fate/brave gunfighter (ひもきゅうり)
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F・一節

勢いで書いたから後半はたぶん手抜き


 アメリカ西部開拓時代、ある伝説があった。

 

 曰く、不殺のガンマン。

 

 曰く、秩序の流れ者。

 

 曰く、臆病な勇者。

 

 曰く、もう一人のキッド。

 

 曰く、幼き正義の味方。

 

 彼のふたつ名はいくつもある。しかし在り得ないほどの彼の伝説から後世の研究家は彼の存在を否定した、彼はビリーザキッドの活躍に刺激された誰かの創作であると結論付けられた。彼の足跡の少なさもその結論をより現実的な物としていた。彼が登場するのはたった一度のみ、とある町になんの前ぶりもなく現れ、そして消えるよう去っていた、その後彼の姿を見た者はいなかった。その町以外に、彼の存在を示す証拠はどこにも無かった。故に彼の実在は曖昧な物となっている。

 

 しかし、彼の存在を肯定する人たちも確かに存在する。彼らは親から子へと脈々とその伝説を語り継いでいた。伝説には幾つかのパターンがあるが、どのパターンでも必ず最後はここう締めくくられる。

 

 『困った時や迷った時、自分ではどうしようもないと思った時は必ず誰か助けてくれる人が現れる。けれど勘違いしてはいけない、その誰かは目の前に立ち塞がる障害物を除いてくれるだけ、その後は必ず自分の足で歩いて行かなければいけない』

 

 伝説が語られる家庭では、子供がある程度大きくなるとカウボーイハットと玩具の拳銃、そして丸い顔をした狸をデフォルメしたような人形を子供に与える。臆病でもいい、決して力強く無くてもいい、ただ勇気を持って優しく、人を思いやれる人間に育ってほしいという願いが込められる。

 

 やがて時を経て伝説は海を渡った。そしてある日、アメリカから太平洋を超えた先にある島国において、ある少女に伝説がまた語り継がれ、贈り物が贈られた。少女はまだ幼く、伝説の意味を理解できていなかったが、なんとなくかっこいいと感じて贈り物を大切な物とした。

 

 それからいくらかの年月が流れた。成長した少女は抗えない絶望を感じた。諦めず、目を逸らさず、手を伸ばしても、それでも間に合わない、もう自分ではどうしようもない。

 

 願った。

 

 少女は願った。誰か助けて欲しいと、お守り代わりのカウボーイハットを片手で強く握りしめ、ただ強く純粋に願った。

 

 そして願いは届いた。本来、触媒(カウボーイハット)だけでは足りない、適切な陣と魔力が必要となる儀式だったが、幸運な事に陣の代用となる盾と、魔力の注がれた杯が近くに存在していた。少女の願いが、彼女の意思が、三つを繋げ、むりやり儀式を成功させた。

 

 「とりよせバッグ!」

 

 手が届いた。少女の手ではない。彼女のものよりももっと幼く小さな手だったが、空間を超え確かに届いた。手は掴んだ者を離さないように強くひっぱり、自分のもとへととりよせた。

 

 その空間にいた者達は皆が手の主に注目した。手の主は幼い少年だった。親しみやすそうな丸っこい顔に真ん丸なメガネを掛け、黄色いシャツと短いズボンを身に纏い、腰には二挺の拳銃を、そして頭には少女の持っていた物とそっくりなカウボーイハットを被っていた。

 

 少年は自分に視線が集まっていることに気が付くと少し気恥ずかしそうしながらも、しっかりと少女に向き合った。

 

 「えっと、さーばんと? だったっけ? まあいいや、さーばんと、アーチャーです。しょーかんに応えてきました。お姉さんが僕のマスターですか?」

 

 誰もが、呆気に取られた。その中で最も早く我を取り戻したのは、少女だった。

 

 「うん! 私が願ったの、私は藤丸立香! あなたのマスターだと思います!」

 

 「分かったよ。とりあえずむつかしい事はよく分からないけど、これでよかったんだよね?」

 

 少女の願いが正しき物であったかどうか、それを判断出来る者はいない。ただ彼女の願いは確かに運命を超えた。

 

 「馬鹿な! サーヴァントだと!? まさか聖杯が反応したのか!?」

 

 次に我に帰ったのはシルクハットを被った男だった。彼は手に持つ杯と少年を驚愕の表情で見比べる。

 

 「クソッ! 実にふざけたことだが、まあいい。どのみちオルガの肉体は既に壊れている、サーヴァント一体でどうにか出来る問題でもない。消え去るのがほんの少し遅れるだけだ」

 

 「レフ……」

 

 「ああオルガ、君の燃え尽きる姿を見れないのは実に残念だけれど、そろそろこの特異点も限界のようだ。48人目の適正者とカルデアの諸君、既に人理の焼却は成った。無事なのは磁場に守られたカルデアぐらいのものだろう。だがそれも2016年を迎えるまでの短く虚しい抵抗だ。この結末は変えられない、精々残った時間で祈りでも捧げるといい。では私は他にも仕事があるのでこれで失礼するとしよう」

 

 男はそう言い切ると、すぐに姿を消した。

 

 「レフ……どうして……、私は……私は……」

 

 「所長しっかりして!」

 

