Fate/UNDERTALE (Feles)
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第1部(ARC1)「Fate/UNDERTALE」
中立(Neutral)


LV 1
WPN 棒切れ
AMR 絆創膏


「君はどうしてそんなに強いの?」

 

小さな背中に問い掛ける。

見た目とは裏腹に無傷で特異点を修復し終えた彼。

後輩も人間とは思えない動きをしていたが、無傷とはいかなかったのに。

これがサーヴァントとデミ・サーヴァントの違いだろうか。

やはり彼は英雄の一人なのだと実感した。

けれど、彼は子供でもある、それも自分より幼い。

だから気になったのだ。

 

「君はどんな人生を送ってきたの?」

 

立ち止まって、振り返った彼の顔はキョトンとした表情を浮かべていた。

脈絡もなく、突然こんなことを聞かれれば当然かもしれない。

もう少しタイミングを考えるべきだったかもしれない。

しかし、聞いてしまったものは仕方ないし、彼は気を害した様子も無く笑顔を浮かべている。

何を言われるかドキドキしつつ、彼の言葉を待つ。

 

「あははは!…たちばなしもあれだから、しょくどうにでもいかない?」

 

「…なんで笑ったの?」

 

「だってとつぜんしんけんなかおをして、そんなことをきいてくるから」

 

自分の失態を人に笑われるのがこんなに恥ずかしいとは知らなかった。

 


 

 

 

ここカルデアにも(英霊)が増えた。

 

「やぁ、マスター」

 

白髪に赤い外套を着たアーチャーもその一人だ。

特異点で敵対した時のような雰囲気は今は無い。

カルデアの料理担当であるため、主に食堂にいる。

 

「それと…あぁ君か、セイヴァー」

 

「ハロー」

 

そういえば、アーチャーは彼に一度も矢を当てられていなかったが、そのことについてどう思っているのだろうか。

…明らかに藪蛇だ、触れないでおこう。

それに、特異点での出来事だから、覚えているか分からない。

 

「それで?昼食は既に済ませているはずだが、食堂に何の用かね?」

 

「ん~?リツカがぼくのことをしりたいんだってさ」

 

間違っていないはずなのに、何か変な風に聞こえるのは何故だろうか。

 

「そうか、ふむ…紅茶を淹れよう、丁度紅茶に合う菓子もある」

 

「「ありがとう」」

 

流石アーチャー、気が利く人だ。

召喚したばかりだけど。

 

「それじゃ、ここにすわろっか」

 

いつの間にかテーブルに移動していた彼の元へ向かう。

 

「それで、えっと、なんのはなしだっけ?」

 

「どんな人生送ったのか、だね」

 

「どんなじんせいといっても、ふつうにくらしてきたよ、ニンゲンとして」

 

「でも、君は攻撃を全て躱すし、棒切れ一本で戦えるくらい強いじゃないか」

 

「つよくはないよ、あたったらしんでしまっていた、それだけだよ」

 

「普通の人生を送ってきたっていうのを信じるとしても、それは大半の時間をってことじゃない?」

 

「ん~、まぁそうだね、たしかにほんのすこしのあいだ、たったいちにちだけ、ぼくはとくべつなじかんをすごしたよ」

 

思い出しているのか、目を閉じている彼の表情は、これまでに無い位の笑顔だ。

 

「そうだなぁ、ふつうにはなしてもおもしろくないし、ものがたりふうにいってみようか」

 

いつの間にやら淹れられていた紅茶に口を付け、彼は話し始めた。




えっ?会話の内容が気になる?
そんなあなたにこちら!

"誰も死ぬ必要の無い優しいRPG"
    『UNDERTALE』    

PS4/Vita版 1620円(税込)
steam版   980円(税込)
開発:Toby Fox

絶賛配信中!(ダイマ)


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力の証明(Proven Strength)

LV 5
WPN バレエシューズ
AMR 古いチュチュ


「今のセイヴァー、とっても可愛いね?」

 

半ば冗談気味にバレリーナのような恰好をした彼に言葉を掛ける。

いつもは、というか霊基再臨を行う前まではピンクと青のストライプのシャツに青いズボン、そして茶色の靴を履いていた。

今はいつものシャツにチュチュとバレエシューズを履いている。

やけに似合っているのは彼がまだ愛らしい子供だからだろうか。

 

「どう?にあってるかな?」

 

「えっ…そうだね、すごく似合ってるよ、うん」

 

「そう?ありがとう」

 

そう言って彼…いや、彼女?は微笑んだ。

もしかすると自分は今まで、中々に失礼な勘違いをしていたのではないだろうか。

それとも、彼はデオンの様に中性的な存在なのだろうか。

 

「ねぇマシュ、セイヴァーって男の子だと思う?それとも女の子だと思う?」

 

「えっ…正直に言うと分かりません、ずっと男の子だと思っていたんですけど、今の姿を見ると…」

 

「ロマンはどう思いますか?」

 

「えぇ?!う~ん…黒髭はありって言いそうかなって…」

 

「なるほど」

 

確かに。

 

「ダ・ヴィンチちゃんは?」

 

「簡単じゃないか!」

 

流石万能の天才、もう分かっているらしい。

 

「ズボンを下ろして貰えばいいのさ!」

 

そう言って、セイヴァーに歩み寄…

 

「マシュ!」

 

「はい、先輩!」

 

後輩は一瞬で天才(変態)を拘束して戻ってきた。

危なかった、もう少し遅ければ大変なことになっていた。

 

「どうしたの、みんなして」

 

「いや、何でも無いよ!」

 

「はい!」

 

「そ、そうだね!」

 

「ズボ、むぐぅ!」

 

「へんなの」

 

不思議そうな顔をして彼は部屋を出て行った。

公然セクハラの危機は去った。

彼の心の平和は守られたのだ。

 

「…マシュ」

 

「はい」

 

「セイヴァーの性別の話は無かったことにしよう」

 

「はい」

 

「今後は性別の詮索も無し」

 

「そうですね」

 

「良いかな、ダ・ヴィンチちゃん?」

 

「マスターが言うなら仕方ない」

 

そう、性別なんて関係無い。

彼はカルデアの一員で、大切な仲間の一人なのだから。

 


 

 

 

「お~い、リツカ~!」

 

「おかあさ~ん!」

 

「マスター!」

 

声に振り返ってみれば、三人組の子供達が廊下の奥から歩いてくる。

セイヴァーとジャックとナーサリーだ。

みんな子供の姿をしているからか仲が良く、よく一緒に遊んでいる。

そう、このカルデアでは最早子供の英霊は珍しくなくなってしまった。

 

「ハロー、リツカ、いっしょにあそばない?」

 

「おかあさん、遊ぼ?」

 

「アナタも一緒に遊びましょ!」

 

「うん、予定も無いしいいよ」

 

「オーケー、じゃあ行こっか!」

 

三人組の後を付いて行くことになった。

偶にはこういうのも悪くはないだろう、息抜きも必要だ。

 

「ところで、何をして遊ぶの?」

 

「パズルとか、クイズ?」

 

「解体?」

 

「お茶会なんてどうかしら!」

 

「リツカ、きめてくれない?」

 

「おかあさん」

 

「アナタに任せるわ、マスター」

 

解体は兎も角として、パズルは一人用な気がする。

だから、クイズかお茶会がいいだろう。

 

「ん~、じゃあお茶会に一票かな」

 

「そう?嬉しいわ!それじゃあ準備してくるわね!セイヴァーはマスターの道案内をよろしくね♪行きましょ、ジャック!」

 

「またね、おかあさん」

 

「いってらっしゃーい」

 

「おぉ、速い、一瞬で見えなくなった…」

 

「ぼくらはゆっくりいこっか、じゅんびがおわるまでね」

 

「うん」

 

「ところで、はなしのネタとかはあるの?」

 

確かに、お茶会をするなら話すことを考えなければならないかもしれない。

 

「れんしゅうでもしよっか」

 

「お願いします」

 

「じゃあ」

 

「あるところにスケルトンのきょうだいがいました、おとうとははたらきもので、あにはとてもなまけものでした」

 

「あるとき、おとうとがあににちゃんとはたらけとしかりつけました、そこであにはなんとこたえたでしょうか?」

 

「う~ん…」

 

思い付かない。

 

「分からないや、なんて答えたの?」

 

「もう1"トン"ぶんのしごとはしたぜ、スケル"トン"だけに」

 

「…」

 

えっ?

 

「おとうとはおこっていいました、にいちゃんのぶんまではたらいてるんだぞ!と、あにはなんとこたえたでしょうか?」

 

「えぇ…」

 

「へぇ、そりゃ"ずい"ぶんとはたらいたんだな、"ほね"の"ずい"まで」

 

彼はすごく楽しそうだ。

 

「にいちゃんのジョークはききあきたといって、おとうとはあきれたひょうじょうをうかべました」

 

「そりゃわるかった、なんせジョークには"めがない"もんで、"スケルトン"だけに」

 

「ふふっ」

 

「たのしくなってきた?」

 

「そうだね、続きが気になるよ」

 

「じゃあつづけるよ」

 

「おとうとはあきらめておうちにかえることにしました、おとうとのすてぜりふはなんでしょうか?」

 

「え~、それもジョークなんでしょ?」

 

「そうだよ」

 

「ん~、気骨を見せろとか?」

 

「おっすごいね、じゃあさいごだよ」

 

「にいちゃんはこんなところで"ボーン"としてないで、しごとをもっとき"こつ"をもってやれ!」

 

「あはは!ボーンは流石に分からなかったよ」

 

「ところで、スケルトンのおうちはどんなおうちでしょう?」

 

「"骨"組みが無いお家」

 

「ジョークになれてきたね?」

 

「お陰様で」

 

「ほねといえば」

 

「次は何かな?」

 

「いや、ちがうよ、ジョークじゃなくて」

 

「?」

 

「ちょうどいいきかいだし、そろそろきになってるかなって」

 

「お茶会に関係あるの?」

 

「おちゃかいかぁ…まぁ、ナーサリーはよろこびそうかな」

 

ナーサリーが喜びそうなもの?

 

「あのふたりはしらないし、リツカもわすれてるかもしれないから、さいしょからはなすよ」

 

「もう聞いたことある話なの?」

 

「そうだよ、あんしんしてね、こんかいはさいごまではなすから」

 

「えっ、それってまさか」

 

「トリエルをころしてからのこともちゃんと、ね」

 

「…大丈夫なの?」

 

「だいじょうぶ、もうかこのことだから」

 

「そうだなぁ、だいめいをつけるなら」

 

 

 

地底世界の御伽話(UNDERTALE)




型月世界にもギャグみたいな展開はあるし、ダ・ヴィンチちゃんの奇行も許容範囲だよ許容範囲!


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家族(Family)

LV 1
WPN 空っぽの銃
AMR カウボーイハット


「ぼくがカルデアにきてもうすぐ1ねんはんだね」

 

「もう、そんなに経ったんだ…」

 

あっという間の時間だった。

 

「そうだよ、いまはクリスマスのじきさ」

 

「もうすぐ、なんだね」

 

もうすぐ。

 

「…リツカ」

 

「ん?何かな?」

 

「リラックスしなよ」

 

「えっ?」

 

「はい、わらって!」

 

「えっと、こう?」

 

笑顔を作ってみる。

 

「ダメだよリツカ!ぜんぜんダメ!そんなのえがおじゃない!」

 

「えっと…ごめん」

 

「はぁ…」

 

ガッカリさせてしまったらしい。

 

「そうだリツカ、デートしよっか」

 

「え」

 

「クリスマスデートだよ、ほらはやく!」

 

手を引かれ、強引にマイルームから引っ張り出される。

 

「どこかいきたいところはある?」

 

「無い…かな」

 

「じゃあカルデアをおさんぽしよう!」

 

「う、うん」

 

「はい、とうちゃく!」

 

「えぇ!?」

 

まだマイルームの隣の部屋の前までしか歩いていない。

 

「ここはだれのへやでしょーか?」

 

「誰って、マシュだよね」

 

「せいかい、おじゃましまーす!」

 

「ちょ、ちょっと!」

 

ノックも無しに扉を開け放つ。

 

「えっ?」

 

「あっ」

 

「ワオ!」

 

そこには下着姿のマシュが…

 

「リツカ、てったーい!」

 

「う、うわわわ!」

 

悲鳴をBGMにこけない様に走る。

マシュ、ごめん。

 

「つぎはどこにしよっかな!」

 

「あわわ、ちょ、こける!」

 

その後も、セイヴァーピックアップ部屋ガチャは続いた。

そして、最後に辿り着いた場所は

 

「はい、ここはどこでしょーか?」

 

「セイヴァーの部屋、だよね?」

 

「ピンポーン!ようこそ、ぼくのへやへ」

 

「お、お邪魔します」

 

手を引かれるままに部屋の中へ。

そういえば、一度もセイヴァーの部屋には入ったことがない。

部屋を見回してみるが、名前の分からない金色の花が飾られている以外はほとんどマイルームと変わらな…

 

「何あれ」

 

飾り付けられた、というよりはイタズラされたクリスマスツリーとトナカイを混ぜたようなモンスターの置物がある。

 

「あれはギフトロットのおきものだよ、クリスマスだからかざってるんだ」

 

「へ、へ~」

 

「ほかになにかきになるものはあるかな?」

 

「じゃあ、あの金色の花は何?」

 

「あのはなのなまえはぼくもしらない、けどアズゴアがたいせつにそだてたはなだよ」

 

「あの花がそうなんだ」

 

「うえきばちをわけてもらったんだ」

 

彼らの思い出の花。

 

「ほかにはなにかある?」

 

「ん~、もう無いかな」

 

「そう?じゃあデートスタート、のまえにパラメーターオンっていってみて」

 

「パラメーターオン?」

 

「そしたら、ステータスをひらいて」

 

「ステータスを開…何これ」

 

セイヴァーのステータス欄に好感度パラメーターに…その他意味不明なパラメーターが沢山追加されている。

 

「はい、こんどこそデートスタート!」

 

ステータスに文字が表示される。

                     

DATE START!

