ボクラ色に染め上げて (リッティー)
しおりを挟む

1.ハイカラシティへ

ばばばばばばばばばっ。

画面内でわかばシューターの射撃音が響く。

花野町に帰って来てから、よし、とばかりに、大好きだったスプラトゥーンをやっている。

そして、隣でやっているのは、チャージャーを扱う妹。

あ。また一人、妹がキル取った。

 

現在、A+の腕前を持つあたし・花園優香。

わかば、ボールド、パブロ、ザップなど、短射程が得意。

アバターネームはフェル。

妹の真紀はB。

エイム最強。

今はスプラチャージャーだが、その気になればリッターも扱う。

アバターネームはシェリィ。

 

今日も今日とて、隣同士でタッグマッチ。

前線特攻、ヤグラもホコも取っていくあたし。

背後からの、シェリィの援護射撃。連携はバッチリだった。

 

現在9時半。

中学生のあたしたちは、そろそろ寝る時間……と、WiiUの電源を切ろうとした。

自分たちのイカが、フリーズしていたのにも気づかず。

 

 

 

翌日・土曜日の朝5時半。

朝っぱらからスプラトゥーン。

が。

異変が起きた。

視界が歪み、テレビがあるのかさえ分からなくなって……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気付いたら、見覚えのあるハイカラシティ交差点中心に、二人でたたずんでいた。

 

 

 

 

「嘘でしょ」

 

真紀/シェリィが呟いた。

 

鏡に自分を映してみる。

 

げ!?初心者装備、てことはこれからプレイヤー登録、とか!?

 

「とりあえず、ご飯食べよ」

 

そうだった。起きて真っ先にやろうとして、これだったから、お腹が空いている。

おまけにナワバリバトルはレジャースポーツ。

絶対体力消耗するに違いない。

 

周りにいる他のイカたちに聞いてみる。

 

「すいません、この辺にどっか食事処ってありますかー?」

 

「食事処?あーー、お腹空いてるの、キミ達?

だったらすぐ近くにちょうどいいテラスがあるからさ、そっち行こう!

んで、食べたら、ナワバトいこっ、ね?」

 

一発でビンゴ。

優しいイカがいた。

 

テラスで食べながら、彼女と話をした。

ボールドマーカー使い、ライ。

S+のボルネオ使い・リーナに憧れて、ボールドを使い始めたとか。

そして、彼女はチームを組んで活動しているらしい。

その中で、毎日店の席取りを任されると、ライちゃんが笑っていた。

 

カランカラン、とドアに付けられたベルが鳴る。

入ってきたのは、ライちゃんと同じ、ブルーカラーのボーイ二人とガール一人。

 

自己紹介を済ませた。

ダイナモローラーテスラを担ぐ、大柄なボーイがダイくん。

リッターカスタムを担ぐ、小柄なボーイがタクトくん。

赤ZAP使いの、あたしと同じくらいの身長の子が、アヤちゃん。

そして、ライちゃん。

この4人が、チーム・『カラーパルス』のメンバーである。

 

 

朝の初戦は、リアルナワバト初の戦い。

そして、新しい、『フェル』と『シェリィ』の、初戦闘。




転移シーンって苦手。
そして次回は、優香&真紀、初ナワバト!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2.はじめてのナワバリバトル

バトルって難しい。
でも、楽しいですよね。


イカスツリー。

ハイカラシティのど真ん中に屹立する、電波塔みたいな施設だ。

その中へと、自動ドアを通って入る。

目の前には受付。

そこで「プレイヤーパスカード」を通してナワバトやガチ、プラべそれぞれのロビーに行くようだ。

あたし・フェルと妹のシェリィは、パスカード作成から始まる。

思ったよりも簡単でびっくりした、プレイヤー登録。

名前書いてカードを受け取るだけ。

ガバガバじゃない、この認証、と思ったら、カード下にバーコードがびっしり。

納得。バーコードセキュリティだったということだ。

 

初ナワバトはハコフグ倉庫。

ライちゃん、タクト、シェリィとは、同じチーム。

アヤちゃん、ダイ君とは、違うチーム。

相手チームにはチャージャーが一人、スピナーが一人。

スプチャとバレルスピナー。

「相手はトルネード三人!タクトくん、チャージャー仕留めて」

「「わかるの!?」」

あ。

あたしらランク1なの忘れてた。

てかリアル知識通用するんだ。

と、ギアチェックをしていく。

やばくね!?

問題のチャージャーさん、スペシャル増加量アップギアガン積みなんですけど!!

ボムラッシュが怖いいいいいいい

「何怖がってんのか知らんが、とりあえずお前ら塗っとけ!バリアたまったら前線来い!それまでは、ライちゃん、頼む!俺も行く」

ライちゃん一人に前線を任せるのかと思ったが、タクト自身も前に出るようだ。

相手チャージャーを仕留め、中央で陣取るつもりらしい。

表情もろバレだったのかなあ、ライちゃん笑ってるし。

そして、あることに気付き、隣のシェリィに声を掛ける。

「つーかシェリィ、これ、相性悪くない?わかばにとって」

「あ」

バレルスピナーもダイナモテスラもスプラチャージャーも遠距離型。

アヤちゃんは基本的に塗り専のようだから、早々に前線には来ない、ということは。

ガンガンいかねばならない、ということ。

よし。二人分の塗り力で早々に中央へ、これしかない。

そして、開戦の号砲が鳴った。

 

あたしは右へ、シェリィは左へ。

タクト・ライ組は前へ。

ってかライちゃん、速い!

塗りながらピンと来ていた。

スタートダッシュギア。

ライちゃんの帽子、あれはボーダービーニーだったのだ。

わかばの射撃の手ごたえを感じる。

そういや、サブウェポンってどう出すんだ、あと、もぐり方もあまりわかってない。

 

とりあえず、インクの中に入るイメージで、身体を縮めてみる。

で、出来たーーーーーー!

上や前が、水中から見た水の上のようだった。

びちゃびちゃと音をたてながら、インクの中を進んで行き、ちゃぽんとヒト形態に戻って、またわかばの引き金を引いて走り出した。

 

 

---------------------------------------------------------------------------------------

side:タクト

ナワバリバトルの経過時間30秒。

ライちゃんの高速機動(スタートダッシュ)が切れた。

そして、相手のチャージャー使い……レヴィンが()()いつもの狩場・自陣高台に上っている。

しかし。

遅かったな、レヴィン!

