじっくりとお月見を楽しむのが基本よね。月を眺める舞台となる月見台(つきみだい)を用意して、飾りつけもすすきや秋の七草と月見団子15個と里芋を準備。元々十五夜は月読命にその年の収穫の感謝を捧げるために始まったらしいんだけど、そこから稲穂に似た薄を供えるようになったそう。月見団子も昔は12個で閏年は13個三方に供えたらしいんだけど、いつの間にか十五夜だから15個お供えするってなったみたい。

 お芋が美味しい季節だから芋名月とも呼ばれているんだ。みんなの部屋のウッドデッキにも月見台が置かれてお月見。私の部屋は北向きだからちょっと見難いんだけど月は南西だから西側で見られるの。三方(さんぽう)に月見団子やこの時期採れる里芋や果物などのお供え物を飾って月を楽しみました。そして昔からお月見と言えばお月見どろぼうよね。村雨の所にも海防艦や幼い駆逐艦の娘がやってきたわ。元々は十五夜の日だけは子供たちが他人の畑の芋を片足だけ踏み込みそこから採れる範囲だけ盗んでも良いとされていたらしいのよね。昔の人々は、子供は月からの使者であると考えていたから、その子供が食べ物を盗むことは神様が取られていったんだという考えになってたんだって、私が艦だった昔の記憶で覚えているのね。

 これからも当たり前の風習として続けて欲しいけど、欲張っちゃ駄目よね。当然子供を出汁にして大人が泥棒するなんて論外だけど。

 あ、そうそう。十五夜のお祭りしたから十三夜のお祭りもしないとね。

 

 

9月25日(火)

 演習まで10日を切った。島風ちゃんとの息はあってきたから、羽黒さんとの攻撃とかのフォーメーションをチェックしていかなきゃ。せめて一発位は当てたいからね。

 演習後に出た遠征先でうっかりウトウトしちゃって、名取さんに怒られちゃった。トホホ。「無理しちゃダメだよ」って言われたんだけど、長門さん達との演習さえ終わっちゃえば大丈夫だから。そんなに心配してくれなくってもいいですよ、ホントに。

 

 

9月26日(水)

 今日で彼岸明け。そして今日は統計上、台風襲来の回数が多い日なんだって。

 ボーキサイト輸送任務と長時間対潜警戒に行ってきたけど波はそんなに荒くなかったわね。

 毎月26日ってお風呂の日だったのよね。だから今日は菊湯なのか。

 今まで特に意識したことなかったけど、そう言えば先月も26日は薄荷湯でした。

 

 

9月27日(木)

 今日は食事会。陽炎ちゃんの誕生日でもあるから皆んなでケーキ作り。秋雲ちゃんがチョコレートで似顔絵を描いてたんだけど、そっくり。食べるのが惜しくなっちゃった。それにしても春雨の誕生会いつしようかしら。夕立達が戻ってからにしたいけど、そうするとちょっと遅くなっちゃうかも。

 食事会もあったけど今日は遠征→演習に向けての紅白戦→遠征と、おもいっきりハードな1日でした。でも気分がのってたから大丈夫……と言いたいところなんだけどね。

 最近、日記を書くのも面倒なくらい眠くなっちゃうなぁ、夜になると。

 しばらく日記書くのお休みしちゃおうかしら……なんてね。

 

 

9月28日(金)

 こまかい部分のチェックもかねて今日も紅白戦形式で演習。みんなちょっと詰めが甘い。私が解るんだから見ていた榛名さんや扶桑さん、山城さんも分かってるんだと思う。私も含めてだけど、このレベルじゃ厳しいかもね。でも、勝ち負けなんかより昔巣立った先達に今の姿を見せることが大事だから。

 

 

9月29日(土)

 演習用の紅白戦が早く終わったので余裕で遠征に行けた。いつもこれくらいだと気分的にも楽なんだけど。山城さんが「疲れてるときにこれ飲むと効くわよ」って白い錠剤くれた。すぐ効くわけはないんだろうけど、飲んだら身体が軽くなってような気がする。ありがとう、山城さん!

 此れって何だろうって訊いたら王乳だって。これが提督が前に言っていた王乳なのね。提督も風邪の時は生で食べているって聞いていたけど、風味が独特ね。

 

 

9月30日(日)

 遠征→演習のフォーメーション練習→遠征と、今日もハードな1日をこなす。でも段々緊張してきたから、これくらい忙しくってもへっちゃら。

 気分次第でなんとかなるもんなのよね。建造された頃からそうだったもん。

 考え方ひとつで元気にもなれるし、疲れたりしちゃうし。なにクソっ! て思えばできる。

 病は気から……というのはちょっと違うかな?

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

村雨の日記――10月01日~10月15日――

村雨が無理して提督が……。

予め謝っておきます。村雨提督の方、ごめんなさい。

2/28提督のイメージを後書きに追記



10月1日(月)

 いよいよ演習が明後日に迫ってきた。演習前の訓練はこまかい部分のおさらいって感じだから、体力的には楽なものになってきてるので、そんなに遠征とかにも響かないのよね。だんだんテンション高くなってきた。島風ちゃんたちも燃えてるみたいだし。なんとか長門さん達に皆んなで最低一発づつはお見舞いして成長ぶりを見てもらうんだ!

 あ、そうそう今日から衣替えなのよね。でも、ここってまだ日中も25℃あるから薄着でも良いんじゃないかしら。

 

 

10月2日(火)

 そういえば最近提督の私を見る目が「体、大丈夫か?」っていってるみたい。やっぱり心配かけちゃってるのかな? でも、私は大丈夫。演習と遠征で確かに楽じゃないけれど、中部海域で頑張っている時雨や夕立に比べればそんなにたいしたことじゃないからね。

 

 

10月3日(水)

 遠征から帰ってきたら明日の演習の打ち合わせ。フォーメーションのチェックなどを詰めて、万全の態勢で臨まないとね。それからもう一回遠征に出かけて今日はおしまい。明日は絶対勝つぞ! 

 

 

10月4日(木)

 

 

 

10月5日(金)

 昨日、演習に行く前に艤装を纏ったら、急にめまいがしちゃった……。演習は敗北だったけどC判定で日頃の成果を発揮できたみたい。長門さん達からお褒めの言葉を貰っちゃった。でも、その後が良くなかったのよね。

 帰る長門さん達を途中まで見送って、帰ってきて艤装に損傷も無かったから後で外すつもりで収納してそのまま街に食事会の買い物に出かけたんだけど、恰好悪いことに買い物中に倒れたみたいで、気が付いたら鎮守府の療養施設のベッドの上だったの。

 朝日丸さんは私の身体の状態が危険で艤装に拒絶されているって言ってて、演習前のめまいはその最終警告だったみたい。警告に気が付かずに出ちゃったから帰ってきて街に出た時に強制的に艤装に倒されちゃったみたいね。艤装に拒絶されるってああなるんだって初めて知ったわ。おまけに艤装から拒絶されている所為で高速修復材も使用できないから1週間は絶対安静にしてなくちゃ駄目みたい。

 ごめんなさい、提督。心配かけちゃって。自分では大丈夫って思ってたんだけど……。ちょっと考えが甘かったのかな? 今日は日記を書いたらお終いにするわ。

 

 

10月6日(土)

 氷川丸さんが作ってくれたおかゆを食べて薬を飲んでひたすら眠る。朝日丸さんや氷川丸さんに診てもらったりすると、「調子が悪いんだ」と思っちゃって余計にガックリくるみたい。

 こんな風に絶対安静にしてなきゃいけないなんていうのもはじめてだからかな。前に大破しちゃって安静を命じられた事もあったけど、これほどじゃなかったよ。

 それにしても、なんかやっちゃったって感じ。提督も内心じゃ怒ってるかも。だって過労が原因だもん。報告が大本営に行ったら提督の監督責任って言われちゃうだろうし、出世にも響いちゃうよね……。

 

 

10月7日(日)

 今日もずーっと眠りっぱなし。不思議なことに食事をとるとき以外は、横になってるだけで寝ちゃうのよね。なんだか冬眠中の熊みたい。よっぽど身体が疲れてたんだなぁ……。自分じゃそこまで疲れてるって意識はなかったんだけど。でも、艦娘としても情けない話には違いないわよね。日記書くのもやっとだし。

 

 

10月8日(月)

 今日も眠りっぱなし。起きててもずっと横になってるだけだから、ついつい色んな事考えちゃうのよね。それでもいつのまにか寝ちゃってて。それにしても今回はほんと彼方此方に心配かけちゃったな。今まではちゃんと体調管理できていたのに、ここ最近なんか変なんだよね。

 

 

10月9日(火)

 今日は横になりながらボーッと本を読んだりして過ごした。本当は頭を使ったりしてもダメだって言われてるからいけないんだけどね。だけど、提督って私のこと本当によく世話を焼いてくれる。なんだか申し訳なくって……。実の娘でも、五月雨ちゃんみたいに養子縁組したわけでもないのに、そこまでしてくれることないよ。

 そんなに気をつかってもらったら、甘えてしまうじゃないですか。本当に……。

 

 

10月10日(水)

 今日は亥の子祭りだったのよね。子供をたくさん産むイノシシに肖って(あやかって)、亥の子餅やイノシシのお菓子を食べて子孫繁栄や収穫祝い、無病息災を祈るお祭り。私も倒れてなければ近所を回って亥の子餅やお菓子とかをもらいにいく筈だったのよね。なんて考えていたら、白露達がお見舞いに来てくれて色々貰っちゃった。私が良く行く喫茶店の店員さん達も心配してくれてるって教えられちゃった。貰ったのは街の人から私にって渡されたものだって。

 そうだよね、街中で見知った人がいきなり倒れちゃったら見ていた人たちは心配しちゃうよね。

 

 

10月11日(木)

 ずっと横になってるだけだから、ついつい色々なこと考えてしまうんだけど、もう最初の頃みたいに眠りっぱなしって訳でもないの。でも提督って、ホントに良い人なんだな。こんなにやさしくしてもらったのなんて、建造直後以来。なんだか照れちゃうな。もし、将来引退して結婚するんだったら、絶対提督みたいな人を選ぼうっと! だって……ね。

 それにしても、私って将来結婚できるのかなぁ……とか。こんなに長い時間、いろいろ想像するのって久しぶり。結構、楽しいかも。

 

 

10月12日(金)

 体調は元に戻ったと思うんだけど、明日もう一度朝日丸さんの所に行くことになってるから、今日はとりあえずおとなしくしてたの。 

 それにしても、今回の件では本当に提督に迷惑かけちゃったな。だけど、そのおかげでこんなにやさしくしてもらえたのよね……。なんだか、ずっとこのままこの鎮守府に居たいな。私のこと専属登録してくれないかな。そしたら私、ずっと提督達と一緒に暮らして皆の世話をしてあげられるのに。

 

 

10月13日(土)

 今日、「もう大丈夫」って朝日丸さんが言ってくれたときはホッとしたよ。でも、しばらくは遠征とかはしちゃダメだって言ってたなぁ。それに薬をもらって、それがなくなるまでは様子をみてくださいとも言ってた。提督も「暫くはゆっくり休んでいていいから身体を大事にしなさい」って言ってくれたから、ひと安心。今回は提督に甘えます。

 

 

10月14日(日)

 今日は鎮守府内でリハビリ代わりに練習航海。艤装に拒否されて倒れちゃってから1週間以上経っているから、ちょっと不安だったんだ。艤装は無事纏えたから大丈夫だと思うんだけど、勘が大分鈍っていたから早く戻さなくっちゃ。

 あと、軽く訓練しても、別にめまいとかもしなかったし、もう大丈夫よね。

 

 

10月15日(月)

 鎮守府の皆もそうなんだけど、街に出ると街の人もまだ心配してくれる。私、そんなに虚弱体質な娘にみえるのかしら? もう心配してくれなくても大丈夫なんだけど。

 それに、なんだか空いてる時間が多くって変な感じ。やっぱり忙しい方が性にあってるみたいね、村雨は。とか言ったら怒られちゃうかな?

