俺のツンドラ妹 (旭影)
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1話

 11月某日、金曜日の夕方6時。

俺は学校が終わって家でゲームをしていた。

高校三年生だがもう大学は決まっている。

後は最後の高校生活を満喫するだけだが、どうも学校というものは好きではない。

今朝も遅刻をしそうになったが、あいつのおかげで事なきを得た。

そう、今朝の出来事は俺の経験の中でも特に異彩を放つものだった。

 

 

――――――――――

 

 

 朝7時。スマホにセットしたアラームがけたたましく鳴り響いた。

あと10分、いやあと5分だけ寝ようとしてアラームを切った時、それは襲来した。

 

「おにい起きてーーー!」

 

 ドン!

 かなり重い衝撃が腹を襲った。

 何事かと思い朦朧とした意識を何とか覚ましながら声がしたであろう方向に目を向けた。

 

「なんだ、つぐみか。」

 

 自分の腹にまたがっていたのは妹のつぐみだった。

パジャマから除くへそやら太ももやらが危ないことになっているが、努めて視線に入れないようにしながら会話をする。

 

「さすがに全体重をかけたのしかかりは重い。あと場所が場所なんでそこどいてくれるか?生理現象には逆らえん。」

 

 そういうとつぐみはニヤリとしてこう言った。

 

「なにおにい、妹で欲情してるの?きっもーい。まあ服の丈短めだししょうがないかなー?」

 

 確信犯だった。こいつ完全に誘ってやがる。

しかしいつもの永遠ツンドラが皆無に見えるのが気がかりだ。

普段はこんなエロゲの妹のような言動はしないはず。

 俺はベッドから起き上がり、たっぷり数秒かけて伸びをした後、違和感の正体を探り始めた。

 

「どうしたつぐみ、変なものでも見たか?」

 

「んー?別になんでもー?ただちょーっと右手に集中してて周りがおろそかになってるなーって思っただけだよ?」

 

 なんと、部屋に侵入されていたとは。そして俺は知らない間に弱みを握られていたようだ。

 

「・・・何が望みだ?」

 

「えっへへーやったー!あのね、駅前に新しいクレープ屋さんができたんだ―!」

 

「わかった、駅前のあのモールで荷物持ちだな任せろ」

 

「ありがと。これでサービスの分までちゃらにしたげる。」

 

 このしぐさは俺から期待以上の対価を引き出す作戦だったようだ。

どこで覚えたんだか。俺のエロゲからなのは明らかである。

 

「よし、明日連れてってやるから、部屋から出てくれ、着替えられない。」

 

「はーい」

 

 つぐみが部屋から出たのを確認して、着替えを始める。

週末にとんだイベントが舞い込んだものだ。

俺は明日の激務を想像しながら、登校の準備を始めるのだった。

 

 

――――――――――

 

 

「はー緊張した。」

 

 おにいの部屋を出て、私は深呼吸する。

今までの誘ったような言動は、おにいのパソコンにあったゲームのしぐさをまねてみたのだ。

一発本番だったがうまくいったようだ。

 

「次は呼び方かなー、でもなんか恥ずかしいし・・・」

 

 画面の中の子はお兄ちゃんと呼んでいた。

 

「やっぱりああいうのが好きなのかな・・・」

 

 パソコンの中には妹が出てくるゲームばかりだった。

おしとやかな子から元気な子までいろいろいたが、私のような冷たく接するような子は一人もいなかった。

 

「お、お兄ちゃん・・・ううぅ~やっぱり恥ずかしい!」

 

 一人自分の部屋でジタバタする。

おにいの理想の妹になるには、とても難しそうだ。

 




ちなみに私は受験終わってません。


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2話

 「ふぃー、疲れたー。」

 

