ラージョー異世界物語 (雀蜂@マスアタック)
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始まりの章
何でも屋 ラー&ジョー


小説初投稿です。アドバイスがあれば是非ともお願いします。


「ハァ、ハァ」荒い息を吐きながら少年は必死に逃げている。10歳ぐらいの小さな少年だ。その後ろには赤い色をした2mはある巨大な蜥蜴が少年を喰い殺さんと猛スピードで追いかけてきている。ここは国へと続く一本道、本来魔物は入ってこれないように厳重な警備がされてるはずだが偶然にも警備を掻い潜って来てしまったようだ。この蜥蜴は馬と同等かそれ以上のスピードが出せる。この一本道では確実に捕まるだろう。

「うわっ」さらに不幸にも少年は転んでしまった。たった十数m後ろにはあの蜥蜴がいるというのに。自分の死を確信した少年は目を閉じ来るであろう痛みに身構えた。その数秒後、《ドンッ!》という音がした。目を開けてみるとそこには黒髪と緑髪の青年二人と、腹の辺りに風穴が空いている蜥蜴の姿があった。

 

黒髪の青年「久々に仕事の依頼が来て何だと思ったら大蜥蜴(ビッグリザード)の討伐かよ。もっと闘い甲斐のある奴が良いんだがなぁ…なぁジョー。」

 

緑髪の青年「仕事があるだけましだぜ。やっとこれでまともな飯にありつける。それに大蜥蜴は普通の人間より何倍も強いじゃねえか。」

 

黒髪の青年「お前は飯にしか興味がねぇだけだろ。」

 

そう言ってる黒髪の青年の拳には血の様なものが付いていた。

 

「あの…」

 

ラー「うん?あぁ生き残りか。普通の人間がよく大蜥蜴相手にここまで逃げてこられたな。おっと、自己紹介が遅れたな。俺の名はラー・ビスタ、ラーって呼んでくれ。」

 

ジョー「俺はジョー・ドラクル、ジョーでいいぞ。」

少年「は、はい…あの、助けてくれてありがとうございます。」

 

少年ペコリとお辞儀をした

 

ラー「気にすんな、俺らも仕事で来ただけだから。それで、生き残ってんのはお前だけか?」

 

ラーは周囲を見渡す、が生きている人間は見当たらない。

 

ジョー「どう見てもこいつが最後だろ。にしてもいくら侵入させない警備を厳重にしても侵入してしまった場合の為の対策をしてないとは呆れるな。本末転倒じゃねぇか。」

 

ラー「そうそう、この王国こういうとこ変にガバガバなんだよなぁ…」

 

少年「え?そうなんですか?この国は大陸で一番安全だと聞いたのですが…」

 

ラー「ん?あぁ確かに国内『は』安全だな。ここは国へと続く一本道だが、国内ではないからな。」

 

ジョー「あっちに荷台があるが、あれお前の荷物か?」

 

少年「あ、はいっそうです。」

 

ジョー「成る程引っ越しに来たのか。つまりお前はある程度裕福な家で生まれたボンボンであり、理由は知らんがこの国に引っ越ししようとしたところ大蜥蜴に襲われ、お前以外の家族や使用人は皆殺しにされたということか。残念だったな。」

 

ラー「とりあえずこの事は政府言っとかないとな。君、歩けるか?」

 

少年「あ、はい」

 

ラー「この荷物とかは俺が運ぶから、君はそこの緑髪、ジョーと一緒に城に行って事の詳細を話してくれ。」

 

少年「わ、分かりました。」

 

ラー「よし、じゃあジョー、頼むぞ。」

 

ジョー「しょうがねぇな…行くぞ。」

 

少年「は、はい」

 

その後、政府が国内にいた少年の親戚と連絡をとり少年は親戚の所へ引き渡された。今回の悲劇の原因は100%政府の責任なので賠償金をもらい、そのお金で少年は両親と使用人の墓を建てたらしい。

 

ラー「久々に金が入ったな。いや~もうダメかと思ったぜ。」

 

ジョー「よし、じゃあ早速これで飯喰いに行こうぜ!」

 

ラー「お前は自分の食う量を少しは自重しろよ!お前のせいで金に困ってんだよ!」

 

怒りのあまりラーの髪の毛が金色に染まる

ジョー「分かったから落ち着け。あ、でもこの間すげぇ安くていい店見つけたんだぜ。」

 

ラー「…その店の飯の値段にもよるが、まあ良いだろう。行くだけ行ってみよう。」

 

ラーの髪の毛は黒髪に戻っていった。

 

ジョー「よしっ決まり!じゃあ早く行こうぜ!」

 

ジョーがすごいスピードで走り出す

 

ラー「ちょっいきなり走んなよ!」

 

ラーはそれを見失わないように追いかけていった

 

 

今は外出中の彼らの店にはこう書かれている

[何でも屋] と



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世界観 キャラクター解説

モンハンワールド発売おめでとう!!


世界観

この世界には北大陸、中央大陸、南大陸、西大陸、東大陸という五つの大陸がある。主人公達は中央大陸にある国のひとつである王国モビスに住んでいる。

[王国モビス]

大陸一安全な国(国までの道が安全とは言ってない)であり、大陸一の軍事力を持つ。昔は国王の命令が絶対という国であったが、近年急にその方針を変え、国民中心の国となった。異常なほど巨大な城があるのは国王政権の名残である。

 

 

 [王国セオン]

大陸一温泉が多い国(世界第二位)であり、毎日数万という数の観光客が来ている名所。ただし、観光客が多いと犯罪の被害も多くなるので、政府は対応に困っている。

 

[獣宿し]

異界のモンスターをその身に宿す魔術。魔方陣さえ完成させれば魔力の無い者でも発動可能。たまに先天的に獣が宿っている場合もある。ただし、宿した獣と宿主に大きな力の差があると獣に肉体を乗っ取られてしまう。因みに異界のモンスターとはモンスターハンター世界のモンスター達の事である。

 

キャラクター解説

[ラー・ビスタ] ラージャンの獣宿し(暴走) 18歳(ラージャンだった頃を含めると59歳)

 

魔術の才能がある人間だったが、10年程前にラージャンを体に宿してしまい、精神を乗っ取られた。獣宿しは宿している獣と知識、記憶を共有するのでラージャンは人間社会に上手く溶け込んだ。体にラージャンが宿っているのでキレると髪が金色に変わり逆立つ。知識を共有しているのでラージャンも魔術が使えるがラージャンとしての力だけで充分だと思っているため、魔術は一種類しか習得していない。ラージャンの怪力、強力な雷撃、宿主の高い知能で敵を殲滅する。こう見えて結構仲間思い。[何でも屋 ラー&ジョー]という店を開いて、そこのオーナー兼店長として働いている。しかし店長というのは名前だけで普通に前線で働いている。

使える魔術 眼(アイ) 相手を分析出来る。それだけ。

技 雷弾 電気の塊を相手に投げつける技。ドッジボール程の大きさの小雷弾、直径十mくらいの大雷弾の二種類がある。

  雷砲 電気をビームのように発射する技ラージャンが使える電気技ではこれが最強。

 回転弾 雷を纏いながら空中で回転して相手に体当たりする技。

闘気硬化 腕に力を集中させて腕の攻撃の威力を爆発的に高める技、腕の硬度もかなり増す。弱点は腕以外の所が柔くなること。

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

[ジョー・ドラクル]イビルジョーの獣宿し(暴走) 18歳(イビルジョーだった頃を含めると60歳)

 

普通の一般人だったが、先天的に獣宿しの魔術が使え、偶然イビルジョーを宿してしまい、精神を乗っ取られた。常に飢餓感があるので基本的には常に何か食っている。ラージャンと違い宿主が一般人だったため魔術は使えない。しかしイビルジョーの力があるので殆どの敵はその力だけでなんとかなる。[何でも屋 ラー&ジョー]の副店長として働いている。しかし、店長、副店長とか名だけは立派だが、この二人以外に従業員はいない。というか雇うつもりも無いらしい。理由は自分が貰える給料が減るからだそうだ。給料が少ない従業員なら雇っても良いらしい。イビルジョーの力の副作用として凄い大食いになった。

 

技 龍ブレス どす黒いエネルギーをビームのように発射する。

 

【挿絵表示】

 

 

[スーラ]バサルモスの獣宿し 12歳

先天的にバサルモスを宿した少女。親に売られ、商人の奴隷として生きてきたという過去がある。商人の命令でラーと闘い敗北、気絶から回復したときにラーから自由の身だと言われたときは喜びのあまり涙を流したらしい。その後ラーと話しているとすっかりラーに懐き、現在はラー達と一緒にすんでいる。何でも屋ラー&ジョーの雑用係として給料一ヶ月50z(5000円)で働いている。ジョー曰く「所詮は雑用だし、三食寝床付きで給料も貰えるんなら子供の小遣いと同レベルで良いと思う」とのことだ。

 

睡眠ガス 名前道り全身から睡眠効果のガスを噴出する技。

毒ガス 毒効果のガスを噴出する技。

熱線 超高熱の息をビーム状にして発射する技。

 

 

[コホウ・スカイ]男 獣宿し飛竜種型 28歳

温泉で出会った飛竜種型の獣宿し。どうやらほぼ毎日あの温泉に通っているらしい。獣宿しであると同時に凄腕の魔術師でもある。上空を縦横無尽に飛び回り、そこからの魔術や火球による遊撃を得意とする。掴み所がなくふわふわした性格。



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勢力紹介

何でも屋ラー&ジョー

 

ラー(獣宿し 牙獣種型 ラージャン)

使える魔術は眼の魔術のみ。ラージャンの腕力と強力な雷の力を使いこなして闘う。

 

 

ジョー(獣宿し 獣竜種型 イビルジョー)

魔術は使えない。強い脚力による蹴り技を得意とする。

 

 

スーラ(獣宿し 飛竜種型 バサルモス)

魔術は火の魔術を少し使えるが戦いに使えるほどの物ではない。基本的には非戦闘員だが、やるときはやる。

 

 

ラー&ジョーの従業員の募集は今のところ行っていない。収入が安定しない職業であり、家計を圧迫する大食漢が一名ほどいるので家賃すらかなりギリギリである。スーラは従業員だが居候と言う形なので給料は子供の小遣い程度である。

 

 

古龍軍

 

 

ボレアス(獣宿し 古龍種型 ■▲▼◆●★)

古龍軍の首領。他の古龍種達を統率しており、とある企みを企てている。しかし、古龍種は我の強いものが非常に多いので苦労人ポジションでもある。

 

 

クシャル(獣宿し 古龍種型 ★▲■●◆▼★)

古龍軍の一人。ボレアスの命令でラーとジョーをさがしている。古龍種にしては珍しくボレアスに従順。

 

 

古代の衣装の少女(獣宿し 古龍種型 ★▲・■●◆▼★)

古龍軍の一人。クシャルと同じくラーとジョーを探しているがクシャルと違い単なる好奇心でさがしているため、多分飽きればやめる。古代の衣装の青年と仲が良い。

 

 

古代の衣装の青年(獣宿し 古龍種型 ★▲・▼◆●■▲)

古龍軍の一人。クシャルと同じくラーとジョーをさがしているがこいつはただ古代の衣装の少女が探すから自分も探すというだけなので、少女が飽きてやめればこいつもやめるだろう。

 

カメレオンのお面の青年(獣宿し 古龍種型 ▲■●◆▼)

古龍軍の一人。自分からは特に何かをしようとはしない怠け者。しかし、色々と異質で不気味。

 

 

白いワンピースの少女(??? ???? ?????)

古龍軍の城を好き勝手に出入れしている謎の少女。見た目に似合わない落ち着いた性格をしていて、彼女が何者なのかは古龍軍にも分からない。ボレアスは知っている。

 

古龍軍は今紹介されたもの以外の者達も所属している。しかし、古龍種型の獣宿しは全員古龍軍に所属している訳ではなく、単独で活動している古龍種型の獣宿しも勿論存在している。古龍軍に居るものは基本的にはボレアスの企みに賛同している者達である。しかし、カメレオンのお面の青年のように古龍軍には所属しているが、ただ住む場所が欲しくて所属しているだけなのでボレアスの企みなんてどうでも良いと思っているものもいる。



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久々の依頼

 王国モビス 城下町 とあるアパートの二階にその店はある。何でも屋ラー&ジョー 二人の人間とは思えないような力を持つ獣宿しが営んでいるとされている店。しかし、チラシもなく、見た目はただのアパートのため、とても見つけにくい。しかし、その二人は報酬さえしっかり払ってくれれば殆どの事はやってくれるらしい。基本、ラー&ジョーは平日は常にやっている。今日は久し振りに依頼人がやってきたようだ…。

 

ラー「…で、依頼は何でしょうか?お客さん達。」

 

依頼人の夫婦「はい…実は息子が行方不明でして…」

 

ジョー「憲兵に相談しろよ。」

 

ラー「ジョー、黙れ。…それで?」

 

依頼人の夫婦「はい、憲兵にも連絡したのですが、国内で子供が行けるところは全て探したが見つからなかったと…」

 

ラー「それで残りの可能性は外に行ってしまったとしか考えられず、外に出てしまったのならとっくに魔物に喰われているから諦めろと言われたって所か。」

 

依頼人の夫婦「はい…しかしだからといって見捨てるなんて事はしたくありません!そう言ったら憲兵の一人にならここに行けと言われたので…」

 

ジョー「分かってると思うが、俺らにも出来ないことはたくさんある。死者蘇生もそのひとつだから、そのときに俺らを恨むなよ?」

 

依頼人の夫婦「勿論です!」

 

ラー「勝手に決めやがって…まぁいい、報酬は後払いで依頼を達成出来なかったら払わなくていい。」

 

ジョー「よし、行くか。」

 

二人はドアを開け、二階から飛び降りると、凄いスピードで走っていった。

 

王国モビスの外 浅緑の平原

 

依頼人の息子「いつのまにか随分遠くに来たなー」

 

依頼人の息子「あ、帰り道わかんねぇや。」

 

と、やけに冷静な息子の近くに狼に似た姿の魔物が数匹彼に低い唸り声をあげながら近づいてきた。

 

依頼人の息子「あ、やっべーなこれ。」

 

魔物達が一斉にとびかかる。

 

依頼人の息子「うわー!…何てな」

 

今更だが、魔術というものは才能のあるものにのみ現れ、一種類しか使えない者もいれば(例 ジョーの宿主)複数の種類を使える者もいる。しかも魔術は名門の魔術師の息子でも魔術が使えないという事が多いにあり得るし、その逆も然り。つまりこの子は…

 

依頼人の息子「氷の弓矢(アイスアロー)!!」

 

魔術が全く使えない両親から産まれたのにもかかわらず、魔術が使えるのである。

氷の弓矢が魔物の一匹に突き刺さり、その魔物は血を吐き倒れる。その様子を見た他の魔物は彼への攻撃を中断し彼から距離をとった。

 

依頼人の息子「うーん…俺が使えるのは氷の魔術だけみたいだなぁ…」

 

そして彼は次の一発を放つために距離をとった魔物の一匹に手のひらを向け冷気を集め始める。その瞬間、轟音とほぼ同時にとてつもない威力の雷の弾が魔物達を襲った。雷弾の威力が凄まじかったせいか、原型を残している魔物はいなかった。依頼人の息子が暫く呆気にとられていると後ろから声をかけられた。

 

ラー「大丈夫か?」

 

依頼人の息子「…何で邪魔したんだ。」

 

ジョー「あぁ?」

 

依頼人の息子「折角自分の力を試そうと思っていたのに、何故邪魔をしたんだ!」

 

ラー「眼(アイ)…成る程、最近氷の魔術師として覚醒して力試しに来たのか。」

 

ジョー「そうならそうと親に言ってから行けよ。お前の親御さん滅茶苦茶心配してたぞ。」

 