もうこっちのチャージは終わってる。

「いけ」

引き金を引く。

ドゴン、と重低音が響く。

レヴィンがインクをまき散らして倒れた。

 

 

経過時間45秒時点で、自身が取ったキルは3。

レヴィンは2回も俺にキルされてるからなあ、逆上するのかなあ、きっと。

ライちゃんが相手方の方へとステップを踏むのを見ながら、俺は索敵を開始した。

うん、いない。

高台にジャンプビーコンを設置して、俺は中央から敵陣へ、インクの中を泳いでいった。

 

少し相手の復帰(リスポーン)地点に近づいたところで、構えずにインクチャージを開始する。

裏どりしているならまだしも、1回相手方の全員がキルされていたので、アヤやダイも復帰(リスポーン)地点に戻っているのだろう。

でも、レヴィンやダイの動きがおかしい。

まるで、バレルスピナーの子に、催促しているような……?

 

 

----------------------------------------------------------------------------------------

side:レヴィン

やべえ、ベリーの動きがおかしい!?

試合開始30秒ごろから、ずっと動いてない。

「おい、ベリー、大丈夫か!?」

ダイも一緒になって、ベリーをゆさゆさしたりしている。

でも、反応ナシ。

やべえんじゃねえか、これ?

 

 

残り2分。

ベリーが再起した。

でも、動きが何だかぎこちない。

ベリーの再起に合わせて、俺やダイも動き出す。

心配だから俺はベリーについていくけど。

そして、狩場にもなる小高い場所に着いた。

タクトが気になるけど、隣同士、チャージ開始。

そして、俺は狙いを付ける。

あの初心者わかば……いけそう。

引き金を引いた。

はじかれる感覚を覚えた。

 

----------------------------------------------------------------------------------------

side:フェル

あっっぶなーーーーい!

チャージャーにぶち抜かれるとこだった!

初めてのバリア、取っといて良かった。

さっきあたしに狙いをつけてきたスプチャ使いの彼に目をやる。

そして、隣のバレルのガールにも目を向けて前進しようとしたところで……

彼女が煙と消えた。

「え?」

「ゑ?」

その場にいなかったアヤちゃんを除く、全員の時が止まった。

 

 

回線落ち、と呼ばれる現象がある。

ネットゲーム特有の現象で、機器同士の接続が不安定な時に起こるのだとか。

例えばスプラトゥーン。

本来は4対4。

だが、この現象が起こると、3対4になったりする。

要するに超不利になるってわけ。

こっちでは、『煙幕』と呼ばれている。

煙幕にかかったイカは、ロビーに送られるのだとか……

っていうのは、試合後にライやダイから聞いた話。

その時は知らなかったから、つい、こう呟いていた。

「落ちた……」

と。

 

 

ボムの出し方もなんとなくだが分かっていた。

だが、何も出来なかった。

わかばの引き金さえも、引く気になれなかった。

相手は、こちらより不利なのだから。

 

死の瞬間は一瞬だった。

死因はもちろん、バリア切れ直後のチャージャー直撃だった。

 

一瞬、バトル会場全部が見渡せたかと思うと、復帰(リスポーン)地点に立っていた。8秒しっかりかかっていた。

 

次の試みはスーパージャンプ。

左腕についているイカ型のスマホみたいなものに、マップと味方の情報、あとタクトやライちゃんが置いたビーコンのマーク。

相手にビーコン使いはいないので、こちらのネイビーブルーのビーコンマークしかない。さらに、敵陣復帰(リスポーン)地点の近くが一部ネイビーブルーに染まっている。扇形に広がる塗り跡はライちゃん、直線的かつ先頭にボムみたいなあとがあるのがタクト。横からチャージャーに抜かれたのか、タクトのいた所にバツマークが付いていた。

相手カラーのビビットオレンジは、なかなか広がりを見せない。

あたしは、高台の上のビーコンマークに、指先で触れた。

イカに変化し、インクを飛ばしつつ大ジャンプ。

ビーコンを破壊しながら、着地した。

 

----------------------------------------------------------------------------------------

side:アヤ

ダイくんを盾にして(ゴメン、ダイくん)、激戦区を何とか抜けた。

あたしは、左から攻める、という作戦を敢行した。

高台にスプリンクラーを投げ置き、金網から降りて、塗って塗って塗りまくる。

これが、あたしの戦い方。

塗りまくる。

だってナワバトだ。塗らないと勝てない。

積極的にキルを取りに行くのも一つの戦法なのだけれど、塗ることだって重要だ。

だからこその赤ザップ。

スプリンクラー・トルネードという、塗り特化のブキ構成。

オマケに、今のギアは、逆境強化とスペシャル増加量アップ……要するにトルネード撃ちまくりギア。

直ぐに溜まるスペシャルゲージ。

即刻、トルネードを発動した。

中央高台のビーコンを、もう一度破壊する。

マップのログには、『タクトを倒した!』の文字が。

どうやらビーコンを置いた直後で、身動きが取れなかったタクトくんにトルネードが直撃したみたい。

ゴメンね、タクトくん。

「反撃開始だーー!!」

レヴィンくんの声が聞こえる。

ライちゃん、タクトくん、シェリィちゃんの3人が復帰待ち。

ベリーちゃんがいないとはいえ、一時的でも有利な状況に持っていけている。

カラン、カラカランという軽快な音は、レヴィンくんのスプラッシュボム、それのラッシュだ。

そして、残るは30秒。

ダイくんの本領発揮。

ラストスパートだ。

 

 

----------------------------------------------------------------------------------------

side:フェル

結局、試合には勝てた。

けど、勝負には負けた気分だ。

一人居なくなったにも関わらず、ナワバリの差はわずか3%だったからだ。

理由も分かってる。

レヴィン、と呼ばれていたチャージャー使いのボムラッシュに加えて、アヤちゃんとダイくんがバトル終了間際にトルネードを放ったから。

ロビーにでかでかと表示されるリザルト画面の、バレルスピナーの所に書かれている塗りポイントは、0。

でも、落ちてなかったらなかったで、乱戦になってたのかな、と、結果を見ながら考えた。

 

その日は、それから2時間程ナワバリバトルをしていた。

初対戦のメンバー全員とフレンドコードを交換し、楽しくバトルを出来たと思う。

 

 




初っ端から煙幕というアクシデントに遭ったフェル&シェリィ、ご愁傷様。
でもいちばん不遇なのはベリーちゃんである。
そして、作者自身がチャージャーポジションを分かってないので、これでいいのかな、とちょっと不安になります。
とりあえずハイカスの時によく使う場所にタクトくんとレヴィンくんを配置しました。
スペ増逆境赤ザップはよくやります。
そしてチャージャーに変えるとクソエイムっぷりが出ます。
チャージャー使い憧れですので、過大評価気味かも。
そして次回はレヴィン&ベリーの事情とチームの拠点の話になる予定。
テストなので再来週になるかも、イカ、よろしくー!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

