“自称”何でも屋の幻想郷―――生活 (牙の道化師)
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祝!自称何でも屋開店!
自称何でも屋の開店


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幻想郷―――それは“外”の世界で忘れられた存在達が住む最後の楽園―――

 

そんな世界に、ある男がやってきた。

その男は人里で少し生活をした後に、ひっそりと店を開いた。

 

「………さて、これで良し。」

 

男が満足げに頷く。

元々、人里の外れにあった小さな小屋を店にする事にした。

もっとも、スライド式の扉に窓が2箇所ある小さな小屋で、人がギリギリ3人入れるか入れないかの店である。

それでも男は“未だかつてない程”の希望を抱いていた。

 

「後はっと。」

 

長方形の木の板に、店名を書く。

 

―――自称何でも屋―――

 

これが彼の店の名前。

そして―――彼の幻想郷で働くお店である。

 

彼―――直人は―――

 

「んじゃまぁ、仕事が来るまで人里で女性と話でもしてこようかな?」

 

女好きであった―――



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雑用依頼―――千里の道も一歩から

まぁ、いくらなんでも最初は仕事を選べないのが現実です。


自称―――それは自分が“それ”を認めていると言う事であり、周りは認めていないと言う事である。

 

彼―――直人が自称を付けたのには理由があった。

 

(まぁ、どんなに報酬が良くても蜥蜴の尻尾きりってのは嫌だしね。)

 

詰まる所、彼が以来を受けるかどうかは気分と状況であると言う事であった。

しかし、開店したばかりの店に資金などある訳がなく。

 

「おう兄ちゃん!その板運んでくれ!」

「解りました!」

 

現在、人里の大工の手伝いに奮闘していた。

少なくとも、明日のご飯が食べられるかどうかと言う話だ。

 

 

 

午前から始めた手伝いは午後で終わり、直人は報酬を受け取った。

 

「おう!また手が足りなくなったら頼むぜ!」

「今後ともご贔屓に。」

 

そうして、彼は資金の一部を使い昼食を取る事にした。

 

―――しばらく歩いていると。

 

「ん?」

「おや、君か。」

 

―――腰まで届こうかというまで長い、青のメッシュが入った銀髪。

頭には頂に赤いリボンをつけ、赤い文字のような模様が描かれた青い帽子を乗せている。

衣服は胸元が大きく開き、上下が一体になっている青い服に袖は短く白。

襟は半円をいくつか組み合わせ、それを白が縁取っている。

胸元に赤いリボンをつけている。

下半身のスカート部分には幾重にも重なった白のレースがついて、長い―――

 

彼女―――上白沢慧音(かみしらさわけいね)は人里の寺子屋の教師であり、人里の守護神である。

 

「やぁ慧音先生、今夜一晩熱い夜を過ごしませんか?」

 

彼は即効で口説く。

そして、慧音は笑顔で直人の両肩を掴み―――

 

「お断りだ!」

 

ゴチィンッ!

 

頭突きを喰らった。

 

 

 

「~~~!!!」

「まったく、お前は初めて出会った時もそうだったな。」

 

ため息を付きながら出会った当初を思い出す慧音。

と言っても、出会いは3日前。

人里の門番に呼び止められて困っていた直人を助けたのが切っ掛けだった。

 

「もっとも、あの時助けなければ良かったと思ったがな……。」

「いやいや、慧音さんには大きな借りが出来ましたよ。お陰で店も開店できましたし。」

「……まぁ、この幻想郷に何でも屋が今更増えた所で気にはしないがな。」

 

彼の開店している店以外の何でも屋―――それはこの幻想郷の問題を解決する博麗神社の巫女―――博麗霊夢と、霧雨魔法店店長―――霧雨魔理沙と言う二人の少女達だ。

 

「とりあえず、専門的な事はあちらに任して俺は俺が解決できる範囲で解決しますよ。」

「それが良いだろう。所で……。」

「何ですか?」

「お前の店は自称何でも屋というらしいが、普通の何でも屋とどう違うんだ?」

「受ける依頼もあれば受けない依頼もあると言う事です。」

「何でも屋なのに依頼のえり好みをすると言うのは矛盾して無いか?」

「えぇ、矛盾してますよ。でも、それで良いんですよ。」

「………そうか。」

 

特に気になった訳ではなかった話題だが、後になってこの会話に何らかの違和感を感じるのはかなり先の話である。

 

 

 

夕刻―――直人は店に帰る帰路に付く。

 

「ふぃ~、疲れたなぁ。」

 

腕を回しながら晩御飯の食料を買った。

 

「しかし、かまどに火なんて付けられるんだろうか?」

 

とりあえず火打石と燃えやすい藁がこの世界にあったのでそれを使う。

 

「やれやれ、外の世界の現代機具が恋しいぜ。………なんてな。」

 

1人ごちる。

 

「―――ん?」

 

店の前に数人の男達が居た。

 

 

 

「何か用かい?」

 

彼が話しかける。

 

「………この店の奴か?」

「店長だ。んで何か依頼なのかい?」

 

人里で会話した事が無い男達だった。

 

「ああ、依頼だ。」

「内容は?此処で言え無いなら中でも…。」

「いや、今言おう。依頼内容は―――」

 

―――妖怪の抹殺―――

 

 

 

「………お宅ら、何か勘違いしてないかい?確かに何でも屋だが妖怪を殺せる様な力は無いよ。」

「だろうな。見た目で解る。」

「んじゃ他に当たってくれ。」

「いや、お前にしか頼めんのだよ。」

「………どういう意味だ?」

 

直人は訝しげにリーダーであろう男を見る。

 

