幼馴染みだけど疎遠だった北条加蓮と久々に再会したら、アイドルになっていた。 (高波)
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居眠りで再会

北条加蓮は夢を見る。

 

 

夕焼けが残る病室。

 

「なんで信じないんだよ!そんなに怖いのかよ!」

「いつも…信じてるよゆーくんのことは」

 

そこには今より少しばかり幼い自分と、男の子の姿。

 

「俺なんか信じなくてもいい!自分を信じろ!」

「でも…」

「大丈夫だ。信じることは怖くない!」

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

「おい、起きろ望月」

「んん…」

 

どうやら寝ていたらしい。

懐かしい夢を見ていた気もするけど。

 

「起きろと言ってるだろ!」

「……はっ!」

 

授業後。

 

「ったく…昼休み後だから眠たいのはわかるが…」

「すんません…」

「いくら勉強ができるとしても寝るのは見過ごせんな」

 

言い訳もできない。昨日は確か遅くまでラノベ読んでたんだっけ…途中で寝落ちしたけど結局寝たのは夜中の二時だった。

俺は睡眠不足だから、一日八時間は寝ないとまともに日中過ごせやしない。睡眠不足ならさっさと寝ろという文句は受け付けません。

さっき見た夢は何だったのだろう。あれは確か病室…ってことはあの夢か。久しぶりに見た気がする。忘れられないからだろうか。

 

「ところで望月。頼みことがある」

「はいなんでしょうか」

 

嫌な予感がする。こういうことの後に頼まれごとなんてろくなもんがない。

 

「一か月後は文化祭だろ?うちのクラスはどいつもモチベーションが低くてな。案の定実行委員が足りない」

「はあ。」

「ということで望月夕、お前に任せる!頼んだぞ!」

 

満面の笑みで先生が言う。拒否権はないのですか…?

まあ居眠りをしていたのだから仕方ない。別に実行委員とかは苦手じゃないしな。まあやるだけやろう。

 

「何をやればいいんです?」

「今日の放課後、最初の会議がある。場所は第二理科室だな。とりあえずそこに出席してくれ」

「わかりました。」

 

そして放課後。

先生から教えてもらった通り第二理科室へと向かう。

にしても文化祭か…まともに参加するのは久々かもな。

先生も言った通りこのクラスはとにかく学校行事のモチベーションが低い。去年の文化祭もかなり酷かった。(ちなみにこの学校はクラス替えがない)

やるからにはあんまり出来の悪いものにはしたくないし、何とかクラスの士気を上げないといけないな。

 

理科室のある三階に到着すると、何やら騒がしい。目的の理科室の前に人だかりができているようだ。

鍵が開いていないのか?人だかりはめんどくさいから早く退いてくれよ…

わずかな人の隙間を抜けつつ、入口へ向かう。

人だかりの中心に一人誰かがいる。ってかなんでここだけ距離感が空いてるんだ…

 

「北条さん!あなたも実行委員なんですか!?」

「そうだけど…ちょっとどいてくれるとありがたいかな…」

「まさか北条さんがいるなんて…俺実行委員立候補してよかったー!」

「サインしてください!サイン!」

「私も私もー!」

 

生徒の目の先の人物。謎の距離感の先に、俺はかなり懐かしい顔を見つけた。

同じ学校にいるというのに二年とちょっと顔を合わせていないが、それでもすぐわかるぐらいの美人。

そいつは俺を見つけるとちょっと驚いた顔をしたが、すぐに目をそらした。

 

俺の幼馴染みの、北条加蓮だ。

 




プロローグ。短めです。ゆっくりやっていこうと思います。


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二年ぶりの会話

アイマスで有名なハーメルンの方がいますがモンハンのくだりとか結構影響受けてます…というかこういうところで使える趣味ってゲームしかないんですすいません。


「え~それでは次は予算係~」

北条加蓮は会議を聞き流しながら考え事をしていた。

もちろん悩みの種は、ちょうど一つ机を挟んだ横にいる幼馴染みのことだ。

向こうは黒板を見つめてこっちは気にも留めていない、いやちらちらと見ているので気になってはいるようだ。

 

「次、見回り係~。」

「あ、じゃあやります。」

 

と、その幼馴染みが手を挙げた。ここを逃すわけにはいかない。

 

「あ、私もやります!」

 

教室の中にざわめきが広がる。

 

「え~私北条さんと一緒がよかった…」

 

案の定反対の声が出る。ここはどうにか…

 

「私が回ればみんなの士気も上がるだろうし、いいですよね?先生。」

「あ、ああ。まあお前が希望するならいいが。」

 

とりあえず誤魔化すことができた。

加蓮は心の中でガッツポーズを決めた。

 

――――――――――

 

俺は今困惑している。加蓮が俺と同じ係に立候補したのだ。

幼馴染みだったとはいえ二年も会ってない。正直向こうは向こうで友達を作って人気者らしいし俺とはあんまり交流しないことになるだろうなと思っていたのだけれど。

 

まあ本人の言った通り全体の士気向上を狙った…いや、あいつに限ってそれはないか。だとしたら何を企んでる…?

気になりつつも今日はこれで会議は終わりらしい。とりあえず係だけを決めて明日係ごとに集合とのこと。

今は四時半か…ここから帰りがどんどん遅くなっていくんだろうなあ…ちゃんと寝れるかな。

 

「とりあえず荷物をまとめてさっさと帰ろうかな…さっきみたいに人が多くても困るし…」

 

 

 

 

少し暗くなった外に出る。今日の夕飯何作るかなあ…何か余りもんあったっけか…

 

「ねえ」

 

時間も時間だし今から買いに行くわけにもいかんしなあ…確かカレーのルーが半分余ってるはずだしカレーでいいか。具材は…

 

「ねえってば」

 

それにしても文化祭。なかなか自由な時間はなさそうだけど疲れを溜めたくはないんだよな…

それにしても何で加蓮はわざわざ俺の係に立候補したんだ?