 夜八時。俺は長時間ゲームをして固まった肩や背中を伸ばす。

友達と通話をしながらゲームをしていたが、思ったより熱中してしまった。

時計を確認すると数時間経っていた。

 友達とは中学の時はクラスメイトだったが高校になって違う学校に通うようになった。

だからといって疎遠になるようなことはなく、ほぼ毎日こうしてゲームをしているのでかなり身近に感じる。

 今夜も両親の帰りは遅くなるようなので、もうそろそろ夕飯を作る時間だ。

俺は冷蔵庫の在庫を思い出しながらキッチンに向かった。

 

 キッチンで料理をしていると、つぐみが学校から帰ってきた。

テニス部の活動が終わったのだろう。

 

「ただいまーあー疲れたー」

 

 帰ってくるやいなやつぐみはソファーに倒れ込んだ。

 

「ずいぶんお疲れのようだな。」

「今日は顧問がやたら張り切っててさー。いつもの倍のメニューこなしたんだよ。」

 

 つぐみはだらーと脱力しながら答えた。

 

「夕飯作るの手伝ってもらおうかと思ったがこれはだめそうだな。」

「うん。おにいよろしくー。」

 

 妹の援護は受けれそうにない。さっさとソロで作る事にした。

 

 両親の分を冷蔵庫に入れ、自分達の分を配膳し、つぐみを呼びに行った所、ソファーにいなかった。

自室にいるのだろうか。つぐみの部屋に呼びにいく。

 

 コンコン

 つぐみの部屋のドアをノックして確認をとる。

しかし返事は無かったので入ることにした。

 

「入るぞー」

 

 一歩踏み出した。

女の子特有の香りに一瞬躊躇したが、部屋を見渡す。

ピンクを基調とした机やたんすに、どこぞの男性アイドルのポスターが一枚張ってある。

昔の記憶と違ってかなり女子の部屋になっていた。

ここ数年つぐみの部屋に入ったことが無かったせいか、かなり緊張している。

ある時を境につぐみは母さんや友達以外一切自分の部屋に入れなくなった。

俺が部屋の前で呼ぶと必ず返事が帰ってくるので暗黙のうちに部屋に入るなという意志を感じられるほどだ。

当たり前な女子の反応だが、父さんがとても悲しんでいた。

 

そう考えるとつぐみの部屋に入れたというこの状況はかなりイレギュラーな事なのではないか。

今朝の言動とこの状況からして何か尋常ならざる事がつぐみを襲っているかもしれない。

しかし俺がしてあげられる事は何も無いので静かに見守っているべきだろう。

 

 つぐみはベッドの上で無防備に寝ていた。

これは今朝の仕返しにちょっといたずらでもしてしまおうか。

いや、逆に罠かもしれない。これは俺を誘っていると見るべきか。

 試しに声を掛けてみた。

 

「寝たふりはいいから起きろ。飯出来たぞ。」

「あ、分かった?いたずらするかと思ったんだけど。」

 

 危ない、もう少しで更に弱みを握られる所だった。

 

「流石に朝の事もあるからな。またネタを握られたらかなわんよ。」

 

 いたずらしかけたとは口が裂けても言えない。どんな事をされるかたまったもんじゃない。

 

「でも私が気づかないうちに視漢されたかも。」

「馬鹿な事言ってないで行くぞ。」

「はーい」

 

 夕飯が冷めてしまわないように、気持ち急ぎめでリビングに戻った。

 




妹に電子辞書を貸したまま帰ってきません。
続きが入っているので早めに返してほしいです。


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3話

lkina:ルキナ(主人公)
serve:サーヴ
rodent:げっ歯類
rise:ライズ
azuki_man:あずき

全員男(の予定)です




lkina>「今朝といいさっきの飯時といいなんかおかしいんだよなぁ。」

serve>「ふーん、あの妹ちゃんがねぇ。そんなことより敵そっち行くぞー」

lkina>「はいよ、っと」

「「「「ナイスキル」」」」

 