「お前は“外”から来たのだろう?」

「そうなんだろうな。それで?」

「少なくともまだこの世界の妖怪達に顔を知られていない筈だ、つまりだお前が囮になって妖怪を誘い込み俺達が襲うって寸法だ。」

「はぁ…。んじゃ参考までに聞いておくけど何故妖怪を殺そうと?」

「ふん!あんな危険な奴等が住む世界に安全な場所など無い。殺さなければ殺される、ヤられる前にヤるという事だ。」

「………条件付で受けよう。」

「条件?」

「その条件を飲めないならお断りだ。」

「良いだろう、言ってみろ。」

 

直人が挙げた条件―――

・俺が獲物を見つけるまで妖怪を襲わない。

・日数制限は無期限。

・報酬は前払い。その代わり成功・追加報酬はいらない。

 

「………この条件を飲んでくれないと俺も困るのさ。普通の依頼もあるからね。」

「……良いだろう、妖怪を殺せるならそれくらい飲んでやる。」

「契約成立だな。」

 

 

―――男共が帰り、彼も店に入る―――

 

「………はぁ~、めんどくさいなおい。」

 

彼は乗り気ではなかった。

誰が好き好んで殺しの依頼を受けたがるのか小一時間聞きたい。

 

「………兎も角、策を練らないとな。」

 

こうして、彼はこの依頼を乗り切る為に頭を働かせた。




ちょっと行き成りご都合主義を……。


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下準備は着々と

さて、深夜のテンションに身を任せてっと。


翌日、彼は考えて居た。

因みに草むしりの仕事を終えた後にご飯を食べて、店から出た後に歩きながらである。

 

(さて、どうするか……。少なくとも俺にあの男共を無力化できる力なんて無いし……。)

 

考えを纏めていると。

 

「ふぅ、早く師匠の下に帰らないと……。」

 

―――女性の声がしたので、直人は声の主を探す。

直人が目にした女性は―――頭にヨレヨレのウサギの耳があった。

 

「あの、そこのお嬢さん。」

「はい?」

 

振り返った女性の姿は、足元に届きそうなほど長い薄紫色の髪に、紅い瞳を持っており、平たく言ってしまえばほぼ女子高生の制服姿。

よく見てみると、ウサギの耳の部分に付け根の様な物があった。

そういえば、お尻の部分に尻尾があったかもしれない。

 

「あの……何か?」

「あっと、失礼。……お嬢さん、今宵は一緒にお酒でも如何ですか?」

 

空気が止まった。

 

「………。」

 

2・3歩、ウサギ耳の少女が後ろに下がる。

 

「あー、またお断りされましたね。」

「……他にもそういう感じで口説いているんですか?」

「否定はしない。」

 

ウサギ耳の少女は思う。

 

(適当にあしらって帰ろう……。)

 

そう思い、少女は口を開こうとして―――

 

「所で話は変わるんだけど、この辺りに薬に詳しくて売ってる人を知らないかな?」

 

―――言葉は出なかった。

 

「………何故ですか?」

「んー、そうだねぇ。強いて言えば……。」

 

その時、彼の眼は少女の“瞳”を見る。

 

「っ!見ちゃ―――!!!」

 

少女が声を荒げ、目を逸らそうとして―――

 

「無理。」

 

彼が回りこんで瞳を除かれてしまった。

 

「―――!?」

「ふむ、中々に綺麗な色だね。」

「何とも……無いの!?」

「えっ?」

 

直人は何の事か解らなかった。

 

 

 

あの後、人里を離れある森に付いた“2人”。

 

「まったく……おかしいわよ貴方。」

「と言われてもね……。その狂気に陥るって言われても陥った事無いから解らないんだよ。」

「本当に人間?」

「生粋の人間ですが何か?と言うか名前くらい聞かせて欲しいんですが?」

「普通は自分から名乗るでしょ。」

「俺の名前は直人。自称何でも屋店長さ。」

「何でも屋って……絶対荒事とか向いて無いわね……。」

「んじゃそっちの名前は?ウサギのお嬢さん?」

「……鈴仙。鈴仙・優曇華院・イナバよ。」

「長い上に舌を噛みそうだな。」

「鈴仙で良いわよ。」

「んじゃ俺の事も直人で良いよ。」

「それで、薬を売っていて詳しい人を探してるのよね?」

「そうだよ。」

「なんで?その何でも屋の依頼?」

「まぁそういう事かな。少なくとも相手の動きを止めないと洒落にならないんだよね。」

「………何に使うつもりよ?」

 

訝しげな目で直人を睨む鈴仙。

 

「まぁ言いたい事は解るけど、決して悪行に使わないよ。と言うか、今回の依頼は断りたかったんだけど、断れなかったんだよねぇ……。」

 

ため息を付く。

 

「どんな依頼なのよ?」

「本当は守秘義務があるけど、こんな依頼に守秘も義務もいらないから暴露しちゃうけど……少しばかり手をかしてくれますかい?報酬も払うんで。」

「………師匠の許可しだいね。それで、内容は?」

「妖怪の抹殺。」

 

ズルッ!

 

鈴仙がこけそうになった。

 

「………何でそんな依頼受けるのよ……と言うかそんな依頼を出す方も出す方よ。」

「まぁ理由としてはだ、あそこで断れば実力行使に出たかもしれないんだよ。もしあいつらが妖怪を抹殺したら寝覚めが悪くなるだけだよ。まぁ相手の妖怪が自分以外死ねば良いとか考えてる奴なら放置したけど。」

「なるほど、以外に考えてるのね。でも、大丈夫なの?制限日数とかは?」

「条件付きでこの依頼を受けたんだ。日数制限は無期限。目標は俺が決めるまで他の妖怪を襲わない。報酬は前払い。」

「何で前払いなのよ?」

「後払いだと尻尾きりに会いかねないし、俺が妖怪を殺した犯人に仕立て上げられちまうからだよ。」

「なるほど…。それで、どうやってその依頼を“成功”させるの?」

「良いかい?あいつ等は俺に“囮”になってくれと言う意味で妖怪の抹殺を依頼してきたんだ。つまり囮の仕事だけをしてれば良いんだよ。それで依頼は達成。」

「……悪どい。」

「否定はしない。さて、そろそろ着かないかな?」

「もう見えてくるわよ。」

 

