こちら、潜水母艦エピメテウス。緊急出航する! (なすきゅうり)
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突然の転移、本人混乱

生暖かい目で見ていただけると幸いです。


 

―――時に2022年。人類は異星文明プライマーと全面戦争に突入。

 

―――様々な紆余曲折を経て、元民間人、ストーム1を隊長とするストームチームは□□□(検閲済み)を破壊。

 

―――その内より現れた『□□□(検閲済み)』…即ち(検閲済み)を撃破。

 

―――人類は勝利した。だが失ったものはあまりにも大きかった。

 

―――それでも人類は立ち直る。プライマーの技術を奪ってでも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『旧横須賀にて』

 

 

 

 

「こちら、潜水母艦エピメテウス。入港許可を求む。」

 

《こちら横須賀、何も残っちゃいないが、歓迎する。》

 

 半分ほど海面から身を出した巨大な潜水母艦が、瓦礫の港を進む。

 横須賀。かつて日本有数の軍港であったが、プライマーとの戦闘で壊滅。戦争終了後、日本で真っ先に応急修理を受け、瓦礫の山からかろうじて港っぽいなにかになった場所。

 本来、横須賀はエピメテウスの受け入れを想定した作りでは無かったが、この未だ瓦礫も多く見受けられる港の形をしたキャンプ地モドキが、現状の世界で最も修復された港なのだ。エピメテウスはここに来るしか無かった。

 

 

「よぉし、ようやく一息つけるんだ。間違ってもぶつけるなよ。」

 

「問題ありません。最新の地形データ、潮流データ共に取れてます。」

 

「横須賀の使用可能桟橋に、こちらの内蔵するタラップでギリギリ届きそうです。」

 

「どうにかなりそうだな。」

 

 エピメテウス艦長は思い返す。今に至るまでの半年以上の戦いの数々を。

 どれも生半可なモノでは無かったし、徐々に狭まる人類の活動圏から毎回、最低限の補給しか受けられない状況であったのも負荷の増大に繋がった。現に、姉妹艦たる『セイレーン』『パンドラ』は今や物言わぬ海底の鉄クズだ。一歩間違えばこの艦(エピメテウス)も同じ運命を辿っていた。

 今こうして生きていられる事実に感謝するとともに、喪われた戦友たちに追悼の意を。艦長の胸の中は、それだけであった。

 

 

 

 

「接岸まで5、4、3、2、1…目標地到達、投錨。」

 

「投錨確認、タラップ展開、メインハッチオープン。」

 

「艦内放送を開始。」「ヨーソロー。」

 

 艦長はマイク片手にハッチへと歩き出す。

 

『諸君、本艦はたった今横須賀に到着した。諸君らがこの戦争を戦い抜いた猛者たちであることは誰よりわかっているし、同時に死ぬほど疲れていることもわかっている。だが地上の惨状はそれ以上だ。3日後には各地復興の橋頭堡として世界各地を回る事となっている。明日、フタマルマルマルには持ち場に居ろ。それまでは自由解散とする。以上。』

 

 放送の終わるころには、艦長はハッチにたどり着いていた。艦長以外にも何名か既に来ていたが、全員艦長に道を譲る。よって艦長はエピメテウス乗員の先頭として、一番最初に、半年以上ぶりの地球の大地を踏みしめることとなった。

 

 

 

 

 一方その頃、エピメテウス自身も、長いこと張っていた緊張を解き、眠ることにした。

 

 前提として、エピメテウスは潜水母艦であり、当然無機物であるから、本来は考えたり眠ったりはできない。だがエピメテウスの、火器管制系、探査系、制御系、他にも様々なシステム系統が戦争中、自然と結びつきを強め、結果としてある程度人らしく思考するだけの演算領域を確保したのだ。だからこそ考えすぎで疲れたり、眠ったりすることが擬似的に可能であり、戦時中何度もあったピンチを、咄嗟の判断でエピメテウス自身が回避した事も数知れず。

 

