IS×シャーマンキング (melk)
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男性操縦者・麻倉葉

初めまして!melkといいます。シャーマンキングが好きでマンガを読んでるうちに、「ISとクロスさせたら面白そう!読んでみたい!」と思ったはいいものの、残念ながらそのような作品がなかったため、書いてみました!
初めて書くので、あまり上手くは書けてはいないかもしれませんが、温かく見守ってください!


「みなさん、初めまして!1年1組を担当する山田真耶です。ISのことや生活についてなど、わからないところがあれば、何でも相談してくださいね!」

 

 IS学園入学式当日。しかし、未だに葉は事態を呑み込めずにいた。それもそのはず、たまたま高校の受験会場で見かけたISを、好奇心から彼の持ち霊・阿弥陀丸と共に調べていたところ、女性にしか動かせないはずなのに、なぜか動かしてしまい、そのままよくわからないうちに勝手に話が進められてなぜか入学することになっていたのである。

 

「・・・君!麻倉君!!聞いてますか?」

 

 物思いにふけっていた葉の目の前には、真耶が立っていた。呼ばれたことに気が付いていなかったらしい。

 

「自己紹介で、相川さんから始まって、今麻倉君なんです。自己紹介してくれますか?」

 

 悪かったのはこちらなのに、申し訳なさそうな表情でお願いされていると、さすがに申し訳なく感じる。

 

「すみません、ちょっと考えごとしてて・・・。オイラは麻倉葉です。趣味はのんびりすること。何かよくわからないうちにここに来ることになっていましたが、これからよろしくお願いします。」

『葉殿、これほど注目されている中でも堂々とした自己紹介。さすがでござるな』

 

 阿弥陀丸が声をかけてきたため、苦笑いだけ返す。もちろん、霊である阿弥陀丸の声はほかの人には聞こえない。だから葉も声には出さないが、内心では、阿弥陀丸の言葉への反論で一杯だった。

 

(ただの自己紹介でこんなに真剣なまなざしを向けられて、堂々となんてしていられるわけないだろ!オイラ、人から注目されるの苦手なのに・・・)

 

 世界でISを動かせる男性はたったの二人。そんな貴重な人物が目の前にいれば、注目されるのも当然だろう。そして、もう一人の男性操縦者の織斑一夏は・・・

 

「織斑君!あなたもですか!私の話なんて聞けませんか、そうですよね・・・」

「あ、いや違くて!ちょっと考え事をしていたというか・・・」

 

 どうやら葉と似たような境遇らしい。

 

___

 

 どうしてこうなった。一夏とセシリアが何やら言い争いをしていたため、それを横目で見ていただけであったのに、いつの間にかセシリアの怒りの対象が葉にまで飛び火し、決闘を行うことになった挙句、一夏の特訓に葉も参加することになってしまった。

 

「で、何で特訓を剣道場でやるんだ?」

「そうだぞ箒、ISの特訓じゃないのかよ!」

「うるさい!本人が動けないのに、ISでうまく動けるわけがないだろ!何事も基礎からだ!」

「そうだろうけどさ・・・」

「まずは一夏からだ。さあ、来い!」

「仕方ないな・・・。竹刀握るのも久々だけど、行くぞ!」

 

 そう言って、一夏から箒に仕掛ける。何の考えもなしに振るわれた上段からの振り下ろしは難なく防がれる。一度距離をとって、今度は籠手を狙うが、それよりも早く箒の竹刀が一夏の面を捉えた。

 

「おい一夏!どうなっている!何でこんなに弱くなってるんだ!」

「いや、中学では剣道やってなかったし・・・」

「この弱さだと、家で素振りすらもしてなかったな?あれほど千冬さんにも言われてたのに!」

「それは、まあ、色々忙しくて・・・」

「これは鍛え直してやらないといけなさそうだな、その根性ごと!さあ、立て!もう一度だ!」

「いや、それよりISは・・・」

「問答無用!」

 

 そう言って始まった特訓(しごき)がしばらく行われた頃。

 

「どうした、もう終わりか」

「いや、もう無理。少しは休ませてくれよ」

「時間がないんだぞ?もう一度だ」

「なあ箒。流石にそろそろ休ませてやった方がいいんじゃねぇか?一夏死にそうになってるぞ・・・」

「ほう?麻倉、お前が次はやると。いいだろう。お前もみっちりしごいてやる」

 

(箒怖えぇ!?というか、オイラもやるのか!?)

 

「準備はいいな?行くぞ!」

 箒が一気に距離を詰め、葉の頭をめがけて竹刀が振り下ろされる。葉は刀をしたから振り上げることで、難なくはじき、返す刀で箒の面を打った。

 

「オイラの勝ちだな」

「麻倉、お前剣道経験者だったのか?それにしてもこの強さは・・・」

「この剣技は、オイラ一人の力じゃなくて、オイラが友達と一緒にいろんな奴と戦って身についたものなんよ。だからそう簡単に負けるわけにはいかんのさ」

「・・・そうか。未経験者だと思って油断していたことは詫びよう。お前は強い。もう一度だけ相手をしてくれないか?」

「おう、いいぞ」

 

 そして第二回戦が始まった。

 一回戦目と同じように、箒から仕掛け、葉が防ぐ。しかし、今度は箒も防がれることは承知していたため、はじかれても体制を大きく崩すことがなく、すぐにもう一度面へと振り下ろすことで、葉に反撃する隙を与えない。葉がそこで一旦距離をとろうと後ろに下がったところを、箒はチャンスと見て、思い切り踏み込み、一閃。箒自身でも過去最高と感じるほどの速さと力を持った一撃であった。

(これはかわせない!もらった!)

 

「何のこれしき!」

 かわすことができない体勢からの剣を、葉はあろうことかそれ以上の速さと正確さで叩き落した。そして、そのまま箒の面を葉の竹刀が捉えた。

 

「二人とも凄かったな!何というか、剣道というよりも、本当の刀同士の切り合いを見てるような迫力だったぜ!」

 興奮冷めやらぬ様子で感想を述べる一夏。もはや自分のための特訓であったことなどとうに忘れている。

 

「麻倉。わざわざ試合をしてくれてありがとう。完敗だったが、色々と学ばせてもらった」

「オイラも楽しかった。箒、お前強いな!」

「また時々手合わせしてもらってもいいだろうか?」

「もちろんだ」

「ありがとう。よろしく頼む。さて一夏、そろそろ休憩は終わっただろう?麻倉がこれほど強いと分かった以上、お前ももっと強くならんとな」

「げ!まだやるのかよ!箒も試合の直後だし、疲れてるだろ?また明日に・・・」

「私なら大丈夫だ。さあ、構えろ!」

「どんだけタフなんだよ!くそ!」

 

 こうして、無事に特訓を終え、セシリアとの試合当日になった。

「で、箒。あれからISの修業を全くしてないんだが、何か申し開きは?」

「うるさい!そもそもお前の剣の腕があれほど鈍っていたから・・・」

「まあ、過ぎちまったもんは仕方ねぇ。なんとかなるさ」

「相変わらず緩いな・・・・。でも良いのか?葉まで俺たちに付き合ってISの訓練全くしなくて」

「さすがに少しだけ自分でも練習してみたさ。感覚は掴めてきたし大丈夫だろ」

「あの特訓の後に!?葉も意外とタフだな・・・」

「もしオイラが全力を出せないままセシリアに負けたら、オイラにもセシリアにもやりきれない思いが残るだろ?オイラにとってそれは楽じゃねぇんだ」

 葉にとっては、楽に生きるということが何よりも重要である。そして、何のわだかまりもなく今を生きることこそ楽で楽しいということを葉は知っている。シャーマンファイトも、多くのシャーマンたちと全力でぶつかり、時に命を懸け、実際に何度か死んだりするほどの大変な戦いだったが、だからこそ、そこで得たつながりは、今や葉にとってなくてはならないものとなっている。

 

「そっか・・・。よし、俺もできる限りのことはやってやるさ!」

「おう、頑張ろうぜ!」

 

「では、最初は麻倉君とオルコットさんの試合からです。準備はいいですか?」

「ああ」

「もちろんですわ」

「それでは、第一試合開始です!」

 

 葉のIS操縦者として最初の試合が始まる・・・

 




次回、葉VSセシリアです!


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初戦闘 vsセシリア

どうもmelkです。ふと見てみると、お気に入りが9件もついていてびっくりしました(笑)
ということで、調子に乗って2話目を投稿します(笑)


「それでは第一試合開始です!」

 真耶の声が響き、葉とセシリアがアリーナで対峙する。

 

「よく逃げずに来ましたわね。ですが、ただでさえ私とあなた達では実力がかけ離れているのに、その上私は専用機、あなた達は訓練機では万に一つも勝ち目はありませんわよ?それとも、何か私を倒す策でもありまして?」

「いんや、お前の戦いはビデオで見させてもらったが、正直何も思い浮かばんかった」

「それなのによく来れましたわね・・・」

 

 本来であれば、男性操縦者ということもあり、専用機が用意されているはずであった。しかし、一夏と葉のISを手掛けることとなった倉持技研も、さすがにこの短い期間で2機同時では間に合わなかったようだ。実は、男性操縦者の専用機ということもあり、倉持技研でもこだわりすぎて時間がかかっているということは、葉達には知る由もないことである。

 

「だから、戦いながら考えることにした」

「・・・あなた、喧嘩を売ってますの?そんな行き当たりばったりでイギリスの代表候補生である私に勝てるとでも?」

「やってみなくちゃわからないだろ?オイラはこういう時、“何とかなる”って思うことにしてるんよ」

「前々から思っていましたが、あなたのそういう何も考えず、ただのうのうと生きているだけなところに、私非常に腹が立ちますの」

 セシリアは早くに両親を亡くし、その遺産を周囲の大人たちから守るため、強く生きざるを得なかった。イギリスの代表候補生の座も、死ぬ気で勝ち取ったものである。そのような彼女からしてみると、ただ楽に生きようとする葉の姿は、ひどく怠惰で浅ましく見えていた。

 

「いいでしょう。この観衆の中恥をかくと良いですわ。さあ、行きますわよ!ブルーティアーズ!」

 セシリアの手に持っていた巨大なレーザーライフルから、矢継ぎ早にレーザーが放たれる。まだ、ISでの戦闘経験がないため、覚束ないながらも、葉は一度も被弾せずに避けていく。

 

「ここまで一度も被弾せずとはなかなかやりますわね。ではこれはどうでしょうか?」

 ブルーティアーズの背面から飛び出したビットが葉を取り囲み、四方八方からレーザーを放つ。葉はギリギリで避けながらも、徐々にその動きが捉えられていく。

 

(まずい、取り囲まれちまった・・・。阿弥陀丸なら全部叩き落すくらいできたんだろうけど・・・。絶対に刀の間合いにビットが入らないようにしてるみたいだし、困ったな)

 実は、試合直前、一緒にいた阿弥陀丸から憑依合体すれば試合に勝てるのではないかという提案があった。しかし、葉はそれを「シャーマンファイトでもないし、自分の力だけでやってみる」として却下していた。ひそかに阿弥陀丸は葉がまた頼もしくなっていっていることに感動していた。

 

「仕方ねぇ、あれをやってみるか!」

 ビットから放たれるレーザーが何度か葉に掠るようになってきたころ、何かを決心したらしい葉が訓練機・打鉄の装備を量子変換し、刀からアサルトライフルへと持ち変える。

 

「まさか葉は、刀だけじゃなくて銃も使えるのか!?」

 管制室のモニターで見ていた一夏が驚く。ISの訓練を受けてきた人なら、基本的には銃と近接武器の両方がある程度使えるようになっている。しかし、今までISを扱えるなど夢にも思っていなかった男子高校生が銃の訓練などしているはずもなく、それゆえ、刀だけではなく、銃の心得もあったのかと一夏は驚き、なぜそのような経験があるのかと不思議に思っていた。だが、当の本人は、

 

「やっぱ、当たらんか」

 ビットに向けて散々ぶっ放したものの、素人の銃撃を掻い潜れぬセシリアではない。当然のことながら、葉に銃を扱った経験などなく、ここ数日の間で少し練習した程度に過ぎない。これにはさすがに一夏たちも苦笑いをしている。

 

「だけど、オイラわかったことがある。実践で銃を扱うってこんなに難しいことなんだってことだ」

「はあ?こんな時に何をおっしゃってますの?」

「アサルトライフル一丁だけでもこんなに集中力使うんだ。ましてやビットを4基も操作してるセシリアはもっと大変なはずだ。そのライフルを撃ってこないってのがその証拠だろ?」

「っ!?」

「それと、必ず一基は・・・背後の死角に来るように配置してるってことも、な!」

 その言葉と共に、前を向いたまま、持っていたアサルトライフルを後ろに向かって撃ちだし、ビットを撃破。一基壊れたことにより包囲網に穴ができた。葉であれば、そこを突っ切り、レーザーライフルを使えないセシリアへと攻め入ることは容易い。

 

「させませんわ!」

 操作をビットから手持ちのレーザーライフルへと切り替え、葉の接近を阻むように移動しながら狙撃する。ビットからの攻撃がない分、葉も余裕をもって避けながら、セシリアを追いかける。

(レーザーライフルは当たらない。ビットでは集中力の関係で、守りが手薄になる。()()は効果を発揮するのは今じゃない。・・・あのような人には負けたくない!!)

 次の瞬間、セシリアは葉のあり得ない行動を目にした。

(銃を投げたんですの!?使い方間違ってませんこと!?)

葉は遠距離が得意なセシリアに対し、自身の持つ唯一の遠距離武器をぶつけた。そう、銃弾を撃つのではなく、銃そのものを投げつけるという方法で。反射的に銃を撃ち落とすも、人は自分の理解できないこと、あり得ないものを見た時、一瞬思考が停止する。それはこの場におけるセシリアも同様であった。それにより、葉の接近を許してしまった。だが、葉の接近に気づいたことにより、再び冷静さを取り戻す。

 

「っ!?でも、甘いですわ!」

  葉がギリギリまで近づいたところで、隠してあった残り二つのビットからミサイルを放つ。セシリアが勝利を確信した瞬間、

 

「これなら、斬れる!」

一瞬のうちにミサイルと2機のビットが斬り落とされる。先程までのレーザーは、あくまでエネルギー体であり、非実体のものであったことと、ビットは常に刀の届かないところにあったため、苦戦を強いられていた。しかし、この距離であれば、どちらも届く。

 

(私は、負けたのですね・・・。こんなに大勢の前で。こんなユルい人に)

そして、葉が再び刀を構える。この一撃で決まる。セシリアが絶望し、悔しさから出そうになる涙を必死でこらえていた時、

 

「お前との試合は楽しかったぞ」

ただ純粋に、侮蔑の色など微塵もない。葉の心だけがそこにあった。

 

「阿弥陀流、後光刃」

薄れゆく意識の中で、セシリアが最後に見たのは、ユルい少年の、だが確かな強く迷いのない眼差しであった。

 

この瞬間、完全に勝負が決した。

 

 一夏の試合も終わり、セシリアは自室で一人考える。

(何でしょう。このもやもやした気持ち。一度とはいえ、負けたことが悔しいという感じでもない・・・。ただあれほどひどいことを言った私に対して彼が最後にかけた言葉、向けた眼差し。どうしてと尋ねてみたい、葉さん(・・・)。そして、あの時感じた、今も感じているこの温かいような、安心するような不思議な気持ち・・・も。)

 ほんのわずかな心の変化が訪れていた。

 




戦闘シーン書くのって難しいですね・・・
セシリアは、まだ完全には落ちてません。


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セカンド幼馴染(一夏の)襲来

どうもmelkです。日付的には今日2本目の投稿となりますね!ゆっくりとはいかに・・・。
原作とシチュエーションやら展開やら大分変ってます。温かく見守ってください(笑)

因みに、『』は阿弥陀丸のセリフです。


それではどうぞ!


「それではクラス代表は織斑君にお願いします」

 1年1組HR。クラス代表決定戦の結果を踏まえて(?)一夏が代表になった。

 

「ちょっと待ってくれよ!唯一勝ってない俺がクラス代表っておかしいだろ!?ここは葉かセシリアがやるべきじゃ・・・」

「オイラはパス」

「私も、()()()()との試合はちょっと大人げなかったかなと反省しまして。それに、()()()が辞退するなら私も・・・」

「というわけで、織班君お願いしますね!」

「マジかよ・・・」

(一番弱かったのに俺で良いのかよ・・・。ん?というかセシリアにちゃんと呼ばれたの初めてな気がする。今までは「あなた」とかだったし・・・。あれ、でも俺は名字で葉は名前なのは何でだ?)

 自分に対する好意でなければ意外と鋭い一夏。しかし、クラス代表に決まったという状況への焦りなどもあって、あまり深くは考えない。

 

「まあ何とかなるって。腹くくれば案外楽しいかもしれんぞ?」

「辞退したお前が言うな!」

「それもそうだな」

「ちくしょう・・・・」

「あきらめろ」

「なんだよ、千冬ね・・・、いえ織斑先生」

「いつまで間違える気だ、馬鹿者」

 言い直しても、出席簿による一夏の頭部への制裁は回避できず、いい音が鳴り響く。まだ言い直しただけ、いつもよりも弱めなのは彼女の良心なのだろう。ただし、どちらにしても痛いことには変わりないが。

 

「さて、クラス代表としての最初の仕事だ。来週、クラス対抗戦が行われる。クラス代表はそこに参加してもらう」

「げ、もうすぐじゃねぇか!」

「優勝したクラスには、学食のデザート引換券一年分が景品として与えられる」

「一年分!?」

「織斑君!お願い、絶対に勝って!」

「期待してるからね!」

「それ、俺で大丈夫なのか・・・?」

「織斑君の専用機ももうすぐ届くんでしょ?専用気持ちがいるのは1組だけだからたぶん大丈夫だよ」

「その情報、古いよ!」

 キャーキャー騒がしくなっていた教室が、ドアを思い切り開ける音で静まり、視線がドアを開けた人物に集中する。腕を組みながら仁王立ちしている小柄な少女がそこにいた。

 

「お前、鈴か!何でここに・・・。というかそのドヤ顔似合わないぞ?」

「ああああんたねぇ!」

「そうだな、凰。今日から2組に転入してきたはずのお前が、なぜHR中の一組にいるんだろうな?」

「げ、千冬さん!?」

 その瞬間、先ほど一夏の時と同じように、鈴にも出席簿が振り下ろされる。しかもさっきよりも強く。

 

「さっさと2組に行け」

「はい・・・」

 一夏を除く、ほとんどの生徒が状況についていけず、ポカンとしていた。

 

_ _ _

 

 次の休み時間

「来たわよ!一夏!」

「おい一夏!お前とそこのやつとはどういう関係なんだ!?」

「えっと、箒がファースト幼馴染としたら、鈴はセカンド幼馴染ってとこだな」

「幼馴染・・・。私以外の・・・」

 一夏を慕っている箒としては、新たなライバル(?)出現に気が気でない様子。

「それにしても一夏、あんたがIS学園に入学するって聞いてびっくりしたわよ。あれ、もう一人の男性操縦者も1組にいるって話を聞いたけど・・・」

「ああ、葉ならほら、そこで寝てるぞ?」

 そう言って、左隣を指す。見事に熟睡してる葉の姿があった。

 

「すごいわね。隣でこんだけ大騒ぎしてるのに起きる気配が全くないわ。どんだけお気楽なのよ」

「ちょっとあなた!いきなり来て葉さんに向かって何てことをおっしゃるのですか!?」

「はあ?あんた誰よ?」

「私は、イギリスの代表候補生のセシリア・オルコットですわ!」

(あれ、この間の試合の時に、葉のことのうのうと生きてるだの考えなしだのと言ってなかったっけ?でも、この場でそれを指摘する勇気はさすがにないな・・・)

 さすがの一夏も、この場でのつっこみはあきらめる。

「ふーん、どうでもいいけど何でイギリスの代表候補生のあんたがそいつのことかばってんの?」

「それは、その・・・。わ、私も葉さんと戦って、表面的なものだけで判断して、その心の奥にある芯の強さに気づかなかった自分の愚かさを知ったからですわ」

「ということは、あんた負けたの?」

「・・・ええ」

「それはちょっと興味出てきたかも。ちょっとあんた!起きなさいよ!」

「んあ?何だよ。せっかくの昼寝タイムを邪魔しやがって・・・」

「あんた、あたしと勝負しなさい!」

「いいぞ?」

「早!いいのかよ!?」

「別にお互い傷つけあうような戦いじゃねぇんだ。やりたいってんなら断る理由もないだろ?」

「じゃあ決まりね!男性操縦者がどんなもんか試合してみたかったのよね。一夏とはどうせ来週試合することになるんだし」

「んじゃまあ、準備とかもあるし、ちょっと部屋寄ってからでもいいだろ?」

「OK!じゃあ、放課後にやるから、それまでに準備しておきなさいよ」

「おう」

 

_ _ _

 

『葉殿、準備というのは』

「ああ、大丈夫ならいいが念のため、な」

『拙者もいつでも大丈夫なように傍にいるようにしておくでござる』

「サンキューな、阿弥陀丸」

 放課後、部屋に戻る途中。阿弥陀丸と葉が話していた。当然、霊である阿弥陀丸はほとんどの人からは視認されないため、人前で話していると、葉が独り言を言っているようにしか見えない。だから、人のいない廊下などで話すようにしていた。そうこうしているうちに部屋につく。葉の部屋は、一夏と相部屋である。これに関しては箒がかなり渋っていたが、同性同士が同じ部屋になることに何か問題があるのかという千冬の一言で黙らざるを得なくなってしまった。一夏は一足早くアリーナの観戦席に箒やセシリアたちと向かっているため、今部屋は無人であるはずだった。

 

「そこにいるんだろ?」

 葉が電気の付いていない部屋に向かって話しかけると、ベッドの陰からもそもそと人の動く音がした。

 

「何で毎日こうもあっさり見抜かれるのかしら。どうなってるのよ?」

 明かりをつけ、出てきたのは水色の髪をした少女であり、このIS学園の生徒会長である更識楯無であった。その手に持つ扇子には「不服」という文字が書かれている。最初は世界最強のIS操縦者である千冬の弟、一夏を見定めるために忍び込んでいたが、同じ部屋にいる男性操縦者ということで、葉までいじられるようになっていた。しかし、部屋にいくら隠れても毎回すぐにばれることがお気に召さなかったようだ。

 

「ところで、こんな時間に部屋に帰ってきてどうしたの?これから2組の凰ちゃんと試合じゃないの?」

「ん?何でオイラ達が試合するってこと知ってるんだ?」

「生徒会長だ・も・の♪」

『それ生徒会長関係あるでござるか!?』

 聞こえないのを承知で阿弥陀丸がつっこむほどである。

(あれ、今一瞬阿弥陀丸に反応した気が・・・。気のせいか?)

