八幡は魔法科高校ではぼっちでは居られない (sinobun)
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四葉八幡

学校 第一高校 1-A

得意魔法 フルコピー 完全模倣 一度見た魔法はCAD無しで全て使える

     戦略級魔法 ブラックホール(大きさは自分の意志で調節できる)

 

 

中学2年生の冬まで比企谷家の息子として総武中学で過ごしたが、実の母親である真夜の命令により四葉本家に戻る。そのさい、それまで奉仕部で共に過ごした親しい友人の結衣と雪乃には小町に伝言だけを頼み姿を消す。

義妹である小町とそのガーディアンである水波(八幡にとっては妹みたいなもの)をとても大事にしている。

本人は絶対認めないが、深雪の事が大好きなのがバレバレ。

普段はやる気のない感じだが、自分の身内に危険が及んだり中傷されたりすると別人の様になる。

フルコピーやブラックホールに関しては一部を除いて秘密にしている。

 

 

 

 

 

比企谷小町

学校 総武中学 2-A

得意魔法 精神干渉

 

 

義兄で従兄妹の八幡と、ガーディアンである水波(姉妹だと思っている)の事が大好き。

従兄姉の達也と深雪の事も大切に思っている。

四葉深夜を超える精神干渉系魔法の使い手で、その力を使って、達也が深雪以外の数人にだけ感情を抱けるようにした。負担が大きいため基本的には高度な精神干渉系魔法は使わない。

 

 

 

 

 

桜井水波

学校 総武中学 2-A

得意 障壁魔法

 

小町のガーディアン兼四葉家のメイド。 

八幡の言いつけにより小町の事は呼び捨てで、八幡の事は「八幡お兄ちゃん」と呼んでいる。

八幡と小町の事が大好き。八幡に関しては完全に恋する乙女になる時がある。

普段はドジなところもあるがガーディアンとしては一流。

 

 

 

 

司波達也 

学校 第一高校 1-E

得意魔法 原作通り

 

深雪のお兄様兼ガーディアン。

深雪曰く、八幡とまともに戦えるのは達也くらいしかいない。

深雪以外にも感情がある分原作よりも多少気さく。

深雪と同じくらい八幡と小町の事を大切に思っている。

 

 

 

 

司波深雪

学校 第一高校 1-A 

得意魔法 原作通り

 

八幡には少なからず好意を抱いている様子。その分原作よりブラコン度が低め。

小町と水波の事は妹の様に思っている。

 

 

 

 

 

雪ノ下雪乃 

学校 第一高校 1-A

得意魔法 振動系統 冷却魔法

 

総武中学出身で、二年生の時に突然消えてしまった八幡と再会するため結衣とともに第一高校に入学。

八幡に好意を持っている。八幡と周りに居る女子に対してあからさまに焼きもちを妬くなど、昔よりもかなり性格が素直になっている。

 

 

 

 

 

由比ヶ浜結衣

学校 第一高校 1-E

得意魔法 ??た

 

総武中学出身。雪乃と共に八幡と会うため第一高校に入学。

魔法はあまり得意じゃないため、雪乃に協力してもらい猛勉強したかいもあり何とか合格した。

八幡の事は飼い犬のサブレを助けてもらった事がきっかけで、中学の頃からずっと好き。

 



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プロローグ

「えっ?今なんてっ??」

 

「だから中学校にはもう行かなくていいから、高校入学まではこちらに帰ってきなさいといったんですよ八幡」

 

「なんでだよっ」

 

ここは比企谷家。今八幡とその実の母親である四葉真夜は電話で口論になっていた。

隣では義妹の小町が心配そうにその様子を伺っている。

 

「あなたには四葉八幡として第一高校に通って貰うことは既に伝えてありましたね?」

 

「ああ」

 

「そこで次の慶春会で分家の方々にあなたの事を私の息子として紹介するつもりでいます。その後もそのまま比企谷家に居ては四葉と比企谷の関係がバレてしまって小町の事も皆さんに紹介しなくてはいけなくなるわ。」

 

真夜と小町の母親の比企谷芽夜(めや)は姉妹であり、本来小町は八幡の従妹になる。

もう一人の姉妹、故四葉深夜の息子と娘の達也と深雪と同じように四葉との関係を今はまだ秘密にしておきたいので、この事を知っているのは分家の者も含めてごく一部にしかいない。

 

「なるほど・・・」

 

「納得したかしら?」

 

「ええ・・・・、でっ本音は?」

 

「そんなの八幡と早く一緒に暮らしたいからに決まってるじゃな~い♡」

 

「このクソ魔王がーーー」

 

「ハっ、ハメたわねっ」

 

「はぁ・・・まぁ、とりあえず事情はわかったから言うとおりにするよ」 

 

「ええ、では会えるのを楽しみに待っているわね八幡。」 

 

通信が終わったのを見計らって、小町が目に涙を溜めながら駆け寄ってきた。

 

「お兄ちゃんっ、今の本当?居なくなっちゃうの?」

 

「・・・・・あぁ、どーやらそーみたいだな」

 

「そっか・・・でも真夜おばさんの命令ならしょーがないもんね」

 

「大丈夫だ!高校に通うときにはまた一緒に暮らせるようになんとかしてみるからな!でもそーなると四葉との関係がバレて小町も面倒なことになるかもしれない・・・」

 

「小町はお兄ちゃんとまた一緒に居られるならそんなの平気だよ!

あっ、今の小町的にポイント高い!!!」

 

八幡は嬉しくなり小町の頭を優しく撫でた。

気持ちよさそうにしていた小町だったが真剣な顔で八幡にこう尋ねた。

 

「お兄ちゃん、雪乃さんと結衣さんはどーするの?」

 

「・・・・・・」

 

「2人とも半端な説明じゃ絶対納得しないよ?」

 

「そーだな・・小町、今はまだ四葉の事はあの二人には言えないから、2人に何か聞かれたら俺は元々養子で本当の親の所に帰ったって言ってくれないか?」

 

「会わないで居なくなるつもりなの?」

 

「正直俺はあいつらの事が好きだったんだよ・・・あっ、別に変な意味じゃないぞ?人としてだ!人として!」

 

「そんなに焦らなくてもわかってるよ、お兄ちゃんが1番好きなのは深っ「小町ちゃんん?」小町だって事くらい」

 

(お兄ちゃん深雪さんの前では毎回緊張でカチカチだから、好きだってのが小町と達也さんにはバレバレなんだよね。)

 

「んっんっ、まぁそれでだ・・・2人に会うと決心が鈍りそうなんでな・・・」

 

「わかったよ、小町が上手い事言っておくから任せておいて!」

 

「ああ、すまんが頼んだ。」

 

こうして八幡は総武中学を去り四葉へと帰る事になった。

 

 

 

 

 

 

 

「ヒッキーのバカ」ポロポロ

 

「比企谷君・・・グスッ」

 

「ゆきのん、私絶対第一高校に入学してヒッキーに文句言ってやる!」

 

「そうね。このままお別れなんて絶対に許さないわっ!覚悟しておきなさい比企谷君!」

 

 

 

後日小町から事情を聴いた雪乃と結衣は八幡との高校での再会を心に誓うのであった。

 




当たり前ですが、読むのと書くのとでは全然違いますね(;'∀')
感想頂けると嬉しいです<(_ _)>オネガイシマス


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入学編
入学式前日


「お兄ちゃんできたー?」

 

「おっ、おう、一応な・・・でもこれは・・・」

 

「おー、中々似合ってるよ。カッコイイよ」

 

「そーか?俺としてはなんか恥ずかしいんだが」

 

明日入学式を控えた八幡は小町にせがまれて一高の制服を着てみたのだが、本人的にはコスプレみたいで恥ずかしいのである。

 

「似合ってるってー、水波ちゃんもそう思うよね?

 

「はい小町様!八幡様!!!世界一格好いいです!!!」

 

八幡にそう言ってキラキラした眼差しをむけている彼女の名前は桜井水波。

四葉家の人間を守るガーディアンとして本当は八幡に付く予定だったのだが、八幡がガーディアンを拒否したため(ただ一人で居る方が落ち着くという理由で)小町のガーディアンとして二人と生活する事になったのである。

この通り八幡の事が大好きなのである。

ちなみに四葉と比企谷の関係については、分家には小町の存在も含め全ての者に伝えられた。世間には、まぁバレたらバレたでその時に対処しようという事になっている。

 

「いやいや、世界一は言い過ぎだからな水波」

 

「そんな事ありません!!八幡様は世界一格好いいし、優しいし、強いし、素敵な方です!!!」

 

「水波ちゃん、お兄ちゃんの事が大好きなのは分るけど、それもう制服関係なくなってるからね?」

 

「あっ!いっ、いえっ、そ、その、大好きとかそういう意味ではなくてですね。いや、もっ、もちろん八幡様の事は大好きなのですが、いっ、いや、そーではなくて、あっ、そーでした、わっ、私はそろそろ夕食の準備をして参ります!」

 

そう言って水波は真っ赤な顔で部屋を飛び出していった。

 

「あははは。ホントに水波ちゃんはお兄ちゃんの事が大好きだなぁ~、ねっ?お兄ちゃん?」

 

八幡にそう問い掛けた小町だったが、八幡も顔を真っ赤にしている事に気が付いた。

 

「・・・・・・」///

 

「いやいやお兄ちゃん、水波ちゃんのアレにはそろそろ慣れようよ」

 

「無理だ!水波みたいな美少女にあんな事言われたら俺には耐えられん!」

 

「はぁ~、ホントにお兄ちゃんはそーゆーところは全然変わってないよね。同じことを深雪さんに言われでもしたらどーなっちゃうんだろうね?」

 

「なっ、みっ、深雪は今関係ないだりょーが」

 

「お兄ちゃん焦り過ぎだから」

 

「とっ、とにかくコレそろそろ脱ぐぞ!小町も水波の様子でもみてきたらいーんじゃないか?」

 

「は~い。じゃっ、お兄ちゃんも着替えたらすぐ来てね!」

 

そう言って小町も部屋から出て行った。

それを見届け八幡は一人部屋で呟く。

 

「たくっ、小町はすぐ深雪深雪って。深雪にあんな事いわれたら、すぐ告白してフラれるまである。そしてお兄様に消されるまであるな。フラれた上に消されるのかよ!とにかく達也にだけはバレないようにしないとな。べっ、別に深雪のことが特別好きとかそんな事はないけどな!」

 

一人でそんな事を呟きつつ、着替えを終えた八幡はリビングへと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

食卓を囲みながら3人は明日の学校について話し合っていた。

ちなみにこの家には八幡、小町、水波の3人で住むことになっている。小町の父親は魔法師ではなくサラリーマンをしており現在海外へ単身赴任中。母親の芽夜は、八幡達も住んでいた千葉にある家に今も住んでいる。当初、四葉の事もあり八幡は小町と水波は芽夜と共に住むことを進言したのだが、小町と水波の猛反対に合い直ぐに首を縦に振ってしまった。

 

「そーいえば新入生総代は深雪さんなんだよね?」

 

「ああ、そうみたいだな。まぁ、深雪なら納得だけどな」

 

水波の得意料理の肉じゃがを食べながらそう言う八幡を、小町と水波はジト目でみつつ・・・

 

「お兄ちゃん手抜いたよね?」

 

「八幡様手を抜きましたね?」

 

2人に同時にそう言われた八幡は居たたまれないようにしながら

 

「しょっ、しょんな事ないじょっ」

 

思いっきり噛んだ

 

「もぉー、今日深雪さんからも連絡来たんだからね!「なんで八幡が総代じゃなくて私なの?ちょっと八幡に確認させて貰えるかしら?」って。ちょうどお兄ちゃんが出掛けてたから、確認しておくッて事でなんとか深雪さんを宥めてその場はおさまってくれたけど。」

 

「マジでか・・・」

 

八幡はそれを聞いて顔を青くした

 

「そもそも小町を経由しないでいい加減連絡先を交換しなさいよ!達也さんとはしてるんだよね?」

 

「うっ、まぁそのうちな・・・深雪の顔を見ると何故か上手くしゃべれなくなるんだよ。小町も知ってるだろ?深雪のあの完璧な顔」

 

それを聞いて水波がちょっと拗ねた顔をしたのに気が付いた小町は

 

「水波ちゃんとは普通に話せるのにね?お兄ちゃんの中では水波ちゃんは可愛い部類には入らないんだね!」

 

「ばっか、何いってんだよ!水波もどっからどーみても美少女じゃねーか!あっ・・」

 

それを聞いて小町はニヤニヤする

 

「水波ちゃんよかったね!お兄ちゃんが美少女だって!」

 

「はっ、はははは八幡様!」

 

「おっ、おう」

 

「おっ、おかわりなどいかがでしょうか?」

 

「おう、大丈夫だからとりあえず落ち着け水波」

 

「はっ、はいっ!申し訳ございません!」

 

とりあえず水波を落ち着かせ小町を睨むが、小町は目を逸らして鳴ってない口笛を吹いていた。

 

「とにかく深雪とは明日直接話すからこの話はここまでな。それよりも水波!!!」

 

「はい、なんでしょうか?」

 

「小町にたいしてもだが、そろそろ様を付けるのとその敬語をやめてほしいんだが。」

 

「そーだよ水波ちゃん!小町の事は小町って呼び捨てにしてって前から言ってるじゃん!」

 

「でっ、ですが・・・」

 

「水波は明日から小町と同じ学校に通うんだから、せめて家以外では普通に接してないと色々不自然なんだよ。四葉との関係も知られないに越したことはないしな」

 

「わかりました・・・小町・・・これでいいですか?」

 

それを聞いた小町は予想以上に嬉しかったようで水波に抱き着いた。

 

「私も水波って呼び捨てにするね!これからもよろしくね!」

 

「はいっ、こちらこそ!ところで・・・」

 

「ん?どーしたの水波?」

 

「八幡様の事はなんと呼べばいいでしょうか?」

 

「様じゃなければなんでもいーぞ。さん付けでも呼び捨てでも」

 

「呼び捨てなんてとんでもないです!!!」

 

「おっ、おう。でも俺は水波の事を家族だと思ってるからホントになんでもいーぞ?」

 

八幡に家族と言われた水波は嬉しそうにしたかと思うと、急にモジモジしてこう言った。

 

「家族・・・じゃぁ・・幡・ちゃん・・・」

 

八・小「えっ?」

 

「八幡お兄ちゃん!!!」

 

そう言った水波の破壊力は凄まじく、八幡と小町は盛大に鼻血を吹き出ししばらく水波を愛でていたとかいないとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

達也・深雪side

 

~司波家~

 

 

 

「まだ怒っているのか深雪?」

 

「はい!お兄様!直接八幡に理由を聞くまでは収まりません!もしちゃんとした理由がないようでしたら・・・お仕置きですっ!」

 

「そっ、そうか(八幡、自業自得だな。どうせあいつの事だから、目立ちたくないとか面倒くさいとかの理由だろうしな)」

 

「まったく!やっと同じ学校に通えるというのに入学前からこの様な事をして!」

 

「八幡と同じ学校だと知って深雪は本当に喜んでいたものな。」

 

「べっ、別にそこまで喜んでなどいませんよ?深雪はお兄様と一緒に通える事が何よりですし・・・まっ、まぁ八幡の事も少しは喜ばしい出来事だと存じ上げていたりなかったりですが!」

 

「(深雪、日本語になってないぞ・・・まぁ八幡も深雪の事を意識しているのはバレバレなんだがな)」

 

妹と従兄弟について思う所もあるが、達也は達也で明日からの学校生活が少し楽しみになったのだった。



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入学式

原作とは違うご都合主義な部分が多数あったりこれからも出てくると思いますが、深く考えず思い付きで書いているので許して頂けると助かります。




国立魔法大学付属第一高等学校入学式当日、八幡が校門をくぐると聞いたことのある少女の声が聞こえてきた。

 

「納得できません!」

 

「まだ言っているのか深雪」

 

八幡はそれが深雪だとわかると、内心ヤバいと思い見つからない様に通り過ぎようとした。

 

「どーしてお兄様が補欠なのですか!それどころか本来のお兄様の力をもってすれば新入生総代も私などではなく・・・」

 

「深雪っ!」

 

口に出してはならない事を口にしようとした深雪を達也は止める。

 

「それは言ってもしょうがない事だってわかってるだろ?」

 

「申し訳ございません」

 

そこで達也は八幡の存在に気が付いて悪い笑みを浮かべた。

 

「それに俺は楽しみなんだよ」

 

「楽しみ・・ですか?」

 

「ああ、お前に見つからないように通り過ぎようとしている八幡がどんな言い訳をするのかな。」

 

「えっ???」

 

それを聞いた深雪は、達也の目線を辿るように後ろに振り向いた。

そこには今まさに深雪の後ろをカバンで顔を隠しながら通り過ぎようとする八幡が居た。

それを見た深雪は

 

「は・ち・ま・ん~~~」

 

その周りだけ五度は気温が下がったと思わせるような、笑っているのに寒気しかしない笑顔で八幡の名を呼んだのだった。

 

「達也、テメー裏切ったな!」

 

「なんのことだ八幡?そもそも手を組んだ覚えがないんだが」

 

「八幡っ!!!」

 

達也に抗議している八幡に深雪が笑顔で呼びかける。

 

「ひゃっ、ひゃいっ!」

 

「聞きたいことは分かってますよね?さぁ、納得いく説明をお願いします!」

 

そう深雪に問い詰められて、追い詰められた八幡は

 

「おっ、俺の自慢のいとk・・・可愛い深雪が新入生総代として挨拶している姿が見たかったんだ!」

 

深雪の容姿の事もあり、先ほどから遠巻きではあるが周りにはこの三人のやり取りを見聞きしている者たちがいたため、八幡は達也と深雪が四葉の関係者だとバレるのはマズイとギリギリの所で気が付き「従妹」の部分を言わずに済んだ。だがそれが仇となり、字面だけみるとまるで深雪を自分の物宣言しているかの様なセリフを吐いてしまった。

 

それを聞いた深雪は顔を真っ赤にして

 

「なっ、なななななっ、何を言っているのよ八幡っ!俺の深雪だなんて・・・」

 

「えっ?あっ、すっ、すまんつい・・・」

 

「とっ、とにかくそろそろ時間なので私はいきます。お兄様、また後程。はっ、八幡もまだ許したわけではありませんからね!」

 

2人にそう言うと、深雪は速足で入学式が行われる講堂へと入って行ったのだった。

 

「なぁ達也」

 

「なんだ八幡?」

 

「俺深雪に殺されないかな?あんなに顔を真っ赤にして怒ってたし・・」

 

「それは大丈夫だろ、あれは怒っていたんじゃなくむしろ・・」

 

そこまで言いかけて達也はやめた。

 

「とにかく大丈夫だ(下手な事をいうと俺に矛先が来そうだからな)」

 

 

 

 

 

入学式までにはまだ時間があったので、達也と別れた八幡は一人で中庭にあるベンチで時間を潰す事にした。

 

(母さんには一高に入学さえすればある程度は好きにしていいって言われてるからな。おかげで総代は回避できたとはいえ、やっぱり俺が四葉だと知られたら目立っちゃうんだろ~なぁ~、嫌だなぁ~、小町、水波助けてくれぇぇ~~~。)

 

心の中で二人の義妹に助けを求めていると、不意に横から懐かしい声が聞こえてきた

 

「ヒッキー」

 

「比企谷君」

 

声のした方に振り向くと、そこには懐かしい二人の美少女が居た。

 

「由比ヶ浜、雪ノ下・・・」

 

八幡がそう呼んだと同時に、二人は泣きながら八幡に抱き着いた。

 

「やっと会えた。ヒッキーのバカ、ボケナス、八幡」

 

「何も言わずに私達の前から居なくなるなんて許さないわよ。バカ、ボケナス、八幡」

 

「お前らな、最後のは悪口じゃないからな・・・でも、すまなかった」

 

二人に謝ったあと、何故急に居なくなったかを説明した。

 

「・・・・・と言うわけだ」

 

「ヒッキーが四葉・・・」

 

「理由を言えなかった事については納得したわ。もう一つ聞きたい事は・・あなたは私達とは二度と会わないつもりでいたの?」

 

「ああ、そうだ」

 

結・雪「っ!!」

 

「怖かったんだよ・・俺が四葉の人間だと知られたら、お前たちに怖がられて拒絶されるんじゃないかってな」

 

「ヒッキーのバカ、ヒッキーが怖いなんて思うわけないじゃん」

 

「ええ、そうね。私達の気持ちを勝手に決めつけないでもらえるかしら比企谷菌、いえ四葉菌?」 

 

「あっ、そっか。もうヒッキーじゃないんだ!ヨッキー?」

 

「いやいや、由比ヶ浜のはそのままでいーぞ。雪ノ下は出来れば四葉か八幡て呼んでもらえると助かる。」

 

「じゃぁヒッキーで」

 

「四葉君・・・八幡君・・・・八幡君にするわ」

 

「ところで、お前らは一高に俺が入学するって知ってたのか?」

 

「ええ、あなたが居なくなった時に小町さんにこう言われたのよ、「もしお兄ちゃんにまた会いたいと本気で思うなら一高に行けば会えます。でもその時に会うお兄ちゃんは今までとは違うかもしれません。どんな事が会ってもお兄ちゃんを拒絶したりしないって誓えるのであれば会いに行ってください」ってね」

 

「小町ちゃんの言ってた意味がやっと分かったよ」

 

「小町の奴そんな事を・・・」

 

「とにかく、これからもよろしくね八幡君」

 

「よろしくねヒッキー」

 

「ああ、こちらこそよろしくな」

 

 

こうして結衣と雪乃と再会した八幡は、そろそろ式が始まる時間だと気が付いたので三人で講堂へと向かった。

 

 

 

 

三人が揃って講堂へと向かっていると、式の開始が近い事もあり他の生徒の姿も見えてきた。

すると、八幡達三人を見てある女生徒達からこんな会話が聞こえてきた。

 

「ねぇ、あれ見て」

 

「なんでウィードとブルームが一緒にいるのかしら?」

 

八幡達を見て発せられた言葉「花冠=ブルーム」「雑草=ウィード」とは本来学園側も禁止している差別用語である。一科生を花冠(ブルーム)、二科生を雑草(ウィード)、一科生のブレザーには左胸と肩に八枚花弁のエンブレムがある事から、自分たちを花冠と呼ぶようになり、それが無い二科生の事を雑草と揶揄するようになったのだ。

 

八幡はそんな事気にしていなかったので気が付かなかったが、よく見ると八幡と雪乃の制服には例のエンブレムがあるが結衣にはなかった。

この会話を聞いていた結衣は八幡と雪乃に対してバツが悪そうにこう言った。

 

「えへへ、私魔法実技がそんなに得意じゃなかったから、せめて筆記だけでもって思ってゆきのんに教えて貰いながら猛勉強してなんとかこの学校にも合格できたんだ。差別がある話は噂で知ってたけど、やっぱり本当にあるんだね。二人にも嫌な思いさせちゃ悪いし私先に行ってるね」

 

目に涙を溜めながらそう言って走って行こうとした結衣の肩を八幡は掴んで制した。

 

「ヒッキー・・?」

 

今にも泣き出してしまいそうな結衣に対して、八幡は小町に対してする様に優しく頭を撫でながらこう言った。

 

「ありがとうな。そんなに一生懸命に勉強してまで俺に会う為にこの学校に来てくれて」

 

「あっ・・・」

 

そう言われた結衣の目からは今度は本当に涙がポロポロ落ちていた。

 

「それに俺達が誰といようが周りにとやかく言われる筋合いはない!だよな?雪ノ下?」

 

「ええ、そのとおりよ!」

 

八幡と雪乃はわざと周りに聞こえるようにそう言った。

 

それを聞いて先ほど差別発言をしていた女生徒達は

 

「なっ、なによ!バカみたい、もぉ行きましょっ!」

 

「ええっ、そうね!」

 

と言いながら講堂へと入って行った。

 

「さっ、俺達も行こうぜ。遅刻しちまう。」

 

「ええ、そうしましょう」

 

そう言う二人に対して結衣は嬉しそうに

 

「えへへ、二人ともありがとう!私一高に合格できて本当によかった」

 

二人の腕を掴みながらそう言った。

 

「ばっ、ばか、腕を掴むな!色々当たって・・・」

 

「あっ、暑苦しいから離れてもらえるかしら」

 

 

 

 

 

八幡達が講堂の中に入ると席が半分以上埋まっていた。空いている席を探していると、前半分が一科生、後ろ半分が二科生で綺麗に分かれている事に気が付いた。

そんな光景を見て八幡は内心溜め息を吐きつつ

 

「ここに居る全員差別肯定派なのか?」

 

「さすがにそれはないと思うけれど、ここまできれいにはっきり分かれていると、自分だけ違う行動を取る勇気が持てずに流されているのもあると思うわよ」

 

「あ~、確かにそれはありそうだな。」

 

そんな会話をしていた八幡だったが、丁度空いている席の近くに見知った顔を見つけた。

 

 

達也の後ろの席に座りつつ八幡は達也に話しかけた。

 

「よう、達也。ナンパか?」

 

達也の横の席には二人の女子生徒が座っていた。

 

「そんなわけあるか!たまたま席が隣になっただけだよ。おまえこそ深雪にあんな事を言っておいてナンパか?」

 

「なっ!だっ、だからあれはアレがアレで間違えただけだ!」

 

八幡が達也をからかうつもりがカウンターを食らっていると、達也の隣に座っていた二人と結衣達も会話に参加してきた。

 

「なになに、司波君の知り合い?」

 

「ヒッキー私達の事も紹介してよ!」

 

ここで問題なのが、達也達が四葉と関係があるとバレないようにする事なのだが・・・八幡がどーしようか悩んでいると達也が悪い顔をしながら

 

「こっちの二人は千葉エリカさんと柴田美月さんだ。そしてこっちは四葉八幡。去年俺の妹をナンパしてきて以来の腐れ縁だ」

 

「「「「えっ????」」」」

 

達也と八幡以外の四人が呆けていると、八幡が小声で達也に抗議した

 

「(おい達也!何デタラメ言ってるんだよ)」

 

「(俺達と四葉の関係を隠す為だ、すまない)」

 

そのことを引き合いに出されると八幡は何も言えなくなってしまう。

 

「何をコソコソ話しているのかしら八幡君?それとナンパってどーゆー事かしら?」

 

「そーだし!ヒッキーマジきもい。私達の前から消えてナンパしてたとか!」

 

放心状態から復帰した雪乃と結衣が、こめかみに青筋をたてながら八幡にそう言った。

 

「ちょっと待てお前ら!こいつとはあれだ。総武から転校した先で知り合ったんだ。確かに妹も知り合いだがナンパなんてしてないから!こいつのいつもの冗談だ!」

 

最初からこう言えばよかったと八幡は後悔した。

 

「総武?じゃあこの二人がお前が話してた部活仲間の二人か?」

 

前に八幡から雪乃と結衣の話を聞いていた達也は「総武」という言葉から、この二人がそうなのかと八幡に尋ねた。

 

「ああ、そうだ。俺が二年生の冬まで通っていた中学で同じ部活に所属していた二人がこいつらだ」

 

八幡がそう紹介した為二人も自己紹介する。

 

「初めまして。雪ノ下雪乃です。よろしくお願いします」

 

「初めまして由比ヶ浜結衣です。よろしくね」

 

なんとか二人の紹介も済み、八幡がホッとしていると今度はエリカと美月が焦った様子で会話に入ってきた。

 

「よっ、四葉ってあの四葉?」

 

「・・・・・・・」

 

エリカがそう言い、隣の美月はどこか緊張したような雰囲気でいる。

それに対して八幡は

 

「あ~、まぁたぶんその四葉で合ってると思うぞ!」

 

「二人ともそんなに警戒しなくても大丈夫だ。一緒に居ればそのうち分かると思うが、八幡は本当にあの噂の四葉の人間かって思うくらい普通だ。それに、目立ちたくないのと面倒くさいって理由で本来新入生総代になる実力があるのに手を抜くような奴だしな。」

 

「普通で悪かったな!それとなんで知ってるかは知らないが、手を抜いた理由は深雪には言わないで下さい!お願いします!お兄様!!!」

 

そんな二人の様子を見ていたエリカと美月は

 

「あははは。なんか普通って言った意味が少しだけ分かったかも!変に構えちゃってごめんね。これからよろしくね!」

 

「私もすいませんでした。よろしくお願いします」

 

「慣れてるから気にしてない。こちらこそよろしく。」

 

「でも四葉君、目立ちたくないのにここに座っててもいいの?」

 

一科と二科で完全に分かれてるこの状況で八幡と雪乃がここにいるのは確かに浮いていた。

しかし八幡は先ほどの結衣の事もあり、この差別意識に対して酷く嫌悪感があった為こう答えた。

 

「関係ない。俺は同じ人間を、ましてや大事な仲間を差別する気なんてないからな!」

 

そう言った八幡だったが、いつまでたっても反応がないので周りを見てみると、生暖かい眼差しで自分が見られている事に気が付き、今自分がけっこークサい事言ったなーと後悔した。

 

「気に入った!!!四葉君、いや、私も八幡って呼ばせてもらうね。私の事もエリカでいーから」

 

「八幡さん、とても尊敬します!あっ、私も美月でいーです」

 

「おっおう?」

 

エリカがそう言い、大人締めな印象の美月までもがキラキラした目で八幡の手を握りながらそう言ってきた為八幡は拒否する事もできなかった。

 

「むむむむむ」

 

「あなたって人は次から次へと・・・」

 

最初は八幡の言ったことに感動していた雪乃と結衣だったが、エリカと美月の行動に頬を膨らましていた。

 

 

「これより、国立魔法大学付属第一高校入学式を始めます」

 

八幡達がそんなやりとりをしている中、式を開始するアナウンスが聞こえた。

 




全然話が進みません(;'∀')俺ガイル寄りのオリジナルな部分を入れてしまうとよけいに進まない。なので少しずつ原作部分を省いて話を進めて行こうと思います。


なぜか達也が八幡を弄る感じになってしまう・・・


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入学式2

深雪side

 

「(本来なら八幡がこの場に居るはずなのに手を抜くなんて、叔母様も八幡に甘過ぎるのではないかしら)」

 

深雪は八幡が入試で手を抜いたと確信している。そしてそんな八幡に対して、叔母である真夜が昔から甘すぎることも。

そんな事を考えながら八幡の姿をステージ脇から探していたのだが中々見つからない。

前と後ろで一科と二科が分かれているのはすぐわかったので(八幡同様この光景には溜め息が出た)おかしいなと思いながらも次に達也を探す事にした。するとその姿はすぐ見つかったのだが、達也の後ろで今正に美月に手を握られて狼狽えている八幡の姿も目に入った。

 

「(は~ち~ま~ん~、先ほどは「俺の深雪」なんて言っておきながら見たこともない女性とあんな事を!よく見たらお兄様と八幡の周りに四人も知らない女性がいるわ!やっぱりあとでお兄様も含めてお仕置きね)」

 

 

 

 

「これより、国立魔法大学付属第一高校入学式を始めます」

 

深雪がどんなお仕置きがいいか考えていると深雪の新入生代表の挨拶がすぐに回ってきた。

 

「続きまして新入生答辞。新入生代表、司波深雪」

 

深雪が壇上に立つと、男子も女子もその姿に見入られていた。

しかし当の深雪の目には八幡の姿しか入っておらず、まるで目が合っただけで凍り付いてしまいそうなくらいの冷気を八幡にだけ向けて放っていた。

 

 

 

 

八幡side

 

 

「やっ、やばい。達也助けてくれ。」

 

「俺は知らん自業自得だろ。それに若干だが俺も寒気を感じる」

 

深雪から向けられる冷気に怯えながら八幡は震えていた。

 

「ねぇ、司波って、もしかしてあの子が八幡がナンパしたって言う達也君の妹?」

 

深雪に怯える八幡は置いておき、エリカが達也にそう聞く。

ちなみにここにいるメンバーはお互いに名前で呼び合うことになった。

 

「ああ、そうだ。八幡がナンパした妹の深雪だ。先に言っておくが双子じゃないからな。」

 

「だからナンパなんてしてないからなっ!」

 

八幡が抗議する中、女子四人はそれぞれ深雪の美しさに見惚れていた。

 

「ひゃー、凄い美人ね」

 

「はい。八幡さんがナンパしたのも頷けます」

 

「むむむ・・ゆきのん、悔しいけど美人だね。」

 

「ええ、確かにそうね・・・」

 

エリカと美月は素直に称賛を、雪乃と結衣はどこか対抗する様な感想を漏らした。

それを聞いていた八幡は

 

「だからナンパはしてないからな?それにお前らだって十分美少女じゃねーか!」

 

深雪に対する怯えとナンパに対する抗議でテンションがおかしくなった八幡はいつもの癖でそんな事を口走った。

 

それを聞いた四人は・・・

 

「や、やーね八幡!いきなり何言ってるのよ!このスケコマシ!!!」

 

「あっ、あのっ、そのっ、ありがとうございます・・・ううう。」

 

「ヒッキー何言ってるし!でっでも、嬉しいかも・・・」

 

「女誑しヶy・・・女誑し葉君っ!貴方はいつから女性に対して軽々しくそんな事を言う人になったのかしら?」

 

四人はそう言うとそれぞれ嬉しいやら恥ずかしいやらで式が終わるまで黙ってしまった。

居心地の悪くなった八幡は達也に

 

「なぁ達也?」

 

「なんだ八幡?」

 

「もぉ帰ってもいいか?」

 

「帰ってもいいが、たぶん後から深雪がお前の家まで行くと思うぞ。」

 

「ですよねぇー」

 

こんなやり取りをする中、入学式は無事?に終了したのだった。

 

 

 

 

 

「さて、式も終わったみたいだし一度教室にでも顔を出してみるか。達也は深雪を待つんだろ?」

 

来賓や一科生の生徒に囲まれている深雪を見ながら八幡は達也にそう尋ねた。

 

「ああ、そのつもりだ。それまで俺も教室を見ておくかな。俺はE組だがみんな何組なんだ?」

 

「俺はA組だ」

 

「やった!私もE組だよ」

 

「私もE組です」

 

「私もE組だよー」

 

「私はA組ね」

 

達也の問いに八幡、エリカ、美月、結衣、雪乃の順にそう答える。

 

「上手い事分かれたものだな」

 

「ホントだな。じゃーそろそろ教室に行ってみるか」

 

そう言って移動しようとする八幡に達也は

 

「八幡また後でな。くれぐれも逃げようとは思うなよ?」

 

深雪のさっきの様子から、八幡がいないと自分に全ての矛先が向くと思った達也は八幡にそう釘をさす。

 

「ぐっ、わかってる。ちょっと教室に顔を出したらすぐそっちに行くさ」

 

「八幡君は私が監視しておくから安心して達也君」

 

雪乃が達也にそう伝えると六人はそれぞれの教室へ向かった。

 

 

 

 

 

八幡と雪乃が教室に入ると中には既に多くの生徒が見て取れた。

二人がそれぞれの席を確認して特にする事もないので教室を出ようとした所に雪乃に声を掛ける者がいた。

 

「雪乃!」

 

雪乃もその声を掛けてきた相手を確認すると返事を返す。

 

「雫!」

 

その雫と呼ばれた少女はもう一人の少女を連れて雪乃と八幡の元へとやって来た。

 

「久しぶりだね雪乃。一高に入ったんだね」

 

「ええ、お久しぶり。色々事情があってここに入る事にしたのよ」

 

八幡を見ながらそう言う雪乃に気が付いた雫は、何かピンときた様にこう言った。

 

「じゃあこの人が雪乃を捨てていきなり居なくなったっていう・・・」

 

「こらこら、捨ててないから!」

 

雫の爆弾発言に思わず八幡はツッコミを入れた。

 

「またこうして会えたからもういいのよ。」

 

「こらっ!お前もこれ以上紛らわしい事を言うな。それよりこの二人は雪乃の友達か?」

 

「ええ。彼女の名前は北山雫。雪ノ下家がお世話になってる北山家のご令嬢よ。そして隣に居るのが雫の親友の光井ほのか。」

 

「初めまして。北山雫。よろしく。」

 

「光井ほのかです。よろしくお願いします。」

 

「四葉八幡だ、よろしくな」

 

「「えっ?」」

 

雫とほのかが一瞬ひるんだと思ったがそれだけではなかった。

 

八幡が四葉と口に出した瞬間、教室中の視線が八幡に集まった。

 

「四葉ってあの四葉だよね?」

 

「あれが四葉の・・・」

 

「噂では聞いてたけど本当に一高に入学したんだ。」

 

その視線と声を聞いた八幡は

 

「(はぁ~、やっぱりこうなるのか。俺は静かに暮らしたいんだけどな)」

 

それを見ていた雪乃は八幡をフォローするように雫達にこういった。

 

「私も実は彼が四葉だとさっき知ったのよ。でも大丈夫。八幡君は私達と変わらない普通の男子高校生よ。ただ女誑しの様だから雫とほのかも気をつけてね!」

 

「うん、わかった気をつける」

 

「そこはわかんなくていいからな!女誑しじゃないからね?」

 

「冗談。さっきは嫌な思いさせてごめんなさい。これからよろしく。」

 

「私もすいませんでした!よろしくお願いします。」

 

「おう、こっちこそよろしくな」

 

雫の無表情に本当に冗談なのかと疑問を持ちつつも八幡も二人にそう挨拶を返した。

 

 

 

二人と別れ達也達の所へ八幡と雪乃は向かうことにした。

 

 

 

 




どーしてもハーレム寄りになってしまいます。
でもメインは深雪です。


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入学式3

八幡の四葉としての威厳がどんどんなくなっていく・・・そのうち取り戻せたらなと思います。
初期の頃の服部くんが大嫌いなんです。


雪乃と共に達也達と落ち合う予定になっていた先ほど入学式が行われていた講堂に向かうと、丁度深雪も来たところの様で、エリカ、美月、結衣と挨拶しているのが見えた。

しかし八幡がそれよりも気になったのが、深雪の後ろに居る生徒会の人間であろう面々だった。

 

その先頭に居るのは、先ほどの入学式でも代表挨拶をしていた生徒会長の七草真由美。

彼女は日本の魔法会ではトップに君臨する十師族「七草家」の長女であり八幡とも面識があった。十師族やその他のナンバーズでたまに催されるパーティーに、本来出席するはずの母親である真夜が面倒くさいという理由で代わりによく八幡が駆り出されていたのだ。

この親にして、この子有である。

そして八幡は真由美の事が苦手なのである。

 

「なっ、なぁ雪乃。俺はやっぱり先に帰る事にする。」

 

突然そんな事を言う八幡に雪乃は

 

「何を言っているのかしら!ほらっ、早く行くわよ!」

 

その腕をひっぱり達也達の元に連れて行く。

 

「みんなお待たせ。」

 

雪乃がそう言うと達也や深雪もこちらに気が付き、雪乃に引っ張られている八幡を見た。

それを見て深雪は額に青筋を立てながら笑顔で八幡に言う。

 

「八幡、女性と腕を組みながらやってくるなんて言いご身分ね?」

 

「いやっ、これは、ちっ、違うぞ。帰ろうとしたら雪乃に捕まっただけだ」

 

「帰ろうとした?つまり私から逃げようとしたって事かしら?」

 

「そっ、それも違う、とっ、とにかくすいませんでした!」

 

そんなやり取りをしていると達也が割って入る。

 

「深雪落ち着け。この子がさっき言っていた、結衣と同じく八幡が総武中学で同じ部活に所属していた雪乃だ。八幡が逃げないように監視していてくれたんだ。」

 

「そうでしたか。挨拶が遅れてしまいました。司波深雪です。よろしくお願いします。」

 

「雪ノ下雪乃です。こちらこそよろしくお願いします。」

 

その様子を見て八幡はホッとしていたのだが、真由美の存在を完全に忘れていた。

そんな八幡に真由美は後ろからいきなり抱き着いてきて、少し怒ったようにこう言った。

 

「はちく~~ん!なんでお姉さんの所には挨拶に来てくれないのかな?」

 

それを見た達也以外の周りの者たちは

 

「「「「「「なっ!?」」」」」

 

達也だけは冷静に

 

「八幡、お前会長と知り合いだったのか?」

 

「ああ、十師族の会合とかでな・・・それより早く離れてください七草会長っ!!!」

 

「七草会長だなんて。いつもの様にまーちゃんて呼んでもいーのよ?」

 

「いや、そんな呼び方した事ねーからな?」

 

思わず素でツッコム八幡だったが、これを見ていた周りの者たちは、呆気に取られる者、怒りに顔を歪ませる者それぞれだった。

特に真由美の後方に居た恐らく生徒会のメンバーであろう男子生徒は

 

「十師族・・・こいつが四葉の・・・会長に対してなんて羨ま・・・無礼な口を。」

 

などと言っていた。

 

そして深雪はというと・・・

 

「小町・・・八幡が一高の生徒会長と・・・そう・・ええ・・・わかったわ、ではまた後でね。」

 

小町に報告していた。

 

場がカオスになって来たと感じた達也は深雪にこう言う。

 

「深雪、生徒会の方々との話はいいのか?」

 

「その心配は要りませんよ」

 

達也の問いかけに答えたのは真由美だった。

 

「今日はご挨拶だけで十分ですし、他に用事があるのならそちらを優先してくださって構いませんから」

 

「会長っ!」

 

真由美の発言に驚いたような男子生徒は納得出来ないのか真由美に食い下がった。

 

「ですが会長、此方も重要な用件だったのでは!」

 

「予め約束してた訳ではありませんし、彼女の予定を優先するのは当然だと思いますよ」

 

「それは……」

 

「それでは深雪さん、また後日改めて。司波君も今度ゆっくりと話しましょうね。はち君もね」

 

そう言って去っていく真由美と、その真由美に付き従うように先ほどの男子生徒も歩を進めたが、少し歩いた後に此方を振り返り、達也と八幡をキッと睨みつけてきた。特に八幡に対しては親の仇でも見るかのような眼をむけていた。

それに気が付いた八幡は

 

「(はぁ~、どれだけ会長の事が好きなんですかね。)」

 

と、できるだけ静かに暮らしたい八幡はまた面倒ごとが増えたと溜息を吐くのだった。

 

「さぁ八幡。小町も話があるみたいだから早く帰るわよ!」

 

と深雪に言われ、さらに頭を悩ます八幡だった。

 

 

 

 

雪乃達とは駅で別れ、八幡、達也、深雪の三人は、小町と水波の待つ八幡の自宅へと帰ってきた。

 

八幡達が帰って来た事に気が付いた小町はトテトテとリビングの方から走ってきた。

その後ろから水波も早足でやって来る。

 

「達也さん、深雪さん、いらっしゃ~い!」

 

「いらっしゃいませ、達也様、深雪様。」

 

そう言って小町は深雪に抱き着く。

 

「ええ、小町も水波もお久しぶりね!」

 

「小町、水波、久しぶりだな。」

 

達也と深雪もそう返す。

 

それを見て自分だけ挨拶をされていない八幡は

 

「小町ちゃん?水波ちゃん?俺も居るんだけど?」

 

「さっ、二人とも早く上がってよ」

 

「八幡様も取り合えず早く中へ。」

 

小町には完全に無視され、水波もご立腹の様である。

 

ちなみに「八幡お兄ちゃん」は、破壊力があり過ぎるため家では封印されている。

 

リビングにやって来ると小町は早速本題に入った。

 

「さてゴミぃちゃん、何をしたのか洗いざらい吐いてもらうよ」

 

「いやいや、俺は何もしてないからね?」

 

「それを決めるのはゴミぃちゃんじゃなくて深雪さんだからね?」

 

「えーーー。」

 

八幡は物凄い理不尽を感じながらも小町に逆らえる訳もなく、今日あった事を一通り話した。

 

「そっか、雪乃さんと結衣さんに会えたんだね!」

 

「ああ、小町のおかげだ。ありがとな!」

 

「エリカさんて人の事と、美月さんて人がなんでお兄ちゃんの手を握っていたのかもわかりました。さすが小町のお兄ちゃんです。」

 

「そーだろそーだろ」

 

どーやら誤解は解けたようだと安心した八幡だったが

 

「しかーし、その生徒会長さんについては許せませんな。」

 

「そーよ八幡!抱き着かれてあんなにデレデレするなんて。」

 

ダメでした。

 

「いや、デレデレはしてないからな?あの人は会うといつもあーやって俺をからかってくるんだ。それに深雪も見てただろ?あの人が勝手に抱き着いてきただけだ。」

 

「八幡に隙があるからいけないのよ!」

 

「そーです、八幡様が悪いんです!」

 

水波も入ってきた。

 

「そお言われてもなぁ~。」

 

八幡がどう言い訳しようか頭を悩ませていると小町が

 

「お兄ちゃん、ちょっと想像してみてよ。」

 

「何を想像するんだ?」

 

「もしお兄ちゃんの目の前で、深雪さんに誰か男の人がいきなり抱き着いてたらどーお?」

 

「な、なん・・だ・・・と・・・・」

 

八幡は小町にそう言われ想像してみた

 

 深雪に男が抱き着く↓

 

  達也すぐ雲散霧消(ミスト・ディスバージョン)で消す→達也捕まる→深雪泣く ✕

 

  深雪相手を氷付けにして殺す→深雪捕まる 絶対 ✕

 

  深雪デレデレする→相手ろくでなし→深雪不幸になる ✕

 

(これじゃどー転んでも深雪が不幸になっちまう、俺がどーにかするしか・・・)

 

  俺が相手の男を抹殺→達也無事→深雪も泣かないし不幸にもならない 〇

 

八幡は斜め上な想像をして怒りでどーにかなりそうになっていた

 

「深雪を泣かせる奴は絶対許さねえーーー!!!!」

 

「「「「はっ?」」」」

 

そう叫んだかと思うとリビングがいきなり夜になる。

 

「ちょっ、ちょっとお兄ちゃん!これって真夜おばさんの流星群(ミーティア・ライン)!?」

 

「はっ、八幡様、落ち着いて下さい!」

 

「お兄様っ!!!」

 

小町は焦り、水波は防げないと分かっていても小町を守るため障壁を展開する。、

 

深雪だけは冷静に達也に助けを求める。

 

達也は即座に術式解散(グラム・ディスパージョン)を使いこれに対抗し打ち破った。

 

魔法を破られた事によって八幡はやっと我にかえる。

 

「あっ、あれ?俺は一体何を・・・」

 

そんな八幡に対し四人は

 

「今のは変な事言った小町も悪いけど、一体何がどーなったら流星群を使うことになるのさ?」

 

「八幡様・・・」

 

「八幡、いくら何でも叔母上の「夜」はやり過ぎだ。」

 

「八幡っ!何か言い訳はあるのかしら?お兄様がいなかったら、私たちに向けては使わないにしても、この家が穴だらけになっていたかもしれないのよ?」

 

完全に落ち着きを取り戻した八幡は正直に答える。

 

「いや・・深雪が泣いたり不幸になる姿を想像したら頭に血が上って、俺がなんとかしないとって・・すまん」

 

「「「「・・・・」」」」

 

しばしの沈黙の後

 

「ぷっ、あはははは。お兄ちゃん一体何を想像したのかは分からないけど、深雪さんの事大切にし過ぎでしょ。小町も妬けちゃうよ。それでこそお兄ちゃん。でもあそこまでするのは今回だけにしてよ!」

 

「水波も妬けてしまいます。ですがやっぱり八幡様はお優しいですね。」

 

「お前って奴は、想像だけでここまでするとは・・・。」

 

小町と水波は一応納得し、達也は呆れていた。

 

そして深雪はというと・・・

 

「八幡っ!」

 

「ひゃっ、ひゃいっ!」

 

「いくら何でもこれはやり過ぎよっ!」

 

「すっ、すまん。」

 

「でっ、でも・・・私の為にありがとう・・・」

 

「おっ、おう。」

 

どうやら嬉しかったようで、若干頬を赤らめそう言った。

 

「よしっ!そろそろご飯にしようよ!小町もーお腹ぺこぺこだよ」

 

「そうですね。すぐ準備致します」

 

 

 

こうして色々あった入学式初日は終わったのだった。




すいません後半は完全にやり過ぎましたm(._.)m自覚あります

感想待ってます。


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八幡はまた切れる

いいサブタイが思いつかない。


「ふぁ~あ、小町と水波め、自分たちが生徒会で朝早いからって何も俺まで一緒に家を出なくてもいーじゃねーか」

 

八幡はキャビネット(現代の移動手段=無人タクシーの様なもの)を降りると、一人学校へと歩きながら

 

(しかし昨日は色々あったな。今日は何事もなく終わればいいが。まぁ、昨日の今日で何か起こるわけもないか。取りあえず教室に入ったら基本ステルスヒッキーを発動して目立たないようにしよう!席もあいうえお順で窓側の1番後ろだしな。初めて四葉に生まれて良かったと思えたぜ!)

