リレー小説の悪い例 (蕎麦饂飩)
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ハッピーエンドは奪い合い
A・B・C・D・Eという5人のネット二次小説家がいた。
彼等はリアルでは知り合いでも何でもないのだが、小説投稿サイト『ハメル』で知り合ったのだ。
このAという男がリレー小説をこのメンバーでやろうと発案した。
事の始まりはハメルでリレー小説が書ける様な『承認した他作者からの編集の許可』機能が試験実装された事による。
グループに入った者が自由に続きを書く事が出来る。但し、後から各話の順番を変える事が出来ない事と、投稿者以外は文章を編集できないという制約があった。
ついでに言えば、誰か一人が完結設定にすれば、それ以上誰も自分の作品も修正できなくなるという仕様もあった。
Aは他の全員にハメルのメール機能で連絡した。
A→ALL「俺らでリレー小説やりませんか。お題は『リリカルなのは』です」
それにB・C・Dは直ぐに乗っかった。
そして暫くしてEも余裕があれば参加すると返信した。
先ずはAが始まりを作った。
“第一話
栄太という少年は高町なのはの幼馴染である。
彼は転生者でFateのギルガメッシュの宝具を神に貰い~~~~~~~~”
のっけから随分悪い意味でのテンプレートな始まりであった。
しかも作者のペンネームと主人公の名前が微妙に被っている上に、文章量は千文字程度。
その上、何故か主人公は高スペックのイケメンで微笑むだけでなのはを含むクラスメイトが見惚れるという大盤振る舞いな設定だった。
次にBが続きを書いた。
“第二話
ビー・テスタロッサはフェイト・テスタロッサの誕生以前に造られた失敗作の実験体だが、
その中の魂はこの世界とは別の世界から飛来した魂が宿っている。彼は以前の世界ではブラック企業で上司に苛められた故に自殺したが、
今生では彼は常に妹の味方で、妹もまた兄の事を~~~~~~”
また随分とアレな走り出しな内容であり、またしても作者のペンネームに酷似したオリキャラが登場した。
その上以前Aが書いた内容との接点は一切なかった。
ただ自分のやりたいことをぶちまけただけである。特にリレー小説でこれをする意味は無かった。
そしてBが其れを投稿してから暫くしてからAとCからリレー小説グループ付属の掲示板上でメッセージが来た。
A→B
『フェイトは僕のキャラクターのヒロインにする予定なので第2話の設定を無かった事にしていいですか?』
C→B
『フェイトは俺のキャラクターが貰う予定なので第2話は取り消せ』
フェイト・テスタロッサという可憐な美少女は将来のメリハリある身体が約束されながら、現在はつるぺたツインテールで二度美味しい上に、
声にも恵まれた原作内でも屈指の人気キャラであった。
故に、自己投影のオリキャラのヒロインにしたい男性作者たちが争い始めたのだ。
そうしている内にDが次の作品を投稿した。
“第3話
二人の幼い魔導師が争うきっかけとなり、また強き絆を育む事になった種、
その名をジュエルシードと言う~~~~~~~~”
特に第一話や第二話と関係の無い話だったが、当たり障りのない内容であった。
そしてDが投稿した一時間後、Cが第四話を投稿した。
“第四話
ビーと言う男は突如倒れた。その理由は実験の試作品として造られた肉体が生物として完成していなかった為だった。
フェイトは優しい兄の死を悲しむと共に、理由は解らないがもしかしたら自分もその様に死ぬかもしれないという不安に陥った。
そんな彼女が感情を抑え込んで母親に命じられたジュエルシードを回収しようとしていたところで、椎という少年に出会った~~~~”
なんとCはBの自己投影先を殺して、フェイトのヒーロー役を新しく自分のペンネームそっくりなオリキャラに移し替えたのだ。
いや、自己投影という言葉も烏滸がましい、自己願望の擬人化のキャラクターの為に。
そして更に畳み掛ける様に、僅かに遅れながらもほぼ同時にAが投稿していた。
“第四話
ジュエルシードを探しているフェイトが夜道を歩いていると反対側から美少年が歩いてきた。
その少年が近づいて来てフェイトはおどろいた。
少年がカッコ良かった事もあるが、その手にジュエルシードが乗っていたからだ~~~~~~”
宣言通り(Bの許可を取っていないが)第二話を無かった事にしたA。
AとCの所業にブチ切れたBは、第六話でAとCのオリキャラを殺して、Bのオリキャラを復活させた。
それが更にリレー小説用の掲示板を炎上させることとなった。
それに付き合ってられなくなったのかDがリレー企画から退場したが、ABCの三人は気にせず罵り合いながら、
自分の作品で、オリキャラが実は死んでいなかった、とか、復活したという展開にしながら他の作者のオリキャラを殺しまわっていた。
そしてその度に登場するヒロインたちは惚れる男を変えていく、何とも不思議な世界になっていた。
そんな中、遂にEが書き上げた文章を投稿した。
“第百話
大きい方を漏らした茶色いパンツのおっさんが栄太のブツを噛み砕いて、ビーに己のパンツを被せて、椎を誘拐してホモになるまで教育した。
三人は汚れ役の女芸人になるかホモになるかを迷ってホモへの道を踏み出した。
それによりなのはもフェイトも他の女の子もみんなおっさんになって、激しいホモの舞を繰り広げた。
すね毛は天を突き、ケツ毛はトイレットペーパーにからまるどころか、ペーパーを丸ごとからめとる様な、身長3mの巨漢へと変わった。
こんなホモならトイレはつまらないし、ワキガでも大丈夫だきっと。
ジュエルシードをおっさんがケツに突っ込んだせいでこうなってしまったのだ。
だから今日もうどんが美味い。勿論カレーうどんだ。但しうどんは尻から出る。完!!”
Eが作品の完成を決定する『完結』の設定を押したことにより、これにてリレー小説は終わった。
登場する作者達及び、投稿サイトは架空の存在です。
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