 葉が一人訝しむ。

 

「ああ、そうだった。オイラちょっと物を取りに来てな」

「何それ?」

「オイラの家に伝わる家宝だ」

「古いけど、何か凄そうね」

「一応国宝級の品らしいからな」

「国宝級!?」

 葉が手に持つのは、フツノミタマノツルギと呼ばれ、麻倉家で保管してきた言わば刀の神の剣である。

 

「でも何でそんな国宝級の物を持っていくの?これから試合だって言うのに・・・」

「まあちょっとな。使わないで済むならそれでいい」

 楯無はそれ以上は踏み込まない。葉の謎に関わることだからである。その代わり、

 

「私も見に行っていいかしら?」

「オイラは別に構わないぞ?」

「やったー!一回葉君の試合生で見てみたかったのよね」

 試合を見に行くこととした。感じている葉の不思議の正体を直接見られるかもしれないから。

 

「そんじゃ、行くか!」

 そうして、葉は楯無と阿弥陀丸を引き連れ、アリーナへと向かう。

 




鈴の登場タイミング(若干)変更&なぜか葉と試合することに&まさかの楯無登場&阿弥陀丸地味に登場&これから何が起ころうとしているんだッ!
という感じでしたね(笑)

せっかく前回セシリアの気持ちの変化入れたのに、うまくからませられない・・・。



次の投稿までは数日間が空きます。


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vs鈴、???

どうも、melkです。
多分今年最後の投稿になります。

戦闘シーンなどかなり雑かもしれませんが、お許しください・・・



「何よコイツ!強いじゃない!」

 試合開始5分、鈴が双天月牙二刀流で猛攻を仕掛けるも、それを上回る技量で葉が捌いているため、未だ直撃していないことに対し、鈴が思わずこぼす。

 

「そっちこそ、やるじゃねぇか」

 一方、葉もそこまで余裕があるわけではない。一つは、接近戦とはいえ、それがISでの勝負であるということ。鈴のIS、甲龍のパワーに対し、葉のISは訓練機であることもあり、このような接近戦では自身の技量と同時に、性能の差が大きく出てくる。その点では葉が不利になる。当然、鈴自身の技量もある。

 

「接近戦じゃ埒があかないわね。だったら!」

 双天月牙を思い切り振りぬき、葉を思い切り吹き飛ばす。ガードの上からでも飛ばされるほど重い攻撃に葉は歯噛みしていた。葉と鈴との距離があいたが、鈴が距離を詰めてくる様子は見られない。次の瞬間、轟音が聞こえたかと思うと、葉の機体が衝撃を受ける。

 

「何だ今の!攻撃されたんだろうが、全く見えんかった!」

「初ヒット!まだまだ行くわよ!」

 そう言って、再びの轟音の後、地面が爆発する。葉は何とか避ける。

 

(何とか今は避けられてるが、このままじゃ近づけんし、さすがに何度も直撃を受けるとまずいな・・・)

 葉は、量子変換でアサルトライフルをとりだす。因みに、前回のセシリア戦で銃を投げてセシリアの攻撃を防ぎ、注意を逸らしたことに対し、その後、葉の使ったISを整備した技術班の人から、「銃は投げて使うような作りにはなっていない」とガッツリお説教を食らったため、今回は投げたりせず、本来の用途で使用する。しかし、葉の放った銃弾は鈴の衝撃砲に掠ったらしく、あらぬ方向へと軌道がズレる。

 

(今の曲がり方は、何かにぶつかったというより、風で飛ばされたみたいだった。そして、この破壊跡の角度から、多分・・・)

「その見えない砲弾。どうやってか知らんが空気を打ち出してるんだな。恐らくその肩の砲身から」

「へぇー、あんた見かけによらず鋭いわね」

「うぇっへっへ、そうか?」

「戦闘中でもそのユルイ感じは変わんないのね・・・。まあいいわ。でも、それを見抜いたからって何も変わんないわよ!」

「そうでもないさ」

 葉が鈴の方向へと飛んでいく。当然、ただ一直線に向かってくるだけであれば鈴の衝撃砲の的になるだけである。ただ向かっていくだけであれば。

 

瞬間加速(イグニッションブースト)!?」

 轟音が鳴り、衝撃砲が飛んでくるタイミングで、葉が瞬時加速を発動し、一気に距離を詰める。両肩から放たれた衝撃砲の角度的に、加速した葉のギリギリ横を通り抜けていた。そして、

 

「こんだけ近いと、さすがに撃てないだろ?」

「っ!でも、近接戦闘だって・・・!」

「この距離ならオイラの刀の方が早い!」

 鈴が右手の武器を振り上げるが、それよりも葉が刀を振る方が早かった。先程までは、確かに近接戦闘で拮抗していた。しかし、それは鈴が攻め、葉が守っていたからであり、パワーも二刀流も関係ないただの剣速勝負であれば、葉の方が上手であった。

 

「強ぇえな」

「当たり前じゃない」

 鈴は左の刀を葉の斬撃と機体との間に滑り込ませることで、ダメージを緩和していた。甲龍のシールドエネルギーは残り4分の1ほど。しかし、鈴の戦意は衰えるどころか、さらに闘志を燃やしており、葉はその心のあり方も含めて強いと感じていた。

 

「まだまだ終わらせないわよ!」

 そう言い、鈴が構え直したところで、轟音と共に、アリーナの天井が破られ、黒い機体がそこから侵入してきた。そして、何の躊躇もなく、それまで試合をしていた葉達やアリーナの観戦席めがけて銃撃を開始する。葉と鈴は避け、観戦席で見ていたセシリアや一夏を含めた他数名は、アリーナに搭載されていた流れ弾による被害防止のためのシールドで守られていたため、全員無事であった。

 

「やっぱり来ちまったか・・・」

誰にも聞こえない声で、一人呟く。そして、

「鈴、ここはオイラが何とかする。悪いが、観戦席のやつらを逃がすのを手伝ってやってくれ」

「それじゃあんたは・・・!しかも、あっちにはセシリアがいるから、何とかなるでしょ」

「目の前のこいつが強いってのはわかるだろ?それに、セシリアはあんまり近接戦闘が得意じゃないみたいだしな。もしオイラ達が戦って、でも隙を見て逃げられて、あいつらの方に行ったら、多分被害が出る。なに、オイラは何とかなるさ。それよりも、先生を呼んできてくれると助かる。後始末とか大変そうだしな」

「もう後始末の心配って・・・。相手が強いとか言っときながら、あんた意外と自信家なのね」

「ちょっと、策があってな。それに、オイラはできることしか言わん。見え張って自分の心に嘘をつくのも疲れるしな。だから、なんとかなる」

「そう・・・。正直ユルくて頼りなさそうだと思ったけど、ちょっと見直したわ。あたしも、みんなのことは何とかする。だから、あんたも無事に戻ってきなさいよ?」

「おう」

 不気味なことに、黒い機体は襲ってくることもなく、ただ話を聞くように佇んでいるが、その隙を利用して鈴は観戦席の人たちを安全な場所へと誘導しに行く。それと同時に、動き出した黒い機体は葉が止める。

 

「オイラが相手してやる。このO.S(オーバーソウル)は」

 葉が鈴を観戦席へと向かわせた理由は、二つ。一つは、本人にも言ったように、観戦していた生徒たちを逃がすための保険として。もう一つは、相手がただのISではなく、ISを媒介としたO.Sであるということであった。霊能力がない一般人には、ただのISに見えるが、その実、この機体は、何者の巫力によって霊をISに憑依させたものであった。O.SはO.Sでしか破壊できないため、この場において、鈴は足手まといとならざるを得なかった。

 

「阿弥陀丸!やったことないけど、あれ行くぞ!」

『承知!』

「阿弥陀丸in葵inフツノミタマノツルギ、O.S スピリット・オブ・ソード改!」

 葉の使用している訓練機、打鉄の近接ブレードである葵を普段使っていた刀、春雨の代わりとし、念のために持ってきておいたフツノミタマノツルギと合わせて二段媒介にすることで、S.Fにおいて使っていた巨大な刀のO.Sを再現していた。

 黒い機体は脅威となる標的を葉一人に定め、様子をうかがう様に距離をとりながら、巫力のこもった銃弾を葉に向かって撃ち続ける。しかし、ISの瞬時加速とスピリット・オブ・ソードのエネルギーを逆噴射することにより得られた推進力が合わったことで、凄まじい速度となり、一瞬のうちにあいていた距離が詰まり、黒い機体の腕が切り落とされていた。

 黒い機体は最後の力を振り絞り、観戦していた人たちが逃げた先へと向かおうとする。恐らくは、O.Sしている者の意思で、せめて一人くらいはというものなのであろう。

 

「阿弥陀流 真空仏陀切り!」

 放たれた斬撃が黒い機体ごとのみ込み、機体は完全に破壊された。

 




今回は戦闘シーン終了まで
次回、ことの詳細などなど

良いお年を!


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戦闘の後 千冬、セシリア、楯無、???

あけましておめでとうございます!melkです。
みなさん、正月は何してましたか?自分は、お雑煮食べて、FGOして、親戚の子供と遊んで、シャドバして・・・と充実した正月でした(笑)

はい、10日以上投稿がなかったのはずっとゲームしてたからです。すみません・・・。

だって、FGOでギルガメッシュ出たのに素材足りなさすぎて周回してたんだもん!



ということで、遅くなりましたが、5話目です!


 侵入した黒い機体が破壊されて数分後、千冬と真耶がその場に到着していた。そして、その現場を見て2重の意味で驚くことになる。

 

「な・・・、無人機だと!?」

「無人機なんてありえません!」

「しかし、現に目の前の機体には搭乗者がいない。もちろん、これだけISが派手に壊され、真っ二つになっていても血の一滴も残さず逃げられるなら別だろうがな。普通に人が乗っていたら死んでいるレベルだ」

「それこそおかしな話です!絶対防御があるISに、もし搭乗者がいたら命にかかわるというほど破壊するなんて、普通出来ません!」

「何がどうなっているんだ・・・?誰がこれを・・・」

 

 誰が無人機を侵入させたのか、誰がその無人機をここまで破壊できたというのか。どちらの意味でもあるつぶやきだろう。そして、千冬は手早くはっきりさせられる方から片付けることにした。葉が単独でこれを行ったことに驚く5分前であった。

 

その1時間後、葉の自室

 

「葉さん、何故一人で戦うなんて無茶を?」

 

 葉がセシリアに正座させられていた。クラス代表決定戦以降、セシリアの態度が柔らかくなったと感じていたが、目の前で仁王立ちし鬼のように睨むセシリアからは、柔らかさなど全く感じなかった。

 葉が一人で戦った理由は、O.S(オーバーソウル)にはO.S(オーバーソウル)でしか対抗できないからであったが、シャーマンだった葉ですらシャーマンファイトが始まるまで知らなかったことを、霊すら見えない一般人であるセシリアが知っているはずもなく、言うわけにもいかないため、どう説明したものか少し焦る。

 

「いや、オイラがやらないとダメだったというか、仕方なかったというか・・・」

「何ですのその言い訳は!まだ百歩譲って、鈴さんを頼れなかったのは良いとして、私がいるではないですか!そうです、私を頼ってくだされば良かったのです!」

「いや、セシリアはみんなの避難を・・・」

「葉さんは黙っててください!」

 

(怖えぇ!というか言ってることがものすごい理不尽だな、まさに鬼だ。超鬼たちより鬼だ。いや、でもアンナほどじゃないか・・・。そう考えると何か大丈夫な気がしてきた)

 ビビるも、アンナのことを(悪い意味で)思い出して、何とか冷静さを取り戻した。葉はセシリアをまっすぐ見て、

 

「セシリア。ありがとな」

「へ・・・?」

「あの時、セシリアがみんなを逃がしてくれてたから、オイラもそっちを気にすることなく戦えた。しかも今だってオイラを心配して怒ってくれてるんだろ?もっと自分を頼ってくれって。だからありがとな」

「え!?あ、いえ///」

 

 葉の偽らない本心からの言葉に、思わずセシリアは顔を赤くする。さっきまで怒っていたのだが、そんな気持ちも吹き飛んでしまった。それと同時に、セシリアに今の状況を理解させるに至った。

 

(あれ、よく考えたら、今この部屋には私と葉さんの二人きり・・・。何故か急にドキドキしてきましたわ。な、何を話したら良いんですの!?さっきまでは気にならなかったのに!)

 

「ん、んん!大体、葉さんの戦い方は危なっかしいんですの。確かに剣の腕は素晴らしいですが、逆に言えば銃が使えず、剣での近接戦闘しかありません。見ていていつもひやひやしますわ」

(私のバカ!言うに事欠いて何てことを言っていますの!?こんな言い方をして葉さんを怒らせてしまいますわ!)

「あー、銃に慣れなくてな。一応練習はしてるんだが」

(怒っていらっしゃらないようで良かった・・・。やっぱり葉さんは優しいですわね)

「それでしたら、私が教えて差し上げてもよろしくてよ」

(ちゃっかり何言ってますの私!?しかもものすごい上から目線で・・・)

「ん?良いのか?」

「ええ、もちろん!では明日から」

(葉さんと放課後、二人きりで秘密の特訓///)

「お、おう。よろしくな」

 

 セシリアにとっても予期せぬ予定が決まることとなった。セシリアは内心で嬉しさと、葉に対して棘のある言い方を何度もしてしまっていることへの後悔とで悶えていた。

 その後、鈴と一夏も部屋に集まり、「勝負がついていないからもう一戦!」と頼む鈴と、「疲れたからもうやらん」という葉との応酬が繰り広げられたが、結局クラス代表戦も近いからということで、その後ということに決まった。

 

 

 

 その夜、葉は楯無に呼び出され屋上へと来ていた。春とは言え少し風が冷たい。それでもこんなところに呼び出したのには何か意味があるのだろうと思い、葉は黙って楯無に従う。先程まで無人機との戦闘が行われていたアリーナが見える位置まで行くと、楯無が振り向き、話し始める。

 

「葉君。あなたに聞きたいことがあるの。さっきの無人機は何?」

「あれはO.S(オーバーソウル)って言って、簡単に言えば誰かが霊をISに憑りつかせた状態だ」

「っ!やっぱりあなたも霊が見えるのね。でもやけに簡単に明かすわね」

「ああ、たまにお前が阿弥陀丸に気づいてるように感じる時があったからな。それにさっきのISとオイラのO.S(オーバーソウル)を見た後でわざわざ呼び出すならこの話だろうなと思ってた」

「・・・あなたは何で霊が見えるようになったの?」

「オイラの家は昔からシャーマン一家だったからな。物心ついた時には見えてた」

「霊が怖くないの?」

「霊にだって良いやつも悪いやつもいる。むしろ生きてる人間の方が怖かったな」

「そう・・・」

「怖いのか?」

「怖い。生きてる人間と同じくらい。私は対暗部用対暗部である更識家の当主として、色んな汚れ仕事もやってきた。時には人を殺すこともあった。人の死に多く関わってきたからか、霊が見えるようになってたの。そうすると、人を殺して終わりじゃなくなった。殺された人たちが見えてしまうから、ずっと責め続けられるの。何で殺したのかって」

「確かに恨みは死んでも簡単には消えてくれない。オイラの持ち霊、阿弥陀丸も蜥蜴郎って奴から600年間も恨まれてたからな」

「600年・・・。やっぱりそんなに年月が経っても恨まれ続けるのね・・・」

「だが、霊も元は同じ人間だ。恨みを解いてやれば成仏するさ。どうやったら恨みが解けるかオイラも一緒に考えるし、何ならオイラも一緒に謝りに行ってやる」

「何でそこまでしてくれるの?元々私が犯した罪の結果なのに」

「霊の見えるやつに悪いやつはいない、オイラはそう思ってる。確かに殺すのは悪いことだ。でも、きっとそうしなきゃいけない事情もあったんだろ?だから今までのことはそいつらに直接謝りに行ってちゃんと成仏させる。これからまた仕方なくそうしなきゃいけない時には、オイラが止める。」

「本当にいいの?そんなことしたら逆に葉君が危ない目に合うかもしれないのよ?」

「それをするのが、あの世とこの世をつなぐもの、シャーマンだ。何とかなるさ」

 

 今まで誰にも相談できなかったことを話し、楯無は恐怖で凍っていた心が解けて温かくなっていくのを感じていた。それと同時に、涙が止まらなくなっていた。

「ありがとう葉君」

 

-----

 

 暗い部屋、モニターの明かりのみが照らしている。モニターには、IS、それも破壊された無人機のデータが映し出されていた。それを見ているのは、ISの生みの親にして、自他ともに認める天才科学者、そして篠ノ之箒の姉である、篠ノ之束である。機械仕掛けのうさ耳をつけ、ふざけているようにも思える格好だが、モニターを眺める表情は真剣そのものであった。

 

「せっかく人が乗る必要がなくて、絶対に壊されないISってことで貸してあげたのに、やっぱり使えないねー、あの亡国機業とかいう連中。それにしても、O.Sを破壊するなんて、誰がやったんだろ?ちーちゃんだってO.S(オーバーソウル)についてなんて知らないはずだよね。さすがにちーちゃんでもO.Sを使わずに破壊するなんてできない・・・はず。しかも、最低限の巫力しか込めてないとはいえ、完全に破壊されてるし。今度ちょっと調べてみないとねー」

 

怪しい雰囲気の中、一人無邪気な笑みを浮かべる。




オンナノコノキモチナンテワカラナイ
セシリアが何かツンデレっぽくなってる・・・。


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再びの転校生と新たな火種

どうもmelkです。
非常に長い間投稿できず、すみませんでした!少しリアルの方でも忙しくて・・・
今後も不定期かつ投稿速度も遅いですが、どれだけ時間がかかっても完結させたいとは思っていますので、どうぞよろしくお願いします。

さらに申し訳ないことに、久々の投稿に関わらず、葉の出番が非常に少ないですが、お許しください・・・


<side Ichika>

「それでは、転校生を紹介します」

 

 今日のホームルームが始まった。しかし、俺の心はすでにここにない。この間のクラス対抗戦で鈴に負けてから、ずっと心がモヤモヤする。確かに俺と鈴では実力が違うし、そもそも相手は代表候補生だ。この間初めてISに乗ったような俺がそう簡単に勝てるはずがないし、それでも一矢報いたとは思う。だが、俺と同じ時期に初めて乗ったはずの葉が勝っていることから、素直には喜べないでいる。俺はどうしたら強くなれる・・・。そんなことを考えていると、不意に名前を呼ばれた。

 

「お前が織斑一夏か?」

「え?」

 

答えも聞かないうちに、パンという乾いた音が教室中に鳴り響いた。横っ面をひっ叩かれたのだ・・・葉が。あれ、何で葉?

 

「教官はお前のせいで・・・!」

「ちょっと待て、オイラは一夏じゃねぇ!一夏は隣のやつだ!」

「む・・・」

 

 そう言われると、転校生は何事もなかったかのように、俺の席の前に来る。あ、これはアカンやつだ。

 

パン!

「教官はお前のせいで・・・!」

 

 予想通り俺にもビンタが来た。しかし、どれだけこいつが重苦しい雰囲気を出そうと、最初に相手を間違えたという事実は変わらないし、巻き戻したみたいに同じことを繰り返しているというシュールな光景であったため、もはや驚くこともない。だから俺は、なぜこんなことになっているのかわからないという釈然としない思いも、いきなり叩かれたことによる怒りも全てぐっと飲みこんで、

 

「・・・そこまではさっき聞いたから。繰り返さなくていいから。あとさすがに葉には謝っとけ」

 

 みんなを代表して冷静な突っ込みをすることにした。

そう言えば、こいつの名前なんだっけ?

 

<side out>

 

「二人とも、同じ男性操縦者として、これからよろしくね!」

「おう、よろしく」

「よろしく・・・ってもう時間やばいぞ!話は後だ!」

 

 謎の転校生(後にラウラという名前であると判明。ただし、一夏以外のまじめに聞いていた生徒はすでに知っていたことだが)が席に戻ってからもずっと一夏を睨み続けていたり、もう一人の転校生であるシャルル・デュノアが3人目の男性操縦者であることがわかり、クラスの女子たちが興奮し、半ば混沌とした空気になったりと色々あったものの、HRが終わり、1時間目が始まろうとしていた。

 

「何してんだ、シャルル?早く着替えないと間に合わないぞ?」

「え、ああ、うん。すぐ着替えるよ、って、何で二人ともこんなところで堂々と脱いでるの!?」

「こんなところって更衣室だろ?」

「まあ、そうだけど・・・」

「シャルロットも早く着替えろよ」

 

 シャルルは焦っていた。もちろん、()()()()である以上、同じ更衣室で着替えることは覚悟していた。しかし、それと平常心でいられるかということはまた別のことであった。

 

(うぅー、恥ずかしい///でも()()()()ならそうするのが自然だよね・・・)

 

「一夏、オイラは先に行くぞ」

「ちょっと待ってくれよ、葉。シャルロットがまだ着替え終わってないだろ」

「一夏はシャルロットが着替えるのをじっくり観察したいと」

「ば、バカ言うな。俺はノーマルだ!!」

 

 葉が一夏をからかったことで、一夏の注意が葉の方へと向けられる。そのチャンスを占めたとばかりに、シャルルは一瞬でISスーツへと着替えていた。

 

「じゃあ、先に行って・・・。って、もう着替え終わったのか!?どうやったんだよ、それ!?」

「あはは・・・。そんなことより、早く行かないとといけないんでしょ?」

「そうだった!急ごうぜ!」

「うん、行こう!さあ行こう!」

 

(助かったー・・・。麻倉君ありがとう!!多分偶然だろうけど!)

 

_ _ _

 

放課後のアリーナ

 

「代表候補生と聞いていたが、二人そろってもこの程度か」

「く・・・同じ代表候補生なのにこんなに差がありますの?」

「ちょっと舐めてたわ、マジで」

 

 ラウラの前で倒れるセシリアと鈴。当然3人ともISを装着した上での正式な決闘であった。ただ、二対一であって尚、実力差は圧倒的であったというだけの話である。

 

「でも、まだあきらめませんわ!」

「せめて一矢報いないと気が済まないっての!」

「ふん、無駄なことを」

 

(葉さんと特訓をしていた時にできたアレ。まだ上手くいく確率は3割くらいですが・・・。今決めて見せますわ!)

 

「インターセプタ―!」

「はあ!?アンタあきらめないんじゃなかったわけ!?」

 

 セシリアがコールした武装は、小さな刀。セシリア自身、これまで近接戦闘が得意ではなかったこともあり、まともにやろうともしてこなかった。ブルーティアーズも射撃がメインのISであるため、鈴からしてみれば訳がわからないのも当然だろう。それはラウラにとっても同じであった。

 

「得意の射撃で勝てないから、虚をつくためにそんな小さな刀で向かってこようとはな。全く小賢しい」

「何とでも!やってみればわかりますわ!」

 

 セシリアが切りかかるも、軽々と受け止められる。それほどまでに、近接戦闘における両者の実力があった。故に、短剣がラウラに届くことはない。そう、()()()()ならば。

 

「ブルーティアーズ!!」

「っく!」

 

 ブルーティアーズをブルーティアーズたらしめる4基のビットがラウラを取り囲み、一斉にレーザーが放たれる。このタイミングから全て避けるのは不可能。のはずであったが、反射的にラウラは唯一レーザーを向けられない場所へと体を潜り込ませることにより、全てを避けて見せた。

 

「さすがですわね・・・。そこまでしてくると思っていましたわ!」

 

 クラス代表決定戦を見ていたものであれば、ビットが4基しか展開されていないという違和感に気づくだろう。しかし、ラウラは当然知らない。ビットが全部で6基あり、2つをいざという時のため背後に隠すことで、懐に入られた時の対策をしているということを。また、普段であれば誘導されているということに気づいたかもしれない。しかし、つい先ほど完璧に打ちのめした相手であるという油断、あえて近接武器であるインターセプターで向かって行き、罠は周囲を取り囲むビットだけであると思わせた二重の罠、これらによって、ラウラに誘導されているということを感じさせなかった。

 ビットから放たれた2つのミサイルが今度こそラウラに直撃する。

 

(本当は、近接戦闘とブルーティアーズを組み合わせた隙のない戦い方が理想なのですが・・・。それでも、何とか一矢報いることはできましたわ!)

