ぼっちが人前で歌などハードルが高すぎる (祥和)
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ルナアタック事変
第一話


何かある程度ストーリーが思い付いてしまったので


地獄を見た――

 

人を炭に変える異形の群れ。

他者を省みず、逃げ惑う人々。

死に瀕した自分と少女を救う為、命を燃やしたあの人――

 

地獄を見た――

 

生き残った少女に対する人々の悪意。

悪意から身を守るには、少女は余りにも無力だった。

それでも、どこまでもまっすぐに生きる少女に目を奪われた――

 

地獄を見た――

 

少女がまっすぐであるために悪意を自分に向けさせた。

気持ち悪い独り善がりの代償として、元々ぼっちだった自分はますます孤独になって行った。

それでも、少女とその友人は自分から離れることは無かった――

 

「未来?ハチ君がまた濁った目で難しい顔してるよ?」

 

「いつもの病気だからほっといていいんじゃない?」

 

…おい。

 

戦姫絶唱シンフォギア

~ぼっちが人前で歌などハードルが高すぎる~

 

春。入学の季節である。

とある事件によって高校受験を受けれず、途方に暮れていた俺、比企谷八幡を受け入れてくれたリディアン音楽院にも、新入生が入ってくる。

それが目の前を歩く、立花響と小日向未来だ。

 

…因みにリディアン音楽院はほぼ女子校に近い。マジでぼっちには厳しい世の中である。

本当に勘弁して欲しい。

 

「それでね?翼さんとお話したいって思うんだ?」

 

立花がそんな事を言う。

…正直聞いて無かった。

適当に返しておくか。

 

「あーはいはい。まぁがんばればいいんじゃね?」

 

「うわぁ…テキトーだなぁ…」

 

「響?八幡にまともな返事を期待しても無駄だよ?」

 

…小日向さん?さっきから俺に対して辛辣過ぎじゃないですかね?

お前は何処乃下何処乃さんかよ!?

 

?自分で言ってて何だが、誰の事だかわかんねぇな…

魂の叫びっぽいし、多分別時空の俺が乗り移ったとかだろう。

 

「うるせーよ。それと、学校であんま俺に話し掛けてくんなよ?」

 

「えぇ!?何で!?」

 

少し考えれば分かるだろ…

リディアンに入学してからはそうでも無いが、それまで人々に迫害されてきた上級生の男と親しげに話してたら悪目立ちする。

 

「ほんと、八幡は捻デレだね?」

 

おい!誰だ、そんな頭悪い造語を広めてる奴は?

小町か?小町なのか?

 

というか、小日向さん?名前呼びとか俺くらいのプロぼっちでないと勘違いして告白して振られちゃうまであるので止めて下さい。

…振られちゃうのかよ。

 

「あ!そう言えばハチ君!今日の放課後ヒマかな?」

 

「残念ながら暇じゃねぇな。帰って寝るのに忙しい」

 

「言い訳が雑過ぎるよ!?」

 

だってさ?コイツに振り回されると体力持たねえんだよ。

人助けとか言って走り回って猫拾って来たり。

人助けじゃなくて猫助けじゃねえかよ!

因みにその時立花が拾って来た猫はカマクラという名を与えられて我が家の飼い猫となっている。

 

「でもでも?ヒマって事だよね?」

 

この流れはまずい。

 

「じゃあさ、買い物に付き合って欲しいんだ?」

 

…どんな厄介事かと思えば買い物かよ!?

というか立花さん?無闇に年頃の男子に対して付き合ってなどと言うと、以下略。

 

「八幡も観念したら?」

 

「うぐっ…買い物だけだからな?」

 

「やった!じゃあ、放課後ね!」

 

「へぇへぇ…」

 

我ながら清々しいまでの社畜根性に心底嫌気が差す。

やはり俺は社会に出ず専業主夫になるべきと心に誓ったのであった。

 

***

 

放課後、立花と合流し、買い物に付き合う。

 

「それでね?CDは特典が凄いんだよ!」

 

立花の買い物は本日発売の風鳴翼のCDだそうだ。

このご時世にCDねぇ…

しかも風鳴翼とは…懲りねぇな、こいつも…

 

風鳴翼――

元ツヴァイウィングというユニットの歌手。

元…というのは相方の天羽奏は故人だからだ。

そして、ツヴァイウィングは俺達にとってもまったくの無縁という訳でも無い。

世間一般では加害者と被害者という位置付けになっている。主に俺のせいで。

つまり、世界災厄であるノイズから逃げる為に俺が天羽奏を犠牲にしたことになっている。

…実際は少し違うのだが、それを語ることは無いだろう。

 

そんなこんなでコンビニの角を曲がったあたりで異変に気付く。

()()()()()()()()()()

そして、最悪なことにコンビニの中で、かつて人であったであろう炭の塊を発見する。

 

「ノイズ!」

 

「立花!落ち着け!シェルターまで走るぞ!」

 

「ハチ君…うん!」

 

そんな時、親とはぐれた小さい女の子の声が聞こえる。

 

「お母さん?どこ?」

 

「ハチ君!助けなきゃ!」

 

こんな時でも自分より他人の事かよ?

まったく、どこまでもまっすぐで目が眩みそうだよ。

 

***

 

あれから、ノイズに追われ、ただひたすらに走っているうちにシェルターからも随分離れてしまった。

こうなれば奴らが自壊するまで逃げ回るしかないだろう。

しかし、俺と立花はまだいいが少女の方は限界が近い。

…仕方ねぇな。

 

「立花。俺が囮になるから、その娘と一緒にシェルターまで逃げろ」

 

「ハチ君!?何言ってるの!?」

 

「しゃあねぇだろ?どのみちこのままじゃジリ貧だ。それならお前らが確実に助かって、運が良ければ俺も助かる方法に賭けるしかねぇよ」

 

「ハチ君のバカ!!そんな事で助かったってうれしくない!」

 

「お兄ちゃん、お姉ちゃん?ケンカしてるの?」

 

そんな事をしてる内にノイズが迫ってくる。

 

「バッカお前!もう団体さんが来ちゃったじゃねぇか!」

 

「うん。だから…一緒に逃げなきゃね?」

 

ほんと、こんな時にどういう神経してんだ?コイツ…

 

***

 

あれからも、ノイズに追い詰められ、いよいよヤバい。

ノイズさん達も俺達を炭に変える為、張り切ってるらしく、一向に自壊する気配は無い。

ビルの屋上まで追い詰められたところで立花に異変が起きる。

 

~Balwisyall Nescell gungnir tron~

 

歌?何でこんな時に歌ってんの?コイツ?

前々からちょっと足りない娘だと思ってたけど、命の危機でいよいよイっちゃった感じか?

 

と思ったらいきなり立花が光り出す、というか俺も。

何だコレ?体が…熱い…血が沸騰しそうだ。

 

…気が付けば、立花は半裸で鎧?みたいな格好をしていた…俺も似たような格好だった。

 

…何コレ?めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど…




とりあえず第1話です。

八幡のモノローグ難しいですね


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第二話

とりあえず二話です。


ありのまま今起こったことを話すぜ。

 

知り合いが急に歌い始めたと思ったら、知り合いと自分が変な鎧みたいな格好になっている。

 

何を言っているかわからねぇと思うが、何が起きたか俺にもわからねぇ。

 

うん。本当にわからん。

人は理解の範囲を超えることが起きると立ち尽くすしか出来ねぇんだな…

 

「ハチ君!?後ろ!!」

 

「うぉっ!?」

 

立花の声で再起動したら、ノイズさんが真後ろまで迫っていた。

思わず蹴っちゃったけど、炭になって無いよね?俺の足…

 

それどころか、今のビックリキックだけで近くに居たノイズさん数体が吹き飛んで砕け散る。

 

は?何だコレ?

ノイズに触れて何とも無いのもビックリだが、身体能力もおかしくね?

 

ともかく…

 

「立花!その娘抱えて隣のビルにジャンプだ!」

 

「え?え?それはさすがに無理じゃないかなぁ?」

 

「大丈夫だ!信じろ!」

 

「ッ!!うん!信じる!!」

 

そう言って立花は女の子を抱えて隣のビルにジャンプする…つもりが身体能力が高すぎて飛び越えて行く…

 

「なんでぇぇぇ!?」

 

はぁ…まぁあの鎧がありゃ無事だろ…

結果的に立花が離れてくれたので、俺も自分の目的に専念するとしますか…

コイツらを立花のところまで行かせる訳にはいかんしな。

 

***

 

しばらくして、見様見真似のカンフー映画の真似事でノイズさん達と戯れていたのだが、急に虚脱感に襲われる。

 

って事はこの鎧のキーはやはり立花のあの歌で、立花と離れた事で力が弱まってるって事だろう。

 

良かった。

あいつの事だからここまで戻って来るなんてバカな事をやりそうだったが、ちゃんと逃げてくれたみたいだな。

 

気付けば鎧は解除され、いつもの制服に戻っていた。

いよいよ、年貢の納め時みたいだな…

 

~Imyuteus amenohabakiri tron~

 

また歌か…まぁ、最期としては悪くねぇな。

そんな事を思って目を閉じる。

 

………アレ?死んでねぇな?

 

目を開けるとそこに溢れかえっていたノイズの姿は無く、力強く、そしてどこか儚い1人の少女の姿があった。

 

「無事か?ノイズに襲われて二度生き延びるとは君も中々に悪運が強いな」

 

そう、そこにはかつて、命を救ってくれた歌姫、風鳴翼の姿があった。

 

***

 

あの後、やっぱり立花は戻ってきた。

何でも女の子を親元まで渡して俺を助けに来るつもりだったらしい。

 

「あなた達を拘束します。抵抗などしないように」

 

いきなり風鳴先輩がそんなことを言って立花と俺を車に乗せる。

いやほんと今日は色々ありすぎて出来れば家に帰ってすぐに寝たいんだけど…

お話があるなら後日とかじゃ駄目ですかねぇ?

…駄目ですよねぇ…はぁ…

立花は終始ついていけないといった顔だった。

 

***

 

何故かリディアンに連れて来られた俺達は見たことも無いエレベーターに乗せられる。

ここって空かずの間じゃなかったのな。

そんな場違いな事を考えていると同行していたイケメンから「揺れるので注意して下さい」と言われる。

 

「ははは…」

 

立花が愛想笑いをしていると

 

「愛想笑いなど不要よ」

 

と風鳴先輩にバッサリ斬り捨てられる。

?何かトゲがあるな?

この感情は…困惑と嫉妬?

ほぼ初対面の相手に抱く感情じゃねぇよな?

…よくわかんねぇな。

俺?俺は終始無言でこの後もずっと空気だと思うからもう帰ってもいいんじゃないかな?

駄目?ですよねー…はぁ…小町に会いたい

 

***

 

「ようこそ!立花響君!比企谷八幡君!」

 

お通夜ムードで連れて来られた俺達を待っていたのは、何かよくわからん歓迎会みたいな集いだった。

ていうかこの熊みたいな人、俺のリディアン入学に色々と便宜を図ってくれた人じゃねぇか!?

 

熊みたいな人、もとい風鳴弦十郎さんが言うには、この人達は特異災害対策機動部二課という国の機関で、主にノイズの()()をメインに活動してるらしい。

 

そして、それを実現しているのが、風鳴翼先輩が纏っていた鎧、シンフォギアシステムということらしい。

 

そして、ここまで言われれば、いかにちょっと足りない娘、立花でも分かろう物である。

 

「その力、人々の為に役立ててはくれないだろうか?」

 

つまり、偶然ながらそのシンフォギアシステムを持つ立花と俺のスカウトである。

そして、それに対する立花の答えなど決まっている。

 

「私の力が誰かの助けになるんですよね?だったら私、戦いますっ!」

 

はぁ…こうなった立花は梃子でも動かねぇからな…

 

「比企谷君。君は?」

 

「…お断りします」

 

「えぇ!?ハチ君!?なんでぇ!?」

 

立花が涙目で訴えてくる。

というか近い近い近いいい匂いかわいい

お前はマジでぼっちに何を期待してんだよ!?

 

「ふむ。断ったからと言ってこちらから何かする事は無いが、理由を聞いても?」

 

「たぶん、シンフォギア?は俺では無く、立花の歌がキーです。俺はぼっちで立花と連携が取れるとも思えないので、力になれるとも思えません」

 

「むぅ…確かに君は起動キーである聖詠を歌って無いと言っていたな?」

 

「あ、ハチ君はそれらしい事言ってますけど、めんどくさい事やりたくないだけですよ?」

 

おいぃ!?立花てめえ色々台無しじゃねぇか!?

 

「まぁ…比企谷君の言う事も一理ある。が、やはり人手は多い程いい。サポートでも構わないから考えてはくれないだろうか?」

 

あ、この人いい人だな?

適当に言った俺の言い訳を考慮してくれてる。

自分で言い訳って言っちゃったよ…

 

「大丈夫だよ。へいき、へっちゃら!」

 

へぇへぇ…お気楽なこって。

 

「…条件があります」

 

「聞こう」

 

「まず、戦闘への参加は期待しないで下さい」

 

これは最低限だ。

聞けばシンフォギアシステムは歌を歌うことで出力を維持するらしい。

ぼっちが人前で歌うなどハードルがK2並みに高い。

 

「もちろんだ」

 

「次に…今後、発生するノイズ災害で、俺は特定の人物の安全を最優先に動きます」

 

これも同じくらい譲れない。

 

「相手を聞いても?」

 

「妹の小町と知り合いの小日向未来、そしてそこにいる立花響です」

 

「ハチ君!!」

 

立花が感極まって抱きついてくる。

バカ!!やめろ!!柔らかいいい匂い近い近い近い!

ぼっちに何て事しやがるんだ、コイツは?

立花を引き剥がすと風鳴さんは豪快に笑う。

 

「ハッハッハッ!戦いに赴く者の安全を最優先にするとは…まったく君も素直じゃ無いな!わかった!こちらでも便宜を図ろう!」

 

…こうして、俺の社畜人生がより磐石な物となりつつあったのであった。




とりあえずパパッと二話まで投稿。
書き溜め無いので、ボチボチ更新していきます。

八幡と防人はちょっと面識ある程度ですが、八幡が奏さんを犠牲にしたことにしているので、防人は八幡を知っています。


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第三話

思った以上に反響あってビックリしてます…

駄文ですがお付き合いください


いつかさ――心と体、空っぽにして、思いっきり歌いたかったんだ―

 

記憶の中のあの人はいつでも笑顔だ。

その笑顔は眩しく、そして儚い。

 

―命の価値に優劣は無い―

 

皆が皆揃ってそう言う。

だが実際は、医療現場では命の取捨選択が平然と行われ、戦争にでもなればその価値は紙のように脆くなる。

だからこそ、この命が彼女が燃やした命と等価であるとは到底思えないのだ。

 

***

 

「メディカルチェックの結果よ」

 

櫻井さんから説明を受ける。

櫻井了子さん、特異災害対策機動部二課の研究主任らしいのだが、その…どこがとは言わないが体の一部が色々と目のやり場に困る。

風鳴先輩は…うん、強く生きて下さい。

 

「響ちゃん、八幡君、二人とも、胸からガングニールの破片が見つかったわ」

 

ガングニール――

 

あの人の…天羽奏の覚悟の結晶。

それがそういう名前であることを初めて知った。

北欧神話の主神が持つ槍の聖遺物との事らしいのだが、正直聞いたこと無いキーワードが多く、さっぱりわからん。

とりあえず、今日明日どうこうなるような物で無いことと、現代医学でこれを摘出することが難しいことがわかっただけで十分だ。

 

「響ちゃんの聖詠で八幡君のガングニールも起動した事なんだけど、同じ聖遺物であることで、共鳴したって線が一番濃いわね。ちなみに八幡君は聖詠が心に浮かんで来たり、ガングニールを纏っていた間に歌が心に浮かんで来たりはしなかった?」

 

「はぁ…さっぱり」

 

「むむむ。これは興味深いわね」

 

「はいはーい!私は胸に歌が浮かんで来て、こう歌わなきゃって感じです!」

 

「ええ。響ちゃんの方はこのデキル女、櫻井了子が設計した通りに機能しているわ。問題は八幡君、聖詠も歌も浮かんで来ないのに、ノイズとは戦えたのよね?」

 

「ええ。…といってもあれを戦いと呼んでいいならですが」

 

「"調律"は機能していると…ますます興味深いわね」

 

え?もしかしてアレって結構綱渡りだったのか?

 

「あぁ、"調律"っていうのは、シンフォギアシステムの機能の一つで、簡単に言っちゃうとノイズに攻撃できるようにする機能のことよ」

 

なるほど。確か、位相差障壁?だったかで、ノイズには通常兵器が通用しないんだったな。

つまり、その位相差障壁を何とかしちゃう機能なんだろう。

語彙力?バッカお前、こっちも聞いた事無い単語のオンパレードでいっぱいいっぱいなんだよ。

立花なんか見ろ、もう思考回路はショート寸前、今すぐ会いたいよ状態だ。

うん、俺も何言ってるかわかんねぇな。

 

***

 

「じゃあ帰るか」

 

「あ、そだね。未来、心配してそうだなぁ…」

 

「小町は…心配して無さそうだな」

 

お兄ちゃんつらい。

 

「いやぁ、さすがに警戒警報も出てたから小町ちゃんも心配してると思うよ?」

 

だといいけどな?

 

「比企谷、少しいいだろうか?」

 

帰り際、風鳴先輩に呼び止められる。

うん、強く生きて下さい。

 

「よく無いので帰ります」

 

「そ、そうか…すまなかった…」

 

………何かコレ、俺が悪いみたいじゃねぇか。

 

「ハチ君!バカな事言ってないで、ほら」

 

な…んだと…?

まさか、アホの娘、立花にバカと言われた…だと…

 

「お前にバカと言われるのだけは、納得いかん」

 

「もう、そんなのいいからさ、翼さん待ってるよ?」

 

そんなのとはどういう事だ!?

これは俺の名誉に関わる問題だぞ?

元からそんなの無い?バッカ、俺が肯定してやらなかったら誰がやってくれるんだよ?

 

「で、何すか?」

 

「あ、あぁ…今日、ノイズと戦っていたあの時の事だ。何故目を閉じた?」

 

「絶対絶命、助かる見込みも無い。生き汚く足掻くより、最期くらいは穏やかに、という人間の心理ですが?」

 

「貴様!?奏から一体何を受け継いだ!?"生きるのを諦めるな"…あいつは、奏は()()()にそう言って逝ったんじゃなかったのか!?」

 

そんな事はわかっている。

だが、決定的に間違っている。

わかっていることと納得していることは別だということだ。

 

「ええ、そうですね」

 

「なら、何故!?」

 

風鳴先輩の語気が荒くなる。

それだけ、天羽奏という存在は、風鳴翼にとって大きいものなのだろう。

 

「…俺も、天羽さんが俺なんかの為に命を燃やした事に納得していないって事っすよ」

 

「比企谷…貴様…」

 

これ以上、話す事も無いだろう。

 

「もういいっすか?妹が家で待ってますんで」

 

「あ、あぁ…すまなかった…」

 

「翼さん、何だったの?」

 

「あぁ、俺は天羽さんを犠牲にした加害者だからな。色々と恨み言を言われただけだよ」

 

うん。嘘は言ってねぇ。

 

「…ばか。うそつき」

 

「ん?何か言ったか?」

 

「んーん!何にも言ってないよ?」

 

「?じゃあ今度こそ帰るぞ?」

 

結局、帰宅した俺に対して、小町はいつもより遅かったね?程度の扱いだった。泣きたい。

 

***

 

今日も今日とて、社畜街道まっしぐらな生活を送っている。

具体的には、学校が終わると即呼び出し、休日出勤など当たり前である。

ノイズって通り魔より遭遇率低いんじゃ無かったのかよ?

いくら何でも、人類を炭に変える為に張り切り過ぎである。

 

ただ、大抵の場合、立花そっちのけで風鳴先輩が無双して終わる。

うん、もうあの人だけでいいんじゃねぇかな?

まぁ、シンフォギアの主兵装であるアームドギアも形成できないヒヨッ子では足手まといになるのも仕方ないのだが。

俺?俺は後方で逃げ遅れた人がいないか探したりしている。

おい、そこ地味とか言うな!俺らしい仕事じゃねぇか。

 

…ただ、立花と風鳴先輩の間の溝は思った以上に深いようだ。

爆発するのも時間の問題だろう。

だからといって、俺に何かできる訳じゃねぇけどな。

 

「そうね。あなたと私、戦いましょうか」

 

そんな事を考えながらノイズ殲滅の一報を受けて立花達との合流地点に向かうと、風鳴先輩が立花に剣を向けていた。

まずいな、立花が風鳴先輩の()()を踏んだみたいだな。

 

「貴女の胸の覚悟を構えてご覧なさい」

 

――天ノ逆鱗――

 

そう言って、風鳴先輩が立花に技を放つ。

俺のシンフォギア、あれ以来、起動すらできてねぇが、頼む。間に合ってくれ…

 

「はぁっっ!!」

 

…俺が割り込むより早く、風鳴司令が割り込んで、拳で風鳴先輩の技を吹き飛ばす。

 

…は?何それ?

 

「何やってんだ!?翼ぁ!?まったく、この靴、高かったんだぞ?」

 

色々ツッコミたい事がある気がするが、人って理解の範囲を超えることが起きると立ち尽くすしか出来ねぇんだな…

 

改めてそう思った。




短い上に話が進まない、自分の文才の無さが露呈しまくってます…


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第四話

おきてがみのネタに詰まって書いたとは言いにくくなってきましたね…

戦々恐々としています。

また駄文ですがお付き合いください。


――おい、死ぬな!目を開けてくれ!

 

生きるのを諦めるな!―――

 

あの人の言葉、一瞬たりとも忘れた事は無い。

あの日、あの時、死を目前にした自分にあの人はそう言った。

自分は死を受け入れていた。

心残りがあるとすれば、助け切れなかったもう1人の事だけ。

 

でも、あの人の言葉で、生きたいと思ってしまった。願ってしまった。

 

――その後、犠牲者の中にあの人の名を見つけて、何よりも絶望した。

 

***

 

思わず現実逃避したくなるのを必死で堪えながら、立花の無事を確認する。

 

「立花、無事か?」

 

「あ…ハチ君…」

 

見たところ無事みたいだな。

心はどうか知らんが。

風鳴先輩?何かピンピンしてるっぽいし、ほっといていいだろ。

 

「比企谷君。後で少し話をしてもいいか?」

 

人外…じゃなかった、風鳴司令にそう呼び止められる。

 

「はぁ…まぁ、構いませんが…」

 

「あぁ、それと…今日は響君を家まで送ってやって欲しい、と…これは言うまでも無いか」

 

おい!おっさん!

何かあり得ない勘違いしてねぇか!?

俺みたいなぼっちが立花と釣り合う訳が無いだろう。

 

そのあたりも含め、きっちり説明しておくべきだな。

 

***

 

「君から見て、響君をどう思う?」

 

含みが多すぎてわからん。

とりあえず、無難に答えておくか。

 

「普通の女の子ですよ」

 

「そうか…俺には、あの年頃の子が、迷わず人の為に戦うと答えた時、ひどく歪に見えたんだ」

 

そう見るか。

これは立花の名誉の為にも、真面目に答えた方が良さそうだな。

 

「あいつも、平穏無事な人生だった訳じゃ無いですからね。ただ、逆境があろうと、どこまでもまっすぐだっただけですよ。まっすぐであろうとすることが歪なら間違っているのは世の中です」

 

そう、それこそが立花響だ。

かつて、俺が気持ち悪い独り善がりを押し付けた女の子だ。

 

そう答えると風鳴司令は、一瞬、何かを言うのを躊躇い、次に豪快に笑い飛ばした。

 

「ハッハッハッ!やっぱり君達は面白い!悪かった!確かにその通りだ!」

 

…やっぱり、この人はどこまでもいい人なのだろう。

こういう大人ともっと早く知り合っていれば…

いや、未練だな。IFの話に意味など無い。

 

「翼の事だが、許してやって欲しい。あいつもあれで割り切れない気持ちと戦っている最中なんだ」

 

そう言って、風鳴司令が頭を下げる。

 

「それは立花に言ってやってください。俺は許すも何も無いので」

 

***

 

風鳴司令と別れ、立花の元に向かう途中、珍しく暇潰し機能付き目覚まし時計が鳴る。

 

着信:小日向未来

 

うへぇ…嫌だなぁ、恐いなぁ、出たくないなぁ…

稲○淳○っぽく言ってみたが着信が消える訳でもなく、観念して出る。

 

「もしもし…」

 

「八幡?そこに響はいる?」

 

「いや、いねぇけど…どうしたんだ?」

 

うん。嘘は言っていない。

立花はこの先の部屋にいるのであって、今ここにはいない。

 

「帰りが遅いし、さっきから何回も電話してるのに出ないから心配で…最近、小町ちゃんが八幡も帰りが遅いって言ってたから、もしかしたら、と思って」

 

小町ちゃん?危険人物に俺の行動教えちゃ駄目でしょ?

…それにしても

 

「ほんとに響と一緒じゃないんだよね?」

 

小日向…お前も勘違い組か…

 

「一緒じゃねぇよ。もし見かけたら小日向に連絡するよう伝えといてやるよ」

 

「……わかった。ありがとう」

 

「へいへい」

 

まったく、疲れるばかりである。

切実に休みが欲しい、というか働きたくない。

 

「立花、待たせたな」

 

「あ…ハチ君」

 

まだ気持ちの整理は出来て無さそうだな。

無理も無い。

憧れで、仲間だと思っていた人から疎まれ、拒絶されたのだ。

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「そういやお前、携帯見たか?」

 

「え?携帯…?うへぇ…」

 

何だ?そう思い、立花の視線の先を覗く。

 

………小日向さんや、物事には限度があるだろ…

 

着信:72件

未読メール:293件

 

立花の携帯には、そう表示されていた…

 

***

 

「そういやお前、小日向にこの事話して無いのか?」

 

小日向の異常行動を疑問に思い、立花に聞いてみる。

 

「え?うん…機密事項だから守秘義務があるって…」

 

「やっぱりお前はアホの娘だな…」

 

「うぇぇ!?ひどいよ!?ハチ君」

 

ひどいも何も事実だろ?

 

「お前、俺が何の為に安全を優先する相手の中に小日向を入れたと思ってんだ?あいつもとっくに当事者だ」

 

「えぇ!?そうだったの!?良かった…私、未来に話してもいいんだね…」

 

そう、小日向未来は知る権利を有している。

有しているが…

 

「まぁ、話した結果、どうするかはあいつ次第だがな」

 

ちなみに小町には話した結果、「危なくなったら、逃げるんだよ?また入院なんて小町嫌だからね?あ、今の小町的にポイント高い!」という答えが返ってきた。

最後のが無ければお兄ちゃん的にもポイント高かったんだがな…

 

「それは…うん。でも未来の事だからきっとわかってくれるよ」

 

「だといいな」

 

「うん。だーいじょうぶ。へいき、へっちゃら!」

 

少しは調子を取り戻したみたいだな。

小日向が絡むと俺の心の平穏が乱されるので、マジで頑張って欲しい。

 

「そんじゃあな」

 

「あ、ハチ君!」

 

立花に呼び止められる。

 

「あん?」

 

「今日…だけじゃなくて、いつもありがとう!」

 

そう言う立花は、さっきまで落ち込んでいたのが嘘のように眩しい笑顔だった。

 

そうだ、立花響とはこういう女の子なのだ。

これが歪などであるはずがない。

 

***

 

いい加減、連日連夜現れるノイズさん達に辟易とする。

 

「八幡、こっちの方、まだ避難が間に合って無いって」

 

小日向は結局、自分もサポートとして参加する道を選んだ。

最初は難色を示されたんだが、俺が面倒を見る事を条件に押しきられた。

自分の社畜根性が憎い。

 

「今日のは初めて見るタイプのノイズらしいからな、何が起きるかわからん。注意しろよ」

 

そう、映像を見たが、何かブドウみたいな見た目のノイズだ。

そんな話をしていると、立花がいる地点から爆炎が上がる。

 

「響!!!」

 

「バカ!!お前が行って何が出来るんだよ!?」

 

走り出そうとする小日向を制止する。

 

ていうか、こいつの瞬発力やべーな…

さすが元陸上部って事…か?

司令とかと同じ人外の域に見えたけど気のせいだよね?

 

「でも!!響が!!!」

 

「…俺が行く。お前は本部に戻ってろ」

 

「………八幡。響をお願い」

 

完全に納得はして無さそうだが、仕方ない。

ノイズ戦でシンフォギアの無い人間が行ったところで邪魔にしかならない。

 

「へいへい」

 

場所は…あっちか。

小日向と別れ、走り出した、その時…

 

「見つけたぜぇ!融合症例第2号!」

 

何か悪の女幹部みたいな格好した痴女に襲われる。

 

「えぇ…何ですか?その格好?痴女?」

 

「う、うるせぇ!!あたしも着たくて着てる訳じゃねぇんだよ!!いいからあたしと来て貰う!」

 

そう言って、痴女に抱えられる。

 

小町。お兄ちゃんこの歳になって痴女に誘拐されちゃったよ…




みんな大好きクリスちゃん登場です。


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第五話

先に言っておきます。

ブラックコーヒーと殴る壁の貯蔵は十分か?

今回からオリ要素が強くなりますので、ついてこれる奴だけついてこい状態になります。

それでは、駄文ですがお付き合いください。


――両翼揃ったツヴァイウィングならさ、何処までだって飛んでいける

 

全ては私の力不足だ。

あの時、私が歌っていれば、私がノイズを殲滅出来ていれば、私に力があれば――

 

幾千、幾万、幾億の悔恨。

片翼の鳥は墜ちて朽つるを待つばかり。

 

ならば、この身はいつか手折られるその時まで、せめて剣で在り続けよう。

 

それこそが、分を弁えず空を夢見た憐れな剣の末路に相応しい。

 

***

 

痴女に抱き抱えられて移動させられる。

いわば、お姫様抱っこの体勢だ。

 

世界を探しても、お姫様抱っこをするよりされる方が早かった男など、俺くらいでは無いだろうか?

…死にたい。

 

しかも、この体勢、その…痴女の豊満なたわわが目の前で暴れてらっしゃるのだ。

痴女が飛び跳ねる毎にSAN値がガリガリ削られていく。

 

「あ、あの…」

 

「あん?んだよ?舌噛むぞ?」

 

?言葉使いは粗暴だが割と優しい?

 

「しょ、しょのですね…この体勢は目に毒というか、何というか…」

 

噛んだ。死にたい。

しかし、痴女だから見せ付けてるとか言われたらどうしよう?

くっ、ぼっちにとって痴女がここまで強敵だとは…

 

「あん?」

 

痴女が視線を下に落とすと、状況に気付いたのかみるみる顔が赤くなっていく。

あれ?何か反応可愛いな…痴女なのに…

 

「て…てめえ!!ずっと見てやがったのか!!?」

 

いや、この体勢で見るなと言う方が無理だろう。

男子高校生の性欲舐めんな!

…などとは口が裂けても言えず、

 

「ひゃ、ひゃい…」

 

と返すしか出来なかった。

相変わらずの対人能力の低さに泣きたくなる。

 

結局、それ以降、何か鞭みたいなのでぐるぐる巻きにされて運ばれた。

残念なんて思ってないよ?ホントダヨ?

 

***

 

「この部屋に入ってろ」

 

痴女のアジト的なところに連れて行かれる。

 

「あの、トイレは…」

 

これだけは人として聞いておかなければならない。

垂れ流せとか言われた時には、また黒歴史が更新されてしまう。

 

「安心しろ、中にある」

 

ひとまず、最低ラインは大丈夫なようだ。

 

「それと、コレは預からせて貰う」

 

そう言って、暇潰し機能付き目覚まし時計を奪われる。

俺に定期的に連絡してくる相手など密林さんくらいなので構わないんだが、外部通信手段は取り上げられてしまった。

まぁスマホって電源切ってても探知可能らしいからそのうち二課が助けに来てくれると信じたい。

 

「後は適当に寛いでろ。用がある時ゃここに来る。ただし、この部屋から出ようとした時ゃ容赦しねぇ」

 

つまり、基本的に自由か…

 

アレ?暇を持て余す事にさえ目を瞑れば、働かなくて良くてグータラできる最高の環境じゃね?

 

とりあえず俺は惰眠を貪る事にした。

 

***

 

「おい!起きろ!」

 

そう言って痴女に叩き起こされる。

 

「拉致られて、即眠れるたぁどういう神経してやがんだよ!?」

 

そうは言われてもやる事も特に無いので、寝るくらいしか無いのだ。

…と、振り返ったそこに居たのは、痴女改め銀髪の美少女だった。

 

「てめえは今から実験のモルモットだ。少ぉしばかり人道的じゃねぇかも知れねぇが覚悟しろよ?」

 

まぁ、そうそう旨い話は無いと言うことか…

小町…お兄ちゃんもう帰れないかもしれん…

 

「とりあえず、今からあたしと子供を作って貰う」

 

は?何言ってんだ?こいつ?

 

「融合症例の子供に聖遺物が引き継がれるのか見てぇんだとよ」

 

「いや、子供って…何すんのか知ってんのかよ!?」

 

「あ、あたりめぇだろ!男と一緒に寝るなんざパパ以来だがちゃんと知ってるっつぅの!」

 

ん?何か食い違いがある気がするな…

それとも、こいつのパパが特殊な変態だったんだろうか?

 

「おら!てめえ!!大人しくしやがれ!」

 

「やめろ!やめて!助けて!小町ー!」

 

…抵抗虚しく、銀髪の美少女にベッドに押し倒される。

ちょ…近い近い近いいい匂い柔らかい

 

「ま、待て、落ち着け…さすがに名前も知らん女と子供を作れなんて言われても…」

 

「雪音クリス」

 

くそっ、悪の女幹部が簡単に本名名乗っていいのかよ!?

 

「雪音クリスだ」

 

「お、おう」

 

………え?何?この間?

 

「おら!てめえも名乗りやがれよ!」

 

「ひゃ、ひゃい、比企谷八幡でしゅ」

 

噛んだ。死にたい。

 

「そうか、これであたしとてめえは知り合いだ。何も問題はねぇな?じゃあ寝るぞ?」

 

小町。ついにお兄ちゃん大人の階段登っちゃうみたいだ……

 

結論から言うとそんな事は無かった。

 

何故なら雪音は本当に眠ってしまったからである。

く、別に残念とか思ってないからな?ホントダヨ?

 

ていうか、こいつ、やっぱり何か勘違いしてるな。こいつに情操教育した奴誰だよ?

 

「ん…パパ…ママ…」

 

……口は悪いし態度は粗暴だが、やっぱり普通の女の子じゃねぇか…

 

とりあえず、何処で寝るかね…

 

***

 

「あー!!てめえ!!何してやがんだ!!?」

 

雪音の怒声で叩き起こされる。

 

「一緒に寝ないとコウノトリさんが運んできてくれねぇじゃねぇか!?」

 

性知識は幼稚園児並みか…

 

「おい!何だその目は?腐った目しやがって!」

 

「この目はデフォだっつうの…」

 

流れるように俺をディスるのやめてくれませんかね?

かわいそうな物を見る目で見てた俺も俺だが…

 

「チッ!今日の夜もう一回寝るからな?次は逃げんじゃねぇぞ!?」

 

こいつに指示してる奴をいつまで騙せるか次第だが…この手は使えるかも知れんな。

俺の理性が持ってくれればの話だが…

 

それから1週間…

 

朝、昼、晩は雪音が食事を持って来てくれ、夜は雪音が寝に来るという生活を送っていた。

わかった事といえば、雪音の上は俺の前に姿を現すつもりは無いらしい事と、雪音はテーブルマナーと寝相の悪さが壊滅的なだけの普通の女の子だという事くらいだ。

…しかしほんと食い方汚ねぇな、こいつ。

 

二課のようにコキ使われる事も無く、三食昼寝付き、夜は美少女の添い寝付きか…

 

…うん、二課のみんな、それに小町、俺の事はもう忘れてくれていいんじゃねぇかな?

 

そんな事を考えつつ、雪音と談笑しながら夕食を食べていた時だった。

 

ガチャッ

 

!?ついに雪音の上とご対面か?

 

…振り向いたそこには、ハイライトさんが完全職務放棄した立花が立っていた…




シリアス展開かと思えば…こうなってしまいました


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第六話

皆さまのおかげでルーキー日間にランクインしました。

こんなに沢山の人が読んでくれているんですね。

だから私も出し惜しみ無しで行きます(笑)

では、駄文ですがお付き合いください。


私が誘ったライブで親友が瀕死の重傷を負った。

 

私は彼女を誘ったことを死ぬほど後悔した。

 

それでも生き延びてくれた彼女に対する世間の態度は驚くほど冷たかった。

それどころか、彼女を迫害しようとする動きさえあった。

 

こんな理不尽があっていいのか?

彼女を否定する世界なんて壊れてしまえばいい。

 

そんな私の願いを叶えてくれたのは、彼女と一緒に生き延びた、目が特徴的な男の子だった―――

 

***

 

ヤバい。

何がヤバいってマジでヤバい。

 

理由は解らんが、突如現れた立花のハイライトさんが全く仕事していない。

有休取ってる場合じゃねぇよ、頼むから仕事してくれ!

俺に言われたくない?そうでしたね。テヘペロ

 

…などと現実逃避してる間にも、ゆっくりと、しかし確実に立花は近付いてくる。

怖えぇよ。後、怖い。

 

「た、立花。こ、これはだな…」

 

「黙れ」

 

「ひゃい!」

 

何だよそのドスの利いた声。

チビるかと思ったじゃねぇか…

 

「ハッ!融合症例第1号様のお出ましか?」

 

雪音…お前この状況で軽口が叩けるとか勇者かよ?

雪音クリスは勇者である、うん、売れそうだな。

 

「大方、コイツを取り返しに来たみてえだがな?もう遅せえって事を教えてやるよ!」

 

「は?」

 

「あたしとコイツの間にはもう子供が出来てるって事だよ!」

 

おい!!バカ!!やめろ!!

間違った性知識をひけらかすな!

ドヤ顔で自己主張の激しい一部を強調してんじゃねぇよ!

今の立花に冗談が通じない事くらい見りゃわかんだろ!?

見ろ!立花がプルプル震えてんじゃねぇか!

 

「誘拐されたって聞いて…心配して…一刻も早く助けなきゃって思って…特訓までして来てみれば見ず知らずの美少女とイチャコライチャコラした挙げ句子供?」

 

「お、おい立花?落ち着け?な?」

 

「ふ!ざ!け!ん!なぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

~Balwisyall Nescell gungnir tron~

 

「おまっ!?このタイミングで聖詠とかっ!?」

 

案の定、俺も強制的にシンフォギアを纏わされる。

 

「ちょせえ!!」

 

雪音?お前、今あの痴女鎧持ってねぇだろ!?

 

~Killter Ichaival tron~

 

は?聖詠?

そして、雪音は赤いシンフォギアを身に纏う。

 

「ヘッ!あたしに自分から歌を歌わせたのは八幡、お前が初めてだよ!こんな気持ちで歌うなんて、初めてだ!」

 

いきなり名前呼びとかぼっちに高度な対応求めんなよ!

距離詰めて来るの速すぎね?

縮地かよ?

 

「てめえみてえなどんくさい奴に後れを取るあたしじゃねぇよ!」

 

もうやめて!ハチマン何でもするから…

 

「『どんくさい』なんて名前じゃない」

 

「私の名前は立花響、15歳」

 

「誕生日は9月の13日で、血液型はO型」

 

「身長はこの前の測定では157cm、体重は、()()()()()()()()()教えてあげる」

 

「趣味は人助けで、好きなものはごはん&ごはん」

 

「後は、彼氏いない歴は()()()()()年齢と一緒」

 

立花さん?そういう自己紹介を淡々と鷹揚無く語るの怖いのでやめてくれませんかね?

 

「よし、これで遠慮無くオハナシ出来るね?」

 

まさか、オハナシってオラオラですか?

ほんと俺が悪かったんで勘弁してもらえませんかね?

 

「ハッ!ポッと出があたしの旦那にちょっかい掛けてんじゃねぇよ!!この泥棒猫!」

 

雪音さん?いい加減煽るのやめようね?

後、いつ結婚したの?

 

あぁ、君の性知識だと子供=結婚だね…

え?お前もしかして命令された時点でよくわからん男と結婚するつもりでいたのかよ…

 

「じゃあ、二人とも、覚悟はいい?」

 

良くないので帰っていいですか?

駄目?デスヨネー…

 

「最速で、最短で、まっすぐに、一直線に、この想いを伝えてあげるね?」

 

立花さん?満面の笑顔ですけど目がちっとも笑ってませんよ?

 

***

 

立花からお仕置き(かなりマイルドな表現だよ、思い出させんな)を受けて、雪音と俺は二人揃って正座させられている。

雪音はこの結果が不服らしく、「チクショウ、何であたしがこんな奴に…」とか呟いている。

君も懲りないね?

 

立花の後ろにはいつの間にか現れた小日向が心の底からといった笑顔でこちらを見ている。

お前何だよ?その笑顔?この2年の腐れ縁だがそんな笑顔初めて見るぞ?

 

「で?ハチ君、実際は?」

 

「そのような事実はございません」

 

「ど、どういう事だよ!?あたしはお前と一緒に"寝た"から"子供"が出来てるんじゃねぇのかよ!?あたしとは"遊び"だったって言うのか!?」

 

雪音さん?立花さんがキーワードに反応してピクピクしてるから少し黙ろうか?

 

「あー、その何だ、小日向、ちょっといいか?」

 

「なあに?八幡?」

 

君、ほんとさっきからご機嫌だね?

何かいい事あった?

 

「何でそんなご機嫌なんだよ?」

 

「良かったじゃない、かわいい彼女が出来て」

 

コヒナタス、お前もか!?

この立花が好きすぎるガチユリ娘め!

まだ俺の事を立花に寄り付く悪い虫だと認識してやがるな?

悪い虫は間違ってねえが寄り付いた覚えはねぇよ!!

 

「あんなのは一時の気の迷いだ。本物じゃねぇよ」

 

「でも八幡なら、誤解を解く必要はない。間違いだろうが解は出ているからって言うんじゃない?」

 

「ぐっ、ああ言えばこう言う奴だな」

 

「それは八幡にだけは言われたくないよ…」

 

「それより、その、雪音なんだが、情操教育が幼稚園で止まってるみたいなんだわ。すまんが正しい教育をしてやってくれんか?」

 

「報酬は?」

 

「ふらわー3回」

 

「5回、響の分も含む」

 

ぐっ、足元見やがって…

 

「…わかった、頼む」

 

「うん。それじゃあ、待っててね。雪音さん、ちょっといいかな?」

 

「あん?んだよ?それとあたしはもう雪音じゃなくて比企谷だ」

 

…不意討ちでぼっちのメンタル削るのやめてくれませんかね?

 

***

 

小日向から説明を受けてる間、雪音は赤面したり、目を丸くしたりの百面相だった。

ああいう素直なところはかわいいんだけどな。

 

「ハ、チ、君?」

 

「ひゃい!すいません!」

 

しかし立花といい雪音といいこの状況どうすんだよ?

収集つかねえぞ?

 

『命じた事も出来ないなんて』

 

『クリス、あなたにもう用は無いわ』

 

?何だ?スピーカーか?

この声、どっかで聞いたことある気がするんだが…

 

「フィーネ!?そんな!?」

 

フィーネ?それが黒幕の名前か…

 

『何処へなり、好きなところに行きなさい、ここから生き延びれたなら、ね?』

 

その言葉を皮切りに大量のノイズが現れる。

 

まずい。ここには小日向がいる。

シンフォギア装者が3人いるとは言え、小日向を守りながらでは分が悪い。

 

そんな時だった―――

 

―千ノ落涙―

 

辺りを埋め尽くしていたノイズが天から降る剣に一掃される。

 

「立花、小日向、無事か?」

 

そこには、以前のようにすぐに折れてしまいそうな儚さは鳴りを潜め、力強く、凛として立つ風鳴翼の姿があった。

 

その姿があまりにも絵になっていて、思わず目を奪われてしまったのであった。




G以降クリスちゃんファンの皆さまごめんなさい
どうしても無印のドロドロ依存ガールの方のクリスちゃんが書きたかったんだ…

ビッキー渾身の叫びは1期12話ラストをイメージして頂ければ(笑)

短い上になかなか話が進みませんが、楽しんで頂けていれば幸いです。


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第七話

お気に入りが200を超えました。

オリ展開になってからの反響っぷりに驚きを隠せません…

自分で読んでてもだんだん魔境になってるのですが、お楽しみ頂けているなら幸いです。

では、駄文ですがお付き合いください。


あたしはずっと独りで生きてきた。

 

パパとママを亡くしてから、心が休まる時などありはしなかった。

 

あたしは歌が嫌いだ。

あたしからパパとママを奪った歌が大嫌いだ。

 

だからあたしは否定する。

歌を、そしてそれを力だと信じている奴らを。

 

全部、全部、全部、全部、全部否定してやる。

 

***

 

「比企谷、無事だったか?」

 

風鳴先輩が声を掛けてくる。

 

「え?えぇ、はい、まぁ…」

 

さっきまで見惚れていたせいか、中途半端な返事になってしまう。

 

「そうか、それは重畳だ」

 

風鳴先輩はそう言って、抱き締めてくる。

…抱き締めてくる?

 

ちょ!?柔らかいいい匂い柔らかい。

誰だよ!?『絶刀・天羽々斬』じゃなくて『絶壁・天羽々斬』じゃねぇの(笑)とか言った奴!?

誰も言ってねぇよ!

 

「てめえ!!何してやがんだよ!?」

 

「翼さん!何してるんですか!?」

 

雪音と立花がそれぞれ抗議する。

君たち仲いいね?さっきまで喧嘩してなかった?

 

「?立花と比企谷は奏の…謂わば私の半身の忘れ形見だ。無事を喜ぶのは当然だろう?」

 

あなたちょっと前まで立花を拒絶してませんでした?

この数日でどんな心境の変化があったんだ?

 

「…というかそろそろ離してもらえませんかね?」

 

「ん?あぁ、そうだな」

 

ようやくハグ状態から解放される。

 

「ハチ君、何か微妙に嫌がってなくない?私が抱きついた時は全力で引き剥がした癖に…」

 

「八幡?後で話あるから」

 

小日向さん?立花の事になると反応速すぎません?

 

「それで、こちらは?」

 

風鳴先輩が雪音を見る。

雪音はいまだに警戒して唸っている。

お前は犬かよ…

 

「あたしは比企谷クリス、そこの八幡の嫁だ!」

 

おい!小日向!全然改善されてねぇじゃねぇか!?

おい!目を反らすな!

 

「ん?そうなのか?しかし比企谷は16だからまだ結婚できる歳では無いはずだが…」

 

うん、そうっすね。

的確なツッコミありがとうございます。

 

「な、なんだって!?み、未来…あたしはどうすりゃいいんだ!?」

 

「クリス、大丈夫。愛があれば大抵の事は許されるから」

 

やっぱりお前が原因じゃねぇか…

 

立花さん?さっきから静かだと思ったらまたハイライトさんが仕事してませんよ?

早く職場復帰させて下さいね?

 

***

 

その後、雪音を連れて、二課の本部に報告に行く事になった。

 

「比企谷君、無事だったか!?」

 

風鳴司令にそう言って迎えられる。

 

「えぇ、まぁ…ご心配をお掛けしました」

 

「まったく、心配したぞ?君の事だから下手に誘拐犯を刺激したりするような無茶はしないとは思ったがな。とはいえ、すぐに助けに動けず、すまなかった」

 

風鳴司令がそう言って頭を下げる。

 

「頭を上げて下さい。あれは俺の不注意でもあるんで」

 

「いや、いくら装者とは言え、君たちはまだ子供だ。子供のピンチにすぐに動けないなんて、大人として失格だ」

 

やはり、この人はいい人だな。

尊敬できる大人とは、こういう人の事を言うのだろう。

 

「で、彼女が報告にあった…」

 

「はい。第2聖遺物、イチイバルの適合者、比企谷クリスです」

 

風鳴先輩が報告を引き継ぐ…

やべっ!名前の件、訂正してねぇじゃねぇか…

 

「比企谷?比企谷君の関係者か?」

 

「嫁だ」「嫁です」

 

雪音と小日向が口々に言う。

小日向お前覚えてろよ…

絶対許さないリストに書いてやるからな!

 

「そ、そうか…彼女の身柄は二課で預かる事になるだろう」

 

まぁ、シンフォギア装者だし、それが妥当だな。

 

「それで、住居なんだが、手配が済むまでの間…」

 

「八幡の家でいいんじゃない?」

 

小日向お前俺にどんだけ恨みあんだよ?

 

「未来!それはさすがに…」

 

いいぞ、立花。お前は味方だと信じてた。

 

「でも、私達の家は寝る所無いし、翼さんの家は人が生活できる環境じゃ無いし、八幡の家くらいしか無いんじゃないかな?」

 

何故かみんな納得してるけど風鳴先輩の家は一体どんな所なんだよ?

 

「私達の家で私と未来が一緒に寝ればいいんじゃないかなぁ?」

 

よし、いいぞ、立花。

その攻撃は小日向にはクリティカルだ。

 

「…で、でもクリスと八幡は昨日まで一緒に生活してて何も間違いが起きて無いし、小町ちゃんもいるし大丈夫でしょ?」

 

な…なんだ…と…

小日向が立花の誘惑を蹴りやがった…

どんだけ雪音を俺に押し付けたいんだよ…

 

「いや、普通にホテルで生活してもらおうと思ってたんだが…そういう事なら比企谷君に任せよう」

 

ちょ!?司令!?ホテル!ホテルでいいじゃないっすか!?

 

「また、一緒だな?八幡!」

 

雪音は満面の笑顔だった。

…ほんと、ぼっちに不意討ちはやめてくれ

 

そして、後ろで聞いてた藤…藤…藤なんとかさんに「チッ!リア充爆発しろ!」との言葉を頂いた。

ぼっちとリア充なんて対極だと思うんだが…解せぬ。

 

***

 

雪音を少し待たせて、()()()に向かう。

 

「あら?八幡君、無事だったのね?」

 

「えぇ、おかげさまで。櫻井さん、いいえ、フィーネさん」

 

さぁ、どう出る?

 

「…どこで気付いた?」

 

櫻井さんの目の色が文字通り変わる。

これがフィーネとしての彼女なのだろう。

 

「スピーカーで誤魔化してましたが、変声器でも使うべきでしたね」

 

「そう…今後の参考にさせて貰うわ?それで、私をどうするつもりだ?」

 

今後…ね。

 

「別に何も」

 

「…は?」

 

フィーネさんが呆けた顔をする。

きっと先ほどの時点で最悪を想定していたのだろう。

 

「いや、別にどうこうするつもりは無いっすよ。あぁ、でも何かやる時は事前に教えて貰いたいっすね。妹避難させなきゃいけませんし」

 

「わ、わかった。けど…そんな事でいいのか?」

 

「俺が言ったくらいでやめるなら最初からやって無いでしょう?なら、やる前に教えて貰う方がありがたいっすね」

 

「…くっくっくっ。つくづく英雄には向かん男だな、君は?私は君の怨敵かも知れんのだぞ?」

 

「私情より、身内の安全の方が俺には大事っすよ。そういうのは立花とか風鳴先輩に任せます」

 

「あ、それと…」

 

「?」

 

「ああいう命令出すときは情操教育くらいちゃんとやった方がいいっすよ」

 

「…あの歳で知らないなんて普通思わないじゃない…」

 

うん、それには心底同情するけどね?

 

「それじゃ、一応、連絡が来ないことを祈ってます」

 

「それは難しいわね」

 

そうっすか…

まぁその時は、あのまっすぐな少女にぶん殴られて目を覚ましてもらうとしよう。

自分の命に価値を見出だせない俺の出る幕など初めから無いのだから。




毎回八幡モノローグに入れる小ネタに四苦八苦してます(笑)

追記
クリスの一人称がブレブレなのを直しました


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第八話

UA10000突破しました。

驚きを隠せません…

皆さま楽しく読んで頂けていれば幸いです。

では、駄文ですがお付き合いください。


私はあの呪いに反逆する。

 

そして、必ずあのお方にこの想いを伝えてみせる。

その為ならば、永遠の刹那に存在し続ける事など苦でもない。

恋する女の行動力を甘く見てもらっては困る。

 

…私は、たとえ振られる運命なのだとしても、ちゃんと振られたいのだ。

そうでなければ、次の恋を始める事すら出来ないではないか…

 

だから、たとえ世界全てを敵に回そうと、私はあの呪いに反逆するのだ。

 

***

 

久しぶりに我が家の敷居を跨ぐ。

あぁ、愛しのマイホーム、マイシスター。

 

正直、色んな事がありすぎて限界なのだ。

早く小町に会って癒されなければ!

 

雪音?そういやさっきから静かだな?

何かもじもじしてるが…トイレか?

 

そういう事なら挨拶とか早めに済ましてやらんといかんな。

 

「およ?お兄ちゃんお帰り、誘拐されたって聞いてたけど、大丈夫だっ……た?」

 

小町がその場に崩れ落ちる。

小町ちゃん?一体どうしたの?

 

「お兄ちゃん!!いくら誘拐されたからって腹いせに関係無い美少女を誘拐してくるなんて小町悲しいよ!今ならまだ間に合うから早く警察行こ?」

 

うん、泣いていいかな?いいよね?

 

「は、八幡?この子が…」

 

雪音が恐る恐る聞いて来る。

トイレ…そろそろ限界なのかな?

 

「あぁ、妹の小町だ」

 

「そっか!じゃあ、あたしにとっても義妹だな!よろしくな!小町!」

 

雪音さん?今、妹のニュアンスがおかしくなかった?

小日向に毒され過ぎじゃないですかね?

あれは猛毒だから近寄らない方がいいよ?マジで

 

「え?え?お兄ちゃんどういう事?」

 

いけね。小町ほったらかしにしてた。

 

***

 

「えぇー!?まさかのお義姉ちゃん!?」

 

小町ちゃん?違うからね?

 

「不束な兄ですが、よろしくお願いします」

 

「おう!あたしの方こそ、よろしくな!」

 

君ら、打ち解けるの早いね?

後小町ちゃん、速攻で兄を売るのやめてね?

お兄ちゃん悲しくなっちゃうから。

 

「お兄ちゃん!!小町、お兄ちゃんはヤればデキルお兄ちゃんだと信じてたよ!」

 

小町ちゃん?お下品な言葉使うのやめようね?

絶対言ってる意味違うよね?

後、最初誘拐犯扱いしてたよね?

何その手のひら返し?

 

「おう!子供はあたしの勘違いだったけど、その…は、八幡が望むなら、あたしも…」

 

雪音さん?君、ぼっちのメンタル削るの好きだね?

 

「ぐはっ!!」

 

こ、小町?

 

「お兄ちゃん!!ヤバいよ!!クリスお義姉ちゃん超可愛いよ!!」

 

「いや、結婚して無いからね?」

 

「はぁ…またこのごみぃちゃんは…まぁでもわかったよ、お兄ちゃんがしたいようにすればいいと思うよ?」

 

ありがとな、小町。

 

「でもでも?小町はお兄ちゃんに幸せになって貰いたいから、色々と応援はさせて貰うよ?あ、今の小町的にポイント高い!」

 

あぁ、お兄ちゃん的にもポイント高ぇよ。

元々振り切ってるけどな!

 

「それじゃあ、八幡!早速、夫婦の営みを…」

 

おい!ちょっと待て!

小日向!お前ほんと何してくれてんだよ!?

中途半端な性知識のせいでむしろ悪化してんじゃねぇか!?

 

「あ、お兄ちゃん?小町2時間くらい買い物してくるから、その間に終わらせてね?」

 

小町待って!行かないで!

お兄ちゃん雪音に襲われたら悲しい事に勝ち目無いの…

 

「冗談だよ?小町に任せて?」

 

その後、小町監修によるぼっちに配慮した雪音の再教育が施された。

小町はやっぱり天使だった。

 

***

 

「比企谷、少しいいか?」

 

リディアンで風鳴先輩に呼び止められる。

 

「はぁ…まぁいいっすけど…」

 

風鳴先輩に付いて行く。

こうして見ると、芸能人のオーラというのもあるが、本当に絵になる人だな…

べ、別に見惚れてた訳じゃないからね!

俺のツンデレとか誰得だよ…

 

「雪音の方はどうだ?」

 

雪音は学校の間、お留守番だ。

来期から編入できるよう手続き中との事だ。

小町の教育のおかげで、ようやく比企谷姓を名乗るのをやめてくれた。

 

「小町のおかげでようやく一般常識を身に付けつつありますね」

 

「そうか…それは何よりだ」

 

「それで、用件はそんな事じゃないっすよね?」

 

「あぁ、これは非常に重要な案件だ」

 

何だ?フィーネさんからは特に連絡は来てないが、まさか裏切られたか?

 

「私をラーメン屋に連れて行ってほしい!」

 

…は?

 

「ラーメンってあのラーメンですか?」

 

「あぁ、そのラーメンだ。恥ずかしながら、剣として己を研ぎ澄ます事しかして来なかったのでな。その…食べた事が無いんだ」

 

うん?今剣関係あったかな?

 

「…まぁいいっすけど」

 

「良かった。男性の比企谷なら一人で行ったりすることもあるだろうと思って頼んでみたんだ」

 

パァっという効果音が聞こえてきそうなくらいに風鳴先輩の表情が明るくなる。

雪音とは別の意味で心臓に悪い人だな…

 

「むしろ一人でしか行った事無いっすよ」

 

食事って一人でする物じゃ無いの?え?違う?

 

「でもラーメンならインスタントとかもあるじゃないすか?」

 

「そんな物緒川さんが許してくれる筈無いだろう!!」

 

ビックリした。

いきなり大きな声出すのやめてね?

ぼっちってストレスに弱い生き物だよ?

 

緒川さん?あぁ、あのイケメンね。

そういや風鳴先輩のマネージャーもやってるんだったな。

 

「くっ!この身は確かに常在戦場の意志の体現!計算された栄養価の食事を摂っていれば問題は無い!しかし!あの光輝くスープの脂が!ツルツルの麺が!剣であるはずのこの身を魅了してやまないのだ!」

 

うん、ところどころに何か変な単語入るね?

これがこの人の素なのかね?

 

***

 

その後、最低限の変装をした風鳴先輩とラーメン屋に向かう。

よくよく考えたら芸能人なんだよな、この人…

 

「男と出掛けるなんて、大丈夫なんすか?」

 

「何を言う?先の戦場(いくさば)でも言った事だが、比企谷は奏の忘れ形見だ。君と出掛けることが後ろめたい事であるはずがない」

 

そう言って、風鳴先輩が微笑む。

ぐっ、この人の言葉や仕草はいちいちぼっちのメンタルを削ってくるな…

単語単語は変なのにな…

 

「それに…念願のラーメンだ。その程度のリスクで、私が鞘走る事を躊躇うとでも思ったか!?」

 

…もしかしなくてもそっちが本命じゃねぇか…

どんだけラーメン食べたいんだよ、この人…

後、鞘走るってこういう時に使う単語だったっけ?

 

ラーメン屋の中では、異常にそわそわしたり、至福の表情でラーメンを啜る風鳴先輩を見る事が出来た。

何をしても絵になる人っているんだな…

 

実はこの時に写真を撮られていたらしいのだが、あまりに美味しそうに食べているため、男とデートとかではなく、食レポの練習をしているものだと認識され、風鳴先輩に食レポのオファーが殺到する事になるのだが、それはまた別のお話である。

 

***

 

「たでぇま…」

 

「お帰り!八幡!」

 

帰宅すると雪音が迎えてくれる。

小町による一般常識の英才教育を受けたはずなのだが、何故か頑なに名前呼びだけはやめてくれない。

 

小町に理由を聞いたら「これだからごみぃちゃんは…」と呆れられたので詳しくは聞けていない。

 

ドン!

 

そんな事を考えていると、いきなり雪音に壁ドンされる。

何この子?逆お姫様抱っこだけじゃなくて、逆壁ドンの不名誉まで持ってくの?

 

「他の女の匂いがする」

 

怖えぇよ。

立花といい、お前といい何なの?

ハイライトさんが仕事しないの流行ってんの?

 

「い、いや、か、風鳴しぇんぱいとラーメン食いに行ってただけだよ」

 

どもったのと噛んだせいで、一気に言い訳臭が濃くなったな…

 

「…ホントか?」

 

「嘘吐く意味がねぇよ」

 

「そ、そうか…あたしの思い過ごしならいいんだけどよ」

 

そう、雪音は何故か俺の学校での交友関係に非常に敏感なのである。

もっとも、ぼっちなのでほとんど無いに等しいのだが…

ぼっちはぼっちらしく分をわきまえて生活しろという事だろう。

 

「それじゃあ、ご飯にする?お風呂にする?それとも…あたし?」

 

「お前今日小日向と会っただろ…」

 

ほんとあいつ何なの?

雪音にいらん知識吹き込むのやめて欲しいんだけど。

 

「み、未来は関係ねぇだろ!それより、ほら!選べよ!」

 

え?何?続けんの?

 

「飯はラーメン食べたばっかだし、じゃあふ…」

 

おい…風呂って言おうとした瞬間落ち込むのやめてくんない?

選択肢あるだけで強制じゃねぇか…

 

「…雪音で」

 

「そ、そうか?仕方ねぇな!それじゃあ今日は耳かきしてやるよ!ほら、膝枕してやるからこっちに頭乗せろ」

 

何か小日向と小町の魔改造で、どんどんあざとくなって行ってるな…こいつ。

 

こうして、この平穏が束の間であることを知りつつも、その平穏を享受して過ごすのであった。




クリスちゃん成分が多めになってきたので防人入れなきゃと思ったらほぼクリスちゃんに…

作者はどんだけクリスちゃん好きなんでしょうね?

今回は日常回です。

幕間扱いにするか悩みましたが、何げに小町初登場なので八話として投稿します。


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幕間 比企谷小町の休日

九話の展開を思い付いてないとかでは無いのですが、タイミング的にここに入れるのが丁度いいのと、読んで頂いている皆さまへの感謝も兼ねて

では、駄文ですがお付き合いください。


朝、お兄ちゃんを起こす為にお兄ちゃんの部屋に行く。

 

「お兄ちゃん!朝だよ?」

 

ベッドを覗くと、寝息を立てる山が2つ。

 

はぁ…またクリスお義姉ちゃんが忍び込んだんだね…

何でも、お兄ちゃんが誘拐されてた間、毎日一緒に寝てたので、癖になってしまったらしい。

お兄ちゃん…不能とかじゃ無いよね?

 

「おう、おはよう小町…ってまたかよ…」

 

最初の方こそ、あり得ないくらいキョドってたけど、最近では馴れた物である。

 

「うーん、おはよ、八幡」

 

お義姉ちゃんは寝相がかなり悪いせいか、衣服がかなりはだけている。

端から見るとどう見ても事後なんだけど、お兄ちゃんの反応を見る限り、多分何もして無いんだろうなぁ…

いちおう、カマだけかけとこうかな?

 

「お兄ちゃん?昨日はお楽しみでしたね?」

 

「小町ちゃん?何もして無いのわかってて聞いてるよね?」

 

チッ!バレてたか。

 

「それより、朝ご飯出来てるよ?」

 

「兄の無実をそれよりで済ませちゃうのはお兄ちゃん悲しいけど、わかったよ。雪音は早く服直せ」

 

「?あたしは別に八幡相手なら恥ずかしくねぇから構わねぇぞ?」

 

「俺が構うんだよ…」

 

お義姉ちゃんは生活面は色々とだらしない部分が多いけど、容姿と仕草はアイドルと言われても納得できるくらいに可愛い。

…これで手を出してないとか、お兄ちゃん本当に不能とかじゃないよね?

小町心配になるレベルだよ?

 

ただ、お兄ちゃんからしたら決定的な不満がお義姉ちゃんにはあるので、甥っ子か姪っ子の顔を見るにはまだまだ道のりは長そうかな?

お義姉ちゃんが問題を改善した結果、お兄ちゃんから離れちゃうかもだしね。

でもでも、小町だけは最後までお兄ちゃんの味方だよ?

 

***

 

「あ、今日は小町出掛けるから、お昼は適当に出前でも取ってね?お兄ちゃん」

 

「おー…どこ行くんだ?」

 

「響さん未来さんと買い物」

 

「そいつらと一緒なら安心だな。ノイズが出たら立花から離れないようにな」

 

ノイズに関しても一時期に比べて全然と言っていいほど出なくなったので、大丈夫だと思うけどね?

…ノイズと言えば、それ関連でお兄ちゃん何か隠してそうなんだよなぁ…

まぁ、話していい事なら話すだろうし、知らないふりしといてあげますか。

 

そんなことを考えてたら、またお義姉ちゃんのお皿が大惨事になっていた。

テーブルマナーもきっちり覚えてもらわないとね?

多分お兄ちゃんをダシにすればがんばってくれると思う。

 

「それじゃ、小町は行ってくるね?」

 

「おー、行ってら」

 

「あ、お兄ちゃん?小町、夕方くらいに帰るからお義姉ちゃんとイチャイチャするならそれくらいまでにしといてね?」

 

「いいからさっさと行けよ」

 

うーん、否定しなくなっただけ進歩かな?

 

***

 

「それじゃあ、第4回雪音クリス対策会議を開催するよ」

 

響さんがそう宣言する。

実際、お兄ちゃん関連でクリスお義姉ちゃんを警戒してるのは響さんだけで、未来さんと小町は巻き込まれただけだ。

むしろ未来さんはクリスお義姉ちゃんを応援してるしね。

 

しかし、最初はこの二人のどちらかがお兄ちゃんとくっつくと思ってたけど、誘拐犯の自称嫁を連れてくるとはわからないものだね!

まぁ、未来さんは恋愛感情は無さそうなんだけど、小町以外でお兄ちゃんを一番理解してるのは間違いなく未来さんだったりする。

ちょーっと小町が後押しすれば、意外にあっけなくくっつくと思うんだよなぁ。

失敗した時が怖すぎるので出来ないけど…

 

「じゃあ小町ちゃん、標的の直近の行動は?」

 

「夜は相変わらず、お兄ちゃんの寝室に忍び込んで寝てるみたいです」

 

「小町ちゃん?何度も聞くけど、それ、何とか出来ないのかな?」

 

響さん…怖いからハイライトを職場復帰させてください。

 

「こ、小町が止めようにも、お兄ちゃんの部屋に鍵が無いので難しいです」

 

「響?小町ちゃんに言っても仕方ないんじゃないかな?」

 

「むぅ…それはそうなんだけど…」

 

小町も響さんの事は他人とは思えないので、できる限りは協力したいけど、クリスお義姉ちゃんも好きなので立場的にはあくまで公平なのです。

 

響さんの場合は、いいとこ妹扱いなので、まずはそこを改善しないと難しいだろうなぁ…

ほんと我が兄ながらめんどくさいお兄ちゃんだなぁ…

 

「それで、何か標的に対抗する具体的な案は無いかな?」

 

「八幡次第だと思うよ?実際、クリスに押され気味だから難しいんじゃないかな?」

 

未来さんはあくまで諦めろってスタンスで行くみたい。

小町はできる限り応援したいけど…

 

「未来?あくまで非協力的な態度を取るなら私はこれから未来の事をこひ…」

 

「響を女性として認識させるのが第一だと思います!」

 

反応速いなぁ…

コンマ2秒無かったんじゃない?

たぶんだけど小日向さんって呼ぶと言おうとしたんだろうなぁ…

 

「で、具体的な案は?」

 

「今までのようにベタベタするより女性的な仕草で責めるのが効果的です!八幡がそういうのに弱いのは翼さんで実証済みです!」

 

「でも、それだと翼さんの焼き増しでしかない…まだあるよね?」

 

「くっ…!響に合うやり方だと…直接好意を伝えるのが…最も…効果…的…です」

 

「そうだね?敵も猛攻を仕掛けてきてるから、私も戦わないとね?」

 

「響!考え直して!?」

 

「未来?」

 

「私は響に戦って欲しくない。だから響が戦わなくていい世界を作るの。」

 

「だけど、未来?こんなやり方で作った世界は、あったかいのかなぁ…?」

 

「私は響を戦わせたくないの」

 

「ありがとう…だけど私…戦うよ!」

 

ちょっと会議が白熱して来たね。

そろそろ止めないとね。

 

結局、告白は響さんが最終的にヘタれたので、見送りになった。

やっぱり女性として認識させるとか以前に未来さんをどうにかしないと難しいんじゃないかな?

 

***

 

響さん、未来さんと別れ帰り道、家の手前で目の前を走っていたバイクが急に止まる。

 

「君は確か比企谷の妹の…」

 

「小町です。翼さんですよね?」

 

テレビやライブで何度も見てるけど、本当に綺麗な人だなぁ…

お兄ちゃんと知り合いというのがいまだに信じられない。

 

「あぁ、比企谷の妹ということは、私にとっても妹のようなものだ。何かあれば気軽に連絡してくれ。これはプライベートの方だ」

 

そう言って、手書きの連絡先が追記された名刺を受け取る。

 

「また、ラーメンを食べに行こうと比企谷に伝えてくれ」

 

そう言って、翼さんはまたバイクで走り去っていった。

うーん、好意はかなり高いけど恋愛感情はまだ無さそうって感じかな?

今をときめく歌姫とかなり近い位置にいるってだけでも凄いんだけどね。

 

果たして小町のお義姉ちゃんの座を勝ち取るのは誰になるのかな?

パッと見はクリスお義姉ちゃんが一番有利だけど、お兄ちゃんの性格的には翼さんがどストライクな気がするしなぁ…

…響さんはまずは未来さんを説得しないとね…

 

などと考えながら帰路についたのでした。




初の幕間ということで小町視点からの装者達をお送りしました。

途中のダイナミック夫婦喧嘩はかなりのフライングですが(笑)


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第九話

それぞれの第0話が一巡したので、少しの間お休みします。

この回までに一巡できて良かったです(汗)

では、駄文ですがお付き合いください


「今日はあたしの買い物に付き合って貰う」

 

二課から給料が出て、ホクホク顔の雪音がそんな事を言ってくる。

 

雪音さん?そろそろ住居の手配終わってますよね?

いつまで居候する気ですか?

 

「あー…今日はアレがアレでとにかく忙しいんだ」

 

「よし!行こうぜ!八幡!」

 

人の話聞けよ!

いい加減泣いちゃうよ?

 

そんなこんなで雪音に無理矢理連れ出される。

 

「で、何で仏壇なんだよ…」

 

「仕方ねぇだろ?パパとママを弔ってやりてぇし、それに、こんな事頼めるの八幡くらいだしな!」

 

ぐっ…だいぶ耐性は付いたはずだが、やっぱりところどころでぼっちのメンタル削ってくるな、こいつ…

 

「…ただ、家に置くのか?お前ん家の手配が済んでから買った方がいいんじゃねぇの?」

 

「?家の手配なら小町のOK貰って未来が取り消してたぞ?」

 

小町ちゃん?お兄ちゃん初耳なんだけど?

後小日向。お前は絶対許さないリストの最上位に書くことが俺の中で決定した。

本当に絶対許さないからな!

絶対だ!

 

「それに、あたしのパパとママなんだから、八幡にとってもパパとママになるだろ?」

 

ならねぇよ…

何だよその超理論…

ジャイアニズムかよ?

 

「…とにかく、買うなら早く買えよ」

 

「おう!それじゃあこいつにしようかな?」

 

雪音さん?ずいぶん大きいの買うね?

居候先に置く遠慮とか無いの?

 

「八幡!じゃあ、これ、運べるかな?」

 

運べるかな?じゃねぇよ…

 

「俺に何を期待してんだよ…1人じゃ無理に決まってんだろ…」

 

「おっさんも連れて来た方が良かったかなぁ?」

 

むしろその人なら1人で大丈夫だと思うよ?

 

「でも今日は八幡とのデートだしな!しゃあねぇ!配送して貰うか」

 

…ほんと、ぼっちに不意討ちはやめて欲しい。

しかし、デートが仏壇屋って、こいつの感性もだいぶおかしいな…

小町が矯正してこれかよ…

 

その後、雪音に引き摺り回されたのは言うまでもない。

 

***

 

「あ、ハチ君!今ヒマ?」

 

立花に呼び止められる。

 

「暇じゃねぇ、帰るのに忙しい」

 

「そ、そっか…じゃあ仕方ないね」

 

?いつもみたいに強引に来ねえな?

どうしたんだ?こいつ…

何か悪い物でも食ったか?

いや、それでも無事そうだな…

 

「で?何だよ?」

 

そう聞くと、立花の表情がパアッと明るくなる。

 

「ホント?良かった。ハチ君に断られちゃうかと思った」

 

ぐっ…本当にどうしたんだ、こいつ?

こいつにドキドキなんてしていないぞ!

落ち着け、俺。素数を数えろ。

1、2、3、ダー!!

そもそも1が素数じゃねぇし、俺に数学とか普通に無理だったわ…

 

「今日はどこかでお茶して行かない?」

 

ぐっ…今すぐそのあざとい上目遣いをやめろ!

勘違いしたあげく、告白して振られちゃうだろ!

…振られちゃうのかよ。

 

それにしても、こいつがいつものふらわーとかじゃない場所に誘うってのも珍しいな。

本当に何があったんだ?

 

「で?何だよ?」

 

「?ハチ君と一緒にいたいって思っただけだよ?」

 

おい!こいつ誰だ!?

俺の知ってる立花じゃねぇぞ!?

ドッキリか?ドッキリだな?

 

「で?いつ頃ドッキリ大成功のプラカード持った小日向が出てくるんだ?」

 

俺が勘違いして告白したあたりか?

 

「未来?未来は今日は先に帰ったよ?」

 

ハッ、そうやって俺を安心させる段取りだな?

ヴァカめ!そんな嘘に騙されるほど、俺はチョロくねぇよ!

伊達に黒歴史量産してねぇんだよ!

…全然駄目じゃねぇか…

 

「お前、今日は熱でもあるんじゃねぇの?普段と違いすぎるぞ?」

 

そう言うと立花が顔を赤らめながら

 

「いつも見てくれてるんだね?ありがとう」

 

とか言ってくる…

…こいつもしかして立花の皮を被った別人なんじゃねぇの?

 

そんなこんなで小一時間ほど、喫茶店で過ごしたのだが、立花別人疑惑は深まるばかりであった。

 

 

*****

 

学校が終わり放課後、フィーネさんに呼び出された為、二課の研究室に向かう。

ついに来ちゃったか…

さて、どうするかね?

 

「来たか…まずは、君の身体についての話をしよう」

 

…え?何?このアラサー俺の身体を狙ってたの?

怖ぇよ…

 

「…何かあり得ない勘違いをしてないか?」

 

「ソンナコトナイデスヨ?」

 

「…まぁいい。()()ガングニールの事だ」

 

ん?俺のガングニール?立花と共鳴関係とか言ってなかったか?

 

「本来、人体と聖遺物の融合など、奇跡的な確率でしか無し得ない。それが、まったく同じタイミングで二人同時に起こっている。ここまで言えばわかるか?」

 

「…あり得ないって事っすね」

 

「そう、あり得ないはずが奇跡が起きている。ならば、その奇跡に絡繰があると見るのが研究者だ」

 

つまり、どういう事だってばよ?

 

「結論から言うと、君は立花響に生かされている」

 

は?何故立花が出てくる?

しかも生かされている?

何の冗談だ?

 

「あの事故の折り、立花響は君を庇ったそうだな?だから君は重傷だが意識があった、違うか?」

 

――思い出される煉獄の記憶。

そう、あの時、小町を避難させた後、崩落に巻き込まれ、足を怪我して死を待つだけだった俺をあろう事か庇った二人の女の子がいたのだ。

一人は、その命と引き換えに絶望的な状況を打破した天羽奏。

もう一人は、何の力も持たず、ただ俺の前に立ち、ガングニールの破片をその身に受けた少女、立花響。

 

…何で忘れてたんだろうな…

天羽さんの方は覚えてたのに、大事な事を今の今まで忘れてたんだな…

 

「立花響はその際に聖遺物と融合したと思われる。そして君については、()()()()()()()()()()()が君に宿っている。だから、立花響が君を守りたい、死なせたくないと願った時にしか、君のガングニールは起動しない。聖遺物が君を侵食しないのも立花響の意志があるからだ」

 

フィーネさんは淡々と述べる。

研究者としての見解を述べているのだろう。

正直、ショックが大きく頭に入ってこない。

 

「まぁ、ある意味、君こそが立花響のアームドギアだと言うことだ。だからこそ彼女は単独でアームドギアを形成できない」

 

俺が…?こんな価値の無い男があいつの枷になっているって?