そして、目の前に門が見えた―――




まぁ尻尾きりは怖いですよね。


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月の頭脳の人体実験

いい加減UAの意味を教えて欲しい今日この頃。


永遠亭―――とある異変の舞台となった屋敷で、歴史を刻んではいなかったが異変後、屋敷の歴史は再び動いた。

 

直人は鈴仙に玄関の受付で待たされる事になった。

 

「師匠呼んで来るからちょっと待ってて。」

「あいよー。」

 

椅子に腰掛け待つ事になった。

 

少し経って、直人が暇だと思い始めた頃―――

 

「ん?どしたよ?」

 

彼が話しかけた相手―――白い小さな兎。

直人の足元に着たかと思えば、頭を足にこすり付けている。

 

「………ふぅ。」

 

ため息を付いた後、彼は兎を持ち上げ膝に乗せる。

軽く頭を撫でながら。

 

「~~~♪」

「ん、もふもふでふわふわだな。」

 

傍から見れば和やかである。

 

「………ちょっと。」

「ん?」

 

声を掛けられ、振り向く。

 

其処には小さな少女が居た。

癖っ毛の短めな黒髪に、鈴仙と同じく頭にウサギ耳があり、ふわふわしてる。

もふもふなウサ尻尾もあり、身長は少女で幼女に近い。

桃色で、裾に赤い縫い目のある半袖ワンピースを着用しており、首にはニンジンのネックレスが掛かっている。

 

「やぁお嬢さん、何か用かな?」

「こっちの台詞だと思うけど。」

「それより、今宵一晩お付き合いしませんか?」

「………。」

 

少女は顔を歪ませたが。

 

「良いよ!」

 

途端に笑顔になる。

………少なくとも、まともな笑顔には見えない。

 

「おお!ありがとうね!いやー!仕事手伝ってくれるなんて思いもしなかったなー!」

「………ゑ?」

「だって言ったよ?今宵一晩付き合ってくれるって。どういう意味だと思ったの?」

 

心底不思議そうに尋ねる直人。

ここで少女は一杯食わされた事に気づく。

 

「くっ!私を騙すなんて……!?あんた、中々やるじゃないかウサ。」

「まぁ、曲がりなりにも仕事を請け負っている最中だからね。請け負ってなかったら口説いてたんだけど。」

「私を口説くのは10000年速いね。」

「そっかー。」

 

ある意味で和んでいる時。

 

「………なにやってるのよ彼方達。」

 

鈴仙が戻ってきた。

 

「お帰り。どうだった?」

「とりあえず、師匠の下に案内するから付いてきて。あと……てゐまで口説くってのは犯罪染みてる気がするんだけど?」

「幻想郷に常識とか無いのでは無かったのかい?」

「最低限はあるわよね。」

「んじゃ、案内お願いしますか。んじゃまたな……てゐだっけ?」

「そうウサ。あんたの名前は?」

「直人だ。んじゃまたな。」

 

そして、直人は鈴仙の後を付いていった。

 

残ったてゐは、先程直人が撫でていた兎に尋ねる。

 

「どんな奴だった?」

「………。」

「そう、良かったわね。」

 

会話の内容は、当人達以外解らない―――

 

 

 

しばらく長い廊下を歩いていた2人。

「そろそろ着くか?」

「ええ。」

 

気の無い返事。

 

そして、扉の前に着く。

 

コンコンッ

 

「師匠、連れてきました。」

『入って。』

 

許可がもらえたので、入室する。

 

「失礼します。」

「失礼します。」

 

中は診療所の様だった。

そして目の前に落ち着いてしっかりとした大人の女性が佇んでいた。

長い銀髪を三つ編み?にしており、前髪は真ん中分け。

左右で色の分かれる特殊な配色の服を着ていて、具体的には上の服は右が赤で左が青、スカートは上の服の左右逆の配色、となっている。

袖はフリルの付いた半袖。

全体的に色合い以外はやや中華的な装い。

頭には、同じくツートンのナース帽を被っている。

 

「始めまして、何でも屋さん。」

「―――ええ、始めまして。素敵なお姉さん。」

「あら、お世辞が上手いわね。」

「生憎、お世辞抜きで言ってますよ。どうですか?一晩お付き合い頂けませんか?」

「残念だけど薬の調合があるから駄目ね。」

「そうですか、それは残念。」

 

全然残念そうには見えない。

 

「では、お弟子さんをお借りできませんか?勿論、プライベートでは無く“仕事”で。」

「………その仕事の内容と家の弟子との繋がりが解らないのだけれど?」

 

少し眉が釣りあがる女性。

 

「………説明してないの?」

「説明する前に呼んできてって言われたのよ。」

「それじゃ仕方無い。」

 

直人は女性に事のあらましを伝えた。

 

 

 

「なるほど、受けたくも無い依頼だけど下手をすれば暴走しかねないのね。」

「そういう事ですかね。一応は数少ない依頼をしてくれる人物ですからね。まぁ、野郎の仕事は請けたくないかもですがね。」

「………そうね、仕事を手伝わせてあげても良いわよ。」

「それはありがたい!……ですが、条件は何ですか?」

「あら、以外に疑り深いのね。」

 

予想外と言った顔を浮かべる女性。

 

「仕事は仕事ですので。」

「なるほど。そうね、条件は―――私の調合した薬の実験台ね。」

 

その言葉に反応したのは鈴仙だ。

 

「師匠っ!?」

「黙ってなさい。」

 