 

「ひゅー、やるわねアンタ!」

「そうか、この程度のダメージがそんなに嬉しいのか」

 

 直撃する直前、両手のプラズマ手刀で防いでいたため、ラウラのISシュヴァルツェア・レーゲンのシールドエネルギーはわずかに削れただけであった。ラウラにとっては痛くもかゆくもない。しかし、格下に一杯食わされたということがラウラは気に食わない。

 

「たった一撃ですが、確かに勝ち取った一撃ですわ。これを喜ばずして何を喜べと?」

「そうか、だがいつまでも喜んでいられると思うなよ?」

 

 そこからはラウラによる一方的な蹂躙。最早戦う力のほとんど残っていない二人を執拗にいたぶり、二人のISが解除された時には、既に二人とも動けないほどボロボロであった。

 

「弱いやつはいなくなっても構わんだろう?いっそここで死ね!」

「そこまでやる必要はねぇんじゃねぇか?」

「お前が二人をここまで痛めつけたのか!」

 

 ピンチの時に駆けつけてくれる。そんな二人が鈴とセシリアにとってのヒーローであったた。

 




ラウラの悪者感と下手糞な戦闘描写で迷いながら書いてました。

因みに、葉の専用機のイメージを乗せておきました。まだ未登場ですがどんな感じか気になる方はぜひご覧ください!
それと同時に、まだ葉の専用機の名前が決まっておりません。ISの名前や性能・能力等に関して何かご意見のある方は感想欄にて言っていただければと思います。

・・・できるだけ早く次話を投稿します。


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Laura is stronger,but ・・・

どうも、melkです。

たった一件ですが高評価が入り、それを見てはニヤニヤしています(ドン引き)

さて、ラウラとの決着までもう少しかかります。今の予定だと、あと二話くらいかかりそうです。とりあえず原作の一夏ハーレムが出そろってからが本番かなとも思っているので、もう少しですね。

それでは7話目です!


「そこまでやる必要はねぇんじゃねぇか?」

「お前がそこまで痛めつけたのか!」

 

 鈴とセシリア、ラウラが戦っていたのを聞きつけ、葉と一夏もその場に現れた。しかし、ラウラにとってはそれまでとさして変わらない、それどころか自分にとって最も憎い相手がわざわざ目の前に来てくれたのだから、むしろ戦意に満ちていた。

 

「織斑一夏・・・。お前の方から来てくれるとはな。弱いくせにヒーロー気取りか?それともそこの弱そうなやつと二人がかりでなら何とかなるとでも思ったか?」

「悔しいが俺は弱い。けどこれ以上仲間が傷つけられるのは許せねぇし、俺一人で敵わないなら仲間と一緒に戦うまでだ」

 

 一夏としては本心からそのように思って言った言葉である。しかし、ラウラの知る強さとはかけ離れたものであり、ラウラの怒りや憎悪はさらに強まっていく。

 

「ふん、仲間を傷つけさせないという割に、自分一人では戦えないと。とんだ正義感だな」

「何!?そういうお前は強いって言うのかよ?」

「私は強い。だがまだまだだ。だからこそ、最も強く厳しいお方を汚すお前がどうしても許せない」

「はあ?何のことだよ」

「気づいていないのならそれでいい。そのまま死ね!」

 

 シュヴァルツェア・レーゲンの肩口にあるレールカノンが一夏の方に向く。すでにその時にはチャージが終わっていた。一夏がそれに気づいたのは、発射される瞬間であり、予測でもしていない限り避けることは不可能であった。ラウラは最初の一撃で一夏を沈めるつもりであった。

 

「オイラも少し怒ってるんだ」

 

 放たれたレールカノンを、刀一本で器用に弾く。熱くなっていた一夏とは対照的に冷静に観察していた葉は、ラウラの奇襲に気づいていた。

 

「誰かと思えば、覇気の感じられない方の男性操縦者か。それに、怒っているという割には随分と冷静だな。敵意の一つも感じられない」

「我を忘れて怒っても、自滅するだけで誰も守れないしな。それに、オイラもしんどくなる」

「結局やる気がないだけか。その程度で私が倒せると思ったか!」

 

 ラウラのプラズマ手刀を葉が刀で受ける。一合、二合と打ち合っていくが、どちらの攻撃も直撃することはなく、互角の打ち合いを続けていた。驚くべきことに、ラウラの剣における強さは葉にも引けを取らない。さらに、ワイヤーブレードで一夏を牽制し、それをすり抜けてきた時には、一夏を蹴り飛ばし、再び距離をとって一対一の状況を続けられる当たりから、ISの戦闘においては、葉や一夏を上回っているということになる。

 

「なるほど、お前はそこに転がっている代表候補生や簡単にあしらわれているあの織斑一夏よりは強いらしいな」

「お前はえらく余裕じゃねぇか」

「ああ、確かにお前は強い。だが、近距離で刀を振るしか能がないならば、動きを止めるのも容易い」

「!!何だこれ!体が動かねぇ!」

「さらばだ」

 

 ラウラが手をかざすと、突然葉の動きが止まる。そして、レールカノンの放たれた音と共に、葉が大きく吹き飛ばされる。

 

(突然体が動かなくなって・・・。よくわからんけどコイツ、強ぇえ!だがそれだけじゃないな・・・)

 

「葉!!お前ッ!」

「そこまでだ」

 

 一夏がラウラに突っ込んでいこうとした時、一夏とラウラの間に、IS専用のものであると思われる刀が地面に突き刺さった。

 

「お前たち何をやっているんだ?」

「は、教官!弱いゴミどもを排除しておりました!」

「私はもうお前の教官ではないぞ?それにだ、ボーデヴィッヒ。お前は随分と偉くなったようだな」

「私は以前とは違います。強くなりました」

「そうか。だがこれからは私闘を禁じる。そいつらとの決着がつけたければ今度のタッグトーナメントでつけろ。異論は認めん。解散しろ」

 

 尊敬する千冬にそう言われては何も言い返せず、一夏たちを一瞥した後、ラウラは無言で去っていった。それと同時に、楯無が葉の元へと駆け寄る。

 

「葉君!大丈夫!?」

「オイラは大丈夫だ。流石に動けなくなったのはビビったけどな。それよか、先生を呼んできてくれてサンキューな」

「え、ああ、うん。気にしないで///」

 

 一夏と葉がラウラと戦闘をし始めてから、そう時間は経っていない。それでもこのタイミングで千冬が現れたのは、葉がアリーナに向かう際に、楯無に頼んでおいたからであった。

 

「さてと、セシリア、鈴大丈夫か?」

「あ、だ、大丈夫ですわ///」

「あたしも大丈夫よ。セシリアはアンタらが来てからずっとボーっとしてたから、別の意味で大丈夫じゃないかもしれないけど」

「ん?どういうことだ?」

「決まってるでしょ?それはあんたが「鈴さんタイムですわ!!」ちょっと何すんのよ!」

 

 正確にはセシリアは葉が来てからずっと葉を見つめていたのである。頬を紅潮させて。と言いつつ、鈴も一夏の姿が物語のヒロインを助けるヒーローや王子様のように見え、一人ときめいていたことは秘密。そして、その姿に危機感を覚えている乙女もここに一人。

 

(あの様子・・・。あのセシリアって子も怪しいわね・・・。あっちの小さいほうの子はそうでもないのかな?)

 

「そして、その方は・・・?」

「あたしは、更識楯無。この学園の生徒会長です!」

 

 いつもであれば、セリフの一つでも書いてある扇子を取り出すところだが、今日に限っていえば、取り出すことはなかった。なぜなら、葉の右腕に自身の両手を絡めているため、手がふさがっているからである。

 

「えっと、突然どうしたんだ?」

「何でもなーい」

 

(葉さん、いつの間にあんな人と・・・。しかもあの見せつけるような密着具合!どうだと言わんばかりのあの顔!こちらを挑発していますわ!)

 

 乙女たちの戦いは続く・・・

_ _ _

 

「さて、これからどうしていくかも考えていかないとな」

「ああ、俺たちは負けたんだよな・・・」

「だったら、オイラ達も強くならんとな」

「だったら、まずはそれぞれパートナーを決めないとな。次の試合はタッグ戦だし」

「あー、オイラもう決まってるんだ」

「マジか!?誰となんだ?」

「シャルルに少し前に誘われててな。もう少ししたら部屋割りも変わって、同室になるし」

 

 これまでは男性操縦者が二人であったため、男性だけで一部屋でよかった。しかし、シャルルが来たことによって、誰か一人は女性と相部屋になることになった時、一夏なら幼馴染のいる部屋でもいいだろうということになったのである。因みに、それに一番喜んだのが一夏と同室になることが決まった箒であることは間違いない。

 

「そういえばそうだったか・・・。あれって決まらなかったら抽選になるんだろ?早く決めないとな」

「そうだな。さっき戦ってて思ったんだが、あいつは確かに強い。オイラ達が束になっても敵わなかったくらいに。でも、アイツがお前を憎んでいる理由には、何か怒り以外にもあるような気がしてならないんよ。何かに怯えてるような、囚われてるような・・・」

「あいつが怯えてる?何にだよ?」

「そこまではわからん。でも、案外あいつも助けを待つお姫様なのかもしんねぇな」

「お姫さまって・・・。俺にはそんな風に見えないぞ・・・?」

 

 一夏から見れば、ラウラはなぜか自分を憎んでいて、仲間を傷つけた許せないやつ。葉の言うお姫様とは、何を以ても結びつかない。葉もわかってはいた。普通はそんな風に見る人はいないということも。

 

「オイラも最初は気づかんかった。でも戦ってて思ったんだ。ボーデヴィッヒは()()()に似てる気がするってな」

 

 思い出すのは、最強最悪のシャーマンキング(麻倉葉王)とそれを姫に例えた背の低い友人(小山田まん太)

 




葉のISの名前を募集しています。イメージ的には、葉の甲縛式O.S 白鵠をベースに、初期O.Sの鎧っぽい部分をつけ、背中にハオの甲縛式O.S 黒雛にあった砲身のようなものがある感じです。

是非ご意見や評価などをよろしくお願いします。

※ご指摘がありましたので、活動報告に上げました。そちらにISの名前はお願いします。


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秘密

どうも、melkです。まずは投稿が非常に遅れてすみませんでした!就職してバタバタしていた上に、それに伴い引っ越しをすると、中々インターネットが使えるようにならないという状況で、約2か月も放置してしまいました。

もしかしたら、この作品を覚えていてくださる方もほとんどいないかもしれませんが、どんなにゆっくりなペースでも完結はさせたいと思っております。




また、葉の専用機の名前が決まりました。白竜王さん、ありがとうございます。格好いい名前ではないかもしれませんが、葉にとっては特別な名前であり、葉とハオの両方に関係しているので、提案にあった名前に決めさせていただきました。

今回は若干短めです。


「これが麻倉君の専用機・・・」

「全体的な色合いが俺のと似てるんだな」

 

 白を基調とし、右手は方から手首まで、武士の鎧をイメージさせる装備が付いている。特に目を引かれるのが、鋭い刀のようにも見える翼部と背中に背負った明らかに異質な黒い砲身。

 

「ああ。これがオイラの専用機 <マタムネ>だ」

「マタムネ・・・。何かその機体のイメージと合って無くないか?パッとしないというか・・・」

「まあな。でも、きっとこいつとオイラにはピッタリな名前なんだ」

「まあ、葉が良いなら良いけどさ。それよりも、射撃の特訓始めようぜ?」

「う、うん。そうだね!じゃあ、始めようか!」

 

 葉は、専用機に砲身がついたにより、射撃の特性を知る必要があり、また一夏も自身の必殺技とも言える零落白夜を使いこなすために、シャルルに稽古をつけてもらっていた。

 

 

その夜

 

「シャルル、先シャワー入ってていいぞ?特訓して一夏の引っ越してってなので、オイラ疲れたから、少し寝てる」

「そうだね。じゃあ、先にお風呂いただこうかな」

 

 一夏の部屋の移動が終わり、シャルルが葉の部屋へと来ることとなった。

 

(あ、そういえばシャンプー切らしてるんだったな。替えのやつを今持ってっといたほうがいいか)

 

 疲れもあって、半分思考停止したような状態の葉が思いつき、浴室に替えのシャンプーを持っていく。それまで感じていたシャルルへの違和感など完全に忘れて。

 

「おーい、シャルル。シャンプー切れてるだろうから、替えのやつを・・・」

「あ」

「あ」

 

 そこには、一糸まとわぬブロンドヘアの()()の姿があった。

 

 気まずそうに扉を閉めた後、数分が経ち、シャルルが浴室から出てきた。依然空気は重い。

「えーっと・・・。このことは秘密にしておいてほしいかな?」

「お、おう。それは良いんだが、何でわざわざ男の振りしてるんだ?」

「それは・・・」

「まあ、言いたくないなら言わなくてもいいさ」

「いや、うん。決めた。ちゃんと麻倉君には言っておかなきゃいけないと思うし。実は僕の父親がフランスのIS製作会社、デュノア社の社長なんだ。だけど、最近は他国で第3世代型が作られ始めて、でもフランスではまだ第2世代までしかできてないんだ。それで、同じ男性操縦者としてIS学園に入学して、麻倉君や織村君の専用機のデータを盗んでこれば、男性が操縦できる秘密がわかるかもしれないし、純粋に他国の最新のISのデータが手に入れられるって言われて。僕はそれに逆らえなくて・・・なんて言ったらさすがに都合よすぎだよね。どういう事情であれ、僕が麻倉君たちを騙して専用機のデータを盗もうとしていたことには変わりないんだから」

「オイラは別に構わんぞ?」

「そうだよね、許せないよね・・・って、ええ!?」

「それよりも、シャルル。ISに乗るのは楽しいか?」

「うぇ!?何で突然・・・?確かに、ISも男装と同じで、たまたま適性があったからさせられてたことだけど、それでも僕はISに乗るのが好きだ」

「そうか。だったら、ここから出て行くとか言うなよ?」

「・・・何で僕の考えがわかったの?」

「何だかんだ言って、シャルルは結構真面目だからな。そんな秘密を隠してたことが知られたら、ここにはいられないって考えそうだと思ってな」

「でもどっちにしろ、データが盗めなかったら、直にフランスから帰還命令が出る。そしたらさすがにここにはいられなくなる。友達を騙してデータを盗むのはやっぱり嫌だなぁ。僕にはできない」

「それなら多分大丈夫だぞ?確か、IS学園の特記事項か何かに、『IS学園に所属している間は、企業や国家からの影響を受けない』みたいな感じのことが書いてあったらしいからな」

「すごい、よくそんなの覚えてたね」

「前に一夏がそんなのがあるってこと言ってて、『どういう状況でこんなの必要になるんだ?』みたいな話してたことがあったからな。まさか役立つときが来るとは思わんかった」

「ふふ。一夏と葉ってそんなこと話すんだね。・・・僕もまだここにいて良いってことなのかな」

「ああ。人間、居たいところにいるのが一番だからな。お前がここでベストプレイスを作ったら良いんじゃねぇか?」

 

 かつて、葉達と共にシャーマンファイトを戦った、木刀の竜こと梅宮竜之介は、自身の安息の地、ベストプレイスを探して全国各地を旅していたことがあった。今のシャルルは、心のよりどころがなく、心から安心できる場所を探していた竜と重なるところがあると感じていた。その思いを共有できる仲間のいない分、シャルルの方がより辛いだろうということも。

 

「もし、この特記事項があってもダメだったときは・・・」

「ダメだったときは?」

「オイラも一緒にお前の父親のところまで、ここに居られるように頼みに行ってやるさ」

「ほ、本当?」

「ああ、だから今は安心してここに居ればいいさ」

「ありがとう・・・」

 

(ああ、何だか心が温かいな。それに、何だか僕は僕のままで一緒に居て良いって言われてる気がする)

 

「気にすんな、シャルル」

「僕の本当の名前はシャルロット。僕のことはシャルロット、いやできれば特別なあだ名で、シャルって呼んでほしいな」

「おう、これからよろしくな、シャル。オイラのことも葉でいいぞ」

「うん!よろしく、葉!」

 

 その後、お互いのことや今後のことなどを先程とは違い、柔らかい雰囲気で話した後、それぞれ眠りについた。しかし、その際、

 

(あれ、お父さんのところに葉も一緒に来てくれるって、何か前に見た『娘さんを僕に下さい!』っていうシーンに似てるような・・・。って、何考えてるの僕!さすがにそれはまだ早いというか、もっと段階を踏んでからというか・・・)

 

 シャルロットは、一人悶々としていた。

 

 

 

 タッグトーナメント当日、対戦表が張り出されていた。

 

「んな・・・!俺のパートナーがボーデヴィッヒ!?しかも、一回戦から葉達と試合かよ!」

「一夏、隣で大きな声出すとうるさいぞ」

「いや、驚くだろ普通!?というか、葉はもう少し驚け!」

「ウェッヘッヘ」

「何も褒めてねぇ!」

「織斑一夏。私は貴様を必ず叩きのめす」

「あれ、俺味方なのに!?」

「私にとってのターゲットはあくまでお前だ。やることは変わらん」

「そうだよな、こいつの場合こうなるよな!なんだろう、この味方がいない感じ」

「まあ頑張れよ、一夏」

「チクショー!もういい、俺一人で勝ってやる!!」

 

 まだまだ波乱は続く。

 




キャラ崩壊してるかもしれませんが、シャルと葉のシーンはこれしか思いつかなかった・・・


次回はラウラとの戦闘になります。できるだけ早めに投稿できるように頑張ります。


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それぞれの戦い

どうも、melkです。

しばらくかけなかったお詫びと、久しぶりに書いたらテンションが上がってしまったため、本日2度目の投稿です。と言いつつ、日付が変わってしまいました・・・


少し長めな上に、タッグトーナメント戦が終わらなかった・・・



それではどうぞ!


「それでは、一回戦、織斑・ボーデヴィッヒチーム対麻倉・デュノアチーム、試合開始です!」

 

「行くぞ!」

「うん!」

 

 合図と共に、相手チームへと向かって行く葉とシャルロット。すでに葉はISを纏ったときの自身の背丈ほどもある大きな刀を右手に持ち、シャルロットは得意の射撃で葉を援護する体制をとっている。

 

「まずは貴様からだ!」

「だろうと思ったッ!」

 

 一方こちらは、開始直後に、味方同士で剣を合わせることとなった。ラウラなら近くにいる最優先で排除したいターゲットを放っておくはずがないとさすがに一夏も予想していた。だからこそ、一撃で葬るための単純な横薙ぎに対して、剣で防ぎつつ、半ばカウンター気味に蹴りを入れることができた。最初の攻防は、備えがあった一夏が制した。

 

 

 

「やった!一夏があいつに一発当てたわよ!」

「ええ、この異常な状況だからこそできた対策ですわね」

 

 観客席では、鈴とセシリアが試合を見ていた。本当であれば、二人とも自分で試合に出てラウラに借りを返したかったところだが、数日前に回復したばかりであったため、今はこうして観戦している。二人とも応援するチームは違うが、ラウラを倒してほしいという目的だけは一致していた。

 

「葉さんとデュノアさんの連携も中々のものですわね」

「麻倉の専用機初めて見たけど、あの刀ほんと大きいわね。パワーならあたしの双天牙月とそんな変わらないんじゃない?しかもその割に器用に使いこなしてるし。何か慣れてる感じするわ」

 

 葉の刀の名は鬼殺し。それこそ、葉が恐山で共に鬼と戦い、全巫力で大鬼を倒した後成仏した猫の精霊マタムネのO.S(オーバーソウル)の名である。葉は自身の甲縛式O.S(オーバーソウル)においても、この鬼殺しを参考にした刀を使用しているため、扱いには慣れている。

 

「それに、デュノアさんも、織斑さんへの牽制射撃をしつつ、時折飛んでくるあのワイヤーブレードも上手くかわしていますわね。今の織斑さんではこの状態で近づくのは難しいかと」

「何よ?あたしの一夏ならそれくらい何とかするわよ!」

「あなたのではないですわよね?私は状況を冷静に判断したまでですわ!葉さんなら何とかできるかもしれませんが、織斑さんでは難しいのではなくって?」

「何を!?今に見てなさい!」

 

 多少目的が一致しても仲の悪さは変わらないようだった。

 

 

 

 ラウラは苛ついていた。最初の一撃で一夏をほぼ戦闘不能まで持っていき、あとから二対一で葉とシャルロットを倒していくつもりだった。しかし、最初の一撃は防がれた上に、カウンターまでもらい、葉は依然として刀一本であるものの、専用機のせいもあって、前よりも強くなっている。さらに、シャルロットの方がたまに射撃を織り交ぜてきており、それも上手く葉と戦っていることによりできる死角を使ってくるため、常に注意が必要となる。これでは、得意のAICにより相手の動きを止めるという戦術も使えない。

 

「チッ!これで吹き飛べ!」

 

 至近距離からのレールカノン。当たれば大ダメージ間違いなしの一撃、この距離では避けることは難しい。これはラウラも行けると思っていた。

 

「そろそろ来る頃だとは思ってたさ」

 

 シャルロットとの打ち合わせの中で、葉との近接戦で押されてきたら、AICが使えなくなっているため、ワイヤーブレードかレールカノンで意表を突いてくるだろうと話していた。

 

「阿弥陀流 後光刃!」

 

 放たれた弾を真っ二つにし、そのままレールカノンごと切り捨てる。冷静なラウラであれば、例えかわすことのできないほど近い距離からであっても、念には念を入れて葉が刀を振るった隙を狙う、フェイントを入れる、刀の届かない位置を狙うなどしたはずである。しかし、少しずつ溜まった苛立ちが彼女に焦りを生み出した。

 

 

 一方、その頃シャルロットと一夏は、一夏のエネルギーが2割ほど削れているとはいえ、直撃は今のところ何とか避けていた。だからと言って、銃弾の雨を掻い潜って近づけてもいない。

 

「織斑君、銃をメインで使う相手と戦うの苦手でしょ?」

「まあな。あいにく俺にはこの雪片弐型しか武装がないもんでね。しかも、こんな密度の銃撃、当たらずに近づくのは俺には無理だからな」

「それなら、今回で言えば葉とボーデヴィッヒさんが僕との射線上に来るように上手く立ち回れば、盾にできたかもしれないのに」

「出来るんだろうけどな。でも、ラウラは俺を憎んでて倒したがってるとは言え一応味方だ。一対一で戦うことはあっても、味方を盾にするような真似は絶対にしたくない」

「そっか。織斑君はすごいね。でも、それで負けたら言い訳にしかならないよ!」

「ああ、だから俺は必ず勝つ!」

 

 射撃の雨を避けながら、一夏は零落白夜を起動する。その様子に、シャルロットは困惑する。

 

(確かに零落白夜は強力だし、織斑君の命中精度も最初の頃に比べれば良くはなってる。でも、動き回る的に対して的確に命中させられるほどじゃないのは本人もわかってるはず・・・)

 

「うぉおおおおおお!」

「そんなの当たらないよ!」

 

 叫びと共に、零落白夜が1発2発3発と発射される。一夏のエネルギーを代償に撃つが、当然シャルロットには当たらない。

 

 しかし、それこそが一夏の作戦だった。零落白夜に気を取られていたシャルロットに一夏が距離を詰めていた。

 

「零落白夜は囮!?本命は突進か!させない!」

 

 トップスピードで猛追している一夏に気づき、シャルロットはすぐさま一夏に向けてアサルトライフルで迎撃する。避けるのが難しく、一夏の残りシールドエネルギーを考えたら、落ちるのも時間の問題であったためであった。

だが、一夏はそれを避けなかった。全てを防ぐことはできないため、特に致命傷となり得る銃弾だけを切り弾き、瞬時加速でさらに加速。

 

「これで、どうだッ!!」

 

 ついに、その刀がシャルロットに届いた。

 

 

「やられたね。かなりの無茶だけど、それを通しちゃうなんてね」

 

 シャルロットのシールドエネルギーは残り2割ほど。対して一夏は残り1割と少し。もちろんまだ試合は終わっていなかったが、シャルロットは思わず一夏の、その無謀とも言える突撃に称賛の声をかけていた。

 

 

 

 一夏がシャルロットに一撃浴びせたことは、ラウラにとってはむしろチャンスとなっていた。

 

(今なら鬱陶しい銃撃がない!動きさえ止めてしまえば、こちらのものだ!)

