海軍史上最悪の男 (チャリ丸)
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始まるまでの序章
その男、最悪につき


原作キャラが酷い目に合います。

シリアスはほとんどありません。エロメインを考えてます。

続くかは未定です。その割にはエロががが…。

シャボンディ諸島の終わり辺りから始まります。


「どこじゃあーっ! どこへ行ったあぁーッ!」

 

 昼の海軍本部に、老兵の怒号が響き渡る。

 

「が、ガープ中将! お疲れ様です!」

「お疲れ様です!」

「ん? おぉ、お前たちもご苦労さん……って違うわいっ! お前たち、ジャックハートの奴を知らんか!?」

 

 老兵の名はガープ。

 廊下を慌てた表情で駆けるその姿からは想像しにくいが、現在に至るまでに積み上げてきた功績は凄まじいものであり、世界中に『海軍の英雄』として知られている伝説の海兵だった。

 

「はっ! ジャックハート中将なら、先ほどパトロールに出てくると……」

「アイツめ……。また物色しに行きおったか」

「ガープ中将。ジャックハート中将に、何かご要件が?」

「何、大した事じゃないんじゃが……」

 

 そう言って、ガープが言い淀む。

 こう聞いてくるということは、この若い二人の海兵はアイツのことを深くは知らないということ。

 教えるのもはばかられるような事だが、それでも部下には教えなければならない。

 

「アイツが無類の女好き、というのは知っとるか?」

「は、はい」

「とっ捕まえた女海賊どもを……あいつは、自分のモノにしておる」

「なっ……えっ……?」

「孕ませとるんじゃよ。抵抗させずに」

 

 ジョー・ジャックハート。

 まだガープの目の前にいる海兵達ともさほど変わらぬ年齢でありながらも海軍本部中将という異例の地位に付いている人物。

 しかし、その素行に問題があった。

 

「い、良いのですか……そんなこと……!」

「言わば黙認じゃ。……アイツは戦闘に関しては天才じゃからのぉ」

「し、しかし!」

「実力があるからこそ認められる、ということじゃ」

 

 海兵でありつつも、その『行き過ぎた正義』を行使する者もいる。

 しかし、ジョー・ジャックハートの場合は話が別だった。

 

「1週間で7000人……1日あたりに1000人か。アイツが一人で先週捕まえた海賊の数じゃ」

「そ、そんなにも……」

「悪魔の実も食べずにそれじゃからのぅ。軍としても、戦力は置いておきたいらしい」

 

 その悪行を拭い去るかのような仕事っぷり。

 他の追随を許さない彼の成果は、上層部に彼の内情を黙認させるには十分だった。

 

「……そ、それで、そのジャックハート中将にはどう言った要件が?」

「おぉっ、忘れておったわい。お前たちも会ったら伝えておいてくれ」

 

 ―懸賞金が1億を越えるルーキーが、11人もシャボンディ諸島に集まった。

 

 若い海兵達にとっても衝撃的なニュースをガープは当然のように言い放った。

 

 

 時を同じくして。

 

 海軍本部の一部で話題に上がっていた、ジョー・ジャックハート本人はというと。

 

「あぁんッ! や、やめっ、んひぃっ!?」

「おー? どした、やっぱ感じてんの?」

「そんなわけ……あはぁんっ!」

 

 とある国で女性と性行為に耽っていた。

 その部屋には二人以外の誰もおらず、寝室と呼ぶにはあまりにも広いそこには、ただただ女性の嬌声が響くだけだった。

 

「あっ。もう一発膣内に出すわ」

「ふ、ふざけないで!」

「あれ、いいの? 俺、ビビちゃんに拒否されたらショックでアラバスタ守ることなんて忘れちゃうかも知んないよ?」

「ッ! 最ッ低……!」

 

 女性の名はネフェルタリ・ビビ。

 ここ砂漠の国アラバスタの王女であり、容姿端麗な少女だ。

 王家としての立場、責任を良く理解し、優しく真面目な性格の彼女。

 そんな彼女がなぜ彼に抱かれているかというと。

 

「クロコダイルが倒されて以降、誰がアラバスタの平和を守ってると思ってんだ? ビビちゃんでも、国王でも、麦わら海賊団でもねぇよ。俺だ」

「……っ!」

 

 国の平和のためである。

 彼は強い。『偉大なる航路』の前半にあるアラバスタ周辺にいる海賊など、一人で壊滅させてしまうほどには強い。

 そんな彼に国を守ってもらうために、ビビはジャックハートとの交渉に応じたのだ。

 

「それに、国王にはちゃんとしたお付き合いをしてるって言ったろ? 誰も仲介せず、個人的に知り合って恋に落ちたって。……そっから離れちゃったら、アラバスタだけじゃなくて国王達もやばいよ?」

 

 交渉内容は、アラバスタ国内全てを守るから好きな時に抱かせろ、というもの。

 もちろん最初は断ろうと思った。しかし、王下七武海であったクロコダイルがいなくなり、名乗りを上げようとした海賊達が後を絶たないことも事実だった。

 そんな海賊達を、彼は一人で倒していたのだ。

 彼の申し出を断ってしまえば、アラバスタを危険に晒してしまうかもしれない。

 そう考えた末の、決断だった。

 

「……かに……」

「ん?」

「……なか、に……」

「聞こえないなぁ?」

「ッ! ……わ、私の膣内に、出してください……ッ!」

「そこまで言うんなら」

 

 悲痛な叫び。

 ビビの顔は悔しさに歪み、目の前の男に嫌悪を通り越して殺意すら感じ始めていた。

 しかし、身体は正反対の反応を見せた。

 

「っ、は、あんっ! ぁ、うぅ……お、おく……まで……!」

「そりゃそうでしょ。ビビちゃんには、俺たちの可愛い赤ちゃんを産んでもらわないと」

「っ、くっ、うぐぅ……」

 

 ついにビビの眼から涙が落ちる。

 それと共に、ビビの秘部から激しい卑猥な水音が鳴り始める。

 

「はっ! なんだ、ビビちゃんもやっぱ感じてんじゃん」

「あぁっ! か、感じてなんか…!」

「嘘は良くないなぁ? こんなに、締め付けてきてんのに」

「くっ……ふ、あ……! や、やぁんっ!」

 

 悔しいが、男の言う通りだった。

 膣は濡れ、愛液が滴り、そして身体と子宮は彼の精液を待ち望んでいた。

 彼と肉体関係を持って数ヶ月。すっかり彼のお気に入りに調教されてしまったビビの身体は、彼だけのものになっていた。

 

「ほらよ、ありがたく受け取りなッ!」

「あああぁっ! イクッ、イックウゥゥッ!! ああぁんっ!」

 

 正常位で膣内に出される。

 これで本日6度目。にも関わらず全く衰えない彼の射精に、抱かれているビビも絶頂した後に呆れるしかなかった。

 

「はぁ……、はぁ……。は、早く抜いて……」

「いやー、もうちょっと二人だけのこの感触を楽しもうよ」

「……もう。勝手にしてください」

「はぁーい」

 

 ぐでっと自分に倒れ込んでくるジャックハートを見て、ビビは苦笑いをするしか無かった。

 こんな人に頼ることしか出来ない自分と、こんな人に抱かれる自分。そして、こんな人が世界最強の強さを持っていることに。

 

「……ジャックハートさん」

「ん?まだ欲しい?」

「違いますっ! ……その、他の女性や国にも、こういったことを?」

 

 それはビビの本音から出た素直な疑問だった。

 アラバスタを守るためという交換条件の元、ビビは彼に身体を差し出している。

 そんなことを他の国にもしているのか、と気になったのだ。

 

「……今んとこ、ビビちゃんとアラバスタだけだよ」

「えっ?」

「一目見た瞬間、この子がいる国には絶対手出しはさせねぇって決めたんだ。……まあ、クロコダイルの後処理に来た時が初めてだったから、遅すぎたんだけどな」

「あ、あはは……」

「海賊はしょっぴいた後に好みがいたら犯してるけど」

「っ、そ、そんなことしてるんですか!?」

「俺が捕まえた海賊だもん。何するかは俺の勝手でしょ? 殺さないだけマシだと思ってよ」

 

 自分とアラバスタだけが特別。

 王女として、自分の国だけが特別扱いされるのはどうかと思った反面、女として少し嬉しく思ってしまった自分がいた。

 

「あ、何。もしかしてビビちゃん怖かった?」

「……はい?」

「他の国に取られるかもーって。……安心してよ。君と俺がいる限り、アラバスタは絶対に平和だ」

 

 彼にバレたくはないが、正しくそれはビビの本心だった。

 若しかしたら他の国でもこんなことをしているかもしれない。ならば、彼が他国に赴いている間にアラバスタが襲われればどうなるのか、と。

 想像もしたくない事だったが、杞憂だったようだ。

 

「そんなことよりさ、ビビちゃんまたおっぱいデカくなったよね」

「っ! な、なんてことを!?」

「いやいや、膣内射精されてるし、今更恥ずかしがるようなことじゃないでしょ。俺は好きだよ、揉み心地のいいおっぱい」

「あっ……んぅ……。くすぐったい、です……」

 

 そんな彼に、両胸を揉みしだかれる。

 先ほどまでは嫌悪していた彼だが、自分を開発しただけあってやはり上手く、ビビの感じるところを的確に攻めていた。

 

「あんっ! は、ぁ……っ!」

「どう?またしたくなってきた?」

「……はい」

「ハッハッハ。そういうエッチに素直な子、俺は好きだよ」

「あぁんっ!」

 

 再び、ビビの声が彼女の寝室に響き渡ることとなった。

 

 

 ◇

 

 

「ねぇビビちゃん。今日のはどうだった?」

「……気持ち良かったです」

「なら良かった。俺も、ビビちゃんには気持ち良くなってほしいしね」

 

 あれからさらに4回戦。

 全てのフィニッシュをビビの膣内で迎え、これでもかと言わんばかりにビビの子宮に精液を放ったジャックハートとビビは、ベッドの中で抱きしめあっていた。

 

「抱いてる時もだったけどさ、やっぱりビビちゃんって可愛いよね」

「あ、ありがとう、ございます……」

「うん、やっぱり海賊共には見せたくないな。この美貌は」

 

 反抗的な態度を見せても、どうせ交渉のことを持ち出されて最終的には丸め込まれる。

 ならばもう、感じたままのことを言えばいいのだと、ビビは割り切っていた。

 

「じゃあ、悪い海賊達から守ってくれますか?」

「そりゃあもちろん! ビビちゃんだけじゃなく、ビビちゃんが好きなこの国ごと守るよ」

 

 悪い海賊。

 そこに過去アラバスタを救ってくれた英雄である麦わら海賊団は含まれるのか、とは聞かなかった。

 今自分を抱きしめている男は、海軍本部の中将の中でも、あのガープを差し置いて最強と言われるほどの傑物。

 どうするかは決まりきっているのだ。

 

「それなら良かったです」

「……ねぇビビちゃん。俺の子を産んでくれる気になった?」

「最初から、そのつもりで膣内射精(ナカ出し)してるんでしょう?」

「そっか。その気があるんなら良かった。俺とビビちゃんの子なら、絶対いい子が産まれるだろうしね」

 

 ビビは、アラバスタの国民たちに交際を発表していない。

 そんな自分がいきなり妊娠した、と言えばどうなるだろうか。

 相手が裏でアラバスタを守っている英雄で無ければ酷い言葉を浴びせられるかもしれない。

 

「……ビビちゃん」

「……ジャックハートさん……」

 

 ピロートークに花を咲かせ、そして生々しい話へと移り変わり、だんだんと彼の顔が近づいてくる。

 ここからまた唇を奪われて行為に発展するのだろう。

 ビビがそう予想していた、次の瞬間。

 

「ぷるぷるぷるぷる」

「あぁ?」

 

 ベッドの枕元に置いていた彼の子電伝虫が鳴った。

 

「チッ。……なんだ」

『ジャックハート中将! 海軍本部より、緊急召集がかかりました!』

「今忙しいんだ。悪ィ行けねぇ」

『……ガープ中将から、サボったらセンゴク元帥へ報告のち、罰則を与えると』

「あんのクソジジイがぁ……! ……で、どこに行きゃあいい」

 

 子電伝虫を介し、渋々自分の部下を会話をしていくジャックハート。

 目の前の絶世の美女との11回戦をお預けされたことから、相当に苛立っていた。

 

『シャボンディ諸島です!』

「……ほぉ。本部にしちゃ、いい暴れ場所くれたじゃねぇか」

 

 獰猛な笑みが浮かび上がる。

 今まで自分を抱いていたただの女好きの顔ではなく、そこには史上最強とまで言わしめる中将の姿があった。

 

『では、報告は以上です』

「あぁ。ジジイ共に言っといてくれ。必ず行くってな」

『はっ!』

 

 部下のその言葉を聞き、ジャックハートは子電伝虫の通信を切った。

 

「悪いなビビちゃん。11回目の膣内射精はお預けだわ」

「は、はい……」

「だから。……んっ」

 

 身体を起こしていた彼に、強引に唇を奪われる。

 

「んむっ、ちゅ、じゅるぅ…あむっ、んっ…!」

 

 舌を入れられ、歯の裏まで舐められ、口内を蹂躙され尽くす。

 二人が唇を離せば、そこに唾液の橋がかかる程に濃厚なキスをした彼は、ベッドから降りた。

 

「今はこれで我慢しといてね。またすぐ、戻ってくるから」

 

 すぐさま服を着て、白いコートに袖を通さずに羽織り、彼はビビの寝室から出ていった。

 

「……はぁ。疲れちゃった……」

 

 朝から彼の無限とも言えるような性欲に付き合わされ、ビビの体力は底をつきかけていた。

 行為に耽っていたせいで抜いていた昼食を取ることもなく、ビビは沈むように眠りに落ちた。

 

 

 ◇ ◇

 

 

 そこから数時間後。

 六式という特殊体術のうち「剃」と「月歩」を同時に使い、常人には考えられない程の速さで飛び、ジャックハートは中将としてシャボンディ諸島へ着いた。

 

「ご苦労様です、ジャックハート中将!」

『ご苦労様ですっ!』

「あーい、お前らもお疲れさーん。……で、俺は何すんの?」

 

 部下の揃った言葉に適当に言葉を投げかけ、任務と現状を聞き出す。

 

「今は特にこれといった抗争は…ムグッ!?」

「これといった抗争じゃねぇだろ。ここに、犯罪者の、海賊共がいる。……ならず者の、無法を好むクソ野郎共だ。居るってのが分かってんなら、とっとと探しに行けやッ!」

『は、はいっ!』

 

 報告にきた部下の口を片手で掴み、そのまま上に持ち上がる。

 それ相応に鍛え抜かれ、武器も装備していたその海兵の身体は相当に重いはずだ。

 それが、まるで紙切れを掴んでいるかのように軽々と持ち上がった。

 その光景と彼の気迫に、部下も従わざるを得なかった。

 

「……お前もだよ、マージ」

「はっ!」

 

 口を掴んでいた部下から手を離し、解放する。

 

「……ジャックハート中将」

「あぁん?」

「……天竜人が、麦わらのルフィに殴り飛ばされたと、報告が」

「……なぜそれをさっき言わなかった」

「申し訳ございません! 要らぬ混乱を招いてしまう恐れがあったためです!」

 

 部下から入ってきた情報。

 それは、世界貴族として知られている天竜人を、海賊“麦わらのルフィ”が殴り飛ばしたというものだった。

 

「まあ、いい。それは俺らの出る幕じゃねぇ。サカズキさん、センゴクさんが出てくるような案件だ。俺の部下にも連絡入れとけ。テメェらじゃ、麦わらにしてやられるだけだってな」

「はっ!」

 

 ジャックハートの指示は、特に何もするな、というものだ。

 自分に直接連絡が来なかったということは、今回の凶悪事件の解決に自分の力が必要ではないと本部が判断したということ。

 ならば、自分がやるべき事をやるだけだ。

 

「んじゃあ、行ってくるわ」

「……ジャックハート中将は、どこへ?」

 

 海軍将校だけが身につけることを許される、背面に「正義」と書かれた白いコート。

 それを覆い隠すような大きな黒いローブを羽織った。

 

「パトロールだ」

 

 そう言い残してその場から消え去るジャックハート。

 残された部下のマージも、急いで海賊を見つけに行くのだった。

 

 

 剃で移動すること数分、彼は自分以外に海兵が誰もいない所を練り歩いていた。

 

「『キャプテン・キッド』、『殺戮武人』、『死の外科医』、ねぇ……。ケハハハッ! カッコイイ名前だけが懸賞首の理由なんじゃねぇか?」

 

 彼が眺めているのは、先ほどシャボンディ諸島に着いた時に渡された賞金首達のリスト。

 最悪の世代、超新星とも言われるほどに億越えルーキーが多く、その数なんと11人。

 

「……まぁ、新世界前に3億が2人ってのはそうあることじゃねぇ」

 

 どれもこれも市民にとっては凶悪な存在である海賊。

 その中でも危険度がかなり高い懸賞首の中で、この時点で3億を越えるというのは中々無いことだ。

 

「ケハハ。人魚買ういい小遣い稼ぎにはなんだろ」

 

 海兵が奴隷を購入してはいけないことは無い。

 限りなくグレーに近い主張を、ジャックハートは上層部に強引に通していた。

 

「さてと。ひとまず物色しますか」

 

 向かう先は28番GRにある人間(ヒューマン)オークション会場。

 海賊に犯罪者、果ては魚人や人魚、巨人族に至るまで、『人攫い』達が持ってきた人間を売買するのだ。

 

「女の人魚、いねぇかなぁ」

「ぷるぷるぷるぷる」

「チッ、またかよ……。はーい、こちらジャックハート中将」

『おー…ジャックハート君。こちら、黄猿ぅ。元気そうだねぇ……』

「あっ、黄猿さん。お久しぶりです」

 

 いい女がいれば買って文字通り性奴隷にしてやろう。

 そう思っていた矢先の電話。

 だが、以前のように苛立ちはしなかった。

 

『今ぁ、27番GRの港に来てるんだけどぉ……。ちょっとー、打ち合わせをしたいんだけど〜』

「27番っすね。すぐ近くなんで、行きます」

『オ〜……。待ってるよ〜』

 

 かけてきた人物が違うのだ。

 海軍の中でも数人しかいない、自分が上司だと認めている人物。三大将の一人、黄猿ことボルサリーノ。

 彼からの招集ならば、応じるしか無かった。

 

「ほっ」

 

 再び剃と月歩を使い、一瞬にして28番GRを後にする。

 空を駆けて27番GRの港に着けば、見慣れた軍艦がそこに鎮座していた。

 

「じゃ、ジャックハート中将! お疲れ様です!」

「おう。黄猿さんどこだ」

「奥に―」

「来る必要は無いよォ……ジャックハート君……」

「黄猿さん、ご無沙汰してます」

 

 彼を待っていたかのように船の内部から出てきた黄猿。

 その顔は、普段通り飄々としていた。

 

「打ち合わせ、とは?」

「今いる海賊達、誰を狙うか―」

「『大食らい』ジュエリー・ボニー。……あの女を捕まえたらまた連絡するんで、その時は指示を」

「……君の女好きも、変わらないねぇ〜」

 

 黄猿がジャックハートに持ちかけた話は、今シャボンディ諸島にいる超新星たちの中で、誰を狙うかというものだった。

 ジャックハートが食い気味に答えるも、その人物を挙げることは黄猿も想定していたことだ。

 

「じゃあわっしは麦わら共を狩るよォ〜」

「海賊共には、それが一番の脅威かと」

 

 三大将の一人、黄猿。

 海軍本部最強の中将、ジャックハート。

 

 海賊達にとってこれ以上に無いと言ってもいい脅威が迫っていた。

 

 

 そこから僅か数分後のこと。

 

 

「ぐっ、ああああっ!?」

「船長!!」

 

 シャボンディ諸島を、戦火が包んでいた。

 

「よおボニーちゃん。迎えに来たぜ?」

「んだてめぇ……!」

「海軍本部中将、ジャックハート。……お前たちを捕まえに来た」

「なっ、なにぃぃいいっ!?」

「て、『天災』、ジャックハートォォオッ!?」

 

 ジャックハートの標的になったのは彼が黄猿に宣言していた通り、ボニー海賊団の一味だった。

 

「……チッ!」

「なんで能力が効かねぇのかって顔してんなぁ?」

「っ、くそ……!」

「お見通しだよ、君らの考えは。俺をガキにしてボコって殺す。それが出来なかったから、今こうして君のクルーは死んでんだよ」

 

 ジャックハートとボニー海賊団の戦闘が始まったのは、一分前にも満たない、ほんの数十秒前。

 そんな一瞬のうちに、ボニー海賊団の中でも腕利きの賞金首達が殺されたのだ。

 

「……ロクに戦えもしねぇのに、長居するからこういうことになる」

「テメエエエッ!!」

 

 怒りに身を任せた攻撃。

 しかし、そんなものが通用するような相手ではなかった。

 

「『ショット』」

「ガッ……ア……!」

「船長ォーッ!」

 

 向かってきたボニーの額に、デコピンをしたジャックハート。

 普通に鍛え上げられたそれならばただ痛いだけで済む。しかし、ボニーはそのデコピン一発で意識をもぎ取られてしまった。

 

「よいしょと」

 

 気絶したボニーの両手首に、悪魔の実の能力者の能力行使を封じる効果がある海楼石で出来た手錠をかける。

 

「……これでようやく、皆殺しの時間って訳だ」

 

 殺戮の時間が、始まった。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「うっ、く……。……ハッ! ど、どこだココ!?」

「俺の船の、俺の部屋だよ。ボニーちゃん」

「ッ! ジャックハート……っ!」

 

 ジュエリー・ボニーが意識を取り戻した場所は、あろう事か海軍の軍艦。それも、とびっきりのヤバい奴の部屋だった。

 

「てめぇ! ウチの仲間はどうした!」

「殺したよ。お陰で財布が復活したぜ」

 

 下卑た笑みを向けるジャックハート。

 海楼石の手錠で拘束され、彼の言うことが真実ならば仲間は皆殺され、ボニーにとってこれ以上に屈辱的なことはなかった。

 

「殺してやる……ッ!」

「君じゃあ無理だ」

 

 椅子に座っていたジャックハートが立ち上がる。

 

「むぐっ……!」

「ほほう……。近くで見れば、より良い女に見える」

「はっ! てめぇなんぞ、お断りだ!」

「断る権利があるとでも思ってんのか?」

 

 近距離で彼に口答えした、その瞬間。

 ボニーの口に猿轡が嵌められた。

 

「ん゛……! ん゛ん゛ーッ!!」

「イラマチオも良いけどさぁ……。やっぱ気の強い女海賊ってのは、反抗的な目を向けられながら犯すってのがたまんねぇよなぁ?」

 

 じたばたと暴れるボニー。

 しかし海楼石を付けられ力が抜けている自分と、化け物として知られているジャックハートの地力の差には従わざるを得なかった。

 

「ほれ。ここが、今日から俺とボニーちゃんの愛の巣になるベッドだ」

 

 抱き上げられ、ベッドの上に寝かされる。

 両手がバンザイの形で拘束されているせいで、ボニーの巨乳がより一層大きく主張する。

 

「へっ。揉んでくださいってか?」

「んっ……ふ、ぅ……」

 

 白いシャツを強引に捲り上げられ、直接胸を揉みしだかれる。

 その際の乳首への快感に、思わずボニーの口から熱い吐息が漏れた。

 

「諦めて、降参して、俺の女になって、ようやく色っぽくなってきたじゃねぇの。ボニーちゃん」

「んんぅっ! んーっ!」

 

 くりくりと乳首を抓り、弄られる。

 今までに感じたことのない快感に思わず身を捩ってしまう。

 

「損だよなぁ、今の女海賊ってのは。本物のセックスの楽しさ、気持ち良さも知らずに死んでいくんだから」

 

 ホットパンツとその中に履いていたショーツすら下ろされる。

 今ボニーの陰部を覆うのは、その髪色と同じ桃色の陰毛だけだった。

 

「今までもクルーとヤッてたのかも知れねぇけど、俺が本当のセックスを教えてやるよ」

 

 その日、ボニーは海賊団の船長を捨て、一人の女としての人生をスタートさせることとなった。

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

「おーう。お前ら、飯できてるか?」

「あっ。お疲れ様ですジャックハートさん。あの女は?」

「失神して股からザーメン流しながら寝てるぜ」

 

 少将の言葉に答えて食堂の席に着く。

 会話の内容は、先ほどまでジャックハートが抱いていた、ジュエリー・ボニーだった。

 

「ぎゃはははっ! ジャックハート中将、途中聞こえてたぜ?アイツがジャックハート中将にどんどんメロメロになっていく声!」

「ほう。例えばどんな?」

「ウチから離れないでぇ! とか?」

「離れるつもりなんざ微塵もねぇ。アイツが俺好みのうちは、ひたすら犯してひたすら孕ませる。それだけだ」

「好みじゃなくなったら?」

「インペルダウンに決まってんだろ」

「ヒューッ! さすがジャックハート中将、えげつねェ!」

 

 会話の内容から察することができるように、僅か1日持たずにボニーは陥落した。

 クルーを失ったこと。そして、死刑かインペルダウンか、可能性を見つけるためにジャックハートの性奴隷になるかで、彼女は逃げる可能性を見出そうとした。

 その結果、ジャックハートの虜になってしまったのだ。

 

「お前らも六式と覇気極めたらヤリたい放題だぜ?」

「いや、それ出来んのあんたぐらいですよ……」

「そうか?武装、見聞、覇王。それらを同時に完璧に使うだけだぞ」

「「「いやいやいや」」」

 

 この男がこれ程までにやりたい放題出来ている理由。

 それは特殊体術である六式と、「意志の力」である覇気を完全に極めているから、という単純なものだった。

 

「そもそも覇王色は珍しいですって!」

「そりゃそうか。…まあでも、残り二つを完璧にしたらいいんじゃねぇか?」

「…さ、さすがに言うことが違うぜ…!」

 

 その二つを極めたジャックハートだからこそ分かるものがあった。

 

「悪魔の実なんてのはぁ、飾りだ。結局戦うのは自分の肉体と心。そいつらを鍛えんのが、一番効率的だ」

 

 事実、ジャックハートは能力者相手でも引けを取らない。どころか、互角以上に渡り合い、最終的には捕獲してくる。

 

「海賊の能力者共は、たまたま食った実の能力を自分の力だと勘違いしてやがる奴が多い。そこを生身でぶっ叩いた時の表情が、たまんねぇのよ」

 

 ジャックハートが凶悪な笑みで舌舐めずりをする。

 自然系、超人系、動物系、全ての能力者に対してそれは有効であり、自分の能力は強いと過信している海賊達を一網打尽にできる。

 

「んっ、はぁん……」

「おっ、ボニーちゃん起きたみたいだ」

「じ、ジャックハートさん……もしかして、また?」

「当たり前だろ。上物の女が俺を求めてんだ」

 

 ジャックハートの部屋から聞こえてきた艶めかしい女の声。

 思い当たる人物はもちろん一人しかおらず、ジャックハートが食事を待たずして部屋へと戻ろうとしていた。

 

「ジャックハート様……どこ行ったんだ……?」

「ここだぜ、ボニーちゃん。さ、子作りの再開といこうじゃねぇの」

「うん……」

 

 部屋から出てきたボニーの肩を抱き、再び部屋へと入っていく。

 

「夜は、長ぇぞ」

 

 ビビで発散できなかった分の全てを、この日、ジャックハートはボニーの膣内に吐き出した。




前書きでも書きましたが、続くかは未定です。

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戦争参加の理由

予想以上に好評のようでしたので、1日で仕上げました。

投稿してこれだけ評価を貰って気づいたのですが、匿名投稿ならもしかしてランキングに載らない感じ…?

今回ですが、描写が増えた分戦闘が入りました。ちくせう。


「あひっ! んッ、これ、このチンポがいいのぉっ!」

「なあボニーちゃん。お前、海賊に戻る気あんの?」

「そんなの無いぃっ! ずっとここで、ジャックハート様の性奴隷として生きたいのぉ!」

「よく言った」

 

 シャボンディ諸島における天竜人傷害事件。

 主犯である麦わらの一味が王下七武海の一人、「バーソロミュー・くま」の手により完全崩壊し一件落着したその事件。

 しかし、ジョー・ジャックハート中将にとっては麦わらの一味がどうなったかよりも、現在進行形で犯している女であるジュエリー・ボニーを自分の手元に置けたということの方が重要だった。

 

「ケハハハハッ! ケツに書かれた正の字がもう4つ目に突入すんぜ?」

「あはんっ、も、もっとっ! もっとザーメンが欲しいのっ! ジャックハート様の濃厚ザーメン、注いでぇっ!」

 

 両手には海楼石の手錠を掛けられ、その両腕を吊るし上げられた状態での立ちバック。

 膣内射精した回数をボニーの尻に書いており、すでにその正の字は三つ完成しており、それはボニーの膣内にすでに15回射精が行われたということだった。

 

「……ぐっ、16発目だ……ありがたく受け取れぇっ!」

「ああぁんっ! ま、また来たぁ……!」

「はは……。そのうちケツに書ききれねぇほどにザーメンぶち込んでやるぜ」

「もっと、もっとだぁ……! その精液で、ウチを孕ませてくれぇ……」

「生意気な女は嫌いじゃねぇ。上等だ……ッ!」

『じ、ジャックハート中将! お楽しみのところ申し訳ありませんが、少しよろしいでしょうか!』

「……チッ。んだよ……こっからだってのに」

「あんっ」

 

 これから30連戦ほどしようかと考えていた矢先、部下のノックにより邪魔される。

 しかし、これでも一応海軍本部中将。

 ボニーの膣から肉棒を引き抜き、服装を直して扉を開ける。

 

「なんだ」

「ご報告いたします。火拳のエース公開処刑により想定される『白ひげ海賊団』との戦争に、海軍本部の中将は強制参加と―」

「却下。男ばっかのとこに行って殺して、んで金も貰えねぇ。行くメリットが見つからねぇ」

「“女帝”ボア・ハンコックも参加するとのことですが」

「……へぇ。一回……いや、一生手元に置いときてぇと思ってたハンコックが来る、か」

「女帝は極度の男嫌いと聞きます。この戦争でもし王下七武海を抜けでもしたら……」

「海賊やってた余罪で捕まえられる、か」

 

 いつも通り不機嫌そうに扉を開けたジャックハート。

 話の最初を聞いているうちも、その機嫌は直らなかった。

 しかし、とある人物の名前が出てからその表情に嬉色が入る。

 

「世界一美しい絶世の美女。是非とも、俺の子を孕んで欲しいものだ」

 

 “女帝”ボア・ハンコック。王下七武海の紅一点であり、世界一の美女と謳われるほどの女性。

 ジャックハートが狙わない理由がなかった。

 

「よし分かった。参加してやろうじゃねぇか。頂上戦争!」

「……その旨、センゴク元帥に報告してまいります」

「あぁ、ご苦労」

 

 部下がセンゴクの元へ向かったのを確認して、扉を閉める。

 

「そっかそっかぁ。ハンコックが来んのかぁ……!」

 

 猛獣のような獰猛な笑み。

 それを浮かべながら再びボニーの元へと戻って来たジャックハートは、勢いよくズボンを下ろした。

 

「そうだよなぁ。どうしちまってたんだ、俺ぁ。もしかしたら、他にも若い飛び切りにいい女がいるかも知れねぇ……」

「っ、んひぃっ!?」

 

 いきなりジャックハートの怒張で膣を貫かれたボニーから、情けない悲鳴があがる。

 

「ボニーちゃん! さっきは追加で30連戦ほどしようと思ったが、気が変わったっ!」

「えっ……!」

 

 すでにジャックハートの性奴隷になったボニーにとって、その宣告は衝撃的なものだった。

 この部屋にいる他の女に取られるかも知れない。そう思ったボニーは―

 

「その3倍の90連戦だ……! ハンコックを孕ませるって想像しただけで興奮する……。寝かさねぇぜ、ボニーちゃんッ!」

「あひぃんっ!」

 

 ―ただただ押し付けられるその快感に、身を任せるしかなかった。

 

 

 ◇

 

 

「ジャックハート様に相手にしてもらえないなんて、ヒナ傷心」

「そう言うなよヒナちゃん。今は、この子が大切だからな」

「えぇ。この歳の女海兵で赤ちゃんを身籠ることができるなんて、ヒナ感激」

 

 ボニーの尻に合計21個の正の字と一本線を引き、一旦シャワーを浴びることにしたジャックハート。

 彼の身体を洗っているのは、一人のお腹が大きく膨れた女性。

 そのお腹以外は完璧なスタイルを誇るその女性は、体を使ってジャックハートを洗っていた。

 

「無事産まれたら、すぐに二人目を作ろうな」

「ジャックハート様……!」

 

 彼と年齢差は少しあり、ヒナが年上。

 しかし、外見はジャックハートの好みに合っていたため任務中の性処理に彼女の身体の三つの穴使わせてもらっていたのだ。

 そしてその結果が、ヒナの今のお腹の状態である。

 

「今日でちょうど9か月目よ。……ヒナ、不安」

「大丈夫だって。俺とヒナちゃんの子だぜ?」

 

 ヒナのお腹の中には現在、ジャックハートとの子どもがいる。

 ヒナの妊娠が発覚した時こそ海軍本部が驚きに包まれたが、相手がジャックハートだと分かると一瞬でほとぼりが冷めた。

 

「……そうね。スモーカーならともかく、ジャックハート様ですもの」

「そうそう。……スモーカーか。あのカス、たしぎちゃんに手ェ出してたら殺してやる」

 

 足の裏や指の間、果ては肛門まで、ジャックハートの全身を自分の体で洗っていくヒナ。

 彼のその言い分にくすり、と笑ったヒナだったが、さすがに同僚を強姦するのはアウトだ。

 

「たしぎちゃんは、ちゃんと口説き落としてからよ? ヒナ、叱責」

「わぁってるよ。……あっ。てかヒナちゃん。海賊で俺好みの女知らない?」

 

 現在、ジャックハートの部屋にいる性奴隷たちは6人。

 それだけの数がいながらも、ジャックハートは新しい女を求めているのだ。

 

「そうねぇ……。……麦わら」

「あん?」

「麦わらの一味に二人、ジャックハート様好みの娘がいたはずよ。ヒナ、確信」

「なるほどねぇ……。麦わら、か。くまに壊滅させられたが、女だけ生きてたらいいんだが」

「ふふっ、相変わらずね。……んぅ、ちゅむ……ちゅっ……」

 

 愛おしそうに彼の身体を洗い、綺麗になったところにキスを落としていくヒナ。

 もちろん、身篭らせた相手にそんなことをされて我慢できるジャックハートではない。

 

「ヒナちゃん。しゃぶって」

「はい……。んぐっ、ぐぷぷぷ……」

 

 勃起した肉棒をヒナに咥えさせる。

 25cmを軽く超える巨根を喉奥まで使って全て咥え込み、そのままジャックハートに向かって上目遣いで強請る。

 

「はっ。そのまま動け」

「ずちゅ……ぐぽっ、んぐ、がっぽ、じゅぽ……」

 

 ジャックハートにより鍛えられたヒナの口淫。

 彼女の身体による洗体を受けていたジャックハート。彼の肉棒をヒナが咥えた時点ですでに彼の性的快感は高まっていた。

 

「じゅぷ、んぶっ、ぐぷ、んっ……じゅるるるるる……!」

「くっ、あぁ……! ヒナちゃん……っ!」

「んぶぅ!?」

 

 彼女の舌使いに達しそうになった瞬間、ジャックハートはヒナの後頭部を掴み、彼女の顔を思い切り自分の腰に押し付けた。

 そして―

 

「っ、らぁ……っ!」

「んぅっ……! ……んっ、ふぅ……」

 

 ―ありったけの精液を、ヒナの口内に射精した。

 あまりの量に一瞬息が詰まってしまったヒナが、その男の匂いにうっとりとした表情を浮かべて鼻から息をゆっくりと吐いた。

 

「ふぅ……。さ、ヒナちゃん。飲んで飲んで」

「こく……こく……んく。……飲んだわ。ヒナ、完飲」

「よくできました」

 

 口内に出した精液全てを飲み干したヒナの頭を撫でるジャックハート。

 

「ありがと、ヒナちゃん。お陰で完全復活だ」

「喜んでもらえて何よりよ」

 

 立ち上がったヒナの肩を抱き、シャワールームから出る。

 

「……ジャックハート中将。彼女は、一応現在安静にしていなければならないはずだが?」

 

 パスローブに着替えた二人を待っていたのは、ここ海軍本部の長、センゴク元帥だった。

 

「ヒナちゃんが、俺に奉仕したいって言ってきたんですよ? センゴクさん」

「何……? ヒナ大佐、それは本当かね」

「はい」

 

 ヒナの即答を聞き、何とも言えない表情で頭を抱え出したセンゴク。

 

「まあ、良い。お前たち二人の問題だ」

 

 導き出した答えは、スルーだった。

 

「ジャックハート中将。白ひげとの頂上戦争について、話しておくことがある」

「俺に?」

「あぁ。ガープでも誰でもない、お前にだ。ついてきてくれるか」

「あーい。ごめんね、ヒナちゃん。また明日」

「えぇ、また明日」

 

 俺には言わないのか、と内心ショックを受けているセンゴクの後ろを、ジャックハートはついていくのだった。

 

 

 ◇ ◇

 

 

「ちぃーす。……ってみなさん。どうしたんです、こんなとこで」

「そらぁこっちのセリフじゃぁ。センゴク。わしらをこんな狭い部屋に集めて、一体何をするつもりじゃ」

「もう深夜なんですし、寝させてくださいよぉ」

「今回ばかりは、クザン君に同意するよォ〜」

 

 センゴクが向かった先にあったのは、ごく小さい会議室だった。

 ジャックハートがそこの扉を開けて中に入ると、そこにいたのは三大将の全員だった。

 

「……ジャックハート中将。今回の頂上戦争、お前には前線で暴れてもらう」

「本気ですか、センゴクさん」

「本気だ。……本気で白ひげとやり合うからこそ、お前を防衛に使うには惜しい」

「待ていセンゴク。……それとわしらが、どう関係する」

 

 センゴクの言葉に疑問をぶつけたのは、赤犬ことサカズキ。

 ジャックハートの配置だけならば、わざわざ三大将を集める必要もない。

 

「止めておいて欲しいからだ」

「止める? ジャックハート中将を?」

「あぁ。……今から六日間。ジャックハート中将に禁欲を命ずる」

「……なるほどねぇ」

「こりゃぁ、わしらが必要なわけじゃ」

 

 センゴクの口から出たのは、意外なものだった。

 

「……あ? 禁欲、だと……?」

「そうだ。酒、女、殺人。それ以外にも多くのものを、戦争が始まるまでの間、禁止する」

「冗談よせよ。なんで俺がそんなもん飲まねぇといけねぇ」

「お前は自分の好きなものを禁止されると、そのストレスから凄まじい力を発揮する。それを、今回の戦争で使う。無論、活躍次第では報酬はお前の望み通りに出す」

「舐めんなよ。……禁欲ぐらい、一人で出来る」

 

 ジョー・ジャックハートは元来、自由人だ。

 どちらかと言うと海兵よりも海賊に近い性格をしている。

 今まで我慢することなく、自分の欲しいものは正義の名の元に奪ってきた。

 

「だがよォ。あんたらの力で、この六日間は俺の周りに誰も近づけねぇようにしてくれ」

「信じていいんじゃな、ジャックハート中将」

「もちろんっすよサカズキさん。……俺の大事な大事な六日間を使って殺すんだ」

 

 ―簡単に死ねると思うなよ、白ひげ。

 

「っ!」

「……おっかないねぇ……」

「こりゃあ、すごい」

「たまげた奴じゃ……!」

 

 彼が発した言葉は、海軍本部元帥であるセンゴクと三大将ですら威圧される程に、殺意の籠ったものだった。

 

「修練室。そこを使います。飯は戸の外に」

「……あぁ、分かった」

 

 ジュエリー・ボニーという新しい女を手に入れ、過去に捕まえてきたミス・ダブルフィンガーやミス・バレンタインの調教、そして海軍外に作っているジャックハートの性奴隷達に手を出さない。

 その制約を、自らの手で課したのだ。

 

「……じゃあ、俺はこれで失礼します」

 

 ジャックハート一人が部屋から出ていく。

 恐らく、言葉通り修練室に向かったのだろう。

 

「サカズキ、クザン、ボルサリーノ。……もしも、ジャックハートが戦争そのものを壊しかけた時は、共に止めてくれ」

「承知」

「ま、やらないと死んじまいますしね」

「やってみるよォ……」

 

 これで海軍の戦力は最強になった。

 

 そう確信した、センゴクだった。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「殺す」

「いきなりおっかないこと言ってんじゃないよ。ジャックハート」

「あぁ、おつるさんか。悪いが話しかけないでくれ。気が散る」

「こりゃあ、本物だね……」

 

 時は一気に流れ、火拳のエース公開処刑当日。

 センゴクに言われていた通りマリンフォードの広場に来ていたジャックハートは、周りの海兵からも恐れられるほどに殺意を発していた。

 

「だってそうだろ? ……今から来るアホどもは、全員ほとんど賞金首。そいつらぶっ殺せば、人魚のハーレム作れるぐらいの稼ぎにはなる」

「動機が不純なのもどうかとは思うが、あんまり周りをビビらせんじゃないよ」

「ケハハ、そりゃ無理だ」

 

 この日のために、自分は六日間、全てを我慢してきた。

 欲求を忘れるために自らの身体を苛め抜き、瞑想し、そして飯を食って寝る。

 ジュエリー・ボニーや他の性奴隷達との交わりを自分で禁じ、白ひげへの殺意を少しずつ鋭利なものにしてきたのだ。

 

「来たぞおおおおっ!」

「海賊船の大艦隊だぁっ!」

 

 その声に、思わず心臓が高鳴る。

 周りの海兵達に緊張感が高まり、いつ戦闘が始まるのかと冷や汗を流す者もいる中、ジャックハートは一人笑っていた。

 

「……おつるさん、行ってくるわ」

「はいよ。やり過ぎないようにね」

「善処しよう」

 

 剃で一気に前線まで上がる。

 何故か開いた『正義の門』から見えるのは、「白ひげ海賊団」の傘下の海賊達。

 肝心の白ひげは、まだ現れなかった。

 

「……この音、コーティングか?」

 

 しかし、異常に研ぎ澄まされたジャックハートの耳が白ひげの位置を捉えた。

 

「わ、湾内に侵入されました! モビー・ディック号、次いで三隻の白ひげ海賊団の船です!」

「分かってんだよんなこたァ……!」

 

 海兵の誰かが狼狽えるように叫ぶ。

 その声すらも、ジャックハートはストレスに感じていた。

 

「俺の愛する息子は、無事なんだろうな……!」

「白ひげぇ……!」

 

 マリンフォードの湾内に現れた、コーティング加工済みの白ひげ海賊団の船たち。

 一番大きいモビー・ディック号の上に立った白ひげが、両拳を横に振るう。

 

「……」

 

 白ひげが放ったのは、文字通り海をも震わせる『海震』

 そして狙いは、そこから派生する津波だった。

 

「氷河時代ッ!」

「ナイスっすよぉ、クザンさん……」

 

 マリンフォードを挟み込む形で襲いかかってきた津波が、青雉ことクザンの手で凍らされる。

 白ひげ率いる海賊艦隊が、マリンフォードに上陸するまで後数分もない。

 ジャックハートはそう確信していたのだ。

 

「両棘矛! ……あらら」

 

 津波を凍らせるために飛び上がった青雉がついでに白ひげに直接攻撃をしかけるも、『グラグラの実』の力によってその身体ごと砕かれる。

 自然系であるクザンが簡単に死ぬことはないが、彼が湾内に落ちたことにより、海が凍った。

 

「さァ……。戦闘、開始だ」

「うおおおおおおおっ!!!」

 

 ジャックハートの小さな呟きを軽く消してしまうほどの怒号。

 

「俺たちの力を見せてやれっ!」

 

 白ひげ海賊団達が、凍った湾内に降りてくる。

 他の海兵たちとともに、ジャックハートも降り、最前線に上がる。

 

「死ねぇえええ!」

「てめぇだよ」

 

 襲ってきた海賊に対し、『鉄塊』で固めた右手を超速で首に伸ばす。

 すると男の首に衝撃が入ることはなく、頭と胴体がぶちり、という鈍い音を立てて分離した。

 

「まずは1500万ベリー」

「お、お前ええ!」

「殺してやる!」

「くたばれえっ!」

「だからそれは―」

 

 白ひげ海賊団傘下の海賊達の手配書は全て頭に叩き込んできたため、顔と賞金額は覚えている。

 剃で一瞬にして上空に飛び上がり、『嵐脚』で襲ってきた男達を脳天から切り裂く。

 

「―てめぇらだっての」

 

 冴え渡る闘志。それは、敵味方関係なくジャックハートを一目見た瞬間に分かることだった。

 

「張りあいがねぇなぁ……。……せっかくここまで我慢したってのによォ」

 

 既に周りは戦いが激化しつつある。

 ミホークの斬撃を白ひげ海賊団のジョズが受け止め、黄猿の攻撃をこれまた白ひげ海賊団のマルコが受け止め、赤犬の牽制も白ひげ本人には効かなかった。

 ならば、自分が殺すだけだと、叫ぶ。

 

「降りてこいや!! クソジジイがァッ!!!!」

 

 周りの何十万人の戦闘音すらをも遮ってしまうほどの気迫。

 ジャックハートが若くして中将に就くことになった、本当の実力が見せつけられることとなる。

 

「親父の元に行かせる……ガっ!?」

「覇気使えねぇゴミが邪魔すんな」

 

 3度襲いかかってきた海賊の目を指で文字通り潰す。

 覇気が使えない者ならば、目を潰せば戦闘能力は大幅に減る。

 

「い、痛ぇよぉおぉっ!」

「なら楽にしてやろう」

 

 右脚に武装色の覇気を纏い、見聞色の覇気で目の前にいる男のどこを狙えばいいかを決め、そして―

 

「『覇王脚』ッ!!」

 

 ―覇王色の覇気を同時に使用することで、周囲の敵に同じダメージを負ったと錯覚させる。

 覇王色と武装色を纏った蹴りが男の顎を砕き、その衝撃で首をへし折る。

 そしてそのダメージを周りの敵も自分が受けたと錯覚し、絶命した。

 

 ジャックハート命名、覇王の一撃。

 

 3つの覇気を完璧に使いこなせるようになったからできる究極の技。

 厄災の如く一瞬で海賊を葬り去っていくことから付けられた名前が、『天災』

 

「カァッ!!」

 

 当たり前のように覇王色の覇気を辺りに撒き散らし、見聞色の覇気で見た景色から効率の良い移動を見つけ、武装色の覇気で一撃で殺す。

 

「生ぬるいぞぉ! 白ひげぇっ!!」

 

 ジャックハート以外の海軍本部中将達でさえ、近くにいれば意識が吹き飛んでしまいそうな覇王色。

 それが、常時海賊達に向けて放たれる。

 

「ハッ! 耐えきれねぇゴミが来んじゃねぇよ、ここに!」

 

 気絶していく海賊共の喉笛を、鍛え上げられた握力を誇る指に武装色の覇気を纏わせ、引きちぎっていく。

 

「ジャックハートを殺せぇえっ!」

「奴を止めろぉ!」

 

 もちろん白ひげ海賊団達も、ジャックハートのその暴力を無視しているわけではない。

 銃に斬撃、悪魔の実。

 無数の攻撃がジャックハートに襲いかかるも―

 

「道具にしか頼れねぇ奴に、負けると思ってんのか?」

 

 ―ジャックハートに、傷はつかない。

 

「な、んで……!?」

「そいつは、覇気と六式を完璧に極めてんだよい。生半可な攻撃じゃ皮膚に傷すらつけられねぇよい」

「マルコ……!」

 

 ジャックハートの目の前に現れたのは、白ひげ海賊団一番隊隊長の『不死鳥マルコ』

 彼にとって最高の獲物が現れた。

 

「ケハハハッ! 分かってて出てきたのかよ、『腰抜けマルコ』」

「……ッ! てめぇは、俺ら海賊にとっちゃ生きてちゃならなぇ存在だよい」

「ケハハ! そりゃお前らの方だ。市民の平和を乱してんだからなぁ」

 

 マルコの蹴りとジャックハートの拳がぶつかり合う。

 

「うっ、ぐ……!」

「ほれ見ろ。肉体を鍛えてねぇから、防御されただけで痛ぇんだ」

「バケモンが……」

「何が化け物だ。見聞で察知した箇所を武装で固める、ただそれだけじゃねぇか」

「……っ、クソッ!」

 

 簡単に言っているが、ジャックハートがやっている事は普通は不可能に近い。

 戦闘中に常に見聞色で周りを感知し、やって来る攻撃に合わせて武装色を纏う。

 その両方が世界トップクラスを誇るジャックハートに、隙は無かった。

 

「マルコさん!」

「アンタはここで足止めを受けちゃダメだ!」

「……すまねぇよい!」

 

 故に、ジャックハートを止めるならば戦法は限られてくる。

 能力は効きにくく、超速近距離戦闘を得意とする彼に対抗するにはとある戦法しかまともに通じないのだ。

 

「また逃げたか、腰抜け」

「俺らが相手だジャックハートォォオッ!!」

 

 多対一による時間稼ぎ。

 およそ200人の白ひげ傘下の海賊達が、ジャックハートを囲うように陣取る。

 

「逃がさねぇぞ! 他に行きたきゃ、俺らを殺してから行けぇええぇ!」

「最初から……そのつもりだッ!」

 

 360°から襲いかかる海賊。

 その彼らが自分の元に辿り着く前に、ジャックハートは右脚を上げた。

 

「何を……!」

「嵐脚・『六破(りっぱ)』」

 

 どんっ、とそのまま強く地面を踏みつけると、そこからまるで這うように六方向に斬撃が飛んだ。

 

「ぐああああっ!」

「怯むなァァアッ!」

「雑魚は引っ込んでろやああぁッ!」

 

 その斬撃を受けた者に反応してほんの少しだけ足が止まった瞬間に、その隙を見逃すことなく覇王色を放つ。

 

「ケハハハハッ!! 1:1なら、六式を使うまでもねぇ!」

「ぐああっ!」

「ぎゃあああっ!」

「こ、こいつ……止まらねぇ!」

 

 肋骨を殴り折り、一人を数十メートル程蹴り上げる。

 敵を仕留めたら直ぐに次の敵へ。

 能力を発動する暇も、照準を合わせる暇も与えずに一瞬で駆けていく。

 

「つ、強ぇ!」

「違ぇよ! てめぇらが弱すぎるだけだ!」

 

 すでにジャックハートの身体は上半身を中心に返り血で染まっており、200人のうちのほとんどが悲鳴すら上げずに瞬殺された。

 攻撃が通らず、逆にジャックハートの攻撃でいとも簡単に倒れていく仲間を見て、囲んでいた残りの海賊が後ずさる。

 

「ケハハッ。喧嘩吹っかけといて逃がすと思うか? ……てめぇら全員、皆殺しだ」

 

 ジャックハートを中心に、紅い花が咲いた。

 

 

 時を同じくして。

 

 

「なんだアレは……! 一人だけ、別次元じゃねぇか!」

「ジャックハートの強さは、お前も知ってるだろう。エース」

 

 処刑台の上で火拳のエースは驚きを隠しきれなかった。

 彼の叫びに隣に立っていたセンゴクが至って冷静に返す。

 

「知っているッ! でも、あの強さは異常すぎるだろうが!」

「それはジャックハートが異常、では終わらんからじゃ」

「っ、ガープ……貴様」

「じじい……」

 

 センゴクとエースだけがいた処刑台に、ガープが登る。

 海軍本部中将という同じ地位にいるだけあり、彼はジャックハートのことをよく知っているのだ。

 

「あいつは鍛えた。女を惚れさせるため、という名目が最初だった。……じゃが、そこからさらに六式と覇気を鍛えた。ただかっこいい、強い奴になりたいからという理由での」

「そ、それだけでアレだと!?」

「……鍛え、鍛え上げ、極め、極め抜いた。いや、極めすぎたんじゃ」

「極めすぎただと……? どういうことだよ、じじい!」

 

 どこか寂しげな表情で湾内にいるであろうジャックハートの方向を眺めるガープ。

 

「簡単じゃ。その結果奴は、無条件反射の次元で覇気が使えるようになった」

「……なに?」

「戦闘では常に見聞色で周囲を完璧に把握し、攻撃が触れる直前に武装色を纏う。それをあいつは、ほとんど意識せずに行っておる」

「そんなの……!」

 

 攻撃が通るはずがない、とエースは心の中で叫ぶしかなかった。

 叫んでしまえば、戦っている自分の仲間たちの士気を下げてしまうからだ。

 

「世界最強クラスに鍛えられたあいつの覇気は、並みの攻撃じゃ貫通できん。……事実、億越えルーキーの一人を、デコピン一発で落とした」

「どこまでも、規格外か……」

 

 現在は違う意味で堕ちているが、それこそ今は関係のないこと。

 

「諦めろ、エース。白ひげは、ここで終わる」

 

 当然のことのように、ガープはエースにそう言い放った。

 

「親父が負けるわけねぇ!」

「ジャックハートのあの強さを見てもか」

「ぐっ……!」

「それに、ジャックハートはこの戦争、白ひげに一番殺意を抱いている」

 

 なぜだ、という疑問を込めた睨みを、センゴクに向けるエース。

 圧倒的な強さを見せつけられながらも彼は自分の仲間を信じていた。

 

「ジャックハートには今回の戦争に向け、禁欲させた。全ては白ひげのせい。奴のせいで、自分は女が抱けないのだと、自分で思い込むことによって今日まで耐え抜いた」

「なっ……てめぇら……!」

 

 何もかもを白ひげのせいにした上で、殺す。

 死ぬのは自分だけでいいはずだ、ということも叫ばずに、エースは戦況へと目を戻した。

 

「悪く思うな。やつは海賊。そして俺たちは海軍だ」

 

 互いが戦うのは、当然だった。




続々とぶち犯すリストに名前が増えていっています。


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集結と幕開け

投稿が少し遅くなった理由。

その1、記憶が曖昧で読み返していたから。
その2、白ひげがしぶとかったから。
その3、エロシーンが書けなかったから。

…くそぅ!次こそは、次こそはたっぷりとエロを書きますので…!


「ケハハハハッ!」

「うわああっ!」

「だ、ダメだ……! 止まらねぇ……!」

「どうやったら傷つくんだよコイツは!」

「逃げてんじゃねぇぞゴミカス共がぁ!」

 

 戦闘が始まってまだ数分。

 すでにジャックハートによって殺された海賊の数は、500を超える。

 だがその数は本人にとっては少なく感じるものだった。

 というのも―

 

「麦わらはどこ行った?」

「い、言うわけねぇだろ!」

「あっそ」

 

 ―つい先ほど、この戦場に新たな獲物が降ってきたからである。

 周りの話から察するに、エースを助けにインペルダウンに侵入したもののすれ違い、そこから脱獄囚たちを率いてここまで来たらしい。

 らしい、というのはジャックハートがその話をよく聞いていなかったからだ。彼にとってはそんなことはどうでも良かった。

 

「ゴフッ……!」

「場所教えるつもりねぇんなら近寄んな。ただでさえパシフィスタが増えて邪魔だってのに」

 

 麦わらのルフィが来たことが、一番大事だったのだ。

 くまに飛ばされたため仲間の位置は把握していないだろうが、ルフィを餌に使えば“泥棒猫”ナミと“悪魔の子”ニコ・ロビンを捕まえられると考えたからである。

 近くにいた海賊の肺を肋骨ごと粉砕し、駆けていく。

 

「面倒くせえな……。飛べば分かるか?」

 

 月歩で高く飛ぶ。

 

「おーいたいた」

 

 上から見ると一際暴れているエリアがあり、その中心にジャックハートの獲物はいた。

 だが、このまま降りるのももったいない。せっかく邪魔なく高く飛んだのだ。

 踏ん反り返っている奴に一撃加えよう。

 そう思い、ジャックハートは『モビー・ディック』号に狙いを定めた。

 

「食らえや白ひげ」

「っ、まずいっ!」

「親父ぃ!」

 

 地上で騒ぐ海賊の声を無視し、狙いを絞る。

 

「嵐脚・船断(ふなたち)っ!」

 

 巨大な斬撃がモビー・ディック号の上に一人で立つ白ひげの元へと一直線で向かっていく。

 

「ぬうんッ!!」

 

 もちろんそれを素直に受ける白ひげではない。

 持っていた巨大な薙刀の刃に覇気を込め、打ち払おうとする。

 

「グ、ォォオオオオオッ!」

 

 競り合う事数秒。

 なんとか押し切った白ひげは、斬撃を弾き飛ばした。

 弾き飛ばされた斬撃はそのまま、白ひげ海賊団の海賊船のうちの一つを、正面から真っ二つに分断した。

 

「な……っ!」

「俺たちの船があああっ!」

「“鷹の目”と同じぐらいじゃねぇのか!?」

 

 その光景に、喚く海賊。

 それもそのはず。自分たちの船を叩き切る芸当ができる人間など、この世に数人程度しかいないと思っていたのだから。

 

「うるせぇよ」

「ヒッ……!」

 

 飛び立った地点に降り立ち、一番近くにいた海賊に今度は狙いをつける。

 

「嵐脚・首刎(くびはね)

「ッ………え?」

 

 その海賊の首を目掛けて蹴りを放つ。

 しかし、その首は繋がったままだった。

 

「な、何をし……た……?」

「あぁ悪い。それすぐに死ねねぇやつだ」

 

 何をしたのか、と海賊が叫ぼうとした瞬間にゆっくりと首が落ちていく。

 遅効性の必殺。首だけが無くなった海賊の体の断面から、勢いよく血が噴き出した。

 

「待てや麦わらぁっ!」

「ぎゃあああっ!」

「ゔ、げは……!」

「止まれよ、ジャックハートッ!」

「指銃・撥」

 

 一歩進むごとに一人ずつ殺していくようなペースで、先ほど見つけた麦わらの元へと駆ける。

 襲ってきた男の額を、飛ぶ指銃で撃ち抜いた。

 

「あ? そういや、ナミちゃんとロビンちゃんって俺が見つけりゃいい話じゃねぇか? ……ハンコックちゃんも、七武海辞めるまでは手出し出来ねぇし……」

「何ブツブツ言ってんだ! ジャックハートォ!」

「うぜぇ」

 

 刀を振りかざした男の足を払い、転んだ所で頭部を踏み潰す。

 

「そうだ。あの二人は俺の見聞色で探せば、案外早く見つかる。……じゃあ今は」

 

 頭の無くなった男が持っていた刀を拾い、武装色の覇気を纏わせていく。

 

「楽しい楽しい狩りの時間ってわけだ」

「じゃ、ジャックハート中将が武器を持った!! 総員、気をつけろぉッ!」

「んな人を戦闘狂みたいに言うなよ……」

 

 海兵達の慌てた声を聞き、仲間に変な印象を持たれていることに少しうんざりする。

 そもそも、こうやって武器を持つことすら久しぶりなのだから。

 

「せいぜい楽しませてくれよ、お前らぁっ!」

 

 刃が黒く染まった刀を携え、狙いを周りの雑魚に切り替える。

 

「ケハハハッ!」

「ヒッ……ぎゃああっ!」

「お、俺の腕があああっ!」

「おいおい、紙切れみてぇだなぁ! てめぇらの身体はよぉ!」

 

 振るう度、その延長線上にいる海賊達の身体が切られる。

 これで広範囲に攻撃をしやすくなった。

 

「さぁて。何人殺せば、センゴクさんから報奨金が出るんだろうなぁ?」

「ヒッ、ば、化け物……!」

「誰がだよ」

 

 酷いことを言われたので、とりあえず首を刎ねる。

 

「チッ。やっぱ面白くねぇ。……まあ、どんだけ殺せるかって考えたらちったぁおもしれぇか」

 

 現在、ジャックハート自身が数えているだけで259人。

 

「目標は……5000ぐらいでいいか」

 

 残りおよそ4700人の海賊の命を奪う。そのために、再び刃を振るう。

 

 

 その一方。

 

 

「ハァ……! ハァ……! イワちゃん、なんだアイツ! めちゃくちゃ強え!」

「足を止めんじゃないっチャブル! あいつの名前はジョー・ジャックハート! 海軍で三大将の次に厄介な奴だよ!!」

「そうか! 分かった!」

 

 兄、エース奪還に向けて走るルフィは、隣にいるエンポリオ・イワンコフに一際異様な雰囲気を放っていた海兵のことを聞いた。

 

「災害の如く海賊を沈めていくことから『天災』の異名を持ち、どんな能力者もインペルダウンにぶち込んできたことから『能力者殺し』とも言われてる()っチャブル!」

「能力者殺しぃ?」

「そう! とにかく、今のヴァナータが勝てる相手じゃないって()ッチャブル!」

 

 武器を持ってからジャックハートが殺した数は、既に500を優に超える。

 その中には彼らと共にインペルダウンを脱獄してきた者も含まれている。

 

「ハァ……! ハァ……! ……にしても、すげぇな白ひげのおっさん!」

 

 ジャックハートがモビー・ディック号に嵐脚を放ち、地に降りた数秒後。

 白ひげは愛する息子であるスクアードに胴体を突き刺されたにも関わらず、分厚い氷の上に降り立ち暴れていた。

 

「それよりも変よ! いつの間にか敵が広場へ上がってる!」

「……ん? じゃああいつはなんで残ってんだ?」

「死なんからじゃろう! ルフィくん!」

「ジンベエ!」

 

 走る二人に、同じく脱獄してきた王下七武海のジンベエが加わった。

 

「ジョー・ジャックハートの強さなら、どうとでもなると判断したんじゃ!」

「ってことは、あいつしか海軍が残ってねぇってのは……!」

「良く気づいた。何かをしようとしとるんじゃ!」

 

 会話の通り、現在凍った湾内に残っている海兵は、ジャックハートを残してほとんどが広場へと上がっている。

 その光景に、イワンコフとジンベエが疑問を持ったその時だった。

 

「な、何だこの壁!?」

「ちくしょう、鋼鉄の壁だ!」

 

 湾内にいる海賊たちを広場に上がらせないようにせり上がった鋼鉄の防御壁。

 バズーカや悪魔の実、果ては白ひげの『グラグラの実』の強力な一撃すら通じない、分厚い鋼鉄がせり上がったのだ。

 

「ケハハハハァッ!」

「ヒィィイイイイッ!」

「ジャックハートを残したのはこのためかよ海軍っ!」

「違うわい。……まあ、保険にはなってるじゃろうが」

 

 まんまと湾内に集まってくれた海賊達。

 それに真正面から向き合う必要などない、と言わんばかりの完璧に近い包囲網。

 行く手を阻む鋼鉄の壁。足場は氷。となれば―

 

「始めるぞ……! 『大噴火』ッ!」

 

 ―その氷さえ溶かしてしまえば、海賊達は海の藻屑となる。

 高額な賞金首ほど悪魔の実の能力者である確率は高い。そいつらを海に叩き込むことさえできれば、戦力を一気に削ることが出来る。

 

「ジャックハートはこれでは死なん。せいぜい、生き延びてみるんじゃなあ、海賊」

 

 青雉の『氷河時代』、黄猿の『天叢雲剣』、赤犬の『大噴火』。

 その全てを武装色の覇気で防いだ実力は、三大将のお墨付きだ。

 

「ケハハハッ! 海に逃げてんじゃねぇぞっ!」

「お〜…サカズキィ……。海に落ちかけた海賊を、ジャックハート君が引き上げて殺してるよォ〜?」

「これじゃあ、ただの処刑場だな……」

「どの道死ぬんじゃから変わりゃあせん」

 

 上から降ってくるマグマに焼かれ死ぬか、海に落ちて溺れ死ぬか、ジャックハートに殺されるか。

 海賊達には死の選択肢がその3つしか無かった。

 

「オーズを越えていけぇ!」

「オヤッざん……!」

 

 鋼鉄の包囲網のせり上がりを一部だけ防いでいる、国引きオーズの子孫である“リトルオーズJr”。

 彼が起き上がったのだ。

 突破するには、生き残るにはそこしか無い。

 

「ジョズッ! 切り札だ……!」

「おう!」

 

 そのオーズの姿を見て、白ひげがジョズにとある指示を出した。

 その時―

 

「待てや白ひげぇっ!」

「ジャックハート……ッ!」

 

 ―返り血に塗れたジャックハートが、白ひげの元へと辿り着いた。

 

「親父!」

「下がってろぉ!」

 

 飛びかかったきた彼を見て、息子たちを下げさせる。

 ジャックハートが両手の拳を上下に構えて白ひげに突き出す。

 

「ぬおおおおおおおおッ!!!」

「六王銃ッ!!」

 

 ジャックハートに対し、白ひげはグラグラの実の能力を全開で使用した拳で対抗する。

 

 地震と衝撃がぶつかり合い、天が割れた。

 

「なっ、ぁ……!」

「そ、空が……、いや、天が割れた……?」

「っ、そ、そういやジャックハートは!?」

「あの小僧なら、衝撃に乗って広場の方に行った……!」

 

 ジャックハートの六式究極奥義と白ひげの全力の攻撃。

 衝撃の強さはほぼ互角だったが、その衝撃が継続して飛んでいく、という面で白ひげは彼を吹き飛ばすことに成功した。

 

「グララララ……放った瞬間に後ろに下がりよって……! ほとんど効いちゃいねぇか……!」

 

 だが、彼にまともなダメージを与えられていないことは、対峙した白ひげが一番よく理解していた。

 グラグラの衝撃が生きていると分かった瞬間にジャックハートが後方に全速力で月歩をしたのだ。

 

「まあいい……。道は、開けた……!」

 

 リトルオーズJrのいる場所に突っ込む一隻の外輪船(パドルシップ)

 万が一に備えて海中に残していたものを、このタイミングで出してきたのだ。

 

「沈めろ!」

「もう遅い!」

「ウオオオオオオオオッ!!」

 

 白ひげの狙いは、船をリトルオーズJrの所へと突っ込ませること。

 突っ込んできた外輪船を、リトルオーズJrは片手で掴んで広場へと引き上げた。

 

「エースを救えぇええええっ!」

 

 海賊たちが、ついに広場へと上がった瞬間だった。

 

 

 ◇

 

 

「いてて。反則だろあの技」

「フッフッフッフッフッ! “白ひげ”の一撃を受けといてそれか……!」

「あ、ドフラミンゴさん。また今度ドレスローザにお邪魔させてもらいますんで、よろしくです」

「あぁ、待っている。フッフッフッ……!」

 

 グラグラの衝撃に乗ってジャックハートが飛んできたのは、王下七武海の一人であるドフラミンゴの近くだった。

 

「雑魚しかいなさそうっすね」

「さすがの見聞色だ」

 

 自然と入ってくる周囲の情報。

 地面に落ちていた刀を拾い上げ、武装色を纏う。

 

「じゃあ俺は白ひげ殺しに行くんで」

 

 ドフラミンゴの返事を聞くことすらせずに駆け出していく。

 横に振るい、下から薙ぎ、時には蹴りで殺す。

 

「……何人殺したっけ?」

「オオオッ!」

 

 恐らく1000を超えた辺りから数えるのがめんどくさくなり数えていなかったが、かなりの数になっている。

 標的の白ひげからも離され、歯向かってきた海賊の攻撃を受け止める。

 

「嵐脚」

「ガフ……ッ!」

「あーぁ。つまんねーの……ん?」

 

 嵐脚で海賊の胴体を切り刻む。

 重力に歯向かうことなく地に沈んでいく海賊を尻目に、ジャックハートは面白いものを見つけた。

 

「なんだあの橋」

「エース〜〜ッ!!」

 

 広場の一部から処刑台に向かって伸びる一本の橋。

 その上を、麦わらのルフィが走っていた。

 

「……ガープさんかセンゴクさんが止めるだろ。それより―」

 

 海賊と同僚の戦闘で埋まる景色。

 その先に、一際目立つガタイのいい髭の目立つ男、白ひげはいた。

 

「―てめぇが死ぬ方が大事だ」

 

 針の穴を通すように斬撃を放ち、白ひげの元へと届ける。

 

「ぬっ、ぐぅ……!」

 

 白ひげが斬撃を受けたのは右の脇腹。

 その深い一撃に、白ひげの足が止まった。

 

「オヤッさんの元に行かせるなぁ!」

「ジャックハートォォオッ!」

「死ねぇぇぇぇえっ!」

 

 白ひげの元へと向かうジャックハート。

 彼らの間に、まるで壁のように並んだ海賊が、波のように襲いかかる。

 

「だから、さっきから邪魔だっつってんだろ……」

 

 どれだけ斬っても、どれだけ殺しても湧いてくるように出てくる海賊達。

 そんな彼らに少しうんざりしながら、横に剣を振る。

 

「一刀流・大蛇(おろち)

 

 振られた刀身から放たれる蛇のようにうねる斬撃。

 生き物の如く宙を這いながら進むそれに触れた場所が、鋭く斬れる。

 地面や武器、そして海賊達の身体に深く傷をつけた。

 

「ガッ、ハ……ぁ……!」

「なんて斬れ味……!」

「流石は『天災』か…」

「ごちゃごちゃうるせぇよ」

 

 跪いた敵の首を刎ねる。

 今までこうして、ダメージを与えては隙を見つけて止めを刺すというのを繰り返した。

 しかしそれでも、数という壁にのみ阻まれて、白ひげにだけは有効打を与えられていない。

 その事実が、ジャックハートにさらなるストレスを生んでいた。

 

「ゴキブリみてぇに湧きやがって……!」

 

 戦闘では悪魔の実に頼る必要などない。その考えでジャックハートは能力者にはなっていない。

 他にも理由はあるのだが、事実1:1ならば戦いは一瞬で終わる。

 しかし、どうしてもこれ程に人数がいれば時間がかかってしまうのだ。

 

「ウオオオオオッ!!」

「指銃」

 

 背後から斬りかかってきた海賊の眉間を撃ち抜く。

 先程の理由以外にも、一気に制圧することが出来ない大きな理由があった。

 

「……チッ。絞りきれねぇ……!」

 

 共に戦う自分以外の海兵達がいること、そして、戦っている場所がマリンフォードだということ。

 見境なしに暴れてしまうと、その2つに大きな損害を出しかねないため、広場では最小限の規模の技を放つ必要があるのだ。

 

「剃」

 

 壁が壊しきれないのなら、上から乗り越える。……否。

 

「嵐脚・(みだれ)

 

 上から叩き潰す。

 無数の嵐脚を放ち、海賊達を沈めて白ひげまでの道を確保する。

 

「行かせる訳ねぇだろ!」

「喰らえっ!」

 

 だがそれでも湧いてくる。

 一人はバズーカで、そして一人は二丁拳銃で宙にいるジャックハートを狙う。

 

「嵐脚・白雷ッ!」

 

 今度は巨大な一本の嵐脚を放ち、その2つを下手人2人諸共無力化する。

 

「チッ……。数が多すぎんだろが……!」

 

 嵐脚・白雷を使ってしまい、体勢を一時立て直すために地に降りた、その時。

 

「ウオオオオオオオッ!!」

「エース~~~ッ!」

「あ゛?」

 

 海賊達が歓喜し、叫んだ。

 何事かと思いやたらと明るく感じる上を見る。

 そこには、“火拳”のエースと彼に掴まれた麦わらのルフィがいた。

 

「ハッ! 殺す場所が変わっただけだろうがよぉ!」

「そ、そうだ……! まだ火拳はマリンフォードにいる!」

「ジャックハート中将の言う通りだ! 総員、怯むなぁッ!」

 

 ジャックハートの大声は、広場にいる海兵達の士気を高めた。

 

「船へ走れ!」

 

 その海兵達の声を聞いたからか、船へと引き上げ始める海賊達。

 

「お前らぁ!!」

「ッ! ……おや、じ……?」

 

 その海賊達の足を止めさせたのは、白ひげ海賊団の船長である、白ひげだった。

 

「今から伝えるのは、最期の船長命令だ……!」

「さ、最期……? ちょ、ちょっと待てよオヤジ!」

「縁起でもねぇこと言うなよ!」

「アホくせぇなぁおい」

 

 最期の船長命令。

 それを白ひげの口から聞いた瞬間に、海軍と海賊、双方が嫌でも理解した。

 

「お前らと俺はここで別れる! 全員、必ず生きて新世界へ帰還しろォ!」

 

 白ひげは、最初からここで死ぬつもりだったのだと。

 

「オヤジィ!」

「一緒に帰ろう!」

「さっさと行けェ! アホンダラ共ッ!」

 

 息子たち、とは言わなかったのはせめて彼らに少しの躊躇いも残さないための考えだった。

 

「海岸へ急げ!」

「走れ! 船へ走れ!」

 

 火拳のエースを救出し、白ひげが一人で戦場を受け持ち、もう用は済んだかのように退散を始める白ひげ海賊団とその傘下達。

 それを絶対に許さないのが、海軍には2人いた。

 

「はぁ……。所詮、“白ひげ”は先の時代の“敗北者(・・・)”じゃけぇのぉ……」

「ケハハハッ! そんなに死にたきゃ殺してやるよ、白ひげぇ!」

 

 赤犬ことサカズキと、最強の中将ジャックハートだ。

 

「……敗北者、だと……?」

「あぁそうじゃ。何が間違っとる。お前の本当の父、ロジャーに阻まれ、王になれずに死んでいく……。永遠に語り継がれる敗北者じゃろうが……」

「やめろ……!」

 

 サカズキの言葉が、解放されたばかりのエースに刺さる。

 

「何十年もただ海にのさぼり、家族だなんだといってゴロツキに慕われ、挙げ句は口車に乗ったそのバカな息子に刺されてそいつを守るために死ぬ。……敗北者どころか、世界一の惨めな人生じゃのう」

「うるせぇ! オヤジは俺たちに生き場所をくれた!」

「生き場所? 正しくない人間同士……傷を舐め合う仲間の間違いじゃろうが」

「てめぇに何が分かる! “白ひげ”はこの時代を作った大海賊だ!」

 

 エースの心にサカズキへの敵意がふつふつと沸き上がる。

 逃げなければならない。でなければ、オヤジが命をかけて作ってくれた時間とオヤジに申し訳ない。

 だが、それでもやはり、自分を救ってくれた人を馬鹿にされるのだけは、許せなかった。

 

「この時代の名が! “白ひげ”だァ!!」

「だとよォ、オヤジさん。息子たちに慕われてて羨ましいねぇ。俺も、てめぇみたいに、産まれてくる子供たちには慕われてぇ」

「そう言うなら、ちょいとは手加減しろぉ……、ジャックハート……!」

「ケハッ。同じ親父として尊敬はしてるが、そりゃ無理な相談だ。じわじわと死んでいけや」

 

 エースとサカズキの“能力”がぶつかり合う。

 火とマグマ。

 そこには、経験や歳では埋められない、単純な能力による差が出ていた。

 

「俺が今苛立ってんのは、てめぇのせいだからなぁ! 白ひげ!」

「ぐ、ぅ……オォ……!」

 

 嵐脚と指銃、そして覇気を纏ったジャックハートの刃が、白ひげの身体を刻んでいく。

 

「ぬぐぅ……!」

「ケハハッ! んじゃあいっちょやるか……!」

「貴様ら兄弟だけは、絶対に逃がさん。よう見ちょれ……!」

 

 ジャックハートが白ひげの太ももに刀を突き刺し、白ひげの前へと飛ぶ。

 同じくして、サカズキが力の抜けたルフィに向け、能力を発動させた拳を振りかざす。

 

「最大輪・六王銃ッ!」

「ぬんッ!!」

 

 ジャックハートの最大威力の六式究極奥義が白ひげの身体に襲いかかり、サカズキの右手がルフィを守るために盾となった、エースの胴を貫いた。

 

「……ゴフッ!」

「ガハッ……!」

 

 六式を極めすぎたジャックハートによる最強の一撃とサカズキの拳は、白ひげの命を削り、エースの命を奪うには十分だった。

 

「オヤジ……ッ!」

「え、エースがやられたァッ!」

 

 白ひげの巨体が僅かながら宙に浮き、吹き飛ばされる。

 それと同時に、エースがルフィの胸元へと倒れ込んだ。

 

「ケハハッ! どうやら死んだらしいな、火拳は!」

「――ッ!」

 

 その光景を見た瞬間、ジャックハートの身体が大きく歪んだ。

 

「なん……ッ!?」

 

 目にも留まらぬ一瞬の突き。

 白ひげの拳が、腹部にめり込んでいたのだ。

 

「紙絵……ッ!」

 

 その衝撃を少しでも受け流そうと身体を攻撃の風圧に乗せて避ける。

 しかし、その衝撃があまりにも強すぎたのか、少しだけ飛ばされた。

 

「チッ……! 間に合わねぇのが分からねぇのかよ」

 

 エースは死ぬ。

 そんなこと、少しでも海で戦ったことのある人間ならば誰でも分かるほどの大怪我だった。

 

「愛してくれて……ありがとう……」

「泣かせるねぇ。……そんじゃあ、すぐにでもあの世で愛するオヤジさんに再会させてやるよ」

 

 ジャックハートを足止めした白ひげは、エースを殺した下手人であるサカズキの元まで移動し、能力で殴り飛ばしていた。

 この戦争で一番強いといってもいい程の規模のグラグラの能力が炸裂し、地面が割れる。

 これにより、白ひげと海兵、そして海賊達というように分けられてしまった。

 

「あらら。……これじゃあ、死にかけのジジイしか殺せねぇじゃねぇか」

「グララ……! やってみろ、ジャックハート……!」

 

 目標数5000人と適当に設定していたが、それの半数を少し越えた所で終わってしまうようだ。

 それでも、目の前の白ひげを殺せればそれでいいと、彼は思っていた。

 だがそんな時―

 

「サロメ! わらわ、ルフィが心配でならぬ!」

「……あぁ?」

 

 ―戦場に似つかわしくない、綺麗な女の声が聞こえた。

 

「麦わらが心配……ハンコックが……? どういう……」

「よそ見たぁ、随分余裕じゃねぇかッ! クソガキがァッ!」

「誰がクソガキだよクソジジイ!」

 

 白ひげの一撃を捌きながらも、ジャックハートの脳内は既に先程の声の主である、“女帝”ボア・ハンコックのことでいっぱいだった。

 

「あっ、アレはなんだ!」

「本部要塞の影に何かいるぞぉ!」

「処刑台の方にもだ!」

「ティーチ、てめぇ……!」

「……黒ひげか」

 

 その思考さえ遮ってしまうほどに大声で叫び出す海兵と海賊。

 処刑台の方に目を向けると、そこにはなぜか“黒ひげ海賊団”が揃っていた。

 

「んなこたぁどうでもいい。……なんでハンコックが麦わらを……。やっぱここで殺しておくか? ……いや、情報を洗い出すのが先だな」

 

 捕えられた女海賊ではない者を自分の女にするために、ジャックハートは準備を怠らない。

 どこかでへまをやらかしてしまえば、計画は破綻してしまうからだ。

 相手は現王下七武海。慎重にいかねばこちらがやられるかもしれない。

 

「まあいい。今はそれよりもてめぇだよなぁ、白ひげ」

 

 そして、現れた黒ひげも現王下七武海。

 ならば、明確な敵は今は目の前の一人しかいない。

 

「ここで死――あぁ?」

「ゼハハハハッ! 邪魔はさせねぇ…!」

 

 その隙だらけの土手っ腹に風穴を開けてやろうと脚を構えた時。

 ジャックハートの身体が、突如として地面に現れた黒い渦に呑み込まれた。

 

「てめぇ……!」

「ゼハハ! 死ねぇ、白ひげッ!」

 

 ジャックハートを遠くへと飛ばした黒ひげ。

 彼が率いる黒ひげ海賊団の面々が放つ銃撃と斬撃が、白ひげの命を縮めていく。

 

「……殺す」

「ジャックハート中将ッ!」

「情けねぇ声出してんじゃねぇよ」

 

 女を抱けない理由を作った白ひげ。

 白ひげを殺すことでそのストレスを少しでも解消しようとしていたジャックハートの視界の中で、黒ひげ海賊団は白ひげの命を奪った。

 殺意の対象はこの瞬間、完全に黒ひげへと移った。

 

「……お前じゃ、ねぇんだ……!」

「まだ生きてんのかよ!!」

 

 黒ひげが叫ぶが、ジャックハートの殺意はもう白ひげには向いていない。

 あんな死に損ないを殺したところでこの衝動は収まらないことを自覚していたからだ。

 

「ロジャーが待っているのは、お前じゃねぇ……! ロジャーの意思を継ぎ、エースの意思を継ぐ者も現れる……! 血縁を絶てど、あいつらの炎は消えねぇ……」

 

 白ひげの言葉に耳を貸すことなく、道中の海賊達を仕留めながら黒ひげの元へと向かうジャックハート。

 

「センゴク、お前達は……世界中を巻き込む巨大な戦いを恐れている! ……興味はねェ。だが、アレを誰かが見つけた時、世界はひっくり返る……!」

「っ、巨大な戦いだァ?」

 

 ジャックハートが珍しくその言葉に耳を傾けたその瞬間、誰もが耳を疑うこと…否、事実を、白ひげは叫んだ。

 

 

 ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)は、実在する!!!」

 

 

 その言葉は、この場にいる者、そして、映像電伝虫を通してこの戦争の様子を見ていた世界中の人々に衝撃を与えた。

 

「んなこたぁどうでもいいんだっつってんだろうが……!」

 

 白ひげはその言葉を言い放ったあと、立ったまま眠るように死んだ。

 その白ひげに向かって黒い布を被せる黒ひげ。

 ジャックハートの目には、彼しか写っていなかった。

 

「死ねやクソ雑魚がァ!」

「ぬぇあ!」

「……てめぇシリュウ。死ぬ覚悟は出来てんだろうな」

「いいや、まだだ」

 

 黒ひげに向けて放った嵐脚を、黒ひげ海賊団の一味となったインペルダウンの看守長である“雨のシリュウ”によって止められる。

 

「そりゃあ、覚悟をする間もなく殺してくれってことで良いんだな」

「違う。……まあ、見てろ」

 

 シリュウに攻撃を止められたその一瞬の間に、黒ひげと死んだ白ひげの両者が、黒い布から出てきた。

 

「ゼハハハ! 海軍、おめェらに俺の力を見せておこう……!」

「力……か」

「“闇穴道(ブラック・ホール)”! これが俺の、ヤミヤミの実の能力だ!」

 

 先程ジャックハートを呑み込んだものよりも遥かに大きなそれ。

 月歩で逃れていたジャックハートは避けられたが、数人が闇に飲み込まれた。

 

「ゼハハ! そして……!」

「何……?」

 

 左手を振るい、今度は死んだ白ひげのグラグラの実の能力を発動した黒ひげ。

 悪魔の実の能力を二つ得ることは不可能。その定説が目の前で覆り、思わず疑問の声を上げてしまう。

 

「ゼハハハ! 全てを無に還す闇の引力、全てを破壊する地震の力! この2つを手に入れた俺に、もう敵はねェ! 俺こそが最強だ……!」

「……あ゛?」

 

 マリンフォードの本部要塞を壊し、そして最強を名乗った黒ひげ。

 

「ここから先は!! 俺の、時代だァ!!!」

 

 高らかに、彼は叫んだ。




黒ひげに死亡フラグがたった模様。


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進む日常

遅れますた。

理由その1。花粉症で体力を持っていかれた。
理由その2。黒ひげの扱いに迷った。この話での戦争の結末に思うところがある方もおられるかもしれませんが、この形にしました。

今回は若干エロ要素多めでございます…。


「ゼハハッ! 力が、体の中から湧き上がってきやがる……ッ! すげぇ能力だぜ! この世の全てを思い通りにできそうだ!」

「……てめぇ」

 

 これまで何百年も世界の海を守り続けた要塞が半壊し、広場も既に荒れに荒れている。

 そんな中、黒ひげは白ひげに受けたダメージなど気にすることなく叫び続けた。

 

「どれ、手始めに……。このマリンフォードでも沈めるとするか……!」

「おいセンゴク……!」

「あぁ……ッ!」

 

 そしてその結果、2人の男を怒らせた。

 

「最大輪・六王銃ッ!」

「ぬんっ!」

 

 3000人近くの海賊を殺しながらも一切の疲労を見せることなく、六式究極奥義を放つジャックハート。

 そして同じく、ヒトヒトの実モデル“大仏”の能力を発動させ、衝撃波を放つ海軍本部元帥であるセンゴク。

 

「ぐわァアアッ!」

 

 その2人のあまりの衝撃の強さに血を吐きながら吹き飛ばされる黒ひげ海賊団。

 彼らの前に、2人は立ちはだかった。

 

「―ここは、世界のほぼ中心にある島、マリンフォード。世界中の人々にとって、ここに我々がいるということに意味がある! 軽々しくここを沈めるなどと口にするな、青二才がァ!」

 

 センゴクが叫ぶ。

 要塞の存在ではないのだと。世界の中心に、正義を貫く人物が集まることこそが大事なのだと。

 

「俺ァ、センゴクより甘くねぇぞ。てめぇらは俺の獲物を奪い、俺の大事なモンがあるマリンフォードを沈めるっつったんだ。……生きてられると思うなよ?」

 

 ジャックハートは宣言した。

 この男にも、正義の心が無い訳では無い。人並み程度には存在している。

 ゆえに、自分が大切にしているものを傷つけられようとしている所を黙って見逃すことも無い。

 

「ゼハハ……! じゃあ……守ってみせろよ……!」

「上から物言ってんじゃねぇよ。…!」

「ジャックハートッ! ちゃんと見てきた(・・・・)か!?」

「ったりめェだッ!」

 

 時と場合を考えて、センゴクはジャックハートに言葉遣いを訂正させる時ではないと考え、ジャックハートが海軍本部に所属した時に出した指示を覚えているか確認した。

 それに荒く答えたジャックハートは、“剃”で黒ひげの目の前まで移動し、左手で狙いを定め―

 

「“(ピストル)”」

「ゴガァッ!!?」

 

 ―誰の目にも映らぬ程の速さを持ち、ありったけの武装色の覇気を纏った拳で、黒ひげの腹部を捉えた。

 

「ッ! 今のは…!」

「あ? んだよ、海兵が海賊の技使っちゃいけねぇのか?」

「喧嘩を売る場所を間違えたな、黒ひげ海賊団……! 俺やガープはともかく、このジャックハートがいる場所でとは」

「黙れよセンゴク。……今は、こいつらの息の根を止めるのが先だろ?」

 

 センゴクからジャックハートに与えられていた指示。

 それは、多くの場数を踏み、数多の能力者の戦いを見てこいというものだ。

 

「次世代の最強は間違いなく、ジャックハート……この男だ!」

「男に褒められても吐き気がするだけだ」

「ゼハハハ……! 悪魔の実を食べずして、悪魔の実の能力を再現するとはな……ッ!」

「目ェ腐ってんのか。腕は伸びてねぇだろうが、よォッ!」

「グガハァッ!」

「船長ッ!?」

 

 再び黒ひげの腹部に、深々と右の拳を突き刺す。

 この技は、元々麦わらのルフィが使っていたものだ。彼の食べた悪魔の実“ゴムゴムの実”の能力が無ければ、絶対に放てない技。

 しかしそれを、腕が伸びるという部分以外を再現したのだ。

 

「……シリュウ、てめぇもかかって来いよ。……“鷹の目”からは、色々と仕入れたんでな」

「チィッ!」

 

 煽られ、そして目の前で数時間前に仲間になった黒ひげを吹き飛ばされたシリュウがジャックハートへと斬り掛かる。

 刀を振り上げるシリュウを見て、ジャックハートの口角が吊り上がる。

 

「嵐脚ッ!」

「ぬぐ……ォ……ッ!」

「ケハハハハッ! 誰も、“鷹の目”から仕入れたものを使うとも言ってねぇよ! ……最も―」

「まずい……ッ! シリュウ、避けろ!」

 

 無防備に拓けたシリュウの腹部を嵐脚で斬りつける。

 そして、持っていた刀を横に振るう。

 

「ガフッ……」

「―使わねぇとも言ってねぇがな。ケハハハッ!」

 

 シリュウの胴体と口から噴き出す鮮血。

 仰向けに力無く沈んでいくシリュウ。

 

「まず一人。裏切り者からだ」

 

 彼の心臓に刃を突き刺そうとした、その時だった。

 

「そこまでだァァァァアッ!!!」

 

 サカズキがいた方から、一人の海兵の高い声が聞こえた。

 

「……あ? なんだアイツ」

「もうやめましょうよ! これ以上戦うのを、やめましょうよ!! ……命が、もったいないっ!!」

「ケハハッ! おいセンゴク、あんなクソガキをてめぇ、なんで本部に置いてんだァ……ッ!」

 

 その声に、その主張に、ジャックハートはさらなる苛立ちを感じた。

 

「目的は果たしてるのに、戦意の無い海賊を追いかけて……! 止められる戦いに欲をかいて……!」

「ケハハハハッ! 戦意がないだと? 戦争吹っかけて勝手に死んだのはジジイだろうが」

 

 そんな苛立ちを越えて、次第に呆れたような表情を浮かべる。

 

「今、手当てすれば助かる兵士を見捨て、その上に犠牲者を増やす……ッ! 今から倒れていく兵士達は、まるで……バカじゃないですか!?」

「ケハハァッ! そりゃそうだろ! 弱ぇ奴から死んでいく! てめぇみてぇになぁ、シリュウッ!!」

 

 サカズキに向かって大声で叫ぶその様子に、少し目を奪われたがどうということは無かった。

 ただの腰抜けのみっともなく生きていたいと主張する、かつて新世界から逃げた兵士達と同じだと思い返し、ジャックハートは刃を進める。

 

「あぁ? ……この覇気、まさか……」

 

 だが、再び止まる。

 

「よくやった……若い海兵……」

 

 覚えのある覇気。そして声。

 

「お前が命を懸けて生み出した“勇気ある数秒”は、良くか悪くかたった今、世界の運命を大きく変えた!」

 

 白ひげと同等とも言える存在感と、圧倒的な気迫。

 

「この戦争を、終わらせに来た!!」

 

 四皇の一人、赤髪のシャンクスが、マリンフォードに降り立った。

 

「てめぇ赤髪ィッ! 邪魔してんじゃ―――ガッ!」

「っ、待てッ!! ジャックハートォオッ!!」

「ぬぇいっ!」

 

 瞬間、ジャックハートの身体が地に沈んだ。

 

「何しやがるクソジジイ共が!」

「落ち着けジャックハート……! 気持ちは分からんでもないが、今は仕掛けるな!」

「あ゛ぁ゛ッ!? 賊を前にして逃げるってかァ!?」

「そうではないッ! ……いいから落ち着くんじゃッ!」

 

 ジャックハートの身体を抑えたのは、近くにいたセンゴクとガープ。

 大海賊時代以前からの重鎮2人が、抑え込んだのだ。

 

「ここがどこか、分かってるのか……!」

「……クソが。離せよクソジジイ。俺に密着していいのは女だけだ」

「ったく。あいも変わらずと言ったところじゃのぉ」

 

 暴れようとしたジャックハートを二人がかりで止め、その後、“赤髪のシャンクス”の提案を海軍側が飲んだ。

 

 

 ――その結果、“白ひげ”と“火拳”を赤髪が弔うということで、戦争は幕を閉じた。

 

 

 それから数時間後。

 マリンフォードには、海兵だけが残っていた。

 

「……なぁセンゴクさんよぉ。“赤髪”が来ることは分かってたんすか?」

「そんな訳ないだろう、ジャックハート」

「じゃあなんで、あんな締まりの悪い形で戦争を終わらせた」

「……あの若い海兵の言う通り、負傷者の手当てに回ろうと思っただけだ」

「ケハハハッ! 素直に言えよ。ボロボロの状態で“赤髪”と戦うのが怖かったってよぉ」

 

 赤髪のシャンクスがマリンフォードに降り立ち、“頂上戦争”は白ひげとエースの死をもって幕を閉じた。

 白ひげ海賊団の代わりに場を受け持つと宣言した“赤髪海賊団”。

 彼らの提案を、センゴクが飲んだのだ。

 

「あの時俺を止めてなきゃ、黒ひげにも赤髪にも多少の手傷は負わすことができた」

「分かってるッ! ……だからこそ、だ」

「はぁ?」

 

 ジャックハートが眉を歪めてセンゴクを睨む。

 ジャックハートの考えでは、黒ひげ海賊団と赤髪海賊団の両者と戦うことは出来た。しかし、それはセンゴクも同じ考えだった。

 だからこそ止めたのだと、センゴクは言った。

 

「お前という戦力を、今ここでは削がれたくない。お前も未来を分かってるからこそ、指示に従ったんだろう……!」

「チッ。……面白くねぇ」

「……すまないな、ジャックハート。禁欲させたのは私だと言うのに……!」

「別に、もう戦争は終わったんで気にしてないっすよ。極上の女の人魚5人で手を打ちます」

「……前向きに検討しよう」

「ケハハッ、殺すぞ。ちゃんと用意しろ」

 

 白ひげが死んだ今、世界の秩序は大きく乱れていくことが予想されている。

 白ひげの脅威が去り、荒れ狂うことを予想したからこそセンゴクはジャックハートを止め、またジャックハートも止まった。

 

「……それに、流石のお前も黒ひげ海賊団と赤髪海賊団に挟まれれば命は無かっただろう」

「どうっすかねぇ。……少なくとも黒ひげの方は、ほぼ全員ぶち殺せそうでしたけど」

「……我慢しろ。今はまだ、黒ひげは王下七武海だ」

「めんどくせぇ制度だよ、マジで。海賊には変わりねぇだろ」

 

 断言もしないセンゴクと、それを否定しないジャックハート。

 当然といえば当然だが、2人の間には他の中将達とは違う信頼があった。

 

「センゴクさん」

「なんだ」

「……新世界に、狩りに行っても?」

「当然だ。本来、敵船の上こそがお前の土俵。黒ひげが七武海を脱退すれば……存分に暴れて来いッ!」

「うっす。丁度、実家の掃除もしたかったんで」

 

 ここマリンフォードの建て直しが一段落付けば、世界中に海兵を回すことになる。

 様々な海がある中で、最も過酷な海をジャックハートは選び、センゴクも了承した。

 

「よっこらしょ、と」

「……どこへ行く?」

「そりゃあ、帰るんすよ。新世界に行くとなったら、しばらく会えねぇ。たっぷりと愛情を注いでやらねぇと」

「はぁ……。大概にしておけよ」

「絶対無理っす。俺若いんで、性欲有り余ってんすよ」

「全く……。血気盛んな18歳だ……」

「ケハハッ。拾ってきたのはアンタでしょうが」

 

 センゴクとの話も終わり、ジャックハートは立ち上がる。

 

「……もし誰か一人でも死んでたら、真っ先にてめぇを殺すぞ……黒ひげェ……ッ!」

 

 ここ、マリンフォードにある自分の部屋に住まわせている性奴隷の元へ帰るために。

 

 

 ◇

 

 

「うーい。死んでないかー、お前らー」

「いやん! ダーリン、無事だったのね!」

「当たり前だろポルチェちゃん。俺が戦争の一つや二つで死ぬわけねぇ」

「あら。それは十分、死ぬのにはふさわしいわよ?」

「えらく辛辣じゃねぇか、カリファちゃん」

 

 自室に戻ったジャックハートを出迎えたのは、ジャックハートが気まぐれで海を泳いでいた時に偶然遭遇し壊滅させた海賊団にいたポルチェと、元CP9のカリファの2人。

 その2人以外にも、ジャックハートの部屋には複数の性奴隷がいた。

 

「随分とお疲れのようね」

「そりゃな。これでも頑張ってきたんだぜ?俺」

「分かってるわよ、ダーリン!」

 

 その2人を両腕に抱いて部屋の奥へと歩いていく。

 進む度に鼻腔を擽る強烈な雌の匂いが、ジャックハートの溜まりに溜まった性欲を駆り立てる。

 

「よぉ。無事だったか? お前ら」

「じゃ、ジャックハート様……」

「キャハハ……。ジャックハート様……は、早く……おまんこに精子を……!」

「ジャックハート様ぁ……」

「ケハハッ。今は安否確認だけだ。今抱くのはてめぇらじゃねぇよ」

 

 まんぐり返しの状態で拘束している、ミス・ダブルフィンガーことポーラ。

 拘束はされていないものの、ジャックハートを見つけた瞬間に股間ににじり寄ろうとする、ミス・バレンタイン。

 そして、寂しそうにもの惜しげな声を出すジュエリー・ボニー。

 その誰も、今は抱かないと言ったのだ。

 

「もしかして、彼女を抱くの?」

「あぁ。だから身体は綺麗にしておきたいんだよ」

「分かったわ。なら、私が手伝ってあげる」

「私も誘ってくれないといやんっ」

「分かってるよ、ポルチェちゃん」

 

 まずは身体を清めなければならない。

 ジャックハートを待ちわびる性奴隷達を一旦置いておき、ジャックハートはポルチェとカリファを従え、脱衣場へと入っていった。

 

「ポルチェちゃん、脱がせてくれ」

「はぁいっ! ……ん、はぁ……。すっごい身体ぁ……いい匂いぃ……」

「じゃあ私は先にバスルームの用意を済ませておくわね」

「あぁ。すまねぇな、カリファちゃん」

 

 ジャックハートの鍛え抜かれた身体を触りながら服を脱がせていくポルチェ。

 彼女が衣服を脱がせている間に、カリファは着ていたバスローブを脱ぎ去り、全裸でバスルームへと入っていく。

 

「いやん、ダーリンのえっち。私は逃げないわよ?」

「マーキングさ」

 

 同じく白いバスローブに身を包むポルチェの胸を、正面から鷲掴みにする。

 

「マーキング? ……ふふっ、そんなの意味無いわ」

「と言うと?」

「私はもうとっくに、ダーリンのものですもの!」

 

 そう微笑みながらジャックハートの手に自分から胸を押し付けるポルチェ。

 むにっ、とジャックハートの手の中でポルチェの胸が卑猥に形を変える。

 

「ジャックハート様、お風呂の準備ができました」

「おぉ、ありがとよカリファちゃん」

「他の女の胸を揉みしだきながら名前を呼ぶなんて、セクハラよ」

「なんでだよ。……あっ、もしかして嫉妬してんのか?」

「……さあ、どうかしら」

「ケハハッ、可愛い子だ」

 

 ポルチェの柔らかい身体を堪能していると、バスルームからカリファがじっと見つめていることに気づいた。

 せっかく用意してくれたのだ。直ぐに入らなければカリファに申し訳がない。

 

「さて、ポルチェちゃんも行こうか」

「はぁいっ!」

 

 ポルチェのバスローブを剥ぎ取り、そのまま肩を抱いてバスルームへ入る。

 ポルチェとジャックハートの二人を待っていたのは、泡で溢れた浴室だった。

 

「おぉ……。流石“アワアワの実”の能力だな」

「脱力する成分も入れてるの。疲れた身体に効くわよ」

「そりゃ助かる」

「だったら、お礼はたっぷりとしてもらわないとね」

「あぁ、分かってる」

 

 カリファがCP9にいた頃に食した悪魔の実である“アワアワの実”。

 その能力を使い、疲労を回復しやすい泡を生成したのだ。

 

「むぅー! 私もご褒美が欲しいわっ!」

「今夜いっぱいぶち込んでやるよ」

「いやぁんッ! ダーリン、カッコイイッ!」

「……ほら、行くわよジャックハート様。足元に気をつけて」

「怒んなってカリファちゃん」

 

 バスルームの入り口でジャックハートを待っていたカリファ。

 彼女の手も取り、バスルームの中へと入っていく。

 

「ジャックハート様。まずはどうなさいますか?」

「そうだな……。今は、すぐにさっぱりしたい気分だ。長居もできねぇしな」

「かしこまりました。ポルチェ」

「はいはーいっ!」

 

 バスルームに入ってすぐ、ポルチェが準備に取り掛かった。

 既に膨らませていたビニールで出来たマットを床に置き、その上にお湯で溶いたローションをまぶしていく。

 

「さっ、ダーリン」

「行きましょう、ジャックハート様」

 

 自らもローションに塗れてマットの上に座ったポルチェが両腕を大きく広げてジャックハートを待ち、彼女が座るマットへとカリファが誘導する。

 

「ポルチェちゃんも変わったよなぁ。最初、俺に捕まった時は泣き叫んでたってのに」

「んもぅ、そんなこと思い出さないでっ。あの時はパニックだったの」

「あんぐらいでパニックになっちゃダメだぜ?」

「……普通、素手の一人の人間に海賊船が半壊させられたらパニックにもなるわよ」

「そうか?」

 

 ポルチェの元まで行くと、まるで絡めとるかのようにジャックハートの腕に彼女の腕が伸びた。

 そのままジャックハートをマットの上に誘い込み、ポルチェはジャックハートの鍛え上げられた身体に正面から抱きついた。

 

「あぁん! この身体……この身体なのぉっ!」

「おいおいポルチェちゃん」

「ポルチェ。今は奉仕する時間よ」

 

 マットの上に座るジャックハートの背に、今度はカリファが抱きつく。

 

「ダーリン、チュー……」

「んむっ……、ちゅる……じゅるるる……あむ、んっ……」

「じゃ、ジャックハート様……」

「……ぷはっ。カリファちゃんも、我慢出来ねぇんだろ?」

「はい。んッ!? ……ちゅぱっ、ちゅぷ……んちゅ……」

 

 性奴隷2人に身体を挟まれるや否や、ポルチェから求められたキスにすぐさま応え、背中に抱きついていたカリファからも求められ、それにも応える。

 

「……っ、と。挨拶のキスはこれぐらいだ。2人とも、頼む」

「いやんっ。ダーリンったら……」

「かしこまりました、ジャックハート様」

 

 合図と共にポルチェとカリファがマットの上下へと移動する。

 その空いたスペースに、ジャックハートがうつ伏せになって寝転ぶ。

 

「いやん、ダーリン。マッサージを受けてる間、私の相手をして?」

「最初っからそのつもりだ」

 

 寝転んだジャックハートの眼前に来たのは、M字開脚をしたポルチェの陰部。

 彼の少しの余興に、彼女達は全力を尽くすのだ。

 

「ではジャックハート様。私は、マッサージを始めさせて頂きます」

「あぁ。いつも通り、完璧に頼むぜ」

「かしこまりました」

 

 ジャックハートの言葉を聞いてカリファが“アワアワの実”の能力を発動する。

 力が抜けていく泡を纏った彼女の細い指が、ジャックハートの脚を揉んでいく。

 

「あぁ〜……効くぜ……。これが終われば、また2週間は戦える……」

「ダメよ。早く帰ってきなさい」

「……ねぇダーリン。早く、ポルチェのおまんこでも遊んで?」

「そうだな。……ってか、剃ったんだな」

「あんっ!」

 

 ジャックハートの指がポルチェの晒された陰核を弾く。

 彼が言った通り、ポルチェは自身の陰毛を全て剃っていた。

 

「ケハッ。どうしたよ、ポルチェちゃん。弾いただけで汁が溢れてきたぜ?」

「だ、だって……我慢出来なくて……っ、いやぁんっ!」

「ほら、膣内だってぐっちょぐちょじゃねぇか」

 

 今度は彼の指が、ポルチェの膣内へと侵入していく。

 長い指が、ポルチェの弱い部分を優しく刺激する。

 

「や、あっ……んぅっ、あ、はぁっ……!」

「エロい声が漏れてるぜ?」

「ジャックハート様、仰向けになってくださいっ」

「おいおい、あんまり怒んなってカリファちゃん。……お前は俺の何だ?」

「っ、……せ、性奴隷、です」

「そうだ。……だったら何をすればいいかは、分かるよな?」

「……はい、ジャックハート様」

 

 ポルチェの膣から指を引き抜いて仰向けに寝転ぶジャックハート。

 頭はポルチェの下腹部に置いてカリファの奉仕を待つ。

 

「先程は申し訳ございませんでした」

「あぁ、許してやるよ。代わりに、ちゃんと気持ち良くしてくれたらな」

「もちろんです」

 

 ジャックハートが仰向けになることでカリファの眼前には先ほどまでは見えていなかったものが現れる。

 彼の、凄まじく大きく屹立した陰茎が。

 

「凄い……」

「カリファちゃん。我慢しなくてもいいぜ?」

「では、失礼します」

 

 そう言い、ジャックハートの股間部へと跨るカリファ。

 その顔は恍惚な笑みを浮かべており、じっと彼を見つめていた。

 

「はぁ……ぅっ、んっ……! は、入りました……」

「見りゃ分かる。ほら、早く動け」

「はいっ……。ん、あっ! す、ごい……ゴリゴリ、ってぇ……!」

 

 寝転んでいるジャックハートは決して動かず、ただ気持ち良さそうに上下に動くカリファを眺めるだけ。

 ただそれだけでも滾る程に、彼女の姿は美しく乱れていた。

 

「あぁんっ! やぇ……あっ、はぁっ! ひっ、はぁあんっ!」

「いいぞカリファちゃん……。膣内(ナカ)がぬるぬるしてて、良く滑る……」

「はぁんっ! ジャックハート様のっ、おちんぽがぁっ!」

「俺のがどうした?」

「きもちいいですぅっ!」

 

 普段の凛としたカリファからは考えられないほどに、大きく、そして激しく啼く。

 以前所属していたCP9にいた時にはこんなことをするなどありえなかったが、それは今も同じ。

 ジャックハートの前でのみ、彼女はこうなってしまうのだ。

 

「わた、ひの……よ、よわい……とこぉ……! いっぱいぃい…っ!」

「可愛いやつだ。そらっ!」

「あひぃんっ!」

 

 ジャックハートが彼女に向かって腰を突き上げる。

 今まで自分だけが上下に動いていた時に、急に下から突き上げてきたその快感に、カリファは一瞬だけ意識を飛ばしてしまった。

 

「イクッ、イッちゃうぅ……」

「さっきからイッてんだろがっ!」

「あひっ、んっ……あぁっ!」

 

 どんどんとカリファを突くペースが早くなり、絶頂ながらも必死にジャックハートを気持ち良くさせようとカリファも腰を振る。

 その彼女の献身的な愛おしい行動からか戦争後の疲労からか、ジャックハートも珍しく早いタイミングで達しそうになっていた。

 

「……カリファちゃん。どこに出してほしい?」

「膣内っ! 膣内に射精してぇっ!」

「おらよ、受け取れっ!」

 

 肉ヒダが竿に絡みつき、何があっても離さないようなカリファの膣肉。

 彼女の上下の口の意見が一致したようなので、彼女の要望通り全ての精液を膣内に吐き出していく。

 

「あぁぁぁああっ! イクッ、イグ……イックううぅぅぅッ!」

 

 最奥を突いたと同時に、カリファが果てた。

 びくびくと全身を震わせながら肩で息をする彼女に、ジャックハートが声をかけた。

 

「ケハハ。大丈夫か?」

「は、はひ……」

 

 呂律が回らない中で何とか返事をし、息を整えていく。

 

「良かったぜ、カリファちゃん。気持ち良かった」

「はぁ……はぁ……、こ、光栄です……」

 

 ジャックハートのイチモツを抜き、カリファが彼の隣に寝転んだ。

 寝転んだと同時。意識を飛ばした。

 

「さてと。俺はもう上がる」

「えぇっ!? 私の番は!?」

「ポルチェちゃんはカリファちゃんの面倒を見てやってくれ」

「そ、そんなぁ……」

 

 2人を残し、ジャックハートはシャワールームを出た。

 

 

 ◇ ◇

 

 

「……今、なんと?」

『黒ひげが正式に王下七武海を脱退した。もう既に、新世界に行っている』

「へぇ……。ってことは、今行けばぶち殺してもイイってことっすよね?」

『行くな、とは言わん。だが白ひげが死んだ今、世界各地でいざこざが起きるだろう』

「それの処理をしろってかぁ?」

 

 浴室から出てバスローブに着替えたジャックハートが部屋に戻ると、彼の机の上に置いていた電伝虫がなっていた。

 そのかけてきていた相手は、海軍本部元帥である、センゴクだった。

 

『そうだ。……お前も、鬱憤が溜まっているだろう』

「ケハハハッ! そりゃそうさ。ジジイ2人に止められたんだからな」

『うむ、ならば頼んだぞ。単独での新世界においての長期任務となる。準備は怠るなよ』

「うーい」

 

 元来、ジャックハートに中将として任されていた仕事は、単独遠征が大半を占めていた。

 基本的に長距離の月歩で移動するジャックハートのスタミナに着いてこれず、海上での奇襲の速度にも着いていけない者が部下に多いのだ。

 

『それとだ。……ガープが、実質職を降りる。おれも、近いうちに元帥から退く』

「あっ、そうなんすか。なんでまた?」

『今回の責任を取った、と言えばいいのだろうがな。いつまでも老兵がのさばっていても意味は無いだろう』

「ほー。若いのを育てるってことっすか」

 

 センゴクとガープ。

 頂上戦争でも海軍側の支柱となった二人が辞める、となれば幾らか変わってくることもある。

 だが、ジャックハートにとってはさほど大事ではなかった。

 

『あぁ。そして、ここからが本題だ。ジャックハート中将。次の元帥に、お前は誰を推す?』

「あー……。ボルサリーノさんっすかね。あの人が上司だと気が楽そうですし」

『そうはいかん!』

「分かってますって。……普通に考えて、サカズキさんじゃないんすか? 俺の海賊は基本皆殺しって考えにも理解してくれてますし」

『そう、か』

 

 ジャックハート自体、現在海軍本部においてトップクラスと言ってもいい地位についているのだ。

 まだ若く、将来更に強くなることも予想されており、現在以上の地位はほぼ確定。

 ゆえに、彼にとって大事となるのは、上司がどう変わるかという事だった。

 

『なら、元帥が誰になるかで、お前の仕事も変わってくるかもしれん、とだけ思っていてくれ』

「了解っす。……あっ、人が来たんで、この辺で」

『あぁ、分かった』

 

 話の途中に扉がノックされた音を聞き、センゴクとの電話をきる。

 つい先程センゴクに言われたことを頭の中で思い出しながら扉の前まで行き、開ける。

 

「やあ、たしぎちゃん。待ってたよ」

「ひぅっ!」

 

 ジャックハートの部屋の前の廊下に立っていたのは、海軍本部少尉のたしぎ。

 頂上戦争が終わった直後。ジャックハートがたしぎを自室へと誘ったのだ。

 

「さ、中へどうぞ」

「し、失礼しますっ!」

 

 その彼女を部屋の中に招き入れる。

 浴室にいるポルチェとカリファ以外の性奴隷は既に別室へと移動させており、たしぎに見えている部屋には、彼と彼女の2人しかいない。

 部屋の奥まで行き、ジャックハートは自分の椅子に腰掛け、たしぎは彼の大きな机を挟んで反対側に立った。

 

「それで、話だが」

「ジャックハート中将ッ! 私……私っ、新世界に行きたいんですッ!!」

「……ほう。なるほどね」

 

 ジャックハートが今日ここにたしぎを呼んだのは、自分の部下にならないか、という提案をするためだ。

 事実、ジャックハートの素顔を知りながらも、その海兵としての実績から男女問わず部下に志願してくる者も少なくはない。

 

「それで俺の今日の誘いを受けたってことは、俺に“覇気”を教えてほしいってことか」

「……な、なぜその事が……?」

「“見聞色の覇気”の応用さ。近くにいる人間の考えてること、次の行動は数手先まで読める」

 

 幼少期に育った環境より、元々ずば抜けていた戦闘のセンスが磨きあげられ、その過程でまず育ったのが“見聞色の覇気”だった。

 もっとも、女を抱き始めた今は相手が達するタイミングを測りながら鍛えているのだが。

 

「そして、たしぎちゃんに使える“覇気”はあと一つ」

「“武装色の覇気”、ですね」

「そうだ。……これから先、たしぎちゃんが“悪魔の実”を食わねぇってんなら、何より先にこれを鍛えた方がいい」

 

 ごくり、とたしぎがジャックハートに聞こえる程に大きな音を立てながら唾を飲んだ。

 たしぎが行きたがっている“新世界”は、偉大なる航路の前半とは比べ物にならないほど過酷な環境だ。

 それに伴い、新世界にのさばっている海賊達も、それ相応の実力を身につけている。

 

「いくら見聞色を鍛えても、武装色を纏ってない刃は自然系には通用しない」

「武装色……。あの、黒くなる……」

「そう。まあでも、刀に纏えるようになれば黒くなるのはそこだけだ。こんなふうに」

 

 壁に立てかけていた刀を手に持ち、ゆっくりと抜く。

 その刀身をたしぎに見せる。

 

「普通の刀が……」

「っ! く、黒く染まって…」

「これが、武装色をちゃんと纏えてる証拠だ。これを極めることが攻撃力の増加に繋がる」

 

 最初のたしぎが見慣れた色から、真っ黒に刀身が染まっていく。

 たしぎやジャックハートのように“悪魔の実”の能力者でない場合は、基本的にこの“武装色の覇気”を身体や武器に纏わせていくこととなる。

 

「……ジャックハート中将。私に、稽古をつけてください!」

「おれに頼むなら、対価は何か分かってるよなぁ?」

「……はい」

「よし、じゃあ早速ベッドに行こう」

 

 一瞬で机を挟んでいたたしぎの隣に現れ、横抱きにするジャックハート。

 ヒナに言われていたように口説いた訳では無いが、同僚を合法的に抱けるのでいいだろう、と考えながら足をベッドへ運ぶ。

 

「えっ、えと……。ジャックハート、中将……」

「中将、なんて呼ぶなよ。今から、俺とたしぎちゃんはただの男と女だ」

「……ジャックハートさん……」

「ケハハ。……ベッドでも、存分に“覇気”の勉強をさせてやるよ」

「あんっ!」

 

 

 その日。たしぎは女になり、海軍最強の覇気の使い手とも言える彼の真髄を見ることとなった。




ジャックハートさんがなぜ素直に止まったかは、彼の持つとあるモットーと一緒にまたいずれ書かせていただきます。

コメント評価など、お待ちしております。


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変わり行く世界

バイトと花粉症でまたまた投稿が遅れました。

まあモチベもあんまり上がりませんでした。申し訳ないです。


「ジャックハートさん……んー……」

「まだキスすんのかよ、たしぎちゃん」

「はいっ。んー」

「寝起きのキスは遠慮してんだわ。だから、キスするなら下にしてくれ」

「はーいっ。んぷっ、ぐぷぷ……」

 

 たしぎを自室に迎え入れた日。

 ジャックハートは、夜が明けるまで彼女を抱いた。

 もちろん全ての精液は彼女の三つの穴に射精し、そして彼女の絶頂するタイミングを完璧に把握した上で焦らし、弱い所を探り当てて攻めた。

 その結果、彼女も完全にジャックハートに落とされてしまった。

 

「ぐぽっ、んぐっ、じゅぽ……じゅるるるる……!」

「数時間前まで処女だった娘を、こうやって自分好みにしてくのも堪らねぇよなぁ」

「じゅぽっ。……どうか、しましたか?」

「いいや、なんにも。続けてくれ」

 

 彼が促すと、たしぎは再び口淫を開始する。

 その彼女の口内の何とも言えない温かさと唾液の感触を楽しみながら、ジャックハートは今後の予定を立てていく。

 

「……まずは、ドフラミンゴさんのとこに行くか。その次にビビちゃんのとこ行って、んで女ヶ島にでも突撃しよう」

 

 最初に、ドフラミンゴに会う。

 先日の頂上戦争も妊婦ということでもちろん戦闘からは離れ、後はただ陣痛を待つだけとなっているヒナもいるが、しばらくは大丈夫だろう。

 これから臨月を迎えると彼女主体の生活になるが、今はまだ好きにさせてもらおうと考えているジャックハートだった。

 

「ケハハ。このタイミングで“麦わら”を匿ってる証拠が出たら、いくら七武海でもただじゃ済まさねぇ」

「じゅぽっ、んぶっ、ぐぷっ……」

 

 たしぎが顔を前後にストロークしている中、ジャックハートはハンコックを手に入れる算段を立てる。

 

「あとは、くまの野郎をボコってどこに飛ばしたか吐かせばいい」

 

 ジャックハートがボニーを手に入れたあの日。

 “麦わらの一味”は黄猿、戦桃丸、PX(パシフィスタ)と戦い、最終的には合流した王下七武海の“バーソロミュー・くま”によってシャボンディ諸島から飛ばされたのだ。

 ならばどこに飛ばしたかをくま自身に聞けばいい。

 

「元懸賞金がたかだか3億弱……だっけか? 余裕だろ」

 

 今でこそくま自身がパシフィスタに改造されているものの、ボコればそれなりの情報は吐くだろう。

 吐かなくても、時間はかかるが“見聞色”を研ぎ澄ませば、場所の特定はできる。

 

「ならまあ、ゆっくりやればいい」

「じゅぷっ、ぐぽっ……じゅぅぅぅう……ちゅぽっ! ……ジャックハートさん?」

「ん、どうした?」

「いえ。その、バーソロミュー・くまに飛ばされた者は、三日三晩空を飛ぶらしいんです」

「ほう。……ってことは、シャボンディ諸島と女ヶ島を結んだ距離を半径として、その円周近くにある確率が高ぇな。よく教えてくれたな、たしぎちゃん」

「ジャックハートさんのためですからっ」

 

 ねっとりと陰茎の付け根まで咥え込み、唾液と舌で奉仕していたたしぎから、くまについての情報が得たジャックハート。

 その口角は、自然とつり上がった。

 

「じゃあご褒美に、もう1発膣内にぶち込んでやるよ」

「もう。えっちですね、ジャックハートさん」

「ケハハ。そんな奴に、“覇気”を教えてもらいに来たのはたしぎちゃんだろ?」

 

 仰向けに寝転がるジャックハートの腰に跨るたしぎ。

 その秘部は口淫をしただけで既にぐしょぐしょに濡れており、愛撫をする必要など皆無だった。

 

「ん、あっ……すっごくおっきい……」

「ケハハハッ! 女を抱き続けるには、こっちも鍛えとかねぇとな」

 

 一切の抵抗なくすっぽりとジャックハートの陰茎を咥えこんだたしぎの膣肉。

 その中は、すっかりジャックハートの形を覚えさせられていた。

 

「んっ、あぁっ! この、硬くておっきいおちんちん……好きになっちゃいましたぁ……」

「おいおいたしぎちゃん。好きなのはそれだけじゃねぇだろ?」

「はいぃ! ジャックハートさんに膣内射精されるのも、めちゃくちゃに犯されるのも大好きになっちゃいましたぁっ!」

 

 じゅぶじゅぶという淫猥な水音を奏でながら、たしぎの淫裂はジャックハートの肉棒を貪り続ける。

 彼らは、男女の関係に至る際に、とある契約を交わしていた。

 

「最初の約束は覚えてんのか?」

「はっ、はい……! 私の体内への射精一回に付き、1日覇気の訓練を見てくださるというものです…」

「そうだ。……頑張って腰を振れよ、たしぎちゃん。今のセックスが気持ち良ければ、一ヶ月追加で面倒見てやるよ」

「ほ、本当ですか!?」

 

 ジャックハートのイチモツを膣で咥えながらもたしぎの顔色が変わる。

 昨日から今朝にかけてジャックハートがたしぎの口内、尻穴、そして膣内に射精した数は30になる。

 これにより、二人きりでの覇気のトレーニングの予定が取り付けられたのだ。

 

「ケハハ。そのためには、俺をうまく興奮させてみな?」

「はい! んっ……はっ、あんっ! ジャックハートさんっ、あぁんっ! 気持ち良いですぅ!」

 

 ジャックハートの体の上で、たしぎが乱れる。

 その細い体からは考えられないほどに豊かに育った乳房がぶるんぶるんと大きく揺れる。

 体が上下に動くとともに、乳房の先端にある薄いピンクの綺麗な乳首から汗が飛び散る。

 

「あはぁんっ! やっ、あぁ……! しゅ、しゅごいのぉっ! イッ、イッちゃうぅ……!」

「もっとだ。もっとちゃんと引き締めな」

「はいぃん……!」

 

 彼の胴体に手をつき、彼にその巨乳が揺れる様を見せつけながら、ひたすらに腰を打ち付け、グラインドし、彼の竿を刺激していく。

 海兵として肉体を鍛えているたしぎは、ジャックハートが少し調教しただけで完璧に膣圧をコントロールできるようになっていた。

 

「あひぃっ! んっ、はっ、あはぁっ! んぅ……おっ、ほぉっ!」

「いいねいいねぇ。しっかり俺好みになってんなぁ」

「ジャックハートさんのおちんちん、もっと欲しいですぅっ!」

「ケハハハハ。いくらでもくれてやるよ」

 

 たしぎの口から、叫びにも似た喘ぎ声が漏れ始める。

 このように、抱いている女性がただ自分の虜になり、自分なしでは生きていけないというところまで調教していくのが、ジャックハートの最近のマイブームなのだ。

 

「お願い、ジャックハートさん……! 私の膣内に、いっぱい射精してぇ……!」

「くぉ……! いきなり締まって……!」

「私、ジャックハートさんの赤ちゃんなら、産みたいです……! 私を、ジャックハートさんの子種で孕ませて?」

「っ! 上出来だぜたしぎちゃん! お望み通り注いでやる!」

 

 たしぎのそのセリフに、ジャックハートの彼女への征服欲が駆り立てられる。

 普段、海軍本部でたしぎの姿を見かけていた時は、彼女の近くに必ずと言っていいほどにスモーカーがいた。

 ストーカーかよスモーカー、とジャックハートが零すほどに、スモーカーによるガードが固かったのだ。

 

「はいっ。いっぱい、いっぱい射精してくださいっ!」

 

 彼の同期であるヒナをジャックハートが妊娠させたことが発覚した辺りから少しスモーカーの態度がきつくなった気がしないでもないが、男と女の関係に口を挟むほど、スモーカーは無粋ではなかった。

 幸せそうにお腹をさするヒナを見て、何かを悟ってくれたのだろう。

 

「ケハハハッ! しっかりと全部受け止めろよ!」

「あぁんっ!」

 

 閑話休題。

 

 たしぎの膣肉がジャックハートの肉竿に絡みつき、根元から精液を搾り取ろうとうねり、濡れ、熱を帯びていく。

 

「あひっ、んっ……はぁんっ! っ、あ……、んはぁっ! イ、イク……! イッちゃいます……!」

「ならイッちまえ!」

 

 ジャックハートもたしぎのくびれた腰を強く掴み、自ら腰をたしぎに打ち付ける。

 陰茎でも分かるほどに彼女の膣内はきゅうきゅうとジャックハートの陰茎を包み込みながら締め上げる。

 

「イク……あ、あぁっ! イックうううぅぅぅぅうっ!!」

「っ! 孕めや、たしぎちゃんっ!」

 

 先に絶頂したのは、たしぎ。

 その尿道から潮を撒き散らし、ぶるぶるとその全身を震わせながら過去最高に膣圧が強くなる。

 その直後に、ジャックハートが達する。

 搾り上げてくる彼女の膣に一切逆らうことなく、たしぎの膣内に精液をひたすらに吐き出し続ける。

 

「あ、あへぁ……。しゅ、しゅっごいのぉ……」

「け、ケハハ……。流石に今回は、俺もちょいと疲れたわ」

 

 結論から言ってしまえば、とんでもない量の精液が出た。

 下手をすればたしぎの子宮が破裂してしまうのでは無いかと言うほどに注ぎ込まれただろう。

 

「ジャックハートさん……。これからも、お願いしますね」

「あぁ。きっちりと、昼も夜も面倒を見てやるぜ」

「んもうっ。相変わらずですね、ジャックハートさんは」

 

 朝一番、かつたしぎとの交わりの中で最大量の射精を終え、彼女との性行為は一旦終わった。

 

「……はぁ。腹が減ったな」

「あっ! じゃあ、持ってきてもらいますね!」

 

 すでに陰茎を抜いたたしぎが、白いバスローブに身を包んで寝室を出て行く。

 鍛えられた膣肉から精液が零れ落ちることはなく、その全てを膣内に収めたまま、ドアを開ける。

 

「あら。ようやく終わったのね」

「はい。あの、ジャックハートさんが朝食が欲しいと……」

「分かったわ。ポルチェ、あなたも手伝いなさい」

「……む〜。さっきまで気絶してたくせに〜」

 

 寝室の外で待機していたカリファとポルチェがジャックハートの朝食の用意に入る。

 

 こうして、彼の朝の至福の時間は過ぎていくこととなる。

 

 

 ◇

 

 

「ぶわっはっはっはっ! そうかそうか、たしぎも抱いたか」

「あぁ。流石は処女だ。締まりも良くて気持ち良かったよ」

「若くていいのぉ、お前は。わしもあと10年若ければ……」

「ケハハ。風俗にでも行ってこいよ」

「お前さんが作ったアレか?」

「それだ。見てくれだけはいいのが多いからな」

 

 たしぎとの性行為と朝食を終えたジャックハートは、散歩がてらに歩いている時に出会ったガープとの話に花を咲かせていた。

 話題は、ジャックハートが抱いたたしぎについて、そして、ジャックハートがここマリンフォードに作った風俗店についてだった。

 

「ん? 見てくれがいいなら、手元に置いておかんのか?」

「アホか。俺には、抱きたくねぇ女のA、B、C、Dがあるんだよ」

「と、言うと?」

アホ(Aho)ブス(Busu)チビ(Chibi)デブ(Debu)だ。アホはまあ許容できてたんだがな、あんまりにも自分勝手な奴が多すぎたからな。手放すついでに金稼ぎってな」

「全くお前は……」

 

 ジャックハートが数年前に捉えてきた女海賊たち。

 外見と女性器の締まりの良さから一時期愛用していた肉便器と化していたのだが、そのあまりの知能の低さに萎えたのだ。

 しかし、インペルダウンに送るよりも良い活用法を思いついた。

 それが、風俗というものだった。

 

「とか言っときながらアンタも常連じゃねえか」

「うぐ……」

「そこで童貞捨ててるやつも多いって聞くしな。アホはハメてもらえる、男は発散できる。ウィンウィンだろ?」

「……まあ、そうじゃが……」

「ケハハハ、なら文句言うなよ。っと、アレだ。ポルチェちゃんのとこにいた他の雌どもはそこに置いてるからよ。思う存分使ってやってくれ」

「む。これからどこかへ行くのか?」

「あぁ、ちょいとな」

 

 ベンチから立ち上がるジャックハート。

 彼の懐が温かい理由も判明し、散財でもしに行くのかと考えたガープだが、その考えは覆されることとなる。

 

「ドフラミンゴさんのとこに行くんだよ。フーシャ村にはその後で顔を出しに行く」

「ぜひそうしてくれ。マキノも喜ぶだろう」

 

 王下七武海の一人であるドンキホーテ・ドフラミンゴに会いに行くというのだ。

 彼が根城にしているのは、新世界にあるドレスローザという国。

 大きなコロシアムが特徴的なその国には、ジャックハートの愛人が数人いる。

 

「じゃあな、行ってくる」

「うむ。女たちは連れて行くのか?」

「当たり前だろ。長い船旅の間、何して過ごせばいいんだよ」

 

 ここマリンフォードからドレスローザのある新世界に行くには、コーティング船に乗って魚人島を通るか、赤い大陸(レッドライン)を越えていくしかない。

 ジャックハートは基本登るのが面倒なため、人魚を見に行くがてら魚人島を経由していくのが基本となってくる。

 

「ヒナちゃんの出産にはできるだけ立ち会えるようにする」

「それが、父となる者の役割じゃ」

「ケハハハ。すでにテメェより子供の数は多いっての」

 

 ガープは自身と女性の間に、一人の子を授かっている。

 しかし、つい先日18歳になったばかりのジャックハートは、数多の女性との間にそれよりも遥かに多い子どもがいる。

 もちろんその中には女海賊たちとの間に産まれた子もおり、すでにその子どもたちは海軍の育児施設に預けられているのだ。

 

「新世界に行くついでに新しいのも仕入れてきたいからな」

「全く……。お前の女好きも変わらんのぅ」

「そりゃ、そんな簡単には変わるわけねえだろ」

 

 ジャックハートが立ち上がる。

 2mに届くのではないかというほどに大きい彼のその姿は、服の上からは分かりにくいが、とんでもなく頑丈に鍛えられている。

 

「じゃあなクソジジイ」

「早よう行けクソガキ」

 

 ガープに別れを告げ、一旦自室に戻るジャックハート。

 

「おーいお前らー。旅に出る準備をすんぞー」

「え……?」

「た、旅……?」

 

 自室の扉を開けてそう言うと、ポーラとミス・バレンタインが疑問の声を上げた。

 

「そうだ。俺の性欲発散のためにお前らも連れて行く」

「っ、性欲……!」

「は、発散……!」

 

 その言葉に、二人の頬に紅が差す。

 無論それはポーラとバレンタインだけではなく、ポルチェやカリファも顔を赤らめていた。

 

「ジャックハート様。どこへ行かれるのですか?」

「新世界にある、ドレスローザってとこだ。そこに行くついでに魚人島にも寄っていく」

「し、新世界……?」

「安心しろ。俺がいる限り、お前たちには手出しさせねぇよ」

 

 流石に一応犯罪者となっている彼女たちを天竜人たちが住んでいる聖地・マリージョアに連れて行くこともできないこともないが、面倒くさいので通らないのだ。

 若干数名、天竜人の中でジャックハートのことを気にかけている女性がいるのだが、それはまた別の話となる。

 

「新世界は、俺が生まれ育った故郷だ。襲ってくるクソ雑魚なんざガキの頃から慣れている」

「ほ、ホントに?」

「あぁ。だから安心して、お前達は俺との子作りに専念してりゃいい」

 

 ジャックハートの部隊には、彼が直々に選び抜いた精鋭達が所属している。

 その全員が、意外なことに男になっている。

 と言ってもこれはジャックハートの意思ではなく、任務中に発情しないように、元帥であるセンゴクが彼の部下候補に男ばかりを用意していたのだ。

 

「深海の景色を眺めながらのセックスはたまらねぇからな。ケハハ、楽しみにしとけよ」

「あの、ジャックハートさん。私も連れて行ってくれませんか?」

「……へぇ。いいぜ、たしぎちゃん。旅の途中でもしっかりと特訓してやるよ」

 

 しかし、そのセンゴクの考えも虚しく、海兵たちが恋に落ちてしまったのだから仕方ない。

 ポーラ、バレンタイン、ポルチェ、カリファ、そしてたしぎの五人がジャックハートに同行することとなった。

 

「じゃあまずは、シャボンディ諸島でデートでもするか」

「わぁっ! 本当ですか!?」

 

 魚人島へ行くためには、特殊なシャボンで覆うコーティングが施された船で行くしかない。

 海軍本部にはコーティング船がもちろん常備されているが、それほど急ぎの用事でもないので、ゆっくりとシャボンディ諸島で英気を養ってから向かうこととなった。

 

「いろいろ買い込んでおきたいからな。……よし、それじゃあ軽く準備して行くぞ」

「んはぁっ!」

「やんっ」

 

 自身の隣にやってきたポーラとバレンタインの胸を横から抱きよせる形で、脇から腕を入れて胸を揉みしだきながら部屋の中へと入っていく。

 

「キャハハッ。ジャックハート様、私のおまんこ使う?」

「つ、使うのなら私のをっ! 子宮が、子宮が疼いて仕方ないんですぅ……!」

「ジャックハート様。私を最初に使ってくれなければ、セクハラで訴えます」

「ダーリンッ! 今度こそ私とエッチしてくれなきゃいやんっ!」

「え、えぇっとぉ……。もう一回、膣内に射精しますか?」

 

 たしぎも含め、すでにジャックハートに堕とされて彼の虜になった美女5人が、その豊かに育った柔らかい肢体で、彼を囲うように彼の身体に抱きつく。

 今朝全てをたしぎの体内にぶちまけたはずのジャックハートの肉棒が、ズボン越しでも分かるほどに大きくいきり勃つ。

 

「ケハハハハハァッ!! 誰とは言わずに全員抱いてやるよ! 長旅の前にくたばっても責任は取らねぇからな」

 

 彼らだけの淫らな前夜祭が幕を開けようとしていた。

 

 

 ◇ ◇

 

 

 その翌日。シャボンディ諸島の近海、海軍軍艦のジャックハートの部屋の中。

 

「あっ! んあぁっ、あひっ、んうぅあッ! ごりって、ごりごりってぇっ!」

「ケハハ。気持ちいいか? バレンタインちゃん」

「はいっ! キャハ、キャハハッ……! ふ、ふっといれすぅ!」

『ジャックハート中将ッ! お楽しみのところ申し訳ありませんが、失礼してもよろしいでしょうか!?』

「あぁ? ……チッ。入れ、構わん」

『失礼いたします!』

 

 バレンタインとベッドに腰掛けながら対面座位で楽しんでいたジャックハートは、渋々ノックに応じた。

 

「ジャックハート中将。あと少しで、シャボンディ諸島に到着いたします」

「おう、そうか」

「いっ、いつまでも見られたら恥ずかしい……」

「ケハハ、今さらかよ。ケツ穴すら何回か見られてんだろ。イッてるとこでいちいち恥ずかしがってんじゃねぇ」

「で、では! 失礼しました!」

 

 部下がドアを開け、シャボンディ諸島までのお楽しみ時間があと少しになっていることが知らされる。

 短い会話ながらもドアは開けっ放しになっており、他の海兵たちにも見える状況になっているが、構わず交わり続ける二人。

 座ったままのジャックハートは腰を動かさずに、ピストンを続けるバレンタインの胸を揉みしだき続ける。

 

「まあ、話してた通りだよバレンタインちゃん。あとちょっとで終わらないといけなくなった」

「えぇえっ! そんなぁ!」

「ケハハハ。だが、安心しろ。ちゃんとたっぷり射精してやるから、なっ!」

「あひぃっ!」

 

 だが、彼の部下が部屋の外に出て行ったその瞬間。

 ジャックハートがバレンタインを思い切り突き上げた。

 

「膣内かケツ穴か口か、それともぶっかけられるか。好きなのを選びな」

「で、でしたらっ、あぁんっ! 全身に、はぁん! か、かけてください…!」

「あ…。な、ならば、わたしにも……!」

「わたしにもかけてくれなきゃ、いやん……」

「か、かけてくださらなければ、セクハラよ……!」

 

 彼女からぶっかけの要望が出ると、それに釣られるように、ポーラ、ポルチェ、カリファも同じ要求をしてくる。

 現在、彼女達は陰裂からジャックハートの精液を滴り落としながらベッドに横たわっていた。

 彼女達が先に抱かれ、その休憩スペースとしてベッドを使わせている間に、対面座位という訳だ。

 

「しょうがねぇ。んじゃ、咽せる程にかけてやるよ!」

「きゃぁん!」

 

 バレンタインをベッドに押し倒し、ピストンを加速させるジャックハート。

 

「おら、っよっとぉ!」

 

 バレンタインの膣内から肉竿を引き抜き、ベッドの上に横たわる四人に鈴口を向ける。

 彼女の名器に刺激され続けていた肉棒は少し手でしごいただけであっという間に射精を迎えた。

 

「おー。すっげぇ射精るわ」

「あぁ……」

「凄い、濃い匂い……」

「ジャックハート様ぁ……」

「ありがとう、ございます……」

「ケハハ。ま、ちょっとはスッキリしたわ」

 

 そう言って、衣服を正すジャックハート。

 彼女たちを抱いている間、たしぎは自分から海上の警戒を買って出ていた。

 理由は簡単で、まだ複数プレイに抵抗があったからである。

 

「んじゃ、ちゃんと掃除しとけよ」

 

 言い残し、自分の部屋を後にする。

 シャボンディ諸島まであと少しということで、色々と再確認しなければならないのだ。

 

「おいマージィッ!! 今の島の様子はどうなってる!」

「ハッ! 数隻の海賊船が、コーティングのために停泊している、との情報があります!」

「そうか。ご苦労」

 

 彼が呼びつけたのは、ジャックハートの部下となってから最も歴が長いマージ准将。

 一時期ジャックハートがストレス発散ついでに手合わせをして殺しかけてしまい、それ以降も身をもって“覇気”の使い方を上達させている男だ。

 

「ジャックハート中将。その中には、あの“麦わら”の船もあるとの情報が」

「何? ……おかしいだろ、そりゃあ。あの戦争で大暴れしたとこの船ってなりゃ、センゴクも黙ってねぇはずだが」

「情報によると、船を守っている人物がいるとか」

「へぇ……。で、その命知らずの名前は?」

「“暴君”バーソロミュー・くまとその他ゴロツキどもです」

「ケハハハハ、何の冗談だよそりゃ。あれでも王下七武海。それにヤツは、ベガパンクの改造手術で人格を失ったはずだが」

「しかし……」

「まあいい。事実なら、殺して船をぶっ壊せばいいだけだ」

 

 そのマージから伝えられた情報は、信じがたいものだった。

 王下七武海の一人、バーソロミュー・くまが麦わらの一味の船を守っている。

 その情報の信憑性は今は不明だが、本当だとしても殺せばいいだけのこと。

 

「なあオイ、マージ。お前、俺とくまのどっちが強いと思う?」

「そ、それは……」

「ケハハハ、悩むなよ。相手がどんな“悪魔の実”を食ってても、俺の方が強い。近々本気を見せてやるよ」

「は、はぁ……」

「あぁそれとだ。恐らく、次に本部に戻った時にサカズキさん辺りから“悪魔の実”を何かしら勧められるかも知れねぇんだ。お前に譲ってやるよ」

「い、良いんですか!?」

「あぁ。あんなもん食っちまったら、女と風呂に入れねぇ」

 

 強さは間に合っている。

 それならば、水に浸かるだけで脱力してしまう“悪魔の実”など食べる必要がない。

 彼の趣味の邪魔になるために、彼は“悪魔の実”を食さないのだ。

 

「候補として考えてるらしいのが、超人系の“トキトキの実”の時止め能力。んで、最強の自然系の“ミズミズの実”。動物系の“ウオウオの実”。どれも、お前には勿体無いシロモノだろうよ」

「っ! 能力を使いこなせるよう、今後も邁進していきます!」

「ケハハ。その意気だ」

 

 現在、マージの強さは1:1でジャックハートの片手片足に負ける程度のものだ。

 一歩も動かすことができないことがほとんどだが、ジャックハートの“覇気”の練度を考えれば、相当のものである。

 

「能力使ってでもいいから俺に一撃食らわせてみろ。それができたら、お前専用の性奴隷を俺が捕まえてきてやんよ」

「え゛」

「遠慮すんなよ。いいもんなんだぜ? いつでも使える女がいるってのは」

 

 形がはっきりと分かるほどに近づいてきたシャボンディ諸島を見ながら、両手をバキバキとならすジャックハート。

 完全に獲物をしとめる目つきをしている彼に、マージは断りを入れることができなかった。

 

「まあ、俺を倒せ、とは言わねぇよ。だが、そんじょそこらのチンピラ程度は倒してくれねぇと困るわ」

「はっ!」

「新世界で今度、相手船上での戦い方を教えてやる」

「ありがとうございますっ!」

 

 ジャックハートがここまで饒舌になることは、そうはない。

 普段の船では、女を犯すか殺すことを考えているか、寝ているかのどれかがほとんどだ。

 

「待ってろよ、くま。もうすぐ俺が、息の根を止めてやるからよぉ……」

 

 “麦わらの一味”の行方を知っているかもしれない数少ない人物。

 

「んなもん、ヴィオラに言えばある程度はどうにかなるんだろうが、とりあえず半殺しにして連れてくか」

 

 ドレスローザにいる愛人の能力を使えば、その記憶を辿って場所を特定できるかもしれない。

 もしできなくとも、強引に力技で探すこともできるが、ヴィオラに頼む方が楽でいい。

 

「さてと、そんじゃあ今のうちにシャボンディ諸島を楽しむとするか。なぁ、マージ」

「はっ!」

「おいお前ら!上陸の準備しとけ!」

『はっ!』

 

 部下たちに知らしめるように声を張ると、甲板に出ていたほぼすべての人間が元気良く返した。

 

「ジャックハートさん。シャボンディ諸島で一緒にいてもいいですか?」

「おぉ、もちろんいいぜたしぎちゃん。くまの野郎をボコってからなら、いくらでも」

 

 下手をすれば王下七武海との戦闘が待っているかもしれない。

 そんな状況にも関わらず、彼はどこまでもマイペースだった。




自分の他の作品も知ってもらいたいので、匿名をやめようかと思っている今日この頃です。

コメント、評価などお待ちしております。


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密かな激戦

匿名投稿を止めました。

匿名投稿時のPN、シコシコの実の能力者こと、チャリ丸と申します!

それでは皆さま。これからもよろしくお願いいたします!


