いつか、すべてを燃やし尽くす日まで (炬燵猫鍋氏)
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僕は個性を受け取った

君がその手に掴んだモノは何?

君が彼に差し出したモノは何?


四才の時に、無個性と言われた。

 

足の小指に関節が2つあるから、古い型の人間だって。

動画投稿サイトHero-Tubeでオールマイトの動画を見ながら、母さんに聞いたんだ。

泣きながら、聞いたんだ。

 

「超かっこいいヒーローに、僕もなれるかなぁ。」

 

母さんは泣きながら僕にしがみついて、ごめんねって。

ごめんねえってあやまったんだ。

僕の名前を何度も呼びながら。

 

その時感じた思いが、その時心を締め付けた感情が、僕の最初で最後の挫折だ。

 

なんで最後かって?

 

今の僕には個性が有るからだ。

サンタさんにもらった個性が。

 

そう、あれは四才の冬。

かっちゃん……()()()()()()()()()()()()()()()()にいじめられて、公園で一人泣いていた夕暮れ。

 

あの人はやって来た。

 

「誰も……助けてくれないんだね。辛かったね。……緑谷出久くん。〝無個性だから〟〝生まれつきだから〟そう言って君の心の痛みをしかたないと放置したんだね。一体どうしてこんな世の中になってしまったんだろう?君は何も悪くない。もう、大丈夫。……僕がいる。」

 

夕日を背に浴びて、その人も赤い色に染まっているかのようだった。

顔は……どうしても思い出せない。

優しく笑っていたのは確かだけれど。

 

「おじさん、誰?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「サンタさん?」

 

「はははは。そうだね。僕は君のサンタさんさ。」

 

「サンタさん、ぼくね、個性が欲しいよ。」

 

「いいとも。君にステキな個性をあげよう。」

 

 

 

そして、僕は個性持ちになった。

母の個性、引き寄せ。

父の個性、火を吹く。

その2つから生まれた混合変質個性。

()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

教室で、先生が叫んでいる。

 

「今から進路希望のプリント配るが みな!だいたいヒーロー科志望だよね!」

 

あーあー、みんなハーイって言いながら、個性使ってるよ。しょうがないなー。

 

まぁ、()()()()()()()

ほとんどの生徒が、レベルのそれなりに高い高校のヒーロー科を志望するもんな。テンションも高くなるか。

 

「せんせぇーっ!いっしょくたにすんなよ!」

 

かっちゃん。机の上に足を乗せるのやめなよ。

 

()()()こんなモブどもと同じレベルの学校には行かねー、よ。」

 

あがるブーイング。

 

「いいかっ!()()()雄英に行くっ!」

 

あ、静まった。

 

「あのオールマイトをも超えたトップヒーロー事務所を設立し!必ずや高額納税者ランキングに名を刻むのだ!」

 

先生が深く頷く。

 

「なるほど、緑谷も雄英のヒーロー科志望だったな。」

 

僕はノートを閉じて、先生と視線を合わせて答える。

 

「経営科と併願ですけどね。」

 

クラスメイトがまた騒ぎ出す。

 

「爆豪!将来設計を緑谷丸投げかぁっ?」

 

「いいなー私も緑谷君のアドバイスずっと受けたーい!」

 

「緑谷ぁ!サイドキックで俺も将来雇ってくれぇ!」

 

かっちゃんがガーッと吠える。

 

「うるせぇっ!イズクと並べるのは俺だけだっ!」

 

 

イズク……出久、か。

昔はデクって、木偶の坊のデクって呼んでたよね、かっちゃん。

 

そうだね。

僕と並べるのは君だけだ。

でも、雄英ならどうだろう?

君より火が点きやすくて、爆発力のある生徒がいたら、いつまで僕の側にいられるかわからないよ?

 

まぁ、僕は一人では無力だ。

 

たくさんの、たくさんの個性を僕の為に、僕一人の為に使ってよ。

未来に待つ級友たち。

 

 

 

 

 




デクくんこわー。


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憧れの残骸にであった日

少年は夢の終わりを知った。

少年は、夢を終わらせなければならないと誓った。


放課後、帰り道で僕は考える。

 

雄英の受験。

かっちゃんも僕も模試はA判定。

筆記は合格圏内だ。

 

問題は実技試験。

考えられるのは大別して3つ。

 

対人。ヒーローと直接対決して評価される。

 

災害救助想定の障害突破。要救助者として試験官が配される可能性あり。

 

対ロボット。数をこなすか、質を見るか?

 

正直、一人では難しい。

かっちゃんと組めればいいのだが、おそらくそれは無理だろう。

 

その場で他の受験生と組むことを想定しつつ、単独でも最低限の対応はできるようにしなければならない。

対ヴィラン用の防犯グッズ、特に国内の製品より強力なアメリカ製の製品を購入し、使用練度を高めてはいる。

体力作りも日常生活の中で継続して行ってきた。

しかし、個性:ハイスペックを校長が誇る雄英だ。

どんなサプライズがあるかわからない……。

 

そんな事を考えて歩いていたら、後ろで何かが吹き出るような音がした。

 

振り向くと、顔のついたドロドロと視線が合う。

 

「Mサイズの隠れ蓑……。」

 

覆い被さってくるそれを、バックステップでギリギリかわす。

 

「避けるなよぉ。取って喰おうって訳じゃない。」

 

ヴィランっ!体が流体状!

 

「体を乗っ取るだけさぁ!」

 

さらに迫りくるソレを、バク転を繰り返して何とかかわす。だが、距離を離せない。

 

「苦しいのは約45秒だからさぁ!」

 

全力バック走!乗っ取る?覆い尽くしてから入り込むつもりだな!

 

「へぇ~。いい動きじゃないか。こいつは拾い物だよなぁ。」

 

バック走の間に、鞄から取り出したマトリョーシカを握り混む。……こいつは国産品だ。

 

「さぁさぁさぁっ!」

 

せーのっ!!

投げつけたマトリョーシカが、ヴィランの顔に沈み混む。

 

「無駄だよ!流動的なんだから!」

 

どうかな?

僕は念のため、手をかざして目を庇う。

次の瞬間、閃光がヴィランの目から溢れでた。

 

「ぎゃあぁぁぁっ!!目、目がぁッ!耳がぁっ!!」

 

うん、()()()()()()()()()()、轟音は体内で吸収されたようだね。

ネットオークションで買ったハンドメイドの偽装スタングレネード、なかなかの効果だ。

 

流動的だろうが、視覚と聴覚の感覚器官は存在する。強い光と音がストレスになるのは免れなかったようだね。

 

さて、回復する前に警察に通報して逃げるとするか……。

 

僕の個性を使ってもいいが、受験前の大事な時期だ。

万に一つも、個性の非正規使用なんて問われたくない。

 

と、その時。

 

「もう大丈夫だぞ少年!……私が来た!!」

 

跳ね上がるマンホールの蓋。

拳を振り上げて現れたのは……ランニング姿の巨漢だ。

 

画風の違う彫りの深い顔。

鋭い眼光。

勝利の頭文字(ヴィクトリィ)とも例えられる特徴的な髪型。

それは、No.1ヒーロー。僕の()()()()()()()()()。オールマイトだった。

 

……なんでランニング姿で、コンビニの袋INペットボトル飲料なんですか。

 

「いやあ、悪かった。ヴィラン退治に巻き込んでしまった。」

 

いや、ジュース飲み始めないでくださいよ。

あいつ、もう動き出しますよ。

 

「いつもはこんなミスしないのだが、オフだったのと慣れない土地でウカれちゃったかな!?」

 

だから、飲み干して笑ってないで……消えた!?

オールマイトが視界から消えたかと思うと、再び現れる。

 

「しかし君のおかげさありがとう!!無事詰められた!」

 

へっ!?ペットボトルの中に、さっきのヴィラン!?

い、今の一瞬で詰めたのか!!

 

「じゃあ私は警察にこいつを届けるので!液晶越しにまた会おうっ!!」

 

「ありがとう……ございました。」

 

助けられたのは確かだから、お礼を言うことにする。

 

「それでは今後とも……応援よろしくねーっ!!」

 

跳び去っていくオールマイト。

なんていうか、規格外だ。

平和の象徴だなんて言われるだけの事はある。

そう、今の時代を作り上げたのは彼だ。

ヒーロー飽和、個性偏重、危機管理の薄い市民……。

 

全部あなたから始まった。あなたのせいだよ、オールマイト。

 

そして、たしかに規格外で、生で見たら動きも目に止まらぬほどだったけど。

 

それでも、弱くなってますよね、オールマイト?

 

貴方の事なら何でも知ってる。顔のシワの数も、出演した番組に飛び入りで現れた他所の犬の名前も、どれだけ強くてカッコよかったかも。

何度も何度も液晶越しに見たんだ。

貴方は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

ヴィラン退治に体を張りながらも、マスコミに露出する頻度と一回あたりの時間が減っていってるでしょう?

 

さっきのヴィランだって、一回取り逃がしたのは、それが理由なんじゃないんですか?

 

サイドキックのサー・ナイトアイが離れたのも、そこに答えがあるんじゃないんですか?

 

〝平和の象徴〟が失われるわけにはいかない?

自分が倒れたら、自分がいなくなったら、混乱の時代に逆戻りしてしまう?

 

その程度の世の中なら、貴方がいなければどうにもならないのが時代の真実なら、いっそやり直せばいい。

 

僕はヒーローになる。

 

貴方の時代を終わらせるために。

 

貴方に遥かな眠りの旅を捧げるために。

 

僕は緑谷出久。

 

八木俊典、貴方の掲げた灯火よりも、ずっと大きな焔をいつか世界にしめしてみせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




かっちゃんのヘドロ事件?