黙る鈴仙。

 

「どう?」

「………やれやれ、かなり分の悪い賭けですが―――そういうの結構好きなんですよ。」

 

彼は笑顔でそう言った。

 

「そう、じゃあこれを飲んで。」

 

薬の入ったガラス瓶を受け取る。

 

「解りました。後、飲む前に。」

「何かしら?」

「自己紹介を忘れてました。俺の名前は直人。自称何でも屋店長です。」

「そういえば名乗り忘れていたわね。私は八意永琳。永遠亭の医者よ。」

 

お互い名乗り終えた所で、彼は薬を飲み―――意識を失った。




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そろそろ行動しよう。

投稿が不定期なのはご愛嬌。

……データがぶっ飛んで大暴れしたのは此処だけの話。
そろそろ序章を終わらせたいなー。


月の光が彼の目を覚ました。

 

「ん……んぅ……。……此処は……?」

 

辺りを見回すと病室の様だった。

ただ少なくとも点滴とかは無いけど、ベッドは外の世界にある奴だ。

 

「まぁあれか、そろそろ仕事を片付ける為に動きますかね。」

 

そして部屋を出ようとした時、足音がした。

その足音の主は此処に向かって来ている様だ。

 

「……鈴仙か?」

 

しかし、何処か違う感じがする。

そして戸が開かれた。

 

「あら?起きたの。」

 

戸を開けた少女は言った。

ストレートで、腰より長い程の黒髪に、前髪は眉を覆う程度の長さのぱっつん系。

服は上がピンクで、大き目の白いリボンが胸元にあしらわれており、服の前を留めるのも複数の小さな白いリボンで、袖は長く、手を隠すほどであり、左袖には月とそれを隠す雲が、右袖には月と山(?)が黄色で描かれている。

下は、赤い生地に月、桜、竹、紅葉、梅と、日本情緒を連想させる模様が金色で描かれているスカートと、その下に白いスカート、更にその下に半透明のスカートを重ねて履いており、スカートは非常に長く、地面に着いてなお横に広がるほどであった。

 

「今しがた起きた所だよ、美しいお嬢さん。良ければ今宵一晩お付き合い願えませんか?」

 

何時もの調子で尋ねる。

 

「残念だけど、お断りね。どうしてもと言うなら―――『龍の頸の玉』『仏の御石の鉢』『火鼠の皮衣』『燕の子安貝』『蓬莱の玉の枝』―――この5つの神宝を持って来たなら付き合ってあげるわ。」

 

それは、かぐや姫に出された架空の代物。

 

「……素直にお断りされた方が楽だな。」

「あら?幻想郷ならあるかも知れないわよ?」

「少なくとも、現時点じゃ見つかる当てが無いな。それで?お嬢さんは一体誰なんだい?かぐや姫とも?」

 

その言葉に、彼女は笑う。

 

「そうだと言ったら?」

「………月に帰ったと思ったんだが……これ以上聞くのも無粋だから名前だけでも教えてくれるかい?」

「………以外ね、もっと根掘り葉掘り聞くのかと思ったのだけれど。」

「誰にでも、言いたくない過去や知られたくない事だったあるさ。」

 

直人は自嘲気味に答えた。

 

「それもそうね。それで、私の名前は蓬莱山輝夜。月の姫よ。」

「………幻想郷は全てを受け入れる、か。何というか……思い知ったよ。」

「ふふっ。さて、永琳が呼んでるわ。案内してあげるから光栄に思いなさい。」

「はは~。」

 

彼は大げさに頭を下げた。

 

 

 

 

しばらく歩き、居間に案内された。

 

「あら、起きたかしら?」

 

永琳が特に心配してない顔で尋ねてくる。

 

「冷たいなおい。」

「氷精よりかは温かいわ。」

 

軽くあしらわれる。

 

「んで、俺としてはさっさと仕事を片付けたいってのが本音だけど……。」

「今から夕食よ?そんな物は後で良いじゃない。」

 

輝夜はお腹をすかせてる様だ。

 

「……ご相伴お預かりしても?」

「ええ、結構よ。」

 

その後―――鈴仙が食器を運んできたので軽く手伝った。

てゐと輝夜「はーやーくー。」と駄々を捏ねたが。

 

「………(*⌒∇⌒*)」

 

ギチギチッッッ!!!

 

弓を構えられ黙った。

誰が構えたのかは語るまでも無い。

 

 

 

夕食を終え、直人は本題を切り出す。

 

「とりあえずだ。あの薬を飲んだのでお弟子さんを貸してほしい。」

「一応聞くけど、どうするつもり?」

「……依頼人は妖怪の殺しを依頼してきた。俺を囮にすると言う方法でだ。しかし、俺としては乗り気じゃねーんだが、暴走されて客になるかも知れない妖怪が殺されるのも勘弁願いたい。」

「以外にまともウサね。」

 

野次が飛んだが無視をする。

 

「奴等は妖怪なら誰でも良いんだろう。そこでだ、依頼人達に妖怪を殺す気すら起きない恐怖を与える為に、妖怪に協力を取り付ける。勿論、依頼人達を死なせる事をせずな。」

「なるほど、だから私達に手伝いをお願いしたのね。」

「えっ?どういう事よ?」

 

鈴仙は理解し、輝夜は解っていない。

 

「簡単に言うと、協力してくれる妖怪を探すんだけど、襲われたら意味が無いから護衛が欲しいって事だ。」

「なるほど。」

 

そして直人は永琳にさらに頼み事をした。

 

「出来れば依頼人達の動きを封じる薬を貰えれば良いんだが……。」

「………医者としては駄目ね。」

「やっぱり。」

「でも―――弟子はまだ医者じゃないからどうしようも無いわね。」

「………それって……。」

 

つまり―――

 