「運はこちらに味方したようだな!」

 

 そう言って、ラウラはAICを起動しようとした。しかし、その瞬間、今まで背中にあった黒い砲身が自分の方を向いていることに気が付き、危険を察知して即座に上空へと飛び上がる。

 

「鬼火」

 

 ラウラは間一髪で避けたが、高密度の炎弾が通った跡を見て戦慄した。地面には黒く焦げた跡が残っており、マグマのように真っ赤な部分からは、通ってから数秒経つが、未だ超高熱のまま収まる気配がないことがわかる。極めつけは、100m以上離れたアリーナの内壁もあまりの高熱に一部溶けているというところだ。ISでの戦闘を想定したアリーナだ、ちょっとやそっとでは傷もつかないだろう。さすがに観客席付近はさらに強力な守りであるため、けが人などは出ていないが、さすがに異常な火力だと言わざるを得ない。

 

(これはやべーな。さすがハオの甲縛式O.S(オーバーソウル)黒雛の蝋を真似しただけあるな。本物には遠く及ばないんだろうが、下手したら周りに被害が出ちまう)

 

 使った本人も驚いていた。

 

「私は、こんなやつにも勝てないというのか。いや、そんなはずはない。私はお前より強い!」

「うお!」

 

 ラウラの攻めが一段と激しくなる。必死さが増したというべきか。今まで牽制用に使っていたワイヤーブレードをただ一か所、葉に向けて放つ。

 

「これで貴様も終わりだ!!」

 

 葉はゆっくりと刀を構え、

 

「阿弥陀流 真空仏陀斬り」

 

 その斬撃はワイヤーブレードを切り裂き、ラウラに直撃する。

 

 

(何故私は倒れている)

 麻倉葉の放った一撃が私の全力を越えてきたからだ。

 

(負けたのか。私は)

 まだシールドエネルギーは残っている。だが、もう勝てないと思ってしまった心はすでに負けている。

 

(何故だ。何故私は勝てない)

 それは弱いからだ。あの男よりも。

 

(欲しい。力が欲しい)

 抗おうとも思わないほど圧倒的な。そう、あの織斑千冬(最強の教官)のような力が!

 

 

 VTシステム起動――

 




葉よりも一夏が主人公してる・・・

感覚としてはW主人公みたいな感じで思ってはいます。もちろん、よりスポットを当てるのは葉ですが


できればもう1話くらいこの日曜日に投稿しておきたいと思ってはいます。(できるとは言ってない)


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戦うのは誰が為か?

どうも、melkです。
予告(願望)より大分遅れてしまいましたが、何とか週が変わる前に投稿することができました!

ラウラ戦の最後となります。それではどうぞ!


「ぁああああああ!!」

「何・・・あれ?」

「何が起こってるんだ・・・?」

 

 葉の斬撃により、地に伏していたはずのラウラから、突如謎の黒い泥のようなものが噴出し、彼女の体を覆っていく。未知の脅威に対し、学園側でも警戒レベルを上げ、観客席のシャッターを閉めるという措置をとっていた。外から見ている人たち以上に、アリーナの内部でその脅威と対面している3人が感じる恐怖は大きいだろう。

 

 次第に泥が人の形、いやISを纏った人のような形へと変わっていった。しかし、その姿は、元であったラウラとは程遠い。それが何なのか一番先に理解したのは一夏であった。

 

「あいつ、千冬ねえの真似してやがるのか!?」

 

 徐々に怒りが込み上げ、試合のこと、周りのことがどうでもよくなっていくのを感じていた。

 

「俺がやる」

「ちょっと、織斑君!?」

「ふざけんな!!」

 

 真っ正面から一夏が突っ込む。しかし、何の考えもない突進は、ラウラだったものの神速の一撃であっさりと防がれる。そして、今の一夏には、返す刀で振るわれる致命の一撃を防ぐ術もなく、白式による武装も解けていた。斬られたところから薄くではあるものの流れる血は、絶対防御ですら防ぎきれないほどのものであったことを示していた。

 

「織斑君!同じ無茶でも、さっきの無茶と違う!今のは怒りに狂っただけの自殺行為だよ!」

「離せ!俺は、あいつを許せない。許しちゃいけねぇんだ!」

 

 一夏を止めるシャルロット。男女で力の差があろうと、武装を解かれた一夏がラファール・リヴァイヴを纏ったシャルロットを振りほどけるはずもなかった。しかし、シャルロット自身も、今のラウラに向かって行こうとは思えなかった。異質で理解できないものへの恐怖、さらに、その力は最強と呼ばれる織斑千冬そのものである。

 すでに、暴走したラウラの機体は、一夏とシャルロットに向かって刀を振り上げていた。ISを纏っていない一夏に避けることはできず、シャルロットは死の恐怖を前にして動けなくなっていた。その時、ラウラの前に葉が立ちふさがり、一瞬動きが止まった。

 

「オイラが相手になってやる」

 

 なぜラウラが止まったのかはわからない。そのまま切り捨てようとしてもおかしくなかっただろう。しかし、後ろで見ていた二人には何となくわかった気がした。この場で一番恐ろしいのは、目の前にいる圧倒的な強者ではなく、それを前にしていつもと何ら変わらない様子で立っている葉だと感じていたからだ。

 

「お前もそんな状態じゃ辛いだろ。もうちょい待ってろ。オイラが何とかしてやる」

 

 放たれる神速の斬撃を、ギリギリの状態ではあるものの受け続けられている。その最中に、超高火力の鬼火を混ぜるも、それすらもたった一本の剣のみで真っ二つにされ、後方で行き場のないエネルギーが爆発する。状況から見て、どう考えても葉に勝ち目はない。しかし、そんな中でもシャルロットの中には、もしかしたら葉ならば止めてくれるのではないかという希望があった。しかし、現実はそう甘くはない。5度目の剣戟のやり取りで、葉が限界に達する。葉が大きく弾き飛ばされたのが見えた。

 

「こりゃさすがにちょっときついな」

 

 ラウラの一撃を防ぎきれず、マタムネの左腕に大きな損傷を受けた。葉自身の左腕からも、血が流れている。世界最強と剣でやり合うには、S.Fによる戦いの経験値だけではあまりに不足過ぎた。

 

「シャル、頼みがある。何とかして一夏を戦える状態にしてやってくんねーか?」

「それはできるけど・・・。でも一人加わったくらいでどうにかできるレベルじゃないよ」

「大丈夫。何とかなるさ」

 

 これほどの状況になっても、葉の普段どおりは崩れない。圧倒的な実力差をその左腕に叩き込まれたばかりだというのに。

 絶望的な状況は何一つ変わっていない。それは一夏が加わっても同じこと。しかし葉の姿を見たシャルロットは、自身に大丈夫と言い聞かせ、信じることにした。

 

「サンキュー、シャル。さて、シャルが一夏にエネルギーを供給してる間、何とかオイラが持ちこたえないとな」

 

 自分だけでは到底勝てない相手。しかし、葉は自分一人で戦ってきたわけではなかった。

 

「さて、少し頼むぞ阿弥陀丸!憑依合体!」

「心得た!」

 

 自身の体に霊を憑依させるシャーマンの初歩的な技術。さらに葉は自身と阿弥陀丸のシンクロ率を100%以上にすることができるため、かつて千人切りの伝説を残し、鬼人とまで呼ばれた阿弥陀丸の力をフルに発揮できる。

 再びの剣戟。今度はまさに互角と言える状態であった。

 

「あれ、本当に葉なのか?さっきまでとはまるで違う・・・。剣筋は似てるけど、さっきまでより圧倒的に強い。雰囲気も全然違う・・・」

 

一夏とシャルロットも驚きを隠せない。先程までは圧倒的な差があったはずなのに、今では互角に戦えているという事実に。明らかに先までとは何かが違うということを感じ取っていた。

 

「ここまでとは、なんという剣の腕。だが、意思無きカラクリに拙者の剣は超えられないでござる!」

 

 ついに阿弥陀丸の剣が千冬を模したものの剣を超える。しかし、その斬撃はラウラに傷をつけるには至らなかった。生半可な攻撃ではダメージすら与えられないほど、泥のようなもので固められた全身は堅かった。だからこそ、

 

「一夏!みんなを護るためには、お前の力が必要なんだ!」

「織斑君、僕のエネルギーは全部託した。僕はエネルギーだけじゃなくて僕の思いの全ても君に注ぎ込んだつもりだよ?」

「葉、シャルル・・・。そうだな、俺はこの一撃を、自分の怒りじゃなくて、みんなを護るために必ず当てる。そして、あいつを止める!」

 

 一夏は零落白夜を起動する。1発分のエネルギーしか残っていないが、葉が足止めし、みんなを護るという覚悟を決めた一夏が失敗するとは誰一人考えもしない。

 

「阿弥陀流 真空仏陀斬り」

 

 葉が相手のガードの上から叩きつけ、ラウラのブレードをへし折る。その強い衝撃で体制が崩れた彼女には避けることもガードすることもかなわない。

 

「今だ!」

「零落白夜!!」

 

 絶対防御すら無視する一撃は、当然のごとくラウラを貫く。禍々しい鎧が崩れていく中で、ラウラには本来聞こえるはずのない声が聞こえていた。

 

「私にはわからない。織斑一夏、何故圧倒的な相手に、敵うはずのないと思わせるほどの敵に向かって行けたのかが」

「俺は、お恥ずかしながら、最初はただただ身勝手な怒りだった。だけど、俺の後ろには護らなきゃならない人がいて、前には一緒に戦ってくれる人がいる。そう思ったら、俺のやるべきことがわかったんだ。そしたらもうビビって何てられないってな」

「護るべきものか・・・。麻倉葉、お前はなぜいつも平然としていられる?やはり、それだけの力があるからなのか?」

「オイラは別に強いわけじゃない。この力だって、オイラ一人のもんじゃねぇんだ。ただオイラはユルく楽でいたいそれだけだ」

「・・・は?」

「オイラが頑張るのは楽でいたいからだ。それで誰かを傷つけたり、自慢したりするためじゃない」

「だが、楽でいたいなら、他の人を護る必要も、ましてやここで戦う必要もなかったはずだ!」

「けど、それじゃ楽でも楽しくないだろ?一夏やシャル、みんなが傷つけられたり、お前が何かに囚われて苦しんでたりするのは嫌だからな。お前が何に苦しんでるのかは正直わからん。でも、戦って全部出しきれたら、お前も少しは楽になるんじゃないかと思ったから、オイラも全力で戦った」

 

ラウラにとって不意打ちだった。葉の答えが思いもよらぬ方向であったのもあったが、葉が自分のため戦ってくれていたということがだ。強さではなく、ただ自分を見て心配してくれていたということが、強さのみを存在意義として考えるほかない生活、体験をしてきたラウラの心をどれほど動かすことだろうか。顔が熱を帯びていくのを感じた。

 

(何だ、何なんだこいつは!さっきまで本気で殺そうとしていた相手だぞ!そんな相手に向かって・・・お前のため戦っていた・・・などと言うとは!どうかしている///)

 

それと同時にラウラは気づいた。葉はユルい。だが、だからこそどんな状況でも飲みこみ、いつも通りの自分で相手に向かっていける。そんな葉に、強さばかりにこだわっていた自分が勝てるはずもないということを。そして、ラウラは静かに意識を手放した。

 

 

「説明のつかない異常な力。無人機の時のこともあいつの仕業なのか・・・?一体何者なんだ、麻倉葉」

 

千冬は一人訝しむ。葉に向けられたその目は、もはやただの生徒に向けられたものではなくなっていた――

 




ラウラとの会話のところが結構難しかったです・・・
もしかしたら違和感あるかもしれませんが、すみません。

これで、アニメ一期で出てくるヒロインは全員登場したので、次回か次々回くらいに、番外編で葉の家を訪問したりするエピソードを書きたいなと思っております。


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疑念と殺気と笑顔と困惑

どうも、melkです。
最近、お気に入りや評価、感想が増えて嬉しいです!

それでは、12話目です!


「えーっと・・・転校生を紹介します」

「シャルロット・デュノアです!」

「ということで、デュノア君はデュノアさんでした・・・」

 

 さすがにこれにはクラス中が唖然とする。3人目の男性操縦者にして、ブロンドの貴公子だと思っていた少年が、実はブロンドの美少女だったのだから。当の本人はいつも以上にニコニコしており、その心境を察することはできない。

 

 タッグトーナメントでの熾烈な戦いから数日。シャルロットとラウラの姿がなく、特にシャルロットの話題で持ちきりだった。中には、あの戦いで絆を結んだ二人の駆け落ち説まで出るほどに皆の関心は高かった。そんな中でのこの突然の発表であった。これを予想していたものなど当然いない。ただ知っていた者と知らない者がいただけである。

 

「これからもよろしくね!葉!」

「ん?ああ、よろしくな」

「な!?」

 

 シャルロットが小さな声で葉にささやく。しかし、シンとした教室の中、そのやり取りは周りの生徒にも聞こえており、かえって「コイツら何かある」ということを想像させる。シャルロットと同室であった点と、すれ違いざまのこのやり取りから、葉はすでに知っていたということが知れ渡る。特にセシリアはショックが大きいようだ。その時、バン!と大きな音を立て、扉が開け放たれた。そこにいたのは、話題となっていたもう一人の人物、ラウラ・ボーデヴィッヒだった。何食わぬ顔で入ってきたラウラに対し、クラスメイトはまたもや驚く。クラス中の気持ちを察し、1年1組の生徒の一人、布仏本音がラウラに疑問を投げかける。

 

「えーっと・・・ボーデヴィッヒさんはIS学園をやめちゃったんじゃないの?」

「?入学してから数日でやめるわけがないだろ?」

 

 さも当然のことのように言い放つ。一夏を狙って入学し、試合では倒しきることができず、さらに国際的に禁止されていたVTシステムを積んでいたことが発覚、さらには暴走までさせたため、様々な説が飛び交う中でも、「もうこの学園にはいられないだろう」という意見が大多数を占めていた。

 

「麻倉葉。お前は私の嫁だ」

「へ?」

 

 突然の告白(?)に葉もさすがに驚く。周りからしてみれば、この数分間に驚きすぎて、理解が追いついていない様子。お構いなしとばかりに、ラウラは葉の顔を自分の元へ引き寄せる。曰く顎クイというやつだ。男子が女子にやるというのも、漫画の世界くらいでしかお目にかからないようなものが、現実に、男女逆転で行われているのだ。クラスのほとんどの女子は、目を輝かせて見守る。唇を奪われかけたその時、約2名邪魔をする者がいた。シャルロットは、葉とラウラの顔の間に手を滑り込ませ、セシリアは、片腕を武装展開して、ラウラの頭へと銃口を向けている。絵面は、なんともカオスで、物騒だ。

 

「突然それはどうかと思うなー。いくら“冗談”とは言え」

「ええ、面白さを求めるのは素晴らしいですが、少しやりすぎですわね。“冗談”にしては」

「?冗談とは何のことだ?それよりもその手をどけ・・・」

「冗談、ですわよね?」

「HR中に冗談を言うなんて、イケない娘だなぁ。さあ、口を閉じたまま、席に座ろうか」

 

 冗談であると連呼するが、その目は決して笑ってはいない。まさに暗黒であった。さらに、上手いことに、両者の表情は葉の位置からは見えていない。見えるのは、これまで見たことがないほど、怯え、冷や汗をかいているラウラの表情だけであった。

 

「その通りだバカ者ども。黙って席に着け」

 

 スパパパパンと綺麗な音が鳴り響く。出席簿を持った千冬がいた。因みに、葉は騒いでもいなければ、席も立っていないが、叩かれている。だが、葉の胸にあるのは、理不尽への疑問などではなく、安堵であった。

 

(何か知らんが、シャルとセシリアが止めてくれて良かった。じゃなきゃ、確実にアンナに殺されてたな・・・。アンナのことだから、必ずいつかバレる)

 

 葉にとっての最大の恐怖とは、アンナであった。ただそれだけのこと。

 

 

― ― ―

「あれ、織斑先生から呼び出し何て珍しいね。どうしたんだろう?」

「うーん・・・オイラ呼び出されるようなことした覚えはないんだけどな」

 

 放課後、葉は千冬から呼び出しを受けていた。しかも、剣道場にとあれば、ますます理由がわからない。

 

「あー、千冬ね・・・織斑先生のことだから、葉の剣の腕を見て、腕試しでもしたくなったんじゃないか?」

「あの教官が葉の剣の腕を認めたということか!さすがは我がよ・・・。い、いや、何でもない」

 

 いつものメンバー+ラウラ。すっかりラウラも馴染んではいるが、葉のことを嫁とは呼ばなくなった。理由は、そのワードに反応し、向けられる二つの視線。蛇に睨まれた蛙とはこういうことを言うのだろう。

「お二人の試合ともなれば、ぜひ私も観戦したいですわ」

「私も一人の剣士として、ぜひ見てみたいな」

「あー、『でも何か一人で来い』みたいな感じだったんだよな。まあ、行ってみればわかるさ」

 

  

 別れを告げ、一人剣道場へと向かう。その先では、竹刀を持ち、立っている千冬の姿があった。ご丁寧に葉の足元にも竹刀が置いてある。適当に言った一夏の予想が当たったのかと驚く。

 

「麻倉、竹刀を持て。言わずとも、この状況を見れば何をするかわかるだろう?」

「何でオイラが・・・」

「そうか、竹刀なしでも私相手程度余裕ということか。良い度胸だ、な!」

「うぉ!!」

 

 一呼吸の間に、葉の脳天めがけて千冬の竹刀が振り下ろされる。葉は反射的に竹刀を拾い、ギリギリのところで、防御が間に合う。

 

「ほう。これに反応し、防御までするとはな。ではこれでどうだ!」

 

 上から振り下ろされたと思ったら、右から竹刀が飛んでくる。次の瞬間には、左。巧みなフェイントを織り交ぜた連撃が襲う。一太刀一太刀が神速、必殺。葉は防戦一方で、誰が見ても明らかに押されていた。

 

(強えぇ!しかも、まだ全然本気じゃねぇ!本気になったら、多分阿弥陀丸と同じか、下手するとそれ以上・・・!)

 

「どうした?あのタッグマッチの時の力を使えば、この程度簡単に返せるだろう?」

「悪いが、あれはオイラだけの力じゃないんでな」

「ずっと不思議に思っていた。無人機が撃破されたあの時からな。明らかにISや既存の兵器によるものではない力で破壊されていた。誰なのかがずっとわからなかった。だが、この間のタッグトーナメントのVTシステムが暴走したラウラとの戦いを見て確信した。無人機の件もお前だとな。麻倉葉、お前は何者だ?」

「オイラはシャーマンだ」

「は?」

 

 千冬は驚いていた。恐らく、葉の人には言えない核心の部分に関することだと考えていたからだ。しかし、いざ尋ねてみれば、何の躊躇もなく、あっさりと答えた。しかも、その内容が予想の斜め上を行っていた。

 

「シャーマン?霊能力者だと?」

「ああ、そうだ。この間のラウラとの戦いの時は、阿弥陀丸っていう侍の霊を自分に憑依させて戦ってた。言ったろ?オイラだけの力じゃないってな」

「なるほどな。霊能力か。その話なら、状況とも矛盾しないし、私に事実かどうかを確かめる術もないということか。やけにあっさり明かすと思ったら、中々良い言い訳を用意していたものだな」

「いや、本当なんだが・・・」

「真実を語る気がないのはわかった。ならば、こうしよう。真実を今ここで話さないのなら・・・

 

 

 

 

敵とみなし全力で潰す」

 

 

 放たれる濃密な殺気。先程までのお遊びとは違う、本気なのだということを表していた。常人であれば、近くにいるだけで気絶するほどのもの。ましてや直接自分に向けられて、立っていられるものなどそう居ない。

 

 

「信じられんかもしれんが、嘘ってわけじゃねぇんだ」

 

 葉は平然としている。いつもと変わらない様子。それこそが葉の強いところであり、最も恐ろしいところでもある。葉はS.F(シャーマンファイト)で、多くの敵と命を懸けた戦いをし、実際2度死んでいる。さらに言えば、地獄まで経験しているが、その中でも、自分の魂のあり方を崩さず切り抜けてきた。そんな葉だからこそ、いくら千冬の殺気が凄まじくとも、受け流すことができる。

 

「貴様の言うことを()()信じることはできない。だが、ただ強いとかそういう次元を超えた戦いを経験してきているのは、今のでわかった」

 

 自分の殺気にも臆することなく、答える葉を見て、千冬は先ほどの話は、少なくとも全くのデタラメではないと判断する。実際のところ、葉が何か他とは違う経験や力を持っているのには気づいており、恐れはするだろうが、何とか答えるのではないかとは思っていた。しかし、ここまで平然としているとは予想しておらず、改めてその異様さを感じることとなった。

 

「何だ、オイラを試してたのかよ」

「半分はな。だが、それも次の質問に対する貴様の答え次第だ。麻倉葉、お前がIS学園に入学した目的は何だ?お前はこの学園、そして生徒たちにとっての敵なのか、味方なのか?」

 

 千冬にとっては、最も重要な質問。この質問の答え如何によっては、先ほどの言葉を実行する気であった。そのことに迷いなどない。

 葉はいつも通りだが、その目からは、決意、あるいは楽しさのような感情が混じっているような気がした。

 

「オイラの目的は、この世界を楽々で楽しいものに変えることだ」

 

 そう言って葉は笑い、千冬は少し困った顔を浮かべた。

 




次回辺り、番外編を挟もうかと思っています。




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番外編① ドキドキお宅訪問

どうも、melkです。

予告通り、番外編です!
みなさんお待ちかね(?)のISガールズVS鬼嫁アンナです(笑)

皆さんからいただく感想を見ていて思ったことが一つ。
「みんなどんだけアンナ好きなんだよ!」


筆者もこの話を書きたくてしょうがなかったです(笑)


それではどうぞ!