何の事ですか?


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ゴミ掃除は好きなんだ。心が落ち着くから。

本当にヒーローになりたいの?

誰かを本当に救いたいの?


「多古場海浜公園でトレーニング?」

 

そうだよ、かっちゃん。

あそこは漂流物と不法投棄で、一部沿岸がゴミの山になってる。

ゴミの撤去をすることで、僕と君の筋トレになるうえに、かっちゃんの個性〝爆破〟を使っても近所迷惑にならない。

万一通報されても、ボランティアで清掃してましたって正直に言えばお咎めは無し。

 

「はー、悪くねぇな。さすがイズクだぜ。」

 

それにね、かっちゃん。

かっちゃんがプロになって、マスコミの取材を受ける時に言うのさ。

ここが自分の出発点ですっ、て。

だから、記録映像は撮っておこう。

誰の称賛も求めずに、二人の少年が黙々とトレーニングとボランティアに励む感動の記録を、ね。

 

「か~っ!やっぱりおまえは最高の相棒だぜ!だよな!学生時代から逸話を残すもんな、一流は!」

 

あぁ、知っているだろう?

君にだけ見せた〝将来の為のヒーロー分析ノート〟。

あれに書き留めたのは、個性や運用だけじゃない。

メディア対応や、副業の種類、過去の履歴までバッチリだ。

だから、今から準備するのさ。

未来の僕たちにふさわしい過去を。

 

 

 

かっちゃんは納得してくれた。

彼の思考はシンプルだ。

誰よりも強いヒーローになって、人気と栄光、それに付随する収入でトップに立つ。

その為に必要なアドバイスをしてきたし、よその暴れん坊とのケンカだって、年上だろうが人数が多かろうが、僕の指示と、()()()()()で負け無しだ。

悪名もなるべく良い方向になるようにコントロールしてきた。

 

あぁ、できる限り、クラスメイトへのアドバイスと、()()()()()()()()()()()()

士傑や雄英程ではないが、英傑レベルを受験する人もいるのだから。

将来の彼らから感謝と協力を取り付ける為に、投資をしておくのは悪くない。

 

あくまでも本命は爆豪勝己と、雄英で出会う仲間だけれど。

 

 

 

海浜公園の清掃は悪くなかった。

全身の筋トレになったし、かっちゃんの個性のレベルアップにも最適だった。

広域爆破、集中爆破、轟音強化、閃光強化、荷物を抱えてのジャンプ、短距離飛行。

 

対ヴィラン戦闘、災害救助での瓦礫撤去や被災者救出。

様々な局面に対応する応用技が開発できた。

 

僕も、防犯グッズとその改造品を使った戦闘訓練もそこそこにできたし。

 

ヴィランというほどでは無かったが、チンピラがからんで来たことは何度かあった。

うん、かっちゃんが出るほどのこともない、雑魚だったけど。

通販の催涙スプレーと、ワイヤー分銅で僕があっさり撃退できるようじゃね。

 

はぁ、魂を燃やすものがないから、ヒーローどころかヴィランにすらなれないんだよ。

こういうのを燃えないゴミっていうんだよね。

 

ん?かっちゃん?

何、今のツボだった?そんなにおかしい?

 

 

 

受験日1ヶ月前には、見渡す限りのゴミの山だった海浜公園は、綺麗な昔日の姿を取り戻していた。

 

 

「やったなイズク!!」

 

そうだねかっちゃん。

ほら見てよ、毎日撮ってた映像のスタート時。

9ヶ月前だよ、これ。

 

「かぁーっ!俺らの偉業がばっちりだな!」

 

あぁ、そうさ。それに、僕たちの体つきもかなり鍛えられてるのがわかるね。

かっちゃん。 君の身体能力、個性の性能もかなりレベルアップしている。

 

だから、ヒーロー科の入試、一位合格を取るんだ。

 

「爆豪勝己。君ならできる。僕が、この緑谷出久が保証するよ。」

 

()()()()()()()()()()()

 

かっちゃんの瞳に焔がともる。

その身が熱く燃え、闘志が目に見えるかのようだ。

 

「まかせろイズクぅっ!!!俺と、お前の!伝説の始まりだーっ!!!」

 

 

空に向かって放たれた号砲。

 

うん、いい映像が最後に撮れた。

 

かっちゃん、君の爆発はやっぱりいいね。

 

全てを吹き飛ばし、焼き尽くすかのような雄々しさ。

 

そして、自身をも焼くのではないかと思わせる危うさがある。

 

君に、とてもふさわしい。




緑谷君へのクラスメイトの過剰接近は、かっちゃんが防ぎ止めます。

特に女子。


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誰よりも熱く生きる君が、ま、嫌いじゃないよ

信じられる物をさがしているの?

それが、ガラス細工のように脆くとも、君は抱きしめるの?


ジャージの下に衝撃吸収性の高いラバーアンダーウェアを。

拳には内部に同質のラバー、外に超硬合金製のナックルガードを仕込んだ手袋。

カーボンと特殊繊維で編み込まれたワイヤー。

改造した高電圧スタンバトン。

後は……夜間・望遠などのモード切り替えつきのゴーグル内蔵の防護キャップ。

 

ま、こんなものかな。

 

『雄英の実技試験に御社の製品を使用して挑みたく。

使用後のレポートを提出させていただきます。』

 

この文言で、サポート会社から割安で各種装備が購入できた。

 

……使わなかった時は丁寧にお詫び文を書かないとな。

 

催涙スプレーやスタングレネードなどの装備はナップザックに入れておく。

試験内容によって、持ち込むか置いていくか決めよう。

 

 

実技試験当日。

かっちゃんといっしょに到着した試験会場は、受験生たちの放つ緊張感と熱気に包まれていた。

 

いいな、この感じ。

 

あ、かっちゃん、緊張してる?

「してねぇし!」

 

……してるなぁ。あ、足元、危ないよ?

 

「うおっ?!」

 

かっちゃん、浮いてる!?

 

「わたしの〝個性〟ごめんね勝手に。でも転んじゃったら縁起悪いもんね。」

 

無重量状態にする個性?

ちょっとぽっちゃりした女の子が微笑む。

 

あ、かっちゃん機嫌悪そう。

フォローしとくか。

かっちゃんが何か言い出す前に、彼女の方へ、と。

 

「ありがとう、僕は緑谷出久。彼は爆豪勝己。助かったよ。」

 

「麗日お茶子です、緊張するよねぇ。」

 

なんかあったかい感じの子だな。

でも、芯に強い何かが有る、な。

うん、悪くない。

 

「お互い、がんばろう!」

 

「じゃあ!」

 

ん?かっちゃん、どうしたの?

 

「いいかイズクぅ!俺は、あんな女に助けてもらわんでも転んでねぇからなっ!」

 

あぁ……うん。そうだね。

 

 

 

「今日は俺のライヴにようこそー!!!」

 

プレゼンテーションはボイスヒーローのプレゼント・マイクか。

テンション高いな。うん、悪くない。

雄英の講師はみなプロのヒーローだからなぁ。

 

10分間の『模擬市街地演習』か。

持ち込みは自由なのはいいとして……指定の演習会場がかっちゃんと別だな。

 

「ダチどうしの連携封じってことか。」

 

「受験番号連番なのにね。」

 

「ちっ、イズクに見せらんねぇじゃねぇか。」

 

仮想ヴィランを三種配置、ね。

()()()()()()()()ポイントが入る。

アンチヒーローな行為は厳禁。

プリントには四種類目が載っているけど、0ポイントか。

ふーん。

 

ん?メガネ君が質問か。

 

誤載とか痴態とか……もう少し落ち着きなよ。

プレゼント・マイクの説明、途中だよ?

 

「ついでにそこの縮毛の君!」

 

ん?僕?

 

「先程からボソボソと……気が散る!物見遊山のつもりなら、即刻ここから去りたまえ!」

 

ははっ。いーね、いーね。

余裕が無いのかな、やっぱり。ピリピリしてさ。

でも、その()()、嫌いじゃないな。

 

だから、かっちゃん。おちついてよ。

 

「うるさくしたなら謝罪するよ。うん、緊張していたからね。……()()()()()、さ。だから、他の受験生に対する攻撃的な言動は慎んだ方がいい。精神的なプレッシャーを意図して与えたと判断されたら、アンチヒーロー行為とみなされるよ?……雄英サイドに、ね。」

 

「……っ!すまなかった!プレゼント・マイク先生も申し訳ありません!決してその様な意図があった訳でなく!」

 

ちょっと言い過ぎたかな。

でも、かっちゃんが落ち着いたからよしとしよう。

 

プレゼント・マイクの説明ではお邪魔虫、と。

ふーん。

そーかなー。

 

しかし、この四体って、あれか。

1ポイント:ヴィクトリー

2ポイント:ヴェネター

3ポイント:インペリアル

0ポイント:エグゼキューター

 

雄英と提携していたり、援助している企業体を調べていた時に引っ掛かったガードロボットや軍事用ロボットがベースだな。

 

ふん、ガトリングやロケットランチャーは模擬弾としても……。

僕の腕力と装備ではエグゼキューターはどうにもならないな。

軽量化とコスト軽減、そして受験生に対しての一定の配慮が為されていると考えれば、強度は……。

 

かっちゃん、1~3ポイントは片手、6割の出力で充分だよ。

数をこなす事を考えて、7分。余力を残しておいて。

おそらく残り3分ぐらいで0ポイントが暴れだす。

 