 そう言えば、今日から伊勢では神嘗祭が始まるのよね。興玉神祭、御卜の後に外宮先祭だから豊受大神宮の由貴夕大御饌(ゆきのゆうべのおおみけ)が午後10時頃にあって由貴朝大御饌(ゆきのあしたのおおみけ)が午前2時。明日は皇大神宮で由貴夕大御饌(ゆきのゆうべのおおみけ)が午後10時頃にあって由貴朝大御饌(ゆきのあしたのおおみけ)が明後日の午前2時。両正宮の後は25日まですべてのお社で行われる行事よね。私達艦娘も伊勢の近くにいるときは必ず参加させる事が鎮守府にも義務付けられているわ。そう言えば艦娘を参加させなかった鎮守府に強制査察があってブラック鎮守府だったことが分かったとか言う話もあったわね。そう考えると必ず参加って良いわよね。

 ……出席中に深海棲艦の襲撃がなければ、だけどね。

 

 




 艦娘含めて人口500人前後の島。外部との交流があるとは言っても来訪者もほぼ見知った顔という環境の為殆どの人は互いに顔見知り。おまけに提督の外出時にも護衛が不要な位、鎮守府関係者との関係も非常に良好。食事会とかで艦娘達も街の店に買い出しに来たり喫茶店に立ち寄ったりするから互いに良く知っている。そんな中、目の前でいきなり艦娘に倒れられたりしたら、そりゃ心配するよね……。
 村雨が復帰するまで、提督が一人で外出すると同年代以上の、特に娘を持つ人達から冷たい視線が……。もちろん艦娘に無理をさせない提督という事は解っていますが、なんで止めさせなかったのかと。
 トンデモナイ濡れ衣……。


2/28追記
提督のイメージ
【挿絵表示】
にするか
【挿絵表示】
にするか迷った挙句

【挿絵表示】
にしようかなと。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

村雨の日記――10月16日~10月31日――

10月16日(火)

 最低限の訓練以外の任務を外されちゃったから、部屋で2時間ほどアコーディオンを弾いて今日はお終い。その代わりにあちこちの掃除をしちゃった。結構汗かいちゃったけど、特にしんどくなったりしなかったから、もう体調は復活したみたい。やれやれよね。明日提督に報告して来週から始まるサンマ漁には連れてってもらおっと。

 今日は皇大神宮で午後10時から由貴夕大御饌(ゆきのゆうべのおおみけ)、明日の午前2時から由貴朝大御饌(ゆきのあしたのおおみけ)が行われるのよね。

 神宮近くの鎮守府でお世話になるまでは大御饌がどんなものなのか知らなかったから、配属直後に自分の興味の赴くままに色々と聞き回っちゃったのは良い思い出よね……。その時聞いた話だと、確か大御饌って立派な食事の事だったわよね。神職の方のお話だと、海川山野のお供え物を取り揃えて、神宮新田で収穫された新米を玄米のまま蒸して土器に盛り、御餅をつき、白酒黒酒(しろきくろき)のお酒を醸してお供えするのよね。白酒は醸したままの原酒を濾したもので白酒殿で作られて、黒酒は白酒にさらに久佐木の灰を加えて黒くしたもので黒酒殿で作られるんだっけ? もう詳しいこと覚えていないわね、持ってきた日記帳のどれかに書いて置いた筈なんだけど……。

 今日のお昼には豊受大神宮で天皇陛下が遣わされた勅使が幣帛をご奉納になる奉幣が行われて、18時頃から御神楽(みかぐら)が行われたのを中継で見ていたけど、明日は同じ時間で皇大神宮で行われるのよね。あそこの鎮守府の大和さん達映らないかしら。そう言えば、あそこの鎮守府の扶桑さんと大和さん、伊勢さんの3人に連れられて江戸時代みたいに125社参拝をしたわね。あれも良い思い出だったなぁ。

 

 

10月17日(水)

 提督ってホントに過保護なんだから! 私はもう大丈夫って言ってるのに、わざわざ朝日丸さんと氷川丸さんを呼んで確認するなんて。おまけに二人とも、まだ遠征も出撃も駄目ですっていうのよ。ちょっと前にもう大丈夫って言ってたじゃない。おまけに認められるのは精々湾内の練習航海だって。全く信じらんない。少しでも早く提督の役に立ちたいだけなのに。

 

 

10月18日(木)

 昨日の事で何だかモヤモヤが(おさま)らない。今日が食事会で丁度良かったな。今日は夏と秋の境目の料理として、いちじくのごま味噌かけを作ってみたの。いちじくは簡単なデザートにならないようにドーフィン種。白みそ仕立てのソースをかけてみました。

 聞いただけで実際に作るのは初めてだったんだけど、意外と美味しかったから作り方もここに書いておこっと。

 いちじくの皮をむいて縦四つ割にしたら冷蔵庫で冷やして、食べる直前にごま味噌をかけて出来上がり。

 

追記:作り方探しに来た未来の私へ

 これ、前菜には丁度良かったけどおかずには物足りないから作るときは注意よ。

 

 ……ちょっと反省しないとね。って書いても後だと解らないわよね。

 料理してちょっとだけモヤモヤが治ったから、昨日の分を読み返してみたんだけどね。ちょっとじゃなくてうんと反省しないと。

 ……いくら気が高ぶっていてもあれは酷かったわ。提督達も私の事心配してくれているからの言葉なんだし、そこのところはしっかりと感謝しなくちゃね。明日はきちんと謝ろう。

 そしてこれ以上心配かけない様に、まずは体調を万全にしとかなくっちゃ! そう思って酒保でドリンク剤を買ってきて飲んでみたら、変に目が冴えちゃって中々寝付けないよ。前にも飲んだことがあるものだから、大丈夫だと思ったんだけどね。まだ、身体が敏感になってるのかもね。失敗、失敗。ちょっと散歩行ってこよっと。

 

 

10月19日(金)

 今日は1時間ほど練習航海して、あとはノンビリと過ごす。朝は探しても中々提督と会えないのよね。お昼に食堂で見つけたから、確りとごめんなさいしておきました。大勢の前でやると提督が困っちゃうだろうから廊下の陰でね。そしたら提督が困った様な笑みで頭をポンポンと撫でてくれたの。判ればいいって。また涙が出てきちゃって、思わず抱きついちゃった。提督に背中ポンポンってしてもらったけど、飛龍さん達ごめんなさい。

 午後、提督と非番の娘達と一緒に梨狩り。梨を収穫する序でに何個か食べてもいいって提督から許可が下りたから美味しそうなのを何個か食べちゃった。

 今回は海防艦娘と駆逐艦娘だけしかいなかったからの許可よね、多分。

 

 

10月20日(土)

 今日から秋土用。何日までか確認したら、11月6日まで。そして、間日は10月は20日、22日、30日。11月は1日、3日なのね。そして今日はいきなりの間日。だったら明日からにしても良いのに……。1日分間日を損した気分。

 あ、土用殺は北西。う~ん、ちょっと微妙な感じ。遠征先に重なるところはあったかしら?

 

 

10月21日(日)

 今日は十三夜。

 お団子13個と大豆や栗等の秋の農作物や果物をお月様の見えるところにお供えしました。十五夜はもともと中国で行われていた行事が日本に入って来たんだけど十三夜の月見は日本独特の風習なのよね。躬恒集に書かれていた延喜19年9月13日の月の宴が十三夜の月見の始まりとされているって広瀬提督に教わったな。十五夜か十三夜のどちらか一方しか観ないのは片見月とか片月見とか呼ばれていて片付見に通じるから縁起が悪いっていうんだけどこれって東京周辺だけなのよね。吉原の客寄せの一環として生まれたとか言われているけど、実際はどうなのかしらね。村雨としてはどちらの月も綺麗だし美味しいものも食べられるから縁起とか関係なく良いものは良いで良いと思うんだけど。

 お団子とかは綺麗なお月様を見ながら食べるのが慣習だから、当然、暫く飾った後で食べちゃいました。

 

 

10月22日(月)

 今日は間日。提督達は根菜の収穫にお出かけ。芋堀の準備を頼まれたから試し掘りもしてみたんだけど、収穫はもうちょっと後が良いみたいね。月末の間日辺りで良いかも。

 京都は時代祭の日よね。平安神宮ができた時からの歴史は浅いお祭りなんだけど、流石京都って感じよね。前に京都の鎮守府にいた頃にも見に行ったけど、昔と違って行列も多くなったわよね。

 

 

10月23日(火)

 今日は霜降。春雨、お肉の霜降りじゃないわよ、「そうこう」って言うのよ。

 北方の鎮守府はそろそろコートや暖房器具の準備とか冬支度を始める頃。

 日も詰まって来る頃だから出撃がない日は読書や編み物をしたりして、夜長を楽しんだっけ。

 そうだ、提督にもマフラー編んであげようかしら。もちろん奥さんたちの許可を得てからね。

 

 

10月24日(水)

 今日、花屋さんでエアプラントが安く売ってたから、衝動買いしちゃった。昔、流行ったんだよね、これって。でも、可愛いし、鎮守府の玄関とかに置いておくと良い感じかなぁと思ったんだ。提督もこれくらいだったら、うるさがらないだろうし。いやだって言われたら、自分の部屋に置けばいいよね。

 

 

10月25日(木)

 今日の食事会は、珍しく提督が調理。翠王っていう茎葉が食べられるサツマイモを鎮守府で栽培していたんだけど、その茎葉を使って、芋との親子揚げとかジュースを作っていたのよね。ジュースは大不評だったんだけど粉末にした茎葉を使ってお茶やもち、パン、パスタとか作ってくれたのよね。和え物は美味しかったかな。

 午後からブドウ狩り。ネヘレスコールっていう長さ90cm位のブドウが食べ頃になったんだって。私も初めて見るんだけど、大きいし重さは3kg以上。大きい葡萄って酸っぱいって聞いてたのに糖度計で計ったら驚きの23度。なんか謂れのない理不尽さを覚えるわ。後、ブラック三尺っていうブドウも収穫したんだけど、これも一升瓶より大きくて50cm近くあったの。糖度も23度だったのよね……。両方とも海風や陽炎ちゃん達と担いで運んだのよね。藤稔とかもあったんだけど、これは満潮ちゃん達が収穫。ネヘレスコールは干しぶどうにするんだって。どれだけできるんだろ。何か疲れちゃったから今日はこれでお終い。

 

 

10月26日(金)

 今月のお風呂は生姜。えっと、生姜湯って飲むだけじゃなかったのね。生姜をすりおろして出来たしぼり汁を浴槽に入れてかき混ぜるだけだって提督は話していたけど、シナモンとレモンバームが入っているみたい。いい香りなんだけど、鍋を思い出しちゃって私達が食べられちゃうみたいな気分になっちゃった。身体を温めたり筋肉疲労をやわらげるとも言われているから、今の私には丁度良いのかも。

 

 

10月27日(土)

 秋土用の辰の日。秋の土用は「た」のつく食べ物か青いものが良いのよね……。た……狸汁? って冗談冗談。青いものを考えましょ。って、合わせると青い狸汁? ……いけないいけない。なんか変なもの想像しちゃった。真面目に考えると、これは青魚よね。とくれば、サンマかしら? サンマには大根よねって、できちゃった。「た」に点々だけど良いよね。

 あ、提督に今度こそサンマ漁に出して貰えるように言ってこよっと。

 サンマは缶詰や塩より炉辺焼きの方が好みなんだけどね、私は。

 そう言えばこの時期って内地だと夏の疲れがでやすい時期よね。前の鎮守府でもこの時期に体調崩していた提督多かったし。おまけにこの季節って稲乗り入れとか冬野菜の手入れや、春野菜の種蒔きや苗植え付けもあるのよね。お腹減るのよ。ついつい食べ過ぎちゃって……。冬も直ぐだから疲れを取って、力を蓄えないといけない時期よね、本当は。

 

 

10月28日(日)

 今日は栗拾いとキウイの収穫。

 朝は裏の果樹園に非番組の皆で栗ひろいにお出かけです。

 うちの春雨って他所と違って案外食いしん坊なのよね。地面に落ちているものを拾うのよ、落ちていない栗を捥いじゃダメ。って何度注意したか。

 京都の鎮守府にいた時も栗拾いしたけど、色々と教わったな。落ちている濃い茶色の栗が熟して食べ頃なのよ、イガが茶色くなって開いているものが熟している証拠。それと穴のないものを選ばないとね。幼虫がついていると嫌だもん。拾う実は丸くてずっしりとして艶があるものよね。ずっしりしているのが水分が多くて、艶があるのは新鮮で美味しいんだって。

 午後のキウイの収穫の前に収穫後の処理。栗ってデリケートなんだ。だから手早く皮のまま塩水に10時間ほど漬けるのよね。よく乾燥させてから、穴あきのポリ袋へ入れ冷凍庫に入れて保存完了。

 午後からキウイの収穫なんだけど、キウイって収穫したらすぐに食べられるわけじゃないのよね。追熟が必要だから2週間は先なのよ。鎮守府のキウイは全部で3種類か。香緑とジャンボイエローと紅妃は定番と言えば定番よね。今日の収穫は香緑と紅妃。ジャンボイエローはもう少し後なのね。

 

 

10月29日(月)

 今日のお昼過ぎに時雨と夕立達が無事に帰還。怪我とかが心配だったから2人がお風呂に入っているときに一緒に入って確認したけど、時雨も心配していた夕立も怪我らしい怪我もしていないみたいね。入渠で怪我は治るけど怪我をしないに越したことはないからね。でも、2人ともどこか雰囲気が違って見えるのよね。一皮むけたって言うのかな?

