東方鬼蛇伝 (鬼怒藍落)
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第一章誕生
第一話


 昔々のある村の出来事

 

とある黒髪の少女が赤黒い蛇を殺したところから始まる。

やがて少女は大人になり、結婚し、男児を産んだ。しかし、その赤子は普通ではなかった。髪は赤黒く肌は白く蛇のような鱗がある。そう、この子は蛇に呪われ生まれてきた。そしてこの子は忌み子として森に捨てられた。

 

 

 

森には夜が訪れていた。子は泣き続け、そこに妖怪や獣が集まってきた。

そして、泣き声を聞き、角の生えた女がやって来た。女を見て獣たちは逃げ出した。

女は子を、一目見て。

 

「なんだこやつは」

 

とつぶやいた。

女は何かを考えた後、再度つぶやく。

「ふむ、拾ってみるか」

 

女は子を拾い、森の奥へと向かう。

子は泣き疲れたのか、それとも妖にでも抱かれると安心なのか寝てしまっていた。

やがて森の奥の洞窟に着き、赤子をそばに置くと女も眠った。だが数刻の後、

赤子の鳴き声が響く。 

 

「ふむ、起きたか。人の子のなんと面倒なこと」

 

赤子はいっこうに泣き止まない。

 

「これ泣き止まんか」

 

女が覇気を出すと怒鳴った。怒鳴っても泣き止まないことがわかると女は指を赤子の口の中に入れると指を吸わせる。女の妖気を吸ったのか赤子は泣き止んだ。それを見て女は独り言のようにつぶやいた。

「これから儂はお主を育ててから食うことにした。まあ拒否はできぬけどな」

だが、と女は続けた。

 

「せいぜい何か面白い事を覚えてみろ。そしたら食わぬかもな。まあ言うてもまだ理解できぬか…。せいぜい頑張るがいい」

 

 

 

 

 

それから4年。

 

「主様」

森から子供の声が聞こえる。

 

「なんじゃ」

 

子供は木の籠にいっぱいの木の実を入れ

 

「木の実を拾ってきました」

 

女は、子のほうを向き、

 

「ごくろうじゃった」

 

子は木の実を女の方へおき、

 

「次は何をすればいいでしょうか」

「水を汲んできてくれ」

「了解しました」

 

子は川のほうに歩いて行った。

しかし子は日が暮れても帰ってこない。

ここから川までは半時ほどなのに帰ってこないのはおかしい。

女は川のほうまで見に行った。しかしそこには、子の姿はなく、二人の妖怪がいた。

 

「それにしてもよく攫えたよな」

 

一人の妖怪がそう言った。するともう一人の妖怪が、くつくつと笑った。

 

「2年前からあの宿儺母禮(すくなもれい)が子育てしてるとほかの妖怪が噂してたからな」

「洞窟を探して見張っていればすぐ見つかったわ。楽だったぜ」

「今頃、牛鬼様のところにいるだろう」

そこまで聞くと母禮は言った。

「ほう、儂の食料を攫ったのか。お主ら、よほど殺されたいようだな」

 

いきなり響いた冷酷な声の主の姿を知覚する暇もなく、一匹の妖怪の頭は砕かれた。母禮は逃げようとするもう一匹の妖怪の足を捥いだ。

 

「それであやつは何処じゃ?早く答えろ。次は金的を潰すぞ」

 

すると妖怪は慌てて、叫んだ。

 

「いっ、言うから待ってくれ!」

「遅いぞ。早くしろ」

 

母禮は右腕に力を込めた。

 

「垣根山の頂上の住処にいる!」

 

叫ぶ妖怪を捨て置き、母禮は立ち去った。

 

 

 

 

 

 

住処で、一人の男と人の顔を持つ牛が笑っていた。

 

「牛鬼様、こいつです」

「件よ、そうかこいつか。こいつを人質にしておびき寄せ母禮を殺し、俺がその妖気を取り込めば俺は最強になれる」

 

牛鬼は下卑た笑いを納め、子をじっと見た。

「気味が悪い子供だ。なぜ人の子の肌に鱗があるんだ。これでは食う気もおきん。部下たちにでもやるか」

 

子が周りを見ると何十匹もの妖怪がうごめいていた。

自分が人質に?自分は主に迷惑を掛けることになるのだろうか。痛烈な後悔が沸き起こる。自分があの時捕まらなければ。

だが主が自分を救いに現れるという確信など微塵もなかった。捨てられた子。自分は初めからいらない子供なのだから。役に立つならば存在することも許されようが足を引っ張る自分など主が許すわけもない。子にはいまだに名前すらなかった。それがどういうことなのかわかるはずもない年だったが、心のどこかで理解していた。自分はごみのように捨てられたいらない子なのだ。

目を閉じる。

(殺せ)

何かの声がするような気がしてハッとする。こいつらを殺せば今すぐ帰れるんじゃないか。

そうだ殺そう。子の中でその考えは妙にしっくりきた。そうすればいいんだ。

でもどうしよう?

死ね。死んでくれ。

そう無意識に祈った途端、近くの妖怪に雷撃が落ちた。悲鳴が上がる。また「死ね」と祈る。

今度は凍った。死ね。燃えた。死ね。突風が妖怪を起き切り裂く。

死ね死ね死ね死ね死ね死ね。

周りの妖怪はどんどん死んでゆく。さながら地獄絵図のようだった。

しかしそれで、死ぬ牛鬼ではなかった。

 

「おまえの仕業か?!」

 

目の前の光景のすべてが子の仕業だと牛鬼が気が付いた時、子の力が切れた。

これを見逃す牛鬼ではない。異形の姿に身を変え、子を殺さんばかりに前足を振り上げた。

 

「殺す」

 

殺ったとそう確かに思ったのに、己の足が消えていた。おかしい。なぜだ。そう不思議に思うほどの速度で足を拳で吹き飛ばされ捥がれていた。馬鹿な。

 

「この状況を作ったのは誰じゃ?」

 

不意に、声が聞こえた。

 

「主…様?」

 

子は声の方に向き

 

「なんじゃ」

 

驚いた様子で、

 

「なぜ..ここに...」

「お主は儂の食料じゃ、所有物を取り返すのは当り前じゃろ」

母禮はそう言った。そして、今まで黙っていた牛鬼が叫んだ。

「貴様ら、舐めるな!!」

「なんじゃうるさいのう、黙っておれ」

 

そう吐き捨てると母禮は牛鬼に飛びかかり蹴った。

牛鬼は吹っ飛び、絶命した。今度は叫ぶ暇もなかった。

隅のほうに、まだ残っていた件を見て、母禮が一言、つぶやいた。

 

「殺すか」

 

件はおびえながら、

「お前はあと20年以内に死ぬ」

と呪いの言葉を吐くと、岩に頭をぶつけ自害した。ぐしゃりとまるで卵のようにつぶれた頭から血が流れているのを冷ややかに見つめ、あっけないのう、と母禮が再びつぶやきを落とした。つまらぬ、という声が続く。

 

「まあいい、帰るか」

聞きなれた主の声に子は我に返った。目の前で起きたことがまだ現実ではないように感じたが、もはや立っているのは主と自分のみだった。ごみのようにつぶれた妖らのおびただしいほどの死骸を前に感情などわかないのだった。そのような感情など教えられてはいなかった。

「主様、すみませんでした」

「謝罪は不要じゃ。面白いものも見れたしな。この惨状はおぬしがやったんじゃろ」

子は周りを見渡し、

「はい、おそらく」

「ならいい、帰るぞ」

「了解しました」

 

 

子が自らの能力に目覚めたのはこの時。女に拾われてから3年の月日が経っていた。。

 

 




読んでいただきありがとうございます。


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第二話

宿儺母禮の容姿は神咒神威神楽の天魔・母禮を
黒髪にして鎧を着物にした姿です
前話で、分からないかと思ったので
ここに書きました



 森の洞窟

 

「此度の褒美に、お主に名前を付けようと思う」

足首にまで触れるほどの長さの黒髪を揺らし、母禮が言った。

目の前で揺れるそれを赤子の頃より幾度も追いかけて育った自分にはもはや見慣れたはずのものだったが、子は我知らずさらさらと流れるようなそれをいつでも目で追ってしまうのだった。そこには理屈などなかった。

鈴が鳴るような美しい声の響きを反芻しながら子は返答を返した。

 

「名前ですか」

 

名前。そう口に出されて胸のどこかが音を立てて鳴るようだった。

「そうじゃ、今の今まではお主の歳が五つほどになったら食うつもりじゃったが。なに、五つの歳の子供は骨も柔らかく肉もまだ柔らかくちょうど食べごろだと言うじゃろう。だがちょっと気が変わったのじゃよ。お主が攫われた時に見せた力に興味がわいた。あと2年で食うてしまうのではいかにも惜しい」

 

母禮は悪びれもせず笑ったが、食うつもりであったと聞かされても「食われてたまるか」などという考えは微塵も沸きもしなかった。母禮に食われるならばそこに悔いなどあろうはずもなかった。

 

「力…先ほどの…」

「そうじゃ、だから儂はお主を強くしてみようと思うのじゃ。見込みがないと思うその時までな」

 

母禮に強くなれと言われるなら強くなろうとすぐに心に決めた。他には世界を知らぬ自分は母禮以外の規範も世の理も有してはいなかった。

 

「分かりました」

「食うつもりの生き物に名前を付ける趣味はないが、今日これよりは名前が必要じゃろ」

「そうですか」

母禮は一息のみ、こう言った。

「お主は今日から宿儺空亡(すくなくうぼう)じゃ」

「宿儺空亡……」

 

この名は、この子いや、空亡の心に馴染むように染みついた。

空亡はこの名を胸の中で繰り返し、笑みを浮かべた。

 

「どうしたのじゃ」

「いやとても嬉しくて」

「それはよかったのう。しかし見込みなしと判断したらすぐ食らうからな、空亡」

空亡はまだ笑みを浮かべ返答した。

「はい!了解しました!」

 

 

 

「まずは三日で成果を出せ。結界を張ったゆえ。三日後に様子を見に来てやろう」

 

母禮は長い髪を優雅に翻し、去って行った。

携帯食として木の実や、水を与えられて森の奥のとある洞窟に空亡は一人取り残された。いや、一人というのは語弊があった。母禮により結界内に閉じ込められた動物達が異変を察知したようにひっきりなしに走り、飛び回っていたのだ。

野ネズミの群れがパニックに陥ったように幼い空亡の周りを走り回り、コウモリは高く低く飛び回り、結界の壁にぶつかり合い耳に刺さるような鳴き声を上げた。

空亡はひっきりなしに足にぶつかって、ついには体を駆け上ってくるネズミ達が耳元まで到達するのにぞっとして振り払っては、耳を塞いだ。

そこにコウモリの翼がバサバサと方向も何もなくぶつかって来る。

こんなところに三日も一人で、と空亡は泣きたくなった。

 

「もう一度同じことをやってみせよ」

母禮の声が脳裏に蘇る。

何も覚えていない。あの時は化け物に捕らえられ、必死で死を願ったのだ。

 

「死ね!」

 

と耳を塞ぎながら叫び声を上げたが、何も起こらない。

動物たちはパニックの果てに空亡一人を異端者であることを悟ったのか、今や空亡に襲い掛かる勢いだった。

ネズミ達にかじりつかれ、コウモリの翼で傷つけられ、切傷だらけの空亡の体からは赤い血がしたたり落ちていた。肩で息をしながら何か武器があれば、と望まずにはいられない。

 

「寄るな!あっちへ行け!!」

 

顔を目がけてとびかかって来るコウモリを避けようと腕をめちゃくちゃに振り回した時、指先から氷のようなものが弾ける様に飛んだ。瞬間、動物たちがひるんで飛び去って行った。

空亡は目を見開いた。

氷。

はぁはぁと息を吐き、空亡は手を合わせ脳裏に氷を念じた。小さな氷の塊が生じてきらきらと光っている。

能力の発現に喜んだのもつかの間、空亡に襲い掛かる動物たちの攻撃はすぐに再開した。氷の塊で振り払う瞬間だけは、動物たちはひるんだが小さすぎて武器にもならない。そしてそれはすぐに溶けてしまった。

もっと。もっと力を。

絶え間ない攻撃に集中力を乱されながら念じる。出でよ!と。

だが、出来るのは小さな氷ばかり。

一刻も二刻もそのまま過ぎていき、空亡は切り刻まれて血まみれのまま倒れるのを意志の力だけで耐えていた。瞼を切りつけられて視界が片方、きかない。

目の前が霞んで頭が鈍く傷んだ。

(お主はごみのように捨てられておったのよ)

母禮の鈴の音のような声がする。

(姿かたちが人と違うだけで我が子を捨て去るとは)

(己と違うものは集団から排除してはじく)

(人とはなんと愚かで醜い生き物か)

(お主は儂が妖力を与えて育てた特別な生き物じゃ)

(強くなれば生かしてやろうぞ)

このままでは。

母禮の姿を二度と見ることが出来ぬまま死んでしまう。嫌だ。それだけは嫌だ。強くなれずに生き残れなくても自分はせめて母禮のそばで死にたいのだ。

「出でよ!」

もう一度叫んだ幼い声が結界内に響いた。

 

 




2話めですが、どうでしたか?
よろしければ感想お願いします



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第三話

「出でよ!」

 

そう叫んだ空亡の下に氷の刀が現れた。しかしその剣は2尺ほどしかなかった。

これだ、と確信し近くの生物に振り下ろした。

グシャと肉を断ち切る音が耳に響いた。

また振り下ろす。

殺せた。

振り下ろし殺す。

肉を切りを骨を断ち羽を切る。

これを何度も繰り返し続けた。

殺し続けなければ母禮にはもう会えない。

そう思い、また殺し続ける。

 

 

何日経ったか、わからない、あれだけ動物達がいた洞窟には今や赤しかない。

死臭があたりに充満し、動くものは、空亡ただ一人。

元々赤黒い髪は血が付き黒く変色し体には殺した。

動物達の肉片が付き異臭を放っている。

そんな空亡は今、満身創痍だった。

肉は抉られ左目は潰れ、そんな状態でずっと殺し続けたのだ無理もない。

食い物がない空亡は近くにあった肉を食った。

ひどい味がした今まで食べたことのない不味さだ。

 

不味い、気持ちが悪い、今すぐ吐き出したい。

 

でも食って生き残れなければ母禮には会えないそう思い無理やり飲み込んだ。

2刻ほど過ぎた洞窟に光があふれる、声が聞こえた。

 

「おい、空亡よ生きておるか?」

 

……声はない

 

「ふむ死んだか、どれ死体ぐらいみてやるかのう」

 

そう言い母禮は洞窟の奧へ入って言った。

そこにいたのは傷だらけで寝ている空亡の姿であった。

 

「ほう、生きておったか」

 

母禮は驚いた様子でそう言う。そして水をかけ空亡を起こす。

空亡は母禮の方を見て言った。

 

「主…様、食事の準備をしなければ」

 

そう言い洞窟を出ようとするが力尽きたのか倒れた。

母禮はそれを見て周りに落ちていた氷の剣を手に取り、軽く殴っただが剣は壊れない。

 

「これで壊れぬか!」

 

まあ今回はこれぐらいでいいじゃろ。

我知らず微笑んで、母禮は空亡を担ぎ洞窟を出て行った

 

 

二日後、空亡は目を覚ました。

 

「此処は?」

 

空亡は周りを見渡し、見慣れた場所だと気づく。

だが違和感があった。潰れたはずの目があるのだ。

 

「起きたか、空亡よ」

 

聞きなれた声の方に空亡は向き、かすれ声を出した。

「主…様?」

「お主の目は直しておいた」

 

空亡は潰れた方の左目を二度三度瞬きをさせ近くの水を使い目を確認した。

そこには、右目の青とは違う紅い目があった。

 

「まあ色は変わってしまったがいいじゃろ」

「感謝します!」

「今日はもう寝ておれ」

「はい」

 

そして、空亡はまだ疲れが残っていたのか、また眠ってしまった。

それを確認して、母禮は独り言をつぶやいた。

 

「我ながら無茶を言ったが、まさかやり遂げるとは。これから少し面白くなりそうじゃ」

 

酒をぐいっとあおった。

 

「おや、酒が切れたのう、仕方ないまた取りに行くか」

 

母禮は森へと姿を消した。

 

 

 

 

 

 

森を出てしばらく歩くと、あたりは夜になっていた。

妖怪の大群が人間と争っている。

人間は刀を持ち鎧を着て抵抗しているようだ。

徐々に人間が押されてきた。

 

そこに一人の女が現れた。

その姿に人間たちが口々に名を呼ぶ。

 

「つ、月夜見様!」

「月夜見様が来てくださった!」

 

 

その女、月夜見はこの場所には似合わなく、肩まである銀髪を揺らし美し月の模様がある着物を着ている。

 

「おや、あやつは」

 

少し離れた所に一人立っていた母禮は女を眺めて呟いた。

 

その女を見た妖怪の大群は気味悪い笑みを浮かべ、騒ぎ始めた。

 

「この女は俺が、俺がもらう」

「いや俺のだ」

「足は俺がもらう」

 

そして、この妖怪達より気配の大きい妖怪が叫んだ。

 

「先に女を捕らえたものが好きにしてよい!」

 

それを聞いた妖怪達が女に殺到した。最初に女の下にたどり着いた妖怪が叫ぶ。

 

「これで、お」

 

だが言い終わる前に頭がなくなった。

女に潰されたのだ。

 

「穢れ風情が」

 

そう言い捨て、女は太い光を天から降らせた。

妖怪の大群は避けることができるはずもなく、理解できずに、言葉も残せない。

 

 

「消えろ」

 

だが辛うじて避けた妖怪は叫びながら女に飛びかかる。

 

「あ゛あ゛ああああぁぁぁ」

 

女は刀を取り出し、妖怪を殺す。

 

「この程度か。帰るぞ」

 

興味を失ったように配下の人間たちに向かって声を掛けた。

人間たちは一斉に声を揃えた。

 

『了解しました、月夜見様!!』

 

月夜見や配下の人間は去ろうとした。

そこに母禮は月夜見の下に飛び、月夜見の目の前に現れた。

 

「まあ月夜見よ、帰るのはまだ早いじゃろ」

 

「その声は…宿儺母禮!」

 

月夜見は母禮の方を見て憎らし気に言った。

母禮はそんなことは気にせずに、

 

「久しぶりじゃな」

 

と言い放つ。それを見た月夜見は怒りもう一本刀を取り出した。

それに光をまとわせこう宣言した。

 

「貴様は今ここで祓わせてもらう!」

「どれ遊ぶか、行くぞ」

 

月夜見は神力を出し、母禮は着物を鎧に変え、月夜見に殴りかかった。

月夜見は刀で受け止めた。

 

大気が揺れる。

 

次に月夜見はもうひと振りの刀で母禮の首を狙い切りかかる。

それを母禮は躱し、腹に向けて、一撃。月夜見は躱すことができずに殴り飛ばされる。

吐血したが、すぐ母禮を殺そうと光を放つ。

母禮はそれを躱したが、それに紛れた月夜見に鎧を傷つけられた。

今度は蹴りを母禮が放ち、月夜見は避けた。両断する!

母禮はそれを気にせずに反撃として、肘打ちをかます。

そこに、今まで見ているだけだった人間たちが叫び声を上げた。

 

「今が好機!行くぞー!!」

『おー!!!』

 

と、母禮に突撃していて行った。

 

「お前たちやめろ」

 

月夜見は止めたがすでに遅く。

 

「これ邪魔するでない」

 

優しい声で言われたのとは裏腹に帰ってきた攻撃は優しくはなかった。

片手で大地を割り、出来た岩を人間に投げた。

高速で放たれた攻撃を人間が避けれるはずもなく、あたりには血の海が出来た。

 

「母禮ぃぃぃ!」

 

月夜見は母禮に対する憎悪を増し、

 

「これ、そう怒るではない邪魔したのはあっちじゃからな、遊びを邪魔するのが悪い」

 

母禮は悪びれずに言った。

月夜見は怒りに任せ母禮に切かかった。

先程とは違う速度で放たれた一撃は母禮の左腕をうばっていった。

 

「ははっ、やるのう」

 

それから母禮は跳び少し離れた所で、傷口から炎を出し、腕と足を生やした。

 

「楽しいのう」

 

母禮は嬉しそうに笑い、大地をっ蹴った。

月夜見の目の前に現れ拳を放つ。

月夜見は刀を持ち直し、受け止める。

その攻防は一刻ほど続き、

 

「次は、これを避けてみせよ!」

 

そう言い、月夜見から少し離れ手を合わせた。

その瞬間巨大な炎の腕が現れた。

腕は月夜見を掴みかかる。それを月夜見は切り裂いた。

 

「この程度か!」

 

月夜見はそこから次の攻撃に移ろうとするが、

 

「すごいのう!!だが、まだあるぞ!!」

 

母禮は再び手を合わせ、後ろには百を超える炎の腕が現れた。

 

「なっ……!」

 

驚いている月夜見にほぼ回避不可能な腕の嵐が襲ってくる。

 

「うおおおぉぉぉ」

 

月夜見は考えるのを一時的にやめ、炎の腕に突撃していった。

月夜見は腕を切り裂く。

 

熱い。

また切り裂く。

熱い熱い。

また斬り裂く。

熱い熱い熱いアツイ。

斬る斬る斬る斬る斬る。

 

この永遠に思えた時間が終わった。

月夜見は炎の腕すべてを捌ききった。

 

「これ、儂を忘れるではないぞ」

 

目の前に今度は先程とは比べようもないほどの巨大な炎の腕が現れた。

月夜見はこれを回避する力はすでになく、押しつぶされた。

 

「くっ……!」

 

母禮に対する憎悪、配下を殺された恨みをバネに何とか持ちこたえる。

 

何とか起き上がった月夜見の体は所々焼けている。

だが未だ殺意は消える事無く、母禮をにらみつけた。

最後の力を込め再び刀を持ち直し、刀に神力を込めた。

刀の光は増し、目が痛いほどになっている。

 

「母禮ぃ」

 

そう言った瞬間に月夜見は母禮に突撃した。

 

「そうじゃそうじゃ、これで終わったらつまらんからのう」

 

母禮は楽し気に笑いながら妖力を放出した。体が徐々に炎になっていく。

 

瞬間、此処一体の温度が上昇した。

 

月夜見はそんな母禮に刀を母禮に振り下ろす。母禮はそれを掴み溶かした。

 

「な!!??」

「どうした?まだまだ終わるのは早いぞ」

 

母禮は見惚れるような笑みを浮かべ、宣告した。

 

「行くぞ」

 

 

 

 




今回の話はどうでしたか、新キャラを出してみました。
良ければ感想、お願いします。


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第四話

「行くぞ」

 

そう言った母禮は、月夜見を蹴り飛ばし、

瞬時に月夜見に向けて炎の腕を作り追撃をする。

月夜見は蹴られた反動で動けなく、避けるすべはない。

月夜見は死を覚悟した。

 

その時!

 

2つの人影が腕を消す、

 

「無事かい?嬢ちゃん」

「ご無事ですか!月夜見様!」

 

蒼い髪の男と薄紫色の髪をした女が、月夜見を掴み少し離れた場所に移動した。

 

「貴様ら…なぜここに」

 

蒼い髪の男は月夜見の方を向き、

 

「嬢ちゃんが戻るの遅いから見に来たら、戦闘音がきこえたんで、

まさかと思ったが間一髪だったみたいだな」

「おい紫苑、今はそんな悠長な言ってる場合ではないだろう!早く月夜見様を治療するぞ」

「お前こそ落ち着けよ、まだ奴はいるんだぞ、お前は、嬢ちゃん連れて町に戻れ」

「な!お前はどうするんだ」

「奴は俺が止める、まあただでは死なんさ」

 

そう言い紫苑は、依姫と別れ母禮の方に歩いて行った。

 

「待ったか?」

「別にいいぞ、でも、もう一人はどうしたのか?」

「依姫は嬢ちゃんを連れて帰った。怪我人がいたら邪魔だろう、まあ俺とやろうや」

「いいぞ!殺りあおう、すぐには死ぬなよ」

 

母禮は拳を構えその身を炎とかす、紫苑は深紅の槍を構え名乗りを上げた。

 

 

「俺の名は、出雲紫苑(いずもしおん)しがない槍兵だ」

「儂も名乗ろう、名は宿儺母禮、神の敵じゃ」

『行くぞ』

 

瞬間二人の姿は消えた。

拳と槍がぶつかり合う。辺りに音が響く。

これを何度も繰り返し、母禮はあることに気付く、炎の拳に殴られたはずの槍は、

溶けずにいるのだ。

 

(なぜ溶けない?)

 

そう思考する母禮に、一瞬隙が出来た。

その隙を見逃す紫苑ではない、二十を超える高速の突きを放つ、

だがその突きは一発は当たったが残りは避けられ反撃される。

それを槍で受け止め再度突きを放つ。

 

「早いのう」

 

そう言い、火球を紫苑へ飛ばす。

 

「これならどうじゃ」

 

凄まじい速度で放たれた火球は、紫苑を焼き尽くさんとばかりに火力を上げ追尾する、

紫苑は姿勢を低くし走る、その速度はすさまじく火球を振りきる。それを見た母禮は、

 

「その動き、本当に人間か?獣みたいだぞ」

「酷いな、俺は人間だぞ」

 

会話は一瞬それだけを交わし、戦闘を再開する。

今度は紫苑から仕掛けた。大地を踏み母禮の下に突きをかます。

母禮は受け止めたがその突きは重く、衝撃で後ろに吹っ飛ぶ、

紫苑は飛びかかり、柄の部分で叩きつける。

母禮は地面に埋まるが、何もなかったように起き上がり紫苑を炎の腕で掴み、

投げ飛ばす。投げ飛ばされた紫苑は槍を地面に刺止まるが掴まれた左腕は燃え続け

炎は体の方にも移ろうとしていた。

 

紫苑は顔を歪め、槍頭の部分を使い腕を落とした。

 

「…危ねえなぁ!」

「まだ片腕があるからいいじゃろう」

 

母禮はふと辺りを見渡す、すでに夜は明け日が昇っていた。

 

「そろそろ飽きてきたのう次の一撃で終わりにするか」

 

母禮は体を元に戻し両刃の刀を作り出した。

刀の刀身は橙なにより、刀の近くは空気が燃えている。刀は徐々に巨大になっていき、

もはや生物が振れる大きさではなくなった。

そんな刀の後ろには炎の巨人が現れた。

巨人は刀を持つと、紫苑目がけて振り下ろした。

 

「ああ、これは無理だな」

 

紫苑はなにかをあきらめたようにそう言い

 

「もういい、吸えよ」

 

その言葉を合図にドクン!という音が響く、

深紅の槍が、脈うち棘を生やす、その棘は紫苑に刺さり血を吸う、槍が鈍い光を放つ。

紫苑は、巨人に向けてこの槍を投げる。

槍は音を超え巨人を貫通しそのまま母禮の腹をを抉る。

 

「ぐはっ!だがこれでは死なんぞ」

 

だが母禮は倒せない。

しかし槍に貫かれた巨人は倒れ、持ち主を失った刀は落ち大地を燃やす。

巨人が倒れたことにより紫苑は生き残るそんな紫苑の下に槍が戻ってきた。

 

「その槍はなんじゃ?まあよい今回はこれでしまいじゃ、

また遊ぼうかのう!」

 

そう言い、母禮は疑問を残し去っていった。

 

「ははっ」

 

紫苑は疲れたように笑い

 

「もうやらねーよ」

 

そう言い紫苑は気絶した。

 

 

数刻ほど経ち、気絶した紫苑の所に、

一人の男が現れた。男は紫苑を見るなり

 

「紫苑様がいたぞーー」

 

と叫ぶ、その声を聴きつけた男達が集まった。

その声に起こされた。紫苑は安心し

 

「なんだお前らか」

「ご無事ですか紫苑様」

 

紫苑は傷を見せ

 

「この傷を見て大丈夫に見えたら、お前らこそ直してもらいな」

 

紫苑の体は左腕がなく体は焼き焦げている。

 

「直してもらうのはあなたでしょう!」

「違いない」

 

と言い笑いながら倒れた。

人間たちは慌てて、、紫苑を町へと運び始めた。

 

 

 

 

 

 

母禮はしばらく歩くと、当然目前に襲われた

先程抉られた、腹を見る。

普段は治るはずの腹の傷が治っていない。

母禮は傷をよく見る、傷には棘が巣くっていた

母禮は体を炎にしようとするが炎にならない、

棘が邪魔をしているようだ。

 

「仕方がないあそこに行くか」

 

そう言い母禮は痛みを我慢し歩き始めた。

歩くたびに血が噴き出す。

景色が変わる。奧には巨大な山が聳え立っている。

母禮はその山に入る。

 

「だが登るのは、今きついのう」

 

母禮は腹の傷を抑え妖力をだした、瞬間母禮の目の前に、

黒い羽を羽を生やした女が現れ、母禮を見て

 

「久しいな母禮よ」

 

と言う。

 

「久しぶりじゃな天魔よ、だが今わそれどころではない、ちと助けてくれんか」

 

母禮の様子がおかしいことに気づいた天魔は、

 

「おい、母禮何があった!」

 

そこまで天魔が言うと、母禮は限界が来たのか倒れた

 

「母禮!おい!しかっりしろくそ、出血がひどすぎる」

 

天魔は息を吸い大声で、

 

「おい!お前たち集まれ」

 

天魔がそういうと、そこに何十人もの天狗が現れる。

 

「お前たち、今すぐ母禮を私の部屋へ連れて行け」

『は!!!』

 

天狗たちは母禮を持ち天魔の部屋に連れて行った。

 

「いったい何があったんだ」

 

そう言い天魔も部屋に向かう。

 

 




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第五話

しばらく時間は遡る。

 

空亡は日が昇る前に目を覚ました。まだ体は衰弱している。

だが、そのまま洞窟の奧へ向かい食材を確認し、足りないことに気付くと一人つぶやいた。

 

「主様が起きる前に、取りに行かなければ」

 

空亡は洞窟を出た。そして食材を取り終えた空亡は、違和感を覚えた。

いつもならこれくらいに起きているはずの母禮がいない。

空亡はひどく慌て、寝床へ向かうが、そこに母禮の姿はなく、静まり返っていた。

 

「主様は何処に??」

 

空亡ひどく動揺したがすぐに思考を巡らせ、あることに気付く。

食材と一緒に酒もなくなっていた。

 

「またいつものように、酒を取りに行かれたのか……」

 

安心し母禮の着物を手に取り、洞窟を出て川に向かい川についたら着物を洗い始める。

傷だらけの体に冷たい水が堪えたが、なんとか終わらせ戻り母禮の帰りを待った。

 

 

しかし、日が暮れてもまだ母禮は帰らない。

 

(流石に遅すぎる……)

 

一人で取り残されると、まるで幼い子供のように不安になってしまうのだ。

もっとも母禮の妖力を体内に取り入れて育った空亡は人の子の歳の基準には当てはまらないかもしれなかった。

空亡は居てもたっても居られず、母禮探しに行くことにした。

 

 

森を歩き、母禮を探す。

だが空亡は今まで森を出たことがなく、すぐに迷ってしまった。

 

「此処は何処だ?」

 

空亡は周りを見渡す。辺りはすっかり暗くなり、鳥の声が響いていた。

暗闇にはいくつもの目が浮かび空亡を見ている。

そこに一匹の狼が空亡に襲いかかる、

空亡は咄嗟に刀を作る、前の出来事により作れるようになった刀は狼の攻撃を防御する。

狼は離れ、空亡に向かい威嚇をし再度飛びかかる。

空亡はそれを避け、腹を切り裂き殺す.

光っていた目は逃げ出したのか消えていなくなった。

 

「……終わったか」

 

そう言い空亡は再び母禮を探し始める。

森に迷ったまま2日が経ったが、進展はなく、食べたものは最初に殺した狼の肉しかない。

ついに体力が、底を尽き倒れる

 

(まだ…倒れる…わけには)

 

空亡はそう思い、立ち上がろうとする。

だがその思いも虚しく倒れてしまう。

 

「主…様…」

 

最後に見えたんのは二つの人影だった

 

 

 

 

 

 

森を黒髪の少女と蒼い髪の少女が歩いていた。

黒髪の少女は、迷わず森の奥に進んで行く、それを蒼い髪の少女が、

後ろから、付いていき、しばらく進むと。

 

「輝夜様ーもう帰りましょうよー」

 

蒼い髪の少女は、輝夜に疲れたようにいう、それを輝夜は、

呆れたように蒼い髪少女の名を呼び言った。

 

「…皐月、あなたは私の護衛でしょう、私より外に出ているのだから、

このぐらいで、へばるんじゃないわよ」

「理由が酷い!じゃあなんで姫様はそんなに体力あるんですか?」

「知らないわよ」

 

そんなやり取り交わしながら森の奥に進んで行く、

皐月は疑問に思う、そこで輝夜に聞いた

 

「それにしても輝夜様はなぜ急に森に行くと言いでしたんですか?」

「屋敷にいても、勉強ばかり偶には息抜きぐらいしなきゃやってられないわよ」

 

輝夜はだからと続ける

 

「抜け出してきたのよ」

「え?許可は取ったって言ったじゃにですか…嘘だったんですか」

「嘘よ」

 

それを聞き皐月は安心したが

 

「許可取れるわけないじゃない」

「デスヨネー」

 

と泣き始める、ふと輝夜の耳に足音が聞こえた

足音はこちらに近づいてくる。

 

「皐月!黙って!」

「え?いきなり何ですか」

 

輝夜は耳を澄ます、一歩また一歩と近づいてくる

それに皐月も気付いたのか身構える

そしてついに

 

「来るわよ」

「はい!」

 

そして現れたのは、赤黒い髪をした少年だった。

その少年はボロボロで今にも死にそうだった。こちらまで近づき、

 

「主…様…」

 

と言い急倒れてしまう、

輝夜と皐月は咄嗟ことで驚いたが、輝夜は我に返り、

 

「ちょと!あなた大丈夫」

 

少年は起きる気配がない

 

「皐月!」

 

その言葉に皐月は我に返る

 

「かっ輝夜様?」

「今すぐこの子を運びなさい」

「何処にですか!?」

「この近くに洞窟があったでしょう、そこに運びなさい!」

「了解しました!」

 

そう言い皐月は少年を担ぎ洞窟に向かう、

洞窟についた輝夜達は少年の看病を始める。

看病をしていると少年が苦しみ始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

空亡は暗闇の中にいた、

 

「此処は?何処だ」

 

この場所には何もない、

ただ闇だけが広がっていた、その時ある声が聞こえた

 

憎い

 

「なんだ?」

 

憎い憎い憎い

 

「なんだこの声は?」

 

憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い

 

「やめろ!」

 

そんな空亡の声は届かずこの声は聞こえ続けている

 

憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い

 

少しずつ声は大きくなるにつれて憎悪が増してゆく、

途端に、声の内容が変わる。

 

 

「なぜ我が死ななければならんのだ!我はあんなところで死ぬはずではなかったのに

生きるためには何でもした、妖怪の死体を食い漁り力を付け続けた!なのにあの少女が我を潰し殺した。だから呪ってやった!我が存在を刻み復活できるように」

 

そう言い声の主が現れた。

その姿は赤黒い蛇っだった。

蛇は続ける。

 

「呪いは子の方に行き、姿を我に似せ人間から孤立させ子を食い破り復活するはずだった。

だが何故だ何故あそこで宿儺母禮が拾うこれでは、出た瞬間殺されるだろう!」

 

そこまで蛇が言うとそこまで黙っていた空亡が

 

「貴様は何を言っている!」

 

その声で気付いたのか蛇は空亡の方に這いより。

 

「だが貴様には感謝してるぞ空亡よ、貴様は母禮の妖気を吸っている

その力は我に流れ我の力は増している、これならいつか我でも母禮を殺せるだろう」

「貴様!!」

 

空亡は刀を作り、蛇を殺そうとするだが、刀は蛇に触れた瞬間刀は腐り落ちてしまう。

 

「な?!!」

「無駄だよ我の能力はもとは腐敗を早める程度能力だが今母禮の力を吸い、自分に触れたありとあらゆる物を腐らせる程度能力を得た。貴様のお蔭だよ空亡」

 

蛇は笑い声を残し姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

空亡は目を覚ました、そこは見慣れない洞窟だった。

 

「此処は?」

 

そして一人の少女が現れた。

蒼い髪少女は空亡を見て大声で、叫ぶ。

 

「輝夜様ー起きましたー」

 

少し離れた所に居た。

もう一人黒髪の少女が、空亡に声を掛けた。

 

「あら、起きたの?」

 

 



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第六話

「あら、起きたの?」

 

そう黒髪の少女は空亡に言った。

 

普通の調子で声を掛けられて困惑する。今まで川に水を汲みに行った時、ほとんどないことだったがたまたま森の奥へを足を踏み入れたのだろう人間は自分を一目見るなり腰を抜かし、やがて慌てたように「化け物だ!」と叫んで逃げて行った。

 

だから空亡は人間と話を交わしたことすらなかったのだ。

 

母禮が教えてくれた通りだと思った。自分は化け物だから捨てられたのだと思った。

 

それなのに……。

 

空亡は少女達に視線を合わせた。

黒髪の少女は色が白く長い髪はまっすぐに伸びている。大きな茶色い瞳は可憐な印象を放っていた。

一方、蒼髪のスラリと背の高い(空亡と同じくらいの身長だ)少女の方は優しそうな翡翠色の瞳をしている。髪を後ろに一つにまとめている。

 

「あなた達は?」

 

黒髪の少女と蒼髪の少女はその問いに我先にと答えを返した。

 

「僕の名前は」

「ちょと皐月!あなたが私より先に名前を教えるんじゃないわよ」

 

皐月は、自己紹介しようとしたが輝夜に邪魔されてしまい地団駄を踏んだ。

 

「輝夜様!もう僕の名前言っちゃってますよ!」

「あなたこそ私の名前言ってるじゃない」

 

輝夜と皐月のそんな二人の少女の仲の良いやり取りに空亡はおかしくて笑ってしまう。

そんな空亡を見た輝夜はむうっとしたように頬を膨らませた。

 

「ちょとあなた!なに笑ってるのよ!」

「だって、面白くて」

 

今度は自分に回って来た輝夜の攻撃に空亡は思わず弁解するように答えたが、何のフォローにもなっていない。

 

「コホン、そろそろ落ち着きましょう」

 

輝夜がちょっと気取ったようにまっすぐな黒髪を払った。

 

「そうですね」

「そうしましょう」

 

空亡と皐月はそれに同意する。

 

「改めて名前を教えるわね」

 

輝夜はにっこりと笑った。

 

「私の名前は蓬莱山輝夜よ」

 

それから輝夜は空亡に尋ねた。

 

「あなたは?」

「私の名は、宿儺空亡」

 

空亡は母禮にもらったばかりの名前を答えた。自分に名前があってよかったと思った。

輝夜は何かよいもののように空亡の名前を繰り返した。

 

「空亡…。そう。空亡というのね、あなたは」

 

皐月も会話に参加したかったのか自分の名前を言った。

 

「僕の名前は、出雲皐月です!」

「ちょと皐月黙ってて」

「酷い!」

 

空亡は皐月の一人称を疑問に思ったが自分の主も儂なので特に気にしないことにした。

改めて状況を整理する。自身の傷は治っており腹も満たされている。

 

「あなた達が、私を直してくれたんですか?」

「そうよ」

「そうですよ」

 

(なぜ……?)

 

自分は普通の人間と見た目が違う化け物なのに、看病してくれた理由がわからなかった。輝夜達のこともわからない。

 

(私は産んだ人にもこの見た目で捨てられたのに……。何故だ?何故、私を……?)

 

空亡は輝夜達が途端に気味悪く感じる。空亡が今までに見た人間たちとはまるで違っている。

 

「あなたたちは何故、私なんかを直したんです?」

 

そんな空亡を輝夜達は笑う。

 

「あたりまえじゃないっ!困っている人がいるなら助けるのが当然でしょ」

 

輝夜はそんなことを当然のように言う。だが自分は普通の人間とは違う。

今まで知る人間と輝夜、どちらが人間の真の姿なのか混乱した。よくわからない。わからなかったが、輝夜が特別だということだけはわかったのだ。

 

(『あたりまえ』……)

 

空亡は生まれてから初めてもらう人の優しさに涙腺が緩む。瞳を膜のように被う水の気配を隠すように俯いた。

 

そんな空亡を見た輝夜が無邪気に自分の服の袖で空亡の潤む涙を拭ってくれた。

 

「あなたなに泣いてんのよ?」

 

皐月も優しく笑っている。

 

「大丈夫ですか?」

 

空亡は初めて出る涙に戸惑いながら気丈に顔を上げた。

 

「大丈夫です」

 

「そう、ならいいわ。でも、あなたお供も付けずに一人でこんなところにどうしていたのよ?年はいくつなの?」

 

「輝夜様、あなたじゃないんですから……。お供っていうのは誰にでも付いてるわけじゃありません」

 

「4歳です」

 

輝夜は空亡の答えを聞いてびっくりしたように叫んだ。

 

「4歳ですって?!まだそんなに小さいの?親はなにしてるのよ?!でもてっきり同じくらいの歳かと思った。背だって同じくらいだし、あなたのその冷静な受け答えったら!私たちは8歳よ」

 

「8歳……」

 

空亡は自分はそれぐらいに見えるのかと思った。

 

しかし『親』という言葉に母禮の顔が浮かんだ。

空亡は母禮のことを探さないといけない。そのことを思い出した空亡は輝夜達に別れを伝えた。

 

「有難う御座いました。私は主様を探さなければなりません」

「あなた!まだ完治してないでしょう!どこに行くの?!」

 

輝夜はそんな空亡を止める。その時。外から話し声がが聞こえて来る。気味の悪い声だった。

 

「此処に人間が入って行ったって本当か?」

「ああ俺は見たぞ」

「俺もだ」

 

此処に妖怪達が集まって来たようだ。

いち早く皐月が気付く。

 

「輝夜様、何か来ます!僕の後ろに」

 

それに空亡も気付いたのかすぐさま刀を作る。刀を作った空亡に皐月は驚いた。

 

「刀?!空亡さん槍は作れますか?!」

「はい、作れます」

「なら作ってください!」

 

そう言われ空亡はすばやく槍を作る。氷で出来た槍を皐月に渡した。

 

「良い槍ですね。有難う御座います」

 

皐月は槍を構え、空亡も刀を構えた。

そこに一匹の犬のような妖怪が入って来る。

 

「居たぞ!女二人に男一人だ!今日は御馳走だぞ」

 

その言葉を聞いた外にいた妖怪達も入って来る。

瞬間、皐月が洞窟の壁を走り入ってきた妖怪の首に一突き。

妖怪は言葉もなく殺されるそれを見て妖怪が空亡に襲い掛かるが

動揺していたのか簡単に避けられ反撃されてしまう、瞬時に2匹やられた妖怪を見て

もう一匹の妖怪は驚き隙が出来てしまう。

その隙を突き皐月が槍を投げる。

 

「しまった!」

 

妖怪が反応が遅れ、腹に穴が開く、穴が開いた腹からは内臓が飛び散る。

まだ生き残ってた犬の妖怪は怯えながらも守られていない輝夜を狙う。

 

「輝夜様!」

 

皐月は投げた槍を取り輝夜に向かう。間に合わない、と思えたその時皐月が加速し犬の妖怪を貫く。

 

「何故だ!」

 

犬の妖怪は最後の力で皐月に問う

 

「僕は限界をなくす程度の能力を持ってるので、速さの限界を一時的に無くしたんですよ」

 

皐月は律儀に答える、そんな皐月に輝夜はいつもの調子で。

 

「皐月、説明してるんじゃないわよ」

 

戦闘が終わり辺りを静寂が支配するそんな中皐月が一言

 

「終りましたね」

 

戦闘が終わり安心したのか、輝夜が驚いたように言う

 

「空亡あなた戦えたのね!」

 

輝夜は少し考え、思いついたのか

笑いながら名案のように言う

 

「空亡あなた私の護衛になりなさい!」

 

 



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第七話

「空亡、貴方私の護衛になりなさい」

 

輝夜はそう空亡に提案する、その提案に皐月も同意する。

 

「いいですね、空亡さんがいれば武器には困りませんし」

「そうでしょう」

 

輝夜は得意げに言った空亡はそんな輝夜に即決する。

 

「すみませんが、お断りします」

 

輝夜は断られると思っていなかったのか、目を見開き驚いている。

少しの時間が経ち我に返る。

 

「なんでよ?!」

 

空亡はそんな輝夜に自分の事を語る。

 

「私に親というものはいません、拾ってくれた主がいるだけです。そんな主に私は死ぬまで仕えるんです」

 

そんな理由を聞いてか、輝夜は笑いそれに続けて皐月も笑う。

 

「何だ、そんな理由があったのね、ならいいわ」

「空亡さんも誰かに仕えてるんですね、私と従者仲間です」

「皐月、あなたは私の護衛でしょ」

「そうでした」

 

と皐月は笑う、そんな輝夜達を見て自然と頬が緩んでしまう。

空亡は母禮を探しに行かなければならない

 

 

「そろそろ、私は主様を探さねばなりません」

「ここまで一緒にいたのも何かの縁よ私も手伝うわ、皐月もそれでいいでしょう」

「いいですよ、行きましょう」

 

輝夜達はそんな空亡を手伝うと言う。

 

「ありがとうございます」

 

空亡はそんな輝夜に感謝を伝え洞窟を出る、空亡に輝夜達はついてゆく

数刻が経ったが進展ははなく、ただ時間でだけが過ぎていき気が付いたら空亡の住む洞窟についていた。

 

「見つかりませんね」

 

空亡はそんな声を漏らす、

 

「そうね」

「そうですね」

 

輝夜達はそれに同意し、空亡は提案する。

 

「ちょうど、私の住居に来たので少し休みませんか」

「いいわね、そうしましょう」

 

そう言い輝夜達は洞窟に入る、洞窟に入った輝夜達は驚いた。

 

「思ってたより、大きいわね」

「大きいです」

 

それから輝夜達は洞窟を一通り見て周り急になにかを思い出したのか

 

「そうだ、そろそろ帰らないと抜け出したことがばれるじゃない」

「やばいですね、見つかったら永琳さまの説教地獄ですよ」

「やばいわね」

 

輝夜たちは焦りだし洞窟を出る、出る時に、

 

「空亡また来ていいかしら」

「いいですよ」

 

そう言い輝夜達と別れ、空亡は倒れる様に眠る

それからというもの空亡は毎日限界まで母禮を探し倒れ、偶に輝夜達が来て、手伝ってもらう

これを繰り返しているうちに一年が経っていた。

 

 

一年が経ち空亡の精神は限界が来ていた。

輝夜達が偶に来るも、母禮に会えない時間が続き日に日に衰弱していく。

食事も偶にしか口にしない睡眠もろくに取らず、衰弱している空亡に輝夜達は何もできず。

ついに空亡は倒れた。そんな時に声が聞こえる。

 

(空亡よ、貴様は主にすら捨てられたのだよ飯にすらされず、そんな貴様に価値はない、その体を我に明け渡せ)

(主様、私にもう価値はないのですか?それならもう死んでしまっても)

 

空亡は生きること諦める、蛇はそんな空亡を見て笑う

 

(よいぞ、それでいい速くその体を我に)

 

その声を最後に空亡の意識はなくなる。

 

「フハハハハハ」

 

途端に空亡が笑いだすでがその声はいつもと違い低く何より気味が悪かった

 

「ついに!ついに!ついに!我が願いは成就した!」

 

空亡は心底嬉しそうに言う、空亡はそのまま洞窟を出て。

 

「我の誕生記念だ」

 

空亡は一言

 

「腐れ」

 

そそれだけ言うと空亡の周りが腐り落ちる

近くにいた生物は逃げるがすでに遅く白骨化してしまう

 

「フハハハハハ、これが我が力だ、さらに!空亡貴様の力を使う」

 

空亡は虚空を殴るその瞬間空間が揺れる周りが砕ける

 

「これが貴様の持っていた力だまだ我でもすべて使えんがな、ふんもう聞こえんか」

 

空亡はつまらなそうに言い、少し考え

 

「我は名を変えよう」

 

空亡は大声で言う

 

「我が新しき名は宿儺蛇骨(じゃこつ)

「まず手始めに母禮を殺しその力を我が物とかそう」

 

そう蛇骨は森を腐らせながら歩いていく

 

 

 

 

 

 

 

とある山そこに母禮は居た。その体は炎となり腹の傷は塞がっている

そこに一つの人影が現れる

 

「母禮少し温度を下げてくれるか」

「おお天魔か、すまぬのう」

 

そう言い母禮は体を戻す。

 

「それにしても感謝するぞ天魔よ」

「なに気にするな困った時はお互いさまだからな」

 

そう言い天魔は笑う、母禮は立ち上がり。

 

「そろそろ帰るかのう」

「帰るのか、また来ていいぞ母禮よ」

「じゃあまたのう」

 

そう言い母禮は跳躍し山を下りる。

山を下りた母禮はつぶやいた。

 

「さて空亡は生きているかのう、紫苑にやられた傷を癒すのに一年かかってしまったのでなあ」

 

そう言い森を歩いていると異変に気付く辺りに動物の白骨死体が沢山さん転がっており、辺りの木々は腐っている

一歩また一歩、歩いていくにつれ死体は多くなっていき大地も腐っている開けた場所に出るとそこに空亡がいた。母禮は空亡に気付く声を掛ける。

 

「おい、空亡よここに来るまでに見たものはお主がやったのか?」

 

その言葉を聞き空亡は母禮に気付く、そして笑い出し

 

「宿儺母禮、貴様やっと来たな」

「お主、空亡ではないな誰じゃ?」

 

此奴は空亡ではないと確信し母禮は空亡に問う。

 

「我が名は宿儺蛇骨、貴様と空亡の力を得て蘇った蛇である」

 

そう蛇骨は名乗る。

そのまま蛇骨は辺りを腐らせ。

 

「この力貴様で試させてもらうぞ」

 

母禮は沈黙を続けてから急に笑い出すそして。

 

「貴様儂の所有物はをどうした?」

「空亡か、彼奴なら我の中で眠ってるだろう」

 

その答えを聞きさらに母禮は笑みを深くする。

 

「そうかそうか、儂の所有物をお主がか」

 

その瞬間空気が変わる肌が焦げんばかりの暑さになっていく。

 

「お主今すぐに空亡を元に戻せ、そうすれば命は残してやろう」

「無理に決まっているでろう、空亡は我の力となり永久に生きてもらう」

 

そう蛇骨が言うと、母禮は着物を鎧に変え、蛇骨に向かい炎と稲妻を出す、それを蛇骨は元の空亡では考えられないような速さで避ける。そのまま母禮の腹を地震を乗せた拳で殴る。殴られた場所は腐り落ちる。

 

「フハハハハハ、この程度か母禮これなら我にすぐ殺されるぞ」

 

蛇骨は笑い、母禮は怒気を込め

 

「お主、これだけか?」

「なに?」

 

辺りの温度が上がっている

 

「これだけで儂を殺せると?」

 

母禮が喋るたび温度が上がっていく

 

「それだけではなく、儂の所有物に手を出しただと!」

 

瞬間温度がさらに上昇する

 

「貴様は儂の全力で消してやろう」

 

そして母禮は詠唱する

 

 かれその神避(かむさ)りたまひし伊耶那美(イザナミ)

 

 出雲の国と伯伎(ははき)の国 その(さかい)なる比婆(ひば)の山に葬めまつりき

 

それに合わせ母禮の手には火炎の刀と稲妻が迸る刀が現れる

 

 ここに伊耶那岐(イザナギノミコト)

 

 御佩(みはか)せる十拳剣(とつかのつるぎ)を抜きて

 

 その子迦具土(カグツチ)(くび)を斬りたまひき

 

 

――太・極――

随神相(かんなばら)――神咒神威(かじりかむい)無間焦熱(むげんしょうねつ)

 

そして周りが灼熱に包まれる大地が割れ火柱と閃光が吹き上がる。

 

「このの状態の儂は優しくないぞ小童が」

 

 




オリキャラたちの容姿

宿儺空亡

天魔・夜刀を小さくし肌を白くした姿

宿儺母禮

天魔・母禮を黒髪にし鎧を着ものにした姿

出雲紫苑

fateランサー

出雲皐月

佐倉杏子の髪を蒼くした姿



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第八話

そこには地獄が広がっていた。すべてが燃え、迷い込んだ生物は皆、水分が蒸発し、皮膚が焼け、骨になる。そんな中、二つの影がある。一つはこの空間を作った母禮である。もう一つは蛇骨、蛇骨はこの空間でも無事なようだ。

母禮は火炎の刀を振るう。蛇骨はそれを避けるが下から来る火柱に当たってしまう。

それに追撃するように稲妻が龍の形を取り、蛇骨に襲い掛かる。蛇骨は燃え続け避ける術はない。稲妻の龍はそのまま蛇骨に当たる。

 

「ぐはっ!」

 

蛇骨は体は焼け、肌が焦げる匂いがあたりに漂う。血も吐いたが、それもすぐこの暑さで蒸発する。

何とか立ち上がるが、すでに満身創痍だ。だがまだ倒れない。

 

「まだだぁぁぁ!」

 

蛇骨は叫びながら母禮に正面から突撃し右の拳をは放つが、刀の峰に止められてしまう。蛇骨はそれを好機に能力を使い、刀を腐らそうとする。

 

「腐れ!」

 

火炎を纏う刀身は峰から腐り、刀は地面に落ちる前に溶けるが、すぐ再生し、炎の勢いを増して蛇骨の右拳を燃やす。炎はそのまま広がり、腕が焼け落ちた。

 