 

などとフラグを立てているのだった。

 

 

八幡が教室の中に入ると一部に人だかりができている事に直ぐに気が付いた。

その人だかりをよく見ると、どーやら深雪を囲むように男女問わず集まっているようだ。

 

深雪も大変だな。まぁ新入生総代であの容姿だからな。ん?てゆーか深雪は同じクラスなのか。そーかそーか。べっ、別に嬉しくなんてないんだからねっ!」

 

「おはよう、八幡君。何をブツブツ言っているのかしら?」

 

どーやら声に出ていたようだ。

 

「おっ、おう、おはよう雪乃。いや、あの人だかりがすげーなと思ってな。」

 

「本当ね。でも、優れている者に群がるのは人間の本能だから仕方ないのではないかしら?」

 

「群がるってお前な。でも確かにそんなもんかもな。俺は大人しく自分の席から見える外の風景でも確認してるわ!」

 

「貴方も大概ね。でもわかったわ。また後で。」

 

そう言って八幡と雪乃はそれぞれ自分の席に着いた。

 

八幡が本当に外の風景を確認していると

 

「八幡おはよう」

 

「ん?」

 

声のした方に振り向くと雫が立っていた。

 

「おはよう」

 

「おっ、おうおはよう。北山だったよな?」

(いきなり呼び捨てかよ。難易度高すぎるぜ。)

 

八幡がそんな事を考えていると

 

「雫でいい」

 

「え?」

 

「私も八幡って呼ぶから雫って呼んで」

 

「いや、それはアレがアレだから・・・妹の許可もいるし・・・」

 

しかし雫は無表情で八幡を見つめる

 

「・・・・・」

 

「( ^ω^)・・・」

 

「・・・・・」

 

「はぁ、わかったわかった。雫。これでいいか?」

 

「ん」

 

満足したのか雫は自分の席に戻って行った。

 

(何だったんだ一体・・・そーいえば昨日一緒に居た光井だったか?今日は一緒じゃないんだな。)

 

八幡がほのかを探すと深雪の取り巻きの中にその姿を発見した。

しかしそーゆー性格なのか、周りの圧力に負けて中々深雪に近づけない様だ。

 

「後で紹介してやるか」

 

見兼ねた八幡はそう思うのだった。

 

 

今日は授業初日と言うこともあり、新入生たちは各教室で自己紹介などのオリエンテーションを行った後、上級生の授業見学をする事になっていた。その際各自自分の好きな授業を見学していいのだが、大半のクラスメイト達は深雪のお近づきになりたいのが見え見えでその後を追うように付いて行くのが見えた。

 

そして八幡はというと

 

「よし、今日からここをベストプレイスにするか」

 

授業見学になど全く興味などなく、あまり人がやってこない様な場所を見つけサボっていた。

 

(はぁ~それにしてもさっきの自己紹介でもそうだが全員「四葉」に反応し過ぎだろ。先生まで余所余所しいのはかんべんだな。毎回あんな反応されるとスゲー疲れるんだがな。まぁ深雪のおかげで俺が余り目立ってなくて助かってるんだが。)

 

そんな事を考えながら午前中はここで寝て過ごすことにした。

 

 

そしてしばらく経つと

 

「・・幡・・ん」

 

「ん~~~」

 

「・・幡君」

 

「んあ~?」

 

「八幡くん!起きなさい!!!」

 

「はっ、はい!」

 

「やっぱりこんな所でサボっていたのね。」

 

「なんだ雪乃か。」

 

「なんだじゃないわよ。授業見学中全然見かけなかったから探しに来てみれば、こんな所で寝てるなんて!」

 

「おう。俺のベストプレイスだ!」

 

八幡はドヤ顔でそう言った

 

「そう言えば貴方には総武中の時もそんな場所があったわよね。」

 

「まーな。それでどうしたんだ?なんか用か?」

 

「もうお昼だから貴方を誘いに来たのよ。雫とほのかが貴方も誘ったら?っていうから。二人とも先に食堂へ行って待ってるわ。」

 

「もうそんな時間なのか!?わかった。じゃー待たせちゃ悪いから急いで行くか。」

 

「ええ、そうしましょう。」

 

そして二人は食堂へと向かった。

 

 

八幡と雪乃が食堂に着くと食堂の中は生徒達で溢れかえっていた。

 

「ありゃ~、スゲー混んでるな。座れるのかこれ。」

 

「貴方があんな所で寝ているからよ」

 

そんな事を言っているとどこからか争う声が聞こえてきた。

 

 

「見て分からないの?私達がまだ使ってるじゃないのっ!」

 

「二科生のくせに生意気な!この学校では実力が全てだ!ウィードごときがプルームの僕達に逆らうなっ!」

 

「なんですってっ!!!」

 

雪乃が言い争っている生徒達を確認すると

 

「あれはエリカね。もう一人は私達と同じクラスの森崎君だったかしら?」

 

八幡と雪乃に気が付いた様で雫とほのかが二人の所にやってきた。

 

「雪乃、八幡っ!」

 

「雫、一体何があったの?」

 

雪乃が雫に事情を聴く。

 

「私達がここで雪乃と八幡を待ってたら司波さんとあの取り巻きの人達が来て、あの席に座っている人達の中に司波さんのお兄さんが居たみたいなの。それで司波さんはお兄さん達と食事をしようと思ったみたいなんだけど、取り巻きの中に居たあの森崎って人が割り込んできて席を空けろって言いだしたの。」

 

その席を見ると確かにエリカの他に、美月、結衣、名前は分からないが体格のいい男子生徒、そして達也の姿があった。

八幡も達也の姿を確認していると達也も八幡に気が付いた様で目で合図を送る。

 

「(すまん八幡。深雪を頼む。)」

 

「(ああ、任せておけ。)」

 

八幡が深雪を見ると若干顔を歪ませ、必死で怒りを抑えているのがわかった。

 

八幡はマズイと思いまず雪乃、雫、ほのかに確認をとる。

 

「雪乃、雫、光井。」

 

「なにかしら?」

 

「なに?」

 

「なんですか?」

 

「今日は違う場所で飯を食う事になりそうだけど大丈夫か?」

 

三人は意味がよく分からなかったが答える。

 

「え、ええ。別に構わないけれど。」

 

「私も大丈夫。」

 

「私も大丈夫です。」

 

「よし、ちょっと待っててくれ。」

 

三人にそう言うと八幡は達也や深雪の居る席へと近づいて行く。

 

八幡が来るのを確認した達也は

 

「深雪、俺はもう行くよ。」

 

「えっ?あっ、はっ、はい・・・」

 

深雪にそう言い食堂を出て行く達也。それに続いて、まだ森崎に文句を言いたそうにしながらもエリカ達も付いて行く。

達也達が行ってしまいさらに顔を歪ませる深雪。

 

そんな深雪の状態にも気が付かずに森崎は

 

「さぁ司波さん、席が空きました。食事にしましょう」

 

それに対して深雪が怒りを爆発させ

 

「結構です!」

 

そう言おうとしたのだが、それに被せるように八幡が深雪を呼んだ。

 

「おいっ、深雪っ!」

 

「えっ?八幡?」

 

「昼は毎日俺と食べるって約束してたじゃねーか!!!」

 

「え?え?」

 

いきなり八幡が現われてそう言われ、何がなんだか分からない深雪。

 

しかし八幡はそれに構わず深雪の手を取り連れて行こうとする。

 

「行くぞ!俺のベストプレイスに連れて行ってやる!」

 

ドヤ顔でそう言った

 

その光景を始めは茫然と見ていた森崎だったが、やっと我に返ると当然納得できずに

 

「おっ、おい!待てっ!司波さんは今から僕達と食事をするんだ!」

 

「あ?」

 

そう言われた八幡の纏う空気が明らかに変わった。いや、食堂の空気が変わったと言うべきだろう。

 

八幡から発せられるプレッシャーに周りの者たちも気が付く。

 

「え?何これ?」

 

「震えが止まらない。」

 

「怖い・・・。」

 

もちろん森崎も

 

「ひっ、ひぃっ。」

 

腰を抜かしていた。

 

少し離れた所から見ていた雪乃達は

 

「八幡くん・・・」

 

「雪乃、八幡てあんなに凄かったの?あの八幡から漏れてるサイオンの量、普通じゃないよ。」

 

「私も実は八幡君の魔法師としての力は知らないのよ。そういえば・・達也君・・・深雪さんのお兄さんが言っていたわ。手を抜かなければ総代は八幡君だったって。」

 

「そうなんだ。四葉は伊達じゃないって事かな。」

 

「凄い・・・。」

 

雪乃と雫は驚き、ほのかは見惚れていた。

 

その一方でこの事態に一番焦っていたのは深雪だった。

 

「(まずいわ!また八幡が我を忘れそうになってる。)」

 

そう思う深雪の脳裏には昨日の八幡の家での光景が浮かんでいた。

 

「(今はお兄様も居ないし、私が八幡を止めないと)」

 

そして深雪は八幡を止めるために・・・

 

「八幡ダメよ!」

 

といいながら八幡の後ろから腰に手をまわす様に抱き着いた。

 




すいません中途半端かもです。

それにしても話が進まない・・・


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八幡はまた止めに入る

すいません今日も中途半端です。
切りの良いところまで書けない・・・


八幡は背中に衝撃を感じたので確認する

 

(ん?なんで深雪は俺に抱き着いてるんだ?)

 

状況を整理する

 

深雪が切れそうになる→俺が深雪を連れて行こうとする→森崎なんか言う→俺切れる→深雪俺に抱き着いてる←今ココ

 

(あ~、またやっちまったのか。昨日言われたばっかりなのにな)

 

八幡が冷静になりそんな事を考えていると深雪が

 

「八幡、ダメよ!冷静になって!!!お願いっ!!!!!」

 

メチャクチャ必死に止めていた

 

(なんか逆に今さら大丈夫だとか言いずらいんですけど。周りの奴らもなんか青い顔してるしな。それにしても深雪め、何ていい匂いしてやがる!あと柔らかいし。特に背中になんか当たってるんですけどっ!ハチマンニハシゲキガツヨスギデス!っと、そんな事より早くこの状況をどうにかしないとな・・・とりあえず流れに任せるか)

 

「はっ、はにゃせ深雪。」

 

思いっきり噛んだ

 

「え?」

 

聞き直す深雪

 

「んっんっ、離せ深雪っ!」キリッ

 

「八幡が冷静になるまで離さないわよ。」

 

「俺は冷静だ。」

 

「嘘よ!こんなにサイオンをまき散らしてるじゃない!」

 

(うわっ、本当だ!真面目に直ぐ切れる癖を直さないとだなこりゃ。でもこんな事考えられてるハチマンメチャクチャレイセイ)

「わかったから離せ」

 

そう言って八幡は溢れていたサイオンを抑える

 

「わかったわ。それじゃあ早くここを出ましょう。」

 

そう言って深雪が八幡から離れると八幡は

 

(べっ、別に全然残念だとか思ってねーし!)

 

めちゃくちゃ残念がってた

 

「森崎って言ったか?」

 

「そっ、そうだけど、なっなんだ??」

 

「お前がどれだけ優秀で二科生を下に見てるのかは知らないけどな、それに深雪を巻き込むなっ!」

 

「っ!?」

 

八幡は最後にもう一度威圧を込めて森崎にそう言うと、今度は本当に深雪の手を引き雪乃らと共に食堂を出た。

ここでの出来事により八幡は全く望んでいなかったのだが、入学二日目にして全校生徒に「四葉八幡」の名が知れ渡る。

 

 

五人は今食堂を出て廊下を歩いている

 

「全く八幡は!私を止めに入って自分が暴走するなんて!」

 

「うっ、すまなかった。」

 

また深雪に怒られていた。

 

「でもありがとう。八幡が来なかったら私も自分を抑える自信がなかったわ。」

 

「おっ、おう」

 

二人がそんな会話をしていると雪乃が

 

「そろそろいいかしら?雫とほのかを紹介したいのだけれど。」

 

「おう、そーだったな。深雪、お前も知ってると思うがこの二人は俺達のクラスメイトの」

 

八幡がそこまで言うと

 

「北山雫。雫でいい。私も深雪って呼んでいい?」

 

「光井ほのかです。私もほのかでいいです。」

 

「司波深雪です。雫にほのか、私の事も深雪で構わないわよ。」

 

「ん、よろしく深雪。」

 

「よかった。よろしくね深雪」

 

お互いに自己紹介を交わした。

 

特にほのかの深雪を見る目は輝いていた。

 

それに気が付いた八幡は

 

「丁度よかったな。光井は教室で深雪と話したそうにしてたけど、周りに人がたくさん居たせいでダメっぽかったから後で深雪を紹介しようと思ってたんだ。」

 

「見られてたんですね、恥ずかしい。ありがとうございます八幡さん。あっ、私もほのかでいいです。」

 

「おっ、おう。」

(あるぇ~?なんでみんな俺には確認なしで名前呼び?)

 

「雫とほのかは入試の試験会場で、明らかに自分達よりも上の魔法力を持つ深雪さんを見て驚いたそうよ?」

 

「うん、そう。私とほのかは今までお互いだけがライバルだと思ってた。でも深雪を見て同年代に初めて負けた気がして悔しかった。」

 

「私は悔しいよりビックリして憧れちゃったかな。それに私は入試の順位も5位で雫以外にも上が居るしね」

 

「ちなみに私は3位」

 

そこで雪乃が

 

「私は4位よ」

 

「「えっ?」」

 

雫とほのかが驚く

 

「雪乃がほのかより上だとは思わなかった」

 

「こんな身近に居るなんて」

 

「二人ともなんだか失礼ね。でもそーなると2位は・・・」

 

雪乃、雫、ほのかが同時に八幡を見る

 

「あー、まぁ一応俺だ。」

 

そこで深雪が

 

「手を抜かなければ私が2位だったわよね。」

 

「さっきの八幡を見れば納得。」

 

「八幡さん凄かったです!」

 

「貴方一体入試ではどれだけ手を抜いたのよ。」

 

「まぁその話はいーじゃねーか」

 

八幡は自分の力についてはあまり聞かれたくない事もあるのでそう言った。

 

深雪もそれを察して話題を変える。

 

「それで八幡、ベストプレイスとはどこの事なの?」

 

「あー、それはだな・・・」

 

さっきはあの場を何とかする為に特に考えないで言っただけだったので、八幡がなんて説明しようか悩んでいると雪乃が

 

「八幡君が授業見学をサボって寝ていた場所よ。」

 

「おっ、おいっ、雪乃。」

 

「呆れた。見かけないと思ったらサボっているなんて。」

 

「八幡、サボりは良くない。」

 

「八幡さんダメですよ。」

 

四人がそう言いジト目で八幡を見る

 

「全く興味ないからいいんだよ。それより時間もないし早く行こうぜ。」

 

「行くのはいいけど私達のご飯はどーするの?」

 

「あっ・・・そこまで考えてなかったわ・・・」

 

「はぁ、貴方らしいわね。」

 

深雪、八幡、雪乃がそう話していると雫が

 

「私とほのかはお弁当でサンドイッチ持って来てるから良かったら食べる?ほのかもいーよね?」

 

「もちろん!よかったら食べてください!」

 

「マジでか。じゃあお言葉に甘えて頂くかな。代わりに今度奢るからな。」

 

八幡がそう言うと雫は

 

「八幡それはデートのお誘い?」

 

そして他の三人も

 

「えー、八幡さんそれには私も入ってるんですか?」

 

「八幡どういう事かしら?小町に報告ね!」

 

「八幡君私の友人まで誑し込もうとするなんて・・・」

 

「だー!お前ら何でそーなる。ただお返しにご飯を奢るだけだろ!雫もワザとだろ?」

 

「うん、冗談。」

 

(雫さん?ホントに冗談ですよね?無表情過ぎてわかりずらい・・)

 

そして五人はベストプレイスで遅めの昼食を取った。

 

 

 

 

午後の授業も八幡はサボっていた。

 

(正直学校の授業程度じゃ俺には得る物がないんだよな。ここに来たのも深雪と達也のカモフラージュが主な目的だしな・・・それでも・・深雪に達也、そして雪乃と結衣。あいつらと学生生活を送れるのは悪くないがな)

 

 

 

八幡がいつの間にかまた寝てしまい、今度は雪乃が起こしに来ることもなく、起きた頃には結構な時間が過ぎていた。

(やっべー、っべー。もうこんな時間かよ!)

 

八幡が教室に戻るともうほとんどのクラスメイトが居なくなっていた。

 

深雪にも置いていかれた事に若干のショックを受けながら八幡も帰ることにした。

 

八幡が校門の近くまで行くとどっかで見たような光景が繰り広げられていた。

 

(なんとか崎君?お前はバカなのか?それに他にも一科の奴らがいるな・・おっ、雪乃達もいるな。とりあえずあいつらに事情を聴いてみるか。)

 

八幡がそう思っていると今回は美月が頑張っている様で

 

 

「いい加減にして下さい! 深雪さんはお兄さんと一緒に帰ると言ってるじゃないですか!

大体、貴方たちに深雪さんとお兄さんを引き裂く権利があるんですか!」

 

(引き裂く?美月さん?何を言ってるの?べっ別に達也に焼きもちとか妬くわけねーし!)

 

「一科生には一科生同士の大事な話があるんだ!ウィードごときが口を挟むな!」

 

(あの野郎俺がさっき言った事聞いてなかったのか?なんであそこまで同じ学校の生徒を見下せるんだよ。)

 

八幡が昼休みの食堂の時より頭にきていると、美月がまた何か言い、それに対して森崎が切れた様でCADを取り出そうとするのが分かった。そしてそれに反撃しようとエリカと食堂にも居た男子生徒も動いた。

さらにこのやり取りを一歩下がって見ていた雪乃、雫、ほのか。そのほのかが恐らくこの三人を止めようと魔法を使おうとしているのが見えた。それを見た瞬間八幡はすぐ行動を起こす。

 

 

 

 

 

 

 

 

雪乃side

 

雪乃と雫とほのかが帰ろうと校門の近くまでくると、また森崎を先頭に一科生とエリカ達が言い争っていた。

 

(どーやら達也君と帰ろうとしていた深雪さんをまた引き留めようとしているみたいね。もうあれはストーカーと言ってもいいのではないかしら?私が深雪さんなら完膚なきまでに罵倒を浴びせてあげるのだけれど。)

 

雪乃がそんな事を考えていると争いはエスカレートしていった。

 

(まずいわね。森崎君は完全に頭に血が上っているわ。これ以上は・・早く止めないと。)

 

雪乃がどうしようか考えている時だった。森崎がCADを取り出そうとし、それに対してエリカと男子生徒も動いた。そして雪乃の少し前に居たほのかが魔法で三人を止めようとするのが目に入った。

隣に居た雫もそれに気が付いた様でほのかを止めようと二人が叫ぶ。

 

「ほのかっ!魔法はダメっ!」

 

「ほのかっ!ダメよっ!!」

 

(ダメ、間に合わない)

 

雪乃がそう思った時いきなりほのかの横に八幡が現われた。そしてほのかの手を掴んだと思ったら次の瞬間ほのかが構築しようとしていた起動式が霧散した。

 

「八幡さん・・・?」

 

ほのかは何が起こったのかわからなくそう呟く。

 

そんなほのかに八幡は

 

「ほのか、安易に魔法は使うなよ?とりあえず俺に任せとけ!」

 

そう言った瞬間八幡はその場から消えた。

 

 

 

 

 

達也side

 

目の前の争いに達也は頭を悩ませていた。

 

すると深雪が

 

「お兄様・・すいません・・・」

 

「お前は何も悪くない。だから気にするなよ。」

 

「ええ、ですがこのままでは・・・」

 

(俺が止めに入ると森崎が余計にヒートアップしそうだしな。それにエリカにレオ、美月まで・・はぁ。)

 

達也が悩んでいるとどーやら美月の言葉に森崎が切れた様でCADを取り出そうとしていた。

そしてエリカとレオも動く。

 

(あの距離ならエリカの方が早いか。魔法は使わないだろうし大丈夫だろう)

 

達也が静観を決め込んだ時だった

 

森崎とエリカの間に八幡がいきなり現れ、右手の手刀で森崎のCADを叩き落とし左手でエリカの警棒を受け止めた。

 

いきなり目の前に現れた八幡に二人は呆気にとられる。

 

「なっ!よっ、四葉っ!?」

 

「えっ?はっ、八幡っ!?」

 

達也と深雪だけは何が起こったか理解していた

 

「お兄様、今のは亜夜子ちゃんの・・」

 

「ああ、擬似瞬間移動だな。」

 

黒羽亜夜子。四葉の分家、黒羽家の長女。彼女が得意とする魔法が擬似瞬間移動である。

 

「あのような魔法を堂々と使っても良かったのでしょうか?」

 

「八幡が無茶をする時はいつも小町と深雪の為だからな。周りが止めたってアイツは聞かないさ。」

 

「八幡・・・」

 

深雪は八幡が自分を助けてくれる事を嬉しく思うと同時に、無茶をさせてしまった事に申し訳なく思った。

 

達也はそれに気が付き

 

「大丈夫だ。八幡は叔母上にもある程度自由にしていいと言われている様だしな。アイツもバカじゃない。本当に知られてはならない事は自分でも分かっているさ。」

 




次回で森崎編?最終回です。

マズい、結衣が空気になってる・・・


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八幡は最後にやらかす

タイトル通りです。
どうぞ~!


「エリカ、気持ちは分かるがここは引け!」

 

「で、でも・・・」

 

食い下がるエリカに八幡は

 

「言う事を聞くならマッ缶を奢ってやる!」

 

「マッ缶?何よそれ?」

 

「千葉のソウルドリンクだ!千葉エリカだけにな!」

 

八幡はドヤ顔でそう言った

 

「全然面白くないわよ!マッ缶はいいからケーキを奢りなさいよ!」

 

エリカは毒気を抜かれた様にそう言うと深雪達の所に戻って行った。

 

(雫はともかくエリカにまで奢るハメに)

 

八幡は内心溜息を吐きつつ今度は森崎に

 

「おいっ、何とか崎っ!」

 

「森崎だっ!なっ、なんだ?」

 

「なんだじゃねーだろ・・・俺が食堂で言った事聞いてなかったのか?」

 

「そっ、それは・・」

 

「なんでまたこんな事になってんだよ!」

 

「うっ、うるさいっ!」

 

森崎はそう言うと八幡に叩き落とされたCADを拾い、今度は八幡に向けて魔法を発動しようとした。

 

しかし八幡は先ほどほのかにも使った対抗魔法「術式解体=グラムデモリッション」を使い発動前に起動式を吹き飛ばす。

 

それを受け森崎は呆然とする。

 

「なっ!?」

 

「口で言ってもわからないのか・・・」

 

八幡が森崎に向けて手をかざし何かしようとしたその時

 

「止めなさい! 自衛目的以外での魔法攻撃は、校則違反以前に犯罪ですよ!」

 

「そこまでだ!風紀委員長の渡辺摩利だ。君たちは1-Aと1-Eの生徒だな。事情を聞くのでついてきなさい」

 

真由美と風紀委員長の摩利が現われそう言った。

 

それに対し八幡はジト目で二人に言う

 

「てゆーか二人ともちょっと前から見てましたよね?出てくるタイミング伺ってませんでした?」

 

「なっ!?はち君気が付いてたの?」

 

「ええ、二人が動かないから俺が止めに入ったんですよ?」

 

(よし、これでこの場は乗り切ろう)

 

「まっ、真由美!お前が様子を見ようなんて言うからだぞ!」

 

「なによ!摩利だってはち君に興味深々だったじゃない!」

 

喧嘩しだした二人に八幡は

 

「あの~、そろそろ帰ってもいいですか?」

 

それに対し摩利が

 

「ダメだ!魔法を使った事には変わりないからな!」

 

「魔法を使ったのは俺だけですよね?それも自衛目的ですし。」

 

「そこの女子も攻撃性の魔法を発動した様に見えたが?」

 

摩利がほのかを指してそう言うと、達也が割って入る。

 

「あれはただの閃光魔法です。威力も抑えてありましたし、失明の危険性もありませんでした。周りを落ち着かせる為に注目を集めようとしたのでしょう。それに発動前に八幡が抑えましたし。」

 

「ほう。君は起動式を読み取れるのか?」

 

「ええまぁ。実技は苦手ですが、分析は得意ですので」

 

そこに真由美が割って入る

 

「もう良いじゃない摩利!少しだけど静観してた私達も悪いんだし!」

 

「それはお前のせいだろ!」

 

「おほんっ!とにかく!今後はこの様な事がないようにお願いします!」

 

「会長がこう言ってるので今回は不問とする!以後気を付ける様に!」

 

そう言って二人は去って言った。

 

「八幡!」

 

深雪が八幡を呼ぶ

 

「おう!」

 

「ごめんなさい。私のせいで・・・」

 

「謝らなくていい!お前は何もしてないだろ!はっきり言って悪いのはコイツだろ?」

 

そう言って森崎を見ると森崎は

 

「司波さんはウィードなんかじゃなく僕達と居るべきなんだ!」

 

「まだ言うのかお前は・・・」

 

「大体なんで同じ一科のお前が・・一体司波さんはお前のなんなんだよ!」

 

いきなり森崎にそんな事を言われ八幡は

 

(深雪は俺の何?ん~?従兄妹?これは言えねーしな。知り合い?友人?恋び・・ゲフン、ゲフン。これはまだ違うしな!「まだ」ってなんだよ!なんか周りの視線が凄い事になってるんですけど!)

 

皆八幡がなんて答えるのか興味津々な様でさっきまで争ってた空気が一変していた。

もちろん達也達二科生と雪乃、雫、ほのかの三人もである。

そして深雪は

 

「・・・・・」ジー

 

一番気になっている様で八幡を凝視している

 

(ちょっと皆さん見過ぎですから!特に深雪!瞬き位しようぜ!目乾いちゃうよ?しかしこれは何て答えるのが正解なんだ?深雪は達也の妹・・達也は俺の従兄弟・・小町と深雪も従姉妹・・小町と水波は俺の天使・・達也と小町も従兄妹・・ん?深雪も俺の妹みたいなものか?)

 

色々考えすぎて頭がパンクしそうな八幡は言った

 

「深雪は俺の天使だっ!!!」

 

それを聞いた周りの反応は

 

「「「「「「「「はっ?」」」」」」」」

 

深雪だけが

 

「えっ?天使って・・八幡それはどうゆう意味よ・・・」///

 

まんざらでも無さそうにして居た。

 

自分の言った重大発言に気が付いた八幡は擬似瞬間移動を使ってその場から消えた。

そしてそのまま家に帰った八幡は自分の部屋で布団にくるまり、小町と水波がいくら呼んでも出て来なかった。

翌日の朝、深雪から事情を聞いていた小町は朝食の間終始ニヤニヤし、水波は少し拗ねていた。




すいませんでした!話が進まないので無理矢理終わらせました!
モブ崎君は放置されました!


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生徒会と風紀委員

そろそろ毎日更新がきつくなってきました。


「深雪は俺の天使だ!」発言の翌日、八幡は学校最寄り駅へ向かう移動中に頭を悩ませていた。

 

「はぁ~、深雪にどんな顔で会えばいいんだよ。他の奴らも絶対何か言ってくるだろーな。特にあのシスコンお兄様怒ってないよな?ハチマンマダシニタクナイ!」

 

そんな事を考えていると直ぐ駅に着いた。

八幡が駅の出口を出ると狙ったかの様なタイミングで達也と深雪以外のいつものメンバーが居た。

エリカが八幡に気が付き寄ってくる。

 

「八幡おはよー!なんで昨日はいきなり消えたのよ!」

 

ニヤニヤしながらそう言ってくる

 

(くそっ、殴りたいっ!この笑顔!)

 

「それはアレだ!録画してたプリキュアを見忘れてた事を急に思い出してな!」

 

「嘘つくんじゃないわよ!そんなの見てるわけないでしょ!」

 

「そんなのとはなんだ!プリキュアにあやまれ!」

 

そこに他のメンバーもやって来る

 

「ヒッキーまだプリキュア見てるんだね。」

 

「えっ?ちょっと結衣!どーゆー事?」

 

雪乃も入ってくる

 

「エリカさん、八幡君は中学の頃からプリキュアの熱狂的なファンよ!」

 

それを聞きエリカは残念なものを見るような目で八幡を見る。

 

「なんだよ!プリキュアが使う魔法は色々参考になるんだぞ!」

 

「えっ?本当にっ!?」

 

「嘘だ!」

 

「結局嘘なんじゃない!」

 

「それより皆いつのまに仲良くなったんだ?」

 

雫とほのかは達也以外の二科生とは面識がないはずだったのでそう聞く

 

「昨日八幡が居なくなった後皆でケーキを食べに行ったの。」

 

「一高の近くにあって、とってもおいしいんですよ!今度八幡さんも行きましょう!」

 

「おっおう!今度な!」

 

そこに昨日エリカと一緒に森崎と揉めていた男子生徒も入ってくる

 

「おい、エリカ!俺の事も紹介してくれよ!」

 

「そう言えばあんたは八幡とは初対面だったわね!八幡、こいつはレオ、私達のクラスメイトよ!」

 

「西条レオンハルトだ!レオって呼んでくれ!八幡!」

 

「おっ、おう!よろしくなレオ!」

(やっぱり名前呼びか!全員リア充かよ!)

 

「それにしても昨日は感動したぜ!あんなに堂々と「俺の天使!」なんて絶対俺には言えないぜ」

 

(俺も二度と言えないけどな!!!)

 

「いや・・あれは間違えただけで・・その、忘れてくれると助かる。」

 

「八幡?誰と間違えたのかしら?」

 

八幡が振り返ると達也と深雪(凍りの微笑)が居た

 

「いや、小町と水波の事だからな?深雪にも恥ずかしい思いさせてすまなかったな。」

 

「私は別に構わないのに・・」ボソッ

 

収拾がつかなくなりそうなので達也が促しメンバー揃って学校へと向かった。

 

 

 

 

 

 

~昼休み~

 

 

あの後八幡達が学校へ向かっている途中で真由美が現われ、昼休みに生徒会室で一緒に食事を取ろうと誘われた。

 

八幡、達也、深雪の三人は生徒会室へと廊下を歩いている。

 

「なんで俺まで呼ばれたんだ?深雪は生徒会へのお誘いの話だろうから分かるが・・・」

 

「おまえは昨日あれだけ派手にやらかしたんだから仕方がないだろうな。」

 

「だからあれは小町と水波の・・・」

 

「天使の件じゃない。昼の食堂や、お前が使った魔法の事だ。別に俺は天使発言についてはなんとも思ってない。お前が深雪を天使と呼ぶのなら止めは・・」

 

「だーーー!分かったから天使天使言うな!!!」

 

深雪もそれを聞き顔を赤くしながら

 

「大体八幡!食堂で言っていたじゃない!昼は毎日わちゃしと・・・」

 

噛んだ

 

「わかったわかった!おとなしく付いて行くよ。」

 

「おほんっ!分かればいいのよ!」

 

そして生徒会室に着いた

 

中に入ると真由美と摩利以外に知らない女生徒も二人居た

真由美にその二人、市原鈴音(リンちゃん)と中条あずさ(あーちゃん)を紹介されたのだが八幡はあずさを見て

 

(なんかこの人を見てるとお兄ちゃんスキルがオートで発動しそうになるな)

 

「会長!私にも立場と言うものがありますから、後輩の前であーちゃんはやめてください!」

 

「そうですよねあーちゃん先輩!会長!あーちゃん先輩をイジメるなら俺が相手になります!」

 

発動した

 

「はち君?あーちゃんと知り合いなの?」

 

「いえ、初対面です!なんか見てると妹を見ている様で、お兄ちゃんとしては守らなければと!」

 

「もう既に立場がないじゃないですか!!!」

 

そんな事もありつつ昼食を済ませた後、真由美が三人を呼んだ本題を話す

 

「まず初めに、我々生徒会は司波深雪さん、あなたに生徒会に入ってもらいたいと思っています。如何でしょうか?」

 

「はい。謹んでお受け致します。」

 

「よかった、ありがとうございます!それと次に・・」

 

真由美がそう言いながら摩利に続きを促す

 

「風紀委員の生徒会選任枠に司波達也君、君が任命された!」

 

それを聞いた深雪は嬉しそうに

 

「お兄様!」

 

しかし達也はこれに異を唱える

 

「ちょっと待って下さい!二科生の俺が一科生の生徒を取り締まれるとは思えないんですが?」

 

「なに、力業なら私が居る!それに君の起動式を読み取れると言う眼は凄く役に立つ!」

 

「しかし・・・」

 

達也がさらに反論しようとしたのだが、一連の話を聞いていた八幡が割って入る。

 

「達也なら大丈夫だろ?術式解体(グラムデモリッション)だって使えるんだしな。」

 

「「なっ!」」

 

これには達也だけじゃなく深雪も驚く

 

術式解体(グラムデモリッション)?昨日八幡が使っていたアレか?」

 

「そうよ摩利。無系統魔法の最強の対抗魔法ね。達也君も使えるの?」

 

「それは・・・」

 

達也が何て答えようか迷っていると、時間も時間なのでこの話は放課後にまたと言う事になった。

 

生徒会室を出て八幡が

 

(摩利さんまで案の定いきなり呼び捨てになってたな?でも俺も摩利さんとか言ってるし!ヤダ、ハチマンッタラリアジュウ!)

 

とか考えていると達也が真剣な目で

 

「八幡!どーゆーつもりだ?」

 

「そんな怖い顔するなよ。」

 

「納得のいく理由があるんだろうな?」

 

深雪は心配そうに二人を見る

 

「俺はな、昨日の森崎じゃないが差別が心底許せないんだよ!ましてや達也、お前が見下されてるなんて見過ごせない。そんなの深雪も望んじゃいないしな。だから少しくらいお前の力を周りに分からせてやろうと思ってな。」

 

「八幡・・じゃあお兄様の為に・・・」

 

「なるほどな。一応納得はした。お前が暴走して今年の慶春会見たいな事を起こされたらたまったもんじゃないしな。」

 

「なっ!?あの話はもういいだろ!」

 

「ふふふ、お兄様?八幡が無茶をするのは私と小町の為だけじゃなくお兄様もでしたね?」

 

深雪は嬉しそうに二人の手を引き教室へと向かった。

 

 

 

 

~放課後~

 

 

先ほどの件からずっと機嫌が良い深雪は、生徒会室に行く為八幡の手を引き教室から出ようとしていた。

それをクラスの男子達が羨ましそうに見ている。

 

「おっおい深雪!恥ずかしいから手を放して貰えると有り難いんだが!」

 

「ダメよ!放したら逃げるじゃない!」

 

「そもそも昼も思ったが俺が行く意味あるのか?」

 

「私が八幡と行きたいのよ!ダメ?」

 

八幡は深雪にそんな事を言われて断れるはずもなく

 

「うっ!ダメじゃないです!」

 

「じゃあ行きましょうか!」

 

そこに雫とほのかが来る

 

「八幡と深雪、手を繋いでどこかに行くの?」

 

「二人ともどこかに行くの?」

 

そう言う雫はいつも通り無表情なのだがどこか不機嫌そうに、ほのかは羨ましそうに見えるのは気のせいだろう。

 

「あー、ちょっとまた生徒会室に呼ばれていてな。」

 

「私が生徒会で、お兄様が風紀委員に入りそうなのよ!」

 

「そーなんだ。達也さんは風紀委員に。」

 

「あれ?じゃあ八幡さんは?」

 

「俺か?俺はどっちにも入らないぞ!例え誘われても絶対断る!」

 

この発言に深雪はこめかみを抑え、雫は無表情、ほのかは苦笑いをした。

 

「お兄様を待たせてはいけないし、とりあえずもう行くわね」

 

「「うん、行ってらっしゃい。」」

 

二人に見送られて八幡と深雪は途中で達也と合流し生徒会室へと向かった。

 

余談だが、達也と合流しても深雪が八幡の手を離すことはなく、八幡と達也の間に微妙な空気が流れていた。

 




あーちゃんが可愛い( ゚Д゚)

次回、また八幡が暴走します!


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奉仕部

本当にサブタイが全然浮かびません。


八幡、達也、深雪の三人が生徒会室の前に着くと、達也がノックをし中に声をかける。

 

「失礼します。司波です。」

 

中から真由美が返事をする。

 

「どうぞー!入って下さい!」

 

三人が中に入ると昼には居なかった男子生徒が居る事に直ぐに気が付いた。

 

(あれは確か入学式の日に会長の後ろに居た会長大好き星人!嫌な予感しかしないんですけど・・・)

 

実際服部(その男子生徒)は八幡に気が付くと直ぐに睨んできた。

 

(おいおい、そんな露骨に俺に敵意をむけちゃ会長の事が大好きなのがバレバレですよ?)

 

八幡が自分の事を棚に上げてそんな事を考えていると摩利が

 

「さて達也君!風紀委員の件考えてくれたか?」

 

「はい!どこまでできるかはわかりませんが謹んでお受けします。」

 

「そうか!それはよかった!では達也君は風紀委員本部へ案内するから付いて来てくれ。」

 

そこで服部が会話に割り込む

 

「待ってください、渡辺委員長」

 

「何だ? 服部刑部少丞範蔵副会長」

 

「ブーーーッ!!!」

 

八幡が服部のフルネームを聞いて吹いた

 

「八幡っ!」

 

深雪がその行為にさすがに八幡を咎めると八幡が

 

「あっすいません、続けて下さい服部刑部少丞範蔵副会長殿」

 

「ブーーーッ!!!」

 

今度は真由美が吹いたので摩利が呆れて

 

「真由美・・・お前まで何をやっているんだ・・。」

 

真由美はツボに入ったようで必死に笑いを堪えながら

 

「ごっ、ごめんなさい・・はち君のバカ・・。」

 

そして服部は八幡をさっきよりも睨んでいたのだが、気を取り直して摩利に言う

 

「フルネームは止めてください!それと自分はそこの二科生(ウィード)の風紀委員入りを反対します」

 

それを聞いた瞬間八幡の雰囲気が変わった事に達也と深雪だけが気付いた。

 

「禁止用語を私の前で使うとは良い度胸だ」

 

服部と摩利が言い争う中、深雪は八幡がまた暴走してはまずいと思い自分が服部を説得しようとする。

 

深雪が達也は風紀委員としてふさわしいと説明するが服部は

 

「司波さん、身内贔屓に目を曇らせてはいけません。魔法師は常に冷静を心掛けるものです」

 

深雪にまでそんな事を言う服部に八幡はついに切れた

 

「おい真由美!生徒会は差別を助長するような奴でも入れるのか?」

 

「えっ?はち君・・?」

 

実は八幡は真由美にお願いされ、普段周囲に人が居ない時は真由美の事を呼び捨てで呼んでいる。

しかし今それが出たと言う事は、八幡がそんな事は気にしていられないほど頭にきていると言う事だった。

 

真由美も八幡の状態に気が付き

 

「はち君落ち着いて!はんぞー君も差別を助長しているわけではないの・・・だから・・」

 

真由美がなんとか八幡を落ち着かせ様とする中、顔を真っ赤にして服部が割り込んでくる

 

「おい貴様!会長に対して何て無礼な口の利き方だ!四葉だからっていい気になるなよ!」

 

「会長会長うるさいんだよ!それに四葉なんて今は関係ない!ただ俺が言いたい事はそんなに一科生は偉いのかって事だ!」

 

そんなやり取りを見ていた達也はこれ以上はまずいと思い

 

「服部先輩、俺と模擬戦をしませんか?」

 

「何だと……思い上がるなよ、補欠の分際で!」

 

それを八幡が聞いた瞬間生徒会室に嵐が吹き荒れた。

 

服部、真由美、摩利、そして後ろで仕事をしていた鈴音とあずさもこの事態に狼狽える。

 

「こっこれはっ!?」

 

「はち君の魔法っ!?」

 

「落ち着け!八幡っ!」

 

「こっこの力は一体!」

 

「きゃーーー!」

 

達也が八幡を止める前に深雪が先に動いた。

そして今回も抱きしめるように後ろから八幡の腰に手を回すと

 

「八幡。ダメよ。さすがにこれはやり過ぎだわ。」

 

「やり過ぎなのはこの男だろ。深雪も聞いていただろ?」

 

「ええ、確かに聞いていたわ。でもこれ以上は八幡が退学になってしまうわ!私もお兄様もそんな事望んでないわ!だからお願い八幡。落ち着いて。」

 

そう深雪が言ったのを聞いたと同時に、八幡は深雪が泣いている事に気が付き急速に頭が冷えて行った。

 

「深雪・・・。」

 

(またやっちまったな。もう二度と深雪や小町を泣かせる様な事はしないってあの時誓ったのにな。)

 

「もう大丈夫だ深雪。達也もすまなかったな。」

 

「ああ。後は俺に任せておけ。」

 

「会長と摩利さんもすいませんでした。俺はいない方がいいと思うのでこれで失礼しますね。」

 

そう言って生徒会室を後にしようとする八幡は自身の左胸のエンブレムを掴みながら最後に服部に言う。

 

「服部副会長。」

 

「なっなんだ。」

 

「このエンブレムが一科と二科を差別するものでしかないんなら俺はこんな物要りません。」

 

そう言ってエンブレムを無理矢理剥がすと床に叩きつけた。

 

「こんな物に大した意味はない事を達也に教えて貰うといい。」

 

そして八幡は今度は本当に生徒会室を後にした。

 

その後場所を移動して行われた模擬戦で達也が服部を瞬殺、服部は達也の力を認め深雪に謝罪し和解した。

 

 

 

一方その頃八幡は帰宅する為一人校門を出た所で雪乃と結衣に会った。

 

二人は八幡の様子がおかしい事に直ぐに気が付いた。

 

「八幡君なにかあったの?」

 

「ヒッキー大丈夫?」

 

「あん?なんでもねーよ。俺はいつも通りだぞ。」

 

「それは嘘ね。貴方酷い顔してるわよ。」

 

「・・・・・」

 

「ヒッキー私達には言えない事?」

 

「無理に聞こうとは思わないのだけれど・・・。」

 

結衣と雪乃が悲しそうにそう言う。結衣は以前八幡が急に居なくなった事もあり、また何かあれば八幡は居なくなるんじゃないかと思っていた。

それを見た八幡は

 

(深雪と小町だけじゃなかったな。こいつらにももうこんな顔させたらダメだよな。)

 

「まー、あれだ。その・・ちょっと話聞いてくれるか?」

 

そう言われた二人は満面の笑みで

 

「「うん(ええ)もちろん!」」

 

そう言った。

 

 

三人は今朝エリカが言っていた昨日皆でケーキを食べたと言う店「アイネブリーゼ」に移動した。

そこで八幡は雪乃と結衣の二人にさっき生徒会室であった出来事と、詳しくは話せないが以前にも深雪と小町を泣かせてしまった事を話した。

 

「なるほどね。それは深雪さんが正しいわね。」

 

「うん。みゆきんを泣かせる様な事しちゃダメだよヒッキー。」

 

「え?みゆきん?」

 

「うん!ゆきのんみたいで可愛いでしょ?」

 

「・・・・・」

 

「ヒッキーなんでそこで黙るし!」

 

雪乃も「みゆきん」については微妙なようでそれを無視して続ける。

 

「八幡君、貴方は中学の頃から自分の事は二の次で周りの事ばかりだったわよね?それで私達奉仕部も一度おかしくなったわ。あの時は私達も貴方の考えを理解してあげられなかった。でも今は違う。もちろん四葉家の事とか話せない事があるのは理解しているわ。でも力になれる事があるならどんな事でも協力する。私達はまた貴方と一緒に居る為にこの学校に入学したのだから。そうよね結衣さん?」

 

「うんもちろんだよ。ヒッキー、だからまた無茶して私達の前から居なくなったりしないでね?」

 

八幡は二人の素直な気持ちを聞き少し照れた様にソッポを向きながら

 

「ああ。その、俺もお前らと居るのは悪くないからな。だからこれからは暴走しない様にもっと気をつけるよ。」

 

「ヒッキーがデレた!」

 

「デレたわね。」

 

「デレてねーよ!」

 

「「捻デレだ(ね)」」

 

「とっ、とにかく明日深雪に謝らねーとな。また怒られるな~。」

 

「大丈夫よ。深雪さんは貴方が達也君と深雪さんの為に怒ったって分かってるのだから。」

 

「そうだよ!みゆきんは分かってくれてるって!」

 

「だといーがな。でも二人ともありがとな。」

 

深雪の事は不安に思いつつも八幡は二人に感謝するのだった。

 

 

 

八幡が二人と別れ自宅に帰り玄関に入ると、見慣れない二組の靴が有り来客がある事に直ぐ気が付いた。

 

(達也と深雪だな。まさか家まで来るとはな。心配かけちまったな。)

 

八幡の帰宅に気が付いた水波が出迎えにやって来る。

 

「お帰りなさいませ八幡様。」

 

達也と深雪に事情を聞いたのか八幡を心配そうに見つめていた。

 

「水波にも心配かけたみたいだな。俺は大丈夫だ。」

 

リビングに行くと小町、深雪も心配そうに八幡を見る。

 

「お兄ちゃん大丈夫?」

 

「八幡・・・」

 

「大丈夫だ。そもそも俺が暴走しちまっただけだしな。達也と深雪にはまた迷惑かけちまったな。」

 

そして八幡は生徒会室を出て行った後の出来事を聞いた。

 

「そうか。副会長を模擬戦で瞬殺か。さすがは達也だな。深雪にも謝罪があったみたいだしもう大丈夫そうだな。」

 

「ああ。これで俺が負けたらお前が副会長に何をするのか分からなかったしな。」

 

「何にもしねーよ。」

 

「お兄ちゃん?どの口が言っているのかな?」

 

「そうよ八幡!もう信用できないわ。」

 

小町と深雪にそう言われ八幡はバツが悪そうに

 

「うっ、すいませんでした。今後は本当に気を付けます。」

 

「そう言えば会長はお前も生徒会に入って貰いたかったみたいだぞ。」

 

「そーなのか?でもな・・」

 

「大丈夫よ八幡。会長も八幡と服部副会長を一緒に居させる勇気はないみたいだから諦めていたわ。」

 

「まっ、それもそーだよな。」

 

ここで四人の会話を一歩下がって聞いていた水波が爆弾を落とす。

 

「八幡お兄ちゃん、あんまり心配かけないで下さいね?」

 

上目使いでそんな事を言う水波を初めて見た深雪が

 

「八幡?これは一体どういう事なの?言わせているの?八幡にはそんな趣味があったの?」

 

「ちっ、違うぞ!これは敬語は必要ないからって言ったら水波が自分から言い出したんだ。」

 

「じゃあなんでそんなに顔がニヤケているのよ。」

 

「うっ、まぁお兄ちゃんとしては嬉しくないって言ったら嘘になるかな・・?」

 

それを聞いた深雪はブツブツ呟きだした。

 

「そう・・じゃあ私も呼んでみようかしら・・いや・・でも私にはお兄様が居るし・・」

 

そして達也は溜息を、小町はニヤニヤし、水波は八幡の言葉に嬉しそうにしていた。

 




服部君がちょっとアンチ気味ですがここまで酷いのは今回だけです。

みゆきんはないですよね。知ってます。


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クラブ活動勧誘期間

深雪が生徒会、達也が風紀委員に入った翌日から二人は昼食を生徒会室で取るようになった。八幡も一緒にと誘われたのだが、八幡はこれを丁重に断った。なぜかと言うとあずさが先日の一件以来八幡の顔を見ると怯えてしまうのだ。

 

そして今は昼休み、八幡は一人ベストプレイスでゴロゴロしている。

 

「はぁ~、あーちゃん先輩には完全に嫌われたかもな。でもお兄ちゃんとしてはこのままではダメだよな。今度千葉に行った時にマッ缶でもお土産に買ってこようかな。」

 

などと、どーやってあずさに許して貰おうか考えていると不意に名前を呼ばれた。

 

「八幡こんな所でなにしてるの?」

 

「ん?雫か。どーしたんだ?」

 

「たまたま通りかかっただけ。」

 

「そうか。ここは俺のベストプレイスだ。って、この前教えたか。」

 

(こんな所をたまたま通りかかるわけないんだがな。)

 

「うん。」

 

「俺専用の一高のオアシスみたいな物だな。」

 

「良く分かんないけどそーなんだ。」

 

と言っていつもの無表情でジーっとこちらを見ている。

 

「私も隣に寝転がっていい?」

 

「え?ダメだけど?」

 

「なんで?」

 

(なんでって考えたら分かるだろ。雫も普通に美少女だしな。いや別に顔は関係ないんだが。てゆーか俺の周りって美少女しか居ないのは気のせいか?)

