ディス イズ ペルシャ (スゥームの達人)
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王、裁きを受ける。

クセルクセス一世はスパルタの王レオニダスとテルモピュライでエノモタイアした人です。


暖かな光と静寂に包まれた空間。

 

その中でも一際強大な輝きを持つ存在が、この空間へと招いた定命の存在へ語りかける。

 

「目覚めなさい、クセルクセス……定命の存在でありながら神王の名を驕る者よ。」

 

まるで母が我が子にするような優しい口調と耳障りの良い声色で語りかけられ、この空間を漂う者の意識は覚醒する。

 

「……私は死んだのか、神王を名乗っておきながら最期は側近の一人に刺されるとは……アルタバノスめ、神殺しとは大罪だな。」

 

自身の置かれた状況に対してさして驚きもせず、己を刺した相手に憎まれ口を叩いてみせる男に対し光に包まれた存在が語りかける。

 

「ペルシャ帝国の王クセルクセス1世、貴方は死にました。普通なら貴方は暴君として名を馳せたため問答無用で地獄行きですが、私の敬虔な信徒のようですのでもう一度チャンスを与えましょう。」

 

クセルクセスは目の前の存在からの語りかけに対して少々驚きはしたが、世界最強の帝国を治めた王はすぐに落ち着きを取り戻した。

 

「……なるほどお前、いや、貴方はアフラ=マズダか……確かに私は生前国民に貴方への信仰を強行させたりもしたが、それがここになって生きるとは。」

 

先程からクセルクセスに語りかけている強大な光の正体はゾロアスター教の最高神「アフラ=マズダ」その名は「智恵ある神」を意味し、善と悪とを峻別する正義と法の神である。

 

「その通りです。貴方は生前暴君と呼ばれる行いもしましたが、それが国民の為に行われていたのも事実。善と悪を司る私自身も困窮する程の生き様でしたので来世の行いによって貴方の魂を裁きます。」

 

神の裁きをも鈍らせるとは私の生も無駄ではなかったようだとクセルクセスが薄く笑みを浮かべるが、頭の隅から湧き出てくる疑問を神へとぶつける。

 

「来世ということは、また私はヒトとしての生を受けるという事か?そこに我が国は存在するのか?」

 

「いいえ、人として輪廻転生はしてもらいますが世界が違います。なので全く違う世界で第二の生を始めて貰います。もちろんそこにペルシャ帝国は存在しません。」

 

己の問いかけへの答えに落胆を隠せないクセルクセスであったが「(無いならば作れば良いではないか!もう一度あの世界最強の帝国を)」と己が建国の祖となる覇道とも言える野心を燃やすのであった。

 

「それならば時間が惜しいな、すぐに私を第二の生へと送り出してくれ」

 

「……少し待ちなさい。貴方が生きる次の世界では、生前とは比べならない程の危険が多くあります。すぐに亡くなられても困るので力を授けましょう、望みがあれば叶えます。」

 

目の前の神は自身に第二の生を享受するチャンスを与えてくれたばかりか、更に直接力まで授けてくれるという。生前の私に似て寛大だなとクセルクセスはひとりごちる。力を望めるのだとしたらクセルクセスの答えはもう決まっているも同然だ。

 

「ならば我がペルシャ帝国軍を力として望む。」

 

クセルクセスは己の国が世界最強であった事を誇りに思っていた。その世界最強たる軍事力を所望するのは当然だったのだ。

 

「承りましたあなたの軍隊を扱う力を与えましょう。しかし貴方自身が弱いと困りますので貴方には私の加護を授けます。」

 

「礼を言う知恵ある神よ、我が国を再建した暁にはゾロアスター教を国教としよう。」

 

「礼には及びません私にとっては造作も無い事なのです。では貴方の生き様を見せつけて下さい、汝に幸あらんことを。」

 

光の奔流に包まれクセルクセスの意識は途切れた。

 

これは敗れた王の再起の物語

 

 

 

 

 

 

 




転生させる場所に悩んでます……


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