 

「………」

「あいたたたた!」

 

何だ急に、と思ったら悩みの種、北条加蓮の姿があった。

 

「なんですか…かれ…北条さん」

 

つい敬語になってしまった。二年ぶりだし向こうは人気者になってるしでちょっと緊張する。

 

「加蓮」

「え?」

「なんで敬語なのよ。前みたいに加蓮でいいのに」

「いやだってなんか北条さん人気者みたいだし…」

「加蓮」

「あ…か、加蓮人気者みたいだからさ、なんでか知らないけど」

「なんでって…知らないの?」

 

なぜだか加蓮はちょっと怒った顔。

 

「何を?……てか怒ってる?」

「怒ってない。自分で調べれば?」

 

いや怒ってるでしょ…。

 

「それより」

「はい」

「なんでずっと避けてたの?」

「いやさっきも言ったけど加蓮だって友達も出来ただろうしそっちのほうが大事かなって…」

「何言ってんの!?あんたとのことも大事に決まってるじゃん…」

 

より一層怒らせてしまったみたいだ…何かおかしなこと言ったかな…。

というかさりげなく勘違いするセリフを言うんじゃないよ…。

 

「悪い…いや俺としては加蓮と一緒にいれるんだったらそれはそれでいいんだけど」

「そ、そう、ならいいけど」

 

今度は声がちょっとだけ上擦っていた。

無愛想な返しではあったけど、加蓮はなぜか機嫌がよくなったみたいだ。

全く、よく言われていることだけど女の子の考えていることはよくわからないな。

 

「そういや、モン○ンってまだ続けてるのか?最近据え置きの新作が出るらしいけど」

「やってるよ?XXはとりあえず一通り」

 

中学時代、入院生活中加蓮の数少ない楽しみだったのが、ゲームだ。

元々あまりゲームをするタイプではなかったけど、俺が持ち込んだ○DSでハマってよく遊ぶようになった。

 

「今ベータ版やってるんだっけ?」

「そうそう。加蓮はP○4持ってないの?」

「んーやりたいはやりたいんだけどね。どうしても携帯機じゃないと時間が取れないんだよ」

「なるほどね。一応俺は○S4買ってるからやってるけど、面白いよ。」

「じゃあやらせてよ」

「貸すってこと?さすがにPS○は運びづらいから休日なら」

「いや、そうじゃなくて」

「え?」

 

「今から行くのよ、あんたの家に」

 

ちょっ、え?加蓮さんそれマジで言うてます?

 

 

 

 

 




なかなか早く更新できないものですね。
あとはしっかり加蓮の個性を出していきたい。頑張ります。


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幼馴染みとはいえ異性と二人きりは緊張する。

そういえばこのお話の加蓮はもうすでにデレております。


「今から行くのよ、あんたの家に」

 

衝撃の発言。

 

「い、いやいくら幼馴染みとはいっても男子高校生の家に女子が入るのはどうかと…」

「嫌なの?」

 

嫌じゃないです。スイマセン。いやむしろ加蓮かわいいしウェルカムって感じではあるんだけどさすがに問題があるんじゃないか…?

 

「んじゃ、行こ」

 

そう言って歩き出したのは俺の家の反対の方向。これには事情があって、

 

「あ、加蓮そっちじゃない。引っ越したんだよ」

「あ、そうなんだ。なんで?」

「親が仕事の関係で引っ越すことになったんだけど、俺がここに残りたかったから引っ越すことになった。あの家は一人暮らしには大きすぎるからね」

「ふ~ん。一人暮らしか…」

「というわけで家はこっち」

 

 

俺の家を案内しながら、二年の間のことを話していた。まあ俺は特に話すような出来事はなかったけど、加蓮はやっぱりまともに学校に通うのは初めてだから、新鮮だったみたいでひたすら学校の話題を続けていた。

 

そんなこんなで家に到着。

素直に案内したけど、やっぱりこれって大丈夫なのか?そう思ってる間にも加蓮は中に入っていく。

 

「何やってるの?早く鍵開けて?」

 

男子高校生の葛藤をわかって…。幼馴染みとはいえどさすがに緊張する。

ふぅ…深呼吸。

 

 

「ど、どうぞ」

「はい。おじゃまします」

 

ついに俺の家に女子が…!っていうとちょっと悲しくなる。

 

「…広いね」

「まあ親が妙に金かけるからな…」

 

何を隠そうここはマンションの一室である。7階。

普通一人暮らしの高校生にマンションの部屋なんて与えるか?普段の趣味にはお金もらえないのにこういうところには金をかけるのが親の変なところだ。

 

「実際使ってるのはリビングと寝室だけだけどな」

「…無駄だね」

「加蓮は今一人暮らしなのか?」

「そうだよ。今度来る?」

 

いやだから安易に男子高校生を自分の家に誘うんじゃないよ…。

嫌というかむしろ行きたいっていうか…でもここで行きたいって言うとあれだし…

 

「こ、今度機会があれば…」

「わかった。じゃあ明日空いてる?」

 

おおおおおおい!機会があればって言っただろ!行きたいけども!

 

「ま、まあ学校と文化祭が長引かなければな」

 

よし、長引け学校。これ以上は俺の心臓に悪い。せめて一週間は日を空けて…。

 

「とりあえずモンハンやろ?」

「お、おう…」

 

一方平気な顔の加蓮。そしてなぜ上目遣い。かわいくて直視できない。

心臓に悪すぎて困るわ。とりあえず意識をモンハンに向けよう。

 

「これって二人で出来るの?」

「いや、今のところはできない。今後画面分割で追加されるかもだけど」

「なんだ、出来ないんだ…」

 

なぜか不満そうな加蓮。いや、普通モンハンを画面分割ではやらないでしょう…。

 

「ま、まあとりあえず操作に慣れよう。前作からの違いとか追加モーションとかもあるし」

「そうだね」

 

 

「大剣で追加されたのはタックルと真溜め切りだね」

「ふーん。タックルは置いといて真溜め切りっていうのはダメージ高いのね?前作までの強溜め切りとかいうフィニッシュにしか使えない派生技もどきじゃないのね?」

「いや、あれはロマンみたいなもんだろ…。まあ真のほうはモーションは溜め切り二回だけど通常のそれよりモーション速いしダメージ高いから―――」

 

そう、紛れもなく加蓮は理論派ハンターであり、ガチ勢なのだ。そのせいで何度振り回されたことか…。

とまあ、そういう感じでとりあえず7時までモンハンをやることになった。

 

 

 

「簡単にノーダメクリアか、笑えねえな」

「まあね。ボルボロスは前いたし」

 

 

―――――――――――

 

少し離れた位置にいる幼馴染みの横で、北条加蓮は悩んでいる。

この幼馴染みはあまり自分のことを異性として意識してないようなのだ。(本当はしないようにしているだけなのだが)

さすがに横に幼馴染みがいるのにこの距離感はおかしい。もうちょっと距離を近づけたい。二年ぶりだというのに。

 

「…よし」

 

―――――――――――

 

 

 

「………!???」

 

ちょっと待て。落ち着け俺。まずは状況を整理しよう。

急に加蓮が俺に寄りかかってきた。いやわからん。落ち着けるかこんな状態!