 

八幡が答えに迷っていると雫は勝手に横に来る。

 

「八幡。」

 

「ひゃいっ!」

(無防備過ぎるだろ。あと近いし。あとやっぱりいい匂いするし。)

 

「ずっと気になってた事がある。そのせいで最近夜も眠れない。だから寝不足。」

 

雫が真剣な口調でそう聞いてくる。

 

「気になる事?なんだ?」

 

(まさか達也と深雪が四葉だと疑われてるのか?)

 

「八幡の・・・」

 

(ゴクリ・・)

 

「胸のエンブレムなんでないの?」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」ジー

 

「え?」

 

「だからエンブレムなんでないの?」

 

「あー、エンブレムな!これはあれだ!色々あって自分で取っちまったんだよ!」

(真剣に聞いてくるから何かと思ったらエンブレムかよ。てゆーか雫はいっつもこんな感じだったな。)

 

「ふ~ん。深雪の為?」

 

「まぁ、半分はそーかもな。」

 

「そーなんだ。」

 

(あれ?若干不機嫌?)

 

「スッキリしたから寝る」

 

そう言うと雫は直ぐ眠ってしまった。

 

「おいおい、本当に無防備過ぎるだろ。まあなんかする度胸なんか俺にはないけどな。・・・・俺も寝るか。」

 

そして八幡も眠りに落ちた。

 

「キーンコーンカーンコーン」

 

「ん?もう昼休み終わりか?」

 

八幡がチャイムの音で目を覚ますと直ぐに脇腹に違和感を感じた。

 

「ん?なんだ?」

 

確認すると雫が八幡の腕を枕にしてしがみ付き、気持ち良さそうに寝息を立てていた。

 

(どーしてこーなった!?とりあえず起こさないとな。でもスゲー気持ち良さそうに寝てやがるな。)

 

雫が寝不足と言っていたのは本当らしく、熟睡していた。

 

「なんか小町みたいだな。俺が四葉に戻る前の晩もこーやって小町と一緒に寝たな。」

 

八幡は雫に小町を重ね、ニヤニヤしながら頬をつついたり頭を撫でたりしだした。

はたから見たら唯の変態である。

そしてこういう時は得てしてお約束の事態が発生する。

 

「八幡?何をやっているの?」

 

「八幡君・・あなた一体雫に何を・・・。」

 

「しっ雫、はっ八幡さん何してるんですか!」

 

八幡が声の聞こえた方に恐る恐る目を向けると、深雪、雪乃、ほのかが鬼の形相で立っていた。

 

「ちっ違うんだ!やましい事は何もしてない!おい雪乃っ、何で写真を撮ろうとしてるんだよ!」

 

「何が違うのかしら八幡君?貴方が雫に悪戯している所をこの目で見たわよ。」

 

「八幡っ!とにかく早く起き上がりなさい!」

 

この騒ぎに雫もやっと目を覚ます。

 

「んんん・・・ふあ~あぁ~。」

 

雫は八幡と三人の顔を交互に見て、やっぱり無表情でサムズアップしながら言った。

 

「八幡の抱き心地は最高。」

 

この後二人ともめっちゃ怒られた。

 

 

 

事情を説明してなんとか許してもらえ、五人は今廊下を歩いていた。

 

「まったく。八幡も雫も午後の授業が始まっても戻って来ないから、心配して探しに行ってみれば。」

 

「すまなかった。まさか寝過ごしてたとはな。」

 

「雫も気を付けないとダメだよ?それにいくら八幡さんとは言え、あっあんなにくっついて一緒に寝るなんて。」

 

「八幡だから大丈夫。でもごめんなさい。」

 

「一応さっきの写真は保存しておくわね。」

 

そんな事を話していると周りがヤケに騒がしい事に気が付く。

 

「なんだ?なんか騒がしくないか?」

 

「今日からクラブ活動勧誘期間だからよ。お兄様も風紀委員だから忙しくなるそうよ。」

 

「なんで忙しくなるんだ?」

 

「各クラブの部員の取り合いで毎年イザコザが絶えないみたいですよ。」

 

「勧誘期間中はCADの携帯も認められているのも要因だと思うのだけれど。」

 

「ふ~ん。まっ、俺には関係ねーな。」

 

「八幡はクラブには入らないの?深雪は生徒会があるから無理そうだけど。」

 

「そうね。お兄様も風紀委員の仕事があるし、元々入る気がないと言っていたわ。」

 

「俺も入る気はねーな。雪乃はどーするんだ?」

 

「私はこの後結衣さんと色々見てからどーするか決めるつもりよ。」

 

「そーか。まぁイザコザに巻き込まれないように気を付けれよ。」

 

そして深雪は生徒会、雫はほのかと、雪乃は結衣とクラブを見て回る為五人は別れた。

 

 

 

八幡が帰宅しようと昇降口までいくとエリカに声を掛けられた。

 

「八幡もう帰るの?」

 

「おう。天使が二人待ってるからな。」

 

「何よそれ。暇ならクラブ見て回るのにちょっと付き合ってよ。」

 

「俺は興味ないからパスだ。他の奴を誘え。」

 

「美月は美術部でレオは山岳部にもう決めてるみたいだし、結衣は雪乃と見て回るって言ってたのよ。」

 

「でも俺はクラブに入る気はないんだが・・・。」

 

するとエリカは今にも泣きそうな顔で言う。

 

「そっか・・じゃあ一人で寂しく回るね。無理言ってごめん。」

 

そういって行こうとするが。

 

(そんな顔されちゃほっとけないだろーが。)

 

「おい待てエリカ。少しなら付き合ってやるよ。」

 

するとエリカは計ったかのように

 

「よし、じゃー早く行くわよ!」

 

「ちょっと待て!お前今のは演技か?」

 

「あったり前じゃない。それにしても八幡。アンタがそんなんじゃ深雪も苦労するわね。」

 

「くそ、やられた。深雪が何だって?」

 

「何でもないわよ。それより早く行くわよ。」

 

そう言うエリカはとても嬉しそうだった。

 

 

二人が外に出てみると周りは予想以上の喧騒だった。

そしてそれに巻き込まれている新入生の大半が一科生の様だ。

 

(成績の優秀な生徒を入れたいってのは魔法科高校のクラブならしょうがないよな。雫達が無事だといいが。)

 

八幡がそんな事を考えていると横に居たエリカが居ない事に気が付いた。

来た道を振り返って見てみると大勢の勧誘に捕まっているエリカを発見した。

そしてどうやら勧誘しているクラブの大半が非魔法系のクラブのようだ。

 

(エリカも見た目は抜群にいいからな。大方その外見だけで入れようとしてるんだろうな。)

 

自分の友人がそういう目で見られている事に若干イラ立っていると

 

「ちょっといい加減にして!どこ触ってるのよ!」

 

見るとどさくさに紛れてセクハラまがいの行為をしている者がいた。

これを見た八幡はさすがに放っておけずに止めに入る。

 

「すいません。俺の連れなんでその辺にしてもらえませんか?」

 

しかしよほど必死なのか

 

「うるさい。引っ込んでろ。」

 

「この子はうちが貰うぞ。」

 

(仕方ねーな。)

 

「なっ、なんだこれ。」

 

「きゃーーーー。」

 

エリカを囲んでいた者達の体が急に重くなる。その衝撃でエリカを掴んでいた部員達の手がはずれる。

その瞬間エリカの体が浮き上がり、そのまま八幡の元へと飛ばされお姫様抱っこの形でキャッチされる。

 

(この魔法は少しやり過ぎたな。)

 

八幡は取り敢えず急いでその場を離れた。

 




魔法についての詳しい説明はできないと思います。
実は魔法について確認しようと思い、改めて少し原作を読み返しましたが難しくて頭痛くなりました(;^ω^)
批判的な意見も出ると思いますが、今作においてはやはり理論が破綻している魔法を出してしまいそうなので予め謝罪しておきます。すいません。



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クラブ活動勧誘期間2

まだここか・・・


エリカを救出した八幡は、ある程度離れた場所まで来るとエリカを地面に降した。

 

「ちょっと八幡、何て事すんのよ。」

 

エリカを見ると顔を真っ赤にしていた。

 

「すまなかった。緊急事態だったからちょっと強引に魔法を使っちまった。」

 

「そっちじゃないわよ。・・・お姫様抱っこなんて初めてされたわよ・・。」ボソボソ

 

八幡が謝っている理由とエリカが怒っている理由は食い違っていた。

 

「その・・なんだ。非常に言いずらいんだが・・・。」

 

「なによ?まだ何かあるの?」

 

「さっきの騒ぎで胸元が大変な事になってるんだが・・。」

 

八幡は目を逸らしながらエリカにそう言う。

実はさきほど掴まれたり引っ張られたりしていたせいで、エリカの制服はネクタイも緩みその胸元が大きく開いてしまっていた。そのせいで少しではあるが下着も見えてしまっている。

 

「きゃー!」

 

エリカは自分の状態にやっと気が付き後ろを向いて急いで制服を直す。

そして振り返りジト目で八幡に言う。

 

「見たわよね?」

 

「・・・ああ。見えてしまったな。白の・・。」

 

「あーあ-!うるさい!それ以上言ったら深雪に言うわよ!」

 

「うっ、それだけは勘弁してくれ。すまなかった。」

 

「まぁ助けてくれたし今回はケーキで勘弁してあげる。これでケーキ二個よ。」

 

「わかったよ。それにしても意外だったな。」

 

「何がよ?」

 

「エリカもやっぱり女の子なんだな。さっきの驚いてる時とか、今恥ずかしがってた時の姿が可愛かったぞ。」

 

「な、な、なななな何言ってるのよ。あ、あんたのそれ絶対わざとでしょ?可愛いってなによ・・」

 

エリカはまた顔を真っ赤にしていたが今度はどこか嬉しそうだった。

 

 

 

エリカが落ち着いてから二人がクラブの見学を再開すると、また知り合いが強引な勧誘を受けている場に遭遇した。

 

「ちょ、ちょっと離して下さい。」

 

「強引過ぎる。」

 

「いい加減にして貰えるかしら?」

 

「ほののんを離すし!」

 

ほのか、雫、雪乃、結衣の四人だった。

 

それを見た八幡はエリカに

 

「ほののん?」

 

エリカは微妙な顔で

 

「私はえりりんみたいよ」

 

「・・・そうか。」

 

二人が揃って何ともいえない気持ちになっていると、騒ぎを聞きつけたのかその場に風紀委員長の摩利がやって来た。

 

「おいっ、お前ら!強引な勧誘は禁止だと・・・って、何でアンタらがいるんだ。」

 

摩利にそう言われたほのか達を勧誘していた二人の女子は

 

「ちっ、摩利か。」

 

「久しぶりだな摩利。」

 

どうやらその後の三人の会話を聞いていると、その二人は今四人が勧誘を受けているバイアスロン部のOGの様で、摩利とも知り合いの様だ。

 

「とりあえず逃げるぞ。」

 

「そうね。この子も連れていきましょう」

 

「おい、待て!」

 

そう言って二人は摩利の制止も無視してほのかを抱えて逃げようとする。

 

さすがに見過ごせないと思った八幡は今度もほのかを助けようとするが

 

「ちょっと八幡。一応聞くけどまさかほのかまでお姫様抱っこなんてしないわよね?」

 

図星だった八幡は

 

「あっ、あたりみぇーだりょーが。」

 

思い切り噛んでエリカにジト目で見られながも八幡はほのかを助けるため魔法を発動する。

 

するとほのかを含めた三人の体が空中にふわふわ浮き出した。

 

逃げようとしていた所に魔法を受けた二人は驚く。

 

「なっ、なんだよこれ!」

 

「摩利の魔法か?」

 

摩利も身に覚えがないので辺りを見回すと、八幡が三人に向けて手をかざしている事に気が付いた。

 

「八幡・・これは君の魔法か。いやそれより、この前もそうだったが君はCADを使わずに魔法を発動できるのか?」

 

それを聞いたエリカや、八幡に気が付いた雫、雪乃、結衣も興味があるようで

 

「そう言えば八幡。さっき私を助けてくれた時もCADを持っていなかったわよね?」

 

「そうなの八幡?」

 

雪乃と結衣はどこか空気を読んでいるのか八幡に直接聞く事はしないが興味深々の様だ。

 

(まぁいずれバレる事だししょうがないな。)

 

「ええ、そうですよ。俺はCADを必要としません。」

 

「何だと。そんな事が・・・」

 

「皆勘違いしがちですが、CADとは魔法師を補助する道具であってそれがなければ魔法を発動できないと言うわけではありませんよね?」

 

「それはそうかもしれないが・・・CADを持たない魔法師など聞いたこともないぞ。」

 

次に雫が

 

「八幡はCADがあっても無くても魔法の発動速度は変わらないの?」

 

「そうだな、むしろ操作する分遅くなるかもな。」

 

五人が信じられないという顔で八幡を見ていると

 

「あの~八幡さん?そろそろ降ろして頂いても良いですか?」

 

「そーだそーだ!」

 

「もう逃げないから早く降ろしてくれ。」

 

魔法で浮かされていた三人がそう言った。

 

八幡は三人の元まで行ってから魔法の発動を停止した。

すると急に浮力がなくなった二人は尻もちをつき、ほのかだけはやっぱり八幡がお姫様抱っこで受け止めたが、今度は直ぐに降ろした。

 

「お姫様抱っこ・・・初めて・・・」

 

「イタタタタタ~。」

 

「イッターーーイ。」

 

ほのかはブツブツ言い、他の二人はお尻を撫でる。

 

「まだ八幡には聞きたい事もあるがそれは後回しだな。二人とも付いて来てもらうぞ。」

 

「う~、わかったよ。」

 

「酷い目にあった。」

 

そう言って摩利は二人を連れこの場から去って行った。

 

「さて、まだ聞きたい事もあるかもしれないが今日はこの辺で勘弁してくれないか?」

 

そう言われた雫達も何かを感じとったのか

 

「うん、わかった。」

 

「そうね。あなたがそう言うのならそうする他ないわね。」

 

「とにかくヒッキーが凄いのはわかったから私は満足だよ!」

 

「お姫様抱っこ・・・お姫様抱っこ・・・。」

 

ほのかはまだ言っていた。

 

「ちょっと八幡。結局ほのかにもしたじゃないのよ。」

 

「あの二人は別に良いがほのかを落とすわけには行かないだろ?」

 

「うっ、それもそーね。まぁ今回は許してあげるわ。」

 

「それよりお前ら四人はなんで一緒に居たんだ?」

 

「私がほのかとバイアスロン部に行こうと思ったら途中で雪乃と結衣にあったの。」

 

「私と結衣さんもバイアスロン部を見てみようと思って向かっていたのよ。」

 

「そしたらさっきの二人が現われてこっちの話も聞かずに引っ張って行こうとした。」

 

「なるほどな。四人とも元々バイアスロン部に行くつもりだったのか。結局あの二人がよけいな事をしてただけなんだな。」

 

「うん。そういう事。」

 

その後四人はバイアスロン部へ、八幡はエリカが見たいと言うので第二小体育館(通称闘技場)へと行くことにした。

 

二人が闘技場に着くと中ではちょっとした問題が発生していた。

エリカの話では剣道部の壬生紗耶香という女子と剣術部の桐原武明という男子がなにやら言い争ったあとに勝負を始める所だった。

勝負は紗耶香が勝ったと思われたが、桐原が何かを言った後にいきなり魔法を発動した。

 

(あれは高周波ブレードか)

 

「ちょっと、危ない!」

 

八幡が桐原の魔法を分析していると、紗耶香に向って高周波ブレードで切りかかる桐原を見てエリカがそう叫ぶ。

 

「大丈夫だエリカ。」

 

「えっ?大丈夫って一体・・・。」

 

エリカが八幡の言葉に疑問を感じていると急に酔ったような気持ち悪さを感じた。

それは周りに居た観客も同じだった様だ。

気持ち悪さは直ぐに治り、エリカが次に見たのは桐原を床に組み伏せている達也の姿だった。

 

「えっ?達也君?」

 

「達也は風紀委員だからな。見回りでたまたまここに居たんだろう。」

 

様子を見ていると二人の試合を見ていた剣術部の生徒十数名が、桐原だけが罰せられる事に納得できずに達也に襲い掛かろうとしていた。

 

「ちょっと、助けたほうが良くない?あの人数はヤバいんじゃないの?」

 

「達也ならあの程度の人数大丈夫だぞ。」

 

エリカが八幡の言葉に半信半疑でいると、確かに八幡の言った通り達也は相手に掠らせもしないで攻撃を避けていた。そして一人、また一人とその場に倒れていく。

 

「うひゃー、ホントに相手になってないわね。達也君凄すぎ。」

 

「達也に体術だけで勝てる奴は魔法科高校には居ないだろうな。」

 

「八幡でも勝てないの?」

 

「体術だけじゃ無理だな。」

 

「ふ~ん。体術『だけ』じゃね?」

 

八幡はエリカとそんな事を話しながら、いつの間にか隅に移動していた紗耶香と、その紗耶香と話す一人の男子生徒を鋭い目で見ていた。




今さらですが基本八幡視点の原作短縮でいきます。

深雪の出番が少ない・・・


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クラブ活動勧誘期間3

達也は先ほど闘技場で起きた事件の報告をする為部活連本部へ向かっていた。

何故か摩利に「八幡も連れて来てくれ」と言われたので二人は一緒に歩いている。

 

「何で俺まで・・・」

 

「呼び出される心当たりはないのか?」

 

「たぶんさっき摩利さんの前で魔法を使ったからだろうな。」

 

「なるほどな。大方CADを使わない事に驚いたと言うところか。」

 

「たぶんそーだな。さっき一応説明はしたんだがな・・・。」

 

そして部活連本部にはすぐに着いた。

 

「失礼します。司波と四葉です。」

 

「入れ。」

 

中からは野太い男の声で返事があった。

 

二人が中に入ると三人の人物が長机に並んでこちら向きに腰を下ろしていた。

生徒会長の真由美、風紀委員長の摩利、そして三人目は部活連会頭の十文字克人。

克人は十師族でもある十文字家の次期当主で八幡とは面識があった。

 

「お久しぶりです十文字さん」

 

「ああ、久しぶりだな四葉」

 

八幡と克人が挨拶を終えると達也が報告にはいった。

 

「・・・・・以上が先ほど第二小体育館で起こった出来事です」

 

報告は直ぐに終わり真由美が労いの言葉をかける。

 

「ご苦労様達也君」

 

「それにしても十数人相手に無傷何てさすがは九重八雲の弟子といったところか。」

 

九重八雲とは達也がほぼ毎朝稽古をしている達也の師匠である。

 

そして次に摩利が八幡を呼んだ理由を切り出そうとするが

 

「さて八幡、君を呼んだ理由だが・・・」

 

「俺がCADなしで魔法を使った事についてですか?」

 

「そ、そうだ。」

 

「先ほども説明した通りですが。」

 

「だ、だが普通に考えたら不可能だっ「摩利落ち着いて!」うっ、すまない。」

 

興奮仕掛けた摩利を真由美が止める。

 

「ごめんなさいねはち君。別にはち君を咎めるとかじゃないのよ。唯そんな事をできる人がいるなんて初めて知ったから、正直私も摩利も興味深々なのよね。」

 

「はぁ・・しかしそう言われても説明出来ることはないんですがね・・」

 

そこで克人が口を開く

 

「もういいだろう」

 

「そうね。本当に聞ける事はなさそうだし」

 

「そうだな。すまなかった八幡」

 

「いえ、それでは失礼します。」

 

「ちょっと待て四葉」

 

八幡と達也が部活連本部を出ようとした時克人が八幡を呼び止めた。

そして真剣な顔で言う

 

「以前お前がくれたあの甘い飲み物だが・・」

 

「マッ缶ですか?」

 

「そうそれだっ!」

 

克人のテンションが若干上がった。

それを見た達也、真由美、摩利は呆気にとられる。

 

「「「えっ?」」」

 

「また貰えないだろうか?」

 

「もちろんOKですよ。今度買ってきます」

 

「おーそうか、悪いな。」

 

「いえ、マッ缶を飲んで頂けるなら嬉しい限りです。ではこれで」

 

そして二人は部屋を出た。

 

「八幡お前十文字先輩とは親しい間柄なのか?」

 

「いや?別に?顔見知りなだけだな」

 

「そっそうなのか」

(どう見てもそうは見えなかったが)

 

八幡はさっき摩利が言いかけた言葉を思い出した。

 

「それにしても・・普通に考えたら・・・か。・・俺は確かに普通じゃないからな・・・」

 

苦笑いをしながらそんな事を呟く八幡に達也が

 

「大丈夫だ。俺も普通じゃないからな」

 

「いや、それなんの慰めにもなってないからな」

 

「ちょっとしたジョークだ」

 

「笑えないジョークだなおい!」

 

 

 

深雪を迎えに行く為生徒会室へ向かってる途中で二人を呼ぶ声がした。

 

「お兄様、八幡」

 

「八幡と達也君お疲れ~」

 

「よう」

 

「お疲れ様です」

 

そちらを見るとバイアスロン部に行った以外のメンバーが居た。

 

「よう、皆待っててくれたのか?」

 

「ええ、八幡に色々聞く為にね!」

 

なぜか深雪はご機嫌斜めだった。

 

深雪の後ろにいるエリカを見ると胸の前で手を合わせて謝っている。

美月とレオは苦笑いしていた。

 

(エリカめ!しゃべりやがったな!)

 

「八幡今日は随分お楽しみだった様ね。」

 

「いや、違うんだ。あれは助けるために仕方なく・・・」

 

「仕方なくお姫様抱っこ?」

 

「うっ、すいませんでした。」

 

素直に謝ることにした。

 

「ふふ、冗談よ。エリカを助ける為だったんでしょう?それなら怒れないわよ。」

 

「そっ、そうなんだ。エリカとほのかを助ける為に仕方なく・・」

 

「ほのか?私はエリカの事しか知らないのだけど。ほのかにもしたのね・・ふーん・・・」

 

(ヤバい、余計な事いっちまったな)

 

そこで達也が助け舟を出す。

 

「深雪、その辺で勘弁してやれ。お詫びとして帰りに八幡が奢ってくれるみたいだからな」

 

「お兄様がそう言うのでしたら・・・」

 

すると他の三人も

 

「やったー!八幡の奢りだ」

 

「何か悪いな俺まで」

 

「えーと、私もいいんですか?すいません」

 

「おい達也、俺は奢るなんて一言も・・それになんで全員なんだよ」

 

「深雪に凍らされるのとどっちがいいんだ?」

 

「よし皆!好きな物を食わせてやるぞ」

 

八幡は即答した

 

 

 

店に着くとエリカが闘技場での話を出してきた。

 

「そう言えば達也君さっきは凄かったわね」

 

「俺も噂で聞いたぜ。相手は殺傷ランクBの魔法を使ってきたんだろ?大丈夫だったのか?」

 

「高周波ブレードは触らなければ問題ないからな。真剣を相手にしているのと大差ない」

 

「それって真剣相手なら楽勝だって聞こえるんだけど・・・」

 

「私にもそう聞こえます」

 

「いや、実はだな・・・」

 

そこから達也は闘技場でエリカが気持ち悪くなった原因でもある達也が偶然発見した、無系統魔法のキャスト・ジャミングを応用した特定魔法のジャミングについての説明をした。

それを聞きエリカが驚く。

 

「新しい魔法を編み出すなんて凄すぎるでしょ」

 

「まぁ、ジャミングを使わなくてもお兄様とまともに戦えるのは八幡くらいなのだけどね。」

 

深雪が自慢げにそう言う。

 

八幡の力を森崎との一件でしか見たことのないレオと美月は

 

「八幡ってやっぱり強いのか?」

 

「そう言えば八幡さんはあの時も見たこともない魔法を使ってましたしね。」

 

エリカも闘技場での八幡の言葉を思い出す

 

「魔法を使えば達也君並に強いって事よね?」

 

それらに対して深雪が

 

「ごめんなさい言い間違えたわ。魔法込みなら八幡とまともに戦えるのがお兄様くらいね。」

 

それを聞いた三人は

 

「それって達也君より強いって事よね?」

 

「マジかよ八幡」

 

「八幡さん」

 

エリカとレオは驚き、美月は八幡に尊敬の眼差しを向ける。

 

「達也と本気で戦った事がないからわからんが、一番強いのは深雪だぞ。なぁ達也?」

 

「ああ。確かにそうだな。」

 

それを聞いた三人は一斉に深雪を見る。

 

「「「えっ?」」」

 

「ちょっと何を言っているのよ八幡!お兄様まで!」

 

「本当の事だ。俺と達也は絶対深雪には攻撃できないからな。」

 

「あ~、そういう事ね。確かに深雪が最強ね」

 

「さすが総代様ってところか」

 

「深雪さん」

 

レオとエリカは納得し、美月は今度は深雪に尊敬の眼差しを向ける。

 

「もう皆まで」

 

「それよりそろそろ何か食べないか?」

 

こうして六人は八幡の奢りで夕食をとった。しばらく頬を膨らましていた深雪もデザートのケーキが出てきた時にはその機嫌も直っていた。



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不穏な影と八幡の実力

もうすぐ入学編も終わりそうです。


「おい達也、ちょっといいか」

 

「八幡か、どうしたんだ?」

 

達也が風紀委員として構内を見回っている所に八幡が声をかける。

 

「お前最近他の生徒から攻撃を受けたりしてるのか?」

 

「なぜそれを・・ああ、雫達か」」

 

勧誘期間は一週間続く為、達也は今日も風紀委員として問題を発生させた生徒が居ればその取り締まりを行っていた。しかしどうもここ最近偶然を装った魔法攻撃を受けるなど、明らかな妨害行為を受けている。しかし達也にしてみれば対して気にする事でもないので放って置いていたのだが、たまたま今回は妨害を受けていた所を知り合いに見られてしまった様だ。

 

「雫とほのかそれに一緒に居た明智英美って子からさっき聞いた」

 

「どうもこの間闘技場で桐原先輩を取り締まった事を良く思ってない生徒が居るみたいだからな。それで?まさか俺の心配をしているわけじゃないよな?」

 

「それはないな。」

 

「それはそれで酷い話だな。深雪に言うか・・」

 

「達也大丈夫か?俺が護衛してもいいぞ。」

 

守護者(ガーディアン)である俺を護衛か。おまえはどれだけ深雪が怖いんだ」

 

「うっ、それよりもだな。ブランシュって知ってるか?」

 

「反魔法国際政治団体のか?」

 

「さすがだな。どうもそいつらが一高の生徒を使って何か起こしそうなんでな。」

 

「確か奴らが掲げているのは魔法による差別の撤廃だったか?」

 

「ああ。それがらみで近いうちに何か起こるかも知れないからな」

 

「八幡、お前どこでそんな情報を・・」

 

「四葉真夜」

 

「なるほど・・納得した。一応警戒しておく。」

 

「ああ。話はそれだけだ。じゃーな」

 

そう言って八幡はこの場を去ろうとしたがもう一度達也に振り返り

 

「俺はお前が心配だからな!だからさっきの事は深雪には言うなよ」

 

「わかった(本当にどれだけ深雪が怖いんだお前は)」

 

 

 

 

 

次の日の放課後八幡は結衣と雪乃の二人を連れ学内にあるカフェに来ていた。

どうやらエリカ達にだけ夕食を奢った事が納得できないらしく、半ば強引に連れて行けと言われた為である。

 

「なぁ雪乃、お嬢様のお前は別に奢って貰わなくてもいいんじゃないのか?」

 

「わかってないわね八幡君。こう言う事はお金の問題じゃないのよ」

 

「そうだしヒッキー。それに最近一緒に居れる時間もあんまりないし丁度よかったんだよ。」

 

「いや・・結衣。ケーキを三個も頼んでる奴が言っても説得力ないからな?」

 

そう言われた結衣は目を逸らす。

 

「まぁいい。お前らも部活が本格的に始まったら忙しいだろうしな」

 

三人がそんな事を話して居ると意外な人物がカフェに入ってきた。

 

「ちょっとちょっとヒッキー!あれ達也君だよね?」

 

「本当ね。あれは確かに達也君ね。一緒に居る女生徒は誰かしら?」

 

(あれはこの前闘技場で桐原先輩と勝負していた・・やっぱり達也に接触して来たか)

 

「ヒッキー聞いてる?」

 

「八幡君?」

 

「あっああ、悪い。あれは二年の壬生先輩だな。お前らもこの前の闘技場での件は知ってるだろ?」

 

「達也君が二年生の男子生徒を叩きのめして後から襲ってきた十数人の生徒も返り討ちにした話よね?」

 

「知ってる知ってる。凄いよね」

 

「大体合ってるな。その叩きのめした先輩と勝負をしてたのがあそこに居る壬生先輩だ。大方達也を剣道部に勧誘でもしてるんじゃないのか?まぁジロジロ見るのも良くないから早く食べちゃおうぜ」

 

「それもそうね」

 

「うん。そうしよう」

 

本当は別の意図があると八幡は疑っていたのだが、雪乃と結衣を巻き込むつもりはないのでこの話はここで終わりにした。

 

 

 

 

勧誘期間も終わり、達也はとりあえずは攻撃を受けるような事もなくなり平穏な毎日を過ごしていた。

そして今は実技の授業中で、達也達二科生は課題に取り組んでいた。

 

「1000ms。達也さん、クリアです!」

 

「やれやれ、やっとクリアか。しかもギリギリだな。」

 

「クリアはクリアです。それに二回目なら十分早いですよ」

 

「美月は一回で終わらせただろ?」

 

「そ、そうですけど。それにしても達也さん、本当に実技が苦手なんですね」

 

「ああ、前から言っていたよな?それよりエリカ達は大丈夫か?」

 

 ちなみにこの課題は五〇〇ms以内が優秀な魔法師とされ、一科生でもそこに到達できないものが半数近くを占める。

 

美月がエリカ達を見ると向こうもこちらを見ていた。

 

「ねぇ達也君、ちょっと手伝ってくれない?」

 

「悪い達也、少し手伝ってくれ!」

 

「達也君、助けて~」

 

エリカ、レオ、結衣の三人は達也に課題のコツを聞くとなんとかクリアする事ができた。

そして丁度そのタイミングで、おそらく課題クリアが授業時間内に終わらないだろうと踏んで、達也に皆の昼ご飯の買い物を頼まれていた一科生組がやって来た。

 

「お兄様、皆、お疲れ様です。」

 

このことを聞かされていなかったエリカが

 

「あれ?深雪?って、八幡も雫もほのかも雪乃もいるじゃない」

 

「お兄様に皆のご飯を頼まれていたのよ」

 

そう言って持ってきた物を出す深雪

 

「ありがて~、もう腹ペコだったんだ」

 

「みゆきんアリガトウー」

 

「え、ええ。どういたしまして。それよりやっぱりみゆきんなのね・・・」

 

肩を落とす深雪を見てエリカも頷いていた。

 

深雪達が来た事で興味が出たのか美月が切り出す。

 

「そういえば一科も同じ課題をやっているんですよね?」

 

「ええ、そうよ。」

 

「もしよければお手本を見せてもらえないかなって・・・。」

 

それを聞いた深雪が達也にどうしたらいいか目線で問う。

 

「良いんじゃないか?」

 

「わかりました。お兄様がそう言うのであれば。」

 

そして深雪が同じ課題をやると美月が結果を見て

 

「ウソ・・・235msです」

 

雫、ほのか、雪乃は

 

「深雪の処理速度は人間の限界に迫っている」

 

「やっぱり凄いよね」

 

「何度見ても信じられないわ」

 

二科生組も達也以外は驚いていたのだが

 

「そう言えば八幡はどうなの?」

 

エリカがそう言うと皆八幡を見たのだが

 

「(-_-)zzz」

 

寝てた。

 

実は八幡は例のベストプレイスで昼寝をしていたのだが深雪達に無理矢理連れて来られたのだ。

 

それを見た深雪は。

 

「八幡だらしないわよ!起きなさい!それに課題でも手を抜いていたわよね?」

 

「ひゃっひゃい」

 

「八幡は幾つだったの?」

 

「500msよ、エリカ」

 

「えっ?それで手を抜いてるの?」

 

「手なんて抜いてないぞ。雫とほのかと雪乃だって同じくらいだったしな。」

 

話を聞いていた達也が言う。

 

「八幡、深雪はお前の格好いい所を見たいんだろう。それにここに居るメンバーなら問題ないだろう。」

 

「ななな何を言っているんですかお兄様!深雪は別にそんな事・・うう・・確かに少し見てみたい気もしますが・・・」

 

それを見ていた八幡は諦めた様に

 

「ちっ、わかったわかった。一回だけだからな。」

 

八幡がやる気になったのを聞き皆その結果に期待はしていたのだが、正直深雪の記録は越えられないだろうと誰もが思っていた。

 

しかし結果は

 

「えっ?・・・・・。」

 

「ちょっと美月どうしたのよ?幾つだったの?」

 

エリカが何時まで経っても答えない美月を訝しげに思い、結果を見ようと後ろに回り込む

 

「150ms・・って、何よこれ?」

 

それを聞いたほかの者もそれぞれ驚きの声をあげる。

 

「150msって・・人間の限界を超えてるんじゃねーのか?」

 

「凄いです八幡さん」

 

「ヒッキー凄すぎだし!」

 

レオ、美月、結衣がそう言い

 

「八幡はやっぱり凄い。私は知ってた」

 

「八幡さん」

 

「八幡君」

 

雫、ほのか、雪乃はどこか誇らしげにしていた。

 

そして深雪は珍しく声を荒げ、とても嬉しそうになんと八幡に抱き着いてしまった。

 

「八幡凄いわ!さすが八幡ね!」

 

「おっおい、みっ深雪落ち着け」

(柔らかい柔らかい柔らかいいい匂いするしあと柔らかい)

 

「あっ、ごっごめんなさい。つい嬉しくて。でもやっぱり凄いわ。」

 

そんな深雪を見た達也以外のメンバーは二度驚く事になった。

 

一応八幡は皆に口止めをし(達也と深雪以外のメンバーは八幡の実力を皆に知らしめたく渋ったが)必要以上に目立ちたくないと言う理由で納得して貰った。

その後は昼食を食べそれぞれ午後の授業へと戻った。

 

戻る際達也が八幡にだけ

 

「本当は100msも切れるんじゃないのか?」

 

「うっ、まーたぶんな。でも深雪には言うなよ?」

 

「わかってる」

 

色んな意味で八幡の本当の力を知っているのは達也だけだった。




深雪もたまにはデレさせないと。

ほかの俺ガイルキャラをどーしようか迷っています。


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警戒と決意

八幡が達也にブランシュの事を伝えてから数日、ついに事態が動いた。

 

八幡が次の授業が始まるのを自分の席に座り待っていると

 

『皆さんっ!!!』

 

突如構内放送がなった。

周りのクラスメイトもこれに反応する。

 

「なんだようるせーな」

 

「なんなの一体」

 

「音量の調節をミスったんだろ」

 

 

放送では有志同盟と名乗り一科と二科の差別撤廃について語っているが、ブランシュの下部組織エガリテの仕業なのだと八幡は確信していた。

生徒会に所属する深雪が現場に行こうとしているのに気付いた八幡が自分も同行すると深雪に言う。

 

「深雪!俺も付いて行くぞ。達也も来るだろうしな。」

 

「八幡、ええ分かったわ。一緒に行きましょう」

 

するとこの騒ぎに不安そうにしていた雫、ほのか、雪乃が心配そうに言う

 

「八幡、深雪、気を付けてね」

 

「二人とも無理しないでね」

 

「八幡君、深雪さん」

 

「大丈夫だ。会長達もいるだろうしな」

 

すると雪乃が

 

「私が心配してるのは八幡君が暴走しないかなのだけれど」

 

「大丈夫よ雪乃。その時は私が止めるから」

 

「おまえらな・・・」

 

「ふふ、冗談よ。二人とも気を付けて」

 

「おう(ええ)」

 

そして二人は現場に向かった

 

 

 

二人が放送室前に着くと生徒会、風紀委員、部活連のメンバーが勢揃いしていた。しかしなぜか真由美だけがいなかった。

そしてもちろん達也の姿はあった。

 

「おう達也」

 

「お兄様」

 

「深雪、八幡も来たんだな」

 

「ああ。お前も呼び出しがかかったみたいだな」

 

状況を聞くとどうやら中の連中は放送室のマスターキーを奪って放送室に立て籠もっているらしい。放送室の電源はカットしたのでこれ以上の放送はできないが、鍵がないためこちらからは扉を開けられない様だ。

そしてこの事態を収拾する為どうするか話し合っていたのだが、どうやら意見が割れているらしい。

摩利は無理矢理にでも突入して中の者を取り押さえたい強硬派、鈴音は下手に刺激して暴走されてはまずいと慎重になっているようだ。そして克人は不法行為を放置しておくべきではないが、扉を破るなど学校の施設を壊してまで突入するほどの犯罪性はないと考えている様だ。

 

現状を理解した達也が急に電話を掛けだす。

 

「もしもし壬生先輩ですか?今どちらに?ああ、それはお気の毒に。いえ、馬鹿にしているつもりはありませんよ」

 

相手が紗耶香だと分かると周りが騒ぎ出す。放送室に紗耶香が居る事は既に分かっていたが、中の者と直接連絡を取れる者はいなかったのだ。

達也は部活連と生徒会が交渉に応じる事を伝え電話を終わらした。しかしすぐに中の者が出て来たら取り押さえる準備をする様に周りに言う。達也は先ほど出てきても自由は保障すると紗耶香に言ったのだが、「それは壬生先輩だけに言った事、そもそも自分は生徒会や部活連の代表として話してはいない。」そう言うと周りの者は呆れていた。

 

深雪にとってはもっと重要な事があった。

 

「お兄様?なぜ壬生先輩のプライベートナンバーを?やはりカフェで壬生先輩を言葉攻めにしていたと言うのは本当だったのですか?」

 

「言葉攻め?達也、お前マジかよ」

 

「そんな事してないからな?八幡、お前は見てただろ?」

 

「やっぱり気づいてたのか」

 

「見てた?八幡もその場に居たの?」

 

「ああ。八幡は雪乃と結衣と一緒に来ていたぞ。二人とも幸せそうにしていたな(ケーキがよほど美味しかったんだろうな)」

 

「へ~、そうですか・・幸せそうに・・」

 

雲行きが怪しくなって来た。

 

「おい達也!変な言い方してるんじゃねー。」

 

「八幡!!!」

 

「ひゃいっ」

 

「私とも今度一緒にカフェに行きなさい」

 

「へ?」

 

「だから雪乃と結衣だけなんてずるいわ」

 

「あの二人はこの間奢ってやれなかったから代わりに連れて行っただけだぞ?」

 

深雪は上目遣いで

 

「私とは行けないの?」

 

「分かったよ。今度な」

(何という破壊力だ)

 

このやり取りを見ていた周りの者はさっきの達也に対して以上に呆れていた。

 

 

その後放送室から出てきた生徒を一度は取り押さえたのだが、いつの間にか現われた真由美により解放された。そしてそのまま今後の事を話す為どこかに連れて行った。

 

 

 

翌日の朝、達也と深雪と駅で待ち合わせた八幡はある人物を待っていた。

そしてその人物が来たので声をかける。

 

「会長!」

 

「・・・・・」

 

「会長?」

 

「・・・・・」

 

「はぁ~、真由美さん!」

 

「なぁに~?はち君~」

 

「最初から聞こえてたよな?」

 

このやり取りを見ていた深雪が若干不機嫌になる。

それに気づいた達也が話を進める。

 

「会長。昨日の有志同盟との話はどうなりました?」

 

「達也君も真由美さんでいいのよ?っと、冗談はこのくらいにして」

 

深雪の機嫌に真由美も気が付き真面目に話し出す。

 

「彼等の目的は一科生と二科生の差別の撤廃だそうよ。でも昨日は具体的な意見は何一つ出てこなかったのよね・・それで、明日講堂で改めて討論会を開く事にしたの」

 

「なるほど。それが一番手っ取り早いですね」

 

もし自分を言い負かすだけのしっかりとした根拠を持ってるのなら、これからの学校運営に役立てるだけ。真由美がそう言ったのを聞いて八幡は少しだけ真由美を見直した。

 

討論会が開かれる事はあっという間に全校生徒に知れ渡っていた。

 

八幡のクラスでもそれは話題になっており

 

「八幡は今回の事についてどう思うの?」

 

深雪、雫、ほのか、雪乃が集まる中雫が八幡にそう聞く。

 

「そーだな。理不尽な差別についてはもちろん反対だ。例の二科生に対しての呼び方とかな。だが今回はまだあちらさんが何を言いたいのか見えて来ないから何とも言えないな。討論会を聞いてからじゃないか?」

 

「じゃあ八幡さんは討論会を見に行くんですか?」

 

「いや?行かないけど?」

 

それを聞いて深雪以外は呆れていた。深雪だけは八幡が単独で講堂の外の警戒にあたる事を知っていた。

 

「深雪は生徒会だから強制として、お前らは行くのか?」

 

「興味はあるけど私と雫とほのかは部活があるから無理ね」

 

「部活か・・・」

 

八幡が少し険しい表情になると雫が

 

「八幡どーかした?」

 

「いっいや、何でもない。バイアスロン部がちょっと気になっただけだ。」

 

それを聞いたほのかと雪乃が嬉しそうに

 

「八幡さん!でしたら今度ぜひ見に来てください!」

 

「八幡君、許可します」

 

話が逸れた所で休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴り解散となった。

 

(外からの侵入にも一応注意しておいたほうがいいな)

 

八幡は一人気を引き締め直した。

 

 

 

 

 

八幡はその日の夜、一旦帰宅した後に達也と深雪の家を訪れていた。

 

司波家のリビングのソファに座り八幡は

 

「ここにも久しぶりに来たな」

 

「前に来たのは今年の慶春会の帰りだったな」

 

「ああ。あの時は小町と水波も一緒だったな」

 

二人がそんな事を話して居ると着替えを終えた深雪が紅茶を入れてやって来た。

 

「お兄様、八幡、紅茶をどうぞ」

 

「ああ、ありがとう深雪」

 

「サンキューみゆ・・」

 

八幡は深雪を見て固まってしまった。

 

深雪は上は両肩を出したセーターに下はミニスカートを履いていた。今は自宅だとしてもいささか露出度が高めの格好である。

 

「どこを見てるのよ八幡!」

 

八幡はミニスカートから伸びる深雪の真っ白な太ももを凝視してしまっていた。

深雪に指摘され慌てて目を逸らす。

 

「すっすまん。」

だったらそんな恰好するなよ。それにしても深雪はやっぱり可愛いな」

 

案の定声に出していた。

 

「なっ!きゃっきゃわいい・・ううう・・。おっお菓子でも持ってくるわね・・」

 

深雪は顔を真っ赤にしてリビングを出ていった。

 

「八幡。邪魔だったら俺は少し出ているが・・」

 

「なっ何をいっちぇるんじゃ」

 

「少し落ち着け。」

 

達也にそう言われ八幡は紅茶に口をつける

 

「んっんっ。すまん、もう大丈夫だ。ところで達也」

 

「なんだ?」

 

「深雪は家ではいつもあんな恰好をしてるのか?いやっ別に深い意味はないんだが」

 

「まあそうだな」

 

「そうなのか・・・」

(マジかよ。お兄様羨まし過ぎるだろ。毎日あれが見られるのかよ。べっ別に悔しくなんかないけどな。小町と水波だって負けてねーし?)

