天華百剣 斬 短編集まとめ byわたち教徒 (給料シーフ)
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天国のような檻の中で

今回はヤンデレ物。
ヤンデレ物ゆえ言葉使いが汚く感じることもあるでしょうが平にご容赦を。




「兄様、今日もいっぱいなでなでしてぇ」

 

「あ、ああ。分かったよ、鬼丸」

 

「ねぇ、たいちょーくんは今わたしとお話してたんだけど。

 なにしゃしゃり出て来てんの?」

 

「あ、おばちゃん居たの?気付かなかった。

 それより兄様ぁ早くぅ~」

 

「あ゛あ゛!?」

 

「お、鬼切。大丈夫だ、話を中断したりなんかしないさっ」

 

「もぅ、お姉ちゃんって呼んでって言ってるじゃない~、

子供は無視してお姉ちゃんと大人なお話をしちゃおっか♪」

 

「は...ハハハハ....。はぁ...っ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………初めはとても幸せだった。

 

天華百剣 斬というゲームを知っているだろうか?

いや、知らなくてもいい。そんなゲームがあることだけ理解してくれれば。

気が付いた時には俺はそのゲームの世界に取り込まれていた。

 

 

俺を慕う可愛い巫剣達、実質ハーレムだ。俺だって男だ、お気に入りだったキャラクター達に慕われ、お手入れという名のマッサージをせがまれたり日溜まりのような笑顔を見せられれば鼻の下も伸びるってもんだ。

男なら誰だってそうなるに決まってる。

 

勿論、天華百剣の世界観上たまに禍憑が出るときもあったし最初に禍憑を見たときなんざへっぴり腰でガクブルしちまってたよ。

まぁ、こっちの事情を知ってる巫剣達が俺を護りながら戦ってくれるからなんだかんだ俺は禍憑相手に刀を振るうことは一度もなかったし、まがりなりにも俺はサービス開始からやっていたこともあり、手持ちの巫剣は此方に来る前に手に入れた大典太含め全員好感度50のレベル80。刀装だって充実してるから巫剣の一振りで禍憑も即死だったが。

 

たまの禍憑だけは慣れないがまるで天国みたいな毎日にずっとここに居れればいいと思っていたりすらした。.....愚かなことに。

 

 

きっかけは....、そう、....そうだ。千人切りと話しをしていた時にたまたま一期一振が来て抱き付いてきた時だった。あの時に気付いていればこの世界から脱出出来ていたかも知れない。

....話を戻そう。その時の目が.....千人切の目がね、こう、死んでいたんだよ。ハイライトが消えてるって言えば分かりやすいか?

そんな目を一瞬だけしたんだ。そのあとすぐに目が戻ってにっこりと大主!って笑いかけてきたからその時は見間違えたのかと思ったんだ。

 

 

それからもそんなことがたまに起きた。だけど俺の巫剣達がそんなことあるわけ無いって信じてたんだ。....いや目を逸らしていただけか。

俺の天国でここは俺の為の世界だなんて本気で考えて目を逸らしていたんだな。

 

決定的になったのは珍しく本部から来た丙子椒林剣が俺にそろそろ結婚とかしないのかとか言い出した時だ。

結婚なんか考えたこともなかったと言う俺に、これだけ美少女に囲まれてるんだからと言って周りの巫剣達を見たアイツの口は....いや、まさか丙子椒林剣だって意図したわけじゃないだろう、さすがに八つ当たりだなこれは。

 

まぁ、それからが酷かった。

 

巫剣同士の口喧嘩は当たり前、酷いときは刀に手を掛ける所までいった。

その頃になるとどうしようもない馬鹿で底抜けに間抜けな俺でも気が付いた。

あ、これヤンデレがヤンデレしてるって。

いやすまない。当時は本当にそんな間抜けな感想を持ってしまったんだ。ヤンデレがヤンデレしてるとかいう感想を。

 

それからすぐに必死になって元の世界に帰る方法を探したよ。本当、今さら過ぎるよな。うん、本当に.....。

巫剣達が俺をこっちの世界に連れ込んだなら俺が元の世界に戻る方法だってあるはずだと閃いて、さすがに巫剣達には聞けなかったからゲーム内に好感度システムが無くてそういったことに詳しそうな八宵に聞いた。

そしたら、どうやらビンゴだった。コラボイベント時にあった黄金の禍要柱特異種。

八宵はあれを制御して俺たちの世界に繋げる装置を巫剣達に懇願され作ったらしい。

それを聞いた俺は歓喜した、これで帰れるって。

だが現実は非情だった。元の世界に帰るには行くときに使った禍要柱本体もしくは欠片が必要なのだが数日前に巫剣達が欠片すら残さずに壊したとのこと。

どうやら装置で操作したあと一ヶ月間は禍要柱が不安定な状態で危険だったから壊せなかったが、数日前に状態が安定して巫剣達が破壊したらしい。

当時のコラボイベントをクリアした巫剣達は欠片でも残っていれば別の禍要柱特異種を使って帰れてしまうことを知っていたのだ。

故に欠片たりとも残さぬように破壊した。

 

 

帰れないことを知った俺は困惑する八宵に反応すら出来ずに自室に戻った。

それから....「何を書いているんですか?隊長さん」

 

「ひっ、き、菊一文字っ」

 

「やだなぁ、僕のことは菊って呼んで下さいって言ったじゃないですか」

 

「あ、ああ、そうだな、すまない菊。これは俺の日記だ、見ても面白くもないし俺としても恥ずかしいから見られたくないな」

 

「ふふっ、ならそういうことにしておきましょうか。どうせ、もう、隊長さんは逃げられないんですから....」

 

「にっ....逃げるって何からだ?お前らが居るんだから怖くても護って貰うさ」

 

「嬉しいことを言ってくれますね。僕が貴方を傷付ける全てから護ってあげますよ、隊長さん。だから、ねぇ」

 

「ひっ....」

 

「そろそろ鞘入と銘入、お願いできないでしょうか?」

 

じわじわとこちらに寄ってくる菊一文字。その頬は赤く上気しその目は金色なのに鉛のように光が伴っておらずーーーー。

 

 

 

 

 

 

この日記を見た者へ。

俺はもう無理だが、君にはまだ時間が残されているかもしれない。

方法は記した。

 

 

 

ーーー早く逃げろーーーーハヤクニゲローーー

 

 

 

 




ゲーム内に取り込まれるヤンデレ物ってなんでお船のゲームにしかないんでしょうね?

ちなみにわたしはみつよさん持ってないです。
いいのです。私にはわたち様がいますから....(遠い目)



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百合の花を煙草で燃やす彼女は

今回もヤンデレもの。
2話目にして保険が両方とも外れる事態に。



深夜になり廊下の灯りが消灯した時刻、私は一人明治館の外に出る。

向かうのは町の端の方にポツンとある公園。

いや、この時代に遊具なんてものは無いから広場といった方が正しいかもしれない。

 

ここ最近寝不足なせいか目にクマが出来ているのがわかる。

広場に着いた私はこっちに来てから吸うようになった煙草に火を付け少し多めに煙を吸い煙草の火をじーっと見つめる。

煙草は良い。眠気とストレスだらけの荒んだ心に安らぎを与える。

....最近はいつもこうだ。夜は部屋に居たくない、あの極悪なレズどもが侵入してくるから。

 

 

私が天華百剣 斬に嵌まったのは冬馬という主人公の親友ポジションのキャラクターの画像を見たからだ。

当時そのキャラクターのイベント露出は少なかったが図鑑で何度も冬馬の出る所を再生し、次のイベントは冬馬が出るはず、次こそは、この次こそはとイベントをやり続けていたらいつの間にか極級すらも余裕でクリアできるレベルに達していた。

wiki内でも冬馬、次こそは冬馬を。と書き込んでいたらいつの間にか冬馬のストーカーとか、女なのにホモのガチな奴というあだ名が付けられるまでになった。

 

 

ゲーム自体も女性キャラしかいないとはいえなんだかんだ楽しかったのもあった。私は女性キャラを愛でる趣味は無いが、ゲーム自体は面白いからキャラクターに興味が無くても続けられたし最後まで巫剣に興味を持つことはなかった。

あれだ、男の人が男キャラを使うときにそのキャラを愛でたりはしないでしょう?ただキャラが居るから使う。私も同じような感覚で使っていた。

 

よく使うのは小夜左文字と獅子王、それに水神切兼光だ。

小夜左文字は私が女子高生なこともあって見た目が似ているから。

感覚的にはキャラクタークリエイト出来るゲームで自分に似せて作る感じだ。

こう、自分がゲームの中で動いているような気分になるのだ。

後の二人はただ単純に強いから。

同性のゲームキャラを使う理由なんて誰だってそんなものだと思う。

 

 

.....なんの話だったっけ?ああそうそう、それでその日も冬馬のイベントを見ながら寝落ちしちゃったんだけど、気付いたら天華百剣 斬の世界に居たんだ。

最初は冬馬に会えると喜んだりもしたんだけど、よくよく考えたら陸軍が出動するレベルにでもならないと会えないことに気付いた。

その時に足手纏いにならないように必死で剣術の練習や体力作りも頑張った。そのお陰か最近だと益荒男相手に時間を稼ぐことだって出来るようになってきた。大振りとか回避よゆー。

その頃は巫剣達も別に普通な感じだったんだ。

私的にも女友達って感じだった。

 

獅子ちゃんはほわほわで向日葵みたいな笑顔のどこかズレた感じのおっとりさんって感じで、小夜ちゃんは、....あれはクール系だね。

スイは何て言うか、うん、冗談が上手い盛り上げ役って感じ。

普通にみんなで明治館の一席使って注文したおっきいわたちパイ食べながら中身の無いお喋りをする、現実の日常となんら変わらない光景。

世界が変わっても女子が数人集まればどこも変わらないんだなぁってそんな気持ちになったね。

 

 

いやぁ、スイの話の途中で獅子ちゃんがうとうとしだしてそれを小夜ちゃんが「獅子....寝るな」って首に手刀入れるの。本人は突っ込みのつもりだったみたいだけど、それで獅子ちゃん意識落ちちゃったし、話をしていたスイはスイで「ちょ、まだオチ言ってないですよ~。獅子さーん!?」なんて必死に起こそうとしてさ。

時間差で手を手刀のままにして固まっていた小夜ちゃんが復讐帳取り出して獅子ちゃんの名前消してたのを見たときには思わず笑っちゃった。

 

 

お手入れの時だって、巫剣自体にさほど興味が無かったから最初にこちらに来たときにマッサージのことだと知った時は驚いた。

刀ぽんぽんしてるのってあれ、マッサージの比喩表現だったのかーって感じ。

まぁ、高校でも悪ふざけの入った女同士でのボディタッチみたいなのは割とよくあったし、お手入れも最初に巫剣達が艶声をあげたときにはびっくりしたけど、だんだん慣れてきて私も『お客様、揉み加減は如何でしょうか?』とか『お、ここか?ここがエエのか?』とか馬鹿言ながらやっていた。

 

 

本当に他愛ない日常って感じ、楽しかった。

 