 少年が手にとった者は茫然と、焦点の合わない視線を男が消え去った場所に向けていた。それを見た少女、藤丸立香が励ますが、返事はない。

 

 『まずいぞ、特異点の崩壊が始まった! 皆、今急いでレイシフトを実行している! もう少し待ってくれ!」

 

 「ドクター! でも所長は!」

 

 「分かってる! でもどうしようもないんだ! 肉体が既に死んでいる限り、所長はレイシフトに成功してもすぐに消え去ってしまう!」

 

 「そんな……」

 

 そんな会話がなされている横で、少年は頭を捻っていた。大きな盾を持った少女と半透明の男が会話しているが、少年はいきなり呼ばれた上に状況もさっぱり分からない、そこで少年は自分を呼んだマスターに問いかけた。

 

 「ねえ、どういうことなのか僕にも説明してよ」

 

 「えっと、私も詳しい仕組みとかは分からないんだけど、所長はもう死んでるから帰れないみたい……」

 

 「えっ、もう死んでるって事は……、ギャーお化けー!」

 

 『随分と失礼なサーヴァントだな! それより君は誰、いやそんなことは今はどうでもいい。君はなんとか出来ないのかい!?」

 

 「ご、ごめんなさい。えっともし肉体が無事だったら所長さんはなんとかなるの?」

 

 『なんとかなる、かもしれない。正直に言って、肉体から魂だけが抜けた状態で、肉体が滅ぶなんて特異な状況は僕も遭遇したことがないんだ。でももし、なんとかなるなら最善は尽くすべきだ、お願いだ名も知らぬ英霊よ、どうか所長を救ってくれ!』

 

 「……分かった、取り合えずやれるだけやってみます!」

 

 『ありがとう!」

 

 少年はおもむろにポケットに手を入れると、明らかにポケットに入るサイズではない道具を二つ取り出した。

 

 「カチンカチンライトとテキオー灯!」

 

 少年は懐中電灯のようなその二つの道具から出る光を所長と呼ばれる人物に当てた。

 

 『よしなんとかレイシフトは間に合いそうだ! 立香君、マシュ、念のためにしっかり所長を捕まえておいてくれ!」

 

 その声とともに所長を中心として、少年達は光の粒子となり、特異点から脱出した。彼らの姿が消えてすぐに彼らのいた空間は瓦礫に押しつぶされた。

 

 少女は暫く意識を失っていたが、彼女を呼ぶ声に目が覚ました。

 

 「立香君、やった成功したぞ!」

 

 「……ドクター? ここは……っそうだ所長は!? ドクター所長とマシュはどうなったの!?」

 

 「安心してくれ、マシュは無事だ。ただ所長に関しては僕もうまく説明出来ない、一応、所長らしき者は君たちと一緒に帰ってきているけど、意識がないうえにまるで鉄の塊みたいにカチンカチンになっているんだ。たぶん君が呼んだサーヴァントが最後に何かしていたみたいだからそのせいだと思う」

 

 「じゃあそのサーヴァントは?」

 

 「君の隣で気を失っているよ、ひとまず彼を起こして所長の状態を説明してもらおう」

 

 そう少女が説明を受けている隣で、少年は起こされるまもなく目を覚ました。

 

 「やあ目が覚めたみたいだね」

 

 「ここは……?」

 

 「ここはカルデアだよ、まあ詳しい説明はまた後でしよう。今はひとます所長を優先したい」

 

 「あっそうだよ! 所長さんの体はどこですか!?」

 

 「残念だけど肉体はほとんど残っていなかったんだ、なんとか所長の物と思われる肉片は確保してあるけれど……」

 

 「じゃあそれを急いで持ってきてください! カチンカチンライトは5分しか効果がないんです!」

 

 「5分? いや今はいいや、所長の肉片はもうここに持ってきているよ」

 

 そういって、ドクターと呼ばれた男はバケツに入った血肉の集まりを少年に差し出した。

 

 「うっ……」

 

 その生々しい物体に少年は思わず吐き気を催した上に気が飛んでしまいそうになったが、なんとか堪えると、ポケットから一つの道具を取り出した。

 

 「タイム風呂敷!」

 

 少年が取り出した布切れをバケツに被せると、風呂敷の中で何かが膨らむように蠢いた。

 

 「なんだこれ、いったい何が起こっているんだ!?」

 

 ドクターが不思議な物を見るような目でその様子を見ていると、いつの間にか風呂敷の中の動きは収まった。それを確認した少年が風呂敷をどけると、そこには血肉はなく、一人の人間の肉体が存在していた。

 

 「これは!? 間違いなく所長だ! こんなのはもうほとんど魔法の域だぞ!?」

 

 「えっとドクターさん? 所長さんはどこですか?」

 

 「あ、ああうん、君たちと一緒に帰ってきた所長なら君の後ろにいるよ」

 

 少年が後ろを振り返るとそこには確かに所長がいた。ただ帰還する前と変わらず虚ろな視線はどこも捉えていなかった。

 

 「よし、いれかえロープ!」

 

 少年はまたもポケットから道具を取り出した。今度は何やら紐状の物であった。

 

 「ドクターさん、これを所長さんの体の手に握らせてください」

 

 「ああ、わかった、もう何が起こっても驚けそうにないぞ」

 