 

「おい達也っ!」

 

「なんだ」

 

「負けてねーからな!!!」

 

「一体何の話だ?」

 

「まあいい。本題に入るぞ。それで何か分かったのか?」

 

「ああ。さっきまで師匠の所に行っていたんだが、剣道部主将の司甲について色々聞けた」

 

「九重八雲か。司甲・・闘技場で壬生先輩と一緒に居た男だな・・」

 

「どうやら司甲の義理の兄である司一がブランシュ日本支部のリーダーをやっている様だ

 

「なるほどな、そいつが黒幕か。少なくともその司先輩と壬生先輩は操られている可能性があるな。」

 

「何か見えたのか?」

 

「ああ。例の闘技場での事件の時その二人が一緒に居てな。その時精霊の眼(エレメンタル・サイト)を使って見た。小町クラスの精神干渉系じゃないにしろ、それに似た何かで操られている可能性がある。」

 

「そう言う事か・・」

 

「取り敢えず事が起こるとしたら明日の討論会でだろうから警戒だけはしておいた方がいいな」

 

「ああそうだな。生徒会や風紀委員には伝えておく」

 

話を丁度終えたところに深雪が戻ってくる。

 

「お兄様、八幡・・・」

 

「そんな心配そうな顔をするな深雪」

 

「・・・・・」

 

「八幡どうしたの?」

 

八幡はどうしても深雪の足に目がいってしまうので必死だった。

 

「深雪、八幡はな・・」

 

「そっそれ以上言うな達也。とっとにかく心配無用だ深雪。いざとなったら俺がどんな事をしてもお前だけは守る」

 

「それはダメよ八幡。守るなら八幡もいる私達の日常を守りましょう。」

 

「そうだな・・・俺達のこの日常を守ろう」

 

「ああ、そうだな」

 

明日起こるであろう事件にそなえ八幡達は決意を固めた。




後2話位で入学編は終わりですかね~。


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襲撃

討論会当日、出席している生徒は全体の半分と言った所だった。

達也は昨晩八幡と交わした情報を真由美、摩利、克人にも伝え、司甲との繋がりが有りエガリテの関係者だと思われる生徒をマークしていた。しかし討論会に出席している生徒の中にそのメンバーは半分位しか見えなかった。

 

「お兄様これは・・・それに壬生先輩の姿も見えませんが」

 

「ああ。もしかしたら何か別の目的があるのかもしれないな」

 

達也と深雪がそんな事を話して居る目の前では真由美と有志同盟による討論が行われていた。

しかし明らかに誰が聞いても有志同盟による主張の中身は希薄で、討論会は最早真由美の独壇場と化していた。それでも真由美は差別が存在する事自体は認め、それに対しての自分の考えも述べた。

そしてそのまま今回の討論会は終わるかに思われた時事態は動いた。

轟音と共に講堂の扉が開き、明らかに生徒では無い男たちが武装して突撃してきたのだ。そのタイミングで討論会を傍聴していたエガリテのメンバーも動き出そうとする。更には窓から榴弾が投げ込まれそこからガスが噴き出す。しかしこれらは予め警戒していた摩利や服部により直ぐに鎮圧された。

 

「達也君、外の様子も気になる。私達はこの場を納めたら行くから君は先に行ってくれ。」

 

「わかりました。」

 

「お兄様、私もお供します。」

 

摩利に指示された達也は深雪を引き連れ講堂を後にした。

 

 

 

 

一方その頃雫、ほのか、雪乃、結衣の四人は一高の敷地内にある演習場でバイアスロン部の部活動を行っていた。

その日は普段演習場を使っている他の部の生徒達は討論会に行っていた為、今この場にはバイアスロン部員しか居なかった。そして練習中にバイアスロン部部長である五十嵐亜美の端末に連絡が入った。

 

「えっ?」

 

端末を見て顔を青くして固まってしまった亜美に雪乃が尋ねる

 

「五十嵐部長。どうかしましたか?」

 

雪乃に声をかけられ再起動した亜美は

 

「みんな落ち着いて聞いてね。今この学校に武装したテロリストが侵入しているみたいなの」

 

それを聞いた部員たちは騒めき出す。そしてその瞬間どこからか爆発音の様な物が聞こえた。それを聞いた部員たちはそれが真実なのだと認識する。

 

「そんな・・テロリストって・・・」

 

「どうするの?怖いよ・・」

 

部員たちが不安がる中亜美が進言する。

 

「皆落ち着いて。今の爆発音もここからはまだ距離が有りそうだし、とりあえずここを離れましょう」

 

そう言う亜美に雫が

 

「部長、ほのかがまだ戻って来ていません。」

 

ほのかだけはタイミング悪く、練習の為今この場にいなかった。

 

早く移動した方がいいと判断した雪乃が亜美に言う。

 

「部長先に行ってください」

 

「でも・・」

 

「ほのかが戻ったら私達もいきます。それに余り大人数で居ない方が目立たなくていいと思いますし」

 

「・・・わかったわ!光井さんが戻ったら貴方達もすぐ移動するのよ?」

 

そして雫、雪乃、結衣はほのかを待つが、震えている結衣に雫が気が付いた。

 

「結衣。部長達と行っても良かったんだよ?」

 

しかし結衣は首を横に振って笑顔で言う。

 

「ううん。ほののんは友達だし。それに雫とほののんは二科生の私と最初から仲良くしてくれたしね。」

 

「そっか。ありがとう結衣」

 

そしてしばらく経つとほのかが戻ってきた。

 

「あれ?部長や皆はどうしたの?」

 

この場に雫達しか居ない事に疑問を持ったほのかに状況を説明する。

 

「そうなんだ・・皆ごめんね私の為に」

 

「ほのかは悪くない」

 

「そうだよ、ほののんは悪くないよ」

 

「ほのか気にしないでいいわよ。それより早く移動しましょう」

 

そう雪乃が言い四人がこの場を動こうとした時に数名の武装した男達が現われた。

 

「おい、こっちにも生徒が居たぞ」

 

「本当だ。逆らうなよ?逆らえば殺す。」

 

四人は部活中だった為CADを所持していた。相手がテロリストとはいえ魔法師ではないと判断した雫と雪乃はCADを操作し攻撃しようとしたのだが急な眩暈に襲われた。見るとテロリストが腕輪の様な物からノイズを発振しているのが分かった。そのせいで雫と雪乃は魔法を発動出来なかった。

 

「逆らったら殺すといったよな?」

 

そう言ってそのテロリストは四人に向け銃を乱射した。

雫と雪乃は咄嗟にそれぞれほのかと結衣を庇い背中に銃弾を受けてしまった。

吐血し倒れて動かない二人を見たほのかと結衣は

 

「いやーーーーッ!雫----ッ!雪乃ーーーーッ!」

 

「雫、ゆきのん・・嘘だよね・・?返事してよ・・・」

 

ショックで最早こちらを見ていないほのかと結衣に

 

「馬鹿が。逆らうからだ。お前らも直ぐにあの世に送ってやるから安心しろ。」

 

男がそう言うとテロリスト達は再度ほのかと結衣に向けて発砲しようとした。

 

その時だった

 

「お前ら・・生きて帰れると思うなよ」

 

そう言いながら四人を守るように八幡が風の様に現れた。

 



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逆鱗

時は少し遡る

 

討論会が行われている真っ最中、八幡は一人校舎の屋上で精神を集中させ、一高敷地内全体に眼を向けていた。

 

(もしエガリテだけじゃなく外部からもブランシュの奴らが襲撃してくるなら討論会をやっている講堂は間違いなく狙うだろうな。だが討論会を邪魔するだけが目的じゃないはずだ。)

 

そんな事を考えていると敷地内に侵入者が現われた事を察知した。

 

(人数は数十人か。かなり多いな・・それに全員武装してやがる。散らばり始めたな・・無差別テロでも起こすつもりか?いや、何組かは固まって動いているな・・・一つはやっぱり講堂が狙いか。まぁあっちは達也達がいるから問題ないとして・・・これは壬生先輩か?何故奴らと一緒にいるんだ・・狙いは・・図書館か。なるほど読めたぞ。本当の狙いは機密文献か。エガリテを使い討論会で目を逸らさせて置いてその隙に本命である図書館を狙うか・・・残念だったなそうはいかないぞ。)

 

八幡が図書館に向かおうとした時だった。

離れてるから大丈夫だろうと油断したのを後悔した。バイアスロン部が部活を行っている演習場の方へもテロリスト達が向かって行ったのだ。それに気が付いた瞬間八幡は屋上から飛び降り全力でそちらに向かった。

 

(クソ、頼む間に合ってくれ!)

 

八幡が演習場に向かっていると部長の亜美達と出会った。

 

「よかった。無事でしたか。」

 

「あなたは確か一年生の四葉君よね?無事って・・・」

 

「演習場の方にテロリストが向かって行くのが分かったので心配してたんですよ。」

 

それを聞いた瞬間亜美は顔を青くした。

 

「ウソ・・まだ北山さん達があっちにいるのよ」

 

「なんですってっ!?」

 

「光井さんが練習中で、戻ってくるのを待つって・・私・・どうしよう・・・」

 

亜美は今にも泣きだしそうになるが八幡が言う

 

「俺が迎えに行きます。先輩達は早く安全な所へ」

 

「でも一人でなんて危険よ!誰か呼んだ方が・・」

 

八幡を心配する亜美に言う

 

「大丈夫です。俺は四葉ですよ?」

 

そう言った瞬間八幡の姿はそこにはなかった。

 

亜美と別れた八幡はすぐに雫達の姿が視認できる位置まで来た。

しかし八幡が見たのはテロリスト達に撃たれる雫と雪乃の姿だった。

さらにほのかと結衣に対して今にも発砲しようとしている事がわかった。

そこに八幡は一瞬で割り込む。

 

「お前ら、生きて帰れると思うなよ」

 

「なっ、なんだお前は。」

 

「大丈夫だ。誰が来ようが俺達にはこれがある。」

 

急に現われた八幡にテロリスト達は最初は驚くが直ぐに余裕を見せる。

そして腕輪を操作するが

 

「そんな物が俺に効くか」

 

そう言って八幡は男達に向け手をかざし分解魔法、雲散霧消(ミスト・ディスパージョン)を発動する。次の瞬間男達の腕輪は跡形もなく消えた。さらに持っていた銃まで跡形もなく消える。

 

「なんだとっ!?なんでキャスト・ジャミングが聞かない?」

 

「お前たちに説明する必要はない。死ね。」

 

そう言われ逆上したテロリスト達はナイフを持って八幡に襲い掛かるが、八幡が加重系魔法の重力操作魔法を発動すると地面にめり込むほど叩きつけられた。

 

「そのまま潰れろ」

 

「あが・・がが・・」

 

「ぐ・・うう・・・」

 

「く・・くる・・し・い・・た・・たすけ・・・」

 

尋常ではない圧力に肺を圧迫され窒息しかけたテロリスト達は全員気を失ったが、それでも八幡は魔法をやめない。今八幡は怒りで我を失いかけていた。

だが、そこに結衣がしがみつき声を掛ける。

 

「ヒッキーもういいよ。それよりゆきのんと雫が」

 

ほのかも涙をボロボロ流しながら

 

「八幡さん。二人が死んじゃう」

 

それを聞いた八幡は

 

(迷ってる暇なんかないな)

 

無言で倒れる雫と雪乃に魔法を発動する。次の瞬間二人の体はまるで何事もなかったかのように元通りになっていた。

 

それを見ていたほのかと結衣は何が起こったかわからず呆然としていた。

しかしやがて雫と雪乃が目を覚ますと

 

「雫ー、雪乃ー、うう・・良かったよ・・・」

 

「二人とも無事で良かった・・グスッ・・」

 

しかし当の本人達も何が起こったかわからず呆然としている。

 

「一体何が・・私は確か撃たれて・・・」

 

「私も確か結衣を守ろうとして・・・」

 

「八幡さんが助けてくれたんだよ」

 

「うん。ヒッキーがなんか凄い魔法で治してくれたの。」

 

二人がそう言った所で初めて雫と雪乃は八幡が居ることに気が付いた。周りを見るとテロリスト達も全員地に倒れているのが見えた。

 

「八幡・・・凄い魔法って・・治癒魔法?」

 

「八幡君・・治癒魔法だとしたら・・効果はどれ位持つのかしら?」

 

雫と雪乃は何故か冷静だった。そんな二人を見ていたほのかも何かに気付く。

 

「あっ、そうか・・治癒魔法は確か・・」

 

一人だけ意味がわからない結衣は

 

「皆どうしたの?良く分かんないけど二人とも大丈夫なんだよね?」

 

「結衣、治癒魔法って言うのはね永続的なものじゃないの。いつか効果が切れて・・その時は・・」

 

「たぶん私達は致命傷を受けていたから・・・」

 

「そんな・・じゃあ雫と雪乃は・・そんなの嫌・・だ・よ・・」

 

「嘘だよね?二人とも死んじゃうなんて嫌だよー。うわあ~~ん」

 

ほのかと結衣は泣き出してしまう。それを見かねた八幡が二人の頭に手をのせながら言う

 

「二人とも大丈夫だから泣き止め。雫と雪乃は死んだりしない」

 

「八幡さん・・だって・・」

 

「ヒッキー・・」

 

「八幡・・私達に気を使っているなら・・」

 

「そんなんじゃない。俺が使ったのは治癒魔法じゃないからな。」

 

八幡がそう言うと四人とも固まる

 

「八幡君、じゃあ貴方の使った魔法は一体・・・」

 

「あ~、すまん。それは聞かないでくれると助かる。あと他言無用でお願いしたい。」

 

八幡がバツが悪そうにそう言うと一瞬沈黙が支配するが結衣がそれを破る

 

「わかったよヒッキー。私は何も聞かないし見てもいない。雫とゆきのんが無事ならそれだけで十分だし」

 

「八幡さん、私もです。雫と雪乃を助けてくれてありがとうございます。」

 

雫は立ち上がり八幡に近づくと

 

「八幡」

 

「言えなくてすまんな雫」

 

「ううん、助けてくれてありがとう。ちゅっ」

 

雫はお礼を言うと八幡の頬にキスをした。

 

「「「なっ」」」

 

「にゃっにゃにしてやがる雫!」

 

「命を助けて貰ったんだからこれ位当たり前。八幡ありがとう」

 

「そっそうか・・じゃあ・・どういたしまして?でいいか?」

 

それを見ていた雪乃は

 

「こほんっ八幡君」

 

「おっおう雪乃」

 

「私も貴方の魔法について詮索も他言もしないと約束します。貴方がそう言うって事は簡単に使ったり見せたりしてはいけない魔法だと言う事はわかるわ。そんな魔法を使ってまで助けてくれてありがとうございます。」

 

「おっおう。間に合って良かったよ」

 

雪乃の畏まった礼に照れた八幡は目を逸らしながらそう言うが

 

「ちゅっ」

 

今度は雪乃が雫とは反対の頬にキスをした

 

「「なっ」」

 

「あっ」

 

「おっおみゃえまでにゃにお」

 

「命を助けて貰ったんだからこれ位当たり前よ。八幡君ありがとう」

 

「まったくお前らは・・どういたしまして」

 

そしてほのかは一人ブツブツ

 

「どうしよう・・私も行くべき?いやいや、そんなのまだ早いよ・・でも・・」

 

結衣は八幡に掴みかかり

 

「ヒッキーずるい。私の命も助けるし!」

 

「お前は何を言ってるんだ結衣。少し落ち着け」

 

ほのかと結衣が取り敢えず落ち着いたところで八幡は

 

「よし!そろそろ移動するぞ。またテロリスト達が来るかもしれないからな。お前達を安全な場所まで送る」

 

「八幡君、貴方はどうするの?」

 

「俺はまだやる事があるからな」

 

「ヒッキー危ない事はしないでね?」

 

「八幡さん、無茶はしたらダメですよ?」

 

「大丈夫だ。それにあんな奴ら何人居ようが相手にならないからな」

 

「八幡がケガしない様におまじない」

 

そう言ってまたキスしようとする雫の顔を鷲掴みにして止めた後、八幡は四人を安全な場所まで送り届けた。

 

そして八幡はある人物を探していた

 

 

(図書館の方は達也と深雪・・エリカもか。アイツらが向かったなら大丈夫だろう。ほかのテロリスト共もほぼ鎮圧しているみたいだな。さて俺は・・おっ見つけたぞ)

 

「小野先生!ちょっと聞きたいことが」

 

小野遥・・表向きは一高のカウンセラーだが警察省公安庁の秘密捜査官としての顔もあり、諜報の世界で「ミズ・ファントム」というコードネームで呼ばれている正体不明の女スパイの正体でもある 。

 

「四葉君?どうかしましたか?」

 

「単刀直入にいいます。ブランシュのアジトを知っていますか?知っているなら教えて下さい。あっ、これはお願いではないので」

 

「いきなりね・・色々聞きたいことがあるけれど、最後のが怖いわね・・・」

 

「なぜ小野先生に聞くのか等知りたい事はあるかもしれませんが、今は急いでいますのでそれは後日と言う事でお願いします」

 

「・・・わかりました・・それと四葉君・・貴方もしかして・・今もの凄く怒ってる?」

 

「ええ、そうですね」

 

遥にブランシュのアジトの場所を聞いた八幡は一人そこへと向かった




次で入学編は終わらせたい・・・


八幡は深雪一筋です。


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決着

やっと入学編が終わりました~


達也達は図書館から機密文献を強奪しようとしていたブランシュのメンバーを難無く制圧した。そしてそれを手引きしていた紗耶香をエリカが一対一の勝負で下した後、、気を失った紗耶香を医務室へと運んだ。目が覚めてから真由美、摩利、克人も交えて紗耶香から話を聞いていたのだが、紗耶香の話を聞いてみるとどうやら過去の記憶が一部改竄されており、摩利が紗耶香に対して見下す様な態度を取ったことになっていた。そしてそれが原因で差別に対して強い憤りを感じるよう仕向けられていた事がわかった。

 

(八幡の言っていた通りだな。壬生先輩はやはり何らかのマインドコントロールを受けていたか・・ん?その八幡はどうした?まさかあいつ一人で・・)

 

達也がそんな事を考えていると真由美が

 

「壬生さん。残念だけど貴女の事は警察に任せる事になると思うわ」

 

「はい、それが当然だと思います」

 

これに達也は反対する

 

「壬生先輩は利用されていただけです。ブランシュの連中を叩けばおそらく壬生先輩は無罪になります」

 

「駄目よ!危険過ぎるわ!」

 

「達也君、私も反対だ!高校生には荷が重すぎる!」

 

そして紗耶香も

 

「司波君。もし私の為なら止めて頂戴。私は裁かれて当然の事をしたんだから」

 

「壬生先輩の為だけではありませんよ。ブランシュの奴らは俺達の日常に土足で入り込んできた。既に俺は当事者です。そして俺はその日常を守る為なら奴らを全力で排除します」

 

「司波、一人で行く気か?」

 

「十文字先輩。そうしたいのは山々なんですが・・・」

 

そこに深雪、エリカ、レオも名乗りをあげる。

 

「お兄様、もちろん私もお供します」

 

「私も行くわよ」

 

「もちろん俺も行くからな。でも達也、奴らがどこに居るのか分かるのか?」

 

「いや、だが知っている人に聞けば良いだけだ」

 

達也の言葉を全員が疑問に思うが

 

「小野先生、そろそろ入って来たらどうですか?」

 

「「えっ?」」

 

達也にそう言われ医務室の扉の前にいた遥が中に入ってくる。遥は紗耶香とはカウンセラーとして面識があった。紗耶香が自分の魔法の才能について伸び悩んでいる事を知っていたが、話を聞くだけでそれを解決してあげる事ができずに今回この様な結果になった事に対して少なからず責任を感じていた。

因みに遥も達也と同じく九重八雲に師事を仰いでおり、それ繋がりで遥のもう一つの顔も知られてしまった。八幡にその事を教えたのも勿論達也である。

 

「やっぱりバレてたか」

 

「それで場所は分かりますか?」

 

「ええ。それに急いだほうがいいかもしれないわ」

 

「どういう意味ですか?」

 

「四葉君が一人で向かったわ」

 

遥のこの言葉に全員驚く

 

「えっ?はち君が?」

 

「八幡が・・アイツなんて無茶を」

 

「そう言えば八幡の姿がずっと見えなかったわね・・」

 

「なあ達也、八幡がいくら強くても一人はまずいんじゃないのか?」

 

深雪だけは別の心配をしている様だった。

 

「お兄様・・八幡はまさか・・・」

 

「ああ。小野先生、アイツの様子はどうでしたか?」

 

「凄く怒っていたみたいよ・・まるで噴火直前の火山みたいな・・今にも爆発しそうな感じがしたわ」

 

「・・・そうですか。急いだほうが良さそうだな」

 

「お兄様、早く参りましょう」

(八幡やり過ぎちゃダメよ)

 

こうして自分も同行すると言った克人の車で、克人に同行を志願した桐原を加えた一行はアジトへと向かった。

 

 

 

 

丁度達也達が学校を出発した頃、八幡は一人アジトに辿り着いていた。

 

(外は随分手薄だな。まぁ何人居ようが関係ないがな)

 

正面入り口と思われる場所を見つけた八幡は警戒する事もせず堂々と歩を進める。

そしてもちろん見張り役と思われる人間に直ぐに発見される。

 

「その制服、一高の生徒か?」

 

「一人でくるとかイカれてるのかコイツ」

 

「おい、何とか言ってみろ」

 

「邪魔だ。今すぐ消えるなら見逃してやる」

 

そう言われた男達は逆上して八幡に向けてマシンガンを乱射する。

 

しかし発射された弾は八幡に届く前に、八幡が自身の周りに作り出した重力場によって全て地面に落ちていく。

 

「なんだこれ・・弾が・・ぐぁっ」

 

「うわ・・くっ来るな・・がぁっ」

 

「化け物・・・ひぃ・・うがぁっ」

 

「・・・・・・」

 

慌てふためく男達に八幡は無言で近づいて行く。そして男達が八幡の重力場の範囲内に入ると全員地面に叩きつけられ気を失った。

 

八幡がアジトの中へ入り進んでいくと目的の部屋まで直ぐに辿り着いた。

精霊の眼(エレメンタル・サイト)によって既に司一の居る位置は分かっていたのだ。

 

八幡がすぐに部屋の中へ入ると

 

「君は四葉八幡君だな。まさか一人で来るとはね。てっきり司波達也君も一緒にくると「黙れ!」っ!?」

 

「お前がブランシュのリーダーか?」

 

「おっと、そうだねまずは自己紹介と行こう。私がブランシュのリーダー、司一だ」

 

「そうか・・お前のせいで雪乃と雫が・・・」

 

「何をブツブツ言っているんだい?」

 

「周りに居る奴らには一応投降の勧告だけはしておいてやる。全員武器を捨てて両手を頭の後ろで組め。大人しくしているなら警察に突き出すだけで勘弁してやる。聞かないなら命の保証はしない」

 

八幡はそう言って前に向かって手をかざす。

 

「CADも持たずに一体何をしてるんだい?一人でノコノコ現われた事と言い、気でも狂ったのかい?まぁ、君が我々の仲間になるというのなら今回の件は見逃してあげようじゃないか。四葉の人間がこちら側に付くのも中々おもしろそうだしね」

 

「警告はした。全員敵意有りとみなす」

 

八幡が魔法を発動する前に一が

 

「四葉八幡、我々の同士になれ!」

 

そう叫んだと同時に一の目から光が放たれた。

 

「はははっ、これで君はもう我々の仲間だ!」

 

しかし八幡は

 

「くだらない。これは光波振動系魔法・・催眠術の類か。これで壬生先輩や弟も操っていたのか?」

 

「何故効かないんだ!」

 

「俺を操れる可能性があるとしたら小町クラスが使う精神干渉系の邪眼だけだ。お前のそれは俺にしてみたらただの光信号だな」

 

「貴様・・一体・・」

 

「話はここまでだ・・死ね」

 

八幡の冷淡な声音に恐怖を覚えた一は部下たちに命令を下す。

 

「何をしている! 相手は四葉の魔法師とはいえCADも持っていない! 生け捕りは止めだ! 撃て、撃て!」

 

一の命令で部下達が一斉に八幡に向けてマシンガンを発砲しようとするが異変に気付く。

 

「なっなんだこれ・・」

 

「銃が凍って・・」

 

八幡がテロリストに放ったのは振動減速系領域魔法ニブルヘイム。

そして銃だけではなく体までも凍り、ブランシュのメンバーは意識ごと凍りついた。

 

今の隙に逃げ出した一を追い八幡は奥へと進んだ。

 

一が別の部屋に逃げ込んだのを見て八幡は警戒もせずに中に入って行く。

八幡が中に入った瞬間銃弾の嵐が八幡を襲う。しかしやはり弾は八幡に届く前に全て下に落ちていく。

 

「なっ何故だ。CADも持たずに・・それにこのキャスト・ジャミングの中でどうして魔法が使える?」

 

「貴様に説明する必要はない。全員死ね。」

 

八幡がそう言うと部屋が一瞬で夜になる。

一や部下たちはこの異様な光景に顔を真っ青にして既に戦意を喪失していた。

しかし八幡は容赦なく流星群(ミーティア・ライン)を発動しようとした。

 

その時だった

 

「八幡ダメよ!」

 

深雪が八幡に飛びつき止めた。

 

「八幡落ち着け!」

 

達也はそう言った瞬間八幡の夜も破壊する。

 

「深雪・・達也・・・」

 

「八幡やり過ぎよ」

 

「一体何があった?」

 

「コイツのせいで雪乃と雫が死にかけたんだ」

 

「雪乃と雫が・・」

 

「そう言う事か・・・」

(八幡がここまで怒ったのはその為か。八幡はその怒りを抑えきれない様に『できている』からな・・)

 

「でもこれじゃあ唯の虐殺よ?ここは我慢して。」

 

「でも・・もう既に何人か殺してるからな・・」

 

「大丈夫よ。あっちの部屋に居た男達なら生きているわよ?お兄様が溶かしてくれたわ。」

 

「そうか・・達也。後は任せてもいいか?」

 

「ああ、深雪も八幡に付いててやれ」

 

「すまない」

 

「畏まりました、お兄様」

 

八幡と深雪が外に出ると、達也に指示されて入り口の見張りをしていたエリカとレオが居た。

二人もこちらに気が付くと声をかけてくる。

 

「八幡、深雪!」

 

「中は片付いたのか?」

 

「ええ。今頃お兄様が全員取り押さえてるわ」

 

そこで八幡の様子がおかしい事にエリカが気付く。

 

「八幡どうしたの?顔が凄い事になってるわよ?」

 

「ああ・・大丈夫だ。ちょっと疲れただけだ」

 

「ケガをしたわけじゃねえよな?」

 

「西条君大丈夫よ。八幡は無傷よ。」

 

「本当にちょっと疲れただけだから大丈夫だ。それと悪いけど俺は先に帰らせてもらうわ。」

 

「え?うっうん。大丈夫ならいいけど・・。わかったわ。後の事は任せて。」

 

「ああ、悪いな」

 

エリカとレオにそう伝え八幡はこの場を後にした。それに深雪も付き添う様に付いて行く。

二人が言ったのを見届けたエリカとレオは

 

「深雪が達也君を置いて行くなんてよっぽどよね・・」

 

「ああ、八幡の奴何か様子がおかしかったよな」

 

二人は八幡を心配するのだった

 

 

 

アジトを後にした八幡と深雪は駅に向かっていたのだが

 

「八幡どうしたの?大丈夫?」

 

「何がだ?俺は大丈夫だ。さっきも言ったように少し疲れただ・・「嘘よね?」・・・」

 

「・・・八幡、取り敢えず私の家に行くわよ」

 

「はっ?なんでそーなる?」

 

「そんな顔小町に見せたら心配するに決まってるからよ」

 

八幡も自覚があったのか了承する事にした。

 

「わかったよ・・」

 

 

 

 

 

 

~司波家~

 

 

家に着くと直ぐに深雪が八幡に尋ねる。

 

「それで八幡。一体どうしたのよ」

 

「・・・・・」

 

「さっきの事を気にしてるなら・・・」

 

「違う!いや・・違わないな・・・。自分でも分かってるんだ。頭に血が上るとどうしても抑えられなくてやり過ぎちまう。それが自分じゃどうしようもない事だって事も。今回はたまたま相手がテロリストだったからまだ良かったが・・・相手が誰だろーが俺はそれを止められない。そしてそんな俺を見たら今俺の周りに居る奴らだってどう思うか・・・さっきテロリスト達にも言われたが、俺は化け物だからな・・」

 

八幡の話を黙って聞いていた深雪がいきなり八幡の手を引っ張り自分の方に引き寄せる。そしてそのまま八幡の頭を自分の腿の上に乗せ膝枕をする。

急にそんな事をされ八幡は驚く。

 

「み、深雪っ!にゃ、にゃにお・・」

 

「黙りなさい!」

 

深雪はそう言うと八幡の頭を撫でながら話し出す。

 

「良く聞きなさい八幡。まず、雫もほのかも雪乃も結衣もそれにエリカに美月に西条君だって、この中に貴方の事を化け物なんて思う人はいないわ。貴方が怒る時はいつも人の為じゃない。確かにやり過ぎてしまう事もあるかもしれないけど、それは全部誰かの為だってみんな分かってくれるわ」

 

「・・・・・」

 

「それに・・もしも他の人がみんな貴方を怖がったとしても私とお兄様は絶対に貴方の味方よ」

 

「そうか・・・」

 

「ええ・・そうよ・・・」

 

「深雪・・このまま少し寝てもいいか?今日は本当に少し疲れたみたいだ・・」

 

「しょうがないわね。少しだけよ。おやすみなさい」

 

「ああ、おやすみ・・」

 

八幡がそう言って眠りに落ちそうになった時

 

「ああ、いい雰囲気の所すまないな・・ただいま」

 

二人は話に夢中で達也が帰って来た事に気が付かなかった。

 

「お、お、お兄様っ!?」

 

「たっ、たちゅやっ!?」

 

深雪は慌て、八幡は跳ね起きた。

 

「邪魔なら席を外すが・・・」

 

「とっとんでも御座いません。お帰りなさいませお兄様」

 

「そうだぞ達也!お邪魔してるぞ」

 

その後なんとか落ち着きを取り戻した八幡と深雪は達也からの事後報告を聞いた。

達也の話では事件は十文字家が十師族の力を使い情報規制を張るようで、アジトの件は現場に居たメンバー以外の一般生徒には明かされない事になった。紗耶香と一高の敷地内で身柄を取り押さえられていた司甲は入院。しかしブランシュのリーダー司一にマインドコントロールを受けていた事により罪には問われなさそうだという。

こうしてブランシュ一高襲撃事件は解決となった。

 

 

 

事件から数日後、八幡は達也と深雪の三人で紗耶香のお見舞いに来ていた。

 

「わざわざありがとう。司波君に深雪さん、そして初めまして。貴方が四葉君ね。」

 

「初めまして壬生先輩。中々お見舞いに来れずにすいません」

 

実は達也と深雪は既に何度か紗耶香のお見舞いに来ていた。ちなみにエリカもあの勝負以来紗耶香とは仲良くなり毎日のように来ている。さらにどうやら紗耶香に気がある桐原も毎日来ている様で、その度にエリカに弄られている。

 

「気にしないで。貴方も今回の事件の解決に協力してくれたと聞いてます。改めてありがとうございました。」

 

八幡にお礼を言う紗耶香。しかし八幡は

 

「俺はお礼を言われる立場ではないです。実はかなり前から壬生先輩が操られているんじゃないかと気が付いていました。言い方は悪いですがブランシュをおびき出す為に泳がせていたんです」

 

「八幡それは・・」

 

深雪が八幡を庇おうと今言った事に反論しようとするが上手く言葉が出てこない。

しかし紗耶香は

 

「いいえ。私がマインドコントロールを受けてしまったのは私の弱さが原因よ。だから貴方が謝る必要はないわ。だからありがとう四葉君」

 

「壬生先輩・・いいえ、どういたしまして」

 

話がひと段落した所で達也が聞く。

 

「それで壬生先輩、いつ頃退院できそうなんですか?」

 

「う~ん。それがまだはっきりしないのよね。マインドコントロールが完全に解けるまではダメみたい。予想ではかなり長期入院になるかもって・・」

 

かなりの期間マインドコントロールを受け続けていた紗耶香はそれを解くのにも時間がかかる様だ。そうなると学校生活にも影響が出る為紗耶香は目に見えて落ち込む。

それを見ていた八幡は

 

「壬生先輩。俺が先輩のマインドコントロールを解きます」

 

いきなりそう言われ紗耶香は驚く。

 

「え?四葉君が?そんな事が・・」

 

困惑する紗耶香を見かねた達也が

 

「壬生先輩、八幡は精神干渉系魔法が使えるので可能です。しかしこの事は誰にも言わないでやってくれませんか?」

 

「わかったわ・・じゃ四葉君・・お願いします」

 

沙耶香がそう言うと八幡は沙耶香に向けて手をかざす。

八幡の手が光ったかと思うと解除は直ぐに終わった。

 

「壬生先輩、終わりましたよ」

 

「えっ?もう?」

 

「はい。一応ちゃんと医師の診断を受けて確認して下さいね」

 

「わかったわ。四葉君・・ありがとう・・」

 

まさかこんな一瞬で済むとは思ってなかった紗耶香は嬉しさで涙を流す。

その後魔法の影響で多少負担があった紗耶香が睡眠をとる為に八幡達は病室を後にした。

 




八幡がすぐ切れちゃうのには理由があります・・・

そして空気を読まない達也・・


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八幡は久しぶりに千葉に帰る

九校戦編前に何話か入れます〜。


八幡は今千葉に来ていた。理由は久しぶりに小町の実家であり、八幡も小学生から中学二年の冬まで過ごした比企谷家を訪れる為である。小町の母親である芽夜に「高校に入学したら一度顔を出しなさい」と言われていたのだが中々行く事が出来ずにいた。しかしブランシュの件も解決して落ち着いた所でようやく行く事にしたのだ。因みに今日は平日なのだが八幡は学校を休んで来ていた。小町と水波が通う総武中学は千葉にあるので二人も学校帰りに寄ることになっている。

 

そして比企谷家の前まで着いた八幡は今悩んでいた。

 

(インターホンは鳴らすべきか?でも小町から鍵は預かってるしな、自分で開けて入るか。)

 

そして八幡が鍵を使い扉を開くと芽夜が待ち構えていたかの様に抱き着いてきた。

 

「はちま~ん、お帰りなさ~い」

 

「おっお久しぶりです芽夜叔母さん。取り敢えず離れて下さい」

(変わってないな。色々当たってるんですけど・・)

 

「嫌よ!久しぶりに会えたんだから八幡成分を充電しないと」

 

そう、芽夜は八幡を溺愛しているのである。それは小町や芽夜の姉であり八幡の母親でもある真夜が嫉妬するほどに。

しかも芽夜は(真夜もなのだが)見た目がとにかく若いのだ。とても中学二年生の子供が居るようには見えず、どう見ても二十台半ばくらいにしか見えない。

 

「来るのがこんなに遅くなってすいませんでした」

 

「ホントよ!いい加減私が行こうかと思ってたんだから」

 

芽夜をぶら下げたまま、八幡は見慣れたリビングへと移動した。

 

「叔母さん、いい加減離れて下さい」

 

「しょうがないわね。じゃあまた後にするわ。」

 

「勘弁して下さいよ。小町にまた怒られますよ?」

 

「うっ、確かにそれは怖いわね・・」

 

その後二人は早めの昼食を一緒に取ることにした。

 

「やっぱり叔母さんの肉じゃがは美味いですね」

 

「ふふ、ありがとう。でも水波も大分上達したんじゃないの?」

 

「はい。俺が肉じゃがが好きだって言ったら猛練習してましたね。今では得意料理になってますよ。」

 

「そう。まず胃袋を掴みなさいって言ったのは私だからね」

 

「何を教えてるんですか何を・・・」

 

八幡が呆れていると

 

「それで、深雪とはどこまでいったの?」

 

「ブーーーッ!ゴホッゴホッ・・何ですかいきなり」

 

「何って、そのまんまの意味よ」

 

「俺と深雪は従兄妹ですよ?それ以上は何もありません」

 

「兄妹じゃないんだから問題ないわよ。まあ魔法師の未来を考えたら~とか文句を言いそうな人達も居そうだけど」

 

「それ以前に深雪が俺なんかを選ぶわけがないでしょう。俺じゃあ釣り合いませんよ」

 

「何を言ってるのよ。深雪の力に釣り合う人間が一体どれだけ居ると思ってるの?ましてや貴方より優れた魔法師なんて存在しないわよ」

 

「それは・・・でも力だけじゃなくて・・その・・」

 

口ごもる八幡に芽夜はピンときたのかニヤニヤしながら

 

「なあに?深雪程度の顔じゃ不満?」

 

「不満なわけないじゃないですか!あんな絶世の美女が他に居るわけ・・あっ」

 

「ほほ~、絶世の美女ねぇ~」

 

「とっとにかく、深雪と俺はそんなんじゃありませんからね」

 

「まぁ今はそう言う事にしておいてあげるわ」

 

やっとこの話が終わったと思った八幡だったが

 

「深雪が違うなら小町はどーなの?」

 

「ブーーーッ!ゴホッゴホッ・・今度は何を言ってるんですか」

 

「だって小町も従兄妹なんだから問題ないじゃない?」

 

「小町をそんな目で見た事はありませんよ」

 

「なに?小町じゃ不満?じゃあ水波とか?」

 

「不満とかじゃありません。小町は・・水波もですけど俺の本当の妹だと思ってますから」

 

「そっか~、小町はわからないけど水波はもっと頑張らないとダメみたいね・・・」

 

八幡が芽夜の呟いている言葉に無視を決め込んでいると、ついていたテレビから緊急ニュースが流れた。

 

「ニュース速報をお知らせします。千葉県にある総武中学校に反魔法国際政治団体ブランシュを名乗る武装集団が突如現れ、只今学校を占拠しているとの情報が入って来ました。繰り返します・・・・」

 

それを聞いた八幡と芽夜は

 

「ブランシュだとっ!?」

 

「ブランシュって八幡達が潰したっていう?」

 

「そうです。まだ残党が居たのか?まさか俺への報復の為に小町を狙って・・」

 

「それは多分違うと思うわよ。八幡への報復が目的ならわざわざ学校なんて狙わないで、小町個人を狙って攫うなりなんなりするはずじゃない?」

 

「確かにそうですね・・・そうか、総武中学には魔法科がありますよね。」

 

「ええ、そこには十師族の関係者やナンバーズの子供達も居たはずよ」

 

普通科のみしかない中学校が大半を占める中、総武中学には魔法科のクラスが二クラスもある。

さらに総武中学は芽夜が言った様に将来を期待された名家の子供達が関東だけではなく全国から集まってくるほどの名門でもある。

しかし結衣や雪乃の様に魔法師としての資質があっても魔法科に在籍していない者もいる。

因みに八幡も小町も普通科に在籍していた。 

 

「それが狙いか・・取り敢えず俺は現場に向かいます」

 

「ええ。八幡、貴方なら大丈夫だと思うけど小町をお願いね。」

 

「はい。まぁ水波も居るんで大丈夫ですよ。じゃぁ行ってきます」

 

こうして八幡は総武中学へと向かった。

 




ブランシュ残党がまだ居たみたいです。

もちろん芽夜はヒロインではありません。


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八幡は天使のピンチに颯爽と現れる

小町side

 

 

ブランシュが総武中学に突入してくる少し前、小町は午前中の授業を終えて水波も含めた生徒会のメンバーと生徒会室で昼食を取っていた。

 

メンバーは生徒会長の一色いろは、副会長の七草香澄、泉美の双子の姉妹、そして書記の小町と会計の水波である。

いろはは十師族を補佐する立場である師補十八家一色家の次女であり、姉は国立魔法大学付属第三高校に通う長女の一色愛梨である。

香澄と泉美は十師族七草家の次女と三女で真由美の双子の妹にあたる。

この三人は総武中学三年生で魔法科に在籍している。八幡とは八幡が総武中学にまだ居た時に面識があった。しかし今の所小町と水波が四葉の関係者である事は知られていない。

 

そしてそんな五人の話題はと言うと

 

「まだ少し早いけど九校戦が楽しみね。「今年は三高が絶対優勝するわ」って、家のお姉ちゃんが張りきって居たわ。」

 

全国魔法科高校親善魔法競技大会(通称九校戦)とは、日本国内に9つある国立魔法大学付属高校の生徒がスポーツ系魔法競技で競い合う、日本魔法協会主催で行われる全国大会である。

 

「それはムリムリ。今年も一高が優勝して三連覇するに決まってるじゃない。だよね泉美?」

 

「そうですね・・・実際見てみないと何とも言えませんが、お姉様もかなりの自信がお有りの様でした。なんでも今年の新入生は粒ぞろいだとか・・」

 

「そうそう、新入生総代の司波深雪さんだっけ?なんかその人が凄いんだよね?あとそのお兄さんが二科生なのに凄いってお姉ちゃんが言ってた。」

 

それを黙って聞いていた小町は

 

(うわ~、達也さんと深雪さんの事だ。そりゃあの二人は凄いに決まってるよね)

 

香澄と泉美の言葉にいろはは得意げに反論する

 

「ふっふっふっ。甘いっ!甘いよ香澄に泉美。三高には一条将輝さんが居るからね。それにカーディナル・ジョージこと吉祥寺さんも居るし。少なくとも新人戦は負けないと思うよ」

 

一条将輝、十師族一条家の長男で一条家の秘術爆裂魔法を得意としている。

 

これに対し香澄も反論する

 

「くっ、でも何と言っても今年の一高の新入生には、あの四葉家の直系が居るんだから」

 

「あっ、それは噂で聞いたよ。で、どーなの?やっぱり凄いの?」

 

「お姉様の話では「入学式の次の日には食堂を地獄に変えた」とか「生徒会室に嵐が吹き荒れた」とか、聞いてる限りでは悪魔の様な人みたいですね」

 

「そうそう。でもお姉ちゃんの凄いお気に入りみたいで「本当は優しくて照れ屋な可愛い人」とか、体をくねくねしながら言ってたから良く分からないんだよね。」

 

(うわ・・お兄ちゃん悪魔とか言われてるよ・・これはポイント低いよ)

 

(八幡様は随分香澄さんと泉美さんのお姉様に気に入られてる様ですね・・・ポイント低いです)

 

そんな風に昼食を取っている時だった

 

「きゃーーー」

 

窓の外から悲鳴が聞こえてきた。

 

五人が急いで窓から外を確認すると、武装した集団が学校の敷地内に侵入してきていた。

そして悲鳴を上げたのはたまたま外に出ていた女生徒だった。

 

「何アイツら?テロリスト?」

 

「銃も持っている様ですわね。」

 

香澄と泉美がそんな事を言っていると不意に警報が校内に響き渡った。おそらく侵入者に気が付いた誰かが鳴らしたのだろう。警報は侵入者によって止められたのか直ぐに止んだが、これで恐らく時期に警察も来るだろう。

 

そして次に校内放送で声が聞こえる

 

「我々は反魔法国際政治団体ブランシュ。この学校は我々がたった今占拠した。我々の指示に従わない者は容赦なく殺すのでそのつもりで。なお魔法科クラスに属していない生徒はすぐ解放するので我々が確認するまでしばらく待て。」

 

「いろはどうする?」

 

「下手に動くと危険だから今は待機ね。ウチには強い魔法師の先生も結構いるしね。」

 

「そうですね。私はとりあえずお姉様に連絡しますわ。」

 

三人が話し合う中小町と水波は

 

「(多分お兄ちゃんがもう千葉に来てるはずだからこの事を知ったらきっと飛んで来るよね・・・)」

 

「(はい・・もし小町がケガなんてしたら総武中学は無くなってしまうかもしれませんね・・・そうならない様に絶対私が小町だけは守りますので)」

 

「(何言ってんのさ!きっと水波がケガをしたって同じ事だよ)」

 

この二人は全然違う心配をしていた。

 

「お姉様に連絡が取れましたわ。すぐに来てくれるそうです。ですが東京からなのでやはり少し時間がかかるそうです」

 

「そっか。しょうがないね」

 

そんな中、学校周辺には既に何台かの警察車両が見えた。

それを見ながらいろはが言う

 

「たぶんアイツらの目的は魔法科クラスに在籍している生徒を人質にして何かを要求する事だよね。特に十師族の香澄と泉美や十八家の私は狙われると思うわ。だから小町ちゃんと水波ちゃんは今のうちにここから出なさい。私達と居れば普通科とは言え巻き添えを食うかもしれないし」

 

「そうだね。その方がいいよ」

 

「小町さん、水波さん、私も賛成ですわ」

 

そう言われた二人は

 

「お断りします!小町達だけ逃げるなんて嫌です」

 

「私も小町と同じ意見です」

 

「・・・はぁ。やっぱりそう言うと思った。わかったわ、でも小町ちゃんに何かあったらいつか先輩に会えた時に顔向けできないから絶対守ってみせるからね」

 

いろはの言った先輩とは勿論八幡の事である。いろはは一年生から今日まで総武中学史上初の四期連続で生徒会長を務めている。その最初の一期目の会長選挙の時に八幡の世話になって居た。それ以来八幡の事を尊敬していたのだが、突然八幡が居なくなってしまい当時は大変落ち込んだ。しかし次会った時に胸を張って会える様にと会長職をずっと続けていたのだ。(小町は雪乃と結衣にしか八幡の一高進学は伝えてない)

因みに香澄と泉美は顔は知っているが直接の接点はない。

 

いろはが格好良く決めているが小町は

 

(まぁ、もうすぐ会えちゃうと思いますけどね。なんか罪悪感が半端ないであります)

 

何とも言えない気分になっていた。

 

そうこうしてるうちに普通科の生徒の解放が始まった様で、窓からは校門の方へ走って行く生徒が見て取れた。

 

「香澄と泉美、CADは持ってるよね?いざと言う時は・・・わかるよね?」

 

「もちろん」

 

「はい」

 

三人が覚悟を決めているといきなり扉が開かれ五人の男が入って来た。

 

「おっ、いたいた。お前らが七草の双子だな?写真で見た顔と同じだな」

 

「そうですが、なんの様でしょうか?」

 

「十師族の人間は使えるからな、着いて来てもらうぞ」

 

そう言って男達が二人に近づこうとするが

 

「待ちなさい!」

 

「誰だお前は?」

 

「私はこの学校の生徒会長の一色いろはです」

 

「一色?ほぉ、あの一色家のご令嬢か。お前も使えそうだな」

 

「あなた達、教師の人達はどうしたのですか?」

 

「教師?あ~、アイツらなら全員拘束させてもらった」

 

「まさかそんなっ!?」

 

いろはは驚いていた。香澄や泉美、そして自分はそこそこ魔法師としての資質は高いと自負している。しかしまだ未熟な自分達よりもこの学校の教師陣は遥かに上の力を持っているのだ。そんな教師達が全員拘束されたとは信じられなかった。

 

それは小町達も同じ様で

 

「平塚先生は?平塚先生はどうしたの?」

 

平塚静。八幡を奉仕部に強制入部させた張本人であり、普通科の八幡を何故かいつも気にかけていた。そしてそんな静を八幡はいつの間にか尊敬していた。さらに静は総武中学の教師の中で最も強い魔法師である。

 

「平塚?ああ、あの最後まで抵抗してきた女教師か。なかなか頑張ってたがあんまりしつこいんで銃で両手足を撃ってやったら大人しくなったな」

 

「何て事をっ!このっ!」

 

それを聞き香澄が逆上してテロリスト達に攻撃しようとCADに手をかける

 

「おっと、そうはいかないぜ」

 

そう言って男はキャスト・ジャミングを発生させる。すると香澄だけでなくその場に居た五人全員が頭痛と眩暈に襲われた。

 

「こっ、これは・・」

 

「なんなんですのこれは・・」

 

「魔法が発動できない・・」

 

小町と水波は分かった様で

 

(これがお兄ちゃんが言ってたキャスト・ジャミング。こんな中で平気で魔法を使えるなんてさすがお兄ちゃん。あっ、今の小町的にポイント・・って言ってる場合じゃないよね)

 

(私は何とか魔法を使えそうですが長時間は無理そうですね・・・)

 

「はっはっはっ!十師族とはいえ魔法を使えなけりゃお前らなんて唯の小娘だからな。そうだな・・二人いるし見せしめに一人殺すか・・」

 

「「「「「なっ!?」」」」」

 

五人が驚愕する中男は香澄に向けて容赦なく発砲した。香澄は勿論、泉美といろはも目を瞑ってしまう。

 

「なっ、なんでお前は魔法を使えるっ!?」

 

「水波大丈夫?」

 

「はい、小町様。やはり辛いですが・・少しは持ちそうです・・・」

 

キャスト・ジャミングの影響がある中水波は障壁魔法を五人を包むように展開した。しかしかなり無理をしている様でその表情は辛そうで口調も素に戻ってしまっている。

そして撃たれたと思って目を瞑った香澄や、同じく目を瞑った泉美といろはもやがて目を開き目の前の光景に戸惑う。

 

「えっ?水波・・あなたなんで魔法を・・・」

 

「水波さん・・あなたは一体・・」

 

「水波ちゃん・・小町ちゃんどういう事?」

 

混乱する三人に小町は言う。

 

「皆さん聞きたい事はあると思いますが後にして下さい!まだ何も解決していません!」

 

「そっ、そうだね。でもこのままじゃ・・・」

 

「お姉様が来てくれれば・・」

 

「一体どうすれば・・」

 

一瞬驚いたテロリスト達もこの状況に再び

 

「はっはっはっ、驚かせやがって。随分くるしそうだが何時までもつかな」

 

「おい、全員でやるぞ!」

 

「「「おうっ」」」

 

そう言ってテロリスト達は全員でキャスト・ジャミングを発生させた。

 

「くっ」

 

(うっ!水波もこれじゃあもうもたないよ。どうしよう・・)

 

その時小町の頭の中に八幡の声が聞こえた

 

「(小町!小町、聞こえるか?)」

 

「(えっ?お兄ちゃん?)」

 

「(そうだぞ。状況はもう分かってる)」

 

「(どうしようお兄ちゃん・・水波ももうもたないよ・・・)」

 

「(俺が何とかする。それでだ小町、窓を開けられるか?)」

 

「(窓?)」

 

「(そうだ!窓さえ開けば俺が擬似瞬間移動で一瞬でそこに行く!)」

 

「(わっ、わかった。やってみるね。)」

 

「(おうっ、頼んだぞ)」

 

そう八幡と小町が会話を終えた瞬間水波が遂に力尽きた。

 

「うっ、すいません小町様・・・」   

 

水波の障壁が消えた瞬間小町は窓の方へと走り窓を開く。しかしそれに気が付いたテロリスト達も今度は小町に向けて一斉に発砲した。それを見ていた、いろは、香澄、泉美はまたも目を瞑ることしかできず、水波は小町の盾になりたくても体が動かず手だけを小町に向けて伸ばしていた。

しかし小町に銃弾が届く事はなかった。

小町が窓を開けた瞬間一瞬で小町の前に現れた八幡は五人を守るように障壁魔法を展開していた。

 

そして八幡は開口一番

 

「お前ら、俺の天使に良くもやってくれたな!」

 

それに対し小町は

 

「お兄ちゃん・・助けてくれたのはポイント高いけど、ここで天使はないかな・・・」

 

ダメ出しされた。

 




いろはと七草の双子出して見ました。
いろはの口調が同級生や後輩相手だと良くわかりません・・・


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八幡の後輩は気が強く緊張感に欠ける

八幡が総武中学に着くと警察や多数の総武生、さらにそれを取り巻く野次馬が見えた。

八幡は野次馬の間を抜けて正門前まで行こうとするが警備の警察官に止められる。

 

「ちょっとキミっ!ここは危ないから立ち入り禁止だよ」

 

八幡は出来れば避けたかったのだが、しょうがなく自分の名前を名乗る事にした。

 

「俺は四葉八幡です。十師族として状況をお聞きしたいのですが」

 

「四葉」と聞いて警察官は固まり、周りの野次馬達もやはり騒めき出す。

 

「四葉だってよ」

 

「マジか。本物かよ」

 

「私四葉家の人って初めて見たわ」

 

周りの声を聞いた八幡は

 

(はぁ~、だから名乗りたくなかったんだよな。裏口に回れば良かったかもな・・・)

 

そう八幡がうんざりしてると、この状況を見ていた一人の私服警官が八幡に話しかけてくる。

 

「失礼ですが君は第一高校の四葉八幡君で合ってるかな?」

 

「はい。そうですが・・・あなたは?」

 

「初めまして。本官は千葉寿和、千葉エリカの兄です。君の事はエリカから少し話を聞いていたからもしやと思って」

 

「エリカのお兄さんっ!?」

 

八幡が驚いていると寿和は

 

「おっと、悠長に挨拶している場合でもなかったね」

 

「あっ、そうですね・・・状況を聞かせてもらってもいいですか?」

 

「ああ、取り敢えず普通科の生徒達は解放された。今中にいるのは魔法科クラスの生徒と教師陣だけだ」

 

八幡はそう聞いて小町を精霊の眼(エレメンタル・サイト)で感知したが、直ぐにまだ校舎内に残っている事を確認した。

 

「奴らの目的は?なにか要求があったのでは?」

 

「察しがいいね。要求はあったよ・・・奴らは先日捕まった司一を初めとしたブランシュのメンバー全員の三時間以内の釈放を要求している」

 

「三時間以内ですか・・・それで警察の対応は?」

 

「何とか対策を練る為に時間を稼ごうと三時間では無理だと言ったんだが・・・奴らは時間が過ぎたら十分ごとに生徒を一人づつ殺すと・・・生徒の命には代えられないので今釈放の準備をしている」

 

それを聞いた八幡は

 

「分かりました。俺が奴らを片付けます」

 

「ちょっ、ちょっと待ってくれ!妙な動きをしても生徒を殺すと言っているんだ。それに解放された生徒の話しではたぶん奴らはアンティナイトを持っている。キャスト・ジャミングのせいで魔法師の教師達も拘束されたんだ。」

 

「・・・・・中の生徒や教師にケガは?」

 

「聞いた話では平塚という女教師だけが最後まで抵抗してたみたいだが手足を撃たれて重傷の様だ」

 

「そうですか・・・。あの人らしいな・・・」

 

「知り合いなのか?」

 

「ええ・・・それより負傷者がいるなら時間がありません。やはり俺が行きます。止めても無駄ですよ?」

 

寿和はそう言った八幡の雰囲気に呑まれ何も言い返せなかった。

 

(何てプレッシャーだ。これが本当にエリカと同じ高校一年生が出せる気配なのか?)