依頼人の息子「知るか!僕には関係ない!」

 

ラー「…ハァ…随分甘やかされてきたみたいだな。ジョー、下がってろ。ちょっとこいつにお灸を据える。」

 

ジョー「やり過ぎるなよ。」

 

依頼人の息子「俺とやるってのか?いいぜ、お前みたいな弱そうなやつ俺の敵じゃねぇ!」

 

ラー「生意気な子供を持つと親も大変だな。」

                    

 

                



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金獅子のお仕置き

ラー「さて、生意気な小僧にお灸を据えてやるとするか。」

 

依頼人の息子「やれるもんなら、やってみろ!」

 

依頼人の息子(少年)がラーに手のひらを向け冷気を集め始める。

依頼人の息子「氷の弓矢!」

 

氷で作られた矢がラーに向けて発射された。

ラー「ふん。」

 

ラーはその氷の矢を掴み、粉々に砕いた。少年は驚いた様な表情を浮かべるが、すぐに余裕のある顔に戻る。

 

依頼人の息子「一本砕いた位でいい気になるな!次はこうだ!」

 

少年は今度は数十本という数の氷の矢を作り出し、ラーに向けて発射した。

 

ラー「ふっ」

 

ラーは馬鹿にするかのような笑みを浮かべ一番最初に自分へ向かってきた氷の矢に自分の拳をぶつけた。その瞬間、拳に当たった氷の矢は粉々に砕け散った。少年は驚きの余り目を見開いた。当然だ、その氷の矢は岩に深々と突き刺さるほど鋭利なのだから。次々にラーに飛来する矢の雨、ラーはその全てに拳をぶつけ、砕いてゆく。矢の雨が止んだ時、そこには無傷のラーと、矢の破片が散らばっているだけだった。少年の顔から余裕が消え、走ってラーとの距離をとった。

 

ラー「何をしても無駄だ。さっきのでもう分かっただろう。」

 

ラーはそう言いながら逃げる少年を歩いて追いかける。しかし、少年はラーとの距離が充分に離れたとわかったとたんラーに向き直る。

 

依頼人の息子「俺は別に逃げてた訳じゃない。今から使う魔術は強すぎて俺も巻き込まれるかもしれないから、距離をとってたんだ。」

 

そういい少年はラーに両手を向けなにやらブツブツいい始めた。

 

ラー「上位魔術か?何故こんな魔術が使えるようになって数日程度の奴が使えるんだ…才能か?」

 

ラーはそう呟きながら来るであろう強力な攻撃に身構える。

 

依頼人の息子「これでも喰らえ!猛吹雪(ブリザード)!」

 

尋常じゃない程の冷気が竜巻状になってラーに襲いかかる。ラーは両手をクロスしてそれを真正面から受けていた。暫くその状況が続き数十秒後ようやく吹雪が止んだ。

 

依頼人の息子「は…ハハハハハ!まともに喰らったぞ!馬鹿が、普通にかわせばこうならなかったのにな!氷の矢を砕かれた時は少しヒヤッとしたがやはり俺の敵じゃなかった!」

 

ジョー「おいおい、まだ倒したか確認してねぇのにもう勝ちだと思ってんのか?」

 

少年がジョーの方を向く。

 

依頼人の息子「そうだ、お前もいたんだったな。勝ったに決まってるだろう。猛吹雪は寒冷地の生物も完全に凍りつくほどの超低温の風だぞ!生きてたらもはや人間じゃねぇよ!」

 

テンションが上がっているのかやたら興奮ぎみに質問に答える少年。そして少年の発言の直後に猛吹雪のせいで発生していた煙が消える。そこには…

 

ラー「じゃあお前の言い分だと俺は化け物だな。」

 

ラーが何事もなかったかのように立っていた。

 

依頼人の息子「そ、そんな…」

 

呆然としている少年にラーは近づく。少年はラーに背を向けて逃げるがその次の瞬間にはラーは少年を捕まえていた。少年はなんとかラーの手を振りほどこうとするが、全く振りほどけない。そんな少年にラーは軽く、かるーく平手打ちをした。

 

依頼人の息子「がっ」

 

その衝撃で少年は地面に倒れる。ラーは少年の胸ぐらを掴み、無理矢理立たせる。 

 

ラー「お前が五年位歳をとっていたならこの程度ではすまなかったぞ。小さい子供はちょっと手荒くしたら死んでしまうほど弱いからこの程度で終わらすんだ。それに俺らの本来の目的はお前を連れ帰る事だしな。しかし、ある程度お灸を据えなければお前みたいな奴は反省しねぇからな。お前の両親にはこの事を説明してお前は罰を受ける。行くぞ。」

 

ジョー「今回も俺出番無かったぞ。」

 

ラー「だってお前手加減出来ねぇじゃん。」

 

ジョー「確かに。」

 

 

 

 

 

ラー「あんなに迷惑かけまくったのに罰が一年間お小遣い無しだけとか…甘すぎねぇか?」

 

ジョー「確かにな。でも他人の家に口出しする訳にもいかんだろう。」

 

ラー「まぁそれはそうだが…」

 

ジョー「給料も入ったしこれで飯を」

 

ラー「駄目だ。今回はこの金でたまってた家賃払わねぇと。」

 

ジョー「あ、そうだったな。」

 

 

何でも屋 ラー&ジョー 依頼募集中



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温泉行こうぜ

ある日の朝、二人はだらだらしていた。

 

ラー「今日は定休日だし、久々にどこか行くかー?」

 

欠伸をしながらソファーから起き上がり質問する

 

ジョー「お、いいねぇ。久々の旅行か。」

 

さっきまで床に寝転がっていたジョーが勢いよく起き上がる。

 

ラー「旅行って程遠出はしないがな。日帰りでどっか行こうかって感じだ。」

 

と、ラーは呆れ混じりに言う。しかしジョーは聞こえていないのか既に準備を始めている。しかも鼻歌混じりに。

 

ラー「…ハァ…」

 

ラーは1つ大きな溜め息を出した後、自分も準備を始めた。

数分後…

ジョーは大きめのリュックサックいっぱいに物が入っているのに対し、ラーは肩にかけるタイプのポーチ1つだけだった。

 

ジョー「お前それしか持たなくていいのか?」

 

ジョーは不思議そうにラーに問い掛ける。ラーは呆れたような感じでジョーを見ながら答える。

 

ラー「日帰りって言ってんだろ。しかも俺らに移動用の馬車は必要ねぇし、日帰りだから着替えとかを大量に持っていく必要もない。財布とかだけで充分だ。逆にお前は何をどうしたらそんなデカイリュックがパンパンになるんだよ。」

 

ジョー「何でだろうな?俺はこれ持っていきたいと思ったものを片っ端から全部詰め込んだらこうなった。」

 

そう笑いながら答えるジョーにラーは再び大きな溜め息をついた。

 

ラー「もういい…準備が出来たんなら行くぞ。」

 

ジョー「ようし出発!」

 

二人は家を出て国の出入口に向かっていった。国を出て数分がたった頃…

 

ジョー「なぁラー、俺達は結局どこに向かってるんだ?」

ラー「え、お前決めずに準備してたの?」

 

二人の空間に沈黙が訪れる。

 

ラー「仕方ねぇ、地図は持ってきてるから今からでもいく場所を決めよう。」

 

そういい大陸地図を広げるラー。

 

ジョー「あ、じゃあ俺東大陸の…」

 

ラー「日帰りだっていってるだろ!」

 

ラーの髪が金色に染まりかけるが、途中で冷静になったのか元の黒色にすぐに戻った。

 

ラー「せめて中央大陸のどこかにしろよ。」

 

ジョー「あ、だったらよお王国セオンはどうだ?あそこの温泉がすげぇ人気らしいんだよ。」

 

ラーは温泉という単語にピクリと反応する。

 

ラー「成る程温泉か…よし、そこ行こう!」

 

ジョー「決まりだな。」

 

地図をしまうと二人は王国セオンに向けて走っていった。

 

王国セオン

 

ラー「きたぜ王国セオン!」

 

ジョー「温泉楽しみだなぁ」

 

ラーはやたらとテンションが上がっている。

 

ラー「ようしジョー!今回は温泉入りまくるぞ!この国のを全部制覇するくらい入りまくるぞ!」

 

ジョー「お前本当にテンション高いな。まぁ無理はないか、この国世界で二番目に人気のある温泉大国だもんな。よし、行くか。」

 

ラー「そうだな。何処に行こうか…色々あるなぁ。なぁジョーお前は何処に行きた…」

 

とか言っていたら既にジョーの姿は無かった。

 

ラー「あの野郎俺を置いていきやがった!許せねぇ!」

 

ラーは怒りながらジョーの匂いを追いかけていった。

 

                     



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温泉入ろうぜ

ここは王国セオン、世界第二位の温泉大国である。そこに来たラーとジョーは今、はぐれていた。

 

ラー「あの野郎マジで何処行きやがった!」

 

体の中身がラージャンであるラーはその嗅覚でジョーの匂いをたどりジョーを探す。そしてとある旅館にたどり着いた。

 

ラー「ここに入ったのかあの野郎…財布持ってねぇくせに…」

 

その頃ジョーは既に受付を済ませ、温泉に入っていた。ジョーは財布は持ってきていなかったが実は金そのものはこっそり持ってきていた。

 

ジョー「あいつ俺をみつけられるかなー?まぁあいつよりも俺の方が鼻がいいしいざとなったら俺が見つければいいか。」

 

と、ジョーは結構楽観的に考えていた。その頃ラーは旅館の近くの細い路地で盗人に囲まれていた。

 

盗人のリーダー「だからよぉ、俺らに目をつけられたのが運の尽きだと思って金目の物を置いてってくれや。」

 

ラー「…なぁ」

 

盗人のリーダー「あぁ?」

 

ラー「お前らって結構名が知れてるのか?」

 

盗人のリーダー「あぁ?当たり前だろうが。」

 

その言葉を聞いた瞬間ラーは笑みを浮かべる。

 

ラー「じゃあブッ飛ばしても問題ないよな?犯罪者だもんな。」

 

その言葉の直後にラーのパンチが盗人のリーダーにつきささり数メートル吹っ飛んで倒れる。吹っ飛んだ場所が人が特に多く行き交う場所だったのでいきなり吹っ飛んできた盗人のリーダーに注目が集まる。そしてすぐにその吹っ飛んできた人物がとある盗人集団のリーダーだと人々は気付いた。そして盗人のリーダーが吹っ飛んできた所から無傷のラーがしれっと出てきたので周囲の人々は何をどうすればいいのかという表情をしている。何故かというと実はこの盗人のリーダーは懸賞金5000zの賞金首になるほどの名の知れた悪人なのだ。(1zは約百円)強力な魔物の討伐報酬に比べれば劣るが、人間にしてはかなり高い部類に入る程の大物。それをラーはパンチ一発で沈めた。ラーの事を知らない者がその光景を見たらあいつは何者だと思ってしまうのも当然だろう。人々は自分が見た光景に唖然としながらラーを見た。ブッ飛ばした張本人であるラーはただ絡んできたチンピラみたいなのが犯罪者だと分かったので、それならブッ飛ばして憲兵に突きだせばいいだろうと思ってやった事をなので、今自分がブッ飛ばした男がどういう存在か分かっていなかったので、泡吹いて倒れている盗人のリーダーを無視してラーはジョーが入っていった旅館の中に入っていった。後に自分がブッ飛ばした奴が5000zの賞金首だと知ったとき、彼はあの時に憲兵に突きだしていればと、丸一日悔やんでいたという。

旅館内部、ジョーは露天風呂で疲れを癒しまくっていた。

 

ジョー「いやー、思いの外絶景だなぁ。秋真っ盛りの時に来れば最高だったんだろうけど今真冬だもんなぁ。草木が見えねぇくらい雪積もってやがるぜ。まぁでもこれはこれでいいな。」

 

ラー「何のんびり温泉に浸かりながら景色の感想言ってやがる。」

 

ジョーが後ろを振り返ると金色の髪を逆立てて、鬼の様な形相になっているラーがいた。

 

ジョー「おーようやく来たか。遅かったじゃねぇか。」

 

悪びれる様子もなくジョーが能天気にラーに話しかける。

 

ジョー「いやー外が寒いと温泉の温かさがよくわかるぜ。ハッハッハッ。」

 

そう言いながら笑うジョー。いまだに金色の髪を逆立てているラーは辺りを見渡しジョー以外誰もいないことに気がついた。

 

ラー「そういやお前以外誰もいないようだが。」

 

ジョー「他の奴等は冬の外に裸で出たくねぇって露天に来ねぇんだよ。」

 

それを聞いたラーは悪い笑みを浮かべる。

 

ラー「へー。それってお前以外誰も来ないって事だよな。」

 

ジョー「そうだな。」

 

ラー「お前さっきさ寒いほど温泉の温かさがよくわかるって言ったよな。」

 

ジョー「おう言ったぞ。だってそうだろ?ていうかお前も俺のそば突っ立ってないで入ったらどうだ?」

 

ラー「あぁ入るぜ。その前にお前にもっと温泉の温かさを分かりやすくしてやるよ。」

 

ラーの怒りは静まっていなかったから。ラーはジョーの腕を掴み、積雪量が凄いことになっている森へ向かって思いきり投げた。投げ飛ばされたジョーはの体は雪の中に完全に埋まる。

 

ジョー「ギャアァァァァァァ!!!冷てぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

ジョーが叫びながら雪から這い出る。ラーは温泉に入りながらその光景を見て爆笑していた。

 

ラー「ハッハッハッ。ほら早く戻ってこいよ。こんな真冬に素っ裸じゃ風邪引くぜ?」

 

ジョー「誰のせいだと思ってんだこの野郎!」

 

 

二人の温泉巡りはまだ始まったばかり。まだまだ続く



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小さな宿での小さな出会い

ここは王国セオン

 

その国の城下町にたっている旅館の入口にいるラーとジョーの表情は沈んでいた。

 

ラー「出禁くらったな…」

 

あまり温泉に入れていないラーはかなり雰囲気が暗かった。

 

ジョー「俺らの喧嘩で露天風呂全域が吹き飛んだからな。」

 

ジョーは特に気にしている様子は無かった。明らかにラーよりもジョーの方が悪いのだが自分が悪いなどこれっぽっちも思っていないのだ。ラーはジョーの性格を知っているので反省してないんだろうなぁと思っています。

 

ジョー「次何処行こうか?」

 

早速ジョーがラーに問い掛ける。もうジョーにとっては旅館出禁などとっくに過ぎ去った出来事になっているのだろう。

 

ラー「お前…ハァ、分かったよ次のを探すよ。勝手に行くのはもうやめろよ。」

 

ジョー「分かってるって。」

 

ラーの問いにジョーが笑いながら答える。それをみたラーはまた溜め息を吐き、次の温泉施設を探し始めた。ラーはこの国にどういう温泉があるのかを全く調べずに来ているので、適当に目にはいった温泉施設に入ろうという結構行き当たりばったりな感じでこの国に観光に来ている。

 

ラー「俺らも随分丸くなったもんだよな。昔(ラージャン本来の肉体があった頃のこと)は自分以外の生物が視界に入った次の瞬間には襲いかかってたからな。」

 

昔(モンスターだった頃)の自分と今の自分を重ね合わせ、遠い目をしながらそう呟く。昔は金獅子やら、破壊と滅亡の申し子やら呼ばれてた頃は、まさか人間の肉体を得て(正確には人間の肉体を乗っ取って)魔術が存在する世界で親友と共に温泉に入るなんて絶対に予想できないだろう。

 

ジョー「そうだな。それによ、俺はよく大食いって言われるけど昔(イビルジョー本来の肉体があった頃)に比べたらありえねぇくらい少食になってるんだぜ。」

 

ジョーも昔を思い出しながら言う。こいつもモンスターだった頃は健啖の悪魔だの貪食の恐王だの呼ばれていた筋金入りの化物である。

 