 ドクターがロープの方端を所長の肉体の手に握らせ、少年はもう方端を一緒に帰ってきた所長らしき物の手にくくりつけた。すると途端に魂であった所長がロープを伝って肉体に吸い込まれるように消えていった。

 

 「やった! うまくいったぞ!」

 

 「ん……ここは……?」

 

 「所長! よかった気が付いた!」

 

 所長の肉体に確かに魂の灯が宿った。

 

 「ありがとう名も知れぬ英霊、所長はまだ意識がはっきりしていないみたいだから、代わりに僕がカルデアを代表してお礼を」

 

 「そんな照れるなあ」

 

 「謙遜することはない、君が行った行為は奇跡にも等しい。それと名前を教えて欲しい、いつまでも名の知れぬ英霊じゃあ格好がつかないからね。見たところアメリカ西部開拓時代のガンマン風だから、もしかしたらかの有名なビリーザキッドかな?」

 

 「いやあ、ビリーザキッドなんて言われるとますます照れちゃうなあ。僕はノビータってことになってるけど、本当は野比のび太っていうんだ」

 

 「ノビータだって! 実在していたのか! それにその本名からするともしかして東洋人かな? これは歴史的大発見だぞ、かの伝説のガンマンが実在していて、しかもあの時代ではほぼ在り得ない東洋人だったなんて!」

 

 その存在は御伽噺とされていた。だが伝説が事実だった。

 

 「ノビータ! やっぱりあなたがノビータなんだ!」

 

 「マスターは僕の事を知ってるの?」

 

 「もちろん! 私のひいおばあちゃんからとおじいちゃんのお母さんから何度も話を聞いたもの!」

 

 海を越えて、時代を超えて、過去の伝説が今再び蘇った。少年は決して力強くない、頭だってそれほどよくない、運動だって苦手、それに臆病、だけど銃の腕前は宇宙一、そして他人を思いやれる優しさととびっきりの勇気を持っている。

 

 これから彼らは、とても大変な困難に挑んでいくことになる。だけどきっと彼らが負けることはない。正しき優しさが、世界を救うことになるだろう。これはその道程のはんの始まりに過ぎない、ただのプロローグだ。

 

 




勢いで書いたけど秘密道具解禁すると作者の手に負えなくなる。
続くかは未定


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一章・一節

なんか感想書かれたからつい書いてしまった。
即席のため手抜きかもしれない。


 「フランス?」

 

 「あ、僕知ってる。パンが無かったからケーキを食べてた国だよね?」

 

 「ああ、マリーなんとかねっと!」

 

 「えっと、のび太さん、パンが無ければケーキを食べればいいとは言われてますが本当にそうしていたわけではありません。それに先輩、なんとかねっとではなくアントワネットです。さらに付け加えるなら彼女のその発言は現代では創作だったという説が大変有力な物になっています」

 

 「へえー、さすがマシュ、物知り!」

 

 なんとも頭の中が空っぽな二人の会話に、大きな盾を持った少女、マシュ・キリエライトは少し呆れたように解説を行う。そんなマシュに呆れられる二人は、世界最後にして唯一のマスター藤丸立香と彼女のサーヴァント野比のび太である。そもそもなぜ二人がそんな会話をしているかと問われれば、それは彼女達が今まさにフランスの地に立っているからにほかならない。

 

 レイシフト、人理継続機関カルデアで行われるタイムワープのような行為である。彼女達はレイシフトを用いて、人理焼却の原因、つまり世界が滅ぶ原因を修正するために過去の時代のフランスに飛んだのだった。

 

 「ひとまず情報収集を行いと思います」

 

 「賛成!」

 

 「異議なし!」

 

 「ちょうどことにあちらの方に現地の方も見えています。ひとまず話しかけてみましょう」

 

 「マシュはフランス語話せるの?」

 

 「あ、いえ熱意があればきっとなんとかなるかと……」

 

 「それなら、ほんやくこんにゃく!」

 

 「のび太さん、それは?」

 

 「こんにゃくだ! マシュ斬鉄剣持ってない?」

 

 「申し訳ありません先輩、ちょっと何言ってるかわかりません」

 

 「マシュがつめたーい!」

 

 「とりあえず先輩は置いておいて、のび太さんそれはいったい?」

 

 「ほんやくこんにゃくだよ。これを食べれば誰とだって話せるんだ!」

 

 「なるほど、仕組みは分かりませんがとても便利な食べ物ということですね。いただきます」

 

 「私も食べるー、いっただきまーす」

 

 もきゅもきゅと二人はこんにゃくを食べはじめた。

 

 「これは、初めて食べましたがなんというか不思議な食感です」

 

 「おいしい! これで私もマルチリンガル! ハローボンジュールシェイシェイこんにちわ!」

 

 「先輩、最後のは先輩の母国語では?」

 

 「そうだった! ところで国連っていろんな言語が話せないと働けないらしいけど、これなら私も働ける!」

 

 「いえあの、カルデアは一応は国連の所属組織なので、ある意味では先輩は国連で働いているようなものなのではないでしょうか?」

 

 「まじか! 私すげー!」

 

 「ひとまずこれで会話には問題ないでしょう、ではマシュ・キリエライト行きます!」

 

 「頑張れマシュ!」

 