笑えねぇよ…

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

そんな独り善がりを押し付けておいて、あいつの力を奪っていたのが他ならぬ俺自身だったなんて、全然笑えねぇよ…

 

「まぁ、これを聞いて君がどうするかは、私には預り知らぬ。好きにするといい。あぁ、後、私の計画だが、1週間後に決行する。どうするも君の自由だ」

 

その後、どうやって帰ったかもわからぬまま帰宅し、心配する雪音に目もくれず、ただ、自室で呆然とするしか出来なかった。

 

冷たい壁の感覚が、自分が生きているという事を残酷に告げていた――




唐突にシリアスさんがログインしました。

日常からいきなりシリアスさんに横殴りされるのもシンフォギアならではだと思います。

今回もお楽しみ頂けていれば幸いです。


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第十話

今回はお話の構成上、八幡視点だと半分以上意味不明になるため、ビッキー視点です。

では、駄文ですがお付き合いください。


ハチ君の様子がおかしい。

 

クリスちゃんからそう相談を受けた。

 

二課に行って帰ってきてから、まともな食事も摂らず、ずっと部屋に引きこもっているらしい。

クリスちゃんや小町ちゃんの呼び掛けにも反応が無いらしい。

 

「こんなこと、お前に頼むのは癪なんだがよ…あたしにはどうしてやることもできねぇんだ!だから頼む!八幡を助けてやってくれ!頼む!」

 

「わかった!絶対に助ける!」

 

でも、ハチ君の事だから絶対に一筋縄ではいかない。

まずは情報を集めないと。

 

***

 

まずは、ハチ君が様子がおかしくなる前に訪れていた二課に向かう。

でも、クリスちゃんに聞いてもどこに行ってたかまではわからないとの事。

誰か見かけた人とかいないかな?

 

師匠や友里さん、藤尭さんに聞いてみたけど、その日はハチ君を見ていないとの事。

 

「比企谷君ですか?研究室に行ってたと思いますよ」

 

緒川さんから情報を貰う。

研究室、了子さんのところだね!

 

「…あなたも当事者だし、特別に話すわ」

 

…了子さんからの話は衝撃的だった。

なるほど、ハチ君はこの話を聞いて様子がおかしくなったんだ。

 

彼に伝えたい想いが胸から込み上げてくる。

いてもたってもいられなかった。

早く、一刻も早くこの想いを彼に伝えなきゃ!

 

「あ、おい!」

 

私は外で待機していたクリスちゃんを置き去りに走り出していた。

 

***

 

「ハチ君!!」

 

「…んだよ。お前とは一番顔を合わせたくねぇ…」

 

「了子さんから話は聞いた!」

 

「なら…わかってんだろうが…」

 

「わからないよ…私、バカだからさ、ハチ君が何考えてるのかなんてわからないよ」

 

「じゃあ、もうほっとけよ…帰れ」

 

「嫌だ!ほっとけない!帰らない!」

 

「…何がしてぇんだよ、お前は?」

 

「ハチ君を助けたい!!」

 

「…なら、余計なお世話だ。頼んだ覚えもねぇ…」

 

「関係無い!!()がハチ君を助けたいんだ!私の気持ちにハチ君の許可も何も必要無い!来て!!」

 

彼を連れて飛び出す。

途中、クリスちゃんとすれ違うけど、今は構ってられない。

 

「おい!どこまで連れて行くつもりだよ?」

 

「ここなら…うん!」

 

「ハチ君…ううん、比企谷八幡君!私は私の想いがあなたを守っていたって聞いた時、嬉しかったんだよ?」

 

「…俺はうれしくねぇ、余計なお世話だ。返せるあてもねぇのに貰う訳にいかねぇんだよ」

 

「返して欲しくてやった訳じゃない…って言っても、あなたは納得しないよね?」

 

「あぁ…納得できねぇ。一人で立たなきゃいけねぇ、一人で立つのが当たり前なのに、ずっと誰かに立たせて貰ってたなんて、納得行く訳ねぇだろ」

 

「じゃあ、一人で立ってみせてよ!」

 

「………は?」

 

「借り物の想い、借り物の歌で立っているふりをするのは、おしまい!君の想い、君の歌で立ち上がってみせてよ!比企谷八幡!!」

 

~Balwisyall Nescell gungnir tron~

 

彼の胸のガングニールは応えない。

当然だ。私は伝えた。

私は彼を守りたいんじゃない。

 

私は、彼の隣に立ちたいんだ!!!

 

そうして、彼は少し驚いた後、頭をガシガシ掻いて、呟くように口ずさむ。

 

~Granzizel bilfen gungnir zizzl~

 

「やっぱり、歌えるんじゃん?」

 

「…うるせぇ」

 

彼が目を反らす。

うん、私、やっぱりこの人が好きだ!

 

「それじゃあ、今までの全部!私にぶつけてきて!!」

 

「チッ!もうどうにでもなれ!」

 

…それから、しばらくの間、彼と殴りあった。

けど、そろそろ私も彼も限界。

まだだ、私はまだ彼に大事な事を伝えてない!

 

「ハァ…ハァ…次が最後みたいだね?」

 

「ゼェ…ゼェ…引きこもってた人間にいきなりこれはしんどいっつぅの…」

 

ようやく調子が戻ってきたね。

 

最後、この想いを歌に、拳に、全部乗せて彼に伝えなきゃ!

開放全開!いっちゃえ!ハートの全部で!!!

 

「比企谷八幡君!!私は!あなたの事が!好き!でぇぇーーーす!!!」

 

「んなっ!!?」

 

私の拳が、胸の想いが、彼に突き刺さる。

私、ちゃんと伝えれたかな?

 

***

 

彼と二人、大の字で寝転がる。

地面が好きすぎる事に定評のある私だ。

汚いとかはあまり気にならない。

 

「お前、最後の何だよ?ビックリして、モロに喰らっちまったじゃねぇか…」

 

「あれが、嘘偽り無い私の気持ちだよ?」

 

そう答えるとそっぽを向いてしまう。

かわいいなぁ。

 

「あ、でも今すぐ付き合って、とかそういうんじゃないよ。ハチ君も色々あって、気持ちの整理つかないだろうし」

 

「…おう、正直いっぱいいっぱいなんだよ。もうちょっと俺を労れよ?」

 

「はいはい。じゃあ、帰ろっか?」

 

「…後で戻るから、先帰ってろ」

 

「うん、待ってるね?」

 

ああは言ったけど、ハチ君にも色々あるんだろう。

結局、最後はハチ君自身が折り合いをつけるしかない。

私にできるのは、ここまでだ。

 

帰路、振り回されてようやく追い付いたクリスちゃんと合流する。

 

「ハァ…ハァ…どこ行ってたんだよ?」

 

ごめんね?

忘れてたとは言いにくいなぁ…

 

「それで、あいつは、八幡は大丈夫なのか!!?」

 

「後は、ハチ君次第だけど、たぶん大丈夫じゃないかなぁ?」

 

「よかった…本当によかった」

 

…改めて、ライバルの容姿や仕草を見る。

むむむ、強敵だなぁ、私も頑張らないと。

 

そうやって、この勝負だけは誰にも負ける訳にいかないと決意を新たにしたのであった。




途中の会話でモノローグが少ないのは、彼女なら思うだけでなく、直接言葉に出すだろうと思い、少なくしたりしてます。

その結果、いつもより若干短くなってしまいました(汗)

色々試行錯誤してみましたが、楽しんで頂けていれば幸いです。


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第十一話

前回から間が空いてしまいました。

本当についてこれる奴だけついてこいなお話なんですが、こんなに沢山の人に読んで頂けて感謝です。

では、駄文ですがお付き合いください。


そうだ。私は彼女を応援すると決めた。

 

たとえ世界を敵に回すことになろうとも――

この邂逅が仕組まれた物であったとしても――

この身体が彼女に塗り替えられてしまったとしても――

彼女の想い人にどのような理由があったとしても――

 

恋する乙女の想いを蔑ろにしていい訳が無いのだから

 

***

 

立花から告白された。

正直どうしていいかわからん。

いまだに、自分が彼女の隣にいていい人間とは思えないのだ。

 

そう、今まで自分がやってきたことを考えれば、俺はあのまっすぐな少女の隣にいてはいけない。

そう、誰が赦そうとも、他でもない比企谷八幡が赦せる筈が無いのだ。

 

結論は出ている。

出ている筈なのに何故こうも後ろ髪を引かれる?

 

いつから自分はこんなにも弱くなってしまったのだ?

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

結局、自分の心に整理など付かず、半端な想いのまま、帰路に付くことになった。

 

…そう言えば、フィーネさんの計画決行って明日だったな。

 

***

 

「八幡!あのバカから聞いたけど、もう大丈夫なのか!!?」

 

帰宅早々、雪音に問い詰められる。

 

「大丈夫かどうかでいうと大丈夫じゃねぇよ…だから、今すぐ離れてくれ。近い」

 

「良かった…大丈夫みたいだな!」

 

雪音さん?人の話聞いてた?

それより、フィーネさんの方何とかしなきゃいけねぇんだよ。

 

「あー…少し真面目な話していいか?」

 

「?おう、あたしは構わねぇぞ?」

 

「今からフィーネさんを説得に行く。もし俺が今日中に帰って来なかったら、小町を避難させてお前も逃げてくれ」

 

「はぁ!?お前何言ってんだ!?ただでさえ狙われてたってぇのに1人で行くなんて…自殺行為じゃねぇか!?」

 

「どっちにしても、今からじゃ俺1人じゃねぇと間に合わねぇんだ。お前らが来て、下手に刺激する方がまずい」

 

「…本当に大丈夫なんだろうな?」

 

「確証はねぇけどな」

 

「…まぁ、信じて待ってやるのも嫁の務めだ。信じてやるよ」

 

「…お前、本当にいい女だな」

 

俺なんかには勿体ない。最高にいい女だ。

 

「へへ、あったりめぇだ!今さら気付くなんて遅えよ!」

 

そう言って微笑む彼女は、本当に見惚れてしまう程のいい笑顔をしていた。

 

***

 

二課の研究室のドアを開ける。

 

「来たか…立花響が訪ねて来た時から、もう一度君が来るような気がしていたよ」

 

「そりゃどうも…」

 

行動が読まれている?

罠があると見た方がいいか?

 

「大方、私を止めに来た、といったところだろう?」

 

「まぁ、そうっすね。ただ、その前に具体的に何をするつもりなのか聞きたいっすね」

 

フィーネさんがこちらに向き直す。

 

「月を破壊する」

 

は?月を?何で?

 

「月にはバラルの呪詛という名の呪いを振り撒く遺跡がある。それを破壊し、本来、人が持っていた相互理解能力、統一言語を取り戻す」

 

急に話のスケールが爆上がりして意味がわかんねぇんだけど…

 

「そもそも、君は私の事をどう認識している?」

 

「…フィーネって名を自称する櫻井了子さん?」

 

「…あながち間違いという訳でも無いのが腹立たしいな…」

 

え?違うの?

てっきり、櫻井さんが中二的な何かを患ってるんだと思ってたんだが…

 

「私は先史文明時代に巫女を務めていた。何度も転生を繰り返し今に至っている」

 

転生とか先史文明時代とかちょくちょく俺の黒歴史を刺激する単語が出てきたな…

くっ!鎮まれ俺の右手!

 

「…何だその目は?…まぁいい。私が元いた時代には、人は統一言語を利用して、完全なる相互理解が出来ていた。だが、ある日突然、あのお方によってそれが奪われた。それがバラルの呪詛だ」

 

…完全なる相互理解だと?

ハッ、笑わせる。そんなものはあり得ない。

そんな()()、ある訳が無い。

 

「解るか!?統一言語を使い、あのお方に恋心を抱いた私に対して、あのお方はそれを一方的に奪ったのだ!赦せる筈が無いだろう!?」

 

フィーネさんの口調が強くなる。

それがあなたの目的ですか…事実であれば、同情の余地もあるし、統一言語とやらに興味が無い訳でも無い。

 

…しかし、

 

「月を破壊した事による被害はどの程度なのでしょうね?」

 

「…破壊そのものによる被害と、その後の混乱で人類の八割は失われるだろうな」

 

そう、()()()()()()()人類の八割に犠牲になれと言っているのだ。

確かに人同士の完全なる相互理解が出来るのであれば、それは理想だし、本物だ。

だが、その為に必要な犠牲が人類の八割であれば、到底釣り合う内容ではない。

ずっと欲していた物が、そんな犠牲の先にしか得られない物であるなら、そんな物はいらない。

俺が欲しい物は、そんな見せかけの作り物では無い。

俺が欲しい本物は、まっすぐな少女がまっすぐなままであれる世界でなくては意味が無い。

 

「なら…止めるしか無いっすね」

 

「…だろうな。それが普通だ。協力しようなど、普通であれば狂人の所業だ」

 

?何だこの違和感…何を見落としている?

何故そこで協力なんて単語が出てくる?

 

「だが、準備してきたと言っただろう?ここまで話したのだ。君自身も計画の一部とは思わなかったか?」

 

!?しまっ…

フィーネさんにスプレーのようなものを吹きかけられ、急激に虚脱感に襲われる。

 

「アンチLiNKER…眉唾物だと思っていたが、融合症例の君には高い効果が出ている様だな?」

 

フィーネさんがゆっくり近付いてくる。

…このアラサー、やっぱり俺の身体を狙ってたんじゃねぇか…

 

「さて、君には最後の実験に付き合って貰うぞ?」

 

フィーネさんの笑みが、強くなる。

 

薄れ行く意識と共に、脳裏に浮かんだのは、不思議と、あのまっすぐな少女の笑顔だった。




それぞれの第0話が一巡したと言ったな?
すまんな。あれは嘘だ。

このお話の上で、重要な意味を持つ彼女の存在は、この回まで伏せておきたかったのです。


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第十二話

体調と相談になってしまうので書ける時に書いておきます。

では、駄文ですがお付き合いください。


目が覚めると、どこかの部屋に閉じ込められていた。

 

身体に少し倦怠感は残っているが、拘束はされていない?

逃げてくれと言っているような物なのだが…

 

『君にはそこで絶唱を歌って貰う』

 

スピーカーからフィーネさんの声が聞こえる。

 

「断ると言ったら?」

 

『私はノイズを操る完全聖遺物を持っている。クリス1人で何処まで護りきれるでしょうね?』

 

…もしかしなくても小町の事だろう。

 

「降参だ。小町には手出ししないでくれ」

 

『この先、生き延びれるかもわからん者の為にご苦労な事だな。では歌いなさい』

 

待ったも心の準備も無しかよ…

全く、ぼっちが歌うなんて間違ってるだろ…

 

~Granzizel bilfen gungnir zizzl~

 

あいつから貰ったシンフォギア…

こんな事の為に使う力じゃ無い筈なのにな…

 

~Gatrandis babel ziggurat edenal~

 

体が熱い。血が沸騰してるみたいだ…

 

~Emustolronzen fine el baral zizzl~

 

あいつなら…あのまっすぐな少女なら、この力をどう使うんだろうな?

ふと、そんな事を考えてしまう…

 

~Gatrandis babel ziggurat edenal~

 

負荷に耐えきれず、口から血が流れる。

 

~Emustolronzen fine el zizzl~

 

これが…絶唱。

あの人が…天羽奏が命を燃やして行使した力の正体。

…最も、戦う覚悟も何も持ち合わせない俺が使えば、ただの暴走するエネルギーでしかない。

 

『これ程のエネルギーを行使して死に至らんとは、さすがは融合症例だと褒めておこう。このエネルギーでカ・ディンギルを発射する!』

 

褒められても全然嬉しくねぇな…

体はもうボロボロだっつぅの…

 

『せめてもの報酬だ。月が破壊される様を君にも見せてやろう』

 

外の様子がモニターされる。

夜に実行されているだけあって、周囲に人はいねぇみたいだな…

それとも、避難しているのか?

 

『~Gatrandis babel ziggurat edenal~』

 

…何でだよ…

 

『~Emustolronzen fine el baral zizzl~』

 

…小町と逃げろって言ったじゃねぇか…

 

『~Gatrandis babel ziggurat edenal~』

 

…何でお前が其処に居て…

 

『~Emustolronzen fine el zizzl~』

 

…何でその歌を歌ってるんだよ…雪音!?

 

モニターの先には、カ・ディンギルと呼ばれた、かつてリディアン音楽院であったであろう砲身の射線上に、いる筈の無い少女、雪音クリスの姿があった。

 

…そして、その儚き少女の歌は、月を破壊するエネルギーを僅かばかり反らし、少女自身はエネルギーに飲み込まれ、墜ちてゆくのであった…

 

***

 

『…思わぬ邪魔が入った。無駄な事を…次弾を打つ。もう一度歌いなさい』

 

…邪魔だと?無駄だと?

 

…ユルセナイ…

 

…アイツヲ…ムダダトワラウオマエヲゼッタイニユルセナイ!

 

体がどす黒い破壊衝動に塗り潰されていく。

今はただ、あいつを、大切な物を守る為に命を掛けた少女を無駄とせせら嗤う者を!

 

気付けば目の前の光景が外に切り替わっていた。

自分自身が何かをした覚えは無い。

だが今、そんな事は些細な事だ。

 

「チッ!こんな時に暴走だと?やはり完全聖遺物でなければ動力制御は難しいか。今からでもネフシュタンを」

 

「私がそんな事を許すと思ったか!?櫻井女史!!」

 

騒がしい。煩わしい。

邪魔をするなら全て打ちのめす。

 

「立花!」

 

…ウルサイ…

この腕が、彼女の胸を貫くと同時に抱き締められる。

 

「これは…束ねて繋ぐ力の筈だろ?」

 

――影縫い――

 

「…立花、奏から継いだ力を、そんなふうに使わないでくれ」

 

…オレハスベテハカイスル…

…ハカイしたい…筈…なの…に…

 

「…待たせたな」

 

「あくまでも一振りの剣であり続けるか」

 

「今日に、折れて死んでも、明日に人として歌うために…」

 

「風鳴翼が歌うのは、戦場(いくさば)ばかりで無いと知れ!!」

 

…そして、一振りの剣は、天高く舞う翼となり、その身をもって、絶望の塔を打ち砕くのであった。

 

***

 

気付けば、動力室で倒れていた。

あの感覚は何だったんだろうか?

 

!今はそんな事より、状況だ。

途中から記憶が曖昧だが…雪音と…風鳴先輩は………

 

モニターを確認する。

その先には、例の鎧を着たフィーネさんと、地に臥せるまっすぐな少女の姿があった。

 

…お前まで何してんだよ…

ボロボロじゃねぇかよ…

 

モニターの先では、無防備に痛め付けられる少女の姿、スピーカーが壊れたのか、音声は聞こえない。

クソッ!さっきみたいに外に出れないのか!?

 

胸の歌は響かない…

普段は五月蝿いくらいな癖して、何で今、何も出来ねぇんだよ!!

 

あれだけの事があって、更にお前にまで何かあったら、俺は一生、俺自身を赦せなくなる。

頼む!今だけでもいい。頼む!!

 

!待てよ、あちらの音は無理でも、こちらの音声をあいつに届けれたなら…

 

急いで動力室を出る。

と、目の前に見知った顔が

 

「八幡!?どうしてここに!?」

 

小日向、お前こそ何やってんだよ?

 

「響に歌を届ける為に、動力室を目指してたの」

 

小日向の目的は、この部屋だったらしい。

急いで、ダウンしていた設備の電源を起動し、小日向達の避難場所まで移動する。

 

「比企谷君!!無事だったか!?」

 

「お兄ちゃん!!」

 

避難場所には、腹に包帯を巻いた司令や小町がいた。

 

「話は後だ。今はあいつに歌を!」

 

***響視点***

 

何もかも終わってしまった…

翼さんも…クリスちゃんも…もういない…

 

ハチ君は…愛しい彼ならこういう時、どうするんだろう…?

 

了子さんが何か言っているんだけど、何も頭に入ってこない。

 

~~♪~~~♪

 

「何だこれは?何処から聞こえてくる?この不快な…歌……歌……だと?」

 

「聞こえる…みんなの声が…」

 

みんなの歌が

 

「良かった…私を支えてくれてるみんなはいつだって側に…」

 

「みんなが歌ってるんだ……だから!」

 

「まだ歌えるっ!」

 

「頑張れるっ!!」

 

「闘えるっ!!!」

 

みんなが私を支えてくれている!

だったら私は、何度だって立ち上がってみせる!!

 

「まだ闘えるだとっ!?何を支えに立ち上がる?何を握って力に変える?鳴り渡る不快な歌の仕業か?」

 

「そうだ、お前が纏っている物は何だ?心は確かに折り砕いたはず…なのに、何を纏っている?それは私が作った物か?」

 

「お前が纏うそれは一体何だ!?」

 

「何なのだ!!?」

 

私を含め、光の柱が3つ。

良かった…二人とも無事だったんだね!

 

もう諦めたりしない!

奇跡だって手繰ってみせる!!

私は生きるのを諦めない!!!

 

「シィィィンフォギアァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」




ラストのBGMは、当然ですがSynchrogazerを脳内再生して頂ければ。

原作の熱量を少しでも表現出来ていれば幸いです。

屈指の名シーンなので、無理矢理ビッキーに視点変更してまでして書いてしまいました。


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第十三話

作者が入院したり、ビッキーのハイライトが職務放棄したり、クリスちゃんが魔改造されたり、防人がラーメン食べたり、マリアさんが変態化したり色々ありましたが、無事に無印完結まで書けました。

文章力が色々足りてない拙文を沢山の人に読んで頂けて感謝です。

では、駄文ですがお付き合いください。


「響き合うみんなの歌声がくれた、シンフォギアでぇぇぇぇぇぇっ!!!!」

 

結論から言うと今しがた、戦いが終わった。

フィーネさんがノイズを大量に放ったり、色々したんだが、エクスドライブという名の奇跡を纏う立花達のトンデモパワーで悉く打ちのめした。

最終決戦っぽいし、巨大化したり、ビーム出したりするかと思ったんだが、そんな事も無かった。

あの目のやり場に困る鎧も完全聖遺物らしいのだが、相手が悪かったとしか言い様が無い。

 

ああなった立花達に太刀打ちできるのは、たぶん横にいる人外くらいだろう。

ほんと、腹に穴空いてんのに対ノイズ用の分厚いシェルターの壁を素手で易々と破壊するとか何なの?この人…

本当に人にカテゴリしていいんだよね?

 

人って理解の範囲を超える事が起きると立ち尽くすしか出来ねぇんだな…

 

改めてそう思った。

 

***

 

立花がフィーネさんに肩を貸して戻ってくる。

 

「このスクリューボールが」

 

雪音が呆れた口調で呟く。

雪音さん?この場面でそんな発言するあなたも人の事言えないと思うよ?

俺に言われたく無い?ごもっとも!

 

「みんなに言われます。想い人にはアホの娘認定されてますし…」

 

ふと、立花が視線をこちらに向ける。

思わず、目を逸らしてしまう。

恥ずかしい事言うんじゃねぇよ…

 

「立花…自分の強さに胸を張れ」

 

風鳴先輩?この子すぐ調子乗っちゃうんであんまり甘やかさないでくださいね?

 

「もう終わりにしましょう?了子さん?」

 

「…私はフィーネだ…」

 

…口を出すとしたら、ここだな。

 

「確かにあんたはフィーネだ」

 

「ハチ君?」

 

「だが…櫻井了子の話が聞けてない。いるんだろ?あんたは何を想ってフィーネさんに協力してたんだ?」

 

最初は違和感でしか無かった。

だが、今は確証がある。

それに、ここで違いますって言われても、俺の黒歴史が少し更新されるだけだ。

…問題無い。無いったら無い。

 

「…いつから気付いていたの?」

 

フィーネさんの目の色が変わる。いや、櫻井さんか。

良かった…的外れな追及じゃ無かったみてぇだな…

 

「"協力"なんて単語をフィーネさんが使ってたあたりっすかね?」

 

「そう…彼女がそんな事を…ね」

 

やはり彼女の体には別人格が同居しているという事なのだろう。

 

「私は彼女の恋を応援するって決めたの…だって、恋する乙女が想いを伝える事も出来ないなんて、悲しすぎるじゃない?」

 

…いや、精神年齢数千歳って、乙女にカウントしていいのか?

 

「…何よ、その目は?女は何歳になっても、乙女なのよ?」

 

「…俺のこの目はデフォっすよ…」

 

…さすがはアラサー、鋭いな…

 

「でも…彼女の…いいえ、私の敗因は、自分の想いを優先して、他の乙女の恋心を敵に回してしまった事みたいね」

 

そう言って、立花に目を向ける櫻井さんは憑き物が落ちたかのように優しい顔をしていた。

 

「…だけどね?」

 

?何だ?

 

()()()まだ諦めてないの!」

 

そう言って、天に向かって鞭を伸ばす。

同時に立花が櫻井さんに拳を向ける。

 

「私の勝ちだ!」

 

櫻井さんの目の色がまたフィーネさんに変わる。

 

「月の欠片を落とす!」

 

このアラサー(アラウンドサウザンドオーバー)…まだ諦めて無かったのかよ!?

 

「私の悲願を邪魔する禍根は、ここでまとめて叩いて砕く!」

 

「私は何度だって甦る!私は永遠の刹那に存在し続ける巫女、フィーネなのだぁぁぁぁっ!!!」

 

トンっと、軽い拳が彼女を貫く。

 

「うん、そうですよね」

 

「どこかの場所、いつかの時代、私の代わりに世界のみんなに伝えてください。世界を束ねるのに力なんて必要無いって事を!」

 

そうだ。つまるところ、彼女の誤算はただ一つでしかない。

 

「私には出来ないから…私の代わりに了子さんが伝えてください!」

 

立花響は、どんな時でも、どんな場所でも、誰が相手でも、まっすぐなのだ。

 

「…本当に、放っておけない子ね」

 

目が櫻井さんに戻る。

 

「胸の歌を信じなさい」

 

優しい微笑みを残して、彼女は塵になっていった…

 

***

 

月の欠片が墜ちてくる。

藤…藤…藤なんとかさんの話では、直撃は避けられないらしい。

こんな時でも、やはり胸に歌は響かない。

自分の無力が嘆かわしい。

こんな時こそ、価値の無いこの命の使い時だというのに…

 

「何とかする!」

 

立花が言う。

待てよ…お前…今度こそ…

 

「いや、それには及ばん!」

 

いきなり、人外が割り込む。

いや、いくらあんたでも、あの質量は無理だろ…

………無理だよね?

 

「所々破損しているが、まだ使えそうだな?了子君…2年来のネフシュタン、返して貰うぞ?」

 

そう言って、司令が例の鎧を纏う。

うん、見た目的に色々とギリギリだな…

 

「二度と使えなくなろうが構わん!世界の危機を子供ばかりに押し付けて、大人が何も出来ないなんて…カッコ悪くて仕方ないんだよ!!」

 

そう言って、鞭を最大限に伸ばして、月の欠片をぐるぐる巻きにして、豪快に投げ飛ばす。

 

月の欠片は地球の重力以上のパワーを受けて見事に外宇宙に向かって飛んで行った…

 

くどいと思うが、人って理解の範囲を超える事が起きると立ち尽くすしか出来ねぇんだな…

 

OTONAってすごい、改めてそう思った…

おそらく、その場に居た司令以外の全員が、俺と同じ気持ちだったと思う。

 

櫻井さん、フィーネさん、やっぱり、統一言語なんて無くたって人は分かり合えるじゃねぇか…

 

***

 

あれから3週間…

 

変わった事と言えば、ようやく、雪音の住居が手配された。

雪音と小日向は最後まで抗議していたが、ハイライトさんが仕事しない立花の前では無力だった。

小日向さん?ほんと、いい加減にしてね?

俺相手だと何やってもいい訳じゃないんだよ?

 

例の仏壇は、司令が軽々しく片手で担いで持って行った。

…やっぱあの人、同じ人類とは思えねぇわ。

金剛類とか、鬼の貌を背中に持つ一族とか言われた方が納得いくんだけど…

しかし、そうなると風鳴先輩も同じになるのか…

 

まぁ、これで、ようやく小町との二人暮らしに戻れるな。

雪音がいると、無防備過ぎて色々とまずいんだよ…

その…男子高校生の理性的にな…

わかるよね?

 

「あー…お兄ちゃん?」

 

小町が声を掛けてくる。

どうした?マイエンジェル?

 

「言いにくいんだけど…今日から住み込みのホームヘルパーさんを雇うように脅され…じゃ無かった、雇う事になったの…」

 

?確かに小町に掛かる家事の負担は馬鹿にならないし、両親からの仕送りと二課の給料で生活に余裕もあるから、人を雇うのは構わんのだが…何だ?

何か不穏な単語が聞こえたけど、気のせいだよね?

 

「ヘルパーさんの…櫻井さんです」

 

は?

 

「はぁい♪デキる女と噂の櫻井了子、34歳です♪よろしくね?」

 

あんた、死んだんじゃ無かったのかよ!?

確かに塵になって消えていったじゃねぇか!?

 

「何年生きてきたと思っている?死んだと欺く事など容易い事だ」

 

急に目の色が変わり、フィーネさんが出てくる。

ほんと、心臓に悪いからやめてくれ。

 

「奴らには、当然内緒にしてくれるな?」

 

そんな事を平気で言ってくるあたり、あまり懲りてないようである。

 

はぁ…特大級の厄介事じゃねぇか…

 

そんな事を思いはしたが、それでも、彼女が生きていた事自体を悪いなどとはどうしても思えなかったのである。

 

「あ、アレ見てたけど、弦十郎君とは絶対に敵対したく無くなったから、絶対の絶対に内緒にしてね?」

 

俺もだよ、チクショウ…

 




これにて無印完結です。

最後、早足な上にトンデモ展開でしたが、色々とシリアスの連続は作者の体が持ちませんでした…

そして、彼女が生存しているため、既にGのお話ほぼオリ展開化が確定しています…
初期のストーリープロットからこうなので、ここは仕方ないです


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番外 マリア・カデンツァヴナ・イヴの葛藤

抜糸はまだですが、無事、退院しました。

休んでいる間にUA2万、お気に入り300突破しましたので、感謝の番外編

本編とは関係ない話で短いです。

マリアさんフライング登場ですが、色々とひどいキャラ崩壊物です。

苦手な方はご注意ください。
※本編とは本当に関係ないのでご安心ください。


私、マリア・カデンツァヴナ・イヴは迷っている。

 

今、私は彼の家にいる。

今日は小町ちゃんに招かれ、彼の家にお邪魔している。

彼は、着替えてくると言って、席を外している。

 

そして、私の右手には彼の下着が握りしめられている。

 

くっ、うろたえるな!うろたえるな!!

 

ここから私が取れる手はさほど多くない。

そうだ、ここは冷静に、Coolに対応するだけだ。

 

①嗅ぐ

彼をこの身で直接感じられる。

一見、最善の手に思えるが、もしその光景を誰かに見られれば、変態の烙印を押され、人として終わる諸刃の剣だ。

 

魅力的ではあるが、保留。

 

②被る

嗅ぐ程の刺激は得られないが、帽子と間違えたという言い訳が効く。

 

…しかしこれは妥協案であるのは否めない。

 

③履く

己で上書きしてしまうため、使い捨てになってしまうが、その分、服で隠してしまえばバレる心配はほぼ無いと言っていい。

 

落ち着いて、情報を整理しよう。

…やはり、③が最善であるように思える。

セレナ、私に力を!!

 

――マリア姉さん

 

セレナ!?

 

――マリア姉さんのやりたい事は一体何?

 

セレナ!?でも、私は…

 

――マリア姉さん、生まれたままの感情を隠さないで

 

セレナ…そうだ!私はずっと己を偽っていた!

己を偽り続けてきた私だが…自分の気持ちに素直になれという事なの!!?

そうであるなら…私は…私は…嗅ぎたい!!

 

そうだ、たとえ人として終わろうと、終わりの名を持つ者を騙った私だ!

今さら何を臆する事があろうか!

振り返らない!全力疾走だ!!

ついてこれる奴だけついてこい!!

 

「いや、人の下着握りしめて何やってんだよ…」

 

「なっ!!?」

 

ただでさえ濁った目をしている彼だが、心なしか、二割増しくらい濁った目をしているように見える。

…しかし、いつの間に?

 

「ななななな何の事かしら!?」

 

うろたえるな!うろたえるな!!

昨日食べた吉○家の牛丼を思い出せ!

満たされないまま、人として終わるのだけは避けなければ!

 

「まずはその右手の物を離そうか?」

 

「みみみみ右手!?ちょっと何言ってるかわからないわ!見間違いじゃないかしら!?」

 

よし!これで押し通せる!

調がいる、切歌がいる、マムもセレナもついてる。

皆がいるなら、これくらいの奇跡…

安い物!!

 

「いや、何隠してんだよ…離せって!」

 

「この手!簡単には離さない!!」

 

「ちょ…力強えぇな!!?」

 

「何が起こっているの!?こんな事ってありえない!!」

 

「いや、それはこっちの台詞だっつぅの…」

 

***

 

「で?本当に何してたんだよ…?」

 

彼の前で正座させられている。

くっ、こんな屈辱的な体勢で濁った目で見下されてゾクゾクなどしていない。

断じて!していない!!

 

「その…下着がありましたので、洗濯をしようかと…」

 

いける!!これなら私の名誉は守られる!!

そうだ!万策尽きたとしても一万と一手目を探し出せ!!

 

「いや、洗濯機に入れてたよね?わざわざ取り出す意味がわからん」

 

駄目でした…

 

「ったく、雪音といい、あんたといい、何なの?」

 

雪音クリス…まさか同志だったとは…

しかし、何か反論しなければ私はこのまま変態扱いされてしまう!

なのに!その…濁った目を向けられると、反論する気が霧散してしまうのだ。

私は一体どうしてしまったのだ!?

私は、その程度の覚悟しかできてなかったというの!?

 

「変態」

 

「はう!」

 

彼の一言で、全身に電流が走る。

これは駄目だ、これはいけない。

私の中の理性が警戒警報を発している。

 

私は今、開けてはいけない扉を開けようとしている。

…なのに、止められない。

止めることが出来ない。

 

「ちょ!!?何喜んでんだよ!?マジもんの変態じゃねぇか!?」

 

「よ…喜んでなどいないわ…ハァ…ハァ…」

 

そうだ!らしくある事が強さであるというなら…

 

「い…いくら罵声を浴びせようと、む、無駄よ…ハァ…ハァ…」

 

「説得力が皆無なんだが…」

 

「私は、洗濯物を洗濯しようとした…この事実だけは信じて欲しい」

 

「えぇ……」

 

私は、弱いまま、この呪いに叛逆して見せる!!




入院のストレスでやった。後悔はしていない。

こんな話を感謝の番外編に選ぶ作者の頭はどうかしてますね…


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番外 フィーネでも恋がしたい!

絶唱しないを書くつもりが…

今日はエイプリルフールじゃねぇか…という事で

短いし完全にお遊びです。後悔はしていない。
やはり作者の頭のネジは数本行方不明みたいです。
誤解の無いように言っておきますが、作者はマリアさん大好きデスよ?

登場人物紹介
マリア・カデンツァヴナ・イヴ(21)
元フィーネ(自称型)。恋がしたい

櫻井了子(34)
オリジナルフィーネ。1万年と二千年前から恋してる

暁切歌(15)
現役フィーネ(勘違い型)。調大好きデス。黒歴史は塗り替えてナンボデス!

月読調(15)
現役フィーネ(無自覚型)。切ちゃんLOVE勢。皆を守る為なら、手伝ってもいい。

比企谷八幡(17)
元中二病。勘違いして告白して振られちゃうまであるからやめてね?

冒頭ナレーション
CV大塚芳忠


皆さまは、「フィーネ」という言葉をご存知だろうか?

 

思春期を迎えた、中学校2年の頃に掛かってしまうと言われている恐ろしくも愛すべき病で、形成されていく自意識と夢見がちな幼稚性が混ざりあって、可笑しな行動を取ってしまうという、アレだ。

 

突然、

 

「私は永遠の刹那に存在し続ける巫女、フィーネなのだぁぁぁぁっ!!!」

 

などと叫んでみたり、

 

「まだ闘えるだと?何を支えに立ち上がる?何を握って力に変える?鳴り渡る不快な歌の仕業か?」

 

「そうだ、お前が纏っている物は何だ?心は確かに折り砕いたはず…なのに、何を纏っている?それは私が作った物か?」

 

「お前が纏うそれは一体何だ!?」

 

「何なのだ!!?」

 

などと質問責めにしてみたり…

 

さて、この少女、マリア・カデンツァヴナ・イヴも、過去にフィーネを患っており、自らの事を

 

「私達はフィーネ、そう、終わりの名を持つ者だ!!」

 

と名乗り、決め台詞は…

 

「私の歌を、全部世界中にくれてあげる!!振り返らない!!全力疾走だ!!」

 

「あぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい」

 

「忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ」

 

このように、思い出すだけでも悶えそうになる恥ずかしい病なのである。

 

OP曲「Sparkling Daydream」

 

***

 

最近、気になる男の子が出来た。

彼は、顔のパーツパーツは整っているのだが、濁った目が全てを台無しにしている、そんな年下の男の子だ。

 

こう、何というか、その斜め下な発言と自虐的な態度が母性本能をくすぐられるのだ。

 

しかし、私には、彼も知っている恥ずかしい過去がある。

 

そう、フィーネだ。

あの時、あんな事をしていなければ、今頃、彼と恋仲だったかもしれない。

 

…でも、あの時の私は、あれが最善だと信じていたのよ…

 

思えば、彼の前では、常にフィーネ全開だった…

冷静に考えれば、軽く引くレベルだ…

 

―――――――

回想1

「ついてこれる奴だけついてこい!!」

 

「いや、俺には無理っすよ…」

 

回想2

「うろたえるな!うろたえるな!!」

 

「いや、勢いで誤魔化そうとしても無理だからね?」

 

回想3

「これが私のガングニール!何物をも貫き通す、無双の一振り!!」

 

「………」

―――――――

 

はぁ…穴があったら入りたいわ…

気が付けば、いつの頃からか彼の口調から敬語が消え失せていた…

距離が近くなったと喜ぶべきか…

否!馬鹿にされてると嘆くべきね…

 

あっ、油断したらまたフィーネが…

 

***

 

ここは、私の可愛い妹分達に相談してみよう。

主に、彼が私をどう思っているのか知りたい。

 

「あの自称ぼっちデスか?マリアはお母さんみたいだって言ってたデスね。私もそれには同意デスよ?」

 

ぐっ…いきなり私のハートを抉る発言が…

お姉さんならまだしもお母さんって…

私はそんな年齢じゃないわよ!?

 

「後、翼さんに感化されて発言が防人になってるって言ってた。私もそれはやめた方がいいと思う」

 

もうやめて!!

私のライフはもうゼロよ!!?

何よ!?あの剣の発言、ちょっとカッコいいなって思うくらいいいじゃない!?

 

「「でも」」

 

 

「「本質は、とても優しい人だって言ってた(デス)」」

 

あぁ…その言葉だけでも私は救われた。

彼が、そんなに私の事を見てくれていたなんて…

こんな事で…私の痛々しい過去の呪いが消える訳では無い。

だけど歌がある!!

 

セレナ…私、まだ闘えるわ!!

 

でも…彼のあの鉄壁は金城、散発を繰り返すばかりでは突破できない。

 

ならば!告白の一点に全エネルギーを集中し、鎧通すまで!!

 

そうだ!らしくある事が強さであるなら…

私は弱いまま、この呪い(フィーネ)に叛逆してみせる!!

 

振り返らない!!全力疾走だ!!

 

世界最高のステージの幕を上げましょう!!

 

明日の為にも、今日の夕食はすき焼きよ!!!

 

ED曲「INSIDE IDENTITY」

vo.マリア・カデンツァヴナ・イヴ、暁切歌、月読調




マリアさんの発言をちょこっと変えて組み合わせるだけでも、割とお話になるという不思議。

作者の手抜きでは断じて無いです(笑)

この世界線のマリアさんの恋の行方がどうなるか気になるところですが、番外の一発ネタなので続くかは不明。

後、中二病ED曲のFIS組バージョンは即興の思い付きなんですが、想像したらマジで聴きたいデス


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幕間 絶唱しないシンフォギア

予告通り絶唱しないです。

日常系短編の組み合わせになります。

では、駄文ですがお付き合いください。


*** クリスの新居 ***

 

今日は雪音の新居に招かれた為、小町と一緒にお邪魔している。

ちなみに断ろうとしたら、小町に「馬鹿、ボケナス、八幡」と罵倒された。

ちょっと待て、八幡は悪口じゃねぇだろ…

……違うよね?

 

しかし、ぼっちが女子の部屋に入るとかハード過ぎるだろ…なんかいい匂いするし…

雪音相手に今さら?バッカそこは気分的に全然違うんだよ…

 

「八幡?急に黙り込んでどうしたんだ?」

 

「い、いや、にゃんでもにゃいぞ」

 

噛んだ、死にたい。

俺の猫言葉とか誰得だよ…

 

「?まぁいいや、コレ、この家の合鍵渡しとく」

 

「はぁ!?おま、俺に渡してどうすんだよ!?」

 

「?嫁の家なんだから、旦那が自由に入れなきゃおかしいだろ?未来も言ってたぞ?」

 

お前まだそんな事言ってんのかよ…

後、小日向、お前は絶対に許さない。

絶対だ!

 

「それに…」

 

?何だ?

 

「もう八幡以外全員持ってんだよ…見ろよあの一帯…全部あのバカの私物なんだよ…」

 

雪音…お前…プライベートとか無いのか…

 

少しだけ、雪音に優しくしてやろうと思った。

 

*** 防人とラーメン ***

 

急に風鳴先輩から呼び出しを受けた。

こういう時は間違いなく、例のアレだろう。

 

「急にすまんな。比企谷」

 

「いえ、構わないっすよ」

 

この人は少し距離が近すぎる感じはするが、立花や雪音のようにグイグイ来ないから、気が楽だ。

 

「で、今日は?」

 

「あぁ、天○一品のこってりに挑戦だ!」

 

天一か…初心者にこってりはあまりオススメしないのだが…

 

「フフっ、あのドロドロのスープに弾力のある麺…私の中の跳ね馬が躍り昂るな!!」

 

楽しみにしてるみたいだし大丈夫そうだな。

やっぱり口調は何かおかしいけどな…

跳ね馬なんて単語久しぶりに聞いたよ…

 

風鳴先輩と二人、ラーメンを啜る。

相手は芸能人の為、カウンターは使えない。

ぼっち歴が長い為、俺的にはカウンターの方が落ち着くんだが、あまり目立つのも避けたいのだ。

しかし、よくよく考えるとラーメン屋に一人で行く事無くなったな…絶対この人ついてくるし

 

「うむ、今日のラーメンも素晴らしい!麺にスープが絡み付いてしっかり味を感じるし、具にチャーシュー、ネギだけじゃなく、メンマが付いてくるのも嬉しいところだ」

 

まぁ…楽しそうで何よりだ。

 

「ちょっと味を変えたくなったら、辛子味噌とラーメン出汁で調整するといいっすよ」

 

「何!?そういう事は早く言ってくれ!ほとんど食べてしまったではないか!?くっ、店主!おかわりだ!」

 

…結局、風鳴先輩はラーメンを3杯平らげた。

天一のこってり3杯とかマジかよこの人…

 

そして、それから、マラソンランナー並の走り込みをしている風鳴先輩の姿をよく見かけるようになった。

 

…やっぱりカロリーがね?

 

*** 響と393 ***

 

「響?どこに行くの?」

 

「未来?ハチ君のところだけど…」

 

「…私も行く」

 

あれ以来、ハチ君に会いに行く時は必ず未来がついてくるようになった。

私としては、二人きりでお話とかしたいんだけど…

二人きりになったらもしかして…えへへ♪

 

「響?顔が邪になってるよ?」

 

「うぇぇ!?私、そんなに顔に出てたかな!?」

 

「響は分かりやすいんだから気をつけなきゃだめだよ?」

 

そ、そうなのかな?

確かにもしそういう関係になったとして、女の子の下心とかが、ハチ君にバレてたらショックだな…

 

「うん、分かりやすいよ。だって、響の事で私に分からない事なんて無いもの。特に表情。喜怒哀楽はもちろん、他の感情だってすごい分かりやすいし、もちろん八幡だって気付いてると思うの。~~中略(10分くらいしゃべりっぱなし)~~後、八幡に対して響は無防備過ぎると思うの。男は誰だって狼なんだから、気をつけないとだめだよ?私?私ならもちろんOKだよ?響の全てを私なら受けとめてあげれる!」

 

「…ごめん、未来が何言ってるか全然わからないや…」

 

私、変わった子だってよく言われるけど、未来も大概なんじゃないかなぁ…

 

*** 比企谷さん家のフィーネさん ***

 

『例の○友学園問題のスキャンダルですが…』

 

こんなくだらん事で騒ぎ立てて、やはり人類とは愚かな生き物だな。

早急に統一言語を取り戻し、世界を一つに束ねなくては…

 

あ、このお煎餅美味しいわ。

やっぱり日本茶とお煎餅って合うわね。

今度、スーパーで安売りしてたら買い貯めしとこうかしら。

 

へー、あのイケメン俳優結婚するのね?

相手は…あぁ、あの棒演技の…

何が良かったのかしらねぇ?

こんな身で言うのも何だけど、私も早く結婚したいわぁ

それもこれも私が行き遅れてるのも全部あのお方のせいよ!

まったく、何のつもりなのかしら?

…でも、独身歴数千年って私、大丈夫なのかしら?

だ…大丈夫よね?…きっと…たぶん…

絶対あのお方に責任取って貰わないといけないわ!

 

あら、いけない、そろそろ小町ちゃんが帰ってくる時間ね。

洗濯物入れて掃除もしておかないと…

小町ちゃん、厳しいのよねぇ…

 

あ、カマクラちゃん、待って!!?

壁で爪研ぎしちゃダメよ!

ごはんの時間はまだだからもうちょっと待ってね?

ほら、私の膝で寝ててもいいのよ?

いまだに警戒の鳴き声は酷くないかしら?

私は怖くないわよ?

ほら、オモチャで遊んであげるから…

ふふっ、かわいいわね…

猫と一緒にいると、色んな事がどうでもよくなってくるわね…




次は思い付いてしまったのでOVA企画物的な幕間を書いてから、Gにいくと思います。


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幕間 小町主催!第1回お義姉ちゃんコンテスト

今回はOVA企画物的なお話です。

幕間なのでキャラ崩壊はしない筈

では、駄文ですがお付き合いください。


今日はクリスお義姉ちゃんたってのお願いで、ついに直接対決の場を設けたよ!

それに、ヘタレのお兄ちゃんの事だ。

放っておいたらいつまで経っても進展しなさそうだしね!

小町はお兄ちゃんに幸せになって欲しいのです!

 

「さぁ始まりました!第1回、小町のお義姉ちゃんコンテスト!司会はこの私、比企谷小町!審査員はお兄ちゃん、比企谷八幡でお送りします!」

 

「いや、何だよこの企画…帰っていい?」

 

「さぁ、それでは選手入場です!」

 

「小町ちゃん?お兄ちゃん悲しくなっちゃうから無視はやめてくれない?」

 

もう、うるさいよ?お兄ちゃん。

 

「まずは、この人。元誘拐犯で自称嫁と言って憚らない!テーブルマナーは矯正中!雪ぃ音、クリスゥゥ!!」

 

「あたし以外に八幡の嫁が務まる訳ねぇ!どいつもコイツも全部まとめてぶっ飛ばしてやる!」

 

「いや、紹介とか凝りすぎだろ…何なの、そのテンション?」

 

「続きましては、最速で最短でまっすぐに一直線に急接近!走り出したら止まらない!弾丸少女!立花ぁ、響ぃぃ!!」

 

「私、戦います!!ハチ君への想いなら、誰にだって絶対に負けない!!」

 

「お前ら並ぶとどっちが喋ってるかわかんねぇな…」

 

お兄ちゃん?メタいよ?

 

「続いては、ご存知この人!剣と鍛え抜いた歌姫!片付けられない女!風鳴ぃ翼ぁぁぁ!!」

 

「フッ、勝負と聞いては引き下がる訳にいかんな!で、これは何の催しなんだ?」

 

「おい!風鳴先輩主旨を理解してねぇぞ!?」

 

アレ?ちゃんと説明した筈なんだけど…おかしいなぁ…

 

「最後はこの人!立花選手の大親友!響が戦うなら私だって戦う!愛が重い女!小日向ぁ、未来ぅぅぅ!!」

 

「響は絶対渡さない!後小町ちゃん?後で話あるから」

 

ヤバっ、やりすぎちゃった…

 

「おい!あいつだけ絶対主旨違うだろ!?誰だよ、あいつ呼んだの!?」

 

***

 

「それでは、第1種目を発表します!」

 

「え?何?続けんの?もう割とお腹いっぱいなんだけど…」

 

もう、お兄ちゃんノリ悪いよ?

こういう時はテンションも大事だよ?

 

「第1種目は料理!お兄ちゃんが食べた時の反応でポイントが付与されます!」

 

「いや、審査員なのに俺が評価できねぇの?」

 

「だってお兄ちゃんに任せると嘘吐くじゃん」

 

「小町ちゃん?お兄ちゃん泣いていい?」

 

どうせ、みんなが傷付かないようにしたりするつもりでしょ?

小町分かってるんだよ?

でも、それだけじゃみんな納得しないだろうから仕方ないんだよ?

 

「さぁ、そうこうしてるうちに、トップバッターの料理が完成したみたいです!」

 

「ハチ君!自信無いけど…頑張って作ったよ!」

 

「響さんの料理は、おにぎり!シンプルながら、奥が深いですね!では早速食べて貰いましょう!」

 

「…かてぇ…」

 

「おぉーっと、これは超パワーで握ってしまったみたいですね…うーん…2ポイントってところですかね」

 

「そんなぁ…」

 

「歯が折れるかと思ったぞ…」

 

でも、全部食べるんだね?優しいなぁ…

ここにいるみんなはお兄ちゃんの優しさを理解してる人達だから、もう少し心を開いてあげてもいいと思うな…

 

「では、次に行きましょう!」

 

「八幡?全部食べてね?」

 

「未来さんの料理は、お好み焼き!意外な事にお料理はあんまり得意ではないとの事ですが…」

 

「うん、ソースの味だわ。ソースうめぇ」

 

「うーん…5ポイントですかね?」

 

「よし、響より上なら大丈夫!」

 

「コイツ、その内毒とか入れそうで怖いんだけど?」

 

うん、小町もそれは否定しきれないなぁ…

未来さん?その手があったって顔しないで?

 

「じゃあ、次です!」

 

「あたしの出番だな!」

 

「クリスお義姉ちゃんの料理は、肉じゃが!小町が教えましたし、これはお兄ちゃんも…」

 

「家の味だわ、普通にうめぇ、ただ料理のチョイスがあざとい」

 

「うーん…10ポイントですね!」

 

「よっしゃあ!」

 

まぁここで失敗料理なんて出してきたら、小町が再教育しなきゃだけどね?

 

「それでは、最後です!」

 

「私の出番か…真打ちをくれてやろう!」

 

「翼さんの料理は…何ですか?コレ?炭?」

 

「ハンバーグだ!」

 

………料理出来ないのに何で凝った物作ろうとするのかなぁ?

 

「……炭の味しかしねぇ」

 

「これは問答無用で0ポイントです…」

 

「な!?」

 

え?何?ポイント貰える気でいたの?

 

「くっ!私は戦う事しか知らないのよ」

 

えぇ…さっきドヤ顔でハンバーグだって言ってたじゃん…

後お兄ちゃん、こんなのでも完食するんだね…

小町はお兄ちゃんに一番ポイントあげたいよ…

 

***

 

「では、第2種目を発表します!」

 

「小町?お兄ちゃんもう帰りたくなってきたんだけど?」

 

まぁ最後にあんなの食べたら気持ちはわかるよ?

 

「第2種目はフリーアピールです!それぞれ、得意な事でお兄ちゃんにアピールしてください!こちらもお兄ちゃんの反応でポイントを付与します!」

 

「小町、俺用事思い出したわ!後は任せる」

 

「逃がさないよ?お兄ちゃん?」

 

「離せ!頼む!小町!小日向は、小日向はまずい!あいつに自由にやらせたら最悪お兄ちゃん死んじゃう!」

 

もう、心配しすぎだと思うけどなぁ…

 

「それでは早速、トップバッターです!」

 

「このまま、あたしが勝ち抜いてやる!」

 

「クリスお義姉ちゃんのアピールは…ハグですね!おぉーっとしかし、何だか対応が慣れている!毎晩寝室に忍び込んでいたのが裏目に出たみたいだー!これは残念ながら、5ポイントです!」

 

「何でだよ!?チクショウ…」

 

元々、距離が近すぎるんだよ、お義姉ちゃん…

小町、たまには引くのも大事だよ?って言ったよね?

 

「では、次に行きましょう!」

 

「次こそは!がんばる!」

 

「響さんのアピールは…恋人繋ぎ!初々しいカップルみたいですね!お兄ちゃんもドギマギしてます!これは、10ポイント進呈だー!」

 

「あぁー…クリスちゃんに負けてるぅ…」

 

いや、それでも料理から凄い挽回だと思うよ!

 

「では、次に行きましょう」

 

「八幡?覚悟してね?」

 

おぅふ、未来さんですか…

 

「未来さんのアピールは…膝枕ですか…お兄ちゃん、無言でキョドり過ぎですね!」

 

「ふふっ、私は響より絶対上じゃなきゃ駄目だもん、心配しなくても大丈夫だよ?」

 

「おぉーっと、ここで頭ナデナデも入りました!お兄ちゃん、あり得ないくらいキョドってます!これは…20ポイントだー!」

 

「おい!納得いかねぇぞ!前にあたしが膝枕した時はそんな反応しなかったじゃねぇか!」

 

「アピールは誰がやるかで反応も当然変わるのです!未来さんの場合はギャップの勝利ですね!」

 

まぁ、命の心配してたくらいだしね…

 

「それでは、最後行ってみましょう!」

 

「次こそは!この身の汚名をそそがせてもらう!」

 

「翼さんのアピールは…え?何してるんですか?」

 

「?得意な事でアピールだろう?だから私は歌女として歌わせてもらう」

 

そう言って、翼さんはFLIGHT FEATHERSを歌い出す。

うわぁ、生の風鳴翼だぁ…

っていけない、小町が見惚れちゃってた…

 

「お兄ちゃんの反応は…言うまでも無いですね。問答無用でぶっちぎり、50ポイントです!」

 

お兄ちゃん、完全に見惚れてたね?

瞬きすら忘れてたって顔してるよ?

 

***

 

「それでは結果発表です!」

 

「第1回お義姉ちゃんコンテストの優勝は…翼さんです!」

 

「チクショウ…納得いかねぇ…」

 

「うーん、私もがんばらないとなぁ…」

 

「響は絶対に渡さない!」

 

うーん、お兄ちゃんを落とすには、もう少し努力が必要かなぁ…?

 

「ありがとう!みんな!で、結局これは何の催しだったんだ?」

 

むしろ無自覚で優勝した、この人があり得ないよ…

食材から炭を錬成した時はどうしようかと思ったけど…

 

「それでは、翼さんには優勝賞品として、お兄ちゃんを1日自由に出来る権を進呈します!」

 

「何!?小町!聞いてねぇぞ!?」

 

うん、お兄ちゃんには今言ったからね?

先に言ってたら絶対に逃げるでしょ?

それに翼さんなら大丈夫でしょ?

 

「そうか!それでは比企谷!少し遠出して、ラーメンを食べに行くぞ!」

 

「はぁ…わかりましたよ…」

 

ほらね?

小町としては、むしろ好意全開の二人に頑張って欲しかったんだけどなぁ…

 

この調子では、甥っ子、姪っ子の顔を見るのは、まだまだ遠いなぁ…と思うのでした。




正妻戦争回でした。

トップアーティストに本気出されたら仕方ないね。

何気に393が2位にいます(笑)

久しぶりに見たらUAとお気に入りが凄い事になってますね…

完全に人を選ぶ作品だと自分でも思うのですが、皆さまが楽しんで読んで頂けているなら作者としても幸いです。


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フロンティア事変
第一話G


今回からフロンティア事変突入です。

無印の終わり方がアレなので、初っぱなからオリ展開です。

では、駄文ですがお付き合いください。


学期が変わり新学期、今日も今日とて、リディアン音楽院の新校舎へと向かう。

 

旧校舎は家に居候しているアラサーの暴走のおかげで使い物にならなくなった為、校舎自体が移転した形だ。

最初はしばらく学校が休みになるとぬか喜びしたのだが、そこは二課、仕事が早かった。

くそっ、もう少しのんびりやってくれても良かったのに…

あんだけ優秀な人材が揃ってるなら俺は働かなくてもいいんじゃねぇの?

 

朝、教室に入るといつも通り、イヤホンを付け、寝たふりをする。

通称ステルスモードだ。

空気になるのはぼっちにとって必須スキルだからな。

 

「それでは、転校生を紹介します」

 

教師の声で目が覚める。

やべっ、寝てたみたいだな…

 

「雪音クリス…よろしく」

 

…あいつ、うちのクラスかよ…

二課が手を回しやがったな…

はぁ…ぼっちの平穏が脅かされる気しかしねぇ…

 

「八幡!よろしくな!」

 

教室がどよめく。

バカ!お前!こんな大勢の前で名前呼びするな!

 

「先に言っておくが、ここにいる八幡はあたしの旦那だ。ちょっかいかけんじゃねぇぞ?」

 

おい!やめろ!教師が「雪音さん…不純異性交遊は…」とか言ってんじゃねぇか!

ぼっち相手に目立つ事するんじゃねぇよ!

 

新学期早々、某幻想殺しさんのように不幸だーと叫びたくなったのであった…

後で雪音を問い詰めたところ、やはりインなんとかさん…じゃなくて小日向の入れ知恵だったらしい。

小日向、お前絶対に許さないからな!

絶対の絶対だ!

 

***

 

「比企谷、探したぞ?少しいいか?」

 

昼休み、ベストプレイスでマッ缶を啜っていると風鳴先輩に声を掛けられる。

ちなみに昼飯はアラサーが作った弁当だ。

桜でんぶでハートとか作るのやめてくれない?

横で見てた雪音がフリーズしてたじゃねぇか…

何故か明日は自分が作ってくるとか言って聞かねぇし…

ぼっちは平穏に過ごしたいんだよ…

 

「はぁ…別にいいっすけど…」

 

「そうか、このチケットだが、君と妹君の分だ」

 

「QUEENS of MUSIC?ライブっすか?」

 

「あぁ、出演する事になってな。雪音と立花は残念ながら任務と重なってしまったんだが君達にはぜひ、ステージの上に立つ私を見て欲しい」

 

「…わかりましたよ、行ければ行きますよ」

 

「ふふっ、素直じゃないな、君も。それじゃあ、邪魔をしてすまなかった」

 

そう言って、風鳴先輩は去っていく。

雪音はずっと唸っていた。

お前は犬かよ…

 

***

 

帰り道、雪音や立花、小日向と別れ1人帰路につく。

ようやく解放された…あいつら何ですぐ喧嘩すんの?勘弁して欲しいんだけど…

 

「やっと1人になったデスね!」

 

「でも待った甲斐があった。大チャンス」

 

ん?何だ?このちみっ子達…

見たところ、中学生くらいか?

 

~Zeios igalima raizen tron~

 

~Various shul shagana tron~

 

は?聖詠?

目の前のちみっ子達が歌声と共に姿を変える。

それは、紛れもなく、シンフォギアであった。

 

「おとなしくしやがるデス!」

 

「わーったよ、降参だ」

 

「抵抗しなければ、危害は加えな…え?」

 

ピンクのシンフォギアを纏うちみっ子がポカーンとする。

かわいいな、チクショウ。

 

「諦めるの早すぎデスよ!?」

 

「もうちょっと何か無いの?」

 

そんな事言われても、あれ以来、胸のガングニールは全く反応しないのだ。

どうやら、愛想を尽かされたのだろう。

…ていうかお前らは仕事しやすくて、願ったり叶ったりなんじゃねぇの?

ちょっと好戦的で危険な奴らだな…

 

「調!釈然としないデスが、連れて行くデスよ!」

 

「うん、わかった。切ちゃん」

 

…誘拐対象の前で、普通にお互いの名前呼び合うとか、ちょっと頭は足りてない子達みたいだな…

そんな事を考えながら、緑のシンフォギアを纏うちみっ子に襟首を掴まれて運ばれる。

お前、もうちょっと運び方に気を使えねぇの?

雪音みたいにお姫様抱っこはやめて欲しいけどね?

はぁ…このパターン何回目だよ…

誘拐され慣れているって言うのもどうかと思うんだがな…

 

***

 

ちみっ子達に運ばれ、如何にもなアジトっぽいところに連れていかれる。

 

「来たか」

 

どうやら今回はボスと対面できるみたいだな…

あのアラサーみたいな厄介さは無さそうだ。

 

「まずはようこそと言っておきましょうか。融合症例第2号?」

 

長身のモデル体型の女性に声を掛けられる。

?どっかで見た事あるな?

あっ、この人小町がテレビで見てた歌手じゃねぇか?

あの時、何かアラサーが含み笑いしてたように見えたけど知り合いか?

でもアラサー関連なら俺を誘拐する意味がわからんな…

あの人あれ以来司令にびびってるっぽいし、世の中のほとんどの事よりうちのカマクラの方が大事とかワケわからん事言ってたし…

 

「私達はFIS、そうね、君にはフィーネ、と言った方がわかるかしら?」

 

ん?やっぱあのアラサーの関係者か?

だとしたら何で誘拐?

本当に意味がわからん。

 

「まぁ驚くのも無理は無いわね。数ヶ月前に消滅した筈の怨敵が、また目の前に現れたのだから」

 

俺が混乱してる間にも、話は続く。

は?何言ってんの?この人…

 

「マリアにはフィーネの魂が宿っているデスよ!」

 

いやいやいや…

そのアラサーなら今頃、家で煎餅でも食って猫と戯れてると思うよ?

さすがにあのアラサーでも、同時に二人に魂が宿るなんて事無いと思うよ?知らんけど。

ていうか、ちみっ子、ボスの名前明かしちゃっていいの?ダメでしょ?

 

「ふふっ、驚いて声も出ないようね?」

 

…なんか素人くせえな、こいつら…

厄介さで言えば、あのアラサーの方が数倍上だ。

そもそも、あのアラサーなら自分の存在はギリギリまで隠そうとする筈だ。

それだけでも、この目の前の女がアラサーを騙っているだけだと言うのが容易に想像付く。

 

「で?俺に何をして欲しいんだ?」

 

素人故に何やってくるかわからん怖さはあるが、警戒レベルは下げても良さそうだ。

力では敵いそうも無いが、おとなしくしてる限り、問題は無いだろう。

 

「話が早くて助かるわ。そうね、さしあたっては君を人質にして、日本国の国土割譲を要求しようかしら」

 

……………

 

少しの間、静寂に包まれる。

…はぁ…ここまでかよ…

そんな要求通る訳ねぇだろ…

ギャグか何かか?スベってるよ?

 

「…何よ、その目は?私達は本気よ!?」

 

「俺のこの目はデフォっすよ…」

 

「そ、そう…それは…その…御愁傷様?」

 

どうやら俺のこの目は誘拐犯に気を使われるレベルらしい…

泣いていいかな?いいよね?

…しかし、あまりにもやる事なす事素人過ぎて腹が立ってきた。

 

「…お前らいい加減にしろよ…人拐っといて何だよその要求は!?バカじゃねぇの?通る訳ねぇだろ!もっと身代金とか分かりやすくて相手が払いやすい物にしろよ!」

 

「で、でも人命は何よりも尊いって言うじゃない?それに貴方は聖遺物との融合症例っていうレアな人種だし…」

 

「はい!バカ!国相手に個人の命なんてほとんど意味ねぇよ!そんな要求通るなら戦争なんて起きねぇんだよ!」

 

「何よ!?バカ、バカって…私達にだってやりたい事があるのよ!!」

 

「…じゃあ、初めからそっちを話せよ」

 

はぁ…こんな誘導尋問に引っかかるあたり、本当に素人みたいだな…こいつら…

 

気付けば、目の前のマリアと呼ばれた女だけでなく、ちみっ子二人も涙目で俺の事を睨んでいた。

 

…え?何この状況?




完全オリ展開です。

杉田君とマム登場まで書けませんでした…

明日から仕事復帰しますので更新ペース若干落ちると思います。


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第二話G

とりあえず第二話Gです。

今後もどんどん魔境になっていきます。

では、駄文ですがお付き合いください。


「マリアをいじめるなデス!!」

 

「切ちゃん、こいつやっちゃお?」

 

ちみっ子達がすごい剣幕で怖い事を言ってくる。

ピンクの方、大人し目で冷静そうな感じなのに意外に脳筋なのな…

 

「待ちなさい。比企谷八幡さんですね?」

 

ちみっ子達を静止したのは、目の前の涙目のマリアさんではなく、その後ろから現れた車椅子の老女。

 

「マム!でも!」

 

「お黙りなさい。その場の感情に流されて、私達の計画をご破算にするつもりですか?」

 

マムと呼ばれた老女がピンクのちみっ子を(たしな)める。

少しは話の分かる人が出てきたみたいだな。

 

「彼と話があります。別室で話しましょう」

 

「マム!?でもそれは…」

 

「こんな奴と二人きりとか危険デス!」

 

俺はこんな奴呼ばわりかよ…

別に言われ慣れてるからいいんだけどね?

嫌な慣れだな…

 

「…ではこうしましょう。音声はあなた達にも聞こえるようにします。それで問題ありませんね?」

 

「それなら…」

 

「では移動しましょう。ついてきてください」

 

「おかしな事考えるんじゃないデスよ?」

 

へいへい…

厄介事には違い無さそうだが、あまりの手際の悪さと素人臭で警戒心はほぼ失われていた。

 

***

 

「さて、それでは…」

 

マムと呼ばれた老女に紙とペンを渡される。

筆談か…話を合わせてください…ね。

 

「まず、私達の目的ですが、ルナアタックについては、どの程度ご存知ですか?」

―マリアにフィーネが宿っていないと何故気付いたのかはわかりませんが、内密にお願いします

 

「一応は当事者っすからね。ある程度は…」

―何故、フィーネさんを騙る必要が?

 

「なら細かい説明は、不要ですね。ルナアタックによって月遺跡、バラルの呪詛に不具合が生じています」

―計画の為、生医学の権威、ドクターウェルの協力を得る為です。

 

「不具合が生じると何かまずいんすか?」

―その計画とは?

 

「単刀直入に言うと、月が落下します」

 

筆談は無し…か、これは話していい内容って訳ね。

しかし、月が落ちるって…

帰ったらあのアラサーに色々聞かなきゃならん事が大量だな…

 

「月の落下を阻止する為にも、協力して頂きたいのです」

 

「協力するかどうかは計画の内容を聞いてからっすね…」

 

「もちろんです」

 

それから、ナスターシャと名乗る彼女から計画の説明を受けたのだが、予想通り、ガバガバだった。

そもそも、想定される敵対勢力の中に二課も入ってるんだが、何故敵対する必要があるのかもぼんやりしてて意味がわからん。

ソロモンの杖強奪しようとしてるけど、月の落下阻止に何でノイズみたいな危険な戦力使おうとしてんの?

いる?いらないよね?

要するに、()()()()()()()喧嘩を売ろうとして、()()()()()()()被害を出そうとしているのだ。

行動理由が善意である分、はっきり言って、テロリストより質が悪い。

月の落下を阻止する肝心要のフロンティア?とかいう遺跡の分析とかは正確なのに、何でこんなバランス悪いんだ?

 

彼女達の分析に関しては信用しても良さそうなので、月の落下はマジっぽいんだが、どうしたもんかね?

 

「以上です。何か質問はありますか?」

 

「はぁ、まずはこの各国政府への宣戦布告って何で必要なんすか?」

 

「それは…」

 

「各国政府は月の落下を既に察知しているからですよ」

 

急に後ろから声が掛かる。

ビックリするからやめてね?

 

「ドクターウェル…彼と二人にして欲しいとお願いした筈ですが?」

 

なるほど、この人がウェル博士ね…

 

「硬い事は抜きにしましょう。月の落下によって力無き人々は混乱するでしょう。そんな中、事前に察知して、自分達だけが助かる算段を立てていた各国政府を打ち倒す!そう!人々にはそんな英雄の姿が必要なのですよ!」

 

想像以上にヤバそうな人だな…

口調こそ丁寧だが狂気が隠しきれてねぇよ…

しかし、問題だけは真実で、対策案が幼稚過ぎる場合、どうすりゃいいんだろうな…

はぁ…働きたくねぇんだけどなぁ…

 

「条件があります」

 

「何でしょう?」

 

「まず、この計画では間違いなく失敗します。計画の修正を俺に一任してください。これが最低条件です」

 

沈むと分かっている泥船に自ら乗る人間はいない。

しかし、それでも乗る必要があるなら、沈まないように補修するしかない。

幸い、家に帰れば悪巧みが得意な人間に心当たりはある。

 

「…いいでしょう。しかし、時間がありません。速やかに着手をお願いします」

 

呑んだか…

おそらくだが、彼女も自分達が素人である事を自覚しているのだろう。

しかし、一介の高校生の指摘を真に受けるってのもどうなのかね?

形振り構ってられないって事か…

 

「次に、特異災害対策機動部二課、特に風鳴弦十郎司令とは絶対に対立しないようにしてください」

 

「それは何故ですか?」

 

?あの人外の事、詳しくは知らないのか?

 

「確実に負けるからです。完全聖遺物込みとは言え、月の欠片を投げ飛ばすような人と戦いたくないでしょう?」

 

俺が話すと同時に時が止まったかのように二人がフリーズする。

アレ?おかしいな…

俺はいつの間にスタンドが使えるようになったんだ?

無駄!無駄!無駄!無駄!とか言っちゃうの?

 

「…そ、それは事実なのですか?」

 

ナスターシャさんが再起動する。

良かった、もうちょっとで「そして時は動き出す」とか言っちゃうとこだったわ。

 

「えぇ、まぁ、その場で見てましたし」

 

いや、あれは俺もいまだに信じられんのだけどね?

 

「あ、ありえないぃぃぃぃ!何なんですか、その規格外はぁぁぁ!?驚き過ぎて眼鏡がずり落ちるかと思いましたよ!?」

 

うん、やっぱヤバめの人だな…

あんまり関わりたくないタイプの人種だわ…

 

***

 

「では、あなたを信用し、解放しますが、くれぐれも私達の事は口外しないように。そちらからの連絡はマリアの連絡先を伝えますのでそちらに」

 

そう言われ解放されるが、ちみっ子二人が後ろをついてくる。

 

「…何でついてくんだ?」

 

「私達はお前を信用していない」

 

「裏切らないように監視するデス!」

 

「まぁ…好きにすりゃいいんじゃね?」

 

とは言ったものの、真後ろにぴったりくっつく必要は無いんじゃないかな?君たち?

ぼっちが目立つような真似するのやめてくれない?

 

「じー」

 

「バッチリ、監視するデス!」

 

はぁ…ほんと心労がマッハなんだが…

切実に休みが欲しい。

 

結局、こいつらは家の前までついてきた。

 

「およ?お兄ちゃんお帰り…ってその子達…」

 

アレ?何かデジャヴを感じるな…

 

「お兄ちゃん!ついに誘拐しちゃったんだね!?クリスお義姉ちゃんや響さんに一体何の不満があったの!?今ならまだ間に合うから警察行こ?」

 

うん、そろそろ泣いていいかな?いいよね?

某号泣議員並みに泣いちゃうよ?

ていうか、雪音と立花は関係ねぇだろ…

 

***

 

「月読調ちゃんに暁切歌ちゃんだね?私は比企谷小町、よろしくね!」

 

「よろしくデス!」

 

「…よろしく」

 

あの後、必死に説明してようやく小町は納得してくれた。

また誘拐されてたと聞いた時は呆れていたが…

それにしても打ち解けるの早いね、君ら?

雪音といい、アラサーといい、こいつらといい小町は誘拐犯と仲良くなるスキルでも持ってるんだろうか?

 

そういやアラサーはどこ行ったんだ?

 

「あ、了子さんならかーくんと旅行行ったからしばらくいないよ?」

 

は?何してんの?あのアラサー…

猫と旅行って…どこの独身OLだよ…

計画の修正どうすんだよ…

割とアラサー頼みだったんだけど…

 

「そうだ!二人とも、今日はご飯食べていって」

 

「え?でも…」

 

「さすがに悪いデスよ…」

 

「いいからいいから」

 

小町の誘いにちみっ子達は遠慮するが、そうなった小町に抵抗は無駄だ。

君らその遠慮をもうちょっと俺に向けてくれてもいいんだよ?

 

その後、月読と暁はもの凄い勢いで、小町の作った唐揚げを頬張っていた。

 

「こんなごちそう初めてデース!おいしいデスよー!」

 

「切ちゃん、みっともないよ?でも、本当においしい」

 

…こいつら普段何食ってるんだよ




ようやく、役者が全員登場しました。

八幡のスタンスがどちら寄りかはお分かり頂けたかと思います。

完全オリ展開とは言え、キャラを掴むため、アニメを見直してるんですが、高質量のフォニックゲインを浴びてるので、そのうち自制が効かなくなって、番外とか書きそうです(笑)


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番外 みくるーと!

お気に入りが400突破しましたので…
書くかもと言った舌の根の乾かぬ内に速攻で番外です(汗)

番外編ですがみくはちという完全なキャラ崩壊物です。

何故キャラ崩壊かって?393がビッキー以外と恋愛なんて確実にキャラ崩壊でしょう?

苦手な方はご注意ください。


私は響の事が好きだ。

女の子として愛している。

でも…響には好きな人がいる…

 

比企谷八幡…彼は響と私の恩人だ。

響が好きになるのも無理は無い。

だけど私は響が好きなんだ。

だから私は彼が響以外を選ぶように姑息な手段に出ている…

卑怯だと罵られても構わない。

響が響のまま、私を愛してくれるなら、私はどんな手だって喜んで使う。

それでも…身勝手だけど彼にも幸せになって欲しいと思う。

響の為に一度は自分の人生を投げ売った彼がこれ以上不幸になってはいけない。

そんな理不尽があってはならない。

こんな二つの相反する想いが同居するのが私、小日向未来なんだ。

 

***

 

今日もクリスから相談を受ける。

今度の八幡の誕生日、何をプレゼントするか迷っているとの事。

これはチャンスだね。

 

「自分にリボンを巻いて、プレゼントは私っていうのはどうかな?」

 

「その手があったか!…でもよぉ、あたしは既に八幡の物だから今さらプレゼントしてもあんま喜んでくれねぇんじゃねぇか?」

 

うーん…八幡じゃなきゃ確実に落ちると思うんだけどな?

あれ?私なんで八幡を落とすのに、八幡以外を基準にしてるんだろ?

 

「それなら、手作りのお菓子とかは?きっと喜ぶと思うよ?」

 

うん、八幡ならこっちだ。

普段ガンガン攻めてくるクリスがこういう物をプレゼントしてくる方がギャップがあっていい。

 

「そうか!いつもありがとな!未来!」

 

そう言って、クリスはプレゼントの材料購入の為、帰って行った。

これで良かったかな?

でも、クリスと八幡がうまくいきそうなのに、何でこんなにもやっとするんだろう?

 

おかしいな…

 

***

 

八幡の誕生日当日。

夏休みだけど、私も響もこの日は予定を空けるようにしている。

去年は、私と響と小町ちゃんで祝ったっけ…

今年はクリスと翼さんが増えて賑やかになりそうだね。

八幡も口では色々言うだろうけど、喜んでくれるんじゃないかな?

 

「ハチ君、お誕生日おめでとう!」

 

「八幡、おめでとう!」

 

「後1年でようやく結婚できるな!」

 

「比企谷!おめでとう!」

 

響の一言を皮切りに、皆それぞれ祝いの言葉を口にする。

でもクリス?気が早いよ?

 

「お…おう、別に義理で参加する必要ねぇんだぞ?」

 

また分かりやすい捻ねデレを言ってるね?