ラー「俺らが初めてあったときの事覚えてるか?」

 

地図を見ながらラーが問い掛ける。

 

ジョー「そりゃあ覚えてるだろ。あの時のはさっきのちょっとした喧嘩とは違ってマジの殺し合いだったからな。命の奪い合いをしていた相手とまさか親友になるなんてな。」

 

ジョーはそう懐かしそうに言う。

 

ラー「何度も会っているうちにいつの間にか意気投合してたしな。でも俺はお前の事を親友でありライバルだと思っているからな。」

 

行き先を決めたのか地図を閉じながらラーはそう言う。

 

ジョー「そういえば結局決着は着いていなかったな。いずれやるか、続きを。」

 

ジョーはそう呟く。それを聞きながらラーは顔に少し笑みを浮かべながら

 

ラー「あぁ。いずれな。」

 

といった。

そんなこんなで次の温泉施設に着いた。ラーが選んだのは先程の旅館のような大きな施設ではなく、質素な雰囲気の小さな温泉宿だった。

 

ラー「この宿の温泉は完全露天だ。そのせいで客は少ないみたいだがな。」

 

ジョー「露天のよさを分からないとは、温泉巡りの九割は損してるな。」

 

ラー「え?そんなレベルで損してんの?」

 

そんな会話をしながら受付を済ませ、二人は脱衣を済ませ、浴場に出た。この宿の温泉は大きな温泉一種類のみなので、それも客が少ない原因の一つだろうと宿に入る前にラーは言っていたが、誰かが温泉に入っていた。先客のようだ。

 

ジョー「なんだ、貸しきりのような状態かと思っていたんだがな。」

 

ラー「文句言うな。いいから入るぞ。」

 

そう言いながら湯に入ると先客がこちらに気づき、話しかけてきた。

 

先客「君たちもこの湯に浸かりに来たんだね。いや~本当にいい湯だよこの温泉は。」

 

ラー「そうっすねぇ~」

 

ジョー「あ~気持ちいい。疲れが取れるぜ~」

 

ラー「お前疲れるほど動いてないだろうが。」

 

どそんなことを喋っていると、先客が再び話しかけてきた。

 

先客「突然の質問だけどいいかな?」

 

ラー「あぁいいっすよ。」

 

先客「君たちも獣宿しだね?」

 

その言葉に二人は驚いたような表情をみせる。ラーはすぐさま先客に眼の魔術を使う。

 

ラー「コホウ・スカイ、魔術師であり飛竜種型の獣宿しか。」

 

コホウ「眼の魔術かい。まさか君も魔術師だったとは。」

 

ラー「この眼の魔術以外使えない(使わない)がな。」

 

コホウは落ち着きながら言う。

 

コホウ「別に敵対しようって訳じゃないよ。君達も僕と同じように獣を宿しているから、ちょっと話を聞こうと思っただけだよ。」

 

ラー「まぁ獣宿しには獣宿しにしか分からない独特な気配をしているから一発でわかっても特におかしくはないか。すまないな、敵対するような姿勢をとってしまって。」

 

コホウ「何、気にすることはないさ。多分僕が君と同じ立場だったら君と同じ事をしているだろうからね。」

 

そう言いながらコホウは湯から上がる。

 

コホウ「ふう、入りすぎた。さて、僕はもう上がろうかな。あ、そうだ君達も分かってると思うけど、この世界では獣宿しは基本的にはあまり世間には好かれていない。だから獣宿しって事を隠してたり、それが原因で様々な差別を受けている子がいるらしいからさ。君らがその子達を探して保護してくれないかな。」

 

ラー「…それは依頼か?」

 

コホウ「いや、お願いだ。だから別にハッキリ嫌だと言ってくれて構わない。」

 

ラー「…見つけたらなるべく保護してやるよ。そして家の雑用係にでもしようかな。」

 

コホウ「…素直じゃないね。ありがとう感謝するよ。それじゃあ僕はこれで。」

 

そう言いながらコホウは出口へ向かっていった。

ラー「…ふん…変な野郎だ。」

 

 

 

                続く



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市場潰し

ここは王国モビスのとあるアパートの一室にある店[何でも屋ラー&ジョー]。二人はいつもどうりグダグダしていた。

 

ラー「今日も今日とて仕事が来ねぇ。」

 

ソファーでぐったりとしているラーがそう呟く。

 

ジョー「仕事の仕の字も来ないな…」

 

と、床に倒れているジョーが呟く。

 

少女「ま…まぁ二人とも元気出してよ。直ぐに仕事の一つや二つ来るって。」

 

と、少女は二人を慰める。

 

ラー「お前は優しいなぁ…うん。お前を雇って正解だったぜ。雑用係としてだけど。ていうか、俺達がグダグダしてる間にもう雑用全部終わらせたのか。随分と早いなスーラ。」

 

スーラと呼ばれた少女は照れたような表情をし、

 

スーラ「そりゃあもう一ヶ月以上やっているからね。慣れたよ。」

 

と言った。

彼女がここに雇われた経緯を説明しよう。それは今から約一ヶ月前、温泉の数日後の出来事だった。

 

 

 

 

ラー「政府が俺達に依頼か…もう少し憲兵を頼ってやったらどうだ?」

 

面倒くさそうな表情をしたラーがそう問い掛ける。しかし依頼人であるの政府の人間は首を横に振る。

 

政府の人間「今回は憲兵達で解決するのは苦しいと思うので。」

 

ジョー「なに?憲兵が弱すぎて勝てないとかか?」

 

政府の人間の発言を鼻で笑いながらそう言う。政府の人間はそれを無視して話を続ける。

 

政府の人間「今回あなた方には闇市場に行ってそこを潰してほしいのです。」

 

ジョー「憲兵にやらせろっての。」

 

ラーもジョーの発言に頷いている。

 

ラー「何故わざわざ俺達に?憲兵にやらせる問題だぞそれは。」

 

政府の人間「もちろん憲兵にも手伝ってもらいます。あなた方は闇市場に潜入して内側から荒らしてほしいのです。そして外側を憲兵が囲み確実に全員捕らえます。」

 

ラー「成る程なぁ…OK分かった。その依頼を受けよう。」

 

政府の人間「お願いいたします。」

 

20分後…

 

ラーはいつもの黒と黄色のシマシマの服ではなく、ちゃんとしたスーツに着替えていた。でもネクタイは黄色。ジョーも緑色に黒の縦縞線が入っているいつもの服ではなく、ちゃんとしたスーツに着替えていた。

 

ラー「これで準備完了だな。闇市場に行くぞ。」

 

ジョー「おーう。しかし市場にこんな堅苦しい格好で行かなきゃならんのか…面倒くせぇなぁ…」

 

そう言いながら二人は外に出て何時も通り超スピードで目的の場所に向かっていった。しかし、スーツが破けないようにある程度は気を使っていた。10分程で闇市場に到着したラー達、憲兵が到着するまでは闇市場をうろつくことになった。

 

ラー「さすが闇市場ってとこだな。違法な物が堂々と売られている。」

 

ジョー「俺的にはこういう違法な物売るよりも奴隷商の方が気にくわないがな。」

 

ラー「あ、それは俺も気にくわないぞ。何様のつもりで人間が人間売ってんだって話だよな。」

 

そんなことを話しているととある賭博場に着く。店の説明によるとコロシアムで店側の刺客と闘い、勝てば賞金獲得らしい。観戦席へ行くと、挑戦者と刺客のどちらかに賭け、当たれば賭け金2倍、負ければ没収となっている。

 

ラー「随分と優しいルールだな。楽勝じゃねぇのか?」

 

賭博場の説明を読んだラーがそう呟く。

 

ジョー「じゃあ俺達でここの金全部貰ってしまうとするか。」

 

ラーの相手は筋肉モリモリの巨漢が相手だったが腹にパンチ一発入れただけで沈んだ。その後もラーは圧勝を続け、もう観客席の人々がラーにしか賭けなくなった時、店のオーナーのような小肥りの男に「さっきまでの金のさらに倍あげますからもう勘弁してください。」と言われたがラーは元々店を潰す気でやっているので当然拒否した。その後、店側の刺客と店の従業員(オーナー含む)を全滅させ、店を解体した辺りで政府から憲兵の準備がようやく整ったと連絡が入った。

 

ラー「ジョー、もう暴れても良いぞ。」

 

ジョー「え?何で俺が暴れたがってるのが分かったんだ?」

 

不思議そうな顔でそう言うジョー。

 

ラー「顔に出てた。」

 

と、そっけなく返すラー。

 

ジョー「あ、そう…」

 

その次の瞬間ジョーは地面を思い切り蹴った。ジョーの蹴りで直径三メートルはあろう大きな土の塊が地面から抉り出され、ジョーが蹴った方向へかなりの速さで跳ばされていき、土の塊の直線上にあった不運な店に激突し、土の塊も店も崩れ去った。その様子を見た闇市場の客は大混乱、商人達も唖然としていた。客は皆急いで闇市場の出口へ逃げていくが、外には憲兵達が陣取っており逃げた客は全員憲兵に捕まった。一方闇市場では商売が邪魔されたことで憤慨した商売達にラーとジョーは囲まれていた。しかし、商人はあくまでも普通の人間。獣宿しであるラー達に勝てるわけが無い。なのに何故商人はラー達を逃がさないように取り囲んでいるのか、ラーは商人達のとっている行動の意味が分からず思考を巡らせていた。ジョーはラーに対して「さっさとこいつら潰して憲兵に引き渡して帰ろうぜ」という事を目で訴えかけていた。

 

商人A「何で俺達が逃げないのか疑問に思っているな?」

 

ラー「まぁな。普通の人間が俺らに勝てるとは思えねぇ。」

 

ジョー「じゃあさっさとこいつら潰して帰ろうぜ。」

 

と、面倒くさそうにジョーは言う。

 

商人B 「ふん、俺達が持っている商品の中にも獣宿しの人間が何体かいるんだよ。お前達こいつらを殺せ!」

 

その数秒後にとある店の奥からボロい服を着た人間が出てきてラー達に襲いかかった。ラーは一言「面倒くせぇな…」と呟き、臨戦態勢に入った。

 

                

               続く



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獣宿しVS獣宿し

ラー「眼(アイ)…牙獣種型が三体、鳥竜種型が四体、飛竜種型が二体、獣竜種型が一体か…」

 

ラーが眼の魔術を使い敵を分析する。ラーの眼の魔術は情報を大雑把にしか分析できないため、万能というわけではない。

 

ジョー「関係無いな。全員ブッ飛ばして終わりだ。」

 

ラー「間違っても殺すなよ。こいつら被害者なんだから。」

 

ラーの言葉に返事をせずにジョーも臨戦態勢に入る。そこへ鳥竜種型の獣宿しの青年が跳び掛かってきた。ジョーはその青年を蹴り、跳び掛かりの勢いを殺した後、その青年の足を掴み、後方にいる牙獣種型の少女に投げつける。ぶつかった二人は数メートルぶっ飛んで近くの店に激突した。一方ラーの方も突進してきた牙獣種型の少年を受け止め、後ろから麻痺属性の爪で襲いかかってきた鳥竜種型の少年に雷弾を放ち感電させ、受け止めた少年をラージャンの豪腕で持ち上げ地面に叩きつける。

 

ラー「ドスファンゴにドスゲネポスか…人間にとっては確かに驚異だろうが俺には通用しないな。」

 

ジョー「こっちのは多分ドスランポスだな。ぶつかったガキの方は分からん。」

 

と、言っていたが次の瞬間ラー達に赤い球状の液体が飛んでくるラーは気づいて避けたが、油断していたジョーは気づかず直撃、火柱が上がる。火だるまになるジョー。

 

ジョー「ギャァァァァァァァァァァァ!!!アチィィィィ!!」

 

火だるまになって転げ回るジョー。

 

ラー「イヤンクックか…こういうのも用意していたか。」

 

イャンクックの獣宿しの青年がラーにも火炎液を放とうとするが、その前にラーは十数メートルジャンプし、イャンクックの獣宿しに大雷弾を放ち、感電させる。しかし、着地した瞬間ラーに火球と熱線が飛んでくる。一瞬驚いたが直ぐにバックステップを行い攻撃を避ける。攻撃が飛んできた方向を見ると二人の少女がいた。二人は再び攻撃をするが熱戦の方は不発し、火球だけが飛んできた。冷静に火球に雷弾を当て相殺するラー。

 

ラー「バサルモスにリオレイアか…こういうのもいたのか。」

 

そう言いながらラーは地面に自分の腕を突き刺す。そして直径十数メートル程の土の塊を地面から取りだし、二人の飛竜種型の獣宿しに投げつける。リオレイアの獣宿しは自らの腕をリオレイアの翼を変え、飛翔することで回避したが、バサルモスの獣宿しには直撃、土の塊は砕け、煙が舞う。

 

ラー「ジョー!そっちはどうだー!」

 

少し離れたところからジョーの声が聞こえる。

 

ジョー「こっちはドスイーオスと、ドドブランゴと、ボルボロスの相手してるからそっちにいるであろう飛竜種型二人は任せたぞー!」

 

ラーは声の具合でジョーは特に苦戦していないだろうということを確信したラーは改めて自分と対峙している飛竜種型二人に注意を向ける。二人の獣宿しの少女は油断なくこちらに注意を向けていた。

 

ラー「なぁ、お前ら奴隷商に奴隷として売られてたんだろ?何故奴隷商の言うことを聞いてるんだ?逃げ出すチャンスだぞ?」

 

リオレイアの獣宿し「その奴隷商からあなた達を殺せば私達に多額の報酬を与えた後解放してくれると言っていた。だからこうしてる。」

 

ラー「(所詮は口約束だろ…その発言を完全に信じている辺りまだ子供だな。)そうか…じゃあ話し合いはここまでだ。」

 

ラーは勢いよく跳躍し、リオレイアの獣宿しに殴りかかる。が、リオレイアはそれをかわす。そしてラーが着地し、再び跳躍しようとした時、土煙の中から熱線が飛んできた。咄嗟に身を捩ってかわすが腕に少し掠った。

 

ラー「っ!火傷しちまったし、服の袖が焼け落ちちまったじゃねぇか。」

 

そう言いながら空からの火球をかわすラー。そこにバサルモスの獣宿しが突進を仕掛けるが、ラーはそれを掴み、ジャイアントスイングを始める。そしてリオレイアの獣宿しに投げつけようと狙いを定めるが、バサルモスの獣宿しの体から毒ガスが噴出する。ラーは咄嗟に手を離すが毒ガスを吸ってしまい、毒状態になってしまう。そこにリオレイアの獣宿しは火球を放つが、それと同時にラーはリオレイアの獣宿しに向かって雷砲を発射する。雷砲は火球をのみ込みリオレイアの獣宿しに直撃し、撃ち落とした。驚いて隙ができたバサルモスの獣宿しに闘気硬化した腕でパンチを当て、気絶させた。

時を少し遡り、ジョーの方はドスイーオスの獣宿しの青年が放ってきた毒液をかわし、ドスイーオスの獣宿しに向かって土の塊を抉り出し、それをドスイーオスの獣宿しに蹴り飛ばす。跳躍して回避され、舌打ちをしていると、ドドブランゴの獣宿しの女性が氷のブレスを放つ。ジョーはそれをかわすが、かわした所にボルボロスの獣宿しの少年が突進してきて、かわせずまともに喰らい撥ね飛ばされる。しかし、ジョーは空中で口に力を溜めていて、着地と同時に溜めていた力、龍属性ブレスを放つ。龍属性ブレスを喰らったドドブランゴの獣宿しは吹き飛ばされ気絶する。その後ジョーは足を大きく上げ、思い切り地面に叩きつける。その震動はジョーの周囲数メートルの範囲を大きく揺らし、ドドブランゴとボルボロスの獣宿しは震動にふらつく。その隙をジョーは見逃さず、タックルでボルボロスの獣宿しを吹っ飛ばし、ドスイーオスの獣宿しの顔面に蹴りを喰らわせ、地面に叩きつけ気絶させた。

 

商人A「ひぃ…」

 

商人B「ぜ…全員倒しやがった…」

 

商人C「に、逃げるぞ!」

 

商人達は逃げ出したが、外に待機していた憲兵に直ぐに捕らえられた。ラー達は気絶させた獣宿し達を回収し、王都へと向かった。殆どの獣宿しは政府管轄の保護施設に住むことになったが、王都へ向かう途中で目を覚ましたバサルモスの獣宿しの少女と雑談をしているうちに妙に懐かれたので、ラー&ジョーの雑用係として雇うことになった。ちなみに三食寝床つきで給料50zという中学生の小遣いレベルで雇っている。それから一ヶ月の時が過ぎ、今に至る。

 

 

 

 

ラー「まぁ慣れてきたらお前にも仕事の手伝いをさせてやるから。そうつまらなそうにするなって。」

 

スーラ「うん…」

 

ジョー「じゃ、行ってくるから留守番宜しくな。」

 

スーラ「うん、行ってらっしゃい。」

 

 

 

 

                続く



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闘いの章
双角猛る砂漠の暴君 その一


祝!狩猟解禁!!!