 俺は飯を食い終わった後、再び友達とゲームをしている。

最初の内はやることが無かったので、仕方なく誘われてやっているといった感じだったが、案外はまってしまった。

今では毎日こなしている。

 

serve>「で、俺らに相談して何をしてほしいんだ?ガンク行くぞー。」

rodent>「色々考えて無いで妹とのデートを楽しんでこい爆発しろとでも言えばいいんですかね。フラッシュ落としたナイスガンク」

rise>「俺の妹が一緒に出掛けようって言ったら何も考えずにあー荷物持ちしてる間暇だなーってスマホいじってるけどね。あ、あいつ体力ミリ残った、ミアピン焚いとこ。」

azuki_man>「いやでもこの彼女いない歴=年齢のルキナがいきなりデートなんてもんを成功させることが出来るとは思えないってそんなことより敵来てるんですけど!ヘルプ!」

serve>「あーはいはい帰って買い物したらそっち行くわ。」

lkina>「お前らに相談した俺が悪かったよ…」

 

 この某敵陣破壊ゲームをやりながら別の話題で会話が出来るあたり異常なことには気付かない。

ちなみに俺は大ダメージを出してチームを引っ張る役目で、駆け引きが多発している。

 しかしこいつらは俺の事をディスるだけで何もアドバイスらしい事を言わない。使えないやつらである。

 

 しばらくすると、試合が終わった。

こちらのチームの勝利である。

 

serve>「はいおつかれー。」

rodent>「いやー対面雑魚くて助かったわ。」

rise>「アシスト25は多すぎ。もうちょっとキル欲しい。」

azuki_man>「なにあいつ対面固すぎやろうっざ。」

lkina>「やっぱりこのロール苦手だ。」

 

 それぞれが試合の結果を振り返る。

やはり駆け引きが苦手な俺はこの役は向いていない。

あまり良い成績を出せていない。

 

serve>「よしお前ら明日ルキナの最寄り駅集合な!」

「「「了解ッ!」」」

lkina>「なんでそうなる…」

serve>「俺らに相談するってことはそういうことだろ?」

rise>「俺らがまともなアドバイス出来ると思ってんの?」

rodent>「まあうちのグルに一人だけこういうことに長けてるやつはいるが今いないしなぁ…」

azuki_man>「というか俺遠すぎて行けないんやけど」

rise>「あずきはパソコン使ってGPS追跡してもらうから」

lkina>「は?GPS追跡?まさかお前googleのアレを使うつもりか?」

rise>「そうだよ。お前ら兄妹二人ともスマホandroidだろ?ならスマホに仮のgoogleアカウント一つ追加するだけでウェブで簡単にスマホの位置特定出来るぜ。」

「「「ふーん」」」

rise>「というわけで今すぐ妹のスマホに指定したアカウントでログインして来い。どうせ妹の端末のロックは記憶してるだろ?」

lkina>「まあそうだけどさぁ。」

 

 こいつと俺は機械に詳しいということもあって家族によくスマホやらの使い方を聞かれる事が多い。

その時にロックを躊躇なく見せてくるので覚えてしまった。

よくライズが「めんどくせぇから情弱は情報端末使うんじゃねぇ!」と叫んでいるのを聞くが俺もその通りだと思うことは少なくない。

特に同じ事を何回も聞かれたり、自分で調べたら詳しい解説がされているウェブサイトをすぐに見つけられる事案などを聞かれたりすると確かに叫びたくなる。

 

lkina>「まあ気が向いたらな。」

rise>「そんな事いっときながらGPS追跡とか興味ありすぎてどうせ追加するだろお前。」

lkina>「何故わかったし。」

rise>「同類の気持ちは痛いほどわかる。多少のリスクは無視して新しい経験を欲しがるもんだ。」

 

 明日は別の意味でも大変な事になりそうだ。

 




電子辞書帰ってきました。

作中のゲームはlots of laughsの頭文字のやつ()です。


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4話

tiger:タイガー

このグループで唯一彼女いるリア充です。


《ブラボー、定位置に付いた。送れ》

《アルファ了解。ブラボー、チャーリーは第一対象Tの動きあるまで待機。送れ》

《ブラボー了解。送れ》

《チャーリー了解。送れ》

《オーバー》

「何やってんだお前ら…。」

 