―side Ichika

 

 俺は今一人で電車に乗っている。いつもは、部屋に戻っても箒がいるから、一人になるということはほとんどない。それはそれで楽しいのだが、一人も中々悪くない。IS学園に入学が決まった時は、高校生活を男友達と過ごすという日常を半ばあきらめていた俺だが、今では、もう一人の男性IS操縦者の葉がいる。そして、俺は今その葉の家に向かっているのだ。他のみんなは先に行っているが、俺は用事(千冬ねぇに頼まれた雑用だが・・・)があったため、一人遅れて向かっている。俺たちが今日家に来ることを、葉は知らない。みんなで、「どうせならサプライズにした方が面白い!」という話になったからだ。みんなはもうそろそろ着くころだろう。葉のやつがどんな反応するのか見れないのが残念だが、後で聞いてみることにしよう。それでも、喜んでくれているといいな・・・。

 

 

1時間後―

 

 どうしてこうなった。葉の家についたら、セシリア、シャルロット、ラウラが、知らない綺麗な女の人(葉のお姉さん?)と睨み合ってるし、その横で箒はどうしていいかわからない様な感じでオロオロしてるし、鈴が目で「お前が何とかしろ」と俺に訴えてきてるし、当の葉本人は部屋の奥で倒れてるし(あ、右の頬に紅葉マークついてるし)。

・・・どういう状況?

 

―side out

 

 

 

 

時は遡り、ちょうど箒たちが到着した頃―

 

 

 

「ここが、葉の家・・・」

「立派っちゃ立派だけど、随分古そうな家ね~」

「インターホン押しますわよ」

 

 セシリアがインターホンを押す。全員の予想に反して、中から女性の声がする。出てきたのは、金髪の美人であった。

 

「で、誰よアンタたち?」

「わ、私達は、IS学園での葉君のクラスメイトです」

「葉の・・・?」

「ただいまー。買い物行ってきたぞ・・・って、どうしてお前らがいるんだ!?」

 

 玄関で話している時に、ちょうど買い物に行っていた葉が帰って来る。みんなが期待していた通りの驚いた顔であったが、特にセシリア、シャルロット、ラウラにとっては、それどころではなくなってしまっていた。その様子を見て、アンナは悟る。彼女たちは敵であると。

 

「そういうこと・・・。葉、ちょっとこっちへ来なさい」

「へ?お、おう」

 

 葉がアンナの元へと近寄った瞬間、アンナは葉の胸倉をつかみ、葉の頬を叩いた。あのハオでさえ避けることのできなかった幻の左が炸裂した。

 

「どういうことか詳しく話してくれるんでしょうね」

「いや、もう気絶してますから!」

「口から魂とか出てそうなほど間抜けな顔して気絶してるわね・・・」

「大丈夫よ。人間この程度で気絶なんてしないわ」

「さすがにやりすぎではなくて?いくら葉さんのお姉さんとは言えこれは・・・」

「私は葉の姉じゃないわ。許嫁よ」

「「「「「はあ!?」」」」」

 

 驚愕の新事実。世界で2人目の男性操縦者にして、セシリア、シャルロット、ラウラにとっての思い人には、高校生にしてすでに許嫁がいたのであった。

 

 

 

 

 

そして現在―

 

 

 アンナが葉の許嫁であると知ってから、葉に思いを寄せる3人はしばらく放心状態になった後、それぞれの思いから、一様にアンナを睨みつけていた。

 

 

 セシリアは、悔しさに顔を歪ませていた。

(葉さんに許嫁がいたとは・・・。いえ、別に葉さんは騙していた訳ではありませんわね。それでも、悔しい!!)

 

 シャルロットは、今にも泣きそうなのをこらえていた。

(葉には許嫁がいたんだね・・・。やっぱり、僕はあきらめなくちゃいけないのかな?やだよそんなの・・・)

 

 ラウラは、自分に言い聞かせるようにして、強く思っていた。

(許嫁・・・。完全に調査不足だった。確かに、まだ私は葉のことをあまり知らない。だが、だからと言って、この思いまで否定はさせない!)

 

 箒は、常識と照らし合わせて考えていた。

(高校生で許嫁・・・。流石に早くはないのか?いや、でもこの家の感じからして、かなり歴史のある家のようだし、旧家とはそういうものなのかもしれないな)

 

 鈴は、一人妄想の世界へと旅立っていた。

(許嫁か・・・。もうこの年で結婚相手が決まってるのよね。私がもし今から結婚を前提に一夏と付き合ってたら・・・。グヘへへ)

 

 一夏は、単純だった。

(許嫁か。すごいんだな、葉の家は)

 

 葉は・・・ほんのひと時の平穏な夢を見ていた。

 

 

 膠着状態に、しびれを切らし、ラウラが宣言する。

「貴様が許嫁であろうと、私はあきらめない。例え葉を嫁にできなくても、愛人であろうと、愛し合えさえすればそれでいい!」

「ラウラ・・・」

「ダメよ、葉の妻になれるのは私だけ。愛人なんて許さないわ」

「それでも!あきらめる理由になんてなりませんわ!」

「そうだよね・・・。先のことなんてわからない。例え許嫁がいたとしても、これから振り向いてもらえるように頑張ればいいんだ!」

 

 ヒートアップする4人、気まずそうにしている2人、未だ妄想から帰ってこない1人、そもそも意識のない1人。混迷を極めるこの状況を打ち崩したのは、新たな来客だった。

 

「女将!旦那が帰ってきてるってのは本当ですかい!?」

「葉君!」

 

 板前修業中の竜こと梅宮竜之介と、森羅学園に通う小山田まん太が、葉に会うため駆けつけたのだった。

 

「俺の上達した料理を食べてもらおうと思って、昼飯作りに来たんすけど、お邪魔でしたかね、こりゃ」

「えーっと・・・。みなさんどちらさんでしょう?」

「わ、私達はIS学園の生徒で、葉さんのクラスメイトですわ。それでその・・・」

「はあ・・・、あんた達もタイミングが悪いわね。いいわ、理由はどうあれ、全員葉に会いたくてわざわざ来たんだもの。妻として、踏ん張り温泉の女将として、お昼ご飯くらいはもてなさなくちゃいけないわ。竜、料理をお願い。まん太、葉を起こして。それと、あんた達は、食器の準備と配膳!」

「あれ、日本のおもてなしって、お客さんにしてあげるんじゃ・・・」

「つべこべ言わずにやる!」

「「「「「は、はい!」」」」」

 

 結局、全員で食卓を囲むことになった。S.F(シャーマンファイト)の時にも、一次試験前のホロホロだったり、本選時のオパチョやラキストだったり、不思議と食事を囲むことがあった。食事には、人を和ませてしまう不思議な力があるようで、葉にとってはS.F(シャーマンファイト)で知り合った者とIS学園で知り合った者が少しだけお互いに馴染むことができたのであった。

因みに、気絶から起こされて、訳の分からない葉とアンナの最初のやり取りは、

 

「今日のトレーニングは10倍よ」

「げ、もうS.F(シャーマンファイト)は終わっただろ!?」

「文句ある?」

「い、いえ、ありません・・・」

 

という理不尽なものであった。

 

 

 

 

 

夕方―

 

 

「それでは、私達はこれで失礼する」

「一時はどうなることかと冷や冷やしたけど、結構楽しかったわ!」

「それなら良かった。お前らも気をつけて帰れよ」

 

 箒と鈴が言い、葉が返す。仲良くなってきたところで、帰る時間が来てしまい、5人は夕焼けの中見送られていた。

 

「アンナさん。僕たちも負けませんから!」

「葉の妻は私よ。だから、()()()()頼むわ。IS学園での葉をよろしく。それと、もう一つ。愛人は認めないけど、葉のファンは許すわ」

「ふふふ、少し異論はありますが、任されましたわ!」

「24時間葉のことは私が守ろう!」

「さようならー!」

 

 先ほどまで女の戦いが繰り広げられていたが、それなりに仲良くなったようだ。葉としては、同年代の同性の友達が少ないアンナと彼女たちが仲良くなってくれたらとも思っていた。夕日に照らされた背中が見えなくなるまで見送る。

 

「葉」

「ん?何だ?」

 

 すると、アンナが葉の耳元で、

 

 

 

 

「私以外の女とイチャついてたら許さないんだから///」

 

 

 

 

「ほ、ほら早くランニングに行ってきなさい!」

「お、おう!」

 

 二人の顔が赤く見えるのは、きっと夕日のせいだろう。

 




ISとのクロスなのに、アンナが一番ヒロインしてるという事実・・・

キャラが多すぎて、ちょっと苦戦しました。特に、葉に惚れてない組の箒と鈴が空気になりそうで(今も若干なってるけど・・・)

感想で、「出すのはアンナ、ハオ、まん太、五人の戦士くらい」的なことを言った矢先に、竜を出しました、すみません。


次回は多分本編になると思います!


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サマー・メモリーズ

どうも、melkです。
少し日が開きましたが、13話目投稿します!

いよいよ臨海合宿編!ついに黒幕っぽい感じのあの人が登場します!今回は少しだけ長めになっています。


「葉!!!」

「そんな・・・、嫌ぁ!!!」

 

 巨大なエネルギーの塊に、為す術もなく葉が飲みこまれる。届かなかったのだ。葉の技量でも、頼れる仲間たちとの絆でさえも、その悲劇を止めることはできなかった。

 

 当の本人は、海に落ちたら寒そうだなどと呑気なことを考えている。そして、葉は力なく墜落し、海の中へと姿を消した。

 

 

―――

「・・・う、葉」

「ん?もう着いたんか?」

 

 遡ること1日、葉達はリニアに揺られていた。どうやら臨海学校の目的地へと着いたようだ。最初はテンションが高かったが、長時間の移動の疲れもあり、静まり、徐々に寝落ちする人が出始めていた。因みに、葉は真っ先に寝ていた。その際、葉の体が傾き、隣にいたシャルロットにもたれかかるような体制になっていたため、シャルロットは興奮して眠れずにいたのだった。眠ることよりも、密着した体制と、コテンと肩に頭を乗っけた葉の寝顔を楽しむことにしたのだ。他のライバルたちに見られたら即座にこの時間が終わらせられそうだったが、生憎とみんな寝ていたため、到着するその時までこの幸せな時間は続いた。起こさなければいけないということが少し残念なシャルロットだったが、葉が起きた時に最初に自分を見てもらえるというのもまた良いと思い、邪魔される前に起こすことにした。

 

「あ、すまん。そっちに倒れて寝ちまってたみたいだな」

「ううん、大丈夫だよ!それより・・・葉、おはよう!」

 

 あまりに眩しく、嬉しそうな表情で挨拶をされ、さすがの葉も少し照れる。

 

「お、おう。おはよう」

 

―――

「11時か。今日は長旅の疲れもあるだろうから、自由行動にする。夕食までには戻って来い、以上」

「やったー!」

「海行こう!海!」

「水着で悩殺するチャンス・・・!」

 

 海辺での自由行動。皆一様に海へ繰り出す。しかし、楽しみ方は人それぞれだ。海で泳ぐもの、砂場でビーチバレーをするもの、無駄に豪華な砂のお城を作ろうとするものetc・・・。しかし、もう一つ大事なことがある。海で遊ぶのもそうだが、何せここにはたった2人だけとは言え、男がいる。それだけで、皆の視線は野獣のごときギラつきを見せる。ビーチバレーをしながらちらちらと目をやっては、気にしてないふりをしつつもちゃんと可愛く見える角度やポーズを計算して見せるようにしている。

 

「ああ、この状況。お腹が痛い・・・」

 

 一人呟く一夏。女子たちの視線が集まる意味は理解している。しかし、自分をからかおうとしているのだろうと考え、ストレスを感じるあたり、その意図は理解していないのだろう。今は、箒と鈴に「絶対にその場を動かないこと!」と念を押されているため、二人の着替えが終わるまで待つしかないのだ。

 

「あれ、そう言えば葉は?」

 

 

 

「ラウラ、そんなに恥ずかしがってないで早く行こう!」

「いや、こんな格好葉には絶対に見せられない!!」

「こんなに可愛いのに・・・。そこまで言うなら、僕一人で行っちゃうよ?」

「ま、待てシャルロット!わかった、今行くから!」

 

 そう言って、シャルロットとラウラは姿を現した。シャルロットは、黄色を基調とし、スカートとなっている部分は黒い線が入っている水着で、シャルロットの明るさをよく表した、まさにシャルロットというイメージをさらに引き立たせる格好であった。ラウラは、いつもの髪型から、ツインテールにしており、黒い生地に紫のレースという大人っぽい色の水着を着ながらも、可愛いという言葉がよく合う格好であった。普段の冷静な態度とは打って変わって、恥じらいで頬を染めている姿も、ギャップを生み出している。

 

「って、あれ?葉は?」

「せっかく恥ずかしい思いをしたというのに・・・」

 

 

 

 皆が砂浜やその付近にいる頃、そこから離れた岩場に葉は一人座っていた。他の人のように海で遊ぶことよりも、ただぼーっと海を眺めている辺りが実に葉らしい。さらに言えば、何時間もこのままでいる可能性もある。以前、葉を尾行していたまん太が、夕方まで川を眺め続ける葉に驚いていたこともあった。普段の喧騒も悪くはないが、葉としてはユルくのんびり過ごす方が合っていると感じていた。

 

「あら、こんなところにいらしたんですね」

 

 セシリアが岩の影から姿を現す。どうやら遠くから葉を見つけ、様子を見に来たようだ。

 

「何をしてたんですの?」

「海を見てたんよ。潮風に吹かれながら、こうやってゆっくりしてるのが、何だか気持ちよくてな」

「確かに、そんなに海をじっくりと見ることなんてあまりないですわよね・・・。私もご一緒してもよろしいですか?」

「ああ、オイラは構わないぞ?でも、セシリアはつまらないんじゃないか?」

「いえ、そんなことありませんわ。こういう優雅な時間も素敵だと思いますわ」

 

(それに、葉さんの隣にいるだけで充分幸せですし)

 

 ゆっくり時間が流れるような感覚を二人とも感じていた。時々思い出したように他愛のない話をする他は、言葉も交わさないが、少なくとも二人にとってはとても心地の良い時間であった。

 

 

―――

「よ、葉さん。あ、あーん」

「ずるいセシリア!葉、僕にも!」

「くっ!席が遠かったのが災いしたか・・・」

「い、一夏!こっちもよ!あーん!」

「いや、こちらにだ!早くしろ一夏!」

「お前らは箸使えるだろ!?」

「うるさいぞお前ら!織斑、麻倉、罰を与える。後で私の部屋に来い!」

 

 夕食時にはいつもの喧騒。セシリアが箸を上手く使えないということから広まった「あーん合戦」。その罰をなぜか一夏と葉が食らう羽目になった。結局、罰として、一夏は千冬の、葉は真耶のマッサージをすることとなった。お互いにマッサージの腕を見て、姉、許嫁のいる苦労を感じ取っていた。罰でありながらも、気づけば臨海合宿の思い出の一つとなる、良い時間となっていた。

 

 

 しかし、教師陣にかかってきたある一本の連絡によって、楽しい臨海合宿の様相は終わりを告げる。専用機持ちと箒がとある一室に集められる。具体的なことを何も知らされず、緊急事態だとだけ言われて集められたため、戸惑っている者も多い。特に、箒は専用機があるわけでもないのに呼ばれ、何故呼ばれたのかもわからない状態であった。ただでさえ、最近起こる様々な問題に対し、一夏やみんなが戦っている中、何もできない自分への悔しさが募り、専用機さえあればと感じていたため、自分の呼ばれた意味を考える。

(何故何もできない私が呼ばれたんだ。専用機も持っていないのに、私が呼ばれたのには特別な理由があるはず。特別なと言えば・・・まさか!)

 

「そう、そのまさかだよー!」

「ね、姉さん!?」

 

 床下から突然出てきたのは、世界中で知らないものなどほとんどいない人物にして、箒の実の姉、篠ノ之束だった。

 

「お前がいきなり出てきたら場が混乱するから、話の後に出て来いと言ったはずだが?」

「ごめんごめん、ちーちゃん。だからその容赦のないアイアンクローをやめてくれると嬉しいかな」

「はあ・・・。というわけだ、順番が逆になったが紹介しておく。ISの生みの親、篠ノ之束だ。()()()()この地にいたらしく、この非常事態を解決するために力を貸してもらうことになった」

「あ、あの有名な天才科学者が何でこんなところに・・・」

「よろしくー!と言っても、ほとんど君らに興味がないから挨拶する必要性も見当たらないんだけどね。もちろん、ちーちゃん、いっくん、箒ちゃんは別だよ?それと、そっちのもう一人の男性操縦者君もね」

 

 悪意を一切感じさせない、純粋そのものといった感じで興味がないと言い放つ。葉は逆に興味を持たれたことに驚く。それは元々束を知っている一夏や千冬、箒ですらも、他人に興味を示したことに意外さを感じていた。

 

「あの無人機の時、ほんのちょっととは言え、この束さんが巫力を込めてO.Sしたのに、それをあっさり壊すなんて、一体何者なのかなー?調べても、古くからあるシャーマンの家ってことくらいしか出てこないし、ただそれだけでISを展開しながら、あのO.S(オーバーソウル)を破壊するなんて高度なことできるわけもないし。わからないことをわからないままにしておくなんて束さん許せないんだよねー。だから正直に教えないと、君のこと潰しちゃうぞ☆」

 

 O.S(オーバーソウル)、巫力、シャーマンなど、聞きなれない言葉が飛び交う中、無視できないことをさらっと暴露する束。そのことに、セシリアが激怒する。

 

「あの無人機を送ったのはあなたでしたの!?どれだけみんなが危ない目に合ったか・・・」

「うるさいなぁ。お前だれ?気安く話しかけないでくれる?じゃないとお前から潰すよ」

 

 間違いなく本気で言っている。その殺気は千冬のものとも遜色ないほどだ。それだけで、篠ノ之束という人物が、ただの科学者という枠に収まらない化け物だということが一瞬にして理解させられる。セシリアもそれ以上口を開くことができず、束と同格の化け物である千冬と千冬の殺気に充てられても笑っていられた葉以外は、立っているのがやっとといった状態だった。

 

「そうか、あのO.S(オーバーソウル)はお前のだったのか・・・。オイラのことなら、気が済むまで教えてやる。だから、他のやつには手を出すな」

「何でそんなこと命令されなくちゃいけないのかな?命令してるのはこっちなんだけど」

 

 珍しく、葉も少し怒っているようだ。怒りで自分を見失ってはいないが、静かな怒りが確かにその表情、声色に含まれているのを感じる。

 

「お前らいい加減にしろ」

 

 気づいた時には、痛みがあった。葉、束の両方の頭に、千冬からの拳骨が入っていた。それにより、一触即発のムードが変わった。

 

「いったーい!束さんにこうもあっさり拳骨を当てられる人なんてほんとちーちゃんくらいだよー」

「そうか、それがそんなに嬉しいならもう一発行くか?」

「いや、本気で痛いからもういいよ」

「麻倉もいいな?」

「はい・・・」

「それでは本題に入る。ハワイ沖で試験稼働していた、アメリカ・イスラエルが合同開発したIS銀の福音が暴走した。それをお前たちに止めてほしいという極秘任務が来た」

 

 

 波乱はここに幕を開ける―

 




文字数的に、どれくらいがいいんですかね?
何となく書いていたら3000字ちょっとくらいになることが多いのですが、少し短いのかなとも・・・

読んで下さる方が、読みづらくないのであれば、少しずつ量を多くしていこうかなと思っています。


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再会

どうも、melkです。
投稿が遅くなり、すみません。さらに、今回短めですみません・・・

ちょっと、アイデアを固めるのに時間がかかり、尚且つ書いてみたら短くなってしまいました。


 臨海学校の最中、普通の和室が、即席の作戦室となっていた。言わずもがな《銀の福音》の件である。

 

「作戦は単純だ。篠ノ之が運び、織斑が仕留める。そして、その補助として麻倉を入れる。先程目の当たりにした通り、《銀の福音》のスピードに追いつけるのは篠ノ之の紅椿しかいない。また、一撃で仕留めるためには、織斑の零落白夜が必須となる。以上が人選の理由だ」

「あの、それでは葉さんは?」

「麻倉は・・・どんな時でも落ち着いているからな。いざという時に、こういうやつがいた方が安定するだろ?」

「な、何か適当ですね・・・」

「そう馬鹿にしたものでもない。こういう非常事態では、少しの焦りが命取りになる。そういう状況で、こいつよりも適していると思うものがいるなら考え直すが?」

「それは・・・」

「実力に関しても、お前たちの中ではトップクラスだろう」

「ふーん、ちーちゃんは随分とこのヘボそうなのを買ってるんだね」

「事実だ。麻倉、やれるな?」

「ああ、よくわからんが何とかなるさ」

「他のものも異議はないな?あっても認めん。それでは1時間後に作戦を実行する」

 

 そう言って、各自が部屋を出て準備を行う。束の出現、葉との対立、《銀の福音》、そして自分たちの知らない世界。ほんのわずかな時間にあまりにも多くの出来事があり、1時間前までの、楽しい臨海学校がすでに遠い昔のようだった。

 

「葉、色々聞きたいことはあるけど、全部これが終わった後にする。だから・・・絶対に無事に帰ってきてね」

「ああ、そうだな。帰ってきたら全部話す。信じてもらえるかはわからんけどな」

「きっと、僕たちに言い出せなかったことだから、すごいことなんだろうなー。信じられるかわかんないや。でも、葉の言うことならきっと信じられると思うし、信じたい」

「そうか。じゃあ、全部終わった後だな」

「うん!」

 

 

 それから一時間が経ち、葉、一夏、箒は海岸で、残りの者たちは作戦室で待機していた。作戦を前にした3人の表情はバラバラだが、そこから様々なことが読み取れた。葉はいつも通りだが、何かを感じているかのように遠くを見つめていた。一夏には少し不安の色が見える。その原因は箒にあった。普段の箒は、戦う前となると、心を落ち着かせ、集中力を高めていただろう。しかし、今の箒は、早く戦いたいという様子でそわそわしている。力を求めていた時に、紅椿という世界の常識を覆すほどのオーバースペックを持った機体を与えられ、その初陣がこれほど大きな任務となったため、少し浮かれ気味であった。

 

「時間だ。任務開始」

「「「了解」」」

「来い《白式》」

「行くぞ《紅椿》」

「頼むぞ《マタムネ》」

 

 それぞれ換装し、葉と一夏は箒の紅椿に乗って《銀の福音》を目指す。その速度は凄まじく、背中に二つの機体を乗せているにも関わらず、過去のどの機体よりも速かった。

 