 そして果敢にも現地住民であろう兵士のような恰好をした人物にマシュは突撃していった。

 

 「ぼんじゅーる、私たちは怪しいものではありません。少し聞きたいことがあるのですが……」

 

 「怪しいやつ! 敵襲だー!」

 

 マシュはあえなく撃沈した。しかしそれも当然のことであった。今のマシュの姿はデミサーヴァントとして大きな盾とやけに露出の高い鎧のような物であり、これで怪しくないなんてことは当然なかった。

 

 「すみません先輩! 交渉は失敗に終わりました!」

 

 「残念マシュ! こうなったら仕方がないから戦おう、みねうちで!」

 

 「みねうちって何?」

 

 「血が出ないように戦うこと! ノビータはその拳銃でいつもシミュレーション通りでお願い!」

 

 「分かった」

 

 「はい、マシュ・キリエライト出ます!」

 

 敵兵の数は六名に対して、こちらは戦闘員二名に非戦闘員一名の編成であった。マスターである立香を守りながら戦うマシュとのび太が圧倒的に不利に思われたがそんなことはなかった。

 

 六回である。わずか六回鳴った音とともに敵は戦闘不能になった。

 

 ポップコーンでも弾けたような軽い音がなると同時に敵兵一人が倒れた。それを見た仲間が動揺しているとすぐ次の音がなった、また一人倒れた。何が起こっているか理解出来ない残りの四人は思わず逃げ出した。しかしいつの間にか回り込んでいたマシュに気が付いて足を止めたその瞬間、次の音が二連続で鳴った。そして二人が倒れた。それを見た残りの二人は恐怖に駆られた、なんとか活路を開こうとマシュに槍の矛先を向けた瞬間、最後の二回の音が鳴った。立っているのはのび太とマシュと立香の三人だけだった。

 

 「どんなもんだい!」

 

 敵を倒した音の正体はのび太が両手に持つ拳銃であった。形状こそ西部劇でよく見るシングルアクションアーミーだったが色合いはまるで玩具であった。敵はこの拳銃にやられたのだった。戦闘が始まるとすぐ最初の一発が放たれた。いつ抜いたのか目を疑うほどの早撃ちであった。次に素早く標準を変え二発目が、その次にさらに目にも止まらない早撃ちで二つの弾丸が放たれた。そして少し間を開けてゆっくりと標準が合わせられ、最後の二発が放たれたのだった。

 

 「戦闘終了です、もっとも私はほとんど何もしていませんが」

 

 「私のアーチャーは最強なんだ!」

 

 「いやあ、最強なんて照れちゃうなあ」

 

 これがのび太の力だった。のび太はグズでノロマでマヌケだったが、これだけは、射撃の腕前だけは誰にも負けることは無かった。

 

 「でも皆寝ちゃったから、次どうしよう?」

 

 「あ、考えてなかったや」

 

 「まあなんとかなるよ、へいきへいき!」

 

 倒れた兵士達には怪我一つ無かった。皆すやすやと気持ちよさそうに眠っていいるだけだった。ドリーム銃、それがのび太の持つ道具の名前だ。これは弾丸が当たった相手を眠りに誘う道具で、当たると丸一日夢を見ながら眠るだけの殺傷能力は全くない武器だった。

 

 「この調子でどんどんいってみよう!」

 

 「おー!」

 

 「こんな調子で本当に大丈夫でしょうか……」

 

 どこかノー天気な立香とのび太、それに対してマシュだけがどこか心配しながら一行はフランスの地を進んでいった。その様子はさながらピクニックのようであった。




勢いで書いてたらぐだ子があーぱーになってしまった。
頭の中空っぽのほうが夢を詰めやすいから問題なし。

なお続くは未定の模様


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一章・二節

感想が書かれたなら書かないわけにはいかないなあ

例によって即席レトルトフリーズドライなので手抜きかもしれぬ


 「そんなのおかしいよ!」

 

 のび太は声を荒げてそう叫んだ。間違っていることを間違っていると素直に指摘することは意外と難しい。大人になると特に飲み込まなければならない、我慢しなければならない理不尽というものは自然と増えていく。しかし、のび太はそれは違うとはっきりと口にする。それは彼が子供だからではない、彼が誰かのために怒ることの出来る優しい人間だからだ。

 

 「よいのです。私は私の結末に対して誰かを恨むことは決してありません。私は私の信じるままに、主の声に導かれ道を進んだのです」

 

 「でもそんなの間違ってるよ! ジャンヌちゃんはみんなのために戦ったのに!」

 

 「あなたはとても心優しいのですね。ですがいいのです、全てはすでに起こってしまったこと、もし主が今からでも別の道を用意してくれたとしても、私は一切の迷いなく同じ道を進むでしょう」

 

 話は平行線だった。決してその行いが正しい物ではないと主張するのび太だったが、相手は全てを受け入れていると言う。それも当然の事であったかもしれない、のび太が話している相手はジャンヌ・ダルク、神の声に導かれるままに戦い、そして命を落とした聖女である。彼女の意見を曲げることはきっと一筋縄ではいかない。

 

 「お二人ともその辺りにしましょう。のび太さんの言うようにジャンヌ・ダルクの最後は決して正しいものではなかったかもしれません、しかし残酷な話ですがそれはもう過去に終わってしまった事です。それよりも今現在の問題に目を向けましょう」