 

 

10月30日(火)

 今日は10月最後の間日。今日の内に土いじりは終わらせないとね。という事で朝からお留守番の年長組総出で芋掘りの準備だったの。試し堀して問題なさそうだったから蔓を切って準備完了。年少の留守番組と提督に合流してお芋堀りにお出かけ。品種は紅はるかと安納芋。そして翠王。皆んなで盛り上がった後は焼き芋パーティよね。そして午後から紅葉狩り。何で紅葉を観に行くのに狩って言うんだろ? 後で聞いてみよっと。鎮守府にいる白露型姉妹も久しぶりに揃ってのお出かけでした。

 

 

10月31日(水)

 今日も非番。掃除したり料理をつくったりしてのんびり過ごす。

 今月は皆に迷惑かけちゃった。それなのに、私のこと怒る人はひとりもいなかったのよね。

 皆、私のこと心配してくれてたんだ。そう思うと、うれしい気持ちと、もっとしっかりしなきゃっていう気持ちが同時に起こって来ちゃって。

 ……昔から本当に周りの人たちのおかげで私は頑張ってこれたのよね。

 つい、私がやらなきゃって、一人相撲をとってしまうんだけど、まわりに良い人が一杯いてくれたからそういうことができたんだよね。ちょっと反省。これからは気をつけないとね。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

村雨の日記――11月01日~11月15日――

11月1日(木)

 今日は紅茶の日。江風の誕生日でもあるんだけどあの娘、恥ずかしがって誕生日のお祝いなんて要らないって言うのよ。うちの鎮守府でそんな事は通用しません。食事会も誕生パーティーを兼ねてケーキを金剛さんを中心に作ったんだけど、紅茶の日でもあるからってケーキも料理も紅茶とそれに合う料理だったの。どうなる事かって思ってたらさすが金剛さん。ケーキは茶葉の香りが上品で甘さがくどくない江風好みのものだったし、料理もケーキにあっているんだけど、見た目も種類も豊富で、江風が羨ましくなっちゃった。

 それとは別に私も久しぶりにクッキーを焼いたんだ。こないだ買った雑誌に、私の知らなかったクッキーのレシピが載ってたから、一度試してみたかったの。でも、気合いを入れて作った割にはあんまりおいしくなかったみたい……。作り方を失敗したのか。もともとこんな味のクッキーなのか、その辺は定かじゃないんだけど、とにかく皆の好みじゃないテイストになっちゃったみたいで、結構余っちゃったのよね……。

 あ、そうそう秋土用の間日だから提督は料理当番に当たってない娘達と一緒にキウイの収穫とか畑仕事していたみたい。

 畑仕事の後で執務室に戻って来た提督が事務の合間に手軽に摘まめる様にクッキーの残りを私からって執務室に置いておいたんだけど、食べてくれるよね。

 

 

11月2日(金)

 今日は万霊節……だっけ? カトリック教徒にとっては重要な日なのよね、確か。前に一緒だったオイゲンちゃんやビスマルクさんも全ての死者の魂のために祈りを捧げる日だって言ってたし。私はカトリック教徒でもないけど、街に教会もあるからお祈りしてきました。異教徒でも願いって届くのかしら?

 

 

11月3日(土)

 今日は明治節。戦前でも今でも祝日なのは変わらないのね。大正の頃は先帝陛下の近代日本の礎を築いたという功績を偲び、誕生日の11月3日が先帝祭として休日になっていたんだけど、昭和になって明治節って変わったらしいの。そして今も明治節として続いているのよね。先の大戦で無条件降伏なんてなってたらこの日は間違いなく祝日からは外れていたわよね。そう考えると色々考えさせられる村雨です。

 あ、提督からは今日が本当の亥の子祭りだから参加して来いだって。亥の刻から始まるって言ってたけど、亥の刻って午後10時頃よね。う~ん、ちょっと遅くなりそうだけど前は参加できなかったから、行ってこよっと。

 

 

11月4日(日)

 朝起きて鏡を見たらショック。口元にニキビが一か所できちゃった。昨日夜更かししたからかな? 艦娘ってニキビとかできないって思われているけど、ホントは外見年齢相応な肌トラブルってあるのよね、報道されないだけで。私はもともとあんまりできない方だったけど、なぜかできると大きくなっているのよね。早く治さなくっちゃね。

 

 

11月5日(月)

 久しぶりに父島の鬼怒さんから連絡があった。前に話に出ていた母島で艦娘のバンドができるって話が実現したんだって。私は会ったことないんだけど軽巡の木津さんを中心に駆逐の青雲ちゃんと紅雲ちゃん、春雲ちゃんで組むらしいんだ。鬼怒さんの言う事には、まだまだ粗削りだけど何時かは私達と一緒に公演したいねだって。冬は無理でも来春にはできると良いなぁ……。

 

 

11月6日(火)

 やっと秋土用が明けた。秋刀魚漁は最後の追い込みか。どれだけ取れるのかな。私も初のサンマ漁出動です。

 あ、そう言えば今日はお見合い記念日だって。昭和22年に東京の多摩川河畔で集団お見合いが開催されたからみたい。記録映像で見たことあったけど特に戦争で結婚適齢期の男性が戦死して結婚相手をなかなか見つけることが出来ない女性のために開かれたお見合いみたいで先の大戦で婚期を逃した男女386人が参加したの。

 この戦争が終わったら同じようなことが起きるかもね。艦娘が多く退役する筈だし。まぁ、まだまだ先の事よね。

 それよりも村雨、F作業に頑張ります♪

 

 

11月7日(水)

 今日は立冬。暦の上では今日から冬なのよね。とは言ってもまだまだ寒くはならないわよね。オマケにここって内地みたいに0度とかの寒さにはほとんどならないからね、たまに雪が降るけど。立冬にこれを食べるといいって言われているのって何かあったかなって、香取さんに聞いたら特にないんだって。提督も強いて言うなら冬瓜が昔から食べられている、だって。

 そっか……やっぱり季節に収穫されたものを季節にあった調理法で食べるのが一番なんだね。

 

 

11月8日(木)

 今日は伏見稲荷大社では火焚祭が行われているのよね。五穀豊穣に感謝して護摩を焚くのよね。そんな日だから今日の食事会のおやつは蒸し饅頭。程よく塩を利かせた餡子をたっぷり詰めました。火焚祭と言えばお火焚き饅頭だもんね。

 夕食は新米を土鍋で炊いた御飯となめこのお味噌汁でした。五穀豊穣に感謝です。

 

 

11月9日(金)

 遠征と演習でちょっと疲れたかな? って感じ。無理したらダメだってことを自分に言い聞かせてる毎日だから、今日はゆっくりお風呂に入って、体力的な疲れをとる事に専念。

 精神的にはぜんぜん疲れてないんだけど、前に倒れちゃったわけだから、きっちりしていかなきゃね。

 ……でも、倒れたらまた提督がやさしくしてくれるだろうから、それもちょっと良いかな……なんて思ってしまう村雨でした。

 

 

11月10日(土)

 今日は断酒宣言の日。提督もこれを機に断酒したら? って言ったら村雨もしなさいだって。もう、私のワインは燃料だから良いんです♪

 そう言えば今日は福島県須賀川市で松明あかしがあるのよね。長さ10メートル、重さ3トンもある大松明を威勢のいい須賀川の若衆150人が担いで街を練り歩くんだって。一度は見てみたいなぁ。元々は須賀川城が伊達との戦いで落城した時に戦死した多くの人々の霊を弔うために行われるようになった行事なのよね。

 

 

11月11日(日)

 今日は宝石の日。1986年に宝石の日として定められたのよね。そんなことを金剛さん達と話していたら、提督がいつの間にか雲隠れしちゃった。あ、1967年に西陣の日にもなっていたんだっけ。提督、金剛さんが西陣織でも良いネだって。

 多分あそこにいる筈だから探しにいこっと。

 

 

11月12日(月)

 今日はちょっと遠征と演習で疲れたからゆっくりお風呂に入って疲れをとったの。

 というのも、熊野さんから「これ、気持ち良いから使ってみて」ってハーブ入りの入浴剤もらったから。なんだか凄く良い匂いがして、身体がポカポカしてくるの。ハーブって本当に凄いのよね。気分的にもリラックスさせる効果があるみたいだし。

 

 

11月13日(火)

 今日はうるしの日で漆関係者の祭日か。和歌山の海南に居た時にお祭りしてたけど、親方衆が職人さん達をお菓子やお酒で労うの。私達艦娘もご相伴に預かった事もあったわね。漆器の小物とかも頂いたし。私が使っている箸もその時のものなのよね。

 私のは紀州漆器なんだけど、他にも京漆器とか有名な津軽塗や輪島漆器や会津漆器とか色々あるわよね。漆器を英語でJapanって呼ぶのは江戸時代に漆工芸品、特に蒔絵がヨーロッパで高い評価を得たからなんだって。蒔絵とか漆塗りの工芸品を呼ぶ名称として一般的に使われてから漆塗りの工芸品や蒔絵をJAPANって呼ぶようになったって香取さんが座学で教えてくれたの。あ、そう言えば前にビスマルクさんが教えてくれたけど、漆器をJapanじゃなくてUrushiって呼ぶ外国人もいるらしいわね。

 

 

11月14日(水)

 なんだか最近ちょっと痩せてきたような気がして、お風呂に入ったあと体重計に乗ってみたら2キロほど減ってた。艤装は軽くならないのにね。

 今までと変わらないくらい食べてるのに体重が減るなんて。ダイエット的にはうれしいんだけど、体力的にはちょっと拙いかも。でも、特に辛いとは感じないから……ま、いいか。気にしすぎるとダメだからね。艤装に拒絶されなければ問題なし。 

 

 

11月15日(木)

 街中で華やかな着物姿の子供たちが多いなって思ったら、今日は七五三だったのよね。提督が松輪ちゃん達に千歳飴あげて怒られてたけど、あげちゃう気持ちはわかるわ。私も来て直ぐに雷ちゃんに頬ずりしちゃったし……。秋雲ちゃんじゃないけど、可愛いは正義、よね。

 今日は着物の日でもあるんだっけ? 和装にもっと親しもうって1966年に着物の日として全日本きもの振興会が制定したのよね。

 そんなわけで今日の食事会は皆でばら寿司。お寿司はいつの時代も人気のメニューよね。ただ、ちらし寿司とどちらにするか揉めたのよね……。多数決でばら寿司になったけど。

 そして、私にとっては重要な日の一つ。ボジョレー・ヌーヴォーの解禁日。深海棲艦が現れる前は凄い人気だったって提督から聞いたけど、一本云万円の物もあったの? でも、この御時世だとフランス産のワインなんてなかなか手に入らないから日本産で代用よね。日本産だからボジョレー・ヌーヴォーとは言わないし、解禁日なんて関係ないけど昔からの慣習を大切にしているんだって。……何か催し物があるとそれを口実に飲めるもんね。ま、酒飲みの口実よね、那智さん♪

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

村雨の日記――11月16日~11月30日――

2018/05/06
ここにも写真こっそり追加。追加した箇所の文を写真前提に修正。実際に撮った季節は9月下旬のホエールウオッチング中なんですけどね。


11月16日(金)

 ちょっと毛先の痛みが激しくなってきたから、美容院へ行ってカットしてきた。伸び気味だったから毛先をカットして前の長さに戻ったって感じかな? 短くしたりしてみようかなとも思ったんだけど、実際にやる勇気は出なかったな。ずっとツインテールできたから、なかなか変えられないよね。精々ツーサイドアップに変える位かな? 