3.チーム拠点と幼馴染

カラーパルスの拠点へ。
おじゃましま~す。


「うっし、今日はここらで終わるかー!」

実質的なチームリーダーを務めるタクトくんが、ナワバト終了を宣言した。

お昼を食べて1時間程後のことだ。

これでランクは3に上がり、明日にもランク4へと到達するだろう。

だが、一つ問題があった。

あたし、シェリィと姉のフェルは、身寄りがない、ということ。

大問題だった。

その事を相談すると、

「何なら、ウチらのチーム拠点行く?」

と、ライちゃん。

本当に助かる。

結局今日は、何から何までカラーパルスにお世話になりっぱなしだ。

だから、あたしは言った。

「行くいく!あと、料理は任せて!」

と。

----------------------------------------------------------------------------------------

ハイカラシティから歩いて約10分。

チーム・カラーパルスの拠点、カモメヶ丘団地リバリーアパート22号室へと到着した。

カモメヶ丘団地は、アパートが立ち並ぶニュータウン。

リバリーアパートをはじめ、様々なチーム拠点用建造物を擁し、ハイカラシティ近郊の一大プレイヤー拠点になっている。

リバリーアパートは、その中でも8人チームの拠点としてよく使われる。

そこまで聞いて、

あれ、と思った。

カラーパルスは4人チームのはず。なのに何故、と。

その理由は、アヤちゃんが語ってくれた。

「広いからいろんなヒトがウチに来るのよ。

残りの4人分は、キミたちみたいな初心者さんや、レヴィンくん、ベリーちゃん……他にもいっぱい来るよ!たまにパーティーとかやったりするね」

そういう事なのか。

ちなみにチーム方針は「バトルは楽しく」。タクト曰く、「固定チームなんて勿体無いでしょ、いろんなヒトと楽しんでなんぼだよ、ナワバトは」との事。

だから、敵味方に分かれても楽しくバトル出来るのか、納得。

予定通り料理を作る。

その時、ドアが開く音がした。

----------------------------------------------------------------------------------------

「ただいまー……って今日のわかば、結局呼んじゃったの!?」

と言いながら、レヴィンくんが入って来た。

最早家じゃん。

で、ベリーちゃんは……いた。

重そうなバレルスピナーを担いで、自室へと疲れた足取りで向かっている。

「やっぱ気にしてるのかな、煙幕のこと」

タクトくんが呟く。

それに答えたのも、レヴィンくん。

「今日も、煙幕2桁行ってた」

「えっマジ!?収入ヤバくない、それ!?」

と、ライちゃんとアヤちゃんが揃って驚く。

「実際ヤバい。整備代でカツカツ」

「レヴィン、それでスプチャに転向したのか、リッターの整備代かかるから」

「よっ、よく分かるね、タクトくん……」

アヤちゃんの困ったような声を聞きながら考える。

煙幕2桁というのは、恐らくベリーちゃんの事だ。

レヴィンくんとベリーちゃんの連携はかなり良い。恐らくコンビを組んでいたのだろう。

そしてナワバトの成績が収入に関わってくるハイカラシティの経済では、煙幕にかかると収入はゼロ。

幾らコンビを組んでいるとはいえ、ベリーちゃんの塗りでお金稼ぎをしていたと思われるレヴィンくんも、収入大幅減。

またタクトくんが言うように、バレルスピナー以上に重そうなリッターシリーズは、整備代もかかるだろう。

定期的なメンテナンスが大事なのは、ナワバトでも同じだからだ。

あと、あたし的に衝撃だったのが、レヴィンくんがもともとリッター使いだったこと。

「まぁ、マブダチだしな、タクトにはバレるって思ってた」

さらに衝撃。レヴィンとタクトが幼馴染だった。

 

「ご飯出来たよー」

夜6時。

テレビを見ながら、夕飯の時間だ。

 




ちなみに、整備は月一で、うちの子達のブキの整備代は、
ライ(ボールドマーカー)→1万G
ダイ(ダイナモローラーテスラ)→2万G
タクト(リッター3Kカスタム)→2万G
アヤ(N-ZAP85)→1万G
フェル&シェリィ(わかばシューター)→二人で1万G
レヴィン(スプラチャージャー)→1万G
ベリー(バレルスピナー)→1万5千G
です。
タクト「俺ら金食いじゃねーか!」
アヤ「でもタクトくんウデマエ高いもん、ものすごく稼いでるもん」
レヴィン「俺らとの違いはそこだーー!!(泣)」
重量級の整備代高し。
ウデマエはまた後日。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

4.バトルシップTV

夕飯後のお楽しみタイム!


夕飯後。

シェリィと共に最後までキッチンに立っていたあたしは、ソファーに座る。

「7時だ、バトルシップ始まっぞー!」

と、レヴィンくんが言った。

7時って言うとゴールデンタイムだからね、その時間にバトル映像(番組名からピンと来た)を流すというのはナワバト競技人口を増加させるのにもちょうどいいだろう……

 

 

そう思ってたあたしがバカだった。

 

----------------------------------------------------------------------------------------

「こんばんわー、バトルシップTVの時間だよぉ!」

司会らしきガール、いやレディが画面の中で喋る。

「今日もS+のガチマッチ、見ていきましょーーー!!」

うえっ、S+!?

まぁ、派手で見応えあるから、視聴率も上々だろう。

 

S+の出場選手達が、順に紹介されていく。

「まーずはこの方!最高速度を誇る雷の使徒!

〈雷帝〉リーナ!」

 

一方テレビのこちら側。

「リーナ相変わらず出てるなぁ」

と、ライちゃん。

「あーー、リーナ出たから、()()も出るかな?」

と、タクトくん。

 

リーナの使用武器はボールドマーカーネオ。

プラス……赤ザップ!?

え、ブキ二個装備ってありなの!?