「少なくとも貴方はあの人体実験に付き合ってくれたわ。なら弟子もまた身体を張るのが筋ね。」

「え~、私は兎の統率が……。」

「………(*⌒∇⌒*)」

「よろこんで手伝ってきますっ!!!」

 

笑顔でてゐを脅した薬師は、弟子に顔を向け告げる。

 

「貴女の成長を見てみたいっと言うのもあるわ。」

「師匠……。」

「行ってきなさい。」

「………はい!」

 

話がまとまった様だ。

 

「それじゃあ、責任を持ってお弟子さんを借りてきます。」

「そう。ありえないと思うけど万が一弟子たちに何かあったら……。」

「その時は煮るなり焼くなりしてください。」

 

そして彼等は部屋を出てった。

 

 

 

「良いの?永琳。」

「ええ。あの子の達には良い経験になるかも知れないから。」

「ならなかったら?」

「その時はその時に考えるわ。」

 

薬師と姫は佇む。

 

「……でも、貴女が彼の依頼を受けるとは思わなかったわね。」

「―――そうね、受ける気は無かったわ。」

「じゃあ何故?」

 

薬師は答える。

 

「あの男は天邪鬼な感じがしただけよ。」

 

他人を心配する事を素直には言え無い事を見抜いた薬師だった。




次回は宵闇を出すはず。

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人間と妖怪の違い―――なんてのは無い。

暇人が通りますよー。


はてさて、あの後3人は妖怪を探す事になった。

時刻は丑三つ時―――では無いが、余りにも行動が遅いとすぐその時間帯になる。

 

「それで?当てはあるの?」

 

鈴仙が尋ねる。

 

「ある訳が無い。」

 

直人はやれやれと言う仕草をする。

 

「じゃあどうするウサ?」

 

てゐが面倒くさそうに尋ねる。

 

「少なくともあの依頼人達でも来れる場所じゃ無いと意味が無いな。」

「どうしてウサ?別に無理に来ようとしても無駄だと思わせれば良いと思うけど?」

「珍しく正論ね?」

「うるさいウサ。」

 

確かにてゐの言葉は正しい。

あの依頼人達が妖怪を殺したいと思っていても、その場所に行けないと解れば諦めるだろう。

 

「それも有りだとは思うけど、結局は問題の先送りにしかならないんだよ。仮にそれで上手くいったとしても、今度は強行手段にでるかも知れない。それこそ、見境無しで。」

「………ちょっと考えが浅はかだったウサ。」

「まぁ仕方無いとは思うがね。ただ妖怪に文句を言いたいだけならその方法でも良いんだけど、完全に妖怪を嫌ってるからねぇ。」

 

本日2回目のため息。

そんな会話を聞いていた鈴仙が不意に尋ねる。

 

「貴方は―――妖怪の事をどう思うの?」

 

その言葉に直人は、こう答えた。

 

「どちらでもない、かな。」

「どちらでもない?」

 

鈴仙は言葉の意味を捉えられない。

直人は理由を告げる。

 

「だってそうだろ?人間の中にも妖怪より恐ろしい狂気を持った奴も居る。自分の欲望の為に命を奪う奴だって居る。妖怪は本能の赴くまま行動し生きている。並外れた力を持っている。結局の所、どちらも違うようで同じ存在なんだよ、俺にとってはだけど。」

 

―――だから、好きでも嫌いでもない―――

 

彼はそう告げた。

 

「………じゃあ、貴方はどういった奴に好意を持つのよ?」

「簡単な事さ、信念を貫き確固たる意思を持っていて―――相手の痛みが解る奴に好感を持てるね。君は違うのかい?」

 

寂しげな笑顔を浮べ、直人は尋ねた。

 

「―――私は……。」

「………いい加減に歩くのも疲れたウサ。」

 

てゐが流れを折った。

 

「そうだなー、少ししみっったれた話だったなー。で?そろそろ出口か?」

「え……?えぇ、そろそろ見えてくるわ。」

「結局何処で見つけるのさ?」

 

直人は少し考えて―――思いついた。

 

「霧の湖に続く林道に行ってみようか。」

 

そうして、一路は林道に向った。




結局、彼が言った人間なんて存在しているのかさえも怪しいですが。


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宵と闇を司る者と何でも屋+a

待たせたな。
一応、設定はオリジナルが多い。
ただ、こんな感じかなとは思う。
原作の性格には合わせる様にしている。


霧の湖に続く林道―――もっとも、獣道に近い道ではあるが。

 

彼等はそんな場所に来ていた。

そして、今日は新月の夜の前日の日であった。

 

「さて、なるべく平和的に協力を取り付ける……ってのは無理か。」

 

直人は希望的観測を呟き、すぐさま否定する。

 

「一応食料とかを上げれば手伝ってくれるかもしれないわよ?」

 

交渉の上等手段を口にする鈴仙。

 

「でも……それだけじゃ足りないって言われて、食べられちゃうかもね?」

 

にやにやと告げるてゐ。

 

「女性に食べられるなら本望かなー。」

「……此処まで来ると立派としか言いようが無いわね…。」

「別の意味で言ってるんじゃない?」

「失敬な、俺だってどういう意味で食べられるか解ってるっての。」

 

直人がそう反論した時、

 

 

「それじゃあ、目の前の貴方が―――取って食べれる人類?」

 

 

彼の背後に立つ少女が尋ねた。

 

彼は振り向かず、その返答を返す。

 

「生憎と、まだ貞操を捨ててないから食べられないよ。」

「ていそう?」

「………それ以上説明したら……。」

 

鈴仙の指が、彼の股の間を狙う。

赤い目がたぎる様に燃えている。

 

「OK、冗談は置いておいてだ。」

 

彼は後ろを振り返る。

 

「何か御用かな?“妖怪のお譲ちゃん”?」

 