 あ、明日は十日夜だから今夜は駆逐艦の年少の娘と海防艦の娘がわら鉄砲で地面を打つんだって。その音を聞いた大根が背伸びするって言われて大根の年取りともいうの。今日は大根の収穫は禁止だって。大根っていうか、根菜全般なのかな?

 

 

11月17日(土)

 一日非番だったから街でお買い物三昧。ちょっと喫茶店に入ってみたんだけど、マスターは私が髪の毛切ったこと気が付かなかったの。

 そして今日は十日夜。田の神様に稲の収穫を感謝して、翌年の豊穣を祈る行事だよね。田の神様が郷を離れて山に帰る日って言われていて、稲刈りは今日までには終わらせないといけないんだって。田の神様へは、感謝の気持ちを込めて餅やぼた餅をお供えるの。

 提督が、海防艦の娘に『とおかんや、とおかんや、亥の子の晩のぼた餅は生でもいいから食いたいな』と唱えながら、隣近所の家の庭をわら鉄砲で打って歩くんだって教えているけど、あれ? 叩いて回るのは前日の夜やる筈だったよね? 違うの?

 

 

11月18日(日)

 遠征から帰って執務室に報告に行くと、提督は気が付かなかったけど飛龍さんに「髪の毛、最近切ったでしょ」って指摘されちゃった。流石よね。それに比べて……男の人は駄目ね。全然分かってくれないのよね、提督も喫茶店のマスターも。

 あ、昨日の件聞いたらやっぱり提督が忘れていたみたい。近所に話して慌てて昨日の夜やったらしいけど、大変だったみたいね。私も口止めされちゃったけど……どうしようかなっと♪ なんてね。提督から口止め料貰っちゃったから黙っています。

 

 

11月19日(月)

 今日は遠征から帰る途中でマッコウクジラの親子に遭遇。小笠原の大体10キロ位沖合にはいつもいるんだけど、今日はいきなり近くでコンニチハされちゃって、一瞬イ級かと思っちゃって吃驚。

 この話を白露にしたら、慌てん坊さんって笑い転げられちゃって。撮った写真も見せたんだけどね。白露は笑ってたけど、こんなの見たらそっくりだと思うんだけどなぁ。

【挿絵表示】

 このマッコウさん、暫く見てたら潮吹きしたのよ。

【挿絵表示】

 とっさに写真撮ったけど、なんだかピンボケしちゃってた。潮吹きの後、また吹かないかなって暫く見てたら潜っちゃったのよね。

【挿絵表示】

 前も海亀見かけたし次はイルカが良いな。なんてね。

 

 

11月20日(火)

 今日は恵比寿講。恵比寿様は七福神の中で唯一の土着の神様。旧暦の10月は出雲の大社(おおやしろ)に国津神の皆様が集まるから、その留守を守る恵比寿様に1年の無事を感謝して五穀豊穣や大漁、商売繁盛を祈願するのよね。恵比寿講は関西や四国で行われることが多いんだけど、この時期は東日本でも結構あるの。10月の恵比寿講を百姓えびすなんて呼ぶところもあったな。どこも神楽や神輿が担がれたり様々な屋台が出てにぎやかなのよね。福笹とか熊手が販売熊手などの縁起物を売ったりするお店もあって……。今宮戎神社に皆で行ったなぁ。

 街の神社で福笹売ってたから買ってきたんだけど、どうやって飾ろうかな。飾るとしたら北側か西側の壁なんだけど……。

 あ、延び延びになっていた春雨の誕生日のお祝い、春雨の希望で27日の海風の誕生日のお祝いと合同で行うことになったの。一緒で良いのか何度も確認したんだけどね、海風と一緒が良いんだって。じゃぁ、盛大に行いましょう。

 

 

11月21日(水)

 今日、夕立と時雨が提督に呼び出されたのよね。戻ってきた二人が私を気にしているみたいだからちょっと気になって聞いてみたんだけど、言葉を濁すだけで話してくれないのよね。二人の隠し事か……気になるなぁ。

 

 

11月22日(木)

 今日はいい夫婦の日。うちの夫婦は……って今日もあの人達の周りは桃色空間です♪

 あ、食事会の時の事なんだけど、時雨と夕立が私の事明らかに避けているのよね。……夕立、お姉ちゃんショックだよ。

 

 

11月23日(金)

 今日は新嘗祭。「新」は新穀を「嘗」は奉ることを意味しているのよね。脇田提督には『収穫された新穀を天神地祇に奉り、その恵みに感謝し、国家安泰、国民の繁栄をお祈りする日』って教わったんだ。今日は鎮守府も休日。そういえば街で農業祭をしていて、鶏を飼っていない家庭ではなかなか食べられない卵とかも大安売りしてました。私達も鎮守府で収穫した作物や果実を販売したんだけど、あっという間に売り切れちゃった。やっぱり顔写真付きで売ったのが良かったのかな?

 

 

11月24日(土)

 二人の事が気になったから、待ち伏せして問い詰める。

 そっか……二人とも鎮守府専属になったのか。……ごめんねって言われてもね。こればかりは提督の考えだし、どうすることもできないよね。二人には気にしないでって伝えたけど、なんか悔しいなぁ。うん、気にしてなんてない。二人にとっていい事だもん。

 でも何で私じゃないんだろ。私も二人と同じ練度に追いついたのにな……。どこが違ったのかな……。

 

 

11月25日(日)

 今日も眠れない。いろいろ考えてると胸のモヤモヤが治まらない。おまけに頭も痛くなってきてる……。このままじゃ拙いなぁ……。

 

 

11月26日(月)

 昨日の事でいろいろ考えてたら、なんだかモヤモヤが沸き起こってくるのよね。これからどうしたらいいんだろう? 今までの鎮守府じゃこんなことなかったのに、ここに来てからやっぱり変になっているみたい。大浴場の蜜柑湯に入って早く寝よ……。

 

 

11月27日(火)

 

 

 

11月28日(水)

 また提督や島の人達に心配かけちゃった。でも、どこか一人になれそうなところへ行くことでこのモヤモヤをなくしたかったの。私の目標はいつか峯風さんに成長した姿を見せに行くことと元沖田提督の二駆と会う事。それだけなのに、この頃のモヤモヤが……。提督に話してもわかんないだろうけど。

 でも、なんにも言わずに一晩隣の島に出掛けた事は悪いと思ってます。ごめんなさい……。懲罰は仕方ないよね、脱営だもん。

 それと春雨、海風。2人とも最初の誕生日なのに参加できなくてごめんなさい。プレゼントは用意しているからバカなお姉ちゃんからのでも良かったら白露から受け取ってね。

 

 

11月29日(木)

 私の処分、まだ決まらないみたいで、自室謹慎中。陽炎ちゃんや白露達も心配してくれるけど、今は誰とも会いたくない。提督とも話をしたくない。……もう、疲れちゃった。前向きに物事を考えられないのよね。

 

 

11月30日(金)

 謹慎場所が療養室の一つに変わった。鉄格子が付いている窓から鎮守府近海を艦娘が何人か通り過ぎていくのが見えるのよね。この時期は異動の時期だから、あの娘達も引っ越しかな? 人によっては荷物が多くて荷造りとか面倒くさいって聞いたことあるけど、その点、私は楽だったなぁ。身の回りのものだけだから、トランク1個とリュック1個で済んじゃったから。……でも、もう引っ越しなんかしたくないかな。ずーっと此処にいたいよ……。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

村雨の日記――12月01日~12月15日――

12月1日(土)

 部屋のカレンダー見て気が付いたんだけど此処に配属されて1年が経ったのよね。ここには夕方に着いたから部屋に案内されてすぐ休んじゃったけど。そっか、長かったようで短かったな。それにしても、私ってバカだな、せっかくの一周年をこんなことでフイにしちゃうなんて。でも……。

 

 

12月2日(日)

 明日、私の処分が決まるって飛龍さんが伝えてくれた。何であんなことをしたのか聞かれたけど……判らないのよね。飛龍さんには正直にモヤモヤが治まらなくて一人になって心を整理してみたかった事とか話したけど。

 

 

12月3日(月)

 処分が決まった。重営倉3日間だって。逃亡罪で解体処分も覚悟はしていたけど、かなり甘い処分よね。日記とかも当然持って行っちゃだめだから置いておかないとね。書き終えたら営倉入りします。

 

 

12月4日(火)

 

 

 

12月5日(水)

 

 

 

12月6日(木)

 

 

 

12月7日(金)

 今日、営倉から釈放されたらそのまま執務室へ連行された。

 提督と飛龍さん達も同席していて、ここ最近の事情を色々と聞かれて、恥ずかしかったけど夕立や時雨の事とかモヤモヤすることとか一通り話し終えたら、皆に抱きしめられたのよね。

 その後書類を渡されたの。読むように促されたんだけど、正式に養子として迎えてくれるっていうことを書いた書類だったの。

 日付を見たら11月24日付。……本当に私ってバカだったのね。自分の本当に考えてることや悩んでいること、提督に話してこなかった。お父さんって呼んでも上辺だけだったのね。あの時素直に相談してたらこんなに遠回りしなくても良かったんだ。

 こんなに自分勝手で我儘な私の事を本当の娘として考えてくれてたのね……。

 もう……胸が一杯。

 なんて書いたら良いんだろう。こんなに嬉しいの艦娘として建造されて初めて。

 私、この鎮守府に来られてよかった。提督に出会えて、皆に出会えてよかった。

 いつもの私らしくないかもしれないけど。でも、偶には良いよね。 

 

 

12月8日(土)

 なんか胸のつっかえがとれたっていうか、ふっきれたっていうか。

 この鎮守府でお世話になるっていうことは、この鎮守府で家族になるっていうことを今頃になってわかるなんて、やっぱりどうかしてる。飛龍さんや五月雨ちゃん達にさんざん言われていたのに……。

 私が提督の養子になったことは白露達も知っていたらしくて、白露型の皆からお祝いされちゃった。時雨と夕立には焼きもちから変な態度取った事と迷惑かけた事をしっかりと謝ったわ。私が提督の養子になった事を夕立からはかなり羨ましがられた。私も二人が鎮守府専属になったって聞いてかなり……うん、あれは嫉妬よね。嫉妬したから夕立の気持ちは解るけど何も言えないのよね。

 

 

12月9日(日)

 お父さんがいる暮らし、か。正直まだ戸惑いがある。

 でも、帰っていく場所がある、待っててくれる人がいる、私達にとってこんなに幸せなことはないわよね。普通の、民間の人たちには何でもない事なんだろうけど。

 こんなに穏やかで暖かい気持ちになれたのって、久しぶりだな。

 

 

12月10日(月)

 私が営倉入りしていた間に部隊編成があったらしいんだけど、春雨が練度40を越したことでいよいよ第二駆逐隊が結成されたみたい。そっか……沖田提督の所とはだいぶ雰囲気が違うけど、2度目の二駆。昔の二駆の皆にあった時に恥ずかしくないように頑張らないとね。何時かは会えるんだから。

 

 

12月11日(火)

 今日は私だけ身体検査があったの。他の皆は私が営倉入りしてた時に済ませたんだって。

 演習の後に検査したんだけど、またバストが大きくなったみたい……。あぁ、もっとスレンダーになりたいなぁ。なんて言ってたら、某先輩からお説教貰っちゃった。モグとか言われたんだけど目が怖かったよ……。

 

 

12月12日(水)

 ニュースを見てたら四川省まで深海棲艦が侵入して砲撃を行ったんだって。ちょっと前にはスエズ運河やライン川、セーヌ川にも侵入したらしいわね。アイツら先の大戦までに船が航行していた所には普通に入って行けるもんね。それを防ぐ為に私達が居るんだけど、大陸には艦娘って居ないのよね。だから被害は甚大みたい。上海とかの沿岸部はもちろん、北京や南京もがれきの山らしいし。海南島の中華民国には艦娘が居るから勢力拡大のチャンスなんだけど、雷州半島と広州湾周辺を抑えるだけで手一杯みたいね。朝鮮半島も艦娘居ないし……。これはまた国際情勢が煩くなるのかな? また異動とかで騒がしくなるのは嫌だよ……。