 

「Sから二個装備出来るよ。俺もSになってからリッター二個担いで行ったなぁ……。リーナの場合、別のブキシリーズを平気で持っていけるから凄いんだよ」

タクトくん、その辺の事情も知ってるんだね。

 

続いての選手は、〈氷の狙撃手〉リコ。

リッターシリーズ二個持ち。

一時のタクトくんと一緒のブキだが、ギアが違う。

タクトくんはインク回復ガン積み。

対してリコはメインインク効率強化構成。

リーナといつもタッグ参戦していて、バトルシップTVでも常連なんだとか。

 

更に、バーニン。

ダイナモバーンド一つを持ってきている。

「兄貴、いつの間にS+!?」

ダイくんがものすごく驚いている。

どうやらお兄さんだったようだ。

バトルシップは初参戦。頑張れバーニン。

 

そしてグリーンチーム最後の一人は、何とタコゾネス。

〈双葉〉アミ。

わかばシューターを二つ。たぶんこの人バリア厨。

スペシャル増し増し戦法で行くようだ。

 

グリーンチームはこんな感じ。

ウデマエは、リーナとリコがカンスト寸前、バーニンは初参戦、アミは50程度。

 

続いて、ピンクチーム。

 

〈氷の狙撃手〉に対応する形で、出てきたチャージャー使い。

彼女もまた、タコゾネス。

〈双撃〉ワカナ。

スプラチャージャーのカスタムバージョンを二つ。

ワカメとベントー。

リッター二個持ちのリコには射程で負けるけど、彼女がピンクチームにいるのは理由があった。

 

(触手部分が黒い……アミとは違ってデラタコゾネスだ。それに射程の関係もあって、別チーム、かな……)

 

デラタコゾネス。タコゾネスの変異種または上位種で、通常個体のタコゾネスとは比べ物にならない機動力と命中率を誇る。

命中率の方をイカして、スナイパーになったんだろうか。

だとすると、アミは相当強いんじゃないか、そう思い至った。

 

更に、カーボンローラー使いのお兄さん。

二つ名が〈魔槌〉って、なんか厨二だ。

でも、ローラーでぶっ叩くのがハンマーに見えるって、あるあるだと思う。

 

続いて、〈掃除屋〉リード。

ブキはスイーパー系。ジェットスイーパーとデュアルスイーパーカスタム。

たまにリールガンも使うらしい。

 

最後に、〈旋風〉ラル。

シューター一の連射力を誇る、プロモデラーを金銀持ってきている。

パブロじゃないんだ。

 

 

そして、全ての選手が出揃い、バトル開始が告げられる。

 

 

----------------------------------------------------------------------------------------

 

S+。

ガチマッチにおけるウデマエ、その最高峰。

そして、その中でも10人。二つ名を持つ、人達がいる。

彼らを総称して、〈ガチ十傑〉。

ただし、現在、内一人がバトル引退を表明し、一月後にはバトルを辞める。

1ヶ月。

それが、新たなる時代の十傑が決まる期間。

そして、バトル引退を表明したのは、〈旋風〉ラル。

これは、チャンスだった。

名声を手にする、絶好の機会(チャンス)

 

----------------------------------------------------------------------------------------

 

 

S+の試合は、迫力があった。

強者達の集う場であるということ以上に、読めない展開もハラハラした。

勝ったのは、リーナのチームだった。

 

 

「……勝てる気がしない」

妹が、弱音を吐いた。

「勝ってみせる。」

あたしは、決意を固めた。

 

 




S+メンバー、特にリーナやリコ視点の話は書いてみたいです。
試合まるまるカット……ごめんなさい。
ウチのメンバーのウデマエは、
ライちゃんB+(ホコ苦手)
アヤちゃんC(エリアでしか上がらない)
ダイくんA-(上昇中)
タクトくんS-(ダブルリッターで無理してこないだ落ちた)
レヴィンくんA(スプラチャージャーに慣れれば上がる)
ベリーちゃんB-(ゆっくり上昇中)
という感じ。
フェル&シェリィは、まだガチマッチは解放されてません。
こっからどう化けるかな?


本作オリジナル設定として、『S以降のガチマッチにおけるブキ二重装備権限』と、『ウデマエS-』があります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

5.邂逅 S+

投稿が大幅に遅れて、すいませんでしたああぁぁぁ!!


翌日も、朝からバトルへと向かう。

今日はあちら……現実世界が日曜日だから、今日中に世界同士の結び目を探さねばならない。明日学校だし。

バトル会場を色々体験しつつ、探していくつもりだった。

 

----------------------------------------------------------------------------------------

モズク農園。

しばらくバトルでランクを上げ、4になったところでシェリィがブキをチャージャーに持ち替えた、その初戦。

(カラーパルスメンバー全員敵方(あっち)だーー!!)

あの団結力はバカにならない。

警戒していこうと覚悟を決める。

しかし、唯一の救いは、味方にリッターとボールドネオがいること。

チャージャー対決でタクトに当てれば、それだけチームの勝率が上がる。

それに索敵手段がポイントセンサー・スーパーセンサーの二つがある。

シェリィも、キルしやすくなるだろう。

 

でも、懸念はこちらがチャージャー二人なこと。

敵方(あっち)にも鈍重なダイナモがいるけど、塗り力が桁違いだ。

あたし(未だにわかば)とボールドの二人で、塗り進める。

そう、作戦を練った。

 

「そのカッコ……初心者ちゃんだねキミたち。」

「は、はい、初心者です……」

語尾がちーさいぞー、シェリィー。

 

「うん、よし。ウチらはサポートに回る。キル感覚、掴んで来い!」

って、え、ボールドさん!?あたしのことをばしばし叩いてくる。痛い痛い!

 

「あたしらのことは心配せんでええよー、何てったって、S+やから。タクトくんぶち抜いたるわ!」

え、え、S+!?

 

まさか……リーナ&リコ!?

 

そう気付いた瞬間、試合開始の号砲が鳴った。

 

 

----------------------------------------------------------------------------------------

side:タクト

 

やっべーーーーー!?

相手、〈雷帝〉リーナに〈氷の狙撃手〉リコ!?

一瞬で分かった。

あの距離でも分かる、S+独特の、覇気(オーラ)

 

悲しいけど、一撃で彼女達__特にリコ__をキル出来る自信がない。でも、あちらにはフェルとシェリィがいる。二人とも初心者だ。

ナワバトの動きを完全には理解出来ていないだろう……

 

そう考えた俺がバカだった。

 

 

----------------------------------------------------------------------------------------

side:ライ

ドギュン!!

という音は、味方のタクトくんでも、相手のリコでもない。

今さっきダイくんを撃ち抜いたのは、シェリィ。

そして現在、1対2。

さらに、フェルとリーナに張られたバリア。

完璧に不利な状況。

しかも、である。

(まずい、インク切れそう……雷神ステップかスパジャンで逃げたいけど無敵発動する前に殺られるよねこれ絶対)

 

密集する相手、リコとシェリィの警戒網。タクトくんは、しばらく来ない。だとすれば、この状況は____

 

と、そこまで考えた時。

 

トルネード着地予告マーカーが光った。

と、同時に、バリアが切れる。

 

(アヤちゃん!!)