そして、妖怪と接触した―――

 

 

 

 

さて、この話掛けてきた妖怪の―――金髪のショートボブに深紅の瞳、その左側頭部には赤いリボンが結ばれている。

身長は低めで、白黒の洋服を身につけ、スカートはロングを履いた―――少女は、疑問符を浮かべた。

 

「どうして私が妖怪だって解ったの?」

 

不思議そうに尋ねる。

 

「簡単な事さ。まず1つ、こんな時間帯に子供が起きてる訳が無い。ましてや、こんな夜遅くに何故居るのかが理由の一つ。2つ、もし君が人間なら、先程の言葉を発言した後、冗談でしたって言えば冗談だと思うけど、君はあの言葉を言った以降にそんな発言をしていない。まぁ一番の理由は―――君が地面に足を付けていない事が妖怪だと理解したって訳さ。」

 

長々と理由を説明した。

 

「そうなのかー。」

 

何故か笑顔で返された。

 

「それで?何か用かな?もしかして、俺と一夜の過ちを「違うのだー。」………最後まで言わせてくれ。」

 

落ち込む直人。

 

「………やっぱり、ロリコン?」

「いやー犯されるー(棒)」

「…………剥ぐぞ?」

「スイマセン、調子に乗りました。」

 

gdgdである。

 

「私の目的、それは……目の前のご飯を食べる為なのだー!」

「ナ、ナンダッテー!?」

「……帰って良い?」

「ごめんなさい。」

 

………最早何も言うまい。

 

「と言う訳で……、先生!お願いします!」

「フラグっぽいから止めて。」

「兎が相手なのかー。今夜は人肉に兎鍋なのだー。」

「良い度胸ね。知ってる?追い詰められた生き物が、逆に相手を追い詰めるって。」

「の割りには、此処最近負け続きだよね?」

「そーなのか?」

「そーなんだよー。」

「(*´-`)」

 

表現出来ないほど怒り狂った鈴仙は、こう呟いた。

 

「アナタ達……マインドエクスプロージョンでボコるわ……。」

(あ、これ死んだ。)

(やりすぎちゃったウサ☆)

(え……これ、不味い?)

 

そして、弾幕ごっこ―――一方的虐殺―――が始まった。

 

 

 

数分後

 

「…………。」   チーンッ

 

物凄くぼろぼろになった宵闇の妖怪が其処に居た。

 

「ふぅ……少しだけすっきりしたわ。」

「………まぁあれだ、今度から気をつける。」

「いや、何に気をつけるのよ……。」

「とりあえず、この子起こさないと意味が無いな。」

「解ってる。てゐ、鞄の中身からあの薬とあの薬出して。」

「了解ウサ。」

 

 

 

しばらくして。

 

「うー、痛かったのだー……。」

「弾幕ごっこって始めてみたが、あそこまで壮絶な戦いなんだな。」

「違うわよ……ちょっとやりすぎたけど……。」

(今度から起こらせるラインを見極めないと……。)

「さてと、とりあえず君に用事があって来たんだ。」

「用事?」

「まぁ結果的にはだけど。その前に、君の名前は?」

「……ルーミア。」

「そうかい。俺の名は直人、自称何でも屋店長さ。」

 

何でも屋と聞いた時、少しだけルーミアが震えた。

 

「どした?」

「……それって、妖怪退治とかもするの?」

「…………もし、そういった依頼が来たとして、詳しい話を聞いて本当に被害があるなら退治するかもしれない。だけど、もし内容が違ったら、俺は放置するね。その結果誰かが“死んだ”としても、俺は知らないね。」

 

以外にも、その内容は冷酷ではあった。

 

「まぁ、出来れば誰も怪我や死ぬ事が無いに越した事はないね。妖怪の方もね。」

 

そう言って、彼は手を差し出し告げる。

 

「君の協力が必要だ、手伝ってくれないか?」

 

差し出した手は、何処か震えてる気がした。

そして、彼女は―――

 

「…………変な事じゃなければ、良いよ?」

 

その差し出した手を握り返した―――

 

 

後に、ルーミアはこう話したと言う。

 

「直人ってなんだかんだ言って“臆病”な性格なのかー。」

 

との事だ。




いよいよ序章を終わらせられる段階に入ったぜ。
感想とかください。


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“自称”囮作戦 前編

今回で蹴りを付けたい序章―――もしくは第一章。
一応、ご都合主義ではあるけれど、人間には解る訳が無い人知を超えた恐ろしさを味あわせるから問題なし。


何でも屋前に数人の男達が居た。

 

そして、戸を叩く。

 

「おい、居るか?」

 

その声に反応したかのように、戸が開かれる。

 

「おや、ご依頼人。3日振りですね。」

 

彼―――直人はそう口を開く。

 

「……それで?見つかったのか?俺らでも“殺せそう”な妖怪は?」

 

殺す―――そんな言葉を平気で告げる辺り、並々ならぬ怨念を感じた。

とりあえず、それを無視する形で彼は“作り笑顔”を浮べ告げる。

 

「えぇ、見つけましたよ。それでは今宵、新月の夜に霧の湖に続く林道の入り口でお待ち願えますか?」

「今からでは無いのか?」

 

はやる気持ちを抑えようともしない依頼人の男。

周りの男達もそんな感じだ。

 

「いえ、どうやらその妖怪は真っ黒い球体の様な物で身を隠しており、夜だと極めて発見が困難だったんです。相手に見つからず相手を見つけられたのは幸運だったでしょう。」

「だが、どうやってそいつをおびき寄せる?暗くては連携も取れない。」

「どうやらその妖怪は、新月の夜だと暗闇を発揮する事が出来ないそうです。」

「……どうして解る?」

 

依頼人の取り巻きの1人が尋ねる。

 

「昨日、稗田家の庭の手入れをした際、当主がやってきたのです。その際、妖怪の事を聞き今さっき挙げた妖怪の事を話してくださったのです。」

「なるほど、あの家は妖怪の事については専門的知識があったな。解った、今夜その場所に向う。」

「……ご確認しますが、本当におやりに?」

「あぁ、憎き妖怪達をこの手で殺せるのだからな。」

「差し支えなければ理由を聞いても?」

「よかろう。この幻想郷は妖怪の楽園と言われている。したがって、やつ等は我々人間を飼い殺しているのだよ、恐怖を生み出させる為に。恐怖が無ければ妖怪は存在価値が無くなるらしいからな。我々は飼い殺される為に生きている訳ではないのだ!」

 

至極真っ当な理由ではある。

あるが、だからと言ってそれが正しいと言えるだろうか?