小町ちゃんが「またこのごみぃちゃんは…」って呆れてるよ?

 

「何を言う比企谷、ここにいる皆は、君が生まれてきてくれた事に心から感謝しているぞ?祝うのは当然の事だよ」

 

翼さん…あんな事言ってるのに恋愛感情無いとかすごいね…

八幡も顔赤いし…デレデレして…

?何でまたもやっとしたんだろう?

 

「それじゃあ、プレゼント!私から」

 

そう言って、響がプレゼントを渡す。

響のプレゼントは…小説か、八幡の趣味をついてきたね。

響は不器用だから手作りはやめておいた方がいいってちゃんとアドバイスもしておいたけど…割と本気だね、響?

 

「お、おう…まぁ…その…何だ?…ありがとよ」

 

八幡にしては割と素直な方かな?

たぶん、好意を受け慣れてないからあんな態度になっちゃうんだろうな。

 

「次は私だ。真打ちをくれてやろう!」

 

翼さんは…何だろう?あの謎のオブジェ…

自作みたいだけど、前衛的過ぎて理解できないや…

八幡も顔引きつってるし…

 

「あ…ありがとうございます…」

 

「次はあたしだな」

 

間髪入れずクリスがプレゼントを渡す。

うん、クリスグッジョブ。

クリスのプレゼントは私のアドバイス通り、クッキーみたい。

 

「お、おう、お前がこういうの珍しいな…てっきり『プレゼントはあたし』とか言うと思ったぞ?」

 

「あたしは既に八幡の物だからな?プレゼントになんねぇよ」

 

そう言ってクリスが八幡の腕に抱き付く。

うん、作戦は成功みたい。

でもクリス?少し時と場所は選んだ方がいいんじゃないかな?

八幡もクリスの胸を見すぎじゃない?

男の子だから興味あるのはわかるけど、女の子はそういう視線に敏感だよ?

 

「じゃあ、私からね?」

 

最後に私がプレゼントを渡す。

 

「お、おう…お前からあるとは思ってなかったわ…」

 

失礼しちゃうね?

これでも八幡には感謝してるんだよ?

 

「中身は私が帰ってから見てね?」

 

「?ここで開けちゃだめなのか?」

 

「うん、だめ。でも変な物じゃないから安心して?」

 

だって、自分が八幡の為に本気で選んだプレゼントを他の人に見られるのは恥ずかしいよ…

だからおあずけ。

 

「えぇー?未来だけずるいよ?」

 

「別に今ここで開けるなんてルール無いでしょ?響」

 

「それはそうだけどさぁ…」

 

心配しなくても大丈夫だよ?

来月は気合いの入ったプレゼント用意するから!

そろそろ響とお揃いの指輪を買ってもいいかな?って思ってたしね!

 

そんな訳でその後、皆で小町ちゃん作の誕生日ケーキを食べて本日はお開き。

帰り際、クリスがまた八幡に猛アピールしてたけど、ちょっとやり過ぎじゃないかな?

八幡もまんざらでも無さそうだし…

 

あれ?クリスなら八幡を幸せにしてくれるだろうし、いい事の筈なのに、何でこんなにイライラしてるんだろう?

…おかしいな、自分で自分の気持ちがわからないや…

 

***

 

それからしばらくしたある日、自販機の前で八幡を見かける。

また、あの甘過ぎるコーヒーを飲むみたい…

あの趣味だけは理解できないなぁ…

 

…でも、ふふっ

 

彼が持つ新品同然のボールチェーンの財布を見て、自然と笑みが零れてしまうのだった。




393が八幡への気持ちに気付くまでが長いのでシリーズものになります。
とはいえ、本編に極めて近い番外です。
本編では393は393のまま、ブレないと思います(笑)

後、本編だと書く機会が無かったので、八幡の誕生日も入れておきました。

またシチュエーションの神が降りてきたら書きます(笑)


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第三話G

第三話Gです。

展開がどんどん原作からかけ離れていきます。

では、駄文ですがお付き合いください。


「調!覚悟するデス!」

 

「負けない!」

 

あれから2日、ちみっ子達は完全に家に居着いてしまった。

お前ら猫かよ…

 

「ギャー!調!そこで赤甲羅はズルいデスよ!?」

 

「勝負は非情」

 

こっちは必死で計画の見直ししてるっつうのに…

まったく、何やってんだよ…

 

「お前ら、ちょっとうるせえぞ…」

 

「あ、八幡さん、計画の見直しは順調デスか?」

 

「八幡、使命を忘れちゃだめ」

 

お前らが完全に使命忘れてるじゃねぇか…

後、月読、お前何で呼び捨てなんだよ…

 

「敬語は、敬意を払う必要がある人に使うもの」

 

さいですか…

しかし、締め切りはQUEENS of MUSICまでか…

1週間ねぇじゃねぇか…

こいつらの事だ。

それまでに出来なければ、元の計画を実行するだろう。

説明の時間も含めると、マジで時間が足りねえ…

あのアラサー、さっさと帰ってきてくれねぇかな…

 

「ただいまぁ♪ってアレ?この子達…」

 

うん、今程あんたを待ってた事はねぇよ…

よく帰ってきてくれた!

 

「ギャー!オバケー!悪霊退散デス!!」

 

「何で櫻井了子の亡霊が!?」

 

お前らやっぱり知り合いなのかよ…

 

***

 

月読と暁に事情を説明し、晩飯1週間分でこちら側に抱き込む事に成功した俺は、アラサーから詳しい話を聞く事にする。

…まぁ、マリアさんには気の毒だが、ピエロになってもらうしかない。

 

「なるほど…バラルの呪詛の不具合か…あり得ない話では無いな」

 

「?月の落下はあんたも予想外って事か?」

 

「元々破壊するつもりだったのだ。破片の落下は予測していたが、本体の落下は私にも慮外だ」

 

そりゃそうか…

家での振る舞いがアレだから忘れてたが、元々月を破壊するつもりだったな、このアラサー。

 

「…であれば、試したい事がある」

 

「――――――――」

 

そう言って、よくわからん言葉を口にする。

 

「…やはりな、不完全とは言え、統一言語が部分的に使用可能になっている」

 

今の統一言語だったのかよ!?

?でも俺は今の言葉理解出来なかったぞ?

 

「だから部分的と言っている。アルファベットを理解出来ても文章を理解出来なければ同じだろう?」

 

そういうもんなのか?

まぁ、元々使ってた人間が言うんだからそうなのだろう。

 

「それで、月の落下を阻止する、か。本来であれば私が協力する筋合いなど無いのだがな…カマクラちゃんの為だ、協力してやろう」

 

…カマクラの名前呼ぶところだけ、すげえ違和感だな…

他全部フィーネなのに…

これがギャップ萌えか…

違う?うん、俺もそう思う。

 

後は、そうだな…

ナスターシャさんも認めてたし、あり得ないが一応あっちも聞いとくか。

 

「今、あんたがフィーネの魂を持ってるが、同じ時間の別の人間にフィーネが宿る事はあるのか?」

 

「あり得んな。私が使っているリィンカーネイトシステムは、謂わば魂の転移だ。私が魂の輪廻に刻んだ刻印と、聖遺物が放つアウフヴァッヘン波形を起動キーに魂を転移している。分割はできんよ」

 

「って事は、今いるあんたの魂が損傷すれば、あんたは消えてしまうのか?」

 

「そうなるな。尤も、そんな手段自体ほとんど無いに等しいが…例外もある」

 

…今日は随分しゃべってくれるのな。

自分の弱点じゃねぇの?

 

「あの少女…暁切歌のシンフォギア、イガリマの絶唱だ。魂を砕くあれを受ければ、私とて消滅せざるを得ん」

 

!?マジか…

デスデス言ってるあいつが、このアラサーの天敵だったとは…

 

「だから…私としても、あの少女には確実にこちら側にいてもらわねばならん。クリスを手込めにした君ならば手込めにする事も容易いだろう?頼んだぞ?」

 

…このアラサー、何言ってんだよ…

ぼっちにそんな事期待すんなよ…

 

***

 

QUEENS of MUSIC2日前、アラサーの協力を得てようやく計画の見直しが完了した。

後は、マリアさんに連絡すれば、とりあえず一段落だ。

ようやく重労働から解放される。

ガングニールが使えないため、二課の仕事はさほど無いのだが、ゼロという訳でも無く、ここ最近は俺のアイデンティティーが消失する程のオーバーワークだったのだ。

家に帰ったら帰ったでちみっ子達が邪魔してくるしな…

ほんと何なの?あいつら…

そんな事より遊ぶデスよーじゃねぇよ…

 

「見直しが完了したみたいね?見せて貰おうかしら?あなたの計画とやらを!」

 

開口一番、マリアさんがそんな事を言ってくる。

前は涙目になってたけど、メンタルは回復したみたいだな…

 

「はぁ…どうぞ」

 

「ふむ…どうして各国政府への宣戦布告が無いのかしら?」

 

「必要無いからです」

 

「ぐっ…それに、ソロモンの杖は?あれが無いとこちらの戦力が覚束ないわ!」

 

「必要無いからです」

 

「それに!特異災害対策機動部二課との戦闘は!?奴らは計画遂行の一番の障害だった筈よ!?」

 

「必要無いからです」

 

「何なのよ!?まるで駄目じゃない!?こんな計画認められないわ!」

 

「マリア、そこまでになさい」

 

「マム!?でも!?」

 

「マリア…血に汚れる必要が無いのであればそれに越した事は無いのです。比企谷さん、この計画の成功率はどの程度ですか?」

 

「はぁ…8割ってところじゃないっすかね?」

 

「そんなに…」

 

アラサーの試算だから成功率もほぼ間違いないだろう。

 

「しかし…肝心要の神獣鏡(シェンショウジン)のシンフォギア化ですが、装者にあてはあるのですか?」

 

そこなんだよなぁ…

アラサーの試算でも、フロンティアを浮上させるキーになる神獣鏡は、今のままでは出力が足りないため、シンフォギア化して、装者が起動させる必要がある。

しかし、肝心の装者が皆目見当も付かないのだ。

完全聖遺物と違い、シンフォギアは装者の相性がある為、他のシンフォギアと適合している装者では、起動するのはほぼ絶望的らしい。

中には複数のシンフォギアと適合する例外中の例外も可能性としてはあるらしいのだが…

アラサーは元々の装者候補であるリディアンの生徒を当たるしか無いと言っていたが…

 

「フッ!話にならないわね?計画の肝がなっていないじゃない?その程度の覚悟しか出来ていないのかしら?」

 

「いや、そこに関しては元からだろ…」

 

「なっ…そうなの!?マム!?」

 

「えぇ…間違い無さそうですね」

 

「では、神獣鏡の装者に関しては探すとして、比企谷さんの計画を採用とします。マリア、異論はありませんね?」

 

「…OK、マム」

 

物凄く不服そうだが、一応、マリアさんも納得してくれたっぽいな…

疲れた…早く帰って寝てえ…

 

***

 

次の日、久しぶりに何も無いため、まっすぐ帰宅する事を心に誓っていた俺だが、帰り際に雪音に呼び止められる。

 

「八幡、最近付き合い悪ぃぞ?合鍵渡してんのにあたしの家にも来ねえじゃねぇか?」

 

「あー…また今度な?」

 

「今度っていつだよ?」

 

ぐっ、鋭いな。

こういう時の今度の来ない率は異常。

ソースは俺。

中学校の時、比企谷は今度誘うと言われ続けて一度も誘われた事は無い。

くそ、カラオケとか初めてでドキドキした俺の純情を返せ。

練習してたら小町に歌い方がキモいって言われたしな…

あれ以来、人前で歌うのが嫌になったな…

そうか…あの時か…

 

「おい!聞いてんのか?八幡!」

 

やべっ、トリップしてたわ…

 

「あたしは明日任務で会えねえからよ?今日は…その…あたしの家に泊まっていかねえか?」

 

は?顔真っ赤にして何言ってんだ?こいつ…




いまだライブ到達せず…

どうしてこうなった…

まぁ、フィーネさんの詳しい説明回なので仕方ないデスね

今回のたやマさん
マリアさん→マム以外知らないと思っている
八幡→気付いている
マム→知っている
切ちゃん→知った new!
調→知った new!
杉田君→知らない?

これはゴレイヌさんじゃなくても「えげつねぇな…」と言ってしまいそうですね…


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第四話G

今回はクリスちゃん回です。
作者がクリスちゃん欠乏症だからというのもありますが、元からです(笑)

では、駄文ですがお付き合いください。


え?何?こいつ今何言ったの?

泊まって行く?誰が?俺?

そんな訳ねぇだろ?

混乱する俺を余所に雪音はなおも続ける。

 

「そ、そのよ?は、八幡さえ良けりゃ()()()()()もアリでいいからよ?」

 

そうか…○鷹さんは、あの時こういう気持ちだったのか…

今ようやく理解出来たわ…

 

「え?何だっ…」

 

「聞こえてただろ?その…あたしの本当の旦那になってくれよ?」

 

ほんと何?こいつに何があったの?

 

「…知ってるだろ?ソロモンの杖を起動したのはあたしだ…ノイズを生み出すアレを…あたしが背負わなきゃならない十字架を研究の為とはいえ、他人に渡すんだ…不安なんだよ…」

 

そう言って、雪音が抱き付いてくる。

 

「…雪音、そんな理由で俺に寄りかかるのはやめろ。そんな物は欺瞞だ」

 

「八…幡…?」

 

「俺はそんな偽物は認めない。()()()()()()はごめんだ」

 

そう言って雪音を引き剥がしその場を後にする。

 

チッ、何でこんなにイライラしてんだよ、俺らしくもねぇ…

 

***

 

帰宅後もちみっ子達が何かデスデス言ってた気がするが、何も頭に入らず、部屋に籠る事にした。

 

「お兄ちゃん?ちょっといい?」

 

しばらく部屋に籠っていると、小町に声を掛けられる。

 

「………なんだ?」

 

「クリスお義姉ちゃんと何かあったでしょ?」

 

…お前はほんと、よく出来た妹だな…

 

「ああ…」

 

「お兄ちゃんの目の腐り具合から見て…お義姉ちゃんの依存がひどくなってるってとこかな?」

 

「…何でわかったんだよ?」

 

「小町はお兄ちゃんの事なら何でもわかるのです」

 

「そりゃすげえな…参った、降参だ」

 

観念して小町に事情を話す。

 

「ほんとめんどくさいお兄ちゃんだなぁ…あんなキレイな女の子を振っちゃうんだもんなぁ」

 

「…別に振ったとかそういうんじゃねぇだろ?あいつの問題を指摘しただけだ」

 

そう、雪音クリスが解決しなくてはならない問題を指摘しただけだ。

 

「それ、女の子にとっては振られたのと一緒だよ?」

 

何だよそれ…わかるかよ…

 

「お兄ちゃん、このままでいいの?小町は嫌だな。クリスお義姉ちゃんともっともーっと仲良くしたいのになー、なんて?」

 

「…小町の為なら仕方ねぇな…」

 

ありがとな、小町。

 

ひとまず、雪音の家に行くしかねぇか…

 

***

 

雪音の家のインターホンを押すも反応が無い。

…仕方ねぇ、鍵使うか…

 

鍵を開け、雪音の家に入る。

雪音の家の中は真っ暗だった。

留守か?

 

「…誰だ?今日は誰にも会いたくねぇ」

 

雪音は電気も付けずベッドの上でうつ伏せになっていた。

 

「…雪音、俺だ」

 

「八…幡…?…っ何しに来たんだよ?ハッ、今さらこんな惨めな女が抱きたくなったか?」

 

雪音が自嘲気味に言う。

何かムカつくな、こいつ。

 

「んな訳ねぇだろ…話に来ただけだ」

 

「…あたしにはしてぇ話なんて無いね、出てってくれ!」

 

「…おう、そんじゃな」

 

そう言って部屋を後にする。

 

………そろそろか…

 

「待て待て待て!ほんと何しに来たんだよ!?」

 

雪音が慌てて追いかけてくる。

構ってちゃんめ、お見通しだっつうの。

 

「話に来たのに出てけって言うから出てったんじゃねぇか…」

 

「だからってほんとに出てく奴があるかよ!?あーもう!女心のわからねえ奴だな!」

 

んなもんわかるならぼっちやってねぇよ。

 

「で?何だよ?」

 

「お前の問題の話だ」

 

「…わかってんだよ、こんなのは逃げだって事は…でも…あたしのせいで関係の無い奴らが死んでんだ…立たせてもらってでも立ってないと潰れちまいそうなんだよ」

 

「…そこだよ」

 

「…え?」

 

「立てねぇのに他人に寄りかかった時点で既に潰れてんだよ。潰れてんのに他人を巻き込んで立とうとするから余計に質が悪い」

 

「っなら!どうすりゃいいんだよ!?」

 

「倒れちまえばいいんじゃねぇの?」

 

「…は?」

 

「倒れたら、後は立ち上がるだけだ。誰の助けも必要ねぇよ」

 

「っそんな事!」

 

「出来る」

 

俺はそういう奴を知っている。

ずっとそうしてきた奴を知っている。

そいつは何度倒れようと、どんな事があろうと、何度だってまっすぐ立ち上がってきた。

 

「何でそんな事が…」

 

「お前も知ってる筈だ」

 

そう、雪音クリスが知らない訳がない。

あのまっすぐな少女の事を知らない訳がないのだ。

 

「借り物の想い、借り物の歌で立ってるふりをするのはおしまい。君の想い、君の歌で立ち上がって見せてよ、だそうだ。俺も言われた側だがな」

 

「…そっか…敵わねぇなぁ…」

 

そう言う雪音はどこか清々しい顔をしていた。

もう大丈夫そうだな…

 

***

 

「その…悪かったな、八幡」

 

「別に…お前関連の厄介事は慣れてるから今さらだ」

 

ほんと嫌な慣れだな…

少しは自重してくれない?

 

「その…それでよ…八幡!!」

 

「あん?」

 

雪音に呼ばれ、振り向き様に唇に柔らかい物が当たる。

!!!!!!!!!!!!?

 

「へへっ、隙ありだ!これはあたしの誓いだ。今度は八幡の方からしてもらえるように努力するからよ、見ててくれよな?」

 

そう言って、雪音は顔を真っ赤にしながら、舌を出す。

俺はただその場でフリーズするしかなかった。

 

その後、どうやって帰ったかも覚えてないが、気付けば自分の部屋のベッドの上だった。

…ほんと、ぼっちに不意討ちばっかしてくる奴だな…

明日からどんな顔して会えばいいんだよ…

あ、明日はいねえのか…

…それでも同じクラスだし確実に会う機会はある訳でどうしていいかさっぱりわからん。

そんな事を考えながら悶絶してのたうち回っているとアラサーからカマクラが起きちゃうから静かにしろと言われた。

どこまで猫優先の生活送ってんだよ…

 

***

 

翌日、結局一睡も出来なかったが、今日はQUEENS of MUSIC当日、風鳴先輩から招待を受けているし、あいつらの計画の事もある。

家で寝てたいんだが、行かない訳にもいかねえよなぁ…

 

会場に着くと既に小日向とそのクラスメイト3人がスタンバっていた。

こいつらは…うるさそうなのが板場、お嬢様っぽいのが寺嶋、活発そうなのが安藤だったか?

 

「あ、八幡と小町ちゃん…て八幡どうしたの?目がいつも以上にひどいよ?」

 

「うわぁ…アニメのゾンビみたいな目だね…」

 

「そんな悪い目付きも、ナイスです!」

 

「ガヤハチ先輩目付き悪すぎ」

 

君ら言いたい放題だね?

板場は直接的な表現すぎない?一応生きてるよ?

で、寺嶋は褒めてるの?貶してるの?

後、安藤…ガヤハチ先輩って何?

今までヒキガエルだの比企谷菌だの色んな呼ばれ方してきたけど、そんな呼ばれ方したの初めてだよ?

…ろくな呼ばれ方してねぇな、俺…

 

「クリスお義姉ちゃんの家に行ってからなーんか怪しいんですけど話してくれないんですよ」

 

小町ちゃん?何でこんな厄介な奴に話しちゃうの?

 

「八幡それって…そういう事なんだね?今日はお赤飯だね?」

 

小日向…てめえ…

絶対許さないからな?

絶対の絶対の絶対だからな?

 

「?うーん…何だ違うのね、残念」

 

「え?未来さん今のでわかったんですか?」

 

「だいたいね?イベントはあったみたいだけど既成事実の方じゃない感じかな?」

 

お前怖えよ…今のやり取りだけで何でそこまで言い当てんだよ…

 

そんな話をしていると、会場が暗転しステージに風鳴先輩とマリアさんが現れ、会場は一気に熱に覆われる。

 

一言で言うと圧巻だった。

 

風鳴先輩は当然だが、マリアさんのパフォーマンスにも目を奪われるばかりだった。

あの涙目の人と同一人物とは思えねぇよ…

 

そして、歌が終わり、挨拶の時間。

 

「ありがとう!みんな!」

 

「私は、いつもみんなから沢山の勇気を分けてもらっている!だから、今日は私の歌を聞いてくれる人達に、少しでも勇気を分けてあげれたらと思っている!」

 

会場の歓声と共に風鳴先輩の挨拶が終わり、マリアさんの番。

 

「私の歌を全部世界中にくれてあげる!振り返らない!全力疾走だ!ついてこれる奴だけついてこい!」

 

この挑発的なパフォーマンスも彼女の売りとの事で許可したが、言動が危なっかしいんだよなぁ…

 

そんな事を考えてる間にステージの上で風鳴先輩とマリアさんが握手を交わす。

頼むからここで暴走しないでくれよ…

 

しかし、そんな俺の祈りも虚しく、会場中に突如、異形の群れ、ノイズが現れるのであった…




ようやく、原作1話に追い付きそうです。
Gになってからいまだビッキーが一行しか登場してないとかこのお話大丈夫ですかね?
作者も早く登場させたいとは思ってるんですけどね?

さて、八幡の計画を無視して暴走したのは一体どこの杉田君なんでしょうね?

これからもどんどんカオスになると思います。

作者にきっちり書ききれるだけの文章力があればいいのですが…

P.S
このお話を書く為にG1話を数回視聴した為、フォニックゲインがヤバいです(笑)
作者個人としては、楽曲はGが一番好きだったりします。
きりしらのユニゾン最高です


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第五話G

ようやく原作合流しましたが…

またかけ離れると思います…

では、駄文ですがお付き合いください。


混乱する会場、人を襲わない()()()()()ノイズ、それの意味する所は…

 

「うろたえるなっ!!」

 

やるつもりかよ…

とにかく、何とかして、あっちと連絡取らねえとな…

 

「っ!?八幡!?どこに?」

 

小日向に呼び止められる。

 

「…最低限、風鳴先輩が動けるようにしねえとだめだろ、混乱してる今しか動けねえよ」

 

「…私も行く」

 

「…何言ってんだ、お前はここにいろ」

 

「嫌、私だって二課だもん。響達が万全でいれるようサポートするのが私の仕事」

 

いや、そうじゃなくてね?

あっちと連絡取りたいのにお前がいたら取れねえじゃねぇか…

しかし、小日向は小日向で頑固な奴なので、説得は無意味だろう。

何とか誤魔化すしかねぇか…

 

小日向と共にバックステージに移動する。

とりあえず、名目上は、全世界生中継を止める事だが、何とかして、小日向にバレないようにあっちと連絡を付ける必要がある。

 

「あ、八幡さん!」

 

「八幡…」

 

「八幡?あの子達…」

 

そんな事とは露知らず、こちらを見付けたちみっ子達が呑気に手を振ってくる。

終わった…相手はあの鋭い小日向だ。

隠し通すのは無理だろう…

 

「…お前らなぁ…」

 

「?どうしたデスか?」

 

「…いや、いい…それより状況はどうなってんだよ?」

 

「それが…私達にも何が何やらわからない」

 

混乱する小日向を余所に、とりあえず確認したい事を確認する。

こいつらにもわからねえのかよ…

って事は、誰かの単独の暴走って事か?

 

「八幡?どういう事なの?」

 

思考に耽っていると置き去りにしていた小日向が静かに聞いてくる。

やべっ、これ滅茶苦茶怒ってる奴だわ。

以前、小日向がこうなった時、マジ泣き一歩手前まで追い込まれた。

くっ、封印してたトラウマが…

 

「いや、そのだな?あーっと…」

 

ヤバい、別の事考えてたからうまい言い訳が思い付かん。

考えろ、奴をこれ以上怒らせたら今度こそ泣くぞ!?

周囲を気にせず、わんわん泣いちゃうぞ!?

何か…何か思い付け!

 

「八幡さん、この女は…誰デスか?」

 

「八幡、彼女がいるのに私達にちょっかいかけてたの?」

 

こいつら…絶対わかっててやってんだろ!?

何?ぼっちいじめて楽しいの?

 

「何だ、また女の子捕まえたの?クリスに怒られるよ?」

 

あれ?さっきまで見えていた小日向の怒気が収束している?

ていうか、またって何だよ…

こいつ、俺をラノベ主人公か何かと勘違いしてねぇか?

ラノベ主人公ならチートとかご都合展開とか色々無いとおかしいだろ…

よって俺はそんな物では無い。

はい、論破。

 

「何言ってんだよ…それに雪音は関係ねぇだろ…」

 

「そんな事言って、キスくらいはしたんでしょ?」

 

「んなっ!?」

 

何でこいつその事を…

 

「やっぱり。八幡は分かりやすいね?」

 

カマかけてやがったのか…

しかしよりによって一番厄介な奴にバレてしまった…

 

「どどどどういう事デスか!?」

 

「八幡、詳しく」

 

こいつらも何でぼっちにそんな事聞いてくんの?

はぁ…今すぐ家に帰って布団にダイブしたい…

 

「切ちゃん…れじゃ…達の計…が…」

 

「調…ま……ャンスは…るデスよ…」

 

「ま…終わら…ない」

 

ちみっ子達がひそひそと何か話している。

まぁ、下手につついてこっちを抉ってきても嫌なので放っておくか。

しかし、どうしたもんかね?

ん?小町から連絡か…

どうやら小町は板場達と一緒に無事に避難したみたいだな。

 

とりあえず中継止めるか…

 

***

 

中継を止めて会場に戻ると黒いガングニールを纏ったマリアさんと風鳴先輩、それに雪音と立花がいた。

ナスターシャさんから聞いた時は俺と立花以外のガングニールがある事に驚いたが、どうもあのアラサーが悪巧みしてた時に回収し、米国に横流しした物らしい。

 

しかし雪音…お前どうしたんだ?

目が俺みたいになってんぞ…

あぁ…昨日の事であいつも寝てねぇんだな…

 

ふと、目が合うとお互いに逸らしてしまう。

べ、別に意識してなんて無いんだからね?

何度も言うが、俺のツンデレとか誰得だよ…

 

それはそうと、途中で離れたため、状況がまるでわからん。

誰か説明してくれないかな?

こういう時こそ解説役改め守護(まも)る人の出番なんじゃねぇの?

ここ公園じゃないから無理か…

 

「あら、来たわね?」

 

「マリア!計画が違う、何で…」

 

「調、切歌、計画は変更よ!でも安心しなさい。この私にはフィーネの魂が宿っているのよ?計画の修正くらい訳無いわ」

 

その自信は何処から来るんだよ…

少なくとも人拐っといて国土割譲とか言っちゃう奴には無理だよ…

宣戦布告の要求も国土割譲だったみたいだし、何なの?

国土に思い入れでもあんの?

 

「そそそそうデスよね?マ、マリアにはフィーネが宿ってるから計画の修正くらいちょちょいのちょいデスよね?」

 

「切ちゃん…もうちょっと自然に…」

 

しかし、マリアさん…気の毒なくらいピエロだな…

後、暁は余計な事言わず黙っといてくれない?

君が一番危ないよ?

マリアさんとちみっ子達が親しい事で小日向が動揺する。

 

「八幡?いったい…」

 

前に出る。

 

「ハチ君?」

 

「おい?八幡?」

 

そしてマリアさんの横に立つ。

 

「すまんがこういう事だ」

 

「どういうつもりだ!?比企谷!!」

 

「どうもこうも無いっすよ…」

 

「ならば!話はベッドで聞かせてもらう!!」

 

そう言って、物凄い剣幕で風鳴先輩が突撃して来る。

勘違いの余地も無い状況だが、言ってる事はちょっとアレだな…

風鳴先輩って割とむっつり?

 

「月読、暁」

 

「ん」「デース」

 

俺の指示でちみっ子達がシンフォギアを纏い、風鳴先輩の前に立ち塞がる。

君たちもうちょっと早く助けてくれない?

斬撃が目の前まで来て割とチビりそうだったからね?

 

「くっ、そこをどけ!あいつの真意を確かめる」

 

「そういう訳にもいかないデスよ!」

 

「やらせない」

 

「だからとて!私が引き下がる道理などありはしない!!」

 

しかし、敵に回すととんでもない奴らだな…

ちみっ子二人掛かりで風鳴先輩1人止めるのがやっとかよ…

ただ、またハイライトさんが留守になってる立花と雪音が怖えな…

君らのハイライトさんはすぐ職務放棄するね?

ちょっと怠慢なんじゃないの?

俺に言われたくない?そりゃそうだ。

だが、おかげで戦闘は風鳴先輩だけに対応してればいいので好都合ではあるんだが…

……戻ったら最低でも土下座くらいは覚悟しといた方がいいかも知れんな…

 

とりあえず、潮時だ。

 

「余計な事はせず、離脱優先だ、話を聞かなきゃならん奴がいる」

 

「チッ、私に指図するな!」

 

「了解デス!」

 

「わかった」

 

「しょうがないなぁ…」

 

ん?4人目誰だよ?

 

「理由があるんでしょ?」

 

そう言って、月読に抱き付いた小日向未来がこちらに笑顔を向けてきた。

…月読、そいつガチだから気を付けろよ?

主に貞操的な意味で

 

はぁ…説明すんのめんどくせえ…

 

***

 

アジトに入り、目的の人物を問い詰める。

 

「何勝手な事してやがんだよ…計画にはソロモンの杖も宣戦布告も必要無いって言っただろ…」

 

「以前言った通りですよ。あなたがどう思おうと世界は英雄を求めているのです!だから!!ボクがあなたの計画をよりドゥルァマティックに修正したまでですよ!!」

 

こいつ…まるで反省していやがらねぇ…

 

「次はネフィリムの起動です!自前で起動の為のフォニックゲインが集まらないのなら、奴らに集めてもらえばいいでしょう!その為には!このアークセプターソロモンの杖は有用なのですよ!!」

 

…言葉の端々から狂気が滲み出てんな…

言ってる事はもっともらしいが、あの杖は絶対にこいつに持たせてはいけない。

これ以上、あの少女に残酷な現実を突きつける必要は無いのだ。

 

「なら、そいつは俺が預かる」

 

「はぁぁぁ!?君は英雄の座を狙ってるのか!?」

 

「んなもんに興味ねぇよ…なりたきゃ好きにすりゃいいだろ…」

 

「ふ…なるほど、君は話の分かる男みたいだね。ボクはボクから英雄の座を奪う気の無い人間には寛容だ」

 

とりあえず、そう言って杖を預かる。

はぁ…やっぱこいつの相手疲れるわ…

LiNKERの開発者でナスターシャさんの命を預かる医者でなきゃとっくに追い出してるんだけどなぁ…

 

どうしてこうなった…




八幡の最後の言葉が彼の今後の心労を物語っています。

あ、ありのまま、今起こった事を話すぜ?

このお話を書く為に、G2話だけ見るつもりで見ていたら、気が付けば最終話まで完走していた。
何を言っているかわからねーと思うが作者も何をされたかわからなかった……

今回のたやマさん
マリアさん→マム以外知らない。私、きっちり演じきれているかしら?もっと強気で行ってもいいのかしら?
八幡→気の毒だな…
マム→八幡さんが知っている事はマリアには伝える必要はありませんね
切ちゃん→どうしよう、知ってる事隠さなきゃデス!?
調→切ちゃん、受け答えが不自然だとマリアにバレちゃうよ?
杉田君→フィーネを擁護してあわよくばボクが英雄に!!
393→フィーネって…どういう事!? new!

相変わらず、えげつねぇな………


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第六話G

第六話Gです。

かなり魔境になります。

では、駄文ですがお付き合いください。


「で、どういう事か説明してくれるよね?」

 

向かい合う小日向が言う。

椅子に座っているのだが、気分的には正座に近い。

精神的正座である。

ほんと、何で笑顔でこんな威圧感出せんの?こいつ…

 

それから、アラサーの事を伏せつつ、掻い摘まんで俺が立てた計画の事、計画があのMAD眼鏡の暴走で狂い始めている事を小日向に説明する。

 

「月が…そんな事に…」

 

月が落ちてくると言う事は小日向にもショックだったらしく、言葉も出ないと言った感じだ。

 

「でも八幡は何でそんな計画が立てれたの?」

 

ぐっ、そこを突かれると痛い。

二課に所属している為、若干の知識はあるとはいえ、俺は一介の高校生に過ぎないのだ。

計画が緻密であればある程、違和感が出る。

そして、あのアラサーが立てた計画は緻密も緻密過ぎたのだ。

 

「あー…実はな…驚かずに聞いてくれるか?後、他言も無用だ」

 

「うん、わかった」

 

観念してアラサーが家に居候している事を話す。

小日向は驚いてこそいたが、得心がいったといった顔をしていた。

そもそも、こいつなら隠しててもバレるのは時間の問題だったように思う。

ガチユリの癖して、勘は鋭いのだ。

ガチユリ関係ねぇな…

 

「む、今何か失礼な事考えなかった?」

 

これである。

ほんと油断ならない奴なのだ。

 

「まぁ、いっか…それで、私に出来る事は無い?」

 

こいつに出来る事、か。

俺としては、大人しく帰ってくれるのが一番なんだが…

マリアさんの宣戦布告のせいでテロリスト扱いされてるだろうし、難しいか…

下手すれば名前が割れている俺と小日向は指名手配されている可能性まである。

とりあえず、先送りしてる問題の事でも考えといてもらうか…

 

「フロンティア起動のキーになる聖遺物の適合者が見つかってねぇんだ。心当たりは無いか?」

 

「それってどんな聖遺物?」

 

「魔を払う鏡とか何とか言ってたが、詳しくは知らん」

 

「うーん、ちょっと見せてもらってもいい?」

 

別にそれくらい構わんとは思うが…

ナスターシャさんに連絡を入れて持って来てもらうか。

 

***

 

ナスターシャさんの了解を得てちみっ子達が神獣鏡(シェンショウジン)のコアを持ってくる。

 

「計画の要だから大切に扱うデスよ?」

 

「ありがとう…うん、やっぱり」

 

何だ?小日向の顔が明るくなる。

 

「私、たぶんこの神獣鏡(シェンショウジン)、使えると思う」

 

は?マジで?

 

~Rei shen shou jing rei zizzl~

 

小日向が聖詠を口にする。

が…上手く起動できず、不発に終わる。

 

「適合係数が足りない」

 

「LiNKERを使えば、適合できるかもしれないデスが…その…あまりオススメしないデスよ…」

 

月読、暁がそれぞれ口にする。

やはり、ほぼ一般人の小日向を巻き込む事に気が引けるようだ。

根は優しい奴らなんだろう。

 

「ううん、大丈夫。持って来てくれる?」

 

「…あのロクデナシに聞いてみるデスよ」

 

しかし、小日向は小日向で頑固なのだ。

この程度で折れるならば、あいつに寄り添い続けてはいないだろう。

だが、聖遺物に適合するという事は、戦う宿命を背負うという事でもある。

…あいつを、あのまっすぐな少女にとっての日常を…このまま戦いの道に引き摺り込んでも良いのだろうか?

無情にも俺が迷っている間に暁がLiNKERを持ってくる。

 

「じゃあ、もう一度やるね?」

 

「ちょっと待て…やっぱり、お前…」

 

「八幡。何を言いたいかはわかるよ?私は八幡のその優しさが嫌いじゃない。けど、私だけただ見てるだけなんてやっぱり出来ないよ。私だって戦うんだ!」

 

こうなった小日向未来は誰にも…そう、立花響でさえも止められないだろう。

 

「わーった。無理はすんなよ?」

 

「うん、ありがとう」

 

そう言って、小日向がこちらに笑顔を向ける。

…やはり、自分の歌を持ち、自分の足で立っている奴は俺みたいな日陰者には眩しすぎる。

 

こうして、自分は戦う覚悟も何も全く持ち合わせていない事を再び痛感させられるのであった。

 

***

 

LiNKERを投与し、小日向がもう一度聖詠を口にする。

 

~Rei shen shou jing rei zizzl~

 

今度は起動に成功し、小日向が紫のシンフォギアを纏う。

 

「できた。私、これで響のいる世界を守れる!」

 

「素ぅ晴らしいですねぇ!ボクの作った『あなたの為のLiNKER』があるとはいえ、ここまで簡単に適合してしまうとは!これこそまさに愛!ですねぇ!」

 

「「何故そこで愛!?」」

 

気付けば全員集まっていたらしく、俺とナスターシャさんのツッコミが被る。

 

「親友のいる世界を守りたい、そんな純粋な想いが聖遺物との適合を果たしたのです!涙ぐましいじゃないですか!これを愛と言わず何と言うのです!」

 

尚もMAD眼鏡の演説は続く。

既に全員が話半分にしか聞いていない。

だんだんこいつの扱い方がわかってきたな…

 

「ではこのまま慣らし運転をしましょうか、マリア、相手を」

 

「OK、マム。フフっ、今日初めて適合した装者が私の相手になるとは思わないけどせいぜいがんばりなさい?」

 

「はい、胸をお借りします」

 

うん、人は自分に無い物を求めるって言うしな?

あの立派な物を借りたくなる気持ちはわからんでもない。

 

「じー」

 

月読がこちらを見ている。

睨んでいると言った方がいいかも知れん。

 

「…何だよ?」

 

「八幡が許せない事を考えてた気がする」

 

うん、君はこれからに希望を持とう。うん。

無いと思ってた風鳴先輩も柔らかかったし、大丈夫だよ、たぶん。知らんけど。

 

「やっぱり許せない」

 

何でわかるんだよ!?

俺ってそんなにわかりやすい?

 

そんな下らないやり取りをしている間に訓練が終わっていた。

結果は…

 

マリアさんがケチョンケチョンにのされていた…

 

マリアさん………気の毒だな……

あんだけ先輩風吹かせてたのに…

あれはフラグだったのか…

 

後で聞いた話だが、神獣鏡(シェンショウジン)には聖遺物由来の力を無効化する力があるらしい。

何そのチート?

何?あいつがラノベ主人公だったの?

しかし、シンフォギアとしての性能は本来、最低に近い程低い筈との事なのだが…

………あいつを怒らせるのはやめておこう。

 

***

 

「いやぁ、新人に花を持たせるとは、新生フィーネは懐も深いようですねぇ!」

 

MAD眼鏡が興奮しながら話す。

 

「え?え、えぇそうね…この調子でがんばりなさい?」

 

「はい、ありがとうございました!」

 

…あの様子だと、割と本気でやってたみたいだな…

なんだろう?何か悲しくなってくるな…

 

ドンッ!!

 

俺が何とも言えない気持ちに浸っていると、いきなり、アジトが大きく揺れる。

 

「ななな何事デスか!?」

 

「これは!?…先ほどの訓練時の小日向さんの歌でネフィリムが起動したようです」

 

は?マジで?

あいつマジでラノベ主人公なんじゃねぇの?

何そのご都合展開…

あの聞いただけで胸焼けしそうな愛が重い歌で起動するネフィリムもどうなの?

 

「しかし、早急にネフィリムを鎮める必要がありますね」

 

「私がやります!」

 

小日向が志願する。

確かにマリアさんを圧倒したこいつ以上に適任はいないのだが、装者になったその日にいきなり自律型聖遺物と実戦なんて無謀にも程がある。

かつて、ネフィリムが暴走した際にマリアさんの妹は絶唱を使ってネフィリムを鎮めたらしいのだ。

それだけ危険な相手という事だ。

 

「お前、何言ってんだよ!?」

 

「大丈夫。任せて?」

 

「確かに、起動したてであれば可能かも知れません。しかし、くれぐれもネフィリムに聖遺物を取り込まれないようにして下さい」

 

ネフィリムの特性は、暴食。

聖遺物の力を取り込んで力を増幅させるのだ。

本来、シンフォギアで挑むのは餌を与えるに等しい。

しかし、司令みたいな色々おかしい人ならさておき、生身でアレと対峙しても勝てる見込みは無いだろう。

 

「はい、じゃあ行ってくるね?」

 

「セレナ!待っ…くっ」

 

?マリアさんの様子がおかしい?

小日向に妹の面影を見てるのか?

 

***

 

アジトの一角で暴れ回っていたネフィリムと小日向が対峙する。

クソッ、モニターで見ているしか出来ねぇなんて無力過ぎるだろ!

 

睨み合いが続く。

ネフィリムがいつ飛び掛かってもおかしくはない。

頼む!無事でいてくれ!

お前に何かあったら、俺はあいつに何て言えばいいかわかんねぇよ…

やがて、小日向がおもむろにネフィリムに近付く。

バカ!お前何やってんだよ!?

 

『お手、フフっ、いい子』

 

我が目を疑う。

しかし、モニターには確かにネフィリムが犬みたいにお手してる姿が映し出されていた…




イヤー393チート過ぎますネ!

これでほぼ原作性能通りというのが恐ろしいデス…

対聖遺物で彼女に勝てる相手はいないでしょう。

今回のたやマさん
マリアさん→嘘!?こんな事ってありえない!これはあなたの胸の歌がしてみせた事なの!?
八幡→マジ気の毒…
マム→まさか…マリアを圧倒する程とは…
切ちゃん→マリア、割と本気っぽくなかったデスか?
調→それよりも八幡?何考えてたか詳しく
杉田君→愛ですよ!
393→手を抜いてくれたみたい。フィーネを演じるって大変なのかな?

F.I.S組はフリーダムですね…


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第七話G

どんどん原作からかけ離れていきます。

今回、いつもより少し長めです。
サクサク読めるを信条にしているのですが…申し訳ない。

では、駄文ですがお付き合いください。


あれから1週間。

 

フロンティア起動に必要な動力確保までネフィリムの成長を待っている状態だ。

 

そのネフィリムはというと…

 

「ネフィちゃん?お座り」

 

完全に小日向のペットに成り下がっている。

結構成長してレトリバーサイズくらいまで大きくなっているんだが、小日向に対して原初的な恐怖を感じている為服従しているというのが、専門家のナスターシャさんの見解だ。

 

まぁ、聖遺物であるネフィリムからすれば天敵に近い相手なので仕方ないのか?

だが、俺に対してはやたら噛みつこうとして来るので接触しないようにしている。

これに関しては、何故か小日向の命令でさえ無視する。

人間どころかペットにまで嫌われてるのかよ…

 

それはさておき、とりあえず、このまま行けば問題無く計画を遂行できそうだ。

 

「八幡、ただいま」

 

「ただいまデース!」

 

買い出しに行っていたちみっ子達が帰ってくる。

ちみっ子達の話では、俺と小日向は特に指名手配などはされていないとの事。

二課の動向が読めないな?

このまま何もして来ないならありがたいんだが…

 

「今日の晩ごはんは奮発して298円」

 

「ごちそうデース!」

 

月読がピースしながら言う。

 

そうなのだ…聖遺物が餌のネフィリムはいいとして、人間の食べる物が資金不足の為、こんな物ばかりなのだ。

はぁ…小町の飯が食いたい…

ちなみにこいつらかなりの偏食でナスターシャさんは病人の癖して肉しか食べないし、MAD眼鏡はお菓子以外口にしない。

あいつらの偏食に付き合ってるから資金不足なんじゃねぇの?

 

しかし、何から何まで見切り発車だな…こいつら…

ただ、タイムリミットが近く、時間に余裕が無かったのだろうという事も想像が付く。

タイムリミットとは、月の落下ではなく、ナスターシャさんの命。

彼女の体は病魔に蝕まれており、余命幾ばくも無いのだ。

そのような状態でなお、人類の為に献身するあたり、彼女もまた信念の人と言える。

やり方は色々間違ってるけどな…

 

そんな事を考えている時に急遽警報が鳴る。

やっぱりこのままうまくいくなんて事は無いか…

 

***

 

「一体何が?」

 

全員がナスターシャさんの所に集まる。

 

「侵入者です。特異対策機動部二課と見て良いでしょう」

 

「私と調、切歌で迎撃するわ。小日向未来はネフィリムが暴れないように見張っていてくれるかしら?」

 

「…わかりました」

 

小日向は不服そうだが仕方ない。

お前とネフィリムは計画の要だからな?

 

「それではドクターと比企谷さんはマリア達のサポートを。比企谷さんは可能であれば説得をお願いします」

 

確かにここまで上手くいっているのだ。

可能であれば、今後、衝突の無いように説得するのは悪い手ではないが…

侵入者があいつらだとしたら、何となく俺が行くのは逆効果な気がするんだよなぁ…

問答無用で立花にぶん殴られる姿が容易に想像付く。

はぁ…行きたくねぇ…

 

先行したマリアさん達のサポートの為、MAD眼鏡とアジト入口方面に向かう。

 

「フフフ、ようやく蒔いた餌に獲物がかかってくれましたか!」

 

お前…今度は何したんだよ…

 

「ネフィリムの餌の調達ですよ!このままでは当初用意していた聖遺物の欠片も底を付きますからねぇ!」

 

つまり、あいつらのシンフォギアを強奪しようって事だろうが…短慮すぎる…

何で頭いい筈なのにバカなの?死ぬの?

はぁ…ほんと余計な事すんのやめてくんない?

こいつがいる限り、今後も心労に悩まされる事になるんだろうな…

帰りたい…

 

そんな事を考えながら向かった先で見た物は、強烈な一撃でのされたと思われるマリアさん達と、出張って来る筈が無いと高を括っていた二課…いや人類最高戦力の姿であった…

オイオイオイ!死ぬわ俺…

 

***

 

「し、司令が何故ここに!?」

 

「君と未来君のおかげで、装者達が出撃出来るメンタルじゃないんでな…まったく、世話の焼ける」

 

?どうしたんだ、あいつら…

小日向がいなくなった立花はわからんでもないが、雪音や風鳴先輩まで一体何があったんだ?

気にはなるが、今はこの状況をどうするかだな…

 

「さぁ、比企谷君!今なら拳骨くらいで許してやろう!」

 

いや、あんたの拳骨とか普通に死ぬわ!

何その死刑宣告…

 

「まぁ拒否しても首根っこ捕まえてでも連れていくがな!」

 

ヤバい!今までの人生でピンチは多々あった…というかピンチしかない人生だったがここまで恐怖を感じる事は無かった。

この人敵に回すとかやっぱありえねぇわ…

プレッシャーだけで気絶しそうになる。

MAD眼鏡とか、口から魂抜けたような顔して「あばばばばば」とか言ってるし…

やべっ、変な思考してる間に目の前に司令が…

 

「させない!」

 

「ど根性デース!」

 

司令の拳骨を何とか再起した月読と暁が受け止め…れず俺含め全員吹っ飛ばされる。

 

「根性は認めるが、まだまだ甘い!」

 

久々に暴れられて楽しそうですね?

しかしどうする?

小日向とネフィリムがいる今、二課と対立する必要はまったくと言っていい程無い。

しかし、ここで正直に話すとして、アラサーの事に触れずに説得するのは、先日の小日向の反応を見て分かる通り、難しい。

小日向はこちらに協力する姿勢を見せていたし、口も固いので例外にするとしても、さすがにアラサーの事を二課に話せばタダでは済まないだろう。

例え相手が信頼に足る大人だとしても、ぼっちである俺にとって()()を売る事になるかもしれない賭けになど出れる訳が無い。

月の落下にしても、元を辿れば元凶あの人だしな…

はぁ…仕方ねぇな…

 

俺はソロモンの杖を起動した。

 

***

 

「比企谷君!自分が何をやっているのかわかっているのか!?」

 

「わかってますよ。出来れば、このまま引いて貰いたいっすね」

 

「くっ、1人で来たのが裏目に出たか…だが、君と未来君は必ず響君達の元に連れていくからな!」

 

そう言って、司令が撤退する。

 

「八幡…」

 

「月読、暁、出したノイズの処理を頼む」

 

「…了解デス」

 

仕方なかったとはいえ、人に対して人を殺す兵器(ノイズ)を…殺意を向けてしまった…

何故か立花と雪音の顔が脳裏に浮かぶ。

こんな外道があのまっすぐな少女や自分の足でようやく立ち上がろうとしている少女から好意を向けられる資格など無いのだ。

元から分かっていた事だ…今さらだ。

 

ノイズを殲滅した月読達が心配そうに俺を見る。

 

「八幡さん…」

 

「大丈夫だ…このアジトは放棄だ、急ぐぞ」

 

「…了解」

 

そう、アジトがバレた以上、ここに長居は出来ない。

速やかに移動する必要がある。

資金は無いのに何故か空輸手段はあるので、しばらくは移動しながら、新しいアジトを探す事になるだろう。

 

俺達は必要最低限の資材を持って、アジトを後にしたのであった。

 

***

 

「それでは、このままフロンティアが封印されている場所まで移動し、付近でアジトを探す事とします」

 

ブリーフィングが終わり、一段落。

今日は中間地点の山中に停留し、一夜を過ごす。

移動中は小日向のギアを飛行機に取り付ける事で強力なステルス性能を発揮できるらしく、見つかる心配はほぼ無いとの事で日中の移動で問題無いらしい。

ただ、燃料の問題もある為、長時間飛行している余裕は無いので、やはりアジトの確保が急務だ。

しかし、俺はというと…

 

「八幡?」

 

「悪いが1人にしてくれ…」

 

いまだ、人を殺す兵器を人に向けた事の重圧から逃れられないでいる。

小日向やちみっ子達が心配そうにこちらを見るが、これは俺の問題なのだ。

自分の問題なのだから自分で解決するのが()()()()

雪音にも言った事だ。

人に言っておいて、自分が出来ないなどあってはならない。

 

簡易ベッドに寝転がり、思考する。

やはり、アラサーの事を話さず司令を退けるにはあれが最善であったと思う。

しかし、何故こうも心を乱される?

失う物など元から何も持っていない俺にとって出来ない事など無かった筈なのだ。

 

「ちょっといいかしら?」

 

思考に耽っていると、マリアさんが部屋に入ってくる。

 

「…何すか?」

 

起き上がりそう返した俺を、急にマリアさんが抱き締める。

…は?え?ちょ…近い近い近い柔らかいいい匂い

 

「強がる必要は無いわ。斜に構えていたり、変に大人びているけど、あなたはまだ高校生なのよ?」

 

そう言われて、何故か不意に涙が出てくる。

本当におかしい。

小学校、中学校時代にいじめられていた時も―

天羽さんを犠牲にしたと公表し迫害された時も―

今までどんな事があってもこんな事は無かったのだ。

何故自分の感情がこうもコントロール出来なくなったのだ?

涙は一向に止まる気配はない。

 

「俺…人を…殺す……兵器を…人に…」

 

「うん、つらかったわね…あなたを巻き込んでしまった事、後悔しているわ。あなたがこんなに優しい人だなんて知らなかったのよ」

 

マリアさんが歌を歌う。

アーティストとしての彼女のような力強くカッコいい歌ではなく、とても優しく、どこか悲しい歌。

 

結局、俺が泣き疲れて眠るまで、マリアさんは優しく抱き締めてくれていた。




ようやくマリアさんが本気を出しました。

長かったです…

マリアさんが最後に歌った歌は劇中でも歌っていたAppleです。
このお話では八幡の為に歌ってますが、原作では彼女自身を奮い立たせ、70億の絶唱に繋げた歌でもあります。

気になる方は是非戦姫絶唱シンフォギアGを見ましょう(ダイマ)


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第八話G

第八話Gです。

もはや原作の面影すら無くなりつつあります…

では、駄文ですがお付き合いください。


あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!

恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい!

バッカじゃねぇの!?バッカじゃねぇの!?

バーカバーカバーカ!!

 

何してんだよ!?

俺のぼっち装甲はそんなに柔だったのか!?

………そういや柔らかかったな…

っじゃねぇよ!?

俺は一体どうしちまったんだ…

自分が自分で無くなっていく感覚…

孤高のぼっち改め泣き虫ぼっち比企谷八幡…

ぼっちは変わらねぇのかよ…笑えねぇな…

 

翌朝、目が覚めるとマリアさんはいなくなっていた。

いや、いても困るんだけどね?

そして現在、久しぶりに更新された黒歴史に悶えている最中である。

 

「あら?おはよう八幡…もう大丈夫そうね?」

 

とりあえずブリーフィングルームに移動するとマリアさんに声を掛けられる。

…いきなり名前呼びとか勘違いしてしまうんでやめてくれませんかね?

そういやアメリカでは名前呼びは当たり前か…

危うく勘違いして告白して振られちゃうところだったわ。

振られちゃうのかよ…

 

「ママママリアと八幡さんに何があったデスか!?」

 

「八幡詳しく」

 

すかさずちみっ子達が追及して来る。

君らは相変わらずぼっちを責めるのが好きだね?

 

「何でも無いわ。ね?」

 

そう言ってマリアさんがウィンクして来る。

思わず目を逸らしてしまう。

これは絶対におかしい。

何でこんなに心臓がバクバク言ってんだ?

顔も熱いし熱があるんじゃないか?

…風邪か?

 

「むむむ…その以心伝心みたいなやり取りは何なんデスか!?」

 

「怪しい…じー」

 

「偉いな暁、以心伝心なんて言葉知ってたんだな?」

 

「バカにしすぎデスよっ!?」

 

こいつら今日はやけに突っ掛かって来るな?

自分の姉貴分がワケわからん男と何かあったみたいに見えるから当然か…

しかし、あれは確実に俺の黒歴史トップ3に入る出来事なので俺の口から話す事は絶対に無い。

 

「あれ?八幡何か大丈夫そうだけど昨日何かあったの?」

 

次いで入ってきた小日向からも追及される。

こいつら何でこんなにぼっちをいじめるの?

もうちょっと優しく扱ってくれない?

 

そんな事を考えているとちみっ子達と小日向がひそひそ話を始める。

お前らこっち見て話してるのわかってるんだからな?

悪口ならせめて俺がいないところでやってくれませんかね?

 

「マ………で…戦し…ら……れ…ゆ…し…事態デスよ」

 

「ラ……ル…多……る」

 

「八幡は相変わらずだなぁ…」

 

小日向てめえひそひそ話するつもりねぇだろ!?

そんなに俺に聞こえるように悪口言いたいの?

性格悪いよ?

 

「それじゃあ移動するわよ」

 

こうしてマリアさんの操縦で再び、フロンティアが封印されている場所まで移動する事になった。

 

***

 

「米国の哨戒船?何でこんな所に?」

 

フロンティアが封印されている海域付近まで移動した俺達だが、付近に見慣れない反応があった為、照会した所、米国の哨戒船との事だった。

 

「米国はフロンティアを自分たちで起動させ、月の落下時に優位に立つつもりなのですよ!」

 

MAD眼鏡がそんな事を言う。

お前の言う事あんまり信用出来ないんだけど…

ナスターシャさんの方を見ると頷いてるので本当の事なのか…

 

「奴らは我々にとって敵です!さぁ!ソロモンの杖を使えば簡単です!奴らを殲滅しましょう!」

 

「んな事しねぇよ…起動キーも動力もこっちが押さえてんだ。ほっといても問題ねぇよ」

 

「甘い!ボクが食べているお菓子より甘すぎる!降りかかる火の粉は早めに取り除くべきです!貸しなさい!」

 

そう言って、杖を奪われる!

バカ!ノイズなんて放ったら二課にここにいますって言ってるようなもんだろ!

 

しかし、時既に遅く、哨戒船を大量のノイズが襲う。

 

「ドクター!?勝手が過ぎますよ!うっ!ゴホッゴホッ」

 

「マム!?ドクター!」

 

「はいはい。奴らの殲滅、後は任せましたよ?」

 

そう言って、ナスターシャさんと暴走眼鏡が退室する。

くそっ!俺の不手際で関係無い人達が…

そうか…あいつはずっとこんな気持ちを抱えてたんだな…

 

今回は自分の不注意が原因だ。

ならば、俺が片付けるのが道理だろう。

 

「八幡?」

 

「小日向、ちょっと行ってくるわ。すぐに二課が来ると思うから神獣鏡(シェンショウジン)は使うなよ?」

 

「え?でも…八幡は…」

 

小日向の返事を待たず飛び降りる。

 

~Granzizel bilfen gungnir zizzl~

 

本当はあの時、立花達と別れて少ししてからまた胸にうるさい位に響いていた。

戦う覚悟など無いからとずっと無視し続けていた()()()

今さら都合のいい話だが、力を貸してくれ!ガングニール!

 

~Zeios igalima raizen tron~

 

~Various shul shagana tron~

 

…お前ら何やってんだよ!?

 

「1人で突っ走るなんて、らしくないデスよ?」

 

「弱い人達を守りたい、それが私達の願い。こんなやり方は認められない」

 

さいですか…

………ありがとよ。

 

***

 

哨戒船に取り付いたノイズ達を殲滅する。

ひとまず、一段落だが…

 

脇を見る。

かつて人だった炭の塊。

娘と写るペンダントが見える。

 

最悪の気分だ。

自分の不注意のせいで、この人とこの人の娘の人生を歪めてしまったのだ。

 

「八幡…」

 

「八幡さん…」

 

ちみっ子達が心配そうにこちらを見る。

 

「大丈夫だ…それより、油断するな」

 

海中からミサイルが打ち出され、ミサイルから二人の少女が出てくる。

お前らはもう大丈夫なんだな…

目の隈は俺みたいになってるけど…

 

「雪音…風鳴先輩…」

 

「八幡…」

 

俺を見て声を掛ける雪音とは対照的に風鳴先輩は無言で刀を構える。

 

「おい!ちょっと待てよ!?あそこにいるのは八幡だぞ!?」

 

「だから何だ?あの男は今やノイズを操る人類の敵だ!それに…立花がどうなったか忘れたか!?」

 

?立花がどうかしたのか?

 

「だからって話も聞かねぇのかよ!?何か理由があるのかも知れねぇじゃねぇか!?」

 

戦場(いくさば)で何を呆けた事を!!」

 

とりあえず、この場を何とかしねぇ事には話も聞けそうにねぇな。

 

「月読、暁、雪音を押さえてくれ」

 

「ん、でも大丈夫なの?あの人かなり強いよ?」

 

知ってるよ。

でもこの場は俺が戦うしかねぇみたいなんだよ。

 

「大丈夫だ。頼んだぞ」

 

「…了解デス」

 

***

 

―蒼ノ一閃―

 

問答無用で風鳴先輩が技を放つ。

こちらも応戦するが、戦い慣れてなどいない身だ。

ボロが出るのも時間の問題だろう。

しかし、こんなに長くギアを纏う事が無かったから知らんかったけど、こんなに体が熱くなるもんなんだな…

体温上昇と共に身体能力も上がっているみたいなので、何とか風鳴先輩についていけてるが…

 

「貴様!舐めているのか!?」

 

―風輪火斬―

 

風鳴先輩の技がクリーンヒットする。

無茶苦茶痛え…

そしてそのまま、刀を突き付けられる。

 

「何故打ち込んで来ない!」

 

「こちらとしては争う理由が無いからっすよ…」

 

「ノイズを放っておいて何を今さらっ!」

 

「あれはこっちも不手際です…今ここに俺達がいるのは後始末の為ですよ…」

 

「そんな話、信じられると思うか!?」

 

「思いませんよ…だからこうして相手してるんです」

 

「減らず口を!」

 

風鳴先輩が刀を振り下ろす。

俺は静かに目を閉じる…

 

「!また目を!?」

 

風鳴先輩が刀を止める。

あの頃から俺が変わっていないという俺と風鳴先輩だけにわかる合図だったんだが、気付いてくれたか…

土壇場に出る行動じゃねぇと信じてくれそうにねぇしな…

 

「…話を聞きましょう。何があった?」

 

はぁ…心臓に悪い。

しかし、ようやく話が出来そう…

 

「黙って聞いていれば好き勝手言って…」

 

急に月読が乱入して来る。

月読さん?おーい?

 

「八幡がどんな思いでここにいるか知ろうともしないで!」

 

「なっ…何を言っているの?だから今から…」

 

風鳴先輩が珍しく慌てている。

慌てるとあの口調も崩れるのか…

今度試してみよう。

今度?何言ってんだ俺は…

血に塗れたこの身にそんな機会なんてもうある筈も無いのに…

 

ふと視界の端に暁に拘束された雪音がジト目を送ってくるのが見える。

雪音さん?戦闘中で拘束されてるのに随分余裕ありますね?

 

どんどんカオスになってんな…

 

「月読、落ち着け、今から話するところだったんだよ…」

 

月読の頭に手を置く。

 

「八幡…でも!」

 

「でも、じゃねぇよ…」

 

続いて頭を撫でる。

 

「ん」

 

ようやく落ち着いたか…

俺のオートお兄ちゃんスキルがこんな所で役に立つとは…

 

「それじゃあ、お互い情報交換しましょうか?」

 

雪音がジト目を辞めないがあえて無視だ。

心なしか、さっきより睨んでるに近くなっている気がする。

暁は…良くわかんねぇな…

何で目キラキラさせてんの?

 

「あ、あぁ…」

 

風鳴先輩が軽く引いている。

ん?引かれるような事しただろうか?

 

「八幡?手を止めちゃダメ」

 

へいへい…




ビッキーがどうなってるかまでたどり着けませんでした…

防人が融通効かない人に見えると思いますが、ソロモンの杖を八幡が持っていると聞いた事とノイズ被害が出ているという事の怒りで再起してここに立ってますので仕方ない感じです。
ほんと杉田君は余計なことしてくれますね…
けど彼いないと正規適合者のいないF.I.S組はまともにシンフォギアの運用できないんですよね…


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第九話G

第九話Gです。

自分の文章力の拙さが呪わしいです…

では、駄文ですがお付き合いください。


「まずはそちらから話して欲しい」

 

風鳴先輩がそう言う。

 

俺は月が落下する事、フロンティアを起動させ、月の落下を阻止する手立てを見つける事が目的である事をアラサーの事を伏せながら話す。

 

「そのような理由に何故ソロモンの杖を?」

 

「あれはこっちのバカの暴走です…」

 

ほんとあいつ何なの?足引っ張るしかしてねぇんだけど…

そういや杖奪われたままだったな…

さっさと取り上げねぇとまた何するかわかったもんじゃねぇ。

 

「…では君自身が使おうと思った訳では無いのだな?」

 

「八幡はそんな事しない」

 

「私達が保証するデス!」

 

ちみっ子達が口を挟む。

 

「そうか…目的はわかったが…何故私達を頼らなかったんだ?叔父様にはソロモンの杖を使ってまで…」

 

ぐっ、やっぱりそこを突いてくるか…

 

「自分の為だからですよ…自分の事は自分でやる。当たり前じゃないですか」

 

「だからとてっ!人に危害を加えてまで…叔父様で無ければ人死が出ていたんだぞ!?」

 

「それについては反省してます…すんませんでした」

 

「…はぁ…不承不承ながら、了承しよう」

 

違和感は拭えんと思うが、こちらもアラサーの事を言う訳にはいかねぇからな…

追及して来ないならありがたい。

 

「ならばこちらの話だな…」

 

そこで、言葉が途切れる。

雪音も目を逸らしている。

 

「落ち着いて聞いてくれ、立花はこのままでは死ぬ」

 

………は?何を言ってんだ?

あんなに元気だったじゃねぇか…

 

「君と小日向がそちらに付いてから急激に聖遺物の侵食が加速した。二課の見立てでは後数回ガングニールを起動すれば立花は…」

 

風鳴先輩が堪えきれず、涙を流す。

その涙が彼女の言葉が真実である事を雄弁に語っていた。

 

その場に膝を折る。

何でだよ…何であいつがそんな目に遭わなきゃならねぇんだ…

 

「それで…あいつは?」

 

「ハチ君!」

 

いつもの呼び声…何度やめろと言ったかわからないその呼び声に振り向く。

 

「良かった…無事だったんだね?」

 

お前…何でそんなになってまで人の心配してんだよ…自分の心配してろよ…

 

「その顔は…聞いちゃったんだね…うん、私、死んじゃうみたい」

 

他人事じゃねぇんだぞ?

何でそんな平気そうな顔してんだよ…

 

「だからさ…急で申し訳ないんだけど私としても返事を聞かないまま死んじゃうってのは…」

 

急に立花がモジモジし出す。

返事?

まさか…お前………

 

「お前…そんな事聞く為についてきたんじゃねぇだろうな…」

 

「そんな事ってひどいよ!?乙女には大事な事なんだよ!?」

 

その瞬間…何かを察した風鳴先輩以外の連中から何故か殺気が溢れ出す。

 

「八幡、どういう事だ?」

 

「八幡、詳しく」

 

「説明するデスよ…」

 

いや、今お前らがしゃしゃり出てくる場面じゃねぇだろ…

何なの?ぼっちに何を求めてんの?

 

凄んでくる雪音達から逃げながら、何とか立花に呼び掛ける。

そうまでしてここまで来たのだ。

応えてやるのが礼儀だろう。

 

「立花!一回しか言わねぇからな?俺は…」

 

ガリッ

 

ん?

急に左腕が熱くなる。

 

振り向くと、そこには、()()()()ごとシンフォギアを食べるネフィリムの姿があった。

 

*** 八幡out 翼in

 

突然現れた化物に比企谷の左腕が食われた。

 

「貴様ぁぁっ!!!」

 

気付けば私は叫んで化物に斬りかかっていた。

他の者達も概ね私と同じだ。

敵になってしまったと悲しんだあいつはやはり優しく不器用なままのあいつだったのだ。

自分の為と言いながら人の為にしか動けないあいつを、支えてやらねばと誓ったばかりなのだ!

それを…絶対に斬る!

 

「雪音!比企谷を急いで治療室…に…」

 

異変は既に起きていた。

比企谷の体が真っ黒になっていたのだ。

あれは…あの時の立花と同じ…?

そうだ!?立花は!?

 

「ウワァァァッッ!!」

 

振り向いたそこには比企谷と同じく、体を漆黒に染める立花の姿があった…

 

「待て!立花!お前の体は…」

 

立花が猛スピードで化物に迫る。

化物が応戦するが、立花から繰り出される拳打に為す術が無い。

続けて、比企谷が化物の腕を()()()()伸びる槍で串刺しにする。

化物が堪らず逃げようとした所を二人掛かりで滅多打ちにする。

まるで()()()()()()()()()かのような連携だ。

先程見た比企谷の動きとは思えない異質さだ。

 

「や、やめろぉぉ!それは!ネフィリムは人類の、ボクが英雄になる為のぉぉ!」

 

いつの間にか現れた白衣の男が何か喚き散らしているが、今は構っている場合では無い。

立花を一刻も早く止めなくては…あの力は立花の命に深刻なダメージを与える。

 

「雪音!立花を止めるぞ!お前達も手伝ってくれ!」

 

「お…おぅ」

 

「デ、デース…」

 

「呆けない!死ぬわよ!」

 

「やめろぉぉ!」

 

白衣の男がソロモンの杖を起動する。

ノイズ!?くっ、こんな時に!?

その時だった。

 

~Rei shen shou jing rei zizzl~

 

初めて見る紫のシンフォギアを身に纏う少女が降り立ったのだった。

 

「…小日向?」

 

「響達は私が止めます!翼さん達はノイズを!」

 

「しかし!今の立花達は…」

 

「大丈夫です!へいき、へっちゃら…そうだよね?響?」

 

「グァァァァッッ!」

 

立花達が小日向に迫る。

くっ、やはり立花達の意識は…

 

「小日向未来は絶対に響を見捨てたりしない!八幡だって助ける!響達の闇を払ってみせる!」

 

***

 

ノイズ達を殲滅した私達だが、小日向達の戦いは続いていた。

まずい…このままでは立花の命が…

 

小日向が手に持つアームドギアから光を放つが暴走した立花達は難なく避ける。

あの機動力を何とかしない限り、素人の小日向が何をしても当たりはしない。

 

「今です!マリアさん!」

 

小日向が降りてきた飛行機から大量の機械が射出される。

あれは…反射鏡?

 

小日向が放った光の乱反射で光の結界が作られる。

 

「これなら!」

 

―流星―

 

小日向の放つ光の束が立花達に直撃する。

…が

 

「グァァァァッッ!」

 

比企谷が盾になり立花を庇う。

その隙に立花が小日向を蹴り飛ばす。

比企谷はそのまま海に落ちていくが…暴走状態は解除されたようだ。

あの装者達が回収に向かったようだな。

あちらは任せて良いだろう。

しかし…

 

「あぅ!」

 

「くっ、やはり全員で掛かるぞ!」

 

「ダメです!神獣鏡(シェンショウジン)の光は聖遺物の力を無効化するんです!翼さん達に当たれば無防備な状態で響に…」

 

くっ、指を咥えて見ているしか出来ないと言うのか!?

 

「こうなったら…1つしかありません…」

 

「まさか…その目…小日向!待て!」

 

~Gatrandis babel ziggurat edenal~

 

~Emustolronzen fine el baral zizzl~

 

~Gatrandis babel ziggurat edenal~

 

~Emustolronzen fine el zizzl~

 

私の制止もむなしく小日向が絶唱を口にする。

気付けば、何故か立花も絶唱を口にしていた…

そして二つの絶唱のエネルギーを立花が束ね天に放つ。

何だ…何が起きているのだ?

思考が追い付かない…

 

大量のフォニックゲインのエネルギーの波が収まり、天から現れたのは、奇跡を纏う小日向の姿だった。

 

「まさか…エクスドライブ!?」

 

バカな!?絶唱二人分のエネルギーだけで限定解除に至るなんて…聞いた事が無い。

 

「響、聞こえる?響の声を私に聞かせて?」

 

「ウルサイ…!ドウセワタシハ…コノママシヌンダ」

 

立花…強がってはいたが、やはりお前は…

 

「死なせたりしない!だから響の本当の声を私に聞かせて!」

 

「ダマレ!ワタシハ…グアアアアッ!」

 

再び立花が小日向に襲いかかるが、小日向はそれを難なく避ける。

 

「響の拳は握って誰かを傷付ける為の拳じゃない!響の拳は…人と手を繋ぐ為の拳なんだ!」

 

「チガウ!この手は…私の…タイセツナモノヲキズツケルモノヲ!」

 

「お願い響!聖遺物なんかに負けないで!生きるのを…諦めないで!!」

 

小日向のその言葉で立花が止まる。

あれは…奏の…

 

「ミク…私を助けて」

 

「響の声、やっと聞けた!うん、助ける!この手は二度と放さない!絶対の絶対にっ!!」

 

―暁光―

 

小日向の放つ力強い光が立花を包む。

そして、それと同時に海面が大きく揺れる。

海底自体が隆起しているかのようだ。

 

まさか、これが比企谷の言っていたフロンティアだというの!?




ダイナミック夫婦喧嘩は翳り裂く閃光チックになりました。

さすがグラビティ担当、ビッキーの為なら奇跡だって纏ってみせるのでしょう

リディアン生徒だけで三人だったり70億で六人だったりエクスドライブの発動条件は良くわかりませんが、シンフォギアには良くある事なので気にしたら負けだと思います(笑)

クライマックス直前で申し訳ないのですが、次の更新はシリアスの連続で作者の身が持たないので、幕間 絶唱しないシンフォギアG1を書くと思います。

XDフェス11連一回でXDたやマさんお迎えできました。
書けば出るという噂は本当だったんですね…


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幕間 絶唱しないシンフォギアG1

予告通り絶唱しないシンフォギアGです。

今回以外のお話はたぶん本編終わってから書くと思います。

では、駄文ですがお付き合いください。


*** クリスと防人(クリス視点) ***

 

今日は風鳴先輩とファミレスに来ている。

いまだこっ恥ずかしくて名前で呼べないのだが、未来がいない今、八幡の事で相談できるのがこの人しかいないのだ。

 

あのバカはライバルだし、今日は何か調子悪りぃみたいで精密検査を受けているみたいで相談なんてできねぇしな。

敵にわざわざ情報を送る必要もねぇだろ。

 

しかし、全く会話が弾まねぇな…

何か頼んで食べながら話すか…

あたしから相談するんだし、奢りの方がいいよな?

 

「何か頼めよ?奢るぞ?」

 

あたしがそう言うと何か考える素振りをしてから、少し間が空いて

 

「夜の9時以降は食事を控えている」

 

と返される。

ダイエットでもしてんのか?

いやいや、ただでさえ細いのにこれ以上痩せる必要ねぇだろ…

あたしなんてすぐ服のサイズ合わなくなるんだぞ?

何で体操服何回も買い直さなきゃなんねぇんだよ…

 

「お前、そんなだから…そんななんだよ…」

 

…あんまうまい言葉が思い付かなかったけど、まぁ伝わるだろ?

 

「用が無いなら帰るぞ!」

 

ん?何イライラしてんだ?

もしかして、さっきのあたしの言い方がまずかったか?

これ以上怒らせる前に本題に入るか…

 

「その…何だ?たまには腹を割って話をしてみたかったんだよ…」

 

初めてキスした時の感想とかよ?

他の人がどうかとか知りてぇしな…

ついでにこれから八幡とどう関係を詰めていきゃいいかとかも聞きてぇし…

あたし…嫁とか割とこっ恥ずかしい事言ってたしな…

 

「腹を割ってというなら…いい加減名前で呼んで貰いたい物だな?帰るぞ!」

 

あ…帰っちまった…

何だよ、チクショウ。

 

でも、いまだに名前で呼べねぇってのは何とかしねぇとな…

 

ままならねぇな…

 

八幡…早く帰って来いよ…

 

*** クリスと防人(防人視点) ***

 

比企谷達が姿を消して5日、何の音沙汰も無くただ日々が過ぎていた。

 

立花は訓練終わりに体に違和感があるという事で精密検査を受けているのだが、珍しく雪音に声を掛けられた為、こうしてふぁみれすに同席しているのだが…

こう、後輩とこのような所に来ると何だかワクワクするな!

クラスメイトがこういう所でドリンクバーを頼んでおしゃべりするのが女子高生としての嗜みだと言っていたしな!

 

「何か頼めよ?奢るぞ?」

 

何?ならばラーメンを…

ふぁみれすなる所で食べるラーメンにも興味があったのだ!

比企谷に聞くとチープな味のわりに値段が高いと不評だったのだが…一度はこういう所で食べてみたいのだ。

 

いや、いかんいかん。

ラーメンは比企谷と食べる物だし、先輩が後輩に奢られるというのも聞こえが悪い。

ましてや私は二課以外にも歌女としての収入もある身だ。

ここは雪音を傷つけないよう、やんわりと断ろう。

 

「夜の9時以降は食事を控えている」

 

ふふん、これが大人の遠慮の仕方と言う物だ!

いらないでは無く、あくまで私の信条を理由に断るのだ。

これならば角も立つまい。

 

「お前、そんなだから…そんななんだよ…」

 

おい!雪音!今何処を見て言った!!?

胸か!?胸なのか!?

くっ!確かにお前は大きい。それは認める。

だからとてっ!私に全く無いなんて事は無いのだ!

よく比企谷の視線がお前や立花の胸に行っているのに、私と話す時は全然視線が胸に行かないのなんて気にしてないからな!

本当に気にしてなんていない!

本当の本当だ!

 

「用が無いなら帰るぞ!」

 

おっと、いかんいかん。

先程の意味深な視線と発言でつい喧嘩腰になってしまった。

私は防人だからな!

このような些細な事で怒ったりしない!

私は剣私は剣私は剣…

振り抜けば風が鳴る剣だ

 

「その…何だ?たまには腹を割って話をしてみたかったんだよ…」

 

腹を割って?

ほう…つまり私の胸の薄さについて本音で語ろうと?

戦争か?戦争だな?よろしいならば戦争だ!

ハイクを詠め!

 

「腹を割ってというなら…いい加減名前で呼んで貰いたい物だな?帰るぞ!」

 

(いくさ)の準備があるからな!

今日から豊胸マッサージとストレッチ、食生活もしばらくは豊胸を意識した物に切り替えましょう…防人からの提案だ!

 

ふふん!見てろよ!

絶対に見返してやるからな!