 

 のび太達はフランスの地を回っている最中にサーヴァントであるジャンヌに出会っていた。彼女が言うには今のフランスは竜を率いる魔女に蹂躙されているとの事だった。

 

 「ノビータの言うことは凄くよくわかるけど、マシュの言う通り、今は竜の魔女について考えよう」

 

 「マスター、でも……」

 

 「大丈夫、私だって同じ気持ちなんだもの、だから全部終わってから二人でお説教したあげよう。なんでもかんでも受け入れちゃだめだよって」

 

 「……分かったよ」

 

 「よし、それなら今は竜の魔女だよね。なんでもジャンヌが生き返ってフランスに復讐してやろうとしてるとかだったかな?」

 

 「はい、フランスの民達は皆そのように言っていました。しかしそれはおかしいのです。竜の魔女が本当に私であったなら救国に身を捧げた私は決して復讐などと言ったことは考えない筈です」

 

 「じゃあきっとジャンヌのフリした誰かがやってるんだ。ゆるせん、とっちめてやる!」

 

 「先輩の言う通りだとして、なぜ魔女はわざわざジャンヌ・ダルクのフリをする必要があるのでしょうか?」

 

 「分かんない! けどきっと悪いこと考えてるに違いないよ!」

 

 「いえ、まあ犯人が人理焼却に加担していると考えると確かに良い事をしているわけではないでしょうが……」

 

 「よしじゃあ決まり! とにかく竜の魔女に会ってみて一発とっちめた後になんでジャンヌのフリしてたのか聞いてみよう!」

 

 「なんとなくツッコミどころが満載な気がしますが、概ねの進路としてはそれほど間違っていないでしょう」

 

 立香は魔女に一発当てる準備運動と言わんばかりに見様見真似でシャドーボクシングを始めた。彼女達の進路をまとめると、右ストレートでぶっとばす真っ直ぐにいってぶっとばすであった。これは頭の悪いのび太にも一回で理解出来た。

 

 「よし、暗くなってきたし今日はそろそろ休もう!」

 

 「しかし、折角方針が決まったのにノンビリしていていいのでしょうか、こうしている間にも竜の魔女は……」

 

 「ダメだよマシュ、休む時はしっかり休まないと。明日頑張るために今日はご飯を食べてちゃんと寝る、じゃないとどこかで倒れちゃうからね。というわけでレッツキャンプターイム!」

 

 「キャンプ! それなら、キャンピングカプセル!」

 

 マスターが音頭を取ると、のび太はポケットから道具を取り出した。見た目は一本鋭い角の生えた小さなボールだった。のび太はそれの角の部分を地面に突き刺した。傍から見るとこれからゴルフでも始めるのかといった風であった。しかし、地面に刺さったそれは少し間を空けて、一気に大きくなった。角の部分は柱となって辺りの木々と同じくらいの長さになり、その柱によって大きく膨らんだボール部分が支えられていた。

 

 「すごーい! なにこれ!」

 

 「えっと、これはキャンピングカプセルっていってあの丸い部分が部屋になってるんだ。柱のところがエレベーターになっているからそこから登ってみて」

 

 「なるほど仕組みは分かりませんが超高性能テントということですね」

 

 「凄いですね。未来にはこんな便利な物が発明されるのですか」

 

 「皆の分もすぐに出すね」

 

 のび太は同じ物を更に三つ取り出すと同じように地面に突き刺した。

 

 「有難いのですが、サーヴァントとなったこの身には睡眠は不要です。私は外で見張りをしていましょう」

 

 「ダメだよジャンヌ、寝なくていいだけで寝れないわけじゃないんでしょ? だったらしっかり寝ないと、あったかい布団でぐっすり寝る、こんな楽しい事他にはあんまりないよ?」

 

 「しかし、寝込みを襲撃されないとも限りません……」

 

 「もー、ノビータなんかいい方法ない?」

 

 「うーんっと、あ! これを置いて置こう、気配アラームとおもちゃの兵隊!」

 

 のび太はポケットから警備員のような形をした道具と、兵隊の姿をしたおもちゃの人形のような道具を取り出した。

 

 「こっちが気配アラームで怪しい人が近くに来たら教えてくれるんだ。それでこっちがおもちゃの兵隊、命令しておけば怪しい人が来た時に戦ってくれるよ」

 

 「グッド! これでジャンヌもゆっくり寝れるね! 安心したらお腹空いちゃった、マシュー、ハンバーグ食べたい」

 

 「先輩には申し訳ありませんが、そういった手間の掛かる食糧の持ち合わせは残念ながらありません」

 

 「ええー、僕もカレー食べたかったのに……、まてよ、だったらこれがあるじゃないか! グルメテーブルかけ!」

 

 のび太が次に取り出したのは何の変哲もないテーブルかけのような道具であった。お誂え向きのテーブルが無かったのでのび太はそれを地面に敷いた。

 

 「ちょっと小さいかな、だったらビッグライト!」

 

 のび太は今度は懐中電灯のような道具をポケットから取り出した。それは普通の懐中電灯のように光を発した。のび太がその光を地面に敷いたグルメテーブルかけに向けると、瞬く間にグルメテーブルかけが大きくなった。