きっかけはこっちに来て3ヵ月くらいたった時、獅子ちゃんが赤い顔で着替え中だった私の部屋に入って来たんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたの?獅子ちゃん、こんな時間に。ってかちょっと着替えちゃうから待ってて?」

 

真っ赤な顔の獅子ちゃんは私の言葉に耳も向けずに抱き付くと、胸に顔を埋めてスンスンと匂いを嗅いできた。

 

「主の匂いだぁ...えへへ~....」

 

「こらぁ、そこは獅子ちゃんの寝床じゃないぞ~?」

 

「主はやっぱり胸が大きいなぁ...。ふかふかぁ....」

 

「やんっ、こら~!怒るよ、獅子ちゃん。もぅ~」

 

 

その時は女友達の間で良くある行き過ぎたボディタッチだと思った。

だけどなんだか獅子ちゃんの胸を触る手付きがいやらしくなってきて、その手がブラをずらそうとした時。

 

「獅子、抜け駆けは良くない....」

 

「がふぅっ!?」

 

小夜ちゃんが獅子ちゃんの首に手刀を入れて気絶させた。

 

「小夜ちゃん!?」

 

「獅子が迷惑掛けた。....じゃ、おやすみ」

 

「あ、ちょっ」

 

小夜ちゃんが獅子ちゃんを片手で抱えてそそくさと帰っていってしまった。

 

「一体なんだったの....?ってか、抜け駆け?」

 

 

 

なにがなんだかさっぱりだった私は、まぁ、大分楽観的な性格なのもあったのだろう。

その日は、まぁ明日になれば分かるだろうなんて考え、そのまま眠りについた。

 

そして朝、開店前の明治館でいつもの3人と朝食をとった時、私は事の厄介さを知ることになる。

 

 

 

 

 

「へ....?今なんて?」

 

「だから、ここにいる巫剣達はみんな貴女の事を好きなんです、恋愛対象的な意味で。もちろんスイも貴女の本妻の座、狙ってますよぉ?」

 

「こっちに来てから鞘入もご無沙汰....私も欲求不満ぎみ....。獅子が暴走したのもそれが原因....」

 

「あうう~、すみませんでした.....。」

 

顔を真っ赤にして謝る獅子ちゃんに反応する余裕すらない。

『鞘入』、一時期wiki内で住民達がはしゃいでいた時があったから巫剣自体に興味が無い私でも、それが原作内でどういう扱われ方をしていたかは分かる。

どうやら、私はゲーム内で好感度35超えだった子達とは鞘入を定期的に行っていたらしく、それが最近はご無沙汰だった為みんな欲求不満になっているらしい。

ってか私は女同士で乳繰り合う趣味もないしそもそもまだ経験なんか無い。

衝撃の事実に辺りをキョロキョロと見回すと六道開聖周回に便利と知って育てた三ツ鱗と目が合う。

三ツ鱗は頬を上気させ潤んだ瞳でこちらを見つめていた。慌てて私は視線を外す。

え、ってか私、あんな幼女とも鞘入したことになってるの!?

 

「む、無理!流石に無理だって!」

 

「鞘入しないといずれ他の巫剣達も獅子みたいなことになるかも....」

 

「あうっ....しゅみませんでした」

 

「スイはまだ我慢できるけど、さすがに今後ずっとは自信無いですね~....」

 

「いやだって女同士とか無理でしょ!」

 

「スイは貴女の子供、3人は欲しいです!そして赤い屋根の一軒家で幸せな家庭をーー」

 

「そもそも巫剣は出産不可....」

 

「いや、巫剣関係無く女同士で子供は出来ないから!?」

 

「獅子はこの先我慢できる...?」

 

「む、難しいかもです...」

 

「何言われても無理なのは無理だから!私はそっちの趣味ないからっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後くらいから悪夢のような日々が始まった。

 

夜這いやお風呂時を狙ってくるのは当たり前、テラスで軽くうたた寝なんかすれば起きたときにどんなことになってるか想像もつかない。

人混みの少ない場所を歩こうものならスラムばりの治安の悪さを体で実感することになるだろう。

 

お手入れ後にそのまま押し倒されたこともあったが何とか逃げ切れた。

あのときほど禍憑用に体を鍛えたことに感謝した日はないと思う。

最近はお手入れで指一本たりとも動かないくらいにしてから部屋を出るようにしてるから危険はないが。

 

明治館で唯一安全なのは七香と八宵くらいだ。あの二人には本当に感謝している。

七香は相談役として精神安定に欠かせない人だし、八宵の造った対巫剣用兵装『獅子改』がなければ暴走した獅子ちゃんから逃げる手立ては無かったと思う。

本当に感謝してもしきれない。

二人がいなかったら精神面と体力面の両方でボロボロになっていた私は悪夢が始まった日からそう遠くない日に補食されていただろう。

今度人気茶屋の限定ぜんざいをご馳走してあげよう。

そして3人で....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

......辺りから欲情した獣の気配がするな。

 

「出てきな、居るんでしょう?小夜ちゃん」

 

「気付かれてた、流石....」

 

小夜ちゃんが一際濃い闇の中から現れる。流石に学習したのか体操服では来なかったらしい。

赤い瞳に紅く上気した頬、なるべく息を殺してはいたみたいだが発情した獣特有の息遣いを殺しきれていない。

 

「今日こそは鞘入をさせてもらう....」

 

「生憎鞘入をする予定は私にはなくてね。私が捧げるのは冬馬一人って決めてるんだ」

 

「会ったことないくせに....。最近は禍憑も少数しか沸かない、これからも会えない....」

 

「いつか会えるさ」

 

「そう、....ならその前にあなたは私のものだって体に刻み込んであげる」

 

「小夜ちゃんには無理さ、これからもずっとな!」

 

 

 

駆け出す二つの影、小夜ちゃんを倒して私は生き残ってみせる。

そして冬馬に会うんだ。

私の戦いはまだ始まったばかりだ!

 

 




どうしてこうなった。
ヤンデレものに見せかけたほのぼのハーレムものを書こうとしたらバトル漫画になっていた、コレガワカラナイ。

読む分には1話5000字でも少ないと思ってしまうのに書くとなると1000字すらキツい。ハーメルンで書き物をしている人達の凄さがわかりました。


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夜の稲穂はとても綺麗である。


今回は普通にラブコメです。
ラブコメを書いていると異様に疲れるのは私だけでしょうか。


 

 

「はふはふっ。やっぱりお米は美味しいよね。神様から力を貰ってる気分だよ!」

 

「相変わらずよく食べるなぁ、太っても知らないぞ?」

 

「巫剣は太らないから問題ないよ。というか女の子に太るとか、そんなんだから隊長様は彼女できないんだよー」

 

「ほっとけ」

 

俺には最近気になっている子がいる。

子...というか巫剣だ、稲葉郷という名前の少しふっくらしたよく食べる奴。

出会った当初は2時間おきにごはんをねだるこの巫剣の管理に、少し扱いづらい巫剣が来たもんだと辟易したもんだが。

 

 

「ご飯粒くっついてるぞ」

 

「むぐもぐ....んえ?」

 

「取れたぞ、ほれ」

 

「ありがとう隊長様。ぱくっ」

 

取ってやった米粒指にのせて見せてやると稲葉郷はその指ごと口に入れて米粒を舐めとる。

そしてくっそ可愛いドヤ顔を決める。

 

「ご飯は一粒たりとも無駄にしちゃダメだよね、お百姓さんに怒られちゃうよ」

 

「俺の指ごと食うなよ!」

 

「むぅ、流石に隊長様の指齧ったりしないよわたし」

 

突然の行動に俺はドキドキしっぱなしだ。

今も何とか平静を保つのが精一杯な状態だ。こいつはこう言う不意打ちみたいなことしてくるから油断できない、可愛すぎんだろ。

 

 

何でこいつを好きになっちまったのだろうか。

意外と話が合うってもあった。年頃の異性である巫剣と話すがなんだか気恥ずかしくてあまり交流に乗り気ではなかった俺にしては本当にあの時会話してたのは別人だったんじゃないのかってくらい話をした。

あんなに自然に話せるのは同性以外では子供の時から先生として面識があったソボロさんくらいじゃないだろうか。

 

ごはんを食べている時のあの笑顔にやられたのかも知れない。

食べてるときのあいつの笑顔は反則級だと思う。

神話に出てくるコノハナサクヤ本人だって言われても多分疑問持てねぇわ。

 

「ごちそうさまー、いやぁお米食べたから元気1.5倍だね!」

 

「おう、ごちそーさん」

 

さて、今日も1日頑張りますか。

明治館仙台支部隊長、いざ咲き誇らん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、今日も告白出来なかったのですか」

 

「そんな度胸あったらもうちょい他の巫剣達とも上手くやれてるさ....」

 

辺りが薄暗くなってきた辺りで業務を終えた俺はソボロさんと居酒屋に来ていた。

 

「男なんだからそれくらいの勇気振り絞らないでどうするの。稲葉郷さんとはもう6年でしたっけ?」

 

「惚れてからはまだ3年だから...(言い訳)」

 

「このヘタレめ」

 

ソボロさんがおちょこを口にやりながらジト目を向けてくる。

やめてくれ、その視線は俺に効く。

 

「あ、でも今日外食した時も最高だった。やっぱり稲葉郷は食べてるときが一番可愛い。ってか稲葉郷は時折反則染みた不意打ちしてくるからまじ心臓に悪いんだよ。

聞いてくれよソボロ先生今日もさぁ.....」

 

「あかん、酒が甘ったるい。

ちょっと店主、お酒取り替えてもらえへん?」

 

「おい聞けよ」

 

ソボロ先生告白の仕方教えてくださいよー。

あ(察し)

ソボロ先生恋愛下手だったわ。

あれぇ、これって相談相手間違えちゃってなぁい?

 

「だいたい貴方はーーー」

 

といってもこんなこと相談できる相手とかそれこそソボロさんくらいし思いつかないしなぁ....。

 

「ですからーーーーであってーーーー」

 

「うん」

 

流石に他の巫剣達に相談って言っても難しいし....。

 

「まったく、いつまで経ってもそれではこの先もずーっと独り身ですよ?」

 

ーーそうだよなぁ、いつまでもソボロ身は嫌だよなぁ....」

 

横からダンッと机を叩く音が聞こえる。

あ、まずい。いつの間にか声に出てた。

でもって地雷踏んだ。

 

「わたしだって!わたしだってぇぇえ!!

うう....格好いい巫剣使いな殿方捕まえて幸せになりたい思うとりますぅ。なんでかいっつも上手くいかへんのやぁ.....」

 

叫んだかと思ったら今度は項垂れるソボロさん。

多分、炊事周りが壊滅的なのとお酒関連が原因じゃないかと思う。

 

「ソボロさん....、炊事まわり。つーちゃんから、教えてもらおう?」

 

「塩と味噌の違いがわかりまへんのや....」

 

「それは眼鏡買い換えた方がいいかと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うう....頭がいたい、あれ、いつの間に自室に戻ったんだっけ。

うわ、今何時だ?