そうしたら、そうだね、高い建物が有れば屋上から、0ポイントの頭部に向けて、集中型の全力を叩き込めば破壊できる。

 

もし近くに使える建物が無ければ……()()の出番だ。でも、着地には充分注意してよ。

 

「はっ!イズクの読みがバトルで外れた事一度もねぇからなっ!まかせろっ!!」

 

あとね、これが重要なんだけど、0ポイントを倒す時には、たぶん他の受験者が逃げている。

そこでは『どけっ!』とか『邪魔だッ』とか言わないで、

『俺にまかせろ!』とか『さっさと逃げろ!』とかそんな感じで向かって行って欲しいんだ。

で、できれば、転んだ受験生とかいたら、手を貸してあげるくらいは頼めないかな。

 

「なんでンな事しなきゃなんねぇんだ?」

 

簡単に言えば、将来的に使える映像と音声の為かな。

実技試験一位合格の雄姿を、将来的に雄英から提出してもらって、宣伝に使うのさ。

 

「伝説の2ページ目か。よし!わかったぜ、イズク!!」

 

うん。これでいいかな。おそらく存在する裏ポイントについて意識させ過ぎると、肝心の撃破ポイントが減りそうだし。

 

さて、そろそろ行かないと。

 

「かっちゃん……いや、爆豪勝己。君は強い。とてもとても強い。()()()()()()()()()()()()。」

 

「あぁっ!」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!!」

 

体が、かぁーっと熱くなり、叫んだ直後に冷めていく。

 

「そうだ!お前の信じる俺は!()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

よし、()()()()()

 

これが僕の個性。

僕の周りの人を巻き込み、引き寄せ、その魂に火を点ける。

個性:灼熱の煽動(ヒート・アジテート)!!

 

テンションが上がり、心身のスペックが上昇する。

僕のこの個性と、かっちゃんはとても相性がいい。

 

 

爆豪勝己は身も心も熱くなりやすいからね。

 

……きっと、燃え尽きるのも早いだろうな。

 

でも、本望なんじゃないかな。

 

僕が最初から()()までつきあってあげるから。

 

 

 

さてさて、僕も頑張らないと。




友情?

あるよもちろん。

ちゃんと、与えているよ?


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試練の味は蜜のよう。

綺羅星のように煌めく個性。

手を伸ばして掴み取ろう。

並べばなおせば星座になるのだから。


会場一つ一つが塀に囲まれた街とはねー。

掘削が得意なパワーローダーと、コンクリート操作のセメントスも教師として在籍してたっけ。

さすが雄英。

 

さて、柔軟体操ーっと。

 

周りは……麗日さんがいた。緊張をほぐそうとしてるのかな?

後は……あ、メガネ君だ。ん?ふくらはぎに排気筒か。

付いている場所は違うけど、インゲニウムに似ているな。血縁だとしたら、高速走行からの近接格闘タイプと考えて良さそうだ。

 

他の受験生は……戦うところを見ないと判断できそうに無いな。

 

『ハイスタートー!』

 

お?

 

でっかい声……プレゼント・マイクっ!

ちっ、カウントダウン無しかっ!

 

ダーシュッ!!

 

まだなんか言ってるけど、とにかく走れ!

スタートは先頭だけど、すぐ追い付かれるな、これ。

 

「ターゲット発見。殲滅スル!」

 

うおっ?!曲がり角からの出会い頭で、口が悪いなこのAI!

 

ヴィクトリー!1ポイントか!

他の子に遠距離攻撃の個性持ちも当然いるよねっ。

横取りされる前に、カメラアイに突き込むっ!

くらえっ!スタンバトン(違法レベル改造品)!!!

 

煙を上げて沈黙。よし!初ポイント!

 

ん?

 

何か残念そうな顔してこっち見たな、あのごっついベルトの受験生。ま、いいか。

 

さて!

 

追いつかれて、遭遇して、こっからは乱戦だっ!

 

1ポイントのヴィクトリーは脆い!

スタンバトンを使わなくても、ナックルガードの付いたグローブ越しなら、首の付け根を殴りつぶせる!

 

やはり、受験用に意図して強度を落としてるな。

 

ガトリングパーツからの射撃は当然避けるけど、無理めの時は両腕で首と顔だけガードして耐える!

よし、しょせん模擬弾だ。衝撃吸収ラバーなら、たいして痛くもないぞっ!

 

2ポイントのヴェネター、蠍を模した形状はヴィクトリーより丈夫なはずだが……機動性は劣る!

ワイヤーを絡み付かせて移動と攻撃を封じれば!

スタンバトンを突き込む事は容易!

 

さて、と。

 

やっばり戦闘向きの個性持ちには対処の速度で遅れをとるなー。

 

周りの人のペースには追いつけないね。

 

麗日さん。凄いな、次々と宙に浮かせている。

空中で何もできなくなれば行動不能扱い、か。

 

メガネ君。機動性の高さを利用した足技か。

やっぱりあの足、インゲニウムの血縁だね。

 

おっと!

 

3ポイント!インペリアル!

ロケットランチャー(模擬弾)搭載型か!

発射するまで待つものかっ!

くらえっ!マトリョーシカ型スタングレネード!

発射口に巧く入ったぞ。

 

……よしっ!内部暴発!

これで停止してくれれば、おぉっ!? ビームだっ!

ビームが貫いたぞ!

さっきの派手目のベルト君か。

バックルからビーム撃てるのか。凄いな。

ポイント、どっちがカウントされるのかな?

 

ま、いいか。サムズアップしておこう。

 

「メルシィ♪」

 

あ、あぁ。キャラが濃いなー。

 

さてさて、ヴィクトリーとヴェネターを倒しながら、周りの観察も続ける。

 

鳥のような顔の少年。

影が実体化してるのか!!

巨大な腕の様にも、怪物の頭にも見える。

ヴェネターを真っ正面から握り潰すのか……。

 

6本腕の人?腕の間に皮膜が有るよ。

なんていうか、頭足類っぽいね。

複数の腕で振り下ろすハンマーパンチ、かなりの腕力だ。

 

両腕を硬質化させて、手刀でインペリアルを切り砕いてる人もいるよ。

お、後ろにヴェネターが。

フォローしとこう!

 

危ないよっ!っと跳び蹴り!

おっ、一発で停まった? いい感じで中に衝撃入ったかな。ラッキーだ。

 

「お、悪ぃなっ!サンキューだぜ!」

 

振り向いた顔も、皮膚が硬質化していた。

全身の硬質化か!

いいな、使()()()()()

 

「余計な手出ししちゃったかな?」

 

「んなことねーって!」

 

()()もいいね。

 

次のターゲットに向かって走り出す彼に声を掛ける。

 

()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

「おぉっ!俺は切島鋭児郎!がんばろうぜっ!」

 

……()()()()

 

さて、そろそろ動き出すんじゃないかなぁ。

0ポイント、エグゼキューターが。

 

 

来た来た来たぁーっ!!!

ビルを崩して迫りくる!

 

うん、みんな逃げようとするね。

倒してもポイント入らない……ってみんな思ってるから、しょうがないよね。

 

あぁ、()()()()()()()()()()()()

 

さぁ、行くぞっ!!

 

ん?麗日さんが、転んでる?

 

助けなきゃ!()()()()()()使()()()()()()()()

 

麗日さんを抱き上げて、ダーシュッ!!

逃げる?

違うねっ!

 

戦う駒を揃えるのさっ!!

 

個性、全開!唸れ!灼熱の煽動(ヒート・アジテート)

 

僕の声は響く!

ここにいる皆に!

同じ戦場に立つ者達に!!

 

逃げるなぁっ!!!

 

なぜ逃げるっ!

0ポイントだからかっ?

かなわないからかっ?

 

なら、君たちはっ!

自治体から要請が来てないからっ!

報奨がはっきりしてないからっ!

そう言ってヴィランから逃げるヒーローになるつもりか!

 

これは試験だから?

本番じゃないから?

ふざけるなっ!

たかが高校の試験で逃げるヤツが!

実戦でなにができる!

 

逃げるなっ!

()()()()()()()()()()()()()()()()

周りを見ろっ!

手を貸せっ!

協力して、助けあえっ!

 

そして、戦える魂を持つ者は……

 

戦えっ!!!

 

僕が、この僕が勝たせてやる!

 

僕を信じる必要は無いっ!

 

自分を信じろっ!!!

 

君たちの個性はっ!

 

君達を決して裏切らないっ!!!

 




そのころのかっちゃん。


ぶちかましてやるぜぇっ!!

イズクにまで届くよぉになぁっ!!!

ハウザー・インパクト・メテオォォォッ!!!


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ONE FOR ALLってことにしておいてよ

僕は鉄の斧を落としましたから、金の斧と銀の斧をください。



よく見ろっ!

あいつは、エグゼキューターは確かに大きく、強いっ!

だが動きは鈍い!

 

遠距離攻撃可能な個性持ちっ!

安全圏から攻撃ができるはずだっ!

自分の有効射程を把握しているなっ?

 

本体に攻撃できる者は胴体中心を!

射程に不安があるものは、左右の手、今の位置から近い方に集中攻撃だ!

 

()()()()()()()()は、エグゼキューターのアルゴリズムに過負荷を与える!

防御も回避も反撃も許さない!

 

増強型、力自慢の異形型!

1~3ポイントの仮想ヴィランの破片を投擲できる者は攻撃参加っ!

 

戦えないものはっ!避難したうえで見届けろっ!