 シャボンディ諸島。

 計79本のヤルキマン・マングローブが集まって出来ている土地であるため、厳密に言えばそこは島ではない。

 そのためログも無いが、地面から特殊なシャボン玉が出たりするなど、変わった島である。

 

「お、おいアレ……」

「ジョー・ジャックハート中将だ……」

「あぁ皆さん。先日はどうも、お騒がせいたしました」

 

 そんなシャボンディ諸島だが、もちろん住民もいる。

 その大半が、先日の頂上戦争を大型のモニターで見ており、彼の姿も確認されていた。

 

「白ひげが死に、これから近海は荒れると思われます。部下たちに警備はさせますが、十分にご注意ください」

「おぉ、ありがたい!」

「流石は海軍本部最強の中将だ!」

 

 ─はー、めんどくせ。そんなに死にたくねぇなら鍛えろってんだ。

 

 そんな彼が、今このタイミングで島内を歩けば住民たちから注目を浴びることは分かっていたことだ。

 表向きの笑顔を張り付け、たしぎ達を引き連れ歩き続ける。

 

「ジャックハートさんが市民の皆さんにも優しいなんて、ちょっと意外です」

「密接に関わらねぇ人間だからこそ、表向きで軽く終わらせるのが疲れねぇコツだ」

「……いい人だな、と少しでも思った私の気持ちを返してください」

「ケハハ。他部隊の部下に“覇気”の訓練を付けてやってるだけでもいい上司だろうが」

 

 女、殺し、休息。

 基本的にこの三つの事しか考えていないジャックハートは、不必要な人間関係を嫌う。

 それこそ、市民を守るため、などという正義を掲げたことは一度もなく、どちらかと言うとサカヅキの“徹底的な正義”に近い。

 

「そう言えば、ジャックハートさんっていつから中将なんですか?」

「あん? 5年前だから……13になった時か。最年少記録らしいな。どうでもいいけど」

「あ、あははは……。じゃ、じゃあ、いつから海兵に?」

「住んでた島で拾われたんだよ。サカズキさんとセンゴクに。8歳ぐらいん時」

 

 懐かしーなー、と本人が呟く中で、たしぎとジャックハートの部下達は冷や汗を流していた。

 今から十年ほど前とはいえ、サカズキとセンゴクが二人で上陸した島に住んでいた彼はいったいどんな幼少期を過ごしていたのだろうか。

 今がこんなんということは、元もそれ相応にヤバいようだ。

 

「そっから政府のどっかの訓練施設に行かされたんだけどよ、そこの教員が弱すぎて何人か殺しかけたんだわ」

「えっ……」

「んで放り出された先が海軍ってワケ。殺してもいい海賊ならわんさか湧いてくるからな」

 

 軽く言っているが、今度は鼓動がどんどんと早くなるたしぎ達。

 政府の訓練機関となれば、たしぎの脳内に浮かんだのはサイファーポールだった。

 諜報機関とは聞いているが、それ相応の戦闘能力は必要なはず。そこであまりの強さ故に、放り出されたというのだ。

 

「いやー。お前ら、ホントに海軍って良いぜ? 道理が通ってりゃ、好きなことし放題だ」

「考え方が海賊じゃないですか!?」

「アホ。俺は、安定と癒し、んで適度な刺激があんのが良いのよ」

 

 ジャックハートの言う安定とは、海軍本部中将という地位。

 癒しは、言わずもがなだが女。

 そして適度な刺激とは、たまに遭遇する腕の立つ海賊との戦闘。

 つまりは、この現状が最高の環境なのだ。

 

「ケハハハッ。つっても、もうちょい手応えのある賊とも戦いてぇもんだ」

「はぁ、はぁ……! ジャックハート中将ッ!」

「あ? んだよ」

「『暴君』バーソロミュー・くまの姿を、確認したとの報告が……!」

「おぉ、そうか。何番グローブ?」

「17番です!」

 

 シャボンディ諸島各地に散らした部下からの連絡を得たマージの報告を受け、進路を変える。

 彼の隣を歩くたしぎ以外の部下を数十人ほど背後に連れ歩く姿は、普段の女好きな彼からは想像出来ないほどのカリスマ性に溢れていた。

 

「なあたしぎちゃん。強い奴と戦う時のコツって知ってっか?」

「いえ……」

「ま、だろうな。甘ちゃんのスモーカーが部下に殿をさせる訳ねぇし。……教えといてやるよ」

 

 元々ジャックハート率いる本隊が向かっていたのは、島の中心部である10番台のGR。

 無法地帯と言えども和やかだった雰囲気に、徐々に喧騒が紛れ込んでいく。

 

「死なずに、殺す。少しでも弱みを見せずに殺しきった方の勝ちだ」

「……はい」

「ケハハ。流石にいきなり殺すのは躊躇っちまうか。……んじゃ、自分が死なねぇために、相手を戦闘不能にしな。そうすりゃ、味方も守れる」

「はいっ!」

 

 喧騒が激しくなっていく。

 既に視界にはいくつかの海兵達が敵と見られるであろう人物達と交戦していた。

 

「おいお前ら。近隣住民に被害が出ねぇように見張ってろ」

『はっ!』

 

 ジャックハートの声に、数人の部下が反応する。

 反応した彼らは、ジャックハートの部隊の中でも特に“六式”の扱いが上手い者達だ。

 ジャックハートとくまの戦闘での余波を防ぐことが、彼らに与えられた使命だった。

 

「さてと、ご苦労諸君」

「ジャックハート中将……!」

「やった……! ジャックハート中将が来てくださったぞ!」

「え、えらい奴が来たべっちゃ……」

「……」

 

 隊列から一人出て、戦闘の中へと入っていく。

 ジャックハートが近づいたことで一旦戦いは止まり、敵味方問わず彼に視線が集まった。

 

「い、今ジャックハートって言ったか!?」

「嘘だろ……! な、なんでそんな奴がここにいるんだよ!!」

「気分でな。デート前の運動ってな感じだ」

 

 バーソロミュー・くまではないゴロツキ達が叫ぶ。

 それもそのはず。相手はあの(・・)ジャックハートなのだから。

 

「だが、俺も殺人鬼じゃねぇ。てめぇらに選択肢をやるよ」

「せ、選択肢……?」

 

 その言葉と共に、ジャックハートが左手の指を3本立てる。

 

「一つ目は、極上の女を50人、生きた状態でここに連れてくること。二つ目、大人しく“麦わら”の船を明け渡し、ぶっ壊させること。三つ目、ここで死ぬ。さあ、どれを選ぶ?」

「舐めたことを……!」

 

 ゴロツキの中でも随一のガタイを誇る男が歯を食いしばり、集団の中から前に出てきた。

 

「おら達“トビウオライダース”は、恩人である“麦わらの一味”の船を見捨てるなんてこと、するわけねぇだべッ!!」

「ほう……。じゃあ、残るは2つだな」

「うぐっ……! か、海兵に献上するために女子を攫ってくるなんてことも、出来ねぇだ!」

「そうか。じゃあ――」

 

 ジャックハートの身体が、一筋の光のようになり、消える。

 

「ゴフッ……!」

「――皆殺しだ」

 

 男、デュバルの心臓を鷲掴みにするかのように食い込んだ、片手五指銃。

 デュバルの胸に深々と突き刺さるそこからは鮮血が飛び散った。

 

「させん」

「チッ」

 

 肋骨を貫通して直接心臓を握り潰そうとした瞬間、デュバルを蹴り飛ばして自身も下がったジャックハート。

 彼らが先ほどまでいたところに一瞬でくまが現れ、その右手が振るわれていた。

 

「ヘッドォ!」

「“ニキュニキュの実”、か。めんどくせぇな」

「そう思うのなら帰ってくれ」

「そりゃ無理な話だ」

 

 心臓を潰しかけられ、そしてその異常とも言える脚力で数メートル蹴り飛ばされたデュバルを無視し、くまとジャックハートの牽制は続く。

 くまが食した悪魔の実は、“ニキュニキュの実”。

 手のひらに出来た肉球のような物に触れると、物体はおろか気体すら弾き、圧縮出来るというもの。

 

「だがまあ、負ける要素なんざ皆無に等しい」

「何を……ッ!?」

「図体デカすぎんだよ、てめぇは」

 

 剃でくまの後頭部へと一瞬で移動したジャックハートの蹴りが、くまの脊椎に突き刺さる。

 バーソロミュー・くまに肉球が現れているのは両手のひらのみ。

 つまりはそこに触れさえしなければさほど危険ではない。

 

「くっ……」

「肉球で飛んでく速さはすげぇみたいだが、てめぇ自体が遅すぎんだわ」

 

 くまが“ニキュニキュの実”の能力で攻撃するには、どうしても手のひらをジャックハートに向けなければならない。

 尋常ではない動体視力どころか、未来視が出来るほどに鍛えられた見聞色の覇気を掻い潜ることなど、不可能に近かった。

 

「呆気ねぇな、王下七武海。飾り程度の覇気しか纏ってねぇからこうなっちまう。実戦から離れすぎだわ」

「……」

 

 脊椎への一撃に加え、ジャックハートが着地してからの数秒のラッシュ。

 突きと蹴りの、まるで嵐のような猛攻に、くまはすぐに膝をついた。

 

「まずは一人、だな。――あ?」

 

 嵐脚でくまの首を撥ね飛ばすべく、右足を高々と振り上げたジャックハート。

 しかしその足はくまの首に届くことはなく、ただの剣に阻まれることとなった。

 

「はぁ……。全く、君とは闘いたくなかったんだがな……」

「……てめぇ、シルバーズ・レイリーか?」

「さて、どうかな。ここではレイさんと呼ばれてるんだが……」

「ただのジジイがこれだけの覇気使えるわけねぇだろ」

 

 その剣を振るった男。

 素性は語らなかったが、ジャックハートには分かっていた。

 かつて“偉大なる航路”を制覇した唯一の海賊であるゴールド・ロジャーの船の副船長だった男、シルバーズ・レイリーだと。

 

「あんたも麦わらの肩を持つってか?」

「あぁ。彼らには船のコーティングを頼まれていてね。…顧客に託された船だ。私の命に変えても、守ってみせる」

「こりゃまた、すげぇ覇王色だな」

「そうかい?」

 

 かの“冥王”が命をかけて守ると宣言した。

 ジャックハートからすれば、今はただのジジイに過ぎない。手段を選ばなければ殺すことだってできる。

 しかし―

 

「一海兵が、ただ剣を持った、仕事に熱心な善良な市民を殺すのか?」

「……チッ。食えねぇジジイだ」

 

 ―今のジャックハートには立場というものがある。

 彼はシルバーズ・レイリーだと確信しているが、遠目に見ている他の海兵、並びに野次馬のように集まる市民達は、ただの“レイさん”というおじいさんとしか認識していない。

 

「一応聞くが、麦わらの船をぶっ壊すことは?」

「許可できんよ。……あれは、確かに海賊船のように見える。だが、だからと言って壊させる訳にもいかん」

「そうかい。……ったく」

「退いてくれるか……」

「興ざめしただけだっつーの。そもそも、くまボコりに来ただけだったってのもあるし、可愛い部下を独断で死なせる訳にはいかねぇだろ」

 

 元々ジャックハート達がシャボンディ諸島に来た目的は、慰安のためだ。

 くまからニコ・ロビンとナミの居場所を聞き出そうと思ったが、ドレスローザにいる愛人の一人、ヴィオラの能力を使えば何とかなる。

 つまりはこの戦闘はジャックハートにとって、戦場に合流した時点でただの暇つぶしになっていたのだ。

 

「一つ、教えてくれるか。ジャックハートくん」

「なんだ?」

「……キミは、いったいどれほどの鍛錬を積んで、その若さでそれだけの覇気を身につけた?」

「環境と慣れ。んで後は気合い。じゃあな、善良な市民。せいぜいマグマに焼き殺されねぇように注意しとけや」

「あぁ」

 

 ゴロツキの一人とくまにそれ相応のダメージを与え、この静かな闘いはすぐに幕を下ろした。

 

「ジャックハートさん、あの人は……?」

「善良な市民さんだとよ」

「……ジャックハートさんの蹴りを止められるほどの、ですか?」

「それだけやべぇ市民だってことだ」

 

 ―いざとなりゃ、このGRごとぶった斬るつもりだったなあのジジイ。流石にそれ全部俺の責任にされんのはゴメンだ。

 

 ジャックハートはレイリーから覇王色の覇気を向けられた時に、自分があのまま仕掛けていた時の未来を見た。

 そこにあったのは、自分から大きく距離をとって剣を振り下ろすレイリーの姿。

 あの覇気の練度から考えても、自分達海兵にだけダメージを与えることは可能だと判断したのだ。

 

「……あとは、書類とかめんどいからな」

「いいんですか?」

「直接他の市民に手を掛けた訳でもねぇし、海賊旗も掲げられてなかった。……普通にしてやられたな。あれじゃ、俺が海兵である限りしょっぴけねぇのよ」

 

 恐らくコーティング作業を一旦中止してジャックハートの元へと駆けてきたのだと、推測する。

 海賊王の元副船長と王下七武海、そしてゴロツキ共。

 またもや場所とタイミングが悪く、仕留めきれなかった。

 

「あー……イライラする」

「ジャックハート中将! 指示をお願いします!」

「お前らで島内パトロール。俺とたしぎちゃんはデートしてくるから邪魔した奴は顔面消し飛ばすからな」

『ハッ!』

 

 後方に下げていた部下達に合流するや否や、すぐさま指示を出してたしぎ以外を散らせる。

 

「さて、行こうか」

「っ……はい……」

 

 彼女の肩に手を回し、自分の身体へと引き寄せる。

 そのまま二人でデートに行こうかとしていた、その時。

 

「ま、待って……!」

「え? ……ヒナちゃん?」

「えぇ、貴方のヒナよ」

 

 聞きなれた声で話しかけられ、振り返れば自分が孕ませた女性が、大きくなったお腹を抱えながら歩いていた。

 

「どうしたんだよ、こんなとこで」

「どうしたもこうしたもないわ。ただ、ジャックハート様がドレスローザに行くと知って……我慢出来なかったの。ヒナ発情」

「ケハハ。んじゃあたしぎちゃんと二人仲良くハメてやんよ」

 

 重い足取りで二人の元へと辿り着いたヒナ。

 そんな彼女の大きなお腹を、たしぎはじっと見つめた。

 

「ヒナさんの、このお腹の中に赤ちゃんがいるんですね…」

「あなたもいずれ授かるわ。ジャックハート様は女を確実に孕ませる素晴らしい術を持ってるから」

「楽しみにしてな、たしぎちゃん。たしぎちゃんが覇気を極めたら、ご褒美として孕ませてやる」

「…はい」

 

 顔を赤く染めるたしぎ。

 具体的なことはまだ言ってくれなかったが、楽しみにしていろ、ということは今までのそれよりも気持ちいいのかと勝手に想像してしまったのだ。

 

「あっ。ヒナさんとジャックハートさんって、いつからお知り合いなんですか?」

「10年前よ。とある決闘があって、私はジャックハート様の女になれたの。ヒナ幸運」

「たしぎちゃんの上司のクソだせぇ話だぜ?」

 

 話題は過去の話になりながら、3人は歩き出した。

 

「8歳……まあ既にそん時童貞は捨ててたんだけど」

「早くないですか!?」

「何やかんやあってな。……まあ戻すと、当時22歳のヒナちゃんにガキながら一目惚れしてな。俺の女になれって言ったんだ」

「えっ……。は、8歳、ですよね?」

「えぇ。カッコよかったわ……あの時のジャックハート様」

 

 身篭っているヒナの歩くペースに合わせているためゆったりとしているが、話す内容はかなりハードである。

 

「そこにヒナちゃんに気があったのか知らねぇけど、スモーカーが突っかかってきてよ。『舐めんなクソガキ。おままごとなら外でやりな』つってきたんだ」

「確かに、スモーカーさんなら言いそうですね……」

「だから、『スモーカーに勝ったらヒナちゃんは俺のモノだ』ってその場にいた海兵達に宣言して、満場一致で受理されたってわけ。誰も8歳が22歳に勝てるとは思ってなかったんだろうな」

 

 当時は今ほど“モクモクの実”の能力をうまく扱えてなかったスモーカーと、幼年期から生まれの環境で覇気を使いこなしていたジャックハート。

 その決闘の末にヒナはジャックハートの女となり、スモーカーはジャックハートに苦手意識を持つこととなった。

 

「へぇ〜……。凄い過去があったんですねぇ〜」

「だったら、カリファちゃんはそん時ぐらいから俺の部下って話もあるぜ」

「えっ!? そ、そうだったんですか!?」

 

 彼の発言にたしぎが驚くが、ヒナは動じていない。

 ヒナがジャックハートとスモーカーの決闘の結果、ジャックハートの女になった時。既に彼の隣にカリファがいたのだ。

 

「訓練施設に預けられた時にな。そん時は単純にカリファちゃんが落ちてったんだが」

「8歳の時からそんなに……」

「なんならカリファちゃん17ん時に一人産んでるからな」

「えぇ!?」

「出産してからちょっとしてCP9へのスパイ任務をさせてたわけ。俺のガキの頃の話っつったらこんなもんだな」

 

 こんなもの、と言っても他の海兵達では考えられないほどの行為の数々であり、もちろんこれらのジャックハートの女性問題はこれからもさらに増えていく。

 

「ジャックハート様。少し歩き疲れちゃったわ」

「普段ならその辺でぶち犯しても構わねえんだが、流石に赤ん坊がいるからなぁ……」

 

 ジャックハートとヒナの視線はすでにラブホテルの看板を捉えており、遅れてその看板を見たたしぎの顔が赤く染まる。

 

「お、お二人とも!?」

「どしたよたしぎちゃん。三人でラブホ入んのは俺の特権でなんとかできるから安心しなって」

「そ、そういう問題ではなく……!」

「あら、じゃあ私一人でジャックハート様からのご寵愛を受けるわ。ヒナ独占」

「むっ!」

 

 たしぎが三人でラブホテルに入ることに対して難色を示すや否や、すぐにジャックハートの手を取り一直線で入り口へと向かい出すヒナ。

 そんな彼女の様子を見て、たしぎが頬を膨らませた。

 

「させませんよ、ヒナさん」

「ケハハハ、大丈夫だっての。もしたしぎちゃんがついてこなかったとしても、強引に連れ込んでたからよ」

「すいませんでした、ジャックハートさん。やっぱり私も、あなたに愛して欲しいです」

「了解だ。骨の髄まで愛してやんよ」

 

 二人の美女を侍らせたまま、ジャックハートは一室がそれぞれ巨大なシャボンでできたラブホテルへと入っていった。

 

 

 ◇

 

 

「え?ジョー・ジャックハートに気をつけろ?」

「はい。……貴女は、我々から見ても目麗しい女性です。奴がここまで来るとは到底思えませんが、どうかご注意ください」

「ありがとう。……そうね。分かったわ」

 

 東の海にある、巨大な橋の上。

 その橋の末端まで“革命軍”に護送されていたニコ・ロビンは、車の中で不意にそう言われた。

 

「……つい先日。彼と、アラバスタ王国の王女、ネフェルタリ・ビビ様の婚約が発表されました」

「っ!? ……あの、お姫様が?」

「はい。そして、元B・W(バロック・ワークス)社員でもあるミス・バレンタインとミス・ダブルフィンガーもジャックハートの元に囚えられているとの情報も」

「……つまり、私の情報が彼に探られるのも時間の問題、と?」

「そういうことになります」

 

 ロビンは今まで、苦労の多いという言葉では済まされないほどに辛い人生を歩んできた。

 その途中に出会った”麦わらの一味”に身を置くことになる前に所属していた会社、バロック・ワークス。

 そこでの同僚とターゲットの一人が、ジャックハートの餌食になってしまったのだ。

 

「しかしご安心を。我々がついています。さらに、奴がこの東の海までやってくることはありえません」

「……そうかしら。彼、狙うと決めた女性は地の果てまで追いかけていたはずよ?」

「し、しかし……場所が掴めなければ……」

「それを祈るばかりね」

 

 ルフィやゾロ達とは違い、普段から新聞にも目を通し、世界情勢についてもある程度は把握しているロビン。

 その中でも、ジャックハートは時折取り上げられていた。

 

「ジョー・ジャックハート海軍本部中将。8歳で海軍本部所属の海兵になり、その後13歳で中将に。そのどちらも最年少記録。中将になった後もその破格の強さに磨きをかけ、現在は次期大将の筆頭候補に挙げられている。……違った?」

「その通りです」

「その女好きは留まることを知らず、捕まえた自分好みの女性は自らの側近兼愛人……という名の性処理道具として近くにおいている。もし海賊になっていたら、とんでもなく凶悪な人になってたでしょうね」

「考えたくもないことです」

 

 ジャックハートは女性の敵だ。と考えているのは、女海賊だけである。

 一般市民相手には取り繕った仮面の笑みを向け、ホイホイ付いてきた女性は同意の元で抱くだけ。

 普段は対海賊のエキスパートとして鳴らしているため、市民からの評価はかなり良いものとなっている。

 

「私が彼のお眼鏡に叶うかどうかは分からないけど、来てほしくはないわ」

「ごもっともです」

 

 大きなサイに引かれる車の中で、ロビンは思案していた。

 

「彼、もし本当に海賊になっていたらどれくらいの懸賞金になるのかしら」

「一説によると、20、30億はくだらないと……」

「……本当に、来てほしくないわね」

 

 ”麦わらの一味”にいるもう一人の女性である航海士、ナミのことを心配するロビンだった。

 

 ◇ ◇

 

 

『そっ、そんな!? 今から、ドレスローザに行くって、ホントですか!?』

「悪ぃなビビちゃん。結婚式にはそっちにいるからよ」

『……あの時の言葉は、嘘だったんですか?』

「嘘じゃねぇよ。ちゃんと、俺の腕利きの部下にアラバスタを24時間体制で警戒させてる」

『ジャックハートさんに、傍にいて欲しいんです……』

「……ビビちゃんにも立場があるように、俺にも海軍本部中将っていう立場があるんだ。ごめんな」

『……いえ、私の方こそごめんなさい。そうですよね。ジャックハートさんにも、立場があるのに……』

 

 早速ラブホテルの一室に入ったジャックハートはベッドに寝転ぶと、すぐに電伝虫でアラバスタにいるビビに連絡を取った。

 

「いや、悪いのは俺の方だ。ビビちゃんを不安にさせちまったんだからな」

『……でしたら一つ、お願いをしてもいいですか?』

「おう、いいぜ」

『……その……ぱ、パパが、もうそろそろ新しい家族の顔が見たい、と最近食事の時に言うようになって……。私も、一国の王女として赤ちゃんの育児を経験しておきたいなって……』

「あぁ分かった。二人で頑張ろうな」

『っ、はい!』

 

 彼女がジャックハートの浮気に対して提示してきた要求は、子作りだった。

 ビビの父であるネフェルタリ・コブラから孫の顔が見たいと言われていたのは事実であり、ビビ自身も欲しいと思い、ジャックハートも孕ませてやりたいとちょうど思っていた頃合い。

 身内のほぼ全てが同意する二人の子作りは、近々行われることとなった。

 

「それじゃあ、俺は予定が入ってっから」

『分かりました。では、アラバスタでいつでもお待ちしております』

 

 ビビのその言葉の後、電伝虫での通話が切られた。

 これにより部屋にビビの声は響かなくなり、聞こえるのは二人の美女がジャックハートの陰茎に口淫をしている卑猥な水音だけとなった。

 

「ケハハ。二人ともちゃんとビビちゃんを見習えよ?して欲しいんなら言わねえとな」

「じゅぷ、れうっ、んちゅっ……。ジャックハートさぁん……」

「ちゅっ、ん……じゅるるる……! ジャックハート様……」

「さあて。たしぎちゃんの雌穴か、それともヒナちゃんのケツ穴か」

「ちゅぱっ。わ、私のおまんこにっ!」

「ん、はぁ……。私のお尻なら、いくらでも注げるわよ?」

 

 ジャックハートの一言に、今まで行っていた口淫をやめて同時に誘惑を始める二人。

 たしぎはM字開脚になり淫裂を指で広げて見せ、ヒナは四つん這いになってその美尻を彼に見せつける。

 

「そうだな……。たしぎちゃんは最近結構な頻度で構ってやってるからな。妊婦のケツ穴ってのも一回堪能したいもんだ」

「と、いうことは……!」

「あぁ。先にヒナちゃんからいただくわ。たしぎちゃん、根本まで濡らしてくれ」

「はい。んぶ、ぐぽっ……じゅぷぷっ!」

 

 たしぎにそう促すと、彼女は嫌がるそぶり一つせずにジャックハートの肉棒を喉奥まで一気に咥え込んだ。

 唇、口内、舌、そして喉。彼の肉棒を可能な限り自身の口で咥え、濡らしていく。

 

「ちゅぽんっ。どうぞ、ジャックハートさん」

「ご苦労様。ヒナちゃんのアナルも汗ばんできて準備万端だし、すぐ入れるわ」

「えっ? ちょ、ちょっと……!」

 

 四つん這いのままだったヒナに覆いかぶさるジャックハート。

 彼の亀頭は、ヒナの薄いピンク色をした肛門を捉えていた。

 

「おらよっと」

「ああぁぁぁぁあっ!! お、奥……深くまで……!」

「せっかくだ、ヒナちゃん。赤ん坊の名前でも決めるか?」

「い、今なの……?」

「あぁ、今だ」

 

 最初の入り口、肛門でジャックハートの陰茎を締め上げたヒナのアナルは、中に進むにつれて少し緩いものとなっている。

 しかしそれでも彼女がしっかりと感じているのは、彼の献身的な調教があったためである。

 

「そ、そう……ね……。男の子なら、ホークがいいわ……」

「おぉ。俺の子にふさわしい、いい名前だな。じゃあ女の子なら、スピカ……ってのはどうだ?」

「あぁんっ! いいっ……なまえ、ね……」

 

 男ならばヒナから産まれ、猛々しい鷹へという意味でホーク。

 女ならばジャックハートと同じくトランプの柄の一つであるスペードと、乙女座のものを組み合わせたスピカ。

 名前の候補が決まったところで、ヒナに覆いかぶさるジャックハートの右手が、ヒナの大きく膨らんだ腹部にあてがわれた。

 

「さて、お前の名前はもう決まったんだ。……早く出てきて、ヒナちゃんをママにしてくれよ」

「んっ、はぁん……。その言葉、反則よ……。ヒナ感動」

「そうか? 今は俺の性奴隷でも、元気な子どもを産んだら一子の母なんだ」

「うっ、あぁ……! でも、そうなったとしても、私はジャックハート様だけの女よ?」

「当たり前だろうが」

 

 ずるずるとした腸内とキュッと引き締まる肛門の感触の違いを楽しみながら腰を動かし続ける。

 ジャックハートの太い陰茎を咥え続けるヒナの薄桃色の菊門が、ひくひくと動く。

 

「ヒナちゃん……いや、ヒナちゃんだけじゃねぇ。俺の元に来た限りは、俺が離さねぇ限りは俺の女だ。逃げ出せるなんて思うなよ」

「あんっ! も、もちろんよ……っ! ヒナは、あぁっ! 一生、貴方だけの物なのぉ!」

「ケハハハッ! んじゃあ、そろそろマーキングでもしてやるか!」

 

 ピストンの速度が跳ね上がる。

 カリまで肉棒が引き出されたかと思えば、一気に根本まで突き入れられる。

 そんな少し強引な責めを、ヒナは嬉嬉として受け入れた。

 

「あぁんっ! いいっ、あっ……んひぃんっ!」

「っ、よっ!」

 

 ぶちゅんっ、大きな水音を一つ立ててジャックハートの竿が全てヒナのアナルの中に吸い込まれる。

 だが、そこから竿が引き抜かれることはなく、まるで膣内への種付けのように奥まで突き入れられた亀頭から、大量の精液がヒナの腸内へと注ぎ込まれた。

 

「ああぁ……っ! あったかぁい……すごく、ドロドロって……」

「ケハハ。ケツ穴からしばらくは俺の精液しか出ねぇだろ」

「ありがとう、ございますぅ……」

 

 腸内は膣や子宮と違い、長くて体積が大きい。

 ジャックハートが本気で射精を行ってしまえば、かなりの高確率で膣内に収まりきらず、外に零れてしまう。

 しかしアナルならば大丈夫なのだ。

 

「しっかり腸内も洗ってるってことは、期待してたんだろ?」

「はい……。赤ちゃんに、ジャックハート様の射精は辛いと思ったので…」

「そりゃそうだろうな。気持ちよかったぜヒナちゃん」

「あんっ」

 

 彼女の菊門から彼の陰茎が、一息に引き抜かれる。

 どろりとした精液が少しだけ零れるものの、数回ひくひくと物惜しそうに開閉する菊門は、放たれた精液を閉じ込めるためにその口を閉じた。

 

「さてと、たしぎちゃん」

「っ! は、はいっ!?」

「んなとこでオナってないでこっち来な」

 

 ジャックハートとヒナの行為中。その二人の煽情的な姿に駆り立てられたたしぎは、部屋の隅で自分の指を使い自分自身を慰めていた。

 彼に呼ばれ、考える間もなくベッドへと近づく。

 

「このままヤるのは……流石に嫌か」

「……はい」

「ヒナちゃんが立場では上司だからって遠慮する必要はねぇよ。こいつも、俺の雌だ」

「あひぃんっ!」

 

 アナルセックスで絶頂していたヒナの美しい尻を叩くジャックハート。

 パチィンッ、という心地いい音とともにヒナが啼いた。

 

「だからまずは、たしぎちゃんに洗ってもらおうか」

「……と、いうことは?」

「あぁ。一緒に風呂に入ろう」

 

 ジャックハートは風呂が好きだ。

 と言っても、彼の中で一人での入浴など存在せず、そのお付きに彼の性奴隷が最低一人は必ずいる。

 

「お、お風呂で……ですか?」

「さあな。まだそれは決めてねぇ」

 

 だが、必ずしも濡れた状態で行為に及ぶという訳でもない。

 浴室で密着したまま、彼女たちの美しい女体を愛でていたい、というのが彼の本音だ。

 

「行くか」

「はい」

 

 横たわるヒナを置いてベッドを降りるジャックハート。

 たしぎの手を取り、唾液や精液で濡れた陰茎をそそり立たせたまま、彼は浴室へと向かうのだった。




早くナミとロビンとハンコックを出してぶち犯したいと思う今日この頃。
次回はたしぎとのお風呂からです。

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船出

すぐできた。(小並感)

スモーカーファンにそろそろ刺されそう。
でもいいのだ。二次創作だから…!(暴論)


「ふぅ……。腹が減ったな」

「え? 船でお昼ご飯食べてませんでしたか?」

「くまの野郎のせいで体動かしただろ? それでだよ」

 

 ラブホテルにあるとは思えないほどの豪勢な浴室。

 ジャックハートとたしぎの二人が横並びで入っても十分に広いそこで、二人は隣り合わせでゆったりとくつろいでいた。

 

「ヒナちゃんにも大量に射精したし、そっちでもちょいと疲れたんだよ」

「ふふっ。お疲れさまです」

「あぁ。まだ18だってのに働かせすぎなんだよ、センゴクは」

 

 彼の右腕は、たしぎの背中、脇を通っており、その手で優しく彼女の巨乳を揉んでいる。

 たしぎはたしぎで、左にいるジャックハートの屹立した陰茎を、左手で優しく上下に扱いている。

 

「あっ、じゃあ私は一応ジャックハートさんのお姉さんってことに?」

「ケハハッ! 俺の虜になってる身でよく言うぜ」

「うっ……」

「年上でも年下でも変わりねぇよ。俺が気に入った女は、俺のモンだ。もちろんたしぎもな」

「っ、は、い……」

 

 ちゃん、は付けず。名前を呼び捨てにされるのはこれが初めてだった。

 その言葉に何とも言えない胸の高鳴りを感じたたしぎは、ジャックハートの肩に頭を乗せた。

 

「ジャックハートさん……」

「今はしねぇぞ。ただ疲れを取るだけだ」

「……え? そ、それってお風呂出てからもしないってことですか!?」

「そうだ。気が変わった」

 

 ジャックハートの想像以上に、彼の肉体は疲弊していた。

 考えられる要因としてはただ一つ。”冥王”シルバーズ・レイリーとの鍔迫り合いのせいだろう。

 

「そんな……! 抱いてくれるって言ってたのに……っ、んむ!」

「さっきからワガママ言ってんじゃねぇよたしぎちゃん。お前は、俺の何だと思ってる?」

「え、えと……部下か、愛人……?」

 

 彼の右隣で叫び声をあげたたしぎの口が、ジャックハートの左手により掴まれる。

 彼女が羅列していく言葉は断片的なものだが、彼女の中ではそうだと思っているものを伝えることができたと、思っていた。

 だが―

 

「違ぇよ。あながち間違いじゃねぇが、今のたしぎちゃんはただの俺の女だ。愛人を名乗るにはまだ早い」

「え……そ、そん、な……」

「でもまあ、だからと言って捨てるわけはねぇし、抱いてから日が経ってねぇからだ。今からでも十分愛人になれる要素はある」

「はぁ……。良かったです……」

 

 ―彼女はまだ、彼と対等にはなっていなかった。

 思い返してみれば、ヒナ、カリファ、ポルチェ、ポーラ、バレンタイン、ボニーの誰もがジャックハートに意見することはなく、ジャックハートの言葉に反対することは無かった。

 つまり、彼と自分たちとでは、彼が圧倒的な支配力を持っているのだ。

 

「今のたしぎちゃんは、部下であり性処理道具だ。デートってのも、ただヤリたい時にヤレるために連れてってるだけだからな」

「はい……。すいませんでした、変なことを言って……」

「ケハハ。いいってもんよ。海賊たちは愛人にするつもりはねぇが、たしぎちゃんが俺に尽くしてくれれば近いうちには、な」

「はいっ。頑張りますっ!」

 

 ジャックハートの中での位置付けというと。

 ビビやヴィオラといった面々と、昔からの付き合いでありカリファとヒナは愛人。

 たしぎは部下兼性処理道具で、今いる女海賊たちは揃いも揃って性奴隷である。

 

「だから今はこの胸だけを楽しむ」

「いくらでもどうぞっ」

 

 その細い体に釣り合わないほどに大きく、お湯に浮かぶ乳房が再び彼の大きな手の中で形を変える。

 陶器のようなその肌を持つ彼女の胸はぴったりと手のひらに吸い付き、ただ唯一勃った乳首だけが違う感触を生み出していた。

 

「いったい何食ってたらこんなにデカくなるのか……」

「し、知らないですよ……」

「ケハハハ。こっからさらにデカくしてやるよ」

「あ、ぅ……」

 

 彼から漂う雄のフェロモン。

 首筋に浮かぶ玉のような汗からか、はたまた湯船に溶けたであろう少しの精液からかは分からないが、彼のそれはたしぎの心を着実に捉えていた。

 

「だからまずは、ここで疲れを落としてぇ。体、頼むわ」

「任せてくださいっ!」

 

 ジャックハートが上がるのについていくように、たしぎも出る。

 年不相応に鍛え抜かれた肉体を持つジャックハートと、それに引けを取らないほどの肢体を誇るたしぎ。

 彼の後ろをいくたしぎの姿は、どこまでも従順さを感じさせるものだった。

 

 

 ◇

 

 

「おやおやおやおやおやおや娘さんや。気分はどうかな?」

「うっさいのよさっきから! ……大丈夫かしら」

「ん? どうしたのかね?」

 

 ジャックハートがたしぎの身体で洗体をしている時、空島”ウェザリア”という天候を科学する国に飛ばされてきたナミの表情には、焦りしかなかった。

 

「私たちが前にいた島に、ちょっとヤバい奴が張り込んでるって記事が出てるのよ」

「はてはて……。むっ? ジョー・ジャックハート中将かの」

「そう。私みたいな海賊にとっては、史上最悪の海兵よ……!」

 

 ウェザリアの住人にはすでに自分が海賊だということは打ち明けたナミ。

 だからこそ言える不安があった。

 

「しかしの、娘さんや。このウェザリアの技術を学ぶというのなら、青海のことを気にしている暇はないぞよ」

「分かってるわよ。ただ、船が心配ってだけで……」

「そうかいそうかい。じゃが、再びその島とやらに集まるのは2年後なんじゃろ?」

「……そう、ね。今は気にしていても仕方ない、か」

 

 シャボンディ諸島に置き去りにしてきた彼女たちの船、サウザンド・サニー号。

 海賊を仕留めることに定評のあるジャックハートが近くにいるのなら、なおさら心配だった。

 

「それはそうと娘さん。本当に賞金首とは……」

「何よ、悪い?」

「悪いから賞金首なんじゃろうて……」

「……あ。それもそっか。で、それがどうしたの?」

「い、いやいやいやいやいや何もないんじゃ」

 

 ここウェザリアには、賞金首はおろか、海兵や小規模な海賊も、果ては若い一般人すらも滅多に来ることはない。

 

「あぁ。空島だからそういうのは珍しいの?」

「そ、そうじゃそうじゃ。ここは滅多なことがない限り、新しい住人は増えんからの」

「じゃあどうやって今まで研究してきたの?」

「どうしても若いもんが少なくなってきた時だけ、青海にいるウェザリアに住みたいものを連れて行くんじゃよ」

「へぇ〜」

 

 そもそもの話”ウェザリア”の土地面積は小さく、それに比例するように住人も少なく、そのほとんどが老人だ。

 それこそ今回のナミのように、空を飛んできた若者など今まで存在するはずがなかった。

 

「よしっ。休憩終わり! 新聞でちゃんと下の世界の情報も知れたし、もう大丈夫よ。続けましょ、ハレダスさん」

「う、うむ」

 

 ハレダスの自宅で行われているナミの勉強会。

 意気揚々と勉強を再開するナミを尻目に、ハレダスは窓の外を見た。

 そこには、ナミのことを睨むように見つめる一人の老人の姿があった。

 

 窓越しにナミを睨むその老人。

 その手には、ナミの手配書と1匹の電伝虫が掴まれていた。

 

「むむむ、あんな小娘に我らが”ウェザリア”の技術を教えるじゃと……? まともな若者ならともかく、賞金首にとは……ワシは許せん!」

 

 その老人はこの”ウェザリア”には少ない、ナミの滞在に反対する人間だった。

 彼女がこの島に着いた時こそ反対派の人間は多かったが、今は多くの住人が彼女のことを認めている。

 しかしそれでも、この老人のように犯罪者を匿うことに反対している者もいるのだ。

 

「……じゃが、手を出すのも怖いしの。殺されるのはゴメンじゃわい。クフフ……無事に帰れると思うなよ、犯罪者の小娘……!」

 

 そう言って老人は、持ってきていた電伝虫でとある組織に電話をかけた。

 

「もしもし。驚かんで聞いてほしいんじゃが、”ウェザリア”という空島に”麦わらの一味”にいる”泥棒猫”のナミがいるんじゃよ! ……ほ、本当じゃ!」

 

 その施設というのは、もちろん海軍。

 海賊を捕まえるのなら海軍に通報、というのは”ウェザリア”の老人たちでも知っていることだ。

 

「空を飛べる者がおるとは思えんが、一応連絡しておくぞよ」

 

 この老人の通報から、数週間後。

 

 ナミの元に、満面の笑みを浮かべた史上最悪の男が舞い降りることとなる――

 

 

 ◇ ◇

 

 

「あぁんっ、んっ、あひぃんっ! んぁっ、あん、ああぁっ!」

「じゃあなヒナちゃん。出産の時には立ち会うからよ」

「えぇ。ちゃんと待ってるわ、ジャックハート様。ヒナ隷属」

「いい心構えだ」

「んほぉっ! ん、や……あぁんっ! やら……っ、らめ……い、イク……!」

 

 ジャックハートはシャボンディ諸島に停めていた彼の船の上から、見送りに来ていたヒナと最後の別れをしていた。

 あの時、たしぎに身体を洗ってもらった後。ジャックハートはベッドで意識なく眠るヒナの隣でうつ伏せになり、たしぎのマッサージを受けながら少しの間睡眠を取っていた。

 

「イックううぅぅぅぅぅぁぁぁああっ!」

「ふふっ。気持ちよさそうね」

「だろうなぁ。俺の愛人にして欲しいって志願してきたから、そのために鍛えてあげてんだよ」

 

 彼の船の甲板で、彼に立ちバックで犯されていたたしぎが盛大に潮を噴いた。

 すでにジャックハートとヒナの会話の最中に何度潮吹きをしたか分からないほどで、二人の足元には甲板の上に水たまりができていた。

 

「んひゃあっ、や、ぁ……あうぅんっ! イッ、イッへ……イッへるんれしゅううぅ!」

「おいおいたしぎちゃん。俺の愛人になるんなら、もっと素直になれよ」

「んひぃっ! あっ、んうぅっ! はひっ、はいぃっ! も、もっと……もっと突いてくらひゃいぃっ!」

 

 ヒナが人払いを済ませているため、ヒナの船とジャックハートの船の関係者以外の人間はいない。

 だが、それでも周囲の人間に気づかれてしまうのではないかというほどに大きな声で、たしぎは喘いでいた。

 

「じゃあよたしぎちゃん。もっと突いて欲しいんなら、選べ」

「は、はぇ……?」

「このままスモーカーの部下のままでいるか、俺の直属の部下になるか。前者を選ぶんならここで船降りろ」

「えっ……?」

 

 たしぎにとって、まるで酔いが覚めてしまうかのような強烈な選択肢が突きつけられた。

 

「えっと、ジャックハート……さん?」

「そのジャックハートさんってのも、選んだ方によりゃあ禁止だ。ジャックハート中将って呼べ」

「そ、そんな……! なんで……私、何かしちゃいましたか!?」

 

 着ているシャツのボタンは全て外され、その巨乳は隠すことなく露出されている。

 下に履いていたパンツもショーツも下され、彼の大きな肉棒を蜜壺で咥え込んでいる。

 その淫裂からは、彼女の愛液がこれでもかと言わんばかりに溢れ出ている。

 そんな状態で、彼女は自分が何か失態を犯してしまったのではないかと叫んだ。

 

「別に、何もしちゃいねぇよ。ただ俺がスモーカーの部下を抱いてるって事実が気に食わねぇだけだ」

「だ、だから私はジャックハートさんの――」

「あぁそうだ。性処理道具だ。だが、それでいてスモーカーのとこの人間でもある」

 

 ようは、自分の愛人になりたいのなら、完全に自分の物になれ、ということだ。

 身も心も、感情も立場も、人生すらも自分の物になれと、彼は言っているのだ。

 

「なに、簡単なことだろ? 甘ちゃんヘビースモーカーでふにゃちんのスモーカーか、この俺か。それを選ぶ権利はたしぎちゃんにあるんだ」

「え……あ、その……」

「ちなみに、俺のとこに来た時のいいことを教えてやるよ」

 

 腰を掴んでいた手を離し、彼女の腹部と胸部に回す。

 そして、顔を彼女の顔のすぐ近くへと持って行った。

 

「ちゃんと愛してやるよ。たしぎ。一人の女として、な」

「あっ……」

 

 きゅう、と子宮が疼くのを感じた。

 

「……り、ます」

「ん?」

「なり、ます……。ならせてください、ジャックハートさん直属の部下にっ!」

 

 高らかにそう宣言したたしぎ。

 その瞬間、ジャックハートの口角が吊りあがった。

 

「いいぜ、歓迎しようじゃねぇか! おいお前らぁ! 新しい部下の誕生だ! 盛大に祝え!」

『ウオオオオオオォォッ!』

 

 そして、彼の船にいる人間が、沸いた。

 

「やりやがったジャックハート中将っ! スモーカーんとこから奪いやがった!」

「酒だ酒っ! 早く出せ!」

「うふふ、海賊みたいね」

 

 陸にいるヒナの声がほぼ聞こえないほどに周りが叫ぶ。

 そんな喧騒の中、ジャックハートとたしぎは互いの唇を押し付け合い、舌を絡ませ合いながら、ねっとりとした濃厚なキスを楽しんでいた。

 

「んじゅう、れぅ……ぷはっ。そんじゃ、俺の部下(・・・・)に、しっかりとマーキングしておかなきゃな」

「んっ……は、い。お願いします、ジャックハートさん」

 

 今までも、ジャックハートはたしぎのことを俺の部下、ということは多々あった。

 しかしそれは、海軍本部中将と海軍本部少尉という、まさしく海軍内での部下という意味。

 それがこれからは、彼直属の部下であるという意味合いに変わるのだ。

 

「ケハハハッ! これからちゃんと、愛人になれるようにしっかりと躾てやるからよぉ!」

「はいっ! あっ、あぁんっ! い、イク……またイッちゃううぅぅっ!」

「我慢すんな。ちゃんとド派手にイケや、たしぎっ!」

「んひぃっ! はいぃっ、イクっ、イキますうぅぅぅぅうっ!」

 

 腰のピストンが先ほどまでよりも早く、そして彼女の弱いところを確実に責めあげるように再開される。

 そして―

 

「っらよぉ!」

「ああぁぁぁぁあっ! イグっ、イッグウウゥゥゥッ!!」

 

 ―たしぎの過去最大の絶頂と共に、ジャックハートの子種が彼女の胎内へと注ぎ込まれた。

 

「おめでとうございます、ジャックハート様」

「ありがとよヒナちゃん。まあ、俺の手にかかればこんなもんよ」

「あひっ、あっ、んあぁ……あぁっ」

 

 彼の肉棒の愛おしそうに咥えたままの彼女の肉体が、びくびくと震える。

 そんな彼女の姿を見て、ジャックハートの情欲がさらに駆り立てられる。

 

「よし、お前ら出航だ。準備しろ」

『はっ!』

「じゃあ。今度こそ本当にお別れだ、ヒナちゃん」

「えぇ。ちゃんと愛してあげてね」

「分かってるよ」

 

 錨が上げられ、彼の船が陸から少しずつ離れていく。

 

「ほらたしぎ。まだまだ愛してやるんだから休んでんじゃねぇよ」

「あひぃんっ! ジャックハートさんっ、しゅきぃっ!」

 

 嬉しそうな女の鳴き声が、湾内に響いた。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

『あぁ? テメェ、今何つった……ジャックハート……ッ!』

「だぁかぁらぁ、今日付けでたしぎは俺の部下になったっつってんだろ。これで何回目だよ。タバコ吸いすぎて耳イカれてんじゃねぇのか?」

『ふざけてんじゃねぇ! んなもん、許可できるか!』

「たしぎがどこに行きてぇかはお前が決めることじゃねぇだろうが。それと、言葉遣いに気をつけろよ。スモーカー海軍本部准将」

 

 船にある、ジャックハートの自室。

 椅子に腰掛け、ポーラの”トゲトゲの実”の能力を使った針マッサージを肩に受けているジャックハートは、電伝虫で海軍本部にいるスモーカーと連絡を取っていた。

 

『チィ……! ……たしぎだ』

「あん? 俺の部下(・・・・)になんか用か?」

『あぁ……ッ! とりあえず、話だけさせろ……!』

「いいぜ。おい、たしぎちゃん」

「じゅぽっ、んぐっ……じゅぽんっ! ……はい」

 

 懸命にジャックハートへの口淫を行っていたたしぎが、陰茎から口を離して顔を上げる。

 その顔は、どこか不服げそうだった。

 

「元上司からラブコールだ」

「分かりました」

 

 口元についていた精液を手で拭い、彼から受話器を受け取る。

 

「はい、こちらたしぎ」

『っ、おいコラたしぎッ! テメェ何勝手に―』

「事前に言わなかったことは謝ります。でも、ジャックハートさんの元で働きたくなったんです。すいませんでした、スモーカー准将(・・・・・・・)

『ッ! 見損なったぞ、たしぎ……!』

「はい。直属の部下ではなくなったので言わせていただきますが、男の嫉妬は見苦しいですよ。……ヒナさんの時も」

『テメェたしぎぃっ!』

 

 電伝虫からスモーカーの怒号が聞こえたところで、彼女の手からジャックハートが受話器を奪う。

 邪魔がなくなったたしぎは、促されることなく再び口淫を始めた。

 

「おいスモーカー。お前何俺の部下に怒鳴ってんだよ」

『認められるか、こんなもんッ! たしぎをオレの部隊から勝手に引き抜いてんじゃねぇ!』

「准将のテメェの部隊より、中将の俺の部隊の方が活躍させてやれる。素直に元部下の門出を祝ってやれよ」

『こんなこと、上が黙ってねぇだろ……ッ!』

「その辺も大丈夫だ。センゴクにも三大将にも話は通しておいたからよ」

『な、に……?』

 

 准将と中将。

 どちらが元帥と大将に近いか、そして信頼されているかなどよく考えなくても分かることだった。

 

「手塩にかけて育ててやれって、センゴクから許可は得た」

『……』

「ケハハ。ちゃんと返事しろやスモーカー。だがまあ安心しろ。ちゃんと育ててやるからよ。お前より強く、な」

『クソが……!』

「あ? もう一回言ってみろ。殺すぞ糞雑魚」

 

 スモーカーがたしぎを引き止めることは、最初から不可能だったのだ。

 

「じゃあなスモーカー。たしぎは、俺がちゃんと可愛がってやるよ」

『――ッ!』

「あ、切られた」

 

 声にならない叫びをあげ、スモーカーは通話を切った。

 切られる寸前の電伝虫の表情は凄まじいことになっていたが、もう終わったことだ。

 今は、新しい部下のご奉仕を楽しむジャックハートだった。

 

「いいねぇ。たしぎちゃん、舐めんの上手だわ」

「んじゅっ、ごぽっ……ぐぽ、んっ……じゅるるるるッ!」

「ッ! 全部、飲み干せ……!」

「んぶっ……んっ、ちゅぷ……。んくっ、んくっ……こくっ。……すっごい濃かったです。ジャックハートさん」

「ケハハ。俺を誰だと思ってんだ」

 

 彼女の口内に解き放たれる、大量の精液。

 それを一切嫌がることなくたしぎは受け止め、飲み干した。

 

「もうおまんこに8回、口に3回なのに……まだドロッとしてる……。おちんぽもまだまだ硬い……」

「だから、俺を誰だと思ってんだっての。まだ何回戦でも余裕だぜ?」

 

 甲板でジャックハートの部下になってから、部屋に移動するまでに抱きかかえられながら5回。

 センゴクとのへの報告の際に2回、サカヅキへの報告で1回、それぞれ膣内射精されて計8回。

 ボルサリーノ、クザン、そしてスモーカーへの報告の際に、口で3回。

 たしぎは、ジャックハートに愛され抜いていた。

 

「ボニー、酒」

「あ、あぁっ!」

 

 部屋で待機していたボニーに酒を持ってこさせる。

 大きめの樽ジョッキに入ったビールを、一気に煽る。

 

「っ、か〜ッ! いいねぇ、上がってきたぜ!」

 

 ジャックハートのテンションがさらに上がった、その時。

 彼の部屋のドアがノックされた。

 

「あ? なんだ」

『ジャックハート中将! 今から、潜水を開始します!』

「そうか。……よし、お前ら外に出るぞ」

 

 衣服を正したジャックハートに続くようにして、部屋を出る性奴隷と愛人たち。

 

「わぁ……っ!」

「すごい……」

「綺麗ね……」

「うっとりしちゃうわ……」

「本当に、美しいな……」

 

 そこには、海の中からしか見られない絶景が広がっていた。

 

「さてと、マージ。お前らは全員部屋で待機しとけ。船の操縦はこいつらにやらせるからよ」

「はっ!」

 

 ジャックハートが男の部下を全員船内へと下げる。

 これにより甲板に残ったのは、ジャックハート、たしぎ、カリファ、ポーラ、バレンタイン、ポルチェの六人だけとなった。

 

「今下着履いてねぇ奴からハメてやる」

「キャハハハ! 私、履いてないわよ!」

「よし、ケツこっち向けろ。カリファ! 船の操縦頼むぞ」

「承知しました」

「あぁあ……ッ! ふっとい……おち、んぽ……きたぁッ!」

「たしぎ、ポーラ、ポルチェ。お前らは海の中でも見て時間潰しとけ。あとで行く」

 

 バレンタイン以外の女たちを、この場から少し離す。

 目の前の性奴隷が着ている黄色のワンピースを捲り上げ、秘部を露わにして陰茎をねじ込んでいく。

 

「ケハハ。おいバレンタイン。お前、次の排卵日いつだ」

「あひっ、んはぁんっ! あっ、あぁんっ! しゅごいぃッ!」

「答えろっての、この雌豚ッ!」

「はひぃっ! す、数日後れすぅっ!」

「そうか。そこで孕ませてやるよ」

「あんっ、はぁ、んぅあっ! あり、ありがひょうごじゃいまひゅうっ!」

 

 鈴口が触れる頃にはすでにぐちょぐちょになっていた淫裂は、まるでお預けを食らっていたかのように、ジャックハートの肉竿を飲み込んでいった。

 彼女が捨てられずにジャックハートのお気に入りになっている理由として、とある一つの要因が挙げられるのだ。

 それが―

 

「バレンタイン。膣圧」

「はいっ!」

 

 ―彼女が食した悪魔の実”キロキロの実”により、膣圧を上げていく。

 こんな芸当、彼の元に来た時にはできなかったのだが、捨てられないために彼女が必死で会得した技だ。

 

「っ、くぅ……! これだよこれ……! 他じゃ、味わえねぇ……!」

「あんっ! あ、あぁあっ! す、すご、い……! あはんっ! まだ、おっきくぅっ!」

 

 ジャックハートが感じやすいように、膣肉の部分部分でかける圧力を変えていく。

 そんな他の女たちでは味わえない快感に、ジャックハートの肉棒が反応し、さらに凶悪なイチモツへと進化していく。

 

「さぁ、ご褒美だっ!」

「んはぁああああんっ! イクッ、あぁんっ!」

 

 ジャックハートの肉棒の全てを呑み込める深い膣と、自由自在の膣圧。

 それら二つにより最大限に高まり、ジャックハートは特濃の精液をバレンタインに発射した。

 

「……はぁ。抜く時もちゃんと締めろよ、雌豚」

「はい……っ!」

 

 膣圧を強め、引き抜かれていくジャックハートの陰茎の尿道に残った精液をこしとっていく。

 ぶるん、と音が鳴るように大きく反り返るようにバレンタインの膣からでた竿は、いつもよりも二回り程大きく硬く、怒張していた。

 

「良かったぜバレンタイン。また使うわ」

「ありがとうございます、ジャックハート様……」

 

 向き直り、深々と頭を下げるバレンタイン。

 彼女を抱いた後は、いつも決まって抱く女がいる。

 

「ようポーラ。景色はどうだ?」

「っ、ジャックハート様……!」

 

 それが、バレンタインと同じく元B・W社員のミス・ダブルフィンガーこと、ポーラだ。

 

「いつものやつだ」

「は、はいっ!」

 

 ポーラはバレンタインのように膣圧を強めるようなことはできない。

 しかし、”トゲトゲの実”の能力を使い、膣内に細く柔らかい無数のトゲを作り出すことで、これまた違った快感が生まれるのだ。

 

「固くしたら許さねぇからな。まあ、お前の能力じゃ俺の体は傷つかねぇがな」

「大丈夫です。……んっ、準備、できました……」

「ケハハ、ご苦労」

 

 酒に酔ったジャックハートは、良くも悪くもいつもよりさらに身勝手になる。

 セックスをしたい時にはその事に関して寛容になるし、美味い飯のためなら多少の我慢だって厭わない。

 しかし、逆に邪魔をされれば容赦なくキレる。

 半殺し以上がほとんどで、かなりの確率で死人が出るのだ。

 

「さてさて、堪能させてもらおう、かっ!」

「んはぁっ! い、きなりいっ! んやっ、あぁんっ! つき、突きすぎれふぅっ!」

「うるせぇ黙れ。俺の性奴隷がよぉ!」

「あはぁっ! んひっ、やぁっ! しゅ、しゅごいぃっ! や、あんっ!」

 

 今回は、前者だ。

 擬似的なミミズ千匹の再現のために、すぐには挿入せずに、待つ。

 だがそれでいて一切の意見を受け入れない。

 酒に酔ったジャックハートは、どこまでも自分勝手になるのだ。

 

「ケハハハハッ! ケツと腰、うねうね動かしやがって……この変態がぁ!」

「んっ、はっ、あんっ! んほぉっ、あっ、んああぁんっ!」

 

 細く柔らかい、まるで毛のような質感で作られたトゲが、ジャックハートの肉棒に絡みつく。

 竿に絡まり、カリを優しく締め上げ、鈴口や裏筋を柔らかく撫でていく。

 これまた、ジャックハートが感じやすいところを的確に刺激していた。

 

「おら、ありがたく受けとれやっ!」

「んふぅあっ、ひぎっ! んっ、や、はぁんっ! イクゥ、わ、わらひもイッひゃうぅっ!」

 

 バレンタインと同じく、立ったまま後ろからガンガン突かれるポーラ。

 その彼女の膣内は、比喩ではなくジャックハートの肉棒に絡み付いていた。

 

「ハァッ!」

「イックうううぅぅッ! あっ、んひあぁっ! いっぱい、いっぱい来てるぅっ!」

 

 そして吐き出される、これまた大量の精液。

 

「んっ、あぁっ……! ジャックハート、様……。わたし、今日危険日で……!」

「あ? そりゃ危険日じゃねぇだろ。てめぇにとって妊娠できる、幸運な日だろうが」

 

 卵巣から卵管を通り、子宮内へと飛び出していたポーラの卵子。

 子宮内という逃げ場がない場所に入ってしまったそれを、ジャックハートの滝のように流れ出る、一般男性が一回に射精する平均の精子の量を軽く超える、数十億の精子が一斉に襲う。

 

「ケハハ。孕んだら言えよ」

「は、はいぃ……」

 

 彼が肉竿を引き抜くと、体力の限界だったのかポーラが甲板に倒れた。

 

「ったく情けねぇ。体力なさすぎだろ」

「も、もうしわけありましぇん……」

 

 だが、疲れているのなら仕方ない。

 別の元気に溢れている性奴隷と戯れればいい話なのだ。

 

「おいポルチェちゃんっ!」

「はぁいっ!」

 

 この甲板にいる、もう一人の性奴隷を呼び寄せる。

 いつも通り桃色の乳輪が少しはみだしている小さな水着を身にまとい、彼女は颯爽と現れた。

 

「私の番ねっ!」

「しゃぶってからだ」

「喜んでっ」

 

 ジャックハートの足元にしゃがみ彼の肉棒を手に取るポルチェ。

 その大きさと匂いに、思わずうっとりとした彼女は、躊躇うことなく口に入れた。

 

「後でちゃんと下にもぶち込んでやるからよ」

 

 青い青い、海の中。

 魚人島へ向かう船でジャックハートは至福のひと時を楽しんでいた。

 

 




魚人島はなんだかんだでさらっと飛ばして新世界に乗り込む予定。
物語を早く進めたいので仕方ないね。

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転機となる日

今更になりますが、オリ主が現在18歳かつ10年前から海軍にいるということで、原作の史実との違いやキャラの考え方の少しの違いが生まれております。ご了承ください。

エロがない…だと……!

やだ、黄猿の喋り方で会話させるの難しすぎ…。


 ポーラの卵子に向けてジャックハートの精子が着実に歩みを進めていた頃。

 一人の男が、再建が進むマリンフォードの『海軍本部』にあるとある部屋で、一人の男と向かい合っていた。

 

「クザンさん。俺の……元部下のことっつったら伝わるか?」

「お〜……あの剣士ちゃんか?」

「あぁ」

 

 立っているのは、海軍本部准将、スモーカー。

 そして『だらけきった正義』の看板を背景に座っているのは、海軍本部大将、”青キジ”ことクザン。

 

「まぁ、この忙しい時期に右腕だった部下の異動ってなりゃ怒りたくなるのは分かるが……諦めろ」

「チッ……」

「……なあスモーカー。お前、そこまであの剣士ちゃんに肩入れしてたのか?」

「そうじゃねぇっ!」

 

 スモーカーが彼の元を訪れたのは、先ほど掛かってきた電話の件を聞き出すため。

 三大将の中でも比較的交友があるクザンの元を訪ねたのは、そのためだった。

 

「たしぎが本当に動きてぇんなら止めはしねぇ。普通は、な……! だが、アイツのとこにやるのだけは反対だってだけだッ!」

「……相手がジャックハート中将じゃ、仕方ねぇんじゃねぇの?」

「ッ! アンタら上が止めねぇと、海軍はアイツによって変えられちまうぞッ!!」

 

 スモーカーは、ジャックハートが嫌いだ。

 苦手ではなく、嫌いなのだ。大嫌いなのだ。

 正義の名の下に女たちを身近に置き、民間人にも手を出し、そして海賊たちに殺戮の限りを尽くす。

 いくら正当化されていようとも、決して許されるような行為では無い数々を行っている彼を、本能が許せないのだ。

 

「……ぶっちゃけ言っちまうとな、俺は怖えんだわ。センゴクさんとかがどう思ってるかは知らねぇがな」

「何……?」

「一回あいつに覇気を込めた”氷河時代(アイスエイジ)”をぶちかましたんだが、全くもって効きやしなかった。4年前……ジャックハート中将が、まだ14歳だった時だ」

 

 しかし、スモーカーが人としてジャックハートを許せないのなら、クザンは人間としてジャックハートと関わりたくなかったのだ。

 

「サカズキさんのも、ボルサリーノさんのもジャックハート中将には通用しねぇ。一切、だ。正直言って多分今海軍で一番強いのはジャックハート中将なのよ」

「それとこれに、何の関係が……!」

「大アリだ。上……まあ、元帥と世界政府、五老星、果ては天竜人……。そのほとんどが、ジャックハート中将の機嫌を損ねるのを怖がってる」

「……ッ! じゃあ今の海軍はッ、アイツの機嫌取りのためにあるってのかッ!?」

 

 要は、ジャックハートが海軍を辞めることを恐れているのだ。

 今まで尋常ではない実力で現在の地位を築いてきた彼の存在は、もちろん上の人間も熟知している。

 そして、上が知ってしまったのは、その仕事っぷりだけではなく人柄もだった。

 

「……認めたくはねぇが、そうだろうな。ジャックハート中将がいなきゃこの前の戦争で莫大な死者が出ただろうし、天竜人たちからの信頼も得にくい。その人材を引き止めるために、多少のワガママは許してる」

「何を……!」

「それに、上からクビにはするなってお達しが来てんだわ。天竜人たちにもジャックハート中将のことを気に入ってる人は結構いてな―」

「何さっきから腐ったことを言ってんだアンタはッ!!」

 

 スモーカーが叫んだ。

 前から頻繁にあった、ジャックハートの目に余る行動。

 それら全てが、上層部により黙認されていたのだ。

 

「上に媚びて、有害因子を切り捨てねぇのか! あぁ!?」

「有害、か。確かに日常生活で見ればそうかも知れんが、それで今までの働きを維持……下手すりゃそれ以上をしてくれんのがジャックハート中将なのよ」

「そんなもん―」

「まだジャックハート中将の働きを認められねぇなら、お前がアイツよりも強くなって、実績と成果、仕事面での信頼を得てから…ってとこだな。……悔しいだろうが今のお前じゃ、海軍での仕事の面では一生敵わねぇ」

「……クソッ!!」

 

 今までの彼の悪行。

 捉えた女海賊の捕虜化、マリンフォード内での風俗店の経営、民間人との隠し子、私怨による犯罪者たちの大量虐殺、そして、唯我独尊とも言える強引な人事異動。

 

「それに、お前は上に歯向かうことが多いが、ジャックハート中将は基本上から言われたことは完璧以上にやり遂げる。そういう人間ってのは、組織では認められやすい。その繰り返しで信頼されているからこそ、センゴクさんもジャックハート中将に一任することが多い」

 

 それらが全て許されるのは、彼が強く、組織のために働くから。

 スモーカーが断罪できないのは、彼が弱いから。

 ただそれだけだった。

 

「腐っちまうぞ、このままじゃ……!」

「……そんなお前に、何つうか、残念なお知らせになるんだが」

 

 己の無力さを嘆くスモーカーに、クザンは追い打ちをかけるように言葉を繋げた。

 

「次期海軍本部大将。その一人に、ジャックハートが選ばれるのはほぼ確実だ。あいつは、働きだけを見れば優秀そのものだからな」

 

 それは、スモーカーとジャックハートの間にさらなる壁が出来ることを突き付けるものだった。

 

 

 ◇

 

 

『お疲れ様ァ〜、ジャックハート中将ォ……』

「はい。ボルサリーノさんも、お疲れ様です」

 

 魚人島で食糧を買い込んだジャックハート一行は、すぐさま魚人島を出て新世界へと入った。

 相変わらずの悪天候ぶりだが、海軍の軍艦ならばちょっとやそっとの嵐は問題ない。

 

「それで、ご用とは?」

『お〜……。次の元帥候補に、サカズキとクザンが選ばれたってのは、知ってるかい〜?』

「もちろんです。さっきセンゴクさんから電話来たんで」

『その二人の決戦に、恐らくジャックハート中将がいる所に近い、パンクハザードが選ばれたんだってェ……』

「……ということは、早く退散しておけと」

『そうなるねェ〜』

 

 船の進路は部下に任せ、自室で休んでいたジャックハートにかかってきた電話。

 それは、今唯一海軍本部大将としての職務を全うしている“黄猿”こと、ボルサリーノだった。

 

「しっかし、あの二人もよりにもよってそこ選ぶんすね」

『まぁ、海軍の管理下で大将二人が暴れられる場所なんて早々ないからねェ……』

「だからって普通、あんな工場跡地みたいなとこ行きます?」

『……わっしは、行きたくないよォ?』

「俺もっすよ」

 

 彼から持ちかけられた話題というのが、現在の“元帥”であるセンゴクが退いたことにより勃発した次期元帥を決めるための闘い。

 大将“赤犬”と“青雉”が候補になり、近いうちにパンクハザードという新世界にある島で雌雄を決することとなった。

 

「どっちが勝つと思いますか?」

『……ん〜……。いつもなら、サカズキなんだけどねェ〜……。今回ばかしは、クザンも気合いが入ってるようだから……。ジャックハート中将は、どう思う……?』

「俺も似たような感じっすよ。二人とも能力だけじゃねぇ。素の力が強えからこそ、あれだけの規模の技が撃てますし」

『だよねェ……』

 

 “徹底的な正義”を掲げるサカズキと“だらけきった正義”を貫くクザン。

 その思想の違いから口論や軽い喧嘩騒ぎになることはあっても、今回のような、それこそ殺し合いが想定される闘いはなかった。

 

「とにかく、この元帥決めで少なくとも一人は痛手を負うでしょうね」

『だろうねェ。いくら二人が丈夫とは言え、互いの実力は嫌という程分かってるだろうし……』

「ボルサリーノさんもですけど、皆さんすげぇ強いっすもんね」

『おォ〜……君もだよォ?』

「御三方ほどじゃないでしょ」

『ん〜……?』

 

 海軍…どころか世界屈指の実力者であろう2人がぶつかるとなれば、最低どちらかが大きなダメージを負うのは分かりきっていること。

 もしかすれば、二人ともがしばらく安静にしなければならない程になるかも知れない。

 

「……ともあれ、忙しくなるでしょうね」

『先が思いやられるよォ……』

 

 普段の飄々としたボルサリーノが珍しく心の底からため息をついた。

 それもそのはず。サカズキとクザンが闘っている間、実質動ける大将はボルサリーノ1人。

 そして、2人の戦いが終わってもすぐには動けない。その間も1人で働き続け、どちらかが元帥になれば、その下で働く。

 

『ジャックハートくんも巻き込むよォ……』

「ちょっ、巻き込まないでくださいよ」

 

 将来有望な若者1人ぐらい、手伝いに欲しいものだ。

 

『でも、それが冗談とはいかなくてねェ……ジャックハートくん』

「……何がっすか?」

『サカズキもクザンも、二人ともが、もし元帥になったら新大将にはキミを確実に選ぶって宣言してるんだよォ……』

「マジっすか?」

『おォ〜、本当だとも……。二人とも、フットワークが軽くて強い人材を求めてるって……』

 

 だがそれは、ボルサリーノの妄言には留まらず。

 サカズキとクザンの両者が、次期大将にジャックハートを選ぶと言ったのだ。

 

「いずれそうなるだろうとは思ってましたが……」

『キミはちょォっと、強すぎるからねェ』

「いやいや。モモンガさんとかもそれなりに強いでしょ」

『わっしらも、ジャックハート中将の年齢の時にはまだヒヨッコだったよォ〜……。……それとも、大将になるのは嫌かい……?』

「……いえ、そういうわけではありません」

 

 別に、大将になるのは嫌ではない。

 むしろ、地位が上がることでさらに出来ることも増えるのならば、いいだろうという考えもある。

 

『安心しなよ〜。しっかりと、前線で働いてもらうからさァ〜』

「なら、俺は問題ないです」

『話はそれだけだよォ。……では、頑張ってねぇ……』

「はい。ボルサリーノさんも、その、いろいろと……」

『おォ〜……。若い子の言葉が染みる……!』

 

 その言葉を残し、苦悶の表情を浮かべていた電伝虫は、数秒後に眠り始めた。

 あの頂上戦争を経て、海軍は変化を強いられている。

 元帥が変われば、その中身も変わる。そうなれば大将も変わるし、内情も変わってくるだろう。

 

「……世知辛いな」

 

 自身の昇格がほぼ間違いないとしても、喜んでばかりではない。

 その分責任は重くなり、仕事も増える。自分の実力をかってくれることは嬉しく思うが、今の情勢を考えればめんどくさい仕事が増えることも分かりきっている。

 

「ケハハハ。まあ、どうにかなるだろ」

 

 だが、今は悩む必要は無い。

 その行く末は、クザンとサカズキのどちらが勝つかで決まるのだ。

 

「さてと、んじゃ久しぶりにトレーニングでもするか」

 

 自室を出て甲板に立つ。

 たしぎ達には今現在シャワーを浴びさせており、別にそこに突撃してもいいのだが、海兵である限りやらなければならないこともあるのだ。

 大将になるならば、尚更強さは必要になる。

 

「マージ」

「はっ!」

「お前、俺の“覇王色”何秒耐えられる?」

「多く見積もっても、5、6秒程度かと」

「ケハハ、自信持てよ。こないだの戦争で少将に昇進したんだろ? 俺の“覇王色”でそれだけ意識保てたら十分だっての」

 

 自身の右腕を呼び寄せるジャックハート。

 幼少期から鍛えられていた彼の“覇王色の覇気”を真正面から受け、数秒耐えられるほどに鍛え上げた部下を見て、ジャックハートの眉間に皺がよる。

 

「だが、そりゃあ同時に俺の覇気がまだ弱いってことになる」

「なっ……! い、いえ! そのようなことは……!」

「お前がそう思ってても、俺自身が許せねぇんだわ」

 

 ジャックハートには嫌いなことが多くある。

 拘束されること、禁止されること、理不尽を押し付けられること、舐められること、などなど。

 色々あるが、一番嫌いなのは自分が弱いと思うことだった。

 

「まだ強くなれる。“覇王色の覇気”が意図して鍛えられないなんて、誰が決めたことだってな」

「は、はぁ……。……も、もしかして」

「そうだ。お前、実験台になれ」

「い、嫌ですよ!」

「何舐めた口聞いてんだよ。ぶっ殺すぞカス」

「えぇ……」

 

 18歳の上司にいびられる31歳の部下。

 とはいえ、海兵として闘うにあたりその実力差が歴然すぎるので仕方ないのだが。

 

「そんじゃ、いくぞ」

「ちょっ! そんないきなり―」

 

 甲板でジャックハートの前に立たされたマージ。

 そんな彼に向けて―

 

「ほいっ」

「……!」

 

 ―ジャックハートの“覇王色の覇気”が放たれた。

 

「……カッ、は、あ……!」

「おー、マジで耐えんのか」

「当たり、前……です……! 何年、ジャックハート中将の元で鍛えられたと……!」

「8年ぐらい、だな。むしゃくしゃしてやった殺しかけたこともあったっけか」

「他人事ですか!?」

 

 ほんの一瞬。

 まさに刹那と言える程に短い時間だけ放たれた“覇王色の覇気”を受けたマージの全身からは汗が噴き出し、意識も少しばかり消えかけた。

 

「……はぁ。ジャックハート中将、あまり理不尽なことはやめてください」

「別にいいじゃねぇか。死ぬわけでもねぇんだしよ。お前、それなりには強いし」

「一瞬死んだんじゃないかって錯覚しそうになるんですよ!」

 

 ジャックハートはもちろん本気では放っていない。

 割合にしておよそ6割程度の強さだったのだが、それでも分かるものはある。

 

「どうだマージ。今ので6割ってとこだが、最大なら耐えられるか?」

「……恐らく、耐えられるかと」

「そうかそうか。おし、ご苦労っ。まだ俺も成長の余地はあるってことか」

 

 自分の”覇気”は、まだ鍛えられる。

 一説によると、”覇王色の覇気”は鍛えにくいらしい。心身の成長と共に成長していく、と言われている。

 しかしそれならば、肉体と精神をさらに鍛え上げれば、”覇王色の覇気”の向上に繋がると言える。

 

「ケハハハハッ! いいねぇ、おもしれぇじゃねぇか」

 

 そう言い残して、ジャックハートは軍艦の中にあるトレーニングルームへと向かった。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 時は少し流れ、一週間後。

 軍艦は目的地であるドレスローザに着いていた。

 そのトップであるジャックハート、補佐官としてたしぎ、秘書としてカリファが彼に同行して、ドレスローザの王宮にある客間に通されていた。

 

「フッフッフッ。俺としては、そこの二人は席を外しておいて欲しいんだがな」

「そりゃあ、できない相談っすね。ドフラミンゴさんがあの三人をくれるってんなら話は別っすけど」

「…なら、この話は交渉決裂だ」

 

 真ん中にジャックハートを挟む形で座る三人と対するのは、このドレスローザの現国王であり王下七武海のドンキホーテ・ドフラミンゴ。

 意外にもこの二人は、交流が深かった。

 

「さて、いつも通り内情を聞かせてもらおうか」

「頂上戦争後……まあ、もうじきです。センゴクさんとガープが職を降りる。そして、次の元帥にはサカズキさんかクザンさんが選ばれるらしい」

「ほう……。センゴクが退く、か」

「えぇ。それと恐らく、俺が新しい大将になるかと」

「フッフッフッ! そりゃあそうだろう!」

 

 しかしその交流というのも、私的なものではない。

 ジャックハートが政府に認められた海賊であるドフラミンゴに情報を流し、ドフラミンゴはジャックハートにその対価を払う。

 

「お前は強いさ、ジョー・ジャックハート……! 恐らく、世界の五指に入るほどには」

「買いかぶりすぎっすよ。カイドウとか、会ったことないですし」

「比較対象がそれの時点で、すでに異常だ」

「そっすか? ……あ、あとは戦争後でみんな動けてないんで、静かに動くなら今っすよ」

「あぁ、分かった。いつもすまないな」

「いえいえ。俺だって見返りを貰ってますから」

 

 もっとも元帥と大将に近い中将と言えるジャックハートには、それなりに機密性の高い情報や、海兵たちの中だけでの情報が集まりやすい。

 ドフラミンゴはその情報を得たがっていたのだ。

 そして、その対価として払うのはもちろん―

 

「モネ、ヴァイオレット」

「はい」

「えぇ」

「……あれ、ベビー5ちゃんは?」

「以前来た時に臨月になっていたのを忘れたのか? あいつは今、お前の子をあやしてる」

 

 ―女の身体である。

 事の発端は7年前。

 当時11歳で少将の地位にいたジャックハートが偶然連れてこられたドレスローザで、偶然にもモネとヴァイオレット、そしてここにはいないベビー5に遭遇。

 すぐさまナンパしようとしたのだが他の幹部たちに止められてしまい、裏路地での戦闘に。

 8割方が瀕死になる程度ボコボコにしたところでドフラミンゴが登場し、和解したのだ。

 

「へぇ、産まれたんすか」

「あぁ。会いたがっていたぞ。何せ、まだ父親の顔も見せられていないのだからな」

「後で顔ぐらいは見せに行きます。あとこれは、ベビー5ちゃんの戦線離脱の補填として受け取ってください」

「よせ。それをするならば、出産祝いを俺が出す方だろう」

 

 客間の戸の近くに待機していた二人の美女、モネとヴァイオレット。

 その二人がジャックハートが座る椅子の近くへと向かう間に、ジャックハートは鞄から大量の札束を取り出した。

 その合計額、なんと50億ベリー。

 謝礼金にしては高すぎるそれを、ドフラミンゴは拒んだ。

 

「早く行け。どうせ、今日一日は大した仕事もない」

「はい。……それじゃ、行こうか。モネ、ヴァイオレット」

「じゃ、ジャックハートさん! 私たちは……?」

「二人とも船旅で疲れただろ。今から借りる寝室のベッドで寝とけ」

「……そう、させてもらうわ」

 

 椅子から立ち上がり、扉の方へと歩いていく。

 その両手はモネの右手とヴァイオレットの左手と結ばれており、その後ろをカリファとたしぎが覚束ない足取りでついていく。

 ここでの船旅とは、軍艦でのセックスのことを指す。

 

「ではドフラミンゴさん。また明日にでも」

「あぁ。存分に、楽しんでくるといい」

 

 扉を開け、五人で客間を後にする。

 割り当てられた部屋までは少しだけ歩くが、その時間も楽しいものなのだ。

 

「モネちゃん、ヴァイオレットちゃん。元気にしてたか?」

「ふふっ。えぇ、ちゃんと言いつけ通り、あなた以外の誰にも身体は許してないわ」

「―ッ! ……わた、しもよ……」

「そうかそうか」

 

 まさしく両手に華。

 体重を預けてくるモネと、少し距離を取ろうとするヴァイオレット。

 そんな二人の違いを楽しんでいると、部屋の前に着いた。

 

「ここが今日のヤリ部屋か」

 

 そこの扉を開けて中に入る。

 大きなベッドや湯船などが揃っているそこは、一日中セックスをするには最高の環境だった。

 

「さて……ん? どしたよ、ヴァイオレット」

「っ。イジワルな人……。知ってるでしょ? 私の本当の名前……」

「あぁ、ヴィオラ。俺の愛する、妻の一人さ」

「あなた……。……ん? 今、妻の一人って言った?」

 

 部屋に入るや否や、カリファとたしぎは吸い込まれるようにベッドに歩いていき、そのまま眠った。

 よほど疲れていたのか、すぐさま寝息が聞こえてきた。

 

「あぁ。この前、アラバスタって国の王女と婚約してな。結婚式の日にその子と子作りを始める予定だ」

「そう、まあいいわ。それよりも、いつの間にか私も愛人から昇格したのね」

「そりゃ王女様を愛人に留めておくわけにはいかないだろ」

「……そのことで少し話があるの」

「ん、なんだ?」

 

 さりげなくこの瞬間にヴィオラとの婚約が結ばれているが、今は気にしない。

 

「私にはね、姪がいるの」

「……ってことは、リク王の孫か?」

「えぇ。……あの事件のせいで今は国民のみんなに嫌われているけど、ドフラミンゴを倒す実力をつけるためにコロシアムで日々戦ってるの」

「なんとまあ、不憫なこった」

「だからお願いっ、あの子を抱いてあげて欲しいの!」

 

 リク王とは、ヴィオラの父である元ドレスローザの国王である人物。

 とある事件のせいでクズと呼ばれているが、ジャックハートはその真相を知っている。

 そのリク王の孫を、リク王の娘であるヴィオラが抱いてあげて欲しいと言ってきた。

 

「なんでまた?」

「あなたはその話術と”見聞色”でファミリーから情報を盗み、事の真相を知った。でしょう?」

「あぁ。だから今でこそあんな関係だが、ボロが出たらすぐにでもぶっ殺すさ」

「それを、あいつはあなたを恐れてるわ。だからこそ、こうして私たちが愛し合える時間も作ってくれる」

「なるほどねぇ。つまり、その子を俺のお気に入りにして、ドフラミンゴの手から守り、ボロが出たら俺の女にしていい、と」

「えぇ。そういうことよ。……ねぇあなた?」

「ん?」

「……なんで、今はドフラミンゴを倒さないの?」

「今は海兵って肩書きがあるからさ。なけりゃ瞬殺だ」

 

 ジャックハートが海兵だから牽制できているが、同時に彼が海兵であるからこそ簡単に倒せないもの。

 それが、今のドフラミンゴなのだ。

 

「ドフラミンゴは俺の私財で抑えられるが、あれはあれで王下七武海。しかも、大したヘマをやらかしてないからこそ、手を出しにくいんだ」

「……そう、ね。あいつは確かに、とんでもなく用心深い男よ。それでいて、強い」

「そうだな。だから今は、待っていてくれるか?」

「……えぇ、待っているわ」

 

 彼の腕の中に身体をすっぽりと入れ、抱き寄せられるヴィオラ。

 彼女自身も彼に凭れかかっているので、そのたしぎよりも大きな胸がジャックハートの身体で潰れる。

 そのヴィオラの表情は、どこまでも幸せそうなものだった。

 

「ねぇ、私には優しくしてくれないの?」

「そんなわけねぇだろ。モネちゃんも愛してやるさ」

「あら嬉しい。……でもそれは、何として?」

「ケハハ、さあな。それはモネちゃんがベッドの上で確認しな」

「きゃっ!」

「あんっ!」

 

 モネとヴィオラの身体が、それぞれジャックハートの左腕と右腕により持ち上げられる。

 

「まずはお風呂?」

「いや、それは船で済ませてきた。覚悟しとけよ二人とも」

「はい……」

「ふふっ、期待してるわね」

 

 たしぎとカリファが眠っているベッドとは別のベッドに、抱きかかえた美女二人を横たわらせる。

 

「ケハハハハッ。さて、楽しもうか」

 

 彼の両腕が、二人の身体へ伸びた。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「んっ……、ふ、ぁ……。あら? ジャックハート様は?」

「ジャックハート中将なら、既に王宮へと向かった」

「あ、マージさん。お掃除ご苦労様」

「あまり気安く話しかけるな。お前は元海賊で、俺は海兵だと言うことを忘れるな」

「いやんっ。そんなに怒らないでよ」

 

 軍艦のジャックハートの部屋にあるベッドの上で目覚めたポルチェ。

 部屋には掃除を任されていたマージ少将がおり、現在はモップで床に撒き散らされた精液を落としていた。

 

「そんなにイライラしてるなら、一発だけクチでヌいてあげましょうか?」

「要らん!」

「とは言っても、普段はそんなに発散出来てないんでしょ? 私からジャックハート様にはナイショにしておくから、あなたが言わなければ大丈夫よ?」

「……知らないのか、お前。合意の元かどうかなど関係ない。私たちがジャックハート中将の物であるお前達に手を出すこと自体が、そもそもダメなんだ」

「どういうこと?」

 

 確かに、マージ自身色々と溜まっているのは事実。

 しかしそれでも、彼の所有物に手を出すことは許されないのだ。

 

「以前、ジャックハート中将の性処理道具に手を出した者がいてな。判明次第、ジャックハート中将のサンドバッグと化した」

「えっ……」

「3日かけてじっくりと始末された。その性処理道具も、それまではジャックハート中将のお気に入りだったんだがな。1週間ひたすら使われ続け、精神が崩壊して風俗行き、後にインペルダウンに投獄された」

「……っ」

 

 思わず、息を飲んだ。

 彼に気に入ってもらえていればそれでいい、という訳では無いのだ。

 

「私からお前達にアドバイスをするのもおかしいことだが、一度ジャックハート中将の物になったのなら覚悟しておけ。あの人は、一度捕えた獲物を簡単には逃さん」

「えと……」

「恥ずかしがることはない。今までも、何とか命だけ助かろうとジャックハート中将に取り入ってきた女は山ほどいる」

 

 ポルチェやバレンタイン、ポーラのように、仲間が殺されたり捕まったりする中、その容姿を使い、命を繋ぎとめた者は多い。

 

「だが、それをするなら心からジャックハート中将に服従するんだな。少しでも気に障ることをすれば、今の平穏はなくなるだろう」

「……ふぅん。じゃあ、もぉっとジャックハート様とエッチすればいいってことねっ!」

「若干違う気はするが……まあ、それでいいとは思うがな」

 

 彼のモノになる、というのは言葉だけでは済まされない。

 もし上っ面だけで、いつかは逃げ出そうなどということを考えようものなら、すぐさま処分(・・)される。

 

「なーんだ、そうなの。もちろんジャックハート様以外と本番をするつもりは無いけど、少将の昇進祝いにでもって思ったんだけど」

「いらん世話だ」

「それはそうと、ようやく少将なのね。もう既に中将レベルに達してるって聞いてたけど」

「……まあ、私は好きでジャックハート中将の下についているからな。まだまだあの人と同じ立場にはなれん」

 

 話は少し変わり、マージの少将昇格の話へ。

 彼自身、既に中将になっていてもおかしくない実力を持っている。

 

「私たちの部隊が海軍最強の部隊と言われている理由もそこにあるから、てっきり知っていると思っていたんだが……」

「いやんっ。私たちは基本ジャックハート様とセックスしかしないもの。海軍内の話なんて、早々してくれないわ」

「……そうか。端的に言えば、皆がジャックハート中将からの教えを受けている状態なんだ。もし中将になればジャックハート中将から直々に稽古をつけてもらうことが難しくなる」

「ふむふむ。なるほどなるほど」

 

 言ってしまえば、部下達自身が昇進を断っているのだ。

 

「だから今は、あの人の元で馬車馬のように働くままでいい。得られるものは、誰よりも大きいからな」

「ふーん。……じゃあ、これからもお仕事頑張ってね」

「……ん? ……寝たのか!?」

 

 長々と語られた昔話に、ヤリ疲れたポルチェの体力は持たなかった。

 スヤスヤと寝息を立てるポルチェ。彼女の他にも、ベッドには全裸にジャックハートの精液が大量にかかり、穴の中に出された者が眠っていた。

 

「……正直発散したい気持ちは無くはないが、まだ死にたくはない」

 

 勃ちそうになる陰茎を鋼の精神で抑え、マージは部屋の掃除を再開した。




ドレスローザ遠征が終われば、少し海軍内での話を書いてから次に進む予定です。

あと、申し訳ないですが、アニメの時系列のどこに劇場版が入るのか教えてくださると助かります。
昨日のFILM GOLDになんか歩くエロい人が二人ほどいたし、Zの方にもシコい人いたので…(ゲス顔)

コメント、評価などお待ちしております!


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畏怖

ヴィオラがただのえっちな有能お姉さんになりました。

ここからどんどん妊婦と子どもが増えていきます。


 

「んむっ、くちゅ……ちゅぅ……ぷはっ。んっ、あむぅ……」

「ちゅう……れぅ、んじゅぅ……ちゅぷっ。じゅるるるぅっ!」

「ケハハハハ。おいおい二人とも。随分と積極的じゃねぇの」

「ぷはっ。……当たり前よ。ベビー5が出産したんですもの。次は私よ」

「じゅぷっ。ふふふ……ヴァイオレット、仮にも貴女は王女様でしょう? ここは、何も関係のない私が孕ませてもらった方がいいわ」

「それこそ何の関係もないわ、モネ。私はジャックハートさんの妻になるんですから」

「どっちが先でも構いやしねぇよ。最後には、二人とも元気な俺の子を産んでるんだからな」

 

 ベッドに仰向けに寝転がるジャックハート。

 その体には何も着けられておらず、ただ尋常ではないほどに鍛え上げられた鋼の肉体があるだけ。

 そこに奉仕する、モネとヴィオラ。

 二人の身体中にジャックハートのキスマークが付けられており、現在、モネが彼の陰茎に、ヴィオラが彼の乳首に愛撫を行っていた。

 

「でもジャックハート様。おちんぽは一つしかないでしょう?」

「そうだな。ひやひやでトロトロのモネちゃんか、情熱的に熱く求めてくるヴィオラちゃんか……」

「わ、私たちも……」

「いま、すよ……」

「……アワアワでヌルヌルのカリファちゃんか、絶賛成長期で俺好みに仕上がりつつあるたしぎちゃんか……」

 

 ジャックハートに群がる複数人の美女。

 いつもの光景ではあるが、メンツが違うだけで唆るものもある。

 

「迷う……」

「ねぇあなた。さっき言ってたけど、最後には皆妊娠するんだから、順番なんて関係ないんじゃないの?」

「アホ。極上の大好物を目の前に並べられて、すぐに一つ選べっていう方がムリだろ。俺ァ、好きなモンはじっくり選ぶ人間なんだ」

「あなた……」

「だがまあ、最後には妊娠するって心意気は好きだ。……よし、ヴィオラ。次はお前だ」

「きゃあっ!」

 

 顔の近くにいたヴィオラの肩を掴み、身体を入れ替えるようにしてベッドに押し倒す。

 

「悪ぃなモネちゃん」

「いいのよ。満足させてもらえれば」

「さすが、いい女だぜ。……さてとヴィオラ。これで何回戦目だ?」

「私とは、次が6回戦ね」

「モネちゃんが5回戦、ここに来てからたしぎちゃんとカリファちゃんがそれぞれ2回戦、か。少ねぇな」

「前に来た時よりは、少ないわね」

 

 以前ジャックハートがドレスローザに来た時というのは、ベビー5がまだ子どもを身籠っていた時のこと。

 その時には彼の相手をできる女性がモネとヴィオラしかおらず、二人だけで数時間ほどジャックハートの愛を一身に受けていた。

 結果妊娠こそしなかったものの、そこから数日、ケツ穴と牝穴からはジャックハートの精液しか排出されないほどに出されたのだ。

 

「まあだが、今日来たのはセックスが目的じゃねぇからな」

「……じゃあ、どうして?」

「とある女の居場所を知りてぇ。……だがそれは、お前をいただいてからでも遅くはない」

「んもうっ。……情熱的な人ね」

「嫌いか?」

「いいえ、大好きよ」

 

 ジャックハートの眼下にいるヴィオラは、今までに見たことがないほどに美しかった。

 以前から身体を交わらせてはいたが、その中でもとびっきりに綺麗だった。

 

「なあヴィオラ。何かいいことでもあったか?」

「えっ? ……そう、ね。ちゃんと言葉にしてくれたこと……かしら?」

「ケハハハ。可愛いやつだ。……ちゅっ、じゅうぅっ!」

「あっ、んぅ……は、あぁっ……!」

 

 ヴィオラの美しい首筋や喉元、鎖骨にキスマークを落としていくジャックハート。

 しかし、その唇が胸に届くことはなく、彼女の乳房は優しく彼の手により揉みしだかれていた。

 

「んっ、あぅ……やあ……! む、胸だけで、こんなに……!」

「俺をただ女を犯すしか能がねぇ男だと思ってたのか? ……ちゃんと、女を愛し、悦ばせる術も持ってるさ」

「あぁんっ! あぁっ、つ、摘まない……でぇ……」

「こんなに綺麗な乳首を、か?」

 

 揉まれ、卑猥に彼の手の中で自由自在に形を変える彼女の乳房。

 時折その先端にある小さな乳輪の中央にある、ぷっくりとした乳首が彼の指に摘まれ、胸全体がそれにゆっくりと引っ張られる。

 ヴィオラの力ない抵抗の言葉も、彼の耳には届かない。

 

「生まれてくる子が羨ましいぜ。この胸から出る母乳で育つんだからな」

「うふふ。安心して? この私の身体は、いつでもあなただけの物よ?」

「ケハハハハハッ! 全く……ホントにいい女だ。んっ、ちゅ……」

 

 胸は揉まれ、唇を奪われ、その中に舌を入れられるヴィオラ。

 ジャックハートの巨体が上にあり、完全にマウントを取られている状態にありながら、彼女もまた、情熱的だった。

 

「んちゅ、ちゅる、んっ……じゅぽっ。……ふふっ。愛が足りないわ」

「ならそろそろ、妻としてのヴィオラに注いでやるか。俺の子種を」

「嬉しいわ……。お願い……たっぷり注いで、いっぱい愛して……!」

「もちろん」

 

 今までの二人の性行為は、あくまでも一海兵と組織の部下の範疇を超えなかった。

 だがその関係はもう終わる。

 これからは、結婚を約束した二人の婚前の性行為に変わるのだ。

 

「んぅ……!」

「ん? ……なんだ、緊張してるのか?」

「えぇ……。一人の女として、互いに愛し、愛されるセックスなんて初めてですもの……」

 

 亀頭を濡れた陰裂に当てがうと、彼女から聞きなれない声が発された。

 いつもはすんなりと竿全体を呑み込み、快楽に啼く彼女が、緊張しているのだ。

 

「ケハハハ。俺ァいつでもお前を一人の女として愛してたんだがな、ヴィオラ」

「……もう、ドフラミンゴの支配には怯えないわ。あなたがいる。それだけでいいと思えるようになったの」

「イイねぇイイねぇ。そうさ、俺がいる。それだけで十分じゃねぇか」

 

 将来、リク・ヴィオラのままなのか、ジョー・ヴィオラになるのか。

 リク・ジャックハートになるのか、ジョー・ジャックハートのままなのか。

 どちらでも構わない。

 

「愛してます、ジャックハートさん……」

「俺もだ、ヴィオラ」

 

 愛さえあれば。

 

「挿入れるぞ」

「はいっ……。んっ、はぁ……! んうぅう……!」

 

 ジャックハートの太い肉棒がヴィオラの陰裂にねじ込まれていく。

 緊張により固くなってしまった彼女の膣肉。

 だが、苦しくはあっても、決して痛くはない。

 これも彼が持つうまさだった。

 

「はぁ……! はぁ……! は、挿入ったの……?」

「あぁ、全部な。処女みたいで可愛かったぞ、ヴィオラ」

「も、もうっ! からかうのはやめて……。っ、お、おっぱいも弄らないでっ!」

 

 ジャックハートは、忘れられがちだがまだ若い。

 しかしそれでも、こと戦いとセックスにおいては他の追随を許さぬ程の独擅場と化す。

 

「じゃあそんな生娘みたいに可愛いヴィオラを、ゆっくりたっぷり愛してやるよ」

「んっ、あんっ! あぁっ、んぁ、くふぅううっ!」

「ケハハ、イクの早すぎだろ」

 

 ヴィオラが達する。

 これまで数え切れないほど達してきた彼女だが、その度に大量の潮を噴くのがまた愛おしい。

 

「お前の噴く潮で海でも出来そうだな」

「あぁんっ! は、激し……ッ! くふ、あっ、んぁあんっ!」

 

 2度目。

 今度もまた、大量に潮が噴き出しベッドを濡らす。

 

「可愛い王女様だな、こりゃ。孕ませがいがあるってもんだ」

「あぁっ! おね、がいぃ……! きて、いっぱいだして……孕、ませて……!」

 

 3度目、4度目、5度目……。

 彼女を襲う快楽の絶頂は留まることを知らず、蜜壷と肉棒の結合部からは、まるで泉のように潮が溢れ出てくる。

 

「まだまだ……! お楽しみはっ、これからだろうがよぉ!」

「あはぁっ! やぁ、んぅっ! い、イクのっ、とまらないのぉッ!」

 

 10度目……16度目……21度目……。

 彼の硬く大きな亀頭が鈴口で子宮口を突き上げる度にイき、大きく反り返ったカリがGスポットをえぐりながら引き抜かれる度、イッてしまう。

 

「……っ、とはいえ、俺も早く射精したいのには違いねぇ」

「ならっ!」

「あぁ。お望み通りに孕ませてやるよ……!」

 

 その瞬間、さらにジャックハートの肉棒が大きく、黒く染まっていく。

 

「んひぁっ! ぶ、武装色は、らめっ……!」

「ケハハ……! 纏ってんのはそこ(・・)じゃねぇ!」

 

 肉棒が黒く染まっているのはあくまでも副作用。

 本当に武装色を纏っているのは、そこから放たれるもの。

 さらに―

 

「なあヴィオラ。知ってるか? 人ってのは、死の恐怖を目の前に、生殖本能が働くらしいんだわ……!」

「んっ、あ……ぁ……!」

 

 ―近距離で、体力がなくなってきたヴィオラに対しての“覇王色の覇気”。

 厳密に言えばヴィオラにではなく、ヴィオラの脳と卵巣に、なのだが。

 

「……排卵した、か。今お前の卵管に無事飛び出したのが、手に取るように分かるぜ……!」

 

 そしてその排卵された卵子の位置を正確に捉える“見聞色の覇気”。

 最後に―

 

「んじゃあ、元気な赤ん坊を育ててくれよ……!」

「あんっ、あっ! きて、きてぇ! あぁあんっ! イクぅ……!」

「はぁっ!」

 

 ―鈴口から一斉に放たれる、武装色を纏った精子達。

 膣内で死滅しやすい精液だが、こうしてジャックハートの鍛えられた武装色を纏うことで、ほぼ確実に卵子まで到達する。

 

「あひぃんっ!」

「ふぅ……。ちゃんと妊娠してたら、お祝いに来るわ」

「はぁ……っ、はぁ……! ありがとう、あなた……。こんな私を、愛してくれて……」

「当然だろ?」

 

 その確率、脅威の95%越え。

 ジャックハートがその肉竿を抜くと、ヴィオラの陰裂からは潮と精液の混合液が噴水のように溢れ出る。

 何度も達し、疲れ果てながらも、ヴィオラはその顔に心からの笑みを浮かべていた。

 

「幸せよ……。こんなに順調に、一人の女としての幸せを噛み締められるなんて、思ってもいなかったわ……!」

「ケハハハ。なら、これからもっと幸せにしてやるよ。ヴィオラ」

「……あな、た……」

「そこで寝ちまうのかよ」

 

 嬉しそうに微笑みながら、ヴィオラは力尽きたかのように眠った。

 とはいえ、疲れたのはヴィオラだけではない。

 彼女の膣肉の想像以上の絡みつきと締まりの良さに、ジャックハートも少しばかり疲弊していた。

 

「俺も、ちと疲れたな」

「ふふっ。なら、冷やしてあげる」

 

 ふわり、と白い大きな羽根が、ジャックハートを背中から包んだ。

 

「モネちゃんか。……あぁ、セックス後の身体によく効くぜ……」

「存分に休んだあとは、どうするの?」

「ケハハ。今度はお前にぶち込んでやるよ」

 

 モネ。彼女もまたヴィオラやカリファと同じく悪魔の実の能力者であり、食した実は“ユキユキの実”。

 雪を生み出して自在に操ることができ、ジャックハートとのセックスにおいては、膣内の温度を下げることで違った快感で楽しませている。

 

「それにしても立派なおちんぽ……。惚れ惚れしちゃうわ」

「惚れてんのはここだけか?」

「いいえ。……言わせないでよ」

「お前の口から聞きてぇんだ」

「……あなたにもぞっこんよ。ジャックハート様……」

 

 背中に抱きついたモネから伸びる両手がジャックハートの陰茎を優しく掴む。

 “ユキユキの実”の能力により体温が低く、それでいて肌触りがよい彼女の手のひらが、ゆったりと上下に扱く。

 

「どれくらい長いのかしら……」

「知らねぇよ。長さだけありゃいいって訳じゃねぇし、互いが気持ちよければそれでいい」

「……そうね。こんなおちんぽなら女は誰でも堕ちちゃうわ……」

「それも違ぇな。俺好みの女なら、ベッドに行く前に既に俺のモノにしてる」

「……流石、言うことが違うわ」

 

 モネがジャックハートの背中にさらに体重をかける。

 むにゅり、と一切の衣服が着けられていない彼女の胸が形を変え、モネから熱い息が漏れでる。

 

「ジャックハート様……」

「我慢のできねぇ雌豚だなぁ、おい。せっかくヴィオラ孕ませていい気分だってのに、そんなにがっつくなよ」

「ご、ごめんなさい……」

「だがまあ、お前は他の性処理道具とは違う。聞けばお前、ヴィオラの侍女をしてたんだろ?」

「え、えぇ」

「……なら喜べ。お前も孕めば、今後もヴィオラの側に居れるだろうよ」

「んむっ!? ……んちゅ、ちゅぷ……」

 

 振り返り、強引にモネの唇を奪うジャックハート。

 ひんやりとした口内を蹂躙し尽くし、彼女の唾液を奪い、自身のそれを押し込んでいく。

 

「ぷはっ。……ほら、立てよモネちゃん」

「あっ……」

 

 ベッドから降りた彼に引っ張られるようにしてモネを立たせる彼。

 

「やっぱバックで犯すのが、たまんねぇんだよな」

「あぁんっ!」

 

 そんな彼女の濡れた秘部に、ジャックハートの黒い肉棒が突き刺さった。

 

 

 ◇

 

 

「ん? ジョー・ジャックハートぉ? 誰だそいつ」

「戦争の時にも言ったじゃろう、ルフィ君。一味の船長を名乗るのならば、必ず覚えておかなければならん海兵の名じゃ」

 

 凪の帯にある島、ルスカイナ。

 そこで頂上戦争での傷を癒しつつ、ジンベエやレイリーと共に“覇気”を会得するための特訓に励んでいたルフィは、ジンベエの口から出た名前に首を傾げていた。

 

「そんなに強いのか?」

「あぁ。……シャボンディ諸島で少しやり合ったが、正直、タイマンでは勝てる気がしない」

「レイリーが?」

「私も一線を退いてしばらく経つが、全盛期でも恐らく勝てん。それほどの強さだ」

「へぇ〜。すげぇ奴もいるんだな」

 

 ジンベエ、そしてルフィの現在の師であるレイリー。

 二人の実力者の口から出るその男の名が、ルフィの記憶に残るかどうかは分からない。

 

「じゃがルフィ君。他人事では無いぞ」

「ん? なにがだ?」

「ジョー・ジャックハート中将は部類の女好きでな」

「サンジみたいなもんか」

「……世間一般の女好きとはちと違う。女海賊を捕らえ、自分の所有物としておる」

「……ん? ってことは……」

「君らの一味にもいるだろう?」

「ナミとロビンか! ……あれ、でもシャボンディ諸島に集まるまで、ナミもロビンもどこにいるか分かんねぇだろ?」

「彼の執念深さを舐めない方がいい。事実、一人で新世界後半の海まで好みの女海賊を追いかけ、5つの海賊船を沈めた経歴もある」

「新世界の後半に!?」

 

 自分の船にも、女性はいる。

 レイリー達が自分にそういうということは、二人も狙われるかもしれないのだ。

 

「だったらなおさら、負けられねぇ! もう仲間たちをバラバラにされてたまるか!」

「その意気だ。さて、特訓を再開するか」

「おう!」

 

 再びルスカイナの森の深部へと戻っていくルフィとレイリー。

 その二人の背を眺めていたジンベエは、近くにとある人物が来ていることに気づいた。

 

「……いつまでそこに隠れているつもりじゃ、ハンコック」

「なっ、じ、ジンベエ! 違うのじゃ! わ、わらわは……」

 

 木の影から出てきたのは、王下七武海の一人、ボア・ハンコック。

 彼女自身は知らないが、現在進行形でとある海兵の目標にされている絶世の美女である。

 

「ルフィ君の邪魔はしなさんな。あやつは今、強くなろうとしておる」

「……分かっておる。それよりも……」

「む?」

 

 絶世の美女と言えど、王下七武海。

 元懸賞金“8800万ベリー”の彼女であるが、そんな彼女がどうも弱々しい。

 

「……先程言っていた、ジョー・ジャックハートという男のことじゃ……」

「おぉ……。ここまでくるとは、思いたくない」

「そんなことは有り得ん! ……しかし、もし来られでもしたら、ルフィは……」

「ルフィ君の身を案じるより、自分の身の心配をせい」

「し、しかし!」

「王下七武海が頂上戦争での重要人物を匿っている、などという情報が出てみろ。……ジャックハートの標的はルフィ君ではなく、お主になる」

 

 ハンコックの耳にも、ジャックハートの名は届いている。

 先程レイリーがルフィに言ったことに嘘はなく、事実ジャックハートは単独で新世界の後半まで突き進み、海賊船を滅ぼし続けた。

 そんな彼ならば、この凪の帯にあるルスカイナと女ヶ島にすら届きうるかもしれない。

 

「今は安静に、女ヶ島で大人しくしておれ。下手に出歩かん方がいい」

「……うむ」

 

 いくら想い人が先日まで瀕死の状態だったとはいえ、今自分がまずい状態であることは分かっている。

 だからこそ、普段は少し傲慢なハンコックも、素直にジンベエの言葉を受け入れた。

 

「まあしかし、女ヶ島にルフィ君がいるという確固たる証拠がない限り、海兵として奴はここには来んだろう」

「そうじゃな。レイリーのような者ではない限り、有り得ん」

 

 自分で発した言葉を自分自身で信じるハンコック。

 

 そうでもしなければ、彼が来てしまうかもしれないという恐怖を紛らわすことが出来なかった。

 

 

 ◇ ◇

 

 

「んひっ、あっ、あぁ……んぁっ、や、らめぇ……」

「ったく。愛してやるって言ったのに気絶するとは……。こりゃ躾が足りなかったか?」

「フフフフッ……! そこまでにしてくれ、ジャックハート。ベビー5の育児に加え、モネまで離脱となったら流石に困る」

「……ま、そっすね」

 

 ―二人とも妊娠確実だが、言わんでおくか。

 

 一人の妻としてヴィオラを愛した翌日の昼。

 ジャックハートは顔をツヤツヤとさせたたしぎ、カリファを連れ、ヴィオラと、ジャックハートの腕を杖がわりに掴むモネによるドフラミンゴ達の見送りを受けていた。

 

「ほらモネちゃん。しっかり立てって。だらしねぇやつは俺は嫌いなんだ」

「はっ、はい……!」

 

 あれから何度もイカされ、文字通りモネの足腰は砕けていた。

 幾多の絶頂により体力は失われ、その度に脚を絡ませていたために疲労が溜まり、寝不足のせいでまともに体力が回復しなかったのだ。

 

「ジャックハート様っ! この子にも、お別れを!」

「おー。……可愛い子だな。お前に似たのか」

「そ、そんな……」

 

 赤ん坊を抱きかかえたままジャックハートの元へと来たのは、絶賛育児に尽力中のベビー5。

 彼女の腕の中に収まる小さな子は、ジャックハートの顔を見るや否や、手を伸ばした。

 

「あぅ〜」

「ケハハ。誰が親か、ちゃんと分かってんじゃねぇか」

「ちゃんと、あなた様の写真を見せていましたから……」

「あぅあー!」

「……頼むぜ、ベビー5ちゃん。ドレスローザでのこの子の親は、お前だけだ」

「……はっ! 私、頼りにされてる!?」

「当然だ。他でもねぇ俺の頼み、聞いてくれるな?」

「えぇ!」

 

 ジャックハートに飽きたのか、その赤子はベビー5の豊かな胸に顔を埋め直した。

 赤ん坊の性別は男。

 父に似た子が産まれたものだと、両親ともつくづく思うのだった。

 

「ジャックハートさん……!」

「んっ、と……。どうした? ヴァイオレット(・・・・・・・)。また俺のが欲しくなったか?」

「っ……。いいえ、もうしばらくは大丈夫よ」

 

 あいも変わらずジャックハートの左腕を支えに立っているモネ。

 空いている右腕で身体に飛び込んできたヴィオラを抱きしめる。

 

「たっぷりと愛してもらったもの……」

「寂しくなったらいつでも呼んでくれ」

「えぇ。分かったわ」

 

 たっぷりと愛してもらった、という言葉通り、ヴィオラはつい先ほどまでジャックハートと熱く乱れていた。

 モネがジャックハートのペースで犯されていたのならば、ヴィオラは互いの愛をぶつけ合うセックス。

 現に、今彼女の腸と子宮の中には、彼の精液がたんまりと溜まっている。

 

「……名前、考えておいてね」

「ケハハ、任せとけ」

 

 抱き合う二人の間で交わされる、決してドフラミンゴには聞こえない囁き声での約束。

 彼の返事に、子宮がきゅうっと熱を帯びた。

 

「フッフッフッ……。これから、どうするんだ?」

「まずは海軍に帰ります。そろそろ子どもが産まれそうなんで。そのあとはアラバスタに行って、東の海に行って、まあ気分次第っすね」

「あっ! ジャックハートさん。言われていたのを忘れてたわ」

「ん?」

 

 彼の腕の中でその大きな乳房をこれでもかと押し付けながら、ヴィオラが再び囁いた。

 

「航海士は空島の“ウェザリア”、考古学者は東の海の橋の上の国の“テキーラウルフ”にいるわ。麦わらも、ちゃんと“九蛇”の庇護下に」

「最高だぜ、ヴァイオレット……! さすが、覚醒した能力だけはある……!」

「ふふっ、あなたのためですもの」

 

 彼女から告げられたのは、ジャックハートが探している3人の居場所だった。

 ナミは空島、ロビンは東の海、そしてボア・ハンコックがルフィを匿っているという証拠。

 彼の肉棒が、ズボンの中で大きくそそり立った。

 

「じゃあ、御褒美だ」

「んぅっ……ちゅる、んちゅ……じゅる……!」

 

 そんな功労を残してくれたヴィオラに御褒美として、深い深いキスをする。

 およそ1分間。息継ぎなどすること無く唾液の交換を終えた二人は、ようやく離れた。

 

「ほら、モネちゃんも」

「は、い……」

 

 左腕に抱きついていたモネを促し、二人ともをドフラミンゴの元へと行かせる。

 

「じゃあドフラミンゴさん。お世話になりました」

「何、情報を貰っているのはこっちの方だ……。フフフフッ! またいつでも来るといい!」

「そうさせてもらいます。……では、これで」

 

 ベビー5の腕の中には自分との愛の結晶である子ども。

 モネとヴィオラにも、孕んでいると確信できるほどに種付けをした。

 

「ケハハハハ! 最高の気分だ! 位置も割れた! あとは、ただ捕まえるだけだってなぁ!」

 

 王宮からの去り際、たしぎとカリファを両腕で抱き寄せながら歩くジャックハートは、ここ数日の中で最高のテンションにまで上がっていた。

 

「ヒナちゃんもじきに出産する。ビビちゃんとマキノちゃんからも許しが出た。ナミちゃん、ロビンちゃん、ハンコックちゃんも確実に孕ませてやる。……なあカリファ」

「……はい」

「二人目はいつ欲しい?」

「今すぐに、でも……」

「じゃあまず、能力を覚醒させろ。それで俺を満足させることができれば、二人目……いや、好きなだけ注いでやるよ」

「ありがとうございます」

 

 たしぎとカリファの陰裂は、歩く度にその肛門と雌穴からジャックハートの精液を零しており、その精液が内腿を伝って下に落ちていく。

 

 そんな二人と共に歩くこと数分。

 ジャックハートは自分の船へと戻ってきた。

 

「さぁ、戻るぞお前ら!」

『はい!』

「ジャックハート中将!」

「おー、どしたマージ」

 

 甲板に上がり、早速自室に戻ってポルチェと一発やろうかと考えていた時。

 マージが声をかけてきた。

 

「報告いたします! 東の海の上空、空島“ウェザリア”なる場所にて“麦わらの一味”の航海士、ナミを見つけたとの通報がありました!」

「ご苦労。……そうか、二人とも東の海に固まってんのか」

 

 それは、ナミがいるウェザリアが東の海にあるということ。

 これで“麦わらの一味”でジャックハートが狙っている獲物の大方の位置は把握できた。

 ロビンは東の海の橋の上の国。ナミは東の海の上空にある空島。

 

「全速力で本部に戻る! 総員、配置につけ!」

『はっ!』

 

 焦ってはいけない。

 だが、急がなくてはならない。

 

「ここから忙しくなるからな……」

 

 ヒナの出産、ビビやマキノとの子作り、ナミ、ロビン、ハンコックの私物化、バレンタインとボニーとの子作りとカリファとの二人目、たしぎの調教、そして孕ませ。

 やりたいことはいくらでもある。

 

「ケハハハ! おいボニーちゃん!」

「は、はい!」

「今日は気分がいい。……俺にハメてほしいんなら服脱ぎな」

「ジャックハート様……!」

 

 自室に入り、待機していたボニーが自分で服を脱いでいく。

 一瞬で全ての衣服を脱ぎ終えた彼女がジャックハートにすり寄る。

 

「ついに私も、孕ませてくれるのか……?」

「さあな。ただ、お前とヤリたくなっただけだ」

 

 全裸になったボニー。

 そんな彼女がジャックハートの首へと手を回し、片脚を上げていた。

 

「向かい合って、か」

 

 上げられたボニーの左脚の膝裏に右腕を通し、右脚も同様に膝裏に左腕を通す。

 その結果、ボニーの身体はジャックハートの両手により持ち上げられ、彼女はジャックハートの首と両手のみで支えられる形となった。

 

「確か、海列車の売り子の格好に似ているから、という理由で付いてた名前があったな」

「え、駅弁スタイル……だろ?」

「あー、それだわ。まあ、名前なんてどうでもいいけど、よっ!」

「んひぁっ!?」

 

 そして突如として挿入されるジャックハートの肉棒。

 ガチガチに硬くなったそれは、愛液が溢れるように湧き出ていたボニーの蜜壷を簡単に貫いた。

 

「はぅ、あ、あぁ……」

「ケハハハ。膣内がもう既に俺の形だな」

「あ、当たり前だ! ……ジャックハート様にしか、身体を許したく、ない……」

「それこそ当たり前だろうが。一回俺に抱かれたからには、簡単に離れると思わないこった」

「んひっ、あっ、んぅっ! ひぃ、やぁんっ!」

 

 ジャックハートの腰がピストンを始め、つられてボニーの大きな尻が彼の足の付け根に叩きつけられていく。

 肉のぶつかり合う音が響き、それが次第に乾いたものから水気を帯びたものへと変わっていく。

 

「愛液出しすぎだろ、ボニーちゃん」

「だっ、だってぇ! きもち、いひぃんっ! き、きもちいいんらもぉんっ!」

「ケハハハハッ! そうか、よぉ!」

「んほぉっ!」

 

 一際強く、肉棒がボニーの膣奥まで突き入れられる。

 

「む、ムリぃ! こんなの、すぐイッちゃうぅ!」

「だったらイッちまえや! プライドなんて捨ててよぉ!」

「あぁっ! んぅ、や、ぁ……! ああぁんっ! イグぅううう……ッ!」

 

 子宮口、ポルチオ、Gスポット。

 ボニーがとにかく弱い所を、ジャックハートの肉竿はまるで陵辱するかのように激しくえぐり、快楽を与えていく。

 

「あうぅあぁっ! んっ、おっ……っ、はぁんっ!」

「ケハハッ! いいじゃねぇか!」

「イクっ、イッ……あぁっ! ……イグっ、あぁぁあっ!」

 

 彼の首に回されたボニーの腕に入る力が強くなる。

 気を抜けば、意識が飛んでしまいそうなほどの快楽の中、彼女はまだ正気を保っていた。

 

「ボニーちゃんっ、そろそろ射精すぜ」

「んぅあっ、き、きて……! いっぱい、ザーメンほしいのぉっ!」

「肉便器の鏡だな、お前はっ!」

「んひぃ! おっ、あぁっ! んぁっ、す、ごい……ひぃあぁっ!」

 

 だが、そんなボニーの苦労など知ってか知らずか、ジャックハートは腰のピストンをさらに速める。

 彼の肉便器なのだから、彼の好きなように使われるのが使命なのだから。

 

「おらっ!」

「イッグゥゥゥゥウウウッ!!」

 

 ジャックハートの大きな亀頭がボニーの子宮口をこじ開ける。

 カリ首を咥えた子宮口は、ジャックハートの亀頭を子宮内から離すまいと締まり続ける。

 そしてそこから放たれる、大量の子種。

 逃げ場を失くした精液がボニーの子宮に貯まっていく。

 

「あっ、あひっ……あへぁ……」

「次ポルチェちゃんでしてぇな。抜くぞ、ボニーちゃん」

「っ、ちょっ、ちょっと待―」

「よっ」

「あひぃっ!」

 

 巨大なカリ首のまま引き抜かれたため、子宮口と膣内を再び抉られ達するボニー。

 子宮口は、精液を逃さぬようにすぐさま閉じた。

 

「おいボニーちゃん。とっとと離れろ」

「は、はひ……」

「次またヤりに行く。……楽しみに待ってな」

「はい……っ!」

 

 降ろされたボニーは全裸のまま淫らに微笑んだ。

 

『ジャックハート中将! 出航の準備が出来ました!』

「よし。帰るぞ!」

 

 彼らを乗せた船は、マリンフォードへと静かに向かい始めた。




一部キャラの口調や呼び方についてですが、原作との相違点があるのは、オリ主が10年前からいるため…とさせていただきます。

クソ長過去回想も書かねば…!

コメント、評価などお待ちしております!


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彼の侵略

遅れて申し訳ないです。

ライブ参戦やらレポートやらで…という言い訳などこれぐらいにして、どうぞ。

やりすぎた感。まあいいや。


 

「はぁ……はぁ……。ジャックハート、様……」

「おめでとう、ヒナちゃん。……ありがとう」

「ふふっ……、それを言うのは、私の方よ……。私を母にしてくれて、ありがとう……」

 

 再建が進む海軍本部に戻ったジャックハートを迎えたのは、なんと元帥であるセンゴクだった。

 ヒナの陣痛が始まったことを伝えられ、二人で病院へと直行。

 彼女の出産に無事間に合い、現在ヒナの腕の中には産まれたての女の子が抱きかかえられている。

 

「スピカ……。お前も、よく元気に産まれてきてくれた……!」

「母子ともに健康そのもの……。流石ヒナ少将と、そのお子さんだ……」

「……ジャックハート様、私は大丈夫だから……早く、お仕事に……」

「そうはいくか。……とは、言えないんすか?」

「あぁ。……ガープの報告曰く、偉大なる航路前半と東の海に、かなり海賊が増えているらしい」

「……了解っす」

「この子はちゃんと、私が見ておくわ…」

「頼むぜヒナちゃん」

 

 息たえだえな彼女の頬に優しくキスを落とし、センゴクと共に分娩室を出るジャックハート。

 

「あっ! パパだーっ!」

「こら、リリー!」

 

 そんな彼を迎えたのは、小さな一人の女の子と、その少女を追いかけるカリファ。

 

「よっ、と。元気にしてたか?リリー」

「うんっ! さっきまでママと遊んでたんだー!」

 

 その少女こそが、8年前に誕生したジャックハートとカリファの愛の結晶である、ジョー・リリーだ。

 

「そうか、良かったな」

「うん! パパも遊ぼ?」

「……あー、ごめんなリリー。パパこれからお仕事なんだわ」

「えーっ! またー!? この前もそうだったじゃん!」

 

 現在8歳の彼女は、当時10歳のジャックハートと17歳のカリファの間に産まれた子。

 ジャックハートの子どもの中でも年上に位置しており、はっきりと自分の意見を述べることも出来る。

 

「ママじゃない別の女の人連れて帰ってきたし!」

「リリー。その女の人たちは、パパのペットなんだ。ちゃんとママのことはママとして愛してる」

「そうなの?」

「あぁそうさ。なあ、ママ」

「……は、はい」

 

 抱きかかえられたリリーとジャックハートの会話を聞き、顔を耳まで真っ赤に染めるカリファ。

 

「あっ、ねぇパパ! 私もパパに着いてく!」

「えっ……。……どうします?」

「むぅ……」

 

 そこに突如、リリーの手により落とされた爆弾。

 ジャックハートの後ろで控えていたセンゴクに判断を委ねる。

 

「……ジョー・リリー一等兵(・・・)。これから君のパパは、偉大なる航路での長期間の任務に出るんだ」

「はいっ! 知ってます! 今朝、マリンフォード内の新聞に載っていたので!」

「そこに、着いていくつもりかい?」

「……ダメ、ですか?」

 

 ジョー・リリー一等兵。

 それこそが、ジャックハートの次女の現在の海軍での地位だった。

 

「ダメとは言い切らん。だが、一等兵の君にはまだ早い任務だろう。パパも、愛する君にはまだ無茶はさせたくないと思うぞ?」

「本当? パパ」

「あぁ。リリーはゆっくり、今のままで強くなればいい。軍曹とか中尉とかになった時は、どこへでも連れて行ってやる」

「本当っ! 約束だよ!?」

「分かった。約束だ」

 

 ゆーびきーりげーんまーん、とジャックハートと小指を絡ませるリリー。

 その指同士が離れると、彼女は軽い身のこなしでジャックハートの腕の中から飛び降りた。

 

「じゃあ私、もっと強くなる! パパとかママみたいに、強くなる!」

「その意気だ、リリー」

「うおおおおっ! 頑張るぞぉーっ!」

「あっ、こら、リリー! 病院の中は走っちゃダメよ!」

 

 とてててて、と幼いながらも全速力で外へと駆けていくリリー。

 その容姿からは想像出来ないほどに強いのだから、彼の遺伝子の強さがよく分かる。

 

「……さてとママ。どうするか」

「せ、セクハラです……」

「何がだよ。てか今更そんなこと思ってないだろ、カリファちゃん」

「……はい」

「んんっ! ……ジャックハート中将。そろそろ出航だ」

「早いな。まあ、俺の船に乗せていくモンは大体決まってっからな」

 

 そう言ってカリファの腰に手を回す。

 

「行こうぜカリファちゃん。リリーにもそろそろ、カリファちゃんの子どもでのお姉ちゃんになってもらいたいしな」

「ジャックハート様……!」

「いちゃいちゃせずに早う行けぃ!」

「へぇ〜い」

「ちょっと元帥さん! 病院内ではお静かに!」

 

 センゴクに怒鳴られたため、渋々歩き出すジャックハートとカリファ。

 看護師に怒られるセンゴクを尻目に、病院を後にするのだった。

 

 

 それから数時間後。

 

 

 物資の補充を終え、後は共に出航するガープの船の準備を待つだけだったジャックハートは、自室の電伝虫で通話をしていた。

 

「んで、報告ってなんだ? ヴィオラちゃん」

『それがね、あなた。私もモネも妊娠したの!』

「おぉ! やったな!」

『えぇ! ……これで私もモネも、しばらく戦線から離脱できるわ。ありがとうあなた。何もかも、あなたが私たち二人を孕ませてくれたからよ』

「よせよ。……俺とヴィオラちゃん、モネちゃんとの愛が実った。それだけだろ?」

 

 ―ただ排卵させてそこに俺の精子ぶち込んだんだから、愛が実るのは当然だがな。

 

 口にはしないが、ムードもへったくれもないことを考えるジャックハート。

 それもそのはず。

 自分が手を出した女性からの妊娠報告など、既に耳にタコができるほど聞き飽きたのだ。

 

『ねぇあなた。私たちの子は、あなたの何番目の子になるの?』

「あん? ……双子とかで変わってくるが、60番台の子になるだろうな。ついこの前、俺の性奴隷のポーラが妊娠して、それが62番目の子だ」

『そ、そんなに多かったのね……』

「俺だぜ? 今まで男の子が28人、女の子が33人……だな。皆健やかに成長してる」

『ふふっ。あなたの子ですものね』

 

 今現在ジャックハートが把握している受精した女性は、ポーラ、ヴィオラ、モネの3人。

 60番目の子をベビー5が、61番目の子をヒナが出産したため、彼女たちは60番台の子を出産する確率が高い。

 

「近い将来には、もっともっと俺の子を増やしたい。……手伝ってくれるか?ヴィオラ」

『えぇ、もちろん。……愛してるわ、あなた』

「俺もだ」

 

 別れの挨拶を終え、電伝虫の受話器を置く。

 椅子から立ち上がり甲板に出ると、隣の船の甲板にもガープが出ていた。

 

「ジャックハートぉ! 出航準備はできておるか!?」

「てめぇの方が遅かっただろがクソジジイ! 引退前にもうボケ始まってんのか! 時間余りすぎて愛する妻に電話してたとこだボケ!」

 

 さりげなく自分の方が遅いと指摘してきたガープに中指を立てながら反論しつつ、部下の元へと歩み寄る。

 

たしぎ(・・・)。今日は出航してからしばらくは訓練だ。セックスはお預けだからな」

「はい。……ガープ中将が近くにいると邪魔される可能性もあるから、ですか?」

「ケハハ。分かってきたじゃねぇか」

 

 別に公開セックスをすることが嫌な訳では無い。

 むしろ身内同士ならば何度か見られたことはあるし、言ってしまえば普段からジャックハートの性奴隷の誰かには見られている。

 

「だからトレーニングルーム行ってきな。今日は“見聞色の覇気”の訓練だ」

「はいっ! ……目だけで見るのではなく、何もかもを研ぎ澄まして周囲の気配を察する…ですよね」

「あぁ。だから、俺が自室で誰とどんな体位でセックスをしてるかをトレーニングルームから当てな。答えが分かったら電伝虫で連絡してこい」

「え、えぇっ!?」

「5回連続で当てられるまで、お前とはヤらねぇからな。早く極めるこった」

「……分かりました。すぐに完璧にして、戻ってきます!」

 

 そう言い残し、たしぎはトレーニングルームへと駆けていった。

 こうなると、やる事と言えば限られてくる。

 

「おいジャックハート! そろそろ出航するぞー!」

「黙れやクソが! むさくるしい声で叫ぶんじゃねぇ! 定年前に俺がぶっ殺すぞ!」

「年長者に向かってなんちゅう口の聞き方じゃクソガキ!」

「ケハハハハ! 俺が丁重に扱うのは愛した女と俺の子だけだ!」

 

 船を出すこと、ただそれだけである。

 もう少しで中将を辞め、後進の育成に励むであろうガープと海軍本部最年少中将のジャックハート。

 彼ら二人の任務先は、通るルートは違うがほぼ同じだった。

 

「……んじゃあ、出航」

『はっ!』

 

 気の抜けた掛け声と共に、彼の部下が慌ただしく動く。

 

「出航じゃあああっ!」

「うるせっ。……とっとと抱きに行くか」

 

 中将を乗せた船が二隻、マリンフォードから出航した。

 

 

 ◇

 

 

 ガープの船はシャボンディ諸島を一度経由し、その後各島々を警備したのち東の海に入る。

 そしてジャックハートの船もほぼ同じく、ウォーターセブンとアラバスタを経由して東の海に入り、諸々の島を警備し、マリンフォードに戻るルートである。

 

「あんっ! んっ、はぁっ! あぁんっ! イクっ、あっ、はぁんっ!」

「おいおい、感じすぎだろ。膣肉もすげえ締め付けやがって」

「だ、だってぇ!」

 

 マリンフォードを出て十数日。

 ウォーターセブンで警備と少しの休息、物資の補充をして再出発したジャックハート一行。

 あと数日でアラバスタに着くという所でジャックハートは毎度の如く、自室で行為に及んでいた。

 

「久しぶり……なんですよ? あっ、はぁ……! け、“見聞色の覇気”のせいか、凄くジャックハートさんの気配を、強く感じるんです……!」

「ケハハハ、いいねぇ。どんな感じだ?」

「強くて、たくましくて……凄く男らしい。かっこいい気配です……」

「ったく、孕ませがいのあるいい女に育って俺は嬉しいぜ。たしぎちゃん」

 

 相手はたしぎ。体位は正常位。

 マリンフォードを出てからウォーターセブンまでの道のりで大幅に“見聞色の覇気”の精度を磨き、つい先程5回連続で当てたのだ。

 余談だがたしぎが当てた時のものは、ポルチェに種付けプレス、ポーラとアナルセックス、カリファと立ちバック、バレンタインと駅弁スタイル、そして最後に、カリファとポルチェの二人のパイズリからの顔面にぶっかけとなっている。

 

「……ジャックハートさん。その、言いにくいことなんですが……」

「あん? なんだ、言ってみろ」

 

 たしぎが真面目な表情で見つめてくる。

 その顔に、ジャックハートも珍しく腰を止めた。

 

「わ、私を孕ませるのは、もう少し先にしてくれませんか!?」

「……何?」

「わがままを言ってる自覚はあります! で、でも! ジャックハートさんの赤ちゃんを私が授かるのは、私がもっと立派な海兵になった時のご褒美にしてくれませんか!?」

 

 たしぎの欲求。

 それは普段からジャックハートの虜にされている女からは聞けないであろうセリフだった。

 

「一応、理由を聞こうか」

「……ヒナさんやカリファさんは、ジャックハートさんとお付き合いが長いです。……でも、私は短いです。そんな私がジャックハートさんとの子どもを持つなんて……」

「なるほどな。たしぎちゃん自身が許せねぇのか?」

「はい。……申し訳、ございません」

 

 彼女はジャックハートの子を持つ資格は、今の自分にはないと主張したのだ。

 付き合いが長いヒナとカリファは特別として、抱かれて間もない自分にはそうやって愛してもらう資格はないと、そう言ったのだ。

 

「謝ることはねぇ。近々、たしぎちゃんも愛人……いや、妻にしたくなってたところだ」

「……えっ」

「海軍本部の中将になれ。大将になる俺の後釜、そこに入った時には、お前を一人の女として愛させてくれよ。たしぎ」

「はいっ。私からも、よろしくお願いします……!」

「あぁ。つっても、今も既に愛してるんだがな」

「っ……! 卑怯、ですよ……! そんな、女性が喜ぶようなことを言って……。……ちゅ、んむ……ちゅぱっ、ちゅむ、んっ……」

 

 だがしかし彼はそれでも待ち、今もすでに愛していることをたしぎに告げた。

 性奴隷ではなく、愛人でもなく、妻。

 嬉しさがこみ上げてきたのか、ジャックハートと舌を絡ませ合うたしぎの目尻から滴が零れた。

 

「どうしたよ。気分でも悪いか?」

「いえ……嬉しいんです。ちゃんと、愛してもらえることが」

「ケハハ。……ちゃんと愛してほしいなら、強さも必要だぜ?」

「分かってますっ!」

「だが今は、愛のあるセックスを愉しむとしようや」

「んっ、あ……はぁっ! じゃ、ジャックハート……さん……っ!」

 

 ぬぢゅぬぢゅと独特の音を奏でながら膣肉と肉棒が擦れ、愛液が満ちていく。

 太く硬く大きく長い。

 それでいて反り返りも強く、カリと亀頭も大きい。

 裏筋も膣内で感じられるほどにたくましく、どくどくと強く脈打っている。

 そんな陰茎が、たしぎを快楽の底へと引きずり込む。

 

「あんっ、んっ、あぁっ! ふ、あっ……んぁあっ!」

「っ、どうしたよ……。今日はえらく、可愛らしく喘ぐじゃねぇか」

「だ、だって、きもちいいんですぅ!」

 

 しかし、たしぎの膣もまた、ジャックハートを快楽へと誘っていた。

 ジャックハートが処女を奪ってから既に1ヶ月以上が経過している。

 意外と長い船の旅で、ほぼ毎日ジャックハートと身体を交わらせていたたしぎ。

 彼女の身体は、完全にジャックハート専用のものになっていた。

 

「もっと、もっとお願いしますっ! あっ、は……あぁんっ!」

「くぅっ……! やっべえなおい……!」

 

 数万回を超えるピストンで膣内の形は彼のモノの形にフィットし、根元から鈴口まで隙を与えることなく刺激していく。

 その睾丸の中身を全て吸い取られてしまいそうな感覚に、思わずジャックハートの腰も速まった。

 

「いいぜたしぎ……! すんげぇ気持ちいいわ……!」

「あぁっ! んぁっ、は、あっ、んぅっ! わ、わたし……もぉっ! さっきから、イッてばっかり……はぅあっ!」

 

 びくびくとピストンの衝撃以外でたしぎの身体が痙攣してつられるように膣肉が締め上げる。

 Gスポットを擦るジャックハートのカリに合わせて突き入れられた時には膣が包み込む。

 どちらが先に達するかという勝負、というわけではないが、やはり上手いのはジャックハートだった。

 

「イグ……ッ!」

 

 ほぼ種付けプレスのような体位に変わり、何度も何度も子宮口に亀頭が打ち付けられる。

 その度に軽い絶頂を繰り返していたたしぎの脚がジャックハートの腰に絡みつく。

 

「あぅ……! ひ、あ、あぁぁあっ!」

「く、オォ……ッ!」

 

 潮と愛液が溢れた膣内と決して逃すまいと力が入れられている両脚。

 二つの異なる柔らかさと刺激に、ジャックハートの快感が絶頂へと達した。

 

「あ、ひぃ……。すご、い……出てる……」

「ケハハハ。そりゃあ、俺の射精だからな」

「……ジャックハートさん。キス、してくれませんか?」

「お安い御用だ。んっ、ちゅぱ……くちゅ、んっ……ちゅる……」

 

 どくどくと子宮にジャックハートの精液が流し込まれてから数秒。

 陰茎と淫裂の結合部から少し精液が溢れ、体を重ね合ったままで二人は唇を重ねた。

 

「っ、ぷはっ。……後どれぐらいでアラバスタだ?」

「えっと……、10時間ほどですね」

 

 現在、ジャックハートはこれでも結婚式を控えている身。

 しかもその後にビビからしばらく滞在して子作りに専念しないか、と誘われているのだ。

 だが―

 

「もう一回、しませんか?」

「望むところだ。中将になる前に赤ん坊がデキても知らねぇぞ?」

 

 ―据え膳食わぬは男の恥。というよりも、この男が我慢などできるはずがなかった。

 

 ここから10時間強という長い時間。ジャックハートとたしぎは互いの愛を激しく確かめ合った。

 

 

 ◇ ◇

 

 

「遅いですっ!」

「悪ぃ悪ぃ。ちょいと海が荒れててな」

「……それなら、しょうがないですね」

 

 たしぎの体をくまなく堪能していたせいで遅れた、とは言わず。

 ジャックハートはアラバスタの王宮にある一室で、ビビの手助けを受けながらタキシードに着替えていた。

 

「あ、そうだそうだ。ビビちゃん。俺ビビちゃん以外にももちろん女作ってるから、そこんとこよろしくな」

「それ今言うことですか!? ……はぁ。まあ、薄々気づいてました。この人は一人愛するだけで満足するような人じゃないって」

「よく分かってんじゃねぇか」

 

 ミニスカートにオフショルダーという少しばかり大胆なウエディングドレスに身を包んだビビだけが着替えを手伝うという少しばかりおかしな光景がそこにはあるが、これには訳がある。

 

「にしても、大々的なモンにしねぇんだな」

「えぇ。パパが結婚式自体は身内で執り行いたいって。一応、映像電伝虫は用意しているみたいだけど」

「ケハハハ。いい気遣いしてくれるなぁ、コブラさんは」

「え?」

 

 ネクタイを締め終えたビビが背伸びをやめる。

 

「こんなにも綺麗な俺の妻の姿を、大衆に見られたくねぇんだ」

「ジャックハートさん……」

 

 彼のその率直な言葉にビビの顔が紅潮していく。

 恥ずかしいという意味合いもあるだろうが、この場合は嬉しさに少しの照れが混じったのだと考える方が妥当だ。

 

「誓いのキスには、少し早いか?」

「いいえ?もう今まで、散々したでしょう?」

「だな」

 

 タキシードに着替えたジャックハートとウエディングドレス姿のビビの唇が重なり、舌が絡み合う。

 正装を崩さぬように力を緩めながら互いを抱き寄せあいながら唾液を交換する。

 

「んっ……。確かに、他の女の人の味がしたわ」

「そりゃ、俺のことを一途に想ってくれてる可愛い部下の唾液の味だろうな」

「むぅ。少し、妬いちゃいます。そんな身近な女性とばかり一緒にいるなんて」

「それについては安心してくれ。いつか、君をここから連れ出す」

「まあ、素敵ね」

 

 ジャックハートの言葉にビビが微笑み再び背伸びをする。

 結婚式本番での誓いのキスを前にして、二人は何度も唇を重ねた。

 

 

 それから数時間後。

 

 

「あんっ! あっ、ひぃあぁっ! じゃ、ジャックハートさん……っ! ジャックハートさんっ! すき、すきぃっ!」

「俺もだぜ、ビビっ!」

 

 結婚式を無事に終えて見事夫婦となったネフェルタリ夫妻は、ケーキ入刀という形だけの共同作業ではなく、文字通り彼らにしかできない共同作業に勤しんでいた。

 夫婦の広い寝室周辺には誰も近づけることなく、ジャックハートとビビはネフェルタリ家の跡継ぎ誕生のために、一心不乱に体をぶつけ合っていた。

 

「射精すぞ……!」

「んう……っ! あぁ、あ、はぁ……」

 

 夜もしっかりと更け、窓の外を見てもただ真っ暗な空に星々と大きな満月が輝いているだけ。

 披露宴を終え、すぐさまこの部屋へと来た二人はそこから休むことなく子作りに励んでいた。

 

「辛くないか?」

「はぁ、はぁ……。少しだけ、休ませて……」

「了解」

 

 たくし上げられていた純白のミニスカートの中にあるビビの美しい陶器のような両脚。

 その間の淫裂に突き刺していた肉棒を抜くと、白い粘液がこぽりと音を立ててこぼれ落ちた。

 

「はぁ……んっ、あぁ……。気持ち、いい……」

「愛のあるセックスってのはこんなもんだぜ」

「じゃあ、ジャックハートさんは今まで、私を愛してくれてなかったんですか?」

「んなわけねぇよ。ただ、二人がより深く愛し合ってりゃ気持ちよく感じるもんだ」

 

 豊かに育った胸をさらけ出したまま、ビビは息を整えていく。

 

「てか本当にこの5日間で確実に妊娠するのか?」

「えぇ、おそらく。お医者さんに診てもらって、排卵日を予想してこの日程を組んだんです」

 

 ジャックハートが他の航路ではなく、できるだけ最短経路を辿ってアラバスタに来た理由がここにある。

 ビビから、この日がいいと言ってきたのだ。

 その訳が分かったジャックハートは、不敵に笑った。

 

「なら、うまくいけば世界会議では二児の母になってるかもな」

「も、もうっ! あなたったら……」

「あっ。今のヤベェわ。また勃ってきた」

「……じゃあ、12回戦、よろしくお願いしますっ」

「こちらこそ」

 

 寝転ぶビビにジャックハートが覆いかぶさる。

 

「ウェディングドレスもいいが……ッ!」

「きゃっ!」

 

 そしてそのまま、はだけていたとはいえビビが着用していたウェディングドレスを片手で引きちぎった。

 

「やっぱこうじゃないとな」

「もう……。それだったら、ジャックハートさんも全部脱いでくださいね?」

「一人だけ全裸は恥ずかしいか?」

 

 そう言いつつも、ウェディングドレスを引きちぎった勢いそのまま右手一本でネクタイを外し、タキシードを脱ぎ捨てた。

 

「ビビ……」

「んっ、ちゅぅ……んちゅ、あむっ……んぅ、ちゅるる……」

 

 唇を半ば強引に押し付けると、ビビから舌が突き出され、ジャックハートの口内に滑り込まされる。

 ジャックハートもそれに答えるようにビビの舌に絡ませ、歯の裏側や口内を味わっていく。

 

「っ、ぷはっ。5日間で3桁超える回数できそうだわ」

「ふふっ。跡継ぎのためって言ったら色々なものを用意してくれたの。ただの子作りじゃなくて、いっぱい楽しみましょう?」

「もちろん」

 

 そう言って、ジャックハートは12度目の膣内射精のために、肉棒を深く深くビビの陰裂へと突き立てていった。

 

 

 ◇ ◇

 

 

「んっ、は、ぁんッ……! ルフィ……ん、あぁっ!」

 

 大きな大きなベッドの上。

 そんなベッドがすっぽりと入るさらに大きな部屋に、絶世の美女と謳われる女の、可憐な嬌声が響いていた。

 

「切ないのじゃ……、んぁっ、はぁんっ! わ、わらわは、切ない……んうううっ!」

 

 そして、本日幾度目かの絶頂した声と共に、女の秘部から少しばかりの潮が溢れる。

 

「はぁ……はぁ……。……足りぬ、な。……ルフィ……」

 

 ここは女ヶ島、九蛇城。

 アマゾンリリー皇帝のボア・ハンコックの寝室であり、その上で自慰に励んでいるのは正しくこの部屋の主だった。

 

「はぁ……ルフィ……」

 

 先ほどから名前を呼ぶのは、彼女の愛しの人物の名。

 出会いこそ良くはなかったが、時が経つにつれてどんどんと惹かれていったのだ。

 

「……いや。ルフィが無事に強くなれるのならば、それでいい」

 

 彼女は自分がモンキー・D・ルフィに恋をしているのを自覚している。

 だがしかし、それと同時に彼の歩みを止めてはいけないとも思っている。

 

「んっ、あぁっ……」

 

 実らない恋心、そして溜まっていく欲求。

 女ヶ島の北東にある島、ルスカイナで現在モンキー・D・ルフィは新世界へと乗り込むために“冥王”シルバーズ・レイリーに師事し、“覇気”の特訓に明け暮れている。

 

「はぁっ、くぅ……っ!」

 

 想い人が近くにいるが、彼のことを思うと会わない方が良い。

 そんな辛くもどかしい現実が、ハンコックの恋心と共に欲求不満な心を焦らすように燃やしたのだ。

 

「ああぁぁあんっ!」

 

 左手で右胸の先端にある、薄桃色のぷっくりとした小さな乳首を抓り、右手で陰部にある皮を剥いた陰核を弄る。

 誰に教わったでもない、自ら見つけた方法で自分を慰め続ける。

 

「はぁ……! はぁ……っ! 足りぬ、足りぬのだ……」

 

 しかし、どれだけ自慰に耽ったとしても彼女の恋心に寄り添う性欲のせいで愛しの人物に会いたいという欲求は収まらず。

 胸を触り、陰部を弄り、達する度に彼の顔、声を思い浮かべてしまう。

 

「ルフィ……ルフィ……ッ!」

 

 そして再び自慰を始めてしまう。

 そこには王下七武海としてのハンコックも、アマゾンリリー皇帝としてのハンコックはいない。

 ただ一人の女としてのボア・ハンコックがそこにいた。

 

「くぁっ、んっ、ふ、ぅ……あっ!」

 

 陰核から陰裂へと右手が移動し、その白魚のように美しく長い指が、中へ中へと入っていく。

 

「んっ、あっ、はぁんっ!」

 

 ぐちゅぐちゅと卑猥な水音が響き始め、昂っていた彼女をさらに高めていく。

 

「あぅっ、イクッ……! く、はぁあああっ!」

 

 この絶頂でハンコックが達した回数は2桁になる。

 ぷしゅっ、と再び少しだけ潮を噴き、ようやく彼女の自慰は止まった。

 

「はぁ……、はぁ……。汗をかいて、しまったな……」

 

 その彫刻のように美しい肢体には玉のような汗が浮かび、丸みを帯びた部分を伝い、下に落ちる。

 浮いた汗を流すため、ハンコックの脚がベッドから降りる。

 

「湯浴みに行くとしよう」

 

 赤いドレスを身にまとい、彼女は九蛇城にある大きな浴場へと向かう。

 

 男に会う時に恥ずかしくないように、その美しい身体にさらに磨きをかけるために。




という訳で、メインヒロイン格のキャラでの一番最初はハンコックです。
あぁ^〜、ハンコックをペットにして飼い慣らしたいんじゃあ〜

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凪へ

魔剤2本一気に飲んだら死にかけました。

遅れて申し訳ないです。ルフィ君が大変な目に合います。許して。


「あんっ、ん、は、あぁんっ! んぅ、あぁっ……っ! す、すっごぉい……っ!」

「下から眺めるってのも悪かねぇな」

「んあっ、や、ぁっ……んぁあっ! いいっ、きもちいいのぉっ!」

 

 ジャックハートがアラバスタに来て、今日で四日目。

 ビビとの子作りのために組まれた日程の最終日も、前日までと変わらず睡眠以外の時間はほぼ互いを貪りあっていた。

 

「アラバスタの踊り子の衣装、だっけか?」

「えぇ……んっはぁっ!」

「それにしても良かったぜ。こんなに可愛い姿ビビちゃんが海賊どもに手を出されてなくて」

「っ……。ジャックハート、さん……?」

「ん?どうしたよ」

 

 アラバスタの伝統衣装の一つでもある踊り子の衣装を身に纏い、騎乗位で腰を振っていたビビの動きが止まる。

 喘ぎとともにどんどんと赤くなっていた頬も少しばかり元に戻っていた。

 

「る、ルフィさんたちをもし捕まえたら、その……」

「あぁ。もちろん一つの海賊として扱う」

「ルフィさんたちは悪い海賊じゃないんですっ!」

「それを決めるのはビビちゃん一人じゃねぇ。全世界の人間のほとんどからしたら、頂上戦争で暴れまわった億越えルーキーなんて怖くてたまらねぇだろうよ」

 

 麦わらの一味は、悪い海賊ではない。

 愛する妻の発言でもあるのでそう言った一面も確かにあるのだろうが、それだけでは捕まえない理由にならない。

 彼らがどんなことをし、そしてどんな人柄であろうと、彼らは海賊(・・)として名乗りを上げているのだ。

 彼らを”麦わらの一味”としてしか知らない大半の人間は、彼らに恐怖を抱いている。

 

「それに」

「きゃっ!」

 

 仰向けになっていたジャックハートの胸元に、ビビが腕を引っ張られて倒れ込む。

 豊満な両胸がジャックハートの鍛え上げられた胸筋で潰れ、お互いの顔が目と鼻の先まで近づく。

 

「俺がネフェルタリ・ジャックハート(・・・・・・・・・・・・・・)として名乗る時の協定にあっただろ?夫婦ともに、互いの立場や仕事には干渉しないって。今のビビちゃんの要求は俺の仕事にどっぷり関わってる」

「……そう、ですよね」

「あぁ。でも、殺すなってんなら大丈夫だぜ」

「っ! ほ、本当ですか!?」

 

 ジャックハートの眼前でビビが叫ぶ。

 

「男どもはインペルダウンに打ち込むのは確定事項だが、あそこの看守に言えば多少は自由がきく。副看守長と獄卒長は俺のペットだからな」

「……ジャックハートさん。いったい何人の女性とこれまで関係を?」

「ケハハ。ビビちゃんは今まで何回呼吸したとか覚えてんのか? んな細けぇこと覚えてねぇよ。……だが、安心してくれ。本当に愛してるのはビビちゃん含めて数人だけだ」

「も、もうっ!」

 

 海底監獄インペルダウン。

 数ヶ月前に死んだポートガス・D・エースが収容されていた場所であり、多くの囚人が脱獄してしまった事件による傷はまだ完全には癒えていないものの、働き自体は完璧に治っている。

 そこにいる美女二人にもしっかりと手をつけており、ジャックハート自らのものにしたのは6年前。

 付き添いだったガープの目をくぐり抜けて和姦に及んでいたのが懐かしい。

 

「ビビ」

「んむっ!? ……んちゅ、んっ……ちゅぱっ、くちゅ……」

 

 話に一旦区切りがついたところで、ジャックハートがビビの後頭部に手をやり、強引に唇を奪う。

 初めこそ戸惑ったもののビビもそれを受け入れ、舌を絡めていく。

 

「んぷっ……。さて、いっぱいしようか、ビビ。あと少しで行かなきゃならねぇからな」

「はい……」

 

 うっとりとした表情でジャックハートの瞳をじっと見るビビ。

 その顔には、再び紅が差していた。

 

「見せてくれ。お前の綺麗な体には、何も装飾品なんざいらねぇだろ」

 

 その夜もビビは、ただ獣に身体を貪り食われるだけの雌になった。

 

 

 ◇

 

 

「ヒイイイイッ!!」

「ちょっ、ちょちょちょちょちょっとジャックハートさぁんッ!?」

「こっちも助けてくださいよぉぉおっ!!」

「うっせぇなテメェら。ポーラの母体に響いたらどうすんだよ」

「母体のこと気にしてる人が『凪の帯』に突っ込んでボーッとしないでくださいよッ!!」

 

 

 翌日の昼。

 驚くほど天気がよく、全くの無風であること以外は絶好の航海日和となっている『凪の帯』

 今から約2時間ほど前から、ジャックハートの軍艦は海王類の群れに襲われていた。

 

「海軍の軍艦って襲われないんじゃないんですか!?」

「あー、多分それ俺のせいだわ。微妙に“覇王色の覇気”が漏れてんのか知らねぇけど、海上に強い奴がいるって察してるっぽいんだ。悪ぃな」

『あんたのせいか!!!』

 

 その理由は、ジャックハートが船上にいるためである。

 いくら船底に海楼石を敷き詰めたとして、その上に存在する強者の匂いというものはかき消すことは出来ない。

 その為、強大な敵が現れたと海王類達が錯覚し、襲ってきているのだ。

 

「てか鼻くそほじってないで助けてくださいよ!」

「さっきまでカリファちゃんにこってり絞られてて疲れてんだよ。……おい、たしぎ」

「はっ!!」

 

 右舷に現れた三匹の巨大な海王類。

 彼らに向かって、たしぎが船を飛び出した。

 

「嵐脚・『白蛇』!」

 

 たしぎの白く、程よくむっちりとした脚から放たれる斬撃。

 まるで蛇の頭を模したようなそれが三本飛び出し、それら全てが海王類たちの喉元に食らいついた。

 

「やった……! できましたよ、ジャックハート中将!」

「おう、よくやった。だが、覇気はまだ甘いな」

「え……?」

 

 海王類を全て倒したと確信し、甲板へと降り立ったたしぎ。

 ジャックハートの方に向き直ったところで、その姿は大きな影に覆われた。

 

「たしぎ少尉ッ!」

「ひっ……!」

「喚くなっての。……おい」

 

 たしぎの嵐脚を食らってもなお生きていた一匹の海王類。

 彼女を食おうと軍艦に歯向かったところで、生物の種として敵わぬ存在に、海王類は遭遇した。

 

「テメェをぶっ殺せば多少は静かに船旅セックス楽しめんのか? あぁ? ……おい、答えろやカス」

「ア、オ、ォ……」

 

 ワナワナと震え、ただただ迫りよる死を受け入れる事しか道がない事を悟る。

 自分はどうあがいても、この船の上にいる一人の存在に殺され、喰われるだけだと本能が叫んでいた。

 

「チッ。叫ぶしか脳がない癖にたしぎに突っかかってくんじゃねぇよ」

「オオオオオオオオォッ!!」

「所詮は獣、か」

 

 自分にダメージを与えたたしぎなど放っておいて、目の前の存在であるジャックハートを食わんとばかりに口を開ける。

 

「武装・正拳」

 

 その大きく開けた口から胴体にかけて、巨大な穴が一瞬にして貫通した。

 

「……試し撃ちにしちゃあ、上出来か」

「えっと、ジャックハートさん……。今何したんですか?」

「お? 突きを飛ばしたんだよ」

「斬撃飛ばすだけでもおかしいのになんちゅうモン飛ばしてんすかあんたは!」

「うっせぇよマージ。お前もこれぐらいできるようになれ」

 

 頭を抱えながらため息をつくマージを無視し、たしぎの元へ近寄る。

 

「大丈夫か?」

「はいっ! ……すいません、ジャックハートさん。私の詰めが甘いばっかりに」

「まあ少尉にまだそこまでは求めねぇ。ちゃんと鍛えな」

「はっ!」

 

 綺麗な敬礼をジャックハートに向けるたしぎ。

 そんな彼女の奥に見える島を見て、ジャックハートの口元が異様に歪む。

 

「ジャックハート中将。何か、いいことでも?」

「ケハハ。あれ見てみろよ、マージ」

「えっと……女ヶ島、ですか」

「あぁ。お前たちにはまだ言ってなかったが、今回のパトロールの途中にとある罪人を捕まえるんだわ」

「罪人?」

「”麦わらの一味”船長、モンキー・D・ルフィ。ま、本命はそいつを匿ってるって罪で、ボア・ハンコックなんだけどな」

「む、麦わらですか!?」

 

 なぜ女ヶ島を経由するのかを大半の部下に一切伝えていなかったジャックハート。

 その真相は、あの頂上戦争でも有名になった麦わらのルフィと、海賊女帝ボア・ハンコックの捕獲のためである。

 

「何の関係かは分かんねぇが、どうやら麦わらが女ヶ島にいるみたいでな。どうせなら同時に捕まえた方がお得だろ」

「し、しかし女ヶ島には我々は入島できないのでは……」

「そのために、まずは猿を捕まえておく」

「猿?」

 

 ジャックハート一行を乗せた軍艦は一直線で女ヶ島へと向かう……ことはなく。

 その北西にある島へと向かっていた。

 

「一体あの島は……?」

「ルスカイナっつう無人島なんだが、やたらと血気盛んな猛獣がいるそうだ。いやぁ、たまには海軍の図書館もバカにできんわ」

 

 もちろんここに来る際に事前学習は欠かしていない。

 好みの女を犯すためにはどんな努力も惜しまないのだ。

 

「試しに”見聞色の覇気”使えるやつ、島ん中確認してみろ」

「……これは、すごい……! 強い生命力を持つ獣が大量に……ん?」

「人の気配が、二つ……?」

「よく気づいたな」

 

 島を探ると、蠢く強い生命体が無数に存在している。

 しかしその中で、猛獣のそれとは少しばかり違う人の気配が2つあった。

 

「エテ公にどいつが稽古つけてんのか、ちょっくら見てやるか。お前らは島に船近づけとけ」

 

 甲板を強く蹴り、ジャックハートは宙を駆けた。

 

 月歩と剃の併用技である『剃刀』を用いること数秒。ジャックハートは無人島であるはずのルスカイナに上陸した。

 

「っと。おーおー、お盛んなこった」

 

 上陸するや否や、ジャックハートに襲いかかる巨大なゴリラ。

 

「うるせぇよ」

 

 “覇王色の覇気”で威圧し、気を失いかけたところで腹部に深々と拳を突き刺す。

 口から泡を吹いたゴリラはそのまま倒れ込み、大きな物音と砂埃を起こした。

 

「……ケハッ。早速引っかかりやがったか」

 

 そのゴリラの様子を見届けたジャックハートの視線は、今度は森の奥に固定される。

 そこからしばらくして、ガサガサという音とともに二人の男の姿が見えた。

 

「ジンベエ、この辺か!?」

「うむ。……随分と大きな音じゃったが、一体何が……」

「麦わら、んで元王下七武海のジンベエか……」

 

 大きくジャックハートの口元が歪む。

 当初の目的だった餌となる猿だけでなく、突き詰めることが出来るいい餌も手に入ったのだ。

 

「よぉジンベエ。戦争じゃあ世話んなったな」

「ん? 誰だお前」

「な、なぜお主が、ここにおる……っ!?」

「あぁ? いちゃ悪ィかよ。俺ぁこれでも働きモンなんだぜ? 世界中をパトロールしてる途中なんだわ」

「じゃからといって、ここにワシらがおることが分かるはずないじゃろう! ジョー・ジャックハートッ!!」

「ッ! こ、こいつが……!」

 

 ジンベエの口から現れた海兵の名を知り、ほんの少しだけたじろぐルフィ。

 それもそのはず。そのジョー・ジャックハートという名は、頂上戦争の時にイワンコフとジンベエからこれでもかと言うほどの強さを聞かされていたからだ。

 

「レイリーさんがコーティング作業が遅れて来れない、と言うとったのはそう言う訳か……」

「それに関しては、俺は何もしてねぇよ? ただあのジジイが途中で突っかかってきただけで」

「……それでお主、ここに何をしに来た」

「だから言ったじゃねぇか。ただのパトロールだって」

 

 両手を大袈裟に広げ、露骨なアピールをして見せるジャックハート。

 その目線は、今度はルフィへと向いた。

 

「よぉ麦わら。……まっ、海兵がこんな島で海賊に会ったんだから捕まえなきゃいけねぇ訳だが……。っと、あぁ! そうだそうだ。お前にそういや聞くことがあったんだ」

 

 これまたわざとらしく胸の前でポン、と手を付くジャックハート。

 

「お兄ちゃんとお仲間さんは、元気にしてっか?」

 

 満面の優しい笑みを浮かべ、大きな声で朗らかに聞いた。

 

「ッ! お前ッ!!」

「ルフィ君!」

 

 シャボンディ諸島で仲間をバラバラにされ、頂上戦争で兄を亡くした今のルフィにとって、海兵からのその言葉はこれ以上にない挑発となった。

 

「"ゴムゴムの"……!」

「ッハ!」

 

 目の前の敵を倒すべく、この島に来てすぐに身につけることができた技で迎え撃つルフィ。

 後ろに大きく伸ばした拳から手首あたりまでが黒く染まり、そこから蒸気が出た。

 

「"JET銃"!」

「うるぁっ!」

 

 この島にやってきて約一ヶ月。

 武装色の覇気の基本と、部分的な"ギア2"の即時発動でジャックハートに攻撃するも、それは無残にも同じ技で返された。

 

「な……ッ!」

「おかしいか? 何の悪魔の実も食ってねぇ奴がお前の技を使うのは」

「どけい、ルフィ君ッ! こいつは今のお前さんが敵う相手ではない!」

「何だよその言い方。まるで自分なら勝てるって言ってるように俺には聞こえるが?」

「そう言っておる!」

「ジンベエ!」

 

 ジャックハートが放った見様見真似の"JET銃"に弾き飛ばされるルフィに変わり、今度はジンベエがジャックハートに肉薄する。

 

「魚人空手「奥義」……!」

「面白ぇ。魚人空手"2万枚瓦"……」

 

 手のひらに水を集めるジンベエと、腰を落として拳を構えるジャックハート。

 

「"武頼貫"!!」

「"正拳"!」

 

 二つの大きな衝撃がぶつかり合う。

 

「ぬぅ……っ! ぎょ、魚人空手……」

「んないちいち驚くなよ。魚人が編み出したから魚人空手だろ? 一般人が扱えてもいいじゃねぇか」

 

 完全に拮抗したその衝撃は打ち消し合い、そのまま消えた。

 実質ジンベエの最強技に等しいそれを軽く止められ、彼は内心冷や汗をかいていた。

 

「なあ麦わら。俺ぁ別にお前をとっ捕まえに来たのが最優先じゃねえんだわ」

「ルフィ君! 奴の言葉に耳を貸すな!」

「黙ってろよ元王下七武海。殺すぞ。……話を戻すが、俺はこの近辺に、とある女を捕まえに来たんだわ」

 

 臨戦態勢を保ったままジャックハートの話を聞くルフィ。

 羽織っているコートの内ポケットに手を突っ込んだまま、ジャックハートは言葉を続ける。

 

「麦わら、お前ボア・ハンコックって知ってっか?」

「お前っ! ハンコックに何すんだ!」

「何って、捕まえんだよ。海賊と海兵だぞ? 当たり前だろ。……あ? てか、なんでお前がボア・ハンコックのこと知ってんだ? お前みたいなやつには関係ねぇ女だろ」

「関係ねぇことねぇ! ハンコックは俺を助けてくれた、恩人だ!」

 

 その瞬間、ジャックハートが耐えきれずに吹き出し、大声を上げて笑い出した。

 

「ケハハハハハハッ! そうかそうか、ボア・ハンコックはお前の恩人か、モンキー・D・ルフィ!」

「だったらなんだ!」

「いいや、なんでも。お前の恩人なら尚更捕まえねぇとな」

「させるか! 俺がお前を止める!」

「テメェ如きに俺が止められるかよ、コンドーム野郎」

「”ゴムゴムの銃乱打”!」

 

 ハンコックを捕まえると宣言したジャックハートに向かって走り出すルフィ。

 一方、目的が達成できたジャックハートはそのルフィの攻撃をヒラヒラと避ける。

 

「“覇気”も力も能力の使い方も速さも何もかもが足りねぇてめぇの一撃なんざ食らうわけねぇだろ」

「“ゴムゴムの象銃”!」

「……はぁ」

 

『紙絵』で技を避けると、今度は“武装色の覇気”を纏った巨大な拳が迫り来る。

 

「武装・神経強化」

 

 着実にその距離が短くなる中、ジャックハートの全身の皮膚に黒い線が木の枝のように走っていく。

 

一槍(いっそう)ッ!」

 

 巨大な拳めがけて突き出される強烈な一突き。

 激突する巨人族のように巨大な拳とジャックハートの拳。

 質量では圧倒的にルフィに部があったが、それだけが勝敗を分けるはずもなく。彼の巨大な拳はジャックハートの拳に弾き返された。

 

「ぐあぁっ!」

「ケハハハ。軽いなぁ、お前の拳は。何のために戦ってんだよてめぇ」

「海賊王になるためだ!」

「これからもう楽しむ予定が入ってんのに、余計なジョークは今求めてねぇ。だから軽いんだよ。海賊なんてやめてママのおっぱいでも吸っとけや、童貞ヒョロガリコンドーム」

「ッ! まさかお前さん、ボア・ハンコック……いや、九蛇海賊団を……!」

「さあ、何のことだろうな。……ってとぼけんのもこれぐらいにしとくか。いつまでも、お前らみてぇな雑魚と遊んでる暇はねぇ」

 

 ことの真相に気付いたジンベエが元から青い顔をさらに青ざめたものに変える。

 

「ルフィ君! こいつを何としてでも止めるんじゃ!」

「だから、3億やそこらに負けるわけねぇだろ。……うぜぇな、ったく」

 

 ジャックハートが少し俯く。

 臨戦態勢を再び整えたルフィとジンベエが彼の一挙一動を見逃すまいと注視する。

 

「死ねや」

 

 放たれる、圧倒的なまでの"覇王色の覇気"。

 元王下七武海であるジンベエはおろか、覇王色の使い手であるルフィすらも沈めるそれは、気づかぬうちに周囲にいた猛獣たちも全て気絶させていた。

 

「ま、こんなもんか。革命家ドラゴンの息子ねぇ。とんだクソザコじゃねぇか。強い子供に育ってくれないなんて可哀想に。うちのリリーとかダレスを見習ってほしいもんだ」

 

 気絶したルフィとジンベエに近寄るジャックハート。

 

「今は船に男を乗せる気分じゃねぇからな……。とりあえず」

 

 右足を思い切り後ろに下げ、倒れているジンベエの腹を蹴り抜く。

 ただでさえ意識を刈り取られている中でのその一撃にジンベエは悲鳴を挙げることすらなく、力なく吹き飛んで行った。

 

「感謝しろよ。運がよけりゃ生きれるからな。……さて、お前にはもうちょい面白え遊び道具になってもらいてえからな」

 

 白目を剥いて仰向けに倒れるルフィ。

 その彼の顔の横にジャックハートはしゃがんだ。

 

「ありがとよ。テメェのアホな証言のおかげでハンコックちゃんはめでたく俺の性奴隷になることが確定した。お礼だ、受け取れっ!」

 

 ルフィの顔めがけて、振り上げた拳を一気に振り下ろす。

 

「杭打ちッ!!」

 

 バゴォンッ、という爆音とともに振り抜かれた拳が地面を穿つ。

 まるでクレーターのように凹んだ地面の中央に、ルフィの顔が首が伸びた状態でめり込んだ。

 

「ケハハハハ。息ができるんなら生きてるか。……さてと、行くか」

 

 ジンベエとルフィを倒し、ジャックハートはその足を船へと戻した。

 船に戻る途中、ジャックハートは白いコートの中に隠していた電伝虫を取り出す。

 

「おいたしぎ。ちゃんと撮ってたか?」

『はいっ!ジャックハートさんと通話していた電伝虫が喋る様子を、カメコでしっかりと!』

「でかした」

 

 たしぎから事前に伝えていた作戦が成功したことを伝えられる。

 ニヤリと笑うと、ジャックハートはルスカイナを後にした。

 

 

 ◇ ◇

 

 

「それで、海軍の男が一体この女ヶ島に何のようじゃ? 頂上戦争の件と言っておったが」

「何、事情聴取だ」

「事情聴取……?」

 

 普段は女ヶ島の周囲にすら立ち入ることが出来ない海軍。

 それが今回特例でこの女ヶ島、それも九蛇城への立ち入りを許可されたのは、先日白ひげが死んだ頂上戦争についてだった。

 

「あぁ。それにしても、まさかあれ一枚で俺を女ヶ島に入れてくれるとはな」

「ッ! 天竜人、世界政府、五老星からの強制入島許可証など、どうやって入手したのじゃ……」

「これでも多少顔は効く方でな。ちょいとお願いすれば半日もせずにもらえるのさ」

 

 ジャックハートが今いるのは、九蛇城の中で最も神聖な場所の一つである"女帝"ボア・ハンコックの自室。

 普通ならば入島すら許されないこの場所に入り込めた理由こそが、許可証だった。

 並の要請なら即決で断ったハンコックだが、許可を出している面々を聞いておとなしくジャックハートに従ったのだ。

 身勝手な彼女も、一応は一国のトップ。それらに歯向かって無事でいられる保証はなく、国民を守った。

 

「それで、そんなものを持ってきていったいわらわに何の用じゃ」

「落ち着けよ」

「それは?」

 

 ハンコックに急かされジャックハートが取り出したのは、一つの文書。

 

「おほん。『先日の頂上戦争において、ボア・ハンコックの海軍への攻撃が確認された。その真意を求める』……だとよ」

「わらわはが戦争で何をしようとも、わらわの自由じゃ」

「なるほどねぇ。じゃあ、本題に入ろう」

「……」

 

 ハンコックは、先ほどから目の前にいる海兵からひしひしと嫌なものを感じていた。

 下卑た視線もあるが、それは九蛇海賊団として海に出ている間も男から見られているのである程度は慣れている。

 しかし、他のどこかで、本能が受け付けていなかったのだ。

 

「『また、ボア・ハンコックには海賊"麦わらのルフィ"を匿っている容疑が掛かっている。確認され次第、報告すべし。王下七武海の資格剥奪の元、捕獲を命ずる』……これが本題だが、何か言うことはあるか?」

「お、大アリじゃ! わらわがどこにルフィを匿っているという証拠が!」

「『何って、捕まえんだよ。海賊と海兵だぞ? 当たり前だろ。……あ? てか、なんでお前がボア・ハンコックのこと知ってんだ? お前みたいなやつには関係ねぇ女だろ』『関係ねぇことねぇ! ハンコックは俺を助けてくれた、恩人だ!』」

「なっ……! る、ルフィ……?」

 

 ジャックハートが流したのは、たしぎに言って撮っていたジャックハートと麦わらのルフィの会話の様子。

 ハンコックが青ざめた表情でカメコを睨む。

 

「この恩人ってのはどういう意味だ?」

「……し、知らん。ル……麦わらの、妄言ではないのか?」

「ほう、そうかそうか。ではルスカイナで死にかけの麦わらを叩き起こして証言させるとするか」

「ッ! どういうことじゃ! ……はっ」

 

 ハンコックは気付いた。嵌められた、と。

 

「ケハハハ。やっぱそうか。シャボンディ諸島で飛ばされた麦わらがここに上陸。あの猿に協力してインペルダウンまで連れて行き、戦争でもあいつを助けた、と」

「者共、出合え!」

 

 ジャックハートに完璧にシナリオを言い当てられたところで、ハンコックは叫んだ。

 扉や窓から弓を構えた女兵士たちがジャックハートを狙う。

 この兵士たちも、嫌な予感を察知していたハンコックが命じて待機させていたのだ。

 

「あ? んだよこの情けねぇ覇気は。ガキのおままごとか?」

「何……!?」

「わ、私たちの覇気が効かない!?」

 

 九蛇の兵士たちは外海に住む普通の男よりも強い。

 それはただ武芸に長けているだけではなく、覇気の扱いが上手いためである。

 だが今回は、相手が悪かった。

 

「てな訳で、"麦わらのルフィ"の隠匿罪、海軍への反逆罪、今の公務執行妨害により、"女帝"ボア・ハンコックを王下七武海から除名とする」

「勝手にしろ!」

「ケハハハハッ! 始めようか!」

 

 サンダーソニアやマリーゴールドといった九蛇海賊団の面々に加え、マーガレットなどの国を守る戦士も揃えた上での戦い。

 だがそんなもの、ジャックハートにとってはお手の物だった。

 

「っらよぉ!」

「ガッ……!」

「姉様と同じ、"覇王色"……!!」

「いや、なんじゃこれは……! わらわのものよりも、数段強い……!!」

「将来は俺の元気な子を産んでもらう母体になるんだ。できるだけ怪我はさせたくない」

「メロメロ甘風!」

 

 ハンコックが手でハートの形を作って両手を振り下ろす。

 その手から出る光線に触れたものは老若男女問わず石化してしまう。

 もちろんこの目の前にいる男も石化する、はずだった。

 

「な、なぜ石化せぬ!」

「簡単なこった。確かにお前は美しいが、メロメロになんのは俺じゃなくてお前の方だ」

「ふざけたことを!」

「せいぜい楽しませてくれよ? そのお遊び程度の弱い覇気で」

 

 戦士たちが弓から刀に武器を変え、ジャックハートに襲いかかる。

 

 しかしそれでも、白兵戦でジャックハートに敵うはずなどなく。

 

「あっけねぇな蛇姫。いや、ハンコックちゃん」

「くっ……!」

 

 ボア・ハンコックを残し、全ての九蛇の戦士は気を失っていた。

 

「アマゾン・リリー皇帝として、最後に言うことはあるか?」

「……一つ、頼みがある」

「なんだ?」

「無人島、ルスカイナで修行をしているモンキー・D・ルフィの捕獲を、諦めて欲しい……!」

「ケハハ。そんぐらいならいいぜ。あんな猿、俺にとっちゃ放っといてもなんの脅威にもなりゃしねぇ」

「くっ……!」

 

 ギリッ、と唇を噛み締めるハンコック。

 目の前で高笑いを続けるたった一人の海兵。

 立場は中将と言っていたが、以前近海にやってきたモモンガとは次元が違う強さを有していた。

 

「あぁ、自己紹介がまだだったな。海軍本部中将、そして時期大将候補筆頭のジョー・ジャックハートだ。以後、よろしく」

「ジョー・ジャックハート……! お主が……!」

「たまにいるんだよ、ハンコックちゃんみたいに俺の名前だけ知ってるやつ。なんでだろうな」

 

 本人は本気で分かっていないが、理由は単純。

 目撃者が少ないためである。

 海軍本部に近いシャボンディ諸島では顔が知れているが、それ以外の島では住民に遭う前に任務を終え、次の目的地に向かっているのだ。

 海賊たちを取り逃がすこともなく、女は手元に置き、男は殺すかインペルダウンに送るので、必然的に顔がバレることが極端に減るのだ。

 

「行くぞ」

「……海楼石の錠はかけんのか」

「俺から逃げれねぇことぐらい理解してんだろ? ……あ、出た。おいマージ! 九蛇の戦闘員全員ぶっ倒したから城から運び出しに来いや! 住民も共犯者として連れてけ!」

『はっ!』

 

 ハンコックとの話の途中でジャックハートは電伝虫でマージに伝達を行う。

 

「さ、て、と。お楽しみの物色タイムといきますか」

「何のつもりじゃ…!」

「あん?俺の名前知ってんなら分かんだろ。俺の手元に置く女を選んでんのさ」

 

 ジャックハートの瞳がより下卑たものへと変わる。

 それから行われるのは、史上最低の値踏み。

 気絶した女たちの顔を身体をねっとりと舐め回すように見つめ、奴隷を決めていくジャックハート。

 

「もちろんハンコックちゃんは問答無用で決定だからな」

「……!」

「どうしよっかなーっと」

 

 まるで子供がおもちゃを選ぶような感覚で選んでいくジャックハート。

 年齢よりも幼く見えるその行動がハンコックの心を抉っていく。

 

「とりあえずはこの子か」

 

 ジャックハートが選んだのは、以前ハンコックが処刑しようとしていたマーガレットだ。

 ルフィにより命を救われたその少女が、無残にも選ばれてしまった。

 

「あとはいくらでも自由に決められる。……さて、行こうか」

 

 ハンコックの豊満な尻を揉み、歩かせるジャックハート。

 

 

 

 この日、女ヶ島からアマゾン・リリーという国が消えた。

 

 

 住民が居なくなった島には風が吹くこともなく、ただの物静かな島へと変わった。




あっ、タグつけ忘れてた!付けてこなくっちゃ!