確かにこの男が言うように飼い殺されているのかもしれない。

だからと言って、この男がやろうとしている事は命を奪う事である。

しかも、囮を餌にである。

 

「……なるほど、お覚悟は良く解りました。それでは、規定の時間で会いましょう。」

 

 

 

 

 

―――深夜、霧の湖に続く林道に彼と男達が歩いていた。

新月の夜は暗く、遠くが見えない。

 

「……まだか?」

「もうすぐです。」

 

男が焦れた様に尋ね、淡々と返す直人。

松明をつけていないのは、相手に気づかれてしまうからと言う理由でつけていない。

そして、彼が不意に立ち止まり告げる。

 

「……居ましたよ。」

 

真夜中の林道に小さな女の子が居た。

 

「どうやらあれが昨日見た黒い球体の主でしょうね。」

「……そうか。では手筈通り、あれの接触し此方に誘導しろ。」

「解りましたが……もし、失敗したら?」

「その時は“1人”の外来人が死ぬだけだ。」

「………どういう意味で?」

「…………。」

 

この男、どうやら彼を生かす気は最初から無かった様だ。

黙り込んだ男の代わりに、取り巻きの男が教えた。

彼の背後に刃物を突きつけて。

 

「……女を口説こうとは、新参者にしちゃ良い度胸だが……礼儀がなってないな。」

「……そういう事ですか。」

 

基本、彼は行く先々で女性を口説いてはいるが、軽くあしらわれている。

しかし、人当たりが良い為あしらわれてはいるが嫌悪感は持たれてはいなかった。

つまり、何らかの嫉妬・危機感を抱いた為に彼を選んだんだろう。

 

「……さぁ行け。」

「……解りましたよ。」

 

もし、彼が行動をしてなかったら彼の生存確率は0のままだったろう。

しかし、彼は自身の手で生存する権利を手に入れた。

そして、作戦が始まる。




そして後編へ……。


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“自称”囮作戦 後編

ひっそりと投稿。
感想くれー。


新月の夜―――

 

林道の道に少女が居た。

 

「―――こんばんは、お嬢さん。」

 

彼は声を掛けた。

 

「………誰?」

 

少女は不思議そうな“しぐさ”を取る。

 

「俺は自称何でも屋店長の直人と言う。」

「ふ~ん……何かようなのかー?」

 

少女は、彼に近づく。

だが、彼は少女の後ろに周る様に“移動”した。

そして、少女の位置は彼が現れた草むらを背にしている形となる。

 

「いやね、君ら妖怪の殺害を依頼されてしまったんだよ。」

 

苦笑いを浮かべそう告げる。

 

「無駄だと思うけどなー。」

 

少女は退屈そうな“振り”をする。

 

「どうしてそう言いきれるんだい?」

 

彼は心底不思議そうに“演じる”。

 

「だって―――」

 

少女が言葉を発しようとした瞬間―――

 

 

「今だっ!」

「おう!」

「殺せ!」

 

少女の背後から男達が刃物を持って少女―――ルーミアに襲い掛かろうとした!

 

しかし、それは絵に描いた餅だった。

 

ダンッ!ダンッ!ダンッ!

 

銃声の様な弾幕が男達の武器を破壊し。

 

ウ~サッサッ!

 

何処かの兎の罠が作動した。

 

ゴチ~ンッ!

 

 

 

 

 

 

「………なんと言うか、此処まで上手く行くものかね?」

「まぁ上出来でしょ」

「いや~実に気分爽快ウサ」

「これは食べても良い人類なのかー?」

「おにぎりあげるからやめい」

 

そう、今回の作戦は穴だらけではあったが成功したと言える。

とはいえ、プランBになってしまったが。

当初の予定は、男達が直人をけし掛けて突撃してきたら罠が作動する筈だったのだが、彼事殺そうとした為に予定を変更したのだ。

変更の合図は“ルーミアが直人に近づいても直人が動いてしまう”と言う合図。

それは緊急事態を意味する。

そこでプランBは男達が武器を持って襲ってくる時、鈴仙が弾幕で破壊してゐが罠を作動させるという作戦である。

もっとも、博打ではあったが。

 

「あのまま全員突撃してこなかったらやばかったな。」

「頭が悪いウサね。」

「普通は妖怪に気づかれずに逃げたって説明されても怪しむと思うけど。」

「馬鹿なのかー。」

 

言いたい放題である。

 

「んじゃ鈴仙、頼めるか?」

「任せて。師匠に昔ならった中毒性の無い幻覚剤を嗅がせるから。」

 

そう言って、鈴仙は袋から線香の様な物を取り出す。

 

「元々は何の為の奴なんだ?」

「………尋問用?」

「何故疑問系になるし。」

「………知らない方が良いウサ。」

「………お腹すいたのだー。」

 

何とも言え無い空気が漂った。

 

 

 

 

 

 

とりあえず、仕事は完遂した。

 

「でも、良かったの?あんな依頼でも一応は仕事でしょ?」

 

鈴仙は心配そうに尋ねる。

 

「気にするなよ。家は自称何でも屋だぜ?つまりだ、例え良い報酬だったとしても途中でやりたくなくなったらやめても良いのさ。」

「そんなんで良いウサ?」

「幻想郷に常識は無いんだろ?」

「………それもそうウサね。」

 

そんな会話をしていると。

 

ヒー!