ラー「今日の依頼は?」

 

スーラと一緒に買い出しに行ってたラーはジョーから仕事がきたと連絡を受け、仕事の内容についてジョーに聞こうとしている。因みに連絡をとっているのは遠くの者と会話できる魔術道具、要するにそちらの世界でいう携帯電話である。

 

ジョー「あぁ、それなんだかよ…」

 

いつもの覇気のあるジョーの声ではなく、疲れきった様な声でラーに応対するジョー。

 

ジョー「暴走した獣宿しを倒してくれだとよ…気が進まねぇな同胞相手じゃ。」

 

ラー「お前笑いながら商人の獣宿し達をボコボコにしてたじゃねぇか。」

 

何言ってんだお前といった表情でそうラーは言う。

 

ジョー「今回は殺さなきゃ駄目なんだとさ。獣宿しの力は野蛮で危険だーとか言ってやがったぜ。」

 

覇気の無い声でジョーはそう言う。

 

ラー「その獣宿しに俺らけしかけて共倒れさせようとしてんじゃねぇの?その人。反獣宿し派の人だな確実に。」

 

疲れたような声でラーはそう言う。

 

ラー「依頼だっていうんだから仕方ねぇか。それでその場所って?」

 

ジョー「東大陸のナナシ砂漠にいるってさ。」

 

その言葉にラーは疑問を感じる。

 

ラー「何故そんな人里から離れたところにいるんだ?移動したからか?」

 

ジョー「さぁ?」

 

本当に必要最低限の事しか知っていないジョーに呆れつつ、一旦店に大陸を渡る準備をすることになった。因みにスーラは仕事の話に口を突っ込むなと言われているので黙っていた。そして今回は大陸を渡るという遠出なのでスーラも連れていくことになり旅行みたいな雰囲気で東大陸に向かった。依頼人から移動費をジョーが貰っていたのでラーも安心して出発した。

大陸と大陸の間は海で隔たれており、船を使って移動するのだが、ジョーは速攻で船酔いしていた。船の上で数時間過ごし、東大陸に到着。スーラははしゃいでいたがジョーはぐったりしており、ラーも獣宿しを殺さなければならないということで表情が暗かった。

 

ラー「それじゃあ行こうか…」

 

スーラ「おー!」

 

ジョー「おー…」

 

 

東大陸 ナナシ砂漠

 

ラー「着いたぜナナシ砂漠…」

 

ジョー「おー…」

 

スーラ「何で二人ともそんなにテンション低いの!?折角なんだから楽しもうよ!」

 

二人のあまりのテンションの低さにおろおろしながらスーラはそう言う。その言葉に二人は顔を見合せ、「そういやこいつにはまだ内容話してなかったな。」といった感じの会話を二人でして、スーラに今回の仕事の内容を話した。内容を聞いたスーラは表情が暗くなり涙目になっていてラーとジョーは困っていたが数分後に再び元気な表情に戻り、行動を再開したがそれはただの空元気だとラーとジョーは見抜いていた。しかし、だからと言って自分たちに出来ることはないので何も言わなかった。そんなことをやっている内にナナシ砂漠の中心辺りに来たラー一行。その視線の先には頭から一対の大きな角を生やし、両腕が翼に変化していて、ハンマーのような形状の尻尾を生やした人形の生物だった。

 

人型の生物「キィェェァァァァァァァァァ!!!」

 

人型の生物は聴いたことも無いような声、いや、咆哮を発した。

 

ラー「これは中の獣が体を乗っ取って本能のままに暴れている証拠だな。肉体が大分侵食されてる。」

 

スーラ「何であの人(?)はああなっててラー達は人間の姿のままなの?ラー達も獣宿しの体を乗っ取った獣なんでしょ?」

 

ジョー「俺達は宿主の知性と知識を利用して理性的に活動しているから人間としての肉体のままなんだ。」

 

そんな話をしているとこちらに気づいたのか人型の生物改め暴走した獣宿しはこちらに威嚇する。ラーは意にも介さず威嚇を無視すると眼の魔術で暴走した獣宿しを分析する。

 

ラー「肉体を乗っ取られる前は魔術を使えないただの一般人だったが8日前に獣宿しの術を使用し自分の身の丈に合わない獣を宿して即乗っ取られた訳か。飛竜種型か…特徴からしてディアブロスに間違いないな。ハァ、獣宿しの術はちゃんとした手順でやれば魔術の才能が無い奴でも後天的に宿せるからな…こういうことが増えて困るぜ…」

 

こちらに対して突進の構えをとっているディアブロスの獣宿しに対してラーはそう言いながら臨戦態勢に入り、ジョーはスーラを抱えて安全な場所へ連れていった。ラーはジョーがスーラを抱えて安全な場所へ行くのを見届けた後、改めてディアブロスの獣宿しに向き直った。

 

ラー「お前には悪いがこれも仕事だからな…殺しても恨むなよ…!」

 

そう言いながらラーは闘気硬化で腕を硬質化させディアブロスの獣宿しに向かって走り出す。一方ディアブロスの獣宿しもラーに向かって全速力で突進を行った。獣宿し二体の本気の闘いが始まる。

 

 

                 続く

 



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双角猛る砂漠の暴君 その二

ナナシ砂漠 とある岩影

 

ジョー「とりあえず大分離れたところまで来たが…あいつ大丈夫かな。」

 

ジョーが少し心配そうに言う。

 

スーラ「大丈夫だよ!ラーはスッゴク強いもん!」

 

そうスーラは食い気味に言った。しかし、ジョーは未だに心配そうな顔でラーが闘ってるであろう場所を見据えた。

 

ラー「うおおおおおお!!」

 

大きく振りかぶったラーの拳がディアブロスの獣宿しの顔面に突き刺さる。しかし、ディアブロスの獣宿しの突進は止まらなかった。突進の直撃を受けラーは数メートル吹っ飛ばされる。しかしラーは空中で回転して上手く着地する。それと同時にディアブロスの獣宿しに雷砲を放つ。雷砲は直撃した。

 

ディアブロスの獣宿し「キュアァァ!!」

 

悲鳴の様な声をあげたディアブロスの獣宿しだったが、直ぐに態勢を建て直しラーに反撃しようとラーを探すが見つからない。ラーは雷砲を発射した直後に跳躍し空中で高速回転してぶつかる技である回転弾をディアブロスの獣宿しにやっていた。高速回転したラーが高スピードでディアブロスの獣宿しにぶつかる。しかし、ディアブロスの獣宿しはダメージは負ったものの即座に反撃のタックルでラーを弾き飛ばす。ラーは起き上がり反撃しようとディアブロスの獣宿しを探すが居ない。

 

ラー「…居ない…逃げた訳じゃねぇな…ということは下か!!」

 

ラーは跳躍し空中で大雷弾を作り始める。その直後に砂中からディアブロスの獣宿しが飛び出すが空中にいるラーには届かなかった。ラーは待ってましたといわんばかりにそのタイミングで大雷弾をディアブロスの獣宿しに放った。ディアブロスの獣宿しは地面に倒れ、起き上がろうとするがラーはそうはさせないと言わんばかりに回転弾による追撃をする。しかし、ディアブロスの獣宿しは持ち前の圧倒的なタフさでラーを猛攻の中起き上がり、ラーに突進をしようと構えをとる。ラーはそれに気づき雷砲で迎え撃とうと口に雷の力を溜めるがディアブロスの獣宿しが突進を開始した。ラーは雷砲を撃とうとするが、ディアブロスの獣宿しの突進が先程の最初にしてきた突進の二倍近く速かった。あまりの速さにラーは雷砲を撃つ前に突進の直撃を喰らってしまう。吹き飛ばされ受け身も取れず砂上に倒れるが、直ぐに起き上がりディアブロスの獣宿しを探すが見つからない。

 

ラー「…まさか…!」

 

気づいたときにはもう遅かった。ディアブロスの獣宿しが勢いよく地面から飛び出し、ラーに激突する。ディアブロスの獣宿しの両角がラーの腹と右胸に深々と突き刺さった。ラーは血を吐きながら地面に倒れ伏す。口から黒煙を出しているディアブロスの獣宿しはラーが倒れ伏すのを見て勝利の雄叫びをあげた。砂中に潜ろうとディアブロスの獣宿しは砂を掘り始めるがその足を誰かに捕まれる。確認するとそこには髪の毛が黄金に変わり逆立ち、目を赤く光らせたラーの姿があった。

 

ラー「何処へ行くんだ?まだ終わってねぇだろうが。」

 

体に大穴が空いているのに平然と喋るラー。胸の傷はもう既に止血されており、再生が始まっていた。

 

ラー「人間ならあの一撃でチェックメイトだっただろうが、獣宿しは中身の獣の肉体と似たような構造になるからな。丸一日寝れば全快するだろう。」

 

そう言うとラーはディアブロスの獣宿しを思い切り殴り飛ばす。ディアブロスの獣宿しは吹き飛ばされた後地面に激突し砂煙を巻き上げる。ラーはそれを油断なく見据えていた。

 

ラー(止血はしたし再生も始まっているがダメージが治る訳じゃねぇからな。これ以上さっきの攻撃のような高威力の技を喰らったら不味い…)

 

と考えていると、ディアブロスの獣宿しは口から黒煙を吐きながら再び突進の構えをとる。ラーはそれに対し改めて両腕を闘気硬化させ、サッカーのキーパーがとるような姿勢でディアブロスの獣宿しを待ち構えた。ディアブロスの獣宿しが黒煙を撒き散らしながら尋常じゃないスピードでラーに向かって突進する。それに対しラーは動かずディアブロスの獣宿しをじっと見据えた。ディアブロスの獣宿しがラーに激突する一瞬、その一瞬でラーはディアブロスの獣宿しの両角を掴み突進を止めようと全力で踏ん張る。しかし、ディアブロスの獣宿しは止まらずそのまま突進を続けラーが全力で踏ん張るもディアブロスの獣宿しは意に介さず自分の角を掴んでいる目の前の生物をそのまま貫こうと突進を続ける。そこでラーは片足を地面から離しもう片足を軸にしてディアブロスの獣宿しの突進の勢いを利用してディアブロスの獣宿しの背負い投げの要領で地面に叩き付けた。ラーはそのまま跳躍し、大雷弾を倒れているディアブロスの獣宿しに放ち、着地した瞬間に大雷弾に当たりまだ起き上がれないであろうディアブロスの獣宿しに向かって雷砲を最大出力で放った。とてつもない轟音が鳴り響き雷砲が着弾した場所には巨大なクレーターが出来ていた。ラーはディアブロスの獣宿しが本当に死んだか確認するためクレーターでディアブロスの獣宿しを探す。しかし、見つからない。

 

ラー「まさかあれを喰らって耐えたあげく地面に潜るほどの力が残っていたのか?」

 

と言った瞬間ラーは何かを察知し反射的に自分が今いた場所から離れようとする。その瞬間地面からディアブロスの獣宿しが飛び出した。反射的に飛び退いたがそれでも少し足の辺りに当たり、片足に重度の打撲を負ってしまった。

 

ラー「うぐ…」

 

しかもタイミング悪くここでラーの黄金の髪は元の黒髪に戻ってしまった。もう闘気硬化する余力もラーには残されていないだろう。ラーはディアブロスの獣宿しの様子を確認する。角は両方折れ、翼もボロボロ、全身の甲殻は割れたり剥がれたりヒビが入ってたりしていた。しかし、当のディアブロスの獣宿しはそんな傷を意にも介さず口から黒煙を撒き散らしながらラーに向かって力強い咆哮を発した。

 

ラー「嘘だろおい…俺はこれまで色んな奴と闘ったがお前レベルにタフなのは初めてだ…」

 

苦笑混じりにそう言うラーに憤怒の形相の角竜の獣宿しはラーに近づき、ハンマーのような形状の尻尾でラーをぶっ飛ばす。まともに喰らったラーはそのまま地面に激突した。立ち上がれるかすら怪しい程弱ったラーに角竜の獣宿しはゆっくりと近づいていった。

 

 

                 続く



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双角猛る砂漠の暴君 終

ラーにゆっくりと近づく角竜の獣宿し。それを見ているボロボロのラーは一つ大きな溜め息をついた。

 

ラー「人間の社会で働いたりしてしているからかな…体が思っている以上に鈍っている。本来の肉体があった頃と違って仕事の時以外は家でダラダラしていたからな…帰ったら筋トレでも始めるかな。」

 

そう落ち着いた口調で言ったラーにディアブロスの獣宿しは突進を仕掛けようと足に力を入れる。そして突進をはじめとした瞬間、

 

ラー「ガァァァァァァァ!!!!!」

 

ラーはとてつもない音量の怒号を発し次の瞬間ラーの体がまるで爆散したかのようにラーの体から雷が発せられた。

 

ディアブロスの獣宿し「…!?」

 

突然そのような事が起こったので思わず突進を中止し何が起こっているのか調べているのか雷の発生源を注視する。

雷がおさまり、砂煙も晴れた時そこには頭から角を生やし、髪を先程よりも激しく逆立て体からスパークを放ち、ボロボロだがしっかりと人間の二本足で立っているラーがそこにはいた。ディアブロスの獣宿しはあの角を生やしている生物がラーであることに気づき再び口から黒煙を吐きながら咆哮を発した。咆哮を聞いたラーはディアブロスの獣宿しの方に振り向く。そして自分に敵意と殺意を向けているディアブロスの獣宿しに笑みを浮かべた。しかし、それは親が子にするような優しい微笑みではなく、狂気と殺意に満ちた残忍な笑みだった。笑うと言う行為は本来は牙を剥くという行為である。つまりラーはディアブロスの獣宿しに笑みを浮かべた訳ではなく本気でディアブロスの獣宿しを殺そうと牙を剥いていたのだ。

歩きながらラーはディアブロスの獣宿しに近づいていく。ディアブロスの獣宿しは黒煙を撒き散らしながらラーに突進を仕掛けた。とてつもない速度でラーに突進をするディアブロスの獣宿し。しかし、その突進がラーをぶっ飛ばす事はなかった。ラーの闘気硬化した腕一本でディアブロスの獣宿しの突進は受け止められていた。ラーはもう一本の腕でディアブロスの獣宿しにアッパーを喰らわせる。ディアブロスの獣宿しの体が遥か上空へぶっ飛ぶ…と思いきやラーはアッパーを喰らいぶっ飛ぶディアブロスの獣宿しの尻尾を掴み地面に叩き着ける。そして間髪入れずに上から闘気硬化した両腕で猛ラッシュを喰らわせる。甲殻が砕け血をはくディアブロスの獣宿し、ラーは狂気の笑みを浮かべたままラッシュの勢いを弱める事もせずむしろ強くしていた。