 

こうして、私は雪音を見返す事を誓い、その場を後にしたのだった。

 

結果を聞きたいのであれば防人の生き様、覚悟を見せる事になるだろう。

 

*** 切ちゃんのてがみ ***

 

八幡の家でご飯を食べてからアジトに帰る。

小町のご飯は今日もおいしかった。

 

そういえば私達って何しに八幡の家に通ってるんだっけ?

楽しいし、まぁいっか。

思い出せないって事は大した事じゃないよね?

 

でも毎日通うのは、大変だなぁ…

そうだ!明日からお泊まりにすればいいね!

早速切ちゃんにも言ってみよう!

 

「切ちゃん!」

 

「ししし調!?ななな何デスか!?」

 

ん?何かすごい動揺してるね?

明らかに何か隠したし…

 

「じー」

 

「な、何デスか?」

 

あっ、そうだ。

まずは本題からだね。

 

「毎日通うのも大変だし、明日から八幡の家にお泊まりしない?」

 

「ななな何を言ってるデスか!?年頃の女の子が男の子の家にお泊まりなんて…」

 

?そんなに慌てる事かな?

顔も赤いし、どうしたんだろう?

 

「でもお風呂まで入ってるのに今さらじゃない?」

 

「うっ、それはそうデスけど…!っさすがに人の家にお泊まりするのは家の人にも悪いデスよ!」

 

「小町に聞いてみればいいんだね?」

 

「え?調?」

 

私は小町に電話する。

 

『およ?調ちゃん?どしたの?』

 

「小町。明日から私と切ちゃんお泊まりしてもいい?」

 

『調ちゃんと切歌ちゃんなら歓迎だよー!お兄ちゃんの部屋、鍵無いから入りたい放題だよ?』

 

?小町何言ってるんだろう?

でもこれで小町のオッケーは貰った。

八幡は…大丈夫でしょ

 

「小町のオッケー貰ったよ?」

 

「いつの間に小町ちゃんと連絡先交換してたデスか!?」

 

「?会ったその日に交換したけど…」

 

小町に聞かれて交換したけど、切ちゃんはしてないのかな?

 

「危機管理意識無さすぎデスよ!?当初の計画忘れたデスか!?」

 

「でも八幡が何とかするんでしょ?なら問題ない」

 

「既に信頼度MAXじゃないデスか…信用できないから尾行しようって言ったの調だったはずデスよ…」

 

切ちゃん?過去の事を掘り返してもいいことないよ?

私達は前を見て進まなきゃ。

話を逸らす意味でも、そろそろ聞いちゃおうな?

 

「ところで切ちゃん?何を隠したの?」

 

「ななな何の事デスか!?ちょっとわからないデスよ!?」

 

うん、見るからに動揺してるね?

 

「じー」

 

「こ、これはいくら調でも教える訳にいかないデスよ!」

 

「じー」

 

「うっ…笑わないデスか?」

 

「うん」

 

「八幡さんにお手紙を書いたデスよ。私達、普通の暮らしなんてして来なかったから…ありがとうのお手紙デス」

 

そっか…そうだね。

私達、普通の暮らしが何かなんて知らなかったもんね。

それをくれた八幡にはありがとうだね。

 

「じゃあ、明日お泊まりのお願いと一緒に渡そ?切ちゃん」

 

「お泊まりは確定なんデスね…」

 

翌日、八幡にお泊まりのお願いをした。

八幡は、「俺の邪魔すんなよ」とだけ言ってすんなり認めてくれた。

意外と女の子と同居するのに慣れてる?

何かムカッとしたから後で八幡にアイス買ってきてもらおう。

 

それで、切ちゃんが渡した手紙なんだけど…

 

「暁…字が汚すぎて読めねぇんだけど…お前はもうちょっと勉強だな」

 

「な、何デスとっ!!?べ、勉強なんて忙しい八幡さんの手を借りるまでも…」

 

「いいから」

 

「…はいデス…」

 

切ちゃん、御愁傷様。

 

「月読も他人事じゃねぇぞ!お前もどうせ似たようなもんだろ」

 

そんな!?ゲームは?マンガは?

 

こうして私と切ちゃんは教育ママ?お兄さん?と化した八幡にビシバシしごかれたのだった…

 

「…ところで八幡、国語ばっかりだけど数学はやらないの?」

 

「あんな科目必要ねぇ」

 

えぇ…勉強が必要とかどの口が言うの?




とりあえずシリアスが続いたので作者の体が持たず箸休め的なお話です。

フィーネさんは今回はお休みです。


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第十話G

少し更新遅れました。すみません。

何か日間ランキング載ったみたいですね…
かなり人を選ぶと思うので期待外れの方はごめんなさい。

とりあえず絶唱しないを書いてシリアス成分に耐えれるだけの箸休めは出来たと思います…

言ってるうちから番外書いたらすみません(笑)

では、駄文ですがお付き合いください。


目を覚ますと至近距離に暁の顔が…

え?何この状況…

 

「…お前何やってんの?」

 

「デデデデデデース!!?何で今目を覚ますデスかぁ…」

 

知るかよ…

 

「で?何しようとしてたんだ?」

 

「そそそそれは…八幡さんが中々目を覚まさないから…」

 

落書きか?落書きだな?落書きだって言ってくれ。

 

「その…人工呼吸などを…デェス…」

 

「お前何で言っちゃうの?聞きたくなかったわ!ぼっちを悶絶死させる気かよ!?」

 

「わ、私だけ出遅れてるから抜け駆けしてやるつもりだったデスよ!」

 

「知るかよ…俺を巻き込むなよ…」

 

「むしろ一番の当事者の筈デスよ…」

 

というか、競争感覚でそんな暴挙に出んなよ…

 

「それで、ここは?」

 

「二課の医務室デスよ、み、皆を呼んでくるデスね」

 

あっ、逃げやがった…

しかし…無くなったはずの左腕…くっついてるな…

がっつり食われちゃったはずなんだけど…

 

***

 

ほどなくして全員入ってくる。

 

面子は…司令、風鳴先輩、立花、小日向、月読、暁か…

ん?雪音は何処行ったんだ?

 

「まず、状況から説明しよう」

 

司令がそう言う。

 

「今はフロンティアが浮上し、3時間といった所だ」

 

フロンティア?浮上したのか?

そういや何で小日向がここにいるんだ?

 

「ネフィリムという自律型完全聖遺物に君の腕が食われて、その後君と響君が暴走したのは覚えているか?」

 

「いえ…さっぱり」

 

「未来君は君たちを助ける為に、シンフォギアで応戦したんだ。その際、響君の胸に侵食していたガングニールは全て除去された」

 

て事は、立花は死なずに済むのか?

良かった筈なのに何でそんなに顔が暗いんだ?

 

「しかし、無理が祟ったのか、未来君のギアは壊れてしまってな…それで君の方なんだが…」

 

皆が俯く。

だいたい読めてきたが、()()()()で何でこんな気まずい雰囲気に?

 

「君の方は暴走が解除されただけで、胸のガングニールは残ったままだ。それに…検査の結果、君の侵食進度は響君以上である事がわかった…」

 

司令が目を逸らす。

手がこれでもかという位強く握られている。

 

「八幡!ごめんなさい!助けるって言っておいて…私…私…」

 

小日向が泣きながら抱き付いてくる。

いや、近い近いいい匂い近い。

 

「何でお前がそんな事気にしてんだよ…」

 

「だって!八幡、このままじゃ死んじゃうんだよ!!?」

 

「いやあんだけ無茶やってむしろ長生した方だろ…」

 

ほんと、何回死ぬと思ったかわかんねぇ位だよ…

そっか、ついに死ぬのか…くらいなんだけど。

むしろノイズに炭にされるとかじゃない死に方にびっくりしてる位だわ。

それでも心残りがあるとしたら小町の事くらいだ。

だが、小町は強い子だ。

俺が死んだとしても、きっと乗り越えてくれると思う。

幸い、あいつも今は1人じゃないしな。

 

「ハチ君…」

 

「何暗い顔してんだよ…お前は助かったんだから素直に喜んどけよ」

 

「喜べないよ…自分だけ助かってハチ君が…好きな人が死んじゃうなんて喜べないよ!」

 

お前何でこんな全員いるところで言っちゃうの?

月読と暁がめっちゃ睨んでるんだけど…

後小日向さん?痛いんでいい加減離してくれません?

いやほんと痛いんだけど…

何で鯖折りに移行してんの?今ここで殺る気なの?

 

「我々の方でも未来君のギアの修復を試みてはいるが…異端技術についてはほぼ了子君任せだったもんでな…」

 

月読と暁が何かを思い付いたような顔をするが…

 

「月読、暁、やめろ」

 

「八幡!でも!」

 

「でもじゃねぇよ、やめろ」

 

アラサーに頼むという事はあの人の身柄と引き換えに助けてくれという事だ。

そんな事は俺が望まない。

誰かを犠牲にして助かるなんて言葉通り死んでもごめんだ。

 

「それで、雪音は?」

 

話を変える為にも気になっていた事を聞く。

 

「雪音はあちら側についた」

 

風鳴先輩が答える。

ソロモンの杖か…

クソッ、俺がしっかり管理できてりゃあいつにそんな無茶させる事も無かったのに…

 

「叔父様、そろそろ私は出撃します」

 

「翼さん…」

 

「案ずるな立花、1人でステージに立つのには慣れた身だ」

 

風鳴先輩がそう答えるが…

 

「防人の剣は…このような所で手折られる剣ではない」

 

その姿は初めて会った時のようにどこか儚く脆い印象を受けた。

 

「風鳴先輩」

 

「どうした?比企谷?」

 

「ラーメン…おすすめの店があるんで帰ってきてくださいよ」

 

「!…それは…帰らない訳にいかなくなったな!掛かる危難は全て防人の剣が払ってみせよう!」

 

そう言って風鳴先輩は出ていく。

少しは前向きになったか?

こんな一言で作戦成功率が上がるなら安い物だ。

俺の方がこんな状態だから約束を叶えられる事は無さそうだがな…

 

***

 

立花と小日向が風鳴先輩の見送りの為に退出し、司令と月読、暁が残る。

 

「それで、月読と暁はどうなるんすかね?」

 

「彼女達はしばらく二課で預かる事になるだろう。幸い、彼女達は人的被害に関与していないしな」

 

そうか、そりゃ良かった。

 

「それじゃあ私達も出撃する」

 

「あのヤドロクなら八幡さんを助けれるかも知れないデスよ。首根っこ捕まえてでも連れて来るデス!!」

 

「ウェル博士か…確かに生医学の権威なら、比企谷君の体についても手立てがあるかもしれんな…」

 

司令がそう言うが…

え?ヤドロク=ウェル博士で伝わるの?

 

「俺の為とかそんなんはいいっつうの。お前らは素直にマリアさんとナスターシャさんを助ける為だと思っとけ」

 

「これが私達の素直な想い」

 

「助けたい人の中に当然八幡さんも入っているデスよ」

 

…さいですか。

まぁ俺も死なないに越した事はねぇから期待せずに待つ事にしよう。

 

「じゃあ行ってくる」

 

「必ず連れてくるデスよ!」

 

そう言って月読、暁も出ていった為、司令と二人きりになる。

 

何だろう…気まずいんだが…

そういやまだ言ってなかったな…

 

「司令…その…ノイズの件、すみませんでした」

 

「ん?あぁ…」

 

司令が徐に近付いてきて、頭を小突かれる。

 

「いてっ」

 

「拳骨で許してやるって言ったからな。これでチャラだ」

 

そのまま頭をワシャワシャされる。

いや、俺は人を殺せる兵器を使ったのに…

 

「まったく、君は大人相手に遠慮しすぎだ…ノイズ程度、少数なら俺でも何とかなるが…理由があるならちゃんと言え」

 

マジかよ…ノイズまで倒せんの?この人

人間離れしすぎじゃね?

 

「それじゃあ俺も発令所に戻る。何かあったら知らせてくれ」

 

「ちょっと待ってくれるかしら」

 

声の主の方を見る。

そこに現れたのはアラサーこと櫻井了子だった。

いやあんたあんだけ苦労したのに何やってんだよ…

 

***

 

「了子君…だとぉ!!?」

 

「久しぶりね?弦十郎君…」

 

「生きていたのか?」

 

「えぇ…その子に助けられてね?」

 

別に助けたつもりはねぇんだけどな…

 

「…何しにここに?」

 

「八幡君は相変わらずつれないわねぇ…あなたを助けによ?」

 

「いやでもせっかく匿ってたのに出てこられると…」

 

話してる途中で抱き締められる。

 

「バカねぇ…そんな事の為にあなたがつらい思いする必要無いのよ…ほんと…響ちゃん以上に放っておけない子」

 

「隠し通せてたってのに…」

 

「あなたの命に替えれる物では無いわ。言ったでしょ?私はあなたと違って死んでも生き返れるって」

 

「フィーネはそうかも知れねぇけど櫻井さんは…」

 

「これについては了子も了承済みだ。ここまでしておいて今さら助けるな、などとは言ってくれるなよ?」

 

彼女はフィーネとして笑みを浮かべる。

それは何もかも覚悟した大人の目だった。

 

そんな大人に半端者の俺から言える事など、何一つ無いのであった。




書いてる途中で寝落ちした為、更新遅れました…

今回はほぼ説明回です。

翳り裂く閃光の復刻版が開催中なので、明日の更新も怪しいかもです…

気長にお待ち頂ければ幸いです。


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番外 正妻戦争

誤字報告ありがとうございます。

お気に入り500突破しましたので…

言ったそばから番外です…

仕方ないネ!嬉しいんだもん

登場人物
セイバー
真名:風鳴翼

アーチャー
真名:雪音クリス

ランサー
真名:マリア・カデンツァヴナ・イヴ

ライダー
真名:月読調

キャスター
真名:小日向未来

アサシン
真名:暁切歌

バーサーカー
真名:立花響

比企谷八幡
マスター。総武高校に通う高校2年生。


正妻戦争…

 

何か1人のマスターの嫁を決める為に7人のサーヴァントが戦ったりする…らしい。

らしい、というのはマスターが自分で未だに現実味が無く信じられないからだ…

7人が7人全員美少女とか意味わからん。

ぼっちを殺しに来てるとしか思えないんだけど…

 

しかし、このサーヴァント達なんだが、ちょっとズレた感性の持ち主ばかりなので、気が抜けないのだ…

 

具体的にはすぐに荒事に持っていく。

何で朝飯誰が作るかで家が半壊しかける喧嘩になんの?

()()()日本でそんな事したらすぐお巡りさんに捕まっちゃうよ?

何か正妻戦争で起きた被害は全部ガス会社のせいに出来るから費用は全額向こう持ちらしいけど…

ただ何かあの監督役のアラサー胡散臭えんだよなぁ…

 

そんな事を考えながら、いつもの空き教室の扉を開ける。

 

「うす」

 

「あら…誰?」

 

「俺だよ…雪ノ下」

 

「私の知り合いに俺なんて名前の人はいないのだけれど。オレオレ詐欺かしら?それとも目だけじゃなく脳まで腐って自分の名前すら忘れてしまったのかしら?」

 

「んな訳ねぇだろ…比企谷だよ」

 

「比企谷…?誰?」

 

「お前絶対わかっててやってんだろ!?」

 

「ふふ、冗談よ、こんにちは比企谷君」

 

『マスター、先ほどからこの女、マスターを侮辱しすぎではないか!?やはり斬るべきでは?』

 

『切り刻んでやるデス!』

 

『やろう?切…アサシン?』

 

セイバーさん?アサシンさん?ライダーさん?ほんと辞めてね?

何ですぐ物事が生き死にに繋がるの?

現代日本はそんな物騒じゃないって何度も言ったよね?

あなた達ぶっちゃけバーサーカーよりバーサーカーしてるよ?

 

『あなた達落ち着きなさい!』

 

はぁ…ランサーさんマジ癒しだわ。

 

『貫き通すのがいいんじゃないかしら?』

 

『それだ!何ならあたしが蜂の巣にしてやるぜ?』

 

前言撤回。この人も脳筋だったわ…

後アーチャーも黙っててくれる?

それだ!じゃねぇよ…

 

『皆そんな事したらマスターが困っちゃうよぉ…だから落ち着いて仲良くしよ?ね?』

 

『うん、そうだね?響』

 

バーサーカーが一番バーサーカーしてないんだけど…

どの辺がバーサーカーなの?この子…

 

後キャスターがどう見てもガチユリなんだけど、君正妻戦争の主旨理解してる?

普通にバーサーカーの真名呼んでやがるし…

いや別に俺を無駄にドキドキさせないからこいつが一番楽なんだけどね?

 

このように5人のバーサーカー+普通の女の子+ガチユリという面子なのだ…

俺の気苦労は察して欲しい…

 

「何をぼーっとしてるのかしら?さっさと座ったらどう?」

 

「お…おぅ」

 

いかんいかん、雪ノ下にはこいつらは見えてないし、声も聞こえてない。

あまり思考に耽ると危険だな…主に俺の風評が。

今後気をつけよう。

 

「紅茶でいいかしら?」

 

「お…おぅ」

 

雪ノ下が紅茶を淹れてくれる。

はぁ…言葉の刺はアレだが、こいつの淹れてくれる紅茶は気苦労の絶えない俺にとって癒しとなりつつある。

 

『じー』

 

ライダーさん?あんまり凝視されると落ち着かんのだけど…

 

『しら…ライダー?どうしたデスか?』

 

『マスターの目、どんどん濁りが酷くなってる』

 

『マジかよ…マスターどうしたんだ?何か悪ぃもんでも食ったか?』

 

誰のせいだと思う?君たちだよ?

ほんとお前達が大人しくしてくれてたら、もうちょっとマシだと思うよ?

むしろマシになりすぎてイケメンになってしまうまである。

…ねぇか?ねぇな。

自分で言っちゃうのかよ…

 

「やっはろー」

 

『やっはろー』

 

『やっは…くっ、屈する訳には!』

 

『やっ…私には無理よっ…!』

 

バカっぽい挨拶と共にこの謎の部活のもう1人の部員、由比ヶ浜結衣が入ってくる。

バーサーカーさん?君たち見えてないんだからその挨拶に付き合う必要無いからね?

アホの娘が移っちゃうよ?

セイバーさんとランサーさんは何でやろうと思ったの?

正直この中でやりそうに無いトップ1と2だよ?

 

「こんにちは」

 

「…うす」

 

それぞれ挨拶を交わし、彼女もいつもの席に座る。

部活と言っても、依頼が来なければだいたい俺と雪ノ下は小説を読み、由比ヶ浜は携帯を弄っているだけである。

ほんと何なの?この部活…

しかし、家に帰ったら帰ったでこいつらが実体化して色々とやらかすので、現在俺の唯一の癒しの場なのである。

 

「ヒッキーそういえばさ?」

 

『何かな?』

 

『響?ビッキーじゃなくてヒッキーだから八幡の事だと思うよ?』

 

由比ヶ浜が声を掛けてくる。

俺に気を使う必要ねぇから声なんて掛けてこなくていいよ?

唯一の憩いの場なんで、女子と話すとかぼっちにとってハードル高い事させないでくれる?

後キャスターはマジでルールガン無視だな…

マスターの事、呼び捨てにしちゃったよ…

ていうかバーサーカーはビッキーって呼ばれてるの?

考えた奴のセンス独特すぎない?

由比ヶ浜も大概だが…

 

「…何だ?」

 

「もうすぐ夏休みじゃん?ヒッキーは何か予定あるのかな?って思って…」

 

こいつ…ぼっちの俺に予定が無いと思ってバカにする為にわざと聞いてやがるな?

ヴァカめっ!俺には戸塚と遊びに行くという崇高な使命があるのだ!

お前らみたいな何も考えず、日々無作為に過ごすリア充共と一緒にするな!

はぁ…1日中天使である戸塚を讃える仕事があるなら俺も専業主夫という信念を曲げて就職するのも吝かでは無いというのに…

 

「戸塚と遊びに行く。というか戸塚以外とは誘われても何処にも行かん」

 

「相変わらずヒッキーさいちゃん好き過ぎでしょ…」

 

好き?違う。間違っているぞ、由比ヶ浜。

これは愛だ。

 

『何故そこで愛っ!!?』

 

ランサーさん?急にどうしたの?

 

『いや、マスターを見てたら言わなきゃいけない気がしたのよ』

 

さいですか…

俺の考えてる事はこいつらにはわからんはずなんだが…

エスパーか何か?

超高校級のアイドルで第一被害者になっちゃうの?

 

「でも夏休みの前に期末試験があると思うのだけど?」

 

「ゆきのん…せっかく忘れてたんだから思い出させないでよぉ」

 

「?忘れてたとしても期末試験を受ける事には変わらないと思うのだけど…」

 

「それはそうなんだけどさぁ…気分の問題じゃん?」

 

そう言って、由比ヶ浜が雪ノ下に抱き付く。

君らゆるゆり好きだね?

うちのガチユリ程じゃないけどね?

うちのガチユリからしたらアレはスキンシップにも入らないらしい…

ガチユリにはガチユリのこだわりがあるんだろう…

 

「暑い…」

 

そう言って雪ノ下が由比ヶ浜を引き剥がす。

まぁこいつもぼっちだからな…

由比ヶ浜との距離感がいまいち掴みきれて無い感じがする。

 

***

 

「じゃあ今日はそろそろ終わりにしましょう」

 

部長様が部活終了を宣言する。

今日もマジでやる事無かったな…

マジで何なの?この部活…

これを部活と呼んだら他の部活に失礼なレベルで何もしていない。

まぁ、何もしなくていいのは有難いんだけどな?

 

しかし、家に帰ったらまたこいつらの相手しないといけねぇのか…憂鬱だ…

 

『あ、マスター?帰ったら少しお話があるんだ』

 

バーサーカーがそんな事を言う。

OHANASHIね…正直嫌な予感しかしねえけど、こいつらの中で唯一の良心と言ってもいいバーサーカーの話だ。

聞かない訳にもいかんか…

俺は雪ノ下と由比ヶ浜にわからん程度に軽く頷く。

 

帰り際、独身教師に小言を言われたついでにラーメンに誘われたり、雪ノ下姉に付きまとわれたりしたが全て断って帰宅する。

しかし、平塚先生は俺みたいなぼっちを気に掛けてくれたり、面倒見いいはずなのに何で結婚できねぇんだろうな…

そのうち、独神と呼ばれる概念上の存在になっちゃうんじゃねぇの?

ほんと誰か早く貰ってあげて!

 

「あ、お兄ちゃんお帰り。お義姉ちゃん達大人しくしてた?」

 

帰宅すると我が愛しの妹小町が出迎えてくれる。

何?シスコン?千葉では普通だろ?

 

「今日は比較的マシだったな…」

 

「あー…お疲れさま、お兄ちゃん…」

 

「む、いつも大人しいではないか?心外だぞ、マスター?」

 

「その通り、何もやましい事なんてしてない」

 

「デスデスデース」

 

いや、お前ら…

雪ノ下を斬るとか言ってたの誰だったっけ?

行動に出ない事が大人しいだと思ってんなら大間違いだよ?

 

「それで、話って何だ?バーサーカー?」

 

「うん、それなんだけどね?さいちゃんってダレカナ?」

 

アイエエエ!?ナンデ?バーサーカーナンデ?

バーサーカーさん?ハイライトさんが仕事してませんよ?

俺の癒しは一体何処に行ったの?

 

「ち、違う!戸塚はただ、俺の最愛の人ってだけだ!」

 

何言ってんだ、俺!?

この状況でそんな事言ったら確実に火に油だろ!?

くっ、しかし俺の戸塚愛が自分を偽るなと騒ぎ立てるのだ。

 

「へぇ…これは、きっちりお話しないとね?」

 

怖えよ…後、怖い。

頼むからハイライトさん仕事して?

 

「バーサーカー、ちょっと落ち着け?な?」

 

何この浮気の言い訳臭い態度?

もうちょっと何か無いの?

しかし、悲しい事にぼっちである俺の対人スキルなどたかが知れてる為、気が利いた話など出来はしない。

小町助けて!あ、既に避難してやがる…

 

「八方極遠に達するはこの拳!如何なる門も瓦解は容易い!!繋ぐこの手(ガングニール)!!」

 

バーサーカーが宝具の真名を解放する。

オイオイオイ!死んだわ、俺…

 

こうして、バーサーカーからお話(物理)をされて、我が家は全壊したのであった…

ほんと、良く生きてたと思う。

 

結論を言おう。

やはり、バーサーカーはバーサーカーだった。




相変わらず悪ふざけ100%の内容です。

どうでもいい裏設定
・監督役はもちろんあの人です。はるのんとは知り合いで悪巧み仲間。
・特に令呪とかは無いが、マスターのお願いは基本聞いてくれる。
・キャスターこと393は神獣鏡の力でサーヴァントの制約をほぼ全て無効化しているため、フリーダム。どの時空でも彼女が小日向未来である限り彼女はブレない。


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番外 切ちゃん誕生日記念

切ちゃん誕生日おめでとう

という事で切ちゃん誕生日記念番外です。

切ちゃん成分100%でお送りします。


暁 切歌…

語尾が特徴的な女の子で本人曰く常識人(笑)らしい。

そして、俺の恋人でもある。

妹と同い年の女の子が恋人というのは、俺的には複雑なんだが、小町が言うには、義姉候補が同い年というのはどうでも良く、俺を引き取ってくれる人なら幼女でも構わないらしい。

小町ちゃん?もうちょっと手加減してくれない?

お兄ちゃん泣いちゃうよ?

 

「む、聞いてるデスか?八幡さん?」

 

やべっ、全然聞いてなかったわ…

 

「あー悪い、考え事しててな…聞いてなかったわ」

 

「むー、八幡さんの悪い癖デスよ?明日は私の誕生日デスから二人きりでお祝いしようって話デスよ」

 

あー、そうだったか?

いやもちろん恋人の誕生日くらい覚えてるけどね?

…ホントダヨ?

 

「しかし、よく月読が許可したな?」

 

そうである。

こいつには、だいたいいつも一緒にいるちみっ子がいて、そいつは自分から暁を奪った俺をかなり敵視している。

まぁ、自分の親友が目の腐った男を恋人として連れてきたら心配するのも無理は無い。

小町が俺みたいな男を連れて来たら俺だって激怒する。

むしろ男を連れてくるだけで激怒するまである。

 

「ししし調にはナイショデスよ!!?」

 

言ってねぇのかよ…

嫌な予感しかしないんだけど…

 

「はぁ…最悪、土下座するか…」

 

親友の誕生日を独占されるのだ。

月読の怒りは計り知れない…

 

「何で八幡さんだけ謝ろうとするデスか?恋人なんだから一緒に謝るデスよ!」

 

ぐっ、こいつは何でこう恥ずかしい事をストレートに言ってくるかね?

こちとら17年ぼっちやってたんだから少しは配慮してくれませんかね?

 

「何言ってんだ。俺は暁の為なら、土下座も靴舐めも余裕で出来る」

 

「そんな後ろ向きな愛情表現はいらないデスよ…」

 

暁に呆れられる。解せぬ。

 

***

 

翌日、暁の誕生日当日。

月読の追跡から逃れながら、俺達はサイゼで夕食を食べる。

 

「お前、こんな日にサイゼで良かったのかよ?」

 

「八幡さんと一緒なら何を食べてもおいしいデスよ?」

 

ぐっ、またこいつは…

ほぼ無自覚に元ぼっちだった俺のメンタルを削ってくるのだ。

こっちは理性を保つのに大変なんだからね?

 

「それに、ここなら調も盲点だと思うデスよ」

 

まぁ、確かに恋人同士のイベントにサイゼは盲点だろう。

しかし、男として甲斐性が無いと思われるのも癪なのである。

まぁ、そこは俺。

小洒落たレストランとか期待されても知らないんだけどね?

 

「いつも通りの日常で、無事に誕生日を迎えれた…それだけで嬉しいデスよ」

 

そう、普段の言動からは全く想像も付かないが、こいつと月読は割とヘビーな過去を持っている。

物心付かない内からとある実験施設に軟禁され、長い間非人道的な実験動物として扱われてきたのだ。

こいつらは自分の親の顔すら知らないという。

自分が何者かもわからない、自分が自分である証を立てる物が何も無いというのは、17年日本で平穏に暮らしていた俺からは想像も付かない。

しかし、長い間親代わりに親しくしてくれていたのが、今をときめく歌姫、マリア・カデンツァヴナ・イヴだというのだから、世の中わからんものである。

こいつら繋がりで俺も会った事あるんだが、芸能人オーラバリバリかと思いきや、ただのオカンだった。

食事した後、何か取り繕ってたけど素がどちらかはお察しである。

 

「む、恋人と一緒にいるのに、他の女の人の事を考えるのは失礼デスよ?」

 

「…何でわかんだよ…」

 

「八幡さんは割とわかりやすいデスよ?私みたいにいつも見てる人ならすぐにわかるデスよ」

 

何それ怖い。

こいつの前では、あんま考え事はしない方が良さそうだな…

 

***

 

「あー、それでプレゼントなんだが…こんな物しか思い付かなかったわ」

 

そう言って、プレゼントの緑色のシュシュを渡す。

 

「ありがとうデース!八幡さんからのプレゼントなら何でも嬉しいデスよ?」

 

喜んでくれたみたいだな…

小町に相談して良かった。

 

「それと…お願いがあるデスよ」

 

?何だ?こいつからお願いって珍しいな。

俺に出来る事なら叶えてやりたいが…

 

「これからは…その…名前で呼んで欲しいデスよ」

 

暁が赤面してモジモジしながら言う。

かわいいな、チクショウ…

しかし、名前呼びか…

リア充ならさておき、ぼっち歴の長い俺がそんな事をすれば、ガリガリメンタルを削られる事間違いないだろう。

 

「ダメ…デスか?」

 

暁が上目遣いで言う。

あざとい…そんなあざといの何処で身に付けたんだよ!?

最近一緒にいる雪音とか言う奴の仕業か?

あざといが、俺にはクリティカルヒットだよ、チクショウ…

はぁ…仕方ねぇ…覚悟を決めるか…

 

「切歌、これでいいか?」

 

「デース!八幡、これからもヨロシクデスよ」

 

そう言って、満面の笑顔を見せる彼女は、暗い過去など全て吹き飛ばす程に眩しく、まるで太陽のようであったのだった。

 

後日、切歌の誕生日に二人きりで過ごした事と名前呼びに変わった事が月読にバレて一波乱あったのだが、それはまた別の話。




何とか13日中に投稿間に合いました。

本編や他の番外とは全く繋がっていない世界線のお話です。

恋人同士からスタートですが、ここに至るまでに切ちゃんがかなり努力したのは言うまでも無いデス。


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第十一話G

ようやく本編に戻ります。

色々はっちゃけたので、番外はしばらく我慢します。
…たぶん。

では、駄文ですがお付き合いください。


「君は侵食進度の割に自覚症状が無かったと言っていたな?」

 

アラサーが聞いてくる。

 

「あぁ、さっき聞くまでそんな深刻だとは思ってなかったわ」

 

「…これは私の考察だが、聞くか?たぶん君にとっては愉快な話にはならんと思うが」

 

アラサーが念を押してくる。

ここまでくれば、だいたいわかる。

答え合わせのような物だ。

 

「教えてくれ」

 

「そうか…相変わらず察しがいいな。以前、君のガングニールは響ちゃんと融合した物が宿っていると言ったな?」

 

「あぁ」

 

「今回も同じだ。本来、君に掛かるはずの負荷を全てあの子が肩代わりしていたと見ていいだろう。一時的に君が歌えなくなったのはその為だ。君の想いより、あの子が君を守りたいと想う力の方が強かったという事だ」

 

やっぱりか…

ほんと、あいつは何処までお人好しなんだよ…

 

「つまり、響君の侵食が急激に早まったのは…」

 

「この子達がいなくなった事で精神的に弱まった所に二人分の負荷を背負ったから、ね。しかし、あの子にも限界があった。その限界を超える分の負荷は君が肩代わりしていたみたいね。お互いがお互いを想い合う間柄、まさに…」

 

「それ以上はぼっちにはキツいからやめてくれ」

 

アラサーの言葉を途中で切る。

あんた何言おうとしてんだよ…

 

「はいはい、ほんと素直じゃないんだから…」

 

まったく、あいつには借りが大きくなる一方でどうやって返せばいいのかわかんねぇな…

もっとも、あいつだけじゃねぇんだけどな…

ほんと、どいつもこいつもぼっちをぼっちにさせてくれない厳しい奴らで困る。

 

***

 

「じゃあ早速、壊れた神獣鏡(シェンショウジン)を見せてくれるかしら?後、研究室も貸し切りにして頂戴?」

 

「あぁ!頼んだぞ!了子君!」

 

司令が力強く応える。

敵だった相手をここまですんなり信用できるとは…

良く言えば器が大きく、悪く言えばお人好しな人だ…

色々悩んでたのが馬鹿らしくなってくる。

 

「ふふっ、相変わらずなのね?」

 

「甘いのはわかっちゃいるが性分だ…こればかりはどうにもならん」

 

ほんと、この大人には敵わねぇな…

物理的にも絶対無理だしな…

 

「司令!ここにいたんですか!?って櫻井さん!?」

 

友里さんが慌てた様子で入ってくる。

 

「彼女は協力者だ。心配するな」

 

「はぁ…司令が言うなら…」

 

「それで、どうしたんだ?」

 

「あ、そうでした!響ちゃんが、F.I.S.の装者と一緒に出撃しちゃったみたいで…」

 

「なん…だとぉ!?響君は今何も戦う力を持ってないんだぞ!?」

 

あいつ何やってんだよ…

まぁ、それでも聞かれたらあいつはこう答えるのだろう…

 

「行かせてあげてください。これは響の『人助け』です、人助けは一番響らしい事ですから!」

 

俺の代わりに戻ってきた小日向が答える。

そうだ、立花響が立花響である限り、こんな所で立ち止まる筈が無いのだ。

例えガングニールが無かろうと、あいつが助けると思ったのなら助けられる方は()()()()()()()をするしかない。

不本意ながら、その中に自分も含まれているみたいなので、もう諦めるしかないのである。

 

「まったく、あの子は相変わらずねぇ」

 

「こういう無理、無茶、無謀は本来俺の役目なんだがな…仕方ない。俺も出る。緒川に車を回しとけと伝えてくれ!」

 

あ、司令も出ちゃうの?

憐れ暴走眼鏡、御愁傷様。

一生消えないトラウマを植え付けられちゃうと思うけど強く生きてね?

 

*** 八幡out 翼in

 

―騎刃ノ一閃―

 

バイクを駆り、散発的に現れるノイズ達を殲滅する。

…そろそろか。

 

バイクから飛び降り、放たれる銃弾を避わす。

 

「そろそろだと思っていたぞ?雪音」

 

雪音は無言で銃をこちらに向ける。

なるほど、語る口は持たん…か。

 

いいだろう、ならばお前の胸の覚悟、防人の剣が応えよう!

 

斬撃と銃撃が乱れ合う。

こちらの剣を避わされ、銃弾を放たれるがこちらも銃弾を斬り更に斬り掛かる。

ふふっ、懐に入られた時の対処、上手くなったではないか。

 

雪音の動きが止まる。

何か通信を受けたみたいだな…

あれは…首輪か?悪趣味な…

あれが雪音を従わせているのか?

 

「犬の首輪を嵌められてまでして、何を為そうとしているのか!?」

 

「汚れ仕事は、居場所の無い奴がこなすってのが相場だ、違うか?」

 

ふ、何を言うかと思えば…

お前の居場所はとっくにあいつの側なのだろう?

 

「首根っこ引き摺ってでも連れ帰ってやる。お前の居場所、帰る場所に」

 

「お前がどれだけ拒絶しようと、私はお前のやりたい事に手を貸してやる」

 

「それが…片翼では飛べぬ事を知る私の…先輩と風を吹かせる者の果たすべき使命だ!」

 

そうだったよね?奏…

 

(そうさ、翼)

 

!?今…奏の声が…

 

(でも、いい加減自分の気持ちにも素直になんないと後輩に奪われるぞ?)

 

な、何を言ってるの!?

あいつは、比企谷はただの後輩で…

 

(あたしは別に誰とは言ってないぞ?それが答えだよ、翼)

 

やっぱり、奏は意地悪だ。

でも、奏が側にいるなら私は飛べる!

両翼揃ったツヴァイウィングなら、何処までだって飛んでいける!

 

「その仕上がりで偉そうな事を!」

 

雪音が体勢を戻す。

また何か通信が入ったようだ。

 

「風鳴…先輩」

 

!雪音が、私を先輩と…

そうか、そうなのだな?雪音?

 

「次で決める。昨日まで組み立ててきた、あたしのコンビネーションだ!」

 

「ならば、こちらも真打をくれてやる!」

 

その言葉を合図に再び剣撃と銃撃が交差する。

 

―MEGA DEATH PARTY―

 

―千ノ落涙―

 

狙いは…そこだ!

 

技の相殺の爆発で視界が悪くなった隙を突き、雪音の首輪を斬る。

これでいいのだろう?雪音!

 

*** 翼out クリスin

 

「ひゃっはー!願ったり!叶ったり!してやったりー!」

 

ゲス野郎が騒ぎ立てる。

あたし達はあたしの放った技の爆発に巻き込まれて、地下に落ちたんだが、どうやらこのまま芝居は上手くいきそうだな?

 

「シンフォギア装者は、これからボクが統治する未来には不要、あひぃぃ」

 

ゲス野郎があたし達の死亡確認の為降りてくる。

そりゃそうだよな?

思った通りのゲス野郎で安心したぜ?

 

「その為にぶつけ合わせたのですが、こうも奏功するとは、チョロ過ぎるぅぅ」

 

しっかし、こいつ気持ち悪ぃな…

おかげでぶっ飛ばすのに躊躇はいらねぇから助かるけどよ…

 

ゲス野郎があたしが立っているのに気付く。

 

「はぁぁぁっ!?」

 

「約束通り、二課所属の装者は片付けた。だから、ソロモンの杖をあたしに」

 

「こんなままごとみたいな取引に、何処まで応じる必要があるんですかねぇ?」

 

そう言って、ゲス野郎があたしの首輪に付いた爆弾のスイッチを押す、が…

 

「え?え?ナンデ爆発しない!?」

 

「壊れてんだよ!」

 

あたしは首輪を引きちぎる。

 

「約束の反古たぁ悪党のやりそうな事だ」

 

「ひぃぃ!く、来るなぁぁ!」

 

あたしが近付くとゲス野郎がノイズを放つ。

 

「今さらノイズごとき!くっ!?」

 

何だこいつは…

ギアからのバックファイアが上がってやがるのか!?

くっ、先輩との戦いでダメージを受けた状況でこの負荷はキツいな…

 

「アンチLiNKERは、忘れた頃にやってくる、うぇへへ」

 

…やっぱこいつ生理的に無理だわ…

 

「なら、ぶっ飛べ!アーマーパージだ!」

 

あたしは、ギアを開放する。

これがイチイバルの奥の手だ。

やった後、素っ裸になるからあんまやりたくねぇんだけどな…

特に八幡がいる時は絶対無理だ。

以前のあたしなら出来てたかも知れないが、今の…八幡にちゃんと恋してるあたしには無理だ。

 

「ひぃぃ!」

 

「おらぁ!」

 

ゲス野郎をぶん殴って杖を手放させる事には成功したが、遠くに弾いてしまった為、杖の支配から解放されたノイズ共がすかさずこちらに迫ってくる。

チッ、妨害されてる状況じゃギアの回復まで間に合わねえ!

ここまでなのかよ!?

 

「先輩!」

 

無数の剣撃がノイズ達を襲う。

そこには、限定解除前のギアを纏う先輩…風鳴先輩の姿があった。

 

「そのギアは!?アンチLiNKERによる負荷を抑える為にあえてフォニックゲインを高めずに出力の低いギアを纏うだと!?そんな事が出来るのか!?」

 

説明くせえ…ほんとうぜえな、こいつ。

 

「出来んだよ、そういう先輩だ」

 

風鳴先輩がノイズ達を殲滅する。

やっぱ戦闘では敵わねぇな…

 

「付き合えるか!ひぃぃ」

 

ゲス野郎が逃げていく。

あたしもノイズに囲まれるが、先輩が一掃する。

 

ようやくギアが回復し、服が戻る。

 

「回収完了、これで一安心だな」

 

先輩が杖をあたしに渡す。

 

「一人で飛び出して…ごめんなさい」

 

「気に病むな、私も一人では何も出来ない事を思い出せた。何より、こんな殊勝な雪音を知る事が出来たのは僥倖だ」

 

クソ、思った以上にこっ恥ずかしいな…

 

「それにしたってよ…何であたしの言葉を信じてくれたんだ?」

 

「雪音が先輩と呼んでくれたからな」

 

はぁ!?まさか、それだけで?

 

「それだけか?」

 

「それだけだ」

 

ほんと、お人好し過ぎるだろ…

やっぱり、こいつらの側は、どうしようもなく、あたしの帰る場所なんだ。

 

「あ、そうだ。比企谷を振り向かせるお前達の戦い、私も参戦する事にした」

 

「はぁぁ!?てめえ、何言ってやがんだよ!?」

 

「何だ雪音?もう先輩とは呼んでくれないのか…?」

 

「ライバルなんだから、呼び方なんざてめえで十分だ!」

 

こうして、急遽現れた超強力なライバルに頭を悩ませる事になるのであった。

 

だけど、こればっかりは譲る訳にいかねぇ。

必ず八幡はあたしが振り向かせてみせる!

 

あたしは決意を新たに先輩の後を追うのであった。




ついに防人がエア奏さんを習得しました。

エア奏さん初登場は最初からここと作者の中で決めていました。

防人が八幡を男性として意識する切欠になる、とっておきたい、とっておきでした(笑)


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第十二話G

十二話Gです。

きりしら、ビッキーサイドのお話がメインになります。

やっぱり、Gも十三話に落ち着きそうな感じです。

では、駄文ですがお付き合いください。


司令達も退出し、特にやる事が無くなってしまったので、小日向と一緒に発令所に行く。

 

「比企谷君!?大丈夫なの!?」

 

友里さんが心配して声を掛けてくれるが…

 

「いや別に安静にしとかなきゃいけない病気でも無いんで大丈夫ですよ」

 

「それに…」

 

「あいつらが戦ってるのに一人寝てたらまたどやされますよ」

 

ほんと、ぼっちに優しくない世の中である。

 

「まぁ…彼女が無事かどうか心配だもんな?」

 

藤…藤…藤なんとかさんがからかい口調で言ってくるが…

 

「自分がモテないからってボヤかないの」

 

友里さんにバッサリ斬られる。

え…えげつねぇ…

あれ致命傷じゃね?

俺が言われたら泣く自信あるよ?

 

そんな話をしていると、モニターに一人の女性の姿が映る。

 

「マリアさん…」

 

『私は…マリア・カデンツァヴナ・イヴ』

 

『月の落下がもたらす災厄を最小限に抑える為に立ち上がった、終焉の巫女、フィーネだ!』

 

…………やべ、ネタばらしするの忘れてたわ…

 

「八幡…これって…」

 

わかってる、わかってるから何も言うな小日向。

友里さんとか「え?でもさっき櫻井さんが…」とか言って混乱してるから!

 

いやだってこんな全世界規模の中継でピエロやるなんて思わないじゃん?

マリアさん、マジでごめんなさい!

演説は尚も続く…

 

『しかし、微力な私1人の力では、この災厄の前にはあまりにも無力だ』

 

『だけど歌がある!』

 

『歌が力になる、歌の力で、皆で世界を守ろうではないか!』

 

『世迷い言と思うかもしれない、でも、ほんの少しだけ信じる勇気を持って欲しい!』

 

『全世界の皆!私に歌を届けて欲しい!』

 

『健やかなる者も、病める者も、等しく皆の力でこの災厄に立ち向かい、共に乗り越えようでは無いか!』

 

『自分の想い、自分の歌で立ち上がるのは今をおいて他に無い!皆の力を私に貸してくれ!』

 

そして、マリアさんが歌い出す。

それは悩みも迷いも何もかもを克服するための彼女の信念の歌。

 

あんた…大した役者だよ…

 

そう、マリア・カデンツァヴナ・イヴは迷っていた筈なのだ。

他者を騙る事に、己の本当の願いに。

しかし、優しすぎる彼女は目的の為に非情になど成りきれる訳が無い。

一体何が今彼女をここまで強くしているんだろうな…

 

ともあれ、あんたがフィーネじゃないって事実を知ってる俺でさえ、力を貸したいと思ったんだ。

あんたの言葉…確かに世界に届いた筈だ。

 

*** 八幡out 切歌in

 

融合症例第1号を乗せた調と一緒にフロンティアの中央部に向かって進む。

 

『人ん家の庭を勝手に走り回るノラ猫がぁぁぁ!』

 

この声…あのヤドロクは何処にいるデスか!?

あいつを連れ帰らないと、八幡さんが…

 

やっと、調やマリア以外に好きになれる人が出来たデス!

セレナの時…アタシはいっぱいいっぱい後悔したデス!

 

もう二度と、失うものかと、決めたのデス!!

 

あいつはアタシが絶対に連れて帰るデス!

 

目の前の地面が隆起し、ネフィリムが現れる。

やられた筈なのにしぶとい奴デスね!

 

「あなたは先に行って」

 

「調ちゃん、でも…」

 

「あなたの言葉なら、マリアに届くと思う。お願い、マリアを助けてあげて!」

 

「ここは任せるデス!」

 

「…わかった!待ってて?ちょーっと行ってくるから!」

 

さて…

 

「調、行くデスよ?」

 

「うん、やろう!切ちゃん!」

 

アタシの全身全霊を見せてやるデス!

 

―切・呪りeッTぉ―

 

イガリマの鎌を放ちネフィリムの腕を両断する。

けど、すぐに再生される。

ど、どうなってやがるデスか!?

 

「それならぁ!」

 

―α式・百輪廻―

 

調が無数の鋸を放つけど、ネフィリムに全て弾かれてしまう。

 

どうやら小技でチマチマやっても無駄みたいデスね…

調にアイコンタクトを送る。

 

―断殺・邪刃ウォttKKK―

 

―非常Σ式・禁月輪―

 

アタシの鎌がネフィリムの腕を再度切り裂き、調の鋸がネフィリムの胴体を切り裂く。

 

まだまだデス!!

再生できなくなるまで、切って、切って、切りまくるデス!!

 

―双斬・死nデRぇラ―

 

―裏γ式・滅多卍切―

 

まだ!まだ!まだ!まだ!まだ!まだ!

 

「ハァ…ハァ…ハァ…やったデスか!?」

 

「切ちゃん…それフラグ…八幡の見てたアニメでやってた」

 

「アニメを真に受けるじゃないデスよ!?」

 

「あ…」

 

調の声に振り返ると、調の言った通り、次の瞬間、ネフィリムが何事も無かったように元通りに戻る。

 

これは…なかなかキツいデスね…

 

でも!こちらも引くワケにいかないデスよ!!

 

*** 切歌out 響in

 

走る!走る!走る!ただひたすらに走る!

 

助けなきゃいけない人がいる!

助けたい人がいる!

助けを待ってる人がいる!

 

進む事以外、答えなんてある訳が無い!

胸のガングニールは無くなったけど、この胸の歌だけは絶やさない!

 

「月が落ちなきゃ好き勝手出来ないじゃねぇか!」

 

あれは!ウェル博士!

 

「そんなに言うならあんたが直接行って来ればいいだろ!」

 

「マム!?」

 

ウェル博士が何かを操作すると、外の遺跡が月に向かって飛んでいく。

もしかして、あの中に人が!?

 

「よくもマムを!貴様ぁ!」

 

いけない!憎しみで歌ってはダメ!

 

「手にかけるのか?ボクを殺す事は全人類を殺す事と一緒だぞ?」

 

「殺す!」

 

「うぇぇぇっ!?」

 

ウェル博士の前に立つ。

憎しみで、そんな後ろめたい感情で歌っちゃダメだ!

そんな歌では、誰の心も動かせない!

 

「そこをどけ!融合症例第1号!」

 

「違う!私は立花響、16歳!融合症例なんかじゃない!ただの立花響がマリアさんとお話したくてここに来てる!」

 

「お前と話す事など無い!マムがこの男に殺された、だから私もこの男を殺す!大切な人すら守れないのなら、私に生きる意味なんて無い!」

 

マリアさんが槍を振るう。

気付けば体は勝手に動いて、マリアさんの槍を掴んでいた。

手から血が滴る。

でも今はどうだっていい。

 

「お前…」

 

「意味なんて…後から探せばいいじゃないですか?」

 

「だから」

 

「生きるのを諦めないで!」

 

私の胸の歌!

夜明けを告げる鐘の音奏で、鳴り響き渡れ!

 

~Balwisyall Nescell gungnir tron~

 

「聖詠!?何のつもりで!?」

 

*** 響out 八幡in

 

中継にあの暴走眼鏡が乱入したり、立花が更に乱入したり、どうなる事かと思ったが…

いつも通り、あいつらしいな…

 

でも、あれって追い剥ぎじゃねぇの?

相変わらず無茶苦茶な奴だな…

 

ていうか、何故か不自然に現れた謎の光のせいで大事なところは見えて無いけど全世界生中継で年頃の女性二人が全裸なんだけど…

完全に放送事故じゃねぇか…

 

くっ、無意識に目が胸や尻に…

いや、仕方ないよね?俺だって男だもん。

俺は悪くない。裸エプロン先輩ならわかってくれるよね?

あ、これダメなパターンだわ…また勝てなかった…

などと思っていると横で般若のような形相で小日向がこちらを睨んでいた。

 

「こ、小日向?落ち着け?な?」

 

「八幡?誰に断っていやらしい目で響の裸を見てるのかな?後でお仕置きね?」

 

待て!これは不可抗力だ!

性に興味津々な男子高校生なら仕方のない事だ!

というか、世界中の人が見てるっての!

それに俺の目は腐ってはいるがいやらしくは無い!

…などとは口が裂けても言えず、

 

「…うす」

 

としか返せなかった…

クソッ、理不尽すぎるだろ!

絶対有耶無耶にして逃げ切ってやるからな!

 

『何が起きているの?こんな事ってありえない!』

 

『融合者は適合者では無いはず…なのに』

 

『これはあなたの歌…胸の歌がしてみせた事なの?あなたの歌って一体何!?何なの!?』

 

あー質問タイム入っちゃったか…

これは立花のトンデモパワーが発揮されるパターンだわ。

あのアラサーもそれで負けたって言ってたしな…

ん?これって例えば俺があいつに質問したりしても発揮されるのか?

それなら無敵じゃねぇか…

いや…さすがにねぇだろ…

…無いよね?

 

「いっちゃえ響!ハートの全部で!」

 

感極まった小日向が恥ずかしい事を叫ぶ。

俺ならこんな事を言えば確実に黒歴史更新なんだが…

まぁ…何だ?口出しするのも野暮だよな?

べ、別に小日向にビビった訳じゃないよ?ホントダヨ?

 

『撃槍・ガングニールだぁぁぁぁっ!!!』

 

画面には、マリアさんから強だ…拝借したガングニールのシンフォギアを纏う立花響の咆哮が映し出されていた。




ガングニール強奪事件と全裸生中継事件までいけました(笑)

次話、G最終話になると思います。
たぶん普段より少し長くなるんじゃないかと思われます。

視点の繋ぎの空白があるので仕方ないのですが、たやマさんの所は後少しの所で杉田君が乱入した感じです。
ほんと、杉田君は無茶苦茶してくれますね(笑)


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第十三話G

フロンティア事変最終話です。

色々とご指摘等ありがとうございました。

では、駄文ですがお付き合いください。


月読と暁が戦っていたネフィリム戦に立花、風鳴先輩、雪音が合流する。

 

月読も暁も見るからに限界っぽかったから助かった。

 

どうやら暴走眼鏡の方は司令と緒川さんが追った模様。

憐れ暴走眼鏡。

よりによって勝ち目ゼロの方に追われるとはな…

ソロモンの杖も雪音が回収したみたいだし、あっちは詰みだろう。

 

問題はネフィリムだけか…

 

何か月読達にやられる度にどんどん大きくなってね?

それに無作為だった攻撃が指向性のある攻撃に変わってる気がする。

 

最初は暴れるだけだったのに、先ほどの火球は明らかに雪音を狙っての物だった。

もしかして、アレ暴走眼鏡が操ってるのか?

 

しかし、何やっても再生する相手、どうすりゃいいのかね?

正直、戦闘は素人なので、いい案が思い付かん。

幸い動きはさほど速くないので、横にいる小日向の神獣鏡なら何とかなるように思うが、今ここに無い物に期待しても仕方ない。

 

稼働可能なシンフォギア装者全員でかかって攻めあぐねているのだ。

なら、()()が暴走眼鏡の追跡を引き継げば、ネフィリムに人類最強をぶつけれるんじゃないか?

 

「司令に繋いでください」

 

『どうした?』

 

「暴走眼…ウェル博士の追跡は俺が引き継ぎます。司令はネフィリムを何とか出来ませんか?」

 

『君を戦わせるつもりは無い!大人しく神獣鏡の修復までそこにいろ!』

 

「しかし!」

 

『本来な、こんな争いに子供が命を掛ける必要なんて無いんだ。間違っているとわかってて黙認するしかない俺が言えた事ではないがな、だが君の出撃は大人として許可できん』

 

クソっ、こんな時に何も出来ないのかよ!?

 

~Seilien coffin airget-lamh tron~

 

聖詠?だが、初めて聞くぞ?誰のだ?

 

モニターを見ると、白銀のアウフヴァッヘン波形を放つマリア・カデンツァヴナ・イヴの姿があった。

てか、また全裸かよ…

ほんと、目のやり場に困る人だな…

 

*** 八幡out マリアin

 

調がいる、切歌がいる。

 

マムもセレナもついている。

 

みんながいるなら…このくらいの奇跡…

 

「安いもの!!」

 

『装着時のエネルギーをバリアフィールドにぃ!?だが、そんな芸当いつまでも続く物ではぬぁい!!』

 

ネフィリムが火球を放つ。

まずい!あの男の言うとおり、このフィールドもいつまでもはもたない。

 

あの子…立花響が前に出る。

 

「セット!ハーモニクス!フォニックゲインを力に変えてぇぇ!!」

 

そう言って、火球をただの拳で掻き消す。

嘘!?今どうやったの!?

さっき奇跡って言ったばかりだけど、あの子の存在自体が奇跡に近いんじゃないかしら…

 

『絶唱6人分…たかだか6人ぽっちですっかりその気かぁぁ!!』

 

ネフィリムが妨害の光線を放つ。

皆のギアが解除されていく、これは!?

ネフィリムの特性…聖遺物に侵食しているの!?

 

「6人じゃない…」

 

またこの子!?

私、正直そろそろこの子のトンデモについていけないんだけど!?

調と切歌は大丈夫なの!?

 

「私が束ねるこの歌は…」

 

いけないわ、私がしっかりフィーネとして、リーダーシップを取らないと!

ちょっと!?急に出力上げないでくれるかしら!?

簡単に見えるかもしれないけど、エネルギー操作って結構大変なのよ!?

 

「70億の絶唱っ!!!」

 

ダメだ…この子の手綱を握るなんて私には無理よ!

さっきから初めてやるエネルギー操作に必死で全然ついていけてないもの!

何!?このノリと勢いが奇跡を生んじゃうみたいな感じ…

マム、セレナ、助けて!!

 

私の想いとは裏腹に、私達のギアはあの子の出力向上と共にエクスドライブモードに換装される。

こんな事なら、昨日もうちょっとまともな晩ごはん食べておけば良かったわ…

それに…セレナのギア、やっぱり私には少し小さいわね…

ガングニール以上にボディラインが出てて少し恥ずかしいわ…

これもだけどさっきの全裸中継も八幡がどこかで見てるのよね?

次会った時、どんな顔して会えばいいのよ…

 

って、あの子また勝手に突撃して!

みんなも当たり前みたいについていくし…

何なのよ!?もう!

 

「響き合うみんなの歌声がくれた、シンフォギアでぇぇぇぇぇ!!!」

 

あーもう!やればいいんでしょ!?やれば!

もうヤケクソよ!!

 

私達の突撃とそのエネルギーの余波でネフィリムは跡形も無く砕け散った。

 

ゼェ…ゼェ…わ、わりと何とかなったわね…

今日のごはんはいい物食べないと割に合わないわ…

 

マム…セレナ…これで良かったのよね?

私、世界を守れたのかしら…

 

*** マリアout 八幡in

 

立花達のトンデモパワーでネフィリムが爆発四散する。

サヨナラ!!

 

後は動力を止めれば一段落か?

しかし、さっきマリアさんから入った通信では月はナスターシャさんに任せるしかないとの事だ。

 

いつもいつも引っ掻き回すだけで、肝心な時に何も出来ねぇな…俺…

 

「フン、オレが出るまでも無かったな」

 

ん?何だ、このちみっ子…

さっきまでこんなちっこいのいたか?

 

「ん?オレか?あの女狐に呼び出された可哀想な錬金術師だ」

 

女狐?アラサーの事か?

ていうか、錬金術師って…等価交換のアレ?

手を合わせると色んな物錬成できたりしちゃうの?

 

「まったくあの女狐…オレをタクシーか何かだと勘違いしてないか?」

 

ちみっ子がブツブツ文句を言う。

どうやら割と酷い扱いを受けているっぽい。

 

「フロンティア動力部から高出力のエネルギー反応!」

 

藤…藤…藤なんとかさんが叫ぶ。

 

「な…何だありゃ…」

 

「ネフィリムだな、どうやらフロンティアの動力を喰ったらしい」

 

ちみっ子が言う。

は?アレがネフィリム?

 

「あのままではいずれ臨界に達して、世界を焦土に変えるだろうよ、あの若造…やってくれる」

 

ちみっ子が忌々そうに呟く。

いや、どう見ても若造はお前だろ…

 

「仕方ない。見てるだけのつもりだったが、アレはシンフォギアでは手に余る。オレが…」

 

「それには、及ばないわ?キャロル」

 

声の方を向くとアラサーが立っている。

 

「お待たせ、神獣鏡、直ったわよ」

 

アラサーが小日向に神獣鏡のペンダントを渡す。

 

「じゃあ早速八幡を…」

 

「いや、どう考えてもあっちが先だろ…」

 

「でも!」

 

「俺の事は後回しでいいっての、行ってやれよ。心配なんだろ?」

 

それでさっきの全裸中継の件はチャラにしてくれない?ダメ?

 

「…わかった!絶対戻って来るから、待ってて!」

 

そう言って、小日向が出撃する。

初っぱなからエクスドライブって何なの?

やっぱあいつがラノベ主人公なんじゃねぇの?

 

「神獣鏡…魔を払う鏡が隠し玉とはな…これもお前の計画か?女狐?」

 

ちみっ子が忌々しそうにアラサーを問い詰める。

え?そのアラサーまた何か悪巧みしてんの?

ただの猫好きにジョブチェンジしたんじゃなかったのかよ?

 

「計画なんて何も無いわよ?ただ、今ある世界は今を生きるあの子達で何とかするべきだと思っただけよ?」

 

「どこかの場所、いつかの時代にきっと人は分かりあえるなんて…亡霊の語る言葉では無いわ」

 

その言葉…

 

「お前!それはオレに対する皮肉か!?」

 

ちみっ子が激怒する。

意外に沸点低いのな…そういやここ来てからほとんど怒ってんな、こいつ。

幼児特有の癇癪か?

 

「そう思うのなら、あなたにもわかってるって事なんじゃない?」

 

アラサーがあやすように言う。

まぁ、これくらいの子どもがいてもおかしくない歳だしな?

やべっ、めっちゃ睨んでる…

 

「チッ、興が冷めた、オレは帰る」

 

「あら?最後まで見て行かないのかしら?」

 

「不要だ、アレが出た時点で結果など見えている」

 

そう言ってちみっ子が何か投げると、ちみっ子が地面に飲み込まれて消えていく。

 

「まったく、いくつになってもお子様ねぇ。精神が肉体年齢に引っ張られてるのかしら?」

 

アラサーがそう言ってため息を吐く。

ん?て事はあいつ、見た目通りの年齢じゃないって事か?

 

っと、そういや状況はどうなってるんだ?

 

『バビロニアフルオープンだぁー!!』

 

丁度雪音が叫び、ソロモンの杖をかざしていた。

あれは…

 

「ソロモンの杖を機能拡張してバビロニアの宝物庫を開いたみたいね。あの子にしては考えたわね」

 

アラサーが説明してくれる。

正直俺では理解が追い付かんので助かる。

 

「後は、あそこにネフィリムを格納出来るかだけど…」

 

ネフィリムの腕に雪音が弾かれる。

まずい、このままじゃネフィリムが落ちる前に閉じちまう。

 

マリアさんが杖をキャッチする。

 

『明日をー!!』

 

宝物庫がネフィリムが収まるサイズまで完全に開ききる。

が、ネフィリムの触手にマリアさんが捕まってしまう。

このままではマリアさんまで巻き込まれて…

 

『ネフィちゃん!おすわりっ!!』

 

小日向が叫ぶ。

…いや、お前おすわりって…

いくら元ペットだったからってあのサイズのネフィリムがそんなの聞く訳ねぇだろ…

 

…しかし、俺の予想は見事に外れ、ネフィリムはマリアさんを拘束していた触手を引っ込めて大人しく宝物庫に格納されていくのであった…

やがて、宝物庫が閉じ、辺りに静寂が訪れる。

 

…え?終わったの?マジで?

 

えぇ…

 

今、司令が月の欠片ぶん投げたのの次くらいにビックリしてるよ?

たぶん、みんな同じ気持ちだと思う。

 

やっぱり、統一言語なんて無くたって人は分かりあえるじゃねぇか…

 

「ははははは!これはいい!」

 

アラサーが笑い出す。

いや、笑うしかない気持ちはわかるけどね?

元ホームとはいえ、今はアウェーなんだからもうちょっと自重してくれない?

 

「世界を救った言葉が『おすわり』だぞ?まさに事実は小説より奇なりではないか!やっぱりあの子達は見ていて飽きないわ」

 

そうか…そうなるのか…

そいつはまた…あいつららしいっちゃらしいな…

 

***

 

ようやく仮設本部が陸地に着陸する。

ちなみに司令達は俺達がちみっ子に構ってるうちに暴走眼鏡を連れて戻って来てたらしい。

 

あいつらが戻ってくる。

 

「それじゃあ、八幡?早速だけど…」

 

「あぁ」

 

「ちょっと痛いかも知れないけど、我慢してね?」

 

小日向が笑顔でそんな事を言う。

ちょ!?お前…もしかして…全裸中継の件覚えて…

 

―暁光―

 

小日向のギアが放つ光が俺を包む…

 

「ちょ!?お前これちょっとどころじゃなくめちゃくちゃ痛いじゃねぇか!?」

 

「あれ?おかしいな?力加減間違えたかな?」

 

そんな事を平然と言ってくる。

こいつ…ほんといい根性してやがるな…

 

「あの…マリアさん、これ…」

 

一方、立花がマリアさんから強だ…拝借したガングニールのペンダントを渡そうとするが…

 

「ガングニールは君にこそ相応しい」

 

どうやら突き返されたようだ。

心なしか、マリアさんが疲れ果てているように見える。

 

「そして、もう一つ」

 

マリアさんがこちらに向かってくる。

ん?何か俺に用事でもあんのか?

そう思っていると、いきなり唇を奪われる。

 

!!!!!!!!???

 

「フフ、あの夜の事は二人だけの秘密にしておくわ?だから、あなたも中継の事は忘れてくれると助かるわ」

 

そう言って赤面しながら発令所の方に行ってしまう。

アイエエエ!?ナンデ?マリア=サンナンデ!?

 

「ハ・チ・君?」

 

「目の前で堂々と浮気たぁやってくれるじゃねぇか?」

 

「比企谷?白昼堂々接吻とは破廉恥極まるな?」

 

「八幡、今日という今日は許さない」

 

「お仕置きが必要デスね?」

 

困惑する俺の後ろから、そんな声が聞こえる。

皆さん?ハイライトさんが仕事してませんけどどうしたんですか?

今のちゃんと見てた?

どちらかというと被害者俺の方だよね?

てか何でこの面子に風鳴先輩まで混じってんの?

いつもは遠目でやれやれみたいな感じで見てたよね?

 

クソっ、小日向は全然助ける気無さそうだし、ガングニールが無くなった今、逃げようにもこいつらから逃げ切れると思えねぇ…

あの人、何て爆弾投下してくれてんだよ…

 

「はいはい、そこまでになさい?八幡君は今から精密検査よ?」

 

アラサーが助け船を出してくれる。

はぁ…助かっ…

 

「りりり了子さん!?もしかしてオバケ!?」

 

「はぁぁぁ!?何で今ごろ化けて出てきやがんだよ!?」

 

「くっ!我が剣で亡霊は斬れるのか!?」

 

二課の面子が混乱する。

あ、そういやこいつらに言ってなかったわ。

後風鳴先輩は物騒な事言うのやめてください。

 

ちなみに、精密検査に向かう途中の廊下でアラサーとすれ違ったと思われるマリアさんが立ったまま白目を剥いて気絶していた。

 

…あの人、幽霊とか苦手だったんだな…

 

***

 

後日、諸々の事件のせいで延期になっていたリディアン音楽院の学園祭当日。

 

月の落下はナスターシャさんが文字通り、命を掛けて止めてくれた。

今、世界を救った彼女を地球に還す為に国連調査団が月に向けてシャトルを打ち上げる方向で進んでいる。

 

あれから、マリアさんとちみっ子達は正式に二課所属となった。

マリアさんは、協力者であるアラサーを匿う目的もあり、蕎麦ばっか食ってる偉いおっさんの計らいでそのまま表向きフィーネとして活動してもらう事になった。

今後も世界規模でフィーネを演じる事になってしまったマリアさんだが…

 

「ちょっと調、切歌!さっきから炭水化物ばっかりじゃない、野菜も食べなさい!」

 

オカン全開で学祭を満喫してらっしゃる。

今の立ち位置は複雑だが、そもそもフィーネ本人が協力してくれている為、以前よりは精神的にずっと楽との事。

 

俺の方は、ガングニールが小日向のギアによって綺麗さっぱり無くなり、ようやく社畜生活からサヨナラできると思ったんだが、どうやら今回の事件で米国の介入など二課という組織では対応しきれない部分が出てきた為、新しく国際的な組織を立ち上げるらしく、事務要員として駆り出されている。

自分の社畜根性が憎い。

 

「あ、ハチ君、こんな所にいたんだ?もう始まっちゃうよ?」

 

「へいへい、今行きますよ…」

 

そう、そろそろ本日のメインイベントが始まる。

 

『それでは、次なる挑戦者の登場です!』

 

まぁ、板場達は残念だったな…

俺は電光刑事バン好きだけどな?

ほぼ女子校のこの学校ではいまいちウケは良くないだろう。

 

『私立リディアン音楽院2回生、雪音クリスさんです!』

 

~~♪

 

あぁ、ようやく帰ってきたんだな…

俺達の帰る場所に

 




過去最高に長くなってしまいました。

ラストだけ決まってて見切り発車するとこうなる訳ですね…

これにてGのお話は一旦終幕です。

数本幕間と番外書いて、少しの間充電期間貰うかもです。
何故なら、このお話は作者がGのエンディングを教室モノクロームにしたいが為に作ったお話だからです(笑)
GXまで続けるとは正直思ってなかったのです…

GXのラスボス既に登場しちゃってますが、気長にお待ち頂ければと思います。


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幕間 絶唱しないシンフォギアG2

少し更新遅れました。

本編終わりましたので…恒例の奴いきます(笑)


*** 響と393G ***

 

昼休み、いつも通りベストプレイスへと向かう。

目ざとく雪音が後についてくるが、まぁ割といつも通りだ。

 

ん?今日は先客がいるのか…

あれは…立花と小日向か?

二人で隣り合わせで座っている。

というか心なしか、小日向の方は立花に寄りかかっているように見える。

 

「響?」

 

「なあに?未来?」

 

「呼んでみただけ」

 

………何?あのバカップルみたいなやり取り…

 

「響?」

 

「なあに?未来?」

 

「なんでもない」

 

「もぉ、そんな事言う未来にはこちょこちょだよ!!」

 

「きゃあっ、だめよ響…こんな所で」

 

…うん、俺は何も見なかった。

 

「…なぁ…八幡?」

 

雪音が声を掛けてくる。

今全力で見なかった事にしてるんだから何も言うな、雪音。

 

「あいつらって、親友…?なんだよな?」

 

親しい友と書いて親友…うん、言葉的には間違ってないな。

どちらかというとレ…いや、何でもない。

そもそも俺には友達すらいないので、どこからどこまでが親友という扱いなのかがわからん。

 

「そうらしい…とだけ言っておく」

 

「…そうか…わかった…」

 

「響、続きは帰ってから…ね?」

 

帰ってからナニするつもりなんですかね?

 

ガチユリって怖い。

改めてそう思った。

 

*** マリアさんの休日 ***

 

今日は久しぶりの休日…

フィーネって忙しすぎじゃないかしら!?

フロンティア事変の後だから仕方ないとは言ってたけど、何で記者会見だけで1週間も拘束されるのよ…

おまけに何よ、あの記者!

 

「フィーネといえば、カストディアンに恋していたはずなワケですが?」

 

「心変わりでしょうか?」

 

「やぁん、意外と尻軽?」

 

「アバズレだねぇ、終焉の巫女」

 

とか失礼な事ばっかり聞いてきて!

一体どこの記者よ!

ん?何でフィーネの想い人がカストディアンとか記者連中が知ってるのかしら?

まぁ、よくわからないけど失礼な事だけは確かね!

 

でも、こんな忙しい上に、アーティスト活動も継続なんて…

緒川さんは鬼かしら…

 

ともあれ、今日はやっと取れた休み、早速八幡を誘ってどこか遊びに行きたいわ!!

 

ってちょっと待って…

あの後、彼からまったく連絡無いんだけど…

 

え?キスまでしたんだし、さすがに私の好意には気付いてるわよね?

※気付いてません

 

なのに、なんで八幡から何のアクションも無いのよ!?

 

これは真相を問い詰める必要があるわね…

早速彼に電話よ!

 

『なんすか?』

 

開口一番が「なんすか?」って何よ!?

もっとこう色々あるでしょ!?

 

「ああああの、き今日なんだけど私休みなのよ」

 

ちょっとカミカミじゃないの私…

どうしちゃったのかしら…

 

『良かったっすね、そんだけっすか?』

 

そんだけなワケないでしょ!?

普通ここまで来たらデートのお誘いくらい気が付くでしょ!?

 

「せ、せっかくの休みだし、どこか遊びに行かない?」

 

『あー、今日はアレがアレなんで無理っすね』

 

「そ、そう…それじゃ仕方ないわね…」

 

電話を切る。

アレがアレじゃ仕方ないわね…

 

…ん?アレがアレって何かしら?

もう一度聞いてみよう。

 

『まだ何かあるんすか?』

 

「アレがアレって何かしら?全然具体性が無いわ」

 

『チッ』

 

え?今舌打ちした?

 

『あー、アレです、アレ。俺寝るのに忙しいんで』

 

「あ、そうなのね?…って寝るのに忙しいって何よ!?暇って事じゃない!」

 

『いや、本当にそう言い切れるんですか?例えば、昨日俺が徹夜してて今から寝るところかも知れないじゃないですか?』

 

だんだんこの子の扱いがわかってきたわ…

 

「でもそれは例えばの話でしょ?実際は?」

 

『…家でゴロゴロしたいだけっす…』

 

やっぱりそうじゃない…

 

「じゃあ、今から迎えに行くから準備しておきなさい。小町ちゃんにも連絡しておくから」

 

『ぐっ、いつの間に小町と連絡を…』

 

「いいわね!?絶対に準備しておくのよ!?」

 

これくらい釘を刺しておけば大丈夫よね?

そうと決まれば、こっちも準備しないと…

 

い、一応下着も勝負用にしておこうかしら…

一応よ一応…

…私、誰に弁解してるのかしら…

 

その後、彼を迎えに行って、そのままドライブをしたのだけど、ほぼ私がしゃべっているだけで彼からの話題提供はまったく無かった。

これって脈無しなのかしら…

 

いいえ、諦めてはダメよ、マリア!

きっと彼はシャイなだけよ、そうよね?

いつか孫を連れて挨拶に行くから早く帰ってきてね?お母さん。

 

*** 防人とラーメンG ***

 

今日は先日の比企谷との約束通り、比企谷オススメのラーメンを食べに行く予定だ。

 

しかし、比企谷との接し方だが、変えなくても良いのだろうか?

 

ただでさえ出遅れている私だ。

マリアのように積極的に行くべきか?

 

(男なんて押し倒せばいいんだよ、翼)

 

いやいやいや、いきなりそういうのは無理よ、奏。

もっとこう段階を踏んで少しずつ恋人になっていくみたいな…

 

(甘い、甘過ぎるぞ?そんなんじゃ後輩に奪われるぞ?)

 

そ、それは困る!

でも、そういうのは私の心の準備が…

 

「…どうしたんすか?」

 

「!い、いや何でもないぞ!?私はいつも通り、防人の剣だ!」

 

「?んじゃ、行きますか?」

 

「そ、そうだな!楽しみで鞘走る思いだ!」

 

いかんいかん、ここは先輩らしく、威厳ある態度で接しなくては!

 

(…手遅れだと思うけどなぁ)

 

何て事言うのよ、奏!?

大丈夫!私は剣よ!こんな事で手折られる剣では無いわ!

 

「な○たけ?ここが比企谷の?」

 

「初心者は普通にしといた方がいいっす」

 

「比企谷は?」

 

「…俺はギタギタっすね」

 

「じゃあ私も一緒にする」

 

「…まぁ、天一こってりが大丈夫なら、たぶん大丈夫っすかね」

 

そもそも、ラーメンなら何でも大丈夫だ!

 

比企谷と二人、ラーメンを啜る。

うん、背脂のクセが若干強いがいけるな!

スープ自体はあっさりしてるし、もやしが入っているので味のバランスもいい。

麺は中くらいの太さで歯ごたえも楽しめるな。

替え玉しないならこれくらいの太さが私好みだ。

 

しかし、またカロリーが気になるな…

 

宿命とはいえ、これで太って、歌女の活動に支障が出ては本末転倒だ。

また走り込みを増やすか…

 

しかし、何故腹にばかり行って胸に行かないのだ…?

そういえば異性に触らせれば大きくなるという噂があるが比企谷に頼んでみるか?

 

(んな事より手っ取り早く押し倒せばいいんだよ)

 

奏にはこの苦労はわからないわよ!

私と立花との差は3センチ、たった3センチの差で視線も感じなくなるのよ!?

 

(お、おぅ…何かすまん)

 

「ごちそうさまでした」

 

「さすが比企谷オススメの店だ、おいしかったわ」

 

「そりゃ良かったっす。んじゃ帰りましょう」

 

「あ、ち、ちょっと待て」

 

「?なんすか?」

 

「そ、その…比企谷は胸の大きい女の子の方が好きか?」

 

比企谷が盛大に噴き出す。

 

「どどど、どういう意味っすかね?」

 

「言葉通りの意味だ。具体的に言うと私よりも雪音やマリアの方が好きか?」

 

「い、いや俺は風鳴先輩嫌いじゃないっすよ…」

 

「そ、そうか!そ、それじゃあまたな!」

 

「アッハイ」

 

比企谷が私の事を嫌いじゃないと!

つまり好きっていう事じゃないか!

これは告白されたと言ってもいいんじゃないか?

いや、そうに決まっている!

フフン、早々に決着がついてしまったな!

 

(…そうかなぁ…)

 

*** 比企谷さん家のフィーネさんG ***

 

今日もカマクラちゃんにごはんはあげたし、掃除、洗濯も終わったわね。

 

あの子、帰ってこないわね…

 

小町ちゃんが向こうの装者と連絡先交換してて無事とは聞いてるけど、さすがにこれだけ長い間帰ってこないと少し心配だわ。

 

あ、お煎餅切れてるわ…

昨日買い足しておけば良かったわね。

 

『続いてのニュースです。今日未明、日本海沖で巨大な建造物と見られる遺跡が急遽浮上し…』

 

…どうやら、計画はうまくいったのかしら?