これは、僕たち全員の戦いだっ!

 

あれは0ポイント!

 

倒しても誰にもポイントは入らないっ!

 

だから、誰かを出し抜く必要は無い!

 

これは、僕たちの、明日のヒーローを夢見た者の!

 

誇りと矜持を懸けた戦いだっ!!!

 

 

「や、やるぜ!俺はっ!」

「僕だって!」

「私だって戦うんだから!」

「煌めけ!ネビルレーザー!」

 

 

……よし。皆に()()()()()()

 

 

おおっ、なんか、隣の試験場かっ?!轟音と火柱が!

かっちゃん、超必(ちょうひ)使ったな!

かっちゃんが勝ったなら、僕も勝ちたくなるね。

 

なら、駒を並べて詰むとするか。

 

 

 

麗日さん、ごめんね。ダッコなんかしちゃって。

 

「いや、その、お姫さまダッコは嬉しいような……。」

 

君の力も貸して欲しいんだ。

後は……。

 

そこのメガネ君!

 

「ぼ……俺は飯田天哉だっ。」

 

影使い君!

 

「常闇……常闇踏陰と名乗っている。」

 

切島君!

 

「おぉっ!熱いなぁ緑谷ぁっ!!!」

 

皆に伝えた言葉に嘘は無い。

でも、他の会場で僕の親友が、たった一人でアイツを、エグゼキューターを倒したみたいなんだ。

 

「え、それってバクゴーくん!?」

 

だから、僕も勝ちたい!倒したいんだ!

ポイントの為じゃなく!

親友に並び立つ為に!

 

でも、僕にできることはアドバイスだけ。

僕の個性にできることは皆を鼓舞することだけなんだ。

 

だから、だから、君たちの力を貸して欲しいんだ!

 

僕の考えが正しければ、君たちの個性でエグゼキューターを倒せる!

 

「……信じよう。君の強い眼差しを。」

「ふっ、たまには熱い血潮の命ずるままに舞うも一興。」

「預けるぜ、俺の拳!」

 

「……もちろんや!イズクくんっ!!」

 

ありがとう!

 

僕は、緑谷出久は誓う!必ずや我らの一撃で、勝利を掴むと!

 

 

 

麗日さんは、常闇くんと切島くんの重さを消して欲しい。

 

常闇くんは飯田くんの背に乗って、影で切島くんを持ち上げて。

 

飯田くんは全力で走って、常闇くんは僕の合図で切島くんをエグゼキューターの喉元を狙って放って欲しい。

 

そうしたら麗日さんは無重量を解除して、後は……切島くん、君の硬さと鋭さに全てを懸ける!!

 

 

無重力(ゼログラヴィティ)!」

 

黒影(ダークシャドゥ)!」

 

「レシプロ……バーストッ!!!」

 

「解除!!」

 

「アンブレイカブル・ライオットぉぉぉっ!!!」

 

 

 

貫けぇっっっ!!!

 

 

 

 

…………やった。

 

やった!ぶち抜いたぞっ!倒れるっ!

 

僕たちの!君たちの!勝利だぁっ!!!

 

 

 

あっ、切島くん大丈夫かな。

 

……大丈夫?

え、凄く燃えた?

そうだよね。うん、そうだろうとも。

 

 

お、ここで終了か。

 

 

みんなーっ!

怪我していたり、歩けないほど消耗している人がいたら手を貸してあげてくださーいっ!

 

あと、これだけは聞いて欲しい!

 

この後、どんな道を歩もうとも!

 

今日ここにいる皆はっ!

 

戦友だと思うんだ!

 

ありがとう!名前も、顔すら知らなくても!

 

僕は、君たちと共有した、この日のことは忘れない!

 

僕の名前は緑谷出久!

 

君たちの、戦友だっ!!

 




激情させる劇場型個性、か。


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幕間:試験官の称賛と疑惑の間で

異例だらけの実技試験を評価した方たちの会話から、緑谷出久に触れたあたりを抜粋した感じです。

一部のみ原作キャラクターを意識しています。


「同じ中学の生徒なのか、この二人。」

 

()()に立ち向かったのは過去にもいたけど……ブッ飛ばしちゃったのは久しく見てないね。」

 

「同年で二件ってのは前例が無いよな。」

 

「かたや圧倒的な破壊力とタフネスで終始独走。」

 

救助(レスキュー)ポイントは中盤までゼロ。エグゼキューターを動かした途端、周囲の受験生に下がるように示唆しながら接近。逃げ遅れた少女にぶっきらぼうながらも手を貸してるな。」

 

「で、〝爆破〟の個性を使って上昇。上空から急降下っていうか、落下だ、これ。……エグゼキューターの頭部をとてつもない爆発力で破砕。大爆発の反動まで計算したかのような動きで危なげなく離脱。」

 

「もう一人は……護身用アイテムで丁寧に仮想ヴィランを撃破。よく考えて、終始冷静に対応。」

 

「戦闘中の挙動は、他の受験生の個性を観察していたようですね。(ヴィラン)ポイントはやや低めだが……」

 

「えぇ、真骨頂はエグゼキューターを動かしたあとの……演説、いや、煽動か。」

 

「煽動し、熱を群衆に帯びさせる個性だなんて。」

 

「逃げるしかなかった周囲の受験生に的確に役割を与え、その中でも目をつけていた者達を使って撃破。」

 

「初対面の少年少女を組ませて放ったコンビネーションでな。」

 

「……自身が戦闘をしながら周囲を観察し、個性の解析を行った、と?5分足らずで。」

 

「〝0ポイント〟ではなく、エグゼキューターと呼んでいるのも侮れん。事前の情報収集でベースとなったロボットの事を把握していたわけだ。」

 

「しかし、これは救助(レスキュー)ポイントの対象といえるのか?」

 

「ですから彼の評点はとてつもなくバラついているでしょう?」

 

「おいおい、この才覚を評価しないでどうするんだ?」

 

「だいたい、こう言ってるんだぜ。〝逃げるな〟〝避難しろ〟〝避難させろ〟って。」

 

「他者を動かしてレスキュー活動をさせた点をレスキューポイントとして扱わないでどうするんだよ?」

 

「これは、ヒーローとしての才覚でしょうか?」

 

「確かに。アジテートを行うというのは……。」

 

「では、門戸を閉ざしてこう告げるのかね?君の才能はヒーロー以外の道で生かした方がいいだろうって。」

 

「本人も判っているから、最後の演説なんでしょう?」

 

「経営科と併願か……。ヒーローコーディネーターやプロデューサーの道を想定し、その種蒔きをヒーロー科の実技試験で行ったのか。」

 

「こいつはヒーロー科に入れるべきだ。……ヒーロー科のカリキュラムを通して見定める必要がある。

経営科に入学し、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ような奴を放っておくのは危険です。」

 

「考えすぎじゃないの?」

 

「オールマイトがヴィランの組織だった活動を解体した現代、ヒーローは飽和し、行き場を失った悪意……ヴィランにすらならない、なれない者の悪意はどこに行く?」

 

「彼がヴィランを煽動し、先導する事を危惧する、と?」

 

 

 

「そうならないように彼を導こうぜ!我々がねっ!」

 

 

 

「緑谷出久、(ヴィラン)ポイント18、救助(レスキュー)ポイント25……。」

 

「要警戒対象特別ポイント35!!」

 

「合格だねっ!!」




レスキューポイントと警戒対象ポイントを足すと、原作の緑谷君の60ポイントになります(笑)


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闘い終わって日が……暮れる前にカツを食べたいな。

僕は、今日という日を決して忘れない。




ボクは、凶という非は決して忘れない。


うん、まぁ、あれだ。

お祭り騒ぎだね。

 

みな肩を叩き、握手して笑い合う。

 

この場所には同じ中学の生徒はいないように配置されているはずだから、基本的に10分前からの知己でしか無いのだが、彼ら彼女らは高揚感と連帯感に満たされているのだろう。

 

素晴らしいことだ。

たとえそれが一時の幻想でしか無いとしても、確かにここには勝利がある。それを自らの手で掴み取った事実がある。

 

みな、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

小学校から中学校で教える個性教育は、基本的に個々人の個性の把握と、その制御訓練でしかない。

 

個性をもって集団で何かを行うという行為は、スポーツですらこの社会の中では行われることがほとんど無い。

()()()()()()()()()()()()()()()()()レギュレーション制定、ルール改訂がいつまでたっても追いつかないのだ。

 

だからスポーツといえば、個性を用いず、異形型の選手を排した旧態依然の形式しか行われないことが多い。

(ヴィランの中で異形型が占める割合が多い理由は、こんなところにも有るのでは無いかと思う。)

 

個性偏重の社会風潮が内包する矛盾が、そのままヒーローの飽和と、いつまでも終息しないヴィラン犯罪に繋がっているというのに。

 

まぁ要するに、みんな初めての経験に舞い上がっているわけだ。

 

当然のように僕たちは囲まれ、称賛の声が響く。

 

見事だ。

カッコよかった。

マジでヒーローじゃん。

必殺技、パねぇ。

僕の煌めきどうだった?

 

ん?何か変な声が混じっていたような。

……ともあれ、僕たち5人がこの場の主役、MVPというわけだ。

 

 

「なんという達成感……!」

 

飯田くんが天を仰いで感動にうち震えている。

 

「ふ、蠱をもって毒を成す壷と思っていたのだがな。」

「タノシカッター」

 

常闇くん、凄いキャラ立てだな……って、喋るんだ、その影!?