はい、お待たせしました!次回はハンコック!それからちょくちょくマーガレットちゃん!

史上最悪、の片鱗を見せたジャックハートさんです。これからもうちょいエグい展開を考えてるので、お楽しみに。


コメント、評価などお待ちしております!


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堕ちる女帝達

バイトやら夏風邪やらお盆やら夏風邪やらで遅れました。申し訳ない……。

本番行かなかった……次は、次こそは……!

あと、ルフィってサブキャラとして動かすの難しいですね。今回の話の後半のキャラも動かす…ってか展開がムズいのなんの…。






 

「んっ……。ここ、は……?」

「お、ようやく起きたかマーガレットちゃん。君が最後だ」

「っ! 貴様、あの時の……! ここはどこだ!」

「ん? しばらく君たちの家になる船の中だ」

 

 窓のない部屋。

 そこで目を覚ましたマーガレットは、意識を失う直前に目にしていた男が視界に入るや否や、叫んだ。

 

「それにしても綺麗な身体してんじゃねぇの。やっぱ起きてる方がいきいきしてんな」

「何のこと……なっ! き、貴様ッ! 私の服をどこにやった!」

「俺の部屋に大事に保管してるよ」

 

 男に言われ、自分の格好を見直す。

 いつも身につけていた装束が剥ぎ取られており、乳房はおろか陰毛が程よく茂った陰部すら丸見えになっていた。

 

「くっ……っ! ち、力、が……」

「無理に動こうとすんな。ってか、俺の本気の“覇王色”受けて数日間はまともに動けると思うなよ」

「……っ!」

 

 俗にいう女座りで可愛らしく座る彼女だが、その表情は強ばったものになっており、ひたすらにジャックハートを睨みつけていた。

 

「ん〜っ、いいねいいねぇ。綺麗だ。そして俺好みのナイスバディに強気な瞳。こりゃ益々俺のモンにしたくなる」

「何を……んむぅっ!? ……んっ、ちゅぴっ、ちゅ、ん、ふ、あっ……!」

 

 そんな彼女の目の前で屈み、ジャックハートは強引に唇を奪った。

 ルフィと出会うまで男という生物がどんなものかすら知らなかった彼女。

 もちろん男とのキスなど知るはずもなく、ただジャックハートの口内の蹂躙を受けるしかなかった。

 

「ん〜……ぷはっ! 初めてのキスの味はどうだ?」

「……はっ! ……さっ、最悪だ!」

「へぇ……。ここは、そうは言ってないみたいだが?」

「そ、そんな所触るな!」

 

 くちゅり、と僅かな水音を奏でるのはマーガレットの陰裂。

 愛液が少し漏れており、ジャックハートの指によってかき混ぜられていく。

 

「んっ、あ……や、ぁ……」

「ケハハ。そうだよな。初めてが指は嫌だよなぁ……。てなわけで、動くぞ」

「きゃっ! ど、どこにいくんだ!」

「楽しいところだ」

 

 マーガレットを横抱きにして、ジャックハートが部屋を出る。

 すると、マーガレットの耳に聞き覚えのある声が、何やら変な声を出していた。

 

「あんっ! あっ、ひぅ……あはぁっ!」

「んあぁんっ! やら、しゅ、しゅごいぃっ!」

「さ、サンダーソニア様っ!? マリーゴールド様っ!? き、貴様! 何をした!」

「ありゃセックスって気持ち良いことをしてるんだ。ほら、見てみろ。二人とも気持ちよさそうな顔してるだろ?」

 

 部屋を出るとそこには、長い長い廊下があった。

 その壁一面が牢屋となっており、その中では彼女が崇拝しているうちの二人、サンダーソニアとマリーゴールドが別々の部屋で全身裸で男とくっついていた。

 

「セックスとはなんだ!」

「まあ単純な話、子作りだ。愛し合ってるんだよ」

「愛し合う……? あの棒を私たちの穴に突っ込むことが、か?」

「マーガレットちゃんもこれから俺と愛し合うんだ。その時に分かる」

 

 マーガレットを抱えたまま歩き続けるジャックハート。

 流れていく景色の中で、リンドウやデージー、コスモスにスイトピーなど、ジャックハートの選定から漏れた戦士たちがそのセックスとやらに励んでいる様子が分かる。

 

「私はお前を愛してなどいない!」

「はいはい。そういうのはもう聞き飽きたから大丈夫だっての」

 

 ポーラもバレンタインもポルチェもボニーも最初はそうだった。

 しかし、時が経つにつれて自分から愛してくれ、注いでくれと喧しいほどに訴えてくるのだ。

 

「ポーラ、この子で最後だ」

「かしこまりました」

「分娩には立ち会う。陣痛が始まったら連絡してくれ」

「はいっ」

 

 廊下の一番奥にある、巨大な扉。

 その前に立っていた女の腹部は異常な膨れ方をしており、マーガレットには見慣れないものだった。

 

「な、なんだその腹は……」

「このお腹? ここにはね、ジャックハート様との子ども、赤ちゃんがいるのよ」

「あ、赤子!?」

「えぇ。あなたも孕ませてもらえるわよ、きっと」

 

 いってらっしゃい。そう言って、腹部が大きな女性、ポーラは扉を開けた。

 

「さあようこそマーガレットちゃん。ジャックハート部隊専用軍艦、通称『孕女艦(はらめかん)』へ」

 

 そこにはすでに数人の、自分と同じく全裸の戦士たちがいた。

 

「キキョウ! ネリネ!」

「マーガレット……」

「よかったっ! あなたもここなのね!」

「今から何をされるの……」

 

 自分が最初目覚めた時と同じように力なく座る彼女たち。

 キキョウの円錐型の胸とネリネの半球型の胸が、振り返る反動でぶるんと揺れた。

 

「さて、キキョウちゃん、ネリネちゃん、ランちゃん、マーガレットちゃん。ようこそ俺の部屋へ」

 

 マーガレットを他の三人の近くに下ろしたところで、ジャックハートは巨大なベッドに彼女たちに向かい合うように腰掛けた。

 一切隠しもしない彼女たちの胸が息をするたびに僅かに上下し、陰部には違う色、違う濃さの陰毛が生え揃っていた。

 

「ここはどこだ、なぜこんなところにいるのか、なぜ裸なのか。その全ての疑問をとある人物に解決してもらおう。……おい」

「はい」

 

 ジャックハートが声をかけたのは、部屋の隅に設置されていたシャワー。

 カーテンの奥から現れたのは、彼女たちの元皇帝・ボア・ハンコックだった。

 

「へ、蛇姫様!?」

「今のわらわは蛇姫ではない。……ここにおられるジョー・ジャックハート様の性奴隷の1人。ボア・ハンコックじゃ」

「アマゾン・リリーはどうなったのですか!?」

「わらわは……いや。わらわたちは、ジャックハート様に敗北した。アマゾン・リリーが無くなったが、わらわたちはこうして、ジャックハート様にご奉仕できる立場を頂いたのじゃ」

「ご奉仕、ですか?」

「あぁ。それを今からわらわが実践する。よく見ておけ」

 

 カーテンから出てきたハンコックは、いつも通りの絶世の美しさを誇っていた。

 何より目につくのが、下腹部に彫られたハートと子宮の形が合わさった紋章のような刺青。

 躊躇うことなくジャックハートの隣に座ったハンコックは、ジャックハートの唇を奪った。

 

「んむっ、ちゅぷ……んっ、あ、むぅ……。あむ、くちゅ……ちゅう……!」

 

 この口づけをするのも何度目か、とハンコックは数時間前を思い出しながらジャックハートの口を貪り食らった。

 

 

 ◆

 

 

 マーガレットがジャックハートの部屋に運び込まれる6時間前。

 

「ジャックハート中将! 『孕女艦』の準備が整いました!」

「ご苦労。俺の好みじゃねぇ奴は好きに犯してこい」

「よっしゃあああぁ!!」

「九蛇をぶち犯せるなんて思ってもなかったぜ!」

「く……っ!」

 

 自分の仲間だったもの達が意気揚々として海兵たちに船に運ばれていくさまを眺めていたハンコックの表情は、苦しげなものだった。

 

「こんなものまで、彫られて……!」

 

 下腹部に入れられたハートと子宮が合わさった、淫紋の刺青。

 ハンコック自らが美しいと誇ることに何の違和感も抱かせないほどのその肢体の雌としての一番大事な部分には、ジャックハートの所有物になった証が刻まれていた。

 

「ハンコック」

「はぁんっ!」

 

 身につけているセパレートタイプのドレス。その上の大きく開いた胸元に入り込む一人の男の手。

 ハンコックの胸を鷲掴みにするように、それでいて指で乳首を愛撫するようなその手の動きに、思わず喘いでしまう。

 

「ジャックハート……様……!」

「ようやく誰が主か分かってきたか? ……だがまだ反抗的だな。なんなら、ここでお前の妹たちを海に突き落としてやってもいいんだが」

「っ! ……も、申し訳ありません、ジャックハート様……。わらわ、あなた様の愛撫に感じすぎてしまい、失礼な態度を……」

「ケハハハハハ! なんだ、そうだったのか。可愛いやつだ」

 

 ジャックハートの正面から抱きつき、わざとらしく大きな胸を押し当てるハンコック。

 今、彼女が元皇帝として出来るのは、なんとかこの男に媚びて妹達の命を少しでも引き伸ばすこと。

 自分が何か不始末を起こしてしまえば、たちまち皆殺しにされてもおかしくないのだ。

 

「褒美にキスをやろう。んっ」

「……んっ、ふぅ……。あむっ、ちゅ、んちゅ、ん、ふぁ……」

 

 彼から押し付けられるように交わすキスも、決して拒まない。

 舌を入れられれば入れ返し、唾液を流し込まれれば流し返す。

 

「あぁん、ジャックハート様……。わらわ、皆がおる前ではしたない格好を見せたくないのです……」

「ん? そうか。なら俺の部屋に行くか。お前の処女を貰ってやるよ」

「あんっ!」

 

 服の下に手を突っ込まれ、直接尻を揉みしだかれながら歩く。

 彼の腕を取りこれでもかと言わんばかりに胸を押し当て、挟む。

 

「お手柔らかに、お願いします……」

「ケハハ。検討してやるよ」

 

 まるで彼専用の娼婦のよう。

 その姿勢とは裏腹に、ハンコックは心の中でとある決心をしていた。

 

(いくらこの男が強いとはいえ、隙を見せぬ時がないはずが無い。……一瞬でも隙を見せた瞬間に芳香脚で首を蹴り砕く……!)

 

 民のために今は耐える。

 

 そのいつまで続くか分からない地獄に、ハンコックは自ら身を投じたのだ。

 

「この『孕女艦』は、その名の通り俺が遠征で捕まえた女を捉え、孕ませておくための船だ。お前もしばらくここにいてもらう予定だが、俺が気に入ったら本船の自室に呼んでやるよ」

「精進いたします」

「……ところでハンコックちゃん。お前、マジに処女か?」

「……はい」

 

 甲板にある重々しい扉を開き、船内へと入っていく。

 階段をただただ降りる間、ジャックハートはハンコックの事を問いただしていた。

 

「歳は」

「今年で29に」

「ケハハ。その年で処女患ってて世界一の美女か。こりゃ、愛しがいのあるいい女だ」

 

 尻肉を揉むジャックハートの左手の小指が時折割れ目の中に入り、肛門の周辺をいやらしく撫でる。

 

「ジャックハート様……。わらわ、早くしとうございます……」

「なんだ、意外と乗り気じゃねぇか。慌てんなよ。この廊下の最奥が俺の部屋だ」

 

 素足のハンコックの足音と革靴のジャックハートの足音が同じタイミングで響き、部屋の前まで辿り着いた。

 

「あぁ、船の操縦は部下に任せてるから安心しろよ」

 

 扉を開け、部屋の中へと入るジャックハート。

 その中には大きなベッドやジャグジー、シャワーなどが設置されており、何を目的とした部屋かは言われずとも分かった。

 

「さて、と」

 

 バサリ、と部屋に入るや否やジャックハートの白いコートが地面に落ちた。

 

「あっちぃなおい」

 

 そのままハンコックに背を向けた状態で服を脱いでいくジャックハート。

 

 ――今ッ!

 

 その瞬間、ハンコックは音を出すことなく高速で動いた。

 彼女の長い脚で放たれる『芳香脚(パフューム・フェムル)』がジャックハートの首筋へと向かう。

 

「ま、だろうとは思ってたよ」

 

 しかしそれは、首を捉えることは無かった。

 

「な、に……?」

「だから覇気の使い方が甘ぇって言ってんだよ。いったいいつまで“見聞色”は気配の察知、“武装色”は見えない鎧とか思ってんだ?」

 

 首を穿つ寸前、ブレて見える程の速さで動いたジャックハートの右手が、ハンコックの足首を捕まえたのだ。

 

「“見聞色”は鍛えりゃ未来が見える。“武装色”は鍛えりゃ神経系統や筋肉に直接干渉させて肉体の速度を大幅に上げられる。“覇王色”は鍛えりゃ、その気になればそれだけで絶命させることができる」

「そ、そんなのデタラメじゃ!」

「俺が今実践してんだろうが。いるんだよ、ハンコックちゃんみたいに“悪魔の実”の能力者で覇気が使えるってだけで調子に乗る奴がよ」

 

 ハンコックは知らないが、ルスカイナでルフィと相対した時に使った技も全く同じ原理だった。

 普通、“武装色の覇気”には肉体の単純な防御力や攻撃力を上げる効果しかなく、多少鍛えたとしても肌の張力が上がる程度。

 しかし、ジャックハートは違った。

 骨、筋肉、内臓、そして神経。人体の中で武装色の覇気を特に強く纏わせる部位を指定できる程に、繊細なコントロールを得ているのだ。

 

「新世界乗り切るために重要な二つ手に入れてはい、お終いってな。そっから改めて鍛えねぇとこうして海軍に捕まるだけだ。……ま、そういう俺も最近まだまだ鍛えられてねぇとは痛感してるが」

「くっ……! は、離せ!」

「離してもいいがてめぇ、勝てるつもりか?」

 

 ぞくり、と足首を掴まれることで蹴りを止められたハンコックの背筋が凍る。

 同じ“覇王色の覇気”を操ることが出来るもの同士とは思えぬほどの実力の違い。

 ハンコックの知る中でレイリーとルフィ、そして自分の3人が今まで扱えていたが、文字通り次元が違った。

 

「……申し訳、ありませんでした」

「ケハハ、分かりゃいいってもんよ。それに、冗談抜きでハンコックちゃんが俺に付き添うのは悪い話じゃねぇんだ」

「と、言いますと?」

「そりゃベッドで教えてやる。来るのか来ねぇのかはハンコックちゃんが決めな」

 

 蹴りを止められた時点でハンコックに選択肢は無かった。

 強すぎる鎧は一切の攻撃を通さないとはよく言ったもので、事実武装色で骨の髄までを染め上げた彼の手は、石化するどころか微塵の傷も負ってなかった。

 

「ジャックハート様……。こんな生意気な性奴隷を、お許しくださいませ……」

「さあな。悪ぃが俺は気分屋なんだ。世界最高峰の身体を持った美女が全身全霊をかけて奉仕してくれるってんなら、話は別なんだが。なぁ、ハンコックちゃん」

「……かしこまりました。このボア・ハンコック、全力をもってご奉仕させていただきます」

 

 渾身の一撃が通用しなかったハンコックは、今度こそ悟った。

 目の前の男に自分は絶対に勝てないのだと。

 

「まずは何を」

「服を脱がしてくれ。さっきのハンコックちゃんのせいで、途中で止めちまったからな」

「……はい」

 

 諦めたかのようにジャックハートに歩み寄るハンコック。

 その足取りは重く、そして女ヶ島にいた頃の彼女からは考えられないほどに弱々しかった。

 

「嫌ならいいんだぜ。そん時はお前の妹たちを海に沈めるだけだ」

「っ……! いえ、申し訳、ありません……!」

「分かりゃあいい。さ、早く頼むぜ。俺たちの愛を育まなきゃいけねぇからな」

 

 そう言ってハンコックに向き合って両手を大きく広げたジャックハートは、笑みを浮かべて俯くハンコックを迎え入れた。

 

「まずは上からだ。ネクタイを外せ」

「……はい」

 

 ジャックハートの元にある程度まで近づいたハンコック。

 まだあと一歩距離を縮められるが、長い手足を持つ彼女からすればネクタイを外すなど容易いこと。

 

「もっと近くだ」

「きゃっ!」

「これから体を重ね合うんだ。もっと距離を縮めようぜ?」

 

 だが、ジャックハートはそれを良しとしなかった。

 左手をハンコックの腰に回して強引に抱き寄せ、右手で尻肉を掴んで揉みしだく。

 その結果ハンコックとジャックハートの体の距離はなくなり、1mを超える破壊的なトップを誇る乳房が形を変えてジャックハートの肉体に押し付けられる。

 

「さあ、ネクタイを外してくれよハンコック。ちょいと近すぎる気はするが、できないことはないだろ?」

「……っ!」

 

 腰と尻に手を回され逃げ場がなくなったハンコックは、すぐに離れるべく、ジャックハートの首元に手を伸ばした。

 少し前なら自らの能力でその命を狙いにいったのだが、もうそれを諦めてしまった彼女は、ただひたすらに素早くネクタイを解いた。

 

「こ、これで良いのか?」

「あぁ。次はこいつだ」

 

 ジャックハートが自分の手で胸元を引っ張ったのは、コートの中に着ているYシャツ。

 紺色のそれの中に直接ジャックハートの地肌が見えるので、それ以外には身につけていないのだろう。

 

「一つ一つ、丁寧にな」

「……かしこまりました」

 

 ジャックハートのYシャツのボタンを言われた通り一つ一つ丁寧に外していくハンコック。

 

「お、中々手慣れてんじゃねぇか。前に男でもいたか?」

「いえ。ジャックハート様が初めてです」

「へぇ。じゃあそれほど急ぐってことはそんだけ早くしてぇってことか?」

「っ、……は、い……」

 

 ボタンが全て外れたことでシャツがはだけ、ジャックハートの鍛え抜かれた肉体が少しだけ露わになる。

 

「じゃ、ジャックハート様……。失礼ですが、今の年齢は……?」

「あ?何ヶ月か前に18になったとこだ」

「そ、その若さでこの肉体を……」

「一応海軍本部中将だからな。ただ女とセックスだけしてるわけじゃねえんだよ、俺は」

 

 その言葉と共にジャックハートがYシャツを脱ぐ。

 そこには、胸部や腹部だけではなく、肩や腕にまで刀傷が走っていた。

 

「んなこたぁ今はどうでもいい。次は下だ」

「っ……はい……」

 

 彼のその言葉に従うようにハンコックの視線がジャックハートの股間を射抜く。

 

「おいおい。そんなに見なくても逃げねぇよ。ほら」

「…………分かりました」

 

 それまでよりも長く息を整える時間を取り、しゃがんだハンコックがズボンのベルトを外し始めた。

 先ほどと同じく手際よくベルトを緩め、ボタンを外し、そしてジッパーを下ろす。

 

「は、あぅ……」

「ん?どうしたよ。……あぁ、そういやこの前めんどくさかったから掃除(・・)させたままにしてたんだったな。どうだ、中々下腹部にクる匂いしてんじゃねぇか?」

 

 ジッパーを下げただけでハンコックの鼻腔に衝撃を与えたジャックハートの股間部の淫臭。

 精液、汗、母乳、愛液、唾液、などなど。様々なものが混ざった匂いになっているのだが、処女のハンコックには分からない匂いが多すぎた。

 

「な、なんなのじゃこの濃い匂いは……」

「ケハハハ。ベッドの上で教えてやるよ。そら、早く下ろせ。全部一気にな」

 

 その言葉に一瞬だけ止まったハンコックだが、躊躇うことなく彼の下着ごとズボンを下ろした。

 

「キャッ!」

「驚くなよ。まだこっからデカくなるんだ」

「こ、これ、が……」

「ち……いや、オチンポ、だな」

「男の……いえ、ジャックハート様のオチンポ……」

「ケハハハハハッ!」

 

 元とはいえ、あの海賊女帝のボア・ハンコックに下品な言葉を覚えさせ、それが当たり前の言葉かのように口にするハンコックを見て高笑いするジャックハート。

 そんなジャックハートには気付かず、ハンコックは初めて見た男性器を珍しそうに眺めていた。

 

「こ、こんなに大きいのか……」

「まあ俺のはだいぶと大きいがな」

 

 ハンコックの眼前に現れた陰茎はどう見てもハンコックの両手に収まるようなサイズではない。

 ここからさらに、大きくなるのだという。

 

「それについてもベッドの上で、だ。さて、次だ」

 

 足首まで下ろされたズボンを脚だけを使って器用に脱ぎ捨て、これで文字通り全裸となったジャックハート。

 彼が、しゃがみこんでいたハンコックに手を差し伸べた。

 

「っ。かしこまりました……」

 

 ついにその時が来てしまったのか、とハンコックは覚悟を決めた。

 大きなベッドがある方向へ足を向けようとする彼女だが、意外なことにジャックハートに腕を掴まれ、止められてしまった。

 

「俺は脱いだ。次はお前だ、ハンコックちゃん」

「……はい」

 

 ジャックハートの大きな手が、ハンコックのドレスの胸元へと伸びる。

 

「性奴隷がこんないい服着る必要ねぇな」

 

 そしてそれを、躊躇うことなく素手で引き裂いた。

 

「っ……!」

「ほう。隠さない、とは学んだな。……それにしても綺麗な身体だ。こりゃ、愛しがいがあるってもんだ」

「はぁ、ぅ……んっ……!」

 

 彼の左手がハンコックの下乳を撫でる。

 くすぐったいような心地よいようなその感覚に、思わずハンコックの口から艶めかしい声が漏れる。

 

「ん? なんだハンコックちゃん。腋毛も丁寧に剃ってんじゃねぇか」

「く、九蛇に生まれた者にそのようなものは生えないのです……。首より下で生える毛は、陰毛程度で……」

「ケハハハハハッ! いいねいいねぇ。男に犯されるためのいい体質になってんじゃねぇの」

 

 ハンコックの脇には一切毛が生えておらず、少しばかり芳しい匂いが漂う。

 女体にはムダ毛が無い方が興奮する、これまたジャックハート好みの身体だった。

 

「下も邪魔だな」

「はぁんっ!」

「……ハンコックちゃん。下着も一切着けてないのも、九蛇の特徴か?」

「は、はい。必要が、ないので……」

「それでこのプロポーションを保てるってのは、これも体質か」

 

 ハンコックの発言からジャックハートの中で九蛇のイメージが固まっていく。

 気絶させて船の中に運んでいる際にハンコック以外の面々も物色したが、彼女たちもそのような体質なのだろう。

 

「さて、今度こそ行こうか。ハンコックちゃん」

「はい……。優しく、お願いいたします……」

 

 全裸のジャックハートとハンコックが二人並んで大きなベッドへと向かう。

 その手は、まるで長年連れ添った恋人同士のように指をすべて絡めて繋がれていた。

 

 

 ◆ ◆

 

 

「……ん、……る、く……ッ! ……フィ、んッ!」

「ん……」

「ルフィ君ッ!!」

「……ハッ! じ、ジンベエッ!? っ、イテテ……」

「ふぅ……ようやく目を覚ましよったか」

 

 ルフィが目を覚まして真っ先に視界に入り込んできたのは、インペルダウンや頂上戦争でも何かと世話になった元王下七武海”海峡のジンベエ”の姿。

 辛そうな表情で肩で息を続ける彼に向かい合うように、ルフィも身体を起こした。

 

「うっ……! 頭が割れるみたいにいてぇ……っ!」

「ジャックハート中将の”覇気”を纏った拳をまともにもらったからじゃ……。ワシも、腹に痛手を負ってしもうた」

「……ッ! そうだ、ハンコックはっ!?」

「そのことについて、もう新聞が出とる。先ほど出て行ったが、トラファルガー・ローが置いていったものじゃ」

 

 パサリ、とジンベエの懐から投げられた新聞。

 その一面にはでかでかとハンコックの手配書が載っており、その上に大きな×印が付けられていた。

 

「『女帝・七武海剥奪。九蛇海賊団はジャックハート中将の恩赦により海軍での奉仕活動へ』……なんだよ、これ……!」

「書いている通りじゃ。九蛇海賊団……いや、アマゾン・リリーの全住民がジャックハートによって捕まえられた」

「あ、あいつらだって”覇気”使えんのに……」

「ジャックハートの”覇気”には一切通用せんかった。そういうことじゃ」

「奉仕活動って……」

「インペルダウン送りにしない代わりに、永遠にジャックハートの奴隷になるようなもんじゃ」

「っ!」

「待てルフィ君っ! 何をするつもりじゃ!」

「決まってんだろ! ハンコックたちを助けに行くっ!」

 

 新世界で名乗りを上げようとしている海賊の中では珍しく、”麦わらの一味”は人数が極端に少なく、そして互いの仲間意識が非常に強い。

 それは船長であるルフィの人柄が出ているのかは分からないが、ジンベエはこの少年の思いを踏みにじってでももこの愚行を止めなければならないと決意した。

 

「ならんっ! 同じ一味の仲間ならともかく、今のお前さんが助けにいく義理も、取り返す実力もありゃあせんっ!」

「うるせぇっ! そんなもん、やってみねぇと」

「やらんでも、もう分かったじゃろうっ!」

 

 ジンベエの慟哭が、ルフィの興奮を鎮めた。

 

「相手は次期海軍本部大将候補の筆頭。今のお前さんやワシよりも、数倍は強い」

「……ッ!」

「じゃが、それなら強うなればいいだけ。二年後にシャボンディ諸島に集まると約束したんじゃろう!」

「あぁ……。でもよジンベエ、ハンコックたちは……」

「あやつらも海賊。捕らえられる時はエースさんと同じ、情け無用という覚悟でジャックハートに挑んだはずじゃ」

「……」

「悔しいのならば、強くなれ。今度は誰もバラバラにせんのじゃろう?」

「……あぁっ!」

 

 ハンコックが海軍に捕えられた。

 その原因に自分も含まれている、と考えるルフィだったが、ジンベエに諭されて現状を冷静に把握した。

 

「気の毒じゃが、今はボア・ハンコックのことよりもお前さん自身の事じゃ」

「……分かった」

 

 相手が今どこにいるのかも分からない、しかし、その相手が見つかったとしてもその相手の方が自分よりも数倍強いことは分かっている。

 ハンコックの助けもあってインペルダウンに侵入することはできたが、今回は話が別だ。

 

「何、あの気の強い女帝たちじゃ。そう簡単にはジャックハートに支配はされん。恐らく新世界に行けば嫌でもジャックハートと出会う機会はある。今悔しいのならば、その時に取り返せ!」

「おうっ!」

 

 手に武装色の覇気を纏い、森の奥へと駆けていくルフィ。

 

 そんな彼を見送るジンベエに近づく人物が一人。

 

「うぅむ。私がコーティングの仕上げで離れている間に、色々と起きてしまったようだな」

「おぉ、レイさん」

「娘たちが捕まってしまったか。あのジャックハート中将に……」

 

 ”冥王”シルバーズ・レイリー。

 その表情はかつての知り合いが海軍に捕まったこともあり、晴れないものだった。

 

「私も若ければ、もしかすれば助けることができたかも知れないのだが……」

「今は難しいじゃろう……。相手が悪すぎる」

「……ルフィ君の育成に専念するとしようか。あぁ、それとジンベエ君」

「む?」

 

 森の奥へと向かったルフィを追いかけるようにしてゆっくりと歩いていくレイリー。

 離れざまに振り向き、ジンベエに向けて忠告を残す。

 

「今は、シャボンディ諸島に近づかないほうがいい。新世界に通じる島ということもあり、今は大将”黄猿”や中将の姿を頻繁に見かける。能力者や覇気使いばかりだ。キミでも掻い潜るのは苦労するだろう」

「ぬぅ……っ! あの頂上戦争からすでに数ヶ月経っていてもその警備か」

「ろくにコーティング作業が進まないほどだ。海軍は戦争を機に、相当の改革を行っているようだな」

 

 すでに新元帥の入れ替えが終わり、それに着任したのは”赤犬”サカズキ。

 そこから新しく大将などは決まっていないが、豪傑揃いの中将達と元の大将であった”黄猿”がマメに動いているらしい。

 

「……強くなれ、ルフィくん。生き残れるかどうかは、船長のキミにかかっているぞ」

 

 彼の未来を守るため、”冥王”もまた動く。

 

 

 




ハンコックさん、あまりにえげつない所に収容されたため一旦諦められる模様。

話の進ませ方に迷い、模索している途中ですが好きに書きます。

そうでもしないと話が進まん……。

コメント、評価などお待ちしております!

お褒めのコメントなどは特に執筆意欲を掻き立てられますので、些細なものでも構いません!


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未知の快感

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また、タグについているように、この作品には”オリジナル展開”や”原作改変”の要素を含みます。
〜〜〜な訳ない。〜〜〜なんてありえないだろう。といったコメントを頂いても、この作品はそういう二次創作なので、としか答えることができません。

ご了承ください。






 

 

「ぬぅ……。しかしまあ、互いに深手を負ったのぉ。クザン大将(・・)

「アンタも島の地図書き変えるぐらいの攻撃ぶち当ててきたでしょうが。サカズキ元帥(・・)

 

 海軍本部、マリンフォード内にある医療棟の一角。

 騒がしく医師たちが動き回る周りとは少し違う、落ち着いたその空間にある二つのベッドに座るのは、二人の元同僚同士。

 

「てか、俺のこと嫌いだったんじゃないんすか? てっきり、サカズキさんの掲げる正義とは違いすぎて、追放されるもんかと思ってましたよ」

「そらぁこっちのセリフじゃ。わしの正義と合わんお前が残るとは、正直思うとらんかった」

 

 その二人の関係は、パンクハザードにおける海軍本部新大将決定の戦いで、上司と部下に変わった。

 戦いに勝ったサカズキが上司、負けたクザンが部下である。

 

「なんというか、まあ、違う考えを持つ部下がいた方が組織としてはいい、と」

「……ジャックハートの考えか」

「あら、知ってたんすか?」

「まあのう。大将候補に置いていることを連絡した際に五大将(・・・)制度を提案したのもヤツじゃ。わしとは違う意味での”徹底的な正義”を持っちょる」

「あ〜。あの大将と元帥の6人で”東の海”、”西の海”、”南の海”、”北の海”、”偉大なる航路前半”、”新世界”を分担して守るってヤツですか? ”偉大なる航路”以外は余程のことがない限り配備しないらしいっすけど」

「あぁ。わしの考えよりも悪を徹するのに隙がない。頼もしい後進が着実に育ってくれとる」

 

 口端を僅かに釣り上げて笑うサカズキ。

 絶対に正義側ではなく悪人の笑みだろ、と心の中で思ったクザンは、なんとか口にはしなかった。

 

海軍(ウチ)らとしては、完璧で最高の海兵っすね。若い、強い、そしてブレない。あの極度の女好きを除けば、マジで最高じゃないっすか」

「……なんじゃ、知らんのかクザン」

「……え。なんすかその間は」

 

 かつてジャックハートが子どもの頃、何かと面倒を見てきたクザン。

 その時の彼のせいで、少しばかり言葉遣いも変わったほどに密な関係ではあった。

 そんなクザンが知らないジャックハートの新たな一面をサカズキは知っているという。

 

「ジャックハート中将が一部で最悪、と言われている由縁じゃ」

「あ〜……。そういやそんなん言われてるらしいっすね。理由は知らないっすけど」

「女好きが理由ではない。 それならば、今頃ただの海軍の種馬とでも呼ばれとるけぇの」

「……ま、考えられる中ではそれが妥当っすね」

 

 好き放題捕まえた女を抱き、高笑いをしながら侍らせるその姿は容易に想像できる。

 

「問題は、ヤツの性格の奥深くにある。言葉にすることは難しいが、大将になればいずれ見れるじゃろうて」

「いや〜……。なんか恐ろしくて見たくないんすけど」

 

 クザンの冷や汗が顎から落ち、ベッドのシーツを濡らした。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 時を同じくして、女ヶ島沖。

 

 

 ジンベエとルフィに簡単には屈服しないだろうと信じられていたボア・ハンコック。

 事実彼女も、支配はされても簡単には屈服しないつもりだった。

 

「あひっ! ん、あぁっ! イグ、イグうううぅぅぅうっ!!」

 

 こうして、30分の前戯(・・)だけで数十回絶頂するまでは。

 ベッドの上で四つん這いになるハンコックがジャックハートに両乳首を抓られ、秘部から大量の潮を吹いた。

 

「ケハハ。おいおいどうしたよ。まだ下は触ってすらねぇぜ?」

「お、お願いしますジャックハート様っ! わらわのぉ、わらわのおまんこにジャックハート様のオチンポをぉっ!」

「やなこった。テメェのその背中にあんの、天竜人の奴隷の証だろ?それに戦争じゃあの麦わらを随分と慕ってたじゃねぇか。俺ぁ、ヤッてる最中に他の男の名前は聞きたくねぇんだ」

「背中の印は、申し訳ございません。あとでこの子宮の紋に似たものに書き換えてはくれませんか?」

「いいだろう。これでお前の主人は、完全に俺一人になる」

「ありがたき幸せですっ!」

 

 目に♡が浮かんでいるのではないかと錯覚するほどに甘ったるい声でジャックハートに媚びるハンコック。

 

「それで、麦わらへの恋もういいのか?」

「当然です。……わらわは、わらわは愚かでした。ジャックハート様の所有物となることで天竜人の憎き呪縛からも解放され、貧弱な猿への地獄のような一瞬の恋を忘れることができた……ッ! こんなに素晴らしいことを選択していなかった自分を殺したい気分です」

「ケハハハッ! そうかそうか。じゃあ、本当に身も心も俺のモンになるなら、誓いのキスをしてもらおうか」

「かしこまりました」

 

 現在ジャックハートはハンコックの前に胡座をかいて座っている。

 そのため、ハンコックの眼前には先ほどからジャックハートの屹立した肉棒がずっとさらけ出されており、ハンコックは長時間お預けを食らっている状態だったのだ。

 

「おいおい、九蛇ってのは誓いのキスの場所も知らねぇのかよ。最初のキスは唇同士だ。自分のと間接キスなんて、相当気分がノってる時以外したくねぇよ」

「も、申し訳ございません。……ですが、いいのですか?」

「あぁ。お前は海賊だったが、格別な美女だからな」

 

 亀頭にキスをし、根元まで一気に咥えこもうとしていたハンコック。

 しかし、それを止められ彼女もまたジャックハートに向かい合って座りなおした。

 数十分前とは違い、そのシミ一つない美しい裸体が恥じることなくジャックハートの前に晒された。

 

「あ、ありがとうございます……!」

「……だが、これを交わしたら、もう後には戻れねぇからな。お前の覚悟を聞かせてもらおうか」

「はい。ジャックハート様がこのわらわの身体を抱いてくださるというのであれば、それはこのボア・ハンコックの人生の中で最高の喜びです。海賊女帝などというくだらないものへの未練も、後悔もありません。ジャックハート様のモノになれるという、何にも変えることのできない喜びを、わらわに与えてくださいませ……」

「合格だ。……んっ、ちゅ、じゅうっ! ちゅっ、んちゅ、くちゅ、ちゅむ……」

 

 二人の体が僅かに動き、唇の距離が0になる。

 これで、名実ともに、心身ともにジャックハートの所有物となることができたハンコック。

 その喜びからか、キスが激しさを帯びていく。

 

「んむっ、はっ……んっ。ちゅむ、んっ、ちゅうっ!じゅるるるるっ!」

「んっ……ぷはっ! ……がっつきすぎだ、ハンコック。焦らなくても、お前の主人は逃げやしねぇよ」

「ジャックハート様ぁ……」

 

 うっとりとした表情でジャックハートの顔を眺める。

 その表情は、少し前に麦わら帽子の少年に向けていたものよりも、数段淫靡なものになっていた。

 

「とはいえ、俺もそろそろ我慢の限界だ」

「きゃっ!」

 

 うっとりとしていたハンコックの肩が押され、ベッドに押し倒される。

 その下手人はもちろん彼女の主人であり、その姿はどこまでも男らしかった、

 

「貰ってやるぜ、お前の処女を」

「はい……っ! あぁ、何という幸せ……!」

「あれだけぐっちゃぐちゃに愛液出てたらもう濡らす必要もねぇだろ」

 

 M字に開かれたハンコックの両脚の間。そこに、ジャックハートが亀頭を当てがう。

 

「んっ、は、あぁんっ……。固いものが、わらわのおまんこに……」

「欲しいか? ハンコック」

「はいっ! 一番奥まで欲しいですぅ!」

「ケハハ。強欲なやつだ。ま、その美しさに免じて応えてやる、よっ!」

「はああぁあんっ!」

 

 ハンコックの処女が散った。

 完璧なまでの前戯で解れていたためか、喪失時の血は出ず、それどころか愛液が奥から湧き溢れてジャックハートの肉竿をコーティングしていた。

 

「んっ、あぁんっ! あんっ! は、はぁあんっ!」

「く、おぉ……! ケ、ケハハハァッ! 身体どころか、下までとんでもねえ名器だとはな!」

「あはぁんっ、んひっ、ひぐうぅぅぅうっ!」

 

 ジャックハートは、今更ながら女性との性関係の経験は凄まじいものになっている。

 そんな彼が一突き目で達してしまいそうになるほどの名器。

 長く重ならなくても分かる、究極の肢体。

 

「突くたびに毎回イキやがる……!」

「はあぁうんっ!」

 

 ぷしゅ、ぶしゅうっとジャックハートの肉棒が子宮口を突くたびにハンコックの陰裂から潮が溢れ、互いの身体を濡らす。

 ジャックハートに抑えられている腰以外、上半身をくねらせるように動かし、そして両脚はいつの間にかジャックハートの身体に巻きつけるようにして絡ませていた。

 

「あぁっ! んっ、は、あんっ! ひゃぅ、あぁんっ!」

「うお……っ!」

 

 ジャックハートのピストンに合わせて気持ちよさそうに喘ぎ続けるハンコック。

 その彼女に、恐らく無意識だろうが両肩を引かれ、抱き寄せられる。

 

「ケハハ、可愛いやつだ。いいのかよ、一番奥で出すことになるぜ?」

「はい……! ジャックハート様の子種を、わらわに注いでくださいませっ!」

 

 仰向けに寝るハンコックに抱き寄せられ、ジャックハートが彼女の上に倒れこむ。

 そのため二人の身体の距離はほぼなくなり、顔同士も文字通り目と鼻の先になった。

 

「行くぞ」

「はいっ!」

 

 ジャックハートが腰を浮かせる。

 正常位から種付けプレスへと体位が変わり、一旦この行為に終止符が打たれようとしていた。

 

「はぁっ! あっ、ひ、やあぁっ! んあっ、あううぅうっ!」

 

 一心不乱にハンコックの膣肉に肉棒が突き入れられ、その度にまたハンコックが軽い絶頂を繰り返し、潮を吹く。

 そしてそのピストンがされる度にハンコックの子宮口とジャックハートの鈴口が熱いキスを交わすかのように密に接する。

 

「ひぐっ、あぁっ、あぁんっ! くっ、はぁっ! ジャックハート様ぁっ!」

「っ、お望み通り、射精してやるよっ!」

 

 じゅぷ、じゅぷ、とハイペースで卑猥な水音を奏で続ける肉棒と淫裂の結合部。

 粘液が擦り合わされたことで精液ではない白濁液が作られていく。

 

「うら、よぉっ!」

「はぁあっ! イクッ、イクうぅぅぅウウッ!」

 

 結合部に深々と肉棒が突き入れられ、その先の亀頭が子宮口をこじ開けた。

 今までどんな男の愛情も、肉棒も、精液も受け入れてこなかったハンコックの身体。女ではなく一人の雌として一番大事な場所である子宮の中に、ジャックハートの濃い精液がたっぷりと注ぎ込まれていく。

 

「あひっ、あ、あぁあ……」

 

 四肢を絡ませてジャックハートを逃すまいとしていたハンコックは、あまりの絶頂に口をパクパクと開けながら酸素を吸っていた。

 ジャックハートの猛烈な勢いの射精は止まるところを知らず、未だハンコックの子宮内を精液で満たしていく。

 

「ケ、ケハハ……。間違いなく人生で一番大量に射精()たぜ」

「あ、あぁん……ジャックハート、様ぁ……」

 

 未だ竿をハンコックから抜かないジャックハート。

 そんな彼を愛おしそうに抱きしめながら、ハンコックは意識を手放した。

 

 

 ◆

 

 

「へ、蛇姫様っ!?」

「なんじゃ。今のわらわ……いや、わらわはもう蛇姫ではないと申したはずじゃ」

「は、ハンコック様っ! な、何をなさっているのですか!」

「見て分からんか? ジャックハート様にわらわの愛を示し、受け止めてもらっているのじゃ」

「男などにそのようなこと!」

「くどいっ! ……そこの。貴様、今ジャックハート様のことを男など、と呼んだか?」

 

 孕女艦の一室でジャックハートにキスを行っていたハンコック。

 その愛情表現を目の前にいる女たちに止められ、さらには主人を貶され、彼女の表情は怒気に染まっていた。

 

「いくらわらわでも、主人を侮辱されれば気にも触る。それと、言葉には気をつけるのじゃ。貴様らの生殺与奪はこのジャックハート様のもの。まあ、そうでなくともジャックハート様のご寵愛を受ければ、命を長引かせ、仕えたい気持ちにもなる」

「そう言うなハンコック。お前も最初はあんなんだっただろ?」

「あの時のわらわは、愚かな女でした……。お許しください」

「俺を満足させてくれたらな」

「かしこまりました」

 

 そう言うと、ハンコックは腰掛けていたベッドから立ち上がった。

 その美しい裸体を四人に見せつけながら、長い脚を開いた。

 

「よいかそなた達。そなた達の股には、何がある」

「毛と、割れ目ですが……」

「そうじゃ。割れ目にある小水をする豆のようなものの奥に、少し大きい穴があるじゃろう。そこが膣口、その穴の中が膣じゃ。そこや胸、口などの全身を使ってジャックハート様に奉仕するのが、わらわ達に与えられた使命」

 

 淫裂を彼女達に開いて見せると、数時間前にたっぷりと注がれたジャックハートの精液が少しだけ溢れ、ハンコックの内腿を伝った。

 

「最初はそんな小さな穴に入るのかと思うかもしれん。大丈夫じゃ。そなた達は安心して、ジャックハート様に身を任せればいい」

 

 くるりと回り、彼女達に背中を見せてジャックハートの元へと向かう。

 その背には、天竜人の紋章を上から書きかえるほど大きな淫紋が刻まれていた。

 

「ジャックハート様。わらわの準備はいつでもできております」

「ケハハ。だがよハンコック、流石にその子たちに何の説明もないってのは可哀想だ。……お前に何が起きて今の状態になったのか、これからどうやって生きていくのかをよく教えてやれ」

「はいっ! ジャックハート様はどちらに?」

「ちょいと外でやらなくちゃいけねぇことがある。じゃ、任せた」

 

 そう言って、ジャックハートは全裸の計5人を部屋に残し、外に出た。

 部屋の前にいたポーラはいない。恐らく、本船の方で休養を取っているのだろう。

 

「あ、お疲れ様です、ジャックハート中将」

「おぉ、お前もお疲れさん。マージ。休憩か?」

「ども、まあそんなところです。……長時間のセックスって意外と疲れるんですね」

「当たり前だろ。これでちょっとは俺のこと尊敬したか?」

「いや、まあ……はい。セックスで体力つけてるんですね」

「そういうこった。まあ普通に訓練もしてるがな」

 

 廊下に出たジャックハートの目の前に現れたのは、彼の部下の一人でもあるマージ。

 ジャックハートと同じくアマゾン・リリーで捉えた女たちとの性交に励んでいた彼は、腰を叩きながら歩いていた。

 

「と言うか、よくそんなに持ちますね……」

「趣味だからな。つーか、良い女の腹の中に自分の子を孕ませてやるって考えたら燃えんのよ」

「は、はぁ……」

「ま、それ以前に堕としてやりてぇって考えてるからな」

「前から疑問だったんですが、よくあそこまで綺麗に落とせますよね」

「そりゃお前、経験とコツよ」

 

 二人並びながら廊下を歩く。

 本船の方に戻っての休憩とするべきことがある二人なので、目的地は同じとなる。

 

「まず、女海賊ってのは意外と処女が多い。仲間が逆に変に意識してたり、ハンコックみたいに女ばっかてのもあるからな」

「なるほど」

「てことは、だ。男とのまともな関わりも接触もほとんどねぇんだ。そこにじっくりとした愛撫と甘い言葉があれば、イチコロだ」

「ですが、最初は警戒心とかあるんじゃないんですか?」

「警戒心は解かんでいい。エロいことへの興味を植え付ければな。俺もさっきはハンコックの目の前でたしぎを抱いてたし。一時間ぐらい見せつけてたらハンコックがオナりだして、そこからだ」

「……なんていうか、うまいですね」

「うまくなけりゃこんなに女作れねぇだろ」

 

 性奴隷は大量におり、一応彼女のような立場として、ヒナ、カリファ、たしぎ。ビビやヴィオラなど離れたところで暮らす女性たちも含めれば、かなりの数の女性がジャックハートの虜になっている。

 

「そのやり方じゃ、他の男に取られたりは……」

「マージ。……テメェ、俺から女寝取れるとでも思ってんのか?」

「あ、いえ。ホントにすいませんでした」

「まあ許してやるよ。お目当ての一人が手に入って気分がいいからな。……取られねぇための最後のコツは、ぶち犯して快感に堕とすだけじゃなくて、俺自身に落としてやることだ」

「……そ、そうですか」

「おい、何だその痛いヤツを見るみたいな目は」

 

 甲板に出て、隣に停まっているジャックハートの軍艦へと乗り移る。

 さりげなく月歩で飛んだ二人を待っていたのは、ジャックハートの部下兼愛人見習いのたしぎ。

 ジャックハートの姿を見つけるとすぐさま走り出し、ジャックハートの懐へと飛び込んだ。

 

「ジャックハートさんっ!」

「っと。おいおい、どうしたよたしぎ」

「いえ。ただ、こうしたかったんです。あ、そうだ。ご飯にしますか? お風呂にしますか? ……そ、それとも」

「飯だ。今はあの子達の相手をしなきゃいけねぇからな。たしぎの相手はちょっと後になりそうだ」

「私は大丈夫ですよ? それよりごはんですよね! 美味しいのがいっぱい出来上がってますけど、もう食べますか?」

「あぁ、貰おう」

 

 献身的に話しかけるたしぎに対し、そっけない返事で対応するジャックハート。

 そんな彼が、先ほどから少しばかりうずうずとしていたたしぎに向け、右腕を差し出した。

 

「ほらよ、たしぎ。飯と休憩には付き合ってもらうからな」

「っ、はい!」

 

 差し出された右腕を愛おしそうに抱きしめ、体をこれでもかというほどに押し付ける。

 彼女もまた、最初はジャックハートを警戒していたものの、最終的には落とされた女性の一人だ。

 

「ま、唆るような誘い方してくれんなら、乘っちまうかもしれんがな」

「もう、ジャックハートさん……」

 

 その言葉を聞き、たしぎはより一層その肢体をジャックハートに密着させた。

 

 

 二人が入っていった部屋からは、女の喘ぎ声が絶え間なく聞こえた。

 

 

 

 ◇ ◇

 

 

 それから数時間後。

 

 

「ジャックハートっ! 次は私に!」

「ならぬ! ジャックハート様、孕ませるならわらわを先に!」

「騒ぐなっての。ランが終わった後はマーガレットだ」

「そ、そんな……!」

「ジャックハート様……! お願い、早、く……イカせて…!」

「ケハハ。ランもすっかり淫乱になったな」

 

 ジャックハートはハンコックと自ら選んだ4人の計5人を本船にあるジャックハートの自室へと連れ込み、行為に励んでいた。

 ネリネとキキョウとはすでに行為を終えており、その二人は股座からジャックハートの精液を垂れ流しながら寝息をたてていた。

 今はそのうちの一人、ランを後背位で犯している最中だった。

 

「あれ、ランって膣内に射精すのこれで何回目だ?」

「んっ、はあぁっ! ひぐっ、あぁ、かっ……! はぁあんっ!」

「ダメだこりゃ。ケハハハ、まあ一人ぐらい壊れたとてそれはそれでいいか」

 

 先ほどから犯され続けているランの目はほぼ白目を剥きかけており、口も舌を突き出してなんとか酸素を吸おうと必死に呼吸を繰り返していた。

 そんな知性の欠片もない乱れ方に、ジャックハートはある見切りをつけた。

 

「乱れるなら盛大に乱れろよ。中途半端な玩具(おもちゃ)に、俺ぁ興味はねぇからな」

「っ、は、はひぃっ!」

「てめぇが命乞いのためか、本当の快楽のためか、いつ来るか分からねぇ復讐のために備えて俺に抱かれてんのかは知らねえ。だから、良くも悪くもてめぇらは俺の性奴隷だ。ま、その理由はいずれ分からせてやるよ」

 

 その言葉を聞いたかどうかは分からないが、後背位で犯されるような体勢になっていたランが、自ら激しく腰を動かし始めた。

 ジャックハートの陰茎の形を覚えきった膣肉で快感を得るべく、奥深くまで咥え込む。

 

「今は何も考えず、ただ腰振ってりゃいいんだよっ!」

「んひぁぁぁあああっ!!」

 

 ジャックハートの肉棒がランの膣奥のさらに奥、子宮口を貫く。

 それと同時にランは絶頂を迎え、肉棒からは大量の精液が子宮内に吐き出され、中を白く染め上げていく。

 

「あ、あぁ……」

「よっ、と。ほら、来いよマーガレット。次はお前だ」

「やっとか!」

 

 絶え間なく絶頂を繰り返したことで呂律が回らなくなり、意識が飛びかけているランから肉棒を引き抜き、今度はマーガレットの方へと向く。

 ハンコック以外の女で、ジャックハートが真っ先に選んだ彼女は、数時間のジャックハートの調教を受けて見事にお気に入りの一人になっていた。

 そんなお気に入りとの性交を心密かに楽しみにしていたジャックハートを、この場にはふさわしくない人物が呼び止めた。

 

「おぬし! 中枢の、それも海軍本部の中将がこんニャことをして許されると思っとるのか!」

「ケハハハハ。世間知らずのクソババアに教えておいてやるよ。強者が、正義だ。そんなこと、どこだって一緒だろう?」

 

 ジャックハートの自室に置かれている巨大なベッド。

 この部屋には現在、その上で性行為を楽しんでいる者たちと、縄で縛られ胡座をかきながらジャックハートのことを睨みつける一人の老婆がいた。

 

「ニョン婆、とか言ったか? テメェらアマゾン・リリーに暮らす者にとって、強い者こそ美しいんだろう?島で一番強いとされていたハンコックが屈服した俺は誰よりも強く美しい……いや、魅力的とはならないのか?」

「……それは、アマゾン・リリーの中での話。おぬしが来る以前に、我らを負かすことのできる男などおらんかった」

「ケハハハッ! まあいいや、そんなことは。男で美しいってのもどうかって話だしな」

 

 未だ反抗的なまなざしを向けるニョン婆をベッドの上から見下ろすジャックハート。

 彼が足を崩して座ると、痺れを切らしたのかマーガレットとハンコックが二人揃ってジャックハートの体に抱きついた。

 

「ぐぬぅ……! だからと言って、女を好き勝手犯していい理由にはならニュはず!」

「あ? 何勘違いしてんだよクソババア。俺ぁ、気に入らねぇやつなら女でも容赦なく殺すぞ。ここにいるやつも、態度次第でお陀仏だ」

「……おぬし、女好き……ではニャかったのか?」

「だから、勘違いしてんじゃねぇよ。俺にとっての女は愛してる女のことだ。こいつらはただの性処理道具。お前も道具にだって使い心地の良さは求めるだろ?」

 

 ニヤリと口端を釣り上げて笑い、その下卑た笑みでニョン婆を見下す。

 両手はマーガレットとハンコックの大きな乳房を揉みしだいており、先端にある乳首を弄ることで、早くも二人への愛撫を開始していた。

 

「こいつらはもう俺のもんだ。それを俺がどう扱おうと、俺の勝手だろ?」

「くっ……! 蛇姫! しっかりせい!」

「わらわのことか? わらわは、蛇姫などではない。ただのボア・ハンコック、そしてジャックハート様の奴隷の一人じゃ」

「ケハハ。てな訳で、諦めろババア。九蛇の再興は不可能だ。ま、安心して余生を過ごせ。この子たちは俺がしっかり面倒を見てやるからよ」

「ほざけっ!」

 

 その瞬間、どこかに隠し持っていたであろう短刀を取りだし、縄を切ったニョン婆がジャックハートへと襲い掛かった。

 ”武装色の覇気”を纏い黒くなった刀身を掲げ、憎き男へと振り下ろす。

 

「はああぁぁあっ!」

「……せっかくなら、試してみるか」

 

 ハンコックが胸の谷間に挟み込むようにして抱きしめていた左腕を動かし、自由に動けるようにする。

 

「『刀閃』、『死突(しとつ)』、『逆打(さかうち)』、JET銃」

 

 ”武装色”を纏い、張力を高めた左腕。その手刀にのみ覇気を纏わせたまま、腕の覇気を解く。

 それにより、弾かれるような勢いへと進化した”武装色”のただの手刀、”刀閃”

 同じ要領で、今度はそれを手刀ではなく突きで行う”死突”と、裏拳で行う”逆打”

 そして、”武装色”だけではなく”鉄塊”でさらに溜めの強度を上げ、放つと同時に”紙絵”を腕全体にかけることでゴムの威力と衝撃の重さを再現した”JET銃”

 それらを一瞬の内に全てまともに食らったニョン婆の体から、血が噴き出した。

 

「ゴホァっ!」

「ハンコック、海に捨ててこい。運がよけりゃ生き残れるだろ」

「かしこまりました」

 

 JET銃の勢いそのまま壁に叩きつけられたニョン婆。

 ダメージの大きさ故か気を失った彼女の髪の毛を掴み、その小さな体を持ち上げた。

 全裸をジャックハート以外の男に見られるのが恥ずかしいのか、バスローブを羽織ったハンコックが部屋を出て行く。それを確認したジャックハートは、マーガレットの胸を揉んでいた右手を、彼女の尻へと移動させた。

 

「さて。邪魔を入れちまったな、マーガレット。これからいっぱい楽しむとするか」

「ジャックハート。さっきの技はなんだ?」

「あれか? ”武装色”の縮む性質を使った新しい技ってとこだ。”鉄塊”と”紙絵”を組み合わせると、結構な威力になる。……って、今はそんなこといいっての」

「きゃっ!」

 

 ベッドの上に押し倒されるマーガレット。

 その目には一切の畏怖も敵意も無く、これからの未来への期待を孕んでいた。

 

「はあぁ……。こんな男と私たちより先にセックスをしていたなど、蛇姫様はズルい人だ……」

「ケハハハ。今から抱いてやるんだ、我慢しろ。それに運が良かったらハンコックよりも先に子どもを授かるかもしれねぇしな」

「こ、子ども!? ジャックハートとの、か!」

「あぁ。だが、欲しいなら忠誠を誓ってもらおうか」

「……はい、ジャックハート様」

 

 完全に一匹の雌へと堕ちたマーガレットの唇に、ジャックハートの唇が重なった。




唐突な、SBS(セックス、ばかり、するんじゃない)のコーナー。

Q.ハンコック処女ってマジ? 多数の読者さまより

A.他の読者様のコメントにもありますが、”天竜人”という身分の存在が、下界の、それも”奴隷”という身分に手は出していないだろう、と考えております。



天竜人との絡みもいつか書きます。


次回はマーガレット&ハンコック!からのついに”東の海”侵略です!


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優雅な優雅な海の旅

頑張った。

薄々気づいている方もおられるかと思いますが、作者が感想に返信するタイミングは、次回の話を投稿する前となっています。
感想に返信があれば、もう少しで最新話が投稿される。と思っていてください。






 

 

「しっかしアレだな。女ヶ島に行ってからやっぱ急に増えたな」

「じゅぷっ、ごぽっ、んぐ……ぐご! んぶっ、じゅぽっ……じゅるるるるうううう……ちゅぽっ! 嫌ですか? ジャックハート様」

「そんな訳ねぇだろ。今もこうして、カリファちゃんとハンコックに奉仕を受けてる時点で、十分幸せさ」

「力加減はいかがですか? ジャックハート様」

「完璧だぜ、ハンコック。お前たちがなかなか寝かせてくれないから疲れてんだ。もう少し、じっくり癒してくれ。カリファちゃんは続きだ」

「かしこまりました」

「了解です。んちゅ、ぐっ……んぐぅ……ごぷっ、んがっ…」

 

 アマゾン・リリーがジャックハートの手によって落とされ、彼女たちがジャックハートの所有物になったあの日から約2週間が過ぎた。

 ポーラの第一子出産というめでたいイベントもあったが、それ以外はいつもと変わらず。ただただジャックハートの部屋で毎日性に乱れた卑猥な毎日を送っていた面々。

 しかしそれも、目標の島が近づいてきたこともあり、カリファのフェラとハンコックによる肩揉みだけという、比較的落ち着いたものへとなっていた。

 

「おいたしぎ。ポーラの様子はどうだ」

「母子ともに健康そのものです。はぁ……。サロメアちゃん、可愛いですねぇ……」

「安心しろ、たしぎ。約束通りの地位につけば、俺とお前の子で大家族を作れるぐらい張り切ってやるよ」

「っ、頑張ります!」

「……で、だ。言ってた飲み物は?」

「はいっ! これです!」

 

 海軍の制服に身を包んだたしぎの手にある鉄製の丸型トレー。

 その上には、一つのカップが乗っていた。

 

「相変わらずうまそうだな。……ここにポーラのが入ってんのか?」

「はい。……味見は、していませんが」

「どんなもんだろうな、母乳でのミルクティーは。……貰おうか」

 

 そのカップの中身。ポーラの母乳が入ったミルクティーを一気に煽るジャックハート。

 授乳期の相手との性交の時にたまに飲んだりすることもあるが、こうして何かに混ぜて飲むというのは初めてだったりする。

 そもそも、臨月が近づいてきた場合は船には乗せず、ジャックハートが戻ってきた頃にはすでに生まれていることが大半だからだ。

 

「……うん、普通にうまい。あとでポーラに礼を言っておくか。片付けてこい」

「分かりました」

「さて、どうするか」

 

 その紅茶を口内で存分に堪能し、飲み込む。

 空になったカップを再びたしぎに渡し、片付けさせると、ジャックハートは自室を見渡した。

 覚醒した”悪魔の実”の能力を遺憾無く発揮し、手と口を使って陰嚢と陰茎への奉仕を続けるカリファと、肩を揉むハンコック。

 ジャックハートの匂いが染み付いた服を嗅ぎながら自慰に耽るラン、キキョウ。ジャックハートの自室に置いている本に夢中なネリネ。なにやら会話に花を咲かせているポルチェ、バレンタイン、ボニー、マーガレット。

 マリンフォードで産休中のヒナを除けば、同じく船で産休中のポーラ、現在キッチンにいるたしぎを加えた計11人が今現在船にいるジャックハートの所有物だ。

 

「ポーラは無茶させるわけにはいかねぇから10人か」

「どうしたんですか?ジャックハートさん」

「あぁ、目的地に着くまでに一発孕ませたい(・・・・・)。ここにいるメンツは今誰も妊娠してねぇはずだからな」

 

 たしぎが戻ってきた瞬間にジャックハートの口から放たれた、衝撃的すぎるその一言。

 女たちの顔が一瞬にしてジャックハートの方へと向いた。

 

「キャハハハッ! 私はどう? ジャックハート様!」

「中将昇進前ですが、これはノーカンですよね!?」

「んぐっ、ぶぷ……じゅぱっ! リリーに、弟か妹をプレゼントするのでしょう?」

「私とジャックハート様との子どもなら、可愛い子になるに決まってるわっ!」

「あぁ……! ジャックハート様っ! 早速わらわのことを……!」

「妊娠、出産、子育て……。どれも興味深いわ」

「ジャックハート様ぁ……。そのオチンポで、私を、私をぉ…」

「わ、私が先だ! そうでしょう!? ジャックハート様!」

「ジャックハート様のザーメンで、今度こそウチを孕ませてくれ…!」

「ジャックハート様との赤子……。授かってみたいものだ!」

 

 一斉にジャックハートの元へと集まり、自分が孕ませてもらうのだと必死にアピールをする彼女たち。

 先ほどまで椅子に座りながら奉仕を受けていたため、非常に暑苦しい状態になっていた。

 

「俺は、アホな女は嫌いだと言わなかったか?」

 

 彼がそう発言した瞬間、女たちの喧騒はピタリと止み、その全員がジャックハートから少しだけ距離をとった。

 

「そうだ。賢い女は好きだからな。俺も命令を誰よりも完璧にこなすことができた奴を孕ませてやる」

 

 一人呟きながら立ち上がり、巨大なベッドの近くへと移動するジャックハート。

 

「ベッドに手を突いてケツを俺に向けて突き出せ。全員並んで、だ。一番エロく誘惑できた穴に挿入れてやるよ」

 

 そう言うやいなや、女達は一斉に移動を開始した。

 バカみたいに走りはせず。それでいて迅速に、主にアピールするために、最大限に自分を淫らに魅せるために。

 

「自分でやらせといてあれだが、圧巻だな。絶景絶景」

 

 ものの数秒で眼前に揃う、美しい臀部が9つ。

 1番左の尻の近くに行き、その表面を撫でる。

 

「んっ、はぁ……」

「ハンコックか。まだ何もしてねぇのに濡れすぎだろ」

「ジャックハート様に触られると、どうしても達してしまいそうになるのです……」

「ケハハ。見事な雌豚に成長したな、お前も」

「はぁんっ!」

 

 ビクビクっ、と上半身を震えさせ、その長く美しい黒髪を揺らすハンコック。

 

「これはバレンタインだな。筋肉がよく締まってる……能力の影響か?」

「はい。……おマンコも、よく締まっててキツキツよ?」

「普段から使ってる俺が一番知ってるって、のっ!」

「きゃぁんっ!」

 

 ペチィンッ、とバレンタインの白くて美しい尻肉をジャックハートの右手が叩くと、尻から背中にかけて肉が震えた。

 

「次はたしぎか。最近より一層エロい体つきになってきたな、お前」

「あっ……は、ぁ……。ジャックハートさんのせい、ですよ?」

「ケハハ。俺好みに育ったお前が悪い」

 

 突き出された白い尻を撫でると、身を捩らせてたしぎが可愛らしい声で鳴く。

 

「これはポルチェちゃん、見ただけで分かるぜ」

「いやんっ、ジャックハート様! 私ならいつでも準備出来てるわよっ!」

「確かにそうらしいな。どっちの穴も物欲しそうにヒクついてやがる」

「ひゃあんっ! お、お尻…揉み広げないでぇっ!」

 

 他の尻よりも高く突き出された尻肉を両手で掴んで広げると、菊門と淫裂がジャックハートの言葉通り、小さく開閉を繰り返していた。

 

「これは……マーガレットか。まあ顔の方を見ればすぐ分かるんだが、これも遊びの一つだ」

「ジャックハート様に孕ませてもらえるのなら、どんな遊びでも構いませんっ!」

「分かってきたじゃねぇか。素直で可愛い奴は特に好みだぜ」

 

 女性らしい丸みを帯びた尻を掴むと、程よく指が沈み、そして程よい弾力で押し返してくる。

 

「ランだな。どうだ、すっかりここには慣れたか?」

「はいっ! で、ですのでジャックハート様…!」

「さあ、それは俺の気分次第だ」

 

 この僅か2週間という短い期間で、すっかりジャックハートの性奴隷としての振る舞いが板についてきたラン。

 

「アマゾン・リリーで仲良く固まってるな。まあハンコックは格別だが……これはネリネか」

「ねぇねぇジャックハート様。受精がどういうものか、この身で体験してみたいわ」

「そうか。……まあ、もし今じゃなくてもいつか確実に孕ませてやるよ」

 

 海軍の文献のみならず、ジャックハートとのセックスすら興味の対象としてみているネリネ。

 

「ってなると、これがキキョウか。お前もただの肉便器になったな」

「あぁ……! お願いだ、ジャックハート様! わ、私を選んでくれ……!」

「さて、どうしようか」

 

 ランと同じくすっかりジャックハートとの性行為にはまり、それ以外のことが考えられなくなったキキョウ。

 

「ボニーちゃんも、すっかり俺の形を覚えたな。戦争前の90回連続膣内射精セックスが効いたか?」

「んひぁっ! あ、あんなのされたら、普通に落ちるっての……!」

「落ちた今の気分はどうだ?」

「最高だ……! もっと早くに捕まればよかった……」

 

 ジャックハートが声をかけただけで陰部を濡らしたボニー。

 

「最後のコレは、カリファちゃんだな。どうだ、”覚醒”はできそうか?」

「はい。体以外から泡を作れるようになったので、本格的になるにはあともう少し、かと」

「そうか、楽しみにしてるぜ。カリファちゃんとのお風呂は格別だからな」

「ありがとうございます。ジャックハート様」

 

 自らの”悪魔の実”の能力で、ジャックハート好みの粘度に調整した泡を精製できるカリファ。

 

「……悩むな。よし、最近体の調子もすこぶるいいからな、一人とは言わず二人相手にしてやろう」

 

 女たちの体が揺れる。

 ポーラの出産やその後の子育ての姿を間近で見ている彼女たちは、愛しい彼との間に子を持てることがどれほど幸せなことか本能で理解できていた。

 カリファのようにすでに子を持った特例もいるが、今は話が違う。

 誰が、より魅力的にジャックハートを誘惑できるか、という女たちの戦いなのだ。

 

「あ、あの、ジャックハートさん? 別に私たちは全員孕ませてもらっても……」

「馬鹿ね、あなた。私たちはここにいる時点でジャックハート様のお気に入りなの。それが全員同時に妊娠してしまったら、普段のジャックハート様は誰を相手にすればいいの?」

「カリファちゃんの言う通り。今回選ばれなかった奴は、選ばれた二人が妊娠してる時に死ぬほどこき使ってやるから安心しろ」

 

 たしぎの提案を、ジャックハートとの付き合いが長いカリファが却下する。

 もちろん、ジャックハートがその気になればここにいる女たちはおろか、外に作っている愛人たちを隈なく孕ませることなど容易い。しかしそうしてしまえば、母体への影響もあるため、ジャックハートが性欲発散するときの相手がいなくなるのだ。

 

「つけあがるわけではないけど、ジャックハート様の部屋に居られるということがどういうことか、よく考えなさい」

「そういうこった。てなわけで、まずは1人目と早速しようか」

 

 女達に緊張が走る。

 自分なのか、はたまたそうではないのか。

 挿入されるときを今か今かと待ち望んでいる女たちのうちの一人の尻の前に、ジャックハートが移動した。

 

「俺のに慣れてない状態でってのもやってみたかったからな。最初は、お前だ」

「ひゃあっ! わ、私か!?」

 

 そのまま左手で尻を掴み、右手は陰茎に添えて淫裂に亀頭を当てがうジャックハート。

 つい先日ジャックハートの肉竿で処女を散らし、そのままセックスの快感に堕とされた彼女の膣口は、まるで大好物をぶら下げられた時のように亀頭を咥え込もうとしていた。

 

「ケハハハッ! そんなに待ちきれねぇか? マーガレットちゃん」

「あぁっ! ほ、本当に私でいいのか?」

「そうさ。嫌なら、他に移るが?」

「いえっ! ……お願いします、ジャックハート様ッ! 私を孕ませてください!」

 

 今回の誘惑でジャックハートのお眼鏡にかなった最初の一人目は、アマゾン・リリーで捕まえたうちの一人、マーガレットだった。

 彼女の髪色と同じ金色の陰毛がうっすらと生える陰部。そこに当てられた亀頭は、なぜかなかなか進まなかった。

 

「マーガレットちゃん。お前、どんな体位でしたい?」

「このまま……。いえ、やっぱり、ベッドの上でお願いします」

「了解」

 

 彼女の要望を聞き入れたジャックハートは、器用にマーガレットの体を持ち上げてベッドの上に登った。

 体位は先ほどまでとあまり変わらない、マーガレットが四つん這いになる後背位。違いを挙げるなら、9人の美女たちに見られながらの行為、というぐらいだ。

 

「そんじゃ、遠慮なくっ!」

「はあぁんっ! んっ、ひゃあっ! あん、あぁんっ! すっごい、奥……まで……!」

「ケハハハハッ! ハンコック同様、マーガレットちゃんもとんでもねぇ名器だからな……! ついはりきっちまうぜ!」

「んはぁっ! あっ、ひぁあっ!」

 

 そんなマーガレットの膣に、ついにジャックハートの屹立した肉棒が挿入された。

 最初から孕ませることを目標としているためかいつものそれよりも遥かにたくましく怒張した陰茎は、マーガレットの子宮口とジャックハートの鈴口が熱いキスを交わすほどに、深く深くマーガレットを貫いた。

 

「イクッ……イグゥッ!!」

「う、おぉ……! 急にうねりと締まりが強く……!」

「や……だ、ら、らめぇえ! イク、イクのとまりゃないぃっ!」

 

 身体を反らせながらほぼ常時絶頂を繰り返し、舌を突き出しながらなんとか呼吸を繰り返すマーガレット。

 彼女の膣肉がその度に電流が走ったかのように急激に締まり、ジャックハートに射精を促していく。

 

「あっ、かへぁ……! んっ、あぁああっ!!」

「っ、ヤベェな……。俺ももうイッちまいそうだ……!」

 

 己の絶頂が近づいていることを感じたジャックハートは、いつもの確定孕ませコンボを発動する。

 ”覇王色”で少しだけ死へと近づけることで排卵させ、”見聞色”で卵子が確実に排卵されたことと位置を確認、”武装色”を纏った受精率が極端に高い精子に変える。

 

「あぁ……ッ! ジャックハート、様……! い、一緒に……ッ!」

「分かってんよ、マーガレットちゃん……! ほらよっ!」

「んっ……あ、あぁぁああっ! イクッ、く、はぁあっ! んくっ、あぁんっ!」

 

 それまでの高速ピストンのトドメとなるほど奥まで突き入れられた肉棒。

 それと共に二人共が絶頂を迎え、卵管に卵子を漂わせているマーガレットの子宮内に、ジャックハートの特膿の精液が解き放たれた。

 

「はぁ……。いやぁ、めちゃめちゃ気持ち良かったぜ、マーガレットちゃん」

「は、はひぃ……。わらひも、れすぅ……」

「受精は確実だろうよ。元気な赤ん坊のために、頑張ろうな」

「はい……」

 

 度重なる最大限の絶頂のせいで舌足らずになり、意識が飛びかけているマーガレットにジャックハートが優しく声をかける。

 彼の声を聞き届けたマーガレットは、何とか身体を仰向けにすることに成功し、そのまま沈むように眠り始めた。

 

「さて、と。お前らオナりすぎだろ。匂い充満しすぎてんだよ」

 

 そんなマーガレットの膣から肉棒を引き抜いたジャックハートは、ベッドに片手を突きながらオナニーに耽る9人の方を向いて胡座をかいた。

 全員が数回達したのだろうか、彼女たちの陰部からは愛液が滴り落ちていて、その目はジャックハートの身体に釘付けになっていた。

 

「じゃあ、今俺が求めていることをできた奴を、褒美として孕ませてやろう」

 

 その言葉を聞き、真っ先に動いた女が一人。

 

「失礼します、ジャックハート様。わらわの口に、オチンポに残ったザーメンを全てお出し下さい」

「合格だ、ハンコック。丁寧に掃除しな」

「んぶっ、じゅるるうううぅぅっっ!」

 

 四つん這いのままにじりよりジャックハートの陰茎に優しく手を添えたのは、ハンコック。

 ジャックハートからの了承のサインが出るとすぐに勃起した陰茎を口いっぱいに含んだ。

 まるで餌を食べる犬の様に尻だけを突き出し、ひれ伏したまま口淫をする彼女の姿からは、かつての”女帝”の姿は想像できなかった。

 

「いくらハンコックが俺好みの女に成長してきたとはいえ、コレの掃除ぐらいはいつもさせてることだろ? ……気づかなかったか? カリファちゃん」

「申し訳、ございません……。その、申し上げにくいのですが……」

「なんだ、言ってみろ」

「……ジャックハート様のあまりの雄の匂いの強さに、動けなかったのです」

「ケハハハ。うまい言い訳だなぁ、おい。……おぉ、いいぞハンコックちゃん。その調子でどんどんしゃぶれ」

「んぐっ、がぽっ、じゅぶ……ぐぽっ、んっ、じゅううぅぅ!」

 

 褒められたハンコックはより一層顔のストロークを早め、フェラに全力を注ぐ。

 対照的に、ハンコックより以前にジャックハートとの肉体関係を持った女性陣には、緊張が走った。

 

「てな訳で、罰ゲームだ。お前ら」

「っ、じゃ、ジャックハート様……! お許しを……」

「安心しろよ。たかがこれだけのことで捨てはしねぇ。次の目的地がフーシャ村ってとこなんだが、そこに全員で降りる」

 

 捨てられない。そのことが確認できた彼女たちは、ホッと胸を撫で下ろした。

 

「そのフーシャ村にいる俺の愛人とセックスする予定なんだが、お前らそれを見とけ」

「……それが罰ゲーム、ですか?」

「あぁ。ただし、今みたいにオナるなよ。オナったやつとは1週間、何もしねぇからな」

「んぐっ、ぢゅぷっ……んじゅるるるるっ!」

 

 ハンコックの大きな音を立ててのバキュームフェラが続けられる中で、彼女たちに絶望的な罰ゲームの内容が告げられた。

 

 

 ◇

 

 

 ハンコックの口内と子宮内にジャックハートの精液が大量に放たれてから、数時間後。

 

「よっと。あ? ガープとタイミング一緒かよ」

「なんじゃ。ジャックハートと一緒か」

 

 ゴア王国があるドーン島の辺境にある村、フーシャ村。

 そこに三隻の軍艦が着けられた。

 

「ん? 孕女艦があるということは……そうか、女ヶ島を落としたんじゃったな」

「あぁ。滅ぼしたのは片手間だったんだがな」

「……海賊女帝、か」

「俺の女におっ立ててんじゃねぇよクソジジイ。殺すぞ」

「ワシも死にたくはない。お前のお気に入りには手は出さん」

 

 部下の男海兵たちを連れて上陸したガープと、部下たちに加えて性奴隷の女たちも連れて上陸したジャックハート。

 ガープの部隊にいる男海兵たちは、ジャックハートが侍らせている美女たちに釘付けになっていた。

 

「部下にも伝えとけ。命が惜しけりゃ手は出すなってな。俺だって人一人殺すのに疲れるんだぜ?」

「……というわけじゃ。手は出すなよ、お前たち」

 

 女たちの中で唯一海兵の制服に身を包んでいるのはたしぎのみ。

 それ以外の面々は、各々自らが選んだ私服に身を包んでいた。

 

「ポーラ。休まなくていいのか?」

「えぇ。この子にも、陸に慣れてもらわなくちゃいけないので」

「……そうか。いい子にしてるんだぞ、サロメア」

「……うぁ〜」

「ポーラ。お前はサロメアと一緒にフーシャ村を見て回れ。久しぶりの癒しになるだろ」

「分かりました」

 

 ジャックハートの命令通り、赤子を抱いたままポーラは歩き出した。

 産後とはいえ”悪魔の実”の能力者で、戦闘力も少しはある。そう判断したジャックハートの決断だった。

 

「さてと、マージ。お前らはフーシャ村、並びにゴア王国の警備に当たれ」

『はっ!』

「お前たちも行くぞ」

 

 駆け足で散っていくジャックハートの部下達。

 一方、ジャックハートとその後ろにつく女達は、ゆっくりと村の方へと歩いていく。

 

「ジャックハート中将だ……」

「すげぇ……。あの若さでガープさんと同じ地位か……」

 

 以前もガープに連れてこられたことがあるここでは、ジャックハートの顔はある程度知られている。

 と言ってもそれは数年前の出来事で、その時のジャックハートは少佐だったが。

 

「……ぐすっ。ジャックハート、さん……」

「っ、おいおいどうしたよマキノちゃん。なんで泣いてんだ?」

 

 そんな彼の目的地である、とある酒場。

 ジャックハートが入るや否や、そこの女店主であるマキノが泣いているのを見つけた。

 

「ジャックハートさんも、頂上戦争にいたんですよね?」

「……火拳のことか?」

 

 コクリ、と小さく頷く彼女。

 そんなマキノをジャックハートは優しく抱きしめた。

 

「あいつが海賊として旗揚げした以上、それはいずれ来ることだ。死んじまった今は分からねぇが、火拳も海賊として生きた人生に未練はあっても後悔はなかったはずだぜ」

 

 ――その弟はどっかで野垂れ死んでるかも知れねぇけど。

 

 頂上戦争で具体的にどんなことをしたかは敢えて言わず、腕の中で泣き続けるマキノを慰め続けるジャックハート。

 頭をぽんぽんと撫でているとふと、彼女が顔を上げた。

 

「……忘れたいの」

「ん?」

「……私を、めちゃくちゃに犯して。今は、何もかもを忘れて、あなたに溺れたい……」

「いいのか? 言っちゃあれだが、ここ最近の俺はかなり昂っててやべぇぞ?」

「いいんです。……お願い、私を壊して……」

 

 今のマキノは、エースの死とルフィの重傷のことで精神に深い傷を負いかけている。

 そんな彼女からの提案に、さすがのジャックハートも一瞬だけ躊躇いを見せた。

 

「それとも、私は女として魅力的じゃない?」

「そんな訳ねぇだろ。……ただ、今のマキノちゃんとするのは流石に気が引けるってか……」

「ふふっ。後ろの綺麗な女の人たちとはほぼ毎日セックスしてるのに?」

「うぐっ」

 

 ジャックハートがとんでもない性欲の持ち主であることは、マキノもよく知っている。だからこそ、彼女は彼に頼んだのだ。

 

「気持ちよくなりたいの。……何もかも、記憶も理性も飛ばして、1人の女として、セックスに溺れたい……」

「……はぁ。そこまで言うんなら仕方ねぇな。おいたしぎ! ガープに出航をしばらく遅らせるように言っとけ」

「はっ!」

 

 彼の一声で、酒場の入り口で待機していたたしぎの姿が一瞬にして消える。

 ここに来て、性技以外でもメキメキと成長を遂げているたしぎは、遂に”六式”を数個会得していた。

 

「で、そんなエッチなマキノちゃんはどんな激しいプレイをお望みなんだ?」

「今までになく乱れてみたいわ。……お願いできる?」

「あぁ。下品にぶっ飛ぶぐらいイカせてやるよ」

 

 マキノの臀部に手を回し、その柔らかい尻肉を揉みしだくジャックハート。

 ジャックハートの筋骨隆々な体に凭れかかり、極限まで鍛え上げられた肉体を全身で堪能するマキノ。

 二人はそのまま酒場の隅にある階段を上り、居住スペースにあるマキノの寝室へと姿を消した。

 

 酒場の二階で、夜を徹して二人の愛が囁かれ続けた。

 

 

 

 数時間後、完全に日が出た頃。

 

 

 

 普段会えない反動からいつもにも増して乱れていた二人は、ベッドの上で、一糸まとわぬ姿で余韻を楽しんでいた。

 

「……もう、行ってしまうの?」

「あぁ。世にはびこる悪人をとっ捕まえなきゃいけねぇからな」

「……そう、ですよね」

 

 このあとすぐにジャックハートは島を離れなければならない。

 大半の理由が彼の趣味とはマキノには伝えていないが、ここに留まるわけにはいかないのだ。

 

「ねぇジャックハートさん。この子の名前を、考えてくれない?」

「デキてるか分からねぇのにか?」

「私今日排卵日なの。そこに何十回も膣内射精されたら、さすがに妊娠しちゃうわ」

 

 横を向いて寝転びながら、ジャックハートの胸板に手を這わせるマキノ。

 その顔はどこか、寂しそうだった。

 

「安心しな。他の奴らがどうなっても、俺は死なねぇよ」

「ありがとう。そう言ってくれるだけでも気が楽ね」

「……じゃあ、そろそろだな」

「えぇ、行ってらっしゃい」

 

 ジャックハートが起き上がる。

 それとほぼ同時に、寝室の扉の近くで待機していたハンコックがジャックハートの着替えを持ってベッドへと近づいた。

 

「ジャックハート様。お召し物です」

「あぁ。じゃあなマキノちゃん。また会いに来るよ」

「はいっ!」

 

 それまで散々愛を確かめ合っていた二人の間に、別れからくる嘆きはなかった。

 先ほどまで悲しそうな顔を浮かべていたマキノも、その瞬間は笑顔を浮かべた。

 

「行くぞ、ハンコック」

「はい」

 

 海軍の制服を着たジャックハートが、ハンコックを連れて寝室を後にする。

 酒場を出ると、そこにはジャックハートの船に乗船しているほぼ全ての人間が揃っていた。

 

「ポーラはどうした」

「先に船に戻っています。もう出港しますか?」

「あぁ。行くぞお前たち」

「ジャックハート中将。目的地は?」

「決まってんだろ?」

 

 自ら先頭に立ち、まるで軍隊を率いるかのようにして船へと歩いていくジャックハート。

 

「頂上戦争で世の中に不安をばらまいた張本人”麦わらのルフィ”。奴の一味には”東の海”出身者が多いことは知り合い(・・・・)から確認済みだ。村にさらなる悪人がいないかパトロールに行け。海の治安も悪くなってるだろうしな」

「行け、ということはジャックハート中将は別行動を?」

「あぁ」

 

 そう呟き、ジャックハートは()を見上げた。

 

「陸も海もだが、空にも賞金首が逃げてるらしいからな」

 

 彼の表情は、獲物を狙う獣のように、獰猛なものだった。




次回、ついにあの人の元にジャックハートさんが舞い降りる……!


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雲の上の存在

本番は次回です。
しかし、なかなかこの話も会心の出来という自信があります。
二年後の新世界編や、さらにそれからのお話のための伏線回みたいなもんです。







 

「んじゃ、俺は別件があるから」

「そんな……!」

「永遠に帰ってこねぇわけじゃねぇ。たしぎ、頼むぞ」

「分かりました!」

 

 フーシャ村から出港して数時間。

 空島”ウェザリア”にいる通報をくれた老人と電伝虫での連絡を繰り返し、無事に”ウェザリア”があるであろう空域の真下に来ることができたジャックハート。

 甲板の上から空を見上げるも、そこには晴れ渡った空といくつかの雲しか見つからない。

 

「ねぇダーリン。ホントに空島なんてあるの?」

「さぁな。だが、行ってみる価値はある。十分行ける距離だしな」

 

 高度1万m上空にあるかもしれない陸地に向かって、生身で飛んでいける人間が果たしているのか。

 もしいたとしてもそれは、死に物狂いで”月歩”を続けることができればの話。

 目の前にいる規格外の男のように、十分行ける距離などと言う者は、誰もいない。

 

「じゃ、行ってくるわ」

 

 トンッ、と軽く甲板を蹴り飛び上がる。

 勢いそのまま”月歩”の速度を上げ、”剃刀”で一瞬にして高度を上げていく。

 

「果てしねぇな。1万mだっけか? ……もうちょいスピード上げるか」

 

 ぐんぐんと速度をあげる度に、高度も上がる。

 少し肌寒くなってきた辺りで、やたらと黒く分厚い雲を見つけた。

 

「あん? ……これか?」

 

 何やら他の雲とは違う、質感を感じられる雲。

 それを上から覗き込めるように、さらに高く高く昇っていく。

 

「ビンゴ。ジジイだらけだな」

 

 上から見下ろすと、分厚いその雲の上には小さな集落のようなものがあり、住人だと思われる老人たちが数人歩いていた。

 

「よっ、と」

 

 空島にある大地に降り立つジャックハート。

 数週間前と同じく青海人が飛んできたということもあり、”ウェザリア”の住民がジャックハートに好奇の目を向けた。

 その中で一人、突如して現れた青海からやってきた青年に一切の疑問も持たずに近づく老人がいた。

 

「遅いぞ海軍ッ! ワシらがあの凶悪な犯罪者に殺されたらどうするつもりじゃ!」

「不安な気持ちにさせてしまい、申し訳ございません。何しろ空島は上空1万mにありますので、見つけづらく……」

「言い訳など聞いておらんっ! さっさと捕まえろ!」

 

 ──このクソジジイぶっ殺してからなら最高に気持ちいいんだろうな。ま、後始末がめんどいからしねぇけど。

 

 ジャックハートに言い寄ってきたこの老人こそ、ここ”ウェザリア”に”麦わらの一味”の内の一人が飛んできたと通報してきた張本人である。

 身長が2m近いジャックハートの肩にも満たない背丈で見上げながら叫んでいるということもあり、いささか迫力には欠けていた。

 

「おやおやおやおや、これはこれはこれは。また青海から若者が飛んできたのかの」

「はっ! 海軍本部所属、ジョー・ジャックハートと言います。ここに”麦わらの一味”の航海士である、”泥棒猫”のナミが逃げ込んだとの通報があったため、私がここに来ました」

「ほ、ほォ〜……。海賊が、のぉ……」

「よろしければ何か情報をいただきたいのですが」

「しかし……」

 

 ──こっちのジジイは何か知ってんな。

 

 通報した老人とジャックハートのやり取りが気になったのか、”ウェザリア”の他の住人がぞろぞろと二人の元へと集まりだす。

 その中の一人が、ナミという名前を聞いた瞬間に明らかに反応を変えた。

 

「相手は懸賞金”1600万ベリー”の極悪人です。見た目の可愛らしさに騙されてはいけません。盗み、暴行、王女の拉致、世界政府への宣戦布告、その他様々な海賊行為が確認されております」

「ほれみろハレダス! やっぱりただの犯罪者じゃったろうが!」

「な、ナミちゃんがそんなことをしてたとは知らなんだ……」

「ハレダスさん、でしたか。ナミについて何か知っていることが?」

 

 ジャックハートのその問いに、ハレダスの表情が曇る。

 

「ちなみにですが、もし彼女を意図的に匿っているようなことがあれば、匿っている人も罪に問われますのでご注意を」

「……そ、そう言えば、図書館辺りに若い女が逃げ込んでいたようないなかったような……」

「分かりました。それでは皆さん、自宅に隠れていてください。私が捕獲するまでは外出も控えてください」

 

 ジャックハートがそう告げると、ハレダスや通報した老人は移動を開始して各々家へと向かった。

 ハレダスや他の住民の少し申し訳なさそうな顔から察するに、うまくここの生活に馴染みかけていたのだろう。

 

「さて、あのハレダスとかいうジジイの言う通りの場所にいんのかねぇ」

 

 辺りを見渡しながら”見聞色の覇気”でさらに見えないところまで細かく探る。

 生命力がそれほど強くない老人たちが建物内に入った中で、一つだけ強く感じる生命力がとある建物の中に一つ。

 

「これで確定だな」

 

 ”剃”で一瞬にしてその建物の前に移動。

 ハレダスの言葉通り、図書館の中にその生命力は感じられた。

 

『本当に凄いわね、ウェザリアの技術……。この技術とウソップの開発があれば……』

「危機感もなく、まあ何とも呑気な海賊だこと。空島だから捕まらないとでも思ってんのかね」

 

 図書館の中から聞こえる一人の女の声。

 まさかこんなところに海軍が来るとは思ってないのだろう、警戒心が一切感じられない声色で独り言をつぶやいている。

 

「さてと、そんじゃあ身なりを整えて、と」

 

 これからお目当ての相手に会うのだ。多少なりとも身なりには気を使う。

 緩んでズレていたネクタイを整え、髪を整えて図書館の扉を開ける。

 

「あっ! ねぇハレダスさ……っ、誰よアンタ!」

「ようナミちゃん。会いたかったぜ」

「っ、海軍がこんなところに何の用……って、決まってるわね」

「あぁその通り。君がここにいるという通報があってね。俺が捕まえに来たのさ」

 

 ハレダスに何かを教えてもらう予定だったのか、扉が開いた瞬間に彼の名前を呼びながら笑顔で振り向いたナミの表情が、一瞬にして目尻を吊り上げるような睨むものへと変わる。

 

「そう睨むなよ。別に、殺すわけじゃねぇ」

「……なら、ここから出て行って」

「そりゃあ無理だ。っと、そういやナミちゃんの質問に答えてなかったな」

 

 そう言って、ジャックハートは満面の笑みで言い放つ。

 

「改めて俺のことを。海軍本部大将(・・)、ジョー・ジャックハートだ。よろしく頼むぜ、ナミちゃん」

 

 ”麦わらの一味”の航海士、ナミが絶望する、自己紹介を。

 

 

 ◇

 

 

「おォ〜……。よかったのかい、サカズキ。ジャックハート君にはあんな雑な通達で」

「構わんじゃろう。奴も、趣味以外の仕事での分別はしっかりとしちょる。大幅な業務の変更は本部に帰ってきてから直接言うが、今は肩書きが変わるとだけ思うちょれ、と言うただけじゃ」

「……とは言え、これで18歳での海軍本部大将っすか。また最年少記録更新っすね」

「わっしらの半分以下の年齢であれだけ強いとねぇ……。さすがに上からも下からも昇格を勧められたら、答えないと」

 

 海軍本部、部屋の主が前元帥のセンゴクから現在の元帥であるサカズキへと変わったこの部屋には、”赤犬”、”青雉”、”黄猿”の三人がいた。

 

「ジャックハート君の次の任務はどうするつもりだい?」

「なに、休暇じゃ。休ませる」

「あらら、意外っすね」

「そもそも働きすぎじゃけぇの。ひと月ほど自由に過ごせる期間を作っても誰も文句は言わん」

「そう言えば彼、ここ一年ほどマリンフォードの家にはほぼ帰れていないって言ってたねぇ……」

 

 三人の話題は、先ほど大将(・・)昇格の通達をしたジャックハートのこと。

 そんな彼へのサカズキなりのささやかなプレゼントが、久しぶりの長期休暇だった。

 

「本人は船旅の途中でも女遊びをしてストレスを溜めないようにしとるようじゃが、肉体はそうは言っちょらん。まだまだ成長期の奴を過労死させるわけにはいかんけぇの。ここらで自由に使える時間があってもえぇじゃろう」

「……そっすね。長期間、自分で自由に鍛えられる時間にもするでしょ、ジャックハートなら」

 

 ジャックハートは何も女遊びばかりしているわけではない。

 もちろん訓練に使っている時間も多く、そしてその質は海軍の中でもズバ抜けて高い、鍛え上げられた自分の肉体をさらにいじめ抜く方法を見つけ、短時間で極限へと追い込んでいるのだ。

 

「ジャックハート君はもう、体をあれ以上作る必要はないからねぇ……。後進のためにも、新しい技でも開発してもらいたいよォ……」

「六式と覇気全部組み合わせた技とか作りそうっすね」

「そんなもんなら奴がもう作っとる……っ、誰じゃ。入れ」

 

 そんな元三大将の集まりの中聞こえてくるノックの音。

 集まりと言っても重要な会話ではなく世間話程度だったため、サカズキが入室の許可を出した。

 

「失礼します」

「ダレス准尉、か。どうした」

「サカズキ元帥。一つお聞きしたいことがあるのですが、よろしいですか?」

「……なんじゃ、言うてみい」

 

 海軍トップとして部下に威厳のある接し方をするサカズキと、茶を飲みリラックスした様子のクザンとボルサリーノ。

 そんな中で、ダレスが口を開いた。

 

「今回の昇進の件についてです」

「父親の昇進とは一切関係ない、ジョー・ダレス准尉。ワシらはお前の力を認め、准尉という地位まで昇進させた。それだけじゃ」

「しかし、いいのでしょうか。まだ9歳の自分が准尉となり、年上の方達を部下に持つなど……」

「安心せい。海軍はこれから完全な実力主義になる。ジャックハートの息子と言えど、それだけで昇進はさせん。昇進はお前自身の力だ、ジョー・ダレス准尉」

「っ、ありがとうございますッ!!」

 

 サカズキ、クザン、ボルサリーノの三人の前に現れたこの少年。

 齢9歳にして海軍本部准尉となるほどの逸材の彼。

 本名を、ジョー・ダレス。

 ジョー・ジャックハートを実の父に持つ、ジョー・リリーの腹違いの兄にあたる。

 

「ダレス准尉、”悪魔の実”の修行は進んでるかい?」

「はいっ! 修行に付き合ってくれる上司の方たちのおかげで、順調に進んでいます」

「そうかい。ちゃんと扱ってあげなよォ……。その”ボムボムの実”は、実質君のお父さんが取ってきたようなものだからねぇ……」

 

 ダレスが8歳、ジャックハートが17歳の時のこと。

 当時海軍の支部で最前線戦力として働いていたダレスの本部所属が決まった際にジャックハートから昇進祝いとして渡された”悪魔の実”こそが、”ボムボムの実”だったのだ。

 元の能力者がアラバスタ周辺をパトロールしていたジャックハートに殺され、そこから数日経ってたまたま外でのプレイを楽しんでいたジャックハートの目の前に、突如として生えたのだ。

 

「ジョー・リリー一等兵も時期に昇進する。……あぁそれと、また妹が増えたそうだ。生まれた方もじゃが、宿す方もな」

「父さん……」

「いやぁ、ダレス准尉はジャックハートみたいにはならなさそうっすね」

「当然。海軍があんな奴の集団になるわけにはいかん。一人で十分じゃ」

 

 父と女性との間にまたもや妹が生まれ、そして父がまた誰か女性を懐妊させたという報告。

 すでに耳にタコができるほど聞き飽きたそれを聞き、ダレスは頭を抱えた。

 

「だが、極度の女好きとはいえその実力が折り紙付きなのもまた事実……! 父を超える働きを期待しているぞ、ダレス准尉」

「っ、はっ! ジョー・ダレス! 父に負けぬよう、これからも精一杯邁進していきます!」

「あぁ」

「失礼しました!」

 

 大きな声で完璧な敬礼をし、ダレスは部屋から去った。

 少年の背を見届けたサカズキは、机の引き出しから紙の束でできた書類を取り出した。

 

「若い子への指導が上手くなってないかい、サカズキ」

「なんか、物腰柔らかくなってないっすか?」

「喧しい。ジョー・ダレス准尉、ジョー・リリー一等兵、ジョー・スウェットリー二等兵、ジョー・アルカナ、ジョー・ハルディ、ジョー・ノルディアが新兵か」

「……どれもみんな、ジャックハート君の子供たちだねェ」

「センゴクが言ったことは間違いない。ジャックハートこそが次世代の最強。そして、その下を支え、担うのがこやつらの使命じゃ」

 

 その書類には、今までジャックハートが孕ませた女性と、その間にできた子の名前が全て記されている。

 子供全員が命令したわけでもなく全てジャックハートの背中を追いかけるように海兵への道を突き進む理由は分からないが、将来有望な戦力が増える事にサカズキは心の中で先ほどの言葉通り期待を抱いていた。

 

「……フッ」

「うわぁ」

「お〜サカズキぃ。今海兵がやっちゃいけない極悪人の顔をしてたよぉ」

「……何、面白い事を考えたんじゃ」

 

 ──ジャックハートに新世界に行く機会を多くし、無限に沸く海賊どもを殺させる。その時に死んだ”能力者”の”悪魔の実”を回収させてジャックハートの子に食べさせれば、それこそ面白い事が起きるかもしれんのう。

 

 サカズキが考える”ジャックハートの遺伝子”を誇る究極の強さと”悪魔の実”の能力。

 それらを掛け合わせた海兵たちが現れれば、きっとさらなる兵力の強化になるに違いない。

 

「……わしはセンゴクのように咎めたりはせん。思う存分暴れまわれ、ジャックハート……!」

 

 元帥の椅子に腰掛け、窓に向かって独り言をこぼすサカズキ。

 その当の本人は、誰に言われるでもなくいつでも好き勝手に暴れまわっていた。

 

 

 ◇ ◇

 

 

「あ、あんたがジョー・ジャックハートッ!? それに、今大将って……中将じゃなかったの!?」

「そりゃ今朝までの話さ。軍艦に戻ってリラックス(・・・・・)してたら電伝虫でいきなりそう言われたんだよ」

 

 自身の武器である”天候棒”を構え、ジャックハートに敵対する意思を示すナミ。

 そんな彼女の敵対心をあざ笑うかのように、ジャックハートは自然体で彼女の前に立ち続ける。

 

「座って中でお茶でもしようぜ、ナミちゃん。……あっ、図書館って確か喋っちゃいけねぇんだっけ?」

「来ないで! 動いたら攻撃するわよ!」

「してみな、意味ねぇから。俺に傷つけようとするなら、んーそうだな。懸賞金を後100倍ぐらいにしてもらわねぇと」

「舐めないでくれる?」

「そりゃこっちのセリフさ。大人しく俺と楽しくお茶をするだけ。それだけで、見逃してやることも多々あるってだけだ」

 

 互いに距離は一切詰めない。

 片方は、次元が違う実力者相手に間合いを図るため。もう片方は、将来性奴隷として従順になってもらうべく、スタートが肝心だと思っているため。

 

「それって、どういう……」

「シャボンディ諸島、サウザンド・サニー号、”冥王”、ココヤシ村、みかん畑……あぁ後は、”頂上戦争”と”麦わら”も、か?」

「っ、あん、た……それをどこで……!」

「大将だぜ? 知ろうと思えば、大体のことは知れるのさ」

 

 ナミの表情が、一瞬青ざめたものへと変わる。

 どれもこれも”麦わらの一味”の再集結や自分の過去にとって大事なキーワードばかり。

 その全てが、目の前の男の口から発せられた。

 

「で、どうする。ココヤシ村の人間に手を出すつもりはねぇが、その気になりゃあのクソジジイ殺して船もぶっ壊す。もちろん、ナミちゃんたちの船長もな」

「……やめては、くれないのよね」

「ナミちゃん次第さ。俺ぁ、美女を侍らせて楽しい時間を過ごすのが大好きなのさ」

「ッ! どうせ犯すんでしょ、私も! 他の捕まえた女海賊みたいに!」

「……さぁ、どうかな。少なくとも俺の記憶じゃ、女の方からセックスしてくれって言ってきた記憶しかねぇがな」

 

 海軍でのあまりの仕事の速さに顔は知られていないことが多いジャックハート。

 しかし、その悪名は世界中の女性中心に広まっている。

 

「ビビちゃんもそうだったんだぜ? 最初はナミちゃんみたいにツンツンしてて、最後にはビビちゃんの方から頼んできたんだ」

「嘘言わないで! ビビがそんなこと言うはずないでしょ!」

「ホントだっての。人の恋路を嘘と決めつけて欲しくはないな」

 

 かつて仲間として旅をし、今はアラバスタの王女としての役割を全うしているビビ。

 彼女と目の前のジャックハートの結婚報道は新聞にも載っていたため、ナミの記憶にも新しい。

 

「にしても期待外れだぜ」

「あら、私の身体が気にいらないなら帰っていいわよ?」

「違ぇよ。お前の身体も顔もどストライクだが、アホだからな」

「……どういうこと?」

 

 これでも”麦わらの一味”の航海士として、仲間の命を預かり旅をしてきた、司令塔のような存在としてのプライドはある。

 同じ一味のルフィやゾロよりは一般常識には自信があった彼女だが、アホと言われて少し頭にきた。

 

「指名手配書には”DEAD OR ALIVE”と書かれてんのは知ってんだろ? つまり、てめぇをここで殺して海軍に持ってってもいいって訳だ」

「っ、いや……!」

「だったら生きる道を選ぶか。どうする、船や故郷の住人を取るか、自分の貞操を取るか」

 

 とどのつまり、ナミはジャックハートがここに来た時点で詰んでいたのだ。

 上空1万mのここで生身で戦っても勝てるわけがなく。

 かと言って仲間や大事な村のみんなを売るわけにもいかない。

 ナミ自身がジャックハートに差し出せる何かは、自分自身の身体しか無かった。

 

「……抱いて」

「あん?」

「抱いてって言ってんのよ!」

「俺ぁ、そんなクソ生意気な性奴隷は抱きたくねぇな。ビビちゃんの方がよっぽど優しくて癒される。アラバスタに行くついでにシャボンディ諸島にでも寄ってストレス発散でもするとしようか」

「ッ! …………ねぇ」

 

 意を決したナミの決断も彼には届かない。

 ただ見た目が良くて抱き心地がいい性奴隷なら、ジャックハートならばいくらでも捕まえることが出来る。

 彼が求めているのは、その中でも特出して欲求を駆り立てられる、お気に入りになる性奴隷。

 

「どしたよナミちゃん。諦めて死ぬ気にでもなったか?」

「ううん。……ジャックハート、様?」

「おぉ、いきなり素直になったじゃねぇの」

 

 声色を変え、急にジャックハートの左腕に自身の両腕を絡ませに来たナミ。

 ぎゅっと彼の腕を抱きしめ、その大きく豊かに育った胸を押し付ける。

 

「私で良ければ、ジャックハート様の性奴隷にしてくれないかしら」

「今のままなら却下だな。俺はどっかに逃げるかもしれねぇ猫ちゃんより、従順な犬、もしくは家畜みてぇな豚の方が好みだ」

 

 だがそれでも一切の油断は見せず、ジャックハートもナミの退路を断つ。

 確実に”麦わらの一味”に戻ることなく、自分の元に留まる。

 そう言わせてから、彼の調教は始まるのだ。

 

「……お願い。ホントに、それだけはお願い、許して……!」

「何がだよ。返答次第によっちゃ、分かってんだろうな」

「分かってる! でもお願い! 私がいなきゃ、みんな新世界を乗り越えていけないの!」

「それを海兵の俺が聞く通りはねぇな。何の交換条件にもなりゃしねぇ」

 

 そのあまりの隙の無さにナミが折れた。

 抱きついた彼の腕から離れ、彼の前に移動して何とか許しを請うために頭を下げる。

 この時点で、ジャックハートに軍配が上がってしまったのである。

 

「まあでも、俺も鬼じゃねぇ。面白いこと(・・・・・)を思いついた」

「えっ……?」

「五日間、さっき言った従順な犬になるんならここは何もかも見逃してやるよ。さっき俺が言ったヤツらには手は出さねぇ」

「ホント!?」

「あぁ。ナミちゃんが誠意を見せてくれれば、だが。俺の要求を全て飲む完全な雌犬になれば、だ」

「うっ……。それでも、五日間か……」

 

 そしてナミは、悪魔の囁きに心が傾いてしまった。

 

「なに、たった五日さ。五日間俺と楽しく過ごせばいいだけ。それでナミちゃんの命も、大事な人達の命も助かり、俺には見逃してもらえる。俺はナミちゃんと楽しく過ごせる。良い条件だと思うぜ?」

「……ホントにその期間アンタの相手すれば、ルフィ達にもココヤシ村のみんなにも手は出さないのね?」

「もちろん。ナミちゃんの命も保証しよう」

 

 自身が身体を1週間差し出すことで助かるものの多さ、重大さ。

 貞操と守るものを天秤にかけ、ナミは決断した。

 

「分かったわ。……ベッドに、行きましょう」

「おいおい、まだナミちゃん自身の口から聞いてねぇぞ。ちゃんと、俺を楽しませるように言ってくれなきゃ分かんねぇわ」

「……そうね。大将にこれだけで何もかも助けてもらえるんですもの。私も、覚悟が足りなかったわ」

「今の立場を忘れるなよ。俺が主で、お前は雌犬。そのことを良く理解して発言しな」

 

 仲間の命のため、故郷の恩人たちのため、船のため、そして、自分自身の命のため。

 ナミは、自分の身体を売ることを決めたのだ。

 

「お願いします、ジャックハート様。この私を、ジャックハート様の性奴隷にしてください……!」

「合格。だが、まだちょっと反抗心が見えるな。俺は楽しく、気持ち良くナミちゃんと遊びてぇんだ。萎えるようなことした瞬間、今の約束は全てなかったことにするからな」

「っ、じょ、冗談よジャックハート様。あなたみたいな人の性奴隷になれるなんて、私幸せよ?」

「ケハハハ。その調子だ。せいぜい俺を楽しませる演技を続けな」

「演技だなんて、そんな……!」

 

 先ほどと同じく、その豊かな胸の谷間にジャックハートの左腕を挟み込むナミ。

 そんな彼女を見て、ジャックハートはニヤリと笑う。

 

「安心しなよ。俺は、一度捕まえると決めた奴は絶対に逃さねぇから」

「きゃっ!」

 

 ジャックハートがナミの背中と膝裏に腕を回し、彼女の軽い体を持ち上げる。

 いわゆるお姫様抱っこだが、ジャックハートにとって女性一人程度の体重などあってないようなものだった。

 

「ナミちゃんさ、ここに来てどこに住んでんの?」

「えっと、空いてる家が一軒あって、そこに住まわせてもらってるけど……」

「そう。ならこの五日間はそこから出ること禁止。全ての予定をキャンセルして、俺との短い同棲生活としようや」

 

 ジャックハートはナミの心を見透かしていた。

 女好きのジャックハートがナミを五日自由にできる権利を無残に捨てるはずはない。ヤッた後で仲間たちを殺されてしまうかもしれないが、あの契約を持ち出された時点で、ナミは頷くしかなかった。

 そして、彼女は五日間という長いようで短いような時間なら、我慢して耐え忍ぶことができるはずだ。

 そう考えていると”見聞色”で彼女の心を見透かし、またナミ自身もそう考えていた。

 

「ジャックハート様を独り占めできるなんて、嬉しいわ」

「そうか? 海軍の基地に来ればいくらでもハメてやるぜ? さっきも言ったけどナミちゃんはどストライクだからな。今すぐにでも持って帰りたいぐらだ」

「ありがと」

「俺の子を身籠って欲しいぐらいには、な」

「あら残念。この五日間は排卵の予定はないの」

「……ケハハッ! そうかそうか、そりゃあ確かに残念だ」

 

 笑いをこらえていたジャックハートだが、我慢できずについ吹き出してしまった。

 この男に一度抱かれて元通りの生活を送れた者など、良くも悪くも誰一人としていない。

 そのことを知らずに腕の中の美女は未だ少しだけ強気な振る舞いをしているのだ。

 

「ナミちゃん家どれだ?」

「あれよ。あの一番大きいやつ」

「ほうほう。……あ、でだナミちゃん。子どもはデキねぇって言ってたけど、もしデキたら俺が名前考えてもいいか?」

「……いいわよ」

「俺たちの子にぴったりのいい名前を考えてやるからよ」

 

 ──つってももう考えてんだけどな。いやぁ、()()()()この名前(・・・・)で海兵になって活躍したら、きっとナミちゃんも泣いて喜んでくれるだろうよ。

 排卵日でなくても強制的に卵子を出させることができるジャックハートにとって、ナミの排卵の周期は関係ない。

 もう、彼女は逃げられないのだ。

 

「ここか?」

「えぇ」

「そんじゃあ、今から五日間。たっぷり楽しもうぜ、ナミちゃん」

 

 抱きかかえられたまま、ジャックハートの腕の中で身動きを取れない、ではなく取らないナミ。

 今更足掻いても無駄だろうと思い、ジャックハートのいいなりになることに決心がついたのだろう。

 彼女も少し気づいたのかも知れない。

 

「俺たちのこの、愛の巣で」

 

 彼女……否、彼女たちにはもう、逃げ道はないことを。




なぜジャックハートさんがナミにあんな提案をしたのか。
なぜナミの要求をすんなりと飲み込んだのか。
その理由は、新世界編が始まってからのお楽しみです……フフフ……。
一つ言えるのは、ジャックハートはただエロいだけの人ではなく、クズ成分もそれなりに入っているということです。


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囚われた航海士

三連休のちょうど真ん中に投稿。
お待たせしました……!ついに、ついに……!


ん?と思う場面が若しかしたらあるかも知れませんが、それはまた次回で……。

では、どうぞ。






 

「ん、はぁ……! や、やめてよそんなところ……んっ、あぁ……!」

「雌犬が主人に反抗してんじゃねぇよ。安心しな、ナミちゃんの身体は今まで見てきた女の中でもトップクラスで俺の好みだからよ」

「くぅ……ふ、う……あ、んぅ……っ!」

 

 ナミを抱きかかえたまま彼女の家に入ったジャックハート。

 そこからはいつものように……とはならず、ベッドに腰掛け、ナミをその膝の上に乗せたまま服の上からその大きな胸を揉みしだいていた。

 

「にしてもまさかノーブラとはな。好きだぜ、そういうエロい女の子は」

「ち、違うの……! その、飛ばされてきて着替えもないし、おじいちゃんばっかりだから、下着ぐらいなら洗えるっかなって……」

「ほう。てことは下はノーパンか。それで勉強しようとしてたとはなぁ」

「んぁ、く……は、あぁ……!」

 

 なんとか喘ぎを殺し、ジャックハートの腕の中で身をよじりながら悶えるナミ。

 彼の両手の愛撫を受け続けている胸部は、じっとりと汗ばんでいた。

 

「ケハハハハッ! えらく可愛らしい反応するじゃねぇの」

「こ、こんなに……その……」

「デカいおっぱい揉まれ続けたことがねぇ、ってか?」

「っ……! は、はい……!」

「ケハハッ! そりゃおもしれぇ! ”麦わら”んとこの男はインポしかいねぇのかよ。俺がもし海賊なら、ナミちゃんみてぇな極上の女がいたら絶対ぶち犯すぜ」

「あ、う……あはぁっ!」

 

 ジャックハートの腕の中でナミが大きく身体をねじる。

 彼の胸への愛撫に、ナミの溜まった性欲が刺激されているため……だけではない。

 

「どした。イキそうか?」

「はぁ……はぁ……! なん、で……触って、くれないの?」

「あ? かれこれ15分ぐらいはナミちゃんのおっぱいで遊んでるけど?」

「そうじゃなくて、その……」

「どこを、どういう風に触って欲しいのか言ってくれねぇと分かんねぇわ」

 

 ブラジャーを着けていない胸を下乳から持ち上げるように撫で、乳輪近くを指で刺激し、再び下乳中心に胸全体を優しく大きくゆっくりと揉んでいく。

 乳房全体を揉みほぐすマッサージのようにジャックハートは触り続けているが、ナミの触られたい場所はそうではなかった。

 

「……乳首を、乳輪ごと優しく摘んでください……!」

「ケハハハッ! ちゃんと言えるじゃねぇか。自分でオナる時のお気に入りか?」

「っ! ……はい」

「恥ずかしがる必要ねぇって。性欲の発散ぐらいしねぇと、壊れちまうぜ? ……ま、乳首でイケる女はそうそういねぇけど」

 

 その告白により、ナミの顔が耳まで真っ赤に染まる。

 五日間の初日。それもまだ一時間も経過していないというのに、自分の自慰の仕方すらも暴露させられたのだ。

 情けない自分と抱きしめている男への怒りよりも、羞恥による紅潮だった。

 

「んじゃ、ご褒美としてナミちゃんのオナニーのお手伝いをしてやるよ」

「ちょ、ちょっと待っ──」

「ほれ」

「っ、ああぁぁああッ! イクッ、くぁ……ふ、ぁ……はあぁぁあんっ!」

 

 ナミがジャックハートの言葉に一瞬だけ平静を取り戻した瞬間。ジャックハートの指が、的確にナミの両胸の先端にある乳首と乳輪を捉えた。

 まるで母乳を絞るような動きでゆっくりと、しかし確実にナミの性感帯に響くように摘む。

 そうすることで、彼女はジャックハートの腕の中で盛大に果てた。

 

「ケハハ。男の手でイクなんて、久しぶりじゃなかったか?」

「はぁ、はぁ、はぁ……! 初、めてよ……! 今まで何度もそういう場面からは、逃げてきたの……!」

「あら。たまに反抗的なのは気に食わねぇが、性奴隷初日だからな。許してやるよ」

 

 肩で息をしながら、ジャックハートの胴体に体重を預けるナミ。

 その姿からは、抵抗する意思はもう感じられなかった。

 

「なあナミちゃん。お前ちょっと、真面目すぎるんじゃねぇの?」

「えっ……?」

 

 絶頂を迎えて体力的にも、そして羞恥から精神的にも疲労が溜まった彼女の隙をジャックハートは見逃さなかった。

 

「男の海賊衆なんてのは、自分勝手な奴が多すぎる。それこそ、頭脳を使う問題は全て女に押し付けてもいいって思ってるぐらいにはな」

「あ、ん……」

「そんな中で、ナミちゃんは一味の頭脳としてニコ・ロビンと一緒に支えてきた。……いや、航海士って役割のことも考えたら、今まで”麦わらの一味”が航海を続けてこられたのは8割方ナミちゃんのお陰と言っても過言じゃねぇ」

「んぅ、あ……あんっ!」

 

 再びジャックハートの両手がナミの両胸を這い、指が乳肉に沈んでいく。

 

「これは俺が海兵として言えることだが、ナミちゃんみてぇな苦労人の女海賊は、もっと報われてもいいはずだ。今まで何度も仲間の危機を救ってきたナミちゃんなんだ。自分の欲求を叶えた程度で、誰も怒りはしねぇよ」

 

 言葉巧みにナミの弱った精神に付け入り、感情を揺さぶっていく。

 

「もっと自分に素直に、欲しいものは欲しいと言っていいんだよ。性欲なんて男はシコればある程度は発散できるが、女はそうはいかねぇ。……ナミちゃん、クリじゃいけねぇだろ?」

 

 この短時間でナミの性感帯を尽く”見聞色の覇気”で見破っていくジャックハート。

 ナミはその問いに、小さいながらもはっきりと頷いた。

 

「ナミちゃんは中途半端にしか発散できない中、男達はシコって自由に発散できる。そんなもん不平等だろう?」

「うぁ……! ん、くぁあ……っ!」

「だが、仲間の間で確執を生みたくねぇとも考えてる。優しすぎるぜナミちゃんは。男に思いっきり抱かれて発散したいなら、そう言えばいいんだ」

 

 そう、ジャックハートは最初から見透かしていたのだ。

 

「…………ねぇ、ジャックハート様。お願いがあるの」

「なんだ?」

「思いっきり、私を気持ちよくしてくれる?」

「元からそのつもりさ」

 

 空島という隔離空間で、一味の命を預かっている責任を負っている彼女にとんでもない性欲が溜まっていることを。

 

「……そうよね。いつもみんなばっかり馬鹿騒ぎしてその後始末に追われてるもの。ちょっとぐらいハメを外しても怒られないわよね」

「ケハハ。そうさ、別に海兵に寝返るわけじゃねぇ。最後には仲間の元に帰るんだ。五日間だけ、性欲を発散するために身体を交わらせるだけだ」

「それに、どうせ楽しまなきゃ私もみんなも殺されちゃうんでしょ? ……だったらもう今は全部捨てて、ジャックハート様とするのを楽しんだ方が得よね」

 

 じっくりとした胸への愛撫と巧みな言葉でナミの警戒心は完全に解かれた。

 彼女の言う通りすでに逃げ場がないこの状況で五日間無意味に抵抗を続けるより、ジャックハートとの行為を楽しんだ方が時間を有意義に使えるのだ。

 

「……はぁ。海兵が来たからって変に緊張しすぎちゃった。ジャックハート様に体を預けることに変わりはないんだし、もういいや」

「そうそう。どの道120時間俺と一緒なんだ。どうせなら楽しもうや」

「えぇ。……ジャックハート様、おちんちんすっごい大きくなってるわ」

「ナミちゃんの身体の匂いがエロすぎんだよ」

「い、忙しくてあんまりお風呂に入れてなかったのよ」

 

 ベッドに腰掛けた状態でナミを膝の上に乗せているためジャックハートの眼前にはナミの後頭部がある。

 首元まで伸びている彼女のオレンジ色の髪を掻き上げると、汗で蒸れたのか、やや独特な匂いを放つうなじが顔を見せた。

 

「確かにちょっとは匂うが、別に嫌な匂いじゃない。むしろ俺は好きな匂いだぜ?」

「でも、やっぱり気になるわね」

「じゃあ後で一緒に風呂に入るか。隅々まで洗ってやるよ」

 

 両手でナミの身体を優しく弄り、少しずつ彼女の性欲を昂らせていく。

 今までの功績を称えられ、航海士として頑張ってきたストレス発散だという言い訳を与えられ、かつ彼の言うことを拒めない立場になり、そして仲間と大切な人を守る正当な手段としてジャックハートの性奴隷になったナミ。

 そんな彼女が性欲が溜まり、することは一つしかなかった。

 

「ジャックハート様のおちんちん、苦しそうよ?」

「なら脱がせてくれるか?」

「もちろん」

 

 ナミが立ち上がり、その後にジャックハートも立ち上がる。

 ジャックハートがコートとシャツを脱ぐと同時に、ナミはベルトを緩めていく。

 

「っ、す、すごい身体……」

「惚れ惚れしたか? これから五日間、これはナミちゃんだけのもんだ」

 

 ナミの手が早くなり、ジャックハートの腰からベルトが抜かれる。

 

「脱がすわよ」

「あぁ。一気に頼むぜ」

 

 下着と同時に一気に足元まで下ろす。

 そうすることで、やや屹立したジャックハートの陰茎がナミの目の前に躍動して現れた。

 

「これが、ジャックハート様のおちんちん……」

「まだデカくなるがな。さ、俺が脱いだんだ。次はナミちゃんの番だぜ」

「えぇ。……脱がせて、くれる?」

「お安い御用」

 

 大きな胸を押し込んでいるせいで生地が大きく押し上げられているシャツの裾を掴む。

 バンザイをした彼女に合わせ、ジャックハートが服を脱がせていく。

 

「おぉ……! 揉んでて分かってたが、やっぱすげぇデケェな。形も色も、綺麗だ」

「そう?そんなに喜んでもらえるなんて、思ってなかったわ」

「綺麗だよ。自信を持っていい。ハンコックにも負けてねぇな、こりゃ」

「ハンコックって……あの海賊女帝!?」

「あぁ。今俺の性奴隷の一人で、多分身籠ってるだろうよ」

 

 ジャックハートが全裸になった次は、ナミの上半身が露わになった。

 服の上からでも分かるほどだった巨乳はただ大きいだけでなく、乳房自体の色や形、うっすらとしたピンク色の乳輪や乳首も合わさった美巨乳だった。

 

「しゃぶりつきたくなるが、今はまだ我慢だ。次は下な」

「こっちは自分で脱ぐわ。……んしょ、と。……ふふっ、恥ずかしいわ」

「そうか? ここからヤることは一つなんだ。別にそんなこと考えなくていいだろ」

「きゃっ!」

 

 ショートパンツを自分で脱ぎ捨てたナミ。

 彼女が言っていた通り下着は着けておらず、脱ぎ捨てられた後には彼女の陰毛が覆うだけだった。

 二人ともが衣服を脱ぎ全裸となった状態でジャックハートが再びナミを横抱きにした。

 

「たぷたぷ揺れて、マジでエロいなそのおっぱい」

「もう。……後でいくらでも揉むんでしょう?」

「ケハハハ。よく分かってんじゃねぇか」

 

 抱えた状態でジャックハートが動くたびに、ナミの胸が柔らかく弾む。

 間近でそんな動きをされてジャックハートが黙っていられるはずもなく、ナミはベッドに仰向けの状態で寝かされた。

 

「ジャックハート様……」

「ナミちゃん。……んっ」

 

 ナミと、そこに覆いかぶさったジャックハートの唇が重なる。

 

「ちゅむ、はぁ、む……んっ、ふ……ぁ、んちゅ……」

 

 唾液がお互いの口内を行き来し、そして相手の口内全てを貪り食うように、舌が絡み合う。

 溢れ出た唾液がナミの頬を伝って首筋を通ってシーツを濡らす。

 

「んっ、ちゅぅ……。ん、はぁ……ジャックハート、様……」

「麦わらんトコで、随分と発散できてなかったみたいだな。ナミちゃん」

「当たり前でしょ? こんなに気持ち良くしてくれる人なんて、いなかったもの」

「だろうな。ココも、そう言ってるぜ。愛液でぐっちゃぐちゃだ」

「ひゃぁああんっ!」

 

 ジャックハートの下で、ナミが啼く。

 左手をナミの顔の横につき体重を支え、右手でナミの淫裂に手を当てたのだ。

 

「可愛い反応だぜ。ますます俺の手元に置いておきたくなる」

「はぁ……はぁ……! ジャックハート、様……おね、がい……。初めてが指は、嫌なの……」

「了解。ばっちりぶち込んでやるから安心しな」

 

 上体を起こしたジャックハートがナミの股座に座る。

 抵抗するどころか自分で両脚を広げたナミの体を、少しずつ自分の方へと引き寄せる。

 

「陰毛までオレンジ色とはな。こういうのも唆るわ。割れ目も綺麗に閉じてて、中はお手本のような桃色。俺ァ幸せもんだぜ」

 

 M字に開かれた両腿の間にある、ナミの陰部。

 ぴっちりと閉じられた陰裂を両手の親指の腹で拡げると、中には綺麗なピンク色の膣口が、挿入を今か今かと待ちわびるようにヒクついていた。

 

「お強請りしてみな、ナミちゃん」

「ジャックハート様……! お願い、私のおまんこに、おちんちんを挿入()れてくださいっ!」

「あぁ、いいぜ。一緒に楽しもうや」

 

 両脚が大きく開かれたことで露わになったナミの淫裂に、ジャックハートが亀頭を当てがう。

 膣口に鈴口が触れた途端、ナミの雌穴が吸い込むようにジャックハートを誘い込む。

 そして、正常位となって、ジャックハートの肉棒がナミの膣肉に沈んでいく。

 

「んっ、あぁぁぁああっ! くふ、あ、んぁっ……はあぁっ!」

「……文句のつけようがねぇ完璧な名器だな、こりゃ。俺のを愛おしそうに根元まで咥え込んできやがる……!」

 

 ジャックハートの陰茎の付け根とナミの恥丘が触れ合い、子宮の入り口と鈴口が微かに触れ、肉ヒダと肉竿がナミの蜜壺の中で濃厚に絡み合う。

 

「すっごぉ……」

「あれ、ナミちゃんなら経験あると思ってたんだけど」

「……どういう、意味よ」

「いやぁ、”東の海”にネズミとかいうカス海兵がいたってのを聞いてよ。そん時ナミちゃん大金溜めてたんだろ?」

「身体なんて、売ってないわよ……! 海賊はめちゃくちゃ嫌いだったし、相手してもどうせお金なんて渡してくれないし、そういう話を出す前にスッて逃げてたわ」

「そか。悪いな、興ざめするようなこと言って」

「そう思ってるなら早っ、くぅんっ! そ、そんないきなり……っ!」

「嫌だった?」

「ヤじゃないけどぉっ! んっ、あぁっ、はぁんっ!」

 

 挿入しきった際のナミの苦しさを紛らわせるための軽い小話を挟むと、その話題のせいか少しだけナミの表情が曇った。

 そんなナミの嫌な思い出を吹き飛ばすかのようなジャックハートの大きなピストンは、ナミを乱れさせるには十分だった。

 

「今までもこのおっぱい揺らして誘ってたんだろ?」

「そ、そんなことしてな、い……ひぃんっ!」

「……マジ?」

「え、えぇ……。だって、体を見返りにするような奴からスルのなんて、簡単よ?」

「なーるほど。じゃあ、お楽しみの続きと行こうか!」

「あんっ! はっ、んはあぁあっ!」

 

 ほぼ完全な勃起状態となったジャックハートの肉棒が、ナミの膣内を攻め立てる。

 Gスポットをカリでゴリゴリと抉り、硬い肉棒の勢いそのままポルチオを突き続ける。

 

「イック……う、うぁ……!」

「我慢しなくていいぜ? どうせ120時間乱れっぱなしなんだ。今耐えてもなんの意味もねぇ」

「イクうぅぅぅううッ!!」

 

 仰向けになりながら両手で枕を掴み、身をよじらせながらまずはナミが達した。

 それでもまだ両脚は無意識のうちにジャックハートの腰に絡み付いているあたり、彼女も相当溜まっていたのだろう。

 

「見事な中イキだな」

「あ、ふ……はぁ、ん……」

「でも、お前ばっか気持ちよくなってんじゃねぇよ」

「ひ、やぁぁああっ! イグ、いっ……! あぁああっ!」

「ケハハハッ! どうせならイキ続けろっての!」

「イクッ! イクのとまんないのぉッ!!」

 

 ストレス、恐怖、苛立ち、不安、不満、疲労、などなど。

 その全てからナミを解放するように、今目の前にいるナミを捕まえない海兵は、彼女の弱いところをひたすらに責める。

 

「うっ……ああぁ! お、くまで……っ!」

「お、ここがいいのか?」

「ああぁぁぁあっ! ほんっとに……だめ、ぇ……おかしくなるぅ!」

「ケハハハハッ! こんなに濡らしてんだ。もうおかしくなってんだろ!」

 

 ナミの蜜壺からは絶え間なく愛液が溢れ、彼女のベッドにかけられているシーツは二人の体液もあるが、その大半はナミから出ていた。

 愛液は下に垂れ、潮は上に向かって噴くことでジャックハートの身体を濡らしていく。

 

「く、ふぅ……んあぁあっ!」

「っ、おいおい。そんなに抱きしめんなよ」

「んっ、あぁんっ! イイッ、いいのっ! ジャックハート様ぁ!」

 

 無意識のうちか、ナミの両腕がジャックハートの上半身を自身の方に抱き寄せた。

 密着する二人の身体。文字通り目と鼻の先まで近づいた双眸が、互いのそれと交錯する。

 

「キス……して……?」

 

 ナミのその懇願を皮切りにして、二人の唇が先ほどよりも熱く熱く重なり合う。

 まるで数時間ずっとエサを待たされていた獣の様に、互いの口内に舌を入れ、唾液を貪り、より身体の距離を縮めていく。

 

「ぷはっ! ……ジャックハート様。膣内に、射精()して?」

「いいのかよ」

「今更許可なんて求めないで。気持ちよくなっていいって言ったのは、あなたでしょ?」

「違えねぇ。じゃ、遠慮なく全部射精すぜ」

「うんっ。私の一番、奥に……!」

 

 キスを終え、さらに二人の抱きしめ合う力は強くなる。

 ほぼのしかかるようにナミの上体を堪能しながら、ジャックハートは肉棒をナミの淫裂に突き下ろす。

 

「あぁ……!」

「ぐっ、あ……。気ぃ抜いたらすぐにでも射精ちまいそうだ……」

「はっ……あんっ! ダメ、またイッちゃう……!」

 

 今までの速度よりも速く、そして深く、ナミの奥を崩していく。

 その”見聞色の覇気”の未来視によりナミの最大の絶頂のタイミングを知ったジャックハートが、さらにナミを満たしていく。

 

「んぁあっ! だ、ダメ……! イク、イックぅ……!」

「ケハハハッ! たっぷりと味わえ、や!」

「〜〜〜ッ! あああぁぁぁぁああっ! あっ、んぅっ! ああぁっ! ひぅっ……あぁんっ!」

 

 彼女の興奮とジャックハートの興奮が最高潮まで高まった瞬間、ジャックハートの亀頭がナミのポルチオの中心にある子宮口をこじ開けた。

 ビクビクと痙攣するかのように身体を反らせるナミを抑えつけながら、その吐き出され続ける精液でナミを染めていく。

 

「っ、止まんねぇな……。めちゃめちゃ射精まくるわ」

「あっ、あぁっ……!……は、ああぁ……」

「お疲れさん、ナミちゃん。大丈夫か?やばいぐらいに乱れてたけど」

「えぇ……。はぁ……っ、ふぅ。もう、大丈夫よ」

 

 頬や耳どころか全身を紅潮させたナミが、ゆっくりと自然な呼吸を取り戻していく。

 二人の淫部の結合部からは、膣内に入りきらなくなったナミの愛液とジャックハートの精液の混合液がどばどばと溢れ出ていた。

 

「すごい……。まだカチカチに勃起してる」

「スタミナには自信があるからな」

「ふぅん。……一つ、お願いしてもいい?」

「なんだ?」

 

 未だ肉棒を挿入されたままの状態で、ナミは顔がすぐ横に来ているジャックハートの方を向いた。

 

「もう一回戦、しましょう?」

「言われなくても」

 

 再び、お強請り(・・・・)をするために。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「あぁんっ、んっ……はぁ…!」

「夢ん中でまでセックス漬けとは、海賊ってのは随分と溜まるらしいな」

 

 あれから立ちバック、騎乗位、駅弁、対面座位など、身体を交わらせること8時間。

 ジャックハートがナミの膣内に14回目の射精をしたところで、彼女の意識がトんだ。

 

「まあ、今のうちに寝かせてやるか。反応が薄い状態じゃあんまり興奮しねぇからな」

 

 ベッドの上で幸せそうな夢を見ているナミが寝てから2時間ほど経過しており、その全裸の身体の上には”正義”と書かれた白い大きなコートが掛けられていた。

 ジャックハートがこの”ウェザリア”に到着したのが昼前ということもあり、今の空は暗くなりつつあった。

 

「やることねぇな。寝てるやつ犯す気にもなれねぇし」

 

 ナミが寝ている間に、住人たちへの説明は終えた。容疑者の家を使っての五日間に及ぶ長期間の取り調べを行うため、絶対に近づかないでくれと言ったところ素直に信じ切ってくれた。

 彼女がどれくらいで目を覚ますかも分からないので、”覇気”のトレーニングでもしようとしていた、その時だった。

 

「……んっ、んぅ……。あれ、私……」

「おっ、起きたかナミちゃん」

「……そっか。私、寝てたんだ」

 

 ベッドの上で艶めかしい寝言をあげていたナミが、目を覚ました。

 その体に掛けられた白いコートで意味もなく前を隠しながら、その体を起こしてベッドを降りた。

 

「気分はどうだ?」

「ん〜……っ!とってもスッキリしてるわ。セックスってすごいのね」

「ケハハ。俺のセックス、だがな」

 

 左手でコートを胸元に抑え、右手をあげて大きく伸びをする彼女。

 その表情はどこか、憑き物が取れたかのように晴れ晴れとしたものだった。

 

「ジャックハート様は寝てないの?」

「徹夜には慣れてるからな。120時間ぐらいぶっ通しで働き続けるなんて当たり前。オマケに書類作成やら何やらで1週間ほぼ寝ないなんてのもあるぜ」

「海軍もブラックなのね……」

「俺は特別だろうよ。その分給料も凄まじいから別に駄々こねてまで断る必要がねぇからな」

「っ! 海軍大将って、どれくらいお金貰えるの?」

 

 ナミが起床後だが、始まった二人のピロートーク。

 話題は、ジャックハートのことについてだった。

 

「月幾らかは覚えてねぇな。全部だと、家を出るときに全財産パクってきたのもあるが……今家に、どんくらいだっけな」

「……20億、とか?」

「100……いや、500はあったはずだぜ」

「ごひゃ……ッ!?」

 

 ナミが20億あるか、と聞いて500あると答えたジャックハート。

 つまり、500億ベリーを超える額を、彼は有していることになる。

 

「海軍ってのは、賞金首を捕まえた時の賞金の70%を直接貰えんだ。30%は上に取られて下っ端の固定給とか自分の部下のボーナスに回るが、それ以外は全部自分のもんになる」

「へぇ……。えっ、てことはジャックハート様、今まで……」

「入隊してから捕まえた海賊の数なんて覚えてねぇよ。殺した状態でも貰えるからな」

 

 ジャックハートの儲けは基本的に、賞金首の賞金、風俗店の利益、海賊船からの強奪が主なものとなっている。

 

「捕まえた性奴隷達にたまにはストレス発散もさせてやらねぇといけねぇしな」

「優しいんだ。そういうとこ」

「文句言われながらより互いに楽しいセックスの方が気持ちいいのは、身をもって分かっただろ?」

「……そうね。ん〜……っ! ほんっとに気持ちよかったわ。自分でするのとは大違い!」

 

 ナミにとって、相手が誰かは今は関係なかった。

 今までの航海で溜まった欲求を解消してくれる相手。それがジャックハートだったと言うだけ。

 そして、身体を預けることで仲間も命も助けてくれるのだ。

 

「喜んでくれて何より。腹は空いてないか?」

「もしかして、作ってくれてるの?」

「あぁ。家が家でな、基本的に俺しか作れるヤツがいなかったんだ」

「……ちなみに、両親は?」

「違法地下闘技場のオーナーでアルコール中毒の父親と、表の顔はシスターで、裏の顔はそこで集めた寄付金使ってクスリ買うヤク中の母親だ」

 

 さらりとやばいことを発言しながらキッチンへと向かったジャックハート。

 あらかじめ作っていた料理を皿に取り分け、テーブルの上に並べていく。

 

「女たちも基本ナミちゃんみたいにヤッた後すぐ気絶しちまうからよ。結果的に自分で作らねぇと腹が減って仕方ねぇんだわ」

「ふぅん……。あっ、美味しい」

 

 ジャックハートが作った料理を疑うことなく口に運ぶナミ。

 肉や魚ではなく、ナミの家にあった野菜や果物を中心に作られた即席のそれは、非常にあっさりとしていて疲れた身体でも食べやすいものになっていた。

 

「ナミちゃん、海賊が海兵の作った料理をそう簡単に食べちゃいけねぇよ?」

「でも、ジャックハート様は私を殺さないでしょ?」

「……どうして、そう思う? ナミちゃん以外にも性奴隷は余るほどいるんだ」

「こうして私の元に残ってるから、かしら。ヤッて気に入らなかったら、私はもう死んでてあなたはここにはいないもの」

「……はぁ。負けだよナミちゃん。確かにお前はお気に入り確実さ」

 

 目の前の少女に一杯食わされたジャックハート。

 しかしその内心では一切負けたとは思っていない。

 

「安心しな。こんなに気持ちいいセックスは俺も久々だ。約束通り、仲間の命は保証する」

「やった! ……でも、信用はできないけど」

「仲間殺したらナミちゃんも心中するかもしれねぇからな」

「私が今自殺するかも、とは考えないの?」

「ねぇな。ナミちゃんが死んだらその時点で契約破棄だ。仲間も殺す。自分も死んで仲間も殺される選択はしねぇだろ……それ、分かってて聞いてるな」

「てへ。バレた?」

 

 つまり、ナミには生きて大人しく抱かれるという道しか残されていないのだ。

 それ以外の道を選んだ瞬間、”麦わらの一味”の命とココヤシ村に住むみんなの命は消えてなくなる。

 そんな最低な道を選ぶより、彼女は気持ちよく抱かれる道を選んだのだ。

 

「てか、ナミちゃんも案外満更でもなかっただろ?」

「……えぇ。ぶっちゃけると、めちゃくちゃ気持ちよかったわ」

「もっかいするか?」

「その前にシャワーを浴びたいわ」

「ケハハ、恥ずかしがんなよ。俺が隅々まで洗ってやるぜ、ナミちゃんの身体」

「じゃあ私はジャックハート様の身体を洗うわ。……また、気持ちいいのを期待してるわね」

「ケハハハ。期待に応えられるよう、頑張らせてもらうわ」

 

 ナミが立つ際に手を差し伸べる。

 彼女が羽織っていた白いコートを取り、投げ捨てる。

 

「まだまだ時間はたっぷりある。今だけだが、愛し合おうな」

「えぇ。ジャックハート、様……」

 

 風呂場へと向かう2人の歩み。

 その途中で引き寄せられるわけでもなく、ナミの身体がジャックハートの腕に密着し、彼女の体重が彼の方へとかけられた。

 

 

 

 

 







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蠢く種

大学が始まったら案の定更新ペースが落ちました。

作者は某プロ野球チームのセのネコ科のチームのファンなのですが、このまま最下位になったら、腹いせにこの作品も他の作品もどんどん投稿しようと思います。

パのネコ科も頑張って。


「んっ、んっ……。改めて見るとすっごい大きいわね、ジャックハート様のおちんちん。私の胸でも全部を覆い隠せないなんて……」

「ケハハ。ナミちゃんのおっぱいも十分デカいさ。柔らかくて大きくて形が良くて、色もいい。最高だな」

「うふふ、ありがと。ちゅっ、ちゅるぅ……。んっ、この濃い精子の味ももう覚えちゃった」

「上の口も下の口も、か?」

「それを言うならお尻の穴も、ね。……あんなにお尻でするのが気持ちいいなんて知らなかったわ」

「どこもかしこも俺に染まってんな、ナミちゃん」

「ジャックハート様のセックスが気持ちいいのが悪いのよ」

 

 ナミが最初に気を失ってから、実に110時間が経過した。

 その間、彼女が達した回数は100を軽く超え、失神した回数も10を優に超える。

 その間ジャックハートは1度も睡眠をとっておらず、相手が非力な女とはいえ、一切の油断も隙も見せなかった。

 

「とはいえ、あと2時間でこの楽しい時間も終わりだ」

「…………はぁ」

「どうしたよ。寂しいか?」

「ううん。ただ、またオナニーだけの日々になると思うと、憂鬱なの」

「襲えばいいじゃねぇかよ」

「ジャックハート様で慣れちゃったのよ? ……今さら、他の男とのセックスで満足できるとは思ってないわ」

 

 パイズリを続け、時折鈴口から漏れる精液を舌で舐めとっていくナミ。

 彼女の言う通り、とんでもない性欲の持ち主であるジャックハートとの長時間のセックスが当たり前に感じてきた彼女にとって、他の男は物足りない存在になっていた。

 

「ジャックハート様のおちんちんみたいに、ウチの男衆のモノは大きくないし」

「へぇ、見たことあるのか」

「不慮の事故で、よ。風呂上がりに隠してないのを見ちゃったりね」

「デリカシーの無い男どもだな」

 

 ベッドの上で密着する二人に最早距離はなかった。

 その大きな胸を両手で中央に押し寄せ、その間に挟んだ肉竿を扱いていく。

 

「ホントにたくましいおちんちん……。もう忘れられないかも」

「ケハハハ。……最後にたっぷり膣内に注いでやる。その時は本気(・・)で抱くから覚悟しな」

「い、今までのは本気じゃなかったの?」

「あぁ。俺の本気はそう何度も味わえるもんじゃねぇぞ?」

 

 ジャックハートの本気とは、言わずもがな強制孕ませ(・・・・・)のことである。

 もちろん、ナミにはそんな芸当ができることは話していない。彼女も安全日の周期に入っていることを考えた上で膣内射精を了承していたのだ。もっとも、気持ちよかったからそれでいいだけかも知れないが。

 

「性奴隷たちには好評だぜ? ブッ飛ぶ感覚が忘れられなくて、他に何も手が回らねぇんだと」

 

 ──受精、着床、そこからの妊婦生活。本番できない状況で俺のことを忘れることの方が難しいだろ。下準備もしてるしな。

 

「へ、へぇ〜……。そんなに気持ちいいんだ」

 

 ──今まで何回もイッたのよりもスゴいのかな……。どんなイカされ方しちゃうんだろ。ちょっと気になるけど、勉強もしなきゃいけないし……。

 

 本人に自覚はないものの、ジャックハートの調教と躾を受け、彼好みの女へと成長しつつあるナミ。

 そんな彼女と主人であるジャックハートの会話の裏での心境で、ナミは綺麗に主人の掌の上で転がされていた。

 

「俺も最近そのセックスしてねぇんだわ。させてくれるなら、さらにサービスしてやるぜ?」

「サービス?」

「五日間の性欲発散に付き合ってくれたお礼として、10億ベリー。ナミちゃん個人にやるよ。好きに使いな」

「……ふふ。本当に私のこと念入りに調べてるのね。いいわ、乗った! 私もおっぱいとその本気のセックスで、ジャックハート様にいっぱいサービスしちゃうわよ!」

「いや、パイズリはもういい。……今溜まってる全部を、ナミちゃんの膣内に吐き出すからよ」

「あら残念」

 

 渋々、といった表情でナミがジャックハートの陰茎から胸を離す。

 彼女を見て、ジャックハートは言葉を繋いでいく。

 

「後悔はさせねぇさ。きっと、最高の思い出になる。ナミちゃんも気に入るぜ」

「ジャックハート様がそんなに言うセックス……! ますます楽しみになってきたわ」

「……あぁ、そうだ。ひとつ言い忘れてたことがあった」

「何?」

 

 パイズリをやめ、身体を起こして座っていたナミは、ごく自然な流れでジャックハートに反対側へと押し倒された。

 仰向けで奉仕を受けていたジャックハートが今度は覆いかぶさるようになり、仰向けになったナミの黒い瞳をじっと見つめた。

 

「このセックスでもしかしたらデキちまうかもしれねぇ、俺たちの子の名前だ」

「そんなに射精すの?」

「あぁ。実はもういい名前があるんだが、どうだ?」

「……聞かせて?」

 

 うっすらと優しい笑みを浮かべるナミ。

 しかしその表情は、ジャックハートの口から出た名前を聞いて一変する。

 

「男の子ならゲン(・・)、女の子ならベルメール(・・・・・)

「っ! それ、どこで……!」

「別に悪い名じゃねぇだろ? 退職した海兵のリスト見てたらな、ココヤシ村に帰った一人の女海兵がいたんだわ。……この人、ナミちゃんの義母だろ?」

「……えぇ。普通の血が繋がっている家族以上強く結ばれてると断言できる、大事な人よ」

「その人がどうなったかは知ってる。……お母さんもきっと、ナミちゃんの子に自分と同じ名前をつけてもらったら幸せだと感じるはずだ」

 

 またもナミには、退路はなかった。

 

「てかナミちゃんが断ったら他の性奴隷との子にその名前が回るぜ?」

「待って! ……いい、名前ね。是非とも私とジャックハート様の子どもに付けたい名前だわ」

「だろ?」

 

 見知らぬ性奴隷と彼との間にできた子に、自分の愛する母と父親代わりのような恩人の名をつけられるかも知れない。

 そんなこと、彼女の本能が許せなかった。

 

「じゃあナミちゃん、挿入れるぞ」

「ジャックハート様っ。……これで、最後のセックスなのよね」

「本気のは、な。あと二時間弱あるが、シャワー浴びたり飯食ったりしてたら時間なんてあっという間に過ぎちまう」

「そう、よね。……お願いが、あるの」

「お、どうした?」

 

 半分期待、半分不安の様なものを孕んだ目を向けながら、寝転んだナミがジャックハートの首に手を回した。

 

「今から、今からだけでいいの……。私を、ジャックハートさん(・・)の一人の女として愛して欲しいのっ! ……ダメ?」

「ケハハハハ。いいぜ、今から(・・・)お前は俺の愛する一人の女だ、ナミ」

「んっ、あぁああっ!」

 

 ”東の海”の空高く、空島”ウェザリア”にて。

 

「イクッ! イク、イクぅ……! はぁ、はぁあんっ!」

 

 一人の少女は雌となり、女となった。

 

「ケハハハハハァッ! ……また会おうぜナミ。元気で、なっ!」

「ああぁぁぁんっ! イク、イクうぅぅぅうっ!」

 

 そして彼女は、胎内に新たな命を宿し、母としての道を歩み始めた。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「よろしかったのですか、ジャックハート様」

「何が?」

「”麦わら”の航海士を捕えなかったことです」

「いいんだよ。そっちの方が面白い。1年ぐらいしたらまた会いに行くし、今は拘束しなくていい」

「かしこまりました」

 

 空島でのナミとの五日間の同棲が終わり、海へと帰ってきたジャックハート。

 降り立った地がたまたまたしぎ達が軍艦を泊めていた島だったため、そこでナンパした女性と一人楽しんだ後、軍艦の自室へと戻った。

 今はデスクに座り、書類片手にカリファに肩を揉んでもらっていた。

 

「……休み、か。お前はどこに行きたい?」

「ジャックハート様がいるところなら、どこへでも」

「あっ、そう。じゃあリリーの面倒見ててくれるか? 久しぶりにサディちゃんとドミノちゃんにも会いたいし」

「…………かしこまりました」

「嫉妬してるカリファちゃんって、めちゃくちゃ可愛いよな」

「セクハラですっ」

「あん? セックスレス?」

「違いますっ!」

 

 ぷい、と頬を膨らませながらそっぽを向くカリファ。

 そんな彼女を愛おしく思い、書類を置いて椅子から立ち上がるジャックハート。

 

「気持ちよくしてやるぜ?」

「……じゃあ、お願い、します」

「ケハハ。リリーの弟か妹も、本気で考えるか?」

「っ、はい! きっと、リリーも喜びます」

「だが、悪いカリファちゃん。色々と連絡が来てるんだ。それを返してから、な?」

「はい……」

 

 ジャックハートの部屋に置かれている数匹の電伝虫。

 その内の一匹が、先ほどからひっきりなしに鳴いている。

 

「はいもしもし」

『フフフフッ! 俺だ、ジャックハート……! まずは、大将昇進おめでとう、といったところか』

「あ、わざわざありがとうございます。で、要件はなんすか?」

『なに。とあるイイ悪魔の実を手に入れてな。それを懸賞にいつかコロシアムで大規模な大会を開く。是非ともお前に挑戦してもらいたい』

 

 受話器を取ると、男の笑みが聞こえてきた。

 この不敵で特徴的な笑い方をする男こそ、現ドレスローザ国王のドンキホーテ・ドフラミンゴだ。

 

「悪魔の実? ……俺ぁ興味ないっすけど」

『子どもたちの昇進祝いにでも渡せばいいだろう』

「それもそっすね。……で、その悪魔の実ってなんすか?」

『メラメラの実だ』

「あ、それ長女が欲しがってたヤツっすわ。了解です、参加します。また詳しい日時とか送ってもらっていいですか?」

『あぁ。……それと、だ。また近々遊びに来い。……いい加減、三人がやかましくて仕方ない』

「ははっ。分かりました。いい子にして待っておけって言っておいてもらえます?」

 

 赤ん坊の世話に追われているであろうベビー5とそろそろつわりが始まっているであろうモネとヴィオラ。

 ベビー5が出産し、これでようやく戦線が完全に復活すると思っていたドフラミンゴだが、モネとヴィオラの妊娠報告に頭を抱えたのだった。

 

『それと、だ。ジャックハート。お前、何か企んでないだろうな』

「何かってなんすか。今度の休みにどんな子抱くかってのは考えてますけど」

『……そうか。フッフッフッ……では、な』

「えぇ」

 

 ガチャ、と割と強めに受話器を置くジャックハート。

 心なしか電伝虫が少し泣いているように見えるのは気のせいだろう。

 

「天夜叉ですか。ジャックハート様の大事な時間にまで電話とは、いやらしい男です」

「言うなよカリファちゃん。今は大事なビジネスパートナーなんだ。下に見られるのが嫌いなようだからな……持ち上げて、煽てて、壊れるまで踊らせてやろう」

「お気をつけてください、ジャックハート様。いくらジャックハート様がお強いとはいえ」

「相手は王下七武海の中で最も用心深い男です。実力もあります。どうか、ご自愛を。……だろ?」

「……はい」

 

 言おうとしていたことが彼の”見聞色の覇気”によって先読みされ、僅かながらの羞恥からか、耳を朱に染めたカリファが弱々しくジャックハートに抱きついた。

 

「ずっと、お慕いしています。ジャックハート様……」

「俺もだぜ、カリファちゃん。今は、だけどな」

「構いません。……ジャックハート様。もう、私……」

「そろそろ我慢できねぇか? ……って、いいトコなのによぉ」

「えっ?」

 

 ジャックハートの身体に胸を押し付けたカリファは、確かにジャックハートの陰茎が少しずつ大きくなっていたのを確認していた。

 程よいところで切り出すことができた。そう思った矢先、ジャックハートがボヤきながら再び机の上を見た。

 

「ぷるぷるぷる」

「はいはい、出るっての」

 

 完全な自然体。今までは戦闘中でのみ無意識のうちに行っていた”見聞色の覇気”による”未来視”

 それが、日常生活の中に溶け込み始めていた。

 

「なんだよクソババア。無駄に時間かけさせんじゃねぇよ」

『……ハハハ、マママママッ! 久しぶりだねぇ、ジャックハート……!』

「それだけが要件なら切るぞ」

『まあ待ちな。……この前のお返しの情報さ』

「あ? ……あぁ、サカズキさんたちが動きづらいってやつか。で、何だよお返しって」

『ジャックハート、ジェルマ66って知ってるかい?』

「一応な。科学の力で強くなりてぇ奴らだろ?」

 

 王下七武海である”天夜叉”ドフラミンゴの次にジャックハートの電伝虫に電話を入れてきたのは”四皇”の一人、ビッグ・マム。

 ジャックハートが持つ有益な情報を欲しがる海賊の重鎮の一人だ。

 

『そこの一人が、お前に婚約を申し込みたいらしい』

「なんでお前経由なんだよ」

『ジェルマ66がお前に連絡を取る手段が無く、おれは繋げるツテを持ってたからな。もうこの前の不法侵入は怒っちゃいない。しばらくしたらうちの島で見合いの場を整えてやるよ』

「あぁ。あとで写真送ってくれ」

『分かったよ。それと、もしおれの娘とジェルマの婚約が破談になれば、お前に貰ってほしい』

「どうだろうな。見た目と従順さ次第だ」

 

 彼女もまた、ジャックハートから情報を得る代わりに対価としてジャックハートに渡しているものがある。

 ドフラミンゴのように女を差し出す場合もあれば、ジャックハートが知らない海軍の外の情報を渡す場合もある。

 

『見た目の良さは保証するよ』

「ほぉ、そりゃ楽しみだ。性格は俺好みに仕上げてやるが、いいのか」

『婚約が無くなった時の話だ! ジェルマとの話が上手くいかなかった時のことさ』

「てかその子の相手はジェルマの誰か、としか決まってねぇのか?」

『今のところそうだ。まあ、それも決まり次第連絡するよ』

 

 2人は言わば、不戦の関係にある。

 今からおよそ一年前。ジャックハートがビッグ・マムの息子達を一斉検挙すると意気込み、トットランドに乗り込んだことがあった。

 一度ぐらいなら痛い目を見た方が良いというサカズキの鬼の擁護もあり、センゴクもこれを渋々承認。

 数人程度なら捕まえてくるだろう、と想像していたのを、彼は軽々と超えた。

 

「カタクリのおっさんは元気にしてっか?」

『お前に”見聞色”で負けたのが効いてるみたいだ。修行が足りなかったってまた鍛え直してるよ』

「へぇ……。んじゃまた近いうちにボコリに行くか」

『ママママ!来てみな、今度こそぶっ殺してやるよ!』

 

 スイート四将星を半殺し、その他億越え戦力を物の見事に戦闘不能にしたのだ。

 もちろんその時点でジャックハートにも相当のダメージが溜まっており、ほぼ意識が飛んだ死にかけの状態でビッグ・マムとの戦闘が始まった。

 その心身の強さと異常な戦闘力、海軍での地位と将来性を買い、ビッグ・マムが停戦を申し出たのだ。

 

『……まぁ、報告はその程度さ。気楽にやんな、最年少海軍大将』

「うーい」

 

 先ほどのドフラミンゴと同じく、電伝虫の受話器を自ら置くジャックハート。

 王下七武海と四皇。その両者に全く臆することなく接し、それどころか交渉面に関しては完全にマウントを取っているジャックハート。

 

『なんじゃ、ジャックハート』

「あ、お疲れさんですサカズキさん。報告です。夜叉は俺が落とします」

『おぉ、そうか。……了解。派手に蹴散らしてこい』

「つっても、そう近いことじゃねぇっすよ? 向こうも用心深いんで、色々と準備が出来てからっすね」

『そうけぇ。引き続き、偉大なる航路でのパトロールに専念せい』

「了解っす」

 

 両者が信頼して送った情報は、もちろん全てジャックハートの手元に置いておくなどという甘いことは無い。

 その全てがサカズキや大将達、中将達、世界政府に送られ、対策が秘密裏に練られているのだ。

 

『ではな、ジャックハート』

「うっす。また帰る時には連絡します」

 

 今度は直属の上司ということもあり、サカズキが通話を切るまで待ち、受話器を置く。

 数十分間起き続けていた電伝虫は、ようやく訪れた休みを満喫するかのように眠り始めた。

 

「さて、カリファちゃん。もう仕事は終わったぜ?」

「あ、あの。ジャックハートさん。皆さんが次の目的地をどこにするかを……」

「あ? あー、テキーラウルフの周辺だ」

「はっ!」

 

 そんな通話の様子をいつの間にか聞いていたのだろう。たしぎがジャックハートの部屋の扉を開け、その入り口から目的地を聞いてきた。

 その問いに簡単に答えると、たしぎは扉を閉めて甲板へと戻っていった。

 

「テキーラウルフ……。ニコ・ロビンの捕獲、ですか?」

「あぁ。ナミちゃん同様、楽しみな女だ」

「ジャックハート様、一つ、聞いてもよろしいですか?」

「ん、なんだ?」

 

 いつの間にかその衣服を全て脱ぎ捨てており、”アワアワの実”の能力で作ったローションソープを見に纏ったカリファが、同じく全裸のジャックハートに抱きつく。

 

「なぜ、”麦わらの一味”の2人の女をここに連れてこなかったんですか?」

「……んー、簡単に言えば面白くねぇから、だな。んな数日のセックスで落としてもポルチェやバレンタインとさほど変わらねぇ。ハンコックの時もそうだが、俺ぁ変化も欲しいのよ」

「……と、言いますと?」

 

 抱きついてきたカリファを拒むことなく、ジャックハートも正面からカリファを抱きしめる。

 ぬるぬるとした感触が互いを高めつつも、2人は会話に専念していた。

 

「女を捕まえて男は皆殺し。それに飽きてきたってとこだ。麦わらんとこの男どもが全員インポって前提でのもうちょい面白い遊びを考えたからな。いずれ、ナミちゃんとロビンちゃんは俺の元に来るさ」

「その言い方ですと、向こうから来る、と聞こえますが?」

「そう言ってんだよ。近いうちに、自分の今の道がどれだけ馬鹿なことをしてるかが分かるさ」

 

 カリファの泡にまみれた腕が、ジャックハートの背中まで回る。

 それだけキツく抱きしめることになるため、もちろんカリファの巨乳もジャックハートの身体に押し付けられることとなる。

 

「さてカリファちゃん。どこでしたい?」

「……今日は、一人の男性を愛する一人の女として、磨いた技を堪能して欲しいです」

「ってことは」

「はい。ジャックハート様、浴室へ参りましょう」

 

 愛娘の願いを聞き入れた2人は、その成就のために浴室へと向かった。

 

 

 ◇ ◇

 

 

「うぅむ、まずい。迂闊に出歩けんな、これでは」

 

 レッドラインのすぐ近く。

 新世界への入り口と言ってもいいシャボンディ諸島の細い路地から、レイリーはその島の異様さを覗いていた。

 

「いたぞ! 懸賞金5200万ベリー、夢魔のケディアだ!」

「囲め! 絶対に逃がすな!」

 

 新世界へと渡るため、ここシャボンディ諸島には多くの海賊が休息とコーティングを求めて訪れる。

 そのため、もちろん海軍のパトロールも多かった。しかし、あの頂上戦争以降、その様子も少し変わっていた。

 

「何人たりとも逃がすな! 今は少し荒れるが、それも安心できる未来のためだ!」

「……それだけで島全域を警備されては、たまったものではないな」

 

 そんなシャボンディ諸島も以前は居住区域と無法地帯といったように、暗黙のルールで区分分けされていた。

 だが、今はそんな区分分けなど関係ないかのように、全てのGRに海軍が張り込んでおり、海賊を見つけ次第まるで大人数の艦隊のようになって捕縛に当たっていた。

 

「また船の場所を変えねばならん、か」

 

 来た道を戻り、別のルートで目的地へと向かう。

 頂上戦争以降に”麦わらの一味”から預かっていた船を動かすこと、計27回。

 わずか5か月に満たない期間のうちに、レイリーは何度も修羅場をくぐっていた。

 

「”赤犬”め、もう少し休んでいればいいものを」

 

 警備が厳しくなっている状況は、もちろん見回りを行う海兵たちの多さだけのせいではない。

 その戦力の質もはるかに強固なものとなっているのだ。

 1か月に一週間程度は必ず”大将”クラスの人間も加わり、それ以外では本部”中将”クラスの海兵が二桁ほど駐在している。

 

「”覇気”の扱いに長けているものが多いのも気にはなるが……」

 

 なんとか警備の目をすり抜け、”麦わらの一味”の船であるサウザンドサニー号の元へと辿り着く。

 海軍の目をくぐり抜けるために許可なく海賊旗を下ろした船が、寂しそうに佇んでいた。

 

「ではまた頼むぞ」

「……承知している。それが、最後の命令だ……」

 

 サウザンドサニー号が停められている近くには船を守る番人のように、”王下七武海”バーソロミュー・くまが立っていた。

 すでに5か月の間、賞金稼ぎや海軍に狙われていた船を守り続けていた彼の体は、改造によって体内に入った機械がむき出しになるほどボロボロになっていた。

 

「さて、今日は誰だ?」

 

 ガチャガチャと忙しない音を立てながら近づいてくる人影。

 船の場所がすでにバレていたのか、武装した海兵たちが部隊を組んで包囲していた。

 

「”王下七武海”バーソロミュー・くま。そして”冥王”シルバーズ・レイリーだな。そこにある船を引き渡してもらおうか」

「断る。と言ったら」

「捕らえるまでだ」

「……そうか。それなら、老体にムチを打つようだが、抵抗させてもらうとしよう」

 

 そう言って、レイリーは腰に携えていた剣を抜く。

 コーティング作業はすでに終了している。だが、こうして船を狙う輩が一向に減らないために、彼もまた戦っているのだ。

 

「――っ!」

「くっ……! その程度の”覇王色”なら、倒れはせん! かかれ!」

「ぬぅ…。効かんとは……!」

 

 開幕一番、牽制も兼ねて”覇王色の覇気”で相手を気絶させにかかる。

 一人一人無力化していては時間がかかる上に疲労もたまる。そう思ってのことだが、うまくはいかなかった。

 

ジャックハート(・・・・・・・)遊撃部隊の意地を見せろ!」

「っ……! また、彼か……。よく教育されているな」

 

 銃弾や砲撃を避け、剣を捌いていく。

 自分が”冥王”ということがバレている時点で、戦っても戦わなくてもほぼ状況は変わらない。

 反撃をして相手を相当な手負いにすれば海軍の上層部がすっ飛んでくるだろうが、どのみちしばらく安泰はないのだ。

 

「今だっ!」

「ぐ、マズい……!」

 

 だが、今現在海兵たちの狙いは、年老いた過去の豪傑よりも未来の脅威。

 レイリーとくまを大人数で足止めしている隙に、数多の砲撃がサウザンドサニー号へと迫る。

 

「……ッ!」

「くま、すまん……!」

「くッ…!」

 

 強引に包囲網を振り切ったくまが”ニキュニキュの実”の能力での高速移動で、なんとか射線上に立つ。

 声にならない悲鳴を上げながら片膝をついてしまうくま。そんな彼に、さらなる猛攻が襲いかかる。

 

「―ッ!!」

 

 しかしそれを、今度は全力の”覇王色の覇気”を放って阻止するレイリー。

 ”覇気”ももちろん、使い過ぎれば消耗し、回復するにはそれ相応の時間が必要になる。

 鍛えれば鍛えるだけ強度も持続時間も跳ね上がり、応用も利くようになるが、レイリーはすでに実戦から退いて長い。

 

「はぁ……、はぁ……!」

「……チッ。年老いても、流石は”冥王”と言ったところか」

 

 そのため”覇気”の全盛期に比べれば相当劣っており、訓練もしていない。

 この現状でジャックハートによって鍛えられている海兵たちに”覇王色の覇気”をぶつけるも、気絶させることができたのは下っ端の海兵のみ。

 佐官、大尉、中尉クラスの海兵たちは、ふらつきながらも何とか耐えていた。

 

「こりゃあ、本気にならなければな……!」

「っ! 総員、気をつけろ! 来るぞ!」

 

 スタミナ切れで負けるなど冗談ではない。

 その一心で、レイリーは剣を構え、覇気を纏う。

 

「行くぞっ!」

 

 彼とくま、そしてジャックハート遊撃部隊の本格的な戦闘が始まった。

 

 その戦火の影響か、サウザンドサニー号が激しく揺れる。

 

「怯むなぁっ!」

 

 海軍からの攻撃が激化し、レイリーとくまの反撃も強くなる。

 

 サウザンドサニー号に植えられたみかんの木から、仲間に手入れされずに腐ったみかんが一つ、土に落ちた。

 

 

 

 




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芽吹く齟齬

遅れました。およそ一ヶ月、申し訳ないです。

しかも本番は少なめという……。うーん、テキーラウルフの出来事を考えていたら行き詰まった。

ストーリーが本格的に動き始めるのは次話からです。お楽しみに。






 ジャックハートがナミとの行為を終えておよそ1ヶ月。

 ビビの妊娠がほぼ確定し、ハンコックとマーガレットにつわりが始まり、空の上にいるナミにも少しばかり変化が出てきた時期。

 

「肌寒ぃな」

「は、肌寒いどころの話じゃないと思うんですけど!?」

「気合いで我慢しろ。じゃねぇと中将になんてなれねぇぞ」

「ひぃぃい……っ!」

 

 たしぎとジャックハートは”東の海”にある橋の上の国、激しく吹雪くテキーラウルフへと上陸していた。

 

「こ、ここってずっと橋を作り続けてるんですよね?」

「あぁ。しかしその作業人に罪人やらが多いせいか、ごく稀に凶悪な事件が起こるらしい」

 

 たしぎが生唾を飲み込む。

 果たして、自分はここにいてもいいのか。ジャックハートの隣に立つに相応しいのか。

 そんなことを考えていた彼女の頭に、ジャックハートの大きな左手が乗った。

 

「てなわけで、だ。これからたしぎには俺流の極悪人の成敗方法を学んでもらう。目を閉じるなよ」

「……嫌な予感がするんですが」

「なに、多少血祭りが起こるだけだ。それほど珍しくはないだろ」

 

 ――十分珍しい、と言うか恐ろしいんですけど!?