 

 

「さぁ、パラメーターをみながら、みごとぼくをこうりゃくしてみせるんだ!」

 

「デートとはいったい…」

 

セイヴァーは こちらの こうどうを    

まっている。

 

どうする?

ふくをほめる

おちゃにさそう

クリスマスプレゼント

 

まさかの選択肢性。

藤丸立香のデートは続く…

 


 

 

 

「ハロー、リツカ」

 

食堂で夕食を取っていると、彼が話しかけてきた。

 

「ハロー、セイヴァー」

 

「ここにすわってもいいかな?」

 

「うん、いいよ」

 

承諾すると彼は向かい合う位置の椅子に座った。

それにしても、珍しい。

彼は親しい人が多い、勿論英霊含めて。

だから、食事を取る時は基本的に他の人と一緒だ。

彼は誰かに誘われれば断らない。

けれど、今は二人きりだ。

 

「…」

 

「…」

 

言葉は無く、食事の音だけが響く。

偶然誰も誘わなかったのか、それとも誘いを断ったのかは分からない。

分かるのは、彼がいつに無く真剣で、自分に用があることだけ。

 

「…」

 

「ふぅ…」

 

こちらは食べ終わったが、彼はゆっくりと食事を進めている。

話は戻るが、彼は友達を作るのが上手い。

彼と誰かの間に敵意や殺意があろうと、彼は慣れていると言わんばかりに突き進み、いつの間にか友人関係を築いている。

そんな彼が、彼を待つ間に食堂内を何気なく見回して、見つけてしまった恐らく彼が初めて断った人物、チラチラ視線を送ってくる花の魔術師(マーリン)との食事より優先することとは何だろうか。

 

「もしも」

 

「うん?」

 

「もしもリツカに"じかんをもどすちから"があったら、どうする?」

 

彼は何を聞いているのだろうか。

言葉通りの意味か。

それとも、もっと別の何か意味があるのだろうか。

 

「…」

 

「あまりふかくかんがえないで、たしかにとくいてんはかこがかえられてうまれた」

 

「うん、そうだね」

 

「でも、いまはなしている"ちから"はとくいてんをうまないものとしてかんがえて」

 

日常の中で、「過去に戻れたらどうしたい?」なんていう何気ない質問をされた時と同じ様に考えるのは、何か違う気がする。

自分に"過去に戻る力"があるとして、それにどんな意味があるだろうか。

 

「…」

 

「とおまわしすぎたかな、じゃあ、その"ちから"がリツカにあるとして」

 

「うん」

 

「オルガマリーを、ロマンをたすける?」

 

「!」

 

特異点を生じさせること無く、所長を、ドクターを助けられるとしたら?

自分はどうするだろうか。

 

「所長は酷い人だと思ったよ」

 

「ふふっ」

 

「魔術なんて知らない一般人だったのに、見下して罵倒してくるし」

 

「そうだったね」

 

「でも悪い人じゃなかった、正しいことを為せる人だった、と思う」

 

「うん」

 

「ロマンは情けない人だなって思った」

 

「あはは!」

 

「弱気で、悲観的で、根性無し」

 

「ひどいいわれようだね」

 

「でも間違いなく善い人で、やる時はやる人だった」

 

「うん」

 

「…助けたかったなって思うよ」

 

所長が真っ赤なカルデアスに飲み込まれた時、何も出来なかった。

ドクターが宝具を使い消え去った時、言葉を掛けることも出来なかった。

 

「そんな"力"があったら助けるかもね」

 

「そっか」

 

そんな都合の良い物は無いけれど、この気持ちは本当だ。

 

「ぼくもそうおもったよ、とうぜんオルガマリーのこともね」

 

彼も所長が、ドクターが好きらしい。

 

「このあと、ひまかな?」

 

「えっ、うん」

 

「じゃあ、おはなししようよ」

 

「まだ何か聞きたいことがあるの?」

 

「いや、もうはなしてしまおうかなって」

 

「?」

 

何の話だろうか。

 

「じつはね、ぼくのアンダーテールにはエンディングがみっつあるんだ」

 

「えっ?平行世界(IF)の記憶があるの?」

 

「いいや、まぎれもなくすべて、いまここにいるぼくがむかえたエンディングだよ」

 

「ほんとうは、はなすきはなかったんだ」

 

「だっておかしいでしょ?まるでゲームみたいに、ひとつのじんせいにみっつもエンディングがあるなんて」

 

「でも、リツカとのかいわが、ぼくをケツイでみたしたんだ」

 

「リツカにはなしたことがあるのは、いちどめのエンディングまで」

 

「いまからはなすのは、いちどめのエピローグからにどめのエンディングまで」

 

「さんどめのエンディングは」

 

 

 

「また、ぼくをしょうかんしてくれたらおしえてあげるよ」




リセット


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始まり(PROLOGUE)
召喚された子供(Summoned Child)


満足するまで書いた。


燃え盛る街。

雪山の山頂の次に辿り着いた場所。

ついさっきまで握り締めていた後輩の手は何処にも無く、姿も無かった。

 

「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。」

 

瓦礫の山。

ここが街であったことを教えてくれた。

それが人であったとも。

 

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)。」

 

蠢く骸の群。

さっきまで追い掛け回されていた異形達。

不思議な格好をした後輩が追い払った。

 

「―――告げる。」

 

謎の文字と幾何学模様の召喚陣。

これから召喚をするのだと所長が言う。

これに全てが、人類の未来が懸かっていると。

 

「我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。」

 

後輩が先輩なら大丈夫です、と励ましてくるけれど。

ここは現実、上手くいく事ばかりではない、自分は物語の主人公ではないのだ。

…それでも、死にたくはない、生きたい。

自分にも大切な人がいる、守らなければならないものがある、救いたいものがある。

だから。

 

「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

 

 

 

 

「さーばんと…せいばー、あなたのケツイにこたえよう。」

 

自分より幼い子供を召喚してしまったらしい。

背後で所長が喚き散らしているのを必死で抑えようとする後輩の声が聞こえる。

…これから大丈夫だろうか、空を仰ぎ見る。

終始子供は笑顔でこちらを見ていた。

 


 

Congratulations!

 

真名 :フリスク(Frisk)〔オルタ〕(〔alter〕) 又は(or) キャラ(Chara) プレイヤー(Prayer)

クラス:アヴェンジャー アルターエゴ フォーリナー

属性 :混沌・悪 混沌・悪 中立・善

時代 :21世紀

地域 :エボット山 又は イビト山

 

筋力:EX

耐久:A-

敏捷:A+

魔力:E-

幸運:EX

宝具:EX

 

スキル:

虐殺(Genocide)

 ただのEXPだ。

 (自身の与ダメージアップ)

笑顔(Smile)

 不気味で空虚だ。

 (敵全体に恐怖付与)

チョコレート(Chocolate)

 有名ブランドのチョコバー。

 (自身のHP全回復)

本物のナイフ(Real Knife)

 やっと見つけた。

 (自身の攻撃力アップ、クリティカル威力アップ)

ロケット(The Locket)

 取り戻した。

 (自身の防御力アップ)

 

宝具:

地底世界の人形劇(Soulless Undertale)

 魂と引き換えだ。

 (敵全体に超強力攻撃)

 

宝具強化:

地底世界の人形劇(Soulless Undertale)

 LOVEで作られた身体。

 (敵全体に超強力攻撃)




とりあえず、これでお終い。
また書きたくなる日まで。

追記:実は最初に投稿したこれが最後にやって来るというね。

追記2:二部が終わるの待てない。


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蛇足(EXTRA and IF)
終わり(EPILOGUE)当たり前の優しさ(True Pacifist)


LV 1
WPN 使い古したダガー
AMR ハートのロケット


人理は修復された。

 

 

 

誰一人欠けること無く。

 

 

 

みんな、生きている。

 

 

 

カルデアの職員達がいる。

 

 

 

英霊達(みんな)がいる。

 

 

 

万能の天才(ダ・ヴィンチちゃん)がいる。

 

 

 

所長がいる。

 

 

 

ドクター(ロマン)がいる。

 

 

 

後輩(マシュ)がいる。

 

 

 

そして

 

 

 

セイヴァーがいる。

 

 

 

間違いなくハッピーエンドだ。

 

 

 

でも、まだ終わっていないことがある。

 

 

 

幾度となく感じた既視感(デジャヴ)

 

 

 

自分は知っている(覚えている)

 

 

 

他の結末(所長とドクターの死)を。

 

 

 

名前も知らない誰か(セイヴァー)との約束を。

 

 

 

どうして、今まで思い出せなかった(忘れてしまっていた)のだろう。

 

 

 

やっと思い出せたよ(また会えたね)、セイヴァー。

 


 

 

 

ハロー、リツカ、とつぜんどうしたの?

 

 

 

え、やくそく?ぼくたち、なにかやくそくしたっけ?

 

 

 

みっつめのエンディング?ぼくのなまえ?

 

 

 

 

 

 

あぁ、ごめんね、とってもビックリして。

 

 

 

だって、リツカはおぼえてるってことでしょ?

 

 

 

そっか、リツカはすごいね。

 

 

 

わかった、おしえてあげる、やくそくだもんね。

 

 

 

いちどめ、ぼくがはじめてひとをころしたひ。

 

トリエルをころしたとき、ぼくはひとにこうげきされたときより、ずっといたかった。

 

だから、もうだれもころさないって"ケツイ"した。

 

でも、そとにでるほうほうをしったとき、ぼくの"ケツイ"はこわれた。

 

アズゴアとであって、ぼくはふたたび"ケツイ"した、たたかうことを。

 

ぼくはきづいたんだ、けしてたたかうことはころすことではないことに。

 

けっきょく、アズゴアはころされてしまったけど、ぼくの"ケツイ"はこわれなかった。

 

ぼくはフラウィーをころさなかった。

 

すべてがおわってから、ふたたびフラウィーがあらわれて、ぼくらはやくそくした。

 

ぼくがだれもころさなければ、フラウィーもアズゴアをころさないって。

 

 

 

ぼくは"ケツイ"でみたされた。

 

 

 

リセット

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

にどめ、フラウィーとのやくそくをはたしたひ。

 

ぼくはだれもころさず、アズゴアのもとへたどりついた。

 

そして、アズゴアもころさなかった。

 

フラウィーはやくそくどおり、アズゴアをころさなかった。

 

アズゴアはじぶんをころした。

 

きっといっしゅうめのときから、そうきめていたんだ。

 

もう、あともどりできないところまできてしまったから。

 

フラウィーがころさなくても、けつまつはかわらなかった。

 

また、すべてがおわって、フラウィーがあらわれる。

 

おちこむぼくをあわれむように、あざわらうように、ばかにする。

 

そして、ふとおもいだしたように、みんなとともだちになってこいって。

 

ハッピーエンドがみたいんだろう?って。

 

きみだけじゃムリだから、いってこいって。

 

"だって、ゆうじょうのパワーはいつだって…

 

しあわせのカギ…でしょ?"