 

 

起きようと体を起こしたタイミングでコンコン

とノックが聞こえて扉が開かれる。

 

「おーい隊長様。いつまで寝てるの?もう巡回の時間だよ?」

 

「ああ、今用意する。それとすまん稲葉郷、水持ってきてくれないか?」

 

「また飲んだの?もぅ、飲むのはいいけど二日酔いはダメだよ?」

 

「以後気を付ける」

 

「もう、いっつもそればかり」

 

そのまま扉を離れる稲葉郷を見送った後、布団から這い出る。

 

しっかしさっきのやり取り、新婚さんみたいな感じで良かったなぁ。

 

そんなくだらないことを考えながら服を着替えて軽く身嗜みを整えてるとノックの音が聞こえて稲葉郷が部屋の中に入ってくる。

 

「はい、お水」

 

「おう、あんがと」

 

さて、今日も1日頑張りますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「禍憑が山に向かってる?」

 

「はい、確認された禍憑自体はごく少数なのですが、山頂付近で怪しげなことをやっているみたいで」

 

調査担当から聞いたところによると今朝がたくらいに山へ向かう禍憑を確認、後を付けたところ数体の禍憑が円を組んで何やら怪しげな行動をしていたとのこと。

周辺に禍憑は確認されてはいないらしく現場には最初に山に向かった数体のみらしい。

 

 

「少数だろうと禍憑は禍憑。放置するわけにはいかないよな」

 

「ならわたしの出番だね、隊長様」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっそ、なんだこの数は!」

 

「ちょっと数が多すぎるよ」

 

最初に報告通り円を組んでいた禍憑を切り殺したまではよかった。

殺した瞬間、まるで地面から生えるように大量の禍憑が出現したのだ。

 

「くぅっ、ちょっとお腹が空いてきた」

 

「ちょ、もうちょっと頑張ってくれ!」

 

「わーん、こんなことならご飯もう1杯くらいお代わりしてくるんだったー!」

 

 

「稲葉郷!危ない!!」

 

稲葉郷の横側から巨大なカラクリが出現し稲葉郷に砲口が向けられていた。

俺は稲葉郷の元へ走り刀を使って盾になろうとするも地を揺るがす爆音と同時に刀ごと吹き飛ばされた。

 

「隊長様っ!!」

 

何回かのバウンドの末に木に叩き付けられる。

超痛てぇ.....。

稲葉郷の金切り声が聞こえた気がするが、声が出ない。

掠れる視界で稲葉郷が無事なことを確認した瞬間守れた安堵からか俺は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢を見ている。

 

 

 

月明かりが照らす夜の草原で稲葉郷が力強い太刀筋で大勢の禍憑達を相手取り、一方的に切り伏せる光景。

 

 

 

 

禍憑に胸をバッサリ切られちまった未熟な俺は地に伏せ、ただただその光景に魅いる。

 

 

 

 

 

ああ、これだ。

3年前のこの時に俺は稲葉郷に惚れちまったんだ。

 

 

 

普段は足が遅くてどんくさいくせに、まるで舞でも踊ってるかのような可憐な足裁きで、しかし太刀筋はとても、とても力強く。

 

 

 

普段の飯を食ってる時の顔からは想像もできないくらい真剣な鬼気迫るその表情はとても、とても凛々しくて。

 

 

 

目尻の紅が月夜に照らされて、それがまるで夜桜のように舞うその光景に、俺の頭は沸騰したんじゃないかってくらい熱く、熱く浮かされて。

 

 

 

でも目尻から零れる涙が、なんだか悲しそうで。

 

 

 

 

 

 

この少女の隣に寄り添いたいって想っちまったんだ。

 

 

 

こんな夜に粗野な禍憑相手にたった独りで舞うこの少女には、もう一人、一緒に踊るお相手が必要だって想っちまったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ....、死ぬ前に俺は稲葉郷に伝えないと行けないことがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーー様!隊長様!!」

 

 

 

目を覚ますと3年前のあのときと同じ藍色の空と月明かりが。

 

 

「稲葉郷。伝えたいことがあるんだ」

 

「そんなの後だっていいよ!早く帰って治療しなきゃ!!」

 

必死に叫んでいるはずの稲葉郷の声が小さく聞こえる。

 

俺はもうダメなのかもしれない。

だけど、この想いだけは伝えなければ。

 

意気地無しで未熟な、こいつよりもずっと不器用な俺の本心を、今なら伝えられる気がする。

 

 

 

「稲葉郷、好きだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、怪我の具合はどう?」

 

「いや対して痛くないな?」

 

「でしょうね!全く、砲撃受けて擦り傷数ヶ所と極軽微な脳震とうで済むって、こっちがびっくりするわよ。軽く脳が揺さぶられた程度だから後遺症もないそうよ」

 

 

どうやら未熟だと思っていた俺の身体はなかなかの成長を遂げていたらしく、吹っ飛ばされた時も無意識に受け身が取れていたらしい。

 

まぁ、それでもしばらくは自室養生なんだが。

 

「後はしっかり寝てさっさと治しなさい」

 

そう言ってソボロさんは部屋を出ていく。

なんだかんだソボロさんも心配してくれたみたいだ。

少し過保護なところは昔から変わっていないらしい。

 

 

さて、ただ起きているのもなんだし一眠りするかと瞼を閉じたところでノックの音が聞こえてくる。

部屋に入ってきたのは稲葉郷。

 

 

「隊長様、体の具合はどうですか?」

 

「軽症らしい、数日寝てれば治るってさ」

 

「よかった....」

 

稲葉郷の様子がなんか変だ。こいつにしては珍しく、しおらしい。

そんな態度に違和感を覚えて声をかけようとするが、それより早く稲葉郷の口が開く。

 

「あ、あの、隊長様っ」

 

「ん?なんだ?」

 

「あ、あのですね、私も....好きです。隊長様のことが....誰よりも」

 

 

顔を朱色に染めてそう言った稲葉郷の顔を見たまま俺は呆けてしまう。

 

 

え、今何て言った?稲葉郷が、俺のこと好きだって?

え、まじで?これ夢じゃないよな?

 

 

 

 

ーーーああ、俺、今死んでも後悔無いーーーーー

 

 

 

 

 

 

「だ、だからね隊長様、.......隊長、様?ちょっ、隊長様!?だ、誰かーっ!隊長様が倒れちゃったよ!誰か来てーっ!!」

 

 

 

 

薄れ行く意識の中、俺はこれからどんな甘酸っぱい生活が待っているのだろうかと、年甲斐もなくそんなことを思った。

 

 

 

 

 

「うわーん、隊長様死なないでーっ!!」

 

 

 





これをラブコメと言い張る作者の精神。
いや言い訳をさせてください。
ラブコメの1話完結だと話全体としてのオチを付けるか起承転結の結をしっかりとしたものにしないと終わった感じがしないんですよ。
結末に触らないような軽いオチじゃ終わらせられないのが難しいです。


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牛王隊長の華麗なる1日

どうもわたち教徒です。
わたしは気付いたのです、これ別に恋愛絡みじゃなくても問題なくね?と...。

と、いうわけで今回は日常回。


やぁ、こんにちは。

わたしは牛王吉光、明治館の巫剣だよ。

 

「たいちょーちゃん依頼終わったよー」

 

「鬼切、ありがとう。戻ったところ悪いんだけど西側の街道で禍憑が出たらしいんだ。幸い調査担当が見付けて街道を封鎖できたから討伐をお願いできないかな」

 

「もう、お姉ちゃんって呼んでって言ったでしょう?討伐ね。おっけー、行ってくる」

 

「なかなか気恥ずかしくてね...。それが終わったらあとは休みでいいから、気を付けて行ってくるんだよ」

 

「はーい、また後でね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふぅ....。

ああ、話の途中だったね。

えっと、何処まで話をしたかな。

ああ、そうそうそれで、最近「いちご任務から戻りました、姉様」

 

「おかえり一期一振、丁度よかった。さっき小夜左文字から伝言を頼まれていてね。一緒にパン作りをしないかって言っていたよ」

 

「わぁ、早速行ってきます!それと、姉様?私のことはいちごって呼んでくれるって約束しましたよね...?」

 

「まだ言い慣れなくてね。すまないね、いちご」

 

「えへへ、苺ジャムのパンが出来あがったら、良ければ姉様もどう...ですか?」

 

「そのくらいになれば仕事も一段落するだろうしいただこうかな」

 

「やったぁ。沢山作って待ってますね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何度も話を中断してしまってすまなかったね。

え?なんでわたしがたいちょーちゃんだなんて呼ばれているのかって?

 

 

 

 

 

 

 

 

.........10年ほど前だったかな、運が悪いことに走行中の馬車の中で政府のお偉いさま達が斬殺されるという事件が起きてね。

 

え?それが現状となんの繋がりがあるのかって?

話は最後まで聞くものだよ。

君達は巫剣の存在が秘匿されていて一般的には知られていないってことは知ってるよね。

実はだね、長い時の中でその秘匿性はさらに強固なものとなり、政府上層部でもトップとその次くらいしか知らされていないような状態となってしまっていたみたいなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

......うん、察しがいい人は嫌いじゃないよ。

 

現在政府の中に巫剣を知っている人は誰もいない状態。

で、お華見衆は政府の書類上は存在しないことになってしまって、晴れて独立。

 

このままハッピーエンド、とはならなかった。

当時の巫剣使いの平均年齢は35~40くらいでね。

所謂あと数年も経てばお爺ちゃんって呼ばれるような人ばかりだったんだ。

 

勿論その頃からその事実を知った小烏丸が巫剣使いの育成に励んではいたみたいなんだけど......。

まぁ、巫剣使いの総数から言えば焼け石に水ってものだよね。

そんなわけで現在お華見衆は慢性的な巫剣使い不足に陥ってる状態なんだ。

 

 

「姉様ぁ、なでなでしてぇ...」

 

「鬼丸、戻ってきたんだね。...ほら、おいで」

 

「姉様ぁ....好きぃ....」

 

 

今は足りないところは巫剣使い無しでやってるわけなんだけども、ここ京都支部は前隊長くんの稜威能力のこともあって大勢の巫剣が居るからね。一人二人を寄越しても焼け石に水、なら巫剣が代理隊長をやるしかないって結論になったみたいなんだ。

それで何故わたしにお鉢が回って来たのかは分からないけど、...理解してもらえたかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仕事が一段落し、鈍った体を少し解そうかと中庭に向かうと風鎮切が日向ぼっこをしていた。

 

「あ、ママ」

 

「風鎮切、日向ぼっこかい?」

 

「うん、今日は天気がいいから気持ちよか。ママも一緒にするがや?」

 

「せっかくだし、そうさせてもらうとしようかな」

 

わたしが草っぱに座ると風鎮切が私の足に頭を乗せて寝そべる。

 

「ママに膝枕してもらうと、なんだか安心するわ」

 

そう言ってくすぐったそうに笑う風鎮切の頭を優しく撫でてあげる。

 

「やっぱりママの手......優しゅう感じがして好きやわ......」

 

しばらく撫でてあげると笑みを浮かべていた風鎮切の顔が次第にあどけないものへと変わっていく。

.....子供は眠るのが早いものだね。

 

「おやすみ、ふぅ...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでですね、その時の牛王さんの微笑みがすっごく母性溢れる顔だったんです。我が子を見守る母の顔でしたね」

 