 

「あ、あの…加蓮さん…?」

「………」

 

心を静めつつ加蓮のほうを向いてみると、何やら不満げな顔。このまま加蓮のモンハンを見ることになるらしい……。

 

 

「苦行だ…」




私はモンハンのイメージはP3のものが強く(それ以外はHR100程度までしか上げてないので)、P3が結構反映されてたりします。まあ最近はコンボフィニッシュとして使えるから多少はね?

ちょっと見づらいかも。感想お待ちしてます。


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急に恥ずかしがられるとこっちまで恥ずかしくなる。

風邪ひいてました。無理しない程度に頑張ります。


やばい。なにがやばいって俺の心臓がやばい。加蓮ほどのかわいい女子が俺に寄りかかってるのだ。

めっちゃいい匂いする…じゃない!とにかく俺の理性を七時まで持たせなければ…!

あとどれくらいだ?今が六時だから…一時間か…。

 

「心頭滅却…」

「何か言った?」

「ナンデモナイデスヨ…」

 

 

 

これまでの人生でトップ5に入る長い一時間だった。

さすがに三つしかクエストがないので交代しながらやっていたけど、正直何をやっていたかも覚えていない。

 

「終わった…」

「………」

「ふぅ…夜食ってくか?そんなら作るけど」

「…ちょっとこっち見ないで」

「ひどっ」

 

ふと加蓮を見ると顔をそらしている。心なしか耳が赤い。

恥ずかしいならやらないでよ…。

 

お互い恥ずかしさで少し間が空いて、このままでも仕方ないので口を開くことにした。

 

「ええっと、夜ごはんどうされますか」

「作ってくれるの?」

「あ、ああまあ簡単なものなら」

 

こう見えて一人暮らし中の高校生だ。料理にはそこそこ自信がある。

 

「何がいい?」

「あんたが作ってくれるんだったらなんでもいいけど…」

 

さらっと恥ずかしいこと言うな。

 

「んーと、フライドポテト?」

「なぜ…マックで食べてこい」

 

結局俺のお任せということに決まった。

冷蔵庫には…あ、そういや今日はカレーにしようと思ってたんだっけ。

それでもルーが足りないか………あ、そうだ。

 

 

少しした後。

「これ何?」

「ドライカレーだよ。カレーのルーがちょっと足りなかったから水分を飛ばしてみた。ルーが固形だったからかなり苦労したけど」

「…いただきます」

「…どう?」

「おいしい。ちょっとムカつく」

「なんで!?」

 

一応出来は良かったらしい。レシピとか知らなかったから見よう見まねだったけど。

 

「あんたも食べれば?」

「あ、うんそうするよ」

「はい、あーん」

「うおおい!」

「?」

 

なぜ食べるだけなのにそんな恥ずかしいことをしないといけないんだ。カップルかよ…。

 

「はい」

 

本人は止めるつもりはないらしい。

仕方ない。

 

「ん…」

 

あ、美味い。これはルーの節約にもなるし今後もレギュラー入りするかも。

 

「これ案外恥ずかしい…」

「だからやってから恥ずかしくなるのやめて…」

 

こっちまで恥ずかしくなってくるんだよな。

恥ずかしかったりめんどくさいしでその後は普通に食べた。

 

 

器のカレーもなくなったところで。

 

「ごちそうさまでした」

「お粗末さまでした」

 

「そういや、今日はいつ帰るんだ?」

 

俺の理性的にも早めに帰ってくれると助かります。

というか普通に考えてこの時間まで男女が一緒の部屋にいるとか…。

 

「うーん九時?」

「いやいやいや…」

 

「………マジ?」

「…?そうだよ」

 

加蓮は昔から決めたことを曲げないので恐らく九時までやっていくんだろう。

今日ゆっくり寝れるかすら怪しい。むしろ夕方のことを考えると目が冴えて眠れないまである。

 

「モンハン飽きたし、別のゲームやろ?」

「あっはい…」

 

俺の明日はどっちだ!?(遅刻or欠席)

 

結局その後もEDFやらパワプロやらをやり続けた…のだが。

 

 

 

事件発生。

時計は八時半を指そうかというところで、急激な眠気が襲ってきた。

昨日六時間ほどしか寝てなかった罰がここにきて。

パワプロをやっている加蓮の姿が徐々に暗くなっていく。

 

「……早く投げて……あれ?」

 

 

―――――――――――

 

自分に寄りかかって寝ている幼馴染みを起こさないように、北条加蓮はそーっと彼を横にさせる。

さすがに自分に男の子を持ち上げる力はないので、寝室から毛布を探すことにした。

 

「全く…ゆーくんは昔からいっつも眠そうにしてるよね…」

 

それにしても幸せそうに寝ている。

正直今日は自分にとっても恥ずかしいことをした。思い返すと今でも顔が赤くなる。

さすがに彼も動揺していたようだが、思ったより効果がなかったのが悔しい。

もっと何かやってやろう。

 

「…あ」

 

思いついた。時刻は九時。今から帰るのもめんどくさいし、明日のこと…はまた明日にでも考えればいい。

思い立ったが吉日。

 

「お風呂借りまーす」

 

加蓮は小声でそう呟くのだった。

 

 

――――――――――

 

 

「朝だよー。起きてー」

「ん…」

「遅刻するよー」

 

いつもより硬い背中に触れる感覚。

どうやらあのまま床で寝ていたらしい。

 

……あれ?俺目覚ましそんな音にしてなかったような…。

まさか。

 

「はっ!」

 