 

みまわしても、もうフラウィーはいなかった。

 

けれど…

 

 

 

ぼくはふたたび"ケツイ"でみたされた。

 

 

 

ロード

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リツカは"ケツイ"ってどんなものだとおもう?

 

 

 

ん?そうだよ、ぼくのほうぐにもかんけいのあることだね。

 

 

 

"ケツイ"っていうのはおおざっぱにいうと、いきつづけたいって、うんめいをかえたいってつよくおもうこと。

 

 

 

じゃあ、"ケツイ"をもつそんざいはなにができるとおもう?

 

 

 

かんたんにいうと、セーブとロード、そしてリセットができるようになる。

 

 

 

そう、ゲームのように。

 

 

 

これが、みっつのエンディングのりゆう。

 

 

 

おまたせ、ここからがほんだい。

 

さんどめ、ぼくがみんなとともだちになったひのおはなし。




セーブ





これは何週目かの可能性(世界)のお話。


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出来ること(Genocide)

彼は自身が最強であると確信している。

だが、彼は知っている。

諭されて。

殺されて。

殺されて殺されて。

殺されて殺されて殺された。

どんな存在よりも長い時間を共に過ごした最弱を。

そして、それを乗り超えてしまった先にあるものを。

彼は知ってしまった。


「…なんで」

 

「ん~?」

 

「どうしてこんなことを…」

 

何故、こんなことに…

 

「なんでだと思う~?」

 

「…どうしてそんなに楽しそうなの?」

 

「だって、リツカがそんな表情を見せてくれるから」

 

歪な笑顔だ。

 

「…久しぶりに笑ったね」

 

「え~?いつもボクは笑顔でしょ?」

 

「感情の籠った笑顔は久しぶり、かな」

 

「ふ~ん」

 

興味無さげに、いつもの笑顔に戻る。

 

「…今までのは嘘だったの?」

 

「何が?」

 

「一緒に笑いあったのも、一緒に戦ったのも、全部演戯だったの?」

 

「そうだね」

 

「…アヴェンジャー、意外と嘘が下手だね」

 

一瞬、本当に一瞬だけ、いつもの笑顔が苦しそうに見えた。

 

「そうかな」

 

「そうだよ」

 

まだ、希望はあるのかもしれない。

 

「なんで、みんなを殺したの?」

 

「殺せるから、かな」

 

出来るから、やる。

とても単純だ、子供が蟻を潰すのと変わらない理由。

 

「それだけ?」

 

「たぶん、そうじゃないかな」

 

「たぶんってことは、まだあるね」

 

「…そうかなぁ」

 

「話してよ、きっと違うって思ってても話して」

 

「…」

 

「…」

 

ほら、君はこんなにも泣いてしまいそうな顔をしてる。

 

「きっと、飽きたんだよ」

 

「何に?」

 

「みんなの反応に」

 

「プレゼントをあげた時の嬉しそうな表情」

 

「一緒に遊んでいる時の楽しそうな表情」

 

「喜ばせて、楽しませて、ボクも嬉しくて、楽しくて」

 

「でも長続きしなくて、飽きちゃったんだ、退屈になったんだ」

 

「それで、みんなを殺したらどんな反応するかなって思って」

 

「殺した」

 

嘘はついている、と思う。

でも、悲しいけれど、本当のことも言っている。

彼が異常者であることの証明。

 

「最低だよね」

 

「どうかな」

 

正常と異常が混在している。

 

「リツカが最後なんだ」

 

「そう、なんだ」

 

もうみんないないらしい。

 

「…殺した後はどうするつもりなの?」

 

「世界を壊すよ」

 

「どうして?」

 

「もう決められたこと、だから」

 

まるで、アヴェンジャーが決めたことではないみたいな言い草だ。

 

「じゃあね、リツカ」

 

「ねぇアヴェンジャー、本当にそれでいいの?」

 

「もう、"決意"したから」

 

そう言って、彼はナイフを振り上げた。

 

「そっか」

 

目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何も起こらない。

 

いや、予想していたものと違っただけで実際には起こった。

 

聞き慣れた音が聞こえた。

 

肉を切る音。

 

信じられなかった。

 

信じたくなかった。

 

「…アヴェンジャー、どうして」

 

「言ったじゃないか、"決意"したって」

 

彼は自身の胸にナイフを突き立てた。

 

「ねぇ、リツカ」

 

「アヴェンジャー、話しちゃ駄目だよ、今手当てを!」

 

「リツカ、聞いて、約束して欲しい」

 

「…何?」

 

「次は、セイヴァー(ぼく)召喚して(呼んで)欲しいな」

 

「次って、次なんて無いよ、一人にしないで…」

 

「おねがい、だから」

 

「分かった、約束するから、だから…!」

 

「ありがとう、リツカ、ボクのめをさましてくれて」

 

「また、おなじことをくりかえすところだった」

 

「ほんとう、にありが、とう」

 

「みん、なが、そろった、ら、おちゃ、でも、しよう、ね」

 

「ま、たね、リツ、カ」

 

「アヴェンジャー?…アヴェンジャー!」

 

彼は息絶えた。

人理は修復されたけれど、自分は独りぼっちになってしまった。

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嫌な夢を見た。

 

 

 

世界が救われる、けれど自分が独りぼっちになる夢。

 

 

 

まるで体験したかのような夢。

 

 

 

でも、一つ現実と違うことがある。

 

 

 

アヴェンジャーがいない。

 

 

 

代わりにセイヴァーがいる。

 

 

 

…。

 

 

 

約束。

 

 

 

ただの夢だって笑われるかもしれないけど。

 

 

 

約束、したから。

 

 

 

お茶会の招待状、作ろうと思うんだ。

 

 

 

来てくれるよね、アヴェンジャー。




過去(いままで)はもう白紙に(TRUE RESET)出来ないから。

未来(これから)汚れた白紙に(RESET)しなくていい様にしよう。

新しい紙を用意(SOULLESS RESET)してあげてもいいがね。





藤丸立香がアヴェンジャーを召喚してしまった可能性(世界)のお話。


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約束(Promise)

Foreign Child


「グッモーニーン!リツカ…とみんな?」

 

「おはよう、フリスク」

 

「おはようございます、フリスクさん」

 

「「やぁ、フリスク」」

 

「みんなそろってどうしたの?」

 

今この場には自分とマシュ、ドクター、ダ・ヴィンチちゃん、そして今やって来たセイヴァーがいる。

後から所長も合流予定だ。

 

「これから新しい英霊を召喚しに行くんだ」

 

「なるほど、だからあつまってたんだね」

 

「それもあるけれど、久しぶりにみんなで集まって召喚をしたいなって思って」

 

「リツカのわがままなんだ?」

 

我儘と言えば、そうかもしれない。

新たな特異点が発見され必要となった、この召喚の機会を利用していることは否定できない。

みんなで集まるのは初めて英霊を召喚したあの日以来だ。

 

「そうだね」

 

「ふふ、いいひとがくるといいね」

 

「そうだ、フリスクも一緒にどう?」

 

思えば、初めて召喚した英霊はセイヴァーだった。

それならば当然、最初の召喚の場に立ち会った一人だ。

 

「う~ん…えんりょしておくよ」

 

「そっか、残念だなぁ」

 

「ごめんねリツカ、ようじができちゃったんだ」

 

「それなら仕方ないね」

 

「かわりに、これをかしてあげるよ」

 

そう言って彼は首に下げているハートのロケットペンダントを手渡してきた。

中には"Best Friends Forever"と書いてある。

 

「これって…」

 

「しょうかんのしょくばいぐらいにはなるんじゃないかな」

 

「フリスク、もしかして…」

 

誰を呼ぼうとしてるのか、気づいてる?

 

「じゃあリツカ、さいごにひとついいかな?」

 

「なに?」

 

「もともとこれをきくためにリツカをさがしてたんだけどね」

 

「うん」

 

「リツカは…バタースコッチとシナモンのどっちがすき?」

 

「え?」

 

それ今じゃなきゃダメ?

 


 

 

 

よーし ■■■ じゅんびは いい…?

 

 

 

はい! “ブキミな かお” やって!

 

=>

 

うわあああ!

 

 

 

フフフ!

 

 

 

あ! たんま たんま!

 

 

 

レンズのキャップ つけたままだった…

 

 

 

えー! なんでー?

 

 

 

いいじゃん! もういっかい やってよぉー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハロー! ■■■

 

 

 

カメラにむかって スマイル!

 

=>

 

アハハ ひっかかった! キャップを つけたままだから うつってないよーだ!

 

=<

 

ひとりで わらってんのー! フフフ! ウケる!

 

 

 

え?

 

 

 

ああ おぼえてる おぼえてる。

 

 

 

とうさんに バタースコッチパイを つくってあげようとした ときのことでしょ?

 

 

 

レシピに 「バター カップ1」って かいてあったから…

 

 

 

「バターカップ」っていう はなを つんできて いれたら どくが あったんだよね。

 

 

 

そうそう! それで とうさん メチャクチャ ぐあいが わるく なっちゃってさ。

 

 

 

すっごい はんせいしたよ…

 

 

 

かあさんも カンカンだったし。

 

 

 

キミみたいに わらいとばせれば よかったんだけど…

 

 

 

…そのはなしが どうかした?

 

 

 

え?

 

 

 

カメラをオフに…?

 

 

 

うん わかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ねえ… ■■■… やっぱり やりたくないよ…

 

 

 

え…?

 

 

 

な… ないてないって…

 

 

 

もう こどもじゃないんだ… なくわけないだろ?

 

 

 

うん そうだよね。

 

 

 

まさか!

 

 

 

キミを うたがうわけ ないじゃないか!

 

 

 

う… うん!

 

 

 

ボクたちは つよいんだ!

 

 

 

みんなを じゆうにするんだ。

 

 

 

ボク… あのはなを つんでくる。

 

=

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■■■

 

 

 

きこえる?

 

 

 

めを さまして…

 

 

 

■■■

 

 

 

ケツイを ちからに かえるんだ!

 

 

 

あきらめるな…

 

 

 

きみは ニンゲンとモンスターの みらいをになうもの…

 

 

 

 

 

 

ねえ… ■■■

 

 

 

おねがい… めを あけて…

 

 

 

やっぱり こんなこと やめようよ。

 

 

 

だって… ボク…

 

 

 

… ううん そうだね…

 

 

 

たしかに ボクは キミを うたがったりしないって いった。

 

 

 

6つ… だよね?

 

 

 

6つ てに いれれば いいんだよね…?

 

 

 

キミとボクで… ふたりで いっしょに やるんだよね?

 

=<

 


 

 

 

「…い、先…、…きてく…、先輩、起きてください」

 

「え」

 

目を開くと、視界いっぱいの後輩が。

 

「おはようございます、先輩」

 

「…おはよう」

 

夢か、いつもの夢。

 

「先輩、ドクターとダ・ヴィンチさんが中央管制室でお呼びです」

 

「何かあったの?」

 

ぼんやりと、答えを待った。

 

「フリスクさんが見つかりました」

 

「!…ホントに?」

 

一瞬で目が覚めた。

 

「観測地は────」

 

寝癖を直して。

いつもの制服に着替えて。

ロケットを忘れず首に掛けて。

 

「迎えに行きましょう、先輩」

 

「うん、行こう」







DO NOT:Destroyed
YES:Restored
LOAD
SAVE
TRUE RESET
ERASE:Destroyed
Restored
ERASE:Destroyed
Restored
ERASE:Destroyed
Restored




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第1.5部(ARC1.5)亜種特異点(PSEUDO SINGULARITY)
御伽人外魔境(Fairytale Uninhabited Area)地底世界(Underground) A.D.20■■


親愛なるモンスター(Dear Best Friends)


 

やぁ、こんにちは。

 

 

 

君が、新しいモンスターだね。

 

 

 

ようこそ、ラボへ。

 

 

 

歓迎するよ。

 

 

 

それで、君はどういった用件で来たのかね。

 

 

 

ほぉ、「魂」の研究に興味があるのか。

 

 

 

それは、何故かな?

 

 

 

ふむ、まぁ良い。

 

 

 

この世界は、あまりにも狭い。

 

 

 

知識が足りない。

 

 

 

出来たのはせいぜい、抽出。

 

 

 

いい加減、行き詰っていたところだ。

 

 

 

外から来た君なら、より実験を進めるのに貢献できるはずだよ。

 

 

 

期待しているとも。

 


 

 

 

それは、何だい?

 

 

 

ほぉ!魂を視覚化させたのか!