 

八幡はまず校舎内の状況を探ることにした。

 

(ここは・・体育館か?ここに人が集められているな・・ブランシュの奴らは十五人か・・あとは・・昇降口に見張りが四人。小町が居るのは・・生徒会室だな・・五人いるが水波も一緒だな。ここにも五人ブランシュの奴らがいるな。確か生徒会は一色と・・そうか、一番の狙いは会長の双子の妹だな。キャスト・ジャミングの反応があるな・・急ぐか・・)

 

そして八幡は小町と念話で会話し飛ぶ準備をする

 

「千葉さん、俺が合図するまで待機する様全員に伝えて下さい」

 

「一体どうする気・・・え?」

 

寿和が問いかけている途中で八幡の姿は突如として消えた。

 

 

こうして八幡は生徒会室へと侵入したのだが

 

「えっ?比企谷先輩?なんで?」

 

「それより今どうやって現われましたの?」

 

「・・・せん・・ぱ・い?・・本物・・・?」

 

香澄、泉美、いろははいきなり現われた八幡に当然驚く。

 

「八幡様・・申し訳ありません・・・」

 

未だ苦しそうな水波は力尽きてしまった事に対して謝罪する。

 

「何を謝ってるんだ水波?ちゃんと小町を守り通したじゃねーか!良くやったな」

 

「そうだよ水波!ありがとね」

 

「八幡さま・・・小町様・・・」

 

そして放置されていたテロリストの一人が八幡を見て

 

「なっ!?おまえは四葉八幡!なんでお前がここに」

 

八幡も名前を言われその男の顔を見ると

 

「ん?おまえは・・この前ブランシュのアジトの入り口に居たやつか?あの時逃げてたのかよ」

(さて、ゆっくり話してる場合でもないな。一色や七草姉妹も居るしできれば分解は使いたくないな。ここは脅してみるか・・)

 

八幡は殺気を放ちながらテロリスト達に言う

 

「おいお前ら、大人しく投降するなら命までは取らない・・そこの奴は分かってると思うがもし抵抗するなら容赦はしないぞ。」

 

八幡の殺気に当てられテロリスト達は完全に戦意を失いキャスト・ジャミングも止めてしまう。

 

「水波、もう一度障壁を張れるか?」

 

「はい!可能です」

 

そう言って水波に障壁を張らせた八幡は自身の障壁を解き、自己加速術式を使って目にも止まらぬ速さでテロリスト達の首に手刀を入れ一瞬で意識を刈り取った。

 

「さて、久しぶりだな一色。お前らとはあんまり話した事はなかったが七草の二人も」

 

呆気に取られていた三人も八幡に話しかけられて再起動する

 

「比企谷先輩どうしてここに?」

 

「それに今四葉と言っていませんでしたか・・・?」

 

「なんなんですか先輩!いきなり現われたと思ったら天使だなんて口説いてるんですか?そうなんですか?確かにピンチに颯爽と現れてそんな事を言われたらキュンときちゃうかもしれないですけど、いやぶっちゃけキュンときましたけど口説くならまずは今まで何してたのか説明してから改めてお願いします!ごめんなさい!」

 

「ニュースでここがテロリストに占拠されたと知ってすぐ来たんだが?おうっ、俺は四葉だぞ。一色は少し落ち着け。あと俺の天使は小町と水波の事だからな?」

 

「いやいや、それ何の説明にもなってませんよ?」

 

「お姉様の言っていた悪魔が小町さんのお兄様だったなんて・・・」

 

「こんな可愛い後輩なんですからそこは素直に天使でいいじゃないですか」

 

見兼ねた小町が

 

「皆さん色々聞きたい事はあると思いますが今は捕らえられてる他の生徒や先生たちが心配です。話は終わってからにしましょう」

 

その言葉に全員頷く

 

「平塚先生が撃たれたと聞いたが本当なのか?」

 

「うん本当みたい。そこで寝てるテロリストが言ってたし・・」

 

「そうか・・・絶対許さねえぞ・・」

 

八幡の様子を見て小町が心配する

 

「お兄ちゃん、気持ちは分かるけど冷静にね。平塚先生もケガだけで無事みたいだから、お兄ちゃんのせいで総武中が無くなるとか小町的にポイント低いよ」

 

「ああ、大丈夫だ。今回は暴走したりしない。テロリスト共もマインドコントロールを受けてる可能性が高いしな」

 

そこで香澄と泉美が

 

「それで比企が・・・四葉先輩、この後はどうするんですか?」

 

「お姉様ももうすぐ到着されると思います」

 

「会長が?」

 

「呼びましたか?」

 

「一色、お前じゃない。ウチの七草会長の事だ」

 

「ああ、香澄達のお姉さんですね。はっ!?て事はそのお姉さんのお気に入りって先輩の事だったんじゃないですか」

 

「な、なんの話だ一体」

 

そこで水波が

 

「いろは会長!今は時間がありませんので」

 

「水波の言うとおりだな」

 

助かったと思った八幡だったが

 

「その話は後でじっくりと聞きましょう」

 

「うっ・・そうだね。でも水波ちゃんなんか怖いよ?」

 

実は水波の方が気になっていた。

 

「とっ、とにかく、奴らは捕らえた人を全員体育館に集めているみたいだ。俺が一人で行くから終わるまでお前達はここで待っててくれ。」

 

「ちょっと待って下さい先輩。私はこの学校の生徒会長です。みんなが捕まっているのに唯待っているだけなんて嫌です。」

 

「私達も行きます。このままやられっぱなしは嫌だしね。」

 

「そうですわね。それに七草の娘として四葉家の方に助けられっぱなしではお父様になんて言われるか・・」

 

十師族の中でも四葉家と七草家は共に最有力とされている。しかし過去に起きたある因縁によってあまり仲は良くない。八幡や真由美は何とも思っていないのだが、お互いの現当主同士が巻き込まれた事件が原因である為中々根が深い。

 

「気持ちはわかるんだがな・・」

 

正直八幡は一人の方が動き易くてよかったのだが、三人の言ってる事も理解できた為どうしたものかと頭を悩ませた。

 

その時だった。テロリストの一人が持っていた通信機から声がした。

 

「おいっ、○○っ!七草の姉妹は見つかったのか?」

 

(まずいな。応答がないとこっちで何かあったと直ぐに感づかれて奴らが何するかわからないぞ)

 

「返事をしろっ!何かあったのか?」

 

八幡がどうするか考えていると、香澄と泉美が通信機を手に取った。

 

「この方達なら私達が倒しました」

 

「なっ!?誰だお前は?」

 

「貴方達が探していた七草の娘ですわ」

 

「今私達がそっちに行くから他の子には手を出さないで」

 

テロリストは少し考えた後

 

「よしわかった。今すぐこっちに来い」

 

そう言って通信を切った。

 

「お前ら・・」

 

「これで私達は行くしか無くなりましたわ」

 

「四葉先輩あとはお願いしますね」

 

そう言われた八幡は二人の頭に手を置きながら

 

「まったく・・だが今のはお前らに助けられたな。かならず助けてやるから下手に抵抗するんじゃないぞ?」

 

「あっ・・はっはい!では行ってきます」

 

「うっうん、お願いしますね」

 

二人はそう言って若干頬を朱に染めながら体育館へと向かった。

 

「ちょっと先輩今のは何なんですか?私の目の前で他の女の子の頭を撫でてヤキモチを妬かせて気を引こうって作戦ですか?正直効果絶大なのでやめて下さい!ごめんなさい!」

 

「しかしお前はこんな時でも全くブレないな・・・正直尊敬に値するぞ」

 

「八幡様!早く私達も行きましょう!全くもう・・・」

 

水波はそう言って生徒会室を出て行く

 

「おい小町。水波はなんで機嫌が悪いんだ?」

 

「はぁ~、ゴミぃちゃん。いい加減その無自覚でフラグ立てまくるのやめなさい!」

 

小町もそう言って出て行く

 

「先輩、この件が解決したら色々話しが有りますからね!」

 

そしていろはも出て行った

 

「なんなんだ一体・・・」

 

そう呟きつつ八幡も体育館へと向かった。

 




やっと生徒会室から出せました・・・


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八幡は守る為に力を使う

あと1~2話で終わらせます。


~体育館~

 

静side

 

体育館では静だけは負傷して倒れている為、静以外の教師と生徒達が全員拘束されていた。

その周りをキャスト・ジャミングを発動したままのブランシュのメンバーが囲んでいる。

 

(くそっ!魔法さえ使えればこんな奴らなんか・・・いや・・言い訳でしかないな・・。七草姉妹がここに来ると言っていたな。一色と比企谷妹それに桜井は取り敢えず無事だといいが。比企谷妹に何かあったらアイツに合わせる顔がないからな。)

 

静がそんな事を考えていると香澄と泉美がやって来た。

 

「さあ、来てあげたわよ!」

 

「早く他の方々は解放して差し上げて下さい!」

 

「はっはっはっ、するわけねーだろ!コイツらは警察が早く俺達の要求を実行しないと、あと二時間もすれば十分ごとに一人づつ殺す為の人質だからな」

 

「「なっ!?」」

 

香澄や泉美、それに静や捕らえられてる者達も初めて聞いた様で

 

「なによそれ!」

 

「嫌だ!死にたくねーよ!」

 

「お願い助けて!」

 

「何で私達が殺されないとダメなのよ!」

 

(何とかしないと・・しかし魔法は封じられ・・このケガじゃ・・・ん?)

 

そこで静はある事に気が付く。

 

(何でケガが・・誰かが治癒魔法を?いや、それはないな。それにこれはケガだけじゃなく・・)

 

そう、いつの間にか静の負っていたケガが治っていた。そしてケガだけじゃなく付いていた血糊まで、まるで何事もなかったかの様に消えていた。

 

静が何が起きたのか分からず疑問に思っていると

 

(先生、平塚先生!聞こえますか?ハァハァ・・)

 

(何だ?その声・・・まさか比企谷か?)

 

(ハァハァ・・そうです、今先生にだけ聞こえるように話しかけています。奴らに気付かれない様にして下さい)

 

(良く分からんがわかった。それにしても何をハァハァ言っている?久しぶりにお前の声を聞いたかと思えば・・セクハラか?)

 

(この状況でんなわけないでしょ!そんな事ばっかり言ってるから未だに独・・「何か言ったか比企谷?」・・いえ、何でもありません)

 

(もしや私のケガを治してくれたのもお前か?これは一体どーやったんだ?治癒魔法なのか?いや、そもそもお前は魔法を使えたのか?)

 

(まぁそうです・・それより時間がありません。その話は後で、今から俺の言う事を良く聞いて下さい)

 

(それもそうだな。わかった)

 

(俺が奴らのアンティナイトを破壊するので、キャスト・ジャミングが止まったら直ぐにそこに拘束されている人達を囲むように障壁を張って下さい)

 

(分かった・・・だがこれだけの人数となると私の障壁魔法じゃそんなに長くは持たないぞ?)

 

(大丈夫です。ここに居る水波・・桜井水波も直ぐに手伝いに行きますので)

 

(桜井だと?なんで桜井まで魔法を・・今はそんな事言ってる場合じゃないな。取り敢えず分かったぞ)

 

(じゃあ直ぐに始めますので準備しておいて下さい)

 

そう言って会話は途切れた

 

(比企谷め、聞きたい事は沢山あるが随分頼もしくなったじゃないか)

 

 

 

八幡side

 

 

体育館の出入り口前で静との念話を終えた八幡は、小町、水波、いろはに指示する

 

「よし、水波は俺が奴らのキャスト・ジャミングを止めたら直ぐに中の人を障壁魔法で守ってくれ」

 

「はい、分かりました」

 

「小町と一色はここで待機だ。ここまでは連れてきたがこれ以上は絶対に認めない!」

 

いろはは渋々ながら了承すると同時に八幡を見て心配する。

 

「分かりました先輩。それと先輩どうしたんですか?顔色も悪いし汗も凄いですよ?」

 

「大丈夫だ。たぶんキャスト・ジャミングの影響だろう」

 

「そうですか・・」

 

いろはは半信半疑ながらもそれ以上は聞かなかった。

小町は原因が分かっている様で八幡の服の裾を掴みながら心配そうにする。

 

「お兄ちゃん・・(お兄ちゃん平塚先生に【再成】を使ったんだ・・たぶん先生が撃たれてから一時間近く経ってるはずなのに・・)」

 

この世界で達也と八幡だけが使うことのできる魔法【再成】。今回静が負傷してから八幡が魔法を使うまでに経過した時間がおよそ一時間。そして静を元の状態に戻すまでにかかった魔法の発動時間がゼロコンマ二秒とすると、八幡は静の受けた痛みのおよそ1万8千倍の痛みをその刹那の時間に受けたことになる。常人なら発狂してショック死していてもおかしくはない。

 

「大丈夫だぞ小町」

 

八幡は小町が心配しているのを察知し、安心させる様に頭を撫でながらそう言った。

 

「よし!じゃあ始めるか」

 

「でも先輩どうするんですか?たぶん全員同時に攻撃しないとアイツら何をするかわかりませんよ?」

 

「大丈夫だ。そう言う魔法を使うからな・・」

 

(この魔法は本当は使いたくないんだがこの状況じゃ仕方ない。あの二人は確実に気が付くだろうしな。はぁ・・また面倒ごとが増えるな。でも撃ち漏れはできないからな・・確実に同時に破壊しないと)

 

そして八幡はテロリスト達のアンティナイトを狙い魔法を発動した。

テロリスト達は死角からの攻撃に全く対応できず、八幡の魔法は見事に全てのアンティナイトを破壊する事に成功した。

静はキャスト・ジャミングが止まったと同時に障壁魔法を展開、続いて水波も予定通りに人質の元へ行き障壁を作る。テロリスト達は急な展開に焦り銃を乱射するが、全て二人の障壁に遮られ生徒たちは無事だった。

続いて八幡は同じ魔法で今度は全ての武器を破壊する。

再び死角から攻撃されたテロリスト達は

 

「なっ、なんなんだ一体っ!?」

 

「何処から攻撃してやがる!」

 

「なんで魔法が使えたんだ!」

 

「どーなってやがる!」

 

この魔法を見た香澄と泉美は

 

「これは・・お姉ちゃん・・・?」

 

「ええ、これは間違いなくお姉様の魔弾の射手ですわね・・」

 

香澄と泉美は真由美が来たのかと思い体育館の出入り口を見る。しかしそこに居たのは水波が中に入るのと同時に中に入って来ていた八幡だけだった。

八幡を見て二人は混乱する

 

「えっ?・・・四葉・・せん・・ぱ・・い・・?」

 

「何故魔弾の射手を・・使えるわけが・・」

 

【魔弾の射手】ドライアイスの弾丸を形成し撃ち出す銃座を、遠隔ポイントに作り出す魔法。撃ち出されるドライアイスは超音速に達する。

ここで問題なのはこの魔法は七草家が開発した魔法であるという事だった。

 

しかし八幡は二人を無視し生徒会室の時と同じ要領で自己加速術式を使いテロリスト達を気絶させて行く。

 

「よし、何とか成功したな・・・」

 

全ての敵を倒した八幡の元に香澄と泉美、そして静がやって来る。

 

「四葉先輩!さっきの魔法は・・」

 

「魔弾の射手・・ですよね?」

 

「ああ・・そうだ。(もろに見られたしな。さすがに誤魔化し切れないよな)」

 

「何で先輩が使えるんですか?」

 

「答えて頂けますか?」

 

この会話を聞いていた静は

 

「ちょっと待てっ!?比企谷が四葉だと?一体どういう事だ」

 

(はぁ~、めんどくせぇ~、さてどう説明するかな)

 

八幡がうんざりしてると小町と水波、いろはもやって来た。

 

「お兄ちゃん、これでテロリスト達は全員やっつけたの?」

 

「そうだった!まだ昇降口に四人テロリストが残ってたな。取り敢えず手分けして拘束されてる皆を解放してくれ。七草姉妹は会長が着いたかどうかの確認を頼む。着いている様なら外に居る警察にこの状況を伝える様伝言を・・・」

 

八幡が指示を出していると昇降口に居たはずの四人が体育館の中に入って来た。

そして中の状況を見て

 

「これは一体どういう事だ」

 

「全員やられてるだと」

 

「あいつ等がやったのか?」

 

「おい、おまえら動くなよ!これが何か分かるよな?」

 

そう言ってテロリストが見せてきたのは対魔法師用に生み出された武器ハイパワーライフルだった。

この武器は障壁魔法などの対物防御魔法を撃ち抜く威力を持っている。

 

(あれを持っているのは一人だけだな・・仕方ない・・)

 

八幡はテロリスト達に聞こえない様に小声で静と水波に言う

 

「先生と水波は俺が合図を出したらもう一度障壁魔法を展開して下さい」

 

「しかし私の障壁ではアレは防げないぞ?」

 

「私もキャスト・ジャミングの影響が残ってる今の状態では防げるかどうか微妙です」

 

「あれは俺が対処するから二人はとにかく他の三人の武器だけ警戒してくれ」

 

「・・・・了解した」

 

「わかりました、八幡様」

 

そして八幡が合図をしたと同時に二人は障壁を展開した。

それを見てハイパワーライフルを持った男が

 

「動くなと言ったよな?見せしめだ、くらえ!」

 

そう言うと男は八幡達目掛けて発砲した。

小町と水波以外の人間は無意識に身を竦め目を瞑ってしまう。

やがて全員が目を開けて目にしたのは、右手を前に出し何かを掴んでるような状態の八幡だった。

小町と水波以外の者は何が起こったのかわからずに

 

「えっ?」

 

「なにが起きたの?」

 

「撃たれたよな?」

 

全員が疑問に思う中撃った男は

 

「たっ弾を掴んだのかっ!?ばっ化け物っ」

 

そう言って今度は乱射する。

そして今度は全員がさっき何が起きたのかを知った。

 

男が二発目、三発目の銃弾を撃つ。その度に八幡の右手が位置を変える。その手が早すぎて第三者には八幡が何をしているのか見えていない。

気が付いた時には右手の位置が変わっており、その手は変わらず何かを掴んでいるかの様に握りこまれている。

勿論これは本当に弾を掴んでいる訳ではなく、八幡は弾を掴んでいるように偽装して分解魔法を使用している。

この分解も再成同様秘密にしたい為である。

 

目の前で起きた信じられない光景を見て居た誰かが言った・・

 

「弾を掴み取ったの・・?」

 

「一体どうやって・・・」

 

「そんな事出来るものなのか?」

 

そしてテロリスト達もこの光景に呆然としていた。

八幡はその隙を見逃さず簡単にテロリスト達の意識を刈り取った。

 




1万8千倍はやり過ぎた・・・


感想ありがとうございます。
時間がある時に返信させて頂きます。


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八幡は天使の為なら頭を下げる

どうぞ~


八幡達はテロリストを全員無力化したあとすぐに生徒達の拘束を解いた。

それが終わると七草姉妹が正門前に既に着いて居た真由美経由で状況を警察に伝えた。

そして今は体育館で警察が来るまで待機しているのだが・・

 

「それで四葉先輩、さっきの質問ですが」

 

「何故お姉様の魔弾の射手を使えるのですか?」

 

香澄と泉美の問いに八幡は悩む

 

「・・・(さてなんて答える・・一度見た魔法は全て使えるなんて言えないしな)」

 

八幡が頭を悩ましていると静が助け舟を出す。

 

「まあ待てお前ら。比企が・・四葉だったか。とにかくこれだけ悩んでいる所を見るとコイツにも言えない理由があるんだろう。それなのにコイツは私達の為にその力を使ってくれたんだ。感謝こそすれ、攻めるのはおかしいだろ」

 

「それはそうですけど・・・」

 

「これは七草家にとっても重大な問題ですし・・」

 

するとこのやり取りを見て八幡に助けられた教師達が言う

 

「四葉君、助けてくれてありがとう。私達教師はここで見た事は誰にも言わないから」

 

「え?たぶん警察には事情聴取をされると思いますが・・・」

 

「それでもだ。何も出来なかった私達教師の代わりに君は生徒達を守ってくれたんだ。そんな君が困るような事はできないよ」

 

「そうですか・・ありがとうございます」

 

「礼を言うのはこちらの方さ。本当にありがとう」

 

そう言って改めて頭を下げて礼を言う教師達の後ろから今度は生徒達が来る

 

「あの・・俺達も、警察にも家の人にも秘密にしますので」

 

「助けてくれてありがとうございました」

 

それを聞いた八幡は

 

「でもお前らの中にはナンバーズの家系の奴だっているだろ?言い方は悪いが四葉の秘密を知りたがってる家が大半だ・・・俺の存在を知ったら多分聞かれると思うぞ?」

 

「それでもです。家よりも命の恩人を裏切るなんてできません。これはさっきみんなで話し合って決めた事なんで大丈夫です」

 

「私達は気絶していて何も見ていない事にしますから」

 

「そうか・・・ありがとう・・」

 

「先生達も言ってましたけどお礼を言うのはこちらの方です」

 

そして今度は助けられた生徒達全員が頭を下げた。

 

「「「「「「「「助けてくれてありがとうございました」」」」」」」」

 

「おっおう、どういたしまして」

 

これを見ていた香澄と泉美は

 

「何かこれじゃあボク達が悪者みたいだね」

 

「本当にそうですわね・・・仕方がありません。この件は取り敢えず保留にさせて頂きますわ」

 

そう言われた八幡だが、二人を気遣うように優しく言う。

 

「まぁ・・あれだ。俺自身は詳しく説明はできないがお前達の事情は分かる。だから家に報告するなら好きにしていいぞ?お前達の立場を悪くする必要はないからな?」

 

「なっ、なんですかそれ。四葉先輩ちょっとあざと過ぎますよ!」

 

「ほっ、本当ですわ。大丈夫です、私達も気絶していたと言い張りますから!」

 

「そうか、お前らもありがとな」

 

そう言って二人の頭を撫でようとした八幡の手を水波といろはが止めた

 

「八幡様、警察の方々が来られました」

 

「そうですそうです。そんな事してる場合じゃありませんよ」

 

香澄と泉美は

 

「くっ、余計な事を。べっ別に先輩に撫でられても気持ちよくなんてないけどさ」

 

「そっそうですわね。ただお礼はちゃんと受け取らないといけないとは思いますけど。それと香澄、貴方さっきから口調が素に戻っていますわよ・・・」

 

四人が火花を散らしていると警察と真由美が体育館へと入って来た。

 

「はち君大丈夫?ケガはない?」

 

「俺は大丈夫ですよ会長。妹さん達も無傷です」

 

香澄と泉美はジト目で真由美を見ながら言う

 

「ちょっとお姉ちゃん、心配するならまず私達が先でしょ?」

 

「そうですわ。いくら四葉先輩がお気に入りだからって酷いですわ」

 

「いやぁねぇ~、もちろん香澄ちゃんと泉美ちゃんの事も心配してたわよ?」

 

言い訳をする真由美を横目に八幡は明らかに元気がないいろはに気が付く

 

「一色どうしたんだ?急に元気がなくなったな?」

 

「改めて考えると私は何にもしてないなと思いまして・・生徒会長なのに情けないなって」

 

どうやらいろはは香澄や泉美、水波達と比べ今回役に立てなかった事に落ち込んでいる様だった。

八幡はそんないろはに対して諭す様に言う。

 

「いいか一色。お前らはまだ中学生なんだぞ?何も出来なくて当たり前だ。ここだけの話だが水波は四葉のメイドとして実践を想定した特別な訓練を受けている。だからあの位はできるんだ。それに俺が来るなって言ったのにここまで来たじゃないか。普通は怖くて来れないと思うぞ?だから落ち込む必要なんかないからな。」

 

「先輩・・・」

 

八幡はこれで大丈夫だろうと思ったのだが

 

「なんでそこで私の頭は撫でないんですか?あれですか?差別ですか?香澄と泉美はそんなに可愛いですか?」

 

「え?ちょっ、なんだよ急に。お前全然元気じゃねーか!」

 

「そんな事もうどうでもいいんです!はっ!?まさか口説いてるんですか?好きな子には意地悪しちゃうとかいうあれですか?正直それも効果絶大なのでやめて下さい。ごめんなさい。」

 

八幡は呆れながらもいろはの頭を撫でてやる。

 

「わかったわかった。これでいいのか?」

 

「はうっ、急にされると逆に・・・ホントに先輩はあざといですね・・・」

 

そこに今度は水波が

 

「八幡様、私も頑張ったと思うのでご褒美が欲しいです」

 

「お前もか・・・ほらこれでいいか?」

 

「あっ、ありがとうございます・・」

 

八幡は水波を見て思う

 

(水波も変わったよな。初めて会った頃とは別人だな。まぁ本当はあっちが四葉の守護者(ガーディアン)としては正しいのかもしれないが・・・俺は水波にもなるべく普通の女の子として生きて貰いたいからいい傾向だな)

 

「あの・・四葉君。そろそろいいかな?少し話を聞きたいんだが・・」

 

そう言って話しかけて来たのはテロリスト達の連行を終えた寿和だった。

 

「千葉さん、やっぱり話さないとダメですか?正直疲れたんですけど・・」

 

「すまない。事件を解決してくれた事は感謝してるんだけどね。こればっかりは一応ね・・」

 

「分かりました。直ぐに行きますので外で待っていてもらえますか?」

 

「分かった」

 

八幡は寿和にそう言うと小町と水波を横に来るように呼ぶ。

 

「小町、水波ちょっとこっちに来い」

 

「どしたのお兄ちゃん?」

 

「八幡様?」

 

二人が来ると八幡はそこに居る生徒と教師全員に話す。

 

「すまん、皆に少しお願いがあるから聞いて欲しい。もう分かってるとは思うが俺は四葉八幡。四葉家現当主、四葉真夜の息子だ。三年生には知ってる奴もいるかも知れないが俺は中学二年の冬までこの総武中学に「比企谷」として通っていた。比企谷小町の兄としてな。まぁ、ここに居る小町はまだその時小学生だったんだが」

 

知ってた者も知らなかった者もこの話を聞き騒めく。

 

「えっ?四葉さんが総武中学に?」

 

「あっ、そーだよ思い出した!確かにあの時は比企谷君だった」

 

「でも小町先輩のお兄ちゃんなんだよね?」

 

「どういう事?」

 

「事情があって俺達が四葉家の人間だと言う事は秘密にしたかったんだ。主に俺が静かに暮らしたかったからなんだがな。でもまぁこれも事情があって、俺は四葉八幡と公表する事にしたわけだ。そしてここに居る小町だが・・・簡単に言うと俺の従兄妹だ」

 

「「「「「えーーーーーーーーー」」」」」

 

これには香澄と泉美といろはも驚く。

 

「て事は小町は四葉家の分家の人・・・」

 

「小町さんが・・・」

 

「小町ちゃんが四葉・・・」

 

小町は少し気まずそうに苦笑いをしながら。

 

「ええ・・まぁ、そう言うことになりますね。えへへ・・」

 

「そしてここに居る桜井水波は四葉家のメイドだ」

 

「「「「「えーーーーーーーーー」」」」」

 

また全員が驚く中水波は

 

「初めまして。八幡様せ・ん・ぞ・くメイドの桜井水波です」

 

ドヤ顔でそう言った。

 

「「「「「えーーーーーーーーー」」」」」

 

「嘘をつくな嘘を・・・とにかくだな、ここからが本題だ」

 

八幡は急に頭を下げる。

そんな八幡の突然の行動に騒いでいた者達も静かになる。

 

「どうかこれからもこの二人を今まで通り受け入れてやってほしい。二人が四葉の縁者だと分かれば好奇心で近づいてくる奴も居るかも知れない。俺が常にそばに居て守ってやる事もできないしな・・」

 

「お兄ちゃん・・」

 

「八幡様・・」

 

八幡の話を聞き最初にいろはが言う

 

「任せて下さい先輩!小町ちゃんと水波ちゃんはこの生徒会長一色いろはが守ってみせます!」

 

続いて香澄と泉美も

 

「四葉の先輩には借りもできちゃったしね。ボク達に任せてよ八幡先輩」

 

「そうですわね。それに借りがなくても小町さんと水波さんは大切な後輩ですし。お任せ下さい八幡様」

 

これに反応したのは真由美だった。

 

「ちょっとあなた達!八幡先輩とか八幡様って一体何よ」

 

「別に~、四葉先輩って言いづらいから何となく?」

 

「そうですわ。深い意味など決してありません」

 

「呼び方はともかく三人ともありがとな」

 

そして他の生徒達も

 

「私達も会長達と同じ気持ちです」

 

「心配しないで下さい」

 

「ちょっかい出す様な奴が居たら俺が命に代えても守ってみせます」

 

「そうか・・・ありがとな。でももしこの二人に手を出したら殺すからな?」

 

「いやいやお兄ちゃん。そこは素直に感謝しよーよ」

 

そして静も

 

「四葉・・・確かにお前を四葉って呼ぶのは違和感が凄いな。・・・よし八幡!私達教師も目を光らせて置くから心配するな」

 

「先生・・・ありがとうございます」

 

こうして言いたい事を言った八幡は寿和に話をする為体育館を出た。

寿和への説明は使った魔法に関してだけ適当に誤魔化し概ねあった事をそのまま話し直ぐに終わった。

 

そして

 

「それでは先生また今度」

 

「ああ。今度は久しぶりにラーメンでも食べに行こうじゃないか」

 

「いいですね、ぜひ。一色もまたな」

 

「はい、先輩。九校戦は私もお姉ちゃんの応援で見に行くんでその時にでもまた」

 

「俺は出るか分からんけどな。取り敢えず分かった」

 

「それでは会長また学校で」

 

「ええ。はち君今日は本当にありがとうね」

 

真由美が礼を言うと香澄と泉美がおもむろに八幡に近づき。

 

「「ちゅっ」」

 

それぞれ左右の八幡の頬にキスをした。

 

「「なっ」」

 

「ありゃ~」

 

「おっ、おまえりゃ、にゃにしてんだ・・」

 

「「命を救って貰ったんだからこれ位当然です(わ)」」

 

これを見た真由美は八幡に掴みかかり

 

「はち君ずるい!私の命も救いなさい!」

 

「かっ会長落ち着いて下さい(何か前にも同じような事があったな・・・)」

 

そして水波は

 

「八幡様、いい加減にして下さい」

 

「いや、俺は何もしてないんだが・・・」

 

「八幡様が隙だらけなのがいけないんです!」

 

そして小町は・・・

 

「あっ深雪さん?うん・・・ニュース?それはもう解決したから大丈夫。それよりお兄ちゃんが・・・じゃなくって双子の妹の方・・うん・・そう・・・」

 

深雪に報告していた

 

とにかくこれでやっと事件は解決し、入学のお祝いをする為芽夜の待つ比企谷家へと三人は帰る事にした。

 




もう一話で終わります。


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八幡の冗談は冗談に聞こえない

八幡は総武中学を出た後比企谷家に帰る前に買い物をしていた。

 

「お兄ちゃんスーパーなんかに寄って何買うのさ?」

 

「十文字先輩に頼まれてたマッ缶だ。あとあーちゃん先輩の分も買って行かないとな」

 

「あーちゃん先輩?ああ、お兄ちゃんに怯えてるって言う先輩だね」

 

「そうだ。あーちゃん先輩に嫌われたままじゃ嫌だからな」

 

「マッ缶じゃダメだと思うけどね・・・」

 

「八幡様・・今度はまた別の先輩ですか?次から次へと・・全く」

 

「おい水波、何がまたかは分からんがあーちゃん先輩とは何もやましい事はないからな?」

 

「お兄ちゃんがもう何言っても信用ゼロだけどね・・」

 

「そう言えば小町ちゃん?さっき深雪になんか報告してたよね?」

 

「うん!洗いざらい伝えておいたからね!帰ったら覚悟しておいた方がいいよ!」

 

「・・・・・・」

 

八幡は深雪の分のマッ缶も一ケース買い足す事にした。

 

 

帰って来た三人を芽夜が待ちわびて居た様に迎えた。

 

「お帰りなさい、やっと帰って来たわねー!ニュースで見たけど無事解決した様ね。八幡も映っていたわよ」

 

芽夜の言葉を聞き八幡は驚愕する。

 

「な・・何だ・・と・・・」

 

「そう言えばテレビ局の中継が結構居たよね」

 

「はい、むしろ皆さん八幡様ばかりにカメラを向けて居ましたよね?」

 

「勝手に人の顔を晒しやがって、訴えてもいいかな?勝てるよね?」

 

「諦めなさい、それに別にいいじゃない。まるで英雄扱いだったわよ?『四葉家の御曹司母校を救う』とか『やはり最強は四葉か?テロリスト数十名を無傷で撃退』とかね」

 

「おいおいマジかよ・・・他の十師族を刺激するんじゃないですか?母さんにも何を言われるか・・・」

 

「姉さんなら大丈夫でしょ?むしろ面白がってきっと楽しんでるわよ」

 

「確かにそれは有りそうですね・・・」

 

「取り敢えず詳しい話も聞きたいし続きは中でしましょう」

 

リビングに移動した八幡はさっき起きた事を芽夜に全て話した。

 

「七草の魔法ね・・確かにそれを見せたのはまずかったわね。貴方なら他の魔法で全員倒せたんじゃないの?」

 

「確かに倒すだけなら簡単でしたけどなるべく怪我はさせたくなかったので・・操られてる可能性もありましたしね・・」

 

八幡がそう言うと芽夜は八幡の顔を見つめる。

居たたまれなくなった八幡は

 

「なっ何ですか一体?そんなに見つめて」

 

「テロリストを無傷で倒した理由だけど・・・それって嘘よね?だって平塚先生が撃たれたのに貴方が我慢できるわけないもの」

 

「そう言えばお兄ちゃん生徒会室ではめちゃくちゃ怒ってたよね?」

 

「じゃあ本当の理由は・・八幡様何故ですか?」

 

八幡が中々答えないので芽夜が代わりに答える。

 

「小町に水波、それはね?八幡はそこに居た生徒達に凄惨な光景を見せたくなかったからよ?」

 

「「えっ?」」

 

「いくら才能があるとはいえ中学生はまだ子供よ?そんな子供達が本当の殺し合いを見てしまったらどうなると思う?全員じゃないにしろトラウマなり精神的なダメージを負いかねない。そうなったらその時点で魔法師を諦めなければならない子供達も出てくるわ。八幡はそれを避けたかったのよ」

 

芽夜はそう言いながら八幡を見るが、八幡は恐らく言い当てられたのが恥ずかしいのかそっぽを向いていた。

 

「お兄ちゃん・・そこまで考えてたんだ。小町的に超々ポイント高いよ!」

 

「流石です!水波的にも超々ポイント高いです!」

 

「もちろん芽夜的にも超々ポイント高いわよ!」

 

「もういいだろこの話は。俺は疲れたから少し寝る。夕飯ができたら起こしてくれ」

 

八幡は恥ずかしさのあまり逃げるようにリビングを出て行った。

 

「本当にあの子は変な子よね。時には一切の情を捨てた冷徹な悪魔、かと思えば今日みたいに誰よりも優しくなったり・・」

 

「でもお兄ちゃんがその悪魔になる時も誰かのためだけどね」

 

「はい!結局誰よりも優しくて強いのが八幡様ですから」

 

「その通りね。どうやら女の子にも結構モテてるみたいだしね?」

 

「いやいやお母さん、あれは所かまわずフラグを立てる天然ジゴロ野郎だから」

 

「そうですよ芽夜様。八幡様はもう少し自分の行動に責任を持った方がいいです!」

 

「あらあら、それは水波も深雪も大変ね?」

 

「わっ私は別に・・ただ八幡様が心配なだけで・・・」

 

「ふ~ん、そんなんじゃ小町に取られるわよ?」

 

「「はっ?」」

 

芽夜の発言に二人は一瞬固まる。

 

「こっこここ小町っ!?そうなんですか?」

 

「いやいやないから!小町は妹だからね?」

 

「さっき八幡にも言ったけど貴方達は従兄妹同士よ?」

 

「・・・・・、いやいやそれでもないからね?」

 

「今の間はなんですかっ!?」

 

「あら?小町もまんざらでもないのかしら?」

 

「もぉお母さん変な事言うのやめてよ!小町はお兄ちゃんの妹です!」

 

結局この話題は夕食の時間になるまで続いた。

 

そして八幡を起こして四人で夕食を食べているのだが・・・

 

「小町」

 

「なっ何?」

 

「なんかあったのか?」

 

「べっ別に何にもないよ!いつも通りだよ(もぉ!お母さんが変な事言うから変な空気になってるじゃん)」

 

さすがにからかい過ぎたと反省した芽夜は話題を振る。

 

「そう言えば八幡は九校戦には出るの?てゆーか出て!八幡の活躍する所が見たいわ」

 

「まだ先の話し何でわかりませんよ。取り敢えず選ばれるかもわかりませんし」

 

「あなたが入試みたいに手を抜かなければ選ばれるでしょ。むしろ手を抜いても選ばれるんじゃない?」

 

「例え選ばれたとしても出るかどうかは母さん次第ですね。まぁ深雪は必ず選ばれるでしょうからそちらを楽しみにしてて下さい」

 

「深雪が出たらきっと注目の的でしょうね。ファンクラブとか出来ちゃったりして」

 

「ファンクラブ・・」

 

「あれだけ綺麗だったら他校の男子もほっとかないでしょ?」

 

「まっ、まぁ深雪はそんなの気にもしないと思いますけどね」

 

「(おっ、動揺してるわね?)そうかしら?深雪だって年頃の女の子だし興味がないわけじゃないんじゃない?」

 

「なっ!?そうなのか小町?」

 

「ん~、そうかもね?小町だって興味はあるしね」

 

「なんだと?水波もか?」

 

小町は水波に目で合図を送る。

 

「えっ?あっ。はっはい!それは勿論ありますよ」

 

「・・・・・そうなのか」

 

八幡は何かを考えるように黙り込んだ。

 

「(ちょっとからかい過ぎたわね。この位にしとくかしら)なーんてね、冗だ・・・」

 

芽夜がそう言おうとした時八幡は答えが出た様で

 

「九校戦って確か魔法協会主催だったよな?あそこが無くなれば中止になるよな?」

 

「「「はい?」」」

 

「ちょっと今から消してくる」

 

それを聞いて三人は本気で焦りだす。

 

「待ちなさい八幡!今のは冗談だから!そんな事したら日本中の魔法師と戦争になるわよ!」

 

「そうだよお兄ちゃん!いくら何でもそれはダメだから」

 

「八幡様、落ち着いて下さい!」

 

すると八幡は

 

「なんてな。冗談に決まってるだろ?仕返しだ」

 

「貴方が言うと冗談に聞こえないのよ!」

 

「そうだよ!実際に出来ちゃうじゃん!」

 

「勘弁して下さい」

 

「とにかく九校戦の事はまだわからんな。あと小町と水波の彼氏は俺より強くないと認めないからな」

 

「八幡のシスコンぶりは達也以上よね・・」

 

「お兄ちゃんより強い人なんていないから」

 

「私は彼氏何て作りません・・」

 

この日三人は比企谷家に泊まり、八幡は翌日早朝にマッ缶を抱えて自宅に帰った。

 




途中から何書きたいのか分からなくなりました(;'∀')すいません


次回からようやく九校戦編です。


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九校戦編
八幡は深雪の為に九校戦に出る事になる


ブランシュ残党による総武中学占拠事件から約二か月が経った。

あれから八幡は深雪にマッ缶を一ケース渡しただけでは許してもらえず、五月の連休に買い物に付き合うことで許して貰ったり(八幡もノリノリで出かけた)、克人にマッ缶を一ケース渡したら偉く感謝されたり、あずさには「一ケースは多いので三本でいいです」と言われて残りをいつものメンバーに配ったら全員微妙な顔をしたりと色々あった。

そして今第一高校では九校戦メンバーの選抜も兼ねた定期試験が目前に迫っていた。

 

八幡は九校戦をどうするか指示を仰ぐため真夜に連絡を取ろうとしていた。

 

「これはこれは八幡様。お久しぶりで御座います」

 

「お久しぶりです葉山さん。母さんは近くに居ますか?」

 

葉山忠教・・・先代当主の頃から四葉本家に仕える執事で、八人居る執事の中で執事長も務めている。

他の執事達とは違い、プライベートを含め常に主である真夜の傍に居る。

さらに四葉家内でも唯一達也の事を軽んじてはおらず(今はある出来事により露骨に態度に表す人間は少ないが、深雪の守護者である達也は四葉家内では見下されがちだった。)高い評価をしている。

 

「はい、今かわりま・・「葉山さん早くどいて頂戴!あっ八幡?」す・・・」

 

「はぁ・・久しぶりだな母さん」

 

「久しぶりね。もっとマメに連絡してくれてもいいのに」

 

「ここ最近は報告する事もたいしてなかったからな」

 

「そうじゃないわよ。親子のコミュニケーションよ。中々直接は会えないんだから、せめて声を聴いたり顔を見たりしたいもん」

 

「したいもんて・・・」

 

「それで今日はどうしたの?もしかして九校戦についてかしら?」

 

「やっぱり分かってたのかよ」

 

「八幡の事ならなんでもお見通しよ」

 

「・・・・・・。」

 

「八幡の事ならなんでもお見通しよ」

 

「二回言わなくても聞こえてるからな?それで・・・どうしたらいい?」

 

「勿論出なさい。そして格好いい姿を私に見せるのよ」

 

「マジで出てもいいのか?」

 

「ええいいわよ。でも条件があるわ」

 

「力を抑えろとかか?」

 

「いいえ。ある程度は本気でやっても構わないわ。それより深雪さんも多分出場する事になるわよね?」

 

「まぁ深雪の実力なら間違いなく選ばれるだろうな」

 

「だから八幡、貴方は深雪さんより目立って誰かが深雪さんの力に疑いを持つ事から守るのよ」

 

深雪の魔法力は八幡と達也を除けば間違いなく一高ではトップクラスである。

ナンバーズでもない出身という事になっている深雪がそれだけの力を持っている事が知られたら、必ず十師族もしくはナンバーズの関係者なのではないかと疑いを持つものが現われるはず。

真夜はその目を逸らす為に、八幡に深雪よりも目立てと言ったのである。そしてその為なら本気を出してもいいと。

 

「でもいくら俺が頑張っても深雪は目立ってしまうと思うぞ?」

 

「それもそうなのよね・・・かと言って私が深雪さんの出場を止めたりしたら八幡が怒るじゃない?」

 

「深雪には出来るだけ不自由な生活はさせたくないからな・・・せめて今しばらくは・・・」

 

「だから例え完全には無理でも貴方が居れば少しはその目を逸らせるじゃない?」

 

「そうだな。・・・ありがとな母さん」

 

「いーのよ。私も深雪さんの事は実の娘の様に可愛いんだから。あっ、でも深雪さんが八幡と結婚したら本当の娘になるわね」

 

「けっ結婚って、にゃっにゃに言ってんだ」

 

「でも八幡は渡したくないわね・・・」

 

「とっ取り敢えず九校戦に着いては了解したからな」

 

「ええ、私も直接応援に行こうかしら?」

 

「いやいや来なくていーから!母さんが来たら凄い騒ぎになるから」

 

「別にいいじゃない!息子の応援をするのは母親として当たり前よ!」

 

「自分の立場を考えてくれ!とにかく今日はもう切るからな。選手に選ばれる為にも試験に向けて勉強しないとな」

 

「何言ってるのよ。達也さんと同じ瞬間記憶能力を持ってる貴方が勉強何て必要ないじゃない」

 

「記憶するには一度見ないとできないだろ?」

 

「ふん!じゃあいいわよ!もう切るわよ!べっ別に寂しくなんかないんだからね!」

 

「まぁあれだ、今度からはもう少しマメに連絡するから今日はこの辺で切るぞ?」

 

「そんな事言われたって別に嬉しくなんてないんだからね!」

 

最後にそう言って真夜は電話を切った。

 

「疲れた・・・今日はもう寝るか・・。」

 

八幡が真夜になるべく連絡したくない本当の理由は疲れるからであった。

 

 

そして数日後、定期試験が無事終わり結果が発表された。

 

 

 

順位   実技       

 

 

1位 1-A 四葉八幡 

 

 

2位 1-A 司波深雪

 

 

3位 1-A 北山雫    

 

 

4位 1-A 光井ほのか   

 

 

5位 1-B 十三束鋼  

 

 

 

順位   理論

 

 

1位 1-A 四葉八幡  1-E 司波達也

 

 

3位 1-A 司波深雪

 

 

4位 1-E 吉田幹比古

 

 

5位 1-A 雪ノ下雪乃   

 

 

 

順位   総合            

 

 

1位 1-A 四葉八幡    

                                      

 

2位 1-A 司波深雪    

 

 

3位 1-A 北山雫     

 

 

4位 1-A 光井ほのか   

 

 

5位 1-A 雪ノ下雪乃   

 

 

 

 

翌日、八幡と達也が指導室に呼ばれたと聞いて、仕事で生徒会に行った深雪以外のメンバーが指導室の前で二人が出て来るのを待っていた。

 

「失礼しました」

 

「・・・・・。」

 

指導室から出てきた八幡と達也を見つけてメンバーは駆け寄る。

一科生と二科生が一緒に行動しているので元々目立っているのだが、女子メンバーは言わずもがな美少女揃い、レオも日本人離れした顔立ちでそれなりに人気がある。さらに風紀委員としてクラブ活動勧誘期間から始まり数々の武勇伝を作り続けている達也。極めつけは元々四葉という名前だけで目立つのに、入学早々の食堂での件に続き先日の総武中学占拠事件の解決でのメディアへの露出。いい意味でも悪い意味でも有名な八幡。このメンバーが一緒に居ればやはり相当目立つのだ。

 

そのせいで周りが騒がしかった事も有り苦笑いしながら達也が聞く。

 

「如何したんだ皆して。お出迎えか?」

 

それに対してレオが

 

「如何したはこっちのセリフだぜ達也。指導室に呼び出されるなんて二人とも何があったんだよ」

 

「簡単に言えば俺は入試や今回の実技試験で手を抜いたんじゃないかと疑われた」

 

「なるほどな。魔法理論ではトップなのに実技はなんでいまいちなんだ?って事か?」

 

「まぁそう言うことだが手を抜くメリットが俺にないと言ったら一応は納得した様だ」

 

そして今度は雪乃と結衣が八幡に聞く。

 

「じゃあヒッキーは何で呼ばれたの?」

 

「八幡君は文句なしで総合トップの結果だったわよね?」

 

二人の言葉にメンバー全員が頷く。

 

「まぁいいじゃねーか。もう済んだ事だ・・・」

 

八幡がなんとか誤魔化そうとそう言うが達也が横から

 

「八幡が呼ばれた理由はだな。「何であれだけ授業をサボってるのにこの点数が取れるんだ」って言う単純な疑問からだ」

 

それを聞いて全員が八幡をジト目で見る

 

「ヒッキーそうなの?なんか凄いけどずるいし!不公平だし!私は補習ギリギリなのに・・」

 

「結衣さん、実技はともかく理論は自業自得よ。一緒に勉強して居ても直ぐにサボるのだから」

 

「うっ!」

 

結衣に続きエリカと美月は

 

「でも八幡ってやっぱり凄いのね。普段はやる気ないのにね」

 

「八幡さん尊敬します。サボるのは尊敬できませんけど」

 

そして雫とほのかは

 

「八幡。次の試験の時は私に勉強を教えて」

 

「あっ、私にもぜひお願いします」

 

「俺は教えるのとかは得意じゃないんだけどな・・まぁ今度は皆で勉強会でもすればいいんじゃねーか?」

 

こうして八幡は無事定期試験を終えたのだった。

 




真夜は八幡と話す時だけこんな感じなだけで普段はちゃんとしてますからね!