 

 「これでよし! さあみんな座って座って!」

 

 「これはレジャーシートのような物でしょうか?」

 

 のび太がレジャーシートのようにしたグルメテーブルかけの上に座ると、他の皆もそれに倣って座った。

 

「ふふふ、僕はカレーライス!」

 

 全員が座ったのを確認したのび太がレストランで注文するかのように声を出すと、テーブルかけからまるで生えてきたかのように本当にカレーライスの乗った皿が現れた。加えてそのカレーライスはまるで出来たてかのように湯気を上げていた。

 

 「すごいすごい! じゃあ私はハンバーグ! あ、ご飯セットで!」

 

 マシュとジャンヌが在り得ない物を見る目で、カレーを見つめている横で順応力の高い立香はのび太に倣って注文した。するとカレーライスと同じようにハンバーグの乗った鉄板が現れた。鉄板は熱せられたばかりといわんばかりにハンバーグの肉汁を弾け飛ばしていた。次に注文通りご飯が現れ、さらには味噌汁まで付いていた。当然どちらも出来たてのように湯気が出ている。

 

 「味噌汁もついてるなんて気が利く! マシュとジャンヌは何にするの?」

 

 「なるほど、仕組みは分かりませんが、頼めば好きな物が出てくるということですか。では私は先輩の国の天ぷらという物を食べてみたいです。あ、私もご飯セットでお願いします」

 

 「ジャンヌは?」

 

 「いえ、私には食事も不要ですので……」

 

 「ダメだよ! みんなで一緒に食べないとおいしくないよ! ジャンヌが食べないなら私だって食べないからね!」

 

 「いえ私は……」

 

 なおも断ろうとするジャンヌに立香は不満そうな顔で少しだけ涙目になった。それをみたジャンヌは諦めた。

 

 「そうですね、では何かおすすめの物をお願いします」

 

 二人の注文が終わるとマシュの前には注文通りの天ぷらの盛り合わせとご飯に味噌汁、ジャンヌの前にはたっぷり具材の入ったシチューとパンのセットが現れた。

 

 「よし、それじゃあみんなで、いっただきまーす!」

 

 立香が音頭を取り、みんなが料理に手を伸ばした。

 

 「ハンバーグ熱い! おいしい! 最高!」

 

 「このカレーおいしいけど辛口だった! みずー!」

 

 「なるほど、天ぷらとは揚げ物あるにも関わらず意外とあっさりとしているのですね」

 

 みんなが料理の感想を口にしている中、ジャンヌだけはゆっくりとシチューを口に持って行った。

 

 「おいしい……」

 

 ジャンヌはその味に驚いた。生前はシンプルな料理ばかりであったが故、沢山の具材の入った複雑な味のシチューに感動すら覚えた。

 

 ジャンヌはふと顔を上げた、立香は熱い熱いと言いながらも手が止まることなく食事を勧めている、のび太は辛いと言いながら慌てて水を口に流し込んでいる、マシュは慌てずゆっくりと一つ一つの食材の味を噛みしめながら食べている。みんなが異なった食事風景だったが一つだけ共通点があった、それに気が付いたジャンヌは思わずつられてしまった。

 

 みんなが笑顔であった。

 

 「皆で食べると楽しいでしょジャンヌ!」

 

 「ええ、とても!」

 

 ジャンヌには不安なことが幾つもあった。竜の魔女の正体やフランスの事、それらの事を考え焦る気持ちもあったが、今は、今のこの楽しい時だけは誰にも気兼ねなく過ごしたいと、ジャンヌはそう思った。




「あったかいふとんでぐっすり寝る!こんな楽しいことが他にあるか。」
by昼寝の世界記録保持者

「I need plenty of rest in case tomorrow is a great day...」
by世界一有名なビーグル犬


尚、眠いため続くかは未定の模様


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一章・三節

感想を書くと続きが投稿されると思ったか?
その通りだよ。

なお過去最高(たった四話目)の手抜きの模様


 「藤丸立香パンチッ!」

 

 「あなたマスターでしょ!?」

 

 ジャンヌ・ダルク・オルタ、彼女は裏切られたフランスに対する復讐者であった。自分こそがジャンヌ・ダルクの正しき姿であると彼女は主張する。そんな彼女は英霊として召喚された正規のジャンヌ・ダルクを罵った。ジャンヌ本人はあまりにも自分とかけ離れたもう一人の自分の姿を受け止めきれずいた。そんな中でジャンヌ本人に代わって怒りに燃えたのが立香だった。

 

 「詳しいことは知らない! けどあなたは私を怒らせた!」

 

 「だからってサーヴァント差し置いて自分から向かってくるマスターなんてどこにいるのよ!?」

 

 「ここにいるよ!」

 

 英霊は人間とは隔絶した力を通常であれば有している。故にサーヴァントを召喚しての戦いであれば、マスターは後方で指示を出すか、なんらかの支援を行うのが普通のことであった。ただ極々稀に立場が逆転する程の力を持った者もいる。ただそれは本当に極一部のことであって、至って一般的な少女である立香には英霊と戦えるような力はない。

 

 だからどうした、真っすぐ行ってぶっ飛ばす、そう言ったからにはやらないわけにはいかないのだと、立香は考えていた。

 