「へぇ、牛王も随分風鎮切のお母さんしてるじゃない。結構満更でもないんじゃない?」

 

「そろそろこの話しは終わりにしないかな」

 

さきほどの風鎮切とのお昼寝を桑名江に見られていたらしい。

話を聞いていた城和泉も日頃の仕返しなのか、ニヤニヤしながらからかってくる。

 

まぁ、話が始まった時からこの事態を予測して城和泉のジュースに実験薬を仕込んどいたから、からかったことはそれで許してあげるとしよう。

 

「......子供、かぁ」

 

「城和泉さんもやっぱり子供が欲しいとか思ったことがあるのでしょうか」

 

「ちょ、桑名江、そんなわけないじゃない!というか思ったとしたって私達巫剣は子供なんて産めないわよ」

 

そう言って城和泉は顔を赤くしながらジュースを飲む。

......よし。

 

「城和泉は子供が欲しいんだね。子供を作らせてあげることは出来ないけど、子供にしてあげることは出来るかもしれないよ」

 

「ちょっと牛王、また私を実験台にするつもりでしょう。さすがに飲まないわよ私」

 

「大丈夫、今飲んでいる飲み物にすでに仕込んでいるから」

 

言うと同時に飲み物を噴き出す城和泉。

だけどもう十分な服用量は飲んでいるね。

 

「牛王あとで覚えておきなさい~~っ」

 

身体がどんどん縮んでいく城和泉の様子に正しく薬の効果が現れていることを確認する。

どうやら今回の薬は成功なようだ。

 

「わあ....っ、城和泉さん、凄く可愛いですよ」

 

「嬉しくないわよぉ......ってなでなでするなぁ!!」

 

人間でいうところの6才くらいの姿まで縮んだ城和泉の頭を桑名江が撫でる。

 

「やーん、可愛い~~」

 

「ちょっと、桑名江。目が危ないわよ」

 

「私決めました、この子は私が育てます!」

 

「何変なこと言ってるのよ!ってちょ、桑名江降ろしてー!!」

 

桑名江が城和泉を抱っこして何処かに行ってしまった。

......まぁ、1日で効果は切れるはずだし大丈夫か。

そろそろ私も部屋に戻ろうかな。

まだまだやることは沢山あるしね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん....、そろそろ寝ようかな」

 

時刻は丑ノ刻、窓から見える外の景色はすっかり真っ暗になっている。

いつもの乳牛の寝間着に着替えて布団に入ろうしたところでノックの音が響く。

こんな時間に誰だろう?

 

「しゅ、主君、まだ起きているか?」

 

ノックの主は大倶利伽羅だった。こんな時間に来るなんて珍しい。

 

「こんな夜更けにどうしたんだい大倶利伽羅」

 

「じ、実はそのぅ.....怖い夢を見てしまってだな、できれば一緒に......うぅ~」

 

「ふふっ、一緒に、何がしたいのかな...?」

 

「寝て......えぇい!あんまり俺をからかうな!」

 

大倶利伽羅が言いたいことはすぐに分かったけどついからかってしまった。

この娘はたまに嗜虐心を誘う顔をするからついからかってしまう。

 

「すまなかったね。ほら、おいで?」

 

先に布団に入って隣に一人分のスペースを空けて掛け布団を捲ってあげる。

 

「あ、...お邪魔する......ぞ」

 

「はい、いらっしゃい。...ふふ」

 

布団の中で借りてきた猫のようにぎこちなく体を丸める大倶利伽羅に思わずクスッと笑みが零れる。

 

 

 

 

 

『へぇ、牛王も随分風鎮切のお母さんしてるじゃない。結構満更でもないんじゃない?』

 

不意に昼間の城和泉の言葉が脳裏をよぎる。

 

ーーー母性...か。

......うん、城和泉の言うようにわたしとしては結構満更でもないようだ。

 

カチカチに固まっている大倶利伽羅の体を優しく抱きしめてあげる。

 

「ひゃ...っ!?しゅ、主君!?」

 

「ほら、大丈夫だよ。わたしが居るから怖くはない。だから安心して眠るといい......」

 

「あ......っ」

 

少しずつ強張っていた大倶利伽羅の身体から力が抜けていく。

......うん、緊張が解れたようだ。

これならすぐに眠れるだろう。

 

 

 

 

「おやすみ、大倶利伽羅」

 

「しゅ...くん......」

 

ほどなくして大倶利伽羅から安らかな寝息が聞こえてきた。

 

さて、わたしもそろそろ寝るとしよう。

また明日も忙しくなるのだからーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ガールズラブは保険です(目逸らし)


牛王は私の二振り目の愛刀です。わたち様が一番なのと二振りしか愛刀ないからセーフです()

沢山の閲覧に評価まで頂き本当にありがとうございます。
ストック無しで思いついたことを拙い文章で投稿間隔気にせず書いてるだけですが、よければこれからも読んでいただけると幸いです。


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この世全ての天華百剣 斬ユーザーに祝福を

どうもわたち教徒です。
今回は日常兼戦闘ものです。

天華百剣の世界観でも掲示板ネタやカラオケがやりたいと思って作ったネタです。(今回掲示板ネタは無い)




3年前世界は大きく変動してしまった。

 

 

世界各地に禍憑と言われる化け物が出現し、世界を混乱に陥れたからだ。

 

禍憑異変、のちにそう呼ばれるこの異変は多くの人の命を奪った。

銃もミサイルも、そして核すらも効かないその化け物達に人類は絶望し、このまま世界は終わりを迎えるのかと思われたが......そうはならなかった。

何故なら当時、天華百剣 斬をやっていた人達のスマホから巫剣達が召喚されたからだ。

 

スマホの持ち主を隊長や主と呼ぶその巫剣達は次々と禍憑達を討伐し、決して少なくはない被害を受けつつも人類は持ちこたえることができた。

 

その後の政府の対応は早かった。

各国の政府はその総力を上げて巫剣や禍憑のことを調べ上げ、首脳会議を行った。

 

 

その結果判明したのは巫剣が召喚されたプレイヤーは天華百剣 斬というアプリゲームをインストールしていたこと。

スマホから召喚された巫剣は3振りだけであり、それは1番隊に設定した巫剣であるということ。

アプリ事態が大きく改変されており、召喚された3振りの巫剣以外はデータから消えてしまっていたこと。

巫剣達はスマホの半径1㎞までしか自由に移動することが出来ないこと。

そして、アプリのヘルプ機能に隊長は不老になりスマホ破損と外的要因以外では死なないという記述が増えていたこと。

 

実際、調査のために市民から強引にスマホ奪おうとした軍部の人間が誤ってスマホを叩き壊してしまった際、巫剣と隊長が金切り声を上げて消えてしまったという報告もあった。

消えた人間はその地域で唯一のアプリ所持者だったらしく、その軍人は自身を禍憑から唯一助けてくれる守り手を失ったことで暴徒と化した大勢の市民に殴り殺されたらしい。

 

 

また、この事態に多くの人が天華百剣 斬をインストールしようとしたが、アプリはストアから消えていた。

巫剣の総数が増やせないという事態に政府はすぐさまサービス提供会社を調べ復旧するように指示しようとするも、サービス提供会社は架空の会社であり存在しないことが判明。

 

 

各政府は巫剣所持者を全ての国で共有し、その戦力を分配する道を選んだ。

 

のちの巫剣使い保護法とお華見衆設立の瞬間である。

 

 

 

そして、平凡な生活を送っていた俺の日常が終わった瞬間でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで東北支部全体会議を終了する。各員今月も生き残れよ。お前達に代わりは存在しないのだからな」

 

小烏丸を護衛に付けていた教官の言葉を皮切りに出席していた人達は次々と会議室を出ていく。

俺もそろそろ帰ろうかと思い席を立とうとすると隣から声をかけられた。

 

「よう、このあとどっか飯でも食いにいかねぇか?」

 

「行きたいのは山々なんだが、この後巫剣たちとカラオケに行く約束があってな」

 

「家族サービスならぬ愛刀サービスなら仕方がないな、また今度誘うとするか」

 

「すまんな暁団子。また誘ってくれ」

 

暁団子のよく誘ってくれる食事会は情報交換の意味合いが強いから出来れば行きたかったが、今回は仕方ないか。

 

 

名前が変だと思うかもしれないが、個人情報の漏洩を避けるためか軍ではコードネームとしてゲームアカウントの隊長名を使うことが義務付けられている。

まぁ、そういうことだ。

 

 

「お、戻ったか主」

 

「月一の放置プレイ、ありがとうございました!」

 

「主様おかえりなさい。あと、亀甲さんは少し自重して下さい」

 

談話室に行くと巫剣達が出迎えてくれた。

義元左文字、亀甲貞宗、加州清光。

俺の愛刀達だ。

1番隊の編成を愛刀のみで固めていた俺はあの事件の時、正直歓喜した。

絶望の縁に立たされ、目の前で禍憑の凶刃が振り落とされる瞬間という人生最大のピンチに何考えてるんだ、とか言われるだろうが仕方がないじゃないか。

吊り橋効果とかももちろんあったかもしれないがその凶刃を刀でいなし、その返しで逆に切りつける義元、私達が来たからもう大丈夫ですよ?と言って禍憑の元へ駆ける加州、ゲーム内では考えられない速度で禍憑の首に縄を掛け縦横無尽に動き回りつつ飛び蹴りをかます亀甲。

その光景に目が奪われた。

自分の愛刀達が現実に飛び出たという事実に歓喜したってバチは当たらないと思うし、仕方がないことだと思う。

 

 

人によっては愛刀を1番隊に入れていなった、そもそも1番隊とか考えず編成がぐちゃぐちゃになってて愛刀が誰一人いないなんて人もいる。

 

なんで愛刀のくーちゃんや菊一文字が来なかったんだと嘆く暁団子を見たときは、俺はとても幸運だったんだなとも思ったものだ。

 

 

「ほら、今日はこれからカラオケに連れてってくれるんだろう?」

 

「久々に今日は喉が枯れるまで歌っちゃいますよげぼっ!」

 

「加州さんの血が私の顔に...。吐血プレイだなんてそんな...っ」

 

 

女3人揃うと姦しいとは良く言ったものだ...。

そんなことを考えながらみんなを連れてカラオケに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「げふっ、がふっ、......歌い"す"ぎて"喉が死にま"した......」

 

「いやぁ、わたちは満足だ!」

 

「義元さんの替え歌は毎回秀逸ですよね、今度私も替え歌歌ってみようなぁ。」

 

「いや亀甲は自重しろ。ピ○ミンのOPとかあんなビクンビクンしながら恍惚として歌うものじゃねぇよ」

 

「いやわたち的にはあのドSドS連呼するボカ○の歌の方がびっくりしたんだが...」

 

「ボ○ロはほら、自由な歌が多いから...」

 

「加集さんの歌も凄かったですよね。綺麗で儚い感じの声質なのになんというか、一言一言に生命の全てを使っているような力強さがあって」

 

「あ...(察し)」

 

「実際死にそうだしな。...加州よ、大丈夫か?」

 

「い"え"....大"丈"夫"でず」

 

「これから町の巡回とかしなきゃいけないんだが、これ加州大丈夫か?」

 