 

 

12月13日(木)

 今日は正月事始め。食事会もあって久々にお昼はお雑煮。伊勢湾の神島って所の、かんの餅っていうの。伊勢さんが作ってくれたんだ。そっか、もうそんな季節が来るのか。もう1年以上いるんだよね、ここに。色んなことがあったなぁ。初めてお父さんもできたし。沖田提督の二駆じゃないけど、ここでも二駆が結成できたし。

 そして煤払いと松迎えも今日だったのよね。お昼の後に煤払いをしたんだけど、煤払いってお正月に年神様を迎えるために1年の汚れを払って清めることなのよ。昔は薪や炭を使ってたもんね。天井や壁についた煤の汚れを落とすことが大切だったのかな。

 煤払いをしている途中に提督や五月雨ちゃん達と一緒にお正月の松飾り用の松を採りに行ったの。これが松迎えなんだって。ここに来て初めてだし、去年は煤払いもした覚えないのよね。提督に聞いたら去年までは大本営指定の業者に頼んでいたんだって。今年からそこら辺の予算が開発費用に回されちゃったから清掃や松飾りは自分達で行うようにって通知が来たらしいわ。此処は皆でいろいろできるから良いけど、松とか橙とか近くに生えて無い鎮守府ってどうするのかしら? 何処かで調達するんだろうけど……。

 作業中に提督がいろいろお話してくれたんだけど、松は「(まつ)る」が語源であるという説があって昔は依り代的な使い方で神棚に飾られていたんだって。いつの間にか年神様を導くための目印になって神棚から玄関や門へと移動したのね。

 そう考えると、古くから神の依り代として崇められたり年神様の目印だったり、松って神様を待つ木なんだね。

 

 

12月14日(金)

 テレビが忠臣蔵だらけと思ったら今日は赤穂義士祭だったのね。でも、吉良さんってホントは名君だったらしいのにいつも悪役にされてちょっと可哀そう。偶にはいぶし銀のような役回りでも良いのにね。

 例えば……実は吉良と浅野は強い信頼関係にあったんだけど幕府が朝廷の供応中にやらかした色々なツケを内匠頭が犠牲となって解消。内匠頭一人を犠牲にした責任を一身に背負って黙って散っていく上野介とか。

 

 

12月15日(土)

 神宮の月次祭と春日大社の春日若宮おん祭の中継があったからのんびり見ていたら、急に提督から呼び出し。

 提督の他に飛龍さんしかいなかったけど、二人ともいつになく真剣な眼差しだったの。話を聞いたら、大本営が新年からの参謀教育の対象者の一人に私を指名してきたみたい。

 普通は軽巡娘以上が対象の筈なんだけど半年くらい前の名取さんと一緒に参加した中部太平洋方面艦隊の演習計画策定会議。あの時の評価が駆逐艦にしては物凄く良かったらしいの。今回の指名は峯風さん以来の特例措置みたいで杉野提督達の推薦もあったみたいね。

 そっか、峯風さんも受けた参謀教育を私も受けられるのか。峯風さんを追いかけられる絶好の機会よね。

 ただ参謀教育を受けるなら2年間大本営に行かないといけないんだって。休みの時は帰れるらしいけど、私は遠いから帰れるとしてもお正月くらいかも。せっかくできた家族とも離れ離れか……。

 参謀教育終了後は直轄鎮守府へ配属になるらしいんだけど、私は養子になっているからここに戻ってくるんだって。それならここでお父さん達と過ごしながら少しづつ学んで行っても良いよね……。香取さんとか教え方上手な先達も揃ってるし。

 どうするか聞かれたけど、直ぐに答えなんて出ないよ……。どうしよう……。

 

 




次回最終話


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

村雨の日記――12月16日~12月31日――

最終話です。


12月16日(日)

 今回の件は見合わせようかなって思う。だって次の機会が全く無くなるって訳でもないし、今はこの鎮守府で少しづつ提督達と一緒に学んでいけばいいんじゃないかなって。二駆の結成とか私とっては久しぶりなんだし。でも、そうじゃないっていう自分もいる……。どっちを取ったら後悔が少ないんだろう。

 

 

12月17日(月)

 演習を終えて部屋に帰って疲れをとろうと思っても、なんだか寝つけない。

 ふとんの中に入って目をつぶっても眠れない……。自分の気持ちを決めなくっちゃ! なんて思うんだけど、ね。それが間違いなのかもしれないけど、自分が納得のいく方を選ばなきゃね。このままだと後で悔いることにもなりそうだし。

 ……期限もあるし早く決めないと。 

 

 

12月18日(火)

 今日は納めの観音なのでお寺さんにお参り。おみくじがあったから引いてみたんだ。色々出ていたけど、良い言葉を頂きました。そっか、そうだよね。なんかストンとピースが嵌ったみたい。時間的な余裕もあるからもう少し考えてみるけど、大分気が楽になっちゃった。

 

 

12月19日(水)

 街で今日まで羽子板市があったのよね。色々綺麗な羽子板があって私も買っちゃった。

 提督からは縁起物の羽子板には粋な買い方があるって言われて実践してみたけど、なんだか面白かったな。

 お店の人に値段を聞いて値切り交渉したんだけどね。支払うのは初めに聞いた値段なの。差額分をご祝儀としてお店に渡すのよ。そうすると買った方は大尽気分を味わえて、売った方は得した気分になれて、お互いにハッピーになれるんだって。私は500コインの羽子板を買ったから手締めをしてもらえたんだ。

 

 

12月20日(木)

 今日は食事会。色々あるけど、今日はいったん忘れて料理に専念しちゃおっと。

 最近スパゲティにハマッてて色々と作ってるのよね。という事で今日の食事会もきのことタラコの和風スパゲティを作ってみました。パスタがイマイチで、70点くらいのデキ。なかなか上手く茹でられないのよね。茹で方一つでも奥が深いわよ。皆でいろいろ好きなスパゲティの話が出るけど、私が今の所1番好きなのはバジリコとニンニクのアレ。シンプルだけど、これが1番美味しいような気がするのよ。

 ……明日には私の決断、話さないとね。もう少しこの鎮守府が内地に近かったらTVのドラマみたいに、みんなが笑えるハッピーエンドな解決法があったのに。

 

 

12月21日(金)

 今日、私の決断を報告した。

 納めの大師だったから報告の前に最後にもう一度お神籤を引いてみたんだけどね、やっぱり同じ内容だったのよね。もう迷わない。そう決めて提督に報告したの。

 参謀教育を大本営で受けますって。

 提督、そうかって一言だけ。何か言いたそうだったけど黙って最後まで話を聞いてもらえた。私も話してるうちに泣きそうになっちゃったから、最後の方はちゃんとうまく話せてなかったと思う……。

 

 

12月22日(土)

 今日は冬至。去年は香取さんと一緒に遠洋に出ていてゆず湯には入れなかったのよね。今年は2人とも無事に入れました。寿命が長く病気にも強いと言われる柚子の木に肖って、ゆず湯に入ることで無病息災を祈るのが基になったのよね。

 今日の食事も冬至の七種(ななくさ)がでてきました。「ん」が二つ付くものなんだけど、南瓜(なんきん)・人参・蓮根・銀杏・金柑・寒天・饂飩(うんどん)で、饂飩はうどんの昔の名前よね。それで、うどんはうどん粉から運(うん)・鈍(どん)・根(こん)に通じるので出世するって言われているんだって。それと、冬至の七種を食べると病気に罹らないってされているのよね。そっか、私が秋に倒れちゃったのは冬至の七種食べてなかったからか……。何て言ってたら、朝日丸さんと氷川丸さん達に怒られちゃいました。後でお父さんからのお叱りもあるそうです……。仕方ない、当分お叱りの言葉なんて聞けないし、大人しく怒られようかな。

 

 

12月23日(日)

 今日は天長節。言わずと知れた明治以来の四大節の一つよね。今上陛下のご生誕を祝し、万世一系の皇室の弥栄を祈る日。街の神社でも午前中に天長節祭があったから非番の艦娘全員で参加してきました。式典後に舞楽が5曲奉奏されたんだけど、これは厳島神社の影響よね。曲も振鉾、萬歳楽、延喜楽、蘭陵王、納曾利って同じものだし。戻ってきたら島の民俗史を勉強してもいいかもね。

 

 

12月24日(月)

 今日はクリスマス・イヴ。プレゼントは明日だけど、今年は初めての家族なんて良いもの貰っちゃったな。この幸せ、誰かにおすそ分けしないとね。という事で、金剛さんにカレーライスを食べてもらいたがっている比叡さんと一緒に、比叡さんが頑張って作ったカレーライスもって金剛さんに突撃したの。比叡さん、食べて貰えて涙浮かべて悦んでいたわね。金剛さんも涙浮かべて慶んでいたけど。……比叡さんが無事カレーを作れてよかったよ。比叡さん料理できるのに何でルー物はダメなんだろう? 一時はどうなるかと思っちゃった。

 

 

12月25日(火)

 今日はクリスマス。年末恒例の大きなイベントといえばクリスマスよね。鎮守府も今年は大きな木を切って皆で飾り付け。私が参加できる今年最後の大きな行事だからいつもより張り切って飾りつけしてみました。ただ、このクリスマスツリーってこれじゃない感がすごいの。樅の木じゃなくて、ノヤシだからね……。父島鎮守府みたいにトクサバモクマオウを代わりにすればいいのに。ってここには植えられてないから仕方ないか。

 そう言えば、今日は終い天神だったわね。弘法大師や菅公の月命日に弘法市とか天神市が開かれているんだけど、12月に行われるものを「終い」とつけて呼んでるの。京都だと21日に東寺の終い弘法、今日やってる天満宮の終い天神の方がクリスマスより賑やかかな。京都の東寺で行われる「終い弘法」、北野天満宮の「終い天神」は招福息災の大福梅、祝箸、お屠蘇の授与とかお正月用の品々がこの御時世でも一杯並ぶから、遠くからも沢山の人が来て凄い賑やかなのよ。平和になったら皆で行きたいわね。提督の好きそうな骨董品も結構あるのよ。何故か深海棲艦の砲弾とかも偶に出てたけど、考えるとアレってどこで手に入れたんだろ? 大阪の終い天神は凄いけど都内の天神様の終い天神って賑わうのかな? そっちも気になるわね。

 

 

12月26日(水)

 今日は礼号作戦が行われた日よね。草鹿参謀長と第五艦隊の志摩司令長官で作戦についての見解が分かれていたんだけど、あの頃は中央と現場、陸軍と海軍でも意思疎通が図られてなかったのよね……。陸海の現場同士は意外と良かったんだけどね。

 

 

12月27日(木)

 今年最後の食事会。せっかくなので、クリスマスは少し過ぎちゃったけどスタッフドチキンにチャレンジ。スタッフドチキンって鶏に野菜とかを詰めてローストした料理なんだけど、今回はポルチーニと香米のリゾットを中身に詰めてみました。ポルチーニって欧州にしかないように思われてるけど日本にもあるのよ。ヤマドリタケって名前のキノコがそれ。近縁種にヤマドリタケモドキってあるんだけど、私だとこの二つの違いって良く判らないのよね。香りが違うのは判るんだけどね。ヤマドリタケは青ヶ島鎮守府からの御裾分けみたいだけど、ヤマドリタケモドキは鎮守府の裏に生えているの。今回は両方入れちゃいました。ヤマドリタケとかモドキだと何となくお洒落っぽくないので、ポルチーニって呼んでみました。別に良いわよね? スタッフドチキンって普段は間接部分の筋や軟骨と肉を包丁の先を使って切り離すのが大変だから作らないんだけど、今日は特別。2年間は不参加だもんね。出し惜しみして帰ってきたら食事会が無くなっていたなんてなったら残念だし。片付けしているときに那珂さんから、明後日に送別会開くからね、だって。楽しみだなぁ。

 

 

12月28日(金)

 今日は納めのお不動さん。不動明王の一年最後のご縁日よね。午前中から護摩供養があるって聞いていたから、暫くここのお寺さんにもお参りできないし、しっかりとお参りさせて貰いました。新勝寺の影響を受けているのかな? 野外での護摩供養があったのよね。もちろん山伏姿の僧たちがお札やお守りなどをお焚き上げしていたんだけど、迫力がすごいわよね。私もこの1年お世話になったお札と縁起物ををお焚き上げしてもらいました。