 

 

 

一体、どうやったんだい?

 

 

 

成程、魔法を応用したのか。

 

 

 

すまないが、魔法は専門外でね。

 

 

 

君は今後も魔法でアプローチしてくれ。

 

 

 

私達は、科学でアプローチする。

 

 

 

お互い知恵を貸し合いながら、進めていくとしよう。

 


 

 

 

…君、大丈夫かい?

 

 

 

あの子達のことは、残念だった。

 

 

 

君、思っている以上に彼らを愛していたんだね。

 

 

 

初めて会った時、君は人間を憎む普遍的なモンスターだと思った。

 

 

 

誤解していたよ。

 

 

 

それとも、ここで暮らすうちに情が移ってしまったかい?

 

 

 

おっと、何処へ行くんだい。

 

 

 

そんな状態で、研究を進めるつもりかい?

 

 

 

おや、今日はやけに素直じゃないか。

 

 

 

…これは、相当参ってるね。

 

 

 

分かった、手伝うよ。

 

 

 

だけど、今は休むんだ。

 

 

 

君は、コーヒーとココア、どちらが好きかな?

 


 

 

 

遂に…王の依頼を実行する時が来た。

 

 

 

私達は国民達を解放する力を生み出す。

 

 

 

私達は魂の力を解き放つ。

 


 

 

 

バリアは魂のエネルギーで封印されている…

 

 

 

このエネルギーは人工的に作り出すことが出来ない。

 

 

 

魂のエネルギーは生命ある者の亡骸からしか抽出出来ない。

 

 

 

つまり新たに作るにはこの世界に存在するものを利用するしかないのだ…

 

 

 

すなわちモンスターの魂で代用するより他ない。

 


 

 

 

しかし生きたモンスターから魂を抽出するには凄まじいパワーが必要…

 

 

 

無論、魂を抜いた瞬間、本体が死亡するのは言うまでも無い。

 

 

 

また、人間の魂は体の外へ出ても存在し続けるが…

 

 

 

多くのモンスターの魂は死ぬとすぐに消えてしまう。

 

 

 

モンスターの魂を消滅させない方法さえ見つかれば…

 


 

 

 

魂に関する情報を得る為、人間について調べた。

 

 

 

資料を求めて城の中を探っていたら、こんなテープを見つけた。

 

 

 

アズゴアはきっと見たことが無いだろう。

 

 

 

…きっと見ない方が良い…

 


 

 

 

遂にやった。

 

 

 

完成した装置を使い人間の魂から、ある“要素”を抽出した。

 

 

 

人間が死んだ後も魂が消えないのは、この要素の御蔭だ。

 

 

 

生き続けたいという意思…

 

 

 

運命を変えたいという強い気持ち。

 

 

 

私は、この力を…

 

 

 

「決意」と呼ぶことにした。

 


 

 

 

「決意」の結晶化。

 

 

 

君は本当に素晴らしいな。

 

 

 

私達では出来なかったことだ。

 

 

 

それは、君が好きなように使うといい。

 

 

 

んん、言い方が悪かったかな。

 

 

 

それは、君が使わなければならない。

 

 

 

君が責任を持って、使い道を決めなければならない。

 

 

 

…既に使い道は決まっているのだろう?

 

 

 

時が来るまで、大事に保管しておきたまえ。

 

 

 

ところで、それは何という名前なのかな。

 

 

 

「聖杯」?

 

 

 

うん、ピッタリだと思うよ。

 


 

 

 

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番外劇(Extra Play)大冒険ビースト(Beast Adventure Ⅳ)

かつて魔術師はこう言ってキャスパリーグを送り出した。“美しいものに触れてきなさい”と

────そうだ。私は本当に、美しいものを見た

刃を交えずとも倒せる悪はあり、血を流さなかったからこそ、辿り着ける答えがあった

おめでとう、カルデアの善き人々。第四の獣は、君たちによって倒された


冷たい感触に目が覚めた。

ここは、洞窟だろうか。

…花の香りがする。

忌々しいアイツを思い出して、少し気分が下がる。

とりあえずは、そちらを目指すことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう時間も経たずに、花畑に辿り着いた。

巨大な玉座と、その前で鼻歌交じりに水やりをする、ささやかな王冠を被った巨体が見える。

アイツの姿が過り更に気分が下がる。

…目の前の存在に罪は無い、声を掛けた。

 

「…これは驚いた」

 

「おっと失礼…改めて」

 

「ハロー!私の名前はアズゴア・ドリーマー」

 

「君の名前を教えてくれるかな?」

 

ヤギの様な姿をした巨体はそう言った。

だから、彼女にした様にただ一言、返してあげた。

 

「ありがとう」

 

「それで、私にどんなご用件かな?」

 

人を探している。

ダ…個性的な服装をした、人間の子供だ。

 

「…申し訳ないけれど、見かけていないよ」

 

残念だ、他を当たることにしよう。

 

「少し、良いかな?」

 

何だろうか。

 

「…もしも、その子を見つけたなら、ここに近づかないよう言ってくれないかな」

 

何故。

 

「…いや、何でもないよ、忘れておくれ」

 

…。

 

「探しに行くのなら、そこを出て右に進みなさい」

 

「私がニューホームと呼ぶ都に着くだろう」

 

「そこを道なりに抜けるとエレベーターが見つかるはずだよ」

 

「そこから先は申し訳ないけれど、アルフィーを頼っておくれ」

 

「連絡は入れておくからね」

 

「いってらっしゃい」

 

ありがとう、さようなら。

 


 

 

 

「キミがアルフィーの言っていた子猫ちゃんかな?」

 

エレベーターを降りてみれば、急に自走式マイクスタンド付テレビが話し掛けてきた。

 

「…?誰の話をしているんだい?」

 

「まぁいっか!ようこそ、コアへ!」

 

「ボクの名前はメタトン!この地底世界のスーパースターさ!」

 

なんだこいつ、聞いてもいないことをペラペラと。

 

「…そして、キミも今日からボクのファンというわけだね!」

 

一体何の話をしているのだ!?

 

「それで、何故スーパースターなボクが一ファンのキミに話しかけたのかというと…」

 

このまま放っておいて先に進めないだろうか…

 

「待つんだ子猫ちゃん!せっかちさんなんだから!」

 

抱き上げられた。

 

「ここは迷路みたいに入り組んでいてね、迷い猫ちゃんになっちゃったら大変だよ!」

 

「それで、キミがアルフィーの言っていた新しいモンスターで合っているかな?」

 

アルフィー…?

あぁ、あまりのインパクトに忘れていた。

 

「それは良かった、もう先に進んでしまったのかと心配していたところさ」

 

「これからだけれど、ボクがアルフィーのラボまで案内することになっていてね」

 

「このままでも良いかな?」

 

案内を受けられるのならば、是非も無い。

 

「OH!YES!LET'S GO!」

 


 

 

 

「は、は…初めまして!わ、わたしはアルフィー」

 

「よ、よ、よ、よろしくね!」

 

自動ドアを潜った先に待っていたのは、とても笑顔とは思えない形相の野暮ったい眼鏡をした、カメレオンの様なモンスターだった。

 

「あ、あなたが、アズゴアの言っていたモンスターで合っているわよね…?」

 

自信なさげな様子の彼女にゆっくり頷いてあげた。

 

「良かった!ま、待っていたわ!」

 

「いや、本当はもう少し遅い方が良かったんだけれど…」

 

「あ、あ!いや、じゃなくて、あ、あの、えぇっと」

 

「…」

 

電池の切れたロボットの様に沈黙してしまった。

大量の汗のみが彼女が生物であると証明している。

この機能はメタトンの方に実装して欲しい。

いや、汗じゃなくて沈黙の方を。

 

「………あ、あの」

 

何だろうか。

 

「あなたは…こ、ここに落ちてきた人間を、探しているのよね?」

 

その通りだ。

 

「ご、ごめんなさい…アズゴアから連絡を受けて、急ピッチで貴方専用の地図機能付携帯型人間探知機を作っていたのだけれど…」

 

ここに辿り着くまでの、たった数十分で出来る筈がな…

 

「あと5分も掛からないしってインスタント麺作ってたら」

 

「あなたが来ちゃったの…」

 

さてはお前、変装したダ・ヴィンチだな?

 

「あ、あ、えへへ」

 

うーん、この反応は白。

分からないことは笑って流そうという魂胆が透けて見える。

 

「そ、それより!あ、あぁ、も、申し訳無いのだけれど、もう少しだけ、ま、待ってくれないかな?」

 

出来れば早くして欲しいが、ここで待たなければ、探すのにどれ程時間が掛かるか想像もつかない。

それに、よく考えるまでもなく全て親切のみでここまで来た。

待たない理由は無い、頷いて見せた。

 

「ほ、本当!?ま、待ってて!すぐ出来るから!」

 

インスタント麺を放置して自動階段を駆け抜けるのを見届けた。

 

「きゃあー!!!」

 

物凄い音が聞こえた。

…これは、時間が掛かりそうだ。

 


 

 

 

「お前がアルフィーの言っていたモンスターか?」

 

鉱石の星空を眺めていたら、バーサーカーを彷彿とさせる全身鎧に話し掛けられた。

…寿司の臭いがする。

 

「こんな場所に座り込んで何をしているんだ?探し物はどうしたんだ?」

 

水辺に目を向け、足止めを食らっていることを伝える。

 

「…なるほどな、いつもならあの鳥が居るんだが、運が無かったな」

 

「少し戻った場所に店があっただろう」

 

「そこを右に曲がると船の乗降場がある、行ってみたらどうだ?」

 

これは良いことを聞いた。

 

「…待て、お前は外から来たモンスターらしいな?」

 

そうだ。

 

「外の世界のことを少し聞きたいんだが…」

 

「やはり外には、巨大な剣や魔法使いのプリンセスが、居るのか?」

 

巨大な剣(岩の塊)魔法使いのプリンセス(裏切りの魔女)なら居るな…)居る。

 

「本当か!?なら…猫耳の付いた人間は居るか?」

 

(猫科だし、獅子耳の女(純潔の狩人)も有りか…)居るとも。

 

「そうなのか…」

 

嬉しげな声に、あれらの何が良いのかよく分からないが満足して貰えたようだ。

話し過ぎた、先を急ごう。

 

「これは、次に人間が来るのが待ち遠しくなってきたな!」

 

…どういうことだ?

 

「…ん?あぁ、お前は外から来たから知らないのか」

 

「お前がどうやってここに来たのかは知らないが」

 

「ここ、地底世界の出口は一つしかない」

 

「そして、その出口にはバリアが張ってある」

 

「人間だろうが、モンスターだろうが誰も通り抜けることの叶わぬ強力な壁…」

 

「それを打ち砕く唯一の手段…」

 

「それが、人間の魂だ!」

 

「7つ」

 

「7つの人間の魂…」

 

「それが手に入ればアズゴア王は神となる」

 

「6つ」

 

「我らがこれまでに集めた魂は6つ」

 

「そう…」

 

「あと1つで、7つ目だ」

 

「あと1つ手に入れば、全てが変わる」

 

「それがたとえ…」

 

「お前の大切な人間であったとしてもだ!」

 

「お前より先に見つけ出し、魂を奪い取ってみせる!」

 

「アズゴア王の為に!」

 

「この地底世界の、全てのモンスターの為に!」

 

そう言って、姿を消した。

…次に遭遇する時は、敵同士だろう。

黄色い小鳥の足に掴まりながら、再開することが無いことを願った。

 


 

 

 

「ニャハハハハハー!」

 

雪の降る町を歩んでいると、町の端から高笑いをしながら何かが駆け抜けてくるのが見えた。

 

「おいきさま!そこを動くな!」

 

「とぉおう!」

 

スケルトンが空高く飛び上がった。

空中で華麗に宙返りをして、頭から着地した。

 

「ンーッ!ンンーッ!」

 

臨戦態勢のまま、暫く呆然としてしまった。

頭を掘り返して救出するとしよう。

 

「ブハァッ!」

 

「ニャハハ!助かったよ!ありがとう!」

 

そう言って、スケルトンは素早く立ち上がった。

…頭に雪が乗ったままだ。

 

「…ゴホン、さて」

 

「オレ様はロイヤル・ガードを目指す、偉大なる男…」

 

「パピルス様だ!」

 

「アンダインから話は聞いている!」

 

アンダイン…あの全身鎧のことか。

町のモンスターの話を聞く限り、近衛の長らしい。

ということは、このスケルトンはロイヤル・ガードだろうか。

 

「きさまが、新しいロイヤル・ガード見習いだな!」

 

 

「オレ様が来たからには、安心して欲しい!」

 

「オレ様がきさまを立派な戦士に育ててみせる!」

 

??