 

 

試合開始30秒。あたしは、速度減衰が起こる中、アヤちゃんのトルネードに、二人を誘導する。

 

(殺れた!?)

 

いや、まだ早い。

リーナは確実に避けてるはず__

 

って違う!

 

あたしの身体が、爆砕した、嫌な感覚。

 

残ってるのは、フェルただ一人。

 

あたしは、犠牲者となった。

 

 

----------------------------------------------------------------------------------------

side:リーナ

やられたね。

上手いことトルネードに誘導されちゃった。

これで、あたしは1デス。

でも__

 

(正直、フェルがトルネードを避け切るとは思わなかった)

 

そして、バリア切れでライちゃんが目を閉じた一瞬のスキをついて、背後に回り込んでキル__

 

やるじゃん、フェル。

 

ただの初心者と、侮れなくなった。

 

 

----------------------------------------------------------------------------------------

side:ダイ

 

残り半分。

驚かざるを得ない事が起きた。

 

 

フェルの奴……

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!?

 

これは、あの〈雷帝〉リーナにだってなかなか出来る事じゃない。さっきはライちゃんとタクトとの二対一でも有利に立ち回っていた。

リッターの射程、タクトの癖、ライちゃんの動き方、ボールドの弾の飛び散り、わかばの弾道、自分の動き、全部計算済みなのか!?

だとしたら、相当不利だぞ、俺ら!

即死級の弾を撒き散らすダイナモに、正面から突っ込んでくるなんてバカなはずだった。

普通なら、相討ちだったんだ。

なのに、振りかぶって、飛び上がって……

足元を掬われた。

 

フェルの身のこなし、侮れない……!

 

----------------------------------------------------------------------------------------

side:シェリィ

バトルは、順調だった。

 

 

()調()()()()

 

 

リコとタクトが相討ち、リーナだってトルネードで1回殺られてる。あたしも何回かダイくんやライちゃんの接近を許してしまったけど……

 

 

優香お姉ちゃんは……フェルは、

 

リアルガチなバトル初心者なのに、動けてる。

 

 

 

 

思えば初戦の対レヴィンくんは放心してたからなしとしても、お姉ちゃんは初心者としては異常な程、デスしてない。

逃げてもいない。

 

異常だった。

 

異常すぎた。

 

 

だけど、それにも理由がある。

 

 

 

もともと、お姉ちゃんは動体視力がかなりいいらしかった。そして、異世界転移に伴う様々な戦闘や冒険を経て、あれだけの速度と視力を手に入れたのだろう。

そのスピードは、かの〈雷帝〉リーナに匹敵する。

そして現在、お姉ちゃんは一人突出していた。

復帰(リスポーン)地点目前。

すなわち……

 

 

 

 

 

リスキルだ。

 

 

 

 

 

----------------------------------------------------------------------------------------

side:アヤ

 

フェルの超絶対応力を尻目に、タクトくんが作ってくれた動線をすいすい泳ぐ。

そしてまたもや危機脱出。悪運強いのかなぁ、あたし。

 

 

 

 

 

 

その思考が命取りだった。

 

 

 

 

 

 

 

泳いだ先に、リーナがいた。

 

 

 

 

(ヤバっ!?逃げ__)

 

 

 

跳んで、撃って、逃げる。スプリンクラーなんて出す余裕は全く無い。

 

 

慌てて逃げて、気付いた。

 

 

 

 

 

リーナが追って来ない。

更に、

 

 

 

(リコとシェリィのチャージライトが消えた!?まさか、見逃してくれるの!?)

 

 

そう簡単に行くわけないけど、そこに縋らずにはいられない。

スペシャルが溜まったことで逸る心を抑えつつ、慎重に場所を選ぶ。

 

敵リス真ん前に、トルネード、発射。

 

 

嵐が巻き起こった。

 

 

----------------------------------------------------------------------------------------

side:タクト

 

一方、自陣復帰(リスポーン)地点に引きこもっていた俺は、フェルと、いつの間にかこちらに来ていたリーナの相手に手間取っていた。

何がヤバいかって?単純に速い。

それだけだが、こっちの攻撃は見切られて早々に回避されるし、かと言ってこっちが動けば速攻で殺られる。

そんなのが二人。

最悪とも言える。

唯一の救いは、中央を陣取るアヤ。

そして今しがた、ライちゃんもアヤの方に飛んでいった。

あの二人が、今回のバトルの鍵だ。

 

残すは30秒。

運を天に任せよう。

 

 

----------------------------------------------------------------------------------------

side:フェル

 

圧勝。

ライちゃんアヤちゃんの巻き返し作戦が頓挫したため、今までにない程の圧勝だった。

 

意図に気付いたシェリィが着地狩りを決め、ライちゃんを即刻復帰(リスポーン)送りにした上に、ほぼ時を同じくしてリコもアヤちゃんを撃破。

 

ダイくんにファイナルクリスタルダスト(バトル終了間際にトルネード。ホタルちゃん提唱)こそ決められたものの、30パーセント差という大差を付けて勝利した。

 

「いやー、まさかリスキルする余裕があるとはー、やるなフェルーーー!このこのーーー!」

 

などとライちゃんに弄られながら、次のバトル会場に向かった。

 

 




リーナは速度で翻弄するタイプ。
リコとシェリィは的確に狙撃するタイプ。
アヤちゃんは基本的にサポート。そして運がいい。
ライちゃんは特攻隊。

書きたいって言ったらオクト・エキスパンション!
スイッチないけど、実況見ながら書こうかな。
これから入れていく(予定)の2要素は、主に実況から取り出す予定であります!

なお、次回は一旦閑話を挟んでからにしたいと思いますので、イカ、よろしくーーー


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

閑話 花野の秘密

今回は閑話です。



キーン、コーン、カーン、コーン。

花野中学校の土曜日、一時間目終了のチャイムが鳴った。

「おせーな、優香の奴」

瀬戸大地が、俺に話しかけてきた。

「そだな、いつもはしっかり来るはずなのにな」

俺・高木悠人は応える。

そして、隣の席の女子・日野愛菜が呟く。

「あの二人の事だし、きっと今日も異世界転移に巻き込まれたんだよ」

と。

 

 

 

花野町には、石造の闘技場や教会、ちょっと大きめの花壇のある公園、商店街、小中一貫校(花野小学校と花野中学校の事だ)などがある。

そして、エルフをはじめとした亜人達や、ゲームやアニメから出てきたような人達などがいる。

今も机の上で、頭のてっぺんに大きな白い花を咲かせた赤い生き物……赤ピクミンが、鉛筆を筆箱からずりずり引き出している。

見てると和む……ってそうじゃねぇ!

