推しカプイメソン書き起こし企画 (こつめ)
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dialogue (KEI)×みさここ

KEIさんの曲は全体的にみさここ感あるのですがこの曲の『今までのこともこれからのことも君にまだ話し足りないことばかりだ』が完全にみさここだったので書きました


自分の手で締め切った扉も、鍵はいつも開いていたんだよ。でも誰も訪れて来てはくれなかった。

それがどうしてかは分からなかったけれど、分かったこともある。

楽しい事も嬉しい事も、向こうから迎えに来てはくれない。

こっちから会いに行かなきゃ、顔を合わせてくれないのだ。

 

 

 

「おはよう美咲!」

「ふわぁ……おはようこころ。朝から元気だねぇ……」

「えぇ!だってこうして美咲と朝から会えたんだもの!」

「っ……、大袈裟だって……」

「そうかしら?わざわざ美咲が来そうな時間に合わせたんだもの、これくらい喜んでもバチは当たらないと思うわ」

「……か、勝手にすれば」

 

こころはいつもこうだ。こうやって、真っ直ぐに来る。逃げさせてくれない。

だから、こころに出会ってから、こころに引っ張られて、不本意ながら少しだけ、嘘が減った。

自分から目を逸らさないようになった。

『手に入らないものならいっそ望まない』とか言って諦める言い訳は、もう捨ててしまったんだ。

 

 

 

「今日はどんないいことがあるかしら?」

「さぁ、どうでしょう……。悪いことが起きるかもよ?」

「それは考えてなかったわね……。でもそれならそれでいいわ!だって、悪いことの後には必ずいいことが起きるでしょう?それが今日か明日かは分からないけど、いつかは起きるんだもの。その前触れなんだから、悪いことでもいいの!」

「……なるほどね……」

 

美咲はいつも心配してくれる。最初はどうしてそんなに心配性なのか分からなかったし、もっと楽しい事を考えてくれればいいのにって思っていた。今までそんな風に思ってくれる人なんて居なかったから。

でも少しずつ、心配するのは彼女なりの思いやりがあってのことって分かってきた。それが分かり始めると、あぁ、美咲はこんなに私のことを思ってくれてるんだなって思って、嬉しくなった。

美咲との出会いを知った私は、もしかしたらこの先別れや孤独を知ることになるかもしれない。

それでもまた、人を好きになってしまうと思う。

囁いても叫んでも届かないこともあるかもしれない。

でも、いつしかまた伝えたくなってしまうと思う。

拒絶の数も失望も増えるかもしれない。

それでもまた、言葉を紡ぐと思う。

なぜって?

だって、今までのこともこれからのことも、君にまだ伝えたいことばかりなのだから!

 

 

 

「あ、見て見て美咲!」

「んー、どうしましたかこころさん」

「水たまりが凍ってるわ!スケートができるかもしれないわね!」

「あーはいはい、滑って転ばないようにねー」

 

こころは何か見つけると、すぐ私に教えてくれる。それは大抵何でもないものなんだけど、きっと私一人では気にも留めなかったものだ。それこそ、こころに出会う前の私なら絶対に見つけられていない。

一人が好きなんだって豪語して。

今にして思うと、それもきっと本当なんだけど、でも一人で居たかったわけじゃなくて。

『君がここにいてくれてよかった』

なんて、こころには絶対言えないけど。言えないけども。そんなセリフもきっと、嘘偽りはないって言えるから。

臆病な自分を嫌って、ひたすらになって隠して。隠せていると思っていたのに。

こころに、それでも見抜かれてしまった。

それからこころを見てると、時々思うようになった。

笑われても恥かいても格好つかなくても、

下手くそな嘘は吐かない方がいいなって。

 

もちろん不安は消せやしないし、悲しい結末もあるだろう。

それでも、期待したい未来があるから。

わたしはこころに着いて行くんだ。

それにさ。

今までのこともこれからのことも、君にまだ話足りないことばかりだ。

 

 

 

「スケートをするにはちょっと小さかったわね……。そうだわ!大きなプールに水を張ってスケートリンクにしましょう!それでその上でハロハピみんなで演奏するの!どうかしら!」

「いやー、流石に滑りながら演奏はちょっと聞いたことないし……」

「なら、私達が最初になればいいじゃない!」

 

そうだ、目の前の暗闇は前人未到の証拠なんだ。誰もやったことがないのなら、私達がその初めてになればいいんだ。

 