血を吐いて動かなくなったディアブロスの獣宿しに止めを刺そうと頭蓋骨を砕くために再び闘気硬化した拳を振り上げる。

しかし、その腕は別の腕に掴まれ、振り下ろせなくなる。ラーが自分の腕を掴んでいる者に視線を向けると、そこには少し悲しそうな表情のジョーと、この光景を見て顔を青くしているスーラの姿だった。

 

ジョー「もういい。それ以上はやるな。顔ヤバイぞお前。」

 

ラー「…ジョー、スーラ…」

 

ラーは瞳に理性の色を戻らせそう呟く。

 

ラー「悪い…」

 

ジョー「お前はその状態の時理性がほぼ無くなるんだろう?何故その状態に…激昂状態になったんだ。」

 

いつも通りの声色で問いかけるジョー。

 

ラー「体が鈍っていたのもあって激昂状態にならなきゃ負けていたんだ。」

 

ジョー「おいおい…ディアブロス程度に負けちまうレベルに鈍ってんのかよ。」

 

呆れ顔のジョーが嘲笑混じりにそう言う。

 

ラー「本気の命のやり取りなんて何年ぶりかってくらいだったからな。本来の肉体があった頃は毎日命のやり取りしてたから鈍ることは無かったけど、最近闘いの相手も格下ばかりだし、何もない日は家でダラダラしていたからな。そりゃあ鈍るわ。」

 

地面に仰向けに寝転がりながらラーはそう言う。

 

ジョー「だらしねぇなぁ…筋トレでも始めたらどうだ?」

 

ラー「そうするつもりだ…つうかお前俺に偉そうに言ってるけどお前も何もない日は何かを食ってるか家でダラダラしているじゃねぇか!」

 

ジョー「俺は食ってるだけでもパワーアップするからな。肉体の構造が根本から違うのだよラージャン。」

 

ラー「腹立つな…とりあえず肩貸してくれマトモに歩けん。」

 

ジョーはラーを起き上がらせて肩を貸す。スーラはラーが転ばないように腰の辺りを支えた。二人はラーを持ってきていた荷車に乗せ、ディアブロスの獣宿しの死体も荷車に放り込んだ。

 

ジョー「本当は暴走した獣宿しのためだけに持ってきた物なんだがな…この荷車。」

 

ラー「悪かったって。ところでここから依頼人のいる町までどれくらいかかりそうだ?」

 

ジョー「スーラの事も考慮すると二時間…ラー、もっとかかることになりそうだ。」

 

ラー「あぁ?」

 

スーラ「あそこにいる人達、私たちの事じっと見つめてない?」

 

ジョー「あぁ、それによく見ると口が少し動いている。恐らく、というより100%詠唱魔術だな。」

 

ラー「くそ…こんな状態に限って…」

 

ジョー「お前はそこでじっとしていろ。俺一人で充分だ。全員片付けてやるぜ。」

 

数十メートル離れたところにいる魔術師達から強力な魔術が放たれる。炎、氷、風、といったものが飛んできたがジョーは龍属性ブレスを放ちその全てを消し飛ばした。魔術師達は一瞬驚いたような顔をするが、直ぐに魔術を唱え始める。ジョーは魔術師達に笑みを浮かべながら猛ダッシュで接近していった。

 

 

 

                  続く



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貪食の恐王

ジョーは笑みを浮かべながら魔術師達に接近していく。魔術師達は迎撃するために詠唱を始めるが、ジョーはいつもの岩を抉り出す攻撃と同じように地面を蹴った。ジョーの蹴りで砂が大量に巻き上がり魔術師達に降りかかる。魔術師達は気にせず詠唱を続けようとするが、一部の魔術師達は口に砂が大量に入って思わず咳き込み詠唱が中断される。ジョーはその間に既に間合いをつめており、一番近くにいた魔術師を蹴り倒した。蹴られた魔術師の体が砂中に埋まる。しかし、ジョーはそんな事気にもとめずに別の魔術師に襲いかかる。ジョーはその魔術師の腹部に膝蹴りを入れ気絶させる。その瞬間詠唱を終えた魔術師達の魔術が雨あられの様に飛んでくる。しかしジョーは先程気絶させた魔術師を振り回し盾にした。気絶させられた挙げ句仲間の攻撃魔術をこれでもかと喰らった可哀想な魔術師は数十メートル吹き飛んだ後地面に激突した。

 

ジョー「流石にちょっと可哀想だったな。」

 

そう言った次の瞬間ジョーに再び魔術の雨あられが飛んできた。ジョーの砂かけで詠唱を中断させられた魔術師達の時間差攻撃だった。回避に徹するジョーだったが、全てかわせる筈もなく何発か直撃してしまう。砂煙が舞う。

 

魔術師「…。」

 

魔術師達は詠唱をしながら油断せずに砂煙を見ていた。すると砂煙の中から異常な量の砂が大量に飛んでくる。砂煙を凝視していた魔術師達は砂を目にいれてしまい思わず目を塞ぐ。それが隙となった。その瞬間砂煙からジョーが飛び出し、目を塞いでいる魔術師にタックルを喰らわせる。その魔術師はタックルの衝撃で吹き飛び少々後ろにいた別の魔術師に激突する。間髪入れずにジョーは龍属性ブレスを吐いて魔術師達を凪ぎ払った。

 

ジョー「ふぅー、こんなもんかな。」

 

未だ砂煙の舞っている周りを見ながらそう言うジョー。

 

魔術師「いや、まだ一人ここに残っている。」

 

そう言いながら一人の魔術師が砂煙から姿を表す。ジョー達を襲った魔術師達は傭兵の様に育てられた魔術騎士なので並の魔術師達よりも強い戦闘能力を持っている。しかし、ジョー位の強さの生物からすれば間違いなく格下の相手である。現に今魔術師達は今ジョーの目の前に立っている者以外は全滅していた。

 

ジョー「残りはお前だけか…何故わざわざ出てきた?遠くから魔術ぶっぱなすのが魔術師なんじゃねぇの?」

 

魔術師「お前は魔術師をなめているのか。」

 

ジョー「うん。だって弱いじゃんお前ら。」

 

魔術師「…殺す…!」

 

その直後魔術師は地面を蹴りジョーに向かっていった。身体強化魔術で魔術師は普段の数倍の身体能力て、闘っていた。しかし蹴りは避けられパンチは呆気なく受け止められてしまった。そんな魔術師にジョーはいかにも悪人がしそうな笑みを浮かべながら受け止めた拳をそのまま掴み自分から離れられないようにして首に向かって蹴りを放った。魔術師は咄嗟にもう片方の腕でガードするが、蹴りが腕に当たった瞬間腕の骨が砕ける。魔術師を激痛が襲うがそれに耐え、ジョーに蹴りを放った。直撃したが、全く効いていないのかジョーはケロリとしていた。ジョーが魔術師の腹部に蹴りを放った。魔術師の体は数メートル吹き飛ぶ。しかし魔術師は起き上がり、詠唱を始めた。

 

ジョー「へぇ…結構タフじゃねぇか。」

 

感心しているジョーを無視して魔術師は詠唱を続ける。

 

魔術師「火炎旋風《フレアトルネード》!!」

 

魔術師の放った竜巻状の火炎がジョーに迫る。

 

ジョー「終わりだ。まぁまぁ楽しかったぜ。」

 

ジョーはそう言った直後に龍属性ブレスを放つ。どす黒い色のエネルギーは火炎を消し飛ばした。

 

魔術師「…悪魔め…」

 

どす黒いエネルギーが魔術師を呑み込んだ。

 

ジョー「おーい、終わったぞー。」

 

ジョーはラー達のもとへ戻っていった。ラー達に闘いの内容を話すと、ラーは「殺してないだろうな。」と聞いてきたのでたぶん生きてるとジョーがぶっきらぼうに答えラーは溜め息をついていたスーラが涙目で「殺しちゃったの?」と聞いてきたので本当に殺してないと弁解した。

 

ラー「変な足止めをくらっちまったぜ。何で俺らが魔術騎士達に襲われなければならないんだ。」

 

ジョー「良いじゃねぇか。大して時間かかってねぇよ。」

 

そういってもラーはまだ何か言いたそうだったが無視して町へと急いだ。

 

 

 

                  続く



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獣宿しの秘密

すいません。テストがあったので更新が遅れてしまいました。


ラー「…そろそろか?」

 

荷車に横たわりながらすぐ横に座っているスーラにラーはそう問いかけた。

 

スーラ「あ、うんもうすぐだと思うよ。」

 

突然話しかけられて少し言葉がつまったスーラだったが、質問にはしっかり答えた。といってもスーラはジョーが今向かっている町の場所を知らないためあまりはっきり答えることが出来なかった。

 

ジョー「というよりももう見えてきたけどな。」

 

ジョーの言葉を聞いたラーは少し痛がりながらも上半身を起き上がらせて前方を見る。

すると、そこには砂漠に囲まれた町が見えた。

 

ラー「あそこか…小さい町だな…何て言う町だ?」

 

ジョー「チノアジという町だそうだ。変な名前だな。」

 

そんな事を言いながらジョーは荷車を引きながら歩き、チノアジの入り口までたどり着いた。そこで入り口に立っている恐らく門番であろう武装した人間二人に呼び止められる。ジョーはめんどくさそうに呼び止めできた二人を見る。

 

門番「すまないが勝手に入られると困るのでな。何をしにここへ?」

 

ジョー「連れが重傷を負っちまってな。少しここに泊めてくれないか?」

 

門番「うーん…まぁそれなら仕方ないか。宿はこの町の中央近くにひとつあるからそこに泊まるといい。」

 

ジョー「分かった。感謝する。」

 

そう言いながらジョーは荷車を引きながら町の中に入っていった。そして町の中央近くに宿を発見し1日泊めて貰う事になった。因みに荷車は宿の真横に置いてきている。四人部屋に案内され、全員その部屋の中にいた。しかし、結構困っている。何故なら…

 

ジョー「これから…どうする?」

 

スーラ「ラーが回復するまで待つんじゃないの?」

 

ジョー「いや、それもあるんだけどよ…」

 

ラー「こいつ(ディアブロスの獣宿しの死体)をどうするかって話だろ。」

 

そう、ディアブロスの獣宿しの死体も宿の中に持ってきていたのだ。

 

ジョー「野外に放置するわけにもいかなかったからな…」

 

ラー「つーか俺が倒してから8時間位炎天下にいたのに良く腐らなかったなこれ…」

 

スーラ「死んでないってことじゃないのそれ?」

 

ラー「いや、心臓は止まっていたんだ。有り得ねぇだろ。」

 

ジョー「腐るどころか死臭もしないな…本当に生きてるんじゃね?」

 

ラー「マジで?」

 

そんな会話をしているとディアブロスの獣宿しの体が突然跳ね上がり動き出した。しかし、跳ね上がる直前にディアブロスの獣宿しの体から何か透明なものが出ていったのが三人には見えた。

 

ディアブロスの獣宿し「う…うん?何処だここ?」

 

ラー「!?」

 

ラーは自分と対峙したときの雰囲気と今の雰囲気の違いと、咆哮と唸り声しかあげなかった奴が突然意味のある言葉を発したことに驚いていた。

 

ディアブロスの獣宿し「…うわっ!誰だあんたら!」

 

ラー「…なぁ突然すまないが今のお前が覚えてる中で最新の記憶って何だ?俺らのは無しな。」

 

ディアブロスの獣宿し「…獣宿しの儀式をやってからの記憶がない。」

 

ラー「成程…うわーめんどくさいなー。」

 

ジョー「?分からんぞ。」

 

ラー「つまり、原理は知らねぇけどディアブロスごとこいつを殺したと思ってたんだが何故かディアブロスの魂の消滅と同時にディアブロスの魂に押さえつけられてたこいつ本来の魂が目覚めて何故か肉体も蘇生されたんだ。」

 

ジョー「じゃあ暴走した獣宿し殺すと中にいる獣が犠牲になって宿主は助かるってことか?」

 

ラー「確証はないがその可能性はある。」

 

ジョー「ふーん…」

 

そう言いながら二人はディアブロスの獣宿しだった人間を見つめた。スーラはまだ理解が追い付いていない様子で唖然としていた。ディアブロスの獣宿しだった人間もラーとジョーの話についていけていない様子で何がなんだか分からないと言った感じだった。

 

ラー「…まぁともかくおめでとう。復活できた事に感謝しながら生きるといい。」

 

元ディアブロスの獣宿し「…何か良くわからないけど、とりあえずありがとうって言っておくよ。」

 

ジョー「おう。」

 

スーラ「…つまりどういう事?」

 

ラー「暴走した獣宿しは死んでも中に住んでる獣が消えるだけで宿主は死なないってことだな。」

 

スーラ「へー、そうなんだ。」

 

ラー(動揺しないってのが流石だなぁ…メンタル強いなぁ)

 

そんな事を思っているとジョーがラーに小声で話しかける。

 

ジョー「依頼ではディアブロス殺せって言われてたけどこいつ生かしたら依頼失敗になるのかな?」

 

ラー「ならねぇだろ。宿主は生きてるってだけでディアブロス自体は殺してるんだから。」

 

ジョー「そっか、そうだよな。あーよかった。」

 

ラー「お前にもやっぱそう言う心があったんだな。俺はてっきりそんな事を考えてないと思っていたぜ。」

 

ジョー「え?俺はこいつ(元ディアブロスの獣宿し)の心配何てこれっぽっちもしてねぇぞ?」

 

ラー「は?じゃあ何であんなこと聞いたんだよ。」

 

ジョー「俺が心配してるのはこいつの安否じゃなくて依頼の失敗で金が得られず飯が満足に食えない可能性を心配してたんだ。」

 

ラー「そうだな、お前はそう言う奴だったな。俺がバカだったよ。」

 

スーラ「もう…ジョーってば…少しは人に思いやりを持ちなよ。」

 

ジョー「へいへい。」

 

このあと元ディアブロスの獣宿しも話の輪に入れ、暫く談笑していたという。

 

 

 

 

 

                  続く



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恐れ見よ、赤き災厄の彗星を

朝…四人は村の入口にいた。

 

ラー「ハァ…仮説が衝撃的過ぎたな…」

 

ラーはあまり眠れなかったせいか少し疲れ気味でそう言った。

 

ジョー「真実とは限らねぇだろ。そんな簡単に獣宿しの謎が解明するわけがねぇ。」

 

同じくあまり眠れなかったせいでかなり不機嫌になっているジョーがそう返す。ジョーの言葉にラーもそれもそうかといった感じで納得していた。

 

スーラ「私はラー達みたいに暴走している訳じゃないけど…私はどうなるんだろう?」

 

ラー「あぁ…お前に宿っているバサルモスは飛竜種だがその中ではお世辞にも強いとは言えねぇしな。普通のガキであるお前が乗っ取られない理由はそれだが、わからんな…殺されても生き返るのは暴走している獣宿しだけなのか…それとも暴走していない獣宿しも復活するのか…何しろ前例がないからな。」

 

ジョー「そういやお前暴走していた頃の記憶は完全にないんだよな?」

 

元ディアブロスの獣宿し「はい…。」

 

ジョー「もうディアブロスの力は使えねぇのか?」

 

元ディアブロスの獣宿し「そのようです…獣が消滅したから当たり前かも知れませんが…」

 

ジョー「じゃあお前は魔術も使えん一般人に戻ったわけか。」

 

元ディアブロスの獣宿し「そうですね…」

 

ジョー「ふーん…」

 

と、そんな二人の会話を聞いたことで暫く考え込んでいたラーはいきなり肩を叩かれ少し驚いたようなリアクションをして振り向く。そこには明らかにイライラしているジョーがいた。

 

ラー「…どうした?」

 