今はピクミンを例に出したが、他にもいろんな世界から、人や物が集まって来るのだ。

人呼んで__異世界と繋がる町・花野町。

そして、その繋がりの皮切りになるのは、

 

 

 

 

大抵の場合、花園優香・真紀姉妹なのだ。

 

 

 

----------------------------------------------------------------------------------------

 

世界が繋がり始めたのは、俺と優香が2年で、真紀が花野中に入ってから3か月が経った頃だった。

て言っても、一年も経ってないけど。

そしてその年の夏休みに、優香と真紀は精神年齢がいっこ上がった。

いわゆる浦島太郎状態って奴だな。

何があったかは、九月から学校の昼の放送で流された『自作動画』が教えてくれた。

旅と戦いの日々だったようで、そのせいか今年のスポーツテストでは、二人とも女子でぶっちぎりのトップ。運動会でも大活躍だった。

そして、忘れもしない、九月二十日。

花野町の教会に、人が倒れていた。

様子を見ようとして、驚いた。

尖った耳が見えた。

(嘘だろ、エルフ!?しかも剣士って__いや、この重装備、まさかガーディアン!?)

そう。そのエルフの男性は、ガッチガチの重装備で、腰には剣。

更に隣に、盾も置いてあった。国の一兵士かは解らんが、誰かまたは何かを守る事を生業にしていたとは容易に想像出来る。

更に、教会の一室は、時空が歪んでいる。

そこを通して、RPG的なファンタジーワールドからここに来ても違和感はさらさらなかった。

とりあえず、声をかけた。

「大丈夫かー?」

答えは、返ってきた。

「腹、減った……何かくれ……」

と。

 

 

それが、俺こと高木悠人と、異世界にある王国アラハギーロの近衛兵クロウリーの、出会いだった。

 

 

----------------------------------------------------------------------------------------

あれから早くも九ヶ月くらい経っている。

 

様々な世界から人やもの、技術や魔法(!)が集まるこの町は、様々な国籍の人が訪れる必見の街となっている。

町の変化は異常だった。そして人の変化も。

クロウリーがピクミンを見た時はものすごくびっくりしてたし、町中でマリオがきょろきょろしてたりと珍しい姿も見れた。

勿論自分達にも変化は訪れ、同中の何人か__その殆どが優香クラスの面々だったのは必然だろう__が魔法を習得。

更にマンガやラノベと、とんでもない世界線まで繋がり出した。

具体的には……もう色々ありすぎてわかんねーくらい。

六子ニートとか、美少女ゲーマー(ちなみに、ウデマエはSだった)とか。

 

 

それはそうとして、今回の問題に目を向ける。

優香達の今回の転移先は、予測可能だ。

なぜなら、最近それしかやってないから。

すなわち、スプラトゥーン。

もっと言うと、その主となる街・ハイカラシティ。

俺は学校から帰り、お昼を食べ、宿題が終わったところでスプラトゥーンを起動した。

 

 

結局、優香ことフェル及び真紀ことシェリィと会えたのは、日曜日のことだった。

でもそのバトルは、始めから意外すぎた。

 




優香達の異世界転移慣れは、あの環境あってこそです。
悠人や愛奈も、異世界転移経験者です。
後、書きながら気付いた。
超絶フラグ爆誕!
でも『運命の光』の方まだ終わらなさそう……てか始まったばっかなんだよなー。
進めねば……


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

6.邂逅 世界を超えて 前編

今回は文字数少ないです。



あれから、しばらくポイント稼ぎに明け暮れ、現在14時30分。

『この試合に勝てば念願のパブロを手に入れられる』という所まで来た。同時に始めたはずなのに、あたしと妹とはランクが2も違ったけど。無論、あたしの方が上だ。理由は、たぶんブキの差。

 

 

ナワバリバトル第一ロビー、控室A-2。

昼からタクトとライちゃんがガチマッチに行ってしまった為、あたし、シェリィ、ダイくん、アヤちゃん、フタバ(デュアルスイーパーカスタム使い)、ルナ(ノブァブラスターネオ使い)と共に、最後の2人を待っている。

さっきまではルナのフレンドだという人達が一緒にやってくれたのだが、他の人から呼び出しがかかったらしく、前回を最後に部屋から退出していた。

 

「遅い」

一番最初にしびれを切らしたのはフタバだった。

もうかれこれ2分待っている。

早く塗りたいらしい。

 

あたしは、イカ型のスマホをズボンのポケットから取り出し、フレンドリストを呼び出していた。

リストには、今まで対戦したほとんどの人の名前が載っている。

《カラーパルス》の面々は勿論のこと、レヴィン、ベリー、フタバ、ルナ、リーナ、リコ、その他諸々。

しかし、『こちら』に来て以来、まだ戦ってない、既存のフレンドが2人いる。

リストの下。

シグマ、そしてラヴィー。

『あちら』、つまりあたし達にとっての帰るべき場所で、グループ通話機能を使いながらタッグマッチしたのも1度や2度じゃない。

中学から帰る時、今日はナワバトやろう、とか語ったものだ。

 

シグマの正体は、あたしのクラスの男子、高木悠人。

ラヴィーは、近所の商店街に家を構える、日野愛奈。

どちらも、花園優香、花園真紀双方の、親友だ。

 

フレンドリストの、2人の欄に光るのは、「ナワバリバトル第一ロビー認証完了」の文字。

ここからA-2の部屋に来るかは分からないけど……

来たら来たで、全力で相手する。

こちら側から出せる、全力で。

 

うぃん、と、自動ドアが開いた。

2人のプレイヤーが、中に入って来る。

その佇まい、その装備は、間違いなかった。

シグマとラヴィーだった。

 

「ねぇ……フェル、あの人、なんて呼べばいい?」

 

フタバが聞いてきた。あの人とはシグマの事だ。

シグマもラヴィーも、厳密にはカタカナ表記ではない。

シグマは「Σ」だし、ラヴィーは、「Lovie」だ。

フェルとシェリィはカタカナだけど。

 

名前を呼ぶことも、連携の一つになる。

だからこそ、プレイヤーネームというのは大事だ。

読み方をフタバ、ルナ、アヤちゃんダイくんに伝えると、

「シグマ、そしてラヴィーか。よろしく!」

代表してダイくんが言った。

コクリと、シグマとラヴィーは頷いた。

一言も喋らないのを訝しんでるような、納得してなさそうな面持ちで、ルナが、よろしくねー、と言って、転送装置へと歩んでいった。

 