「いやー、流石にスケートはミッシェルには無理なんじゃないかな……」

「そうかしら?ダンスだって上手に出来るんだからやれそうな気がするけど……」

「無理!私もスケート出来ないのにミッシェルじゃもっと無理だから!」

「……?そこに関係があるのか分からないけど、美咲はスケート出来ないの?」

「出来ないっていうかやったことない。けど出来る気もしないっていうか……」

「それは勿体無いわ!そうだ、今度一緒にスケートをしましょう!きっと出来るようになって楽しくなるわ!」

「……あー、これ拒否権なく突然発生するやつだな……」

 

美咲と話していると、美咲のことがどんどん詳しくなる。だから、私は美咲と話がしたいの。

そうだ、僕の知らなかった君に会いに行くんだよ。

誰も訪ねて来やしないなら、こっちから会いに行かなきゃ。

 

 

「まぁ、こころがやるっていったら仕方ないからな……」

「楽しいのよ、スケート!こう、氷の上をスーッと滑って、時々クルッと回るの!氷の上でしか出来ないことばかりなのよ!」

「こころさんや、流石に初心者の私にそのレベルを求められても……」

 

こころに出会うまでに、いくつも出会いと別れを知って、孤独の意味を知った。

それでもこころと出会って、また人を好きになった。

囁いても叫んでも届かなくても、こころを見てると、いつしかまた伝えたくなってしまって。

 

拒絶の数は増えるし、失望の数もきっと増えるよ。

それでもまた、こころと一緒に、言葉を紡いでいきたい。だってやっぱりさ。

今までのこともこれからのことも、君にまだ話足りないことばかりだ。

 

 

 

「「ねぇ」」

「あら、なにかしら美咲」

「こころこそお先にどうぞ」

「そう?それじゃあ……あら、何を言おうとしたか忘れてしまったわ」

「なんじゃそりゃ……」

「それで美咲は?」

「え?あぁ、えっとね……、……ごめん、私も何言うか忘れた」

「こんなこともあるのね!でもいいわ、思い出したらすぐに美咲に言うから!美咲も思い出したらすぐ言ってちょうだい!」

「あーうん、多分大したことじゃないと思うけどねー」

 

 

 

『『君も話してほしいな』』



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アスノヨゾラ哨戒班(Orangestar)×モカ蘭

公式イメソンを手癖で書いたら迷走しました


気分次第です、私は。

何が正しいのかなんて分からなくて。

例えるなら、敵を選んで戦うみたいに、何に基づいて生きればいいのか分からなかった。

そんなだから、叶えたい未来も無くて、夢に描かれるのを待ってた。

そのくせ未来が怖くて、明日を嫌って過去に願って。

だけど嫌でも今日は昨日になって、明日は今日になった。

そして、もう如何しようも無くなって叫ぶんだ。

明日よ、明日よ、もう来ないでよって。

そんな私を置いて、月は沈み陽は昇る。

 

 

 

「う〜さっむ〜い……」

「流星群が見えるから見に行こうって言い出したのモカでしょ、我慢しなよ」

「ら〜んー、あっためてー」

「ひゃっ?!ちょ、冷たいから首触んないで!」

「え〜、いいじゃん減るもんじゃないしー。……じゃあ、えい」

「……やっぱり冷たい」

「首じゃなく手で満足してあげてるモカちゃんに感謝するのだー」

「なんで私が感謝する側なの……」

 

本当ならこの日も、何も無い普通の日になるはずだった。

けどその夜は違ったんだ。

君は私の手を引いた。

珍しくモカの方から「流星群を見に行こう」と誘われた。私はもともと星を見るのは好きだったけど、モカはあまり興味がないものだと思っていたから、誘う事も無かった。それだけに意外だった。

二人で見つけておいた秘密の場所、屋上に出られる雑居ビルを上って行く時は、とてもワクワクしていた。

空は生憎の曇り模様だったけれど、予報では少し晴れてくるらしかったので、二人でしばらく待つことにした。

 

寒がりのモカの手はやっぱり冷たかったけど、だんだん私の体温が伝わって暖かくなっていくのが分かった。

寒空の下、二人手を繋いでいる間、まるで世界には私達しか居ないような気がしていた。

今日はもう見えないかもね、なんてモカに言おうとしたところで、手を握る力が強くなった。

「蘭、あれ……」

 