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達也のエンジニア推薦とバイアスロン部の見学

誤字脱字報告ありがとうございます<(_ _)>


この日八幡は真由美と深雪に誘われた為昼食を生徒会室で取っていた。

そして先ほどから真由美は九校戦のメンバーをどうするか頭を抱えながらずっと唸っていた。

見兼ねた八幡が真由美に聞く

 

「まだ選抜選手が決定してないんですか?」

 

「選手の方は十文字君が手伝ってくれたおかげで何とかなったんだけど・・・問題はエンジニアなのよ」

 

「エンジニアですか・・・」

 

そこで摩利も話に入ってくる

 

「何だまだ決まってないのか?」

 

「二年生はあーちゃんとか五十里君とか、優秀な人材が揃ってるんだけどね」

 

そこで八幡は大袈裟に頷きながら

 

「さすがあーちゃん先輩ですね!お兄ちゃんとしては鼻が高いです」

 

「だから私は先輩です!四葉君の妹じゃありませんからね?」

 

あずさは意外とマッ缶を気に入ったらしく、あれ以来たまに貰える八幡からの差し入れを楽しみにしていた。

そのせいもあって入学当初にあった八幡への恐怖心も今はほぼ無くなっていた。

 

「まーまー、いいじゃないですか。また差し入れ持ってきますから。ね?」

 

「うっ、仕方がないですね・・今回は許します・・・」

 

そのやり取りを見て居た真由美と摩利が

 

「あーちゃん・・貴方完全に餌付けされてるわね・・・」

 

「本当に兄妹に見えて来たな・・」

 

そして深雪も

 

「やっぱり私も水波みたいに八幡お兄ちゃんて呼ぼうかしら・・いや、でも私は妹よりも・・・」ブツブツ

 

脱線した話を摩利が戻す

 

「でも五十里は調整はそんなに得意じゃ無いと聞いていたが?」

 

「そんな事言ってられる状況じゃないのよ。十文字君と私でカバーするって言っても限界があるし」

 

「お前たちは主力だからな・・他のヤツのCADの面倒を見ていて自分たちの事が疎かになったら洒落にならんぞ」

 

「せめて摩利が自分のCADくらい自分で調整出来れば良いのだけれどね・・・」ジー

 

そう言うわれた摩利は気まずそうに真由美から目を逸らす

 

「ねぇリンちゃん。やっぱりエンジニアやってくれない?」

 

しかし鈴音は

 

「無理ですね。私の腕では中条さん達の足を引っ張るだけです」

 

そこで八幡が

 

「だったら達也はどーですか?」

 

その言葉にあずさものってくる

 

「司波さんのCADは司波君が調整してる様ですし、一度見せてもらいましたが一流メーカーのクラフトマンにも勝るとも劣らない出来でした」

 

達也のもう一つの顔、トーラス・シルバー 。これはフォア・リーブス・テクノロジーに所属する魔法工学技師の名前である。しかし四葉が念入りに情報をブロックしており、本名、姿、プロフィールなどは一切公開されていない。達也の使うCAD「シルバーホーン」もトーラス・シルバー の作品で有り、それを見たCADマニアのあずさが目を輝かせて居た事からトーラス・シルバー のファンで有る事も周知の事実である。

そんなあずさが知らないとは言えトーラス・シルバー本人である達也の腕を認めないわけがない。

 

「ですよねあーちゃん!」

 

「はい!って、もう先輩も無くなってるっ!?」

 

「それに深雪もCADを調整して貰うなら達也の方が安心だろ?」

 

「ええ勿論よ。、お兄様が一番安心できるわね。それに雫やほのかや雪乃も同じ気持ちだと思うわ」

 

そして達也は少し考えた後

 

「・・・はぁ。分かりました・・・引き受けますよ。他の方々が二科生の俺を簡単に認めるとは思えませんがね」

 

それに対して真由美と摩利は

 

「前例が無いのは分かってるわ。でも達也君の実力なら皆納得するわよ」

 

「というか納得せざるを得ないだろうな」

 

「それじゃあ達也君、貴方の調整技術を皆に見せる為に放課後部活連本部でやる予定の会議に来てね」

 

こうしてこの場での話は纏まった。

 

 

 

 

放課後になり達也に付いて行こうとした八幡だったが、それは達也本人と真由美に止められた。

 

「さっきも言った通り二科生の俺をあっさり認めるとは思えないからな。それに対してお前がまた暴れでもしたら大変だからな。」

 

「はち君、私も達也君と同じ意見よ。絶対に来ないでね?いい?絶対によ?」

 

「会長、それはフリですか?」

 

「違うわよ!今回は冗談抜きで本当に大人しくして居てね!」

 

八幡も自覚がある為大人しく従う事にした。

 

「わかりましたよ・・・俺は行きません。」

 

その後会議の冒頭で達也のエンジニア入りが発表されたが、やはり大多数の生徒が反対した為達也の腕を見せる事になった。そこで披露された達也の完全マニュアル調整という高すぎる技術はその場に居たほとんどの者が理解できないレベルだった為逆に簡単には納得しなかった。しかし桐原が自ら達也の調整したⅭAⅮを試したり、自身も優れたエンジニアであるあずさ、さらに克人、真由美、摩利の一高三巨頭、そして止めは且ては達也を二科生だからと侮って居た副会長の服部までもが推薦した為誰も反対できる者はいなくなった。

 

一方その頃八幡は、今日の帰りは司波家に寄ることになっていたので、達也と深雪の仕事が終わるまで暇を持て余していた。

そこで以前からほのか達に来てと言われていたバイアスロン部の練習を見に来ていた。

 

正確にはSSボード・バイアスロン部

 

SSボードは、スケートボード&スノーボードの略。それを使用して移動しながら設置された的を魔法で撃ち抜きつつ林間コースを走破する競技なのだが・・

 

(これって目のやり場に困るな)

 

この部活は現在女子しか居ない上にけっこう激しい動きをするので、ついつい揺れる二つのアレに目が行ってしまうのだ。

 

(俺は断じて悪くない!だって男の子だもん!)

 

八幡がそんな風に言い訳を考えているとほのかと雫、雪乃と結衣が休憩の為八幡の元へやって来た。

 

四人が近くに来ると八幡はついつい流れで目が行ってしまった。

 

(ほのかと結衣はあれだな。うん・・立派な物をお持ちだな。雫と雪乃は細い分それなりだが・・まだ諦めるには早いぞ。)

 

「八幡どこ見てるの?」

 

「八幡君・・今何か不愉快な事を考えて居なかったかしら?」

 

「八幡さん?」

 

「ヒッ、ヒッキーどこ見てるし!エッチ・・・ううう」

 

雫と雪乃は不機嫌そうにそう言い、ほのかと結衣は恥ずかしそうに自身の胸を隠す様にする。

 

「すっすまん。ついな・・」

 

「まぁ呼んだのは私ですから今回は許してあげます」

 

ほのかがそう言うと八幡は感謝し話題を変える。

 

「そう言えば結衣以外の三人は九校戦のメンバーに選ばれたんだろ?」

 

「うん。楽しみ」

 

「はい。雫は毎年現地に見に行く位九校戦が大好きな上に、今年は自分が出るから人一倍張り切ってるんだよね」

 

「私は今回辞退・・・というか控えに回らせて貰う事にしたの」

 

雪乃の言葉を聞き八幡は心配する。

 

「そうなのか?何か問題でもあるのか?」

 

「問題と言えば問題ね。悔しいけれど体力が無さ過ぎて最後まで競技をやり通す自信がないのよ。この部活も半分は体力作りの為に入った様なものだもの」

 

八幡はそれを聞いて納得した。確かに雪乃は中学の頃から全て完璧に見えて体力だけは無かったのだ。

 

「そうか・・・でも意外だな。負けず嫌いの雪乃なら選ばれたからには無理にでも出たがる様な気がするけどな」

 

「昔の私ならそうだったでしょうね・・でも貴方が居なくなってから私も変わったのよ。姉さんを追いかけるのももうやめたし・・・」

 

「そうか・・・」

 

八幡はそれを聞き一人の女性を思い出す。

 

雪ノ下陽乃・・雪乃の姉で有り八幡並みのシスコンである。でも当時そのシスコンをこじらせて雪乃との仲はあまり良くなかった。

 

(陽乃さんか・・確か彼女も一高の卒業生だったはず。今は国立魔法大学に通ってるはずだよな?それに陽乃さんとの仲もだが雪乃は実家とは今どうなんだろうな・・・今聞く事でもないし今度機会があったら聞いてみるか)

 

「まぁあれだ、雪乃なら来年も選ばれるだろうし今は体力作りを頑張れ」

 

「ええ、そのつもりよ」

 

話を聞いていた結衣も

 

「そうだよ!ゆきのんなら来年も再来年も選ばれるに決まってるよ」

 

「おい結衣!お前も可能性はあるんだから頑張れよ」

 

「えっ?私は無理だよ。二科生だし・・」

 

「俺の前でそれを言うのか?」

 

「でも・・・」

 

「俺はお前がやればできる子だって知ってるからな。一高にだって頑張ったから入れたんだろ?」

 

「うっうん!」

 

「だったら最初から諦めるな。来年か再来年には元奉仕部三人で九校戦に出るぞ」

 

「そうね。結衣さん頑張りましょう」

 

「わっわかった。私頑張る」

 

良い感じになっている三人に雫とほのかは

 

「八幡。私とほのかも居るんだけど」

 

「そうですよ!皆で頑張りましょう」

 

「そうだな!取り敢えず今年は俺達が頑張るか」

 

そこに部長の亜美から声がかかる。

 

「皆そろそろ練習再開するわよー」

 

それを聞き八幡も

 

「んじゃ俺もそろそろ行くわ。練習頑張れよ」

 

「はい。八幡さんまた見に来てくださいね」

 

「それじゃあね八幡君」

 

「ヒッキーまた明日」

 

最後に雫が

 

「八幡・・今度また見に来てもほのかと結衣の胸は見たらダメ」

 

「うっ、すいませんでした」

 

結構根に持っていた。

 




陽乃の名前だけ出してみました。登場するかは未定です。


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飛行魔法と出場競技

八幡がヤンデレ化してしまった・・


バイアスロン部の見学を終えた八幡は達也と深雪を待つため校内にあるカフェで時間を潰した。

そして二人がそれぞれの仕事を終えて八幡も合流し三人は司波家へと帰って来た。

 

「お兄様、八幡、今紅茶を入れるから少し待っていて下さいね」

 

深雪は部屋着に着替えており、八幡は今日も当然その深雪に見惚れていた。

 

「(やっぱり深雪は可愛いよな。九校戦に出たらホントにファンクラブとか出来るんじゃねえか?かと言ってそれを阻止する事もできないしな・・・)はぁ・・」

 

「溜息なんてついて如何したんだ?」

 

「もう皆殺しにするしか・・・」

 

「おい八幡っ!何を物騒な事を言ってるんだ?」

 

「いや・・大した事じゃない」

 

「そうか・・(皆殺しが大した事じゃない?本当に大丈夫なのか?)」

 

その後深雪の入れた紅茶を飲んだ後八幡と達也は司波家の地下へと向かった。

地下には達也専用のラボが有り、その規模はとても一般家庭に設置されているとは思えない機材などが並んでいる。

八幡が今日ここに来た理由は、達也が既に完成目前までこぎつけている「常駐型重力制御魔法」を使った「飛行魔法」のテストに付き合う為である。

 

「テストと言ってももうほとんど完成してるんだろ?」

 

「まぁそうなんだが、八幡は唯一不可能とされている重力制御魔法のみでの飛行魔法が可能な人間だからな。二つを比べてどうなのか感想を聞きたい」

 

「分かった取り敢えずやってみるか。CADを使うのも久しぶりだな」

 

そして八幡は飛行魔法の起動式がインストールされているCADを使って飛んでみた。

 

「どうだった?何か問題はあったか?」

 

「いや、特に無いな。これを使っても使わなくても違和感がないからな」

 

「・・・・・・」

 

達也が無言でこちらを見つめている為八幡は疑問に思う。

 

「どうしたんだ?」

 

「いや・・今のおまえの発言がちょっとな・・」

 

「だからなんだ?」

 

「おまえは今違和感が無いと言ったが・・それはつまりこのCADと同じことをお前は自力で出来るという事だよな?いや、以前から出来たの方が正しいか」

 

「まぁそうだな・・・あっ!?」

 

「気が付いたか。そう言う事だ。お前が自力でやっていた事が実は「常駐型重力制御魔法」で、それをCADにインストールすれば飛行魔法はもっと早く完成していたと言う事だ」

 

八幡は少し気まずくなり言い訳を始める

 

「俺も飛行魔法を使う事なんてほとんどなかったからな。俺が使ってる起動式を達也が見て居たら気が付いたかもしれないが・・・でも自力でそれを開発するなんて凄いじゃないか。俺は感覚で使っていただけだからな」

 

「お前の方がよっぽど凄いんだがな・・まぁいい。後はこれを誰でも使えるかのテストだな」

 

そこでラボのドアをノックする音が聞こえた。

 

「お兄様、八幡、深雪です。入ってもよろしいでしょうか?」

 

「丁度良いな。深雪、早く入って来いよ」

 

八幡がそう促すと深雪が中に入って来る。そして深雪の姿に八幡はまた見惚れてしまう。

 

「どうでしょうか?お兄様、八幡」

 

その問いに、固まっている八幡より先に達也が先に答える。

 

「ああ、フェアリー・ダンスのコスチュームか」

 

深雪が出場する九校戦の花形競技ミラージ・バット、別名フェアリー・ダンス。深雪が着ていたのはそのコスチュームだった。

 

「とても可愛いよ。本当によく似合ってる。」

 

「ありがとうございます。それで・・その・・・八幡はどうなの?」

 

そう言う深雪の再度の問いかけに八幡はやっと再起動する。

 

「あっああ、よく似合ってるよ。可愛いと思うぞ・・・だけど・・・」

 

「だけど?」

 

「ちょっと下が短過ぎないか?大丈夫なのかそれ?ミラージ・バッドは空に飛び上がるし・・」

 

「大丈夫よ。素足なわけでもないし、ちゃんとそう言う事に配慮した作りになっているのよ」

 

「しかしな・・」

 

「もう、八幡は。そんな事言って他校の女子をそう言う目で見たらダメよ?」

 

なおも納得しない八幡に深雪はそう言う。

 

「バッバカ。見るわけねーだろ。俺はただ・・」

 

「深雪。八幡はな、お前が他の男にそう言う目で見られないか心配してるんだよ。」

 

「お兄様・・八幡そうなの?」

 

「・・・まっ、まーな。深雪はただでさえ目立つからな・・その上そんな恰好してたら嫌でも目を引くだろう」

 

「そっ、そう・・・その・・心配してくれてありがとう」

 

八幡の真意を知り深雪は嬉しかったようで頬を染めながら礼を言う。

そしてお互い恥ずかしくなり無言になる。

 

「・・・・・・。」

 

「・・・・・・。」

 

「邪魔なら俺は席を外すが?」

 

「たっ、たちゅやっ!にゃっにゃに言ってんだ!変な気を使うにゃ!」

 

「そっ、そうですよお兄さま!」

 

「ならいいんだが(気を使うというより俺がこの場に居たくないだけなんだがな・・)」

 

「それより丁度いいから深雪にテストを頼んだらどうだ?」

 

「そうだな」

 

「テストですか?」

 

深雪が疑問に思ってそう聞いた時だった。椅子に座って居た達也の体がそのままの体制で空中に浮きだした。そしてそのまま深雪の前まで水平移動するとやがて達也は地に足を着け着地した。

 

「深雪にもこのデバイス(飛行魔法専用CAD)のテストを頼みたかったんだ」

 

「飛行術式・・常駐型重力制御魔法が完成したんですね!」

 

感動している深雪を尻目に達也は八幡をジト目で見る。

 

「完成したというか・・既に完成していたというか・・」

 

「どういう事ですか?」

 

「深雪も俺が一応飛行魔法を使えたのは知っているだろう?どうやら俺が無意識で使っていたのが常駐型重力制御魔法だったみたいなんだ」

 

深雪はそれを聞き呆れた様に言う。

 

「まぁ今回は八幡が悪い訳ではないけど・・お兄様の苦労を考えると何とも言えないわね」

 

「八幡の異常性を改めて認識させられたな」

 

「誰が異常だ誰が!」

 

「異常(だろ)(よ)」

 

「ぐっ・・」

 

兄妹に揃ってそう言われ八幡は何も言い返せなかった。

その後行われた深雪によるデバイスのテストも問題なく終わり、それを見届けた八幡も帰る事にした。

達也はデバイスの最終調整の為ラボに残り、深雪が玄関まで八幡の見送りをする。

 

「それにしても八幡、よく九校戦に出る気になったわね。八幡の事だからめんどくさいからって適当な理由をつけて辞退するかと思ったわ」

 

「まぁ母さんにも出ろって言われたからな・・」

 

「叔母様が?あっ・・・もしかして私の為に・・」

 

深雪は八幡が九校戦に出る理由に気がつき顔を下に向けてしまう。

 

「深雪のせいじゃないさ。俺だってどうしても出たくない訳じゃなかったからな」

 

「八幡・・ありがとう」

 

「おう!それよりも俺は深雪よりも目立たないとダメなんだよな・・・気が重い」

 

「四葉八幡の力を他校の生徒にも見せつけてあげればいいじゃない。私は楽しみよ」

 

「俺は静かに暮らしたいんだよ。」

 

「母校の中学を一人でテロリストから救ったヒーローが今さらよね」

 

「・・・はぁ。取り敢えず今日はもう帰るな」

 

「ええ。明日はお兄様と一緒にFLTに行くからまた週明けに」

 

「おう。じゃあな」

 

こうして八幡は司波家を後にした。

 

 

 

翌日の朝八幡が教室に入るとすぐに雫、ほのか、雪乃が八幡の元にやって来た。

 

「八幡おはよう」

 

「おはようございます」

 

「八幡君おはよう」

 

「おう、おはよう」

 

「八幡は知ってたの?」

 

雫の急な問いかけに八幡は何の事かわからず聞き返す。

 

「何をだ?」

 

「達也さんのエンジニア入りです」

 

「今学校中がその話題で持ちきりよ」

 

八幡は登校中にもその手の話題が耳に入って来ていたので納得した。そして周りのクラスメイト達も現在進行形でそんな会話をしているのが聞こえてくる。

 

「まぁな。推薦したのは俺だからな」

 

「そうだったんだ。八幡グッジョブ」

 

「達也さんの腕を知っている私達としては、ぜひ達也さんに担当してほしいです」

 

「ただそれを知らない人達はおもしろくないのでしょうね・・・」

 

八幡も雪乃の言った事には気が付いていた。二科生が選ばれて一科生の自分達が選ばれていない事に納得できないのだろう。

 

「一科生のプライドか?くだらない・・」

 

「本番で達也さんの腕を見れば嫌でも納得するはず」

 

「そうですよ。それにしても達也さんなら選手としても行けそうですけどね」

 

「選手は試験の結果で選抜してるからさすがに選ぶ事は出来なかったのではないかしら?」

 

「そうだろうな(まぁ達也に関してはさすがに母さんも認めなかったかもしれないしな。達也が間違って実力を見せる事になったら誤魔化し切れないからな。力を隠して負けたりしても深雪が不機嫌になるのは目に見えてるし・・)」

 

「そういえば八幡はどの競技に出るの?」

 

「ん?俺はスピード・シューティングにアイス・ピラーズ・ブレイク、それにモノリス・コードだな」

 

「三つも出るんですかっ!?」

 

「会長が勝手に決めたんだよ。モノリス・コードに俺を選んだのはどうかと思うけどな」

 

八幡の言葉に雪乃が反応する。

 

「どういう事?」

 

「モノリス・コードのメンバーには森崎もいるんだ・・・」

 

「「「ああ・・・」」」

 

どうやら三人共納得したようだ。

 

「チームワームなんて皆無なんだが・・」

 

「でもモノリス・コードは一番ポイントが貰える競技だから八幡が選ばれないはずがない」

 

「八幡さんなら一人でも勝ち進みそうですよね」

 

「確かに八幡君なら一人でも十分ね」

 

八幡は森崎に聞かれていないか確認してからほのかと雪乃を止める。

 

「おい二人ともその辺にしとけ。ただでさえ俺はアイツに恨まれてそうなんだから、そんな事言ってるのを聞かれたらまためんどくさい事になりかねん」

 

「それもただの逆恨み」

 

「そうですよ。八幡さんは何も悪くありませんよ!」

 

「また八幡君に何か言ってくる様なら私が徹底的に論破してあげるわ」

 

八幡はそれを聞き苦笑いするしかなかった。

 




九校戦は八幡が居るので原作からの変更点が多々あります。


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発足式

その日の昼も八幡は真由美に呼ばれ生徒会室で昼食を取る事になった。

しかし今日は達也と深雪が居ないので八幡はあまり乗り気ではなかった。

 

(今日は何の用何だ一体。俺はベストプレイスでゴロゴロしたいんだが)

 

そんな事を考えていると生徒会室に着いたのでノックする。

 

「四葉です」

 

「どうぞ~」

 

八幡が中に入ると真由美、摩利、鈴音、あずさのいつものメンバーが出迎えた。

 

八幡はまず真っ先にあずさの元へ行くと

 

「あーちゃんこれ飲みますか?」

 

「もう四葉君は、また先輩が抜けて・・これは・・」

 

八幡があずさに見せたのは勿論MAXコーヒー(マッ缶)である。

 

「良かったらどうぞ」

 

「いいんですか?」

 

「はい。俺は家にまだ大量にストックが有りますので」

 

「わーい、ありがとうございます~」

 

両手を挙げて喜ぶあずさの頭を八幡が撫でるが、当のあずさは余程この差し入れが嬉しかったのか何も言わない。

 

その光景を見て居た他の三人は

 

「もうはち君!ちょっとあーちゃんを甘やかし過ぎじゃない?」

 

「最早この光景にも違和感が無くなって来たな」

 

「はい。あの中条さんがあんなに心を許すとは正直驚きです」

 

「会長!あーちゃんを甘やかすのは俺の義務なんで」キリッ

 

「そんなキメ顔で言わなくたって良いわよ!」

 

それから八幡は昼食を取りながら今日自分が呼ばれた理由を聞く。

 

「で、今日はどうしたんですか?」

 

「実はね・・」

 

真由美がバツが悪そうな顔をして中々話さないので見兼ねた摩利が代わりに説明する。

 

「真由美は八幡が九校戦に出るのが嬉し過ぎてルールを忘れていたんだよ」

 

「ん?と言いますと?」

 

「八幡は三つの競技にエントリーされると聞いていただろ?」

 

「はい。会長にはそう聞いてます」

 

「九校戦のルールでは一人の選手が出場できるのは2種目までなんだよ」

 

摩利の言葉を聞き八幡を含め全員が真由美を見る。

 

「うう・・ごめんなさい。はち君最初は九校戦は選ばれても辞退するかもしれないって言っていたから出てくれるって聞いて嬉しかったのよ。それでルールの事をつい忘れてて・・」

 

八幡は当初真夜の許可が下りるかどうか分からなかった為真由美にその様に伝えていた。

 

「そうですか。俺は別に構いませんよ。むしろ一人で3種目も出たくなかったので。というわけでモノリス・コードは他の人でお願いします」

 

「それはダメよ(だ)」

 

出来れば森崎と関わりたくない八幡はここぞとばかりにそう言ったのだが二人に却下される。

そこに鈴音とあずさも加わり

 

「モノリス・コードは1番貰えるポイントが高いですからね。おそらく一年生の中でトップの実力を持つ四葉君は外せませんね」

 

「ですが俺と森崎が色々合ったことは先輩達も知ってますよね?」

 

「四葉君頑張って下さい。私も応援してます」

 

あずさの言葉を聞いた八幡は

 

「分かりました出ましょう!必ず優勝して見せます!」

 

即答した。

 

「何だか釈然としないけど・・はち君が出てくれるならまぁいいわ」

 

「で、もう一つはどっちの競技に出るんだ?」

 

「はち君が選んでくれて構わないわよ」

 

「そうですね・・じゃあもう一つはアイス・ピラーズ・ブレイクにします(深雪もアイス・ピラーズ・ブレイクに出るって言っていたし俺も同じ方がいいよな)」

 

「わかったわ。じゃあスピード・シューティングには森崎君をエントリーしておくわね」

 

そこで八幡はルールについてある事を思い出す。

 

「ルールと言えばCADを使用しないで出場するのは有りなんですよね?」

 

「「「「・・・・・」」」」

 

その質問に四人は無言になってしまう。

 

「あれ?ダメなんですか?」

 

「そもそも過去にそんな人はたぶん一人もいないのよね」

 

「ルール上は問題ないと思いますが・・・」

 

「前代未聞だよな。まあ前もって運営委員会に報告しておいた方がいいかもな」

 

「四葉君が変な誤解をされたらいやですしね・・・」

 

「確かにそれは有りそうね。なにか不正をして優勝したんじゃないのか?とか」

 

「いや・・さっきはああ言いましたがまだ優勝するとは決まってませんが・・」

 

八幡のその言葉は無視された。ここにいる全員が八幡に勝てる者が新人戦レベルではいないと思っているのだろう。実際は世界中探しても居るかどうかわからないのだが。

こうして改めて八幡の出場種目も決まり、あとは週明けの発足式を待つだけとなった。

 

 

 

 

 

 

そして翌週の午後、発足式が行われる講堂には既に多くの生徒達が集まっていた。

その舞台裏ではエンジニアとして参加する唯一の二科生である達也が深雪にせがまれて技術スタッフ用のユニフォームを着せられていた。このユニフォームには二科生の制服にはない例のエンブレムがある為、深雪はそれを羽織った達也を満足そうに見つめて言う。

 

「良くお似合いです、お兄様」

 

「深雪、お前は着替えないのか?」

 

制服のままの深雪を見て達也が聞く。

 

「私は進行役ですので。それよりも八幡の姿が見えないのですが・・」

 

深雪は八幡にも選手用のユニフォームを着せようと準備していたのだが当の本人が見当たらない。

しかし達也は知っている様で

 

(八幡の奴本当にサボる気みたいだな。どうなっても俺は知らないからな)

 

「お兄様?何か知っているのですか?」

 

既に若干不機嫌になりつつある深雪に達也は言う。

 

「いや、俺は何も知らないぞ。そろそろ来るだろう」

 

「そうですか・・全く八幡は・・・」

 

 

 

その頃八幡はというと

 

「発足式なんて出なくても別に問題ないよな。あんな大衆の前で見世物みたいにされるのはごめんだ」

 

実は講堂までは一度足を運んだのだが、あまりの人の多さに引き返したのだ。

そして今はベストプレイスに身を隠している。

 

(いよいよ九校戦だな。はたしてどこまで力を見せることになるか・・・まあ深雪次第なんだが。モノリス・コードについては森崎に好きにやらせるのが一番いいな。あ~、考えただけでめんどくせーな)

 

八幡がそんな事を考えていると人の気配を感じたのでそちらを見ると

 

「なんだ雪乃か。驚かすなよ、深雪が探しに来たかと思ったぞ」

 

「呆れた。発足式には出ないの?」

 

「面倒だからサボった。お前は?」

 

「貴方らしいわね。私は控えと言っても正式な選手では無いから。他の選手がケガか何かで出場できなくなったりしなければ出る事はまずないわ。だから発足式も観客側よ。それで講堂に向かっていたのだけれど途中でここに向かう貴方を見かけたのよ」

 

「そう言う事か」

 

八幡は丁度いいと思い気になっていた事を聞くことにした。

 

「よし雪乃少し付き合え。ちょっとこっちに来いよ」

 

雪乃は八幡のその言葉に自分の体を守る様に抱きしめる。

 

「私は雫みたいにこんな場所で添い寝なんてしないわよ?もししたいなら場所を変えて・・」

 

「なんでそーなる!添い寝なんてしねーよ!それに雫のあれは事故だ!ちょっと話をするだけだ」

 

「そう・・べっ別に残念なんて思ってないんだからね!」

 

八幡は雪乃を見て先日の真夜を思い出し頭が痛くなった。

 

「おまえもかよ・・・しかし雪乃は本当に変わったな」

 

言ってみたは良いものの、雪乃は少し恥ずかしくなり顔を赤くする。

 

「じょっ冗談はこれくらいにして・・・それで話ってなにかしら?」

 

「ああ、答えたくないなら構わないからな。俺が聞きたかったのは陽乃さんとの仲と実家についてだな」

 

「そう・・少しは心配してくれているのかしら?」

 

「そりゃな、俺はあんな形でお前の前から居なくなったからな」

 

「二度と会わないつもりだったくせに?」

 

「うっ・・すまん」

 

「ふふ、冗談よ。心配してくれて嬉しいわ。姉さんとは偶に会ってるし昔よりは仲が良いと思うわ。両親とは私が第一高校に進学すると伝えたら大反対されて大喧嘩したわ」

 

八幡はそれを聞き驚いた。八幡の知ってる雪乃は絶対両親には逆らえない女の子だったからだ。

 

「私は総武中学時代に魔法科クラスにも在籍してなかったから、両親もまさか私が一高に進学すると言い出すとは思ってなかったみたいなの」

 

「そうか、でもそれで良く許してくれたな?」

 

「たぶん私が反抗したのも初めてだし、姉さんが一緒に説得してくれた事が大きかったと思うわ」

 

「陽乃さんが?」

 

「ええ。最初は姉さんも私がまた姉さんの後を追って一高に行くと言い出したと思って反対してたけど、私が「自惚れないで頂戴。私はもう姉さんを追いかけるのはやめたの。私が追いかけてるのは比企谷君よ!」って言ったら大笑いして協力するって言ってくれたの。それからね、姉さんとの仲が良くなったのも」

 

「そんな事があったのか」

 

「ええ、だから姉さんとの仲が改善されたのは八幡君のおかげね」

 

「俺は別に何も・・でも良かったな」

 

「ええ・・」

 

丁度雪乃が話し終えた所で放送が鳴った。

 

「1-Aの四葉八幡君。大至急生徒会室まで来てください。繰り返します・・・」

 

八幡はそれを聞いて

 

「ヤバい・・今の深雪の声だよな?」

 

「そうだったわね。恐らくかなり怒っているわね」

 

「どうすっかな、このまま知らないフリして帰るかな」

 

「たぶんそれをやったら大変な事になるわよ?」

 

「ですよねー。雪乃、一緒に・・」

 

八幡が雪乃に助けを求めようとするが

 

「さて、私はこのあと結衣さんと用事があるからもう行くわね」

 

そう言うと一瞬で居なくなってしまった。

 

残された八幡は

 

「雪乃の奴いつの間に擬似瞬間移動を・・・はぁ・・行くか」

 

諦めて鬼の待つ生徒会室に向かった。

 

 

八幡が生徒会室の扉を開けると案の定深雪が仁王立ちで腕組をして八幡を待っていた。その迫力に耐え切れずあずさは震えて縮こまっている。

 

「よう深雪、怒ってる姿も美しいな」

 

八幡の言葉を聞き一瞬口元が緩んだのを達也だけは気付いていた。

 

「黙りなさい!八幡あなた発足式に来ないで一体何をしていたの?」

 

「世界平和についてちょっとな」

 

八幡がふざけた事を言うと深雪はさらに顔を赤くして怒る。

 

「は・ち・ま・ん〜〜〜」

 

「しゅっしゅまん冗談だ!大勢の前に出るのが嫌でサボった」

 

様子を見て居た真由美も

 

「はち君・・・本番はもっと観客が大勢いるのよ?」

 

「それはそれ。これはこれですよ」

 

そこで鈴音が

 

「会長、そろそろ選手と担当エンジニアの顔合わせの時間ですよ?」

 

「ですよねリンちゃん」

 

「リンちゃんっ!?」

 

今度は摩利が

 

「はっはっはっ、まさか市原も妹枠か?それよりまぁいいじゃないか。本番で結果さえ出してくれれば文句はないさ」

 

「さすがまりりん」

 

「誰がまりりんだ!お前は先輩を何だと思ってるんだ」

 

「嫌だな冗談ですよ。先輩たちの事は尊敬してますよ」

 

最後にあずさが

 

「四葉君私は・・・」

 

「あーちゃんは妹です」キッパリ

 

「うえ~ん、何で私だけ」

 

「そういうとこですよ」

 

一連の流れを見て居た深雪が

 

「八幡楽しそうね。随分先輩方と仲良しなのね?」

 

「しょっ、しょんな事ないぞ。」

 

「とにかく今後はこのような事がないようにしなさい」

 

「分かったよ・・」

 

一年女子の担当エンジニアになっている達也が時計を見て言う。

 

「じゃあ俺はそろそろ行きます。たぶん選手を待たせてると思うので。深雪も行くぞ」

 

「はいお兄様。八幡も早く行きなさいね」

 

そう言って二人は生徒会室を出て行った。

 

「会長、俺はCADを使わないので顔合わせはパスでいいですよね?」

 

「う~ん・・それもそうね。取り敢えず私達も行きましょうか」

 

「そうだな」

 

「私も急がないと」

 

真由美、摩利、あずさが出て行き、最後に鈴音が

 

「四葉君、ちゃんと先輩はつけるように」

 

そう言って出て行った。

 

「リンちゃんは有りなのか?」

 

八幡はこの先「リンちゃん」と呼び続けるか生徒会室に一人残り暫く考えて居た。



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九校戦へ向け出発

誤って削除したので再投稿です。すいません。
内容は変わってません。


八幡が生徒会室を出て昇降口に向かっていると、目を抑えながら美月がどこかへ走って行くのが見えた。

 

(あれは美月か。如何したんだ?あっちは実験棟の方だな・・)

 

美月のそんな姿は珍しく八幡は心配になり後に付いて行くことにした。

 

後を追いかけ実験棟の階段を上ると、実験室の少し開いた扉から中を覗いてる美月を発見した。

 

(美月の奴なにを見てるんだ?・・・この気配・・・精霊魔法か?)

 

八幡は中の気配を探りながら美月に近づいていったのだが、丁度八幡が後ろに来たくらいの所で美月が中に居る者を呼んだ。

 

「吉田君?」

 

「誰だっ!?」

 

中で精霊魔法を行使していた者も、誰も来るはずの無い場所で声を掛けられ動揺したのか術が乱れてしまった。その為使役されている精霊が美月に襲い掛かる。それに気が付いた美月は恐怖のあまり目を瞑ってしゃがみ込む事しかできなかった。しかし美月の後ろからそれを見ていた八幡が術式解体で襲い掛かる精霊を消し飛ばした。

 

「美月の知り合いか?」

 

そこで美月は初めて八幡が居ることに気が付く。

 

「え?八幡さん?どうしてここに?」

 

「美月が珍しく焦ったようにここに向かってたから心配になって付いて来たんだ」

 

そこで中に居た者も美月だと分かった様で

 

「柴田さん?それと・・・」

 

「俺は四葉八幡だ」

 

「僕は吉田幹比古、柴田さんを守ってくれてありがとう」

 

「気にするな。それに今のは美月も悪いからな」

 

八幡にそう言われて美月も反省する。

 

「吉田君、急に声を掛けたりしてごめんなさい」

 

「いや、僕の方こそごめん」

 

そこにさらに別の声が聞こえる。

 

「何があったんだ?珍しい組み合わせだな」

 

三人が声がした方に振り向くと達也が立っていた。

 

「達也か」

 

「達也さん」

 

八幡は今起きたことを達也に説明する。

 

「なるほどな。それで幹比古、これは精霊なのか?」

 

「うん、そうだよ」

 

「俺には霊子(プシオン)の塊があるようにしか見えんが、美月には如何見えた?」

 

「私には青系統の光の玉があるとしか」

 

「色の違いが分かるのかい?」

 

幹比古はそう言うと急に美月の顔を覗き込むように接近する。その急な行動に美月は驚き固まってしまう。

そしてそれを見ていた八幡は

 

(何だコイツは?おとなしそうな顔をして結局リア充なのか?爆発しろ)などと的外れな事を考えていた。

 

しかし達也は幹比古の行動に対し

 

「同意の上なら席を外すがそうでなければ問題だぞ?精霊の色の違いが分かる美月に興味があるんだろうが少し落ち着け」

 

幹比古は達也の言葉に自分の行動を自覚して顔を赤くし美月から距離を取る。そして美月も顔を赤くして幹比古から顔を背ける。

 

落ち着きを取り戻した幹比古は

 

「一年前の僕なら力ずくでも柴田さんを手に入れようとしただろうけどね。今の僕にはそんな気力は無いよ」

 

「(力ずくだとっ!?じゃあコイツは一年前はもっとリア充だったのか・・いや、その前に犯罪者じゃねーか?)とりあえず爆発しろ・・・」

 

「何を言ってるんだお前は・・・」

 

「いや、こんなのを見せつけられたらしょうがないだろ?」

 

「お前がそれを言うのか・・・それよりも美月、もう待ち合わせの場所に全員揃ってるんだが」

 

「え?もうそんな時間ですかっ!?すいません」

 

今日は帰りにいつものメンバーでアイネブリーゼに寄る約束をしていたのだが、待ち合わせ場所に美月だけが居なかった為達也が探しに来たのだ。

 

「それじゃあな幹比古」

 

「うん、ありがとう達也。それに柴田さんも本当にごめんね。あと四葉君も」

 

そして三人は実験室を後にした。

ちなみにこの後八幡は一緒にと誘われたのだが、さっき生徒会室で調子に乗って色々言っていた事を深雪に攻められるのが怖くて一人で帰った。

 

 

八月一日、いよいよ九校戦へ出発する日なのだが八幡は寝坊した。

 

「べっー、やっべー。なんでよりによって小町と水波は今日朝早いんだよ」

 

こんな事を言っている八幡だが、昨夜二人に「絶対寝坊なんてしたらダメだからね(ですからね)」と散々言われていたのにも関わらず既に集合時間に一時間遅刻している。

 

「もうみんな出発してるんじゃないのか?でもそれなら達也か深雪から連絡が来てもよさそうだけどな。って端末の充電が切れてるな。とりあえず急ぐか・・・とは言え普通に向かったんじゃあと一時間は掛かるよな。しょうがない飛んで行くか」

 

達也は先月トーラス・シルバーの名前で例の飛行術式を既に発表していた。なので八幡は使っても大丈夫だろうと思ったのだが、世間一般的にはそれはまだ有り得ない事だった。

 

八幡が集合場所に向かっていると途中で見知った顔を発見した。

 

「あれは会長か?なんだよ会長自ら遅刻かよ。しょうがない・・見捨てるのもかわいそうだから連れて行ってやるか」

 

そして八幡は時間がないので飛行したままいきなり真由美をお姫様抱っこするとそのまま集合場所まで向かう。

いきなり抱えられた真由美は驚き

 

「きゃーーー!なっなっ何っ何なの?」

 

「真由美、落ち着け。俺だ」

 

「え?え?はち君?ってなんで飛んでるの?」

 

「飛行術式は先月発表されてただろ?」

 

「そうだけど・・なんでもうそれを使えるのよ・・・」

 

真由美は納得できないのか八幡になにかを探る様な疑いの目を向ける。

 

「なんでと言われてもな・・(あれ?これはミスったか?)」

 

八幡は誤魔化そうと悩んだがいい案が浮かばず

 

「気に食わないなら降ろすから歩いて行ってくれ」

 

「わー、待って待って!わかったから。これ以上は何も聞きません!だからこのままお願い」

 

「そうか、わかればいいんだよ。それにしても真由美も遅刻とはな。正直俺だけじゃなくて安心したぜ」

 

「そっそう?それはよかったわね(私は家の用事で遅れるって言ってあるから大丈夫なんだけどね。それを今言ったらまた降ろされそうだから黙ってましょう)」

 

 

 

そして集合場所に着き、移動に使うバスや作業者が停まっているのを確認すると八幡は地上に降りた。

バスの前で達也が暑い中一人で立っているのを発見した八幡は声を掛ける。

 

「おう達也。この暑い中何してるんだよ?」

 

「俺は点呼係でな、お前と会長が来るのを待ってたんだよ。そんな事よりも何でお前は会長を抱えて空からきたんだ?」

 

「ああ、それは・・・」

 

八幡が説明しようとすると真由美が割り込んでくる。

 

「達也君遅れてごめんね」

 

「会長は家の事情で遅れると連絡を頂いていたので問題ないですよ」

 

「それでもこの暑い中待たせちゃってごめんなさい。所でこの服どうかしら?」

 

真由美は夏らしいサマードレスを着ているのだが達也に見せるようにクルッと回る。

 

「とても良くお似合いですよ」

 

「そう?ありがとう」

 

真由美は満足したのか八幡を置いてバスの中へ入っていった。

 

そして八幡は一人うな垂れていた。

 

「騙された・・・」

 

「おい八幡、お前飛んで来るのはやり過ぎじゃないのか?」

 

「別に大丈夫だろ・・・そんな事より帰ってもいいか?」

 

「いいわけないだろ。諦めて早く中に入れ。既に大幅に遅れているからな」

 

「・・・分かった」

 

八幡がバスの中に入ってもどうやら飛んで来たことは殆どの生徒には見られていなかった様で、特にそれについて問いかけて来る者はいなかった。

一番前に既に腰を降ろしていた真由美が顔を青くした八幡に声を掛ける。

 

「はち君ごめんね?隣座る?」

 

「いえ・・・結構です・・・」

 

八幡は本当は真由美の隣に座りたかった。なぜなら後ろの方の席を見ると目の錯覚なのかそこだけ氷河期になっているのが見えたからだ。しかし八幡にそれを無視する勇気は無く、諦めて深雪の元へと向かった。

二人用座席の深雪の横は空いており、通路を挟んで雫とほのかが座っていた。

 

「八幡なんで遅刻したの?」

 

「ちょっと家の用事でな」

 

「中々来ないし電話も繋がらないから小町に確認したけど、そんなものはないわよね?」

 

「寝坊だ・・・」

 

「八幡さん、さっき飛行魔法を使ってませんでしたか?」

 

「なんの事だ?俺はここまで自転車で来たが?」

 

「じゃあ八幡は会長を抱えて自転車に乗ってきたのね・・・」

 

「飛んで来ました・・・」

 

八幡は言い訳をやめて素直に謝る事にした。

 

「悪かったよ。会長を抱えてたのは偶々途中で見かけて置いて行くのは可哀想だと思ったからだよ。他意はない」

 

「お兄様はこの炎天下の中ずっと外で待っていたというのに・・・八幡のバカ・・」

 

「達也にも後で謝っておく。そうだな・・今度何かある時は深雪が迎えに来てくれ」

 

「え?」

 

「だから小町と水波が居ない時は深雪が迎えに来てくれると助かる。こんな事頼めるのは深雪しかいないからな」

 

深雪が八幡の言葉を聞くとそれまで漂っていた冷気が消え周りの温度が上昇した。

 

「わっ分かったわ。全くしょうがないわね。でも私しかいないのならしょうがないわね」

 

深雪が自分の頬を両手で抑えながらそう言うのを聞いた八幡がホッとしたのも束の間

 

「イテテテテ。雫、脇腹をつねるな」

 

隣を見ると無表情で八幡をつねる雫と頬を膨らますほのかがいた。

 

なんとか深雪に許してもらい、その後は深雪に近づきたい男子生徒達に嫉妬の目を向けられながらもバスは目的地へと向かって動き出した。ほのかと雫に改めて飛行魔法について聞かれたのだが、特に隠すこともなく「使える」としか答えなかったのだが「「八幡(さん)なら有りだね(ですね)」」で納得した。

 

「そう言えば達也は違う車に乗ってるのか?」

 

八幡が言った言葉を聞くと雫とほのかがあからさまに顔を背けた。八幡は疑問に思い次に深雪を見るとその意味が直ぐに分かった。

 

「お兄様はこの炎天下で長時間立たされた挙句、窮屈な作業車に乗せられているわ。」

 

「そっそうか。でもあれだよな、達也は真面目で偉いよな。普通は少しくらい不満を漏らしてもおかしくないのにな。俺なら切れて帰るまである」

 

八幡がそう言うと深雪は機嫌が良くなり

 

「そうなのよね・・お兄様は真面目過ぎるのよね。でもそこがお兄様の良い所でもあるのよね」

 