 

 

12月29日(土)

 鎮守府の皆と送別会。2年後には戻ってくるけど、今の娘達が揃っているって保証もないからね、盛大にやって貰えたなぁ。私も那珂さんと久々にバンドを組んでアコーディオン弾きまくっちゃった。暫くはアコーディオンも弾けないだろうし。あ、母島のバンドとの共演、2年間お預けか。ちょっと残念。

 最後に提督からキャンディーフラワーを貰ったの。赤薔薇のスティックキャンディーが11本でブーケになっているの。味はアップル味なんだって。……馬鹿。

 

 

12月30日(日)

 部屋の後片付けと荷造りも無事終了。明日でこの鎮守府とも2年間のお別れ。寂しくないって言えば嘘になるけど、色々と貰った小物とかもあるしね。それに纏まった休暇を作れたら戻ってこられるって思うとそれほど寂しくはないかも。

 防音室や大きな家具とかはこのまま置いておくけど、アコーディオンとか結構荷物が増えたのよね。なんだかはじめて鎮守府に来たときのことを思いだしちゃったな。あの頃は良い子で居よう、迷惑かけないようにしようって事ばかり考えていたような気がする。

 今思うと私って、本当に馬鹿な娘だったんだなぁ……。

 あ、後で提督に手紙書いて置こう。

 

 

12月31日(月)

 もう大晦日。今年も、もうおしまい。そして今晩、私はこの鎮守府を出る。

 それにしても、長かったようであっという間に終わってしまった1年のような気がする。今年もいろんなことがあったなぁ……。また新しい年が始まるのよね。私は7日から大本営で2年間の参謀教育か。楽しみなんだけどちょっと不安もあるのよね。楽しみが9割8分なんだけどね。

 明日からはじまる新年には、この鎮守府にもなにか良い事がありますように……。

 結局、提督に手紙書けなかったなぁ。改めて書こうと思うと色々と浮かんで来て……。私らしく日記に書いて置けば良いか。この日記は置いて行くつもりだし。

 

尊敬する提督へ

 私のこれまでの生活でも、とても幸せな1年でした。提督にはお世話になりっぱなしでなんにも恩返しできないうちに長期出向になってしまいました。

 暫く会えないし、前みたいにお父さんって書きます。では改めて。

 

親愛なるお父さんへ

 私のこれまでの生活でも、とても幸せな1年でした。お父さんにはお世話になりっぱなしでなんにも恩返しできないうちに長期出向になってしまいました。

 わがままばかりの1年だったと思います。大破したり倒れたり脱営したりと迷惑ばかりかけてきちゃいました。そんな私のことをいつも見守ってくれたお父さん。お父さんがいなかったら、私はここまで自由で幸せで楽しい生活をおくれなかったと思います。

 2年間という長期出向ですが参謀としてしっかりと学んで必ずここに戻ってきます。私の戻ってこれる場所ってお父さんのところしかないから……。私の戻って来る場所なくさないでくださいね。

 それと村雨のこと忘れられると困っちゃうので私の代わりに日記帳を置いていきます。ちょっと恥ずかしいんですけど見ても良いですよ。お父さんの事だから娘の部屋に入る事もないでしょうけど、この日記を見つけたら偶には私の事も思い出してほしいな……って、最後のわがままかな?

 本当にお世話になりました。最後に……。

 

 またね♪

 

 




書き終えました……。

最後は草書体で「村雨」と書いています。

3月28日追記:
赤い11本の薔薇の意味は「あなたは私の宝物」です。それにリンゴ味の飴の意味を加えると……。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

小悪魔村雨の秘密の日記(後書き)
村雨の日記――後書きという名の蛇足――


諸事情で追加投稿。蛇足の後書き且つ此処だけ台本形式です。
お気に召さない方、ブラウザバックどうぞ。




村雨:

はいは~い。村雨だよ。えっと、まずはここまで見て下さった皆さま、ありがとうございます。提督に代わって御礼申し上げます。

 

赤猫:

柱島で提督やっている作者のfire-catです。色々とやらかしました。

 

村雨:

まずは疑問に思った事、色々聞いちゃおうかな。早速なんだけど、ねえ、提督、なんで私だったの? 私じゃなくてもいいわよね、これ。

 

赤猫:

そこからか……。ぶっちゃけると初めは、ある程度の年齢且つ面倒見が良さそうで生真面目そうな娘ということで陽炎を主役に「陽炎日記」で書いていたんだ。

 

村雨:

知ってる。で、「陽炎日記」そのままの作品があったのよね。駄目よ、きちんと調べなくちゃ。はい、ここできちんと謝りましょうね。

 

赤猫:

既に同一タイトルがあったことに気づかず、陽炎日記として公開してしまって申し訳ありません。公開していたのは30分とは言え、関係者の方々には不快な思いをさせてしまい申し訳ありませんでした。

 

村雨:

……なんか不十分な謝罪だけど、これでごめんなさい。それで? 何で私だったの?

 

赤猫:

面倒見の良さそうな娘だけだと色々いたんだけど、途中まで書いていた関係で一定以上の年齢の艦娘である必要がある。そうなると候補が少ないんだよね。

 

村雨:

ふんふん、それで?

 

赤猫:

その時点で候補は白露型と陽炎型、神風型になるわけだ。海外艦はまだZ1とZ3しか入手していないから論外。

 

村雨:

ふんふん。何となく判って来たけど、先どうぞ。

 

赤猫:

陽炎が候補から外れると、他の陽炎型は面倒見という点で正直ちょっと使いにくい。神風型は神風と春風と旗風はいるけど、これも他の艦娘とはどうかと考えるとちょっと絡めにくい。何せ駆逐艦の中では峯風級除いたら最年長だし他の艦娘が遠慮しそう。となると候補は白露型だけ。

 

村雨:

やっぱり。白露は提督や妹の面倒見は良いけど他の艦娘の面倒見が良いかって考えると疑問が出るし、時雨は色々他の作者さんの作品と被りそうだものね。それで私か……。

 

赤猫:

年長そうな白露型で日記書きそうな娘が他に思いつかなかったって言うのが一番の理由だけどね。海風も江風もまだいないし(2018/3/17)

 

村雨:

あら? 軽巡以上の娘は? 名取さんとか熊野さんとか金剛さんとかお気に入りでしょ?

 

赤猫:

軽巡以上は娘として扱いにくい。むしろ嫁。

 

村雨:

うわ、欲望駄々洩れ。……名取さんも嫁艦? 見た目、学生なんですけど。学生に手出すなんて提督ってばロリコン?

 

赤猫:

服装は脳内変換すればOK! 出撃時はともかく、母港での服装は提督からのプレゼントとかで変更できればいいのに。絵師さん死にそうだけど……。

 

村雨:

でもあの題名は酷くない? 私、小悪魔じゃないわよ。それに最後のアレ。アレナニ?

 

赤猫:

村雨と言えば小悪魔めいた娘というイメージがあったからね。秘密の~って部分は色々とあってね……天然でちょっぴり腹黒い村雨になる予定だったし。陽炎プロットの改編という時点で無理だったけどね。最後のアレ、小悪魔って言ったらルージュと言うイメージがあるんでね。

 

村雨:

風評被害って嫌ね。それで、聞こえにくかったけど色々って? 言わないと、色んなところ擽ぐっ(くすぐっ)ちゃうぞ♪

 

赤猫:

秘密です。……村雨、年頃の娘が手をワキワキしながらおっさんを(まさぐ)るんじゃありません!(ペシッ) そういうのは夜にまたな……

 

村雨:

は~い。もう、ノリが悪いんだから。あ、そもそもこの日記帳ってどういう扱いなの? 会話文みたいな感じで何か変。

 

赤猫:

あ。それか。この世界で艦娘が書く日記帳は艦娘専用の日記帳で妖精さん特製品という扱い。艦娘が音声入力したのをセットした紙の日記帳に自動印刷するものと考えて。イメージ的には銀行の預金通帳の記帳かな。プリンタに日記帳をセットして、村雨が口述したものを印字していって後は自分の手書きとかと組み合わせて書いてます的な。

 

村雨:

想像すると恥ずかしいんですけど、それ。それと会話になっていないところもあるから、気が付いたら治してね、提督。あ、そもそもこの【小悪魔村雨の秘密の日記】を書いた理由は?

 

赤猫:

自作の日常生活ネタのネタ帳代わり。ついでに艦娘=年相応の娘っていう視点でも書きたかった。そして日記という存在が他の作者さんのネタ帳にもなれば、面白そうなもの読めるかもという下心があったのは否定しない。

 

村雨:

うわっ。ネタ帳代わりって身も蓋もないのね。その割にはネタって少なかったわね。

 

赤猫:

ネタの引き出しなんてそんなにないから。我ながらよく365日分埋まったわって感心するわ。

 

村雨:

ああ、それで行事に絡めることが多かったのね?

 

赤猫:

行事って結構あるんだよね。それでかなり助かった。面白知識も色々と知ったしね。

 

村雨:

ホワイトデーは実話が元だっけ? チョコマシュマロ彼女さんに贈ったの。

 

赤猫:

その話はヤメな……(;_:)

 

村雨:

あ。地じゃなかった、機雷だったのね。……食事会ネタは?

 

赤猫:

あれは完全に偶然。2月頃の書いていて気が付いたら木曜日に集まっていたから食事会ネタの曜日にしてしまえと。26日が風呂の日と知ってたら季節湯ネタもそこに持って行けたのにな。気が付いたの9月頃の書いていた時だった。因みに食事会の費用は鎮守府持ちなのは当然な。

 

村雨:

へ~。偶然ってすごいわね。ところで矢鱈と「改」があるわよね。誤字修正?

 

赤猫:

誤字と脱字、ルビ振りミスが殆ど。んで他に【曜日間違い】と【日抜け+曜日修正】に【途中保存と新規投稿の押し間違い】以上。【日抜け+曜日修正】があったところは話を追加したり、世界観の修正は質問あったから色々追加したけどね。

 

村雨:

【途中保存と新規投稿の押し間違い】って、最終話でもやったわよね。この話って最終話の後書き用でしょ? 態々台本形式にしてまで書き直す事かな?

 

赤猫:

言うな……言わないで。書きたかったんじゃ、後書き。最終話の投稿時間が23:48なのは投稿失敗したからです。……最後の最後まで締まらんわ(;_:) 

 

村雨:

よしよし。さ、皆さんにお礼を言いましょうね。

 

赤猫:

此処迄お読みの皆さん、こんな駄作に長い間お付き合い頂き有難うございました。評価していただいた皆様、お気に入り登録していただいた皆様にも改めて御礼申し上げます。誠にありがとうございました。




4/22追記

日記帳の設定で書き忘れてたことが一点。下記の内容を本文に修正追記します。

この日記は艦娘専用の日記帳で妖精さん特製品です。艦娘が音声入力したのをセットした紙の日記帳に自動印刷するものと考えてください(通帳の記帳みたいなイメージでお願いします)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

村雨からの手紙(番外)
親愛なる提督へ


……4/17に投稿するの忘れてた。


 お元気ですか? ってまだ鎮守府を出てから1ヶ月ですね。村雨は元気で頑張っています。

 やっぱり内地は鎮守府と比べてとても寒いです。つい先日も大雪になって、丸の内で25㎝も積もって大騒ぎになっちゃいました。提督お父さんの鎮守府に配属になるまで全国周りましたが、どこも冬は寒かったのを思い出します。以前、お父さんからは「自分が若い頃は温暖化の可能性が叫ばれていた」って聞きましたが、とても信じられません。

 そうそう、一緒に教育を受ける……同期生って言えばいいのかな? 同期生には顔見知りも何人か居ました。和歌山の海南鎮守府で一緒だった鞍馬さんや秋田の男鹿鎮守府で一緒だった海鷹さん。他にも鹿児島の坊津鎮守府の紀伊さんに三重の安濃津鎮守府の伊勢さん、石川の比楽湊鎮守府の伊吹さんに新潟の今町湊鎮守府の笠置さんとか。って言ってもお父さんは知りませんよね。今度帰るときに出来れば紹介したいです。後、ごめんなさい。何回か紀伊さん達の前で鳥島鎮守府では養子艦以外の娘も鎮守府長官をお父さん呼びしているって喋っちゃいました。話を聞いた紀伊さんや笠置さんがちょっと怖い顔で私が帰るときは絶対同行するって……何か誤解していそうです。何か誤解しているようなら帰るまでにはその誤解を解いておきますね。