 

「やった!やったぜ俺!(おとこ)をみせたぜ!」

 

切島くんは熱いなぁ。……熱くて頑丈なのか。是非とも仲良くしたいね、これからも。

 

 

「すごいやん……。うち、やったで!」

 

麗日さん、関西出身なのかな。

 

さて、もう来る頃かな?

 

「どけやモブども!!」

 

……かっちゃん。知らない人の事をモブっていうのそろそろやめようか。

 

 

「ははっ!イズクぅっ!見えたかよ!!」

 

熱狂する人混みを、紅海を渡る預言者のごとく割ってみせるは爆豪勝己。僕の、()()()()()()()()

 

あぁ、やったねかっちゃん。超必(ちょうひ)……ハウザー・インパクト・メテオが決まったんだね。

 

「おぉよっ!お前の読みどおりの展開で楽勝だったぜ!」

 

さすがは爆豪勝己。僕の相棒だ。

ま、なんの心配もしてなかったけどね。

言ったろ? 君は無敵だって。

 

「お前の方は……あん?コイツらか。」

 

うん、紹介するよ。この人達のおかげで勝利を掴めた。

急造まるだしだけど、チーム緑谷のメンバーさ。

 

「ぼ……俺は飯田天哉。」

 

ひょっとして、もともとの一人称はボクなのかな?

 

「お前、どこ中よ?」

 

かっちゃん、あごをクイクイするのもやめようよ。

 

「私立聡明中学卒業予定者だ。」

 

丁寧に言うよね、飯田くん。

 

「聡明~!?エリート様じゃねぇか。なら、ちったぁイズクの役にたったかよ。」

 

「あぁ、彼の的確な分析と指示のおかげで、俺たちはあの仮想ヴィランを倒せた。」

 

「常闇踏陰。なるほど……緑谷出久と並び立つ武士(もののふ)か。納得の覇気よ。」

 

そのしゃべり方はプロデュースしがいがあるなぁ。子ども受けしそうだね。相棒の影ともども。

 

「ほぉ……。わかってんじゃねぇかっ。」

 

かっちゃん、ちょろすぎないか?

 

「バクゴー君もスゴかったんだね!さっきの火柱!」

 

腕をブンブン振り上げる麗日さん。

君の個性もスゴいよ。用途がいくらでも有る。

 

「ははっ!始まる前から勝ってんのさ!俺達はな!」

 

あ、上機嫌だ。

……女の子とまともに話す姿も久しぶりな気がするよ?

 

「俺は切島鋭児郎。緑谷のダチかっ!真っ向からブッ飛ばしちまうなんて、スゴいなあんた!」

 

切島くんは、真っ向とか、堂々とか、男気とかが好きなんだな……覚えておこう。

 

「なぁ、この後、まだ時間あるならだべらねーか?」

 

ん?切島くん?

 

「聞きてぇよ。緑谷の話とか、爆豪の話とか。」

 

僕はかまわないよ。

みんなも……異存は無いみたいだね。

 

周りで盛り上がる受験生達にも、もう一度声をかけておこう。

 

みんな!また どこかで!必ず会おうっ!

 

 

雄英の最寄り駅近く。ハンバーガー店に皆で入店。

 

かっちゃん。席の確保お願い。

かっちゃんはいつものセットでいいんだよね。

 

「おおっ!頼むわ!」

 

ん、どうしたの、皆?

 

「本当に仲が良いのだな、君たちは。」

 

飯田くんがウンウンと感心している。

 

そうだね。いわゆる幼馴染ってやつだからさ。

雄英を卒業したら、二人でヒーロー事務所を立ち上げるつもりだし。

 

「マジか!将来設計凄いな、お前ら。」

 

いやいや、切島くん。獲らぬ狸のなんとやら、さ。

 

「常道としては、何処かのヒーロー事務所にサイドキックとして所属し経験を積むべきだが、何を見ている?」

 

「そうだね、常闇君の疑問ももっともだ。席に着いたら少し話すよ。あ、麗日さん。ここは奢らせてもらっていいかな?」

 

「えぇっ!?いやいや、そんな事してもらったらあかんやろ!?」

 

「お礼だよ。今日の戦術、正直に言って、要は君だったんだ。それも後で話すから……ここは受け取って貰えないかな?」

 

……半分本当で、半分は嘘だ。

彼女の態度。ファーストフードに行こうって話になった時の表情のわずかな変化とか、こうして並んだ時のメニューと財布を交互に見た視線の泳ぎ。

どうもお金に余裕が無いようだから、恩を売っておこうかなって、ね。

受けてもらいやすいような話題は振ったから、さて、どうかな?

 

「じゃあ、お言葉に甘えて。」

 

「緑谷ってさぁ、なんつうか、スゲー気配りだなっ!」

 

うん、そこは大事だからね切島くん。

 

さて、僕はカツバーガーセットのポテトサイズアップ、プラス単品でカツバーガーを2個。

 

かっちゃんの分はチリドッグセットで、ポテトにマスタードを付けてもらう。

 

飯田くんがハンバーガーセットで、ドリンクがオレンジジュースのサイズアップ。

 

常闇くんが黒バーガーセット。

 

切島くんはベーコンダブルバーガーセット。

 

麗日さんは……ライスバーガーのセットでいいの?

 

なんていうか、個性的だね、みんな。

 

「イズクくん、がっつり食べるんだね!」

 

あぁ、カロリー結構使ったからね、個性で。

 

「ふむ。緑谷君の個性についても聞いてみたかったところだ。」

 

いいよ、さ、席につこうか。

 

さて、何から話そうかな。

そうだね、僕の個性について、でいいかな。

 

ん?あー、かっちゃんの食べ方?

そう、ポテト用にもらったマスタードソースだけど、チリドッグにかけて食べるのさ。

 

いいんじゃない?

 

食べ物の好みだってプロフィールに載るでしょ?

うん、だから、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

あと、それから……せっかくだから、先に言っておくね。僕がヒーロー科に入れなくても、君達とは友達として付き合っていきたいなと思ってる。

 

あ、みんな、そんな顔しないで。

かっちゃん……はわかってくれてる、よね? よね?

 

僕自身は、半々だと思ってるんだ。僕の合否については。

このあたりも、僕の個性について合わせて話そうかな。

 

うん、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

君達と出会えた。それが一番の収穫かな。




楽しくダベってアドレス交換じゃすまないのかね。

一挙手一投足を策に繋げていくスタイル。


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みんな、早く食べなよ。……冷めちゃうよ?

皆の眼差しが眩しくて、皆の笑顔が目映くて、僕はいつものように笑顔を浮かべる。

親友の獰猛な笑顔なら、何の罪悪感も有りはしないのに。




僕が個性に目覚めたのは、4才の冬だったかな。

父さんの個性は火を吹く。

母さんの個性は物を引き付ける。

 

でも、僕の個性は全く違った。

 

灼熱の煽動(ヒート・アジテート)。それが、僕の個性の名前。

 

人の心を引きつけ、その心に、魂に火を灯す。

そうして熱を帯びた魂は、心身に力を与える。

 

ほら、今日は気分がいいとか、凄くやる気が出るとか、そういう時って有るよね?

僕の個性を受けた者は、コンディションが目に見えるほど上がるんだ。

 

母さんが元気になる。

近所のおじさんが元気になる。

……近所のいじめっ子とケンカをしていたかっちゃんを応援したら、かっちゃんがメチャクチャ勢いづいた。

 

そんな事から、僕はこの個性に気がついたんだ。

ちなみに、使うとお腹が減る。

どうやら自分の熱量(カロリー)を消費しているみたいでね。

 

あ、カツバーガー、さくさくで美味しいや。

 

「そうか、あの時感じた高揚感は……。」

 

飯田くん、クワッ!って感じだったね。

 

で、これはどうにも自分に使う個性じゃないと理解してね。サポートする個性ならばって割りきって、知識を蓄える方向に力を入れ始めたんだ

ちなみに、一番の得意分野はヒーロー・ヴィランの情報と、過去に存在した個性の知識に基づく、他者の個性分析、だよ。

 

「そうか。初対面の我らに対して有効なる指揮をとれたのも、かく培った土台ありきなのだな、軍師よ。」

 

……本当にしゃべり方が面白いな常闇くん。

 

そして、その過程でかっちゃんの信頼を得た僕は、こう考えるようになった。

 

かっちゃん……爆豪勝己の個性も性格も、僕の個性と相性がいい。そして、長い付き合いから、的確なアドバイスが出来る。そもそも彼はありとあらゆる分野に天性のセンスが光る。僕が支えることで、彼はどこまでも高く昇っていけるんじゃないか、とね。

 

「で、俺とイズクはコンビを組んだ訳だ。俺とイズクが組めば、オールマイトをも超えるヒーローになれるはずだっ!いや、俺はなる!」

 

「ほぇー。イズクくん、バクゴーくん、すごいねー。」

 

あ、麗日さんの頬っぺたに米粒付いてる。

……少し黙っておこう。

 

容易な道でないことは百も承知しているよ。でも、望みは高く持とうと二人で決めたんだ。()()にたどり着くまでは全てが通過点。ならば傲ることなく、向上心を持ち続けようってね。

 

 

 

 

そう。()()()()()()()()()()()。たどり着いてみせる。

一番の高みで燃やす灯火ならば、地の果てまでも見えるだろう。

一番の高みで叫ぶ檄ならば、地の果てまでも届くだろう。

 

 

 

 

で、さっきの常闇くんの質問に対する答えなんだけどね、かっちゃんのヒーローとしての旨味は単独戦闘なんだよね。

 