そこで私の目が捉えたのは、空へ舞う世界の彼方と。

それを瞳に写す彼女の姿で。

まるでそれは、闇を照らす魁星の様だった。

 

「綺麗……」

「だねー……」

「……ありがと、モカ」

「わ、蘭が素直だ。こわ〜い」

「もう……」

「……よかった」

「え?」

「……最近さー、蘭、あんまり笑ってなかったから。こうして寒い中頑張った甲斐があったなーって」

「……モカ……その、心配かけて、ごめん」

「いいってことよー」

「…………モカと私もさ」

「んー?」

「また、明日へ向かっていこう」

「……んー」

 

もし明日が夢で終わってしまうならば、『昨日を変えさせて』なんて言わないから、せめて。

また明日も、君とこうやって笑わせて。

 

 

 

あれから世界は変わったって本気で思ったって、期待したって変えようとしたって、未来は残酷で。

毎日毎日、今日が終わると明日がやって来てしまった。

それでもいつだって、君と見ていた。一人ならきっと飽きていただろうけど、君と見るこの世界は本当に綺麗だった。

忘れてない、忘れることなんてきっとない、だって思い出せるように仕舞ってるから。

 

君がいてもいなくても翔べるなんて妄想だってことは、自分がよく分かってる。

もしモカがいなくて独りじゃ、歩くことさえ私はしないまま、藍色の風に幻想を吐いていたかもしれない。

そしてきっと、そんな幻想を壊してくれって願って踠くだろう。

こんなことをモカに言うと、なんて返されるだろう。きっと「願ったんなら叶えてしまっちゃえ」なんて君は言ってくれるかな。

 

 

 

明日はまた流星群らしい。

だから、また明日の夜に逢いに行こうと思うが、どうかな、君はいないかな?

もし、君がいなくても。

それでもいつまでも私達は一つだから。

今日はまたねって言って笑いたい。

未来を少しでも君といたいから、今日も私は叫ぼう。明日が来ないうちに。

今日の日をいつか思い出せ、未来の私達。



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ダブルラリアット(アゴアニキ)×さよつぐ

紗夜が回り疲れた時はつぐが側にいるの、エモみ深い


私には音楽しか、ギターしかない。

だからこの音が届く半径85センチの中で、精々振り回してみよう。

 

 

 

「〜〜〜♪♪♪」

「わぁ……」

「〜〜〜♪♪♪。こんなところでしょうか」

「すごい……やっぱり紗夜さんはすごいです……!」

「羽沢さんに褒めていただき光栄です。今まで練習してきた甲斐がありました」

「そんな大袈裟ですよっ」

 

羽沢さんは嘘を言わない。だから羽沢さんに褒められると、素直に嬉しくなる。

 

他人に褒められても裏を疑うようになったのは、いつからだったか。

初めは、ただギターを弾く事が楽しかった。ずっとこのままでいたかった。

ただギターを弾く事を続けていたら、止まり方を忘れていた。

それなのに、そんなにも練習したのに、私を追い越していく存在があって。

いつも比較されているような気がして、褒められてもその存在と比べてしまって、素直に喜べなくなっていた。

どれだけの練習を積んでも付いてくるその存在を私は。

仕方ない、と一言つぶやいて、諦めたフリをしていた。

 

でも今は、少なくとも今この瞬間は。

私と羽沢さんの周りの半径250センチは、この音の届く距離だから、他の何も入ってこないで。

 

 

 

「〜〜〜♪♪♪」

「……いい音ですね……」

「〜〜〜♪♪♪……っと」

「やっぱりいつ聴いても、羽沢さんの演奏は良いですね。羽沢さんの気持ちが伝わってくるようです」

「そんな、褒めすぎですよ。私なんかまだ全然ですから」

「いえ、そんなことありませんよ。技術は後から幾らでも身に付けられますが、気持ちを伝えられるような、自分の音を出すのは別です。それができている羽沢さんが、私は寧ろ羨ましいくらいです」

「……えへへ、紗夜さんにそう言ってもらえるとなんだかすごいことができてるみたいで嬉しいです!」

 

から回る事も、楽しかったのかもしれない。から回る事を続けていれば、報われると信じていられるから。

でも私はどこまでいっても私の音が見つからなくて。

そんな私を置いていく日菜の存在が辛くて、私は日菜を直視出来なかった。

下から眺めるのは首が痛い、と拗ねたフリをしていた。

 

 

 

「それじゃあ次は2人で合わせてみましょうか」

「はい!」

 

2つの音が重なって、広がっていく。重なった2つの音は、半径5200センチが届く距離だ。『今から飛び回りまわすので、離れていてください』なんて言いたい気分だ。

 

今の私は、どうでしょう?昔の自分が見たら褒めてくれるだろうか?