「母禮ぃぃぃ!」

 

蛇骨は恨みを込め叫ぶ。そんな蛇骨を母禮は何の感情もうつさない瞳で見て、

 

「つまらんのう、本当につまらん」

 

母禮は無表情で刀を振るう。

そのたびに、蛇骨は焼け悲鳴を上げる。これで終わりとばかりに、今までより巨大な炎を蛇骨へ向かわせる。だが炎は届く前に消え蛇骨に変化が訪れる。傷は治っていき髪は腰まで伸び蛇骨が触れた地面は腐りだしている。

そして何かを唱え始める。

 

一 二 三 四 五 六 七 八九十(ここのたり)

 

布留部 由良由良止 布留部(ふるべ ゆらゆらと ふるべ)

 

血の道と血の道と其の血の道返し(かしこ)(たま)おう

 

禍災(かさい)に悩むこの病毒(びょうどく)を この加持(かじ)にて今吹き払う(とこ)の神風

 

(たちばな)小戸(おど)(みそぎ)を始めにて 今も清むる(わが)が身なりけり

 

千早振(ちはやふ)る神の御末(みせい)(われ)ならば 祈りしことの叶わぬは無し

 

――太・極――

 

随神相――神咒神威・無間叫喚(むげんきょうかん)

 

そう唱えた蛇骨の後ろに醜悪な面相に凄絶な笑みを浮かべる。巨大な大剣を持った武者が現れる。

武者は咆哮し周りの木々はすべて腐り落ちる。

蛇骨は姿を巨大な赤黒い蛇に変える。その姿は、人を数人飲み込めそうだった、その姿で母禮に体当たりする。母禮は躱すが少しかすってしまい、そこから母禮の鎧は腐り落ちる。

 

「なに?この鎧結構気に入ってたんじゃがな、しかたない」

 

母禮は全く動じず、そう呟いた。

 

「まだまだ行くぞぉぉぉ」

 

蛇骨の声に合わせ、天を圧する武者の剣が振り下ろされる。母禮は横に跳び避けるが、剣により発生した衝撃で辺りが吹き飛ぶ。

 

「これはこれは、危ないのう」

 

母禮はこれを見てにやりと笑うそして、

 

「だがのう儂も出せるぞ」

 

そう言うと母禮をそのまま巨大化させ額当てを着け、さらに腕を二本増やしたような姿の女武者後ろに現れる。

女武者の手には火炎の刀と稲津の刀が二本ずつある。刀はそれぞれ炎と稲妻を纏っている。

女武者は武者へと四刀すべてを使い斬りかかる。武者は大剣を使い防御するが反動で後ろによろめく。

 

その下で、戦闘は続いていた。蛇骨は母禮に近づき噛みつく。

母禮は不意を突かれたが、左足で受け止める。噛みつかれた足は腐敗し始める。このままでは腐食が広がると思ったのか、母禮は火炎の刀で足を落とす。傷は燃え腐食は広がらない。落ちた足はそのまま腐り辺りに広がっていく。これを見て母禮は一言漏らす。

 

「さっきまでとは違うのう、だがな」

 

女武者はさらに巨大になる。腕はさらに増え、刀が十本近く周りを回っている。そのすべての切っ先を蛇骨へ向ける。狙いを定め終わったのかその刀は蛇骨へ飛んでいく。蛇骨は咄嗟に武者を盾にし、防御するが刀は武者を貫き蛇骨へ向かう。

 

「くそがぁぁぁ!」

 

蛇骨は絶叫し姿人にを戻し、それを受け止めようとする。その甲斐はなく押しつぶされる。大地が割れ、蛇骨は埋まる。蛇骨は辛うじて生きているが左腕は潰れ足は焼け焦げ動かなくなっているそれでも地面から這いずり出てくる。

 

 

「嫌だ死にたくない、死にたくない」

「なんだ?まだ生きていたのか」

 

そんな蛇骨を見て、哀れに思ったのか

 

「これで終いにしてやる」

 

母禮は唱える。

 

「おお、道神よ。憤怒して魔性を撃破せよ。あなかしこ

オン・ケンバヤ・ケンバヤ・ウン・ハッタ」

 

そう母禮が言うと巨大な火柱が何本も出て、それが一斉に蛇骨に向かう、蛇骨は出てきたまま死にたくないと呟いていて、火柱には気づかない火柱はそのまま蛇骨は焼き、蛇骨は声にならない叫びをあげた。

 

「ーーー!」

 

体は燃えながらも、蛇骨はまだ生きていた。燃えたことで蛇骨は我に返りまだ喋れる気力はあるのか。

 

「母禮貴様!空亡がどうなってもいいのか!」

「この炎は魔性を焼く炎じゃ、お主だけが燃えて死ぬ」

 

その言葉に蛇骨絶望する。そして喚きだした。

 

「嫌だ…消え…たくない、死にた…くない」

 

そう言い蛇骨は姿を蛇に変え逃げだそうとする。しかしまだ燃え続けており、しばらく這いずり周る。

 

「嫌だ…熱い…死にたくない、なんで僕が死ぬの生きるために何でもしたのに」

 

蛇骨は死ぬ直前に精神が限界に達し幼児退行する。そのまま蛇骨は続ける。

 

「嫌だよう、誰か助けて、誰…か、助…けて、嫌…だ」

 

最後に見えたのは、自分が今まで生き残るために見捨てた生き物達や自分が喰らった妖怪達だった。それらはすべて歪な笑みうかべている。それが蛇骨に触れ中から黒い蛇みたいのが出てくる。生き物はそれを掴み引っ張る。

 

「嫌だーーーーー!!」

 

それを最後に蛇骨は動かなくなる。

炎が完全に消え、人の姿へ戻る。

 

「終わったか」

 

そう言い、蛇骨に近づく。

 

「空亡起きんか」

 

空亡は起きる様子がない。母禮はしばらく軽く叩いたりしてみたが、やはり起きない。

だが辛うじて息はあるようだ。改めて空亡を見る。腕は一本なく、足は焼け焦げている。

 

「しかたないのう、また天魔の所へ行くか」

 

母禮は空亡を担ぎ山へ向かう。

森をあるきながら母禮は周りをみる。

森は焼けて炭になっていたり、腐食毒侵されもう木にはなにも実らない

辺りにあるのは動物の死体のみ。この森はすでに生物は住めない環境になり果てた。

 

「此処にはもう住めんのう、引っ越すか」

 

そう言い母禮は歩き続ける。

母禮はしばらく歩き天魔の居る山の麓の森に付いたについた。そのまま山に入るとそこに数人の天狗が現れる。そこで一人の天狗が母禮に問う。

 

「貴様らは何者だ!」

「なんじゃお主ら儂のこと知らんのか?」

 

その答えに天狗は苛立ち、

 

「知らぬから、聞いているのだろう」

「そうかそうか、なら天魔に聞くと言い」

 

そう言う母禮にさらに天狗は苛立ち怒鳴る。

 

「貴様!天魔様のことを呼び捨てにに!」

「そう怒鳴るでないぞ、そうじゃそこの天狗」

 

母禮は一人の女の天狗を指名する。

 

「私ですか?」

「天魔を呼んできてもらえんか、母禮が来たと言えばいいじゃろ」

「貴様まだ話は終わってないぞおい」

 

天狗の言葉を無視し母禮は

 

「頼んじゃぞ」

「はっはい」

 

女の天狗は飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

天魔は一人、部屋で食事をしてた。すると外が騒がしいことに気付く。

 

「なんだ?少し騒がしいな…仕方ない見に行くか」

 

天魔が部屋を出ると見えたのは二人の天狗に止められてい一人の女天狗だった。

 

「私は天魔様を呼んでくれと頼まれたんです」

「天魔様は今お食事中だ邪魔するではない」

 

そこで一人の天狗が天魔に気付く

 

「天魔様!何か御用ですか」

「なに、少し外が騒がしかったのでな様子を見に来ただけだ」

「すみませんこの女が」

 

天魔は女の天狗を見る。そして。

 

「お前名は何という」

 

女の天狗は少し怖がりながら。

 

「射命丸歩美です」

 

歩美は天魔に名を答える。

 

「さて歩美よ、私に用があるのではないのか」

「そうでした。母禮という鬼が天魔様に名を言えば分かると」

 

そう言う歩美に天魔は驚き、

 

「母禮が来たのか?」

 

天魔は少し考える。

 

「この短期間で二度もここに来るなんてな」

 

まあいい、と言い母禮の元へ天魔は飛び去った。

 

「母禮とは誰なんですか?」

 

歩美は護衛の天狗に聞いた。護衛の天狗は。

 

「天魔様の古い友だ、その悪かったな」

 

天狗は歩美に謝る。

 

「大丈夫ですよ」

 

そう言い歩美も元の場所に飛んでゆく。

 

 

 

 

 

天魔は母禮の前に現れるそしてまた此処に来た要件を聞く。

 

「母禮、まだなにか用があるのか?」

「たびたび済まぬのう今回は儂の従者を治してくれんか」

 

そう言い天魔に空亡を見せる

 

「酷いな、何があった?」

「蛇に憑りつかれて儂に襲い掛かってきたのじゃ蛇は祓ったが、祓うためには弱らせないと祓えないからな、ちょと加減をまちがえてしまったのじゃ」

「ちょと所ではないだろう!!」

「そう怒鳴るでない」

「これが怒らずにいられるか!時間がない早く私の部屋に向かうぞ!」

 

天魔は焦りながらも空亡を担ぎすごいスピードで飛んでいく、そのあとを母禮は跳びながら追いかける

部屋についた天魔は空亡を置き巫女服のようなものに着替える。そして改めて空亡を見る

 

「腕はまだ二か月程度生やせるが、足はきついな私の能力でも半年はかかる」

 

そう言う天魔の下に母禮は追いつく

 

「どのぐらいで直せそうか?」

 

その問いに天魔は答える

 

「8か月程度だな」

「その位か、でもなぜだ儂の時は一年掛かったぞ」

「それは母禮は傷よりそれについた呪詛のの方が強かったからな、それより母禮この子のを治すのを手伝ってもらうぞ」

「それは分かっておる、心配するな」

「では始めるぞ」

 

 



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第九話

「では、始めるぞ」

 

そう天魔は言い、何処からから剣を取り出し、空亡の足を切り落とした。空亡はこれでも起きない。焼け焦げた足は感覚が完全に無くなっているようだ。切られた足は血が吹き出す。

 

「起きないか、まあいい。そっちのほうがやりやすいからな」

 

天魔は、次に自分の手を切り、出てきた血を空亡の傷に流し込む、すると血が止まる。そして、傷口から少し骨が生えてくる。

 

「思ったより早いな、これなら5か月位ですむぞ」

 

天魔の予想では骨が生え始めるのは二三週間位だと思ったのだが、予想より早くて驚いてるようだ。

 

「母禮ちょっと妖力を貸してくれ」

「分かったのじゃ」

 

そう言うと母禮は赤い塊を作りだした。それに合わせて天魔は碧の塊を作りだすそれを赤い塊と合わせて空亡を中に入れた。

 

「これでいいだろうあとは待つだけだ」

「こんなのでいいのか?」

「私の能力を知っているだろう」

「直す程度の能力じゃろ」

「そうだ、だがな」

 

天魔は付け加える。

 

「死んでいたりすると使えんのだ」

「死なせんでよかったのう」

「反省しろ、母禮」

 

天魔はそう母禮を叱り、椅子を出し座る。

 

「母禮まだ用があるんじゃないか?」

「そうじゃそうじゃ忘れたいた。天魔よ、此処にに住まわせてくれんかのう」

 

母禮はそう天魔に頼み込む。

 

「何故だ?確かあの森気に入ってただろう」

「いやのう、あの森儂と空亡に憑りついた蛇、確か蛇骨だったかのう、そいつと戦った時の余波で、もうあの森には住めんのじゃ」

 

それを聞き天魔は呆れて溜息をつく。

 

「はぁ、まあいいぞ」

「ありがとな天魔よ」

 

母禮は見惚れるような笑みを浮かべ感謝を天魔に感謝を伝える。天魔は照れて話題を変える。

 

「此処に住むのなら家を建てるぞ、何処がいい」

「少し待ってくれ、儂着物を洞窟に置いてあるんじゃが、取ってきていいか?」

「おまえは、偶に抜けてるな」

「言う出ない、では行って来るぞ」

 

母禮は部屋を出る。

 

「建てられる場所を探すか」

 

天魔はそう言い部屋を出て声を上げる。

 

「皆の者集まれ!」

 

瞬間十を越える天狗が集まり。

 

『何かご用でしょうか天魔様』

 

声を揃えてそう言った。

 

「私の友が今日から、此処に住むことになった。何処か家を建てられる場所はないか?」

 

天魔はそう天狗に聞くすると天狗の一人が、

 

「友とは、母禮様のことですか」

「そうだ、あと、その従者が此処に住めこことになった」

 

天魔は、天狗達にそう教える。一人の天狗が、

 

「天魔様、川の近くに開けている場所がありましたそこはどうでしょうか」

「あそこか、確か景色が良かったな、良しそこにするか行くぞ」

 

天魔は川に向かい飛んでゆく、それに天狗達がついて行く。

 

 

 

 

 

 

 

母禮は再び死んだ森を歩く、そして周りを見渡し

 

「これは酷いのう、やはりやりすぎたか」

 

森の木は焼け焦げたり、腐っていたりしておりもう元に戻る事は無いだろう。

母禮は洞窟入る。

 

「あったあったこれじゃ」

 

母禮洞窟の奧の着物を手に取り言った。目的のものを取った母禮は洞窟を出る。少し歩き、森の入り口を見ると二つの人影があったそれを見て母禮は首を傾げ、

 

「こんな森に何か用かのう、まあ儂には関係ないじゃろ、天魔の所に戻るか」

 

 

 

 

 

 

輝夜達は急いでいた。輝夜が嫌な予感がすると言いそれに皐月もついていく、走り続け何時も空亡とあっていた森につく。

 

「なにがあったのよ?!」

「これは…酷いですね」

 

 

輝夜達は森を見てそう言う

 

「嫌な予感が当たったわね、空亡は無事かしら?!」

「早く見に行きましょう!」

 

輝夜達は死んだ森の中に走って空亡のいるはずの洞窟に向かう、走るのでは遅いと気づいた輝夜は皐月に背中に乗せてもらい、皐月は能力を使い速度の限界をなくし、すぐに洞窟に向かう、洞窟に着いた輝夜達が見たのは森の入り口より酷い状態の木々と何故か無傷の洞窟だった。

 

「何故洞窟だけ無事なのかしら?」

「分かりませんが、早く見に行きましょう」

「そうね」

 

そして輝夜達は洞窟の中に入る、そこに空亡の姿わなく、食器や食料は前来た時と変わらずのまま、自分の主の着物ですと、前見せてもらった。着物はそこになかった。

 

「空亡は逃げたのかしら?」

「たぶんそうでしょう、空亡さんは自分の主の物をとても大切にしてましたから、それを持って逃げたのでしょう」

 

そう考えた輝夜達だが、あることに気付く空亡は碌にに食べていなくあまり動ける状態ではなかったことに、そのことに気付いた輝夜の行動は早かった。

 

「皐月!空亡を探すわよ!」

「ど、どうしてですか」

「空亡は今まともに動ける状態ではないじゃない」

「そうでした、早く探しましょう」

 

輝夜達は洞窟を出て輝夜達は考える、何処に空亡は居るのかと、そして思いつく、この腐食を起こしたものは、空亡を追っているのかもしれない、それから輝夜達は腐食跡を追うすると開けた場所に出る。そこは今までより酷く

腐っていたそれに所々に動物の死体があるそれだけだはなく、焼け焦げた場所もある。

 

「っ此処が一番ひどいわね」

「そうですね」」

 

その光景を見て輝夜達は一言漏らす、

 

「二手に分かれましょう」

「そうですね」

 

しばらくすと輝夜は黒い何かが落ちているのを見つけた。

 

「何かあるわ」

 

そこにあった物に輝夜は気づくそれは一年間で見慣れた空亡の腕だった。

 

「っーーー」

 

輝夜はそれを見て言葉をなくす。

 

「輝夜様なにか見つけましたか?」

 

皐月は何か見つけたのかと輝夜に聞く、輝夜は動揺しながらも腕を隠し、

 

「何もなかったわ」

「そうですか」

「たぶん、空亡は逃げ切ったでしょう、帰るわよ」

 

輝夜は少し涙声で言う。皐月は輝夜の様子がおかしいことに気付いた。

 

「でも、探してみないと分かりません!」

「帰るわよ!」

 

輝夜は毅然とした声でその提案を遮る。その輝夜に皐月は何も言えず、輝夜についていく。来た道を戻り森の入り口に付くとそこには一つの人影が

そこに居たのは銀の髪の女だっ。女は輝夜を見ると走り寄り。

 

「輝夜様、なんでこんな所のにいるのです?!」

「永琳なぜここに?」

 

その言葉を聞き永琳は声を荒げ、

 

「それはこっちのセリフです!」

「ごめんなさいね」

「皐月も!」

「はっはい」

 

皐月もそう言い輝夜達は帰ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

空亡は暗闇の中にいた。そこで自分が母禮を傷つけたことを後悔していた。あれは自分ではないとは分かっているのだが、自分の体が母禮を傷つけたそれを悔やみ続けている。そんな空亡の中で二つの言葉がずっと聞こえ続けていた。

 

許されたい、

消えて無くなりたい。

 

この言葉が永遠と空亡の中で流れ続けていた。次第に言葉が変わる。

母禮を傷つけた世界なんて。すべて凍ればいい。そう思ったと同時に自然と声が出る。

 

魔訶鉢特摩(マカハドマ)

 

瞬間、氷が空亡の体を覆い時間が凍結し始める。

 

 



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第十話

「魔訶鉢特摩」

 

瞬間、氷が空亡の体を心臓辺りから覆い時間が凍結し始める。ふとこの空間に一羽の鳥が天魔に餌をもらいにやった来る。部屋に入ると宙に浮いたまま止まっている。鳥は何が起こったのわからなかっただろう。

 

母禮達の家を建てる場所を見に来た。天魔は異変を感じる徐々に周りが冷えていき今は秋なのに白い息が出るのだ。そのことにほかの天狗も気付く。天魔たちは特に冷えているところを目指す少しずつ羽が凍っていき飛ぶのが辛くなっていく。急に寒さが無くなり、天魔の部屋が見える。なぜか天魔の部屋だけが何もない。周りの木々はすべて凍っているのに、この部屋が流石におかしいことに天魔たちは気付く。そんな中灰色の髪をした天狗が軽い調子言い、

 

「俺が行くっすよー」

 

手を振り笑いながら部屋に入っていった。

 

(さて何が出るっすかね)

 

そう思い部屋を見渡し氷の塊を見つける。これを見て原因はこれかと思い触るすると、徐々に腕が動かなくなっていく。

 

「何が起こってるんすか?!」

 

天狗は焦り手を放そうとしたがもう遅く体が凍結し始める最後に見えたのは氷の塊の中で眠る少年の姿だった。

 

 

 

しばらく経つが天狗は中々戻ってこない。さすがに遅いと思ったのか一人の天狗が痺れを切らし、天狗を見にく。少し怒った様子部屋まで近づきで扉を開け中に入り大声で天狗の名を呼ぶ。

 

「おい!経造(けいぞう)遅いぞ!」

 

そこで見えたのは氷の塊を触りながら凍ったように動かない経造の姿だったその経造をみて呆れながら経造に触れ瞬間腕が動かなくなり始める。それに天狗は驚きの声を上げる。

 

「なっ!!」

 

それでも自分はこのまま動けなくなることを悟ってか、最後の力を絞り天魔に向かって危険を知らせる様に焦りながら叫ぶ。

 

「天魔様!此処は危険です!」

「何があった!」

 

その大声に天魔は反応し部屋に向かうが遅く、危険を知らせた天狗も凍ったように動きが止まり、声もなくなる

 

「おい!…くそ!」

 

天魔は悪態を吐いた。

 

「何が起こっているんだ?」

 

天魔たちは何が起こっているのか分からないようだ。天魔は次は自分が行こうとするがほかの天狗が達が慌てたように止める。そこに後ろから足音が聞こえてくる。足音の主は天魔達を見るなりくしゃみして。

 

「何で此処に来るまでにこんなに冷えてるんじゃ?今は秋のはずじゃろ?」

「母禮!」

 

母禮が来て天魔はほっとする。母禮は此処で何があったのか聞く

 

「どうしたんじゃ?」

「お前の従者がいる部屋が可笑しい」

 

母禮はそれを聞き、空亡に何か起こったのかと思い。

 

「どれ、儂が見に行ってやろう」

「おい母禮!止めろ!」

 

天魔は母禮を行かないように呼びかけるが母禮はそれを聞かず天魔の部屋に向かう、部屋に足一歩踏み入れると足が凍ったように動かなくなる。

 

「これは?冷たいのう」

 

母禮は特に気にせず足を動かそうとしてもびくともしない、母禮は空亡の能力であることは分かるが効果がいまいち分からない、足から体が徐々に動かなくなくなっていく、周りを見渡すと浮いたまま止まっている鳥がいる。その鳥は墜ちる事無く止まっている。そのことで母禮は時間が凍っていることに気付く、そして母禮は体を炎と化す。その炎は凍った時間すらをも溶かし始める。すると凍っていた天狗も動き出す。天狗は慌て部屋から出て天魔の安否を確認する。

 

「てっ天魔様無事ですか!」

「無事だが…お前こそ無事なのか?」

 

天魔慌てている天狗の大声に少し、ビクッとなったがすぐに天狗たちの無事を確認する。

 

「はい、ですけど最初に入った経造は無事でしょうか?」

 

そう言い天狗は部屋に戻り経造を見に行く。経造は未だ動かない。それを見て天狗は慌てる。

 

「おっおい経造無事か!」

 

その声に経造はこの場に合わないほど軽快な声で自分の無事を知らせる。

 

「無事っすけど、まだ体がうごかないっす、助けてください」

 

経造の体の時間は完全に溶けていなくて、早く溶かしてほしいと思い母禮に助けを求める。

 

「すまんすまん」

 

母禮は軽く笑いながら謝り、経造の体を溶かす。経造は二三度体を動かし安堵する。

 

「ありがとうっす」

 

そう経造は感謝を伝え笑う、そんな経造を見てから、母禮は空亡の無事を確認するように、空亡に声を掛ける

 

「空亡無事か?」

 

返事はない、そこには妖力の塊に浸っている空亡が凍っており、死んだように眠っている。それに母禮が空亡の氷を溶かそう触ると腕が凍り始める。母禮は少し驚いたがすぐさまそれを腕を炎と化し空亡の氷ごと溶かし空亡に呼びかける。

 

「おい空亡起きんか」

 

空亡は起きず魘され始める。そしてまた空亡の周りをピキピキと氷が覆い時間が凍結を始めようとする。それが周りを包み込み母禮を凍らせようとするが母禮はそれを腕を振るい溶かす。再度時間の凍結は開始される。そこで母禮はまた溶かし考える。

 

(これは空亡の能力が暴走しているのう)

 

時間の凍結はまた始まりうとしている。母禮は息を吐き全身を炎と化して一言。

 

「まずこれを止めないといかんのう」

 

母禮は休む暇もなく来る空間の凍結をすべて溶かし止める。するとそれは突然終わる。母禮は体を戻し違和感を感じながらも声を漏らす。

 

「終わったのか…?」

 

そして母禮は終わりを確認するため、空亡の方を見る。すると空亡を覆っていた氷は溶けて空亡は更に酷く魘され始める。

 

「おい空亡大丈夫か?!」

 

そんな様子の空亡を心配するが意味わなく空亡は次第に何かを唱え始める

 

ざんざんびらり、ざんざんばり、びらりやびらり、ざんだりはん

 

つくもふしょう、つかるるもふしょう、鬼神に王道なし、人に疑いなし

総て、一時の夢ぞかし

 

ここに天地位を定む

 

計都(けいと)天墜(てんつい)

 

その声に合わせる様に空に穴が開く。そして光が何かを通すための道のようになる。其処に計都彗星(けいとすいせい)の威容が宙の果てから燃える大火球と化して母禮のいる部屋に迫り来る。 それを見た天魔達は声を失ったがすぐに、それを壊そうと天魔は錫杖を取り出し天狗達各々武器を構える、其処に母禮が部屋から出てきて大声で言う。

 

「これは儂に任せよ!」

 

そう言い放った母禮は唱える

 

――太・極――

 

随神相――神咒神威・無間焦熱

 

そして女武者が出て彗星を両断する。両断された彗星は破片となり降り注ぐ。それを天魔は錫杖を鳴らし突風を起こし彗星の破片を消していく。だが数が多すぎる。もう駄目かと思った。その時、母禮が紅蓮の炎を出す。彗星より熱いその炎は彗星の破片をすべて蒸発させる。それを見て天魔達は喜んだが、いきなり天魔の部屋の扉が開く。そして空亡が出てくる、空亡は頭痛のするほどの妖力を纏っている。それは圧となって周りに広がる。その圧力に天魔と母禮以外が地面に叩きつけられる。その様子に母禮が声を漏らす。

 

「この妖力儂のが混じっているな」

 

そんな言葉を軽く漏らす母禮に天魔が分からないといった様子で母禮に問う。

 

「なぜ奴からお前の妖力を感じるんだ?!」

 

そんな天魔に呑気に答える。

 

「いやのう空亡に飯を与えるのが、面倒でのう儂の妖力で育てたんじゃ、それで半妖みたいな存在になったんじゃ」

「半妖でこの妖力とか洒落にならんぞ」

 

そんな様子の母禮達を尻目に空亡は何か唱え始める

 

 

終焉の時は来たる天地万物は灰燼と化し

 

総てを終わらす最悪の愚者がやって来る

 

人も神も妖も皆すべからく滅ぶべし

 

今最悪の試練を与える生命よ武器をとれ抗い続けろ

 

愚者は現れた滅びは始まる

 

――太・極――

 

随神相――神咒神威・無間終焉

 

 

そう唱えた空亡の周りに下半身が蛇、上半身が長い赤い髪腕が八本ある男の巨人が現れる。巨人の腕にはそれぞれ紅い球、蒼ノ球、黒ノ球、碧ノ玉、黄ノ球、白ノ球、茶ノ玉、紫の球がある。

紅い球形が変わる巨大な剣となり母禮達へと振るわれる。女武者はそれを止めたが、黄ノ球が雷が、白ノ球は氷が、碧ノ球は暴風を起こし、そして黒ノ球は雲の中に入っていくそこから無数の星たちが墜ちてくる。それらは全て母禮達に襲い掛かる。

 

「これは覚悟を決めないといかんのう」

「終わったら宴会だな」

 

母禮は女武者の腕を増やし、天魔は羽が増え錫杖と薙刀を構える

 

「ではやるか」

「ああ」

 

 




オリジナル詠唱を出してみましたがどうでしたか


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第十一話

雷が、氷が、暴風が、そして無数の流星が母禮達を襲う。回避は不可能、迎撃するしかない。母禮は先ずは己の炎で氷の大半を溶かす。だが溶かし損ねた氷は刃となり天狗たちの方に向かう。その中で一人の天狗が立ち上がる。経造だ。剣を構えて氷を斬る。氷を斬った経造は得意げに言う。

 

「どうっすか!一応俺は警備隊の副隊長ですからね!」

「おい経造!そんな事言ってる場合ではないだろう!」

 

そのやり取りを尻目に、次々とほかの天狗も立ち上がり武器を構える。未だ氷は天狗たちを襲い続けている。天狗達は各々武器を使いそれらを捌いていく。次は雷だ。神速と言っていいほどの雷は、逃げる母禮を追い続け周りの木々をなぎ倒していく。母禮は急に方向をかえ雷に突っ込む、雷は母禮の体に吸収されていく。

 

「天狗たちから離れられたし妖力も減っていたから丁度良かったのう」

 

そう母禮は軽く笑い、手を合わせる。そして紅蓮の火球を流星に向かって放つ。火球は流星を包つみ蒸発させていく。母禮はこの程度で消える流星に拍子抜けしたが、

 

「まだまだあるのう」

 

母禮は空を見て言い、流星に向かい再度炎を放つ。

 

天魔は暴風と対峙していた。風は刃となり天魔を切り裂こうとする。それにに錫杖と薙刀一つで立ち向かう。暴風は天魔を飲み込んだ。暴風の中で天魔は錫杖を鳴らす。しゃらしゃらと音が鳴り、それに合わせる様に天魔の翼が巨大になっていく。そして羽ばたく。すると突風がおき、中から暴風を消し去る。そして母禮のもとへ飛ぶ。

 

天魔は無事な母禮を見て安堵の息を漏らす。

 

「母禮は無事だな」

「たわけもの、儂がこの程度で死ぬと思うのか?」

「無粋だったな」

 

 

女武者は巨人に切りかかる。炎を纏った刀は、恐ろしい速度で巨人に迫る。それを巨人は防御せずに佇んでいる一本の腕から蒼ノ球が浮き、そして広がり盾のようになる。蒼ノ盾は水になり炎を防ぐ、炎の刀では無理と気づいたのか女武者は雷の刀を使い斬りかかる。蒼ノ盾はそれを防げず貫通される、そのまま巨人の腕を切断する。巨人はそれを全く気にしていないようだ。腕の斬られた傷からは紅い血がドバドバと漏れ出す。血はベチャリと天狗の近くの地面に落ちると、形を変え人や犬や蛇の様な物になる。それらは耳が壊れるようなほどの奇声を上げ、天狗たちを見るなり襲い掛かる。まずは人型の怪物が経造に腕を振り下ろす。その攻撃を刀を使い防御する。だがその攻撃は重く地面が陥没する。その隙をついて蛇と犬が噛みつこうとする。経造は反応が遅れ防御ができない。

 

「危ない経造さん!」

 

それを他の天狗が守る。

 

「ありがとうっす」

 

経造は軽く笑い、感謝を伝え人型達に突撃する。

その後ろで母禮と天魔は空亡を探す。空亡を止めればこれは終わると直感したからだ。人型や犬や蛇が行く手を阻む。だがそれは意味はなく等しく倒される。

 

「この程度なら意味がないぞ」

「無駄だな」

 

母禮達は空亡を探すのを続行する。其処でより多くの人型達が集まっている場所を見つける。

 

「空亡はこの中か?」

「早く見つけるぞ!」

 

母禮達が空亡を探している中、女武者は巨人と戦闘を続けていた。女武者が斬りかかり、それを巨人が使っていない四っつの球を使い防御する。女武者は雷の刀を十本出し、巨人に向かい飛ばす。巨人は茶ノ球の形を刃に変え、刀を両断する。

母禮達は人型の奥で蛇たちに守られている空亡を見つけた。

 

「居たのう」

「やっと見つけたぞ」

 

その時巨人が目を見開き、腕にある球がすべて集まり一つにる。それは蒼を纏った巨大な黒い球だった。塊は縮小をくり返し落ちてくる。それを見て天魔たちは此処一体は消えてなくなると確信し、まず動いたのは天魔だった。天魔は天狗たちにこの場所から離れる様にと言う。

 

「お前たちは里に戻り結界を張れ!」

「天魔様達はどうするのですか?!」

「私たちはこれを止める!早く行け!」

「まあ儂らは死なぬよ」

 

天狗たち下を向きながらも言葉をのみ込み後ろを向き、

 

「ご武運を!」

 

そう言い天狗達は去っていく、母禮達はその後姿を見て笑う。

 

「お前と共闘するのは何度目だ?母禮」

「忘れたのう、そう言えば萃香達と最近戦ってないのう」

「誰だそいつらは?」

「儂の古い友じゃよ」

 

そう雑談し、母禮は女武者を自分に纏わせる。その姿は女武者をそのまま自分につけたような見た目で炎の腕が二本後ろに浮いている。天魔にも変化が訪れる。羽がさらに増え十二枚になる。空亡が放つ妖力と母禮達が放つ妖力で此処一体の空間は悲鳴を上げる。

 

「さて本気でいくか」

「この姿は久しぶりだな」

 

姿を変えた母禮達二手に分かれ、

 

「儂はあの球を止めるぞ」

「巨人は任せろよ母禮」

 

天魔達はそう言い各々自分の役目を果たそうとする。天魔は巨人の方に飛びその勢いのまま薙刀で斬り掛かる。

巨人は咄嗟のことで反応が遅れ、そのまま胸から腹にかけて傷ができる。其処から血が溢れるがそこに風の刃を飛ばし血を切り刻む。血はまき散らされたが形が変わる様子はない。風はそのまま巨人を拘束し、空に打ち上げる。

母禮は黒い球の下へ行く。丁度真下辺りに来ると一気に母禮は跳び、黒い球を炎の腕で抑える。球は炎の腕を飲み込んでいくが、母禮はさらに腕を出し止めていく。しかし押され始めたが、母禮は諦めない。

 

「まだじゃぁぁぁぁ!」

 

そう言い炎の腕をさらに出す、炎の腕の数は二十を超え、次々と球の方に殺到するついに炎の腕は黒い塊を巨人の元へ押し返す。天魔に飛ばされ宙に浮いている巨人は避けることが出来るはずもなく球に当たり消し飛んだ。

巨人が倒れたことで周りに変化が起きる。あれだけいた人型や犬や蛇はすべて消え、静けさが訪れる。この現象を起こした空亡は倒れている。

 

「終わったのう」

「そうだな」

 

母禮は終わったことを確認し、倒れている空亡には歩みより、空亡を揺する。

 

「空亡起きろ」

「もう大丈夫なのか?」

 

天魔は少し離れ、少し警戒しながら母禮に言う。そして空亡は目を覚ます。そして母禮に蛇に身体を奪われたこと、そして暴走し周りを壊したことを謝る。能力が暴走している中でも意識はあったようだ

 

「主…様…すみません」

「何を謝っているんじゃ?何も謝ることは無いじゃろ」

 

母禮はそんなこと軽い調子で空亡に言う。

 

「私は…許されるの…ですか」

「ああ、天魔もそうじゃろ」

 

そこで空気を読んで離れていた天魔が、突然のことに驚きながらも言う

 

「私か?!まあ大した被害はなかったしな皆も許してくれるだろ」

「そう…ですか…ありがとう…ございます」

 

そう言い空亡は疲れたのか倒れて寝てしまう。

 

「おい空亡寝たのか?」

「母禮今は寝かせといてやれ」

 

母禮は空亡を担ぎ、天魔は羽を戻し何かを思い出す。

 

「そうだ母禮、休んだら家を建てるのを手伝ってもらうぞ」

「いいじゃろう」

 

そう言い母禮達は部屋に戻る。母禮は空亡を部屋に置き、天魔と山の頂上に行く

辺りはすっかり夜になっていた。月を見て二人は酒を酌み交わす。

 

「うまいのう」

「そうだな、それにしても今日は疲れたな」

「ああそうじゃな」

 

そして一通り酒を飲んだ後。

 

「母禮」

「なんじゃ」

「なぜあの子を育てているんだ」

「空亡のことか」

「そうだおまえは、人間が嫌いだろう」

 

母禮は何か少し考え、

 

「最初はある程度育てた後、喰うつもりだったんじゃが、ずっと一緒にいると段々愛着が湧いてきてのう」

「そうなのか」

「それに空亡を育てたらどんな強さになるか気になるからのう、強くなった空亡と本気で遊んでみたいからな」

 

天魔はそこまで聞くと納得がいったという様子で笑いある提案をする。

 

「そうだ母禮、空亡を鍛えるの経造にやらせてみてはどうか」

「なぜじゃ?」

 

母禮は首を傾げ天魔に問う。

 

「奴は性格は軽いが能力に武器を扱う程度の能力を持っておる、武器の使い方や対人戦を教えてもらうのなら奴以上に適任はいないだろう」

「そうなのか、任せてもいいかのう」

 

そのあとも二人は酒を飲み、笑いあい夜が明ける。

 

 

 

 

 



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第十二話

空亡は目を覚ます、そこに母禮の姿はない。

 

「主様は?」

 

部屋を見渡してから、空亡は部屋を出る。そこには巨大な荷物を持った経造がいて、空亡を見るなり、声を掛けた。

 

「やっと起きたっすね」

 

空亡は初めて見る経造に警戒する。そんな空亡に一言いう。

 

「そう身構えないでほしいっす、俺は天魔様と母禮様に頼まれて、君に戦い方を教えることになったっす」

 

母禮と聞くとと空亡は完全にではないが、警戒を解いた。

 

「貴方は?」

「俺っすか、俺は経造というっす、えっと名前を教えてください」

「……、宿儺空亡といいます」

「まだ警戒してるっすね。危害は加えないっすよ」

 

経造は空亡が警戒していたことに、気付いていたようだ。その言葉を聞き空亡は警戒をゆるめる。

空亡達は山の中枢へ移動する。その途中で経造は突然話始める。

 

「それにしても空亡の能力凄いっすね」

「私のですか?」

「そうっす。俺を一瞬で凍らせるなんて、あんな能力初めて見たっす」

「私がそんなことを!すみませんでした」

 

空亡は自分がしたことに謝罪をしたが、経造は空亡の頭を撫で笑いながら、

 

「気にしなくていいっすよ、あれは俺の不注意みたいなものっすから」

 

空亡は納得もいかない様子で言う。

 

「しかし私がやったことは」

 

納得してない空亡に、しょうがないなあと言いこう続ける。

 

「ならその分、厳しく教えるっす」

「分かりました!貴方のことを師匠と呼んでもいいですか?」

 

その言葉を聞き空亡は元気よく返事をした。空亡のの問いに経造は嬉しそうに笑い、空亡にそう呼んでくれと頼む。

 

「師匠すか。いいっすね、そうっすこれから自分のことは師匠と呼んでください」

「はい!師匠」

 

山の中枢についた空亡達は荷物を置き、経造が持っていた飯を食べた。

 

「今日は組手をするっす」

「了解しました師匠!」

 

空亡は、経造から離れる。そして呼吸を整えた。

 

「行きます」

 

そう言い空亡は地面を蹴り、経造の目前に間合いを詰める。常人では避けられない速度を放つその拳を、経造は寸前で躱し、空亡の腕を取り投げる。

 

「遅いっす。もっと速く鋭く」

 

常人には避けられない拳を簡単に避け、それから投げ返すとはさすが天狗だろう。空亡は先程より素早く経造に近寄り蹴りを放つ、さっきより速かったのか経造に掠る。

 

「おお!やるっすね」

 

経造は空亡を褒めながら、あることを考えていた。

 

(一言いうだけで、すぐ出来るとは筋がいいっすね、これは楽しくなりそうっす)

 

「次は俺からいくっすよ」

 

経造は空亡の前に瞬時に現れ、腕を振る空亡は防御したが横からの蹴りに吹っ飛ばされる。

 

「こういう風にだまし討ちとかがあるので、相手の攻撃はあまり信じない方がいいっす」

 

空亡はよろけながらも何とか立ち上がった。

 

「はい!」

「まだまだ行っすよ」

 

経造は空亡の前に地面を蹴って移動する、空亡の前まで来た経造は猫だましをする。それにより反応が遅れた空亡は経造に一撃入れられる。空亡はよろけながらも、意識を保ち経造の話を聞く。

 

「戦闘では何をしてもいいっす、生き残れば勝ちなんすから……」

 

そう経造は空亡に教える。そう言う経造は少し悲しそうだ。空亡はそれに気づくことなく返事を返す。

 

「…はい!」

 

その後半刻ほど続け経造に言われた通り、だまし討ちなどを混ぜてみたが、攻撃を当てたのは最初の蹴りのみで、それ以外は全く攻撃を当てることができず、躱されたり、攻撃がすべて読まれ、なげ返されたりし、時間が過ぎていく。

 

「そろそろ次に別のことやるっす、大丈夫っすか?」

「問題…ないです」

 

空亡は息を整える、この組み手でかなり疲れているのか息も荒い、だが気合で次に移る。

 

「空亡は武器は何が使えるっすか?」

「はい、刀ぐらいなら使えますが他は分かりません」

「じゃあ試してみますか、この中から選んでください」

 

そう言い経造は持ってきた荷物を開く、そこには刀、槍、棍、大鎌、大剣、弓、戦槌がそれぞれ3個ずつ入っている。経造はこれだけのものを持ち、息一つ疲れた様子がないとは流石だ。

 

「他にも気になるものが有ったら、使ってみてくださいっす」

 

空亡は刀と弓と戦槌と大鎌を選ぶ、自分はこれ等なら使えると思えたからだ。

 

「それを選んだっすね。持ってみてくださいっス」

 

空亡はそう言われ武器を持つ刀と弓は持てたがは、ほかの武器は重すぎてまだ持ち上がらないようだ。その様子を見た経造は微笑ましい物を見る目をし、空亡に言う。

 

「鎌と槌はまだ持てないっすね。それなら最初は刀を教えるっすよ。構えてくださいっす」

 

そう言われ空亡は刀を構える。重さはちょうどよく手に馴染むようだ。

 

「まずはどのぐらい出来るか確認するっすよ、来てください」

 

空亡は経造に刀で斬りかかる。真正面から来たその攻撃は縦横様々に振られ、それを経造は避けて助言する。

 

「速さはいいですけど攻撃が正直すぎるっす。もっと工夫してどんどん来てくれっす」

 

空亡は経造から離れ後ろに回り込み、鋭く横薙の一閃を噛ます。それを経造は上へ跳び避ける。それからも空亡は経造を追い刀を振るう。それを半刻続け、経造がいきなり刀を手で止めた。

 

「次は防御っす。行くっすよ」

 

経造は離れた所にある刀を取りに行き、構えると一気に突きを放つ。それを空亡は間一髪で避けたが、後ろにあった木が根元なくなっている。

 

「次はもっとゆっくりやるので、避けてはだめっすよ」

 

空亡はさっきの一撃を避けたことで、気力を半分以上持っていかれて、しゃべる余裕はないが何とか頷く。

 

「では行くっすよ!」

 

その言葉とともに放たれた突きはさっきより遅いが目で追うのがやっとだ。それを空亡は刀で何とか逸らし防御する。

 

「合格っす、今日はこのぐらいにして明日またやるっすよ」

「了解…しました」

 

空亡は気力も体力使い果たし、今にも倒れそうだが返事を返す。そして経造は荷物を背負い、空亡を小脇に抱え母禮の下へ戻る。だいぶ進むと川が流れており、その近くに開けた場所がある。そこには屋敷が建っており門があり、その前に母禮もいる。

 

「母禮さまは何の建物の前にいるのですか?」

 

空亡は母禮の後ろにある建物を疑問に思ったようだ。その問いに経造は答える。

 

「あれっすか、あれは空亡と母禮様の屋敷っすよ」

「そうなのですか」

 

母禮は空亡達に気付いたのか、声を掛ける。

 

「帰ったか、経造とやら空亡はどうじゃったか?」

「筋はすごくいいっすので鍛えがいがあるっすよ」

「そうかそうか。空亡、一週間は儂は出かけるのでな、鍛えてもらうのじゃぞ」

 

そう言いう母禮に少し空亡は渋ったが、返事を返す。

 

「……了解しました主様!」

 

経造は期待されて嬉しいのか、元気よく返事をする。

 

「俺も頑張らさてもらうっす」

「頼んじゃぞ経造。では空亡、屋敷にに入るぞ」

「はい!」

 

空亡は経造から降り母禮に付いて行き屋敷に入る。玄関は広く小さな部屋ぐらいある母禮に案内され部屋に行く途中で台所や酒蔵や大広間を案内せてもらう一通り屋敷を見た後、二階へ向かう二階には部屋が六つありその一番奥の部屋に母禮は入っていき空亡の部屋の場所を教える

 

「空亡はこの隣の部屋じゃぞ」

 

空亡はそれに従い部屋に入ってく部屋に入った空亡は疲れたのか、すぐに寝てしまう。母禮は空亡が寝たのを確認する。

 

「空亡寝たのか?」

 

返事はない、完全に寝たようだ。それを確認してから、空亡の部屋に入っていく。空亡は寝ており、それに母禮は近づき、髪をどかす。そこには小さな黒い角が生えている。

 

「やはり生えているか。儂の妖力のせいで、どんどん妖怪に近くなっていくな。面白いのう」

 

 

 



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第十三話

母禮が出かけて三日が経った。空亡達は毎日のように組み手をし、刀を振るう。空亡も少しずつ上達していき、経造にも何発か攻撃を当てられるようになってきた。

この三日で他にも進展があった。蛇に憑りつかれていた時に使えた地震を使う能力を会得したが、経造に使わないようにと言われた。空亡はなぜかと聞く。

 

「実戦では良いっすけど、組み手では衝撃を逃がすのが大変なので使わないでくれっす」

「了解しました師匠」

 

今日も組み手をする。地面を蹴る音が聞こえ、その瞬間、経造の前に空亡が現れ拳を振るう。経造はそれを逸らしたが、すぐに空亡が左手を使い攻撃する。咄嗟なことで反応が遅れた経造は、防御出来ずに攻撃に当たる。しかし経造は全く堪えていない、次は経造が仕掛ける番だ。経造は空亡に向かい走り踵落としをかます。それを空亡は腕を十字にし防御する。空亡が次を仕掛けようとしたとき、経造が突然止める。

 

「空亡、止まるっす」

「何故ですか?」

 

空亡は突然止められ困惑しているようだ。そんな空亡に経造が説明する。

 

「この三日で、かなり俺に攻撃を当てられる様になったっすよね。ですからそろそろ技を教えるっす」

「技ですか?」

「そうっす、空亡。能力で何か作ってみてくださいっす」

 

空亡はそう言われて、巨大な氷塊を作り出す。能力が暴走したことにより前より強くなったことで、出来ることが増えたようだ。

 

「丁度良い大きさっすね」

 

経造は氷塊に近づき、腰を落としか構える。そして体を横に向けながら拳を放つ、すると氷塊が内側から砕け破片が辺りに広がる。空亡はそれを見て唖然とする。あの氷塊はかなり固く、溶かすぐらいでしか壊す方法は無いはずだったからだ。

 

「すごいですね!」

「そうでしょう。今から教える技は、別の国から来た妖怪に教えてもらったす。これを出来る様になってもらうっす。でも地震は使っちゃだめっすよ」

「はい!」

 

空亡自身、氷の硬さを知っている。だから経造がやったことを、自分ができるとは思えない。だが母禮や経造に失望されたくないという一心でやることにした。まず氷塊を作り出す、それに近づき経造の真似をする。しかし氷塊には傷一つもつかずにいた。空亡は諦めずにもう一度やってみる。日が暮れれるまでやり続けたが罅を入れた程度だった。空亡は氷塊を殴り続ける、手がボロボロになってもやめない。経造が、もう今日は止めていいと言ってもやめない。

 

「もう今日はもういいっす!拳がボロボロで、もうほとんど動かないでしょう」

「まだ……です師匠」

「いいえだめっす」

 

そう言い経造は、空亡に近づき頭を軽く殴る。すると空亡の意識がなくなり、倒れる。経造は空亡を背負い、呟いた。

 

「明日は休ませないといけないっすね」

 

経造は氷塊に近づき、罅が入ったところを触る。経造が力を込る。

 

「四歳でこれとか将来化けるっすね」

 

経造は空亡を担ぎ家へ戻る。

 

 

 

 

 

 

母禮は山へ向かったいた。その途中で何回か他の妖怪に襲われたがすべて返り討ちにした。山に向かうにつれ妖怪の数も増えていく。

 

「そろそろじゃろう。萃香達は居るかのう」

 

山の麓に付く、見上げると山が連なっている。

 

「ついたのう、大江山」

 

そう言う母禮の方へ二つの人影が歩いてくる。その人影の一人は母禮ぐらい身長で巨大の杯を持っている。もう一人は背が小さく瓢箪を持っている。瓢箪を持った方が酒を一気に飲み、母禮を見て喋りだした。

 

「気持よく飲んでいて、懐かしい妖力を感じて来てみたら母禮じゃないの」

「萃香が、山をいきなり降りるって言ったから、何かと思えば母禮が来てたのか」

 

その二人を見るなり、母禮は嬉しそうに笑った。

 

「久しぶりじゃな。萃香と勇儀、遊びに来たぞ」

「ああ歓迎するぞ母禮、何にか持ってきたの」

「ああ」

 

そう言い母禮は酒瓶を見せる。瓶には天甜酒(あまのたむざけ)と書かれている。それを見て萃香達は驚き、嬉しそうにしている。

 

「その酒は?どこで手に入れたんだい!」

「これか?少し前に妖怪に乗っ取られた村があってのう。その村、酒神を祀っているから助けたんじゃ。その見返りに数十本ぐらいもらってな。余ってたら持って来たんじゃ」

「早く飲もうよ」

 

萃香は飲みたくてうずうずしているようで それを見て母禮はやれやれといった様子で酒を手渡す。それを受け取り萃香は一気に飲み干す。それを見た勇儀が勇儀が慌てて言う。

 

「おっおい萃香、私の分は!」

「悪い悪い、久しぶりの上物だったからつい」

 

その光景を見た母禮は楽しそうに笑い、もう一本酒を渡す。それを受け取った勇儀も一気に飲み干した。

 

「うまいなあ」

「そうじゃろまだあるぞ」

「ありがとうな」

 

酒の余韻に浸っていた萃香はすぐに我に返り、私にも渡せとごねる。

 

「一旦落ち着け。まだまだあるからのう」

「やったー」

 

萃香は子供のようにはしゃぎ、酒をまた受け取り、母禮も酒を飲み始める。半刻ほど三人は酒を飲み続け、母禮が突然に話し始める。

 

「そろそろここにきた目的を話すかのう」

「目的?何だい?」

「何かあるのかい?」

 

酒を飲んでいた。萃香と勇儀は母禮の話に耳を向ける。

 

「実はな、あと二十年以内に多分死ぬんじゃ」

 

それを聞いた萃香達は驚き、酒を盛大に噴き出した。

 

「もったいないのう」

「いやそんなことより何でよ?!母禮?!」

「冗談言うんじゃない。なぜお前が死ぬんだ?!」

「一片にに言うでない。落ち着けお主ら」

 

母禮は萃香達に落ち着くように言う。しかし萃香達は慌てたままだ。

 

「落ち着けっていうけど無理だよ!」

「続きが話せないじゃろ」

 

それを聞き萃香達は少しおとなしくなる。

 

「一年ほど前に件に予言されてのう。もう儂は十分生きたから別にいいじゃが、一つ心残りがあってのう。儂に空亡という従者が出来たんじゃが、そいつにいろいろ教えてくれんか」

「従者って何?もう何から聞けばいいかわかんなよ、母禮」

 

萃香は駄々をこね母禮に問いただす。それを勇儀が宥める。

 

「落ち着け萃香、母禮教えるとはとは何だ?」

「ああ、儂が死ぬ前に空亡を旅に出すつもりじゃ。それであった時でいい、鬼の事やこの国のことを教えてやってくれんか」

「お前が教えればいいだろう」

 

そんな言葉を母禮に返す。母禮は恥ずかしそうに言う。

 

「儂は空亡を他のものと関わりさせなかった。このままだと儂に依存しきるからな、幸い今は師ができて、ましになったんじゃが、このままではまずいからのう」

 

勇儀は何かを考え、思いつき、母禮の頼みを了承する。

 

「……分かった母禮、任せときな」

「なんで勇儀!」

 

萃香は勇儀に抗議するが、それを無視し勇儀はこう言う。

 

「その代わり、ここで一戦交えてくれ」

「勇儀なんで?……私も頼むよ」

 

萃香は分らなかった様だが、すぐに意図に気付き自分も便乗する。

 

「……良いぞ、その代わり2対1でな」

 

母禮は少し考えてから答え提案する。

 

「それで良い、だが負けた時はこっちの頼みを聞いてもらうぞ」

「じゃあ、やろうか」

「ああ」

「行くよ」

 

そう言い、母禮達は互い距離を取る。母禮は鎧を出し、萃香達は拳を構え名乗りあげる。

 

「神仏の敵、宿儺母禮」

「小さな百鬼夜行、伊吹萃香」

「語られる怪力乱神、星熊勇儀」

『いざ尋常に』

『勝負!』

 

母禮達は大地を同時に蹴り、萃香達が母禮の目の前に現れ、二手に分かれ左右から同時に殴り掛かる。勇儀の方が腕が長いので先に攻撃が届く、それを母禮は掴み、萃香に向けて投げつける。萃香は咄嗟なことだったが、すぐに反応し勇儀を受け止め少し話し合う。

 

「あぶないあぶない、大丈夫か勇儀」

「ああ問題ない。萃香、上に投げてくれ」

「分かった」

 

萃香は勇儀を上に投げる。そのままさらに加速し母禮に拳を放ち、勇儀が上から膝蹴りを喰らわせる。それを見て母禮は笑う、とても楽しそうに笑う。そして萃香に間合いを詰め腹を殴る。萃香は血を吐き出し飛ばされる。母禮は次に勇儀の上に跳び、回し蹴りを喰らわせ地面に叩きつける。

 

「これでどうじゃ」

 

だが萃香達も負けてはいない。萃香が腕を回すと、そこに岩が集まっていき、より巨大な岩となる。それを母禮に投げつける。岩は恐ろしい速度で母禮へと向かう、母禮はそれを受け止めたが反動で左腕が折れる。母禮は手を二三度ふり言葉を漏らす。

 

「これは完全に折れてるのう」

「すぐ直るくせによく言うよ、私は肋骨が折れたよ」

 

萃香は肋が折れたのにもかかわらず母禮と話す。萃香の体が徐々に霧になっていく

 

「趣旨を変えるからすぐにやられないでよ母禮、勇儀行くよ」

「ああ!」

「あれか?来い!」

 

萃香の体が完全に霧になり、此処一体に霧が広がり周りが見えなくなる。その霧の中で勇儀が母禮に仕掛ける。その中で虚空からいくつもの攻撃が母禮を襲う、母禮はそれを感覚で捌く、上や右や左、絶え間なく来る萃香の攻撃と、勇儀の攻撃を捌き続ける。

 

「やはりこれは厄介じゃのう」

 

そう言いながらも母禮は楽しんでるようだ。

 

「まだまだ終わんないぞ、母禮!」

「長い夜を楽しもうよ」

 

萃香達はそう言いながら笑い、母禮は喋る。

 

「儂からも攻めさせてもらうぞ」

 

母禮の体から妖力が放出され、それが炎と雷に変換されてゆき空間を焦がす、そのせいで萃香の霧化はとけ、元に戻る。母禮の後ろに炎と雷の腕が現れ浮いている。その雷の腕が勇儀を、炎の腕が萃香を襲いかかる。

 

「これで終わるなよ萃香!勇儀!」

「ああ」

「分かってるよ」

 

萃香達はそれぞれ腕へ向かう。

 

 

 

 




そう言えば母禮さんも炎の腕はFGOの茨城童子のあれです。
次回は金か土に出せたらいいな。
FGOフレンド三人ほど良ければお願いします
252、010、572


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第十四話

たぶんセーフ


炎の腕は萃香を追い駆ける。萃香に腕が当たると思ったとき萃香の体が霧になり、腕を避ける。体を霧から戻し母禮に懐かしそうに言う。

 

「母禮。初めて会った時も殺し合ったよね」

「そうじゃのう。あの時は儂も若かった。雑談はこれぐらいにしてまだまだ行くぞ」

 

母禮さらに腕を増やし自分も攻撃に参加する。

勇儀は雷の腕に苦戦。無暗に触ると感電する。それを理解してるので動きは最低限。そして隙をうかがっていた。

 

(このままじゃ母禮に仕掛けられないな。仕方ない。腕を捨てるか)

 

そう思考し、勇儀が捨て身の覚悟で仕掛け雷の腕に突撃する。そのまま左腕を使い雷の腕の前腕の部分を掴み叩きつける。そのせいで腕が感電し動かなくなる。それは特に気にせずに、再び母禮に向かう。母禮は萃香のみを相手していたので不意を突かれ、鬼の力で殴られる。母禮は足に力を込め踏ん張り勇儀の方に殴り掛かる。

 

「私を忘れちゃ困るよ母禮」

 

萃香が母禮に後ろから殴り掛かる。避けれれないはずの攻撃を、その身を炎と化して防御する。そのせいで萃香の腕は焼ける。

 

「熱い熱い。母禮、使えなくなったらどうすんの」

「ぬかせ、すぐ治るじゃろ」

「違いない」

 

萃香は腕を散らしまた集める。其処には無傷の腕があった。それを見た母禮はやはりなと声も漏らす。母禮の体の炎が激しくなる。

 

「ここからが本番じゃ、来い焔狐(えんこ)焔龍(えんりゅう)

 

母禮は炎を出す。それが形を変え九の尾を持つ狐と炎を纏う龍になる。それは咆哮し母禮の傍に寄る。

 

「主殿久しぶりですね」

 

狐が言う、それに続けて龍が喋る。

 

「要件はなに主」

「久しぶりにお主らを使う。頼むぞ」

『御意』

 

そう言う狐は母禮に溶けて行き母禮に尻尾が生える。龍は母禮の周りを回り続けてる。萃香は不思議に思い母禮に岩を投げつけるすると龍がそれを阻止し岩を燃やす。

 

「この状態だと力が下がるからのう。基本妖術しか使えんのじゃ。まあその分妖術が強力になるんじゃがな」

「それは面白い。私と術でも比べるの。勇儀此処からは一人でやりたい。負けたら代わるよ」

「了解、任せるよ萃香」

 

勇儀は少し離れ観戦する。

 

「じゃあ、やろうよ。母禮」

「そうじゃな」

 

萃香が突撃し何かを手に集め母禮に投げつける。それは母禮に当たると爆発する。そして中から大量の岩が出続ける。

岩の一つに当たった母禮は吹っ飛ぶ。そこに萃香が巨大化し跳ぶ。そして母禮を潰そうとする。母禮は手を合わせると地面から炎が噴き出し萃香を襲う。萃香は元のサイズに戻りそれを避けるが炎は萃香を追う。空中にいる萃香は避けられない。しかし腕に巻き付いている鎖を回し炎をかき消す。

 

「この程度じゃやられないよ」

「ならこれでどうじゃ、行け焔龍」

 

焔龍は萃香に向かい飛び噛みつく。萃香は牙の部分を掴みそれを阻止する。龍は尾を使い薙ぎ祓う。萃香は右足を使い防御する。だが反動で右足が折れる。

 

「いったいな」

「その程度で済むとはさすが萃香じゃ。だがこれでしまいじゃ」

 

萃香の周りに炎の玉が回っている。徐々に速度が上がっていき、炎が溢れだしそれは萃香を包みこむ。それを見て萃香は言葉を漏らす。

 

「これは無理だわ。私の負けだね」

 

萃香は炎に包まれ倒れる。

 

勇儀は萃香に慌てて駆け寄り揺する。萃香は起き上がり、

 

「あー負けた負けた、次は勇儀の番だよ」

「大丈夫なのか?萃香」

「問題ないよこの程度じゃ死なないしね」

「そうだな、じゃあ行くか」

 

勇儀は母禮の下に歩いていく。母禮は姿を戻し、拳を構える。

 

「もういいのか?」

「ああ来い」

 

 

勇儀も構え、母禮が殴りかかる。それに合わせて勇儀も殴り掛かり、拳同士がぶつかり、空気が悲鳴を上げる。

 

 

 

 

 

 

空亡は経造に起こされる。

 

「空亡起きるっす」

 

空亡を何度か揺すり暫くすると空亡が目を覚ます。空亡は周りを見渡し此処が自分の部屋だと気づく。そして経造に分からないことを聞く。

 

「師匠なぜ私は此処にいるんですか?氷塊を壊そうとしてたはずでは?」

「空亡は疲れて倒れてたっすよ、だから俺が運んだっす」

「そうですか、ありがとうございます」

「別にいいっすけど、今日一日休んでもらうっす」

「何故出すか?!」

 

空亡は何故か分からない様子だ、そんな空亡に経造は宥める様に説明する。

 

「空亡は昨日のせいで拳がボロボロっす。いくら治癒力が高くても一日は休ませないいといけないっす」

「そうですか……。分かりました」

 

空亡は腑に落ちない様子だが了解した。経造はその代わりと言い、言葉をつづける。

 

「今日は子供の天狗と遊んでもらうっす」

「遊びですか?そんなことしなくても」

 

経造は空亡の頭を撫でてから言う。

 

「天狗の子供だから足が速いので修行になるっすよ。それに俺の娘と遊んでほしいっす」

「子供がいたんですか?!]