 




バトルはまた次回。

イカスツリーの中のロビー
ナワバリバトル編
第一から第三まであり、8人入りの控室はA-1,A-2と続いてA-5からB-1と続き、E-5まであるので、5×5×3×8=600人が控室で同時に待てる最大数となる。ナワバリバトルロビーは、結構な確率で満杯近い。試合中であれば他の組が待てるため、2分待つことは普通はしない。
フタバがしびれを切らしたのもそれが理由である。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

7.邂逅 世界を超えて 後編

side:Σ/悠人

 

マッチングリストは、ほぼ一瞬で一杯になった。

フェルとシェリィのランクは、いつもよりも少ない。

っつーか一桁。「ゑっ」ってつい言ってしまった。

後のメンバーは、「Lovie」こと愛奈と、

「アヤ」、「ダイ」、「ルナ」、「フタバ」だ。

どんなブキで来るんだろうかとワクワクしていた。

この3分間が、衝撃の3分間になるとも知らずに。

 

----------------------------------------------------------------------------------------

うわっ、全コンビ別れた!

と、フェル/優香は思った。

フェルと同じチームなのは、ルナ、ダイくん、シグマ。

相手は、シェリィ、フタバ、アヤちゃん、ラヴィー。

コンビというのは、フェル&シェリィの姉妹コンビ、ルナ&フタバのフレンドコンビ(合流回数最多とは本人談だ)、ダイくん&アヤちゃんのカラーパルスコンビ、シグマ&ラヴィーの花野町コンビ。

真反対の回転台を見据える妹も、同じことを考えて居るだろう。

今回のバトルステージは、キンメダイ美術館だ。

 

 

キンメダイ美術館。

「回転台」というギミックを備えた、どちらかというと新しめのステージだ。

この、「回転台」をイカにして上手く使うか、が大事になる。

今回持ってきたのは、わかばではない。

赤ザップことN-ZAP89。

有り体に言えばアヤちゃんと同じブキだ。

 

そこからは、怒涛の如く思考と指示が溢れ出す。

スプリンクラーの置き場所は、考えどころだ。

それとトルネードの着地点も。

ルナとシェリィは同じサブスペ、つまりスプラッシュボムとラッシュ。

ダイくんは言わずもがなダイナモテスラ。

ラヴィーは……まさかのバケツ。クイックボムとメインのコンボに注意。スペシャルはトルネード。

シグマは、スペシャル回転率重視のバレルスピナーリミックス、通称バレリミ。スプリンクラー置き場は、彼とは似ない方が良い。

フタバはデュアルスイーパーカスタム、ビーコンとメガホン。

シグマもメガホン持ち。ビーコンは優先的に破壊すること。シェリィのチャージャーの射程に注意……

ということを、試合開始前30秒で確認。

 

30秒。

長いようで短い、試合開始前の待機時間。

『あっち』では対面が合計10秒ぐらいだから、それよりましだが。

 

Ready……

 

GO!!

 

 

開戦の号砲が鳴り響いた。

「シグマに合わせて!ダイくん高台で牽制!ルナ、あたしと突撃!」

「フタバ、ビーコン置きまくって。ラヴィーは……まあいいや。アヤちゃん塗りまくって、トルネード大事。キルはあたしが取る。」

 

 

指示役はフェル/優香とシェリィ/真紀。

フタバもルナも、初戦で二人の実力を痛いほどわかっていたため、素直に指示に従う。

「突撃!ボムラーーーーーッシュ!!!」

カラカラカラン、とボムの転がる音が鳴る。

ルナだ。

「避ける……ってシグマ!?」

ダイがトルネードの着地マーカーを見て潜伏、回避行動を取る。シグマはおもむろにメガホンレーザーを取り出す。

(合わせろってのはそういうことか、アイツマイペース過ぎだろ)

ジト目でマップを取り出し相手側にトルネードを叩き込むダイ。

その直後、大音響が響き渡る。シグマのメガホンレーザーだ。

ばちゅん、と相手の高台でインクが飛んだ。

シェリィだった。

(うわっ、自分犠牲にしてシェリィと痛み分けかよ、ナイスすぎ!)

その隙にフェルが敵陣に侵入していた。

 

 

悠人は、驚愕していた。

(なんだよあの動き)

その理由は単純。

画面内に映るフェルが、本来ならば両手持ちのシューターを片手で持ち、真左にいたラヴィーを撃ち抜いたからだ。他にも、ダイがバク宙スーパージャンプでフタバをキルしてたり、アヤが壁ジャンプしてたり。

ラグかと思うが処理速度は全く落ちてない。

つまり……

 

 

ここのテレビを通じて、ガチにハイカラシティと繫がっちゃったとか……

 

 

あまりよくない想像をしてしまった。

戦局が、拮抗し始めていた。

 

 

 

 

 

スペシャルが応酬し出す。

塗りでは差は付かないが、メガホンレーザーやボムラッシュが移動を妨げ、そこにトルネードを撃ち込んでいく。

地道な攻防の末、ついに牽制役のシェリィが負けた。

トルネード内からの奇襲。

フェルだった。

しかし同時に、ダイとシグマがやられていた。

射程で優位に立つフタバがフェルに攻撃を重ねるが、そこに転がるボムに気づけない。

ルナだ。

フェルがリスキルに走りだし、ラヴィーも敵陣へと走る。

そうして。

混ざり合い、混沌とした戦場に、笛の音が鳴った。

 

 

3分間が、終わった。

 

 

直後、四つの竜巻が、美術館を揺らした。

 

 

 

 

 

 

「勝った!」

と、フェル。

 

 

 

 

「負けたー……」

と、シェリィ。

 

 

 

差は、たったの0.1%だった。

 

 

 

 

 

シグマとラヴィーが物言わずロビーに出たのに合わせて、全員が第一ロビーへと向かった。

手を振る2人に、またねー、と返して、

6人はそのまま、ロビーで語り続けていた。

 

 

 

 

やがて、タクトとライがやって来る。

 

「ただいま、Sに上がったよ」

タクトからの、嬉しい報告。

 

「おめでとう!」

 

全員が祝福した。

 

 

 

そんな中、フェルとシェリィは、一つの決意を固めていた。

 

 

 

 

全てを語る決意を。

 




何か急転直下ですいません……


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

8.フェルとシェリィ

リバリーアパート、22号室。

「んで、話って何だ?」

 

 