「あれが紅椿の性能・・・」

「凄まじいな・・・」

 

 

 

「目標発見、10秒後に追いつくぞ!」

「了解、一撃で決める・・・」

 

 一夏が零落白夜を起動し、攻撃の準備を整える。当たれば一撃で作戦は完了する。

 

「おらぁあああ!」

 

紅椿のスピードが乗った一撃。しかし、大ぶりなその攻撃が当たることはなかった。一夏の剣を避けた《銀の福音》は飛び上がりつつ、10にも近いほどの数の光弾を放つ。散開した3人は、それぞれ避けようとするが、自動で追尾する光弾に手を焼いていた。さらに、それだけではなく、《銀の福音》は追尾しないタイプの銃弾も3人に向けてばら撒き、追い詰める。

 

「三方から同時に攻める!俺が右、箒が左、中央が葉だ!」

「おう!」

「わかった!」

 

 この3人は、基本的には全員接近戦を得意とするタイプであるため、破格の射撃性能、回避性能を持つ《銀の福音》相手に、弾幕を避けながらの持久戦は不利だと判断してのことであった。位置関係的に、コンマ数秒一夏が二人よりも早く、ぶつかる。はずだった。

 

「ちょっと待て、あそこに密漁船が・・・!」

「今はそんなものどうでもいい!これが最後のチャンスなんだぞ!?」

「箒・・・俺は見殺しにはできない!」

 

 そう言って、密漁船を助けに行く一夏、それを見て憤慨する箒。そこに反撃を許す隙が生まれた。箒の意識が一夏へと向いた瞬間、《銀の福音》は一夏の次に攻撃してくるはうだった箒へと先ほどのように箒へと弾幕を張る。それを避けきれず、数発被弾しながら箒は一度離れる。

 

「一夏!箒!」

 

 この瞬間、《銀の福音》と対峙するのは葉一人。突然のアクシデントだが、葉は逆に銀の福音の動きを止めるチャンスだとも考えていた。先程の銃撃は、箒を下がらせることには成功したが、同時にすぐ目の前にいる葉の姿を見えにくくした。もう既に刀の届く距離にいた。

 

「阿弥陀流 後光刃」

 

 必殺の一撃とも言うべき技。S.F(シャーマンファイト)においても、ISにおいても、多くの戦いを決めてきたこの剣技を《銀の福音》は腕のガードで、簡単に止めていた。これにはさすがの葉も驚く。O.S(オーバーソウル)とISという違いはあれ、この技を止めた者など、十祭司のプラントで戦ったシルバくらいのものなのだから。

 大技を放った直後の隙に、《銀の福音》の蹴りが葉へと直撃する。そのまま《銀の福音》は飛び上がり、翼を広げてくるりと回る。すると、あたりに舞った無数の光弾が今度は密漁船を助けようとする一夏に向かって行く。その数は、先ほどまでの比ではない。

 

「一夏!」

「ちくしょう!!せめて船だけでも!!」

 

 そう覚悟する一夏。直後、大きな爆発音がする。無数の光弾が命中したのだ。しかし、一夏は何の痛みも感じない。不思議に思ってうっすら目を開けてみると、ボロボロになった葉が静かに海へと沈んでいったのが見えた。無線を通して、みんなの悲鳴や嗚咽が聞こえてくる。

 

 

 

「ん?ここは?オイラは確か・・・」

「お目覚めですかな、葉さん」

「そういうことか」

「おや、冷静なのですね」

「まあ、大変なことになってるってのは理解してる。でも、一度ちゃんと会って話をしなきゃとは思ってたからな。案外ちょうどいい機会かもしれん」

 

 そう言って笑う葉。先程までの激闘で、無数の光弾を受けて瀕死の状態であるはずなのに、なぜか真っ白い空間にいる。そしてその異常を理解し、もう早馴染んできている。それもそのはずだろう。何せ今目の前にいるのは・・・

 

「久しぶりだな、マタムネ」

「お久しぶりです、葉さん」

 

 数年ぶりの再会、意図せずISの意識内にて叶う。

 




感想、評価お待ちしております。

次回はもう少し早く投稿出来たらいいなぁ。



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番外編②-1 シャルル・デュノアの日々

 お久しぶりです!どうもmelkです。

 いつもながらに遅い更新ですみません。さらに言えば本編を進めず番外編ですみません。もっと言えば、短い上に②-1とか書いてあってすみません。非常にゆっくり書いていますが、近いうちに本編も更新しますので、ご容赦ください。

 さて、今回の話は、CHICO with HoneyWorksの「プライド革命」のPV?を見ていて、ああいう男装で男子の中に入っているようなシチュエーションがぐっときて書きました。ぐっと来た感じを表現できてはいないかもしれませんが・・・


―これは、まだ僕が男性操縦者としてIS学園にいた頃の思い出

 

 

「麻倉君、織斑君!もう授業始まるって!ゆっくりお昼ごはん食べてる場合じゃないよ!」

「そう焦るなって、もう少しなんだ。それに、次の授業は千冬ね・・・織斑先生じゃないから、多少遅れても『男子トイレが遠くて~』とか理由つければ大丈夫だって」

「何か変な方向でたくましいというか・・・」

「今日はこんなに天気が良いのに、一日中座学だしもったいないよなー。オイラも何か眠くなってきた」

「麻倉君まで!」

「落ち着けってシャルル」

「怒られても僕は知らないからね!」

 

 男性操縦者の三人でいた時には、こんな馬鹿をやっていた光景がよくあった。周りの女子たちからは、嫉妬の目より、歓喜の目(たまに興奮の混じった目)で見られていたと思う。僕もそういう思いはわからなくはないけど、いざ当事者になってみると、この視線は怖いんだなということがわかった。麻倉君や織斑君は気づいてすらいないみたいだけど。

 

 

 

「それで?遅れた理由を聞かせろ」

「全員一発ぶった後にかよ!」

「質問に答えろ。もう一発行くか?」

「いえ、すみません・・・。えっと、男子トイレが遠くにあったもので」

「デュノア、本当か?」

「えっと・・・」

 

(やめて!『頼むから』みたいな目で二人ともこっち見ないで!ええい、仕方ない!こうなったら『シナバモロトモ』だ!)

 

「ほ、本当のことです!」

「そうか・・・。では今日は予定を変更して模擬戦を行う。織斑、麻倉前に出ろ!」

「葉と試合するのか。今日は負けないぞ!」

「何を勘違いしている?相手は私だ。二人同時でも構わん」

「げ、それはさすがに・・・。オイラ達じゃなくても・・・」

「さっきは、デュノアがお前らの為に覚悟を以て()()()()()。なら、お前たちもそれに見合った覚悟を見せるのが筋というものだろう?」

「「「バレてる・・・」」」

 

 その後、ぼろ雑巾のようになった二人を見て、「だから言ったのに・・・」と言って、苦笑いを浮かべていることしかできなかった。

 

 

― ― ―

 その何日か後、僕たちは模擬戦をしていた。今度はもちろん三人でローテーションを組んで1対1で。

 

「白式シールドエネルギー消失、勝者デュノア」

「くそっ!!何で勝てないんだ!」

「やっぱりまだ僕には敵わないかなー」

「絶対次は勝ってやる!」

「よし、次はオイラと頼む」

「もちろん!今のところ4勝2敗で、僕の方が勝ち越してるね。もっと差がついちゃうかもしれないけどいいの?」

「負けっぱなしってのも楽じゃないしな。今日中にはひっくり返るさ!」

 

 二人は、負けてももっと強くなって何度も挑んでくる。お互い高めあっていくっていうのが本当に楽しくて、ついつい少し意地悪なことも言っちゃう。それでも離れないでいてくれて、むしろ楽しんでいるようにも感じる。男の子ってこういう感じなのかな?

 

 

 

 

「今日の模擬戦はこれくらいにするか」

「そうだな。さすがに疲れたぜ」

「じゃあ、僕はあっちで着替えてくるね。・・・絶対付いて来ないでねっ!!」

「いいから行ってこいよ」

「絶対だよ!」

 

 いつもなら、ISスーツの上から制服を着るだけにしていたけど、この日は強くなっていく二人に負けないようにかなり必死にやってたから、いつもより汗をかいていて、さすがにこのままでいるのは気持ちが悪い。見られたら困るという事情が半分と、見られるのが恥ずかしいという女の子としての思いが半分で、かなりドキドキしながら着替えていた。

 

 

 

 部屋割りが変わり、一夏の引っ越しを手伝った後、僕はシャワーを浴びていた。その日はものすごく疲れていたのに、妙に頭が冴えていて、シャワーを浴びながらつい考え事をしていた。

正直言って、今の生活はすごく楽しい。麻倉君や織斑君とは気兼ねなく軽口を叩き合ったり、泥だらけの汗まみれになりながらも遅くまで訓練したり、何より真っ直ぐにぶつかってきてくれる。でも、楽しいと思うほど、不安も大きくなる。僕が本当は女の子だと知ったら、今の関係性はどうなるだろうか。僕だけ真っ直ぐにぶつかっていけないことが後ろめたく感じる。そんなことを考えていたから、麻倉君の声に気が付かなかった。

 

「おーい、シャルル。シャンプー切れてるだろうから、替えのやつを・・・」

「あ」

「あ」

 

 人生で初めて男の人に裸を見られた瞬間であり、これまでの人生で一番恥ずかしい循環であり、そして、人生が変わるきっかけとなった瞬間だった。

 




 次回は、本編か番外編の続きにするかまだ考え中です。筆の乗り具合にもよりますが、近いうちには投稿したいと思っています。


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作戦の終わり

どうも、melkです。

仕事が忙しくて中々時間が取れませんでしたが、何とか書き上げることができたので、久しぶりに投稿します!

久しぶりに書いたせいで、文章の書き方など忘れてる気がする・・・


「何となくこのISからお前に似た力を感じたから、って理由で名前を付けたのに、まさか本当にお前だったとはな」

「小生もこのような形でまた出会えるとは思ってもいませんでした。とはいえ、この身は分霊のようなもの。本体はグレートスピリッツの中に未だおります。それよりも、いいので?こんなにゆっくりとしていて」

「あー、オイラの魂はこんなにピンピンしてるが、体のダメージはそうもいかない。死んでまではいないが、誰かが治療でもしてくれない限りしばらくは目覚めることもできそうにないんよ。だから、時間はたっぷりある」

「なるほど、であれば葉さんがいかに歩まれ、どこに向かおうとしているのか、ゆっくりと聞かせていただくとしましょう」

 

 数年ぶりの再開に葉は、アンナとのこと、S.Fでのこと、そこで出会った様々な人のこと、IS学園でのこと、そして、これから進もうとしている道のことなど、思いつく限りのことをマタムネに話した。葉にとってマタムネは大切な友人だからこそ、マタムネが成仏した時には、心に大きな穴がぽっかりと開いてしまったように感じもしていた。それがこのような形での再開となり、心なしか興奮しているようにも見える。

 

「さて、まだまだ話していたいところですが、そろそろ時間が来てしまったようです」

「うお!オイラの体が消えかかってる!?」

「・・・葉サン、今でもまだ寂しいですか?」

「オイラは・・・」

 

最後まで言葉を紡ぐことは叶わなかった。しかし、葉の表情はすでに十分答えを物語っていた。

 

「優しくもどこかアンナさんやあのお方とも似た寂しさを抱えていた少年が・・・。本当に立派になった。小生の心もすでに葉さんに救われた。これからは小生もお供しましょう」

 

 これからの歩みではマタムネも共にある。きっといつか会える日も来るだろう・・・。そう思い、マタムネも静かに瞳を閉じる。

 

 

 

「ん・・・ここは」

「遅い。もっと早く目覚めなさい」

「うお!何でアンナがここに!?」

「阿弥陀丸から、あんたが瀕死だって聞いて来たのよ」

「ボクも一緒です」

「ファウストまで!?どおりで治るのが早ェと思った」

「も、もう大丈夫ですの?」

「ああ、大丈夫そうだ」

「よかったぁ」

 

 旅館の一室で目覚めると、IS学園の関係者だけではなく、アンナとファウストまでがいた。葉が墜落し、運ばれてきた時には、旅館には碌に治療できる設備もないため、千冬は急いで大きな病院へと運ぼうとしていた。しかし、その直後、葉の許嫁を名乗るアンナと、医者を自称するファウストが葉に合わせろと言って来た。

 アンナはともかく、ファウストは見た目からしても明らかに怪しい。医者は医者でも、解剖を楽しんでいそうだなと第一印象で千冬は思ってしまった(昔のファウストに関して言えば、あながち間違いではない)。初めは信用できないとし、追い返そうとしたが、アンナの「アンタに構っている暇はないわ」との一言と、見えない何かが千冬の前に壁のように立ちはだかっていたことから、ISを展開して迎撃をしようかと思っていたほど、一触即発の事態へとなっていた。そこへ、シャルロット達が様子を見に来て、葉の許嫁で間違いないと証言したため、無事に葉の治療を行うことができたのであった。

 

「ここまで治療に来るのも大変なんだから、死にかけるんじゃないわよ」

「治療したのはファウストじゃ・・・」

「ウチの専属の医者を連れてきたのは私よ。文句でもあるの?」

「いや、何も・・・」

「傷の方は治りました。体力の回復には少し時間がかかると思います。葉クン、くれぐれも無茶はしないように」

「ああ、サンキューな」

「さて、大丈夫そうだし、そろそろ帰るわ。何かよっぽどのことがあってこうなってるみたいだし、この状況を見る限りまだ解決もしてなさそうだし」

「みたいだな」

「さっきも言ったけど、そう何度もは助けられない。だから・・・これ以上心配させるんじゃないわよ///」

「すまん」

 

 こうしてアンナとファウストは帰っていった。大した設備もない状態で死にかけの人を蘇らせるファウストを見て、千冬を含めた周りの面々はさらに葉達についての謎が深まったと感じていた。自分たちが思っていたよりも重大なことなのかもしれないと。

 

 

「葉、すまなかった。俺が密漁船を庇おうとしていたばっかりに、お前が死にそうな目に合った」

「いや、元はと言えば、私が浮かれていたせいだ。麻倉、許してもらえるとは思えないが、本当に申し訳なかった」

「あんまり気にすんな。お前らだって、この作戦を受けたときから、危険は覚悟してただろ?オイラも同じだ」

「麻倉、すまなかった。この作戦の指揮官は私だ。責任は私にある。それがたとえ覚悟して臨んだ結果だったとしてもだ。安静にと言われた以上、次の作戦は麻倉抜きで行うしかない。少人数での奇襲に失敗したにも関わらず、銀の福音には不気味なほど動きがなく、先ほどまでと同じ地域に留まっている。こちらはこの場にいる麻倉を除く専用機持ち全員で迎え撃つ。1時間後に作戦を実行する。準備しておけ」

「「「「「「はい」」」」」」

「麻倉はここで待機。先程の二人はお前の命に関わる事態であったため例外として、情報漏洩を避けるため極力外部との接触を避けたい。心苦しいがこの部屋で休んでもらう」

「ああ、大丈夫だ」

 

 1時間が経ち、葉を除く全員での総攻撃が始まっていた。シャルロット、ラウラ、セシリアが銃による牽制を行いながら、箒と鈴で切りかかり注意を引きつけ、一夏が止めを刺しに行くという作戦であり、今のところは順調そうに見える。この作戦は、銃による牽制役が多い分、一歩間違えば味方にも銃弾が当たるという非常にシビアな連携が求められる。また、前回戦って一夏の危険性を学習している銀の福音に一夏を落とされても、この作戦は失敗となるが、シャルロットが銃撃をしつつ、一夏に敵が向かってきた時には盾を換装し、守るという役割もこなすことでその可能性も潰している。

 葉は、モニターでその様子を眺めていた。千冬たち含め、この作戦室から前線で戦っている6人にできることはほとんどない。故に見守るしかない状況だった。そんな中、モニターから目を外さないまま、千冬が葉へと尋ねた。

 

「お前はさっき二人を許した時、『覚悟していたから』と言ったな。だがそれだけじゃないんだろう?普通はいかに覚悟していたとはいえ、死の恐怖を感じたら、あの二人に対しても何かしら思うところはあるはずだ。加えて、あれほどの傷をお前の許嫁と医者がこの短時間で治したのを見て、お前は『どおりで』と言っていた。麻倉、お前、何度か死に直面する事態に会っているな?」

「ああ」

「そうか・・・。この現代の日本で普通に暮らしていてそんな経験を何度もすることなどまずない。ISに触れたこともなかったのなら尚更だ。ということは、お前の言うシャーマンとかいうのに関係することなのだろう。最初は偶然ISを動かせるようになったただユルいだけのやつだと思っていた。しかし、お前も壮絶な経験をして、そこまでの心の強さを手に入れたのだろう。もしかすると、お前が男性操縦者になったことも必然なのかもしれないな」

 

 千冬が葉の強さの秘密の一端に気づいた時、遠い海上では、一夏の一撃により、目標が撃破された。これにより、初めての極秘作戦が終了した。

 




ではまた次回!


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浜辺でシャーマンファイト!

どうも、melkです。
今回は少しオリジナル設定もあります。苦手な方はブラウザバックで!


一夏達が《銀の福音》を撃墜した直後、千冬が再び口を開く。目的を果たした喜びとは別の空気が流れる。

 

「さて、私がこんな話をわざわざこんなタイミングでしたのにも訳があってな。()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

千冬が虚空に向かって話しかけたと思うと、室内中央の床からあまりに不自然なニンジンが勢いよく飛び出してきた。

 

「どこかにとか言いつつ、しっかりこっち見ながら言うとかさすがはちーちゃんだね!ほんとどうしてわかるんだろ?」

「半分は勘だ。それで、聞いてたんだろ?」

「うん、まあね。それで、ちーちゃんは()()()()を私に聞かせてどうしようって言うのかなー?」

「さあな。それはお前が決めることだ」

「ぶー、ケチ。ぶっちゃけ、シャーマンファイト・・・だっけ?そんなマイナーな大会に出て苦労しましたーなんて話を聞いても感想に困るし。ISに選ばれたってのも、いっくんみたいな子なら納得だけど、こんな程度のやつを偶然でなく選ぶような不良品にISを作った覚えはないかなー」

 

束は基本的に自分の感情を隠したり、取り繕って相手に見せるのは得意ではない。というより、する必要がなかったと言うべきだろう。その類稀なる頭脳はどこに行っても求められるものであるため、必要とする人は必然的に下手に出てくる。さらに言えば、大体のことは一人で完結させてしまえるため、人を頼ることもない。逆に、気に入らないものは徹底的に潰してきており、それだけの力もあった。

そんな束だからこそ、自分が気づかなくとも感情を表に出しているときがある。そう、例えば、()()()()()()()()()

 

「こんな程度のやつ、か・・・。だが、お前は麻倉のことを大して知りもしていないだろう?」

「ちーちゃんも随分コイツのこと買ってるんだねー。ほんと・・・ムカつく。大した実力もないくせに、粋がってるゴミだってことくらいはよくわかってる」

「確かに、ISの実力で言えば、まだまだ未熟なのは確かだろう。しかし、麻倉の強さの本質がそこではないのはわかってるはずだ。だから、お前も苛ついてる」

「はあ!?ちーちゃんまで何言ってるの!?苛ついてなんかないし!」

「だったら、お前も直接見てみるといい。ただし、お前たちが言うところのシャーマンとしての力をだ。私はシャーマンの戦いについて詳しくは知らない。だが、これは勘だが、その方が明確に現れるのではないか?」

「何か勝手に戦う流れになってる!?」

「そこまで言うなら、いいよ。やってあげる。必ず潰す」

「こっちもやる気だ!?」

 

いつの間にか葉が戦う流れになっている中、千冬は葉に近づく。その瞳は至って真剣だ。

 

「麻倉、無理を言っているのはわかっている。お前にとってはする意味のない戦いだということも、ましてや絶対安静と言われている時にやらせようとしているということも。だが、頼む。コイツには、束にはきっと今しかないんだ」

「そこまで言われたら、オイラも断れんな。友達が間違ったときに、放っておけないっていう気持ちはわかるしな」

「すまない。・・・私は最低だな。こういう頼み方をすればお前は断れないのを知っていてやっているのだから。それに、多くの人の命にも関わる任務では休ませておきながら、個人的な友の為には戦ってほしいなんて、自己中心にもほどがある」

「きっと、それが()()()()の愛なのかもしれねぇな」

「ち、千冬さん!?あ、愛!?」

「さて、じゃあいっちょやりますか!」

 

そう言って、葉がドアを開けると、突き刺すような朝の陽ざしが部屋いっぱいに広がった。

 

 

そして、近くの砂浜で、葉と束が向かい合って立っていた。葉は、懐から出したフツノミタマノツルギを右手に、春雨(何故かアンナたちが持ってきていた)を左手に構えていた。一方束は、無構えで、手には特に何も持っていないため、どんな持ち霊、媒介を使って戦うのかが全く分からない。そして、その二人から少し離れたところに、言い出した張本人の千冬と、心配そうな顔で見つめる一夏達がいた。一夏達としても、無事帰ってきたと思ったら、いきなり戦いが始まるというので、驚き半分、混乱半分といったところだろう。()()()()()()()()ということでの興味もあるが。

 

 

「審判は私が行う。と言っても、ルールなど知らん。どちらかが負けを認めたら決着ということにする。異存はないな?」

「ああ」

「もちろん」

 

始まる直前の緊張感が周りで見ている者たちの間で漂う。一体何が始まるのか、と。感じていないのは当事者二人のみだった。束は、今まで思い通りにならなかったことなどほとんどない。束にとって勝利は確定しており、故に緊張などするはずもない。葉は相変わらずの呑気さで佇んでいる。死というものが目前に迫った時でさえ変わらない自分で居続けられた葉がこの程度のことで緊張など感じないだろう。外面だけ見れば、いつも通りで待っている二人は似ているのだろう。

 

「それでは、試合開始!」

 

「阿弥陀丸in春雨inフツノミタマノツルギ、O.S(オーバーソウル)……白鵠!」

最初にO.S(オーバーソウル)を纏ったのは意外にも葉だった。O.S(オーバーソウル)と呼ばれた巨大な刀と葉の纏っているものを見て、一夏達はどこかISに似ていると思った。確かに、何らかのISの部分展開で似たようなものを再現はできるかもしれない。しかし、そこから伝わってくるエネルギーが、明らかに別物であると教えていた。

 

「何が起きている?私には持っていた刀が浮いているようにしか見えん。お前たちには違うものに見えているのか?」

「ち、千冬ねえにはあれが見えないのか!?」

「ということは、違う何かが見えているのだな。他の者たちも様子を見る限り、私以外には見えているようだな」

 

基本的に霊は大多数の人には見ることができない。それは霊の力をシャーマンの力で具現化したO.S(オーバーソウル)であっても例外ではない。しかし、極稀に臨死体験などの死にまつわる体験をして、霊視能力を得る場合がある。一夏達の場合、目の前で死にかける葉の姿がトリガーとなったと考えられる。では、なぜ同じものを目にした千冬には見えないのか。それは、葉との物理的、精神的な距離によるものだ。葉という非常に高い巫力を持ち、阿弥陀丸という強力な霊が近くにいるという存在が、一緒に行動することが多く、良好な関係を築いている一夏達に少なからず影響を与えていたということが原因なのだろう。

と、突然、どこからともなくISが飛来し、束の目の前に降り立つ。

 

「あれはまさか《銀の福音》!?」

「いや、だが微妙に形状が違う。何より手に持っている剣、あれが主武装であるならば、先ほど戦った射撃特化の《銀の福音》とは全く違うものということになるだろう」

 

「アーサーin《銀の福音》 O.S(オーバーソウル)!」

 

《銀の福音》を恐らく改造したものであろうISに霊を憑依させる、これが束のO.S(オーバーソウル)であった。主武装は両刃の大剣。かなりの強さであろうということが伝わってくる。

 

「あら、驚いて声も出なくなっちゃった?そう、束さんの持ち霊はあのアーサー王なのだ!持ち霊の信仰度何かも力になっちゃうシャーマン同士の戦いで、これ以上の持ち霊はないよね!そっちも、剣を使う霊みたいだし、持ち霊の強さでも、シャーマン本人の強さでも負けてるなんてほんと絶望的だよね!この天才束さんに喧嘩を売ったのがお前の敗因さ!」

 

確かに、束はシャーマンとしても天才と言っていいレベルだろう。束の巫力は約3000、幼少の頃より修行してきた葉ですら、予選で蓮と戦った時には270であったことを考えると、シャーマンの家系でもなく、特別修行などもしてこなかった束のこの巫力は非常に強力なものだろう。そう、相手が葉でなければ。

 

「っつ!!」

 

O.S(オーバーソウル)が破壊されたことによるリバウンドが束に襲い掛かる。確かに、攻撃していたのは自分のO.S(オーバーソウル)だ。なのに、気が付いたら破壊されており、当の葉はというと、平然と立っている。

 

(壊された?この私のO.S(オーバーソウル)が?)