 

「教えることは山程あるぞ!」

 

「人間を捕らえるためのトラップ!」

 

「人間を惑わせるパズル!」

 

「スパゲティの作り方!」

 

「ロイヤル・ガードのみんなへの挨拶も忘れずにね!」

 

???

 

「それが終わったら、町を抜けた先にある森に来るが良い!」

 

「森には至るところにパズルが設置されている!」

 

「それを解きながら進むのだ!」

 

「安心しろ!解けなかった時の為に、常に傍に居てやるぞ!」

 

????

 

「オレ様は一足先に、森で待っているぞ!」

 

「きさまのパズルを解く力に期待している!」

 

「ニャハハハハハー!」

 

…?????(宇宙の深淵を見た猫の顔)

 


 

 

 

雪の積った林道を独り歩む。

パピルスとは、見張り小屋で眠る彼の兄に怒鳴り散らしている隙に別れた。

…静かなものだ。

たった一人、居なくなっただけだというのに。

…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

扉が見えてきた。

探知機が震える。

ここに来て、初めて反応を示した。

自然、駆け足になった。

やっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

辿り着いた扉は、何をしようとも開くことは無かった。

ここまで来て、何故。

やっと、見つけたのだ。

諦められるものか。

渾身の力で扉に体を叩きつけた。

…意味は無かった。

雪に体を投げ出し、小さく鳴いた。

 

「あら、珍しいわね」

 

「今日は違う子が来たのね」

 

突然、聞こえた声。

出所を探り、気付いた。

扉の中だ。

 

「貴方、何をしにここまで来たの?」

 

この先に居る筈の人間を探しているのだ。

ここを開けて欲しい。

 

「…ごめんなさい、ここは開けられないの」

 

「でも、人間が落ちてきたのね?」

 

「教えてくれてありがとう、私はその子を探してみるわ」

 

「もし、見つけたら貴方にも教えてあげるから、安心して」

 

「きっと、貴方にとって大切な子なのでしょう?」

 

「どんなことがあっても、決して悪いようにはしないと、約束するわ」

 

何故、そこまでするのか。

モンスターにとって人間とは忌まわしいばかりではないのか。

パピルスでさえ、そうだったのだ。

貴女を信用出来ない。

 

「…6人よ」

 

モンスター達が集めた魂の数だ。

やはり貴女は!

 

「私が信じて送り出した人間の数よ」

 

「地上へ帰りたいと、みんなそう言ったわ」

 

「だから、地底世界のことを出来る限り教えてあげたの」

 

「アズゴアの恐ろしさを」

 

「でも、みんな、出ていった」

 

「そして、死んだ」

 

「次で、7人目だわ」

 

「私は、もう二度とここから人間を出ていかせるつもりは無いわ」

 

「それはつまり、貴方に会わせるつもりは無いということ」

 

「でも、それがその子を救う方法だって、信じているわ」

 

「…ごめんなさい」

 

…。

 

「…もし、もしもよ」

 

「ここから人間が出てくることがあったら」

 

「その子を守ってあげてちょうだい」

 

勿論だとも。

 

「わざわざ、言う必要も無かったわね」

 

「…お願いよ」

 

足音が遠ざかっていく。

少し、疲れた。

暫く眠ろうか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい、こんなところで寝転んでたら、寝込むことになるぜ?」

 

「猫だけに?」

 

さっきまでの気持ちを返して欲しい。




もう一度、奇蹟を望まずにはいられないのだ。


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第1節(Chapter1)過保護チュートリアル(Overprotection Tutorial)

ミつからナい


「おはようございます、先輩」

 

目が覚めるなり、隣からマシュの声がした。

体を起こして見回してみれば、金色の花畑に囲まれていた。

 

「綺麗な、場所ですね」

 

上を見上げると、空が見えた。

僅かに開いた隙間から差し込む光が、花畑だけを照らしている。

 

「…先輩」

 

何かな。

 

「カルデアとの通信が途絶えました」

 

やっぱりか。

 

「先輩が目覚める少し前まで、問題は無かったのですが…」

 

大丈夫、慣れっこさ。

 

「…それもそうですね」

 

「これから、どうしますか?」

 

いつも通り、また復旧するまで、自分達で頑張ろう。

そう言って、立ち上がった。

マシュに向かって手を差し出す。

 

「分かりました」

 

それじゃあ、行こっか。

 


 

 

 

そこからは、彼の話の通りだった。

 

 

 

トリエルさんと出会って。

 

「優しそうな人ですね」

 

パズルの歴史とレクチャーを受けながら、遺跡を進んだ。

 

「とても分かりやすいです」

 

マネキンとの3人での会話はどうしようかと思ったけど。

 

「あなたの名前を教えてください」

 

マシュとマネキンが繰り広げる吃驚する様なピュア空間は正直、助かった。

 

「先輩って、人見知りだったんですね」

 

そういえば、あの子も生きているのだった、ごめんよ。

 

「この先の会話もどうぞ、わたしに任せて下さい!」

 

それから、通信の復旧待ちついでに、マシュと話しながら留守番をしたり。

 

「皆さん、心配しているでしょうか」

 

犬から電話が掛かってきたり。

 

「せ、先輩!トリエルさんがワンちゃんに!」

 

待ち切れなくて結局、先に進んだ。

 

「勝手に進んでしまって、良いのでしょうか…」

 

キャンディを一つずつ貰って。

 

「お一つずつ、ですね!」

 

落ち葉を踏み鳴らして遊んだり。

 

「こうしてみると、なんだか楽しいですね」

 

仲良く落とし穴に落っこちたりした。

 

「ひゃああー!先輩ー!」

 

あっ、因みに自分はバタースコッチが好きだ。

 

「私はシナモンが好きです!」

 

進んだ先で、二人で喋る岩に必死に頼み込んだり。

 

「どうか、お願いします!」

 

例のネズミとチーズシリーズを初めて見つけた時は感動した。

 

「…くっ付いてますね」

 

お化けのナプスタブルーク、彼を励ますのは大変だった。

 

「ヒヤリハット…?冷たいのですか?」

 

マシュがいなかったら、励まし切れる自信が無い。

 

「元気が出たみたいで良かったですね」

 

モンスター達との和解は順調だった。

 

「わたし達はあなたを揶揄ったりしません!」

 

モンスター達の好きなことは予習済みだったから。

 

「分かって頂けたようですね」

 

…好奇心とは斯くも恐ろしいもので、スパイダースイーツを一つずつ買ってしまった。

 

「ドーナツですね…えっ、蜘蛛で出来てるんですか…?」

 

4匹目の蛙を探してみたり。

 

「わ、小さいですね」

 

本当に欲しいもの、か。

 

「何の為にここに来たのか忘れない様にしましょう、先輩」

 

スイッチの部屋を越えて。

 

「不思議な部屋でしたね」

 

そして、とうとう。

 

「あれは、枯れ木でしょうか」

 

プルルルル…

 


 

 

 

バタースコッチシナモンパイを2切れ貰った。

 

「とても美味しいです!先輩!」

 

蝸牛の雑学も聞けるだけ、聞いた。

 

「蝸牛の知識が一つ増えましたね!」

 

それでも、避けては通れないことがある。

 

「先輩…?」

 

外に出たい。

 

「トリエルさん…?」

 

時間稼ぎもここまでだ。

 

「どうされたんでしょうか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしても出て行くと言うのね…」

 

「そう…」

 

「貴方達も他の人間達と同じなのね」

 

「なら残る手段は1つしかない…」

 

「私を納得させて御覧なさい」

 

「貴方達の強さを証明するのよ」

 

「…待って」

 

「…どうして、そんな目で私を見るの?」

 

「そんな今にも泣いてしまいそうな顔をして…」

 

「貴方まさか…私の知らないことを知っているの…?」

 

「いいえ…」

 

「そんなことはあり得ない…」

 

さぁ行くよ、マシュ…!

 

「はい、先輩…!」




来たか


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第2節(Chapter2)気骨稜々スケルトン(Skeleton with Backbone)

ドコにイったの…?


「母、というのは、ああいった感じなのでしょうか」

 

トリエルさんに別れを告げ、針葉樹林の雪道を歩む中、マシュがそう言った。

マシュにとって、母の愛は目の当たりにすることはあれど、初めての経験だったみたいだ。

 

「…」

 

デザインベビー。

詳しくは知らないけれど、遺伝情報の上での両親は居ても、本当の意味での両親は居なかったのかもしれない。

マシュの手を両手で包んだ。

 

「先輩…?」

 

寂しい?

 

「…いいえ」

 

「先輩が、カルデアの皆さんが居てくれますから」

 

そっか、それは良かった。

 

「ふふ…」

 

嬉しいことでもあった?

 

「はい、再確認、出来ました」

 

「ありがとうございます、先輩」

 

こちらこそ。

 


 

 

 

背後で枝が折れる音が聞こえた。

 

「今、誰か居ませんでしたか…?」

 

橋を渡る直前に、背後から握手を求める声がした。

 

「せ、先輩、ここはわたしが…!」

 

鳴り響くブーブークッション、マシュの悲鳴。

 

「ひゃあああああーっ!?」

 

二人で仲良く詰め所に隠れて。

 

「せ、先輩、もう少しくっ付いてください、食み出てしまいます」

 

異次元ボックスを見つけて。

 

「ダ・ヴィンチさんなら、原理が分かるのでしょうか…」

 

音楽を聴いたり、写真を釣り上げたり。

 

「一体、誰の写真でしょうか…」

 

犬を撫でたり。

 

「ツルツルでした!」

 

氷の上でスケートをしたり。

 

「スイーっと!」

 

雪だるまと約束をしたりした。

 

「世界を見たい、その気持ちはよく分かります」

 

透明ビリビリ迷路に挑戦して。

 

「ぱ、パピルスさんが黒焦げに…」

 

ナイスクリームを一緒に食べて。

 

「だ、抱き合う絵…」

 

スノーボールゲームで遊んだり。

 

「赤色…フリスクさんによれば“決意”の色、でしたっけ」

 

サンズの用意した文字探しで遊んだりした。

 

「すふぎあろてにぺけなも…すふぎあろてにべけなも…?」

 

手作りスパゲティを食べようと試行錯誤して。

 

「…凍ってますね」

 

犬を撫でたり。(2回目)

 

「な、撫で過ぎました…」

 

犬を撫でたり。(3回目)

 

「フワフワでした!」

 

○×パズルを解いたり。

 

「踏むと変化するんですね、覚えておきましょう」

 

パピルスお手製のパズルを解いたり。

 

「あぁ!2回踏んでしまいました…」

 

カラータイルパズルを解いたり。

 

「え、えっと、赤が通行禁止で、黄色が電撃ショック、緑は警報装置、オレンジはピラニアの好きなオレンジの香りのタイル、青はピラニアの池で黄色と隣り合わせだと感電して、紫はピラニアが嫌いなレモンの香りの石鹸タイル…あれ?黄色の床がでしたっけ…?」

 

前衛芸術を観賞したり。

 

「素晴らしい雪像ですね!」

 

犬を撫でたりした。(4回目)

 

「モフモフでした!」

 

そして。

 

「吊り橋ですね、落ちないように気を付けて進みましょう」

 


 

 

 

スノーフルの町に到着するなり、モンスターが飛び掛かってきた。

 

「フォーウ!」

 

「せ、先輩!」

 

危なげなく受け止めて、いつもの様に肩に乗せてあげる。

 

「フォウ」

 

「だ、大丈夫ですか!?…ってフォウさん!?何故こんなところに…」

 

最近、姿を見ないとは思っていたけれど、先に特異点に到達していたらしい。

 

「フォウフォ!」

 

「随分と馴染んでいる様に見えますが、一体いつから、この町で暮らしていたのでしょうか…」

 

フォウ君、一緒に頑張ろうね。

 

「フォフォーウ!」

 

「頑張りましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「複雑な感情について、語っても良いか…?」

 

「それは…」

 

「自分と同じ様に、パスタを愛する者達を見つけた喜び…」

 

「自分と同じ様に、パズルが得意な者達への憧れ…」

 

「イケてて、頭も良い奴に、イケてると思われたいという願い…」

 

「これこそ…」

 

「きさまが今、抱いている感情だなッ!」

 

「オレ様には、そんな気持ちはサッパリ分からんがッ!」

 

「何しろオレ様は偉大なるパピルス様だからッ!」

 

「友達が沢山居る奴の気持ちなんて、フツーに知ってるし!」

 

「悲しい人間達よ…きさまらは哀れだ…」

 

「だが、案ずるな!オレ様がきさまらを悲しませたりしない!」

 

「この、偉大なるパピルス様が、きさまらの…」

 

「…」

 

「ねぇ、なんで人間達と一緒にいるの?」

 

「え?前からお友達だった…?」

 

「そっか、それじゃあしょうがないね…」

 

「…」

 

「えぇーーーーー!?ズルいぞきさまーーーーーッ!」

 

来るよ!マシュ!