 

経造が子持ちのことに空亡は驚いているようだ。経造は若干ドヤ顔した。

 

「ついでに嫁も紹介するっす」

「楽しみです、そう言えば師匠の本名は何ですか」

「そう言えば言ってなかったっすね。俺の名前は射命丸経造っす」

 

 

空亡達は部屋を出て天狗の里に向かう。途中で獣に襲われたが経造が威圧すると、すぐに逃げ出した。空亡達は里に付く里に付くと、他の天狗が経造たちを見るなり声を掛ける。

 

「経造昨日はどこ行ってたんだ?いつもより遅いぞ」

「経造さんが帰ってきたぞ」

「遊ぼうー」

 

経造はハハと笑い一人ずつの質問に答える。

 

「昨日はこの子の家に泊まったっす。遊ぶならこの子と遊べばいいっすよ」

 

そこに一人の黒髪の少女がが歩いてきて経造を見ると満面の笑みで近づく。

 

「父様お帰りなさい、その子はは誰ですか?」

「俺の弟子っす。空亡自己紹介をしてみるっす」

 

空亡は戸惑ったがすぐに名前を教える。

 

「私ですか空亡はと言います、あなたは?」

「私は射命丸文と言います。以後お見知りおきを」

「よろしくお願いします、文さん」

「文でいいですよ」

「分かりました文」

 

経造はそんな二人を見て微笑んでいる。

 

「早速仲良くなっみたいっすね。文、空亡と遊んでくるっす」

「分かりました父様。行きますよ空亡」

 

文は空亡の手を取り走っていく。空亡は引っ張られて里の奧へ連れてかれた。

 

「何して遊びますか空亡」

「遊んだことがないので何があるか、分かりません」

 

空亡は今まで遊びというものをやったことがないので、何があるかが本当に分からない。そこで文が提案する。

 

「私の能力で遊びませんか空亡」

「何ができるんですか?」

 

文は団扇を取り出すとそれで空亡を呷る。すると風が起き空亡を包む。そして空亡が浮く。空亡は目を輝かせる。その姿は空亡の歳相応だった。文は得意げに笑った。

 

「面白いでしょう、これで木の実とか探しに行きませんか」

「いいですね、行きましょう」

 

文も飛び、木の実を探しに行く。集めて満足したところで、文が提案する。

 

「今度は鬼ごっこをしましょう」

「それは何ですか?」

「やったことないんですか!じゃあ教えますね」

 

空亡は文の説明を聞きある程度理解したようだ。其処で文が気付く。これでは人数が少ない。

 

「これでは足りませんね。椛を呼びますか」

 

文は息を吸い大声で椛の名を呼ぶ。すると白い髪に耳を生やして少女がやって来る。

 

「文様あまり私を呼ばないでください。用件は何ですか?」

「この子と三人で遊びませんか」

 

椛は少し考え、答えた。

 

「今日はもう稽古がないのでいいですよ。そう言えばあなたは?」

「宿儺空亡と言います。よろしくお願いします」

「こちらこそ犬走椛と言います」

 

文はそんな二人を見て笑う。

 

「自己紹介も済んだことですし。遊びましょう私が鬼やりますね」

「いいですよ文様。さあ空亡さん逃げましょう」

 

空亡は椛に手を引かれ一緒に逃げる。それから日が暮れるまで遊び、空亡が疲かれたと言いい、みんなで昼寝をする。

文が先に起きると空亡のいた場所に蛇が寝ている。文は戸惑ったが気配が空亡と同じだったので、蛇をおこすと、蛇は空亡に戻る。空亡は蛇骨に体を乗っ取られた時から時々眠ると蛇になるということが多々あった。そのことを文たちに話した。

 

「そんなの気にしなくていいでしょう」

「そんなこと私は気にしませんよ」

 

文と椛が言う。空亡は経造や母禮、輝夜達と同じようにで気味悪がられなくて、少し涙が出る。そしてまたしばらく遊び、経造の下に帰る。経造は三人を見て手を振り喋りかける。

 

「椛も一緒だったんすか、今日は文と空亡と遊んでくれてありがとうっす」

「こちらこそ楽しかったので」

 

経造と椛は談笑し、文は二人を尻目に空亡と話す。

 

「空亡、今日は楽しかったですね。なんか弟が出来たみたいです。そうだ私のことをお姉ちゃんと呼んでみてください。ついでに椛も」

「私もですか!」

「そうですよ嫌ですか」

 

椛はうっとなり言葉に詰まった。が、すぐに否定した。

 

「別に嫌というわけでは」

「じゃあいいですね。空亡、呼んでみてください」

 

空亡は突然のことで戸惑い、恥ずかしそうに言った。

 

「えっと姉様じゃダメですか」

「いいですよ。じゃあ呼んでみてください」

「文姉様、椛姉様」

 

それを聞いた文は嬉しそうに、椛は顔には出さないが尻尾揺れている。経造はやはりその光景を微笑ましく見ている。

 

「空亡そろそろ帰るっすよ。文は先に帰っていてください」

「分かりました、父様。椛帰りますよ」

「はい、文様」

 

空亡は文たちと別れ帰宅する。その途中で経造が話しを始める。

 

「空亡、今日はどうでしたか?たのしかったっすか?」

「はい!」

「それは良かったっす。また明日から鍛えるっすよ」

「了解しました、師匠」

 

屋敷に付くと門の前に母禮がいる。母禮は空亡を見ると手を振った。

 

「空亡、帰ったか」

「主様お帰りなさい」

「経造もごくろうじゃったのう」

「はい。空亡、また明日っす。では」

 

経造は空を跳びかえっていく。母禮と二人でそれを見送った。空亡達は屋敷に入り、空亡は母禮がいなかった時の事を話す。

それを母禮が聞き自分も古い友と何があったかを話す。そして夜が明ける。

そしてこの日から、十二年後に時は進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次の話で時間を飛ばしますね


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第十五話

山奥の森の開けた場所に白い衣を纏った赤黒い長い髪をした青年が、胡坐をかき手を合わせ目を瞑っていた。

 

【挿絵表示】

 

青年の周りには動物たちが集まっていた。しかし、一匹たりとも青年に近づこうとしない。青年は目を開けて周りを見渡すと動物達を見て言葉を漏らす。

 

「なんだお前たちか。来ていいぞ」

 

そう青年は言い手招きをする、一匹の狼が青年に近づく、青年は狼を撫で始める。狼は気持ちよさそうな鳴き声を上げ素直撫でられ続ける。其処に足音が聞こえ、それは此処に近づいてくる。足音の主は青年を見るなり。

 

「やはり此処でしたか空亡、そろそろご飯ですよ」

「なんだ文か」

「酷いですね。昔みたいに姉様と呼んでもいいですのに。そう言えば椛も喜びますよ」

 

空亡はため息をついて、鬱陶しそうに言う。

 

「何年前の話をしてるんだ。もうそう言わなくていいだろ」

「何年前ってたった十歳まで言ってたのに」

「もう俺はそんな歳じゃないぞ。今年で十六だ」

 

空亡はそう言い此処から立ち去ろうとする。そんな空亡を文は揶揄う。

 

「またまたー。四年も年が離れているのだから、姉様と言いっても良いんですよ。ほら言ってみてください。文姉様と。それとも文お姉ちゃんでもいいですよ。ほら速く」

「うるさい黙れ鬱陶しい」

「さすがに酷くないですか?!」

 

空亡はそんな文にきつい言葉を返す。文は心外だーという表情で空亡に突っかかる。空亡は鬱陶しそうにしながらも、文に付いて行く移動の最中に文は空亡をからかい続ける。しかし途中から無視され始め、これではだめかと悟った文は、団扇を取り出し風を起こす。その風は空亡の長い髪を揺らし、髪は顔の前にかかる。空亡はついにしびれを切らしたのか、氷柱を文に向かい放つ。文はびっくりしたが空を飛び避ける。

 

「危ないじゃないですか!当たったらどうするんですか?!」

「文なら避けるだろ」

「もう知りません!先に返ります!」

 

文は飛び去ろうとする。空亡はそんな文の羽を氷で冷やす。

 

「ヒャア」

 

文は可愛らしい悲鳴を上げ地面に落ちる。文は頭をさすりながら、空亡ににじり寄る。

 

「いたた。もう完全に怒りました。覚悟してください!」

 

団扇を持ち風を起こす。それは空亡に向かい当たると肌が切れる。空亡はさすがにやりすぎかと思い始める。

 

「それ謝る人の態度じゃありませんよね!」

「面倒くさい、何でもするから許してくれ」

「え、今何でもするって」

 

空亡は面倒くさすぎて適当に言ったが、自分が何を言ったかにすぐに気づき、訂正する。

 

「何でもはなしな」

「もう遅いですよ。何してもらいましょうか」

「勘弁してくれ」

 

そんな二人の下に白い長い髪の女が歩いてくる。女は空亡達を見ると、ため息をこぼした。

 

「此処に今したか文様。空亡、探しましたよ」

「あれ椛何で此処に」

「今日のご飯は私が作りましたなので、早く食べてもらわないと困ります。冷めるといけませんし」

「そう言えばそうでした。あと椛」

 

文は嬉しそうに椛に言う、若干ドヤ顔してることに椛は少しうざそうに答える。

 

「なんですか?」

「今日は空亡が何でも一つ言うことを聞いてくれるそうです。椛もどうですか?」

 

それを聞き椛の尻尾が少し揺れる。だが表情には出さずに冷静に言う。

 

「文様何をしたんですか?」

「違いますよ。空亡が自分から言いましたよ」

「空亡本当ですか?」

「いや、文だけに言ったけど椛は」

「そうですか」

 

それを聞いた椛は尻尾が下がり目に見えて落ち込んだ。流石に悪いと思ったのか空亡は言う。

 

「椛も良いぞもう」

「本当ですか?!何にしましょう」

 

それを聞いた椛の表情は明るくなり、何がいいか考え始める。

 

「そうだ。今日一日でいいから椛姉様とまた呼んでください」

「それは……まあいいぞ椛姉様これでいいか」

 

空亡は恥ずかしそうに椛に言う。

 

「やった六年ぶりだー」

 

椛は子供のようにはぎ空亡に抱き着く、空亡は離せと椛を剥がそうとする。

 

「おい離せ椛」

「姉様ですよー」

 

文は唖然と見ていた。いつも冷静な椛ががなんかすごい甘えていて、そして文は我に返る。

 

「椛……椛!なんかすごい甘えてるんですけど、というかかずるいです。私も呼んでください」

「文様は別のことを頼んでください。名残惜しいですが離れますか」

 

椛は空亡から離れて息を整える。空亡は疲れた様子でいる。

 

「空亡戻りましょう、文様も」

 

椛は何事もなかった様に振る舞い移動を開始する。空亡は諦めた様に笑い、椛に付いて行く。暫くたつと文が疲れたのか我がままを口にする。

 

「空亡背負ってください。何でも言うこと聞くんでしょう」

「乗りな文」

「素直ですね。何かあったんですか?」

「いやもう、諦めただけだ」

 

空亡は文を背負う、空亡に乗った文は椛の方を向いた。

 

「さあ行きますよ空亡、椛」

「いや文様すぐ降りてください。空亡が重そうです」

「今乗ったばかりなのですが!」

「とゆうか私もそれにすればよかったです」

「良いでしょう」

「いや二人とも早くいくぞ」

『ハーイ』

 

空亡達は森を進み、母禮の屋敷に付く空亡は文を下ろし、玄関を開けた。

 

「母禮様、帰りましたよ」

「空亡は母禮様の事だけ敬語なんですよね」

 

文は呆れた様子で言い、椛は不満な顔で空亡を見た。

 

「なぜ私には昔のように言ってくれないんですか?母禮様だけずるいですよ……」

「ずるいって言われてもしょうがないだろう母禮様俺の主だぞ」

「そう言われたら何も言い返せないじゃないですか」

 

椛はそう小さく漏らし、屋敷に入る。そして大広間に向かう、途中で椛はうどん取ってきますねと言い台所に向かう文は用事を思い出したのか

 

「私は仕事があるので、此処で一端帰りますね」

「文ついでに師匠を呼んでくれ?」

「その位いいですよ、いつ呼べばいいですか」

「夕方頃で頼む」

「分かりました」

 

空亡は文と別れ、大広間に入るそこには狐のような耳を生やし鎧を着た紅い髪の女性と鹿のような角を生やした背の小さい紅い長い髪の女性が座っていて、うどんを食べている。空亡達に気付いたのか女性達が。

 

「空亡殿帰りましたか、椛殿の作ったうどん美味しいですよ」

「空亡……うどん冷める……早く食べる」

「焔狐、焔龍、母禮様は?」

「確か天魔殿の所に行ってる筈ですよ」

 

そう焔狐と話していると、焔龍が空亡の下に、手にうどんを持ちトコトコと空亡の下へ歩いていく。空亡の前まで来ると。無表情でうどんを差し出し

 

「空亡……うどん取って……座って」

「はいはい」

 

空亡が座ると焔龍が空亡の膝に腰を掛ける。空亡はいつもこうしているので特に気にしてない、焔龍に渡されたうどんを食べ始める。うどんを食べていた空亡に焔狐が袋を持って、近づいて来る。

 

「空亡殿、私特性の油揚げです!どうぞ食べてください」

「分かった」

 

空亡は油揚げを受け取りうどんに入れる。焔龍が空亡の服のを引っ張り

 

「頭……撫でて空亡」

「何時ものか、何の意味があるんだ」

「いいからやるの」

「はいはい」

 

空亡は一度うどんを置き、焔龍の頭を撫でる。撫でられた焔龍は気持ちよさそうに体をよじる。其処に椛がやって来る。

 

「空亡の分のうどん取ってきましたよ、此処に置きます……ね」

 

椛が見たのは空亡が片手で焔龍を撫でている。空亡の姿だった。

 

「空亡そのうどん誰から貰いましたか?」

「いや焔龍から貰ったんだが、これじゃないのか?焔龍これは誰のだ?」

 

焔龍は少し恥ずかしそうに顔を赤らめ

 

「……私の、おいし……いよ?」

「は?」

 

空亡は戸惑っている。椛はすこしの間無表情になり、空亡の方を見つめるがすぐ戻り、引きつった笑みを浮かべ、優しく言う。

 

「焔龍様、空亡から降りてください、空亡がうどん食べれませよ」

 

焔龍は降りる気配がなくて、そのまま空亡に顔をうずめて

 

「私は軽いし、小さいから、それに何時もこうしてるから問題ない、空亡も迷惑してないし」

「空亡?本当ですか?」

「別に何時もと同じだ、慣れた」

 

空亡はそう言いうどんを食べ始める。それを聞いた椛は不満そうな顔をした。焔龍は小さく

 

「嫉妬?」

「何か言ったか?焔龍」

「別に」

 

空亡は聞こえなかったので、椛は耳がいいのでそれが聞こえて、焔龍をにらむ。焔龍は気にせず空亡から降りようとしない、空亡はうどんを食べ続けている。焔龍はまた空亡の服を引っ張り、

 

「撫で……て」

「今日はなんか多いな、まあいいぞ」

 

空亡はうどんを置き、焔龍の頭を撫で始める。呑気にうどんを食べていた。焔狐が椛をみて恐怖する。椛は自分より弱い筈なのになぜか自分の足が震えるのだ。しかしそれは一瞬だけで、焔狐は気のせいだと椛を無視し自分の部屋に戻る。椛は、自分に言い聞かせる。

 

「私は空亡の姉です。これぐらいじゃ動じるません」

 

椛は後ろを向き、これを何回か言い聞かせてから、空亡の方を向き直り

 

「空亡早く食べちゃってください、冷めますよ」

「分かったよ椛姉様」

「なんで……昔の呼び方?」

 

焔龍は空亡が椛のことを、昔の呼び方で呼んでいることを疑問に思う、空亡は疲れたように

 

「今日は何でも一つ言うことを聞くって言ってしまったからな、それで昔の呼び方で呼べって言われたから仕方なくだよ」

 

それを聞いた焔龍は首を傾げ、空亡に頼む。

 

「私も……いい?」

「何をだ?」

「今日……一緒に……寝て」

「そのぐらいならいいぞ」

「嬉しい」

 

椛はその光景を見てついに、我慢の限界だったのか、震えて

 

「私も……私も泊まります」

「椛、今日これから警備があるって言ってなかったか、明日まで」

「今日一日、休暇を取ります、とゆうか普段侵入者とか稀ですし」

「それでいいのか隊長」

「いいんです!」

 

そんなやり取りをしてるうちに、日が暮れて夕方にになる。

空亡は庭に移動し、自身の能力を使い氷像を六体作り、それに自らの血を入れ、命を吹き込む。それらは各々武器作り、空亡に襲い掛かる。空亡は応戦する。まず一体目の氷像が刀を持ち、やって来るそれを空亡が蹴り砕き、武器を奪い取る。二体目に刀を投げつけ頭を砕く、三体目は弓を使い矢を射る。空亡はそれを掴み投げ返し目を潰す、四、五体目は空亡に突撃する。それを氷像の腕を踏み台にして、上に跳び氷像たちの頭を掴みぶつけて砕く。最後の一体に間合いを詰め、腰を落とし冲捶 (ちゅうすい)を放つ、それを受けた氷像は砕け散る。空亡はこれで終わりかと言い、そのタイミングに焔龍が歩いてきて

 

「空亡……経造が来た」

「師匠が来たのか、すぐ行く」

 

空亡は汗を拭き玄関に向かう。其処には経造がいる。経造は空亡を見て聞く

 

「空亡今日は何をやるっすか」

「組み手でお願いします」

「了解っすそれでは行きましょう」

 

焔龍が空亡の後ろで

 

「私も……ついて行っていい?」

 

それを経造は笑顔で許可する。

 

「いいすっよ」

 

空亡達は屋敷を出て、いつもの場所に向かう。

 

 

 

 




多分初めての日常回それと焔龍と焔狐に名前つけた方が良いですかねアンケート取ります活動報告に行ってください。


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第十六話

遅れてすいません


空亡達は森の開けた場所に移動する。其処は空亡の修行にずっと使われていたことでボロボロだ。あるところは地面が砕けていたり、斬られていたり、またある所は氷塊があり、今は夏なのに溶けていない。焔龍が結界を張り、空亡達は組み手の準備を始める。準備の終わった二人は刀を構える。

 

「来ていいっすよ空亡!でも腐毒は使わないでください」

「押忍」

 

空亡が仕掛ける。刀に氷を纏わせ、斬ったら凍る刀を作り、経造に斬りかかる経造は刀を仕舞い、小太刀を二本抜き防御する。小太刀は刀に当たった先から氷だす。すぐにそれを捨て経造は刀に持ち変える。空亡は経造が刀に持ち変えた時に弓に変え炎の矢を射り追撃する矢に合わせ自分も鎌を装備し突撃する。経造は矢を刀を三本浮かし、盾のようにして守る。空亡の突撃には体の軸をずらし避けてから、背中に回り込む体当たりをする。空亡は飛ばされ氷塊に当たる氷塊は砕けることもなく空亡を止める。空亡は血を吐きながらも立ち上がる。

 

「師匠にはやはり当たらないな」

「当然っす、伊達に何百年は生きてないっすよ。さてそろそろ、あれ行きますよ」

 

経造は刀を腰に戻し、辺りに妖力があふれだす、経造は服から札を何枚か取り出す、其処から何個もの武器が現れる。それが宙に浮き空亡に突撃する。戦斧が刀が大鎌が槍がすべて空亡に向かう弓が浮き何発もの矢が空亡に飛んでゆく。

 

「うおおおぉぉ」

 

空亡は叫び能力を使う、時間を凍結させて避ける。その間に経造に近づき拳を放つそして能力を解除する。だが其処に経造は居なかった。空亡は上を見ると経造が飛んでいた。降りてくるなり

 

「その技は反則急ですけど、殺気の塊を残像として残せばそれがだますことができるの注意」

「押忍」

「じゃあ続きるっすよ」

 

空亡達は再び構え経造と対峙する。

 

「行くぞ焔龍」

「任せて」

 

焔龍の体が空亡に、同化していく空亡に尾が生え体に炎を纏う

 

「鍛錬し続けて母禮様の見様見真似の技を焔龍の助けを借りでこれができる様になった。師匠これは初めて見るだろ」

「良いっすね、初めての技、面白い来いっす」

 

空亡は突撃する経造は笑いながら迎え撃つ、そのまま日が完全に暮れるまで組み手を続ける。森の一部は炎で焼け武器のせいで穴が開いている。空亡はとても疲れたようで床に寝ている。そんな空亡を焔龍は膝枕をしている。

 

「空亡……帰ろう」

「そうだな、師匠先帰ります」

「帰るっすか、じゃあまた明日っす」

 

空亡は立ち上がり経造に手を振り屋敷に帰る。帰る途中に天狗の里により土産を買って帰る。屋敷につき玄関を開けると二つの下駄がある。一つはいつも見慣れた母禮のでもう一つのは椛のだ。本当に休みを取ったのかと空亡は呆れながらも屋敷に入る。広間に行と母禮と椛がいて酒を飲んでいる。母禮は全く酔っていないが、椛は顔が赤くなりながら酒を飲み続けている。空亡は慌てて、酒を飲み続けている椛から酒を取りあげる。前椛が酒を飲んだときは大変だったからだ。しかしそれはもう遅く、

 

「わーい空亡が沢山だ」

 

と言いながら笑っている。空亡は疲れたように溜息を吐き、母禮に聞く

 

「母禮様どんだけ飲ましたんですか?」

「たしか二十瓶位から数えてないのう、まあ別にいいじゃろ面白いし」

「面白いじゃないですよ、俺はもう部屋に戻りますよ、とゆうか焔狐はどこにいるんですか?」

「奴なら儂の中で寝ておる。何か用があるのか?」

「少し前に頼まれたことがありまして」

「なんじゃそうか、焔狐、起きんか」

 

母禮が炎を出すとそれは狐の形になり出てくる。焔狐はあくびをし、周りを見渡すと人型になり

 

「おはようございます。主殿、空亡殿何か用ですか」

「焔狐に頼まれていた。油揚げ受け取ってきたぞ」

「ありがとうございます!」

 

喜んでいる焔狐の耳と尻尾が動いている。

 

「空亡殿も食べますか?」

「明日もらう」

「そうですか」

 

焔狐は耳の動きが止まり尻尾が垂れる。悪いと思ったのか

 

「やっぱもらうぞ」

「本当ですか!うどん持ってきます!」

「儂の分も頼む」

「はい!主殿!」

 

焔狐は嬉しそう尻尾を揺らしながら台所へ向かう。

 

「待つか」

 

空亡はそう言い座る。座ると後ろから何かを押し付ける感触がし振り返ると椛が抱き着いている

 

「おい椛離せ!酒臭い」

「女子に臭いはないんじゃないんですか?それより今日一日は姉様と呼ぶはずでしょう」

「酔ってんのになぜそれは覚えてる?!」

「呼ぶまで離しませんよー」

 

椛は酔っていて力加減が上手くいかず、かなりの力で空亡に抱き着いている。空亡が引きはがそうとしてもびくともしない、椛は自分を引きはがそうとしてる空亡に酒を飲ます。咄嗟なことで反応できず成すもなく飲まされる

 

「おっおいなにする!」

「空亡も飲んでくださいよー」

 

空亡は酒を飲まされ続け、暫くして焔狐が戻って来る。母禮は笑っており空亡は椛に抱き着かれて焔龍は空亡は私のと酒を飲みながら呟いている。この状況を見た焔狐は理解できずに、

 

「何ですかこの状況?」

「焔狐助けてくれ椛が引き剥がせない母禮様も笑ってないで」

「すまんのう椛ーもっとやるのじゃ」

「全く反省してない!」

 

焔狐はさすがに空亡が可哀想に思ったのか

 

「椛殿、空亡殿から離れてください流石に引っ付きすぎですよ」

「そんなこと言って自分もやりたいんでしょう焔狐様も」

「自分は別にいいですからほら空亡も嫌がってますよ」

 

椛は堪能したのか空亡から離れる。

 

「しょうがないですねー空亡その代わり一緒にお風呂入りましょう」

「いやダメだろ椛お前無防備すぎるぞ」

「なにがですか?」

 

椛は何のことかわからないようだ空亡は椛の頭を撫でながら

 

「おまえは見た目は綺麗だからなそんな無防備でいると襲われるぞ」

「へ空亡が私のこと綺麗って、えこれ夢ですか?でも撫でられた感覚はある。これは現実!嬉しいです……」

「なんだ寝たのかしょうがないな椛姉様は、空いてる部屋にでも休ませるか」

「空亡殿……酔ってますね」

「如何したんだ焔狐様、俺は酔ってないぞ」

 

空亡は用途性格が昔に戻ることを知っていた。焔狐は諦めて

 

「酔っている人はそう言うんですよ、酔いを醒ます為に風呂にでも入っていてください」

「分かった焔狐様、入って来る」

 

空亡は椛は空いている部屋置きに浴場に向かう、風呂に入っていたら足音が聞こえてくる。足音の主をは戸を開けて姿を現した。それは焔龍で空亡が入っているにも関わらず風呂に入って来る。空亡の前まで焔龍は歩くと、

 

「髪……洗って空亡」

「焔龍か、いいぞ背中を向けてくれ」

 

そう言われ焔龍は空亡に背負向け床に座る。空亡は風呂かから出て焔龍の後ろに座る。空亡は風呂においてあるゆするを使い長い髪を濡らし櫛を使い髪を整えてゆく

 

「ふぁっ」

 

焔龍は気持ちよさそうな声上げ体を揺らす。そして髪を整え終わったら手のひらから水を出しゆする完全に流し、炎を使いゆっくりと髪を乾かし風呂から出る。

風呂から出て広間に戻ると焔狐が鼻歌を歌いながらきつねうどんを食べている、その近くに用意されていたうどんを取り空亡も食べ始める焔龍は自分も食べたいのか空亡の服を軽く引っ張り

 

「私も……食べる」

「食うのか、一口で良いか」

「うん」

 

焔龍は空亡から箸を受け取り一口食べる。焔龍は何時もは表情が薄いが酒が残っているのか表情豊かにうどんを食べる。そんな焔龍を空亡が撫でている。

 

(空亡の使った箸、それに酔ってるお蔭で基本言うことを聞いてくれる。これは良い)

 

と撫でられながら焔龍は考えている。空亡そんなことは知らず、うどんを返してもらい食べ終わる。眠くなったのか部屋に戻ろうとする。それに焔龍は気付きばれないように部屋に付いて行く。部屋にはすでに布団が敷いており、空亡は入るとすぐ寝てしまう。

 

「ばれなかった、これで布団に入って寝たら、明日どんな反応するんだろう楽しみ」

 

焔龍は空亡の布団に入り空亡に抱き付き寝始める。焔龍は規則正しい寝息を立ている

 

 

夜が明け空亡が目を覚ます、頭が痛い昨日のことが記憶にない、周りを見てみると焔龍が寝ている。

 

「空亡……そこは駄目」

 

などと寝言を言っている。空亡は昨日のことを覚えていないので何が何だかわからない、とりあえず焔龍を起こす

体をゆするが起きる気配がない、仕方ないから焔龍を背負い焔龍は寝相が悪いのか、空亡に体をこすりつけている。空亡は気のせいかと特に気にせず無視をする。焔龍は小声で

 

「……予想通り」

「何か言ったか?」

「すーすー」

 

焔龍はすぐに寝息を立て誤魔化す、母禮を起こしに行き部屋に入る。母禮は着物を着崩しながら寝ている。母禮は着物がずれているので肌が少し見ている。空亡は目を逸らしながらも声を掛ける。

 

「母禮様起きてくさい、朝ですよ」

「なんじゃ空亡もう朝か着物を持ってこい」

「もう用意してるぞ」

「着替えさせろ空亡」

「え?」

 

空亡は動揺し慌てて言う

 

「自分でやってくれ!」

「主の命に背くのか」

「いやそういうわけでは」

「じゃあやれ」

「ああもう、はいはいやりますよ」

 

空亡は吹っ切れて焔龍を下ろし母禮の着物を脱がす。新しく着物を着せる。着せるといっても着物の下には何もつけず上から羽織おり帯を結んだ程度だ。

 

「まあこれでいいじゃろう、焔龍も起きんか」

「主……おはよう」

「お主起きていたじゃろ」

「そんなことない」

 

焔龍は顔を背け下に降りてゆく、母禮と空亡も下に降り広間に入る

 

「そうだお前たち話がある」

 

母禮は突然言う

 

「なんだ?」

「なに?」

 

空亡と焔龍は耳を傾ける。母禮は焔狐を出し。

 

「焔狐も出るのじゃ」

「なんですか主殿?」

「お前たちと一緒にな旅に出ようかと思う」

「旅ですか?」

 

空亡が聞き返すと焔龍も続けて

 

「何処……行くの?」

「旅と言ってもな2年ぐらい人間の村を巡ろうと思うのじゃ」

 

母禮はそこで一息つき、話を続ける

 

「空亡の妖気を隠す訓練にもなるし、人間の村にはうまい飯があるからのう」

「良いですね主殿」

「空亡と旅楽しみ」

 

二人は賛成し空亡は考える、旅の間屋敷のことはどうするか。

 

「母禮様、屋敷は如何するんだ?」

「そこは心配いらん天魔に頼んでるからのう」

「なら行こう」

 

其処に椛が下りてくる。母禮達の話を聞いていたのか

 

「空亡旅に出るんですか?」

「ああそうだが、如何したんだ?」

「何でもないですけど」

 

椛は顔を赤らめて恥ずかしそうに

 

「部屋の掃除は私がやりましょうか」

「椛に任せれば安心できるからな、任せる」

「はい!任せてください」

 

椛は笑顔で答える。焔龍が不満そうな顔をし空亡に

 

「空亡……準備手伝って」

「焔龍何か用意するものが有るのか」

「うん……着物とか空亡が選んで」

「分かったよ」

「早く……行こ」

 

空亡は焔龍の部屋に向かい、着物を5着選び、下に降りる広間に入ると母禮達も準備が出来たようで。

 

「さあ行くかのう」

 

母禮がそう言い空亡達は山を下りた。

 

 

 



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閑話壱

本日2本目空亡と焔達の出会い


私は焔龍。炎から生まれて三千年近く生きた龍。母禮に負けて仕えてる。

今日は空亡と出会った時の話をしようと思う。

 

今も鮮明に覚えている。あれは空亡が七歳ぐらいの冬の時。母禮が、

 

「今更だが新しい従者を紹介しようと思うのじゃ」

 

と言われ紹介された。赤黒い髪の少年だった。僅かだが鬼と蛇みたいな妖気を感じる。それにどこか私に似ている。私は無意識に声が出た。

 

「人間?」

「そうですけど」

空亡はそう返してきた。これが初めて交わした言葉だった。私は空亡のことが無性に気になったから母禮に聞いてみた。

 

「主……どこから拾って来たの?」

「空亡のことか?森で拾ったのじゃ」

「なんで蛇と鬼の気配が?」

「気づいてたか。空亡は蛇に体を一度奪われて種族が中途半端に変わってのう。元々儂の妖力で育てていたから普通の人間より能力が高くなっていて、奪われた時に鬼にも蛇にも近くなっているから、いっそ完全に妖怪にしてしまおうと思ってな。それに空亡には友を多く作ってほしいからのう。焔龍頼んだぞ」

「だから……主の妖力を感じるんだ。有難う……主任せて」

 

私は納得がいき、空亡のいる場所を探す。台所から音が聞こえてきた。

 

(此処かな?)

 

中を見てみると空亡は台所で飯の準備をしていた。私は後ろから声を掛ける。

 

「なに……してるの?」

「貴方はさっきの」

「うん……空亡だよね?」

「はいそうですけど。名前言いましたっけ?」

「母禮から……聞いた」

「そうですか」

 

私は空亡と何か距離があるのを感じた。

 

(やっぱり似てる。昔の私に。知り合いにしか全く興味持てなかった時に。何か寂しいな)

 

私は考える事が面倒くさくなったから行動に移すことにした。

 

「焔龍」

「なんですか?」

「私の……私の名前……覚えて」

「分かりました焔龍様」

「呼び捨てで……いいよ」

「遠慮しときます」

 

やっぱり距離を感じる。

 

(自己紹介から始めよう)

 

「えっと……どんな能力を……持ってるの?」

「急に何ですか?」

「教えて」

 

空亡は私のことを警戒している。その事実に少しもどかしくなる。私は諦めず声を掛けてみる。

 

「私は……炎を生み出す程度……空亡は?」

「私は何の能力か分かりません」

「なら……あとで焔狐の所に行こ」

「何故です?それに誰ですか?」

 

空亡は初めて聞く名に首をかしげる。私はそんな空亡ことが面白く見え、笑みがこぼれる。空亡は気付いていない。

 

「焔狐は……術を操る程度の能力を……持っているから能力を知ることも……出来ると思う」

「なら後で行ってみます」

 

もうひと押し。私はそう思った。

「場所……分からないよね……私が教える」

「それならお願いします」

「うん……任せて……あとご飯作るの……手伝うよ」

「このぐらい一人でできますよ」

「年下に……だけは任せてられない」

 

空亡は今までのやり取りで焔龍に対する警戒を解いていた。私はそれに気づき嬉しくなる。

 

「そこまで言うなら手伝ってもらいます」

「うん……任せて」

 

私たちは四人分のご飯を作り広間に持っていく。そこには焔狐がいて本を読んでいる。空亡は初めて見る焔狐に警戒した。

 

「空亡……その人が焔狐……だよ」

「そうなのですか御免なさい」

「いえいえ気にしてませよ。貴方が主殿の言っていた空亡殿ですね」

 

焔狐は本を置いて空亡の前に立つ。

 

「私は焔狐。炎から生まれた九尾の狐です!好きな物は油揚げ。特にうどんに入っていると最高ですね」

「よろしくお願いします」

 

この妖怪は焔狐。生まれは私と同じようなのに背も胸もなぜか負けている。正直羨ましい。私の方が年上なのに。でも気にしない。私の方が強いし龍の姿のの方大きいし。そう考えていると、戸が開き母禮がやって来る。母禮を見た空亡は焔狐から離れ挨拶する。

 

「主様お帰りなさい」

「飯が出来たのか。それに焔龍達とも打ち解けたようだな」

「主……空亡とご飯作った……食べて」

「そうかそうかそれは良かったな。さて食べるとするか」

「はい主様!」

「主…金目鯛がおすすめ……焔狐……稲荷寿司もある」

「本当ですか!有難うございます!」

 

私たちはご飯を食べ始める。刺身は空亡が切り私が稲荷寿司とみそ汁を作った。食べ終わった私は思い出した。空亡の能力を聞かなければいけない。母禮に聞いてみる。

 

「主……空亡の能力はなに?」

「空亡の能力か、分からん」

 

母禮は即答する。この時の私は微妙な顔をしてたに違いない。

 

「主……焔狐の能力を使えばいい」

「焔龍殿私ですか?確かにできますが」

「そう言えばそうじゃのう。忘れておった」

「酷いですよ主殿」

 

確かに忘れていたのだろう。二十年近く私たちは使われていなかったから。私は特に気にはしていない。母禮の中は快適で居心地がいい。母禮のありとあらゆる炎と雷を操る程度の能力は元々炎だった私たちを仕舞っておける。だから基本、私は母禮の中で過ごしてる。

 

「まあいいです。空亡殿、少し血を分けたください」

「血ですか?分かりました」

 

空亡は刀を作り腕を傷つけた。そこから血が溢れ鉄のにおいが充満し血の池を作る。私は血の匂いに興奮した。私だって妖怪だ。人を食ってきた。しかしこの匂いは今まで食べたどの人間よりもいい香りがする。食べたいという欲求が出てくる。ここ何百年も人を食っていない。すぐに空亡を食べたい。だがそれを押し殺し、空亡のことが心配で駆け寄る。私に続き焔狐も空亡に駆け寄ってきた。

 

「空亡!」

「空亡殿、何やってるんですか!」

「如何したんです?」

 

空亡は急に大声を出した私と焔狐に戸惑っている様だ。だが今はそんなこと気にしてる場合ではない。早く食べ……。だめだ!治療しなければ。

 

「空亡!なんでそんな事としたの?!」

「血が必要なら。この方が早いと思いまして」

 

空亡は特に痛がりもせず冷静に言う、焔狐がさらに慌てて言った。

 

「空亡殿!血はそんなにいりません!痛くないんですか?!」

「このぐらいの痛みなら問題ありません、死にませんし」

「そうじゃないです!自分をもっと大切にしてください!」

 

焔狐は空亡に説教をする。母禮がやはりかと呟いていたのが聞こえた。後で聞かなければ説教が終わったのか空亡はげっそりしている。

 

「このぐらいで今日は許しましょう。もうこんなことやらないでくださいね」

「はいもうしません」

「宜しい、じゃあ始めますか」

 

焔狐は札を取り出し何かを唱えると血の池が血の玉となり陣となり光り出す。そして焔狐は空亡の能力が分かったようだ。

 

「これは……相当危険な能力ですね」

「分かったのですか!」

「終わったかのう。で、なんじゃったんだ」

 

空亡は長年分からなかった能力が知れると分かり、はしゃいでいるようだ。そんな空亡を見て私も嬉しくなる。だが気になることを言っていた。

 

「……危険?何」

「空亡殿の能力は自然災害を起こし操る程度の能力です。そして蛇に憑りつかれたって言ってましたね。そのせいか空亡殿の能力にありとあらゆる物を悉く腐り落とす程度の能力も混ざっています。このまま力を操れずにいたら大変なことになるでしょう。それにまだできることは残ってますからね。これから能力の修行の時には私と主殿が付きます。それでいいですか」

 

母禮は仕方ないのうとこぼした。

 

「分かった。儂は空亡の主だからなその位しよう」

 

私のやることがない。私も役に立ちたい。

 

「私も……やる」

「じゃあ焔龍殿は戦闘訓練の時に付き添ってください」

「分かった」

 

ドサ!という音が聞こえる。私が振り返ると空亡が倒れていた。仕方ない。空亡は血を流し続け、貧血で倒れたのだ。

 

「空亡!大丈夫?!」

 

私は空亡に慌てて駆け寄る。近づくと鉄の匂いが強くなる。食べたいという欲求が強くなる。だめだ本能を抑えなければ。空亡の腕は凍りだし、傷がふさがっている。流れている血も凍りだしている。そのお蔭で匂いが消え、自分を抑えられた。焔狐が空亡を担ぎ部屋につれていく。暫くして焔狐が戻って来る。

 

「焔狐……空亡は?」

「はい、血はある程度戻ってきたので、安静にさせてます」

「よかった」

 

私は心底安心し安堵の声が出る。でも一口でいいから食べたかったな。駄目だ、こんな考えていちゃ。空亡は私と焔狐と同じ従者仲間だ。こんな考え捨てないと。そう考えていると焔狐に声を掛けられる。

 

「焔龍殿大丈夫ですか?」

「……うん大丈夫」

「焔龍殿、空亡殿の血を飲みますか?」

「なんで?」

 

なんでばれたの。ばれないようにしたはずなのに。それを焔狐は悟ってか、

 

「ばれてますよ。焔龍殿は元は人を食ってましたからね。人を食べるのが苦手な私でも食べたくなる匂い。何百年も食べていないあなたには辛かったでしょう。大丈夫です占術に使った血を飲んでいいですよ。」

 

その言葉は耳に届き少しよだれが出る。私はハッとしすぐに我に返る。

 

「駄目……だよ」

「空亡殿を食べるよりはいいです。我慢しないでください」

 

焔狐は血をまた集め凍った血を解凍し一か所に集める。その匂いだけで理性がなくなりそうになる。焔狐は血の塊の一部を焔龍の口に入れる。それだけで私は身震いする。今まで飲んだ血が全て泥水に感じる。無意識に声が出てしまう。

 

「もっと……ちょうだい」

「此処に湯のみがあります。その中に入れておきますので、飲んでいいですよ」

 

私はそれを一気に飲み干した。今までに感じたことのない旨みが襲う。体が火照る。この余韻に浸り続けたい。

暫くして私は正気に戻る。正気に戻って感じたのは罪悪感だった。

 

(私は最悪だ。空亡に合わせる顔がない)

 

「やはりこうなったか」

 

母禮がしゃべりだす。私はその言葉に耳を傾ける。

 

「空亡は妖怪にとって最高の食料だ。儂の妖力を長年吸い続け妖怪に近づいている。そのせいで血は妖怪にとって極上の酒のようになっている。仙人の肉と同じぐらいにな。そんな血の匂いを嗅いだら、どちらかはこうなると予想しておったんだが的中したのう。焔龍、偶にでいい。空亡から血を分けてもらってくれ」

「なんで?」

 

私は母禮が何を言っているかわからない。

 

「一度あの味を知ったらほかの人間はもう食えないだろう。そして抑えがきかなくなったお主は空亡を食べる。それを防ぐために定期的に血をもらえ」

 

私は納得がいかないが、空亡を食べたくないから頷いた。

 

「今日もう寝るぞ焔狐。焔龍、儂の中に戻れ」

「はい主殿!」

「……分かった…母禮」

 

私はそう言い、体を炎にし、母禮の中に戻る。

 

 




あと一話続きます


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閑話弐

遅れてすいません!


「焔龍、空亡が呼んでいるぞ」

 

母禮の声が聞こえ私は目を覚ます。其処には空亡がいた。

 

「分かった……主……おはよう空亡」

「おはようございます焔龍」

 

空亡が挨拶を返してくれた。嬉しい。ところで何の用だろう?