訳がわからないといった様子の束。しかし、次の瞬間、思考が怒り一色になる。

 

「どうした?こんなんじゃオイラは倒せんぞ?」

 

束、ブチ切れる。

 




霊視能力の説明で、「死にまつわる体験」というところは、シャーマンキングの設定です。フラワーズの方でもそんな感じのが出ていました。「物理的、心理的な距離」については、ブリーチに似たような設定があった気がしたため、都合よくお借りしました。

それにしても、血統補正も修行もなしで巫力3000いく束さんマジ天才(笑)。その天才に、巫力108000の凡才(?)はどう戦うのか!?


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心と心

どうも、melkです。

束とのシャーマンファイトの続きです!
葉の能力についての独自解釈があります。また、束のキャラが崩壊しているかもしれませんが、それは怒りのせい、ということでご容赦ください・・・。


「なん、だとぉおお!」

束のO.S(オーバーソウル)が再び構成され、葉へと襲い掛かる。最早束に余裕などない。自信のあったO.S(オーバーソウル)を一瞬で砕かれ、さらには葉の発言から見下されているように感じていた。プライドの塊である束にとって、見下されることは最も許せないことの一つであった。

 

「このっ!クソ!折れろ!死ね!」

束のO.S(オーバーソウル)は容赦なく葉へと襲い掛かるが、葉は全て余裕をもって防いでいた。苛立ちが収まるどころか、逆に高まっていく中、束は自分を見失っていったのだった。

 

「もう終わりか?ならこっちからいくぞ!」

言い終わるや否や、白鵠が束のO.S(オーバーソウル)の上から振り下ろされる。防ごうとした剣ごと真っ二つにされ、二度目の破壊となった。O.S(オーバーソウル)は、破壊されると、使用者に精神的ダメージとして返って来る。そのO.S(オーバーソウル)に込める巫力が大きければ大きいほど、ダメージも大きくなり、自身の力量を超えて巫力を注いだO.S(オーバーソウル)ともなれば、一度の破壊で死に至るほどのショックとなることもある。束も二度目のO.Sの破壊ともなれば、自分に跳ね返ってくる精神へのダメージもそれ相応のものとなっていた。

 

「どんな小細工をしてるのか知らないけど、今度の攻撃は確実にお前を殺す!アーサー王伝説と共に語り継がれる黄金の剣、エクスカリバー!!!!」

ISの武装をコールした時のように、金色の剣がそのO.S(オーバーソウル)の手に握られていた。そして、そこから放たれる黄金の光を纏った斬撃は、今までの攻撃と比べても、明らかなほどの力を持っていた。それを目にしている一夏達はもちろん、全く見えていないはずの千冬ですら空気の違いを感じ取っていた。おそらく、あれが束の持つ最強にして最後の切り札だろうということは全員が理解していた。

 

「何で・・・何でお前はまだ立っている、麻倉葉!!」

束は思わず目を疑った。自身の放った最強の技は、防御する手段などなく、相手を消し去るほどの威力を持っていると確信していた。しかし、葉を見ると、傷一つついておらず、何かをしたような素振りもなかった。

 

「『巫力無効化』、お前の力がどれほどのものだろうが、結局は巫力で具現化された霊の力だ。オイラはそれを無効化できる」

「くっ!そんなことが・・・」

「見たところ、残りの巫力ももうそんなにないんだろ?じゃあ、これで終わりだな」

葉が刀を再び束に向ける。次にO.Sを破壊されたら、もうO.Sを形成する巫力は残らない。そして、圧倒的ともいえる力の差を感じてしまったことにより、束自身も気づいてしまった。自分に葉の攻撃は防げないと。

 

 

だが、その一瞬でもう一つだけ束の頭の中で駆け巡ったことがある。それは葉の巫力無効化についてだ。O.S(オーバーソウル)やそれを形作る巫力にはその人の性質や精神状態が大きな影響を与える。つまり、それを無効化するということは、相手の心を、さらに言えば相手の存在そのものを受け止める必要があるということだ。それが例え今の自分のように、半ば暴走したような状態であったとしても受け止め、浄化する。それが葉の力の本質だと束は気づいたのだった。まさに、自分の力や都合を押し付け、それ以外には興味も示さなかった束のやり方とは真逆であり、それこそが葉と自分との”差”だということに気づいた時、束は不思議な気持ちになった。

 

(これが私との差・・・。完敗だ・・・。でも、負けているのが心だというなら、私の心の持ちよう次第で、今からでも追いつける・・・!?まだ、負けたくない!!!)

 

 

葉が振り下ろす刀を束のISは剣で受け止めた。込められる巫力は依然として大きく変わってはいない。しかし、O.S(オーバーソウル)としての強度が明らかに上がっている。鍔迫り合いのような状態でありながら、葉も少し驚く。しかし、一番驚いているのは束自身であったりする。

 

「・・・ちょっと強えじゃねえか」

葉の雰囲気も少し変わる。先程までより少し楽しんでいるような笑みを浮かべている。

 

「当然!」

そう言って、束はニヤリと笑う。そこには嘲りの意味はなく、純粋に気持ちが高揚してのことであった。

 

「「はぁああああああ!!!」」

両者が同時に動き出す。これが最後の勝負となるだろう。砂浜の上を縦横無尽に飛び回りながら、お互いに打ち合う。先程までの一方的な展開とは違い、ようやく戦いになってきたところだ。しかし、打ち合うこと数合、束のO.S(オーバーソウル)が限界を迎える。

 

(ああ、最後まで追いつけなかった。いっくんやちーちゃんの持つ強さ、それとはまた違う強さ、私にはない強さ・・・。悔しい、負けたくなかった。でも、楽しかった)

「オイラも久々に本気で負けたくないと思っちまった。楽しかったな」

そこで束は意識を手放した。

 

 

しばらくたち、辺りは真っ赤に燃えるような夕焼けに照らされていた。葉に負け、意識を失っていた束が目を覚ます。

 

「ありゃりゃ、もう夕方かー。随分長いこと寝てたみたいだね」

「そうだな。まあ、激しい戦いだったみたいだから仕方がない。そういうものなんだろう?お前たちの戦いというのは」

「あら~?『()()()()()()』?ちーちゃんもしかして束さんたちの戦い見られなかったのかな?」

「ほう、冗談を言える元気はあるみたいだな。じゃあ、私のアイアンクローぐらい食らっても問題はないな?それほどの激しい戦いの後なのにそんなに元気があるくらいだから、余裕だろうな?」

「すみません、ほんと許してください」

「はあ・・・。それで、何かつかめたのか?」

「さあね」

「ふ・・・そうか」

 

束自身もまだはっきりとはわかっていない。だが、何かを得たのだろうということは、付き合いの長い千冬にとっては、顔を見れば容易にわかることであった。

 

「さて、じゃあ私は帰るね」

そういって、ニンジン型のマシーンに乗り込む。

 

(麻倉葉・・・。まだまだ遠い、でもそこに近づきたい。それに・・・)

『ちょっと強えじゃねえか』

(たったあれだけ、認められただけだっていうのに、何故かすごく嬉しかった。人から認められるなんてこと、今まで当たり前だったのに・・・。何だろうこの気持ち?)

 

一人この場を去るのであった。

 




ヒロインらしき感じに束もなりました(笑)
束と葉には大きな力の差がありますが、思いの力だけで強さが変わってくるのがシャーマンファイトらしいのかなと思います。

それと、エクスカリバーに関しては、fateのものを想像していただければわかりやすいと思います。エクスカリバーの模造品→本物へと、束のISの持つ武器が変わっています。


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シャーマン

どうも、melkです。
今回は葉のシャーマンとしての歩みの説明回です。シャーマンキング側からもあの人が・・・


「さて、シャーマンのこととかを説明していく・・・んだが、何でお前までいるんだ?ついさっき帰ったばっかりじゃねぇか!?」

 

さきほどいい感じの流れで帰ったはずの束が、他の面々に交じって話を聞いていた。あまりにも自然にその場にいたため、他の人たちも気づかなかったようで、驚いていた。

 

「ちょっと伝え忘れたことがあったから戻ってきたら、何か面白そうなことやってるし。束さんだけのけもにするなんて許さないぞ☆」

「伝え忘れたことって・・・?」

「それは後。まずはせっかくだから話を聞かせてよ」

 

 

「まあ、いいか」

 

 

それまでの話を区切るように咳ばらいを一回。葉の顔には真剣さも見える。シャーマンについてほとんど知らない人に、それも自分の友人に話した経験など、まん太の時しかない。それも、まん太は霊を見ることができ、その結果問い詰められたため話したのだったが、今はみんな葉にとって大事なことだと察して待ってくれていたため、自分から話すような形になっている。改まって自分から話すとなるとさすがの葉でも少し緊張していた。霊が見えるということを話したせいでいじめにあったこともあり、昔ほどではないが人に対して壁を作る傾向が葉にはあった。

 

「シャーマンっていうのは、あの世とこの世をつなぐもの、霊や精霊などと交信することのできる人のことだ。オイラの家はシャーマンの家系だった。それでオイラにも小さい頃から霊が見えていた。さっきの戦いや、前の無人機が侵入してきた時に使ったのはO.S.(オーバーソウル)っていう技術で、霊を物質、例えばこの刀とかに憑依させることで、霊を具現化することができる」

「霊って、その・・・幽霊的なもののことなんだよな?」

「ああ、オイラの持ち霊・・・つまりパートナーは、600年前千人斬りの伝説を残した侍、阿弥陀丸だ」

『見えるかはわからぬが、拙者が阿弥陀丸でござる』

「見えない・・・でも声だけは確かに聞こえる!?」

「私には見えてるけどねー。まあ、同じシャーマンだから当然だけど」

『おお、声が聞こえているでござるか!いつも葉殿が世話になっているでござる。それと、束殿。先程は良い戦いであった。今度そちらの伝説に名高い、アーサー王とも純粋な剣技での試合をしてみたいでござるな!』

「千人斬りの侍って聞いてた割には随分と気さくなのね・・・」

「いいやつだろ?もちろん剣の腕がすごかったのもあったが、何より阿弥陀丸と一緒なら楽しそうだと思ったから持ち霊にしたいと思ったんよ。な、阿弥陀丸!」

『懐かしいでござるな・・・。拙者も葉殿なら使えるべき主として、そして友として傍に居たいと思った故、一緒に行くことにしたでござる。』

 

葉のクラスメイト達にも声が聞こえると知って、阿弥陀丸は非常に嬉しそうだった。それは、葉も同じであった。みんなが真剣に聞いてくれて、阿弥陀丸の話もすることができ、葉も非常に楽しそうだった。

 

「では、葉さんの剣技は阿弥陀丸さんに教わったものなのですか?」

「いや、シャーマンの技術の一つに、自分の肉体に霊を憑依させて、その動きなどを再現するっていうものがあって、オイラは元々O.S.(オーバーソウル)を知らなかったから、阿弥陀丸を自分に憑依させて戦ってたんよ。それで、阿弥陀丸の剣術が体に染みついちまったみたいでな」

 

「基本的に、シャーマンだからってそれらの技術を身に付けて戦わなきゃいけないわけじゃない。でも、阿弥陀丸の剣技が体に染みつくほどの戦闘経験、さっきの戦いで使っていたO.S.(オーバーソウル)の強さ・・・。それがS.F.(シャーマンファイト)とかいうものの影響?」

 

尋ねる束の表情は真剣なものだった。これまでの話の大体は束の知っている内容だった。先程戦って感じた強さの秘密はここからの話にあるのだろうと思ってのことだろう。

 

「ああ、世界中のシャーマンが集って争う500年に一度の戦い。それがS.F.(シャーマンファイト)だ。優勝者は全知全能のG.S.(グレートスピリッツ)を手にし、シャーマンキングになる」

「全知全能か・・・。確かにそれが本当ならみんな参加しそうだよね。でも、本当にあり得るの?」

「本当だぞ?G.S.(グレートスピリッツ)の中でG.S.(グレートスピリッツ)と戦ったが、何せ全宇宙の力だ。相手にならんかった」

「戦ったの!?」

「というか、G.S.(グレートスピリッツ)の中でG.S.(グレートスピリッツ)とって・・・?」

「まあ、詳しく説明すると長くなるからな。今回の優勝者の名前は麻倉ハオ、オイラの兄ちゃんだ」

「葉の兄ちゃん!?ってことは葉はシャーマンキングの弟!?でも、さっきG.S.と戦ったって・・・」

「ハオはこの世界を恨んでいた。そして、シャーマンだけが生きる世界を作るためにこの世界を一度滅ぼそうとしていた。だからオイラと仲間たちであえてシャーマンファイトを途中で辞退して、シャーマンキングになるための儀式で無防備になっているハオを倒そうとしたんだが、結局失敗して、G.S.(グレートスピリッツ)を手に入れたハオと戦うことになったんよ」

「勝てはしなかったんだよな?」

「ああ、だが、ハオのかあちゃ・・・」

 

 

 

 

『葉、それ以上そのことを話す必要はないだろう?』

 

 

 

 

風が傍らを吹き抜けるように声が響いた後、気が付けば一夏達の後ろに髪の長い少年が腰かけていた。見た目は葉とそっくりだが、放つ存在感のようなものが段違いだった。自然と一部になっているような、しかし、ものすごく強調されているような不思議な感覚だった。

 

「なんだよ、聞いてたのかよ」

『当然さ。僕は神様だからね。この宇宙のどこにでも存在している。』

「もしかして、コイツがさっき言っていた麻倉ハオなのか?」

『口を慎めよ?神様に向かって「コイツ」なんて。今この場で消されても文句は言えないぞ?』

「っつ!!!」

 

瞬間、ハオが千冬を一睨みすると、凄まじい殺気が千冬を襲った。千冬の知る限りでも、これほど強い殺気を放てるものなどまずいないだろう。シャーマンの王にして、神となったハオは明らかに別格であった。

 

『まあ、葉の知り合いというなら、一度くらいは見逃してやろう。それよりだ、葉。G.S.(グレートスピリッツ)内でのあのことは死んでも言うなと言ってあっただろう?第一、お前のことを説明するのに、その部分を説明する必要はないだろう』

「ああ、そうだったな。すまんかった」

『次お前が口走りそうになった時は、この日本が地図から消えるだろう。覚悟しておけよ?』

「そんなに大ごとになるの!?そこまで言われると逆に気になるかも・・・、いえ、全く気にならないです、ハイ」

 

たった一言で国一つ無くすとかいうハオの聞かれたくないエピソードに一瞬好奇心を示す鈴だったが、ハオが睨むと、自身の身の危険を感じ、決してこのことには関わるまいと決意したのであった。

 

 

「んん!まあ、それでオイラ達がこの世界をどう変えていくのか少しの間見守っていてくれることになったから、今もこうしてみんな生きてるんよ。それで、オイラがIS学園に入ったのは、たまたま適性があったっていうのもあったが、ISっていうのがたぶんこれから本格的に軍事的に利用されるようになってくる。だから、それを止めるためにも、男性操縦者っていう肩書だったり、ISでの実力だったりがあったほうがいいと思って今こうして通ってるんよ」

「まさか、戦場でISが使われる日が来ると・・・!?ですが、実際今ISは、徐々にスポーツとしての意味合いで捉えられるようになって・・・」

「それは、国民の多くはそういう風に考えてるってだけ。国のトップとか胡散臭い連中はまだ軍事目的で利用しようとしている。今はまだ各国のパワーバランスが大きく崩れてはいないから、抑止力としてって方が大きいけど、どこかが大きい力を持つようになると、仕掛けてくるところは出るかもしれない。水面下ではどの国もそのチャンスを狙ってる」

「そんな・・・」

 

葉の話が束の補足によって、現実味を帯びてくる。S.F.(シャーマンファイト)時に、ハオとの約束をした他の仲間たちも、多かれ少なかれそのような事態は想定して動いていたりする。ISは新たな大戦の火種になり得ると。

 

「それが、今回私が伝えわすれていたことにつながるんだよね」

「そういえばそうだったな。オイラからの話は大体終わったが、伝え忘れたことって?」

「箒ちゃんに上げた第4世代型のIS《紅椿》と一部第4世代の技術を私が盛り込んだ上に男性が操縦できているという付加価値のついた《白式》は、その世界のパワーバランスを崩しかねないから気をつけてねって言うことを伝えようとしていたのを束さんすっかり忘れてた☆」

「はぁああ!?」

「姉さん、何でそんな大事なことを!」

 

あまりにも重要なことを忘れていた上に、さらっと言い出す束に、一夏、箒を含めた全員が驚きを隠せないでいる。千冬に至っては頭を抱えていた。

 

「第4世代はオーバースペックな上に、まだどこもきちんと開発できてないからねー。さらに言えば、機体性能で言えばいたって普通の第3世代型だけど、《白式》と同じで男性が操縦しているってことで《マタムネ》。この3機はどの国、どの胡散臭い組織も狙ってるから、取られたりしないようにね!《マタムネ》はわからないけど、《白式》と《紅椿》は本当に大戦のきっかけになり得るから!それだけ!じゃあね!」

 

言いたいことだけ言って、束はすっきりしたとでも言いたげな顔で帰ろうとしている。あるいは、鬼の形相で睨んでいる千冬を見て逃げ出そうとしているのか・・・。

 

 

『何にせよ、お前の行く道は険しいぞ?覚悟はできてるな?』

「ああ、確かに簡単じゃねぇが、何とかなる」

 

 

 




ハオ登場!母親とのやり取りを微笑ましく見守られていたというのを知られたくないがために、登場(笑)

葉の目的は最初から決めていました。“大地の交渉人”になるまでの準備として、実力があり、たった二人しかいない男性操縦者の一人という肩書があれば、大国の首脳などでも話し合いのテーブルに着かせやすくなるのではないかと思って、このようにしました。

新たな火種は今後どのように影響してくるのか・・・


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特訓の日々

どうも、melkです!
あけましておめでとうございます!新年明けてからすぐ投稿しようと思ったのですが、中々筆が乗らずだらける日々・・・
久々にこの小説の情報を見てびっくり!
「評価のバーに色がついてる!!」
皆さま本当にありがとうございます。たくさん頂いている感想も読んでいます!(返信する気力が出ず放置していて申し訳ない・・・)
今年もこの小説をよろしくお願いします!