「……この試験で、まずそれを試してみたのか。畏れ入る。雄英の入学試験を自分達の試しの場とするとは。」

 

 

 

ふむ。頭も切れるな、常闇くん。僕の言わんとする事を理解してくれたよ。相当使えるな、彼。

影の個性のリスク、絶対何か有るはずだからそこが気になるけど……。

 

 

 

高速機動、広範囲爆破、集中単体爆破……。うん、詳しい話をかっちゃんに聞いてみないと断言はできないけど、今日という日に備えて鍛えたんだ。この実技試験、かっちゃんは、爆豪勝己は一位を獲っているはずさ。

0ポイント仮想ヴィラン、エグゼキューターをかっちゃんに倒してもらったのは、常闇くんが言った通り、最大戦闘力を僕達が確認しただけにすぎないんだ。

 

「……すげぇ。すげぇよお前ら!熱い友情とクールな判断ってヤツか!?かっけーなぁ!!」

 

 

 

切島くん、ホントに熱いなぁ。シンプルな個性だけど、それゆえに伸ばせばどこまでも強くなるよね。

()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

で、だ。卒業後にどこかの事務所にサイドキックで入って、経験を積むというのは確かに悪くない。いや、普通はそうするべきなんだろう。ただ、それだと時間がかかる。そのヒーローが、爆豪勝己を理解して、使いこなすのに時間がかかる。かっちゃんを一番理解しているのは僕だ。例えプロのヒーローだからって、彼を使い損ね、得られるリターンをみすみす減らすなんて我慢がならない!

 

「俺とイズクの見ている道は最短距離だ。荒れ野だろうと爆走する。壁が有るならブッ飛ばす!!」

 

 

 

……いけない。少し熱くなっちゃったかな。

いや、熱くなるのはいいんだ。でも、思考はクールにいかなくちゃね。

 

 

 

僕たちのプランはね、事務所を立ち上げた場所の近隣に有るヒーロー事務所、そう、なるべく多くと提携を結んで、ヴィラン制圧の助っ人として協力するように立ち回ることさ。助っ人でいい。ただし、事件解決後の自治体や警察への提出書類には、必ずかっちゃんのヒーローネームを協力者として明記してもらう。マスコミの取材にも、ね。……サイドキックじゃない。対等の関係なんだから当然だよね。

 

かっちゃんほどの戦闘力が無くて、ヴィラン制圧で他のヒーローに功績を獲られているヒーローを提携相手にしたいね。

 

収入より、まずは公文書に残る実績と、人々の目と耳に存在を焼き付けることを選ぶ。ちなみに、副次プランとして、商店街や企業と直接契約し、警察や自治体からの要請の手順を踏むことなく有事に駆けつけられるようにする事も考えているよ。もっともこれはリスクが大きいから、実現性は低めになりそうだけどね。

 

あと、副業としてはね、サポート会社の開発テストに参加できないかなって考えているんだ。

かっちゃんの個性を耐久テストに生かしてもらおうかなって。

 

「君は……入学前からそこまで考えているのか。」

 

飯田くん?だからこんなのは獲らぬ狸のなんとやらだってば。

実際はそんなに簡単じゃないはずさ。

 

で、ね。

このプランは僕が経営科に入学……ヒーロー科に落ちてもいいように考えたものなんだ。

 

「そう、それだよイズクくん!どうして落ちるかもって。」

 

あの試験で僕が倒した仮想ヴィランのポイントは20にも満たない。

おそらく……飯田くんや常闇くんの半分にも達していないだろうね。

ただ、ここから先は推測にすぎないのだけれど、本当にこの試験で評価するのはそれだけなのかな?

 

「む……何か別の()()が有ると考えたのか、緑谷くん!」

 

そうだよ飯田くん。人助けを、フォローをした受験生に与えられるポイントが有るんじゃないか。そう考えている。

 

「だったら緑谷ぁ!お前だって充分だろ!」

 

そこが問題なんだ、切島くん。

果たして僕の個性、僕の煽動、僕の指揮を雄英サイドがどう判断するか?

ヒーローを統率する、ヒーローに相応しい個性として、皆でエグゼキューターを撃破した点をポイントとして評価するのか?

雄英のヒーローとして育てるにはふさわしくない個性としてヒーロー科の門戸を閉ざすのか?

……合否が見えない、半々かなって言ったのはそういう事だよ。

 

でも、筆記で落ちるつもりは欠片もないよ。

だから、最悪でも経営科で入学する。

ここにいる皆はきっとヒーロー科に合格しているはずさ。

たとえ科は違っても、同じ雄英の生徒には違いないよね?

 

うん。ぶっちゃけちゃうとね、最後の皆へのアピールタイムもさ、後々僕らのヒーロー事務所へのコネになったらいいなーっていう下心丸出しさ。

 

でも、君たちとの縁は特別だと勝手に僕は思っている。

 

 

たぐいまれなる機動性を持つ飯田くん。

 

自在変幻な影を操る攻守に優れた常闇くん。

 

シンプルな硬化という個性がとても頼もしい切島くん。

 

そして、エグゼキューター攻略の為にあの場で考えた戦術、その全てのパターンで最も重要な役割を担っていた無重力使い、麗日さん。

あぁ、そうだよ。

君が一番の要だっていったよね。

機動性と攻撃力。

最大限に引き出せる個性は、麗日さんの個性だったんだ。

あ、頬っぺたにご飯粒付いてるよ?

取ったげるね。

 

「あ、ちょ、イズクくん、その……。」

 

 

今日、君達と出会い、力を借りて成果をあげる事ができたのは、その、えっと、言うよ。

 

運命の出会いかなって、うん、そんな風に感じるんだ。

 

僕の一方的な思い込みかもしれない。

でも、今日という日はきっと、僕の特別な日で有り続ける。そんな気がしてならないよ。

 

僕とかっちゃんの進む道、もし君達と重なることがあれば力をこれからも貸してほしい。

 

「おぉ、お前らぁ。イズクがここまで買ってんだ、俺も認めてやるぜ、雑魚でもモブでも無いってな。

だから……考えとけやぁっ!」

 

……これで正常運転だからね。

 

 

 

 

 

 

皆が笑って頷いてくれた。

いい日だ。

今日は本当にいい日だ。

アドレスを交換して、お別れしよう。

 

 

僕も心から笑えているでしょうか。

サンタさん。

 

あの日の貴方のように笑えているかな

 

もしも、僕の生きざまを一つの物語とするのなら、

貴方に会ったあの日が原点(オリジン)

 

これは僕が最高のヒーローになるという夢から覚めた後の現実(ものがたり )だ。

 




きっと普段より早口で話していたと思われます。

かっちゃんは終始ドヤ顔。


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精密機械を緩衝材も無しに封書で送るのっておかしくないかなぁ。

尊敬するのはいいけれど、思考停止じゃ愚かだと、どこかの誰かが言ったっけ。

考えろ考えろ考えろ。

全て凡て統べて。

僕にできることはそれぐらいだから。



筆記試験は全く問題なく終わった。

 

経営科に関しては、ヒーロー科との併願を優遇する制度があり、内申点での条件を充分に満たしていた僕は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()実技試験の評価で不合格となっても、経営科に入学できることになっている。

 

かっちゃんと一緒に行った自己採点では、満点こそ逃したものの、二人ともかなりの高得点が見込める手応えだった。

 

入試から一週間がたち、僕の家でいっしょに夕食を食べながら、かっちゃんと入学後の事を話している。

 

「かなりの確率で入試の成績一位だからさ、新入生代表の挨拶を考えときなよ、かっちゃん。」

 

カレーライス……かっちゃんが来ている時は彼の好みに合わせて辛い料理を母さんは作ってくれる。

まぁ、僕も辛い料理が嫌いな訳じゃないけどね。

 

「そーだなー。がっつり()()()つもりだけどよぉ、それでいいよなぁ?イズクぅ。」

 

「あぁ。かっちゃんが、爆豪勝己が来たっ!て知らしめてやるといいよ。」

 

僕達二人の掛け合いを、母さんがニコニコと笑って眺めている。

 

「二人とも、合格通知はまだでしょ?気が早いわよ。」

 

ほっそりとした、僕が幼い頃からほとんど変わらない容貌。世間的に美人の部類に入るんじゃないかな?

かっちゃんのお母さんも若くて美人だけど。

 

「とは言ってもさ、僕らの中では確定事項だしね。」

 

「そうだぜおばさん。もう俺らの視点は入学後さ!あ、お代わりいいっすか?」

 

 

 

 

さて問題は唯一つ。

僕をどう判断した? 雄英教師陣。

 

 

 

翌日の事。

雄英から送られてきた手紙。

それを母さんの前でゆっくりと開ける。

書面と……投影装置?

えーっと、スイッチは……ポチっと。

 

「私が投影された!!!」

 

うおっ!オールマイト!?

なんで?雄英からだよね?

濃ゆいなぁ、相変わらず。

 

「なぜ私が!?と思っているかな緑谷少年!君とこの街で出会ったのも他でもない。雄英に勤めることになったからなんだ。」

 

なるほどね。

 

「あの時の少年が雄英を受験するとはね。こういったことも縁……ゴホッ。ん?何だい!?巻きで!?」

 

何か拳が横から突き出されてクルクルしてるね。

……オールマイト、ところで今の咳、音が良くないよね。肺を患ってるのかな?