 

「空亡……何か用?」

「はい今日から私の修行に付き添うのでしょう。もう行くので一緒に行きましょう」

 

そう言えば、そうだった。私から言ったんだった。

 

「分かった……行こう」

「はい行きましょう」

「そういえば空亡」

「何ですか主様?」

 

母禮が空亡に話を始める。私はその話に聞き耳を立てる。

 

「空亡、偶にでいいから焔龍に血を飲ませてくれんか?」

「いいですよ、しかし何故ですか」

「焔龍は元々人を食って生きていてのう、人の血が必要なんじゃ、最近飲んでなくて体調を崩しやすくなっていんじゃ」

「私なんかが役に立てるなら」

「頼むぞ空亡」

 

母禮は嘘を交えて空亡に私のことを頼んだ。本当の事を言うと私が怖がられると思ってだろう。これで空亡の血が飲める。私はそんな考えが出てしまう。最低だ、空亡は私のことを思って血を分けてくれるのに。

 

「焔龍、今飲みますか?」

「え?」

 

私がそう考えていると、空亡がそう言ってくる。間抜けな声が出てしまう

 

「私の血が必要でしょう、なら飲んでください」

「今は……大丈夫」

「いいえ、飲まなければ体調を崩すんでしょう。飲むまで此処から動きません」

 

空亡は変なところで頑固なようだ。多分私が飲むまで此処から動かないだろう。それに私のこと家族と言ってくれた。私は嬉しくなり飲むことにした。

 

「分かった……飲む」

「それでいいですでは」

 

空亡は刀を作り血を出そうとする。私は慌てて止める。

 

「空亡それは駄目!」

「何故ですかこっちの方が早いでしょう」

「昨日焔狐に言われたでしょう!また説教されたいの!」

「それは嫌ですね。どうすればいいですか?」

「なら腕……出して」

「分かりました」

 

空亡が腕をまくる、そこに白い肌が現れる。私は空亡の腕に噛みついた。歯を立てると血が溢れだす。私はそれを飲み込む。美味しい、やっぱり最高の味だ。どんどん溢れる血を私は飲み続ける。体が火照りだす。こんな味はもう忘れられない。私はどんどん飲んでいく、気が付いたら数分間飲み続けていたようだ。傷はもう塞がっている。

 

「もういいですか?」

 

私は空亡の声で我に返る。

 

「うん……ありがとう」

「じゃあ行きましょう」

 

私は空亡に付いて行く。歩いている間もあの血の味が忘れられない。どうして私はこうなってしまったんでろう。空亡は美味しいだけじゃないもっと別のなんだろう。そう考えていると、空亡が突然足を止める。着いたのかな?見渡すと其処には見知らぬ鴉天狗がいた。私は警戒していると、空亡が天狗に声を掛けた。

 

「師匠、遅くなってすいません」

「別にいいっすよ、そちらの方は?」

 

私に声を掛けてきた。何か言わなければ

 

「私は……焔龍……母禮の式」

「母禮様のですか、俺は射命丸経造っす。よろしくお願いするっす」

「こちらこそ」

 

空亡と経造が組み手を始めた。数刻やったあと、休憩中に経造に聞いてみた。いつもこんなことをしているのかと。経造はすぐに答えてくれた。

 

「いつもこんな組手を? そうっすけど」

「傷は……どうしてるの?」

「基本俺が治療してるっすけど、。最近は俺が治療する前に傷が治ってるんすよね」

 

私は経造に昨日の空亡のことを話す。すると経造は驚き。

 

「空亡がそんなことになってたっすか。だから最近、ほぼ捨て身のような攻撃方法で俺に向かってましたからね。気のせいかと思ってんですが、そうっだったんですか」

「うん……だから私が……見守ることになった」

「俺も注意してみますね」

 

それから毎日、空亡に血を飲ませてもらい、経造のもとに付いて行く。それを一週間ぐらい繰り返した。そんなある日、見知らぬ白狼天狗と鴉天狗が訪ねてきた。二人は初めて見る私に、警戒することなく話かけてくれた。

 

「初めて見る妖怪ですね、名前を教えてくれますか」

「文様いきなり名前を聞いても迷惑ですよ、自分の名前から言ってください」

「それもそうですね、私は射命丸文ですよろしくお願いします」

「次は私の番ですね。犬走椛、空亡の姉です」

 

椛の言ってる意味がよくわからないが、私は特に気にせず、自分の名前を言う

 

「私は……焔龍……よろしく……姉?」

 

訂正、やっぱり気になった。そう言えば空亡が、明日椛姉様と文姉様が来ると言っていたな。

 

「気にしないでください、椛のことは、それより空亡は何処にいますか?」

「二階で……寝てる」

 

椛の耳がピンッと張った。そして、

 

「そうですか、見に行きますね」

 

椛が下駄を脱ぎ屋敷に入っていく。、私は唖然とした.私でも認識できない速度で椛が二階に入っていったからだ。文が呆れながら慣れた様子で言う

 

「また椛の持病が出ましたね」

「持病?」

「椛はいつもは真面目なんですが、空亡のことになると性格変わるんですよね」

「そう……なの」

「はい……」

 

文は疲れたように笑う。哀れに思った私は、話題を変えることにした。

 

「空亡の……部屋行こ」

「そうですね」

 

そう言う文の背中には哀愁が漂っていた。私と文は空亡の部屋に向かうと、部屋から椛の声が聞こえる

 

「これが空亡の寝顔ですか、始めて見ます。いつも私が行くと起きてますからね。空亡、朝ですよ……起きませんね。そうです!今なら何してもいいじゃないですか。膝枕でもそれとも添い寝、どうしましょう?」

 

私は部屋に入る。すると空亡の布団に入ろうとしている椛の姿だった。それを見た文はため息をつき、私は何をどうすれば、私が戸惑っていると、文が椛に声を掛ける。

 

「椛、落ち着いてください、貴方と焔龍さんは初対面なんですから、印象が酷いことになってますよ」

「文様いつの間に、部屋に入る前に声ぐらいかけてくださいよ」

 

そんな二人を無視し、私は空亡を起こすことにした。空亡をゆする。起きない、私は空亡に殺気を飛ばす、すると空亡が飛び起き上がり、氷の刀を作り私に向ける。私はそれを溶かし、空亡に言う。

 

「空亡……朝だよ」

「なんだ焔龍ですか、殺気飛ばさないでください」

「ごめんね」

 

前、経造が言っていた。空亡はいつでも戦闘態勢に入れるように殺気を感じたら、どんな時でも臨戦態勢になれるように訓練したらしい。空亡は周りを見渡す。そして椛たちをみると。

 

「椛姉、様文姉様なぜいるんですか?」

「あ、空亡おはようございます」

「空亡、おはようございます。焔龍様に入れてもらいました」

「そうですか」

 

椛はさっきまでの様子と違い、真面目な雰囲気を纏っている。私はそんな椛に違和感を覚える。空亡が私の肩軽く叩く叩いて話しかけた来る。

 

「なに……空亡」

「焔龍、血を今日はどれぐらい飲みますか」

「今日は……いい」

「駄目です。飲まなければ体調崩すんでしょう」

 

空亡は母禮の話を勘違いし、偶にを毎日と勘違いしている。私は偶にでいいと言いたいが、血が美味しすぎて言い出せない。毎日の血が楽しみになっている。だけど今は二人の前だ。

 

「分かった……飲む……後でいい」

「分かりました焔龍」

「血?何のことですか」

 

椛は何のことを話しているのか分かっていないようだ。そんな椛に空亡が答える。

 

「焔龍の体調を崩さないように私の血が必要だから、毎日飲んでもらっているんですよ」

 

空亡は恥ずかしがらずに言った。椛はそれを聞き、私を空亡にばれない様に睨んでくる。私は目を逸した。すると椛が震えながら小さくつぶやく。

 

「ずるいです」

 

私は聞き逃さなかった。声は大きくなる。

 

「ずるいです。私も空亡の血を飲みたいです!」

「え?椛姉様?!」

 

椛は空亡に近づいて行く。唖然としている空亡に抱き着いて、首に噛みつく、

 

「っっっ」

 

空亡が声にならない悲鳴を上げる。椛は肉を噛み切り、溢れる血を飲んでゆく、血を飲んだ椛は恍惚な表情を浮かべ、ビクンと痙攣し体を擦りつける。椛は傷から溢れる血を飲み続けて、空亡は咄嗟なことで傷を塞げない、血はどんどん溢れていき椛はそれを飲んでいく、椛に変化訪れる髪と尻尾が伸び妖力が増えていった。一度首から口を離す。はぁはぁと息が荒くなっており。すごく興奮しながら目を潤ませ。

 

「空亡のが私の中に!もっと、もっとください」

 

そんな様子を、私と文が唖然と見ている。椛は再び空亡に首に噛みつこうとする。文が我に返り、椛を空亡から引き剥がそうとするが、力が上がっており剥がれない、文では無理と悟った私は椛を引きはがす。力が上がったといっても私には及ばず、簡単に空亡から椛は離れる。空亡から離れ、暫くして椛は落ち着いたのか。

 

「空亡、許されないことは分かっています。本当にごめんなさい」

「別にいいですよ椛姉様、死ななかったんですし」

「私の気が済みまなみません、私を罰してください」

「椛、そこまでにしておきなさい」

「文様?」

 

二人の間に文が割り込んでくる。文の手には紐の付いた木の板を持っていて、何かが書かれている。気になり、覗き込む、その文字を見て笑ってしまう。

 

「空亡、貴方は椛を罰したくない。てゆうか、椛に傷ついてほしくない、そうですね」

「はい」

 

空亡は文に向かい頷く。文は椛に向きなおり、

 

「椛は罰してもらい、罪を償いたいと、そうですね」

「そうです」

 

椛もうなずと、文はそんな二人に木の板を見せる。其処には[私は駄目な白狼天狗です]と書かれていた。空亡は訳が分からないといった顔をして、椛はプルプル震えていた。

 

「如何したんです?」

「文姉様、どういう事です?」

「文様、ふざけないでください!」

「ふざけてなどいませんよ、これが罰です。椛これを付けて一日過ごしてください、空亡これなら椛は傷つきませんよ」

「椛姉様が傷つかないならこれでいいです」

「空亡が言うならやりますよ」

 

椛は木の板を首から掛ける。すると木の板は胸に引っかかり止まる。私はそれを見て殺意が湧くが動じない、私の方が大人だからだ。文が私を見て驚く

 

「焔龍さん、炎を仕舞ってはいただけませんか」

 

いけない、炎が漏れていたようだ。私は炎を仕舞う。空亡が私に声を掛けてくる

 

「焔龍、血がもったいないので今飲んでください」

 

空亡が首を覆っていた氷を溶かす。するとまた血が出てくる。私は空亡の首にかぶりつき、血を飲み始める。私は少しずつ流れる血を啜りながら飲んでゆく。

 

(私は最低だ。だけどこんな血の味を知ってしまったら戻れないだろう)

 

私はさらに強く啜る。いつもは腕から飲んでいるのが、今回は首からで、いつもより濃厚な味が口に広がる。体が疼いてもっと血を求める。そんな私の様子を見た椛が恥ずかしそうに顔を赤くしながら言う。

 

「私、あんな風に飲んでたんですか」

「いや椛、貴方はもっとやばかったですよ」

 

椛の顔が更に赤くなる。私は空亡から離れる。

 

「もういいですか?焔龍」

「うん」

「椛姉様、今日は何して遊ぶんですか」

「そう言えばそうでした。今日は遊びに来たんでしたね。隠れん坊でいいでしょう」

「そうしましょう」

「良いですね、でも椛、能力は使ってはいけませんよ」

「分かっていますよ文様、私の千里先まで見通す程度の能力は反則ですからね」

 

椛と空亡が遊びの話をしている。私も空亡と遊びたい、

 

「私も……遊ぶ」

「焔龍さんもいいですよ、後椛が鬼です」

「文様?!まあいいです」

 

私たちは屋敷を出て隠れる。私は空亡に付いて行く、隠れる場所を探していると崖の下にちょうどいい場所があったので、二人で隠れる。

 

「焔龍、二人でいると簡単に見つかりますよ」

「別に……いい」

「そうですか」

 

沈黙が続く、痺れを切らした私は空亡に話かける。

 

「空亡……好きな食べ物は……ある?」

「それなら、あんみつですね」

「そう……なんだ」

 

あれから空亡にいろんなことを聞いた。空亡は快く質問に答えてくれた。空亡といると楽しいな。

急に山が揺れ始め。崖が崩れ岩や土や折れた木が私に向かい落ちてくる。

 

「焔龍危ない!」

 

空亡が私に向かい走って来るが、遅い。私は反応が出来ず、私の体を木が貫き、肉を抉り、骨が砕け、血が溢れだす。痛すぎて声が出ない。私はすぐに体を貫いた異物を焼き払う。だが傷が深く治りそうにない。完全に崖が崩れ、逃げ道がなくなる。私は暗くなる意識の中いろんなことが浮かぶ。

 

(ここで私は死ぬのか……結構生きたな…心残りがあるとすれば何だろう?…… 空亡達ともっと一緒に居たかったな……なんで……空亡が先に思い浮かんだんだろうか……そうか……私……空亡の事が好きだったんだ……今更気づいても…もう遅いよ…………)

 

最後に見えたのは空亡が泣きそうになっている姿だった。私は安心させるように笑いながら

 

「大丈夫……だよ……空亡」

 




長くなったのであと一話に分けますね、今日の12時ぐらいに出します。

うさまつさんから頂いた椛今より年上


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閑話参

「大丈夫……だよ……空亡」

 

焔龍はそう言い倒れる。空亡の目の前で焔龍が死にかけている、幼い空亡でもそれを悟った。すぐに助けなければ、だけど崖が崩れ、助けを呼ぶことはできない。治療するしかないが、空亡は何ををすればいいのか分からない。思考を巡らせると、母禮が前言っていたことを思い出す。人を食べる妖怪は、人のより重要な臓器ほど美味く感じて、力が増し傷も治る。この手しかないと空亡は確信して、腕を体に突き刺し肝臓を体から無理やり取り出す。空亡に今まで感じたことのない痛みと血が抜ける感覚が襲う。だが気にしてる場合ではない。幸い肝臓は再生する、母禮の妖力のおかげ鬼に近くなっているから治るのは早い。痛みに堪え、自分の傷口を凍結させて痛みを誤魔化す。空亡は肝臓を食べやすい大きさに千切り、焔龍の口に入れるが、焔龍は意識がなく飲み込めない。それに気づいて肝臓を噛み千切り、焔龍に口移しで流し込んでいく。焔龍は本能的に体を治そうと、空亡の肝臓を飲み込む。すると傷から炎が溢れだし再生を始める。

 

「よかった」

 

空亡は安心したが、まだ焔龍の意識は戻らない、空亡は引き続き肝臓を口移しで与える。

 

(生きてる?)

 

私は意識が戻るが、暗闇で周りが見えない。口の中にとても甘く濃厚な味がする。空亡の血の味だ、それに肉のような感触がある。もっと欲しい、もっと欲しいと体が欲望に蝕まれて行く。

 

(そういえば何で空亡の血の味がするんだろう?)

 

私は目が慣れてきて少しは周りが見えてくる。空亡が私に口づけをして、口移しでなにかの肉を私に送っている。私は驚き、脱兎のように空亡から離れる。私の顔はもの凄く赤くなっているだろう。

 

「空亡何して?!すごく嬉しいけど何で?!夢!此処は天国!」

 

私は早口で何を言っているか、自分でも分からない、

 

「焔……龍」

 

私が取り乱していると、空亡が泣きながら私に抱き着いてくる。私は戸惑いながらも聞く、

 

「空亡……どうしたの?なんで……泣いてるの?」

「焔龍、よかった生きてる!」

「空亡……落ち着いて……私は生きてるよ」

「はい」

 

空亡は私から離れる。私は名残惜しいが仕方ない。空亡の顔は暗闇で分からないが、たぶん赤くなっているだろう。コホン、と空亡が言い、話題を変えようとする。私はそれに乗ることした。

 

「空亡……ここから……どう出るの?」

「たぶん椛姉様達が探してくれているでしょう。椛姉様は千里先まで見通す程度の能力を持ってますからね」

「そう……なんだ」

 

空気が薄くなってきた。頭がくらくらしてきた。そう言えば空亡は、何を私に口移ししたんだろう? 思い出したら顔が赤くなってくる。私は気になったので聞いてみた。

 

「空亡……なにを私に……なにを……食べさせたの……腕?」

 

そう言ったけど、それはないだろう、だって私に抱き着いた時に腕はあった。

 

「私の肝臓ですよ」

「え……肝臓……大丈夫なの」

 

私は空亡の体を見ると、肝臓があるはずの部分が凍結している。

 

「凍らせているので痛みはありません、それにそろそろ直り始まるでしょう」

「そう……なんだ」

 

暇だ、助けはいつ来るんだろう? 空亡が私に話しかける

 

「それにしても、空気が薄いですね」

「うん……そうだね」

 

私は空亡に寄りかかる。どのぐらい経ったんだろう? 足音が外から聞こえる。岩がどけられ、光が広がり声が聞こえる。

 

「空亡!見つけましたよ母禮様!」

「よくやったのう椛、空亡、焔龍、無事か?」

 

光の先には椛と母禮がいた。空亡は安心したように言う、

 

「やっときましたか、主様」

「おそい……主」

「すまぬのう二人とも、椛の能力でも、見える場所が暗闇で分からなかったのでな。焔龍なぜ上半身裸なんじゃ?」

「え……裸?」

 

私は自分の姿をあらためて見る。暗闇で気付かなかったが着物がなくなっていた。顔が真っ赤になる。

 

(てことは、私は裸で空亡に抱き着かれた? それで寄りかかっていた。なんで裸? 体に刺さった木を燃やした時に着物も焼けたの)

 

私は着物を出しすぐに着る。そんな私を気にせず、椛が申し訳なさそうに

 

「遅くなってすいません空亡」

「いいえ別にいいです姉様」

 

椛は私達がいた所を見る。そして目を見開き

 

「空亡!此処一体に広がっている血は何ですか?!」

「私の……血」

「焔龍様大丈夫なんですか?!」

「空亡が……直した」

「空亡は怪我を治すような能力持ってましたっけ? まさか!」

 

椛は気付いたようだ。慌てて空亡の傷を探す。四肢はあり目立った外傷はない、よく見ると右肋骨の部分の服がやぶれている。

 

「空亡、臓器を食べさせたんですか? その位置だと肝臓ですか、早く治療しないと」

「大丈夫ですよ姉様、もう治ってきてます」

「空亡、どんどん人間やめてきてますね」

 

椛は呆れながら言う。空亡はあははと笑い誤魔化す。

 

「空亡、焔龍、椛そろそろ帰るぞ、疲れたじゃろ」

「そうですね」

「帰ろう……主……空亡」

「そうですね母禮様」

 

私達は屋敷に向かい帰る。帰る途中で私は空亡に言う。

 

「空亡……崖の中で……あったことは……秘密だよ」

「何をですか」

「私との……口づけ」

 

私は揶揄うように言う。空亡は思い出したのか顔が赤くなる。照れているようだ。私はおかしくて笑ってしまう。

 

「何笑っているんですか!」

「ふふ何でもないよ」

「聞き捨てなりません!」

 

椛が私に突っかかって来る。

 

「口づけ?!私でもしてことがないのに!空亡に?!」

 

椛が取り乱す。私は椛に余裕をもって言う。

 

「したよ……空亡に」

 

私は椛の耳元に近づき、言う。

 

「椛……空亡が……好きでしょ……私も……だから」

「な!!」

「今は……私の……勝ちだよ」

「っ負けません」

 

椛は空亡に近づき顔を寄せる。

 

「姉様?!」

 

咄嗟なことで空亡は反応できずに、椛に唇を奪われる。舌を絡められ唾液を送りこんでくる。空亡は離そうとするが椛はもっと強く空亡の口を貪る。満足したのか椛は口を離す、舌が見え唾液が糸を引いている。空亡は全く情報整理できずに気絶した。

 

「はぁはぁ、空亡」

 

椛は息を荒げ、再び空亡に口づけをしようとする。空亡が気絶したことに気付いていないようだ。私はそれを慌てて止める。椛は落ち着いたのか、顔を真っ赤にして空亡の様子に気付く。こんな状態でも椛は木の板を掛けたままだ。

 

「空亡?空亡!」

「椛……やりすぎ」

 

私は呆れてそれしか言えない、椛は空亡をゆする、だが空亡は起きる様子はない。さすがにこの騒ぎに気付いたのか、母禮がこちらを見て言う。

 

「何故空亡が気絶してるんじゃ?」

「主……空亡が……私を直した時に……肝臓を使ったから……今になって気絶したと思う」

「焔龍様、私がやったんですよ!」

 

椛が小声で言う、それに私は小声で椛に返す。

 

「母禮は……色恋とか……分からないから……正直に……言わない方が……いいと思う」

「分かりました」

「お主たち何話してるんじゃ?」

 

母禮に今の内容は聞こえなかったようだ。

 

「そうです。いきなり空亡が倒れてしまい」

「軟弱じゃのう空亡は、焔狐、空亡を運んでくれ」

 

焔狐が母禮から出てくる。

 

「了解しました主殿!」

 

そして空亡を担ぎ、私たちに聞いてきた。

 

「焔龍殿なにしたんですか?」

「椛が……空亡に……口づけ…した」

「ちょっと言わないでくださいよ焔龍様!」

 

私はそれを無視して、焔狐に頼む。

 

「空亡の……記憶……口づけの部分だけ……別のに変えて」

「何故ですか?」

「空亡……恥ずかしがって……私たちに……顔合わせ無くなると……思うから」

 

椛もそう思ったのか、

 

「私もお願いします焔狐様」

「分かりました母禮殿が寝たらやりましょう」

「ありが……とう」

「ありがとうございます焔狐様」

 

そうしているうちに屋敷に付いた。母禮が椛に、

 

「今日はご苦労じゃったのう、泊まっていくか」

「お言葉に甘えて、お願いします」

 

その後空亡が起きる事無く、夜になる母禮も寝て、私たちは空亡の部屋に向かう。空亡はやはり寝ていて、今しかない、

 

「来ましたね、焔龍殿、椛殿準備はいいですか?」

「うん……いいよ」

「できています」

 

焔狐が何かが書かれている紙をだす。それを空亡の上に置くと紙が光り出す。

 

「そういえば……何するの?」

「空亡殿の一日分の記憶を見るんですよ。それから変えたい部分を変えます」

「そう……なんだ」

「はい、そろそろ見えますよ」

 

空亡の記憶が部屋に映し出される。椛が空亡の血を飲むところが映る。椛の顔が赤くなる。焔狐はこれを見て言う。

 

「椛殿、こんな事したんですか?」

「はい」

 

椛は顔を伏せる。崖が崩れるところまで来た。私が気絶し、空亡が肝臓を取り出し、口移しで私に食べさせている。私はそれを見て顔が赤くなる。空亡が私にこんなことを、そんな私を焔狐が揶揄ってくる。

 

「良かったですね、焔龍殿」

「恥ずかしい」

 

幸い此処は椛に見られなかったようだ。その後口づけした所を変え、空亡が肝臓の再生途中で倒れたことにした。その後、私たちは部屋に戻り、朝になるまで寝た。朝になると私たちは空亡が起こされた。

 

「焔龍、姉様、焔狐、起きてください、ご飯出来てますよ」

「分かった」

「おはようございます、空亡殿」

「おはようございます、空亡。今下に降りますね」

 

私たちは下に降りて、朝食を食べる。食べていると空亡が、私に聞いてきた。

 

「焔龍、もう大丈夫ですか昨日の傷は?」

「うん……空亡のおかげで……治ったよ」

「よかったです」

 

空亡は心からそう言う、良かった、ちゃんと記憶は変わったみたい。

 

「焔龍?」

「何でもないよ……空亡」

 

これで私と空亡の出会いの話は終わり、空亡のことは今でも好きだ。空亡は私の気持ちに気付いていないだろう。記憶も書き変えたんだし。でもそれでいい、空亡が私の気持ちに気付くまで待とう。だから私は、今日も空亡に甘えるのだ。それと血を飲むのは今はやってない。十二歳まではやっていたが、さすがに間違えに気付いたようだ。

 

「焔龍、何時まで下に居るんだ。もう寝るぞ」

「分かった……空亡……一緒に寝よう」

「またか、はやくしろよ」

「はーい」

 

お休みなさい

 

 

 



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第十七話

椛達に別れを伝え山を下りていると警備途中の空亡達は経造に出会った。経造は荷物を持った空亡達を見て疑問に思い母禮に聞く。

 

「母禮様に空亡そんなに荷物を持って何処へ行くんっすか?」

「経造か、お主には伝えるのを忘れていたのう、空亡にの修行の為に人間の村に行くんじゃ、空亡は持っている妖気が多いからなもしも人間の村に行くことが有ったらばれるかもしれんし今のうちにならした方がいいからな」

「確かに空亡は人間だけど妖気持ってますし量も多いっすからね、山を出る前にいつか渡そうと空亡用作っておいた物を渡しますね、少し待っていてくださいっす」

「別に良いんじゃが、空亡用だと気になるから早く持ってこい」

「了解したっす」

 

経造はそう言い空を飛んで行った数分が経ち経造は戻ってきた。しかしその手には何もない空亡達は不思議に思ったが経造は

 

「遅くなってすいません空亡」

「師匠何もないですよ」

「待ってください今取り出すっす」

 

経造はそう言い懐から八枚の札を取り出した。空亡はこの札が何に使えるかは見当がつかない

 

「空亡武器を取ってくださいっす」

「武器ですか?」

 

そう言われ荷物の中にある自分がよく使う大鎌を取り出した。

 

「武器を持ったら札に妖力を込めて武器に貼ってくださいっす」

 

空亡は言われるままに妖力を込めて、大鎌に貼ると札に大鎌が消えた。

 

「どうっすかこれは武器を仕舞っておける札っす便利でしょう、この札には俺の能力を応用して武器を一度登録したら失くしても札さえあれば手元に戻せるし好きな時に取り出すことができるんっすよ」

 

空亡は自分の為にこんな便利なものを作ってくれた経造に感謝しきれない、

 

「有難うございます師匠大事にしますね」

「ちなみにこれ作るのに二年かかっているんで失くさないでください」

 

空亡は札を受け取る。母禮がそれを見て羨ましそうに言った。

 

「便利じゃのう儂にもくれんか?」

「主様は自分でしまっておけるでしょう」

「そうじゃったのう」

 

空亡達は経造と別れ山を下りた。空亡はこの山に来たときは周りの景色など見ていなかったのでい色々と初めて見る物も多い景色を楽しみながら歩き数刻ほど経つと焔龍が空亡の服をひっぱり

 

「空亡歩き疲れた」

「はいはい分かったよ」

 

空亡は立ち止まり焔龍を慣れた様子で背負う、焔龍は幸せそうに。

 

「出……発」

 

とそう言い空亡から降りる様子はない、そんな二人を母禮が少しジト目で見て

 

「空亡、お主焔龍に少し甘いぞ」

「そうですか母禮様?別に普通だと思いますが」

「気のせい……だよ……主」

「そうかのう?ならいいが」

「気のせいではないと思いますよ主殿」

 

母禮は気のせいだと判断し、焔狐の呟きは母禮の耳には届かなかった。それから妖怪の山で貰った肉などを使い料理をしその日は野宿をした。朝、空亡は一番に起き焔龍を起こしてから母禮を起こそうとしたが、母禮は狐の状態の焔狐に包まっていて起こすのは悪いと思い、先にご飯の支度を始めた。

 

「空亡良い匂いがするんじゃがもう飯かー」

「主様起こましたか、出来ているので食べてください。焔狐も」

 

そう言う空亡に焔龍が器を持って近づいてきて

 

「空亡……うどん……お代わり」

「少し待ってろ焔龍」

 

焔龍はそう言われ小さく言葉を漏らす

 

「主と経造以外には何でこの口調何だろう?」

「何か言ったか焔龍?」

「別に……何も」

「朝ですかー空亡殿?」

 

焔狐も目を覚ましたようで目をこすりながら座る。

 

「うどんですか、油揚げはいつも道理でお願いします」

「分かってる三枚だろ」

「はい」

 

そんなやり取りをしているうちに、母禮は食べ終わり着物に着替え準備は整ったようだ。そんな母禮は焔狐に

 

「焔狐早く食べろ、いくぞ」

「待ってください主殿、私はゆっくり食べる派なんですよ」

「仕方ないのう空亡今のうちにかたずけておけ」

「了解しました主様」

 

焔龍も食べ終わり支度が終わった空亡達は歩みを進めていく日が暮れ始めると母禮が立ち止まり言った。

 

「そろそろ付くかのう、空亡、姿を変えるから氷で隠してくれんか?」

「了解しました母禮様」

 

空亡が氷の部屋を作る。それに母禮が入っていく。少し経つと母禮が出てくる。その姿は何時もより幼く髪を後ろで結っていた角も消えている。空亡は初めて見る母禮の姿に戸惑ったが、いつも感じる母禮の妖気で母禮だと気づく、暫く空亡が母禮を見つめていると、母禮が空亡を揶揄う。

 

「なんだ空亡?儂に見惚れたか」

「いえ別に初めて見たので」

「なんじゃ……そうか」

 

母禮が少し残念そうに言った。空亡は母禮の妖気が隠れていないことを言った。

 

「母禮様?妖気隠さなくていいんですか」

「そう言えばそうじゃのう、空亡お主も隠れてないぞちょっと待っておれ」

 

母禮は妖気を消す。そして荷物の中から布を取り出し右腕にまく。

 

「これは焔狐が作った布じゃこればあればお主の妖気を隠せるじゃろう破くなよ」

「はい主様」

「空亡は肌を見せないようにするんじゃぞ、あと儂のことは香澄(かすみ)と呼べ、苗字を聞かれたらいい感じに誤魔化せよ」

「了解しました母、香澄様」

「様はつけなくていいぞ空亡」

「はい香澄様」

 

空亡はまだ慣れないようだ、母禮が空亡に注意する。

 

「気をつけろ」

「はい」

 

空亡は少し落ち込みながら返事をした。それから空亡は氷の部屋を溶かしてから、人間の村に向かい歩みを進める。夜になり暗いが人間の村が見えてくる。

 

「見えてきたぞ空亡」

「香澄様、なんか騒がしいですね」

「そうか?空亡まだ様ついているぞ」

「すいません」

 

母禮が耳を澄ますと、慌てたような人間の声が聞こえる。

 

「また妖怪が攻めてきた!」

「ここ最近ずっとだぞ!」

「いつもより数が多い!」

「こんな時に紫苑様は何処だ!」

「月夜見様の護衛で出かけている!」

 

村の人間たちは叫びながらも妖怪と応戦している。そんな声に母禮は

 

「うるさいのう」

 

そんな声に母禮が鬱陶しそうに言った。そして空亡に向き直り、

 

「空亡ちょと行ってこい」

「了解しました」

 

空亡は村に向かって走る。村に入る時兵士に怒鳴られる。

 

「おい貴様何者だ!」

 

空亡は兵士を無視して、近くにいた妖怪に札から大鎌を取り出し二つに切り裂く、切り裂かれた妖怪はまだ動こうとするが空亡はすぐさま妖怪を凍結させて殺した。次に空亡は一番妖怪が集まっている所に向かう、其処には薄紫色の髪の女が妖怪と戦っていた。空亡は女を後ろから襲おうとしていた妖怪の首を刈り取る。そのことで女は空亡に気付く、

 

「お前は?」

「気にしないでくれ」

「まあいい、妖怪の数が多い手伝ってくれるなら有りがたい」

「了解」

 

泥の塊の様な妖怪が女に襲い掛かる。女は妖怪を両断したが死体の泥に刀が取り込まれ抜けなくなってしまう、女は舌打ちをして刀を抜こうとするが如何せん泥が重い、そんな様子を見た空亡は札から刀を出し女に渡す。女は急に取り出された刀に驚いたようだがそう言っている場合ではない、

 

「感謝する」

 

女は刀を受け取り、二度三度刀を振る。そして後ろから現れた妖怪を振り向きざまに斬った

 

「手に馴染むしよく切れる」

 

女は刀を構えなおし、空亡に

 

「このまま借りるぞ」

「あとで返せよ」

 

女と空亡は二手に分かれ妖怪達に向かう、その二人を見てこれを見ていた兵士たちが

 

「依姫様とあの男にだけに任せるな!」

『おおおおぉぉぉぉ』

 

兵士たちは各々妖怪に向かっていった。辺りから妖怪の断末魔が聞こえる。戦闘は朝まで続いた。今生き残っているのは女と空亡、二十人ぐらいの兵士だけだった。

 

「終わったな」

 

女はそう言い空亡に近づいてきて、話しかけてきた。

 

「感謝する。そういえば名前を聞いていなかったな教えてくれ」

「宿儺空亡だ」

「宿儺?何処かで聞いたような」

「気のせいだと思うぞ」

「たぶんそうだな」

 

女は気のせいだとその考えを捨てる。空亡は女に名を聞く

 

「お前の名は?」

「私の名か?依姫、綿月依姫だ」

 

依姫は堂々と自分の名を教える。依姫は空亡に聞いた。

 

「空亡お前は何故この村に来たんだ?」

「香澄様達と一緒に旅をしている途中でこの村が襲われているのが見えたんだ」

「そいつを呼んでくれないか?」

「分かった」

 

空亡は村の入り口で待っているはずの母禮を呼びに行く、其処には母禮と焔龍達が立っていた。二人には尻尾と角がなく人間のような姿になっていた。

 

「遅いぞ空亡」

「すいません香澄様、焔龍達も待たせて悪いな」

「別に……いいよ」

「私も手伝えば良かったんですが久しぶりに人の姿になったもので加減が聞きそうにないんですよ」

 

焔龍は特に気にしていなく、焔狐は申し訳なさそうにしている。空亡は母禮に用事を伝える。

 

「香澄様依姫とゆう女にに呼ばれています」

「そうか、案内しろ」

「空亡……もう……名前で……呼んでる……女か」

 

焔龍の呟きは空亡の届くことなく耳がいい焔だけに届いた。そして焔狐は身震いをした。空亡は母禮達を依姫の元へ案内する。依姫は母禮を見るといきなり聞いてきた。

 

「貴方は私と何処かであったか?」

「私はお前と会ったことないぞ」

 

母禮は依姫のことは全く覚えていないので初対面と変わらない。いきなり名前を聞いたことに依姫は謝る

 

「そうだな、いきなり悪かった」

「気にしなくていい」

「母、香澄さま?」

 

 

空亡はいつもと違う、母禮の口調に戸惑い、元の名前を言いそうになったが何とか香澄と呼べた。

 

「どうしたんだ空亡?」

 

母禮は笑顔で空亡の方に向きなおる。その笑顔は少し怖かった。

 

「いや何でもない」

「そうだお前達、もうすぐ月夜見様達が帰っくる。会ってくれないか?」

 

依姫がそう空亡達に頼んできた。母禮は何かを考えた後、依姫に言った。

 

「いいぞ、だが何の用があるんだ」

「今回村を守ってくれたことで月夜見様から感謝があるだろうだから待っていてくれ」

「分かった、空亡もそれでいいか」

「俺は香澄様に従うだけですよ」

 

空亡がそう言うと遠くから大声が聞こえてくる。

 

「依姫様ー無事ですかー!」

「月夜見様たちが帰ってきたな」

 

依姫の所に蒼い髪を後ろでまとめ槍を持った女が走ってきた。

 

「無事だ皐月、この旅の人たちが手を貸してくれた」

「皐月?」

 

空亡はその名を聞き首をかしげる。この名を聞いたことがあるような、それを聞き皐月はすぐに空亡の方へ向く、

 

「はいはい!僕の名は皐月ですよ……」

 

皐月の言葉が途切れる。槍を落とし、空亡の事を見て何回か瞬きをする。そして

 

「空亡さんですよね?」

 

皐月は少し動揺した様な口調で言い、目の前の人物は本当に空亡なのか最後の確認を取る。それに空亡は答える

 

「そうだが、やはり何処かで会ったことあるのか」

「はいありますよ、すいません皆さまちょっと空亡さん借りますね」

 

早口でそう言い皐月は空亡の片手を掴みすごい速さで村の中に消えていった。皆唖然とし、一番最初に焔龍が我に返り言う。

 

「空亡が連れていかれたなんで」

 

あまりのことに焔龍はいつもの言葉に間がなくなっている。次に母禮が我に返り声を漏らす

 

「えっと、どういうことじゃ?」

「主口調戻ってる」

「おいお前たち!」

 

依姫が母禮達に怒鳴る。依姫にもなにが起こっているかわからないからだ。

 

「なんだ?」

「皐月とお前たちは知り合いなのか?!」

「いや私は会ったことがないが焔龍は知らないか?」

「知らない」

 

母禮達は皐月とは会ったことないだから、皐月が空亡を知り合いなんて知る由もない、皐月は空亡の腕を片手で掴み走っている。空亡は掴まれていない方の腕で手を剥がそうとしたが力が強くて剥がすことはできない、そんな空亡の様子を見て皐月は

 

「無駄ですよ、今私は力の限界を無くしてるので貴方では抜け出せませんよそれに無理に動いたら腕抜きますよ」

 

空亡は腕は抜けても治すことはできるがやってしまったら母禮達が人間じゃない事がばれる可能性があるので抵抗することを諦めた。

 

「自分で歩くから離してくれ」

「本当ですか?なら付いて来てください」

 

皐月に付いて行き暫くすると、大きな屋敷が見えてきた。皐月が空亡に向けて言う

 

「部屋が多いので此処からも私に付いて来てください」

「まあいいが何で俺を連れてきたんだ?」

「会わせたい人がいるんですよ、まあ貴方は十一年間会っていないから覚えてないかもしれませんが、現に私のこともわからないようですしね」

 

皐月は少し寂しそうに言った、そんな皐月の様子に空亡は少し申し訳なくなる。目の前の人間事が本当に分からないからだ。皐月に

 

「すまない俺はお前がわからない」

「別にいいですよ後で思い出せばいいですから、着きましたよ」

 

皐月は襖を開け、大声で

 

「輝夜様!起きてください!」

 

輝夜その名前も前に聞いたことがある気がする。部屋の中からは黒く長い髪に上質な着物をきて目を擦りながら

 

「皐月朝から何よ、五月蠅いわね、頭に声が響くでしょ、ご飯なら後でいいわ」

「輝夜様寝ぼけてないで見てください」

「何よ?皐月、永琳でもきたの?」

「違いますちゃんと見てください」

 

輝夜はそう言われ空亡の方を見る。最初は分からなかったが段々意識がはっきりしてきて、空亡を認識し始める。

 

「なんか空亡が大きくなったみたいな人がいるわね夢でしょう、空亡!?なんで夢に空亡が?」

 

輝夜はそう言って空亡に抱き着く、空亡は咄嗟なことで避けられなかった。

 

「空亡…空亡ごめんなさい私がもっと早く無理やりにでも村に連れていけば助かったかもしれないのに」

 

そう言い輝夜は泣き出してしまった。今までため込んだものを吐き出すように、空亡はいきなり泣き出した輝夜に対して何すればいいかわからずオロオロしている。そんな輝夜に皐月は咳払いをする。

 

「コホン輝夜様これは夢ではありません」

「え?夢じゃないのじゃあ幻覚?でも触れるわよね」

 

輝夜は空亡をぺたぺたと触る。しばらく触り輝夜は気付いたこれは本物だと。

 

「空亡生きてたの?じゃあさっきまでの私は、恥ずかし待ってすごく恥ずかしいんだけど」

 

輝夜はそんな様子で一人百面相をしている。空亡はこんな状況で本当に何すればいいか分からない。マジで、そして閉めてあった襖が開かれる。そして母禮が大声で、

 

「お主ら!儂の従者に何するんじゃ!」

「主様助けてください」

 

空亡はついに限界が来て、母禮に助けを求める。

 

「いや何があったんじゃ?」

 

 



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第十八話

久しぶりの二日連続!


輝夜は一人百面相をしながらぶつぶつ何かを呟き、空亡は限界で俺は何すればいいんだと言い続け、皐月は笑いを堪え、母禮は状況が理解できない、こんな混沌とした状況の中皐月が、

 

「そろそろ落ち着きましょう皆さん」

「空亡に抱き着いちゃったし泣き顔見られた恥ずかしい」

「輝夜様空亡さんがもう限界です離してあげてください」

 

それを聞き輝夜はまだ空亡に抱き着いていたことに気付くさらに顔を赤くして空亡から離れる。

 

「まだ抱き着いてた。死にたい」

「俺は何すればいいんだ」

 

空亡は未だこの言葉を言い続けている。流石に我に返った母禮が場を落ちかせる。

 

「お主ら落ち着いてくれ、この状況焔龍たちが見たらさらに混乱するからのう」

「そうですね輝夜様空亡さんいい加減戻ってきてください」

「そうね落ち着いたわ

「俺は何をすれば、香澄様何故此処に?」

 

輝夜と空亡はやっと正気に戻り、母禮を確認した。

 

「取り乱して悪かったわね、香澄って言ったかしら、座ってくれるかしら?」

「ああ座らせてもらうかのう」

 

輝夜は机を取り出し三人を座らせる。すると廊下から足を音が聞こえてくる。そして焔龍達が入って来る。輝夜は初めて見る焔龍と焔狐に戸惑ったがすぐに持ち直す。そして依姫が皐月に

 

「皐月用というのは輝夜に会わせることだったのか?」

「はいそうですよ」

「私は居ない方がいいだろうか?」

「月夜見様を迎えてくれませんか」

「ああ分かった」

 

依姫はそう言い屋敷から出でいく、そして皐月も座り輝夜が話を始めた。

 

「先に聞くわね貴方は空亡の主かしら」

「そうだが何で知っている?」

「まえ聞いたからよ」

「何処で聞いた空亡はお前たちの事を覚えてないようだが」

 

輝夜はそれを聞き苦虫を噛み潰したような顔をして、

 

「貴方達こそ何か知らないかしら?空亡の記憶がなくなるようなことを十一年前に」

「十一年前だとどのぐらいの時期だ森が腐食し他にも気が炭化したころだと思うわ」

「思い出したぞお主私が着物を取りに来た時に一瞬見えた人間だな」

「人間?あなたも人間じゃないのかしら?」

 

母禮はそれにしまったと内心毒づきすぐにある案を思いついた。

 

「人間これから言うことは他言無用だ誓えるか?」

「いいわよ、皐月もいいわね」

「僕もいいですよ」

「焔狐結界を貼れ」

「御意」

 

母禮にそう言われ焔狐は結界を張った。その反動で人化が解け耳と尻尾が出てしまう、

 

「主殿これなら妖気は漏れませんよついでにこの中なら外との時間がずれる様にしておきました」

「想像以上じゃな、感謝するぞ焔狐」

 

皐月は一瞬で張られた結界にも驚いたが、何よりも自分が結界の発動する瞬間を感知できなかったことに驚く。

 

「一瞬でなんてもの作ってるんですかこんな規模の結界月夜見様でも破壊に時間掛かりますよ」

「そんなにすごいの皐月?」

「はいこんなの作るなんてかなり高位の妖怪ぐらいしか」

 

焔狐は褒められてか耳と尻尾が出て揺れている。それを見て皐月は構える

 

「九尾ですか!?」

「何故分かるんですか?」

 

焔狐は自分の正体がばれたことを疑問に思う

 

「焔狐……尻尾……出てる」

「本当ですか?気づきませんでした」

「うん」

「焔龍お前も角でてるぞ」

「あ………ほんとだ」

 

焔龍は結界が居心地が良いらしく気が抜けて角が出てしまう、そんな様子を見て皐月は驚くことに疲れて乾いた笑がでてくる。

 

「龍に九尾って何でもありですねあはは」

「皐月笑ってないで香澄の話聞きましょう」

「悪いのう、まあ儂も正躰を言うかのう」

 

母禮はそう言うと、母禮の姿が成長し角が現れる。

 

「見てのとうり儂は鬼じゃよ、本名は宿儺母禮じゃ」

 

皐月はその名を聞き、目を見開くその名はずっと聞かせれていたからだ最悪の鬼として。

 

「宿儺母禮!あの最悪の鬼!?」

「ほう儂ってそんな呼ばれ方もしてるのか」

「皐月静かに」

「いや無理ですよ輝夜様!宿儺母禮は主神伊邪那岐様を殺した鬼なんですよ!」

 

皐月はそう言い取り乱す、伊邪那岐と聞き母禮は顔を顰めるが具に表情を戻す。これを聞いてもあまり輝夜は驚いていないようだ。それに母禮は反応する。

 

「お主は驚かんのか?」

「まあね十一年前から人間ではない薄々感づいていたからね」

「何故じゃ?」

「永琳に聞いたんだけど、あの辺りは妖怪が多いと聞いたからね、空亡が一人でいる間妖怪が襲ってこないのは可笑しいでしょう。それこそあの洞窟に自分達より各上の妖怪がいて攻められないことが広まってると思うのだけど」

 

輝夜はそこまで言うと母禮に向けてこれでどうかと目配せをする。母禮はそこまで聞いて関心したようで、少し笑っている。そして言葉を漏らす。

 

「お主面白いのう」

「あら、ありがとう」

「輝夜様がすごい真面目なんですけど、さっきまであんなに取り乱していたのに、そもそもなんで普通に話せているんですか?誰かー助けてくださいよー」

 

皐月は真面目な様子の輝夜に少し驚き余計な事まで言ってしまう。ついでにもう驚きすぎて容量が限界のようで今にでも泣き出しそうだ。

 

「皐月泣かないでよ……」

「それなら気になることがあるのう」

 

母禮は皐月を無視して最初からずっと疑問に思っていた事を聞く輝夜も聞かれると思うことは予想がついていた。

 

「私たちが空亡と何時で出会ったことでしょう?」

「そうじゃ儂がいない間に会っていたのか?」

「そうよ、でもそれを言う前に私は貴方言いたいことがあるわ」

 

輝夜はそう言い一呼吸置き少し怒気含みながら言い放つ。

 

「貴方どうして一年間も空亡をほっといたのかしら?」

「その事か?」

 

母禮はバツの悪そうな顔をして少し経つと喋り始めた。

 

「あの時はのしくじって腹に穴が開いてのう治療に時間がかかり戻れなかったんじゃ」

「貴方ほどの妖怪がそんな傷負うかしら」

「ああ、出雲紫苑とゆう人間にやられてのう」

 

その話を聞いていた皐月は驚き声を上げる。

 

「父様ですか!?」

 

それを聞いて皐月泣き止み、もしかして自分今殺されてしまうじゃないかと冷や汗をかく。

 

「なんじゃお主の父だったのか?安心しろお主に何か言うことはない」

 

それを聞いて安心したが、何も言ってこないのはおかしいので母禮に聞いてみる。

 

「何故ですか?」

 

その問いに母禮はあの時のことを思い出しながら言った。

 

「あの戦闘、儂は楽しかったしのう、久しぶりにいい戦いだったからな恨む理由もない」

「戦闘狂ですか、父様が大きく負傷したのは十一年前ですからあの時ですか」

 

皐月は珍しく父が死にかけていたことを思い出し、あの時は驚いたなと冷静になってきた。そんな皐月に母禮は、

 

「お主こそ儂に恨みはないのか?」

「別にありませんよ、父様は死んでいませんからね、死んだとしてもあの人なら戦いの末死んでも満足するでしょうし」

 

皐月はそう紫苑に教えられてきた、死んだら負け生き残れば勝ち、子供の時からの教えだ。その心情に母禮は面白いなと笑う。話を中断された輝夜は咳払いをして話を戻す。

 

「理由は分かったわ、最後に空亡が私たちを忘れているのはなぜか分かるかしら?」

「心当たりはあるのう」

「教えてちょうだい!」

 

輝夜はその答えにすぐに反応する。母禮はこれを言っていいか悩んだ、空亡には思い出した方が為になると考え、それに空亡が自分のいない間何をしていたのか気になるから、自分の予想を輝夜達に伝える。

 

「あれは傷が治り洞窟のに戻った時じゃった。洞窟に空亡の姿はなく周りが腐り落ちていた。そして遠くからは空亡の気配と見知らぬ妖気そこに向かうとな空亡を呪っていた蛇が空亡のことを乗っ取られていてのう、倒したんじゃが儂を傷つけたことで歳が五つの空亡には辛かったんじゃろそれでその周辺の記憶を自分で封じた。大体そんな感じじゃろ」

「思い出させることはできるから?」

「ああ今の空亡ならあの記憶を思い出しても大丈夫じゃろ多分な」

「それって大丈夫なの?」

 

その言葉に輝夜は不安になるが、思い出してくれるかもしれない可能性があるのなら頭を下げてでも頼むしかない。

 

「ならお願いするわ空亡もいいかしら?」

「ああ大丈夫だ」

 

それまで話を聞いていた空亡も記憶が戻るなら特に悪いこともないし別に問題はないそう伝えた。

 

「それで方法はどうなの」

「焔狐が空亡の血を水に垂らしそこに記憶を映すだけじゃ」

 

輝夜は肝心の方法を聞いてはいない、空亡に負担がかかるなら止めるつもりだ。その考えを読んだのか母禮は。

 

「これぐらい数分で終わる特に空亡には負担は掛からないと思うぞ」

「ならいいわ」

「空亡水を出せお主は何か器を用意してくれ」

 

空亡はそう言われ能力で水を出すそれに輝夜が用意した器に入れる。焔狐は空亡に謝り血を貰い水に垂らす。水はすぐに揺れ始め、其処に四歳の空亡の姿を映し出す。この空亡は母禮の帰りが遅くて森に探しに行った時だ。

 

「空亡この時の事は覚えているかのう」

「はい母禮様ですがこの先の事はどうにも思い出せません」

「別にいいぞ空亡この先を見て思い出せばいいからのう」

「初めて会った時より幼い空亡新鮮」

 

焔龍は幼い空亡を見て少し興奮しているらしい。記憶が進む。そこから先は体力の尽きた空亡が輝夜達と出会い、始めて拒絶されなかったことが映し出された。このあたりから空亡は封じた記憶が徐々に戻ってきた。そして従者にならないかと聞かれたこと。毎日遅くまで母禮を探した空亡を時より輝夜達が会いに来て食材を持って来たり、妖怪に襲われ撃退した時の傷を看病する姿、そして徐々に衰弱していく空亡の姿映っていた。空亡はこのあたりの記憶を完全に思い出した。そこまで思い出し空亡は震えながら言う。

 

「何故忘れたんだ、輝夜と皐月を」

「空亡原因は多分この先じゃぞちゃんと見るんじゃ」

「は…い母禮様」

 

空亡は輝夜達に謝りたいがこの先を見なければいけないそう言い聞かせ続きを見始める。

 

「覚悟はいいですか?行きますよ」

 

映像が再度動き出す。空亡の体力も正気もなくなりかけた時に蛇骨に付け込まれ乗っ取られた事や母禮を殺そうとしいている姿、地震を纏わせた拳を容赦なく叩き込んでいる姿を。これを見た輝夜達は自分がいなかった時にこんな事が起こっていて空亡がもう限界だったことに気付かなかった自分を責める。空亡は思い出したことにより、乗っ取られていた時に流れてきた蛇骨の渇望を思い出した。それは自分以外を全て腐らせ生を奪いつくす。それを思いだした時空亡に異変が起きる。頭を押さえ左腕から黒い液体が溢れる。その異変を察知したのは焔龍だった。

 

「空……亡?」

「離れろお前ら!」

 

 




どうでもいいですけどホモロりの語呂の良さ以上ですよね。


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第十九話

四日ぶりの投稿


「お前ら離れろ!」

 

そう言う空亡の腕から黒い液体が溢れ出てくる。それは左腕を全て覆い、地面に少し垂れる。それだけで床は腐り落ち、周りに広がろうとする。これは母禮達三人は空亡から離れる。これは空亡が使える腐敗毒だ。その危険性は三人はよく理解している、修行の時に一度乱入してきた土蜘蛛を一瞬で溶かしたからだ。土蜘蛛には自分の毒で溶けないように毒に対して強い耐性がある。それすら貫通した毒だ。この中で毒の耐性を持つものは母禮くらいしか居ない、

 

「お主らこれに触れるな、死ぬぞ! そして焔狐、空間を広げろ!!」

「今すぐやります主様!」

 

焔狐は札を懐をから取り出して四方に飛ばす。すると部屋が広がり、家一軒は入りそうな広さになる。そうでもしないとこの毒が広がり人間の輝夜達ではすぐに死ぬからだ。

 

「分からないけど、今、空亡は危険なのよね? それと、この部屋を広げた意味はなに?」

「呑気なことを言うでない! お主らだと毒がすぐ周り溶けるぞ!」

 

母禮の焦る様子を見て状況を理解したのか輝夜も急いで離れる。だが皐月だけは離れなかった。母禮は声を掛けようとしたが、皐月がその前に声を出した。

 

「母禮さん武器って持ってますか? 有るなら貸してください空亡さんを助けます」

「なぜじゃ儂らに任せればいいじゃろ」

「僕はあの時、助けるどころか空亡さんの状態に気付けさえしなかったですよ、今なら僕でも助けることができます。それに私の能力を使えば毒耐性は上がります」

「何故空亡の為に其処までするんだ」

 

母禮は空亡と輝夜達は一緒にいた期間は一年だと記憶を見た。たった一年の関係でそこまでする理由が母禮には、分からない、そして皐月はこう続けた

 

「これは知り合いが死んでほしくないっていう僕のエゴですよ、だから武器をください今すぐに」

「しょうがないのう得物はなんじゃ?」

「槍です」

「渡すが簡単に死ぬなよ」

「当り前です」

 

母禮達はそんなやり取りを交わし、母禮の手に炎が噴き出るそれは次第に槍の形となる。母禮はそれを皐月に手渡す。皐月は槍を受け取重さを確認する。その槍は炎で出来たはずなのに重量感がある。母禮はそして大声で叫ぶ。

 

「焔龍は空気に広がる毒を燃やし続けろそして今より状況が悪くなった時の保険だ!」

「了解……主……任せて」

 

それまで黙っていた焔龍はそう言い炎を纏う、そしてさっきまで無かった尾が生え体が変わっていく、完全に龍の姿になり身の纏う妖気も増していく、焔龍の役目は腐毒を広がらせないことに状況が悪化した時の保険だ。しかし焔龍は毒の耐性が少ないので常に炎を纏ってないといけない。

 

「焔狐は結界を強化し続けろ!空亡の毒はこれからも効力を増すだろう、強度が足りなければ天狐の力も使え!」

「了解しました主殿!」

 

焔狐は火の神を殺し力を奪った九尾だ。天狐とは神と等しい存在と言われているが、焔狐は神そのものから力を奪ったことにより、元々稀にしか誕生しない天狐より位が高い、それゆえに焔狐と別の名前を母禮に付けられた。天狐の力を全て結界に注ぐということは、この結界は基本どんなことがあっても壊れることはないだろう。

 

「お主は儂とともに空亡を止めるぞ」

「任せてください!」

 

皐月は決意を固め返事をする。母禮も構え空亡と対峙する。そして空亡が口を開き唱え始める

 

一 二 三(ひいふうみい) 四 五 六 (よいむ) 七 八(なや) 九十(ここのたり)

 

布留部 由良由良止 布留部(ふるべ ゆらゆらと ふるべ)

 

母禮もそうだが詠唱をするときは、隙ができる。今が好機だ。それに母禮はこの技を見たことある。その効果と危険性を、皐月に伝え突撃する。しかし空亡もそんな隙をさらすほどの馬鹿ではない、腐敗毒を自分の周りに壁として展開するそれにより二人は強制的に止められる。詠唱は続く。

 

血の道と血の道と其の血の道返し(かしこ)(たま)おう

 

禍災(かさい)に悩むこの病毒(びょうどく)を この加持(かじ)にて今吹き払う(とこい)の神風

 

母禮達は止める為に突撃するが何度も腐毒の壁に邪魔をされる。母禮は炎を使い毒の壁を燃やすがすぐに別の壁ができる。空亡を毒の壁が包む。

 

(たちばな)小戸(おど)(みそぎ)を始めにて 今も清むる(わが)が身なりけり

 

千早振(ちはやふ)る神の御末(みせい)(われ)ならば 祈りしことの叶わぬは無し

 

――太・極――

 

随神相――神咒神威・無間叫喚(むげんきょうかん)

 

詠唱が終わり空亡が出てくる。その姿は身に余るほどの腐敗毒を固めてできた大鎌に黒い鎧、明らかに異様だった。母禮はこの姿を一度見たことがある。蛇骨の鎧武者だ。大鎌ではなかったが鎧が一致する。

 

「あ゛あ゛あ゛ぁ゛ァ゛ァ゛ァァァ」

 

空亡が咆哮を上げ、母禮と皐月に攻撃を仕掛けてきた。近くに居た皐月に鎌を振り上げ物凄い速度で迫る。何とか槍を使い防御するが反動で部屋の壁に叩きつけられる。そして腐毒でできた大鎌を受けた槍は一瞬で跡形もなく腐り落ちる。腕が腐らないようにすぐに話したおかげで大事は無かった。

 

「お主無事か!?」

「問題ないです。だけど槍がなくなりました」

「仕方ないもう一本作った早く受け取れ」

「すみません」

 

母禮はすぐさま槍を作り皐月に渡す。そして母禮は作戦を伝える。

 

「空亡の腕を儂が切り落とすそれなら隙ができるじゃろ」

「大丈夫なんですか!?」

「腕を落としたぐらいじゃすぐに治る。隙さえできればいいんじゃ、囮になってくれそして焔狐!隙が出来たら空亡を眠らせろ!」

「わかりました」

「了解です主殿!」

 

空亡はその様子を観察しているようだ。今の空亡は周りに反応する人形の様な状況だ。何方かが動けばそれに反応するだろう、母禮は生きてきた戦闘経験を活かしそう予想する。皐月が動くそれに反応し獣じみた動きで皐月に向かう、皐月は槍を犠牲にする代わりに大鎌を弾き宙に飛ばす。それを焔龍がすぐさま燃やす。その隙に母禮が腕を切り落とした。そして焔狐が術を発動使用する直前に空亡に更なる異変が起こる。獣の様な叫び声を上げその場に蹲る。

 

「AAAaaaaa!!」

 

空亡の腕が生え背中から更に四本の腕が生えてきて、計六本の全ての腕に腐毒でできた大鎌が現れる。明らかに雰囲気が変わり体から霧の用なものも溢れ出した。そんな空亡の様子を見て母禮は。

 

「先程より不味いのう、焔龍儂に憑依しろ」

「分かった……主」

 

焔龍は龍のまま母禮の中に戻る。すると母禮に龍のをが生え角の形も変わる。そして今の姿より背が少し縮む。この姿になると母禮は焔狐の術に特化した姿ではなく、遠距離に特化し弓や炎の腕の作る数も増える。そして皐月に

 

「あの霧は毒じゃろ儂は遠距離から無力化させるが、その間、囮になってくれんか?」

「僕は槍投げが苦手なのでそれが適任ですね、任せてください」

「任せたぞ、これで仕切り直しじゃ」

 