まだ自分の音は見つけられてない、目が回り軸もぶれながらでも回り続ける私の姿はどう映るんだろう?

 

ずっと1人でやってきた、できると思っていた。

けれど、羽沢さんと、私の嫌いな私を認めて肯定してくれる人と出会って。

少しだけ変わった、23.4度傾いて眺めた街並みは、いつの間にか見た事のない色に染まっていた。

 

 

 

「「〜〜〜♪♪♪」」

やっぱり訂正しよう。

2人の音が届く距離は半径6300キロだ。

今なら、できる気がする。

 

 

 

つぐみさん。

私1人では、85センチが音の届く距離だから。

いつの日か回り疲れた時は、側にいてください。



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世界は恋に落ちている(HoneyWorks)×あやちさ

世界は恋に落ちている(HoneyWorks)×あやちさ
好きに解釈しました、反省はしてる


世界は恋に落ちている。

それに気がついたのはずっと前だった気もするし、ついさっきな気もする。

ただ確かなことは、この気持ち。

君をわかりたいんだよ。

「ねえ、教えて」

千聖ちゃんのこと、もっともっと。

 

 

 

「お疲れ様です」

「あ、千聖ちゃん!お疲れ様!」

「あら彩ちゃん、お疲れ様。これからお仕事?」

「ううん、さっきまでレッスンだったけど、今日はそれだけ。なんとなく事務所に居たくて、まだ残ってたの」

 

なんて嘘。ホントは、千聖ちゃんが仕事を終わらせた後に事務所に来るって知ってたから残ってたの。

 

「……なんとなくで事務所に居るのはあまり褒められたものではないわね。ちゃんと休むのも仕事の内よ?」

 

すれ違う言葉にちょっとだけの後悔。

目的ばっかにとらわれて、大事なものが霞んで逃げて。

今日もリスタートだ。

 

 

 

「はい……」

「……今日は、もう何もないのよね?」

「へ?」

「私も今日はこれで終わりだから、一緒に帰りましょう?」

「……うん!」

 

世界は恋に落ちている。時々こうやって、光の矢が胸を射す。

全部わかりたいんだよ、千聖ちゃんのこと。千聖ちゃんが、私という人間を知ってくれたように。

「ねえ、聞かせて」

 

「千聖ちゃんは今日何のお仕事だったの?」

「今日はドラマの撮影だったわ。慣れない役回りで大変よ」

「やっぱりドラマは大変なんだね……。どんな役なの?」

「どんな?……うーん、そうね……」

 

2人でおしゃべりしながら一緒に歩く。

ありきたりな日常だけど。

千聖ちゃんまでの、たった1ミリが遠くて。

駆け抜けた青春に、忘れない、忘れられない輝く1ページなんだ。

 

 

 

春に咲いた花が恋をした。

つらいことも沢山あった。

それでも花は、必死に上を向いて笑った。

青い夏の蕾も恋をした。

でもこの時にあったのは、咲かない花と火薬の匂いだけだったんだ。

 

 

 

「それじゃあまた明日ね」

「あ、うん、……また明日」

「あぁ、明日は私はオフだから、また明後日、が正しいのかしら?」

「そ、そっか」

 

『オフでも、仕事じゃなくても、一緒に居たい』なんて、ホントの気持ち言葉にして、大事なこと話せたら。

ホントに、できるかな。

 

 

 

「それじゃあ」

「……待って!」

「……何かしら?」

 

鈍感な君だから、口に出して言わなきゃ。

今君に伝えるよ。

 

「ねえ、好きです」

 

 

 

世界は恋に落ちている。

全部わかりたいんだよ。あなたが私に思ってること。

 

「ねえ、聞かせて」

 

手繰り寄せてもう0センチ。

駆け抜けた青春に。

忘れない、忘れられない輝く1ページ。



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メランコリック(Junky)×かすあり

メランコリック(Junky)×かすあり
あまりにかすあり過ぎて五体投地をすることしか許されなかった


 香澄という存在は、全然つかめない。

 ポピパの中で何か言い出すのは、決まって香澄だ。でも決まってるのはそれだけで、どんなことを言い出すのかは全く予想できない。だからそう、目が離せないのは心配だから。そうに決まってる。なので間違っても。

 全然知らないうちに、ココロ奪われるなんてこと、あるはずないでしょ!