 艦内でエピメテウスが擬似的とはいえ『生きている』事に勘づいている乗員は何名かいるが、しかし皆その事には口を閉ざしているため、この事実はほとんど誰も知らない。その事をエピメテウス自身、『悲しい』と何度か思ったことがあるが、直後には『ま、いっか』と思考放棄していたりする。

 

 

 そうして眠っていたエピメテウスだが、突如、何かに引っ張られる感覚に襲われる。エピメテウス自身は仮想的存在であるため物理的に引っ張られることはありえない。ならばと座標系、探査系に目を走らせてもエピメテウスが物理的に動いてる訳では無い。つまり異常事態。

 だがしかし今、エピメテウスは猛烈に眠い。それに電子仮想体のエピメテウスをどうにかできる力に抵抗(レジスト)する術などない。そんな思考を睡眠(セーフモード)の限られた領域でこなしたエピメテウスは、諦めて寝続けることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――夢を見た

 

―――私ではない、誰かの夢

 

―――地球を丸呑みにする敵と、私の知らないEDFの戦い

 

 

―――炎上し、それでも支援の手を止めない要塞

 

―――自身を顧みず、人類のために持てる全てを放つ流星

 

 

―――やっと目前までたどり着いた悲願、蒼い星

 

―――砲が潰れ、脚が砕けて、それでも殲滅の為に

 

 

―――救いがない、とは思わない

 

―――きっと私達とプライマーも、これと大して変わらない

 

―――純粋な思いが、純粋な願いが、ぶつかり合う様

 

―――ただただ美しい

 

―――散る命、失せる本能

 

―――でもそれでも、引き金だけは、絶対に離さないで

 

 

―――今、一つだけ思った

 

―――どうか、彼らの総てに、報いあれ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …眠い。超眠い。ばり眠い。めっちゃ眠い。ぶち眠い。

 

「………ぅ……ぁ………。」

 

 うぅぅ、ここ…どこ…?つか私…。えっと…。自己診断(セルフチェック)スタート。

 

 

――自己診断(セルフチェック)、スタート

 

――エラー、船体に異常があります

――エラー、機関系、応答がありません

――エラー、電装系、チェック不能箇所多数

――エラー、GPS、戦術情報局、接続されていません

――エラー、生体反応1、乗員が規定に達していません

――エラー、艤装系、FCS、オフライン

――エラー、演算容量が不足しています

――エラー、演算容量が不足しています

――エラー、演算容量が不足しています

 

 

 分かった。自己診断(セルフチェック)強制中断。

 

 

――自己診断(セルフチェック)、中断

 

 

 

 ふむふむ、なるほど、分からん。

 

 

 情報過多でパンクしそうなので、一旦思考停止し、腕組みでもしながら少しづつ考える。

 

 まず第一に、自分自身。今しがた自然に腕を組んでみせたが、そも私は潜水母艦だ。腕に該当する部位を持ち合わせたことは無いし、(チラッ)カメラからの映像以外で景色が見えるはずもない。だが現にこうして腕を組み、両の目に景色を写している。無機物であるはずの自分が、生きたカラダを持ち、全身で、己とこの見知らぬ砂浜を感じ取っている。事実は小説より奇なり?

 

 第二に、ここ何処?眠る前は横須賀に居たはずだ。断じて今眼前に広がる南国的砂浜で寝た記憶はない。それにさっきのセルフチェックでもあったが、今GPSが繋がらない。地図もない、位置知れる人もない、おまけに電波もぐーるぐる。オラこんな場所ぁいやだ〜、オラこんな場所ぁいやだ〜。

 

 第三に、というより第一第二の総合的に、不可解と意味不明が多すぎる。今私の認識する範囲で起こった事をありのまま話すとすれば、『潜水母艦の付喪神モドキやってたと思ったら人化して見知らぬ場所にテレポートした』…B級映画の題材のがまだよっぽどマシに思えてくる。誰だこんな現象起こしたヤツ、出てこい、テンペストぶち込んでやる。

 

 

「………はぁっ……。」

 