「主よ、流石に無理だと思うぞ。わたちと亀甲が居るし、今回は休んでもらっても大丈夫だ」

 

「い"え"、行ぎま"す...ごふぅっ!!」

 

加州のこういうところはゲームの時から相変わらずだな。

加州も病気って訳でもないし、喉痛めただけだから多分大丈夫そうかな。

 

「わかった。だがダメそうな時は言えよ?」

 

「がふぅっ!....は"い"」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リアル版お華見衆の仕事は事務を除くと大きく3つに分けられる。

巡回・任務・依頼だ。

 

巡回は担当区域を車で決められたルートで巡回すること。所謂お巡りさんがよくやるあれだ。

 

任務は自分の担当地区での禍憑討伐で、禍憑が出たと通報があった時に現場に急行し倒す。

 

依頼は国からお華見衆へ依頼があった時や不足の事態が発生したときに出る仕事。たまに担当地区近くの巫剣使いから直接連絡が来るときもあるが、基本的にはお華見衆の現在纏め役をやっている人が依頼を巫剣使いに振り分ける。

大体が禍憑の大量発生があって放棄した区域の禍憑駆除や他地区の隊長の応援、たまに大型禍憑の大討伐がある。

大型禍憑が出たときや本当に膨大な数の禍憑が現れた時には東北中の巫剣使いが駆り出さることもある。

巫剣使いが減ることはあっても増えることのない現状、数で押して危険を減らすことは当たり前だよな。

 

 

「しかし、本当に便利な世界だなここは。馬が無くとも馬車は走るし鉄箱が空ぶ。連絡に鳩や烏は必要なくボタン一つで済んでしまう」

 

助手席で回りに異常がないか見渡す義がそんなことを嘯く。

ってか和服にシートベルトってかなりの違和感を覚えるな。

 

「産まれてからこれが当たり前だったから気にもしなかったがな」

 

「ここまで歩く必要がないなど、なんだか体が鈍りそうだ」

 

「いや巫剣は体が変化しない設定だろ?」

 

「刀だからな。痩せたり太ったりはせずとも錆びたり鈍ったりはするんだっ」

 

義的には車での移動はあまりお気に召さないようだ。

 

「うぅ....」

 

後ろでは車酔いして更に酷いことになっている加州を亀甲が介抱している。

 

「ああ......加州さんの吐血が私の顔と服を...。吐血プレイ...はぅ、嵌まってしまいそうです...っ」

 

後ろでは加州と亀甲が特殊プレイをしている。

 

「違います、違いますから言い直さないで下さい...げぶぅ」

 

「ああ、また顔に...はぁ..はぁ...」

 

「そなたらそれは言い訳できんであろう...」

 

義が呆れた顔でそう言った直後、車内取り付けの無線からアラームが鳴る。

 

「こちら義元左文字だ」

 

『此方、博多餡蜜饅頭。現在市内に禍憑が出現した!神輿も居る、至急応援求む!』

 

「...わかった、すぐ向かう。主よ聞いたな?」

 

「おーけー、すぐに向かうとするか」

 

車の上に緑色のパトランプを付けて起動し、隣のエリアに向かう為にアクセルを踏んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この世界に来た巫剣達はゲーム内とは大きく性能が変わっている者も多かったりする。

亀甲あたりはゲーム内では大型に有効な得意技・奥義ではなく、いわゆる最弱巫剣だったが現実世界の彼女はその実質リキャスト0で使い放題な縄を禍憑の首や大型なら腕や武器に引っかけ縦横無尽に移動しながら飛び蹴りをかます強い巫剣だ。

例えば千字村正。奥義中操作がきかず極級では奥義縛りの必要があったが、現実世界だと俺達はおろか、禍憑が知覚できない速度で移動し殺戮の限りを尽くす。

それゆえ千字はゲーム内ランキングで言うところのSSランクの強さだ。

たとえば今剣、リアルで禍憑のみをスロウ状態に出来るこの巫剣がぶっ壊れなのは言うまでもないだろう。

攻撃UPや防御力UPのバフ持ちの巫剣なんかは切れ味自体が上がったり肌が刀通さなくなるので一部のSR巫剣はURランキングでS評価を貰えるレベルだ。

 

また、ゲーム内では火力が通常攻撃・クリティカル込み装備技〉越えられない壁〉奥義・得意技だったが現実だと巫剣の特別な力を使う関係上、たとえ攻撃刀装をガン積みしようとも奥義〉得意技〉越えられない壁〉無属性装備技〉通常攻撃となってしまう。

 

 

 

そんな中、使いにくくなった技や奥義も勿論ある。

全体攻撃系だ。

全体攻撃系奥義は半径100メートル程度の制圧攻撃なのだが、その影響は自分以外の全てだ。

そう、近くに巫剣使いや他の巫剣達がいる場合に使えないのは勿論、街の中でも使えない。

使ったら周辺一帯に甚大な被害を及ぼす。

 

 

ここで博多餡蜜饅頭という巫剣使いの所有する巫剣達を紹介するとしようか。

江雪左文字、水心子正秀、三十二年式軍刀甲だ.....。

そう、奥義が(強すぎて)使えない3振りである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現場に向かうと博多餡蜜饅頭が巫剣達を従え応戦していた。

幸いまだ巫剣達には被害が出ていないようだ。

 

 

「援軍が到着したか!こちら博多餡蜜饅頭、応戦頼む!神輿が印籠ガン積みでも倒しきれん!奥義じゃないと恐らく倒しきれない。あと今江雪が得意技を使っている、巻き込まれる可能性もあるからそちらには近付くなよ!」

 

 

「了解した!みんな、行くぞ!!」

 

「わたちに任せておけ!」「加州にお任せを!」「行きます!」

 

 

「義はしばらく小型禍憑を倒しつつ加州の奥義の準備が出来次第神輿まで護衛しろ!亀甲はいつも通り遊撃!加州は今誠衣装に変更掛けて虚像の鎧を持たせる、用意が終わったら奥義を神輿にぶち込んでこい!!」

 

3人が禍憑に向かって駆け出す、走っている途中でスマホでの衣装変更が終わり加州の衣装が光出し誠の陣羽織へと変貌していく。同時に虚像の鎧の効果が発動する。

 

 

「退け!そなたら禍憑に天下は相応しくない!」

 

義が不可逆の玉と得意技を交互に繰り出し強引に道を作り、その後ろを誠加州が追従する。

 

 

「見えた!」

 

 

神輿の元へ加州がたどり着き、突きの構えを取って力強い笑みを浮かべた。

 

 

「神輿風情に私の攻撃は避けられません!くらえっ、天稟の剣閃三段突きぃ!!!」

 

 

凄まじい轟音とともに神輿に3つの風穴が開き神輿が崩れ落ちる。

 

崩れ落ちた神輿から墜ちる人形型の禍憑を義が間髪入れずに切り払う。

 

「ああ、私の獲物ぉ!」

 

「奥義後に格好付けてるからだ。まだ禍憑は居るんだからそっちを倒せばいいだろう」

 

「ぐぬぬ、...なら義元さん今からどちらが多くの禍憑を倒せるか競争です!絶対に負けませんよ...がはっ」

 

「そなたも相変わらずだなぁ。...だが、わたちに挑むとはいい度胸だ!リキャスト鬼な不可逆の玉を装備したわたちに虚像の鎧でどこまで追い縋れるか、見せてもらおうではないか!」

 

「ああっ!装備技は卑怯ですよ!!」

 

「ふははは、運も実力の内!挑む前にそなたは負けていたのだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が一番ですか!?嬉しいです!主様、ご褒美に卑しい私に痛みの伴うご褒美をください!」

 

「予想だにせぬ伏兵だったな...」

 

「亀甲さん、恐ろしい娘...っ」

 

「馬鹿なことやってないで帰るぞ」

 

 

あの後小型禍憑は6振りの巫剣に翻弄され、瞬く間にその数を減らしていった。

博多餡蜜饅頭から謝辞と依頼料を貰ったので、後は帰るだけだ。

 

まぁ、今日はみんな頑張ったし、夜になったら久々にお手入れしてやるかな。

そんなことを思いながら俺は車に乗り込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




戦闘あり(しっかり書くとは言っていない)

わたち教徒としてはわたち様の魅力を書ききれていないと思う。
でも満足。

加州さんの美人設定を生かしたい。
どなたかwikiの加州板で存分にその魅力を語っては頂けないでしょうか。(無知)


サイレントで始めたのにUAが1000を超え評価もまた頂けました、本当にありがとうございます!


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【禍憑】巫剣運用時の戦術について語るスレ【絶対○す】

今回は引き続き前回の世界観です。
そう、掲示板ネタ。

ちなみに前の話からさらに2~3年経過後。

お華見衆専用の掲示板が作られており、その中のスレの一つって感じです。
それではどうぞ



 

【禍憑】巫剣運用時の戦術について語るスレ その211【絶対○す】

 

 

(以上省略)

 

 

669 名無しの刀を振れない巫剣使い

だから獅子王100振りいれば禍憑大量発生時に小型が千体程度程度沸いたとしても一掃可能になるって話。

 

 

670 名無しの刀を振れない巫剣使い

確かに獅子王がそれだけ揃えば銃持ちや棍棒が沸いたとしてもいけるだろうが、そもそも不定期な禍憑大量発生を予測して各地から獅子王を呼び寄せて100振り揃えるって時点で実現不可能だろ。

海外ならともかく日本じゃ戦闘予測区域到着時刻加味したら良くて30集まるかどうかだな。

 

 

671 名無しの刀を振れない巫剣使い

なら装備技の束縛持たせれば?

あれならまとめて一掃出来るんじゃない?

 

 

672 名無しの刀を振れない巫剣使い

束縛は禍憑同士が重ならないリアルにおいてはただ戦況を悪化させる産廃って決まっただろ。

あれ全体奥義と同じ半径100メートルが範囲対象なんだぞ?しかも敵味方問わず。

古参プレイヤーがそれで圧死しちまった事件忘れたのか?

 

 

673 名無しの刀を振れない巫剣使い

議論中すまんな。

お前ら、こいつをどう思う?

 

『大討伐依頼時に阿弥子×3を瞬殺した動画』

 

 

674 名無しの刀を振れない巫剣使い

えぇ...なにこの......えぇ...?

 

 

675 名無しの刀を振れない巫剣使い

阿弥子可哀想

 

 

676 名無しの刀を振れない巫剣使い

(わたちカリバーが)すごく、おっきいです...。

 

 

677 名無しの刀を振れない巫剣使い

慈悲は、慈悲はないんですか!?

