パワフル野球人生~最強のピッチャーになろう!~ (うぃけりん)
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非才のマイライフ

 俺は小さい頃から野球が好きだった。才能なんて欠片も無くて、努力も全然追いつかなかったけど。白球を追いかけているだけで幸せだった。

 

   

 

 俺の高校最後の試合。夏の甲子園予選・地区大会決勝戦は、絶対に忘れられないものとなった。今までの努力や仲間達との絆。それら全てが詰まった最後の一球は天高く打ち上げられ、スタンドへ飛んでいった。サヨナラ負けという極上の負け方により、無名高校の下剋上・俺達の青春はここで終わったのだ。

 

 

 大学に入ってからも野球を続けた。どれだけ周りに反対されても、どれだけ辛く苦しい茨の道でも、俺には野球しかなかった。体格や運動神経に恵まれたチームメイトを尻目に非力な俺はただ練習を続けた。その大学は強豪で仲間の意識も高く、そんなに浮いた感覚が無かった事だけは幸いだった。

 

 

 やった!これで俺もプロ野球選手だ! 俺の血の滲む努力がとうとう花を咲かせた。ドラフト指名6位。これが俺の野球人生最大の出来事であり、プロ野球という舞台におけるはじめの一歩となった。それでも俺は努力を忘れない。努力は裏切らない、努力はいつか絶対実を結ぶ。球団に入ってから、俺は一層練習に励んだ。

 

 

 

 

 

 その努力に我が腕をもぎ取られるとは思っても見なかったのだよ。

 

 

 

 プロになって3年目、俺は肩を痛めた。原因は今までの努力だというのだから、何とも言えない気分になったよ。「肩は消耗品」とは、上手いことを言う人もいるもんだ。

 

 俺の野球人生・二十数年に後悔はない。どの道、努力なしで通れる道では無かったのだから、これが俺の最適解なのだろう。だからこそ、この世に未練など何一つない。実に無意味でかつ有意義な人生だった。

 

 

 ただ一つだけ…そう、一つだけこの世に足跡を残すのならば敢えて言わせてもらおう。「死ぬほど後悔してでも生きろ」と。今を無理して未来を考えずに死に逝くさだめを負うのは私だけの特権にしてくれないだろうか。これが俺の最後のお願いだ‥‥‥そろそろ用紙が一杯になってきた。どうか皆様、末永くお元気で。未来を生きてください。

 

                    ~伝説の野球バカ  好野 球大の遺書~

 

 

 

 

 

 

 

 

「これでよし…もう思い残すことは無いな。」

 

 自室のテーブルに遺書は残した。両親はすでに他界している。貯金は全部降ろして、親代わりにずっとお世話になった叔父さんの枕元に置いてきた。今の俺の全財産はボロボロの野球グローブと塗装の剥がれた木製バットだけだ。こいつらは冥土の土産に持っていこう。

 

 

「大学に入ってから今までずっと世話になったが…お前らより先に俺の方がくたばっちまうなんてな。―――ごめんな。一緒に逝けたら、また野球しようや。」

 

 

 俺の愛棒を腹に括り、覚悟を決める。後は一歩、踏み出すだけだ。

 

 

(‥‥‥‥‥‥よし)

 

 

 

「我が野球人生、一片の悔いなし!」

 

 

 未練を断ち切る最後の一歩。俺は飛んだ。…正確には落ちた。

 

 

「ぐぉぉ‥‥来世は‥来世は才能をくれえええええええええええええええええええ!!!」

 

〔――――その願い、かなえてしんぜよう。〕

 

(え?)

 

 

身体がグシャる寸前、何かが聞こえた気がした。

 

 

 

 

 




 初めまして、明けましておめでとうございます。うぃけりんと申します、こんな稚拙な文章を最後まで読んでくださり、誠にありがとうございました。


 早速、主人公死んじゃいましたね、可哀そうに。――――え?やったのは私?…またまた、ご冗談を。これはさだめなのです。


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理不尽な転生

 

 

 さざめく音が聞こえる。

 

 

 眼が開かない。それどころか、呼吸をしている感覚もない。ただ感じているのは、誰もが遠い昔、必ず味わったことのある繋がりだ。

 

 そう、俺はいま母親のお腹の中にいるのだろう。へその緒に伝わる安らかな愛情は、やはり何より温かいものだという事を思い出させる――

 

(――ちょっと待った!なぜ俺は赤ん坊になっているんだ!!それにこの記憶…嘘だろ?)

 

 理解が追い付かない。精神がまだ不安定なのか(安定してても混乱するだろうが)無意識に暴れてしまい、母体のお腹を蹴ってしまった。

 

「いたっ。…今…ちゃんが‥‥ったみたい。」

 

「‥‥か!?いいぞ、きっと‥‥な男の子だ!」

 

「…かしら…でも、…ね。元気な子が‥‥‥‥くれるわ。」

 

 両親と思われる男女の声が不鮮明に聞こえる。きっと、誕生を待ちわびていることだろう――

 

(って、なんで俺の記憶が残ってるんだよ!)