タスケテー!

 

「……今頃は妖怪の襲われてる夢でも見てるのかね。」

「多分ね。」

 

その言葉通り、悲鳴は止まなかった。

因みに、ルーミアが寝ている男達の居る場所の外周を見張り、内側はてゐが呼び寄せた兎達が見張ってる為問題は無かった。

 

「しかしまぁ、助かったよ。」

「乗りかかった船って奴よ。」

「私を出し抜いたご褒美ウサ。」

「それならこれから夜を共に『却下。』………ですよねー。」

 

そうして、夜が明けていく―――

 

 

 

 

その後、男達は人里から極力出ない生活を送る事にしたらしい。

しかもあの線香の副作用なのか、あの時見た“悪夢”と依頼した人物と妖怪を忘れたと言う何ともご都合主義な展開ではあったが、店には何の影響も無いので気にしない事にした。




納得いかない展開では無いと思いたい。


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紅魔館の優雅な依頼
始まりは洒落と共に


かなり放置していたがモチベーションが漲ってきたのと深夜のテンションの所為です。


あの受けたくない依頼の件から1週間、直人は今日も今日とて何でも屋の仕事をこなしていた。

 

「ふぅ、青山さん家の子供の遊び相手も疲れるな……。」

 

そう呟き、店の中に入る。

正し広さは大きく異なっている。

少しだけだが改築したのだ。

そのお陰で、ある程度は広くなり、依頼人が座れる横に長い椅子(背もたれ無し)と対面に机と椅子が置かれたのである。

 

「しかしまぁ、慧音さんと鈴仙には感謝しないとな~」

 

今の人物達が改築をする切っ掛けになった。

あの依頼の会った日、人間の直人を送ってくれた鈴仙が改築前の家を見て一言。

 

『………これ……押入れ?』

 

と発言されたのが始まりだった。

因みにその言葉を聞いた兎詐欺と金髪幼女が笑い転げて居たが、直人は男女平等におしおきが出来る技を会得していたのでそれでおしおきをした。

その光景を見ていた鈴仙はと言うと。

(直人は怒らせない方が良いかもね……;)

と内心戦慄を覚えたとか覚えなかったとか。

 

兎に角、その後に鈴仙が人里で慧音にあった際にそれとなく直人の家の惨状を伝えてくれたので、色々と手を回してくれたらしい。

頼まれた大工さん達も直人の働きのお陰である程度楽をさせてもらっているから無料でやってくれると言ってくれた。

 

そんなこんなで、ある程度何でも屋の事務所兼自宅は改築され住みやすくなった。

 

「後は現代社会の設備があれば文句無しなんだけど……無いものねだりだな。」

 

そう呟いて、彼は午後の仕事を待つ。

 

 

 

 

そんな時だった。

 

ガラッ

 

「ごめんください。」

「あ、いらっしゃい。自称何でも屋にようこそ。」

 

直人は入ってきた人にそう声を掛けた。

 

入ってきたのは女性だった。

 

銀髪のボブに両方のもみあげ辺りから、先端に緑色のリボンをつけた三つ編みを結っおり、瞳の色は赤。

身長から察するに10代後半以降程度だろう。

服装は青と白を基調としたメイド服であり、頭にカチューシャ(ホワイトブリム)を装備している。

裾の長さは膝上丈~膝丈程度で、襟・肩のひらひら・メイドカチューシャ・帯・前掛け(エプロン)が白で、下の服が青色であるという事だろうか。

良く見ると腰に銀色の懐中時計がぶら下がっている。

顔は美人さんと言えるのは幻想郷では当たり前?の様だ。

 

「さて、ご依頼ですか?それとも世間話でもしますか?それなら今夜どうでしょうか?」

 

とりあえず彼は口説きに掛かったが。

 

「お断りさせていただきます。少なくとも礼を欠いた方と一夜を共にする気は毛頭ありません。」

「礼を欠かなかったら過ごしても良いのかよ……?」

「さぁ?それは状況によりますと思いますよ?」

 

はぐらかす女性。

 

「まぁ良いや。それで、ご依頼の様ですが……どんな依頼で?」

「えぇ、実は私の勤めているお屋敷の妹様の遊び相手をして欲しいの。」

「遊び相手ね……。別に構わないけど……。」

「けど?」

 

女性は不思議そうに尋ねる。

 

「―――その依頼はあんた自身の依頼か?」

 

直人の眼が鋭くなる。

彼は仕事を請負う際、必ず成功させようと言う信念があるが、それには条件がある。

依頼人自身が依頼してくる事。

特別な事情を除いて、代わりの人を使って依頼に来させると言う事は彼に取ってはNGである。

勿論それでは食べてはいけない。

しかし、それを承知の上で彼は聞いた。

 

女性は直人の問いに答えた。

 

「………いいえ、これは我が主のご依頼よ。」

 

その言葉を聞いた直人は、背もたれのある椅子に座りこう言った。

 

「お帰りください。」

 

 

その言葉を聞いた女性は眉を潜める。

 

「何故です?報酬は払います。」

「そういう事じゃないんだよ。家は自称何でも屋。受けたい時に受け、受けたくない事は受けない。悪いが他を当たってくれ。」

 

直人は冷たく突き放す。

 

しかし、彼は気づいていなかった。

女性の体が“微かに震えている”事を―――

 

そして

 

 

 

時が

 

 

 

止まった

 

 

 

 




次回に続く。


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