 ほぼ無意識のため息。

 少し考えを巡らせても、状況のキャパオーバー具合が酷いもんだとしか分からなかった。仕方がないから余計な思考、演算は中断、保留、凍結、カット。今はこの生きたカラダを堪能しよう、脳死で。

 

 

 そうして改めて、自分の姿を舐めまわすように視てみる。手始めに髪から。

 

 とりあえず、で首周りをまさぐってみると肩に直線距離でギリギリ届くくらいの房が二房。たどってみるとポニーテールくらいの高さで括られている。言うなればツインポニーテール。生憎様、私はファッションのフの字も知らぬ潜水母艦だからこの髪型の正式名称は知らない。ちょうど結び目はポニーテールとツインテールの中間あたりに居る。うなじの方から髪は垂れてないから全部房の方に持っていってるのだろう。前髪はM字型、頭頂部付近に括られなかったアホ毛(弱)が一本。

 髪の色は茶髪系、相当明るめ。つか薄め。もう少しイエローが入ると金髪に分類されるくらいの明るさ薄さ。触ってみると手櫛が面白いように通る。さら、さらさら、さらさらさら。楽しい。さらさらさらさら。いつまでもこうしていたい、でも時間は有限。…とっても口惜しいけど、そろそろ次に行こう。さらさら。

 

 お次はカラダ。…の前に服。流石に真っ裸ではなかった。

一通り全体を見渡してみると、あれ?この服、フィンダイヴァーのじゃない?

 

 説明しよう。フィンダイヴァーとは、かつては存在していた、ウィングダイバーの派生兵科である。フィン(足ひれ)ダイヴァー(潜行者)の名の通り、その肉体で素早く潜る事で敵の意表を突くための兵科で、マイナス三次元的動きはダバ子に負けず劣らず芸術的だった。だけど、結局やってる事は海女(あま)の強化版みたいなもので、活動時間限界や武装の問題、それ潜水艦で良くね?問題とかで瞬く間に廃れていった。そーんな幻の兵科。

 

 ただまぁ、今私の着てるこの服は、フィンダイヴァーのインナー的服なんだよね。部位によってはこのインナーがそのまま海水に曝されることもあるからインナーだけでも性能(防寒性・遮水性)は十分なんだけど、本来はこの上からアーマーなりフィン(推進系)がついたりする。つかこのインナー、両手両足のパーツがついてない。両手は手袋、両足はソックスみたいのが存在する筈なんだけど……。無いね。あたりを見渡しても何も無い。仕方ない。無くても性能は変わらないからね。手首と脛にそれぞれ遮水ポイントが設けられているのだ。

 

 しっかしこのインナー、オートフィットとかも出来るんだけど、そのおかげでカラダのラインが浮き出て、なんかエロいなオイ。胸も尻も、そう大して出てるワケじゃないんだけども、競泳水着の感のあるフィンダイヴァーインナーと合わさると健全な競泳女子感が出てね。それをこういう目(エロ視線)で見ているって考えると、こう…背徳的な感じがして…イイな!自分のカラダでなければ尚のこと良かった!まぁしかし、このエッチぃカラダもエッチぃココロも、私のものだからな。受け入れるのは当然であるし、()でもしよう。あぁ、人間って素晴らしい!

 

 

 あ、そうだ。このインナーのセンサ系に繋げないかな?センサ系に繋げたら私のカラダのスペックが見た目以上に分かるし、インナーマッスルが使えたらクマだろうとへし折れる…んだ……けーど、っと!良し、繋がった!

 

――システム検出

――FD.IF ver 1.2.5

――Syncing.........Ok

――Vitaldata........Autocheck

――Powerassist...Ready

――Otherparts.....none

 

――Language.......change?