 私と同部屋になったのは仁淀さんで、房総の銚子鎮守府から来たそうです。銚子といえば六躯の娘達が異動した鎮守府ですよね。あの娘達も色々頑張っているそうですよ。街の人達にも可愛がられて今ではちょっとしたアイドルで彼方此方のイベントに引っ張りだこだそうです。暁ちゃんは嫌がっているみたいですが、その姿がまた街の御爺ちゃん御婆ちゃんには人気だそうです。

 でも、やっぱりあの娘達も自己紹介の時に提督をお父さん呼びしてしまったそうで、銚子ではしばらくの間『鳥島鎮守府の提督は艦娘に無理矢理お父さんと呼ばせて悦に入ってる鬼畜』扱いだったそうですよ。最近やっと誤解も解けて、今では鎮守府の艦娘の間で嫌がる提督をお父さん呼びするのがブームだそうです。

 ……あ、銚子の提督からの伝言は届いていますか? 今度、1週間ほど特別演習を組んで欲しいそうです。演習の時は事前に教えてくださいね、何とか実践演習の一環として帰って頑張りますから。

 そうそう、参謀教育の事ですが朝から晩まで座学かと思ったら、そんなこと全然なくてある程度の基礎知識を教え込んだらすぐに実践演習なんですよ。大本営にしかない仮想空間設備で灼熱の赤道直下での海戦や凍てつくような厳冬期の北極海での海戦とか、渡された海図と現場が違っていたりとか。それで、何故その戦法を採ったのかとか装備は適切だったのかとか事前に入手した情報の信頼性や正確性とか色々考えさせられて速やかな判断を要求されるんです。また、回答に対しての指導が理に適っていて、さすが大本営って感じ。

 ちょっぴり不安だった頭でっかちの参謀教育じゃなかったのは良かったけど、これが結構大変なんです。無事参謀教育を修了した艦娘が大本営とか大本営直轄鎮守府へ配属が決まってるのも納得できます。

 

 ……あれ? そうなると出身鎮守府に戻れる私って随分特別扱いされてる? 杉野提督ってば、かなり無理してたんじゃ……。

 ま、いいか。

 

 あ、そんな訳で村雨は元気でやっています。

 お父さんも心配しないでください。まだ暫くは戻れそうにないけど長期休暇になったら必ず戻ります。

 また今度会える日を楽しみにしています。それではまた。

 




次の投稿は夏季休暇の時期か年末年始か2年後の帰還時期かw
投稿できるかわからないので完結扱いにしたままですが。


【挿絵表示】
銚子鎮守府提督のイメージw


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

その後の日記――抜粋――
村雨の日記――研修先での一コマ その1――


7月6日(土)

 明日は七夕。研修も明日明後日(あしたあさって)と久々の連休。そう言えば一昨日鳥島のお父さんから手紙が来たけど……。埼玉の小江戸鎮守府で受け取って欲しいものがあるんだって。私に頼まなくて、直接取りにくればいいのに。そうすれば私も久しぶりに会えるんだから。偶には会いたいのにな。

 まぁ一日空いているから旅行がてら取りに行くけどね。受け取るものって何だろ?

 

 

7月7日(日)

 お父さんの依頼で埼玉の小江戸まで荷物の受け取りに行ってきたんだけど、荷物の事はさておき、色々面白かったなぁ。行きは鉄道で丸の内から2時間程で駅に着いたんだけど、時間まで少し余裕があったから駅前で買った芋ババロアとか食べながら街中を観光。唐桟がすっごく安いと思ったら今日は浴衣の日だからみたい。唐桟って平織りの細い木綿糸を使う絹そっくりの風合いの布なんだけど、一反で8,000コインってかなりお得よね。これで浴衣を仕立てても良いかも。とか思っちゃった。それにしても、こんなご時世でも街中は意外と混んでいるのよね。時の鐘とか見て駄菓子屋によったりして、のんびり歩いて小江戸鎮守府に行ったんだけど、郊外にあるとは言っても一時間も歩けば鎮守府が見えてくるのよね。あそこの鎮守府初めて行ったけど、初めはこぢんまりとしていてホントに鎮守府なのかなって思っちゃったよ。中に入ったら辺り一面田圃と畑だし。提督は麦わら帽子とポロシャツとチノパン姿でトラクター運転してるし。どう見ても農家のおじさんだと思って普通に会話して鎮守府の本庁舎に行ったらちょっと前に会ったおじさんが糊の利いた制服に着替えて待ってるんだもん、吃驚だよ。色々とお話したら、お父さんとは士官学校以来の交友関係だって言うし……。お父さん、教えてくれても良かったんじゃない? おまけに色々と初めて聞くことがあって結構ショックだったのよね。向こうの提督はとっくに知っているものと思っていたらしくてかなり慌ててたけど。

 ……内緒にしたかったのはなんとなくわかったけど、今度帰ったらきっちりと問い詰めなくちゃ。……紀伊さんや笠置さん、(けしか)けようかな?

 お土産に菓匠右門という地元ではかなり有名なお菓子屋さんの七夕限定の和菓子を貰っちゃいました。

 それと、受け取るものがお米20俵って聞いてないよ。おまけに苗木とか野菜の種とか……私、運送屋じゃないよ。

 帰りは荷物が多いから川舟を借りて川を使って帰ったんだけど、荒川から八丁堀と京橋川を通って外堀から帰るつもりだったの。でも八丁堀の途中で止められちゃってそこから丸の内までは自分で運ぶことに。とっても重かったよ……。

 今度は絶対に断るからね! 手紙書いて置かないと。

 

 

7月8日(月)

 今日は竹島防衛戦戦勝日で研修もお休み。大本営で半年ほど研修を受けていて気が付いたんだけど、やっぱり大本営だと、4月18日のドーリットル空襲と海軍甲事件とか6月5日のミッドウェー海戦や2月8日のヤルタ会談の内容を小野寺大佐達が暗号解読に成功した2月25日とか軍事的な記念日が多いのよね。他にも南鳥島鎮守府を失った11月10日や沖ノ鳥島鎮守府を失った11月13日も戒めの為の記念日としているの。

 そう言えばお父さんの鳥島鎮守府では南鳥島や沖ノ鳥島の失陥した日は特に意識していなかったけど、あれは何か理由があったのかな?

 竹芝港に青ヶ島鎮守府までの船便があったから鳥島鎮守府宛で依頼のあったお米とかは全部纏めて送ったけど……無事に着くと良いな。後で連絡しておこうっと。

 

 




小旅行ネタ書きたかったんですが、挫折しました。

2018/07/07:こじんまり⇒こぢんまりに訂正


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

村雨の日記――研修先での一コマ その2――

そろそろ投稿を再開しようとしたら書けない……。
取り敢えずリハビリ代わりの投稿です。



8月7日(水)

 明日が立秋だからそろそろお父さんの誕生日か。週末から盆休みだけど12日には鳥島に戻っていたいから買い物は10日までかな。今年は何贈ろうかな。朝、仁淀さんに相談したら笑いながら「村雨ちゃんの身体に長いリボンを巻いて夜中に『はいプレゼント』って言えばOKよ。あ、プレゼントあげるのってお父さんだったわね。じゃ、これはだめね」だって。もう、真剣に悩んでいるのに。明日は級友に相談してみよっと。

 

8月8日(木)

 今日は立秋。やっちゃった。大失敗。去年お父さんに贈った手作りのナンバンアカアズキのブレスレッドってとんでもない意味があったんだね。お父さんに贈る誕生日祝いの贈り物を級友に相談したら、昨年は何を贈ったの? って話になったんだ。それでナンバンアカアズキのブレスレッドを贈ったって言ったら馬公鎮守府の能登呂さんが「村雨ってば大胆」だって。理由を聞いて吃驚。

 父島のナンバンアカアズキは海紅豆(かいこうず)っていう種類だって言う事は現地で教えて貰って知ってたんだ。だから鳥島で見つけた豆がトウアズキじゃないって気づけたの。でも初めて知ったんだけど、海紅豆って相思樹とも言われてたんだね。能登呂さんが「詩仏と言われていた王維が若き日にこれを使って『紅豆生南國 春來發幾枝 願君多采 此物最相思』って告白したから、これを贈る行為は独身の人から意中の人へ『貴方を想う』って告白の意味があるのよ」だって。周りから「禁断の恋ぃ?」なんてすごく囃し立てられちゃったよ。おまけに去年鳥島から北大東島に異動した長鯨さんが「鳥島の父上はその由来をご存じだった筈」って言ってまた大盛り上がり。そんな由来なんて私知らなかったよ。お父さん、知ってたら教えてよ……。飛龍さん達は笑って済ませてくれるんだろうけど、私は合わせる顔がないよ。

 

8月9日(金)

 明日から16日までお盆休み。

 昨日の事がまだ頭から離れないよ。おかげで演習で散々な目に遭ったし、体調不良の疑いありって強制的に検診を受けさせられたし。前にお邪魔した埼玉の小江戸鎮守府の提督から聞いた話も浮かんでくるし。えっと、脇田提督の鎮守府に脇田提督の又甥ーーってこれも吃驚だったけどね。又甥のお父さんが卒業報告で来た時に最初に出迎えたのが私だったって教わったのよね。小江戸の提督が聞き出したら脇田提督の所に案内するまで色々と助言して貰ったり楽しかったって喜んでいたらしいんだけど。……何を言ったのか覚えてないのよね。出会っていた事さえ覚えていなかったし。……あの当時のお父さんって多分20代前半かな? 抱き着いたりとか腕を組んだりとか揶揄って変な事はしていないと思うけどね、迎える時にどういう人かは教わる筈だし。……身内扱いで揶揄ってないと良いな。私の態度、あっちに帰るまでに元に戻ってるかなぁ。

 

8月10日(土)

 今日は一日買物に明け暮れた日。2000年代前半は物資もまだ足りなかったから大変だったらしいけどね。それにしても、前に広瀬提督から新旧の米穀配給通帳を見せてもらった時はしんみりとしちゃったなぁ。昭和57年にやっと米穀配給通帳が廃止されたと思ったらまた復活だもんね。5年前に臨時物資需給調整法が改定されてやっと「供給の特に不足する物資」を除いて配給制が解除されているけど。

 プレゼントはお洒落なインテリアっぽいディプティックってメーカーのディフューザーを骨董市で発見したから即買い。我ながら良いもの買っちゃった。オイルは自分で調香しちゃおっと。私らしさを印象付ける香りで私の事も偶には思い出してもらわないとね。……加齢臭対策じゃないからね、誤解しないで欲しいな。

 島に戻る準備をしていたら紀伊さんと笠置さんが仁淀さんと一緒に来て一緒に行っても良いかって聞かれたんだ。大丈夫だとは思ったけど、一応お父さんに連絡したら大丈夫だって。良かった。

 さてっと、明日は早くに出港だからまだ20時だけどもう寝よっと。

 

 

8月11日(日)

 懐かしの我が家に到着! って、もうすっかりここが私の戻る場所になっちゃったな。一昨年の12月は不安だったのにね。早速夕立や春雨達にお土産もっていかなくちゃ。そ・れ・と、お父さんにも色々聞かないとね。折角、紀伊さん達が一緒に来てくれたんだから、皆でお話、ね。

 

 

8月12日(月)

 昨日はお父さんや紀伊さん達とお話した後、夕方皆に歓迎会開いて貰っちゃった。久しぶりに那珂さん達とバンド演奏もできたし楽しかったなぁ。

 今日は紀伊さんや笠置さんは鎮守府の皆と哨戒活動に出かけて行ったみたい。お父さんは頻りに恐縮していたけど、あの二人って姉御肌で面倒見も良いし二人の鎮守府に居た時は私もずいぶん助けられちゃったなぁ。陽炎ちゃん達とも打ち解けていたし金剛さんや飛龍さん達とも色々盛り上がっていたみたい。何よりお客さん扱いは苦手だって言っていたから丁度良かったのかも。私も行こうとしたら紀伊さん達にプレゼント作りに専念していなさいって言われちゃった。お言葉に甘えて一日調香していたんだけど、私を印象付けるオイルも何とか完成しました。