 

 今現在自分の頭を撫でている男、ジャックハートとたしぎの関係は、言わずもがな歪なものである。

 海兵としての関係で言えば、完璧な上司と至らない部分が多い部下。

 たしぎのミスはジャックハートがカバーしているが、その分たしぎが請け負う雑用も増える。

 男女としての関係で言えば、絶対的な主とその愛を欲する愛人。

 一度”正義”を脱ぐとその心と体の距離は縮まり、一人の女としての幸せを味わわせてもらえる。

 

「じゃあ、始めるか」

 

 黒い革手袋を両手に嵌めるジャックハート。

 眼前には海兵が来たということを知り、武装した数多の犯罪者たち。

 

「よく見ておけよ、たしぎ」

 

 彼の姿が消える。

 次の瞬間には数メートル先にいた犯罪者たちの塊から人が噴き出し、血を吐きながら吹き飛んでいた。

 

「いや、無理ですよ」

 

 海兵としても男としてもある意味ストイックな日常を送っている彼が、笑みを浮かべながら犯罪者たちを屠っていく。

 爪の間に入った血の処理が面倒、という理由で嵌められた手袋が、一人の男の顔を握りつぶした。

 

「それでも、やっぱりカッコイイんですよね……」

 

 いつか彼が言っていた、一対多こそが本領を発揮できる場面。

 まさに嵐。もし仮に自分が中将になれたとしても、強力な”悪魔の実”を食べたとしても、あそこまで理不尽な暴力にはなれないだろうと思ってしまう程の圧倒的な強さ。

 そんな姿に心も体も反応してしまう辺り、末期だということは自覚している。

 

「たしぎ! 進むぞ!」

「はっ、はい!」

 

 地面に倒れた屈強な男達の中央に一人立つ、返り血に塗れたジャックハート。

 息切れ一つしないで歩き始めた彼の元へ駆け寄り、ハンカチで血を拭いていく。

 

「こんな汚ぇ血を一々拭く必要ねぇぞ?」

「そうはいきません! ……ジャックハートさんの、お身体ですから」

「直接かかってんのは顔ぐらいだがな。ま、ありがとよ」

「いえ。今私にできるのは、これぐらいしかありませんので」

 

 まるで門番のようにジャックハートを待ち構えていた男たちは、彼の手により無力化されている。

 その体を踏まないように上手く避けながら、白いコートに着いた血を拭っていく。

 

「そ、それにしてもジャックハートさん。良かったんですか?」

「何が?」

「……こ、殺しちゃって」

「あぁ、コイツらなら大丈夫だ。たまに俺みたいに襲撃してくる奴がいるから、その対策で雇われてる無法者ばっかだからな。”DEAD OR ALIVE”の犯罪者だらけだ」

「そこまでして、一体何を……」

「さあな。俺には関係ねぇことだ」

 

 べっとりと血が着いた手袋を外し、たしぎの頬を撫でる。

 先ほどまでは上司と部下だった関係が、男女のそれへと変わった。

 

「さてと。早くやることやって、船に戻るとするか」

「……はい」

 

 近いうちにまた身体を重ねることを約束した2人は、どんどんとテキーラウルフの内部へと入っていく。

 

 

 テキーラウルフの内部にある、簡素な宮殿。

 

 

 しかし、簡素とはいえここにいるのは国のトップ達。ジャックハートが上陸した場所に湧いていたゴロツキたちなどはいるはずもなく、彼の目の前には汗を額に滲ませた小太りの男性が1人。

 

 そもそも、先ほどジャックハートが息の根を止めた犯罪者達もこの国に合法的に雇われているわけではない。

 

 つまり――

 

「いやぁ、困るっすよ。上陸する所をあんな無法地帯にされちゃ」

「……それは済まなかったな。なにせ、この国は広い。私の目が行き届かなかったことは謝罪しよう」

「まあ、安心してください。ちゃんと元通り、平和な海岸線にしときましたから。てか、俺ァ別に奴隷に橋作りさせてるからって、それだけでは咎めませんよ」

 

 ――国の誰も、ジャックハートの殺しについて言及出来ないのだ。

 テキーラウルフの政府が橋作りに従事させるには勿体ない力を持つ極悪な犯罪者を傭兵のようにしていたのには、とある理由がある。

 

「革命軍の居場所さえ教えてくれりゃあ、問題ないっす」

「ッ!! ……それを、どこで……」

「いやいや。普通に有名っすよ。革命軍に目をつけられ、その対応に追われ、そして自分の力で決着をつけられない国だってことは」

「ぐっ……!」

 

 自分達が橋を作らせるために連れてきている奴隷たち。

 その解放を目指した革命軍がここ数日国内に侵入しており、ジャックハートの言葉通り、彼らを退けることは出来ていなかった。

 

「なので、俺があんた達の威厳を守ります」

「……何が、目的だ」

「別にそんな大した意味なんて無いっすよ。……ただ、国に恩を売って損はないかと思っただけで」

「……頼めるか」

「えぇ。奴らの処遇は俺の好きにしても?」

「あぁ」

 

 奴隷を使って橋を作り続けようとするテキーラウルフと、奴隷の解放を目指す革命軍。

 一般常識であれば、海軍(・・)が味方をするのは奴隷を解放しようとする革命軍の方かもしれない。

 しかし、この男は海軍において一味違った。

 

「では、今戦ってる戦力を引き上げてください。正直邪魔なんで」

「……分かった」

 

 海軍大将クラスの地位、権威を、自分の好きなように振りかざす。

 そして自分好みの利益を得ることが出来たら、その一部を海軍に還元する。

 

「行くぞたしぎ。仕事は早くしないとな」

「はっ!」

 

 彼が連れているのは、線は細いが出るところはしっかりと出ている女性的な体型をした部下一人。

 その部下に、一切の返り血を浴びせることなく50人程雇った賞金首を皆殺しにされたのだ。

 

「あぁ、それと」

 

 たしぎの腰に手を回しながら宮殿を後にしようとしていたジャックハートが、不意に立ち止まり、振り返った。

 

「サカズキさんは、怒らせたら怖いっすよ?ま、海軍大将も当然だけどな」

 

 ゾクリ、と背筋に冷たいものが這うのを感じた。

 あのゴロツキ共が自分達が用意していたものだとバレているのか、はたまた海兵(・・)ジョー・ジャックハートを警戒していたことがバレたのか。

 

「そろそろ、奴隷使って国作りとかやめた方が身のためっすよ。いくら天竜人の命令だからって、もうちょいどうにかしないとマズいでしょ」

 

 それだけ言い残して、ジャックハートは今度こそ宮殿を去った。

 

 

 ◇

 

 

「……妙に外が騒がしいわね」

「そうですね……。恐らく、テキーラウルフの戦力と私たち『革命軍』が戦闘している音だと思うんですけど、近いですね……」

 

 テキーラウルフの領土内に立てた革命軍の拠点。

 そこを目指して走り続けるサイに引かれる車の中で、ロビンは新たな革命軍の人間を迎え入れていた。

 

「それにしても助かったわ、コアラ。あなた達が来てくれなければ、今頃どうなっていたか」

「間に合ってよかったです。私たちもまさかこんなところにロビンさんが飛ばされてきているとは知りませんでしたから」

 

 その人物こそ、革命軍幹部の一人、コアラだ。

 比較的若い女性ではあるものの、幼少期の経験から魚人空手の師範代として、革命軍の肉弾戦の指南も行っている。

 

「安心してください、ロビンさん。貴女の身には何も無いよう、全力をもって――」

 

 守ります、とコアラが続けようとした瞬間。車が大きく揺れ始めた。

 

「何っ、どうしたの!?」

「危ないわっ! 伏せて!」

 

 革命軍幹部とは言え若いコアラがその突然の事態に狼狽し始めるのに対し、昔からかなりの修羅場をくぐってきたロビンが咄嗟の判断を下す。

 揺れが激しくなり、車体全体が大きく跳ね始めたところで、大きな浮遊感が身体を襲った。

 

「あっ!」

「きゃっ!」

 

 思わず目を閉じる二人。

 身体が宙に浮く感覚が消えて目を開けると、そこには派手に横転し、原型を留めていない程に壊れた車。そして、首を落とされて血を流し、絶命しているサイと御者が倒れていた。

 

「っ、な、なんでこんな……!」

「なんでだろうなぁ。分かるか? たしぎ」

「はい。恐らく、革命軍が国に侵略してきたことが原因かと」

「っ! コアラッ!!」

 

 コアラの心中を吐露するかのような呟きに返事をするものは、自分以外いないはず。

 その事を理解しきっていたロビンは、すぐさま彼女に退避するように叫んだ。

 

「っとと。おいおい、あんま暴れないでくれよ。俺だって女性二人を小脇に抱えるのは楽じゃねぇんだぜ?」

 

 再び頭上から聞こえる知らない男の声。

 危険だと、本能がそう言っていた。

 

「おいおい。そんな人を殺しそうな眼で見つめないでくれよ」

「離しなさい!」

「やなこった。んじゃ、とりあえず今は不法入国の罪で逮捕だ」

「っ、離して! 他のみんなは!?」

「おねんねしてるぜ。もう二度と起きねぇが」

 

 ジタバタと男の腕の中で暴れるロビンとコアラ。

 体重が重いとは思いたくないが、女性二人が同時に暴れるエネルギーを全て受け止めながらも、その男は微動だにしない。

 

「自己紹介が遅れたな。海軍本部大将、ジョー・ジャックハートだ」

「そしてその部下の、海軍本部少尉のたしぎと言います。以後お見知り置きを(・・・・・・・・・)

「っ、ジャックハート……ッ!」

「ま、まさか……本当に、こんなところまで……!」

 

 ジョー・ジャックハート。

 その名を聞いてロビンとコアラが抱いた気持ちはほとんど同じもので、浮かべた表情も理由とモノは違えど、似通っていた。

 コアラは、ロビンと自分がいるという情報が漏れ、そして部下を殺された不甲斐ない気持ちと嫌悪感からくる怒りを。

 ロビンは、以前車の中で話していた会話の中で、まさか来るはずはないと信じたかった人物が来たことによる絶望を。

 

「おぉ、俺のことを知ってくれてんのか。なら話は早い」

「っ! やだ、離して!」

「おっと。そんなにケツ振って誘わなくたって、ロビンちゃんもコアラちゃんもたっぷりと愛してやるから安心しなって。おい、たしぎ」

「はい」

 

 彼の合図に従うように、たしぎがジャックハートに抱えられているロビンの両手に海楼石の手錠をかけた。

 そのままたしぎにまるで人質のように扱われながら立たされるロビン。

 

「さて、じゃあコアラちゃんも立とうか」

「……っ!」

「ほう。歯向かわず、臨戦態勢も取らないとはな」

「そんなことしても無駄でしょ」

「ケハハッ。賢いじゃねぇか」

 

 空島でナミと相対した時と同じく、若いながらも出るところは出て、締まっているところはしっかりと細いコアラの身体を舐め回すように観察していく。

 

「じゃあくだらねぇ嘘は無しにして、だ。俺がここに来たのはニコ・ロビンを抱くため。コアラちゃんは幸運にもそこにもう一人追加されることになった美少女ってわけだ」

「くっ……!」

「で、まあお前らの態度次第じゃ逃してやらんこともねぇし……何より、革命軍本体を逃がしてやるよ」

「っ!? それを、どこで……!」

「……ほう。やっぱ来てたか、ドラゴン。まあここにあいつが来てるってことは重要なメンツがそれなりにいるってわけだ」

 

 ハメられた、とコアラは心の中で仲間に詫びるとともに、目の前の男の不気味さを痛感していた。

 今や相当の力をつけてきたと自負してもいい革命軍。しかしこの男は、その組織と敵対しているという事実を真正面から受け止めているのだ。

 

「まあ、怖くねぇな。幹部それぞれの戦力で見たらそこそこだが、勝てないほどじゃねぇ。ビッグ・マムんとこの方が数も力も強ぇだろうし、単体じゃ多分カイドウには負けてんだろ」

「っ、か、考えてることを……!」

「”見聞色”は鍛えといた方がいいぜ?」

 

 そう言いながらコアラに近づいていくジャックハート。

 

「抱かれる覚悟はできたか?」

「……念のために聞かせて。もし、断れば?」

「海軍の全力をもって革命軍を叩き潰す。その後、メンバーの遺伝子が途切れるまで血縁者を殺す。油断してると、海が汚ねぇゴミで溢れちまうからな」

「そんな言い方……!」

「別にいいだろ? 俺ァこれでも平和はお前ら以上に守り、作ってきてる。世界に認められた合法的なやり方でな。お前らの自己満とはわけが違う」

 

 海軍と革命軍。

 根本の部分で考え方が異なる二つの組織の幹部と大将が分かり合うことは、無かった。

 

「薄々分かってんだろ? コアラちゃんが今ここで俺に見つかった時点で、革命軍は海軍に負けてんだ」

「っ……!」

「あとは、仲間の命を取るか、自分の貞操を取るか、だな。よく考えて、答えが出たら行動に移しな」

 

 待っててやるよ、と俯向くコアラに言い放ったジャックハート。

 ここで断ってしまえば、この男は自分とロビンを殺して、革命軍本体に甚大なダメージを与えるだろう。

 ここで断らなければ、彼の言葉通り自分とロビン、そして革命軍という組織も存続する。

 

「っ、ダメよコアラ! その男に身体を許しては――」

「ダメですよ。男と女の二人だけの時間を邪魔しちゃ」

 

 後ろで何かを叫ぼうとしていたロビンの口が、たしぎの手によって塞がれる。

 今のコアラは、一人で決断しなければならない立場にある。

 そして、この場である意味革命軍の存続、仲間の安全をかけた選択を迫られた彼女は、そちらを選ぶしかない。

 

「せっかく女の子が自分の意思で女に……いえ、違いますね」

 

 意を決したコアラの表情を見て、たしぎが言葉を変える。

 短い歩幅でジャックハートの元へと歩み寄ったコアラが、ジャックハートの首に両手を回し、目を閉じて唇を差し出した。

 

「ジャックハート様の雌になろうとしているんですから」

 

 ジャックハートの鍛え上げられた腕に抱きしめられるコアラの華奢な体、互いの体で卑猥に潰れる胸。

 少女の口内を蹂躙するように舌を絡ませ、着実に彼女への侵略を始める主人を見て、たしぎが歪な笑みを浮かべた。

 

 

 ◇ ◇

 

 

「あっ、お兄ちゃんだ!」

「ん。リリーか。どうしたんだ?」

「訓練終わったから遊ぼうと思ったの!」

「……悪い。俺はまだ訓練が終わってないんだ」

「そうなの?」

「悪いねぇリリーちゃん。ダレス准尉にはもっと強くなってもらわないと」

「あ、おつるさん。こんにちは!」

「えぇ、こんにちは」

 

 海軍本部、マリンフォードにいくつもある訓練所。

 兄を探すためマリンフォード中の訓練所を手当たり次第に探しながら奔走していたリリーは、ようやく兄と出会うことができた。

 

「お母さんはどうしたんだい?」

「お家に帰ったの。お兄ちゃんを探してきてって頼まれたんだ!」

「そうかい。偉いねぇ」

「えへへ〜」

 

 上半身の衣服を邪魔だと感じているのか、上裸のダレスはその全身にびっしりと汗をかき、少し前まで父が就いていたのと同じ中将という地位にいるおつると特訓をしていた。

 しかしその特訓も、リリーが来たことにより一時中断されることになる。

 一般的な海軍本部中将とジャックハートの年齢は、親子のそれ程度に離れている。

 

「……孫がいたら、こんな感じなのかねぇ」

 

 そのジャックハートの子どもは、そのほとんどが私生活では中将や大将にとって孫のように扱われている。

 満面の笑みを浮かべるリリーと、そんな彼女の頭を微笑みながら撫でるおつる。

 息を整え、汗を拭ったダレスが再びおつるの方を向いた。

 

「おつる中将。……続きを、いいですか?」

「あぁ、いいよ。ジャックハートの息子だからって容赦はしないからね」

「リリー。次で終わりだから少し待っててくれないか?」

「うん! 私、見てるね!」

 

 訓練用の槍を構えるダレスと、訓練用の剣を構えるおつる。

 拭ったとはいえ火照る体から噴き出すような汗をかいているダレスと向かい合うおつるは、汗ひとつかいていないどころか息ひとつ乱していなかった。

 

「どうしたんだい? あの程度じゃ、父親に並ぶなんて夢のまた夢だよ」

「分かっています。……では」

 

 ダレスの姿が一瞬にして消える。

 ジャックハートが使っている六式の中でも最も得意と言ってもいいうちの一つである”剃”

 体はできていないがその分軽いダレスの剃は、速度だけで言えばかなりのものだった。

 

「あまい」

「くっ……!」

「殺気が漏れすぎだね。それじゃあ、まだまだだ。海軍将校にはなれやしないよ」

「自分が未熟なのは分かっています。だから今こうして、胸を借りているんですっ!」

 

 おつるへの背後からの強襲は、刃に防がれて体に通ることはなく。

 それどころか、振り返ったおつるに切り払われるように振るわれ、ダレスの軽い体が宙に飛ばされる。

 

「それは、愚策です。はぁっ!」

 

 ダレスが翳した左手から、まるで飛ばされてきた後を辿るかのようにおつるに向かって伸びていく連続的な爆発。

 美女と一緒に風呂に入ったり、自分の身体で自由に抱きたいという思いだけで能力者になっていない父とは違い、その父からの贈り物である”ボムボムの実”を食べたダレス。

 その能力は体表に留まらず、体表に触れたものにも及ぶ。

 

「”鎖状爆撃”!」

 

 連なる鎖のように、まさしく連鎖して繋がっていく。

 ダレスがあえて自らの身体には不釣り合いなほどにぶかぶかな上着を選んでいるのは、皮膚を直接通る空気を少しでも多くするためだ。

 

「はっ!」

 

 進んでいた爆撃がいよいよおつるに触れるまで迫っていた時。

 ダレスが爆撃を操作し、おつるの視界を奪うほどに大きなものを発生させる。

 

「これでっ!」

「あぁ、終わりだね」

「がぁっ!」

 

 もちろんそれを発生させたのは目くらましのため。

 いくらおつるとダレスの間に圧倒的な力の差があったとしても、流石に”悪魔の実”の攻撃を直撃させるわけにはいかない。

 これは海兵同士の訓練で死人を出さないために作られたルールであり、もちろんこの訓練でも適用される。

 

「体と能力の使い方はマシになってきても、”覇気”が絶望的に下手だね。これじゃ、20年あっても今のジャックハートに瞬殺されるよ」

「はぁ、はぁ……! やはり、”覇気”ですか」

「あぁ。一度、落ち着いた時に本格的な訓練を始めた方がいいかもしれないね。ジャックハートも、三種の”覇気”全てを海軍入隊する前から使いこなすことはできていたからね」

「……父さんやおつるさん、他の中将クラスの方達の強さを痛感します」

「生まれた環境、潜り抜けてきた死線、やってきたことの密度が違うから当然だよ」

 

 しかしそのダレスの奇襲も実らず。

 熟練の”見聞色の覇気”によって先読みされたのか、腹部に痛烈な突きを浴びて彼の体が数メートル吹き飛び、訓練が終わった。

 

「厳しくしてくれって言ったのはそっちだからね。これからも容赦はしないよ」

「ご指導ご鞭撻、ありがとうございました!」

「……ちゃんと体のケアはしとくんだよ」

 

 訓練が終わり、おつるはそそくさと訓練所を後にした。

 

「大丈夫? お兄ちゃん」

「あぁ。父さんは凄いな。あんなに強い人よりも、さらに上の地位に……」

「……はっ! わ、私もお兄ちゃんやパパには負けないよっ!?」

「楽しみだな。……でも、このままいけばリリーは俺の直属の部下になるんじゃないか?」

「え。お兄ちゃんが上司って、なんかヤダ」

「なっ……!」

 

 腹違いとはいえ、半分は海軍最強の男の遺伝子と血を受け継いだ、血の繋がった妹であるリリー。

 実の妹に上司になってほしくないと言われ、かなりのショックを受けた。

 

「だって、私がお兄ちゃんの隊に入っちゃったら、絶対に贔屓してるって言われるでしょ?」

「……あ、あぁ。そうだな」

「だからね、早く私も強くなって、お兄ちゃんやパパみたいに強くなるんだ!」

 

 フンスっ、と音が出るほどに強く鼻息を鳴らすリリー。

 ただ妹に嫌われてしまったのかと不安になった兄に対し、一人の海兵として立派な志を抱いていた妹。

 

「……負けないぞ」

「ほえ? 何が?」

 

 首を傾げながら間抜けな顔をしている妹に、心の中で密かにライバル心を抱いた兄であった。

 

「そろそろ戻ろうか。ヒナ母さんも戻っているんだろ?」

「うん。ママはパパと行っちゃったけど、ヒナお母さんと遊んでもらう約束してるんだー!」

「それはいいが、ちゃんとお手伝いもしなきゃだめだぞ?」

「分かってるよ。これでも、長女だもん!」

 

 ジャックハートが7歳の時に孕ませた女が産んだダレスと、ジャックハートが8歳の時にカリファが17歳にして産まれたリリー。

 そこから不特定多数の女性や、今ジャックハートが保有している女から産まれた数多くの兄弟姉妹の長男と長女は、自然と頼れる存在になっていた。

 

「いいなぁお兄ちゃん。パパからプレゼントもらうなんて」

「いいことばかりじゃないぞ? 泳げなくなるし、何より加減が難しい」

「ふーん。泳げなくなるのはヤダなー」

 

 海兵になっているとはいえ、まだまだ遊び盛りなリリー。

 8歳という年齢で一生泳げなくなってしまう決断は、まだできなかった。

 

「あ、でも、”メラメラの実”っていうのは食べてみたいかも」

「そんなオヤツ感覚で食べるなよ!?」

 

 実家への帰り際、とんでもないことを口にした妹に思わず驚嘆し、ツッコんでしまう。

 天然のものでは世界に100種しかない”悪魔の実”。食べれば凶悪な能力をその身に宿してしまうのだ。

 

「それにリリー、お前知ってるのか? 前の”メラメラの実”の能力者」

「うんっ! 戦争で死んじゃった人で、”火拳のエース”って人でしょ?」

「そうだ。なんでも、あのゴールド・ロジャーの実の息子で、白ひげの船員でもあったそうだ」

「ほへ〜。なんか強そうだね〜。でも、私達のお父さんも強いもんね!」

「……あぁ、そうだな」

 

 一等兵であるリリーと、准尉のダレス。

 もちろん上の地位にいる海兵との繋がりがより強いのはダレスであり、その分彼は自分の父の海軍内での評価は耳にタコができるほどには聞いていた。

 

「リリー」

「うん? どったの?」

「……父さんはな、強いどころでは済まないほどの強さらしい」

「どういうこと?」

 

 今は知らなくてもいい、とリリーの頭を撫でる。

 ダレス自身が昇進してきた理由として挙げられるのが、市民の安全確保や避難誘導など、戦闘ではない部分で大きな活躍をしてきたからだ。

 もちろんその間に父譲りの身体能力を生かして戦闘を行ったこともあるが、だからこそ分かる、父の凄さがある。

 

「海軍屈指の……いや、世界屈指の戦闘の達人だそうだ」

「ほえ〜。パパ凄い!」

「……あぁ。見習わないとな」

 

 常日頃から先輩に、女好き、戦闘狂、人殺しを躊躇わない、といった部分は父を見習うな、と口うるさく言われているダレス。

 しかし、海兵としての強さだけは父だけを見習うことにしていた。

 

 そんなことを話しながら歩いていると、いつの間にか家の前まで来ていた。

 

「たっだいまー!」

「ただいま」

 

 勢いよくリリーが玄関の扉を開け、その後にダレスが続いて入るいつもの光景。

 

「おかえりなさい、二人とも」

「ただいま、ヒナ母さん」

「ただいま! ……あ、起こしちゃだめだよね」

「そうしてくれると助かるわ。スピカもみんなも、今お昼寝を始めたところなの」

 

 玄関を開けて家の中に入ると、寝顔を浮かべる赤ん坊を抱きかかえながら歩いているヒナがいた。

 彼女の話を聞くに、他の弟や妹達も寝始めているという。

 

「うーん……。どうしよ」

「どうかした? この子達を起こさないようにするんだったら、何でもしていいけど?」

「スピカの寝顔見たら遊ぶ気無くなっちゃった」

「ふふっ、そう。じゃあ、リリーもお昼寝する?」

「……ううん! お庭でお兄ちゃんと訓練する! パパみたいに強くなるの!」

 

 そう言うや否や、強引に兄の手を掴んで庭へと駆け出していくリリー。

 ダレスも最初こそ驚いた顔をしていたが、父のように強くなると宣言したリリーを見て、自ずと走り始めた。

 

「……みんながジャックハート様の背中を追って成長していくなんて、ヒナ感激」

 

 自身が愛する人への想いを馳せながら、ヒナは取り掛かろうとしていた家事に取り組み始めた。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「あっ! んっ、や、ヤダ……! こんな、の……んぅうあぁっ! お、おかひくなっちゃうよぉ!」

「コアラ……!」

「気持ち良さそうでしょ? ジャックハートさんとのセックスは、すごいですよ?」

「ケハハハハ! おかしくなるって言ってるがよぉ……さっきから膣肉しまって愛液だだ漏れだぜ、コアラちゃん」

「きもちいいのぉ! す、すごすぎて、あっ、んひぁっ!」

 

 しんしんと雪が降りしきるテキーラウルフの橋の上で、ジャックハートは条件を呑んだコアラとの性交に臨んでいた。

 ジャックハートはただ下に履いていたものを下ろしただけだが、コアラはその身に何もつけていなかった。

 

「どうすんだよコアラちゃん。俺とのセックスを気に入ってくれたのは嬉しいが、燃え上がって服投げ捨てたのはお前の自己責任だぜ?」

「んぅっ、あぁんっ! はっ、あんっ、あ、い……イク、イクうぅぅぅううっ!」

「……こりゃ戻る気なんてなさそうだな。まあ、そりゃそうか。革命軍幹部が海軍本部大将にぶち犯されて、全裸のまま膣内精液塗れでこの寒い中船に戻るなんて、みっともなさすぎるだろ。ケハハァッ!」

 

 寒さから身を守るために体を動かすのか、それともこの男に殺されないために腰を振るのか。

 本人以外には全く、その理由は分からなかった。

 

「だがそれも、堕ちちまったんなら仕方ねぇ。俺が飼ってやるよ、コアラちゃん」

「はひぃいっ!」

「……まあ、お前が手に入ろうが入るまいが、革命軍を潰すことは世界政府の上層部の意向で決まってんだわ。コアラちゃんの初々しいセックスが気持ちよくて、つい言い忘れちまったぜ。悪いな」

「……へ?」

「ケハハ! やっぱ演技だったか。残念だったな。コアラちゃんを抱けば見逃してやるってのは、ジョー・ジャックハート個人としての言葉だ。海軍本部大将としての言葉は、世の中そんなに甘くねぇ、ってとこだな」

「……あ、アハ、アハハハッ!」

「ん? 壊れちまったか?」

 

 服もプライドも処女も捨てたコアラが守ろうとしていたもの。

 それはもちろん、革命軍という組織とそこに属している仲間たち。

 その全てを自分の体一つで守ることができると思っていた彼女に告げられたのは、冷酷すぎる言葉だった。

 

「まあそれはどうでもいいとして、だ。俺もそろそろ出そうだわ」

「……えっ? い、イヤ! やだ、やめてよぉ! んっ、はぁあっ!」

「ケハハハッ! 喘ぎながら否定されても、説得力がねぇよ!」

「ああぁぁぁああっ!」

「コアラッ!?」

 

 どくどくとジャックハートの鈴口から絶え間なくコアラの再奥に注がれていく精液。

 本人の意思、言葉とは裏腹に嬉しそうにジャックハートからの愛を受け入れていた淫裂から、愛液と精液の混合液が溢れる。

 

「……チッ、失神したか」

 

 絶頂を迎えたのか、はたまたどうしようもない現実から逃れようとしたのか、ジャックハートにとってどうでもいいことだが、使っていた女の意識を刈り取ってしまったことは事実。

 

「さて、お前の番だぜ。ロビンちゃん」

 

 だが幸いなことに、ここにはもう一人新しい女がいる。

 名器に凍死されても後味が悪いためコアラの身体を白いコートでくるみ、たしぎへと引き渡す。

 それと入れ違いになるように、海楼石の錠を外したニコ・ロビンを目の前に立たせる。

 

「攻撃はしてもいいが、その瞬間にコアラちゃんと”麦わらの一味”の命は保証しねぇ。一味の命をナミちゃんは大事にしたが、お前はどうする?」

「っ! あなた、ナミを……!」

「おぉ。すっかり俺にメロメロになっちまったみてぇだぜ。さすがにこんなとこでナミちゃんの時みたいに五日間も滞在する気はねぇから、やるなら一発だな。それで、見逃してやろう」

「……話には聞いていたけど、本当にゲスな男ね。こんな状況でなければ、近寄りたくもないわ」

「あんま萎えること言うなよ。つい、たしぎの手が滑るかも知れねぇぞ?」

 

 ロビンが振り向くと、そこには刀を抜いたたしぎがコアラの首筋に刃を当てていた。

 返答次第ではいつでも実行できる、という意思の表れだということは、聡明なロビンは考えなくても分かることだった。

 

「さっきも言っただろ? 俺はただ、お前という美女と一発ヤリてぇだけだって。それが終われば命も狙わねぇし、ちゃんと返してやるさ」

「……本当ね」

「当たり前だ。今ここにいるのは一人の女と男。海軍と海賊なんて肩書きはねぇ」

「……なら、気持ち良く抱いてくれないかしら」

「ケハハ。いいぜロビンちゃん。短い時間だが、たっぷりと愛し合おう」

 

 仲間を、自分を、そしてコアラと革命軍を救うために、ロビンも女を捨てることを決心した。

 

「あっ……!」

「ん? なんだ、えらく頬が赤いじゃねぇか。俺とコアラちゃんのセックス見て興奮したか?」

「……えぇ。その、あまりにも男らしくて、見惚れてしまったの」

「そうかそうか。そんなに気になるなら先に奉仕してくれよ。あぁ、後その前に」

「きゃあっ!」

 

 近づいてきたロビンのコートを剥ぐ。

 シャボンディ諸島から飛ばされてきた時の服のままなのか、この寒いテキーラウルフには合わない黒いノースリーブが現れ、それすらも破り捨てる。

 

「綺麗な体を隠さないでくれよ、ロビンちゃん」

「あなたのたくましい体も見たいわ」

「お安い御用」

 

 ロビンからそう言われ、上半身をまとっていた衣服を脱ぎ捨てるジャックハート。

 今まで幾度となく死線をくぐり抜けてきたロビンから見ても異常なほどの体に、思わず息を呑んだ。

 

「さ、ロビンちゃん。おいで」

「えぇ」

 

 互いに身に纏うものは何もない。

 そんな状態で、互いの体に暖を求めるかのように縮まった二人の距離は、あっという間に無くなった。

 

「……んむ、んちゅう……」

 

 ジャックハートの両腕に抱きしめられる中、彼の両頬に両手を添えたロビンが、彼の顔を引き寄せるようにして唇を強引に重ねた。




ジャックハートさんのプロフィールを適当に決めました。

身長 203cm(5話の時よりも伸びた)
体重 121kg

誕生日 11月18日(ジャック=11、ハー=8でト=10を足して18より)
好きなもの 女、殺し、休息

的な感じですね。なんと投稿日が誕生日という……狙ったわけじゃないです。

もし皆さんが他に気になるプロフィールとかがあれば、要望があれば活動報告に質問板のようなものを作りますので、どしどし聞いてください!


コメント、評価などお待ちしております!


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花開く善意

ロビンを楽しみにしていた方、申し訳ないです。ナミやハンコックより少ない描写になってしまいました。

サカズキの喋り方むっずいっす。

何はともあれ、この話から徐々に動いていきます。今までの理由付けとかも補足していくので、よろしくです。





「あいつもとうとう、海軍大将か……」

「なんだいシケた顔して。我が子のようにしごいてきた子が成長して嬉しく思うのが、親心ってもんじゃないのかい」

「おぉ、おつるちゃん。ダレスとの訓練は終わったか」

「終わったよ。……全く、嬉しいことかは分からないけど、順調にジャックハートの強さを受け継いでるよ、あの子たち」

「ぶわっはっはっは! そうかそうか。そりゃ、ワシもセンゴクも安心して後進の育成に専念できるというもんだ」

 

 海軍本部、マリンフォードの談話室。

 すでに聞いた情報でもあり、センゴクやサカズキからも直接教えられたことではあるが、正式な新聞として発行されたそれに載っている”ジョー・ジャックハート中将、大将への昇進が決定”という記事を見て、思わずガープの口から言葉が漏れた。

 

「掲げるのは”力こそ正義”、か。あいつらしいわい」

「唯一父親から教わった、自分の矜持の元になってる教えだね」

「そうじゃ」

 

 そう言って、ガープとつるが思い出すのはジャックハートがまだ中将ではなかった頃。

 幼い体には不釣り合いなほどに強力な覇気をその身に纏い、返り血を全身に浴びたジャックハートが放った言葉だった。

 

「世の中は全て、力を持ち、行使したものが正しくなる。知力、財力、権力、腕力があるもの。それらが無くても行動力、実行力、発信力を元に大人数で何かを実行しようとするもの。思考力、解決力を発揮できるもの。……何でもいい。とにかく力があるものが、世界で生きていける」

「間違っちゃいないね。世界中に海賊が溢れ出してる今じゃ、力がないと生きていけないのは事実さ」

「平和に暮らすには大したもんは要らんじゃろうが、戦いに身を置く以上、大事な心構えじゃ」

 

 少年期にすでに海兵としての心構えをほとんど完璧といっていいほどに理解していたのだ。

 海賊や賞金首たちと戦うことが多い海兵は、つまりより強い力を身につけていなければならない。

 

「だからジャックハートは、海賊たちがどんな力をつけてきても叩き潰せるように圧倒的な力、暴力をつけておる」

「その結果として海軍大将。何と言えばいいのか分からないね」

「大きくなったと言えばいいんじゃろうがのぅ……」

 

 ジャックハートが現段階で海軍に残しているものは非常に大きなものとなっている。

 各階級への最年少昇進、賞金首の最高捕獲率、少将になるまでに海賊船を沈めた最高記録などなど、様々な記録や偉業を彼自身が成し遂げてきた。

 

「元帥がセンゴクからサカズキに変わり、海軍の体制も世界情勢も著しく変わっている。そこを支えるのがジョー・ジャックハートの血筋になると、ワシは考えとるんじゃが……おつるちゃんはどう思う」

「あたしも同意見さ。戦闘センスの完全な遺伝方法まで会得するなんて、まさに天才としか言えないじゃないか」

「ぶわっはっは! 本人の闘争心や戦闘好きといった性格までは遺伝せずとも、そのセンスは全員が綺麗に受け継いでいる。受精させるときに精子に”覇気”を纏わせるやつ何ざ今まで聞いたこともない」

「言っておくけどね、ガープ。ダレス准尉はもう開花したよ」

「……これでようやくじゃが、一人目か。ジャックハートの血を受け継いだ”覇王色”の使い手は」

 

 本来ならば数百万人に一人しか身につけることができないとされている”覇王色の覇気”

 自身が持って生まれたジャックハートは、ダレスが生まれた際に意気揚々と宣言していたのだ。

 この子は……いや、俺の子は皆、俺の才能を受け継いで生まれてくる、と。

 

「大半がまだ赤ん坊で頭数には入れんが、全員が本当に開花するなら、ジャックハートの子だけで6人の”覇王色”の使い手の誕生じゃのう」

「海賊を捕まえると考えたらいいことじゃないか。……ガープ、此の期に及んで息子と孫の命は救ってくれ、なんて言わないだろうね」

「言いやせん、そんなこと。ルフィたちも、それは分かって自分で海に出た」

「そうかい。なら、海上でジャックハートに出会わないことだけは祈っとくんだね」

「そんなもん、当の昔からしておるわい」

 

 ガープ自身、息子のドラゴンが革命家となり、孫のルフィが海賊となった時点でそのぐらいのことは想定しているし、仕方ないと割り切っていた。

 しかし、ジャックハートにだけは捕まらないでくれ、とも祈っていた。

 ジャックハートに捕まった男の未来は、死ぬか半殺しにされてインペルダウンに投獄されるかの二択。

 満足な状態で入獄する確率が全くと言っていいほどになく、ガープも血の繋がった家族のそんな状態など見たくはない。

 

「ならなおさら、これからは熱心に祈りなよ。大将になったとはいえ、ジャックハートはジャックハート。元帥や上からもフットワークの軽さと圧倒的な強さを買われてる。奴は行くよ、新世界に」

「分かっとるさ。ジャックハートが見つける前に、支部の連中が捕まえてはくれんかのぅ……」

「まあ、期待はできないだろうね」

 

 しかし当然、海兵という立場から革命家と海賊の暴挙を簡単に見逃すわけにはいかない。

 そのため、比較的マシなダメージを負った状態で捕まって欲しい、というのがガープの正直な気持ちだった。

 

「ガープさん! おつるさん!」

「んぉ、どうした」

 

 話し込んでいる二人の元に、一人の若い海兵が駆けてきた。

 どうやら相当な距離を走っているようで、その額には玉のような汗が浮かび、止まって時には肩で息をするほどだった。

 

「じゃ、ジャックハート大将が戻ってきた時に、本部大将就任式並びに昇進式を行う、と!」

「了解」

「では、失礼します!」

「……電伝虫での連絡じゃ、いかんのか?」

「よく言うよ。あんた、どれだけかけても出ないじゃないか」

「ぶわっはっはっは! それもそうじゃ」

 

 ガープは豪快に笑い飛ばし、おつるはいつも通り平静を保ったまま、駆けていく海兵の背中を見つめていた。

 

 

 ◇

 

 

「んっ、あぁんっ!」

「意外とケツデカいんだな、ロビンちゃん。俺好みの安産型のいい尻だ」

「はぁ、ん、ぅあっ……! ふざ、けない……で……! 誰が、あなたとの子どもなんか……!」

「そう思ってるのは今だけさ。てか、お前の意思なんて関係ねぇよ」

 

 対面しながら抱きかかえられ、ひたすらに突き上げられ続けるロビン。

 駅弁スタイルという彼女にとって体の自由が奪われた体位で犯され続け、膣内にジャックハートの精液が放たれた回数はすでに10を超える。

 

「あぁっ!」

「それに、口ではそう言ってながら下はめちゃくちゃ正直だぜ? また膣内に、たっぷり射精()してやろうか?」

「……えぇ。お願い、射精()して……!」

 

 心の中では嫌と思いつつも、今はこの男に気に入られるように抱かれなければいけない立場にあるロビン。

 そのため、プレイ中は反抗しつつも、彼から提案されたものは全て受け入れなければならず、彼の要求全てに従わなければならない。

 

「ケハハァ! お望み通りに、ってなぁ!」

「あっ……! あ、んうぅ……、は、ぁあ……」

 

 子宮口を思い切り突かれ、嫌でも身体に力が入って彼の体を抱きしめてしまう。

 固く大きく怒張した彼の陰茎の形をすっかり覚え込んでしまった膣肉から精液が溢れ、同時にロビンが噴いた潮がジャックハートの下半身を濡らしていく。

 

「はあぁ、あっ、ん……はぁん……」

「ケハハ。マジでエロいなロビンちゃん。今までもこんな抱かれ方してたのか?」

「えぇ……。当時の私には、はぁ……! 賞金稼ぎから逃げる、力が無かったの……」

 

 ――悔しいけど、今まで抱かれてきたどんな男よりも上手いわ……。

 

 ロビンは今のこの状況を仕方ない、否、正直助かったとさえ思っていた。

 海軍でトップクラスの力を持つであろう男に抱かれるだけで、自分も革命軍も見逃してもらえるのだ。

 ”麦わらの一味”としても革命軍の全滅はやめてもらいたい彼女にとって、その提案は予想はしていても実際に起こるとは思っていなかった最高の結果。

 

 ただ一つ――

 

「ロビンちゃん。喉乾いたわ」

「んっ……ちゅう、じゅるるぅぅう!」

 

 ――この男のセックスの上手さに自分が感じてしまっていること以外は。

 

「ぷはっ。いやぁ、嬉しいねぇ。ロビンちゃんみたいな美女に、今までで一番セックスが上手い男だと思われるなんて」

「っ! ……見聞色、ね」

「あぁ。安心しろよ。マジでロビンちゃんとのセックスは気持ちいいからな。今の状況で脅してぎこちなくなっても嫌なだけだ。このまま一緒に気持ちよくなろうや」

 

 極寒の中でひたすらロビンを責め続けていたからか、彼の体には玉のような汗が浮かんでいる。

 対するロビンもその美しい肢体にじっとりと汗を浮かべ、額には前髪がぺたりと濡れてついている。

 

「ケハッ。なぁロビンちゃん。そろそろイキたいか?」

「……あなた、分かってやっていたの……?」

「当たり前だろ。お淑やかな女が絶頂を求める時が、めちゃくちゃどエロいってのに」

「はあぁんっ!」

 

 じゅぷっ、じゅぷっとジャックハートの大きく反り返った肉棒がロビンの雌の部分を苛める。

 この男に出会うまでは上げることがなかったような喘ぎ声をあげてしまい、彼の目を熱を孕んだ瞳で見つめてしまった。

 

「ん? どした、欲しいか? 気持ちいいって評判なんだぜ、俺の本気はよ。なあたしぎ」

「はい。それは、もう……ジャックハートさんに抱かれてすごく幸せというか……ほら、見てください。先ほど強引に抱かれたコアラさんも、夢の中でも喘いでますから」

「はぁ……ん、あっ……は、あぁ……。ジャック、ハート……」

 

 ピストンが止められ、顔を数十分前までジャックハートに抱かれていたコアラの方へと向ける。

 そこには、半ば無理やり処女を奪われ、ヤリ捨てられた状態にも関わらず、幸せそうな寝顔を浮かべる彼女の姿があった。

 

「素直になれよ、ロビンちゃん。さっきも言っただろ? ここにいるのは一人の男と一人の女。俺とのセックスで絶頂したいか、インポの仲間に囲まれていつ死ぬか分からねぇ日々を過ごすかの違いだ」

 

 ナミの時と同じく、警戒心を少しだけ解き、昂らせ、焦らし、そして雌の本能を目覚めさせるのだ。

 

「イカ……せて……!」

「ん? イカせてやるのは簡単だが、どんな風にイキてぇかをちゃんと言ってくれねぇとな」

「……ジャックハート様のおちんちんで、私をめちゃくちゃに犯して欲しいの……! お願い、イキたいのっ!」

 

 ロビンがその言葉を発するためのストッパーは、もはや

 機能していなかった。

 本来の彼女ならば絶対に言わないこと。だが、彼女も一人の人間であり女。普段の航海では決して得られないような快感に、抵抗できる術はなかった。

 

「了解だ。んじゃ、ぶっ飛ぶぐらいにイカせてやるよ!」

「はあぁあんっ! ああ、んっ……くぅ、んはぁっ!」

 

 無意識のうちにジャックハートの上半身にしがみつくロビンをただひたすらに突き上げる。

 熱を帯びたロビンの体よりもはるかに熱く燃え滾るように肉棒を求める彼女の蜜壺が大きなイチモツを受け入れ、ほぐれ切った肉襞が肉竿に絡みつく。

 

「はぁっ! あぁっ、あはぁあっ!」

「ケハハハッ! いいじゃねぇか、ロビンちゃん! そんなに乱れてくれるなんて、男として光栄だ!」

「あんっ! んはぁっ! イイっ、あっ、ん、ふ……ぁあっ、くふぅうっ!」

 

 もはやロビンは、誰に抱かれているかなどどうでもよかった。

 ただ、普段からチリのように微妙に積もり続けていた性欲や自分の女や雌の部分を解放してくれる強烈な雄に犯され、抱かれ、愛されたかった。

 

「もっと、もっとよっ! たりないのっ!」

「随分と素直になったじゃねぇか。そんじゃ、そのご褒美だ。ぶっ飛ばしてやるよっ!」

「あぁっ、あああぁぁあっ!」

 

 ジャックハートのピストンが加速していく。

 肉と肉のぶつかり合う音が一定間隔で響き、絶え間なく竿と壺が擦れ合う水音が奏でられる。

 

「孕めや、ロビンちゃんっ!」

「んはああぁっ! イク……うぅぅぁぁああぁあっ! ダメ、と、まら……ない……っ!」

 

 ロビンの奥深くへと突き入れられることで止まったその強烈なピストンの最後は、ロビンを絶頂させるには十分すぎた。

 膣内が精液で満たされていく何度目かの感覚に快感すら覚え始めながら、彼女は軽い絶頂を繰り返していた。

 

「お、なんだ。そんなに俺とのセックスが気に入ったか?」

「あぁんっ! ま、また……っ!」

「ほれっ」

「ひああぁぁぁあああっ! イクッ、いくぅぅぅうううっ!!」

 

 大量の精液を吐き出し終えたにも関わらず未だ完全な勃起状態を保ったジャックハートがロビンの膣奥を突く。

 その度に激しく絶頂し、身体全体を震わせ、豊満な胸を彼の上半身に押し付けるようにきつく抱きしめ、大量の潮を噴く。

 

「抱き心地の完璧な女だぜ、ロビンちゃん。初々しかったナミちゃんもいいが、ハンコックみてぇに妖艶に誘うロビンちゃんみたいな女とも、一日中繋がってみてぇもんだ」

「はーっ、はーっ……。お、お生憎さま、ね。これで、約束は果たしたでしょう?」

「あぁ、残念ながらな。てな訳で、だ。お前だけはここで見逃してやるよ、ロビンちゃん」

「え……。は、話が違うわ!」

「違わねぇよ。もう一回ちゃんと思い出せよ」

 

 ジャックハートの屹立した肉棒を愛おしそうに淫裂で咥えながら、ロビンは叫ぶ。

 彼女は自分が抱かれればコアラと自分、そして革命軍を見逃してもらえると考えていたのだ。

 

「俺がロビンちゃんに言ったのは、ロビンちゃんが攻撃してきたら全員の命の保証はしないってことと、抱けばロビンちゃん(・・・・・・)の命は見逃してやるってことだけだ。コアラちゃんとの話と混ざってんじゃねぇか?」

「そん、な……」

 

 確かに、誰を確実に逃がしてやる、とも誰を殺さない、とも明言はしていなかった。

 だからこそロビンは悟り、絶望してしまった。

 もう革命軍という組織は長くは持たないことを知ってしまったからだ。

 

「とはいえ、俺も今は気分がイイ。一発じゃなく大量にロビンちゃんに射精しちまったしな。それで、革命軍とロビンちゃんは見逃してやる」

「待ってっ! コアラはどうするの!?」

「決まってんだろ。持って帰って、俺の世話係だ」

 

 たしぎの手によりすでに衣服をある程度整えられたコアラは、すやすやと寝息を立てている。

 そんな彼女がはたしぎにより抱えられ、もう捉えられる寸前の状態だった。

 

「で、ロビンちゃんはどうする。どうしてもってんなら、一発どでかいのをぶち込んでやるぜ?」

「……残念ね。もうお腹いっぱいで入らないわ」

「ケハハ、そう言うと思ったぜ。安心しな。さっきのは俺の飛びっきり極上のやつを膣内に出してやったからよ」

「そう、ありがとう。じゃあもう……」

「釣れねぇなぁ、ロビンちゃん。せっかくちょっとだけとは言え、交わった男女の仲じゃねぇか。こんな短い時間しかイチャつけねぇなら、美女からの熱い口づけでもねぇと、満足出来ねぇわ」

 

 ジャックハートがそう言ってロビンの目をじっと見つめる。

 舌を絡めるキスなんて、それこそセックスの間に数え切れないほどに求められ、そしてそれに答えてきた。

 だが、今ここで彼から求められているのは、ロビン自身からの熱いキス。

 

「んむっ……くちゅ、ちゅう。じゅるる、んぷっ、んっはぁん……」

「ケハハ! なら俺も、お返しだ!」

「んはぁんっ! ちょ、ちょっと……んぁっ、イクッ……うぅぁぁああああっ!!」

 

 ロビンほどの美女から舌を入れられるほどの熱烈なキスを受け、お礼を返さないのは男として廃る。

 そう考えたジャックハートはキスを終えた後、思い切り腰を突き上げ、ロビンの最奥へと亀頭をねじ込み、大量の精液を解き放った。

 

「ケハハハハッ! まだいっぱいにはなってねぇぞロビンちゃん。文字通り、膣内全部を俺で満たしてやる」

「あ、あぁ……。ま、まだ出てるなんて……」

「抵抗しねぇってことは、もっと出してくれってことか?」

「うそ、でしょ……?」

「なーんてな。冗談だって。流石にこれ以上俺が本気出すと、ロビンちゃんの身体が心配になっちまう。大事にしてもらわなきゃならねぇし、な!」

「はぁあっ!」

 

 ちゅぽん、と小気味よい音を立ててロビンの陰裂からジャックハートの肉棒が引き抜かれた。

 射精された精液が相当に濃いものになっているのか膣内からは中々垂れてこず、粘り気の強い精液が、大量の愛液の中にほんの少しだけ混じって出てくる程度だった。

 

「ほら、ちゃんと歩けるか?」

「えぇ……。それにしても、本当に私だけは見逃してくれるのね」

「そりゃあそうさ。セックスする仲になった男女の約束だからな。嘘偽りはねぇよ」

「そう」

 

 ジャックハートに抱えられながら肉棒に突き上げられること数十分。

 ようやく彼との情事を終えることが出来たロビンは地面に降ろされた。

 積もった雪で濡れないように衣服を持っていたたしぎから服を受け取り、一刻も早く裸を隠すように着ていく。

 

「さて、じゃあなロビンちゃん。運がよけりゃ、革命軍の下っ端が来るだろうよ」

「……もう、来て欲しくはないわ」

「ケハハハ。俺の気分次第だな」

 

 それだけ言い残し、コアラを抱えたたしぎを従え、ジャックハートは本当に立ち去った。

 

「……はぁ」

 

 抱かれ続けた疲労からか、はたまた海軍大将と相対していた緊張感から解放されたためか、大きなため息をつくロビン。

 未だ熱を帯びる秘部に羞恥を覚え、捕まったコアラのことを思い出し、これからのことを考え、表情を二転三転させた彼女はおもむろに立ち上がり、フラつく足取りで歩み始めた。

 

「まずは、合流して報告するべきね……」

 

 革命軍がどこかに仮設テントのようなものを設営しているかもしれないし、そもそもまっすぐ歩き続ければいずれ革命軍の船にたどり着く。

 

 そう考えた彼女は、決して万全とは言えない体調でありながらも、しっかりと一歩一歩進んでいった。

 

 

 ◇ ◇

 

 

 ”東の海”にあるテキーラウルフにてニコ・ロビンとコアラを抱き、そのうちの一人を文字通りお持ち帰りしてから実に一ヶ月が経過した。

 

「あぁん、ジャックハート様っ! 私にもお情けを……」

「まあ待てよ、サディちゃん。さっき散々ドミノちゃんと一緒にハメてやっただろ?」

「で、でもぉ……」

「聞き分けのねぇ雌ブタは嫌いだぜ、俺ァ。順番待ちができるんなら、相手してやるよ」

「ん〜〜〜〜♡ はぁいっ」

 

 ジャックハートの船の自室にコアラと、インペルダウンに寄った際に転職させたサディとドミノの二人を加え、船はマリンフォードまであと少しというところまで来ていた。

 

「ありがとうございます、ジャックハート様。天竜人と世界政府からの異動命令なんて代物を、私たちのために……」

「ドミノちゃんたちのためじゃねぇ。俺の性欲発散のためだ。天竜人がエラく俺の活躍を気に入ってくれているらしくてな。ちょっとおねだりしたら貰えんのさ。あんなむさ苦しいとこ、ドミノちゃんみてぇな子がいるべき場所じゃねぇ」

「……はい」

 

 それは言うなれば、たしぎの時と同じような引き抜きの要素が濃い昇進だった。

 インペルダウンで苦しい時を共にした仲間に思うことがないわけではない。しかし、数年前に肉体関係を持ち、子を授かった二人はジャックハートの誘いに、すぐに頷いた。

 

「ん〜〜〜〜♡ ジャックハート様、メドウィーちゃんは元気かしら?」

「あぁ。もう3歳で、やんちゃ真っ盛りだ。俺の家に着いたら、今までの分たっぷりと愛してやってくれ。もちろんマークも元気だぜ、ドミノちゃん」

「よかった……」

 

 厳しいインペルダウンという環境か、それとも将来有望な人間の元で自分の子と悠々自適な生活を送りながらたまに愛する人との愛しい時間を過ごすか。

 人間として、女として、そして何よりジャックハートの雌として、彼女たちは異動を快く受け入れた。

 

「てかドミノちゃんはいいとして、サディちゃんはよかったのか? もう囚人たちの悲鳴が聞けねぇけど」

「ジャックハート様の近くにいれば、それだけで悲鳴なんていくらでも聞けるでしょう? それに、ジャックハート様に鳴かせられる自分の悲鳴も、聞いてて絶頂しちゃいそうになるもの」

「ケハハハ。そりゃ自分の悲鳴に感じてるんじゃねぇだろ?」

「えぇ。普段は他人の悲鳴を聞くのが好きよ。でも、あなただけは違うわ、ジャックハート様。あなたとのセックスでは、無限に責められ、犯され、イカされたいの」

「サドじゃなくてマゾ、だな」

「はァんっ!」

 

 ジャックハートのそのセリフに、身を捩らせながら絶頂するサディ。

 言葉だけでなく、実際にその陶器のような白い肌を紅潮させ、潮を噴き、淫裂からは滝のような愛液を溢す姿から本当に達していることが察することができる。

 

「ジャックハート中将っ! マリンフォードまで、あと5分程度です!」

「了解。だってよポルチェちゃん。どエロい騎乗位でイカせてくれや」

「任せて、ダーリンっ!」

 

 現在、ジャックハートは両脇に全裸のサディとドミノを寝かせた状態で自分も寝転がり、先ほどから嬉々として体全体を上下に動かすポルチェとの騎乗位に勤しんでいた。

 その極楽の時間も、マリンフォード到着が近づいていることから終わりが見えてきていた。

 

「っと、そうだポルチェちゃん。プレイの途中にサディちゃんとドミノちゃんの相手しちまってたからな。お詫びに何か欲しいものでもあればプレゼントしてやるぜ?」

「ホントッ!?」

「あぁ。本当さ」

「なら私、ダーリンとの赤ちゃんが欲しいわっ! ここに、ジャックハート様のザーメン、いっぱい注入して?」

 

 そう言ってポルチェが両手で作ったハート型で示したのは、生物として最も大事な部位と言っても過言ではない、生殖器の子宮がある下腹部だった。

 

「お安い御用。時間も迫ってるし都合よく高まってるし、速攻で大量に注いでやるよ!」

「ああぁんっ! んっ、ひ、やぁあっ! らめ、しゅ、しゅごしゅぎるうぅぅぅうっ!」

 

 ポルチェの両脚の付け根を掴んだジャックハートが、ポルチェの子宮めがけて腰を突き上げる。

 突き、子宮口と亀頭で叩くように刺激し、大きく出張ったカリでGスポットを抉る度に膣肉が搾精のために肉棒の根元から貪るようにうねる。

 

「あっ、イクッ……! イク、イクぅうっ! はぁんっ、ジャックハート様ぁんっ!」

「っらよ、受け取れっ!」

「はあああぁぁあんっ!」

 

 ジャックハートの肉棒を咥え切るどころか子宮内にまで侵入を許したポルチェの膣内に、容赦なくジャックハートの精液がなだれ込む。

 あっという間に体の奥深くを白く染め上げられたポルチェは、びくびくと全身を痙攣させて上半身を反らせた後、力尽きたかのようにジャックハートの方へと倒れた。

 

「幸せです、ジャックハート様……」

「俺も、家族や愛する人が増えればそれだけより強くならなきゃいけねぇって思える。これからも、俺の子を孕んでくれるか?」

「いやんっ、ダーリンったら。……そんなの、当たり前でしょう?」

 

 熱を孕んだポルチェの瞳が、ジャックハートの双眸を捉える。

 

「んっ……ちゅぅ、あむっ、んちゅる……」

 

 気がつけば唇同士の距離は無くなり、舌同士が熱く絡みついていた。

 

 

 

 数分後。

 

 

 

「ケハハハ。ひっさしぶりに戻ってきたが、随分と復興してんじゃねぇか」

「……まさかここに、捕まっていない立場としてくるとはな」

「ここが、マリンフォード……」

「あぁ、そうか。女ヶ島メンツとコアラちゃんは初めてか。ここが、これからの君たちが住む街になる、マリンフォードだ」

 

 ジャックハート一行は無事にマリンフォードへと帰還した。

 出迎えには数人の海兵がいたがその中でもやはり、赤ん坊を抱いているヒナの姿はすぐに分かった。

 

「ジャックハート様っ!」

「ようヒナちゃん。元気にしてたか?」

「えぇ。スピカも他のみんなも、相変わらずよ」

「そうか」

「それにしても、随分と増えたわね……」

 

 ジャックハートを真ん中にして、たしぎ、ボニー、ポルチェ、バレンタイン、ポーラ、カリファ、ハンコック、ラン、キキョウ、マーガレット、ネリネ、コアラ、サディ、ドミノ。

 マリンフォードにいるジャックハートの女が自分を含め計15人に増えたことに、さすがのヒナも驚くしかなかった。

 

「ゆくゆくは、今ここにはいない子たちも俺の元に来てもらう予定だ」

「そう。賑やかになりそうね」

 

 ヒナとそんな会話を広げていると、不意にジャックハートの両腕を柔らかい感触が包み込んだ。

 

「ん? どしたよ、ハンコックちゃん、マーガレットちゃん」

「ジャックハート様……その、男どもの汚らわしい視線が、怖いのです……」

「お腹の赤ちゃんに何かあったらと思うと、怖くて……」

「大丈夫だ。こいつらは一応俺の同僚。お前たちを襲わせやしねぇし、そもそも俺の所有物に手を出すアホはここにはいねぇよ」

 

 その感触の正体はハンコックとマーガレットの乳房だった。

 慣れない大人数の男の視線を浴び、かつ母としての自覚が出てきたのか、子を守るように身をジャックハートの腕ごと抱いた。

 

「それより、頑張ろうな2人とも。ここから出産までは厳しい戦いになる。俺も付き合ってあげられる時間は少ないが、力は尽くさせてもらう」

「ありがとうございます、ジャックハート様」

「……帰ってきたか、ジャックハート」

「あ、サカズキさん。ただいま戻りました」

 

 マーガレットとハンコックの少し膨らみ始めた下腹部を優しく撫でていると、群がっていた海兵達の中から元帥となったサカズキが現れた。

 その表情にはジャックハートの帰還がやや遅れたことに対する怒りなど、全く感じられない。

 

「アマゾン・リリーを壊滅させ、女帝と革命軍幹部を捕まえたのは上出来じゃ。他に、まだ終えていない報告があれば今聞くが」

「この2人が俺の子を妊娠、資金繰りや情報収集はいつも通りって感じっすね」

「そうか。これから、お前と他2名の大将就任式、並びに昇格式を行うのは知っちょるか」

「えぇ。それが終われば、俺の大将としての初仕事っすよね」

「と言っても、1ヶ月の休養じゃけぇ。好きに使うといい」

「うっす」

 

 それだけ言って、サカズキはジャックハートに背を向けて歩きだした。

 その後を追うようにしてジャックハートも歩き始め、彼の女達があとに続き、出迎えに来ていた下っ端の海兵達がさらに続く。

 

「……ジャックハート」

「なんすか?」

「センゴクやガープだけではない。わしやボルサリーノ、クザンも同様かそれ以上に期待しとる。活躍、楽しみに待っちょるけぇの」

「ケハハハ。それって、海兵としてっすか? それとも、俺の趣味のこともっすか?」

「両方じゃ。わしはセンゴクみたいにお前の女好きに文句は言わんけぇ、好きにせぇ。誰を何回孕ませようが、わしは何も言わん」

 

 サカズキから放たれたその言葉は、どこかにあったジャックハートを縛っていた鎖を解き放つには、十分すぎるものだった。




サディちゃんとドミノちゃん、異動。
なお既に一児の母の模様。

ロビンの描写が少なくなった代わりと言っちゃアレですが、この後出すのが確定したキャラを。
カリーナ
ペローナ
レベッカ
アイン
バカラ
この5キャラです、頑張ります。

原作にて年齢が明記されていないキャラは作者が勝手に決めていきます。ご了承ください。

コメント、評価などお待ちしております!


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浸透

【速報】テゾーロさん、優しくなる。

ここから2、3話挟んでから過去編に入るか、飛ばして新世界編です。
劇場版のキャラって、良くも悪くも日常パート少なすぎて何にも参考にならねぇ……。







 

 

 

 

 

 一人、氷とカクテルが入ったグラスを煽るジャックハートの元に、一人の男が笑みを浮かべて近づいてきた。

 

「これはこれはジャックハート大将。私のところをご贔屓にしてくださっているとは、光栄です」

「やっぱここが当たりやすくて気分がいいし、何より専用の待遇までしてくれるんだ。通わねぇ理由なんてねぇだろ、テゾーロさん」

「それほどのお褒めの言葉まで頂けるとは、ありがたい。……正直、ジャックハート大将がここに通ってくださるお陰で、煽てれば散財してくれる天竜人がホイホイと集まるので」

「だろうな。滅多に下に降りねぇあの人たちに情報吹き込みまくってるからな。これからも金づるにしてやれ」

「それはもう、遠慮なく」

 

 ぼんやりとした灯だけが男2人を照らす部屋。

 新世界を自由に航海するこの船の名は、グラン・テゾーロ。

 天竜人を忌み嫌っていたテゾーロだったが、目の前に座るジャックハートがその天竜人を手なずけていることを知り、彼の方からジャックハートへと交渉を持ちかけたのだ。

 

「てかいいのかよ。俺に金粉かけなくて」

「かけたところで、あの速度の”剃”と”覇王色”があっては太刀打ちできないので。ジャックハート大将と戦うか、良い関係を築くか。ただその後者を選んだだけです」

「そりゃそうか。……にしても、あんたも変わったな。天竜人を金づるにするとはいえ、関係を蜜に持つとは」

「……それも、ジャックハート大将のお陰ですよ。生涯天竜人を目の敵にして生きるより、どうせなら手のひらの上で遊ばせた方が面白い。そう考えるだけで、随分と楽です」

 

 そう言って、柔和な雰囲気を醸し出しながらテゾーロが赤ワインが入ったグラスを呷る。

 それに続くようにして、ジャックハートもグラスを傾けると、カランと高い透き通った音が重厚な壁に覆われた部屋に響く。

 

「それにしてもジャックハート大将。相変わらず、夜の方は絶好調なようで」

「あん? ……あぁ、女たちとのセックスのことか。自分で言うのもアレだが確かに絶好調だな。最近は特に、俺の体を完全に自分のモノに出来ている感覚がしててな。体力の回復速度も速ぇし、何もかもが成長してる」

「まさに成長期、ですか。頼もしいことだ。天竜人をカモにするパートナーとして信用しているあなたがさらに強くなるのは、私としても嬉しい限りです」

「ケハハ。俺も、グラン・テゾーロではかなりいい思いをさせてもらっている。あんたとはこれからもいい関係を続けていきてぇし、助け合いたいとも思っている」

 

 二人の関係は、やや歪なビジネスパートナーのようなものだ。

 数年前、ジャックハートが自身の少将昇進祝いでグラン・テゾーロを訪れた際、海軍の将来を担う候補筆頭としてこの船の主であるテゾーロと知り合った。

 当時は自身の生い立ちのこともあり天竜人を目の敵にしていたテゾーロだったが、ジャックハートとの会話で彼らにいちいち振り回されているような状況に気づき、変えた。否、変わった。

 

「金はこの世で最も分かりやすい力だ。ガキでも分かる力を、奴らから毟りとる」

「それができるのも、天竜人の間でジャックハート大将がグラン・テゾーロを気に入っているという情報が流れているからです。あなたは信頼という餌で天竜人をここに誘い、私はその見返りを払う。至って単純、シンプルだ」

「ケハハハ。そうさ、難しいことは何もねぇ。互いに気分良く生きるだけ、だな」

 

 空になったグラスに自分でカクテルを注ぎ、飲み干していく。

 性豪であり戦闘狂であるジャックハートだが、実はかなりの酒豪でもある。

 そんな彼の酔い癖は至って単純。普段の彼から分かるその性欲の強さに歯止めが利かなくなる、超絶倫状態になるのだ。

 

「……なぁテゾーロさん。あんたにゃ悪いが、俺ァいつまでも男二人で酒飲む趣味はねぇんすけど」

「まぁまぁ、もう少しだけ待ってください。今日はジャックハート大将の昇進祝いに、いつものコンパニオンともう一人、つい最近ここに入ったジャックハート大将好みの女性を用意しているんです。きっと、喜んでいただけるかと」

「ほう。じゃあここに連れてきている15人にその二人を加えて、一日中堪能しようとするか」

「はははっ、どうかお手柔らかに……っと、来たようですね」

 

 テゾーロがジャックハートに唯一と言ってもいい注意をしたところで、扉から軽いノック音が三回聞こえた。

 それに合わせテゾーロが立ち上がり、部屋を後にするべく扉の方へと向かう。

 

「ではジャックハート大将。どうか、最高の時間をグラン・テゾーロでお過ごしください。イッツァ、エンターテインメンツッ!」

 

 そう高らかに告げ、テゾーロは扉を開けて外に出た。

 付近に待機していたであろう女性と一言二言交わし、テゾーロの足音が遠ざかっていく。

 そして、ジャックハートだけが残ったVIP専用部屋に、二人のスタイル抜群の美女が二人入室した。

 

「いつもありがとうございます、ジャックハート様。今日も一段とクールで、セクシーなあなた様と過ごせることを、とても光栄に思います」

「よおバカラちゃん。さ、いつも通り横に来な。もう一人の子は、俺の左に」

「はい」

「かしこまりました」

 

 ここでのジャックハートの扱いは、あくまでも客。

 海軍大将という大きすぎる肩書きもあるが、先ほどからテゾーロとコンパニオンたちがへりくだった態度を取っているのは極上のサービスを提供するためである。

 この男にとっての極上のサービス。それは、言わずもがな美女との交流である。

 

「また私と過ごしてくださるなんて、そんなに気に入ってくださったの?」

「あぁ。バカラちゃんとは随分と相性がいいみたいでな。……君は?」

「グラン・テゾーロでの歌姫をさせてもらっています、カリーナと言います」

「へぇ……。”東の海”で女狐って呼ばれてた盗賊が、こんなところで歌姫とはな」

「っ!? あ、なた……。それを、どこで……」

 

 壁に沿うようにしてコの字に設置されたソファ。入り口から見て再奥に座るジャックハートの左にバカラが、右にカリーナという女性が座る。

 ジャックハートと二人の体の距離は無く、ジャックハートの体の側面に二人の露出した素肌が触れている。

 そのうちの一人、カリーナの表情がジャックハートの言葉で青ざめたものへと変わる。

 

「安心しろよ、リークなんてしねぇ。3年前に民家の裏で二回戦ほど愛し合ったのを覚えてねぇか?」

「っ! あの時の海兵が、ジョー・ジャックハートだったなんて……!」

「ケハハハ。あん時よりも気持ちよくイカせてやるよ。随分と成長していい女になったな。こりゃ、愛しがいがありそうだ」

 

 二人の出会いは3年前の東の海にある小さな島だった。

 盗賊として少しばかり名をあげていたが、まだ賞金首までにはなっていなかったカリーナを捉えたジャックハートが、見逃す代わりに肉体関係を求めたのだ。

 抵抗する術がなかったカリーナはそれを受諾。正常位と後背位でジャックハートが二回膣内射精する間に、カリーナが10回を超えて絶頂したのが慣れ初めだ。

 

「あら、二人とももう知り合いなの?」

「そうだな。じゃあ早速始めるか、バカラちゃん」

 

 彼のグラン・テゾーロでの扱いは、VIPの中でもさらに破格の待遇で迎え入れられる言わば超VIPのようなもの。

 VIP専用コンシェルジュのバカラとステージ上での歌姫のカリーナという二人の重要な人間を、コンパニオンとして丸一日テゾーロの方から貸し出すほどであり、それによってジャックハートを引き止めることができるのなら構わない、とテゾーロも考えている。

 

「かしこまりました。この後はどうなさいますか?」

「ちょっと時間潰したら俺が泊まってる部屋に行こう。最近ここに来れなかった分、たっぷり愛してやるよ」

「ふふっ、随分とエキサイティングな夜になりそうね。楽しみにしています」

 

 上半身をジャックハートに凭れさせるバカラ。

 左腕でジャックハートを抱きしめて自分の身体を押し付け、右手でジャックハートの股間を優しくまさぐる。

 

「もう準備万端?」

「あぁ、そりゃあな。これからこの2人の極上の美女を抱くんだ。ホモ野郎でもねぇ限り、普通の男は興奮するに決まってんだろ」

「ジャックハート様が普通の男性とは思えないですが、私たちを魅力に感じてくださり、1人の女として嬉しく思います」

「ケハハ。……じゃあ悪ぃがバカラちゃん。一発頼んでいいか?」

「はい。口か胸、どちらで?」

「口で頼む」

 

 ジャックハートのその言葉を聞いたバカラがテーブルの下から彼の開かれた両脚の間に入る。

 

「じゃあ下はバカラちゃんに任せるとして、上はカリーナちゃんに楽しませてもらおうか」

 

 早速バカラがジャックハートのズボンを脱がし、やや勃起状態になっている陰茎を手袋をつけたまま手淫し始める。

 擦るたびに少しずつそのサイズを大きくしていく陰茎は、あっという間にカリーナが知っているジャックハートの陰茎の大きさを凌駕した。

 

「っ、おっきい……。前は、そんなじゃなかったのに……」

「おいおいカリーナちゃん。俺らの初めては3年前だぜ? そん時はまだ俺は15だ。あれから体も何もかも成長したに決まってんだろ。もちろん、テクも上げたぜ?」

「……本当に、楽しめそう」

「ケハハハハハッ! そうさ、いちいちへりくだられたら俺も違和感しかねぇ。バカラちゃんはそういう言葉遣いと態度だが、カリーナちゃんももっと自然に振る舞ってくれよ」

「……ウシシっ! そうするわ。よろしくね、ジャックハート様」

 

 彼の指示により、VIPへの接客態度から一人の女性のそれへと変わる。

 やや強張っていた彼女の表情からその固さは消え、柔らかい笑みを浮かべると同時にジャックハートの上半身に凭れかかった。

 

「どうしたよ。えらく積極的だな」

「だって、ジャックハート様とのセックス以来、自分で慰めても満足にイケなかったんだもん。今日久しぶりに抱いてもらえるなんて、今からでも興奮しちゃう」

「ケハハッ! すっかり淫乱だな。別に、その呼び方じゃなくてもいいんだぜ?」

「いいの。私が好きで呼んでるだけだから。……そんなにおっきなオチンポで、あの時以上のテクニックでしょう? もう、ハマって抜け出せなくなりそう」

「もうなってんじゃねぇのか? ま、安心しとけ。イヤでもハマらせてやるよ」

 

 カリーナの背後から回されたジャックハートの左手がドレスの中にあるカリーナの大きな胸を直接揉みしだく。

 本番ではなく焦らすだけ、ということもありゆったりと優しく動かされている手だが、カリーナの頭の中には3年前のジャックハートの強烈な責めが浮かび上がっていた。

 

「ジャックハート様。口での奉仕を始めさせていただきます」

「おう、よろしく頼む」

「じゃあ私はジャックハート様をキスでおもてなしするわね」

「あぁ」

 

 そう言って、バカラはジャックハートのそそり立った肉棒に唇を当てて喉奥まで一気に咥え、カリーナはジャックハートの肩に両腕を絡ませて唇を彼の唇に強引に重ねた。

 

「ぐぽっ、んぐっ、じゅ、ぐぷぷ……! んごっ、じゅぷっ、じゅるうぅぅぅうっ!」

「ちゅむっ、んっ……ちゅぷっ、ぷはっ。ん、あむ、ちゅる……」

 

 顔を前後に動かしながら、文字通り口内全体を使ったバカラの口淫と舌を絡みつかせてくるカリーナからの激しいキス。

 カリーナのやわらかく豊かな乳房が体に押し当てられ、かつ美女二人が自分を昂らせるためにしているということもあり、ジャックハートの陰茎がさらに怒張していく。

 

「ん、ちゅ……。ケハハ。こりゃまたホテル戻っても大量に出ちまいそうだな」

「また?」

「あぁ。ここには海軍の軍艦じゃなくて俺の船で来たんだが、久しぶりにただ女とヤリまくってたんだわ。ホテル着いてからテゾーロさんの準備が整うまでもヤってたら全員くたばっちまってな。そこに二人が追加されるってわけだ」

「今まで何人の女の人を抱いたの?」

「数え切れねぇよそんなの。今ホテルに泊まらせてるのは15人だな。街じゃ、ナンパしてその夜限りってのがほとんどなんだわ」

 

 一旦唇を離し、カリーナとの他愛ない会話に花を咲かせる。

 グラン・テゾーロにはジャックハートが所有する船で来ており、その付き添いに数人の海兵を自腹で連れてきている。

 操舵や食事の用意など航海に必要なことを全て部下に押し付けて、マリンフォードからグラン・テゾーロのVIP専用部屋に入るまでひたすらに女たちを愛し続けた。

 その結果、誰一人として残ることなく、全員が意識を手放したのだ。

 

「期待してな。今まで体験したことがないようなセックスを見せてやるよ」

「ウシシッ、本当に楽しみっ!」

「てな訳で、だ。かなり早いがここでの時間は終わりにしてぇ。出すぜ、バカラちゃん」

 

 口淫を続けるバカラに視線と言葉で合図をすると、彼女から了承の意が込められたアイコンタクトが返ってくる。

 手で優しく撫でるようにしながら睾丸を揉みしだき、舌や頬の筋肉全てを使って竿に刺激を与えていく。

 

「っと、出るわ」

「んぶ……っ!」

「どんぐらい出たか見せてくれねぇか? 調節して、ほんのちょっとしか出てねぇはずだが」

「あ〜……」

 

 バカラが口を開けると、そこには唾液と混じった白濁液が溜まっていた。

 彼の言葉通りその射精量は彼の意思により抑制されており、普段の本番時に射精するときよりもはるかに少ない。

 

「んく。相変わらずすっごく濃い精液です……。こんなのをいっぱい膣内に射精されたら、孕んでしまいそう……」

「ケハハハッ! いやか?」

「いいえ、むしろウェルカムです。私たち二人を満足させていただけますか?」

「あぁ、約束しよう」

 

 器用にするりとテーブルの下からジャックハートの隣に戻ってきたバカラが妖艶に微笑みかける。

 言葉を交わし、グラスに注がれていたワインを口に含む彼女。

 彼の精液が解き放たれたとはいえ、これからいくらでも口づけをするかもしれない口をすすぎ、含んだワインを飲み干す。

 

「さてと、バカラちゃんもカリーナちゃんも準備はできたみてぇだな」

「えぇ」

「ウシシッ! いよいよね」

「あぁ。さ、行こうか。俺たちの愛の巣へ」

 

 ずっと胸を押し当て続けるカリーナとワインに口をつけほんの少しだけ頬が赤らんだバカラを立ち上がらせる。

 部屋の外に出るとすぐさま二人共がジャックハートの腕を抱きしめ、その豊かで柔らかい谷間に挟み込む。

 

「ケハハハッ! 最っ高じゃねぇか、この時間は」

 

 中将に昇進してからしばらくぶりの長期休暇。

 一ヶ月という長期間与えられたそれを、ジャックハートは一瞬一秒として無駄にはしなかった。

 

 

 ◇

 

 

 グラン・テゾーロには様々なホテルが各客層向けに、それこそ値段やサービスがピンキリのものが多数揃えられている。

 端金を握りしめて一攫千金を夢見てくる客への安宿。そして、ただ有り余る金と時間を消費したい客のための最高級宿。

 テゾーロの性格から高級な宿が大部分を占め、安宿はほぼないに等しい。

 

「まさか本当に、この部屋を使える人間が天竜人以外にもいたなんて……」

「ケハハ、だろうな。こんなに広くても数人じゃむしろ落ちつかねぇし使わねぇんじゃねぇか?」

「おっしゃる通り。一泊500万ベリーするここに泊まれるのは、本物のVIP。つまり、世界の超大物だけですもの」

 

 二人の美女を引き連れてジャックハートがたどり着いたのは、グラン・テゾーロが誇る7ツ星カジノホテルがある黄金の塔、"THE() REORO(レオーロ)"の客室の中の最上階、スイートエリアにある一つの扉の前。

 このエリアのおよそ5分の1の広さを誇る客室が、今回ジャックハートにテゾーロから与えられた部屋だった。

 

「ジャックハート様の海軍本部大将昇進祝いと、数多の女性のご懐妊のお祝いを兼ねて、です。気に入ってくれるだろう、とテゾーロ様からメッセージを頂いています」

「了解。またマリンフォード戻ったらマリージョアに手紙送っておく、って後で伝えといてくれるか。俺が言えば、ホイホイ行くだろうしな」

「かしこまりました。……では」

 

 ジャックハートの腕から両腕を離し、巨大なドアを開けるバカラ。

 一度荷物を置きに女たちと来たジャックハートだが、バカラとカリーナにとって今の彼は客。

 最高の気分で帰ってもらうために、最上級のサービス(・・・・)でもてなす。

 

「っ! ジャックハート様っ!」

 

 ドアが開けられると、部屋の中からジャックハートの姿を確認したのか、一人の女が駆け寄ってきた。

 黒く美しい長髪をたなびかせ、ぽっこりと膨らんできた身重であるはずのその体でありながら跳ねるように向かってきた彼女は、部屋に入ったジャックハートたちの目の前に止まった。

 

「おいおいハンコックちゃん。そんなに激しく動いて大丈夫なのか?」

「これでも体の丈夫さには少し自信があるのですが、ジャックハート様がそうおっしゃるのなら控えます」

「な、なぜ女帝がここに……!?」

「ん? そなたか、今わらわのことを懐かしい名で呼んだのは。わらわはもう海賊女帝などではない。ジャックハート様の愛人の一人、ボア・ハンコックじゃ」

 

 いきなり現れた大物海賊だった(・・・)美女に、バカラが驚いた声を上げる。

 しかし、彼女が驚くのも無理はない。

 下腹部に彫られた淫紋、元王下七武海としての威厳など感じさせない従う様、そして何より、膨らんだ腹部がバカラとカリーナの目を引いた。

 

「ハンコック様! あまり激しい運動をなさると、母体によろしくないかと……」

「説教は先程ジャックハート様から頂いたところじゃ、マーガレットよ。そもそも、そなたも子を、それも二人も身籠っている身。少しぐらい動きたい、という気持ちにはらんか?」

「それは、なりますが……」

 

 海軍本部の医者に見せたところ、ハンコックはおそらく一人、マーガレットは双子を妊娠していることが発覚した。

 二人とも初めての妊娠で体に何か変化が生じて体調を崩してしまわないかと心配されていたが、二人の九蛇の戦士としての体の強さもあり、大した不調に見舞われることもなく母子ともに健康そのもののようだ。

 

「確かに七武海剥奪の記事は出ていたけど……まさか、こんなことになっているなんて……」

「ケハハハ、驚いたか? 新聞屋どもには”俺の恩赦で海軍での奉仕活動”って握らせたが、この美女たち相手に俺がそんなことするわけねぇだろ?」

「はぅ……。ジャックハート様に美しいと言われると、身体が熱く……」

「わらわ達九蛇の女にとって、強さこそ美しさ。これほどの強さを持つジャックハート様に、心の底から惚れてしまっての」

 

 そう言いながらジャックハートの両腕を取り、部屋の奥へと誘導するハンコックとマーガレット。

 安定期に入ったとは言えないもののそれだけでジャックハートとの行為が否定されるわけでもなく、むしろ彼女達の方からジャックハートを誘惑していた。

 

「たしぎちゃんたちは?」

「風呂に入っております」

「よし。ハンコックちゃん、マーガレットちゃん、バカラちゃん、カリーナちゃん。まずは全員で裸の付き合いといこうか」

「かしこまりました」

「俺ぁちょいと電話かける用事がある。先に行っといてくれ」

 

 美女四人を浴室へと向かわせる。

 グラン・テゾーロ最大のスイートルームに備え付けられているそこは、浴室もそれはそれは大きいものとなっており、数十人が同時に入っても全く問題のない温泉のような作りになっている。

 部屋の奥、今回の訪問でジャックハートの部屋として割り当てられたそこへと向かい、部屋の奥にある電伝虫でマリンフォードに連絡を取る。

 

「さてと。……あぁ、俺だ。そっちの様子はどうだ? 俺がいねぇ分、大した仕事は入らねぇはずだが」

『お疲れ様です、ジャックハート大将! ジャックハート大将の昇進に合わせて昇進しましたが、ジャックハート大将の休暇明までは確かに大した仕事は入っておりません』

「そうか。俺が昇進したことでの異例の昇進だが、まだ中将だ。気楽にやれよ、マージ」

『はっ!』

 

 電話に出たのは、かつてのジャックハートの部下の中でも右腕として働いていたマージ。

 頂上戦争後、元帥となったサカズキが海軍を強くするために行った世界徴兵でジャックハートが大将に昇進し、それに引っ張られるようにして元々はジャックハートがいた中将の地位に就任。

 "覇王色"を扱えるようになってきたジョー・ダレスが准尉から少尉への異例のスピード昇進や、ジャックハートの部下が"覇気"や"六式"の扱いに長けてきたことによる一斉昇進など、異例づくしの世界徴兵となっていた。

 もっとも、その異常な戦闘能力から一年で大尉になったジョー・ジャックハートと比べれば、どうしても見劣りはしてしまうが。

 

「って、そんなんのために電話したんじゃねぇんだわ。俺宛に何か連絡なかったか?」

『そうですね……。一人、"東の海"の女性がジャックハートさんに口説かれ、秘書に誘われたのでここで働きたいという人が……』

「何ヶ月前に抱かれたって?」

『2、3ヶ月ほどだと』

「ビンゴだな、そりゃ本物だ。お前の方で迎え出しといてくれ」

『はっ!』

 

 ちょうど空島でナミを直後、空島を離れたジャックハートが偶然降り立った島でナンパした女性。

 その彼女と交わった時期と一致していたため、ジャックハートの表情が柔らかくなる。

 

「他にはねぇか?」

『ドレスローザとアラバスタから、毎日のように電話がかかってきています。休暇なら、自分の国でゆっくりと体を癒して欲しいと』

「そっちは俺が連絡しておく。まあ、最初っから両方行く予定だしよ」

『……どうやれば絶世の美女、それも王女と肉体関係どころか婚姻にまで持っていけるんですか……』

「そりゃあお前、愛に決まってんだろ」

『は、はぁ……』

 

 一ヶ月に及ぶ長期休暇をもらえたことをアラバスタとドレスローザに報告した際に、ヴィオラやモネ、そしてビビの妊娠報告を正式に受けた。

 アラバスタに滞在する時にはネフェルタリ・ジャックハートとして、ドレスローザには単純に海軍大将としてきてほしいと言われており、その際に子の名前や今後の生活の取り決めを行いたいらしい。

 

「あぁそうだ、マージ。お前、"覇気"の訓練は進んでるか?」

『はっ。ジャックハート大将とまではいきませんが、"武装色"に力を入れつつ、二つともを鍛えています』

「ならちょうどいい。休暇明けから修行に付き合ってくれや。俺も、中将時代から何も変わらねぇんじゃ示しがつかねぇ」

『承知しました』

「んじゃな。ま、俺みてぇにとは言わねぇが、それなりに頑張るこった」

 

 ガチャリ、と受話器を置くと電伝虫が眠り始めた。

 この一ヶ月の間にドレスローザとアラバスタに再び訪れ、かつ海軍本部大将の名に恥じないような力をつける地盤を固めなければならない。

 

「……ふーっ。なる前から感じてはいたが、やっぱ海軍大将ってめんどくせぇわ。個人個人の部下を持たなくてもいいのは楽だけどよ」

 

 ゴキゴキと首の骨を鳴らしながら腰掛けていた椅子から立ち上がり、本来の目的地であった浴室へと向かう。

 このスイートルームがある黄金の塔の下層にあるカジノの喧騒などはもちろん聞こえず、窓から見える景色は煌びやかに輝き続け、室内のジャックハートを照らす。

 

「ケハハハ。ま、ふさわしい身分と地位って考えりゃ納得できるか」

 

 そう一人言葉を漏らしながら、脱衣所に入り、一切の衣服を脱ぎ捨てる。

 日を増すごとに質が上がっていると自覚できるその鏡に映った肉体には幾らかの大きな刀傷や砲撃で受けたものが残っていた。

 

「相変わらず、見るたびにダセェ傷だな。もう痕になって消えることはないかもなー。ま、大将になるまでの不甲斐ない歴史とでも思えばいっか」

 

 そこに刻まれているのは、もちろん戦いの歴史。

 ビッグ・マム海賊団との半戦争のような戦い、ドンキホーテ海賊団との街中でのいざこざの時、頂上戦争で不意にもらった切り傷、少将の時に敵船から受けた砲撃など、様々な傷が残っている彼の体。

 今ですら懐かしい思い出のように振り返ることができる彼だが、何一つとして傷がついていない、心臓のある左胸を注視していた。

 

「……また今度会いに行くか。サディちゃんとドミノちゃん迎えに行った時にでも会えばよかったな。さすがに大将昇格ぐらい、あんな親でも伝えた方がよかったか?」

 

 薄く、しかしそれでいてはっきりと残る記憶。

 珍しく泥酔していない、ほろ酔い状態の父に拳を当てられながら熱く語られた幼少期の記憶を思い出していた。

 

「海軍大将が大罪人に会うってのもな……。今度モモンガさん辺りにでも行っていいか聞いとくか」

 

 そう呟きながら、ジャックハートは浴室に待っている自分だけの桃源郷への扉を開けた。




駆け足で新世界編に行こうか迷い中。
どうせ似たような本番描写になるやろしなぁ……って思いつつも新しく出さないといけないキャラを思い出して、あぁ……。


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必然の成熟

説明会やらバイトやらスマブラやらで遅れました。

できたら年末までに他の作品も合わせて一気に投稿したいなぁ……なんて。






 

 

 グラン・テゾーロで文字通り素敵な一夜を過ごしたジャックハートは、次の目的地へと向かっていた。

 もちろんバカラとカリーナに彼なりのプレゼントを渡すことも忘れることなく少し前までは優雅に波に揺られながら、いつも通りの生活を楽しんでいた。

 日に日にお腹が大きくなっていくハンコックとマーガレットの姿をより一層愛らしく感じながら、新しくつわりが始まったポルチェとバレンタインに気を使う日々を送って数日。

 

「……なあレベッカちゃん。お前、本当に14か?」

「……」

 

 やや俯いたまま小さくこくりと頷く目の前の美少女、レベッカ。

 ジャックハートは以前ヴィオラに頼まれていたレベッカを抱くという使命を果たすため、ドレスローザにあるコロシアムの内部に潜入していた。

 

「安心しな。俺ぁレベッカちゃんを殺すつもりなんてもちろんねぇし、むしろ味方だ」

「それは、どういう意味で?」

「ドフラミンゴに、表立ってはいないものの敵対心は抱いてる……っつーか、俺の場合は信頼しきってはいないって意味で、だ」

 

 警戒するようにジャックハートのことをじっと見つめていたレベッカの視線が、さらに厳しいものへと変わる。

 ドレスローザ国外にいる人物で、かつドフラミンゴの悪事を知っていながら見逃している男。さらにはこのコロシアムの内部にまで侵入することができることもあり、レベッカの警戒心が強まったのだ。

 

「あれ、ヴィオラちゃんから連絡入ってねぇのか? ここでは本名を名乗りにくいが、海軍にいるヴィオラちゃんの愛する人物、とでも言えば分かってくれると思ってたんだが」

「っ! まさか、海軍大将の……?」

「おっと、それ以上は言わないでくれよ。ここにいるのは謎のマスク男、ジャックスだ」

 

 ヒントを出すことでジャックハートの正体を感づいたレベッカに一応注意を促しておく。

 先日の世界徴兵とほぼ同時に行われた海軍本部の大将就任式で大将が5人に増えたことは世界中に報じられた。

 そしてレベッカには、数ヶ月前、秘密裏にヴィオラから伝えられた情報があった。

 

「ってか、知ってるみたいだな。レベッカちゃんの考えていることであってるぜ。二人の間でだが、婚約関係になってる」

「……そんな人が、ここに何の用?」

「ま、そんな態度になるのは当然だわな。来た理由は単純。将来いい女になりそうな子に唾でもつけておこうかってな」

「ッ、ふざけないで! 私はっ! 私は、そんなことをしてあなたの助けを得なくたって、一人でドフラミンゴを倒してみせる!」

「酷なことを言うが、無理だ。100%な。誰かの助けがあったとしても、レベッカちゃんがあいつを倒すのは無理だ」

 

 レベッカが伝えられたこととは、ヴィオラに愛する男性ができたということ。そしてそれと、その人物が近いうちにレベッカに会いに行くということ。

 生活こそそうではないが、年齢を考えるとまだまだ思春期盛りのレベッカ。自分でドフラミンゴを倒すと意気込んでいるところに見知らぬ男がやってきて、警戒心を解くはずがなかった。

 だが、ジャックハートもそのことを分かって話を進める。

 

「武術、剣術、軍勢、個々の力、"覇気"、能力、そして意思。レベッカちゃんがあんなドス黒いやつと戦うには、足りないものが多すぎる」

「そんなもの――」

「やってみなくちゃ分からないってか? それが残念、新世界を知ってるやつなら分かるさ。あいつは、キミを何の躊躇いもなく殺してくるぜ?」

「――っ」

 

 殺しにくる。そう言われ、レベッカの思考と言動が止まった。

 ドフラミンゴを倒す。口ではそう言っているし、事実それを目標に強くなろうとしていた。

 だが、自分の命が逆に狙われるというのは、心のどこかでは考えていても現実味を帯びていなかったのだ。

 

「もちろんドフラミンゴを殺す方法ならいくらでもある。俺のツテを使って奴が食う飯に劇薬を仕込むでもよし、一人一人幹部を消していくもよし、最悪大事なものだけ運び出して、島そのものを消し去るのもありだ」

「そんなっ!」

「ひどいことは出来ねぇ、だろ? レベッカちゃんが考えてるのは濁りが一切無い綺麗な絵空事だ。真正面から全員殺さずにドフラミンゴを倒し、悪夢から覚まさせる。そんなことができるのは、あいつらよりも圧倒的な力を持ったやつだけだろう?」

 

 殺す、ではなく倒す。

 似たようで全く違うそれの難易度の違いは、海兵として最前線に立ち続けるジャックハートは嫌という程分かっていた。

 

「てかそもそも、命を奪いやしなくてもほとんど全てを壊滅させねぇとあの男は諦めねぇだろ。絶対に復讐に燃えるタイプだぜ、ありゃ」

「……じゃあ、どうすれば」

「簡単さ。今は自分の身を守ればいい。……君の元にドフラミンゴの幹部が来たら、"白龍"を怒らせてもいいのかとでも脅せばいいさ」

「"白龍"?」

「あ、こっちはまだ知られてないみたいだな。"赤犬"、"青雉"、"黄猿"、"藤虎"、"緑牛"、"白龍"。俺を含めた海軍の最強戦力の通り名だよ」

 

 今のレベッカではドフラミンゴを倒すことはもちろん、殺すことも不可能。

 そんなことは未来を見通せるほどの"見聞色"を使わずとも彼女も分かっており、そのためジャックハートが提示した"待つ"という選択肢は、それだけで魅力的なものだった。

 

「何、俺の名を出すだけだ。今のキミみたいな少女に見返りなんて求めやしねぇよ。あとは今まで通り、強くなるための訓練に明け暮れるといい」

「……何が、目的なの?」

「さぁな。それを言っちゃあ面白くねぇだろ。まあ、帰る前に一つだけ言っておくなら、戦闘の先輩として一つだけ。死ぬな。死ななければ、いつかチャンスは来る」

 

 死ねば終わりという過酷な世界で、ある意味最も核心をついた言葉。

 不十分な実力で特攻を仕掛けるよりも、地道な訓練が身を結ぶ。そしてその過程での安全確保のために、ジャックハートの名を出してもいいという許可を出しに来たのだ。

 

「ほ、本当にそれだけ言いに来たの?」

「あぁ。ぶっちゃけそんなエロい体してるとはいえ、まだ14歳だ。手を出す予定ではいたが、身体はエロくても幼い子を抱く趣味はないんでな」

「っ、へ、変態っ!」

「あー、まあそういう評価にはなるだろうよ。でも、その変態にキミの叔母であるヴィオラは恋してるんだぜ?」

「うっ……」

 

 そのジャックハートの言葉の数々は、完全にとまではいかないもののレベッカの警戒心を解いていくには十分なものだった。

 そもそもがヴィオラの婚約者であり、その正体は海軍本部大将。いずれドフラミンゴをなんとかしてくれるのでは、と彼女が心の中で思い始めた時点で彼はレベッカの中に入り込んでいた。

 

「何度も言うが、すまんが今は耐えてくれ。コロシアムの中では、ジャックスって名の男に愛されているとでも言えばいいさ」

「……さっきも言ってたけど、それはここでの名前なのよね?」

「そう。ま、あとは言ってみてのお楽しみだわな」

 

 一度評価を改め出すと、その方向に流されやすいのが人間というもの。

 それも、まだ若いレベッカが流されないことはなかった。

 

「じゃあ、元気でな。俺も準備が整い次第、キミを助けに来る」

「……期待せずに待ってるわ。私も、ドフラミンゴを倒すことを諦めたわけじゃないから」

「おう。頑張りな」

 

 "剃"でその場を去り、コロシアムの()に出るジャックハート。

 このコリーダコロシアムでは、選手は一度入ると普通は二度と外に出ることはない。外に出る出口を知っているのはドンキホーテファミリーの関係者のみである。

 

「終わったぜ、ベビー5ちゃん。親子水入らずのデートと行こうか」

「えぇ、ジャックハート様」

 

 そしてもちろん、ベビー5、モネ、ヴィオラと繋がりがあるジャックハートがその抜け道を知らないはずがなかった。

 

「なあベビー5ちゃん。一体いつ俺のとこに来てくれるんだよ。一生を俺に捧げてくれるって話はどこいったんだ?」

「あなた様に必要とされるのであれば、どこへでも……」

「そうか。真面目な話、ちゃんと考えておいてくれよ?」

 

 ――ぶっちゃけもう、あの人は用済みだからな。

 

 自分たちの子どもである赤ん坊をだき抱えながら歩くベビー5の尻肉を掴み、ジャックハートは獰猛な笑みを浮かべていた。

 

 

 ◇

 

 

 それからさらに数週間が経過した。

 

 ジャックハートが想像していた通り、ドレスローザの王宮内ではモネとヴィオラからしつこいぐらいに結婚の段取りと子どもの名前を求められた。

 事前に決めていた名を彼女たちに教え、命名を預ける形ですぐさまドレスローザを去ることになったのだ。

 

 その後、何もしなくていいという休暇を生かして船の上で自分の肉体をいじめ抜き、今度はアラバスタへと赴いた。

 

「さぁさぁジャックハートくん、どんどん飲みたまえ!」

「あざっす。いやぁ、1年に満たない内に、随分と豊かになりましたね」

「それもこれもキミのお陰さ。海軍大将の妻がいるこの国を襲う輩はまだいるが、その全てを無力化してくれるとは」

「俺は当然の仕事をしてるまでっすよ。クロコダイルからコブラさんに、本質を知られていないクズから本当にいい人に変わったから、アラバスタも変わったんです」

 

 現在ジャックハートの対面に座っているのは、彼の義父であるネフェルタリ・コブラ。現アラバスタの国王である。

 結婚式はもちろんのこと、正式な婚姻関係となり、“偉大なる航路“前半でのジャックハートの主な基点となるこの国の主と近しい関係になり、今はビビを除いた2人だけで酒を飲んでいた。

 

「本質は変わっていないさ。国民があり、国がある。国民一人一人の強さがアラバスタをより良きものへと変えたのだ」

「……お言葉通りっす」

「ところでジャックハートくん。ビビとの関係はどうだい?」

「良好、と思いたいっすね。結婚して直ぐに子どももデキましたし、毎晩のように電話はしてますし。会えないのは寂しいっすけど、ちゃんと愛して、愛されてるとは思います」

 

 話のネタはもちろん、ジャックハートとビビについてだ。

 海軍きっての若手有望株であり、事実大将にまで上り詰めたジャックハートを婿に迎え入れることに成功したアラバスタは、それだけで他国から一目置かれることになった。

 と言っても、当の本人たちはただジャックハートがビビに近寄り、紆余曲折はあったもののゴールインしただけとしか考えていない。

 

「私はジャックハートさんと結ばれて幸せよ、パパ。確かにエッチなところもあるけど、かっこよくてこんなに頼り甲斐がある人なんて、そういないでしょ?」

「俺も幸せだぜ、ビビちゃん。こんなにも優しくて可愛い、そしてこんな俺のことを想ってくれるんだ。絶対、幸せにする」

 

 男二人だけがいたその空間に、髪を後ろでくくり白のマタニティドレスに身を包んだビビが加わる。

 何も言うことなく長椅子に座っていたジャックハートの横に腰を下ろし、頭を彼の肩に乗せた。

 

「ふふっ、幸せにするじゃなくて、幸せになろう、じゃない?」

「……だな。俺は一緒に居られる時間は少ないだろうが、3人(・・)で幸せになろう」

「えぇ」

 

 電話越しでは数え切れないほどに囁きあってきた愛の言葉を、直接自分たちの声で相手に届ける。

 ビビの両手とジャックハートの右手が彼女の大きくなった腹部に当てられ、出産を数ヶ月後に控えた彼女の中に眠る小さな命が反応した。

 

「はっはっは。ビビをよろしく頼むよ、ジャックハートくん。これからも二人仲睦まじく、親子仲良く過ごしてくれ」

「任せてください」

「大丈夫よパパ。……ねぇ、ジャックハートさん。今夜は、その……泊まっていくの?」

 

 ビビの美しい手がジャックハートの内腿をゆっくりと撫でる。

 その手の向かう先は彼の股間部であり、気づけばビビの息遣いが普段よりも荒くなっていた。

 

「そうさせてもらう予定だ。さて、そろそろ風呂を借りようかな」

「分かりました」

「ビビ、ジャックハートくん。安心しなさい、寝室は私のところとは離してあるし、従者たちももちろん離れるように言っている」

「も、もうっ! パパ! 行きましょ、ジャックハートさん!」

 

 ワインを飲み干したジャックハートの手を掴み、椅子を立つビビ。

 妊婦、それも自分の子を妊娠しているということもあり、ジャックハートは彼女の先導に従った。

 

 彼女にとってはやや早いペースで歩き、辿り着いたのは大浴場の女子更衣室(・・・・・)

 ジャックハートがアラバスタを訪れるというイベントのため特定の人間のみが使える貸切状態になったそこに、ビビがジャックハートを連れ込んだ。

 

「はぁ、はぁ……。あなた……」

「やっと、二人きりになれたな」

「えぇ。……んっ、くちゅ、ちゅぱ……ん、ふぅ、ぷはっ。んむっ、ちゅう……」

 

 そしてそのまま、息を切らした身体を押し付けるかのようにして、彼の唇を奪った。

 貪るように口内を舌で嘗め回して蹂躙し尽くし、満足した彼女は銀の糸を引かせて唇を離す。

 

「ぷはっ、ごちそうさまっ」

「ケハハハ。随分と積極的になったな、ビビちゃん」

「当然でしょ? こんなに長い間、会えなかったんですもの……」

 

 頬を赤らめて彼を見上げるビビの表情は、先ほどまでコブラといた時の娘であり、王女としての表情ではなく、一人の恋する女性のものへと変わっていた。

 

「にしても意外だったぜ。まさかコブラさんがあそこまで俺を評価してくれているとは」

「海軍の手が入れば、いずれにせよクロコダイルは失脚していただろう、って言っていたわ。それに何より、国の地盤が緩くなっている時に外部からの圧力を止めてくれたことに感謝しているみたい」

「へぇ……。つっても、一ヶ月弱張り込んで来た奴ら全員とっ捕まえただけなんだがな」

「その全員捕まえた、っていうのがすごいんでしょ?」

 

 互いに目を合わせながら衣服を脱いでいく。

 今回ジャックハートがビビと共に大浴場に来たのは他でもない、ただ入浴するためである。

 

「まあ、"覇王色"ぶっ放すだけで気絶するやつがほとんどだったしな」

「それって、使ったらみんな倒れるっていう?」

「そうそう。ビビちゃんの目の前でお披露目するようなやばい状態にはしたくねぇが、ま、そのうちな。さ、入ろうか」

「えぇ」

 

 完全に衣服を脱ぎ去り、そこにあるのは男女の全裸。

 ビビのお腹には二人の愛の結晶が宿っており、元の彼女の細いウエストを考えると、随分と大きく膨らんでいるように感じる。

 

「あっ、ジャックハートさんにビビさん。お疲れさまです」

「おうたしぎちゃん。楽しんでるか?」

「はいっ。んーっ、海軍にいてこんな王宮の大浴場が使えるなんて、思ってもいませんでした」

「赤ちゃんのこともあるので少しぬるいですが、ゆっくりしてくださいね」

 

 転ばないようにしっかりとビビの手を握り、大浴場の女風呂の扉を開ける。

 そこには、見慣れた男風呂と同じ構造の浴場に、見慣れた全裸の女性たちがいた。

 コブラやビビにもたしぎやハンコックたちの存在はすでに明かしており、ジャックハートのお付きという形で王宮での滞在が認められているのだ。

 

「それにしても随分とモテるんですね、ジャックハートさん」

「んな冷てぇ言い方やめてくれよビビちゃん。ここにいるメンツで俺が妻だと認めてるのはビビちゃんだけだぜ。……今んとこ」

「い、今のところ?」

「あっ、私も中将に昇進することができたら、一人の女として愛してくれるって約束してもらいましたよ?」

「むぅ〜……」

 

 自分以外にそう言った関係の女性がいるということは知らされてはいたが、実際にその人物が目の前に現れると当然思うところはある。

 それはビビにも当てはまることであり、嫉妬か対抗心かは分からないが、胸の奥底に沸いたなんとも言えない感情を隠すためにビビは彼の腕をその豊満な谷間に挟み込むように抱きしめた。

 

「安心しろって、ビビちゃん。ビビちゃんのことももちろん大切に思ってるし、愛してるからよ」

「それなら、大丈夫です。ジャックハートさんに愛されている証は、ここに……」

「むぐぐ……」

 

 会話の中で、今度はビビがたしぎに見せつけるように彼の子を孕んだお腹をゆっくりと撫でる。

 うっすらと笑みを浮かべながら互いに牽制し合い、睨み合うビビとたしぎ。

 おっかない雰囲気を出しているそんな空間の中心にいるジャックハートはそんなことなど気にも止めず、目を細めて大きな欠伸をした。

 

「いつまでもこんなとこにいたら風邪引くぜ? ビビちゃんは特に、注意しねぇと」

「あっ、そうですね。たしぎさんも、ごめんなさい」

「それに、2人で喧嘩しなくたって大丈夫だ。お前達二人分の愛ぐらい、余裕で受け止めてやる」

「……ふふっ。それもそうですね。こちらこそすいませんでした、ビビさん。じゃ、行きましょうか。ジャックハートさん」

 

 彼の一言で多くを語らずに和解した二人。

 先ほどまでと同じくビビがジャックハートの右腕を取り、その反対側にたしぎが抱きつく。

 

「ケハハハッ! いやぁ、最高だぜ。こういう両手に花の状態を作るのは俺の一つの夢だったからな。その相手がビビちゃんやたしぎちゃん、ハンコック。今じゃ喜んで俺の雌犬になるポルチェちゃんたち。まさに毎日が充実してるって感じだぜ」

「私はいつでも、ジャックハートさんに愛されるのを待っていますよ?」

「あぁ。期待しとけよ、たしぎちゃん」

「私も、この子が生まれた時に、また会いたいです……」

「いいぜビビちゃん。そん時に、君を攫いに来よう」

「まぁっ。……ふふ、楽しみに待ってるわね」

 

 ビビがキザなセリフに少し驚きながらも、笑みを浮かべて彼に期待を向ける。

 ジャックハートがその大きな体を湯船に浸していく後を追うように、たしぎとビビも浸かっていく。

 

「で、調子はどうだ、コアラちゃん。これから一生俺の奴隷として生きていく覚悟っつうか、認識はできたか?」

「――っ、こんなことして、革命軍が黙ってるとでも思ってるの!?」

「思いたいね。黙ってんなら、幹部一人の命で組織を生き残らせようとする有能の集まりだ。もし仮に黙ってないなら、せっかく助かった命をドブに捨てるアホの集まりってことだろ?」

 

 たしぎとビビを両手に侍らせて湯船に浸かるジャックハートの対面には、彼らと同じく全裸のコアラが彼を睨みつけていた。

 テキーラウルフでの一件が全てコアラの演技だったことは既に彼にバレているが、それでも殺さずに手元に置いている。

 

「そんな賢いお仲間さんが、もしかしたら取り返しに来てくれるかもしれないことを願いながら、キミは俺に抱かれ続けるしかねぇってわけだ。ケハハハハッ!」

「っ、本ッ当に最低な男……!」

「あぁ? そりゃ自己紹介かよ。正規の手段で上に訴えることができねぇからって、違法な行為を繰り返す。んな無法者集団の元幹部に最低とか言われたくねぇな」

「くっ……」

 

 目の前の男から放たれる言葉に、コアラはどうしても言い返せなかった。

 元より革命軍幹部と海軍大将。世間的な発言力の強さや影響力は比べることが出来ないほどの差があり、もちろん世論は海軍を支持する。

 

「いったいこの世界のどこに変えなきゃならねぇもんがあるってんだ。力さえあれば、こうして世界最高の美女に自分の子を孕ませられるし、今みてぇにいろんな美女に囲わせることだってできる」

「あなたや、それこそ天竜人のような強い権力者に虐げられ、その上海賊にまで襲われる人たちがいる。その人たちを救うために、世界政府を倒すの」

「はぁ? んなもん、ただそいつらが弱ぇだけだろ。ってか、世界政府転覆させてどうすんだよ」

 

 目はしっかりとコアラの方を向いているが、彼の右腕はビビの背後に回り、その大きな手で先ほどからゆっくりと乳房がもまれている。

 左腕はたしぎの背中に回され、その手は陰部に当てられている。その手で何かをされているのだろう、たしぎの顔は蕩けきっており、艶めかしい声を上げている。

 

「世界政府を倒せたとしよう。そしたらどうなる。俺らやインペルダウン、エニエスロビーの体制はガタガタ。それこそ、今以上の大海賊時代の幕開けさ。それを防ぐため、革命軍が第二の世界政府になるとしよう。反感を買って、そんな組織一夜と持たずに壊滅だ」

「革命軍が倒したいのは、世界政府の悪い部分だけよ」

「ケハハ。その悪い部分があるからこそ、均衡が取れてるんだ。それだけ倒せば簡単に世界が良くなるとでも思ってんのかよ」

 

 ビビの胸を揉みしだき、たしぎに手淫をしながら、ジャックハートは続ける。

 

「崩壊するに決まってんだろ。天竜人が消えりゃあ、今度は虐げられていた奴隷たちが一気に解放される。極悪人、賞金首、犯罪者、能力者。んで、世界政府が倒れた後始末に俺らが追われ、その隙に海賊も大暴れだろ」

「……そんなの」

「あぁ、分からねぇよ。やってみなくちゃな。だが、どこのどいつにどんな感情があるのか、なんてことも誰にも分からねぇ」

 

 ビクビク、と声を殺してジャックハートの左腕の中で達したたしぎの淫裂から手を引き、コアラに差し出す。

 その差し出された手に対して、彼女に与えられている選択肢は一つしかなかった。

 

「それに、今や海兵の性奴隷になってる元幹部がわざわざ考えることじゃねぇだろ」

「っ!」

「……何度も言わせんじゃねぇよ。俺ぁ、俺が抱いてて気分がいい女しか抱かねえ。そんな反抗的な態度を取るなら、今日のノルマは未達成だな」

「…………お願い、します。ジャックハート様……。革命軍に残ることよりもジャックハート様に抱かれることを選んだ淫乱を、より激しく調教してください……!」

「ケハハハハッ! 今日のは一段と滑稽だな。いいぜ、いつも通り脱水症状になるまで潮吹かせてやる」

 

 ジャックハートがコアラに求めるのは、一日1回の膣内射精と、その度の違う文言による誘惑。

 では、何のためにそんなことをするのか。

 その理由は至って簡単なもので、ただ単なる彼の思いつきだ。

 言わなければ自身の死か革命軍の壊滅が確定してしまうコアラは、目尻に涙を浮かべながらジャックハートを求めた。

 

「何だよ、嬉しそうじゃねぇな。従順で思いっきりヨガるコアラちゃんが可愛いから、せっかくお前のことを思って俺の権限で革命軍に攻撃を仕掛けるのは止めろって言ってんのによ」

「っ、そ、そんなことありませんっ!」

「ほう。……じゃあその言葉が本当かどうか、この後ベッドの上で確かめさせてもらおうか」

「……はい」

 

 淫猥で発情した表情を張り付ける。

 コアラの身体という足止めがなければ、すぐにでもジャックハート本人が革命軍を潰しにいくということを、コアラは何となく悟っていた。

 

 ――勝てない。

 

 単に力の強さだけではない、形容し難い理不尽。何をどうすればこの男を止めることができるのか、コアラには答えを出すことができなかった。

 

「ってか意外だな。てっきりビビちゃんはこういうのいやがると思ってたんだが」

「海兵と王女、その棲み分けは大事なんでしょ? 私にとっては旦那様だけど、他のほとんどの人にとっては海軍大将のジャックハートさんだもの。私にはそんな酷いことを言わせたりはしないって信じてるけど、他の人、それも革命軍の人なら仕方ないのかなって」

「ケハハ、なるほどな。そりゃ王族にとっても革命軍なんてのは良いイメージは持たねぇわな」

 

 ジャックハートに媚びるただの雌犬となった表情の裏で、コアラは苦悶の感情を抱いていた。

 革命軍にいた時にも感じていたことだが、最近妙に行動が取りづらくなっていたのだ。

 

「天竜人や他国の王の印象操作、新聞の記事の修正、それによる民意の誘導。大将ってのは、バカみてぇに権力与えられてるからな」

「っ!」

「ん、どうしたよコアラちゃん。俺が何か、悪いことでもしたか? 海軍本部大将として、危険なものは危険だと世界に伝えただけなんだが」

「……いえ、何も、してないです」

「ケハハハハ。そりゃそうだろう。海軍と革命軍と海賊。どれが危険でどれが守ってくれるか、それをただ知ってもらっただけさ」

「編集って……革命軍が危ないことをしているのは事実じゃないの?」

「あぁ、それは事実さ。まあ、平和なところでわざわざ争いに巻き込まれたくもないだろ?」

 

 薄々感づいてはいたが、それらの原因にいたのが海軍本部。

 新聞も海賊を褒め称えるような記事を書くはずがなく、四皇や超新星、その他の大型ルーキーについての注意を促す記事や、海軍の活躍により危険な海賊が捉えられた記事を大きく取り扱うなど、民衆への注意喚起をしていた。

 

「だいたい、自分らが違法な行為をしてるってことに気づいてないのかねぇ。海賊だぜ? 略奪、殺人、襲撃、民衆に危険が及ぶ戦闘。そんなもん、世間一般が快く認めるとでも思ってんのかよ」

「ジャックハート様、そろそろお体の方を……」

「おぉ、頼むわカリファちゃん。じゃあ相方はサディちゃんにでも頼むとするか」

「はぁい、ジャックハート様ぁ♡」

 

 立ち上がったジャックハートの体を支える様に手を取るカリファと腕に抱きつくサディ。

 いったいこの男にどんな魅力を彼女たちは感じているのか、と疑問に思うコアラの眼前には、ジャックハートの屹立した肉棒があった。

 

「ケハハ。安心しろよコアラちゃん。ちゃんとベッドの上でしこたま愛してやるからよ」

「っ。……よろしく、お願いします」

 

 王女や多くの国を味方につけ、海軍本部での圧倒的な地位を得て、なおかつ心の中までを見透かすことのできる"見聞色の覇気"を身につけている彼。

 そんな彼の前に、性奴隷と化してしまったコアラに反抗する術はなかった。




めんどくさいことが増えてきたので、ストレス発散にこの作品でジャックハートさんに好き勝手暴れてもらいます。


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出発

あけましておめでとうございます!(激遅)

展開に迷ってたら盛大に遅刻しました。
投稿出来かけまで書けたタイミングでインフルかかりました。

テンポ上げます。お詫びの若干ナミちゃん回です。新世界編入ったらもっと本番書けますので、お付き合いよろしくです。

それと、この話辺りから独自設定やら独自解釈やらが増えてきます。
苦手な方はご注意ください。





 

 

 

「え、ヴァイオレットちゃんとモネちゃん、無事に出産終わったってマジっすか?」

『あぁ、本当だ。母子ともに健康そのもの。それと、ベビー5も新しく恐らくお前の子を孕んだ』

「……あぁ、あん時っすか。了解です。また挨拶に行かせてもらいます」

『その話なんだがな、ジャックハート。もうそろそろ、3人の身体を報酬とした交渉はやめにしたいと考えている』

「……と、言うと?」

 

 長期休暇が終わりしばらく。

 久方ぶりにマリンフォードにある実家へと帰っていたジャックハートの元にかかってきた電話の主は、ドレスローザの現国王、ドンキホーテ・ドフラミンゴだった。

 

『フッフッフッ。何、こちらとしても幹部が休養で常に抜けられるのは痛い。お前の当初の要求とは異なる対価を、それこそお前の要望以上に出させてもらいたい』

「……ちょっと、考えさせてもらってもいいっすかね?」

『あぁ、存分に考えてくれ。次にお前がここに来た時、答えを聞かせてもらいたい』

「了解っす。じゃあすんません、引越しの作業があるんで」

『ん? ……そうか、"新世界"側に来るんだったな、海軍本部』

「そういうことっす。そんじゃ、また」

 

 ガチャリと乱暴に受話器を電伝虫に置くジャックハート。

 周りで忙しなく彼の所有物となっている女性たちや彼の子どもたちが動いている中で掛かってきたその内容は、彼を苛立たせるには十分な内容だった。

 

「ど、どうしたんですか? ジャックハートさん」

「……あのクソ野郎。ドレスローザの3人と俺の関係を強引に断とうとしてやがる」

「ヴィオラさんたちとの関係、ですよね」

「あぁ。……潮時だな。もう少し金の搾取と暇つぶし程度には遊べるとは思ってたんだが」

「おいジャックハート。お前のこの家で最後なんじゃ。パパッと終わらせてしまわんか」

「へいへい。ったく、なんで最後の日にジジイがいるんだよ。せっかくパーっと全員でイチャイチャしながら部下にやらせようと思ってたのによ」

「その考えが筒抜けだからじゃ」

 

 すでにビビが出産したという報告は受け、その次にジャックハートが孕ませたであろうハンコックとマーガレットはすでに"新世界"側の元々G‐1支部だった場所と入れ替えられたニューマリンフォードの病院内で安静にしていた。

 

「にしても、こんなとこでこんなことしてていいのかよ。仮にも伝説の海兵だろ?」

「そりゃ近いうちにお前さんが受け継ぐじゃろ。今や昼も夜も伝説の海兵。ワシより名は知れ渡るかもしれんの」

「そんなに褒めんなよ。これからもハッスルしたくなるだろ」

 

 食器や小物などを箱に詰め終え、後はただ全ての荷物を運び出し、レッドラインの向こう側へと運ぶだけ。

 "新世界"側で新しく買い換えればいいという意見もあったが、ジャックハートの身の回りに多い女性たちが使い慣れた物がいいと言ったため、大々的な引越しをする運びとなったのだ。

 

「それにしても変わっているな、お前は。普通、これだけの女性がお前を囲っているとなれば、もっと性だけに溺れていてもおかしくは無いと思うが」

「あぁ? ただ毎日ヤリまくるだけの海兵なんていらねぇだろ。俺ぁただ、いい女を合法的に多く抱ける手段を取ってるだけだっての。こいつらに俺の身の回り以外のことを自由にさせてるのも、ストレス溜められたら俺が気持ち良くセックスできねぇからだ」

「……はぁ。わしもお前さんほど若けりゃ、ボア・ハンコックにでも――」

「ズボン下ろして汚ねぇ粗チン晒した瞬間に死にてぇなら好きにしろよ。つっても、ハンコックちゃんの身体を俺が手放すわけがないけどな」

 

 ジャックハートが己を鍛えるのも、女に可能な限り好きにさせているのも、実力をつけて高い地位にいるのも、最終的には全て彼自身のため、というところに帰結する。

 海賊や犯罪者を好き勝手にいたぶることができる強さを得て、極上の女を最高の状態で抱き、指図を受けることが少ない立場に就く。

 その全てが、彼自身が気持ち良く生きるためなのだ。

 

「あ、思い出した。なあガープ。ちょいと聞きてえことがあるんだが」

「なんじゃ、いったい」

「俺がお前の息子と孫を殺すっつっても、別に構いやしねぇよな」

「……っ! そう、じゃな。だが、もし捕まえたのなら、少しだけワシに時間をくれんか」

「まあそんぐらいならいいぜ。その後はストレス発散に付き合わせるし」

 

 ふとジャックハートから切り出された話題は、ガープの血の繋がった家族である"革命家"ドラゴンと"麦わら"モンキー・D・ルフィーのことだった。

 ジャックハートとしてもその二人の関係者であるコアラ、ロビン、ナミと肉体関係を持ったこともあり、その処遇について血縁であるガープに聞いたのだ。

 

「ケハハハ。老兵は若いのに任せてゆっくり隠居しとけって。その二人捕まえたら真っ先にお前んとこに連れてってやるよ」

「うむ」

「んじゃ、そろそろ準備できたみたいだし、向こう行くわ。こっちでの新兵の育成頑張れよ」

「お前もな」

 

 これから現役の海軍大将として働くジャックハートは"新世界"のニューマリンフォードに移り、ガープは旧海軍本部となるマリンフォードに残り、若い海兵たち後進の育成に専念することとなる。

 顔をあわせる機会も少なくなり、今まで対等だった立場も微妙に変わる。

 

「元気でやれよ、クソジジイ」

「ちょいとは自重するんじゃな、クソガキ」

 

 いつも通り多くの女性を引き連れ、ジャックハートは家を後にした。

 

 

 ◇

 

 

「邪魔するぜ」

 

 1ヶ月の長期休暇を終えて数ヶ月、ジャックハートは再び空島を訪れていた。

 その間に交わった女体は両手の指で数えられる人数を超え、徐々に腹部が膨らんできている者も増えた。

 膨らんでいるだけではなく、その胎内にいた赤子を出産したものも数多い。

 そしてそれはもちろん、現在ジャックハートの元にいる女性だけではない。

 

「ようナミちゃん。俺たちの愛の結晶に、俺がパパだってことを教えさせてくれよ」

「ぁ……」

 

 10ヶ月前に5日間ほどジャックハートの所有物となり、彼の精液を一滴残らず体内に取り込んだナミもまた、孕んでいた。

 当時からくびれていたウエストは健在ではあるが、大きく変わっているのはナミが抱きかかえている小さな子ども。

 産まれて数ヶ月たったであろうその赤子は、元気にナミの左乳房に口を密着させて母乳を吸っていた。

 

「ケハハハ。ちゃんと栄養のある食事採ってんのか? ちゃんとママのでかいおっぱいから栄養貰うんだぜ、ベルメール」

「なん、で……あなたが、ここに……」

「俺とナミちゃんが出会ってからの日数考えたら、だいたいもう産まれてる時期かと思ってな。なんてったって俺とナミちゃんの子どもだ。可愛くねぇ訳がねぇし、ベルメールに挨拶しに来たんだわ」

 

 驚愕の表情を浮かべながらも赤子、ベルメールを抱き続けるナミに近づいていくジャックハート。

 ナミが出産し、育児を始めるための準備は終えていたため、特に触れることは無かった。

 

「い、いや……、来ないでっ!」

「ヒス起こすんじゃねぇよ。可愛い子どもの前なんだ、いい親でいようじゃねぇの」

「あなたがそれを言うのっ!?」

「俺ぁいい父親だとは思うぜ。いい人間ではない自覚はあるけど」

 

 乳房に顔を埋める娘のことは決して手放さずに、それでいて彼女をジャックハートから隠すように自らの体で壁になるナミ。

 そこには確かに、母としての子どもへの愛があった。

 

「てか、てっきり堕ろしてるもんだと思ってたんだが、意外だな。見知らぬ男との望まない子。その気はなかったのか?」

「……あったわ。何度もここのお医者さんに頼もうとした、でも、その度に……ぐすっ、あなたがつけた、名前が……」

「ケハハハッ! だからいい名だって言ったろ? ナミちゃんも気に入ってくれるって確信してたんだ」

「ベルメールさんとゲンさんの名前を出されて、その私の子を自分の手で殺せるはずがないでしょっ!?」

 

 ナミの家に入ってきた時から笑みを浮かべていたジャックハートが笑い声を上げて笑う。

 その様子にもちろんナミが激昂する。

 あんなことをされて、あんなことを言われて、いざ子どもができた時にそんなことができるはずがない、と。

 

「その確信があったからこそ、俺はナミちゃんとの子どもにその名前を押し付けたんだ。……なあナミちゃん、この問題で誰が一番悪いか教えてやろうか?」

 

 仲間を守るためという言い訳を盾にして自らが求める性欲に溺れ、海兵との間にできた子を出産してしまったナミ。

 海軍大将という立場での権限を存分に振るい、限られた時間内ではあるが女を手篭めにしたジャックハート。

 そして、無事元気に生まれてきてしまった子、ベルメール。

 

「悪いのはお前だよ、ナミちゃん」

「っ、そん、な……っ!」

「といっても、ナミちゃん個人が悪いなんて俺は言ってねぇ。ナミちゃんが海賊だから、悪いんだ」

 

 その否定はナミ自信を責めるものではなく、身体を交わらせた時と似て、海賊を否定するものだった。

 

「考えてみろよ。なんでナミちゃんは今苦しんでるんだ? ナミちゃんが海軍大将の妻として俺の元に来てくれていたら、なんの問題もないだろう。もちろん、これからもな」

「ふざけないで!」

「ふざけちゃいねぇさ。大将の権力を振りかざせば、懸賞金1600万程度の賞金首一人の存在ぐらい揉み消せる。海賊、"麦わらの一味"の仲間としての今を捨てて俺の元に来てくれるってんなら、ナミちゃんとベルメールを全身全霊をもって愛させてもらうぜ」

 

 ジャックハートの口から飛び出したのは、今の彼女を全てと言っていいほどに否定する言葉。

 "麦わらの一味"の航海士、"泥棒猫"ナミ。正式に加入するかどうかのいざこざを入れなければ一味に入ったのは3番目で、幼少期より身につけた航海術は人数が少ない一味の最大の生命線と言ってもいい。

 

「わ、私は"麦わらの一味"のナミよっ! 私の意志で船に乗ってるの!」

「へぇ。それはまた、どうしてだ?」

「……海兵のあなたにはバレてるかもしれないけど、"東の海"での恩があるのよ。そして、何より自分の目で見た世界中の海図を書きたいっていう私の夢のためよ」

「ほう、なるほどなるほど」

 

 ベッドに腰掛けてベルメールを抱きかかえるナミに向かい合うようにして、ジャックハートが部屋にある椅子に腰掛ける。

 そして、自信に満ち溢れた表情で、ナミに告げた。

 

「その夢、俺の船に乗った方が叶えやすくないか?」

「……えっ?」

「自由奔放、何をしでかすか分からない、女としてのナミちゃんを満足させてやれない……。"東の海"での恩なんてもん、今までで十分返し切ってるだろ。そんな船に乗るより、俺の元に来た方が好きに海図も書ける。女としても存分に愛してやるし、ナミちゃんの夢のサポートもしてやるさ」

「それでもっ、私はあの船が好きなのっ!」

 

 彼が言った言葉はある種至極当然だった。

 ナミの夢。それはナミが義母であるベルメールに育てられていた頃からの抱いていた、世界中の海図を書くというもの。

 "偉大なる航路"の終着地、ラフテルを目指す海賊船に乗っているのだから、世界のほとんどは描けるかもしれない。

 しかし、海賊船が航路を何度も往復することはなく、どうしてもいけなかった島もあれば、普通の船では入っただけで危険な"凪の帯"もある。

 その全てが、ジャックハートの海軍の軍艦に乗ることで解決できるのだ。

 

「……なるほどねぇ。まあいいぜ、好きにするといい。今後期待して観察させてもらうからよ。……っと、そうだ。これ、前に言ってたやつだ。自分のために使いな」

「っ、う……嘘……。ホントに……」

「疑ってんなら確認しな。10万枚の1万ベリー札を数える気力があるんならな」

 

 ゴン、と重々しい音を立てて雑に床に放り投げられる巨大なトランク。

 ナミの脳裏によぎるあの時の口約束が、現実になっているのだ。

 かつて一味が手にしていた最大の額でも3億ベリー。その三倍以上が彼女だけの懐に入ろうとしているのだ。

 

「だが、これをナミちゃんが受け取るには条件がある」

「……何? まさか、また抱かせろとか言うんじゃないでしょうね」

「おいおい……ずいぶん反抗的になったな、ナミちゃん。生意気で俺の気に触る態度をとったら皆殺しってのは、まだ続いてるぜ?」

「っ!? ご、ごめんなさいっ! そんなつもりじゃなかったの!」

「ケハハハッ! いいぜ、許してやるよ。久しぶりだったからな。雌犬としての心がけを忘れるのも仕方ねぇ」

 

 10ヶ月以上の月日を経たとしても変わらない力関係。

 それが、海軍歴代最年少で大将へと昇進した彼と、その前に一度とはいえ屈服してしまった彼女の力の差だ。

 

「その金を受け取ってくれれば許してやる。条件は簡単だ。その金はナミちゃんのためだけに使うこと、俺たちの子をちゃんとナミちゃんの手で育てること、そして最後に、今後俺と出会った時には積極的にセックスに応じること。それだけだ」

「……最後のは、どういうこと。これから私たちと遭遇するなんて、分からないじゃない」

「ケハハッ! "頂上戦争"であれだけ暴れて、"革命家"ドラゴンの息子だってバレた船長の船だぜ? 出し抜かれたサカズキさんも本気で"麦わら"を捕まえようとしてるし、俺が駆り出されることもある。まあ、俺の方から直訴するだけなんだがな」

「……もし、受け取らなければ?」

「それだけで皆殺しにはしねぇよ。ただ、ベルメールを海軍に連れて帰って、立派な海兵にしてやるだけだ」

 

 その言葉に、ナミは何も言わなかった。

 ただ腕の中で必死に自分の乳房から栄養を吸っている愛娘を見つめるように俯き、抱きかかえて立ち上がる。

 ちゃんとげっぷをさせて、ゆっくりと彼女をベビーベッドに寝かせた。

 

「この子は、私の子よ……。あなたの子でもあるけど、この子は、ベルメールは私の手で育てるわ」

「ってことは、受け取るのか?」

「えぇ。過程がどうであれ、ベルメールを産んだのは私。育てるって決めた以上、このお金はありがたく頂戴するわ」

 

 授乳のために放り出していた豊満な双丘を下着と服の中に押し込む。

 出産を経ても妊娠前の細さを維持しているウエストによって、張った乳房の大きさがジャックハートと初めて会った時よりもさらに強調されている。

 ベッドへと戻り、ナミが巨大なトランクを持ち上げる。

 

「んっ……っ! これ、すっごく重いわね……」

「そりゃ10億だからな。で、本当に受け取るってことでいいんだな?」

「そうよ。今更返せ、なんて言われても返さないわよ? そういう契約でしょ?」

「あぁそうだ。そういう契約だ。……だから」

「きゃっ! ちょ、ちょっとっ!」

 

 ナミが持ち上げたトランクをテーブルの上に置いた瞬間、彼女の身体の自由をジャックハートの両腕が奪った。

 

「契約完了だろ? 言ったはずだぜ、出会った時には積極的に求めろって」

「そういう意味で……! んっ、はぁあっ! い、今おっぱいは、ダメぇ……!」

「ケハハ。母乳で随分と張ってやがる。デカさだけで言えばハンコック超えてんじゃねぇか?」

「んぅっ! あ、ん……ふぅ、ぁあ……。だ、だめ……おっぱい出ちゃうから……」

 

 テーブルに手をつくナミの後ろから覆いかぶさるようにして抱きつき、左手を彼女の服の中へと侵入させる。

 ゆっくりとその柔らかい胸を揉みしだいていくと、ブラジャー越しにだがじんわりと母乳が染み出してくるのが分かる。

 

「つっても、もう出ちまってるみたいだぜ」

「くぅ、んっ……ふ、ひゃあっ!」

「てな訳で。こんなとこじゃなく普通に愛し合おうや」

「きゃあっ!」

 

 ナミの身体もその気になってきたところで、今度は右腕を彼女の膝裏にやって抱き上げる。

 望んではいない形ではあるが、不意のお姫様抱っこにナミの顔が紅潮する。

 体を反転させてナミをベッドに寝かせ、彼女の上に覆いかぶさる。

 

「よっと。……なんだ、ナミちゃんもまんざらじゃなさそうだな」

「嫌がる女とのセックスは嫌なんでしょう?」

「よく覚えてるな。さて、こっちの方は……ケハハハッ! こっちも準備万端じゃねぇか」

 

 ベッドに寝かされた時点でナミはジャックハートのすることに一切抵抗することなく、横たわるとほぼ同時に下着とともにショートパンツが脱がされた。

 すると、脱がすと同時に下着のクロッチ部とナミの秘部に粘性のある液体の銀橋がかかった。

 

「ケハハ。胸揉まれてしっかり感じてるってか?」

「し、しかたないでしょ……。あなたとのセックスが気持ちよかったのはホントだし、思い出しちゃったのよ……」

「嬉しいねぇ、俺とのセックスを覚えてくれてるなんて」

「何もかもが強烈過ぎたの。あの子を妊娠してる状態でおじいちゃん達となんてしたくなかったし、オナニーだけじゃ足りなかったもの」

 

 自らの秘部から滴る愛液。

 すでにシーツをぐっしょりと濡らしてしまうほどに溢れているそれを見ても、ナミの表情は恥じるものではなかった。

 つまり。

 

「なんだ、ナミちゃんもすっかりその気じゃねぇか」

「……さっき、あの子の名前じゃなくてジャックハート様と私の子って言ったのは、その、そういうこと、よね?」

「あぁ、そういうことだな。ナミちゃんにはもっともっと俺の子を孕んで欲しい。というより孕ませる、だな」

「やっぱり……」

 

 言わずとも分かるほどに準備万端なジャックハートと同じく、ナミもまた、快楽の海に期待しているのだった。

 秘部が露わになったところで、もうすることは1つしかないと諦めが着いたのか、ナミ自身が上に着ていたシャツを脱いだ。

 

「話を整理しておこうか。俺がナミちゃんを諦めることはねぇ。絶対にだ。海賊を続けてぇならそれで構わねぇが、さっきも言った通りベルメールを育てるならこの条件を飲め。飲みたくねぇなら、ベルメールは俺が育てる。2人で俺の元に来てくれるのが俺としては嬉しいんだがな」

「冗談言わないで。この子は私が育てるし、"麦わらの一味"の航海士も続ける。あなたとの関係はこういうベッドの上での肉体関係だけよ」

「ケハハハ、それだけでも十分さ。……さてナミちゃん。お楽しみの時間といこうじゃねぇか」

「きゃっ!」

 

 彼女の口から漏れる短く可愛らしい悲鳴。

 ブラジャーのフロントホックを片手で外すと、そこから普段よりも大きくなった乳房が飛び出すように溢れた。

 

「母乳垂れ流して、相変わらずどエロい体してるなぁ、おい。こりゃ、出産後のサイズで言えばハンコックちゃんやビビちゃんにも負けてねぇな」

「え……? び、ビビ、も……?」

「何に驚いてるのかは知らねぇが、ビビちゃんなら母子健康体で無事出産を終えたぞ。国の再建と育児を同時にこなそうとする美人王女。下は結構それで話題になってたぜ」

 

 "ウェザリア"での気候の勉強とベルメールの出産、育児に追われていたナミは、もちろん新聞をじっくり読める時間などなく、ビビの出産の話など知らなかったのだ。

 時期的に言えば、ヴィオラとモネ、その次にビビ、そしてハンコックとマーガレット、マキノ、その後にナミという順番でジャックハートと肉体関係を持っていた。

 そしてもちろん、その順番通りに妊娠し、出産していたのだ。

 

「ナミちゃんがここに飛ばされてきてから何ヶ月かは分からねぇから、そうだな。頂上戦争が起きてからにしよう。あの戦争が起きて、もう既に18ヶ月が過ぎた。ナミちゃんたちの集合予定の2年後まではもう秒読みだ。その前に、どでかいプレゼントをくれてやるぜ」

「んっ、くぅう……っ、あ、あぁあっ! き、きたっ……これ、これよ……これなのぉっ!」

 

 熱く濡れそぼった蜜壺。

 およそ10ヶ月以上の間そこに侵入者を許さなかったご褒美として与えられた肉棒を、大好物の獲物をぶら下げられたかのようにヒダは奥へ奥へと誘って行く。

 ジャックハートの巨大な逸物を全て咥え込んだことで奥に当たり、ビクンと大きく身体が震えたところで彼の動きが一旦止まり、

 

「じゃあ、行くぜ」

「んひぁっ、や、ああぁあっ! イク、イッ……クゥァぁぁあああっ!」

 

 膣奥(ゴール)を捉えたことで、ピストンが加速した。

 5日間に及ぶ調教と、そこから妊娠発覚、出産であったり、そもそも老人だらけで性的欲求を満足に満たせない状況が続いていたナミ。

 そこに、待ち焦がれていたモノが来たのだ。

 ジャックハート好みに調教された彼女の身体が、彼の動きに達しないはずがなかった。

 

「ケハハハハッ! 膣内(ナカ)までぐっちょぐちょじゃねぇかよ。こんなに待っててくれたんなら、もうちょい早く抱きに来ればよかったか?」

「ちが、んぅうああっ、はぁっ……あぁあんっ! ちが、うのぉっ! あなたの……え?」

 

 ナミの身体など一切気にしていない激しく大きいピストン。

 もちろんそれはジャックハートが自分のことしか考えていないプレイであり、それでいて彼の調教を受けたナミが一番感じやすいプレイだった。

 しかし、数十回のピストンの後、彼の腰の勢いが急激に遅くなった。

 

「呼び方が違ぇぞナミちゃん。忘れたか? こうやって俺に抱かれているうちは、お前は俺の所有物だ」

「あ、ぅ……ジャックハート、様……」

「覚えてんじゃねぇか。で、どうしてほしい」

「奥、私の奥を、ジャックハート様の逞しいおちんちんでいっぱい突いてほしいの……」

 

 膣内で微妙に刺激を与え続けるジャックハート。

 Gスポットを絶妙に抉り、奥を小刻みに突き続けることでナミとジャックハート自身の興奮を高ぶらせていた。

 

「それだけじゃ足りねぇだろ。大量に奥に出して、もっぺん孕ませてやるよっ!」

「んはぁあっ! す、すごっ、んぅううっ! あぁ、いい……!」

 

 言葉とともに激しさを増すジャックハートの腰使いがナミの精神を蝕んでいく。

 突かれるたびに快感が身体を駆け巡り、もしかしたらまた、という気持ちもありながらもそれに抗うことができずに、再び堕ちて行く。

 

「ケハハハハッ! んじゃな、ナミちゃん。また会おうや」

「っ、あっ……! ああぁぁぁぁあっ、イクっ、くぅぅううああああっ!」

 

 10ヶ月ぶりに膣内に吐き出されるジャックハートの精液。

 久しぶりに味わう快感に溺れつつも心のどこかで罪悪感や焦燥を抱きながら、ナミは意識を飛ばした。

 

 

 ◇ ◇

 

 

「ジャックハート大将っ! もうすぐ目的地に到着します!」

「おぉ、ご苦労。すぐ行くわ」

 

 空島でのナミとの二回目の行為を終えて数ヶ月。

 無事ニューマリンフォードへの引越しを終えたジャックハートは自身の船に乗ってとある場所へと赴いていた。

 訓練施設で肉体を鍛えていたジャックハートの元に若い海兵が息を荒げて駆けてきた。

 全身に汗を滴らせた彼は上半身に着ていた服を脱いでおり、部下からの報告を受けて訓練を終え、衣服を整えて歩き出す。

 

「つってもただ懐かしい顔に会いに行くだけなんだがなぁ。いやぁ、久しぶりだぜ。中に入って会いに行くのはいつぶりだ?」

「あ、あの、ジャックハート大将。インペルダウンに来るなんて……誰に会うために来たんですか?」

「あん? ……あぁ、そうか。お前入隊して短いし、知らなくてもしょうがねぇか」

 

 乱雑に髪を拭き、そのタオルを別の新兵の部下に投げ渡す。

 大将就任当時と比べ、その体に纏う筋肉の鎧の質も格段に向上し、彼が得意とする"武装色の覇気"を骨や神経にまで通わせているため、それらの全体的な質も上がっている。

 まさしく天賦の才の塊とも言える肉体をより高度なものへと変えて、彼は歩き出す。

 

「話はいきなり変わるが、俺が特例で海軍に入ったってのは知ってるか?」

「はい。確か、8才の時に当時住んでいた島で、センゴクさんとサカズキ元帥に声をかけられた、と」

「そうだ。だが、その特例ってのは年齢のことじゃねぇ。親だ」

 

 船内から甲板へと上がる階段を登り、外に出る。

 すると目の前には、頂上戦争を経ても外見は一切変わらない堅甲さを想像させるような圧力を感じさせる建物が鎮座していた。

 

「史上最悪の違法薬物仲介人(ブローカー)兼違法格闘場オーナーの父親と、ヤク中の大量殺人鬼の母親。聞いたことあるはずだぜ、ジョージ・ディヴェッドとジョージ・アルルシェフ」

「っ、そ、その二人がジャックハート大将の両親、ということですか……?」

「あぁ。普通は犯罪者の子どもが海軍になんてなれやしねぇ。が、言った通り特例でな」

 

 インペルダウンへ続く桟橋に足をつけ、門へと歩いていく。

 

「二人ともを半殺しにしてサカズキさんに引き渡したってわけだ。そりゃ、海軍としては悪人なら家族でも取っ捕まえる奴は引き入れてもいいって思ってたんだろうな」

「じ、自分の手で、ですか……?」

「あぁ。住んでた島が6割ぐらいスラムで占められててな。そこにいる賞金首どもを捕まえに来た海兵やらサイファーポールやらの技を見て盗んでたってわけだ。アル中ヤク中の大人倒すぐらい、別に難しくはない」

「……あの、ジャックハート大将。ちなみにですが、住んでいた島っていうのは……」

 

 恐る恐る、といった口調と表情で新兵が尋ねる。

 その質問に、ジャックハートは珍しく感情をあまり表に出さずに答えた。

 

「新世界後半最悪の治安を誇る島、ラスム島だ。あんなんでも親は親。クソみてぇな治安の中、こんな頑丈な身体に産んでくれたことぐらいは感謝しねぇとな。海軍大将になった報告も兼ねて、だ」

 

 新世界トップクラスに治安が悪いとされるその島の中心で、ジョー・ジャックハート、本名ジョージ・オル・ディエゴ・ジャックハートは誕生したのだ。




はい、という訳で次回から過去編です。続くとしても5話にはなりません。多分。

過去編が終われば、一気に新世界編です!