急激に意識が覚醒する。見慣れた朝の部屋の中に一人、いるはずのないやつがいる。

 

「起きた?コーヒーでも飲む?」

「なんでお前がいるんだああああああ!?」

 




完全にカップルですよこいつら。幼馴染みだから少し壁が薄いというのもあります。
おかしな点が少しありますけど次話で合わせます。


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幼馴染と朝。

投稿遅れてすいません。風邪とモンハンワールドと地の文を増やすという課題ががが。



ちょっと待て。状況を整理しよう。

まず、俺は昨日寝落ちしたらしい。そのまま床で寝ていたようだが、起きたら毛布が掛けられていて、そして台所には幼馴染みの姿があった…。

 

うん、さっぱりだ。

 

「いくつか質問いいか?」

「う、うん」

「どこで寝た?」

「あんたの寝室で」

 

うーん。最初からツッコミどころが多すぎる。

 

「着替えは?」

「バッグの中に入れてあったよ?私服でも寝れるし」

「今日の学校の荷物はどうするんだ」

「今から取りに行くよ?そのために早く起こしたんだし」

 

時計はまだ七時。学校が九時から始まることを考えれば早すぎる時間帯だ。

 

「風呂は?」

「借りました☆」

 

☆、じゃねえよ…。

 

「落ち着くためにもコーヒー飲も?はい」

 

いや多分コーヒーで落ち着くのは無理だと思うぞ?

 

「うめえ…」

 

落ち着いた。ていうかなんで俺の好み把握してんだ…そんな話したこともないのに…。

 

「とりあえず今からお前ん家に行くってことか?」

「そう。まずは私の荷物をとりに行かなきゃだからね」

「了解っと。そんじゃあ軽く準備して行くか」

「あれ?朝ごはんは?」

「いや、普段は抜いてるけど…」

 

主に時間がないからだけど。

 

「それじゃだめだよ?まだ時間もあるし食べていかないと」

「いや、でも…」

「昨日は作ってもらったし今日は私が作るね」

 

まあたまには朝食べるのもいいか…。健康に悪いともいうしな。

加蓮って料理はどうなんだろう…?中学の頃はやりたいとよく言っていたけど。

 

「はい。とりあえず冷蔵庫の中から朝食っぽいもの作ったよ」

「おお…!」

 

普通に美味かった。

 

 

 

「さてと、じゃあ行きますか」

 

いつもより早い時間。朝の風がちょっと気持ちいい。

たまにはこういうのもいいな。早起きは三文の得ともいうし。

 

一人は私服、一人は制服のはたから見れば奇妙なコンビが朝の住宅街を歩く。

比較的人は少ないものの、片方は超美少女で人目を集める。

できれば早く加蓮の家に行って早く学校に到着したい…。学校の生徒に会うのだけは避けたいもんだ。

 

「はい、着いたよ」

「あれ、近いな…」

 

徒歩三分ぐらいか?そんなに離れてない。

 

「というかマンションなんだな」

「うん。まあそっちよりかは広くないけどね…」

「ほい、それじゃ俺は待っとくから。行ってらっしゃい」

「え、なんで?」

 

……え、なんで?

 

「入っていいよ?寒いでしょ?」

「いや、そうでもないし別に着替えて荷物取ってくるだけでしょ…?」

「とにかくいいの!入って!」

 

引っ張られるようにしてラウンジに入る。そのまま加蓮が住んでいるらしい四階へ。

 

「ここが私の家だよ」

 

俺のには及ばないとは言ってたけどなかなか広そう。玄関しか見れないけど。

 

「…入って?」

 

待ってなんか怖いんですけど…。というか女子高生が付き合ってもない男を家に入れるとか大丈夫なの…?

 

「お、お邪魔しま~す」

「その辺適当に座ってていいよ、私着替えてくるね」

 

さて精神集中の時間だ。

隣のおそらく加蓮の部屋であろう場所から衣擦れの音が聞こえる、

さて、耳ふさぐか…。

 

――――――――――

「終わった…よ?」

 

北条加蓮は制服に着替え終わると、耳を塞いで後ろを向いている幼馴染の姿があった。

 

「む~」

 

加蓮としては別に誘ってるわけでもなんでもないのだが、何の興味も持たれていないと、それはそれで悔しい。

 

ここは思い切って。

 

――――――――――

肩に触れる感覚。

 

「お、終わったのか…?」

「うん、終わったよ」

 

返ってくる声がやけに近い…?

そして何かが覆いかぶさっているような感触。

振り返ると。

 

「ちょっ…加蓮さん!?」

 

あ、これはやばい。半ば抱きしめられているような構図だ…!

さすがにそれは倫理的に大丈夫なんですかね…!?

 

 




加蓮さんは驚かすのがお好きなようで。


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幼馴染みと登校。

抱きつかれている。

なんかこのくだり最近多いけどすべてこの北条加蓮とかいうのが原因だ。

 

「あの…加蓮さん?」

「ムカついた」

「…もしかしてこれまでの全部そういう理由ですか?」

「………」

 

肯定か…これから俺が加蓮をムカつかせるたびに心臓に悪いことされるんですかね?

っていうかなんか俺悪いことしたかな…。

 

「とりあえず、ごめん」

「……」

 

まだご不満ですか…?いつか俺心臓発作起こすんじゃないだろうか。

 

―――――――――――

 

「(これ、思ったよりも恥ずかしい…」

 

今まで散々やっておきながら北条加蓮は毎回のごとく恥ずかしがっている。

さすがにここまでやれば彼も恥ずかしいんだろうけど。

 

ふと、彼のほっぺたを触ってみる。

 

凄く熱い。

 

「ふふっ」

「な、なんだよ…」

 

彼の反応がかわいい。こう思っているあたり自分はSなのかなとも思う。

もう少し反応が楽しみたいけど、学校もあるのでこのへんにしておこう。

 

――――――――――――

 

 

「……最近加蓮との距離がやけに近い」

「なんか言った?」

 

学校に登校しながら考えてみる。

中学の頃はそこまででもなかったはずなんだけどなあ…もちろんあの時は加蓮も入院してたけど…。

世の中の幼馴染みの距離感ってこんなもんなのか?よくわからん。

正直加蓮ほどの美少女になってくると近づかれるだけで緊張する。幼馴染みだろうとそれは変わらない。

 