母禮は巨大な弓を作り出し大人一人分ほどの弓を射る。まっすぐ空亡に向かうそれを空亡は六本の鎌をすべて使い防御する。そのあと鎌を合わせ真ん中にだけ隙間ができる。そこに妖気が集まり始める。母禮は直感でこれはまずいと悟る。妖気は徐々に溜まっていき、それが放出されると一同が思ったとき。

 

「AAAaaa?」

 

放出される事無くそれは不発に終わる。空亡自身も疑問の声をあげ、もう一回鎌を合わせようとする。その時一本の腕が鎌を落とし、空亡の腕が腹を貫いた。その行動に母禮達は困惑する。空亡の体から鎧も消えいつもの姿に戻る。輝夜が確認の為に声を出す。

 

「えっと?終わったのよね?」

「たぶんそうじゃのう」

「終わった」

「そうですね主殿」

「疲れましたよ輝夜様」

 

一同は輝夜の発現に同意し空亡の方へ視線を向ける。空亡の腹の傷はすでに治っており、空亡は勢いよく起き上がり母禮達に向けて。

 

「母禮様無事ですか!」

「無事じゃが空亡お主は無事か?」

「はい無事です母禮様」

 

そう母禮と空亡が会話を交わすと輝夜が入ってきて言った。

 

「空亡私たちの無事は確認しないのかしら?」

 

輝夜は少し怒っているようだ。それに空亡は頭を下げ謝る。

 

「本当に迷惑をかけた。すまない皆お前らを殺しかけた。許さないことは理解している何でもしよう言ってくれ」

「そこまでしなくていいわよ空亡皆もそうでしょう」

「うん……大丈夫……空亡」

「そうですよ空亡殿その代わり何があったか話してください」

「確かにそれは気になるわね教えてくれるかしら?」

 

輝夜達は空亡を許し空亡は何があったのかを話すことにした。

 

「記憶を見た時に蛇骨の願いが流れてきた。死にたくない、全てを腐らせて命を奪い続けてでも、生き残りたい。そんな渇望が俺を支配した。その時もう一つ声が聞こえた。それは」

 

空亡は一旦息を呑み続ける。

 

「これで空亡と話せるこっちに来てね、とそれが聞こえた時意識がなくなり視界が黒く染まった。そして視界が戻ると、そこは一面花畑で二人の少女が居たんだ」

 




次回は何があったのかを空亡が話します。本当は今回書くつもりだったんだけど明らかに六千文字超えるかもしれなかったから次回にしました。明日か明後日い投稿するので見てください。ではお休みなさい。


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第二十話

空亡視点何があったのか


そこには一面の花畑と二人の少女がいた。一人の銀の髪の少女が俺に近づいてきて満面の笑みでこう言ってきた。

 

「やっと会えたよ空亡会えてう嬉しいよ!ほら恵理(えり)も早く」

「ごめんなさいです妖華、初めましてです空亡、これから宜しくです」

 

恵理と呼ばれた少女は銀髪の妖華という少女に謝り宜しくとあいさつをしてきた。だが俺は状況が理解できない、急にこんな場所に連れてこられて、知りもしない二人の少女がいて混乱しているからだ。それを読んだのか妖華は、

 

「混乱してるね空亡なら私たちの紹介から始めるよ恵理もそれでいいよね」

「いいですよ妖華」

「私から行くね、長いからちゃんと聞いてね!」

 

妖華と呼ばれた少女は息を吸い言い放つ

 

「私は【自■災害を■し操る程■の能力】に宿る■格だよ!空亡に■禮の妖■が流し込まれた時に生まれたんだ!だから空亡の事は何でも知ってるんだよ!」

 

胸を張り妖花はそう言ったが所々言葉が聞こえない何かに邪魔されている様な感覚があった。思い出そうとしても頭まに聞こえなかった部分だけ靄がかかる。

 

「少し聞こえないみたいだね!しょがないなあ恵理やってみて」

「分かったです妖華」

 

妖花は恵理に託したみたいだ。恵理も長いですよと忠告してから続けた。

 

「私はあの糞蛇から生まれた【あり■あら■る■のを悉く■り落と■程度の能力】の人格です。あの塵蛇が死んだことにより空亡の中に残りました。今思うとあのカス蛇には感謝します。貴方と妖華に出会えたのですから」

 

今度は最初は聞こえ中ったが。後半はほぼ聞こえた。あの蛇とは蛇骨の事だろうか?それよりここが何処かを聞かなければならない俺は二人に尋ねなければならない早く戻らなければ。

 

「ともかくお前ら此処は何処なんだ!?」

「お前らってひ酷いなー、名前で呼んでくれないと教えてあげない」

「名前でお願いしますです」

 

この二人は強情なようだ名前で呼ぶまで本当に教えないだろう仕方ないが名前で呼ぶしかないだろう。

 

「分かった妖華、恵理これでいいか?」

「いいよー教えてあげる。此処は空亡の中の精神世界だよいつも私たちは此処で貴方を見てたんだ」

「そうですと言っても私は蛇骨が死んでからですけどね」

 

二人はそう言ってきた。精神世界俺の?この二人はずっと俺の中に居たのか?意味が分からない

 

「理解できないって顔だね酷いなー、私はずっと貴方を助けていたのに」

「助けていただと?何時だ」

 

妖華は誇った様な顔をして、嬉しそうに喋り始めた。

 

「ずっとだよ最初は牛鬼達を殺したいって貴方が願ったから力を少し使うの許したし、次はこの世界を亡くしたいと願ったから、私の力を全部使うの許可したしね、ほらずっとでしょ」

 

察しの悪い俺でもは気付いた。この少女は自分の能力その物だと、ずっと力を貸してくれていたのだと、ならもう一人の恵理は?なんだ?蛇骨の能力か?確かに腐敗毒は使えるが触れただけで、腐らすことはできない、そう考えていると恵理が言ってきた。

 

「私は能力貸すのは会ってからがよかったのです。ごめんなさいです」

「いや会ってからってなぜ今呼んだ。この外はどうなっている?状況が何一つ理解できないんだが」

「今の状況?それはえーと恵理説明して」

「任されたのです妖華!でも何から説明したらいいかですか?」

 

恵理は頭を捻り考え始めている。そんなに説明し辛いのか?そんなことを考えていたら、恵理は思いついたのか意気揚々と説明を始めた。

 

「今空亡は糞蛇の渇望と私の能力に飲まれて暴走してます、それで母禮達の襲い掛かっているです、見ますか?」

「見れるのか!」

「はい出来るのです、見せますね」

 

すると外の光景が映し出される。丁度皐月を壁に叩きつけた所だった。今すぐ戻り止めなければ外の誰かを殺してしまう。

 

「頼む戻してくれ!俺は母禮様達をこれ以上攻撃したくない!」

「大丈夫ちゃんと戻すから、その前にやってもらうことがあるんだ」

「なんだ!?」

「そんな急がないでよー簡単だからやってもらうことはー恵理と戦って認めさせてよ」

 

戦って認めさせるこの場所でか?武器もない使えるのは体術のみ、やるしないか、

 

「準備はできたですか?なら場所を変えるです」

 

恵理がそう言い、景色が変わった周りには骸しかなく地面には塵ばかり、腐毒の霧が立ち込める。目の前には大剣を片手に持った恵理が居る。身の丈以上の大剣何故持てているのかすら気にならないほどに、周りの景色は異常だ。そんな中、恵理が口を開く

 

「私はもうほぼ認めているですが糞蛇の様になったら困るです。だからやっぱり直接戦って私を倒してくれです。技術だけそれのみで私を打倒してくれです」

「了解した武器は有るか?」

「いいです」

 

そう言うと愛用している大鎌が目の前に現れる。これを取れば開始なのだろうか、恵理を見ると頷い。俺はそれを引き抜き片手に持つ。すると恵理の雰囲気が変わり、名乗り始めた。

 

「我が名は恵理、糞蛇の渇望より生まれた最悪の化身なり、宿儺空亡、我を打倒しその力を示せ!さすれば我が力汝のものとなるだろう、来い人間!」

 

その合図とともに俺と恵理は動き出した俺は腐敗毒を吸わないように呼吸を最低限にしなければならない、そうしなければ臓器はすぐに腐り落ちるだろう。そう考えていると恵理は言う。

 

「無駄なこと考えるな!」

 

そういわれ俺は上に飛び鎌の重さと速さを合わせ鎌を振り下ろした。それを恵理は大剣の腹で受け止め空いている手で腐敗毒を固め、槍として放ってきた。まだ宙に浮いている俺では回避できないだろう、俺は片手を捨てることにし槍を掴み投げ返す。腕が腐りはじめ頭が可笑しくなるほどの激痛が襲う、大鎌で腕を切り落とす。これで腐毒は広がらないだろう。切り落とした痛みもさっきの激痛に比べたら大したことはない、恵理はつまらなそうにしており、

 

「この程度か?そんなわけないだろう経造との事は忘れたのか!腕を使え足を使え頭を使え!此処は汝の精神世界思えば基本好きなものは出せる。我が言うのは此処までだ、あとは自分でやれ、いくぞ」

 

忘れていた師匠の生き方を勝てばいいだ。だが武器が足りない、嫌違う最初恵理はなんて言った技術を使い打倒しろと言た。技術とは何だ?技だ能力を使えばいいのか、そう考えると休む暇のない連撃を恵理は仕掛けてくる。それを大鎌で防御したりいなすが攻撃はできない、この戦いは認めさせる為にやっているならただ単に倒しただけでは認めるだろうか無理だろう、なら何を使えばないのか?これは賭けだが腐毒を使おう、それにこの世界では欲しいと持ったら基本出てくるらしいならば、師匠に貰った札を呼び出したこれならいける。

 

「準備できたか?」

「嗚呼問題ない行くぞ!」

 

大鎌を札にしまい接近する妖力を少し流し後ろに投げる。もう一枚の札にも妖力を流し戦槌を持ち押しつぶす。先に投げた札は具現化し大鎌となる。この札の特性の念じれば戻るというのは活用し上と後ろそれからの同時攻撃だ。だがこれは狙い道理に避けられ防御された。防御したことで足元に隙ができる掃腿を使い体勢を崩す。

 

「なに!?」

「これで終われ!」

 

崩したところに腐毒を手に纏い手に力を込め貫手を噛ます臓腑に突き刺し毒を流し込むそして戻ってきたか大鎌で首を刎ねる。首を刎ねる直前に恵理は微笑みながら。

 

「見事」

 

そう言い倒れた霧が消え辺りの景色が戻ると恵理と妖華がいた。恵理は首を刎ねたのになぜ無事なのだろうか?妖華が答えてくれた。

 

「私たちは空亡の魂に直接つながってるからあなたが死なない限り消えないんだよ」

「そうなのか」

「うん!ところで恵理途中から元の口調に戻ってたよあんなに私が直してあげたのに」

「嫌アレは違うだろ直したじゃなくて強制だっただろもう口調はばれてるしこのままでいいか?」

「もうめんどくさいからいいよー」

 

恵理は俺の方に向き直り手を取り言った。

 

「空亡汝はの力を認めようこれより我は汝の力だ好きに使うがいい、最後の褒美だ強引だが戻してやろう」

「恵理ーもうちょっと空亡話したかったんだけど」

「我が儘を言うな空亡は外で暴走中だぞそれ戻すだけだお前の試練はまた今度やればいいだろう」

「まあいっかこんどやろーね空亡」

 

また意識が暗くなり気が付いたら腹に自分の腕が刺さっていた強引ってそういうことか目の前には母禮様達がい今に至る。まあそんな感じだ。

 

「どうだこんなことがあったんだが」

 

空亡はそこまで話し終え周りの反応を見る一同は空亡が嘘を言う性格ではないと分かっているからこれは本当の事だろう、最初に母禮が聞いていた。

 

「空亡、今その能力はどのぐらい使える?」

「はい母禮様、蛇骨以上に使えるかと見ますか?」

「見せてくれ」

 

そう言われ空亡は腐敗毒を腕に流すと空亡の白い肌は黒く染まる今この状態は腕が完全に腐敗毒と化している。母禮にもういいと言われ戻すそして、焔狐に母禮は

 

「全部終わったぞ戻せ焔狐そして空亡達は妖気を隠せ」

「はい母禮様」

「了解しました主殿」

「分かった……主」

 

部屋は戻り結界は消える。そして一分程経つと依姫が入って来る。

 

「空亡達月夜見様が呼んでいる来てくれ」

「分かった行くぞおまえら」

 

 




次は二日後ぐらいですかね第一章は残り三話から四話ぐらいです。感想ください


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第二十一話

二日後といったなあれは嘘だ!なんか早くかけたので投稿します。


依姫に案内され月夜見の屋敷に向かう、屋敷に向かうにつれ兵士の数も増える。屋敷に着くと五人の兵士に迎えられた。屋敷に入り兵士に案内さえ依姫は途中で兵士に聞いた。

 

「今日は何時もより警備が多いんだ」

「はい依姫様今日は前々から予定されていた。天照様と素戔嗚様が来ておりますので護衛の数を増やしているんです」

 

天照達の名前を聞いて母禮は

 

(これ儂の事ばれるんじゃね)

 

と内心母禮は焦っていた。そんなことは知らず依姫と兵士は会話を続ける。

 

「そう言えばそうだったなそんな中空亡達を連れてきてもよいのか?」

「はい月夜見様達が感謝を伝えたいと」

 

母禮はは諦めた。あの二人は儂のこと知っている素戔嗚のいたっては会ったらすぐに母禮姉様!と喧嘩ふかっけてくる天照の天岩戸に引き込もった理由も迷って出られなくなった天然だし、

 

 

(儂今から会わなければいけないの?熱血馬鹿と天然に月夜見だけが良かったのじゃが、やつ察し悪いし伊邪那岐との事知らんし)

 

とこのように母禮は内心慌てている空亡は母禮が焦っていることに気付き、助けようとしたがいい案が思いつかず静かに謝った。依姫達は会話が終わったらしく。

 

「そうかこのまま案内を頼むぞ」

「は!」

 

 

階段を上がり一際大きな部屋に付くそして依姫が空亡に言った。

 

「空亡先に入ってくれ一番活躍したのはお前だからな」

「分かった依姫」

 

空亡はそう言い部屋の扉を軽くと中から声が聞こえる。

 

「入れ」

 

空亡達は部屋の中に入る部屋には銀髪の女と水色の髪男そして母禮に似た見た目の髪の短い女がいたそれを見て空亡は母禮と呼びそうになったが本人は後ろ居る何とか声を出さずにいられたが母禮にばれない様に小突かれた。月夜見達の前に空亡達は座り対面した。そして月夜見が口を開く。

 

「旅の物私の村を守っていただき感謝する」

 

月夜見はそう言い頭を下げ感謝を伝えた。香澄が代表してそれを受け取った。

 

「ありがたく受け取ろう、此方も旅と途中でいろんな村を回っていたからな、そんな時この村が襲われて私の従者に助けさせたそれだけだ」

「それでもいい事実助けられたからな、近々姉様と兄様の為の祭りがあるからそれに参加してくれるか?それに他に褒美はいるか?」

「参加させてもらおうそれに褒美を貰えるならこの村に一年ぐらい滞在していいか」

 

母禮はそう頼み、月夜見はそれを聞き少し考えて答えた。

 

「良いが何故だ?旅をしてるんだろう」

「そろそろ私たちも休みたいからな」

「そういう理由か、いいぞ二年ぐらいな」

 

母禮達は元々二年は滞在する予定なので丁度いい、そんなことを考えていると素戔嗚が口を開く

 

「俺からもいいうが姉様の村を守ってくれて感謝する。なあ名前をまだ聞いていなかったんだが教えてくれるか?」

 

そう言えばまだ名前を言っていないすると母禮から名前を言った。

 

「儂は宿儺母禮久しぶりじゃな愚弟に天照」

「母禮様!?」

 

母禮はすぐに正体を明かした空亡はすぐに反応し混乱した

 

(何を言ってるんだ母禮様は?いきなり正体を明かしたぞ)

 

「宿儺母禮だと!」

 

月夜見は神力を開放し母禮に構える。素戔嗚は月夜見を抑える。

 

「まあ待て姉上やっぱり母禮姉様だったかなあいい加減高天原に戻っては来てくれないか?」

 

それに反応したのか寝ていたらしい天照が起きる。そして目の前に居た母禮に抱き着く

 

「ほえ寝てたーあー姉様だ月夜見ーなんで姉様がいるのー?」

「天照久しぶりだないきなり抱き着くでない」

「母禮姉様今度こそ貴方に勝つ、一戦交えてくれ」

「良いぞその代わり条件がある」

 

そんな天照と素戔嗚は母禮と何もないかのように話している

 

「天照姉上!素戔嗚!?母禮ですよ父上を殺した!」

「そう言えば姉上はあの事の真相知らなかったな、一回話したが信じなかったんだ」

「そうですよー月夜見は信じなくて悲しかったです。そして何千年か勘違いして」

「どういうことですか姉様!素戔嗚!?」

「それは儂が話す聞いてくれるか?」

 

天照と素戔嗚は頷き月夜見も納得がいってないが何とか頷いた。

 

「天照、素戔嗚お主らは覚えているか」

「嗚呼忘れていないぞ姉様」

「私もー大丈夫だよ姉様」

 

 

「あれは月夜見が病に侵され寝込んでいた時、ある一柱の神が攻めてきた。その名も伊邪那美、儂を産み出した神、火之迦具土神を産んだ際焼き殺されたのは知っているな?そして伊邪那岐の嫁であり兄妹そいつが黄泉から攻めてきた雷神を連れ、この話は長くなるぞまずは儂の生まれから話そうか空亡も天照も知らないと思うからな」

 

母禮はそう前置きをし話を始めた。

 

 

 

 

儂の生まれは異端だったなにせ神産みの時、火之迦具土神を殺した際その死体から八柱の神が生まれたそして最後に儂こと母禮が火之迦具土神の力をほぼ受け継ぎ鬼として生まれた。それも少女の姿で他の神は成長した姿だったのにだがこの時は神として扱われた。それは何かの手違いだと思われたからだその後父伊邪那岐は黄泉へと伊邪那美を迎えに行った。其処から走っているだろう黄泉から帰った伊邪那岐は禊ぎを行いお主らが生まれた。それから儂は他の神々に数多くの事を教えられ成長していった百年ほど経ち事件が起きた。とある鍛冶の神を主犯とし五柱の神がが儂を犯そうとしたのじゃ、儂は怖かったいままで優しくしていた神が一斉に迫ってきた。その時ある声が聞こえた殺せばいいと、それから先は聞こえたとうりに炎で神を焼いた。その炎は神格を燃やし神そのものを殺しつくした焼いている途中に神たちの叫び声を聞いた。他の神がやってきて事件は発覚した。水の神が炎に触れると燃え移りその神ごと殺した。このことで儂には火之迦具土神の神殺しの焔を受け継いでいたことも分かった。他の神々は儂を殺せと言ったが伊邪那岐が頭を下げ頼み込んだことで四千年の幽閉で事が済んだ。

 

「此処までが儂の誕生と初の神殺しの話、さて此処までで何か質問あるか?」

「ないぞ姉様強いて言うならこの赤髪の男の名前を知りたい」

 

さっき言ったのは母禮だけで空亡は名前を言っていなかった。母禮は空亡の名前を答える

 

「こ奴は宿儺空亡儂の従者兼家族じゃ」

「家族か?姉様子を産んだのか?」

「馬鹿者儂が簡単に股を許すわけがなかろう森で拾ったんじゃ」

「それもそうだな」

「続けるぞ」

 

まあそれからは地獄だった幽閉され何もない部屋で過ごしているとある声が聞こえてきた。憎い神が憎いという声が一人で居る中それが聞こえ気が狂いそうになった。千年経ち声の正体が理解できた。火之迦具土神の怨念だ産まれてすぐ殺されたことによる。他にも変化は有った角が伸び完全に鬼の姿になったことだ千年の間で一人炎を使い続け完全に扱うこともできるようにいなった。神殺しの焔でさえも。たまに渡される食事儂を殺そうとする神による妖怪の投下、それを殺し力を奪い強くなっていった。妖怪の投下は千五百年続いいた。不定期に前より強い妖怪に儂を殺せばどんな悪事も見逃すことを条件に、

 

「待て!他の神がそんなことをしていたのか!」

「そうじゃ伊邪那岐にばれない様に偶にだがな、続けるぞ」

 

「それから五百年ほど経ちお前たちが儂を見つけた。覚えているか?」

「忘れるわけがない天照姉様が迷い込み俺と月夜見姉様が探しに行った時に初めて会ったからな、そこで父様にお前たちの姉が幽閉されているが出すことができないと悔やんでいたのを俺が思い出し封印を俺の【あらゆるものを斬り裂く程度の能力】で斬ることで出会った」

 

他の神達にばれないようにして此処に来ることが多くなったお前達と遊んだり素戔嗚と勝負をしたりしたなそれが二千年続き月夜見が病に侵された。その時に儂を殺そうとしている神と達が黄泉から伊邪那美を解放したその時にその神は伊邪那美の纏う黄泉の瘴気にやられ神格を削られ死んだ。伊邪那美の目的は伊邪那岐と儂を殺すこと。雷神を引き連れやって来た伊邪那美が来たことにより瘴気に毒され百を超える神も殺された。伊邪那岐と伊邪那美は対峙し争いは国が崩壊するほどに続いた。天之尾羽張を使う伊邪那岐に黄泉の力ト死者を使う伊邪那美、その矛先は雷神を押さえていた儂に向いた。そして伊邪那岐が儂を庇い最後に言ったんだじゃよ。

 

「お前を愛せなくて済まない」

 

それからは伊邪那美に対する憎悪と火之迦具土神の恨みが混ざりあい、炎が溢れた。そのまま雷神を全て殺し力を奪ったそのお蔭で儂は炎と雷を使えるんじゃが話が逸れた戻すぞ。伊邪那美はかつて自分を殺した炎を恐れ黄泉にに帰りその現場は天照と素戔嗚に見られ。残ったのは儂と数多の神の死体と主神伊邪那岐の死体これは全て儂がやったことにされ、儂は神仏の敵とされ、その場を逃げ出した。月夜見は伊邪那岐の死体と改変された事実を聞き鵜呑みたのじゃ。その後旅をしていろんな妖怪と神、人間と出会い空亡を拾い今に至るそれが真実じゃよ。

 

「どうじゃこれがすべてじゃよ月夜見」

「本当ですか姉様、素戔嗚」

「嗚呼本当姉様だこれが事実だ」

 

月夜見は体が震えている拳を握りしめ言った。

 

「これが事実なら私は只の道化じゃないかいいように信じ剰え母禮を姉様を殺そうとした。姉様私を殺してくれ」

「そんなことはしないぞ月夜見よ儂は特に気にしておらん」

「姉様ぁ」

 

月夜見は母禮に泣きついたそして今まだため込んでいや物をすべて吐き出し母禮と溝は埋まった。こんな状況に部屋の扉が開き慌てて白い髪の女が入って来る。

 

「月夜見様!泣き声が聞こえたのですがご無事です!かってどういう状況なの」

 

女はいつも凛々しい月夜見が母禮に抱き着いている様子を見て困惑した。空亡は最後に

 

「俺すごい空気だったんだが」

「私もですよー、一緒ですねー」

 

と天照も同意した。空亡はそれで気が抜けた

 

 

 

 




やだこのの主人公空気すぎ?


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第二十二話

四日連続!そして今回は能力の説明回と素戔嗚と母禮の語り合い


月夜見は泣き疲れたのか寝てしまい。入って来た女永琳は、素戔嗚に事情を聴き、月夜見を部屋に連れて行った。母禮達は今日は別の部屋で休むことになった。その際母禮は素戔嗚と話があると言いて部屋に残った。そして素戔嗚をから母禮言った。

 

「姉様一つ聞きたいがさっきの条件とは何だ?」

「そうじゃそうじゃ忘れていたのうそれは空亡と勝負してくれんか」

「良いぞ俺もあいつのこと気になっていたからな強いのか?」

「お主が相手ならいい線は行くだろうが倒せないと思うぞ」

「そうか俺と戦って暫くは持つというのかそれは楽しみだな能力は持っているのか?」

 

素戔嗚は母禮から認められている空亡と戦うのが楽しみなようだ。そして何より自分の能力と張り合うことができる能力が何か気になるからだ。

 

「空亡に直接聞け多分答えてくれるぞ」

「それは楽しみだな」

 

そんな話をして、からもう一つ気になることがあったらしく。

 

「姉上は何故空亡を育てたんだ?」

「嗚呼それか、空亡はな最初は気まぐれじゃったんだが、育てて一緒に居る内に楽しくてのう、儂に文句も言わず何でもやってくれたり、着実に強くなっている。いつか儂を倒すだろうそれが楽しみでのう」

「やけに高評価だな、姉様は空亡のことどう思っているんだ?」

 

母禮が空亡の事を高く評価しているので、実際どう思っているのか気になったらしい。

 

「空亡のことか?考えたことないのう、だがひとつ言うなら儂の家族それだけじゃ」

 

そう言う母禮の顔は本当に嬉しそうで何より綺麗な笑みを浮かべていた。それを見て素戔嗚も笑った。

 

(姉様はそう言っているが明らかに前からいた焔龍達に持っている感情と違うだろう)

 

「焔龍達はどうなんだ?」

「あやつらもじゃぞ儂と空亡と焔龍達この四人でいるのが本当に良い儂の大切なじん時間じゃ」

「そうか姉様は幸せなんだな俺はずっと苦しんでいると思っていたからな思えば焔龍達を俺が初めて見た時にはすでに苦しんでいることはなかったんだな」

 

(やはり空亡と言った時が一番嬉しそうだったな、でもこれは気付いていない様だ俺からいうのは余計な世話だろう)

 

母禮は素戔嗚に伝えることを忘れていた。

 

「そうじゃ大切なことを伝え忘れていたのう」

「姉様何だ?」

「あと八年以内に儂が死ぬほどのことが起きるだろう」

「なんだと今言うのか!?姉様が死ぬ!?そんなことありえないだろう!」

 

素戔嗚はひどく取り乱し母禮に掴みかかる。

 

「慌てるな愚弟、だからお前に言ったんだろう流石にお前たちと儂がいれば何とかなるからな」

「本当に起こるのか?」

「嗚呼そうだ。件が予言した」

「それは本当だな強くならなければ」

「だからそれまでに空亡も鍛えてくれ儂だけじゃ足りない」

「了解した姉様」

 

素戔嗚は了承し、空亡との手合わせを楽しみにしている

 

「じゃあそろそろ儂は寝る案内してくれ」

「分かった姉様」

 

そのころ空亡達はなぜか案内された部屋に天照と一緒にいたそして天照は空亡に酒を飲みながら絡んでいた

 

「空亡ー貴方は姉様の家族ですよねーならさー私の弟ですねー」

「そうですかね?」

「そうですよーならさお姉ちゃんって呼んでください」

 

空亡はこの光景を何度か見たことある酒をを飲んだ椛だ。対処法は知っている。言うこと全てに反応しなければ泣き出してしまうそれは阻止しなければいけない、それに天照は母禮の妹だ失礼のないことにしないと、

 

「天照様何故酒を飲んでいるのですか」

「お酒ー?そこにお酒があるからですー」

「そんな名言っぽく言わないでください」

「それにーお姉ちゃんですよーはやくー」

「はいはい天照姉様」

 

空亡はめんどくさくなって椛達みたいに天照のことを呼んだ。それが不服だったんのか天照が空亡をポカポカと叩く、威力は無いがウザったくなってきた。

 

「適当に言うなーそれに姉様って素戔嗚達みたいに言ったーお姉ちゃんと呼べー」

「なあ焔龍助けてくれ」

 

焔龍酔っぱらっているのかそっぽを向き不満そうに

 

「自分でやれば?」

 

頼みの綱の焔龍に裏切られ焔狐に助けを求めたが

 

「空ー亡ー殿ー酒の飲みましょうよっ!」

 

そう言い空亡に酒瓶を口を入れ中身を口に流し込んできた。

 

「がぼっ!ちょっ焔狐酒を流しごぼっ!」

 

絶え間なく酒を飲ませる空亡の顔は赤くなってきてきて頭を押さえる。

 

「やめれ焔狐様何本飲んだんだ!?」

 

焔狐の近くには母禮が持ってきた酒が十本以上空になっていた散らばっていた。

 

「何本飲んでるんだ!」

 

空亡は酔いを醒ますために無理やり水を出し顔にかける。

 

「頭いてーくらくらする」

「空亡ーお姉ちゃんですよー」

 

抱き着いてきた天照をキャッチして膝に乗せる。

 

「何故乗せるんだー?空亡ー」

「暴れないようにだ」

「頭撫でるなでくださいー」

「はいはい」

 

こんな中焔龍が空亡に突撃してきて、空亡に体当たりを噛ます。

 

「何するんだ焔龍?」

「ずるい……ずるい!」

 

焔龍は炎を拳の纏い叩いて来る。

 

「痛っ痛い焔龍」

「ずるい」

 

ずるいと言いながら空亡を叩き続けていた焔龍は今日一日のことで疲れたのか寝てしまった。そんな焔龍に毛布を取り出し掛けて寝かせておく、天照は空亡から離れない、空亡はそんな天照のことを妹みたいに見ている母禮の妖力で育ったからだろうかそうして天照に話しかけた。

 

「空亡ー初めて今日あったけど、貴方の傍は落ち着くし安心するんですよー」

「そうか?」

「今日は本当にいい日ですよー月夜見は姉様と仲直りしたし私も久しぶりに姉様に会えましたからねー」

 

そう言ったあとすーすーと寝息を立て寝始めてしまった。

 

「やっと寝たか疲れたな、母禮様早く来ないかな」

 

丁度そのタイミングで部屋の戸が叩かれる。そして素戔嗚と母禮が入って来る。

 

「空亡来たぞって酒臭いのう」

「おいお前らどんだけ飲んだんだよ、それに天照姉様も」

「母禮様俺はもう限界ですなんか体熱いし天照様の周り熱いし」

「空亡それは天照の能力じゃよ此奴は【熱と光を操る程度の能力】を持っておるからな寝てるとき少し熱を周りに出してしまうんじゃなあ素戔嗚この癖治ってなかったのか?」

「すまない母禮姉様、これだけは直せない天照姉様自身が「寝る時温かくて凄いんですよ!」そう言っており直せなくてな」

 

素戔嗚は申し訳なさそうに言った、何気に声真似が似ていて今日初めて話した天照だが簡単にそう言う姿が想像でき空亡は少し笑ってしまった。

 

「空亡丁度いい、儂らの能力を説明するのじゃ質問はあとで受け付ける行くのじゃ」

 

母禮は息を吸い一つずつ丁寧に説明するために机を用意し二人を座らせた。そして炎を出し炎の人形を作り出した

 

「この人形で説明するぞ、では始めるのじゃ」

 

人形が形を変え母禮の姿を形作る。

 

「まずは儂からじゃのう儂は【この世ありとあらゆる炎と雷を操る程度の能力】この能力は少し前説明した通り火之迦具土神から受け継いだ炎と焼き殺した雷神の力が混ざったものじゃその名の通り炎と雷を使ったり炎と雷で色んな物をつくったりできる」

 

説明に合わせる様に炎の人形は雷を起こしたり周りに炎の腕を飛ばしている。次行くぞ、そう言うと今度は人形が空亡の姿に変わる。

 

「俺ですか?」

「そうじゃ空亡の能力は複雑じゃから最後に回そうと思ったがやっぱり最初にした。空亡お主は自分の【自然災害を起こし操る程度の能力】についてどこまで理解しておるか?この場合天災と言い方を変えた方がいいと思うが」

 

空亡はそう言われ考えてみたが今までも自分が起こせる災害を派生させることができるくらいしか知らないそれを伝えると、素戔嗚が驚きながら言った。

 

「待て姉様、空亡の能力はそれなのか!?そんな力龍神様と同じくらいの能力だぞ!」

「そうじゃ、この能力は空亡の生まれに関係してると儂は思うのじゃ空亡お主は産まれた瞬間から、恐れらてきた。人間にはその赤黒い髪と蛇の鱗は異端そのもの、恐怖しないことがないからな、話を変えるが、自然災害又は天災の種類や名前は何が定めた?」

 

母禮はそこまで喋り一度空亡に聞いた答えを待たずして次に進む。

 

「人間だろう。人間が自然に起きる現象に名をつけ恐怖する。全てを破壊する地震、飲み込んでしまう津波、中に入ったら切り裂かれる暴風、全てを凍てつかせる吹雪、一度起きたら周りの物を燃やし尽くす火山の噴火、大陸すら一瞬で消去る隕石、これ等全て人間が名をつけ恐怖したもの。この能力の本質は人間の恐怖を体現した力だから関係の無い怪物の生成までも使える。それは人間が別の生き物が無限に自分たちを殺してくるとゆう恐怖から生まれたものじゃ分かったか?そしてこの能力が生まれた理由じゃがお主が生まれた瞬間に村の人間に恐怖されたからじゃと思うんじゃ、まあこれがお主の能力じゃ」

 

空亡は自分の能力の本質を教えられ戦慄していた。同時に素戔嗚は人間の罪深さを改めて実感した。姿が違ったって同じ人間だろう、こんな能力が生まれえるほどに恐怖されるとはその村は狂っていたのだろう。沈黙が続き母禮が口を開く。

 

「それそれ夜が明けるな少し早く説明するぞ次は素戔嗚じゃそれはお主が説明いた方がいいじゃろう」

 

炎の人形は次は素戔嗚の姿に変わる

 

「分かった姉様まあ俺には能力が二つある一つは姉様が言った【あらゆるものを斬り裂く程度の能力】と姉様と反対の【この世ありとあらゆる水を操る程度の能力】を持っている二つある理由は姉様達は二つの物を使える代わりらしい月夜見姉様の能力は【光と重力を操る程度の能力」どっちもその名の通りの力だあとは姉様に任せる」

「任された時間もないし次が最後じゃ焔龍達のは知っているじゃろう?」

「そうですね母禮様」

「最後は天魔彼奴の能力も二つある一つはよくお主も世話になった【治す程度の能力】じゃこれは天狗をまとめた時に自分で作った能力で本当のは【塵に帰す程度の能力】見たものや触ったものを塵と化す能力じゃこの力は今は使わないようにしているらしいあまりにも危険じゃからな初めて会った時も苦戦した触れられたらその部分が塵になるんじゃぞ何回も引き分けになり百年近く戦い続け決着がついた今思うと天魔とは長い付き合いだな」

 

母禮は懐かしそうに言った。そして手を叩き空亡達に、

 

「さてそれそれ寝るかのう素戔嗚ありがとな、空亡寝るぞ布団を出せ」

 

空亡は言われた通りに布団を出し母禮に渡し、寝始めた。母禮は空亡が寝たのを確認すると

 

「嗚呼儂は空亡達と一緒に居たい、儂の様な罪人が願ってはいけないと分かっているが、死にたく無いのう」

 

 




一章終了まであと二話!


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第二十三話

五日連続!そろそろ疲れてきた。


朝になり、空亡達は目を覚ますと、月夜見の従者にある部屋に来てほしいと、伝えられた。空亡達は支度を終え部屋に向かう、部屋付くとそこには月夜見と素戔嗚、永琳、依姫そして見知らぬ蒼髪の男が座っていた。空亡達も指定してある場所に座り、全員が集まったことを確認し月夜見が話を始める。

 

「集まったか、これより天照姉様と素戔嗚来日の祭りの会議を始める。嗚呼紫苑達にはまだ紹介していなかったが、今回は客人として母禮姉様と、その従者たちを呼んだ。今回村に来た妖怪の討伐をしてくれたからな、その報酬と思ってればいい」

 

月夜見は紫苑と永琳にそう伝える。紫苑と呼ばれた男は、

 

「了解した嬢ちゃん、そして空亡っていったか?娘世話になったな。昨日聞いたら嬉しそうに俺に喋ってきたからな、久しぶりにあんな皐月見たぞ」

 

紫苑は空亡にそう言い笑った自分の娘が元気でいて嬉しかったようだ。事実皐月はここ何年か無理して笑っていたからだ。次に永琳が空亡に話しかけてきた。

 

「私からも感謝するわ、死者は居なかったですし怪我人も少なかったからね、一つ聞くけどあなた輝夜様になにしたのかしら昨日屋敷に戻ったら輝夜様が貴方の名前呼びながら悶えていたから」

「別になにもしていないが、何故輝夜はそんなことしていたんだ?」

 

空亡は焔龍達に聞いてみたが帰ってきた答えは辛辣なものだった。

 

「自分……考え……たら?」

「空亡殿それは……ないです」

 

焔龍は不機嫌そうに焔狐は呆れていた。母禮だけは一人

 

「空亡安心しろ儂も分からんのじゃ」

「ですよね母禮様」

 

母禮も分からないらしく、空亡もそれに同意する。それに焔龍は

 

「なんで……こんなに……二人は……鈍感……なの?」

「私に聞かれても困ります焔龍殿」

 

二人はそんなことを話していた。永琳は空亡は本当に分からない事と焔龍達の反応で何か悟った月夜見が咳ばらいし話題を戻す。

 

「お前らは後で話しておけ、では話を戻すぞ今回の目玉は武芸大会だ今回は素戔嗚と空亡の試合をやろうと思う異論はないか?素戔嗚、空亡」

「俺は別に構わない」

 

空亡は母禮が認める素戔嗚の実力を知りたいし素戔嗚は母禮に頼まれているので断る理由はない。

 

「俺も大丈夫だ月夜見姉様、母禮姉様に頼まれていたからな」

「それならいい次に永琳準備は何処まで進んでいる?」

「月夜見様八割ほど終わっています。服屋や、食事屋、甘味屋、祭り屋台、、これは終わっているのですが昨日の襲撃で武芸会場が損傷して修理に時間掛かるかと」

 

永琳は月夜見にそう報告する月夜見は渋い顔をして

 

「どうする祭りまであと四日だぞ、なあ母禮姉様何かないか」

 

月夜見はそう母禮に助けを求めた。母禮は焔狐に目配せをしてから提案をした。

 

「焔狐が式神を使えば早く終わるだろう、それでいいか?」

「ありがたい頼まれてくれるか?」

「良いですよ月夜見殿私に出来ることなら」

「ならこれで会場は安心だな言い忘れていたがこの祭りには他の村の神や人間が沢山くる。母禮姉様は妖気を隠してくれ、そして紫苑お前の隊の何人かを他の神の護衛や送り向かいに使わせてくれんか?」

「良いぜ嬢ちゃん、まあ元より俺の隊は月夜見専属だ。異論はねえよ」

 

紫苑は自分の隊を使うことに異論や不満はなくむしろどんどん使ってくれという精神だ。

 

「これにて会議を終える。焔狐はすぐに取り掛かれるか?」

「任せてください月夜見殿」

「なら今から準備を本格的に始める頼んだぞ、お前達。それと素戔嗚今からでいい空亡の実力を測ってくれ」

「任せろ姉様、いいか空亡?」

 

素戔嗚は空亡に確認を取る空亡はそれはいいがどこでやるのかが気になった。

 

「それはいいが、何処でやるんだ?俺の能力だと広範囲が破壊されるぞ」

「そこは大丈夫だ。屋敷の地下には練習場がある。そこなら素戔嗚が能力を使わない限りは壊れない筈だ。そこなら大丈夫だろ」

 

月夜見はそう空亡に教えた。空亡はそれならと安心して、素戔嗚のと共に屋敷の地下に向かう、この間に母禮と月夜見は会場に焔狐と行っていた。焔龍は空亡が心配なので付いて行くことにした。地下に付き各々準備を始める。空亡は母禮に貰った布を取る。せき止められていた極大の妖気が解放されて空気が重くなる。それに素戔嗚は冷や汗をかきながら言った。

 

「空亡お前本当に人間か?こんな妖気母禮姉様くらいいやそれ以上にあるぞ」

「多分一日妖気が止めれれていたからじゃないか?それに俺は母禮様の妖気で育ったから半分妖怪だ」

「そうなのか俄然楽しみだ用意できたか?」

 

空亡達は互いに距離を取り武器を構える。空亡は札から取り出した大鎌を素戔嗚は両刃の刀をそれぞれ構え。其々名乗りを上げる。

 

「宿儺母禮の従者、宿儺空亡」

「高天原の剣神、素戔嗚尊」

『いざ参る!』

 

この戦いは本気を出してはいけないあくまでこれは力を確かめる目的だ。それに本気でやるなら試合でだ此処でや本気でやっても意味がないだが、二人の馬鹿はそんな事考えていなかった。素戔嗚は反応できないほどの速度で刀を振るう空亡は刀が当たる直前に周囲の水を凍らせて盾を作る。素戔嗚の刀はそれすら斬り裂くが一瞬の隙さえできればいいその隙を突き空亡素戔嗚の後ろに回り込むが予想していたのか普通に反応する。そのまま刀を空亡に向けて振る。空亡は鎌を札にしまい、腐敗毒の鎌を作り出し、刀を受け止める。鎌は斬られたが刀は腐敗毒に溶かされた。

 

「この刀は結構な業物だったんだがもう使えないな、仕方ない、もうやめるか?」

「何言ってるんだこれじゃ物足りない、まだ武器はあるだろ?」

「当然だ空亡、話が分かるな。こんなのじゃ足りない。だがこの刀は斬れ過ぎるそれでもいいのか」

「そっちの方が面白い来い」

「ならお前も力を隠すな、それなら対等だろ」

 

素戔嗚は空亡の能力は母禮に聞いているので力を隠していることは知っているだがこんなとこで使うとこの村は滅ぶだろう流石に空亡は分かっているでやらないがこっちも戦いたいなら

 

「期待しているのと違うがやらせてもらう、焔龍暴走したら頼む、恵理使うぞ」

 

(使え空亡!負けることは許さんぞ)

 

空亡が妖力を開放するそしてその名を言う

 

「――太・極――

 

随神相――神咒神威・無間叫喚」

 

空亡は恵理の力を使った。鎧を纏う腕が増えその腕には鎌が現れ体から霧が立ち込める、足元が腐り落ち、目が一際紅く光り、完全にこの姿は化け物そのものだ。素戔嗚はそれを面白そうに見て、

 

「それは聞いていないなどんな力だ?」

「ジブンデタシカメロコイ、ナガクモタナイカラナ」

 

空亡自身まだ使えこなせないので、持続時間は二分程度しか持たない焔龍はもし暴走したら止めるつもりだ。

 

「近づいたらやばそうだなならこれだ、水薙ぎ!」

 

斬るとゆう属性を乗せた水の斬撃が空亡に襲い掛かる。空亡はそれを睨むと水の斬撃は変色し腐敗毒になる。

 

「効かないか、なら視界を埋めるほどの数はどう対処する?」

 

視認できないほどの速度と数の斬撃が飛んでくる空亡は出来るだけ多くの斬撃を捌いていく鎌が斬れらても少しでも斬撃を逸らし斬られた瞬間に新しい鎌を作る。凌ぎきったが、所々斬り裂からていて満身創痍だが空亡は笑っておりそして、

 

「コチラカラユクゾ」

 

そう言い空亡は素戔嗚に仕掛けた。

 

 

 

 

二分後圧倒的な破壊音が聞こえ、月夜見や永琳が急いで集まって来る。月夜見は地下着くと第一声に

 

「なにがあった素戔嗚無事か!?」

「すまん姉様やり過ぎた」

「何がって、おいどうしたこの惨状は!?」

 

部屋は所々斬り裂かれ腐り落ち部屋の真ん中は大きな爆発があったようで、破壊されている。永琳は呆れながら。

 

「やっぱりこうなったわね素戔嗚様一つ聞きますが空亡は如何して其処でノビテイルノカシラ?」

 

永琳の怒気に素戔嗚は恐怖する。

 

「えっとそれは、武器が空亡に溶かされ互いに不完全燃焼だったから本気でやろうってなって俺は天叢雲剣を使って空亡は腐毒を全力で、すまなかっただから二人とも 睨むの辞めてくれ怖い、特に姉様、手にに何を溜めているのでしょうか?」

「この愚弟が力を確かめるだけって言っただろう!」

 

月夜見は素戔嗚に神力を溜め本気で殴る素戔嗚はそれを受け吹っ飛び壁に埋まる。永琳は気付け薬を使い空亡を起こす。

 

「どっちが勝った」

 

空亡は起きた瞬間にそう言った。

 

「素戔嗚が勝ったぞ空亡はあとお前は母禮姉様の説教か天照姉様の遊び相手か選ばせてやろう」

 

月夜見は神力を出しながら言った。空亡はすぐに答えた。

 

「天照の相手でお願いします」

「なら祭りが始まるまで付きっきりでやれよ空亡」

「はい!了解しました!」

 

永琳は部屋を見渡しそして一言いった。

 

「また書類整理さなきゃいけないわね辛いわ」

 

 

 




すいません一章はあと2話続きます。


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第二十四話

六日連続何とか間に合った


祭りの当日になり準備は終わった。その間空亡は、天照の相手をずっとしていたのでげっそりとしている。空亡いわく、あれは地獄の様な時間だった、と語っている。天照はとても笑顔で

 

「楽しかったですー」

 

と言っているが、内容は空亡の為に言わないでおこう。それは置いておき祭りが始まる。開始の一日前から村に泊まっていた者や、村の入り口で待たされている大勢が、今か今かと月夜見の開催の声を待ちわびている。月夜見が祭りの名を呼ぶ

 

「皆の者、よく集まってくれた。早く始めたいだろう?これより三神祭の開幕だ!」

 

 

その言葉を聞き、屋台が全て開かれ他の店は店員が出てくる。これより祭りの開催だ。人が流れ込む、我先にと屋台に向かう、空亡達も全員で回るつもりだ。母禮を先頭にイカ焼きやら酒を買いに行く。酒店に行くと店主が声を掛けてきた。

 

「おお、香澄様達じゃないですか、村を守っていただき有難うございます。お蔭でこの祭りが開けました」

「別に良い、空亡がやっただけだからな」

「それでもいいです。今年の最高傑作の酒です、持ってってくだせえ」

「それならありがたくもらっていくか、空亡しまっていけ」

 

空亡はそう言われ酒を荷物にしまう、この後全ての屋台を回り、感謝の品を貰った。回っていたら、輝夜達と出会う、輝夜は空亡に偶然を装い言った。

 

「あら空亡、奇遇ね。私も一緒に回っていいかしら」

「……輝夜様、空亡さんを高い所に上って、僕に探させたのに」

「皐月うるさい」

 

疲れた様子の皐月がそう言い、輝夜は皐月を小突き言う、空亡と母禮には聞こえなかったらしく

 

「お主たちも、一緒に回るのか、いいぞ、空亡もいいだろ」

「俺はいいですよ香澄様」

「二人共……鈍感……とゆうより……そうゆうこと……だけ……聞こえない?」

「多分そうでしょう焔龍殿」

 

焔龍達は、何時もの様に空亡達に呆れていた。その後遊んだりして、夜になった。目玉の武芸大会が始まる。空亡は素戔嗚と戦うまでは、引き続き周り続けた。時間になり会場に向かう、会場は焔狐が直し結界を張ったことで、基本どんな組が戦っても壊れないだろう。空亡は素戔嗚と対峙する。

 

「二日ぶりだな空亡、姉様の事はすまない大変だっただろ」

 

空亡はそれを聞き、思い出したのか哀愁を漂わせている。

 

「頼む、言わないでくれ。頭痛がする」

「本当にすまない、それは忘れて戦おうか」

「そうだな、戦おう今すぐに」

 

二人は武器を構える。そして月夜見が大声で宣言する。

 

「このたびは三神祭に来てくれた人々よ、これより我が弟と客人宿儺空亡の試合を始める。結界は私が張った、存分に見るがいい。これより試合を開始する」

 

その合図とともに、空亡と素戔嗚は同時に駆ける。先ずは空亡が仕掛けた。素戔嗚は、、大鎌を足で受け止め跳ね返した。空亡は、地面を滑りそのまま後ろに跳び、そのまま鎌を振るう。素戔嗚は、背中に水を盾のように出現させ鎌を遮った。

 

「前より早くなっているな、何をした?」

「天照の出す炎弾を、ひたすら鎌で斬り続けていた」

 

空亡は死んだ目でそう言った。素戔嗚もやられたことがあるのか、

 

「あれは辛いよな……」

 

この会話の中にも攻防は続く、五分ほど斬り合い空亡が言った。

 

「まだ母禮様にも見せてない技がある。それを使う、いいか?」

「面白い。来い、空亡」

 

空亡は、この技はなぜ出来るかは分からないが、ある時、焔狐が怪我をして帰ってきた時から出来る様になった。この技の渇望は、この日常を手放したくない、停めてしまいたい、というものを元に出来ている。

 

ものみな眠る小夜中に 水底を離るることぞ嬉しけれ

 

水のおもてを頭もて 波立て遊ぶぞ楽しけれ

 

澄める大気をふるわせて 互いに高く呼びかわし

緑なす濡れ髪うちふるい 乾かし遊ぶぞ楽しけれ

――太・極――

 

随神相――神咒神威・無間黒縄

 

 

水がさらに増え、空亡の後ろに海が出来る。海からは、頭足類のような足を持つ巫女が現れる。現れた直後、巫女は何かを恐れた叫び声を上げる。それを聞いた素戔嗚は停まる、指一本さえ動かせない。其処に巫女の触手が迫る。間一髪で動けるようになる。素戔嗚は急いで斬撃を飛ばし、触手を斬り飛ばす。素戔嗚は焦ったような声で、

 

「空亡、今のは何だ? 全く動けなかったぞ」

「俺の方が驚いているんだが、なぜ動けた?」

「ギリギリだったぞ。まあこんな技を見せてもらったんだ、俺も見せなけれな」

 

素戔嗚は、雨叢雲剣を取り出した。それを見た月夜見は大声で止める、

 

「おい愚弟、それは禁止しただろう」

 

だがそれは遅く、素戔嗚は詠唱する。この技は、斬れない物を見つけるまで、全てを斬り裂きたいとゆう渇望でできている

 

我は全てを断ち斬る剣神なり

 

我に斬れない物は存在しなく

 

全て等しく斬れてしまう

 

唯掠っただけでもだ

 

故に問うたなぜ斬れるのかを

 

神は答えた汝に斬れぬ物はないと

 

ならば探そう

 

三千世界神羅万象

 

我に斬れぬものが見つかるまで

 

全てを斬り裂き続けよう

 

――太・極――

 

随神相――神咒神威・修羅剣神

 

素戔嗚と雨叢雲剣が一体化し、そのその身そのものが剣と成る。腕を振るうだけで斬撃が飛ぶ。空亡はこれは危険と本能で悟り、鎌で逸らす。上に逸れた斬撃は結界を斬り、空へ消える。

 

「ははっ、逸らしたか! ならもう一度だ行くぞ!」

「やめんか、愚弟、空亡」

 

母禮が現れ二人を殴る。二人は頭をさすり抗議する。

 

「何をするんだ姉様。まだまだこれからだろう、邪魔をするな」

「そうですよ母禮様、まだ決着はってぁ」

「どうした空亡? あっやばい」

 

その光景は、結界が斬られて水が天照や月夜見の方に流れ濡れている状態だった。素戔嗚の後ろに神力を溜めている月夜見と笑顔の天照がいた。

 

「ねえ空亡、濡れたんだけどーこっち見てよー」

 

天照は空亡に笑顔で言った、空亡は冷や汗をかき謝った。

 

「本当に謝るからあれはやめてくれ。今だ体が震えるんだ」

「駄目だよー奥に行こうねー」

 

空亡は天照に連れられ会場の奥に行った。数分後、悲鳴が響く。そして空亡達は出てきた。

 

「もうしないでよー、空亡ー」

「すみません、ごめんなさい、天照様、許してください」

「もういいだよー」

 

空亡は、その言葉を繰り返し、天照はさすがにもう許したんだが空亡は戻ってこない、母禮が呼びかける。

 

「空亡、大丈夫かー?」

「母禮様、良かった俺生きている」

 

空亡は帰ってきて、母禮を見て安心した。月夜見は素戔嗚に説教が終わり、空亡に説教しようとしたが流石に悪いと思いやめることにした。咳ばらいをして月夜見は

 

「今回は予想外な事も有ったが、これにて大会を終わりにする。皆の者、明日も祭りは続く、存分に楽しんでくれ」

 

これにて大会は終わった。観客も物足りない人もいるが、大半は空亡が出した巫女を見て満足して帰っていった。

 

「空亡、またいつか本気でやろう」

「俺も楽しみにしている」

 

武芸大会も終わり、空亡達は月夜見の屋敷に行き疲れをいやした。

 

 

 

 

 

武芸大会から一年間。空亡達は、滞在した依姫や素戔嗚、紫苑と稽古をしたり、村の警護を手伝ったり、村の子供たちと遊んだり、そんなことをしていると一年過ぎた。そんなある時空亡達は、月夜見に呼び出された。

 

「母禮姉様、私達は月に行こうと思う」

「何故じゃ?」

「この村は他の村よりも発展しており鉄器なども作れる。その技術を使い、穢れのない月に向かおうと思うんだ。姉様は知っていると思うが、人間には元々寿命が長かった。六百までも生きている筈だったが、穢れが増え、寿命が減り、今もこの村の人間は次々死んでいっている。もうこの村は私の家族と言ってもいい。死んでほしくない。準備もできている」

「それで何が言いたいんじゃ?」

「提案だ。空亡を連れて行かないか?」

「っふざけるなよ月夜見、空亡を連れていく?何故だ理由を言え!」

「空亡は半妖といえど元は人間だ、逸か姉様を置いて死ぬだろう。そうなっても良いのか姉様? 人間は、妖怪や神の様に生きられない」

「だがそれでも儂はいいん、じゃ……」

 