 

 あー、うん。言語を日本語に設定。

 

――了解しました

 

 ……一応これでも(ワタクシ)エピメテウスは国際的に活動するからまぁ、英語分かるし英語でも良いんだけどね。なんでか日本語の方がいい気がスルなー。ドウシテダロウナー。

 そんなことより、バイタルデータを見せて。

 

――バイタルデータ

 

――種族 エラー ※不明なデータベースに接続しようとしています※

――性別 ♀

――身長 約148cm

――体重 約46kg

――STR 24(+12)

――CON 30

――破損 エラー ※不明なデータベースに接続しようとしています※

――補給 エラー ※不明なデータベースに接続しようとしています※

 

 ……不明なデータベース多すぎない?STR(筋力)CON(タフさ)の値が人間辞めてるのも相当にやばいけども。一先ず、一旦カラダ探りを止めてシステム&ハード的問題を解決していこう。

 とりあえず、不明データベースの接続先とウイルス危険性のチェック。

 

――接続先名 ''Read me From the world''

――ウイルスチェッカー 反応なし

 

 『読んでねby世界』って…どういう事だってばよ。…でもこれ以外に現状のヒントになるものがなぁ…無いのよなぁ…。ネットワーク状況は?

 

――不明データベース以外全てオフライン

 

 デスヨネー。(乾いた笑い)

 

 

 しゃーない、不明データベースにアクセス。ただしファイヤーウォールは逐次構築せよ。

 

――了解、接続します

 

 さーて、鬼が出るか蛇が出るか。………っつ、これはちょっと………想定外に量が多い。んー、今の処理容量じゃ限界が早いな。よし、寝よう。思考演算分の領域が今は惜しい。おやすみなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ほぼ同時刻、同島、大体反対側にて

 

 

 

「これは…なんだか面白い状況ね!」

 

「同意。」

 

「だってアンタ…アルゴでしょ?」

 

「肯定。そういうアナタはデスピナ?」

 

「そうよ。1400m級空母ネームシップ、幼妻空母デスピナとはアタシのことなんだから!」

 

「漢字違う漢字違う。それ(幼妻)じゃ夫がロリコン犯罪者。」

 

「あら、そうね。そうだわね。じゃあ改めて。」

 

 

 

「こちら要塞空母デスピナ、アタシに任せなさい!」

 

「識別コード、アルゴ。正式名、変形汎用戦艦。蹂躙、殲滅する。」

 

 

 

 この世界に現れたのはエピメテウスだけでは無いようで…?

 

――to be continued...




「所で」
「何かしら?」
「さっきの決め台詞…要る?」
「うーん、今思うと必要無かったかもしれないわね!」
「デス(´∀)ヨ(∀`)ネー」


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当然の邂逅、方針決定

|ω・)

|ω・)つ[2話]ソッ

|ミ ザッ


前回のあらすじ

 電子の精霊的存在だったハズのエピメテウスは、何者かの手によって見知らぬ場所に生きた体を得て存在することになった。唯一接続可能なデータベースになんか色々あるようで……?


 

――不明データベースRFとの接続…良好

――データ解読及び整理…完了

――各部位の異常に対する対処法…確立

――思考演算領域…確保

 

――思考領域稼働開始

――睡眠時間…およそ18時間

――ボディ…異常なし

――艤装系…承認待ち

――思考領域稼働12%

 

――おはようございます、エピメテウス

 

 

 

 

 

 

「………ん。おはよ。」

 

 えーっと、寝る前何したんだっけ。………あぁそうだ。データベースに接続して、この状況のヒントを得ようとしてたんだった。(思考演算)が起きたってことはデータベースの読み解きは終わったみたいだね。結果は?

 

――データベース内データ、全チェック完了

――ウイルス、存在せず

 

 そう、良かった。で、問題のデータは?

 

――内容は文章、現在のエピメテウスの疑問に沿うような多数の説明

――内容取得済み、反映承認待ち

 

 りょーかい、反映を承認。

 

――反映

 

 …っつ、うぅ……。うん、うん。大体分かった。アタマイタイ。

脳に、蓄積された常識を、一瞬で書き換える…ようなものだからまぁ、頭痛がするのは仕方ない。重ねて、前常識と新常識の違いのぶっ飛び具合である意味、頭が痛いのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、これはどこから説明したものか……まぁ要点を掻い摘むのならば、