 

「筆記はトップクラス!だが、実技試験でのポイントは18ポイント……。これでは不合格だ。」

 

引っ張るなー。

あ、母さん大丈夫だよ。これ、()()だからさ。

 

()()()()ならね!先の入試!見ていたのは仮想ヴィランの撃破ポイントのみにあらず!!!」

 

……オールマイト、さっきから突き出た手がクルクル回ってますよ。ほら、マキでって声も聞こえちゃったし。

 

「他の受験者を助け、フォローした行動も審査制で評価していたのさ!救助活動(レスキュー)ポイント!!!」

 

ふむ。やはり、ね。

なら、かっちゃんも少しは加点されたかな。

 

「そして!緑谷少年!君だけがとった行動も我々は評価した!受験者への指示!指揮!()()()()!」

 

せんどう、ね。

煽動かな、それとも先導?

 

「初めて出会うもの達をまとめ上げ、巨大な敵を撃ち破った判断力!リーダーシップ!実に素晴らしい!」

 

手放しで誉めちぎる、か。

あえて伝えない裏側があるよね、絶対。

 

「レスキューポイント25!特別評価ポイント35!」

 

ほら。()()()()()()()()()()()()()()

 

「経営科でヒーローコーディネーターを目指す進路も考えていたようだが、我々は君はヒーローになるべきと判断した!……合格さ。」

 

それは、貴方も同じ考えですか?

僕がヒーローになるべきと、思っていますか?

 

「来いよ緑谷少年!ここが君のヒーローアカデミアだ!」

 

お母さん、泣かないでよ。

やっとスタートラインに立っただけなんだから。

 

 

さて、オールマイトが雄英で教鞭を執るとは、ね。

ステキだ。

存外にステキだ。

オールマイトが赴任した年代の新入生ってだけでも注目の的じゃないか。

かっちゃんや、これからの3年で手に入れる戦力の価値がワンランク上がると考えても良いくらいだ。

 

ただ、平和の象徴が雄英に来た理由はなんだ?

次代の平和の象徴の育成?

歩くように人助けをして、呼吸をするようにヴィランを制圧する男が?

 

引退した後ならば分からなくも無いけれど。

 

引退しなければならない日が近いのに、勝手に世界を背負い込んでいるのかな? オールマイトがいなければ、次のオールマイトがいなければ、一日とて世界は廻らぬとでも思っているのかな?

 

好都合だ。

まったくもって好都合だね。

なら謳おうじゃないか。

僕達がいると。

僕達に任せてくださいと。

 

笑って人を救っちまう化け物に、貴方はもういらないと笑顔で引導をわたしてやろう。

 

サンタさんが僕に言ってくれたように、笑顔で

 

 

もう大丈夫 僕がいるって さ

 

 

 

 

あ、かっちゃんとチーム緑谷(仮)のみんなに連絡しなきゃ。

 

 

え?お母さん?カレーカツ丼作ってくれるって?

あはは。僕らのお祝いメニューだもんね。




この二次創作では緑谷君のお母さんは、ストレスからの過食が無かったのでスマートな美人さんです。
かっちゃんもちょくちょくご飯食べに来てるみたいですな。


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ヴィランによる犯罪発生件数、毎日チェックとかしない?

自分の無力さを忘れたことなんて、一日も無い。


自分の無力に悔やんだ日々の数は、思い出したくも無い。






被服控除はかなり悩んだ。

雄英に提出する個性届と身体情報。

それに基づいて作成してくれるコスチューム。

 

僕の個性は()()()()支援型だ。

その個性を生かして戦うという前提ではないのだが、それでも単騎で戦う状況は想定するべきだろう。

実技試験で準備した装備を原型とした、個性使用の為の要望を添えることとした。

デザインはオールマイトの銀時代(シルバーエイジ)を参考にした。

 

かっちゃんは自分でヴィジョンを持っていたので、少しばかりの助言にとどめた。

ノーリスクで最大火力を求めるあたりが何とも彼らしい。

 

 

さて、入学式までに色々とやっておきたい事は有るのだけれど。

今日はチーム緑谷(仮)の紅一点、麗日お茶子さんの為の家具選びに付き合うこととなっている。

 

というのも、麗日さんは親元を離れての独り暮らしで雄英に通うとのことで、実家で使っていた小物類や衣服は持ってきたけれど、家具類は送料を考えて、安価なものがあればこちらで購入を検討したいと言うのだ。

 

合格報告をした時にそういった話が出て、僕がリサイクルショップや格安店を案内すると申し出たのだ。

 

ちなみに、今はクッションやタオル類を寝具代わりにしているらしい。

健康の為にも早々に改善を図るべきだろう。

 

かっちゃんも誘おうかと思ったが、今回のミッションは麗日さんの個性について詳しく話を聞いたり、彼女の好感度を更に高めておくのが目的だ。

つまり、一緒にいてかっちゃんより麗日さんと話す方が自然と多くなる。

 

うん、かっちゃんの機嫌が微妙に悪くなる未来しか見えない。

 

小学校ではそんな事は無かったのだが、中学に入ってからは僕が女子と話すのを嫌がる素振りが見えるのだ。

自然とできる男女の壁的なアレだとは思うのだが、チーム緑谷(仮)の重要なメンバーである麗日さんとのコミュニケーションに支障をきたすのは御免こうむりたい。

 

麗日さんとかっちゃんを交えた円滑な人間関係の構築。

その為にも、麗日さんの情報収集を的確に早急に行う必要があるわけだ。

 

待ち合わせは、県内最多店舗数を誇る木椰子区ショッピングモール。

六本腕のあなたにも、六本足なあなたにも、きっと見つかるオンリーワン!

が、今月のキャッチコピーだったかな?

異形型の人も服や靴が揃えられるのが売りなのだが、今日の買い物はここじゃない。

 

このすぐ側に、リサイクルショップや型落ち品とか展示品を格安で扱う店が立ち並ぶ商店街が有るんだ。

ベッドや机を揃えたいとの麗日さんの要望にリーズナブルに対応できる店舗が複数ある。

 

と、いうわけで……。

 

「イズクくん!おまたせぇ。」

 

おぉ、何か山ガールっぽいぞ!?

ん?なら、かっちゃんとそれなりに合うのかな?

 

麗日さん、おはよう。

じゃあ、早速いこうか?

 

「お、イズクくんの格好は!」

 

はは。うん、オールマイトの公式グッズ。

銀時代(シルバーエイジ)ver.のパーカーだよ。

 

ファンかって?ヒーロー目指しててオールマイトのファンじゃ無い人の方が少なくない?

んー、昔は憧れを拗らせてた、かなぁ。

今は目標さ。

だから、この格好は、その事を常に忘れない為の覚悟みたいな感じだよ。

まぁ知識でそこらの半端マニアに負けるつもりも無いけどね。

 

 

うん。こっちこっち。

結構な穴場的ショップがあってね。

 

……っ!

 

()()()は、路地を抜けようとした僕たちの前に降り立った。

薄汚れた作業服。短く刈り込んだ髪。

紫色の瞳。

そして、手にしたボストンバッグからはみ出した、札束。

 

強盗犯(ヴィラン)、か!?

 

「麗日さん、下がって!通報!」

 

とにかく彼女の安全!

後は警告して、催涙スプレーを……っ!

 

「悪いな。ちよっとだけおとなしくしててくれよ。」

 

男の目が光を放った。

 

しまっ……!

 

 

 

『無個性の癖に、ヒーロー気取りか、デク!!』

 

なんだ、これ。

 

『諦めた方がいいね。出久くんには関節が二つ有る。』

 

なんで、こんな。

 

『この世代じゃ珍しい……何の個性も宿ってない型だよ。』

 

こんな、昔の。

 

『ごめんねぇ出久ごめんね…!!』

 

違うよ、母さん。僕には、個性が、有るんだ、から。

 

くそっ。精神、に、干渉、する、個性、か。

 

 

「お父ちゃん、お母ちゃん、うち、うち……。」

 

麗日さん、も。

ダメだ。これ、以上、考えちゃ、ダメ、だ。

 

「悪いな。NIGHTMARE-EYEの効果は5分。そのまま悪夢を見ていてくれよ。」

 

くそ、体が、動かない。ダメだダメだダメだダメだ。

 

『来世は個性が宿ると信じて……屋上からのワンチャンダイブ!!!』

 

知ら、ない。かっちゃん、は、爆豪、勝己は、こんな、こと、言って、ない。

これは、ただの、妄想、だ。

 

『夢を見るのは悪い事じゃない。だが…相応に現実も見なくてはな、少年。』

 

誰、だよ、あんた。ガリガリ。これが、悪夢、なんだよ。

 

『赤谷海雲。君は無個性だというのに……』

 

僕は、緑、谷、出久、だ……。

 

「人の相方にぃ!何してくれとんじゃあっ!」

 

 

かっ……ちゃん!?

 

僕の肩をポンッと叩き、今まさに脇を通り過ぎようとしていたヴィラン。

 

その頭を思い切り横から殴りとばしたのは、かっちゃんだった。

 

「ぐはっ!!」

 

倒れ込むヴィラン。

……よしっ!!頭が晴れた!

 

「かっちゃん!タイプ瞳術(ゲイザー)!対応はS!」

 

叫んでバックダッシュ!麗日さんを抱えて距離を取る!