 

 

 

「……ありがとう、有咲。……えへへ、改めて言うと、恥ずかしいね……」

 それは無愛想な笑顔だったり、

「今日の演奏よかったよね! 私のギターに香澄のキーボードがジャーン!って重なって、すごい良い音が出せた!」

 それは日曜日の日暮れだったり、

「有咲ぁ〜、全然わかんないよ〜。勉強教えてください〜……」

 それはテストばっかの期間だったり。

 それは君と言う名のメランコリストだ。

 

 

 

 時々、いつでも全力な香澄のことが羨ましくなる。私は香澄みたいにはなれない。あんな風に、手当たり次第強気でぶつかっても、なんにも手には残らないって思い込んでる。

『お前が心配だから、あんまり無茶するなよな』なんて、伝えられればいいのに。

 ちょっとくらいの勇気にだって、ちっちゃくなって塞ぎ込んでる私だから。

 これはきっと、伝えられない。

 

 

 

 香澄について、私は全然知らない。

 私のこと、どう思ってるの?バンドのメンバーの一人?友達?それとも?

 そうやって全然つかめない君のことを、全然知らないうちに、ココロ奪われるなんてこと。

あるはずねーから!

 

 

 

 私の気持ちなんか全然気付かないお前のことなんて、全然知らない。知らねーから。

「ねぇねぇ、有咲! いいこと思いついたんだ!」

 じゃねぇから。この笑顔の所為で、また眠れないだろ!

 

 

 

「あーもういい加減にしろ香澄! もうちょっと大人しくしてろ!」

 また今日も香澄に起こってしまった。自分が嫌になる。

 明日もおんなじ私がいるのかな。不愛想で無口なままの、カワいくないヤツ。

 

 

 

 あの夢に。

 ありきたりな、つまらない夢。ギターをかき鳴らして自分を歌い上げるヤツがいて、自分も同じ景色を見る。

 そんな夢に香澄が出てきて、叶えられてしまって、夢じゃなくなった時から、素直じゃないんだよ。

 だって。

 

 

 

 何を考えてるか全然つかめない香澄のこと、私のことをどう思ってるのか全然知らないうちに、こころ奪おうとしてたのは。

「香澄!……あんまり無茶、するなよ。……私が好きなのは……元気なお前、だから」

 私の方、な訳ない、ことはないかもしれない。

 

 

 

「め、珍しいね、有咲がそんなこと言ってくれるなんて……。」

「うるせー。そういう時期なんだよ」

「……あのね、有咲」

「なんだよ?」

「……私も、同じ気持ち、だから」

「……っ」

 おぼれたいの、いとしのメランコリー。



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リミットフレンズ

リミットフレンズ(koman's)×みさここ
離別世界線のみさここのイメソンを書き起こしました


 夢を見ていた。

 

『美咲! 待ってたわ!』

『はいはい、今日はなんですかー』

 

 昔の、高校生の頃の夢だった。私の人生の中で、1番大事な、楽しかった期間。それはきっと、いつも側に彼女がいたから。

 あの頃の私達は、あんなに仲よかったのに。あんなに遊び回ったのに。

 それはもう、過去の思い出に変わってしまっていた。

 

 

 

「おはようございます、こころ様。本日の予定ですが……」

 黒服の人達が、いつも通り今日の予定を教えてくれる。いつもならすぐ覚えられるが、今日はさっきまで見ていた夢の所為で、あまり聞いていなかった。

 最近はあまり見なくなっていた、高校生の頃の夢。もう卒業して何年も経っているのに、色褪せてくれない思い出だ。

 美咲とは、いつも楽しい事を探して過ごしていた。笑いあって、ふざけあって、気づけばいつも一緒だった。一緒に居てくれた。今日はどんな楽しいことが見つかるのか、そればかりいつも考えていた。

 

『美咲! 一緒に帰りましょう! 楽しいことがきっと見つかるわ!』

『わかった、わかったから引っ張らないでくださいこころさん……』

 

 私達が友達だなんて、確かめることに意味はなかった。

 だって、毎日一緒に過ごすことが、それを証明してたのだから。

 そう、思っていた。

 

『こころはさー、進路とかどうすんの?』

『もちろん世界を笑顔にしに行くわ!』

『……そう、なんだ』

 だから美咲も一緒に行きましょう、と言おうとしたところで。

『あたしは、普通の大学生になって、普通に生きるから。……応援してるよ』

 はっきりと、拒絶された。ついていけない、と言われたようで、ショックだった。

 ねぇ、私達あんなに仲よかったわよね? 美咲はそんなんじゃなかったのかしら?