母禮はいつもと違い、弱い口調で言った。そして月夜見は空亡に聞いた

 

「空亡、お前は如何するんだ?」

「空亡……行かないよな」

 

空亡もそうだが、母禮も空亡に依存していた。所詮、共依存とゆう関係だ。母禮は何千年も一人で過ごし、焔龍達にも依存していた。だが、それでもその心は孤独だった。そんな時に空亡を拾い、自分の妖力で育てた。それも、一年離れたがそれ以外の十七年はほぼ一緒だ。偶に出かけるが、空亡や焔龍、焔狐がいる。それが母禮の中では当たり前になっている。母禮は考えてしまった、一人欠ける恐怖を、そして、その後も焔龍達も死に自分一人が残る事を。焔龍と焔狐は寿命が永いけれども、自分よりも少ないだろう。自分は鬼だが、神の娘だ。それだけではなく、宿儺母禮とゆう妖怪は、神を殺した鬼として崇められている。その信仰だけで、あと一万年以上は生きられるだろう。話を戻す。母禮は、依存している空亡達に離されるとなったら、月夜見ですら殺すだろう。

 

「月夜見様、ありがたいですけど、俺は行きませんよ。絶対に」

「何故だ?」

「ほんとか空亡?」

 

月夜見達はその理由を言うのを待っている。

 

「だって俺は、拾われた時から母禮様の所有物。これは俺も認めていますし、何より俺自身あいつ等と離れたくないんです」

「それなら仕方ない、この話はなかったことにしよう。姉様、私達は一年後、姉様達が帰る時、月に行こうと思う。だからそれまでは、ゆっくりしていてくれ」

「分かったのじゃ。月夜見、あと一年よろしく頼むのじゃ」

「嗚呼、頼まれた」

 

こうして物語は加速する。月夜見達は月に行き、月人となる。だが其処に徐々に最悪が近づいてくる。その名も伊邪那美、母禮達の母だ。

 

「伊邪那岐は殺した、死者も十分じゃ。後は母禮を殺せば妾は蘇る。死者達よ、今こそ進軍せよ、宿儺母禮の命を奪え」

 

そう言う伊邪那美の傍には、吐き気を催す程の蛆虫と、死者の骸の大群、そして母禮が今まで殺してきた恨み持つ妖怪達がそろっていた。

 

 

 




あと一話で一章完結


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第二十五話前編

昨日投稿できなくてすいません。


更に一年の時が過ぎた。空亡の歳は十九になり、依姫の姉の豊姫とも交流するようになった。空亡の身長も伸び切り母禮を超すぐらいになり、能力の精度も上がった。今日は紫苑の手伝いで、村の警護を任されていた。警備隊の人々とも仲良くなったが、村の権力者からは母禮達は、嫌われていた。当然だ。いきなり現れ村を救ったことに加え、武芸大会で見せた力、他の村人に慕われている、空亡達は邪魔な存在だ。それはさて置き、あと一週間で月夜見達は月に向かう。そして明日、空亡達は帰ることになっている。そんな時、空亡は輝夜に呼ばれた。

 

「何の用だ、輝夜?」

「空亡。貴方は月に行かないの?」

 

輝夜は単刀直入に言った。空亡の答えは既に決まっていた。

 

「月夜見様にも言ったが、俺は母禮様と共に居るから月には行かないぞ」

「そうなのね……。空亡本当に行かないの?寿命が無くなるのよ」

 

輝夜は譲らない。空亡とまたも離れたくないからだ。空亡はそれでも、母禮達と居ることに決めていた。

 

「駄目だ。俺は母禮様たちと一緒に居るんだ。死ぬまでな」

「そう……。どうしても地上に残るのね?空亡。なら私はどんな手を使っても地上に行くわ。もしも私の名前を聞いたら、会いに来てくれるかしら?」

「ああ。そうするよ、輝夜」

「お願いよ、空亡。それまで生きていてね」

 

その会話を最後に、空亡は借りている家へ帰って行った。輝夜は一人残され、泣き出した。

 

「やっぱり駄目だったわね。でもね、空亡。私は諦めない。逸か地上に行って、私に惚れさせるんだから」

 

泣き声を聞いたのか、皐月がやって来る。皐月に何があったのか聞かれ、ことの顛末を話した。そして皐月に言う。

 

「皐月、貴方は私に付いて来てくれるかしら?」

「はい輝夜様!僕は何処までも付いて行きます!」

 

皐月は笑いながらそう言った。輝夜にはもう涙はない、二人はそのまま話し込んだ。

空亡は今度は依姫に呼ばれた。話があるそうだ。依姫達の屋敷に向かう、付くと依姫の従者に迎えられる。今に案内され、依姫は話し始めた。

 

「なあ空亡お前は地上に残るのか?」

「そうだが、依姫もか」

「私もとはどういう事だ?」

「輝夜にも言われたんだ」

「輝夜のにもか奴が言う理由も分かるがな」

 

依姫はそう言ったあと頼み込んできた。

 

「なあ、空亡。いつか月に来い。その時は手合わせしよう」

「俺も楽しみにしとく」

 

空亡は依姫と約束した。次は永琳に呼ばれた。空亡の体の事で話がるそうだ

 

「空亡。貴方の体を前調べたのだけど、貴方はどのぐらい体の事、理解してるのかしら?」

 

空亡はそう言われて考えてみたが、自分の体は蛇になるくらいだ。空亡はそう永琳に伝えた。

 

「貴方の体はっていうより種族の事なんだけど、貴方は四分の一が鬼で四分の二が人間残りが妖蛇になっているわ」

「それがどうした」

「最近それの均等が崩れて貴方の寿命が縮む可能性があるわ」

 

寿命が縮む。それを聞いて空亡の顔が強張る。

 

「それを母禮様にも言ったんだけど、それを直してほしいらしいから、薬を作ったわ。これは毎日二回。一週間程で効果が出るからちゃんと飲んでね」

「了解した」

 

その後は紫苑率いる警備隊に別れの挨拶に行ったり、今までを世話になった人に挨拶を交わし、家に戻った。家に戻ると母禮が話をしてきた。

 

「空亡話がある、聞いてくれんか?」

「なんですか、母禮様」

「近いうちにとある最悪が来ると焔狐が予言した。それを迎え撃つ、手伝ってくれんか?」

「良いですよ母禮様」

 

空亡は考える素振りすらなく即答した。少しは考えると思っていた、母禮は呆気にとられた。

 

「母禮様の頼みです。俺はそれを断ることなんて出来ません」

「そうか。ありがとのう空亡。これは素戔嗚にも頼んだ。来るのは三日後。儂を追ってくるだろう。だから一刻も早く村を離れるのじゃ。分かったか?」

「分かりました、母禮様。明日出るんですよね。月夜見様には伝えたんですか?」

「全部ではないが、伝えておいた。素戔嗚に送ってもらうと言う話にしたのじゃ」

 

母禮はそう言うと空亡に、もう一つ頼んできた。

 

「なあ空亡、死なないでくれよ、絶対に」

 

母禮は弱々しく言う。空亡は母禮に微笑みながら言った

 

「母禮様、愚問ですよ。俺は死にません。それでも心配なら、命じてください。俺に死ぬなと」

 

母禮は声を戻し、何時もの調子で言った。

 

「死ぬな空亡。これは絶対だ。死んだら儂が殺すぞ」

「死んだら殺せないですよ、母禮様」

「馬鹿者が。地獄か黄泉に行って、儂が殺すんじゃ」

「そうですか、それは死ねませんね」

 

そう会話していると、焔龍達も聞いていたのか、会話に入って来る。

 

「主……私も……死なないよ……帰ってきて……また……妖怪の山……行こう」

「主殿私達は死ねませんよ。そうしたら主殿に怒られるじゃないですか、怖いから嫌ですよ私は」

 

焔龍は喋るのがやはり苦手なのか、間が開くが何とかそれを伝える。焔狐は冗談の様に笑いながら言った。母禮はそんな二人を見て、笑い出した。

 

「そうじゃお前たち、死んだら怒るからな。あと三日じゃ、各々それまでに準備をしとけよ」

「了解……主」

「了解です主殿!」

「了解しましたよ母禮様」

 

空亡達はそう返事をして、その日は全員で寝た。朝になり出発する時間になった。輝夜達に別れを告げ出発した。

輝夜は昨日のことで別れる決心が付いたのか、もう止める様子は無かった。村から一日程歩き、素戔嗚が探し出した野原に着いた。其処で母禮に素戔嗚が聞いてきた。

 

「母禮姉様ここならいいでしょう、でもこんなに広い場所で、何を迎え撃つんでしょうか?」

「確かに聞いていませんね、母禮様どんな奴なんですか?」

「そう言えば言い忘れていたのじゃ、、儂を殺そうとしているのわ、伊邪那岐の嫁、黄泉の女神、伊邪那美、それが最悪の正体じゃ」

 

伊邪那美、そう聞いた時に素戔嗚から神力が溢れ出す、父を殺した女神を許さない、それが今の素戔嗚の心を支配した。母禮はそんな素戔嗚を、炎の腕で叩き止めた。

 

「何するんだ姉様!伊邪那美は俺が殺さなければ、父様の敵を、姉様を高天原から追い出した原因を、俺が!」

「落ち着け、来るのは明日じゃ。その時やればいい」

「分かった姉様、頭を冷やしてくる」

 

素戔嗚はそう言い、少し離れ刀を振り始めた。空亡は武器の手入れを開始し、焔狐は新しい札の準備を始める。焔狐の術は強力なのが多く発動時間が長いので、焔狐は札の力で術の発動時間を速めている。例えば氷山を作る為には札が三枚いる。空亡の暴走や妖力を漏らさず、時間の流れを遅くする結界は、札が五枚程必要だ。焔龍は特に準備は必要ないので、食事の準備を開始する。

 

「空亡……主……焔狐……出来た」

「もうそんな時間か、ちょっと待ってくれ、あと少しで弓の手入れが終わる」

 

空亡は弓の手入れも終わり、食事を受け取る。素戔嗚達も準備が出来たようで、食事を受け取る。次の日に来ると言われているが、今日になるかもしれないので、何時でも戦闘出来るよう身構えている。結局その日には来ず、夜になり、丑三つ時に近くなると、霧が立ち込めてきた。呻き声が辺りから響く、百足が蜘蛛が蛆が蟋蟀が蟻がゲジが足元を這う、カサカサと。百いや千、それすらも超える数の虫が這い続ける。そして現れたのは、体の大部分が骸で出来ている女だった。女の後ろには、視認できない程の死者の骸が、その近くには妖の大群、地獄のような光景だ。

 

「久しぶりだの母禮。百年ぶりか?」

「そうだな、伊邪那美。百年ぶりだな、死者は揃ったのか?」

「主にやられ百年、死者の数は五千万は超えた。これなら主を殺せる。それだけではない、主に殺された妖達の怨念、利用させてもらうぞ」

 

伊邪那美は周りを見渡すと、空亡に目を付けた。

 

「赤髪の、面白いのう、名はなんてゆう?」

「俺か?宿儺空亡だ」

「空亡か、最近来る死者が減ったのは(うぬ)のせいか。どうじゃ空亡、妾の物にならんか?」

 

伊邪那美は、そう空亡を勧誘した。それだけで母禮は焦る。空亡は戸惑ったが、既に答えは決まっている。

 

「俺は母禮様の物だ、それ以外はあり得ない」

「そうか、なら更に欲しくなった。殺して骸にして妾の物にして忠誠を誓わせよう。死にかけの母禮の前で、それか汝を洗脳するか、どっちがいい?」

 

伊邪那美は愉快に、そして楽しそうに、未来を想像して嗤う。

 

「安心しろ、そんな結末は起こらない、俺が殺すからなぁ伊邪那美ぃぃ!」

 

素戔嗚は雨叢雲剣を抜いて、極大の斬撃を飛ばす。伊邪那美はつまらないそうに腕を振った。それだけで斬撃は消える。

 

「なんじゃ汝は?今、妾の物と話していたのに邪魔するでない。気が散るだろう」

「覚えてないのか!お前が父を殺したときに居た素戔嗚だ」

「なんじゃ、あの塵の息子か。前の妾はよくあんな塵の事、愛してるなんて言えたよなぁ、あんな塵より愛い奴じゃぞ空亡、その力は儂によく似とる。死者を己に内包するなど、まさしく黄泉そのものではないか。さっきから妾の死者が汝に吸収されている」

「は?どういう意味だ!?」

「もしや聞いていないのか?なら教えてやる、その能力は天災を操る能力だろう、妾の中の骸が調べた通りなら。だが見て分かった。その能力はそれだけではない、人の恐怖を具現化する?なら一番の恐怖があるだろう、それは死後を縛られるその恐怖が。何故、今も死者が吸収されているのに、無事なのかは分からないが、それは主の中に死者を集めてできた化け物がいる。そんな感じか」

 

空亡のこの能力のこの力は、母禮ですら気づいていなく、今、伊邪那美に聞かされた。だが空亡にそんなことは関係ない、こいつを倒して母禮達と過ごす。それだけだからだ。

 

「煩い、そんなことはどうでもいい!俺はお前を倒し、母禮様たちと帰る、それだけだ」

「よくぞ言ったのじゃ空亡、倒すぞ此奴を」

 

この母禮の合図でこの戦いは始まる。まずは母禮が動いた

 

「すぐに決める。熱いが我慢しろよ空亡、素戔嗚、

――太・極――

 

随神相――神咒神威・無間焦熱」

 

母禮の女武者が現れ、母禮の手には二振りの刀、此処に焦熱地獄が展開された。続いては素戔嗚

 

「――太・極――

 

随神相――神咒神威・修羅剣神」

 

素戔嗚自身が剣となる。これよりこの身は腕一本ですら斬撃と化す。背中には二つの刀が浮かんでいる。其々の銘は雨叢雲剣と父から継いだ天之尾羽張剣そのものだ。この姿の素戔嗚は、まだ誰にも見せたことがなかった。二人に向かい骸と妖の大群が迫って来る。二人はそれを斬り裂き、燃やす。空亡に向かってきた物は片っ端から大鎌で殺され、空亡に取り込まれる。空亡は伊邪那美に言われてから気付いたが、自分は殺すたびに魂を取り込んでいる。そのたびに力は強く、体は固く、魂はより強固になっていく。空亡に向かい百匹程の妖怪が迫る。空亡はそれに合わせる様に技を使う。

 

「――太・極――

 

随神相――神咒神威・無間叫喚」

 

この技を使い全てを腐敗毒で溶かす。妖怪は一瞬の内に骸となり、魂は空亡に吸収される。次に骸達は数で空亡を押し潰してきた。骸に潰され肉が拉げ、接触した際に腕が捥がれる。それでも大極を発動している空亡は、全てを腐らせ脱出する。しかし傷が治らず意識が朦朧とし始めた。周りを見ると、焔龍や焔狐は各々骸を燃やしている。素戔嗚は骸を細切れにする。そんな中、母禮は伊邪那美と対峙していた。空亡はすぐに其処に向かおうとするが、妖怪や骸に邪魔をされる。

 

「邪魔だ退け!!!」

 

空亡はもう一つの大極を展開する

 

「――太・極――

 

随神相――神咒神威・無間黒縄」

 

停止の水を出し、骸と妖を全て停め触手で一掃する。そして空亡は、今殺した全ての魂を吸収した。母禮の下に着き、伊邪那美と対峙する。

 

「来たのか妾の空亡、あの数の骸を全て殺したとな、褒美をやろう」

 

伊邪那美はそう言い、空亡にありえない速さで近づいた。そいて口を手で固定し口付けを交わす。その行動に母禮達は呆気にとられる。そして貪る様にして、しばらく経つと、ゴキュゴクチュルと音が響く、空亡は苦しみだし胸の辺りを抑える。伊邪那美は口を離す。空亡は倒れる。其処に母禮は急いで駆け寄る。

 

「大丈夫か!?空亡!!?」

 

空亡は吐血を続ける。やっと喋れる様になったのか

 

「主様……彼奴に臓器を……ゴホッ」

 

空亡は又も吐血する。先程より酷くそれで母禮は察す、何が奪われたのかを。

 

「伊邪那岐、お主は……」

 

伊邪那美は口を開く。其処には空亡の臓腑が収まっていた。それを舌で転がしてから噛み砕く。伊邪那美の体が跳ねた。喘ぎ声を上げる

 

「はぁはぁ、そうだ、肝を喰った。旨いぞ、何だこれは?こんな味は知らん、体が回復したぞ、確定した空亡は絶対に妾の物にする」

「伊邪那美!ふざけるな!」

「空亡は今すぐ殺す。主の前で妾の物とする」

 

伊邪那美は死者を集めて創った刀で斬り迫る。母禮達は空亡に走る。一番近くに居た母禮が空亡を庇う、この刀は死に瀕している生者を死に運ぶ刀、生きているものには毒だろう。母禮はそれを直に浴びた。もう瀕死だ。素戔嗚達は怒りで我を忘れ、伊邪那美に攻撃をする。そんな中、母禮は静かな声で空亡に言った。

 

「儂はもう死ぬだろう、治らん。最後にある技を使う、避けるなよ」

 

汝は転生する

 

 

その体は過去となる

 

 

 

人を捨て鬼と為れ

 

 

 

しかし汝の身は蛇でもある

 

 

 

故に言おう汝は新しき種族に転生せよ

 

 

 

その名も鬼蛇、全てを恐怖させる鬼蛇と為れ

 

 

 

――太・極――

 

随神相――神咒神威・鬼蛇転生

 

 

 




このままだと八千文字超えると思ったのであと一話分けます御免なさい。


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第二十五話後編

最後が納得いかなかったんで少し書き直して再投稿


――太・極――

 

随神相――神咒神威・鬼蛇転生

 

そう母禮が唱えると、空亡に炎の塊が襲い掛かる。それは暖かく心地よい。母禮の体が炎となって消えていく。空亡には変化が起きる。角が四本になり伸びる。蛇の鱗が黒く墨の様に体に描かれる妖気が増える。傷も治り、空亡は鬼蛇となった。母禮はそれを見て安心したて、この場には似つかわしくないほどの声で言った。

 

「なあ空亡……今まで……楽しかったぞ……天魔を頼れ……手紙を……渡しておいた」

 

空亡は赤子のように泣き言った。

 

「母禮様ふざけるなよ!死ぬなって言ったのは貴方じゃないか、貴方が死んだら意味がない!何故俺なんかを庇ったんだよ……母様」

「空亡……それは……のう……儂はお主が……好きだった……んじゃよ……好きな奴に……死んでほしく……ないんじゃ」

 

母禮は消えそうに為りながらも、思い伝える。空亡もそれに泣きながら答える。

 

「俺も好きだよ宿儺母禮が!貴方が!貴方が死んだら如何すればいい!?俺たちには貴方しかいないんだよ!」

「それに……約束した……じゃろ皆は……欠けさせない……後一つ頼みが……ある三人で……旅に出よ……それが儂の……最後の……頼み……じゃ」

 

母禮はそう言い微笑みながら火が消える様に消えた。空亡は残った服を抱きしめ泣き続ける。そんな空亡に焔龍達を倒した伊邪那美は宙に浮きながら言った。

 

「母禮は勝手に死んだか、これでは蘇れないだろ、でも空亡に力を受け渡したか、なら空亡を殺し私は蘇り空亡も手に入れる。そうすればいい、聞いているのか?」

 

空亡には何も聞こえない、母禮の記憶が入り込んできている。空亡達に対する思いも分かった。

 

(嗚呼こんな生き方をしていたんだな母禮様は、なあ妖華、伊邪那美を倒そう、魂さえ俺が喰らおう)

(いいよ空亡殺そう彼奴を私たちの母を殺した愚者を力はもう全部許可したよ、後は歌うだけ、いこう)

 

空亡と妖華の思いは一つになる。俺と私の大切なものを殺した者を打倒しよう、我が能力で破滅を呼ぼう、恐怖を刻もう、行こうか。

 

「なあ伊邪那美、俺はお前を殺すよ、そしてその魂は俺が喰らう、今宵ここに来たことを、後悔させてやる」

「「覚悟しろよ」」

 

空亡と妖華は同時に歌う

 

今訪れるは原初の恐怖

 

自然の暴威

 

これに抗うことはできない

 

ただ絶望しろ生を諦めろ

 

地震に砕かれ津波に飲まれ風に裂かれろ

 

星は墜ち怪物は生まれ命を喰らう

 

体現するは最悪の鬼蛇

 

命ある全てその意志のままに悉く終焉を齎そう

 

(グノーティ)訪れる(ヴィズィターレ)原初(アルケー)天災(カタストロフィ)

 

空亡の後ろに色の違う八個の球が浮いている。空亡の角も伸び五本になる。その横に銀髪のどこか母禮の似た少女が現れる。伊邪那美は少女を見て正体を知る。この少女こそが空亡の吸収した魂を喰らっている存在だと。

 

「汝達が妾を殺すだと。笑わせるな。そんなことはありえん」

「そんな事お前に分かるのか?手始めに墜ちろ!」

「墜ちて!」

 

空亡は茶ノ球を体に纏うすると角の色が変わりそのまま腕を振り下げる。空気が押し潰され、伊邪那美を地震の衝撃が襲う。

 

「ぐがぁぁぁぁ!」

 

伊邪那美が地に墜ちる。そのまま空亡は、立ち上がる伊邪那美に、地震をのせて殴る。伊邪那美は飛ばされ、宙に浮く、死者を盾にして、地面に落ちた際の衝撃を殺す。その地点に妖華が構えていた。髪は紅く染まりその体には炎を纏っている。母禮の力と同じだ。妖華は伊邪那美を燃やしたが伊邪那美はすぐに持ち直し怒声を放つ。

 

「妾を舐めるなぁぁぁ!」

 

そのまま伊邪那美は黄泉の瘴気を放つ、それは辺りの木々を殺し、今も倒れている。焔龍達を蝕んだ。空亡は傷を治すことができる妖怪限定だが。己の肉を切り其処から流れた血で怪物を作るそれを焔龍と焔狐は空亡の肉を喰い回復した。

 

「有難う……空亡……主は?」

 

焔龍は、まだ母禮が消えたことに気付いていないが、焔狐は知っていた。母禮が死ぬときにこの術を使うことは知っている、何よりこの術の基礎は自分が作ったからだ。

 

「空亡殿、主殿は貴方に託したのですよね」

「嗚呼そうだ。母禮様の力と記憶は全部継いだ」

「空亡殿今は私達は泣いていられません彼奴を倒しますよ、でも私はもう戦えません、だから」

 

焔狐は力を込めるがもう限界だ、なので最後の力を空亡に託すことにし。伊邪那美はその隙を見逃すはずもなく、槍を出し、投げる。

 

「隙を見せたな空亡!」

 

しかし、それは素戔嗚に阻まれる。

 

「姉様は空亡に託したんだ、なら弟の俺はそれを助けるだけだ!行け空亡」

「素戔嗚任された!」

 

空亡は碧の球を纏う、体を風が覆い辺りに風が吹き始める。伊邪那美は瘴気を出し空亡を飲み込もうとする。が空亡は風を使い全て上に飛ばし、そのまま暴風で攻撃した。伊邪那美は風に飲み込まれ体のあらゆる場所が切り刻まれる。空亡はマクロバーストを発生させて伊邪那美を地面に叩きつける。伊邪那美の骨が悲鳴を上げるギシリと、体の大半が骨でできている伊邪那美は、今の出致命傷だ。だがこれでも伊邪那美は倒れない。伊邪那美は瀕死ながらも叫ぶ。

 

「黄泉の魑魅魍魎よ妾が命ず、妾に仇なす愚者を殺せ!」

 

その声合わせ伊邪那美の周りに四つの鳥居が現れる。其処から悍ましい数の不定形な物が現れる。それは命あるもの全てを恨む怨念その物、生きているものは触れるだけで黄泉へ誘われる。だが空亡には相性が悪かった。空亡は己の腕を捥ぐ、腕を持ちそこから血を垂らす血の一滴一滴が全て怪物となる。その怪物は、人型や、獣型、空亡に殺された妖怪や、赤い骸の大群となる。新しい空亡に創り出せれたことの喜びで、歓喜の叫びをあげる。今は自分達の主、空亡の敵を殺しに行く、この怪物たちに恐怖は無い、死んでも空亡に回帰するからだ。また生み出せれ、主の命を遂行する。魑魅魍魎と怪物の大群が激突した。次々と両者の数は減っていく、その間も空亡は伊邪那美を殺そうと、大鎌を振るう、瀕死の伊邪那美は何とか避ける。ついに攻撃が当たる。空亡は決めていた最後はこの技で決めると。

 

「妖華決めるぞ、声で最後だ!」

「分かったいくよ!」

 

二人は最愛の人の技を使う、これは母禮の奥義、母禮の空亡達をの敵を燃やし雷の様に前を走る。という渇望の技、それは空亡に託された、今それを使う

 

かれその神避りたまひし伊耶那美は

 

体が炎に転じ、雷がほとばしる

 

 

出雲の国と伯伎の国 その堺なる比婆の山に葬めまつりき

 

一言唄う度に力が増す。

 

 

ここに伊耶那岐

 

 

その身に鎧が装着される。

 

 

御佩せる十拳剣を抜きて

 

母禮の声が聞こえた。

 

「決めるのじゃ空亡!」

 

 

その子迦具土の頚を斬りたまひき

 

 

――太・極――

 

 

随神相――神咒神威・無間焦熱

 

大鎌が二本に増え雷と炎を纏っている。その二振りで十字に伊邪那美を両断する。母禮ノ神殺しの焔雷神の雷を同時に受け伊邪那美は倒れた。伊邪那美が倒れたことにより魑魅魍魎はすべて消えた、空亡の怪物たちも勝利の叫びをあげ消えていった。空亡は一言漏らす。

 

「終わりました母禮様、でも!此処に貴方がいなければ意味ないじゃ無いですか!」

 

空亡は静かに涙を流すそこに焔龍、焔狐、素戔嗚が駆け寄ってくる。

 

「空亡終わったな……泣いているのか?」

「素戔嗚、虚しいんだ何時も此処には、母禮様がいたのに」

 

それを聞いて焔龍達は泣き出した、

 

「空亡……主は……母禮は……最後どう……だったの?」

 

焔龍は泣きながら空亡に聞いてきた。空亡は思い出したのか、また泣かないように、我慢しながら言った。

 

「満足そうに笑いながら逝ったよ母禮様は」

「最後まで主殿らしいですね、あれ?涙が止まりません私は泣いちゃダメなのに」

「いいんだ焔狐泣いて、いいんだよ」

「いいんですか我慢しなくて」

 

焔狐はもう限界だった子供の様にん泣き出した

 

「みんなで帰るって言ったじゃないですか!なんであなたが死ぬんですか私が死ねばよかったのに!ああぁぁぁぁ」

 

焔狐は我慢してたものが崩壊した。素戔嗚は悲しいが、ここに自分は場違いだと感じ、静かに涙を堪え去って行った。三人で泣き続け、泣き止んだら空亡が話し始めた。

 

「母禮様は、天魔様に手紙を渡したと言った。読みに行くぞ」

「分かりました空亡殿、行きましよう」

「うん……空亡……行こう」

 

空亡達は母禮の衣服を持ち妖怪の山に転移する。天魔の元に転移したので驚かれたがすぐに天魔は状況を理解した

 

「少し待ってろお前たち」

 

天魔は部屋の奥に行き一枚の手紙を持ってきた。

 

「空亡読んでみろ」

「分かりました天魔様」

 

空亡は息をのむ、そして手紙を読み始めた。

 

「拝啓、空亡達へこの手紙を読んでいるという事は儂は死んだんだろう、手紙の書き方ってこれで合ってるかのうあまり書かんのでわからんのじゃが、まあ本題に入ろう、空亡儂はお主が好きなんじゃと思う、お前と居ると楽しい、もちろん焔龍達もじゃぞ、そしてお主らに頼みがある世界をみろ、お主達はずっと儂と居たからなあまり外を知らんだろう、それが頼みじゃ、そしてお主らと居れて楽しかったぞ、儂はお主達が大好きじゃ、ここまで書いて吹っ切れた。できればこの手紙は、見られないようにしないとな、恥ずかしいし、最後はもし生きていた時の儂のためじゃ」

 

 

空亡が手紙を読んだあまり上手く纏まってないが何故だか涙があふれた。周りを見ると焔龍達も泣いており手紙も濡れていた。そして天魔が聞いてきた。

 

「旅に出るのか空亡?」

「嗚呼そうする。母禮様の最後の頼みだからな、焔龍達もいいか」

「いいよ……空亡」

「良いです空亡殿」

 

二人の答えは一緒だ。母禮の頼みを聞かなければいけない。

 

「空亡達百年程山で休まないか?いや休んだ方がいい、今の状態だと何時心が折れるか、分からないからな」

 

空亡は少し考えそうなる。かもしれないと考え、その提案を受けることにした。母禮の屋敷に行き三人は今日の疲れを癒す為倒れる様に寝た。次の日になり天魔に呼び出され。母禮の墓を作った。それを昔、椛と見つけた滝が見える崖へ埋めた。そして空亡は母禮の墓に喋りかけた

 

「母禮様、此処は俺と椛しか知りません。次は何時になるかわかりませんが、また焔龍達ときます。いまま本当に有難うございました!」

 

空亡は墓を見ると、墓の上に母禮が座っている気がした。それを見て空亡はまた泣き出してしまう。そして空亡は其処から去って行った。この誰もいない場所に声が響く。

 

「空亡儂は戻って来るぞ、空亡。それまでは、さよならじゃ」

 

 

 

 

 

  東方鬼蛇伝  第一章  鬼蛇誕生 完

 

 

 




一章完結次は二章です。今週中に書きますのでお待ちください。一章まで感想や評価がありましたらどうかお願いします


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人物紹介

合計で三十話目なので丁度いいから、空亡達の紹介。


名前・宿儺(すくな)空亡(くうぼう)

 

種族・元人間の鬼蛇 性別・男 

 

能力・【自然災害を起こし操る程度の能力】〔???】

 

自然災害の地震、噴火、津波、暴風、落雷、吹雪、隕石、生物の異常発生、そして蛇骨から混ざった腐食。それらに関係あるものを起こしたり操ったりできる。分かりやすく言うと、人が恐怖し災害と名付けたものは基本使える

それに加え人の恐怖がもとになっているので、生き物の死後を自分の中に閉じ込めることができる。そしてこの能力はとある場所に繋がっている

 

見た目・天魔夜刀に四本の角を生やし、体に黒い蛇の這ったような畦がある。

 

使える技一覧・無間焦熱、この技は元は母禮の空亡達の敵を燃やし雷の様に前を走り続ける。とゆう渇望からできた技を受け継いだ。効果は強力な炎と雷を操るで、だが一般的な雷と炎と違い水で消えることはないし金属に引き寄せられたりもしない。その炎はその名の通り地獄の熱であり。発動と共に現れる女武者の一振りは国すら焼き尽くすだろう。

無間黒縄・空亡のこの時間を停止させ永遠に仲間と共に居たいとゆう渇望がもととなっている。効果は水に触れた者を停止させその間に巫女が押しつぶすそれが主な戦法だ。対策は水に触れないで遠距離で攻撃するか、力で捻じ伏せ無理やり動くそれだけだ。

無間叫喚・もとは蛇骨の渇望だがその能力の人格が空亡に宿ったことにより使える様になった。効果は己そのものを腐敗毒と化して視線や呼吸までもが腐敗毒を含む、基本は鎧武者を出しより広範囲を腐らせるとゆうものだが空亡は鎧武者を自分に纏い、集団を相手する問いに使う。

(グノーティ)訪れる(ヴィズィターレ)原初(アルケー)天災(カタストロフィ)・空亡の渇望っ最愛の者を殺した。愚者を、その体一片残さず、滅し魂を喰らう、と渇望が元になっている。効果は自分が使える能力を身に纏いその力を限界以上に発揮する。

 

キャラ説明・蛇骨に呪われ人間に恐怖され親から忌み子として捨てられ、蛇骨の苗床となるはずだったが母禮に拾われて、育っていく、輝夜との出会いや、椛達の優しさに触れ、他人を知ろうとする。伊邪那美との戦闘で母禮に力を託され、新たな種族の鬼蛇となる。

 

 

名前・宿儺(すくな)母禮(もれい)

 

種族・鬼神 性別・女 

 

能力・【この世ありとあらゆる炎と雷を操る程度の能力】

 

見た目・天魔母禮に二本の角を生やして黒髪にした姿

 

使える技一覧・無間焦熱、空亡の説明と同じ

 

キャラ説明・火之迦具土神から生まれた鬼、生まれた瞬間から神殺しの炎を持つ、伊邪那美襲来の罪を着せられ、高天原を追い出されるその後何千年か好き放題に生き殺しに来た神を返り討ちにして殺していると。いつの間にか神仏の敵とゆう二つ名が付いた。焔龍、焔狐の噂を聞いて式にした。その後空亡を拾い最初は食料として見ていたが、牛鬼の際の力を見て本格的に育てることを誓う、十数年一緒に暮らし空亡に好意を寄せる。死ぬ直前に気付き空亡に伝え空亡もそれに答えた。最後に鬼蛇転生を使い自分の技術力を空亡に託し穏やかに逝った。

 

名前・焔龍(えんりゅう)

 

種族・龍 性別・女 

 

能力・【炎を生み出す程度の能力】

 

見た目・凶月咲耶に龍の角を生やした姿に紅い髪

 

キャラ説明・龍の死体が焼かれた際、その死体から生まれた龍。強力な妖気を持って生まれ、その力を妬んだ妖怪に毎日命を狙われた。その時勝負を仕掛けてきた母禮に負けて式となった。空亡と自分を、出会った当時重ね世話を焼こうとしたが、空亡を命を救われ惚れた。

 

名前・焔狐(えんこ)

 

種族・十尾の天狐 性別・女 

 

能力・【術を操る程度の能力】

 

見た目・久雅竜胆に狐の耳と尻尾を生やし紅い髪の姿

 

キャラ説明・元はただの妖狐だったが数千年生き力を増していった。ある時から自分より強い存在を探し旅をする。五行ノ髪を喰ら今の能力を得る。母禮と出会い勝負を仕掛け式となった。仲間思い。

 

 

 

 

 




だんだん説明が少なくなっているけど気のせい。他のキャラはまた後日


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第二章諏訪大戦
第二十六話


第2章スタート


百年程の時が経った。空亡も妖怪の体にも慣れてきた。しかし百年経っても母禮が死んだことを割り切れていなかった。時々空亡達は一つ分多く料理を用意してしまうこともある。今日も空亡は母禮の墓に参りに行く。

母禮の墓はとても大事にされており、よく天魔や椛に文。母禮に世話になった妖怪が来ている。そんな場所に空亡は五年間隔で来ていた。来ると母禮の墓に人里から買っていた酒などを供えている。

 

「母禮様、もうすぐ旅立ちます。俺達を見守ってください」

 

空亡は百年の間、経造と戦い続けたり、天狗の中で、天魔の次に速い、文と競ったりなどの、日々を過ごしていた。焔龍はもう空亡達をに遅れないようにと、天魔に弟子入りした。焔狐は術の種類を増やし、九尾を超え十尾と為った。空亡が墓から帰ろうとすると。足音が聞こえた。その方を見ると、椛が現れた。椛は空亡を見るなり言ってきた。

 

「やはり此処に居ましたか、空亡」

「椛か、何の用だ?」

「なんの用って、空亡達そろそろ旅に出るんですよね。焔龍さん達は、準備できてますよ」

「もうそんな時間か、ありがとな椛」

 

空亡は椛に微笑んで、礼を言った。ここ何十年かは空亡は強くなるのに必死であまり笑わなくて、空亡が笑ったことが嬉しいのか、椛は機嫌がよくなり耳を揺らしながら

 

「仕方ないですね早く行きますよ」

「行こうか」

 

空亡は墓を離れ椛と共に屋敷に帰る。帰る途中に椛は、話を始めた。

 

「でも百年前は驚きましたよ、いきなり帰ってきたと思ったら妖怪になっていて、それに母禮様は居なくて、空亡が毎日辛気臭そうにしていて、私も辛かったんですからね、それに何かに憑りつかれたように経造さんと戦って強さを求めて」

 

椛は百年前の事を語るそれに空亡は顔を搔いて言った

 

「あの時は母禮様がなくなって俺は、何時も考えていたなんで母禮様に庇われたんだろうってそれで強さを求めた、まあそれで寝ずに一年間近く鍛錬してたら、椛に怒られたからなあれは怖かったぞ本当に」

「あれですか私も言いすぎましたが空亡も悪いんですよ」

 

空亡は、あの時の事を思い出した。母禮が死んで半年間、毎日の様に能力を限界まで使い、そのあと経造に無理を言って鍛錬に付きあって貰った。経造や焔龍達の前では、寝たふりをして、夜になると抜け出し、ずっと大鎌を使い人型達と戦っていた。人型達は渋ったがそれが空亡の命ならばと従った。そして行われるれるのは殺し合い、人型達は空亡を殺す力で、空亡はそれまでに体を酷使し続けていた為、死に掛ける事も多々あった。自分でも何故狂わなかったのか不思議でならない、そんなある日椛に見つかった。

 

 

 

 

 

 

 

今日も殺し合いを続けた。腕はほぼ動かなないもう何日寝ていないだろうか半年辺りからわからなくなった。焔龍達の食事を作んないと、母禮様がい居ない分、頑張らないといけないのに俺が、やばい意識が保てないもう無理だ。そして俺の意識はそこで落ちた。倒れる時に視界の端に見覚えのある白髪を見た気がする。

椛は焦っていた。眠れなくて困っていたら。遠くから金属がぶつかる音が聞こえ、敵襲かと思って行ってみたら、空亡が人型の怪物と殺しあっていた。止めようと思ったが空亡の頭がおかしくなるほどの殺気を受け動けなくなっていた。殺し合いが終わり空亡が不意に倒れた、急いで空亡を担いで、屋敷に向かう。屋敷に付き急い扉を開ける。その音で焔龍達は起きる。そして何事かと急いでやって来た。空亡を見て焔龍は慌てて言った。

 

「椛!何があったの!?」

 

ここ一年間落ち込んでいた焔龍は久しぶりに大声を出し取り乱している。椛にもそんなこと分からない、自分にも分からないことを聞かれても困るのだ。

 

「私にも分かりませんよ!そんなことはいいから早く部屋に運んでください!」

「了解しました椛殿!」

 

そして焔狐は慌てながらも空亡を受け取り部屋の運ぶ、空亡は一週間目を覚まさまなかった。焔龍達は毎日看病したが意味はなく無意味に終わった。それから更にに一週間空亡は目覚めた。空亡に椛は問いただす。

 

「空亡!何をしてるんですか!私たちは心配したんですよ!」

 

空亡は、それを無視して、外へ行こうとしていた。椛はそれで更に怒る。空亡を引っ叩き無理やりと止める。それに焔龍達は唖然となった。そのまま空亡に捲し立てる

 

「行かせませんよ!空亡貴方は何やってるんですか!焔龍達に心配かけて、ふざけてるんですか!」

「もっ椛?」

 

空亡は椛の今まで見たことない剣幕に思わず後ずさる。それを逃亡と勘違いしたのか引き寄せて。

 

「何してたか言ってください!今すぐ」

 

空亡は勘弁して白状し始めた。

 

「えっと、能力で人型達と作って殺しあってた」

 

それを聞いて椛は更に怒りだした。空亡を引き寄せて腹を殴る。空亡はそれで腹を抑える。

 

「空亡貴方ふざけていますよね!何故そんな事したのか私には分かりませんんよ、でも貴方は母禮様に焔龍達を任せれたんでしょう!なら死のうとしないでくださいよ……」

 

椛はそう言い泣き出してしまった。それに空亡は溜まっていたものを吐き出した。

 

「椛、お前に何が分かるんだ!俺は強くならなきゃいけないんだ!焔龍達を守れるように、強くならなきゃ。だから邪魔をするな!」

 

空亡は自分を追いつめていた。母禮の代わりに焔龍達を守らないといけない。そんな母禮の渇望に憑りつかれていた。自分は強くならなければならないのに。そんな空亡に椛は泣きながら、掠れた声で言った。

 

「分かりませんよ、そんなの。それなら尚更死のうとしないでください。死んだら何も守れないんですよ。それに焔龍さん達も弱くないんですよ。それに貴方が死んだら、焔龍さん達貴方を追いますよ。それじゃ意味がありません。何より私は貴方に死んで欲しくない。貴方が好きだから!優しい貴方を愛したから。だから死に急がないでください空亡」

 

椛はそう告白して、空亡の唇を奪った。焔龍達はさっきまで泣いていた椛がいきなり空亡に口づけをしたことで混乱する

 

「椛殿何してるんですか!?」

 

椛は空亡から口を離す空亡はそのことに混乱する。

 

「椛何する」

 

空亡はまた口をふさがれるそして時間が経ち。椛は口を離す。

 

「落ち着きましたか空亡」

「それはこっちの台詞だ椛、何するんだ」

 

空亡は状況がいまいち飲み込めない、椛はそのまま空亡に言う。

 

「空亡ともか死のうとしないでください、強くなりたいなら私が付きあいます」

「もうわかったよ椛、もうやんないから許してくれ」

「分かりました約束ですよ」

 

そこまで言うと椛は気付いてしまった今自分は告白したのだとそして焔龍達が居ることに、瞬間的に顔が赤くなる。そして空亡に慌てて言いだした。

 

「空亡今すぐ忘れてください、恥ずかしいですから、それに私何してるんでしょうか」

 

椛は自分のやったことを思い出す更に顔が赤くなった。空亡は椛に照れながら言った。

 

「えっと椛、多分忘れられない、それとごめん俺は告白の答えが出せない」

「そうですか仕方ありませんね、このことは保留にしましょう何時かまたちゃんとしますよ」

 

 

 

 

 

 

空亡は思い出したら顔が赤くなった。椛も同様に顔が赤くなっている思い出したのだろうか。空亡は話を切りだし難かったが何とか、何とか話を始めた。

 

「なあ椛俺は母禮様が好きだ。これは変わらない、だからごめん」

「そんなこと知ってますよ、だからここに宣言しましょう。私は貴方を振り向かせます。時間をかけてでも」

「やってみろ椛」

 

其処に空から声が聞こえる。文の声だ。

 

「あややや、いい記事が書けそうですよ、見出しは宿儺空亡、椛に勝負宣言!こんな感じでいいですかね」

「文様?」

 

椛は低い声でそう言った。文は冷や汗をかき始めた。そして椛は文に低い声のまま聞いた。

 

「文様いつから見ていたんですか?」

「椛冗談ですよ、やだなー私がそんな事するわけないじゃないですか、だから剣を下してくださいお願いします」

「空亡ちょっと用事が出居ました。文様行きますよ」

「空亡お姉ちゃんを助け」

 

文はそれを最後に椛に連れられどこかに行った。空亡は屋敷に帰る。着くと焔龍達は準備が完了していて。

 

「空亡……遅いよ……もう……出るよ」

「空亡殿主殿に挨拶を済ませましたよねもう天魔殿に挨拶をしました行きますよ」

「分かった皆行くか」

 

空亡達はそう言って山を下りた

 




二章はスタートです。これからもよろしくお願いします。文さんに何があったのかはご想像にお任せします。


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第二十七話

今回は新キャラを二人追加


空亡達は山を下りた。そして最初は、月夜見の村に向かうことに決めた。空亡達は月夜見達が月に行った。あとあそこはどうなっているか気になるからだ。此処からだと2日は掛かる気長に行くことにした。この景色は百年ぶりだあまり変わってはいない。少し歩くと焔龍が話しかけてきた。

 

「ねえ……空亡……月夜見……達は……どうしてる……かな?」

「月にいるんだろ、まあ皆なら元気にしてるだろう」

「そうだね」

 

空亡達はそのまま三日歩き村のあった場所の近くに付く、空亡は二人に注意する。

 

「二人とも耳とか隠しておけよ」

「もう隠していますよ空亡殿、貴方こそ主殿からもらった布を、取らないようにしてくださいよ」

「分かっている。取らないぞ」

 

空亡はそう言い腕に巻いている布を見せる。村に着いた村は別の村に代わっており全く知らない人達が居た。村の門に着く、門番に旅の物だと伝えると迎えてくれた。門番は空亡達に言った。

 

「一つ頼みがあります。旅の方、村長に挨拶してさい」

「了解した。だが何故だ?」

「あの人はもう歳ですが、ある能力があります。それでこの村に来た人を確認してるんですよ」

「分かった案内してくれ」

 

空亡達はそのままもう一人の門番に案内され、村長の家に着くこの場所は月夜見の屋敷だった場所だ。村長の部屋に着き門番が戸を叩く、

 

「清太様、旅人です」

「入れ」

「入ってください旅の方」

 

空亡達はそう言われ部屋に入る。村長は空亡を見ると目を見開いた。村長は動揺を見せない様に聞いた。

 

「旅の人一つ聞くが名は?」

「宿儺空亡」

「やはり、覚えていますか空亡さん、よく遊んで貰った清太ですよ」

 

清太この名前は覚えている。村にいた時、よく自分を他の子供と一緒に誘ってきた子供だ。

 

「あの清太か、歳をとったな」

「そう言う空亡さんは、まったく変わってませんね」

「俺はもう妖怪になったからな」

「そういえば、空亡さんは半妖でしたね、母禮様もいるんですか?見えませんが」

 

清太には肌を見られている。蛇の鱗があった時の肌を見て、一時期恐れていたが、いつも優しくしていてくれていたからって吹っ切れたらしく、それまでと変わらず接してくれたことを覚えている。

 

「お前は知っているんだったな、そして母禮様は遠くを旅している……」

 

空亡はそう悲しそうに言う。だがそんな空亡の様子に気付かないで、清太は残念そうに言った。

 

「そうなのですか?私も会いたかったのですが」

 

空亡は一つ清太に聞きたいことがあった。それは何故清太が村長なのか、月夜見達どうしているのかを。そのまま空亡は聞いてみると。

 

「私の父がこの地に残るって言って、聞かなくてですね。それで私も残り村に残っていた十人ぐらいで、村を支えていたら徐々に村に人が集まってきて、最初は父が村長やっていたんですけど、父が亡くなって、その子供の私が村を預かったんですよ、月夜見様はどうなんでしょうね、元気だといいですが」

 

清太はそう空亡に伝えた。空亡は月に行かなかった人間がいたとは驚いた。そして輝夜達は無事いに月に行ったんだと安心した。

 

「そうか輝夜達は無事に着いたのか」

「たぶんそうでしょう八意様の設計した乗り物ですからね」

「ありがとうな清太もう俺たちは次の村に行くよ」

「そうですか……次空亡さんがこの村に来た時は、多分私は死んでいるかもしれません、その時は墓でも見に来てください」

 

清太と最後にそう会話して、空亡達は別れ村から旅立った。村からまた歩き続け空亡は焔龍達に聞いた。

 

「なあ次は何処へ向かおうか?」

「そうですね空亡殿、情報収集しましょうか、近くに茶屋がありますよ」

「それが……いいと思う……空亡」

 

空亡達は近くの休みついでに何かないか聞くことにした。茶屋の主人に団子とお茶を出してもらい話を聞いてみた。主人は何かないか考えてみるとあることを思い出す。

 

「近々守谷の国で祭事があるんですよ。それに行ってはどうですか?」

「諏訪の国、何処にあるんだ?」

「此処から十五日程歩いたありますよ、その途中に村があるので休むこともできます」

 

主人にお金を渡し空亡達は歩みを続けた。二日歩き続け、流石に疲れたのか空亡達は野宿することにした。食事も終え夜になった。焔龍達は体が炎なので、基本だ寒さに強い、空亡は半分は鬼だが、もう半分は蛇なので母禮から受け継いだ力で、体を炎にして夜を凌いだ。次の日になり村まで歩く、村に着くと慌ただしい様子だった。村に入り、何事かと聞くと。

 

「慌てているが何があったんだ?」

「旅の人か!?あんた腕は立つか?それなら助けてくれ!」

 

村人は慌てた様子で、空亡に頼み込んできた。空亡は一先ず落ち着かせ話を聞いた。

 

「落ち着いたか?ならゆっくり話してくれ」

「すまねぇ、ここ最近宵闇の妖怪の活動が活発になってきていてな、そのせいでこの村に被害が及び、ここ一週間で、五十人程喰われているんだ。討伐対や陰陽師を雇ったが、すべて殺され喰われているんだ」

 

それを聞き空亡は、その宵闇の妖怪が気になった。一週間でその数は異常だし陰陽師を殺すほどの実力はいい相手になるかもしれな。

 

「その妖怪気になるな焔龍達もどうだ」

「気になりますね空亡殿、昔その名を聞いたことある気がしますし、焔龍殿もどうですか?」

「会ってみよう……それに……母禮の……知り合い……かもしれない」

「そうなのか?ならなおさら、会ってみたいな」

 

空亡は焔龍達にそう言われ、自分の知らない母禮の話は聞けるかもしれない、そう決定しこの話を受けるした。

 

「この話任せてくれんか、腕は立つつもりだ。」

「はい私も、ある程度、陰陽術を使えますし、焔龍殿は弓を使えます」

「遠距離は……任せて」

「そうかなら助かる。このご時世旅に出る奴らなんて、余程腕が経つか、物好きだろうし、大丈夫だろう」

 

空亡はそう言われ、宵闇の妖怪は夜の森に出るらしいから、それまで休ませて貰った。空亡は妖華達呼ばれたので、夜までに間寝ることにした。空亡の視界は落ちいつもの花畑に着く其処には成長した妖華と恵理と、見知らぬ二人女が増えていた、一人は巫女服着ており先程から手を顔に当て笑っている。でもう一人は鎧で固めていてさっきから拳を振り続けている

 

「妖華一つ聞くが、呼んだ理由はこれか」

「うんそうだよー、魂がかなり伊邪那美のお蔭で溜まったから、二人増やしておいたよ、ほら二人とも挨拶してー」

 

妖華にそう言われ鎧で固めた女が最初に話しかけてきた。

 

「私は大獄この中では新参者だがよろしく頼む、お前の地震の力だ。よく使うだろう」

 

大獄はそう簡潔に自己紹介をした。次に巫女服の女がぬるりと近づいてきて、空亡の手を取り、いきなり言った

 

「旦那様」

「は?」

 

空亡は開幕早々そう言われ混乱した。

 

「旦那様(わたくし)奴奈比売(ぬまひめ)と申しますわ。旦那様の津波の力ですの。以後末永くよろしくお願いしますわ」

「旦那様って、は?」

 

再度いうが空亡は混乱している。それを無視して奴奈比売は続ける。

 

「それにしてもやっと会えましたわ、この香り、感覚夢にまで見てましたの、やっと私に会いに来てくれたのですわね、妖華さんが中々合わせてくれなくて、でもこれで壁はありませんの。さあ旦那様、奥の方で交わりましょう」

 

奴奈比売は触手を出し空亡を奥に連れて行こうとする。空亡は混乱したまま、為す術もなく連れてかれる。空亡我に返り抵抗しようとするが、奴奈比売の能力停止のせいで動けない。この状況で理解する。この女達は自分の大極の能力を使えるのだと。空亡は焦る奴奈比売も不味いが、大獄の地震は自分で禁止した技で危険すぎる。現実逃避は此処までにして、空亡現実を見ることにした奴奈比売に拘束され服を脱がされる。

 

「さあ旦那様一つになりましょう」

「いや辞めろよ頼むから」

「大丈夫ですよ、他の女達は停止させました。さあ私達の愛を見せつけましょう!」

「愛も何も、初対面なんだが」

 

空亡は事実を言った。奴奈比売はそれを無視したまま更にテンションが上がっていく。

 

「そんな事関係ありませんわ、今すぐ交わりましょう!さあ!早く!」

 

そう奴奈比売は言った。後ろから殺気を感じる。後ろを向くと大獄が動けるようになっていた。大獄は殺気を纏いながら言った。

 

「おい奴奈比売私の戦友に何している?返答次第では粉砕するぞ」

「ちっ!貴方にはやはり通用しませんか、いいですわ、今ここで決着をつけましょう」

「良いだろう戦友に私の力を見せるのに丁度いい」

「言ってくれますわねこの根暗!勝つのは私です!」

 

 

そう言うと二人から妖力が溢れ出。そして二人は技を叫ぶ

 

『――太・極―― 』

「随神相――神咒神威・無間黒縄地獄!」

「随神相――神咒神威・無間黒肚処地獄(こくとしょじごく)

 

二人がそう言うと奴奈比売の後ろからは津波が、大獄は鎧が消え、軽装になり、籠手がより攻撃的に変化する。

 

津波と触手が大獄に迫る。大獄は拳を構え振りぬく、すると津波と触手は全て消え無くなる、そのまま奴奈比売に殴りかかろうとする所で、

 

「随神相――神咒神威・無間焦熱」

 

そう聞こえ炎が大獄に迫る。大獄はそれを拳一つで消すが、籠手に罅が入る。

 

「何をする妖華もう少しで粉砕出来たはずだ」

「この馬鹿殺しちだめだしょー当ててたら奴奈比売死んでたよー」

「すまない悪かった」

 

大獄は自分の失態に気付き謝った。奴奈比売は冷や汗を流しながら言った。

 

「危なかったですわ、これだから野蛮で根暗な、大獄は困りますわ」

「其処ー挑発しないーそうだ空亡もう夜だよ起てね、焔龍が起こしているよ」

「分かったまあこれからよろしくな、大獄、奴奈比売」

 

空亡はそう言い名前を呼ぶ、奴奈比売はそれを聞いて笑いだす。ふふふと、大獄は照れたのかそっぽを向き言った。

 

「また来い戦友歓迎する」

「ふふふふふ、やっぱり私と旦那様は相思相愛!次会った時こそ交わりましょう」

「またな皆」

 

空亡の意識はそれを最後に現実に戻る。最初に目にしたのは自分を揺さぶっていた焔龍だった。焔龍は空亡に聞いた。

 

「魘されて……いたけど……大丈夫?」

「えっと焔龍俺の中の、精神世界が賑やかになった」

「そう……なんだ」

 

焔龍と会話して空亡達は森に向かう。

 

 

 




微ヤンデレお嬢様キャラと大獄はどうでしたか?良ければ感想ください。

そして大獄の能力説明

随神相――神咒神威・無間黒肚処地獄・この力は拳を当てると、地震を叩き込み相手を粉砕する。それは物理破壊のみならず、僅かでも歴史という時間が流れた概念総てに及び術式までも破壊し、現象さえも粉砕する。簡単に言うと、ご都合主義パンチ


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人物紹介2

今回は空亡の大極に宿る少女達の紹介、丁度災害系の少女は出を終わったから。それと息抜き


名前・妖華

 

種族・能力人格 性別・女 

 

能力・【自然災害を起こし操る程度の能力】

 

空亡の中に、一番最初に生まれた能力人格。母禮の妖気から生まれた。担当する能力は、暴風、落雷、噴火、怪物生成を担当している。暴風は自分が使いやすいって理由と、噴火、落雷は母禮から受け継いだ力なので、他の誰かに渡したくないと。怪物生成は魂の数は足りるが、何かしっくりこない為、まだ作ってはいない。基本優しい性格口調は天照と似ている感じ。空亡の能力が覚醒した時の成長した。

 

 

名前・恵理

 

種族・能力人格 性別・女 

 

能力・【自然災害を起こし操る程度の能力】

 

 

蛇骨に宿っていた能力人格。蛇骨のことを嫌っていた蛇骨が空亡から消えた時の妖華に取り込まれたが。妖華が今まで貯めた魂を集めて再誕させた。口調は我だが、蛇骨と被るので、私と口調を変えようとして、丁寧になるようにですを付けたが、戦闘になると無意識に我に戻ってしまう。担当は腐毒、使える技は、大極・無間叫喚地獄。効果は人物紹介に書いてあるのと同じ。

 

 

 

名前・奴奈比売

 

種族・能力人格 性別・女 

 

能力・【自然災害を起こし操る程度の能力】

 

見た目・ピンクの髪に青い目巫女服を着ている

 

 

伊邪那美を殺して貯蔵した魂で新しく生まれた。元になったのは渇望は、この時間を停止させ永遠に仲間と共に居たい、から作られている担当は津波、技は、大極・無間黒縄地獄、効果は停止の水と巨大な触手、この触手は触手は細分化できるので、腕そのものを増やし、何十、何百という触手で、相手を掴み、捕縛することもできる。触手圧は凄く、山すらも潰すだろう。口調hお嬢様風、性格は微ヤンデレ、理由は渇望が少し病んでいるので。空亡の事を旦那様と呼ぶ。

 

 

 

名前・大獄

 

種族・能力人格 性別・女 

 

能力・【自然災害を起こし操る程度の能力】

 

見た目・黒い髪に紫色の目、天魔大獄の鎧、兜は基本装備しない。

 

 

奴奈比売とは同時期に生まれらた。元になった渇望は、自分母禮に仇なす森羅万象を悉く粉砕したい。担当は地震技は、黒肚処地獄、効果は、この力は拳を当てると、地震を叩き込み相手を粉砕する。それは物理破壊のみならず、僅かでも歴史という時間が流れた概念総てに及び術式までも破壊し、現象さえも粉砕する。この技を使うと大獄の鎧が消え、軽装になり籠手が攻撃的になる。だがこの技の属性は粉砕であり、空亡の渇望を叶えるために腕だけではなく、体に触れるだけであらゆる物を粉砕する。一人称は私、基本的に冷静な性格、空亡の事は戦友と呼び、よく自分のことを使ってくれていた内心は喜んでいる。空亡が使うと大獄の鎧がそのまま装備され、鎧が壊れると……

 

 

此処からは紫苑たちのの紹介、

 

名前・出雲紫苑

 

種族・月人 性別・男 

 

能力・【武器を増やす程度の能力】

 

見た目・fateのランサー

 

 

月夜見の部下で、出雲皐月の父親、月夜見部下の中で最速最強の実力を持つ。本編では能力を使わなかった。この能力は多数戦で真価を発揮する。槍投げてそれを増やして広範囲の敵を殺す。あの時母禮の回復を阻害した槍は数多の妖怪を殺し怨念を吸って。その怨念が仲間を増やすために不治の呪いを傷つけた相手にかける。

 

 

名前・出雲皐月

 

種族・月人 性別・女 

 

能力・【限界をなくす程度の能力】

 

輝夜の従者、幼馴染で基本一緒に居る。一人称は僕で、誰にでもさんとつける。能力は速さの限界をなくし速くなったっり出来る。空亡の事は友達だと思っており空亡が二年間滞在していた時もよく子供たちと一緒に遊んだ。

 

 

名前・射命丸経造

 

種族・鴉天狗 性別・男 

 

能力・【武器を使う程度の能力】

 

 

射命丸文の父親で、空亡の師匠、元警備隊の隊長であり、今は椛に任せている。能力は武器の力を限界以上に使い初めてみる武器でもすぐに使い方を理解できる。

 

 

名前・天魔

 

種族・天魔 性別・女

 

能力・【治す程度の能力】【塵に返す程度の能力】

 

母禮の古い友人、最初の頃は敵対しており、よく殺しあったが、ある時自分を殺そうとした神を、殺すのを手伝ってくれた時から仲良くなった。能力は自分の下に天狗が集まってきててそれが、死んだり病気になったりしない為に身に着けた。元の能力だと触ってだけであらゆるものを塵に返す

 

 

 

 

 




少し疲れたので、二日程休ませてください。


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第二十八話

俺復活!