 

 

678 名無しの刀を振れない巫剣使い

1体出たら数十人単位の犠牲を覚悟するあの阿弥子だろ!?それが3体だろ!?何でこうなったwww

 

 

679 名無しの刀を振れない巫剣使い

阿弥子×1の大討伐経験者の俺氏、あのときの地獄は何だったのかと震える。

 

 

680 名無しの刀を振れない巫剣使い

移動経路を予測して予め設置しておいた師匠の膨大な量の羽地雷による爆撃からの今剣複数での連続奥義による継続スロウ。

それと同時に大勢のつーちゃん奥義と奥義使用千字&得意技使用鬼丸が恐らく20振りの部隊での3体同時蹂躙、そして恐らくわたち5振りによる奥義での死体蹴り...。

この作戦思い付いた奴はそうとう頭逝ってるな。

 

 

681 名無しの刀を振れない巫剣使い

控え目に言ってもただの苛めです、本当にありがとうございました。

 

 

682 名無しの刀を振れない巫剣使い

一人が使った障壁に複数人で入ることにより少ない数で巫剣使いと後方支援部隊の安全確保をし近接組は全員障壁持たせて突撃させるその周到さ、俺じゃなきゃ見逃しちゃうね...。

 

 

683 名無しの刀を振れない巫剣使い

大量のつーちゃんにおしくら饅頭されたいだけの人生だった...。

 

 

684 名無しの刀を振れない巫剣使い

作戦参加巫剣使い35名、参加巫剣内訳 師匠×1 今剣×6 つーちゃん×18 千字×9 鬼丸×11 わたち×5  計50振り。

今剣二人目の奥義途中、千字鬼丸部隊の時点で阿弥子は沈んだが初志貫徹で作戦通りわたちカリバー×5をぶち込んだ。

阿弥子は塵一つ残さずに跡形もなく消え去りました...。(目逸らし)

 

 

685 名無しの刀を振れない巫剣使い

>>680

カマイタチみたいなのしか映らないアレをしっかり誰であるかとその正確な人数言い当ててる時点で人のこと言えないんだよなぁ...(誉め言葉)

 

 

686 名無しの刀を振れない巫剣使い

そら野外に出現したらそうなるわなw

 

 

687 名無しの刀を振れない巫剣使い

あの羽地雷の爆撃が師匠一振りによってなされたという事実

 

 

688 名無しの刀を振れない巫剣使い

わたちカリバーが一つに纏まり阿弥子×3を飲み込む様に振り落とされる光景がやばいw

5振りだけでこの大次元斬放てるという事実に驚くわw

 

 

689 名無しの刀を振れない巫剣使い

で、わたちカリバーの被害はどのくらいだったんですかね(小声

 

 

690 名無しの刀を振れない巫剣使い

野外に出現した阿弥子が悪い説、一理ある。

 

 

691 名無しの刀を振れない巫剣使い

>>684

あの障壁の中につーちゃん達がぎゅうぎゅうになって入ってるつーちゃんボールのどれか一つに一緒に入りたい気持ちはわかるw

 

 

692 名無しの刀を振れない巫剣使い

>>687

師匠の羽地雷、3時間は残るらしいから多少はね?

 

 

693 名無しの刀を振れない巫剣使い

>>689

奥には廃街しかないから大丈夫ですよ。

...廃街の一部が消え去ったけど、禍憑の根城を禍憑ごと消し去ったと思えば寧ろプラスだから(目逸らし)

 

 

694 名無しの刀を振れない巫剣使い

正直に言え、これ作戦立案時点で過剰戦力って分かってたろ!なぁ!!

 

 

695 名無しの刀を振れない巫剣使い

俺氏この作戦誰が思い付いたかなんとなく分かった。

義元亀甲加州持ってる隊長だろ。

 

 

696 名無しの刀を振れない巫剣使い

>>692

師匠の羽地雷ってそんなに持つのか...。

ってことは夜なべして永遠とあのリキャスト速度で射ってたんだろうなぁ...。

 

 

697 名無しの刀を振れない巫剣使い

>>684

それ多分風圧で阿弥子の体廃街に吹っ飛んでいったんだろw

義元のわたちカリバーって最後剣の形保てずに放出して爆風起こすしw

 

 

698 名無しの刀を振れない巫剣使い

>>695

ああ、廃街の禍憑掃討作戦時に障壁持たせた江雪5振りで種子島三段射ちモドキやった人?

巫剣使いがたったの6名で街一つ綺麗に出来るものなんだなぁと思ったわ。

 

699 名無しの刀を振れない巫剣使い

>>698

あの動画はビビったw

一つの障壁に複数人で入るとかさすがに考えもしなかったわw

 

700 名無しの刀を振れない巫剣使い

>>698

多分その人で合ってる。

亀甲持ちとかそれこそ希少だし。

>>694

作戦立案時にはそれでも駄目だった時用にさらに予備戦力として全体奥義持ちも投下する予定だったんだよ...。

 

 

701 名無しの刀を振れない巫剣使い

>>700

なにそれ頭おかしい()

 

 

702 名無しの刀を振れない巫剣使い

脅威が脅威でなくなった瞬間であった。

 

 

703 名無しの刀を振れない巫剣使い

この戦術を見て思い付いたんだけど、3時間おきに師匠20人程度で廃街へのバイパスや道路に羽地雷撒いて封鎖すれば大分効果出るんじゃね?

リセマラ放置で戦力外過ぎてお華見衆入り免除になった奴ら居たじゃん、その中にも師匠持ち何人か居るだろ。

せっかくだし役に立ってもらおうぜ。

 

 

704 名無しの刀を振れない巫剣使い

>>703

最高にいい発想だ!

それでレベルが上がれば担当地域持ちに昇格させればいいしな!

 

 

705 名無しの刀を振れない巫剣使い

>>703

予備戦力(犠牲者)増強もかねたいい案だ。

さっそくお華見衆の改革案投稿板に書き込みに行こう。

 

 

706 名無しの刀を振れない巫剣使い

人を人とも思わない下衆どもめ。

そんなお前たちが私は大好きだ!

 

 

707 名無しの刀を振れない巫剣使い

いつも通りの戦術スレだな。

 

 

708 名無しの刀を振れない巫剣使い

>>706-707

被害気にしてちゃ新しい戦術は生まれないからね、仕方がないよね!

 

 

709 名無しの刀を振れない巫剣使い

はいはいコラテラル・ダメージコラテラル・ダメージ。

 

 

 

 

 

 

 

 

(以下雑談が続く)




掲示板ネタはまだまだ書き足りないけど流石に自重する。

ちなみに作者は見たいと思った内容を書いているので出てきた設定の一部を拝借した、もしくは全てをそのまま使った天華百剣小説を書いてくれる人とかいたら泣いて喜びます。
巫剣隊長の設定とか書きやすいと思うんだ。お船のゲームのMMDとかでもよくある設定だし。


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牛王隊長の優雅なる生活(居酒屋Ver)


牛王隊長の呑み回です。
今回は公式のあの人がちょっとだけ出演します。



 

 やぁ、久しぶりだね。京都支部隊長代理の牛王吉光だよ。

 仕事が早く終わったので今日は城和泉と桑名江を連れて珍しく居酒屋にきているんだ。

 意外かもしれないけど二人ともお酒は何だかんだ好きらしくてね。普段は甘味処なんだけれど、たまにこうやって3人で居酒屋に行くこともあるんだ。

 

 

「ーーその抱き枕の抱き心地がすごく良くって最近はぐっすり眠れてますね」

 

「あー、あの家具屋の枕ね。そんなに良く眠れるのなら私も買おうかな。桑名江のお墨付きなら買って損はなさそうだしね」

 

「城和泉さんもきっとやみつきになりますよ。すごくグッスリ眠れちゃいますから」

 

「それはとても楽しみね。‥‥ちなみに牛王は寝るときにそういうの使ったりしないの?」

 

「最近はだれかしら一緒に同衾してるから抱き枕とかは必要ないかな」

 

城和泉がお酒を吹き出した。

 

「ちょっと同衾って....!!?」

 

「ああ、そういえばこのあいだ大倶利伽羅さんが言っていましたよ。すごく良かったって」

 

「ちょっ、桑名江それお酒の席とはいえ暴露していい内容じゃないでしょうっ」

 

「え、いけなかったですか?」

 

「当然よ!大倶利伽羅だって桑名江のこと信用して喋ったんだろうし」

 

「でも大倶利伽羅さん結構色んな人に自慢していましたよ?」

 

「大倶利伽羅ぁぁああ!」

 

「話を戻すよ? まぁ、結構寝相が激しい子や絵本を読むようにせがんできてなかなか寝かせてくれない子も多くてね、ここ最近は寝不足気味かな」

 

「えっ、絵本....?」

 

「うん、意外と読んでほしいって子は多いよ、乱藤四郎とか九字兼定とかね。‥‥おや、顔が真っ赤な城和泉は一体どんな勘違いをしたのかな....?」

 

「ううううるさい!別になんも勘違いなんてしていないわよっ」

 

 お酒を呑みながら城和泉をからかう。

相変わらず城和泉はこの手の話には弱いね。

 まぁ、色恋沙汰に弱いのは私もきっと同じなんだろうけど。多分恋愛に関して一番前向きになれるのはこの中だと桑名江だろう。

 そんな桑名江は先ほどから城和泉がなぜ顔を赤くしているのかが分からないみたいで頭にハテナを浮かべていたが、やっと城和泉がどんな勘違いをしていたのか理解したらしく顔を赤くしていた。

 

「‥‥あの、城和泉さん。あまりえっちなのはいけないと思います」

 

「安心して城和泉、女の子なら誰しもこの手の話(色恋沙汰)に興味を持つのはしょうがないさ」

 

「うぅ....」

 

 恥ずかしさからか机に突っ伏す城和泉。私が意図していない勘違いとはいえ、少しからかいすぎたかな?

 

「そう言えば牛王さんと一緒に寝るととてもいい夢を見れるって一部の巫剣たちに有名なんですよ」

 

「そうなのかい?」

 

「ええ、抱きしめられるととても安心して眠れるとも聞きますね」

 

 ‥‥そう言えば九字兼定も前に『主の抱擁(ほうよう)は正義だな‥‥』なんて言っていたね。

 というか、あの子にとって正義とは一体なんなのだろう。前にもきわどい兎の衣装を正義の正装だなんて言っていたし、少なくとも世間一般に言われている正義とは少し違うのかもしれない。

 

「そう言えば、牛王ってば前に津田越前守助廣にお母ちゃんって言い間違えられてたわよね」

 

「その話はよそうか」

 

 ソボロ助廣に見られてしまい、何故か落ち込んでしまったソボロ助廣を慰めるために数日ほど連続で一緒にお酒に付き合ったのは苦い思い出だ。

 

「でも確かに最近の牛王さんは、お母さんって呼んでしまう気持ちも分かる気がします」

 

「まあ....、たしかに。なんというか母性が滲み出てるって感じするもの。私には相変わらず悪戯ばかりするけど」

 

 母性うんぬんは誰かさんのせいなんだけど、口には出さないでおく。きっとここぞとばかりにからかってくるだろうから。

 

「城和泉がかまって欲しそうな顔をするからね。つい、からかってしまうんだ」

 

「私がいつそんな顔をしたのよ」

 

 あきれ顔でお酒に口をつける城和泉。少し飲み過ぎたのか頬に赤みがさしている。

 

「そういえばこの前も城和泉さん、部屋に牛王さんがいないと部屋が広く感じるってぼやいてましたね」

 

「ちょっ!?桑名江それは言わないでって言ったじゃない!!」

 

「あっ...すみませんっ」

 

「ふぅん、城和泉もなんだかんだ寂しがってくれてたんだね」

 

「う、うるさいわね。ただ部屋が広く感じるなぁって、....ただそれだけよ!」

 