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ジャックハートの過去 1

これから公式に載っていないものを扱うことも多いので、独自設定を出していきます。
その時には前書きに記載するので、目を通していただけると助かります。








 

 

 

 

 14年前。

 

 

「おいジャックハートォっ! 酒だぁ、酒がねぇぞテメェッ!」

「ふ、ふふ……。ねぇジャックハート。お願いよ、買ってきてくれない? 私のおクスリも足りなくなってきたの」

「分かったから金よこせよ。ないと買えないだろ」

「おぉ、そりゃそうだなっ! そら、今日の観客どもから集めた金だ! 使っていいのは50万ベリーまでだからな!」

「うん」

 

 新世界後半にある島、ラスム島。

 治安が悪く島の大半がスラムで構成されているそこに立っている、不似合いなほどに豪勢な城のような屋敷。

 そここそが、ジャックハートの生まれた家であるジョージ家だ。

 真っ赤な顔で子供に怒鳴る父親と、時折焦点が合わなくなる目をその子供に向ける母親。

 この光景が、この家の当たり前だった。

 

「いいかジャックハートッ! いつも通りバレんじゃねぇぞ! アルルは表向きはシスターで通ってんだ。俺も、ただ賭け金や入場料がやや高い闘技場のオーナーってだけ。政府に目ぇつけられんのはめんどいからな」

「んぇ、はぅ……あぁ……。そ、そうよぉ、ジャックハート。言いつけを守れない悪い子には、お仕置きしちゃうかもしれないから」

「分かってる。じゃあ、行ってくる」

「おう、気ぃつけろよ。俺もアルルも、ちょいと恨みの一つでも買ってるかもしれねぇ。憂さ晴らしにお前に殴りかかってくる奴がいるかもしれねぇがな!」

 

 ジョッキを持ちながら赤い顔で豪快に笑う父、ディヴェッドを横目で見ながら、ジャックハートは金を握りしめてリビングを後にした。

 大きなドアを閉めると、そこから聞こえるのは二人の愛しあう声。

 この屋敷から酒やクスリが安価で手に入る場所までは子どもの脚力ではどうやっても片道30分はかかる。

 

「バカみたいに盛ってやんの。猿みてぇ」

 

 十数年後の自分に聞かせてやりたいような一言を呟きながら、これまた大きな玄関の戸を開け、門を開けて外へと出る。

 門番は雇っているがボディガードのような存在は雇っていない。

 

「あんなこと言ってたけど、もう恨み買ってるの知らねぇのか」

 

 そのためもちろん、先ほどディヴェッドが言っていたことは、現実に起きている。

 

「おい」

「情報通りだな。毎週、一番デカイ対戦があった日にはガキがここを通るってのは」

「なあクソガキ。この前部下をやったことは怒りはしねぇ。今持ってるその金を寄こしてくれるだけでいいんだ」

 

 屋敷を出てから数分。

 スラムに差し掛かったところでいつも曲がる角をいつも通りに曲がったところ、短剣や銃を持った屈強な男が4人ほど、ジャックハートのことを待ち構えていた。

 

「やだ。いい年こいて子どもから金巻き上げないと生きていけねぇクズどもに渡す金なんてねぇよ」

「こいつっ!」

「……おい、ガキだから痛い目にあわねぇ、なんて思ってんじゃねぇだろうな」

「先週もあんたらの部下みてぇなのが襲ってきただろ。思ってねぇよそんなこと。悔しかったら力づくで奪ってみろ。ラスム(ここ)から新世界に出れねぇ負け組のくせにイキってんじゃねぇよ」

「このガキィ……っ! やっちまえっ!」

 

 握りしめた50万ベリーの束。

 それは男たちにもはっきりと見えているだろうが、今真っ先に狙われているのはジャックハート本人。

 5歳程度の子どもにそこまで言われて、黙っていられないのだ。

 

「死ねやクソガキがっ!」

 

 放たれる弾丸。

 銃声が響き渡るが、誰一人としてこの路地裏を覗きに来ることも、辺りが喧騒に包まれることもない。

 このスラムでは、銃や剣を使った殺し合いなど日常茶飯事であり、自分が被害者にならない限り誰も興味を示さないのだ。

 

「よっ」

「チッ! おい、やっぱこのガキ。噂通りだ」

「この年で"覇気"使いか。こりゃ、こいつとっ捕まえて売り捌いたら中々の値段になりそうだな」

「何のんきに調子乗ってんだよ、おっさん」

「ぐっ!?」

 

 ジャックハートの小さな手から放たれる、年齢とは不釣り合いなほどに強力な突き。

 小さな身体を生かして一瞬のうちに男たちのうち一人の懐へと潜り込んだジャックハートは、"武装色"をまとった黒い拳を、突き上げるようにして飛び上がったのだ。

 

「子ども一人に手こずってるような奴らに捕まるわけねぇだろ。じゃ」

「テメ、逃げんなっ!」

「追えっ!」

「ぶっ殺して金巻き上げろ!」

 

 一人が沈められたと言うこともあり、逃げるジャックハートを鬼の形相で追いかけ始める男たち。

 だがしかし、近い将来に海軍本部大将になる少年の身体能力というのは、まだ小さい時から凄まじかった。

 

「ダッセェなぁ。子ども一人見失うなんて」

 

 見事に無傷のまま3人を撒き、目的の場所までたどり着いたのだ。

 

「おっちゃん。いつもの」

「ん? ……おぉ、ジョージさんとこの坊ちゃんか。いやぁ、あそこの二人も親失格だねぇ。こんなとこにまだ5歳の君を、酒とドラッグのために走らせるなんて」

「別にいいよ。そんな危なくもないし。それよりおっちゃんさ、いつもここで買ってるんだからいつも通りちょっとマケてよ」

「いいよぉ。君にはいつもお世話になってるからね。将来のために大事に取っとくんだよ」

「うん」

 

 ジャックハートが喋っているこの人物こそ、ディヴェッドとアルルシェフに酒とクスリを頼まれてからジャックハートがよく世話になっている闇商人だ。

 まともに治安が整備されていないここでは、それこそ安全もまともな暮らしも、娯楽もない。

 そんな生活に一筋の光のように一瞬の"楽"を与えてくれるものを、この男は比較的安く提供しているのだ。

 

「なんでおっちゃんはこんなとこで商売してんだ?」

「ここは法があってないようなもの。ヤベェもんを作って隠すには最適なのさ。実験台も、金を払ってまでクスリを求めに来るからね」

「ふぅん。でも最近、政府の人が海岸うろついてるの見かけるから注意した方がいいよ」

「ははっ、相変わらず鋭いとこを見てるねぇ」

「……いつか、大きくなったら出て行きたいから」

「そうかい。そんじゃあ、それまでは気をつけながら頑張るんだよ」

 

 そう言って袋に酒瓶を詰め、その底には粉が入った袋を紛れ込ませたものをジャックハートに手渡す男性。

 普通5歳の子どもには持つことすらままならない重量だが、すでに"覇気"を使いこなせるほどに肉体的に成長しているジャックハートには苦に感じなかった。

 

「うん。また来るよ」

「はいよ。代金はいつも通り、35万だよ。……うん、ちょうどある」

「残りは自分用に、だよね」

「あぁ、そうさ。……それと、本気でここを出て行きたいなら、身体を鍛えるのを忘れちゃいけないよ」

「うん。じゃ」

 

 両手を使い、抱きかかえるように袋を持ち上げる。

 残った15万ベリーはズボンのポケットに乱雑に突っ込んで、そのままジャックハートは男の元を去った。

 

「身体、か……。門番さんに頼んで訓練つけてもらおうかな」

 

 そんなことを一人零しながら、帰路につく。

 数ヶ月前に海岸沿いにいた政府の人間らしき人物たちが使っていた、その場から一瞬で移動する方法。

 肉眼で確認することはできたが、どうしてもその通りに動かすことができなかったのだ。

 

「ただいま」

「んっ、はぁああっ! あなた、ジャック……んうぅうっ、はぁんっ! ジャックハートが帰ってきたわぁっ!」

「本当か、アルルッ! ハッ、それならいつも通り酒とドラッグでぶっ飛びながらキメようぜ!」

「んんぁ……は、あぁん……。もう、大好きよぉ、あなた……。朝まで離さないから、覚悟してね?」

「そりゃこっちのセリフだ」

 

 正面門から敷地内に入り、玄関を開けると聞こえてくる実の両親の大きく卑猥な声。

 大きなリビングへ入ると実の息子に一切隠す気がない2人の性行為が、およそ5歳の眼前に飛び込んでくる。

 

「ただいま」

「おうジャックハート! なら、買ってきたモンそこに置いて部屋戻っとけ。出てきたとしてもお前の相手はしねぇからな」

「ん」

「んもう、あなたったら。私に構ってくれるんじゃないの?」

「そのつもりだって、のっ!」

「はぁぁああんっ!」

 

 帰宅した息子を雑にあしらい、そのまま性行為を再開するディヴェッドとアルルシェフ。

 盛りだした両親を買い物に行った時と同じように視界に入れることすらなく、ジャックハートは部屋を後にした。

 

「さてと。頼みに行こう。いつまでもこんなクソったれみたいなとこに居てられるかってんだ」

 

 帰宅時に考えていた、門番に頼む稽古。

 この屋敷にはジャックハートと両親の合計3人以外に、ディヴェットが多額の金額で雇っている凄腕の門番やボディーガードが軽く10人以上は常にいる。

 その中の一人に頼むことさえできれば、未来は変わるかもしれない。

 

「あいつらぶっ飛ばしてでも、俺はここから出て行くんだ」

 

 幼心にそう決心し、ジャックハートはひとまず自分の寝室へと向かった。

 

 

 ◇

 

 

「え? えっと、坊ちゃん。今なんと?」

「だから、俺に稽古をつけてくれって言ってんだよ。それと、今度その呼び方したらお前が寝てる時に金タマ引きちぎるからな」

「も、申し訳ございません、ジャックハート様」

「あんたの方が年上だし、強いし、そんな言葉づかいしないでよ。気分が悪くなる」

「……分かったよ、ジャックハートくん。これでいいかい?」

「ん」

 

 翌朝。

 仕事に出かけたディヴェッドとアルルシェフは、もちろんの事屋敷に一人残したジャックハートのことなど微塵も考えることなく、一夜を通して行われた性行為からくる心地良い疲労感を抱きながらそれぞれの職に励んでいた。

 ディヴェッドが屋敷に門番たちを付けている理由はただ一つ、恨みからくる襲撃から身を守るためである。

 闘技場とその裏で行なっている違法薬物の売買により得た莫大な金額で彼らを雇い、命を守っているのだ。

 

「それでどうしたんだい、急に。強くなりたいから戦いを教えてくれだなんて」

「その言葉通りだよ。強くなって、島の外に出たいんだ」

「……この島は、ジャックハートくんのような子供からすれば地獄かも知れん。だがな、私たちのような"負け組(・・・)"からしたらここは天国のような場所なんだ」

「ここが? それに、あんた確か懸賞金10億ベリー超えてんだろ? なんでそんな人が負け組なんだよ」

「それが海の怖ささ。懸賞金だけが全てじゃない。私には、単純に力が足りなかったんだ。かけられている懸賞金も、"悪魔の実"による殺傷能力が高いからだよ」

 

 自虐するようにそう呟き、力なく笑う門番。

 どんな能力か聞こうとしたジャックハートの目の前に、突如として自分の顔と同じぐらいの大きさのボールが現れた。

 

「"ボルボルの実"のボール人間。こんな風に、シャボンのようなボールを生成することができるんだ。中に何かを入れて収納できたり、そのままサイズを変えることもできる。作ることができるのは半径100m以内。中に何か入れたままボールを消すこともできるけど、その数は最大で10個まで」

「……ふぅん」

「はは、あんまり興味無さそうだね。……でも、これに爆発する寸前の爆弾を入れて、サイズを小さくして、相手の体内に作るって考えたらどうだい?」

「っ……なかなかエグいね」

「だろう?」

 

 門番が食したのは"ボルボルの実"という"悪魔の実"であり、効果は今彼が言った通りのもの。

 単純に何の力も持たないボールならいくらでも作ることはできるが、すでに何かを中に入れたボールは10個までしか作れない。

 そのボールに触れたものはもちろん"悪魔の実"に触れたことになるため感知することができ、その能力は門番の仕事にいかんなく発揮されている。

 

「遠くから予想外のところを爆撃したり、相手の心臓の位置にボールを作って心臓を奪ったりとか、戦闘よりも殺しに向いている能力なんだ」

「その能力でも、通用しないの?」

「航海士が病死してね。そこに追い討ちをかけるかのように海の気候と海軍、他の海賊たちの襲撃さ。船長の私以外がほとんど瀕死になってしまってリタイアしたのさ」

「へぇ……。でも、それなら俺の訓練相手として十分だな」

「本当にやるのかい?」

「当たり前だろ」

 

 半袖に半ズボンという、年相応の格好に身を包んだジャックハート。

 対する門番の男、エリック・バーガルックは黒いシャツと白いズボンを身につけていた。

 ジャックハートのその言葉を聞き、エリックもシャツの袖を捲った。

 

「あんたは何か欲しいもんはあるのか?」

「そうだな……。強いて言うなら、安息と金だ。ここでの門番はかなりハードだし、高い懸賞金を懸けられてるからって、俺自身に金があるわけじゃない」

「分かった。なら、俺に稽古をつけてくれるんなら親父に何とか言ってやる。それでどうだ?」

「おぉ、そりゃ助かるな。んじゃあ、ジャックハートくんが強くなって将来何をしたいかってのを教えてもらおうか。目的が分からねぇ弟子を持つ気はないからな」

 

 エリックの言葉が終わると、すぐにジャックハートの口角がつり上がった。

 ジャックハートが強くなる目的を聞くということはつまり、その目的が大それたものや自分に不利益なものではない限りジャックハートを弟子にする意志が少しはあるということ。

 

「俺の目的もあんたに似たようなもんさ。こんなクソったれた場所にはない平和と、ムカつく奴を自分の手でぶっ飛ばせる力。この島にはアホみてぇな大人が多いし、まずはガキだからって舐められないような力をつけたい」

「ほう……。なかなかの心意気だな。よし、いいだろう。さっきの条件を飲む代わりに、君に稽古をつけてやろう」

「ホントか?」

「あぁ。……ただし」

「グッ!?」

 

 エリックの言葉を聞いていたジャックハートの右側頭部に、突き刺さるような鋭い痛みが走る。

 数メートル吹き飛ばされた彼だが、器用に一回転して受身を取った。

 そして間髪入れずに今まで自分がいたところを見る。するとそこには、親指の先程度の小さな白い玉が浮いていた。

 

「言葉遣いには気をつけろ。これ以降、私が君の師匠だ。それでなくても、君は子どもで私は大人。肉体が子どもなのは仕方ないとして、精神までが子どもの弟子を持つつもりは無いぞ」

「……分かりました、師匠。これでいいですか?」

「うむ。……時にジャックハートくん。君は"覇気"を知っているかい?」

「うん。黒くなるやつと、相手の行動が分かるやつ」

「それは"武装色"と"見聞色"の覇気だな。私には才能が無かったんだが、実はもう一つ"覇気"がある。君が使えるかは分からんがな」

「なんでですか?」

 

 エリックを見上げるのは、強さを求めているジャックハートからは想像できないほどに純粋な瞳。

 それこそ、今まで二種類しか知らなかったものに新しいものがあると知った時の、それこそ子どもの興味を孕んだ視線だった。

 

「この世界に数百万人に一人しか使えないという代物でな。なんでも、全身から発する威圧で、人を気絶させることができる"覇王色"というものだ」

「……なあ師匠。それってさ」

 

 ジャックハートが言葉をそこで止めた瞬間、エリックを壮絶な寒気が襲った。

 それだけでなく、彼らが今いる地下道場の床の木材がめくれ上がり、実際にエリックの肌にもビリビリとした感覚があった。

 

「こんな感じのやつですか?」

「……あ、あぁ。まさしくそれだよ。……驚いたな、一体いつから使えるんだい?」

「2ヶ月前ぐらいから。外に出かけた時にチンピラが鬱陶しかったから、死ねって思ったら気絶してた」

「……本物、だな」

「何が?」

 

 なんでもない、と呟きながら口に手を当てて何やら思案し始めるエリック。

 そんな彼を見上げながら頭を傾げるジャックハートを見て、エリックはジャックハートの内に眠る才能を見出した。

 

「よし。まずは体を鍛えることから始めよう。いくら"覇気"が使えるとはいえ体が弱くちゃ意味がない。戦うのは、自分の体だからな」

「了解っ!」

 

 齢5歳にして、ジャックハートの鍛錬が幕を開けた。

 

 

 ◇ ◇

 

 

 "偉大なる航路"前半の海、マリンフォード。

 海軍本部であるその場所にある"議事の間"に、大勢の海軍将校が集まっていた。

 

「事態は急を要します」

 

 引き締まっていた雰囲気が、一人の中将の凜とした声により一層引き締まる。

 

「"偉大なる航路"後半の海、通称"新世界"。そのさらに後半に位置する島、ラスム島に大量の高額賞金首が根付いているのです」

「そんなことは事前の報告で分かっちょるわ。肝心なのはその奥じゃろうて」

「はっ!」

 

 一人の海兵が呟いた一言にその中将は自分が言おうとしていた言葉を止め、大事だと思われる部分から話を再開する。

 

「その理由となるのが、"快王"ジョージ・ディヴェッドによる違法薬物の蔓延と高額なファイトマネーによる地下格闘技場だと考えられます」

「違法薬物……。覚せい剤か何かか?」

「恐らく。使用した場合、その人物のとある欲求を満たしたいという強い気持ちに駆られるようです」

「とある欲求じゃと?」

 

 言葉に出して首を傾げた海兵。

 その疑問ももちろんというもの。ただ欲求を満たしたいという欲をより強めるだけのものが、なぜ危険なのか。

 現にその海兵以外のほとんどもすっきりとしない表情をしている。

 

「はい。戦闘欲、破壊欲、殺戮衝動といったようなものです」

「何じゃと……っ!」

「ラスムはその大半が無法地帯のスラム状態です。そこに、"新世界"の航海を断念した海賊どもが集まり、そのドラッグを使用した状態で再び海に出る、ということが多発しています」

「……副作用のようなものは起きないのかい?」

「猛烈な喪失感に襲われる、と」

「なるほどぉ……。そりゃあ、それを埋めるためにもう一度使いたくなるわけだ」

 

 ドラッグを使った状態で地下格闘技場へと行き、そこでのファイトマネーや賭けでの勝ちにより得た多額の金を使い、船とドラッグを買い、海に出る。

 さらに言ってしまえば、ストレス発散や欲求の解消が最優先の目的となっているため、"偉大なる航路"を逆走しながら関係ない一般市民に手を出す事案が多発しているのだ。

 

「これまでも人海戦術により沈めてきた船もありますが、ここ最近はその数が異常です。大元を叩かない限り、このままでは"偉大なる航路"前半にも影響が出るかと」

「……うぅむ。そりゃあ流石に、見逃せん事態じゃな……」

 

 別の海兵が腕を組みながら優れない表情で唸り声を上げる。

 大将の地位にいるその海兵はしばらく悩んだ後、絞り出すかのようにポツリポツリと考えを吐露し始めた。

 

「……殲滅部隊、で異議はないな」

 

 男の言葉に首を横に振る海兵は誰一人としていなかった。

 

「標的はラスムに集まっている賞金首、並びにジョージ・ディヴェッド本人。奴に近しい人物が現れれば、尋問も許可する」

「で、肝心の部隊はどうするんじゃ。センゴク」

「私とサカズキ、サカズキの部隊と他に中将数人。それとゼファーのところの生徒を何人か連れて行こうと思っている」

「連れて行くのは構わんが、絶対に死なせるなよ。センゴク」

「もちろん。誰か適任はいるか?」

「あぁ、いるとも。つい最近実力を伸ばしてきているのがな。まだ若い女剣士だが、実力は保証する」

 

 センゴク、サカズキ、ゼファーと呼ばれた海兵たちにより、部隊の編成が着々と進んでいく。

 そのメンバーはジョージ・ディヴェッド本人の脅威よりも、ドラッグによって戦闘意欲が刺激された賞金首たちに重点を置いたものとなっていた。

 

「魚人島への入り口はG-1支部が見張っているし、第一まだ強行突破されるほどの人数じゃない」

「……ですが、センゴク大将。一つ問題が」

「なんだ」

 

 殲滅部隊の編成まで完了し、あとはいつ出発するかを決めるだけ。

 その段階まで来たところで新たな問題が浮上した。

 

「ジョージ・ディヴェッドはそのドラッグ以外にも他数種の違法薬物を生成、販売しているとの情報が」

「……そのクスリの情報が少ないということは、つまりはさらなる危険がある、ということか?」

「はい。うち一つは使用者の性的興奮を異常に高めるもの、というのは掴んでいるのですが、これは媚薬として市販されている場所もあるということです」

「殲滅するとなれば、相手がどんな状態かを知る必要はある。……どうするんじゃ、センゴク」

「情報が集まるのを待つ。万が一のこともあり、何より場所が場所。油断は禁物だろう」

 

 そのセンゴクの提案に首を横に振るものは、またも誰もいなかった。

 それほど海軍にとっても"新世界"後半の海というのは危険な場所で、またそこで脱落した海賊たちも厄介者が多い。

 

「では、いずれ来るラスムの賞金首殲滅まで各自他の任務をこなしつつ、最大限の準備を怠らないように。以上っ!」

 

 センゴクの言葉で海兵たちの集会は締めくくられ、"議事の間"から大勢の海兵たちが出て行く。

 確かにラスム島の現状も注意は必要だが、海軍はそれこそ世界中の治安を守らなければならず、ディヴェッドの動向ばかりを気にしてはいられない。

 

「フィッシャー・タイガーにロシナンテのこともある。……全く、落ち着かんな最近は」

 

 一人になったことを確認し、センゴクは一人呟く。

 自分を含め、ガープやおつる、ゼファーなども実力は確かにあるが少しずつ衰え始めている。

 また、サカズキやクザン、ボルサリーノといった後進も確かに実力をつけ、成長してはいる。

 だが今の海軍には、足りないものが一つあった。

 

「……"覇王色"。やはり、アレがなければいつまでも海賊にのらりくらりと逃げられる、か」

 

 それが、"覇王色の覇気"の使い手だ。

 数百万人に一人というその希少性と、始まってしまった大海賊時代。

 文字通り"王"となる資質を備えた者が、政府の下につく海軍には集まらないのだ。

 

「誰か一人、一人でいい。"覇王色"を完璧に扱えて他の覇気も鍛えられていて、それでいて正義の心を持った者。さらに言えば若く、伸び代があり、仕事は完璧にできて政府と天竜人から気に入られる」

 

 ブツブツと一人、現れるはずがない才能を持った人物の理想形を呟き続ける。

 

「海賊を一人で叩き潰し、かつ世界各国には好かれ、部下の育成もうまい。そんな人間が現れんかのぉ」

「ぶわっはっはっはっ! そんなバケモンおらんじゃろ、センゴク」

「っ、ガープ……いたのか」

「さっきから廊下でブツブツと気持ち悪かったからな、見てた」

 

 そんなことを呟きながら一人廊下を歩き自室に向かっていたセンゴクの元に、彼の同期であるガープがやってきた。

 つぶやいていた内容を少し聞かれて恥ずかしかったのか、一つ大きな咳払いをして、センゴクは話を続けた。

 

「もしも、の話だ。そんな奴が出てきたらどうする」

「海軍に置くために最大級の待遇で迎え入れる。当然じゃろう」

「まあ、そうなるか。どこかしら欠点があったとしても、それぐらいに仕事を完璧に成し遂げられるなら目を瞑ろう」

「じゃな。ま、そんなまさしく世界の王にでもなれるような才能を持ったやつがおれば、になるが」

 

 言ってしまえばセンゴクの要望はこうだ。

 数百万人に一人という才能を持ち、戦闘センスに溢れ、正義の心を持ち、若く、仕事に熱心で、人柄も良く、実力があり、信頼も勝ち取ることができて、部下に教えることもうまい。

 自分たちでもそんな人物にはなれないという自覚はあるし、そんな人物がいないという確信もある。

 だが、もしいるのなら喉から手が出るほどに欲しい人材に違いない。

 

「地道に若いのを鍛えるしかない。それに、今は開花していなくても、いずれ"覇王色"の才能を持ったやつが出てくるかも知れんだろ」

「そうだがなぁ……。いかんせん、最近は情勢が激しく動きすぎている」

「抑止力、か」

「あぁ」

 

 めくるめくように変わる世界情勢、海賊事情、世界政府への報告、天竜人の機嫌取り。

 やらなければならないことがあまりにも多すぎるため、センゴクもガープも話したはいいものの頭を抱えてしまうほどだ。

 

「……頭が痛いな」

「全くじゃ。それこそ、さっきのような妄想話でもしとらんと、精神が持たんわい」

 

 そう言い残し、先ほどのように豪快に笑いながらその場を去っていくガープ。

 そんな彼の背中をあきれるように見ながら、一人になったセンゴクは一人、また呟いた。

 

「誰か、いないだろうか……」

 

 近い将来、史上最悪だが史上最強だと言われるほどの逸材をセンゴク自らが見つけるまで、あと3年。




というわけで、次回はここから3年後。
原作の"新世界編"スタート時にジャックハートが20歳になるようにしていて、前話の話が"新世界編"の数ヶ月前です。
なので、今回は原作"新世界編"から14年と数ヶ月前の話、と考えてください。


コメント、評価などお待ちしております!



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ジャックハートの過去 2

過去編終わりです。
子供の頃じゃ本番描写書きづらいんじゃ……おねショタにぴったり当てはまるジャックハートとか想像できなかったんです……。


その代わりですが、海軍入隊直後のお話はバッサリカットいたしました。
新世界編は本番いっぱい!ストーリーも大きく動く!

ちょろ可愛くなったアインちゃんで許して……。





 

 

 

 

 ジャックハートがエリックの弟子になり、訓練を始めてから3年後。

 

「なぁ師匠、さっきから攻撃が遅いぜ」

「君が速くなっているんだ……っ!」

 

 訓練を始めた当初こそエリックの"悪魔の実"の能力すら使う必要がない程に隔絶した力の差があった2人。

 素手だけの組手を繰り返して2ヶ月が経過した頃から、元からセンスの良さを見せていた戦闘能力が一気に開花していったのだ。

 

「へぇ、そうなんだ。もっとボール増やしてもいいんだけど」

「さすがにこれ以上の数をこの速度、精度で操作することは難しいな。50個のボールでほぼ同時に多方面から攻撃してるんだ。それで我慢してくれ」

「ん。"見聞色"と"紙絵"使えば、大体の攻撃って避けられるんだな」

「そうだ。……全く、一体どこで六式なんて覚えてきたんだ……」

「最近よく、見慣れない変な格好してる人達とか海軍が海岸線にいるから見てたんだ。その人たち、スラムに隠れてる人を探し出して捕まえてたから」

 

 会話をしながらではあるが、現在進行形でエリックはジャックハートへの攻撃の手を緩めてはいない。

 実戦を離れて10年以上経過しているが、自分の"悪魔の実"の能力は中々に小回りや応用が効きやすい能力だと自負している彼にとって、僅か8歳の子どもに全ての攻撃を躱されているという事実に、乾いた笑いしか生まれなかった。

 

「師匠のボールって、直径1cm無いと実体を持たせられないんですよね?」

「あぁ。それ以上に小さくし、目に見えない程にも出来るがその場合は実体がない。触れれば感知は出来るがそれだけだ」

「ふーん。じゃあ、このままならあんまり怖くないな」

「……何?」

 

 この3年間でジャックハートは確かに強くなった。

 "見聞色の覇気"、"武装色の覇気"、彼が自分で見て得た六式のうちの数種類、そしてその心身の成長と共に強度を増した"覇王色の覇気"。

 六式は子どもならではの身の軽さにより使うことが出来るものしか使えないが、それを抜きにしてもとても8歳とは思えない強さを得た。

 

「だって師匠、"武装色"苦手でしょ?」

「確かに苦手だがまだ君には―」

 

 しかし、それでもエリックはまだジャックハートに負けてはいないという自信があった。

 "新世界"後半まで共に戦ってきた"ボルボルの実"の能力。それは絶対に負けないと、信じていた。

 

「だからさ、師匠」

 

 エリックの言葉を遮るように少し声を張り、その場に止まったジャックハート。

 もちろんその瞬間にジャックハートの身体に無数のボールが飛来し、その全てが直撃する。

 

「っ、おい、ジャックハートくん!」

「安心してよ。こんな軽い攻撃、もう効かないって」

 

 しかし、両腕を身体の前で交差するように顔をガードし、全身を黒く(・・・・・)染めたジャックハートの皮膚には一切の傷が無かった。

 煽られたとはいえ自分の能力による攻撃が全て直撃したことを心配したエリックが能力を解除すると、ジャックハートは首をゴキゴキと鳴らしながら歩き始めた。

 

「……なぁ、前から言ってんだろ? 師匠も感覚が戻ってきてるけど、俺も強くなってんだって」

「まあそれは知っていたが、ここまでとはな。……地下闘技場にも、出ているんだろう?」

「うん。戦えるし金も貰えるし、一石二鳥だよ」

「……まさかとは思うが、クスリに手を出すつもりか?」

「そんな訳ないって。強ぇやつと戦うとか、ボコボコにする方が気持ちよさそうだし」

 

 両親とは違う方向性でとんでもない才能が遺伝している、とふとエリックは考えた。

 ジャックハートの父、ディヴェッドは自分の成功のためなら他人を一切厭わない、その上で悪知恵が働く男だ。

 "快王"という通り名のように、違法薬物を全世界にバラまき、魑魅魍魎の大海賊時代の改悪に拍車をかけている。そしてそれだけでなく、貴族には自身も使っている媚薬を売りつけることで、その快楽に依存させている。

 対する母、アルルシェフはディヴェッドよりは直接的な被害は小さいが、その巧みな話術は脅威だ。普段はラスム島唯一の良心と言ってもいい教会のシスターをしているが、裏ではそこで集めた金を使って好き放題に過ごしているだけ。

 

「それに、親父たちのクスリ使ったら身体弱くなるんだろ? そんなもん、使わねぇよ」

「なるほど。つまり君は、クスリでの快感を得るよりも、戦いたいということか」

「そういうこと。だから、闘技場だって師匠に止められても行くし、スラムにいるムカつく奴をボコりにも行く」

 

 そんな両親からジャックハートに芽生えてしまった才能は、戦闘に対する意欲の高さだ。

 ディヴェッドもアルルシェフもジャックハートの前で自分たちの本当の一面を隠すことはなかった。また、生まれた環境という要因も混じり、ジャックハートが戦いというものを知るのは遅くなかった。

 

「前にさ、親父が言ってたんだよ。この世で一番信頼できるのは、自分が手に入れた力だ、って。政府や海軍が正義で、賞金首や海賊が悪じゃない。力を持ったものが正しくなる」

「……間違ってはいない、とだけ言っておく。この大海賊時代、どこに本当の平和があるのかなんて誰にも分からん。自分の欲しいものは自分で手に入れる。それは誰でも一緒だ」

 

 そこに加わる最大の要因が、現在の世界情勢だ。

 "海賊王"ゴールド・ロジャーの処刑での最後の言葉により始まってしまったそれは、世界中を混沌とさせるには十分だった。

 "赤い土の大陸(レッドライン)"と"偉大なる航路"により区分される4つの海にすら常に海賊がたむろし、着実に実力をつけて"偉大なる航路"やその先を目指している。

 その後半の"新世界"のさらに後半のこの島に生まれてしまった以上、自衛の意味でも訓練は必要だった。

 

「なあジャックハートくん。修行を始めた時は曖昧に圧倒的な力が欲しいとしか言っていなかったが、今はその力を手に入れて何がしたいんだ?」

「んー……。なんだろ、分かんねぇ。強くなりたいのもムカつく奴をぶっ飛ばしたかっただけだし、海にもそんな興味ねぇもん」

「……ま、それは後で考えればいいさ。海賊になるにしろ、師匠として君の将来は応援させてもらうよ」

「ん」

 

 先ほどのボールの直撃の後、エリックの元へと歩み寄り、彼を見上げていたジャックハートが小さいながらもしっかりと頷く。

 まだ二桁にも満たない年齢の子どもとは思えないほどに決意の籠ったその瞳に、エリックは満足そうに微笑んだ。

 

「よしっ。なら今日の修行は終わりだ。ちゃんと身体は綺麗にしておくんだぞ」

「やだよ、面倒くさい」

 

 汗をかいた身体のままジャックハートは屋敷の地下に作られたトレーニングルームを後にした。

 急な石階段を上がり、普段自分が生活している居住スペースへと上がると、そこにはいつも通りビンのまま酒を煽っている実の父の姿があった。

 

「おうジャックハートッ! 修行は進んでるか?」

「うん。……母さんは?」

「セックスの途中に外で暴れてた奴らが気に入らねぇってんで、ぶっ殺しに行ったぜ」

 

 日中、この家で起きている間はクスリを堪能しているかディヴェッドとの性行為を楽しんでいるかの二つしかしない母親がおらず、思わず探してしまう。

 しかしその理由を聞くとともに納得する一方で、一つ疑問に残ることがあった。

 

「……なあ親父」

「お? どした、お前が俺に何か聞くなんて珍しいじゃねぇか」

「セックスってそんなに気持ちいいのか?」

 

 首をコテンと傾げながら、純粋無垢な瞳を父に向けるジャックハート。

 その子どもの様子にディヴェッドは数秒間停止した後、豪快に笑い飛ばした。

 

「そりゃお前、気持ちいいに決まってんだろ! お前が女のことが好きなら、絶対に気持ちいい。保証するぜ」

「でも、師匠は親父みたいにハマりはしないって」

「あいつは相性のいい女に出会わなかった、それだけだ! ……いいか、ジャックハート。これだけは覚えとけ」

 

 酒を飲み、セックスに溺れ、金の力を使い自分の身を保身し、ドラッグの売買で金儲けをする。

 普段からそれだけのことしか考えていないディヴェッドでもジャックハートにとっては身近な血の繋がっている実の父親。

 

「自分の女にしてぇと思った奴が出てきた時は、なんとしてでも手に入れろ。んなもんは、極上の料理を前にして下げられるのと同じぐらいに屈辱的なもんだ」

「別に興味ないんだけど」

「じゃあオメェ、他の男どもに男としても魅力で負けてるって考えたらどうだ。その女を愛し、虜にしてやれる一番の男。お前が女に興味が出てきたんなら、それを目指せ。俺もアルルがヤク中だって知ってから、自分でクスリ作ってあいつを落としたんだ」

「へー」

 

 心底どうでもいいという感情を思いっきり表情に出し、さらにはその様子をディヴェッドに見せることなくその場を立ち去ろうとするジャックハート。

 元々子育てにそこまで精力的ではなかったディヴェッドだが、あんなことを質問してきた息子に、一つだけ言葉をかけた。

 

「おい、ジャックハート」

「ん?」

「どんな奴にも舐められねぇ、負けねぇ、自分を貫く、強い男になれ」

「……言われなくてもなるつもりだっての」

 

 そう言い残し、ジャックハートは屋敷の外に出た。

 

 

 ◇

 

 

『さぁッ! やってまいりました本日のメインイベントッ! この地下格闘技場のオーナーであるジョージ・ディヴェッド氏の実の息子にして、先日のリーグ戦では見事最年少優勝を成し遂げた期待の新星、ジョージ・オル・ディエゴ・ジャックハート選手っ!』

 

 自然の日の光が一切入らない、男の野蛮な声に包まれた地下格闘技場。

 鉄骨や照明がむき出しで、その照明はただステージに立つ選手とそのリングしか照らしていない。

 そんな場所に、ジャックハートは名前も知らない謎の女性剣士を前にしていた。

 

『対するは、つい先日このラスムにやってきたという謎の女性剣士! 職業は言えず、何が目的かも言わないとのこと! たった一つ私たちが知っているのは、剣士であるということと、この選手の名前だけ! アイン選手!』

 

 ジャックハートの時と比べ、アインという選手に下品かつ淫猥な言葉が飛ぶ。

 その飛んでくる耳を塞いでしまいたくなるほどの汚い言葉の全てを聞き入れつつも、アインは真っ直ぐにジャックハートだけを見ていた。

 

『しっかァしッ! 皆さんもご存知の通り、この地下格闘技場は勝者こそ正義! 財産を渡せと言われれば敗者はそれに従わなくてはなりません。無論それは、僅か8歳のジャックハート選手にも、17歳のアイン選手にも適用されます!』

 

 リングに最も近い実況席でマイクを握る男は、敢えて観衆の興奮を煽るように高らかと歌うように続けていく。

 その中でリングのジャックハートとアインに一切確認を取るようなことはなく、淡々と進行される。

 

『それでは両者、お互いに求めるものを宣言してください!』

 

 司会がそう言った途端、湧いていた観衆が一気に静まり返る。

 物音一つ立てることなく選手の一番の欲求を聞き入れる試合前のこの一瞬は、この地下格闘技場の大きなポイントなのだ。

 

「私は――」

 

 リングから響く、透き通るような美しい声。

 もちろんその声は幼いとはいえ男のジャックハートから出たものではなく、成長してきた女性であるアインから出たものだ。

 

「ジャックハート選手に聞きたいことがあります。この島に来たのも偶然ではなく、それが目的です。なので、もし私がこの試合に勝てば、私の質問全てに答えてもらいたい」

『おぉっとぉっ! 試合前のこのタイミングで、アイン選手がここに来た理由が分かりました! この要求に対し、ジャックハート選手は何を求めるのかっ!』

 

 アインの見つめる先にいるジャックハートは一瞬だけ逡巡したそぶりを見せ、顔を上げた。

 金や権力、制圧力といった面でラスムのトップに君臨するディヴェッドの息子が何を求めるのか、観衆とアインが真剣に見つめる中、ジャックハートは口を開いた。

 

「……俺は、女が欲しい。もし俺が勝てば、俺の女になれ」

『な、なんとジャックハート選手っ! 求めるものはアイン選手自身っ! 確かに贔屓目に見ても素晴らしい美貌を誇るアイン選手ですが、僅か8歳のジャックハート選手の心を早速射止めてしまったようだー!』

 

 ジャックハートが求めたのは、これから戦うアイン自身。

 先ほど父と交わした会話やこれまでに得た情報から、単純な興味の対象としての要求だった。

 

「それに、試したいこともあるんだ。いいよな」

「……えぇ、構わないわ」

 

 とある任務(・・・・・)を上司に命令されてこの場所に来たアインは、まず第一の目標としてジャックハートに近づこうとしていた。

 8歳の子どもに日々辛い訓練を受けている自分が負けるはずがない。

 絶対に油断はするな、と言われたが目の前の小さい体を見て、気が緩んでしまった。

 

『最後のルール確認として、殺しはなしです! ここで戦えるファイターが減ってしまっては面白くありませんからねっ! また、先ほど要求したものを拒否することもできません! 拒否した場合、その選手にはキツい罰が与えられます!』

 

 その結果。

 

『それでは、試合開始ィーッ!』

 

 開幕と同時に最大威力で放たれたジャックハートの"覇王色の覇気"に、観客や司会同様に気を失ってしまうのだった。

 

 

 ◇ ◇

 

 

「んっ……。ここ、は……?」

「俺の部屋だよ。おはよ、よく寝てたね」

「っ! あなたは……」

「ジョージ・オル・ディエゴ・ジャックハート。長いからみんなからはジャックハートって呼ばれてる」

 

 アインが目を覚ましたのは、見慣れない天井が見える寝室のような場所。

 身体を起こして周囲と自分が寝ていたものを確認してその認識が正しいことを確認すると、自分が寝ていたベッドのすぐ側にいた少年に声をかけた。

 

「私は……負けたの?」

「うん。"覇王色の覇気"っていうやつらしいんだけど、お姉さん知ってる?」

「……いいえ、知らないわね」

「海兵なのに?」

「……え?」

 

 目の前の子どもの口から飛び出た言葉に、文字通り血の気が引いた。

 アインは、海軍本部所属の海兵だ。それも、ここ数年にかけて昇進を繰り返しており、つい先日17歳という若さながらにして海軍将校になった有望な海兵である。

 その実力と、まだ"新世界"では顔が知られていないこと、そしてその美貌を買われてラスムでの潜入任務に当たっていたのだ。

 

「お姉さんずっと気絶してたからさ、俺がお姉さんの控室に行って荷物持ってきたんだ。その中に入ってたよ、海軍の制服」

「そう……。どう、するの?」

「別に。誰にも何も言わないし、俺は海兵に何も思ってないもん」

「……なら、あの闘技場で言っていたことはどうするの?」

 

 海軍の制服ではなく、ラスムに紛れるために私服に身を包んでいたアイン。

 もちろんベッドの上に寝かされている今も、その格好に変わりはない。

 いくら目の前にいるのが子どもとはいえ男は男。

 言われた言葉に対する恥ずかしさといったものから、頬が赤く染まっていた。

 

「うん。それは、その……してみたい」

「やっぱり、そういうことに興味があるのね」

 

 十年後の彼ならば有無を言わせずにすぐに愛することを求めたかもしれないが、今の彼はまだ子供。

 少しずつ片鱗を見せつつあるとはいえ、まだ自分が体験したことのない女体への興味や興奮から、少しだけ鼻息が荒くなっていた。

 

「あの闘技場での要求は、一回だけって約束なんだ。財産全部って要求なら一度で全部渡さなきゃいけないし、恨んでるやつを対戦相手にして殺したいなら、一発で殺す権利を与えられる」

「それほど無秩序だったのね……」

「やっぱり。お姉さん……いや、お姉さんたちって、親父を捕まえに来たんでしょ?」

「っ!? し、知ってた、の……?」

「うん」

 

 自分が、否、自分たちが、とジャックハートは言った。

 つまりアインだけでなく他にも隊を組んだ海兵たちがこのラスムに来ることを分かっており、その上で誰にも何も言わないと言ったのだ。

 

「俺は……親父に対して何も思ってないから。もちろん、母さんも。こんな頑丈な体に産んでくれたことには感謝してるけど、あの二人がとんでもなく悪いことをしてるのは、ダメだと思う」

「……じゃあ、両親が捕まってもいいの?」

「うん、いいよ。だってまず、ここじゃ弱くて捕まるほうが悪いし」

 

 ジャックハートの言葉は間違いではない。

 3年ほど前から一月に数回程度、海軍がこの島を訪れているのをジャックハートは知っていた。その度に捕まるのはラスムの中でも弱い人間ばかりで、確かな実力を持っている者はその度に退けていた。

 そもそもの話、悪いことをしているのならば捕まれば終わりなのだから、捕まるほうが悪いのだ。

 

「お姉さんが俺に話を聞きたいってのも多分それでしょ。別にいいよ、話しても。俺もここから出たかったし」

「なら……それなら君は、これからどうやって生きていくの?」

「……考えてなかった。まあ、なんとかなるでしょ」

「人を殺して強奪したり、人に悪いことをするようになったらお父さんと同じよ」

「……それは、ヤダ。あんなのと一緒にはなりたくない」

 

 その言葉に、アインは心の中で胸をなでおろした。

 こんな環境で生まれ育ってしまった多感な子ども。もしかしたら父親のような他人を自分の踏み台としか思わない人間に育ってしまっているのではないか、というのは海軍内部でも議題に挙がっていたことだ。

 だが、ジャックハートは確かに父は悪で、そうはなりたくないと言い切った。

 

「あ、てかお姉さん。話反らそうとしてる」

「……そ、そんなこと、ない」

「今日親父が教えてくれたんだけどさ、セックスって気持ちいいらしいんだけど、知ってる?」

「ふぇえっ!? せ、せっく……す……」

 

 そういうとこを望んでいるのだろう、という予想はできていたが、いざ言葉に出されると恥じらいが出てしまう。

 普段から冷静を保っているアインだが、彼女もまだ思春期の17歳の少女。

 生々しいものを想像してしまい、急に体が火照りだしていた。

 

「……いいわ。元から、そういう約束だったもの」

「お姉さん、どうやるか知ってるの?」

「…………えぇ。そういうことは、少しなら習ったわ」

「え、海軍ってエロいんだ」

「ち、違うわっ! その、勉強する場所があって、そこで教えられたのよ!」

 

 完全に冷静さを失ったアインが、真っ赤になった顔のまま声を張り上げる。

 闘技場での勝者に与えられる権利ということで逃げ道もなく、二人が体を重ねるという事実が現実味を帯びていく。

 

「そもそも、できるの?」

「え?」

「えっと……お、おちんちんが大きくならないと、セックスはできない……のよ?」

 

 自分の知っている知識を出すアイン。

 このぐらいの年齢の子どもがちゃんとできるぐらいのサイズまで勃起するのか。

 

「あぁ、それなら大丈夫だよ」

「……そう」

 

 アインは、心の底から嫌がっているわけではない。

 そもそもの話、負けてしまったのだから従わなくてはならない。

 要求を飲み込まなければ罰を受けるというのもあるが、ジャックハートが与えてくれた情報の対価として支払うのなら仕方ない、と割り切っていた。

 

「……それじゃあ、脱がせてくれる?」

「う、うん……」

「そ、それと」

 

 訳の分からない初めての感情に襲われ、股間に違和感を覚えるジャックハート。

 そんな彼の様子に気づかず、アインは続ける。

 

「私も、初めてなの……。こう言っても分からないかも知れないけど、優しくして……ね?」

 

 アインの恥じらいを帯びたそのセリフに、幼いジャックハートの中に何かが芽生えた。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「で、なんじゃあアイン。そのガキは」

「はっ! えっと……」

「ジョージ・オル・ディエゴ・ジャックハート。あんたたちが捕まえようとしている、ジョージ・ディヴェッドの実の息子って言えば分かって貰えるとは思うけど」

 

 ラスム近海に泊めていた海軍の軍艦のうちの一隻。

 サカズキとセンゴクという海軍の重鎮がいる今回の作戦の中心となるその船の内部に、ジャックハートはいた。

 

「"快王"のガキか……。そいつは対象じゃないはずじゃが、なぜ連れてきた」

「アンタ達、親父と母さん捕まえたいんだろ? 手伝うよ」

「……なんじゃと?」

 

 ジャックハートの言葉にもちろんサカズキは耳を疑った。

 相手はまだ子ども。実の親が捕まるかもしれないと聞いて、それを手伝おうとしているのだ。

 

「あの二人が悪いことしてるのは知ってる。それは、絶対ダメなことだって島のまともな人はみんな言ってる」

「なるほど。子どもにすらそう思われてるとはのぉ……」

「それに、アインちゃ……アインさんから聞いて、海軍にちょっと興味が出た」

 

 その言葉を聞き、サカズキは呆れるようにジャックハートから視線を切った。

 

「海軍は子どものお守りのための施設とは違う。どこか安全な島の平和な家庭に養子にでも……」

「その件なんですが、1つよろしいですか」

「なんじゃ、アイン」

 

 船の奥へと歩こうとするサカズキを、アインの一声が止めた。

 先ほどからアインの左手とジャックハートの右手が繋がれていることを少し不思議には思っていたが、そのことか。

 そう思っていたサカズキの、否。その場にいる海兵全員の度肝を抜く事実を、アインは口にする。

 

「ジャックハートくんですが、"覇王色の覇気"を含む3種の覇気と、六式の一部を使えます」

「……冗談を言うちょるんなら、即刻除隊処分にするが」

「本当です。私が地下格闘技場に潜入した際も、観客の全員が一瞬で意識を失うほどの"覇王色"です」

「お前はどうなった」

「……恥ずかしながら、私も気を失いました」

 

 その事実にサカズキとセンゴクの表情がより一層厳しいものとなる。

 8歳の子どもが、海軍将校を気絶させるほどの"覇王色"の才能を開花させているという事実。

 そして、このままのさばらせてしまい、厄介な海賊にでもなられたらという一抹の不安。

 

「……小僧。海軍が遊びではないことを分かっていて、入りたいと言うちょるんか」

 

 様々なことを天秤にかけた結果、サカズキとセンゴクはアイコンタクトで意思疎通をし、彼を海軍に迎え入れようとしたのだ。

 

「分かってる。人を殺さなきゃいけないこともあるんでしょ?」

「そうじゃ。相手は厄介な能力者どもの場合もある。お前に、しっかりとした"正義"を掲げて、犯罪者どもを片っ端から捕まえる覚悟はあるか?」

「うん」

「お前がやろうとしていること、ワシらがこれからしようとしていることは、遊びとは違うけぇの」

「……ラスムには、遊びなんてないよ。クスリか戦い、どっちかしかない」

 

 その言葉に、近くにいた若い海兵達が身震いした。

 ラスム島には基本的に、高額賞金首の中でも野蛮な男海賊が多い。

 そもそもの話腕っぷしが強いため、女海賊よりも生き残る確率が高いためだ。そのため、ジャックハートのような子どもはとても珍しい存在となっている。

 

「ぶっちゃけさ、本気で出て行きたいんだ。それに何より―」

 

 ビリッと辺り一面の空気が張り詰める。

 先ほど話題になっていた"覇王色"が漏れでると共に、ジャックハートの顔が子どものものとは思えないほどに凶悪なものへと変わる。

 

「―海兵になりゃあ、調子に乗ってる海賊どもぶっ殺してもいいんだろ?」

「……"覇気"を抑えろ。こりゃあ確かに本物じゃわい。だが、肝心なのは"正義"を重んじる心。ジャックハート、お前に何か守りたいものはあるか?」

「アインちゃん」

「ちょっ!?」

「ん?」

 

 サカズキがジャックハートの"覇気"と悪を倒すという心構えを認めたところで、ジャックハートが軽く爆弾を投下した。

 一気に顔を真っ赤に染め上げるアインと、その様子を不思議そうに見るサカズキとセンゴク。

 

「……ふむ、なるほど。ディヴェッドに近い人物に近づけ、とは言ったが、まさか……」

「ち、違うんです! その、彼に出会うには地下闘技場に行くのが一番早い、という情報を得て……。それに、私が負けたので彼の要望を飲まなければならず……」

「海兵が違法地下格闘技場に潜り込む。別に律儀にそこのルールを守る理由もないじゃろうて」

「うっ……」

 

 頭上で飛び交う言葉のやり取りにジャックハートは頭を抱えつつ、先ほどまでのアインとの気持ちいい行為を思い返していた。

 互いに裸になり、理由はなんとなくしか分からないが大きくなった陰茎を奥まで咥え込む彼女の膣肉。

 盛大に乱れ、大きく喘ぐ彼女が上下する様を寝転がりながら眺めていた記憶を、何度も何度もリピートさせる。

 

「自分でも、よく分からないんです。"覇王色"で気絶させられてから目を覚ました時から、変な気持ちになるんです……」

「1000万人に一人という才能に隠れた魅力か何かしらに惹かれたか、単に疲れが溜まってきていたところを口説かれたか……。どちらにせよ、うちで預かることになるんなら、きっちりシゴいちゃるけぇの」

「ん、俺も強くなりたい」

「ならジャックハート。お前が本当にその覚悟があるのか、見せてもらう」

 

 まだ正式に入隊すらしていないジャックハート。

 つまりはまだただの子供である彼に向かって、サカズキは残酷とも言える初任務を言い渡した。

 

「お前の両親を、今日中にこの船に連れてくる。生死は問わん。これが、お前の初任務じゃ」

 

 

 ◆

 

 

「――で、その後はこの前話した通りだ。覚えてんだろ? お前らをボコボコにして捕まえて俺は晴れて海軍入り。一旦海軍から離されて、CP(サイファーポール)に入れられてカリファちゃんと出会い、海軍に戻ってきてヒナちゃんと出会い、俺の海兵人生はスタートしたんだ」

「……まさか、ここまでなっているとは、な……」

「俺ァお前とは違う。強さの重要性を教えてくれたことに関しちゃ感謝しているが、実際のところ訓練をつけてくれたのは師匠だ。ま、今は俺の方が強いけどな」

「当、然……だろう。お前、は、海軍大将になったんだからな……」

 

 時は戻り、インペルダウンのLEVEL4。

 そこに、ジャックハートの実の父である"快王"ことジョージ・ディヴェッドは収容されていた。

 

「大変だったんだぜ、そこから。改名手続きやら、もう海賊をする気が無かった師匠に恩赦を与えてくれるようにお願いしたりとか」

「アルルは、アルルはどう……してる……」

「あの人は変わらずLEVEL3だ。まだお前のクスリのせいで狂気を撒き散らしてる最中だ」

 

 ジャックハートの言葉に力なく反応するディヴェッド。

 元々彼自身が腕っぷしが強いわけではなく、インペルダウンの過酷な環境は平静を保っていられるものではなかった。

 

「あぁ、もう一つお前が教えてくれて良かったことがあるぜ」

「……セックス、か」

「ケハハハッ! なんだ、知ってんのかよ。今も世界中の美女を合法的に抱き、合法的にいい気分になり、合法的に犯罪者をぶっ殺してる。お前らがアホな手本見せてくれたからだぜ」

 

 11年前と変わらない屈託のない笑み。

 その中にあるものはほとんどが変わってしまっているが、彼の中にある意思は変わっていない。

 

「俺は、お前らみたいなただのアホなクズにはならねぇ。一応、正義はかざす。悪は倒す。だからそれ以外を好き勝手にするんだ」

「……あぁ、それで、いい。男なら、一度決めたら……やり、通せ……」

「言われなくてもやってるっての。んじゃ、また数年後に会いに来るわ。ここちょいと暑ィしな。臭えとこに何回もきたくねぇ」

「ははっ……。それ、は……同感だ」

 

 面会時間も残りわずかとなり、来た道を戻ろうとするジャックハート。

 しかし、その途中で足を止めた。

 

「お。でも、外の情報ぐらいはここの知り合いに頼んで仕入れさせるわ。新聞でも読んで暇つぶししとけや」

 

 そう言って、今度こそジャックハートは実の父に背を向けた。

 

 

 

 そして舞台は6ヶ月後。

 

 

 

 頂上戦争が終わりしばらくして、"麦わら"モンキー・D・ルフィーが再建中の海軍本部で"オックス・ベル"を16点鐘してからちょうど2年後へと移る。

 

 

 




次回から、本格的に新世界編です。

多くは語りません。お楽しみに。


コメント、評価などお待ちしております!


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新世界編
門出、再出発


 劇場版のキャラやあまりにも登場回数が少なすぎるキャラに関しては、口調などはオリジナルで書かせてもらうことがあります。デレたアインちゃんとか描写少なすぎんだよなぁ……。

 そして、朗報……かもしれない報告。

 原作最新刊の92巻で作者の性癖にこれまたダイレクトアタックを直撃させたキャラが出てきました。
 ワノ国編まで書かなきゃいけなくなったじゃないか!(憤怒)

 ワノ国一の遊女……? ほーん……、かかってこいやァっ!






 

 

 頂上戦争からおよそ2年後。

 

 シャボンディ諸島。

 

「ケハハハハハァッ! 最っ高の天気じゃねぇか。こりゃあこんな日に船出を迎える一味は、さぞ良い運命になるんだろうな」

 

 二回目の空島への訪問からわずか6ヶ月。

 しかしその期間はジャックハートが肉体をより高度なものへと進化させるのに十分な時間であり、そこから派生する新たにできるようになったことを完璧に習得するのにも十分すぎる時間であった。

 

「……そうは思わねぇか? ロビンちゃん」

「んぶっ、ぐぷぅ……ん〜っ、ぐぽっ。……えぇ、そうね。本当にいい天気よ」

「ん、どうした。俺たちの愛の結晶であるオルビアが気になるのか?」

「っ……。本当に、その名前をあの子につける気?」

「当然。ロビンちゃんが嫌がるなら今度生まれてくるコアラちゃんかランちゃん、ポルチェちゃんの子どもにつけてもいいんだぜ?」

「……いえ。それなら、その名前は私の子につけてほしいわ」

 

 今ジャックハートたち(・・)がいるのは、彼がシャボンディ諸島を訪れた際にほぼ毎回といっていいほどに使用しているラブホテルだ。

 その最上階のフロアを丸々一室にした部屋で、ジャックハートはシャボンでできた天井から覗くことができる快晴の空を眺めながら、道中で捕まえたロビンにフェラをさせていた。

 

「コアラ……」

「どうしたんですか? ロビンさん。……あっ、そっか! 今度こそジャックハート様の性奴隷になりたくなったんですね?」

「……魅力的なお誘いだけど、私はまだあの船に乗っていたいから」

「えーっ。あんな船に何もないですよー? ただ弱くて貧相なインポのアホばっかりが乗ってるんですよ?」

「……それでも、私にはあの船に乗りたい理由があるの」

 

 かつて仲間になりかけていたコアラの大きくなった腹部を見ると同時に、どこからかくる申し訳なさのような感情に顔を歪める。

 ジャックハートの元に来たばかりの彼女からは想像できないほどに、堕ちて調教された彼女。

 あの時の自分の交渉次第では救えていたのではないか、という自責の念に今更駆られる。

 

「まぁまぁ、その辺にしておいてやれよコアラちゃん。ロビンちゃんやナミちゃんには二人なりの人生がある。コアラちゃんの人生はどうだ?」

「一生ジャックハート様の性奴隷としてお仕えすることですっ!」

「革命軍はもういいのか?」

「……はい。もう、いいですよあんな組織。だって、たった一人をたった一人から奪い返せない、奪い返そうともしない組織ですもの」

 

 革命軍の話題をジャックハートがコアラに振った途端、彼女の目から光が消えた。

 ジャックハートが彼女に行った調教。それは鞭やひたすら犯し続けるといったものではなく、言葉による洗脳のようなものだ。

 革命軍は幹部である自分が捕まっても行動すらしない組織。その傷心のコアラをジャックハートは慰めている。

 毎日そう囁かれながら体を愛され、妊娠が発覚して彼女は生まれ変わったのだ。

 

「てかおい、ロビンちゃん。止まってんぞ」

「っ、申し訳ありません」

「まあいいわ。ここに来るまでしこたまハンコックちゃんをぶち犯してきたからな。ロビンちゃんの立場を分からせる前戯はこの辺にして、そろそろ本番と行こうか」

「えぇ」

 

 跪いていた状態から立ち上がり、来ていた衣服を脱ごうとするロビン。

 胸元が大きく開いた半袖のジャケットに包まれている大きな乳房がこぼれ落ちるように飛び出し、その先端にある乳首からは白い液体が滴り落ちている。

 

「おいおい、ブラジャーも着けねぇでそのままとは……。赤ん坊を育てるって意識があんのか?」

「っ……えぇ、あるわ。服の内側にパッドはつけているから」

「ケハハハ。ならいい。いずれ、親子揃って俺の元に来るんだからな。健康体でいてもらわねぇと」

 

 衣服を全て脱ぐと、彼に手振りで促されてシャボンでできた壁に手をつく。

 尻を突き出した状態で彼の方を振り返ると、長らく会っていなかった間に鍛え上げられたジャックハートの肉体が姿を現していた。

 

「す、ごい……」

「ん、何がだ?」

「い、いえ……。その、体がより鍛えられていて……」

「あぁ、それか。自分でもここまでなるとは思ってなかったぜ。そのお陰かどうかは分からねぇが、こっちの方も進化してるぜ」

「あぁんっ」

 

 立ちバックの姿勢で始まろうとしている、ロビンにとって久しぶりの性行為。

 完全な勃起状態となったジャックハートの肉棒の先端、亀頭のさらに先の鈴口がロビンの膣口に密着する。

 

「さて。久しぶりだな、ロビンちゃんとするのは。そのお祝いとロビンちゃんのこれからの無事を祈って、俺からもう一回どデカいプレゼントくれてやるよ」

「っ! ま、待ってっ! そんな話聞いてないわ!」

「今言ったんだからそりゃあ初耳だろうな。安心しろって。ただロビンちゃんの膣内に射精するだけじゃねぇか」

 

 ジャックハートの言葉に若干の抵抗の意思を示すロビンだが、その行動は決して激しいものではない。

 そもそも尻肉をがっしりと掴まれており、その上彼の意にそぐわない行動をしてしまうと自分にも仲間もまずい状態になってしまうかもしれない。

 そして何より痛感させられるのが彼との地力の差であり、"武装色の覇気"を纏えないロビンがジャックハートの肉体に抗えるとは到底思えなかったのだ。

 

「さて、それじゃあ」

「ひうっ―」

 

 一気にジャックハートの腰が前に進み、亀頭、カリ、竿がロビンの膣内へと侵入し、満たす。

 根元まで挿入されるまでにロビンの弱い部分を刺激するのも当然ながら、挿入しきったと同時に膣奥に懐かしい感触を思い出し、彼女の体がビクビクと震える。

 

「……イッたか。おかえりロビンちゃん。また隅まで愛してやるよ。これからもな」

「はあぁうっ、あぁ……! は、ぁ……、はぁ……!」

 

 覆いかぶさるように上半身を密着させたままの立ちバックで挿入されたロビン。

 耳元で囁かれたロビンは、彼の言葉にあった通り再びジャックハートに引き戻された感覚に陥った。

 

「ケハハハハ。そんなに愛おしそうに絡ませねぇでも、俺が気持ち良くさせてやるから安心しなって」

「んっ! はぁあんっ、あぁっ、すっ……すっごぉいっ!」

「おっ、いいねぇ。ノリノリじゃねぇか。なぁコアラちゃん。もっと素直に求めた方が気持ち良くなれるってのに」

「もちろんですっ! ん〜、私たちみたいにジャックハート様のところにいた方がいいと思うんだけどなぁ……」

「や……あっ、んぅうっ! あぁっ、あぁんっ!」

 

 始まった激しいピストンに呼応するように、一度だけだが彼に抱かれて孕まされた記憶が蘇る。

 その強烈な快感を膣内全体で受け止め、豊かに育った体全体を快楽に震わせる。

 奥を突かれる度に細かく絶頂を繰り返し、息を乱しながらロビン自身も乱れていく。

 

「はぁあっ! イイっ、これ……イイのぉっ!」

「ケハハ。そう言ってやるなよコアラちゃん。ロビンちゃんはあの船に乗って海賊を続けながら、子どもも育て、それでいてたまにやってくる俺に抱かれてぇのさ」

「あははっ! 何それ、すっごくわがままですね」

 

 にこやかに笑いながら軽い足取りでジャックハートの愛を一身に受け止めているロビンに近寄るコアラ。

 数ヶ月前に彼に抱かれた時に身籠り、少しばかり大きくなったお腹に気を使いながらも軽快に進む。

 

「ねぇロビンさん」

「んっ、あぁんっ! あっ、ダメ……イッちゃう……!」

「ジャックハート様に一生懸命なのはいいですが、一つ、考えておいてくださいね」

 

 裸で激しく愛し合う二人。

 そこから奏でられるロビンの柔らかく豊満な尻肉とジャックハートの鍛えられた肉体がぶつかり合う音を聞きながら、喘ぎ続けるロビンに顔を近づける。

 

「海兵に捕まって犯されて、孕まされて、出産して、それに気持ちよさそうに喘いで……」

「ケハハハハハハ。おいおいコアラちゃん、犯されてってのはおかしいだろ? 求めてきたのはお前らじゃねぇか」

「あっ、そうでした。ごめんなさい。……でもね、ロビンさん」

 

 どこか悲しそうな表情で、コアラは続ける。

 

「これからまた孕まされるロビンさんを……子連れになったロビンさんを、麦わらの一味の男衆はどう思うんですかね?」

「っ、や、やめ……て……」

「……私はもう、諦めました。その道に行くなら、頑張ってくださいね」

「ケハハハハッ! 悪ぃ子だなコアラちゃんは。ロビンちゃんのメンタル崩しにいくなんてよ」

 

 コアラがロビンに話しかけている間に動きを止めていたジャックハートの腰が引かれる。

 先ほどまでのピストンにより刺激されたロビンの膣内は愛液に塗れており、結合部からはポタポタと溢れた液体が零れている。

 

「コアラちゃんに関しては構わねぇよ。その状態でもまだ革命軍に戻ろうとする気力があるんなら、素直に尊敬するぜ。ま、無理だろうがな」

「っ、ジャックハート……様……」

「だが、ロビンちゃんは絶対に落としてやるよ。俺の好みにドストライクだからな。もし船に乗って無事に合流したら、ナミちゃんも本気で落としにいくって伝えといてくれ」

「んぁう……! は、あぁあっ!」

 

 彼女たちの心情を完全に読み取った上での発言と宣言。

 さらに精度を上げた"見聞色の覇気"により二人の考えていることを見抜き、自分にとって気分の良くないことを未然に防ぐジャックハートの姿に、改めて敵わないと察した。

 

「ほら、下りなコアラちゃん。母体に何かあったらいけねぇからな。下がる時にハンコックちゃん呼んできてくれ。湯浴みしてると思うから」

「はい」

「さてと。んじゃあハンコックちゃんが来るまでに一発どデカく気持ち良くなろうや」

 

 グッ、と尻肉を掴む両手に力を込める。

 元々程よく脂肪がついた臀部だったが、出産を経たことによりより一層女性らしいラインを見せつけるそこにジャックハートの情欲が駆り立てられる。

 

「いやぁ、相っ変わらず最高の締まり具合と絡み具合、熱さ加減だぜロビンちゃん。俺と出会うために生まれてきたんじゃねぇのかってぐらいにな」

「んはぁあっ、あんっ! ん……あぁああっ、イクっ、イクぅううっ!」

「ケハハハ。気持ちいいだろ? つっても、こんなに敏感になってるとは思っていなかったがな」

「だ、だって、ずっとシテなかったもの……! オナニーでも満足できないし、あの子を産んでからも疼いて疼いて仕方なかったのッ!」

「ほう。ようやく本音を出したか。で、どうして欲しいんだ?」

 

 最奥付近まで挿入された肉棒が微妙に動かされ、ロビンを焦らしていく。

 抉って欲しいところに竿が来ない寂しさを解消するためにロビン自身が動こうとしても、その動きを先読みされて快感を得られない。

 

「おね、がい……」

「あん?」

 

 焦らしに焦らされ、ついにロビンが我慢の限界を迎えた。

 ずっと我慢していたものを突き入れられ、しかしそれでも自分の欲しいところには来てくれない。

 出産してしばらく。一度も絶頂できなかったロビンが、彼の前で本音を零してしまう。

 

「お願い……お願い、します。ジャックハート様……。私を、あなたの好きに犯して、ください……!」

「いいのかよ。また予期せず子どもを孕んじまうかもしれねぇぞ?」

「いいのっ! お願いだから、いっぱい突いて、いっぱいイカせて! 膣内にいっぱい出して欲しいのぉっ!」

「そこまでせがまれたなら仕方ねぇな。んじゃ、覚悟しろよっ!」

「っ……ああぁぁぁああんっ!」

 

 そして突き上げるように膣奥に一気に挿入された肉棒が、ロビンを数ヶ月振りの絶頂の海へと誘う。

 これまでも細かく噴いていた潮を、さらに盛大に噴き出し足元を濡らす。

 以前交わった時よりもサイズアップしたジャックハートの肉棒が、これまで以上にロビンに快感を与える。

 

「はひっ、んぅうっ! あんっ……あぁっ! いいぃっ、しゅっ、しゅご、いぃのぉっ! あぁああっ、イクッ……あぁああんっ!」

「っ、いい乱れっぷりだぜロビンちゃん。こんなどエロい女が俺の子を産んで、これから孕んでくれると考えただけでも興奮してくるぜ」

「んんぅ、んっ……はぁん……。お願い、奥に注いで……」

「ケハハハ。疲れちまったか? ま、いいぜ。お安い御用だ」

 

 加速していくピストン。

 膣口と膣内の弱点を刺激される度に絶頂を繰り返していたロビンだが、彼の肉棒がこのッマジ割で一番深いところまで突き入れられた瞬間に、文字通り意識を飛ばした。

 

「受け取れ」

「イッ……ッ! イクゥゥゥうううううッ! ああっ、んっ……はあぁぁぁぁあんっ!」

 

 自分の体が自分のものではなくなってしまうような強烈な刺激。

 しかしそれは同時に、ロビンが喉から手が出るほどに欲していた快感でもあった。

 忘れたい感覚がいつの間にか忘れたくない快感に変わり、それを何とか堪能するために必死に意識を食い止める。

 

「はーっ、はーっ……。は、ぁあ……」

「あー、すっげぇ射精たわ。ありがとよロビンちゃん。気持ち良かったぜ」

「……えぇ。私もよ、ジャックハート様」

「ケハハハハ。マジで相当ロビンちゃんも気持ち良かったみたいだな。孕んでも責任は取らねぇぞ。麦わらんトコに居る限りはな」

 

 ジャックハートが自覚できるほどにロビンの子宮に大量に注がれた精液。

 もちろん最初から彼女を孕ませるつもりでこのラブホテルに連れ込んだため、いつもの"覇気"の応用で排卵させることも忘れてはいない。

 

「っと。さて、お別れだロビンちゃん。オルビアの子育ては任せたぜ。将来的に強い海兵に育てたいからな」

「はぁ……はぁ……。この子の将来は、この子が決めるわ」

「まあ確かにそうだが。ロビンちゃん、俺がお前たちの航海中にも狙いに行くの忘れてねぇか?」

「えっ……?」

 

 まだ激しく主張を続ける肉棒が抜かれると、ロビンの淫裂からは子宮と膣内に収まりきらなかった精液が床へと零れ落ちる。

 そのうちの幾らかがポタポタと音を立てる間が空き、彼女の口から少し気の抜けた声が出た。

 

「あれ、知らねぇのか? 俺はフットワークの軽い海軍大将として期待されてんだ。んで、これからもその軽さと単純な強さを買われて"新世界"での任務が続くってわけだ」

「……"青雉"では、ないの……?」

「そこまで言う義理はねぇな。"頂上戦争"でやらかした(・・・・・)麦わらにサカズキさんもキレてるし、四皇とか王下七武海とかも最近暴れすぎててウザいからな。遠慮なくぶっ殺す俺が適任なんじゃねぇか?」

「と、いうことは……」

「あぁ、安心しな。"新世界"でもまた会える。そん時はナミちゃんと一緒に愛してやるよ」

 

 ジャックハートの言葉にドキリとする。

 彼との性行為がまた恋しいものになるのではないかと考えていたのも事実であり、彼と交わりたいという気持ちが強くなっているのもまた事実。

 子を産み、子を孕み、仲間と同じ船に乗っている。そんな状態で彼に会ったらどんなことになるのか。

 

「もしかしたらその時にナミちゃんと二人で俺の元に来るかも知れねぇな。ケハハハ」

「ジャックハート様っ。わらわに何か御用ですか?」

「おぉ、来たかハンコックちゃん」

 

 近い将来に来るかもしれないそんな場面をロビンが想像しているうちに、ハンコックが部屋に入ってきた。

 彼女もまた、赤子の出産を終えた身であり、今は連れてきていないがマリンフォードにはジャックハートとの愛の結晶である愛しの娘、ジョー・シャルロットに愛を注いでいる。

 

「今、俺はものすごく機嫌がいい。なぜだか分かるか?」

「ニコ・ロビンを抱いたから、ですか?」

「あぁそうだ。そこで、俺の女の中でもとびきり美しく、ここ最近かなり頑張って俺に尽くしてくれるハンコックちゃんに、ご褒美をやろう」

「わ、わらわに、ジャックハート様からのご褒美を……?」

「何だっていい。お前の欲しいもの、して欲しいことを言ってみろ。なんでも叶えてやろう」

 

 息を整えるロビンの近くですぐさま2人の世界に入り込むジャックハートとハンコック。

 何かを決心した表情をしながら頬を赤く染めたハンコックが、ジャックハートに近づいた。

 

「それならばジャックハート様。一つだけ、叶えて欲しい願いがございます」

「ん?」

「わらわには未だ、過去の名である"蛇姫"を連想させる、ボア・ハンコックという名があります。その名を、ジャックハート様が書き換えてはくれませぬか?」

「……つまりは、ジョー・ハンコックになりてぇってことか」

「はい。無礼は承知でございます。ですが、どうか……!」

 

 ハンコックの要求は、まさかの結婚だった。

 目の前で繰り広げられる茶番のような2人の会話に唖然とするロビンだったが、その立っていた時間を後悔することとなる。

 

「いいぜ、ハンコックちゃん。正真正銘、俺の女になれ」

「〜〜っ! はいっ! 愛しています、ジャックハート様っ!」

「俺もだ、ハンコック」

 

 ハンコックからの告白を受け入れたジャックハート。

 指輪を渡されることも、正式な式を挙げることもしていないが、今この瞬間に2人は夫婦となった。

 

「特別だぜ。俺が元海賊を妻に迎え入れるなんて、そうはねぇ。ハンコックが俺のことを思い、主人ではなく一人の男として愛してくれていたのは分かっていたからな」

「ありがとうございます……!」

「だから、だ。その硬っ苦しい呼び方も終わりでいい。お前の好きに呼べ」

「……では、貴方様と呼んでも?」

「あぁ」

 

 ハンコックからジャックハートに迫り、互いの身体の距離が無くなる。

 四肢を絡め合うように抱きつき合う2人のその姿は、心に少しばかり闇を抱えるロビンにとっては見ていられないぐらいに甘ったるい空気を醸し出していた。

 

「貴方様……。永遠に、お慕いしております……」

「お前がそれだけ愛してくれるのなら、俺もお前を愛してやる」

 

 ベッドに押し倒されるハンコック。

 ハンコックが普段身につけている赤いドレスの裾が捲り上げられ、すでにぐっしょりと濡れた秘部が露わになる。

 

「準備万端か?」

「もちろんです。……貴方様と愛し合えるのですから」

「ケハハ。可愛いやつだ」

「んっ……ちゅぅ、ちゅぱっ、あむっ……んっ、ふ、ぁ……」

 

 仰向けになったハンコックに覆いかぶさるジャックハート。

 一切の躊躇いもなく重ねられた唇。舌が扇情的に絡み合い、唾液の橋がかかる。

 

「……抱いて、ください」

「あぁ」

 

 どこか優しさを感じる手つきではだけた服を完全に脱がされる。

 隠すものが無くなったその美貌は、出産を経てもなお完璧を保っていた。

 

「ケハハ。おいロビンちゃん。もう俺に用がねぇんなら出て行っていいぞ。これからはハンコックちゃん相手に忙しいからな」

「っ、そう、させてもらうわ」

 

 これから始まろうとしている二人の濃厚な絡み合い。

 そんなものを視界に入れたくないと思い、衣服を整えて部屋を出ようとするロビン。

 

「……ふふっ」

 

 部屋を出て行く瞬間に振り返り、交差してしまったハンコックとの視線。

 どこか勝ち誇ったようなその笑みに、ロビンは謎の敗北感を覚えるのだった。

 

 

 ◇

 

 

「おいおい戦桃丸くんよぉ。いくら"麦わらの一味"復活っつっても、大将の俺まで出ねぇといけねぇほどか?」

「パシフィスタを2体用意はしているが、念のためだ。ここで確実に仕留めるか、戦力をダウンさせたいそうだ。……って、あんた知らねぇのか?」

「んなもん深く考えてねぇよ。視界に入った海賊は誰であれぶっ殺す。お前も正式に海兵になったんなら、一つにこだわるんじゃねぇぞ」

 

 ハンコックと熱い行為を終えたジャックハートは、黒いワイシャツと白いスーツを身に纏い46番GRに向かっていた。

 大将となった今、ジャックハートは自分の部隊は持っておらず、直属の部下は形式上はいない。

 中将の時の部下やたしぎなど個人的にジャックハートを師事している面々はいるが、今はそれぞれ別の任務に当たっており、たしぎも今は"新世界"に移った海軍本部に待機している。

 

「それに、今回の作戦は"麦わら"が本命じゃねぇだろ。サカズキさんもそう言ってたんじゃねぇか?」

「……どうしてそう思う」

「単純さ。船員全員が一対多の大立ち回りを得意としている。そんな奴らを相手にしようとするんなら、選りすぐりのメンツで個人を叩き潰す方がいい。大方、"麦わら"復活騒動にはしゃいでるアホどもを一網打尽にするのがメインってとこだろ」

 

 二年前にここ、シャボンディ諸島でパシフィスタや黄猿とともに"麦わらの一味"を文字通り一時解散まで追い詰めた一人でもある戦桃丸。

 その時は海軍本部科学部隊隊長であったが正式に海兵となった彼だが、当時のまま黄猿の部下という形になっている。

 

「まあ、そういう理由も確かにある」

「だろ? 俺もどっちかっつうと大立ち回りの方が好きなんだ。てな訳で、今日はやる気が出ねぇ。なんでよりにもよってシャボンディ諸島でやるんだよ。戦力分析して奴らの慣れねぇ"新世界"でぶっ潰した方が楽だろ」

 

 とは言うものの、ジャックハート自身は誰にも言っていないが、現時点で"麦わらの一味"を崩壊させる気はさらさらない。

 そもそもロビンとナミが所属しており、かつ彼女たちが残りたいと言っているのだ。海で偶然遭遇したのならともかく、今シャボンディ諸島に集結している海賊を無視してまで捕まえなければならないほどの状況でもない。

 

「それに、戦力の分析ってことなら俺たちも他人事じゃねぇ。部下がどれだけできるか、上としては把握しておかなきゃいけねぇからな」

「上司……いや、海軍のトップとしての自覚はあるのか」

「ったりめぇだ。部下と組織のことを考えてるからこそ、あいつらに場数踏まそうとしてんじゃねぇか」

「死人が出るとは思ってねぇのか?」

「出ねぇよ。俺がいるからな」

 

 今回の"麦わらの一味"と戦うことになるかもしれないが、ジャックハートは最前線に出て戦うつもりは皆無だ。

 妊娠した女性クルーがいるという点から、仲間思いで有名な彼らが激しい戦闘を行うことはないと考えているためだ。

 

「前から疑問だったんだが、なんで海軍って"覇気"の習得を義務付けねぇんだ?」

「"覇気"は中将クラスまで鍛錬を積まねぇと引きだせねぇ。ワイはともかくとして、あんたみたいに幼少期からほぼ全てをマスターしてる奴なんざそうはいねぇよ」

「そうか。……面白くねぇな」

「何?」

 

 戦桃丸は耳を疑った。

 いったい今の会話の何が面白くないのか、そもそも何を面白いと感じているのか。

 

「張り合いがねぇんだよ、どいつもこいつも。麦わらには"覇王色"のセンスがあるってことで一応期待はしているが、こりゃしばらくは"新世界"から帰ってきたくはねぇな」

 

 ジャックハートのその言葉を聞き、戦桃丸は戦慄した。

 強いものと戦いたい。張り合いがある戦いがしたい。

 それは思い上がった馬鹿な海賊たちがよく口にするものであり、その一時の気持ちから強者に挑んで敗北する。よく見、そして彼自身そう言った海賊たちをよく倒してきた。

 

「ケハハ。最近性欲の方もそうだが、刺激的な戦いがしてぇって気持ちもやばいぐらいに高まってきてんだわ。発散してぇが鎮めたくねぇ。どうすりゃいいんだろうな」

 

 獰猛な笑みを浮かべるジャックハート。

 戦桃丸よりも幾分小さい背ではあるが、彼から圧倒的な力を感じ、額に汗が流れた。

 

「っ、あそこか……?」

「みてぇだな。行って来い戦桃丸、大将命令だ。俺はお前らが取り逃がした奴らを追う」

「了解っ!」

 

 広場が見え、そこに集まる大勢の海賊たち。

 ジャックハートの命令という許可が下りたところで、因縁の相手を捕まえるべく戦桃丸は従えていたパシフィスタ2体と共に飛び出していった。

 

「……さてと。気に入ってるシャボンディ諸島で暴れんのもアレだし、奴らの出航現場でも見届けるとするか。天竜人にクレーム入れられんのも面倒くせぇしな」

 

 続々と海兵たちが"麦わらの一味"の集合地に集まる中、ジャックハートは一人逆方向へと歩いていく。

 

「楽しみだぜ、新世界。今までセンゴクさんは俺が若ぇってだけで"偉大なる航路"前半の任務多めだったからな。これからはサカズキさん主導の"実力主義"。海賊たちも文字通り実力者が"新世界"に集まる。ケハハハ、血が騒ぐぜ」

 

 休暇を終え、存分な修行期間を経てジャックハートがサカズキから受けた命令。

 それこそが当初から彼に期待されていた、"新世界"での蹂躙だった。

 

「部隊の編成にアレ(・・)関係の手続き、子どもたちの訓練にも付き合わなきゃいけねぇし……。ダレスは10歳で少尉、リリーは9歳で軍曹、スウェットリーが伍長で、アルカナとハルディが一等兵、ノルディアが二等兵か。他の子達も全員海兵志望だし、俺より強くなるんじゃねぇか?」

 

 誰にも聞かれていない、ただの独り言。

 もちろんジャックハートも誰かに聞かせる気もなく、誰かに聞かれているとも思っていなかった。

 

「ふふっ。安心したわ、ジャックハートくん(・・)。私たちの子どもが、立派な海兵になってくれているなんて、とても嬉しいわ」

「え……?」

 

 遠い昔に聞いた、聞き覚えのある愛しい女性の声を聞くまでは。

 いつもの彼からは想像もできない、本人自身も自分で間抜けな声を出したと分かるほどに気の抜けた声がジャックハートの口から漏れる。

 ゆっくりと振り返る。

 

 そこには。

 

「久しぶりね、ジャックハートくん。いくら長期の任務でずっと海軍本部を離れていたからって、先生よりもあなたのことを選んだ私に報告なく多くの女性に手を出すエッチな男の子になってるとは思わなかったわ」

「アイン……ちゃん……?」

「えぇ。あなたに処女(はじめて)を奪われ、あなたの童貞(はじめて)を奪い、あなたとの子どものダレスを産んだ、アインよ」

 

 およそ10年前に出会った、文字通り初めての思い出の女性であるアインが立っていた。

 

 

 

 




 き、気づけばお気に入り登録者数5000人という大台目前に……! 読者の皆さん、お気に入りに登録してくださっている方、いつもコメントをくださる方、ありがとうございます。これから就活が本格化し、もしかしたら投稿ペースがかなり遅くなってしまうかもしれませんが、待っていただけると幸いです。
 この作品……他の作品もですが、完結目指して頑張るので、応援のほどよろしくお願いします。


勝手にSBSのコーナー!

Q:過去編の後、アインはどうなったのですか? 一部の読者さんより


A:映画とは違い、フツーに海兵として働いてます。詳しいことは次の話で書くので、次回もお楽しみに!



コメント、評価などお待ちしております!


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覚醒

就活もうすぐ終わりそうなので投稿。

ここら辺から登場キャラまた増えてくる予定なのでごっちゃにならないように気をつけないと……。


感想などは、絶賛お待ちしておりますよー!
いっぱい来るとそれだけで喜ぶので、ぜひともよろしくですっ!


 

「アイン、ちゃん……だよ、な? なんで、ここに」

「あなたが海軍本部大将になったって聞いて、急いで戻ってきたの」

「支部の中将してたんじゃなかったのか?」

「押しつけてきたわ。……もう、他に言うことはないの?」

「……あぁ、悪い。おかえり、アインちゃん。俺も会いたかったぜ」

 

 シャボンディ諸島での感動の再会。

 と言うには少しリアクションが小さいものだが、二人ともすでに成人した大人。

 外に出すほどに大きな動きはしていないが、内心は二人とも再会できた喜びに満ち溢れていた。

 

「嬉しい……っ! ようやく、会えた……!」

「俺もだぜ。まさかまたアインちゃんと再会できるなんてな……」

「本当に、会えてよかったわ……!」

 

 平静を保っていたアインだったが、我慢の限界がきたのかジャックハートの胸元に勢いよく飛び込んだ。

 出会った当時からは考えられないほどに大きくなったジャックハートの体。その腕の中にすっぽりと収まった彼女は、彼の体を堪能しながら頬を赤らめた。

 

「変わらねぇな、アインちゃん。当時まだガキだった俺を骨抜きにした時と同じ……いや、それ以上に魅力的になってるぜ」

「そう? ジャックハートくんは……変わったわね。随分と男らしくなったというか、かっこよくなったわ」

「ケハハハ、そうか?」

 

 互いに育った体の感触を確かめながら、人目も憚らずに抱きしめあう。

 身長差のある二人だがその瞳はお互いの瞳をしっかりと見つめており、アインはジャックハートの体に両腕を回して抱きしめる力を強めた。

 

「あんっ」

「……すまねぇな、アインちゃん。いちゃいちゃすんのはもうちょい後になりそうだわ」

「お仕事?」

「そんなとこだ。後でたっぷり愛してやるから、待っててくれるか?」

「えぇ」

 

 まだまだ幼かった当時よりも遥かに大人びた……というよりも色々と成長しすぎた彼の姿にアインの口から熱い息が漏れる。

 数秒間のお互いの存在を確かめ合うような抱擁。今は愛し合う時間はない、と言っているジャックハートだが、その手はしっかりとアインの尻肉を掴んでいた。

 

「頑張ってね」

「あぁ。っつーより、アインちゃんが帰ってきたってのにやる気が出ねぇ訳がねぇよ」

 

 手のひらと上半身で軽くアインの感触を楽しんだジャックハートが彼女から離れる。

 周囲からはクールで知的というイメージを持たれている彼女だが、ジャックハートにはうっとりとした、まるで雌のような表情を向けていた。

 

「じゃ、行ってくる。結局"麦わら"には逃げられたみたいだしな」

「私はどうすればいいかしら、ジャックハート大将」

「慣れない土地で慣れない任務はするもんじゃねぇ。そういうのは俺に任せて、アインちゃんは船で休め」

 

 そう言い残し、瞬間移動のように姿を消すジャックハート。

 移動の正体は"六式"の歩法である"剃"とその応用技である"月歩"の複合技の"剃刀"なのだが、それを彼が使用すれば文字通り目にも映らぬ速さとなるのだ。

 

「……待ってるわ、ジャックハートくん」

 

 アインのその呟きは、吹いた風に流れていった。

 

 

 ◇

 

 

 

 "麦わらの一味"の出航直前。彼らを捕まえようとする海軍の小隊の行き道を、様々なトラブルが塞いでいた。

 偽物の"麦わらの一味"たちが集まっていた46番GRから海兵たちの包囲網を突破した船長のモンキー・D・ルフィ。

 巨大な鳥の背に乗って42番GRの本物の集合場所にやってきた彼を待っていたのは、二年ぶりの船と仲間たちの姿だった。

 

「うおー! みんなー!!」

「ルフィッ! サンジ、ゾロー!」

 

 懐かしいサウザンド・サニー号の甲板には、懐かしいがこの二年の間に修行した証の見える仲間がいる。

 その事実が、ルフィの顔を満面の笑みにさせる。

 

「ルフィさん、急いでください! 軍艦がすぐそこまで来ています!」

「おう、分かったブルック!」

「こ、今回の船には大将なんて乗ってねぇよな……?」

 

 "ヨミヨミの実"の能力のおかげで白骨化しながらも蘇った音楽家、ブルックの言葉を聞き、戦闘員のゾロとコックのサンジと共に船に乗る。

 全員(・・)が揃い、いよいよシャボンディ諸島から離れるために出航するという時に、ルフィはあることに気づいた。

 

「あれ、ナミとロビンはどこだ?」

「――っ」

 

 新世界に向かおうとしている海賊にしては圧倒的にメンバーが少ない"麦わらの一味"。

 わずか9人という人数のうち大半を男が占めており、女はたったの2人。

 その2人、航海士のナミと考古学者のロビンの姿が甲板に見えないのだ。

 

「な、ナミとロビンは、今船ん中にいるんだ。ナミから出航と同時にすることは聞いてるから安心しろ!」

「そうなのか? なら呼ぼう! 出航する前に話したいことが―」

「ルフィ!!」

 

 2人の姿を探すルフィに狙撃手のウソップがたじろぎ、ブルックやサンジ、船大工のフランキーやゾロといった気の強い船員ですら表情を曇らせた。

 そんな中、普段は大人しい船医、チョッパーが大きな声を上げてルフィを制した。

 

「……ナミとロビンは今、甲板には出られない状態なんだ。無事にシャボンディ諸島を出て、安定したら出てくる」

「……そっか、分かった! チョッパーが言うんなら、無茶はさせられねぇ」

 

 お調子者でもある彼だが、チョッパーの真剣な表情と声を聞き、詳細は分からないが事態を何となく察した。

 船医であるチョッパーが出られない状態ということは、無茶はさせられない。船長としての冷静な判断を下した彼は、事前に出ていたというナミの指示に従うことにした。

 

「そんじゃ野郎ども! 一旦出航だ!」

「おう!」

 

 迫り来る軍艦。

 その砲撃を躱しながら、コーティングされたサウザンド・サニー号は海の中へと潜っていく。

 

 その瞬間。

 

「っ、なんだ、これ……!」

「さ、寒気が……」

 

 謎の寒気が甲板にいた彼らを襲った。

 背筋をなぞるような、それでいて腹の奥底から恐ろしいものが湧き出るような感覚。油断すれば、意識を刈り取られてもおかしくがない気配。

 その正体に、ルフィだけははっきりと気づいていた。

 

「"覇王色"だ……」

「えぇっ!? ちょ、ちょっとルフィさん? 海の中に入った私たちにまで届く覇気の使い手なんているとは思えません……と言うより、思いたくありませんが……」

「おれもブルックに賛成だ。海に入って気温が下がったからじゃねぇか? 第一、海の上にいた軍艦にはそんな使い手はいなかっただろ」

 

 ブルックとサンジがルフィの発言を否定する。

 と言うよりも、否定したかったのだ。

 もしルフィの言葉が本当ならば、今現在シャボンディ諸島内で足止めをくらっている海兵の中に、海の中の船に正確に"覇王色の覇気"を届けることが出来る強者がいることになるからだ。

 

「ま、まさかとは思うけどよ、大将クラスがいたってことはねぇよな?」

「……それについては、私が説明するわ。シャボンディ諸島から離れていた間も、少しだけ情報収集はしていたから」

「ナミッ!」

 

 船の奥から戸を開けて出てきたのは、この船の航海において最重要と言っても過言ではない存在である、航海士のナミ。

 船出の時には姿はおろか声すらも聞けなかった仲間の存在を確認することができ、ルフィの顔に喜びの色が現れる。

 

 振り返り、その姿を確認するまでは。

 

「……ん? ナミ、お前太ったか?」

「違うわっ! 失礼ね! って、これじゃそう思われても仕方ないわね」

 

 長い時間同じ船に乗る仲間として生活してきたルフィにとって、見慣れないほどに大きく膨らんだナミの腹部。

 顔や首といった部分はさほど太っているように見えないその姿をルフィは見たことがなかった。

 

「……ルフィ。私ね、妊娠したの」

「妊娠……?」

「赤ちゃんのお母さんになる……いえ、もうなってるって言えば分かるかしら」

「ゴメンなさいルフィ。ナミだけじゃなくて、私もなの」

 

 大きくなったその腹部を優しく撫でるナミ。

 その奥から、小さな赤ん坊を二人抱えたロビンが現れ、彼女もまたナミと同じことを口にした。

 

「飛ばされていた二年間のうちにちょっと、ね」

「その件についてさっき全員で話しててな。船長のお前に何も言わずに出航を急いだのは正直どうかとは思っているが……ルフィ、お前はどう考えてる」

 

 憂いを感じさせる表情を浮かべるナミ。

 フランキーのその声とともに、ロビンとナミ以外の男衆がルフィに視線を向ける。

 

「ん〜? どう考えてるも何も、そいつらはナミとロビンの子供なんだろ? だったら、ナミとロビンの家族ってことなんじゃねぇか?」

「そりゃそうだけど……ホントにいいの? ルフィ」

「あぁ! 二人の家族ってことは、俺たちにとって仲間みてぇなもんだ!」

「ほらナミさん、ロビンちゃん。安心しろって言っただろ? コイツはこういうやつだ」

 

 "麦わらの一味"船長であるルフィが下した決断は、別にどうだっていいというものだった。

 そもそも彼自身がそういう事情を詳しく知る必要を感じておらず、深掘りしなかったのだ。

 

「それに、ナミもロビンも子どもと離れたくねぇんだろ?」

「……えぇ」

「船長と船医がそう言うんなら、乗せない理由はねぇな」

「ん? なんでだ、チョッパー?」

 

 一応この船の船長ということで一味の意思決定は基本的にルフィにあるが、そこに船医であるチョッパーも賛同しているというのだ。

 いつも通り純粋な表情で首を傾げながら、ルフィはチョッパーに視線を向けた。

 

「全員揃ったし、航路も……大丈夫なんだよな?」

「問題ないわよ」

「よし。おれは何でも治せる医者を目指してるけど、"精神(・・)"は流石に別問題なんだ。本人がいる前でこれを言ってもいいのか分からないけど、船の意見で子どもだけを置いていくってなったら、多分ナミとロビンは正常じゃいられなくなると思う」

「ヨホホホ……。それは確かに、そうでしょうね……」

 

 一味の中で実年齢で考えれば一番年上となるブルックだけでなく、普段そういうデリケートなことを考えたことがないメンバーですらも容易に想像がつく。

 ナミとロビンの相手が誰かは分からないが、自分の子どもと自分の意思でなく離れることになれば、精神的なストレスも相当なものになる。

 

「おれもこれから、精神科と産婦人科、小児科の勉強もまた始めるつもりだ。そうすりゃ二人のカウンセリングもできるし、子どもたちの世話もできるからな」

「……ナミ、ロビン。二人とも、その子どもが誰との子どもかってのは話せねぇのか?」

 

 チョッパーの言葉が終わり、ほんの少しの間だけ続いた静寂を切り裂いたのはそれまで口を挟まなかったゾロだった。

 縦についた刀傷が特徴的な左目を閉じたまま、鋭い眼光をのぞかせる右目を開く。

 

「……ごめん。それは、言えない……」

「……私も、言えないわ」

「そうか。チョッパー、こういうのも、二人の気持ちに整理がついてからってことか?」

「そうだっ! 授乳期の精神状態もあるからな! ナミもロビンも、そういう報告ができるってなった時に自分のタイミングでいいからな!」

 

 突然として"麦わらの一味"に降りかかった二人の女性船員の妊娠、出産。

 その問題を解決するには船長のルフィではいささか力不足であることは全員理解している。そのため、船医のチョッパーと当事者のナミ、ロビンの三人で話を進めていくことが決定した。

 

「ナミとロビンの話は一旦終わりか? チョッパー」

「おう、もう大丈夫だぞ」

「なら俺からもお前たちに話しておかなきゃいけねぇことがある」

 

 チョッパーから話のバトンを受けて話すのは、この二年で物理的にも大きく変わったフランキー。

 

「俺たち全員がシャボンディ諸島から離れていたこの二年、このサニー号を守ってくれていた奴らのことだ」

 

 それは、彼らの知らないうちに自分たちの船に迫っていた密かな危機と、その際に聞いたこれからこの一味、そして新世界に訪れるかもしれない最大級の危険についてだった。

 

 

 ◇ ◇

 

 

「いやぁ、まさか本当にアインちゃんと再会できるなんてな」

「私もこのタイミングで異動できるとは思ってなかったわ。またジャックハートくんに会えるなんて、嬉しい……っ!」

「んーっ! んんーッ!」

「おいおいアインちゃん。部下が見てるんだ、抱きつくのは部屋に入ってからにしてくれねぇか?」

 

 心の中で小物だと決めつけた偽物の"麦わらの一味"の処理は部下に押し付けたジャックハート。

 そこから海軍の軍艦までの帰り道に捕まえた女を担ぎ上げて帰ってきたのだ。

 

「ケハハハ。そんなケツ振って誘わなくたってちゃんとぶち込んでやるから安心しろって、ペローナちゃん」

「離せお前ッ! クソッ……!」

「汚ねぇ言葉を使う女は気に入らねぇな。まあ、調教すりゃあいいだけか」

「ふざけんなっ! 誰がお前なんか、に……」

「……ケハハ。怖気づいたか? 死ぬより痛い思いをするか気持ち良く生き延びるか、好きに選べ」

 

 ゴスロリ風のドレスに身を包んだ女性、ペローナ。

 その正体は元王下七武海であるゲッコー・モリアが率いるスリラーバーク海賊団のメンバーであり、彼女もしっかりとした海賊。

 そのためジャックハートに捕らえられ、今もこうして弱めた"覇王色"を当てられることになっている。

 

「さてと。新世界に行くとするか。魚人漁りもいいが、それはまた今度にしよう」

「……今回は、マリージョアを経由するのですね……」

「あぁ。……そうか、お前にとっちゃ嫌な記憶か。大丈夫だ。俺がいるからな」

「はい……」

 

 ジャックハートの"覇気"を受け、小刻みに震えるペローナ。

 そんな彼女を担ぎ上げたまま甲板に上がったジャックハートを出迎えたのは、先に船へと戻っていたハンコックだった。

 ここにいるメンツではジャックハートぐらいしか知らないことだが、以前天竜人の奴隷であったハンコックにとって"聖地"マリージョアは嫌な思い出が色濃く残っている場所だった。

 

「ジャックハート様。なぜ魚人島を経由しないのですか?」

「たまには顔出せってあの人たちに言われてんだわ。んで、"麦わら"の動向を観察するにもここは一旦放置。もしナミちゃんとロビンちゃんを魚人島に置き去りにするんなら、新世界に顔だした瞬間に船ごと潰す。で、二人は魚人島で人魚達と一緒に回収すりゃあいい」

「……そっかぁ。あの海の中の景色、好きなんだけどなぁ」

「平和になりゃいくらでも海中船上セックスしてやるよ、コアラちゃん」

 

 お腹が大きくなったコアラの尻肉を掴む。

 それに即座に答えるように悶え、体をくねらせる彼女を見て口を大きく歪ませたが、その直後にその表情を珍しく険しいものにした。

 

「とは言ったものの、"ボンドラ"の中はクソ暇になるな。母体に無茶はさせらんねぇし、なんかそういう気分にもならねぇしな」

「っ! 貴方様、どこか具合が悪いのですか!?」

「おいハンコックちゃん。俺がセックスのことしか頭にねぇ奴だと思ってねぇだろうな?」

 

 "赤い大陸"の麓にある"赤い港"。

 聖地マリージョアへ飛ぶためのリフトは2つしかなく、効率よく人間を運ぶためには出来る限り大人数を詰め込む必要がある。

 

「……なら、アインちゃんとのお話の時間にでもするとしよう。積もる話は山ほどあるし、何よりみんなとも仲良くなって欲しいからな」

「それは、どういった意味で?」

「色んな意味で、だ。まずは女同士で仲良くなれ。俺は、ちょいとこの子を調教してくるわ」

「ひっ……! や、やめてくれ!」

「何、ペローナちゃんが従順な奴隷になるまでしこたま教えこんでやるだけだ。怖がる必要なんてねぇよ」

 

 ペローナを担いだまま、自らの部屋へと入るジャックハート。

 普段ならその後にハンコックたちを連れてこさせるのだが、今はいない。

 

「"ホロホロの実"か……。久しぶりだな、恐らくだが俺を無条件で無力化できる悪魔の実は」

「っ!」

「ケハハハ。睨むなよ。……ペローナちゃんの発動が早いか、俺が一撃入れるのが早いか、だな」

「……そんなこと、するもんか。私だって命は惜しいんだ。生きてモリア様に会うまで、死ねない……!」

「相変わらず海賊どもの考えることは分かんねぇな。犯罪者なのに妙に義理堅いってか、どうでもいいことをちゃんと守るんだよなぁ。ま、別に俺にとっちゃどうでもいいがな」

 

 ベッドに投げ捨てられるように寝かされたペローナ。

 彼女の首元には先ほどジャックハートが彼女を捉えるときに"覇王色の覇気"を放った際、気絶してしまった彼女に付けられた、錠のついたチョーカーがあった。

 

「試作品だったが、思いの外効くもんだな。チョーカーにただ雑に丸く加工した"海楼石"をつけるだけで、日常生活には全く支障が無いが、能力は完全に封じることができるとは、思ってもなかったぜ」

「クソ……っ! このチョーカーさえなけりゃ、こんなとこ……」

「おいおいペローナちゃん。自分の言葉にはちゃんと責任を持たなきゃならねぇぜ? それに、俺の元で生き延びようって考えてるんなら、今みたいな汚ぇ言葉はやめといた方が身のためだ」

「ジャックハート様っ。出航の準備ができました。"赤い大陸"の麓にもボンドラがもう待機しているとのことなので、到着次第すぐに乗り込めるとのことです」

「おう。んじゃ出航で」

 

 放り投げられたベッドの上からジャックハートのことを睨みつけるペローナ。

 ジャックハートと彼女しかいなかった空間にマーガレットが入り、坦々と報告を済ませていく。

 その光景と、今までに起きたこと、そして自分が見てきたことを振り返っていたペローナは、その睨みの中に怯えを孕ませた。

 

「……一体、その若さでどれだけの力を溜め込んでるんだ……?」

「ケハハ。気になるか? ……ってそういやペローナちゃん、くまの野郎に吹っ飛ばされたんだっけか」

「あぁ。そして今は、そのくまをボコボコにした男に捕らえられちまってる」

「そういうこった。海賊がのこのこシャボンディ諸島に顔出すから悪いんだぜ?」

 

 そこから感じられるのは、ジャックハートが今まで海賊を捕らえてきた時にも向けられた、諦めだ。

 圧倒的な力を目の前にし、その力に屈し、自分はここで終わるということしか想像できなくなってしまった時点での、諦めだった。

 

「ま、俺が気に入ればある程度は自由にさせてやるさ。頑張って俺を骨抜きにしてみな」

 

 そしてそこに、一本の逃げ道を用意する。

 若い海賊が多い中で、彼らはまだその人生の半分も終えていないことが多い。

 まだ人生が長い道半ばで捕まえた彼らに、余生を充実して過ごせるという唯一の幸福の可能性を与えるのだ。

 

「事実、元"女帝"のハンコックちゃんは正式に俺の妻の一人として過ごしている。もしゲッコー・モリアがインペルダウンかどっかに捕まったとしたら、優先的に会わせてやらんでもない」

「っ……」

「もしも、の話だがな。あとは、単純な話俺の行動範囲が広いから会える可能性も高いってのもある。その可能性にかけて俺の元にいるのが嫌ってんなら、今すぐにでもインペルダウンにぶち込むが……どうする?」

 

 さらに"見聞色の覇気"から相手が今一番求めている、強く欲しているものを探り出し、その条件を相手に突きつける。

 そしてその条件を断るならば、問答無用で投獄するのだ。

 

「……お願い、します……ジャックハート、様……。私をあなたの元に、置いてください……」

「ケハハハハハッ! いいぜペローナちゃん。ルールとかは他の奴に聞いとけ。……っと、着いたか。んじゃ、また後でな」

 

 ペローナと話しているうちにシャボンディ諸島と"赤い大陸"の僅かな距離は縮まっており、"聖地"マリージョアへ上がるためのボンドラが目の前に来ていた。

 

「ジャックハート大将ッ! ボンドラの準備、できています」

「おう。つーかあの人たちもマジで暇人だな。王だか神だか知らねぇが、あんな生活で数十年もずっと生きるなんて信じられねぇ」

 

 今回マリージョアを通るルートを選択したのは、ジャックハートの意思ではない。

 基本滅多なことでは他人からの指示は受け付けたくない彼だが、彼ら(・・)の指示には従うようにセンゴクやサカズキから言われているのだ。

 

「ジャックハート大将。もう一つご報告があります」

「……あ? マージか。何の報告だ?」

 

 ジャックハートのマリージョア入りに合わせ、物資や人材の移動のために他の軍艦も麓に集まっていた。

 そのうちの一隻から降りてきたのは、"東の海"からこの場所まで戻ってきていたかつての部下、マージだった。

 

「"東の海"でジャックハート大将と関係を持ったという女性を連れてきました」

「ほう……。上出来だ、マージ。彼女はこれからのお楽しみ(・・・・)をより刺激的なものにするアクセントには必須だからな。よくやった」

「今は身支度をしているとのことなので、もうすぐ降りてくると思いますが……」

「いや、もうその心配はいらねぇみてぇだ」

 

 ジャックハートが視線を向ける先には、マージがその彼女(・・)を乗せてきた軍艦。

 そしてそこから降り、駆け足でこちらに向かってくる全身をローブで隠した人影が一つ。

 

「えいっ」

「っと。そんな安っぽいローブで隠れてても分かるぜ?」

「あら残念。でも、せっかく長旅を終えて会いに来た秘書候補相手に冷たくないかしら?」

「……そうだな。久しぶりに会えて嬉しいぜ」

 

 抱きついてきた彼女の体を抱きとめる。

 なんども抱いた彼女の義妹(・・)と同じ完璧なプロポーションを誇るその肉体は、衣服の上からでもよくわかる。

 急接近した互いの顔。声や身長など様々な条件からすでに正体は分かっているが、ここで彼女の名前を呼ばないというのは無粋というものだ。

 

「私もよ。まさかいきなり空から男の人が降ってきて、そのまま口説かれて抱かれるなんて思ってもいなかったわ。でも、そのおかげで魅力的な人に出会えたし、何より村のみんな(・・・・・)が助かるんですもの。一石二鳥以上よ」

「そりゃこっちのセリフさ。まさか、君みたいな美女を口説くのに成功するなんて思ってもいなかったぜ」

 

 未だ抱きしめ続けてくる彼女が被っているフードを、そっと外す。

 するとそこには、数ヶ月前に抱いた時よりもさらに魅力的になった彼女の顔があった。

 

「相変わらず綺麗な髪だ。久しぶりな、ノジコ(・・・)ちゃん」

「えぇ、久しぶりね」

 

 彼女の微笑みに、ジャックハートも笑みを返す。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「ってなわけで、くまは恩人には違いねぇが、次会うときは心のない"人間兵器"だ」

「そう、か。ありがてぇが、色々と疑問が残るな」

 

 時を同じくして、海の中。

 フランキーから2年間という長い年月の間一味の船が無事に残っていた理由を聞かされた麦わらの一味は、再会した直後にしては珍しく少しばかり張り詰めた空気が流れていた。

 

「じゃあ、報告ついでに私の方からもいいかしら」

「さっき言ってた、大将クラスのやつの話か?」

「そうよ。ルフィ、あの頂上戦争で大将たちの戦いは見た?」

「あぁっ! 次やるときは絶対ぇ負けねぇ!」

「っ、てことはルフィ、お前……」

「そん時は"覇気"が使えなかったからな。今度戦う時は、ぶっ飛ばしてやる!」

 

 二年前、つまりは修行を始める前とはいえ船長のルフィが負けた。

 何度か遭遇したことはあるが改めて"海軍本部大将"の強さをかみしめる仲間に向け、ナミは続ける。

 

「その海軍本部大将が、5人に増えたのは知ってる?」

「えぇっ!? あ、青雉クラスがそんなに……?」

「そう。海軍元帥には元大将の"赤犬"が選ばれたわ」

「赤犬……!」

 

 頂上戦争で受けた胸の傷に手をやり、表情を強張らせるルフィ。

 他の面々も、ナミの言葉に真剣に耳を傾けていた。

 

「そして大将には、以前と引き続き"青雉"と"黄猿"。そして、元帥赤犬の指示の元、より海軍を強力なものにするため世界中から猛者を集める"世界徴兵"が行われたの」

「ま、まさかそこから三人も大将が出たのか!?」

「いいえ。そこから選ばれたのは二人。"藤虎"と"緑牛"。この二人に関しては、情報はほとんど無いわ。……そして問題は、最後の一人よ」

 

 ナミとロビンの顔が、苦悶とも言える表情に変わる。

 そして、彼の名が紡がれた。

 

「"白龍"。本名は、ジョー・ジャックハートよ」

「ジャックハート……! あいつが……」

「知ってるの? ルフィ」

「あぁ。俺、女ヶ島に飛ばされてて、戦争の後にやってきたそいつにジンベエと一緒にやられちまったんだ」

「じ、ジンベエって、元王下七武海の!?」

「そいつとルフィが同時にやられるって、どんなやつだよ……」

 

 "覇気"習得前に戦った三大将はまだしも、"覇気"をある程度会得していた状態ですらルフィが勝てなかった相手。

 どんな相手なのか、と全員がナミの方に視線で続きを促した。

 

「……詳細は、全くと言っていいほどに表に出ていないわ」

「え? いや、そりゃおかしくねぇかナミさん。海軍本部大将になるようなやつ、目撃情報とか悪魔の実とか、そんぐらいは……」

「出ていないわよ。全てが噂程度の信憑性が薄い情報。ただその中にも、確定している情報は少しならあるわ」

 

 ナミの言葉に疑問を抱いたサンジが聞き出そうとするも、それをロビンによって止められる。

 噂程度の情報の中で、数少ない明らかになっている情報。

 

「ジョー・ジャックハート。史上最年少で海軍本部所属の海兵になり、13歳で中将になった。目撃情報が少ないのは、仕事を終わらせるのが早いからよ」

「よ、ヨホホ……。ロビンさん、念のために聞きますがその仕事というのは……」

「えぇ、海賊の殲滅よ」

「ひ、ヒイイィィッ!」

「早すぎて目撃情報がないとか、どんだけだよ……」

「そしてもう一つ。これは、新聞に載っていた赤犬へのインタビューに書いていたことよ」

 

 ルフィ以外、この一味で彼が戦闘を行っている場面をまともに見たことがない。

 そして、ジャックハートの数少ない情報のうちの一つが、最後に告げられる。

 

「『今現状、最も期待している大将はジャックハート。"悪魔の実"を食べていないが、今いる海兵の中で最強と断言できる戦力というのもあるが、奴の仕事に対する徹底ぶりを見ていると、楽しみで仕方ない』だそうよ」

「能力者じゃねぇのに最強って……マジかよ……」

「そこんとこどうなんだ、ルフィ」

「……とんでもなく強いってのは、本当だ。やられた時は、手も足も出なかった」

「そしてもう一つ。流れている噂の中で、彼が"覇王色の覇気"の使い手ではないかっていうものもあるわ」

 

 サウザンドサニー号を沈黙が覆う。

 過去三大将一人にすら苦戦を強いられていた彼らにとって、その大将よりもさらに強い存在が現れたとなれば、空気も重たくなる。

 

「……最後に、一つだけいいかしら。これは、"麦わらの一味"のナミ、としてではなく、一人の女としてのお願いよ」

 

 絞り出されるような声。

 珍しい前置きに何を言うのかと男衆が首を傾げる。

 

「ジョー・ジャックハートは、無類の女好きなの。……捕まえた女海賊は、自分の元においているって……」

 

 それを言い切ると、ナミの体が震えた。

 おぞましい感覚に襲われているのか、冷静なロビンですらも体をビクつかせている。

 その光景だけで、何が彼女のお願いなのかは分かった。

 

「なんだよ、それ……!」

「許せねぇな……」

「……そういや、ハンコックもあいつに捕まったって、ジンベエが言ってたな」

 

 自分のせいで恩人が捕まった。

 その思い出したくもない事実が頭をめぐり、ルフィが苦い表情に変わる。

 他の男衆も海兵とは思えない下卑た行為に怒りがふつふつと湧いていた。

 

「あ、安心しろって、ナミ! ロビン! そのための二年間だったじゃねぇか!」

「そ、そうだぞ! おれたち、もう負けねぇために強くなっただろ!」

「……ありがと。ウソップ、チョッパー」

「ふふっ。そうね」

「あぁ。まさかとは思うが、お前ら最初っから負けることを考えてたわけじゃねぇよな」

「当たり前だ。俺がぶった切ってやる」

「おいゾロ! あいつとは俺がやるからな!」

 

 暗くなった雰囲気をかき消すために、ウソップとチョッパーが盛り上げる。

 二年間修行を積んだ自分たちなら海軍大将でも倒せる。

 

 そう、意気込んでいた。




天竜人にお呼ばれしたジャックハートさん。ペローナとノジコのゲットに成功。

次回からいよいよこの作品での新世界編です。
原作の新世界編は6割ぐらい原型なくします。


コメント、評価などお待ちしております!


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新境地

就活まだ続くことになりました(絶望)
めっっちゃ辛い……。



オリ主側の話がメインで進んでいくので、原作で起きたいざこざを無視することもあります。ご了承ください。





 

「おぉ〜! 来たかえ、ジャックハート! 待ってたえ、待ってたえ〜」

「あー、ご無沙汰っすチャルロス聖。で、何の御用っすか?」

「前々から言っておった人魚の奴隷だえ! まだ捕まらんのかえ!」

「いや、俺が捕まえたら俺の女にするに決まってんでしょ。アホっすか」

「なっ……! 貴様、無礼だえ!」

 

 一体なぜこの人は天竜人相手にこんな態度を取れるんだろう。

 眼の前で繰り広げられている天竜人の一人、チャルロス聖とジャックハートの会話を聞き、ジャックハート側の人間は全員一人残らずその考えに行き着いていた。

 

「ロズワード聖。俺ってこう見えても意外と忙しいんすよ? いくら天竜人の、そしてあなたのご子息とはいえ、俺はそんなワガママを聞くために海軍本部大将になったわけじゃないんですが」

「わ、分かっている! こらチャルロス! ジャックハートをあまり困らせるんじゃない!」

「父上っ! こいつ、わちしに対して……!」

「チャルロスッ!!」

「ひぃえっ……。ど、どうしてだえ父上……」

 

 天竜人という立場にあるからか、父親に怒鳴られたことがないからか、ロズワード聖の大声に怯えるチャルロス聖。

 しかし、しばらくしてから冷静になり、ジャックハートの立場(・・)を思い出したチャルロス聖はさらに続けた。

 

「どうしてだえ! こいつは下界のただの海兵なんだえっ! わちしの方が偉いんだえっ!」

「……俺ぁ、俺が手に入れようとしてるもんを奪われんのが嫌いでね。天竜人さま相手とはいえ、そんなことをされると流石に頭にくるってことっすよ」

「そんなこと関係ないえっ! だいたい、お前はわちしたちみたいに天竜人でもないのに奴隷を飼いよって! 生意気だえーっ!」

「……今、なんと?」

 

 その瞬間に解き放たれる、殺気。

 "覇王色の覇気"ではないが、その場にいる全員に確かに伝わるそれに、チャルロス聖は震えた。

 

「な、なんだえ……。お、おいっ! こんな無礼なやつ、早く殺してしまえっ!」

「んなチンケなおもちゃで俺が死ぬとでも思ってんすか? そもそも、俺が死んだら困るのはあんたたちっすよ?」

「ふんっ。わちしたちがお前一人いなくなったところで困るなんてこと、あり得るはずがない」

「どうだか」

「おいチャルロス! いい加減にしろっ!」

「どうしてだえ父上っ!」

 

 ジャックハートにひたすらに言葉を浴びせ続けるチャルロス聖。

 しかしそんな彼を再び彼の父、ロズワード聖が制した。

 

「ジャックハートが海軍から離れるのは、私たちにとって非常に痛手となる。そのことが分からんのか!」

「そりゃ言わなきゃ分からんでしょうよ。主に俺に命令するのは、あなたたち大人の天竜人ですから」

 

 非常に海兵を多く抱える海軍本部。

 そこのトップともなれば、世界政府や天竜人から直接命令が入る場合もあるのだ。

 

「中将以下の海兵への戦闘指導、並びにシャボンディ諸島近海の治安維持。賞金首確保の金による上納金にボディーガード、各海の近況報告に要人殺害。そして何より、俺が海軍にいるってことがあなたたちには一番のメリットのはずです」

「……そうだ。正直なところ、私たちが今一番恐れているのは、お前の気分による謀反。海軍全軍でかかっても倒せるか分からない相手は、リードに繋いでおきたい」

「あんまりにもキツく縛られると暴れちゃうかもしれないっすけどね。まあ、現状なら大丈夫です」

 

 天竜人すらジャックハートに強く出られない理由。

 それは、彼の気分を害してしまうことによって自分たちに多大な被害が及んでしまうことが確定しているからである。

 

「海兵って立場が嫌になりすぎたら、こいつら全員引き連れて海賊になるかもしれませんし」

「っ、だ、大丈夫だジャックハート。チャルロスには、私が良く言い聞かせておく」

 

 ジャックハートがこのマリージョアを通るのは、このチャルロス聖に理由もなしに呼ばれていたためだ。

 しかしそれは、蓋を開けてみればチャルロス聖のわがままだった。

 ジャックハートが明らかに気が立っているのを見て、ロズワード聖が青ざめた顔で言葉を続けていく。

 

「そ、そうだジャックハート。何か、欲しいものはないか? 極上の女ならいくらでも用意できるぞ?」

「今は、俺の元に来てくれた子たちを可愛がるつもりっす。……そうっすね。なら、一つ」

 

 海軍本部大将とはいえ、天竜人に言わせれば下々民。

 しかし彼にはそんな立場など一切関係ない。普通の人間が天竜人に向ければ即刻銃殺されてもおかしくないほどに獰猛な笑みを浮かべ、ジャックハートはロズワード聖に求めた。

 

「これから1ヶ月。……俺がすることを天竜人の名の元に正当化してください。あぁ、それだけだと足りないので、上の方達にもよろしくお願いします」

「……何? そ、それだけか?」

「えぇ、それだけ(・・・・)です」

 

 その笑みを隠したかと思えば、ジャックハートが次に浮かべたのは柔和な優しい微笑みだった。

 ジャックハートの行為の正当化。

 それは、正式には認められていなくても天竜人、世界政府、各国、海軍の中でもはや既に黙認されているものだった。

 

「その程度ならいいが……。普段のお前がしていることと何が違うのだ?」

「それは秘密です。言ってまた駄々こねられてもめんどくさいんで。ロズワード聖はただ、俺が海軍本部大将として行った行為を全て正当化すればいい」

「……分かった。その条件を飲もう。ただし、これからもよろしく頼むぞ! 私たちの幸せな暮らしはお前次第と言ってもおかしくないんだからな!」

 

 普段やっている事とほぼ同じ。

 そう思い、ロズワード聖はジャックハートの要望を受け入れた。

 もちろん彼の中に拒否するという考えはない。

 拒否してしまえば彼が先程言っていた、ジャックハートの謀反という最悪の事態が起きてしまうかもしれないからだ。

 

「承知しています。俺の要望を飲んでくれるのならば、天竜人の皆様の安全は保証します」

「なら良し。存分に働いてくれ」

「はっ」

 

 ジャックハートが敬礼をすると、ロズワード聖は何が何だかまだわかっていない様子のチャルロス聖を連れて帰って行った。

 屈強な男の奴隷を四つん這いの乗り物にし、のそのそと遅く進む彼らの背中を眺めながら、ジャックハートはほくそ笑んだ。

 

「ケハハハ……! 言質は取ったぜ、ロズワード聖」

「あの、ジャックハート様」

「ん、どしたよマーガレットちゃん」

 

 笑うジャックハートに、マーガレットが小さな声で尋ねた。

 

「……なぜ、あのような要望を?」

 

 誰から見てもわざわざ口にする程でもないようなこと。

 しかし、ジャックハートの頭の中にはとある考えがあった。

 

「ケハハ。そりゃお楽しみさ。まあ、強いて言うなら……そうだな。一国傾城って所か」

 

 その言葉を聞き、マーガレットはこてん、と首を傾げた。

 

 

 ◇

 

 

「ふんふふんふふふーんっ! おっ、やぁー諸君! おっはよー!」

 

 翌朝。

 新世界にある海軍G-5支部にて、一人の少女が楽しそうに歩きながら強面の海兵たちに満面の笑みを浮かべていた。

 

『おはようございますッ! ジョー・リリー少尉!』

「わっ。……もー、そんなにかしこまらないでよ。私の方が圧倒的に年下なんだし」

「い、いえいえ! 年下とはいえ立場はあなたの方が上ですから! それに……」

「それに?」

 

 その少女の名はジョー・リリー。

 海軍本部にて軍曹の階級についた彼女だったが、彼女自身の希望とサカズキの指示により、このG-5支部に配属となったのだ。

 

「……あなたに変なことをしたら、ジャックハート大将に殺されますので」

「あははははっ! いくらパパでもそこまではしない……と思うよ?」

「おいお前ら! さっさと食っちまえ、仕事は山ほどあるんだぞ!」

『りょ、了解スモやん!』

 

 食堂にてリリーと海兵たちが話していると、そこに現れたのはG-5支部の実質的なNo.2、G-5支部中将のスモーカーだった。

 荒くれ者が多いここですら言葉一つでまとめ上げてしまう彼の手腕は見事の一言だが、その視線は一点に注がれていた。

 

「お前もだ、リリー。……俺は、あいつが父親だからって甘やかしはしねぇぞ」

「望むところですっ! パパより弱い(・・・・・・)とはいえ、まだまだ未熟な私といつも手合わせしてくれて、ありがとうございますっ!」

「…………チッ。手加減はしねぇからな」

「はいっ!」

 

 屈託のない笑みを浮かべるリリーに対し、スモーカーはどこか決まりが悪そうに顔を背け、食堂を後にする。

 その後ろを駆け足で、大人と子供という歩幅の違いを埋めるように詰めていく。

 

「ったく、やりづらいな」

「むぅ。パパはパパ、私は私なんだから普通に接して欲しいのに」

「それを抜いたとしても、だ。……たかだか10歳のガキが、それだけの"覇気"を使える上に戦闘センスも抜群って、どうなってやがんだ……」

「そんなの私に聞かれても。できない人たちが弱いんじゃないの?」

 

 リリーのセリフの一部にジャックハートの面影を見るたびに小さく舌打ちをするスモーカー。

 "新世界"に身を置き、より厳しい環境で己を磨いて標的(・・)を捉えようとしていたのだ。

 このG-5支部に身をおいて二年が過ぎる前の頃。本部から彼の右腕として送られてきたのが、リリーだったのだ。

 

「そういや、ここに来る時に聞いていなかったな。お前の実力はそれなりに知っているつもりだ。……だが、まだその年齢で"新世界"ってのは正直早すぎると思うが……。どうしてここを選んだんだ?」

「えーっと。パパはともかくとして、お兄ちゃんもすっごく強くなったから、私も負けてられないなーって。それで、パパに相談したら『他の中将さんたちはリリーには厳しすぎるだろう。スモーカーさんのとこならちょうど良いんじゃないか』って言われたから、ここにしたの」

「……なるほどな」

 

 とはいえ、このG-5支部に来て数ヶ月。リリーがしたことと言えば、荒くれ者の部下たちを"武装色"を込めた拳で黙らせることや、近隣の島に行ってパトロールしたり、魚人島から出てきた海賊を待ち伏せして沈める程度のこと。

 そして、そんな彼女の仕事の一つとして今現在大きな割合を占めているのが、基地内での訓練だった。

 

「お前の親父に言われてんのはそれだけか?」

「ううんっ。あと、たっぷりと修行をつけてもらえって言われたよ!」

 

 スモーカーとしても将来有望な覇気の使い手である海兵との手合わせはありがたい。

 しかし、しかしだ。その相手が因縁の男の娘。それも10歳。

 つまり。

 

 ──お前にとって俺は、10歳のガキと同レベルってことかよ……!

 

 大将という地位につき、さらに自由に行動を続けるジャックハートに変わって、リリーの本格的な修行の相手に選んだということは、そういうこと。

 言いかえるのならば、ジャックハートに彼の10歳の子供と同レベルに見られているかもしれないということだった。

 

「舐めてんじゃねぇぞ……!」

 

 お前では俺には及ばない。

 リリーにそう言った気は全くないことは理解しているが、彼女を送り込んできたジャックハートに言外にそう言われているような気がして、無性に腹がたつ。

 もちろん、そんな憶測のことでイラついていても仕方ない。

 

「それと、サカズキさんやセンゴクさんたちも、私の"武装色の覇気"の訓練ならスモーカーさんが相手として適任だーって言ってたよ?」

「……あぁ。そんなにたっぷりシゴいてほしいならシゴいてやるよ」

 

 上層部も、まるでスモーカーには期待せずにジャックハートの子供達の将来に期待している。

 たしぎの一件もあり、ジャックハートに若干の恨みを抱いているスモーカーの中に、靄がたまっていく。

 

「ばっちこいですっ!」

「今が……8時か。4時間ぶっ通しだ。泣いても知らねぇからな」

「はいですっ!」

 

 しかし、自分の標的である"麦わらの一味"を捉えるためには自分の実力向上も不可欠。

 目の前にいる少女は、少し複雑な思いだが強いことに変わりはない。

 

「よし。じゃあまず、俺は能力は使わねぇ。"自然系"だからダメージは通らねぇが、体に当たったら攻撃成功だ」

「ふむふむ。肩慣らし程度に、どちらかが一撃当てるまで、ですねっ!」

「あぁ」

 

 修練場に着いたスモーカーとリリー。

 周辺海域のパトロールや事務作業は少し不安ではあるが部下たちに任せている。

 そのため、上司二人こうして訓練の時間がまとまって取れるのだ。

 

「さあ、来い」

「では……ほっ」

 

 剣道場のような小さな修練場。

 身につけている衣服のうち靴とローブを脱いだリリーが、掛け声とともに消えた。

 

「ふん。死角に移動するのはいい判断だが、移動が露骨すぎるぞ」

「ちぇー。バレちゃってた」

 

 リリーが現れた先は、スモーカーの背後。

 しかし、スモーカーもリリーがそこに来ることを読んでいたかのように右手を後ろに回し、後頭部への蹴りを防いだ。

 

「死角ばかりを突こうとすると、逆に動きを読まれやすい。今のも"見聞色"を使わなくても簡単に読める。……子供の小ささ、身軽さを利点にした戦いなら、一撃を狙うよりコンビネーションで攻めろって……これで何回目だ?」

「……パパみたいになりたいんだもん」

「ありゃ規格外だ。お前にはまだ無理だろうよ」

 

 "覇気"や六式を使えるとはいえ、彼女はまだ10歳の子供。

 そのためその中にも得手不得手があり、六式で言うならば"鉄塊"や"指銃"は苦手だが、"剃"や"紙絵"は得意だった。

 

「武器を使うってのも一つの手だ。"武装色"が得意なら、それだけで攻撃の種類は格段に増える」

「パパみたいに何も持たずに倒せる海兵になりたいのー!」

「……ったく。どこまでいってもジャックハート、か」

 

 訓練が始まって早々、リリーの意識は未だ父に向いていた。

 

「おい。今のお前の上司は俺だ。俺が上司で、お前が部下。そこにお前の父親は関係ねぇ」

「……うん。そう、だね。ごめんなさい」

「分かればいい。……続けるぞ」

「うんっ!」

 

 再び"剃"で消えるリリー。

 憎い相手の娘が部下となり、心の中はどこかスッキリとはしないが、スモーカーも己の強さのために修行に励む。

 

 

 ◇ ◇

 

 

 一方その頃。

 G-5支部で少しだけ話題に上っていたジャックハートはというと。

 

「あひぃっ、あっ、んっはあぁあっ! やら、らっ……んふうぅうううっ!」

「あう、くっ……ふ、うぅぅう。んっ、あんっ!」

「んひあぁぁあっ! イクッ、イッてる……っ! そ、そこっ! ゴリゴリしてぇっ!」

「っへっくし。誰か噂でもしてんのか?」

「ジャックハート様。ネフェルタリ・ビビ様からお電話です」

「おう。受話器近づけてくれ、カリファちゃん」

 

 シャボンディ諸島から連れてきたペローナと、"東の海"から来たノジコ、そして久しぶりにジャックハートの船に乗ることになったたしぎの三人と行為に及んでいた。

 大将になったおかげか知らないが、ジャックハートの船は他の軍艦と比べて医療設備が比較的整っており、女たちの妊娠、出産までを完璧にカバーできるようになったのだ。

 

『もうっ、あなたっ! いつになったらアラバスタに来てくれるのっ!?』

「悪いなビビちゃん。実は"新世界"の配属になっちまってよ。気軽にそっちに行けそうにねぇんだわ」

『嘘……。じょ、冗談でしょ?』

「冗談じゃねぇんだ。ほら、海軍大将になっただろ? そのせいで、最近増えてる調子に乗ってるルーキーを片っ端からボコってこいってサカズキさんに言われちまったんだわ」

 

 三人をベッドの上に仰向けに寝転ばせ、ペローナとたしぎはそれぞれ左手と右手による手淫で膣内をかき混ぜ、ノジコの蜜壺を絶妙な腰使いで奥を攻め立てていく。

 そんなジャックハートの背後に全裸で抱きつきながら、カリファが電伝虫の受話器をジャックハートの口元に近づける。

 空いている左手でジャックハートの乳首を愛おしそうに弄りながら、カリファは彼の左耳を舐めていく。

 

『それじゃあ、もうあんまり会えないの……?』

「それに関してなんだがな、ビビちゃん。……今からするのは真面目な話だぜ?」

『……大丈夫よ。今周りには、誰もいないから』

 

 ビビと通話をつないでいる電伝虫から伝わる声が慎重に、そして小さくなる。

 

「前にも言っただろ? いつか、君をそこから連れ出すってさ。ビビちゃん次第になるが……よく考えておいてほしい。一人の人間として、一人の女性として」

『分かったわ。……それで。あまり聞きたくはないけど、今は何をしているの?』

「ん? 聞かせるようにわざと音を大きくしてるのに分からねぇか? いつも通り、捕まえたり連れてきたりで、俺のとこに来た女たちとセックスしてんだよ」

『……っ! 本ッ当に相変わらずな人っ! ……私だって、待ってるのに』

「安心してくれよ。こいつらの大半はただの性欲発散だ」

 

 今んところは、というセリフをあえて言わずに、ジャックハートはそのまま動きを続ける。

 左耳から聞こえるカリファの息遣いがどんどんと荒くなるのを聞きながら、ビビとの会話を広げていく。

 

『もう、それならいいけど』

「ケハハ、ありがとよビビちゃん。愛してるぜ。もちろんティアもな」

『調子いいんだから……。あの子、誰に似たのか知らないけど、元気いっぱいよ』

「お母さんに似たんだろうな」

『ふふっ、そうかもしれないわね。そう言えばあなた、今海軍本部にいるあなたの子供たちって、みんな今そこにいる女の人たちとの子供なの?』

「あー、いや、そりゃちょいと違う」

 

 そして話題は、ジャックハートの子供たちへと移った。

 ジャックハートとビビの間にできた娘、ティア。ビビにとっては初めての子になるが、もちろんジャックハートにとってはそうではない。

 アインとの間に生まれたダレスやカリファとの間に生まれたリリー。最近で言うならば、ポーラとの間に生まれたサロメアやサディとの間のメドウィー、ドミノとの間のマークなど、ジャックハートの近くに母子がいる場合もある。

 

「パトロールで遠出してる時に、休息だったり資材の補給だったりで港に立ち寄る時があるんだわ。そん時に出会った女の子と一発ヤって、デキたって感じだな」

『……ということは、ほとんどを海軍本部で預かってるってこと?』

「ジョー・ジャックハートって名前だけは知られてるからな。そいつとの子供なんて海賊からの恨みの対象にもなりやすい。だから、そういうパターンで生まれた子は、母親の安全面も考慮して、海軍本部で育ててる」

『そういう事ね』

 

 だが、一般人にとってジャックハートとの繋がりがあるということは、彼が言った通りただ目立とうとしている海賊たちに狙われる可能性があるということ。

 それを防ぐべく、まだ自己防衛ができない赤子を海軍に置き、母親はジャックハートと愛し合ったということを周囲に隠しているのだ。

 

「ま、ビビちゃんみたいに子供も母親も守れる環境があるんなら、そういうことはしねぇんだがな」

『……大丈夫。慣れないことも多いけど、頑張るから』

「俺も、なかなか会えないとは言ったが極力そっちに行くようにする」

『うん』

 

 終わりそうで終わらない、ジャックハートとビビの会話。

 それにより地獄のような辛い快感の時間を強制されているのが、仰向けに寝かされている三人だ。

 

「さてと。そんじゃまた明日電話するわ」

『えぇ。……頑張ってね』

「あぁ」

 

 だが、その長かった会話も終わり、電伝虫が向こうから切られる。

 受話器がカリファの手により電伝虫に戻され、ジャックハートの意識がペローナ、ノジコ、たしぎの三人に向く。

 

「さぁ、お楽しみと行こうか。カリファちゃん、すまねぇな。ちょっとこの三人に集中させてくれ」

「かしこまりました」

 

 豊満な身体を、一切身につけることなくジャックハートの上半身に押し付けていた彼女が、ベッドから離れる。

 コアラやランとポルチェ達といった妊娠した面々はマリンフォードの自宅で留守番をしているが、妊娠がはっきりとしていない者達は、もちろん普段通りジャックハートの相手をすることになっている。

 

「ケハハハハッ! じゃあノジコちゃん、選んでくれるか。これからしばらく俺の相手をするか、すぐに妊娠したいか」

「あぁ、ん……は、あっ……。ずっ、と……ずっとシたいのぉ……」

「正直な子は好きだぜ。つっても、排卵日が近いとデキちまうが……どうだ?」

「…………もうすぐ、よ」

「じゃあ、申し訳ないがお預けだな」

 

 ぬぷり、とゆっくりジャックハートの腰が引かれ、ノジコの膣内から大きく屹立した肉棒が引き抜かれる。

 これだけのキャリアを今まで積んできたジャックハートだが、そんな彼もまだ未成年。

 それも食べ盛り動き盛りということもあり、肉体だけではなく肉棒もかなりの進化を遂げていた。

 

「今はケツ穴を堪能する気分じゃねぇし、ペローナちゃんとはじっくり楽しみてぇし、たしぎはまだ中将になれてねぇし……」

「そ、そんなぁ……」

「つい先日、本部の少将になれたので、もうすぐです……! 待っていてくださいっ、あぁんっ!」

 

 手持ち無沙汰な竿の行く手を考えながら、手ではペローナとたしぎをしっかりと焦らす。

 そんなことを考えているジャックハートの元に、ノックの音が届いた。

 

「ジャックハート大将!」

「あ? 何だ、そっから話せ」

「はっ! 目的の場所が見えてきました。あと数分で着く予定です!」

「了解」

 

 とある理由から二つ名である"白龍"という名で呼ばれるのをあまり好いていないジャックハート。

 彼はその思いを公にしており、そのため部下の大半が彼のことを今まで通り名前で呼んでいる。

 

「2人が俺の元に来たら、一旦マリンフォードに戻るぞ。あんな金と復讐しか考えてねぇやつのとこにいても、人間として腐っちまう」

「と、いうことは……向かっていたのは」

「あぁ、グラン・テゾーロだ。あの人には悪いが、大将になって本格的に金にも一切困らねぇし、ギャンブルなんかは自分で新しいの(・・・・)を作ればいいからな」

 

 ぐちゅぐちゅとペローナとたしぎへの愛撫を止めることなく、寝転がっているノジコの質問に答える。

 ここまでの道のりでノジコやペローナにはカリファがジャックハートの元で生活する上で必要な知識や、新世界での情報を教えていたのだ。

 

「だから手始めに、お前達2人の勝負を見よう。ルールは単純。先にイッた方の負けだ。時間はグラン・テゾーロに着くまでの間。もし二人ともイッたら、マリンフォードに戻るまでヤらねぇからな」

「そ、そん、なぁ……」

「うっ……ん、ぁっ、はん……」

 

 マーガレットやハンコック、たしぎやこの船に新たに加わったペローナやノジコ。

 彼女たちとジャックハート、そして彼の部下を乗せて、船はグラン・テゾーロへと進んでいく。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 ジャックハートたちを乗せた軍艦の中でペローナとたしぎが彼の手により盛大に果てたとほぼ同時刻。

 新魚人海賊団とのいざこざを終わらせた"麦わらの一味"はその活躍を讃えられるかのようにリュウグウ王国の宮殿、竜宮城で行われる宴に誘われていた。

 しかし、その宴に"麦わらの一味"で参加しているのは、男衆だけだった。

 

「なーナミー、ロビンー。二人ともこっち来ないのかー?」

「だからルフィ、ナミもロビンも無茶はできねぇって言ってるだろ? ゾロ、もちろんだけど、お酒もダメだからなっ!」

「……あぁ」

 

 ナミとロビンが二人とも授乳期であるため、母体への影響を恐れ、チョッパーが仲間たちにもあまり二人を積極的に誘わないように指摘する。

 以前からお酒が好きだったナミも一切飲んでおらず、"麦わらの一味"に加入してから仲間との宴なども好きになっていったロビンも、オルビアへの授乳もあるため控えていたのだ。

 

「……その、ごめんね、みんな」

「謝るなってナミさん。ナミさんやロビンちゃんだって……あー、なんて言うか、相手の男をよく思ってるんだろ?」

「サンジの言う通りだぞ。くまに飛ばされた先で好きな人ができることは、何も悪いことじゃねぇからなっ!」

「サンジくん……チョッパー……」

 

 ナミとロビンの子どもの一件は、飛ばされた先でナミとロビンに好きな相手ができた結果、出産にまで至るほどの相手ならば、自分たちが責める理由などどこにもない、という結論に至った。

 以前から一味の中での女好きの筆頭であったサンジも二人が選んだ相手ならば、ということもあり、そもそもの話船に乗ることを決意した仲間を責める理由などなかった。

 

「ナミもロビンも、後悔はしてねぇんだろ?」

「……えぇ」

「ならいいじゃねぇか。な、ルフィ」

「おうっ!」

 

 ウソップとルフィが場の空気を明るくする。

 しかし、ナミとロビンの顔はほんの少しばかり暗くなっていた。

 出産を後悔しているわけではない。それどころか、あの時間(・・・・)には今まで感じたことのない快感すらあった。

 だが、その相手が最大の敵と言っても過言ではない海兵、それも海軍本部大将であるということを切り出せていないということが、二人の罪悪感を駆り立てていた。

 

「そういや、ナミとロビンはどこに飛ばされてたんだ?」

「私は天候を科学する空島、ウェザリアよ」

「私は……革命軍がいた橋の上の国に飛ばされたわ」

「空島かー。懐かしいなー」

 

 そして、二人が子どもの父親の話を切り出せていないということは、自分たちの元に彼が来たということを伝えられていないということになる。

 

「あぅ〜」

「ん? どうしたの?」

「そろそろ寝る時間じゃないかしら。ちょっと寝かしつけてくるわね」

 

 母親たちの居心地の悪さを察したのか、二人の娘たちが救いの手を差し伸べる。

 成熟した彼女たちには平気な時間帯だが、生まれて間もない娘たちにはもう寝る時間。騒がしい宴から、母親二人だけで離れる。

 

「……ねぇロビン。ロビンの相手って、その……」

「えぇ。海軍本部大将の、ジョー・ジャックハートよ。ナミも、でしょう?」

「っ、え、えぇ……そうよ。……みんなには、言わないほうがいいわよね」

「そうね。この子たちの父親が彼とはいえ、航海に支障が出るわけじゃないもの」

 

 ナミはベルメールを、ロビンはオルビアを抱っこしながら、ゆっくりと体を揺すりながら寝かしつける。

 一定のリズムの呼吸音が聞こえてきたところで、少しずつ揺れを弱めていく。

 

「支障が、出ないわよね……」

「……えぇ。私たちがいるいないに関わらず、彼はこの船を狙ってくるわ」

「じゃあ、私たちが頑張らないといけないわね」

「っ、ナミ、あなたもしかして……」

 

 ジャックハートを相手にナミが頑張ること。

 シャボンディ諸島を出港する際にウソップやチョッパーが言っていた通り、彼女たちもこの二年間修行をしていた。

 しかし、元々腕力がそれほどない彼女が二年間訓練をしたところで、ジャックハートに勝てるほど現実は甘くはない。

 

「えぇ。あの人が、今このお腹にいる子の名前を考えていないわけがないもの。新世界に入って、確実にもう一回私を抱きに来るわ。多分また妊娠しちゃうことになるけど、それでみんなが助かるなら、私の身体なんて安いものよ」

「ナミ……」

「それに、こんなこと言っていいのか分からないけど……その、彼とのセックス、気持ちいいし」

「……ふふっ、そうね。認めたくはないけれど、それは同感よ」

 

 ジャックハートが今後この一味に関与してくることはほぼ確定している。

 しかし、仲間だからこそそれは中々簡単には伝えることはできない。

 

「協力するわ、ナミ。私も、私の身体で彼を引き止めることができるなら、なんだってするわ」

「ロビン……。ありがとう。しばらくは、辛いけど二人で頑張りましょ」

「えぇ」

 

 ゆえに、"麦わらの一味"が今確実にジャックハートに対して有効なカードを切れるとしたら、ナミとロビンの身体しかない。

 

 

 その結論に至ることの違和感を覚えることすらなく、ナミとロビンは再びジャックハートに抱かれることを決意していた。

 

 

 




若干のこじらせスモーカーさん。パンクハザードが終われば出番が少なくなるかもしれません。


私情なんですが、就活が円滑に進んでいたと思っていたところでつまづいてしまい、中々に精神的にショックを受けております……。
現実逃避も兼ねて執筆を頑張りますが、温かい目で見守ってください……。


コメント、評価などお待ちしております。


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肥える土壌

前回の投稿時に、感想を書いてくださった読者様の中で返信することができていなかった方が出てしまいました。
申し訳ございません。予約投稿して油断して酒を飲んで風呂に入ってたら22時になっていました。

以降は気を付けますので、今後ともよろしくお願いいたします。


さて、話は変わりますが、今回と次回でようやく大きく話が動いてくるかと思います。
伏線というか、前回でなかなかに大きい動きがさりげなく入っていたので、確認したい方は振り返ってみてください。


「あっ……あぁ……。お願い、します……! ジャックハート様……」

「あぁ? 何がだよ。言ってるだろ? 俺は聞き分けのねぇ子は嫌いだ。ま、逆に素直な子は好きなんだが」

「ず、ずるいです……」

「ズルいかズルくないかはお前らが決めることじゃねぇ。お前らは、選択肢を突きつけられてるだけ。どっちかを選べって言ってんだ」

 

 グラン・テゾーロにあるVIP専用の巨大な談話室。

 彼がこの部屋に入ってからおよそ一時間。休む暇なく愛撫を続けられ、全身の感度が最高潮まで高まっていたバカラとカリーナの二人は、ジャックハートの目の前で全裸で正座をさせられていた。

 

「俺だって神じゃねぇ。完璧じゃねぇし、お前らと対等だ。……だからこそ、今みたいに中途半端な関係は嫌なんだよ。性欲発散のための女なら、もう十分に抱えている。正直、新世界を自由気ままに動くここに来るのは、少々面倒なんだ」

「そんな……!」

「だ、だからって……」

「あぁ。だから、二人にその気があるのなら俺の元に来て欲しい。俺の元に来てくれるのなら、一生をかけてお前たちを愛そう。……だが、来てくれないのであれば、今みたいな関係はもう終わりだ」

 

 これからいよいよ本番。

 そのタイミングで彼女たちを焦らすのは、以前スモーカーの部隊からたしぎを引き抜いた時とほぼ同じ。

 カリーナとバカラという極上の女2人を自分の手元に引き寄せるためだ。

 

「安心しろ。ここに一切来ねぇってわけじゃねぇ。ここに残るんなら、今まで通りコンシェルジュとして俺の身の回りの世話をしてもらおうか。性欲発散にはいらねぇがな」

「んっ、はぁ……と、ということは……」

「あぁ。これから先は、俺と他の女とのセックスを、間近で見せてやるよ。愛を注がなきゃならねぇ子も増えちまったしな。いちいち会いに行くのは面倒だ。……単刀直入に言う。テゾーロの元に残るか、俺の元に来るかだ」

 

 前回ジャックハートがグラン・テゾーロを訪れた時と比べると、ペローナやノジコ、アインといった面々が彼の元に増えている。

 そして何より変わったのが、彼自身の現状だ。

 

「前の時は休暇だったが、これからはあんなまとまった休みは取れねぇだろう。サカズキさんから直々に"最悪の世代"をほぼ全員ボコボコにしてこいって命令があるんだわ。余裕があるなら四皇の勢力も削げとも言われてる。特別な用事がある場所以外には、中々簡単には行きにくい」

「愛して、くれるのですか……?」

「そりゃあもちろん。最近さらに絶好調だからな。嫌と言っても愛してやる。金も心配しなくていいぞ。……自慢になるが、大将になってより一層給料が増えてな。もう特に使う用事もないから使いたけりゃ好きなだけ使え」

 

 海軍本部大将としての本格的な業務が始まった彼に、気軽にグラン・テゾーロに寄れるほどの暇がなくなったのだ。

 新世界を根城とする四皇への威嚇も含め、倒せる海賊や危険な勢力の討伐。それらをジャックハートは一心に引き受けていた。

 理由は至って単純。彼が強く、丈夫で、戦闘欲求が異常に強いからだ。

 

「……ウシシッ。そんなの、私の選択は決まりきってるわ」

 

 テーブルの前に正座している二人。

 葛藤を続けるバカラを尻目にカリーナは立ち上がり、テーブルに置かれている契約書を手に取った。

 

「あの日から、ずっとあなたを待っていたの。また我慢して、しかも二度と愛してもらえないなんてゴメンよ。それに、お金も手に入るんでしょ? 私は泥棒なの。欲しいものはどんな手を使ってでも必ず手に入れる。お金も、ジャックハート様も」

「ケハハハハハッ! 賢い選択だぜカリーナちゃん。ここにいるのはどこまでいっても金と天竜人と死んだ恋人のことしか考えられねぇヘタレ野郎だ。……っと、そうだバカラちゃん。テゾーロのことをどう思ってるか知らねぇけど、これだけは言っておくわ」

 

 カリーナが手にしたのは、グラン・テゾーロで従業員として働く旨が記載されたテゾーロとの契約書だ。

 それを躊躇うことなく一気に破り捨てたカリーナ。

 豊満な体を揺らしながら、大きなソファに腰掛けるジャックハートの左隣に、体を押し付けるように座る。

 

「ケハハハ。グラン・テゾーロは、いずれ政府がぶっ壊す。一番上の人らから、流石に世界の資産を持ちすぎだって指摘があってな。あいつがいなくてもうまく回るってことを知ったらしい。金を溜め込んでおくだけの不良債権だからな。いらねぇのよ、もう」

「そん、な……。どうやって……」

「サカズキさんがマグマぶっ放すでも、クザンさんが凍らせたとこを俺が壊すでも何でもあるだろ。ってなわけで、いずれ潰れるであろう可哀想な船から助けてやろうとしてんだわ。……バカラちゃん。自分の選びてぇものを選んだ方が、後悔しねぇぞ?」

 

 ジャックハートの鍛えられた体をなで回しながら堪能するカリーナ。

 彼女の姿を見てもまだ、バカラは決断できなかった。

 しかしこのような状況で、二択という名の実質一択を迫るのが、ジャックハートなのだ。

 

「このままあいつと過ごして近い将来船と共に死ぬか、俺の元に来るかだ。……バカラちゃんが俺の元に来てくれるなら、テゾーロの命だけは助けてやるよ」

 

 それはつまり、バカラがジャックハートの元に来ないのならば、テゾーロはほぼ確実に死ぬということだ。

 バカラは知っている。この男なら、本気で船ごとテゾーロを殺しかねないと。

 そして、命は金よりも大事だということを。

 

「……私も、ジャックハート様とエキサイティングな人生を送っても、よろしいですか……?」

「利口な選択だ。安心しろ、テゾーロは生かしてやるよう、上に俺から言っておく」

 

 長年付き添ってきたとは言え、ジャックハートの要求を断ればほぼ確実に死ぬ未来が待っている。

 その事実を突きつけられたバカラは、テゾーロや船と共に沈むことよりも、それぞれの命が助かる道を選んだ。

 

「さあ、こっちに来いバカラちゃん。せっかく俺を選んでくれたんだ。望みがあるなら、叶えられる範囲で叶えてやろう。もちろんカリーナちゃんもな」

「……なら、私は壊れるぐらいに、ハードに抱いてください。身も心も、あなたのものに……」

「ケハハ、いいぜ。今が……夜の11時か。夜が明けるまで、狂わせてやる」

「うしし、なら私には優しく抱いて欲しいわ。今までスリルは結構味わったし……その、しっかりと愛されてみたい、っていうか……」

「了解だ。隠さなくてもいいんだぜ。別に、君らの考えていることぐらい、"見聞色"で手に取るように分かる」

 

 ジャックハートの言葉を聞き、思わずハッとするバカラ。

 テゾーロのことを心配しているのがバレたのではないかと表情を強張らせるが、ジャックハートはそれを咎めなかった。

 

「大丈夫だって。俺が求めるのは、俺の望みを叶えてくれる女の子だ。二人はただ、一心不乱に俺を求め、俺に溺れ、俺に愛されればいい」

 

 歯の浮くようなセリフを通り越して、浮世離れしたかのような言い回し。

 しかしそれらは彼女たちが本当に求められていることであり、それができなければジャックハートの近くに身を置き続けることは不可能だ。

 その言葉を聞いてしばらく。バカラがテゾーロとの契約書を破った。

 

「ケハハハハハッ! やっぱり何回経験してもいいもんだぜ。極上の女が俺だけのもんになる瞬間は。……さて、順番だが、早い者勝ちだ。てな訳でカリーナちゃん。準備はいいか?」

「えっ!? い、いつでも大丈夫よ?」

「そうか。だが残念、俺の方がまだなんだ。ホントは焦らす予定だったんだが、どんなプレイでもいいからどうしてもっつうんでな。ガッツリ絞られちまったんだわ」

 

 ジャックハートが視線を動かす。

 その先には、全身に精液を浴びたまま気を失い、仰向けでベッドに寝転がるペローナとたしぎの姿があった。

 膣内に射精された精液はそのあまりの量の多さに溢れ、純白のシーツをやや黄色を帯びた白濁で汚していた。

 

「ケハハ。そんじゃ、お楽しみといこうじゃねぇか」

「んっ、あぁ……! 来っ、たぁぁ……! はぁぅ、ん……あぁっ……!」

「随分と気持ちよさそうだな、カリーナちゃん」

「当然、でしょ? いつか来てくれると信じて、今まで我慢してたもの……っ、はぁんっ!」

 

 テーブルに両手を突き、淫靡な匂いを漂わせる淫裂を尻ごとジャックハートに突き出すカリーナ。

 陰核の周りにうっすらと生え揃った彼女の髪の毛と同じ紫色の陰毛。

 それらが完全に水気で皮膚にくっついてしまうほどに愛液がすでに溢れ、ジャックハートの肉棒をゆっくりだがしっかり奥まで咥えこんだ。

 

「つっ……。結構きついな、カリーナちゃんの膣内」

「きついのは……きら、い……?」

「いいや、好きだぜ。名器で美人で従順なら最高さ」

 

 陰茎を根元までしっかりと咥えこんだカリーナの全身の震えが止まるのを一旦待つ。

 "東の海"からこの"新世界"まで、カリーナは誰にも捕まることなくやってきた。

 その過程で鍛えられた下半身や下腹部、そして経験が少ないというおかげもあり、彼女の膣内はジャックハートの肉棒を強く包み込んでいた。

 

「あぁう、んっ……はぁ、気持ち、いぃ……っ!」

「ケハハハ。随分と感じてるじゃねぇか。そんなに奥突かれるのが好きか?」

「っ、えぇっ! 好きぃっ、好きなのぉ!」

 

 決して速いペースではないが、確実に膣奥をゴリゴリと抉られていくカリーナ。

 数回とは言え彼に抱かれ、彼女の敏感な部分は全て読まれていた。

 

「俺の女になるって宣言したんだ。好きなだけ抱いてやるし、好きなだけ金も使え。……その代わり、俺も好きなだけお前を抱くし、孕ませる。これはカリーナちゃんに対する要求なんかじゃあねぇ。俺の元に来るってことは、そういうことってだけだ」

「……えぇ。分かってるわ」

「ケハハ。たっぷりと愛してやるよ」

「んぅ、あっ……はぁっ! あんっ、あっ……あぁあっ!」

 

 背筋を逸らし、喘ぎ、身体を震わせながら絶頂を迎える。

 それは、また一人の女がジャックハートの雌になった瞬間だった。

 

 

 ◇

 

 

「うっひゃぁあ〜っ!? すっごい大しけ〜!」

「おいリリー! はしゃぐんじゃねぇ! 遊びじゃねぇんだぞ!」

「別に私は"月歩"できるから大丈夫だよー! ねぇねぇスモーカーさん、"麦わらの一味"って強いの?」

 

 それから少し経って、"新世界"の最序盤。

 新たに"新世界"に乗り込もうとしている海賊を捉えていたスモーカー率いる"G-5支部"の面々。

 魚人島から上がってきた海賊たちから"麦わらの一味"が時期に来るという情報を受け、待機していたのだ。

 

「……まあ、魚人島でくすぶってたこいつらよりかは、な」

「ふーん。楽しみだなぁ」

「さっきも言ったが、遊びじゃねぇんだ。気ぃ引き締めろよ」

「分かってるよ! んー、それにしても、パンクハザードかぁ」

 

 "麦わら"たちの情報を仕入れたスモーカーが彼らの行き先として予想したのが、最初に訪れることができる島の中で、最も"記録指針"の触れ幅が広い……つまり、危険度が高いライジン島だ。

 しかし、"麦わらの一味"の船長であるルフィはライジン島ではなく、電伝虫が受信した緊急信号の発信地、パンクハザードを目指しているのだ。

 

「何にもないし、面白くなさそうだなー」

「喜べリリー。お前の大好きな"海賊"を狩りに行くんだ。お前にも任せてやるよ」

「やったっ! ……あ、でも確か、"麦わらの一味"にはパパのお気に入りだって人がいるんだった。その人たち以外は、倒しちゃっていいんだよね?」

「……あぁ」

 

 パンクハザード。

 そこは、かつて大将"赤犬"と"青雉"が元帥の座をかけて争い、戦った場所だ。

 そのあまりの壮絶な戦いを経て人が住めないほどの荒れた島になってしまったそこに、何者かがいるのだ。

 

「もしかしたらパパにも会えるかな?」

「何? ……お前の父親が、この近辺にいるのか?」

「うんっ。今グラン・テゾーロってところに行ってて、たまたまそれが近いんだって」

「……ジョー・ジャックハートと"麦わら"か」

 

 過去、その両者と戦ったことのあるスモーカーは、逡巡した。

 ローグタウンやアラバスタで見て、直近の"頂上戦争"でその実力を再確認した"麦わら"と、10年近く前に少年ではあるが戦ったジャックハート。

 

「間違いなく、遭遇したら"麦わら"は詰みだな」

「もー。スモーカーさん、そんなの当たり前でしょ? パパから逃げられた海賊なんて、いないんだよ?」

「……あぁ、そうだな」

 

 スモーカーも"東の海"の大佐時代は、就任してから"麦わらのルフィ"が現れるまでは一人の海賊を逃したことはなかった。

 だが、ジャックハートはその次元が違ったのだ。

 

「海兵になってから今も進行形で、一人も逃したことがないなんて、パパってホントに凄いよね!?」

「あぁ」

 

 そう、10年以上海兵として勤務している彼だが、その短い間であっても一人も逃していないのだ。

 

「つっても、男は殺すかインペルダウン、女は気に入ったら自分の手元か風俗嬢だがな」

「フーゾクジョー?」

「子供のお前はまだ知らなくてもいいことだ」

「えーっ? ……あっ。もしかしてエッチなことなの?」

「……誰かに聞いたか?」

「ううん。何となく、今周りのみんながそういうこと考えてそうだなって」

 

 察しがいいのか、それともすでに"見聞色の覇気"で思考を読み取ることすらできるようになっているのか。

 そのどちらかは分からないが、スモーカーの心持ちは穏やかではなかった。

 いくら嫌いな奴の娘とはいえ、預かって色々と教育している身。周りの"G-5支部"の連中から余計なことを学ばないでほしいと思う、優しい彼なのであった。

 

「んー。じゃあスモーカーさん。そろそろこの島からは離れるの?」

「あぁ。魚人島でくすぶってたレベルのこいつらなら、俺たちがいなくても十分だ。それより、お前の父親が向かってんなら心配ねぇとは思うが、"麦わらの一味"や他の脅威のために援軍にな」

「やったーっ! ようやく強い人と戦えるぞー!」

 

 シッ、シッ! とシャドーボクシングをしてその闘志の高さをスモーカーにアピールするリリー。

 10歳であり、そしていくらジャックハートの子供とはいえ実践不足がやや否めない彼女を戦場に出すのはどうかと一瞬だけ考えたが、彼は今まで短い期間ではあるが右腕として十分な働きを見せてくれている彼女のポテンシャルを信じることにした。

 

「リリー。今回は、お前も戦闘に出ることを許可する」

「えぇっ!? ま、マジかよスモやん! リリーちゃんが少尉っつったって、まだ10歳だぜ?」

「ウルセェよ。お前らよりもリリーの方がはるかに強ぇだろうが。……それに」

『それに?』

「……いや、なんでもねぇ。とにかく移動するぞお前ら! 行き先はパンクハザード、急げ!」

『お、おうっ!』

 

 ジョー・リリー。

 彼女の未だ小さな体に抑え込まれている戦闘の才能は確かなものだ。

 父親譲り。その言葉がうってつけだと言わんばかりの才能に溢れている、文字通りの天才であり、神童。

 そしてスモーカーにはもう一つ、確かめておきたいリリーに眠っているであろう力を見出しておきたかったのだ。

 

 ──ジャックハートが戦闘において他の追随を許さねぇのは、その残虐性にもある。……こいつにも、どれだけ遺伝しているか……。

 

 目の前で船の大きな揺れにはしゃぐ少女の、眠っている力。

 それは、彼女の父親であるジョー・ジャックハートを見ても分かる容赦の無さだ。

 ジャックハートは、基本的に海楼石で海賊を捉えない。完全に殺してしまうか、殺す前に戦う興味が削がれるかの二択なのだ。

 

「頼むぜ」

「ん? どうしたの?」

「なんでもねぇよ」

 

 ぽつりと呟いたスモーカーの方を振り向いてきたリリーに返事をする。

 その際、ふと彼女の腰に据えられた、彼女には不釣り合いな長さを誇る刀が目に入った。

 

「訓練の時にはお前の生身の力を上げるために武器は使ってなかったが、相手が海賊なら話は別だ。問答無用、本気で行けよ」

「もちろんっ! これはパパからもらったプレゼントだもん。ねー、"影羽(かげばね)"」

 

 リリーには不釣り合いだが、一般的に見れば普通の長さの刀。

 しかしそれは、蓋を開けてみれば21工しかない大業物であり、ジャックハートがリリーに渡した最初のプレゼントだ。

 その代わりに刀の手入れや失態を全て、海兵となった自分で処理するという条件が付いているが。

 

「リリー。お前、今一番得意な覇気は、自分でなんだと考えてる」

「えっ? んー、"武装色"も"見聞色"もどっちも得意だと思うけど……。まだ実戦で本気出したことないから分かんないや」

「何?」

 

 海兵が、それも新世界に赴任することになった10歳の少女が、まだ実戦で本気を出したことがない。

 一瞬だけそんなことあるわけがないと考えたスモーカーだが、ジャックハートの血筋を色濃く受け継いでいると考えれば納得できた。

 

「パパもお兄ちゃんも言ってたよ? 訓練の本気と実戦の本気は違うって。私もそうだもん。だって──」

 

 その言葉の後、スモーカーはリリーの笑みにジャックハートに似た何かを感じた。

 リリーが浮かべた笑み。それは、普段の可愛らしい笑みの中に、どこか獰猛さが紛れ込んでいた。

 

「──戦いで本気を出す(・・・・・)ってことは、敵を私の好き勝手にしていいってことでしょ? 海兵の仲間のみんなにそんなこと、できないもん」

「……あぁ」

 

 "新世界"。そこは、"偉大なる航路"における最後の海であり、海の猛者たちがひしめきあっている危険な海。

 スモーカーはこの瞬間から、以前の部下であった優しく甘いたしぎではなく、リリーの方が右腕としていいのではないかと考え始めていた。

 

 

 ◇ ◇

 

 

「ジャックハート大将ッ! 本部より通達、"G-5支部"のスモーカー中将がパンクハザードに向かうため、援軍に行くようにとのことです」

「え、やだよ。マージでも向かわせとけよ。つーかパンクハザードに何があるんだ? あそこって確か、ベガパンクが実験失敗してから閉鎖されてたんじゃ……あ、そういやクザンさんとサカズキさんが争ってたっけか」

「いえ、それが。こちらを聞いていただければ分かるかと」

 

 ジャックハートの場所は移り、自身の船の中。

 行き先はマリンフォード。自室でくつろいでいたジャックハートに突如として舞い込んできた仕事のお知らせ。

 部下の一人が持ってきたのは、海軍でよく用いられている盗聴用の黒電伝虫。そこから流れてきたのは、複数人の男の声だった。

 

「……こりゃ確かに、訳ありらしいな。臭うぜ。それに"麦わら"かぁ……! ケハハ、楽しくなりそうだ」

「……では、行き先は」

「決まってんだろうが。進路変更。行き先はパンクハザードだ」

「ハッ!」

 

 事件の匂いを色濃く感じ取ったジャックハートが取った指示は、直行。

 ジャックハートの部屋の戸を開けた部下がその扉を閉め、慌ただしく離れていくのを確認したジャックハートは、ベッドの空いている隙間に寝転んだ。

 

「ふふっ。次は私かしら、ジャックハートくん」

「ジャックハート様。不躾ですが、妹か弟をリリーにプレゼントするというお言葉を、そろそろ……」

「まぁ待てよアインちゃん、カリファちゃん。あとで記憶がぶっ飛ぶぐらいに激しく抱いてやるからよ」

 

 彼の船内の自室に備え付けられた大きなベッド。

 複数人の大人が寝転んでも十分すぎるスペースがあるそこには、計6人が寝転がっていた。

 部屋の主、ジャックハート。そして、アインとカリファ。つい先日グラン・テゾーロから連れ出したカリーナとバカラ、ボニーだ。

 だが今、この部屋にはもう一人の女性がいた。

 

「さて、面接(・・)の続きだ、ハニークイーン。まさかお前みたいないい女がインペルダウンにまだ残ってたなんてな。ドミノちゃんとサディちゃんに洗わせておいて大正解だったぜ」

「は、はぃ……」

「オイオイオイ。返事ははっきりとって教えたところだろ? 俺は、アホは嫌いなんだ。それこそ、女でも死ねばいいって思うほどにはな」

「は、はいっ!」

 

 全裸で直立させられている、金髪の妖艶な美女。

 ジャックハートの好みにも刺さっている彼女だが、彼のお気に入りになるかどうかはまだ分からなかった。

 

「ここにいるこいつらは全員、俺が独断と偏見で選んでる。共通してるのは、俺のことを絶対的存在だと認知してるってこととかだ。良くも悪くもな。そこで、だ。インペルダウンの"LEVEL1"で余生を過ごそうとしてたハニークイーンちゃんが、俺に何をしてくれるかっていうのを聞きたいわけだ」

 

 ジャックハートの周囲にいる女性に共通して言えるのは、理由はどうであれ彼に服従しているということ。

 つまり、一生をかけてジャックハートのモノになり、彼のために生き、彼のために死ぬという道を選べるのかということだ。

 

「……私は、あの地獄から救ってくださったジャックハート様のために生きることを、誓います」

「あぁ? 地獄? あんなもんただの遊園地だろうが」

「……それでも、あそこにいるのは苦痛であり、ジャックハート様からのお呼び出しは、天からの救いの手の様でした」

「言い過ぎだっての。てかまた忘れてんだろ。俺は"見聞色"で大体の考えてることなら分かるんだって。どうやってうまく俺の元に転がり込もうかって考えてんのが筒抜けだ」

 

 言って、顔が青白くなってしまうハニークイーン。

 彼の言うとおりのことを正しく考えており、この場でうまく乗り切ることができなければ、またインペルダウンに逆戻りとなってしまう未来が見えたのだ。

 

「ケハハハハハハッ! ならお前の本気具合を確かめてやるよ。期限は一ヶ月。まず一つ。俺ぁこの船とともに、おそらくこれから遠征続きだ。その間、"新世界"の海を自力で生き伸びろ。船には載せておいてやるから、死ぬ気でしがみつけ」

「はいっ!」

「んで次に、その間に能力を覚醒させろ。分からねぇことは俺以外の誰かに聞け」

「はいっ!」

 

 淡々と告げられていく、簡単なようで難易度が高い要求。

 生き伸びろというのは簡単なように聞こえるが、そもそも"新世界"を旅したことがない彼女にとって、事前情報を与えられずに生き伸びろというのも、なかなかに厳しいのだ。

 

「んで最後。これぁ、カリファちゃんやアインちゃんたちにも迷惑かけちまうが……」

 

 右手で手枕の状態になり、立っているハニークイーンの方を見るジャックハート。

 その左手で彼の横に寝転ぶカリファの体を弄ると、カリファの体もそれに応じるようにビクビクと細かく反応する。

 

「ケハハ。たまには趣向を変えてみるか。今までは俺とのセックスを我慢させることで欲求を高ぶらせてきたが、今回は逆だ。一ヶ月間で俺の子を孕め。もちろん優先順位は他の子が先だが、誰も相手できる子がいねぇ時に抱いてやるよ」

「わ、分かりましたっ!」

「よし。ならしばらく休憩部屋にすっこんでろ。で、ヒナちゃんとドミノちゃん、サディちゃんを呼んで来い。それが終わったら寝とけ。全員相手し終わったら俺好みの女になるように調教し始めてやるからよ」

 

 ジャックハートの最後の指令。

 それは、優先順位は最後になるが、必ず孕めという理不尽なもの。

 ジャックハートが確実に孕ませられることをするかどうかは確定していないが、ハニークイーンの顔は、彼の最後の命令を聞き、真剣なものへと変わった。

 

「ケハハハハッ! おもしれぇわ。あんな綺麗な子が、こんなバカみてぇなことのために本気になるなんてよ。インペルダウンってそんなに辛いか? クスリでイカれた10億越えがゴロゴロいる無法地帯のほうがよっぽどやべぇ気がするが」

「ジャックハートくんを他の普通の育ちの海賊と同じにしちゃダメよ。差異はあれど、あなたほどの過酷な環境で育った人もそうはいないから」

「……それと、付け加えさせていただけるのなら、ひとえに才能の問題かと」

 

 ハニークイーンとの会話を終え、再び横になるジャックハート。

 彼の裸体に優しく指を這わせる二人の美女の身体の柔らかさを堪能する。

 

「才能、ねぇ……。"覇王色"に関しちゃ確かにそういうのはあるとは思うが、単純な強さにはそんなもんねぇだろ」

 

 彼の横にいるのは、アインとカリファ。

 海兵と元CPというジャックハートを囲っている女性陣の中でも武闘派に当たる彼女たちの肩に手を回しながら、続ける。

 

「ケハハハ。歯向かってきた相手ぶっ殺せば、そいつよりも強いんだ。才能なんてねぇよ。ただムカつくやつをぶん殴りてぇって気持ちだけだ。ま、俺の場合はそこにお前たちみたいな女を奪うって目的もあるが」

 

 その佇まいや態度、言動から想像されるのは、王。

 "天竜人"や他の海軍本部大将クラスにも動じることなく自らの意見を貫くことができる胆力と、それが許されている実力。

 彼の実力のほぼ全てが、他人に勝ちたいからという単純な理由で鍛え上げられてきたものだった。

 

「さて、パンクハザードに着く前にすっきりしようか。どっちが先にしてほしい?」

「私は普段から、長くジャックハート様に愛されていますので」

「そうか。ならアインちゃんが先だな」

「えぇ。……よろしくね、ジャックハートくん」

 

 鍛え上げられた肉体と精神、技術は確固たる自信に変わり、そこから来る自尊心が、彼のさらなる成長を生んだ。

 その過程で生まれた、自分の気にいった女を手元に置いておきたい。

 そういった考えも入り混じった結果として、ジャックハートは文字通り最強の格を得た。

 

「んっ……」

 

 アインがジャックハートの唇に自身の唇を重ねる。

 ジャックハートたちを乗せた軍艦がパンクハザードに到着するまで、2時間もかからないだろう。

 

「……ケハハ。短い間だが、満足させてやるよ」

 

 この男の進化は、まだ続く。




はい。ということでグラン・テゾーロ消滅です。

と、いうわけで。パンクハザード編開始です。

原作でも三つ巴っぽくなっていましたが、この作品では

海軍(ジャックハート&スモーカー&リリー+ジャックハートの乗組員)
VS
海賊(麦わら&ロー ※うち二人はジャックハートに手が出ない)
VS
マスター(拭いきれない小物感)

的な感じでスタートです。単純に言ってしまうなら、海軍クソ強化、海賊やや弱化です。ナミとロビンの分ですね。

本番の描写をあまり書ける展開ではありませんが、これからも若干ストーリーや戦闘描写が多くなってきます。

もちろん、感想などは大歓迎でございます。


感想、評価などお待ちしております!