空亡達は夜の森に向かう。森の夜道には所々に死者の骸が落ちており死臭が辺りに満ちている。それに集る獣達森の奥に行くに進むと、どんどん骸は増えていく。人間だけではなく妖怪や獣の骸、魂は片っ端から食い散らされ、ボロボロの状態のが空亡に吸収される。此処には死が満ちていた。常人なら、見た瞬間に発狂すだろう。そんな中空亡は顔を顰めて声を漏らした。

 

「これは……酷いな」

 

それに同意するように、焔龍は頷き焔狐は、思い出したことがあるらしい。空亡にそれを伝える。

 

「空亡殿、こんなに食い荒す妖怪は一人、心当たりがあります」

「どんな奴だ?」

 

歩きながら話を聞いていると森が開ける。其処は一面が骸でできていた。山が出来ており、それは全てが死者の骸出来ている。その山には一人の金髪の女が座っていた。空亡に焔狐がその妖怪の名前を答える。

 

「その名はルーミア、闇を操る最悪の妖怪、宵闇の妖怪もう一つは神への反逆者。そう呼ばれています」

 

焔狐がそう言うと女、ルーミアは骸の山から降りてきた。空亡に笑顔で問いかけた。

 

「ねえ貴方は食べて言い生き物かしら?」

 

そしてそのまま空亡に黒い塊が現れた。空亡は危険を察知したのか横に跳ぶ、しかしそれは遅く空亡の腕は塊に飲み込まれる。痛みぐ凄く血が溢れ出す傷口は、噛み切った後の様になっている。空亡はすぐさま腕を炎で、創り治す。

 

「空亡!」

「空亡殿無事ですか」

 

そんな空亡の下に二人は駆け寄る。空亡は新しく創った腕を、二、三回。閉じたりして確かめ。

 

「速かったな、これは楽しみだ」

 

空亡は痛みなど気にしていなく、寧ろこれから戦うのが、楽しみで仕方がないようだ。

 

「やはりですが、空亡殿は百年で戦闘狂になりましたよね……主殿と同じく」

「何処で……こうなったん……だろう?」

「私には分かりません焔龍殿」

 

二人は呆れながらも武器を構える。空亡はそんな二人に提案した。

 

「二人とも、此処は俺にやらせてくれ戦いたい」

「やっぱりこうなりましたか……まあいいですよ空亡殿」

「危なく……為ったら……行くね」

 

そんな緊張感の欠片の無い、やり取りをしていると。ルーミアは何かを租借している様だ。グシャリ、最後にそう聞こえルーミアは言い放つ。

 

「あら美味しいわね、もっと頂戴」

 

ルーミアの足元からは黒い塊が無数に現れる。それは全て空亡に襲いいかかる。全方位に展開された黒い塊を空亡は直感で触れたらいけないと察する。空亡は避けることを諦め、ある技を使う。この技の危険性を忘れて。

 

「――太・極――」

 

空亡の腕に籠手が装着される。その籠手は腕を全て覆い、

 

「随神相――神咒神威・無間黒肚処地獄」

 

最終的には、大獄の装備していた鎧を纏う。この技は完成した。そして空亡は黒い塊を殴る塊は粉砕されて消える。空亡は腕を振り塊を殴り続ける。塊は全て消え、何事も無かった様にルーミアが言った。

 

「そういえば、貴方なんて名前なの?」

「宿儺空亡」

「宿儺?何処かで聞いたことあるわね」

 

ルーミアは宿儺という名に心当たりがあるようだ。そんな考えはすぐに、ルーミアは捨てて空亡に剣を出した。その剣は十字架を逆さまにした様な形で逆十字を表している。ルーミアは闇を固めたような翼を生やして空亡に聞いてきた

 

「貴方は美味しかったわね、細切れにして食べましょうか?それとも丸のみ?貴方はどちらがお好みかしら?」

「どっちも嫌だな」

「そう残念ね!」

 

ルーミアはそう言いってから、空亡に急接近して、両断しようと剣を振る。空亡はそれを籠手で受け止める籠手に罅が入る。空亡はこの籠手が壊れ中が見られるのは不味いので、すぐにルーミアから離れる。女はそれが弱点だと考え攻撃を加えようとする。空亡が籠手で闇をルーミアh闇で尾を創り叩きつけたり、空亡は距離を取り弓を射たっり、数えるのも面倒になるほどの攻防を交わし、二人は互いに楽しくなってきた。笑いながら武器を振るう。しかし籠手は限界だった。

 

「貴方よく持つわね久しぶりよこんなに続いたのは」

「一ついいか勝ったらでいい聞きたいことがある」

「良いわよけれど私に勝ったらね!」

 

そう短く会話して、空亡とルーミアは、それから三分ほどの戦い続け、遂にに籠手が砕ける。空亡は戦いに集中していて籠手の耐久力を気にしていなかった。

突然だが、空亡の技には地獄と名が付くものが多い、母禮はありとあらゆる炎を使えた地獄の炎さえも、その炎は空亡に受け継がれた。そして空亡の能力とは恐怖の具現だ。他にに思い浮かぶ恐怖は何だろうか、人は天国を目指し地獄に行くことの恐怖。そのことによりもう一つの能力が発動したそれは【地獄を具現化する程度の能力】だ。

この能力が発現したり理由は、伊邪那美が原因だ。伊邪那美は仮にも死の女神だ。その魂は空亡の中で妖華に分けれた。そのことで大獄と奴奈比売が生まれた。だが余った魂は、空亡の起源、恐怖に注がれた。その事で恐怖である地獄の力が発現した。元々その予兆は有った。空亡の魔訶鉢特摩とは圧倒的な寒さで時間すら凍結させる技だ。仮に空亡の能力を使うと、八寒地獄の、魔訶鉢特摩が具現化される。この地獄に落ちた者は、紅蓮地獄を超える寒さにより体が折れ裂けて流血し、紅色の蓮の花を咲かせる。そして蛇骨の無間叫喚地獄は、空亡の恐怖が元に作られた物だ。

そしてもう一つ、黒肚処地獄とはご存じだろうか、仏教では仏に属する物品を喰ったり自分のものとした者たちが落ちるとされる地獄だ。罪人たちは餓鬼道さながらに飢え渇きに苦しみ、ついには自分の肉まで喰らう。さらに、黒い腹の蛇が罪人を足の甲から喰う。喰われた部分は何度でも、再生し、また繰り返される。こんな地獄だ。無間黒肚処地獄は地震で相手を粉砕する技だが、この技にはもう一つある。黒肚処地獄でゆうところの蛇とは、空亡の事であり罪人とはルーミアになる。この技を使うと周りにそのその法則が広がり、他の生き物は全て罪人と化し飢え、空亡の餌と化す。それを防ぐ為に鎧と籠手があった。最も空亡は今日の夜まで大獄が居る事など、知らなかったが、この能力は未だ空亡は制御しきれない。空亡は黒肚処地獄の具現は焔龍と焔狐すら巻き込んでしまう。それは阻止しなくてはいけない。そこで空亡はルーミアに頼み込んだ。あったばかりのルーミアに。

 

「頼む俺を止めてくれ!」

「何故かしら?」

「俺の能力は二つある。その一つが発動する。そしたらこの森一帯が黒肚処地獄になる」

 

ルーミアはこの話を嘘と思はない、さっきまでの攻防で空亡の性格がある程度、分かったからだ

 

「もう、しょうがないわね、気絶させればいいかしら?」

「それでいい頼む」

 

ルーミアは空亡の頭を叩き気絶させた。空亡はルーミアに倒れる。ルーミアは空亡を受けとめる。

 

「そういえば宿儺って母禮の苗字よね、一緒に居た妖狐も母禮の式だし」

 

そんな事を思い出してルーミアは空亡の顔を見る。そして小さく言った。

 

「気絶してるし、少し食べてもいいわよね」

 

 

ルーミアは闇を出し空亡の指を包む、指は無くなりコリコリルーミアの口の中に音が聞こえる。

 

「やっぱおいしわね、もう一本いいかしら?」

 

そんなルーミアに焔狐が近づいてきた。

 

「ルーミア殿空亡殿を食べないでください」

「久しぶり……ルーミア」

 

焔龍と焔狐がルーミアに挨拶した。ルーミアは慌てて闇を消して言い訳をした。

 

「た、食べてないわよ、それにしても二人共久しぶりね、何年ぶりかしら?母禮は」

「主殿は……亡くなられました」

 

焔狐は悲しそうに言った。ルーミアは少し声が震えながらも言い切った。

 

「そう……母禮は死んだのね、また私の友達が居なくなったのね」

「それと主殿から伝言があります」

「何かしら?」

 

ルーミアは母禮の伝言を聞こうと耳を立てる。焔龍は札に録音した声を聴かせる。札に妖力を流すと声が流れる

 

「ルーミア化久しぶりじゃな、これ流れるってことは儂は死んだんじゃな。他の奴にも頼んだんじゃが、空亡の事を試してくれんか?空亡は儂の家族でな大切なんじゃ、方法は何でもいい任せる。頼んじゃぞ、それとルーミア良ければ空亡に着いて行ってくれんか」

 

それは流れ終り。ルーミアは笑った。

 

「母禮らしいわね、そう言われても、もう戦ったわよ、空亡だっけ?私も楽しかったし、着いて行ってもいいわよ」

「本当にいいですか?ルーミア殿、目的なんてありませんよ?」

「信じないの?私も暇だし丁度いいわ」

「なら……よろしく」

 

焔龍達はルーミアをすでに受け入ているようだ。空亡が目を覚ます周りを見渡し焔龍達の無事を確認する。

 

「お前ら無事か!?」

「問題ないですよ空亡殿」

「大丈夫……だけど……危なかった」

「それは本当に悪かった」

 

空亡は誠心誠意謝った、焔龍と焔狐は元よりあまり怒っていなかったので、許すことは決めていた。

 

「別にいいですけどちゃんと制御してくださいね」

「分かっている焔狐、練習しておく」

 

空亡は精神世界で大獄と練習しておくことに決めた。そう決意するとルーミアが空亡に話しかけた。

 

「空亡って言ったかしら、貴方達に着いて行く事にしたわ、母禮に頼まれたからね」

「母禮様を知っているのか!?」

 

空亡は母禮の事を聞けると知って、身を乗り出した。ルーミアは空亡が急に近づいてきてビックリした。

 

「母禮のこと?勿論知ってるわよ、私の数少ない友達よ」

「そうなのか、聞いてもいいか母禮様の事?」

「良いわよ、あれはね何千年か前に、母禮達に喧嘩を仕掛けたのよ」

 

その話は朝まで続き、最後にルーミアは懐かしむように少し悲しい顔をして

 

「最後に母禮はね、友になってくれって、言ってきてね。笑ちゃったわよ。腕とか足とか食った相手に友って、でもそんな母禮だから私は友達になったのよ」

 

ルーミアはそう言った後に少し涙が零れた。

 

「なに私以外に殺されているのよ、あのばか」

「それは俺が悪いんだ……あの時母禮様に庇われたから」

「それは貴方が悪いとは、私は言わないわ、母禮は貴方が好きなんでしょう、そんな相手に恨みの一つでも言ったら、私が燃やされるわよ」

 

ルーミアは涙を流しながらも、笑いかけた。

 

「母禮様はそんな事しないぞ」

「そうね、母禮は友達に甘いからね」

 

空亡達はそうして村に帰った。途中でルーミアは気付く、このままだと自分たちは敵とみなされる

 

「焔狐あの札は持ってるかしら?」

「あれですね、ありますよ」

 

焔狐は紅い札を取りだした。それでルーミアは髪を結う、すると姿が変わる。身長が縮み焔龍程の背丈になる。

 

「これでいいわ、欠点はこれを付けるとあまり力を使えないのよね」

「そうなのか、それは不便だな」

「別になれればいいのよ」

 

そんな何気ない会話をしていると、村に着いた。村人は本当に空亡達が、帰って来るとは思っていなく、驚いているようだ。

 

「あんた達生きていたのか?」

「ああ、宵闇の妖怪なら倒したぞ」

 

普通なら嘘だと思われるが、この場に居る事が倒した証だろう。村人達自身、ルーミアの危険性は理解している。生きて帰すことなどしないだろう。だからこの話は信じられた。

 

「その金髪の娘は?」

 

村人は最初に居なかった。ルーミアの事が気になっている様だ。空亡はこのことは想定済みで、ルーミアと話は済ませている。

 

「この子は妖怪に親が喰われ、森で隠れていたらしい」

「そうなのか、それは災難だったな」

 

村人は本気で同情している様で、ある提案をした。

 

「この村で引き取ろうか?」

「それは今もそうだが、あまり話せない。この子は母が喰われたことで、トラウマが出来ている。それで俺たち以外は怖いらしい」

 

空亡は嘘をつき、村人に伝えた。村人はそれを信じて、空亡達に伝えた。

 

「そうなのか、ならお前たちに任せよう。それとお前が、宵闇を倒したことでの宴会がある。存分に楽しんでくれ」

「そうか楽しませてもらおう、焔龍達もそれでいいか」

「私もいいですよ空亡殿」

「私も……休む」

 

空亡達は宴会に、参加することした。この後は酒を飲み、食事を食べ、夜が明けた

 

 




二日休んだので再開します、これからも、東方鬼蛇伝をよろしくお願いします。


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第二十九話

諏訪子様登場!


空亡達は、村での宴会を終え茶屋で聞いた。諏訪の国に向かう。村からは十二日程かかるので、気長に歩くことにした。空亡達は睡眠をほぼ必要としないので、六日は不眠不休で歩き続ける事ができる。食事を何回かした。食欲旺盛なルーミアは空亡に頼み込み、腕を一本貰って食べていた。

 

「空亡ごめんなさいね。でも貴方の肉、美味しくて」

「別にいいぞ。母禮様の話聞かせてもらったんだし。それに肉をあげるのは慣れている。焔龍でな」

「それは……言わないで」

 

焔龍は自分の恥ずかしい過去を言ってほしくないようで、空亡をぽかぽかと叩く。

 

「ごめんって、だから叩くな」

「分かった……なら……いい」

 

空亡達は平和に旅を進める。諏訪の国に近づいてきて、距離はあと二日程で着くようになった。

 

「空亡殿あと二日程で着きますよ。あれ…何か騒がしいですね?」

「そう?何も聞こえないけれど、空亡はどう?」

「いや、俺は何も聞こえないが」

 

耳が良い焔狐には聞こえ、普通な空亡達は特に何も聞こえないようだ。焔龍達は耳をたて音を聞く。すると遠くから声が聞こえた。

 

「何故だ?この道は安全のはずだろう?なんで妖怪が出る!?」

「逃げろお前たち!この中には諏訪子様への御供え物が入っている。捧げ損ねたらミジャクジ様の機嫌を損ねるぞ!」

 

空亡達は声の方へ向かう、声のする場所に着くと馬車があり、其処に妖怪が群がっている。妖怪は空亡達を見て歓喜の声を上げた。

 

「やった餌が増える!それに女は見た目が良い物ばかりだ!」

「此処を見張っていて正解だったな。諏訪の国の貢ぎ物はこの時期だったからな、運び屋と旅人が同時に釣れた!」

 

妖怪は自分勝手にそう言っている。それにルーミアはムッとする。

 

「こいつ等はもう勝った気でいるのかしら?それなら、なんて御粗末な頭のなの?」

「分からない……可哀想」

「焔龍達にそんな事言うとは、殺すか」

 

空亡達もキレて、妖怪を殺そうとする。妖怪はそれを冗談と受け取ったのか笑い出した。

 

「こっちはの数は十も超えているだぜ、勝てるわけねえだろ」

「面白い冗談ですね三つ目入道様」

「そうだな儂は天下の三つ目入道だぞ、人間ごときが儂を倒せるわけない!そして赤髪の男は女を置いて行け、そしたら見逃すことも考えてやるぞ」

「それいいですね三つ目入道様」

 

三つ目入道の発言に焔龍達は引いていた。

 

「典型的な屑ですね、反吐が出ます」

「つまんない」

「殺す気失せるこんなの」

 

そんな中、空亡からは冷気が溢れていた。体を震わせ怒りを表していた。そして怒気を含みながら言い放。

 

「お前ら面白いなぁ、俺に焔龍達を置いていけと?あははは、殺す!」

「紅蓮地獄!」

 

空亡が叫ぶ、冷気が溢れ此処一帯が冷気に満ちる。酷い寒さが妖怪を襲う。猫の妖怪の皮膚が裂け、血が溢れ出す。血がまき散らされ地面に広がる。その形は紅い蓮の花のようだった。一匹また一匹と妖怪は蓮の花を咲かせる。最後の一人の三つ目入道は、寒さが調節され、体が完全に凍っていた。その顔には恐怖が浮かび、青い顔をしていた。空亡はそれに語り掛ける。

 

「なあ、なんか喋れよ。おい……もういいか、死ね」

 

空亡が腕を開き閉じる。三つ目入道の皮膚が裂け血が溢れ出しそれは凍り、氷の蓮の花を咲かせた。それは芸術品の様で空亡は感想を口にした。

 

「お前の様な屑でも、死に際は綺麗だな」

 

そう言った空亡をルーミアは叩いた。

 

「いて、何をするルーミア」

「寒いの、焔龍達はいいけど、私は寒さに強くないの」

「そうなのか、以後気を付ける」

 

そんな中に人間たちが寄ってきた。人間たちは各々感謝を伝えてきた。

 

「お前たちは妖怪か、ともかく助かったありがとう」

「それはいいんだが俺たちの怖くないのか?」

「ああ別に怖くないぞ、諏訪の国は妖怪と人間に差別なんか無いからな」

「珍しいな」

 

空亡は素直にそう言った。

 

「そうだろう。諏訪子様の言い分でな、種族が違いがあっても、言葉を交わせば仲良くなれるそうだ」

「それはいい言葉だな、提案だが俺たちも諏訪の国に向かう、それまで護衛をしようか?」

 

空亡はそう提案し、運び屋は元々それは頼もうとしていたので丁度良かった。

 

「それは俺も頼もうとしていたとこだ、こちらこそ頼ませてもらおう」

「了承した。焔龍達も手伝ってくれるか」

「良いですよ、空亡殿、恩は自分に帰って来ることもありますし」

「縁……作り……大事」

 

空亡達は護衛をすることになり。貢ぎ物を守り諏訪の国に向かう。それからは特に何もなく、二日歩き続けた。国が見え、此処からでも見える巨大な社がある。それだけでも諏訪子の信仰の高さが分かるだろう。国には普通に入国出来た。焔龍達も既に角や尾を出していたが何も言われず。国の中に入ると、運び屋達と別れ、国を周ることにした国の中を見ると、普通に妖怪が過ごしていた。走る妖怪と人間の子達、談笑する大人の妖怪と人間。この国には種族の違いなんてなかった。

 

「これは凄い光景だな」

「そう……だね……空亡」

「まさか本当に共存してるとは思いませんでした」

 

空亡達は目の前の光景を見て、驚いている。そんな中ルーミアは一つ質問が有った。

 

「食事はどうしているのかしら?妖怪は基本、人を喰うわよ」

 

その質問に空亡は自分の考えを言った。

 

「いや俺もそうだが、人間を喰わなくても普通に過ごせるぞ」

「そうなの?私は無理ね、耐えられない」

「それなら俺の肉を喰えばいい」

 

空亡は普通にそんなことを言う。ルーミアは此処まで一緒にいて、空亡は自分の優先順位がとことん低いんだなと悟る。だけど自分も空腹が我慢できそうにないので、言葉に甘えることにしたらしい。

 

「そうさせてもらうわ」

 

焔龍達はやっぱり空亡の悪い癖は、治らないんだなと諦めた。

 

「空亡……は……無理か」

「そのようですね、焔龍殿あれは治りません」

「どうしたんだ?二人共」

 

空亡はそれに気づけない、空亡の中では自分の事は後回し、いや自分が死ぬ事や、傷つく事を考えていない。元より空亡には、痛みを感じられない。幼い頃の洞窟に修行として、入れられた時はまだ痛みを感じることが、出来たが、経造の修行で痛みを無意識のうちに、痛みを感じなくなっていた。否、感じる暇が必要ないと本能が痛みを遮断している。だが流石に伊邪那美に肝を喰われた時は、命の危機を感じ痛みを知らせた。それは今は置いておこう。運び屋たちが戻ってきた。運び屋の一人は空亡言った

 

「空亡さん達、諏訪子様が呼んでいる会ってくれないか」

「別にいいが何故だ?」

「諏訪子様がお礼をしたいそうだ」

「了解した」

 

空亡達はそうして村の外から見えた。巨大な社に案内された。階段は長く両脇には幾つもの灯籠が並んでいる中の火は揺れており、空亡達を歓迎している様だった。階段を登り、社の前に着く、賽銭箱があり、それは金が溢れる程に入っている。そして目の前には、いつの間にか緑の髪の巫女服を着た女が居た。巫女服を着た女には空亡が苦手意識があるが、顔にでさないようにする。女は空亡達を見るなり言った。

 

「ようこそお越しくださいました。早織と申します、奥で諏訪子様がお待ちしておりますので、案内しますね」

 

空亡達は早織に案内され、社の庭に着いた。庭には蛙が沢山おりピョコピョコと飛んでいる庭の奥に進んで行くと湖があり橋が架かってい。橋を渡り其処には一人の少女が居た。その少女は膨大な神力を纏っており。一目で神だと分かるだろう。少女は口を開く。

 

「よく来たな妖怪達。我の国に、歓迎しよう。我が国の民を救ってくれて感謝する」

 

その神力に違わず威厳のある喋り方だ。空亡達があった神は友好的な者や高圧的な者が多かったので新鮮だ。その時、湖から一匹の白い大蛇が現れる。その蛇は神力と呪いを身に纏っていた。どう考えても神だ。蛇は諏訪子の後ろに佇んでいる。

 

「丁度いい、紹介しよう。この娘はミジャクジ我の眷属の一柱だ」

 

そう諏訪子は紹介し。こんな強い呪いを纏う神が眷属とはどんな神だ。空亡達は戦慄しているとミジャクジが泣き声を上げた。

 

「なんだミジャクジ、え?なんでそんな喋り方だって?だってこの方が威厳あるでしょ、もう一つあるの?なに今ので、威厳無くなってる、あ……」

 

空亡達は先程から恐れていたのが馬鹿らしくなった。諏訪子は慌てて喋り方を直す。

 

「今のわ聞きゃなかったことに、あーうー、此処までかっこよく出来たのにー、ミジャクジのせいだよ、自分が悪いって?酷いよー」

 

空亡達はその光景をみて和んでしまい。穏やかな笑みを浮かべた。

 

「皆ー何で笑っているの?待ってやり直させてー」

 

諏訪子はそう言って手をぶんぶんと振っている。

 

 

 




次回は明日か二日後?


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第三十話

何時もより、短めです。


「ミジャクジ、笑わないで、皆も笑わないでよ」

 

諏訪子がそう言って取り乱していると、ミジャクジが空亡び近づいてきた。何かを訴えている。空亡は鬼蛇、半分は蛇なので言葉は分かる。

 

「何で蛇の姿じゃないのか?だって邪魔だろう、それより何で蛇に為れるって分かったんだ?」

 

ミジャクジは鳴き声で伝えるのが面倒になったのか、少し待ってねと空亡に伝えてから、ミジャクジの姿が変わる、人間の姿になる。背は焔龍程で病的に白い肌、赤い目に青白い髪、服装は子供の服の様で軽い格好だ。そして黒い靄を纏っている。少女ミジャクジは空亡に挨拶した。

 

「改めよろしくね、僕はミジャクジ、祟り神だよ」

 

僕と聞き空亡は皐月を思い出した。ミジャクジは続ける。

 

「君も蛇でしょ、僕もその姿見たいな、お願い」

 

空亡は特に断る理由が無いので、この願いを聞くことにした。だがかの場で蛇に戻ると妖気が漏れてしまうので焔狐に頼むことにした。焔狐は結界を張る。空亡は張られた確認すると、蛇に転身する。霧が出てきて次の瞬間大蛇が現れる。その姿は赤黒い鱗に覆われ、腹は白く、頭部には刀を模した様な角が二本ある。諏訪子は空亡の身にまとう、もはや圧と言ってもいいほどの妖気に、戦闘態勢に入ろうとしたが。ミジャクジが楽しそうに空亡に近づいて行くのを見て慌てて止めようとした。

 

「ミジャクジ危ないかもしれないんだよ、戻ってー」

 

そんな声が聞こえないミジャクジは、空亡の前に行きはしゃいでいる。

 

「凄いよ!諏訪子でっかいよ!かっこいいよ!僕みたいだー」

 

ミジャクジは空亡に飛び乗り無邪気な様子で。

 

「出発!動いて、動いて」

 

空亡も悪い気はしないので前に進むことにした。暫く動いているとミジャクジは次の願いを言う。

 

「一緒に泳ごうよ」

 

そう言ってミジャクジは跳び一瞬で蛇に戻る。そのまま湖に跳びこみ、その場で回っている。早く来いということだろう。空亡も水の中に入り、二人でゆっくり泳ぎ出した。そんな二人を見る諏訪子は、馬鹿らしくなったのか、焔龍達に聞いた。

 

「一様聞くけど、あの妖怪って危険?」

「空亡は基本暴れませんよ元人間だったからだと思いますが」

「空亡……私達……以外の事では…怒らない」

「そうなんだ。そう言えば名前を聞いてなかったね教えてくれる?」

 

諏訪子は焔龍達に名前を聞いた。焔龍から名前を言い始める。

 

「私は……焔龍……よろしく?」

「次は私ですね、焔狐で。よろしくお願いします。諏訪子殿」

「私ね、ルーミアよ、宵闇の妖怪って言った方がいいかしら?」

 

諏訪子は焔龍達事は知らないがルーミアの事は聞いたことある。

 

「宵闇の妖怪!?この国の民を喰いにいたのか!」

「そんな警戒しないでよ、今は私は空亡に肉

 

しか食べないから」

 

そう聞いて諏訪子は空亡の事を不憫に思った。焔龍達にその空亡は、許可しているのか聞くと

 

「残念ながら、良いってい言っているんですよ」

「空亡……馬鹿……優しいん……だけど」

「そうなの?空亡って少し壊れているのかな」

「そうですね空亡殿は痛みを理解できない」

「治そうと……したんだけど」

 

そんな話をしていると、空亡とミジャクジが戻ってきた。ミジャクジは諏訪子に嬉しそうに言う。

 

「諏訪子ー空亡と遊ぶと楽しーよ、ねえ此処にいてもらおうよ」

「ミジャクジが言うならいいけど、空亡達は如何なの?」

「元々滞在する予定だった。泊めくれるなら頼むが、いいのか?」

「いいよ、部屋も余っているからね」

 

空亡達はそうして、諏訪の国に住むことになった。そこで諏訪子は空亡聞いてきた。

 

「ねえ空亡は何の神を殺したの?」

「俺が殺した神か?伊邪那美っていう女神だ」

「空亡が噂の妖怪かだったの」

 

空亡の事は噂になっていたらしい。空亡は噂の事が気になったので、諏訪子にどんなものか聞いてみることにした。

 

「噂だと?詳しく教えてくれ」

「予言出来る神がいるんだけどね、百年程前に伊邪那美を妖怪が殺すって、予言があってね。実際、伊邪那美の被害が無くなっているし、何処かの神が黄泉に行ったら、居なくなっていたらしいから」

「確かに殺したが、噂に為っていたとわな」

 

諏訪子は改めて空亡を見る。諏訪子は気付く、空亡の中にいる存在に。その力と魂の大きさ、能力の危険性、そして空亡の本質に。諏訪子は土着神の頂点だ。数多の神を見てきた。そして観察眼を鍛え続けて、見た相手の能力をある程度察することができる。そして諏訪子の能力は【坤を創造する程度の能力】空亡の能力近いものが有る。いきなり坤と言われても分からないと思うので説明しよう。坤とは八卦で地を表す、簡単に言うと大地を創造したり、操る能力だ。岩石や、土、水、植物に、マグマなどを無から創造、操作出来る。空亡は、自然災害に関することを操り、起こすことができる。これだけ見ると諏訪子の能力は、空亡の劣化に見えるが、全く違う、坤とはもう一つ母という意味もある。空亡は怪物を作れるが、それは空亡に吸収された魂を空亡の血で体を作り一定時間簡単な命令を実行させるだけだ。諏訪子はその身一つで新たな生命を作る事が出来る。事実、早織も諏訪子が腹を痛めて生んだ子供だ。話を戻すが、諏訪子は空亡の能力は危険だが安定してると断じ、今は警戒するだけ無駄だと考える。

 

「一つ聞くけど、空亡ってどんな能力?」

 

空亡は言ってもいいのか悩んだが、特に害はないだろうと思い、答えた。

 

「【自然災害を起こし操る程度の能力】だ」

「やっぱりね」

「何がだ?」

「何でもないよ、ただ私の感は衰えてないって、思っただけ」

 

諏訪子はそうしてから、空亡達の前に行き手を叩いて言う。

 

「さあ案内するから、着いてきて」

 

空亡達は来た道を戻り始めた。そして社の中を案内され空き部屋に招かれた。空亡達は村では、ほぼ休まず空亡達は歩続けた。久しぶりの布団だ、焔龍は目を輝かせ、ルーミアの基本、森の木の上で寝ていたので数十年ぶりで、焔龍はすぐに布団に入り寝てしまった。空亡は、皆が寝静まると庭に出て行った。ミジャクジに呼ばれていたからだ。庭に着くとミジャクジが居た。ミジャクジは空亡を見て何かを思いついたのか。

 

「遅いよ空亡、僕待ちくたびれたな」

 

そう空亡を揶揄った。実際ミジャクジは特に気にしていないようだ

 

「遅れてすまないな、焔龍達が寝てからの方が、いいと思ってな。それで話しってなんだ?」

 

ミジャクジは少し息を吸って、今までの軽い雰囲気が消え、淡々と言った

 

「ねえ君は自分の中に居る者を理解しているのかい?」

 

 




次回シリアス気味


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第三十一話

今回はシリアス&短め


「妖華達の事か?俺の中に住む、人格だと思うが」

 

空亡はそれしか知らなないので素直にそう答えた。その答えに、ミジャクジは首を横に振り答えた。

 

「全然違うよ空亡、全員化け物なんだよ」

「妖華達が化け物?冗談言うなよ」

 

空亡は信じない、それどころか妖華達が化け物と呼ばれて、少し不機嫌だ。ミジャクジはそれでも続ける。

 

「空亡その妖華っていうのは、どうやって生まれたの?」

「それか確か妖華は俺の能力に宿る人格で最初から居たらしいが、出来たのは母禮様の妖気で生まれたはずだ」

「妖気で生まれたんだね、初めて能力を使ったのは何時?」

 

ミジャクジは続けざまに、空亡に問い続ける。

 

「それは、牛鬼に攫われ時」

「その時、何を願ったの」

「殺せ、それだけだ」

 

それを聞き、ミジャクジは息を飲む、そしてまた質問をする。

 

「二人目は何時?」

「蛇骨から移動したと聞いた」

「蛇骨って何?」

「俺の中に居た妖蛇だ」

 

空亡がそこまで言うと、空亡の中に声が聞こえる。

 

(空亡、私が言うよ少し待ってね)

 

妖華の声が聞こえ、次の瞬間空亡から妖華が出てきた。妖華はいつもの口調でなく真面目な口調で、

 

「こんばんはミジャクジ様、妖華と言います。これからは私から説明しますね」

 

ミジャクジは直に妖華を見て、警戒を強めた。自分が思っていたよりもこの化け物は危険だ。少し空亡と遊んでみて分かったが、空亡は優しい。泳いでいる時も自分に速さを合わせたり、気遣ったりしてくれた。初対面なのに空亡はそうだった、自分は祟り神だと紹介したのに。それなのにこんな化け物を住まわせてるのは、空亡が危険だ。自分に優しくしてくれる数少ない生き物だ、守らないと。そんな考えがミジャクジの中には生まれている。

 

「いいよ、聞くけど君達は何なの?僕には化け物ってことしか分からないから」

「私達は空亡の能力に宿る人格。私以外は空亡が殺した妖怪や、伊邪那美から奪った魂で出来ております」

 

ミジャクジはそれを聞いて、自分は警戒してよかったと心底思う。

 

「それ、どれほどの禁忌か分かっているの?魂を地獄に送らず閉じ込め、その魂で新たな生き物を作っているんだよ、もしも暴走したりするのなら、僕は諏訪子の民を守る為に貴方達を殺す」

 

ミジャクジは自らの祟りの力を纏いながら言った。この祟りとは神霊などが起こす天災。空亡の能力と全くの同じだ。もしもこの場で開放されたら。国一つは軽く滅ぶだろう。そんな神威を受けても妖華は怯まず。

 

「理解していますよ。私達は空亡の起源、人間の恐怖から生まれた。今宵語ろう空亡の渇望を、どうぞご清聴あれ」

 

妖華は結界を張ってから、語り始める

 

「叫喚地獄、宿儺恵理。蛇の渇望から生まれた。空亡の宿す渇望、それは自己犠牲。自分が毒を啜ろう毒を被ればいい、それはなんと傲慢だ、一人で毒は受けれない。なら溢れさせ一つにしよう、全てを溶かす腐毒の咒法」

 

その声とともに、恵理が大剣を持って現れる。次は奴奈比売だ。妖華は語る

 

「黒縄地獄、宿儺奴奈比売。宿す渇望は、時の停止。この時を終わらせない、邪魔するもの全ては停め、押しつぶそう。それはなんとも強欲だ。時は有限だ。停まるなんてありえない。世界の法則を無視する津波の咒法」

 

語り終わると。奴奈比売が現れる。その後ろには無数の触手。次に大獄だ妖華は語り続ける。

 

「黒肚処地獄、宿儺大獄。宿す渇望は森羅万象の粉砕。自らや主、仲間に仇名す物全て、三千世界森羅万象一撃の下に粉砕しよう。それはなんという憤怒だ。邪魔をするな!其処をどけ!動かぬなら粉砕しよう。死を含む粉砕の咒法」

 

そう妖華が語り、黒き鎧を纏う大獄が現れる。次は遂に妖華だ。

 

「焦熱地獄、宿儺妖華。宿す渇望は不滅の焔と雷、炎は不滅だ。消えはしない仲間を照らす灯りとなろう、前を走る神速の雷となろう。それはなんという希望か。照らす為に全てを燃やそう、何者に引き寄せられず駆け続けよう。影響を受けない不変の咒法」

 

最後は空亡だ。妖華はそれまでの淡々とした口調ではなく優しさを含んだ口調で語る。

 

「これらを束ねるは、鬼蛇、宿儺空亡、人の恐怖から生まれ、死の女神を殺した最悪の蛇であり鬼である」

 

妖華は語り終わる。この場には空亡の能力が出現した。そして妖華は宣言する。

 

「これが私達空亡の中の妖怪の正体。渇望から生まれ魂を集め固めて出来たもの。貴方が言う様に私達は化け物だ。存在してはいけない、だけどね、それが如何したんの?私達は空亡の願いを叶える為に存在している。危険だとか関係ない、もしも私達の邪魔をするなら、その魂全て、私達が殺しつくすよ!」

 

そうして妖華達はミジャクジを脅す。その後、空亡の方に妖華が振り向き、悲しそうな顔で言う。

 

「空亡、私達が怖い?気持ち悪いと思う?こんな歪んでいる私達を。突き放していいんだよ」

 

妖華達は空亡の答えを待つ、空亡は全て聞いた。しかし答えは最初から決まっていた。

 

「馬鹿なこと言うなよ妖華。お前達が何者であろうと関係ない。俺の仲間だ。俺の渇望には仲間と居るとある、ならさお前たちが欠けたら意味ないだろ。だからさミジャクジ、俺を心配するのはありがたい。だけどこいつ等は俺の仲間なんだ。だから一人も欠けることは許さない。頼むミジャクジ、こいつ等を信じてくれないか」

 

空亡はそう妖華達に語る。これが当たり前だと、欠けることは許さないと。ミジャクジはそれをきいて、頭を掻いて神威を消して言った。

 

「そこまで頼むなら仕方ないなーうん僕は信じるよ、諏訪子にも言っておくね。安心してもう疑ったりしないから」

「ありがとう。すこし体が重いな、何故だ?」

 

空亡は少しふらつき、疑問に思う。それに妖華は答える。

 

「ごめん空亡。私達は空亡の妖気を使っているから辛いよね。すぐ戻るよ」

「悪いなせっかく出てきたのに」

「いいよ、空亡が倒れたら困るから」

 

そう言ってから妖華達は空亡の中に戻った。そしてミジャクジが空亡を支えてから謝った。

 

「本当にごめんね空亡。妖華達を危険視して」

「いいんだ。だってミジャクジは諏訪子のためだったんだろ、誰かの為っていう思いに悪いなんて無い。俺は尊敬するよ」

 

空亡はそれを笑顔で言った。笑顔で言う空亡を見て。ミジャクジは恥ずかしくなったのか、顔を逸らした。

 

「ありがとね、今日は疲れたでしょ。私の部屋で休んでよ」

「ならそうさせてもらおう。流石に疲れた」

 

 

空亡はそうして、ミジャクジがいつも寝ている湖の奥の部屋に案内され、ミジャクジの部屋で一夜を過ごした。

 

 

 

 

 




明日も投稿できればします!


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第三十二話

日が昇り空亡は目を覚ます。ミジャクジが隣で寝ており、布団がずれていたので直してから、部屋を出て湖を泳ぎに庭に出た。まだ焔龍達は起きておらず、心配されると思い部屋に戻る。長い廊下を歩き部屋に着くと、ルーミアが起きていた。ルーミアは空亡を見て聞いてきくる。

 

「あら空亡お疲れさま。ミジャクジと会っていたんでしょう」

「起きていたのか?」

「私は空亡が居なくて、気配を辿ってみたら、ミジャクジと貴方が居たからね気になってね、話を聞いていたのよ」

 

空亡は全くルーミアの気配を感じていないかった妖華達も気付いていなかった。事実ルーミアは気配を消して闇に溶け込んでいた。空亡達では気付けなかっただろう。そんなルーミアは空亡の話を全て聞いていた。

 

「それで空亡貴方仲間を誰一人欠けさせないって言ってたけど私も入っているのかしら?」

 

ルーミアは当然その言葉を聞いていて、空亡を揶揄った。空亡は恥ずかしがらずにそれとも、揶揄ったことに気付いていないのか答えた。

 

「当然だろルーミアは最近あったばかりだが、悪いやつじゃないことは知っているし、何より俺ルーミアの事は気に入っているからな」

「そう私も貴方の事はいい人って知っているわよ、そろそろ焔龍達を起こしましょう

 

そう返されルーミア恥ずかしくなったのか、そう言って強引に話を変える。

 

「そうだな、起こそうか。そうだルーミア今度、手合わせしてくれないか」

「そのぐらいいいわよ」

「助かるこの前のは物足りなかったからな」

 

ルーミアはこの発言を聞いて、空亡は母禮と同じで、戦闘狂なんだなと再確認した。自分もそうなので、得に何も言えないが。空亡は焔龍達を起こした。起こすと戸が開き、早織が食事の準備が出来たと呼びにきた。空亡達は今に案内される。既に諏訪子とミジャクジがいて食事を食べていた。ミジャクジは空亡を見るなり。

 

「空亡何で起こしてくれなかったのさー」

「ミジャクジが気持ちよさそうに寝ていたから起こすのも悪いと思ってな」

「それならいいけど」

 

空亡達が座ると諏訪子が空亡に話かける。

 

「ミジャクジから聞いたよ本当にこの国に危害を加えないんだね私も信じるよ、でもその力は危険すぎる。悪いけど制御するのを手伝うよ」

「俺からも頼む。このの力を使える様になりたいからな」

「任された、土着神の名に懸けて手伝うよ」

 

空亡と諏訪子はそう約束した焔龍達は話に着いていなく、疑問を抱いている。

 

「空亡……何の……話?」

「焔龍達には関係ないぞ」

「そう」

 

空亡隠し事をして焔龍は不満そうにしている。空亡達は食事を終えた。そしたら諏訪子が提案する。

 

「空亡達今日はせっかくだし、この国を案内するよ。いいかな」

「いいぞ、鍛冶屋があるなら覚えておきたいし」

 

空亡は新しい武器や、武器の刃が最近脆くなっていたから鍛冶屋に用があった。それで諏訪子は得意げに言う

 

「あるよとっておきのがね、焔龍達はどう?」

「私は……休む」

「諏訪子殿私は、ちょっとミジャクジ殿と話したいので、後から行きますね」

「そうなの?ミジャクジいいかな?」

「諏訪子僕はいいよ」

 

ミジャクジは了承して、焔龍は部屋に戻り、休むことにして。空亡と諏訪子は鍛冶屋に向かう。この部屋に残った焔龍とミジャクジは話し始めた。

 

「それでさ僕に話って何?」

「聞きますが空亡殿に何したのですか?」

「何の事?」

「とぼけないでください」

 

焔狐は結界を張り妖気を開放した。尻尾が十本出てきてその手には札が握られる。

 

「空亡殿が隠し事する時なんて、自分で背負い込む時です。貴方が関係あるでしょう吐きなさい」

「昨日の事?それと焔龍は天狐だったんでね」

「呑気なこと言ってないで早く答えろ、もう私は空亡殿が傷ついてほしくない、言え!」

「そう怒らないでよ昨日の事なら教えるよ」

 

そうしてミジャクジは昨日の事を話した。それを聞き焔狐は落ち着いた。

 

「そうですか早とちりして、すいませんミジャクジ殿」

「いいよ空亡がよっぽど大切なんだね」

「はい空亡殿まで失ったら私達は壊れます。今も空亡殿、焔龍殿、私は限界なんですよ主殿を失った時から、三人が居て保ってられる。もしも誰か死んだら負けると分かっていても世界を壊そうとするでしょうね」

 

これが焔龍の歪み一人欠けたら崩れてしまう。母禮を失った問いから焔狐は空亡程ではないが壊れている。自分を責め続け夜寝ると、時々夢見る目の前で母禮が死ぬところをあの時速く駆けつけ自分が空亡を庇え。そえより速く自分が伊邪那美を倒せば。しかし誰を失っても結果は変わらない鬼蛇転生は二種類有ったもう一つ狐蛇転生、空亡が焔狐の力を手に入れただけだ。

 

「それにしても空亡殿の中には、四人もそんなのが居たなんて、二人は知っていましたが」

「危険だよね、あんな力。でも空亡はあの中の一人でも失はないって私に誓ったからね。私はそれを尊重するだけだよ」

「私も空亡殿の意志は守りますよ、空亡殿がその子たちを守るというなら、私もそれを手伝うだけです」

 

焔狐はそう誓った。空亡を守ろう狂わない様に、傷つかない様に。焔龍は空亡が決して弱くないことを知っている。だからこれは自分の我儘でしかない、それは分かっている。けれど頑張ろう。

 

「このことは焔龍殿にも伝えますね」

「なんか決意したようだね私は応援するよ」

「ありがとうございますミジャクジ殿、そろそろ私は空亡殿の所に向かいますね」

 

焔狐はそう言ってから、部屋を出て町に降りた。ミジャクジはそれを見送った。

 

 

時は同じくして空亡と諏訪子にルーミアは鍛冶屋に向かっていた。向かう途中に諏訪子は国の妖怪や人に話しかけられる。この国で諏訪子は余程、慕われていることが分かる。鍛冶屋の前に着く中からは、鉄を打つ音が聞こえる。此処からでも熱気が伝わってくる。中に入ると、何故か女物の着物を着崩した金髪の男が居た。

 

「なんだ諏訪子なんか用か?」

「そうだよ司狼今日は私に客人が来て居るからねその人の武器を見てくれない?」

 

そう司狼呼ばれた青年は鉄を打ちながら

 

「面白ければいいけどよ、そいつは面白いのか?」

「自分で確かめてよ」

「そうするわ」

 

司郎は鉄を打つのをやめ空亡の方に行った。そして値踏みするように空亡を見てから

 

「へぇ、お前俺と同じ鬼か、それだけじゃねえ、蛇か」

「分かるの?」

「面白そうだな、俺は暁司狼(あかつきしろう)まあ普通の鬼だ、ほら角あるだろ」

「目にかなったの司狼私は外に出てるね」

 

諏訪子はそう言って外に出る。空亡は改めて見ると司狼の頭には一本角があったしかしその角は欠けていた。その角を見た空亡は何があったのか気になってしまう。司狼はそのことに気付いたのか

 

「この角か?これは昔餓鬼を庇って、その時に角が折れてな。それの後遺症で、痛覚、味覚、嗅覚が麻痺してな、そのせいか知らねえが他の感覚が無駄に上がったんだわ、ほかにも集中力が上がったが」

 

司郎は何でもない様言った。空亡は同情しそうになったがやめたこれもう司狼の中で終わっていると分かっているからだ。

 

「それでよお、早く武器見せろや」

「了解した」

 

空亡は札から大鎌と戦槌を取り出した。司狼はそれを受け取り、見定める五分ほど経過して司狼は嬉しそうに

 

「これは大事に使われているな、おいまだ名前を聞いてなかったな教えろや」

「宿儺空亡よろしく頼む」

「空亡ね洒落てる名前じゃねえか、空を亡くすってかっこいいじゃねえか」

 

空亡は名前をほめられてまんざらでもない、そのまま司狼は言った。

 

「見て分かったが、この大鎌は百年使われているが、何時から使ってんだ?」

「五歳の時らへんだが今で百十五年は使っているな」

「てことは空亡俺と歳は同じか、俺も百二十歳ぐらいだ」

「そうなのか、同じ歳の奴にあったのは初めてだな」

 

空亡は妖怪の中では若いので歳が近い者の会うのは初めてで新鮮だ。

 

「そんじゃまあやりますか武器をかしな」

「やってくれんのか」

「いいぜ、その前に確かめる事がある、庭に出ろや空亡」

「分かった何するんだ」

「出たら言う待ってろ」

 

空亡は司狼に案内され庭に出たそして司狼が大声で言う。

 

「大極!技名未定!」

 

司郎がそう言うと、庭が世界と切り離される。此処だけが別に世界となり空は黒く染まった。

 

「この場ではなどんな力も意味がねえんだわここで殴り合おうぜ」

「何故だ?そんな必要ないだろ」

「いあやあるね俺の武器を渡すんだ。力を確かめるぐらいはしないとな」

「分かった。俺も司狼の力は気になっていた。確かめさせろ」

「いいねぇ戦闘狂か俺に力を見せてみろや!」

「行くぞ」

 

 

空亡と司狼は同時に地面を蹴った

 

 




司郎の口調ムズイ


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第三十三話

司狼と空亡の拳がぶつかり合う、空亡は司狼の拳の硬さは、鉄ほどだと知る。直撃したら骨は拉げるぐらい威力はあるだろう。空亡は出来るだけ避けようと考えたが、直ぐにその考えを否と切り捨てた。この戦闘は自分を試すといった。ならば避けるなんてせずに殴りあった方がいいだろう。

 

「そう言えば聞いていなかったな、司狼お前は何の鬼だ?」

「余裕だな。まあ俺の種族は鉄鬼て言うんだわ、体が馬鹿みたいに硬いし、固有特性として鉄を扱う事に長けているそんだけだ」

「聞いてこと無いな他にはいないのか?」

「しらね、滅んでんじゃねえか。俺にはどうでもいいが。まあ今は殴り合おうや!」

「そうだな!」

 

空亡は再度拳を振るい司狼もそれに合わせてくる。空亡は司狼の腹に一撃を入れ、司狼はそれに笑いながら拳で答える。鉄のような腕で頭に拳が入る。脳が揺れたが空亡はそれでも笑った。自分は能力に頼り切っていたことを確認した。なら今は経造に教わった技を改良したものでやるしかない。

 

「ありがとう司狼」

「なんだ空亡、被虐趣味でもあるのか?」

 