なぜ彼が怒っているのか分からないラーはそう聞いた。それを聞いてジョーは一回舌打ちをして答えた。

 

ジョー「お前が考え込んでンのか何だか知らねぇけど呼び掛けに何の反応も示さなかったから俺たちだけで手続きとかやってきたんだよコノヤロウ。」

 

何だかんだラーは10分以上考え込んでいたようだ。

 

ラー「す、すまん。」

 

ジョー「お前そういうワケわからん事たまにするよな。」

 

あきれ顔のジョーがそう言いラーは少し恥ずかしそうにしていた。ジョーはそれをガン無視してラーを急かしていた。

 

ナナシ砂漠

 

炎天下の中、ラー、ジョー、スーラ、元ディアブロスの獣宿しの四人で荷車を押しながら歩いていた。

 

ラー「暑い…くそ、村の中はまだマシだったのに…」

 

ジョー「外に出てから急に暑くなったなぁ…」

 

スーラ「そうだね…あっ!」

 

ラー、ジョーと同じく暑がっていたスーラが急に大きな声をあげる。元ディアブロスの獣宿しは急に大きな声を出したスーラに少し驚き、暑がっている二人はうっとおしそうな顔をした。

 

ラー「今度は何だよ…暑いんだからあまり大声出さないでくれ。頭に響く。」

 

スーラ「あれ見て!あれ!」

 

スーラが少し興奮気味に空を指差す。

 

ジョー「あ?今俺らに熱波を浴びせてるクソ太陽はもう見飽きたっての。」

 

スーラ「そうじゃないよ!いいから見て!」

 

ジョー「ンだよ…」

 

ジョーは面倒くさそうにスーラが指差した方向を見る。そこには赤い彗星が飛んでいた。

 

ジョー「…何だありゃ…」

 

ラー「彗星…だなどう見ても。しかし、ここまで大きくハッキリと見えるとはな。あの彗星はこの砂漠の近辺に落下するな。」

 

元ディアブロスの獣宿し「彗星…ですか。珍しいことも有るものですね。」

 

ジョー「だな。」

 

そう言いながら歩を進める一行だが暫くするとあることに気づく。

 

ラー「なぁ…あれこっちに向かってきてねぇか…?」

 

ジョー「気のせいだろ…と、言いたいところだが…明らかに近付いてきているな。」

 

そんな話をしていると赤い彗星は異常なほどのスピードで突っ込んできてラー達一行のすぐ手前に着陸…というよりも激突した。その衝撃で多量の砂が巻き上がりラー達にかかる。

 

ラー「何なんだよ一体!?」

 

ラー達が前方を確認できる様になったとき、ラー達の目の前には異様な姿の生物が立っていた。

全身銀色の鱗の様なもので覆われていて上半身は裸、下半身は鱗と同じ銀色のズボンを履いている。頭には後頭部に向かって生える角の様なものがあり、背中には一対の翼を生やしていた。いや、翼というよりは何かの噴射機だろうか、普通の翼とは似ても似つかぬ形だった。

 

ラー「飛竜種型…いや…飛竜種型は飛行するとき腕を翼に変化させて飛翔する。四肢に翼…古龍種型か…!」

 

古龍種型の獣宿し「…。」

 

古龍種とは、道すがらの生態系を変え、地形を変え、存在するだけで人類に大打撃を与えるほどの災害を引き起こし、その戦闘力は一匹で小さな国を一つ滅ぼせるほど強力。まさに、生態系から外れた絶対的な存在。それが古龍種、伝説や古代の歴史にも名を残す謎の生物の総称。古より存在する怪物の総称。

古龍種型の獣宿しはその青い目でラー達をまるで品定めするかのように見つめた。そして…

 

古龍種型の獣宿し「キィィィィイイイイ!!!」

 

大型の鳥類の様な、しかし声量は比べ物にならないほど大きな咆哮をあげた。

 

ラー「眼(アイ)…獣宿し古龍種型…バルファルク…!」

 

砂漠三度目の…しかし前の二つよりも圧倒的に強大な相手との闘いが始まる。

 

 

 

 

 

                    続く



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銀翼の凶星 その一

遅れてしまい申し訳ありません(見ている人がいなければただの独り言だけど)


ナナシ砂漠 

 

炎天下の砂漠で激戦が繰り広げられていた。

 

ラー「ぐぉあ!?」

 

吹き飛んだラーは地面の砂に激突する。しかし、すぐさま体勢を立て直して前方を見る。赤黒いエネルギー弾が飛んできたのが見えたので大きく横に飛んで回避する。その数瞬後、先程までラーが居たところに赤黒いエネルギー弾が着弾し、爆発した。

 

ラー「ちっ…スピードだけじゃねぇってか。」

 

爆発により発生した砂煙を払いながらラーはそう愚痴るように呟いた。そこへジョーが砂煙を払いながら走ってくる。

 

ジョー「よう、無事か?」

 

ラー「無事だけどこれから無事じゃ無くなりそうだな…こっちは病み上がりだっていうのによ。」

 

茶化すような口調で話しかけてきたジョーにラーは不機嫌そうにこたえた。

 

ジョー「にしても、どうする?古龍種なのにあの野郎俺の龍ブレスが効かなかったぞ。何なんだよあいつ。」

 

ラー「バルファルクってモンスターだ。超高空を縄張りにしてる古龍種らしいぜ。しかし、参ったな。龍属性が効かねぇのか。」

 

そう言いながらラーは前方を見つめる。そこには人型の姿をしているが、人間とは似ても似つかない存在が、こちらを見つめていた。その存在の両目は狂気に満ちていた。

 

ラー「とりあえずスーラ達の逃げる時間を稼がねぇとな。いけるか?」

 

ジョー「足止め位は余裕だが…問題は倒せるかどうかだな。」

 

そう言いながら二人とも構えをとる。

 

バルファルクの獣宿し「キィィィィイイイイ!!!」

 

バルファルクの獣宿しは甲高い鳥の様にも、何かの機械の様にも聴こえる咆哮を挙げ、背中に生えている何かの噴射口のような翼から赤黒いエネルギーを噴出させ、その推進力で此方に一直線に突っ込んできた。ラーとジョーは左右に別れてこれを避ける。バルファルクの獣宿しは翼の向きを逆方向に変え、自分の突進の勢いを殺して着地する。バルファルクの獣宿しは二人は何処に行ったのか確認するために後ろに振り向く。そこには赤いオーラを纏った拳がバルファルクの視界を埋め尽くしていた。思いきり顔面を殴られたバルファルクの獣宿しは数メートル吹き飛び大量の砂を巻き上げ地面に激突した。

 

ラー「…闘気硬化した拳の一撃。果たしてどのくらい効いたのか…」

 

ジョー「ま、あの一撃で終わるんなら苦労しないんだけどな。」

 

砂煙からシルエットが見えてくる。シルエットはどんどん鮮明になり、そして砂煙からバルファルクの獣宿しが何事も無かったかのように出てきた。姿を見る限り、特にダメージを受けてる様子はない。

 

ラー「…やっぱ一発当てた位じゃ大してダメージにはなんねぇか…」

 

ジョー「…しかし、龍属性が効かない古龍種とはな。」

 

ラー(龍属性は効かないか…なら他の属性はどうだ?雷属性が効いてくれると有りがたいんだが…)

 

ラーが思考を巡らせているとバルファルクの獣宿しが赤黒いエネルギー(龍気)を推進力にして二人に猛スピードで突っ込んできた。二人はそれぞれ逆方向に跳躍しこれを避ける。それを見たバルファルクの獣宿しは今度は翼の向きを変え、噴射口のような部位の先を二人へ向ける。

 

ラー「!!」

 

噴射口のような翼の先から龍属性エネルギーの弾が放出される。放出された龍属性エネルギーは弾丸のような速度でラー達に向かっていく。ラーは咄嗟に後ろに跳躍しギリギリこれを回避する。しかし、一瞬理解が遅れたジョーは直撃してしまう。

 

ジョー「ぐぁああああ!!!」

 

ジョーは数メートル吹き飛んだ後砂上に倒れる。

 

ラー「ジョー!!くそっ!」

 

ラーはバルファルクの獣宿しを睨み付ける。バルファルクの獣宿しはラーを見ながらまるでバカにしたようなにやついた顔をしていた。その顔を見たラーは怒りの表情を浮かべ、バルファルクの獣宿しに飛び掛かった。バルファルクの獣宿しは龍属性エネルギーを連射し、ラーを撃ち落とそうとする。しかし、ラーはその全てを闘気硬化した拳で叩き落とす。バルファルクの獣宿しは近付いてきたラーに翼を叩き付けようとする。ラーは自分に降り下ろされた翼に自らの拳を叩き込む。ラーの拳の直撃を喰らったバルファルクの獣宿しは一瞬仰け反った。ラーはその隙を逃さない。ラーは仰け反ったバルファルクの獣宿しに大雷弾による追撃を喰らわせ、その反動で後ろに後退し距離をとる。

 

ラー「…どうだ。」

 

その次の瞬間突然龍属性エネルギーが飛んできてラーに直撃する。

 

ラー「うぐぁあ!!」

 

吹き飛ばされそうになったラーだが空中で体勢を立て直して着地する。前を見ると、そこには目を血走らせながら此方を睨み付けるバルファルクの獣宿しの姿があった。

 

ラー「どうやら雷は結構効くみたいだな。」

 

少し笑みを浮かべながらラーはそう呟く。バルファルクの獣宿しはもう一度此方に龍属性エネルギーを放とうとしたが、それは横から飛んできた岩に阻止された。岩が飛んできた方向を見るとそこには口からドス黒い煙のような何かが出ているジョーが蹴り飛ばした物だった。

 

ラー「ジョー、生きてたか。」

 

ジョー「そう簡単に死ねるかっての。いや死ぬかと思ったけどさ。」

 

バルファルクの獣宿し「キィィィィイイイイ!!!」

 

ラー「おーおー、メチャクチャキレてるな。」

 

ジョー「恐い恐い。」

 

「おーい!!あそこだー!!!」

 

ラー「あ?」

 

突然聞こえた謎の声の方向を探すとそこには多数の人間がいた。全身鎧を着た者。身軽そうな服に杖を持っている者等様々である。ジョーはいきなり現れた者達にはてなマークを浮かべていたが、ラーは知っていた。

 

ラー「まぁそりゃあこんだけ大暴れすりゃあ来るよな軍の兵達が。」

 

ラー「おーい!!!今こいつがいきなり襲いかかってきて困ってんだ!!手伝ってくれ!!」

 

軍の兵「元よりそのつもりだ!!獣宿しを始末しろと言う命令で来たからな!!」

 

ラーの大声での呼び掛けに軍の兵も大声を出して答える。

 

ラー(俺達にディアブロスの獣宿しの討伐を依頼してきたババアは軍の兵達を動かせるほどの権力者だったか…。ディアブロスの獣宿しを俺達に殺させ、消耗した俺達を軍の兵達で始末する気だったのだろうが、今この状況一番獣宿しの様な見た目をしているのはあの銀色野郎だ。軍の兵も都合よく勘違いしてくれたぜ。利用させてもらおう…。)

 

 

 

 

 

 

 

               続く



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銀翼の凶星 その二

すいません。テスト期間だったので投稿が遅れました。


ラー「さて、利用するにしてもこいつらが果たしてどのくらいの実力があるのか…それが問題だ。」

 

ジョー「お前さっきから小声で何ブツブツ言ってんだ?」

 

ラー「ま、なるようになるか。」

 

ジョー「は?」

 

ラーは勢いよく駆け出しバルファルクの獣宿しに突っ込んでいく。バルファルクの獣宿しは突っ込んで来るラーに翼を槍のようにし、ラーを串刺しにしようとした。しかし、ラーは空中で身を捻り、避けようとする。槍の様な翼がラーを脇にかすったがラーはその翼をつかみ、背負い投げの様にバルファルクの獣宿しを地面に叩きつけ、直ぐ様距離をとった。

 

バルファルクの獣宿し「キィィィィイイイイ…!」

 

バルファルクの獣宿しは怒りの表情を…いや、顔は先程までと同じ張り付いたような笑みを浮かべているが、後頭部に伸びる角の様な部位から赤黒い煙の様なものが出ており目にも怒りの感情が宿っている。そんな状態で起き上がったバルファルクの獣宿しは翼の向きを変え、噴射口の様な翼をラーに向ける。ラーに向けて龍属性エネルギーが発射する瞬間、突然衝撃波の様なものがバルファルクの獣宿しを襲った。数メートル吹き飛ぶバルファルクの獣宿し。突然の攻撃で受け身がとれずそのまま砂上に倒れるが直ぐに起き上がる。しかし、その次の瞬間、バルファルクの獣宿しの体に透明の鎖のようなものが大量に巻き付いた。身動きがとれなくなったバルファルクだったが力ずくで引きちぎる。さすが古龍種といったところか。しかし、バルファルクの獣宿しが鎖を全て引きちぎった時にはバルファルクの獣宿しの視界は巨大な炎で埋め尽くされていた。

 

ラー「おーおー、思ってたより全然強いな。」

 

魔術師達の連携攻撃を見ながらラーはそう呟いた。

 

ジョー「あぁ、こりゃあお前が荷車で運ばれている状態で出くわしたら負けてた可能性あるな。」

 

ラー「…予定より三日も早く着いたからな。だれかさんのせいで。」

 

ジョー「おい、何で俺を睨むんだ。結果的に助かったんだから良しだろう。」

 

ラー「お前がそれを言うのか?」

 

バルファルクの獣宿し「キィィィィイイイイ!!!!!!」

 

ジョー「あ?」

 

ラー「何だ?いきなり咆哮を発して。」

 

二人はバルファルクの獣宿しが発した咆哮の意味は分からなかったが元モンスターの二人は何かを察したのか一気に警戒レベルを上げる。魔術師達も何が来るかと身構えていたがバルファルクの獣宿しがとった行動は飛行だった。ラー達に突進する低空飛行ではなく、空に向かって龍属性エネルギーを噴出し、飛んでいった。

 

魔術師A「…逃げたのか?」

 

魔術師B「流石に多対1は不利だと思ったか。」

 

ラー「…ただ逃げただけなのか…?本当に?」

 

ジョー「撤退でも逃亡でも移動してくれたなら好都合だエネルギーの使いすぎで腹へってたんだ。」

 

ラー「…それもそうだな。それと避難させたスーラ達を迎えにいかねぇと。」

 

と、はなしをしていたら、遥か上空を赤い尾を光らせながら飛んでいたバルファルクの獣宿しが急に反転し、どう見ても此方に向かって突っ込んできている。

 

ラー「全員今すぐ逃げろぉ!!」

 

ラーの叫びを聞き一斉にちりぢりになって逃げ出す。それから三秒…もたっていないだろう、それぐらいの短い時間でバルファルクの獣宿しは砂上に勢いよく激突した。巻き上げられる砂と共に砂漠に巨大なクレーターが作り上げられた。ラーはその光景を見て少し冷や汗を書いた。

 

ラー「おいおい…超高度から地面にぶつかってるのにほぼ無傷かよ…しかもできたクレーターを見りゃ誰でも威力は察しがつくな。なるほどこれが古龍種か…数千数万というほどの途方もない年月を生き抜けたのも頷ける。そりゃあ敵わねぇわけだ。」

 

周りを見てみれば魔術師達が複数倒れていた。恐らく逃げ遅れたのだろう。しかし、幸いにも直撃を喰らったものはおらず、ミンチ肉がその辺に転がってたりはしなかった。

 

ラー(さっきの一撃で半分近くの魔術師達がやられたな。これはキツいな…。)

 

と、考えを巡らせていたラーだったがバルファルクの獣宿しはまた直ぐに上空へ飛び立った。再びラー達はその場から逃げようとするが、その必要はなかった。バルファルクの獣宿しは何を思ったか別の場所に行ったようだ。

 

ジョー「今度こそ行ったか?」

 