「そういや文化祭の見回りって何するんだろうね?」

「あーそんなのあったな」

 

昨日今日と色々ありすぎて学校のことなんて考えてなかった。

 

「まあ…サボらないようにーとかじゃね?期間中はあんまり先生もついてないだろうし」

「そうなのかなー」

 

正直こんな楽な役回りなんてあるのか…とも思うけど。

というかよく考えたら文化祭期間中はずっと加蓮と一緒なのか…嬉しいは嬉しいんだけど…ここ最近のことを考えると胃が痛い。

それと…

 

「あ、北条さんだ!おはよう~」

 

加蓮は人気者だから、俺なんかといると周りからの印象が下がりそうで怖い。

 

「ん、おはよ~」

「あれ?その人誰?」

 

まあそうなるわな。

 

「ん?彼氏だよ」

「「え!?」」

「冗談だよ」

 

はーびっくりした。俺が加蓮の彼氏とかだったらクラス、いや学校中から恨みを買いそうだ…。

 

「私の幼馴染み」

「へー北条さん幼馴染みとかいたんだ」

「まあね~」

 

明らかにこの生徒からはこんな奴が…という視線を向けられている。

まあ当たり前だけども。この超美少女と俺じゃ明らかに釣り合いが合わない。

そういう意味も含めて…、

 

「んじゃ、俺はこの辺で先に行ってるわ」

「え?」

「先にやっとかないといけない用事もあるしな、すまん」

 

俺は加蓮を置いて学校に小走り気味に向かう。

女子を置いて先に行くのは我ながら最低だとは思うけど…さすがにほかの生徒に見つかって学校中の男子生徒から恨みの目を向けられるわけにはいかん。

 

 

 

「…まあやりたいことがあるってのもあながち間違いじゃないしな…」

 

授業で出された課題がまだ残っている。中身はともかく量が多い。

出来れば朝の時間で済ませときたいなあ…。

 

ある程度終わったあたりで、少しずつ生徒が入ってくる。

何やらいつもよりも騒がしい気もするけど、気にする必要もない。

と、入ってきた男子生徒の一人がこちらへ向かってくる。

 

「おい、確か望月だったか?」

「ああ、まあそうだけど」

 

あんまりクラスの人を覚えていないせいか名前が出てこない。

というか俺が話しかけられるようなことしたっけな…?

 

「それで?」

 

「お前、朝北条さんと登校してたってのはマジなのか!?」

 

………バレてました。

 

 




むしろなんでバレないと思ったんだろうね?


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現代の噂の広まり方は凄い。

今回は砂糖成分少な目です。


ちょっと待て。なんでもう広がってんだ?

まあ確かに一人の生徒には見られたけど…。あの生徒が発端だとしたらなんという拡散力…あなどっていたぜ。

 

「それで、どうなんだ?」

「まあ、本当だよ」

「なん…だと…」

 

目を見開くクラスメイト。

オーバーリアクションすぎやしないか…。

 

「どういう関係なんだ!?」

「どういうも何も…ただの幼馴染みだよ」

「幼馴染みだとォ!?」

 

だからオーバー。

こうなるからバレたくはなかったんだけど…まあ警戒してなかった俺が悪い。

こりゃめんどくさいことになりそうだ…。

 

 

 

 

「疲れた…」

 

予想通り主に男子生徒からの質問攻めにあって、それはもう本当に疲れた。

というかやっぱり加蓮は人気者だったんだな。学年が違うのに聞いてきたやつまでいる。

 

「どしたの?」

 

噂をすれば元凶の加蓮がやってきた。向こうも少し疲れたような表情を見せている。

 

「加蓮とどんな関係なんだって一日中質問攻めにされたからな…こっちはただの幼馴染みだっつーのに」

「ふーん…まあ、私もそんな感じだったかな。多分あんたよりかは少ないだろうけど」

 

ちょっと不機嫌そう。まあ俺が原因だからなあ…。

 

「怒ってる?」

「朝」

 

朝…?

 

「あ」

「私置いて行ったでしょ」

「申し訳ありませんでしたあああ!」

 

 

 

ひとしきり謝り倒した後。

 

「ま、とりあえず文化祭のとこに行くか」

「そうだね」

 

今日はそれぞれの役回りについて教えてもらって、それぞれの日程やら動きを確認する日とのこと。

 

 

「ん、まあまあ人集まってるな」

 

加蓮と会話しながら理科室に入ると、すでにいた生徒たちの視線が一斉にこちらを向く。

さすがに午前中の間で一気に広まっただけあってもう大体の生徒には話が伝わってるらしいな…勘弁してくれ。

一つ幸いなのは俺と加蓮の幼馴染みの関係も広まってるってこと。質問攻めにされることがなくてちょっと安心した。

 

「大体揃ってるなーじゃあ始めるぞー」

 

俺と加蓮が席についたあたりで先生が教室に入ってきた。どうやら最後のほうだったらしい。

 

 

「んじゃまずは、係ごとに…もう座ってるな、じゃあ各係にプリントを配布する」

 

先生が順々に回っていく。俺らの方に回ってきたときに、少しだけ俺に先生が目を向けた。

 

「な、なんです?」

「仲良くするのはいいが、自重しろよ」

 

先生まで俺たちをそういう風に見てるのか…そんなに仲がいいように見えるのか?極力トラブルは避けたいから抑えてるつもりなんだけど…。

 

「なんか勘違いされてないか?」

「……」

 

ノーコメント。あなたはそれでいいんですかね…?

 

「んじゃ、とりあえず係ごとに確認しろー今日はそんだけだ。各自適当に帰ってくれ」

 

適当すぎる言葉を残して、会議は終了。

周りを見てみると、めんどくさがっている生徒たちはさっさと帰ってしまうようだ。

 

「俺たちもさっさと済ませるか」

「そうだねー」

 

 

結局中身自体は、至極簡単なもの。

単純に文化祭期間中のクラスの見回りをして、サボってたりはしゃぎまくってるクラスを注意する。

まあどっちみちサボってても注意できるわけじゃないし、結局特にやることはなさそうだけど。

 

「あんなんでいいのか…」

「まあ、委員全員にきっちり割り振れるわけじゃないんだと思うけど?」

「それもそうか」

 

時刻は五時少し回ったところ。

 

案外早く終わったな…………早く…終わった…?!