 笑い転げた日々を、どこに隠せばやりきれるっていうの?

 私は、この後もずっと、あなたと笑いたいのに。

 

 

 

 結局、美咲は宣言通り普通の大学に進学して、普通の大学生になった。そして私は、世界を笑顔にするために日本を出た。

 それぞれの環境で今日だって、あなたはもっと、前よりもっと、輝いた道を駆け抜けてるんでしょう? 美咲のことだから、きっと色々言いながらも、うまくやっているのだろう。

 美咲が笑っていれてるならそれでいいけど。

 ちょっぴり寂しい、なんて思ってしまうのは我儘かしらね?

 

 

 

 どんなに美咲と距離ができて、忘れられるようなことがあっても。

 一緒に過ごした時間だけは、あなたと私を繋げてるから。

 だから平気、そう思っていたのに。

 あの頃の夢を見る度、涙が出る。あなたのことを思い出す度、胸が痛む。

 でも私がどれだけ涙を流しても、あなたはずっと思い出の中でしかなくて。

 

 ねえ美咲、私知らなかったわ。

 共に築いた絆も、こんなにも容易く崩れてゆくなんて。

 

 ねえ美咲、私勘違いしてたわ。

 美咲がどんなに過去をたどっても、私はずっと奥に埋まってるの?

 一生一緒だなんて、勝手に保障されてるんだと思ってたのに。

 

 ねえ美咲、私に教えてちょうだい。

 美咲と笑い転げた日々を、どこに隠せばやりきれるの?

 

 ねえ美咲、私ね。

 またあなたと、笑いたい。

 



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世界征服やめた

世界征服やめた(不可思議/wonderboy)×みさここ
みさここ離別世界線の美咲視点です


 いつのまにかサラリーマンになっていた。普通の大学に入って、普通の大学生して、普通に就職した結果だ。

 立ったまま寝る通勤電車も、少年ジャンプを読むおっさんにも慣れっこになっていた。

 あの頃からしたら、まさかと思うじゃん。もう慣れたよ、慣れた。

 

 

 

 もしも誰かが「世界を征服しに行きましょう」って言ってくれたら、履歴書もスーツも全部燃やして、今すぐ手作りのボートを海に浮かべるのに。

 

 こういう日に限って、あんたからメールは来ないんだもんなぁ。

 あたしはあんたがそう言ってくれるのを、ずっと待ってたんだよ?

 

『こころはさー、進路とかどうすんの?』

『もちろん世界を笑顔にしに行くわ!』

『……そう、なんだ』

 そう言ってのけたこころは、とても輝いていて。

 普通の人間のあたしじゃ、邪魔になってしまうんじゃないかって思って。

 それが怖くて、あたしは。

『あたしは、普通の大学生になって、普通に生きるから。……応援してるよ』

 

 世界征服なんて、無理だもの。サラリーマンより忙しいもの。別に偉くなりないわけではないもの。

 

「もしもし、あ、あたしだけど最近なにやってんの?」

「いやちょっと最近迷路にはまってしまって、すぐに抜け出せると思ってたんだけど、なかなかそうもいかなくて、あ、でもさっき道を聞いたら交差点に出るたび左に曲がれば大丈夫だって言ってたから、もうきっと、きっと、すぐよ」

 

「なんだ、早くしてよ、みんな待ってるよ」

って言ったところで電話は切れて。

 もう彼女は帰ってこないんだってことが、はっきりとわかった。

 

 

 

 もうやめた、世界征服やめた。

 普通のあたしは、今日のごはん考えるのでせいいっぱい。

 もうやめた、二重生活やめた。

 今日からは、そうじ洗濯目いっぱいだ。

 

 

 