『1.現代世界(私の知る物とは少し違う)に突如、所属不明の武装艦艇多数出現→世界の海閉鎖』

『2.途方に暮れる人類の前に、武装艦艇達を「深海棲艦」と呼びそれら(深海棲艦)と戦う希望の存在、「艦娘」が!』

『3.人類、特に日本が「艦娘」を組織化させ、「提督」の指揮の元、戦う組織「鎮守府」及びその統括組織「大本営」設立』

『4.「深海棲艦」側もやっかいな事に進化し、艦艇から人型にバージョンアップしたりしなかったり。以降、泥沼の戦いが続いている。』

『※そして私は艦娘であるらしい。もっと言うと私みたいな艦娘(異世界からの来訪者)が少なくともあと二人は居るそうな。』

 要点掻い摘んで一部用語を解説しなくてもそれでもこれは長い(確信)

 

 他にも色々あるけど、今は置いとく。今はとりあえず、これからどうするかを考えようかな。バイタルデータ、破損と補給の欄を見せて。

 

――破損 無傷

――補給 燃料残り95% 弾薬艦載機full

 

 うーん、燃費悪いなぁ。寝てる間と昨日のちょっとだけで5%の消費、燃料が最初fullだと仮定してだけど。計算すると1%で3時間半ちょっと、1日で大体6.5%の消費、残り95%だと約二週間しか持たないね。艤装を展開して戦闘なんてしようものならリミットへのカウントダウンスピードが倍プッシュ。

 だがしかし、艤装は燃料でのみ動くけど、この生きた身体は燃料の他に飲食物でも生きていける。食あたりとかに強いオマケ付き。生存する事のみ考えるのなら燃料で食事睡眠に代替出来る艦娘ボディがチート。

 

 つまり、チート付きでサバイバル生存しながら人類の生存圏に合流すればいいってこと。…なんだか艦娘になる前とおおまかにはやるべき事、変わって無いみたいだね。これが運命って奴なのかな、命を運ぶと書いて運命。ただし私の場合、命は得た。

 

 

 そうなると、とりあえず最優先は通信かな。人類(&艦娘)がまだ生存してるって確証が欲しい。それと並行してこの場所の散策。どうせオートで通信接続を試みてると思うけど、状況は?

 

――全デジタル周波線は確認終了反応なし、アナログ周波数域に突入

 

 分かった、まだ時間がかかりそうね。島のマッピングをこれから並行してやるから程々にね。

 

――了解

 

 

 そうして、昨日は結局砂浜で寝た身体を起こす。今思うと結構危ない事してた。…まぁそれはそれとして、身体がどれくらい動けるかの測定がてら深くストレッチしつつ、身体のあちこちに付いてる砂を払い落としていく。

 はてさて、散策と言ってもどこから行こうか……あ、そうだ。レーダーと、ソナー…じゃないエコーロケーションを出して。

 

――Ready

 

「さて音を…声しかない、仕方ない。スウッ、―――!」

 

 えっおほっ、げっほげっほ、のどが高周波で分解するところだった、えほっ。まぁでもこれで、ここがどんな所か多少は分かる筈。…エコロケの結果は?

 

――現所在地、周囲10km程度の孤島

――山が無い為、火山による島ではないと推定

――島中央部は反響錯乱でロケーション失敗

――島中央部は恐らくヤシ類の森が広がっていると推測

――沿岸部に生体パルス2、強度から人と推測

 

 うわぁ…。そこまでわかるとかエコロケ優秀すぎる。いくら『耳』が潜水艦のイノチとはいえ、ちょーっとEDFの技術力にドン引き。

 

 それはさておき、エコロケと一緒に出してたレーダー、何か反応は?

 

――海面上約5kmに反応6

――沿岸部の人間二人から艦娘固有の反応

――周囲1km程度を精密測定、マップに反映

 

 おっけ。

 

 

 それじゃあ、その艦娘二人組に会いに行ってみようか。サバイバルにおいて人手は何物にも代えがたい大事なモノ。それに私より先にここに居たハズだから私よりここの情報は持ってるはず(押し付け)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘッ クシッ!