 

「行きます!」

 

「フォーウ!」




カルデア…


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第3節(Chapter3)勇者アンダイン(Undyne the Undying)

ドーして…


雨を抜けて目にしたものは、満点の鉱石の星空の中、ぼんやりと佇むお城だった。

 

「フォーウ…」

 

「綺麗です…」

 

本当に、綺麗だ。

 

「フォウフォフォーウフォウフォフォウフォーウ」

 

「あそこがやはり、終着点のようです、先輩」

 

まだまだ、遠い。

少し、休憩をしよう。

 

「…そうですね、歩き通しで少し疲れました」

 

「フォウ」

 

小さな岩に二人並んで座った。

フォウ君はマシュの膝の上で丸くなった。

 

「…フリスクさん、見つかりませんね」

 

「…フォーウ」

 

きっとこの世界の何処かに、居るよ。

ダ・ヴィンチちゃんが、そう言っていたんだから。

 

「そう、ですね」

 

「フォーウ」

 

それも大事なことだけれど、もう一つある。

何故、この世界が特異点になったのか。

その原因も、あるはずだ。

 

「はい」

 

「フォウ」

 

彼が居なくなったこと。

この特異点が発生したこと。

決して無関係ではないはず。

彼を探すことが、この特異点の原因を発見することに繋がる筈だ。

絶対に、探し出そう。

 

「はい、先輩」

 

「フォーウ!」

 


 

 

 

  

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩!しっかりしてください!先輩!!」

 

「フォウフォ!」

 

ここ、は。

 

「良かった…!目が覚めて、本当に良かった…」

 

「フォーウ…」

 

な、にが。

 

「わたし達は、落ちてきたんです」

 

「先の無い橋に到達して、戻ろうとした時」

 

「全身鎧の騎士によって、橋が切り落とされました」

 

「フォーウ…!」

 

あぁ、思い出した。

 

「この金色の花達が、わたし達を受け止めてくれたみたいです」

 

ありがとう。

そう言って、花を撫でた。

 

「この花達もモンスターなんでしょうか」

 

さぁ、どうだろう。

そういうモンスターも居るかもしれないけれど。

…ここでのんびり話をしている時間はきっと無い。

先を急ごう。

 

「そうでした、早く逃げましょう」

 


 

 

 

マッドダミーには、襲われなかった。

 

「まさか、最初のマネキンさんのいとこだったとは思いませんでした」

 

あのダミーはマシュとの会話が楽しかったみたいだった。

 

「乱暴な口調でしたが、いとこ思いの良い方でしたね」

 

ナプスタブルークと再会して。

 

「蝸牛牧場…トリエルさんが好きそうですね」

 

それから、ガーソンさんのお店に立ち寄って。

 

「デルタルーン…」

 

忠告を受けた。

 

「ストライプの服を来た人間に、気を付けろ…ですか」

 

この世界の“彼”か、それとも自分達がよく知る“彼”か。

 

「どちらにしても、止めないといけません」

 

どの道、今はアンダインから逃げるしかない。

 

「和解、出来るでしょうか…」

 

テミー村を見つけて。

 

「学費、貯まると良いですね」

 

そして到頭、出口に辿り着いた。

 

「あれは…」

 


 

 

 

「これは最早、モンスターだけの問題では無い…そうだな?」

 

 

 

「私がここで食い止めなければ…」

 

 

 

「貴様は全てを破壊するつもりだ…」

 

 

 

「モンスターも…人間も…見境無く…」

 

 

 

「夢も…希望も…一瞬で握り潰す…」

 

 

 

「だが、この私がさせはしない」

 

 

 

「今、世界中の全ての魂の…」

 

 

 

「鼓動が1つになっている」

 

 

 

「我々の目的は、ただ1つ…」

 

 

 

「貴様を倒すことだ」

 

 

 

「人間よ…貴様の決意が、どれ程のものであろうと…」

 

 

 

「貴様を救う為…」

 

 

 

「私が必ず貴様を打ち倒す!」

 

 

 

「そう、約束しただろう!」

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

違和感はあった。

 

 

 

アンダインに襲われたのは、一度だけだった。

 

 

 

いや、違う。

 

 

 

助けられたんだ。

 

 

 

出口には、溶けた塵だけが残されていた。

 

 




どうか…


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第4節(Chapter4)人間殺戮エンターテインメント(Human Eradication Entertainment)

ボクラは


洞窟を抜け、研究所らしき建物に到達した。

道中にモンスターの姿は無かった。

 

「…っ!駄目です、バリアが張ってあってエレベーターには近づけそうにありません…」

 

順路を、あの研究所を進もう。

いつ解除されるかも分からないものを待っていられない。

 

「モンスターが居なければいいのですが…」

 

大丈夫。

人間という種族を正しく知っているモンスターは極僅か。

町で見たようにね。

 

「確かに、今のところ実際に人間と戦闘経験のある方達だけが知っているようでした」

 

自動ドアを潜ると、モンスターが待ち受けていた。

 

「…っ!先輩!下がってください!」

 

「えっ!ちょちょ、ちょっと待って!」

 

「フォーウ!」

 

3人でマシュを宥めた。

さっき言ったばかりなのに…

 

「す、すいません…てっきり待ち構えられていたのかと…」

 

「お、驚かせてしまったみたいで、ごめんなさいね…」

 

「フォウフォー」

 

白衣を着たモンスターはそう言って、謝った。

 

「…あなた達を待っていたのは、その通りよ」

 

「あなた達が先に遺跡から出て来た、人間ね?」

 

「あなた達のこと、ずっと見てたわ」

 

「誰かを探しているのも、その子と友達なのも、通信機が不調なのも知ってるわ」

 

「今、少しだけ、手が空いているの」

 

「その通信機、見せてもらえない?」

 

「直せるかもしれないわ」

 

「あなた達の助けになりたいの」

 

「わたしは、もう見守ることしか出来ないから…」

 

「フォウ…」

 

「ありがとう、ございます…」

 

ありがとう。

 

「わたしを信じてくれて、ありがとう」

 

「すぐ、終わらせるわ」

 


 

 

 

全てのパズルとトラップが停止したホットランドを駆ける。

 

「エレベーターはこの先ですね」

 

塵。

 

 

 

塵。

 

 

 

塵。

 

 

 

そこかしこに残されたモンスター達の痕跡。

 

「誰かが…モンスターを、殺して回っています…」

 

コアが見える。

 

「あれが…」

 

エレベーターで最上階まで辿り着いた。

 

「まるで、世界から誰も居なくなったみたいです」

 

塵に添えられた一輪の花と、寄り添う蜘蛛達を横目に、蜘蛛の巣を駆け抜ける。

 

「…絶対に、止めなくては」

 

無人のホテルを通り抜け。

 

「コアは目の前です」

 


 

 

 

「…やっと、来てくれたね」

 

 

 

「キミに初めて遭遇した後、ボクはとても恐ろしい事実に気付いてしまった」

 

 

 

「キミはモンスターだけでなく、人間すらも脅かす存在なんだね」

 

 

 

「やれやれ」

 

 

 

「これは大問題だ」

 

 

 

「観客が居てくれなきゃ、ボクはスターでは居られない」

 

 

 

「それに…」

 

 

 

「ボクには、守りたい人も何人か居るからね」

 

 

 

「アハハ」

 

 

 

「相変わらず、やる気満々だね」

 

 

 

「でも、チャンネルはそのまま!」

 

 

 

「この後、衝撃の展開が待ってるよ」

 

 

 

「ファンの間では常識だけど、ボクは元々人間殺戮マシンだった」

 

 

 

「こんなフォトジェニックなボディを付けて貰ったのは、スターになった後のことさ」

 

 

 

「でも…」

 

 

 

「当初の目的の為に搭載された機能も、まだこのボディには残ってる…」

 

 

 

「それ以上、近づくと…キミに見せてあげるしかなくなっちゃうな…」

 

 

 

「ボクの本当の姿をね」

 

 

 

「そうかい…」

 

 

 

「…なら、遠慮なくいかせてもらうよ?」

 

 

 

「SHOW TIMEだ!!」

 


 

 

 

コアに入った瞬間、ドクターから通信が入った。

 

『二人共、この先から強力なサーヴァントの反応がある』

 

「それって…!」

 

『いや、フリスク君じゃない』

 

『非常に似ているが、霊基反応が違う』

 

『これは…アルターエゴだ』

 

「一体、誰でしょうか…」

 

『とにかく、敵か味方か分からない、気を付けてくれ』

 

「はい…先輩?どうされたんですか?」

 

これは、どういうことだろう。

何かが、何か違和感が。

既視感が。

 

「先輩?大丈夫ですか?」

 

…何でもない、行こう。

 

「…分かりました」

 

「でも、何かあれば、すぐに言ってくださいね?」

 

うん、分かった。

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奥から爆発音が聞こえた。

音の聞こえた方向に駆け出す。

辿り着いたコアの最深部には、ロボットの残骸が残されていた。

 

「これ、は…」

 

「フォウフォウ…」

 

ふと、残されていた頭の部分に目を向けると、目が合った。

 

 

 

「ア…ハハ…よく来たね、子猫ちゃん達」

 

 

 

「もう少し、早く来ていたら、キミ達にも見せてあげられたんだけれど…」

 

 

 

「ボクのボディと最高のショーを、ね」

 

 

 

「…」

 

 

 

「キミ達は逃げた方が良い」

 

 

 

「ボクはそう思うけど…」

 

 

 

「行くんだろう?」

 

 

 

「あの子は、もう、人間を超えた何か、だ」

 

 

 

「気を付けるんだ、よ」

 

 

 

そう言い残して、塵になった。




あの子達を


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第5節(Chapter5)罪業ジャッジメント(LOVE Judgement)

パートナーだろう?


見覚えのある景色だ。

ニューホーム。

ここは、そう呼ばれているらしい。

 

「トリエルさんのお家と構造は全く一緒ですが…」

 

色の無い家だ。

 

「道も、家も、何もかもが真っ白ですね」

 

点在する金色の花を、一層際立たせる。

 

「思い出の花…」

 

住人は孤独な王様と、思い出だけ。

 

「寂しい場所です…」

 

既に地下への鍵は開かれている。

さぁ、急ごう。

 

「…はい」

 


 

 

 

ハウディ!

 

 

 

初めまして!

 

 

 

ボクはフラウィ。

 

 

 

お花のフラウィさ。

 

 

 

…そんなに警戒しないでよ。

 

 

 

傷付くじゃないか。

 

 

 

アハハ。

 

 

 

キミ、ボクとは最初に出会うはずなのに、ってずっと不思議だったんじゃないかい?

 

 

 

そう、ボクらは本当は初めまして、じゃないね?

 

 

 

でなくちゃ、こうして現れただけで警戒なんてするもんか。

 

 

 

前のボクには随分と酷い目に遭わされたみたいだね。

 

 

 

アハハハハ。

 

 

 

…。

 

 

 

大丈夫さ、何もしないよ。

 

 

 

ただ、キミにお願いがあってね。

 

 

 

これから先も、キミが覚えていたらで良いんだけれど…

 

 

 

お願い、フリスクを助けて…!

 

 

 

信じられないかもしれないけれど、フリスクは本当は、こんなことするような奴じゃないんだ。

 

 

 

…え?知ってる?

 

 

 

そっか…キミ達は地上でフリスクと友達だったんだね。

 

 

 

フリスクから、地底世界のことをどこまで聞いてるの?

 

 

 

…じゃあ、地底世界からモンスターが解放された日の、その後から教えてあげるよ。

 

 

 

フリスクがモンスターの親善大使になってから、地上では人間とモンスターの交流が始まって、平和な世界が訪れた。

 

 

 

だけれど、ある日突然、世界はリセットされた。

 

 

 

フリスクの意思で?