「そうなのかい?わたしは城和泉とこうやって話す時間が減って少し寂しいと思っているんだけどね‥‥」

 

「....牛王、そういう台詞はそのニヤニヤ顔を止めてから言いなさいよ。からかう気なのが丸分かりよ」

 

「おっと、わたしとしたことが失敗してしまったね」

 

 城和泉がオツマミを箸でつまみながらじと目を向けてくる。どうやらお酒のせいで表情筋が緩んでいたみたいだ。

 

 

「あ、ごしゅじんさまだ~っ」

 

 突然後ろから誰かに抱きしめられる。誰かと言うか、この声はーー

 

「ちょ、亀割刀!? いかんだろ、いきなり抱き付いたりしては! すまない、この娘には私からしっかり言っておくから赦してはもらえないか」

 

 ‥‥やっぱり亀割刀だったか。抱きつくのは遺憾ながら最近慣れてしまったけど、逆に抱きつかれるのはなかなか慣れないものだね。

 そんなことを考えてる内に亀割刀は抱きついたままわたしの頬に頬擦りしている。

 

「慣れてるから大丈夫だよ、きみも一緒にどうかな?」

 

「いいのか?」

 

「構わないよ、亀割刀もその気だっただろうしね」

 

「わ~いっ、ごしゅじんさまといっしょにのみます~」

 

「呑む為にもまずは席に座らないとね? ほら、亀割刀も空いている席に座ろうか」

 

「もちょっとこのままで~。はわあ‥‥ごしゅじんさまのせなかあったかいですぅ‥‥」

 

 亀割刀が離れてくれるまでもう少しかかりそうかな。わたしとしてはさすがに少し気恥ずかしいから早めに離して欲しいんだけど。二人に目線で助けを求めてみる。

 桑名江はなんか恋愛小説を見ているときのような目でこっちを見ている。‥‥そういうのとは違うはずだからそんな目で見ないでくれないかな?

 ーー城和泉はなんか、またかって感じの目でこちらを見ている。最近城和泉はじと目でわたしを見ていることが多い気がする。なんか納得いかない。

 そんなことを思っていると亀割刀と一緒にいた女性が机の反対側に座った。

 あれ、この人ってたしかーー

 

「失礼する。ふむ、ここはビールがあるのか。店主、ビールを二人前たのむ」

 

 ーーうん、亀割刀に当てられた観察方の人だね。亀割刀と一緒にいるということは多分、今も巫剣観察のお仕事中なはずだけれど、すでに顔が赤い。

 大丈夫なのだろうか。いや、それを言ったら観察対象に接触してしまっている時点で大丈夫ではないはずなのだけれども。

 そんなことを考えていると観察方の人の前に二杯のビールが置かれる。

 

「お、ビールがきたか。ほら亀割刀、ビールが来たぞ。飲まないなら私が二杯とも呑んでしまうぞ?」

 

「あ~っ、だめです、そのしゅわしゅわはわたしのですよっ」

 

 言うやいなや亀割刀は私を解放して観察方の人の隣に座りビールを呑ん‥‥ペース早すぎないかな?

 

「ぷはあ、しゅわっと~、のどごし~、さわやか~っ。おかわり!」

 

「凄い呑みっぷりですね‥‥」

 

 桑名江がひどく驚いている。たしかにわたしたちは普段一気なんてしないからびっくりしてしまうよね。わたしもびっくりした。

 

「いやあ、相変わらずいい呑みっぷりだ! さあ、もっともっとおかわりDA!」

 

 観察方、相変わらずって普段から一緒に呑んでいるんだね‥‥。それたしか減給案件だったはずだけれど。

 というか大分出来上がってるみたいだけど、ここで何軒目なのだろうか。

 

「いえーい、ぐびぐび、ふはあ!おかわり!」

 

「もう4杯目って、‥‥亀割刀は相変わらずよく呑むね」

 

「きょうはごしゅじんさまもいますからね!いつもよりもおさけがすすみます!」

 

「それは良いけど、お金は大丈夫なのかい?」

 

「だいじょうぶです、ともだちのおごりですから!ここくるまえのみせもともだちのつけになってます!」

 

「えっ」

 

 さっきまで真っ赤だった観察方の人の顔が真っ青になっている。人って一瞬でここまで顔色を変えられるものなのだね。今でも医者として回診しているけど、そのわたしでも初めて見たよ。

 

「あ、あのな亀割刀。私今月も減給くらってるからそんなに手持ちない‥‥ああ、まったまった、待て亀割刀、呑むな呑むなぁぁああ! ってさっきまでの店も私のツケになってるのか!?」

 

「ああ....もうまどろっこしいですねえ。むそうさんげぇっ」

 

 

「あっ‥‥」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ‥‥賭け事で全財産溶かした人ってきっとあんな顔をするのだろうね。亀割刀が寝てしまった後のあの観察方の人の顔をわたしは生涯忘れないだろう。

 

 

「ごしゅじんさまぁ、おふとんはまだですか~?かめわりとう、もうねむいですよう」

 

「部屋までもう少しだから頑張ってね」

 

 飲み会が解散した後、亀割刀を起こして今は明治館に帰ってきたところだ。

肩を貸してあげたけど、亀割刀とわたしの身長が違うからうしろからわたしにしがみつく形になっていた。

 そうこうしている内に亀割刀の部屋の前に着いた。

 

「ほら、着いたよ?」

 

「ううん? ごしゅじんさま、ここじゃないですよ‥‥?」

 

 そう耳元でささやきながら、亀割刀はゆっくりとわたしの部屋を指差した。

 

 

「かめわりとう、きょうはあっちでねたいきぶんです‥‥」

 

「亀割刀?」

 

「さいきんあまりあえていなかったから。ねえ、ごしゅじんさま。かめわりとうのわがまま‥‥きいていただけないでしょうか‥‥」

 

 耳元でささやかれる少し不安そうな声に、ふと何かがこみあげてくる。

 

「‥‥まったく、しょうがないね。今日だけだよ?」

 

「あ‥‥。ありがとうごさいます、ごしゅじんさま....」

 

 耳元でささやく声に安堵と喜びの色が混ざる。表情は、見えていないけどきっと、笑っているのだろうね。

 泣いた烏がなんとやら。でも、悪くない気分だ。

 

「ふふ、甘えん坊な亀割刀には絵本でも読み聞かせてあげようかな?」

 

「あは、それもいいですね‥‥。いっぱい、いっぱいあまえさせてください....」

 

 

 

 

 亀割刀を布団に入れてあげたら眠るまでの少しの時間だけど、精一杯甘えさせてあげよう。

 こみあげた母性にわたしはそう思ったのであった、‥‥なんてね。

 

 

 

 

 





牛王がなぜか母性全開な扱いになっている。コレガワカラナイ。

あ、ガールズラブは保険だから勘違いしてはいけないよ?(牛王並感)

はい、公式のあの人とは観察方の人でした。
個人的にはなんだかんだ好きなキャラです。
普段対象への接触時は敬語、酔っぱらうと素のかっこいい口調になっていたので、今回は最初から酔っぱらっていて素が出ている感じです。

亀割刀の方は雰囲気出てたか怪しい。
もし違和感を感じた亀割刀が愛刀の人がいたら申し訳ない()


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あべこべ世界の新任隊長は天華百剣を知らない(仮)

 今回は貞操概念逆転ものです。
 醜美逆転ものも書きたかったけど、見るのはともかく巫剣達が虐げられる世界観や設定を考えることに拒絶反応がやばかったのでそちらはあえなく断念。
 誰か代わりにお願いします(懇願)



 明治館1階の食堂で和泉守兼定と菊一文字は朝食をとっていた。食堂にいる巫剣達は珍しくがやがやと落ち着きがなくいつもより騒がしい。

 

「‥‥そうか、今日は新しい隊長が着任する日か」

 

「僕としては綺麗な男性だったりすると嬉しいですね。ま、無いでしょうけど」

 

 この世界では大昔から男の数が少なく、希少な存在になっていた。この街にも男は数人くらいならいるであろうが、基本的には家からは出ず部屋の中でやりたいことだけをして暮らす、いわゆる箱入り息子が普通だった。

 それゆえ巫剣として長く生きる二人も男を見たことはない。

 男を見ずに一生を終える女性もさして珍しくはないこの世界では菊一文字の言ったことは年頃の女性の妄想のような話だ。

 

「戦場に男なんて不要だ」

 

「さすが鬼の副長、硬派ですね。僕としてはつねに禍憑に目を見張らさなければならない職場だからこそ、華が必要だと思うんですけれど」

 

 そんな話をしていると一人の女性が近付いてくる。

 

「あ、和泉守さん菊一文字さん丁度良かった。お二人とも今日は任務は無かったですよね」

 

「七香か、確かに今日は非番だったが」

 

「ええ、僕も今日はこれといって用事はなかったですよ」

 

「実は今日隊長さんをお迎えするはずだった石田切込正宗さんと加州清光さんが禍憑を見付けて交戦に入ったらしくて、代わりに二人に新しい隊長さんのお出迎えをお願いしたいんです」

 

「禍憑の方は加州がいるなら大丈夫か。わかった私が行こう」

 

「加州さんもこんな時に禍憑見付けちゃうなんて大変ですね。僕で良ければいいですよ」

 

「ありがとうございます。ここ最近は何故か禍憑の出現が多いです。一体何が起きてるんでしょう」

 

「案外この街に絶世の美男でも来たんじゃないかな。禍憑は人の負の感情で湧きますし」

 

「もうっ、そんな男の人を見ずに生涯を終えた女性の執念なんかで湧くわけないじゃないですか!」

 

「いや分からないですよ? 案外本当にそうだったりして、なんてね」

 

「ほら二人とも、確かそろそろ新しい隊長殿が到着する時刻だろう。ふざけたこと言ってないで行くぞ」

 

「そうでした! 私は準備してから行きますのでお二人は先に明治館の前で待っていて下さいね」

 

「わかりました。七香さんも忙しそうだけど頑張ってください」

 

「ありがとうございます。それではっ」

 

 

 

 

 

 二人が明治館の入り口に移動してから半刻が経った。

 七香は準備に忙しいらしく出迎えには参加できないと二人に伝えており、二人で隊長を出迎える手筈になった。

 

「そろそろ新しい隊長さんが来る時刻ですね。どんな人でしょうか。僕としては仕えがいのある人がいいんですけれど」

 

「どんな人であろうと私はその隊長の指示に従うまでだ」

 

「はは、和泉守さんならどんな人が来ても理想の隊長にしてしまいそうですね。....っと、隊長が来たみたいで‥‥すね‥‥‥‥」

 

「どうした菊一文字、そんな呆けた顔をし‥‥て‥‥」

 

 

 この世界の女性が想像する理想の美男子がそこにいた。小さくすらりとした体に整った中性的な顔立ち、どこか幼くみえる守ってあげたくなるような理想の清楚系美男子。

 その美男子は走ってきたのか頬を朱に染めて息を切らしている。

 正直にいってムラムラする、菊一文字はそう思った。

 新任の美男子は息を切らしたまま少し緊張した顔でお辞儀をする。

 

「新しく着任した隊長の誠(マコト)です。これからよろしくお願いします!」

 

 

 (可愛い、可愛すぎる! え、この物凄く可愛い美男子が僕の新しい巫剣使い!?)