 

『しかし、周辺ではノイズが出現したとの報告もあり…』

 

ソロモンの杖…あの子があんな物使う訳が無い…これは何かイレギュラーがあったと見るべきか…

 

ふぅ…ここ数ヶ月の生活だったけど、悪くは無かったわね。

カマクラちゃん、小町ちゃん…お別れね…

 

 

『何だ女狐、オレは忙しい』

 

「今からフロンティアまで送ってくれないかしら?」

 

『聞いてやる理由が無いな』

 

「そんな事言っちゃうのね?あなたの泣き顔ネット公開まで後1クリックなんだけど…」

 

『鬼かお前は!?チッ、わかったから今すぐやめろ!』

 

まったく、最初からそう言ってればこんなつまらない脅迫しないのに…

ほんと、素直じゃ無い子ばっかりで世話が焼けるわね。




とりあえず、絶唱しないです。

番外何にしようか考え中です。


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番外 みくるーと!!

神が降りてきましたので…

学祭ですが、Gのラストと繋がってるようで繋がってません。


今日はリディアン音楽院の学園祭。

 

私は響と回るつもりだったのに、何故か今八幡と二人きりだ…

 

途中まで一緒だったクリスはクラスメイトに引き摺られていったし、響は翼さんの家に忘れ物を取りに行く手伝い、小町ちゃんは気付いたらいなくなっていた。

あれ?翼さんの家から特定の物を探し出すって響今日帰ってこないんじゃ…

 

「…んだよ?」

 

「別に?響今日帰ってこないんじゃないかな?って思っただけ」

 

「…風鳴先輩の家はどんな魔境なんだよ…」

 

ん?八幡行った事無いんだ?

…何で私今ホッとしたのかな?

 

「…んで、どっか回んのか?」

 

言い方はぶっきらぼうだけどちゃんと私に合わせてくれるんだね?

八幡は優しいな、でもね?

 

「八幡はどこか行きたいところ無いの?」

 

こういう時はリードしてもらいたいのが女の子なんだよ?

 

「俺か?俺は今すぐ帰って寝たい」

 

…ちょっとそれは無いんじゃないかな?

まぁ、八幡に期待した私がバカだったけど…

 

「もう…八幡は相変わらずだね?じゃあ帰って一緒に寝る?」

 

期待を裏切られたのだ。

これくらいの仕返しはいいよね?

 

「バ…おま…にゃ、にゃに言ってんだよ!?」

 

焦ってる焦ってる。

ふふっ、猫みたいになってるよ?

 

「だって八幡は帰って()()()()()寝たいんでしょ?」

 

「んな訳ねぇだろ…ぼっちに勘違いさせるような事言うんじゃねぇよ」

 

八幡はすぐそうやってぼっちって言うけど、いい加減にしとかないと藤尭さんに怒られるよ?

私は響がいるから興味無いけど、藤尭さんも十分イケメンだと思うのになぁ…

 

「はいはい、それでそろそろ行きたいところ考えてくれた?」

 

「え?何?これ俺が決める流れなのかよ…」

 

もう!そんな事ばっかり言ってたら…

って、見事なまでにこんな事くらいで愛想尽かすような人がいないね…

改めてすごいと思うけど、ちょっと天然タラシ過ぎないかな?

今まで二人だったのが、いきなり六人って…

彼の相手が響以外なら誰でもいいはずなのに何かちょっと面白くない。

 

「あ、八幡!…と未来さん」

 

「八幡さん達は二人だけデスか?」

 

そんな事を考えていると調ちゃんと切歌ちゃんが私達を見かけて声を掛けてくる。

二人とも両手に食べ物を持ってる。

よっぽど学祭の食べ物が気に入ったんだね?

 

「おぅ…立花達が用事でな、お前らは何やってんだ?」

 

「私達はうまいもんMAPの作成中デスよ!」

 

「八幡も一緒にどう?」

 

うまいもんMAP?それで両手に食べ物持ってたんだね…

ていうか、この学祭の食べ物全部食べる気なの?

私には無理だなぁ…それに…

 

「あー、悪い。俺達これから行くとこあるんだわ」

 

え?八幡どうしたの?

さっきまで帰りたいとか言ってたのに…

 

「そうなんデスか…では私達は使命に戻るデスよ!」

 

「残念…でも今日だけはこっちが優先」

 

調ちゃんと切歌ちゃんと別れる。

良かったの?八幡…

 

「お前、食べ物ばっかりとか苦手だろ?仕方なくだよ、仕方なく。んじゃ行くぞ」

 

ふふっ、不器用だなぁ。

 

***

 

八幡と一緒に学祭を回る。

八幡は適当と言いつつ、私に歩幅を合わせてくれたり、私がちょっと疲れてきたタイミングで休憩を入れたりしてくれる。

何でこんなに気遣いができるのに、自分の事をぼっちなんて言うのかな?

 

八幡が自分の事をぼっちって言う度に胸がチクッとする。

どうしたらやめてもらえるのかな?

 

やっぱり、クリスに頑張ってもらうしかないのかな?

でも、八幡の好みは翼さんなのかな?

よく見惚れてるし…

 

あれ?おかしいな?何かイライラしてきた。

何で八幡の好みのタイプを考えたらイライラするんだろう?

…まさかね。私は響を愛しているもん。

この気持ちに偽りなんてないはず。

 

「ぼーっとしてどうしたんだ?調子でも悪いのか?そろそろ帰るか?」

 

「!ううん、何でもない」

 

もう!女の子と一緒にいるのにそんなに帰りたいオーラ出すのは失礼だよ?

 

…でも、私を気遣ってだよね?

ほんと、不器用だなぁ…

 

ありがとね?八幡

 

本当に彼の優しさは分かりにくい。

でも、私は彼が誰よりも優しい事を知っている。

だからこそ、彼には幸せになって欲しい。

誰かに彼を幸せにして、なんて人任せだけど響が好きな私が取れる手段はこれしかない。

…これしかないはずなのに…

 

何で八幡と二人きりだとこんなにドキドキするんだろう…

八幡の事は人としては好きだけど、男の子として好きな訳じゃないと…思う。たぶん…

やっぱり自分の気持ちがわからない。

八幡の事ならだいたいわかるのに、自分の事がわからないなんて、私どうしちゃったんだろう…

 

「やっぱお前今日はちょっと変だぞ?本当に帰った方がいいんじゃねぇか?」

 

「…うん、ちょっと今日は疲れちゃったみたい、じゃあ私帰るね。今日はありがと、八幡」

 

「…ちょうど俺も帰ろうと思ってたから、その…何だ?途中まで送ってやるよ」

 

…何でそういう事しちゃうかな?

そういうのは私じゃなくて、クリスとかにして欲しいのに…

でも、八幡にこう言われただけで、嬉しい自分がいる…

もう…何だかなぁ…私ってこんなにチョロかったかな?

 

「送り狼を狙ってるのかな?八幡」

 

これくらいの意地悪は大丈夫だろう。

 

「バ…おま…やっぱ今日は何か変だぞ!?」

 

「ふふっ、冗談だよ?八幡にそんな度胸無いもんね?」

 

予防線を張っておいて正解かな?

正直、今日八幡にそういう事されたら断れる自信が無いし…

 

「ハッ、わかってるじゃねぇか?俺にそんな度胸は無いし、お前にそんな事やったら後が怖すぎんだよ」

 

…今のはちょっと聞き捨てならないなぁ…

よし、帰り道は八幡にたくさん意地悪しちゃおう。

 

***

 

帰り道、生まれて初めて出来たちょっと気になる男の子が横にいるだけで、こんなにドキドキしてしまう物なのかと、自分のチョロさに辟易としてしまう。

 

「そういや、立花は大丈夫なのか?」

 

「今日は確実に戻ってこないから大丈夫だと思うよ?」

 

「…ほんと、風鳴先輩の家はどんな魔境なんだよ…」

 

む、女の子と二人きりなのに、他の女の子の話は関心しないなぁ…

これは少し教育が必要だね?

 

でも八幡だしなぁ…

はぁ…先が思いやられるや…




今回、393が少し自覚しました(笑)

でも、まだやっぱりビッキーの方が好きです。
彼女の愛は深く重いのです(笑)

ちょっと執筆速度が落ちてきたので、明日は1日お休み頂く予定です。


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番外 正妻戦争・続

お待たせしてすみません。

割と好評だったので…何故か続いてしまいました…


正妻戦争…ってこのくだりはもういいな?

 

とりあえず、何か知らんが美少女(ただしバーサーカー)達に迫られて、ぼっちのメンタルをガリガリ削っていくよくわからん戦いだ。

一体何が目的なのかね?

誰か選んだらドッキリ大成功のプラカードでも出てくんの?

 

だとしたらプロぼっちの俺を選んだ時点で失敗だな。

伊達に黒歴史を量産してないのだ。

黒歴史が塗り替えられる度に二度と失敗しないと誓ってきたのだ。

俺の黒歴史もそろそろ打ち止めのはずだ。

そうだよね?

自信ねぇのかよ…

 

しかし、こいつら7人もいんのに料理できるのがライダーだけってどういう事?

これ嫁決める戦いだよね?

ライダーの圧倒的勝利で終わっちゃうよ?

あ、そもそも俺が専業主夫志望の時点で関係ねぇな…

しかし、こいつらがまともな仕事に就けるとは思えんのだよなぁ…

 

だが、俺にとって引っかかるのはそんな事ではなく、こいつらの好感度は作られた偽物の好感度であるだろうという事だ。

会ったその日に好感度MAXなど、信じられる訳が無い。

いや、一人よくわからん奴がいるにはいるけど。

あいつはガチユリなので、俺に対する好感度が上がる事は無いだろう。

俺は別にあいつらに好かれるような事をしてないのだから、むしろそれで当たり前なのだ。

やはり俺は戸塚と小町を愛するべきという事が証明されてしまったな。

フッ、敗北を知りたい。

 

そんな現実逃避的な事を考えながら黙々と作業を続ける。

ブラック企業顔負けの仕事量である。

何故、こんなに仕事が無くならないかって?

文化祭実行委員長様(笑)がサボってるからだよ!

 

『マスター、やはりあの女斬るべきではないか?』

 

バーサーカーA(セイバー)がそんな事を言ってくる。

うん、強く否定できねぇ…

 

『闇討ちなら任せるデス!』

 

『証拠は残さない』

 

『狙撃なら確実だぜ?』

 

『この道を往く事を恐れはしない!』

 

次々にバーサーカー達が名乗りを上げる。

そろそろバーサーカー(真)が止めに入るはずだが…

 

『とりあえずぶっ飛ばして、お話はそれからだね?』

 

『うん、そうだね?響』

 

これである。

あの普段温厚なバーサーカーでさえ、こうなるくらい目に余るのだ。

正直、こいつらがいつ暴れ出すかわからんので内心ヒヤヒヤしっぱなしだ。

 

「比企谷君?手が止まってるけど、仕事が欲しいのかしら?」

 

雪ノ下…お前記録雑務の俺にどんだけ仕事回すつもりだよ…

しかし、記録雑務がこれだけ仕事をしなければ回らないくらいに破綻しているのだ。

雪ノ下がもう少し人に頼れる奴ならいいのだが、あいつは頑なに頼らない。

違うな…

頼らないのではなく、頼り方を知らないのだ。

今に至るまで、ほとんどの事はあいつ一人で出来ていた…出来てしまっていたのだ。

しかし、所詮はぼっちに与えられた物事の範囲で出来ていたに過ぎない。

今回のような大掛かりな仕事であのように一人で抱え込むのは悪手でしかない。

俺に対しては何だかんだ同じ奉仕部員という事もあり、仕事を押し付け…もとい仕事を振ってきているが、あいつ自身が抱えている仕事は一向に無くなる気配が無い。

 

これだけ他人がサボっているのだ。

いかにあいつが優秀でも5人6人の仕事が1人で出来る訳では無い…ましてあいつ体力無いしな。

 

『じー』

 

バーサーカーD(ライダー)?雪ノ下見つめてどうしたんだ?

 

『この人、体調悪い。たぶん倒れる一歩手前』

 

…マジか…今こいつが倒れると確実に破綻するだろう。

はぁ…仕方ねぇな…

 

『やはりあの女、斬るか?マスター?』

 

バーサーカーAは黙っててね?

俺は雪ノ下の所に向かい、あいつの持っていたプリントを奪う。

 

「…何のつもりかしら?」

 

「やっとくから今日は帰って休め、顔色悪いぞ」

 

「余計なお世話よ!自己管理くらい出来ているわ!」

 

「出来てねぇだろ…今お前が倒れたら確実に由比ヶ浜が飛んでくるぞ?」

 

「それは…」

 

そう、完璧超人雪ノ下雪乃にも弱点はある。

由比ヶ浜だ。あいつの名前を出したとたんにさっきまでの威勢がみるみる無くなっていく。

まぁ、俺が戸塚の名前を出されるのと同じだ。

え?違う?

 

「…今日のところはお言葉に甘えるわ。でもあなたも無理はしないで」

 

へいへい。

雪ノ下が帰宅し、教室に1人になる。

生徒会にも生徒会の仕事があるので、下校時刻くらいまではここに来ないだろう。

俺は教室の鍵を閉める。

 

「お前ら、今日だけ頼む。手伝ってくれ」

 

そう、俺にしか使えない奥の手だ。

見られる訳にはいかんが、今なら大丈夫だろう。

 

「待ってたぜ!ここでマスターにいいとこ見せてあたしが正妻だ!」

 

「あら?みんな条件は同じなんだから私が一番に決まってるじゃない?」

 

「負けられない」

 

「やるデース!」

 

「ふ、待っていたぞ!マスター」

 

「うへぇ…書類仕事は苦手なんだけどなぁ」

 

「私も手伝うからがんばろ?響」

 

俺含め単純計算でも8倍の効率だ。

これであいつの負担も少しは減るだろう。

 

***

 

翌日、1日休んで多少顔色が戻った雪ノ下からダメ出しを受ける。

 

「単純ミスが非常に多いのだけど?あなたの頭には学習という言葉は無いのかしら?」

 

くっ、ズルした手前反論できねぇ。

ミスが多いのは、バーサーカーAとバーサーカーC(ランサー)とバーサーカーE(アサシン)か…

バーサーカー(真)はキャスター(ガチユリ)が見てたからそうでもない。

というか、ほぼキャスターがやっていた。

バーサーカーB(アーチャー)とバーサーカーDはほぼ完璧だ。

 

『ち、違うぞ?マスター、たまたま…そう、たまたまだ!私が本気を出せば…』

 

「これは数字がズレているし」

 

『ち、違うのよ!?ちょっと間違えちゃっただけよ!?私の実力はこんな物じゃ…』

 

「これなんて、字が読めないのだけど?」

 

『そ、そんなハズは無いのデース!?』

 

お前らな…

きっちり相互チェックさせるべきだったな…

しかし、ぼっちにそんな発想は無かったとだけ言っておく。

 

「他はきっちり出来ているのに、何でこうムラがあるのかしら?」

 

「ぐっ…すまん」

 

まぁ、世の中そうそうズルは出来ないという事だろう。

 

「でも…」

 

「心配してくれた事には…その…ありがとう」

 

…こいつから礼を言われるとは、明日は雨じゃねぇか?

 

「では、これの直しは私がやっておくから、あなたはこれをお願い」

 

そう言って、笑顔で書類の山を渡される。

雪ノ下さん?これ、昨日より多くないですかね?

 

「昨日の仕事量だけ見ると、これくらいならミス無く出来るのでしょう?()()()()?」

 

チッ、まったくもって不本意ではあるが、頼まれたのであれば、仕方がない。

仕事が無くなった訳でもなんでも無いのだが、俺も、おそらくだが雪ノ下も、昨日よりは気分も前向きに仕事に取り組むのであった。

 

我ながら、この社畜根性は如何な物かと思う。

 

***

 

その夜、監督役のアラサーから呼び出しを受けたので、アラサーのいる研究室に向かう。

何かの学校の地下を改造したものらしい。

…よく知らんのだけどこういうのって違法改造じゃねぇの?

 

「来たわね?サーヴァント達とのハーレム生活はどう?」

 

「…用って何すか?櫻井さん?」

 

「釣れないわねぇ…君がなかなか1人を選ばなくて面白そ…じゃなかった、面白そうだからサーヴァントが追加されるわ」

 

全然言い直せてねぇよ…面白そうって何だよ…

他人事だと思いやがって…

 

「入ってきて」

 

「サーヴァントアヴェンジャーだ。お前がオレを選ぶ必要は無い。さっさとオレ以外の誰でもいいから適当に選んでこのくだらん戦いを終わらせろ。オレは忙しいんだ」

 

何か偉そうなちみっ子が入ってきた。

アヴェンジャーって、復讐者?こんなちみっ子が?

ていうか、ロリはライダーとアサシンで間に合ってんだけど…

 

「ちょっと性格が捻ねくれちゃってるけど、同じく捻ねくれてる君なら相性いいと思うわ。よろしくね」

 

そう言ってちみっ子を押し付けられる。

同じく捻ねくれてるって何だよ…

はぁ…また面倒事が増える未来しか見えねぇ…

 

「おい!何無意識に頭を撫でている!?オレをバカにすると許さんぞ!」

 

こいつがバーサーカーでない事を祈るばかりだ…

 

「や、やめ…ふぁ…ちょ…ほ、ほんとにマズイから!?オレの威厳が…」

 

帰宅途中、ちみっ子が何か喚いていたが、連日の疲労もあり、早く帰って寝たかったので、適当に聞き流していた。

家に着く頃にはすっかり大人しくなっていたが、何だったんだろうな?

 

オマケ

サーヴァント紹介

 

セイバー

真名:風鳴翼

宝具:『天を羽撃く翼(アメノハバキリ)

家事:E-

料理:E

知力:C

包容力:B+

幸運:E

スキル:降霊術A、防人A、常在戦場B

 

アーチャー

真名:雪音クリス

宝具:『弓に番う銃爪(イチイバル)

家事:D

料理:C

知力:A

包容力:D

幸運:E-

スキル:ツンデレB、チョロインC、ばーん!EX

 

ランサー

真名:マリア・カデンツァヴナ・イヴ

宝具:『信念は永劫の炎(ガングニール)

家事:C

料理:D

知力:C

包容力:A++

幸運:E

スキル:降霊術B、歌姫B、ただの優しいマリアEX

 

ライダー

真名:月読調

宝具:『月の如き純心(シュルシャガナ)

家事:A

料理:A

知力:B

包容力:E

幸運:E

スキル:じーB、激情家D、おさんどんA

 

キャスター

真名:小日向未来

宝具:『永遠に誓う愛(シェンショウジン)

家事:B

料理:C

知力:A

包容力:EX

幸運:B

スキル:愛EX、百合A++、槍投げEX

 

アサシン

真名:暁切歌

宝具:『闇裂く太陽のように(イガリマ)

家事:B

料理:D

知力:D

包容力:B

幸運:E

スキル:常識人D、黒歴史B、てがみEX

 

バーサーカー

真名:立花響

宝具:『繋ぐこの手(ガングニール)

家事:D

料理:D

知力:E

包容力:A

幸運:E

スキル:中国拳法C、へいきへっちゃらEX、言ってる事全然わかりませんB

 

アヴェンジャー

真名:キャロル・マールス・ディーンハイム

宝具:『世界を壊す歌(ダウルダブラ)』、『愛知らぬ自動人形(オートスコアラー)

家事:B

料理:A

知力:A+

包容力:D

幸運:E-

スキル:錬金術師A、呪いの旋律B、臍下あたりがむず痒いEX




という訳で番外編でした。

何となくキャロルも入れたかったのでノリで入れてしまいました(笑)

続くかどうかは例によって作者の悪ノリ次第です(笑)


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幕間 聖夜の戦い・前編

季節感皆無ですが、GX書くとなると劇中は年度変わってしまうので、イベント消化します。


12月某日…

 

旧特異対策機動部二課仮設本部の一室に呼び出された私こと比企谷小町はとても焦っている。

 

なぜなら…

 

「小町ちゃん!何とかしてハチ君とクリスマス二人きりになれないかな!?」

 

「おい、バカ!バカも休み休み言いやがれ!八幡はあたしと一緒に過ごす予定だ!」

 

「だから比企谷は私に告白して来たと何度も言っているだろう!当然、クリスマスは恋人である私に権利がある!」

 

「妄想も大概にした方がいい。八幡は私と切ちゃんが予約済み」

 

「厨二病の妄想乙デース!」

 

「あなた達いい加減にしなさい!彼の気持ちが最優先よ!その場合は当然、私が選ばれる事になるでしょうけどね?」

 

これである。

みんな、お兄ちゃんとクリスマスを過ごしたくて、一歩も引く気は無いみたい。

これだけ拗れるなら、みんなでクリスマスパーティーじゃダメなのかな…?

ダメなんだろうなぁ…

 

ていうか、響さんは未来さん放置して大丈夫なんだろうか?

小町的に絶対大丈夫じゃない予感しかしないんですけど…

 

後、何を勘違いしたのか知らないけど、翼さんの中ではいつの間にかお兄ちゃんと恋人同士という事になっている。

お兄ちゃんなら恋人が出来た時点で挙動不審になったり何かしらのリアクションがあるハズだから、勘違いで間違いないと思うけど…

 

でもクリスマスは確かにお兄ちゃんと距離を詰めるには格好のイベントだから、みんなの気持ちもわからないでもない。

 

「み、皆さん落ち着いてください…」

 

さて、どうしよう…

正直、クリスマスを誰と過ごすかなんて、お兄ちゃんの答えはほぼ決まっている。

あの自称ぼっちでヘタレなお兄ちゃんならお義姉ちゃん候補がこれだけいたとしても、十中八九小町と言うに違いない。

でも、それをただ伝えてもみんなは絶対に納得しないだろう…

だから、小町的には当たり障りの無いクリスマスパーティーに持っていきたいのだ。

 

「正直、この中から誰かを選んで過ごすなんて、あの兄がやる訳ないです。そんな事するくらいならあの兄なら小町と過ごすとか言いかねません。皆さんならわかるでしょう?」

 

「う…確かにハチ君なら言いそう…」

 

「そうね…悔しいけど目に浮かぶわ…」

 

うん、みんなお兄ちゃんの事を好きなだけあって、ある程度お兄ちゃんの事は理解してるね?

 

「後、翼さんの恋人宣言は残念ながら勘違いだと思います。お兄ちゃんに恋人が出来たっぽいリアクションが全然ありませんので」

 

「な!?そんな馬鹿な!?」

 

でもでも、恋愛感情が無い時はお義姉ちゃん最有力候補だったのは間違いないですよ?

 

「くっ、だからとてっ!私が引き下がる道理などありはしない!」

 

「翼さんにだって負けません!」

 

「あたしが絶対に勝ち取ってやるから指咥えて見てやがれ!」

 

「あら?私だって負ける訳にはいかないわ?」

 

「それはみんな一緒、私だって負けるつもりはない。相手が切ちゃんやマリアでも絶対」

 

「絶対の絶対にアタシが勝つデスよ!」

 

うーん、でも正直、翼さんの場合は恋愛感情が無いからお兄ちゃんも惹かれてた部分が無い訳でもないしなぁ…

追わない人には自然に接するけど、追われると逃げるめんどくさい兄なのだ。

その点、今は全員で追いかけてる状態なので、お兄ちゃんが逃げるのは目に見えている。

なので、お兄ちゃんが逃げない為の土台作りが必要だ。

ほんと、めんどくさいお兄ちゃんだなぁ…

 

「という訳で、今回は合同クリスマスパーティーを提案します」

 

「まぁ…仕方ねぇか…」

 

「妥協案としては順当…」

 

「そうデスね…」

 

でもでも?ただクリスマスパーティーをやるだけというのも、一向に進展の無いお兄ちゃんの恋愛事情を考えると最善でもないと小町は思うのです。

 

「ただし!」

 

「?」

 

全員の注目が小町に集まる。

 

「合同クリスマスパーティーの最中にそれぞれ、お兄ちゃんと二人きりになるチャンスを平等に譲り合うというのはどうでしょう?」

 

「なるほど…それなら…」

 

「チャンスを生かせるかどうかは自分次第という訳ね?」

 

「ですです。ルールは、お互いに邪魔だけは絶対にしない。後、過度のスキンシップもお兄ちゃんが絶対に逃げるのでナシです。特にクリスお義姉ちゃんとマリアさんは自重してください」

 

隙を突いてお兄ちゃんにキスしたこの二人は特に要注意だから釘を刺しておかないとね…

行為がエスカレートしたら、確実にお兄ちゃんは逃げるだろう。

 

「うっ…わーったよ」

 

「でも、彼から求められた場合は応じてもいいのよね?」

 

マリアさん…自信満々ですね…

 

「あのヘタレのお兄ちゃんの事だから万に一つも無いと思いますが、その場合は構わないです」

 

「たとえ万策尽きたとしても、一万と一手目がきっとあるはずよ!」

 

もの凄いポジティブ思考ですね…

さすが全世界に全裸を晒して尚、今もテレビに出続けてるだけありますね…

年上で包容力もあるし…

しかも、全然現実的じゃなかったあの専業主夫という希望でさえもこの人なら叶えてしまえる。

…あれ?もしかして、お義姉ちゃんに一番近いのって実はこの人なんじゃ…?

 

「じゃあ、今一度お互いに絶対に邪魔しない事を約束してください。当日は、違反者が出た時の為に未来さんにも来てもらいます」

 

「うへぇ、何で未来まで…」

 

「…あの人には逆らえない…」

 

「あの人を敵に回すくらいなら、司令の特訓フルコースの方がナンボかマシデスよ…」

 

よし、これで未来さんの方も大丈夫だね?

響さんには悪いけど、積極的に小町も関わる以上、小町も命が惜しいのです…

 

「それじゃあ、お兄ちゃんの説得は小町にお任せください」

 

正直、これが一番めんどくさいんだけど、乗り掛かった船だし仕方ないかぁ…

小町はいつでもお兄ちゃんの幸せの為なら、がんばれるのです!

 

「では、順番を決めるか!初手は当然私が頂く!初手より奥義にてつかまつる!」

 

「何当然のように主張してやがんだよ!?あたしに決まってるだろうが!」

 

「一番をもぎ取る為なら、私…戦います!」

 

「ままならない想いは、力づくで押し通すしかないじゃないデスか!」

 

「勝つのは私」

 

「…普通にくじ引きじゃダメなのかしら…」

 

またこれである…この人達は…

マリアさん、もっと強く主張してください!

この人達の争いに巻き込まれたら、小町の命がいくつあっても足りないですよ…

 

***

 

帰宅した私はお兄ちゃんのところに行く。

どうせお兄ちゃんの事だから、クリスマスに予定なんて無いだろうけど、みんなに言った手前一応確認しておかないとね。

 

「お兄ちゃん?」

 

「あん?どうした、小町?」

 

「クリスマスは予定あるの?」

 

「フッ、聞いて驚け?今年は板場達とオールナイトでプリキ○アを見る予定だ!」

 

…は?よりにもよって何でその日に予定あるの!?

…ヤバッ、マジでどうしよう…

 

その後、お兄ちゃんとお義姉ちゃん候補達両方を説得の末、弓美さん達にもクリスマスパーティーに参加してもらう事で事なきを得た。

ほんと、今年に入ってから、お兄ちゃんの天然ジゴロ関連のせいで小町の命の危険が急激に増えたように思う。

 

小町としてはお兄ちゃんの意志を尊重したいけど…本当に危ないと思ったら、奥の手の未来さんとくっつけてしまおう。

そう心に誓ったのだった。




という訳で前編です。

後編はクリスマス当日のお話になります。
近日中には書き上がると思いますので、気長にお待ちください。


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幕間 聖夜の戦い・中編

前後編の予定でしたが、後編があまりにも長くなりそうなので、切ります。


12月24日クリスマスイヴ

 

リア充達にとっては特別な意味を持つ日だが、ぼっちである俺にとっては至って普通の日と変わらない…はずだった…

 

そう、はずだったのだ。

 

この日は板場達とオールナイトプリキ○ア観賞という予定こそあったものの、俺からすれば冬休みのただの1日である。

 

何でクリスマスイヴにプリキ○アかって?

プリキ○アはいつ見ても素晴らしいアニメだろ?

 

そんな現実逃避を必死でしているのだが、状況は刻一刻と不利に傾いている。

何が起きてるかというと…

 

「はい。八幡、あーん」

 

予定は何故か小町主催のクリスマスパーティーに変更され、パーティーのはずなのに何故か月読と二人きりなのだ…

何これ?

 

「いや、自分で食えるっつうの…」

 

「八幡は私からあーんされた食べ物は食べたくないの?」

 

「い、いやそういう訳じゃねぇけど、ぼっちにはハードルが高すぎるんだよ…」

 

「そういう訳じゃないなら問題ない。今なら誰も見てないし大丈夫。はい、あーん」

 

そう言って無理矢理口に捩じ込まれる。

初あーんが発育が芳しくないロリっ子になるとは…

 

「む、今何か失礼な事考えなかった?」

 

…何でわかるんですかね?

 

「いつも見てるから八幡の事はだいたいわかる」

 

そんな事を頬を染めながら言ってくる。

 

「…勘違いさせるような事言うんじゃねぇよ…」

 

「勘違いじゃないよ?」

 

…は?何言ってんの、こいつ?

 

「試してみる?」

 

そう言って月読の顔が近付いてくる。

いや近い近い近い!?

 

ピーッ!!

 

…ん?笛?ナンデ?

 

「調ちゃん?アウトだよ?さぁ、こっち行こうね?」

 

いきなり現れた小日向に月読が連行される。

 

「い、嫌だ!お、おしおきは…」

 

「はいはい、お話ならあっちのお部屋で()()()()聞いてあげるよ?」

 

「八幡!たすけ…」

 

バタン…とドアが閉まる。

…理解が追いつかんのだけど…何コレ?

 

ちみっ子にドキドキさせられた屈辱と小日向の笑顔が軽く恐怖映像だった事くらいしか整理できてないが、もしかしてこれドッキリ的な奴?

 

絶対にドキドキさせてはいけないクリスマスパーティーみたいなノリ?

…だったら月読は何であんなギリギリを攻めたんだよ…何かお題でもあるんかね?

 

小町がやたらと焦ってたから、何かと思えばあいつらこんな事企画してやがったのか…

 

ほんと、ぼっちで遊んで何が楽しいんですかね?

普通にいじめだよ?

 

***

 

あの後、月読と小日向以外の全員が部屋に戻ってきたと思ったら、しばらくして、また退出しだす。

次の刺客は…風鳴先輩か…

 

この人、無意識にドキドキさせてくるからな…

アウトにならないように注意してくださいよ?

 

………しばらく無言が続く。

 

何?しゃべらない事が今回のお題?

 

「そ…その…比企谷!?」

 

「ひゃ、ひゃい!?」

 

ビックリした…急に大きな声出さないでね?

アウトになっちゃうよ?

 

「わ、私の事をどう思ってる?」

 

?何でわざわざそんな事聞いてくるんだ?

お題と何か関係あんの?

 

「頼りになるラーメン好きな先輩っすかね?」

 

「そ、そうではなくだな…いや、それも嬉しいんだが…」

 

?何だ?今の答えじゃ駄目なの?

 

「お、女の子としてどう思っているんだ?」

 

そんな事を頬を染めてモジモジしながら聞いてくる。

…結婚したい。

 

…いやいやいや、騙されるな比企谷八幡。

これはそう言うゲームだ。

風鳴先輩も本心ではなく、お題がこういう物なんだろう。

となれば、少しくらい仕返ししても問題無いだろう。

こいつらだって俺で遊んでる訳だしな?

 

「前にも言いましたけど、風鳴先輩の事、嫌いじゃないっすよ?」

 

そう返したら、何故か満足げな顔で目を閉じたままフリーズしてしまった。

 

…もしもーし…し、死んでる!?

じゃなくて、これ気絶してね?

…どんだけ俺にあの質問をするのが嫌だったんですかね?

割と好意的だと思ってた先輩が実はそうでもなかったとか、普通に凹むんですけど…

 

(はぁ…もうちょい耐性付けなきゃダメだわ、こりゃ…)

 

ん?今何か知ってる人の声が聞こえた気がしたんだが…

…誰の声かも思い出せんし、気のせいか?

 

その後、目が俺みたいになった月読が風鳴先輩を回収し、他の奴らも戻ってくる。

…月読、一体何があったんだよ…

 

しかし、これ最低でも後4人いるんだよな…

もう既にしんどいんだけど帰っちゃダメ?

あ、ここ俺の家だったわ…

神なんていねぇんだな…

 

***

 

また、ぞろぞろと人が退出しだす。

いい加減俺が感付いてるって理由でお開きにしない?ダメ?

次は…暁か…まぁこいつにドキドキさせられる事は無いだろう。

良かったな、お前はクリアできるぞ?

クリア出来たら何の特典があるのか知らんけど。

どうせふらわーとかだろ?

 

「八幡さん、あーんデスよ」

 

何でお前も月読と同じ事やってくんの?

まぁ、そういうお題なら仕方ないのかも知れんけど。

しかし、これがゲームであると知ってるのと相手が暁なので普通に差し出された物を食べる。

たとえコミュ障のぼっちでも、演技だとわかっていれば、これくらいなら問題無い。

演技というのがポイントだ。

 

「わ、わ、これ、割と恥ずかしいデスね?」

 

そう言って、頬を染めながら上目遣いしてくる。

 

「はいはい、あざといあざとい」

 

「何なんデスか!?他の人と扱いが違い過ぎデスよ!?待遇改善を要求するデス!!」

 

「その場合、無視になるな」

 

「改悪じゃないデスか…」

 

いや、悪口言われんのと無視されるなら無視の方が断然いいと思うんだが…

俺基準だと確実に改善なんだが、どうやらお気に召さないようだ。解せぬ。

 

「むぅ…こうなったら、出たトコ勝負デス!!」

 

そう言って、暁が飛び付いてくる。

バカッ!!お前、そんな事したら…

 

ピーッ!!

 

ほらな?

 

「切歌ちゃん?アウトだよ?さ、行こうね?」

 

またどこから現れたかわからん小日向が暁を連行する。

こいつもしかして、神獣鏡の力使ってね?

こんなしょうもない事にギア使うなよ…

 

「お、おしおきは嫌デス!」

 

「はいはい、お話ならちゃんと聞いてあげるから、じっくり…ね?」

 

「は、八幡さ…」

 

バタン…

 

暁…合掌。

 

どうやら過度の接触はアウトってところか…

小町主催だけあって、そのあたりはぼっちに配慮されてるっぽいな。

そもそもこんな事しないのが一番の配慮なんだけどね?

これで後3人…ようやく折り返しかよ…

 

***

 

「そう言えばガヤハチ先輩ってこの中に好きな人とかいないの?」

 

戻ってきた安藤がそんな爆弾を投下する。

バカッ!!お前!?

案の定、装者全員が血走った目でこちらを見る。

 

百歩譲って雪音と立花はわかる。

何で他まで血走ってんの?

 

あぁ、小日向もわかるわ。

俺が立花なんて答えた日には、血の雨が降るだろう…俺の。

しかし、俺の答えなんて決まってるんだがな?

 

「好きな人?小町だな」

 

俺は世界一愛する妹の名を答える。

 

「はぁ…このごみぃちゃんは…」

 

「まぁハチ君だもんね…」

 

「八幡、そりゃねぇよ…」

 

「比企谷?先ほどの事は秘密という事か…?」

 

「これだから八幡は…」

 

「まったくデスよ…」

 

「何故そこで妹っ!?」

 

小町の言葉を皮切りにほぼ全員からため息が出る。

え?何で?本心だよ?

後、風鳴先輩先ほどの事って何?

俺嫌いじゃないって言っただけだよね?

小日向も無言で笑顔なの怖いんだけど…

笑顔って凶器になるんだな…知らなかったわ…

 

「妹を愛する比企谷先輩、ナイスです!」

 

「これアニメだとヤバい展開だよ!?大丈夫?逃げた方がいいんじゃない?」

 

寺島と板場はいい奴だな…

次に聞かれたらこいつらも好きな奴の中に入れてもいいかも知れんな…

 

プロぼっちの俺にあるまじき考えだが、そんな事を考えずにはいられないくらいに、例の催しのせいで俺の心は急激に疲弊していたのであった…




という訳で中編でした。

前半3人中、2人アウトで1人気絶…

うん、愛されてますネ(白目)

八幡にゲームだと勘違いさせた調が割と戦犯です(笑)


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幕間 聖夜の戦い・後編

後編です。

中編、後編に切ったのにいつもより長めです。


安藤の質問で微妙な空気が流れる中、また人が少しずつ減っていく。

 

お前らさすがにもう気付いてるからやるならさっさとやってくんない?

早く終わらせてプリキ○ア見て癒されたいんだけど…

 

次は…雪音か…

 

こいつはすぐアウトになりそうだな…

 

「は、八幡!?」

 

「な…何だよ…?」

 

お前まで大きい声でビビらせてくんなよ…

 

「あ、あのさ…あたし、今まで色々とやらかしてきたけどさ…」

 

はぁ…お前ようやく自覚したのかよ…

まぁ、失敗を自覚するのはいい事だ。

自覚せず、放置した結果大惨事になる事もある。

ソースは俺。

中学校時代、優しくしてくれたと勘違いした女の子に手当たり次第告白したら、学校一の勘違い野郎扱いされていた。

断るだけじゃなくて、せめて駄目な理由も教えて欲しかったですまる。

 

「おい?聞いてんのか?」

 

おっといかんな…どうもこいつの前では過去の黒歴史を思い出してトリップしてしまう癖があるようだ。

やらかし方が似てるからか?

こいつも大概ぼっちだしな…

 

それに、一時期同居してたせいか、どうもこいつに対しては俺の心のぼっちガードが緩い気がする。

元々紙装甲?無いよりゃいいんだよ、無いよりゃ。

 

「でさ…改めて言うんだけどよ?あたしは八幡が好きだ」

 

何でそういちいちぼっちの紙装甲を蹂躙してくんの?

見ての通り紙装甲だからやめてくんない?

どこの階層守護者の吸血鬼だよ…

 

…言ってみてなんだが、一部分だけは似ても似つかんけど、銀髪だったり低身長だったり美少女だったり割と身体的共通点多いのな…

 

「八幡はさ?あたしの事好きか?」

 

ぼっちが答えにくい事平然と聞いてくるんじゃねぇよ…

 

「まぁ、少なくとも嫌いではねぇな…」

 

「そっか!へへっ、()()その答えで満足しといてやるよ!」

 

今はってどういう事ですかね?

べ、別にあんたの事好きだなんて言ってないんだからね?

だから俺のツンデレとか誰得だよ…

 

「っと、そろそろあたしの時間は終わりみてぇだな、じゃあ八幡、最後に一つお願いしてもいいか?」

 

こいつの要求とか嫌な予感しかしねぇんだけど…

 

「…俺に出来る事ならな?」

 

「じゃあさ…頭撫でてくれよ?あいつらみたいにさ…」

 

え?そんな事?もっと酷い事要求されると思って拒否する気満々だったわ…

逆に何か裏がありそうで怖いんだけど…いや、まぁ、それくらいなら…

 

俺は雪音の頭を撫でる。

 

「へへっ、何か『幸せ』って感じだな!こ、これからもたまにやってくれると、う、嬉しい…」

 

何だ?こいつどうしたんだ?

こいつほんとにいつも嫁だ何だほざいてた雪音か?

 

「ぐはっ」

 

あ、雪音のギャップに小町がやられたわ。

こいつら相手に監督役不在とか危険なんで、お開きになんない?

小日向?むしろ誰かがあいつを取り締まってくれよ…

 

「ま…まぁ気が向いたらな」

 

「じゃあ向かせるように努力するからよ?見ててくれよな?」

 

そう言って雪音との時間は終わりとなった。

正直ドキドキしっ放しだったんだが、あれはアウトになんないの?

相手が雪音なので、小日向や小町が甘く見てる可能性はあるが、まったく基準がわからん…

 

***

 

後2人か…しかしめんどくさいのが残ったな…

 

小日向の監視がフル稼働するであろう立花と俺の最新の黒歴史を知るマリアさんか…

…どっちも全裸中継ズじゃねぇか…

 

い、いかん、思い出したら意識しちゃいそうだ…

 

まずは…マリアさんからか…

 

「………」

 

…なんかドヤ顔で座ってるけどまったく会話が無い。

これほっといても大丈夫なやつかな?

今のうちにチキンでも食っとこう。

 

「ちょっと!?何か話す事無いの!?」

 

あ、俺が無視してるって気付きやがった。

めんどくせえな…

 

「いや、俺からは特に…」

 

「もう!もう!何なのよ、あなたは!?」

 

いや、ただのぼっちだよ…

 

「デートしても全然会話が無いし人の裸見といてこれといってリアクションも無いし何なのよ!?」

 

「い、いや…そんな事言われても…」

 

裸にリアクションとかぼっちに求める対応じゃねぇよ…

後、この前のあれってデートだったの?

車で連れ回されただけだと思ってたわ…

 

「こ、これでもプロポーションには自信あるのよ?」

 

そんな事を頬を染めながら言ってくる。

いや、確かにご立派ですけどそんなコメントしても俺がただの変態になるだけじゃねぇか…

 

しかし、裸にコメントが欲しいとかも割と変態っぽいんだが…

もしかして露出狂?

 

「な、何よ…その目は?」

 

やべっ、思わず可哀想な物を見る目で見てたわ…

俺にそんな目で見られるとか屈辱以外の何でもないだろう。

 

「いや、俺のこの目はデフォっすよ…」

 

「そ、そう…」

 

静寂が再び訪れる。

まぁ、年上なんだが風鳴先輩と違ってこの人はお互いのポンコツ具合を知ってるせいか、割と距離が近い気がする。

風鳴先輩は俺に対して好意的でもなんでもなかったってわかっちゃったしな…

べ、別に悲しくなんてないからな?

むしろ勘違いする前に気付いて良かったまである。

 

「そ、それで私に対して何かしたい事とか無いのかしら?」

 

何かよくわからん抽象的な事を言ってくる。

 

(無茶苦茶にしたいとか言っちゃえばいいと思いますよ?)

 

何かまた謎の声が聞こえるんだけど…

しかも今度はまったく聞いた事無い声だし、内容が過激過ぎるんだが…あんた誰?

 

(私はあなたの義妹ですよ?)

 

俺の妹は小町だけだっつうの…

しかも今妹のニュアンスがちょっとおかしくなかった?

 

(ここで既成事実を作っちゃえばマリア姉さんの勝ち確なのに…あなたもしかしてヘタレですか?)

 

失礼な奴だな…ほぼ初対面?の相手にヘタレとか言うなよ…

いや、間違ってないけどね?

 

「ちょっと!?聞いてるの!?もう時間無くなっちゃうじゃないの!?」

 

あ、謎の声の相手してたらこっち放置してたわ…

 

(それじゃあ、また暇な時にお話しましょ、お義兄さん?ちなみにマリア姉さんは未経験だから優しくしてあげてね?)

 

いや、そんな情報聞いてねぇよ…

後、やっぱお兄さんのニュアンスがおかしい。

 

「あぁ、えっと…マリアさんって妹いましたよね?」

 

「え?えぇ…亡くなってしまったけどね…セレナがどうかしたの?」

 

「そいつ、むっつりなんで、もし声が聞こえたら叱ってください」

 

「え?え?何で急にセレナが?確かにあの時セレナの声は聞こえたけど…ってむっつりって何よ!?」

 

そんな話をして、時間が過ぎていった。

マリアさんは最後まで納得いかない顔をしていた。

 

「何で私だけこうなるのよ!?こんな事ってあり得ないわ!?」

 

知らねぇよ…

むしろぼっちに全投げして、何でうまくいくと思ったんだよ…

 

***

 

ようやく最後か…しかし、最後が一番危険なのは言うまでもない。

立花が下手な事をして、俺が防げなかった場合、この風景のどこかに潜んでいる小日向に俺が刺されるだろう。

可能性があるとか生温い予想ではなく、確実にそうなる。

別に自分の命にさほど価値があるとも思ってないが、だからといって死にたい訳でもない。

死ななくていいなら、それに越した事は無いのだ。

 

そんなこんなでいよいよ立花と二人きりになる…

 

「ハチく…」

 

「響?アウトだよ?」

 

「うぇぇ!?私、()()何もしてないよ!?」

 

まだって何かするつもりだったのかよ…危ねぇ奴だな…

しかし、立花には気の毒ではあるが小日向の行動はグッジョブと言える。

少なくとも一つの命は守られたのだ。

いかに俺が警戒していようと、立花が本気になったら俺に防ぐ術は無いのだ…悲しい事に。

 

「納得いかない!私、まだ何もしてない!」

 

「響、聞き分けの無い事言わないの」

 

おや?何か雲行きが怪しくねぇか?

 

「みんなだって自分の想いをハチ君に伝えてるんだ…だから!」

 

「響?」

 

「まだ歌えるっ!」

 

「頑張れるっ!!」

 

「戦えるっ!!!」

 

おい!?何だよ、そのアラサー退治しそうなフレーズ…今日はアラサー何か用事あるとかで司令んとこ行ったからいないよ?

 

「私は響を戦わせたくないの!」

 

「ありがとう…だけど私、戦うよ!」

 

ちょ!?待て待て待て!

ここ俺の家だっつうの!

 

どうする?

ああなった立花は絶対に止まらん。

なら、必然的に止めるのであれば、小日向の方だ。

しかし、小日向の方もどうすれば止まるんだ?

こいつもこいつで理由が立花の事なので生半可な事では止まらんだろう。

愛が愛を重すぎるって理解を拒んじゃう奴なのだ…

え?こいつこそがガン○ムだったの?

どっちかというと雪音の方がガン○ムっぽいんだけど…

って、そんな事言ってる場合じゃねぇな…

 

小日向を止めるには…

はぁ、仕方ねぇ…あんま使いたくないんだが…

俺は心を無にする。

 

「ちょっと待て」

 

「何?八幡でも邪魔するなら…」

 

「小日向…好きです。付き合ってください」

 

ぼっち奥義、振られてその場を有耶無耶にするである。

文字通り、振られる前提の技なので、俺くらいのプロぼっちでないと負荷に耐えられない危険な技だ。

 

これで止まってくれれば…

ん?何か静かだな…

恐る恐る顔を上げると、茹でダコみたいに赤くなっている小日向と今にも泣きそうな立花の姿が見えた。

 

え?自分でやっといて何だが、何この状況?

小日向が俺を振って終わりじゃねぇの?

何でこいつさっきから「へっ!?はっ!?ほぁっ!?」とかわけわからん事叫んでんの?怪鳥?

 

「お兄ちゃん…それはいくらなんでも悪手過ぎるよ…」

 

え?小町?ナンデ?

よく見たら隠れて見てたらしい板場達と小町以外の装者全員がお通夜みたいになっている。

 

何が起きてんの?誰か説明してくんない?

 

「お兄ちゃんは人の気持ち考えなさすぎ!」

 

(さすがにあれはねぇわ)

 

(ちょっと引きますねー)

 

小町と、割とはっきり聞こえる亡霊?の声にダメ出しされる。

いや、こいつらの事を考えた最善があれなんだが…

 

「はぁ…小町が説明してくるから」

 

「お…おぅ」

 

***

 

数分後、小町達が帰ってくる。

あれ?小町以外の顔が全員般若みたいなんですけど見間違いだよね?

 

「とりあえず、みんなへのお詫びに未来さん以外と2日ずつデートしてもらう事になったから」

 

小町が決定事項を言う。

え?こいつら相手って6人いるよね?

俺の冬休みは?

 

「そんな物無くなったよ?後未来さんからはおしおき体験コースだって?良かったね?ごみぃちゃん?」

 

ちょっと待て!?おしおきって月読が俺みたいな目になったあれだよね?

 

「じゃあ八幡?覚悟してね?」

 

「ちょっと待…」

 

無情にも俺の声は誰にも届かず、おしおき部屋と化した俺の部屋のドアが閉まるのであった…

 

その後の事はまったく記憶に無いが、小日向に対する恐怖は一層根強く植え付けられたとだけ言っておく。




という訳で、無事?八幡の冬休みはキンクリされました(笑)

一番みんなが狙ってた大晦日、元旦は目の前でやられたビッキーが独占したとか何とか。

次の幕間はバレンタインまで飛びます。
バレンタイン、ホワイトデーを書いたらGXのストーリーを本格的に考えると思います。

間に番外ネタが固まったら番外書くと思います(笑)

グレ響ものがもうちょっとしたらイメージ固まるかもです。
XD時空なんで割と何でもありでいくと思います(笑)


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番外 やはり立花響と比企谷八幡は正反対である

番外です。

前回のあとがきで書いたグレ響ものと言いつつ、よくわからないお話です(笑)


本日は休日。

 

久しぶりに学校も仕事も無い日である。

 

こんな日は一歩も外を出ずに家でゴロゴロしたいのだが…

 

「八幡、次はあっち」

 

「アタシはコアラが見たいデス!!」

 

ちみっ子達に連行され、動物園に来ている。

はぁ、割と仕事が忙しいお父さんが休日に子どもに引っ張り回される気分だわ…

 

「あ、あの鳥八幡に似てる」

 

月読がハシビロコウを指さし、そう呟く。

いや、さすがに俺でもあんなに目付き悪くないと思うよ?

…悪くないよね?

 

「あれ?あんな所に響さんがいるデスよ」

 

暁が指差す。

その先には、茶髪の癖っ毛に特徴的なアホ毛でグレーのパーカーを着た知り合いによく似た少女がパンダを見ていた。

 

「いや、立花はあんなやさぐれた雰囲気出してねぇし、あんなアホ毛無いだろ…他人のそら似だろ」

 

「うん…確かに似てるけど、別人だと思う」

 

「そうデスかねぇ…?確かに響さんとはちょっと雰囲気が違うんデスけど…」

 

「そもそも立花なら()()()こんな所にいる事自体おかしいだろ?」

 

そう、あの少女が立花響なら、確実にアイツが隣にいるはずなのだ。

このような観光やデートを目的とした場所であれば尚更だ。

その時点で別人であると断言できる。

 

「それもそうデスね…アタシの勘違いみたいデス」

 

「八幡、次はライオンが見たい」

 

へいへい…

 

***

 

ちみっ子達に一日中引っ張り回され、ヘトヘトになりながら帰路につく。

ほんと、あいつら体力有り余ってやがるな…

訓練もうちょい増やしてもらうように司令に進言しとこう。

 

ん?気が付けばあの時の立花によく似た少女が目の前にいる。

この辺に住んでるのか?

間違って声掛けたりしないように気を付けないとな。

いや、そもそも俺が知り合い見かけて声掛けるとかキャラじゃねぇな…無用な心配だった。

 

「やっと一人になった。パ…じゃなかった、比企谷八幡さん」

 

少女が声を掛けてくる。

ん?こいつやっぱり立花の関係者か?従姉妹とか?

でも、何で俺の事知ってんの?

 

「私はひ…じゃなくて、立花ヒカル。並行世界からこっちに来たの」

 

…どうやらこいつは見た目に反して電波MAXのやべーやつみたいだ。

並行世界とか俺はもう卒業したんだよ!

くっ、鎮まれ俺の右手!

それに、言い淀んだ所を見て、名前も偽名っぽいしな…

 

「とりあえず来て」

 

…もしかしてこれ、また拐われるパターンじゃねぇだろうな…

 

***

 

立花ヒカルと名乗る少女に連れられ、とある公園の一角に着く。

え?何これ?こんな光るアトラクションこの公園にあったか?

 

「これが完全聖遺物ギャラルホルンが作った並行世界を繋ぐゲート。通れるのは、シンフォギア装者だけ」

 

シンフォギア?何でこいつがそんな秘匿情報まで知ってんだ?

え?ちょっと待て?て事は…

 

~Balwisyall Nescell gungnir tron~

 

立花ヒカルが聖詠を口にする。

…そこには、立花響と全く同じガングニールを身に纏う少女の姿があった。

 

「信じてもらうにはこれが一番手っ取り早いからね」

 

「…はぁ、わーったよ、んで?何が目的なんだ?」

 

「……………」

 

沈黙が訪れる。

ん?こいつ今何か理由を必死で考えてないか?

立花達に言い寄られた時に言い訳を考える俺によく似ている。

何となく他人な感じがしねぇんだけど…

 

「……特に?」

 

あ、諦めやがった…

はぁ、ほんと何しに来たんだよ…

 

「あ、強いて言えば、今日泊めて欲しいかな?」

 

いきなりこいつ何言ってんの?

初対面の女子泊めれるならぼっちなんてやってねぇよ?

 

「いや、金ならやるから…」

 

「いいじゃん、行こ?こっちでしょ?」

 

…強引な所は立花に似てやがるな…

てか何で俺の家知ってんだよ?

はぁ、小町に何て説明すりゃいいんだよ…

 

***

 

「へー、ヒカルちゃんは並行世界の未来から来たんだね?」

 

「そうそう、小町お…じゃなかった、小町さん」

 

すっかり打ち解けてやがる…

こいつ、見た目はやさぐれてるが、話すと普通の奴みたいだ。

 

どうやら、こいつは今の時間軸から20年後の並行世界から来たらしい。

年齢的に見ても、立花の親類と見ていいだろう。

 

…しかし、名字を言い淀んだり、俺や小町の事を別の呼び名で呼ぼうとするし、何よりあのアホ毛…こいつ、もしかして…

 

「なぁ?」

 

「?どうしたの?パ…八幡さん」

 

「お前、もしかして俺の娘じゃねぇだろうな?」

 

立花ヒカルがフリーズする。

 

「なななな何いい言ってるのかな!?ち、ちょっと…わわわからないな」

 

動揺しすぎだろ…

嘘が下手過ぎるのは、あいつによく似ている。

まさか並行世界ではあいつと結婚してるとはな…

…ん?ちょっと待て?小日向はどうしたんだ?

 

「…はぁ、そうデス。私は比企谷ヒカル。父親の名前は比企谷八幡、母親の名前は比企谷…旧姓立花響デス…」

 

ヒカルが観念して白状する。

語尾は暁に毒されてやがるな…

あいつは20年後もデスデス言ってんのか…

 

「でも、パパってこっちだと全然キャラが違うからビックリしちゃった」

 

え?そうなの?どの時空でもぼっちかと思ってたんだけど…

 

「全然?むしろ真逆に近いかな?目はキラキラしてるし、口を開けばポジティブな事だし、曲がった事が大嫌いな人だよ?」

 

…誰だよ、そいつ?

絶対同一人物じゃねぇわ…

 

「こっちのパパはママっぽくて、私的には気が合うかな?」

 

ん?立花もキャラ違うの?

 

「うん、こっちがどうかは知らないけど、基本的にめんどくさがりで、他の人と関わりたくないって感じかな?」

 

そいつも誰?ていうか、そいつらどうやって結婚したの?

 

「ママが恥ずかしがるからあんまり教えてくれないんだけど、パパが押せ押せで行ったらしいよ?」

 

うん、全くの別人みたいで安心した。

こっちとは真逆みたいだから同じ事は起きないだろう。

ん?真逆?…まさかな…

 

「で?お前はほんとに何しに来たんだ?」

 

「…いやぁ、ちょっとママと喧嘩しちゃって…」

 

やっぱりか…しかし並行世界まで家出するとかどんだけだよ…

 

「パパもママももう装者じゃ無いからこっちに来れないしね?」

 

こいつ…国家機密をそんな私情で使うなよ…

 

「それで…もうしばらく…」

 

「ギャラルホルンが起動しているから、まさかとは思ったが…」

 

いきなり風鳴先輩によく似た少女が乱入してくる。

 

「お姉ちゃん!?」

 

「ヒカル、帰るぞ!母上も心配している」

 

ん?お姉ちゃんに母上?どういう事だ?

この人はどう見ても風鳴先輩の娘っぽいんだが…

 

「ちょ、ちょっと待ってよ…私はまだ…」

 

「話はベッドで聞かせてもらう」

 

あ、確実に風鳴先輩の娘だわ。

…でも、お姉ちゃんって…まさかな?

 

「あんたは?」

 

「む?挨拶が遅れて済まない。私は比企谷葵、このヒカルの姉だ…ってまさか父上!?いや、しかし…」

 

どうやら並行世界の俺の娘で決定らしい…

こっから先はあんまり聞きたくないんだけど…

 

「あ、言い忘れてたけど、私、ママが8人、兄弟が7人いるから」

 

聞きたくなかったよ!?

どんだけ最低野郎だよ、そいつ…

 

「あぁ、こっちのパパなら絶対そう言うと思って言わなかったんだけど…」

 

どうやら気遣いは出来る奴らしい。

しかし、17人家族って…

 

「父上の重婚については、八紘お爺ちゃんが無理やり何とかしたとか…」

 

ん?誰?まぁ、お爺ちゃんって事は誰かの父親なのだろう。

 

「では迷惑を掛けたな!父上、オタッシャデ!」

 

そう言って、嵐は去って行った…

立花と結婚してるのに小日向はどうしたのかと思ったが、嫌な形で謎が解けてしまった…

 

しかし、あくまでも並行世界の話なので、今の俺には関係の無い話だ。

 

…俺みたいな立花とか全然想像が付かねぇしな。

 

***

 

週が明けて月曜日。

1週間で一番憂鬱な曜日である。

 

ちみっ子達に連れ回されたり、並行世界の娘に引っかき回されたりした為、全く疲れが取れていない。

休みたい衝動に駆られるが、ぼっちが休むと授業についていけなくなるので却下である。

しかし、休みたい…

くっ、この衝動に塗り潰されてなるものか!

 

そんな事を考えながら登校していると、後ろからいつもの声に呼び止められる。

 

「ハチ君!一緒に行こ?」

 

「チッ、響と二人きりだったのに…」

 

立花も小日向もいつも通りだ。

あんな並行世界がある事を知ってしまったせいか、小日向には是非ブレないでいて欲しいと思う今日この頃だ。

 

「それでね?お好み焼き食べようと思ったらソースがドバーって出ちゃって」

 

立花は若干アホっぽいが、やはりいつも通り底抜けに明るい。

こいつがこうでない世界などやはり想像が付かない。

 

「ところで響?昨日は夜遅くまでどこに行ってたの?」

 

おっと、浮気の疑いですか?小日向さん?

 

「いやぁ、ちょっと…人助けで…」

 

怪しい、怪しいですよ?小日向さん?

 

「…ちなみにね?八幡?昨日の夕方、八幡が響によく似た女の子を家に連れ込んだって目撃情報があるんだ?」

 

アイエエエ!?ナンデ!?ナンデオレ!?

 

「え?そうなの!?ハチ君、どういう事かな?」

 

立花さん?またハイライトさんがお留守ですよ?

 

「い、いや、ただの知り合いが小町に会いたいって言うから連れてっただけだ」

 

並行世界の事言うのはアレだしな…

特に小日向に向こうの事を知られたら命が危ない。

 

「そうなんだ?でも、もしそういう事したかったら私に言ってくれればいつでも…」

 

立花がモジモジしながら言う。

立花さん、火にガソリンぶっかけるのはやめようね?

 

「八幡?おしおきだね?」

 

小日向が迫ってくる。

理不尽過ぎるだろ…

 

結局、向こうの事を話さずに誤解など解ける訳もなく、何度目になるかわからん小日向のおしおきを受けるのであった…




という訳で番外でした。

グレ響物と言いつつ、本人はまったく出ないという…

あっちの響がグレ響なら八幡は?と考えたら真逆じゃなきゃおかしいよね?って所から生まれたお話です。

正史ビッキーみたいな八幡ならヒロイン全攻略してそうなのでこんなお話になりました(笑)


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幕間 戦姫達のバレンタイン

幕間です。

G終わりからGXまで割と劇中期間が長いので幕間多めですね…


バレンタインデー。

 

ぼっちにとってその日は最も忌むべき日である。

お菓子メーカーの戦略という事実から目を背け、リア充共は自身が貰った個数を自慢し、比較する実に下らないイベントである。

 

敢えて言おう、数ではなく質であると。

 

世界一可愛い小町の1個はお前達の100個に匹敵すると。

むしろ、小町の1個さえあれば、他に貰う必要など無いとさえ言える。

 

とはいえ、俺も毎年小町だけという訳でもない。

去年は立花と小日向から貰ったし、クラスメイトの綾野さん?だったかからも貰っているのだ。

つまり、実質103個貰っていると言っていいだろう。

しかし、男女比率1:100の学校で1個という奇跡の数字を叩き出すあたり、やはり俺のぼっち力は凄まじいの一言に尽きる。

隣のクラスのイケメンはほぼ学年全員から貰ったらしいがな…

 

結論を言おう、何だかんだ言ったが、やはり欲しい物は欲しい。

…俺だって健全な男子高校生なんだし仕方ないよね?

 

***

 

朝、受験生である小町からは今年は貰えないという事が確定したが、ぼっちにとって1が0になる事など誤差でしかない。

なのでまったく問題は無い。

 

学校に着く。

訓練されたぼっちである俺にとって、ここで上履き入れにチョコレートが入っているかドキドキするなんて希望は持たない。

上履きを入れる場所なのだから他の物が入っている方がおかしいのだ。

 

無い、当然である。

当然なのだから俺の心はこれっぽっちも動じない。

 

教室に入り机の中を執拗に確認するなんて事もしない。

普通に誰かに見られたら黒歴史確定である。

紳士たるぼっちはさりげなく無い事を確認するだけだ。

やはり無い。当然の結果なので、問題無い。

 

昼休み、ベストプレイスで1人昼食を摂る。

雪音は今日は風鳴先輩と約束があるようだ。

いまだ誰からも貰っていない事に焦ったりはしない。

当然、そのまま午後の授業開始である。

当然なのだから、何一つ動じる要素が無い。

 

午後の授業も終わり放課後。

今日は仕事がある為、速やかに帰り支度を済ませる。

と、その時、帰り際に板場達に呼び止められる。

 

「あ、ガヤハチ先輩やっと見つけた」

 

「先輩割とアニメの忍者みたいに居場所わかんないよね?」

 

「気配を感じさせないステルス性、ナイスです!」

 

お前らな…

やっぱり寺島は褒めてんのか貶してんのかどっちかわかんねぇな…

 

「これ、私達からバレンタインデー」

 

そう言って、綺麗に包まれたチョコレートを貰う。

お前らいい奴だったんだな…

お前らがいい奴だと末代まで語り継いでやろう。

…そもそも結婚出来る気がしねぇから、俺が末代である可能性が高いがな。

 

しかしこれで0では無くなったな。

ぼっちでも割と貰えるもんなんだな…

 

***

 

本部に着くと、やたらとピリピリした空気が流れていた。

あぁ、藤…藤…藤なんとかさんか…

あの様子だと…お察しである。

 

まぁ、俺もたいして変わらんのだが…何だろう?

0じゃないというだけで気が楽だわ。

 

「比企谷君、はい、あったかいものどうぞ」

 

友里さんから、ホットチョコレートを貰う。

 

「はぁ、あったかいものどうも」

 

「今日はバレンタインだからね?」

 

なかなかに気の効いた渡し方だ。

仕事中に頂けるし、持ち帰りなどの荷物にもならない。

これが大人の気遣いなのだろう。

 

「君は持って帰るのが大変そうだからね?」

 

?一体何の事だろう?

 

「あの娘達、今年は気合い入れてると思うわよ?」

 

…いや、一部はさておき、他は義理だろう。

小日向なんて去年コンビニチョコだぞ?

立花は…とてつもなく固かったとだけ言っておく…

あいつが作った物は高確率で固くなるようだ。

トランセルかよ…

 

ていうか、何貰える前提になってんだよ…

藤なんとかさんがこちらを睨みながら「リア充爆発しろ!」と言っているのを眺めながら、ぼっちの戒めを再度心に刻む事にした。

 

裏切られてがっかりするくらいなら、最初から期待などしなければ良いのだ。

そうしておけば、俺の心も痛まないし、相手も余計な気遣いをしなくて良い。

WIN-WINの関係だ。

何度も戒めてきたはずなのに、どうも最近すぐに忘れてしまうようだ。

この年で痴呆とか洒落にならんのだけど…

 

あ、そういや藤尭さんだった。

 

***

 

仕事が終わり、帰路に着く。

あいつらは訓練が終わるとそそくさと帰って行った。

ほらな?そんなもんなんだよ。

ぼっちが調子に乗って期待するのが間違いなのだ。

 

「たでぇま」

 

「おかえりなさい、あなた。ご飯にする?お風呂にする?それとも、剣?」

 

…予想外の出来事にフリーズしてしまう。

風鳴先輩、エプロン姿似合うな…料理全然出来ねぇのに…結婚したい。

って、いやいやいや…

 

「そ…その…な、何か言ってくれないと私としても困るのだが…」

 

「…いや、何やってんすか?」

 

「ふふん、この日は抜け駆けしようとする輩がいるかも知れんからな?事前に皆で結託したのだ」

 

ん?一体何を言ってんだ?

 

「おい!出迎えに何チンタラやってやがんだよ!?」

 

「ちょっとじゃんけんで勝ったからって調子に乗るなデス!」

 

奥から雪音と暁の声が聞こえる。

 

「吠えるな!カッコいいチョキに負けたのはお前達だろう!?」

 

え?カッコいいチョキって何?

無茶苦茶気になるんだけど…

 

「八幡?」

 

うぉ!?ビックリした…小日向か…

え?お前何でいんの?

あ、わかったから言わなくてもいいわ。

奥にあいつもいるらしい。

 

「はい、義理だよ?」

 

そう言って、有名店の物と思われるチョコレートを渡してくる。

いや、義理とかわかってるからね?

あれ?そういや今年はコンビニチョコじゃねぇの?

 

「きょ、去年は響と一緒に作ったから…って何でもない!」

 

ほーん、立花と一緒という事はあのげんこつ飴か…

つまり、あのコンビニチョコはこいつなりの気遣いだったという訳か…

立花のあれ…一時間口の中で溶けなかった時はほんとどうしようかと思ったが…

 

「別にわざわざ俺に気を遣う必要ねぇんだぞ?」

 

原価を安くあげようと思って手作りしたのに、結局購入していては割に合わんだろう。

 

「むぅ、やっぱり八幡は全然わかってない!」

 

そう言って何故かむくれてしまう。

俺なんか変な事言ったか?解せぬ。

 

「さぁ、そんな所に立ってないで入れ」

 

風鳴先輩に背を押される。

いや、ここ俺ん家だからね?

 

「あ、やっと入ってきたデス!」

 

「遅ぇぞ!何やってたんだよ?」

 

「待ちくたびれた」

 

「あぁっ!ついに来ちゃったわ!ドキドキしてきた!立花響、どうしましょう!?私どうしたらいいの!?セレナ!私に力を!!」

 

「マリアさん!落ち着いてください!あーもう、うろたえるなっ!!」

 

「はっ!私は一体…」

 

部屋の中には、立花、雪音、月読、暁、マリアさんがいた。

…てか最年長(笑)何やってんの?

 

(色々拗らせちゃってるみたいで…でも大丈夫です!チョコ貰ったら、チョコと一緒にお前も欲しいって言っちゃえばイチコロですよ?お義兄さん?)

 

またむっつり亡霊が声を掛けてくる。

お前何なの?暇なの?何が大丈夫なの?

後、やっぱりお兄さんのニュアンスがおかしい。

 

「八幡、本命」

 

むっつり亡霊の相手をして油断していたら月読がチョコを渡してくる。

え?今何て?

 

「私と一緒に召し上がれ?」

 

「ちょ!?調!?抜け駆けは無しって話だったはずデスよ!?」

 

「はっ、ついうっかり、てへぺろ」

 

どう見ても嘘くさい反省に全員の視線がこちらに集まる。

ちょっと皆さん?目がちょっと怖いですよ?

何で獲物を見つけた肉食獣みたいな目になってるんですかね?

 

「八幡!あたしのも勿論本命だ!」

 

「比企谷!ほ…本命だから…」

 

「アタシも本命デス!」

 

「当然私も本命よ?決まっているでしょう?」

 

「ハチ君!私も本命だから!」

 

「響は渡さない!」

 

そう言ってもみくちゃにされる…

おい!今尻触った奴誰だ!?普通にセクハラだぞ!?

正直、こいつらが何言ってるかは雪音と小日向以外まともに聞こえなかった。

てか小日向まで何やってやがんだよ…

 

やはりぼっちがバレンタインに期待するなど間違っている。




次はホワイトデーになる予定です。

防人の卒業も書きたい気持ちはあるのですが、原作でまったく触れられてない話なので、まとまるかどうか怪しいです…


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幕間 男が独断で考えた贈り物は大抵の場合地雷である

遅くなりました。

仕事が立て込んでたのと何故かこのお話を考えてるのに別のネタが浮かんできて脳内で衝動と戦ったりしてました…


あれは小学校高学年の頃…

 

バレンタインの日、クラスメイトの女子グループが男子全員に義理チョコを配っており、俺も例に漏れず貰った事がある。

小町とかーちゃん以外から貰った事が無かった俺はホワイトデーのお返しに何がいいかと張り切り、小学生にしては少し高い買い物となる、デパートで買った箱詰めのクッキーをその女子グループに渡した。

 

返ってきた答えは…

 

「うわっ、キモッ!誰よあいつにチョコレート渡したの」

 

…その後、立花達と出会うまで、バレンタインは小町とかーちゃんだけだったのは言うまでもない。

つまり何が言いたいかというと…

 

「あいつらに何を返せばいいかわからん…」

 

そう、そもそも何かを貰うという事に慣れていないのだ。

去年は少数だったため、小町チョイスで乗り切った。

今年も乗り切れると思っていたのだが…

 

「お兄ちゃんが考える事に意味があるんだよ?」

 

と、協力を却下されてしまったのだ…

そうは言っても小町ちゃん?お兄ちゃんほんとに何がいいかわかんないの…

むしろ俺が考えた物など何を贈ってもダメまである。

板場達と友里さんとアラサーは無難にお菓子で良いだろう。

しかし他は?

 

正直、小日向もお菓子で良いと思う。

思うのだが、去年デパ地下のお菓子を渡し、それが小町チョイスである事を伝えると、露骨にため息を吐かれたのだ…

あれはどういう意味だったのかいまだにわからない。

最初喜んでたのに何?その心変わり…

 

だがまぁ、俺チョイスなど確実に地雷なので、ここは素直に何が欲しいかを聞いた方が早いだろう。

まずは、あいつらだな…

俺は自分の部屋に行き、ここの所毎日俺の部屋を不当占拠しているちみっ子達に聞いてみる事にする。

 

「お前らさ…」

 

「え!?そんな!?もう潜伏がバレたよ?切ちゃん!?」

 

「潜入美人捜査官メガネを掛けているからバレてないハズデスよ!?きっと八幡さんの独り言デス!」

 

…いや、普通に人のベッドに寝転がってマンガ読んでて、何でバレないと思ったの?

さすがに自分の部屋に着くなり、独り言言う程ヤバい奴じゃないよ?

後、潜入美人捜査官メガネ(笑)って何?

 

「むむむ…気配だけで私達に気付くとは…これはまさか…愛?」

 

「愛、デスよ!」

 

「何故そこで愛っ!?」

 

「むぅ、本気なのに…」

 

「最近扱いがどんどん雑になってるデスよ!」

 

とまぁ、お約束は置いといて…

 

「お前ら、ホワイトデーに何が欲しい?」

 

「八幡」

 

「八幡さんデス」

 

…いや、何言ってんの?こいつら…

暗に俺が物だって言いたいの?

 

「いや、出来れば贈れる物を教えて欲しいんだが…」

 

「じゃあ、八幡のどう…」

 

「調!?言わせないデスよ!?協定を破る気デスか!?」

 

?今月読は何を言おうとしたんだ?

だが、暁が止めなければ、何かヤバい事になっていた気がする。

ていうか、協定って何?

 

「むぅ、なら何でもいい…」

 

「アハハハ…アタシも何でもいいデス…」

 

暁が露骨に動揺しているが、深入りすると後に戻れない気がする。

しかし、何でもいいが一番困るんだよ…

親父が晩飯何でもいいって言った時のかーちゃんの気持ちが今わかったわ…

 

「…後で文句言うなよ?」

 

「八幡が選んだ物なら何でもいい」

 

「八幡さんが選ぶ事が大事なんデスよ」

 

小町も言ってたけどほんと何なの、それ?流行ってんの?

じゃあ他の奴に聞いてみて、それベースで考えるか…

 

「あ、他の人に聞いても返ってくる答えはたぶん一緒」

 

「きっと間違いないデスよ?」

 

…こいつらはどうあっても俺に地雷を踏ませたいらしい…

マジでどうなっても知らないよ?

 

「私にだけ3倍返しなら一番うれしい」

 

「調!?ちょっとやり過ぎデスよ!?これ以上協定に抵触する発言は防人に報告するデスよ!?」

 

「切ちゃん…防人はヤバいから内緒にして欲しい…」

 

いや、1人だけ贔屓にしたら後が怖すぎるだろ…

しかし、結局わかった事は風鳴先輩がこいつらに恐れられている事ぐらいだったな…

 

念のため、もう1人くらい聞いてみるか…

しかし、一番まともそうな答えが返ってきそうだったこいつらの答えがこれだから、あんま期待はできそうにねぇな…

 

***

 

しかし、誰に聞くのがいいのかね…

なるべく他の奴の贈り物にも応用できる一般的な意見が欲しいんだが…

 

アホの娘の突撃娘、ガチユリ、自称嫁、自称剣の防人、自称フィーネの残念美人…

…うん、一般的な意見を言いそうな奴がいねぇ…

 

立花は…食べ物なら何でも良さそうだ…小日向は立花とお揃いという付加価値を付ければ文句言わんだろう…

 

問題は残りだ…

食べ物を貰ったのだから、食べ物を返せばいいと思ってるんだが、何故か何か言われそうな気がするのだ…

しかし、何か特定の奴を特別扱いすると、俺の命が危ないと俺の直感が全力で警鐘を鳴らしている。

なので、選ぶなら全員同じジャンルの物だ。

…一番まともそうな返事が期待できるのは残念美人か?

普通に考えたら雪音か小日向なんだが、何故か雪音と小日向は聞く事自体がヤバそうな気がする。

雪音は貞操的な意味で、小日向に関しては命の危機だ。

しかし残念美人か…あの人はそうでもないんだが、むっつり亡霊がなぁ…

あいつのせいで、マリアさんと話してても半分以上聞いてない時があったりする。

 

(むっ、失礼ですね、お義兄さん。確かにプレゼントは子どもがいいと思いましたけど…)

 

とまぁ、そんなこんなでマリアさんに会いに行ったのだが、開口一番これである。

 

(私気付いちゃったんです!バレンタインに子どもを作ると順調にいけば、クリスマスが誕生日の子どもが出来ると!なので来年は期待してますよ!お義兄さん!)

 

いや、知らねぇよ…また、ぶっ飛んだ発想してやがるな…

…そういや中学の時のクラスメイトの女子に誕生日がクリスマスと自慢してた奴が…いや、何でもない。

 

「それで、何かしら?」

 

いかんいかん、今日はむっつり亡霊の相手ではなく、本題を聞かなくては…

 

「ホワイトデーって何か欲しい物ありますか?」

 

俺が質問するとフリーズしてしまう。

え?やっぱ俺から物貰うのはキモいとか思うの?

 

(あ、また拗らせてるだけなんで、ちょっと待ってあげてください)

 

…しかし、むっつり亡霊も妹なのに割と容赦ねぇな…

あ、小町も容赦ねぇから一緒か…

 

「よっしゃぁぁぁぁぁっ!それはつまり!そういう事でいいのよね!?」

 

ん?そういう事って何だ?

あ、俺が皆に贈る物を悩んでいるって話か。

しかし、何でこんな喜んでんだ?

まぁ、お返しとはいえ、何か貰えるって事は嬉しいって事かね…?

 

「えぇ、そういう(()()()贈り物で悩んでいる)事です」

 

「そう!そう!ならアクセサリーがいいわ!お揃いの物なんてどうかしら?」

 

うへぇ、マジか…

二課、そして後進であるS.O.N.G.の給料が高給なので、買えなくはないが…全員分となると割と手痛い出費だ。

しかし、この人の意見としては案外まともだな…

ちゃんと全員分である事も考えてるし。

 

「わかりました。(皆との)お揃いですね?参考にします」

 

「えぇ、期待してるわ!ちなみに私の指輪のサイズは…」

 

指輪?いやいや、さすがに高校生が贈る物としては高額過ぎるだろ…

しかし、何故かむっつり亡霊が終始爆笑してたが、何なんだろうか?

おかしなやり取りは無かったと思うのだが…

 

***

 

そしてホワイトデー当日…

 

俺はそれぞれにモチーフになるネックレスを贈った。

何故かいつも二人一緒にいる奴まで別々で二人きりにさせられたんだが、どういう意味があったんだろうか?