ラー「そのようだが…何故今頃になっていきなり…」

 

ジョー「移動する前何か不審な行動とかしてたか?」

 

ラー「俺は不審な行動とかは見てないが…いや、移動する直前何故かあいつ誰もいないところをじっと見つめていた。」

 

ジョー「じゃあそれに誘われて行ったんじゃねぇの?」

 

ラー「余り腑に落ちないが…まぁ今は助かって良かったって思うべきだな。」

 

ラー「…おい!お前ら!」

 

魔術師達「?」

 

ラー「お前らはこのあとどうする?」

 

魔術師T「一旦街に戻って報告する。」

 

ラー「お前らの言う街って王都サンバナか?」

 

魔術師T「そうだが、それがどうした。」

 

ラー「荷車に伸びたお前らの仲間乗せてってやる一応役にはたったしな。」

 

魔術師T「上から目線なのが気に入らんが、感謝する。」

 

ジョー「おう。」

 

それからラー達は倒れている魔術師達を回収した後、スーラ達を迎えに行き、スーラ達も荷車に乗せ、王都を目指した。二時間はかかると踏んでいたが魔術師達の魔術で荷車をかなり軽くしてもらい、砂漠の暑さをある程度遮断してもらったため一時間もかからずに到着した。

 

ラー「さて、依頼人の元へ行くとするか…」

 

ジョー「あぁ、魔術師達をけしかけやがって、許せねぇ。」

 

スーラ「やり過ぎないでよ?」

 

ラー「分かってるよ。」

 

 

 

 

 

                  続く

 

 

 

 

 



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古龍会議

遅くなってすみませんでした。


超高空圏

 

一つの物体が猛スピードで進んでいる。バルファルクの獣宿しだ。バルファルクの獣宿しは空を音速を越えるスピードで進み、目的地を目指していた。目指している地は、中央大陸と北大陸の丁度真ん中にある島、そこに建っている一つの古ぼけた外見の城だ。

 

城内部 会議室

 

黒い角を生やした青年「…で、まだ帰ってこないのか、あいつは。」

 

黒い角を生やした青年はそう不機嫌そうに呟く。

 

鋼色の角を生やした青年「そのようですね。」

 

と、黒い角を生やした青年の隣に座っている青年は返した。

 

古代の衣装を着た少女「あやつはまだ人間の体に慣れきっておらんからの。」

 

と、黒い角を生やした青年より二席分程離れたところに座っている少女が言う。

 

古代の衣装を着た青年「慣れるまではずっとあんな感じだろうな。」

 

と、少女の隣に座っている青年は言った。

 

黒い角を生やした青年「はぁ…面倒だ…」

 

そう青年が呟くと、鋼色の角を生やした青年の隣にの席から笑い声と共にカメレオンのお面を着けた青年が現た。

 

カメレオンのお面を着けた青年「へへっまぁそう言うな。流石のオイラも蘇り、それも人間の肉体を持つなんて予想出来ねぇよ。最初は混乱するだろ。」

 

白いワンピースの少女「そうかしら?私は結構早く馴染めたけど。」

 

カメレオンのお面を着けた青年「それはあんたやボレアスの兄貴だけだろう。ゴグマジオスの奴なんか龍の頃の癖で人間の体で火薬食って腹壊して寝込んでるからな。」

 

ボレアスと呼ばれた黒い角の青年「バカだろアイツ。」

 

そんな事を話していると天井の壁を突き破りバルファルクの獣宿しが会議室に入ってくる。

 

ボレアス「いい加減天井突き破りながら入室してくるのをやめてくれないか。」

 

バルファルク「キィィィ…」

 

ボレアス「悪いけど何言ってんのか全然分からねぇ。」

 

と、ボレアスは一通り突っ込みを入れたあとバルファルクの獣宿しがかなりダメージを負っていることに気付く。

 

ボレアス「…お前それ誰にやられた?火傷に…雷でも喰らったか?お前は龍属性以外には悲しいほど弱いもんな、この世界の魔術師とか言う奴等とは相性悪いからな。しかし、お前も古龍の一柱だろう。まさか魔術師ごときに負けたとかじゃ無いだろうな。」

 

バルファルク「キィィィ…」

 

ボレアス「何て?」

 

カメレオンのお面の青年「魔術師と変な二人組にやられたそうッスよ。」

 

ボレアス「変な二人組ねぇ…」

 

古代の衣装を着た少女「こやつが変だと言うのならほぼ間違いなく獣宿しじゃな。」

 

古代の衣装を着た青年「そうだな。」

 

ボレアス「…ふむ、バルファルクよ、その二人組の特徴は?」

 

バルファルク「キィィィ………」

 

カメレオンのお面を着けた青年「金髪と緑髪の男だそうで。」

 

ボレアス「大雑把過ぎるだろ。この世界金髪も緑髪もかなり多いぞ。」

 

鋼色の角を生やした青年「しかし金髪と緑髪の二人組でなおかつ獣宿しだと言うのならかなり絞られるかと。」

 

ボレアス「…まぁそうだけど。ならその二人組の捜索はお前に任せるぞクシャル。」

 

クシャルと呼ばれた鋼色の角の青年「分かりました。」

 

クシャルはそういうと席を立ち会議室室から出ていく。

 

古代の衣装の少女「我等には何かないのか?」

 

ボレアス「クシャルだけで十分だと思うが、行きたければ行っていいぞ。」

 

古代の衣装の青年「決まりだな。」

 

そう言うと二人は席を立ち背中から翼を生やして先程バルファルクが開けた天井の穴から出ていった。バルファルクも同じく出ていこうとするがボレアスに止められる。

 

ボレアス「お前は天井を直せ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

城の外で白いワンピースの少女は軽い足どりで歩いていた。

 

白いワンピースの少女「さてさて、面白くなってきたわね♪」

 

                   続く



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帰路

王都 サンバナ

貴族の屋敷

 

ラー「…さて、言い訳があるのなら聞きますが?」

 

依頼人の貴族「…えっと…」

 

ジョー「無いようだな。よしぶっ潰す。」

 

ラー「まぁ待て。貴族殿、貴方は我々を殺すように依頼を出しましたね?いやぁもう証拠も証人もいるんで言い逃れはできませんねぇ…」

 

依頼人の貴族「…はい…」

 

ラー「じゃあまずは慰謝料の件ですが…」

 

 

数時間後…

 

 

 

大金の入った袋を持ったラーとジョーが意気揚々と屋敷から出てきた。

 

ラー「いやぁ、話の分かる貴族殿でよかったぜ。最悪の場合は武力行使も検討していたからな。」

 

ジョー「検討じゃなくて確定事項だろ。」

 

ラー「ははっ当たり。」

 

そう雑談をしながら二人は外で待たせていた二人に呼び掛ける。

 

ラー「終わったぞー。」

 

スーラ「もう、遅いよ~一時間以上かかってるじゃない。」

 

ジョー「わりぃな。」

 

元ディアブロスの獣宿し「…。」

 

ラー「どうした?黙り込んで?…ははーん、分かったぞ。お前これから先どうやって生きていこうかって思ってるな?」

 

元ディアブロスの獣宿し「えぇ、どうやら自分は狂って暴れ回ったみたいですし、知り合いや親にも会わせる顔がないです。」

 

暗い表情の元ディアブロスの獣宿しの言葉にジョーは下らないとでも言いたげな顔で

 

ジョー「別にお前の意思でやったんじゃないなら別に良いじゃねぇかよ。細かいことをいちいち気にすんな。」

 

と言った。

 

元ディアブロスの獣宿し「ですが、自分が暴走してしまったのも事実ですし…」

 

ジョー「メンドクセェ奴だな、暴走したのはディアブロスであってお前じゃねぇよ。大体終わったことをいちいちぐちぐちと、それでも男かよ。」

 

元ディアブロスの獣宿し「…。」

 

ラー「話は終わったようだな。じゃあ俺達は帰るぞ。元々何泊もするつもりは無いからな。」

 

スーラ「あ、うん。またねお兄さん。」

 

元ディアブロスの獣宿し「う、うん、またね。」

 

そしてラー達は王都サンバナをあとにした。行きと違い、どこかスッキリしたような表情で。

 

ナナシ砂漠

 

馬車に揺られながらラー達はクレーターだらけの砂漠を眺めていた。

 

スーラ「それにしても馬車に乗れてよかったね!」

 

ラー「そうだな…馬車の中は直射日光が当たらないだけまだましだ。帰りに地獄を見ずに済んだ。」

 

ジョー「しかし、あの古龍種の獣宿しは何だったんだろうな。」

 

ラー「知るかよ。餌でも食いに来てたんじゃねぇの?」

 

車掌「御客様方、到着しましたよ。」

 

ジョー「お、着いたか。ご苦労ご苦労。」

 

三人は馬車を降り、辺りを軽く見渡した。眼前は海、後ろには砂漠という奇妙な光景をみた。三人は軽く笑みを浮かべた。

 

何だかんだで家到着

 

ジョー「久しぶりの我が家ー!!」

 

スーラ「我が家ー!!」

 

ラー「お前らうるせぇぞ。」

 

暫くして二人は落ち着きを取り戻し、リビングでくつろぎ始めた。

 

ラー「あ、俺明日から筋トレ始めるから、邪魔すんなよ。」

 

ジョー「あん?何で筋トレなんか…あぁ、成る程。ディアブロスに負けたのがそんなに悔しかったか。」

 

ラー「負けてねぇ!!深手は負ったけど負けてねぇぞ!」

 

スーラ「この騒がしさ、いつもの日常にもどった実感があるなぁ~」

 

 

 

 

 

                  続く

 

 



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嵐に舞う黒い影

何でも屋ラー&ジョー

 

普段騒がしいこの店は今静けさに包まれていた。

 

ラーは窓の外をじっと見つめ、ジョーは暇そうにソファーに寝転がり、スーラは床でゴロゴロしていた。

 

ジョー「酷い雨だな…ここまでのは初めてじゃねぇか?」

 

だるそうにジョーがそう呟く。

 

ラー「そうかもな。それに風も強い…今日は外に出ない方が良いな。店も今日は休みにしよう。」

 

スーラ「休みってことは今暇って事だよね?トランプでもする?」

 

ジョー「暇潰しくらいにはなりそうだな。やろうぜ。」

 

割と乗り気なジョーがソファーから起き上がる。

 

ラー「そうだな…。」

 

窓の外を見続けていたラーも窓から目を離しトランプに参加した。

 

 

 

荒れた空を黒い影が飛んでいた。激しい雨は何故か黒い影に一滴も当たらない。何かに弾かれたかのように黒い影から離れていく。

 

黒い影「見つからないな、金髪と緑髪の獣宿しの二人組。この大陸にはいないのか…?」

 

黒い影、クシャルは辺りを見渡す。そこでクシャルの視界に王国モビスが目に入る。

 

クシャル「国か…さてここにいるのかいないのか。」

 

そういいながらクシャルは高度を低下させ、モビスに向かっていった。

 

 

一方三人は

 

スーラ「やったー!上がり!」

 

ジョー「ちっくしょおおおおおおおお!!!!」

 

ラー「はは、又ジョーが最下位だ。」

 

トランプが白熱していた。

 

ジョー「何故だ!?何故勝てない!?」

 

ラー「そりゃあお前、何も戦略を考えずにただ強い札を序盤に出しまくったらそうなるだろ。」

 

スーラ「ジョーって先の事を考えるの下手だね。」

 

ジョー「畜生が…」

 

と、そんな他愛ない話をしていたラー達だったが、

 

ラー「!」

 

ジョー「む…」

 

スーラ「ん」

 

三人同時に会話を中断する。

 

ラー「獣宿し特有の気配…しかも屋内から感じとれる程強力な…古龍種型か?」

 

ジョー「古龍種…大雨…それだけでかなり候補が絞られたな。」

 

スーラ「私でも相手がとにかく強いってことが分かるわ…どうするの?」

 

ラー「いや、どうするの?って言われてもなぁ…相手の目的が分からん内はどうしようもねぇよ。相手も獣宿しだから俺らが隠れて大人しくしてても見つかるだろうしな。」

 

と、そんな話をしていると、店の呼鈴が鳴った。

 

ラー「最悪だな。」

 

目を鋭くし、細心の注意を払いながらドアに手を掛け、開いた。

 

そこには鋼色の髪をしたスーツ姿の男が立っていた。

 

ラー「(外があんなにもどしゃ降りで、しかも見たところ傘や雨合羽の様なものはない。なのに濡れてるどころか水滴すらついていない…こりゃ確定だな。)すみません、今日は店はお休みなので依頼は明日にしていただけませんか?」

 

クシャル「白々しい芝居は結構。見ただけで分かりますよ。あなたかなり強力な獣宿しの様ですね。他にもこの家には強力な獣宿しの気配が一つ、並の上程度が一つ。」

 

ラー「…それで?」

 

クシャル「簡潔に聞こう。バルファルクを倒したのは貴方か?」

 

ラー「…いや?知らないけどそんな名前の奴。」

 

クシャル「今、一瞬言葉が詰まったな?お前は嘘をついている。」

 

ラー「…チッ」

 

苦し紛れの嘘があっさり看破され、舌打ちをするラー。

 

ラー「それで?報復に来たというわけか。」

 

クシャル「いや、勧誘だ。」

 

予想外の答えに頭に?マークを浮かべるラー。

 

ラー「勧誘?」

 

クシャル「そう。我々の組織に入らないか?バルファルクを退ける程の実力者を死ぬのは惜しいし、私としては無駄な血は流すべきではないと思っている。」

 

ラー「ほう…」

 

ラーは目を細め、観察するようにクシャルを見つめる。

 

ラー「詳しい話を聞こう。中に入れ。」

 

そういいながらラーはクシャルを中に入れた。

 

店の客間でいつも道りの姿勢でソファーに座ったいるラーとジョー。スーラは怯えるようにソファーの後ろに隠れている。そんなラー達の前には同じくもう一つのソファーに座っているクシャルがいた。

 

ジョー「お前達の組織の名前と目的は?」

 

クシャル「組織の名は古龍軍。文字通り主に古龍種で構成されている。が、入りたいと言うものがいれば別に古龍種ではなくとも快く受け入れている。そして、我々の目的だが…人類種の数の調整だ。」

 

ラー「何だと?」

 

クシャル「今、人類は急激な増加を続けている。このままだと他生物の居場所をすべて奪い、この星は人間が完全に牛耳る事になるだろう。しかし、だからといって人類も自然の一部、絶滅させるのはいくらなんでもやりすぎだ。ということで絶滅もさせず、かといって人類に星を牛耳らせないように数を調整することにした。」

 

ジョー「ふーん…今の人類の数ってどのくらいだっけか?」

 

ラー「約十億」

 

ジョー「結構いるな。それで?どのくらい減らすつもりなんだ?」

 

クシャル「大体1000万前後になるまで減らそうと思う。」

 

ラー「百分の一かよ。」

 

クシャル「お前達は獣宿し、姿は人間でも中身は人間じゃないだろう。どうする?加盟するか?」

 

ジョー「確かに俺たちの中身は人間じゃねぇ。でもな…」

 

ラー「俺たちは今この人間社会で生きている。そんな人間が大量に死んだら俺たちも困るしな。お断りだ。」

 

クシャル「…そうか、なら仕方ない。お前を危険因子と判断し、ここで始末する。」

 

その瞬間クシャルの周りから風が吹き始める。鋼龍クシャルダオラとの戦闘が始まる…!