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最悪と最悪と最悪と

えっちなシーン無くてすんません……!
戦闘とか、原作シーンが終われば増やしますので……!

ちなみに、原作から大きく乖離し出すのはドレスローザ編となります。
パンクハザードももうめちゃくちゃになり始めてるとか言ってはいけない。


 

 

M(マスター)、どうしますか。ロー氏とスモーカーがどハデな戦闘を……。どうやら、脱走した海賊たちがガキどもを引き連れていたところに遭遇したようで……」

「……っ! 海軍にガキどもを見られたのかっ!? ただでさえ最近のアイツらは厄介だってのに……!」

「ロー氏も、殺すことなく追い払うことにはかなり苦戦しているようでして」

「七武海なんだろうが! ったく、使えねぇ……!」

 

 以前は青々とした緑に溢れ、今は吹雪と炎に包まれる島、パンクハザード。

 その半分、吹雪側にある研究所の一室に、二人の声が響く。

 一人はもう一人のことを敬意を込めて"M"と呼び、その"M"は、煙を形どりながら焦りを露わにしていた。

 

「"JOKER"も使える秘書を寄越してくれねぇし、かと思えばこの近海での移動も相当に制限されてきてやがる……。おい、海軍側には本当にスモーカーしかいねぇのか?」

「は、はい……。あとは大半が"G-5"のゴロツキどもと……あぁ、そう言えば一人、ガキの女がいました」

「ガキの女? 名前は分かってるのか?」

「えぇ。数ヶ月前に"G-5"配属になった、リリーとか言う奴です」

「そうか。……ん? リリー……? お、おい。一応だが、そいつの名前を全部聴かせろ」

 

 "自然系"の悪魔の実である"ガスガスの実"の能力者である彼。

 パンクハザードの、否、"新世界"全体の闇の部分の中心に近い場所にいる彼が、一人の少女の名前に何かを感じた。

 

「ジョー・リリー。これが本名とされていますが……ど、どうかしましたか?」

「ジョー……リリー、だとぉ!? なんであんなイカれた血統の奴がスモーカーごときの部下になってんだ!」

 

 部下からリリーの本名を聞き、父親が誰かを完全に悟ってしまった"M"こと、シーザー・クラウン。

 過去、ベガパンクに事故の責任を押し付けたり、現在進行形で部下たちや誘拐してきた子どもたちを使って殺戮兵器の開発を行っている彼が、部下の前で珍しく心の底から(・・・・・)取り乱した。

 

「このガキが、何か……?」

「何かってもんじゃねぇ! そいつはあのジョー・ジャックハートの長女だ! 父親が十分すぎる働きをしてるってのとそいつ自身がガキだからって理由で実戦経験こそ少ないが、将来性で見れば第2、第3のジャックハートになる素質があるやつだぞ!」

「ジョー・ジャックハートって、あの最年少で大将になったっていう……」

「クソッ! 混戦に持ち込めばローに勝ち目はあるが……そもそもの話、ガキどもを見られちまってる……」

 

 素顔は見せていないためその表情は分からないが、シーザーの声色から相当に焦っていることはひしひしと伝わっていた。

 そもそもシーザーがこの本来立ち入り禁止となっているパンクハザードにいるのは、極秘で違法な実験を繰り返しているからだ。

 もし海軍に捕まえられてしまえば、自分の立場上どうなるかは分かりきっている。

 その恐怖感が、シーザーを突き動かしていた。

 

「M?」

「……シュロロロロロ。いや、いい。このまま待つ。そうだ。よく考えれば、今この状況は、あいつらがホイホイ研究所の中に入ってくれる状況だ。ということは、今必要なのは隠すことではない。殺しの許可だ。シュロロロロ……」

 

 部下の問いに対し、シーザーは高い笑い声で返した。

 自身の能力の性質もあるが、彼には様々な実験を可能とする頭脳もある。ふと冷静になった時に、あのスモーカーがこの研究所に足を踏み込んでこないはずがないと確信したのだ。

 

「ローとスモーカーの結果がどうであれ、必ず研究所には入ってくる。もし一部が逃げれば、それは海難事故扱いでいい。シュロロロロ……」

 

 ローは立場上、交戦はしても海軍を殺しはしない。

 スモーカーも海兵という立場でありながら、殺しはせずに捕まえようとする傾向がある。

 また、脱走した海賊たちもローと海軍の争いに首を突っ込んでまで強引に逃げようとはしないだろう。

 

「まあまずは、ガキどもを連れ帰ることが先決だな。ローとスモーカーなら、こちらに分がある」

 

 今度は声をあげて笑うことなく、ニヤリと口端を釣り上げて笑う。

 最も、このパンクハザードに来てしまったシーザーが予想していなかった来客以上に彼にとって脅威となる男が来るのだが。

 

「シュロロロロ。そういや、脱走した海賊の中に一人、妊婦がいたな。あの女はどうした?」

「男どもと同じ部屋に寝かせています。連れていた子どもも3人とも同じ部屋に」

「そうかそうか。もう一人女もいたが、シュロロ。男どもで船員の女をマワしてるなんて、決裂しない理由が知りたいぜ」

 

 シーザーの部下が捕らえた海賊たち。

 それこそが、スモーカーの軍艦が通話をキャッチした"麦わらの一味"だったのだ。

 彼らが研究所の一室に閉じ込めたのは、部下を船に乗り込ませた時に船にいた7人。近海を通過するかもしれない新しく"新世界"に乗り込んでくる海賊たちは予め調べ上げていたため、その面子も知っていた。

 

「"麦わらの一味"……。2年間の謎の失踪、船長だけの頂上戦争参戦。その間にまさかガキまで作るとはな……」

「しかしM、いいんですか? ガキなら実験材料に最適なのでは?」

「シュロロロロ、考えてもみろ。堕さずに産むんだ。それだけガキと相手の男に気持ちが入ってるってことだ。それを引き離してみろ。研究所内で何をされるか分かったもんじゃない」

 

 シーザーの研究所には、近隣の島々から攫ってきた子どもたちが多くいる。

 そのほとんどが彼の実験材料となり、近い将来の政府の戦士となるため、巨大化の実験を受けている。

 しかし、そんな暴挙ができるのは、その子どもたちを海難事故での死亡扱いとして、そして近くに親がおらず、子どもも無知なためだ。

 近くに親がいて、しかもその母親が賞金首。となれば、3億の懸賞金がかかるほどの実力者でもあるシーザーでも対応できないことがあるかもしれない。

 

「危険はできるだけ取り除いておく。そこから、安全なところから変えていく。あいつらが何もしねぇってんなら、帰してやるさ。どうせ海賊の言うことなんざ、誰も信用しねぇし、させやしねぇ(・・・・・・)

 

 用心深く、能力も強力であり、平静ならば頭もキレる男、シーザー。

 そのため彼は、許可を得るためにとある人物へと許可を求めた。

 

「……あぁ、"JOKER"。一つ頼みたいことがあるんだ……」

 

 そう切り出し、シーザーは"JOKER"と呼ばれる男に電話をした。

 

 

 ◇

 

 

「"メス"ッ!」

「ほっ! はぁっ!」

 

 シーザーの研究所の正面入り口。

 そこでは、研究所の持ち主であるシーザーが想像している以上に激しい戦闘が繰り広げられていた。

 

「チッ……。すばしっこい奴だ」

「私だって海兵だもんっ! これぐらいできるよ! それに、負けちゃったらやだもん」

「ガキか……!」

 

 一方は、一定環境下では最強クラスの能力といっても過言ではない"超人系"の悪魔の実である"オペオペの実"の能力者、王下七武海のトラファルガー・ロー。

 そしてもう一方は、パンクハザードに乗り込んできた海軍の軍艦において、最も階級が高いスモーカー……ではなく、彼の右腕として働いている、少尉のジョー・リリーだった。

 

「そ、れ、にッ!」

「ぐ……ッ!?」

 

 ローの鋭い突きを避け、一旦距離をとったリリー。

 しかし、ローの一瞬の思考の隙にいつの間にか懐まで彼女が潜り込んでいた。

 

「私ももう、子どもじゃないもんっ!」

「ガッ!?」

 

 アッパーの要領で突き上げられる右拳。

 それがローの顎ではなく、喉を直撃した。

 

「ゲホッ、ゲホッ……! 中々えげつねぇな……」

「狙えるなら顎じゃなくて喉の方が効率いいもんね」

「言い方を子供っぽくすりゃいいって訳じゃねぇぞ」

 

 トラファルガー・ロー。

 現王下七武海の一人で、その元懸賞金は4億4千万ベリー。

 そんな世界でも実力者と謳われる彼だが、目の前に現れた少女の見た目と実力のギャップを、未だ埋められずにいた。

 

「白龍屋の長女。最初にお前が切り掛かってきたのには驚いた」

「"自然系"のスモーカーさんよりも、私の方が戦うのに向いてそうだしね」

「……なるほどな。相性も良く理解できているらしい」

 

 ローの"オペオペの実"の能力は強力だ。

 サークルと呼ばれる球体を作り、自分を含むその円の中にあるものを改造できる。

 雪と銃弾の位置を入れ替えたり、手足を分断して付け替えたりなど、その用途は多岐に渡る。

 

「それにスモーカーさんも私のこと信じてくれてるもんっ! "覇気"も使えるようになってきてるって!」

「使えるようになってきた、ってレベルでそれか。末恐ろしいな」

 

 そんな彼の唯一の弱点とも言えるのが、能力を使用する際の代償だ。

 能力を使用すればするほどに体力を消費する彼が一対一で取れる戦法は、実際のところそれほど多くはない。

 特に、今目の前にいるリリーのような、小柄で能力を使うことなく戦うスタイルの、超速近接戦闘に置いては、よほどの実力差がない限りローが苦戦を強いられることがある。

 

「むぅ。だって、まだパパみたいにうまくは戦えないもん」

「……戦闘の何もかもが父親基準、か」

「パパは凄いんだよ!」

「知ってるさ。嫌という程な」

 

 王下七武海。

 世界政府によって公認された海賊たちではあるが、そのおかげで海軍とのコンタクトを取ることもある。

 ローがそこで聞いたのは、圧倒的という言葉すら甘く聞こえるほどの、ジョー・ジャックハートという男の力だった。

 

「一戦交えたくもねぇ。その考えだけで七武海や四皇の座にしがみついている奴らもいるって噂だ」

「ほえ? 誰のこと?」

「お前は知らなくてもいいことだ。……で、どうする。まだお前がやるのか」

「もちろんっ! そろそろ本気、出しちゃうもんね!」

 

 腰に携えた刀、"影羽"を抜く。

 その瞬間、リリーのくりくりとした大きな瞳が、スッと細くなっていく。

 

「おいリリー」

「分かってるよスモーカーさん。油断はしないし、殺しもしない」

「……大した自信だな。まるでおれに勝てるかのような……」

 

 わずか10歳の少女。

 いくら海軍本部大将の娘とはいえ、これまで海賊として活動し、王下七武海にまでなった実力がローにはある。

 その気持ちが、命取りとなる。

 

「勝てるよ」

「何……ッ!?」

 

 まばたきをしたわけでも、視線を外したわけでもない。

 しかし、ローの一瞬の隙を突いたリリーが"剃"で彼の背後に回っていたのだ。

 ローが気づいた時には遅く、すでに抜かれた"影羽"が彼の首筋を捉えようとしていた。

 

「くっ!」

「っ、嵐脚・飛沫」

「ぐぁっ……!」

 

 とっさの判断で自身の持っている刀である大太刀・鬼哭で防ぐ。

 だが、リリーの攻撃はそれだけでは終わらずに、防がれた勢いそのままにふわりと宙に浮き、蹴りによる斬撃の嵐をローに浴びせた。

 

「一刀流……」

「クソ、休ませてもくれねぇか……! "ROOM"!」

「"大斬波(おおざんぱ)"ッ!」

「"タクト"」

 

 そしてそのまま着地するかと思えば、"影羽"を大きく振りかぶり、勢いよく振り下ろしながら大きな音を立てて着地した。

 それと同時にローに巨大な斬撃が飛ぶが、サークルの中に入った斬撃はローの右手人差し指の動きにつられるように上に反れた。

 

「……あれ? んー、まあそっか」

「随分と大雑把な攻撃だったな」

「うん。だって、それが元の名前だし。技名が"大雑把"はダサいってお兄ちゃんに言われたの。今の大雑把な攻撃を避けられないのは弱い人だって」

 

 目の前の敵のコロコロと変わる雰囲気に若干のやり辛さを感じながら、ローは先ほど飛んで行った斬撃の方向を見た。

 確かに大雑把な攻撃ではあったが、その破壊力は抜群。

 その小さな体のどこにそんな力が隠されているのかと思うほどの斬撃は、ローが作った氷塊と軍艦のオブジェを真っ二つに分断していた。

 

「リリーちゃん危ねぇ! 俺らのこと考えてる!?」

「え? ……う、うん。大丈夫。バッチリ」

「絶対嘘だろ!?」

「もう嫌だぜスモやんっ! あんたが戦ってくれよ! リリーちゃんが戦ってるといろんな意味で体が持たねぇ!」

「そうだな。……そろそろ本気でカタつけるか」

 

 リリーとローが戦っている後ろでギャーギャーと喚く"G-5"支部の面々。

 その一番前でリリーの戦いを眺めていたスモーカーが、一歩前に出た。

 

「出るか白猟屋」

「いや、今回お前と戦うのはリリーだ」

「いいのか?」

「あぁ。……何せ、そいつはある意味俺よりも強いからな」

「何?」

 

 スモーカーのその言葉を聞き、ローは再びリリーの方に視線を向けた。

 するとそこには、"影羽"を鞘に収め、凍てつくような視線と殺気を向ける少女がいた。

 

「っ!?」

「よく言えば純粋、悪く言えば子どもっぽい。気分が乗れば容赦なくなるぜ、リリーは」

「一刀流・居合……」

「チッ……!」

 

 柄に手をやり、ロー目がけて駆け出すリリー。

 その彼女の姿を見てローもまた、鞘に収めたままの鬼哭を構える。

 

「"気龍"ッ!」

「……ッ!」

 

 一瞬でローの懐まで潜り込んだリリーの右手から放たれる、神速の一撃。

 間近で受け止めたローだから分かることだが、その刃には一切の無駄なく"武装色の覇気"が込められており、文字通りその気配は架空の生物である龍のように強大なものだった。

 

「厄介だな。逃げられても困る……」

「逃げないよ。私だって海兵。あなたがここで何をしているのか、ちゃんとパパやサカズキさんたちに報告しなきゃ」

「……そうか。なら、少し行動を制限させてもらおう。……悪く思うなよ」

 

 リリーの攻撃を自身の重心を落とすことで受け切ったロー。

 10歳の少女の身長から繰り出される高精度の攻撃というのは、高低差が生まれやすい。

 だが、それだけで戦いの行方が左右されることも多いのだ。

 

「何を……? わっ!」

「"タクト"。……"メス"」

 

 ローとリリー。その間の距離は、互いの身長差はあるものの一歩踏み込めば刃が届く程度。

 これまで近距離でのやり取りしかなかったためにリリーに植え付けられてしまった固定観念がここで邪魔をする。

 彼女の足元が勢いよく持ち上がり、目線がローとほぼ同じ位置にまでせり上がった。

 その勢いにふらついてしまい、バランスを崩してしまったのだ。

 

「え……?」

「っ、おいリリーッ!」

「将来厄介な海兵になりそうだ。……これ(・・)は預かっておくぞ」

 

 ローの左手による攻撃。

 それによりくり貫かれたリリーの胸は空洞と化し、そこに本来あるはずの心臓がローの手元に渡った。

 

「……くそがっ!」

「自分の判断ミスを責める気持ちも分かるが、それは悪手だ。スモーカー」

「っ!?」

 

 積もった雪に倒れていくリリーの姿を見て、完全に自分の判断ミスだと自責の念に駆られたスモーカー。

 そうだと言われればそうに違いないが、事実リリーとローの実力が拮抗しているように見えたのもまた事実。

 "G-5支部"側が正しく認識できていなかったのは、自分たちの実力でも、部下の経験値不足でもない。

 

「今はおとなしくしていてくれ」

 

 倒れているリリーと、ローに向かっていくスモーカーに向けられる鬼哭の突き。

 それを受けた二人の胸からハートのようなものが飛び出たかと思えば、今度はスモーカーが雪に沈んだ。

 

「な、何が起きたんだ!?」

「リリーちゃんならまだしも、スモさんまで!?」

 

 現状この場にいる海軍のツートップが一人に倒されどよめく"G-5支部"の海兵たち。

 

「あれ〜〜っ! お前は〜〜〜ッ!!」

「……麦わら屋」

 

 王下七武海と海軍の戦いがひとまず決着が着いたこの場に、また一人、海賊が現れる。

 

 

 ◇ ◇

 

 

「ゴメンなさい、サンジ。私だけ運んでもらって」

「大丈夫だ、ロビンちゃん! フランキーの身体になってナミさんの身体を運べるし、お腹の中の子どもにも無茶させないためだ。これぐらい、なんてことねぇ!」

「ゴメンね、サンジくん。チョッパーとフランキーも、任せっきりになっちゃって」

「入れ替えられる選択肢の中じゃ、まだいい方だぞ!」

「ン〜〜〜……普段こんな毛皮に覆われてんのか、チョッパー」

「頼むぜチョッパー。俺の身体なら蹴りで戦うことはできるだろ」

 

 リリーがローと戦いを始める少し前。

 誰もいないはずだった研究所の中から、麦わらの一味の数人と大きな子どもたちが飛び出してきたのだ。

 王下七武海であるローと海兵たちの姿を見て海賊達は引き返した。……が、その際ローから攻撃を受けてしまったのだ。

 

「ナミと私が入れ替わったのは幸いだわ」

「だな。母体はデリケートだから、性別が同じならまだ安心だ」

「走り辛ぇなこの身体……。チョッパー、走りに特化した形はないのか!?」

「あるにはあるけど、フランキーは変形に慣れてねぇから、下手にすると逆に危ないぞ!?」

 

 ロビンとナミの精神が入れ替わり。

 サンジの精神がフランキーの肉体に、フランキーの精神がチョッパーの肉体に、チョッパーの精神がサンジの肉体に入った。

 ローの"オペオペの実"の能力により、精神を入れ替えられてしまったのだ。

 

「あぅ……」

「っ、ロビンちゃん、2人は大丈夫か? おれも出来るだけ、揺れないようには気をつけてるんだが……」

「えぇ、大丈夫そうよ。ありがとう」

 

 今ここにいるメンバーの中で最も身体が大きいフランキーの肉体になったサンジがお腹が大きくなったナミの身体と赤子二人を抱えて走る。

 普段改造した自分の身体で戦っているフランキーはチョッパーの身体になってしまっているため、満足に戦うことは難しい。

 そのため、そもそもの肉体のスペックが高いサンジの肉体となったチョッパーが、このメンバーの中で唯一戦える存在となっていた。

 

「むむぅ。なにやら面妖なことになっているでござるな……」

「悪いがちょっとだけ我慢してもらうぜ、サムライ。服を出してくれたことに感謝しちゃいるが、海兵がいるんなら動きにくいんだ」

「お主らが海賊ならば海軍と敵対するのは当然。……しかし、拙者の体を斬った男もあそこにいたとは……」

「ねーねーお姉ちゃんたち。これからどうするの?」

「え? んー、そうねぇ……。どうしましょ」

「考えてねぇのかよ!?」

 

 ナミの精神がロビンの体に入ったことにより、発言のギャップが普段よりもさらに激しく感じられるが、それはフランキーの精神が入ったチョッパーも同じこと。

 怪しげな研究所から謎の大きくなった子ども達を連れ出すことには成功したが、海軍と王下七武海がこの島にいたことにより、どうすればいいかという考えが止まってしまった。

 

「いた〜〜〜! お前ら〜〜!!」

 

 しかしそこに、彼らの残った仲間達である4人が合流する。

 これまた謎の人の体にワニの足がついた生物に乗ったルフィ、ゾロ、ウソップ、ブルック。

 彼らがナミ達が走ってきていた道を追いかけてやってきたのだ。

 

「おーいっ! ルフィ、ゾロ、ウソップ、ブルック──!!」

「何だあのアホコックのハイテンション。……あぁ、寒さでとうとう……」

「やばいやつ扱いすなっ。てかなんだあのデカい子ども達」

 

 ゾロが来たことに飛び上がって喜ぶサンジ、ナミやロビンのことをやたらと気にかけているフランキー、普段からは想像できないような表情と立ち方で彼らを迎えたチョッパー。そしてフランキーの体よりも大きな数人の子どもたち。

 船の上での生活が多い彼らにとって見慣れない光景が広がるが、話は落ち着いてから。

 天変地異や怪奇現象などは、それなりには慣れてきている。

 

「みんな、詳しい話は後よ。とにかくまずは吹雪をしのげる場所に行きましょう」

 

 ロビンの提案により、ひとまず吹きさらしになっているこの場所から離れる。

 

 

 少し歩いた場所にあった、ボロボロの施設の跡地のような場所。

 

 

 そこに一旦全員身を入れて、情報の共有を行うことにしたのだ。

 

「えー、っと。つまりだ。チョッパーがサンジになって、フランキーがチョッパーになって、サンジがフランキーになったのか?」

「そうだぞウソップ。料理はできねぇけど、けが人はおれが見るからな!」

「というわけで、ケガしてもおれには頼るな」

「ビームはどうやって出すのかしらねぇが、まあ一応蹴りでは戦えるだろ」

「あのクソコックがおかしくなったかと思ったが、そういうことか」

「なんだとクソマリモッ!」

「あ、そういうことか」

「今のやりとりで理解すんな、ルフィ」

 

 繰り広げられる、混沌とした会話。

 フランキーとゾロが罵り合い、チョッパーが自分の変形に翻弄され、サンジがナミとロビンと彼女たちの子どもの診察を始める。

 そんな中、ブルックだけは冷静に。

 

「ルフィさん。やっぱりこの下半身さん、頭さんがいたようですよ」

「なに〜〜!? ホントかブルックッ!」

「うおっ、ホントだ。サンジたちの方に頭があったのか」

「か、下半身が戻ったでござる!」

 

 下半身と頭が繋がった奇妙な人間を分析していた。

 このサムライこそが"麦わらの一味"がパンクハザードに上陸するきっかけとなった、人斬りのサムライだったのだ。

 

「あぅ、あ〜う〜」

「ん〜? どうしたの、ベルメール」

「あ〜……」

「オルビアも……。トラファルガー・ローと海軍が戦っている方向に何かあるのかしら」

 

 状況が落ち着くのを時間が解決することを待つ女性陣。

 ナミの体も今はフランキーに抱えられてはおらず、お互いの子供を抱いていたのだが、その赤ん坊たちが先ほど海軍がいた方向に向かって手を伸ばしたのだ。

 

「何か気になるのがあったのかも知れないな。子どもは好奇心旺盛だし、スモーカーのケムリとか、ローの戦いが面白かったのかも」

「あう〜!」

「きゃっ。……もう、どうしたのかしら」

「……そういえば、ローと戦っている海兵、子どもみたいだったわ。……もしかして」

「っ、や、やめてよロビン。まだそうと決まったわけでもないでしょ?」

「ん? どうしたんだナミ、ロビン。何か体調の変化とかあるのか?」

 

 ロビンとナミの脳裏に一瞬だけよぎる、つい先ほど見たローと小さい海兵の戦い。

 研究所から出てその場面に遭遇し、すぐさま裏に逃げたのだが、その衝撃的な光景は嫌でも目に焼きついた。

 王下七武海になれるほどの実力を持った海賊。そして、その海賊と渡り合えていた少女。

 一体どれほどの実力と可能性があるのかと考えてしまった瞬間、ナミの体になったロビンは頭を横に振った。

 

「い、いいえ。大丈夫よチョッパー。ただちょっと……なんて言えばいいのかしら」

「懐かしいようで強烈な、嫌なんだけど忘れたくないっていう、変な感覚が……」

「……授乳期とか、ナミの体は今も妊娠してるけど、そう言った時期の人間は精神的に不安定になりやすいから、言いにくいことは別に言わなくても大丈夫だぞ?」

「……えぇ。ありがとう、チョッパー」

 

 子どもたちが喜びながら手を伸ばし、その方向に這ってでも行こうとするような勢いを見せている。

 その瞬間、吹雪をしのげていたこの場所ですらも凍えてしまうような猛烈な冷たい風が吹いた。

 

「っ、寒いわね……」

「だ、大丈夫かロビンっ! 体もだけど、お腹は特に冷やさないようになっ!」

 

 吹雪く島。もちろんそれ相応の寒さがある。

 しかしロビンとナミには、それ以上に寒気を感じていた。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「あはははははははっ! あははは、すっごーいっ! おもしろーいっ!」

「ひ、ひぇえ……。あんな笑顔で爆笑してるスモさん初めて見たぜ……」

「おいリリー。俺の姿でみっともねぇことすんのはやめてくれ」

「逆にこっちのリリーちゃんはすんげえ貫禄あるっつぅか、あんま違和感ないのなんでだ?」

 

 麦わらの一味が合流するほんの少し前。

 サンジやナミたちと同じ技で精神を入れ替えられていたリリーとスモーカーが目を覚まし、"G-5支部"の海兵たちが子どもたちやロー、麦わらが同じ島にいることへの推測を始めていた。

 

「そりゃリリーの父親の遺伝子考えたら分かるだろ」

「あ、あぁ……なるほど」

「ん、パパがどうしたの?」

「リリーちゃん、頼むからその姿でパパはやめてくれ……」

 

 10歳の少女と36歳の男。

 その二人が入れ替わってしまったことにより、ある種麦わらの一味よりもひどいギャップが生まれてしまった。

 

「で、リリーちゃん。何が面白いんだ?」

「んっとね、すっごいタバコ臭いの!」

「……スモさん」

「分かってんだよッ! こいつの体にいる間は一切吸わねぇ! ……で、だ。リリー。お前がさっき言っていた違和感って何だ」

 

 10歳の少女の肉体に精神が入ってしまったスモーカーが、本来の自分の体に凄む。

 ジョー・リリーが"G-5"にて主に行っている任務。それと関連していたのだ。

 

「えっとね。小さい女の子だとだいたいみんな油断してくれるの。だから、スモーカーさんとかだったら怖くて話せないこともいっぱい話してくれるんだ」

「それが、ガキの海難事故と関係してるのか?」

「多分。通信部には誘拐された〜って通報がくるのに、そのほとんどが海難事故になってるの。まあどっちも子どもがいなくなってるから勘違いかなって思ってたんだけど、この島にいたあの数はおかしいなって」

「……だな。あと何か、気になるところはあるか?」

 

 以前から"G-5支部"に多かった近隣の島からの子どもの死亡数。

 それが海難事故と扱っていたが、誘拐としての報告が本当に正しいのかもしれない可能性が浮上してきたのだ。

 そして、リリー自身気になる点が、もう少し。

 

「うん。この研究所の中、ただの誘拐犯じゃない人たちもいるよ」

「何? ……見聞色か。俺の体でも問題なく"覇気"は使えそうなのか?」

「むしろ鍛えられてる体だし、いつも以上に使えそうだよ。……でも、なんだかつい最近感じた気がする気配もあるんだけど……」

 

 そう言いながら、研究所の方を見るリリー。

 強い気配をひしひしと感じるその方向を見ていると、ふと真後ろから音が聞こえた。

 

「えっ!? ぐ、軍艦っ!?」

「や、やった……っ! 援軍だーっ!」

「……来たか」

 

 スモーカーたちを乗せた軍艦が通ってきた道と全く同じルートを通ってきた軍艦。

 事前にここに来るであろう人物を、スモーカーはリリーから聞いていた。

 

「つっても、こんなやべぇとこに弱ぇやつが来ても意味ねぇだろ……」

「た、確かに……。スモさんより弱ぇやつなら話にならねぇ!」

「頼むぜオイ!」

「っ、お前ら。あんま変なこと言うんじゃねぇ……」

「えっ? どうしたんすか、リリーちゃん」

「俺はスモーカーだ……。安心しろ。癪だが、あそこにいるやつは俺より強ぇよ」

 

 甲板に出ている海兵たちですら、"G-5支部"の面々よりも軒並み修羅場をくぐった風格を見せている。

 

 その奥から、上半身裸の男が現れた。

 

「おい、誰だよ今俺の事弱ぇとか言ったやつ。半殺しにでもすりゃあ分かってくれるか?」

「……だ、誰だ?」

「ったく、頼むぜスモーカー。いくらアホでも雇ってんなら教育ぐらいしてくれや。俺ァ、海軍内じゃ名は売れてるとは思うんだが」

 

 黒い短髪を右手でかきあげて眠たげに欠伸をしながら口元を左手で覆う。

 本人がそう言っているが、そもそもの話、本部にいなければ声はおろか姿を見ることも珍しいのだから仕方ない。

 

「あーっ、パパだーっ!」

「え……。す、スモさんに入ったリリーちゃんがそう言うってことは、もしかして……?」

「……どういうことだ? そんなヤニカスのおっさんの子ども、育てた覚えは無いんだが」

 

 貫くような視線。

 そこからしばらくして、ため息を吐いたその男は、面倒くさそうに部下から手渡された黒いシャツに袖を通した。

 

「まあ良い。無能なアホどもに自己紹介をしといてやる」

 

 トン、と甲板から軽やかに飛び、"G-5支部"の海兵たちの前に降り立つ。

 その手には大きな白いコートを持っていた。

 

「娘が世話になってるな。海軍本部大将、ジョー・ジャックハートだ」

 

 彼の登場に、場がさらにかき乱されることとなる。




最悪(の科学者)と最悪(の世代の海賊)と最悪(の海兵)と

誰が1番最悪なんでしょうかねぇ……。

感想などよろしくお願いします。予想以上にモチベーションに関わっているので、誰とのが見たい、どこがどうだった、など気軽によろしくです。

評価もお待ちしております。


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チキンレース

たくさんの感想、ありがとうございます。
就活と卒研でメンタルズタボロの作者の癒しとなっております。

パンクハザード編は恐らく後2〜3話で終わると思います。

「あれ、このメンツでここにいたら絡みあるのでは……?」という部分がありますが、今回はあえて入れていません。
次回以降、原作キャラにも焦点を当ててストーリーを深くしていきたいので、お楽しみに!


※6/29追記

コメントにてご意見をいただき、投稿してから少し修正させていただきます。話のストーリーにはほぼ関係ない部分にはなりますが、キャラ同士の掛け合いだったり立場が変わっております。申し訳ございませんでした。

修正内容
支部の階級は全て本部より下がると勘違いしていたため、修正前ではスモーカーの方がたしぎより下の立場になっておりました。
修正後は、本部と支部という距離の差はあれど、スモーカーの方がたしぎよりも階級は上、となっております。

重ね重ね、申し訳ございませんでした。


 

 

「で、お前とスモーカーがローから攻撃を受けて精神が入れ替わった、と」

「うん。"悪魔の実"とかそもそもの体のサイズが違うから、動きづらさを狙ってるんじゃないかなって」

「そりゃそうだろうな。……でもリリー。今のままじゃお前は戦力じゃねぇな」

「えーっ!? なんでー!?」

 

 先にパンクハザードについていた"G-5"の海兵たちから今までの事情を聞いたジャックハート。

 彼の部下の一部がパンクハザードに降り立ち、残った者は一旦海軍本部に事の顛末の報告に向かった。

 そのパンクハザードで、見た目はスモーカーのリリーがジャックハートに駄々をこねるという側から見ると絵面がやばすぎる場面が完成した。

 

「まず一つ。"悪魔の実"の扱いに慣れてないから。そして二つ。相手がいくら王下七武海だからって、心臓は取られるわ精神は入れ替えられるわ、やりたい放題にされすぎだ」

「……う〜」

「ジャックハートさん、それぐらいに……」

「ダメだ。これは親子の問題じゃなく、上司部下の問題だからな。俺の意見もあってここに赴任して、階級にもついてるんならちゃんとしねぇと」

「……うん」

 

 普段部下たちに向けるような怒りではなく、まさしく子どもを叱る親のよう。

 しかし、海軍本部大将と支部の少尉という、明らかな上司部下の関係性もある。

 そのためジャックハートは、親という立場から仕事を全うできていなかったリリーを叱っているのだ。

 

「パパもママも、仕事中は一切ふざけてなんかいないし、本気でやってる。手を抜くなんて選択肢がそもそもないからだ。……そして、今のリリーには失敗しても許される二つの大きな理由がある」

「……パパが強くて、私が子供だから?」

「そう。リリーがどんなことをしても、パパの娘なら怒れない。失敗しても、まだ子供だからで済まされる。リリーはそれでいいのか?」

「よくないっ」

「なら大丈夫だ。このままだとダレスにどんどん差をつけられるかも、と思ってたけど安心だ。これからは頑張るんだぞ」

「うんっ!」

 

 ジャックハートと自分の身体になったリリーとの会話を見て、リリーの身体になったスモーカーはあんぐりと口を開けた。

 まさかあいつがこんなにちゃんとした父親らしくしているとは、と驚いていたのだ。

 そんな彼に、ひとつの人影が近づいた。

 

「可愛らしくなりましたね、スモーカー中将」

「っ、たしぎ……!」

「……ついに、後一つです。すぐにあなたに追いつき、追い抜いてみせます」

「……チッ。そんなにあいつにくっついていたいのか」

「えぇ。当然です」

 

 たしぎ。

 ジャックハートの元に正式に部下として配備され、セックスだけでなく戦闘のノウハウもバッチリと指導されている彼女は、昇進に昇進を重ね、今や海軍本部少将にまで登りつめていた。

 

「私の今の目標は、本部の中将になること。いずれはその先に行くことです。スモーカー中将も、目先の標的を追い過ぎず、自分を見つめ直してみることも必要かと」

「随分と偉くなったじゃねぇか、お前……」

「おいスモーカー。何俺の可愛い部下を睨みつけてくれてんだ、あぁ?」

 

 その2人のやり取りに、この場で最も強いといってもいいジャックハートが割り込んだ。

 今まで彼と話をしていたリリーはというと、父親に発破をかけられ、まるで身体から炎が出ているかのように燃えていた。

 

「元はと言えばてめぇが不甲斐ないせいでリリーが汚ねぇヤニカスジジイの身体になっちまったんだろうが。責任取れや」

「……それに関しては、悪いとは思っている」

「ケハハハ。ここにいる間こき使わせてもらうぜ。それでチャラだ」

 

 スモーカーの目の前にいる男にとって、部下が逆らうということは正しく怒りの琴線に触れること。

 自分に否があり、そして立場は完全に向こうの方が上。

 ジャックハートにパンクハザードで何が起きたかを説明する前に部下たちに徹底的に指導しておいた、態度には気をつけろという言葉がなければどうなっていたか分からない。

 

「たしぎ。この一件、指揮はお前に任せる。今言った通り、こいつは今んとこ信用できねぇからな」

「えっ!? ジャックハートさんはどうするんですか?」

「一人で動く。要するにシーザー・クラウンが怪しいってんだろ? 今はもう政府の人間でもねぇただの賞金首だ。黒幕だろうがそうでなかろうがボコボコにして持っていきゃあいい」

 

 そう告げ、簡単な作戦会議を開いていた場所から去ろうとするジャックハート。

 彼につられ、複数人が立ち上がる。

 

「お待ちくださいあなた様っ! わらわは、わらわ達はどうすれば……」

「たしぎを手伝ってやれ。俺の想像を超える働きを見せてくれた子には、それ相応のご褒美をやるぜ」

「〜〜〜っ! このハンコック、必ずやあなた様の期待に応えてみせます!」

「わ、私もです、ジャックハートさんッ!」

「もちろん、私もです。リリーのためにも、身を粉にして働きます」

「ケハハハハハッ! 期待してるぜ」

 

 たしぎ、ハンコック、カリファなど普段ジャックハートに愛されている女性たち。。

 一旦通報に戻った軍艦に、ジャックハートを囲っている女性たちは誰一人として乗っていない。

 戦闘が全くのド素人であるノジコですら、島に降りていた。

 

「す、すげぇ光景だな……。これが、本部の大将……」

「そういうことだ。入ってねぇ脳みそでも格の違いぐらいは認識できただろ?」

「っ、そ、そこまで言うか!?」

「あ? 単純に海兵としてのデキで考えてみろよ。ここにいる俺以外のテメェら全員束になってかかってきても2分と持たねぇっての。身の程わきまえろよザコども。懸賞金が高い見てくれだけの海賊にビビってんじゃねぇよ」

 

 自分が抱きたいと思う女性には比較的優しく、どうでもいいと思っている男性陣には辛辣。

 普段からジャックハートのその言動に慣れている直属の部下たちは問題ないが、"G-5"の面々はいくら強いとは言えそのあまりの横暴さに少しばかり気が立っていた。

 

「なあ、リリー。お前もそう思うだろ?」

「うん。だってみんな、任務中私よりも楽しそうに遊んでるもん」

「やってることの差ってわけだ。汚ねぇ馬鹿な弱い海兵に、どこの女が抱かれたいって思うんだよ」

 

 少し歩いたジャックハートと、その後ろに固まる"G-5"の海兵たち。

 容姿、頭脳、実力、財産、地位、名声。その全てにおいてジャックハートが勝っており、"G-5"側はその言葉に思うことはあれど言い返すことはできなかった。

 

「せいぜいうちの可愛い部下たちの邪魔はすんなよ。俺とのはさみ打ち要員に、一応だが期待している。じゃあたしぎ、他のみんなも、リリーも。また後でな」

 

 "正義"の白いコートを腰に巻き、すたすたと一人歩いていくジャックハート。

 その後ろ姿が吹雪で完全に見えなくなった途端、彼らの怒りが爆発した。

 

「いいんすかスモさんっ! あんな言われたい放題のままでっ!」

「俺らだってそれなりには頑張ってきたつもりだぜ!?」

「いくら海軍本部大将だからって、ありゃむかつくぜ……!」

 

 彼らの怒りの矛先は、もちろん先ほどのジャックハート。

 彼は、本部で直接見ていた部下たちには当たりはかなり厳しいがまだ部下として扱うことがある。しかし、今のジャックハートは完全に自分の視界にも入れたくない存在を扱うような態度だった。

 

「……なあスモさん。こいつらあの大将サンの女たちなんだろ……?」

「一回ぐらいヤラせてもらってもバチ当たらねぇよな……へへっ」

 

 そしてその捌け口は、ジャックハートが連れてきた女たちへと向いた。

 スモーカーが制止しようとするも、その目はギラついており、すでにジャックハートへの腹いせと性欲発散しか頭になかった。

 

「黙れッ!」

 

 しかし、そんな彼らに向けてさらなる怒りをぶつけるものが、一人。

 

「さっきから無能な猿が猿らしい下品な考えを垂れ流しているぐらいだと聞いてどうとも思っておらんかったが、わらわたちに手を出そうとするなら話は別じゃ」

 

 ジャックハートが連れてきていた女性たちの中で唯一"覇王色の覇気"を扱えるハンコックが、その片鱗を漏らしながら男たちを制止したのだ。

 

「わらわたちの身体も心も、全てはジャックハート様のもの。本来、お前たちのようなクズどもにはわらわたちの影すら見せていいものではない」

「っ、なんだとこのアマッ!」

「……じゃが、獣でも見惚れてしまうほどの肢体になったと思えば、それも美しさを求める者としては良いことじゃ。ここに人の言葉を話せる珍しい獣がいることに感謝せねばならんの」

 

 何処かの誰かから彷彿とさせるような、口から出る言葉の数々。

 正式にジャックハートの嫁として彼に迎え入れられ、愛し愛される日々。その日々の中で、似なくてもいい部分まで似てしまったのだろう。

 

「それにお前たち、忘れておらんか?」

「何……?」

「ここには、そこのタバコ男よりも一時的に立場が上となった海兵がおるのだぞ? のう、たしぎ」

「えぇ。……今の皆さんの言動は、そう簡単に許されることではありません」

「そんなこと言ったら、さっきの大将サンだってそうじゃねぇか!」

「ジャックハートさんをあなたたちなんかと同じにしないでください。大将権限というものを知らないのですか?」

 

 流れる険悪な雰囲気。

 相手が海軍本部の大将なら仕方ない。そう思う気持ちもありつつ、男たちはまだ完全には収まっていなかった。

 

「それと、補足しておきますが私達は全員、ジャックハートさんの部下か所有物、または秘書です。これは海軍本部だけではなく、世界政府からも認められていること。それに手を出して、無事でいられる保証はありませんよ」

「っ……」

「むしろ今のままでもお前たちが罰せられる立場じゃ。わらわたちの愛するお方、そしてあれだけの強さを誇るジャックハート様を侮辱し、その所有物に手を出した。わらわにその権限があるのなら、今すぐにでもお前たちに自害を命じておる」

 

 リリーの姿になってしまっているスモーカーも諦めてしまう程の重々しい雰囲気。

 元はと言えば、ジャックハートに歯向かうなと指示しておきながら歯向かってしまった"G-5"の男たちも悪いが、根本的なことを言うならジャックハートがそもそもおかしいのだ。

 

「……ねぇみんな、いつまでそうやって言い合ってるの?」

 

 そこに待ったをかけたのが、スモーカーの姿となったリリーだった。

 

「パパに怒られても知らないよ? ここにいる全員で、パパの反対方向から攻めて挟み撃ちにする。それすら出来なかったら、多分ゲンコツじゃ済まないよ」

「パパのことよく分かっているわね、リリー。……この子の言う通り、恐らくですが何の役にも立たないと思われた時点で、一切の期待もされないかと。ジャックハート様は若い身でありながら、世界的に発言力があるお方です。念のため、忠告をしておきます」

 

 この中で最もジャックハートの海兵ではない、素の部分を多く知っていると言っても過言ではないだろうリリーとカリファからの忠告。

 それまでどれだけ気に入っている人間であろうと、ジャックハートの中にある琴線に触れてしまえばどうなるかは分からない。

 

「先ほどジャックハート様は2分もあれば倒せる、とおっしゃっていましたが、殺すだけならばもっと早いです。……そして、ジャックハート様の今のブームはじっくりといたぶることです。仮にも同じ職種の海兵に、さすがに今はそういったことをなさるとは思いませんが……」

 

 "新世界"に来ることになり、まず初めにジャックハートを刺激することとなったのが、まさしくそれだった。

 "偉大なる航路"の前半の海と比べて強者が多い"新世界"。それでも今の所ジャックハートのお眼鏡に叶う相手はそうそう現れず、彼の目の前に来るのはリタイアしかけか、さらに名乗りを上げようとするアホな海賊ばかり。

 普通に倒すのもさすがに飽きてきたジャックハートは、遊び感覚で手加減をしながらじわじわとなぶっているのだ。

 

「……ま、ジャックハートがどうだろうと関係ぇねぇ。俺たちは俺たちの仕事をこなすだけだ」

「ではスモーカーさん。まずはリリーちゃんの心臓、そしてお二人の精神を戻すことを優先しましょう」

「あぁ。じゃあ行くぞ、お前ら。気を引き締めろ……!」

 

 たしぎやスモーカー達が行こうとしている研究所。

 そこを阻む、ひとつの大きな扉。それを開かなければ研究所には入れない。

 

「ふん、良いかゴロツキ共。わらわがこの場で言うことを聞くのは普段からジャックハート様を愛している女たちと、ジャックハート様の娘のリリーだけじゃ。無論、これはわらわだけではなく、海兵であるたしぎとアイン以外の者もじゃ」

「分かってる。元々、海賊だったお前らに協力は期待してねぇよ」

「……その言葉、数ヶ月先まできっちりと覚えておくと良い」

 

 ジャックハート部隊と"G-5"支部。

 彼らを迎え撃つように、どこからかシーザーの部下が現れ始めた。

 

 

 ◇

 

 

「ここから入るか。……3億と4億と4億ちょい。かー、しょっぺー島だぜ。肌寒ぃし、向こうは暑いらしいし。やりすぎだろあの二人」

 

 たしぎたちから離れたジャックハートは、研究所の裏口へと通じているであろう道を進み、その扉の前まで来ていた。

 ここに来るまでの間、アインとカリファ、そしてヒナとドミノ、サディの計5人を抱いただけでは足らず、そこからバカラとカリーナ、ハニークイーンといった新しくジャックハートの元に来た女性たちとの関係を深めていたのだ。

 性欲は満たされ、休息も栄養も十分に摂った彼にとって今唯一不足しているもの。

 

「まあ、今後のこと考えりゃあちょっとは楽しめそうだ」

 

 数多くの極上の女を抱き、存分に休み、そして肌がひりつくような戦闘をずっと心待ちにしてきたのだ。

 磨かれていくまさに神に愛されたかのような天性の肉体。

 そこに最高潮にまで高まった精神が組み合わさり、彼の感覚は人生史上最高クラスにまで研ぎ澄まされていた。

 

「この気配……。あぁ、やっぱそうだ。間違いなくナミちゃんとロビンちゃんはまだ一味にいる。ベルメールとオルビアも無事か。んで、強いので言えば麦わらとトラファルガー、シーザー……と、なんでここにいるのかは分からねぇ奴が一人、か」

 

 片手で扉を押し開け、中へと入っていく。

 そこには研究所とは思えない談話室のような部屋があり、バーカウンターにはアルコールが入ったボトルが並んでいた。

 

「趣味悪ぃとこだなおい。……ん? 誰か、いるな」

 

 ある程度存分に戦えはするであろうその場所に、自分以外の誰かがいる。

 白いコートを左の脇に挟んだまま辺りを見渡すものの、それらしい人影はいない。

 

「……名乗りもしねぇってことはクソ雑魚か。一応眠らせておくか。ここ以外にも、牽制しておこう」

 

 そう言い切った瞬間、彼からまるで空間がきしむような圧力が放たれる。

 発動させる範囲をかなり広めた"覇王色の覇気"。それは、研究所だけではなくその外、島全体にまで及んだ。

 

「遠い奴にはもしかしたら効いてねえかもだが、まあいいだろ。さっさとぶっ殺すもんぶっ殺して、こんなとこ出て行こうか」

 

 カツカツと靴音を鳴らしながら奥へ奥へと進んでいく。

 初めてきた場所にも関わらずジャックハートが迷うことなく進んでいるのは、そこにとある気配があるからだ。

 

「あーあー、せっかくリリーを倒したって実力を確かめようと思ってたのによぉ。なんで玉無し野郎に負けてんだよ、トラファルガー」

 

 右手で乱雑に後頭部を掻きながら言い切った後にあくびをする。

 ジャックハートが歩いていた通路の先に、血を吐きながら倒れているトラファルガー・ローともう一人、彼にとって懐かしい顔がいた。

 

「久しぶりだな、ヴェルゴ。テメェの部下は今外にいるぞ。早く行ってやれ」

「……じゃ、ジャックハート……」

「あぁ? 口の利き方に気をつけろよカス。お前がペーペーの時に鍛えてやった上司だろうが」

 

 ヴェルゴ。

 海軍に入隊して約15年。"G-5"の基地長にまで昇りつめた男が、なぜかそこに立っていた。

 

「お前、首さえ繋がってりゃ言い訳できるだろ。基地長のお前がここの内部になぜか入り込んでいること、お前がトップの"G-5"の報告が間違いまくってたこと、んで最後に、海兵の格好すらせずにこの場にいること。……どういうことか洗いざらい吐いてもらうぞ。敵意を見せた瞬間に拘束させてもらう。大人しく……」

「このッ!」

 

 歩み寄ろうとするジャックハートに構うことなく、勢いよく近くの壁を殴るヴェルゴ。

 その壁の奥にはなにやらスイッチのようなものがあり、押されたと同時にジャックハートの目の前に壁がせり上がり、それと共にガスが噴射された。

 

「ガス……。くそ、シーザーのやつか」

 

 振り返って見るも、後ろにも壁がせり上がっており、完全に密室が完成してしまっている。

 綺麗な空気を存分に吸えるのならば息を長く止めていられるだろうが、今は空間も制限されており、何より耐えるのは性に合わない。

 

「舐めてんじゃねぇぞクソがッ!」

 

 ジャックハートが生身で放つことができる衝撃、"六王銃"。

 シーザーの研究所で使われている分厚い防護壁に大きな穴を開け、そこから外に出る。

 

「……逃げられたか。ってことでこの時点でヴェルゴは黒。犯人はあいつか。ここにいる奴らを潰しにきたってことは、十中八九ドフラミンゴの手下じゃねぇか」

 

 ガスが充満する前に密室から脱出したものの、そこにすでにヴェルゴとトラファルガーの姿はない。

 以前から3人を抱くついでに上手く聞き出していた情報を照らし合わせ、ジャックハートの中で全ての事柄が繋がっていく。

 

「政府に捨てられ殺戮兵器を開発しまくってたシーザーに人造悪魔の実の元、SADを作らせて、それを元に"SMILE"を大量生産。それをカイドウに売っぱらって自分は大儲け。王下七武海として表向きは普通の取引をしてる裏で"JOKER"として働いてる、って感じだな」

 

 誰に伝えるわけでもないが、ポツポツと一人考えを零していく。

 そんなことを一人しているうちに、とあることに気づいた。

 

「ん? ……"見聞色"が鈍ってるな。神経ガスか……小賢しい」

 

 先ほど噴射されたガスを少しだけ吸ってしまったのか、"見聞色の覇気"が少し鈍っているのだ。

 強い気配があることはなんとなく分かるが、その位置までは分からなくなってしまっていた。

 

「探索……する気もねえし。女を抱く……にもここじゃ殺風景すぎるし。マジでなんもねぇなこの島」

 

 ゴキゴキと首を鳴らしながらゆっくりと歩き出す。

 近道を作ろうと左の腰に手をやるも、そこに彼の求めるものはなかった。

 

「……あー、そういや軍艦に置き忘れたか」

 

 アレ(・・)があれば手っ取り早かったのに。と一人ため息をつき、壁の方を向く。

 軽く準備体操をして、構える。

 

「ちゃんと避けねぇ奴が悪い。嵐脚・賽」

 

 右足から縦横三本ずつの斬撃を放つ。

 目の前にある壁を切り裂き、その斬撃はジャックハートの目に映らなくなっても轟音とともに進んでいった。

 

「とりあえず戻るか」

 

 斬撃を飛ばした方向は、先ほどたしぎたちと別れた研究所の正面入り口がある場所。

 その場所へ向けて、ジャックハートは歩き出す。

 白いコートのポケットから電伝虫を取り出し、通話を始める。

 

「あぁ、もしもしサカズキさんですか? 俺です」

『ん、ジャックハートか。どうした』

「さっき連絡してた通りです。予想通り、ヴェルゴは黒。入隊時からドンキホーテファミリーだった可能性が高いっすね」

『そうけぇ……。ご苦労』

「いえ。それと、もう確認は取れたので……」

『あぁ、もうヴェルゴは用済みじゃ。情報を抜き取り次第、始末せい』

 

 通話の相手は、自分の海軍内での唯一の上司と言ってもいい元帥のサカズキ。

 パンクハザードに到着する前にジャックハートが立てていた推測通りだった結末をサカズキに伝え、その決断を待ったのだ。

 

「了解。方法は?」

『任せる』

「うっす。遺体は持って帰りますか?」

『ドフラミンゴの手土産にでもしてやれ。……どうせ、この後ドレスローザに行く予定じゃろうて』

「あらら。バレてるんすねぇー」

『お前が今回立てた航路からしてあからさますぎる。まあ、止めはせん』

「あざーっす」

 

 サカズキの判断は、殺せ。

 スパイを疑われ、そしてその容疑が黒。どっぷりと海賊側に浸かっている海兵をサカズキが許しておくはずがなく、その下手人のジャックハートが見逃すはずもない。

 

『ジャックハート。"麦わら"、トラファルガー、シーザー、ヴェルゴの相手はさすがに面倒じゃろう。帰ってき次第、何らかの報酬を用意しておくけぇの』

「えっ、いいんすか?」

 

 何が欲しいかなー、と電伝虫片手に考えながら歩く。

 その先には一直線に穴が空いており、迷いなくそこを進んでいく。

 

 

 ◇ ◇

 

 

「シュロロロロ……ッ! 七武海に4億の首、白猟のスモーカーに白龍の娘、パシフィスタもどきに悪魔の子、本部少将や九蛇まで。ひとつの檻に入るには、豪勢過ぎるメンツだな」

 

 研究所の正面玄関で行われていた戦闘に顔を出し、その能力を使って主力を戦闘不能にしたシーザーは、それら全員をひとつの檻に閉じ込めていた。

 全員を海楼石でできた鎖を繋ぎ、シーザーは高笑いを続ける。

 

「いいかスモーカー。これからお前達の部下は死ぬ。そしてそれは、お前達もだ。どれだけ強固な肉体を持っていようと、あのシノクニはその全てを飲み込む……!」

 

 シーザー、ヴェルゴ、そしてシーザーの側近の3人が檻の外におり、その部屋には大きなモニターが設置されている。

 そこには、紫色の毒々しい煙がまるで意志を持つかのように人間を追いかける映像が映し出されていた。

 

「シュロロロロロロッ! まさか本部少将までいたとはな! ……だが、残念。いつも通り、海難事故で処理してもらうさ」

「うわっ!」

 

 ガコンッと大きな音を立て、檻が研究所の外へと移動させられる。

 全員が海楼石でできた鎖に繋がれ、宙に檻ごとぶら下げられ、徐々に殺戮ガスが近づいてきているこの状況は、文字通り捕まっている側から見れば絶体絶命だった。

 

「シュロロロロロロロロッ! これでもう、俺を邪魔する奴は誰もいないっ!」

「……シーザー。一つ、報告だ」

「何? どうしたヴェルゴ」

 

 先ほどまでは檻の中に入ったスモーカーとリリー、ローの3人を見て平静を保っていたヴェルゴだったが、そんな彼を突如として強烈な寒気が襲った。

 彼も、相当な実力の持ち主である。それこそ、"武装色の覇気"だけで言えばかなりのものだ。

 それゆえに、その寒気が自分の勘違いではないことを悟ってしまったのだ。

 

「この島に、最悪の海軍本部大将がすでに潜入している」

「…………は? ど、どういう……」

「簡単なことだ。恐らく、スモーカーたちの援軍に来たのだろう。蛇姫たちが奴の船に乗っていると考えればあのメンツが揃うのも分かる」

「お、おまえっ! 分かってるならさっさと──」

「無理だっ!」

 

 落ち着きのあるヴェルゴから一変。何かに怯えるかのように額に汗を浮かべ、彼は叫んだ。

 

「奴は、次元が違う……! 10年前ですら、手も足も出ずに一度殺されかけた……」

「シュロロロ。安心しろ、今は状況が違う。シノクニもあるし、何なら俺が息を止めてやろう」

「……どうかな。とにかく、俺はまだ死にたくない。用が済んだら帰らせてもらうぞ」

「らしくないな、ヴェルゴ。シノクニがあると言っただろう?」

 

 シーザーの表情は、勝ち誇った表情そのものだった。

 灰のように体にまとわりつき、皮膚から侵入することで全身を一気に麻痺させるシノクニを完成させた時点で、彼の中では勝ったも同然なのだ。

 しかし、ヴェルゴの表情はそれでも晴れない。

 

「言っただろう、すでに研究所の中だと。外気を入れない限り、あのガスでは倒せない」

「なら外気を入れるだけだっ!」

「……シーザー。一つ言っておく。俺はもう奴とは戦いたくないからな」

 

 10年前、ジャックハートがわずか10歳の頃だが、ヴェルゴの脳裏には今でもトラウマとして映像が残り、痛みを思い出す。

 

「奴は、恐ろしく強い。単純な戦闘力だけじゃない。根本はお前に似ているかも知れんが、強さが違う」

「シュロロロロ。何、どれほど強い奴でも関係なく、シノクニが固めて殺す……! 天下の最強の海兵ですらも、だ」

「……そうか。では、少し外させてもらう」

「どこに行くんだ」

「万が一を考え、少し準備をしてくるだけだ」

 

 そう言い残し、一人足早に部屋を去るヴェルゴ。

 彼が今思い出しているのは、10年前にジャックハートに扱かれていた時の全身に走る痛み。

 

「……」

 

 そのトラウマがフラッシュバックする。

 奥歯を噛み締め、険しい表情のまま彼は歩いて行った。




ヴェルゴとジャックハート。
早く書きてぇなぁ……。

ドレスローザ編で自分の中では戦闘シーンとか結構考えられているので、最近楽しいです。
あそこには今の所エチエチ4人娘がいるのでね……へへっ……。

コメント、評価などお待ちしておりますっ!


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断罪

金欠……! 圧倒的金欠……!
というわけで懐に優しい趣味に時間を使います、はい。

書いていてまた思ったのですが、パンクハザード編ほぼ常に全体が移動してるのでその場にキャラを固定しにくかったです。
ドレスローザや……ようやく、ドレスローザや……。


 

 

「R棟66番ゲートへ急げえぇぇぇえっ!」

「死にたくなけりゃ、とにかく走れえぇっ!」

「が、ガスが来るぞぉッ!」

 

 パンクハザードの研究所の外を覆った殺戮ガス、シノクニ。

 研究所の主であるシーザーの判断により外壁が破壊され、研究所の中に侵入し始めたシノクニは、"G-5"や"麦わらの一味"、トラファルガー・ローたちを追いかけていた。

 

「"泡波(ソープ・ウェーブ)"っ!」

「おおぉおっ! ママすごいっ!」

「リリー、真剣になさい」

 

 そんな逃走劇で、意外な働きを見せていたのがカリファだ。

 元CP9であり現在もジャックハートの船に乗る彼女は、当時よりも能力の幅が広がり、その強度も上がっている。

 体から大量の泡をまるで大きな波のように放ち、シノクニを一瞬だけはねのける。

 

「これで止められるのはほんの一瞬。疲労を考えても、あと数回撃てるか分からないわ」

「それでも十分です、カリファさん。……ん?」

「おいハンコックッ! どうしたんだよ一体!」

「くどい! わらわに話しかけるな猿が!」

「……はぁ」

 

 カリファの攻撃により生まれたほんの少しの余裕。

 その隙に少しでもシノクニから離れなければならないのに、たしぎの視界の中では2人の男女の言い争いが起こっていた。

 

「おいルフィッ! 今はそんなことしてる場合じゃねぇだろ!」

「ハンコックさんも、先を急ぎましょう。さっさとこんなところ脱出して、ジャックハートさんと会いましょう」

「……うむ、そうじゃな。こんな貧相な猿に構っている場合ではなかったな」

 

 ハンコックとルフィ。

 ジャックハートから伝えられていたたしぎは知っていることだが、頂上戦争が終わった当時、女ヶ島にルフィを匿っていたハンコックを、島民丸ごと捕らえて分断したのがジャックハートだ。

 ルフィからすれば海軍に捕まった恩人にまた会えた、となっているが、ハンコックから見ればそうではない。

 

「……忌々しい過去じゃ。あんなに弱々しいこの世の何も知らぬようなガキ以下の猿に、少しでも心を許してしまっていたとは……」

「過去は過去、今は今です。そんなことよりも、生きて帰りましょう」

「分かっておる。ジャックハート様がわらわに求めておられるのは美しさなどだけではない。強さもそうじゃ。この程度、軽くこなしてみせる」

 

 ハンコックがある意味素直でよかったと思う反面、彼女ですら手懐けてしまうジャックハートに、少しばかり恐怖を抱いてしまった。

 ジョー・ハンコック。

 元王下七武海という彼女の元懸賞金は8000万ベリー。すでにジャックハートの元に嫁いだ形になっているためその懸賞金並びに手配書は無効となっているが、実力は変わらない。むしろ、彼のためにと思い戦っているため海賊だった時よりも強くなっている部分もある。

 

「しかし、ガスというのは厄介じゃの。わらわの"覇王色"が通じん」

「そりゃ普通アレは生物に使うもんだからな。何、触らなけりゃいいだけの話だ」

 

 大きな扉を超えた先に待っていたのは、とある一人の男。

 たしぎ自身も確信はしていたが、隣にいたハンコックの体がブレたのを見て改めて分かった。

 

「あなた様っ!」

「おっと。おいおいハンコックちゃん、こんな何もねぇ殺風景なところで熱くなるより、ベッドの上に早く行かねぇか?」

「その通りです。それと、その際にはきっちり私のことも隅々まで愛してもらいたいものです、ジャックハート様」

「わ、私もですよっ!」

「分かってるっての」

 

 突進する様にその男に抱きついたハンコック。

 彼女のそれを軽く受け止めたのは、もちろんジャックハートだった。

 ハンコックが抱きついたままのジャックハートにカリファとたしぎが急いで駆け寄り、ついでリリーが可愛らしく駆け寄ってきた。

 

「リリー、死者は出たか?」

「ううん。ママとわたしで、みんな守ったからねっ!」

「はぁ、はぁ……! リリーちゃん、マジ鬼畜すぎる……」

「えー? 死ぬよりマシでしょ?」

「確かにそうだけどよ……」

 

 背後にあった巨大な扉が閉まったことでシノクニの侵入が止まり、一安心する面々。

 目の前には強力な援軍が来てくれたこともあり、冷静さを取り戻せていた。

 

「あれ、スモーカーは?」

「スモーカー中将なら先ほど、ここにいた麦わらのルフィを強引に引き連れ先に進みました」

「なるほどねぇ。何考えてんのかは知らねぇが、俺らは俺らでやることやっちまうか」

「お、俺たちのやること?」

「あぁ。つっても、俺が過去のミスを揉み消すだけだ」

 

 ジャックハートが来た道を振り返る。

 "G-5"やたしぎたちはジャックハートとは真逆の方向から来ていたため、奥の通路を目を細めてじっと見る。

 

「よう。さっきぶりだな、ヴェルゴ。15年間楽しかったか?」

「お陰さまでな。お前のおかげで"覇気"の扱いも想像以上に上手くなった」

「ケハハハハハハ。ゴミはいくらやったってゴミのままだぞ? 当時10歳の俺に金玉片方潰されて惨めに泣いてたおっさんがどんだけ強くなったんだよ」

「……嫌なことを、思い出させる」

 

 そこから現れたのは、少し前にジャックハートと相対し、つい先ほどまでシーザーとともにいたヴェルゴ。

 自分たちの直属の上司であり、かつ信頼も厚い人物だと分かり"G-5"の面々にさらに活気が訪れるが、それとともに同じ海兵であるジャックハートに敵意を示していることに疑問を抱いた。

 

「あ、あれ? なあヴェルゴさん。なんでアンタ海兵と戦おうとしてるんだ?」

「アホで能天気なやつらに教えてやるよ。ヴェルゴ……こいつは15年前に入隊してくる前からずっとドンキホーテファミリーにいた男。つまりはスパイだ。海軍や一般人のためじゃなくドフラミンゴのため。今回の騒動も、シーザーを上手く使いたいドフラミンゴのために陰で働いてたってことだ」

「……う、嘘だ。嘘、だろ……? ヴェルゴさん」

「残念ながら嘘じゃねぇ。そんで、ヴェルゴ。お前にも残念なお知らせだ」

 

 持っていた"正義"の白いローブを隣に立つたしぎに渡すジャックハート。

 その姿を静かに見つめていたヴェルゴは、右手に持っていた竹竿に"武装色の覇気"を込めてくる。

 

「サカズキさんから伝言だ。お前はもう海軍には要らんから殺せ、だとよ」

「そうか」

「ってわけで、死ねやクソジジイ」

 

 強く地面を蹴り、一瞬にして距離を詰めたヴェルゴがジャックハートの顔を狙う。

 

「かぁあっ!」

 

 まさしく渾身の一撃。

 鍛え上げられたヴェルゴの"武装色"を纏った左の裏拳がジャックハートの左頬を捉える。

 

「……おいおい。せっかく教えてやったことを忘れてんじゃねぇよ」

「っ!? くそ……っ!」

 

 既に達人の領域に達していると言ってもいいヴェルゴの本気の攻撃。

 しかしそれすらも、ジャックハートを傷つけるには足りなかった。

 

「一つ、敵は本気で殺しにいけ。二つ、相手の隙を見逃すな。三つ、相手のペースに呑まれるな」

「チッ……ッ!」

「弱くなったなぁ、ヴェルゴ。せっかく俺が弱ぇお前のためを思って弱点むしり取ってやったのによ」

 

 バックステップで大きく距離を取る。

 自分でも改心の当たりだと確信していたヴェルゴは、今の一撃を受けてなお平然と立っているジャックハートを見て戦慄を覚えていた。

 

「なんだ、攻撃はもう終わりか?」

「化物め……」

「違ぇよ」

 

 冷や汗を流すヴェルゴ。

 彼の眼前から、一瞬にしてジャックハートの姿が消えた。

 

「てめぇが弱いだけだ」

「がぁッ!?」

 

 そしてほぼ同時に、自分の背中に突如として襲いかかる強烈な衝撃。

 言葉と気配から察することは容易であり、ジャックハートが背後に回り込んでいたのだ。

 ヴェルゴの背中にめり込んでいるのはジャックハートのただの突き。

 それだけでヴェルゴは前方に数メートル吹き飛ばされた。

 

「ケハハ、軽いな。何もかも軽い」

「クソ……ッ!」

「いいねいいねぇ、もっと来いよ」

 

 久方ぶりの強い"覇気"使いとの戦いにテンションが上がっているジャックハート。

 言葉も口数が増え、煽るような口調でヴェルゴを促す。

 負けじとヴェルゴも立ち上がり、反撃しようとするものの。

 

「グッ、ガ……ァ……!」

「弱ぇっての」

 

 止められる。

 竹竿での攻撃も、自慢の体術を使った蹴りや突きも、何もかも通じない。

 まるで見えない壁に阻まれ、ジャックハートが謎の技術を使っているかのように攻撃は重くのしかかる。

 

「ケハハハハハッ! 頼むぜヴェルゴ。……楽しませてくれよ」

 

 欠けたサングラスから覗く彼の左目。

 その目から見える20歳の青年の姿は、とんでもなく大きく、強く見えた。

 

「たしぎ、リリー。そいつら連れて先に行け」

「はっ! ジャックハートさんは、何を?」

「こいつの始末だ。んで、もう少ししたらまた外壁破壊してあのガスぶち込むつもりだろうしな。今のうちにお前達は逃げとけ」

「分かりました!」

 

 部下達に指示を出し、直ちにこの場から離れさせる。

 ヴェルゴ直属の部下である"G-5"の海兵達には嫌がる素振りを見せるものもいたが、たしぎやリリー、ジャックハートといった面々の真剣な雰囲気を流石に察したのか、静かに離れていった。

 

「……さて、観客もいなくなったことだ。さっさと終わらせようや」

「ここで、終わるのか……」

「あぁ、残念ながらな。どうせあんたも聞いてんだろ? ドフラミンゴさん」

『……気づいていたか』

「当然っすよ。お察しの通り、ヴェルゴはここで死ぬ。いくら王下七武海とは言え"新世界"に兵器やら人造悪魔の実やらを流してたんだ。あんたにも、それ相応の処罰はあるかもっすよ」

『フッフッフッ……! やってくれたな、ジャックハート……ッ!』

 

 ジャックハートとヴェルゴ。

 二人だけしかいない空間に突如として入ってきた一人の男の声。

 ドンキホーテ・ドフラミンゴ。彼と通信が繋げられた電伝虫がヴェルゴのコートのポケットに入っていたのだ。

 

「トラファルガーがあんたに対して何かしら企んでるのは明らかだ。結果どうなるかは分からねぇが、あんたこのままだと落ちるぞ」

『……ジャックハート、取引だ』

「あ?」

『モネ、ヴァイオレット、ベビー5をファミリーから追放し、お前に渡そう。子ども達もだ。その代わり、ローと麦わらを止めろ』

「……話が分からねぇ人だな。そんなもん、何の交換条件にもなってねぇっすよ」

 

 相手は王下七武海きっての策士。

 闇の部分に最も近い存在であると分かっていながら、ジャックハートの態度は依然として大きいままだった。

 

「俺がトラファルガーと麦わらを相手すんのは当然のことだ。同盟組んだんならトラファルガーは七武海剥奪。普通の海賊として俺が相手することになるだろ」

『……』

「んで、俺の目下最大の敵はシーザーっす。あんなもん作られてたら落ち着かねぇ。あんたがどうとか関係なく、あいつは捕まえる。それだけだ」

 

 王下七武海と海軍本部大将。

 世界政府に認められた海賊である王下七武海である彼に、対等ではなく上に立っている。

 

「とにかく今は何もしないほうがいい。下手に動いたら、犬に噛み付かれるぜ」

『……フッフッフッ。なあジャックハート。お前も、ここに来るのか?』

「えぇ。誘ったのはあんたでしょう。"メラメラの実"を景品に出す大会を開くって。安心してくださいよ。俺からあんたに直接何かをするってことはない。ヴェルゴだけだ。こいつは、海軍に関わったからな」

 

 その関係にしているのはいたって単純。ジャックハートとドフラミンゴの力の差にある。

 ドフラミンゴ本人もそれをよく理解してしまっているからこそ、ジャックハートに強く出られないのだ。

 

『……相棒。お前とは一番長い付き合いだった。……今まで、ご苦労だった』

「ケハハハ。まるでここで死ぬみてぇな言い方っすね。大丈夫っすよ。ちゃんとあんたのとこにも送りつけるんで」

 

 今回のヴェルゴの一件で、非があるのは完全にドフラミンゴである。

 ジャックハートに何を要求されるか分からない現状で、今は一番の相棒と言ってもいいヴェルゴの命を諦めるしかなかった。

 最後の一言を伝え終え、ドフラミンゴは通信を終えた。

 

「……言いたいことは何かあるか?」

「いや、何もない。ただ、それなりの抵抗はさせてもらうぞ」

「ケハハ。好きにしろ。どうせ結果は変わらねぇ」

 

 自身の得物である竹竿に"武装色の覇気"を纏い、ヴェルゴはジャックハートに向かって駆けていく。

 

 

 ◇

 

 

 ドォォォォン……ッ!

 シノクニから逃れるように走るたしぎ達の背後で、遠くから地鳴りのような音が響いた。

 

「な、なんだぁ? まさか、また外壁に穴開けやがったのか!?」

「オイオイ、大丈夫かよ大将さん!」

「大丈夫です。ジャックハート様なら、必ず生きてここに戻ります」

 

 走り続ける彼女たち。

 そんな彼女たちに先ほど、研究所内での放送が入った。

 

「さ、さっきのローがどうこうとか言うの、放っといていいのか!?」

「だいじょーぶ。そんなことよりみんなは自分が生き残ることに集中して! ママの能力も、何回も使えないんだから」

「ありがとう、リリー。でももう大丈夫よ」

 

 放送の中身は、トラファルガー・ローがシーザーを裏切り何かを企んでいるというもの。

 恐らくドフラミンゴ側とロー側での対立があっただろう。しかしそれは、今現在の海軍側には関係のないことだった。

 

「そうだ、リリー。ママはもう大丈夫だ」

「あっ、パパっ!」

「えぇっ! もうここにっ!?」

「お前ら走るの遅すぎんだろ。もうちょい急げ。俺が向こう離れる時にまたガスが侵入してきやがったからな」

「ヒィィィィイイイッ!! ま、マジかよぉ!」

「あれ、ねぇパパ。その袋は?」

「汚ねぇ大人へのお土産さ」

 

 一心不乱に走る彼女たちの元に、大きな白い袋を提げたジャックハートが合流した。

 彼も放送や今までの会話は聞いていたようで、同じくR棟66番ゲートを目指して走っていた。

 

「リリー、たしぎ。また少し任せるぞ。少し先に用事がある」

「うんッ!」

「了解です!」

 

 そう言い残し、今度はジャックハートがたしぎたちから離れた。

 鍛え上げられた肉体による超速歩法の"剃"は、普通のそれよりも遥かに速い移動を可能にしていた。

 

「よっと」

 

 宙を駆けること数秒。

 ジャックハートがこの島に入った時からずっと感じていた懐かしい気配にようやく再開することができた。

 

「ケハハハハハハハッ! ガキと鬼ごっことは、随分と楽しそうじゃねぇか。なぁ、海賊ども」

「ッ! なんだ、こいつッ! いつの間に……!」

「海兵ッ!? おいお前、今は争ってる場合じゃねぇだろ!?」

「テメェらの尺度で俺を図るんじゃねぇよ。ガスもシーザーの野郎も俺にとっちゃ雑魚でしかねぇ」

 

 巨大化した子どもたちから逃げるように移動を続ける海賊たち。

 手配書で見たことのある顔と名前を一致させていく。

 男どもや彼らの船医であるトナカイを一目見てから、最後に共にいた女性二人を見やる。

 

「おーおー、随分といい女がいるじゃねぇか。おまけに腕の中には俺に似て可愛らしい子どもと来たもんだ」

「おいテメェッ! ナミさんとロビンちゃんに近づくんじゃねぇ!」

「あ? んだよ、お前の女だってのか?」

「ナミもロビンも、そういうんじゃねぇよ! 二人ともおれたちの仲間だ!」

「へぇ。こんないい女に手ぇ出さねぇなんて、お前ら枯れてんな。そんなんじゃ大事な時に気持ちよくさせてやれねぇぞ?」

「……なんだコイツ」

 

 ジャックハートの視線の先にいるのはもちろん、過去彼が肉体関係を持ち、その結果として子どもを産むこととなった女性たち。

 ベルメールを抱えるナミと、オルビアを抱えるロビン。

 巨大化した子どもたちや他の男どものことはどうでも良かったが、二人に会うついでに軽くからかいに来たのだ。

 

「あぁ、自己紹介がまだだったな。海軍本部大将のジョー・ジャックハートだ。以後よろしく」

「大将……ッ!」

「しかも、ジャックハートって……」

「おそらくこの二人から忠告されてんじゃねぇか? 最悪の女の敵だってな。全く失礼な報道の仕方だぜ。向こうから愛してくれって言われてそれに答えてやってるだけなのによ」

 

 片目に縦の刀傷を負った剣士、ロロノア・ゾロの問いに丁寧に答える。

 その返事として帰ってくるのは今まで出会った大半の海賊たちと同じような、驚きと嫌悪を示すものだった。

 

「ケハハ、見れば見るほどいい女だ。デートのお誘いでもすれば、頷いてくれるか? 熱い夜を約束しよう」

「テメェ……これ以上ナミさんとロビンちゃんにふざけた口聞くんじゃねぇ!」

「おーおー、怖いねぇ。……ま、おちょくるのはこれぐらいにしておくか。本題に入るぞ」

「本題?」

 

 やってきて早々の挑発するような態度から一転。ジャックハートの纏う雰囲気が真面目なものへと変わった。

 それを悟ったのか、この場での実力者でもあるサンジとゾロも真剣な表情になった。

 

「そ、本題。軽く状況を教えてやる。今ここでテメェら全員ぶっ殺してもいいわけだが、見ての通り手荷物抱えちまってるんだ。ヤニカスのアホが迷惑かけた分として、命だけは見逃してやるよ」

「ほう……!」

「挑発に乗らないで、ゾロっ! ……それで、状況って?」

「……。ここの主、シーザーは今現在"麦わらのルフィ"とトラファルガー・ロー、スモーカーと戦闘中。後者が勝つだろう。そして、俺が来た方向からガスが迫ってる。これも時間に余裕があるが、そのガキども相手にしながら逃げるのはきついぞ」

「どうやってそんな情報……。っ、覇気か」

「ご明察、剣士くん。この島で何が起きてるかは、今なら大体分かる」

 

 ジャックハートの口から語られたのは、今パンクハザードのこの研究所の中において、どこで何が起きているのかということ。

 シーザー捕獲に向けて同盟を組み、ルフィとローは勝利目前。ガスの進行にも余裕があるとのこと。

 

「信用できねぇな。そもそもなんで、大将がおれたち海賊にそんな情報をくれるんだ」

「信用したい、が本音だろうが。さっきも言っただろ? ここでは命だけは助けてやるって。俺には求めてるもんがあるんだ。それを叶えてくれるかもしれねぇのがお前たちってわけだ」

「求めてるもの……?」

 

 軽く走りながら再びナミとロビンの方を見るジャックハート。

 その口が、大きく弧を描く。

 

「あぁ。俺を満足させてくれるもの(・・・・・・・・・・・・)だ。期待してるんだぜ、頂上戦争を掻き回した"最悪の世代"の黄金ルーキー」

「ね、狙いはルフィか!?」

「お前たちっつったろアホ。……今は、思いっきり戦える状況じゃねぇ。時が来れば、本気で戦ってみてぇってことだ」

 

 ジャックハートのその言葉に、海賊たちが息を飲む。

 彼の言葉をそのままの意味で受け取り、闘志を燃やすもの。噂で聞いた彼の強さに少しだけ腰が引けるもの。そして、彼がここに来た意味と今の言葉の本当の意味を察したもの。

 

「また会おうや海賊ども。最近、俺は常に飢えてるからな。満足させてくれることを期待してるぜ」

 

 その言葉だけ残し、再びジャックハートは"剃"で移動を始めた。

 

「……3億か」

 

 一瞬にして辿り着いたのは、シーザーの部下と思われる大勢の兵士たちがいる部屋。

 その中心で戦っている人物たちを見て、ジャックハートはまた笑った。

 

「ケハハハハッ! 生きのいいのが揃ってるじゃねぇか、なぁ! トラファルガー、麦わら!」

「っ、誰だ……!」

「お前……!」

「……来たか。いよいよ終わりだな、シーザー」

「はぁ、はぁ……。この忙しい時に、誰だ……!」

 

 ガスガスの実の能力者、シーザー・クラウン。

 ゴムゴムの実の能力者、モンキー・D・ルフィ。

 オペオペの実の能力者、トラファルガー・ロー。

 王下七武海であるローの懸賞金を除いたとしてもその総額は7億にまで及ぶ。

 

「ローとシーザーはともかく、お前は名前覚えとけよ。一回殺されかけてんだから。俺はジョー・ジャックハート。海軍大将だ」

「白龍屋か……」

「……ッ! そうだ、ジャックハートッ! ハンコックをどうしたんだ!」

「あぁ? 俺の女がどうした。ハンコックなら今、毎日すっげぇ楽しそうに生きてるぜ」

「おい麦わら。今はそんなことで争ってる場合じゃないだろ。今は、こいつが先だ」

「しゅ、シュロロロ……。よりにもよって、ジャックハートか……」

 

 シーザー、スモーカー、ロー、ルフィ、そしてジャックハート。

 実質的にシーザーから見て1対4の形が完成した。

 

「おいお前ら、俺を捕まえたらどうなるか分かってやってんのか!?」

「当たり前だ。……麦わら屋だけでは心配だったから来てよかった。元から、お前を誘拐することが目的だったんだからな」

「……なるほどな。性格腐ってんじゃねぇか? トラファルガー」

「この場でお前にだけは言われたくないな、白龍屋」

 

 シーザーとローのやりとりから海賊側の狙いを理解する。

 ドフラミンゴの裏の顔、ジョーカーとしての一番のビジネスパートナーは四皇のカイドウ。

 彼が一番欲しているものが、人造悪魔の実である"SMILE"だ。

 そして、その元である"SAD"を作れるのがシーザーなのだ。

 

「ケハハハ。新世界がめちゃくちゃになるぜ、おい」

「元からそのつもりだ。……白龍屋。お前、ここに何しに来た」

「お前らとほぼ同じだ。俺も、そろそろボロが出そうなビジネスパートナーを切りてぇと思ってたとこだ」

 

 四皇の一角を落とし、そして過去の因縁の相手であるドフラミンゴも倒す。

 ローの頭の中にある最良のシナリオが完成すれば、新世界は一気に変わる。

 そして、ローの思惑とジャックハートの思惑が、一部分だけ一致していたのだ。

 

「捕まえるのは、もう少し先にしてやろう。俺もお前たちを相手にしなきゃならねぇほど暇じゃねぇし、次の予定が控えてる」

 

 王下七武海であるローはともかく、ルフィは普通の海賊。

 しかしジャックハートは、その両者ともを捕えないと言ったのだ。

 

「……何が目的だ?」

「さぁな。ただ一つ言えるのは、俺は退屈したくねぇってだけだ」

 

 ローとスモーカーが真剣な面持ちでジャックハートを見つめ、シーザーが新たな敵に震える中。

 

「ん? どういうことだ?」

 

 ルフィは一人、彼が何を言っているのかいまいち理解出来ていなかった。

 

 

 ◇ ◇

 

 

 時を同じくして。

 

『つ、強い、強いぃ〜ッ!! "幻の王女"、そして最強の一角と名高いジャックスに愛された美少女剣士、レベッカ〜!!』

 

 ドレスローザ、コリーダコロシアム。

 この国の前国王、リク王の孫である彼女は、このコロシアムでとある一言を発するまでは全方位からブーイングを常に浴びるほどに嫌われていた。

 それもそのはず。そのリク王は国中の恨みを買ってしまった人物であり、唯一その血縁関係者だと知られているのがレベッカただ一人しかいないのだから。

 

『この試合でも、数多くの選手達が彼女を倒そうとしていますっ! しかし、その攻撃すらも華麗に躱し、反撃する!』

「チクショウ……! あのジャックスと関係を持ってるなんて卑怯だろ……」

「どんな手を使ってるか分かんねぇが、何がどうなって全部避けてるんだ……」

 

 しかし、その状況をいとも簡単に打破してしまったのが、ジャックスという名前。

 

(彼の名前をコロシアムの中で出した途端、恐らく彼の部下の人だと思うけど、私に強くなる戦い方を教えてくれた……)

 

 向かってくる敵の攻撃を"見聞色の覇気"で動きを読み取りつつ、場外へと叩き出していく。

 ジャックスに愛されている。

 彼女がそうコロシアム内で漏らした瞬間から、レベッカ本人はジャックハートの部下と思っている人物が、コロシアムの中にも関わらず、懇切丁寧な戦闘指導を行ってくれたのだ。

 

(兵隊さんに教えて貰ったことと、彼と部下の人に教えて貰ったこと。これで十分、戦える……ッ!)

「はぁあっ!」

『レベッカ、また一人を場外へと叩き出したぁーッ!』

 

 以前から自分の身を自分で守れるように、とおもちゃの兵隊に戦い方を教えられていたレベッカ。

 そこに、悪を倒せる力を身につけさせたのが、ジャックハートだった。

 

「私は、負けない……! もうこれ以上、あいつの好きになんてさせないっ!」

 

 過去ドンキホーテ・ファミリーに逆らったとして、コロシアムの囚人剣闘士にされてしまった彼女。

 未来を変えるため、彼女は戦い続ける。

 

 そして、レベッカがコロシアムで健闘を見せている映像を眺める人物が、ドレスローザの王宮にいた。

 

「……」

「どうしたの、ドフィ(・・・)。顔が怖いわ」

「……フッフッフッ。お前だな、ヴァイオレット。ジャックハートにレベッカの存在を知らせたのは」

「何か問題でも? あの人好みの女の子だったから紹介しただけよ。レベッカも、戦いばかりの生活じゃなくて、ちょっとは楽しいことを知った方がいいと思ったの」

 

 ドレスローザの現国王、ドフラミンゴ。

 そしてドンキホーテ・ファミリーの幹部、ヴァイオレット。

 

「余計なことをしてくれたな……! あいつが俺と、どういう関係か知っているはずだ!」

「えぇ。よく知っているわ。だからこそ、よ」

「何?」

「女の私から見ても分かるぐらいにスタイルが良くて可愛いレベッカよ? もし、そんな子をあなたが攻撃していると彼が知ったら、どうなるかしら」

「……。なるほどな、そういうことか。女の勘といったところか?」

「そうね。モネもベビー5もレベッカは彼好みの女の子だって分かってたから」

 

 ドフラミンゴにとってレベッカは、言わば晒し者にできる絶好の弱者だった。

 しかし、そんな扱いをしていることがもしジャックハートにバレてしまえば、どうなってしまうか分からない。

 

「あなたも良く知っているでしょう? 彼が一人の女性相手にどれだけ本気を出すか」

「あぁ、良く知っている。そう考えれば、いい判断だ。ヴァイオレット」

「ありがとう」

 

 表向きの理由としては、ドフラミンゴをジャックハートから守る盾を増やすため。

 本当の理由としては、レベッカに迫るドンキホーテ・ファミリーの毒牙からジャックハートに守ってもらうため、ヴァイオレットはジャックハートにレベッカの存在を知らせたのだ。

 

「今は私とモネ、ベビー5で彼も満足している。でも、以前あなたが彼に提示してしまった条件で、どう思われているかは私にも分からないの」

「そこに新しい駒としてレベッカ、か。フッフッフッ……! 十分だろう。所詮はあいつも性欲に狂ったただのガキだ。新しい女で満足させれば、しばらくは飼っておける」

 

 ──馬鹿ね、ドフラミンゴ。彼がそう簡単に私たちを諦めるとも思えないし、何より立場ではあなたの方が下よ。

 

 海軍内部の情報を女を抱かせるだけで教えてくれる存在を抱えていると考えているドフラミンゴと、そんな彼をどのタイミングでどう潰すかを考えていたジャックハート。

 力関係などはすでに数年前から如実に現れ出しており、異常な強さを誇るジャックハートにドンキホーテ・ファミリーの誰も刃向かおうとは考えていなかった。

 

「……まあいい。あいつと麦わらを同時に処理できるエサもある。フッフッフッフッフッ、食いつけよ、小僧ども……」

「ドフィ。ルーナのお世話をしてくるわ」

「あぁ。王宮の外には出るなよ」

「えぇ」

 

 一人高笑いをするドフラミンゴを尻目に、ジャックハートとの子供である女の子を抱き上げ、部屋の外に出るヴァイオレット。

 とある一室。以前ジャックハートと熱い夜を過ごした部屋に入ると、そこには2人の女性がヴァイオレットと同じように赤子を抱えていた。

 

「あら、ヴァイオレット。ドフィとのお話は終わり?」

「えぇ。……進展は無いわ。荷物をまとめておきましょう」

「いよいよ、私が永遠にジャックハート様のお傍にいるように……」

 

 モネとベビー5。

 ヴァイオレットとモネが第一子を妊娠した時には既にベビー5は出産していたというタイミングの違いはあるが、3人とも考えは同じ。

 

「私はともかく、あなたたちは大丈夫なの?」

「もちろんよ。この子のことを考えても、安全なのはジャックハート様の側よ」

「私も、この子を含めて今一番私を必要としているって言われたもの」

「……そう」

 

 かなり長い期間付き従っていたモネとベビー5が裏切っていると知ったらドフラミンゴはどんなキレ方をするのか。

 まあ旦那がいるから大丈夫だろう、と軽く結論を出したヴァイオレット……もといヴィオラは、娘であるルーナを抱きながら椅子に腰掛けた。

 

「いい? 二人とも。前にジャックハートさんが言っていた通りよ。彼が私たちのことをドンキホーテ・ファミリーの犯罪者として捕まえに来る時に、偶然引っ越しの準備が終わるようにするの」

「レベッカはどうするの?」

「一般市民をただ口説いたって扱いにするみたいよ」

「ジャックハート様はいつドレスローザに?」

「えーっと。そうね、見てみるわ」

 

 そう言って、"ギロギロの実"の能力を発動するヴィオラ。

 覚醒したその能力のおかげで以前のようなポーズを取ることなく遠い場所まで視えるのだから非常に使い勝手がいい。

 

「……今、パンクハザードにいるみたい。二人の女性と話しているわ。これは……海賊ね」

「この前言っていた麦わらの所の?」

「恐らく。……もうっ、羨ましいわね。あんなにジャックハート様とイチャイチャできるなんて……」

「ふふっ、どうかしら。みんながみんな、最初から素直というわけではないわよ?」

 

 赤ん坊を抱きかかえて授乳しながらも意味深な言葉を零すモネ。

 その言葉の意味を何となく把握しながら、ヴィオラは能力による視界の映像を切った。




裏で何が起きている、とかの補足説明は次話で書かせていただきます。

はぁ〜、これから自分でも書くのが楽しみです。
でもそろそろISとかオリジナルの方も進めよっかなって思い始めてます。ジレンマ。1日50時間ぐらい欲しい。

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妥協点

就活が無事に終了! ……したのですが、想像以上にそこからすることが増えてしまい、投稿が遅れました。申し訳ないです。

スタンピード公開されましたが、作者はまだ見に行けておりませぬ。またエロい人出てきましたか?(直球)

原作とかなり密にストーリーが関わっているなら絡ませるかも知れませんが、よほどでない限りは劇場版のストーリーを絡ませるということはしないと思います。


 

 

 

「……まあ、あれだ。いろいろと迷惑かけたな」

「気にすんなってケムりん。次やる時は、敵だからな!」

「よ、ヨホホホホホ……。いやぁ、それにしても本当にお綺麗な方がたくさん……」

「一応念のために伝えておくが、あいつのお気に入りには関わらねぇ方がいい。死ぬぞ」

「し、死ぬぅ!?」

「あぁ」

 

 パンクハザードにて無事シーザーを捕まえ、ひとまず一件落着という形で今回の事件は幕を閉じた。

 それにより海賊と海軍という奇妙な協力関係は終わりを告げつつあり、その境界線が引かれることとなった。

 その境界線にて、麦わらの一味の男衆とローが、スモーカーと雑談を広げていた。

 

「文字通り、現海軍で最強の男だ。勝てやしねぇよ、お前らじゃ」

「なんだとッ!?」

「お、おーいルフィー? 海軍大将とまともに戦わなくてもいいんだぞー?」

「……今回ばかりは、鼻屋に賛成だ。あいつとやり合うのは避けたほうがいい」

「お前が言うほどなのか」

 

 "麦わらの一味"は、実力はあってもこれが初めての新世界。

 すでに新世界の海をある程度知り、王下七武海にまで上り詰めたローが、ジャックハートとの正面対決を勧めなかった。

 

「あぁ。というか、俺も学んだ側だ。他の王下七武海や四皇は、あいつに一見対等に見える取引を持ちかけることでさらなる安全を確保しているらしい」

「取引?」

「……ま、金と女だろうな」

「それと情報じゃ、タバコの。全く、誰もジャックハート様の強さを正しく理解できておらんとは、つくづくお前たちはジャックハート様と同じ性別なのか疑いたくなる」

「っ、ハンコック!」

 

 金、女、情報。

 それらをうまく使い、新世界の重鎮たちは自らの安全を確保しているという情報を麦わらの一味が手に入れたタイミングで、その男だらけの輪に凄まじい美貌を誇る女性が現れた。

 

「さっきからなんじゃ。くどい男は嫌われる。そんなことも知らんとは……本物のサルか?」

「ハンコック! お前、その……」

「はぁ、今度は女々しいと来たか。この際はっきりと告げておく。わらわは好きでジャックハート様の元にいる。他のものもそうじゃ。もう九蛇に未練などない。これ以上執拗に話しかけられてもこの気持ちは変わらん」

「……そっか。お前が今楽しいんなら、それでいい」

「何様じゃお主。わらわのことはわらわが決める。それだけじゃ」

 

 頂上戦争の一件を終えてルフィを助けてくれたハンコックはそこにはおらず、以前との違いにただただ驚くルフィ。

 彼の仲間であるサンジたちも、ルフィから聞いていた人物像とはかけ離れていることに動揺を隠せなかった。

 

「とはいえ、わらわをジャックハート様と引き合わせてくれたのはお主じゃ。他の男どもはともかく、お主の言い分は聞き入れてやろう」

「……ならハンコック。ナミとロビンはどこ行ったんだ?」

「たしぎと共に保護した子どもたちの今後の予定の確認や、元いた島への連絡を行っているかを見ておる。安心するがよい。このシーザーとヴェルゴの件でお主たちに助けられたことは事実。ここで捕まえはせん」

「その点に関しては任せてくれ、としか言えんな」

 

 ハンコックと"麦わらの一味"の話にスモーカーが入る。

 シーザーの研究所に誘拐され研究の対象にされていた子どもたちを常に心配していたナミとロビンが海軍とはいえ簡単には引き渡せないということで、海軍の軍艦の中にある一室に、たしぎとナミとロビンだけが入り、話し合いをしているのだ。

 

「ふんっ。……全く、羨ましい」

「ん? どういうことだ?」

「なんでもない。……おぉ、そうじゃ。ジャックハート様とたしぎから伝えておいてほしいと言われていたことをすっかり忘れていた」

「大将がおれたちに伝えたいこと?」

「あぁ。といっても、そこのスモーカーとほぼ同じになるが……」

 

 こほん、と小さく咳払いをしたハンコック。

 麦わらの一味の男たちに向けられた言葉は、予想通りのものだった。

 

「次に会う時は、貸借りも何もないただの海賊と海軍。子どもたちの話し合いが終わればわらわたちはすぐに出航する。それ以降は、言わんでも分かるだろう」

「敵対関係になるってことか。まあ、当然といえば当然だな」

 

 この島の一件が終われば、海軍と海賊の普通の関係性に戻るということ。

 一時的に協力関係にあったが、それが終わる。その合図が、ジャックハートを乗せた軍艦が出航するタイミングだ。

 

「あれ、ハンコックも海軍なのか?」

「わらわはジャックハート様の妻じゃ。どちら、と言われれば海軍じゃ」

「ゲッ……。どんだけ戦力強化してんだよ海軍……」

「お主達……。まさか知らんことは無いとは思うが、海軍が世界徴兵を行ったことは……」

「知ってるさ。5大将だったか? そのうちの一人が、ジャックハートなんだろ?」

「そうじゃ。……ふむ、一つここで、助言をしてやろう」

「……どういうことだ? 今、お前は海軍側だって言わなかったか?」

「オイくそマリモ! てめぇハンコックちゃんに向かってなんて口の聞き方してんだ!」

 

 まあよい、とハンコックは静止する言葉を挟み、自分の言葉を紡いだ。

 

「ジャックハート様は自分を熱くさせる相手を所望しておられる。どのような戦闘スタイルか知らんお主達に、ジャックハート様の戦い方や強さを教えてやろう」

「い、いいのか? そんなこと言って」

「構わん。それに、何かあればお仕置きを受けるのはわらわじゃ」

 

 どこか艶めかしい声を上げて、ハンコックは続けた。

 

「んん。まず初めにじゃが、ジャックハート様は三種の覇気、六式、魚人空手やオリジナルの武術、技を用いた近接戦闘が得意じゃ」

「三種ってことは……は、"覇王色"も使えるのか!?」

「当然。そして、悪魔の実を食べずに高速戦闘で相手を倒していく、というのが基本的なスタイルとなっておる」

「ヨホホホ。意外と戦い方は普通なんですね」

「……ただ近接戦闘が得意なだけで、海軍本部大将にまで上り詰めることができると思うか?」

 

 ハンコックを包む雰囲気が、より一層冷たいものへと変わる。

 先ほど彼女がルフィに告げた言葉には、何の偽りもない。彼と共にいることに幸せを感じていることも確かだが、過去海賊であったハンコックには、この短い時間では拭いきれないトラウマがあった。

 

「戦い方は普通じゃ。……しかし、その質や次元が違いすぎる。"覇王色"の素質があるから、修羅場をくぐってきたから、頼りになる仲間がいるから相手になると思っていたら大間違いじゃ。王にも格差というものがあるということを肝に銘じておくと良い」

「……そっか。分かった」

「では、伝えることは以上じゃ。見送りなども特に要らん。女二人を下ろし次第、わらわ達は出航する」

「ん? ケムリン達と一緒じゃねぇのか?」

 

 伝えるべきことを伝え、そそくさとジャックハートが待つ軍艦に戻ろうとしたハンコック。

 しかし、その彼女に声をかけたのは、またもルフィだった。

 

「……そ奴は"G-5"所属。ジャックハート様は本部所属。わらわが乗ってきた船も、ジャックハート様の船じゃ」

「ってことは、ナミとロビンはどっちにいるんだ?」

「ジャックハート様の軍艦じゃ。出産経験のある女性や医師、医療設備も整っておるからの。子育てに関することも伝えておるじゃろう」

「なら安心だ! 制限時間いっぱいまでちゃんと見てくれよな!」

 

 お腹が膨らんでいる様子がハッキリと分かるナミと、最近つわりが始まったロビン。

 二人とも一児を出産したタイミングはほぼ同じなのだろうが、二児の妊娠のズレにより、胎児の成長速度に違いが生じていたのだ。

 慣れない問診や看病をしなければならないチョッパーはずっと二人のことが気が気でなく、このタイミングでハンコックに聞いた。

 

「もう良いか? わらわも暇ではない」

「おう! 色々教えてくれてありがとな、ハンコック!」

 

 スモーカーやルフィたちに別れを告げ、ジャックハートが乗っている軍艦へと戻るハンコック。

 

「……全く、のんきなやつらじゃ」

 

 去り際に海賊側の陣営をちらりと横目に見る。

 ナミとロビンを海軍の軍艦内に入れる代わりに、ジャックハートはルフィたちの元に拘束した自分たちの部下を置いた。

 新世界に入る前に作っておいたそれぞれのビブルカードで安否を確認し、二人の命の危機を感じたのなら部下を好きにしろというジャックハートの言葉を聞き入れ、ルフィたちは小さく動く紙をじっと見つめていた。

 

「ビブルカードに反応などあるはずがない。まあある意味、殺されるよりも過酷なことをされておる頃じゃろう」

 

 自分の左手の薬指に光る指輪を愛おしそうに撫でた後、数ヶ月前にシャボンディ諸島でニコ・ロビンと同じタイミングで彼に精液を注がれた下腹部に手をやる。

 新たに命の種を注がれ、そして二人目となる子を授かったそこを優しく撫でながら、ハンコックは軍艦へと歩いて行った。

 

 

 ◇

 

 

「……はい、お疲れ様でした。これであなたたちが我々に求めることと、海軍ができることの照らし合わせと、あなたたちのメディカルチェックは完了しました」

「え、えぇ。ありがとう」

「……その、これから私たちがしなきゃいけないことって……」

「ありませんが。というよりあなたたちは海賊でしょう。さっさと軍艦から出て行ったらどうですか? いつまで軍艦の、それもジャックハート様のお部屋にいるつもりですか。セクハラです」

 

 海軍の軍艦の一室。

 極寒の地を走ったり戦ったりとでお腹の子どもに影響はないかをしっかりとした設備で確認し、シーザーに誘拐されていた子どもたちの今後の大まかな処置を聞いたロビンとナミの二人。

 話の相手であったカリファから退室を求められるものの、二人の視線はとある一点に釘付けになっており、そのまま動けずにいた。

 

「ケハハハハハッ! 好きにさせてやれよカリファちゃん。海賊が軍艦の中に招き入れられることなんてそうそうねぇんだ。時間いっぱいまで堪能させてやれよ」

「……了解しました。では、ジャックハート様。私は」

「あぁ、こっちに来い」

 

 女海賊二人が招き入れられたのは、彼女たちと同性の人間が多数いる中、一人だけ異性がいる部屋。

 女子専用部屋だと言われて入った部屋にいるその男こそ、この船の主人だ。

 

「ケハハハハ、どうしたよ二人とも。……あぁ、言い忘れてたな。この船に女海兵はアインちゃんとたしぎの二人だけだ。それ以外も俺の女だけ。つまりこの船での女子専用部屋ってのは俺の自室ってことだ」

「……そんなの」

「普段はこんな呼び方してねぇんだがな。こうでも言っとかねぇとお前ら入らねぇだろ」

 

 ジャックハートがこの部屋にいる時の8割は裸であり、客を招き入れている今も何の衣服も着ていない。

 無論それは彼だけではなく、この部屋にいるナミとロビン以外の女性全員もそうだった。

 

「てな訳で、俺からの触診も終わったんだ。ここからは、個人的なお話といこうか」

 

 両手どころか体に纏わりつくほどに女性を侍らせ、部屋の至る所にも待機させている彼が、背もたれもない椅子に腰掛けながら話を始める。

 先ほどまでナミとロビンの話し相手になっていたカリファもジャックハートに呼ばれるや否やすぐに来ていた服をその場で脱ぎ、恥ずかしげもなく全裸になっていた。

 

「ケハハハ。これが、近い将来の君らの姿さ」

「……ッ! 私、たちは……!」

「あぁ? なんだってんだよ。なんなら今からバラしに行ってもいいんだぜ? その子たちは因縁の相手でもある海軍大将とセックスしてイキまくった結果できた子どもだって」

「やめ、て……」

「なら諦めて受け入れることだ。あいにく、君らの仲間から指定された時間制限のせいで何もできねぇけどな」

 

 ナミとロビンが自分の子どもたちを連れて軍艦に乗り込む際に、彼女たちの船医であるチョッパーから出された制限時間は15分。

 それだけあれば、最先端の技術が詰まっている軍艦ならば最低限調べることができると踏んでのことだった。

 

「肝心のお話だ。まず、二人とも久しぶりだな。会えて嬉しいぜ」

「えぇ、私もっ! お腹にこの子を身籠ってなかったら、今すぐにでもあなたに愛してほしいぐらいに」

「私もよ、ジャックハート様。……シャボンディ諸島であなたと愛し合ってから、寂しくて仕方なかったわ」

「ケハハハハ。そうかそうか。俺好みの賢い女のままで嬉しいよ」

 

 しかし、今回もまた相手が悪すぎた。

 誘拐されていた子どもたちの件は、無事に送り届けること。ナミたちの子どもに関しては、俺の子どもを舐めるなという彼の一言により終わってしまったのだ。

 つまり、15分の診察時間の大半が、ジャックハートに自由にされる時間となってしまっている。

 

「じゃあ次は、三人での話し合いだ。二人と一対一で話したことはあっても、三人同時にはなかっただろ?」

 

 そう言って、余裕の表情で語りかけるジャックハート。

 一度抱かれ、子を孕み、産み。そこまで彼を受け入れてしまった時点で、もう彼女たちに逃げ場はなかった。

 カリファやたしぎといった面々がジャックハートに奉仕をし続ける音と光景を受け止めながら、彼女たちはジャックハートに相対する。

 

「まず船でのことだ。あのアホどもはどんな決断をしたんだ?」

「私たちの子どもってことなら、家族……仲間と同じだって言ってくれたわ」

「ケハハ、なるほどな。じゃあ次。二人ともお腹の子はどうだ?」

「私の子は、元気にしてるわ。もう少しで臨月になるわ」

「私も、つわりが始まってきたわ」

「ケハハハハ。ロビンちゃんも無事二人目妊娠ってことか。知ってるか、ナミちゃん。ロビンちゃんだが、シャボンディ諸島で一味が合流する日に我慢できなくて俺に犯されるのを受け入れたんだぜ?」

 

 お互い一味の男衆たちに隠す秘密を共有していた仲だ。

 しかし、そんな二人でもお互いに探りを入れられたくなかった部分もある。

 ロビンの場合はまさしくシャボンディ諸島での一件。出産したのはオルビアのみであり、現在妊娠していることはナミにすら言っていなかった。

 

「じゃあ、次で最後。お互いが俺と交わした約束事についてだ」

 

 その言葉にナミとロビンの表情が強張る。

 直接的に彼女たち、そして麦わらの一味にも関わってくること。

 この話題でナミやロビンが現状ジャックハートとどう関わっているのかを深掘りされていく。

 

「ナミちゃんは、もう俺から特にどうこう言う必要はねぇだろ。俺の個人資産を手渡す代わりに養育権の確保。んで、これは二人ともに共通してることだが一味を見逃して欲しけりゃ抱かせろってぐらいだ」

「ナミ、あなた……」

「許してやれよロビンちゃん。ナミちゃんだって、当時空島に一人の状態で俺から逃げるにはそれを受け入れるしかなかったってだけだ」

 

 ジャックハートから当時ナミに出された提案である、10億ベリーを受け取って赤子を育てるというもの。

 ただの口約束を守った程度のものと考えていたが、後々周りから見れば、子どもができたためその養育費やら何やらをもらったようなものだった。

 

「だが、ロビンちゃんも他人事じゃねぇ。まだロビンちゃんの口からは聞けてねぇんだ、オルビアをどうするかってのは」

「……ッ!」

 

 しかしロビンも、ジャックハートから様々なものを与えてもらっているナミに冷たい目を向けている場合ではない。

 

「ケハハハハ! なんだ、自分はナミちゃんと違って何の要求もされないと思ってたか? 残念だったな。俺が形上対等に扱うのは、海賊以外の女だ。二人が海賊である限り首輪はしっかりとつけておかねぇとな」

「……何が、望みなの」

「なぁに、簡単さ。ナミちゃんみたいにしっかりと育ててくれりゃあいい。必要なら同じように金もやろう」

 

 彼から出される提案は、至極簡単なもの。

 ナミとロビンの二人の間で秘密を共有すれば、一味の他のメンバーに何か直接的に迷惑をかける心配はない。

 

「……あー、だがそれじゃあちと足りねぇな。もしものことだが、二人があいつらを裏切ってどっかの島に隠れるかもしれねぇ」

「え?」

「てことで、ビブルカード出せ。仲間を取っ捕まえるためには使わねぇよ。君らみたいなお気に入りの女がいるのに、何で俺がわざわざ汗くせぇ雑魚を相手にしなきゃいけねぇんだ。安心しな、あいつらから俺らに危害を加えてこねぇ限り、仲間は捕まえねぇし、殺さねぇよ」

 

 そこから出た彼の要求は、ビブルカードを差し出せというもの。

 ナミもロビンも、というより麦わらの一味全員が新世界に入る時にはすでに自分のビブルカードを作っていた。

 その大半の理由として挙げられるのが、シャボンディ諸島での一味解散。これから別行動をする機会が増えるかもしれないということで、全員作っておいたのだ。

 

「拒否するってんなら話は別だ。今すぐあいつらんとこ行って全員──」

「待ってッ! ……いいわ。この子のお父さんなんですもの。常に私たちの居場所は知っておいてもらわなきゃ」

「賢いじゃねぇか」

 

 ジャックハートの提案を彼女たちは飲み込むしかない。

 彼が言い切る前にナミが一歩足を踏み出し、ポケットに入っているビブルカードを千切って手渡した。

 それに続くように、ロビンも自らのビブルカードを彼に渡した。

 

「ケハハハ、これで取引は終わりだ。仲間殺されたくなかったら、分かってるな?」

「えぇ。今みたいに時間が少ししかないのが残念だけど、街であなたと出会ったら是非とも愛し合いたいわ」

「私もです。今度はもっとゆっくりと時間が取れる状況で、是非」

「あぁ、俺も楽しみてぇよ」

 

 一旦話題がそこで途切れる。

 椅子に座るジャックハートの背中に自らの豊満な体を密着させながら泡を立てて動かし続けているカリファから、もうそろそろ制限時間だとジャックハートに知らせが入った。

 

「最後の最後になるが、二人とも本当に俺の元に来なくていいのか? 今来てくれるんなら、とびっきりの待遇で迎え入れてやるんだが」

「捕まえないのに勧誘って、ジャックハート様も変わった人ね。……前にも言った通り、今はしたいことが他にあるの」

「ナミと同じく、私もよ」

「……ケハハ、そうかい。そりゃ残念だ。君らが俺の元に来るのをずっと心待ちにしていた女もいるってのに。なぁ──」

 

 ジャックハートがその言葉とともに、部屋の奥の方にある扉へと呼びかける。

 誰かが事前に準備していたかのようにタイミングよく開かれたそこからは、一人の女性が出てきた。

 

「ノジコちゃん」

 

 女性の名は、ノジコ。

 姓はジャックハートと同じ。彼と再会するや否やすぐさま夫婦の間柄となり、秘書兼妻として日夜ジャックハートを支えるようになった女性だ。

 

「……え? ノジ、コ……?」

「あら? ナミじゃない。久しぶりね」

「え、えぇ……」

 

 ナミの義姉である彼女は、ナミにとって懐かしい顔で微笑み、ジャックハートの左腕に抱きつくように彼にもたれかかった。

 

「そのお腹、ジャックハート様の子どもを妊娠してるの?」

「あぁ。ちなみに、抱いてる赤ん坊もな。名前はベルメール。この名前つけた時、ナミちゃん泣いて喜んでくれたんだって」

「ち、ちが……!」

「へぇ〜、いいんじゃない? あ、ってことは次が男の子ならゲンってことで!」

 

 突如現れた、新世界では何がどうなっても会えないだろうと思っていた肉親の登場。

 それはナミの精神を揺らがせるには十分だった。

 

「別に本当に羨ましくはないの。だって、私もいずれはそうなる予定だもの」

「なん、で……」

「簡単よ。ジャックハート様が空島から降りてきたのが偶然ココヤシ村で、そこでナンパされたの」

 

 ノジコから伝えられた言葉もまた、ナミに衝撃を与えるには十分すぎた。

 自分が海賊となり、その途中で空島に飛ばされ、その結果としてノジコと竿姉妹になってしまったのだ。

 

「あぁ、安心して。ジャックハート様の秘書兼妻になれたことに、何の後悔もないから」

 

 屈託のない笑み。

 その後、自分たちを狂わせた男と口づけをするノジコの姿が、ナミの目に焼きついて離れなかった。

 

 

 ◇ ◇

 

 

 ナミとロビンの診察後、麦わらの一味もジャックハートの軍艦もパンクハザードを離れた。

 

「ケハハハハッ! なあイッショウさん、朗報だぜ。ちょうどアンタの部隊が今潜入してるドレスローザに、麦わらの一味が向かってる。きっちりやってくれよ、教育も兼ねてな」

『ご親切にどうも。教育ってぇと、息子さんのことで?』

「当たり前だろ。俺も任務でドレスローザに向かうが、直接手はださねぇよ。俺らの仕事は局面が動くまでは座ってることだ。あんまりチョロチョロしすぎると良くねぇからな」

『あっしとあんたじゃ、ともに考えている正義は違うが、未来のことを考えると若ぇ力が必要ってのは一緒だ』

「ケハハハ。世界徴兵があるまで海兵にならなかったあんたが正義を語るか。綺麗事もいいが海兵も仕事だ。残した成果が重要ってことも忘れんなよ」

 

 その軍艦の中の自室。彼が連絡を取っていたのは世界徴兵の後、自分の同僚となった海軍本部大将、"藤虎"ことイッショウだ。

 電話の最中のお楽しみはもちろん忘れることなく、今後の大まかな予定を彼と共有していた。

 

「まあ、さっきの報告にもあった通りだ。ローが企んでるのは恐らくドフラミンゴとカイドウを引き摺り下ろすこと。特攻じゃなく真っ先にSAD製造止めた辺り、どう転んでも痛手を負わせたかったんだろうな」

『となると、ローさんらが同盟を組んでいると……?』

「ほぼ、な。あぁ、ローはあいつを中心にあんたがやってくれ。妹が負けたって言えばよりやる気になるだろ」

『……なら、麦わらの方を?』

「あぁ、俺が受け持つ。ドレスローザにはちょいと私用もあるからな、ちょうど良い」

 

 私用、というのはもちろんヴィオラたちの一件。

 ローや麦わらたちとドフラミンゴの間に何かが起きるかも知れないが、それは事が起きてからでないと対処できない。

 

『よくそこまで調べなさった』

「ただ情報が漏れ混んでくるだけだ。やりようによっちゃ、この程度の情報はいくらでも入ってくる」

 

 彼らの行き先は半ば強引な取引により手に入れたナミとロビンのビブルカードから。

 同盟の疑いに関しては、その二人と交わした新たな契約から手に入れたものだった。

 

「人間、何かを守るには必死になるもんだ。その過程で捨てなきゃいけねぇもんが出ても、すっぱり捨てちまうぐらいにはな」

 

 彼女たちが情報を得る代わりに守ったもの。それは、自らの身体。

 海軍にとって何か有益だと判断できる情報を一つジャックハートに報告することにより、出産後でも性行為を一度見逃すというもの。

 もちろん、この男の前ではそんな契約は無に等しいのだが。

 

「そして、一度だけ願いを叶えてやるんだよ。無償でな。そうしたら向こうはその手段を取るしかなくなる。そしたら、甘いあんたでも流石に分かるだろ?」

『最後の最後にハシゴを外す、と』

「ケハハ、その通り」

 

 追いつめ、追いつめ、逃げ場を無くす。

 そうして相手が完全に負けを認める一歩手前まで来た時に、唯一の逃げ場を提示する。

 それを繰り返すことで自分が提示する条件に依存させ、最後にその梯子を外す。

 その結果、完璧に堕ちるのだ。

 

「ま、悪く思うなよ。俺が基本的に相手するのはゴミか女だ。殺すのは人間じゃねぇよ」

『……やはりどうも、気が合わねぇようだ』

「ケハハハハ。お互いにな」

 

 海賊相手にも筋を通し、仁義を重んじるイッショウと、無能な男海賊たちを総じてゴミと判断し、自分好みの女海賊のみを唯一まともに生かすジャックハート。

 サカズキやクザンのように、同僚ではあるもののその性格や考え方の違いゆえの衝突を、この組み合わせもよく起こしていた。

 

『では、基本的にドレスローザでの任務は息子さんに任せればよい、と?』

「だな。あんたは嫌がるかもしれねぇが、俺の子どもたちの成長は世界政府より上(・・・・・・・)からの依頼だ。断るってなりゃ、俺らも全力であんたを叩き潰さなきゃいけねぇ」

『いえ。あっしとしても、若ぇもんの活躍ってのも楽しみなもんで』

「そうかい。まあメイナードやバスティーユもいるからな、俺らが出るようなことには早々ならんだろ」

『早々ってぇと、なることもある……と?』

「あぁ。まあこれもあんたは嫌うだろうが、安心しろ」

 

 テーブルの上の動くビブルカード。

 そして、新たに一人増えた乗船員と、イッショウの船に乗る自分の息子。

 様々な要因を思い起こして自然と笑みが浮かぶが、一番は何と言ってもドレスローザ本島。

 

「あの島はある意味、俺の島だ。文字通りな」

 

 笑うジャックハート。

 電伝虫越しに彼の言葉を聞いたイッショウは、深いため息を吐いた。




いや、それはないやろ。と思う部分があると思います。
ナミとロビンがどう呼び出されて、何を話したのか。中身は今後、少しずつ明らかにします。


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邂逅

待たせたな(土下座)

研究が忙しすぎて時間が取れませんでした……しかもまた、本番は少なめという……。申し訳ない。


これからも忙しいとは思いますが、なんとか今年中に最低もう一話は投稿したいです。


 

 

「全く、お前たちの船長はどうなってやがる。この作戦のメインは麦わら屋たちだぞ……!」

「あいつらに大人しくしとけってのが無理難題よ。今いるこのメンツで考えましょ」

 

 パンクハザードを出港した麦わらの一味とトラファルガー・ロー。

 彼らの目的地であるドレスローザの港に着くや否や、ローが立てていた作戦のメインメンバーである、ルフィ、ゾロ、サンジ、フランキー、そしてパンクハザードで出会ったワノ国の侍、錦えもんがドレスローザの街に消えた。

 

「まさかとは思うがお前たち、いつもこんな行き当たりばったりな計画で動いているのか?」

「そうだぞ! ルフィがそういうの考えられると思うか?」

「……あぁ、いや、そうか……。すまん」

「謝らないでよ」

 

 結果、船に残ったのはローとナミ、ロビン、チョッパー、ブルック、ウソップ。そして、錦えもんと同じくパンクハザードで出会った子どものモモの助と、ドフラミンゴへの人質であるシーザー。

 ロー以外は敵対勢力への戦力として些か不安があるメンバーが残る形となった。

 

「……よし。予定通り作戦を実行する」

「おー、お前もルフィに慣れてきたな」

「……俺たちはこのままドレスローザを通り、橋を通ってグリーンビットに向かう。その間残るメンバーには、この船の護衛を任せたい」

「子守も、でしょ? 私もロビンも、この子達を置いてそんな危ないところに行けないわ」

 

 残ったメンバーの中で、ドフラミンゴとの取引によりシーザーの引き渡しに向かうのはロー、ブルック、ウソップの三人。

 他の面々は有事の時のために船を守る役目として、船に残ることとなった。

 

「私たちじゃ心配かしら?」

「俺だって同盟相手は選んでいる。お前たちの実力を見くびってはいない」

「信用してくれているみたいで嬉しいわ。ま、母は強しっていうでしょ? こっちは任せておいて」

 

 自分の子どもであるベルメールを抱くナミがきっぱりと言い切る。

 愛と情熱とオモチャの国、ドレスローザの喧騒は人気の少ない港にまで響き渡っていた。

 

「……それと、だ。各々一応耳に入れておいてほしい情報がある」

 

 そんな喧騒の中、ローがより一層真剣な表情をして最後の言葉を繋げた。

 

「情報?」

「あぁ。あくまでも憶測に過ぎないことだが、十分に考えられることだ」

 

 その言葉に疑問を抱いたのは、返事をしたチョッパーだけではない。

 今このタイミング、ここにいる者にのみなぜそれを伝えるのか。

 

「今朝の新聞で見た通り、ドフラミンゴは七武海を脱退し、ドレスローザの王位を放棄した。つまりは、ただの海賊に戻ったわけだ。シーザーの一件で白猟屋とあれだけ同じ時間を俺たちが過ごしていたことから考えて、この航路に海軍が探りを入れている可能性は高い」

「……ってことは、海軍に張り込まれてるかもってことか?」

「そうだ。……先に行った連中には言わないほうが大人しそうだったからな。ちょうど良かった」

 

 彼の口から飛び出たのは、簡単に言ってしまえば海兵に注意しろということ。

 と言っても彼らも海賊としてここまで来ているため、そういったことは当然のように分かっているのだが、今回は少し勝手が違った。

 

「大将クラスが来ていることも考えられるからな。下手に興奮されるよりかはやりやすい」

「……ん?」

「ん? どうした鼻屋」

「た、大将クラス……?」

「あぁ。ドフラミンゴの七武海脱退、王位放棄、俺と麦わら屋の同盟。こんなにも不安定な要素が一気に出てきてるんだ。おまけに、表立って知らされてはいないが、シーザーの一件もある。ここら一帯は間違いなく今一番海軍に目をつけられていると言ってもいいだろう」

「ヒィィイイッ!? ほ、本気で言ってんのか!?」

「あくまでも憶測だ、と最初に言っただろう。だが、大将ではないにしろ海軍が来ていることは確実だ。今更こんなことを言う意味はないが、注意しておけ」

 

 船に残るメンバーにそう言い残し、ローはシーザー引き渡し組を率いてグリーンビットへと向かった。

 

「ほ、ホントに大将が来てんのかな……」

「大丈夫よ、チョッパー。ドフラミンゴやローの方が忙しいなら、こっちには来ないはず」

「そ、そうだよな! ロビン!」

「えぇ」

 

 ナミやロビンと同じように船に残るチョッパーに言った理由の他に、ロビンとナミには海軍が麦わらの一味を狙っては来ないだろうという確証があった。

 その確証とは、言わずもがなジャックハートの存在である。

 彼に自分たちのビブルカードを渡したことはまだ誰にも言っておらず、それもまた二人だけの秘密となっていた。

 

「よしっ! それじゃあ二人とも検診と育児の続きだ! モモも、お兄ちゃんなら色々と手伝ってくれ!」

 

 船の護衛、とは言っても本格的に敵襲があるまでは大してすることがない。

 そうしてできて暇な時間を使い、ベルメールとオルビアの育児に専念しようというのが、チョッパーの考えだった。

 

「……チョッパー。ゴメンなさい、私から少し言わなきゃいけないことがあるの」

「……どうしたんだ? ロビン」

「ナミは少しずつ臨月に近づいているけど、私もつわりが始まったの。二人目よ」

 

 ロビンの口から明らかにされる、第二子の妊娠報告。

 まだ子どものモモの助と船医のチョッパー、そして同じ境遇になったナミだけになったこのタイミングで言ったということは、そういうことなのだろう。

 

「……そっか! またおめでただな、ロビンッ!」

「……えぇ。私も、嬉しいわ」

「よし! じゃあロビンの二人目の子どものことも含めて、また頑張っていこうな!」

 

 空元気とも取れるチョッパーの言葉。

 しかしそんな言葉でも、ナミとロビンの精神にゆとりをもたらすには十分だった。

 

 

 ◇

 

 

「んっ、あぁんっ! あぁう、んはぁんっ!」

「……こればっかりは、俺が軽率だったな。まさかこんな上物を知らずにいたとは……。不覚だ」

「あんっ、はっ、あぁあ! ひぃ、あ……あっ、んぅ……あぁあんっ!」

 

 同時刻、ドレスローザの海岸。

 麦わらの一味の船からは少し離れた位置に、ジャックハートを乗せた軍艦は泊まっていた。

 その中で行われているのは、例に漏れず性行為。数日前に本格的に始まったハニークイーンとの交わりの際に彼女の名器ぶりを知ったジャックハートは、彼女の全てを犯していた。

 

「ケハハッ! いいじゃねぇかハニークイーンちゃん、前言撤回だ。能力の覚醒の進捗がどうであれ俺の船に置いてやるよ。覚醒まではしてなくても、副作用なのかは知らねぇが膣内はトロットロに仕上がってるしな」

「くっ、んぅ……はぁんっ!」

「ちゃんと船にしがみついてるし、まあ人間やろうと思えば意外と何でもできるんだろうな。そら、三発目だ。受け取れっ!」

「あぁああっ! イクッ、くぅ……あっ、あぁああんっ!」

 

 ハニークイーンの蜜壺の奥深くまで突き入れられるジャックハートの肉棒。

 そこから放たれる白濁液が彼女の膣内を染め上げていく。

 

「ふー、ちょいと短期間に詰めすぎたか。さすがにキツいな」

「はっ、はっ……。ジャック、ハートさま……。ありがとう、ござ、います……!」

「別に無理してまで喋らんでも何にもしねぇよ。さて、任務前に存分にリフレッシュできたところで、行くとするか」

「ひぁっ!」

 

 白濁と透明が混合した液体が肉棒に絡みついたまま、一息にそれをハニークイーンの秘部から抜く。

 びくんと大きく彼女の身体がベッドの上で跳ね、息絶え絶えのまま彼女は眠りについた。

 

「ケハハハ。スタミナはいまいちだな。ま、それも込みでまだまだこれからってことか」

「あ、あの……あなた様?」

「ん? どうしたよハンコックちゃん」

 

 ハニークイーンとの情事を終えたジャックハートに話しかけたのは先日めでたく彼の妻となったハンコックだった。

 

「その……わらわへのお仕置きというのは……」

「あぁ、それか。まさしく今やってることだ」

「……ま、まさか」

 

 ハンコックが言ったお仕置き。それは、パンクハザードでジャックハートがナミやロビンと話している際に、彼の許可なく彼の情報を麦わらの一味に流したことに対するものだった。

 

「俺を熱くさせる相手を望んでいる、か。あながち間違っちゃあいねぇな。支配者になりたい訳じゃないが、ナメられたくもねぇ。だが雑魚の相手ばかりするのも面倒だ。確かにそれは正しい。……だが、それだけじゃまだ50点だ。俺は100点じゃねぇと合格をやりたくないんでな」

 

 そう言うと、彼は別室に待機しているマーガレットを呼び出した。

 彼が普段寝食を行う部屋に、常に女たちが全員いるわけではない。ジャックハートの部屋と同じ程度の広さを誇る併設された部屋で、彼に呼ばれるまで待機しているのだ。

 そこでは彼に出された指示を全うし、彼のために自らの美を磨いているのだ。

 

「俺は相手によって楽しみ方を分けてるんだ。ただ捕まえただけの海賊とハンコックちゃんとの楽しみ方が違うみてぇにな。あいつらはまだその選定の最中だ。育つまで待つか、壊れるまで遊ぶか、壊しながら遊ぶか。それは俺が選ぶことだ」

 

 その専用部屋でトレーニングを行っていたマーガレットを呼び出し、彼がベッドの上ですることと言えばただ一つ。性行為だけ。

 九蛇、元賞金首、元CP9と戦力だけで見れば女性陣だけでもそれなりに整っており、彼女たち一人一人に指示が出されているのだ。

 

「よって、ハンコックちゃんへの罰ゲームだ。その内容はマーガレットちゃんに選んでもらうとしよう」

「良いのですか? ジャックハート様」

「あぁ。つっても、離婚しろとかは無理だ。ハンコックちゃんだけに対する罰ゲームな」

 

 何の抵抗をするわけでもなくジャックハートに衣服を脱がされながら、マーガレットは考えた。

 ベッドの上に座る自分と愛しの主。そしてそれを見るハンコック。

 

「でしたら、いい事を思いつきました」

「ん?」

「一週間、お仕事にのみ専念することです。その間ハンコック様の代わりは私が務めます」

「ケハハハハ、そりゃあいい。だってよ、ハンコックちゃん」

「……はい」

 

 これから一週間。

 つまりは、これから戦闘を終えたジャックハートの相手を全てマーガレットに取られるということなのだ。

 

「さて。ってな訳でしばらくの間ハンコックちゃんの代わりにマーガレットちゃんをひたすら抱くことになった。重ね重ねの確認になって悪ぃな」

「……いえ。あなた様の決定ですもの。ですが……」

「あぁ。罰ゲームの後は存分に愛してやるよ」

 

 1:1とは限らねぇが、とは口にしない。

 全ての決定権は彼にあり、また彼の言葉は絶対なのだから。

 

「ではジャックハート様。私は下がっても?」

「あぁ、いいぞ。お前たちにはセックス以外にも期待している部分はある。こっちの手続きは順調に進んでいるから、頼んだぞ」

「はいっ!」

 

 意気揚々とジャックハートに返事をして待機室へと戻っていくマーガレット。

 ふと、今から目の前で彼との行為を見せつけられるのではないかと勘ぐっていたハンコックは胸を撫で下ろしていたが、その安堵も束の間。

 

「ハンコックちゃん。お前も一旦マーガレットちゃんに付き合ってくれ。それと、あの子を呼んできてくれ。泥棒猫ってワード出せば分かるだろ」

「……かしこまりました」

「ケハハハッ! しょげんなよ。一週間後、ちゃんと満足させてやるから」

「ありがとうございます」

 

 ジャックハートにキスと一礼をし、マーガレットの後を追いかけるようにして待機室へと入っていくハンコック。

 扉が閉められてから数秒後、再びその扉がゆっくりと開き始めた。

 

「……こうして、二人で正式に求め合うのは初めてね、ジャックハート様」

「だな。最初は犯罪者としてやや一方的に。次はバカラちゃんやホテルで周りにいる状態で、だったからな。こういう時をなんだかんだで待ってたんだぜ、カリーナちゃん」

「ウシシッ。そう言ってもらえると嬉しいわ」

 

 ジャックハートの部屋に入ってきたのは、バスタオルでその豊満な身体を隠しているつもりのカリーナ。

 流れるようにジャックハートの隣に腰掛けると、躊躇うことなく彼女の方からジャックハートの唇に唇を重ねた。

 

「んっ、んむ……ちゅぅ、ちゅぷっ…ん、ふぅ……んくっ。……別の女の味がするわ」

「ケハハ。そりゃ慣れるしかねぇな。俺を一人が独占し続ける方が珍しいんだぜ?」

「もちろんそれは理解しているわ。郷に入っては郷に従え。それに、ここの主人はあなたでしょう? 逆らうつもりなんて毛頭ないわ」

「分かってるじゃねぇか。じゃあカリーナちゃん、グラン・テゾーロでバカラちゃんより先に俺の元に来る決断をしたご褒美をやろう。バカラちゃんには内緒にな?」

「本当っ!?」

 

 全裸のジャックハートとバスタオルを巻いただけのカリーナ。

 互いに脚や肩が触れるほどに近く座っている状態で、カリーナが食い気味にジャックハートの顔を覗いた。

 

「あぁ。なんでもいい。俺に叶えてやれる範囲なら、叶えてやろう」

「なら、そうねぇ……。あっ、決まったわ」

 

 彼の言葉を聞き思案する素振りを見せたカリーナ。

 しかし、それもほんの数秒。あっという間に彼女の中で答えが出た。

 

「願い事って、一つだけ?」

「よほどヤベェことじゃねぇ限り、いくらでも」

「じゃあまず、私と結婚して」

「お安い御用だ」

 

 カリーナがまず求めたのは、婚姻関係。

 現状、正式にジャックハートが妻と認めているのは、ヴィオラ、ビビ、ハンコック、アイン、カリファのみ。

 彼と同じ職種であるたしぎですら、その関係に至れていないのだ。

 

「そしてもう一つ。赤ちゃんが欲しいわ。人数は、ナミとの間にできた子より多く」

「……おいおい、大丈夫か?」

「えぇ。あの子には負けたくないの。いい母親としてもね」

 

 そして次に求めてきたのが、やはりというか子ども。

 流石のジャックハートも子どもの命を軽く考えるということはしておらず、無計画にただ欲しいからという理由で子作りをしているわけではない。

 

「大丈夫よ。……今まで奪ってきただけの人生。こんなのはもう嫌なの。お母さんとして、たくさんのことをいっぱい子どもたちに与えたいの」

「分かった、了解だ」

 

 しかしその考えも、カリーナの目を見て払拭される。

 好きな相手の子どもを授かりたい。その一心が込められていた。

 

「赤ちゃんができたとしても、できる限りあなたへのご奉仕はするつもりよ?」

「ケハハハ、嬉しいねぇ。んじゃあ、その奉仕精神に免じてもう一つだけ俺がサービスしておいてやるよ。しばらく秘密だがな」

 

 そう言って、カリーナの身体を包んでいるバスタオルを優しく剥ぐジャックハート。

 ハンコックやナミという、ジャックハートが今まで抱いてきた女たちに匹敵するほどの美貌がそこにはあった。

 

「それじゃあ早速、そのご奉仕とやらをしてもらおうか……と思ったが、その身体は卑怯だわ。準備はいいか?」

「ウシシ。承知しました、ご主人様っ」

 

 立ち上がり、その肉体の距離を無くす2人。

 

 そこからしばらく、水気を帯びた肉のぶつかり合う音と喘ぎ声がジャックハートの部屋から漏れ続けた。

 

 

 ◇ ◇

 

 

「ジャックハート様。お洋服の支度ができました」

「おう。助かるわカリファちゃん」

 

 ジャックハートのベッドの上には、カリーナやハニークイーン以外にもマーガレットやノジコ、ランやキキョウと言った面々も寝転がっており、その彼女たち全員が揃いも揃って秘部から白濁液を垂れ流していた。

 行為を終え、いきり勃つ肉棒がようやくおさまり出したところで、彼の制服を抱えたカリファが入室した。

 

「つっても、イッショウさんとの合流はまだまだ先。俺も役目はとことんドフラミンゴを詰めることだ。てな訳で、たしぎちゃん、アインちゃん。お使い頼むわ」

「は、はいっ!」

「了解です」

 

 カリファに手渡された黒いシャツとコートを受け取りながら、ドレスローザでの簡単な段取りを口に出して確認していく。

 彼の部隊に与えられた仕事は、今朝王下七武海脱退を発表したドフラミンゴへの問い詰めと、その後の拘束。そして、万が一ドレスローザが混乱の場になった時の海軍の保険としての戦力強化だ。

 

「では、ジャックハート様は……」

「リリーへのプレゼントを貰いに行くついでに、あいつの大事なもんぶっ壊そうと思っててな。俺たちの関係を引き裂こうとした罰だ」

「かしこまりました」

 

 カリファの問いに答えつつ、シャツに袖を通す。

 先ほど行為を終えたタイミングから海兵としての仕事に変わっており、たしぎやアインも海兵としての態度に変わっている。

 

「俺は先に行くわ。たしぎちゃんもアインちゃんも、部下が必要なら自由に使ってもいいからな」

「はいっ」

「了解です」

 

 直前までまぐわっていた男女同士の会話とは思えないような緊張感のある声を出す。

 しかし彼らの主人でもあり上司でもある男は、大きなあくびと共に部屋を後にした。

 

「さてと、お楽しみの後のお楽しみといくか」

 

 目指すはドレスローザにある巨大な闘技場、コリーダコロシアム。

 今現在その場所では、かつて海賊"火拳のエース"の能力であった"メラメラの実"を景品とした大会が開かれようとしており、彼の娘であるリリーが欲しがっていた"メラメラの実"とドフラミンゴへの単なる嫌がらせのために、その大会に参加するのだ。

 

「あ、っとと。言い忘れてたわ」

 

 甲板から降りる前に伝え忘れていたことを言うために再び自室へと戻るジャックハート。

 着替え出していた女性陣がそれに気づき一気に顔を赤く染めるが、その様子を気にすることなく話し始めた。

 

「さっきのことはもちろんリリーには秘密にしておいてくれ。サプライズのつもりだからな」

 

 "G-5支部"に配属となったリリーと頻繁に会う機会も少なくなってきてはいるが、彼女もまだまだ子供。

 渡すものがことあるごとに彼女が強請るものとくれば、喜んでくれるだろうという考えだった。

 

「それと」

 

 伝えることを簡潔に伝えたジャックハートが、部屋の中をぐるりと見回す。

 未だにベッドの上で意識を飛ばした状態の者や、たしぎやアインのように着替えるために下着姿になっている者もいることを確認した上で、表情を引き締めた。

 

「今日新しくメンバーが増える可能性がある。カリファちゃんはその準備もよろしく」

「かしこまりました。お食事の方も手配しておきます」

「おう」

 

 新しく増えるであろう女性陣。

 ドレスローザで以前からジャックハートとの肉体関係にあった、ヴィオラ、モネ、ベビー5。

 彼女たち三人ともがすでに出産しているため、もしジャックハートの元に来ることになれば、それなりの人数が増えることになる。

 

「さて、と。今度こそ行くか」

 

 甲板を慌ただしく移動し、物資の確認を行っている部下たち。

 彼らにに見送られ、ジャックハートはドレスローザの地に降り立った。

 

 彼が船を降りて数秒。

 騒がしい船上の中でさらに騒がしい影が、ジャックハートの部屋へと突撃した。

 

「あれっ!? パパはっ!?」

「あらリリー。パパならもうドレスローザに降りたわよ。あなたも今回の任務だけ同行しているなら、早く準備なさい」

「はーいっ」

 

 その正体は、室内にいたカリファと降りたジャックハートの娘であるリリー。

 所属は"G-5"となっているが、先日のパンクハザードの戦いで露見してしまった彼女の油断してしまう性格を矯正するため、そして少しでも覇気が使える戦力を増やすためにジャックハートの軍艦に同行することとなったのだ。

 

「……ねぇ、ママ。私、力になれるのかな……?」

「大丈夫よ、リリー。確かに少し気持ちの面で緩みがあったのかもしれないけれど、それは直せばいいだけ。あなたはパパとママの子、自信を持ちなさい」

「……うん」

 

 そしてその理由はリリー本人にも伝えられており、その言葉を聞いたリリーはショックを受け、今もその言葉を引きずっている様子だった。

 現状彼女は戦力としては期待できるものの、心構えとしてはダメだと言われていることを、幼いながらに悟ってしまったのだ。

 

「いつまでもそんなに塞いでいると、お兄ちゃんに離されていくわよ」

「むっ! そんなことないもんっ!」

「そう。なら……」

「早くパパと合流して、任務を頑張ってくるーっ! じゃ、行ってくるねママっ!」

「えぇ、いってらっしゃい」

 

 父にもらった愛刀を腰に携え、入ってきた時と同じようにドタバタと慌ただしく駆けていくリリー。

 そんな娘の背中を見送った後、カリファは再び部屋の中を見渡した。

 

「あの元気は羨ましいわね……。私も見習わないと」

 

 部屋の中はいつもジャックハートが出て行く時と同じく女たちがベッドに横たわり、占拠している状況。

 彼女たちの姿を見ながら、カリファは自身の下腹部を撫でた。

 

「ふふっ」

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

『……おいヴァイオレット。お前今、どこにいる』

「どこって、コロシアムよ。せっかくの豪華な景品が出る大会ですもの。自惚れているように聞こえるかも知れないけれど、それにふさわしいコンパニオンも必要だと思ったの」

『そうか。くれぐれも、変な気は起こさないようにな』

「えぇ、分かっているわ」

 

 時間は少しばかり進み、コリーダコロシアム。

 ”メラメラの実”を景品とした大会が開催するまであと少しという時に、ドンキホーテ・ファミリーのヴァイオレットがいた。

 下っ端に持たせている電伝虫越しの会話相手はドフラミンゴ。

 ローと麦わらを同時に始末できるチャンスが来たと言うのに、その様子は焦りに焦っていた。

 

「彼、でしょう?」

『あぁ、そうだ。メラメラの実を取られる分にはまだいい。アレは俺にとっては餌程度だからな。だが、奴をあまり自由にさせるなよ』

「もちろん。彼はしっかりと見張っておくわ。そのための能力といっても過言ではないもの」

 

 シーザーの一件ですでにほぼ敵対することが確定したローと麦わら、そしてその捕獲と以前から伝えていた"メラメラの実"のために来ているであろうジャックハート。

 あわよくばその二つの戦力を衝突させようと企んでいるドフラミンゴの考えの中で、唯一の不確定要素がジャックハートだった。

 

『ローが騒ぎを起こしたタイミングでジャックハートを当てがう。奴も肩書きは海兵……それも大将だ。王下七武海の反逆者と頂上戦争で大問題になったルーキー。いやでも対応することになる』

「あなたは誤報で王下七武海を脱退したことになっている……。確かにそのことを使えば彼の動きは制限できるわね」

 

 ──尤も、気にくわない相手に彼が素直に言うことを聞くとは思えないけれど。誤報を許したお前が悪いって通しそうだし。それに……。

 来賓としてコロシアムを訪れているヴィオラの視線が、暗く伸びる通路の方へと伸びる。

 そこから時折聞こえる、若い女の声。声自体は聞いたことはあるものの、その声の種類には聞き馴染みはなかった。

 

『奴がいつコロシアムに着くか、お前の能力ならたやすく分かるだろう。奴の娘が欲しがっている"メラメラの実"に食いつかない、なんてことは無いと思うが、確認し次第連絡を入れろ』

「分かったわ」

 

 伝えることだけ伝えてしまうと、ドフラミンゴはこちらに断りを入れることなく通話を切った。

 そういうところよ、と心の中で呪詛のように唱え、一瞬だけ電伝虫を睨みつける。

 しかし、ドフラミンゴと連絡を取る前に言われていたことを思い出し、ヴィオラは頬を赤らめながら先ほど見ていた通路へと歩き出す。

 

「あ、あのっ。ヴァイオレット様?」

「何かしら」

「どちらへ……」

「決まっているでしょう? お風呂よ。この通路の先には来賓用の浴場しかない。でしょう?」

「し、しかし……」

 

 そんなヴィオラの行く手を、若い兵士が止める。

 ドンキホーテ・ファミリーの幹部である彼女を止めることなど、普通はありえないことだ。

 ドフラミンゴの、幹部全員をあまり自由にさせるなという言葉がない限りは。

 

「ど、ドフラミンゴ様より、幹部たちは有事の際に備え、おとなしくしていろと」

「できないわ」

「なっ!? こ、困ります!」

 

 だが、その兵士が匂わせていたそのドフラミンゴの言葉を、ヴィオラは一蹴した。

 

「どうして? 私はおもてなしをしなきゃいけないの。これは、彼の命令よりも重いわ」

 

 彼女が取り出したのは、一枚の紙。

 そこには複数の契約が書かれており、それに目を通していくだけで兵士の顔が青白くなっていく。

 

天竜人(・・・)様からの命令よ。私は、今浴場にいる彼の身の回りのお世話をしなくちゃならないの。一生ね」

 

 前国王リク王の娘であり、現在はドンキホーテ・ファミリーの幹部。

 そして、秘密にはされているがジャックハートの子を孕み、出産している。

 そんな彼女を正々堂々と、そして事件のうやむやで印象を薄くしつつ奪い取る為にジャックハートが取った方法が、これだ。

 

「今彼と一緒に入っている女の子もよ。今日の大会で寿引退。死ぬまで彼の側にいるの。……あぁ、もちろん他言無用でお願いね?」

 

 だが、目の前の兵士に見せたこの契約書は、正しく言えば正式なものではない。

 正しいものは、すでにヴィオラ個人の元に届いているのだ。

 内容は、海軍大将であるジャックハートが妻にしたいというので、応じること。という人権など感じさせないような命令が、王族であるヴィオラに天竜人から届いたのだ。

 

 彼女はそれに、応じるしかない。なぜならそれは、天竜人の命令なのだから。

 

「彼、女が取られそうになると、何をするか分からないから」

 

 そうヴィオラは兵士に言い残し、ジャックハートとレベッカの待つ浴場へと駆けて行った。




レッドライン登った時の、ジャックハートの行為の正当化が本格的に使われ始めます。
ヴィオラ宛に来たのは、『お前こいつの嫁になれ』的な命令文です。

次回は露出剣闘士さん回です!久しぶりの本番だぁ……。

コメント、評価などお待ちしております!


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露見する格差

あけおめです。2019年内に投稿できず、申し訳ないです。

年明けにおめでたいことが。

活動報告にも書かせていただきましたが、なんとこの度、この小説のUAが100万を突破いたしました!

突破記念……というよりは感謝ですね。特別編なんかももしかしたら書かせていただきたいなと考えています。


しばらく不定期、亀更新となってしまうかも知れませんが、今後ともよろしくお願いいたします!