 

 菊一文字の好みにクリティカルヒットした。

 そのあまりの可愛さに一瞬口が動かなくなるもどうにか声を振り絞っていつも通りの対応を心掛ける。その際に衝動に身を任せて襲ってしまわないように可能な限り体を律するのも忘れない。

 

「よ、よろろくお願いします。僕は菊一文字という巫剣です。これから末永くずっとよろしくお願いします」

 

 いつも通りの対応ではなかった、というか台詞をかんでいた。

 それに気付けないくらい動揺した菊一文字だったが、和泉守兼定が一言も喋っていないことに気付き、同時に仕方がないと思った。

 

(こんな美男子を見てしまったら言葉が出なくなってしまうのも仕方ないですね。僕ですら一瞬声が出ませんでしたし)

 

 菊一文字がフォローを入れようとしたとき、それより和泉守の口が開く。

 

「私は和泉守兼定というものです。これから貴方の刀として一生護り続けることを誓います、我が君」

 

 一瞬で誠衣装になり片膝をついている和泉守兼定の姿がそこにはあった。

 

「我が君!? ちょっ和泉守さん、あなたそんなキャラじゃないでしょう!? 鬼の副長はどこ行ったんですか!? というか今の一瞬でどうやって誠の陣羽織を羽織ったんですか!?」

 

「我が君よ、館内を案内します。さ、こちらに」

 

「え、あ、はい。よろしくお願いします」

 

「和泉守さん一応言っておきますが、手を握ったりしたら憲兵案件ですからね」

 

 和泉守の手がピクリと動いたのを見逃さずに菊一文字が忠告する。

 この世界では男性が許可しない限り身体的な接触は犯罪である。血迷って抱きつこうものなら死罪、巫剣なら金槌での打ち折りが待っている。

 

 菊一文字の言葉に和泉守の顔に少しだけ理性が戻り、自分のやろうとしたことにサーっと顔が青くなる。そして菊一文字の方を見て、視線で感謝を伝えた。

 

「失礼、我が君。‥‥改めてこちらへどうぞ」

 

「え、あ、よろしくお願いします」

 

 今のやり取りを理解していない誠が戸惑いながら館内へ入っていく。

 

 (戸惑っている顔も可愛すぎるっ)

 

 誠の戸惑い顔を脳内保存した菊一文字はそのまま二人の後を追った。

 

 

 

 

 

 あの後明治館は混乱に陥った。年頃の巫剣達が大勢いるのだから当然とも言える。

 そんな巫剣達の肉食乙女と化した顔を見るたびに菊一文字は、不謹慎ながら彼女らよりも誠と長くいれることに優越感を感じてしまっていた。

 長くといっても館内案内の間だけだったが。

 

 今は部屋に戻っていて自室で恋愛小説を見ている。禍憑に襲われていた男性を助けた女性がそのまま関係を深めていく内容で、女性達の間で大人気の小説だ。

 菊一文字も愛読しており、禍憑から逃げるために男性と手を繋ぐシーンを見たときには布団をゴロンゴロンと転がりながら言葉にならない声をあげたものだ。他の人には絶対に見せれない奇行である。

 

 小説を読んでいると勢いよく扉が開いた。

 

「菊一さん酷いですよ、またですか!」

 

扉を開けたのは加州清光だった。

 

「ああ、かしゅーさんですか。酷い、とは?」

 

「また私の巫剣使いを毒牙にかけようとしましたね!」

 

「酷い言いぐさだなぁ。僕は禍憑と交戦して隊長のお出迎えが出来なくなってしまった加州さんの代わりに七香さんに頼まれたんですよ」

 

「そうやってまた奪うつもりでしょう、騙されませんよ!」

 

「騙してなんかいないですよ。そんなに不安なら僕と一緒に任務をするようにしますか? 新撰組で一番の働きをする人の下なら僕も勉強になりますし」

 

「うっ、完全に嫌がらせじゃ....ゲボッ、ゴホッ」

 

 

「大丈夫ですか!?」

 

 いつの間にか開けっぱなしの扉の前に薬箱を持った誠が立っていた。誠は心配そうに加州に近付く。

 

 

「あ、誠さん。かしゅーさんなら大丈夫ですよ、いつものです」

 

「え、そうなの?」

 

「主様、菊一さんの言う通りです。巫剣は病気にはかかりませんから、ですからその手に持った薬箱は下ろしてください!」

 

「そ、そう? 大丈夫ならいいんだけど」

 

「ええ、もうそれは完全に! むしろ今が絶好調ですから!」

 

「かしゅーさん落ち着いて。血を吐きながらてんぱっちゃってるとだいぶ危ない人に見えちゃいますよ」

 

「ぐっ、そうやって菊一さんは‥‥ゴホッゲハッ! くっ、失礼します」

 

「あ‥‥」

 

 誠の持つ薬箱を見て逃げる加州。薬嫌いは相変わらずだった。

 

「やれやれ、嫌われたものですね」

 

「菊一文字さんは加州清光さんとは仲が悪いんですか?」

 

「僕としてはみんなと仲良くやっていたつもりだったんですけど、なんでか目の敵にされてしまって。‥‥それより、えっと、僕に何か用がありましたか?」

 

「あ、そうでした! 菊一文字さんちょっと失礼しますね」

 

 そう言うと誠は菊一文字の前で屈んで菊一文字の足の裾を捲る。

 

(え、近! というか男の人ってとってもいい匂いが....)

 

 上では菊一文字がスンスンと匂いを嗅いでいることなど露知らずに誠は菊一文字の足を真剣な表情で見ている。

 

「‥‥やっぱり。菊一文字さん、怪我していますね」

 

「ぅあ? あ、うん。‥‥バレてしまいましたか」

 

 菊一文字の足は紫色に腫れていた。

 巫剣使いが未着任だった期間に菊一文字は刃こぼれするほどではないものの負傷してしまっていた。

 どうやら微妙な足取りの違和感から誠は気付いたらしく、薬箱はその為に持ってきていたようであった。

 

「痛そう‥‥。少し触りますね」

 

 凄く近い位置に男の人が居ることで混乱ぎみの菊一文字には一切気付かずに誠は触診を始める。

 

(お、男の人が僕のふくらはぎを触ってる!? うわ、手が綺麗。というかなにこの状況、ご褒美かな?)

 

 菊一文字が刀生初の男とのふれあいに至福を感じてふるふると震えていると、それを怪我のせいだと勘違いした誠が真剣な表情のまま呟いた。

 

「痙攣するほど辛かったんですね。‥‥うん、これだけの傷だとお手入れした方がいいですよね」

 

「お、お手入れですか!?」

 

(男の人にお手入れしてもらえるとか、これ僕捕まったりとかしないですよね!? というか巫剣の『折れるまでに一度は体験したいことベスト3』である男性からのお手入れがまさかの実現!?)

 

 菊一文字の驚いた声を、羞恥によるものと勘違いした誠が真剣な顔を菊一文字へ向ける。

 

「巫剣使いとはいえ会ったばかりの男の人に体を触られるのは不快だと思います‥‥。でも菊一文字さんが怪我をしたままなのは私が嫌なんです!」

 

(脈あり? これって脈ありですよね? これは婚姻待ったなしなのでは!?)

 

「ふつつかものですがよろしくお願いします」

 

「ふつつか‥‥?」

 

「あ、いえなんでもありません。お手入れして欲しいです。お願いします」

 

「よかった‥‥」

 

 菊一文字の欲望にまみれた返事を聞いて、自分の誠実な思い(怪我を治したい)が届いたと安堵しあどけない笑顔を向ける誠に、菊一文字のムラムラは加速する。

 

(お手入れして欲しいなんて犯罪級の台詞を言った僕の体を気遣って安堵してくれるとか、天使かな?)

 

「あ、では布団に横になって下さいね」

 

「は、はい」

 

 上着を脱ぎ布団にうつ伏せになった菊一文字の上に誠が跨がり、拭紙で綺麗に拭いていく。

 

「ん‥‥っ」

 

 そのまま打ち粉と拭紙を何度か使って菊一文字の背中を綺麗にしていく。自分を大切にしていると肌で感じれるその丁重な手際に菊一文字の口はだらしなく開いていく。

 

「ふっ、くぅ‥‥っ。んはあ‥‥っ」

 

(ああ、これはヤバイですね。本来守るべき男の人に身を任せることがここまでいいとは。これはまさかあの恋愛小説に書いてあった『バブみ』というものなのでは?当分おかずには困らないですね‥‥)

 

 顔は赤く火照り開いた口からよだれを垂れ流す菊一文字。下半身が疼きっぱなしであり、内心このまま襲っても許されるのではという気持ちが支配していく。

 

(いや、さすがにそれは捕まる。というか誠さんに嫌われたくはないですね。がまん、がまんするのです)

 

「では失礼します」

 

 菊一文字が鋼の精神で欲望を押し殺していることなど露知らずの誠。

 手に丁子油を付けた誠は菊一文字の背中を揉みほぐし始める。

 

(ふあっ‥‥あっ‥‥あっ‥‥‥‥。これはやばい、男の人の手が直接僕の背中を揉みほぐしてる‥‥っ。というかこのお尻に乗っている感触って、誠さんのお尻!?うわ、なにこれ柔らかい‥‥‥‥うっ)

 

「え?、あ、うわぁっ」

 

 ビクンビクンと腰を痙攣させた菊一文字に誠の体勢が崩れる。

 手で体を支えようとするも油で滑りそのまま覆い被さるように倒れた。

 

「いったぁ~‥‥」

 

(胸のポッチが背中に当たってる!? え、誠さんサラシ巻いていないんですか!?というかお尻に当たってるこの硬いのは‥‥)

 

 そこまで考えた瞬間菊一文字の意識は途切れた。

 

「ううっ、ごめんなさい菊一文字さん‥‥‥‥あれ、菊一文字さん? ちょっ、菊一文字さん!? だ、誰かーーっ!? 菊一文字さんがーーっ!!」

 

 

 

 騒ぎを聞いて駆けつけた巫剣いわく、その菊一文字の表情は鼻血を出しながらも、とても満足しきった安らかな笑みを浮かべていたという‥‥。

 

 

 

 

 

 

 




 どうも、いまだに某お婆さんの名前が頭から離れないわたち教徒です。
 先日ぎっくり腰をやってしまった際、頭の中であの名前が浮かんだ時に私はあの名前を忘れることを諦めました。多分一生あの名前を頭に浮かべて生きていくのだと思います。


 誠さんは一応転生者(0才児スタート)になります。といってもなろうあるあるの貞操概念逆転系の転生者なので特に無双系能力なんて持ち合わせていないでしょうが。
 1話完結系の主人公に名前を付けたのはなんか今回は誠キャラが多かったから試しに誠と付けてみた次第です。局長とヤンデレ百合さんが居ないのはゲーム内好感度や未入手の問題と意図して誠キャラを出したわけではなかった為。
 それと多分、牛王隊長や現代デスゲーム系(?)の話みたいに続きを書くこともあるかもしれません。




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