 

 

「ズッ…誰か噂してるのかしら?」

 

「さぁ?さっきの生声ソナーの張本人?」

 

「かもしれないわね。だとするなら、とっとと出てきなさいよね!」

 

「激しく同意。」

 

「それともあれかしら、アタシから行くべきかしら?」

 

「やめて。最悪はぐれる。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 呼ばれて飛び出てサンダー!、エピメテウスですよっと。

 

――思考にエラー、自己修復を

 

 待って待って、悪かった。電波拾った私が悪かったからガチ対応はヤメて。

 

 さてさて、件の艦娘二人組のすぐ近くまでやってきたワケだけども。……どうやって会おうか。よくよく考えたらこう(生きた身体に)なってからコミュニケーションの一つもとったこと無いのよね。うん、所謂人見知り、もしくは食わず嫌いって奴だね。緊張と言ってもいい。

 

 

 

「うーん。」

 

 こう、なんと言うか、うん。うだうだしてても仕方ないのは分かってるけど、それでもなんでか尻すぼみしてしまう。

 

「つまり、話しかける勇気が足りないのね!」

 

「そうそう、なにせ初めてだし……ひゅいっ!?」

 

 え?ヱ?ゑ?ちょ…待っ…えええ。アイエエエ、カンムス=サン!?カンムス=サン、ナンデ!?

 

 驚愕、即、キャパオーバー。思考が大混乱し始める中、音に対する本能か、身体は自然と声の主の方を向く。

 それは、ょぅι゛ょであった。私より一段低い目線、ぱっつん前髪と伸ばされた横後ろの黒髪、現代風魔改造の施されたシンプルな着物。こちらの驚きの表情に満足したのか、悪戯に成功した子供のように、ニシシと言わんばかりの笑みを浮かべた、見紛うこと無きょぅι゛ょであった。

 

「あはっ、イイ反応するわね!」

 

ガサッ「居た。やっと見つけた。」

 

 アイエエエ、フエタ!?カンムス=サン、フエタ!!

 

 続く二人目。今のょぅι゛ょとは違って身長は私と同じか少し高いくらい、雪のような銀髪のツーサイドアップ、無表情な顔にぱっちり輝くシアンの瞳、絹とかであろう純白に瞳と同じシアンを織り交ぜレース等でヒラヒラを増したポンチョ風味の独特な服。動かなければ人形と言われても違和感のないその出で立ちは、実際スゴイかわいい。

 

 

 

 

 刹那の観察眼はさておき、自分の前の方に居ると思った艦娘がいつの間にか背後をとっていた。そんな想定外に即応する術を持ち合わせない私の思考は絶賛、混乱錯乱大パニック。しかしながら荒ぶる思考は混乱の終息の為に状況の把握(事実の飲みこみ)を開始した。

 

 

「な、ちょっ、まっ、な、なんで…。」

 

「艦娘が一人、こっちに向かって来ていることは分かっていたわ。だから驚かせてあげることにしたの!」

 

非同意(ヒドーイ)。普通そんな発想出ない。…貴君、大丈夫か?」

 

「だっだだ大丈夫大丈夫だ問題ない。」

 

 あーえーだからえぇーっと。レーダー!

 

――目前の二人が先程の艦娘二人組で間違いありません

 

 なんでさぁああ!?

 

「…大丈夫じゃない、大問題だったか。」

 

「アルゴは分かってないわねぇ。こういう娘はこうしちゃえばいいのよ!」

 

 幼女はそう言うや否や、私にすり寄り…

 

「チェストォ!」

 

「!?」

 

 世界がひっくり返った。後頭部に感覚、空が明るい。燦々と降り注ぐ陽光に目を顰めようとして、すぐさま陽の光を遮る幼女の笑顔にその必要を奪われる。その瞳には、何処か得体のしれない、それでいて温かな何かを感じて、何故かふとそれが「母親」というものに結びつく。って、そうじゃなく!