 「マスター、強力ウルトラスーパーデラックス錠のお試し版の効果は3分間しか持たないからそろそろ戻ってきて!」

 

 「わかった! 最後に一発!」

 

 握りしめた拳を下げ、一瞬だけ溜める。瞬きする間もなく放たれた立香の拳は残念ながらジャンヌ・オルタの持つ旗で受け止められてしまった。今の立香には力はあれど技術は無かった。単調に真っすぐ放たれた拳が防がれてしまうのは当然の事だった。

 

 「トウッ!」

 

 どこかのヒーローのように立香は地面蹴って宙を舞い後ろへと下がった。そして丁度その時に道具の効果が切れ、立香は体から力が抜け出たように感じた。強力ウルトラスーパーデラックス錠の効果は言ってみれば凄く強くなれる薬なのだが、のび太の持っていたのは試供品で三分間しか効果が持続しない物であった。その薬の効果が今切れたのだった。

 

 「あなた達見てないでなんとかしなさい!」

 

 「そう言われてもどうにも体が動かないみたいでね、どうしようもないわ」

 

 「ああもう使えないわね、こんなことならジルを連れてくるべきだった!」

 

 散々攻められ続けたジャンヌ・オルタは苛立ちを隠すことなく声を荒げた。彼女はこの場に複数の従者を率いていたが、何故か誰も彼も全く体を動かすことが出来なかった。相手ストッパー、それが動きを止めている道具の名前だった。

 

 「いいでしょう、ここは一旦引きます。ただ勘違いしないように、あなた達は私が必ず燃やし尽くしてあげる。特にそこの私の残骸の残り滓は入念に焼き焦がしてあげるわ」

 

 そう言い放ってジャンヌ・オルタは引いていった。動けない従者達は哀れにもそこらを飛んでいたワイバーンの口に咥えられてお持ち帰りされた。

 

 「あらあら? どうやら遅れてしまったようだわ」

 

 「それは良かった、音楽家に荒事なんてさせないで欲しいものだからね」

 

 魔女が去ってすぐにお姫様がやってきた。

 

 「ヴィヴ・ラ・フランス♪ とても素敵な戦いだったわ! あなた達名前を教えて下さる?」

 

 キラキラ輝くお姫様、明るく陽気なお姫様、彼女は誰に憚ることなく場所に馴染む。

 

 「わあ凄いよマシュ! 本物のお姫様だよ! あ、私は藤丸立香です!」

 

 「すごいかわいいお姫様だ! 僕は野比のび太です!」

 

 「先輩! もう少し緊張感を持って下さい! 彼女達が味方だと決まったわけではないんですよ!?」

 

 「もーマシュはお堅いなあ、こんな素敵なお姫様が悪い人な訳ないじゃない! そっちの変な恰好の自称音楽家はちょっと胡散臭いけど!」

 

 「そんなことをおっしゃらないで? 確かにアマデウスの姿は少し愉快だけれど、悪い人ではないのよ?」

 

 突然現れたお姫様と自称音楽家を怪しむマシュの隣で、立香とお姫様はすでに意気投合していた。

 

 「先ほどの戦い少しだけ見ていたの! とっても素敵だったわ!」

 

 「えへへ、そんな事言われると照れるなあ」

 

 「あら、照れることないわ。本当にかっこよかったもの!」

 

 「やれやれ、見ての通りマリーはこんなんだから僕がいろいろ説明させてもらって?」

 

 年頃の若い乙女の会話を具現化したような様子のお姫様と立香を差し置いて、自称音楽家のほうが話始めた。

 

 「まあ、気が付いているかもしれないけど僕たちはサーヴァントとさ。最も主のいない野良サーヴァントだけどね?」

 

 「野良サーヴァント……、つまりあなた方は先ほどのジャンヌ・オルタに対抗するために召喚された存在、ということでしょうか?」

 

 「うん、理解が早くて助かるよ。ただまあ僕みたいな芸術系サーヴァントが召喚されたところで何が出来るかっていうんだけどね。おっとそういえばこちらから促しただけで自分たちの自己紹介を忘れいたね。僕はヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトしがない音楽家さ、それであっちのお姫様はかの有名なマリー・アントワネットさ。それでそろそろ君の名前を聞いてもいいかい?」

 

 「え、あ、はい私はマシュ・キリエライトです」

 

 「うん、それでさっきから静かなそちらのサーヴァントは?」

 

 「私はジャンヌ・ダルクです」

 

 「まあ! ジャンヌ・ダルクですって! 私あなたのことが大好きなの!」

 

 「私も好き!」

 

 ジャンヌが自己紹介したタイミングで年頃の若い乙女二人組が会話に乱入してきた。そのままキャピキャピだとかいう擬音が見える会話にジャンヌを巻き込んでいった

 

 仲間を増やした彼女達はこれから更に歩みを進める。いまだ始まったばかりの人理修復の旅はこれからどうなるか分からないが、今ただ言えることが確実に一つだけあった。彼女達は希望に満ち溢れているということだ。




 カルデア所長、オルガマリーが消え去ろうとしその時! 奇跡が起こった!

 浪漫「これはサーヴァント反応だ!」

 なんと突然召喚されたサーヴァントが所長と憑依合体したのだ!