 俺は今駅前で待ち合わせをしている。

昨日つぐみに要求された買い物の荷物持ちをするためだ。

何故兄妹なのに一人で待ち合わせをしているのかというと、一緒に家を出ようとしたら、つぐみが先に行っててと言って譲らなかったからだ。

お陰で駅でこいつらに出くわして、通話に強制参加させられた。

 

「このハンズフリーイヤホンをしてデート中の音声を逐一俺らに届けるように」

 

とはアルファ隊のリーダーサーヴの言葉だ。

外出中はいつもイヤホンをしているのでつぐみから変な目で見られないのがせめてもの救いだ。

 

「なんで普通の電話なのにトランシーバーみたいなんだ?」

《雰囲気だよ。ほんとはトランシーバー使いたかったけど範囲が狭いうえに色々とルールがあってめんどくさいからやめた。あと高いし。》

「お前なぁ…」

 

 ブラボーのライズがそういった。

確かに免許のいらない物は範囲が狭いと聞いたことがある。

 等と話していると、緊張した声がイヤホンから聞こえた。

 

《ブラボー、対象の移動を確認。追跡を開始する。送れ》

《アルファ了解。チャーリー、GPS追跡を開始。送れ》

《チャーリー了解。対象Tの位置捕捉、対象Lとの接触まであと5分。送れ》

《アルファ了解。オーバー》

「来たか…」

 

 妹だと解っていても緊張してしまう。

身構える時間をくれた所はこいつらの評価を改めなければいけない。

 

《そう力を入れるな。自然体を心掛けろ。》

「そうは言ってもだな…。」

《相手は身内だろ?そんなに身構えて逆に不信がられるぞ。》

「流石はタイガーだな、その調子でどんどん助言をくれ。こいつら全然使えん。」

 

 最初何故通話などというめんどくさい真似をしなければならないのか解らなかったが、アドバイスをしたり周囲の警戒をしてくれるという事なので最後には許可してしまった。

 

《まあ俺らの役割は観察してタイガー師匠に状況判断してもらうのと用心棒()ぐらいしかないからなぁ。》

「用心棒に関してはお前らに力を借りるまでもない。厨二病時代に我流拳法(笑)を編み出した恩恵がある。」

 

 そんじょそこらのチンピラには負けないつもりだ。

しかしかなり苦しい過去も一緒に思い出すのであまり使いたくない。

 

《タイガーがいる司令塔のアルファが崩れたら何も出来ないからな。しっかりしろよサーヴ。》

《解ってるよ機械オタク。お前こそ妹ちゃんに感づかれるなよ。》

《この俺がこの手の事でミスするわけないだろう。ステルス性能なめんな。》

 

《えーこちらチャーリー、対象接触まで数十秒、目視可能圏内でーす。》

《おっと来たか、いったんこちらの声を遮断する。伝達事項があるときに声を通すから注意するように。あとなにかあったらそっちの声は繋がってるから何かしら言ってくれれば対処する。》

「了解。」

 

 しばらくすると本当に静かになった。

本来待ち合わせとはこういう物だろう。

だが話し相手がいたのはいい暇つぶしになった。

俺はスマホを操作してイヤホンから音楽を流した。

やはり外出するときは何か聞いてないと落ち着かない。

 

「おまたせー。」

 

 予想どうり数十秒経った時つぐみが来た。

時間はかなり正確なようだ。

 

「誰かと電話でもしてた?一人でしゃべってたけど。」

「電話してたけどもう終わったから大丈夫だ。」

 

 本当は終わっていないが。

 

「ふーん。まあいいや、とりあえず映画借りにいきたいな。」

「お、それなら俺もCD借りようかな。」

「おっけー、じゃあとりあえずTSU○AYA行こう。」

「うぃ。」

 

 気楽に、自然体を心掛けて。

日本は安全だしそこまで気を使う必要はない。

いざというときはライズが事前に警告してくれるはずだ。

 

 そうして俺は妹とのデート?を始めたのだった。




冬休み入ってから毎日塾漬けです。つらいです。


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