 

起き上がるヴィランがその個性を発現させるより早く、海浜公園でのトレーニングで開発した技の一つ、閃光・轟音特化が炸裂した。

 

倒れてのたうち回るヴィラン。

よし、これで通報から現着までは大丈夫かな。

 

あ、かっちゃん!それ以上は過剰防衛(いけない)

 

「あの、イズクくん、また、お姫様抱っこ……。」

 

あ、ごめんね麗日さん。

大丈夫だった? 今おろすね。

 

 

 

その後、警察とヒーローが到着し、僕たちは後日あらためて詳細を話すこととなった。

もしかしたら、かっちゃんはお小言を受けるかもしれないけれど、個性による直接的な攻撃は止めたから大丈夫だと思う。

 

麗日さんの買い物は後日として、僕たちは帰宅することにした。

 

かっちゃんが助けてくれたのは、本当に偶然見かけたからとのことだ。

ショッピングモールに新しい登山靴を買いに来ていたらしい。

麗日さんが、コンビの絆がどーのこーのと言って、かっちゃんの機嫌も悪くなさそうだ。

 

これなら、まあ、いいかな。

 

「しっかしよぉ、イズクぅ?」

 

ん?どうしたのかっちゃん。

 

「すっげぇ久しぶりに見た気がするわ。」

 

 

 

……っ!やめてよ。やめてよ。やめてよ。やめてよ。

やめてよ、かっちゃん。

言わないでよ、かっちゃん。

 

 

 

「お前が、助けを求める顔してたの。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……本当に、悪夢のような、一日だった。




ヴィランの個性のタイプや爆破の応用は、短いワードで指示できるように取り決めています。

目を使うタイプ:ゲイザー、口から吐くタイプ:ブレスなど。


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オールマイトってどうやって通勤してるんだろう。運転免許持ってるのかな。

ヒーローの収入は基本出来高歩合制。

そう教えたときの親友の顔は今でも忘れない。




文字通りの悪夢の時間は終わり、僕達は日常に帰った。

 

警察での証言の時に聞き出せた限りでは、あの男は個性を悪用した強盗犯(ヴィラン)で、個性は目を見た相手を悪夢で5分の金縛りに掛けること。

悪夢の内容は、掛けられた者の心が生み(生む=一般的)(産む=限定的)出すのだとか。

 

サンタさんに個性を貰う前の体験がフラッシュバックしたのは理解できた。

だが、それでは説明のつかないヴィジョン。

確かに僕の心を抉ったあのイメージはいったい何だったのか?

 

まあいい。

他人の心を窺う(伺う=聞く・尋ねる・訪ねるの謙譲語)術はそれなりに得たつもりだけど、自分の心こそ不可解。

そういうことにしておこう。

何より、あの日の事を考えていると、かっちゃん……爆豪勝己が笑いながら言いやがった言葉まで引きずることになる。

 

良かったことだけ考えよう。

 

後日、あらためて()()で麗日さんの家具を買いに行き、持ち帰って設置まで済ませた。

麗日さんの個性で重さを消して、かっちゃんと二人で運んだよ。

 

「これバレたらお巡りさんとかに叱られへんかなー。」

 

「なら重そうに持ちゃあいぃんだ。だろ、イズク。」

 

「あはは。微妙に難しいよね、それ。」

 

うん、麗日さんとかっちゃんはソコソコ親しく会話するようになった。

まさしくトラウマ(怪我)の功名。

 

 

麗日さんは凄いと思ったことを素直に称賛する子で、僕とかっちゃんの事を聞くたびに感心し、褒め称えた。

これがおべっかの類いだったなら、僕はもちろんの事かっちゃんも直ぐに見抜いていたろう。

裏表のない明るい有り様は、人付き合いが苦手なかっちゃんにしても満足のいくものだったらしい。

 

僕の事を麗日さんが褒め、かっちゃんがドヤ顔する姿は少しばかり眩しかったけど。

 

そして、ほんのさわりではあったけれど、麗日さんの個性を体感してのトレーニング。

最初は海浜公園で行うつもりだったが、9ヶ月かけて清掃したあの場所は、皆が利用する本来の姿に戻っていた。

うん、ちょっと個性のトレーニングは無理かな。

 

でも、ゴミを片付けるのはやはり気持ちいい。

たくさんの人が笑ってくれるのは嬉しいもの。

 

と、いうわけで有料のトレーニングルームを借りた。

雄英の新入生という身分で割り引いて貰えたのは少し驚いた。

 

結論。かっちゃんは天才。いや知ってるけど。

 

まさか半日とかけずに自身が無重量状態での爆破のコントロールを掴むとは思わなかった。

あとは、麗日さんの個性の把握と検証が進んだのは嬉しい。

 

彼女の個性はあくまでも重力影響を見かけ上の0にすることであり、質量その物に干渉する訳ではなく、結果として、慣性の法則の支配下に有り続けるということが暫定的に立証出来たといえる。

これはエグゼキューターを破壊したときの切島くんの貫通力からも仮定できていたことなのだけれど、切島くんの個性の検証を精査に行ったわけでもないので、僕の中でも今回の検証で……

 

おっといけない。

新しい個性について考え始めると思考が集中しすぎるのが僕の悪い癖だ。

ちなみに僕も三次元的機動の()()は体感できた。

麗日さんはニンジャだぁっ!て喜んでいた。

 

 

 

 

さて、その他の雑事も少なからず有ったけれど、僕達は入学の日をようやく迎えた。

 

「ハンカチも!?ハンカチは!?ケチーフ!」

 

緊張してるのかな?何故か母さんがハンカチの所持にこだわっていた。

玄関の扉を開ければ不敵に笑うかっちゃん。

僕ら二人の姿を見て、母さんが微笑む。

 

「超カッコイイよ。二人とも。」

 

「あざっス。」

 

 

うん、ところでかっちゃん。ノーネクタイでいくんだ。

いきなり着崩すのもキャラ的には有りか……。

今日からの日々の為に練習を重ねたネクタイに触れながら、なんとなく羨ましかった。

 

 

 

セキュリティの高さも自慢らしいけど、分厚い金属の隔壁を備えたゲートを通る時はちょっと緊張した。

雄英バリヤーっていったっけ?

誤作動とかしたら怖いよね。

 

広いなあ、ホントに。

 

敷地内に併設された各施設は当然として、校舎内部も実に贅沢な空間の使い方をしている。

これで1学年につきヒーロー科が2クラスしか無いんだものなぁ。

もちろん、普通・サポート・経営の9クラスを低く見るつもりは毛頭無いが、本当に少数精鋭主義なのだと実感する。

 

うん。つまり、ここでヒーローライセンスを得る事の意味は、他校の出身とは()()が異なるということだ。

さぁ、始めよう。僕のヒーローアカデミアの計画(物語)を。

 

 

教室の扉も大きいよ。

5メートルの身長の異形型ってそんなにいないよな。

そんな事を考えながら、1-Aの扉をくぐる。

かっちゃんとも同じクラスだ。助かる。

余裕を持って登校したおかげか、教室には3人しか来ていなかった。

 

「緑谷君!同じA組なのだな!あらためて宜しくお願いする。」

 

飯田君。礼儀正しいなぁ。ちょっと角ばった動きが笑えたけど。

 

「こちらこそ。いっしょのクラスで嬉しいよ。」

 

「俺もいるぜ緑谷ぁっ!」

 

うん?……切島君?イメチェンかな。

真っ赤に染めた髪をガチガチに固めて、角のようなヘアスタイルに仕上げている。

 

「切島君、カッコイイね。その髪。」

 

「へへ、気合い入れてきたぜ!」

 

うん。よく似合ってる。いいな、キャラが強くなってるじゃないか。

 

「あーっ!アレだよね!切島の言ってた、リーダー!」

 

お?切島くんの友達かな。

ピンクの髪、あ、ちょっと髪型が僕と似てる。

そこから生えた短い角。

紫っぽいピンクの肌。反転目。

可愛い異形型の子だなぁ。アイドル路線行けそうだ。

 

「緑谷出久です。切島君達には実技試験で助けてもらいました。」

 

「あたし、芦戸三奈。よろしくね!」

 

かっちゃん。僕が女の子と話すと不機嫌オーラ出すのやめようよ。

 

そこから続々と入ってくる少年少女。

 

麗日さんが手を振って、軽くかっちゃんが返しているのが印象的だ。

お、常闇君も来た。

 

「貴殿の言った通り、我ら再会する宿命であったな。」

 

常闇君、流石だ。

でも、チーム緑谷(仮)、全員A組か。偶然、かな?

そうでないとしたら、雄英サイドが僕に対しての観察を行うための材料というところか。

 

「あたしも同じ試験会場だったんだ。凄いね緑谷。」

「再会できたね、ムッシュ☆」

「おいおい、お前何もんよ?いきなり話題の人?」

 

囲まれたよ。

はは。掴みはオッケーかな……。

ん?寝袋?

 

ゼリー飲料を咥えた男性が、寝袋にくるまって現れた。

 

「お友達ごっこしたいなら他所へ行け。」

 

ゼリー飲料を一瞬で飲み終えて、ゆらりと這い出てきたよ。

静かになるまで8秒だとか、合理性に欠くとか言われた。

常識的な言動を欠いてる人に言われたくないなあ。

 

相澤消太……担任、か。

体操服を着てグラウンドに出ろと言われたので、机の中に入っていたソレを持って、更衣室に向かうことに。

 

あ、一応聞いておこうかな。

 

「ヒーローネームを名乗らないのは、校内・校外で対応が変わってくるからですか? ()()()()()()()()。」

 

あ、睨まれた。

 

予定が変わってちょっとイラッとしただけですよ。

入学式の新入生代表挨拶、かっちゃんプロデュースの機会が無くなるってことでしょう?

 

さて、どれだけ理不尽で非合理的な初日になるのかな。

一周まわって楽しみだ。




個性把握テスト……イレイザーヘッドvsイズクのネゴシエーションが前哨戦かな。


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