今回は切りの良いところまでにしたので、短めです。


「えーっと、学園祭の出し物ですが・・・全部却下!」

「えー!何でー!」

「良い案だと思ったんだけどな」

「ポッキーゲームだとかホストクラブだとか・・・。いい訳ないだろ!ですよね、山田先生!」

「ポッキーゲームなんて、先生はいいと思いますよ!」

「先生まで!?なあ葉何とか言ってくれよ!」

「オイラは何でもいいぞ?全部一夏がやってくれるからな」

「このクラスの女子たちがそれで許してくれると思うか?」

「織斑一夏と麻倉葉はこのクラスの共有財産である!」

「女子を喜ばせる義務を全うせよ!」

「「「「そうだそうだ!」」」」

「な?」

「うぅ~」

 

夏も終わりに近づき、IS学園でも学園祭の時期が迫っていた。困惑する一夏、興奮気味な女子たち、力なくうなだれる葉。

 

「それならメイド喫茶でいいのではないか?」

「男子が執事服でキッチンを担当してもらえばいいんじゃないかな?」

「織斑君と麻倉君の執事服・・・いい!」

「まあ、さっきのに比べればまともか」

 

こうしてクラスの出し物が決まり、裏方だと決まった一夏と葉は少し安堵していた。結局ホールにも立たされることを彼らはまだ知らない。

 

 

 

「当面君のコーチをしてあげるって言ってるの」

「・・・それは俺が弱いってことですか?」

「そういうこと。機体性能で言えば専用機持ちの子達の中でも間違いなくトップクラス、でも実際の試合での勝率はお世辞にも高いとは言えない。そうでしょ?」

「悔しいけど言い返せませんね。みんなを護ると言いながらいつも葉やみんながお膳立てしてくれた上での勝利。俺の功績は《白式》の能力による最後の一撃だけ。実際には葉達に護られてるだけだ」

「そう。私に教われば確実に強くなるわよ?」

「よろしくお願いします!」

 

 

「で、何でこの訓練に葉もいるんですかね!?」

「一夏も呼ばれてたのか、よろしくな!」

「おお、よろしく・・・って、そうじゃなくて!葉達より強くなるって話じゃないんですか!」

「正直なところ、ISの操縦技術云々で言えば、一夏君と葉君はそれほど大きな差はないの。ISの技術として使ってるのだって、せいぜい瞬時加速ぐらいだし。差があるとしたら、剣技と戦闘経験の差だけど、それも慣れてしまえば通用しなくなってくる。そうよね、葉君?」

「ああ、試合をしてても最近は負けることも多くなってきたな。この間の篠ノ之束の言葉から、どうやらオイラ達は狙われやすい立場にあるらしい。だったら、強くなれるときに強くなっておかないとな」

「どうりで、葉がこういうことに積極的になるのが珍しいと思ったら・・・」

「目的は葉君に言われちゃったけど、大体そんな感じ。というわけで、さっそく始めましょうか。セシリアちゃん、シャルロットちゃん、サークルロンドやって見せて!」

「せっかく一緒に居られる時間を邪魔されるのも癪ですが・・・葉さんが決めたことなら仕方ありません」

「そうそう♪早く早く!」

 

それぞれ思うところはありつつも、シャルロットとセシリアはISを展開する。展開するまでの時間の短さからも、この二人の確かな技術が見て取れる。

 

「じゃあ、始めます」

 

シャルロットのかけ声で、二人が同時に動き出す。一定の距離を保ちながら円の軌道で飛んでいる。

 

「なあ、これから何が始まるんだ?」

「この二人ってことは射撃の技術だと思うけど・・・。俺たちに射撃の技術ですか?」

「そう。でもそれだけじゃないんだな」

 

楯無がそう言うと、シャルロット達は射撃を始める。お互いに撃って回避してを繰り返しながらも、おおよそ先ほどまでの円の軌道を保っている。

 

「これは、射撃と回避、それを同時に行えるだけの高度な機体制御を覚える練習なの」

「どうしてそれを俺たちに?」

「あら、忘れたの?今の二人には遠距離攻撃武器があるでしょ?」

「あ、荷電粒子砲!」

「鬼火!」

「そう、正解。織斑君の荷電粒子砲はセカンドシフトで最近使えるようになったから仕方ないとして・・・葉君、あなたあの強力な砲撃をほとんど使ってないでしょ?」

「うっ!いや、でもあの威力はさすがにヤバいというか・・・」

「言い訳しない。絶対防御があるんだし、執拗に当て続けでもしなければ問題ありません。今までの試合でだって使える場面は何回もあったはずよ」

「うぅ・・・実を言うと、射撃系の武器はあんまり慣れてなくて使いづらいんだよな」

「だ・か・ら、お姉さんがじっくり教えてあげる。二人っきりでね」

 

楯無が葉の耳元で囁く。葉はただただ顔を真っ赤にするほかなかった。こういうことに耐性がないためだ。影響は葉一人に留まらない。

 

「葉!?」

「何をしてますの!?ってシャルロットさん、前、前!!」

「へ?あ、うわぁ!」

 

ドゴン!という大きな音と共に、シャルロットとセシリアの二人が衝突し、落ちていく。先程までの高い技術を持った操縦者とは思えない状況だった。

 

 

「とまあこんな風に少し集中を乱しただけで事故につながるから気をつけてね!最終的には葉君と一夏君の二人でさっきまでのができるようになるのが目標ね!」

「「は、はい!」」

「それと・・・葉君、さっき言ったことは本気よ?ISのこと以外にも、イロイロ教えてあげる」

 

そう言いながら笑う楯無。葉はただ苦笑いで返すだけだった。

 

 

 

「そこ!射撃が止まってる!何してるの、もう一回!」

 

楯無による一夏、葉へのコーチは二人の想像以上にスパルタだった。機体制御に集中すれば射撃が止まり、射撃に集中すれば機体はあらぬ方向へと飛んでいく。この訓練を休みなしで3時間近く続けており、少しでも休もうとすると(主に葉)檄が飛ぶ。

 

「今日はこのくらいにしておきましょうか。お疲れ様。また明日同じ時間ね!」

「はい・・・」

 

さらに2時間後、ようやく終わりが告げられた。

 

「ささ、葉君!部屋に帰るわよ!」

「おう・・・てか何でそんなにテンション高いんだ?」

「特訓で疲れてる葉君を優しくマッサージする私。それをきっかけに二人の距離がさらに近づいて・・・キャー!!」

「ま、まあよくわからんが楽しそうだな・・・。それでこの特訓はいつぐらいまで続くんだ?」

「二人の上達具合にもよるけど、今のメニューは2週間くらいね」

「ちょうど学園祭前くらいまでか。今のメニューはってことは次もあるのか?」

「ええ、もちろん。今は射撃と機体制御に慣れてもらう訓練、言ってしまえばまだ導入の段階なの。ISは起動時間が物を言うの。さらに言えば、射撃の命中精度を上げるのなんてコツコツとした地味な訓練でしかできないのよ」

「そういうもんか。まあとりあえず明日からもよろしくな」

「もちろん!」

 

(『明日からもよろしく』。たったそれだけなのに、今の自分を認められているように感じる。人の言葉に一喜一憂するなんて柄じゃなかったのにな)

 

善意で二人の指導をしているというのはもちろんのこと、楯無には二人を自衛できるようにしなければならないもう一つの理由があった。だからこそ、訓練中は心を鬼にして厳しく当たっていた。それは二人を教える立場として、またIS学園の長としては正しいことだ。しかし、乙女楯無としては、自分の想い人に厳しく当たるのは辛いものがあった。厳しくしつつも、内心では葉に嫌われはしないだろうかという思いも抱えていたのであった。だからこそ、今は安堵している。

 

「さ!帰りましょ!」

 

厳しい特訓はしばらく続くのであった。

 




次回、学園祭!


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奪われたIS

どうも、melkです。
ずっと書きたかった話までようやく来ました!今更ながらこの作品もついにIS2期に入りました!1期の時よりも展開が早くなるのではないかと思います!

そして前回、学園祭の話だと言いました。書いてみると、学園祭要素結構薄いです。ガッツリカットしています。期待していた方がいらっしゃればすみません・・・


学園祭―

それは学校生活において最も盛り上がる行事の一つであり、学生であれば楽しみにしている人も多いだろう。

 

「ほら、麻倉君!もっと笑顔!」

「こ、こうか?」

「引きつってるって!あ、指名入ったからよろしく!」

「うげ!?何でオイラを・・・」

「手と足一緒に出てるし!?そんなに緊張しないで・・・注文取って来るだけだから!」

「オイラには荷が重すぎるぞ・・・」

 

学園祭の最中、追い詰められている人が一人。一夏はキッチン兼ホールとしての役割をこなしているが、特別料理ができるわけでもない葉は当然ホールの担当となった。しかし、接客には向かないタイプであるということは当人も自覚している。愛想よくなどできないため、憂鬱な気持ちだった。

 

「ご、ご注文は?」

「えーっとぉ、何にしようかな?店員さん、何かおすすめありますかぁ?」

「おすすめ!?えーっと・・・」

(くそう何を言えばいいんだ!?執事にご奉仕セットは絶対にやりたくないから論外として、女子の好きそうなもの・・・。ケーキ、それがあった!)

 

「ケーキセットがおすすめ、です」

「へぇー、そうなんだ~!じゃあ、この執事にご褒美セットで!」

「げ!?い、いやケーキの方がいいと・・・」

「執事にご褒美セットで」

「・・・かしこまりました」

 

(やだ、可愛い!!何かいじめたくなっちゃう!!)

 

葉の接客はお世辞にも上手いとは言えないが、それはそれで需要があるものである。いつもはマイペースで余裕を崩さない葉がガチガチになりながらも接客をしている不慣れな感じが「可愛い」「いじめたくなる」「お持ち帰りしたい」といった理由で特に上級生から人気がある。現に楯無は接客を受けては列の一番後ろに並んでいる。今日はもう3度目だ。生徒会の仕事は大丈夫なのだろうか。因みに、一夏は葉とは対照的に慣れた様子で接客をしており、本当にお嬢様扱いしてくれているように感じることから、特に同級生からの人気がすごい。

 

「葉、そろそろ時間じゃないか?劇の手伝いだっけか?」

「おお、そうだった!今すぐ行かないとな!」

「いや、そこまで急がなくても」

「きっと早くから行って準備することとかあるだろうしな!すぐ行こう!ということで失礼します」

「え、ちょっとー!」

「あんなに行動の速い葉を初めて見た気がする・・・」

 

 

劇の裏方と聞いていたのに、台本なしで出演する羽目になり、さらにはなぜか女子たちに襲われたり(正確には頭に乗っている王冠を狙われていた)したが、気づけば葉と一夏は更衣室にいた。女子たちから逃げていた時に、突然ステージ下から伸びてきた手に引きずり落とされたのだが、二人とも状況を飲みこめずにいた。

 

「巻紙さん?」

「一夏、知ってるのか?」

「さっき、装備の斡旋で来てた人だ」

「覚えていてくださったんですね。実はお二人のISを・・・いただきたいと思いまして」

 

巻紙という女性がそう言った瞬間、すでにその体にはISが換装されていた。右手による薙ぎ祓いを、二人はロッカー裏へと転がることにより回避していた。

 

「《白式》!」

「《マタムネ》!」

 

「ほう、今のを避けてすぐに臨戦態勢とはやるじゃねぇか」

先程までは右腕だけの換装だったが、今の行動の間に全身にISを纏っていた。足が八本、目が八個、完全に人型をベースとしない異形ともいえる様相だった。巻紙自身からも先ほどまでのような丁寧な感じは見受けられず、粗暴な言葉遣い、雰囲気へと変わっていた。

 

「このオータム様が寄越せって言ってるんだ。早く寄こしな!!」

「くっ!!」

 

一夏の方へとビームが飛ぶ。どうやら手足全てからビームが出せる仕組みのようだ。八か所から角度やタイミング、方向を変えてのビームは非常に厄介だ。一夏は飛び上がり、寸でのところで避ける。

 

「今だ!」

「阿弥陀流 後光刃!」

 

一夏が狙われている隙に、死角から葉の刀が閃く。だが、オータムは八本のうちの四本を後ろに回し、葉の攻撃をはじく。即席とは思えない連携を発揮する葉と一夏だが、オータムはそれすら防ぎきる。

 

「阿弥陀流・・・」

「させるかよ!」

 

間髪入れずに次の攻撃に移ろうとしたようだったが、オータムの蹴りが入り、後ろのロッカーに叩きつけられた。一夏よりも先に葉を落とすと決めたようで、葉の方に向き直る。しかし、何本かの足で一夏を牽制することも忘れない辺り、かなりの実力者だと言えるだろう。

 

「オラオラ、どうした!自慢の剣技は!」

(手数が多いし固ぇ!そして単純に強ぇえ!)

 

斬撃、ビーム、蹴り。圧倒的な手数の有利で葉は防戦を強いられる。だが、葉とてただやられているだけではない。ギリギリの戦いの中で、活路を見出すことができるのは、葉がで培ってきた特技である。現に、防戦一方になりつつも、葉はオータムのIS《アラクネ》の弱点を一つ見つけていた。

 

「一夏!」

「ああ!おらああああああ!」

「それで奇襲のつもりか?動きが見え見えなんだよ!」

「お互いにな!」

 

真っ直ぐ突っ込んでくる一夏をそれほど脅威とは捉えていないため、注意を向ける比率は変えず、一夏へとビームを放つ。しかし、その単調な攻撃を一夏は見逃さなかった。

 

「滑り込みだと!?」

 

急激に方向を変え、アラクネの下を通るようにスライディングをするような形になった。アラクネの足の可動域は広いが、胴体、蜘蛛でいうところの腹の部分が大きいため、下方向への対応は苦手となる。それに気づいてオータムは飛び上がるも、一夏の剣が届く範囲であり、体制も崩れた。葉がそこを見逃すはずもなく、

 

「阿弥陀流 真空仏陀斬り!」

 

不完全な体制だったため、どちらに対しても受けに行くことができたのは二本ずつ。そのうちの三本の足を切られた代わりに、何とか直撃は免れたのだった。

 

「下の方が死角になるのはわかってた。後はセシリアの《ブルーティアーズ》もそうだが、自分の手足以上の数の武器を操ろうとすると、意識外のことが起きた時、特に集中力にできる偏りが大きくなるからな。思っても見なかった一夏の反撃にびっくりしただろ?」

「俺たちを二人同時に相手できると思ったところにお前の油断があった。一人ずつ攫うんだったな」

 

敵は強いが何とかなると感じていた二人。だが、オータムの雰囲気に違和感を感じていたキレてはいるが、むしろさっきまでよりも冷静にも見える。油断がなくなった証拠だった。先程までより数段速く、キレのある動きで、反応すら許さず葉に蹴りを入れる。

 

「葉!!」

「お前は冷静さを欠くと途端に動きが単調になるな」

「ぐあ!何だこれ!」

 

葉が蹴り飛ばされたことで焦って最短距離で決めようとする一夏に粘性の高い蜘蛛の糸のようなものが飛ばされ、壁に張り付いたまま身動きができない状況になった。

 

「お前はそこで待ってろ。さて、こっちも片をつけるか」

 

オータムが葉の手足を抑え、残った手に銃を換装する。

 

「ぐ、あ、が、あ!」

(抜けられねぇ!できることは鬼火しかいない。がステージ上にはまだみんながいる。もし外れたらあの威力だと確実に被害が出る)

 

容赦なく打ち付けられる弾丸に葉のシールドエネルギーは残り僅か。打つ手が何もなくなったところで、不意に弾丸が止んだ。

 

「危ねえ、危ねえ。強制解除される前に使わなきゃいけないんだったな。この強制剥離剤をな」

「何をする気だ・・・!」

「まあ見てろよ」

 

葉の胸に六角形の機械が取り付けられる。すると六本の触手のようなものが出てきて固定される。その直後、高圧電流が流れるような痛みが走る。

 

「があああああ!」

 

すぐに痛みが消えると、《マタムネ》の換装状態が解け、待機状態となってオータムの手の中にあった。

 

「まさか、人のISを!?」

「そういうこった。ぶっちゃけお前のはついでなんだがな。本命は《白式》だ」

「やめろ!そいつは下手すると大きな争いに繋がっちまう!!」

「それがいいんだろ?」

 

そういうとオータムは慣れた手つきで一夏にも同じことをし、葉の叫びも届かず、《白式》までもがオータムの手に入ってしまった。その痛みで一夏は気を失ったようだ。

 

「さて、目的は達成したしあとは持ち帰るだけだな」

「そうはさせないわよ」

 

葉とオータムは声のした方を向くと、楯無が立っていた。広げられた扇子には「学園最強」の文字が入っていた。IS学園の生徒会長は、そのまま学園最強という称号でもある。これはISに通じる人の中では有名なことであり、葉も本人に聞かされて知っていた。

 

「二人の様子からして、ちょっと手遅れだったみたいね」

「生徒会長サマのご登場か。本当ならやり合ってみたいところだが、こいつらに思った以上にやられちまってるし、あとは目的の物を持ち帰るだけなんでな。続きはまた今度にしてやるよ」

「待ちなさい!!」

 

言うが早いか、オータムは壁を突き破り一直線に飛び去っていた。《アラクネ》のスピードに、楯無は歯噛みする。機動力の差は歴然であり、今からでは追いつくことはまずできないだろう。千冬をはじめとする教師陣に必死で連絡を取り、応援を呼ぼうとする。その時、倒れていた葉が楯無へと一言呟く。

 

「悪い、後は頼む」

「え?」

 

もう動けないということを伝えているのかとも思ったが、立ち上がる葉の目にはあきらめなんてものは見えない。むしろ今まで以上の覚悟を感じる。意図が掴めないまま葉を眺めていると、空気が変わったのを感じた。押しつぶされそうなほどの圧倒的な存在感、人の発するものではないことだけはすぐに分かった。そして、それを葉が引き起こしていることも。

 

 

O.S(オーバーソウル) S(スピリット).O(オブ).E(アース)

 




ついにS.O,E登場!この作品を書き始める前から構想にはあったので、ようやく出せてよかったです!楯無が来るのが遅い、葉と一夏相手でも本気を出せば勝てるというオータムの強化など、原作と少し変わっています。


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スピリット・オブ・アース

どうも、melkです。
久々の投稿です。書き方が毎回コロコロ変わって読みづらかったらすみません。色々手探りでやっているので・・・


O.S(オーバーソウル) S.O.E(スピリット・オブ・アース)

 

瞬間、数mはあろうかという巨大な何かが顕現した。機械じみているともいえる姿だが、確かに生命を感じる。そして、その圧倒的な存在感は、決してその大きさからくるものだけではなく、押しつぶされそうなほどの圧として感じていた楯無は、大きく目を開くしかなく、その瞬間には呼吸すらも忘れていた。楯無には知る由もないことだが、目の前にいるのはまさに大地そのものと言ってもいい大精霊、その存在感に圧倒されるのも無理はないことである。

 

「どうなってやがる!何に引っ張られてるって言うんだよ!」

 

先程までは、楯無が追いつけないと判断するほど距離があったはずだった。しかし、今は、何故かIS学園の方へ引き戻されて、葉や楯無の姿がうっすらと目視できるほど近づいていた。当然、スラスターの出力を最大限まで上げて抵抗しようとするが、引き寄せられるスピードには一切の変化が見られない。さながら逆再生のようになっており、遂には葉や楯無がはっきりと見えるほどまで近づいていた。最早立つ体力すら残っていないのか、片膝を床に着けたままだったが、それでもなおオータムに向ける葉の視線には力が、強い意志があった。その目を見てオータムは確信する。コイツだと。

 

「てめえかぁああああ!」

 

葉は口元に浮かべたわずかな笑みで返す。S.O.E(スピリット・オブ・アース)は、例えば阿弥陀丸をO.S(オーバーソウル)するのとはわけが違う。霊力にして47万、空気を媒介としていることで際限なく持っていかれる巫力、その状態でS.O.E(スピリット・オブ・アース)の能力、自身を中心として対象を引き寄せる「重力」を発動している。巫力が減っているというよりも、ほとんど絞り出しているという方が近い。そんな状況で平然としていられるのは、世界広しといえども、ただハオ一人だということはまず間違いがない。思っていたよりもきついと感じていた葉は、生きている状態でS.O.E(スピリット・オブ・アース)O.S(オーバーソウル)したのは初めてだったなということに気づき、コイツに頼る機会があるとはなと胸中で苦笑いしていた。

 

重力により引っ張られるオータムは、抵抗するのをあきらめ、思考を切り替える。逃れるための最善の手段は、恐らく訳のわからない力で自分を引き寄せている葉を手始めに殺し、改めて逃げるというパターンだと判断した。動く気配もなく、徐々に近づく的を殺すことなど、今までの任務の中でも最も簡単な部類だと、自身の経験と照らし合わせることで、冷静さを取り戻す。

 

「ふう・・・」

 

焦りも、困惑も全てを吐息と共に吐き出す。冷静になったところで、葉の隣にいる楯無が臨戦態勢をとっていることに気づく。楯無が構えているのは大型のランス。当然遠距離に対応するための武装も積んでいるのだろうが、接近戦に自信があるからか、それとも近づいてくる相手を見て確実にしとめようとしているのか、目視できるのランスのみ。であれば、射程の差で、こちらの攻撃が早く当たるだろう。射程圏内に入った瞬間に一撃で仕留め、追撃が来る前に再び全速力で飛ぶヒット&アウェイの戦法で行くことに決めた。いつでも攻撃し、逃げる準備をしておきながら、射程に入るまでそれを悟らせてはいけない。緊張のせいか、汗がオータムの頬に流れる。

 

射程に入るまで、あと2、1。そこで、小さな声ながら、楯無の声が不思議と鮮明に聞こえた。

「ねえこの部屋、暑くない?」

 

何かに気づいたオータムだったが、もう遅い。妖艶な笑みを浮かべる楯無とは対照的に、オータムの顔は青ざめていく。その直後だった、《アラクネ》の胴、足、スラスターと次々に爆発が起きたのは。至近距離での爆発で絶対防御が発動し、シールドエネルギーが大きく削られる。手や足などが焼けるように熱いが、次いで来る楯無の槍に、痛みを感じている暇すらない。手数ではオータムの方が有利だったが、その程度で苦戦する楯無ではない。《アラクネ》のアームによる引掻きをランスで受け流すと、それを攻撃の起点として、一切の無駄のない突きが放たれる。オータムがリーチの差を活かした戦い方をしようとしても、間合いを離すことすら許さない。自身をこの場に留める謎の力はとうになくなっているが、それを気にしている余裕もなかった。

笑みを絶やさぬ楯無の猛攻に、オータムはじりじりと後ずさるしかない。スラスターは壊れ、逃げるには絶望的。それでも諦めようとしないのは、意地か、はたまた何らかの策があるのか。聞こえてくるのは金属のぶつかる甲高い音とお互いの息遣いのみ。オータムの意気は荒いが、相手の足運びから次の手を予測し、先回りすることで、何とか防戦に持ち込めていた。楯無も自分の口元が吊り上がって来るのを感じる。お互い万全ならもう少しいい勝負になっていただろうというほどの強敵との戦いを楽しんでいた。徐々にキレを増していくランスのキレに、オータムも追いつけなくなってきている。不意に―ランスの軌道がクンと跳ねた。ガードをすり抜け、オータムの左肩を貫く。痛みに声にならない声で叫ぶオータムだったが、その左腕は動かそうとしてもピクリともしなくなっていた。恐らく一時的に神経からの信号が遮断されているのだろう。

 

「残念だけど、これで終わりね」

「まだ・・・!」

 

オータムが叫ぶ声は、再び響いた爆発音にかき消された。展開されていたISが強制解除され、その場に力なく膝をつく。懐にしまっていた《白式》《マタムネ》も楯無が無事に回収、後はオータムをどうするかという問題だけだった。

 

「くそっ!!お前たちなんかに計画が邪魔されなんてな。私たちが、どんな思いでここまで来たと思ってやがる!なぁ、そこのガキ。いいよなお前らは。男性操縦者だからって、大した強くもないくせにちやほやされて。私たちはいつも死と隣り合わせ。こんな世の中、おかしいよな!」

 

 

「お前の事情なんて知らん」

「な・・・!?」

 

吐き捨てるように一言。オータムとしても、その返しは意外なものであった。言葉にしてはいないが、自分の体験してきた地獄のような世界、それと比べて、のうのうと生きているお前はどうかという問いをぶつけたつもりだった。相手の心にためらいや迷いくらいは起こせると思っていた。

 

「ただ、オイラは、オイラの仲間を傷つけるやつは許さん。オイラたちから奪ったものでさらに争いを起こそうって言うなら尚更な」

 

オータムが息をのむ。恐らく、計画の全てではないだろうが、何となく葉が気づいている様子に、葉の警戒度を一つ上げる。今は何としてでもここから脱出し、不思議な力のことも含めて麻倉葉のことを報告しなければ、麻倉葉一人で計画全体を大きく狂わす存在になり得ると感じて冷や汗が流れる。そんな時、突然天井を突き破って、オータムと楯無の間に光線が落ちる。天井の穴からは、深い青の蝶を纏った少女が見える。ISで覆っているため、顔はよく見えない。

 

「迎えに来たぞオータム」

「名前で呼ぶんじゃねぇと言いたいところだが、いいタイミングで来た」

「ほう?やけに素直だな?無様にやられて心でも入れ替えたか?」

「こっちにも色々とある。早く連れていけ」

「ふん」

 

蝶のようなISを纏った少女は、オータムの様子からただ事ではない何かがあったと推測していた。基本的に亡国企業には、プライドの高いメンバーが多いため、煽れば喧嘩になることも当然ある。その中でも、オータムとは特にその回数が多いのだが、今回はあれだけ言っても言い返して来ない辺り、ことは深刻なのだろうと感じていた。すでにISを起動できないオータムを拾い上げ、そのまま飛び去る。

楯無としても、悔しいがただ見ているしかなかった。動けない葉と倒れている一夏を庇いながら、オータムとの戦いで多少とは言え消耗している自分が戦うのは厳しいと見ていた。そう感じさせるほどに、目の前の少女は強いと確信していた。本来であれば、重要な情報源となるオータムを逃す手はないが、葉と一夏の安全を考えて、あえて動かなかった。逃げ去る敵を見つめる楯無の背中は、心なしかほっとしているようにも見えた―

 



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