八幡はそんな深雪を見てホッとするが

 

「八幡もお兄様を少しは見習いなさい。だいたい八幡は日頃から・・・」

 

また怒られるのかとうんざりした時だった。

 

「おいっ、あれヤバくないか?」

 

「危ないっ!」

 

その言葉に全員が対向車線側の窓へ目を向け外を見た。

すると対向車線を走る大型車が傾いた状態で路面に火花を散らしていた。それを見た誰かがパンクや脱輪じゃないかとそれぞれ口にするがその声に危機感はない。なぜなら対向車線と言っても道路としてはこちら側とは別々に作られており、さらには堅固なガード壁で仕切られているからだ。

しかし八幡だけはその事故に不自然さを感じていた。

 

「何かおかしいな・・・」

 

八幡がそう呟いた時だった。

 

今まで興味本位でそれを見ていた者達が悲鳴を漏らした。もちろん八幡も見ていたのでそれに直ぐに気がついた。事故を起こしていた大型車がいきなりスピンしたかと思うとガード壁をジャンプ台代わりにこちらへ飛んで来たのだ。

 

「まずはバスを止めるか・・これは・・・」

 

八幡が実行しようとした瞬間バスに急ブレーキがかかり停止した。しかし大型車は炎を上げながら滑って真っすぐバスに向かって来ていた。

 

「吹っ飛べ!」

 

「消えろ!」

 

「止まって!」

 

「っ!」

 

数人がこれに対処しようとほぼ同時に魔法を発動してしまった。

無秩序に発動された魔法が無秩序な事象改変を同一の対象物に働きかけ、結果的に全ての魔法が相克を起こし事故回避を妨げた。

 

「ばか、止めろ」

 

摩利がその事にすぐ気づき止めるが、パニック状態で魔法を発動している者達の耳には届かない。

この状況を何とかできるかもしれない克人を摩利が呼ぼうとした時だった。

 

「俺が相克を起こしてる魔法を吹き飛ばすから深雪は火を消せ!十文字先輩は車体を」

 

八幡がそう深雪と克人に指示を出す。

それに対し二人も

 

「わかったわ」

 

「了解した」

 

次の瞬間無秩序に発動されていた魔法式が全てかき消された。そして直ぐに深雪が火を消し、克人が車体を止めなんとか難を逃れることができた。

 

(さすが達也だな。俺の出番はなかったな)

 

八幡がそんな事を思っていると摩利が

 

「三人共助かったぞ。それに比べてお前は」

 

「痛ッ! 何するんですか摩利さん」

 

そう言って摩利に拳骨をくらったのは二年生の千代田花音。彼女は同じ二年生で今回の九校戦にもエンジニアとして参加している五十里啓とは許嫁同士である。どうやら先ほど魔法を発動してしまった内の一人の様だ。

他には例の森崎、そして服部は発動寸前になんとか止めた様だった。

そしてもう一人

 

「雫、そう落ち込むな。急な事態だったからしょうがないさ」

 

そう雫だった。八幡は落ち込む雫の頭に手を乗せ慰めるように言う。

 

「でも八幡は冷静に対処してた」

 

「俺は誰かが対処するだろうと最初は見てただけだからな。偶々だ」

 

「そうよ雫。結局八幡は指示をしただけだしね」

 

「ぐっ、深雪・・・やっぱり気づいてたか」

 

「当り前よ」

 

それを聞き雫と隣のほのかも疑問に思う。

 

「え?」

 

「どういう事ですか?」

 

「さっき魔法を吹き飛ばしたのは八幡じゃなくてお兄様よ」

 

「そうだったんだ・・・」

 

「達也さんが・・凄いです」

 

「まあそう言う事だ。だから俺は何もしてない」

 

「そんな事ない。でも八幡ありがとう」

 

雫は八幡の自分への気遣いが素直に嬉しく感謝した。

 

そこで真由美が

 

「はち君はさすがね。冷静な判断で指示を出してくれてありがとう。それに深雪さんも素晴らしかったわ! あんな状況で正確に魔法を展開出来るなんて、私たち三年生でも難しいわ」

 

これに対し八幡はさっきの仕返しとばかりに

 

「いえいえ、熟睡していた会長を起こすわけにはいかないのでこれ位はやりますよ」

 

「うっ、さっきは悪かったわよ!もう」

 

そして深雪は

 

「ありがとうございます。でも冷静で居られたのは市原先輩がバスを止めてくれたからです」

 

深雪の言葉に八幡も思い出したように親指を立てながら

 

「そうだった。リンちゃん先輩ナイスでした」

 

それに対し鈴音も親指を立てながら返す

 

「いえ、これくらい問題ないです」

 

そのやり取りを見た全員がさっきの事故よりも驚愕していた。

 

その後達也達技術スタッフによる運転手の救助活動(生存は絶望的だが)と警察の到着を待っての事情聴取などでさらに時間をロスしたが昼過ぎには目的地に到着した。

 

 

 



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懇親会

八幡は目的地である九校戦の間滞在予定のホテルに到着しバスを降りると、深雪と共に直ぐに作業車から荷物を降ろしている達也の元へ向かった。

 

「達也、さっきの事故だがどうもきな臭くなかったか?」

 

「やはりお前は気づいたのか」

 

二人の会話の意味がわからず深雪が問う

 

「どういう事ですか?」

 

「深雪、さっきのあれは恐らく事故じゃないって事だ」

 

「誰かが人為的に事故を起こしたという事?」

 

「ああ、さっき救助活動をしている時に見えたんだが車内にわずかだが魔法の痕跡があった」

 

「自爆って事か?」

 

「或いは操られていた可能性も高いな」

 

「なんと卑劣なっ!」

 

「どちらにしても一高生が乗るバスを狙って居た事に変わりはないよな・・・」

 

「ああ、警戒はしておいた方が良さそうだな」

 

その話を聞き不安に顔を曇らす深雪に、八幡は頭を撫でてやりながら優しく言う。

 

「心配するな深雪。まだ何かあると決まった訳でもないしな。もし何かあっても俺と達也が居れば大丈夫だ。お前は試合の事だけ考えて居ればいいからな」

 

「八幡・・・。お兄様、何かあっても八幡が暴走しない様に見張っていて下さいね」

 

「ああ。任せておけ」

 

「不安の原因はそっちかよ!おまえらな・・・」

 

三人が話をそこでやめてホテルに入ると、ここにいるはずのない見知った顔を直ぐに発見した。

向こうもこちらに気付いた様で近くにやって来る。

 

「深雪!八幡に達也君も」

 

「エリカ?」

 

「ハイ深雪、一週間ぶりね」

 

そう言ってこちらにやって来たエリカの格好は、直視するには些か刺激的な恰好だった。

しかし感情の希薄な達也はその格好に特に反応は示さず、エンジニアとして仕事が有り先輩達を待たせる訳にもいかない為直ぐに行ってしまった。

そして八幡は

 

「エリカ、お前何て恰好してやがる」

 

「何よ、別に普通じゃない?」

 

エリカはそう言うが確かに八幡の反応は正しかった。周りを見るとさすがに直視はしないまでも、チラチラとエリカを見ている生徒達が多数見受けられた。

 

「ところで何でこんな場所にエリカが?」

 

「もちろん応援だけど? それに今夜は懇親会でしょ?」

 

「そうだけど、関係者以外は入れないわよ」

 

「大丈夫よ!」

 

自信満々にそう言うエリカの後ろから更に三人の知り合いがやって来た。

 

「エリカちゃん、これ部屋のキ・・って深雪さん?」

 

「えりりんお待たせー・・ってヒッキー?」

 

そう言ってこちらにやって来た美月と結衣、そして雪乃も後からやって来る。

 

結衣はともかく美月までもがそのイメージからは想像できない様な派手な格好をしていた為深雪は一言言う。

 

「美月、随分と派手ね。悪い事は言わないからTPOにあった服にした方が良いわよ」

 

「エリカちゃんに堅苦しいのは良く無いって言われたんですが、やっぱり深雪さんの言う通りかもしれませんね」

 

そこで八幡も直視するとある一点を見てしまう為、顔を背けながら二人に言う。

 

「結衣もだぞ。お前と美月は特にアレがアレ何だから・・その・・もっと気をつけろ」

 

「ヒッキー?アレがアレ?・・・あっ」

 

「八幡さん・・?アレ?・・・あっ」

 

結衣と美月はお互いの胸を見ながら八幡の言いたい事に気が付き顔を真っ赤にしてしまう。

そこで今まで黙っていた雪乃と深雪が口を開く。

 

「八幡君、さあ私も付き添うから警察に自首しに行くわよ」

 

「そうね、私も付き添うわ」

 

「待て待ておまえら!俺は注意しただけだ!やましい事は何もない」

 

そう言いながら今度は雪乃を見ると、さすがに雪乃は特に派手な格好ではなくお嬢様らしい清楚な恰好をしていた。

 

「雪乃の服装はその・・いいと思うぞ。似合ってる」

 

八幡にそう言われ、さっきまでの怒りは一瞬で何処かに行ってしまった雪乃は照れながら

 

「そうかしら・・?・・・ありがとう」

 

「ちょっと八幡!私の事も褒めなさいよ」

 

エリカがそう言ってきたのだが八幡はもう面倒くさくなり

 

「可愛い、可愛い。世界一可愛いぞ。それに綺麗な足だな。出来れば撫でまわしたいくらいだ。・・・・あっ」

 

八幡はこの場に深雪が居る事を思い出し自分の言った言葉を後悔する。

一方八幡の言葉を聞いたエリカは珍しく顔を赤くして黙り込んでしまった。

そして深雪はこの後、本当は問題なのだが自分の部屋まで八幡を引っ張って行き懇親会が始まる直前まで説教をしていた。因みに同室だったエイミィは部屋の中の異様な雰囲気を感じ取り、中を確認する事もせずに他の部屋へ避難していた。

 

 

深雪の説教からようやく解放された八幡は今懇親会の会場に向かっていた。九校戦前の懇親会は、選手だけでも三百六十人を超え、裏方も合わせると四百人くらいにはなる。まあ何かと理由をつけて欠席するものも居るので本当は八幡もサボろうと思っていたのだが

 

「実は朝から何にも食べてないんだよな・・・やっと何か食べれるな」

 

朝の寝坊、移動中のトラブル、そして深雪の説教と色々あった為、八幡はやっと食事にありつけるからという理由だけでここに来た。中に入ると隅の方で壁を背に立つ達也と何故かウエイトレスの様な恰好をしたエリカ、そして深雪、雫、ほのかが話しているのを直ぐに発見した。

八幡はさっきまで深雪に説教を食くらって居た事もありそちらへ行くのはやめ、取り敢えず何かを食べようと食べ物が置いてあるテーブルの方へと向かった。

 

「何かお飲み物は如何ですか?」

 

声のした方へ顔を向けると、エリカと同じようにウエイトレスの格好をした雪乃と結衣が笑みを浮かべ立っていた。

 

「おまえらまでどうしたんだその格好は」

 

「えへへ、どうヒッキー似合う?」

 

「この会場に入る為にエリカさんのコネで仕事を用意して貰ったのよ。もちろんちゃんとウエイトレスの仕事はしてるわよ?ちなみにホテルは雪ノ下家のコネで貴方達と同じところよ」

 

八幡はそれを聞き呆れながらも

 

「雪乃が実家のコネまで使うとはな・・それにしてもお前らのその格好を見てると前に奉仕部で行ったメイド喫茶を思い出すな。あの時も言ったけど・・その・・二人とも似合ってるよ」

 

「八幡君ありがとう。それじゃそろそろ仕事に戻るわね」

 

「えへ、ありがとうヒッキー。それじゃまたね」

 

そう言って雪乃と結衣は嬉しそうに仕事に戻った。

二人と別れようやく食べ物の置いてあるテーブルに辿り着いた八幡は、適当に並んでいる物をつまみながら周りを観察した。

 

(深雪はやっぱり注目を集めてるみたいだな・・)

 

八幡は深雪の事を遠巻きから見ている他校の、特に男子生徒の目に気が付くと若干不機嫌になる。

周りからはこんな声も聞こえて来た。

 

「おい、あそこにスゲー可愛い子が居るぜ」

 

「本当だな。話しかけてみるか?」

 

「止めとけ。お前じゃ相手にされないって」

 

(そうだ、やめとけやめとけ)

 

「ウルセェ! でも将輝ならいけるんじゃねぇ?」

 

「何て言ったって一条の御曹司だもんな」

 

(一条・・十師族か・・)

 

その言葉に八幡は反応しそちらを見ると第三高校の制服を着た数人の生徒達が居た。そしてその中に写真で見た事がある十師族、一条家の長男一条将輝の姿を直ぐに発見した。

さらに彼らの会話は続く

 

「将輝?」

 

「なぁジョージ、お前あの子の事知ってるか?」

 

「名前は司波深雪さん。見ての通り一高の生徒で、エントリーしてる競技はアイス・ピラーズ・ブレイクとミラージ・バッド。一高一年のエースらしいよ」

 

「才色兼備ってやつ? 神様ってのは不公平だな」

 

深雪に見惚れていた男子も、そこまで行くとそんな感想を漏らした。

 

「司波深雪か・・」

 

「珍しいね。将輝が女の子の事を聞いてくるなんて」

 

(あれがカーディナル・ジョージか?いやそれよりもあのイケメン・・一条め。アイツも深雪に見惚れてやがるな。まぁ深雪が誰であろうと相手にするとは思えないけどな・・・。でももしかしたら・・小町と水波も深雪だって年頃の女の子だって言っていたしな。・・・・・)

 

八幡が良く分からない危機感と不快感に気分を悪くしてる所に話しかける者が居た。

 

「あの、貴方は四葉八幡様で宜しいでしょうか?」

 

「あん?」

 

八幡がじゃっかんぶっきらぼうに声をかけられた方に振り向くと、三高の制服を着た何処かで見たような顔の女子生徒が立っていた。

 

「私は第三高校一年、一色愛梨と申します。急に声を掛けて申し訳ございません」

 

その丁寧な自己紹介に八幡も慌てて自己紹介をする。

 

「あっああ。俺は第一高校一年の四葉八幡だ。それと一色ってもしかして・・」

 

「はい、私は一色いろはの姉です。先日は妹を助けて頂きありがとうございました」

 

そう言うと愛梨は深々と頭を下げる。その様子は周りからするとまるで八幡が愛梨に対してそうさせて居る様にも見えた。

案の定周りからは

 

「ねえ、何あれ?」

 

「あれってうちの一色さんじゃないか?」

 

「相手の男は誰だよ?」

 

「何もこんな所であんな真似させなくてもいいんじゃないか?」

 

それを聞いた八幡はうんざりしながら愛梨に言う。

 

「一色さん、取り敢えず顔を上げてくれ。このままだと俺が悪役になっちまう」

 

そう言われた愛梨も周りの様子に気が付き慌てて顔を上げる。

 

「それとな、俺はあの時偶々千葉に居たのと、妹も総武中学に通っているから助けに行っただけで妹さんを助けたのは偶々だ。だからそんなに感謝する必要はない」

 

それを聞き愛梨は

 

「ふふふ、いろはの言っていた通りでした。私がお礼を言ってもきっと貴方は今言った様な事を言うだろうって」

 

「なっ、俺は本当に・・・」

 

「いいんです。私が一方的にお礼を言いたかっただけなので。改めて妹を救って頂きありがとうございました」

 

「そうか・・じゃあ・・・どういたしまして」

 

八幡がそう答えると愛梨は笑顔で

 

「はい」

 

八幡はそれを見て

 

「やっぱり姉妹だな。笑った顔が一色・・・アイツとそっくりだな」

 

「そうですか?それと一色では紛らわしいので私の事は愛梨とお呼び下さい」

 

「初対面でいきなり呼び捨ては・・・」

 

八幡がやんわり断ろうとすると愛梨は上目遣いで

 

「ダメですか?」

 

「うっ!分かったよ・・愛梨。これでいいか?」

 

「はい、私は八幡様と呼ばせて頂きますね」

 

「おいおい・・様って。しかしあざとい所もそっくりだな」

 

「何の事ですか?」

 

「いや、なんでもない(どうやら妹と違ってこっちは天然の様だな)」

 

愛梨との話もひと段落し八幡が食事の続きをしようとしたタイミングで急に辺りが静かになった。どうやら来賓の挨拶が始まるようで、それまで談笑していた生徒達も一斉に壇上へと目を向けた。

 

(おいおいこっちは腹ペコ何だから勘弁してくれよ・・)

 

入れ替わり立ち替わり壇上に現れるお偉いさんの話に八幡は一切興味がないので構わず食事を続けた。もちろんそんな事をしているのは八幡だけでかなり目立っていたのだが、本人は久しぶりの食事とそのあまりの美味しさに周りの目にも気付かず夢中で食べていた。

時々見兼ねた愛梨が止めようとするのだが

 

「八幡様、さすがに来賓の方々に失礼ですので食事は終わってからにしたほうが・・・」

 

「いいんだよ。どうせ全員同じようなテンプレじみた事しか言わないんだから。それより愛梨もコレ食ってみろよ。結構いけるぞ」

 

八幡とそんなやりとりをしていると、周りの生徒達の緊張感が高まった事に愛梨が気付き壇上を見る。

司会者の紹介で、どうやら次に挨拶をするのは「老師」と呼ばれる十師族の長老、九島烈の様だった。

愛梨も九島烈の名前は当然知っており、さすがにまずいと八幡を説得する。

 

「八幡様、次は九島閣下の挨拶の様です。さすがに失礼があっては問題になりかねないのでどうか手を止めて下さい」

 

「ん?九島閣下だと・・・?」

 

愛梨の言葉に八幡が壇上を見た。すると丁度そのタイミングで壇上にライトが当てられ誰もが九島烈の姿を確認しようとした。しかしそこに現れたのはパーティードレスに身を包んだ金髪の若い女性だった。

それを見た者たちは意味がわからず騒めき出す。

八幡の横に居た愛梨も

 

「どういう事でしょう?あの女性は一体・・。九島閣下は・・」

 

その呟きに八幡が手を上に掲げながら答える。

 

「ふん、くだらねーな。あのじーさんがやりそうな事だ。九島烈ならあの女性の後ろにいるぞ」

 

「え?」

 

八幡が手を上に掲げた瞬間会場全体から「パキン」と何かが割れる音が響き渡った。

 

愛梨が八幡の言葉に驚いていると烈が確かに女性の後ろから現れた。

 

「まずは悪ふざけをした事を謝罪する。今のはチョットした余興だ。しかしこの魔法に気がついたのは私が見たところ六人だけだった。つまりもし私がテロリストで君たち全員を殺そうとしたとしても、止めに動けたのは六人だけだと言う事だ」

 

その言葉を聞き会場は静寂に包まれる。

しかし烈の言葉には続きがあった。

 

「そして一人だけ見事に私の魔法を破った者がいる。のう?四葉八幡?」

 

烈のその言葉に会場中の視線が八幡に集まった。




愛梨のキャラが良く分からないので想像で書いてます。


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懇親会2

九島烈は四葉家の先々代当主で真夜、深夜、芽夜の父親でもある故四葉 元造(よつば げんぞう)と親しくしていた。その縁で一時期、真夜と深夜さらに真由美達の父親である七草家現当主、七草弘一の三人を教え子としていたことがある。そして真夜の息子である八幡の事も八幡が幼い頃から知っているのだ。四葉家の者以外で八幡の力を知る数少ない人間でもある。

 

烈に名指しされ会場中の視線を集めている八幡は

 

「ちょっと何言ってるかわかんないですね。人違いじゃないですか?」

 

これ以上関わりたくないのか誤魔化そうとする。

 

「ほう、人違いか・・・じゃあお前が小学生の時に孫の響子と風呂場で・・・」

 

烈が周りには余り聞かれたくない(特に深雪には)事を口走ろうとした瞬間、八幡は烈の前に一瞬で現れたかと思うと喉元に持っていたフォークを突きつけて言う。

 

「おいじーさん、こんな場所で何を言う気だ!それ以上言ったら殺すぞ」

 

対する烈も会場中のほとんどの人間が八幡の動きについていけない中、いきなり目の前に現れた八幡の喉元に手刀を突きつけ言う。

 

「やれるもんならやってみろ。その時は道連れじゃ」

 

この一瞬の出来事にその場に居た全員が呆気にとられ固まっていたが、この八幡の暴挙を止めようと警備員達がやっと動きだす。

 

「おいっ!君っ!九島閣下に対して何て事を!直ぐに離れなさい」

 

「ちょっと一緒に来てもらうよ」

 

しかし烈はそれを手で制す

 

「良い。それにお主らが束になってかかってもこの八幡には勝てないぞ?」

 

「しかし・・・」

 

「良いと言うておる」

 

烈が少し威圧を込めてそう言うと警備員達は渋々ながら下っていった。

 

「おい八幡、後でワシの部屋に来い。久しぶりなんじゃから少しくらい良いじゃろ?」

 

「・・・・はぁ。分かったよ。取り敢えず俺は飯の続きをする」

 

そう言って八幡は先ほどまで居たテーブルに今度は歩いて向かった。

テーブルに戻る間も全員が八幡を見て居たのだが、やがて烈の話が再開すると皆そちらを向いた。

そして元居た場所まで戻ると

 

「あの・・八幡様。九島閣下とお知り合いだったんですね」

 

他の者と同じように呆気にとられながら先程の光景を見ていた愛梨が八幡に聞く。

 

「ん?まぁな。喧嘩友達みたいなものだな」

 

「閣下と喧嘩友達ですかっ!?」

 

「ああ。小学生の頃はよくお互い喧嘩を売ったり買ったりしてたな」

 

「そうですか・・・」

 

八幡の言葉に愛梨は戦慄していた。

烈は約20年前までは世界最強の魔法師の一人と目されていた人物。

当時は「最高にして最巧」と謳われ、「トリック・スター」の異名を持っていた。

そんな人間と小学生が喧嘩友達だったなんてにわかには信じられなかった。しかし八幡と烈の先程のやり取りを見た愛梨は、それがきっと本当の事なんだろうと思っていた。

 

「そういえば八幡様はどの競技に出場されるのですか?」

 

自分の在籍する三高の九校戦優勝に八幡の存在が大きく影響すると思った愛梨は、八幡が出場する競技が気になり聞く。

 

「俺はアイス・ピラーズ・ブレイクとモノリス・コードだぞ」

 

「それは本戦のですか?」

 

「いや、新人戦だ」

 

「そうですか・・・」

 

新人戦で入るポイントは本戦の半分である為、八幡が出場するのは新人戦だと聞いて愛梨は一瞬安心したが

 

(でも逆にそれだけ一高の選手層が厚いと言う事ですわよね)

 

本当は八幡より優れた者など一高には居ないのだが、愛梨は勝手に深読みして気合を入れ直していた。

 

「でもその競技だとどちらもうちの一条と当たりますわね」

 

「一条?あのイケメンか・・・そうか・・くっくっく、丁度いいな。殺すか・・」

 

八幡の完全に悪役染みたセリフに愛梨は

 

「殺してはダメですわっ!それに一条も八幡様と同じ十師族。簡単には勝てないと思いますわよ?」

 

「十師族ねぇ・・だが俺が負けることは絶対にないぞ?(負けたら深雪より目立つもくそもないからな。母さんにも何を言われるか分からないしな)」

 

色々深読みし過ぎる愛梨は八幡の言葉に少しムッとする。

 

「それは一高の優勝も揺るぎ無いと仰っているんですか?」

 

「優勝?それはどうなんだろうな?正直俺はどうでもいいからな」

 

その言葉に愛梨は目が点になる。

 

「え?どうでもいいって・・・」

 

「言葉通りの意味だ。個人的に応援する奴は居るが優勝とかには興味がない」

 

「ぷっ、あはははは!本当にいろはの言っていた通り八幡様は面白い人ですね」

 

八幡の言葉に愛梨は声を上げて笑い出す。

普段の愛梨はお嬢様然として振舞っている為、この様な姿は珍しいのか同じ三高の生徒達も驚く。

 

「おい、あれ見てみろよ」

 

「一色さんがあんなに笑ってるの初めてみたな」

 

「相手はまたあの一高の奴か・・・」

 

愛梨は見た目も美しく人気がある。しかし愛梨のお眼鏡にかなう男子は三高には居ないらしく、今まで数多くの人間がアプローチしたが誰も相手にして貰えていない。そんな愛梨にこんな顔をさせ親しげに話す八幡には勿論嫉妬の目が向けられていた。

さらに八幡を凍てつく様な目で見る数人の一高女子生徒も居たのだが八幡はこの時気付けなかった。

 

「あいつは俺の事を何て言ってるんだよ・・」

 

「とにかく八幡様みたいな方は他にはいないと言っていました。私もそう思いましたわ」

 

「どういう意味だよ一体・・それより愛梨はどの競技に出るんだ?」

 

「私は新人戦のクラウド・ボールと本戦のミラージ・バットですわ」

 

「ミラージ・バットは本戦なのか」

 

「ええ、それがどうかしましたか?」

 

「いや、一高の新人戦のミラージ・バットに出る奴はうちのエースだからな。ちょっと気になっただけだ」

 

「それはあそこに居る司波深雪さんですよね?こっちを見てらっしゃいますね」

 

「そうそう・・・って、マジでっ!?」

 

愛梨の言葉に八幡が深雪を見ると確かに笑顔で八幡達の方を見て居た。

 

(ヤバい!あの笑顔は相当ヤバいやつだ)

 

「噂では相当高い魔法力をお持ちだとか・・直接戦えないのが残念です」

 

「そっそうか?でも深雪と当たらなくてよかったと思うぞ?アイツに勝てる奴はたぶん一高の上級生にも居ないからな」

 

八幡のその言葉に愛梨はまたムッとする。

 

「それは私が司波深雪さんに劣ると言っているのですか?」

 

「うっ、別にそう言う訳ではないんだが・・」

 

「いいえ・・わかりました。直接は戦えないので私の出場している試合を見てからもう一度どちらが上か答えて下さい」

 

愛梨の剣幕に若干気圧されながら八幡は

 

「わかったわかった。ちゃんと見るからそんなに怒るなよ。可愛い顔が台無しだぞ?」

 

「な、なななな何を、かっ可愛いだなんて・・・」

 

「とにかく、さすがに一高の生徒も出場している試合は無理だが、他の試合は応援してやるから頑張れよ?」

 

「はっはい!私も八幡様の事は応援させて頂きます」

 

「おう!それじゃそろそろ俺は行くわ」

 

「あっ、最後にいろはから伝言が・・どうやら総武中学の魔法科クラスの生徒が全員で八幡様の応援に来るそうです。さすがに全試合ではないでしょうが」

 

「マジかよ・・取り敢えず分かった。それじゃまたな」

 

「はい!では失礼致します」

 

 

そう言って愛梨と別れた八幡は会場を出ようとしたのだが

 

「八幡待ちなさい!どこに行くのかしら?」

 

深雪に直ぐに捕まった。

 

「アレだアレ、小町への定期連絡の時間なんだよ」

 

「大丈夫よ。小町にはさっき私から連絡しておいたわ」

 

また報告されてた。

 

「そっそうか。助かったよ、サンキューな」

 

「ええ。それでさっき一緒に居た三高の女子生徒は誰なのかしら?随分仲が良さそうだったわよね?」

 

「あれは総武中学の時の後輩の姉ちゃんだ。この前の事件のお礼を言われて少し話してただけだよ」

 

「ふ~ん、そうなの・・」

 

疑いの目を向ける深雪に八幡も言い返す。

 

「俺の事より深雪こそ随分人気みたいだな?殆どの生徒が深雪に見惚れていたみたいだしな」

 

「そうなの?でも別に興味ないわよ」

 

(ですよねー。いや、別に分かってたけどな。深雪がそんな事で浮かれるような女じゃないって事は)

 

二人が話して居ると雫とほのかも加わる

 

「八幡、九島閣下と知り合いなんだね?」

 

「さっきはびっくりしましたよ。いきなりフォークを突きつけるなんて」

 

「まーな。昔ちょっと遊んだ(ケンカ)事があるだけだ」

 

「そうなんだ。そう言えばさっき閣下は何を言いかけてたの?」

 

「私も気になりました!孫がどうとか言ってましたよね?」

 

八幡はその話はマズいと思い

 

「そういえばその閣下に呼ばれてるんだったわ。待たせたら悪いからちょっと行ってくるな」

 

「うん、わかった」

 

「八幡さんまた後ほど」

 

「おう、じゃーな」

 

八幡は何とか逃げ切れたと思ったのだが

 

「八幡。響子さんとの話は後で教えてね?」

 

「はい・・わかりました・・・」

 

やっぱりダメでした。

 



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雑談

会場を出た八幡はホテルのフロントで烈の部屋へ連絡してもらい、VIPルームだった為部屋のあるフロアへの進入許可をもらった。

そして直ぐに部屋へと向かいドアの前まで着くとノックをする。

 

「四葉八幡です」

 

「来たか。入れ」

 

八幡が中に入ると烈が椅子に座って居るのが直ぐに見えた。

そしてその横には一人の美しい女性が立っていた。

 

「八幡君お久しぶりね」

 

「響子さん・・お久しぶりです。でも貴方が何故ここに?」

 

藤林響子・・・彼女は九島烈の孫娘にあたる。

さらに彼女は国防陸軍の軍人であり、国防陸軍第101旅団独立魔装大隊の幹部で風間玄信の副官(秘書役)をしている。電子・電波魔法による高度なハッキングスキルを得意とし、「電子の魔女(エレクトロン・ソーサリス)」という二つ名で呼ばれている。

この独立魔装大隊には大黒竜也特尉という偽名で達也も所属している。

 

「私は仕事でここに来ただけよ?ここは軍の施設何だから別に不自然ではないでしょう?それに久しぶりに八幡君に会えたからラッキーだったわ」

 

「仕事ねぇ・・やっぱりこの九校戦で何か起きそう何ですよね?」

 

八幡はここに来るまでに起きた事故を思い出し響子にそう聞く。

 

「一応守秘義務があるからそれには答えられないわ。ごめんなさいね」

 

「大丈夫です。いざとなったら自力で調べますので」

 

八幡の言葉に響子は肩を竦める。

 

「もう!それを言われたら身も蓋もないじゃない!一応聞かなかった事にするわね」

 

そこで二人の話を黙って聞いて居た烈が口を開く。

 

「それで八幡、よくお前がこの九校戦に出場する気になったな?面倒くさいとか言って絶対出ないと思うておったぞ」

 

「まぁな・・・色々あるんだよ・・」

 

「それはお前と同じ一高に居る深夜の子供の為か?」

 

烈は深夜とも関係が深かった為、達也と深雪の(特に達也の)隠している力についてまでは知らないがその素性については知っている。

 

「・・・・まぁそんなとこだ」

 

「司波深雪と言ったか・・確かもう一人は司波達也と言ったな。そっちも見てみたかったんだがのう・・」

 

烈は『十師族』という序列を確立した人物であり、その力関係がどこか一つの家に偏ることを危惧していた。

だからこそ九校戦に選手として出場する深雪はもちろん達也の力も見ておきたいと思っていた。

八幡もその事を知っている為

 

「じーさん、見るのは勝手だが達也と深雪に何かしたら本気で怒るからな?」

 

「わかっておる。それにお前が居る時点で四葉に勝てる家などないからな」

 

「俺は別にそんな事に興味ない。『十師族』っていう枠組みだってどうでも良いと思ってるからな」

 

「はっはっは。それも知っておるわ。だからこそワシも安心なんじゃ。もしお前が四葉をトップに立たせ様と目論む独裁者の様な奴だったらこんな所で笑っておらんわ」

 

そこで響子も話に加わる

 

「でももしそうだとしても八幡君を止めるのは私達じゃ無理よね・・止めれるとしたら深雪さんくらいね」

 

「俺はそんな事考えてないしこれからも考えないからもうこの話はいいじゃないですか」

 

「それもそうね」

 

次に烈はもう一つ興味が有る事を八幡に聞く。

 

「それで八幡、この九校戦ではどの程度力を見せる気なんじゃ?まさか全力ではやらんのじゃろ?」

 

「流石に全力はないな・・でもある程度は母さんにも本気を出していいと言われてるからな」

 

「そうか。それは楽しみじゃのう」

 

「私も楽しみにしてるわね」

 

「どうも俺が出る種目は二つとも一条将輝と当たるらしいからそれなりに楽しめるかもな」

 

「一条家の御曹司か・・」

 

「ああ、あのイケメン・・あわよくば殺してやろうかと・・・」

 

八幡の物騒な言葉に響子が引き気味に言う。

 

「ちょっと八幡君どうしたの?目が据わってるわよ?というか絶対に殺したらダメよ?」

 

「冗談ですよ冗談・・・」

 

「それならいいけど・・(本当に冗談なのよね?)」

 

響子は八幡のまだ据わっている目を見て心配になった。

 

「あんまり長居するとアレだから俺はそろそろ戻るぞ」

 

「そうじゃな。まぁとにかくお前の出る試合は全部見るつもりじゃから頑張れよ」

 

「ああ。それじゃあ、響子さんもまた」

 

「ええ、またね八幡君。それと達也君にも後日会うと思うからよろしく言っておいてね」

 

そして八幡はその場を後にして、自分の部屋に戻る前に達也の部屋に寄る事にした。

 

 

 

 

達也の部屋にはどうやらさっきまで深雪を含めたいつものメンバーが来て居た様だが、丁度八幡と入れ替わりでそれぞれ部屋へ戻ったらしく今は達也一人だけだった。

 

「そうか、藤林さんがな。それより俺はお前が九島閣下とあそこまで仲がいいとは知らなかったぞ」

 

「仲は良くないぞ?会ったらいつもあんな感じで喧嘩だ」

 

「閣下に自分から喧嘩を売れる奴はお前だけだろうな」

 

「それより響子さんが居るって言う事はやっぱり軍が動いているんだろ?達也にも何か連絡は来てるのか?」

 

八幡の質問に達也は苦笑いしながら答える。

 

「一応俺にも守秘義務があるんだがな。それにまだ確定てしていないから黙ってたんだが・・実はここに来る前に軍がちょっとした情報を掴んでいてな。九校戦の会場であるこの富士演習場南東エリアに不穏な動きが確認されている」

 

「不穏な動き?」

 

「香港系国際犯罪シンジケート無頭竜(ノー・ヘッド・ドラゴン)の構成員らしき姿が確認されたらしい」

 

「無頭竜・・・じゃあ昼間の事故もやっぱり・・・」

 

「まだ確定はしていないがな。それと実はさっき不審者がこの会場に侵入してな。偶々そこに居合わせた幹比古と一緒に取り押さえた。身柄の方は・・これは偶々か分からないが後から現れた風間少佐に引き渡した」

 

「侵入者か・・とにかく警戒はしておく。いざとなったら俺が・・」

 

「落ち着け八幡。今回は軍も動いているしお前は大人しく九校戦に専念していろ。(こうなるから無頭竜の事は黙っていたんだがな)」

 

「大丈夫だ。さすがに俺もこんな所に来てまで暴走したりはしないさ」

 

「懇親会で閣下にフォークを突きつけておいてか?」

 

「ぐっ!あれはあのじーさんが悪いんだ」

 

「そう言えばさっきも深雪がその事で怒っていたな・・」

 

「・・・・そうか。取り敢えず今日の所はもう部屋に戻るな」

 

「ああ。それじゃあな」

 

肩を落として出て行く八幡の背中を見ながら達也は思った。

 

(八幡の奴毎日深雪を怒らしてないか?)

 



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九校戦開幕

懇親会のあった翌々日、九校戦はついに開幕した。

会場へ直接足を運ぶ観客だけでも十日間で延べ10万人。決して交通の便が良いとは言えない場所にこの会場があるにも拘わらず、一日平均1万人の観客が競技を見る為にその足を運ぶ。さらに有線放送の視聴者は少なくともその百倍以上にはなる。

初日はスピード・シューティング本戦の決勝までと、バトル・ボード本戦の予選までが行われる。

 

そして八幡達も真由美と摩利の試合を観戦する為、まずはスピード・シューティングの行われる競技場に来ていた。

 

「やっぱり凄い人の数だな・・」

 

八幡の言葉にエリカが前の方に陣取っている観客を指差しながら言う。

 

「バカな男どもが多い所為ね」

 

「男だけじゃないみたいだぞ?」

 

「お姉さま~ってやつ?」

 

「とにかくすごい人気だな、うちの会長様は」

 

その時、既に試合開始の合図を待って第一レンジに居た真由美が八幡達のいるスタンド席に向けて微笑みながら手を振る。

 

すると前の方に居た観客は自分達に向けてそうされたと思い

 

「うおー、七草さーん」

 

「真由美さーん」

 

「きゃーきゃー」

 

「まゆみお姉様~」

 

しかし達也達は分かっていた

 

「あれはどう見ても八幡に向けてだけ手を振ってるわよね?」

 

「ああ、恐らくな」

 

「むむむ、ヒッキー」

 

「八幡君、貴方やっぱり七草会長と・・」

 

そして深雪も

 

「八幡良かったわね?これだけ人気の会長を独り占めできて」

 

「勘弁してくれ・・って、イテテテテッ雫とほのか二人して脇腹をつねるな」

 

そうこうしてるうちに試合が開始された。

 

予選試合は五分間に百個射出されるクレーをどれだけ撃ち砕けたかで勝敗を決めるスコア戦なのだが・・・

 

「パーフェクトか・・」

 

八幡が言ったように真由美は百個全てのクレーを撃ち抜いた。

 

「あれは知覚系魔法『マルチスコープ』も併用していたな」

 

その呟きが切っ掛けで達也は八幡以外のメンバーに魔法講座をするハメになった。

 

 

そして一行は次に摩利が出場するバトル・ボードの予選が行われる競技場に移動した。

 

そこで試合開始を待つ選手たちを見て八幡は思った。

 

(あの水着?ユニフォーム?は体のラインがくっきりですね!あれ?確か・・)

 

「なぁほのか?確かほのかは新人戦のバトル・ボードに出るんだよな?」

 

「はい、そうですよ」

 

「て事はアレを着て出るんだよな?」

 

八幡は選手達を差しながら聞く。

 

「はいそうですけど。それがどうかしましたか?」

 

八幡はほのかの胸を一瞬見て答える。

 

「いや、別に・・ただ聞いただけだ」

 

そこで雪乃と深雪がすかさず反応する。

 

「さぁ八幡君行くわよ!自首しに」

 

「私も付き添うわ!さぁ行きましょう」

 

「すいませんでした」

 

そのやり取りで気が付いたほのかは胸を隠しながら言う。

 

「もう、八幡さんは偶にエッチですよね・・・」

 

「ヒッキー、私もほののんに負けてないし!」

 

「純粋にほのかが変な目で見られないか心配になっただけだ。あと結衣は何を口走ってるんだよ・・」

 

八幡達がそんな事をしていると直ぐにバトル・ボードの試合も始まり、摩利は危なげなく予選を通過した。

 

人ごみに疲れた八幡は残す観戦予定の競技が午後に始まるスピード・シューティングの準決勝と決勝だけなので、他の試合も見ると言う皆とは別れどこかで一人休む事にした。

 

 

 

 

(しかし本当に凄い人の数だな・・見てるだけで疲れる・・)

 

八幡が人の多さにうんざりしながら休める場所を探していると

 

「いい加減にしてよ!」

 

「貴方達しつこいですわよ!」

 

「少し位いいじゃねえか。奢るからよ」

 

「そうだぜ、ちょっとだけ付き合えよ」

 

(ん?あれは七草の姉妹だよな?)

 

姉である真由美の応援に来ていたであろう香澄と泉美がいかにも軽そうな二人組の男達に絡まれていた。

 

(しょうがねえなぁ・・)

 

八幡は見て見ぬふりも出来ない為二人を助けようと男達に声を掛ける。

 

「おいアンタら。この二人はどう見ても嫌がってるだろ?だからその辺にしておけよ」

 

「あん?」

 

「なんだテメーは?」

 

香澄と泉美も八幡に気が付く。

 

「あっ!」

 

「八幡様っ!」

 

「おうっ、姉ちゃんの応援か?」

 

「はい、そうですよ」

 

「準決勝と決勝は午後からなのでその前に何か食べようとしていたんですが・・」

 

「そしたらこいつ等に絡まれたのか」

 

そこで自分達を無視して会話をしている八幡に男達は怒りだす。

 

「だから何なんだテメーは?」

 

「この子達は俺達が先に声を掛けたんだ!邪魔だからテメーはどっかいけ!」

 

「いやいや、どう見ても嫌がってるだろ?お前らがどっか行けよ。それにこんな所でナンパとか何考えてるんだよ・・」

 

八幡の呆れた様な物言いに男達はついに切れて殴りかかってくる。

 

「うるせえ!」

 

「この野郎!」

 

八幡は男達を相手にはせず香澄と泉美を両脇に抱えて空に飛び上がった。

 

地上に残された男達はその光景に呆然とする。

 

「何だよそれ・・」

 

「空を飛ぶとか反則だろ・・」

 

急に抱えられた二人はというと・・

 

「えっ?えっ?これって飛行魔法?」

 

「先月発表されたばかりですわよね?」

 

驚く二人を取り敢えず無視して八幡は少し離れた場所に着地する。飛び立った時もそうだが、当然それを見て居た周りの者達も驚きの声を上げる。

 

「今飛んで来たよな?」

 

「トーラス・シルバーの飛行術式・・」

 

「一体何者だ?」

 

八幡はその視線に気付き直ぐその場から離れようとする。

 

「それじゃあな、お前らも今度は気を付けろよ」

 

「ちょっ、ちょっと待って下さいよ八幡先輩」

 

「そうですよ!お礼をしたいので一緒に昼食でも如何ですか?」

 

「いや、礼なんていらないから気にするな」

 

八幡は早く移動したいのでそれを断るが

 

「いいから行きますよ」

 

「そうですわ。行きますわよ」

 

「おいっ、こらっ!離せっ!」

 

二人はそれぞれ八幡の腕を抱えて引っ張って行った。

 

 

結局八幡は断り切れずに、三人でこの九校戦用に開設されているカフェで昼食を取ることになった。

 

「それで八幡先輩っ!さっきのは飛行魔法ですよね?」

 

「まーな」

 

「初めて空を飛びましたが素晴らしいものでしたね」

 

「いやいや泉美!それより飛行魔法にもっと驚こうよ」

 

「まぁそれはいいじゃねえか・・俺は人ごみに疲れたからゆっくりしたいんだが・・」

 

「そうですわよ香澄。それに今さら八幡様が飛行魔法を使ったくらいで驚きもしませんわ」

 

「うっ、確かに・・・。すいません八幡先輩。それと改めてさっきは助けてくれてありがとうございました」

 

「私からも、ありがとうございました」

 

頭を下げる二人に八幡は

 

「さっきも言ったが気にするな。それより早く注文しようぜ」

 

注文を済ませた後香澄が疑問に思っていた事を口にする。

 

「それにしても八幡先輩、さっきは何で逃げたんですか?八幡先輩ならあんな人達簡単に倒せますよね?」

 

「あのな・・アイツらは恐らく一般人だった。そうじゃなくても九校戦に出場する俺があんな所で暴力事件なんて起こせるわけないだろーが」

 

八幡が手を出さなかった理由を聞き質問した香澄だけではなく泉美も意外そうな顔をする。

 

「へー、八幡先輩って意外とまともなんですね」

 

「確かに。感心しましたわ」

 

「おまえらな・・・俺を何だと思ってるんだ一体」

 

「悪魔」

 

「シスコン」

 

「悪魔は酷過ぎない?シスコンは否定できないな・・」

 

八幡が二人の答えを聞きがっかりしていると

 

「それより八幡先輩も午後からお姉ちゃんの試合見るんですよね?」

 

「ああ。そのつもりだぞ」

 

「でしたら私達と一緒に見ませんか?」

 

八幡は一瞬考えるが、別に達也達と約束しているわけでもない為了承する。

 

「ああ、別に構わないぞ」

 

「ホントですか?やったね泉美」

 

「ええ、これで先ほどみたいに絡まれる心配もないでしょうし本来の目的も達成できました」

 

「なんだ本来の目的って?」

 

「いえいえなんでもないですわ。気にしないで下さい」

 

「そうそう、気にしない気にしない。それより注文した物が来たみたいですよ。早く食べちゃいましょう」

 

実は二人は最初から八幡を探し出して一緒に観戦出来たらいいなと話していたのだ。

 

こうして三人は一緒に昼食を食べ準決勝が始まる時間までそこで休憩を取った。

 




八幡の出る試合以外はかなり短縮しちゃいそうです。
なぜなら文才がなくて上手く書けないからです。


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七草姉妹との試合観戦

カフェを出た八幡と香澄、泉美の三人はスピード・シューティング準決勝の行われる競技場へと向かって歩いていた。

 

「ご馳走様でした先輩」

 

「ご馳走様でした。すいません結局支払って頂いて・・」

 

「いいんだよ。後輩の女子に奢らせる訳にはいかねーしな」

 

二人は助けて貰ったお礼をするつもりだったのだが、結局支払は八幡が済ましたのだ。

 

「えへへ、先輩今のはポイント高いですよ?」

 

「ポイントだと?まさかお前らもポイント制を導入してるのか?」

 

「ポイント制?」

 

「なんの事ですか?」

 

「いや、なんでもない。知らないならいいんだ」

 

八幡は小町と水波だけじゃなく香澄と泉美、はたまた総武中学でもポイント制度が流行っているのではないかと一瞬疑ったが、どうやら違う様で安心した。

 

(ポイント制度は八幡的にポイント低いからな。あれ?俺も影響されてる?)