 

「今日どうする?来る?」

 

ソウデシタ。完全に忘れてた。

 

「い、いやまあ一回朝行ったし?」

 

不本意ではあるけど。

 

「ふーん。来たくないんだ?」

「い、いやまあそういうわけではないんだけど…」

 

逃げ場ナシ。

 

「……まあ用事あるとかならいいや。」

 

 

……あれ?許された?

 

「その代わりまた今度来てもらうからね?」

「アッハイ」

 

とりあえずひと時の休息を得られそうです。




週一投稿になりつつあるのでもっと早めていきたい。
というかこの頻度なのに文字数がそこまでなのが申し訳ないです。


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衝撃の事実。

やっとトラプリの話です。


――――――――――

 

学校が終わった後、加蓮は事務所へ向かった。

彼との用事が無くなった以上、空いた時間はレッスンに回すつもりだ。

 

事務所に到着すると、偶然にもトライアドプリムスの二人と遭遇した。

 

「おっ加蓮じゃーん。珍しく昨日は来なかったな、なんでだ?」

「昨日?……あっ、いやたまには休もうかなって」

 

奈緒に昨日のことを聞かれて思い出してしまった加蓮は、少し顔を赤くしつつもなんとか誤魔化す。

と、そこに凛も割り込んでくる。

 

「なんかあったの?加蓮」

「い、いやー特に何もないよ?」

 

「もしかして前話してたなかなか話せないっていう幼馴染みに会ったとか?」

 

「………」

「もしかして図星?冗談のつもりだったんだけど…」

 

偶然とはいえ完全に的中され加蓮は黙るしかない。

 

「でも再会しただけでそんなことになる…?そんなことないよね。何かあったの?」

「い、言わないからね!あんな恥ずかしいこと!」

「ふーん。恥ずかしいことなんだ?」

「あっ…」

 

自ら墓穴を掘りに行く加蓮。

 

「それじゃ、346プロ特製取調室に行こうか」

「待って!どこそれ!?」

 

案の定全部吐かされた。

 

 

 

「なるほどね。久々に会った幼馴染みがなかなか自分のことを意識してくれないから色々(意味深)したと」

「声に出さないでよ…!」

「それさ、もう向こうは意識してるんじゃないか?話を聞く限りだけど」

「いや、どうかな。まだ加蓮から聞いた限りだとわかんないから実際会ってみないとね」

 

加蓮から全て吐かせて、冷静に分析を始める二人。

 

「あ、会わせないからね!?」

「じゃあ今度つけていこうか」

「そうだな」

「何怖いこと言ってんの!?」

「いやだって気になるし。加蓮の好きな人」

「い、いや好きってわけじゃ…ないこともないけど…」

 

 

「っていうか何でその人を好きになったんだ?」

「え……言いたくないんだけど…」

「また行く?取調室」

「……」

 

加蓮はもう逃れられないことを察した。

 

「…わかったよ。私が中学の頃なんだけどね…」

 

 

――――――――――――

 

「ふう…疲れた」

 

自宅に戻ってソファに座ると、ここのところ数日の疲れがドッと来た。

しばらくだらだらしてよう。

 

にしてもここ二日でいろんなことがあった。主に幼馴染み関連で。

居眠りのペナルティで文化祭の実行委員に選ばれ、偶然にも加蓮に再会。

加蓮との距離感ってあんなだったっけ…?中学の時はそうでもなかったと思うんだけど…。

 

「そういや、加蓮すっげえ人気者だったなあ…」

 

ただ美少女ってだけであんなに人気になるもんだろか…。いや、加蓮ならあるいは…。

 

「調べてみるか」

 

こういう時に便利なのはT○itter。

あれほどの人気なら名前で検索すればうちの高校のやつがボロボロ出てくるはずだ。

 

「まああいつはTw○tterやってるようなやつじゃないし、ツイート検索でなんとなくわかるはず…」

 

まあちょっとしたTVの特集で出たとかそんなところだろ…。

 

 

「………え?」

 

――――――――――――

 

「なるほどね。そんなことがあったわけだ。」

「すっげえいいやつだな!加蓮の幼馴染み!」

「ま、まあね」

 

なぜか少し誇らしげな加蓮。

自分の恋バナを語るのはやっぱり恥ずかしいと思う反面、自分が彼のことをどれだけ好きなのかというのを再認識した。

 

「やっぱり気になるな。加蓮の好きな人」

「だな!」

「あ、会わせないからね!」

 

加蓮は彼の話をしながら、少しニヤついているのを自覚していた。

彼の前だとより悪化するだろうから、絶対にこの二人には会わせるわけにはいかない。

 

――――――――――――

 

「…………マジ?」

 

衝撃の事実。

 

 

 

幼馴染みが、アイドルになっていた。

 




過去編はまた今度です。
自分の幼馴染みがアイドルになってたらどんな気分になるんですかね…。
投稿ペース上げます(n回目)


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幼馴染みがアイドルになっていた

やっとタイトル回収です。


「アイドル……だと…?」

 

北条加蓮。346プロ所属。参加ユニット、『トライアドプリムス』『シンデレラドリーム』『モノクロームリリィ』。

 

…人違いじゃないよな…?でも写真がある。これは間違いなく加蓮だ。

そもそも加蓮ってアイドルとかやるような奴だっけ?