あ、あともう1つ。Twitterにて小説専用アカウントを作ったので、よろしければフォローしてください。@ChariNovel


「ケハハハハハッ! いいねぇ。若くてハリのあるこの巨乳。今まで剣闘士として戦って、よく質が落ちなかったもんだ」

「んぁっ……ん、うぅっ、あっ!」

「感度も良し。ケハハ、こりゃあまたいい子だ。ナミちゃん、ロビンちゃん、ビビちゃん、ハンコックちゃんに並ぶ逸材だな」

「あら。私の体じゃ不満なの?」

 

 コリーダコロシアム、来客用大浴場。

 たった二人で占拠するにはあまりにも広すぎるこの場所で、ジャックハートは一人の少女と共に湯に浸かっていた。

 少女の名はレベッカ。

 このコロシアムで剣闘士として戦っている少女であり、2年前からジャックハートが目をつけていた人物でもある。

 

「おっ、ヴィオラちゃん。ようやく来たか」

「遅れてしまってごめんなさい。それで、レベッカとはもう馴染めたのかしら?」

「あぁ、もう早速な。ヴィオラちゃんが来る少し前に、ここに一発ブチ込んだところだ」

 

 その空間に入ってきた新たな人物、ヴィオラ。

 彼女が開いた扉の真正面にいたレベッカとジャックハートの姿は一切隠されることなく丸見えになっており、ヴィオラが真っ先に目にしたのは最愛の人物が自分と血縁関係にある少女の胸を揉みしだいていた光景。

 しかし彼女は、その光景を見て嫌悪感を示すことなく、むしろ好意的な瞳をしていた。

 

「ヴィオラ、さん……」

「ふふっ、久しぶりねレベッカ。さっきは気持ちよさそうに大きな声で喘いでいたけれど、すっかりジャックハート様の虜かしら」

「どうかな。今はただ契約(・・)としての肉体関係だからな。とはいえ、満更でもなさそうっていうのも事実だ」

 

 隣に男がいると言うこの状況でありながら、布や手などでその美しい裸体を隠すことなく二人の方へと歩いてくるヴィオラにレベッカは少しの違和感を抱いた。

 今までの物心がついてからの人生の長くを剣闘士として過ごしてきたレベッカにやってきた突然の来訪者。それが、自らの叔母にあたる目の前の女性、ヴィオラだったのだ。

 

「『剣闘士として負けない戦い方を教え、そしてドフラミンゴの勢力を常に一定以下に保ち続ける。その代わりに、ドフラミンゴを倒す算段がついた時に、嫁に来て欲しい』。我ながら、素晴らしい契約だったと思うぜ?」

「誇るべきよレベッカ。あなたのお陰で、ドフラミンゴとその一味は今日明日にでも滅びるわ」

「……この契約をしなければ、戦い方を教えないし、ドフラミンゴも放置する。そう言われたら、守るしかないでしょう……!」

「あらら、そういやそんなこと言っちまった気がしないでもないな」

 

 ジャックハートの本音としては、もちろんそんなことをするはずがない。

 将来有望な少女に傷がつくことも我慢ならない上に、ヴィオラやモネ、ベビー5がいる時点でドフラミンゴをそのままにしておくと言うこともない。

 しかし、その契約を作ってしまえばレベッカは首を縦に振るしかないということは一目瞭然だったのだ。

 

「さて、じゃあ役者も揃ったところで、現状の報告でも始めるとしよう」

 

 右手で大きく育ったレベッカの乳房を揉み、左手では先ほど精液を注ぎ込んだ子宮が奥にある下腹部を撫でていた。

 レベッカの若い柔肌を堪能していたジャックハートの左に密着するほど近くにヴィオラが座り、挨拶代わりと言わんばかりのキスが始まる。

 下腹部に触れていた左手をヴィオラの背中から乳房へと回し、口を離してジャックハートがこれまでの状況を話す。

 

「まずはレベッカちゃんに言っておくことからだ。ここにいるヴィオラちゃん、そしてドンキホーテ・ファミリーのモネちゃん、ベビー5ちゃんは秘密にはしているが俺の妻だ。そして、あのクソを倒せる状況となった今、君も俺の妻の一人となったわけだ」

「倒せる状況って、あの男は……っ、んぁっ、はぁああっ!」

「安心しろって。誤報だろうがなんだろうが、王下七武海脱退というニュースが流れたのは事実だ。そもそも、なんでそんなことになったかを追求するところから始まるんだ。だからレベッカちゃんは、安心して俺とセックスしてりゃあ良いんだ」

 

 右手でレベッカ、左手でヴィオラの胸をゆったりと揉みしだく。

 まだ経験が浅いレベッカは慣れない感覚に声を抑えながら身を悶えさせ、ヴィオラはその快楽に抗うことなく身を委ねる。

 ジャックハートの肉棒が屹立していく様を、レベッカは未だ物珍らしそうに頬を赤らめながら確認している。

 

「それに、奴が王下七武海を脱退してねぇなんて言っても、もうそんなのは通用しねぇよ」

「え?」

「王下七武海の制度が認めてるのは、海賊行為のみだ。配下でも無ぇ海賊や他の国に武器や人造悪魔の実の元を流すのはちと頂けねぇ。政府が上。それを植え付けるためにサカズキさんが少し前に制度の中身を少し変えたってわけだ」

 

 美女二人を両手に侍らせながら、ジャックハートは海軍本部でのやり取りを思い出す。

 海賊行為。一見分かりやすそうなものだが、意外と線引きが難しいのだ。

 それゆえに王下七武海たちの行き過ぎた行為なども黙認されていた部分があり、それを大々的に変えたのだ。

 

「って、今はそんなことどうでもいいんだ。あいつをブチ切れさせる手はもう二重三重にも打ってある。今俺たちがすべきことは、お互いを愛し愛されることだろ?」

「えぇ、その通り。ねえジャックハート様、私、またたっぷり愛して欲しいわ。ずっとドフラミンゴの近くにいたせいでストレスが溜まってるの。一緒にたくさん発散しましょう?」

「あぁ、もちろんだ。レベッカちゃんもな」

 

 二人の胸から手を離し、ジャックハートが立ち上がる。

 それに釣られるようにヴィオラも腰を上げ、レベッカも彼女に続いて風呂から出る。

 三者三様の音を立てながら広々とした浴室内を歩き、目的の場所へと向かう。

 

「嬉しいねぇ。俺の好みを完璧に把握して、そのプレイを楽しむためにヴィオラちゃんが用意してくれるとは」

「私もアレ好きなの。ぬるぬるしてて気持ちいいでしょ?」

「ケハハハハハッ! 俺の船に乗れば、好きなだけできる。特化した能力者もいるしな」

 

 船に乗れば、という言葉に首を傾げるレベッカ。

 そもそも今から何をするのかも分かっていない上に、これからの話をされても意味が分からないのも当然のことである。

 そして、この場には彼女のそんな考えを簡単に読み取れる人物もいる。

 

「ケハハハ。大丈夫だぜレベッカちゃん。難しく考えすぎる必要なんてない。さっきも言った通り簡単なことだ。君はただ俺を愛し、俺に愛されればいい。ただそれだけだ」

「……分かってるわ。それで、今から何をするの?」

 

 広大な浴室を歩き、向かった先にあったのは一枚の大きなマット。

 コロシアムの中での生活が長かったレベッカには見慣れないものだったが、ジャックハートとヴィオラにとっては逆に見慣れたものでもあった。

 

「この上でするんだ。いやぁ、まさかヴィオラちゃんがこれを手配してくれるとは思わなかったぜ」

「気持ちいいことをしたいもの。それに、三人でするなら大きくないと、ね?」

 

 事の発端は、ジャックハートとカリファがサイファーポールの訓練生だった頃まで遡る。

 上官すら瀕死に追い込む問題児兼優等生であったジャックハートと紅一点と言ってもいいカリファの行為は、互いの部屋で行われていた。しかし、あまりにベッドや部屋が汚れるため、風呂で行為を始めたのが全ての始まりだった。

 

「先に言っとくぜレベッカちゃん。ここでヤルのはマジで気持ちいいからな」

 

 カリファとの風呂場での行為により、ジャックハートの性欲が勢いを増したのだ。

 水分過多と言ってもいい、そしてお互いの肌が嫌でも密着し合う状況。

 そこにいつからかローションという代物が入り、さらに加速していったのだ。

 

「私が準備をするわ。だからジャックハート様は、レベッカをよろしくね?」

「あぁ、任せておけ。存分に解してやるよ。レベッカちゃん、こっちに」

「わ、分かった」

 

 レベッカ以外手慣れているというこの状況に、彼女はどこか違和感のようなものを抱いていた。

 まるで自分が今まで知らなかった世界に連れて行かれるような、不思議な感覚。

 しかし、目の前にいる男の圧倒的な強さと嬉しそうに何かの準備を進めていくヴィオラの姿、そして全員が一切隠すものを身に纏っていないというこの非日常な光景が、若干16歳の彼女を狂わせた。

 

「ほら、もう一度仕切り直しだ。今後は、周りに誰かがいる状態でも思いっきりセックスを楽しめるようになってもらわねぇとな。つっても、俺の船に乗る頃にはそうなってるだろうがな」

「ま、周りに人がいる中でッ!? さ、先ほどのような、せ、セック……ス、をする……の?」

「あぁ。見ろよヴィオラちゃん。このレベッカちゃんのピュアな反応。この身体同様、真っ白でなんの汚れもねぇいい反応だろ?」

「えぇ。あなた好みの、染め甲斐のある女の子よ」

 

 ヴィオラが着々と準備をする様を眺めながら、ジャックハートはレベッカと向かい合うように立つ。

 と言っても、二人の身体の距離は異様に近い。レベッカの年不相応に発達した立派な乳房やジャックハートのいきり立った肉棒が相手の体に触れてしまいそうな程の距離で、レベッカは視線をあちこちに動かし、ジャックハートからの視線を避けていた。

 

「おいおい、寂しいじゃねぇか。なんでこっちを見てくれねぇんだ?」

「は、恥ずかしいのよ……」

「ケハハハハハッ! もう処女じゃねぇし、なんならついさっき絶頂して潮まで吹いてただろ? 何を今更恥ずかしがってんだよ、なあヴィオラちゃん」

「そうよ、レベッカ。あなたは、今はただジャックハート様に任せていればいいの。自分から動けるようになるのは、これからでも遅くないわ」

 

 彼の言葉の通り、レベッカはつい先ほど処女を散らし、その際に派手に潮を吹いた。

 意気揚々とした雰囲気を保つヴィオラと目の前の男を交互に見て、自分と彼がしていた行為を二人に置き換えて想像してみる。

 まぐわい合うヴィオラとジャックハート。その光景を思い浮かべた時に、レベッカは自分でも信じられないようなことを考えていた。

 

「ん? なんだ、もう調教する必要がねぇくらいにハマってんのか? レベッカちゃん。俺に隠し事が通用しねぇって言うのを言い忘れてたが、そこまで露骨に表情が変わると、"覇気"もいらねぇわ」

「っ!? そ、そんなこと……!」

「いやいや。誤魔化すのは無理があるって。俺の下半身とヴィオラちゃんのおっぱい見比べて、ずっと楽しそうな顔してたぞ? 息も荒かったし、ここも、ほら」

「きゃあぅっ!」

 

 目の前のジャックハートに、"覇気"すら使われることなく読まれてしまったレベッカの思考。それこそ、彼が言った通りのものであった。

 確信を突かれ咄嗟に嘘で誤魔化そうとするが、彼女の身体は本能に忠実だった。

 ジャックハートが手を伸ばした先、レベッカの隠部はすでに大量の愛液が滴っており、彼の指先が触れるだけで彼女の身体を熱く燃やしていた。

 

「ケハハハ。最近の俺は運がいい。名器を二人も発見できたんだからな」

「あっ、あぁんっ!」

「まだ何もしてねぇのにこの乱れっぷり。今後が楽しみだ……」

「ジャックハート様。準備ができたわ」

「おう、助かるぜヴィオラちゃん」

 

 たった今ジャックハートがレベッカした事。それは、ただ片手で彼女の秘部に軽く触れただけという、テクニックも何もないもの。

 陰核はおろか、薄らと生えた隠毛にも軽く触れるかどうかという、愛撫と呼んでいいのか怪しいその程度の動きで、レベッカは感じてしまったのだ。

 ヴィオラに呼ばれ、マットへと少しの距離だけ歩く中で、ジャックハートは確信していた。

 

 この少女、レベッカは最高の女になるということを。

 

「さ、よろしく頼むぜ二人とも。ヴィオラちゃんはレベッカちゃんにいろいろ教えながらになると思うが、任せる」

「分かったわ。じゃあ、うつ伏せに寝転んでくれる?」

「了解」

 

 ローションが全体に撒かれたマットの上にジャックハートが横たわる。

 身体にもローションを塗りながら、レベッカは歳が僅か4つしか違わないとは思えないほどに鍛えられたその肉体に頬を染めていた。

 

「ケハハハハ。やはりいいな、この時間は。俺好みの極上の女が、俺の身体に絡みつくように奉仕する。言葉にしても最高だ」

「そんなに楽しみにしてくれているなら、私たちも頑張らないといけないわね。あなたのお家でする時も来るでしょうし」

「基本的に風呂にも常に二人以上は連れているからな。普通にあるだろ」

 

 うつ伏せのジャックハートと視線を交わさずに話すヴィオラは、そのローションに塗れた完璧なプロポーションを誇る肢体で彼の身体に覆いかぶさった。

 彼の背中の上で優雅に舞うように体をくねらせているヴィオラに視線で誘導され、レベッカも口を一文字に結びながら彼の背中の右側へと覆いかぶさった。

 

「おぉ……。予想通りイイもん持ってるな、レベッカちゃん。手で揉んでた時にも分かりきってたことだが、形も柔らかさも大きさも、全てがいい」

「はっ、恥ずかしいことを大きな声で言わないでよっ!」

「ケハハハ。なら恥ずかしいついでにもう一つ。レベッカちゃんの乳首ビンビンに勃ってるぜ」

「〜〜〜ッ!」

 

 顔から火が出るほどに赤く染まり上がるものの、レベッカは決して動きを止めることなくジャックハートの背中に自らのローション塗れの体を絡みつかせていく。

 ジャックハートがレベッカを手に入れるためにとった手法は、ビビとの関係を持った時のものに限りなく近い。

 

「もうっ、あなたったら……。私にも何か言って欲しいわ」

「っと、すまねぇなヴィオラちゃん。相変わらずの完璧な奉仕精神で嬉しいぜ。これからも末長く、よろしく頼むぜ」

「ふふっ、冗談よ。あなたが私を大事にしてくれることは分かっているわ。私からもよろしくね、あなた」

 

 未だ自分が何をしているのかということを完全には把握できていないレベッカとは真逆。すでに彼の子を孕み、出産も済ませているヴィオラは、ジャックハートの好みをよく把握していた。

 ただ自分の乳房を押し当てるだけのレベッカに動き方を教えるように長い手足を使って彼の体を何度も往復する。

 

「ってか、ヴィオラちゃん的にはどうなんだ? レベッカちゃんは姪っ子になると思うんだが、その子と旦那が関係を持つってのは」

「私は全然問題ないわよ? 9年間、ドフラミンゴに乗っ取られたこの街を裏で救い続けていた英雄のお嫁さんになれるなら、本望よ」

「救ったって、そんな大したことはできてねぇって」

「そうかしら。あなたは当時たった11歳の小さな海兵。史上最強の海兵とは言え、そんな少年が王下七武海の中でもトップクラスに用心深い彼を抑えることが、どれだけ難しいか」

 

 ジャックハートの背中に時折吸い付き、手足だけでなく口まで使って彼に甘美な刺激を与えていく。

 そんな叔母であるヴィオラの姿を見習い、見様見真似ではあるもののレベッカも奉仕を続ける。

 次第に上達していくレベッカの技量を背中で感じながら、ジャックハートはいつものように言葉を零していく。

 

「ま、俺のことはどうでもいいんだ。これから先も似たようなやつが何人も出てくるだろうしな。……で、だ。レベッカちゃん。さっきは契約っつったが、君の身分は一応王女ってことになる。俺のとこに来るのがどうしても嫌だってんなら、ここに残ってもいいぜ」

「えっ? え……っと……」

「判断の遅い子は嫌いなんだ。俺の元に来るか、それとも王女として俺と結婚するか。どっちだ?」

 

 彼が話を振った先は、契約のため一心不乱に彼の体に自分の歳不相応なほどに発達した肢体を絡ませていたレベッカだった。

 まさかこのタイミングで、行為に慣れていない自分に話が来ることはないと勝手に思っていたレベッカに、実質一択の二択が突きつけられる。

 

「あぁ、だが契約内容は変わらねぇよ。君が正式に俺の妻となり、俺の元に来ないというのであれば、俺が今後ドレスローザを訪れるのは君を抱くためだけ。どんな海賊が現れても俺たちは助けない。例え、ドフラミンゴみたいなやつでもな」

「っ! だ、ダメッ! そんなこと……」

「なら選択肢はひとつだぜ。俺の元に来ること。そうだな……俺の元に来れば、確実に世界最高峰の生活を送れることを保証しよう。君も、この国の国民もな」

 

 二択に見せかけた一択。

 それまでの関係から既に圧倒的上位に立つジャックハートにこの選択肢を突きつけられて跳ね除けることができた者は男女問わず誰一人としていない。

 全てが地獄に堕ちるか、全てが救われるか。

 レベッカもまた、王女の素質に溢れてしまっていた。

 

「……この国で苦しんでいる人々を、これからも助けてください……!」

「お、ってことはいいのか? 俺と結婚するってことで」

「えぇ。これからよろしくお願いね、あなた。愛してるわ」

 

 惨劇があったとは言え、レベッカはこのドレスローザの王女であり、また、そこには民もいる。

 今後国が一切の海軍からの援助が得られないということと、自らの一生。それを天秤にかけた時、レベッカにとって国が大事だった。

 

「ケハハハハハハハッ! 最高だぜレベッカちゃん。俺も君を愛してるし、君の愛する物を愛する。何、一生ドレスローザの地を踏めねぇわけじゃない。みんなで幸せな家庭を作って行こう」

「そ、そんなこといきなり言われても……」

「ケハハハ。心配しなくても大丈夫さ。レベッカちゃんはレベッカちゃんの思うまま、過ごせばいい」

 

 レベッカとヴィオラの動きを止めて、ジャックハートが仰向けになる。

 彼女達の前に、普段よりもさらに大きく感じる屹立した肉棒が現れる。

 

「さてレベッカちゃん。正式な夫婦となった祝いだ。おいで」

「……はい」

 

 ヴィオラが二人の側から一旦離れ、マットの上にはジャックハートとレベッカの二人だけの世界が完成した。

 

「んっ……、ちゅ、あむっ……んんっ、はぁ……ちゅぷっ」

 

 仰向けで寝転ぶジャックハートの身体の上に、豊満な肉体を彼にすべて預けるように載せるレベッカ。

 契約云々という会話もあったが、そもそもの話自分に戦士としてのレベルアップのノウハウを教えてくれ、かつドフラミンゴを裏で10年近く抑えていた年も近い海兵。

 少しエロい面もあるが、顔は整っており、実績と将来性も共に完璧。

 16歳のうら若き少女が惚れるには、要素は十分すぎた。

 

「ジャックハート、さん……」

「堅苦しいな、レベッカちゃん。もっと素直になってくれよ」

「……なら、あなた、と」

「あぁ、それでいいぜ。……じゃあ、自分で挿れてくれるか?」

「えぇ」

 

 ヴィオラが来る前の行為で既にジャックハートの精液がレベッカの膣内に注がれている。

 彼女にはまだ伝えていないが、ジャックハートがレベッカほどの女性をそのままにしておくはずがなく、一度目の行為で既に彼女は排卵をしており、ほぼ妊娠することが確定していた。

 

「あぅっ! んっ、あ……ぁんっ!」

 

 再びレベッカの狭い膣に挿入されるジャックハートの肉棒。

 今後彼女がどんな成長をするか想像しているのか、彼らの側でヴィオラが女神のように微笑んでいた。

 

「レベッカちゃん、もう一発……欲しいか?」

「えぇっ、欲しい……わぁっ!」

 

 レベッカの思うもう一発とは、二度目のセックスやそれに伴う絶頂。

 ジャックハートが言ったもう一発とは、二度目の排卵とそれに伴う受精。

 つまり、レベッカをもう一度孕ませることで、双子を妊娠してもらうということだ。

 

「着実にどエロい女の子に育ってくれているようで嬉しいぜ。なら、一発とは言わずにこれからずっと楽しもうや」

 

 自分の身体の上で、本能に身を委ねて淫らに腰を振り続けるレベッカを見て、ジャックハートは笑う。

 レベッカとヴィオラと正式に関係を結ぶことで着実に進めることができる作戦を思い出し、より一層竿が大きくなる。

 

「永遠に楽しむ方法は、もう見つけてるんだ」

 

 ジャックハートのその呟きに、二人は妖しく笑った。

 

 

 ◇

 

 

「よしっ! ナミもロビンも、二人とも母子共に健康そのものだぞ!」

「ありがとうチョッパー」

「いつもゴメンなさいね。モモの助も、オルビアとベルメールをありがとう」

「と、当然でござる! せっしゃは兄ゆえ、子どもたちの面倒ぐらい、簡単でござる!」

 

 時を同じくして、サウザンドサニー号。

 船内の医療室に現在サニー号にいる人間全てが集まっており、ナミとロビンの健康状態のチェックを行っていた。

 チョッパーによる診察結果は良好。二人とも母子ともに健康であり、ベルメールとオルビアにも何の問題も無かった。

 

「じゃ、俺は船の周りの見張りをしてくるからな! モモもついてきてくれ!」

「悪者がいれば、せっしゃが成敗してやるでござる!」

 

 意気揚々と医療室を出ていくチョッパーとモモの助。

 微笑ましい光景ではあるが、実際外にはとんでもなく強い海兵がいるかもしれない。

 そう心配したロビンとナミであるが、彼女たちが彼との契約を守っている限り、彼が仲間を襲うことはない。

 チョッパーも可愛らしい見た目をしているが、そう簡単に負けるほど弱くもない。

 

「……ねぇロビン。この子の名前、どうした方がいいと思う?」

「……そう、ね。私の子の名前のこともあるし、一度彼に会った方がいいんじゃないかしら」

「そう、よね……」

 

 二人っきりになって広がる話は、やはり彼。

 話し合いで分かっていたが、彼も今現在このドレスローザにいることはほぼ確定している。

 

「やっぱり、来るのかしら──ッ!?」

 

 憂鬱そうな、しかしそれでいてどこか期待しているような声をナミが漏らした、その瞬間。

 

 大きな爆発音が甲板に響いた。

 

「チョッパーッ!? モモの助!?」

 

 慌てて、しかしお腹の子と自分たちの娘を大事にしながら、二人で甲板へと出る。

 二人の脳内にあった最悪の光景は、彼とは別の海兵に二人が襲撃されたこと。

 

 しかし、甲板にあったのはその二人の想像をさらに超える光景だった。

 

「あーっ! やっぱりいたよ、お兄ちゃん! 私たちの新しいママと妹たち!」

「はぁ……。父さん、また増えてますよー」

 

 甲板に転がっていたのは、全身アザだらけのモモの助と、腹部に深く刀を突き刺され、全身が焼け焦げているチョッパー。

 そして、サニー号の甲板に立っているのはたった二人の少年少女。

 

「あ。あなたたちはこうしないよ? 見て分かる、私たちの家族だもん!」

「家族って、ま、まさ、か……」

「……あぁ、父から海軍内部の情勢や自分たちのことを教えてもらっていないんですね」

 

 薄々、見た瞬間から嫌な予感はしていた。

 しかし、それは話していて確信に変わったのだ。

 

「俺は海軍本部大尉、ジョー・ダレス」

「私は"G-5"の少尉、ジョー・リリーだよ!」

 

 現在11歳と10歳の少年少女は、ナミとロビンを妊娠させた男の、長男と長女だった。

 

「ま、待って! あなたたちのお父さんとの約束で、私たちが……その、彼の言いなりになる代わりに、仲間には手を出さないはずよ!?」

「それは父とあなたたちの間の約束です。俺たちには関係ないでしょう」

「それにー、パパじゃなくて良かったって考えなきゃ。パパなら、そんな約束してても、海賊から手を出して来たら正当防衛で殺しちゃうよ?」

 

 彼の理不尽はこんな小さな子供にも受け継がれているのかと思ってしまうほどの圧。

 相手は子供とはいえ彼の血を引いている。妊娠している状態の二人で対処できるかと言われれば難しい。

 

「……ですから、警戒しなくても大丈夫です。あなたたちを怪我無く連行することが、俺たちの任務なので」

「ついてきてくれなきゃ……」

 

 リリーがチョッパーに刺さっている刀の柄を握る。

 かろうじて意識があるのか、チョッパーから呻き声が上がる。

 

「分かったわ! あなたたちについていくから、それだけはやめて!」

「賢明な判断です。では、行きましょう」

 

 船はどうするのかとも聞けず、ナミとロビンは手錠を掛けられ、その手で子供を抱きながら船を降りた。

 短時間で全身に深い傷を負ったチョッパーとモモの助を抱えるダレスとリリーがその前を行く。

 

「それにしても、流石お兄ちゃんッ! 一撃で二人を気絶させるなんて」

「お前にも素質はあるだろ。あれぐらい、父さんの子どもなら全員できる」

 

 何の話か、と聞き耳を立てるが、二人は後にその行為を後悔することとなる。

 

「んー。確かに最近、"覇王色の覇気"は使えるようになったけど、要らなくない? 自分の手で仕留めた方が確実だし」

「弱い海賊相手に体を動かさなくてもいいだろ?」

 

 この小さな子どもですら"覇王色"を使えるという事実。

 さらに、ナミやロビンは気絶させないように調整できるレベルになっているということも、彼女たちの危機感を更に煽ることとなる。

 

 そんな二人に、ダレスが憐みの目を向けていた。




前書きにも書いていた特別編ですが、時系列はガン無視して書こうと思っています。
本編に繋がるかもしれませんし、繋がらないかもしれません。

とにかく、何かしらを。

詳しくは活動報告をご覧ください。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=230875&uid=80825


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変革

卒論を大学に叩き込んできたので恐らく卒業確定です。NKT……。

ようやく原作との乖離点が大きく出てきました。
ややこしくならないよう、細かく書いていければと思います。




 

 

 

 

「あの、クソガキ……ッ! 本当に送ってくるとは……!」

 

 ドレスローザの王宮の玉座で、ドフラミンゴの額に血管が浮かぶ。

 彼の目の前には、白い風呂敷に包まれていた彼の部下、ヴェルゴの頭部のみがあった。

 

「ドフィ……」

「それだけでもいい、なるべく静かな所に埋葬してやれ。ヴェルゴの頭部がその惨状ってことは、首から下は()()()()()()なんだろう」

 

 ドフラミンゴも認めるほどの実力者であったヴェルゴの頭部は、元の顔が分からなくなるほどに血や痣だらけになっており、歯もほとんど失い、舌まで抜かれていた。

 風呂敷に同封されていた手紙には、ジャックハートの直筆で海軍の裏切り者として処分したと書かれており、彼の手で行われた拷問によるものだと想像できた。

 

「ジャックハートはどうする」

「今回に関してこちらから復讐はできない。王下七武海と海軍は、協力関係のようで不干渉が暗黙の了解だ。そこに、俺の方からスパイを送っていたことがバレた」

 

 ドンキホーテ・ファミリーの最高幹部の一人であるディアマンテと共にヴェルゴの一件について話す。

 王下七武海が送ったスパイをよくも殺しやがって、とは流石のドフラミンゴも海軍に言えず。ドフラミンゴは長年相棒として活躍してくれたヴェルゴの仇すら取れなくなっていた。

 

「……ディアマンテ。"メラメラの実"に関してはお前に任せる。麦わらは次点でいい。もし大会に奴本人が出てくるのなら、最優先はジャックハートだ」

「了解した」

 

 普段は個性的な話し方をするドンキホーテ・ファミリーの面々であるが、死者が出たこと、そしてジャックハートが牙を剥きかけているという事実が事態を深刻にしていた。

 兄エースの能力を欲しがるルフィと娘のために実を欲しがるジャックハート。双方ともに同時に叩けると考えればタイミングが良いとなるのだが、先日起こったとある出来事によりそうとも言っていられなくなったのだ。

 

「やってくれたな、ロー……!」

 

 それこそが、ローとドフラミンゴとの間に発生した一種の契約。

 ローは捕らえたシーザーを引き渡し、ドフラミンゴは王下七武海を辞めるというそれは、一見成立しているようでしておらず、しかし第三者の手によって成立しようとしていた。

 そもそもドフラミンゴは自身の特殊な立場を使い、王下七武海脱退を誤報という扱いにしてシーザーを奪い返そうとしていた。

 だが、運はローに味方していた。

 

「あのジャックハートが誤報なら仕方ないと見逃すか……? 最悪、3人を奴にやってでも……」

 

 それこそが、ジャックハートの存在である。

 ローは、麦わらと同盟を組んでいるものの、自分の口から正式に発表していないため完全な黒ではない。

 しかし、ドフラミンゴの場合はジャックハートとの関係が長く、そして辞めるという情報が一度完全に流れてしまっている。

 極上の女3人を常にジャックハートの世話係としてドレスローザに置き続ける。そこまでして彼と交戦しなかったドフラミンゴだからこそ分かる、ジャックハートの異質さ。

 

「……ディアマンテ。コロシアムに向かう前に、一つ」

「どうした、ドフィ」

 

 ドンキホーテ・ファミリーの中でも"コロシアムの英雄"として圧倒的な強さを誇るディアマンテ。

 そんな彼がコロシアムに向かおうと席を立った時、ドフラミンゴが俯いたまま言葉を続けた。

 

「もし、仮にジャックハートが出ているのなら、負けろ。勝率やファミリーの誇りなどどうでもいい。出るなら奴はジャックスという名で出場するはずだ」

「……ドフィ、それは」

「お前を信用していないはずがない。だが、だからこそお前を失いたくはない」

 

 ドフラミンゴの発言は、暗にディアマンテではジャックハートに勝てないということを示していた。

 長年支えてきたドフラミンゴの言葉ゆえに平静を保っていたが、その意味を込められた言葉にディアマンテも表情を良くはしなかった。

 

「奴は、異常だ……。"悪魔の実"はともかくとして、なぜあいつが武器の類をあまり使わないか知っているか?」

「……」

 

 沈黙。

 ヴァイオレットやベビー5伝いに"悪魔の実"を食べない理由の大半はセックスを存分に楽しめなくなるからと聞いているが、それでも素手で闘う理由までは知らなかった。

 恐らくそれは、ファミリー内の男たちでは定期的に顔を合わせてやりとりをしているドフラミンゴしか知らないこと。

 

「楽しむためだ。殴る感触も、潰す手応えも、折る快感もな。武器を使うのは雑魚が多すぎて面倒になる時。それ以外は、敵のしぶとさと自分の力を確認するかのようにじわじわと嬲りながら殺す」

「っ……。分かった、ドフィ。そこまで言うなら、気をつけよう」

 

 海兵とは思えないような戦い方。

 その戦闘の真髄を知る者が少ないのは、大半が殺される対象だからである。ドフラミンゴのように、懇意にしているとはいえ、ジャックハートの戦いを近くで見て、無事でいる海賊の方が珍しいのだ。

 

「だが、用心に越したことはないが、奴一人にそんなに臆病になる必要はない。正式に王下七武海である限り、あいつは俺たちにそこまで大きく手は出さん」

 

 王下七武海。

 政府により海賊行為が特別に許可されている彼らを、海軍であるジャックハートが派手に裁くことはない。

()()()()()()がない限り、命や解散の危機に陥ることはなく、言い逃れが厳しい場合はジャックハートに限らず個人を()()()()()()()()()きた。

 そうして今まで狡猾にやってきたのが、このドフラミンゴというだった。

 

「ではディアマンテ。ここからしばらく先のことを伝えておく。トレーボルもよく聞いていてくれ」

「んねー。べへへへへ、ジャックハートもそうだけど、ローの方にも気をつけないとねー」

「そういうことだ。俺はこれから、ローが指定した場所に行く。コロシアムの方には恐らく、ジャックハート以外にも麦わらが行くだろう。"ハートの海賊団"の面々はいないだろうが、"麦わらの一味"がそろそろ動きを見せるはずだ。シュガーの護衛をしながらも、頼むぞトレーボル」

 

 いつにも増して真剣な雰囲気を醸し出すドフラミンゴに、付き合いの長い最高幹部である二人もいつもの口調での返事ができず、ただ、一つはっきりとした頷きを返すだけだった。

 

「……ところで、ヴァイオレットからの連絡はまだか?」

「んねー、べへへへ。2時間前から、まるっきりねェよぉ〜」

「そうか。……2時間、いつもの調子ならまだ盛っててもおかしくはないか。モネとベビー5はどこだ」

「いつもの女だけで羽を伸ばす時間とやらに出ているが……。なぜあんな要求を許可したんだ? ドフィ」

「……こうも大所帯では、窮屈だろうと思ってな」

 

 嘘である。

 あまりにも窮屈すぎる生活に女性陣から文句がでたのは事実であるが、原因は違う。

 ストレスを溜めた彼女たちを見たジャックハートが、参戦したコロシアムで大会でフィールドをうっかり()()させたためだ。

 これ以降何度も全壊するコロシアムを想像してしまったドフラミンゴは、買い物程度ならと女性陣に許可を出したのだ。

 

「まあそのことはいい。それぞれ、頼んだぞ」

 

 だが、今のドフラミンゴにとって大事なのは女性陣の動きよりもローや麦わらの動き。

 ジャックハートには女性陣を当てがっておけばしばらくは大人しくなるだろうと考えているドフラミンゴにとって、最優先事項はカイドウとの取引。

 

「フッフッフッフッ! 年貢の納め時だな、ロー……!」

 

 まずはローからシーザーを取り返すために、ドフラミンゴが動き出した。

 

 

 ◇

 

 

「ッ! ここ、は……! そうだ、ナミ、ロビン! モモッ!?」

 

 甲板に見回りに出た瞬間に襲われ、意識を失ってしまったチョッパーが目を覚ました。

 一瞬の出来事だったとはいえ、油断していたわけではない。それゆえに、チョッパーは目覚めた瞬間から最大限の警戒をしていた。

 

「ふぇ……! お、お兄ちゃん、タヌキさん、起きた」

「誰がタヌキだ! ……って、子どもか。いや、でも……」

 

 檻越しにいたのは、海軍の制服に身を纏った一人の少女。

 黒髪にぱっちりとした瞳。その他にも端正な顔つきをしているが、少し怯えたような様子を見せた彼女は、兄を呼んだ。

 

「ん、ありがとうスウェットリー。さて、"麦わらの一味"の船医、トニートニー・チョッパー。お前にはしばらくここにいてもらうぞ」

「っ、お前は……! モモは、ナミとロビンはどこへやった!」

「もう一人の子どもなら、父さんからの指令で、重要人物ってことで妹たちが締め上げてる最中だ。他の二人は……」

 

 スウェットリーの兄、ダレスが檻の中のチョッパーの言葉に返事をしていると、その部屋の奥にある扉が開いた。

 チョッパー自身、その音でようやく部屋全体を見渡すことができ、この部屋には自分が入れられている檻と扉以外にはほとんど何もないことが分かった。

 

「ねーねー、お兄ちゃん。あの子めっっっちゃくちゃ弱いんだけど」

「なのに威勢だけはいいし、妙に打たれ強いし。俺が止めなかったら今頃姉貴に殺されてたぜ? っつっても、今も半殺しのまま止められてるけど」

「お、お前ら! モモに何したんだ!」

「あ、タヌキくん起きたんだ。それにしても、判断が悪いねぇー。この制服着てるってことは、年齢に関わらず正式な海兵だってことは考えなくても分かるのに。海兵が海賊にすることはただ一つ、でしょ?」

 

 その扉から出てきたのは、スウェットリーに兄と呼ばれていたダレスよりも少し小さい二人の子ども。

 たった4人の子どもしかいないが、その全員が海兵の制服に身を包んでいた。

 

「……あ。ね、ねぇお兄ちゃん。このタヌキさん、ずっと気絶してたから、私たちのこと知らないんじゃ……」

「俺はトナカイだッ!!」

「あぁ、そうか。父さんが注意しろって一味だから本気でいったら、予想より随分と弱かったから、手加減ミスったんだった」

 

 モモの助を恐らく痛めつけていた少女と少年が、一番大きい少年の両脇に移動し、一番小さな少女が一番大きい少女の左腕に抱きついた。

 

「お前のお仲間にはもう紹介したが、俺はジョー・ダレス。海軍本部大尉だ」

「私はジョー・リリー。海軍"G-5"支部少尉だよ!」

「俺はジョー・アルカナ。海軍本部軍曹だ」

「わ、私は、ジョー・スウェットリー……。海軍本部の、伍長だよ」

 

 目の前の子どもたちの口から次々に飛び出る、海軍の階級名。

 大将や中将クラスではないものの、見た目の年齢から考えると簡単には起こらないであろう事態に、チョッパーは青ざめた。

 

「それと、今オルビアとベルメールをあやしてるのが、ハルディとノルディア。二人とも、私と同じ伍長」

「そうだ……! 二人は、二人の子どもは無事なのか!?」

「え……? 無事なのかって、なんで私たちが二人に酷いこと、するの?」

 

 他の3人には似ていない、怯えた様子で話すスウェットリー。

 それもそのはず、1人だけ年齢的にいえばまだ5歳程度にしか見えないのだ。

 

「なんでって、お前たちは海兵で、あの2人はナミとロビンの……海賊の子どもなんだぞ!?」

「え……?」

 

 チョッパーのその言葉にすら疑問を返すスウェットリーは、その後。

 

「あの2人は、パパと2人の間に出来た子だから、私たちの家族、だよ?」

 

 チョッパーにとって、最悪な知らせを言い放った。

 

「……え?」

「だから、ベルメールとオルビアは、私たちのパパと2人のお母さんとの子ども。……知らないの?」

 

 ナミとロビンの子どもが、海兵の家族。

 ずっと頑なに言おうとしなかった父親が海兵なら、納得がいく。

 だが、その人物がよりにもよって、なぜあのジャックハートなのか。

 

「そ、そんな……」

「リリー。うるさくなる前に眠らせてくれ」

「はーいっ」

 

 事の真相を聞こうとした瞬間、チョッパーの意識は絶たれた。

 最後に見たのは、リリーと呼ばれた少女が目を見開き、何かを発した瞬間。

 ぱたりと倒れたチョッパーは、再び眠り始めた。

 

「今、この船にいる子ども達って何人だ?」

「えーっと、私たちとハルディ、ノルディア、スピカにマーク、メドウィーにサロメア、ベルメールにオルビアと……赤ちゃんも入れたら、ハンコックお母さんの子のシャルロットと、マーガレットお母さんの双子のリリウムとルベルム、ランお母さんのファレノと、ポルチェお母さんのグード、コアラお母さんのアローとマキノお母さんのミルがいるから……19人? うわぁ、増えたねぇ」

「家にいる子たちも入れたら、もっといるけどなー」

 

 リリーの口から列挙される、ジャックハートの子どもたちの名前の数々。

 ダレスとリリーの二人が少し年齢的には抜けており、それ以外はほぼ腹違いの兄弟と考えると、凄まじい数の女性と父親が肉体関係を持っていることがよく分かる。

 

「それがどうしたんだよ兄貴。まだほとんど海兵にはなれねぇだろ?」

「いや、それがそうでもないらしい。ボニーさんが自信満々に父さんに話していたらしいんだが、能力の新しい使い方を覚えて、一気に使いやすさが増したそうだ」

「へぇー。ボニーさんの能力でどうなるんだろ」

「……分からん。だが、父さんがいいことを思いついたらしい」

 

 あまりにも増えた弟と妹。

 しかし、彼らはまだ血の繋がった家族。名前や顔を一致させるのは難しくない。ダレスやリリーにとって一番難しいのは、次々と増える母親たちの特徴を覚えることだった。

 その中には"悪魔の実"の能力者ももちろんいるため、その能力は完全に覚えきれていなかった。

 

 父の言ういいこととは何なのか。それを考えるリリーたちの部屋に、一人の来客が現れた。

 

「皆、わらわじゃ」

「あっ! ハンコックお母さん!」

「ふふっ。相変わらず可愛らしいの、お主は。一つ、速報でいい知らせがある。聞きたいか?」

「うんっ!」

 

 その正体は、ジャックハートと結婚して正式に妻となったハンコック。

 豊満な肉体を押し込める衣服は、珍しいというか何と言うか、露出は多いが異性を誘うようなものではなく、その額には汗が浮かんでいた。

 腕に娘であるシャルロットを抱きながら、女神のように優しい微笑みを子どもたちに向ける。

 

「たった今、家族がもう一人増えたようじゃ。元気な男の子。久しぶりの弟じゃの」

「ホントっ!? ……あっ、でもパパが今いないから、名前が……」

「大丈夫じゃリリー。すでに、ジャッ……、んんっ。あな、ではない。だ、旦那様から名前は聞いておるからの」

 

 リリーたちが知らされたのは、弟の誕生。

 アマゾン・リリー出身の者との間にできた子は皆女子であり、それ以外の母親との間にも妹ばかりが生まれており、弟の誕生は彼女の言葉通り久しぶりだった。

 いつも子どもたちの命名は父親であるジャックハートが行っているため、今回はしばらく時間がかかりそうだと感じていたリリーたちの懸念を他所に。

 

「名前は、ゲン。ジョー・ゲンじゃ」

 

 ハンコックは、この世に生まれた新たな命の名前を世界に知らせた。

 

 

 ◇ ◇

 

 

「あーあ。可哀想なレベッカちゃん。こんなむさ苦しいゴミみてぇな奴らと戦わされて、挙句視姦されてんだろ? 粗末なモンぶら下げて、思考回路もお粗末そのもの。てめぇらが俺のレベッカちゃんに指一本触れることすらおこがましいわ」

「ぐ、ガァアアッ!」

『つ、強い強い強いぃ〜!! やはり強い、強すぎるぞこの男ッ! 急遽体調不良から出場できなくなったレベッカ選手の代役として現れた、ジャックス選手! 着けている防具は顔を隠す仮面のみ! それでも強いぃ!』

 

 軍艦の中で新たな命が誕生した時、ジャックハートはコロシアムで行われている大会で暴れていた。

 元々レベッカが出場予定だったブロックに割って入ったのだ。もちろんレベッカは体調不良になどなっておらず、ヴィオラと共に抜け道から外に出て、ドレスローザ内を駆けていた。

 

「……マジで雑魚しかいねぇな。今まで何やってたんだよこいつら」

 

 ジャックハートの眼前にいるのは、そのレベッカの対戦相手であった者たち。

 "メラメラの実"の争奪戦に参加する者たち。その実力を少し楽しみにしていた部分もあるのだが、彼らでもジャックハートを熱くするには至らなかった。

 呆れたようにため息を一つ。それと共に、今後の予定を大まかに確認していく。

 

「カリファちゃんとレベッカちゃんも妊娠したし、コアラちゃんとマーガレットちゃんともする約束をしてるし、何よりヴィオラちゃんとモネちゃん、ベビー5ちゃんをたっぷりと愛さなきゃいけぇねんだ。こんなとこで雑魚の短小どもと遊んでる場合じゃねぇんだっての」

「随分と、余裕だなっ!」

「おっと」

 

 片手で自身の肩をマッサージしながらもう片方の手で相手の首を掴み上げ、握力だけで骨を木っ端微塵にへし折り、足の下にはそれぞれ肩を踏み砕かれた戦士が二人。

 用意されている武器を用いても良いというルールだがジャックハートは一切使わず、己の肉体だけで参加していた。

 ジャックハートとしての素性を隠し、ジャックスと名乗るための仮面だけを被っていたジャックハートに、一人の男が切りかかった。

 

「お前……キャベンディッシュか。懸賞金高々2億ちょっとの」

 

 肩をマッサージしていた手でキャベンディッシュの愛刀、デュランダルの刃を掴む。

 圧倒的な膂力に"武装色の覇気"が加わったその力は、実力者でもあるキャベンディッシュですらぴくりとも刀を動かせないほどだった。

 

「ふっ。それは世界政府の見る目がないだけさ。"最悪の世代"なぞばかり注目をしているから僕のような大スターを見落としてしまう」

「おーそうか。……でもまあ、政府の認識も正しいだろ」

「何?」

 

 美しき海賊団船長、キャベンディッシュ。懸賞金2億8000万ベリー。

 ジャックハートが中将時代に聞いた名前ではあるものの、キャベンディッシュを捕らえるためにジャックハートが駆り出されることは()()()()

 つまりはその程度だというのがジャックハートの認識であり、その認識は今も変わらなかった。

 

「悪ぃがお前には、()の素質がないからな。いや、王より強くなる素質か?」

「何をふざけたことを……! ならその素質とやらを見せてやろう!」

 

 ジャックハートの胴体に蹴りを入れ、強引に刀を引き抜いたキャベンディッシュ。

 彼の美しい見た目から繰り出される華麗な技。まるで一つの舞踊のようにも感じられるが、生憎ジャックハートは目の前の男に動かされる何かを感じなかった。

 

「はぁぁぁあああッ!」

「……違ぇよ。素質ってのは──」

 

 眼前に、一直線に迫る剣先。

 容姿だけではなく実力も兼ね備えており、中でも剣術は抜群の腕前を誇るキャベンディッシュ。

 そんな彼の本気の突きは、ジャックハートの喉元どころか、彼の間合いにすらも入れなかった。

 

「──こういうことを言うんだ」

 

 キャベンディッシュだけではなく、リングの上に沈んでいく戦士たち。

 中には呼吸をできているのかも怪しい状態の戦士もいる中、それは一部の観客席にまで及んだ。

 

「おい実況。悪いな、一瞬で終わっちまったわ」

『な……何と言う、ことだ……! 謎の仮面戦士、ジャックス……! 以前からその実力は折り紙付き、しかしっ! 今日改めてそれが明らかになったぁー!』

 

 ジャックハートが放ったのは、ただの"覇王色の覇気"

 実力者揃いの中でその全員を確実に気絶させる練度にまで引き上げられたそれは、客席前方に座っていた一般市民の意識すらも刈り取った。

 

『Cブロックでも見た、は、"覇王色の覇気"〜ッ!! な、なんと、混戦が予想されたDブロックを制したのは、体調不良のレベッカ選手の代役として急遽参戦した、仮面の男、ジャックスだーッ!!』

「あんなクソみてぇな"覇王色"と一緒にすんじゃねぇよ」

 

 歓声を背にコロシアム内部へと引き上げるジャックハート。

 このコロシアム内には現在ジャックハートと関係を持ったことがある女性は誰一人としておらず、また、退屈な遊びから解放されたとしても待っているのはむさ苦しい戦士たちの姿と臭い汗の匂い。

 

「……最悪だぜマジで。レベッカちゃんがいるのとリリーの誕生日プレゼントのためじゃなきゃ、こんなとこ二度と踏み入れたくねぇ」

「いやぁ〜、お前強いなぁ〜」

 

 仮面の下で嫌悪感丸出しの顔を浮かべる彼の元に、一人の小さな男が現れた。

 その男は、すでにCブロックを勝ち抜き決勝進出を決めていた剣闘士、ルーシー。

 だが、彼の粗末な変装などジャックハートには全て見透かされており、彼が"麦わらの一味"の船長、ルフィであることは一瞬でバレていた。

 

「……ルーシーか。お前こそ、素晴らしい戦いだったじゃないか」

「お、そうか? ま、決勝でやるとしても、勝つのはおれだけどな!」

「戦い方を見る限り何かの"能力者"のようだが……"メラメラの実"は要るのか?」

「当たり前だっ! って、え〜っと……、あ、そうだ。仲間が欲しがってんだ」

「ほう……。見ない顔だが、海賊か何かでもやってるのか?」

「おうっ! 船長だ!」

 

 だが敢えて正体を突かず、泳がせる。

 ジャックハートも正体を知られない程度に、ほんのりと情報をルフィに染み込ませていく。

 

「なるほどな。"新世界"でも無事なら、さぞかし優秀な船長なんだろう」

「しししっ! おれの仲間たちがすごいんだ!」

「となると、とびきり優れた航海士でもいるのか?」

「あぁっ! ウチの航海士はすっげぇんだぞ!」

 

 至る所まで知ってるよ、と心の中で呟き、ルーシーとの会話を続けていく。

 二人がいるリングへと続くゲート付近からは、着々と決勝の準備が進められていく様が見える。

 

「それは是非、一度会ってみたいものだ」

「なんでだ?」

「さぁ。なんとなくだ。……だが、良い出会いになると思うだけだ」

「ふーん。変わってんな、お前」

 

 リングの準備が整い、観客のボルテージも最高潮まで高まっていく。

 そんな中、ジャックハートはルーシーに一つの言葉を残した。

 

「あぁ、そうそう。ルーシー、海賊をやってるなら一つ、面白いことを教えてやろう」

「面白いこと? なんだそれ」

「海軍のことだ。世界徴兵で戦力の底上げをしただろう? だが、()()()()()()()()()()()()()。なんでも、考えられない経歴を持つ人材が育っているそうだ」

「へぇー。ま、おれ達の邪魔するなら、海軍でも他の海賊でも、ぶっ飛ばしてやる!」

 

 その言葉にジャックハートは、仮面の中で薄らと笑みを浮かべた。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「あら、サカズキ元帥。随分と書類が残っちゃってるじゃないっすか」

「クザンか。ジャックハートの奴がよこしたモンじゃ。全く、わしに何も言わんとこんなもんを上に通しよって……」

「どれどれ……ッ!? これ、マジっすか?」

「大マジじゃ。戦力としては確かに数えられるが、経歴が経歴。まあ奴の監視下にあるなら大丈夫じゃろうが……」

「上……ってか天竜人がよく通しましたね」

「その天竜人からの命令じゃ。ジャックハートの要求は全て呑め、と。一月の間だけでいいらしいが、その間に決定されてしまえばな」

 

 時は少し遡り、ジャックハート達がドレスローザに入る少し前。

 パンクハザードを出発した辺りとほぼ同時刻。海軍本部にある元帥、サカズキの部屋に、部屋の主であるサカズキと、大将であるクザンがいた。

 時刻は夜。何か連絡はないかと確認に来たクザンの目に止まったのは、大量の書類。

 それに目を通した彼は、言葉を失った。

 

「まぁ〜これを飼い慣らすことが出来るのはジャックハート大将だけでしょ」

「じゃからわしも、賛成したくはないが納得はできちょる。判を押すという選択肢以外もないけぇの」

「にしても凄い人数だ。……15人以上っすか?」

「あぁ。しっかり海兵として働いてくれるなら何も言わん。制服についてもじゃ」

「え、いいんすか?」

「全員を海軍の制服に統一した方がめんどうじゃろう。ジャックハートが」

 

 リストに書かれていたのは、見知った名前。

 しかし、滅多に顔と顔を合わせて話すことはなく、むしろ言葉よりも遠くから聞こえてくる喘ぎ声の類のものを聞くことの方が多い人物たち。

 

「元九蛇、ボア・ハンコック()()らは、いい活躍をしてくれると思うちょる。気に入らんが」

「実力は間違いないでしょう。諸々の管理はジャックハート大将に任せましょうよ」

 

 その人物たちこそ、今現在ジャックハートに付き添っている女性たち。

 彼女たちの中で過去に海兵ではなかった者たちが、正式に海兵として認められたのだ。

 

「ドレスローザに革命軍が数人いるとの情報もあるけぇの、上手く潰すじゃろ」

「……そうっすね」

 

 それぞれに女性の顔とこれまでの経歴などが書かれた書類の中の一枚に注目する。

 そこには、海軍本部准将となったコアラの情報が書かれていた。




ドレスローザ編めっちゃ長くなりそう()

メラメラの実がどうなるかや、原作に出てくるドレスローザの主要キャラがどうなるのか……。

えっぐいことなりそう。

コメント、評価などよろしくお願いします!


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圧砕

【悲報】サボくん。

ここから頂上戦争の時みたいに、戦闘メインになります。ゲス成分多めになるかも知れないです。

前に言っていた特別編ですが、アンケートとルーレットにより、決定致しました。
ハーレムで、ナミ、ビビ、レベッカ、ハンコック、カリーナです。ナミさんのメンタルが死んでしまう。気が向いたら、カリーナを小紫、アインに変えた物も書きます。

とある読者様から頂いた、恩赦組を含めた今現在の階級を書いておきます。

中将:ハンコック、アイン、カリファ
少将:ペローナ、たしぎ
准将:サディ、コアラ、
大尉:ドミノ、マーガレット
中尉:カリーナ、バカラ
少尉:ボニー、ポーラ、キキョウ
准尉:ラン、ネリネ
曹長:バレンタイン
軍曹:ポルチェ

現状決めてるのがこんな感じです。九蛇勢やっぱやばすぎんよ〜。


 

「サボさん……」

「分かってるッ! クソ、なんでだ……! 起こっている事態が想定外すぎる……!」

 

 ドレスローザの一角。

 とある一件のためコリーダ・コロシアムに向かおうとしていた革命軍参謀総長、サボの前に、会いたいようで会いたくなかった人物が現れた。

 

「久しぶりだね、サボくん」

「あぁ。本当にな、コアラ……! なんで、その格好を……」

「え、コレ? ジャックハート様に用意してもらったの、似合ってるでしょ?」

「助けに行けなかったことは本当に申し訳なく思っている……。だが、それでもお前が、なぜ……」

 

 その人物こそ、サボたち革命軍が唯一ジャックハートに奪われてしまった仲間である、コアラ。

 彼らと行動を共にしていた時は革命軍の幹部としての地位にいた彼女は現在、海軍の制服に身を包んでいた。

 

「なぜって、そんなことも分からないの? 革命軍の参謀も落ちちゃったんだね」

「お前も、お前も革命軍の仲間だろ!?」

「んー、今はもう違うよ。私は()革命軍幹部のコアラ。今は海軍本部准将兼ジャックハート大将専属秘書兼お世話係として、ジャックハート様の側にずっといるんだ」

 

 元革命軍幹部という言葉が、サボの心に重く突き刺さる。

 テキーラ・ウルフで、極寒の中コートの下に何も着ていないロビン一人しか保護できなかった時に、彼女を部下に預けてでも強引にコアラを探すべきだったという強い後悔に駆られる。

 その後、月日が経つに連れてお腹が大きくなっていくロビンを見て、とんでもないことになってしまったと後悔したことが追いかけるように思い出される。

 

「戻ってきてくれ、コアラ!」

「え、なんで?」

「なんでって、お前は革命軍の……」

「だから、さっきも言ったけど私は()革命軍幹部ってだけ。そもそも私がどうするかなんて私が決めることだし。……まあ、その要らない過去もジャックハート様が消してくれたんだけど」

「何……?」

 

 過去を消す。

 そんなことが実際にできる人間などいるはずがなく、そんな"悪魔の実"もない。というのはサボも分かっており、その言葉が何を示しているのかを単純に聞きたかっただけなのだ。

 

「サボくん、最近懸賞金グッと上がったでしょ? なんでか知ってる?」

「知らん。というか、それがどうしたんだ」

「ふふっ、実はそれが結構関係あるんだ。教えてあげるとね、私が()()()()。私を一般人に戻す代わりに、元々私に掛ってた懸賞金の倍額をサボくんに上乗せ。結構動きにくかったんじゃない?」

「お前……! もう、革命軍に戻ってくる気はないのか!?」

「何を今更。……当時は私がどこでどんなことされてるかすら掴めなかった無能な集団に、戻るわけないでしょ?」

 

 ジャックハートが一時的に天竜人に無条件で許可を得られるというこのタイミングで行ったのは、自分が気に入っている女性たちを賞金首ではない、一般人に戻すこと。

 その全員がジャックハートの元にいるため賞金額自体に意味はないが、海兵になるという条件のためにそれが必要だったのだ。

 

「それに、新しい家庭も大切にしなきゃいけないし、気の合う同性の友達もいっぱいいるもん」

「新しい家族って、まさか……」

「うん。紹介してあげられないのが残念だけど、少し前に男の子が産まれたの! テキーラ・ウルフでジャックハート様と出会ってからほぼ毎日シてたから、当然といえば当然なんだけど」

「やめろっ! ……もう、いい」

 

 ずっと後悔の念を抱き続けていたコアラが自分たちを売り、挙げ句の果てに憎んでいたはずの相手との間に子どもを授かり、出産していた。

 その事実をいきなり突きつけられたサボは、耐えきれなかった。

 

「すまなかった」

「わっ、謝らないでよ。頭も下げる必要ないし。下げるくらいなら──」

 

 彼が行ったのは、謝罪。深々と彼女に向けて頭を下げ、誠意を見せる。

 彼女の人生を狂わせてしまった。ひどい目に合わせてしまったという考えの元だ。

 しかし()()コアラにとってはそうではない。愛しの人となったジャックハートと同じ職業になり、その間に子どもを授かり、これからも永遠の愛を誓っているのだ。

 だからこそ彼女は、背中の『正義』を振りかざす。

 

「っ、サボさん!」

「──その首、私に頂戴?」

「くっ!?」

 

 ブレるコアラの足元を見て、二人から少し離れた場所でコアラの出方を伺っていた部下がサボの名を呼ぶ。

 コアラのその可愛らしい見た目からは想像し難いが、彼女はこれでも魚人空手の師範代。そんな彼女がジャックハートと共に寝食を共にし、訓練を重ねてきたことで、彼女の実力は革命軍時代と比べると異常に伸びた。

 六式、覇気、武術。

 "悪魔の実"を食べていない面々の中で、限りなくジャックハートに近い戦い方を再現できるまでに成長したのだ。

 

「今のは名付けて、魚人空手・二万枚瓦回し蹴り飛ばし。ジャックハート様が直々に、朝も昼も夜も付きっきりで密着して教えてくれた"覇気"と、"六式"の嵐脚。……今の私は、強いよ?」

「……もうお前は、海軍側の人間ってことでいいんだな?」

「だから、最初からそうだって言ってるでしょ? 私だけじゃなくて、元海賊の人たちもみんなだよ。何かしらの階級がみんなに与えられてるし、ジャックハート様からの教えも貰ってるから」

 

 頭を下げるサボを狙った、殺意だけが込められた嵐脚。

 ただ革命軍を捕らえるために尽力しようとする1人の海兵が、そこにいた。

 

「……改めて。海軍本部准将、コアラ。サボくんは名乗らなくてもいいよ」

「やる気、なんだな」

「うん」

 

 相対する2人。

 しかしどこか、サボから戦意を感じない。

 

「死んでも知らないよ、サボくん。そんなに気を抜いてて」

「随分と俺のことを気にしてくれるんだな、コアラ准将。てっきり完全に海兵に染まったと思ったんだが」

「いや、サボくんじゃなくて」

 

 女性だからか、はたまた元仲間だからか。コアラの目はサボに敵意がないことを見抜いていた。

 煽ってはみるものの、それすらも好意的に捉えられてしまう。

 あまりの甘さに、つい本来の予定には無かった工程を挟んでしまった。

 

「その子だよ。……名前、なんだっけ」

「えっ……?」

 

 コアラの視線が、先ほどサボに危険を知らせた部下の方を向く。

 その目には一切の興味も示しておらず、病的なものも感じられず、ただただ興味のない対象としてその青年を捉えていた。

 

「言ったでしょ、()()()()()()()って。他のみんなもそう。ジャックハート様と同じ職業になって、ちゃんと一人の女として愛してもらうために必死に頑張ったし、頑張ってるの。油断してると、痛い目見るよ」

「何を──」

 

 するつもりだ、とサボが聞こうとした瞬間、背後で嫌な音がした。

 サボがずっと見ていたコアラは何もしておらず、自分でも"武装色"ほどは鍛えられていないがある程度は扱える"見聞色"にも変わったものはなかった。

 発砲音もなし。ならばなぜ、部下の首が落ちる音がしたのか。

 

「……何を、した……!」

「海賊にもいるけど、ウチにも腕のいい狙撃手がいるの。それも弓の。ジャックハート様と会う前から"武装色"が使えてて、そこからどんどん実力が上がったんだ」

 

 二人の周囲で慌ただしく市民たちが逃げ惑う。それもそのはず。一触即発の場面を野次馬のように眺めていたら、少し離れた場所にいた青年の首が文字通り飛んだのだから。

 その下手人はマーガレット。アマゾン・リリーにいた時の水着のような衣服ではなく、しっかりとした海軍の制服に身を包んだ彼女が、建物の屋上から矢を放ったのだ。

 

「コアラ、お前……ッ!」

「散々注意したのに逆ギレって、そんなんじゃ女の子に嫌われるよ?」

「はぁっ!」

 

 ようやく感じた、海兵としての敵意。

 自分どころか革命軍そのものを完全な敵として認識しているのだと理解したと同時に、サボは飛び出していた。

 

「俺が甘かったよ……! お前はもう、革命軍に何の未練もないし、あいつに出会ったことを不幸にも思ってないんだな!?」

「だからそうだって。ホント、甘いよねサボくん」

「なら俺も、お前を敵だと思うぞ、コアラ!」

 

 手に持った鉄パイプを振り上げ、彼女に向かって振り下ろす。

 敵だと思う。言葉にするのは簡単だが、実際に行動に移すのは難しい。

 

「っ!」

 

 二人に動きがあったのはほぼ同時。

 振り上げられた鉄パイプが頭部めがけて振り下ろされる直前に、コアラが腹部を庇うように屈んだのだ。

 その姿は、まるで子を守る母のよう。

 それを見たサボは、反射的に動きを止めてしまった。

 

「ふふ、なんてね」

「なっ……! ぐぅッ……!」

 

 元仲間であった子持ちの女性が、腹部を庇う素振りを見せる。

 先ほどの発言から、もうすでに二人目を妊娠しているのかと思い込んでしまったのだ。

 結果、ただ力を溜めていただけのコアラに隙を見せる形となってしまい、あばらに強烈な一撃をもらうこととなった。

 

「まだお腹の中に赤ちゃんはいないよ。出産してからエッチしてないし、ジャックハート様と頑張るのはこれからだから」

「ぐ、ぁ……」

「これ、"武装色"を鍛えたらこうなったんだけど、効いた?」

「……あぁっ! あばら数本が折れて、肺から酸素が一気に抜けたからな……!」

 

 コアラは女性であり、必然的にその拳は男のそれと比べると小さくなる。

 そのため、鍛え上げられて男と変わらない強さで拳を振るうことができるようになれば、拳が小さいコアラの方がより深く突き刺さり、痛みも感じやすい。

 

「じゃあここから、追撃の一打」

「クソッ……!」

「魚人空手奥義・大時化(おおしけ)

「が、はぁ……っ!」

 

 その拳から伝わる、サボの内部への第二撃。

 肋骨を折り、肺を突き上げた拳から発せられた衝撃は、肝臓や膵臓、腎臓にまで伝わり、技名の如く彼の内臓をかき乱した。

 

「うぐ、ぁ……オエ……っ!」

「殴り合いじゃ男の人に勝てないし、中を潰すしかないでしょ?」

「これぐらいで、終わりだと思うなよ……!」

 

 蹲ったものの、なんとか立ち上がるサボ。

 口の端から血を流しながら鉄パイプを手に持ち、コアラに向かう。

 

「油断しすぎてたか……」

「そういうこと。でも、私の役目はとにかく一撃入れること」

「何……?」

 

 目の前のコアラにのみ注意を向けていたため、背後にまで気が向いておらず、()()()()()攻撃に気づかなかった。

 白い何かがサボの胴体を通った後、再び地面に膝をついてしまった。

 

「すまねぇコアラ……」

「これで良かったのか?」

「うんっ。無力化するにはペローナさんが最適だから」

「ふーん。まっ、そういうことならいいけど」

 

 建物の影から出てきたのは、シャボンディ諸島から魚人島、パンクハザードにかけて無事ジャックハートに落とされてしまったペローナ。

 自身の悪魔の実である"ホロホロの実"の能力で生み出したゴーストが身体を通ることで、技を受けたものがネガティブ思考になるというもの。以前ジャックハートに彼を無条件で無力化できる技と評価されていた物が、彼の力になっていた。

 

「それにしても、ペローナさんってその技ジャックハート様に使わなかったんですね。捕まった時は海楼石がありましたけど」

「冷静に考えてジャックハート様をネガティブにしたとして、逃げられる気がしなかったしな。それに、女の中にも私より遥かに強いのもいるし、ジャックハート様一人をそうしたとして、絶対ヤバイことになるし」

「あはは……。まあ、そうですよね」

「ホラ、さっさと運んで次のとこ行かなきゃいけないんだろ?」

 

 パチン、とペローナが指を鳴らすと、ネガティブになっていたサボを囲んでいた大量かつ巨大なゴーストが爆発した。

 本格的に鍛えるまでは衝撃波程度の技だったが、そこに"覇気"が加わることで威力が遥かに増したものとなっていた。

 

「いくらサボくんでも、内臓損傷と脳に直接衝撃を受けたらしばらく起きないよね」

「念のため手錠をしておこう」

 

 サボを無力化したことを確認して建物から降りてきたマーガレットが慣れた手つきでサボの手首に錠をかける。

 悪魔の実を()()()()()()()()()()()が拘束力も高いため海楼石の錠を使い、離れたところで待機していた男性海兵がサボの身体を担ぎ上げた。

 

「ジャックハート様は今確か、コロシアムにいるのか。私たちはこれから……」

「"メラメラの実"の争奪戦に来ている海賊たちを捕らえるために、ドレスローザ内をパトロールです!」

「うへぇ……。私たちだけでか?」

「んー、何人かの子どもたちにも手伝ってもらうみたいですけど……」

 

 ペローナ、マーガレット、コアラの3人で並びながら軍艦へと向かう。

 慣れない海兵の制服であるが、嫌な気はしない。元々賞金首であったものやそうでなかったものもいるが、公的な"正義"の証である制服に身を包む感覚に、優越感に浸っていた。

 

「さっさと戻って、次の準備をしよう。任務がすぐ終われば、またジャックハート様に愛してもらえる」

「多分無理だぞー。ジャックハート様、ここにお気に入りの子がもういるって言ってたし、その子を可愛がってやるって意気込んでたから」

「何!? いつ、聞いたんだ」

「この前たしぎと抱いてもらった時だな」

「そうか。……また、愛してもらう頻度が減るのかな」

「ジャックハート様なら、私たちがちゃんとしてれば大丈夫です! 今がとびっきり忙しいだけらしいですから」

 

 女子3人が喋りながら歩く姿は、海軍全体でもジャックハートの近辺でしか見られない。

 さらに最近はその面々も顔ぶれが増え、揃いも揃って美少女だらけ。そんな彼女たちが猥談を繰り広げている場面も海軍本部内ではお馴染みである。

 

「ちなみに、いつ頃落ち着くんだ?」

「王下七武海に首輪をかけた後、四皇に契約をふっかけ、"最悪の世代"やらその他諸々を叩き潰すそうですよ。今後の予定としては」

「あっ、カリファさん。……それって、いつ暇になるんですか?」

「……私には、分かりません。それでも基本は船の中、海の上でしょう。やることが限られる以上、することは一つです。」

 

 軍艦に近づいた3人に、甲板から飛び降りた人影が一つ。ジャックハートとの付き合いが長いカリファが悪い知らせを告げる。

 想像以上の激務。他の大将は何をやってるんだという仕事量と、常人のそれを遥かに超える鍛錬量、定期的に行われる凄まじい頻度のセックス。

 今や完全に彼に堕ちてしまった彼女たちは、愛する人がぶっ倒れてしまわないか心配になるとともに、その光景が思い浮かばずに意識から消え去った。

 

「とにかく、パトロールに行きましょう。()()()()()()ようですし、たしぎやポルチェたちもそろそろ出てくると思います。船内で軽く休憩を取ったら、お願いします」

 

 そう言い残し、カリファが"剃"で消えた。

 ジャックハートによる海兵の補強、増員。

 より大きく戦力が上がった船に、3人は再び戻った。

 

 

 ◇

 

 

 彼女たちが軍艦の近辺で動きを見せている中、その船の主人はコロシアムで暴れていた。

 "メラメラの実"を賭けた争奪戦。

 Aブロック勝者、ジーザス・バージェス。Bブロック勝者、バルトロメオ。Cブロック勝者、ジャックス。Dブロック勝者、ルーシー。そして、ドンキホーテ・ファミリーの最高幹部として参加する、コロシアムの英雄、ディアマンテ。

 以上5人による乱戦は、過去史上最高レベルの混戦になるだろう、というのが大半の観客の予想だった。

 しかし、そんな常識内の予想では彼を測ることはできなかった。

 

『な、なんということだ……。文字通り、圧倒……ッ! 一切不明の正体から、一時期ファミリー入りすらも考えられていたという噂も流れてしまうほどの実力者! 仮面の男、ジャックスが、強すぎるー!!』

 

 先ほどまで行われていた予選と変わらないフィールドに、5人の選手が……否。一人だけが立っていた。

 中央に立つジャックスを囲むように、満身創痍の4人が這いつくばりながら彼を見上げていた。

 

「おいおい……。とんだ期待外れだぜ、ディアマンテ。テメェならちょいとは楽しめるとは思ってたんだが」

「残念だったな、俺もまだ死にたくはない。"メラメラの実"を取るならさっさと取って、優勝を決めてくれるとありがたいんだが」

「断る。せっかくテメェら海のゴミをまとめて公開処刑できるってのに、俺がそれをしねぇ選択肢がないだろ。せっかくお前のボスが王下七武海を辞めたんだ。王宮に行く度にキモいおっさん見させられたストレス発散でもさせてもらうわ」

 

 今ここにいるのは、素性を隠しているジャックスとルーシー以外、全員が海賊。さらにそのルーシーもジャックスには海賊だとバレている。

 だが、そのジャックスもその中の一人であるディアマンテには素性がバレている。

 

「ま、待て! あの報道は誤報だ! 今日訂正があり、ドフィは王下七武海を辞めていない!」

「はぁ? 公式な発表は脱退までだっただろうが。大体、国内だけのCP0使った小規模のお知らせなんざ誤報の訂正とは言わねぇよ。一旦抜けたんなら正式に認定し直してもらえや。テメェら海賊に都合の良いようにできてるわけねぇだろカス」

 

 バージェスとバルトロメオ、ルーシーよりも比較的傷の浅いディアマンテに話を振り続けるジャックス。

 彼が行っていた戦闘は至ってシンプルそのもの。他4人の攻撃を全て受け、躱し、自分の攻撃を当てるだけ。

 

「ん〜……。足りんなぁ。ま、60点ってとこか」

「お、おいジャックハート。お前、一体何が望みだ? 金か、女か?」

「本名で呼ぶなよアホ。っつーかその両方とももう今は十分足りてるし、一味の幹部がそれを交渉のタネに使うって時点で話にならんわ」

「ハァ、ハァ……! い、今っ……なんつったべ……!」

 

 ディアマンテとの会話の中で漏れてしまった彼の本名。

 と言っても、彼自身はそこまで必死に隠し通そうとしていたわけではない。偽名を使っているのは何も知らない一般市民に騒がれたくないから。そもそも、ドフラミンゴ本人に許可をもらっているのだ。

 

「ジャック、ハート……!」

「あ? バルトロメオか。"バリバリの実"を食った。まあそのバリアも攻撃に反応できなければ意味ねぇだけだが」

「ゼェ、はぁ……。海軍本部、大将が、なぜここにいるべ……!」

「ウィハハハ……、そういうことか……!」

「お、おまえ〜。こんなとこにも来てたのか……」

 

 三者三様、様々は反応を見せるが、その目から闘志は消えない。

 理由こそ違うものの、ここにいる全てのものが"メラメラの実"を欲しており、そのためには倒さなけらばならない相手なのだから。

 

「悪ぃな。ちょいとこの島には欲しいものが多すぎたんだ。許してくれよディアマンテ。俺とドンキホーテ・ファミリーの仲だろ?」

「……ちなみに、何が欲しいか聞いても良いか?」

「聞かない方がいいと思うぜ。ま、女のためだってのは色々当てはまってるがな」

 

 娘、リリーのための"メラメラの実"。

 海兵として働き始めた女性陣の実績を残す場。

 そして、レベッカ、ヴィオラ、ベビー5、モネを連れ出す為。

 などの理由は様々あるが、とにかく彼がすべきことはただ一つ。

 

「最近調子乗りすぎだって、言葉じゃ分からねぇだろあのおっさん。だから、他の王下七武海への牽制も込めて見せしめだ。安心しろよ、天竜人から許可は得てる」

「何……ッ!?」

「『知りすぎてる奴をお前が仕留め、インペルダウンに入れるなら安心だ』ってよ。ケハハハ、見事に信頼されてねぇな。さすが海賊」

 

 ドンキホーテ・ファミリーを、今日この場で叩き潰すこと。

 元より、ジャックハートにとって価値が無くなりつつあった男。このタイミングで懸賞金が復活し、捕まえる大義名分も出来たのだ。動かないはずが無かった。

 

「あ、あの3人はどうするつもりだ?」

「あぁ、そう言えばそうだったな。さっき連絡があって、偶然リク王の件についての重要参考人と、3人の賞金首が子ども達と街を歩いていたから捕まえた、って連絡があったんだ。今頃、俺の部下が事情聴取をしてるとこだろうよ。俺も戻り次第、隅々まで調べ尽くしてやる」

「そんなことが、許されるか……!」

「許されるだろ。所詮テメェらは鼻つまみ者の海賊で、俺は世間一般の味方の海兵さん。怪しいのは徹底的に調べ、悪を世に蔓延らせるわけにはいかねぇのよ」

 

 コロシアムから出たレベッカとヴィオラは、偶然街を歩いていたモネとベビー5と偶然出会い、さらに自分たちの子を偶然海軍が保護しようとしていた場面に出くわしてしまい、力及ばず捕らえられてしまったのだ。

 その後たしぎにより様々な書類作成や手続きが行われ、完全に海軍に拘束されてしまうこととなった。

 

「今ここに来てるもう一人の大将、イッショウさんは市民を守るのを優先するとか甘いこと言ってるが、俺はそうじゃねぇ。テメェらみたいなのがいなくなれば、世界は平和だ。お宝探しなら冒険家ごっこでもやってくれや」

「い、やだ……! おれは、海賊なんだ……!」

「る、ルフィ先輩……!」

「おーおー。俺には分からんが一体海賊に何の魅力があんのかねぇ。こうして海軍と世界政府に叩き潰されるだけのただのお尋ね者じゃねぇか。ま、この話は平行線になるか」

 

 ルーシーに釣られるように、バルトロメオも立ち上がる。

 戦況がどう動くか様子を窺っていたバージェスも立ち上がり、再び戦闘が開始されようとしていた。

 

「とはいえ、もうテメェら相手に今は燃えねぇよ。大人しく眠ってろ」

「くぁっ……!」

「は、"覇王色"……ッ!」

「ついでに下も壊すか。よっ」

 

 放たれる、"覇王色"の覇気。同じく"覇王色"を持っているルーシーは辛うじて意識を保つことができたものの、他の3人にはもちろん通ってしまう。3人ともに実力者であるため、完全に意識が断たれはしないものの、動きが鈍る。

 そこに追撃するように、フィールドが砕かれる。ジャックスが地面を足で強く踏み、その衝撃が同心円のように広がっていく。

 

「あっ! おい!」

「テメェはしぶといからな。落ちろや」

「ガッ!?」

 

 唯一動ける状態にあったルーシーをコロシアムの場外にある海に叩き込む。

 その海には予選の時にも放たれていたリトル闘魚たちよりも遥かに獰猛な闘魚が潜んでおり、ジャックスによって傷を負わされた彼らに襲い掛かる。

 

「う!」

「ぐあぁっ!」

「ケハハハハハ! 魚ぐらい何とかしろよ。海賊だろ?」

『あ、あぁ〜っと! 仮面の男、ジャックス! ただ地面を踏んだだけでリングを粉砕! 満身創痍の4人を海に叩きこんだぁー!』

 

 "悪魔の実"を食べておらず、かつ身軽に動けるのは参加者の中でジャックスのみ。バージェスは重い筋肉の鎧により海と闘魚と格闘しており、まともに動けるのは"月歩"を使えるジャックスだけだった。

 4人と闘魚を空から見下ろし、"メラメラの実"が入った宝箱をくくり付けられた闘魚以外に"覇王色の覇気"を何度も放つ。

 連発による疲労など一切感じさせないほどの余裕を見せるジャックスに、"メラメラの実"を持った闘魚が襲い掛かる。

 

「待ってたぜ。よっと……これで優勝だろ?」

『ここで! 宙に浮くジャックスに襲い掛かった闘魚を仕留め、その背にあった宝箱を奪い取ったー! まさに圧倒的! 予選、決勝共に無傷! これ以上の強さを欲するのか、ジャックス! 優勝〜〜!』

「違ぇよ。これは、娘のだ」

 

 闘魚から取った宝箱をそのまま抱え、月歩でコロシアムを上から脱出するジャックス。

 コロシアムから出るタイミングで仮面を放り捨て、外に待機していたアインの元に降り立つ。

 

「お疲れ様、ジャックハートくん。どうだった?」

「どうもこうもねぇよ。いつも通りのゴミどもだった。癒してくれよアインちゃん」

「もう、後でね」

 

 慣れた手つきでコロシアムで着ていたマントを脱ぎ、アインが持っていた"正義"のマントを身に着ける。

 コロシアムからはリングは大きく破壊されたこととディアマンテが負けたこと、さらに優勝者が逃げたこともあり悲鳴や歓声が入り混じった凄まじい声が漏れているが、もう関係のないこと。

 

「これからどうするの?」

「ローんとこにはイッショウさんが行ってるし、ドフラミンゴを捕らえる準備もできている。あとはストレス発散がてらにボコって終わりだ。……って、なんか騒がしくないか?」

「ドンキホーテ・ファミリーの幹部の能力でおもちゃに変えられていた人間が、元に戻ったのよ。おかげで国中大パニック。王下七武海かどうかなんて関係なく、捕まえる理由はできたわ」

「なーるほど。ヴィオラちゃんから俺がコロシアムにいる間、何が起きたか聞いてねぇか?」

「少しだけなら」

 

 宝箱を脇に抱えながら、アインと共に街を歩く。

 彼女の口から出てきたのは、想像以上の出来事だらけだった。

 

「まず、ローについて。グリーンビットでシーザー引き渡しなど色々あったけど、今はドフラミンゴの近く、王宮にいるわ。ドフラミンゴも同じく王宮に。麦わらの一味は、ナミとロビンは私たちの船に。おもちゃが元に戻ったのは、狙撃手が何かしたみたい。麦わらの船も抑えたし、黒足や海賊狩りといった面々も国内にいるのを確認しているわ。……どうするの?」

「おー……。とりあえず、今整理するのがめんどいぐらいにいろんなことが起きてるわけだ」

「そうなるわね。ちなみに、シーザーがこの島にいるのも確認済みよ」

「んー……ってなると、ちょうどいいな。とにかく、だ。アインちゃん」

「うん?」

 

 ジャックハートが天を見上げると、そこには島を囲むように柵のようなものが降り注いでいた。

 何を考えてそうしたかは分からないが、恐らく下手人はドフラミンゴ本人。そして、幸運なことに今現在この島には大量の海賊や賞金首たちが集まっている。

 

「俺は俺のやるべきことをただやるだけだ。そうだろ?」

 

 観客に見せるため、ではなく敵を仕留めるための戦い。

 さらにその人数と質はあの頂上戦争と肩を並べるほどの面々が揃っており、海軍側の戦力としては自分自身とイッショウが主となる。

 人数比で見れば海軍が圧倒的に不利に見えるが、そう言った場面こそジャックハートの本領が発揮される戦場なのだ。

 

「ケハハハハハァ! さて、行くとするか」

 

 "正義"を背に、王宮へと歩みを進める。

 その背に、声が掛けられる。

 

「父さん」

「ん? ダレス、か」

「えぇ。リリー達も」

「えへへ。どうかな、パパ」

「おー、良いじゃないか。様になってるぞ」

 

 聞き慣れたようで、少し違う声。

 振り向けばそこには、見慣れた顔が、少しばかり高い位置にあった。

 

「俺と母親に似て、美形揃いだな」

「父さん……。そういうのは良いですから、行きましょう」

「どうした。えらく張り切ってるじゃねぇか」

「当然です。ようやく、反則気味ではありますが、一人前になれたんですから」

 

 それが自分の子ども達だと言うことはすぐに理解できた。

 

「まだ慣れてねぇだろ、無理すんなよ。いくらボニーちゃんの能力で大人に成長したからっつったって、俺には到底及んでねぇ」

「分かってます。しっかりと、海兵として頑張ります」

 

 ボニーの能力により一気にジャックハートと同じくらいの年齢まで成長した子どもたちの姿が、そこにはあった。




原作との相違点としては、今後も書いてはいきますが
1.一部がゾウに向かえてすらいない
2.ナミ、ロビン、チョッパー不在
3.ルフィがコロシアムにまだいる
4.サボがメラメラを食べていない
5.ミンゴさんトリカゴ発動するけど大ピンチ
などなどが挙げられます。ウソップは実質1人で小人を引き連れてシュガー気絶させてます。これはゴッド。

今後も、本文で書けていない相違点があれば、こうして後書きなどで書いていきたいと思います。
多分作者が一番困惑するので。


コメント、評価などお待ちしております!


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躍起

この話でかなーり進みます。不必要だと作者が思ったところは割愛しました。誰もラオGとかが悶え苦しみながらボコられるシーンとか見たくないやろ……。

そして、この話からちょっとずつ史上最悪の片鱗が出始めます。自分で書いててご都合主義やな、と思いながらも筆が動いた結果です。





『さてドレスローザの国民諸君、及び客人達。真実を知り、俺を殺してェと思うやつもいるだろう。そこで、ゲームを用意した。俺を殺すゲームだ。それと同時に、12名の愚か者たちをも殺すゲームでもある』

「うぇえぇぇぇぇぇっ! 何これ、美味しくない! 何これー! お兄ちゃんこんなの食べてたの!? まっずい!」

「今ドフラミンゴが話してるんだ。もう少し静かにしてくれないか、リリー」

「ぶー」

 

 大きくなった子ども達と共に、突如国内に流れ始めたドフラミンゴによる放送を聞く。

 聞けばなんとも面白おかしい話である。

 

『星1つにつき1億ベリーだ。リストはすぐに公開しよう』

「アホだろ。そんぐらい自分でさっさと殺せや」

「それが出来ないから四皇ではなく王下七武海なんでしょう」

 

 ドフラミンゴがドレスローザで行っていたのは、海軍もビックリのおもちゃによる超奴隷労働。幹部の能力によりおもちゃに変えられたものはその命令に逆らうことは出来ず、おもちゃにされた者のことは皆が忘れてしまう。自分に都合が悪いものだけをおもちゃにし、自らを王と慕わせていたという事実に、国民は怒り狂っていた。

 

『俺は王宮にいる。逃げも隠れもしない。よく考えろ。俺たちドンキホーテ・ファミリーと共に、楯突く奴らを殺すか、俺の首を狙いに来るか。俺をどうしても殺したいのなら王宮に。金と命が同時に欲しいのなら受刑者を殺せ。さっさと動かなければ、発動した『鳥カゴ』の中で息絶える事になる』

「お、じゃあドフラミンゴとリストのやつら全員殺して終わりか」

「ねぇパパ。"悪魔の実"って全然美味しくないよ」

「知ってる」

 

 18歳程度まで成長した子ども達。その中でもダレスとリリーの二人は落ち着いており、リリーは先ほどジャックハートに誕生日プレゼントとして渡された"メラメラの実"を食していた。

 空中投影されたモニターに映るドフラミンゴの顔が、歪んだ笑みを浮かべる。

 

『その受刑者が、こいつらだ』

 

 まず投影されたのが、10人。

 レベッカ、錦えもん、ヴィオラ、フランキーがそれぞれ星一つ。

 キュロス、ゾロが星二つ。

 サボ、ルフィ、ロー、そしてリク王が星三つ。

 うち二人はすでにジャックハートの自室で会話に花を咲かせており、うち一人はすでに軍艦に捕らえられているのを知らないのだろう。

 

『そして後二人。一人は今日最も俺を怒らせた人間、ウソップ。星は七つ。そしてもう一人は、海軍本部大将の一人、ジョー・ジャックハート。星は、二十だ』

「俺一人で20億かよ。桁考えろって」

「……海兵として言いたくはないが、支配されていた憎しみを俺たちに向けないで欲しいな」

「全くだぜ兄貴。まんまと何年間も騙されてたのはお前らだろってな。それに、海軍は真正面から王下七武海には手を出せないってのに」

「そんなこと言ってもしょうがないでしょ? それより、アルカナとスウェットリーもアレ、使える?」

「う、うん。使える。さっき試したから」

 

 ジャックハートの顔に浮かぶのは、僅かながらの怒気。

 安全な場所に避難させているとは言え、形式上でも自分の女を奪おうとしているのだから。

 今から始まろうとしているゲーム。それは、一般人にとっては、親しい隣人がドフラミンゴによって操られ、武器を振りかざすゲームを止めるためのもの。一部の海賊にとっては『受刑者』を討ち取り、金と命を得るもの。そして、また一部にとってはドンキホーテ・ファミリーの首を狙うもの。

 

「よし。じゃあ王宮に向かうぞ」

「周りを囲んでる人たちはどうするの?」

「一応国民だからな。直接手を出すわけにはいかん。リリー、みんな、いけるか?」

「うん! せーのっ」

 

 ジャックハートの懸賞金はなんと20億ベリー。

 知っている者は彼の実力をよく知っているが、一般市民にとっては普通に強い海軍の大将。

 市民が海兵の首を狙うなど、普通はありえないこと。だが、それほどの大金をかけられれば動く者も現れる。

 そんな彼らを一撃で気絶させるのが、"覇王色の覇気"である。

 

「す、すごい……!」

「やっぱりお前たちも使えるようになったか」

「めちゃくちゃ便利じゃねぇかこれ」

 

 スウェットリー、アルカナという実年齢の時には"覇王色"を扱えていなかった面々も、己の感覚と才能で発動することが可能となっていた。

 "覇王色"を使うまではジャックハートを捕らえることでなんとかドフラミンゴに見逃してもらおうと考えていた者たちが立っていたが、彼らも全員気絶していた。

 父親と子ども4人による、計5人での"覇王色"。一般人に耐えられるほど、優しいものではなかった。

 

「具体的な作戦としては、どうしますか」

「作戦もクソもねぇよ。俺は王宮に直接向かう。お前たちはお母さんたちのサポートをしろ。くれぐれも、海賊ども殺して連れてくるなよ」

「はーい」

 

 この状況をジャックハートも想定していた訳ではないが、彼にとっては嬉しい誤算だった。子どもたちに任せるだけになりそうだったドレスローザでの滞在で、自分が動ける状況になったのだから。

 それぞれが"剃"で消えた子どもたちを背に、一人"剃刀"を使い、高速で宙を蹴る。

 向かう先はもちろん王宮。途中、最高幹部の一人であるピーカが"能力"を使い"王の大地"を操ることで巨大化したものとすれ違ったが、一旦放置。

 最優先事項は、ドフラミンゴただ一人なのだから。

 

「よう御一行。元気にしてるか?」

「ッ! フッフッフッ……! まさかお前自らここにくるとは思わなかったぞ、ジャックハート……!」

「分かってただろ。んなくだらねぇ冗談いらねぇよ」

「では率直に聞こう、ジャックハート。あの4人をどこへやった?」

「あ? あぁ、今頃俺の船で俺の帰りを今か今かと待ってるところだろうな。さっさと片付けて帰りてぇんだ。協力してくれよ」

「断る、と言ったら?」

「強制連行か、ヴェルゴと同じ運命だな。お前ら全員」

 

 なんらかの攻防があったのだろう。すっぱりと刀で切ったように上半分が消しとんだ王宮を、上から侵入してドフラミンゴの目の前に降り立つ。

 そこには、外で地面と同化し暴れているピーカ以外のほぼ全てのファミリーが揃っており、彼の登場に表情を引き締めるものが大半だった。

 

「いやぁ、ようやくだぜ。ずっと待ってたんだ。テメェらを正式な海賊として扱うことが出来る日をよ……」

「……俺も、落ちたな。最初からお前にビビることなく、こういう状況になったら正々堂々とお前を始末すればいい話だったんだ」

「ケハハハハハ! お前らが、俺を? 9年前にファミリー半壊させられて、そこから海軍本部のたった一人の海兵にビビりながらこそこそ活動してた天下のドンキホーテ・ファミリーがか? 笑わせんなよ」

「黙れ。よくよく考えれば分かる話だ。お前をこういった形で殺せば万事解決。今の俺は、ただの海賊なんだからな」

「やってみろや。椅子に座ってふんぞり返ってるだけで勝てるほど、大将は甘くねぇぞ」

 

 この場には今現在、ドンキホーテ・ファミリーのほぼ全ての人員が揃っている。

 王宮の外の争いは操られた市民や海兵とコロシアムにいた海賊たち、それを取り押さえようとしている海軍の3つの勢力によって激化していく。

 そしてこの王宮では、ジャックハート一人とドンキホーテ・ファミリーによる戦いが行われようとしていた。

 

「ケハハハハ。工場守るための戦力も注込めねぇ、海兵一人、海賊一人も殺せねぇ。だからお前は政府の犬止まりなんだよ、元天竜人」

「……殺れ」

 

 ラオG、グラディウス、ディアマンテ、トレーボル、バッファロー、デリンジャー。

 最高幹部を含む幹部たちが、一気にジャックハートへと襲い掛かる。

 

 

 ◇

 

 

「はぁーッ、はーッ! ……ッ、はぁ……」

「お疲れ、ナミ。赤ちゃんは元気だよ」

「知ってるわ。っ、ふぅ……。私と、ジャックハート様の子どもだもの」

「あははっ。よく分かってるじゃない。すっかりジャックハート様にゾッコンってわけだ」

「ちがっ……わないことも、ないわ」

 

 ドレスローザの各地で暴動のような騒ぎが起こる中、ここだけは違っていた。

 ジャックハートを主人とする軍艦。その医務室には特定の専門器具が揃っていたり、乗船している人間が特定分野に手慣れているという特徴があった。

 

「あら、意外。海賊と海兵、しかもココヤシ村を出る時にあんな笑顔で出て行ったもんだから、海賊が一番楽しいのかと思ってた」

「……もう二人も赤ちゃんを出産してるし、心のどこかで本気で拒もうとは考えられないもの。ノジコも抱かれたなら知ってるでしょ? ジャックハート様のセックスの巧さ」

「そりゃあもう。あんたが羨ましいよ、二人も出産してるなんて。聞いたよ? あんた、5日間ぶっ通しでジャックハート様としてたんでしょ? 私も秘書になってから短いけど、それでも結構身体を重ねたつもり。でも、まだあんたには負けるわ」

 

 言わずもがな、ジャックハートと関係を持つこととなった女性陣のための設備である。

 数時間前に男の子を出産したナミのように、いつ陣痛や破水が来ても大丈夫な準備が常に整えられており、ナミもその設備の恩恵を十二分に受けることとなった。

 現在この部屋には、無事二児の母となったナミと、つい最近ジャックハートの秘書となったノジコだけがいる。

 

「……あんた、どうするの?」

「っ。どうするって……」

「こんなこと私が言っていいことじゃないと思うけど、このままじゃあんた絶対に破滅するよ。ジャックハート様を、あんまり舐めない方が良い。あの人は、アーロンなんかとは次元が違う」

 

 ノジコとナミの話題は、もちろんというかなんと言うか、ジャックハートのこと。

 ベルメールとゲンの二人を出産し、尚且つ現在彼から逃げ切る方法も、彼を倒す手段も見つからない。

 ナミも海賊の端くれ。今まで本当に同じ生き物かと思うような敵と戦ったこともあるし、やられたこともある。だからこそ分かるものがある。

 

「あんたも薄々気づいてるでしょ? ジャックハート様は、どうでもいい人間が壊れるまで遊ぶ。王下七武海でも、ただの海賊でも関係ない。ただ自分にとって面白く遊べるおもちゃに過ぎないの。残念だけど、今のあんたらはジャックハート様に狙いを付けられてる」

「……知ってるわよ。でも、今更私が抜けるわけにはいかないわ。契約も結んでるし」

「自分たちの身体を差し出す代わりに仲間を守るのと、情報を差し出す代わりにその身体を差し出すのを一回見逃してもらうってやつ?」

「そうよ。……あれ?」

「ナミ、どうかした?」

「う、ううん! なんでもない!」

 

 ノジコからナミに改めて伝えられたことは、ジャックハートからは逃げられないということ。

 その会話の途中、一瞬だけとてつもなく恐ろしい考えにナミが至ってしまった瞬間を、ノジコは見逃さなかった。

 

「……まっ、いいけど。じゃあナミ、しばらくここにいな」

「っ、そ、そういうわけには……!」

「捕まえる気があってもなくても、出産直後のあんたを生まれたての赤ちゃんと一緒に外には出せないって。もう一人の女の仲間もここにいるし」

「やっぱり、ロビンも……」

「少なくとも今はジャックハート様は外にいるし、今だけでもいたら?」

「……そうね。そうする」

 

 話相手が親しいノジコであるとは言え、海賊である彼女が軍艦で休むことを拒否しない。

 出産の疲れが相当溜まっているのか、すぐに眠ってしまった義妹の姿を見つつ、少し憐むような、暖かい眼差しを向ける。

 

「あいつらでも、どうにもできなかったか。楽しそうだったんだけど、目を付けられた相手が悪すぎるわね。切り替えて、第二の人生を楽しみましょ」

 

 眠る義妹に語りかけるノジコの声は、どこまでも優しいものだった。

 ナミが眠り、ノジコが周辺の整理整頓を行っていると、扉が静かに開けられた。

 

「ノジコさーん、入りますよー」

「あっ、たしぎさん。どうしたの?」

「ナミさんのお子さんの診断が終わったので、その報告です。健康そのもの、今はぐっすりと眠ってます」

「そっか、よかった。って、私の方が年下だし海兵でもないんだから敬語じゃなくてもいいって言ってるのに」

「こ、これは私の性格みたいなものですから。気にしないでください」

 

 扉から入ってきたのは、海軍の制服に身を包んだたしぎ。

 ドレスローザの混乱の収束のために駆り出されている者もいるが、全員という訳ではない。今のように、一人が出産するとなれば、その間に敵襲がないかを見張る者も必要となるのだ。

 

「ならいいけど。たしぎさんはこれからパトロールに?」

「はいっ。今回はちょっと、気合いを入れないといけないので」

「えっ。……ヤバいかも知れないってこと?」

「それはそうですが、相手が"麦わら"なので」

 

 来た。

 ジャックハートに口説かれ、そして一生添い遂げる覚悟をしたノジコにとって、海賊は言ってしまえば敵。

 ナミのように、ジャックハートとの間に子どもを授かりながらも海賊を続けているという例が珍しすぎるだけであり、本来は誰であろうと捕まえられる。

 詳しい事情や戦力の差についてはノジコにはまだ分からないが、ついに見知った海賊が標的になる時が来たのだ。

 

「それに、約束してもらったんです」

「約束?」

「はい」

 

 見た目はか弱く見えるたしぎであるが、その実力は本物。

 なぜまだ中将になれないのかという意見がジャックハートの派閥以外からも頻繁に聞くことができるほどに、実力を付けたのだ。

 それも全ては、彼のため。

 

「このドレスローザの一件で活躍すれば、中将昇進を薦めてくれるって。ジャックハートさんの推薦はすごくて、元帥もすぐに認めてくれるんです。中将になったら正式に結婚して、その……」

「あー。一日中独り占めした後で、子作りをするっていう」

 

 こくん、と赤くなった顔を縦に振るたしぎ。こう言ったうぶな部分とプロポーションのギャップがジャックハートに気に入られている要因の一つでもある。

 

「ただ、少し忙しいみたいで」

「ジャックハート様どれだけ働くの……」

「今だけの辛抱だそうですよ。ドレスローザを出た後、最低で6人、多くて8人の相手をしなければならない予定が入っているそうなので」

「ホント、セックスの体力もすごいわよね。ジャックハート様」

「体力というか、持久力はそれで付けている部分もあるそうです。私たちも、ですが」

 

 6人、多くて8人。ノジコの知っている限りでは島を出た直後となると、先ほど偶然街で捕まえたという報告があったレベッカ、ベビー5、ヴィオラ、モネの4人。

 さらにそこから増えるとなると、彼女には誰が抱かれるのか想像できなかった。

 

「誰になるんだろ。……もしかして、たしぎさん?」

「久しぶりにすることになるのがほとんどって言ってましたし、違うと思います。誰なんでしょうか……」

 

 ノジコよりもジャックハートとの付き合いが長いたしぎですら、そのメンツが思い浮かばない。

 もしかして、という女性もいるにはいるが、現実問題としてここに来ることが確定していないのだ。

 

「ま、まさか……」

 

 ドレスローザで捕まえた4人。

 そこから増える人間を考えた時、たしぎの視線は自然と、ベッドで眠るナミへと移っていた。

 

 

 ◇ ◇

 

 

「ギャアアアアアッ!!!」

「な、なんだコイツら、海兵!?」

「こんなヤツらがいるなんて、聞いてねぇぞ!」

「うるさいなぁ。お兄ちゃん、いくよ!」

「あぁ」

 

 市街に溢れかえる海賊達の暴動を抑えるため、海兵達が奔走する。

 その中心でまだ子どもとも取れる年齢の海兵が暴れていた。

 

「"炎塊・花火"!」

「……? 味方に、攻撃を……?」

「俺が食べたのは"ボムボムの実"で、妹が食べたのは"メラメラの実"。この二つを組み合わせるとどうなるか、知ってるか?」

 

 新たに"メラメラの実"の能力を手に入れたリリーが、ダレスに文字通りの炎の塊をぶつける。

 "覇気"が込められた火炎。常人ならばその威力と熱に痛手を負うが、"ボムボムの実"を食べているダレスに関しては少し違っていた。

 

「"自動爆破(オート・ボマー)"。炎そのものを爆発させる」

「なっ……!」

 

 リリーが放った火炎がダレスの身体に纏わりついていく。

 "ボムボムの実"の能力が発揮されるのは、能力者の体表に触れたもの。

 

「リリー」

「うんっ! 一気に、起爆ぅ〜!」

 

 一旦ダレスの皮膚に触れた炎が、リリーにより操作される。

 爆発する炎という何とも掴みがたいものが海賊たちへと襲い掛かる。

 

「うぐ、ぁぁあああああっ!」

「な、なんでだっ! 炎が、爆発した!?」

「あっちぃ!」

「……なんか、ショボいね」

「逆だな。俺が、リリーの補助だ」

 

 "ボムボムの実"は超人系の悪魔の実で、"メラメラの実"は自然系の悪魔の実。

 ダレスがリリーの背に手を突き入れる。肉体が炎そのものとなったリリーの肉体は、ダレスの右手を何事もなく受け入れた。

 

「おぉっ! なんかすっごいのが来てる!」

「爆発の勢いで、炎を放つ……!」

 

 リリーの皮膚の内側が淡く発光する。

 ダレスの"ボムボムの実"の力により彼女の内側に爆発が溜め込まれていき、リリーにより"武装色の覇気"が込められていく。

 

「行っくよー!」

 

 体内に爆発の威力を溜め込んだリリーが大きく飛び上がる。"ボムボムの実"の能力者ではないが爆発を続ける炎が彼女の右手に集まる。

 

「"爆炎拳"!」

 

 空から降り注ぐ、巨大な炎の塊。以前の"メラメラの実"の能力者であるエースの"火拳"よりもさらに大きく、かつ爆発による圧倒的な質量が、下にいる人間すべてに襲い掛かる。

 熱量が地面を包み込む。炎と連続した爆発が一気に襲いかかり、爆風が通り抜ける。

 

「……。今のは、凄かったな。"ボムボム"を食った俺以外、ほぼ全員倒れてるな」

「すっごいスッキリしたけど、体の中めちゃくちゃ痛いよー。爆発のせいでバッキバキになっちゃった」

「ま、お互い組み合わせずに別々で戦った方が効率がいいな」

「だねー。いい技できそうだと思ったんだけど」

「姉貴、兄貴も。真面目にやれよ。他の奴らも含めて普通にしぶといぞ」

 

 コロシアムの地下にあった港で働いていた、人形にされていた人々。

 その中でも腕に自信のある海賊たちが地上へと溢れ出てきており、彼らを抑えるために海兵たちが奔走し、その中でジャックハートの子供達も活躍していた。

 その一帯を無力化し終えたリリーとダレスに、彼らの弟であるアルカナが近寄った。

 

「ロロノアとローは王宮近くにいる。"麦わら"と狙撃手は地下から王宮を目指している最中、一味のうち3人は親父の船にいて、コックとガイコツは今その3人を助けようと奔走しているらしい」

「っ! 本当か?」

「スウェットリーの"見聞色"だ。成長して精度は親父並みに上がってる」

「それで、船は大丈夫なの?」

「愚問だろ、姉貴」

 

 まだ20歳にも満たない年齢である3人の周りにはもう海賊は立っていない。

 周りにいた海兵たちもすでに別の戦闘区域へと向かっていたが、誰もジャックハートの軍艦の方へと向かう者はいなかった。

 そしてそれは彼ら3人も同じ。彼らが向かう先は、父がいる王宮。

 

「少将2人に中将2人。うち1人は妊娠中とは言え、総合賞金額が1億ちょっとの2人には負けねぇだろ。それに、そもそも数の暴力で潰すからな」

「あっ、そっか。九蛇から来たっていう人たちみんなが援軍に来たんだっけ」

「そうだ。それと、ここで捕まえた人たちも()()()協力的らしい。普通に考えて負けやしねぇよ」

 

 以前ジャックハートが完璧に叩き潰した国、アマゾン・リリー。

 そこの住人の一部だけがジャックハートのお気に入りとなった訳だが、他の者は始末されたかと言われればそうではない。

 むしろ、ほぼ全員が相手を見つけ、家庭を築き、その後正式な海兵として認められている者もいるほどだった。

 

「兄貴。次どこいく」

「そうだな……。とりあえず、面倒ごとを片付けよう。残しておくと父さんにいろいろ言われるし」

「さんせー!」

 

 周囲に人がいなくなったところで、3人の次の目的地が決定した。

 コロシアムから王宮へと続く道。そこに群がる海賊たちを止めるために、彼らは走る。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「おいブルック……! どういうことだ、こりゃあ……!!」

「さ、さあ……。私にも、何がどうなっているやら……」

 

 打倒ドフラミンゴを掲げるようになった"麦わらの一味"。その過程でシーザーを引き渡す契約や人口悪魔の実を製造している工場を壊す計画などが持ち上がったが、とある情報が舞い込んでからは第一優先事項が変わっていた。

 ドレスローザを一味の大半が駆け回っていたため、一時期船への注意がほぼ消えてしまっていたのだ。チョッパーがいるため大丈夫だろうという期待を他所に、船は乗っていた仲間ごと海軍に取り押さえられてしまったのだ。

 

「っ。みなさん、来ましたよ。"麦わらの一味"です」

「ふむ、あやつらか。今のわらわでも十分な気がするが……」

「そういう訳にもいかないって。妊娠してるんだし」

「ジャックハートくんも、きっとあなただけに任せるようなことはしないと思うわ」

 

 そこで、その話を聞いたサンジとブルックが向かったのが海軍の軍艦が止まっている港だった。

 いくら海軍とはいえ、取り押さえた海賊船をすぐに沈める訳ではない。船内に資産などの、言ってしまえば再利用できるものがある可能性があるためだ。

 

「び、美人の女海兵ばっかりだと……!」

「サンジさんっ! 彼女たちもきっと、あの……」

「あぁ……! ジャックハートとかいう野郎の……!」

「今、なんと言った?」

 

 彼ら2人を待ち構えていたのは、たしぎ、ハンコック、ペローナ、アインの4人。

 "麦わらの一味"屈指の女好きの2人でもある2人の前に立ちはだかったのは奇しくも、ジャックハートに虜にされた女性たちだった。

 

「ジャックハート様のことを、貴様は今なんと言った……!」

「っ、悪ぃ。悪く言ったつもりじゃねぇんだ」

「……まあ良い。貴様らに処分を下すのはジャックハート様じゃ。そのためにまずはわらわたちが貴様らを捕らえる」

「ヨホホホホ。これは、かなり手厳しくなりそうですね……!」

 

 サンジの軽はずみな発言をハンコックは聞き逃さなかった。

 すでに1人の娘を出産しており、シャボンディ諸島での行為により今現在も妊娠中であるハンコックにとって、愛しい旦那を侮辱する発言が許せなかったのだ。

 人数の比で見れば4:2。しかし、仲間であるブルックは分かっていることだがサンジは例え敵であっても女性を傷つけることはしない。

 武器を構え、臨戦体勢を整えるブルック。

 

 そんな彼らの元に、()()が飛来してきた。

 

「ッ!? おいブルック、何かが来る!」

「う、上ですか!? って、えぇぇぇええっ!? な、何ですかぁー!?」

 

 人、人、人。

 大小様々ではあるものの、一定のリズムで飛んできたそれらは、睨み合っていた両者の間に落ちた。

 そしてその落ちた人間たちを追う死神のように、白衣を赤く染め上げた男がゆっくりと舞い降りた。

 

「っと。……あれ、なんでハンコックちゃんがここにいるんだよ。臨月はまだでも、大事な時期だろ? 船の中に戻っててくれ」

「あなた様!」

「っ、ジャックハート……! って、もしかしてこいつら全員、ドンキホーテ・ファミリーか!?」

 

 最後に降りた人間は、今も少し話題になっていたジャックハート。

 彼の前に吹き飛ばされてきた人間たち。顔を見たことはない者も多数いる中、先ほど始まったゲームとやらで戦闘が始まったのだと、サンジは推測した。

 

「あなた様……。わらわ、あなた様のお役に立ちたく……」

「大丈夫だっての。俺も早く終わらせてみんなと船の中でイチャイチャしたいんだ。さっき子ども達から連絡を受けて知ったが、幸いなことに()()()()()()()()()()()も待っててくれてるらしいからな」

「……なんだと?」

 

 普通ならば、今この場面でサンジたちが取る行動は、静観。

 しかし、以前から伝えられていたジャックハートという男の性格とサンジの性格からして、これ以上ジャックハートに喋らせることを許すわけにはいかなかったのだ。

 

「あ? って、黒足かよ。邪魔しなけりゃ殺さねぇから、首突っ込むな。どうなっても知らねぇぞ」

「そういう訳にもいかないんでな。うちの航海士と考古学者、ついでに船医。返してもらおうか」

「断る。なんで海兵が捕らえた海賊を解放せにゃならんのだ」

 

 魚人島へと向かう際に伝えられていたジャックハートという人間について。

 気に入った女海賊たちを問答無用で()()()()()()ジャックハートの素行は、サンジとは全く違う女好きとしての一面をより分かりやすく表していた。

 

「そっちに開放する気がないんなら、戦ってでも取り返す!」

「おーおー。困るな、そんなに急かされちゃ。こっちにはこっちの約束ってもんがあるんだ」

「知ったこっちゃねぇな。そっちの約束なんて関係ねぇ」

「ほう……。いいんだな、戦っても」

 

 ジャックハートの顔に笑みが浮かぶ。

 今彼に吹き飛ばされてきた中には、幹部や最高幹部たちだけではなく、黒幕と言ってもいいドフラミンゴ本人も含まれている。

 彼らを一瞬で片付け、その表情にはまだ余裕があるのだ。

 

「いいっつってんだろ。……ブルック、俺があいつを引きつける。その間に、ナミさんたちを頼む」

「分かりました。……お気をつけて」

 

 サンジとブルックの作戦としては、至ってシンプル。

 サンジが戦況をかき乱し、その隙にブルックが軍艦へと忍び込む。確実に成功するとも限らない作戦だが、そうするしかない。

 

「最後の確認だぜ。俺はナミちゃんたちと約束してるんだ。それが、もうどうでもいいってことか?」

「ったり前だ! テメェみてぇなクソ野郎を、ナミさんたちに触れさせてたまるか!」

「ケハハハハハハハハッ!!! 喜べよナミちゃん。これで"麦わらの一味"と俺の間での契約は、破棄だ。自由にやらせてもらうぜ」

「何……?」

 

 契約。

 初めて聞くその言葉に、サンジの表情が引き締まる。

 だが、兎にも角にも彼を引きつけなければ話にならない。

 

「まあいい。もう、済んだことだ。ギャラリーも集まり始めてるし、役者も揃いつつある。始めようか、黒足」

「ッ! "悪魔風蹴(ディアブル・ジャンブ)"……!」

「ケハハ、来るか」

 

 サンジの右足が赤く光る。

 高温を帯びたその脚は、彼の蹴りの速度に比例してさらに熱く燃え上がる。

 

「"腹肉(フランシェ)ストライク"!」

「ッ〜〜〜! っ、かぁあ〜、効くねぇ……」

「なっ……!? 吹き飛んですらねぇだと……!?」

「鍛え方が違うんだ。雑魚と一緒にすんなよ」

 

 超高温による、"武装色の覇気"が込められた蹴り。

 パンクハザードではシーザーの部下相手にほぼ一撃で仕留めることができていた技が、効かない。

 サンジの目の前に立つ男は、不敵に微笑んだ。

 

「さあ、始めようか」

 

 ドンキホーテ・ファミリーに海軍に海賊。

 戦場は王宮ではなく軍艦付近の港へと移り、戦闘が始まろうとしていた。

 

 

 




デデドン(絶望)

え、そんなんありかと思う方がいるかも知れませんが、ありです。

ドンキホーテ・ファミリーほとんどカットしちゃったけど……。一回ぐらい戦闘飛ばしても、バレへんか。


"麦わらの一味"の動き方としては
ルフィ&ウソップ:地下で合流し、王宮を目指す。
ゾロ:ローと共に王宮付近に。それぞれピーカとドフラミンゴに焦点。
サンジ&ブルック:ナミ、ロビン、チョッパー奪還作戦。
フランキー:工場破壊。

的な感じです。ゾウどころの騒ぎじゃねぇ。



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懺悔

サブタイには色んな意味が。

まず、バロックワークスのメンバーについてです。
てっきり本名設定無いもんだと勘違いしてたら、感想でご指摘を頂きましたが、あるようで……。どうにかして自然な形で馴染ませようと思います。

次に、戦闘シーンです。
書けるとは思うのですが、正直な話一瞬のシーンを書くつもりでも文字で表そうとするとかなりの文字数になってしまうので、今回は前話は割愛させて頂きました。それより早く本番シーンに移りたいのじゃ。

そして、本来のサブタイとしての役割があります。これは本編を読んでいただくのが早いと思います。


お待たせいたしました(?)が、ようやく原作と大きく変わってきます。

あ、あと。シュガーの出し方を思いつきました。頑張ります。



 

「"ほほ肉(ジュー)シュート"ッ!」

「汚ねぇ足裏ばっかで攻撃すんじゃねぇって」

 

 軍艦前の港で開戦したジャックハートとサンジの戦い。

 騒ぎを聞きつけた海賊たちが少しずつ集まってきていたが、その光景はやや異常と言えるものだった。

 

「お、おいアレ……。黒足の攻撃、全く当たってないんじゃないか……?」

「バルトロメオみたいなバリアって訳でもないだろうし、なんだあれ……」

「はぁ、はぁ……! チッ……!」

 

 "悪魔風蹴"によるサンジの猛攻。

 彼の手応えが正しければ、とっくの昔に目の前の男は倒れているはず。今まで戦ってきた中でとびきりに頑丈だったパシフィスタですら沈めることができた攻撃が、通じない。

 

「まさか、改造人間か……?」

「ケハハハハハ。んなもんと一緒にすんじゃねぇよ。俺は正真正銘、普通の人間だ。この差は言うなれば、格の違いってとこだな」

「んだと……!」

 

 想定外の強さに、サンジに焦りが生まれる。

 初撃以降ほぼ彼を動かすことができておらず、そのためブルックも不用意に動けずにいるためだ。

 "武装色の覇気"を込めた"悪魔風蹴"ですらダメージを与えることができない。見た目は自分たちとそれほど変わらないサイズと年齢をしているにも関わらず、圧倒的に何かが違っていた。

 

「"見聞色の覇気"と"武装色の覇気"。そこまではいい。っつーか、新世界に乗り込んでくるならそれは身につけておいて欲しい技術だ。だが、まだまだそれじゃあ足りん」

「何……?」

「ワノ国では"武装色"のことを"流桜"というらしい。力は込めるものではなく流すものって認識でな。それを上手く、かつ強く行うとだ。今みてぇにどこにでも現れる最強の鎧の完成ってわけだ」

 

 まずは"武装色の覇気"。

 単純な差として存在する、練度の差。

 

「"見聞色の覇気"は、鍛えれば近い未来なら見通すことが出来る。視える範囲も広げることができる。お前がどこを蹴るかも、あのガイコツがいつ抜け出そうか考えてるのも、お前の仲間が駆けつけてくるのも、全て筒抜け。お前の攻撃に覇気を合わせれば避ける必要もねぇのよ。ま、受けるのも癪な攻撃は避けるが」

 

 次に"見聞色の覇気"。

 自分達がまだ体験した事のない次元に、既に到達している。

 

「最後に、お前が無意識にビビってるからだ。ろくに腰も入ってねぇヘナチョコな蹴りになってる理由はな」

「んなわけねぇだろ……!」

「残念。"覇王色の覇気"をお前1人に長時間じっくりと浴びせれば、心の奥底にじわじわと恐怖が募るんだ。もうお前は、俺のことを本気で蹴れねぇよ」

 

 最後に"覇王色の覇気"。

 そう言われると、圧倒的な実力差に怖気付いてしまっているのかも知れないという気持ちが溢れてくる。

 

「次いで六式。鉄塊で固めつつ、紙絵で上手くお前からの力を流す。全部同時に組み合わせれば、お前の攻撃なんて避けるも受けるも自由自在だ。別に効かねぇからな」

「クソ……ッ!」

「ケハハハハハッ! やっと格の差が分かったか? そんなにあの2人が恋しいなら見せてやってもいいぜ。喘ぎながら絶頂してる姿をよ。潮噴きまくってる方がいいか?」

「ッ!! 今すぐその汚ぇ口を閉じやがれ……!」

 

 その絶望的な実力差を感じつつも、サンジの心には怒りの感情が常に燃えていた。

 ただ女好きなだけだからではない。ここまで苦労を共にしてきた、仲間だからだ。彼らにとって、仲間は必ず助けるもの。

 

「……苦労を共に、か。よく言えるぜ。いや、お前はまだマシな方か」

「今度は何の話だ!」

「いいから聞けよ。殺すのを後回しにしてやってんだから。参謀と航海士、んでお前がコック。あのタヌキが医者。船大工を除いて他の奴らは何に貢献してんだか」

「てめぇにウチの船の何が分かる」

「分かるんだなぁ、それが。例えば、不明の家族構成とかな」

 

 常に人を小馬鹿にしたような態度を見せるジャックハートに、サンジの感情が乱される。

 今すぐにでも蹴り飛ばしてやりたいが、出来ない。できる未来が想像出来ない相手はそういなかった。

 

「フッフッフッ……! ガフッ、おま、え……は、やはりっ、海兵でっ……グッ、ゴフッ! もっとも、おそろしい……おとこ、だ……」

「キモいんだっての。死にかけてんなら話しかけんなよおっさん」

「やめ、ろ……! ドフィに、何を……!」

「あんま喋らねぇ方がいいぜ、ディアマンテ。肋骨を肺と心臓にぶっ刺さるように折ったから、喋り過ぎるとすぐ死ぬぞ」

 

 その会話を聞いて、口を挟んできた者がいた。

 ジャックハートにより王宮から飛ばされてきたドンキホーテ・ファミリー達。その中でまだ意識を保つことが出来ていたドフラミンゴとディアマンテだった。

 

「今ごろ、麦わら達が俺たちの影を、追いかけている頃だろう……! じきに、ここも激しい戦場になる、ぞ……」

「ならねぇって。俺がいるからな、雑魚は立てねぇよ」

 

 相当の実力者でもある彼らだが、王宮でのジャックハートとの戦いではまるで歯が立たなかった。

 ジャックハートが行ったのは、今のサンジの戦闘とほぼ同じ。だが、弄ぶのではなく本気で殺しにいったのだ。

 

「邪魔だわアンタら。今はもう、お前らのターンじゃねぇ」

 

 放たれる"覇王色の覇気"。

 相手をする必要も無い相手を気絶させるという、本来の出力。それだけでドフラミンゴとディアマンテは再び地面に沈んだ。

 

「さて……」

「おーい、サンジー! ブルックー!」

「お、おいおいルフィ……! いいのか、あんな所に突っ込んで……」

「チッ。もう邪魔が来たか」

 

 改めてサンジとの戦闘を再開しようとした時に、ドフラミンゴとは違う邪魔者がまた乱入した。

 声がした方を向くと、そこにいたのは麦わらの一味の船長であるルフィと狙撃手のウソップ。

 1人は意気揚々とこちらに向かって走ってきており、もう1人はこの周囲に広がる異様な雰囲気に当てられていた。

 

「ッ!? お、お前、ジャック……」

「ジャックハートだ。散々やられてんのに覚えが悪ぃのは理由でもあるのか?」

「こ、これ今どういう状況なんだよ、サンジ」

 

 最初は仲間の姿と顔しかはっきりと確認できていなかったルフィとウソップだが、近づくにつれて敵が誰なのかを鮮明に認識することができた。

 頂上戦争、ルスカイナ、パンクハザード、そしてこのドレスローザ。

 4回目の遭遇で戦闘の経験もあるルフィはジャックハートを確認できたタイミングですぐさま臨戦態勢を取り、その隙を見てウソップがサンジとの情報交換を図る。

 

「おいルフィ! 今どうなってんだ!」

「ゾロ!」

「おーおー、また増えちまったよ。……だが、これでようやく役者がほぼ揃ったな」

「ルフィ! こいつは1人でなんとかなるような相手じゃねぇぞ!」

「分かってる!」

「ケハハハハ。そう焦るなよ……。それに、複数で来たとしてもテメェらじゃ敵わねぇよ」

 

 ルフィとウソップが到着した数秒後、"麦わらの一味"の剣士であるゾロも駆けつけてきた。

 ドンキホーテ・ファミリーのほぼ全員を1人で相手したということもあり、ジャックハートが相手をしていなかったピーカもこちらに向かっているのだろう。街に被害が及んでおらず、"見聞色"で確認をしても街で暴れている様子はない。

 

「さて、じゃあ揃ったところで、始めるか」

 

 ドフラミンゴの近く、血溜まりになっている場所を一瞥して、ジャックハートは"麦わらの一味"に向き直った。

 

「さあ来い、玉無し野郎ども」

「"ゴムゴムの"……」

「"悪魔風脚"」

「"三刀流"……」

「お、おいお前ら!」

 

 ジャックハートが来ると悟った3人がそれぞれの技を構える。

 相手がただものではないことは分かっているため、手加減などする気もない攻撃を浴びせるために、すぐさま準備を整える。

 

「"JET速砲(マズルキャノン)"!」

「"胸肉(ポワトリーヌ)シュート"!」

「"百八煩悩鳳"ッ!」

「ケハハハ。名前をつけるのが流行ってるみたいだな。んじゃあ俺も、一つぐらいつけてみるか」

 

 3人による猛攻。

 単純計算で3人分の攻撃が浴びせられたことにより、ジャックハートの身体が大きく後退していく。

 

「"六式絶技・覇装鉄塊"。ケハハ、まずはこれを破ってみろ」

「ッ、またアレか……!」

「なんだアレ」

「3種類の覇気と六式を組み合わせた防御術だとよ」

 

 しかし、先ほどのサンジの単体での攻撃時と同じく、ジャックハートの肉体に目立った傷はない。

 ルフィの攻撃、JET速砲は腕を伸ばして攻撃するのは今までの技と同じだが、その際に反対の腕を縮めることで通常の"ギア2"よりも遥かに速い攻撃を可能としたものだ。

 ゾロの常人離れした筋力による飛ぶ斬撃、ルフィによる集約された超速の殴打、サンジの"悪魔風脚"による超高温の蹴り。それら全てが、また通じない。

 

「ケハハハハ、軽い軽い。確かに他のゴミみてぇな奴らと比べればマシだが、その程度だ。もっと本気で来いよ。飽きて女の方にでも行っちまうぞ」

「言われなくても……ッ!」

「サンジ!」

 

 またも笑うジャックハートに、サンジが1人飛び出していく。

 仲間を侮辱され、その中でもナミとロビンについての暴言が聞き捨てならないほどに吐かれていた。"麦わらの一味"の中でも屈指の実力を持つ2人が来たことで、彼の中の枷が外れた。

 

「"悪魔風脚・粗砕(コンカッセ)"!」

「なんだ。まずは脚を潰して欲しいってことか」

 

 ジャックハートの頭部めがけて振り下ろされるサンジの脚。かかと落としの要領で回転と重力により速さを増したそれは、常人では耐えきれないほどの重みを持つ。

 しかしその蹴りを、ジャックハートは右手で掴んだ。

 

「何ッ……!?」

「ま、熱くしようがなんだろうが、触れなきゃいいってだけだろ」

 

 ジャックハートの右手には、何やら透明だがオーラのようなものが確かに存在しているのが見える。そのオーラ越しに、サンジの脚を完全に掴んでいた。

 先ほどまでの説明にもある通り、それが"武装色の覇気"であることは理解できた。しかし、初めて身体を掴まれたと同時に相手が次元が違う"覇気"の使い手であることを理解してしまった。

 

「"圧縮"」

「グッ!? ああぁぁぁぁあああッ!」

「ちょろちょろされんのはウザいからな、文字通り足止めさせてもらう。"指銃"」

「ッ! く、がぁぁああ!」

 

 足の骨である中足骨を握り潰すように砕いた後、ジャックハートに掴まれ無防備になっていた右脚のアキレス腱を目がけ、連続で指銃を放つ。

 一瞬のうちに右脚に多大なダメージを受けたサンジは、ジャックハートの手により投げ飛ばされることなく、彼の足を掴んでいた右手で強引に引き寄せられた。

 

「ケハハハハ。海のゴミが夢見てんじゃねぇよ。片足使えなくして終わりじゃねぇ」

「何を……」

「まずは、こう。次に、こうだ」

「……〜ッ!? ア、ガッ……!」

「で、こう」

 

 すぐにでも治療を始めなければ後遺症が残ってしまうほどにぐちゃぐちゃにされた右足だが、ジャックハートはそれでは終わらない。

 引き寄せたことで不自由な体勢になったサンジの右膝に"覇気"を纏った突きを浴びせて普通なら曲がらない逆方向へと脚を折り、その直後にサンジの唯一の支えとなっていた左足を踏み抜いた。

 そして最後に、ガラ空きとなったサンジの懐に、深々と拳を突き刺した。

 

「その手を、放せ!」

「おっと、危ねぇな。仲間ごと斬るつもりか?」

 

 意識を吹き飛ばすには十分すぎる一瞬での大量の痛み。悲鳴すら上げずに意識を絶った瞬間、ジャックハートに第三者による攻撃が伸びてきた。その下手人こそ、ゾロだった。普段は仲間同士とは言え仲が良いとは言えないサンジとゾロだが、今回のような緊急時は違う。

 仲間を捕らえる手を斬ろうとするその攻撃は、標的が宙に逃げたことによって不発に終わった。

 

「ルフィッ!」

「おう!」

 

 だが、避けられることも狙い通り。

 サンジの足を掴み上げたままジャックハートは宙へ飛んだ。つまり、体勢が不十分かつ満足に動けないのはジャックハートも同じ。

 

「"ゴムゴムの火拳銃(レッドホーク)"!!」

「やっぱバカだわお前。どうせならコイツごと俺をぶっ潰すぐらいの技撃ってこいや」

 

 ゾロの斬撃を避ける形となり、不自由な体勢のまま宙へと逃げた彼にルフィの文字通り燃える拳が迫る。"武装色の覇気"を込め、炎を纏ったその拳は──

 

「頼むわ身代わり」

 

 ──ジャックハートが右手を前に持ってきたことで流れてきたサンジの身体に直撃した。

 

「あっ! サンジ!」

「ま、こんなことも予想できねぇ船長なら、細けぇことなんざ考えられるはずもない、か。つくづく有能なクルーが可哀想になるぜ。そら、お前らの大好きな海にでも浸かってろ」

 

 ルフィの攻撃が直撃してもなお、呻き声一つ上げないサンジ。そんな彼の身体をまたも振り回し、ジャックハートはサンジを海へと投げ捨てた。

 

「テメェ……! ブルック、ウソップ!」

「残念。あいつらはもう私とハンコックで無力化済みだ。どうしますか? ジャックハート様」

「そうだな……。よし、面白いこと考えた」

「っ、もう好き勝手にさせるか! ゾロ!」

「あぁ……! チッ、あいつまで……!」

 

 投げ捨てられたサンジを助けに行こうとするも、ブルックとウソップの両者ともに石化しており動けない。

 唯一道があるとすれば、女が近くに来たことで多少隙ができたジャックハートを正面から突破することだった。その時ジャックハートに近寄ったのが、自分がシャボンディ諸島から飛ばされた際に世話になったペローナであることに思わないことがないわけではなかったゾロだが、今はそれどころではない。

 

「"ゴムゴムの三千煩悩鳳"……」

「あぁ? おい。……たしぎ、刀」

「は、はい!」

 

 ルフィとゾロが技を構える。放つ前から分かる、大規模なもの。それを見たジャックハートの表情が険しいものへと変わる。もっとも、それは彼らの技に危機感を抱いているからなどではない。

 今この場には、いくら覇気を扱えるようになったとは言えまだまだ実戦経験は不十分なものもいる。そんな者たちがいる中で大規模な技を放とうとしていることに、怒りを覚えたのだ。

 

()()()()一刀流……」

 

 たしぎから投げ渡された、一本の刀。

 ジャックハートの愛刀という訳でも、たしぎの愛刀という訳でも、ましてや海軍が所有している業物でもない。ただのナマクラ刀。どこにでもある、5万ベリーするかも分からない刀。

 それを抜刀し、ゆらりと垂らすように切っ先を下げた。

 

「"JET攻城砲(キャノン)"!」

 

 先に動いたのは、ルフィとゾロ。

 斬撃と打撃を何度も高速かつ高密度で繰り返すことにより生まれた衝撃波が、まっすぐジャックハートへと向かう。

 

「"威国(いこく)"」

 

 その衝撃波を貫き、霧散させたのがジャックハートの斬撃だった。

 およそ刀を振る姿勢とは思えない、力任せの一撃。ただ斬撃を飛ばすために刃として必要にされていた刀の先は消滅しており、2人によって放たれた衝撃波をかき消すだけでなく、その先にいたルフィとゾロを建物の壁に強く叩きつけてなお、2人に襲いかかり続けていた。

 

「ててて。巨人族の武器の振り方真似してみたが、こりゃ合わねぇな」

「ジャックハート大将! ドンキホーテ・ファミリーの拘束、並びに連行、完了しました!」

「おう、お疲れ。んじゃああの2人を、奴らの海賊船の甲板に放り込んでおけ」

「……はい?」

 

 連続して襲っていた斬撃。もはや爆発と言っても良いほどの轟音を立てていたそれは、しばらくすると鳴り止んだ。

 戦闘を終えたジャックハートの元へと駆け寄ってきたのは、かつての部下であったマージ。

 しかし、そんな彼に言い渡された命令は、意外なものだった。

 

「だから、その4人をあの船に乗せとけっつってんだよ。海に行った黒足は放置でいい。とにかく4人積んで、錨上げとけ」

「はっ!」

 

 せっかく捕らえた海賊達を、逃がす。

 ジャックハートが中将の時にこういったことを指示された記憶はないが、逆らえばどうなるか分からない。

 マージは意味が分からずとも、咄嗟に敬礼をしていた。

 

「あ? おい、マージ。お前トラファルガー・ローはどうした」

「トラファルガーでしたら、リリー少尉とダレス大尉、たしぎ少将が捕獲しましたが」

「ほう……。なるほどな、りょーかい」

 

 ドンキホーテ・ファミリーが飛ばされてきたのと同じく飛ばされてきたトラファルガー・ロー。

 彼の身体も王宮にてジャックハートに痛めつけられており、そこから更に追撃を食らったらしい。

 

「んじゃ、俺戻るわ。後頼んだぞ。なんかあったらイッショウさんに押しつけとけ」

「はっ! ……えっ?」

 

 無力化した麦わらの一味の処分を部下に任せ、ジャックハートは軍艦の方へと向かう。

 

「あなた様! お疲れになっていませんか?」

「あぁ、大丈夫だぜハンコックちゃん」

「ジャックハートさん。これからどうしますか?」

「ちょいとお預けだ。ケハハハハハハハッ」

 

 女たちとセックスをして快感に浸る。それだけがジャックハートの楽しみではない。ここしばらく、すぐに音を上げ、自首し、諦める海賊たちが多すぎたのだ。

 

「セックスとはまた違うことを楽しませてもらうぜ、"麦わらの一味"」

 

 ジャックハートの顔がおよそ海兵とは思えないほどに邪悪なものへと変わる。

 しかしその表情は、女性たちをさらに虜に変えるだけであった。

 

 

 ◇

 

 

「……ィ! フィ……! い、ル……ィッ!」

「ん……!」

「おいルフィ! 起きろ! 寝てる場合じゃねぇ!」

「んがっ!? ウソッ……い、いデェ!」

「怪我は()()()()し、()()()()()()()! のに、海に出ちまってるんだ!」

「ん? 何言ってんだウソップ。……ってアレ?」

 

 それからしばらくして、"麦わらの一味"が全員船の上で目覚めた。

 "偉大なる航路"の後半の海、新世界とは思えないほどに穏やかな波に乗って、サウザンドサニー号は進んでいた。

 

「ッ! おいウソップ! ナミとロビンとチョッパーは!?」

「落ち着け! いや、落ち着いてられねぇが、話を知らねぇのは寝てたお前だけだ! 他全員、チョッパーから()()()()()!」

「話だと!? って、チョッパーいるのか!?」

「いるにはいるぜ、ルフィ。……ただ、()()ぞ」

「フランキー!」

 

 最後に目を覚ましたのは、船長であるルフィ。

 起きて早々ジャックハートに捕まっていた仲間たちのことを思い出し、近くにいたウソップに詰め寄った。

 それに待ったをかけたのが、船大工であるフランキー。比較的年長者であるということもあり、ウソップと比べて落ち着きは見られるがその表情は険しい。

 

「チョッパー自身、相当痛ぶられてる。意識もねぇし、触れて分かるぐらいの高熱も出てる。完全素人知識の緊急処置レベルだが、多少の治療はした」

「……。ナミと、ロビンは」

「そのことについては、俺が話す」

「サンジ! ……どうしたんだ? その杖」

「あいつにやられたのが応えたな。すぐに治療しなきゃいけねぇが、チョッパーは動けねぇし、船内に置いてた大事なモンがゴッソリ奪われてる。いくらチョッパーが目覚めても、治療する方法がねぇ」

 

 満身創痍の仲間たちからどんどんと伝えられる、考えたこともないような惨状。

 

「ちなみに、ナミさんとロビンちゃんなら、まだあいつの船だ」

「ッ! ……行くぞ」

「待てルフィ。話はまだ──」

「早く行かねぇと、本当に捕まっちまうぞ!」

「話はまだ、終わりじゃねぇんだ。ルフィ……!」

「チョッパー! ……ッ!」

 

 加えて、ナミとロビンはまだあの男の元にいる。

 ルフィの選択肢は当然、奪還。そう決意した瞬間、チョッパーの声が聞こえた。

 

「おいチョッパー! 寝てろって!」

「おれひとり、寝てられねぇ……! ルフィ、今から話すのは、全部ホントのことなんだ……」

 

 その姿を見て、ルフィは絶句した。

 想像していたよりも遥かに傷ついており、不慣れな中巻かれた包帯の隙間から、陥没した胴体が見て取れる。

 

「ナミとロビンは、2年前からジャックハートと、知り合ってたんだ……」

「それって、どういう……」

「……ナミさんの子どものベルメールちゃんと、ロビンちゃんの子どものオルビアちゃん。2人とも、ジャックハートの子どもだ」

 

 天を仰ぎ、タバコの煙を吐きだすサンジから告げられた、衝撃の事実。

 思考が追いついていないルフィに、さらに畳み掛けるように言葉が繋がる。

 

「ナミさんとロビンちゃんは、自分の身体で俺たちを守っていた。ジャックハートと性行為をすることで、一度見逃してやる、ってな。そしてその約束を……オレがッ、捨てちまった……ッ!」

「サンジ……」

「ッ! これでいいんだろ、ジャックハート! これで男衆全員、事態は把握できたぞクソ野郎が!!」

 

 慟哭。泣き叫びながら続いたサンジの言葉は、とある方向へと投げかけられることで終わった。

 サンジが顔を向けた方向。そこには、電伝虫が通話状態で鎮座していた。

 

『ケハハハハ、伝達ご苦労様。怒りに任せて電伝虫の通話を切ってたらあの2人をぶち犯してたところだぜ』

「いいから話を進めやがれ……!」

『焦んなよ。早漏童貞は嫌われるぜ? さて麦わらの一味諸君。あの2人は返して欲しいか?』

「当たり前だ!」

 

 今はまだ怒りに身を任せる時ではないと、頭に血が昇りそうになったルフィでも判断はできた。

 その返答を聞き、電伝虫がニヤリと笑う。

 

『ケハハハハハ。なら、ゲームをしよう。ルールは簡単。お前たちが勝てば、あの2人を解放する』

「ゲームだと……!」

『落ち着けよ。提案してるのは俺だ。嫌なら、このまま帰ってもいいんだが』

 

 またも、優位に立たれる。と言っても、取り返したい立場である彼らにとって、その条件は可能な限り飲まなければならない。

 

『まず一つ目。軍艦前まで辿り着け、だ。ゲームの会場はお前たちに向かわせている島。無人島だから安心しろ。お前らはそのまま船の進行方向通りに島に上陸。そこから島に停泊する軍艦を目指せ。全員でな』

 

 一つ目のゲーム。

 重傷者もいるが、難易度としてはそれほど高くはない。

 

『二つ目。その時点での転職アンケートだ。2人に出てきてもらい、海賊を続けるか、俺の元に来るかを言ってもらう。これは、海賊を続けるって方が勝ちだな』

 

 二つ目のゲーム。

 完全にナミとロビン頼みの勝負であるが、2人を信じないわけにはいかない。

 

『三つ目。戦闘だ。俺が選んだ選りすぐりの海兵たちと戦ってもらう。一勝でもできればそっちの勝ちだ』

 

 三つ目は、至って単純なものだった。しかも、一勝でいいというのだから勝機は十分ある。

 

『四つ目。クイズだ。これはサービスとして、"麦わらの一味"に関する問題を出してやる。問題数と合格ラインはやるときに教えてやるよ』

 

 四つ目も、自分たちに有利なもの。

 

『そして最後に、決定。これは、最後に2人にどうするかを決めてもらうってことだ』

 

 最後の問題を聞いて、はっきりとした。

 相手は自分たちを舐め腐っており、そして遊びの道具としか思っていないということが。

 

『全てでお前たちが勝てば、2人を解放してやるよ。そのまま航海でも続ければいい。好きにしろ。だが、一つでも落とせば、分かってるな?』

「あぁ……!」

 

 そして、自分たちが舐められているということ以上に、ナミとロビンをこのまま見捨てるわけにはいかないというのが、一味の決断だった。

 

『ケハハハハハハハッ。さて、どうする?』

「……お前は、俺が一番嫌いなタイプの人間だ」

『あ? 褒め言葉かよ。てめぇみたいなカスに好かれたところで、どうともならねぇよ』

 

 一々神経を逆撫でするような、ジャックハートの言葉。

 爆発しそうな怒りを胸に、ルフィは電伝虫越しにジャックハートに宣言した。

 

「望むところだッ!」

『ケハハハ。そう言ってくれて助かるよ。あぁ、ちなみにだが、俺の指示した方法以外でこの船に接近したり、この船を攻撃しようとした場合、てめぇらの故郷が地図から消えることをお忘れなく』

 

 それだけ言い残し、ジャックハートとの通話は切れた。




ちなみに、この作品はハッピーエンド(意味深)の予定です。

どういう人がハッピーエンドを向かえるか、ですね。


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一歩

進んでしまうお話。





 

 

 

 

 

「で、だ。この子がモネちゃんの妹か?」

「えぇ。……その、この子だけは、見逃してくれませんか?」

「本人次第だな。まあ、従順になるなら、この幼すぎる容姿もどうにかする方法はいくつか考えられるからな」

 

 電伝虫の受話器を置いたジャックハートは、その広い自室で新たに増えた女性たちと向かい合っていた。

 そこにはドレスローザで新たに船に乗ることとなった女性陣に加え、2人の海賊がいた。

 

「さてナミちゃん、ロビンちゃん。どうする?」

「……どうもこうも、最後にはあなたの女になるわ。身も、心も」

「私もよ。永遠に、愛してくださるのでしょう?」

「ケハハハハ。賢い選択だ」

 

 ナミとロビン。

 2人の表情は、ジャックハートと出会ってからこれまでにないほど険しいものだった。

 

「あなたの脳内、どうなってるのよ……! ルフィ達が勝っても、私たちを解放して即皆殺し、ルフィ達が負けたらインペルダウン行き……! そんなの……」

「あぁ。そんなの、ナミちゃん達が俺の元で幸せに生活を送ることで、麦わらの一味の男どもの命だけは保証するっていう未来しか存在しねぇな。それが嫌なら、アイツら死ぬまで全員サンドバッグだ」

 

 先ほどの電話で、ジャックハートはルフィ達が勝てばナミ達を解放すると言うことを告げた。

 しかし、その後逃がすかどうかは言っておらず、ナミとロビンが上陸したと同時に再び捕らえ、男どもを皆殺しにすることは決まっているのだ。

 

「逃げ道もねぇよ。まずこの軍艦に全員で来た段階で、待ち伏せさせた部下にあいつらの船を処分させる。みかんの木やら考古学の本やらはもう既に撤去済みだ。安心してくれ」

「そう……。嬉しいわ、ジャックハート様」

「ケハハハ、露骨に不機嫌になってんな。まあいい。その部分も黒足との話で契約としては解消されてるからな。ま、少し先が楽しみだ」

 

 

 ジャックハートの機嫌を取らなければ一味が危ない、という契約はもうない。

 ならばせめてものあらがいとして、今現在、口で抵抗できる限りはしようというのが2人の考えだった。

 険しい表情を続けるナミとロビンの前でコーヒーを一口含み、ゆっくりと飲む。

 

「で、どうする。特例として今だけはその反抗的な態度は認めてやるが」

「どうもしないわ。ルフィたちがゲームに勝って、かつ無事に生き延びる。それしか、私たちが船に戻る方法はないんでしょ?」

「そういうことだ。あぁ、変な気は起こさない方がいいぞ。人体実験の材料なら常に不足中なんだ。恵んでくれるってんなら遠慮なく受け取るぜ」

「……分かったわ」

 

 2人とも賢いが故に、悟ってしまう。

 勝機を、希望を、未来を。この男1人の手により潰されてしまう。だが、これから人生の全てにおいて彼に身も心も委ねなければならないのならば、せめて今だけは海賊としての意地を見せようとしていた。

 

「でも、いいのかしらジャックハート様。いくら大将とはいえ、街の破壊とこれほどまでに非常な権力の行使。一般人から苦情が出るかもしれないわ」

「でねぇよ。ケハハハハハッ! そうかそうか、新世界に来て短いからそりゃ知らねぇか。俺ぁこれでも海兵。それも、戦いがメインだ。それに対してかじったこともねぇような雑魚から文句言われんのもめんどくさいからな。とある作戦を立てたんだ」

 

 少しでもジャックハートをいい気分にするのを防ごうとして、失敗。

 彼の表情は常に自信に満ちていた。

 

「海軍本部大将が破壊するぐらいに暴れても仕方ない、ってな。小遣い稼ぎのためじゃねぇ。ゴチャゴチャ言われんのがめんどくせぇから、標的にした奴の懸賞金はハイペースで上げるようにしてんのよ」

「っ!」

「大半の人間からしたら、海賊は怖いもんだ。もし海賊と名乗る奴の懸賞金が10億を軽く超えていたらどう思う」

「……怖い、わね」

「そう。つまり、そいつに暴れられる前に仕留めれば、非難どころか称賛される。捕らえた海賊の一部は海軍での奉仕活動もさせてるからな。何も害を出しちゃいねぇ」

「そんな簡単に、懸賞金が動くの……?」

「だから、俺を誰だと思ってんだっつーの。上が今一番ビビってんのは俺が海賊になることだ。それをチラつかせれば、懸賞金を上げるぐらいのことぐらい、すぐにやってくれる。俺が捕まえてくるだけだしな。ちょっと高めの給料程度の扱いらしい」

 

 ジャックハートの口から飛び出したのは、自分の行っていることが上からも下からも、世論からも何も言われないという確固たる事実。

 自分が鍛え上げたものは自分のためにしか使わない。しかし、その結果として一般人と天竜人に安心と安全を保証しているのだ。

 

「ま、今はそんなことどうでもいい。ベビー5、モネ。2人はまだだったからな。お楽しみといこう」

「あなた様……」

「ありがとう、ございます……」

 

 頬を赤く染め、ジャックハートの元へと歩み寄る2人。

 ベビー5とモネ以外の面々は今から何が行われるのか察し、控えの部屋へと下がっていく。

 慣れている訳ではないが、同じように察したナミとロビンも下がろうとしたが、待ったをかける人物が一人。

 

「待てよナミちゃん、ロビンちゃん。二人とも、一応拘束してるって扱いなんだ。この船で、大将として上に立つ俺の視界から外れることは許さねぇ」

 

 その声の主はもちろんジャックハート。

 彼が言ったようにナミとロビンは現状、連行される直前という段階で止まっており、その過程でジャックハートが()()調()()を行っているのだ。

 

「別にひどいことをするつもりはねぇよ。今さら君らに海楼石の錠をかけるつもりもねぇし、ただそこで大人しく見ていればいい」

 

 一つ、一つと衣服を脱ぎ、床に落としていく3人。

 その3人を前に、不満げな表情をしながら俯き、ナミとロビンはじっと立っていた。

 

 

 ◇

 

 

 軍艦内でベビー5とモネとの熱い絡み合いが始まったのとほぼ同時刻。

 目視で確認できるほどに近い島を奪還の場に指定されていた"麦わらの一味"の男衆たちは、島の海岸に船をつけ、甲板に出ていた。

 

「で、作戦はどうする」

「どうもこうもねぇだろ。真正面から行って、ナミさんとロビンちゃんを取り返す。それしかねぇ」

「奇襲は、やめておいた方がいいでしょうね。あの大将さんのことですし、故郷を消す……というより、私たちの大事なものを壊されそうですから」

 

 その彼らの表情にいつもの朗らかな様子は一切ない。

 鬼気迫る、といった言葉が最も良く当てはまる雰囲気を皆が纏っていた。

 それは、普段は楽観的なルフィも同じ。

 

「どうだっていいだろ、ブルック。俺たちは、アイツをぶっ飛ばせばいいだけだ」

「……だな」

「違いねぇ」

「おれも、やるぞ!」

「いやお前はその怪我じゃ活躍できねぇだろ、チョッパー」

「アゥッ! 戦闘面は俺たちに任せとけ!」

 

 一味の考えは明確な言葉などなくても統一されている。

 ナミとロビンの奪還。その過程で、ジャックハートとの戦闘もあるだろうが、逃げ切ればいいというのが結論だった。

 

「よし。行くか」

「おう。……つっても、何か仕掛けてるだろうが」

 

 ジャックハートが海賊相手には徹底的に詰めてくるということは、すでに一味も分かっている。

 チョッパーは全身にダメージを受け、サンジは両脚を痛めつけられたことでまともに動けるかどうかも怪しい。

 そして、ルフィとゾロが共闘をしてもジャックハートに勝てるかと言われても、頷けはしない。

 

「あいつは、めちゃくちゃ強い。あいつとは俺がやるって言いてぇけど、俺だけじゃ勝てねぇかもしれねぇ」

「大丈夫だルフィ。そんなこと、ここにいる全員分かってる。俺たち一人一人じゃ、あいつには勝てねぇ。でも、今回は向こうがゲームを仕掛けてくれてるんだ。もうここまで来たら、向こうの土俵で勝つしかない」

 

 それゆえに、ジャックハートが提案した条件で勝つしかないのだ。

 と言ってもその内容は先ほど彼が提示していたゲームであり、不確定要素もあるが自分たちに有利と言える条件が多い。

 つまり、舐められているのだ。

 

「舐められんのは正直ムカつくが、あいつが勝手に手を抜いてくれるならありがてぇ。勝って、取り返して、逃げる。今回は誰も、あのジャックハートに戦いを挑もうなんてするなよ」

 

 サンジのその言葉に、反論を持ち出す者はいなかった。

 正々堂々と戦って勝てる相手ならば、ナミとロビンが掴まっていないならば、指定されているのが軍艦の近くでないならば、あの男に確実に戦いを挑んでいたであろうものはいる。

 それほどまでに憎い相手ではあるが、隔絶した実力を持っているのも事実。

 

「それじゃあ、しつこくなるが動きのおさらいだ。全員、今回に関しては身勝手な行動はするなよ。まず、下船したら島の状況の確認からだ。以前人が住んでいた島なのか、獣だらけの島なのか。次に、2班に分かれて軍艦を目指す。一つは、ルフィ、俺、フランキー、チョッパー。もう一つはマリモ、ウソップ、ブルックだ」

 

 男だけで行動する場合に、自然と"麦わらの一味"では頭の切れるサンジが参謀役となることが多い。

 先ほどジャックハートに手痛くやられたということもあり、冷静に判断できている彼の言葉を遮るものはいなかった。

 

「いいか。道中どんな敵が出てきても、構うな。軍艦までとにかく辿り着く。それが最優先だ」

 

 もちろん作戦が簡単に進められるとは思ってはいない。

 相手はあのジャックハートなのだ。翳め手を使い、力でねじ伏せ、心を折ってくる。最初の段階に軍艦前まで辿り着くようにというものを用意したということは、つまりは島にも何かを仕掛けているということ。

 

「……よし。ならまず、軍艦までだ」

 

 とにかく生きて、全員が軍艦まで辿り着く。それを最初の目標として一味が動き出す。

 全員が一塊になって動かないのも、全滅を避けるため。チョッパーとサンジという二人の重傷者を抱えたまま、一網打尽にされては話にならない。

 

「行くぞ!」

 

 サウザンドサニー号から降り、一味は島の反対側に停泊させられているという軍艦を目指す。

 その様子を、少し離れた木の上から観察するものが一人。その男は一味が島の内部へと入っていくのを確認すると、立っていた枝から一瞬で消え、少し離れた場所で待機させていた部下の元へと降り立った。

 

「行ったか。では、5分後に作戦を開始する。予定通り、必要な物だけを持ち出し、その他不必要な物は船内に残しておく。選別はカリファ中将、たしぎ少将に一任する。いいな」

「了解しました」

「はいっ!」

 

 その男は、ジャックハートに鍛え上げられてきた、中将マージ。

 待機させていた面々にはジャックハートと濃い関係を持っているものが大半だが、彼女たちに対してはジャックハートに対する接し方はしない。

 上司と、その上司に愛されている女性を同列に語るわけにはいかない。そもそもマージ自身も海軍本部の中将という地位に立っているのだから。

 

「確か、ジャックハートさんから言われていた運び出すものって、あの2人の下着とかでしたよね」

「えぇ。それと隠し持っていると彼女たちが言っていた一味のお金よ。運び出した後は、もうあの船に価値はありません。"竜骨"を破壊して、帆や船首を粉砕すれば心も折れるでしょう」

「あっ。それはジャックハートさんが最後にするそうですよ。なんでも、とびっきりの演出を考えているとか」

 

 ジャックハートのお楽しみが始まったタイミングで、事前に指示を受けていたカリファとたしぎがマージに合流した。

 彼らにジャックハートから与えられている指令は、サウザンドサニー号を壊滅一歩手前まで追い込むこと。その前に、一味が蓄えていた資金や食料、価値が見出せそうなものを運び出すこと。

 先ほどは運び出すことが出来なかったナミとロビンの衣服や財宝類を奪い取った後、表面をボロボロにする。それが、彼らの仕事だった。

 

「……可哀想にな。ジャックハート大将好みの女を2人、仲間にしてしまったが故に、この運命か」

「いえ。きっと、"麦わらの一味"の問題ではありません。ジャックハート様に気に入られるであろう女性に関わってしまった海賊。だから、こうなる運命なのです。美女に関わっていたからと言って、海賊でないなら問題はありません」

 

 ナミとロビンと親密な関係をもし築いていても、その人物が海賊でないならジャックハートはその人物にまで手を出すことはない。

 彼女たち2人がいた"麦わらの一味"が悪いのではない。ジャックハート好みの女性を仲間にしている海賊が悪いのだ。

 

「それより、早く仕事に入りましょう。やらなければならない仕事は山ほど残っています」

「了解ですカリファさん」

「あぁ、それと。たしぎ少将。ジャックハート様からの伝言です。『元王下七武海トラファルガー・ローの拿捕、ご苦労。手柄は元帥サカズキに報告済みだ。以上の手柄から、元帥サカズキへの進言が認められたため、中将への昇進とする』だそうです。おめでとうございます」

「……へ?」

 

 これから仕事に取り掛かろうとするたしぎにカリファから伝えられたのは、中将昇進の知らせだった。

 サカズキ元帥に認められたということは、正式に中将としての地位に就いたということ。

 

「え、あ、アレでいいんですか!?」

「アレ、とは?」

「トラファルガーを私が捕らえることが出来たのは、ジャックハートさんがトラファルガーをほぼ死にかけの状態にまでしてたからで……」

「それでも彼を捕らえたのはあなたで、ジャックハート様と元帥から認められたのもあなたです。兎にも角にも、これであなたは正式な海軍本部中将です」

 

 不本意な昇進だとは思っているたしぎだが、今回のこの昇進を蹴る気は一切ない。

 海軍本部中将への昇格。それは、たしぎがジャックハートと密な関係を始めてから最も望んでいたものだった。

 

「ということで、今回のこの任務には中将が3人いることになりますが、決して気を抜かないように」

 

 

 ◇ ◇

 

 

「島に何か仕掛けてるかもーなんて、馬鹿なことを考えてんだろうな。あの海賊共は」

「んぁあ……! は、んひゃあ!」

「ケハハハハハ! 教えてやった方が良かったか? テメェらみたいな雑魚相手に、わざわざ島に小細工仕掛ける必要もねぇって」

「あっ、んふ……あぁんっ! ジャックハート、様ぁ……」

 

 "麦わらの一味"が軍艦に向かい始めている頃、ジャックハートはベビー5とモネとの行為を終え、彼女2人の胸を揉みしだきながら、ベッドに腰掛けていた。

 ベビー5相手に2回戦、モネ相手に3回戦。全てを違う体位で楽しんだジャックハートの側には、彼の最初の指示通りナミとロビンがずっと立っていた。

 

「で、2人はどうする? あいつらが来たら構ってられねぇし、その後も生憎だが真っ先には相手できる保証はねぇ」

 

 ナミとロビンを誘惑するように、わざとらしく大きな喘ぎ声を上げていたベビー5とモネ。もちろんジャックハートも彼女たちの心境が分かった上でそうしており、彼女たちが落ちるのを待っていた。

 

「……なんて、言うとでも思ってたか?」

「キャッ!」

「ナミ! ジャックハート様、話が違うわ!」

「はぁ? 契約は破棄されて、今は俺の管理下で連行中。俺の気分次第で抱くかどうかを判断して何が悪い。なぁ、元海賊」

「っ!? 元、海賊……?」

 

 内腿をもぞもぞと動かしながら行為を見ないようにしていた2人の内、ナミの身体を抱き寄せ、ベッドに寝かしつける。

 その際、ジャックハートの口から出た言葉に、ナミが反応した。

 

「あぁ、元海賊だ。いや、正確に言えば元賞金首だな、2人とも」

「……まさか」

「その通り。さっきサカズキさんに連絡した時に、2人はもう捕まえたって報告しておいた。明日の朝にでも、2人の手配書は効力を失ったことが世界中に知れ渡る。そして、その段階を経て2人の身柄は俺の元に来たって訳だ」

「っ、そんなの、また私たちが海賊になれば……」

「なっていいのか? インペルダウンが可愛く思えるほどの地獄を見せてやるよ。あいつら全員にな」

 

 ナミを仰向けにして寝かしつけ、彼女に獰猛な笑みを向けるジャックハート。

 そもそもの話、契約が破棄された時点で彼女たちに有利な点は一つとしてない。以前の契約ならば、彼女たち2人がジャックハートに対して有益なことをすれば仲間が助かるというものだったが、その唯一の利点すら消えた。

 

「ケハハハハ。元仲間の命で足りねぇんなら、ナミちゃんの故郷でも吹き飛ばすか?」

「やめて!」

「冗談だって、冗談。それに、ナミちゃんだって嫌がってる訳じゃねぇんだろ?」

「そんっ、あっ……そこ、ダメ……」

 

 そして、抗えない最大の理由が一つ。

 2人とも、本気で彼を排除しようとしていないのだ。

 

「ちょうどいい機会だからハッキリさせておこう。あのむさ苦しい男どものことなんざどうだっていい。今君たち2人が求められてる答えは、死ぬか、生きるかの二択だ」

「はぁ、ぅ……うぁっ、ん、ふぅー……。く、クリじゃ、なくて……」

「イキそうになるのは後にしてくれよ、ナミちゃん。選択肢だ。ズタボロのボロ雑巾みたいになって文字通り海の藻屑となるか、俺の元で生きて、奇跡的に元仲間の命の無事を祈るか」

 

 目の前で、自分たちがずっとお預け状態にされていた彼のセックスを見させられ続け、強引に引き寄せられ、愛撫を受け。

 待ち望んでいた時が、もうすぐそこまで来ているのだ。

 

「さあ、どうする……って、どうしたよナミちゃん。挿入れるのは答えを聞いてから──」

「……お願い。あなたのものになるから、あいつらの命だけは助けて……」

「それがナミちゃんの答えか。で、ロビンちゃんはどうする? 2人の美女に熱心に求められておねだりされたら、いくら俺でも海賊相手に()()は甘くなっちまう」

「……私の答えも、ナミと同じよ。あなたのお側で、あなたを愛させてください。ジャックハート様」

 