 

「ひ、膝枕?」

 

「えぇ、膝枕よ。ようやく落ち着いたかしら?」

 

「えっと…その…落ち着いたっていうか…」

 

「もしかして:思考停止」

 

「そう、それ。一瞬の内に色々ありすぎて何が何だか…。」

 

「あら、そういう事だったの。」

 

「おい張本人。むしろどういう事だと思った。」

 

「てっきりアルゴの色気にやられたのかしらと」

 

「ねーよ。…貴君、状況が呑み込めないのはわかるがここは一旦自己紹介とするべきと提案。」

 

「えっと……はい。お願いします。」

 

 一先ず、話の流れが自己紹介に移るようなので思考は全カット。記憶系、レーダー系稼働優先、他に領域が余るならレーダーのログも洗って。

 

――了解

 

 

「言い出しっぺの法則。なのでワタシから。」

 

 幼女にアルゴと呼ばれたポンチョの方からみたいね。

 

「ワタシはアルゴ。正式には変形汎用戦艦だがそれでは個性がない。のでこの(幼女)デスピナの勢力につけられた、識別コードのアルゴを使わしてもらってる。得意な事は空を飛ぶ事。苦手なものは範囲攻撃。はい次。」

 

 航空戦艦(直球)のアルゴさん…っと。

 

「じゃあアタシね。アタシはデスピナ。EDF海軍第一艦隊旗艦にして、1400m級空母のネームシップ。臨時支援部隊の基地も務めた、エアレイダーのお母さんよ!」

 

「え、EDF?」

 

「えぇそうよ、EDFよ。EarthDefenseForse(地球防衛軍)。」

 

「それホントにEDF?」

 

「…おかしいこと言うわね。EDFがEDF以外にあるかしら?」

 

「いや、えっ、だって…。私もEDF所属だけど、1400m級空母とかデスピナとかって知らないんだけど……。」

 

1400m級空母をご存知でない!?(……コホン。)おかしいわね、EDF海軍に居る限り1400m級空母を知らない筈はないし、私より先の子だとしたらアタシが知らない筈はないし……そういえばアンタの名前、聞いてなかったわね。」

 

(「やっと気づいたかデスピナ。」)

 

「あ、はい。まだ名乗ってませんでしたね。私はエピメテウス。EDF海軍所属の特殊潜水母艦セイレーン級3姉妹の末っ子で、終戦時生存艦の一隻です。指揮系統はEDF極東戦線、艦載はDE202M(ガンシップ)。神殺しの時のテンペスト中継とかをやりました。」

 

「エピメテウス…知らない名前ね。それに潜水母艦だなんて私のログには無いわよ。」

 

「ええ、私もです。私のログにデスピナや1400m級空母なんてありません。」

 

「おかしいわね。」

 

「はい、おかしいです。」

 

「うーん、そうねぇ。EDFの本部は?」

 

「北米、アメリカの東海岸側です。」

 

「私の知る本部は、北米のアメリカ、カナダ寄りの地点よ。」

 

「では…レンジャー(陸軍)の制式採用アサルトライフルの型番は?」

 

「AFタイプね。」

 

「…PAシリーズの筈です。」

 

「…疑問。これ以上問答要る?」

 

「要らないわね。…いえ、最後に決定的なのをぶっこむわ!エピメテウス!あなたの(・・・・)EDFは何と戦ったの?」

 

「地球外文明、プライマーです。デスピナさん、そういう貴女は?」

 

「アタシらが戦ったのはね、フォーリナー。このアルゴが居た勢力よ!」

 

「肯定。そして確定。お前らのEDF、違うEDFや。」

 

 

 ふーむふむふむ。見知らぬ世界と知らない身体と、おまけでもう一つのEDF。不可解に不可解が重なってあやとりみたいになってるけど、まー多分ダマにならずに紐解けるかな。多分。

 

「私とデスピナさんのEDFが別物という事は分かりました。」

 

「アタシの事は呼び捨てで良いわよ」

 

「ワタシもそれ(呼び捨て)でいい」

 

「じゃあ、デスピナ、アルゴ。私もエピメテウスか、長かったらエピでいいよ。」

 

「分かったわ、エピ。」

 

「了解、エピメテウス。」

 

 ここで少し確認しておきたかった事を聞いてみる。

 

「貴女達はどうやってこの島へ?」

 

「アタシには分からないわ、だって昨日起きたばっかりなのだから!」

 

「アルゴもそう思います」

 

「昨日……昨日の、時間はいつぐらい?」

 

「そうね……お天道様が真上に居たくらいかしら」

 

蘇る自身の昨日(始まり)の記憶。あの時、状況把握の為に見回した空でお日様はどこに居た?