フェルが「拠点で話したいことがある」と言ったため、ここに移動し、タクトが、その一言を絞り出した。

 

 

「簡潔に言う。

あたし達は、()()()()()()()()()()()。」

 

 

「は?この世界?どーゆーことだそりゃあ」

 

疑問を投げかけたのはダイだった。

 

「ダイくん、考えたことなかったの!?『もし海面上昇がなかったら』って!そしたらあたし達たぶん居ないよ!?」

 

 

アヤの発言でライとタクト、ダイも分かったようだ。

 

 

 

並行世界(パラレルワールド)

 

 

 

「世界は選択により無数に分かれる」という理論がある。

そうして新たな世界として発展したいくつかの場所へと、花野町は繋がっている。

そして昨日、新たにハイカラシティへと繋がった。

しかしフェル/優香とシェリィ/真紀は中学生。

「学校」という名の事情により、彼女たちは帰るべき場所へと帰らねばならない。

そういう事もあって、二人は「時空の歪み」とも呼ぶべき場所を探していたのだ。

 

全ては、故郷へと帰る為に。

 

 

2時間後、夜九時。

それは、ハイカラシティ裏路地のシャッター店舗近くで見つかった。

そして、その時が、別れの時だ。

 

 

「また来てくれる?」

 

 

アヤが聞いてきた。

 

 

「うん、来れるなら。」

 

フェルは応えた。

 

 

 

裏路地のシャッター店舗で、フェルとシェリィは渦に吸い込まれるようにして、消えていった。

 

 

「またね」

 

 

カラーパルスの面々は、手を振って別れを惜しんだ。

 

 

 

 

 

----------------------------------------------------------------------------------------

side:ライ

 

 

「行っちゃったね、フェルとシェリィ」

「そだな」

「あ"ーー寂しい!会えるって分かってても離れたくない!」

「だよなーーー、あーーー、あの二人の本気見たかった、特にフェル」

 

上から、あたし、ダイくん、アヤちゃん、タクト。

リバリーアパートへの帰り道のことだ。

また会えると分かっていても、こうして引き離されるのは、やっぱり嫌だった。

 

だから、翌朝、早めに起きたあたし達は、大急ぎで裏路地の、シャッター店舗へと行った。

 

フェル。シェリィ。待ってて。

 

 

すぐ行くから。

 

あたし達は。

 

 

だから____

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこからの記憶は十分くらい曖昧だった。

 

 

 

 

「大丈夫か?」

 

 

 

 

声が、聞こえた。

 

 

 

 

 

男の子。

声変わり中らしい声。

こちらに、少し頼もしい手が差し出される。

握り返して、重大なことに気づいた。

 

 

 

 

 

 

朝ごはん、食べてない。

 

 

 

 

 

あたしは、固まった。

お腹の音を鳴らしながら。

 

 

 




ライちゃんが目覚めたのはどこなのか、声の主は誰なのか……
それはまた来週。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

9.花野中学校

思い出しながら書くって大変です。
遅れて申し訳ありませんでした。



「校長先生ー、すいませーーん」

校長室前。

ここに来たのは、優香も真紀も初めてではない。

 

何度、異世界関連でここに来たのか分からない。

 

共にいるのは、チーム《カラーパルス》の面々だった。

 

 

-----------------------------------------------------------------------------

少し、時は遡る。

ほぼ一番乗りで教室へと入った花園優香。

しかし、この日は先客がいた。

 

高木悠人と、ライちゃん。

 

「……ライちゃん?」

 

聞いてきっちり2秒後。

 

「……あんた誰よ」

 

逆に質問された。

そして、何故自分のことを知っているのかとも。

それには答えられるが、メンバー全員の前で話した方が良かろうと判断し、ライちゃんの「カモン」シグナルでダイくん、タクト、アヤちゃんの3人を集めてもらった。

 

そして、優香は言った。

 

「あたしは、花園優香。

『あっち』では、フェルだったけどね。

ついでに言っとくと、シェリィはガチであたしの妹。

こっちだと花園真紀。」

 

「フェルちゃーーーん!!!!」

 

ライちゃんが思いっきり抱きついてきた。

痛い。特に左腰。長いことブキ持ってたからか握力凄いことになってる。

「ちょ、ちょま、こっちじゃ『ゆうちゃん』で頼むよライちゃん!」

 

「あいだがっだよーーーー」

 

ライちゃん、涙声で変な風になってる。

ハンカチ後で渡そ。

 

「んで、優香」

後ろから、声。

悠人だ。

「レポート。書いてこい。どっちにしろ政府からお達しがくるしな。あと、校長先生ん所行ってこい。今すぐ。こいつらいつでもここに入れるようにな」

レポート……日記じゃダメなのかなぁ。

などと考えながら、とりあえず、《カラーパルス》の面々を連れて、校長室へと向かった。

 

 

----------------------------------------------------------------------------------------

門田校長先生からは、「またお前か」みたいな顔で見られた。

全く手続きに忙殺されるこちらの身にもなってみろ、と言わんばかりに、ため息が漏れる。

残念だが、こちらだって好きで異世界に行ってるわけではない。

行かされていたり、突発的事故だったりもする。

今回は事故に近い。

それにたった2日しかハイカラシティを体験出来ていないのだ。

まともなレポート、今回は期待しないでください、町役場のおじさん……。

何とか明日中に特別通学証発行を約束させ、明後日水曜日の朝礼で全校発表することになった。

さて、レポートとPV作りだ。

忙しい。

ほぼ月一でこういうことが起こるから、もう慣れている。

 

「失礼しましたーー」

 

 

さて、書類作成を頑張らねば。

 

 

 

 

 

 

教室に帰ると、担任の雪華先生が、待て、と手で制してきた。

さらに口パクで、「ブキは持ってきてるの?」と言ってきた。

カチャリと音がしたと思ったら、ケースからリッターを出すタクト君の姿。持ってきてたんだ……

更に、指示出して、一発、と。

構えて、引き金に指が触れた瞬間、レーザーポインター機能とチャージ機能が働いた。きゅうううっ、と音が鳴り、インクが圧縮される。

ピリッ。

チャージ完了。

それを合図に、「Splattrack」が流れ出す。

 

なるほど、どこかから情報を得た雪華先生、特別生のプレゼン練習にこの場を貸したということらしい。

教室の壁は濡れない。絶妙な距離感で解き放たれたインク弾が着弾し、直後に四匹のイカがその中を泳いでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




異世界移動は花野特有の現象で、政府も町役場も一部マニアも色々知りたいのでしょう。
そのために花園姉妹はレポート提出を余儀なくされているのです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。