 

「………いや」

 

確か加蓮がまだ病院にいた頃だ。あの時。

 

「そういやそんなことも言ってたな…」

 

思わず笑ってしまう。

未だに頭の整理が追い付いていないけど、一つだけ思い出したことがある。

 

 

  ―――――――――――

 

「加蓮は、何か夢とかないの?ほら、退院した後とかさ」

「何?目途すら立ってないのに嫌味?」

「あ、そういうわけじゃないよ。ごめん」

 

「私の夢はね、みんなに夢を与えられるようになることだよ」

「加蓮がか?」

「失礼な」

 

今思い起こすと、加蓮は憧れていたのだと思う。

希望すら見えない状況で、夢を与えてくれた存在に。

 

「みんなに夢を……そうだな、アイドルとかか?」

「ふふっ」

「な、なんだよ」

「いや、まさかゆーくんからそんな言葉が出るとは」

 

そういや、この頃はゆーくんと呼んでいたっけ。

 

「いいだろ、別に。最初に思い浮かんだのがそれだったんだから」

「アイドルかあ…ゆーくんは私がアイドルになったらどうする?」

「どうするも何も、精一杯応援するよ」

「ふふっ。ありがと」

 

そんなところで俺の記憶は終わる。

 

 

―――――――――

 

翌日。

いつものように学校へ向かう。

今日は金曜日で、一週間の終わり。文化祭の実行委員の仕事も特になく、精神的にはかなり楽だ。

 

「おはよー」

「あ、ああおはよう」

 

朝から加蓮と遭遇。そういや家はかなり近かったか。そのまま学校へ行くことになった。

まあ前みたいに見られても別に何かあるわけではないし、気兼ねなく話せる。

 

「そういやモン○ン発売されたの?」

「そうだね。軽くやってみたけどほんの数クエストでHR上がるのがなんか変だった」

「そんなことになってるんだ…全体のボリュームが損なわれなければいいんだけどね」

「その通りだ」

 

大半の話はやっと発売されたモン○ンの新作についての話だった。

加蓮も楽しみにしていたらしく、色々聞いてきた。

 

「今日モ○ハンしに行っていい?文化祭もないことだし」

「え?ま、まあいいけど…」

「んじゃ、一回家帰った後行くね」

「了解」

 

加蓮からの誘いを自然に受けてしまっている自分が怖い。

まあ楽しいからいいんだけど…。

 

「あ、もう着いたか」

「それじゃあ放課後にねー」

 

 

 

 

時は過ぎ去り放課後。

一週間の疲れを早く癒そうと、家までの道を歩いていた。

 

「そういやなんか忘れてることある気がする…あ、スーパー行かないと」

 

確か食材のストックが切れてるんだよな…。休日は家でまったりしてたいし買いだめとかないと。

加蓮との約束は…まあスーパー行って帰るぐらいなら間に合うだろ。女の子は着替えとかに時間がかかるともいうし。

 

 

 

「ふう…思ったよりも時間がかかったな」

 

それでもまだ許容範囲内ではあると思うけど。

マンションのエレベーターで部屋まで上がっていくと、俺の部屋の前に人影が見えた。

誰だろう…あんまり俺の家に用事がある人はいないはずだけど…。

 

「あ」

「何やってんの?早く開けて?」

「ちょっと早くないっすかね…」

 

予想よりも早く到着していたようだ。

ちょっと時間かかったとはいえさすがに早すぎるでしょ…。

少し息上がってるしそんなにモン○ンがやりたかったのか?

 

「はい、どうぞ」

「おじゃまします」

 

「あ、そうだ」

「なんだ?」

「合鍵ちょうだい」

「いやいやご冗談を…」

 

そんな簡単に合鍵なんて渡していいもんだろうか…。

いやまあ加蓮は信用できるけど…。そもそも鍵ってまだあったっけ?

 

「えーと…使ってんのとスペアとで…あともう一個か……あ」

 

余ってた。

 




みんなは合鍵を簡単に人に渡さないようにね!


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二度目のお泊り。

「そいじゃモン○ンやるか」

「そだねー」

 

俺がソファに座り、自然と加蓮が横に座る。

ほんとにこれ心臓に悪いからやめてほしいな…。

 

「とりあえず最初からでいいか?データも余ってるし」

「うん。ストーリーも楽しみたいしね」

 

モン○ンのストーリーが始まる。

確か最初は船の中。古龍に襲われるところからスタートだ。

 

「グラフィック綺麗だねー」

「まあ一応P○4 Proだからな。モニタも新調してるし」

 

ストーリーがどんどん進んでいく。

 

「おー」

 

加蓮も結構楽しめてるみたいだ。

誰でもゲームのストーリーを進めてるときはワクワクするよな。

船から脱出して、巨大な古龍の上を歩くところから操作は始まる。

 

「んーと、大体3○Sと操作は同じなんだね」

「そうだな。L2R2があるぐらいだ」

 

古龍の上から竜を使って脱出し、向かった先は新大陸。

ここのムービーが…、

 

「綺麗…」

 

ディスプレイを見つめる加蓮に向っておまきれと声をかけてやりたいところだけど、まあ本当に言ったら気持ち悪がられるか。

やっぱり操作感は変わらないのか、順調に進めていく。このままHR解放ぐらいまで一気にやっちゃいそうだな…。

 

「加蓮ー適度に休憩しろよー」

「んー」

 

やっぱり集中しているみたいだ。適度に時間空けてから声かけるか。

 

 

 

 

「………あ」

 

ソファはホテルのベッドに匹敵するレベルで眠くなると思う。

寝過ごしてたみたいだ。

時計を見ると時間は八時。結構遅い時間になってしまった。

ディスプレイに目をやると、画面上のキャラクターは動いていない。

 

「…すぅ」

「…お前も寝てるのか」

 

恐ろしや、ソファの睡魔。

しかも気づいてなかったけど俺の肩に頭が乗っかっている。

これ、よく考えたら結構恥ずかしいシチュエーションじゃね?

 

「おい、起きろ。もう八時だぞ」

「ん…」

 

寝顔がかわいい。

 

「ん…ゆーくん…」

 

いきなり加蓮の口から俺の名前が出てきてドキッとした。

昔の夢でも見てるんだろうか。

とにかく、起こさないようにそーっと寝かせて、毛布を掛ける。

 

「さてと…今日は何作ろうか」

 

―――――――――――

 

「ん…」

 

北条加蓮は料理の音で目を覚ました。

寝心地のいいソファの上。記憶にない毛布がかかっている。

 

「そうだ、時間…」

 

時計の針はちょうど九時を指している。

 

「ん、起きたか。もう晩飯できるぞー」

 

キッチンから聞き慣れた幼馴染みの声が聞こえてくる。

ようやく加蓮は現実に戻ってきた。

 

「(モンハンやったまま寝過ごして…それで毛布まで掛けられて…)」

 

我ながら情けない。

それと同時に、彼の優しさも再認識した。

 