 明日はお父さんの誕生日。プレゼントのディフューザーも磨けたし箱にラッピングしたらお終いっと。

 

 

8月13日(火)

 今日はお父さんの誕生日。去年と同じように朝からお祝いムード一色。

 金剛さん達は去年以上に張り切っていたし父島や母島からも鬼怒さん達がお祝いに駆け付けてくれたのよね。南大東島鎮守府の長門さんや銚子の暁ちゃん達からも祝電があったし去年以上に規模が大きくなっていてびっくり。間宮さん達の手作りケーキ、美味しかったなぁ。大本営でも食べられるけど、ここのケーキは南国果物がふんだんに使われているから大本営とはまた違った味なんだ。う~ん、私はこっちが好きかな。我が家のケーキだし。なんてね。そうそう、プレゼントは飛龍さん達お嫁さん組の次の養子組の一番最後で無事渡せました。お父さんに良い香りだって喜んでもらえたんだ。良かった。

 

 

8月14日(水)

 休みは16日までだからね。今日の便で帰らないと大変。

 昨日は夜更かしして皆とお話してたら香取さんに怒られちゃった。気持ちは解るから懲罰簿には記載しないけどもう少し静かにする事、だって。ごめんなさい。

 その後で寝ちゃったら寝坊しちゃった。慌てて食堂に行ったら食事を終えた紀伊さんと笠置さんにバッタリ。二人に村雨のそんな姿は初めてだって呆れられちゃった。

 今日でまたしばらく皆とお別れだからって午後から送別会をお父さんと那珂さんが計画して開いてくれたんだ。皆で一緒に演奏会をしたり、飛び入りで紀伊さんがコントラバスで演奏してくれたり笠置さんのハープ演奏があったりと賑やかだったの。最後にビールの似顔絵彫刻ボトルを貰ったんだ。似顔絵は秋雲ちゃんが描いてくれたのを明石さんが彫刻して、ビールはお父さんが私が去年父の日のプレゼントで贈ったMini Brewで醸造したんだって。瓶も夕張さんと桃取さんが妖精さんと一緒に手作りしてくれていたの。紀伊さん達の分まで用意してあってお父さんが「これからも娘を宜しくお願いします」って。

 帰りの船中で夕日を見ながら紀伊さんが、良い鎮守府だったなってぽつりと漏らした時は嬉しかった。三人を連れてきて良かった。

 

 




因みに紀伊や笠置が急に村雨についてきたのには裏事情があります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

村雨の日記――研修先での一コマ その3――

1/27(月)

 今日は鎌倉鎮守府から来ていた雲鷹さんがそわそわして落ち着きがなかったのよね。お昼に事情を聴いたら、今日は実朝忌だから鎌倉の寿福寺で歌人たちによる追悼会が催されているのよ、だって。よ~く聞いたら提督も正装で参加しているから毎年楽しみにしていたのよねって。確かに立襟燕尾服での参加は珍しいかも。提督の服装で盛り上がっていたら生駒さんが雲鷹さんの提督の写真見せてってお願いしたの。雲鷹さんてば、なかなか見せてくれなかったけど私が後ろから回って奪取して皆に見せたら顔真っ赤になっちゃって。まぁ、二人だけで写っていた写真だし。雲鷹さんの肩に提督の腕が廻されていたし、雲鷹さんの腕も提督の背中越しに廻されていたし。それを見た能登呂さんと仁淀さんが物凄い追及をしちゃって……。皆、恋の話って大好きだもんね。

 そう言えば今年の12月で参謀教育も修了なんだよね。それだけに今年の課業は昨年より高密度になっているのよね。この学級も脱落者が出ない様に皆で勉強会とかしているの。それにしても来週からの一次試験、無事乗り切れるかな? 土曜日が初天神だったから湯島天神でお守り買ったけど……。

 ダメダメ、人事を尽くして天命を待つって言うし、勉強勉強! 今の級友と離れ離れになるのは少し寂しいけど、修了後は私も少佐待遇の佐官。峯風さんに近づけるのはすごく楽しみだから。

 

 

1/28(火)

 今日は初不動に初荒神ね。お不動さんの縁日と、三宝荒神(さんぼうこうじん)様の縁日は同じ毎月28日だけど1月28日は新年最初の縁日だからね。

 そう言えば前にお父さんから聞いたけど「逸話の日」でもあるんだっけ? 「()()()」(逸話)と読む語呂合わせからきているって聞いたけど……。

 まだ世の中にあまり知られていない興味深い話「逸話」を語り合う日かぁ。

 三宝荒神って日本特有の仏教における信仰対象の一つだとか、仏法僧の三宝を守護して不浄を厭離(おんり)する佛神だとか、仏法と伽藍の守護神のことだとか、火と竈の神だから神棚は家の中で最も清浄な場所である台所に祀るとか、不動明王は密教の尊格である明王の一尊で「五大明王」の中心となる明王だとか、「魔を断ち、煩悩をしずめる」とされ、憤怒の相は、不動明王が大日如来の教令輪身で、煩悩を抱える最も救い難い衆生をも力ずくで救うための姿をしているとか、背中の炎は迦楼羅をあしらった炎で、毒になるものを焼きつくすことを現すとか、一般常識だもんね。逸話って難しいわよね。

 

 

1/29(水)

 今日は冬土用未の日。【ひ】のつくものか赤い色の物を食べると良いのよね。お父さん達は何食べるんだろ? そんな話を課業前にしていたら何で赤い色なのって聞かれちゃった。

 そう言えば、お父さんの鎮守府に来た時はそんなこと知らなかったから、後で何で赤青黒白の色を食べると良いのか聞いた事あったけど、色は五行思想と春夏秋冬の色が由来だって言ってたわね。聞いたのは夏だったから、黒色の物を食べたのよね。夏の反対が冬だから、夏に足りない冬の力を補うために冬の色の黒を取り込んだんだっけ? 日記に書いていたわよね……多分。後でお父さんか香取さんに電話して聞いてみよっと。

 

 

1/30(木)

 今日は孝明天皇祭。皇霊殿と陵所で祭典が行われるのよね。夜には御神楽も行われるって。孝明天皇と言えば終始攘夷を望んだけど過激な討幕運動には反対して和宮様を14代将軍家茂公に嫁がせて公武合体の立場をとった方よね。疱瘡で亡くなられたけど、もう少し天命があったらあの戊辰戦役が無くて穏やかな政権返上が行われていたのかしら? そうなったら今の世ってどうなっていたかしらね。

 

 

1/31(金)

 今日は晦日節。名古屋鎮守府にいたときは正月の終わりの日としてお祝いしたのよね。名古屋とか岐阜や飛騨の方だと新しく餅を搗いて神棚にお供えして、松の内に年始回りに行けなかった親類を訪問するのよね。名古屋鎮守府だと伊勢とか高山とかの鎮守府に挨拶、と言うかあれって演習の申し込み? とにかくこの日に挨拶に行ったのよね。夜はお蕎麦を食べてお祝いしたけど、懐かしいなぁ。

 

 

2/1(土)

 今日は重ね正月ね。教官が厄年だから2度目のお正月としてお正月らしい一日でした。昔は数え年だから厄年ってお正月から始まったのよね。

 それにしても厄年となる人に仮に一つ歳をとらせてまで早く厄年をやり過ごそうなんて、どれだけ厄年が恐れられていたのかしらね。

 

 

2/2(日)

 今日は夫婦の日。こどもの日や敬老の日があるのに夫婦の日がないのは残念。という意見で昭和62年の2月2日に制定されたらしいけど……。私が知っている夫婦の日って11月22日だから気になって調べてみたら、4月にも良い夫婦の日とかあるみたい。語呂合わせだから沢山あるのよね。

 

 




書くの忘れていた。
峯風、現在引退しています。最終階級は准将待遇将官でした。
提督の大叔父(脇田元帥海軍大将、現在91歳。参議院議員5期目で心身ともに元気)の伴侶として公私ともに夫を支えています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

村雨の日記――研修先での一コマ その4――

12月21日(月)

 参謀教育も今週で最後。皆とのお別れもいよいよ間近に迫っているし、任官式もすぐだから今日は午後から予行演習。おかげでいつもより早く課業終了になったからみんなで今日は熊手を買いにお出かけ。流石に関東厄除け三大師だけあって、露店も多いわよね。皆で熊手を買ったんだけど、お父さんから聞いた値切り交渉で今年も楽しめたのよね。皆も今年は同じように交渉して満足感を味わったみたい。

 それにしても、このご時世だからこそなのかな、熊手が招き猫やオカメなどで色鮮やか。値段も数百円の可愛い熊手から数十万円もする誰が買うんだろうって首を傾げる豪華な熊手まで。

 夜は自分で冬至の七種を食べるつもりだったんだけど、同級の皆で冬至の七種を入れた鍋宴会。皆で盛り上がったんだけど、盛り上がりすぎて危うくお風呂に入り損ねる所だったわ。

 冬至だから大浴場がユズと日本酒が入っている酒風呂に。流石に少し酔っちゃった。

 

 

12月22日(火)

 この日記も後6頁になっちゃった。帰る前に新しい日記帳買っておかないと。それにしても、日記の残り頁とここでの日数が同じだなんて何だか出来過ぎ。小説みたい。

 

 

12月23日(水)

 今日は天長節。今日一日休養日という事で街に出かけたんだけど、今上陛下が来年の譲位を思召されてから初の天長節という事もあって、色々雰囲気が違うのよね。いよいよ一つの時代が終わるのね。

 

 

12月24日(木)

 今日はクリスマス・イヴ。終業後に皆で酒保に繰り出したんだけど、流石に色々なものがそろっているのよね。明日のパーティに向けて足りないものも買えたし。いよいよ最後のパーティ、楽しまなくちゃ。

 

 

12月25日(金)

 今日は色々なイベントが重なっちゃっているのよね。クリスマスでしょ、終い天神でしょ、そして大正天皇祭に私達の任官式。

 午前中の大正天皇祭を拝聴して、そのまま任官式開催という流れだったけど、任官式に鳥島のお父さんが参列していたのよね。小さく手を振って貰えたけど、その姿見たら、なんだか涙が出てきちゃって……。隣にいた笠置さんに気が付かれてハンカチ貰ったけど、その事でも余計に涙が出ちゃって。どうしようもない想いが出てきちゃって式典の間中泣いちゃった。皆もあちこちで泣いていたからそんなに目立ってはいないと思うけどね。

 流石に元帥閣下から金線2本1桜の肩章と飾緒を授与された時には泣き止めたけどね。

 夕方からはもう大変。任官式も終えて、そのままクリスマスパーティだもんね。

 ……私は適当なところで抜け出しちゃったけど。

 

 

12月26日(土)

 荷造りも無事終了。同室だった仁淀さんと挨拶を交わしたら、彼女が大泣きしちゃって大変だったのよね。今生の別れじゃないんだからね。絶対この2年の経験は役に立つんだからって。機会があったらいつでも遊びに行くって約束してお別れしたけど、ね。

 でもよくよく考えると、私は何度も異動を経験しているし、また会えるから最後じゃないって思っているけど、お父さんの鎮守府でも大異動があった時はしんみりとしちゃったもんね。広瀬提督から教わった独座観念、まだまだこの境地には立てないなぁ。

 

 

12月27日(日)

 最後の最後に皆で集まって互いの武運長久を祈って万歳三唱でお別れ。

 父島とか硫黄島とかに配属になったらよろしくねって笑顔で別れたけど皆は今後どこに配属になるんだろう。

 また会う機会もあるんだろうけど、今は帰った後の事を考えなくちゃ。

 私の金線2本1桜の肩章と飾緒の重みに負けないように、お父さんを支えていくことを誓って、この日記を終わりにします。

 でも行き詰ったらまたこの日記を開くかも。

 そんな私に一言。

 

 この2年分の日記のどこかには必ず解決する方法が書かれているからね、頑張れ、私!

 

 




これにて【小悪魔村雨の秘密の日記】は、最終回となります。
この後は無事、鳥島鎮守府の参謀として勤務をこなす日々となります。

御拝読ありがとうございました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 5~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。