 所長「私自身がサーヴァントなることね、なるほどこれがデミサーヴァントか」

 マシュ「何やってるんですか! 所長!」

 所長「私は止まらないから、あなた達がとまらない限り! その先に(ry」

 マシュ「団ちょ……所長! 所長ォォッ!」

誰だよ、オルガなんて名前つけたやつ

なお、オルフェンズ未視聴のための続くかは未定


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一章・四節

今回は閑話的な何かのため手抜き
なおのび太は出ない模様


 「ロマン、彼をどう思う?」

 

 「唐突になんだいレオナルド、彼っていうのはのび太のことであってるかな?」

 

 レオナルド、かの有名なモナリザの作者であり万能の天才と名高いレオナルド・ダヴィンチその人である。もっともその見た目はモナリザであったが、彼、或いは彼女にとって性別などというものは些細な問題でしかなかった。

 

 「そうだ、はっきり言って私は彼が恐ろしい。いや正確にいえば彼自身ではなく彼の持つ道具がだけれどね」

 

 「まあ、言いたいことは分からなくもないよ。彼の道具はどれもこれも魔法の域に達している、持つ者によって恐ろしいことになりかねない事は僕だって理解してるさ。でもそんな心配はいらないと僕は思うんだ」

 

 「なぜだい?」

 

 「決まってる、彼がとっびきりの善なる者だからだよ。これといった根拠があるわけじゃないけれど、彼は信頼に値する者だと思うんだ」

 

 「確かにそれは私もなんとなく分かる。ただ私が最も恐れていることは道具が敵に奪われる事だ。彼の道具を調べてみたがあれは彼の宝具とは異なる物だった、詳しい解析は済んでいないから原理は分からないが、あれらの道具は少量の魔力を呼び水にしてどこからか取り出している物だ、道具自体は魔力は欠片も感じられなかった」

 

 「ということは道具は誰にでも使えてしまうということか」

 

 「そうさ、使おうと思えば私だって使える」

 

 こんなふうにね、なんて彼、或いは彼女であるダヴィンチは頭の上に竹トンボのような道具を乗せて、道具のスイッチを押した。すると竹トンボは自動で回り始めた。その様子は小さなヘリコプターのようであったが、事実その通りにダヴィンチの体は宙に浮き始めた。

 

 「確かタケコプターと彼は言っていたかな? こんな小さな機械で私を浮かび上がらせる程の浮力を発生させているなんて到底信じられない、私がかつて考案したプロペラ機が確か直径4、5メートル程だったことを考えると、在り得ないとすら言える。彼はこれを科学による道具だと言っていたが、万能の天才たる私から言わせてもらえば、科学なめんなとしか言いようがないね」

 

 少しの間、ダヴィンチは空中浮遊を楽しんでいたが、とても自由に飛び回れる程の広さがある訳でもないカルデアの管制室では長時間飛び続けた所で大した面白みもなく、ゆっくりと床に戻ってきた。

 

 「と、まあ個人的には非常に興味をそそられる訳だが、今はそれどころではないからね。このタケコプター一つでさえ悪意を持った誰かの手に渡ればそれなりに悪用出来そうなものだ」

 

 「なら、無事に彼らが特異点から帰還した時はその辺りの事を相談する必要があるわけだ」

 

 「そういうことさ、出来ることなら早めに手は打っておいたほうがいい。ところで話は変わるが、君も確か何かの道具を彼から受け取っていたと思うんだけれど、何を受け取ったんだい?」

 

 「ああ、これさ」

 

 そう言ってロマンは懐に大事に仕舞ってあった本のような道具を取り出した。ロマンがページを開き数ページ捲るがそこには何も書かれていなかった。

 

 「白紙の本じゃないか、彼はこれを何だと言っていたんだい?」

 

 「魔法辞典、彼はそう呼んでいたよ。なんでもここに自分で好きな呪文と効果を書くと実際にその呪文が使えるようになるらしい」

 

 「本当にそんな事が可能なら、それは万能の願望器どころの騒ぎじゃないぞ、それこそ名前の通り魔法の領域だ」

 

 「うん、まあそう思ってなんとなく恐ろしいから僕もこれを使う予定は今のところはないよ」

 

 「賢明な判断だ、それにしてもやはり彼の道具は恐ろしいものだね」

 

 「うん、あ、でもどれもこれもが危険な物ばかりじゃないみたいだよ」

 

 「例えば?」

 

 「夜間布団の中からおしっこできるホース」

 

 「は?」

 

 「だから、夜間布団の中からおしっこできるホースだって」

 

 「なんというか、病院とかであれば役に立ちそうだ」

 

 「まあ、そんな道具もあるわけだからあまり彼の事を危険視するのはよしたほうがいいさ」

 

 「確かにそうかもしれない」

 

 「あー、やめようやめよう、変に深刻に考えていると胃が痛くなってくるよ。今はともかく彼らの存在証明に集中しよう」

 

 ロマンはそう言い切ってコンソールに向き直る。そこから暫くの間、管制室での私語はなかった。

 

 これは特異点修復中のカルデア管制室の記録である。

 




プロペラを設計したダヴィンチちゃんにタケコプターを使わせたいだけの話

なおアイルーが可愛いため狩りが進んでいないので続くかは未定の模様


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