 

そんな事を話しているうちに競技場には直ぐに着いたので中に入り空席を探す。

 

「凄い人だな。予選の時より多くないか?」

 

「本当ですね。座れるかな?」

 

「さすがお姉様ですわね」

 

泉美が言ったようにそこにいる観客のほとんどが真由美目当ての様で、『真由美』と名前が入った応援弾幕を持つ熱狂的なファンも見えた。

 

何とか三人並んで座れる席が見つかったので八幡達はそこに座り試合が始まるのを待つ事にしたのだが

 

「なぁ?何で俺が真ん中なんだ?」

 

「気にしない気にしない。特に意味はありませんよ?」

 

「そうですわ。偶々ですわ、偶々」

 

「・・・・別にいいんだがな。それにしてもお前らの姉ちゃんは本当に凄い人気だよな?」

 

「確かに・・去年も観戦しましたけどこんな感じでしたね」

 

「八幡様から見たお姉様はどうなんでしょう?」

 

「どうって言われてもな・・計算高い女狐とかか?」

 

「あはははは!さすが八幡先輩良く分かってますね」

 

「香澄は笑い過ぎですよ。でもお姉様の本性を知っている男性は少ないでしょうね」

 

そこで突如八幡の電話が鳴る。

 

「ん?誰だ?達也か・・・」

 

八幡は少し・・いや、かなり嫌な予感がしたが無視するわけにもいかず電話に出た。

 

「おう、どうしたんだ達也?」

 

「八幡、今すぐ右上の方の観客席を見ろ」

 

達也にそう言われ八幡は恐る恐るそちらを見た。

そこには冷たい笑顔で手を振る深雪、雫、ほのか、雪乃、結衣、そしてニヤニヤしてるエリカと苦笑いしてる美月が居た。

 

「皆からの伝言だ。「戻って来ないと思ったら見た事もない女の子を二人も連れてるなんて・・・後でお仕置確定」だそうだ」

 

「・・・・了解した」

 

「じゃあな。・・・健闘を祈る」

 

顔色が悪い八幡を見て香澄が心配する。

 

「どうしたんですか先輩?何かあったんですか?」

 

「いや、問題ない。せめて今だけはお仕置きの事は考えたくない」

 

「お仕置き?」

 

「二人ともそろそろ始まりますわよ」

 

泉美の言葉に二人は前を見る。

そして真由美が姿を現した瞬間怒号の様な歓声が競技場を揺るがした。

 

既に午前中に行われた上位8人による準々決勝からは予選とは異なり、紅白の標的が100個ずつ用意され、自分の色のクレーを破壊し、その破壊した数を競う対戦型になっている。

 

「これは対戦相手が可哀想だな・・・」

 

「確かに・・相手がお姉ちゃんってだけで相当なプレッシャーですね」

 

「これは少し気の毒ですわね・・」

 

そして試合が開始された。

 

空中を紅白のクレーが乱舞する。真由美が撃ち落とすべき赤のクレーが有効エリアに入って来た瞬間、一つのミスもなくそれらが撃ち砕かれていく。

そして圧巻すべきは全方位からクレーを撃ち抜ける真由美の魔法とその技量である。それを見ていた者達は全員息を吞む。相手の白いクレーの陰になっている赤いクレーを真由美は『下』から撃ち抜いた。

 

「魔弾の射手か・・去年より更に速くなっているな。あれを使われたら相手はお手上げだな」

 

その八幡の呟きを聞き香澄と泉美はジト目で八幡を見ながら言う。

 

「ええ。だって七草家が開発した魔法ですからね」

 

「そうですわね・・お姉様『だけ』が使える魔法ですからね」

 

「うっ!なんだよお前らその目は・・」

 

「冗談ですよ~、でも先輩もスピード・シューティングに出ていたら楽勝だったんじゃないですか?」

 

「確かにそうですわよね。なにせ魔弾の射手を使える訳ですから」

 

「あのな・・もう既に使えるって言っちゃってるじゃねーか。でもそう簡単にはいかないぞ?俺は確かに魔弾の射手が使えるが会長ほどの精度も速度もないからな。それにこんな公の場で使う気はない。あの時は仕方なく使っただけだしな・・・」

 

「そうなんですか?あの時見た限りではお姉様と遜色ない様に見えましたけどね」

 

「そんなわけないだろーが(まぁ回数をこなせばわからんがな)」

 

八幡は確かに一度【視れば】その魔法を使えるが、全てを完璧に使いこなせるわけではない。そうなる為にはそれなりの回数をこなす必要があるのだ。

 

「やはり秘密なんですね・・でもそうですわよね。この事をお父様が知ったら何て言われるか・・」

 

「まぁいずれはバレる日が来るかもしれないがな・・・」

 

そのとき試合終了のブザーがなった。結果はもちろん真由美のパーフェクトによる圧勝。真由美はその勢いで決勝もパーフェクトを叩き出し危なげなく優勝を決めた。

決勝も三人で観戦した八幡達は競技場を出て、香澄と泉美の泊まるホテル前まで来た。

 

「送って頂いてありがとうございました」

 

「ありがとうございました」

 

「おう、また絡まれたりしてもアレだからな。お前らは明日も会長の出場するクラウド・ボールを観戦するんだろ?」

 

「はい。その為に今日はこのホテルに泊まる事になってますから」

 

「明日の試合を観戦したら一度帰る予定ですわ」

 

中学校は通常通り登校日なのだが、身内が九校戦に出場する場合は特別に休んで応援に行く事が認められている。

 

「次は八幡先輩の出る新人戦モノリス・コードの決勝戦に応援に来ます。」

 

「魔法科の生徒全員で応援に来るって言ってたが本当だったのか。しかも決勝戦って・・・まだ進めるかもわからないんだが」

 

「いいえ、八幡様なら確実に決勝戦まで行けますわ!と言うよりも優勝すると信じています。これは総武中学魔法科クラス全員の意見ですので!」

 

「おいおい・・・まぁ善処するよ。それじゃあまたな」

 

「はい、今日はありがとうございました」

 

「ありがとうございました。八幡様もお気を付けて」

 

そして八幡も自分の宿泊するホテルへと帰った。

 



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パジャマパーティーと甘える深雪

その日の夜、真由美のスピード・シューティング優勝と摩利のバトル・ボード準決勝進出を祝って、真由美と摩利の部屋でささやかな祝勝会が行われていた。メンバーは生徒会の女子メンバーと摩利・・・と強制参加の八幡。

なぜ八幡が連れて来られたかと言うと、香澄と泉美に挟まれて一緒に観戦していたのを真由美にもしっかり見られていた為、どういう事なのかそうなった経緯を説明する為だった。

 

「会長、優勝おめでとうございます」

 

あずさの言葉に続き摩利も

 

「まずは予定通りの結果だな」

 

「あーちゃん、ありがとう。そうね、摩利も順調に準決勝進出ね」

 

周りが女子だけ、しかも皆パジャマ姿と言う非常に居心地の悪い状況に八幡は撤退を申し出ようとするが。

 

「あのー。すいません」

 

「少し危なかったが、服部も準決勝に進出したしな」

 

「すいませーん。ちょっといいですか?」

 

「CADの調整に問題があったみたいですよ?」

 

「おーい。聞こえてますよねー?」

 

「試合が終わってから木下君と再調整をしていたみたいですけど・・・」

 

この様に部屋に来たはいいが八幡は空気扱いだった。

真由美と深雪にそうするように言われているのか摩利、鈴音、あずさまでもが八幡を無視している。

このままじゃいつまで経っても部屋に戻れないと思った八幡は

 

「五人共パジャマ姿がとても可愛いですね」

 

「「「「「っ!?」」」」」ピクッ

 

(おっ、反応したな)

 

「やっぱり一高が魔法も女子のレベルも一番だなー」チラッ

 

「「「「「っ!?」」」」」プルプル

 

(もう一押しか?)

 

部屋に戻るという目的を忘れて調子に乗った八幡は

 

「会長にあれだけ沢山のファンが居るのも当然ですよ!今日試合を見てて気が付きましたが、摩利さんはアレですよね!普段は男勝りで気が強い感じですけどスタイル抜群で色っぽいですよね!」

 

「「「「「なっ」」」」」

 

「えっ?」

 

「八幡!お前試合中に私のそんな所を見て居たのか!」

 

「いやっ・・そんな事は・・・」

 

「はち君?香澄ちゃんと泉美ちゃんとも楽しそうにして居たし、あなたは九校戦をなんだと思ってるのかしら?」

 

「あれはただ試合を見て居ただけですよね?」

 

「四葉君・・さすがにそれはないですね・・・」

 

「今のはちょっと口が滑っただけで・・・あーちゃんなら分かってくれますよね?」

 

最後の頼みの綱とばかりにあずさに助けを求めるが。

あずさは自分の幼児体型を気にしている為八幡の味方をするはずもなく

 

「知りませんっ」プイッ

 

めっちゃ可愛く顔を背けられ、危なくこの状況で愛でる所だった。

 

そして最後に深雪が

 

「は~ち~ま~ん~」

 

八幡は怒った深雪により文字通り半分凍らされた。

 

自力で凍らされた部分を溶かした八幡は

 

「深雪・・さすがにこれはやりすぎじゃ・・」

 

「いいえ!これでも軽いくらいよっ!」

 

「連絡もしないで戻らなかったのは悪かったよ。明日は一緒に見よーぜ」

 

「しょうがないわね。私だけじゃなく皆にも明日謝るのよ?八幡が全然戻って来ないから心配してたのよ」

 

「ああ、そうするよ」

 

やっと深雪に許して貰った八幡は、この後香澄達と居た理由を真由美に説明した。

 

「そうだったの・・絡まれてた所を助けて貰ったのね」

 

「はい。これで誤解は解けましたよね?そじゃあ俺はそろそろ戻りますね」

 

そう言って八幡は自分の部屋に戻ろうとしたのだが

 

「折角来たんだからもう少しいいじゃない。さっきは無視して悪かったわ。ちょっとはち君をを虐めようと思って皆に協力して貰ったのよ」

 

「十分ダメージをくらいましたよ。こんな女子だらけの部屋で放置されるくらいなら殴られた方がマシです」

 

「あはは、でもこんな所に呼んで貰えるのははち君くらい何だから少しは感謝しなさい」

 

その後は八幡も交えて六人でお祝いと、明日からの試合について話し合った。

 

そろそろ時間も時間なので解散する事となり、一年生の深雪の部屋だけが別フロアだった為八幡は深雪を部屋まで送る事にした。

 

「別に送って貰わなくても大丈夫よ?フロアが違うとはいえすぐ着く距離なんだから」

 

「俺が送りたいだけだから気にするな」

 

「そう・・その・・心配してくれてありがとう」

 

八幡は達也から侵入者が出たと聞いていた為、多少過保護だと自覚してはいるものの深雪を送る事にしたのだ。

侵入者の事は知らないが、八幡の言葉が素直に嬉しく深雪は上機嫌だった。

そして深雪の言った通り部屋にはすぐ着いたのだが

 

「それじゃあまた明日な」

 

八幡はそう言ってこの場を去ろうとした。

しかし深雪が八幡を呼び止める。

 

「八幡っ!」

 

「ん?どうした?」

 

「あの・・その・・」

 

「どうしたんだよ深雪?」

 

「少し私の部屋に寄っていかない?」

 

「へっ?」

 

八幡は深雪の言った言葉を聞いて間抜けな声を発し一瞬キョトンとするが。

 

「いやいや、こんな時間にまずいだろ。それに明智もいるんだろ?」

 

「エイミィは里美さんの所に遊びに行くと言っていたから今は居ないはずよ」

 

「しかしな・・・」

 

八幡が本気で悩んでいると深雪は断られると思ったのか上目遣い+若干涙目で言う。

 

「・・・・ダメ?」

 

勿論八幡は断る訳がなく即答する。

 

「ダメじゃない(やっぱり深雪の上目遣いが一番破壊力あるな・・)」

 

そして部屋の中に入った八幡は備え付けのソファに座ったのだが、何故か深雪も八幡の直ぐ隣に座った為緊張でどうにかなりそうだった。

 

(ヤバいヤバい。近い近い。それにこの匂いはシャンプーの匂いか?ずっと嗅いでると頭がどうにかなってしまいそうだ・・・頑張るんだ俺!)

 

八幡が理性を保とうと必死に頑張っていると

 

「確か明日も会長の出場するクラウド・ボールが決勝戦まであるのよね?」

 

「おっ、おう!そうだったな。あとアイス・ピラーズ・ブレイク本戦の予選もだったな」

 

「男子が十文字先輩で女子が千代田先輩が優勝候補ね」

 

「千代田先輩?誰だそれ?」

 

「呆れた・・九校戦のメンバーくらい覚えてなさい。エンジニアの五十里先輩の許嫁で二年生の千代田花音先輩よ」

 

「五十里先輩?それも誰だ?」

 

「・・・・もういいわ。私が悪かったわよ」

 

「なんかすまん。それにしても俺達の出番はまだまだだよな。試合観戦だけじゃ飽きて来るな」

 

「そうね。アイス・ピラーズ・ブレイク新人戦の予選は五日目からだものね」

 

「でも深雪に勝てる奴なんか居ないだろうな」

 

「それはやってみなければわからないわよ。雫とエイミィも出るのだし」

 

「そうか、勝ち進めば同じ一高の奴と当たる可能性もあるんだよな。なんか応援する方としては複雑だよな」

 

「そうね・・それより八幡も油断してると足元をすくわれるかもしれないわよ?やっぱり三高の一条さんがライバルなのかしら?」

 

「一条か・・なかなか優秀らしいな・・・」

 

「ええ、大丈夫なの?」

 

八幡はまさか自分が一条に負けると思われているのかと少し不機嫌になる。

 

「大丈夫に決まってるだろ。何があっても俺はお前の前でだけは負けるつもりはない」

 

深雪は勿論八幡が負けるなどとは微塵も思っていなく、少しからかうつもりでそう聞いただけだった。

しかし八幡から返って来た答えが予想外に嬉しいものだったので顔を赤くして言葉につまってしまう。

 

「えっ?私の前でだけは?それって・・・・」

 

「あっ、いやっ、今のは・・・とっ、とにかく俺は絶対負けないからな!」

 

八幡も自分の言ったことが恥ずかしくなり顔を背けて深雪にそう言った。

 

「私も八幡が負けるなんて思ってないわよ?」

 

「おっおう。それならいいんだが。それに実は、万が一の時の為に必殺技を用意してあるから大丈夫だ」

 

「必殺技?」

 

「ああ。まぁ新しい魔法なんだが、それを使えばたぶん負けないな」

 

「新しい魔法・・・大丈夫なのよね?」

 

「何がだ?」

 

「八幡の事だからデタラメな威力の魔法なんじゃないかって心配なのよ」

 

「・・・・・・ああ、多分大丈夫だ」

 

「今の間は何?本当に大丈夫なのよね?」

 

「大丈夫だ。他の人は巻き込まない。()るのは一条だけだ」

 

「何言ってるのよ!殺しちゃダメよ!」

 

「冗談だよ。とにかく俺が勝つって事だ」

 

「全くもう・・・ふあ~あ」

 

「深雪が人前であくび何て珍しいな。眠くなってきたのか?」

 

深雪は四葉家の女として相応しくなる様幼いころからかなり厳しくしつけられて来た。そんな深雪が人前であくびなど達也を含めて今までした事などない。こんな姿を見せるのは八幡の前でだけだった。

 

「ごっごめんなさい。ええ・・少し眠気が・・」

 

「よし。じゃあ俺もそろそろ自分の部屋に戻るぞ」

 

「・・・・・。」

 

「深雪?」

 

「・・・・・・いて」

 

「え?」

 

「私が眠るまで手を握っていて」

 

普段なら深雪にこんな事を言われたら焦る八幡だったが今日は違った。

そもそも深雪がこんな事を言う事自体珍しいので八幡は疑問に思い聞く。

 

「どうしたんだ?何かあったのか?」

 

しかし深雪から返って来た答えは意外なものだった。

 

「私だって偶には甘えさせてくれてもいいじゃない・・・・ダメ?」

 

またも上目遣い+涙目である。

 

「ダメじゃない」

 

もちろん八幡は即答する。

 

「よかった。じゃあお願いね」

 

その後深雪が眠りにつくと八幡は自分の部屋に戻ったのだが、眠ろうとする度に深雪の寝顔がチラつき全然寝付けなかった。

 



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空気を読まない男

【クラウド・ボール】制限時間内にシューターから射出された低反発ボールをラケットまたは魔法を使って相手コートへ落とした回数を競う対戦競技。

1セット3分、ボールは20秒ごとに追加され最大9つのボールを操る事になる。女子は3セットマッチ、男子は5セットマッチで、 選手の一日の試合回数が最も多い競技である。

 

九校戦二日目、真由美が出場するクラウド・ボール観戦の為に八幡は深雪、雪乃、結衣の四人で競技場に来ていた。

達也を除く他のメンバーは、同じく今日行われるアイス・ピラーズ・ブレイク本戦の予選を見に行くためこの場には居ない。八幡達もこちらが終わり次第見に行く予定でいる。

そして達也がいない理由は本来新人戦女子の担当なのだが、急遽エンジニアとして真由美に付いている為である。

 

昨日の真由美の様に雪乃と結衣に七草姉妹について聞かれた為、八幡はまた同じ説明をして身の潔白を証明した。

 

「そもそもお前ら二人は同じ学校の後輩なんだから顔くらいわかるだろ」

 

「言われて見ると確かにそうなのだけれど・・・私達は魔法科ではなかったからほとんど接点がなかったのよ」

 

「去年はまだ生徒会にもいなかったしね。でもいろはちゃんと良く一緒に居た子の中に確かに居たかも」

 

「取り敢えずそう言う事だからやましい事は何もないぞ。ふあ~あ・・」

 

「ヒッキー寝不足?」

 

「ああ、昨日の夜中々寝付けなくてな」

 

「そうなの?試合が近づいてきたからさすがの貴方でも緊張したのかしら?」

 

「いや全然。ちょっと深雪の・・・いや、そうかもな」

 

八幡は危なく寝不足になった本当の理由を言いそうになったがなんとか誤魔化した。

しかし深雪には聞こえていたらしく八幡に小声で聞いてくる。

 

「私があんなお願いしたからよね?ごめんなさい」

 

「違うぞ・・ただちょっとな・・」

 

「ちょっと何?」

 

「深雪の寝顔を思い出したら目が冴えちゃってな」

 

それを聞いた深雪は顔を真っ赤にする。

 

「もう!何言ってるのよ八幡っ!そんなの早く忘れなさい!」

 

深雪の顔が急に赤くなった事に雪乃と結衣は不審に思い

 

「深雪さんどうかしたの?顔が真っ赤よ?」

 

「むむむ・・・なんか二人とも怪しい・・」

 

「だっ大丈夫よ。何でもないわ!ちょっと暑くてのぼせたのかもしれないわね」

 

「おっ、そろそろ始まるみたいだぞ!ちゃんと応援しようぜ」

 

明らかに挙動不審な二人を怪しみながらも、雪乃と結衣は八幡の言葉に従い試合を見る事にした。

 

そして真由美が姿を現すとそれだけで観客席は昨日同様大いに沸きあがった。

 

「相変わらずの人気だな・・それより会長はあの恰好で試合をするのか?大丈夫なのかよ・・」

 

八幡が言うように真由美は所謂テニスウェアの様な出で立ちで下がミニスカートなのだ。

 

「八幡が何を心配してるか大体予想は付くけど心配は無用よ。会長は魔法オンリーだから体を動かすことはないわよ」

 

深雪に言われて八幡も納得する。

 

「あっそうか。それならパンチラの心配もないな。・・・あっ」

 

時すでに遅し。八幡の言葉に三人は軽蔑の眼差しを向けて居た。

 

「アンダースコートを履いているに決まっているでしょ。それに昨日渡辺先輩にも言われたわよね?そんな事ばかり考えて居たらまた凍らすわよ?今度は全身」

 

「エロ葉八幡君・・・」

 

「ヒッキー最低だし・・・」

 

「すまん・・気を付ける・・・」

 

そしてついに真由美の試合が始まったのだが

 

「相手はどう見てもオーバーペースだな。あれじゃ最後まで持たないぞ」

 

「でもそうしないと会長にはついていけないのでしょうね」

 

「まだ相手に一ポイントも与えていないものね」

 

「うわ~、なんか可哀想だね」

 

真由美は自分のコートに侵入してきボールを一球の例外もなく倍の速度で相手コートに返していく。一見すると単純な作業の様にも見えるのだが、実際は真由美の持つ魔法力と精神力があればこそ出来る芸当だった。

真由美が第一セットを無失点で取り、今から三分間のインターバルなのだが

 

「さすが会長と言うべきか・・もうこの試合は終わりだな」

 

「「「えっ?」」」

 

八幡の言葉を疑問に思いながらコートを見た三人は納得した。

相手の選手が再びコートに立つ事はなくそのまま棄権したのだ。

 

「サイオンの枯渇だな。会長の相手を務めるには力不足だったな」

 

そしてその後の試合も真由美は相手に得点を許す事はなく、全試合無失点のストレート勝ちで見事優勝を果たした。

 

クラウド・ボールを見終えた四人は次にアイス・ピラーズ・ブレイクの会場へと来ていた。

八幡と深雪は雪乃と結衣と一旦別れ、二人共選手としてこの競技に出るので、参考の為に試合を間近で観戦しようと観客席ではなくスタッフ席まで足を運んだ。

 

「お兄様、お疲れ様です」

 

「達也と雫も来てたんだな。それと五十里先輩ですよね?」

 

雫は選手として、達也はそのエンジニアとして参加する為八幡達同様ここに来ていたのだ。

 

「八幡と深雪も来たのか」

 

「八幡、深雪。もうすぐ千代田先輩の試合が始まるよ」

 

「こんにちは四葉君。こうして話すのは初めてだね。僕は五十里啓、よろしくね」

 

「四葉八幡です。よろしくお願いします(深雪に昨日名前を聞いておいてよかったな)」

 

間も無く試合は始まった。

 

【アイス・ピラーズ・ブレイク】試合時間は無制限で、相手陣地にある縦横一メートル、高さ二メートルの12本の氷柱を先に全て倒す、または破壊した方の勝利である。

 

「あれは振動魔法・・『地雷原』か?」

 

八幡の呟きに達也が続く。

 

「千代田家の二つ名は確か地雷源だったな」

 

その名の通り花音の使う地雷原により相手の氷柱にだけまるで地震が起きた様に爆発的な振動が加えられ、やがて轟音を立てて次々と倒壊していく。

しかし相手の選手も防御を捨て攻撃優先に切り替えると、花音側の氷柱も倒されていく。

 

「なるほど。ヤられる前にヤるの精神ですね」

 

「確か一回戦も全試合中最速のタイムと聞きましたが」

 

八幡と達也の言った言葉を五十里が肯定する。

 

「はは、そうなんだよね。思い切りが良いと言うか大雑把と言うか。守る時間があるなら攻めて一気に勝ちに行くスタイルかな?」

 

五十里の言った通り試合は花音が相手より先に全ての氷柱を倒し終えて勝利した。

 

花音が三回戦進出を決めた後周りの目も気にせず五十里の腕に抱き着きながら一高天幕に引き上げた。それを後ろから苦笑いで見つつ八幡達も付いて行ったのだが、中に入ると重苦しい空気になっている事に直ぐ気づいた。

疑問に思った八幡が一番近くに居た鈴音に聞く。

 

「何があったんですかリンちゃん先輩?」

 

その呼び方にこの重苦しい空気の中躊躇したのだろうが、、そこに居た者の殆どが八幡にツッコミたいのがバレバレだった。

そしてこの時達也、深雪、雫の三人は空気の読めない八幡を睨んでいた。

唯一呼ばれた鈴音だけが普段通りの調子で答える。

 

「男子クラウド・ボールの結果が思わしくなかったので、予定していたポイントの見通しを計算し直していたんですよ」

 

その答えに今度は達也が聞き返す。

 

「思わしくなかったといいますと?」

 

「出場選手三人全員が予選敗退という結果です」

 

その時計算が終わった様で作戦スタッフの二年生が報告する。

 

「本戦残り六種目中四種目で優勝すれば総合優勝は安全圏だと思われます」

 

その結果に八幡が思わず言ってしまう。

 

「そう上手く行きますかね?実際今予定通りに行ってないですよね?知らんけど」

 

その言葉に一高天幕内はさらに空気が悪くなった。

 




明日は更新出来ないかもしれません。
なるべく出来るように頑張ります。


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お食事会

不謹慎な発言により上級生が八幡に食って掛かりそうだった為、摩利によって天幕からつまみ出された八幡は一人ホテルの自分の部屋に戻った。

 

「俺は正論を言っただけなんだがな・・・」

 

八幡自身は総合優勝に興味はないが、余りにも多数の人間が楽観視し過ぎている様な気がした為気を使って忠告したつもりだったのだ。

 

「やっぱり余計な事をするもんじゃないな。今後はやめておこう」

 

そう結論を出した八幡は気が付くと時刻も夕刻となっており、食事を取る為ホテルの食堂へと向かった。

 

「しまった、一高の利用時間になるまで少し早く来過ぎたな」

 

八幡達の宿泊しているホテルはなにも一高だけが利用しているわけではない。全てではないが九校戦に出場する他の高校も宿泊している為、食堂や風呂などの公共施設はトラブルを避ける為各学校で利用時間が割り振られている。

今の時間利用しているのは三高の生徒達だった。

 

「しょうがない出直すか」

 

八幡達が一度部屋に戻ろうとした時声を掛ける者が居た。

 

「八幡様?」

 

「おう。愛梨か」

 

食事を取る為他に三人の女子生徒を引き連れた愛梨だった。

 

「どうなされたのですか?」

 

「飯を食いに来たんだが利用時間の事をすっかり忘れててな。一度部屋に戻ろうとしてたところだ」

 

「そうだったんですか・・・」

 

愛梨が八幡の答えを聞きなにやら考えていると、一緒に来ていた三人の女子生徒が愛梨に小声で言う。

 

「愛梨、この人が四葉さんだよね?」

 

「ええ、そうよ」

 

「だったら私達の事は良いから一緒に食事したら?」

 

「え?でも・・」

 

「いいからいいから。愛梨が男の人に興味持つなんて珍しいもんね」

 

ニヤニヤしながら言う友人の言葉に愛梨はつい声を荒げてしまう。

 

「なっ、何を言っているのよ!私は別に八幡様の事を・・・」

 

「八幡『様』ねぇ~?」

 

「あうっ・・」

 

そのやり取りを見て居た八幡は

 

「どうしたんだ愛梨?俺はそろそろ行くが」

 

「あっ、あの・・その・・」

 

口ごもる愛梨を見兼ねて友人の一人が八幡に言う。

 

「四葉さん、私達は行きますので愛梨と一緒に食事をして下さい。それでは」

 

そして三人は先に食堂へと入って行った。

 

「そうは言っても今は三高の利用時間だからな・・。一高の俺が使うのはまずいだろ・・・」

 

先に行った三人を恨めし気に見て居た愛梨は八幡のその言葉に

 

「八幡様!一人では問題ですが三高の生徒である私とであれば大丈夫だと思います」

 

「そうなのか?う~ん・・じゃあ一緒に食うか?」

 

「はい!では参りましょう」

 

そして二人は食堂へと入って行った。

 

(うわ~、メチャクチャ視線を感じるな。そりゃいきなり一高の俺が入って来たら目立つよな)

 

八幡の考えている理由も当たっているのだがそれよりも大きな理由があった。

それは勿論愛梨と二人で入って来た事である。

 

「なんで一高の生徒が・・・」

 

「いや、それよりなんで一色さんと居るんだよ」

 

「アイツは確か懇親会でも一色さんと一緒に居た奴だよな?」

 

「九島閣下に襲い掛かかった奴か」

 

「思い出した!十師族の四葉八幡だ」

 

「四葉・・・」

 

「一色さんと四葉が・・」

 

周りの声が聞こえた八幡は

 

「なぁ愛梨・・やっぱり俺は戻るかな?メチャクチャ見られてる・・」

 

「そんなの気にしないでいいですわ。それよりあそこが空いているので座りましょう」

 

そう言って愛梨が行ってしまったので八幡も諦め付いて行った。

そして交互に食事を持って来た二人は食事を開始する。

 

「「頂きます」」

 

「なんか済まなかったな俺のせいで。さっきの三人にも後で謝らないとな」

 

「気にしないで下さい。あの三人は絶対楽しんでますから・・・」

 

愛梨がそういいながら離れた席に座る三人を見ると全員こちらをニヤニヤしながら見ていた。

 

「そうなのか?良く分からんが大丈夫ならいいか」

 

「はい、問題有りませんわ。それより八幡様は何故お一人だったのですか?」

 

「うっ、実はな・・」

 

八幡は具体的な数字は言っていないが、さっき一高天幕で起きた事を話した。

それを聞いた愛梨は苦笑い気味に言う。

 

「それは何というか・・言っている事は正しいのですが・・・」

 

「やっぱりまずかったかな?」

 

「一年生の八幡様が言うべき言葉ではなかったかも知れませんね」

 

「やっぱりか・・」

 

自分の言葉で落ち込む八幡に愛梨は焦る。

 

「でっ、ですが八幡様の言った事は間違ってはいませんよ?だから元気を出してください!それに今はせっかくご一緒して居るのですから食事を楽しみましょう」

 

「すまん、それもそうだな。それにしても愛梨のパスタは旨そうだな」

 

「ええ、とても美味しいです。良かったらどうぞ」

 

そう言って愛梨は無意識で自分のフォークに巻いたパスタを八幡に差し出した。

密かに八幡達のテーブルを観察して居た周りの者達もこれには騒めき出す。

そして八幡も

 

「あっ愛梨っ!その・・これはまずいんじゃないか?」

 

その言葉に愛梨も自分のしている事にようやく気が付く。

しかしかなりプライドの高い愛梨は周りに見られている事に気が付き、狼狽える姿を見られたくない一心で強がってしまう。

 

「べっ別に問題ありませんわっ!さあどうぞっ!」

 

「いや、しかしだな・・」

 

「あ~んですわっ!」

 

愛梨の妙な迫力に負け八幡はついに

 

「ぱくっ・・・うん・・美味いな」

 

そして何を思ったか愛梨は

 

「八幡様のドリアも美味しそうですわね?」

 

「へ?」

 

「八幡様のドリアも美味しそうですわね?」

 

「いや、聞こえてはいるんだが・・・」

 

「・・・・・・」ジー

 

「(;^ω^)・・・・」

 

「(´;ω;`)」

 

「はぁ・・わかったよ・・・ほら」

 

「・・・・・・」ジー

 

「・・・あっあ~ん」

 

「ぱくっ・・おっ美味しいですわ」

 

「そっそうか、それは良かった」

 

八幡と愛梨がそんなバカップル染みた事をしつつ食事を終えたタイミングで声を掛けて来る者がいた。

 

「四葉、少しいいか?」

 

八幡は声の聞こえた方を向く。

 

「お前は・・一条か。それとカーディナル・ジョージ・・吉祥寺だったか?」

 

「僕の事も知っていて貰えたとは光栄だね」

 

吉祥寺 真紅郎・・・弱冠13歳で仮説上の存在だった「基本(カーディナル)コード」の一つである「加重系統プラスコード」を発見した天才である。

 

せっかく八幡との二人きりの時間を楽しんで居た愛梨は不機嫌になり言う。

 

「一条と吉祥寺、一体何の用ですの?」

 

「ちょっと挨拶に来ただけさ。新人戦ではどちらの競技でも対戦するかもしれないしね」

 

「そう言えばそうだったな。随分自信がありそうだな?(挨拶とかいいから!早くどっか行けよイケメン!)」

 

「一条家の爆裂はアイスピラーズ・ブレイクには相性がいいからな」

 

それを聞き八幡は鼻で笑う。

 

「ふっ。その慢心が命取りだぞ?(イケメン、お前自身が爆裂しろ!)」

 

「・・・まあいいさ。試合でどっちが上かはっきりさせればいいだけだしな」

 

「そうだな。そろそろいいか?今は愛梨と楽しんでいるんだ」

 

そこで真紅郎が疑問に思う。

 

「そういえば二人は何でそんなに仲がいいんだい?さっきも見てたけど・・その・・食べさせ合ってたよね?」

 

「なっ!うっうちの妹が八幡様の後輩でお世話になっているからですわ!それ以上は特に答える事はありません」

 

「そっ、そうなんだ。そろそろ行こうか将輝」

 

「そうだな。三高の利用時間もそろそろ終わりそうだからな。じゃあな四葉、試合を楽しみにしてる」

 

愛梨の剣幕に二人とも気圧されそう言って食堂から出て行った。

 

「全くあの二人は・・八幡様っ!一条なんかに負けたらダメですわよ」

 

「おいおい・・さすがにこの場で三高の生徒の愛梨がそれを言ったらまずいんじゃないか?」

 

「あっ!ううう・・・」

 

愛梨が自分の失言に顔を赤くして小さくなっているのを見た八幡は

 

「でもその気持ちだけは受け取っておく。サンキューな」

 

愛梨の頭に手をのせそう言った。

 

「はっ、はい!」

 

「よしっ、そろそろ出るか」

 

「そうですわね。今日はありがとうございました。その・・楽しかったです」

 

「俺の方こそ助かったよ。ありがとな」

 

そして二人は食堂を出た

 

 

所で深雪、雫、ほのか、雪乃、結衣、エリカ、美月に会ってしまった。

 

「八幡・・・」

 

「おっおう深雪、これから飯か?ドリアとパスタがお勧めだぞ!じゃあな」

 

勢いで逃げようとした八幡の方を雪乃と結衣が掴む。

 

「待ちなさい八幡君っ!」

 

「ヒッキー待つしっ!」

 

八幡は観念して取り敢えず愛梨に先に行くように言う。

 

「わかったわかった。愛梨、悪いけど先に行ってくれ。俺はどうやら戻れそうにない」

 

「・・・・わかりました。それでは八幡様、また」

 

その時一高女子と愛梨の間には見えない火花が散っていた。

 

「八幡。なんで三高の女子と一緒に居たのか説明を要求する」

 

雫に続きほのかとエリカと美月も

 

「八幡さん随分楽しそうでしたね?」

 

「八幡、あんた見境なさ過ぎるわよ。さすがの私も黙ってないわよ」

 

「八幡さん・・あの・・頑張って下さいね」

 

最後に深雪が笑顔で言う。

 

「さて八幡食事にしましょうか?」

 

このあと八幡は愛梨の事を説明して、全員分の食事を奢りなんとか許してもらった。

 




次回は原作に戻ります。


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八幡は気を引き締め直す

短めです。


九校戦三日目。

男女バトル・ボード本戦の準決勝~決勝とアイス・ピラーズ・ブレイク本戦の三回戦~決勝までが行われる今日は九校戦における前半の山場と言われている。

 

「刑部少丞先輩が男子第一レース、摩利さんが女子第二レース、千代田先輩が女子第一試合で十文字先輩が男子第三試合か・・どーする深雪?」

 

第一試合が被っている為どちらを見に行くか八幡は隣に居る深雪に聞く。

 

「全くもう!八幡は!服部先輩の前で絶対言うんじゃないわよ?」

 

「おう。でも俺は気に入ってるんだけどな。刑部少丞・・なんかカッコよくないか?」

 

「私には全然わからないわ」

 

「それはそれで失礼だなおいっ」

 

そこに他のメンバーもやって来る。

 

「八幡君、深雪さん。服部先輩か千代田先輩、どちらを見に行くのか決まったのかしら?」

 

「まだだ。俺はどっちでもいーんだが・・ 刑部少丞先輩は俺に来てほしくはないかもな」

 

それを聞いて居た結衣が

 

「餃子?賞状?ヒッキー何言ってるし」

 

「そんな事は言ってないからな?服部先輩だ服部先輩」

 

「八幡いい加減にしなさい!でもそれなら千代田先輩の方を見に行きましょうか」

 

「そうするか。摩利さんの試合は絶対見に来いって言われてるから、取り敢えずアイス・ピラーズ・ブレイクを見るのもいいしな」

 

こうして八幡達はまず花音の試合を観戦する事にした。

そして試合が始まると花音は前日同様、先手必勝で危なげなく勝利を収めた。

 

続いて一行は予定通り摩利の出場するバトル・ボード女子第二レースの行われる会場へとやって来た。

試合開始直前になって、今まで真由美に作業の手伝いの為連れて行かれていた達也が合流した。

 

「よう達也、何とか間に合ったな。見逃したら摩利さんに何を言われるか分からなかったぞ?」

 

「ああ。会長にも困ったものだ。ギリギリまで解放してくれなかったからな」

 

そしてまもなく選手達がスタートラインに出揃った。

 

「摩利さんは準決勝でもやっぱり余裕の表情だな」

 

「まあ、それだけの実力があるからな」

 

八幡と達也がそんな会話をしているとスタートを告げるブザーが鳴った。

やはり先頭に躍り出たのは摩利だった。

 

「よし、スタートは順調だな」

 

「でもピッタリ後ろに張り付かれているわ」

 

「さすがは海の七高と言ったところか」

 

八幡、深雪、達也の会話に雫とほのかも入る。

 

「これ去年の決勝と同じ展開」

 

「さすがは九校戦マニアの雫だな」

 

「そうなんですよ八幡さん。雫は見た試合は内容までほとんど覚えてるんですよ」

 

そしてレースは八幡達の観戦するスタンド前を選手達が通り抜けて行く。

ここを抜けると次にかなり急角度のコーナーに差し掛かり、スタンドからは直視できなくなる為大型スクリーンでの観戦となる。

摩利がコーナー直前まできた時、八幡と達也は一足先にスクリーンに目を移していた。

そこで観客達の悲鳴や叫び声が聞こえた。

 

「危ないっ!」

 

「オーバースピードかっ!?」

 

その声に二人も視線を戻すと七高の選手が体勢を崩し、完全にボードの制御力を失って猛スピードで水面を滑って行く。そしてそのまま行けば本来フェンスへ突っ込むはずだったのだが、その先にはコーナーを曲がる為一度減速し次の加速を始めたばかりの摩利が居た。

 

他の人間が悲鳴を上げるか見て居るかしかできない中、八幡は摩利の名を呼ぶ。

 

「摩利さん後ろだっ!」

 

距離的に八幡の声が聞こえるはずはないのだが、摩利は何かを感じ取ったのか後ろから自分に向かって突っ込んで来る七高の選手に気が付いた。

不測の事態にも拘わらず摩利は冷静だった。加速魔法をキャンセルして七高の選手を受け止めるべくそれに適した魔法を発動して体勢を整える。

しかしここで更に予想外の事が起きた。摩利の足元の水面が僅かに沈んだのだ。そのタイミングでまず七高選手のボードが摩利の足を刈り取ろうとする。これは側方へ弾く事に成功した。次に足場を失った選手自身が突っ込んで来たのだがこれには先ほどの僅かな水面の沈みでタイミングがずれ対処できなかった。

もろに七高選手が摩利に衝突し二人はもつれ合いながらフェンスへと吹っ飛んで行く。

さらに観客達の悲鳴が大きくなる中八幡は動いた。

突っ込んで来る摩利達とフェンスの間に一瞬で移動した八幡はまず二人に減速魔法をかけ速度を落とす。

しかしこのままではまだ勢いを殺し切れていないので、以前エリカを助けた時の様に重力を操り摩利達に浮力を与える。そして殆ど勢いを失った二人を八幡は難無く受け止める事に成功した。

 

「摩利さんっ!?大丈夫ですか?」

 

「うっ、八幡・・一体どうなった・・・痛っ」

 

「やっぱりどこか負傷しているみたいですね。とりあえず今は動かないで下さい」

 

「ああ・・わかっ・・・た・・・」

 

摩利はそう言って気を失った。七高の選手も気を失っている。

八幡は二人をゆっくり地面に降ろすと少々荒い口調で言う。

 

「おいっ!何をやってるんだ!早く担架を持って来い!」

 

観客は勿論、大会の全係員までもが固まっていたのだ。

誰もが摩利達はフェンスに激突すると思っていたのに、突然現れた八幡の救出劇に訳が分からなくなっていた。

しかし八幡の声に係員達はさすがに動き出し救護班が直ぐに駆け付けた。

そしてここでやっと試合中止を告げるブザーが鳴った。

 

 

(くそっ!移動中のあれ以来何も起きていなかったから油断してた。もし深雪にもこんな事が起きたら・・・させてたまるか。まあ・・もう絶対に許さねえけどな・・・)

 

八幡は自分が甘かった事を反省しまだ見ぬ敵に鉄槌を下すことを決意した。

 









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九校戦よりも深雪

その後レースの結果は危険走行により七高は失格。決勝進出は三高と九高に決まった。

そして一高は準決勝で敗れたもう一人の選手である小早川景子が三位決定戦にまわる事になった。

 

摩利はあの後直ぐに医務室に運ばれ、ろっ骨を骨折していた為治療魔法による応急処置を受けた。

そして軍の施設にある病院へと真由美の付き添いの元移され、暫くするとベッドの上で目を覚ました。

 

「摩利、気がついた?私の事わかる?」

 

「何を言ってるんだ真由美?そんな事・・・そうか私は・・ここは病院か?」

 

摩利は直ぐに現状を理解した。

 

「ええ、病院よ。良かった、意識ははっきりしているようね」

 

「私はどのくらい眠っていたんだ?それとあの後試合はどうなった?」

 

そこで真由美は試合結果と摩利の怪我の程度について説明した。

 

「そうか全治一週間か・・じゃあミラージ・バットも・・・」

 

「残念だけど棄権するしかないわね」

 

「これじゃあ昨日八幡が言っていた通りだな。予定通りには行かないか」

 

「でも貴方があそこで七高の選手を庇っていなかったら彼女は魔法師生命を絶たれていたかもしれないのよ?名誉の負傷ってやつね。まぁ、はち君がいなかったら摩利ももっと大怪我を負っていたかもしれないけどね」

 

その言葉に摩利は思い出した様に言う。

 

「そうだな。八幡が居なければ・・・って、そうだっ!アイツはいつの間にあそこに現れたんだ?」

 

「入学式の翌日に一年生が校門の所で揉めていたじゃない?たぶんその時はち君が使っていた魔法と同じだと思うわ。加速魔法ではないと思うけど・・あれはまるで瞬間移動みたいよね?」

 

「そうだった。確かにあの時も見たが結局分からず終いだったな」

 

「それに摩利達を受け止めた後、固まる係員に指示を出して迅速に医務室に運ばせたのもはち君よ?まぁ、周りの人達が固まって居たのは、はち君の魔法のせいなんだけどね。さらに言うなら医務室まで付き添って応急処置をしたのもはち君よ。さすがに女の子の摩利に対してはち君一人って言うわけじゃなかったけどね」

 

摩利はそれを聞き恥ずかしくなったのか若干顔を赤らめながら言う。

 

「くっ、それにしてもアイツには驚かされてばかりだな」

 

「でも気になる事があるのよね・・」

 

「気になる事?八幡についてか?」

 

「ええ。摩利が怪我したのははち君のせいじゃないのに・・・彼、応急処置をしながらまるで自分が悪いみたいに摩利に謝っていたのよね。自分がもっと気を付けて見て居れば、みたいな事を言っていたわ」

 

「なんだそれは?まるで何か起こるかもしれないと分かってたみたいじゃないか・・」

 

「そうなのよね・・聞いても詳しくは教えてくれないし。それはそうと摩利の目が覚めたら聞いてほしいとはち君と達也君に言われてる事があるの」

 

「あの二人に?何だ?」

 

「七高の選手を受け止める直前、魔法による妨害を受けなかった?あの時急に体勢を崩していたわよね?」

 

「確かに足元に不自然な揺らぎは感じたが、それが魔法によるものだったかどうかは分からないな」

 

「そう・・これははち君達も同意見なんだけど、あの時の摩利の足元の水面の動きは明らかに不自然だったわ。今達也君がさっきのレースの映像を大会委員から借りて検証しているところよ。水面の波動解析をすれば何か別の力が働いていたかどうか分かるそうよ」

 

「八幡といい達也君といい、アイツらは本当に高校一年生なのか?何故そんなスキルを持っているんだ」

 

「それは私も思ったわ。取り敢えず摩利も何か思い出したら教えてね?私はもう行くから今はとにかく休んでね」

 

そういい残し真由美は病室を出て行った。

残された摩利はベッドに横たわりながら一人呟く。

 

「一体何が起こっている・・八幡、お前は何か知っているのか?」

 

 

摩利が病院に運ばれた後八幡はホテルの自分の部屋に戻って来ていた。

 

「やっぱり無頭竜(ノー・ヘッド・ドラゴン)の仕業なのか?どちらにしてもバスの件といい、今回の摩利さんの件といい一高が狙われている可能性が高いよな。母さんに調べて貰うか・・いざとなったら九校戦を抜けてでも俺が・・」

 

八幡がそんな事を一人考えているとドアをノックする音が聞こえた。

 

「誰だ?」

 

「八幡私よ?少しいいかしら?」

 

「深雪?ちょっと待ってくれ今ドアを開ける」

 

突然訪れた深雪に八幡が聞く。

 

「どうしたんだ?達也とレースの映像の解析をしていたんじゃないのか?」

 

「ええ。でも五十里先輩もおられたし、私が居ても出来ることはないから。それに八幡の事が心配だったから」

 

「心配?俺は別に普段通りだぞ?」

 

「それは嘘ね。貴方今ブランシュの事件の時に犯人を殺そうとしていた時と同じ顔をしているわよ?」

 

八幡は深雪にそう言われて何も言い返せない。

 

「今回の渡辺先輩の事も自分のせいとか考えているんでしょ?」

 

「それは・・・」

 

「いい八幡?貴方のせいなわけがないでしょ?いくらこの九校戦で何か起こるかもしれないと疑っていたからってそんなわけないじゃない。もしそうなら私とお兄様も同罪よね?それに八幡があそこで助けたからこそ渡辺先輩と七高の選手はあの程度の怪我で済んだのよ?」

 

八幡は深雪に自分の考えて居た事を見事に言い当てられて観念するしかなかった。

 

「参ったよ、降参だ。深雪の言った通りの事を確かに考えていた。でも今回は少し違う。俺はこの先お前まで何かに巻き込まれる前に犯人を見つけ出して消すつもりだ」

 

「そんな事・・相手が誰か分かっているの?」

 

「いや、まだだ。だから母さんの・・四葉の力を借りる」

 

「叔母様の・・」

 

八幡が母親で在り当主である真夜に力を借りる事など過去にはほとんどなかった。だからこそ八幡がいかに本気なのか深雪には分かった。そんな八幡を深雪は止められない。

 

「そう心配するな。相手が誰だろうと大丈夫だ。それに軍も何か情報を掴んでいるみたいだから直ぐに解決するかもしれないしな。だがいざとなったら俺は九校戦を途中で抜ける事も有り得る」

 

「そんな・・でも先輩達には何て言うの?」

 

「そのまま事実を言う。まぁ納得しなくても関係ないがな」

 

「八幡・・どうして貴方が一人でそこまでしないといけないのよ・・」

 

深雪の疑問に八幡は一瞬躊躇ったが答える。

 

「それを俺に聞くのか?・・・俺には九校戦なんかよりお前の方が大切だからな。お前を守る為なら何だってするさ」

 

深雪はその言葉を聞き嬉しさと悲しさが混じったような表情を見せる。

 

「ごめんなさい。八幡が『そう思ってしまう』のは知っていたはずなのに・・」

 

「そんな顔するな。俺が深雪と小町を大切にするのが悪い事みたいじゃないか」

 

「そんな事・・・いいえ。ありがとう八幡、いつも私を守ってくれて」

 

深雪が何かを吹っ切るように笑顔でそう言うと、それを見た八幡も深雪の頭を撫でてやる。

そしてその時またドアをノックする音がした。

 

「八幡、深雪も居るか?」

 

「達也か?」

 

「お兄様?」

 

八幡が直ぐにドアを開ける。

 

「どうしたんだ達也?」

 

「せっかく二人きりだったのに邪魔をして悪いな」

 

「にゃっ、にゃにそんな事を真面目な顔で言ってやがる」

 

「俺は真面目に言っているんだが・・・」

 

そこで深雪が耐えられなくなり達也に聞く。

 

「おっお兄様!それでどうなされたのですか?何か用事があったのではないのですか?」

 

「ああ、そうだったな。深雪、会長達が呼んでいるからお前を呼びに来たんだよ」

 

「七草会長が?一体どのような用なんでしょうか・・」

 

「それは行ってみなければ分からないな。八幡、お前も来るか?」

 

八幡は深雪が呼ばれた理由にピンと来て、自分がその場に居るのは良くないと思いそれを断る。

 

「いや・・俺はいい。深雪、早く行って来いよ」

 

「ええ。じゃあ行ってくるわね。八幡また後でね」

 

こうして深雪は達也と共に部屋を出た。

 

真由美達の待つミーティングルームに向かう途中、深雪はさっきまで八幡と話していた事を達也に話す。

 

「そうか、八幡がな。アイツがそういう行動にでるのは仕方がないな」

 

「私もそれは分かっているつもりです。ですが・・」

 

「そう心配するな。確かに軍も動いているからな。八幡が九校戦を抜ける事になる前に尻尾を掴むさ」

 

「はい、お兄様」

 

二人はミーティングルームに着いた為その話はそこで終わらせた。

 

真由美が深雪を呼んだ理由は、摩利の代わりにミラージ・バット本戦へ出て貰えないかと言う打診の為だった。

今回のアクシデントや男子競技の成績不振により、総合一位をキープしているとはいえ予定よりも獲得ポイントが少なく二位の三高との差が十分逆転可能な差である為、新人戦よりも獲得ポイントの多い本戦を優先しようと言う事になったのだ。

深雪を代役に指名した理由が深雪ならば優勝が狙えるとの言葉に、深雪よりも達也が自信満々にそれを肯定した為、深雪は断る事など出来るはずもなくこれを了承した。

八幡は自分がこの場に居れば更に深雪を目立たせ標的になる可能性が増える代役になる事など止めてしまうのが分かっていたので付いて来なかったのだ。いくら深雪の為を思っての事でも、深雪の行動を縛りたいとは思っていないのだ。




仕事が忙しく暫く不定期更新になりそうです。



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