『それでは御社を志望した動機をお聞かせください』

『はい、私が御社を志望致しましたのは……』

 もしもあんたが、世界征服しに行こうって言ったら、履歴書もスーツも燃やしてすぐにでも太平洋にくりだしたよ。

 なのにそういう日に限ってあんたはメールをよこさないし、貸したCDも返ってこないままだ。

 あたしはあんたがそう言ってくれるのを、ずっと待ってたっていうのに。

 

 でも世界征服なんて無理だし、サラリーマンより忙しいし、偉くなりないわけでもないから。

 

 知りたくない、何も知りたくないんだよ実際。

『ハッピー! ラッキー! スマイル! イェーイ!』

 いくら知識がついたって、1回のポエトリーリーディングにはとてもじゃないけど勝てないよ。

 果てが無いくせに時おり夢をちらつかせてくる人生や、1日限りの運勢や、どうにも抵抗できない運命みたいなものをいっしょくたに抱え込んで宛名のない手紙を書き続ける人間の身にもなってみてよ。

 

 

 

「もしもし、あたしだけどみんな待ってるよ?」

「あー、ごめんなさい、言われた通りに交差点に出るたびに左に曲がってるんだけどなかなか抜けられなくて、でも大丈夫よ、きっと、すぐだわ」

 

「いやあんたそれってさ、思うんだけど……」ってところで電話は切れて、結局何も伝えられない。

 

 

 

『ふん、ふん、ふーん! ……って感じでどうかしら!』

『あー、つまりここは楽しげってことだから使う言葉は……』

 

 詩や歌にするのはとても簡単なのに。

 

『……じゃあね、こころ』

『……美咲も、元気でね』

 

 直接言葉で伝えることが、こんなにも難しいことだとは知らなくて。

 

『どうなってるんだ、君!』

『……申し訳ありません……』

 

 それなのに知らなくていいことばかり増えてしまって、自分の1番近くにある風景がこんなにも霞んでしまっていることに気が付きもしないなんて!

 

 

「人生がもし流星群からはぐれた彗星のようなものだとして」

 こころは言ったんだ。

「私達はもうどこから来たのかもわからないくらい遠くに来てしまったのかもしれないわね」

「そしてどこへ行くのかもわからない」

 あたしは付け加えた。

「まっくらな宇宙の中でどこかに進んでるってことだけがはっきりわかる」

 

 人生はきっと、流星群からはぐれた彗星のようなもので、行き着く場所なんてわからないのに命を燃やし続けるんだよ。

 

 だから、だから10年後のあんたは今のあんたを余裕で笑い飛ばしてくれるって。

 10年後のあたしは今のあたしを笑い飛ばしてくれるって、間違いないよ。

 

 そうでしょ、こころ?



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シルエット

シルエット(KANA-BOON)×みさここ
みさここ離別世界線の再会イメソンを書き起こしました


「それじゃあ行くわよ? ハッピー! ラッキー! スマイル! イェーイ!」

 こころの掛け声を合図に、いっせーのーせで、ステージへと踏み出して行く。

 そこから見える景色も聞こえる音も何も、あたしたちはまだ知らない。

 でも一線越えて、ライブを終えて振り返ると、演奏前の不安だった気持ちはもうない。

 ライブをした後の高揚感とか達成感を超えるものを、あたしたちは何もまだ知らなかった。

 

 うだって、うだって、うだってく。

 ライブをするとき、ステージはいつも熱気に包まれる。この熱気に触れて、煌めく汗が溢れる。

 紛れもなく、それはあたしたちの青春だった。

 

 

 

 

 

「……夢か……」

 布団の中、起き抜けの働かない頭でぼんやりと考える。最近、あの頃の夢をよく見る。

 世界を笑顔に、なんて御伽噺に付き合っていたあの頃。

 あたしの人生の中で、1番密度の高い、色々なことを経験したあの頃。

 覚えてないことも、たくさんあっただろう。それこそ、誰も彼もシルエットに見えるくらいには、色々なことをしたから。

 だけどあたしは、大事にしてたそいつら、忘れたフリをしたんだよ。

 だって、そうでもしないとさ、あんたが居ない世界、無理だったから。

 でもそしたらさ、なにもないんだ、あたし。笑えるね。

 

 

 

 

 

 なんだか昔が恋しくなって、あたしは久し振りにあの街に行ってみることにした。

 自宅から徒歩10分の最寄り駅から、電車に乗り込む。日曜の昼下がり、電車に揺られることしばらく。

 そうして辿り着いたこの街は、あたしが離れた時と何ら変わらず存在していた。

 