 

 

 状況を整理しよう。

 あの日、俺は確かに死んだんだ…死に際の言葉も鮮明に覚えているし、今でいう「前世」が嘘だったとは思えない。

 問題は前の俺が死ぬ瞬間だ。あり得ないことだが――この状況も十分にあり得ないが――落ちる瞬間に聞こえた老人の声。そう、落下中なのにはっきりと聞き取れたんだ。

 

 

―――その願い、叶えてしんぜよう。…じゃろ?―――

 

 そうそう。今みたいな声だったね。

 

(―――てか、あんた誰だよ!これどうやって喋ってるんだよ!そもそもこの状況なんなんだよ!!)

 

―――ワシは野球仙人。どっちかというと神様みたいなもんじゃよ。…あとこれは「ふぁみちち」‥‥だっけのう?―――

 

(「ファミチチ」ってなんだよ!…ファミチキだろ?)

―――おぉ、そうじゃそれそれ。ふぁみちきっていうやつじゃ。―――

 

 

(そうそう、それでいい‥‥‥わけねぇ!! だから何だよ! 何にも解決してねぇよ!?)

 

 

―――細かいことはどうでもいいじゃろう。‥そうじゃのう。お前さんの憧れるプロ野球選手と言えば誰かいのぅ―――

 

(全然良く…もういいや、ツッコミ疲れたよ――そりゃあ、野茂投手だよ。日本野球の立役者さ、俺も憧れてトルネード投法を練習したもんだよ。)

 

―――そうじゃのう。日本では沢村 栄治を始め、数々の豪勇達が人々を魅了していった。王 貞治、鈴木 一郎、近年はダルビッシュ有や大谷 翔平が注目されとるのう。―――

 

 続けて神(?)は俺の予想もしてない、とんでもないことを言い出す。

 

 

 

 

―――近い未来。お主はそれらに並ぶ偉人として、野球界に名を刻むことになるんじゃよ―――

 

 

 

 

 

 この神(笑)の言ったことを要約すると、

 

・俺の死後、書いた遺書が日本中に広まり、全国のプロ・アマ・挙句にはリトルリーグまでが意識改革を行ったと。

 

・そのお陰で、選手の故障率が激減。新たなトレーニング法により選手生命が格段に長くなり、元々潰れてしまう筈だった天才を救う事にも繋がったと。

 

・「好野スタイル」は世界にも認められ、「世界一非才な偉人(球界のボーダーライン)」として教科書にも載ることになったと。

 

 

(…で、その御褒美がこれだってことか。まるでゲームや漫画のような話だよ、ったく。)

 

―――物分かりが良くて助かるわい。前世のお主は虚弱にして無才。周囲の体格や運動神経の速さに、さぞや嫉妬したものじゃろう―――

 

(‥‥ああ。そんなの毎日のように思っていたよ。「どうして俺の身体はこんなに貧相なんだって」ね。)

 

――ふっふっふ、ならばやろうぞ!その新しい身体!…心配するでない。お前の魂が宿るその肉体は既に空。死産直後に魂を捻じ込んでおいたから倫理的にセーフじゃ。CERO.Aじゃよ。――

 

(いやいや生命倫理的にアウトだよ!宇宙の真理覆してんじゃねーよ、てかCERO.Aって何だよふざけんな!)

 

 最早何を言っても無駄だという事は分かった。心の喉が限界になっているのを感じた俺は全てを悟り、今世を生きることを決意した。――出来るだけ野球と関わらないように、細々と。

 

―――因みに野球以外のボールに触れると脳ミソが爆発するので注意じゃ。―――

 

(八方塞がりだな!オイ!)

 

―――流石に冗談じゃよ。そこまでひどいことにはならんから安心せい。‥‥多分―――

 

(多分て言った!今多分て言ったなてめぇ!!)

 

―――ええい、黙らっしゃい!もうそのまま幼稚園児になるまで眠っとれい!!―――

 

(俺の話を最後まで…き‥‥‥‥‥け‥‥ぇ‥‥‥‥‥)

 

 疲れ果てて寝込む感覚、急に意識が遠くなる・・・・・本当に、何が目的なんだ。俺は第二の人生なんて望んでないぞ。そんなのお断り・・ダ・・・・

 

 そして俺は、この定めの濁流に飲み込まれてしまった。

 

 

 

 

 ふぅ、やっと静かになったわい。あと5年くらいは目覚めんじゃろう。まぁ、もうちとサービスしてやるかのう…ホレ、念願の「才能」じゃよ。

 

 

 

 

―――その世界を生かすも殺すもお主次第じゃ。出来れば、「善」に生きて欲しいもんじゃのう。―――

 

 そして、俺は人生初めての「センス◎(さいのう)」を手に入れた。

 

 

 

 