しかし、割とマジで手痛い出費だった…

 

暁には、太陽をモチーフにした物を…

 

「こ…これは…そ、そういう事って受け取っていいデスか!?」

 

月読には月をモチーフにした物を…

 

「ついに私の時代が来た」

 

雪音には、雪の結晶をモチーフにした物を…

 

「へへっ、幸せってこういう事なんだな」

 

風鳴先輩には翼をモチーフにした物を…

 

「………」

(あー…また気絶してやがるよ…)

 

立花には、花をモチーフにした物を…

 

「ハチ君!私!一生大事にするね!」

 

小日向には、光をモチーフにした物を…

 

「そ、そんな…私…義理って言ったし…私には響が…」

 

マリアさんには音符をモチーフにした物を…

 

「…指輪じゃないのは残念だけど…やっぱり気持ちを再確認出来たのは嬉しいわね!」

(~~~~っ)

 

全員喜んでくれたようで何よりだ…

風鳴先輩は気絶してたのでちょっと微妙だが…

後、むっつり亡霊はやっぱり爆笑してやがった。

人が選んだプレゼントを見て爆笑するとか性格悪いよ?

 

…余談だが、後日、何故か俺が贈ったネックレスを身に付けた全員から鬼のような叱責を受けた。

あんな喜んでたのに理不尽すぎんだろ…

何その手の平返し?

 

やはり俺が贈り物を選ぶなど間違っている。




だいぶお待たせしてすみません。

次回はちょっとこの間に思い付いた番外を書いてからGXのストーリーを固めます。
GW中には第1話GXを書きたいと思いますが…

ちょっと構成次第になると思います。


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番外 デースノート

という訳で、ホワイトデーのお話を妨害していた片割れです(笑)


ちみっ子達が我が家に入り浸るようになって早半年、もはや俺の部屋もだいぶ侵食されており、奴らの私物が散見するようになっていた。

 

特に酷いのが、暁。

何故当たり前のように上着やインナーなどが脱ぎ散らかされているのだろうか?

ここは君の家じゃないよ?

 

ただ、奴らが泊まると何故か俺が自分の部屋から追い出される。

 

「お客さまをリビングで寝かす訳にいかないでしょ?ごみぃちゃん」

 

小町ちゃん?お兄ちゃんの扱いが酷すぎない?

後、週3で泊まりに来る奴らはもうお客さま扱いじゃなくて良いよね?

 

そんなこんなで、最近は俺の部屋があいつらの部屋になりつつあるという危機的状況なのだが、断固として拒否だ。

俺にもやっとダンコたる決意って奴が出来たよ。

ダンコ八幡だ。意志弱そうだな…

しかし、俺にとって最後の砦である自分の部屋を奪われてたまるものか。

 

という訳で、今日は奴らがいない間に奴らの私物を整理してやろうと思う。

巧妙に隠しておいたはずのエロ本が帰ってきたら机の上に整理されて置いてあった男子高校生の悲劇の感覚を味わうがいい。

…違うか?違うな…

 

まずは床。

…何で当たり前のように少女マンガや雑誌を置いていくのだろうか…

買ってきて読むのは構わない。

しかし、何故俺の部屋に置いたままにするのか?

これがわからない。

まずはこれらを段ボール箱に詰める。

奴らにお帰りいただく時に一緒に持って帰らせよう。

フハハハハ、奴らの悔しそうな顔を想像すると楽しくなってきた。

 

次にクローゼット。

もはや、俺の服など隅に追いやられ、月読と暁の服が大量に置いてある…

…正直、ここまで侵食が酷いと思っていなかった。

どうやら敵を甘く見ていたようだ…

しかし、これらを箱に詰めて大丈夫なんだろうか?

ファッションはまったくわからんが、実は繊細な生地とかで、箱詰めして皺になったらまずいとかあるような気がする…

…ここは後回しにするか…

べ、別にビビった訳じゃねぇからな?

 

最後に机。

何でこんな所まで侵食されてんの?

お菓子の袋くらいちゃんとゴミ箱に捨てろよ…

ん?何だ、このノート?

俺のじゃねぇな…

そもそも俺がこんなファンシーなノート使ってたらドン引きである。

つまりこれはあいつらのどちらかの物だろう。

どうせ勉強用のノートだろう。

一応、中を改めるか?

 

しかしこの時、俺は致命的なミスに気付いていなかったのである。

()()()()()()()()()()()()()()()()()という事に…

 

***

 

---------------------

 

私が太陽ならあなたはお月さま

 

追いかけても、追いかけても

 

あなたは遠くへ逃げてしまう

 

だけどいつか

 

大好きだって伝えたい

 

そうして私とあなた、二人でキラキラ輝くのq(≧▽≦q)

 

大好きなあなたへ

 

今日もおやすみ

 

---------------------

 

……

………

…………はっ!?あまりの出来事に思わず意識がトリップしてしまったようだ…

こいつはヤベェ…ヤバすぎる代物だ…

もしこんな物が他人に見られたと知ったら、たとえ百戦錬磨のプロぼっちの俺でも精神崩壊は免れないだろう…

本人の名誉の為にもこれは見てはいけない物だ。

見てはいけない物の筈なのに…

 

---------------------

 

キラキラのお星さま

 

今日もお願い聞いてください(/≧◇≦\)

 

この想いが大好きなあの人に届きますように

 

キレイなキレイなお星さま

 

今日の願いが届くといいな

 

---------------------

 

………よし、見なかった事にしよう。

俺はファンシーなノートなど見ていないし中のポエムも見ていない。

これを見たと知られたら確実に抹殺されるだろう。

あの汚ねぇ字は間違いなく暁の物だ。

あいつ好きな人いんのか…

 

…いやまぁ、あいつも年頃だし好きな人くらいいるだろうが…何というか…何だ?

妹に彼氏が出来た感覚?

いや、小町に彼氏が出来たら相手を確実に抹殺するから違うな…

妹じゃねぇけどそうだな…うん、従姉妹が一番近いな…

何とも言えん複雑な感じだ。

 

おっと、このノートは元の位置に戻しとかねぇとな…

 

***

 

「今日もお邪魔するデスよー!」

 

今日も来やがったのか…

邪魔するなら帰ってくんない?

 

「およ?今日は切歌ちゃん1人?」

 

「そうなんデスよ…寝てる間に調はマリアと出掛けちゃったデスよ」

 

置いてきぼりか…

俺からすれば置いてきぼりなど序の口に過ぎない。

まだまだ甘いがぼっち道を歩み始めてしまったのであれば先達としてアドバイスしてやるべきか…

 

「あ、お兄ちゃんしょうもない事言ったら晩ごはんお兄ちゃんだけカップラーメンね?」

 

小町ちゃん酷い…

 

しかし暁だけか…

ヤベェな…例のノートのせいで変に意識してしまう…

 

「?どうしたデスか?八幡さん」

 

「い、いや、にゃんでもにゃいぞ?」

 

噛んだ、死にたい。

 

「何デスか!?その露骨な動揺は!?あやしいデース!」

 

「偉いな、暁。露骨とか動揺なんて言葉知ってたんだな」

 

「えへへぇ、って違うデース!誤魔化そうったってそうは問屋が卸さないデスよ!」

 

いや、お前の学力アレだからマジで褒めたつもりなんだけど…

 

「これは部屋に何かしたデスね!」

 

そう言って俺の部屋に突撃して行く。

いや、確かにしたけど俺はノートなんて知らないよ?ホントダヨ?

 

「御用改めデース!」

 

割と疑問なんだが、何でそんな言葉知ってんの?

あぁ、風鳴先輩か…

 

「こ、これは…アタシ達の部屋が整理整頓されているデース!?」

 

うん、色々ツッコミたいところだが、まずはここ俺の部屋だからね?

 

「何をしてるデスか!?ま、まさかタンスの中とか見てないデスよね!?」

 

ん?何を必死になってんだ?

 

「タンスなんか見てねぇけど…何かあんのか?」

 

「そそそそんな事よりどういう事デスか!?」

 

「いや、ここ俺の部屋だからね?」

 

露骨に話を逸らしたタンスの中が気になる所ではあるがまずはこれ以上の侵食を防ぐのが先だ。

 

「い、いずれアタシの部屋になるデスよ」

 

そんな事を何故かモジモジしながら宣言してくる。

こいつ…全然反省してやがらねぇ…

 

「はっ!?そ、そう言えば…ままままさか、机の上とかも見てないデスよね!?」

 

「い、いや、見てねぇけど…」

 

うん、見なかった事にしたから見ていない。

俺は断じて机の上のノートなど見ていない。

 

「それはおかしいデスね…机の上のお菓子の袋が捨てられているデスよ?」

 

お前…普段お気楽な癖してなんでこんな時だけ鋭いんだよ…

 

「いや、机の上のノートなんて見てねぇよ?」

 

あっ、やっべ…

 

「…なんでノートだってわかったデスか?…見たんデスね…」

 

「いや、あんな所に置いとく方が…」

 

「見たからには…覚悟するデス!」

 

昔、名前を書かれた人間が死ぬ死神のノートの話があったが、今の俺の状況はあのノートを見てしまった為に起きているので、あながち間違いではないらしい…

 

結局あの後、羞恥から錯乱する暁を宥めるのに二時間掛かった。

何でも責任を取って貰うという話なんだが、責任っつっても何すりゃいいのかわからんので、あいつの恋愛を手伝うという事で手を打った。

どうせ俺にできる事など情報収集くらいなんだが、何でも今日はデートの練習をしたいとの事だ。

 

休日まで働かされるとか、我ながら社畜過ぎて怖いが、手伝うと言った手前断りきれないのである。

 

まぁ、これもあいつに彼氏が出来るまでの辛抱だと割り切るしかないのである。




やっぱり番外はこんな感じデスね…

とりあえず、もう片方はGXのお話が固まってから書くと思います。

思い付きを数字では語れませんが、GW中にはGXの方も書き始めたいなぁ…と思っております。

5月はライダー型防人ですね…
仮面ライダーSAKIMORIイベでしょうか?(笑)


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番外 やはり装者全員ヤンデレなのは間違っている。

GXはもう少しかかるので番外先に書きます。

例のホワイトデーのお話考えるのを妨害したもう1つです。


目が覚めるとそこは見知った自分の部屋の天井…ではなかったがこの天井はよく知っている。

 

「あ、ハチ君起きた?」

 

どうやら、また目の前の少女に拉致されたらしい。

 

「お前…またかよ…薬使うのやめてくんない?」

 

慣れとは恐ろしいものである。

そう、この状況は一度や二度では無いのだ…

とはいえ、薬で眠らされている間なので自信は無いのだが、俺はおそらくまだ未経験のはずだ。

さしものヤンデレでも、貞操観念はしっかりしているらしい。

 

「だって…せっかく誘ったのに断られちゃったらどうしていいかわかんないし…」

 

言っている事は恋する少女なのだが、行動がヤバすぎる。

黙ってたら美少女なのにな…

 

「いや、先約が無い限りお前優先するから」

 

「でもその先約が女だったら…私、自分を抑えれる自信が無いよ!」

 

怖えぇよ…後、怖い。

頼むからハイライトさん仕事してください。

一体何するつもりだよ…

 

「で?今日は何の用だ?」

 

「愛する人と一緒にいたいって理由じゃダメ?」

 

こんな事を平然と言ってくるのである。

 

「だから何度も言ってるが、お前のは一時の気の…迷…い」

 

立花の目からハイライトさんが完全にいなくなる。

どうやら()()やってしまったらしい…

 

「は?何でそんな事言うのかな?」

 

「い…いや落ち着け?立花?」

 

「ダメだよ?ハチ君?いつもみたいに響って呼んでくれなきゃ…」

 

いや、いつもも何も一度も呼んだ事無いのだが…

 

「いけない事言うのはこの口かなぁ?」

 

立花に頬を掴まれる。

何か考えろ…いつもの事だがまた命の危機だ…

 

「そんな口は塞いじゃわないとね?」

 

立花が顔を近付けてくる。

端から見ると美少女に迫られている爆発しろな状況なんだが、こいつと既成事実が出来てしまうと色々と人生詰みな気がする…

とか何とか考えているうちに立花の顔が至近距離まで来ていた。

ヤバいヤバいヤバい…

 

「響?八幡困ってるから落ち着こうね?」

 

「未来ぅ。だってハチ君が…」

 

「響が八幡を好きなのはわかったけど、自分の気持ちを押し付けるだけじゃダメだよ?」

 

どうやら助かったようである。

小日向にはこういった危機的状況から何度も助けて貰っており、もはや足を向けて寝れない存在になっている。

 

「悪ぃ、助かった」

 

「八幡も不用意な発言は避けた方がいいよ?」

 

立花に聞こえないように小日向に礼を言う。

こいつがいなかったら、今ごろパパになってたかもしれん。

…自分で言っといて何だが洒落になんねぇな…

 

***

 

小日向の助力もあり、ようやく立花から解放される。

何も用無いのに薬使うのはマジでやめて欲しい。

 

帰り道、見知った顔を見かけ思わず身を隠す。

今日は間違いなく厄日に違いない。

 

「何隠れてんだよ?」

 

しかし、身を隠すのが遅すぎたらしく、ヤバい奴その2に見つかってしまう。

 

「いや、隠れた訳じゃねぇぞ?だから落ち着け、な?雪音?」

 

「隠れるって事ぁやましい事があるって事だよな?」

 

そう言って雪音に壁ドンの体制を取られる。

何故こいつらはこうも人の話を聞かないのだろうか?

 

「女の匂いがする…この匂いはまたあのバカだな?」

 

お前は犬かよ…

人の匂いを嗅ぐのやめてくんない?

 

「あぁ…また薬でな?だから落ち着い…て…」

 

みるみる雪音の目からハイライトが消えていく…

頼むから仕事してくんない?

 

「また?またと言ったか?あたしという者がありながら隙だらけなのがいけねぇんじゃねぇか?」

 

前半は意味わからんが後半はごもっともだ。

だが、一言言わせて貰うなら、極論を言うとお前ら相手に警戒しても、まったく意味を成さないという事である。

今回、最後に意識があるのはマッ缶を飲んでいた所までだ。

誰が自分のマッ缶に睡眠薬が仕込まれていると気付けるだろうか?

しかし、気付いたとしても、立花が本気になれば、俺に身を守る術が無い為、薬で連行が強制連行に変わるだけなのだ。

 

「いや、お前ら本気になれば、俺なんて何しても隙だらけだろ…」

 

「屁理屈言ってんじゃねぇよ」

 

そう言って雪音に胸ぐらを掴まれる。

あ、これヤバい奴だわ…

 

「決めた。八幡はこれからあたしの家で生活して貰う。あたしの家から出なけりゃ隙だらけでも関係ねぇよな?」

 

冗談にしか聞こえないが、目がマジである。

 

「あたしの家で愛するあたしだけを見てりゃいいんだ。最高だろ?」

 

いや、同意求められても…

とりあえず、また人生が詰む危機に立たされているらしい。

何か考えねぇとまずいんだが、悲しい事に何を言っても機嫌を損ねて強制連行される未来しか見えない。

 

「そこまでだ」

 

この声は…

 

「立花といい、雪音といい、黙って聞いていれば…何故比企谷の言う事を聞かないんだ?」

 

普通なら助けと思うだろう。

しかしこれはヤバい奴その3、風鳴先輩の登場である。

ていうか、黙って聞いていればって立花の時何処で聞いてたの?

 

「んだよ、あたしと八幡の間を邪魔立てするつもりか?」

 

って事はどっかに…

 

「邪魔も何も比企谷の心は最初から私の物だろう?」

 

鞄か?いやいや、鞄は念入りに確認したからな…

 

「ほたえてんじゃねぇぞ!てめえ!!」

 

あった、制服の内ポケットに盗聴器が入っていた。

だんだん手口が巧妙になってきてんな…

 

「昨日も154回目が合ったし、比企谷の事で私に知らない事は無いぞ?」

 

カメラもあんのか…

はぁ…また家ん中調べねぇとな…

 

「うらやま…じゃねぇ!普通に犯罪じゃねぇか!とにかく、八幡はあたしの家で過ごすんだ!」

 

「私は比企谷を見守るのだ!それが…先輩と風を吹かせる者の果たすべき使命だ!」

 

言ってる事はもっともらしいけど、やってる事はただのストーキングだからね?

しかし、今にも取っ組み合いの喧嘩に発展しそうである。

これはフェードアウトするチャンスだろう。

 

イメージするのは常に最強の自分…

俺はぼっち特有のステルス性を発揮して、その場から離れようとするが…

 

「待て、比企谷何処に行くつもりだ?」

 

しかしまわりこまれてしまった…

アルェェ?ナンデ?ステルスヒッキーは何処に行ったの?

何?こいつら魔王だったの?

納得だが、エンカウント前に回復もセーブポイントも無かったよ?

何だよこのクソゲー…

あ、人生なんてクソゲーだったわ。

『 』(くうはく)さんも言ってたしな…

 

「あたしから逃げようたぁな…」

 

「仕置きが必要だな」

 

ハイライトさんが完全に仕事していない二人に迫られる。

今度こそヤバい。

 

「そうだな…私から逃げようとする足なんていらないんじゃないか?」

 

「奇遇だな?あたしもいらないと思ってたんだ」

 

「足がなくなって動けなくなっても、私が比企谷を手厚く介護してやろうではないか」

 

「それはあたしの役目だがな?」

 

「「まずは足、取っちゃおうか?」」

 

ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい。

こいつらやると決めたら絶対やる奴らだ。

足ってそんなガンプラ感覚で取ったり着けたりできないからね?

 

「八幡!こっち!」

 

急に手を引かれる。

 

「あ!待ちやがれ!」

 

いや、足取られるのに待たねえだろ…

 

***

 

「ハァ…ハァ…危ない所だったね?八幡」

 

助けてくれた小日向が言う。

ほんとに足を向けて寝れない。

奴らはまだ周辺をうろうろしている為、とある工事現場の一角に身を隠している所だ。

 

「何処に行こうともこちらには発信器が…ってアレ?」

 

どうやらあの盗聴器は発信器の役割もあったらしい。

捨てといて正解だな…

 

「今回はマジで助かったわ…ありがとな、小日向」

 

「うん、八幡が気になったから様子を見に行ったらピンチだったみたいだから…」

 

こいつは天使か何かだろうか?

 

「今度また改めて礼するわ。いつも助けて貰ってるしな?」

 

「ほんとに!?でも…」

 

ん?どうしたんだ?

 

「お礼なら…八幡が欲しいかな?」

 

急にハンカチを押し当てられる。

アレ?これ…立花がよく使う…くす…り…

 

……

………

目が覚めた時、内装がピンク色のいかにもなホテルのベッドの上で、横で小日向が寝息を立てていた…

何もかもが手遅れであるらしい…

 

コヒナタス…お前もだったのか…

どうやら天使だと思っていた奴は堕天使だったらしい…

 

こうして、薬で眠らされたまま迎えた為、何も感覚が無かった初体験を悔しく思いつつ、ただただ絶望するのであった…




という訳で初期装者3人+393でした。

F.I.S.組はまた後日書きます。

GXはGW中には書き始める予定ですが、ちょっと微妙かも…です。


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魔法少女事変
第一話GX


長らくお待たせしました。

GX書いていきます。


今、天に問い掛ける願い―――

 

力とは何か?

 

答えはまだ見つからない。

一生掛かっても解る物では無いのかも知れない。

 

だけど――

 

あの日、あの時、あの人から確かに託されたのだ。

背負う覚悟など全く無く、肝心な時に何も出来ない愚か者ではあるが、それだけは確かなのだ。

 

奇跡とは呪いだ。

すがる者を皆取り殺す。

 

彼女が言った…

それについては否定しない。

 

奇跡などに頼るのでは無く、自分自身の手で掴み取ってこそ、俺が求めてやまない『本物』であるはずなのだから…

 

***

 

「安保理の規定範囲内で我々の国外活動、許可されました!」

 

「よぉし!お役所仕事に見せてやれ!藤尭ぁ!」

 

「軌道計算なんてとっくにですよ!」

 

発令所内で忙しなく言葉が飛び交う。

そう、今日は命懸けで世界を救ったナスターシャさんが地球に帰ってくる日になるはずだった。

 

しかし、国連調査団の機体が帰還時のエンジントラブルで着陸予定地点から大きく離れてしまっている。

このままでは不時着すらままならず、地球に帰るどころか、操縦士共々、木端微塵になってしまう。

それを何とかしたい一心で、俺達は国連に掛け合っていたのだが、ようやく許可が下りたようだ。

 

後は、あいつらに任せるしかない。

 

『へいき、へっちゃらです!』

 

『だから!』

 

『生きるのを諦めないで!!』

 

例のシンフォギアミサイルが打ち上げられ、中間点から雪音の放つミサイルに乗り換える。

 

ん?ミサイルに乗り換えるって何言ってるかって?

 

ミサイルは乗り物だろ?

サ○バツナ○ト=サンもやってたしな?

それに、今さらその程度で驚いていたら、あいつらとは付き合えないのである。

 

「装者達、シャトルに取り付きました」

 

後はうまい事減速して無事に着陸出来ればいいのだが…

 

「マムを…」

 

「お願いするデスよ」

 

月読と暁が手を握ってくる。

普段は気丈にしているが、こいつらもまだ小町と同い年なのだ。

不安や恐れが無い訳が無い。

いつもなら振り払うところなんだが…まぁ、気休めになるなら今くらいは構わんか…

 

ふと横を見ると行き場の無い手を出してフリーズしているマリアさんと目が合ってしまった…

どうやら、こいつらと同じで不安だったみたいなんだが…

…うん、見なかった事にしよう…

 

「ちょっと!?何も言われないのが一番クるんだけど!?」

 

せっかく優しさから見なかった事にしたのにうるせえな…

とりあえず、あいつらの方に集中しようぜ?

 

「K2への直撃コース、回避出来ません!」

 

マジか…これヤバいんじゃねぇの?

 

「せめて…操縦士だけでも…」

 

緒川さんが言う。

 

「そんな…それじゃマムが…」

 

「帰れないじゃないデスか…」

 

まぁ、()()()()そういう選択になるだろう。

トリアージだったか?

どちらも助けるのが難しい時に行われる取捨選択。

残酷だが、最悪を回避する為に片方だけでも助けるというアレである。

尤も()()()()の話だがな?

 

『そいつぁ聞けねぇ相談だ』

 

『人命と等しく、人の尊厳は守らなければならない物!』

 

『ナスターシャ教授が世界を守ってくれたんですよ?なのに、帰ってこれないなんておかしいです!!』

 

な?そういう奴らなんだよ。

 

「どこまでも…」

 

「欲張りデスよ…」

 

ちみっ子達の握る手の力が強くなる。

最初は控えめだったから何も言わなかったけど、今のこれは所謂恋人繋ぎって奴じゃねぇの?

ちょっとぼっちにはハードル高いんで離してくんない?ダメ?

 

あ、マリアさんが何か言ってたけど聞いてなかったわ…

しかし、現実問題どうするつもりだ?

 

***

 

問い:山に直撃しそうです。どうしますか?

答え:山を壊します。

 

そう、雪音が楔を打ち込み、立花がぶん殴って山を破壊しやがったのだ…

これ…安保理の規定範囲?大丈夫?

司令が何も言ってないから大丈夫なんだよね?

 

「K2の標高、世界3位に下方修正」

 

藤…藤…藤なんとかさんが淡々と報告する。

うん、今その情報いるかな?

シャトルは山の斜面を滑り落ちて行く。

 

尚もシャトルは止まる気配が無いのだが…

今度は風鳴先輩がダイナミックに森林伐採しておられる…

防人というか裂き森である。

上手い事言ってる場合じゃねぇな…

 

これ…ほんとに規定範囲内なんですよね?

安保理…ガバガバ過ぎやしませんかね?

 

しかし、このまま麓までいければ良かったのだが、最悪な事に進行方向に村があったのだ。

建物にぶつかるだけでも最悪の事態に発展するだろう。

 

…と思ったのだが、立花がテ○ーマンの如くシャトルを受け止め、最後は投げ飛ばしたところで無事?シャトルは止まった。

 

だいぶ減速していたとはいえ、やっぱりあいつとんでもない奴だな…

絶対怒らせないようにしよう。

 

何はともあれ、これでナスターシャさんも帰ってこれた訳だ。

 

「やった」

 

「さすがデース!」

 

感極まってちみっ子達が抱き付いてくる。

いや、近い近い近い。

さすがにこれは無理と引き剥がしていると…

 

またもや行き場の無い手を宙に浮かせるマリアさんと目が合ってしまった…

 

あんたほんと何してんだよ…

 

***

 

4月…

 

俺と雪音は最上級生になってしまった。

つまり、風鳴先輩は卒業し、アーティスト活動に専念するとの事でロンドンに旅立っていった。

何故かしきりに同行を誘われたのだが、俺にも学業があるし、何より小町と長期間離れて生活など許容できないので断った。

まぁ、マリアさんもロンドンに行くらしいので、仲良くやってくれ。

ちなみにマリアさんにもドヤ顔で当然来るよね?みたいな事言われたが当然断った。

何で行くと思ったんだよ…

 

まぁともかく、去る者がいれば当然新しく訪れる者もいる訳で…

 

「八幡、小町、おはよう」

 

「二人ともおはようデース!」

 

ちみっ子達二人と小町が今年のリディアン音楽院の新入生である。

ちなみに多分S.O.N.G.の計らいの結果、同じクラスらしい。

 

「それで、今日だっけ?」

 

「デスデス!マリア達のコラボユニット復活デスよ!」

 

「皆で応援するから今日は八幡の家に集合」

 

女3人寄れば姦しいとは良く言った物である。

しかし月読さんや?何で当たり前のように俺ん家が寄合所みたいになってんの?

 

てかロンドンとの時差は確か8時間だから、向こうの開演が夕方として日本では深夜だよね?

何?俺何も聞いてないけど皆泊まんの?

一応家主俺のはずなんだけどなぁ…

急に来られても泊まるんじゃねぇぞ…とか言っちゃうよ?

希望の花咲かせちゃうよ?

ダメだ、これ俺が死んじゃう奴だわ。

なんだよ、結構当たんじゃねぇか…へへっ…

 

しかし、百歩譲って泊まるのは仕方ないとして、風呂とかどうするつもりなんですかね?

あいつらの入った後に入れとか言われたら悶絶死した後に変な性癖の扉開いちゃう自信あるよ?

それだけは何としてでも守護(まも)らねば…

だからこれダメな奴だっつうの…

 

***

 

湯船に浸かる。

どうやら板場達も参加するらしく、人数が多すぎるため、あいつらは銭湯に行った。

俺も誘われたのだが、ぼっちが大衆浴場など堪えれる訳が無いので、丁重に断った。

何故か雪音も残るとか言い出して、ちみっ子達や立花も残るとかなんとかギャーギャー騒いでいたが、全員漏れなく小日向に連れて行かれた。

 

黒い笑顔になったあいつに逆らえる勇者など誰もいないのである。

たとえ逆らっても、「おぉ勇者よ…死んでしまうとは情けない」が確定してるしな…

 

しかし、今でこそ独り静かに過ごせているが、この後騒がしくなるのが確定しているので、ちょっとぼっち力を高めておくか…

ん?独り静ってワードが何故か非常にしっくりくるし、誰か貰ってあげて!という謎の感想が浮かんで来たんだが、何故だろう?

…まぁ、いいか…

今はぼっちのイメトレの方が大事だ。

 

体は空気で出来ている。

血潮は水で心は硝子。

 

幾たびの戦場を越えて不戦敗。

ただの一度の戦いも無く、

当然のように勝利も無い。

 

担い手は常に独り、

孤独の丘でただ立ち尽くす。

 

故に生涯に意味は無く、

その体はきっと…空気だった。

 

よし、イメトレはバッチリだ。

後は持ち前のステルス性を存分に発揮するだけだろう。

 

「そんな心配は不必要なのです☆何故ならぁ…今からガリィちゃんに拐われちゃうからでーす☆」

 

は?

 

いきなり風呂場に痴女?が乱入してきたんだが…

ていうか拐われんの?また?しかも全裸で?

 

「オラ☆大人しくしろよ☆」

 

「やめてー!助けて小町!せめて服を着させて」

 

「てめえの粗末なモノに隠す程の価値なんてねぇよ☆てかそっちの方がマスターの反応が絶対面白いからそのまま来て貰うゾ☆」

 

さすがにこれは…という格好だったので必死で抵抗したんだが、抵抗虚しく全裸のまま連れ去られてしまうのであった…

わかった事はこいつの性格が最悪という事くらいだろう。




という訳で第一話でした。

恒例の誘拐です(笑)

全裸のまま連れ去られた八幡はどうなってしまうのでしょうか?(笑)


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第二話GX

少し遅くなりました。
第二話GXです。


性格最悪の痴女が何かの結晶を投げたと思ったらさっきまで風呂場だったのが、いつの間にか物々しい広間に景色が変わっていた。

周りには、コアラみたいな顔した赤髪の等身サイズの人形が一体置いてあり、その先の玉座?に誰かが座っていた。

どう見てもあいつがコイツの言うマスターとやらだろう。

 

「戻ってきたか、ガリィ…って何て格好で連れて来てるんだ!?」

 

そう、俺は未だ全裸のままである。

てか、誰かと思えばこの前のちみっ子じゃねぇか…

幼女にこの姿は教育に悪いと思うよ?

 

「いやぁ、シンフォギア装者がいないタイミングを見計らったら丁度お風呂入ってたみたいで?ガリィちゃんうっかり☆」

 

呼吸するように嘘吐きやがったよ、こいつ…

何?大嘘吐き(オールフィクション)でも使えんの?

今のこの状況も無かった事にしてくんない?

 

「ととととにかく、何か着ろ!ふ、服なら貸してやるから!ガリィ、案内しろ!」

 

ちみっ子が顔を真っ赤にして言う。

だから最初から服くらい着せてくれと言ったんだが…

 

「エー!?このままでいいんじゃないですか?マスターからしたら見慣れてるモノでしょうし☆」

 

「そそそそんなモノ、パパ以外………ってガリィお前わかっててやってるだろ?」

 

どうでもいいけど、年頃?の女の子があんま下品な言葉使うなよ…

アラサーが言うには見た目通りの年齢じゃないらしいが…どう見ても幼女である。

というかさっきからガン見されているので、変な性癖の扉を開いちゃいそうである。

さすがのエリートぼっちの俺でも全裸だと目立つらしい。

いや、当然か…

 

「テヘ☆」

 

「いいからさっさと服を着せろ!」

 

「ハーイ☆」

 

ガリィと名乗る少女?に連れられる。

さっきからコイツ、隠しきれてない腐った性格にあざとい物言いとかで、いい印象皆無なんだけど…

 

「じゃあ、このマスターの普段着とかどうカナ?きっとマスターの好感度アップ間違いナシだよ☆」

 

そう言って、赤色のワンピースを渡してくる。

やっぱコイツ性格最悪だわ…

 

「いや、サイズ合わねぇし、それを普通に着れたら全裸よりレベル高い変態じゃねぇか…男物ねぇのかよ?」

 

「ブー☆人質の癖に注文多いなぁ…服を与えて貰えるだけ感謝しろよ、この豚野郎☆」

 

ほんと口悪いな、コイツ…

しかし人質か…少し情報が入ってきたな。

それより、まずは服を何とかしてくれ、頼むから。

 

その後もドレスとかコアラ顔の人形が着ていたようなファンシーな服とか、ひたすらネタに走った服ばかり渡されたが、比較的まともなカジノのディーラーみたいな服を渡された所で妥協した。

どれだけやっても自分の服だけは渡そうとして来なかったので、ネタに全力投球という訳でも無いらしい。

…今、またどうでもいい知識が増えてしまった気がする。

 

***

 

「やっと服を着てくれたか…」

 

ちみっ子が疲れ気味に言う。

いや、その言い方だと俺が普段から全裸で過ごしてるみたいじゃねぇか…

あれはお互い忘れたい出来事だと思うので、さっさと本題に入ろう。

 

「で、用件は何なんだよ?」

 

「ブフォッ」

 

ガリィが吹き出す。

 

「…何だよ?」

 

「いや、だってさっきまで全裸だったのにいきなり『用件は何なんだよ?キリッ』って…プククク」

 

「いや、全裸は全面的にお前のせいだからな?」

 

ほんと何なの、コイツ?

 

「ガリィ、話の腰を折るな」

 

「ハーイ!ガリィちゃんお口チャックしてまーす☆」

 

どうやら、一応ちみっ子の言う事はちゃんと聞くらしい。

 

「コホン…それでだな、お前を拐ったのは女狐に対して人質として有効そうなのでな」

 

女狐?アラサーの事か?

いや、あの人俺をモルモットにしたり、燃料扱いしたりしてたから多分無駄だと思うよ?

 

「いや、多分あんま意味無いと思うが…」

 

「ん、ちょっと待て。…オレだ」

 

ちみっ子がいきなり話を切って自己紹介?しだす。

 

「あぁ、オレが預かっている。コイツの命が惜しければこちらまで来て貰おうか」

 

ん?もしかして今アラサーと会話してんの?

テレパシーって奴か?

司令とか立花とか小日向がとんでもない奴らだから忘れがちだが、あの人も大概だよな…

 

「では遣いを出す。ガリィ」

 

「アイアイサー☆ちょっと行ってきますね☆」

 

そう言ってガリィがまた結晶を使って消える。

あれはテレポートか?

割とこいつらも何でもアリだな…

 

***

 

「連れてきましたよ☆」

 

しばらくして、ガリィがアラサーを連れて戻ってくる。

いや、あんた何で来たんだよ…

 

「ずいぶん舐めた真似をしてくれるわね?キャロル?」

 

アカン、あれめっちゃ怒ってる奴だわ…

あんなに怒ってんのカマクラ関連以外で見た事無いよ?

 

「フン、フィーネともあろう者が小僧1人の命が惜しくてノコノコやって来るとはな?」

 

「さっさと八幡君を返しなさい?今なら昔のよしみで見なかった事にしてあげるわよ?」

 

「断ると言ったら?」

 

「残念だけど…あなたとはお別れになるわね」

 

「いつまでも自分が優位だと思ったら大間違いだぞ?ガリィ」

 

「ハーイ☆」

 

ガリィに拘束される。

いや、あんだけ怒ってたら人質意味ねぇだろ。

 

「…卑怯ね」

 

…アレ?

いやいやいや、あんたフィーネだろ!?

何で俺なんかが人質になったくらいで引き下がってんだよ?

 

「ガリィ、女狐を拘束しろ」

 

「エー?殺っちゃわないんですか?」

 

「そいつの場合、転生される方が厄介だ」

 

「なるほどー☆じゃあ、手足縛って牢屋にでもブチ込んでおきますね☆」

 

「ちゃんと術式を無効化する方に入れろよ」

 

「ハーイ☆オラ☆ちゃっちゃと歩けよ☆」

 

「くっ、キャロル、覚えてなさい!…とでも言えば満足か?」

 

「何?」

 

アラサーの雰囲気が変わる。

ガリィが俺から離れるのを狙ってたのか…

 

「私が何の用意も無しにここまで来たとでも思ったか?」

 

アラサーが懐から何か取り出す。

あれは…

 

「あれは!?ガリィ!さっさと拘束しろ!」

 

そう、ネフィリムの爆発によって無用の長物と化したはずのソロモンの杖だ。

 

「遅い!機能拡張されたままなのでな、こんな使い方も出来る」

 

瞬間、ガリィの姿が消える。

 

「自慢の人形はバビロニアの宝物庫に飛ばしたわ?あそこから帰ってくるのは転移結晶では難しいわよ?」

 

「チッ、やはり計画の一番の障害はお前だ、女狐」

 

ちみっ子が忌々しそうに呟く。

完全に形勢逆転だな…

 

「なんてな?ガリィ、いつまで遊んでるつもりだ?さっさと終わらせろ」

 

「ちぇー、最高にドヤ顔してる所を追い詰めるのが楽しいのに」

 

「な!?」

 

アラサーがガリィに拘束される。

 

「お前がさっきまで遊んでたのはガリィが水で作った分身体だったという訳だ」

 

「くっ、人形にここまでの性能を…キャロル、あなた本気なのね?」

 

「あぁ、オレはいつでも本気だとも」

 

「万象黙示録…世界を分解し、破壊するなんて」

 

世界の破壊…

それがこいつの目的か…

 

「当然だ、パパを殺した世界など、オレがこの手で壊してくれる!ガリィ、連れて行け」

 

「ハーイ☆」

 

アラサーがガリィに連れて行かれる。

 

「さて、お前はこれで用済みだが…このまま帰すわけにもいかん」

 

つまり、始末しちゃうよ?って事か…

まぁ、アラサーが負けた時点で何となくそんな気はしていた。

 

「せめて、オレの糧になって貰おう」

 

ちみっ子が近付いてくる。

小町…お兄ちゃん、ここまでみたいだわ…

覚悟を決めていると、いきなりちみっ子に唇を奪われる。

 

!!!!!?????

 

「な!?」

 

ちみっ子が驚いたように離れる。

何だ?何か無数にある俺の黒歴史の何個かが()()()()()()()()

 

俺は今何をされたんだ?

いや、キスされたのはわかってるけども…

何か、もっと恐ろしい事をされたような気がするのだ。

俺が困惑していると…

 

「お前…こんな過酷な人生送ってきて、よくまともでいられるな…」

 

何故かちみっ子が憐れみの目でこちらを見ていた…

…余計なお世話だっつうの…




という訳で思い出の搾取で八幡の黒歴史を強制体験させられたキャロルちゃんでした(笑)

アラサーはあっさり負けてしまい絶対絶命のピンチですが、何故か憐れみの目を向けられているので割と何とかなりそうです(笑)


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第三話GX

お待たせしました。

ちょっと体調不良で寝込んでました。


「興が冷めた。お前を殺すのはやめておこう」

 

ちみっ子がそう言う。

何か知らんけど助かったらしい。

しかし、今現在、癇癪持ちの幼女が俺の命を握っているという事実に泣きたくなる。

 

「しかし、どうするか…ふむ、まぁ適正はあるか」

 

ん?何だ?

 

「お前にはオレの計画に協力して貰おうか」

 

「断る」

 

わかったとでも言うと思った?

残念、俺はノーと言える日本人なのだ。

ていうか、今までがおかしかっただけで、俺は働きたくないのだ。

それに、その計画とやらの最終目標がさっきアラサーが言ってた世界の破壊だとしたら、尚更である。

 

「断った代償がお前の命だとしてもか?」

 

ちみっ子が凄んでくる。

二言目には脅迫とか語彙力が残念な奴だな…

しかし、俺の答えは変わらん。

 

「その計画手伝ったら、最終的に死ぬんだから一緒じゃねぇか…脅迫にもなってねぇよ」

 

そう、俺に自殺願望など無い。

何が悲しくて自分が死ぬとわかってる事に手を貸さなきゃならんのだ。

 

「何故だ?お前…あそこまでの経験をしておいて、何故世界を憎んでいない!?こんな理不尽だらけの世界など、壊したいとは思わんのか?」

 

…どうやらこいつも過去に何かあったみたいだが…

ていうか、何で俺の経験知ってんの?

 

「ん?オレがさっきお前にやったのは、思い出の搾取だ。それで…その…お前の記憶を見てしまったんだが…」

 

え?マジで?さっきから忘れたくても忘れられなかったはずの黒歴史が何個か思い出せなくなったのは、それでか…ちなみにどれ?

 

「あぁ…中学の時にクラスメイトに告白したら、全校に知れ渡っていたやつと、相手の好きな人を勘違いして、俺の事?って聞いたら翌日黒板に書かれてて、あだ名がナル谷になってた事とそれから…」

 

「もういい。わかった」

 

どうやら、一番酷い中学時代の記憶のようだ。

思い出せない内容を客観的に聞くと本当に酷えな…

 

「とにかく!世界からこんな酷い扱いを受けてきたお前をオレは殺したくない。むしろ、世界を憎む同士として歓迎したいのだ。しかし、それでも断ると言うのなら…仕方ない」

 

いや、あれは俺がぼっちの分を弁えずに暴走した結果の産物なのだから、世界のせいだとか、そんな大それた感情は無いのだ。

なので、俺の答えは変わらない。

 

「それでも、断る。お前に何があったか知らんが、俺はお前程世界に絶望してねぇよ」

 

「そうか…本当に残念だ。ようやく…そう…ようやく、オレの理解者が得られると思ったんだがな…」

 

?世界を破壊しようって奴が何故そんな悲しそうな顔をするんだ?

 

ちみっ子が手を翳す。

今度は思い出の搾取ではなく、物理的な方法で殺すという事だろう。

 

「せめて、苦しまんように跡形も無く消してやろう」

 

ん?ちみっ子の目から…涙?何で俺を殺す事くらいで…

…さっきから思ってたんだが、こいつ、世界を憎むだの壊すだの言ってる割には優しくね?

というよりは、何だ?()()()()()

 

「さらばだ」

 

ちみっ子の手から魔方陣っぽい何かが浮かび、高出力のエネルギーが放たれる。

小町…お兄ちゃんのパソコンは出来れば、何も見ずに完全破壊して欲しい。

最後に考える事がこんな事かよ…

 

とか何とか考えていたのだが、あれ?

俺、もう死んで霊的な奴になっちゃった?

ていうか、体の感覚がまだあるぞ?

 

「こんな所で高出力過ぎますよ、シャトーを壊すつもりですか?マスター?」

 

「さすがにこれは派手過ぎる」

 

混乱している俺の目の前に、剣を持ったロングヘアーの女性と俺と同じ服を着た癖っ毛の女性が立っていた。

 

***

 

「すまんな、加減を間違えたようだ。ファラ、レイア、そいつを殺すのは決定事項だ。邪魔をするな」

 

「マスター、ただ殺すだけなら、私達にご命令すれば良いのでは?」

 

「勝手に私の服を着たふざけた奴は派手に殺す」

 

いや、服については全面的にガリィのせいである。

よって俺は悪くない。

 

「あ、そいつ殺しちゃうんですね☆だからマスターの普段着着て好感度上げとけって言ったのに☆」

 

ガリィが戻ってくる。

 

「ガリィ…お前…」

 

ちみっ子がプルプルしている。

あれは間違いなく、おこだろう。

激おこかもしんない。

 

「何故オレの服を着せようとした!?そんなモノ見たら、女狐を呼ぶ前にアイツを消し炭にしていたぞ!?」

 

「エー?そこは、マスターのセンスを理解するアイツに好感度アップじゃないんですか?」

 

「するか!というか、よく着ないでいてくれた」

 

当然である。

ちみっ子サイズのピチピチのワンピースを着た俺とか、想像するだけで吐きそうである。

グロ画像注意とか前書きが必要なレベルだ。

 

「しかし、ガリィのせいとはいえ、借りが出来たな」

 

ん?あれを借りとか言っちゃうの?

ずいぶんチョロいな…

 

「決めた。殺すのは無しだ。女狐と一緒に牢屋に入れておけ」

 

どうやら、命は繋いだようである。

しかし、こいつらに好き勝手やらせておくと、世界が壊れるらしいので、今死ぬか、後で死ぬかの違いでしかないのだが…

実はそれほど心配して無かったりする。

()()()()が、そんな事を放置しておく訳無いしな。

 

「ガリィちゃんのおかげで命拾いしたんだぞ☆感謝しろよ、ゴミ虫☆」

 

ガリィに連れられて行く途中、そんな事を言われる。

いや、お前…

 

「マスターってば、後に引けなくなって、絶対お前を殺すって言うだろうからねー☆」

 

もしかして、今までのネタとしか思えない発言や行動は全部計算だった?

いや、絶対に違うな…こいつ自分で楽しんでるだけだわ…

 

「勘違いすんなよ?お前の命なんか心の底からどうでもいいけど、お前を殺して、シンフォギア装者が暴走したら、こっちの計画がおじゃんなんだよ☆」

 

まぁ、そういう事だろう。

何かしらメリットかデメリットが無い限り、俺の命など、蟻みたいな物としか思っていないような奴だろう。

 

「それはそうと☆」

 

ガリィにいきなり唇を奪われる。

最近好き放題やられ過ぎじゃないですかねぇ…

孤高のぼっちはどこ行ったんだよ…

ていうか舌を入れてくるな!

うわっ、ナニコレ、ヤバい…

 

「おまっ!?何すんだよ!?」

 

「味見?んー、なるほど☆マスターが変に優しかったのはコレを見ちゃったんだね☆ていうか、何コレ?プククク」

 

味見ってお前…ビッチめ。

しかし、どうやらこいつも思い出の搾取が使えるらしい。

また、俺の黒歴史が何個か思い出せなくなる。

何か最悪な奴に知られてしまった気がするんだけど…

というか、ちみっ子と合わせて割と奪われた筈なのに、まだまだ黒歴史のストックがある俺って一体…

 

「マスター、さっきからお前を殺さない口実をずっと考えてたからねー☆変に高出力にしたのも、私達の誰かに止めさせる為だし☆ま、ガリィちゃんは止めなかったけど☆」

 

お前…そこまでわかってて止めないのかよ…

あのファラとレイアって二人が止めなかったら死んでたと思うと、今さらながら背筋に寒気を覚える。

 

「だって、誰も止めずにお前を殺してしまったマスターがどんな顔するか考えると…ゾクゾクするじゃん☆」

 

やはり、こいつは性格最悪である。

 

***

 

「じゃあ、ここに入ってろよ☆たまにしか見に来ないから、二人でナニしてても黙っててやるよ☆ていうか、推奨☆お前達のヤってる様をマスターに見せたら…あぁ!マスターのNTRの絶望顔とか…想像しただけで堪らない☆」

 

こいつ…ちみっ子に対する愛情が歪み過ぎだろ…

そんな事する訳ねぇだろ…

ていうか、NTR自体使い方がおかしい。

 

ガリィに牢屋に放り込まれると…

 

「八幡君!」

 

アラサーが一糸纏わぬ姿でそこにいた…

いや、少しは隠してくんない?

目のやり場に困るんだけど…

ガリィめ…こういう事かよ…

 

「あ、これは…ずいぶん、警戒されてるみたい」

 

アラサーが思い出したように頬を染めながら自分の現状を説明する。

 

「でも良かったわ。あの子の事だから、あなたを殺すんじゃないかと思ってたから…」

 

いや、その前に…

 

「何で来たんだよ…?」

 

そう、そっちの方が疑問なのだ。

フロンティアの時といい、今回といい、何故、己を省みず俺などを助けようと思ったのか?

 

「そうね…あなたにとって、あなたを助けようと思う人がいるのは当たり前では無いものね」

 

アラサーが困ったような、悲しいような笑顔で応える。

 

「だからこそよ?あなたに…親しい人が信じられる人達だって、教えたかったのかもしれないわ?」

 

らしくないにも程がある行動は…

櫻井了子の物なのか、フィーネの物なのか、結局わからず終いであった。




という訳で、第三話でした。

オリ展開なので、十三話に収まるか不安です…


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第四話GX

第四話です。

どんどん原作からかけ離れていきます。

まぁ、今さらですが(笑)


牢屋の中。

 

特に出来る事も無く、アラサーと二人隣り合わせで座っている…

向かい合うと色々と視覚的にまずいのだ。

とりあえず、上は俺の着ていた服を羽織って貰っているが、その大きい双丘は全く隠しきれていない。

 

「小町ちゃんが心配ねぇ」

 

「あぁ…」

 

「あ、でも安心して?ここに来る前に打てる手は打っておいたから」

 

このあたりは、流石元祖黒幕と言えよう。

しかし、一体何をして来たんだ?

 

「ちょっと…ね?」

 

うん?歯切れが悪いな。

どうしたんだ?

 

「いや、この状況だと、あなたが確実にまずいかなーって」

 

だから何なんだよ?

 

「私の服に発信器を仕掛けておいたの。多分ここは位相差空間だと思うけど、藤尭君なら位置特定出来るはず。…だから、多分もうすぐあの子達が来るわ」

 

マジで?すげぇな藤なんとかさん。

でも何でそれがまずいんだ?

 

「私達の状況、特に服」

 

サーっと血の気が引く。

こんな状況をあいつらに見られたら、確実に厄介だ。

特に立花や雪音に見られたらかなりヤバイ。

またハイライトさんが職務放棄するだろう。

何とかなりそうなのは小日向のみ、次点でマリアさんくらいだろう。

しかし、マリアさんは今ロンドンなので、つまるところ俺の生還率は悲しい事に5分の1という事になる…

 

「はーい☆お一人様ごあんなーい☆3人でお楽しみでもしといてねー☆」

 

そんな自分の命の心配をしているとガリィが誰かを連れてやってくる。

 

ガリィが連れて来たのは…何故かまたしても全裸の雪音クリスであった。

 

***

 

「雪音!?だ、大丈夫か?」

 

「チクショウ、油断した…って、八幡!?」

 

雪音が自分の格好を思い出し、顔を真っ赤にする。

 

「クリス、何があったの?」

 

アラサーが雪音を問い詰める。

 

「あ、あぁ…八幡がまた誘拐されたって聞いて、助けに来たんだが…奴らが出したノイズっぽい奴にやられちまったんだよ…ギアが反応しやがらねぇ」

 

「これは…コアが傷つけられているわ…多分強化型ノイズね。まさか、あの子ノイズまで研究していたなんて」

 

冷静に真面目な話してる所悪いんだが、半裸、半裸、全裸と圧倒的に衣類が足りていない。

雪音にも何か羽織って貰わんと、目のやり場に困るんだけど…

 

「つーか、あたしが言えた立場じゃねぇけど、お前らも何て格好してやがんだよ…」

 

俺に関しては全裸で拐われたし、アラサーは服を奪われている。

雪音はギアが壊れるとこうなるらしい。

何故奴らはこうも服を奪っていくのか…

何?服に恨みでもあんの?

今んとこ、世界の破壊というより、衣服の破壊しかしてないよ?

 

「他のメンバーは?」

 

「あのバカは別任務だ。未来と後輩達(あいつら)はLiNKERの洗浄で数日は出られねぇから留守番だ」

 

つまり、万策尽きたという事である。

全裸の雪音が加わり、状況が更にまずくなっているので、たとえすぐに立花が助けに来ても俺の命は終了だろう。

というか、ちみっ子やガリィ達ならまだしも、強化型か何か知らんが、ノイズに雪音がやられているのだ。

ここは何か対策を考えて慎重に行くべきだ。

 

「くしゅん」

 

雪音がくしゃみをする。

何も着てないし、何か知らんが、ここは結構寒い。

下を渡すべきだろうか?

これ渡すと今度は俺が全裸になるんだけど…

はぁ…仕方ねぇな…

 

「無いよりはマシだから、これ履いとけ」

 

雪音にズボンを渡す。

 

「そ、それだと八幡が全裸に…」

 

「あら、優しいのね?それとも、ここで始めちゃうつもりかしら?」

 

あんた…俺にそんな根性無いってわかってて言ってんだろ?

ニヤニヤしてやがるし…

 

「っ!そ、それじゃあ、八幡はあたしが暖めてやるよ!」

 

雪音が何かを思い立ったように、手をワキワキしながら近付いてくる。

アラサーといい、こいつといい、少しは隠してくんない?

ヤバイ、あんな格好の雪音に近付かれると確実にマイサンが反応する。

 

「待て!?落ち着け!それ以上近付くな、雪音!」

 

「あらあら、八幡君はもう融合症例じゃないけど、今さら私が出した命令が有効になったのかしら?」

 

頼むから助けてくんない?

何この状況を楽しんでんの?

 

「八幡の裸…八幡の裸…」

 

雪音の目が血走っている。

確実に正気じゃない。

今まさに貞操の危機という所で…

 

「き、聞こえますか?」

 

牢屋の外から何者かの呼び掛けがあったのだった。

 

***

 

アラサーとアイコンタクトを取る。

誰かは知らんが、交渉ならばアラサーに任せた方が良いだろう。

 

「八幡!八幡!」

 

そんな事をしていたら雪音に抱き付かれる。

こいつに抱き付かれるのは初めてじゃないが、素肌に当たる胸の生の感触ががが…

このままではまずいので、すかさずチョップで雪音の目を覚まさせる。

 

「いてっ、あれ?」

 

ようやく、正気を取り戻したようだ。

おれはしょうきにもどった。

これ、ダメな奴じゃねぇか…

アラサーがジト目でこっちを見ているが、俺のせいじゃねぇだろ…

 

「聞こえてるわ」

 

アラサーが外の声に応える。

 

「ボクはあなた達を解放しに来ました」

 

「そう、でも外に出た途端、ノイズに囲まれてるなんて事は無いのかしら?」

 

「それについては、信じてもらうしかありません」

 

「それに、あなたのメリットが不明だわ」

 

「ボクは、キャロルの計画を止めたいんです」

 

うーん…一応話の筋は通っている気がするが…

つうか、雪音さん?そろそろ離してくんない?

あなたのせいで、全神経が背中に行ってしまってて、全然話に集中できないよ?

 

「いいわ、解放して貰えるかしら?」

 

まぁ、助けに来た雪音が捕まっている時点で、こちらの手は万策尽きているので、話に乗る方がいいだろう。

相手戦力にノイズが居るなら、人類最強の出撃も難しいしな…

 

「では、術式を解きます。ボクの姿を見ても取り乱さないでください」

 

ん?どういう意味だ?

牢屋の術式が解かれ、声の主の姿が明らかになる。

 

そこに居たのは…

 

ちみっ子こと、キャロルに瓜二つの幼女であった。

 

***

 

「な!?キャロル!?」

 

「落ち着いてください。ボクはエルフナイン。キャロルの器の成り損ないです」

 

「?フィーネは何を驚いてんだ?」

 

ちみっ子と面識が無いらしい雪音だけが、話についていけてないが、今は放置だ。

 

「なるほど、ホムンクルスが魂を宿したみたいね」

 

困った時はアラえもんの出番である。

アラえもーん。話についていけないよー。聖遺物で助けてよー。

 

「はい。キャロルの次の次の器になる予定だった個体です」

 

「つまり、あの子の計画は…」

 

「はい。既に最終段階です」

 

「で?私達は何をすればいいのかしら?」

 

「ボクをS.O.N.G.本部まで連れて行ってください。キャロルに対抗する手段があるんです」

 

「手段?」

 

「ここで説明している時間はありません。もうすぐボクの行動に気付いた自動人形(オートスコアラー)がここに来ます」

 

エルフナインと名乗るちみっ子が結晶を出す。

おそらく、あの転移する奴だろう。

 

「話は帰ってから聞きましょうか?行きましょう」

 

アラサーの発言でちみっ子が結晶を投げるが…

 

「そう簡単に逃がすとでも思ったかよ!」

 

「はいざんねーん☆」

 

突如現れた元祖ちみっ子とガリィの二人がかりで俺だけ捕らえられる。

あいつらは…良かった、逃げ切れたみたいだな。

まぁ、俺1人いない所で問題無いだろう。

何故か、こいつら俺に危害を加えるつもり無いみたいだし、ゆっくり、慎重に助けてくれるか、何なら見捨ててくれても構わんから、今回みたいな心臓に悪い事は辞めて欲しい。

 

「チッ、女狐は逃がしたか…ガリィ、何でお前までこいつを優先した!?」

 

「マスターこそ!マスターはあの行き遅れを確保すると思って、ガリィちゃんはコイツを確保しようと思ったんですよ☆」

 

何故か、ちみっ子とガリィが喧嘩を始める。

 

「チッ、エルフナインとシンフォギア装者だけ逃がすつもりが…」

 

ん?あっちのちみっ子と雪音は良かったの?

あれ?もしかしてこれって、あのちみっ子の対抗手段ってのは、こいつらに筒抜けなんじゃ…

かなりヤバくね?

 

「それはそうとマスター?」

 

「…何だ?」

 

「あの行き遅れこそ、計画の一番の妨げですよね?マスター、何でコイツを優先したんですか?」

 

ガリィがニヤニヤしながらちみっ子を問い詰める。

 

「い、いや…その…それは…そう、あれだ!こいつがいればまた女狐を釣るのは容易いからな?オレに他意は無いぞ?」

 

ちみっ子がワタワタしながら答える。

 

「んー☆まぁ、そういう事にしといてあげますよ☆」

 

「何だその顔は!?というか、何でまたお前は裸なんだ!?」

 

服はあいつらに渡したからな…

あいつらが全裸のまんまで、俺だけ服着てたら、たぶん小町にどやされるしな。

 

「あれあれー?ほんとにお楽しみ中だった?」

 

ガリィがニヤニヤしながら余計な事を言う。

んな訳ねぇだろ…

俺が否定しようとすると…

 

「よし、あいつら殺そう」

 

何故か、ちみっ子のハイライトさんが職務放棄しておられる。

アイエエエ!?ナンデ!?ハイライト=サンナンデ!?

 

「あはは☆冗談ですよ☆牢屋の中はガリィちゃんがずっとモニターしてましたから☆」

 

「ガリィ、お前…」

 

ちみっ子がまたプルプルしている。

これ、今度こそ激おこじゃないの?

 

「見てたなら余計な事言うな!後、こいつにまた服を着せてやれ!その後、オレの所まで連れてこい!」

 

「はーい☆じゃあ行ってきまーす☆」

 

明らかにおこなちみっ子相手にこの態度である。

ほんと、いい性格してやがる…




という訳で、捕らえられたまんまです。

まじで桃姫ですね。


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番外 やはり装者全員ヤンデレなのは間違っている。やり直し!

少し息抜きに番外です。

内容は全然息抜きじゃないですが(笑)

前に予告したF.I.S.組編です。


…何だか悪い夢を見ていた気がする。

 

立花が薬で眠らせてくるヤンデレだったり、雪音がテンプレヤンデレだったり、風鳴先輩がストーカー型のヤンデレだったり、天使だと思ってた小日向が堕天使だったりする夢だ。

…現実はそんな事、ある訳無いのにな。

 

何故なら…

 

「八幡、おはよう」

 

「おはようデース!」

 

「あら、起きたのね?朝食、用意出来てるわ」

 

四六時中、こいつらに監視されているのだから…

つか、毎度思うがどうやって入って来てるんだろう…

俺、鍵閉めたよね?

こいつらのせいで、自分の部屋に鍵を掛けるのが習慣になって久しいのだが、今に至るまでまったく効果がある気配が無いのも如何な物だ。

定期的に鍵を変えているのに、朝起きると確実に侵入されている事から、おそらく合鍵ではなく、ピッキングによる物と思われる。

本格的に指紋認証とかにした方がいいのかね?

今度司令に相談してみようかな…

 

しかし、毎回こうやって侵入されてはいるが、おそらく俺はまだ未経験の筈だ。

寝てる間の事なので、確証が無いのが悲しい所なのだが、そもそもそういった事をされていれば、こいつらの態度も変化がある筈だ。

 

なので、おそらくではあるものの、状況証拠的に未経験である。

何?うらやましい?じゃあ代わる?

 

…確かにこいつら、見てくれ()()()いい。

まずは、月読。

黒髪のロングツインテで物静かに見える美少女。

こいつの場合、未成熟な方がポイントが高いというのも、萌えを知る諸兄ならお分かりだろう。

だが、ヤンデレである。

 

次に暁。

金髪で特徴的な語尾を操る美少女。

月読とは対照的に割と発育しているが、それが更に活発で健康的なイメージを与えてくる。

だが、ヤンデレである。

 

最後にマリアさん。

ピンクの特徴的な猫耳っぽいお団子ヘアの面倒見が良さそうな美女。

彼女は、ダイナマイトボディと言って良いだろう。リアル不二子ちゃんだ。

だが、ヤンデレである。

 

お分かりだろうか?

1人でさえお腹一杯なヤンデレが、あろう事か3人同時に迫ってくるのだ。

ヤンデレジェットストリームアタックである。

俺がたとえニュータイプだったとしても、踏み台にしようとした時点で刺されているだろう。

 

ヤンデレが可愛いだとか、実は安全なんていう風潮は、フィクションの中だけの話なので、代わりたいという人がいれば、是非代わって欲しいものである。

その代わり、命の保証はしかねる。

実際、俺も何度か死にかけているしな…

 

***

 

朝食の時間。

マリアさんの用意した料理を食べる。

基本的に彼女達の用意する料理は俺の物だけ妙に赤い。

原材料は聞かない方が己の為だろう。

食べれないなどと言ったら、それだけで刺されかねない。

 

「八幡、おいしいかしら?」

 

「…鉄分たっぷりですね」

 

「ふふ…八幡が…私の…うふふふ♪」

 

怖えよ…私の何なの?

しかし、これがスタミナ料理などに切り替わると貞操の危機なので、いよいよ逃げる事も視野に入れる必要が出てくる。

よって、これでもまだマシなのだ。

 

「八幡」

 

無心で鉄の味を胃に詰め込んでいると月読に声を掛けられる。

 

「…何だ?月読」

 

「何度も言ってるけど、調って呼んで?呼べ!」

 

怖えよ…

何でそんな呼び方に拘るんですかね?

間違ってねぇだろ?

 

「ど、どうしたんだ?調」

 

調、そう呼ぶと、さっきまでの怒気が嘘のように霧散して逆にニコニコ顔になっていた…

マジで訳がわからん。

 

「うん、私達、そろそろ次のステップに進むべきだと思う」

 

…どうする?

こいつの中で俺との関係がどうなっているのか不明だし、怖くて聞けないが、心情的には絶対に却下だ。

しかし、断り方を間違えれば、リアルバラバラの実になってしまう。

ヤバい、派手に死んでしまう…

 

「…具体的には?」

 

何はともあれ、こいつの要求を確かめるため、少し探りを入れる。

 

「セッ…」

 

「何度も言ってるけど、俺はお前を大事にしたいんだ。だから、そういうのは結婚したらな?」

 

「むぅ…」

 

っぶねー、危うく襲われるとこだったわ…

こういった危機回避能力は、こいつらによって培われたのだが、まったく嬉しくねぇ。

こいつらと関係持つとか、人生終了なので論外だ。

むしろ、関わりたくないんですけど、いい加減解放してくれませんかね?

はぁ…胃が痛え…

 

***

 

両隣に月読と暁、前にマリアさんという布陣に囲まれながら通学する。

周囲の視線が痛いんだが、残念ながらこの扱いにももう慣れてしまった。

嫌な慣れだな…ほんと…

 

「おい!ポンコツ装者共!今日こそは八幡を解放して貰うぞ!」

 

幼女がヤンデレ達に突っ掛かる。

この幼女は、お隣さんのキャロル・マールス・ディーンハイム。

見た目からは想像も付かないが、御年数百歳の錬金術師だ。

こうやって、何度も俺の救出を試みてくれている勇者なのだが…

 

「イグナイトモジュール!抜剣!」

 

―禁殺邪輪 Zあ破刃エクLィプssSS―

 

「何するものぞ!シンフォギアァァァァ!」

 

原理はわからんが、何故か発生した爆発で幼女が吹っ飛ばされる。

何でも、彼女が本領を発揮するには、思い出を焼却する必要があるらしいのだが、とある事件で思い出を焼き尽くしてしまった彼女には、かつて程の力は無いらしい。

他力本願この上無いのだが、彼女には頑張って欲しいと心から思う。

てか、即時イグナイト抜剣の上にユニゾン技とか容赦無さすぎませんかね?

 

「殲滅完了」

 

「悪は去ったデス!」

 

暁さん?俺にはどう見てもあなた達の方が悪に見えるんだけど気のせいかな?

キャロルさん生きてる?

 

「クッソー!次こそは必ず!待っててくれ!八幡!」

 

良かった…生きてるみたいだな。

 

「しぶとい」

 

「今日という今日はトドメを刺すデスよ」

 

ハイライトさんが長らく行方不明のヤンデレ達がキャロルさんに迫る。

まずい、こいつら殺る気だ。

マリアさんも見てないで止めてくれよ!

 

「いいわ…調、切歌、殺ってしまいなさい」

 

ヤンデレに期待した俺がバカだった…

 

「ちょっと待て!?つく…調、切歌!」

 

急いでキャロルさんの前に立つ。

 

「八幡どいて!そいつ殺せない!」

 

「八幡さんにちょっかいかける害虫は一匹残らず駆逐するデスよ!」

 

お前らは一体何処のイェーガーだよ…

 

「まぁ落ち着け、な?俺はお前らを殺人者になんかしたくないんだ。殺人者なんかになったら、俺はお前らを軽蔑するぞ?」

 

危険な賭けだが、人命が掛かっているのだ。

形振り構っていられない。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!見捨てないで見捨てないで見捨てないで見捨てないで見捨てないで!」

 

「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」

 

「違う違う違う違う違う!嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ!」

 

阿鼻叫喚である。

俺が彼女達を否定するような事を言うと、このように呪文のように同じ事を言い続け、かなり精神が不安定になる。

回復して通常のヤンデレに戻るまで3日程掛かるのだが、その間、俺の命が危険に晒される。

ちなみにどうあっても、出会った頃のようなキレイなこいつらには戻らないらしい…

 

「ぐ…すまない、八幡。助けに来ておいて、この体たらく…オレが万全であれば…」

 

キャロルさんに礼を言われるが、目の前で殺人が起きる所だったのだ。

止めるのが普通だろう。

 

「気にすんな…」

 

ただ、数日の間こいつら精神不安定で、うるさくなると思うけど我慢してね?

 

***

 

夜、危険な時間の始まりである。

ヤンデレ達は精神が不安定な為、何をするかわからない。

しかし、警戒した所で奴らを止める術が無い為、あまり意味は無いだろう。

せめて、死なないように奴らを誘導出来れば御の字だ。

 

「八幡…」

 

早速来やがった…月読だけか?

 

「八幡が私達を見捨てるなんて言い出さないように…朝言った通り、次のステップに進む事にしたの」

 

ヤバいヤバいヤバいヤバい。

俺は後退りながら、説得を試みようとした所で…

 

「逃がさないわ」

 

「デース!」

 

マリアさんと暁に押さえ付けられる。

ちょっと待て!?本当に待って?

 

「放せコラ!」

 

「3人に」

 

「勝てる訳」

 

「無いのデース!」

 

…お前ら、何でこのネタ知ってんの?

しかし、馬鹿野郎お前、俺は勝つぞお前とか言ってみたい物だ。

3人どころか1人にも勝てないっつうの…

現実は非情である…

 

***

 

翌日…奴らに夜通し搾り取られた俺は現在進行形で絶望の真っ最中である。

こんな時だけ素直過ぎる我が分身が憎らしい。

奴らの監視のせいで禁欲生活を続けていた反動で、それこそ無双の働きだったとだけ言っておく。

男の脳と下半身は別人格ってのは本当だったんだな…

 

ともあれ、人生詰みのお知らせである。

後はいつ投了するかのご相談だ。

俺は所詮敗北者じゃけぇ…

 

…頼むから誰か取り消してくんない?

 

やはり俺がヤンデレに迫られるのは間違っている。

いや、ほんとに。




という訳で番外でした。

相手が装者だとBAD ENDは避けれないようです。


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第五話GX

本編に戻ります。


例の如くガリィからまたちみっ子の普段着を勧められるが、丁重にお断りして唯一あった男物の服を拝借する。

少し大きいが、他の女物よりはマシだろう。

 

「うーん…五分五分かな?」

 

何故かガリィからは、そんな微妙な評価を受ける。

何が五分五分なんだよ…

 

「まぁ、マスターのところに行ってみればわかるよ☆」

 

へいへい…

ガリィに連れられ、ちみっ子の元に向かう。

アレ?あの玉座みたいな部屋通り過ぎたよ?

 

「マスターが常に玉座に座ってる訳ねぇだろ☆今から行くのはぁ、し・ん・し・つ☆やぁん、マスターってば大胆☆」

 

…落ち着け、俺。

勘違いするな、ガリィのいつもの軽口だ。

ぼっちの癖に調子に乗ってはダメだ。

ていうか、あの見た目は普通に犯罪だろ…

 

「服着る必要無かったかもね☆」

 

いや、全裸で拐ってきたお前が言うなよ…

しかし、こいつのからかい方から見て、寝室に呼んだ事に他意は無さそうだ。

こうやってぼっちの反応を見て楽しんでいるだけだろう。

からかい上手のガリィさんである。

からかい上手なら、たまには「やっとこっち見た」とかキュンキュンする台詞言ってくれねぇかな…

さっきから言葉の核弾頭の連発で、心が折れそうだよ?

 

「ガリィちゃんの性格についてのクレームはマスターに言えば?設定したのマスターだし☆」

 

マジかよ…

自分からからかわれに行くとか、あのちみっ子見た目に拠らずドMか何かなの?

ヤバい…今から会うのに変な目で見てしまいそうだ…

 

***

 

「来たか…って何だ、その目は?」

 

やべっ、無意識にかわいそうな人を見る目で見てたわ。

 

「いや、俺のこの目はデフォだっつうの…」

 

「そ、そうか…その…何だ?強く生きろよ?」

 

俺のこの目は、今から世界を壊そうという奴からも同情されるレベルらしい…

泣いていいかな?いいよね?

 

「というか、その服…」

 

ん?何だ?この城?に1着だけあった男物の服なんだが、着ちゃダメな奴だったのか?

 

「…いや、何でも無い。本題に入ろう」

 

何だったんだ?すぐに感情を隠されたので良くわからんかったが、まず哀愁、次に懐かしい、そんな印象を受けた。

 

「で?何の用だ?」

 

「まぁ、簡単に言えば勧誘だが…オレの境遇、ルーツを話しておこうと思ってな?」

 

まだ俺を引き込もうとしてたのかよ…

俺は引きこもっていたいが、引き込まれるつもりはねぇよ…

専業主夫を希望しているが、養われるつもりはあっても飼われるつもりは無い、が俺の信条である。

何?一緒じゃねぇのかって?完全に別物だろ?

 

「まぁ、焦るな。どうせ時間はある。結論はオレの話を聞いてからでも遅くは無いだろ?」

 

…確かにちみっ子の言う通りだ。

エルフナインの対抗手段がどのくらいこいつらに有効かは知らんが、今すぐに、という訳でもないだろう。

話くらいは聞いて、時間を稼げれば儲け物か…

次に雪音が全裸で抱き付いてきたら、理性が持つ自信が無いしな…

あいつらには、しっかり準備して欲しいものである。

 

「おい、今オレと話しているのに、他の女の事を考えてなかったか?」

 

…だから、あいつらといい、こいつといい、何で俺の考えてる事がわかんの?

エスパーか何かなの?

テレポートとか使えるし、割と近い存在なのかも知れん…

 

「…まぁいい、話が逸れたな、今からオレが世界を壊す理由を教えてやる」

 

…それから、彼女の境遇を聞いた。

助けた人に裏切られ、父親を火炙りにされたこいつに確かに同情はする。

しかし、こいつの父親の最後の言葉をどう解釈すれば、世界を破壊するなんて話になるのか…

俺には、愛する娘を案じるのみで、その中にネガティブな要素などまったく無いようにしか聞こえなかったのだが…

 

あぁ…おそらくだが、その時にこいつの心は何処か壊れてしまったのだろう。

だから、他人が何を言ったところで、こいつが聞き入れる事は無い…無いはずなのだが…

 

「世界を知る…その為にすべて分解する、か…ハッ」

 

どうやら、俺も一言言ってやらないと気が済まないようだ。

ぼっち道を極めたとばかり思っていたが、俺もまだまだだな。

久しぶりの感覚だが、負け続ける事に関してなら俺の右に出る者は、それこそ負完全先輩くらいだろう。

 

問はこうだ。

世界は変わりません。自分は変われます。あなたはどうしますか?

答えは、「俺が新世界の神になる」だ。

 

「何がおかしいっ!!?」

 

怖えよ…

ちょっとビクッてなったから、いきなり大きい声出すのやめてね?

 

「難しく考え過ぎだっつうの」

 

「お前にパパの何がわかるっ!!?」

 

「わかんねぇよ」

 

「…は?」

 

「これは、俺の友達の友達の話だがな?」

 

「お前の話だな?」

 

うるせえよ、何で俺に友達がいないって知ってんだよ?

あ、実際見たんでしたね。

 

「そいつは、妹が好きで好きで堪らなくてな、同じく娘を溺愛する父親とよく喧嘩してたんだが、捻ねくれて育ったそいつは口だけは達者でな?」

 

「もうお前の話でいいんじゃないか?」

 

「まぁ、相手が大人でも、口喧嘩なら割と勝つんだよ」

 

「続けるのか…」

 

「でもな?そいつの父親だが、一度だって小町に仕返ししてくれなんて頼んだ事はねぇんだよ」

 

やべっ、小町って言っちまったわ…

 

「何が言いたいかって言うと、娘を愛する父親なんて皆そんなもんなんだよ。自分の事なんかより、娘の方が大事だからな」

 

そう、父親になどなった事は無いが、父親が娘を愛しているなら、古今東西どの父親でも同じ事を言うだろう。

今聞いた情報しかなく、少し違うかもしれんが、こいつの父親だってきっとそうだと思う。

 

「知った口を!」

 

「俺は何も知らねぇよ、でも、お前は知ってんだろうが」

 

普段なら「この愚か者」と付け加える所だが、こいつが元ネタ知ってるとは思えんしやめておこう。

べ、別にビビった訳じゃねぇし、普通だし。

 

「な、何を…」

 

「お前が知ってる、お前の父親は自分の娘に復讐を命じるような親だったのかよ?」

 

そう、こんな簡単な事ですら、こいつに言ってやれる他人がいなかったのだ。

こいつは数百年の間、ずっとぼっちで、盲目的に、言葉の意味を考えず、ただひたすらに忠実に父親の命題を成し遂げようとしていたのだろう。

 

「ち…違う、パパは…パパは…あぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

キャロルが取り乱す。

しかし、口出しこそしたが、答えはあくまでも、キャロル・マールス・ディーンハイムが出さなければ意味が無い。

俺に出来るのは、ここまでだろう。

 

「マ、マスター!?どうしたんですか?」

 

キャロルの叫び声が聞こえたのか、ガリィが慌てて入ってくる。

 

「おい!お前、マスターに何をした!?」

 

何って、ただ話してただけなんだけど…

 

「まさか、無理矢理マスターの唇を奪って、あの変な思い出をマスターに!?えげつない事するわね!?」

 

…色々言いたいが、好きでこんな黒歴史積み重ねてきた訳じゃねぇからな?

それに、俺の黒歴史見たからってさすがに発狂するようなレベルじゃねぇだろ…

え?違うよね?

 

そう思っていたら、キャロルが再起動する。

さて、鬼と出るか蛇と出るか…

 

「…パパ?」

 

………はい?

 

***

 

幼児が幼児退行した。

何を言っているのかわからんと思うが、何が起きたのか俺にもわからん。

わかっている事は…

 

「パパー♪」

 

この幼女が、何故か俺を父親だと認識している事だけだ。

小町…お兄ちゃん、ぼっちで経験も無いままシングルファーザーになっちまったよ…

嘘だと言ってよ、バーニィ…

そうか、これは夢だな?

ずいぶん、リアリティーに溢れてるから勘違いしてしまったみたいだが、きっと夢に違いない。

これは夢これは夢これは夢…

カカカッ……

ところがどっこい……

夢じゃありません………!

現実です………!これが現実………!

ってやかましいわ!

 

「あーもう!どうすんのよ、これ!?さすがのガリィちゃんも対処に困るんですけど!?」

 

「ガリィきらい」

 

俺が脳内で現実逃避していると、ガリィが慌てふためいていた。

こいつがこんなに取り乱すなんて珍しいな…

いつも人を喰ったような態度しかしないこいつが、こんなに慌てているという事は、よっぽどの状況なのだろう。

…まぁ、自分に命令出してた相手が急に幼児化すれば、当然か…

しかし、これ…どうすんのかね?

 

「パパすきー」

 

思考の海に潜っていると、幼児と化したちみっ子が突撃気味に抱き付いてくる。

…ぼっちに不意討ちはマジでやめてくれ…

俺がオートで発動するお兄ちゃんスキルを駆使して、ちみっ子の頭を撫でていると…

 

「とりあえず、マスターが元に戻るまで、お前に面倒見て貰うからな!?」

 

ガリィにそんな事を宣告される。

マジかよ…これじゃ、マジでパパじゃねぇか…

 

「えへへぇ♪パパ、もっと」

 

はぁ…気楽なもんだな…

 

「後、私達自動人形(オートスコアラー)の指揮も執って貰うからな☆頼んだよ?仮マスター☆」

 

…は?何でそんな事まで…

ていうか、これ、また装者達(あいつら)と対立しちゃうパターンじゃねぇの?