 

 

 

                   続く

 



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風翔龍

クシャルの体から暴風が巻き起こり部屋の中を白く染め上げる。

 

ラー「風強すぎだろ…!前みえねぇ…」

 

暴風によりラーは目を開けることすら出来ない。

 

ラー「お前ら!!吹き飛ばされたりしていないか!!!」

 

暴風の中仲間に叫ぶもこの風ではおそらく聞こえないだろう。しかし、暴風は突然止み、つんざくような寒さが全身を襲った。

 

ラー「…!?」

 

何事かと思い目を開けるとそこには一面の雪景色があり、腕を組んだクシャルがこちらを見つめていた。

 

ラー「何だこりゃあ…」

 

ジョー「雪山?」

 

スーラ「私たちの部屋じゃない…!?」

 

クシャル「私の魔術の一つ、空間創造の魔術だ。この雪山は私が作り出した。」

 

ラー「獣宿しが魔術を…!?」

 

クシャル「なに、我々なら造作もない事だ。宿主の肉体をちょいと弄くって魔術を使えるようにしてやったんだ。」

 

ラー「本当古龍ってメチャクチャだな。」

 

ジョー「というよりもこの世界の魔術って奴にこんなヤバいのもあるなんて思わなかったがな。」

 

そういいながらジョーは辺りをよく見渡す。自分達三人とクシャルを除いてあの部屋にある物は一つとして見当たらなかった。

 

ジョー「空間を作り出して引きずり込むなんて随分大掛かりじゃねぇか。」

 

挑発気味に発言してみたがクシャルはまるで意に介さない。

 

クシャル「我々古龍種の力は目立つものが多い。私も力を使うときは暴風雨が起こるしな。だから空間を作り出して引きずり込んだ。ここなら本気でやっても気付く奴もいない。」

 

ラー「成る程…しかし、それなら俺らも周りを気にせずに暴れまわれるな。」

 

と、ラーは軽く笑みを浮かべた。

 

ジョー「スーラ、危ないから下がってろ。」

 

スーラ「下がるもなにも、ここがあのクシャルって人が作った空間なら安全な場所なんてないと思うよ。」

 

ジョー「それもそうだな。よし、お前も戦え。」

 

スーラ「え」

 

ジョーは返答も聞かずにクシャルの元へ走り出した。それを見たラーも走り出す。クシャルはそれを妨害する訳でもなく迎撃する訳でもなくただ見ていた。そこへラーの拳、ジョーの蹴りが突き刺さる…が

 

ラー「…っ!」

 

ジョー「!」

 

二人が顔をしかめた直後、クシャルの体から暴風が吹き出し二人を吹き飛ばした。

 

ラー「まぁ…クシャルって名前の時点で分かってたけどよ。」

 

ジョー「やっぱり張ってるか、風のバリア。」

 

クシャル「当然だろう。(しかし、この二人の戦闘能力はかなりのものだ。勢いをつけた一撃とはいえ風のバリアを破るか…次からは避けた方がいいかもしれないな…)」

 

ラー(風のバリアを破るまではいけるが破った時点でかなり威力は殺されているしクシャルダオラはたしか体表が鋼の筈だ。ダメージは微々たるものだろう。まずは風のバリアをどうにかしないと勝てねぇ。)

 

と、それぞれが考え、作戦を練っている時にジョーはクシャルに問答無用の龍ブレスを放つ。しかし、放たれたブレスはクシャルが放った風のブレスに押し返され、風によって吹っ飛ばされたジョーは頭から雪上に落下し顔面が埋まった。

 

ラー(…?あいつ風のバリアを纏っている筈なのにブレスを放てるのか?普通なら自分のブレスでも風のバリアによって打ち消される筈だ。なのに何故?まさか…)

 

ラー「ジョー!もう一回ブレス放て!」

 

ラーは雪から漸く顔を抜いたジョーにそう叫ぶ。

 

ジョー「(何か作戦思い付いたのか?)分かった!」

 

再びジョーは龍ブレスを放つ。

 

クシャル「無駄だ!」

 

クシャルが風のブレスを放ちジョーのブレスを押し返す。その瞬間にラーは思い切り地面を蹴り、クシャルに肉薄する。風のうねりは感じない。

 

ラー「やっぱりブレスの時はバリアを解除するみたいだな!」

 

バリアのないクシャルの身体にラーの拳がまともに突き刺さる…事はなかった。

地面から突然竜巻が発生しラーを巻き上げる。

 

ラー「うぉあ!?」

 

そしてそのまま地面に落下。落下直前に見た光景はジョーが風のブレスで吹っ飛ばされている光景だった。

 

クシャル「この世界の魔術の一つ、転移と私の力の応用だ。私は遠距離操作でも風を操れる。」

 

クシャル「魔術など無くとも自分の能力だけでやっていけると慢心していたな?確かに我々強力な種ならこの世界の人間どもの使う魔術などにやられはせん。しかし、応用によっては獣宿しの能力を強化、補助できる。」

 

そう言い終えた後クシャルは上空に翔んだ。ブレスや岩投げで落とそうとするもヒラリとかわされる。そして二人はクシャルが何かをぶつぶつ呟いているのを耳にした。

 

クシャル「こんな風にな」

 

ラー「まさか詠唱魔じゅ

 

クシャル「ブリザード!!」

 

吹雪の魔術ブリザードにクシャルの風の力を上乗せ、凍える竜巻が二人を襲った。

竜巻が消える頃には二人は全身血塗れ、しかも肉体の所々が凍りついているという目も当てられない状態になっていた。

 

クシャル「我々の仲間になっていればそのような状態になることは無かったのに、残念でならない。」

 

と、クシャルが呟いた瞬間クシャルに熱線が直撃する。間違いなくスーラが放った熱線だった。

 

スーラ「ようやく成功した…けど。」

 

クシャル「幼子よ、今の攻撃は無かった事にしてやる。そこで先程までのように大人しく見ていろ。そうしていれば見逃してやる。」

 

スーラの熱線がまるで効いていないのか涼しげな顔でクシャルはそう言い、雪山の空間を解除した。

 

スーラ「え…部屋に戻った…?」

 

クシャル「空間創造を解除しただけだ。さて…」

 

驚いているスーラを無視してクシャルは倒れている二人へ目を向ける。止めを刺そうと二人へ近づいたその時、倒れていたラーがクシャルの顔面に手を向け雷弾を破裂させた。目の前で雷弾が破裂し、クシャルは思わず目を瞑る。ラーとジョーはその隙に即座に起き上がり、スーラを抱え窓から飛び降りた。

 

クシャル「!…しまった…」

 

追おうとするクシャルだったが窓に目を向けたときにはもう三人の姿は無かった。

 

クシャル「逃がしたが…住んでる国はもう分かった。一度戻ろう。ここで待ち伏せしたところで警戒して帰って来ないだろうしな。」

 

そう言いクシャルは背中から鋼色の翼を生やし空へと飛び去っていった。

 

 

その頃…

 

 

王国モビスのとある店

 

ラー「悪いな、助かったぜ。」

 

占いの魔術師「いえいえ、貴方達にはお世話になったことがありますから。それにしても手酷くやられましたね。普通の人間なら死んでますよ。」

 

ジョー「生憎普通じゃないんでな。」

 

占いの魔術師「お嬢さんはほぼ無傷で良かったですね。」

 

スーラ「…うん。」

 

ラー「軽くあしらわれたからって落ち込むなって、お前はあの時自分がとるべきベストの行動をしただけだ。」

 

スーラ「何もしてないよ…私は」

 

ラー「俺たちはお前に目を向けれるほど余裕なかったし、戦ったらお前は絶対にやられていた。だからお前はあの場ではなにもしないのがベストだったんだ。」

 

スーラ「…うん。」

 

占いの魔術師「せっかく来たんですから占いましょうか?これからの事とか。」

 

ジョー「金ねぇよ。」

 

占いの魔術師「タダで良いですよ。その様子だと金もっているようには見えませんし。」

 

ラー「なら頼む。」

 

 

 

しばらくして…

 

占いの魔術師「出ました!」

 

ジョー「おせーよ!!何十分待ったと思ってんだ!」

 

占いの魔術師「このまま何も得ずに過ごしていると貴方達は死にます。」

 

スーラ「死ぬの!?」

 

ラー「何も得えなければ死…何かを得る…古龍に殺されない何か…」

 

ラー(自分の力を強化、補助できる魔術…?)

 

ラー「それならまずは獣宿しでかつ魔術が使えるやつを探さねぇとな…あっ」

 

スーラ「どうしたのラー?」

 

ラー「お前ら!突然だが王国セオンに行くぞ!」

 

ラー以外「え?」

 

 

 

 

 

 

                  続く

 

 

 



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温泉通の獣宿し

遅れてしまって申し訳ありませんでした。


王国セオン

 

ジョー達はラーについていく形で王国セオンに到着した。

 

ラー「ここにいるはずだ…。」

 

ジョー「あの時のボロ旅館か。何故こんなとこに…」

 

スーラ「そうだよ、まだラー達は傷だって癒えてないんだし…」

 

ラー「スーラは来たこと無いから仕方ねぇけどジョーお前は覚えてろよ。会っただろ変な奴に。」

 

そういいラーはジョーを呆れたように見つめる。

 

ジョー「あ~?………そういやいたな。変な奴。」

 

ラー「やっと思い出したか。」

 

スーラ「あの…」

 

スーラがおずおずと手を挙げる。

 

ラー「ん?」

 

ジョー「何だ。」

 

スーラ「その人って男?」

 

ラー「あぁ、男だが…成る程、男湯入れないもんなお前。」

 

ジョー「まぁお前はゆったり温泉を楽しんでいろ。」

 

スーラ「…うん。(また仲間外れか…)」

 

少し不満そうな様子のスーラをこの二人が気遣う訳もなく、戸を開け旅館に入っていく。

 

スーラ「あっ待って待って!!」

 

ラー「別に置いていく訳でも無いんだからそんな焦るなって。」

 

 

 

男湯

 

ラーとジョーが戸を開けると、そこにはあの時に会った男がいた。

 

ラー「よう、久しぶりだな。覚えているか?俺達の事。」

 

ジョー(俺は忘れてたけど…)

 

男「あぁ、しっかり覚えているよ。久しぶりだね。頼み、聞いてくれたかな?」

 

ラー「獣宿し達の保護の事だろ。安心しろ、しっかりやっている。」

 

男「そうか、ありがとう。僕の願いを聞いてくれて。」

 

ラー「礼なんかいらん。それよりも相談したいことがある。獣宿しであり、熟達の魔術師であるお前にな。」

 

男「…何故僕が魔術師…それも熟達って分かったんだい?」

 

ラー「匂うんだよ。魔術師特有の魔力の匂いが…」

 

男「魔力の匂いか…僕も獣宿しだが魔力の匂いなんて嗅いだことないけどな…」

 

ジョー「そりゃお前が獣宿しである前に魔術師だからだろ。匂いよりも魔力感知の方が精度が良いらしいからな。」

 

男「…成る程ね。」

 

ラー「そろそろ本題に入っても良いか?」

 

男「コホウ・スカイ」

 

ジョー「は?」

 

コホウ・スカイ「僕の名前さ、いつまでも[お前]だと君達も面倒だろ。」

 

ラー「あぁ、そうだな…。なら俺達も名乗ろう。俺はラー・ビスタ。」

 

ジョー「ジョー・ドラクルだ。」

 

コホウ・スカイ「ok 覚えた。それでほぼ初対面の僕に相談って?」

 

ラー「魔術を教えてくれ。」

 

コホウ・スカイ「ヤダ。」

 

ジョー「即答かよ。」

 

ラー「何故だ。」

 

コホウ・スカイ「魔術の使い方がどれだけ分かっても、魔力はどうあがいても才能が必要だからね。そればかりはどうしようも。」

 

ラー「そのための獣の力だろう。ラージャンたる俺は強力な電気エネルギーを雷系統の魔力の代わりにする。」

 

ジョー「俺は…龍属性って魔力系統あったっけ?」

 

ラー「ない。が、無いなら作れば良い。」

 

コホウ・スカイ「無茶苦茶言うねぇ。けど面白いじゃないか。気が変わったよ。」

 

ラー「お、協力してくれるか!」

 

コホウ・スカイ「出来るようになるって保証はないけどね。」

 

ジョー「じゃあ早速始めるか。」

 

コホウ・スカイ「いやいや、まずはこの温泉を楽しもうよ。それに君たちが今最優先にやることはその傷を癒すことだしね。」

 

ラー「…それもそうだな。」

 

 

 

 

その頃スーラは

 

女湯

 

スーラ「気持ちいい~」

 

先程の不満はどこえやら言われた通り普通に温泉を満喫していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

           

 

                    続く



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獣の魔術

一年以上も失踪してすみませんでした。色々忙しくて後回しにしていたらこんなに経ってしまっているとは…


ひとしきり温泉を堪能した後、コホウ・スカイに連れられてラー達はとある人気のない広場に来ていた。無論スーラもしっかり連れてきた。三人がちゃんといるのを確認するとコホウ・スカイは口を開く。

 

「まず君達は知らないかもしれないから一応説明しておこう。我々魔術師が使う魔術と獣宿しは非常に相性が悪い。よって獣宿しが使える魔術は余程簡単な魔術か、自分の波長に合う魔術だけだ。」

 

「つまり俺の場合はラージャンとして波長が合う雷系統の魔術は使えると?」

 

「そうとも限らないんだよね、波長が合う魔術でも使えない物はある。」

 

ラーの問にスカイは少し気まずそうに答えた。

 

「随分とめんどくせぇ物なんだな魔術って。」

 

「ははっ…普通の人間ならここまで面倒くさくないんだけどね。」

 

ジョーの愚痴にコホウは苦笑いしながら答える。

 

「異世界の獣達…君達のもといた世界ではモンスターと呼称されている存在はその悉くがこの世界の常識を簡単に覆す奴らさ。特に龍属性とかいうものは僕らの世界の魔術属性には無いものだ、自分達が見たことも聞いたこともない未知の属性を扱う生物…人々に恐がるなと言う方が無理な話さ。」

 

「それに「いやその話はいいからよ、いい加減魔術教えてくんねぇか?」

 

まだまだ続きそうなコホウの話しをジョーが強引に遮る

 

「そうだね、すまない。じゃあ魔術の説明に入ろう。僕が波長が合う魔術でも使えないかもしれないと言ったのは君達の肉体の問題、君達が乗っ取っているその二人の青年の魔術への適性の有無と、有る場合どの系統の魔術に一番適性があるのかという点、魔術を放つ奴だけが魔術師ではないんだ。肉体強化を得意とする魔術師もいるし様々な物に新しい属性をエンチャントするのが得意な魔術師もいるしね。」

 

「ほぉ~それで俺達の肉体がどの系統に特化しているのか調べるってことか?」

 

コホウの説明にさっさと魔術を覚えたいジョーが食い気味に口を挟む

 

「うん、そういうことだね。その前に魔術そのものへの適性の有無を調べるけどね。」

 

「しかし魔術そのものへの適性なんてどうやって調べるんだ?魔術でそういう事が出来るのか?」

 

「出来るよ。しかもかなり簡単な部類の魔術だから今すぐにでも調べられるよ。」

 

「それは凄いな、魔術ってそんな便利な物だったのか知らなかった。」

 

ラーの言葉にコホウは(眼の魔術は彼にとって便利に入らないのかな)とか思いながら魔術適性を調べる魔術を使うため手を二人の方へ向ける。そうしたら二人のいる場所に淡い光が降り注ぎ二人を包み込む。二人は黙って立っていたがジョーがスーラが光の中にいないことに気付き、光の外側にいるスーラな

 

「スーラお前は調べないのか?」

 

と質問した

 

「私は奴隷商の所にいた頃にもう適性は低いって判定されてるから…」

 

ジョーの質問にスーラは自嘲が混じった声で答えた

 

「…まぁお前がそれで良いというなら俺達も特に何も言わないが…」

 

ジョーはすこし眉を潜めラーはなんともいえない様な顔になったがすぐに切り替え、コホウへ向き直る

 

「それで?これでもう分かったのか?」

 

ラーの質問にコホウは

 

「ワァオ…」

 

という何とも不安にある呟きを溢した。

 

 

 

 



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