 ここまで読んでくださり、誠にありがとうございます。いやぁ、転生ものは難しいですね。何より書くのが難しいのは、また子供時代をやり直すハメになる大人の心境です。これを上手く書いている他の筆者さんは本当にすごいです。小学生並の感想ですみません、コナミだけに


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強くてニューゲーム

 


 吾輩は幼稚園児である。名前は倉井 神雅(くらい しんが)、たった今前世の記憶が戻ったところである。

 

(…にしても、見渡す限り幼児、幼児、幼児‥‥何かの罰ゲームだよ。)

 

「どうしたの?シンガくん、今日はげんきがないね。おなかいたいの?」

 

「いや、何でもないよ。えーと‥‥」

 

「ボクはケンだよ!‥‥はやくなまえ、おぼえてよね。」

 

「ごめんごめん。ちょいとド忘れしちゃったよ。‥‥ケンくん。」

 

「いいよ!許してあげる!――あっちでキャッチボールしよ?」

 

 カッコいいというより、可愛らしい印象の銀髪男の子の名前はケン。名札を見ると、やまぐち けんと書いてあったんだが‥‥

 

(名前適当に付けすぎだろ野球仙人‥‥偶然の可能性もあるけどさ。こりゃ、小学校に入ってから大変だな。)

 

「ほらはやくー!つねにじかんはゆうげんなんだよ!」

 

「ああ、今行くよ。」

 

 

 これは後から知った事だが、今は西暦2018年の4月。俺が死んで数か月が経っているのだが…誰も好野 球大を知らない。それどころか、プロに入った形跡、戸籍、名実ともにキレイサッパリいなくなっていた。

 さらには、プロの面々も一新されていた。甲子園の常連校はPLや早稲田実業などではなく「あかつき大付属」や「激闘第一高校」など。前世とかなりの差違が生じているようだ。

 

 

「えいっ!」

 

(それにしても、俺達本当に5才か?こんな直球普通は投げられないぞ。)

 

「なぁ。ここに思いっきり投げてみろよ。」

 

「ええ!?――コントロールつかないし、かおとかに当たったらあぶないよ。」

 

「大丈夫!慣れてるから!!(一応元プロだし)」

 

「…わかった。思いっきりいくよ。ケガしないでね!」

 

 

ビューン!    パシッ!

 

「おぉ…」(すげぇ…50~60km/h位出てたんじゃないか?5才でこれは化けるぜ。)

 

「シンガくんすごい!お父さんに[全力で投げるのは危ないからやめなさい]っていわれてたのに…あっさりとれちゃうなんてすごいや!」

 

「ケンくんの方がすごいよ。軟球でこの速さなら将来いいピッチャーになれるよ。」

 

「えへへ/// じつはボク、しょうらいはプロやきゅう選手になるのが夢なんだ。」

 

「そうか、・・・・・・・・俺もだよ。」

 

当面の目標は、野球をしながら野球仙人の所在を探る事だ。恐らくだが、この世界のどこかに棲息しているだろう。野球をしてそれなりの成果を上げていれば、奴の情報を掴めるかもしれない。てか、それしか方法はない。

 

 

 (今自決したところで、またあの手この手で蘇らせるかもしれないからな…あのハチャメチャ仙人め、次に会ったらブン殴る。)

 

 とはいえ、単純に野球が上手くなるだけなら大歓迎だ。こんな横暴なやり方でなければ手放しで喜んでいただろう。

 そう考えつつも球大(倉井 神雅)は自分の身体を見渡す―――なんてことない。ただの男子園児の風貌だ。

 

(‥‥練習次第で能力は伸びるだろうが、今のところ特に変わった様子はないな。―――練習、か。)

 

 

 

「おーい!シンガくん。…もうすぐお昼休みおわっちゃうよ。もどろ?」

 

「…ねぇ、ケンくん。幼稚園のあと、2人で野球の練習しない?」

 

「それ、楽しそうだね!やろうやろう!」

 

「わかった。じゃあ、教室まで戻ろうか。」「うん!」

 

 

 

 

 プロへの近道は、やはり「甲子園で結果を残すこと」だろう。そのためには野球の強豪校に入るべきだ。これは前世からの教訓である。

 

(まずはリトルリーグから。そこで実力をつけてシニアだ!)

 

 

 なんだか、年甲斐もなくワクワクしてきた。くらい しんが(5才)の野望はここから始まる‥‥‥!

 

 

 

 

 

・プロフィール

 

 

 倉井 神雅(5才)

 

 

 球速 60km/h

 

 コントロール 15(G)

 

 スタミナ 20(F)

 

 

 センス◎…能力UPに必要な経験値が減る。特殊能力のコツを覚えやすくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまで見てくださって、誠にありがとうございます。


 やっと始まった幼少期。幼稚園時から始まるのはお約束というか…若干メジャーを彷彿とさせます。




 ところで、センス◎はオリジナルチート能力なのですが。そもそも能力UPってどうすればいいんですかねぇ。


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