俺、マジで生きて帰れるのかな…

俺が近いうちに確実に起きるであろう、ハイライトさんが行方不明の装者達に迫られる状況からどうやって切り抜けようか考えていると…

 

「パパ…zzz」

 

あー、こんな所で寝るなよ…

ちみっ子をおぶってベッドまで連れて行く。

 

どうやら計らずも、俺を勧誘するというこのちみっ子の思惑は、結果だけ見れば達成されてしまったようである。

あくまで結果だけだが…




という訳で魔境です(笑)

もはや、原作の面影も無いですね…

XDビッキー爆死しました(笑)
今月後2回東京と大阪を往復するので、残念ながら断念しました…


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番外 魔法少女キャロル☆マギカ~始まりの物語~

気付いたらお気に入りが800を超えてましたので…
UAに至っては、14万…マジか…

趣味全開の道楽で始めた拙作をたくさんの方に読んで頂き、感謝の想いを込めて、番外です。


「ボクと契約して、魔法少女になってよ」

 

…あの、白い地球外生命体から契約を持ち掛けられて早数百年…

願いによって、火炙りを回避したパパももう今はいない。

…それでもオレは、朽ちかける度に錬金術で生み出したホムンクルスにソウルジェムを移し換えながら、このマッチポンプのクソ喰らえな現実と戦い続けている。

しかし、それもどうやらここまでのようだ。

 

永く魔法少女の間で噂になっていた、ワルプルギスの夜とかいう魔女を討ち滅ぼした所で、運悪く魔力が尽きてしまったのだ。

オレが絶望などする筈が無いが、魔力が尽きてしまっては、身体を動かす事すらままならない。

せめて、グリーフシードを落とす魔女なら良かったんだが、残念ながらあの災厄と呼ぶに相応しかった魔女はグリーフシードを落とさなかった。

あれだけ苦労してようやく倒したというのに、ボウズとは世知辛い世の中だ。

このままでは、魔力が自然回復して動けるようになるより、この身体が朽ちる方が早いだろう。

何せ、この肉体を維持する為の食べ物も傷を癒す為の設備も何もここには無いのだから…

 

でも、それでもいいかと思っている。

魔女になって誰かに迷惑を掛けるでもなく、人知れず朽ち果てていく。

なんだ、最高じゃないか…

ようやく…そう、ようやくオレは休めるんだな…

強いて言えば、昔から憧れだけはあった、恋っていうものをしてみたかったが、まぁ、縁が無かったものは仕方がない。

そもそも、今でこそ大人の女の姿だが、元に戻ればチンチクリンのオレを愛してくれる男など、パパ以外にいないだろう。

パパとお別れして久しい今となっては、すべて詮無きことだ。

 

「キャロル、正直キミが彼女を倒してしまうとは思っていなかったよ」

 

今わの際、インキュベーターのクソ野郎が声を掛けてくる。

人が今まさに大往生という時に無粋な奴だな。

オレ達魔法少女を消耗品として扱い、デリカシーの欠片も無いこいつが本当に嫌いで仕方ない。

だが、それ以上にこんな奴に騙されたオレ自身が一番赦せないのだが。

まぁ、あのままだと殺されるのを待つだけだったパパを救えたのだから、その一点に関してだけは感謝しないでもない。

 

しかし、数百年力を付けた魔法少女がこのまま魔女にもならず朽ち果てるのだ。

奴にとっては、手痛い損害だろう。

ざまぁ見ろだ。

 

「ただ、彼女を倒してしまったキミをこのまま退場させるのも勿体無いからね。キミを次の彼女にしようと思うんだ」

 

!?こいつ、オレを次の災厄にするだと!?

 

「キミという最強と呼ぶに相応しい魔法少女が魔女になる際に生まれるエネルギーは、間違いなく史上最高の物になるだろう。有史以来、キミ達人類を見てきたけど、キミ以上のエネルギーを生む魔法少女は今後も現れないんじゃないかな?これは誇っていい事だよ」

 

白い小動物の皮を被った化け物がゆっくりとオレに近付いてくる。

やめろ!来るな!オレに近付くな!

クソっ!こいつ、オレがワルプルギスの夜と戦うのを狙ってやがったな?

あの災厄、単独の魔女にしては強すぎると思ったが、世襲制だったのか!

そして、こいつはこいつで、内情を知るオレがずっと邪魔だったのだろう。

わざわざオレにとってアウェーの地である日本まで誘き寄せたのも、それが狙いだったのだと今ならわかる。

知り合いなどいないこの地では、万が一にも助けなど来る訳が無いからな…

戦って死ねばそれで良く、万が一倒したとしても消耗は免れず、弱り切った所で後釜として処理する。

やられる方からしたらクソったれだが、実に効率的でこいつらしい策だ。

 

「安心するといい。キミという最強を倒す誰かが現れたら、次はその誰かが彼女(キミ)になるよ。そうやって、キミという存在は永遠に語り継がれていくんだ。これはキミ達人間にとって究極の夢である不死の存在になると言ってもいいんじゃないかな」

 

それの何処に安心する要素があるんだよ!?

宇宙人にジョークセンスは無いみたいだな。

クソったれ…オレもここまでか…

 

「おい、あんた大丈夫か?」

 

自分の最期を覚悟した所で、ふと誰かの声が聞こえる。

どうやら、目撃者が現れた為、あの宇宙人は逃げたようだ。

何とか命拾いしたみたいだな…

 

それが、錬金術師であり、魔法少女であるキャロル・マールス・ディーンハイムと、目が腐った男、比企谷八幡との初めての出会いだった。

 

***

 

なんか、観測史上最高とか言われたスゲー台風が来た次の日、露出の高い格好で倒れていた豊満な女を助けたら、みるみる縮んでツルペタの幼女になった。

何を言っているのかわからんと思うが、俺にもわからん。

世の中は、まだまだ俺の知らない不思議で溢れているようだ。

 

「すまん。その…助かった。って甘っ!何だ、この飲み物!?」

 

暖ためたマッ缶をマグカップに移して渡すと、キャロルと名乗る幼女が礼を言いながら、砂糖と練乳のハーモニーに驚いている。

どうやら我が家最上級のおもてなしはお気に召さなかったようだ。解せぬ。

一応、応急手当はしたんだが、所々見える生傷が痛々しい。

 

「…気にすんな。人が倒れてたら、助けるのは当たり前だ。それと、マッ缶は千葉のソウルドリンクだ」

 

これは間違いなく、事情を聞かない方がいい奴だろう。

どう見ても成人女性だった奴が幼女になるとか、確実にヤバイ案件だ。

もしかしたら、見た目は子供、頭脳は大人な名探偵で、変に関わったら謎の黒ずくめの組織から命を狙われる事になるかもしれん。

俺は角の生えた戦闘民族ではないので、狙われたら即被害者入り間違いないだろう。

あの戦闘民族、至近距離から撃たれた銃の弾道を見切って避けるとか、どんどん人間離れしてませんかね?

彼女の空手は確実にカラテの方だと思う。

空手のチャンピオンだからって、至近距離でプロが撃った銃弾が避けれますか?

おかしいと思いませんか?あなた。

ハハッ、バーロー。

 

「世話になったな。うぇぇ、まだ口の中が甘い…」

 

マッ缶を飲み切ると、幼女がフラフラと覚束ない足取りで、出て行こうとする。

…あー、チクショウ…

俺は頭をガシガシ掻きながら…

 

「まだもうちょい寝てろ。調子戻るまで家にいていいから」

 

…そう言ってしまったのだった。

はぁ…幼女拾って来たとか、小町に何て説明すりゃいいのかね?

最愛の妹に誘拐犯扱いされる未来しか見えないんだけど…

 

***

 

最初はこいつが何を言っているのか、わからなかった。

言われた事を反芻し、理解するのに時間がかかった。

見返りも無しに他人を助ける人間(ばけもの)などいない。

オレの知っている人間(ばけもの)は、そんな綺麗な生き物ではない。

別段、金を持っているようにも見えないオレを助けるなど、こいつに何のメリットがあるんだ?

金でないとするなら…あぁ、なるほど、得心がいった。

 

「お前、ロリコンか?」

 

目の腐った男が、ブーっと、口に付けていたあの甘い飲み物を盛大に噴き出す。汚っ。

しかし、こいつのこの狼狽えようはどうやら図星か?

 

「悪いが、この身体に生殖機能は付いていない。残念だったな?」

 

ホムンクルスであるこの身体に生殖機能など不要なので、取っ払って久しい。

まぁ、危うく魔女にされる所を助けて貰ったのだ。

オレに出来る範囲でなら、あくまでも!そう、あくまでも礼として、この変態(仮)の欲望を満たしてやるのも吝かではない。

痛いのとか、マニアック過ぎるのは勘弁して欲しいが…

 

「ゲホっゲホっ、お前、俺にそんな下心があったとして、実行できるような度胸のある人間に見えるのかよ?」

 

…確かに。どこをどう見てもこいつはヘタレだ。

しかし、金でもなく、オレの身体が目当てでも無いなら、一体何が目的なんだ?

 

「…困ってる奴を見て、無視したら妹にドやされるんだよ。これは、あくまでも俺の為であって、お前の為じゃねぇ。お前こそ勘違いすんな」

 

…なるほど、何とも不器用な奴だな。

そう思って、数百年ぶりに会った()()に思わず微笑んでしまうのであった。

 

***

 

幼女にロリコン扱いされ、案の定、小町に誘拐犯扱いされたが、何とか誤解を解き、事なきを得た。

はぁ…今日は厄日に違いない。

 

「おい、八幡」

 

幼女に声を掛けられる。

いきなり名前で呼び捨てかよ…

ぼっちには、ちょっとハードル高いからもうちょい手加減してくんない?

 

「フェアじゃないからな。オレの事情を話しておこう」

 

幼女が自分の身の上を話し出す。

 

…は?魔法少女?こいつが?

変身後はどう見ても少女じゃなかったよ?

普通逆じゃねえの?

何その詐欺。こんなのアニメで放映したら訴訟も辞さないよ?

ていうか、魔法少女ってもっと夢がある存在だろ?

何?その殺伐とした世界…

そんな感じの感想をオブラートに包みながら述べていると…

 

「お前はどこまでも小市民だな…」

 

と呆れられてしまった。解せぬ。

因みに一番しっくり来なかった実年齢の事だけは、確実に地雷なので言うのをやめておいた。

いかにぼっちで対人スキルゼロの俺だってその程度の空気くらい読める。

むしろ空気を読み過ぎて、自分が空気になってしまうまである。

 

だが、プリキ○アを愛し、魔法少女には一家言ある俺としては、やはり夢も希望も何処かに置いてきてしまったような現実の魔法少女社会はどうにも受け入れ難い物だったのだ。

 

…だから聞いた。聞いてしまった。

 

「つらくないのか?」

 

「…正直、つらくないと言えば嘘になる。だが、インキュベーターの思惑通りになるのも面白くない。ただそれだけだ」

 

そう言って、儚く微笑む幼女は、どこまでも綺麗で美しく、神秘的な何かに見えてしまった。

 

落ち着け、俺は断じてロリコンなんかじゃない。

 

「でもまぁ、魔法少女なんかに成らなければ、こうしてお前と出会う事も無かったんだ。インキュベーターはクソ野郎だが、そう考えると魔法少女も捨てたもんじゃないんじゃないか?」

 

そう言って、今度は悪戯っぽく微笑む。

 

…もうロリコンでもいいんじゃないかな?

 

『彼女の笑顔を守りたい』

 

彼女の方が、俺なんかよりずっと強い筈で、ただのぼっちの俺ごときが烏滸がましいにも程があるのだが、彼女の笑顔を見て、不意にそう思ってしまった。

 

何度も戒めてきた筈なのに、まだ簡単に人を好きになろうとする度しがたい大馬鹿者に、我が事ながら心底呆れ果ててしまうのであった。




という訳で番外でした。

また続き物の番外を書いてしまったよ…

みくるーとも正妻戦争もあるのに、何してるんでしょうね…


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第六話GX

本編に戻ります。
番外シリーズはまた書きます(笑)


「あー、今日からお前らの仮マスターになった比企谷八幡だ」

 

「はちまんだー♪」

 

自動人形(オートスコアラー)達に自己紹介する。

キャロルがお気楽に俺に続くが、今は放っておこう。

 

「マスター?これは何の冗談かしら?」

 

「先ほどの男か?私のマスターとしては、地味過ぎる」

 

「この男、目が腐ってるゾ」

 

「ねー☆こんな目の腐った奴がガリィちゃんのマスターだなんて…きっと夜な夜なガリィちゃんにエッチな事するつもりだわ☆エロ同人みたいに☆」

 

…散々だな…

つか、ガリィてめえ…やれって言ったのお前じゃねぇかよ…

何でお前が一番俺を罵倒してるんですかね?

 

で、何かコアラみたいな奴が増えてんだけどどちら様?

 

「ミカはミカダゾ。戦闘特化型ダゾ」

 

やべえ…戦闘特化型とか、聞いただけで厨二心をくすぐられるんだけど…

くっ、鎮まれ俺の右手!

 

「それでマスター?これは一体どういう余興なのかしら?」

 

ファラだったか?が、キャロルに向けて問いかける。

しかし…

 

「?パパー?よきょうって何?」

 

幼児に難しい事聞いてもわかんないである。

 

「マスター?」

 

「あー仕方ないからガリィちゃんが説明してやるよ☆」

 

そういうのは集める前にあらかじめやっといてくんない?

まぁ、百聞は一見にしかずと言うし、まずは見せといた方がいいと思ったのかもしれんな。

しかし、こいつらほんとに俺の言う事なんか聞くのかね?

特にガリィ…

 

***

 

改めて、ガリィの説明を受けた自動人形(オートスコアラー)達が俺の前に並ぶ。

ちなみにキャロルはお昼寝の時間なので退室させた。

一緒に寝て欲しいとか、眠くなるまで撫でて欲しいとか散々駄々をこねていたが、夜に本を読んでやる事を約束したら渋々出ていった。

幼児らしく体力が有り余っているようで、相手するのマジで疲れるんだけど…

いつから俺はベビーシッターにジョブチェンジしたんだよ…

でも待てよ?今ベビーシッターとしての実績を作っておけば、将来万が一、いや億が一結婚出来たとして、この実績を生かせば専業主夫も夢ではないんじゃないか?

自分で億が一とか言っちゃったよ…

 

しかし、一番多感なこの時期に母親不在というのも、問題があるんじゃないか?

何故か真っ先にガリィが立候補してたが、キャロルに相当嫌われているらしく、あえなく撃沈していた。

って、何本気で父親の思考してんだよ…

いかんな、どうにも幼い見た目も相まってマジでキャロルが自分の娘みたいに見えてきている…

ヤバい…コブ付きとか益々専業主夫の道が遠ざかるじゃねえか…

 

「非常に不本意だけどあなたをマスターと呼んであげますわ?マスター、指示を」

 

「私に地味は似合わんが…今しばらくは我慢しよう。マスター、派手な指示を頼む」

 

「ミカはミカの役割を果たすだけダゾ」

 

「マスターの母親役は絶対ガリィちゃんの物だからな?てめえら邪魔すんなよ?」

 

おっといかんいかん。

つか、こいつらに指示って何すりゃいいんだよ…

頼みの綱のガリィはまだキャロルの母親役にご執心みたいで俺のサポートをするつもりねぇみたいだし…

 

さて、どうした物か?

俺が指示を出す以上、あいつらと衝突するような事は論外だし、正直、小町がいるこの世界を破壊するなど絶対に却下なのだが…

 

そんなこんなで悩んでいると…

 

「ハチ君を返せ!」

 

「この前みてえに簡単に行くと思うなよ?」

 

「比企谷を返して貰う!」

 

「八幡は無事?」

 

「絶対助けるデース!」

 

「響が怪我しないようにしないと…」

 

「皆落ち着きなさい!気が逸っては成功する物も成功しないわ!?」

 

空気を読まず、立花達が乗り込んで来たのだった…

マリアさん、苦労してんな…

 

***

 

「あらあら、これはこれは…出来損ないのシンフォギア装者達が揃いも揃って…」

 

「派手な登場だな、うらやまけしからん」

 

「数を集めたところで出来損ないは出来損ないダゾ」

 

「てめえら油断すんな!あの鏡の奴はマスターが言ってたやべー奴だ!あの鏡の光はガリィちゃん達ですら当たったらやべーぞ!」

 

小日向の登場にガリィだけが警戒しているようだ。

まぁ、元のキャロルが何言ってたか知らんが、色んな意味でやべー奴なのは間違ってないので、訂正する必要は無いだろう。

 

「…で、なんで八幡はどう見てもラスボスっぽいポジションに座ってるのかな?」

 

やべー奴が、若干ハイライトさん留守気味で聞いてくる。

あれ?今日って俺の命日なのかな?

 

「もしかして…またかよ…」

 

「あぁ…またか…」

 

「まぁ…ハチ君だもんね…」

 

立花、雪音、風鳴先輩が半ば呆れ気味に呟く。

いや、気持ちはわかるけど俺も仕方なくなんだよ?

だからね、今にもビーム撃ってきそうなそこのガチユリを誰か止めてくんない?

何かゴーグル装着しだしたし、今まさに俺の命が風前の灯火なんだけど…

 

「ちょっとどういう事なのよ!?私達にもわかるように説明しなさい!?」

 

「どういう事も何も半年前のお前らと一緒っつう事だよ」

 

「つまり…」「デェス…」

 

「また増えたって事だろうね…」

 

またとか増えたとか立花が意味不明な事を言っているが、そろそろ小日向がヤバい。

何か光り出してるもん。

あぁ、小町…お兄ちゃん、敵地でも何とか生き延びてたのに、味方に殺られそうだわ…

いよいよヤバくなり、自分の最期を覚悟していると…

 

「パパー?トイレー…」

 

この日一番の核弾頭がこの場に投下された…

 

***

 

「パパって…うぇぇ!?」

 

「あの娘…エルフナインにそっくり…」

 

「まさか…デェス…」

 

装者達が驚愕の顔でこちらを見る。

いや、言いたい事はわかる。

だが、こっちも色々あったんだよ…

だから弁明の場をくれませんかね?

 

「何とも緊張感の無い奴らダゾ」

 

「派手に散らしてやろう」

 

「まったく、付き合ってられないわ?マスター、そろそろ始末してもよろしくて?」

 

いや、よろしくないからね?

後、レイアさんはバラバラの実か何か食べた?

このままじゃ、俺がバラバラになるから助けてくんない?

 

「はいはい☆マスター、ママのガリィちゃんがこいつらちゃちゃっと片して連れて行ってあげますからね?」

 

「ガリィきらい」

 

バッカ、ガリィお前!?

核弾頭に更に燃料追加してんじゃねぇよ!?

 

「ママ…?」

 

「つまり…あいつが比企谷を誑かしたと?」

 

「らしいな?」

 

もしもーし?今度は小日向以外の全員のハイライトさんが行方不明だよ?

どこに忘れてきちゃったのかな?

早く見つけてあげてね?

 

「あん?何だ?ポンコツ共?マスターのママの座はガリィちゃんの物だからな?」

 

「ガリィきらい」

 

お前…そんだけ嫌われてるのに懲りねぇ奴だな…

人を好き勝手罵倒するだけあって、メンタルも図太いようだ。

 

「ねぇ…クリスちゃん?」

 

「んだよ?」

 

「あのガリィって子、ハチ君の娘?隠し子?から嫌われてない?」

 

おい!立花!ひそひそ話のつもりだろうが声デカ過ぎて聞こえてんぞ!?

キャロルがマジの娘だったら俺は幼稚園児から小学校低学年ぐらいで父親って事だぞ!?

頼むから常識的な判断をしてくれ!

 

「………」

 

そんな事を思っていると、何かを思い立った風鳴先輩が、おもむろにキャロルに近付く。

 

「おい!てめえ、勝手にマスターに近付いてんじゃねぇよ!」

 

ガリィ…お前さっきから素が出過ぎだぞ…

 

てか風鳴先輩はキャロルに何をするつもりだ?

危害を加えるつもりなら止めたいんだが、さっきから小日向がロックを外してくんないせいで、俺も自動人形(オートスコアラー)達も下手に動けない。

風鳴先輩…そいつ、何も知らん無垢な子なんで勘弁してやってくれませんか?

俺がそんな藁をも掴む思いでキャロルの無事を祈っていると…

 

「ほら、私がママだぞ?」

 

「「「「「!!!!!?」」」」」

 

装者達全員が唖然としている。

自動人形(オートスコアラー)達も同様だ。

いやいやいや…あんた何言ってんだよ…

確かにキャロルに母親は必要だと思ったよ?

ガリィ嫌われてるしどうしようかな?とも思ったよ?

 

「ママ…?」

 

「そうだ、私がママだ」

 

「…ママはこんなにおっぱいちっちゃくない」

 

……

………

…………

キャロルのその一言に、風鳴先輩と、何故か流れ弾が直撃した月読がその場に崩れ落ちるのであった…

装者2人を瞬時に無力化するとは…キャロル…恐ろしい子…




六話でした。

キャロルの精神攻撃に屈する防人と調の命運はいかに…?

それでは、また次話で。


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第七話GX

続けて七話です。
何かまた日間ランキングに載ってましたね…

作者自身、日間に載るような万人受けする内容を書いてるつもりは無いので、驚きを隠せません…

期待外れの方には本当にすみません。


S.O.N.G.本部発令所…

 

ここでは、実際に現場で戦うシンフォギア装者達が後顧の憂い無く、安心して全力で臨めるよう、屋台骨を支える大人達が戦っている。

云わば第二の戦場(いくさば)である。

 

「翼さんと調ちゃんのメンタル、急激に低下!」

 

友里あおいが叫ぶ。

シンフォギア装者のメンタルは、低下すればする程、歌えなくなり出力の低下に繋がる。

云わば、命綱に等しい。

それが急激に下がったのだ、大人達の間に緊張が走る。

 

「音声はまだか!?藤尭ぁ!?」

 

司令である風鳴弦十郎が、情報処理能力のみであれば、世界でも五本の指に入り、あの櫻井了子ですら足元にも及ばないエキスパート中のエキスパート、藤尭朔也に激を飛ばす。

それ程までに状況は逼迫しているのだ。

 

「無茶言わないで下さい!ミリ秒単位で座標がランダムに変わっていて、映像を回すのがやっとです!」

 

そう、敵地である悪辣と背徳を冠する城、チフォージュ・シャトーは位相差空間内にあり、彼の神掛かった腕であっても、映像を回すのがやっとなのだ。

むしろ、映像を回せるだけでも、彼のその特異性が証明できると言える。

 

「ボヤいてる暇があったら手を動かす!」

 

勿論、友里もそう言いながら装者達のバイタル、メンタル情報のモニターから目を離さない。

ここから先は、一瞬たりとも目を離してはならない。

二課時代からシンフォギア装者を支え続けてきた彼女の勘がそう告げているのだ。

天羽奏の時のような悲劇は二度と起こしてなるものか、彼女はそう心に誓っている。

 

「翼さんが敵の首魁に近付いたと思ったら…急に崩れ落ちて…調さんまで…一体何が?」

 

緒川慎次がそう漏らす。

彼は、この発令所内での仕事こそ無いが、いざとなれば、敵地に乗り込み、死と隣り合わせの危険な任務に就く。

決して、シンフォギア装者である彼女達だけが敵地で戦っている訳では無いのだ。

彼女達を支える大人達…彼ら無くして、シンフォギアという力は十全に振るう事が出来ない。

 

「敵の狙いは、対人特化の翼と、ユニゾンの阻止…か」

 

弦十郎が呟く。

そう、普段の私生活こそだらしない面はあるものの、姪である翼は対人戦に特化した戦闘のエキスパートであり、調もまた、切歌と組む事で、決戦級の力を発揮するユニゾンの使い手だ。

要するに、戦の常套手段である、切り札を先に潰しに来たという事だろう。

敵の狙いははっきりした。

後はどうやってそれを実現したかだが…

 

「キャロルの錬金術です!ボクにも詳細はわかりませんが、おそらく、錬金術で翼さんと直線上にいた調さんに精神攻撃をしたと思われます!」

 

この発令所の新たなメンバー、エルフナインが敵の攻撃を分析し、予測する。

正直、了子を除き、異端技術、ましてや錬金術に明るくないS.O.N.G.に於いて、非常に頼りになる新メンバーだ。

 

そして、最後の1人、フィーネこと櫻井了子は独り呟く…

 

「錬金術にそんな術あったかしら…?」

 

自分こそ創始者ではあるものの、キャロルの錬金術はかなりのアレンジが加えられており、確証が持てない故に彼女はそう呟くしかないのであった。

 

***

 

拝啓、小町。

 

お兄ちゃんは今、まさに地獄の一丁目にいます。

風鳴先輩が撃沈した後、他の装者達がキャロルに群がり、しまいには自動人形(オートスコアラー)達まで参加して自分がママだのなんだの言い争っています。

まさに地獄の黙示録(アポカリプス・ナウ)です。

最悪、お兄ちゃんはここに骨を埋める事になりそうです。

何故なら、自動人形(オートスコアラー)達が自由に動いてんのに、小日向の照準がお兄ちゃんに向けられたままなのです。

勿論、お兄ちゃんも死ぬつもりはありませんが、小町も知ってる通り、相手はあの小日向なので、無理そうです。

もしも、お兄ちゃんが帰らなかった時は、お兄ちゃんのパソコンは中を何も見ずに破壊して下さい。

 

最愛の妹へ、比企谷八幡

 

やっべー、思わず脳内で小町に向けて遺書書いてたわ…

まぁ、今の現状は概ね遺書の通りだ。

当然、黒い笑顔の小日向の照準は俺に向けられたままだ。

余計な口出しはするなという事だろう。

 

「あたしがママだろ?な?」

 

「…おっぱいデカすぎ、ママはこんなバカみたいなおっぱいじゃない」

 

「バカみたいなおっぱい…」

 

「ざまぁwwwやっぱりガリィちゃんがママですよね?」

 

「ガリィきらい」

 

あ、雪音とまたもやガリィが撃沈した。

ていうか、キャロルは何か胸に恨みでもあんの?

バカみたいなおっぱいってお前…

 

「アタシがママデスよ!」

 

「よくわからないけどミカがママダゾ?」

 

「お前らは語尾のキャラ付けがあざとい、パパに相応しくない」

 

「ぐぬぬぬ」

 

「アハハハハ、マスターに嫌われたゾ」

 

次は暁とミカが撃沈していた。

ていうか、いつの間に俺に相応しいかが基準になってたの?

俺基準にしちゃうと俺自身が誰とも釣り合わんから、全員ダメになると思うよ?

 

「ふっ、真打の出番ね!世界最高のステージの幕を上げましょう!さぁ、私こそがあなたの本当のママよ!?」

 

「あら?マスターは私がママじゃ不満かしら?」

 

「お前らはポンコツ臭がひどい。やっぱりパパに相応しくない」

 

「そ、そんな事何であなたにわかるのよっ!?」

 

「ポンコツ?この私が?ポンコツ…」

 

「そういうリアクションが既にポンコツ」

 

「くっ、うろたえるな!うろたえるな!!」

 

「おまけに無駄にうるさい」

 

次の被害者はマリアさんとファラか…

ていうか、キャロル毒舌すぎね?

ちょっとマリアさん涙目になってんじゃねぇか…

…幼女に言い負けて涙目のマリアさん…

…やっぱポンコツって言われても仕方ないんじゃねぇかな?

 

「ほ、ほら、キャロルちゃん?私がママだよ?」

 

次は立花か…レイアは参加するつもり無いみたいだな…

 

「お前は見た目が汗臭い、シャワー浴びて出直してこい」

 

「…あ、汗臭い…見た目がって…」

 

見た目が汗臭いって、すげえ言葉の暴力だな…

立花大丈夫?俺はお前がいい匂いするって知ってるからあんま落ち込むなよ?

うわ、小日向がめっちゃ睨んでる…

何でわかんだよ…怖えよ…

 

しかし、キャロルはどこでそんな悪口覚えてくんの?

パパ、そんな悪口教えた覚え無いよ?

あ、元凶わかったからいいわ…

やっぱあいつは、キャロルの教育によろしくないな…

 

***

 

そういえば、根本的な事なんだが、何でこいつら揃いも揃って、キャロルの母親になりたがってんだ?

お前らそんなに子ども好きだったの?

ガリィにしても、何であんな執着してんのか意味不明だし。

 

「お前らどいつもこいつもパパに相応しくない!やっぱりキャロルがパパのおよめさんになるしかない!」

 

キャロル…お前…そんな事言ったら、パパ本気にしちゃうよ?

もし将来彼氏とか連れて来ても、娘は絶対に嫁に出さんとか言っちゃうよ?

…だから、マジな娘じゃねぇっつうの…

やべーな…完全にキャロルのペースに呑まれちまってるわ…

 

大方、自分が誰かを母親と認識する事で、俺を取られると思ったのだろう。

…かわいいじゃねぇか…

理性はともかくとして、一度心が身内認定を下してしまうと、自分でもどうかと思うくらいダダ甘の俺である。

つまりはそういう事なのだろう。

 

今からキャロルを他人だと理性でいくら否定しても、もはや手遅れだろう。

記憶が戻ったらどうすんのって?

そん時はそん時だよ。

 

「お前、そりゃねぇだろ!?てか、八幡も何満更でもねぇ顔してやがんだ!?」

 

バカみたいなおっぱいが再起動する。

何?お前、ウチの娘に何か文句あんの?

 

「くっ、まだだ、私はまだ負けていないぞ!?胸が小さいからとてっ!私が引き下がる道理などありはしない!なぁ、月読?」

 

「…私を巻き込まないで欲しい…」

 

ちっぱい達も復活したようだ。

月読はマジで御愁傷様…

 

「お前達がママなんて認めない!パパはキャロルとけっこんするんだから!」

 

「「「十年早いわ、小娘!!」」」

 

小日向を除く装者全員が口を揃える。

君たち、こういう時だけ仲いいね?

でも、あんまウチの娘いじめんじゃねぇよ?

これ以上は俺も黙ってないよ?

俺が立ち上がろうとすると…

 

ヒュン

 

小日向のビームが擦り、頬から血が滴る…

うす、大人しくしてます…

っべー、今の殺気マジもんじゃねぇか…

ん?ていうか、あいつは何であんな怒ってんの?

 

そういや、あいつだけ、キャロル登場前から怒ってた気がするんだけど…

まぁ、俺の事だ。気付かぬ内にあいつらを怒らせている事などザラなので、きっとまた何かやってしまっているのだろう。

 

しかし、どんどんカオスになってんな…

誰がどうやって収拾付けんだよ…

 

おい、お前ら寄って集ってキャロルに言い寄るのはやめろ!

キャロル半泣きじゃねぇか!?

 

「キャロル、キャロル、パパが大好きなだけだもん!うわぁぁぁぁん!」

 

あーもう、キャロル泣いちまったじゃねぇか…

お前ら全員母親失格だ、マジで。

やはりキャロルを任せれる母親役は小町しかいないだろう。

ていうか、最初から小町しかいなかったと思う…

 

そんな事を考えつつ、小日向をどうしようか考えていると…

 

「オレは一体何をしてるんだ!?っていうか、何だ、お前ら!?顔怖っ!?」

 

どうやら愛娘が魔王に戻ってしまったようである…




キャロルちゃん復活ッッ!!
キャロルちゃん復活ッッ!!

いや、まぁ、今の幼児キャロルも捨て難いんですが、魔王キャロルに戻らないと話が進みませんので…


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第八話GX

八話です。

これからの展開は早めの予定です。


「寄って集ってなんなんだ!?お前らは!?どっから湧いて出た!?」

 

どうやらキャロルの記憶が戻ったらしいな…

まぁ、これで父娘ごっこも終わりという事だろう。

べ、別に残念だなんて思ってねーし?

 

…いやまぁ、本音を言えば、身内認定までしていたのだ。

やはり、名残惜しい気持ちはある。

それに、こんな目が腐ったぼっちを真っ直ぐに好きだと言ってくれたのだ。

幼児故に裏表を考えようが無かったのも大きい。

偽物の親子関係ではあるが、悪くはなかった…と思う。

ん?親子関係が偽物って事は、愛娘が言っていた結婚は法的に何も問題無いんじゃねぇか?

 

……………

 

…いや、俺は断じてロリコンじゃないけどね?

ホントダヨ?

ていうか、見た目はともかく、実年齢はキャロルの方が遥かに上だからね?

これが合法ロリか…

文面にすると犯罪臭がやべえな…

 

「チッ、シンフォギア装者が勢揃いか…って、ちょっと待て!?」

 

ん?何か妙に慌ててるし何かモジモジしてるけど、どうしたんだ?

やべー奴がいるから焦ったのか?

ほんと、いまだにロック外してくんないんだけど何とかしてくんない?

 

「お前ら、オレが戻ってくるまで大人しくしてろよ!?いいな!?絶対だぞ!?」

 

そう言うだけ言って、やや早足で退室して行った…

装者達もキャロルのいきなりの豹変についていけてないようで、唖然としている。

 

しかし、どうしたんだ?

何か準備でもあるんだろうか?

 

あぁ…そういやあいつ、トイレ行きたくて起きたんだったな…

 

***

 

「待たせたな」

 

キャロルが戻ってくる。

しかしあちらは、もはや戦いムードではなかったようで、談笑などしていた。

君たち、敵地で余裕あるね?

 

ちなみに、俺は自動人形(オートスコアラー)に囲まれてるのと、いまだ無言の小日向がロックオンしているので、玉座に座ったままだ。

やだ、このままじゃ狙い打たれちゃう…

 

「なんだ!?この緊張感の欠片も無い状況は!?」

 

キャロルが叫ぶ。

まぁ、それはお前にも原因あると思うよ?

生理現象だから仕方ないけどね?

 

「あ、キャロルちゃん、トイレちゃんと行けた?」

 

立花がキャロルに声を掛ける。

さすがお気楽の権化のような奴だ。

キャロルの豹変など気にしてもいないし、まったく空気を読んでいない。

 

「やかましいわ!!ていうか、何でトイレって知ってるんだ!?」

 

どうやら、急に記憶が戻ったせいで混乱しているらしい。

幼児状態の記憶は無いみたいだな…

愛娘とは本格的にお別れか…

 

「大方、パパを取り戻しに来たんだろうが、オレが返してやる義理は無い!!」

 

キャロルが術式を展開する。

いや、ちょっと待て…キャロル、お前今パパって…

 

「オレの下僕ども!敵を排除しろ!最優先はパパの安全だ!」

 

「ようやく派手に暴れられる!」

 

「退屈だったゾ」

 

「邪魔者にはお帰りいただきましょうか?ポンコツ…」

 

「はいはーい☆マスターが元に戻った以上はお仕事しないとね☆」

 

キャロルの一言で待機していた自動人形(オートスコアラー)達が一斉に行動を開始する。

若干1名まだダメージが抜けてないみたいだが…

 

「守ってやるんだからガリィちゃんの側を離れるなよ☆」

 

ガリィが俺の側につく。

同時に小日向がガリィに向けてビームを放つが、ガリィも水の盾で防ぐ。

 

「光を使う時点でガリィちゃんとは相性最悪だよ☆お嬢ちゃん?」

 

ガリィが軽口で小日向を挑発する。

やはり小日向は無言でビームを再度放つが…

 

「無駄だって☆」

 

ガリィの前に大きな球状の水が作られる。

小日向のビームを受けたそれは内部で光を乱反射させ、そのまま小日向に向けてビームを打ち返す。

 

「!!」

 

間一髪、小日向は回避するが、驚きを隠せないようだ。

 

「聖遺物に対して完全特効?相性ゲーで無双し放題で腑抜けた装者なんてガリィちゃんの相手じゃねぇんだよ☆」

 

そう言ってガリィが俺の横に立って自分の腕を俺の腕に絡める。

いや、今そんな事する必要ある?

 

「ガリィちゃんが護衛している限り、奴らには指一本触れさせないぞ☆あ・な・た☆」

 

どうやらこいつ、まだキャロルの母親を諦めていないようである。

その精神的タフさは素直に尊敬する。

 

「てめえ!何してやがんだ!!」

 

「調子に乗るなデス!!」

 

「切り刻む…」

 

「何のつもりの当てこすり!貴様、明日の陽を拝めると思うなよ!!」

 

「ハチ君嫌がってなくない?」

 

「あなた達落ち着きなさい!?相手の思うつぼよ!?」

 

「ガリィ!誰がそこまでやれと言った!?」

 

ガリィの挑発的行動に装者達が一斉に食いかかる。

てか、キャロルも混じってんだけど…

なんかこいつら来てから俺の立場がマッハで悪くなっていってる気がするな…

しかし、いまだに無言の小日向が怖すぎる…

 

***

 

「抜剣…」

 

ようやく小日向が喋ったんだが、まったく聞き慣れない単語だった…

ばってん?小日向って九州の人だったっけ?

違うか?違うな…

 

「!?小日向、待て!?」

 

ん?何だ?妙に風鳴先輩が慌ててるが…

 

小日向のギアが禍々しい黒いオーラに包まれる。

いや、お前…黒いオーラ似合い過ぎだろ…

 

「ッ!!また!!」

 

ん?またって何だ?

 

「いつもいつもいつもいつもいつも八幡は!」

 

小日向の感情が爆発する。

え?何?やっぱ俺、何かやっちゃってんの?

またオレ何かやっちゃいました?

孫じゃねぇっつうの…

あのコミック版の帯の今一番孫ってるって煽り文句考えた奴のセンス凄いよな…

 

「私を危ない人扱いして!私だって、女の子なんだからぁぁぁぁ!!!」

 

小日向の咆哮と共に小日向のギアが漆黒に変わる。

何だ、あのギア?

どうにも話に聞いている暴走状態とは様相が異なる。

 

しかし、どうやら小日向は俺の表情からだいたい俺の考えてる事が読めるが故に、俺のあいつへの扱いがお気に召さなかったようだ。

そういや、最初来た時にガリィのやべー奴発言に心の中で同意したわ…あれが原因か…

やっぱりやっちゃってんじゃねぇか…

 

「まさかぶっつけ本番でイグナイトを成功させるたぁな…」

 

「しかし、決め手に欠ける今この場では…」

 

「私達もやろう!」

 

装者達が次々にばってんばってん叫ぶ。

何?九州の方言流行ってんの?

方言女子って変な魅力あるよね。

 

とまぁ冗談は置いといて、装者達のギアが次々に漆黒のギアへと変わっていく。

これが、エルフナインの言っていた、キャロルへの対抗策だろう。

って事は、これってもしかしなくても、キャロルの思惑通りって事なんじゃ…

 

「イグナイトを起動させたか…下僕ども!お前らの本分を果たせ!!」

 

「派手に言ってくれる」

 

「好きにやらせて貰うゾ」

 

「ポンコツの汚名返上といきましょうか」

 

自動人形(オートスコアラー)達が次々と奮起する。

レイアはコインを両手に構え、雪音と対峙する。

あいつ、トランプとか武器にしそうだと思ったけど、コインだったか…

ミカは排熱で服が燃え尽き、人形としてのボディが顕の状態で月読、暁と対峙する。

人形だとわかっていても、目のやり場に困る。

ファラは剣を両手に二刀構え、風鳴先輩とマリアさんと対峙する。

ポンコツ同士の対決か…

どうやら、それぞれ、あれがあいつらの戦闘形態なのだろう。

それは、俺の隣の奴も例外ではなく…

 

「あーあ☆命令されちゃった…」

 

心底残念そうにそう呟くと、いきなりくるっと、こちらを向いて、またしても俺の唇を奪ってくる。

お前!?また思い出吸い取るつもりかよ!?

 

「てめえ!何してやがる!!!」

 

「切ちゃん、あいつは最優先で抹殺」

 

「デスデスデース!!」

 

「今の私は冗談が通用する程穏やかでは無いぞ!!」

 

「ハチ君もちょっとは痛い目見た方がいいんじゃないかな?」

 

「だから頼むからあなた達落ち着きなさい!私達の目的を忘れないで!」

 

「まったく、素直じゃない同僚を持つと派手に苦労する!」

 

「同僚のよしみだゾ!行かせないゾ!」

 

「そちらのポンコツは冷静みたいね」

 

装者達が激昂して、それを自動人形(オートスコアラー)達が止めているのが聞こえる。

俺、生きて帰れんのかな…

 

「ん…」

 

どれくらい経っただろうか?

一瞬にも思えるし、かなり長かったようにも感じるが、ようやくガリィから解放される。

あれ?記憶を掘り返しても別に何も思い出を取られてない気がするんだけど…

 

「取り忘れただけだよ、少しは()()に集中しろ、バーカ」

 

そう言って、一瞬困ったように微笑み、すぐにいつも通りの底意地の悪い笑顔の仮面を被り直して小日向へと向き直したのであった。

 

その微笑みの意味がわからず、ただただ立ち尽くすのであった。




という訳で公式に存在しないイグナイト393が爆誕してしまいました(笑)

ガリィちゃんの圧倒的正ヒロインオーラがヤバいです(笑)


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第九話GX

九話です。

ちょっとシリアスです…


「ここでは些か決戦には手狭だな」

 

キャロルがそう言って、転移結晶を投げる。

 

「パパはここで待っててくれ、すぐに()()()()()

 

そう言って装者達を伴って、キャロル達が消えていく。

俺はただ、彼女の微笑みの意味が理解出来なくて、高い天井を一人で見上げていた…

 

***

 

最初にミカがやられた。

次にファラ、そしてつい今しがたレイアとレイアの妹が呪いの旋律の餌食となった。

先ほどから何をしても、鏡のシンフォギアを纏うこいつには通用していないので、間もなく私も同僚達と同じ運命を辿る事になるだろう。

 

()()()()()()()()()()()()

 

マスターの計画に従い、奴らの呪いの旋律を受けるのは、私達自動人形(オートスコアラー)にとって誉れであり、規定事項だ。

だけど…だけど、何故か私は醜く、生き汚く恥を晒している。

私の性格であれば、真っ先に奴らに仕掛けて一番乗りの誉れを受けているのが一番しっくりくるはずなのに…

それもこれも全部あの目が腐った自称ぼっちのせいだろう。

 

「ハァ…ハァ…ハァ…クソッ」

 

実際の私達には疲労など無いので、この息切れは演出としての機能の一つだ。

何でマスターはこんなに人間に近く作っちゃうかなぁ…

初めから、感情など持たないただの機械として生まれていれば、あんな捻ねくれた男の事でこんなに悩む事も無かったのになぁ…

おかげで一番乗りを取り逃しちゃうし、散々だ。

 

「…お別れはあれで良かったの?」

 

目の前のメス豚がそんな事を聞いてくる。

こいつ!?まさか気付いて…!?

 

…私にも自動人形(オートスコアラー)としての矜持がある。

人形は人間に非ず、だ。

だからこそ、人形である私を人間と同じように扱うあいつが最初は気に食わなかった。

でもすぐに、たとえ人形が相手だろうと誰にでも優しい男なのだと知った…知ってしまった…

それから、その優しさを独占したいと思ってしまった。

マスターが幼児化して、それに拍車が掛かった。

マスターをダシにして、あいつの隣を主張した。

()()()()()…何度そう言い聞かせても、自分でももう止められなかった。

 

違う…訳のわからない変な男をマスターよりも優先するなど、人形すら失格だ…

 

だから、人形としての分を弁えず、人間に恋をしたなど絶対に誰にも知られてはならない。

同僚達にはバレバレだったみたいだけど、まぁ、あいつらは私と同じく死ぬ事が規定事項の奴らだ。

特例で除外してあげましょう。

だけど、こいつの口だけは確実に封じる必要がある。

 

「ガリィちゃんには何の事だかさっぱり☆てめえは氷漬けにでもなってろ、メス豚ァ!」

 

ありったけの力を込めて、奴の周囲に水を錬成し、瞬時に氷に変える。

死人に口無しだ、ざまぁ見ろ。

 

「ッ!?ガリィ!?お前!?」

 

「いやぁ、マスター…つい勢い余って殺っちゃったみたいです☆」

 

マスターにそう報告した次の瞬間、氷の棺から無数の光の束が発生し、やがて粉々に砕け散る。

チクショウ…これじゃどっちがバケモノかわかんねぇよ…

 

「ごめんね…私にも守りたい世界があるの」

 

――漆黒――

 

あぁ…あいつは相当なニブチンだからどうせ気付いてないんだろうなぁ…

あーあ、人に生まれてたら、あいつに抱き締めて貰えたのかな?

温もりなんて感じないし、与えてあげる事もできないこの身体が心底恨めしい。

こんなどっかの星詠人形みたいな恋愛脳(スイーツ)、ガリィちゃんらしくもないなぁ…

 

最後だというのにおかしな感想を抱く私を黒く輝く光が包み込む。

 

温もりなど感じない身体のはずなのに、何故か『暖かい』と感じてしまった…

 

***

 

どれくらい経っただろうか?

 

何も考える事が出来ず、天井に書かれた紋章に一つ、また一つと光が灯るのをただ眺めていると、急に何かカプセルっぽい装置が作動し、中からキャロルが出てくる。

 

「待たせたな、パパ」

 

帰ってきた?いや、このキャロルは最初からあの中にいたんじゃないか?

だとしたら…

 

「計画は順調だ。この座標はバレているみたいだからシャトーごと移動させる。次の目的地は深淵の竜宮だ」

 

いや、そんな事より、レイアは?

ミカは?ファラは?…ガリィは?

 

「奴らはシンフォギア装者にやられた」

 

キャロルが淡々と述べる。

浮遊感が身体を襲う。

 

先ほどまで、普通に会話していたのだ。

彼女の微笑みの意味がわからなくて、問い質したかったのだ。

 

…少しだけ…そう、ほんの少しだけだが、実の父親を失い、出された命題を盲目的にこなそうとしていたキャロルの気持ちが理解出来てしまった。

だが俺には…今はいない彼女の真意を知るなど、無理難題もいいところだ。

 

キャロルはなおも続ける。

 

「後は、ヤントラ・サルヴァスパがあれば、計画を実行に移す事が出来る」

 

やはり、俺とのあのやり取りを経た今でもまだ、キャロルは世界を壊そうと思っているのだろうか?

 

「オレには人を救わぬ奇跡など要らぬ!ならば世界を、人が奇跡などに頼らずに生き、ついでにオレとパパが誰にも邪魔されずに幸せに暮らせる世界に再錬成してくれる!」

 

…どうやら、突拍子も無い方向に修正されてしまったようである。

おい、ご主人様が変な方向に行こうとしてんぞ…

さっさと軽口の一つでも叩きにこいよ…

 

***

 

深淵の竜宮…

 

どうやら、ここは海底に位置しているらしい。

転移結晶で来たので、よくわからんのだが…

 

ここにあるヤンバルクイナ?とかいう聖遺物がキャロルのお目当てらしい。

なんで沖縄固有種の鳥が必要なのかはよくわからん。

ていうか、探すなら沖縄に行った方がいいんじゃねぇの?

 

「ここにあるはずだ」

 

とある一画にキャロルと共に入る。

今さらだが、これって不法侵入だよね?

ていうか、錬金術マジで何でもアリだな…

 

「あった…が、基底状態か…」

 

キャロルが変な鉄っぽいプレートの束を手に取る。

ん?それがヤンバルクイナ?俺が知ってんのとなんか違うんだけど…

 

「起動にはフォニックゲインが必要だが…パパ…は無理だな…」

 

さすが我が娘、よくわかっている。

ぼっちである俺が聖遺物を起動させる程のフォニックゲインを出せる訳が無い。

もはや、融合症例でも何でもない紛うことなき一般人だしな…

 

「となると、オレが歌うしかない訳だが…」

 

「おっとそこまでだ」

 

突然掛けられた声に振り返ると…

そこには、月読、暁と雪音がシンフォギアを装着した臨戦体勢で立っていた。

 

***

 

「やけにあっさりしてやがったし、いつまで経っても八幡が戻って来ねえからおかしいと思ったぜ」

 

「大人しくお縄につくデス!」

 

「抵抗しないなら危害は加えない」

 

ちみっ子達が最後通告を出してくる。

まぁ、これ不法侵入だし普通にこちらに非がある。

しかし、我が愛娘は…

 

「知ったことか!」

 

これである。

とことんあいつらと相入れるつもりは無いらしい。

俺も何故だか、今はあいつらのところに行くような気分になれない。

 

「ちょせえ!」

 

雪音が威嚇射撃を放つが…

 

「ヘルメス・トリスメギストス」

 

キャロルのバリアが全てを防ぐ。

 

「パパ…これは参重層術式防護って術式でかなり難しい術。バリアで片付けられるのはちょっと心外」

 

いや、素人の俺が見てもバリアにしか見えないんだが…

まぁ、娘が凄いのは俺としても悪い気はしない。

 

「そうか、すごいなキャロル」

 

そうやって、頭を撫でてやる。

 

「えへへ♪もっと誉めてもいいよ♪」

 

キャロルのおねだりに応え、撫でるのを続けていると、ふと寒気を感じる。

見ると何故か雪音達が暴発寸前だった。

 

「人の目の前でイチャコライチャコラ何やってやがんだ!!」

 

「ギルティ…」

 

「話はベッドで聞かせて貰うデス!」

 

雪音がフルオープンで全弾発射してくる。

おい、非武装の一般人相手にこれはねぇだろ!?

ていうか、キャロルの参重層術式防護?(まぁいい、バリアだバリア)で俺達は無事だが、周囲は大惨事である。

これじゃどっちが賊かわかんねぇな…

続けて暁が切り掛かってくるが、これもまた、キャロルのバリアで防ぐ。

しかし、その裏から現れた月読には、さすがのキャロルも対処が遅れてしまう。

 

「そこぉ!」

 

「チッ!あっ!?」

 

キャロルが驚いたような声を出す。

見れば、月読の攻撃によって、バリアとは逆の手に持っていたヤンバルクイナが壊れてしまったようだ。

そして、想定外の事態が起きてしまったが故に、死角から来る雪音のミサイルにまったく気付いている気配が無い。

まずい!俺は咄嗟にキャロルを抱き締める。

 

「ッ!?八幡!?何してやがんだよ!?」

 

せめて、娘だけでも無事でいて欲しいが……

 

……

………

ん?いつまで経ってもミサイルの爆発で俺が木っ端微塵になったり、衝撃で吹っ飛ばされたりしない為、疑問に思い振り返る。

 

「久しぶりの高純度の聖遺物ぅぅ!」

 

雪音のミサイルが白衣を着た男の左腕に飲み込まれていく。

おいおいおい、マジかよ…

月読と暁も声の主の正体に気付いたようで、げんなりした顔をしている。

 

「そう!ボクこそが!英雄にして、真実の人!ドクターウェルぅぅぅ!!」

 

そこには、半年前、何度も色んな意味で俺を苦しめた歩く天災が立っていた。




という訳でシリアス展開からの杉田君登場です(笑)


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第十話GX

十話です。

アレ?おかしいな…
私、日曜日くらいにお気に入り800記念番外を書いたと思ったんですが…もう900…
マジですか…


来ちゃったよ、暴走博士…

いや、愛娘が危ない所を助けて貰ったのには感謝するけどね?

その節はどうもありがとうございます。

 

てか何でいんの?

何かネフィリムと融合しちゃってるから、聖遺物扱いで普通の牢獄じゃなくて竜宮城だかどっかに幽閉されるって聞いてたけど、もしかしてここの事だったの?

 

「退屈な日々を送るだけだったが、ようやく世界がボクという英雄を求めたって事だろう!?これこそ!まさに!英!雄!たる!ボクの宿命!!」

 

初っぱなから飛ばすなぁ…

全員が退いてるの見てわからんの?

 

「んー、まぁ、代用にはなるか…」

 

キャロル?どうしたの?

 

「ウェル博士、どうしても英雄の貴方にやって欲しい仕事がある」

 

キャロル?頭打った?大丈夫?

 

「むぉちろんだとも!世界が英雄を求めるのなら!ボクはぬぁんどだって応えてみせるさ!」

 

興奮し過ぎて呂律がおかしくなってるよ?

しかし、こいつと関わるとロクな事にならんからオススメしないんだけど…

 

「オレは今、チフォージュ・シャトーという世界変換装置を作っている。貴方の力で、世界をより良い物に変えようじゃないか!」

 

こいつにここまで言っちゃって大丈夫なのか?

また暴走する未来しか見えないんだけど…

 

「ウェクスェレント!これこそ!まさに!英雄たるボクに相応しい仕事だよ!」

 

同調しちゃったよ…

あー、雪音、月読、暁?

今なら邪魔したりしないから止めてくんない?

 

「切ちゃん、あいつが付くと絶対失敗するから見逃さない?」

 

「たしかにデスね…」

 

チッ、あいつらもわかってやがる…

しかも、なかなかの策士だな…

 

「それじゃあ、パパ。もうここに用は無いから帰ろ?」

 

キャロルがそう言って転移結晶を取り出す。

雪音達は見送る方針のようだ。

とんでもない爆弾を抱えたようにしか思えんのだけど…

はぁ…キャロルと二人きりなのは寂しい思いをさせてしまってると思ってはいたが、よりによってこいつを連れていかんでもいいだろ…

他にいるだろ?

小町とか、小町とか、小町とかさ?

そういや、しばらく小町に会ってねぇな…

そろそろ小町ニウム欠乏症に陥る危険性があるな…

 

そんな馬鹿な事を考えている間にキャロルが転移結晶を投げる。

しかし、それと同時に雪音が高速で飛び掛かってきて、俺だけ拘束されてしまう。

というか、顔に胸が押し当てられてて、しゃべれん…

ナニコレ?胸ってこんな弾力と圧力が生み出せるもんなの?

こ、これがバカみたいなおっぱいの実力か…

 

「八幡は返して貰うぜ!」

 

「パパ!?貴様ァ!!」

 

キャロルが叫ぶが、時既に遅く、転移が完了する。

 

「戻ってきやがる前に急いでずらかるぞ!」

 

「がってんデス!」

 

そうして、強制的に連行されるのであった…

 

***

 

ようやくおっぱいに解放される。

ここは…どの辺りまで来たんだ?

 

「八幡…その…」

 

「…何て事してくれたんだよ?」

 

「八…幡…?」

 

「お前…娘があんな不審者まる出しの奴と二人きりだぞ?キャロルに何かあったらどうしてくれんだよ?」

 

きついかも知れんが、これだけは言っておかなくてはならない。

こいつらにはこいつらの事情があるかも知れんが、俺にも俺の事情がある。

当然の事だ。

 

それに…こいつらはガリィ達を…殺した。

任務だった?仕方なかった?

あぁ、そうだろうとも。

それに、底抜けにお人好しのお前らだ。

対話を試みたが無理だったのだろう。

結果が逆だったら、きっとガリィ達に同じ事を言っていただろう。

そんな事はわかっている、わかっているが…

そこに俺の感情がついていけるかは別問題なのだ。

 

「俺はキャロルのところに戻る。もう…お前達とは歩めない」

 

そう言い残し、深淵の暗闇へと引き返す。

後ろから、ドサッという何かが倒れるような音が聞こえるが、振り返る事無く、歩みを進めるのであった。

 

***

 

「パパ!大丈夫だった?」

 

元の場所まで戻ると、キャロルが出迎えてくれる。

良かった…あんだけ啖呵切っといてキャロルが帰っちゃってたらどうしようかと思ったけど杞憂だったようだ。

 

「心配かけたな、キャロル」

 

俺がそう言うと、キャロルが抱き付いてくる。

 

「パパは、あっちに行っちゃうかと思った」

 

キャロルが泣きそうな声でそう言う。

 

「パパがキャロルを見捨てる訳無いだろ?」

 

そう言って頭を撫でてやる。

 

「うん、パパ…ありがとう」

 

ガリィ達は既に亡く、周囲には英雄願望の強いいつ暴走するかわからん奴が1人いるだけ。

正直、不安しかない戦いだ。

それでも、俺だけは最後までこの子の味方であろうと心に誓ったのであった。

あの人…天羽さんには相棒とその仲間に反旗を翻す形になって申し訳ないが、託された命の使い時がようやく来たみたいだ。

 

「それはそうとパパ?」

 

ん?どうした、キャロル?

 

「あのバカみたいなおっぱいにデレデレしてなかった?」

 

アレレ?幻覚かな?

キャロルの背後に般若が見えるよ?

 

「むぅ…オレだって成長すれば大きくなるんだからね!」

 

キャロルがそう言うが…あんま想像できねぇなぁ…

 

「あ、その顔は信じてない!もう!ほんとにバインバインになるんだから!」

 

俺の血を引いてる訳じゃねぇから、小町は参考にならんが…今がツルペタだからなぁ…

ていうか、あんまお下品な言葉使うのやめようね?

パパ、キャロルが将来ビッチなんかになったら泣いちゃうよ?

 

「むぅ…やっぱりあのバカみたいなおっぱいは敵。次に会ったら容赦しない」

 

…どうやら、我が娘もなかなかに鋭いようである…

俺ってそんなにわかりやすいのかね?

 

***

 

「戻ってきましたね、あなたもつくづく運に恵まれない体質のようだ」

 

シャトーに戻ると暴走博士が出迎えの挨拶とばかりにそう言ってくる。

 

「あぁ、ほんとにそう思うわ」

 

今、俺の目の前に主な原因がいるけどね!

どうやら、過去を振り返らない人種みたいだ。

PDCAって知ってる?

 

「しかし!これも何かの縁です!ボクが英雄として伝説になった暁には、あなたも英雄の従者として語り継がれる事になるでしょう!!」

 

あー、そいつはすごいね!

それじゃあ、俺の為にも英雄になれるようにがんばってくれ!

 

「パパ…」

 

キャロルがひそひそ声で話し掛けてくる。

どうした?

 

「この人…残念な人だね…」

 

え?今頃気付いたの?遅くない?

出だしからフルスロットルでやべー奴だったじゃん?

 

「あ、あの時はパパに抱き締められてて、頭いっぱいで…」

 

…やはり俺の娘は世界一かわいいわ…

ちなみに同率タイに小町という世界一かわいい妹がいる。

これ、豆な。

 

「コホン、ウェル博士、早速だが、シャトーを起動して欲しい」

 

気を取り直したキャロルが暴走博士に依頼する。

 

「任せたまえ!これでボクがこの星のラストアクションヒーローどぅぁ!!」

 

暴走博士が勢い良く左手をシャトーの制御盤に乗せる。

見た目はアレだが、あの手便利そうだよなぁ…

ていうか、ラストアクションヒーローって…

もしかして、英雄英雄言ってるけど、シュワちゃんみたいなムキムキマッチョの英雄に憧れてんの?

がんばる方向性全然違うくない?

 

「まもなく起動しますよぉ!きぃたぁぁーー!!どっこいしょぉぉー!!」

 

暴走博士の手によって、シャトーが起動する。

いちいちうるさくしないと何か出来ないの?

最初会った時、こんなんじゃ無かったよね?

 

「それではシャトーを現界させる。パパ、いよいよ大詰めだ」

 

華麗にスルーしたキャロルが暴走博士の横に立ち、制御盤を操作する。

 

すると、外の様子が映し出される。

どうやら、位相差空間から、通常の空間に出たみたいだ。

ここは…どうやら都庁上空みたいだな。

 

しかし、ここからは確実にS.O.N.G.の妨害があると思っていいだろう。

そういや、キャロルの目的が変わってる事、あっち側は知らねぇもんな…

て事は、キャロルが世界を破壊すると思って全力で妨害に来るはずだ。

もはや、対話の段階はとうに過ぎている。

ここからは、血生臭い戦争だ。

 

海面からミサイルが放たれるのが見える。

どうやら来たみたいだな…

 

「オレはシンフォギア装者を迎え撃つ!パパとウェル博士はここで待って…」

 

「待てキャロル、俺も行く」

 

「パパ!?」

 

自分の娘だけを戦場に送り出して、自分は安全圏で見物するだけの父親などいるだろうか?

誓ったのだ、俺は最後までキャロルの味方だと。

今ここで、あいつらを前に尻込みするような誓いなら、そんな物は『偽物』だ。

断じて違う。俺が求めている物は『本物』だ。

形すらわからない。

本当にあるのかもわからない。

それでも、あって欲しいと願って、ずっと探し続けている。

今動けなければ、二度と手に入らない。

何故だか、そんな予感がする。

 

「でも、パパ…危ないし…」

 

「承知の上だ。足手まといなのもわかってる。それでも、俺は一番近くでキャロルの味方でいたいんだ」

 

「パパ…」

 

「素ぅ晴らしいですねぇ!これこそ!まさに!愛っ!!ですねぇ!」

 

「「何故そこで愛ッ!?」」

 

オレと顔を真っ赤にしたキャロルがハモる。

いや、このツッコミお約束になってて条件反射でやっちゃったけど、なるほど、確かにこれは愛だわ。

なんだよ…たまにはいい事言うじゃねぇか…

いや、たまにどころか初めてだな。

 

「そんな貴方にプレゼントです」

 

ウェル博士から2種類のアンプルを受け取る。

 

「LiNKERとアンチLiNKERです。どう使うかは、貴方にお任せします」

 

ん?シンフォギアが相手だからアンチLiNKERはわかるけど何でLiNKER?

俺、装者でも、何でもないよ?

 

「ボクの勘、ですよ」

 

まぁ、どう使うかはお任せという事なので、一応貰っとこうか…

 

「じゃあ、パパ」

 

「あぁ、行こう」

 

キャロルと手を繋ぐ。

 

世界を再錬成する、最後の戦いだ。




完全に原作と逆転してしまってますが、正義とは何なのでしょうね?
敵側にもちゃんとした正義や信念があるのが、シンフォギアの魅力の一つだと思います。
八幡は装者達と関係修復できるのでしょうか?
そのあたりは、また次話以降で書いていきたいと思います。

それはそうと…
5月25日は風鳴翼生誕祭です!!!
もう一度言います。
5月25日は風鳴翼生誕祭です!!!

残念ながらその日は、仕事で大阪に行く予定なので、予約投稿になると思いますが、防人メインの番外を書くと思います。


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番外 風鳴翼生誕祭~実録、防人の一日~

すみません、遅くなりました。
予告通り防人番外です。


防人の朝は早い。

 

午前8時、3度目の目覚ましで起床する。

学生の時分は4度目の8時10分だったのだ。

ふふん、私も成長して、大人としての自覚が芽生えているという事だ!

今度は2度目の7時45分に起きる事に挑戦しようと緒川さんとつい先日約束したところだ。

 

午前8時30分、朝食を取る。

朝はもちろん、緒川さんが前日に用意してくれた、白米と味噌汁に漬物だ。

やはり、日本人は米に限る。

む、今日は合わせ味噌か…

緒川さん、ますます腕を上げましたね。

 

午前9時、着替えを始める。

何故だ!?私のお気に入りのワンピースが無いぞ?

今日は比企谷とデートなのだ。

無いでは済まされんぞ!!

何処だ!?このタンスの中か?無い…

もしかして、食器棚か?無い…

わかった!テレビ台の中だな!?無い…

おのれ、誰の陰謀だ!?出てこい!叩き切ってやる!

む、陰謀を企てた敵は出てこなかったが、ワンピースの方はようやく出てきたか…

まさか、クローゼットにあるとはな…くっ、不覚!

しかし、部屋が()()散らかってしまったな。

…まぁ、いいか。

何、()()散らかっていても、どこに何があるかを私が把握していればいいだけの話だ。

何も問題は無い。

 

午前11時5分、比企谷と待ち合わせだ。

約束は11時だったから、少し遅れてしまったな。

やはり、バイクで来た方が良かったか?

いや、しかしワンピースでバイクというのもどうなんだ?

やはり、こういったヒラヒラした服でバイクに乗るのは抵抗があるな。

やめておいて良かった。

 

待ち合わせ場所に着く。

比企谷は…いた。

 

「すまない、待たせたな」

 

「…いや、俺も今来たとこっすよ」

 

「何!?待ち合わせは11時だぞ!?遅れるとはどういう事だ!?」

 

「いや、先輩が遅れたから話合わせただけっすよ…」

 

まったく、不器用な奴だ。

しかし、付き合い初めて半年経つというのに、いつになったら翼と呼んでくれるのだ?

というより、先週、ようやく手を繋いだくらいだ。

もちろん、その先のせ、せ、接吻とかは、まだやっていない。

いい雰囲気になっても、いざ、となると推して参れず、鞘走るのを躊躇ってしまうのだ。

こういう時、女の身としては、男にリードして貰いたいものだが、相手は比企谷だ。

期待しても難しいだろう。

まぁ、そういう所も含めて好きになったのだから仕方ない。

惚れた弱みだな。

しかし、世間一般的に見て、私達の進展は遅すぎるのではないだろうか?

前に読んだ雑誌…ゼ◯シィだったか?では、私達の間柄は既に結婚を前提に付き合っており、後は式場の予約や指輪、ドレス選び、新婚旅行先を考える段階になっていると書いてあったのだが…

どうもそのような感じがまったくしない。

おのれゼ◯シィ…謀ったか!!

 

まぁ、ゼ◯シィはともかく、今日は目標として、翼と名前で呼んで貰う事と、チャンスがあれば、せ、せ、接吻をする事にしている。

やはり、少し気恥ずかしいな…

 

正午、比企谷と昼食を摂る。

比企谷との食事といえば、そう、ラーメンだ!

今日はあっさり系の塩ラーメンのお店に行く。

ラーメンは普段はこってり系が好きなのだが、その、カロリーがな…

今日は比企谷とせ、せ、接吻をするかもしれないし、場合によってはそれ以上の事も…

とにかく!少しでもカロリー控えめにしておきたかったのだ!

む、どうやら私はあっさり系ラーメンというものを舐めていたようだ…

認めよう、カロリーを気にして、妥協したなどと、無礼な態度だった、と。

気付けば、スープまで全て飲み干していた。

…また走り込みを増やす必要がありそうだな…

 

午後1時、比企谷と映画館に行く。

 

「俺はこの映画を見るので、2時間後にまたここで合流しましょう」

 

「………は?」

 

「………え?いや、俺はこの映画が見たいんで、先輩も見たい映画見てきてください」

 

………どうやら説教する必要があるようだ。

恋人とのデートを何だと思っているんだ、まったく…

比企谷に説教をしていたら、比企谷が見たい映画の開演時間を過ぎてしまったようだ。

ならば、今日は私の見たいこのラブストーリーの方に付き合って貰おう。

 

午後3時、ど、どうにもまずい状況だ。

私が見たい映画に二人で入り、暗がりを利用して手を繋ぐ事までは成功したのだが、ど、どうやらこの映画…その…濡れ場があったみたいで…その、気まずい…

先ほどから、比企谷の手を少し強めに握ってしまっている。

わ、私が誘った映画だけに、私がそういう事を期待していると思われたらどうしよう…

その…もちろん求められる事は素直に嬉しいし、私とて、そういう事に興味が無い訳ではない。

ただ、その…今日いきなりは心の準備が…

そこからの映画の内容は、まったく頭に入ってこなかった。

 

午後4時、周囲をブラつく。

どうやら、比企谷的にあの映画の内容はスルーの方向でいくつもりのようだ。

ホッとした反面、何かモヤっとする。

恋人として、まったく興味を持たれていないようで、悲しくなるのだ。

もちろん、そんな事無いとは思うのだが、相変わらず私の胸に視線は集まらないため、不安になる。

今日は翼と呼んで貰わねばならんしな。

少し聞いてみるか?

 

「ひ、比企谷?」

 

「ひゃ、ひゃい」

 

「その…私の事をどう思っている?」

 

「…大切な先輩で、彼女です」

 

「そ、そうか…ならば、私の事は…翼、と呼んでくれないか?」

 

「…翼さん、これでいいっすか?」

 

「さんも無しだ」

 

「…………翼」

 

…………………はっ!?いかんいかん。

また気絶していたようだ。

どうも比企谷がでれ?る度に気絶する癖は直さなければならないな…

 

次の目標は接吻か…

 

午後6時、いつもならここで別れる時間だ…

だが、今日の私は接吻までを目標としている。

 

ならば!我が家に招いて夕食を一緒に摂るなどどうだろうか?

…うん、我が家なら人目につく事も無い。

 

「ひ、比企谷?」

 

「ひゃい」

 

「その…今日は我が家で夕食などどうだろうか?」

 

「…………は?」

 

「そ、その…泊まりでも構わないんだが…」

 

「せ……翼」

 

む、また先輩と言おうとしたな?

まぁ、こればかりは慣れていくしかないだろう。

 

「いや、まぁ、その、俺は…」

 

「わかった、ならば提案だ。我が家に来て、一緒に夕食を食べてくれ」

 

これくらい言わないと首を縦に振らんだろう。

 

「………了解っす」

 

こうして、初めて彼氏が我が家に来る事になった。

 

***

 

午後7時、何故か私は正座している。

 

「何故怒られているかわかりますか?」

 

「………部屋が散らかっているからです」

 

そう、私としてはまったく気にならないのだが、どうやらこの部屋は俗にいう汚部屋というものらしい。

 

「はぁ…じゃあ一緒に片付けましょうか…」

 

もはや、接吻など雰囲気すら出てこないのであった…

 

***

 

「…というのがだいたいの一日です」

 

「すみません!全面カットで!!事務所的に絶対NGです!」

 

?緒川さん?

何かまずい事でもあったのだろうか?




すみません、構成が少し甘いので、書き直すかも…
やはり大阪出張で少し時間が足りない感じが…

しかし、本日中に何とかしたい気持ちでの投稿と相成りました。


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第十一話GX

十一話です。

出張中でスマホで書いてるので、誤字とかあったらすみません。


キャロルと一緒に外に出る。

 

対峙するのは…

 

「小日向…」

 

小日向未来がただ1人立っていた。

小日向は無言で構える。

 

「ハッ、お前1人で充分という事か…舐められた物だな!!シンフォギア!!!」

 

キャロルが手を翳す。

炎の激流が小日向を襲うが、小日向はそれを難なく避わす。

 

「八幡…あの子を倒したのは私。言い訳はしない。どんな罵りも受ける。だから、帰ってきて!」

 

小日向が俺に向けて言葉を投げかける。

そうか…こいつがガリィを…

しかし、元々俺に小日向を責める権利など無い。

それに、こいつは何か勘違いをしている。

俺は俺の意志でキャロルの側にいるのだ。

 

なおも小日向は続ける。

 

「八幡がいないと、響は歌えない…みんなも…私じゃダメなの、ダメだったの…だから、お願い!!」

 

なるほど、こいつ1人なので陽動かと思ったが、どうやらそうではなく、こいつ1人しか戦えないのだろう。

こちらにとっては好都合だ。

 

「キャロル」

 

「なに?パパ」

 

「あいつの気を逸らしてくれ。その隙に俺がこいつをあいつに打てば障害はクリアだ」

 

アンチLiNKERを取り出す。

 

「うん、わかったパパ」

 

名残惜しいが、キャロルの手を離す。

 

「あっ…」

 

どうやら、キャロルの方も名残惜しかったようだ。

しかし、今は小日向を排除するのが先だ。

 

「八幡!!」

 

小日向が俺に向かってくるが…

 

「お前の相手はオレだ!」

 

キャロルが行く手を阻む。

 

「邪魔しないで!抜剣!!」

 

小日向のギアが漆黒に変わる。

それだけ、本気だと言う事だろう。

キャロルを心配しつつ、背後に回り込むため、走る。

あのギアの小日向は危険だ。

一刻も早く決着を着ける必要がある。

 

「イグナイトか、ならばオレも本気を出そう。来い!ダウルダブラ!!」

 

キャロルが琴のような鎧を召喚し、身に纏うと…

みるみるうちに大人の姿に成長していた。

……バインバインはマジだったのかよ…

 

***

 

――閃光――

 

「ヘルメス・トリスメギストス!チッ、これもダメか…まったくやりずらい!」

 

キャロルと小日向の激戦は続く。

どうやら、あのギアの力は錬金術に対しても有効なようだ。

何とか、小日向の背後に回り込めたのはいいんだが、戦闘が激し過ぎて近付けない。

一瞬でも動きが止まってくれたら何とかなるんだが…

 

「臍下あたりがむず痒い!オレとパパの幸せを邪魔する禍根はここでまとめて叩いて砕く!!」

 

キャロルが琴のような糸を弾くと、旋律と共に4つの紋章が同時起動する。

四大元素の錬金術の同時起動…

凄まじいエネルギーが小日向を襲うが…

 

――漆黒――

 

小日向が黒く輝く光を放つ。

何だ…あの技は…

黒い光はみるみるうちにキャロルの術を飲み込み、キャロルに向かって襲いかかる。

キャロルが気がかりではあるが、技を打って硬直している今しかチャンスは無い。

俺は全力疾走で小日向に向かい、小日向を拘束しようとするが…

 

「八幡!?離して!」

 

小日向が暴れる。

拘束の時に抱き締めるような形になってしまい、その…暴れられると色々と当たるのだ…

しかし、最大のチャンスだ。

なんとか、アンチLiNKERを打たないと…

なおも小日向は暴れるため、ついには向かい合って抱き締める形になってしまう…

 

「あっ…」

 

小日向が顔を真っ赤にする。

ん?少し大人しくなったか?

 

「パパ!?何してるの!?」

 

キャロルが後ろで喚いてる。

どうやら無事だったようだ。

ひとまず一安心ではあるが、今は小日向を無力化するのが先だ。

俺はすかさずアンチLiNKERを取り出すが、さすがに何をされるか理解したようで、小日向の抵抗が激しくなる。

 

「八幡!お願い、やめて!!」

 

「チッ、大人しくしろよ」

 

………客観的に見たら絵面が酷いな…

どう見ても、ごうか…いやいやいや、ぼっちがそんな事する度胸無いからね?

しかし、こいつら揃いも揃って力強えな…

俺も割と空いてる時間に筋トレとかしてんのに、全然勝てないんだけど…

 

「やめ…むぐぅ!!!!?」

 

あっ…………

激しく抵抗する小日向と押さえつけようとする俺…

揉み合いになって倒れた拍子にその……唇が触れ合ってしまう。

俺…今勝っても確実に死ぬんじゃないですかね?

しかし、予想に反して小日向の抵抗はみるみる弱くなり、何故か目を閉じている。

アレ?ナニコレ?まぁ、チャンスなのは間違いないか…

俺はまったく抵抗しなくなった小日向の首筋にアンチLiNKERを打ち込んだのであった。

 

***

 

「色々と言いたい事はあるけど、パパ!まずはオレ達の勝ちだ」

 

ぶすっとしたキャロルがそう言う。

いや、あれは不可抗力だからね?

 

「むぅ、パパ、帰ったらオレにもして貰うからね?それ以上の事も!」

 

キャロルが頬を染めながらそう言う。

今は大人の姿なので、色々とヤバい。

これは、大人の階段登っちゃうお誘いなんじゃねぇの?

普段の俺なら、間違いなく、勘違いだと決め付けるだろう。

しかし、キャロルの好意に関しては疑いようも無いため、俺も…

 

「うす…」

 

とだけ答える。

ヘタレ?何とでも言え。

 

「パパはどっちの姿がいい?」

 

おそらく、顔が赤くなっているだろう俺に対して、キャロルが更に爆弾を投げてくる。

 

「い、いにゃ、キャ、キャロルにみゃかしぇる」

 

盛大に噛んだ。

ぼっちの俺にそんな免疫まったくねぇんだよ!

仕方ねぇだろ!

 

「そうか、じゃあパパはおっぱいが好きみたいだからこっちの方がいいかな」

 

………いや、それはその…まぁ、否定はしない。

俺だって男子高校生だからね?

 

「ではこの後、お楽しみの予定が出来たんでな!邪魔者には消えて貰おう!!」

 

キャロルが、ギアが解除され、気を失っている小日向に向けて四大元素の水の錬金術を放つ。

 

「馬鹿!やめろ!キャロル!」

 

気付けば、小日向に向かって走り出していた。

 

「パパ!?」

 

キャロルが慌てて叫ぶが、術はもう止まらない。

間に合え!間に合ってくれ!!

 

***

 

気が付くと、真っ赤だった。

あの後、何があったんだろう?

私、死んじゃったのかな?

だんだん、意識が覚醒する。

 

あの時、八幡にキ、キス…されて、それから、どうしたんだっけ?

完全に意識がはっきりする。

真っ赤なこれは、血だ。

でも、これは…この血は私のものじゃない。

 

「八幡!!!」

 

八幡のものだ。

八幡は私を抱き締める形で、あの子の術をその身に受けていた。

意識が無いらしく、みるみる抱き締める力が失われていく。

 

「パ…パパ…」

 

あの子が呆然と呟く。

やがて、八幡が糸の切れた人形みたいに崩れ落ちる。

嫌だ!ダメ!行かないで!