 特に当ても無く、歩き回る。通っていた学校、よく行った商店街。

 街並みはほとんど変わっていない筈なのに、何故だか昔とは違って見えた。

 それはきっと、隣で楽しいことを探す彼女が居ないからだろう。

 結局こんな気持ちになるのが分かってたのに、なんで来ちゃったんだろう。

 そう後悔して、帰るために駅へと足を向けた時だった。

 

「みさ、き?」

 もう二度と聞くことはないと思っていた、いつも楽しげな、あの声で呼ばれたのは。

「……こころ?」

 いっせーのーで、あたしたちは思い出していた。

 

 

 

 

 

 あたしたちは、世界を笑顔にする御伽噺を叶える、何もかもを欲しがった。

 でもいつまでもそれを追い続けることは出来なくて。

 わかってるって、あぁ気づいてるって言っていたけど。

 時計の針は、日々は、止まらなかった。

 

 

 

 奪って、奪って、奪ってく。

 こころが居なくなってからの日々は、空っぽで、なんにもなく。

 流れる時と記憶は、遠く、遠く、遠くになって。

 

 

 

『ねぇねぇ美咲!』

『はいはい、なんですかこころさん』

 

 覚えてないことも、たくさんあっただろう。誰も彼もシルエットに見えるくらい、一緒にいろんなことをした。

 でもいつかは終わる。その終わりが怖くて。恐れてやまぬこと、知らないフリをしたんだよ。

 だってそしたら、怖いことなにもないから。笑えるね。

 

 

 

 

 

「全然連絡なかったけど、元気にしてた?」

「えぇ、元気にしてたわ。美咲も、変わりないようで安心したわ」

 あたしたちは立ち話もなんだから、ということで近くの喫茶店に入った。この喫茶店もあの頃と変わっていないが、あたしたちの知る人はいないようだった。

「それにしても、こんな偶然あるんだね……」

「えぇ、私も驚いたわ。だって何年か振りにこの街に来てみたら、偶々美咲と出会うなんて!」

「ほんとびっくりだよ……。……高校卒業以来、だよね」

 そこで自然と、トーンが下がる。

「……えぇ、そうね」

「……今は、何やってるの?」

「弦巻家の当主として、色々な所に行って、色々なことをしてるわ」

「……そっか」

「……えぇ。……ねぇ、美咲」

 こころが、思い詰めた様子で言った。

「なに?」

「……私ね、ずっと後悔してることがあるの」

「……後悔?」

「そう、後悔」

 

「……ねぇ、美咲?」

 

「もし私があのとき、一緒に世界を笑顔にしに行きましょうって言っていれば、あなたは着いて来てくれた?」

 

 それは、あたしにとっても後悔で。

 だから、逃げないで答えようと思った。

「……あたしは、できることならさ」

「……えぇ」

「ひらりひらりと舞ってる木の葉みたいに、憂うことなく焦燥なく過ごしていたかったけどさ」

「えぇ」

「……付き合うつもりだったよ、世界のどこまでも」

「……美咲」

「覚えてないこともさ、たくさんあったけど。……こころが教えてくれたんだよ? きっと、ずっと、変わらないものがあるって。……消えないシルエットだよ、アンタは」

 話しているうちに、涙が溢れて来た。こんなんじゃ世界を笑顔になんかできないな、って思った。

「……嬉しいわ。そんなこと思ってくれていたなんて」

 

「……ねぇ、なんで、あのとき言ってくれなかったの?」

「……怖かったのよ、私。臆病だったから。もし断られたらどうしようって……」

「……そのくらい頑張ってよ、馬鹿……もう今更、遅いよ……」

「……えぇ、本当に、馬鹿だったわ……」

「……じゃあさ、こころ」

「何かしら?」

「これからは、ちゃんと連絡、してよ。……時々は、あたしもするからさ」

「……美咲……。……えぇ、もちろん!」

「……大事にしたいもの持って、大人になるんだ」

「え?」

「どんな時も離さずに守り続ければ、いつの日にか、なにもかもを笑えるよ」

「……えぇ、えぇ!きっとそうね!」

 そうして、2人笑いあった。

 

 

 

 

 

 ひらりとひらりと舞ってる、木の葉が飛んでゆく。



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