……確か、真上付近。時刻にして午前11時あたり。つまり……

 

「デスピナとアルゴの目覚めたタイミングは、私とだいたい一緒?」

 

「エピもそうなのか。……それとデスピナ、いい加減膝枕から解放してやれ。格好が真面目になれん。」

 

「あら、そういえばまだ膝枕のままだったわね」

 

「見たらわかる」

 

 

――留意:見れないから分からない(読者)も居る事

 

 

 言えない、実は膝枕が心地よかったとか口が割けても言えない。

 そんな思いを乗せたり乗せなかったりしながら、膝枕は解放される。アルゴが立った状態から座る……というより屈む状態になり、必然的に私も座る体勢になる。

 

「それで、アタシら二人が起きたところまでは言ったわね?」

 

「せやな」

 

「ですね」

 

「そこからまぁ、昨日は結局テキトーに過ぎてテキトーに寝たわ」

 

「いきなり雑っ!?」

 

「で、今朝起きたらなんとアルゴが居たのよ!」

 

「いやそれまでの流れだと寝る時も居たよねっ!?」

 

「それからそれから、誰かの声がしたからなんとなくステルスデコイで近づいて、そしたらエピがいたってワケ!」

 

「ステルスデコイ!?どうりでレーダーじゃ動かないワケだ私の苦悩返せww!!」

 

「草生やすな」

 

 

 という訳でレーダーのログ洗い終了。レーダーにアンノウンは?

 

――先ほどの海上5kmの反応が移動、新たな反応6と交戦中

 

あーそいえばあったねそんなん(海上の反応)……交戦中?

 

 

「ギュピーン!」

 

「どしたデスピナ」

 

「分かってるでしょ?誰かが戦ってるのよ!」

 

「うん、知ってる」

 

どうやら二人の方も気づいたみたい。

 

「6対6……内一方は艦娘の反応」

 

「あ、デスピナも艦娘云々とか知ってるんだ」

 

「あったりまえでしょう?アタシは1400m級空母よ?」

 

「データベースRF読んだだけだろが」

 

「あぁやっぱしRFか」

 

「エピもそうみたいだな」

 

「うん」

 

「それよりも!交戦中の艦娘を援護するわよ!そしてあわよくば『鎮守府』ってのに合流するの!」

 

「案外打算的だぞこの幼女」

 

「でも私は賛成です」

 

「ま、ワタシも実際ポジティブ(肯定)だ」

 

「それじゃ行くわよ!」

 

 

立ち上がり、浜辺へ走り出すデスピナ。私とアルゴもそれに続く。

 

 

「『鎮守府』がブラック企業だったら?」

 

「丸々消し飛ばすわ!」

 

「じゃあ、敵が思いの外強かったら?」

 

「WW2モチーフの艦に負ける道理なんて無いわ!」

 

「提案、通信回線繋げようぜ」

 

「OK、周波数は0.01933ね!折角だからDAE(DデスピナAアルゴEエピ)回線って名前にするわ!」

 

「了解」

 

「分かった」

 

今になって、一つ急に確信した。

 

「そういえばアタシ艤装の展開初めてだわ!」

 

「安心しろワタシもだ」

 

「良かった。私もです」

 

「つまり基本ぶっつけ本番ね!」

 

多分この二人となら退屈はしない。絶対。

 




|ω・) しばらくデスピナアルゴエピメテウス全員キャラがブレかねないが、まぁ許せ
|ω・) なす、これでも分類上受験生だから元から亀の投稿頻度が落ちるが、まぁ許せ
|ω・) 前回のフィンダイヴァーとか色々捏造設定だかんな?

|ω・) 誤字脱字他あったらツッコンでくれたもう
 


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