 

 

 

いいや、違う。

 

 

 

初めてフリスクと出会った時から、ずっとフリスクを助けていた存在がいる。

 

 

 

ボクは、そいつと親友だった。

 

 

 

今でも、そう思ってるよ。

 

 

 

みんなが地上に出て、あいつは間違いなく満足したと、そう思った。

 

 

 

でも、違った。

 

 

 

あいつは、まだ不満を持っていて、ボクとの約束通りボクの記憶ごと世界をリセットした。

 

 

 

じゃあ、何故ボクはその記憶を保持しているのかって?

 

 

 

どんなことをしたって、白紙に出来ないことはあるんだよ。

 

 

 

ボクが決意を持っていたから。

 

 

 

ボクが友達に恵まれていたから。

 

 

 

本当に大切な記憶の欠片だけ残すことが出来た。

 

 

 

そう…そうだよ!その欠片を修復してくれた人が居るんだ!

 

 

 

それで…!その人から、キミ達のことも聞いてたんだ!

 

 

 

思い出した…!

 

 

 

あぁ…長かった。

 

 

 

キミ達がやって来るまで、何度も何度も、世界はリセットされた。

 

 

 

ずっと、待ってたよ。

 

 

 

キミ達に伝言があるんだ。

 

 

 

それは、ボクの願いでもある。

 

 

 

もう一つ、お願いしてもいいかな?

 

 

 

“カルデア…どうか…あの子達を───”

 


 

 

 

「今日は素敵な日だ」

 

 

 

「花が咲いてる」

 

 

 

「小鳥達も囀ってる」

 

 

 

「こんな日には」

 

 

 

「お前みたいな奴は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

黄金に輝く回廊。

 

 

 

鮮やかな赤。

 

 

 

白骨死体。

 

「…サンズさん!」

 

マシュとフォウが駆け寄る。

 

「…よう、遅かったな」

 

右肩から左脇腹にかけて切り裂かれている。

傷口から赤い液体が滴る。

 

「そんな…酷い怪我です…」

 

「フォウ…」

 

「へへ…間違いなく、致命傷だろうな」

 

スケルトンなのに?

 

「スケルトンでも、ソウル()はあるさ」

 

あるのは骨だけでしょ。

 

「生憎、オレは骨のあるモンスターじゃないんだ」

 

ははは。

 

「へへへ…」

 

マシュとフォウが呆然とした表情で、自分とサンズの顔を交互に見ている。

 

「お前、慣れ切ってるな」

 

うん。

 

「とても言葉じゃ言い表せないぜ」

 

そんなにかな。

 

「なぁ…聞き飽きただろうが、良いか?」

 

うん。

 

「どんなに罪深い人間だろうと救われるべきだと、思うか?」

 

「償いさえすれば幸せになれると、思うか?」

 

分からない。

 

「そうかい」

 

でも、救われたいって思う人の手なら掴んであげるよ。

 

「…へっ」

 

ふふ。

 

「なら、アイツはどうだ?」

 

伸ばしてない手は掴めない。

 

「お前も落ちたらどうだ?」

 

自分は自分さ。

 

「アイツは違ったみたいだがな」

 

そういう時もあるさ。

 

「都合の良い話だな?」

 

人間だもの。

 

「…オレにとっちゃ、アイツは薄汚い兄弟殺しだ」

 

うん。

 

「…次のサンズにとっては友達だと、良いな」

 

そうだね。

 

「…なぁ、パ、ピ、ル、ス」

 

塵になった。




救ってくれ…!


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第6節(Chapter6)失魂落魄チルドレン(Soulless Children)

これがサイゴのチャンスだ


マシュ、お願いがあるんだ。

 

「…はい?何ですか?」

 

もう一度、藤丸立香の盾になって欲しい。

 

「…はい!」

 

ダ・ヴィンチちゃん。

 

「何だい?」

 

マシュの為の盾を用意して欲しい。

 

「…不思議なことに、もう用意されているんだな~、これが」

 

ドクター。

 

「何かな?」

 

カルデアを頼んだよ。

 

「…うん、任せてよ」

 

所長。

 

「…何かしら?」

 

今回、マシュとだけレイシフトさせてください。

 

「…分かりました」

 

みんな、ありがとう。

 


 

 

 

謁見の間に辿り着いた。

バラバラになった金色の花が見える。

その目の前に、黄色の横縞が1本入った緑色のシャツを着た子供が立っている。

子供が振り返った。

 

「フリスク、さん…?」

 

「フォウフォウ…?」

 

いや、違う。

 

 

 

ごきげんよう(Greeting)

 

 

 

「私はキャラ」

 

 

 

「フラウィの…いや、私の片割れのソウル」

 

 

 

「フリスクのソウル」

 

 

 

「そして、プレイヤー(偽りの神)ソウル()

 

 

 

「それら全てを以て、(キャラ)は復活を果たした」

 

 

 

「…」

 

 

 

「今は、違う」

 

 

 

「フリスクを、プレイヤー(偽りの神)を切り離し」

 

 

 

「残ったもの」

 

 

 

「それが(キャラ)だ」

 

 

 

「…」

 

 

 

「私がこれからすること」

 

 

 

「言うまでもなく、いつも通りだ」

 

 

 

キャラ()が、破壊した世界」

 

 

 

フリスク()が破壊した世界」

 

 

 

プレイヤー(私達)が破壊した世界達」

 

 

 

「もう、沢山だ」

 

 

 

「うんざりだ」

 

 

 

「終わりにしよう」

 

 

 

「地底世界のモンスターを沢山殺した」

 

 

 

「今、親友(アズリエル)のソウルを取り戻した」

 

 

 

「藤丸立香」

 

 

 

「お前で最後だ」

 

 

 

「お前の持つソウルを以て、私は極点に至る」

 

 

 

「今、プレイヤー(偽りの神)はフリスクの肉体を依り代に降臨している」

 

 

 

「肉体に溶け込み、この世界の法則に縛られている」

 

 

 

「殺せる」

 

 

 

「そして、私だけの世界が残るだろう」

 

 

 

「それで良い」

 

 

 

「どの存在よりも強い決意を持って」

 

 

 

「私が全てを終わらせる」

 

 

 

「そう、私は“決意”した」

 


 

 

 

星の一撃を受けた。

 

 

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)をマシュは受け止めて見せた。

 

 

 

人類史の一撃を受けた。

 

 

 

誕生の時きたれり、其は全てを修めるもの(アルス・アルマデル・サロモニス)をマシュは受け止め、消滅した。

 

 

 

ただの園芸用ナイフから放たれる、世界を終わらせる一撃。

 

 

 

それを受け止めたマシュはそれらと同等だと言った。

 

 

 

これで完全ではないことが、恐ろしい。

 

 

 

いや、それを連撃として放ってくる今の時点で十分に危険だ。

 

 

 

守り、躱すだけでは、サンズと同じ結末が自分達を待っているだろう。

 

 

 

だから、呼び掛けるんだ。

 

 

 

アズリエル、仲直りの時間だよ。

 

 

 

ソウルが共鳴する。

 


 

 

 

「…ラ…キャラ…起きて、キャラ」

 

アズリエルの声が聞こえる。

 

「おはよう、キャラ」

 

「見てキャラ、キミの故郷のお花畑だよ」

 

周りを見渡すと、確かに私達が石の雨に打たれた花畑に違いなかった。

 

「アハハ、キャラってば、嫌いな野菜が出た時みたいな顔してるよ」

 

何もかも、忌々しい。

 

「…ねえ、キャラ」

 

「裏切って、ごめんね」

 

「キミが間違ったことをしようとしたから、止めなくちゃ駄目だと思ったんだ」

 

「それが、友達だと思うから…」

 

「でも、二人でやろうって約束したのに…」

 

「約束を破って、家族を裏切って…」

 

「ごめんなさい」

 

 

「…」

 

「違う」

 

「…え?」

 

「裏切ったのは、私だ」

 

「初めから、こうするつもりだった」

 

「二人でなんて、嘘だ」

 

「全て、私一人でやるつもりだった」

 

「私だけで人間を殺して、バリアを壊して」

 

「消える気だった」

 

「どうして…!」

 

「だって、そうすれば」

 

「優しいお前は操られた可哀そうな奴であっても」

 

「悪い子にはならないと思ったから」

 

「傷付かずに、綺麗な儘」

 

「そんなの、酷いよ…!」

 

「お前は何も悪くない」

 

「殴っていい」

 

「殺していい」

 

「何をしても許される」

 

「…」

 

 

『キャラ、こういう時はどうするの?』

 

トリエル…?

 

『も~、お母さん、でしょ?』

 

何処に…

 

『ウフフ、照屋さんなんだから』

 

おかあ、さん…

 

『いい?キャラ、こういう時は、ごめんなさいって言うのよ?』

 

 

『はい、せーの』

 

「ご…」

 

「ご?」

 

「めん、なさい…

 

『はい!よく出来ましたー!』

 

『キャラ、私は気にしていないから、謝らなくてもいいんだよ…?』

 

『ゴアちゃんは黙ってて!』

 

『ご、ごめんよ、トリィ…』

 

これは、私の記憶なのか…?

 

「キャラ!」

 

「え…?」

 

アズリエルが飛んで来た。

ギリギリ受け止められた。

力強く抱きしめられる。

く、苦しい…

 

「いいよ!」

 

「な、何が?」

 

「許してあげる!」

 

「…どうして」

 

「キャラは素直じゃないところがあるからなー、みんな謝っていれば、すぐ許してくれたのに!」

 

「な、んで」

 

「キャラが泣くところなんて初めて見たなー!」

 

「でも、これでボクのこと、泣き虫なんて言えないね!」

 

「アハハハハ」

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イいユメミれた(レンシューにナった)?」

 

「ああ」

 

「それはヨかった!」

 

フリスクがキャラを立ち上がらせた。

 

「フリスクさん!?いつの間に…」

 

「フォウフォウ!?」

 

キョトンとした顔でフリスクが此方を見た。

 

「んー?」

 

「ああ、ゴメンね」

 

「ボクはフリスクじゃないよ」

 

「プレイヤー、ってイったらワかる?」

 

繰り返す世界の元凶。

 

「貴方が…!」

 

「フォウフォフォー…!」

 

でも、倒すべき敵ではないようだ。

 

「随分と見た目相応の話し方をする様になったな」

 

「だってイマはフリスクしかイないし」

 

「成る程」

 

親しげな会話は続く。

 

「…ってそうじゃなくて」

 

「キャラ、ボクはオコってるんだよ!」

 

「ボクラをオいて、こんなトコロまでキて!」

 

「しかも、カッテにセカイをコワそうなんて!」

 

「…え?ボクラもマきゾえにするキだったの…?」

 

「そんなコトしたって、ギセイがフえるだけだってワかってるでしょ?」

 

「…もー、シカタナいなあ、キャラは」

 

「ツラいなら、ツラいってイってよ」

 

「じゃないと、ボクラもワからないんだから…」

 

「ああ、その…悪かった」

 

「えー?!キャラがアヤマるなんて!?ドーしたの!?タイチョーワルい!?」

 

「…ふん!」

 

キャラはそっぽを向いてしまった。

 

「アハハ、ジョーダンだよ」

 

「…でも、ホントーにイいユメだったんだね」

 

「さてと、このハナシはオシマい」

 

「じゃあ…」

 

プレイヤーが此方を向く。

 

「フジマルリツカ」

 

何かな。

 

「キャラをスクってくれて、ありがとう」

 

「ボクもね、シゴトのアイマにサガしてはミたんだ」

 

「キャラのシアワせをね」

 

「でも、ボクにはミつけられないモノだったみたいだね」

 

「ナニがナンだかワからないかな?」

 

「ジュンをオってセツメイするね」

 

「ボクのヤクメはヘイコーセカイのイジ」

 

「そして、キャラはそのパートナーなんだ」

 

「ボクラはイッショに、このセカイをツクりナオして」

 

「このセカイが、ホコロび、シゼンホーカイするマエにハカイして」

 

「またツクりナオして」

 

「そうやってヘイコーセカイをイジしているんだ」

 

「ドーして、それがイジにツナガるのかとイうと…」

 

「セカイがヒトツオわると、ドーなるとオモう?」

 

「レンサハンノーをオこして、そのセカイにツラなるヘイコーセカイもオわりハジめる」

 

「それをフセぐタメの、クりカエすセカイだよ」

 

「まだ、このセカイはオわっていない、そうセカイのメをゴニンさせる」

 

「ドーだった?」

 

ソウル(コウドーゲンリ)をウめコんだ、ダミータチは」

 

「よくデキてたでしょ?」

 