「………晩飯?」

「おう、もう出来てるぞ。今日はペペロンチーノをベーコンと野菜で適当に作った」

 

 

「「いただきます」」

「今日はどうするんだ?帰るなら送っていくけど」

「んー泊まってくー」

「い、いや着替えは?」

「私服で寝れるし、明日土曜日だし」

「あ、そうか」

 

自然に彼の家に泊まることを選択しているのもどうかとは思う。

 

「(まあ時間的にも厳しいしね…)」

 

―――――――――――――

 

加蓮が俺の家に泊まるのは二回目。

ちょっとずつ慣れてきた。いや慣れていいもんではないんだろうけど。

 

「風呂どうする?」

「先入っていいよ、私長いし」

「ん、いや先にどうぞ」

「ありがと」

 

まあ、こういう生活も楽しいもんだ。

普段一人暮らしで、寂しいって程ではないけど静かだからな。

 

「あ、そうだ」

「ん?」

「覗かないでね?」

「覗きません」

 

さすがにそれは社会的に死ぬ。

 

「ほんと?」

「……覗きません」

「………覗いてくれてもいいのに」

「え、なんて?」

「な、なんでもない!」

 

勢いよく扉を閉めて、加蓮は浴室に入った。

女の子、それもアイドルが自分の家で風呂に入っていると思うと、ドキドキする。

覗きにいかないように精神統一をしてから、俺は加蓮を待つ間モンハンをすることにした。

 

――――――――――――――

 

「あーのぼせそう…」

 

好きな人とひとつ屋根の下。

前泊まった時はこういう気持ちにならなかったのだが。

 

「まああの時は寝てたからね…」

 

長くなるとは言ったけど、早く上がりたい気分になった加蓮だった。

 




夫婦ですね。


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合鍵を渡した相手ぐらい覚えよう

お久しぶりです。クオリティは相変わらずです...。


―――――――――――

翌日。

休日ということもあり、8時ごろに起きた加蓮に起こされて、朝食。

普段はあんまり食べないんだけど、加蓮が作るということで食べることにした。

加蓮のご飯は美味いしな。

 

「………全く、なんで女の子とお泊りなのに何も起きないかなあ…」

「ん?加蓮なんか言った?」

「……なんでもない、バーカ」

「なんで俺は罵倒されているんだ…」

 

相変わらず加蓮のご飯は美味い。

朝ごはんって簡単なものだし、今日も白飯と玉子焼き、みそ汁だけ。それでこれだけ美味い飯が作れるんだな…精進せねば。

 

「この玉子焼きって何か混ぜてるのか?砂糖とか牛乳とか」

「ふふん、教えてほしい?」

「……今後の参考のために」

「仕方ないなあ…」

 

なぜだかめっちゃニヤニヤしてる加蓮。

 

「………やっぱ教えない!」

「なんでだよ!?」

 

 

「加蓮はなんか今日用事とかないのか?ほら、レッスンとかあるんだろ?」

「うん、今日もあるんだけど…」

「けど?」

「サボる」

「………」

 

昔から加蓮はめんどくさがりなところというかサボり癖がある。

 

「行っとけ、サボる理由もないだろ?」

「………ゆーくんと遊びたいから」

「…なんて?」

 

加蓮が小声で何か呟いたけど、小さすぎて聞き取れなかった。

まあどうせめんどくさいからなんだろうけど。

 

「そういや、やっと知ったんだ?」

「何が?」

「私がアイドルだってこと」

「そりゃあんだけ人気あったら気になるからな」

「その割にはあんまり驚いてないみたいだけど?」

「そりゃ、アイドルだからって何も変わらんからな」

 

正直結構ビビったけど。

幼馴染みがアイドルになってて驚くなってほうが無茶だわ。

 

「じゃあ今度ライブ見に来てよ」

「ん、いいけど?いつ?」

「文化祭が終わったころかな」

「了解」

 

加蓮のライブか…。どういう気持ちで見ればいいんだろ…。

って。

 

「話をそらすな」

「……いつも変なところで真面目だよねえ…」

「学校なんかとは違って仕事なんだから軽く休めるもんじゃないだろ…」

 

「むー。わかったよ。お昼からだからそれまで遊ぼ」

「あいよ」

 

 

 

いつものようにモンハンをして過ごし、時計の針が二つとも真上を指すころ。

 

「それじゃ」

「うん、また明日」

 

加蓮がレッスンに行くと、途端に暇になった。

いつもならラノベ読んだりゲームしたりしてるけど、加蓮がいなくなると急に寂しさが出てくる。

というかいつのまに加蓮と一緒に居る前提になったんだ…慣れって怖い。

 

「とりあえず積んでるラノベ消化するか…」

 

―――――――――――

加蓮が事務所に到着すると、そこにはすでに奈緒の姿があった。

 

「お、加蓮じゃん。どうしてたんだこんな時間に」

「いや、13時からレッスンでしょ?」

「え…」

「何その珍しいものを見たような目は」

 

そこに凛もやってくる。

 

「どしたの?奈緒」

「た、大変だ!加蓮がレッスン10分前に来た!いつもギリギリなのに!」

「加蓮、大丈夫?熱とかない?」

「二人とも失礼だよ!」

 

 

 

ひとしきり騒いだ後。(一緒に来ていた奏達もノったせいで)

 

「それで?どうせ何かあったんでしょ?」

「い、いや別に何もないし…」

 

「((何かあったな……))」

 

ひそかにこれをからかいネタにすることを決めたアイドル達だった。

 

――――――――――――

 

翌日。

一日完全フリーのときって意外とやりたいことが出てこない。

ラノベ読むにはもったいない気がするし、ゲームするにしても時間があり余ってる。

どうしたもんかな…。

 

休日にありがちな悩みに頭を悩ませていると、玄関のインターホンがなった。

 

「はーいって、あれ?何か頼んでたっけ…?だとしてもどうやってエントランス抜けたんだ?」

 

 

「開けるよー」

 

開ける……って。

 

「おはよー。早速だけど、映画でも見に行かない?」

 

………そういや合鍵渡してましたね。

 

 




言うの忘れてましたが大体次の話あたりから作品内時間の進むスピードが速くなると思います。これまでがテンポ悪かっただけ。


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