司郎はそう空亡に冗談を言った。

 

「違うぞ。この空間で初めて、自分が能力に頼り切っていたことを、知れたからな」

「そうかい、それならいいぜ、さっきまでじゃつまらなかったからな」

「それはすまなかったな。だが今からは違うぞ」

 

空亡は拳を構える。そして技名を叫ぶ。

 

「破天上弦の月!」

 

右腕に八極拳の攻撃の命中する瞬間に、地面を強く踏みつける発勁の用法。それを乗せ冲捶を放つその一撃を司狼は避けもせず受ける。それは胸板を捕らえ、司狼は吹き飛ばした。司狼は数秒間宙に浮き血を吐き楽しそうに。

 

「なんだ?さっきまでの威力と段違いだぞ?」

「当ててみろよ司狼!」

 

空亡はそう言いって、今度は手のひらで川掌を放つ衝撃が司狼の体の中に伝わり司狼は内臓が破裂する。それでも司狼は笑う、それはそれは何とも楽しそうに。

 

「はははは、いいねぇいいねぇこの俺の体に傷つけたりしたのは、諏訪子かあの時のでかい猿ぐらいだぞ」

「それは嬉しいなまだ倒れないだろ」

「当然!これだけじゃつまらねえだろうがぁ!」

「そうだな、これで終わるなんて俺が許さない!」

 

数分間空亡達はも遠慮なく殴り合っている。周りに血が飛び散って服は破れたり空亡は腹の骨が折れていた司狼は内臓が何個か潰れている。司狼は限界ながらも笑いながラ愉快そうに。

 

「そうだ丁度いい。空亡溜まっているもの全部吐き出せよ」

「溜まっているものだと?」

「溜まっているんだろ、百年間。俺には分かるぞ、全部話せよ」

 

そう言われ空亡の感情は溢れてきた。殴り合って、司狼は悪い奴じゃないと知ったのか。今なら吐き出せると理解できたのか会ったばかりの司狼に、話始めた。

 

「なあ俺は何でまだ生きているんだろうな」

「はん、どうした?」

「司狼俺は弱い。椛の時に話して少し楽になったが。百年間毎日思うんだ。何で母禮様が此処に無いんだろうな、俺が死ねば、母禮様は生きていたのか?それで焔龍と焔狐は悲しまなかったのか、答えてくれよ司狼」

 

空亡は今にも崩れそうなほどの弱い声で司狼に言った。その言葉で司狼全て悟った

 

「そうゆう事ね。つまり空亡、お前は後悔しているだろ、俺は何があったしらねえ、だが一つ言えることはあるんだわ、お前はそのお蔭で今があるんだろ、過去を忘れろとは言わない。けどなお前にはその焔龍と焔狐って奴がいるんだろ、そいつ等はお前が死んで悲しまないのか?」

 

司狼はそう言って純粋な疑問言った。空亡はそれを否定する。

 

「悲しむだろうな、焔龍達はこんな俺を気遣ってくれる。何でこんな事に気付かなかったんだ」

「そうだろ聞く限りじゃ、お前たちは壊れてるんだわm、誰一人でも欠けたら崩れてしまう、多分誰が死んでも変わらなかったと思うぜ」

「ありがとな司狼、楽になった」

 

空亡は吹っ切れた、今までの重りが全て無くなった訳ではないが今までよりは軽くなった。空亡は司狼に笑いかける。

 

「なあ司狼」

「なんだ空亡?」

「俺とさ、友になってくれないか?」

 

友になってくれ、空亡はそう司狼に言った。空亡は自分でそう言ったのは初めてだ。それに司狼は茶化すようにして笑った。

 

「物好きだな空亡、角が折れた鬼だぞ俺は」

「そんな事関係ないだろ、俺はお前の友になりたい。初めてなんだ。友になりたいと思った奴は」

「いいぜ、お前といると楽しそうだしな。ダチになとうや」

 

司狼は傷だらけの体で答える。

 

「ははは、なんか笑えて来るな」

「ああ俺もだ。今は気分がいい、ダチができるってこんな気分なんだな」

 

空亡と司狼は共に地面に倒れる。二人は流石に体限界だ、それもそうだ空亡は骨が折れているし。司狼は衝撃をもろに内臓に喰らっていくつか破裂してる。体なんてもう動かない。司狼は大極を閉じ世界は戻る。全ての能力が否定される世界が消え、二人の傷は治り始めた。空亡は自分の腕を折って司狼に渡した。司狼は不思議そうに。

 

「なんだ空亡腕なんか折って、喰えってか?」

「喰え、その方が傷が速く治る」

「ありがとさん、貰うわ」

 

司狼は腕の肉を齧り始める。ぐちゃぐじゅ、と嫌な音が響く。一口食べる度に司狼の傷は治る。司狼は笑い出した。

 

「なんだこれ薬かよ、この肉。傷が治っちまった、後はお前が喰えよ」

「全部司狼が喰え、俺が喰っても効果がない」

「そうか?なら全部貰うわ」

 

そんな話をしているうちに空亡の傷は治っていた。それに司狼は愉快そうに言った

 

「空亡お前治るの速いな俺結構本気で殴っただぜ」

「それは酷いな俺も本気で殴ったが」

「お前もじゃねえか」

『ははははは』

 

空亡と司狼は同時に笑い出すそんな庭に諏訪子が入って来る。諏訪子は二人を見て聞いてくる。

 

「二人共何笑ってんの」

「いやな空亡とダチになってな、ダチなんて出来たの初めてだで新鮮なんだわ」

「本当!司狼に友達が出来たの!?今日は早織に赤飯炊いてもらわなきゃ!」

 

諏訪子は子が何かした時の様にはしゃいでいる。司狼は鬱陶しそうに叫ぶ

 

「うっせえな!ババア、いい歳こいたババアがはしゃいでるんじゃんねえ」

 

そう叫んだ司狼は地面から土で出来た拳で打ち上げられる。飛んでいる、司狼に土で出来た腕が伸び、がっしりと掴まれギシギシと悲痛な音が響く。

 

「おいババア離せ、洒落にならねえ」

「誰がババア?拾ってあげた恩も忘れて、ねぇもっかい言ってみてよ。私の聞き間違えかもしれないからさぁ」

 

諏訪子の後ろには蛇が見えるような気が居したそれどころか視認できる程の神力が溢れている。空亡は冷や汗をかく。諏訪子にババアとは言わない事にしようと誓った。司狼は腕の中で踠き続け未だ暴言を吐く。

 

「いいから離せよババア」

「カチンときたよ、空亡今から司狼と話があるから、ちょっと外に出ててね」

 

司郎は流石に不味いと気づいたのか空亡に助けを求めた。

 

「空亡助けろ、流石にこれはやばい!」

 

諏訪子は空亡に、人を殺せそうな視線を向けた。空亡はこれは危険だと悟り司狼に心から謝った。

 

「すまない司狼……俺は無力だ」

「おい!諦めるなよ!ちょまたすけ」

 

空亡は鍛冶屋を出た。数分後悲鳴が周りに響く。外に居た人や妖怪にも聞こえたが、何時もの事なので特に気にせず日常の一部と化していた。空亡が外に居ると遠くから焔狐が走ってくる。

 

「空亡殿ーなぜ外に居るのですか?」

「焔狐か今は中に入るのは駄目だ」

「どうしてですか?」

 

焔狐は頭に疑問を浮かべている。そしてそのまま数分待つと、血に濡れた諏訪子が司狼を持って出てきた。諏訪子はとても笑顔で空亡を迎える。

 

「終わったよー空亡、あれ焔狐も居たの?」

「はい諏訪子殿、それよりその血は?」

「何?」

 

諏訪子の声は恐ろしかった。血に濡れているのにすごく陽気な声で言ったからだ。それに焔狐は謝ってしまう。

 

「何でもありません諏訪子殿!」

「それならいいよーじゃあ社に戻ろうね」

「諏訪子、司狼は?」

 

諏訪子は又も、笑顔で言った。

 

「これの事?気にしないでいいよー速く戻ろう、ね」

「ああ分かった」

 

空亡は今の諏訪子は怒こった母禮並みに、恐ろしく感じた。そのまま諏訪子司狼を引きずり社の戻っていった

 

 

 

 

 




空亡に友が出来ました!それと司狼と諏訪子は何があったんでしょうね。(¬д¬;) 


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第三十四話

短め


諏訪子はまだ司狼を持ち引きずっている。その後ろに空亡達は着いて行くが会話はない。諏訪子が笑顔なのが何とも空亡と焔狐は怖いのだ。諏訪子の雰囲気は何も聞くなと言っている様だった。空亡達はそのまま社に着いた。早織が迎えてくれたが、倒れている司狼を見ると近づいて行き。

 

「司狼兄、起きなさい!」

 

そう言って司狼の上に乗り引っ叩いた。司狼はそれにたたき起こされてしまう。

 

「ごはっ!何があった!?てか早織か」

「起きましたか司狼兄、社が寄汚れるのでく立ってください」

「それより何で俺は此処にいるんだよ空亡教えろや」

 

空亡は諏訪子の視線を受けていて、正直に話したらやばいと直感が告げている。空亡は心の中で謝りって、誤魔化すことにした。

 

「俺との傷が響いたんじゃないか?急に倒れて心配したぞ」

「そうか?まあそのぐらいしかないしな」

 

司狼は空亡の言葉を信じたようだ。

 

「それで空亡で誰が俺を運んだんだ?」

 

司狼はそれが気になったようだ。空亡はそのことはそのまま、伝えて大丈夫だろうと考え、司狼に伝える。

 

「それは諏訪子が運んでくれたぞ」

「なんだ諏訪子か。ありがとな諏訪子」

「そうだよ司狼感謝してよね」

「諏訪子殿……」

 

司狼をこんな風にした本人に司狼は礼を言った。空亡は何と言っていいのかわからない、焔狐も同じ気持ちなようだ。

 

「そうだ早織、今日は赤飯だよ司狼に友達が出来たんだ!」

「本当ですか!?司狼兄ですよ。頑固で快楽主義者な」

「それが本当なんだよ!空亡と友達に為ったらしいんだよ」

「そうなんですか?空亡さん」

 

空亡はそう聞かれなんだか、恥ずかしくなった。

 

「そうだが、そんなに喜ぶことなのか?」

「そううですよ!だって司狼兄はずっと俺は一人でいい!なんて言って、友達なんか居なかったんですよ!」

 

早織興奮しているいるようで口調が崩れている。興奮したまま早織は続ける。

 

「私が生きている十六年間。ずっと一人だった司狼兄なんですよ!」

「馬鹿早織!俺の事を言うんじゃねえ!」

 

司狼はとことん哀れだ。空亡は何度目か分からない心の中で合掌をした。

 

「そうだ早織、そろそろお腹すいたから、食事の準備よろしく」

「了解しました諏訪子様、すぐに準備いたしますね」

 

そう言って早織は上機嫌で台所に向かった。それに諏訪子も私が見てるって言って、着いてってしまった。

 

「もう餓鬼じゃねえんだが、仕方ねえな」

 

司狼はそういうが満更でもなさそうだ。空亡達はは達は朝に食事を取った部屋に向かった部屋には既に焔龍が居た。

 

「ん……空亡……焔狐……遅い」

「すまない焔龍遅くなった」

「すみません焔龍殿」

 

空亡達に遅いと言うがさほど気にしていないようだ。空亡達は各々座り食事を待つ。

 

「誰?」

 

焔龍は初めて見る司狼にそう言った。

 

「俺か?俺は司狼空亡のダチだ。お前が焔龍か?」

「そう……空亡……友達?」

 

焔龍は空亡に友が出来たのが信じられないようだ。

 

「本当?」

「そのようです焔龍殿」

「そう……なんだ……空亡に……友達か……嬉しいな」

 

焔龍は自分の事の様に喜んでいる。そして司狼に聞く。

 

「それで……何を……したの?」

「どうやってダチになったかって?殴り合っただけだよ」

 

そう言ったら瞬間的に殺気が二人から溢れだした。

 

「空亡殿と殴り合ったて、あはは殺しますよ」

「空亡怪我はない?」

「こわっ空亡なんか言ってくれ」

 

司狼は全く動じす空亡に笑いながら、助けを求める。

 

「司狼は悪くないぞ、司狼のお蔭でいろいろ吹っ切れたからな」

「そうなの……司狼」

「おいおい空亡の事なら信じるのかよ、まあいいけど」

 

吹っ切れた。その言葉を聞いて焔狐は気になった

 

「空亡殿ちょっと早織殿を手伝ってきてください」

「分かった焔狐行ってくる」

 

空亡はそう言われ、台所に向かった。空亡が居なくなると、焔狐は司狼に問いただす。

 

「それで司狼殿空亡殿と何を話したんですか?」

「これは伝えた方がいいから、言うぜ」

 

司狼は庭であったことを全て伝えた。

 

「空亡殿……そんなに思い詰めていたなんて……」

「空…亡……空亡が……居なくなっても……意味ないんだよ……」

 

焔狐は自分を責め焔龍は泣きそうになっていた。司狼は二人を慰める。

 

「うじうじするんじゃねえよ、空亡を支えるのはお前らだろ、お前らが弱気になってどうする。まったくなれないことは言うんじゃねえよな、はずいわ」

「司狼殿そうですね」

「そう……だね……私達が支え……るんだ」

 

焔龍達はそう決意を固める。司狼はそのまま空亡と友に為った時から考えていた事を言った。

 

「それによ、俺もお前たちに着いて行っていいか?」

「何故ですか?」

「俺は退屈なんだ、大抵の事が出来ちまう、だから鍛冶を始めた。それだけじゃたりねえ、空亡と居るとさ未知が見れそうなんだ」

 

司狼はそう焔龍達に頼んだ二人の答えは決まっていた。

 

「私はいいですよ司狼殿、一緒に行きましょう」

「私も……行こう」

「空亡殿は良いっていうでしょう」

「そう……だね」

「そうだな彼奴なら言うだろうな」

 

そう会話を会話を交わしていると。外から足音が聞こえる。そして諏訪子が入ってきた。

 

「皆ー出来たよー」

「おせえぞ諏訪子、腹減った」

「すみません司狼兄量が多くて」

 

空亡の姿がそこにはない、それに焔龍は疑問を抱く。

 

「空亡……は?」

「今空亡とその眷属に運んでもらてっるの」

「私も運ぶって言ったのですが」

 

そう早織が言うと、人型の怪物が料理を運び入ってきた。怪物は料理を置くと消える。次々と運ばれては怪物は消える。空亡が最後に刺身を持って入ってきた。

 

「皆準備できたぞ」

「じゃあ食べようよ皆」

「そうだな、食おうぜ」

「ですね諏訪子殿」

 

空亡達はそう言って食事を開始した。焔狐は我先にときつねうどんや稲荷ずしを頬張り。焔龍は肉を食べ、いつの間にか居なくなっていたルーミアが空亡の首筋に噛みつき。それを笑いながら見る司狼とミジャクジ。此処に混沌が広がっていた。

 

「手か金髪の誰だよ?」

「私?私は一緒に行こうとしたんだけどやっぱ明るい所って駄目ね、だから茶屋で休んでたのよ、お金はあるしね」

「そうかい何時から居たんだ?」

 

司狼は全く築けなかったので聞いた。

 

「空亡が部屋に入る少し前よ」

「気付けなかったぞ」

「気配なんて出すわけないじゃない」

「すげえな」

 

そんなこともあり食事は終わった。空亡達はそのあと温泉に入る事になった。男湯に空亡が入っていると、一緒に入っている司狼がにやけながら提案する。

 

「空亡覗こうぜ」

「覗く?何をだ?」

「そんなん決まっているだろ女湯だよ」

「嫌駄目だろ」

「いいじゃねえか、俺は逝くぜ」

 

司狼はそう言って風呂を飛び出し壁を駆け上がる。

 

「見える!」

「やっぱりやったね司狼ー」

 

諏訪子の声が聞こえ壁から巨大なうでが生え司狼は捕まった。

 

「僕の予想通り!」

 

其処のは腕をピースしたミジャクジが居た。焔龍達の声が聞こえる

 

「ミジャクジ殿の言った通りでしたね」

「空亡に……悪影響」

「気を付けましょう焔龍殿」

「私は空亡ならいいわよ」

 

そんな会話があり、気絶した司狼を持ち、空亡は温泉から出た。司狼は説教され、空亡は部屋に戻り焔龍達と寝た。この日から次は何年か経つ

 

 

 

 



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第三十五話

「なあ空亡助けてくれ」

 

司狼は大地の腕に掴まれていて放置されていた。その横に空亡が居て、司狼は助けを求める。

 

「無理だ司狼」

「なあ空亡もう体の感覚が無いんだが」

 

司狼はかれこれ二日程このままだった。

 

「お前が悪い」

「たく、あのババア。ただ妖怪の群れに跳びこんだだけじゃねえか」

「それだけならいいが、早織を連れて行ったからだろ」

「あれは早織と居たら妖怪が現れたのが悪い」

 

司狼はそう言い訳をした。これは事実だが早織に危害が及んだ事で諏訪子は冷静ではなかった。其処に早織が現れる。

 

「ごめんなさい司狼兄、私が外に出たいって言ったばっかりに」

「別にいいだがよ出してくれねえか?」

「それは無理です諏訪子様でないと解けません」

「空亡出来るだろ」

「この硬さだと地震を使うか破天を使うかしかないぞ」

 

それは聞いて司狼の顔は青くなる。使われた時の事を想像したからだ。

 

「おいおい、それりゃねえぜ空亡、使うなよ、俺の体が砕ける」

「分かっている、司狼を殺すわけないだろ」

「流石親友、つーかよ速く諏訪子の奴帰らないのか?」

 

司狼も流石に四時間も動けないでいて退屈していた。そんな時ミジャクジがやって来る。

 

「おおー司狼まだそうしていたの、僕は尊敬するよ」

「呑気なこと言ってんじゃねえ!つかよ空亡腐毒使えばよくないか?」

 

司狼は完全に頭に残ってなかったことを言った。空亡もそれは盲点だったと考える。

 

「そう言えばそうだな使うか」

「加減間違えるなよ腐って死ぬのは嫌だぜ」

「分かっている」

 

空亡はそう言いい腕から腐毒を垂らす。かなり加減して垂らした毒は、嫌な臭いを放ち溶け始める。

 

「やっと出れた、マジで体いてー」

 

司狼は伸びをして体を解す。

 

「てか諏訪子どこ行ってるんだっけ」

「確か高天原に呼ばれているらしいぞ」

「そだっけ」

「そうだ」

 

空亡がそういうと、丁度誰かが走る音が聞こえてきた。

 

「空亡!司狼!早織!大変だよ!ミジャクジも居たの!?」

 

諏訪子は慌てながら大声で駆けてきた。

 

「如何したんだ諏訪子」

「なんだ諏訪子」

「何かあったのですか諏訪子様?」

「なーにー諏訪子、面白い事ー?」

 

諏訪子は急いできたようで息が切れている。

 

「はぁはぁ大変なんだよ」

「一旦落ち着け諏訪子」

「そうだぜ息ぐらい整えろや」

 

そう言われ諏訪子は息を整える。

 

「ありがと、それよりこの国と大和の国が戦争することになっちゃた」

「は?嫌々冗談言うんじゃねえぞババア遂にボケたか?」

「司狼嘘じゃないよ」

 

諏訪子はババアと言われても無視でいる程焦っていた。

 

「諏訪子、何があったか話してくれ」

「分かったよ空亡。えっとね、高天原に行ったら、いきなり国の信仰を渡せって言われて、拒否したら戦争だって相手が言ってきて、断れなくて。断ったら攻める……からって……」

 

諏訪子はそう言って泣き出してしまった。早織っは諏訪子を慰め空亡は静かに怒りを貯め、司狼から殺気が漏れる。

 

「へえー成程ね、ババアを泣かせたのかその糞神共。なあ空亡、ちょっと用事が出来た行こうぜ」

 

司狼はそう司狼に言った空亡はその意図にすぐに気づく。

 

「分かった司狼、焔龍を呼ぼう。その方が速く着く」

「了解たのむわ」

 

空亡は焔龍を呼ぶすると数分も経たないうちに焔龍が現れる。

 

「何……空亡?」

「焔龍頼む、俺と司狼を高天原に連れてってくれ」

「分かった……任せて」

 

焔龍は龍の姿に戻る。空亡達をのせ空を飛ぶ。凄まじ飛行速度で後二時間程で高天原には着くだろう。諏訪子は泣き止み。周りを見渡す。

 

「あーうー空亡達は?」

「諏訪子様少し出かけるそうです」

 

其処に焔狐とルーミアがやって来る。

 

「諏訪子殿焔龍殿を知りませんか?いきなり部屋から出てしまって」

「もう焔狐、朝は起こさないでよ。まだ寝ていたいんだけど」

 

ルーミアは未だ眠そうにしている。諏訪子は焔龍の事は知らないので素直に答えた。

 

「知らないよ早織知ってる?」

「はい諏訪子様、焔龍さんは空亡さんと出かけてますよ」

「そうですか早織殿、空亡殿とお出かけ、私も誘ってくれればいいのに」

「焔狐空亡は何処なのお腹すいたわよ」

 

ルーミアは寝ぼけていて場違いな事を言っている。

 

「ルーミア殿空亡は今出かけてきますので待ってください」

「分かったわ、速く帰ってこないかしら」

 

 

空亡達は空を飛んでいる。暫く飛んでいると巨大な大和の国が見えてくる。

 

「見えてきたぜ空亡」

「嗚呼、行くか。焔龍突撃してくれあのでかい城だ」

 

空亡の声で焔龍は城を目指す。。空いている部分に入る。其処には何人もの神が居た。

 

「お前達何者だ!?」

「此処を大和の国と知ってのことか!」

「妖怪風情がこの国に何の用だ!」

 

神は神力を放ちを威嚇する。司狼は全く動じない。

 

「はいはい、そうゆうのいいから、で?うちの諏訪子泣かしたの誰だ?」

 

司狼は恐ろしく低い声で言うその後ろには視認出来る程の妖気の塊が、両面の鬼、両面宿儺を映し出す。神は察したこの妖怪は一刻も早く滅さなければいけない。瞬間、司狼に向けて一本の柱が飛んでくる。司狼それを避けきれずに直撃した。

 

「司狼!」

「無事だ空亡。だがこんな威力、俺じゃなきゃ即死だぞ」

 

足音が聞こえるゆっくりと此方に近づいてくる。声が聞こえた。酷く愉快そうな声だ。

 

「なんだ?酒を飲んでいたら変な妖怪が来たぞ?」

 

その声の主は背中にしめ縄を付け紫色の髪をした。押し潰されそうな程の神力を放つ女だった。

 

「なあ妖怪なぜここに攻めてきた?答えなよ」

「べっつにー、おたくら糞神がうちの国に攻めてくるて言うから、見に来たけぜ」

「確か近々戦争するって話があったがそれは諏訪の国が攻めてくるって話だが?」

「なんか違わねーかこっちに攻めてくるって話だったぜだよな空亡」

「だよな、信仰を渡せと言われたらしいぞ」

 

空亡達が聞いた話と女の話は噛み合わない、そこで女は近くの神に聞いた。

 

「おいそこの神、話が違うぞ。私は諏訪子の国が、ミジャクジの神を使って攻めてくる話を聞いたぞ」

「神奈子様、妖怪の言うことを信じるのですか!?あの国は妖怪風情と暮らしているのに信仰が多いのですよその信仰をこの国に明け渡すのは当然で」

 

そこまで言うその神は司狼に殴り飛ばされた。墓穴を掘り自分から暴露したかだ。

 

「もういいぜその神が腐っているのは分かった、どうにかならねえか」

「無理だ、もうこの国の兵士は戦争の準備をしている」

 

神奈子は本当に申し訳なさそうに謝っている。其処に水の斬撃が飛んでくる。空亡はいち早く察知して炎で水を蒸発させる。

 

「神咒神威・修羅剣神」

 

その声が聞こえ空亡はは直感的に技を発動させる。

 

「神咒神威・無間焦熱地獄」

 

此処に母禮の技を発動させる。此処一帯が焦熱地獄と化した。神奈子以外の神は暑さでやられそうになっている。神奈子は小さくつぶやく。

 

「これは母禮の技」

 

修羅剣神それを使った声の主は現れる。その身に圧倒的な神力を纏いながら

 

「妖怪が攻めてきたと聞き、懐かしい気配を感じて来てみれば。久しいな空亡」

「素戔嗚か?いやこれを使えるのは素戔嗚だけだな」

 

其処には素戔嗚が居た。空亡はこれから起こる事を察し、笑みがこぼれる。

 

「久しぶりだな素戔嗚。さっきまでの話聞いていたか?」

「話とはなんだ?」

 

空亡は一から説明した。素戔嗚事情を把握して。

 

「空亡そういう時は力を示せばいい、やるぞ」

「まあ予想通りだな、百年ぶりだな」

「嗚呼姉様が死んで百年ぐらいか、母禮姉様の力、何処まで使えるか見させてもらおう」

 

戦闘狂二人はすでに、この場所で戦おうとしている。幸い二人準備できていた。空亡の闘気に合わせる様に炎はよ熱くくなっている。空気中の水分が蒸発しし始める。そんな時司狼が空亡を殴り、神奈子は御柱で素戔嗚を殴った。

 

「おい馬鹿空亡ここで戦ったら俺が死ぬんだけど」

「素戔嗚様、此処で戦わないでください」

 

空亡達は止められたことで不機嫌になった。

 

「何するんだ司狼」

「そうだぞ神奈子俺は空亡と戦おうとしただけなんだが」

 

二人の馬鹿は戦う気満々だったようで。その二人を司狼たち説得する。結果戦争で二人が戦う事になった。戦争は今更やめられないので。その時に諏訪子と神奈子が一騎打ちして、他の兵士は互いに殺さない様にして。その後ろで空亡達が戦うことに決定した。

 

「こういうことでいいか二人共、戦争もうやめられないからな被害を抑える事にした」

「私もそれでいいからな素戔嗚様もそれで了承してください」

 

そこまで言われて、流石に空亡達も諦めた。

 

「それならいいが空亡もいいか」

「俺も別に構わない」

 

 




そうだUAがもうすぐ5000を達成するので記念にリクシュチュを募集します。
活動報告欄にどんどんリクエストしてください。


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第三十六話

空亡達はこの事を伝える為に、焔龍に乗り諏訪の国に向かう。既に日は暮れており、夕方になっていた。国に帰ると。諏訪子が迎えてくれた。

 

「二人共遅いよ、何処行ってたの?」

「わりい、諏訪子ちょっ大和の国行ってた」

「なんで行ったの」

「お前が泣いたからだよ」

 

司狼はそんな言葉を、恥ずかしがる様子もなく言い放った。諏訪子は照れ隠しなのか司狼を小突いて、小さくつぶやく。

 

「ありがと」

「まあ気にすんな」

「それで何があったの」

 

諏訪子は大和の国で何があったのを聞いてきた。空亡はそれを司狼と説明する。素戔嗚の案でこの戦争を逆手に取り、今回諏訪子の国を奪おうとした神をあぶり出す。素戔嗚は説明した。元々国譲りは、信仰の少ない神を助ける為に、天照が行っていた事だと。それを勘違いした神や悪用しようとした神が居る事を。そうゆう神をあぶり出すために今回の戦争は二柱の神が本気で戦う事を。互いの民を戦わせ最後まで意識が残っていた国の民が一勝だとだと添居最後に空亡と素戔嗚で素戔嗚は大和、空亡は諏訪の国のの戦士として勝ったほう一勝の三つの戦であると。

 

「それなら仕方ないね、でも空亡何で素戔嗚と知り合いなの?」

「素戔嗚は百年前に、共闘したり手合わせしたり、まあ色々有ったんだ」

 

空亡はその時の事を思い出しながら言った。諏訪子は気になったが、今は八坂神奈子の事方が大事だ。

 

「そうなんだ、でも八坂の神と一騎打ちか、あの神の能力は有名なんだよ。私の【坤を創造する程度の能力】八卦の地、八坂の神は【乾を創造する程度の能力】八卦の天、私とは相性が悪いんだよ。何か武器は無いかな」

「諏訪子それなら俺が造るぜ、あの御柱を壊せるぐらいの武器は今開発中だ」

 

司狼は元々新たな武器を造っていて、神奈子様に改良するつもりだ。

 

「司狼それは私が使える?」

「お前が使えなきゃいねえじゃねえか」

「それもそうだね、どんな武器なの」

「それは楽しみにしてろ、二日程で出来る。戦争まで半年それまでに使える様になれよ」

 

司狼はそう諏訪子を激高した。それに諏訪子は元気よく答える。

 

「任せて司狼!私は勝つよ絶対に!」

 

諏訪子はそう決意する。空気を読んで黙っていた空亡は気配を消していた。

 

(此処は喋らない方がいいな)

 

気配を消していた空亡に一人近づく影が有った。

 

「空亡お腹すいたわ、食べさせて」

 

ルーミアが現れ、空亡を押し倒す。そして腹に噛みついた。

 

「ちょっまてルーミア今は空気読んでくれ、喰うんじゃない、司狼達も笑うな。やめろそれ以上は死ぬ」

「やっぱおいしわねもっと頂戴」

「焔龍助けてくれ」

 

空亡は焔龍に助けを求める。瞬間ルーミアの下に二つの炎が襲い掛かる。

 

「ルーミア殿何しているんですか?」

「ルーミア……いい加減に……して」

 

二人からは妖力が溢れ、それはルーミアに向けられている。

 

「何よ?焔龍も食べる?」

「食べない!」

「いい加減してください!」

 

焔龍はそう言って、弓でルーミアを射る。焔狐は薙刀を出しそれに炎を纏わせ斬りかかる。ルーミアは空亡から離れ、闇の盾を出しそれを防御した。空亡はその隙に傷を治す。

 

「死ぬかと思った」

「大丈夫か空亡」

 

司狼はニヤニヤしながら近づいてきた。空亡は流石に洒落にならないといった表情で。

 

「司狼止めてくれよ、痛みは無いがあれ以上は流石に死ぬ」

「わりいわりい、次は止めるわ」

「そうしてくれ司狼」

 

空亡達がそう話していると後ろでルーミアと焔狐と焔龍が戦っていた。

 

「いつも空亡殿を食べないでください!」

「空亡は良いって言ってるわよ」

「今日のはやりすぎです!」

 

薙刀で斬りかかる焔狐を大剣でいなす。焔龍は邪魔にならない範囲で弓を打つ。その全ては闇に阻まれる。空亡は、三人を止める焔龍の弓を取りルーミア達の間に入り止める。

 

「二人共そろそろ戻れ、腹減った、内臓再生したばっかだから、何もない」

 

空亡は腹の中身を喰われたので、何も無くとても腹が減っていた。其処に早織が現れ。

 

「空亡さんすぐ用意しますね」

「早織今日はなに?」

 

諏訪子も腹が減っており早織に今日は何かを聞いた。

 

「生姜焼きですよ」

「やったー」

「俺の分もあるよな」

「ありますよ司狼兄」

 

空亡達はそうして社に戻り食事を終えた。次の日になり空亡は司狼の鍛冶屋に来ていた。

 

「なあ司狼どんな武器を造るんだ?」

「空亡予想より早くできるから待ってろ」

 

司狼は鉄を空亡の炎を借りて溶かし始める。型に流し込む。司狼の【否定し封じる程度の能力】で不純物は否定され、消え失せる。本来なら鍛冶は不純物を取り除きながら整形するが、司狼にはそれが必要ない。水で鉄を冷やし型から取り出す。型からは全長10~30cm程度真ん中に穴が開いた円盤が現れた。

 

「一先ずこのぐらいだろ」

「司狼それは何だ?」

「これか?これは戦輪、投擲武器だぜ」

「初めて見るぞ、そんな武器」

「だろうね、俺が思いついたやつだからな、まあここから本番だぜ。今から俺の能力を馴染ませながら外側に刃を付ける」

 

空亡は何故で司狼の能力を馴染ませる意味が分からなかった。

 

「司狼何故能力を馴染ませるんだ」

「あの神の御柱俺を殴っても砕けないって事はかなり硬い、だからこの武器に硬さを否定する属性を付けるのさ」

「なるほどな、それならあれも壊せる」

「だから空亡俺は今から此処に籠るだからよ飯を持ってきてくれないか?」

 

司狼二日は掛かると察しその為の食事を空亡に持ってきてくれと頼んだ。空亡はそれを了承して社に取りに行く。司狼に食事を渡し、空亡は夕方の庭を散歩していた。そしたら湖を泳いでいるミジャクジと出会った。

 

「空亡何してるのー」

「なんだミジャクジかただ散歩しているだけだが」

「僕も一緒に行くー」

 

ミジャクジは空亡に着いて行くことになった。暫く歩いているとミジャクジが話を始めた。

 

「ねえ空亡今回の戦争、誰も死なないだよね」

「そうだそう約束したからな」

「でも誰も死なないなんて、無理だよ」

 

空亡にそう言われミジャクジは安心するが、まだ心は晴れていない。この国の民が死ぬのがとても不安だからだ。空亡はそんなミジャクジを慰める。

 

「無理かもしれない、だけどさそれが叶ったら、夢みたいじゃないか」

「そうだね僕は戦争に出られない、だけど夢見る事は出来るよ」

 

ミジャクジはそう吹っ切れたようだ。そして空亡に笑いかける

 

「ありがとね空亡、僕の話を聞いてくれて」

 

その笑顔は夕日に照らせれとても綺麗だった。それに空亡は照れてしまう。そんな時ルーミアが飛んできた。

 

「空亡そろそろ手合わせするわよ、顔が赤いわね大丈夫?」

「大丈夫だルーミア速行こう」

「頑張ってねー空亡」

 

そんな事もあり時は過ぎていく。諏訪子は戦輪を受け取りその扱い方を覚え。空亡は焔龍や焔狐、ルーミアと戦い、己を高め素戔嗚との戦いを待つ。半年が過ぎた戦争がはじまる、大和の国と諏訪の国の途中にある平原に両者の国の兵士は集まっている。諏訪子が兵士達の前に立って演説をする。

 

「我が国の兵士よ!よく集まってくれた。この戦は我と八坂の神の一騎打ち、その前に。お前達が最初に勝利すればいいこの戦では不殺の誓いがある命を奪うな意識を奪え、それだけでいい」

 

諏訪子はいつもの雰囲気ではなく真面目な口調でそう言った。そんな諏訪子に一人の兵士が諏訪子をちゃかした

 

「諏訪子様、貴方様にそんな口調合いませんよ、何時もの様にしてください」

「やっぱりかーなら言うねみんな死なないで」

『了解しました諏訪子様!』

 

諏訪子はいつもの口調で兵士達に命じた。兵士の士気はそれだけで十分だ。同時刻大和の国も神奈子が演説をしていた。

 

「大和の精鋭よ!武器を持て!しかし殺すな!お前達ならそれが出来ると信じている!お前達も死ぬな!帰ったら宴会を開こう」

『了解神奈子様!』

 

 

大和の民も諏訪の国と同じように士気を高めているそして。諏訪子と神奈子が同時に

 

「皆出撃!」

「皆の者!行け!」

 

『おおおおおおおぉぉぉぉぉぉ』

 

両者の国の兵士が咆哮し一斉に駆ける。これより諏訪大戦の開幕だ!

 

 

 

 

 

 




活動報告にてUA5000記念のリクエスト募集しているので、気軽にコメントしてください。


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第三十七話

兵士達は各々駆けだす。諏訪の民は国を守る為に大和の民は勝つために、戦争は始まった。

 

「行け!お前達殺すなよ!」

「了解!」

 

諏訪の民は空亡の人型達との半年間殺さずの戦いを訓練してきた。大和の民も殺さない為の訓練をしていた。準備は整っているあとは互いに勝つだけだ武器は全て木で出来ており。相手を殺さない様に徹底してある。

地を駆ける諏訪の民と大和の民はは木刀を持ち攻防を交わす。また一人また一人倒れていく。それを見守るある所では弓を持った兵士が弓を射る。それを頭に喰らい倒れる兵士もいる。諏訪子の為と刀を振るう兵士が居る。何千の兵士がそれぞれの思いを持ち戦いを続ける。

 

「弓を射れ!通すな、気絶させろ!」

「避けろ潜り込め!」

 

この一戦目は日が沈むまで続くそれまでに残っていた数が多いか、決めた大将を倒した方が勝利だ。

 

「空亡殿や諏訪子様の為にこの戦勝つぞ!」

 

諏訪の兵士達は、空亡と諏訪子に負担掛けないように、この戦を勝ち取らなければならい。

 

「神奈子様に勝利を捧げろ!」

 

神奈子の民は全てを注ぎ武器を振るう。負けられない自分達は大和の民だぞ他の国に負けなどしない。そう決意している。数刻が過ぎ残る兵士も減っていた。日が暮れはじめ遂に互いの大将が顔を合わせる。

 

「諏訪子の国大将、晋助」

「大和の国大将喜亮」

『いざ参る!』

 

二人は同時に地面を蹴った。剣を合わせ。腹を蹴り上げ。殴り合う。持ち手で頭を殴り、意識を奪おうとする。日が暮れる直前ま戦い続け最後に立っていたのは晋助だった。

 

「勝ったぞ!一戦目諏訪の勝利だ!」

 

晋助がそう雄叫びを上げ一戦目は終わった。意識の残った諏訪の兵士は勝利を噛みしめる次は諏訪子と神奈子だ。二人は平原近くの湖に向かい合っていた。

 

「最初は私達の勝ちだよ、もう後がないんじゃない?」

「違いない、だけど私が負けるはずないだろう私は戦神、八坂神奈子だぞ」

「私だけなら負けていただろうね。だけど私に皆が居る。司狼に託された武器がある。だから負けやしない!」

「ぬかせ土着神!その程度で私に届くと思うな!!」

 

その神奈子の怒涛に合わせ御柱が何本も現れる。それはこの湖を囲むように突き刺さる。

 

「行くよ!八坂の神!」

「来い土着神!」

 

神奈子は宙に浮き、手始めに千を超える御柱を召喚する。それが雨粒の様に諏訪子に降り注ぐ。一本だけで凡百の生物は押しつぶされる程の巨大さ、それを諏訪子は大地を操り壁を作り防御した。防御した以外の御柱だけで、地形は変形し元の原型など、留めていない。煙が晴れ其処には朽ち果てた土の壁、変わり果てた地形、諏訪子の姿は見えない。神奈子は確信している。これでやられる神じゃないと。そう考えている神奈子に近づく影があった。

 

「其処だろう、ばれているよ」

「よくわかったね、だけどこれは避けられないでしょ」

 

諏訪子は此処まで能力を使い、神奈子まで土の道を作り接近した。そのままさらに道の形を変え、巨大な拳を創り殴りかかるそれを止めるは、神奈子の後ろに浮いていた四本の御柱、拳の一撃を完全に防御した。

 

「避けるまでもない」

「やっぱ効果ないか」

 

諏訪子地に墜ちようとする拳に飛び乗り、それを砕き足場を作る数多の足場が出来てそれは全方向に張り巡らされる。神奈子は全方位からくる土の塊を避けながら諏訪子に御柱を飛ばす。

 

「当たらないよ」

 

諏訪子は四方に張り巡らされた足場を使い御柱を避ける。そして諏訪子は懐から二つの鉄の輪を取り出した。それを神奈子に投げつける。高速で投げられたそれを神奈子は今までと同じように御柱で防御するが御柱が斬り切り裂かれる。

 

「何!?」

「これなら効く、まだまだ行くよ!」

 

諏訪子は続けざまに戦輪を投げる。神奈子はこれはまずいと察して避けることも視野に入れた。神奈子は雨を降らせる。雷雲が発生し諏訪子に向かい雷を振らせる。諏訪子は最初は避けていた雷の性質を思い出した。宙に向けて戦輪を投げ雷を吸収する。投げた戦輪は諏訪子に向かい戻るように司狼によって造られた。雷を帯びた戦輪は地面に刺さり諏訪子の手に戻って来る。

 

「少し痺れるね、でも空亡の雷に比べたら問題ないよ」

 

諏訪子は戦輪を扱う為に空亡とずっと練習していた。何回も空亡の技を耐え、何度も襲う雷や氷に炎、戦輪はそれらに耐性を持っている。司狼が半年間の間で寝る間も惜しみ徹夜で改良を重ねたからだ。この戦は茶番に見えるだろうだが二柱の神には関係ない。諏訪子もこれに勝てば、他の神に何も言われなくなる。何より諏訪子は負けるつもりなどない。此処まで頑張ってくれた国のた兵士や今まで手伝ってくれたみんなの為にも。

 

「私の雷があまり効かないのか、だがこれならどうだ?」

 

神奈子は腕を上げる其処に雷が集まり始める。それは巨大さを増していき一本の槍となる。それは青白く発光しバチバチと嫌な音を出している。周囲の雨が一瞬で蒸発する雷槍に諏訪子は冷や汗を流す。これは危険だ受けきれない。そう直観が告げている。槍は未だ巨大さを増し神奈子の山ほどの大きさになった。そしてそれは放たれる。神速の雷槍は諏訪子に向け一直線で向かう。諏訪子は一瞬で思考する。

 

(避ける?不可能。打ち消す不可能、ならば逸らす)

 

諏訪子はそう結論付け大地の拳で槍を殴りつける。槍は逸らされ湖に直撃する。圧倒的破壊音の蒸発する音。湖はただの巨大な穴となった。神奈子はそれを見てすごく愉快そうに笑い。

 

「これを避けるか!何とも愉快、初めてだぞこれを放生き残った強者は!」

「それは嬉しいな次は私から行くよ」

 

諏訪子は戦輪を投げつける。神奈子は褒美としてこのぐらい受けてやろうと敢て避けなかったしかしそれは間違いだった。神奈子の凄まじく削られる。他の神より神格が大きい神奈子は問題がないと言えば嘘になるが、下級の神なら一瞬で消滅するぐらいの力はこの戦輪は持っていた。神奈子はそれすら愉快と笑う・

 

「面白い!その武器は神格を否定するか!嫌違うな、それは否定の力だろう諏訪湖以外の全ての否定それがその武器の本質だ」

 

神奈子はこれまでの戦闘で、この武器の本質を見抜いていた。諏訪子はさほど驚いていない

 

「よくわかったねこれは司狼の能力を使って作られた否定の武器でけど分かったところで勝てるの?」

「笑わせるなその程度逆境!常世の神の時に乗り越えたぞ」

「そう言えば大和の神は常世の神の討伐をしたんだよね」

「その時は素戔嗚様が居なくて私一人で討伐した様なものだが」

 

神奈子は自慢げにそう言った。諏訪子はそうだったんだとしか考えておらず、余り興味はなさそうだ。

 

「まあ続けようよ」

「そうだな」

 

諏訪子がそう言い再開した。諏訪子は先程の雷槍が放たれる前に勝負を決めるつもりだ。あの技は溜めが長い、その隙を突けば勝てるかもしれないと、勝機が諏訪子には見えてきた。神奈子はまた溜めに入る徐々に集まり形を作る雷槍それに諏訪子は戦輪を投げ下からさらに大地を操り土の槍放つ。神奈子に向かい放たれる槍と戦輪。それを神奈子は、溜めを中断して御柱を放つ。ぶつかり合う槍と柱、槍は破壊されたが戦輪は御柱切り裂き諏訪子の下に戻る。

 

「駄目みたいだね」

「私が易々隙をさらすと思うか?」

「だろうね」

 

神奈子は会話中に雷槍を溜め終わる。第二槍が放たれ知れは諏訪子に直撃した。

 

「終わりか?」

「まだだよ!」

 

諏訪子は土人形を創りそれを囮としていた。神奈子に接近して接近して戦輪を放つ、それは神奈子の腹に吸い込まれ腹を切り裂いた。

 

「獲った!」

「まだだ!この時を待っていたぞ!」

 

神奈子は戦輪を掴む神格を削りながらもそして、植物を腕に纏わせ湿気で鉄を錆びらせた

 

「え?」

「隙を見せたな!」

 

神奈子は御柱で諏訪子を叩き落としす。諏訪子は地面に叩きつけられて血反吐を吐く、それでも諏訪子は立ち上がろうとする。

 

「まだだよ……私は勝たなきゃ……みんなの為にも!」

「もう終われ、このままでは死ぬぞ」

 

諏訪子は満身創痍ながらも神奈子に向かう。土を集め巨大な蛇を出現させた。その蛇は口に諏訪子の最後の神力を注ぎ込む。

 

「これで……倒れて!」

 

しかしそれは放たれる事はなかった。

 

「終わったかこんな神は初めてだな」

 

蛇が崩れていく諏訪子は立ったまま気絶していた。この事で神奈子は宣言した

 

「この一戦私達の勝利だ!」

『おおおおおおおぉぉぉぉぉぉ』

 

大和の民は雄たけびを上げ勝利を唄う。その時諏訪子が前に倒れた。其処に司狼が支える

 

「よくやったな母さん、あとはゆっくり休んでくれや」

 

司狼は穏やかな顔でそう言った・諏訪子は意識が回復したのか

 

「こんな時にだけ言わないでよ司狼自分立てるよ」

 

諏訪子は司狼に支えれながらも何とか立ち上がり。

 

「そっか……負けちゃったのか悔しいなぁ、皆……ごめんね」

 

諏訪子はそう言って悔しそうに涙を流す。其処に諏訪の兵士がやって集まり。晋助が言った。

 

「諏訪子様貴方はよくやってくれました。誰も貴方を責めませんよ、今は休んでください」

「皆……皆」

「そうだぜ諏訪子今は休めや」

「そうだね司狼今は休めませて貰うね」

 

諏訪子はそう言って司狼に寄りかかり寝始めた。

 

「あと一戦、空亡任せたぜ」

 




次回素戔嗚対空亡!明日か明後日の十一時時までには出せると思います


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第三十八話

空亡と素戔嗚は兵士達が戦った平原で向き合っていた。風が吹き互いに髪が揺れる。神奈子の勝利の雄叫びは聞こえた。次は二人の番だ。空亡は素戔嗚に話しかける。

 

「諏訪子達は終わったみたいだな、素戔嗚俺は勝たせてもらうよ」

「空亡それは俺の台詞だ、俺も負けないぞ」

 

空亡達はそう会話して。空亡は札から大鎌を素戔嗚は天村雲剣を召喚する。それだけで。

 

「この感じ久しぶりだな空亡」

「そうだな素戔嗚、百年ぶりだ」

 

空亡達は互いに名乗り上げる。百年ぶりに初めて戦った時の様に、それで神力と妖力が周りに溢れ出す空間が悲鳴を上げた。

 

「高天原剣神、素戔嗚尊」

「鬼蛇、宿儺空亡」

「いざ尋常に」

『参る!』

 

まず仕掛けたのは空亡だ。大鎌を素戔嗚に向けて大振りの攻撃を仕掛ける。それに腐敗毒を混ぜ即死の一撃と化す。それを素戔嗚笑いながらも、剣で逸らした。腐敗毒は地に落ち、大地に大穴を空ける。其処はもう草木一生えたこない死の大地と化した。素戔嗚は水を召喚して腐敗毒を広めないようにした。次は素戔嗚だ水の斬撃を視界を埋める程の必殺の一撃を空亡は一瞬で凍結させる。水に斬撃は空中に静止してもう砕けない氷塊と為る。

 

「やるな!空亡!」

「お前も素戔嗚!」

 

空亡は技を使う腐敗毒を固めて出来た。鎧を装着して詠唱を開始する

 

一 二 三 四 五 六 七 八 九十

布留部 由良由良止 布留部

 

血の道と血の道と其の血の道返し畏み給おう

 

禍災に悩むこの病毒を この加持にて今吹き払う呪いの神風

橘の 小戸の禊を始めにて 今も清むる吾が身なりけり

 

千早振る神の御末の吾ならば 祈りしことの叶わぬは無し

 

――太・極――

 

随神相――神咒神威・無間叫喚

 

此処に空亡は叫喚地獄を身に纏う。近くの物が全て死に絶える。空亡は腕が六本になその全てに大鎌が装備されその全てを十字に構える。腐敗毒が其処に収縮され。全てを腐敗させる。波動砲が放たれる。大地を腐敗させ素戔嗚までの道を全て抉る。素戔嗚は本能だけで横に跳び。それを避ける。波動砲は避けたが後ろの大地は全てが死に絶えた。

 

「殺す気か空亡?」

「ぬかせ素戔嗚その程度ですぬお前ではないだろう」

「俺もそうだな次は俺だぞ」

 

 

素戔嗚から凄まじい程の神威が解き放たれるそして天羽々斬と天村雲剣が素戔嗚の周りを踊る。素戔嗚は詠唱を始める。空亡その隙をついて腐敗毒を放つが、二振りの刀に邪魔される。

 

 

我は全てを断ち斬る剣神なり

 

我に斬れない物は存在しなく

 

全て等しく斬れてしまう

 

唯掠っただけでもだ

 

故に問うたなぜ斬れるのかを

 

神は答えた汝に斬れぬ物はないと

 

ならば探そう

 

三千世界神羅万象

 

我に斬れぬものが見つかるまで

 

全てを斬り裂き続けよう

 

――太・極――

 

随神相――神咒神威・修羅剣神

 

 

素戔嗚の体が一振りの刀と化す。これより素戔嗚は行動全てが必殺の斬撃と化す。素戔嗚は手始めに腕を振り上げ勢いよく振り下ろす一瞬で放たれた。巨大な斬撃は空亡の半身を切り裂いた。空亡は痛みを嘆く暇など無くし。己に内包された魂を消費し体を再生させる。新しく生えた半身は違和感があるが問題なく動くだろう。空亡は素戔嗚を倒すために技を変える。鎧を消し別の鎧に切り替える母禮の鎧だ。そして詠唱を始める。

 

かれその神避りたまひし伊耶那美は

 

出雲の国と伯伎の国 その堺なる比婆の山に葬めまつりき

 

ここに伊耶那岐尊此処

 

御佩せる十拳剣を抜きて

 

その子迦具土の頚を斬りたまひき

 

――太・極――

 

随神相――神咒神威・無間焦熱

 

此処に焦熱地獄が展開される。この場所には素戔嗚か空亡以外は近づけない。空亡は女武者を出し。炎と雷の刀で斬りかかる。大陸を切り裂ける刀は全て素戔嗚に向けられた。素戔嗚は攻撃を受ける覚悟で突撃する。素戔嗚の肌は炭化して灰になる空亡の所に辿り着いた時には腕や腹が灰と為り消えていた。それでも倒れない素戔嗚の根性に空亡感服する。

 

「空亡ぉぉぉぉ!」

 

空亡と素戔嗚は至近距離で攻防を交わす。素戔嗚の体は刀になっている殴られるだけで、空亡の体は切り裂かれる。空亡はそれでも炎を出し。雷を放ち、刀で斬る。それが数分続き二人は満身創痍だ。素戔嗚も空亡も視界がぼやける空亡に至っては傷ももう治らない。それでも勝つために二人は戦う。空亡の腕が両腕共切られた。空亡に傷を治す体力は残っていない。

 

「空亡これで終わりだ!」

 

素戔嗚は腕を振りかぶるしかしそれは凍りに阻まれる。空亡は宣言する。

 

「素戔嗚。俺はもう動けないし、傷も治らない。視界もぼやけている。だがな、勝つのは俺だ!!」

 

空亡を氷が包みこむそして詠唱が聞こえる。

 

之は鬼蛇の咒法

 

最愛の鬼

 

母禮との合わせ技

 

此処に焦熱地獄と大紅蓮地獄

 

それを混ぜ合わせ敵を打倒しよう

 

――太・極――

 

随神相――神咒神威・無間氷熱地獄

 

空亡のを包む氷から炎が溢れ出し空亡が中から現れた。片腕は炎となりもう片方の腕は氷で出来ている。角が氷に代わり炎を纏っている。空亡の周りには冷気が漂っていて。空亡が呼吸するたびに近くに氷山が出来る

 

「なんだ?その姿は空亡?」

「これか?これは母禮様の焦熱地獄と、俺の大紅蓮地獄を混ぜた技だ。この姿は為れるか分からなかったからなだが成功した行かせてもらうぞ素戔嗚!」

「まだ強く為るか空亡!俺も楽しいぞ!」

 

空亡は蛇の声帯で咆哮する。すると炎の竜巻と。氷の竜巻が素戔嗚を襲う素戔嗚は何とか避けるが下からの炎を纏った氷山に直撃した。そのまま空亡は蛇の姿になり。自分の上を向いた大きく咆哮しすると。紅い星が墜ちてきた。生物の恐怖である星の衝突それが今、空亡の手で実現されそうになっていた。素戔嗚は心底嬉しそうに言った。

 

「星は斬ったことないな、こんなのそう経験できるものではない感謝するぞ空亡!」

 

素戔嗚は天村雲剣を構え跳びあがり、全てを込居合い切りを噛ます一瞬のうちに何百回も刀を振るい隕石を細切れにした。素戔嗚は着地して。

 

「俺は星を斬ったのか、だがまだ終わっていない空亡との戦いは!」

「だよな!素戔嗚!」

 

空亡は残る妖力おを全て注ぎ。素戔嗚も神力を注ぐ。次で二人共決めるつもりだ。空亡は氷と炎を一つにに合わせ、素戔嗚は天羽々斬を構え。空亡は氷炎球を放ち、素戔嗚は一閃、二つがぶつかり合い、氷炎球が爆発した。

視界が光に包まれて光が収まると。そこは氷の大地に為っていた。素戔嗚も氷の中に閉じ込められる。空亡は素戔嗚の氷を溶かし、大声で、皆に届くように宣言する。

 

「この戦争!諏訪の勝利だ!」

 

 

 




新しく投稿した魔王の幼馴染もよろしくお願いします


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