 極限の選択を迫られた彼女たち。"見聞色の覇気"とノジコから聞いていた事前の情報でナミが陥落寸前になっているのが分かっていたジャックハートは、最後に最善の選択を突きつける。

 それこそが、契約などない、仲間たちの命を保証するというもの。

 シャボンディ諸島、魚人島、パンクハザード、そしてドレスローザ。仲間の無茶な行動に対するストレスや周りの目を気にしてしまったせいで溜まりに溜まっていたナミの性欲が、ジャックハートを前にして決壊していた。

 

「だが、俺は2人を俺のものにしたい訳じゃねぇ。俺の女になって欲しいだけだ。分かってるな、ナミちゃん」

「……チュッ。ちゅむ、あむ……んっ、ちゅるるる……んぷっ、ちゅぷっ、ちゅぅ〜……ぷはっ。えぇ、分かってるわ、ジャックハート様。……いいえ、あなた」

 

 仰向けの状態から覆いかぶさっている彼の背に両腕を回し、ナミが彼の顔を引き寄せる。

 ロビンやベビー5、モネらがいるにも関わらず、ナミはジャックハートの唇を貪りくらうように自らの唇を押しつけ、その口内に舌を侵入させた。

 心の底から彼を愛し、彼に愛され、共に人生を歩む。そうすれば、あの快楽がまた味わえる。

 

「私はあなたを愛しています。これから、たっぷり愛してくれる?」

「もちろん。俺も愛してるさ」

 

 ナミは、これからのことと今までのことを考えてしまった。

 その結果として、これから先の人生全てを、ジョー・ジャックハートの為に使い切ると決めたのだ。

 

「ねぇ、お願い……挿入れて……。もうずっとあなたを我慢してたのよ?」

「んー、まだ足りん。そんなおねだりじゃあロビンちゃんと愛し合うことになるぜ?」

「んもぅ。そうね……あっ! じゃあ──」

 

 懸賞金が無くなり、海賊ではない身分となり、一味を抜ける決心をし、彼に愛される人生を選んだナミ。

 吹っ切れたのか、彼女は心の底からジャックハートを求め続ける。

 

「──赤ちゃんが欲しいわ。孕ませて?」

「これから先も楽しみてぇからまだもう少し先ってのはダメか?」

「ふふっ、素敵ね。これからも愛してくれるなら、いいわよ?」

「安心しろ。ほぼ毎日抱いてやるよ」

 

 互いの唇を貪り合う。

 混じり合った唾液が仰向けで寝転がるナミの頬を伝い、枕を濡らしていく。

 空島で抱かれた時のような罪悪感はもう無い。むしろ、今のナミにあるのは、命を助けてやっただけ感謝をして欲しいという少しばかり傲慢なものだった。

 

「もちろんロビンちゃんも、な」

「えぇ」

「なんだ、乗り気じゃねぇのか? どうせ俺の女になるんなら、俺の気が変わらず、一味の命だけは助かる今のうちになっといた方が後味良いと思うんだが」

「……私も早く、あなたとしたいの」

 

 だが、彼女たちの中にあるのは最善の選択をしたという満足感が共通して存在していた。

 自分たちも男衆も全員死ぬか、自分たちは助かり男衆は死ぬか、全員が生き地獄を見るか、今の選択である自分たちはジャックハートの元で幸せに行き、彼の気分がいいために男衆が死なないか。

 彼女たちは、最後の選択肢を取っていた。

 

「ケハハハ。俺も早くロビンちゃんとしてぇが、今はナミちゃんだ」

「やったっ」

「今までベルメールとゲンをナミちゃん1人に任せててすまなかった。俺の元なら安心だ。安心して、ナミちゃんらしく楽しんで、そして俺と愛し合おう」

「はい……。んっ、そこ……」

 

 一度ではなく、完全にジャックハートを受け入れたナミ。

 かつての仲間がこちらに向かってきていることなど、分かってはいるがどうでも良くなり、今は彼の屹立した肉棒を前に、いかに彼と愛し合い、互いに気持ち良くなれるかしか考えていなかった。

 

「なかなか俺のとこに来るって決心をしてくれなかったからな。その分焦らさせてもらうぜ」

「なん、でぇ……。もうぐちゃぐちゃなの、分かってるでしょ?」

「分かりきってるが、俺なりのナミちゃんへの罰だ。っと、ここらで遊び終えてからの流れを教えておこう」

 

 鈴口でナミの膣口に小刻みに触れ、彼女を更に焦らしていくジャックハート。彼女が快感に身を捩らせる度に、出産を経て分泌され始めた母乳が彼女の美しい大きな乳房の先にある薄桃色の乳首から母乳が垂れる。

 完全に堕ちきったナミを眼下に、ジャックハートはこれからの予定を口にする。

 

「今、フーシャ村ってとこにいたマキノちゃんって子がこっちに向かってる。新しい俺の秘書ってことで部下を迎えに出してるとこだ。そして、マキノちゃんが合流し次第、アラバスタに向かう」

「っ、アラバスタってこと、は……」

「その通り、ビビちゃんだ。今回はただ愛し合いに行くだけじゃねぇ。もらいに行くのさ。文字通りな」

 

 ジャックハートと肉体関係を持ったことがある女性は全世界にいる。そしてその中でお眼鏡に叶い、かつ彼の元に行きたいという女性だけが、彼の元へ来ることができるのだ。

 そして、その女性が合流すれば、次に向かうのはアラバスタ。ナミやロビンも知っているビビを、彼の元に迎えるのだという。

 

「そんなの、どうやって?」

「何、簡単だ。君らと海賊やってた時の記録を出せばいい。前科持ちの王女なんて、再建しようとしている国からしたら邪魔者でしかないからな。海賊と密な関係を持ってしまっている王族。知られたくなかったら王女を剥奪でいい。後釜なんざどうにでもなるからな」

「……そっか。ねぇジャックハート様。……まだ、挿入れてくれないの?」

「ケハハハハハッ! 随分と、俺好みの女になってるじゃねぇかナミちゃん。いいぜ、そんなにお望みならたっぷりと楽しませてもらおう」

 

 ビビを迎える段取りを説明しているところで、ナミの我慢の限界が来た。

 最後に彼と体を重ねたのは、一味とシャボンディ諸島で合流する前。そしてそれからも、彼の姿だけは確認できていた。

 見る度に鍛え上げられている身体。周囲に増える魅力的な女性。そして、そんな彼女たちの表情から察することができる、彼とのセックス。

 その全てが、今までナミを焦らし続けていたのだ。

 

「ほらっ」

「〜〜〜〜〜ッ!! イッッ……くぅぅううああぁぁっ!」

「ケハハハ。相変わらず、派手に膣内(ナカ)でイッてくれるな。抱いてる男として最高の抱き心地だぜ、ナミちゃん」

「んっ、はぁ……。も、っと。もっと抱いてぇ……」

「随分と溜まっちまってたみてぇだな。可哀想に。そんじゃあ、一発ぶっ飛ばしてやるよ」

「んぁっ! ひぅ、あっ、はぁあっ! あんっ、あぁっ、そこ……っ! そこぉ! 奥、奥を、もっと突いてぇ!」

 

 そのナミの性欲を一気に開放するように、ジャックハートの肉棒がすでに受け入れる準備が整いきっていたナミの膣内に挿入される。

 すっかり彼の竿の形を覚え、彼の肉棒を刺激し、彼の肉棒を感じるために動く膣肉が、ナミの脳裏を焦がす。

 ジャックハートの動きに合わせてナミの身体も卑猥に揺れ、汗や母乳が散っていく。

 

「いいのかよナミちゃん。このまま出しちまったら、お仲間の前に俺の精液を受け止めた状態で出ることになるぜ?」

「いいっ! お願い、膣内(ナカ)に出してぇ!」

「んじゃ、お望み通り」

「んぅっ、はぁ……あぁあんっ! イク、イッ……! んむっ! ちゅ、んちゅぅ……」

 

 最後に一つ、深く突き入れられた肉棒から、ナミの内部を白く染めるように静液が吐き出される。

 待ちに待った快感から何度も絶頂を迎えていたナミの口を塞ぐように、ジャックハートがナミの口内を舌で蹂躙した。

 ドクドクと脈打ち続ける彼の肉棒。ナミの全身から吹き出す汗と、両乳首から漏れ出る母乳。その排出された水分を互いに補い合うように、ナミとジャックハートはお互いの唾液を交換し合っていた。

 

「ちゅむっ、んく……んっ、じゅぷっ……。はーっ、はぁ……」

「気持ちよかったか?」

「……最高。もう、ほんとに離れたくない」

「俺も離す気はねぇよ。こんな最高の女、離すはずがねぇだろ?」

「ふふっ、ありがと」

 

 彼の全てを、ナミは受け入れた。

 ナミの膣内から肉棒を引き抜くと、何も言わずにその精液と愛液に塗れた肉棒を、ナミは当たり前かのように自らの口に咥えた。

 

「んぶっ、ぐぷ……。ぶっ、じゅぶっ、んぐ……」

「あぁ……いいぜナミちゃん。そういうことをしてくれると、俺も嬉しいぜ。……ってことで、さっきからずっとオナってるロビンちゃん」

「っ! 分かって、たの……?」

「当然。さ、おいで」

 

 尿道に残った精液を一滴も残すことなく吸い取るナミの頭を優しく撫でる。

 念入りに彼に奉仕を続けるナミ。彼女に奉仕をさせたまま、ジャックハートはロビンを呼んだ。

 ロビンはその声と手に、吸い込まれるようにベッドへと歩いていった。

 

「……し、も」

「ん?」

「私も、ナミみたいに愛してくれる?」

「ケハハハハ」

 

 股間に顔を埋めるナミと、ベッドの上に座るジャックハート。その2人の近く、ジャックハートの隣にロビンは四つん這いになってベッドに登った。

 過去を拭い、1人の女としてジャックハートを愛することを決めたナミを見て、彼女も決心がついたのだ。

 

「当然。もう、逃しやしねぇよ」

「あっ」

 

 ロビンの手をジャックハートが掴み、引き寄せる。

 ベビー5とモネはもうおらず、控室へと下がっている。

 今ここにいるのは、ジャックハートとナミとロビンの3人だけ。

 

「今はまだちょっとの間だが、楽しもうや」

 

 彼のその言葉に、下腹部が疼いた。




ナミとロビンには実際、選択肢があって無いようなもんでした。はい。

一歩です。まだ、一歩です。


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羽化

一部深夜テンションで書いた部分もありますが、まあ大丈夫なはず。

どこを持って最終回とするかによりますが、ある一つの大きな区切りが近づいているのは間違いないです。

※ここから、原作における男海賊キャラがさらに酷い目に合うことになります。
苦手な方は、ご注意ください。


ちょっとは戦闘描写を描きたいですねー。





 

 

 

 

「おいジャックハート! "麦わらの一味"全員、揃ったぞ!」

 

 島に上陸してから30分後。"麦わらの一味"が全員軍艦の前に揃っていた。

 島の内部はただのジャングルだけであり、別に特別強い生物がいる訳でも、罠が仕掛けられている訳でもない。

 そんな中、ジャックハートが待ち構えているというだけで警戒しきっていた一味は、精神的に少しだけ疲弊していた。

 

「お〜、やっと来たか。待ちくたびれて、もう15回戦ぐらいやってたわ」

「おい」

「あ?」

 

 甲板にはジャックハートの部下である女海兵たちがずらりと並んでおり、中心のみが空いていた。

 サンジのその声に応えるようにゆっくりと船の奥から歩いてきたジャックハート。その格好は海軍のズボンに黒いインナーだけという人前に出るのに決して相応しくはないものだった。

 人を舐めた態度、言葉、姿勢、服装。

 それらに苛立ちを覚えていたらキリがない中、低い声を発したのは、ルフィだった。

 

「ナミとロビンは無事なんだな」

「ケハハハハ。ハンコックちゃんのことと言い、随分と女々しい奴だな。……ま、いいか。ナミちゃん、ロビンちゃん」

 

 ジャックハートが船の奥にいる2人に声をかける。

 "麦わらの一味"は軍艦に乗れている訳ではなく、島内から見上げているだけ。そしてその角度により彼らからは見えなかったが、彼女たちが出てきたのはジャックハートの寝室だった。

 数分前、"見聞色の覇気"により彼らの接近に気づいたジャックハートの指示により、全身に跳んだ精液や汗、母乳を拭き取り、ジャックハートが事前に用意していた綺麗な衣服に身を包んだ彼女たちが、ジャックハートを挟むように甲板に現れた。

 

「ナミ! ロビン!」

「変なことは何もしてねぇよ。なぁ、2人とも」

「えぇ」

「安心して、されていないわ」

 

 変なことは何もされていない、というナミとロビンの言葉に、態度には出さないものの安堵する。

 そう、彼女たち2人は変なことは何もされていない。されて当然ということをされているだけなのだ。

 

「それじゃあ、時間も惜しいことだ。二つ目のゲームに行こう。ナミちゃん、ロビンちゃん。2人はどうしたい?」

 

 陸にいる"麦わらの一味"たちに一言挟む隙すら与えることなく、話はジャックハートを中心に進む。

 もちろん、この問答もジャックハートからナミとロビンに指示があり、受け答えは全て彼の指示通り。

 

「答えるのが怖いってんなら、沈黙でもいいぜ。俺としても、ゲームが進まなきゃ面白くねぇからな」

「……」

「……」

「ナミさん、ロビンちゃん……!」

「答えられる訳ねぇだろ、この状況で……! 俺たちの前で肯定したら、何されるか分からねぇ……!」

 

 ナミとロビンが海賊を続けたいと言ったら次に進む。そう伝えていたが、それはつまり、海軍本部大将の前で海賊になると宣言するようなもの。

 沈黙でいいのなら、不用意に喋る必要はない。

 

「なるほどな。それじゃあ、次に進むか。お待ちかねの戦闘だ。そっちの1人は俺の子どもがボコボコにしちまったみたいだからな、参加するのは6人でいい」

 

 ジャックハートが次に進むと言った瞬間、ナミとロビンは誰に言われるでもなくジャックハートの部屋へと下がった。

 彼が指定したのは、ルフィ、ゾロ、サンジ、ウソップ、フランキー、ブルックの計6人。

 サンジも軽い怪我ではないが、退く訳にはいかない。

 

「リングなんて丁寧なモン、要らねぇだろ。お前らが下がって、軍艦の前でやればいい」

 

 戦う場所に指定されたのは軍艦の前。

 ジャックハートの腰には、そのラフな格好に似合わない一本の刀があり、その柄に手が触れている。

 彼の視線は常に"麦わらの一味"を捕らえており、彼らはジャックハートの言葉にただ従うだけだった。

 

「で、だ。流石に一勝でいいってのはそっちにハンデとしてデカすぎるからな。そっちが出る順番は俺が決めさせてもらう」

「早くしろ! なんなら、お前から先にやってもいいんだぞ!」

「へぇ……」

「お、おいバカ、ゾロ! そんなこと言ってマジで出てきたらどうすんだよ!」

 

 剣士としての嗅覚なのか、その剣を腰に挿したジャックハートに戦意を向けるゾロ。

 最上大業物・天艶(てんえん)

 まだ抜いてはいない薄い紅紫の直刃のその刀は、7年前にジャックハートが中将となった際、異例の速さの昇進と実力を買われ、世界政府から直々に与えられたものだった。

 

「ま、そんなことは今はどうでもいい。ぐだぐだされるのが俺は嫌いなんだ。進めるぞ」

 

 あわや一触即発、となるところだったがそれは言葉と雰囲気だけで終わった。

 そして、誰にも言葉を挟まさせることなく、ジャックハートの言葉だけで進んでいく。

 

「まず、ルールを設ける。互いに"覇王色の覇気"で気絶させるのはなしだ。こっちの陣営は多少耐えられるように訓練はしているが、フェアじゃねぇだろ。んで、殺しはしない。どちらかが気絶するか、降参するまでだ。もちろん、外部からの援護射撃も無しだ」

 

 彼が決めたルールは、至って単純なもの。

 複雑ではなく、そして残酷でもない。

 

「黒足、まずはお前だ。さっさと終わらせて、ゆっくりしたいだろ?」

「……どこかの誰かさんが痛めつけてくれたお陰でね。俺が先鋒なら、ありがたく行かせてもらうぜ」

 

 まずジャックハートが指定したのは、つい先ほどジャックハートに完敗を喫したと言ってもいいサンジ。

 その目はリベンジに燃えており、誰が出てきても必ず勝利を収めるという意思がひしひしと感じられるほどだった。

 

「こっちはじゃあ、頼む」

 

 顔を向けるだけのシンプルな合図。

 奥にいる海兵を呼んだのか、と一歩前に出たサンジが推測する中、ジャックハートに呼ばれた()()が返事をする。

 

「はい」

「っ、……まさか、この声って……」

 

 たんっ、と一つ小気味良い音を立てて甲板を蹴り、人影が宙に舞う。

 空中で回転しながら地面に着地したその人物は、着地の際に乱れた金色の長い髪を掻き上げ、ズレたメガネを直した。

 

「以前はCP9として、役人としての役割が多く、そしてあんな上司の命令を聞きたくなかったので手を抜いていましたが、今日は違います。愛するジャックハート様の御前。徹底的に叩き潰します。つまりは、半殺しです」

「君も、か……」

 

 サンジの前に降り立ったのは、エニエス・ロビーにてロビン奪還の時にも一度戦った、"アワアワの実"の能力者でもあるカリファ。

 胸元が開いた白いシャツに黒いミニスカート、そして白のガーターを身に纏い、以前とは見た目の雰囲気も違う彼女に、少しだけ気圧される。

 

「ママーッ! 頑張ってー!」

「ッ!? リリー!? なぜまだこの船に!? "G-5"に戻ったのでは!?」

「この戦いだけ見たいんだってさ。せっかくのママの活躍だ。見させてやれよ」

 

 着地したカリファに、軍艦から大きな声援が送られる。

 その発信者こそ、ボニーの能力で成長していたのが元に戻り、実年齢になったカリファの娘のリリーである。

 

「ま、ママァ!?」

「ってことは、まさか……」

「えぇ。あの子は私とジャックハート様の娘、ジョー・リリー、10歳。彼女も立派な海兵です。……私が既婚者かつ一児、いえ。二児の母であることが、何か問題でも?」

「二児って……」

「ッ! ママ!?」

「えぇ。リリー、あなたももうすぐお姉ちゃんよ」

 

 わーいわーいとはしゃぐリリーに対し、カリファと相対するサンジの表情は優れない。

 一度対戦し、その当時は相手が手練れであったこともあるが、自分が女は蹴らないということを心に決めていたため、完膚なきまでに叩きのめされた。

 ナミとロビンが捕まり、何とか取り返そうとしている中、今回はさらにその相手が妊娠中だということも知ってしまった。

 

「ケハハハハ、安心しろよ黒足。お前が想像しているようなことにはならねぇ」

「テメェ……」

「なんなら、カリファちゃんの代わりに俺が出てもいいんだぜ? ま、それなら残りの全ての試合に俺が出るが」

「……クソッ」

 

 ジャックハートに全て出られると、勝ち目がない。

 しかし、敵とは言えサンジが妊婦の女性を攻撃できるはずがない。

 

「なら、試合開始だ」

 

 痛む両足で地面を踏みしめ、苦悶の表情のまま構える。

 ジャックハートの掛け声を聞いたカリファの姿が、サンジの視界から消えた。

 

 

 ◇

 

 

「……」

 

 戦闘が始まった頃、ナミは1人、軍艦の内部を歩いていた。

 とある錠の鍵を持ち、軍艦の奥にあると言われて向かっているのは、暗い廊下の先にある一つの牢屋。

 

「……トラ男?」

「……な、ナミ屋……か……」

「だ、大丈夫なの?」

「そう、ゴフッ……みえ、る……か……」

 

 その牢屋の中にいたのは、全身を痛めつけられ、満身創痍の状態で転がるように投げ捨てられた元王下七武海、トラファルガー・ロー。

 "麦わらの一味"の同盟相手であり共にこのドレスローザまで来たが、彼は王下七武海を剥奪されて海軍に捕まり、その"麦わらの一味"も現在ここで足止めを食らっている。

 

「……海楼石の錠、くすねてきたわ。これで……」

「……や、めろ。もう、意味は……ない」

「意味ないって……」

「俺は……医者、でもある。自分の死期は、自分で分かる……。これはもう、治らねぇ……。ジャック、ハー……トっ、との、戦いで……、能力も、使いすぎた……」

 

 彼の姿は、正しく最後の力を振り絞っている最中と言ってもいいもの。

 ドレスローザでジャックハートに飛ばされてきた時はすでに満身創痍。戦闘で気を失い、痛みで目を覚まし、また気を失う。そうしてダメージを蓄積し続けた彼の身体からは、生きるのに必要な血液がすでに大量に無くなっており、ジャックハートの手によりいくつかの内臓も壊されていた。

 

「ナミ、屋……。どうせ、なくなる命、だ……」

 

 自身の能力を使い、なんとか身体に入り込んだ細かい瓦礫や欠けた骨などを取り出し、できうる限りの必要最低限の処置をし終え、身を隠していたところをたしぎに見つかったのだ。

 リリーやダレスによる業火のような攻撃に耐え切る体力は、彼には残っていなかった。

 

「どうせならこの命……ッ! くれてやる……!」

「っ、ど、どういうこと?」

「出血多量に、内臓破裂……! 骨や、筋肉……健まで、ぐちゃぐちゃにされてる……。能力で意識は繋ぎ止めてるが、もうもたねぇ」

 

 心に決めたように、ローが身体を起こす。

 見れば、右足は膝から下が欠損しており、左腕はまるでもぎ取られたかのように途中からちぎられている。胴体には人の指が食い込んだ後のような穴が多数開いており、外から見ても分かるほどに全身の骨が歪んでいた。

 

「"オペオペの実"の最上級の、技だ……」

「何を、するの……?」

「ゴブッ! ガッ……ゴフッ、グ……! もう、説明する体力が……ない……。とにかく早く、錠を……」

「わ、分かった!」

 

 いつ心臓が止まってもおかしくないほどに息絶え絶えなローに急かされ、まずは牢屋の錠を開けるナミ。

 右足と左腕を失っているローの能力を封じているのは、胴体に乱雑に巻きつけられた海楼石でできた大きな鎖と錠。

 その錠を、ナミが外した。

 

「いい、か……。お前たちは、生きろ……! 生きてさえ、いれば……奴に、勝てるはずだ……!」

「奴って……」

「ジャックハート、だ。……それより、ナミ屋。ドフラミンゴは、どうなった……?」

「捕まったわ。ドンキホーテ・ファミリー全員ね」

「そう、か……」

 

 ナミのその言葉に、どこか安堵したような表情を浮かべるロー。

 一瞬だけ出たその笑みを、真剣なものへと変える。

 

「ナミ屋。お前は、生き続ける覚悟があるか……?」

「……あるわ」

「分かった。……なら、これが最後だ」

 

 "オペオペの実"により、薄く、小さなルームが貼られていく。

 ローが口から血を吐き、彼の顔色もどんどんと悪くなっていく中、ナミの身体が薄く光る。

 

「"延命措置(エクステンション)"!」

 

 "オペオペの実"の最上級の技。事前に知らされていたことだが、いざ自分の身にそれが起こるとなると不思議な感覚がある。

 目の前で力なく倒れていくローを見て、ナミは例え難いものを感じた。

 自分の中には、特筆して変わったようなことが起きたという感覚はない。しかし、彼が言った技と、自分の身を包んだ光。そして、"オペオペの実"の最上の業である"不老手術"。

 

「……ねぇ、トラ男? おーい」

 

 軽く触れ、揺すってみるも反応はない。

 

「……私、ホントに不老不死になったんだ」

 

 ナミがジャックハートに受けた指示は、まだ同盟が続いているフリをして、"オペオペの実"による不老手術をナミ自身に受けさせることだった。

 息を引き取ったローを牢屋の中に置いたまま、ナミは来た道を引き返していく。

 

「あとは、また出てきたオペオペの実とヤミヤミの実、モドモドの実でジャックハート様のやろうとしていることが完成するって言ってたわね」

 

 彼女が捕まるつい数時間前までは同盟相手であったローの死に直面しながらもナミの心情は至って冷静。

 ジャックハートと対峙してしまった海賊がどうなるか、というものを思い知ってしまったからこその落ち着きをもって、ナミは甲板に戻った。

 

「あっ、ロビン。……どうなってる?」

「予想通りよ。サンジは結局、カリファを蹴ることはできなかったわ」

「……そっか」

 

 途中から戦いを観戦していたのか、ロビンも甲板に立っていた。

 彼女の視線の先には、カリファに倒されて下がったサンジの姿。現在戦っているのは、フランキーとアイン。

 アインのモドモドの実の能力により、"新世界"に入る以前、ナミたちと出会うよりもさらに前の姿へと戻されていた。

 

「随分とまあ、呆気ねぇな。"鉄人"フランキー」

「は、ハハハ……! こりゃ、たまげたぜ……!」

 

 自らの身体を改造しているフランキーの時が戻されるということは、実質的に成長が全て消されたようなもの。

 事実、シャボンディ諸島で別れ、また集合するまでの2年間で培ったものは、時が戻ったことにより消えていた。

 

「"悪魔の実"の能力、だけじゃねぇ……! なんだ、この女海兵……!」

「アインちゃんをただの女海兵だと思うなよ。俺の後を追う形だが、正真正銘自分の力だけで中将になる実力は持ってんだ。そこに、"覇気"や六式の使い方をさらに教えてやれば、億越えしてねぇカスぐらい、簡単に捻ることはできる」

「ハァ……! ハァ、ハァ……! たまらねぇな、そりゃ……!」

 

 記憶はそのままなので強者と戦う際の経験はあるが、文字通り成長を消されたフランキーが、ほぼ自力で海軍本部中将となった実力を持つアインに実力で勝てるかと言われればそうではなく。

 離れれば"モドモドの実"、近づけばジャックハート仕込みの近接戦。

 "モドモドの実"の光線に触れることで12年若返ることになる。12年前のフランキーは、まだサイボーグにすらなっていない、海列車が完成した直後の姿。

 

「……もうあなたに、勝ち筋はないかと」

 

 "覇気"と六式を会得したアインに勝つ可能性は、限りなく0に近かった。

 

「負け、だ……。俺じゃ、勝てねぇな……」

 

 反撃の意思を見せるたびにチラつかされる、"モドモドの実"。触れれば触れるほど時は戻り、生まれて12年未満のものに触れると消滅させることができる"悪魔の実"を前に、フランキーは動きを封じられた。

 そして、まともに鍛えられていない時のフランキーに対し、アインは"武装色"と"見聞色"を身につけていた。

 その差は、歴然だった。

 

「あっけねぇな"麦わらの一味"。テメェらそんなんで、よくここに来たもんだ」

「テメェ……!」

「なら、さっきから威勢の良い、ロロノアに出てもらおうか?」

「上等……! 俺で、ケリをつけてやる!」

「んじゃ、頼むわ」

 

 申し訳なさそうに引き下がるフランキーと入れ違いになる形で、ゾロが前に出る。

 剣を抜きながら出てくるその姿は、どこから見ても戦意に溢れていた。

 

「ペローナちゃん」

「っ!」

「ホロホロホロッ! どうしたんだ? たしぎが出る、とでも思ってたみたいな顔だが」

「テメェ……! まともに戦う気はねぇのか!?」

「海賊が海兵にまともを求めてどうする。そんな馬鹿なオツムだから、今こうして遊ばれてんだ」

 

 ゾロの顔に、一気に焦りが生まれる。

 とある時期からジャックハートの側にいることが増えたたしぎ。ローグタウンでのことがあり、てっきり彼女が出てくるだろうと踏んでのことだったが、予想が外れた。

 たしぎになら負けない。そう思っていたが、出てきたのは相性が最悪の相手。

 

「試合、開始だ」

「クソッ……! おい、逃げるな!」

「やなこった! 痛いのは嫌なんだ。それに、身体に刀傷を負いたくねぇしな」

 

 試合開始の合図の直後、高く飛び上がるペローナ。本体も飛ぶことが可能になった彼女にとって、周囲に遮蔽物がない一対一は独壇場と言ってもいいほど、得意としていた。

 

「チッ。"三刀流"……」

「おいおい。上ばっかり見ていて良いのか?」

 

 宙を跳び続けるペローナに痺れを切らしたのか、ゾロが立ち止まって刀を構える。

 斬撃を飛ばして一か八かの攻撃を仕掛けようとした彼の膝が、折れた。

 

「ホロホロホロ。ゴーストはどこでもすり抜けられるからな。試合開始と同時に地面に隠していれば、飛ぶ手段がねぇ奴はかわせねぇだろ?」

 

 両手を両足を地面につき、ネガティブな発言を繰り返すゾロ。

 誰がどう見てもすでに戦意を欠いてしまっているその姿に、戦闘を続けることを期待するものはいなかった。

 

「さて、じゃあロロノアも脱落したところで、だ。次は誰が出る?」

「俺が……!」

「待てルフィ! つ、次は、俺だぁ!」

 

 サンジがカリファに、フランキーがアインに、ゾロがペローナに負けた。

 これまでの傾向からして、過去対戦したことがある女性陣をぶつけにきている、または有効な"能力者"をぶつけているというのがウソップの見解だった。

 

「いいか、ルフィ。あいつは、関係があった女をぶつけに来てる。お前にぶつけるとなったら、ほぼ確実にボア・ハンコックだ。お前も強くなっただろうが、元王下七武海があいつの元で鍛えてるってなったら、苦戦するかもしれねぇ」

「ウソップ……」

「だからお前は、ここでブルックと一緒に作戦を立ててくれ! 俺と関係があって、あいつの元で海兵やってる女はほとんどいねぇはずだ。……俺も、ここまでされてずっと黙っていられるか……!」

「ウソップさん……」

 

 ウソップは自分で、勝ちをもぎ取ることができないというのを薄々ながら感じていた。

 いくら相手が女性とはいえ、強さは別格。今までのうち2人は能力にやられた面もあるだろうが、それを差し引いたとしてもウソップが勝てるかは怪しかった。

 

「俺の戦いなら、なんとか時間くらいは稼げる。その間に、頼むぞ……!」

「ウソップッ!」

「なんだ。話し合いはもういいのか?」

「あぁ……! 次は、オレ様だ!」

 

 単身、前に出たウソップ。

 ブルックがルフィに声を掛け、恐らく後半に控えているルフィの戦いに向け、気持ちの整理をつかせていく。

 ボア・ハンコック。元々ルフィがここまで無事に来ることができた理由となる恩人の1人であり、半分ルフィのせいでジャックハートに捕まってしまったような人物。

 そんな彼女を、海賊にしてはどこか優しいルフィが殴ることができるのか。仲間をかけた戦いとはいえ、兄であるエースの元へ送り届けてくれた人物を殴ることができるのか。

 

「さ、さぁ! 誰でもかかってこ〜いっ!」

 

 そして、もう1人控えるブルック。彼と接点を持つ女性も少なく、誰を当ててくるのか分からない。

 同じ剣術使いというのなら、ゾロには当てなかったたしぎが来るのか。他が来るのか。

 前の3人が瞬く間に倒されてしまい、作戦を立てることすらできなかったが、ウソップは自分の役割を自分なりに果たそうとしていた。

 

「……ほう。まさかあの"ゴッド"ウソップが出てくるとはな。ドフラミンゴが見たら嬉々として参戦しそうだが、ここにはいねぇ」

 

 とはいえ、ウソップ自身が何もしないかと言われればそうではない。

 出てくる相手次第だが、もちろん負けるために出るわけではない。ルフィやブルックの作戦を練る最後の時間を稼ぐと同時に、自らも勝ちを狙いに行くのだ。

 

「お前の相手だが、どうするか」

 

 足がガクガクと震えているウソップを、まるで玉座に座る王のような態度で甲板から見下ろしていたジャックハート。

 ここで、ジャックハートとウソップ本人の間で、ウソップに対しての認識の差が生じていた。

 

「ウソップ。以前の手配書の名はそげキング。本人の戦闘能力はそこまで高くないが、その狙撃の腕は見事。エニエス・ロビーでは世界政府への宣戦布告とも取れる、旗の狙撃。ドレスローザでは、労働力として働いていたはずの賞金首たちを解放、その後地上に解き放った」

「……え?」

「そして、パンクハザードでシーザーを捕獲した人物でもある。……気の抜けたようなフリをして、実際は常に隙を伺ってた……ってわけじゃなさそうだな」

 

 "見聞色の覇気"で行動どころか、それに至るための心理すら読み取る。

 つまり、世界政府の見解としては、実力はそれほどないがある意味での脅威ではある人物、というものだった。

 

「よし」

 

 そこから導き出される最悪の結果として。

 

「俺が行こう」

 

 ウソップの相手がジャックハート本人となるのも、ある種頷ける。

 

「……え?」

「お前の狙撃の腕は本物だ。それは世界政府も認めてる。そして、エニエス・ロビーの旗を打ち抜いた張本人ってことで、それにブチ切れてる天竜人もいるんだ。ま、俺本人としては意味の分からんものを女に打ち込まれたくねぇからってだけだ」

「お、おい……っ! お前が出るなんて、聞いてねぇぞ……!」

「おー。目が覚めたのか、黒足。確かに出るとは言ってねぇが、出ないとも言っていない。そもそも、この場にいる俺の選りすぐりの海兵ってなりゃ、本部大将の俺を選ぶだろ」

 

 初めてと言ってもいいジャックハートとのまともな会話。だが、その中身はよく考えればこれまた後出しのようなもの。

 時間稼ぎにと意気込んでおり、もしかしたら勝てるのではないかと考えていたウソップにとって、まさに最悪の相手。

 

「……ってやる」

「あん?」

「やってやるって言ってんだよぉ!」

 

 足は震え、声も震え。

 しかしそれでも、戦わない理由にはならない。

 ナミとロビンを助けるために。

 

「ウソップ! ……お前、俺と戦え!」

「やなこった。認めたくねぇが、お前には"新世界"を生き抜く最低限度の力はある。だからこそ、前半ではそれなりに名を挙げることができた。……が、政府としては、大して力のないこいつが、なぜここまで神経を逆撫でするようなことばかりできるのか。そこが気になるらしい」

「ウソップさんッ!」

「いいんだブルック! 俺に、やらせてくれ……!」

 

 戦う相手がジャックハートと分かってもなお、臆病なウソップが退こうとしない理由。

 それは、ジャックハートが一瞬だけ動いた際の視線と、彼が一言呟いた、後ろにいる仲間たちには辛うじて聞こえないほどの小さな独り言。

 

「俺は、勇敢なる海の戦士になる男だ……! 仲間を前に、ビビって逃げ出す訳には行かねぇ……!」

「心意気はご立派だな。とはいえ、それだけでどうにかなるような実力差でもねぇが」

「おいウソップ! お前、殺されるぞ!」

「ケハハハハ。ルールを忘れてるぜ、黒足。これはゲームだ。殺しはしない。第三者が介入するってんなら、話は別だがな」

「クソ……!」

 

 意を決した仲間の覚悟を雑に扱う訳にもいかず、かと言ってこのままでは目の前で悲惨な戦いが繰り広げられる未来を想像することは難しくはない。

 ウソップとジャックハートが戦う。これはもう避けられないことであり、ウソップに棄権させることもできなかった。

 

「あぁ、武器なら使ってもいいぜ。無論、俺も使わせてもらうがな」

 

 自分を馬鹿にされ、仲間をコケにされ、一味全体が舐められ続けている。

 勝ち目がほぼないとはいえ、その状況を黙って見逃せなかった。

 

「……もう仲間を、バラバラになんてさせてたまるかよ……!」

「ケハハハハハハッ! 残念ながら、それはもう叶わねぇ。だが、俺も鬼じゃねぇ。最後まで夢は見させてやるよ」

 

 腰の愛刀に手はかけず、脱力した立ち方のまま、鬼気迫る表情のウソップに相対する。

 

「試合、開始だ。楽しませてくれよ」

 

 決められたルールを破った際、ジャックハートが何をするか分からない。

 そのため派手な動きを取れない"麦わらの一味"は、戦いの開始を焦りを滲ませた表情で見つめていた。

 

「ジャックハート様、お気をつけてください」

「おう」

 

 軍艦の上からは、女性陣の声。

 複数人のその声が、"麦わらの一味"をさらに苛立たせていく。




現在の状況

カリファVSサンジ → カリファ

アインVSフランキー → アイン

ペローナVSゾロ → ペローナ

です。空飛べるペローナとか普通に考えてタイマンで負けることないんじゃね、と思いました。

悪魔の実のご都合主義な活用方法。いずれ、使い方は出します。

次回はジャックハートVSウソップです。どちらが勝つのか。


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崩壊

筆が乗った。と言っても1万字行ってないですが。

これから先、長い休みが取れるか分からなかったので、進められる時期に進めることができて良かったです。

次話からやっとエロいのいっぱい入れられる! やったぜ!


 

 

 

 

「ガ、ペグ……。ゴプッ……!」

「ウソップーッ!」

「おいジャックハート……! テメェ、いい加減にしやがれッ!」

「何がだ? 俺はただ戦っただけだろ。それに、こいつの口からはまだ降参の言葉は聞いてねぇ。判断はもちろん、続行だ」

「ただ喋れてねぇだけで、ほぼ意識も飛んでんだろうが……! おいウソップ、もういい! 下がれ!」

 

 ジャックハートとウソップの戦い。

 一部の人間が期待したような下克上など、起きるはずもなく。その長い鼻を複数段階に渡って折られ、顔全体も怪我をしていない部分を見つけるのが困難なほどに痛めつけられ、ローやディアマンテと同じく胴体も骨折だらけだった。

 

「ケハハハハッ。あれだけ啖呵切っておきながら5分と持たずに降参かよ。やっぱ、過大評価だったみたいだな。実力、脅威共に足りてなさすぎる」

 

 試合開始と同時に、ウソップの猛攻が始まった。

 始まって一分、全くと言ってもいいほどに動きを見せないジャックハートに、連続して攻撃を浴びせていく。

 二分。それまで攻撃の全てを"武装色の覇気"で受け止めていたジャックハートが動き出し、ウソップの猛攻を全て避ける。

 三分。ジャックハートの攻撃が始まった。ウソップが持っていた武器である黒カブトを天艶で細切れに切り捨て、あとはただの蹂躙。

 

「ま、大人しく尻尾巻いて戻るってんならもう終わってもいいぜ。サンドバッグを殴る訓練なんざ、今更やりたくねぇよ」

「どこまで人をコケにすりゃあ気が済むんだ……!」

「人? ケハハハハッ! ()()()が、か?」

「カペ……」

「〜〜ッ! "ゴムゴムの"……」

「おいルフィ!」

「ルフィさん!」

 

 散々痛めつけた後に、首を掴んで持ち上げたジャックハートがウソップに言い放った一言は、後ろで待機していたルフィの怒りの頂点を突破させるには十分な言葉だった。

 

「何をするつもりだ、"麦わら"。何かしらの攻撃をしてみろ。こいつの首、もぎ取るぞ」

「……ッ! ……おい、もういいだろ。ウソップは……」

「よくねぇな。社会不適合者の集まりのテメェらがそれを判断するもんじゃねぇ。それは、海軍と政府、司法の役割だ。お前らは海賊。まあ、遊び程度なら許すが、立派な賞金首だ。海賊を続ける意思を摘み取るまで、俺らは戦わなくちゃいけねぇのよ」

 

 怒りの沸点に達する行動をされるが、仲間の命は彼の手の中。

 拳を引き、ただ言葉で訴えることしかできないのだ。

 

「……とは言え、テメェが言うようにもうこいつに飽きたのも事実だ。気絶しねぇ程度に遊んでやったが、もうお役御免だ」

「グフッ……!」

「ウソップッ! ……次は、俺が出るぞ!」

「ケハハハハァ! 随分とまぁ、キレてんじゃねぇか。モンキー・D・ルフィ。兄を見殺しにして、その形見でもある"メラメラの実"も奪えず、頼りのお仲間もこのザマだ。そう考えると兄と似てるな、お前。負け犬の兄貴そっくりとは、笑わせるぜ」

「お前ェッ!!」

「ルフィさん!」

 

 ジャックハートの煽りに、ついにルフィに我慢の限界が訪れた。

 ブルックの静止も聞かずに、ジャックハートの方へと飛び出していく。

 自らだけでなく、兄であるエース、そして自分を支えてくれている大事な仲間たちまで馬鹿にされて、黙っていられる彼ではなかった。

 

「"ギア4"」

「あぁ? なんだ、見てくれだけデカくなりやがって……。効率悪い"覇気"の使い方してんなぁ」

 

 ルフィが発動したのは、シャボンディ諸島から飛ばされていた2年間、ルスカイナにいる猛獣たちを仕留めるために彼が身につけたもの。

 と言っても、ジャックハートからすれば急増で作り上げた付け焼き刃にしか感じない。

 それもそのはず。ルフィがいくら戦闘のセンスに優れていて、"覇王色"を持っているとしても、"覇気"を扱えるようになってから必殺技に昇華させるまでに2年という期間しかなかったのだから。

 

「"ゴムゴムの"ォ……」

「その程度で、大将倒せると思われちゃ困るな。最年少とは言え俺が舐められると、他の大将さんまで舐められちまう」

大猿王銃(キングコングガン)ッ!」

 

 軍艦を背後に立つジャックハートに向かい、大技を放つルフィ。

 想定されていたドフラミンゴとの戦いを経ておらず、疲労はそれほど溜まっておらず"覇気"も消耗していない。

 コロシアムでの戦いで十分に動いていた彼の、現在放つことができる最大級の技。

 

「ただ押すだけ潰すだけ。それしか考えてねぇガキに負けるわけねぇっての」

 

 それをジャックハートは、()()()止めた。

 

「え……ッ!?」

「視えてるし、なんならテメェがどんなこと考えてるかも分かってんだっての。より強い"覇気"をぶつけ返せば、このぐらいの直線的な攻撃は簡単に止まる」

 

 肥大化した拳を掴んだジャックハート。その手と足は黒くなり、身体の周囲を包む透明なオーラのような"武装色の覇気"の両方が混在しており、地面はひび割れていた。

 ルフィよりも強い"覇気"で彼の覇気を正面から受け止め、受け止めきれない力は地面に流す。

 受け止め、そして流し。ジャックハート自身にはダメージは無かった。

 

「ほら、こっち来い」

「うわっ!」

 

 "ゴムゴムの実"の能力により伸びた腕を、一気に引き寄せられる。

 伸ばし切ったところをより強い力で引っ張られたことで、体勢を崩しながらルフィはジャックハートの元へと飛んでいった。

 

「お前の弱点を教えてやるよ。近距離戦だ」

「このっ! 離せ……!」

「近くにいる敵に攻撃をしようとすると、腕を大きく後ろに引く必要がある。そんなもん、ただのデカい隙でしかねぇ」

 

 右腕を尋常ではない力で掴まれて引き寄せられ、ジャックハートとルフィの距離はほぼゼロ距離に近かった。

 ジャックハートよりも背が低いルフィは腕を掴まれながら彼を見上げる形となり、まともに動かせるのは両足と左腕のみ。

 

「"ゴムゴムの"……ッ、グッ!?」

「させねぇって。隙が、でけぇんだよ」

「ガァッ!!」

 

 左腕を大きく引いたところで、ジャックハートの膝がルフィの顎に直撃した。

 もちろんその膝には"武装色の覇気"が纏われており、攻撃がそれで終わるわけでもない。

 体勢を整えるために一旦ギア4を解き、サイズが小さくなったもののルフィの手を掴む力が弱くなったわけではない。

 

「いちいち技の名前を叫ばなきゃならねぇテメェらの神経が分からん。そういうのは格上が格下に、余裕を持ってするもんだ」

「ギッ……。この……っ!」

「見本を見せてやる」

「わっ!」

 

 左手でルフィを掴んでいるため、ジャックハートが自由に動かせる腕も右の一本のみ。

 しかしそれでも、意図して引き寄せたジャックハートの方が動きに対応することができるのは当然であり、右手一本での連撃がルフィを襲った。

 とある一瞬。不意にジャックハートが掴んでいた手を離した。今まで引き抜こうとしていた反動から、大きくルフィの身体が後退する。

 

「"居合・"……いや、こっちはやめておこう」

「っ!?」

「今のテメェの攻撃の、強化版だ」

 

 鞘に納めていた刀に手をやろうとして、途中でその動きを止めた。

 その間にルフィも体勢を整え終えており、来るであろう攻撃に対して構えたところ、ジャックハートの姿が消えた。

 気配と風を感じたルフィが視線を下へと向けると、そこには深くしゃがみ込んだジャックハートがいた。

 

大猿王砲(キングコングキャノン)

 

 下を向いた瞬間のルフィの首を捉える、ジャックハートの"覇気"が込められた突き上げるような蹴り。

 "剃"の速度で放たれる、最速かつ重いその一撃に、ルフィの身体が宙に飛ぶ。

 

「ルフィ! お前……!」

「先に手を出したのはそいつ、だろ? まあ、俺もやり返しちまったしな。こっちも反則したってことで、ゲームはこっちの負けでいい。……それともなんだ。残ったガイコツも俺とやるか?」

「クッ……!」

 

 その戦闘に異議を飛ばすのは、意識を取り戻していたサンジ。

 何もさせてもらえずに敗北した申し訳なさからか、ゾロとフランキーはさらに一歩下がった場所から様子を伺っていた。

 

「いいんだぜ。俺も、あの雑魚とやっただけじゃ物足りねぇ」

「……遠慮しておきます。戦わずして勝たせてくれるのなら、そうさせてもらいます……ッ!」

 

 ウソップとルフィ。

 ジャックハートの言葉に乗せられた2人が戦いを仕掛け、どうなったかを現在進行形で間近で見たブルックの判断は、至って冷静だった。

 空高く飛ばされたルフィが力なく落ちてきたのを、フランキーがキャッチ。"覇気"が存分に込められた本気の蹴りを顎と首に浴びて、ルフィの意識は飛んでいた。

 

「ケハハハハ。そうかそうか。んじゃあ、次のゲームに行こう。お前たちに関するクイズだ。気絶してるやつは起こしても起こさなくてもどうでもいいが。クイズは全部で5題。4問正解で合格だ」

 

 タン、と軽く地面を蹴り、軍艦へとジャックハートが戻る。

 載った際に近くにいたハンコックとカリファに軽いキスをして、島に立つ"麦わらの一味"に向き直る。

 見れば、あれだけ痛めつけたウソップと、つい先ほど意識を飛ばされたはずのルフィがフランキーとサンジに肩を貸してもらいながら立っていた。

 

「ほうほう、そこまでして奪い返そうとするか。……では、一問目」

 

 問いかければまた同じようなことを繰り返し叫ぶだけだ、と察知したジャックハートが"麦わらの一味"の反応を無視して進めていく。

 

「俺の子を妊娠し、出産してくれた女海賊。ナミとロビンがバーソロミュー・くまによって飛ばされ、"麦わらの一味"が一時的に解散した島はど〜こだ。……はい、黒足」

「……シャボンディ諸島だ」

「おぉ、正解だ。その通り。無様にパシフィスタにしてやられたテメェらは、全員散り散りに飛ばされちまったんだってな。ご愁傷様」

 

 第一問。

 海兵、その中でもこれまでのことからとびっきりに性格が悪いと分かったジャックハートが出す問題なのだから、まともな問題ではないと踏んでいた彼らの、ある意味予想通りの問題。

 思い出される光景に、胸が痛む。

 

「では第二問。そのお陰で無事に俺と出会うことができたナミちゃんとロビンちゃん。2人が産んだ子どもの名前はなん〜だ? これは、ロロノアに答えてもらおう」

「……ベルメールと、オルビアだ」

「残念、不正解。ナミちゃんがついさっき、俺の息子となるゲンの出産を終えたところだ。母子ともに健康そのものだ」

 

 第二問。

 "麦わらの一味"の誰もがゾロが答えた2人だけだと思っていたが、答えは違った。

 ナミはドレスローザに来た時点で、いつ陣痛が来てもおかしくはない状態にあった。そんな時に海軍に捕まり、軍艦内で出産をしたこととなる。

 その子どもの名は、ゲン。両親であるナミとジャックハートがいるのだから、子どもに名前を付けていてもおかしくはなかった。

 

「ここからはもう、間違えられねぇな。第三問。シャボンディ諸島でバラバラになったお前たち"麦わらの一味"が、ナミちゃんとロビンちゃんが、どこでどんなことをしていたか、知っていたでしょうか。これは、"鉄人"にでも答えてもらおうか」

「……知らなかった」

「正解。知ってたら誰かしらが来ていただろうしな。楽しかったんだぜ、ナミちゃんとの五日間の同棲生活」

 

 第三問。

 分かってはいたが、こちらの心を抉るような問題に、後悔と申し訳なさに苛まれながらもフランキーが回答した。

 ルフィは女ヶ島、ゾロはクライガナ島、ウソップはボーイン列島、サンジはカマバッカ王国、チョッパーはトリノ王国、フランキーは未来国バルジモア、ブルックはナマクラ島へと飛ばされていた。

 各々がそこにいた2年間で自分を鍛えたが、他の仲間の様子は分かっていなかった。

 無事だろう、飛ばされたのだから何もないだろうという根拠のない安心。その被害が、ナミとロビンに出てしまったのだ。

 

「では、第四問。お前たちがシャボンディ諸島からここまで、無事に生き残ることができたのは、誰のお陰だ? ガイコツ」

「……ナミさんと、ロビンさんがいたから」

「正解だ。さすがによく分かっているな。本部大将ってことで、ある程度の権力が俺にはある。それを使って、2人がいた"麦わらの一味"を放置しておいたんだ。ストレス抱えられて育児に支障が出たら目も当てられねぇ」

 

 第四問。

 自分たちがここまで生き残れたのは、ナミとロビンのお陰だと誘導される。

 というのも、これもまた事実である。"麦わらの一味"がジャックハートにとって一切の利益を生まないのなら、早く消すために天竜人と世界政府に懸賞金の引き上げを直訴。その後、海上で数に物を言わせて叩き潰すという戦法を、いつでも取ることができたのだ。

 元帥であるサカズキが頂上戦争以降"麦わらの一味"に執心しているとはいえ、余程のことがない限りそこだけに注力するわけにはいかないのだ。

 

「よしっ! じゃあ最終問題だ。ナミちゃんとロビンちゃんが身体を張って海軍から守っていたものの、自分たちから契約を破り、海軍に喧嘩を売った挙句、現状何もできていない海賊の一味の名前はな〜んだ。"麦わら"」

「……"麦わらの一味"だ」

「ケハハハハハハッ! とんだお笑いだぜテメェら! 答えろとは言ったが、マジで答えるとはな!」

 

 最終問題。

 自分たちは仲間を捕まえられ、自分たちがジャックハートの掌の上で踊らされていたことを自分の口から言わされたルフィ。

 先ほどと同じく怒りが頂点にまで達していたが、拳を握り締めながら我慢していた。

 それは、他の面々も同じ。

 ここさえ我慢すれば、最後のゲームでナミとロビンが帰ってくるのだから。

 

「まあ、何はともあれこれでクイズは合格だ。言ったろ? 簡単な問題だってな」

「ならもう、これで終わりだ。最後は……」

「急かすなよ。あぁ、これで最後だ。ナミちゃんとロビンちゃんに、最終的にどうするかを決めてもらおう」

 

 ジャックハートの合図に応じて、船の奥から再び姿を表したナミとロビン。

 2人は、ジャックハートを挟む形で軍艦から島を見下ろしていた。

 

「ナミッ! ロビンッ!」

「良かった……。2人とも無事みたいだ」

「こんな胸糞悪ぃの、早く終わらせるぞ」

 

 その姿を確認できた"麦わらの一味"が浮かべる表情は、もちろん安堵そのもの。

 敵わない実力差でありながら、仲間を返すチャンスが巡ってきて、その最後まで来ているのだ。

 それも、ナミとロビンが一味に戻るというだけ。それだけで、また今までと同じように冒険を続けられる。

 

 はずだった。

 

「帰って」

「……え?」

「……な、何、言ってんだ? ナミさん」

「帰ってって言ってんのよ。分かんない? アンタらと一緒に生活してるだけで、もうイライラしてしょうがないのよ」

 

 ナミの口から飛び出したのは、想像していなかったもの。

 その表情も、どこか自分たちに怒りを向けているようだった。

 

「おいお前ッ! ナミに何したんだ!」

「ジャックハート様には何もされてないわ。ただ、冷静に考えてアンタたちといていつか死ぬより、ジャックハート様の元にいた方が良いって思っただけ。ストレスも何もないし、ここにいた方が幸せよ」

「おいナミッ! ……ロビンッ!」

「私も、ナミと同じ意見よ。エニエス・ロビーで言ったこと、忘れた? 私は生きたいの。それに、私がいたら一味に迷惑がかかる。現に今も、死にそうになっているでしょう? だから、ここは大人しく捕まるの。と言うより、もう捕まっているけど」

「認められるか、そんなの……!」

「認めてやれよ。これがナミちゃんとロビンちゃんの選択だ」

 

 その意見はロビンも同じ。

 フランキーとサンジがナミとロビンに問いかけるも、その険しい表情と意見は変わらない。

 

「いい? はっきり言わせてもらうわ。アンタたちの自由気ままに振り回されるのはもう嫌。いくら命があっても足りないわ」

「そんなモン、海賊始めた時から分かってただろ……!」

「私だけならいいわ。でもね、今は子どもがいるの。それも、ジャックハート様との子どもよ。これ以上に、海賊を辞める理由がある? 父親がいて、子どもがいて、安全がある。最大の理由でしょ?」

「あるぞ、ナミ! ロビン! お前らがいないと、俺が困る!」

「……そう。私は困らないわ。別に戦いが好きって訳でもないし、オルビアも育てなくちゃならない。その環境が、海賊である必要はないわ」

 

 どれだけの言葉をぶつけても、ナミとロビンの言葉と表情は一切変化しない。

 何が起きているのか分からない。その感情の赴くままに、ルフィはジャックハートへとぶつけた。

 

「ジャックハートォッ! ナミとロビンに、何したんだお前ぇ!」

「何も? ただ、強いて言うならだ。なりたての女海兵たちになす術なく負け、挙げ句の果てにはやるなと言っていた乱入。その結果として惨敗。そんなことを繰り返してたから、愛想を尽かされたんじゃねぇか?」

「ふざけたことを……!」

「ふざけちゃいねぇさ。守る、強くなったと言いながら俺との接触を回避させることができず。戦えば負け。にも関わらず自分たちから首を突っ込んでいく。そんな環境、子持ちの母親としては嫌だろ? 弱ぇのに戦いたがるんだからよ。海賊は自由なんだろ? だったら、彼女たちの決断も自由だ。素直に送り出してやれよ」

 

 ジャックハートの言葉は、そう言った考えもあるのかという、少し納得できる部分もあった。

 だが、これまで一味として共に冒険を続け、これからも続けていくと思っていた"麦わらの一味"にとっては、信じたくはない考えだった。

 

「もういい……! 取り返せばいい、それだけだ!」

「私を勝手にアンタたちの所有物みたいに言うの、やめてくれないかしら。……こうでもすれば、分かってくれる? んむっ……」

「ん? ちゅむ、ちゅぷ……。おいおいナミちゃん、いきなりすぎるって。あいつらには、刺激が強すぎるだろ」

「もう、ナミ。抜け駆けよ?」

「後でロビンもすればいいじゃない。これから、ずっと一緒なんだし」

 

 戦闘の構えを見せる"麦わらの一味"に対し、ナミが取った行動。

 それは、ジャックハートへの自発的なキスだった。

 恋愛などの浮ついたものがほとんどない"麦わらの一味"でも、それがどういうことかは分かる。

 そしてとにかく、今"麦わらの一味"がこの島から無事に脱出するために必要なことも同時に理解できた。

 

「"ゴムゴムの"ォ……!」

「んもう。私たちが選んだ人生だっていうのに」

「ま、仕方ねぇな。全部聞いた結果の判断として戦闘を選ぶんなら、そういうことだ。ナミちゃん、危ねぇから離れてくれ」

「はーいっ」

 

 高く飛び上がり、攻撃を仕掛けてきたルフィ。

 先ほどと同じく明らかな戦意をジャックハートに向けており、彼を仲間を奪った犯人としか考えていなかった。

 

「思考回路が読めてんだっての。"居合・粗目(ざらめ)"」

「っ!?」

 

 大きく後ろに引いた手は、高速で射出されることはなかった。

 ジャックハートの右手が腰に据えられている刀の柄に触れ、一瞬で抜刀と納刀が行われる。

 その結果として発生した、巨大な斬撃。その見た目に沿った斬撃がルフィの胴体に入っただけでなく、彼の身体が大きく後ろに吹き飛んだ。

 

「さて、"麦わらの一味"ッ! 言いたいことは、軍艦の檻の中で聞かせてもらおうか。後は、インペルダウンで余生を楽しんでくれ」

「お前……ッ!」

「ケハハハハ! 戦闘、開始だ」

 

 宙に浮いたルフィが地面に着くまでの間。

 "麦わらの一味"の敗北がジャックハートによって宣言され、先ほどのゲームの一環ではない、本当の戦いが始まった。

 

「おいサンジ、どうする!」

「どうするっつったって、ナミさんとロビンちゃんを置いていけるかよっ!」

「いい加減目を覚ませクソコック! もう手遅れだ!」

「テメェもう一回言ってみろ、クソマリモ……!」

「喧嘩してる場合じゃねぇだろ!」

 

 戦うのか、逃げるのか。

 ルフィがまたもやられ、ジャックハートが島に降りようとしている中で、島は阿鼻叫喚となっていた。

 

「……あんなとこにずっといたら、疲れちゃうわよね」

「えぇ。本当に」

 

 その光景を、ナミとロビンは軍艦の上から冷ややかに見ていた。

 普通に考えれば、圧倒的な実力差を思い知らされている海軍本部大将が戦おうとしているのだから、逃げるという選択肢しかないのだ。

 

「ケハハハ。いいのかよ、逃げて。あの船長も放置でいいのか? あの斬撃は、少々雑に放ったからな。切り口がぐっちゃぐちゃになっちまってるかも知れねぇ」

「っ! ルフィ!」

「おいチョッパー! お前は大人しく……!」

「ケハハ。まず、一匹だっ!」

 

 ドレスローザでジャックハートとその子供達に受けたダメージが抜け切っていない体で、脚力強化(ウォークポイント)になりジャックハートの横を通り抜けようとしたチョッパー。彼の先には、胴体から夥しい量の血液を流すルフィの姿。

 もちろん、ジャックハートがそれを許すはずがなく。トナカイとしてのチョッパー本来の姿の首に肘による強烈な一撃を入れる。

 意識を飛ばしかけたことにより、頭脳強化(ブレーンポイント)の姿になったチョッパーを、まるでボールを蹴るかのように島の遠くに吹き飛ばした。

 

「クソ……ッ!」

「話は後だ、コック……! 今は、あいつを止めねぇと俺たち全員、終わりだっ!」

 

 ルフィがやられ、助けに向かったチョッパーもやられ。

 すでにゲームの中でウソップが再起不能の状態にされ、残るはゾロ、サンジ、フランキー、ブルックのみ。

 気絶した者を担いで逃げるということも許してくれない相手に対してできることは、ただ戦うことだけだった。

 

「グッ……! "悪魔風蹴"……! 何ッ!?」

「足が痛むだろ? 忘れさせてやるよ」

 

 砕かれた足の痛みをなんとか気合でごまかし、ジャックハートへの攻撃へと転じようとしていたサンジの目の前に、突如としてジャックハートが現れた。

 その手には先ほどルフィを叩き切った斬撃を放った最上大業物・天艶。

 彼の狙いは、サンジの両手首。

 

「小手弄り」

「な……っ! ぐ、あぁぁああっ! 俺の、両、手がぁ……!」

「んで、お前も眠っとけ。騒がれるとうるさいんだ」

 

 滑らかな太刀筋で刃を入れられたサンジの両手首からも、出血。

 とある部分を斬るためにそこに刃を入れた後、納刀。素早く彼の鳩尾に深い一撃を入れ、下がった顎を右足で蹴り上げ、無防備になった後頭部に左のかかと落としを入れた。

 

「この……っ!」

「遅ぇよ。剣術だけできればいいって訳じゃねぇだろ。戦いは」

 

 その最後に出来た隙を突くように、ゾロがジャックハートに襲い掛かる。

 しかしその奇襲も、"剃"によりいきなり距離を詰められたことにより不発に終わる。

 超至近距離で一瞬で切り返す技が、ゾロにはなかったのだ。

 

「ほっ。おらっ!」

 

 サンジと同じように顎をかち上げられ、露わになった胴体に左手の五指銃が突き刺さる。

 

「逃げんなって」

 

 刺さったままの指を無意識に抜こうとして下がろうとしたところを、再び距離を詰められる。

 体勢を整える暇も与えられることなく、ジャックハートの右の拳が振り上げられていた。

 

「よっと」

 

 こめかみに、斜め上から振り下ろすように叩き込まれた拳。

 "武装色の覇気"をしっかりと込められたそれは、地面にゾロの顔面を突き刺すまで止まることはなかった。

 

「皆さんっ!」

「おいテメェ!」

「んだよ、ロクに戦えもしねぇ雑魚がピーピー喚くんじゃねぇ、よ!」

 

 ウソップを抱えながら様子を伺っていたブルックとアインによって年齢を戻されたフランキー。

 その2人には、まるで直接手を下す必要がないと突きつけるような、今まで感じたことがないような威圧感を誇る"覇王色の覇気"を浴びせる。

 思い知らされた実力差に、2人は意識を飛ばして膝を地面に着くことで答えた。

 

「っし。終わったか」

 

 軍艦の前に倒れる、血塗れのルフィ。

 そこから順番に、チョッパー、サンジ、ゾロ。そして少し離れたところにいるウソップ、ブルック、フランキー。

 

「楽しかったぜ、"麦わらの一味"。お前らの大冒険とやらも、残念ながらここで終わりだ」

 

 倒れた"麦わらの一味"に、軍艦から現れたジャックハートの部下たちが手際良く海楼石の手錠を掛けていく。

 手錠を掛けられた者たちから順に、軍艦内へと運び込まれていく。

 

「ジャックハート様っ!」

「おう、今行く」

 

 意識を失い、力なく運ばれていく彼らを気にすることなく、ジャックハートは甲板で待つ愛しの女性たちの元へと戻っていった。

 

 

 




無事崩壊。

とはいえ、ここで"麦わらの一味"の出番は終わりではありません。ジャックハートのお遊びも終わりではありません。


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天地

投稿間隔が短いと、感想を多く頂けるのでモチベーションの更なる向上に繋がるので、とても嬉しいです。
……とは言いつつ、最新話を投稿した後の感想見るの割と怖いんですよね。

ともあれ、前話で原作から完全に乖離する道しか無くなったので、ここからはひたすらオリ主&海軍強化ルート的なものになります。


平和かな?


このキャラの動きはどうなるんだろう、このキャラは生きてるだろう、というのをいろいろ推測してみてください。
モブすぎるキャラとかは出さない可能性の方が高いですが……(震え声)




 

 

 

 "麦わらの一味"が捕らえられたというニュースは、元王下七武海トラファルガー・ローの死亡報道と共に一気に全世界を駆け巡った。

 最悪の世代としてシャボンディ諸島までたどり着き、その世代の中の2人を有する海賊が、音沙汰もなく解散した。

 かと思えば、その船長が白ひげ海賊団と海軍の頂上戦争に現れたのだ。

 そしてそこから2年後。再び集結した彼らがこれから"新世界"で暴れるだろう。と思われていた時に、捕まったのだ。

 

「ねぇ、ジャックハート様?」

「なんだ、ナミちゃん」

「……むぅ、イジワル。せっかくあなただけの女になったのよ?」

「そういうのは邪魔者がいないところでって言っただろ?」

 

 一味全員を捕まえたのは、海軍本部大将であるジョー・ジャックハート。

 自ら志願してジャックハートのための女になった、ナミを膝の上に対面になるように座らせながら、彼は椅子に腰掛けていた。

 彼らを載せた軍艦の向かう先は、"新世界"の入り口にある海軍本部。

 バスターコールにより裁判所としての役割を多少は果たしていたエニエス・ロビーが消えてしまったため、罪人は海軍本部に送られた後、取り調べを受けてからインペルダウンへと護送されることとなっている。

 

「今はほら、こいつらがいるからな」

「ムーッ! ンム〜ッ!!」

「はぁ……。ほんっとうるさいわね。静かにしてくれないかしら」

「……」

「……クソ」

 

 しかし、海軍本部へと向かう際に問題が生じてしまったのだ。

 ドンキホーテ・ファミリー、コロシアムに集まっていた海賊、おもちゃに変えられていた賞金首、トラファルガー・ロー、そして"麦わらの一味"たちを入れておくための場所が無かったのだ。

 相当数の人間を捕まえることができると分かっていたためそれなりの数の護送船を用意していたものの、足りず。スペースが無かったため、最も監視が厳しいと言えるジャックハートの自室に海楼石の錠と、1人には猿轡をして、ルフィとゾロ、そしてサンジの3人を収容していた。

 

「それにしても、その格好にする必要があったの?」

「一応な。自害しようとしても、そんな恥ずかしい格好のまま死ぬ馬鹿はいねぇだろ。プライドだけは一人前だからな。全裸のまま舌噛み切って死ぬやつはいねぇよ」

「とは言え、目障りだわ。ここには本来、ジャックハート様以外の男なんている資格はないのに」

「ふふ。分かっているではないか、ニコ・ロビン。その通り。この部屋に入っていいのはわらわ達だけ。ここは海上にある旦那様の愛の巣なのじゃ」

 

 注目すべきは、その3人の格好だった。

 ずっと叫び続けるルフィにのみ猿轡はされているが、それ以外の装飾品は何もない。3人ともが全裸の状態で、鎖でまとめられていた。

 

「逃げることは愚か、立つことも出来ないのによく吠えるわね。ヒナ、感服」

「ハンコックさんの攻撃で各主要な関節を石に、ヒナさんの能力で力が入らない方向に曲げたまま固定、カリファさんの能力で常に脱力の状態にして、ペローナさんの能力でその意思を無くす。流石です、ジャックハートさん」

「たまたま、俺の元に来てくれた子たちがいい能力を持っていただけだ。それと、たしぎ」

「は、はいっ」

 

 全裸で暴れても醜態を晒すだけ、さらに言えば暴れることもできない状態にされ、彼らは捕縛されていたのだ。

 この部屋には現在、ジャックハートの女たちが数人いる。その中の1人、たしぎに向かってジャックハートは真面目な声色で話しかけた。

 

「ジャックハートさん、じゃねぇだろ」

「……え?」

「今回の件での活躍、見事だった。()()()トラファルガーの拿捕云々抜きにしても、コロシアムにいた奴らを捕まえたのは純粋なお前の功績だ」

「……ま、まさ、か……」

「あぁ。正式に中将昇進、おめでとう」

「ジャックハートさんっ!」

 

 元帥がサカズキに変わり、ジャックハートが女性を直々の部下に持つことができないというルールが撤廃された。

 その結果として、海軍本部大将であり直近の上司であるジャックハートとサカズキにより、大将の部下である中将という立場ができたのだ。

 そこに、ずっとそのポジションに就くために努力をしてきたたしぎが、入ることができたのだ。

 思わず自分に飛び込んできたたしぎの身体を、左腕一本で受け止める。

 

「これで……」

「あぁ。たしぎが望むなら、だが」

「お願いします、ね?」

「了解」

 

 たしぎのお願い。それは、ずっと前から伝えていたもの。

 結婚、そして妊娠。それに至るまでの、長時間のセックス。

 それらをジャックハートが了承したのだ。

 

「むっ。ねぇジャックハート様、私は?」

「あー……。ま、工夫すりゃここでも邪魔が入らずにできるか。ヒナちゃん」

「了解よ。檻のカーテンっ」

 

 ジャックハートの膝の上でなおも甘い声で彼に甘え続けるナミと、彼の胸元にくっつくたしぎ。

 そして、彼女たち以外のジャックハートの眼前にいる女性たち。

 彼らと拘束されている3人の間に、ヒナの能力により壁と壁に彼女の能力で作られたカーテンがかかる。

 

「カーテンっつっても、布は無いわけだが……。そこはまあ、これでも掛けてりゃいいだろ」

 

 無骨な黒い檻に、"正義"の白いコートが掛けられる。

 ジャックハートの意図を察したのか、上着を羽織っている者から順にそれを脱ぎ、ヒナが作ったカーテンに掛けていく。

 床から少し隙間は空いているものの3人からの視線はほとんど遮ることができるほどになり、ジャックハートが衣服を完全に脱いだ。

 

「ほら、抱いてほしいやつは全部脱げ。あぁ、ハンコックちゃんはここにいるのに悪いが、お仕置きの件を忘れるなよ。次はもう少し先だ。出産もあるだろうしな」

「……分かりました」

「さてと。前から約束してたのは、マーガレットちゃんとカリーナちゃん、レベッカちゃんにヴィオラちゃんにモネちゃんとベビー5ちゃん。そして、ナミちゃんとロビンちゃんだ」

「っ!? おい待てジャックハート……ッ! テメェ今から何するつもりだっ!」

「ケハハハハ。みんな、後ろのアレは無視して大丈夫だぜ。……って、一番はナミちゃんか」

 

 視界を遮り、衣服を脱ぎ。そして出てきた言葉と彼の性格からして、今から行われること。

 音を遮蔽されておらず、薄らを人の動きが影で確認できてしまう環境でそれ(・・)が行われる前に声を上げたサンジ。

 しかしその訴えは誰にも届かない。さらに彼らに追い討ちをかけるように、衣服のカーテンの隙間から見える床に真っ先に落ちた物。

 それは、ナミが着ていた服。そして彼らが見たことがない下着。

 

「ふふっ。当たり前でしょ? どれだけ、ジャックハート様に抱いてもらえるのを待ってたと思ってるの?」

「あぁ、そうか。"新世界"に入ってからは結構な頻度で会ってたから実感は沸かなかったが、最後に抱いたのは空島か」

「そうよ。ほんっとに待ったんだから。……満足、させてね?」

「当然。なら、始めようか」

 

 一瞬の差で衣服を全て脱ぎ捨てたのがナミであっただけで、気がつけばそれ以外の面々も全てを脱いでおり、衣服のカーテンの隙間から見える床には脱いだ下着などが散らかっていた。

 部屋の主人であるジャックハートの意思を汲み取るかのようにナミ以外の女性が壁際へと下がっていた。

 

「とは言ったものの、まだ濡れてねぇだろ?」

「さぁ、どうかしら。……確認、してみる?」

「そうさせてもらおうか」

 

 サンジたち3人とカーテンを隔てた向こう側ではすでに全員が全裸になっている。

 もちろん、その中にはナミやロビンもいる。そして、数多くいる女性陣の中で、真っ先にジャックハートの標的となったのがナミだった。

 

「あっ……」

「ケハハ。ちょっと濡れてる程度か。もう少しだけ解してやるよ」

「んぅっ、あんっ! そこ、もうちょっとぉ……あぁんっ!」

 

 腰掛けていた椅子から立ち上がったジャックハートは、彼につられるように立ったナミと向かいあった。

 普段ならベッドに彼女を寝かせ、その上で愛撫をするのだが、生憎今現在ベッドはサンジたちの方にある。

 そのため、立った状態でナミに愛撫を始めていく。向き合ったまま彼女の秘部と乳房に手を伸ばし、すでに把握している彼女の敏感な部分を刺激していく。

 

「ナミちゃん。上も、だ」

「んっ!? んちゅ……ちゅっ、んっ、はぁ……。ちゅぱっ、ちゅっ……。ちゅぷっ、んぷっ……」

 

 彼の愛撫を受け、艶めかしい声が漏れ出していたナミ。

 酸素を吸うために息継ぎをしようとしたところに、ジャックハートのキスによってその口を封じられた。

 不意に口を閉じさせられたとは言え、鼻でも十分呼吸はできた。それよりも今彼女が集中していたのは、ジャックハートを存分に感じることだった。

 

「んっ、ふぅ……。ねぇ……。もう、いいでしょ?」

「ケハハハ、随分と早いな。だが良かったな、ナミちゃん。俺も、そんなに我慢が得意な方じゃないんだ。始めようか」

 

 待ちに待ちに待った、ジャックハートとの愛しの時間。

 完全には濡れていなかったために彼が愛撫をしたが、ほんの少しだけのそれで完成してしまうほどに、彼女は待ち焦がれていたのだ。

 

「……優しくシテね?」

「無理な相談だな、そいつは」

 

 密着していたナミが後ろを向き、ジャックハートの方に何も身につけていない臀部を突き出す。

 これから行われる行為については、今現在この部屋にいる大半の人間が想像できている。そして、その直前に彼女がそうしたということは、彼女の希望する体位がそれだということ。

 

「待てナミちゃん。せっかくなら、だ」

「えっ。ちょ、ちょっとっ」

「頑張って掴めよ。俺だって、せっかくナミちゃんと楽しんでる最中に裸の男なんて見たくないからな」

 

 立った状態でのバックで始めて欲しかったナミの思惑は、ジャックハートによってしっかりと汲み取られた。

 しかし、ナミの立ち位置がジャックハートの先導によって変えられる。彼女が掴むところが何もなく、不安定だったこともあったのは確かだが、ジャックハートがナミに掴ませたのは先ほど掛けた、衣服のカーテン。

 強く引っ張ればすぐに崩壊してしまいそうなそのカーテンを掴み、ナミは彼を待った。

 

「ケハハハ。気をつけろよナミちゃん。色々と、なっ!」

「〜〜っ!? んっくぅぁぁあああっ! き、きた……っ、あぁんっ!」

 

 乱雑に掛けられている衣服たちの中で、ナミが奇遇にも掴んでいたのはジャックハートの白いコートだった。

 カーテンを掴み、尻を彼の方へと突き出し続けていたナミに、ついに待ちに待った瞬間が訪れた。

 濡れそぼり、さらにその上から愛撫を受けた彼女の膣口からはすでに愛液が滴っていた。そこに、硬く屹立したジャックハートの肉棒が奥深くへと突き入れられていく。

 

「んぅっ、あっ……んっ。ん、ふ……ぅ……。は、ぁあ……!」

「っ、くぅ……! 俺自身が昂っているってのもあるが、流石の気持ち良さだぜ、ナミちゃん……!」

「んっ! あぁっ! あんっ、あ……、んっ、ひゃっ! あぁ……んんっ!」

「ケハハハ……ッ! まず、一回イッたか……!」

 

 一定のリズムで、かつ深さは調整されたジャックハートのピストンがナミの奥を虐めていく。

 膣内と陰核。空島での調教によりどちらでもイケるようになってしまった彼女の最も弱い部分は、彼が開発したと言っても過言ではなく、そこをただひたすら、焦らすように責めていく。

 

「んく……っ! だ、めぇぇぇえええっ! イク……ッ! イッ……!」

「く、おぉぉ……!」

 

 それとともに、彼女の膣肉が精液を求めて彼の肉竿を絞り上げる。

 彼の陰茎の形を覚えたナミの膣肉は、ジャックハートを気持ちよくさせるために特化したと言っても過言ではなかった。

 無論、それは他の女性たちにも言えることだが。

 

「イクッ! イッちゃうぅ! さっき、から……ぁんっ! 奥、ゴリってぇっ! いっぱい、きもちいいっ、ですぅっ!」

「なら、思いっきりイッちまえ……ッ!」

 

 右手で彼女の腰を掴み、左手は彼女の乳房に回してその先端を指先で転がしながら弄り、常にナミを悦ばせながら啼かせていた。

 ナミも今はただそれを受け入れるだけであり、ずっと待っていた快楽に身を委ねていた。

 そんな中、ジャックハートのピストンが早まり、より奥深くに突き入れられていき、彼の陰茎がより大きく硬くなった。

 

「っ! 射精して……くださいっ! 奥に、いっぱい射精してぇ……っ!」

「ケハハハハッ! いいぜ、お望み通りに染めてやるよ!」

 

 部屋に響く、ナミの懇願。

 彼女の蜜壺に収まり切らない愛液が他の体液と共に床に溢れる。

 薄いカーテンの役目を果たしているジャックハートの白いコートを一生懸命に掴みながら、何とか脚に力を入れて踏ん張っていた。

 

「おら……っ、よっ!」

 

 そのナミの限界の線を、超えた。

 

「イック……ぅぅううッ! イ……ッ! んっ……ぁぁあああんっ!」

 

 彼女の口から出るのは至って単純な絶頂時の喘ぎ。

 まるで叫びのようなそれは心の底から喜んでいるナミの心情をこれでもかというほどに表していた。

 

「はっ、はっ……。は……あ……。すぅ……はぁ……」

「ケハハ。随分と気持ち良かった見たいだな」

「ふー……っ。えぇ、最っ高だったわ! ありがと、ジャックハート様っ!」

「なら良かった。んっ……」

「んむっ、ちゅぅ……。んく、ちゅむ、ちゅっ……じゅぷっ、ちゅる……っ、ぷはぁっ! キスも上手いしセックスも最高に気持ちよくしてくれるし、本っ当に最高の男性だわ、ジャックハート様」

「それだけじゃねぇがな。まあ、それは後々見せていってやるよ」

 

 ナミの膣内に大量の精液が吐き出されるのと同時にナミが今回で最大の絶頂を迎え、行為は終了した。

 肉棒が抜かれた後の膣内からは愛液と精液が混じった液体がナミの内ももを伝って床に向かっていたが、そんなことは気にも止めずにナミはジャックハートの唇を熱く求めた。

 性行為の後の激しい口づけを終えた後、ナミの頬にキスを落としたジャックハートは壁に待機していた女性陣へと向き直る。

 

「さて、じゃあ次はロビンちゃんと……」

「ジャックハート様。お電話です」

「あぁ? ったく、誰だよこんな良い場面で」

 

 次に抱く相手をロビンに決めたタイミングで、控え室へと一旦下がっていたカリファが、保留状態の電伝虫を持ってきていた。

 アイコンタクトと手の動きでロビンに指示を出し、ジャックハートの前で膝立ちの状態にする。

 

「はいよ、こちらジャックハート」

『ママママ、ハ〜〜〜ハハハハ……。どうやら、それなりの成果を挙げたようじゃないか、ジャックハート』

「あ? お前かよ」

「んっ……。ちゅぅ……ぐぷっ、ごぷっ、んぐ……じゅるろろろろ……!」

 

 通話の相手はビッグマム。

 行為を妨げられたとは言え、蔑ろに扱うことができない相手の登場に思わずため息を吐きそうになりながらも、それを抑える。

 膝立ちの状態にさせたロビンには口による奉仕を行わせており、先ほどナミの膣内に射精した直後でまだ尿道に精液が残っている陰茎に口淫をさせたまま、ビッグマムとの会話を続ける。

 

「成果って、"麦わら"どものことか?」

『そうさ。一応、生きのいいルーキーだってことで多少は名が知られていたのが、全滅だろ? それに加えてローとドフラミンゴが七武海にふさわしくはないことを証明し、奴らを捕らえた。どうせお前のことだから理由のほとんどが女絡みだとは思うが、功績には違いないだろ?』

「まあ、そこまで言うなら評価として受け取っておく。……で、どうした。これで終わりじゃないだろ?」

『マママ。流石に気付くかい。近々、王下七武海制度が完全に撤廃されるってのを聞いてね。今のうちに海軍内部に媚を売ろうかと思っただけさ』

「……というと?」

「がっぽ、ぐぽ……。んぶっ、じゅるる……。んちゅ……れぅ……」

 

 ビッグマムが切り出した本題。

 それは、海軍と世界政府が薄々考えていた、王下七武海制度の撤廃。

 それ自身はどうでも良いとして、ビッグマムはそこから来る余波を気にしていた。

 

『前に言っていたおれのとこの娘を1人、お前に()()よ。ジェルマも、是非ともお前に1人娘をやりたいと言ってるが、どうする?』

「まずは見た目、んで中身だ。人格と骨格が変わるぐらいに調教していいってんなら、クソブスクソデブ以外なら別にある程度は許せるがな」

『ママママ、安心しな。2人ともその辺は大丈夫さ。……これで、血縁ではないもののお前とは身内になる。お手柔らかに頼むよ、ジャックハート』

「あぁ、そういうことか。了解だ。ちゃんと前向きに考えといてやるよ」

 

 七武海が仮に撤廃されたとしたら、次に海軍が戦力を割くと予想されるのが、主に新世界に拠点を置く四皇、並びに生きのいいルーキーたち。

 そのことをすぐに予想したビッグマムが取った行動こそ、自分の娘をジャックハートにやるというもの。

 ついでにはなるが、ビッグマムと関係を取り持とうとしていたジェルマの一人娘もジャックハートの元に来るという。

 

「くれるのはありがたいがお前、どうやって俺のとこに来るつもりだ?」

『ジェルマの特殊なルートを使って、海軍本部にもう2人を送っている。到着したら確認の連絡を寄越しな。そしたら、もう好きに過ごせばいい』

「了解」

 

 つまりは、娘をやるから見逃してくれということ。

 だが、今の会話でジャックハートは曖昧な返事しか返していない。

 それもそのはず。いくら彼が海軍本部大将とは言え、そこまでの決定権はなく、その辺りのことは元帥であるサカズキが決めるのだ。

 

『マママ。そういうことだ。ま、頼むよ』

「はいよ」

 

 至って単純な連絡だけを済ませたビッグマムは、それだけを言うと通話を切った。

 そのことに何の負の感情も抱くことなく、ジャックハートも受話器を電伝虫に戻す。

 これから集中しなければならないのは、この部屋にいる女性たちを時間一杯まで愛し尽くすことなのだ。

 

「悪ぃなカリファちゃん。これ戻してきてくれ」

「かしこまりました」

「さてと、ロビンちゃん。そんなに美味しそうにしゃぶってくれるのは嬉しいが、もういいぜ」

「んっ……じゅぽっ。……そう。なら、次は──」

「何をすればいいのかって? 簡単だ」

 

 膝立ちになっていたロビンを立たせる。

 ナミを抱くために発動していた"覇気"がより洗練されていき、ロビンの思考を読み取っていく。

 

「ロビンちゃんのどエロい誘惑が見てみたい。……が、それじゃちとフェアじゃねぇ。他にも、待ち望んでいる子はたくさんいるからな」

「と、いうことは……」

「あぁ。どんな形でも構わねぇよ。俺を誘ってみな。ロビンちゃん、マーガレットちゃん、カリーナちゃん、レベッカちゃん、ヴィオラちゃん、モネちゃん、ベビー5ちゃん」

 

 ジャックハートが提示したのは、自身の身体を使ってジャックハートを()()()にさせるというゲーム。

 愛したい女性が多すぎて順番を選べない時や時間がないため1人だけを抱く時によく使われているものだった。

 

「ジャックハート様。失礼します」

「お? ノジコちゃんか。どうした?」

「"東の海"にて、ジャックハート様のお子様を出産した女性が今しがた、他の軍艦から到着致しました」

「あぁ、了解。客室に通して、待ってもらっていてくれ」

「かしこまりました」

 

 しかし、そのゲームは再び控え室から入ってきた人物によって中断された。

 その人物こそ、今現在全身に汗をかいたまま肩で息をしているナミの義姉、ノジコ。

 彼女が持ってきた知らせは、またジャックハートの近くに女性が増えるというものだった。

 

「……だが、まだ海軍の人材不足は否めないな。主に戦闘を行う海兵……その中でも"能力者"と"覇気"使いは俺のとこで相当増えたが、まだ足りないな」

「では、どういった提案を?」

「大将を最低限2人は常に遊撃に回す。賞金首の具体的な位置はヴィオラちゃんが見れるからな。海上にいるとこを他の大将たちの能力で沈めれば大半の海賊は死ぬだろ」

 

 ノジコにより持ち込まれた話題により、ジャックハートの思考が仕事の時のものへと一時的に切り替わる。

 若干20歳にして、ジャックハートは海軍本部大将という、海軍の中で見ればトップから2番目の地位にいる。

 以前からもそうであったが、大将になりより一層彼の影響力というものが高まってしまっているため、どうしても切り替えなければならないタイミングも出てきているのだ。

 

「あとは、鍛え直しだな。世界徴兵したところで、軍の大半を占めるやつらが雑魚なら、そこから綻んでくる。センゴクとガープには、その辺を厳しくして欲しいもんだ」

「……具体的には?」

「欲を言うなら俺ぐらい。……無理なら、せめて海賊には怯むことなく突撃していくぐらいの気迫を持たせねぇとな。……あー。そうなると医療設備と金もいるな。ま、金はこいつらみたいな自称大物ルーキーから巻きあげれば済むが」

 

 ジャックハートの発言を、一言一句逃すまいと高速で手に持った紙にペンを走らせていくノジコ。

 彼女もただジャックハートに好かれたというだけで海軍に入れるはずはなく。彼の秘書としての技術を磨いていた。

 

「とりあえずは、だ。見せしめがいる。海軍内にも、海賊どもにも、な。"麦わらの一味"じゃちょいと弱い。もう少し、ビッグネームの首を取って、地獄が天国に思えるほどにボコボコにしねぇとな」

「となると……四皇ですか?」

「だな。"赤髪"は酒と金積んでくれるし、ビッグマムは美女を寄越してくれるっつってたからなぁ……。カイドウなんて、正直どんなやつかもハッキリしてねぇし」

 

 "大海賊時代"が始まって以降、良くも悪くも海賊界に影響を与えてきた立場の人間がいる。

 それこそ、海軍、王下七武海、四皇。

 その中で海軍……というよりも世界政府が上に立つための見せしめとしてジャックハートが考えていたのが、四皇だった。

 偶然にもビッグマムが標的になることを回避することに成功しており、彼の意見としては──

 

「……ってことは、"黒ひげ"か」

 

 2年前、頂上戦争にいきなり現れてその場を乱していった、黒ひげに照準を合わせていた。

 ジャックハート自身としても、頂上戦争でのあの無差別な攻撃を許しているわけではなく、あの4人の中で落とすなら誰か、と言われれば黒ひげとなることは何らおかしくはなかった。

 

「だが、あいつらを落とすのはまだだ。戦力を一つに集めすぎるのは良くねぇからな。やっぱ、若い海賊たちへの見せしめとして適任なのは、"最悪の世代"の海賊か。後は、"新世界"に乗り込んできた奴らでも狩ればいいだろ」

「海軍の戦力は、どう確保しますか?」

「それについてだが、いい案がある。月に一人、インペルダウンに収容した能力者を殺して、"悪魔の実"を自然に返すんだ。それを海軍が回収できればそれで良し。海賊に見つけられたらそいつをまた殺せばいい」

 

 そのための海軍の戦力拡充としてジャックハートが考えていたのが、"能力者"を増やすというもの。

 それも、海賊が使っていた能力を得るためにインペルダウンにいる囚人たちを殺して、同じ実を自然界に発生させるという方法だった。

 

「だからまず必要なのは、遊撃部隊。……というか、世界中をとにかく移動しまくる奴らだな。報酬は考えなきゃならんが、一斉に動かせばすぐに終わるだろ。特定期間の特定地域には中将とか大将とかも使えばいい」

「なるほど……」

「じゃ、一旦それでサカズキさんに報告してきてくれ」

「かしこまりました」

 

 頂上戦争が終わり、2年。

 元帥がサカズキに変わり、戦力も少しは増え、その変わりに海賊も増えた。

 そしてつい先ほど、1人の海兵の手によって"最悪の世代"の一角でもある"麦わらの一味"が落ち、王下七武海であったドフラミンゴとローが捕まり、まだ報道はされていないがローが死んだ。そして、脱退していないため捕まえられてはいないが、バーソロミュー・くまも彼に敗北した。

 そして、少し前の話にはなるが元王下七武海であったハンコックも彼の手により捕まっていた。

 

「あーあ。これからまた忙しくなるだろうが、頑張るか。やればそれなりの報酬は貰えるしな」

 

 この2年で王下七武海を計4人倒し、"最悪の世代"の海賊を計3つ壊滅させたジャックハートは、誰に言われずとも今後もこうして仕事を振られるのだと予想していた。

 また大半が雑魚の海賊たちの相手をしなければならないのかと思う反面、報酬もいいので蔑ろにできない仕事が増えることに、何とも言えない感情を抱いていた。

 

「ジャックハート様。もう直に、海軍本部に到着するとのことです」

「早ぇな。……って、"新世界"から赤い大陸経由しなくて良くなったからか。了解」

 

 ジャックハートの考えを手元の紙にまとめ終えたノジコが、去り際に最後の連絡を残していく。

 頂上戦争があり、"偉大なる航路"前半にあった海軍本部が"新世界"側へと移ったのだ。ジャックハート自身も、最後に自宅に帰ったのがまだ移転する前の段階であり、移転後の自宅には戻っていなかった。

 

「いろいろ言ったが、まずは家のことしないとな。どんな家になってるか、誰か知っているか?」

「前の5倍ぐらいの大きさになったと聞いていますが」

「デカすぎるだろ。……いや、増える子たちのことを考えるとそうでもない、か」

 

 以前の家ですら、超豪邸という言葉が霞むほどの、小さい城とでも呼べるほどの家だったのが、さらに大きくなったらしい。

 詳しくは聞いていないが、今回のドレスローザの一件で報奨金もまたたんまりと増えたらしい。

 何でも、給与だけでなく天竜人からの慰労金や謝礼金がかなり増えたと、人づてに聞いていた。

 

「よし。"麦わらの一味"の護送が終わったら、シャボンディ諸島でちょっと豪遊でもするか。パーッと金使って、好き勝手しよう」

「っ!? じゃ、ジャックハート様。お金の使い方には……」

「分かってるっての」

 

 ナミ、ロビン、レベッカ、ヴィオラ、ベビー5、モネ。そしてさらにそこに、増える女性もいる。

 彼女たちの要望もなるべく叶えつつ新居の中身も充実させなければならないとなると、必然的に金遣いは多少荒くなる。

 

「2、3日で10億ぐらいに留めておくさ」

 

 ナミと初めて出会った時からさらに増え、ジャックハートの貯蓄はとんでもない額になっていた。

 崩壊したグラン・テゾーロから押収した金品、ドンキホーテ・ファミリーの財産、そしてその他諸々の各方面との契約による報酬。

 その中から自分の元に来させた女性たちに10億ベリーを使う程度は、さほど問題ではなかった。

 

「派手に使われると、サカズキ元帥が……」

「大丈夫だろ。俺のモチベーションのためって言ったら引き下がる」

 

 いつの間にか元帥の扱いにも手慣れたジャックハート。

 もうすぐニューマリンフォードに着くということもあり、女性を愛するのはもう少しだけ先のこととなった。

 

「……とにかく今は、面倒ごとを終わらせよう」

 

 そう言ってジャックハートは、衣服のカーテンの奥に映る影に視線をやった。

 

 





新世界の海賊「やべぇよ、やべぇよ……」
マム&ジェルマ「娘やるから勘弁」
シャンクス「金と酒やるで」
海軍「カイドウはよぅ分からんし……見せしめとして黒ひげぶっ殺すか!」
黒ひげ「!?」

次回以降のストーリーの大筋はこんな感じです。



もっと濃厚な本番シーンの方がええんやろか……。
やっぱり主要キャラが多い方がええんやろか……。

本番シーンを書く上で参考にしたいので、アンケートにご協力ください。


感想、評価などお待ちしております!


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裁きの間

少々攻めてみました。とは言え適当に設定を盛り込んでいるので、この作品の完結までに原作で触れられなかったら多分放置です。

次回は本番シーン多めですかね。

新社会人として働こうとしたら、いきなり一ヶ月在宅勤務生活を開始させられました。
今まで住んだこともない高級住宅街に軟禁です。キツいんご……。

暇すぎて機材無いけど配信でも始めたろかと思うぐらいに暇&暇です。
リングフィットもあつ森も手に入れられず、マジに暇です。
漫画も持ってこれなかったので原作を思い出す作業をしながら書いてます。頑張ります!




 

 新世界、ニューマリンフォード。

 新しく元帥となったサカズキにより新世界に海軍本部が置かれたが、そのニューマリンフォード内には以前の海軍本部には無かった設備があった。

 それこそが、通称"裁きの間"

 全世界の海兵によって捕まえられた海賊たちが軍艦でここまで連れて来られたのち、裁判を受ける。

 その後、海軍本部で少しの間だけ預かり、判決通りに動いていくのだ。

 

「だが、お前らみたいなフダ付きの海賊どもの判決は、実質もう決まってる。終身刑だ。懸賞金の額がとんでもなく軽けりゃ、刑期もつくがな」

 

 現在その"裁きの間"で裁判を受ける前の説明を受けているのは、"麦わらの一味"たち。

 手錠、足枷、猿轡をされた状態で立ったまま横一列に並ぶ彼らに裁判の流れを説明するジャックハートの隣には、女海兵たちがずらりと並んでいた。

 

「良かったな麦わら。お前のお陰で変わったインペルダウンの制度、お前が真っ先にデカい対象になりそうだ」

「……」

「そういう細かいニュースとか、一切見てねぇか。ナミ()()、説明を」

「ハッ!」

 

 彼のその言葉に、"麦わらの一味"の表情が歪む。

 ジャックハートの側に、なるべく彼の近くに寄ろうと考えている女海兵たちの中に、ナミとロビンの姿があるのだ。

 

「インペルダウンでは、より凶悪かつ、危険因子と判断される囚人たちの脱獄という意思を削ぎ落とすために『懸賞金1万ベリーにつき刑期一年を課す。また、懸賞金が1億ベリーを超えている囚人は一ヶ月に一度、本人の力が危険とみなされる場合のみ拷問にかけることとする』ということが決定されたわ。と言っても、他にもありますが」

「ケハハハ。そういうこった。だから、天竜人に普通の海賊より嫌われてるアホは懸賞金が上がりやすい。上がったところを速攻で俺が捕まえに行くからな」

 

 1万ベリーにつき一年。

 つまり、懸賞金が1億ベリーなら刑期は1万年となる。

 そしてその間、一ヶ月に一度の拷問を受けなければならないのだ。

 

「懸賞金が上がれば上がるほどいい、みたいなガキな考えしてる奴らに灸を据えるための措置だ。質問がある奴は一回頷け」

 

 ジャックハートのその言葉に頷いたのは、サンジ。

 彼の猿轡を待機していたロビンが外す。

 

「……その拷問ってのは、どんなもんだ?」

「俺に聞くな、って前なら言ってたんだがな。基本的に賞金首ってのは海賊が多い。そこで、インペルダウンから海軍に海賊が嫌がる拷問ってことで意見を求められてな。元帥と大将、一部中将が答えて、それが反映されている」

 

 チョッパーとウソップの喉から息を吸い込む音が聞こえた。

 他の面々も、それを聞いて額に汗を浮かべていた。

 

「もちろん殺しはしねぇよ。拷問だからな。生きていてもらわねぇと困る」

「……面会なんてのは、あるのか」

「ある。だがお前らから望むのは不可能だ。いるなら親族がインペルダウンまで足を運んでくれることを祈れ」

「……最後に、俺たちの最終的な懸賞金はいくらなんだ?」

「ケハハッ。自分らのそれも知らねぇのかよ」

 

 サンジのその質問に、たしぎから手配書を手渡されたジャックハートがそれらを眺めながら答えていく。

 

「"麦わらのルフィ"、10億。"海賊狩りのゾロ"、4億3千万。"黒足のサンジ"、2億6千万。"ゴッド"ウソップ、5億。"鉄人"フランキー、1億4千万。"ソウルキング"ブルック、1億。"わたあめ大好きチョッパー"、5万。一味の総合賞金額は24億4千5万ベリー。ま、"新世界"へチャレンジするルーキーとしてはそこそこだったな。ご苦労さん」

「……ッ! いつの間にそんな額になってんだ……」

「航海士と考古学者が気がついたら抜けていただろ? お前たちの船。航海士と能力者がいなくても"新世界"を生きていける男衆。少数精鋭になっているところにドフラミンゴの敗北が重なったんだ。()に進言したら、軽く上がったんだよ」

 

 ジャックハートのその言葉にサンジの顔が怒りに染まる。

 ナミとロビンを捕まえたのも、ドフラミンゴを倒して捕まえたのも、天竜人に一部嘘を織り交ぜた報告をしたのも、全てはジャックハートである。

 だが、ここで声を荒げるわけにはいかない。もう判決は決まったも同然の現状でそれをしてしまえば、ジャックハートが何をするか分からないからだ。

 

「念のために言っておこうか。お前たちがまた海賊行為を繰り返そうという意思を見せた時、罰せられるのはお前らが最初じゃねぇ。お前たちを育てた環境だ」

「何……!?」

「フーシャ村、シモツキ村、シロップ村、バラティエ、サクラ王国、ウォーターセブン。骨のお前は、関係のあるクジラでも殺せばやる気が削がれるか?」

「……どこで、それを……」

「ケハハハハ。情報も力だ。これだけ仕事が増えちまうと、嫌でも顔が拡まっちまうんだわ。テメェらでも知ってるようなとこからでも流れてくるからな」

 

 ジャックハートが持っている情報網は、世界で見ても群を抜いている。

 王下七武海で情報のやりとりをしていたのはドフラミンゴとミホーク。四皇ではビッグマムと赤髪との契約を結んでいた。

 それに加えて正規の海軍としての情報と、グラン・テゾーロが動いていた時の情報もテゾーロ本人から得ていた。

 

「いつまでもゴキブリに湧かれちゃ面倒だ。だからまずは、根本を叩き潰す。海賊を排出する行為自体が悪だとな。どう思う? ナミ准将」

「ジャックハート大将の考えに、賛成です」

「ケハハハ。だが、生憎海賊に脅されて船に乗せられた可哀想な女性もいるらしい。そういう子たちは今後、俺の元でメンタル面のリハビリをすることになったんだ」

 

 これも、ジャックハートが天竜人に進言して、彼らの中で名案だとされて可決されたものである。

 海賊に戻ることを完全に断念し、政府のために働くことを誓えば、まだ生き残る道があるのだ。

 ジャックハートの目に留まった女性は、であるが。

 

「ジャックハート大将。そろそろお時間です」

「了解。それじゃあ、裁判の始まりだ。無期懲役か死刑か。どっちだろうな」

 

 役人の手によって、手錠をさらに鎖で一繋ぎにされた"麦わらの一味"が裁きの間へと連行されていく。

 彼らの足取りはもちろん重く、厳戒態勢の中暴れようという意思も摘み取られた。

 全員が裁きの間へと入っていくのを見届けた扉は、重々しく閉じられた。

 

「さて、と。孫との別れの挨拶はどうだった? ガープ」

「……これほどまでに、何も言えなくなるとはな……」

「ま、あんたが悪い訳じゃない。海賊になることを決めたのはあいつだろ」

 

 彼らと入れ違いになる形で、ジャックハートの前に現れたのは、現役の海兵としては実質引退したガープ。

 痩せこけている訳ではないがどこかその顔はやつれているように見えた。

 

「……分かっていたことじゃ。そして、割り切らなければならんことでもある。ルーキーとして"新世界"に殴り込んだ海賊が、海軍本部大将に捕まえられる。よくあることと言えば、よくあること」

「そういうことだ。ま、あんたの血縁ってこともあったし、あいつ自身に更生する気があったなら、もうちょいマシな扱いにはなったかも知れねぇが」

「ッ! ……なぜじゃ、ルフィ……! なぜ、海賊などに……ッ!」

 

 ガープの拳がキツく握り締められる。

 その迫力に女性陣は怯えているが、この部屋にいるもう1人の男であるジャックハートは気にも止めていなかった。

 

「あんたが悔しがってもしょうがねぇだろ。海賊を捕まえまくっていけば、世界は平和に近づく。()の意見は一貫してそれだ。"D"の名を持ちながら、政府に反旗を翻す。同じ"D"を持つ俺としても、他人事じゃねぇしな」

「……何?」

「ジャックハート様ッ! それって、どういうことッ!?」

 

 名前に"D"を持つ。

 あまりむやみやたらに話していた訳ではないその話題に、ガープとロビンが食いついた。

 

「俺の本名はジョージ・オル・ディエゴ・ジャックハートっつーんだが、ディエゴってのは親父が適当につけた仮の名前だ。正しくは、ジョージ・オル・D・ジャックハート。別に"D"の意味を深く追求しようとも思わねぇよ。どうでもいいし、俺のことを深掘りされる方が気分悪いからな」

「そうか……」

「ただ、俺の仕事として、その辺のが増える可能性があるらしい。何をどうするかは良く知らんが」

 

 現状、サカズキからの指令と、天竜人からの直々の命令と、五老星による指示が主なジャックハートの仕事となっている。

 "麦わら"とローを仕留めたことで、ほんの少しだけ仕事が変わるかも知れないとサカズキから伝えらたが、ジャックハートの考えは変わらない。

 割り当てられた仕事をこなす。

 ただ、それだけである。

 

「俺もあんたもこの子たちも、やることは何も変わらねぇよ。"正義"とか"悪"とか関係ねぇ。"平和"のために尽力するだけだ」

 

 海賊の視点から見れば、ジャックハートの戦いや素行というものは凶悪かつ極悪非道のものにしか感じない。

 理不尽な暴力の権化、嫌がらせの天才、限りなく天竜人に近い海兵。様々な言われ方をされるほどに、彼は恐れられている。

 しかしそれと同時に、世界中の一般市民の視点でのジャックハートは、正しく"正義の味方"なのだ。

 どんな凶悪な海賊であろうが市民に大きな被害を出さずに倒してしまう。その圧倒的な姿と功績の前には、多少のワガママも見逃されていた。

 

「今回捕まえた奴らの中には、革命軍の参謀総長もいる。革命軍と戦うのも近いだろうな」

「……そう、か」

「割り切るしかねぇよ、ガープ。俺らは海軍だ」

 

 海軍本部大将のその言葉に、老兵は頷くしかなかった。

 過去の経歴と年齢で見ればどう考えてもガープの方がジャックハートよりも立場は上であり、そうした関係で指導を行っていた事実もある。

 だが、ガープは今前線を退いており、ジャックハートはそのトップに君臨しているのだ。

 

「平和に過ごそうとする市民のために、危険や悪を排除する。それだけだ」

 

 男海賊を殺すのも、捕まえるのも。

 とんでもなく危険な賞金首を捕まえるのも。

 気に入った女海賊を自分の元に引き止めるのも。

 

 全ては、平和のため。

 

 

 ◇

 

 

 それからおよそ一日後。

 シャボンディ諸島の77番GR。

 

「ケハハハハッ! やっぱり、ここは良い。サカズキさんにもシャボンディ諸島でのパトロールと慰安旅行って言ったら了承もらえたし、羽伸ばし放題だ」

「ねぇジャックハート様。これ、ホントに全部私たちのなの?」

「そうだ。俺に女物の服を着る趣味があるように思えるか? ちゃんと君らの服さ。喧嘩しないように分けてくれ」

 

 ホテル街の中でもとび抜けて高級なホテルの最上階。

 フロアを丸々繰り抜いたような最高級の部屋に、ジャックハートは女性陣を全員引き連れて来ていた。

 

「うーん……。それにしても、ロビンには悪いことしてる気分だわ」

「大丈夫だって、ナミちゃん。ハンコックちゃんやロビンちゃんは出産が近いし、ハニークイーンちゃんもつわりが始まってるからな。他に欲しいもんがある子は外に買い物に行ってるし、ナミちゃんも後で行くか?」

「今はここにいるわ。他の誰でもない、この2人にあなたを取られたくないし」

「ん?」

「むっ」

 

 今現在、ジャックハートが宿泊しているこのフロアにいる女性は、全員ではない。

 しかしその中には、ナミの以前からの顔見知りがいた。

 

「あんたたちよ、ノジコ! カリーナ! 何よ、2人とももうジャックハート様のお嫁さんにしてもらってるなんて!」

「あら、嫉妬? でも結婚式はまだよ」

「そうよ、ナミ」

「それでも、私より長い期間ジャックハート様の側にいたんでしょ!?」

 

 義姉であるノジコと、昔の顔なじみであるカリーナ。

 その2人を前に、ナミの口調が戻る。

 

「えぇ。一生懸命仕事して、綺麗になる努力をして、ジャックハート様に愛してもらう。それの繰り返しよ」

「……ホンットにバカバカしくなってきた。アイツらに振り回されてる間に、こんな羨ましいことしてたなんて」

「ウシシシシ。いいの? ナミ。そんなこと言って」

「良いでしょ。ジャックハート様との力の差が分かってないのよ?」

 

 ナミの口から語られたのは、以前の彼女からは考えられないようなものだった。

 

「……アンタ、変わったね」

「変わるでしょ、そりゃ。冷静に考えれば天竜人の権力とかがある世の中で、力をつけてくる海軍相手に海賊が無事でいる確率の方が低いでしょ」

「ケハハハハハ! 違いないな。これからさらに、海軍の力は強くなる。なんせジェルマの科学力が手に入ったんだ。君らもいるし、ここから海軍は強くなる一方。海賊は衰退の一途だ」

「あら。ジャックハート様はジェルマの科学力を手に入れるために、私を迎えたの?」

 

 ジャックハートのその発言に、反応した者が1人。

 彼が腰掛けている大きなソファーとは別の、これまた大きなソファーに、先ほど彼の目の前で着替えた身体のラインを強調するような華美なドレスを身に纏った女性。

 数時間前までの名は、ヴィンスモーク・レイジュ。現在の名はジョー・レイジュ。

 ビッグマムの言葉通り、彼女はジャックハートがニューマリンフォードへと戻ってきた時すでに彼の自宅にいたのだ。

 

「そんな訳ねぇって、レイジュちゃん。分かるだろ?」

「分からないわ。……だから、私にちゃんと、教えてくれる? あなたがどうして私を迎え入れたのか」

「ケハハハッ! 意外と乗り気じゃねぇか」

 

 話題に挙げられたところでレイジュがジャックハートへと迫る。

 胸元を大きく開け、角度次第では乳房のほとんどが丸見えになるのではないかというほどに彼への警戒を緩めた状態で、彼の隣に座る。

 

「大方、レイジュちゃんも嫌気が差してたんだろ? 聞けば、奴らそれなりに強くなる代わりに、感情が欠落してたり、人格がおかしくなっちまってるらしいじゃねぇか」

「そうね。……私も同じとは、思いたくないけど」

「そりゃそうさ。俺のすることに反応してくれるのは、ちゃんとした感情がある人間だけだ」

 

 ジャックハートのその言葉で、レイジュの脳裏にとある光景が思い返される。

 つい数日前、ビッグマムが拠点とするホールケーキアイランドにてジャックハートの資料を見せられた時の、家族たちの顔。

 まるで自分たちの科学力を無意味だと言わんばかりの、圧倒的な力。人間が生身でこれほどのことができるのか、と汗を滲ませていた弟たちを思い出す。

 

「大丈夫だ、レイジュちゃん。君が俺のところにいる間は、相当なことをやらかさねぇ限りジェルマには何もしねぇよ」

「そう? なら良かったわ」

「ってか、レイジュちゃんもプリンちゃんも良かったのかよ。海軍から逃れるための駒として俺の元に来て」

「私は良いわ。あそこにいるよりも、刺激的かつ良い暮らしが出来そうだし」

「なるほどな。……プリンちゃんは?」

「わ、私は……」

 

 ジャックハートから話を振られた先にいたのは、レイジュと比較すると少し幼さを感じさせる風貌をした美少女。

 数時間前までの彼女の名前は、シャーロット・プリン。現在の名前はジョー・プリン。

 四皇ビッグマムことシャーロット・リンリンの子供にしては珍しい、相手に嫁ぐ形となった女性だ。

 

「猫被る必要なんて無い。本音と言葉が違っていた方がイライラするからな」

「っ! そ、そんなこと……」

「だが、あいつもやっぱ馬鹿だな。三つ目族とのハーフなんだから、そりゃ三つ目で生まれるだろ。それを気持ち悪いって酷い話だぜ。海賊やってる最中に頭でもぶつけて脳味噌吹き飛んだんじゃねぇか?」

「〜〜っ!」

 

 ジャックハートのそのセリフに、プリンは顔を真っ赤に染めた。

 その顔色と表情を隠すかのようにソファーの上で膝を抱えて座り、もぞもぞと彼女の身体が左右に揺れる。

 彼女も強引に結婚を決められたことに腑に落ちない部分がある一方、相手がとんでもない上物であることと、その彼が自分の三つ目に否定的ではないことも相まって、感情の振れ幅が凄まじいことになっていた。

 

「……で、だ。話は戻るがプリンちゃんはそこんとこどうなんだ? 俺とこういう関係になるってのは」

「べ、別に……嫌って、訳じゃ……」

「なるほどな。ま、安心したぜ。嫌な気分で来られるよりも、圧倒的にそっちの方がいいからな」

 

 具体的に、誰にとって何が良いかは言っていない。

 しかしそれでも、確かに良いということがプリンには理解できていた。

 

「だが、まだ緊張してそうだな。俺の元に一生いるつもりもないが、あのババアのとこに絶対に帰らなきゃならねぇ訳でもない。能力を使おうにも、この布陣相手に隙が見つからないってとこか」

「……!」

「ケハハ。そんな怖い顔すんなって。プリンちゃんが能力でいろいろした瞬間にビッグマムは俺が沈める。クソキモい息子もな。その辺のリスクリターンの計算ができない子だとは、思いたくないが」

「んもう、ジャックハート様? 私たちの前で、そんなに怖い話をしないで」

 

 ジャックハートの左に座ったレイジュが、彼の体に密着するように凭れかかる。

 腰にタオルを巻いているだけのジャックハートの体に彼女の柔らかい肢体が絡みつくも、ジャックハートの表情は未だ真剣なもの。

 そもそもの話、プリンはジャックハートにまだ完全に受け入れてもらえていなかったのだ。

 少し前までは海賊であり、さらにジャックハートに惚れてここまで来たわけではなく、ビッグマムから送られてきたのだ。

 

「ま、プリンちゃんに関してはいい。あのババアを抑え込めば、プリンちゃんが逆らう必要もなくなるからな」

「そ、それって……」

「あぁ。ナミちゃんやロビンちゃんの時と同じだ。あいつらがどうなってもいいんなら好きにしろってことになる」

 

 だが、その手の扱いにはもう慣れてもいる。

 ジャックハートの脅し文句は、『ビッグマムたちを半殺しにした上で、プリンを追い出す』というもの。鼻つまみ者であった彼女がそう言った状況になってしまえばどうなるか、分からないプリンではなかった。

 

「よしっ。待たせたなレイジュちゃん。君の言う通りだ。ここから先はデカい仕事はそれほどない。今はゆっくりたっぷり、楽しむとしよう」

「ふふっ。えぇ、そうしましょう?」

「ちょ、ちょっとジャックハート様!」

「ウシシシシ。今更言いたいこと、分からない訳じゃないでしょ?」

「たしぎさんたちが帰ってくる前に、発散しましょ?」

 

 じっとソファの上で様子を伺うプリンと対照的に、ジャックハートに迫るレイジュ。

 そんな彼女に待ったをかけるように、ナミ、カリーナ、ノジコも彼の元に近寄っていく。

 彼女たちもまたレイジュと同じく、ジャックハートの情欲を誘うような露出度の高い、派手なドレスを身に纏っていた。

 

「ケハハハ、望むところだ。せっかく着てもらって悪いが、すぐ脱ぎ散らすことになるぜ?」

「それこそ望むところよ。いっぱい愛してくれるんでしょう?」

「当然」

「なら、誰から愛してくれるの?」

「さあな。まずは、全員まとめてだ」

 

 ジャックハートのその言葉を皮切りに、女性陣が彼にさらに詰め寄る。

 最も近くにいたレイジュがジャックハートの唇に自らの唇を重ね、ノジコはドレスを脱ぎ始め、ナミとカリーナは彼の空いているスペースに身を収める。

 

「ケハハハハ。誰かが戻ってくるまで、嫌と言っても抱き続けてやるよ」

 

 硬くなり始めるジャックハートの陰茎。

 その主張は、女性陣の情欲を駆り立てていた。

 

 

 ◇ ◇

 

 

 一夜にして世界中を駆け巡った衝撃的な報せの数々。

 ジョー・ジャックハート海軍本部大将による、"麦わらの一味"並びに革命軍参謀総長、そして王下七武海の2人の討伐は、全世界に良くも悪くも影響を与えた。

 "ジョーカー"から仕入れていた兵器が届かなくなった国、革命軍から矛先を向けられなくなった国、それと同時に、海賊たちの脅威に怯えなくてよくなったもの。様々である。

 しかしその中で特に衝撃を受ける立場となっていたのが、"麦わらの一味"と深い関わりを持つものたちであった。

 

 

 

 ウォーターセブン

 

 かつては街の嫌われ者であったゴロツキたち。彼らが円形になって床を眺めるその中心にあるのは、新聞の一面にあるとある記事。

 

「う、嘘……だ……。あの、アニキと麦わらさん達が、捕まったなんて……」

「……相手が悪すぎるわいな。まさかあの、ジャックハートが出てくるなんて……」

「そ、その言い方はあんまりじゃねぇか!? まるで、アニキたちが弱いみたいな……」

「違う! ……けど、有名な話だわいな。海軍本部の大将たちにも違いがあって、その中でもジャックハートはとびきりに最悪だって」

 

 モズの語りを邪魔するものは、その場にはいなかった。

 

「元帥"赤犬"は、徹底的な正義で殺しも厭わない。でも、"青雉"、"黄猿"、"藤虎"は絶対に殺すという訳ではない。"緑牛"の話はまだ聞かないけど、ジャックハートの話は有名だわいな」

「"白龍"は、自分の娯楽のために賞金首で()()。……正直、アニキがジャックハートに遊ばれなくて良かったと思っているわいな」

「……けど」

「送り出してしまった以上、俺たちにも責任はあるかも知れん、な」

「ニューアニキ……」

 

 その場には、かつてフランキーについていくだけだったものたちではなく、フランキーの兄であるアイスバーグもいた。

 

「……普通に考えれば、よくないことだ。それでいて、その選択肢しかなかった。海賊として生きていくアイツを送り出すってことは、そういう覚悟ができてなきゃならなかった」

 

 エニエス・ロビーで世界政府や海軍相手に大立ち回りをしてしまったフランキーには、どの道逃げ場はなかった。

 ウォーターセブンから出ようが出まいが、いつかは海兵と戦う時が来る。

 そしてその結果として、彼は負けてしまったのだ。

 

「そりゃ、海賊として生きるなら、最後まで逃げ切るか捕まるかのどっちかだろうよ」

「……」

 

 まるで自分に言い聞かせるように、心痛な面持ちで1人呟くアイスバーグ。

 彼に言葉を掛けることが出来る人間も、ここにはいなかった。

 

 

 

 サクラ王国

 

 "世界会議"に向けての出航を数日後に控えたこの国にも、"麦わらの一味"崩壊の報せは届いていた。

 

「まさか、彼らが……」

「悲しむんじゃないよ、ドルトン。海賊が捕まったんだ。何も不思議なことじゃない」

 

 彼らの口から出る言葉は、他と同じ。

 劇的な強さを見せ、この国を変えるきっかけとなった彼らが、まさか捕まるとは。

 人格も知っている彼らだったが、海賊ということも知っていた。

 

「……Dr.くれは。海賊というのは、悪でしかないのでしょうか」

「世間一般から見りゃそりゃそうだろう、としか言えないね。海賊だって言って名乗りを上げちまってるんだ。あの子たちだけは捕まらない、とでもどこかで思ってたのかねぇ」

 

 そう1人呟き、遠くの空を眺めるDr.くれは。

 その空にはどんよりとした分厚い雲がどこまでも続いており、サクラ王国にしんしんと雪を降り注いでいた。

 

「切り替えな。もうすぐ"世界会議"だ。その会議の護衛には、天竜人への報告も兼ねて海軍本部大将たちも来るって話だ。国王の感情で国民を危機に晒す訳にはいかないよ」

「……えぇ」

 

 年長者であるくれはの言葉に、俯いたまま返事をするドルトン。

 様々な感情が入り乱れているであろう彼は、しばらくそのまま立ちすくんでいた。

 

 

 

 アラバスタ王国

 

 アルバーナ宮殿には、6人の大人が集まっていた。

 

「……そう、か。ルフィくんたちが、やはりジャックハートくんに捕まったか」

「殺されてはいない、のよね?」

「えぇ、恐らく。……あんな彼らでしたが、政府や世間の認識としてはやはり海賊。最近や2年前の動きを見ても、悪と捉えられる部分が多いのでしょう」

「それと、ビビ様宛に海軍本部から手紙が届いております」

「私に手紙?」

 

 国王であるコブラと、王女であるビビ。そして王国護衛隊であるイガラムとチャカとペル。そして、王国環境大臣であるコーザ。

 5人の話題も"麦わらの一味"であったが、ペルがビビに海軍本部からの手紙を差し出したことで大きく逸れることとなる。

 

「えっと……っ!? 何、これ……!」

「ど、どうかされましたか!?」

「っ、ペルとチャカは、中身を知らなかったのね! お父様は!?」

「……知っていた。あまり国を混乱させないようにと、ジャックハートくんから口止めされていたのでな」

「ジャックハートさんが……?」

 

 海軍本部からビビに送られてきた手紙。

 ほぼジャックハート関連のことだと分かってはいたが、その内容までは予想できなかったのだ。

 

「あぁ。王女が王女に()()()()()()と政府から言われたことが知られれば、また国は混乱してしまう」

「ビビが王女に相応しくない、だと……?」

「……経緯はどうであれ、バロック・ワークスや"麦わらの一味"と行動を共にしていたのは事実。理由を知っている者は弁明するが、知らないものはそんなもの関係ない」

「なるほど。……今回の一件で、ビビ様を狙う輩が増えるかもしれない、と」

「世界政府……というより、ジャックハートくんの意見はそうだ。なんでも、ドフラミンゴの兵器に頼っていた連中がそれなりにいるらしく、憂さ晴らしのようにルフィくんたちに関係が深い場所を襲撃する可能性があるようだ」

「……絶対にない、とは言い切れないな。インペルダウンから出てきた奴らも、来ないとは限らない」

 

 ドフラミンゴを通じて世界中の海賊や権力者たちに伝わっている情報は予想以上に多く、その中にビビが秘密犯罪会社や海賊の一員として動いていたという情報もある……かも知れない、というのがジャックハートから寄せられた手紙に書いてあったことだ。

 そして、もし海賊たちが組んで押し寄せてきた場合、完全に守り切る自信はないとも書かれていた。

 

「それで、手紙の本題は?」

「……ビビを、ジャックハートくんの元で生活させるというものだ。つまりは、王女ではなくなるということになる」

「そんな……ッ!? それでは、アラバスタの次期国王はどうなるのですか!? それほど簡単に、王族が変わってもよろしいのですか!?」

「今回の一件に関しては良い、というのが、天竜人の意見らしい」

「天竜人……! なぜ、アラバスタの内政に……!」

「国の関係者にそういうものがいる、というのは他国と彼らからすれば、事情はどうであれ簡単に見逃せるものではないらしい」

 

 簡潔に言えば、何をしでかすか分からない、どうなるか分からない起爆剤のような扱いになっているのだ。

 腫れ物をそのままにせず、安全な場所に送るというのが、天竜人の決定だった。

 

「次期国王は未定。私の精子と、これまた天竜人が決めた誰かの卵子を体外受精させて、子を授かろうと考えているようだな。それが出来る技術もあると」

「横暴、すぎではありませんか……!」

「いいえ、イガラム。お父様やみんなには申し訳ないと思っているけど、これが最善よ。ルフィさんたちが捕まってしまった今、私が一緒に行動していたことを脅しに使ってくる人もいるかも知れないわ」

「ビビ様……」

 

 自分の腕の中ですやすやと眠る愛娘、ティアに視線をやるビビ。

 あくまでも、国に住む民が大事。海賊だけでなく、他国に不審に思われないということもまた、民のため。

 

「"世界会議"が、私のアラバスタの王女としての最後の仕事になるわ。それ以降は、この子と一緒に、ジャックハートさんの所で生活する。……アラバスタは、みんなに任せるわ」

 

 物思いにふけるように、そう呟くビビ。

 ジャックハートの真意を唯一知る彼女は、1人心躍らせていた。

 

 

 

 "東の海"、海上レストラン"バラティエ"

 

「カゼひくな、とは言ったが……」

 

 忙しなく動くキッチンと、扉を隔てた先の部屋にいるゼフは、新聞を広げながら独り言を溢していた。

 サンジと仲が良かった面々も、もちろん今回の騒動は知っている。

 だがそれでも、彼が捕まったからと言って店を閉める訳にもいかない。そんなことを、サンジも望まないことは誰もが理解していた。

 

「……帰ってくるって約束破りやがって。親不孝もいいところだ」

 

 ボヤくが、その言葉に力はない。

 海賊として旅立った彼を、しっかりと見送った。

 

「……クソ」

 

 その事実から目を背けるように、ゼフはキッチンへと赴いた。

 

 

 

 シロップ村

 

 決して栄えているとは言えない"東の海"にあるのどかな島も、本来の静けさとは違うものが村を包んでいた。

 

「こ、これって、キャプテン……だよな?」

「あぁ……。信じたくねぇけど、この鼻と、この名前。キャプテンしかいねぇよ……」

「……カヤさんには、言った方がいいのかな」

 

 村人たちの話題に上っているのは、この村出身である海賊、ウソップが捕まったということ。

 かつて彼と行動を共にしていた3人の少年たちが話していたのは、村のはずれにある大きな屋敷に住む女性のこと。

 ウソップが傷ついて帰ってきても、全部治せるようにと医者を志す彼女に、どう伝えるか。

 

「私が、どうしたの?」

「「「いぃっ!?」」」

 

 悩む彼らの元に来たのは、丁度話していた人物。

 どこか悲しげな表情を浮かべた彼女の手には、彼らが持っていた新聞と同じもの。

 

「か、カヤさん……。知ってたの……?」

「えぇ。……やっぱり、寂しいし、辛いわね」

 

 海賊になる。

 それがどういうことを意味するか、分からない彼らではない。

 

「……でも、キャプテンはきっと戻ってきますよ!」

「っ……! そう、ね」

 

 だがそれでも、いつかウソップが帰ってくると信じている少年たち。

 しかし、そんな彼らを前に、カヤは笑顔ではいられなかった。

 

 

 

 シモツキ村

 

「先生! 先生! "海賊狩りのゾロ"が捕まったってホント!?」

「……えぇ、どうやら、そのようですね」

 

 ロロノア・ゾロが少年時代に通っていた道場。

 彼に憧れて道場に通い始めた子どもたちは、新聞の記事について道場の先生であるコウシロウに詰め寄っていた。

 

「海賊になる、ということはこういう運命にもなってしまう道に進むということです。……君たちが将来、海賊になるのを私は止めはしませんよ。私が教えることが出来るのは、剣だけです」

 

 今まで自分たちにとって、会った事はない漠然とした英雄のような存在だった人物が、海軍に捕まった。

 その事実は、子どもたちにもある程度重くのしかかった。

 

「剣を習い、その続きとして海賊になるのか。海賊になるために、剣を習うのか。それを決めるのは君たちです」

 

 ゾロは捕まった。しかし、まだ彼の道は途絶えてはいない。

 いつか、ゾロがまた進む時が来ることを信じて、彼は今日もまた剣を教える。

 

「……立ち止まっても、また進み出せばいいのですよ」

 

 かつての教え子に向けての激励。

 それは、騒ぐ子どもたちの声にかき消され、空に消えていった。

 

 

 

 フーシャ村

 

「エースに続いて、ルフィもか……」

 

 小さな港村は、静まり返っていた。

 2年前、過去この村の近くに住んでいたことがある、"火拳"のエースが死んだ。

 そして今回は、彼の義兄弟であるルフィとサボが捕まったという報道。それも、この村に何度か訪れたことがある海兵によって捕まえられたという。

 

「……ガープのようには、なれなんだか」

 

 海兵と海賊。

 将来のことを考えるとどちらが良いかは、明確だ。

 だがそれでも、ルフィたちはただ自分の進みたい道を進んでいたのだ。

 

「海賊などに、なるからじゃ……」

 

 小さい頃を見ていた彼らからすれば、自分たちの子どものような少年たち。

 海賊や革命軍として活動しているのだから、海兵と戦って捕まることもある。

 誰も彼もが分かっていることだが、いざ身内の人間がそうなると、思い知らされるものもある。

 

「マキノも村を出て行った。……この村も、静かになる」

 

 村の長である村長は、重々しい表情で家の奥へと姿を消した。

 

 

 

 




次回は、ナミ、カリーナ、ノジコ、レイジュたちとの絡みからの、ですね。
誰にするかは気分次第です。

あ奴のせいで一歩も家を出られない日もあるので流石に気が滅入ります。こうなりゃ短編でもいいから書きたいエロをいろんな原作で気が向くままに書きまくったろか……!

ともあれ、いろいろ書きましたが元気です。強いて言えば多少お肌が荒れたぐらいです。

感想欄でアンケートの答えを募集してしまうという痛恨のミス。申し訳ない。


コメント、評価などお待ちしております!


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会議直前

新入社員研修を終えたので初投稿です。
今までのペースで考えたら久しぶりなので忘れられていないか不安。

社会人になって出勤する日々が少し続きましたが、これは辛い。
在宅勤務じゃダメなんですか……どうして……。

宣伝になりますが、ワンピ原作が手元に無い時にエロ書く感覚を忘れないために短編集的なものを投稿させていただきました。
まだ原作数は少ないですが、もし良ければ一度読んでみてください。

前回の後書きとは少し展開が変わってます。


 

 

「あぁっ! は、んぁあっ! イッ……くぅぅぅううっ!」

 

 立ちバックの状態でジャックハートに突かれ続けていたレイジュが盛大に果てた。

 後ろを向いた彼女と交わるジャックハートにはもう一人、彼の唇を貪る女性が1人密着していた。

 

「んぅっ、ちゅぷっ……。んむぅっ、ちゅぱっ、ん……はぁ……」

 

 ジャックハートがレイジュを責め立てる動きを妨げないような位置どりで、彼の口内に舌をねじ込み続けるのは、ナミ。

 あれからすでに、ナミが2回、カリーナが3回、ノジコが1回。そして今現在のレイジュが3回目。

 

「んっ……あぁ。ナミちゃん、一旦ストップで。そろそろロビンちゃんたちが帰ってくる頃だし、出迎えてやってくれ」

「はぁーいっ」

 

 キスを堪能したナミが床に落ちたドレスをカゴに入れ、クローゼットの中にある新しいドレスを手に取り身に着ける。

 女性用の衣服はジャックハートが揃えたものが大量にあるためそれを咎めるものは誰1人としていない。

 

「さて。今まで1人で気持ち良くなってたみたいだが、レイジュちゃん。俺もそろそろ射精したいんだが」

「んぅっ、はぁ……。おね、がい……。思いっきり、突いてほしいわ……っ!」

 

 初めて男というものを知り、その快楽に身を委ねて溺れるように落ちていったレイジュ。

 正常位、騎乗位、そして立ちバック。

 3回目の今回のジャックハートの責め方が、どこか今までと違うものがあるということが何となくだが分かるぐらいにまでなっていた。

 

「ケハハハハッ! んじゃあ、お言葉に甘えて、そうさせてもらうぜ」

「んぁあっ! あっ、あぁんっ! い、いいっ……いいのぉっ! こんな、の……っ、はじめてよぉっ!」

 

 今まではジェルマ王国が誇るジェルマ66の一員として働いて彼女は、もちろん異性を好きになれる環境などなかった。

 そんな彼女がある日実の父であるヴィンスモーク・ジャッジに見せられたのが、海賊"麦わらの一味"の崩壊を取り上げた記事と、その立役者でもある海軍本部大将のジョー・ジャックハートの写真。

 国の安定と海軍とのコネと資金を得るためにジャックハートと結婚しろというのが、ジャッジの言葉だった。

 国王でもあり父でもあるジャッジの言葉と、相手が海軍本部大将であるということからこの結婚を断ることなどできず。弟たちに揶揄われながら流され、今に至る。

 

「一つここで言っておくがな、レイジュちゃん。ここでは君は俺の女だ。それ以上でもそれ以下でもない。……楽しませてくれることを期待してるぜ」

「〜〜〜っ! あっ……ぁああっ!!」

 

 この結婚に、ジャックハートと対面するまでは肯定的でも否定的でもなかったレイジュ。

 しかし彼女もまた、ジャックハートの周囲を囲む女性たちのように、理解させられてしまったのだ。

 この男には勝てないことを。そして、彼に流されるしかないことを。

 

「さっきも言ったが安心しな。レイジュちゃんが俺と幸せに生活してくれるってんなら、ジェルマは悪いようにはしねぇよ。口約束ではあるが、ババアが間に入ったってこともあるからな。簡単にレイジュちゃんを離すつもりもねぇし、離れていってもらっちゃ困るな」

「あっ……!」

 

 何度も絶頂を迎えていたところで、3回目の射精を膣内をすると言われたそのタイミングで、ジャックハートの陰茎がレイジュの膣から抜かれる。

 立ちバックで責められていたレイジュの体がジャックハートの手により反転させられて彼の方を向く。

 振り向く勢いそのままに、彼に唇を奪われる。

 

「んんっ……。んむっ、ちゅるぅ……んくっ、あっ……んぅ……。ちゅむっ、ちゅっ……ちゅぱっ」

 

 舌が絡み合い、ジャックハートの唾液がレイジュに送られ、レイジュも自分の唾液をジャックハートに流していく。

 彼に促されるままに身体の位置が動かされていき、柔らかくベッドに押し倒される。

 

「じゃあ一発、受け取ってくれ」

「えぇ……っ! 早く、して……? もう、待ちきれないわ」

「ケハハハハ。積極的な子は好きだぜ、俺は。ならお望み通りにしてやるよ」

「っはぁぁああんっ! ぁっ、ダメ……!」

「イッたか。随分とまあ、敏感な身体だな……!」

 

 仰向けに寝かされたレイジュに、ジャックハートの肉棒が再び挿入される。

 すでに行為を何度も重ね、レイジュはただその快楽に落ち、ジャックハートは彼女の体を把握していた。

 彼女の弱い部分、好きなタイミング、感じやすい深さや角度。

 自分好みの感度を持つ身体へと、知らず知らずのうちにジャックハートの手によって調教されていく。

 

「あんっ! んぁ、んぅあっ、ひぅっ! あっ……んぁあ!」

 

 ジャックハートが腰を突き動かす度にレイジュの整ったプロポーションが淫らに揺れる。

 汗が彼女の肢体をより美しく魅せようと光沢を産み出し、奥を突かれることで絶頂を迎えることで潮が陰部から吹き出し、ジャックハートの体を濡らしていく。

 

「イッ……! あああぁぁぁあっ! イクッ……! んはぁあっ!」

「……相当な名器、かつ俺好みの身体だ……! 突く度に全身でイッてやがる……!」

 

 2回、3回。ジャックハートの大きなピストンに合わせてレイジュが達する。

 彼の精液を強請るかのようにもぞもぞと蠢くレイジュの膣肉にジャックハートの肉竿が扱かれる。

 肉と肉がぶつかり合う音が、膣肉と陰茎が擦れ合う水音でかき消されるほどに愛液で満たされているレイジュの蜜壺を、ただひたすらに突いていく。

 

「〜〜〜っ! カッ……はぁっ! んひゃっ、あぁあっ!!」

 

 4、5、6回。続けて絶頂を迎える。

 

「あんっ! んっ……ダメぇ……」

 

 続けて7、8と連続していき、意識が飛びそうになる。

 無意識のうちにレイジュの陰部からは絶え間なく潮が噴き出ており、それでもなおジャックハートの動きは止まらない。

 

「イッ……! イッ……くぅぅぁああっ!」

 

 盛大に果てたのは、小刻みに絶頂を繰り返すこと15回。

 それは、ジャックハートの精液がレイジュの膣内に放たれたのと同時だった。

 

「ケハハハ。よかったぜレイジュちゃん」

「はっ、はっ……。はぁ……。私も、よかったわ……」

 

 息絶え絶えになりながら全身で呼吸をしながら酸素を取り込もうとするレイジュ。

 そんな状態の彼女から肉棒を抜き、ジャックハートは一つ息をついた。

 

「ふーっ。……っと、()()来たみたいだな」

 

 ジャックハートの視線の先。

 巨大なエレベーターのドアがゆっくりと開かれる。

 

「おいおい。お呼びじゃねぇおっさんが一人、紛れ込んでるじゃねぇか」

 

 フロアにいる女性たちの裸体は布類で隠し、帰ってくるはずの女性たちを待つジャックハートの元に戻ってきた人物たちの中には、見慣れたようであまり会ったことのない、一人の男性が中央に佇んでいた。

 

「……どうやら、お邪魔してしまったようだな」

「分かってるんなら、お帰り願いたいんだが」

「まあそう邪険に扱わないでほしい。いい酒と、情報、そしていつも通りの報酬を持ってきた。……久しぶりなんだ。ゆっくりと話をしようじゃないか。ジャックハート大将」

「できるなら時と場所を考えて欲しかったが、アンタと会うのは確かに久しぶりだからな、いいぜ。ノジコちゃん、椅子を用意してくれるか」

「は、はいっ」

 

 "覇王色の覇気"を纏っている訳ではないし、何より今の彼は愛刀を腰に携えていない、完全な丸腰。

 そんな状態ですら、ジャックハート以外のこの場にいる人間たちを震わせていた。

 

「あまり、威圧しないでやってくれ」

「過保護すぎるのもどうかと思うが、キミがそういうのなら控えよう。それにしても、またいい女の子たちが増えてるみたいだな」

「あぁ。サカズキさんには好きにやれと言われているからな」

 

 ジャックハートが腰掛けた華美な椅子の前に、持参した酒とスーツケースに入った多額の金を置く。

 ノジコが椅子を持ってくるまでの間、彼は部屋の中を見渡していた。

 

「……この生活は、確かに羨ましくもあるな」

「ある意味、俺みたいな男が行き着く最高の結果だろうよ。……って、そんな話しにきた訳じゃねぇだろ? ()()

「あぁ。……()()()()()()()。個人的な頼みがあって、俺はここに来た」

「天下の四皇()()()()()様が、か? まさかとは思うが、四皇のライバルを潰してくれなんて情けねぇモンじゃねぇだろうな?」

 

 バスタオルだけを腰に巻いたジャックハートに対面する形でノジコが持ってきた椅子に座るシャンクス。

 その目は、鋭くジャックハートを射抜いていた。

 

「そのまさかだ」

「あ? ……カイドウか?」

「確かに"ワノ国"に陣取っているのは不気味、というか警戒しなければならない。が、ドフラミンゴをお前が潰したことで動きが多少は鈍くなる」

「ビッグマムは俺と……っつーか海軍と交戦する気はない。となりゃ、残りは」

「あぁ。"黒ひげ"だ」

 

 彼の口から飛び出したのは、"四皇"、黒ひげの討伐依頼。

 同じ四皇として海に名を馳せるシャンクスの口からそんな言葉が出てくるとは、微塵も考えていなかった。

 

「別にお前に頼まれなくても、海軍の優先度で言えば四皇なら"黒ひげ"が最優先だ。他と比べればお世辞にも戦力が綺麗とは言えねぇし。端っから皆殺し前提でぶつかって良いって言われてんだ。奴が根城にしてる……ハチノスだったか? そこに大将式バスターコール打ち込む話も出てんだ」

「大将式?」

「クザンさんが凍らせて、サカズキさんが溶かす。イッショウさんが動きを潰して、俺が残党をぶち殺す。ボルサリーノさんと緑牛さんは念のための本部待機」

「ほう……。そりゃあまた、穏やかじゃないな。緑牛とはまだ、交流はないのか?」

「ねーな。最初にちょいと顔合わせしたぐらいだ。こう見えても俺、忙しいんだぜ?」

「知っているさ。昼も夜も大忙しということは。海賊としては、少しぐらい休んでいてほしいんだが」

「そうもいかねぇんだわ。あんたはまだ良いが、どこにでも喧嘩を売る阿呆どもを始末していかなきゃならんのよ」

 

 ジャックハートとシャンクスの間で行われる会話。

 腹の中の探り合いが行われている訳ではないが、海軍本部大将と四皇の話し合いということもあり、周囲にはピリついた雰囲気が流れていた。

 

「話をまとめると、だ。金や酒はやるから見逃してほしい、その間は"黒ひげ"で暇をつぶせと」

「そうなる。……すまないな」

「いやいや、俺個人としてはもらえるモン貰えりゃそれでいい。アンタがこのタイミングでここに来てんだ。大方、"世界会議"中に何かするつもりなんだろ?」

「……流石に聡いな。どこから漏れた」

「単なる推測だ。このタイミングでマリージョア周辺に来る海賊なんて、馬鹿か何か企んでる奴かの二択だろ」

「違いないな。現に、各国の王を狙う輩も出てきているらしいが」

「みたいだな」

 

 "世界会議"のために各国から集まる王たち。

 その護衛には多くの海兵が徴収されており、日夜緊張感に溢れた現場となっている。

 

「他人事のように話しているが、いいのか?」

「いいだろ。いつでもどこでも俺がいる訳じゃねぇし、他の大将さんもだ。2年前の頂上戦争でもそうだったが、少将以下の奴らがどうも弱すぎんだよ。王族の護衛ってなりゃ、文字通り死ぬ気で仕事するだろ」

「スパルタだな」

「尻尾巻いて逃げ出すって選択肢を消すだけだ。せっかく海兵になったからには、それなりに戦力として働いてもらわなきゃ費用対効果が満足に得られねぇ」

 

 ジャックハートの元で戦ったことがある人間は、期間の長い短いに差はあれどそれなりの人数がいる。

 その人材が中将や少将、大佐といった地位にもいるため、実質的にジャックハートが教えたことになる人物が増えているのだ。

 

「本来遊撃に回ることができる人間が情けねぇ後進のために時間を割かなきゃならねぇってのは、割りに合わねぇ。海軍は組織だ。全員に好き勝手に動かれるわけにはいかないだろ」

「海賊なら行き当たりばったりになりがちだが……。確かにそうか。海兵となると色々あるもんだな」

「そういうこった。っつー訳で面倒ごとを増やさねぇためにも、雑魚どもには大人しくしておいてほしいんだが」

「まあ、好き勝手やるのが海賊だ」

「ンな全人類が好き勝手にしていい世の中になってたまるかっての。ワガママが通るのは実績を残せている奴だ。アンタや俺みたいにな」

 

 だがその人材不足という現状も、少しずつ改善されてきてはいる。

 サカズキ元帥の元、ガープとセンゴクが一線を退き、海兵として戦うことはなくなった。その彼ら二人が海軍本部で若手の育成にあたるというのは、海軍にとって非常に大きかった。

 本人の才覚による部分も大きいが、センゴクにはジャックハートを育てた一人であるという肩書きもあり、ガープはそのジャックハートと共に何度も仕事をこなしていた。

 年も近い、若い海軍本部大将の活躍。その人物に近い老兵から教わることは海兵たちにとって大きな財産となる。

 

「ってことで、アンタからの話は"黒ひげ"を再起不能にしろってことでいいか?」

「そうなる。まあ、再起不能とまではいかなくてもいいが」

「いいや、俺の独断だ。アイツは俺の手で殺してやるよ。危険性や影響力なんかじゃねぇ。単純にキモいからな」

「そうか。……なら、そろそろお暇させてもらおう」

「そうしてくれ。せっかくのお楽しみの時間を奪われてんだからな」

 

 ジャックハートとシャンクス。

 二人の話し合いの結論は"四皇"の一角となった海賊"黒ひげ"の討伐。

 それを聞き入れたジャックハートの元に多額の金と酒を残し、シャンクスは椅子から立ち上がった。

 

「……最後に一つ、いいか」

「あ?」

「この中に数人……手配書で見慣れた顔がいる。"麦わらの一味"に所属していたはずだが」

「お前も"麦わら"に入れ込んでるタチかよ。ナミちゃんとロビンちゃんは()()海賊ごっこに付き合わされていた。そこを俺が保護してる。……って設定だ。まあお察しの通り、"麦わらの一味"の男は全員ブタ箱、女の子はここだ」

 

 登ってきた巨大なエレベーターに向かう途中、シャンクスが立ち止まりジャックハートの方へと振り返った。

 その目には鋭い眼光が宿っており、ジャックハートを射抜くように捉えていた。

 

「で、それがどうしたよ。一海賊を海兵が捕らえる。何の問題もねぇだろ」

「あぁ、何の問題もない。ただ、少し見知った顔でな」

「そうか。まあ、海賊を続けていくにはあいつらはアホすぎて、お前は賢い。そんだけだろ」

「……失礼する」

 

 彼が聞こうとしたこと。

 それは、ガープが聞いたものと同じく"麦わらの一味"についてのこと。

 何か言いたげではあった様子だが、ジャックハートの言葉を聞いてそのままエレベーターへと向かっていった。

 

「……"麦わら"が何だってんだ? なあ、ナミちゃん」

「えぇ、ホントに」

 

 シャンクスが下に行ったことを見届け、離れた場所で立っていたナミを呼び寄せる。

 全裸の上から軽くバスローブを羽織っただけの状態からたった一枚の布を剥ぎ取られる。

 

「ロビンちゃんたちは買ってきたものをとにかく置いていってくれ」

「分かりました」

「さて、と。お邪魔虫もいなくなったところで楽しむとするか……ん?」

 

 シャンクスが降りたタイミングでジャックハートももちろん着用していた布は取っ払っており、後は身体を重ねようとしている者同士欲求を高め合うだけ。

 そのタイミングで、登ってくるエレベーターの音と共にジャックハートの"見聞色の覇気"が複数人の気配をその中に捉えた。

 

「……ケハハハハッ! 最ッ高だぜ! まさか、このタイミングでもう我慢できずに来てくれるとはな!」

 

 全裸のナミを抱き寄せて膝の上に座らせる。

 隠すものが一切ないが、ナミが恥ずかしがることはない。ジャックハートが、来る人物が誰か判別できていて動かないのだから、彼女も動く必要はない。

 

「待ってたぜ。俺の愛しい妻の一人」

 

 エレベーターの扉が開く。

 白を基調としたドレスに身を包み、腕の中には一人の赤子を抱えている。

 美しい()()の髪を棚引かせて歩く彼女は、ジャックハート以外の人間が知らない姿でありながら、多くの人物が彼女のことを知っていた。

 

「えぇ。……本当にえっちな旦那様ね。ナミさんたちがいるってことは、あの報道はやっぱり本当?」

「あぁ。ビビちゃんのお願い通り、殺してはない」

「なら良かったわ」

 

 アラバスタ王国王女、ネフェルタリ・ビビ。

 ナミやロビン、バロック・ワークスにいたときの顔見知りたちもいる中で、彼女たちが最も注目していたのはビビの腕の中の存在。

 

「び、ビビ……?」

「久しぶりね、ナミさん。もしかして、この子が気になる?」

「えぇ、そりゃもちろん」

「この子はティア。生まれた順で言えば、ベルメールちゃんの一つ前になるわ」

「ふぅん」

 

 ジャックハートとビビの間に生まれた愛娘、ティア。

 ティアが生まれ、ベルメールが生まれ、オルビアが生まれ。

 ビビ、ナミ、ロビンの出産の流れはジャックハートから事前に聞いていたナミだが、やはり()()授かった相手には嫉妬心に似た何かを抱いてしまう。

 

「でも、二人目はまだなんでしょ?」

「っ……。久しぶりに会ったのに、そんなこと言うんだ。ナミさん」

「そりゃあだって、今日からジャックハート様の元で一緒に過ごすんでしょ? 負けたくないって思うのは当然じゃない?」

 

 ナミよりも早くに娘を授かり出産したビビ。

 ビビよりも早くに第二子を授かり出産したナミ。

 お互いに、思うところがあるのだ。

 

「ケハハハハ。いきなり二人で話を進めてたら周りもついてけねぇよ。紹介しておくと、簡単な話ヴィオラちゃんと同じような境遇の一児の母ってとこか」

 

 ジャックハートの元にきた女性たちが共に丁寧な自己紹介をすることはよくあることだ。

 その過程で抱かれる仲間だけではなく、同性の友として仲良くなる場合もある。

 

「ナミちゃんもビビちゃんも、こっちに来てくれよ。……つもる話は、後でもできるだろ?」

 

 もちろんそれは、優先順位で言えば彼の次になるのだが。

 

 

 ◇

 

 

「ここが、海軍本部……ですか?」

「そうじゃ。今慰安旅行に出かけておるジャックハートと合流し次第、お前が生活する場所じゃ」

「慰安、旅行……」

 

 同時刻、ニューマリンフォード。

 一線を退いたガープに付き添われて遠路遥々ここまで来た一人の女性が、巨大な施設を眺めていた。

 

「……お前も、来るタイミングが良いのか悪いのか。忙しくなる代わりにほぼ確実にジャックハートと共に居れる時に来たのぉ」

「そうなんですか?」

「あぁ。何せ、これから行われるのは"世界会議"。各国の王たちが集う。その警備の後は、あやつは世界中で海賊相手に大立ち回り。そこにお前さんたちは帯同することになる」

「……はい」

 

 以前から親交があったということでガープに付き添ってもらい、ここまで来た彼女。

 その顔に後悔などなかった。

 

「エースに続き、ルフィとサボもじゃ。エースはジャックハートが直接捕らえた訳ではないが、サボとルフィはジャックハートが捕まえたも同然。お前は、大丈夫なのか? マキノ」

「えぇ。……ガープさんの言う通りだったわ。海賊になっても、最後まで無事で帰ってくることができる人なんていないのよね……」

「そうじゃのぉ。世界は繋がっておる。その中で、老衰で寿命を終えることができる海賊などおらんじゃろう」

 

 ジャックハートをはじめ、緑牛や藤虎、そしてサカズキと少し争いはあったものの海軍大将の座に座り続けているクザン。

 彼らがいる限り、そしてジャックハートがこのまま成長を続ける限り、海軍に負けはない。

 

「……ここにいたら、ルフィたちにも会えるでしょ?」

「まあ海兵の、それも大将の関係者ならばインペルダウンには一般人よりかは遥かに近づきやすいが……」

「なら大丈夫。一人檻の中は、流石に寂しいでしょ?」

 

 そう言って、儚げに微笑むマキノ。

 そんな彼女の姿を見て、ガープが言葉を溢す。

 

「わし個人の本心としては、ルフィだけは見逃して欲しかった」

「……」

「海兵だったわしが言ってはならんことだとは分かっとる。それでも……」

「……ジャックハートさんの言う通り。と言うか、確かに海賊は悪とされているもの」

 

 海賊は、悪である。

 その事実を裏づけするかのように、世界中の大半の人間が"麦わらの一味"の崩壊と、ドフラミンゴ、ローの王下七武海脱退を喜んだ。

 だが、彼らのように"麦わらの一味"を深く接してきた一部の人間だけは違った。

 

「個人の感情で特定の海賊にのみ恩赦なんて与えられない。一度そうして許してしまったら、もう止められなくなる」

「……そうじゃな」

「冷たくなるけど、海賊なんだから仕方ない……のよね」

「そうとしか言えん。それが()()じゃ」

 

 実際、彼ら"麦わらの一味"は海賊としてはかなり優しかった。

 殺しや窃盗、無差別な暴力や略奪などを自分たちから引き起こすことはほとんどなかった。

 しかし、新聞がそれを報道することはない。ただの危険な海賊として、一般市民には認知されていた。

 

「海賊は英雄などではない。世界から求められてはおらんからな、海賊は」

「世界が求めているのは、悪を取り締まる正義の味方、か」

「絶賛活躍中の若手大将に捕まったんじゃ。新聞や世論にもあるように、対比として極悪人と認知されておるのは知っとるじゃろ」

「えぇ、よく」

 

 さらに言えば、"麦わらの一味"にとって捕まったタイミングと場所が悪すぎたのだ。

 "王下七武海"の中でも特に黒かったドフラミンゴの失態、そしてその討伐に出た()王下七武海トラファルガー・ロー。

 彼らやドレスローザにいた大勢の海賊たちの捕縛のために駆り出されたのが大将二人。

 そのうちの、頂上戦争でも活躍を見せた方に捕まってしまったのだ。

 

「……変わりそうですね、世界は」

「どうなるかは分からん。……じゃが、()()にはなるじゃろう」

 

 平和。

 海賊が溢れ、程遠くなってしまったそれを、手繰り寄せる。

 

 

 ◇ ◇

 

 

 場所は変わり、先ほどから数時間後のシャボンディ諸島。

 人数も増え、ジャックハートに誰が多く愛されるのかという勝負が秘密裏に繰り広げられていた、ホテルの最上階。

 ロビンやハンコック、カリファといった子を身篭っている女性陣は参加していないそれは、一人が優勢となり、続いていた。

 

「ッ! あっ、あ……!」

「はぁんっ! あぁっ、ん……んん〜〜っ!」

 

 ナミとビビがほぼ同時に果てる。

 この状況で、この場面で、彼女たちが二人だけで愛し合っている訳がなく。

 

「なんか、二人ともどんどん敏感になってねぇか? 指入れてちょっと動かしただけでイキまくってんな」

「はぁ……っ! あぁあっ!」

「んぅ、そ、そこぉ……」

「……流石に、これ以上シーツがぐっちゃぐちゃになった上で寝転んでするのもアレだな」

 

 やはりというべきか、現在この部屋で全ての女性陣相手に優勢に出ることができる人物はただ一人。

 ジャックハートである。

 マーガレット、ヴィオラ、ノジコ、レベッカらなど、ジャックハートの独断で選んだ女性陣の相手をして、最終的にジャックハートの情欲を最も駆り立てたものとする。

 そして今、その最後の二人であるナミとビビが、共にベッドの上で愛撫を受けているところだった。

 

「っと、やめだ。ヤリたい子も決まったしな」

「えぇ……っ」

「ケハハハ。そんな物欲しそうな顔されてもな。残念だが俺は一人しかいない。ということでナミちゃんたちを弄る時間は一旦終わりだ」

 

 愛液に塗れた二人の秘部からジャックハートの指が抜き去られる。

 物欲しそうにぱくぱくと開閉を繰り返すナミの膣口と、ここに来るまでの間ずっと女としての、雌としての魅力に力を注いできたビビの体液に濡れた肢体。

 その二つの肉体を交互に見比べ、すでにベッドを降りた女性陣たちの方を向く。

 

「ジャック、ハートさん……」

 

 その中で一人、より一層熱い視線を送る女性。

 先日無事に本部中将へと昇進を果たしたたしぎである。

 中将への昇進ということで、待ち望んでいたものが、彼女にはある。

 

「……確かに、その約束を今果たさない訳にはいかねぇな。まず一人目はたしぎちゃん、二人目はビビちゃんだ」

「ま、今回はやっぱりそうなるわよね」

「すまねぇな、ナミちゃん」

「い、いえ! ジャックハート様に対して言っている訳では!」

「ケハハハハ! また、たんまりと愛してやるさ」

 

 女性陣たちも薄々感じていた、今回の相手。

 出来レースのようなものだったが、ジャックハートに対して文句は言えない。

 遠路はるばるアラバスタから来たビビと、中将昇進の際の約束があったたしぎ。

 "世界会議"を控え、これからは圧倒的に忙しくなることが予想されている今この状況で、彼がこの二人を選ばないはずがない、と。

 

「じゃあ、二人とも」

「えぇ」

「よ、よろしくお願いします!」

 

 つい先ほどジャックハートからの前戯が終わっただけであるため、身体も気持ちも準備が完璧に整っているビビが先に彼に迫り、後に続くようにしてたしぎもベッドに登る。

 空気を読んだのか、他の女性陣は静かに部屋を後にする。

 

「ねぇ、ジャックハートさん。私は孕ませてくれないの? ティアも大きくなったし、これからはもう、ずっと貴方の側にいるのよ。もうそろそろ、二人目が欲しいわ」

「っ! じゃ、ジャックハートさん!」

「ケハハ。了解、ビビちゃん。数少ない、俺の正式な妻だ。ビビちゃんの願いは、優先的に聞き入れる。たしぎちゃんも、な」

「え……?」

 

 肝心の行為を先にビビに取られてしまうのではないかと焦ったたしぎが声を張り上げる。

 しかしその声は、ジャックハートの優しい声と、枕元から取り出された紺色の小さな箱によって遮られた。

 

「言ったろ? 中将に昇進したら()()()()()()()愛するって。孕ませるだけがそうじゃねぇ。俺なりの答えはこれだが、嫌か?」

「そんなはず、ありません……!」

 

 その小さな箱にあるのは、銀色の指輪。

 たしぎの回答を聞くなりそれを取り出し、たしぎの左手の薬指に嵌める。

 

「ありがとうございます……!」

「安心してくれよ、たしぎちゃん。君との指輪も、ここにつけてる」

「あっ。そのネックレスってそういうことだったんですね」

 

 普段はジャックハートの白いコートの内側のポケットに入れている、複数個の指輪に通されたネックレス。

 その中にはビビやヴィオラ、カリファやアインにハンコックのものなど、ジャックハートの正式な妻となった女性たちとの結婚指輪しかない。

 

「そういうことなら、最初はたしぎさんにお譲りします」

「えっ、い、いいん……ですか?」

「えぇ。本来なら、夫婦として最初のセックス……それも、赤ちゃんを授かろうとしている場所に違う女がいるってことはありえないでしょ? 償いって訳じゃないけど、それは譲ってあげないと」

「てな訳で、ビビちゃんからのお許しも出たんだ。容赦はしねぇよ、たしぎ」

「あっ……」

 

 左手に輝く見慣れない、憧れていた光にうっとりと見惚れていたたしぎの手が強い力に引き寄せられる。

 唇が重ねられ、胸を揉みしだかれ、数十分前に受けていた愛撫をもう一度受ける。

 しかし、それは今までに感じたことがないほどに優しく、たしぎにとって今までで最も気持ちの良いものとなっていた。

 

 




ビビちゃん合流&マキノちゃん合流確定演出。

ここからだいぶ強引な進め方になると思いますが、アンケート通り作者好みのキャラでゴリゴリのゴリ押しで進みます。

【目標】一刻も早く小紫に会う。


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