「よくデキスぎてたかな…」

 

「キャラは、それがツラかったんだろうね」

 

「さ、そろそろボクラのシゴトのジカンだ」

 

「あ、アンシンしてね」

 

「ちゃんとフリスク(セイヴァー)はカエってクるよ」

 

「ゼンブ、ナかったコトになるからね」

 

「だからって、キミタチのミライまではナかったコトにはならないよ」

 

「ミライがナいのは、ボクラのセカイだけさ」

 

「セッカク、チテイをカイホーしたジテンでマンゾクしたフリスクのセカイがソンザイするのに」

 

「マきゾえでオわってしまったら、カワイソウでしょ?」

 

「ほら、もうカルデアにカエりなよ」

 

「あ、サイゴにイいかな?」

 

「タクサンのセカイをスクってくれて、アリガトう!」

 

「じゃあね!バイバイ!」




ハヤくしなよ


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友誼回復(Friendship Recovery)

悪魔とは、願いと引き換えに対価を要求する“誠実”な存在である。


「ここに何か用か、人間」

 

キャラは傲慢な子供だ。

 

「うわ、吃驚した」

 

そう思っていた。

 

「勝手に入っておいてそれか」

 

あの子は、知る限りでは、一度も謝ったことが無い。

 

「アハ」

 

ただ叱責、或いは激怒するモンスターを見つめている。

 

「ふん、さっさと出ていけ」

 

時折、モンスターの子供が怒りのあまり突き飛ばしてしまうことがある。

 

「あれは何?」

 

あの子は、落ちて来た当時の頃の様に不気味な笑顔を浮かべて、見つめるだけだ。

 

「聞こえなかったのか?」

 

モンスターの子供は、真っ青な顔をして、慌てて手当てをしてから、あの子の家まで送り届ける。

 

「いいじゃないか、教えてよ」

 

そして、次の日にはまた一緒に遊んでいるのだ。

 

「…設計図だ」

 

そういった光景は少なくなかった。

 

「何の?」

 

キャラは自罰的な子供だ。

 

「何でもいいだろう」

 

死ぬのが怖くないか、聞いたことがある。

 

「へー、そんな態度とっていいのかな?」

 

義父を毒殺仕掛け、剰え鼻で笑い飛ばした子供だ。

 

「…なんだ」

 

蟻を踏み潰す様なものなのだろうと。

 

「お父さんに言い付けるぞ~?」

 

あの子は

 

「…はぁ…」

 

“そんな悪い子は、罰を受けるべきだ”

 

「フッフッフ」

 

“だから怖くない”

 

「…聖杯だ」

 

と言った。

 

「何それ」

 

 

「分かりやすく言えば、どんな願いも叶える器だ」

 

人間とは、そんな勇気の出し方をするものなのか?

 

「!じゃあ」

 

 

「無理だ」

 

その結果が、どうだ。

 

「…どうして?」

 

友を裏切り、友に裏切られ。

 

「燃料が足りない」

 

そんな悪い子は、未来永劫、愛しい者達を殺し続けなけばならなくなった。

 

「何が」

 

それが、あの子の罪と罰だ。

 

「人間のソウル()

 

 

「…そう」

 

カルデア。

 

「お前がなってみるか?」

 

これは、正当なのか。

 

「いいよ」

 

これは、あの子に対する仕打ちとして、妥当なのか。

 

「…」

 

教えてくれ…

 

「…」

 

 

「…遠慮しておこう、お前一人でどうにかなるものではない」

 

教えてください…

 

「あっそ」

 

王よ…

 

「ふん、とっとと出ていけ」

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛を知り

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛を望む

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前には権利がある

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友は全て消えゆく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全てを知るが故に、全てを託すのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聖杯を受け取れ、キャラ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

お前が居なければ、「復讐心」という感情を理解することは無かった。

あの子の気持ちを、理解することが出来た。

 

ありがとう、バアル。

 

お前が居なければ、「決意」することは出来なかった。

死にたくない、ただ在り続けたいという願い、それが残した欠片は、とても貴重なサンプルになった。

 

ありがとう、アンドラス。

 

お前が居なければ、人間に「期待」することは無かった。

たとえ間違いだったとしても、あの子の背を押したことを、後悔などしていない。

 

ありがとう、ゼパル。

 

お前が居なければ、「生」きるということを、「死」ぬということを、理解することは無かった。

彼等が居たということ、忘れることは無い。

 

ありがとう、フェニクス。

 

お前が居なければ、「救済」することは叶わなかった。

偽りの神(プレイヤー)は、想定以上の結果を齎した。

 

ありがとう、ラウム。

 

貴方がいなければ虚数潜航など、不可能だっただろう。

貴方には、本当に世話になった。

貴方の御蔭で、ここまで来ることが出来た。

もっと、貴方と…貴方達と、共に研究が出来たなら…

しかしそれは、贅沢が過ぎるというものだ。

たった一つ、為せることがある。

何一つ為せなかった、我々にとってそれは。

とても幸福なことだ。

感謝している。

 

ありがとう、☝✌ ❄☜☼。

 

さようなら。




“ああ、こんな悪い夢”

“早く醒めてしまえばいいのにな…”


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知らなくてもいいこと(END ROLL)
おしまい(THE END)


おはよう(Good Morning)


「おはよう」

 

寝ぼけ目を擦りながら隣で眠る親友(アズ)に、そう告げた。

悪い夢を見ていたようだ。

などと言えれば良かったのだけれど。

残念なことに、わたしはそこまで幼くない。

 

「ただいま」

 

全てを忘れてしまえれば、とは思わない。

もう一度、みんなに会いたいから。

もう会えない誰かを忘れたくないから。

せっかく、練習したのだから。

 

「…ごめんなさい」

 

会いたい人。

伝えたいこと。

謝りたいこと。

たくさん、あった。

 

「ありがとう」

 

それが叶う存在も、最早数える程。

たとえ、それでも。

約束とは、果たされるべきものなのだろう。

 

「ふぁ…」

 

わたし達の部屋の入り口に、今にも叫びだしそうな顔をしたアズゴア(お父さん)と、その口を押さえるトリエル(お母さん)が見えた。

謝りたいのはやまやまだけれど、少し疲れてしまった。

 

「おやすみ、なさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おやすみ、キャラ」

 


 

 

 

落ちてきた。

6つの魂、その宿主達。

ニンゲンが。

来るのは分かっていた、けれど。

 

わたしを含めれば7つの魂。

つまりバリアを破壊できる、はず。

それはモンスター達の悲願。

 

わたしは嫌だ。

モンスターは、嫌いじゃないけれど。

ニンゲンが嫌いだ。

憎い。

怨んでいる。

表向きはそういうことになっている。

 

アズゴア(お父さん)は本当に、甘い。

モンスター達の王として、決定するべきなのに。

モンスター達も。

ニンゲン達も。

甘い、甘い、甘い。

反吐が出る。

吐き気がする。

虫酸が走る。

本当に、度し難い。

理解できない。

 

地上はフラウィだらけ、とはよく言ったものだ。

だからこそ、わたしは憎悪を腹の中に飼う羽目になった。

わたしにはそれを癒し、隠す為の時間がいるのだと。

そういうことになった。

まるっきりの嘘ではない。

 

これはわたしの、わたしだけの我が儘。

今やわたしだけが覚えている(知る)、8人目の魂。

その輝きが、わたしには必要だ。

おまえは家族に、兄弟に、親友に、なってくれるだろうか。

 


 

 

 

何処かの世界のぼくが目指した先がここにある。

 

 

 

ありとあらゆる手段を試した末に、目的を見失ったぼくか。

 

 

 

可能な限り救った末に、きみを諦めきれなかったぼくか。

 

 

 

それは知らないけれど。

 

 

 

ぼくらは三人で親善大使。

 

 

 

血が繋がらずとも、家族で。

 

 

 

種族が違おうとも、兄弟で。

 

 

 

掛け替えのない親友同士。

 

 

 

救われたのはきみ達だったのか。

 

 

 

それとも、ぼくだったのか。

 

 

 

少なくとも。

 

 

 

今、ぼくは幸せだよ。

 


 

 

 

「ねぇ、キミタチのナマエをオシえてよ」

 

何もかもが無かったことになると、成り立たないことが出てくる。

 

「…我らに最早名乗る名など無い」

 

解答が抹消され、過程だけが残る。

 

「でも、ムカシはあったんでしょ?」

 

しかし、逆説的に存在証明が為される。

 

「…」

 

あったかもしれないそれは実態を持った幻想として、ここにある。

 

「ねぇ~、オーシーえーてーよー!」

 

穴の開いた公式を埋め合わせる為に、世界はこれを受け入れざるを得ない。

 

「 ✌☼ ✌❄⚐ 」

 

いつか天秤は傾き、揺り戻しが起こる。

 

「あぁ、今行きます」

 

君達が重さを増すごとに、僕達も積み重ねよう。

 

「あ、もぉ~」

 

それはLOVEで出来ていて、けれど確かに(Love)なのだ。




良い夢を(Sweet Dreams)


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思い出(Material)

気骨(Backbone)は良い…なんせ(Bone)があるからな。


フリスク(Frisk)世界を救った普通の子供。

実のところ性別は決めていない。

召喚されたクラスが、セイヴァーだとしてもアヴェンジャーだとしても、本質は何も変わらない、ラブを知る子供。

赤色のソウル(Determination SOUL)

セイヴァー・アヴェンジャー・フォーリナーの適正あり。

藤丸(フジマル)立香(リツカ)世界を救った普通の子供。

こちらも性別は決めていない。

召喚したサーヴァントが、どんなものであったとしても、本質は何も変わらない、思いやりを知る子供。

キャラ(Chara)世界を壊した普通の子供。

正直ほぼ性別は決めているが、公表はしないので、好きに想像してほしい。

裏切った家族(利用した親友)との、仲直りの仕方が分からなかった子供。

赤色のソウル(Determination SOUL)

セイヴァー・アルターエゴの適正あり。

アズリエル(Asriel)ドリーマー(Dreemurr)心を失ったモンスターの王子。

願いは「キャラに会いたい」。

裏切られても(利用されても)心を失っても(花になっても)親友だった(忘れられなかった)

白色のソウル(Monster SOUL)

(Creator)地底世界の創造主。

あるいは、白い犬(Monsters God)

異端の神(Player)

好奇心(Play)願い(Pray)のままにフリスクをキャラ復活の為の生贄とした。

何故彼らは願い叶って悲しみに囚われたのかが、理解出来なかった。

落ちてきた子供。

聖杯(Holy Grail)魔術師と科学者のモンスターの共同開発品。

とあるエネルギーを聖杯として結晶化し造られた願望機。

アズリエルの願いを手段問わず叶えた。

実際に行ったことはプレイヤーをほんの少し感情移入させ(魅了し)ただけ。

ウィング(W)ディン(D)ガスター(Gaster)地底世界の住人の一人。

落ちてきた人間とモンスターの王子の友情劇とその結末を知る一人。

だから、聖杯を造ってしまった。

魔神柱(Barbatos)地底世界の住人の一人。

落ちてきた人間とモンスターの王子の友情劇とその結末を知った一人。

だから、聖杯を求めた。

命題は「不変の友情」。

青色のソウル(Integrity SOUL)

 

「またあえた()、リツカ」

 

真名 :フリスク(Frisk) & キャラ(Chara)

クラス:セイヴァー

属性 :中立・善 & 混沌・悪

時代 :21世紀

地域 :エボット山 又は イビト山

 

筋力:E-

耐久:E-

敏捷:A+

魔力:E-

幸運:EX

宝具:EX

 

スキル:

戦う(FIGHT)

 殺意を込めて、攻撃する。

 (自身の与ダメージアップ)

 

アイテム(ITEM)

 ポケットを一つ空ける。

 (味方単体のHP全回復)

 

見逃す(MERCY)

 決意で満たされ、笑顔を浮かべる。

 (戦闘の強制終了、QPのみ獲得可能、拘束系弱体状態時不発)

 

行動(ACT)

 友達になる方法を考える。

 (敵単体の攻撃力ダウン、防御力ダウン)

 

救う(SAVE)

 希望を抱き、夢を叶えるため、手を伸ばす。

 (毎ターン自身のHP回復、防御力アップ)

 

宝具:

決意(Determination)

 殺すか、殺されるか。

 (自身のHP全回復、即死無効)

 

宝具強化:

決意(Determination)

 誰も殺さず、誰にも殺されない。

 (自身のHP全回復、即死無効、ガッツ付与)




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