誰か…誰か助けて!

 

「パパァァァァ!!!」

 

あの子が叫ぶ。

自分の術だ、まともに受けた八幡が致命傷だと理解しているらしい。

 

「もはや、パパのいないこんな世界など要らぬ!全てまとめて消し去ってくれる!!」

 

あの子が激しい怒りと共に歌を歌う。

愛を、奇跡を呪う禍々しい歌…

でも、今の私にはどうする事もできない。

あの子の怒りのエネルギーが私に襲いかかる。

八幡…目を覚ましてよ…

いつもみたいに捻ねくれた理論であの子を救ってよ…

目の前まで来たエネルギーに最期を悟り目を閉じる。

 

……

………?

 

「遅くなってゴメン!未来!!」

 

「ひ…び…き、みんな!」

 

私の前に、響、翼さん、クリス、マリアさん、調ちゃん、切歌ちゃんが立ってあの子のエネルギーを受け止めていた。

 

「苦労をかけたな、遅れた分は防人の剣が露を払おう」

 

「悪ぃ、未来は八幡を!フィーネなら何とか出来るかもしれねぇ!いや、絶対に何とかしてくれる!!」

 

「ここは私達が死守する!」

 

「力の見せ所デスよ!!」

 

「もう二度と失わせない!!奇跡だって手繰り寄せてやるわ!!」

 

弱気になるなんて、私はどうかしていたみたい。

そうだ、諦めない!諦めてなるものか!!

 

「未来さん!こちらへ!!」

 

緒川さんが車で駆け付けてくれる。

待ってて、みんな!

八幡は絶対に助けてみせるから!!




という訳でクライマックスです。

八幡はどうなってしまうのでしょうか?
そのあたりはまた、次話で書いていきます。


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第十二話GX

十二話です。


キャロルちゃんの歌に合わせて、フォニックゲインのエネルギーは激しさを増していく。

 

「この威力、まさか…」

 

「すっとぼけが効くもんか、こいつは絶唱だ!」

 

「絶唱を負荷も無しに口にするなんて…」

 

「錬金術ってのは何でもアリデスか!?」

 

キャロルちゃんの歌に共鳴して、チフォージュ・シャトーがエネルギーを放出し始める。

 

「本来なら、この力で、パパと幸せに暮らせる世界を錬成するつもりだったが、パパのいない世界などに価値などありはしない!全て破壊し尽くしてくれる!!」

 

そんな、まさか…これは…

 

「世界の…分解…?」

 

「そうだ!パパのいない世界など何もかも、全て壊れてしまえ!!」

 

『そうはいかないんだぬぁぁ、これが!!』

 

………この声は…

 

「この声…ドクターウェルよね…?」

 

『そう!!生医学者にして!英雄!!定食屋のチャレンジメニューもかくや!という盛り過ぎ設定!!ボクこそが、ドクターウェルゥゥゥ!!』

 

………相変わらずぶっ飛んだ人だなぁ…

あまりお近づきにはなりなくないよね…

 

「切ちゃん」

 

「調、作戦成功みたいデスよ」

 

「うん、やっぱりあいつが味方につくと絶対失敗する」

 

え?調ちゃん、切歌ちゃん、どういう事?

 

「キャロルがあいつに協力を求めてたから、見逃した。ぶい!」

 

「あいつがいると成功するものも成功しないデスよ」

 

…散々な言われようだね…ウェル博士…

 

『シャトーの制御は今ボクが完全掌握している!世界が無くなったらボクが英雄になれないからねぇ!!分解も錬成もすぁせはしない!!』

 

「ウェル博士!貴様、邪魔立てするつもりか!!」

 

『むぁったく、これだから嫌がらせってのは超サイコー!ボクが英雄になる事を否定しない彼がいるから協力してたんですが、生憎、貴女には協力してやる筋合いがむぁったくぬぁい!!』

 

「おのれぇぇ!!シンフォギア装者共を始末した後は貴様の番だ!!首を洗って待っていろ!!」

 

ハチ君…あんな厄介な人にまで好かれてたんだね…

ホントに、何故か彼だけ気付いてないけど、彼は関わった人をみんな変えてしまう。

彼の事は心配だけど、今は未来と了子さんに任せるしかない!

だから、私は…私達は!

 

「みんな、キャロルちゃんを止めよう!ハチ君はきっと戻ってくる!」

 

「自分の娘が世界を壊そうとしただなんて、八幡にゃ絶対聞かせれねぇしな」

 

「あぁ、まったくだ。母親として、これ以上のおいたは見過ごせん」

 

翼さん?何さらっと母親ポジション主張してるの?

あれだけ致命傷を受けて、まだ諦めてなかったの?

そりゃ私も諦めてないけどさ?

見た目が汗臭い…

 

「防人の妄想はさておき、あの子は今、ひとりぼっちで泣いている」

 

「ぼっちになんかさせないデス!させてやらないデス!!」

 

「えぇ、やりましょう!みんな!ぼっちをぼっちにさせない事なら、私達の右に出る者はいないわ!!」

 

「そうだ…彼も、キャロルちゃんも、私達だって!みんな1人じゃないんだ!!」

 

だから、もう誰にもぼっちだなんて言わせない!

言わせてあげるもんか!!

 

「臍下あたりの疼きが収まらん!!」

 

キャロルちゃんが再度、フォニックゲインを放出する。

 

「オレのフォニックゲインは、ただの1人で70億の絶唱を凌駕する!!」

 

ッ!!それなら!!

 

「オレを止められるなどと、自惚れてくれるなよ!!」

 

キャロルちゃんが出力を上げる。

このフォニックゲインを使えれば!!

 

「みんな!!」

 

みんなと目を合わせる。

 

「イグナイトモジュール!オールセーフティ!!」

 

~Gatrandis babel ziggurat edenal~

 

~Emustolronzen fine el baral zizzl~

 

~Gatrandis babel ziggurat edenal~

 

~Emustolronzen fine el zizzl~

 

イグナイトの3段階励起と共に絶唱を口にする。

 

「S2CAヘキサゴンバージョン!」

 

「キャロルちゃんのフォニックゲインをガングニールで束ね!!」

 

「アガートラームで制御!再配置する!!」

 

泣いている子には、手を差し伸べてあげないと!

その為なら、奇跡だって何だって纏ってみせる!!

 

「うぉぉぉぉぉ!」

 

「ジェネレーター!!」

 

「エクス!ドラァイブッ!!!」

 

***

 

暗い水の底…

俺は、小日向を庇って、それから…

あぁ、とうとう死んじまったみたいだな…

キャロルには父親殺しの汚名を着せちまったな…

気にしてないといいんだが…はぁ…そうもいかねぇだろうなぁ…

 

『まぁったく☆なーにやってんだよ、このスカタン☆』

 

ガリィ!?お前…どうして?

 

『ちょっとした事情で今お前の側にいるんだよ☆ガリィちゃんに会えてうれしい?うれしい?』

 

あぁ、お互い死んじまったみたいだが、お前には聞きたい事があったんだよ。

 

『………何?ガリィちゃんのスリーサイズ?教えてやんねぇ☆』

 

ちげーよ!!お前、あの時の別れ際の意味深な微笑みは何だよ!?

あれ以来、気になって気になって仕方ねぇじゃねぇか!?

 

『あぁ、あれ?まったくお前はバカだなぁと思っただけだよ☆』

 

てめえ…そんなんであんな意味深な笑顔見せんじゃねぇよ!

こちとらぼっち何年やってると思ってんだ!?

危うく勘違いして告白して振られちゃうところだったじゃねぇか!?

振られちゃうのかよ…

 

『プクククッ、お前は相変わらずだね☆』

 

不意にガリィに抱き締められる。

 

『マスターさ…今、泣いてると思うんだ、何とかしてやってくれよ』

 

いや、そうしたいのはやまやまだが、俺はもう死んじゃってるから…

 

『死んでないよ』

 

………は?いや、今こうしてお前と話してるんだから死んでるんじゃねぇの?

 

『ちゃんと生きてるよ☆ほっとくとすぐに死にそうになる癖にしぶとい奴だよ、まったく☆』

 

ガリィが呆れ顔で言う。

ていうか、ぼっち的にそろそろ限界なんで離してくんない?

 

『やーだ☆絶対に離さない☆あぁ、"あったかい"ね…』

 

ん?お前…今あったかいって…

 

『お前が死なないようにガリィちゃんが守ってやるからさ、マスターを頼むよ』

 

………前向きに善処する。

 

『それやらないやつだよ…締まらねぇ奴だなぁ…まぁ、そういう所も…』

 

ん?何か言った?

 

『な、何でもない!いつまで寝てんだ、そろそろ起きろ!』

 

へいへい…

 

***

 

目を覚ますと、ここは…医務室?

どうやら、ガリィの言っていた俺が死んでないってのは本当だったらしいが、周りには誰もいない。

今、状況はどうなってるんだ?

 

ふと、横の机に手紙が置いてあるのが目に入る。

読めって事か?

 

---------------------

発令所を空けておけないので、状況を簡単に説明しておくわ。

今、あの子は貴方を殺してしまったと思って、自暴自棄になって世界を壊そうとしている。

響ちゃん達が戦ってるけど、きっとあの子を本当の意味で救えるのは貴方だけだと思うの。

傷は私の術と最新医療を駆使して塞いだけど、万全ではないと思う。

戦いに出るかどうか、後は貴方の判断に任せるわ。

 

少し早いけど、誕生日プレゼント。

貴方の為だけにカスタマイズした私の最高傑作よ。

好きに使いなさい。

デキる女より

---------------------

 

手紙に添えて、シンフォギアのペンダントが入っていた。

このシンフォギア…もしかして…

 

『言っただろ?守ってやるってさ☆』

 

あぁ、言ったな…言ってたな…

 

ウェル博士に貰ったLiNKERを首に打つ。

痛っ!?これ、月読とか暁とかがバンバン打ってたから、あんま痛み無いのかと思ったら結構痛いんじゃねぇか!?

まったく、締まらないにも程があるが、それが俺なのだ。

ぼっちの癖に1人では何も出来やしない。

未だに理由が無ければ動く事すらままならない。

 

だけど、娘が泣いている。

今は理由がある。

だから、力を貸してくれ!ガリィ!!

 

『当たり前だろ?それに今はぼっちでもないじゃん☆ガリィちゃんにお任せ☆』

 

~Granzizel bilfen gabriel zizzl~

 

ライトブルーの装飾が施された黒色のシンフォギアを身に纏う。

なるほど、黒がベースとはガリィらしい。

 

『心外だなぁ…まるでガリィちゃんが性格悪いみたいじゃん☆』

 

いや、間違ってねぇだろ…

 

『あ、それはそうとガリィちゃんとお前の相性最初から最高だからLiNKERいらなかったと思うよ☆』

 

…そういう事は早く言ってくんない?

そういう所だよ、性格悪いの…




という訳でガリィちゃん復活?というかシンフォギアのパーツとして復活です。

たやマさん達のシャトー潜入は杉田君の活躍により、カットとなりました…
そもそも、このお話では彼女達別に罪を犯してないので、塗り替えてナンボの黒歴史が無いのデス…
マリアさんだけは恥ずかしい系の黒歴史を大量に量産してましたが(笑)

感慨深いものがありますが、後一話です。
次話もお楽しみ頂ければ幸いです。


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最終話

本編最終話です。

今まで沢山の感想ありがとうございました。

推奨BGMはここまで読んでくれた方なら説明不要だと思います。


ハッチを空けて外に出る。

 

場所は都庁だから…あっちか…

勢い良くジャンプするが…うぉっ!?

ナニコレ?とんでもない飛距離なんだけど…

ガングニール纏ってた時でもこんな身体能力無かったよ?

 

『ガリィちゃんが力貸してんだ☆当たり前だろ?』

 

マジかよ…お前こんな高性能だったの?

うわっ、本部の甲板凹んでんじゃねぇか…

弁償しろとか言われたらどうしよう…

 

『いや、まぁ、あの行き遅れに魔改造された結果というか何というか…何か内蔵でデュランダルとかいう完全聖遺物を組み込んでて、エクスドライブまで達すると理論上は人類最強とも互角で戦える性能らしいよ?』

 

……………何やってんだよ、あのアラサー…

物には限度があるだろ…

あの人外と互角とか、頭おかしいレベルじゃねぇか…

いや、こんだけの性能でようやく理論上互角?の司令がまずおかしいんだけどね?

しかし、戦う覚悟(アームドギア)はちゃんと俺に出せるのかね…

まぁ、やってみるしかねぇか…

 

待ってろよ、キャロル。

 

『お熱いねぇ☆ガリィちゃん火傷しちゃいそう…』

 

バッカお前、これは娘を想う純粋な気持ちだっつうの!

 

『どうだか?』

 

何で急に不機嫌になってんだよ…

俺何か悪い事……いっぱいありすぎて、どれか言われてもわかんねぇわ…

 

***

 

エクスドライブを纏った私達はキャロルちゃんと対峙する。

 

「奇跡を纏ったくらいで調子に乗るな!」

 

キャロルちゃん…?

 

「オレの実の父親は、資格なき奇跡の代行者として、焚刑の煤とされた…」

 

泣いて…?

 

「奇跡とは蔓延る病魔にも似た害悪だ!故にオレは殺すと誓った!だからオレは、奇跡を纏う者にだけは負けられんのだ!!」

 

キャロルちゃんがアルカノイズを放つ。

なんて数…

 

「何もかも、壊れてしまえばっ!!」

 

キャロルちゃんの号令と共にアルカノイズ達が破壊を始める。

 

「泣いている子には、手を差し伸べなきゃね」

 

そうだよね?ハチ君…

 

「翼さん!」

 

「わかっている、立花」

 

「スクリューボールに付き合うのは、初めてじゃねぇからな」

 

「その為にも、散開しつつ、アルカノイズを各個に打ち破る!」

 

泣いているあの子を助ける。

その為に私達は、この戦いの空に歌を歌う!!

 

***

 

何か見た事無いノイズが出てきたから、とりあえずぶん殴ってるけど、これ、どういう状況?

またあの博士が暴走でもしたの?

 

『これはアルカノイズだよ☆そういや、見るの初めてか?マスターがいよいよ後先考えなくなってるって事だよ』

 

マジか…て事は急いでキャロルの所に行かねぇと…

でも、こいつらほっとくのも不味いんだが…

 

――流星――

 

これは…

 

「八幡!!ここは私に任せて!!」

 

小日向…恩に着る。

 

「ありがとな!愛してるぜ、小日向」

 

「んな!?」

 

あれ?何か思いついた事そのまま言っちゃった気がするな…何言ったっけ?ガリィ覚えてる?

 

『知らない!!』

 

?何怒ってんだよ?

 

『………ばか』

 

うーん、何かまずい事言ったみたいだな…

相手は小日向だし、俺最悪死ぬんじゃねぇかな…

 

っと、アレ何?ル◯バ?

何かでっかいル◯バがアルカノイズを掃除してんだけど…

………よし、俺は何も見なかった。

 

そろそろキャロルの所まで着いてもいい頃合いだが…いた。

 

『マスターいたみたいね、ふん!』

 

そろそろ機嫌治してくんない?

場合によっては戦うかもしれねぇんだし…

 

『お前はガリィちゃんより、あのどう見てもヤンデレのバケモノの方が好きなんだろ?』

 

…は?いやいや、何でそこで小日向が出てくんだよ?

いや、その表現で誰かわかるってのもすげえな…

 

『悲しいけど、コンビ解散だね…音楽性の違い?』

 

いやいや、ガリィ様が一番です。

頼りにしてます。

だからこんな土壇場で見捨てないでください。

 

『…んー、仕方ないなぁ☆…惚れた弱みか…』

 

ん?今何て?

 

『何でもない!ほら、ちゃっちゃとマスター助けるぞ!』

 

…何かお前、シンフォギアになってから2割増しくらいで感情豊かになってない?

 

なんて馬鹿なやり取りをしている内に、キャロルが糸を使い碧の獅子のような物を生み出し、中に取り込まれていく。

何アレ?グレ◯ガ?

 

『ガリィちゃんも初めて見たけど、あれがダウルダブラの奥の手だろうね…マスター、あの様子じゃ相当な思い出を燃やしてるんじゃないかな?』

 

クソッ、やっぱ戦いは避けられないのかよ…

てか、思い出を燃やしてるって!?

 

『これも知らなかったのかよ…マスターは思い出を燃やす事で力を錬成してんだよ』

 

マジか…じゃあ、このままじゃキャロルは…

 

『良くて廃人だろうね…』

 

あんな所から一刻も早く連れ出さねぇと…

 

そうこうしている間にあいつらがアルカノイズの殲滅を終えて集まってくる。

 

「ハチ君!」

 

まぁ、先ほどまで敵だったのだ。

言いたい事も沢山あるだろう。

しかし、今は時間が惜しい。

 

「話は後だ、俺はキャロルを助けたい!だから、みんな…力を…貸してくれ!」

 

都合のいい話だ。

今まで散々好き勝手して、困ったら助けてくれ?

まったくもって救いようが無い。

しかし、恥を晒してそれでも尚、助けたいんだ。

こんな安い頭で良ければいくらでも下げる。

 

「やっと頼ってくれた」

 

………は?

 

「比企谷、私達はずっと待っていたんだぞ?」

 

「まったく、付ける薬がねぇな…あたし達が八幡を手伝うなんて、当たり前だろ?」

 

「八幡が大丈夫って言う時は、ずっと大丈夫じゃ無い時だった」

 

「だから、いい傾向って事デスよ!」

 

「八幡が頼ってくれた!どうしましょう!?小日向未来、私どうしたらいいかしら!?これはもう結婚するしかないんじゃないかしら!?セレナ!私達に祝福を!!」

 

「マリアさんは…もう…うろたえるなっ!!」

 

「はっ、私は一体!?」

 

最年長(笑)ほんと何やってんの?

 

「八幡?後でさっきの話、詳しく聞かせてね?」

 

っべー、小日向の奴、やっぱり覚えてやがる…

 

「うす…」

 

「では、防人の剣が露を払おう!共に駆けるぞ!マリア!」

 

風鳴先輩がポンコ…マリアさんと向かい合わせで突撃していく。

その…何だ?胸囲の格差社会が…

風鳴先輩…強く生きてください。

 

しかし、キャロルのグレ◯ガは強固でビクともせず、首を振り回しただけで吹き飛ばされてしまう。

 

「くっ、あの鉄壁は金城ッ!散発を繰り返すばかりでは突破できない!!」

 

「ならば!アームドギアにエクスドライブの全エネルギーを集中し、鎧通すまで!!」

 

え?ちょっと待って?

だいぶ慣れたと思ってたけど、鎧通すって何?

 

「身を捨てて拾う瞬間最大火力…」

 

「ついでにそれも同時収束デス!!」

 

え?誰もつっこまねぇの?

おかしいの俺だけ?

 

「ゴタクは後だ!マシマシが来るぞ!!」

 

拡散ビームっぽいのが飛んで来る。

ここは、アームドギアが出るかわからん俺の出番か…ガリィ、頼む!

 

『ほーい☆ガリィちゃんにお任せ☆』

 

水の盾でグレ◯ガの攻撃を受け止める。

 

「俺が受け止めてる間にやってくれ」

 

装者達がアームドギアにエネルギーを集中させる。

 

「はぁ!」

 

「はぁ!」

 

「やぁ!」

 

「はぁ!」

 

「はぁ!」

 

「やぁ!」

 

「デェス!」

 

暁…お前…まぁ、ただの気合いだからいいんだけどさ…

しかし、装者達の一撃でようやくグレ◯ガにダメージが通ったようだ。

ようやくキャロルと対面できるか…

 

「アームドギアが一振り足りなかったようだな…ってパパ!?」

 

「よう、キャロル、帰ろうぜ?」

 

「そうか、これはパパを手に掛けたオレの未練が見せている幻覚!」

 

キャロルさん?おーい?

 

「奇跡など認めん!オレは奇跡の殺戮者に!!」

 

やっぱあの中から出さんと対話は無理か…

グレ◯ガが咆哮と共にビームを打ってくる。

 

「比企谷ぁ!!」

 

「ふん、オレの弱さなど、この場で消し去ってくれる!!えッ!?」

 

「まったく…これが反抗期かよ?」

 

グレ◯ガのビームにはビビったが、何とか出たみたいだ、俺の戦う覚悟(アームドギア)

 

それは…青く輝く盾…

 

『全てを守りたい、お前らしい覚悟だよ』

 

そう、俺には誰かを傷つける力など要らない。

痛みなら知っている。

だから…こんな物、誰にも味わわせたくない。

ただ、目に映る全てのものを守りたい。

 

「俺は全てのものを守りたい。奇跡なんかに頼るかよ、俺は俺自身の手で掴み取る!それが…俺の『本物』だ」

 

「しつこい幻影だ!鈍は潰す!!にゃ!?」

 

…にゃ?えらくかわいいな…

動画撮っときゃ良かった…

 

『ばっちり保存してるから大丈夫☆』

 

でかした!

…俺は明さんかよ…

万能兵器丸太ならあのグレ◯ガ何とか出来るかね?

 

「こんな時に拒絶反応!?違う、これはオレを止めようとするパパの思い出!?」

 

おや?キャロルのようすが…

 

「認めるか!認めるものか!オレを否定する思い出など要らぬ!全部燃やして力と変われ!!」

 

バカっ!?お前、実の親父さんの記憶まで!?

ダメだ!早く何とかしねぇと!!

ガリィ、頼む!

 

『ガリィちゃん使いが荒いなぁ、でもマスターの為だ、デュランダル、フル稼働でいくよ!!』

 

盾を構えたまま、グレ◯ガのビームを反らしつつ、キャロルに向かって突進する。

 

「うぉぉぉぉぉっ!!」

 

柄にも無く叫ぶ。

しかし、あちらもフルパワーだ。

このままじゃ、押し負ける…

 

「比企谷に力を!アメノハバキリ!」

 

「イチイバル!」

 

「シュルシャガナ!」

 

「イガリマ!」

 

「アガートラーム!」

 

「シェンショウジン!」

 

「ガングニール!!」

 

あいつら…助かる!

いくぞ!ガリィ!!

 

『オッケー☆』

 

『「ガヴリィィィィィル!!!」』

 

――Groulious Break――

 

俺達の突進は、碧の獅子を貫き、キャロルを無事この手に抱き寄せたのだった。

それにしても、このギア高性能過ぎねぇ?

エクスドライブ無しでこれかよ…

 

***

 

「パパッ!?え!?もしかして本物!?」

 

抱き寄せたキャロルがひどく慌てる。

いつの間にか、元のロリ状態に戻っていた。

 

「何だと思ってたんだよ…」

 

「だって…パパはあの時…」

 

「お前を親殺しにはさせられねぇからな」

 

「パパ…」

 

「疲れただろ…後はやっとくから、少し寝とけ」

 

「うん、パパ?」

 

「何だ?」

 

「夢じゃないんだよね?」

 

「当たり前だ」

 

「良かった…おやすみ、パパ…」

 

「あぁ、おやすみ、キャロル」

 

寝息を立て始めたキャロルを横に寝かせる。

少し寝づらいかも知れんが、我慢してくれ。

それじゃ、後始末の時間だな…

 

間もなく、あのグレ◯ガが爆発しそうなのだ。

俺の盾で衝撃を殺しつつ押し上げて、宇宙空間まで飛ばせれば…

まぁ、この高性能過ぎるギアなら死ぬ事はねぇだろ…

 

「えい!」

 

――漆黒――

 

………は?

小日向の放つ黒い光がグレ◯ガを飲み込み、やがて何も無かったかのようにあたりは静寂に包まれたのであった…

やっぱ、あいつやべー奴だわ…

 

人って理解を超える事が起きると立ち尽くすしか出来ねぇんだな…

久しぶりだが、改めてそう思ったのだった…

 

***

 

久しぶりの登校。

色々あったが、ようやくリディアン音楽院に復学できた。

かなり休んでいた為、出席日数が不安だったが、S.O.N.G.職員で成績も授業態度も悪くないという事もあり、休学扱いにしてくれていたようだ。

司令には拳骨の上、定期的にギア装着して、司令の憂さ晴らしに付き合う事で何とか許して貰えた。

俺、死ぬんじゃないですかね?

 

『ちょっと…定期的にあの人外相手とか勘弁して欲しいんだけど…』

 

言うな、ガリィ…俺も同じ気持ちだ…

 

『同じ気持ち…えへへ…』

 

ん?どうした?

 

『な、なんでもない!!』

 

?何怒ってんだ?

 

そういや、キャロルはあの後、監視の名目で比企谷家で引き取る事になった。

やはり、思い出はかなり失っており、俺を父親と認識している以外は、ほぼただの幼児と変わらん状態になっている。

たまに獲物を見る肉食獣の目で見られるんだが、何なんだろうね?

 

『相変わらずニブチンだなぁ…』

 

いや、何でそこで罵倒されんの?

まぁ、俺が知らんうちに怒られるのはデフォだからいいんだけどさ?

 

話が逸れたが、急に叔母になってしまった小町だったが、心配は杞憂だったようで毎日キャロルを猫可愛がりしている。

アラサーは相変わらず、カマクラ以外の事に興味無いみたいだ。

エルフナインという社畜精神旺盛な部下と何故か今回の功績で解放されてしまった天災博士という右腕が出来た為、ますます帰宅が早くなってカマクラの世話をせっせとしている。

ほんと、ブレねぇよな…

 

しかし、後悔などは全く無いが、未婚で未経験でシングルファーザーになってしまった…

専業主夫の道は夢のまた夢という奴だ。

そもそも、日々小町の英才教育を受けているキャロルが認めてくれそうもないのである…

 

はぁ、愛する娘の為に登るしかないと言うのか…この社畜坂を…

 

「あ、ハチ君!おはよう!」

 

「お、おはよう、八幡」

 

立花達が声を掛けてくる。

そういや、小日向とはあの後、怒られるでもなく、何故かギクシャクしてしまっている。

俺、よっぽど酷い事言ったみたいだな…

 

「そういえばさ?ハチ君は今回がっつり歌ってたけどさ?どういう心境の変化?」

 

お前…普通そういう事本人に聞いちゃう?

まぁ、そう問われたら、こう答えるだけだ。

 

()()()()()()()()()()()()

 

「え?それって…?」

 

「八幡…?」

 

「もう行くぞ、遅刻する」

 

「あ、待ってよ!?ハチ君!」

 

やはり、ぼっちが人前で歌などハードルが高すぎる。

 




これにて、本編終了です!

グロブレの歌詞って八幡にも当てはまるよね?ってところから生まれたお話でした。
彼を主人公らしく、締めたかったのもあります(笑)

AXZですが、作者がGX以上の物を書くのが難しいので、本編は終了とさせて頂きます。

この後、幕間を書いて、各ヒロインルートを書く予定です。
番外はちょこちょこ書きます(笑)


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幕間 絶唱しないシンフォギアGX1

恒例の絶唱しないです。


*** 自動人形(オートスコアラー)達の休憩 ***

 

ここはチフォージュ・シャトー…

かつて、悪辣と背徳の限りを尽くした青髭ことジル・ド・レの居城の名を冠する錬金術師キャロルの根城である。

ここでは、主であるキャロルに忠誠を尽くす自動人形(オートスコアラー)達が日夜働いているのだ。

今日は丁度、休憩中の彼女達の様子を見てみよう。

 

「あ゛ぁ゛~しんど!マスターってば、ガリィちゃんをこき使い過ぎじゃない!?」

 

「文句言わないの。だって貴女、汎用性高いじゃない」

 

「器用貧乏とも言うゾ」

 

「地味な仕事は私には似合わない」

 

「うるせえぞ、てめえら!まったく、なんでガリィちゃんがあんな目の腐った男の世話しなきゃなんねえんだよ」

 

「私の服を勝手に着て、いつの間にか派手に全裸になっていた変態か…あいつは何なんだ?」

 

「なんか、マスターがやけに気に掛けていたわね…変態なのに」

 

「ただの変態にしか見えないゾ」

 

「てめえら変態変態うるせえぞ!だいたいあいつはなぁ、目は腐ってるし、言う事はだいたい斜め下だし、猫背だし、言いたい事は山程あるけど…」

 

~30分後~

 

「…とまぁ、こんな感じでいいとこ…じゃなくて悪くないところもあるんだよ!べっつにガリィちゃんは全然好きじゃないけど!?」

 

「派手に恋してるな…」

 

「完全にホの字ね…」

 

「これでバレてないつもりとか、信じられないゾ…」

 

「おい!てめえら、聞いてんのか!?ほんっと、あいつといると苦労するぞ!だから、好奇心で近付くのはやめとけよ!」

 

*** 比企谷さん家のキャロルちゃん ***

 

私は、比企谷キャロル。

訳あって、比企谷家にお世話になっている。

八幡パパと父娘なんだけど、血の繋がりは無い。

なので、八幡パパとほうてきに親子になるまでが、勝負の鍵だと小町叔母さんは言っていた。

ほうてきに親子ってなんだろう?

難しい言葉はわかんないや…

 

後、私には比企谷家に来るまでの記憶がほとんど無い。

八幡パパがパパだって事と、パパと何か大事な約束をしていた事くらいしか覚えてなかったのだ。

でも、同居している年増を見ると妙に腹が立ったり、パパと一緒に寝るとすごくドキドキする。

たぶん、パパや年増は記憶が無くなる前の私を知っているんだと思う。

でも、話してくれないって事は、今はまだ知らなくていいって事だよね?

いつか話してくれる日が来るのかな?

 

そういえば、元々自分の事は、オレって言ってたんだけど、小町叔母さんに無理矢理矯正させられた。

こういう時の小町叔母さん本当に怖いんだよなぁ…

 

そんな訳で、比企谷家で暮らすようになってから、いろんな人にお世話になっている。

一番お世話になっているのはパパだけど、たまに来る弦十郎おじさんは、いつも映画のDVDとお菓子をおみやげに持ってきてくれるし、よく来る調と切歌は友達だ。

ただ、エルフナインだけは本当に私そっくりでびっくりした。

なんでも、私とは姉弟みたいなものらしい。

博士?誰それ?そんな変な人は知り合いじゃないし、お世話にもなってない。

 

比企谷家で生活するようになって、しばらくしたある日、小町叔母さんから買い忘れた卵と牛乳を買ってきて欲しいとおつかいを頼まれたので、近所のスーパーまで買い物に出ている。

500円までならお菓子も買っていいって言われたから、喜んで引き受けた。

パパはずっと心配してたけど、小町叔母さんには頭が上がらないみたいで、渋々納得したみたい。

パパは心配性だなぁ…私だっておつかいくらい出来るのに。

でも、知らない人とかおまわりさんに声を掛けられたら、「モクヒシマス、ベンゴシヲヨンデクダサイ」って言うといいって教えてもらった。

やっぱりパパは頼りになるね!

 

「お、キャロルじゃねえか?おつかいか?」

 

出たな!?ハレンチおっぱい!!

 

こいつは、パパをおっぱいでゆうわくする危険人物だ。

初めて会った時から妙に気に入らない。

きっと私をダシにして、パパに言い寄るつもりに違いない。

ここは無視だ、無視。

 

「あ、おい!無視すんなよ!知り合いに会ったら、挨拶しろって小町に言われなかったか?」

 

ぐ…こいつ、痛いところを…

仕方ない、挨拶くらいはしてやろう。

 

「こんにちは、さようなら」

 

「雑すぎんだろ…」

 

こいつと会ってしまうなんて、最悪だ。

こいつは何だかんだ理由を付けて、パパに会おうとする。

きっとえっちな事をするつもりに違いない。

ん?何か思い出せそうな…

 

「なぁ、待てよ。そ、そうだ!お菓子買ってやろうか?」

 

「そんな事言って私をゆうかいするつもりでしょ!おまわりさん!こいつです!」

 

「ちがっ…ってマジで来たじゃねぇか!?クソッ、どうすりゃなついてくれんだよ…」

 

何かボヤキながら、悪は去った。

パパとえっちな事しようなんて私が許さないんだから!

だって、私はひとつ思い出したのだ。

パパとの大事な約束。

パパは私とえっちな事をする約束をしてたのだ!

 

………え?パパってろりこんだったの?

でも、私と一緒に寝ててもパパは何もしてこないけど…

大人になったらって事なのかな?

でも、パパがろりこんなんだったら今の方がいいんじゃないのかな?

うーん、わかんないや。

今度パパに直接聞いてみよう。

 

「あら?キャロルじゃない?元気してたかしら?」

 

ん?このピンクの髪の人誰?知らない人だ。

パパの知り合いかな?

ていうか、あのハレンチおっぱいに近いおっぱいだ。

でも、何だろう?おっぱい大きいのに、この人からは安全なオーラみたいなのを感じる。

でも、私は知らない人だしなぁ…

知らない人に声を掛けられたら…えーっと…確か…

 

「モクヒシマス、ベンゴシヲヨンデクダサイ」

 

「何故そこで弁護士っ!?」

 

*** 防人、倫敦に立つ ***

 

私、風鳴翼は今、絶望的な現実と戦っている…

装者としての戦友、アーティストとしての盟友、そして同じ男を好きな恋敵でもあるマリアと共に倫敦の地に来ているのだが…

 

ラーメンが…食べれない…

 

思えば、比企谷がいないので、もはや好物にまで昇華したラーメンが食べれないのだ…

何故だ!?こんなにラーメン屋があるのに!?

何故、私はラーメンが食べれないのだ!?

 

倫敦は今、ラーメンブームらしく、一◯堂などの日本でも有名なラーメン屋が多数出店している。

もはや、メシマズの国などというレッテルは時代遅れと言えよう。

だからとて、カロリーにうるさそうなマリアは誘えない。

緒川さんなど論外だ。

確実に説教コース間違い無しだろう。

 

だいたいなんなのだ?

このふぃっしゅあんどちっぷすだの、じぇりーどいーるだのといった料理は?

食べる人を馬鹿にしているとしか思えないんだが…

 

「翼さん、今日の夕食ですが…」

 

緒川さんに声を掛けられる。

夕食…か、今日は何ですか?

じぇりーどいーる以外ならもう何でも…

 

「そろそろ故郷の料理が恋しいでしょうし、日本食にしましょう」

 

何!?もしかして…

ラーメンですか!?

ラーメンでしょう!?

ラーメンですよね!?

 

「よければ、マリアさんも誘いましょう。彼女も日本食が好きみたいですし」

 

そうなのか?

ならば、背に腹は代えられん。

今度、緒川さんに内緒でマリアを誘ってラーメンを食べ…いかんいかん、比企谷と食べに行くことが大事なのだ。

戦いしか知らぬ女が愛しい男と持てた唯一の接点だ。

自らの手で台無しにしてどうする?

くっ、比企谷が同行してくれてさえいれば…

しかし、比企谷には学業もあるし、妹御を想う気持ちもわかる。

私の都合だけを押し付ける訳にもいかんからな。

しかし、出された料理を食べないのも失礼だからな。

仕方なく、そう仕方なく!今日はラーメンを食べようではないか。

 

「では、マリアには私から声を掛けておきます」

 

「はい、楽しみにしておいてください」

 

では、早速マリアの元へ向かうか。

 

「あ゛ぁ゛~、イギリス料理も゛う゛無理…何でウナギをゼリーにしようなんて思ったのよ…蒲焼きが一番美味しいに決まってるじゃない…って翼!?どうしたのよ!?」

 

どうやら、マリアも日頃の料理には不満があるようだ。

まぁ、ろーすとびーふとかすこっちえっぐなど美味しい料理もあるらしいのだが、私達アーティストの食事には、基本的に肉料理が出てこないのだから当然か…

 

「マリア。今日は緒川さんの好意でな、日本食を食べに行かないか?」

 

まぁ、当然ラーメンだと思うがな?

なんと言っても、日本の国民食と言っても過言ではない料理だからな!

 

「日本食!?フッ、当然行くに決まっているじゃない!これを糧に私のステージは更に輝きを増すわ!」

 

そうか、マリアもラーメンが食べたかったみたいだな。

何、食べた分は運動すれば良いのだ。

 

くっ、落ち着くのだ、風鳴翼!

しかし、久しぶりのラーメンを前にして、鞘走らずにいられようか!?

楽しみだ…王道の一◯堂か、昇◯か、金◯屋か…いや一◯張というのも…

 

「翼さん、マリアさんお待たせしました。では、行きましょう」

 

「えぇ、楽しみだわ」

 

あぁ、そうだろうそうだろう。

今から久しぶりのラーメンなのだ。

最早ステージに立つのと同様の高揚感だ。

 

「ここです」

 

―The Ar◯ki―

 

…え?

 

「ここは何と、銀座でミシュラン三つ星を取ったお寿司屋さんのロンドン店なんですよ」

 

「ヤバい!テンション上がってきたわ!!あれ?翼、どうしたの?」

 

「…いや、なんでもない。なんでもないんだ…」

 

やはり、もう最終手段、自作するしかないのか…

納得のいくものが出来たら、いつか比企谷に振る舞ってやろう。

そう心に誓ったのであった。




という訳で絶唱しないひとつめです。

ジェリードイールはゼリーに魚の生臭さを凝縮させた狂気の料理です…

食べてみたい方は自己責任で…
好奇心という方はやめておく事をオススメします。
少なくとも、私は二度と食べたいとは思いません。


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番外 正妻戦争・参

お待たせしました。

出張やら検査入院やらなんやらでバタバタしてました。


文化祭当日。

 

何とかこの日までたどり着いた。

あの後も結局相模はサボり続けたが、生徒会とか何故か現れた葉山の手伝いや、俺の裏技で何とか乗り切った。

新しく参加したちみっ子、アヴェンジャーは見た目に拠らず、かなり優秀だった為、アーチャー、ライダー、キャスターと4人でほぼ完璧なサポートをしてくれた。

他の連中?当然、謹慎だ。

バーサーカーには体を動かす仕事は手伝ってもらったが、セイバー、ランサー、アサシンは何やるかわかんねぇし、また雪ノ下にネチネチいびられるのはたまらんからな…

 

『マスター、この剣に汚名を灌ぐ機会を…』

 

『納得いかないのデス!』

 

『あれは、たまたまだって言ったじゃない!くっ、前日のご飯が唐揚げだったらこんな事には…』

 

『ははは…書類仕事は苦手だけど、体動かすのは得意だから…』

 

いや、バーサーカーの言うとおり、人には得手不得手があるからね?

変な見栄張らなくていいよ?

後、ランサーさんは小町の飯に何か文句あんの?

というか食べ物で仕事の出来が、そんな劇的に変わると思えんのだけど…

 

『ハッ、こりゃあたしの勝ちだろ?マスター、さっさとあたしを正妻に…』

 

『功績なら私も一緒。それに私は料理もできる。だから私が正妻』

 

『私と響以外なら誰を選んでも文句言わないよ?』

 

『お前ら、ほぼ全部オレにやらせといて、よくそんな図々しい事が言えるな…まぁ、マスターがどうしてもと言うのならオレも吝かではない』

 

いや、確かに助かったけど、それで正妻選ぶってのは違うだろ…

てか、アヴェンジャーはどうしたの?

初対面の時と全然態度が違うんだけど…

 

そんなやり取りをしているうちに、壇上で相模が盛大な噛み噛みの挨拶をしていた。

まぁ、ぼっち的には気持ちはわかる…あんな大勢の人の前で何か喋るとか、噛めと言っているようなもんだ。

しかし、今回の挨拶自体雪ノ下の考えたものの上、ずっとサボりっぱなしで、練習すらしていないのだ。

これは当然の結果と言えるだろう。

己の責任すら果たせないのなら、何故立候補などしたのか?という話だ。

自業自得過ぎて同情などできる筈もない。

 

***

 

昼過ぎ、俺は何故かサーヴァント達から執拗な詰問を受けている。

由比ヶ浜からハニトーの差し入れを貰った後、一緒にハニトーを食べに行く約束をしたのがお気に召さなかったようだ。

 

『マスター、やはり胸か?胸なのか!?くっ、この身をこれ程呪った事は無い…なぁ、ライダー?』

 

『だから、私を巻き込まないで…さすがに胸だけじゃないと信じてる。それに、マスターに大きくしてもらえばいいだけ』

 

『くっ、オレが大人の姿で現界していればこんな屈辱は…』

 

『なぁ、胸ならあたしだって負けてねぇと思うのに何でだよ?』

 

主に残念な方々からは俺が胸で女性を選んでいると思われ、横綱からは何故自分じゃないんだ、といった感じだ。

いや、部活仲間の社交辞令に付き合っただけで、何でこんな言われないといけないの?

胸に関しては俺だって男子高校生なんだから、それなりに興味くらいあるよ?

あくまで興味あるだけで、それメインで好きになる訳じゃないからね?きっと、たぶん…

後、ライダーはちょっとませ過ぎじゃね?

それ、都市伝説って噂だぞ?

 

『そう言えばマスター?さいちゃんって男の子だったんだね…マスターってもしかしてそっち系の人?』

 

『八幡!私、八幡を応援するよ!!』

 

『でも、女の子よりかわいいとか反則デスよ…』

 

バーサーカーさん?

戸塚は戸塚だよ?

性別など戸塚の前では意味の無い言葉だから今後控えてくれる?

後、キャスターは何でそんな力強いの?

でも、今日、俺は君を初めていい奴だと思ったわ。

俺の戸塚愛を理解できる奴が、海老名さんとキャスター(ガチユリ)だけってのが、悲しくなってくるけど…

 

***

 

宴も(たけなわ)、間も無く文化祭も終わりなのだが、トラブル発生である。

相模が行方不明なのだ。

何なの?あいつ…

いちいちトラブル起こさないと気が済まないの?

お前はリ◯さんかよ?ToLOVEっちゃうの?

違うか?違うな…

 

まぁ、ぶっちゃけあいつ自身はいなくても何の問題も無いのだが、諸々の賞の結果をあいつが持っているので、探さない訳にもいかない。

何とか、場を繋ぐ必要があるのだが…

 

「私達に任せて貰おうか!」

 

「フッ、翼と立つステージにしては少し小さいけど、存外、悪くないわね」

 

…え?何勝手に実体化してんの?

 

「うそ!?あれ、TSUBASAとMARIAじゃない!?」

 

…え?何で由比ヶ浜が知ってんの?

面識ある訳無いよね?

 

「え!?ヒッキー知らないの!?動画サイトで超人気の二人だよ!?歌とか超上手いんだよ!?」

 

二人を見る。

おい!目を逸らすな!

 

こんな大掛かりなやつ、こいつら二人だけで出来る訳ねぇし、たぶん小町もグルだな?

俺が見る訳ねぇと思って好き放題やりやがって…

はぁ…この件に誰が関わってて、どこまでやってんのか後で尋問が必要だな…

しかし、今このタイミングに関してだけは助かるのも事実だ。

 

「マス…八幡に私の勇姿を見て貰えないのは、残念だが、この場は私に任せてくれ!」

 

「マ…八幡、後でご褒美期待しているわ?」

 

バッ、お前ら!?

 

「え!?ヒッキー知り合いなの!?っていうか凄い親密な間柄っぽいんだけど!?」

 

「比企谷君?これはどういう事かしら?」

 

「じゃあ、俺は相模探してくるわ!」

 

「ちょ!?ヒッキー待つし!」

 

「比企谷君!待ちなさい!」

 

あいつら、雪ノ下と由比ヶ浜の前でなんつう事言うんだよ…

しかし、この場は逃げれたが、手ブラジーンズ先輩みたいに無かった事に出来る能力など持っていないので、後々奴らが説明を求めて来る事は確実だろう。

あいつら、何でそんなにぼっちの交友関係に敏感なの?

ぼっちの癖に生意気だ、とかスネちゃま的な事言うつもりなの?

はぁ…何て説明するかね…

 

***

 

川なんとかさんから、相模が屋上に向かった事を聞き出し、屋上に向かう。

 

『マスターは天然タラシデス!』

 

『これは赦されない。やっぱり胸が好きなのかな…』

 

しかし、川なんとかさんと話してから、このようにこいつらはやたらと機嫌が悪いし、川なんとかさんは顔真っ赤にしてたし、何なの?

俺、そんな川なんとかさんが怒るような事言ったっけ?

でも、それならそれでこいつらの機嫌が悪くなるのも不明だ。

何故かキャスターだけは見た事無いくらいニッコニコだけど…

君、もしかして人の不幸を見て喜ぶタイプ?

性格悪すぎない?

ブーメラン?知ってるっつうの…

 

そんなこんなで屋上に着く。

相模は…居た。

 

「お前、何やってんだよ…みんな探してんぞ?」

 

「探してるのはウチじゃなくて、賞の結果でしょ!?ホラ、さっさと持って行けば!?」

 

うわっ、めんどくさっ…

まぁしかし、確かにこいつではなく、賞の結果があれば何の問題も無い。

さっさと持って行くか…

アレ?バーサーカーさん?

何で実体化して…

 

「甘えないで!」

 

バーサーカーが相模の頬を平手打ちする。

相模の頭が吹っ飛んでないので、手加減はしているようだ。

 

「い…いきなり何すんのよ!?ていうか、あんた誰よ!?」

 

「私は立花響!16歳!趣味とかは…また今度!」

 

「い…一体何なのよ!?もうウチの事はほっといてよ!」

 

「生きるのを諦めないで!!今日の失敗は、南ちゃんが普段がんばってなかったから、起きた事!でも…きっとやり直せるし、がんばれる!」

 

…もう理解が追い付かんが、どうやらバーサーカーにも思うところがあったらしい…

相模は泣き崩れてしまったが、今この状況で俺に出来る事などまったくと言っていい程無いので、とりあえず賞の結果回収して、雪ノ下達のところに戻るか…

やべっ、言い訳考えてねぇわ…

 

その後、結局相模が戻ってきて、締めの挨拶をしたのだが、さっきまでのウジウジめんどくさいのが嘘のような清々しい表情で噛みながら挨拶していた。

あの後、バーサーカー置いてっちゃったけど、何があったらこんな劇的に変わんの?

なんということでしょう!

え?バーサーカーって匠だったの?

 

とりあえず、セイバーとランサーに関しては、小町の友人という事にしておいた。

あいつら…絶対に全部吐かせるからな…

 

***

 

後日、学校にて、急に相模に声を掛けられる。

…え?ぼっちに何の用?

 

「あのさ…比企谷…」

 

え?何なの?何でそんな頬染めて、潤んだ瞳してんの?

何、また罰ゲーム?

高校生にもなって恥ずかしくないの?

 

「響様と知り合いなんだよね!?響様を紹介してくれない!?」

 

………は?

待て、落ち着け俺…

もしやこいつ…あの時のバーサーカーの説教で、そっち方面に目覚めちゃったの?

ていうか、響様って…

 

「ウチ、あんな素敵な(ひと)に会ったの初めて…あぁ、響様…もう一度お会いしたい…」

 

…完全に恋する乙女の顔をしてらっしゃる…

 

『響?どういう事かな?』

 

『うぇぇ!?普通にお話しただけだけど…私にも訳がわからないよ…』

 

OHANASHIね…

どうやら、相模には刺激が強すぎたようだ…

 

「いや、俺も連絡先は知らんから…」

 

「そう…もし次に会う事あったら、ウチに絶対に教えてね!」

 

「お、おぅ…」

 

なんということでしょう!

今までは、葉山の取り巻きの一人に過ぎなかった相模南が、匠の手によってガチユリの仲間入りを果たしたのです。

 

結論を言おう。

 

やはり、バーサーカーは匠だったらしい…




正妻戦争を久しぶりに書きました。

文化祭のところ読んだのだいぶ前なので、大まかなストーリー以外、ほとんど忘れてますね…
勝手に実体化したりと、そろそろフリーダムな面子が増えていってます。
しかし、おかげで八幡の悪評が立たなかったり、悪い事も無い感じです。
ゆきのんとガハマさんにはかなり怪しまれていますが(笑)

次はたぶん絶唱しない2を書くと思います。
新人の受け入れとかあるので、少し投稿遅れるかもですが、気長にお待ち頂ければと思います。


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幕間 絶唱しないシンフォギアGX2

予告通り、絶唱しない2です。


*** 響と393GX ***

 

最近、ハチ君に露骨に避けられている気がする。

いつもお昼ご飯食べてる所にもいないし、クリスちゃんに聞いても話逸らされるし…

告白の返事もまだ聞けてないのに、このまま何にも無しで終わっちゃうのかなぁ…

 

あれ?未来?

キョロキョロしてどうしたんだろう?

何か尾行されてないか気にしてるみたいな…

 

………あやしい。

ちょっと追いかけてみようかな?

でも、未来ってば、私が半径100m以内に入るとすぐに気付くから気を付けないとね…

 

………これ、改めて考えるとおかしいよね?

未来って本当に人間?

師匠レベルに片足突っ込んでない?

 

未来に気付かれないギリギリで尾行しながら着いた先は…ハチ君の家!?

ま、まさか…未来とハチ君って…

 

そんな事って…

でも、キャロルちゃんの時、ドサクサに紛れてキスしてたし、やっぱり付き合ってるのかなぁ…

 

…ダメだ、悪い方向にばかり考えちゃう…

これは、直接本人達に確認した方がいいよね!

へいきへっちゃらへいきへっちゃらへいきへっちゃらへいきへっちゃらへいきへっちゃら…

 

ピンポーン

 

「はーい、およ?響さん?」

 

「小町ちゃん、未来が来たよね?お邪魔します!」

 

「あっ、ちょ…」

 

ハチ君の部屋に向かう。

もしかしたら、この先に残酷な現実が待ってるかも知れないけど、知るもんか!

中から話し声が聞こえる。

 

「八幡…じっとしてて…」

 

「いや、無理だろ」

 

えぇぇぇ!?

ナニしてるのかな!?

 

「パパ、私がするからじっとしてて!」

 

キャロルちゃん!?

子どもの前でナニやって…ていうか、これ子どもも参加してない!?

 

「未来!ハチ君!何してるのかなぁ!?」

 

慌ててハチ君の部屋に入る。

そこで待っていたものは…

 

「お前さ、もう少し力加減考えてくんない?ただでさえ出席日数ヤバいんだからさ…」

 

「本当にごめんなさい…」

 

ベッドに腰掛けるハチ君の左腕の包帯を取り替えてるキャロルちゃんと正座してる未来の姿だった。

………え?どういう状況?

 

「うぉっ!?なんだ?立花、どうした?」

 

「響?」

 

その後、詳しい説明を聞くと、あのキスの一件以来、未来はハチ君が近付くと、オートで投げ技が出るようになっちゃったらしい…

今回は、初めてだった上に打ち所が悪く、肩が脱臼しちゃったみたい…

 

え?て事は避けられてると思ってたのって…

 

「いや、昨日から学校行ってねぇけど…」

 

良かったぁ、てっきり嫌われちゃったのかと思ったよ…

あれ?じゃあ、クリスちゃんは何だったの?

 

「あぁ、あいつキャロルに嫌われてるからな…」

 

どうやら、昨日お見舞いに行ったのに、キャロルちゃんに門前払いされたらしい…

私も同じ目に合うと思って気を使ってくれたのかな?

ああ見えて優しいし…

 

「というか、響は何と勘違いしたのかな?」

 

あれ?未来、顔が怖いよ?

 

「いい?私が響をどれだけ好きか教えてあげるね?私は響の事ならどんな些細な事だって全部知りたいし、私の事を全部教えてあげたいの。私の体の隅々まで響のものだから、響の好きにしていいんだよ?それに…」

 

~1時間後~

 

「…だから、私は響を愛してるし、どんな響だって受け止めれるんだよ?」

 

「…いや、キャロルの教育に悪いから、もうお前ら帰ってくんない?」

 

「…パパ…あいつこわい…」

 

未来も最近隠さなくなったなぁ…

 

*** きりしら戦争 ***

 

ようやく、腕の包帯が取れたので、再び学校に通っているのだが、休みが続いてしまった為、まったく授業についていけなくなっていた…

ぼっち歴が長いため、聞ける相手など雪音くらいしかいないんだが、雪音も俺がいない間、気が気でなく、あまりついていけてないらしい…

 

ヤバい…S.O.N.G.に就職するにしても、進学するにしても、卒業できん事には全部パァだ…

これから卒業まで、絶対に厄介事に巻き込まれないようにしねぇと…

さすがに留年とかシャレにならん。

 

という訳で、自室に籠って勉強しようと思ったのだが…

 

「きのこ!」

 

「たけのこデスよ!」

 

これである…

これはもしかしてあれか?

俗に言う、きのこたけのこ戦争とかいうやつ?

頼むから、そういうのは自分の家でやってくんない?

とりあえず、邪魔で仕方ないので、妥協案を出すか…

 

「どっちもいいところあるじゃダメなのかよ?」

 

「「そういう訳にはいかない(デス)!!」」

 

お前ら…何でこういうところハモれるのに、喧嘩してんの?

たかだかお菓子の話だろ?

 

「何故なら」

 

「これは」

 

「八幡の股関のサイズについてだから!」

「八幡さんのアソコのサイズについてデスよ!」

 

…………

…………

…………は?

お前ら、ほんと何やってんの?

ていうか、こんな下らない事にユニゾン使うんじゃねぇよ…

 

「切ちゃん、考えてみて?八幡のサイズがたけのこだと、私達が受け入れられるかわからない」

 

「調こそ考え直すデスよ!八幡さんのサイズがきのこなんて体格的に絶対無いデスよ!」

 

お前らキャロルの教育に悪すぎるから、頼むから帰ってくんない?

妄想すんのは自由だけど、本人の家でやる事じゃねぇだろ…

どんなレベルの高い変態だよ…

 

『中間くらいってところかなぁ?』

 

おい!ガリィ、うるせぇぞ!

 

「あれ?また何か思い出せそうな…」

 

キャロル!?お前、またピンポイントで変なところだけ切り取って思い出そうとしてない!?

パパ、世間体が悪くなる一方だから、頼むから自重してね?

 

「きのこ!」

 

「たけのこデス!」

 

お前らはもうカエレ!

 

キャロルの登場により、最近、こいつらが好意を隠さなくなった上に、こういう露骨なアピールをしてくるせいで、元ぼっちとしては、頭の痛い日々である…

俺…その内、胃に穴空くんじゃねぇかな…

 

*** マリア・カデンツァヴナ・イヴの華麗なる休日 ***

 

今日は久しぶりのオフね。

最近になってようやく、装者、アーティスト、フィーネの3足の草鞋にも慣れてきたわ…

慣れって怖いわね…

 

それはそうと、せっかくのオフだし、八幡をデートに誘おうかしら。

最近、まったく会えてないもの…

正確には10日と8時間20分くらい。

うん、今日くらい、彼を独占したって罰は当たらないわ!

そうと決まれば早速…

 

『…なんすか?』

 

…もうこの扱いにも慣れてしまったわね…

慣れって怖いわ…ほんとに…

 

「今日は私オフなのよ。だからデートに行きましょう?」

 

最近気付いたのだけど、彼を誘うのに緊張したらダメみたい。

堂々と、当たり前のように誘うのよ!

 

『遠慮しときます。それじゃあ』

 

………わんもあ。

 

「ダメな理由を教えてくれるかしら!?」

 

『しつけぇな…キャロルがアレでアレなんで』

 

ちょっと!?本音がダダ漏れじゃないの!?

しかもまた、アレで乗り切るつもりね?

 

「そう、じゃあ小町ちゃんに確認して…」

 

『あぁ、もうわかりましたよ…デートではなく、食事や買い物なら付き合います』

 

それってデートじゃない…

どうも彼には変なこだわりがあるらしく、デートという名目では確実に釣れない。

しかし、彼と恋人になりたい私は毎回デートに誘うため、いつもこんなやり取りをしている。

まぁ、実質デートなのだけど、気分の問題だ。

ただでさえライバルが多いので、負ける訳にいかないのだ。

それに今回は必勝の策を用意している。

今日こそ、私が決めさせてもらうわ!

 

「じゃあ、いつも通り車で迎えに行くわ」

 

彼を車で迎えに行く。

いつもなら、ここでドライブしつつ、レストランに行ったりするのだが、今日は…

 

「おい、何処に入るつもりだよ!?」

 

な!?まさかしれっとお城に入って既成事実作戦がバレるなんて!?

 

「………ご休憩?」

 

「驚く程発想が妹と一緒だな…休憩するなら1人でして下さい」

 

「…じゃあ、宿泊?」

 

「しつけぇ…しません」

 

チッ、いけると思ったのに…

しかし、またセレナと会話してたのね…

フロンティアの時以来、私には聞こえないから、何を話してるか気になるわ…

 

「これ以上強引に来るなら帰りますけど…」

 

「じょ、冗談よ?じゃあ、今日はショッピングに行きましょ?」

 

結局、12回目の正直と思っていた勝負下着は今回も彼の目に入る事は無かった…

 

「……何で柄だけ教えてくんだよ…気になっちゃうだろ…」

 

ん?今何か言ったかしら?




という訳でお待たせしてすみません。

少し更新ペースが不安定になりそうです。


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番外 みくるーと!!!

拙作で一番のキャラ崩壊だと思ってるんですが、何気にみくるーと人気だったんですね…

ご期待の声が思いの外多かったのと、お気に入りが1000を越えましたので、何とか無理矢理神を降ろしました(笑)

季節感が仕事してませんが、G直後くらいの時間軸です。


クリスマスをどう過ごしますか?

 

去年の私なら、確実に響と二人きりで熱い夜を過ごすと答えただろう。

でも、今年は…

 

「だから、ツリーの手配は先輩が山行って適当に伐採してくりゃいいだろ?あたしは八幡とチキンの買い出しを担当するからよ?」

 

「何を言う雪音!木を切るだけなら、月読や暁でも問題無い。私こそ比企谷と買い出しを担当させて貰う!雪音は料理を担当すれば良いだろう?適材適所だ」

 

「勝手な事言わないで。八幡は私達と飾り付けを担当する。買い出しなら1人で行ってくればいい」

 

「デスデスデース!」

 

「あなた達もう少し自重しなさい!私が車を出して彼と買い出しに行くから、みんなは他を担当して頂戴?」

 

「あははは…みんな積極的な意見だけど、ハチ君に一言も言ってないんだけどなぁ…」

 

こうなっている。

響を含め、みんな、クリスマスを八幡と過ごしたい。

でも、彼がクリスマスに女の子と二人きりなんて絶対に首を縦に振る訳が無いので、妥協案でみんなでパーティーを企画中という事らしい。

響の言うとおり、八幡には一言も言ってないけど。

 

もう一度言うね?

八幡には、一言も、言ってないけど。

というか、ツリーを用意するのに木を切ってくる必要は無いんじゃないかな?

 

でも、響と二人きりじゃないのは残念だけど、実は私もこのパーティーを割と楽しみにしていたりする。

だって、このパーティーに全員が参加する限り、彼を独占する人はいないって事だから。

 

私自身、響の事は心から愛してると胸を張って言えるけど、八幡の事が本当に好きかは自分でもわからない。

…訂正。厳密には、好きだ。

それはもう間違いない。

今は、この気持ちがlikeなのか、loveなのかがわからない。

響に向ける気持ちとは違うし、だからといって、他のみんなとも違う。

そんな感じだ。

 

でも、クリス達を放置して、響と過ごす選択肢を取ったら…

 

----------------------------

 

『話はベッドで聞かせて貰う!(直球)』

 

『聖なる夜の幕を上げましょう!(意味深)』

 

『小っちゃいって言わないで?』

 

『地獄極楽どっちがいいデス?』

 

『イイ子はネンネしていな!!』

 

----------------------------

 

………自分の勝手な想像なのに、なんだかムカムカしてきた。

八幡がそんな男の子じゃないってわかってるはずなのになぁ…

でもそれは、裏を返せば、たとえ自分が彼にアピールしても、結果が撃沈になるという事だ。

それはそれで、何だかモヤっとする。

 

はぁ…響といい、八幡といい、私の気になる人は何でこんなに難易度が高いのかなぁ…

おまけにあの自称ぼっちは、難易度高い癖に無自覚に、私以外の6人をほぼ陥落させているのだから余計に質が悪い。

 

小町ちゃんが私とくっつけようと裏で色々手を回してた頃が懐かしいなぁ…

全部潰しちゃったけど、あの時、私が受け入れてたら、今頃八幡と恋人になってたのかな?

あの時の私は響一筋だったから、絶対に無いけど。

そう、絶対に無いんだけど…

 

***

 

何故か八幡を誘う役に任命されてしまった。

あれだけみんな積極的だったのに、なんでいざって時に全員ヘタレるかなぁ…

そんなだから、八幡に気付いてもらえないんだよ?

 

…それは私も同じか…

 

まぁ、任されたからには誘うけど、そのまま言っても絶対逃げるだろうから、何とかしないとね。

うーん…小町ちゃんを味方に付けるか、逃げない口実を作ってあげるかだけど…

後者は最終手段かな…彼の優しさに付け入る感じがして、あまり良い気分じゃないと思うし。

せっかく参加するなら、楽しんでもらいたいしね?

 

「ごめんなさい。小町、クリスマスは学校の友達とパーティーする予定でして…」

 

…いきなり頓挫しちゃった…

どうしよう…そのまま言ったら、八幡の事だから絶対に逃げると思う。

どうしよう…八幡の負担になるようなやり方は、良くないと思うし…私も嫌だ。

八幡が自分から参加したくなるような…無理だね、うん。

小町ちゃん関連か責任関連でないと絶対参加しないよね…

はぁ…めんどくさい男の子だなぁ…

 

***

 

八幡のところに行く。

このまま誘っても、絶対に断られるので、私に借りを作って貰おう。

少しずるいとは思うけど、日も迫ってるし、作戦を考えてる時間が無いから、仕方ないよね。

 

「八幡」

 

「…小日向か?どうした?」

 

…ん?何か警戒してる感じ?

クリス達が何かしたのかな?

…あれ?何かムカムカしてきた…

 

「何か警戒してるみたいだけど、どうしたの?」

 

「け、警戒にゃんてしてねぇし」

 

…噛んだね。

これは確実に女の子関連で何かあったね…

ちょっとどころじゃなく、イライラしてる自分を落ち着かせつつ、少し探りを入れてみる。

 

「クリスに何かされた?」

 

「ゆ、ゆゆ雪音は関係ねぇだろ…」

 

…クリスで決まりだね?

いきなり当たるとは…

 

「もしかして、キスされたとか?」

 

「………」

 

あれ?これはほんとに冗談だったのに…

何この反応?

…え?ほんとに?

 

「……当たり?」

 

「……知らねぇよ…」

 

クリス…八幡にキスしたんだ…

………そっか…

 

「…小日向?」

 

「…っ!どうしたの?」

 

「いや、何か用があったのはお前じゃねぇの?」

 

いけないいけない。

一旦、自分の中から湧き上がる黒い想いを閉じ込めて、八幡に向き合う。

もう先ほどまで考えてた方法なんて、ショックで飛んで行っちゃったから、正攻法で行こう。

至急、クリスに話を聞かなきゃいけなくなったしね?

 

「クリスマス、みんなでパーティーやるんだけど、八幡も参加してね?」

 

「え?こういうの普通、参加しない?とかって聞く感じじゃねぇの?俺の意志は?」

 

「さ・ん・か・し・て・ね?」

 

「ひゃい!しゃんかしましゅ!」

 

…八幡、噛み噛みだね…

どうしたんだろう…?

 

まぁ、いっか。

八幡も快く参加を了承してくれたし、クリスに話を聞かないとね?

 

***

 

その後、クリスから話を聞いたら、盛大に惚け話を聞かされた。

キスした時、八幡がどんな感じだったかとか、そういう話だ。

極力普段通り聞いてたつもりだったけど、心中はまったく穏やかじゃなかった。

 

「…未来?何か怒ってねぇか?」

 

「ううん、怒ってないよ?どうしたの?」

 

「いや、それならいいんだけどよ…何か、あのバカが八幡と何かあった時みてぇな感じがしたからよ…」

 

やっぱり、いつも通りじゃなかったみたい。

クリスはこう見えて、気遣い上手なので、私の微妙な変化に気付いたんだろう。

自分にも、もう誤魔化しは効かない。

 

あぁ…やっぱり私、八幡の事が好きなんだ…




ついに393が目覚めました。

これからはずっと393のターンになりそうです(笑)


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片翼のおねえさん 1話

お久しぶりです。

リアルがバタバタしてまして、なかなか筆を取れず申し訳ない。

奏さん誕生日に初めたかった奏さんのお話です。
リアルタイムで書けず申し訳ない。
XDUの片翼の装者プレイ済み推奨です。


あの翼を失った日から2年…

 

相変わらずノイズ共はうじゃうじゃ出てきやがるし、アタシも日々奴らを狩るのに一杯一杯で考える間が無くて丁度いい。

 

一度立ち止まって振り返ってしまうと潰れちまいそうだしさ…

 

まぁ、こんなアタシだから、これからずっと独りぼっちで戦いの果てに消え行く運命だと思ってたんだが、去年から少しだけ…ほんの少しだけ変化があった。

 

朝、今日は燃えるゴミの日だからそろそろだな。

 

「おはよう、八幡」

 

「………うす」

 

そう、こいつと妹の小町が隣に越してきたのだ。

 

……違う。正確には、あの事件の生き残りで、翼のアメノハバキリの欠片が身体に埋まったままのこいつを監視する歴とした二課の任務だ。

何か想定外の事が起きた場合にシンフォギア装者のアタシが側に居た方が対処しやすいとの事だ。

 

なので、本来のお隣さんには快くご退去頂いてアタシがこいつの隣に住んでいる。

しっかし相変わらず釣れない挨拶だなぁ…

 

「朝から元気ねぇぞ?ちゃんと朝メシ食ってるか?」

 

そう言って、八幡をヘッドロックして、頭をグリグリする。

 

「痛っ、ててていうか当たってるし!みゃ、みゃじでやめてくださいよ!?」

 

…ん?顔真っ赤だけど、どうしたんだ?

 

…ははーん。

八幡も男の子だなぁ。

 

「何だ?そんなにアタシの胸が気になるのか?何なら触ってみるか?」

 

一旦八幡を解放して、露骨に胸を両手で持ち上げて強調すると…

 

「きき気安くしょんな事言ってんじゃねぇよ!ビッチ!」

 

暴言吐く癖にカミカミで締まらねぇ奴だなぁ…

まぁ、そんな所もかわいいんだが、ビッチはちょっとお姉さんカチンときたからオシオキだな!

 

「お兄ちゃん早く準備しないと遅刻…って何してんの?」

 

八幡へのオシオキがコブラツイストに移行したあたりで小町が出てくる。

 

「小町聞いてくれよ、八幡ったらアタシの胸に興味深々みたいだから触らせてやろうか?って言ったらアタシの事ビッチとか言いやがるんだ」

 

「あぁ…まぁた奏さんとイチャイチャしてたんですか…ほんともう朝からごちそうさまです」

 

「おい小町!?この状況をどう見たらイチャイチャになるんだよ!?てかマジで痛え!ギブ!ギブ!」

 

…とまぁこんな感じで戦いだけだった暗い日常にほんの少しだけ陽だまりが出来ていた。

任務ではあるが、こんな日常を割と気に入っている自分がいるのも確かだった…

 

***

 

『奏!前に出過ぎだ!少し下がれ!』

 

ダンナからの静止も無視して、今日もノイズ共の相手をする。

しかしダンナも心配し過ぎだ。

アタシがこいつらを早く始末しないとその分、被害が大きくなる。

そう、翼がいない今、この場に槍を携えているのはアタシだけなんだ。

 

奴らを薙ぎ払い、貫く。

ただそれの繰り返し。

やる事が決まってて単調だが、頭空っぽにして、思いっきり戦えるのはありがたい。

元々翼みたいな器用さはアタシにはねぇんだ。

馬鹿は馬鹿らしくってな!

 

『待て!奏!そっちは!』

 

?急に視界が暗転する。

何だよ、せっかく人が気持ち良く戦ってるってのに…

段々、意識が覚醒する…

あれ?何でアタシ倒れてんだ?

 

目を開けると、そこには見た事もない真っ黒い不気味なノイズが立っていた。

何だコイツ!?

 

『奏!一時撤退だ!』

 

「ダメだ!コイツを野放しには出来ねえ!」

 

見るからにヤバそうなコイツを放置したら、それこそ被害が計り知れない。

ダメージが足にきてやがるが、もうひと踏ん張り…やってやれない事はねえ!

 

―LAST∞METEOR―

 

今のアタシにできる精一杯の技を放つ。

 

…が、アイツには効いている気配が無い。

こうなったらもう、アタシには…()()しか…

 

覚悟を決める。

アイツは絶対にここで倒しておかなきゃダメな奴だ。

 

…この命は翼に繋いで貰った命だ。

ここで返す事にはなっちまうが、元々ロクデナシの復讐鬼の命だ。

惜しくはねぇ。

 

…よし!天羽奏のラストライブにしちゃ人間のお客さんが少ねぇが、歌うか!

 

……

………

 

しかし、そうやって決めた覚悟を嘲笑うかのように、何度歌おうとしてもあの歌が胸に響いてこない。

神様…そりゃねぇだろ…中途半端な出来損ないには相手と刺し違える資格すらもねぇってのかよ…

 

さすがに向こうさんもそんなに待ってはくれねぇみたいで、一直線にアタシに向かってくる。

 

あぁ…許されるならもう一度…翼と歌いたかった…

それと…()()()には…ツヴァイウィングじゃない、天羽奏の歌を聞いて欲しかったな…

そんな場違いな事を考えながら目を閉じる。

 

………?

あれ?生きてる?

 

「生きる事を諦めないで!」

 

いきなり出てきたソイツは、アタシが何度やってもダメだった黒いノイズをいとも容易くぶん殴っていた…

 

***

 

立花響と少女は名乗った。

()()()()()()ガングニールの装者。

 

何でも、2年前にアタシが絶唱を歌い、翼が生き残った世界からギャラルホルンとかいう聖遺物を使って来たらしい。

ていうか、アタシも人の事言えた義理じゃねぇけどコイツ説明下手過ぎだろ…

 

「あの言葉は、奏さんから受け継いだ大事な言葉なんです」

 

…そんな事言われてもアタシには身に覚えがねぇから困る。

 

「…アタシとソイツは別人だ」

 

…八幡みたいに愛想悪くしちまったが、よくわかんねぇけど、なーんかコイツからは敵?みたいなオーラを感じる。

まぁ、助けてくれたのは事実だし、感謝もするけどよ?

それとこれとは別のところで何かがしっくり来ないのだ。

 

「うーん、こっちの奏さんは捻デレ?」

 

…は?コイツ、何でその単語を…

アレは小町の造語だから、知ってる奴なんて知り合いくらいのもんだが…

 

「…お前、小町と知り合いか?」

 

とりあえず探りを入れてみる。

違う世界の人間だし、同じ人間がいたとしてもそれは別人とは思うのだが、何か心がザワつく。

 

「え!?こっちにも小町ちゃんいるんですか!?って事はハチ君も!?」

 

…やっぱりか…

…ていうか、ハチ君?

随分と親密そうな感じだな?

 

………ふぅん?

アタシのいない世界で、ガングニールでハチ君…ねぇ?

 

「アレ?奏さん?…なんか…ハイライトが…」

 

ん?何言ってんだ、コイツ?

まぁ、とりあえずはダンナに報告だな。

 

「とりあえず、二課までご同行願えるか?」

 

「アッ、ハイ……アレ?何か忘れてるような…」

 

何か途中から変な迷路に入ったみたいで、うーんとかうむむとか言ってずっと唸ってるけど、とりあえず連れて行くか…

 

***

 

「カルマノイズ…だとぉ!?」

 

アタシがダンナに報告を入れるついでにあの黒いノイズについても響に説明して貰う。

なんか妙に馴れ馴れしい奴だが、まぁ色々と犬っぽいので、扱い易くて助かる。

 

しかし、カルマノイズか…

相変わらず響の説明は難解だが要約すると、通常のノイズより強力な個体で厄介な上に、奴らは際限無く人を炭に変えれるらしい。

イグナイトが何かは知らねえけど、たぶん響の奥の手だと思われるのも聖遺物の呪いを増幅させるので、簡単には使えないらしい。

 

それだけ聞くと、あの時のアタシの判断は間違っちゃいなかった筈なんだが…

 

「奏は謹慎だ!この件に許可無く関わる事は許さん!頭を冷やしてこい!」

 

ダンナに大目玉を喰らったので、渋々始末書を書いて家に帰る。

…ダンナの奴、苦手な書類仕事までやらせるとかマジで怒ってやがるな…

 

はぁ…絶唱は歌えねぇし、今日は散々だな、アタシ…

 

こんな日は、小町の飯食って八幡からかってさっさと寝るに限るな。

 

…まぁ、一応?一応な?

『ハチ君』って呼び名で呼ぶ奴がこっちにもいるのかも聞いとこうかね?

 

そう思いながら歩いていたのだが…

 

瞬間、言葉を忘れてしまう。

 

「まったくあの子は…勝手に1人で突っ走って…これだからガングニールの装者は」

 

「まぁそう言うな、マリア」

 

アタシが見間違える筈が無い。

 

そう、向かいから歩いて来たのは、確かに翼だったのだ…




という訳でヒロイン個別ルートの中の奏さんルート第1話です。

まさかのヒロイン個別ルートのトップバッターは奏さんです。

片翼の装者世界はライバルが誰もいないので約束された勝利になるとは思いますが…
八幡だしなぁ…というのが作者の素直な感想です…


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番外 正妻戦争・肆

またまたお久しぶりです。

なかなかにリアルの生活が安定せず、不定期更新ですみません。

久しぶりの番外です。
久しぶりなので書き慣れてるもので…


秋…明日から京都に修学旅行という事で家で準備をしている。

 

現状を説明すると、何故かサーヴァント達は憑いて来る気満々だし、海老名さんに告白したい戸部と戸部から告白されたくない海老名さんの相反する依頼を両方クリアしなければならないという厄介極まりない状況である。

はぁ、ほんとどうすんの?コレ…

 

しかしながら、全く楽しみが無い訳でもなく、旅先の宿は戸塚と同室である。

 

もう一度言おう。

戸塚と同室である。

 

戸塚と旅行で同室とか、これはもう新婚旅行と言っても過言ではないのではないだろうか。

材木座?誰それ?

そんな名前の人は知らないってエ◯マンガ先生も言ってたぞ?

そもそもあいつクラス違うから同室ではないしな。

確実に自分のクラスに溶け込めず、俺達の部屋にたむろするだろうが…

 

「むう…またマスターがさいちゃんの事考えてる気がする」

 

バーサーカーさん?

ナチュラルに心読むのやめてくれる?

しかし戸塚だぞ?

色々と心の準備をしとかないと俺の理性が耐えられないよ?

最悪泊まるんじゃねぇぞ…って某散る事の無い鉄の華の団長宜しく道半ばで倒れてそのまま警察のお世話になっちゃう可能性まである。

 

「響?こういうのは優しく見守るのも大事なんだよ?」

 

俺が妄想にトリップしてるとキャスターがニッコニコの笑顔でそう言う。

 

振り返るとあいつの目があるんだ。

すげえよ、ミク(ガチユリ)は。俺をバーサーカーから遠ざける為の要素はなんでも肯定する。

あの目の前では最高にぼっちでコミュ障な比企谷八幡じゃないといけねぇんだ。

 

色々と乗ってはみたがこれはダメだな…

最終的に原作通り希望の華咲かせる未来しか見えねぇわ…

 

しかし、サーヴァントの誓約無視のフリーダムでこんだけ俺を警戒してんのに実力行使してこないあたり、こいつも訳わかんねぇな…

なんかペナルティでもあるのかね?

今度監督役の方のアラサーに聞いてみるか…

教師の方のアラサーは…早く誰か貰ってあげて!

 

「しかし、ジッサイゆゆしき事態デスよ!」

 

「偉いな、アサシン。ゆゆしきなんて言葉知ってたんだな」

 

「エヘヘェ…って絶対バカにしてるデスよ!!」

 

いや、だって…ねぇ?

君の学力考えるとそう思うのも仕方ないよ?

 

「そう…マスターが間違いを起こさないように私達が24時間監視する必要がある」

 

ライダーさん?

その発言はどう聞いてもヤンデ…

どこの後方警備担当ですかね?

 

「もちろん、マスターに拒否権なんてもんはねぇよな?」

 

アーチャーまでハイライトさん何処に置いてきたのかな?

早めに職場復帰させて貰える?

 

「何、私達にも意地があるのだ、マスター」

 

「ええ、そうよ」

 

セイバーとランサーまでどうしたの?

なんか鬼気迫る勢いだけど…

 

「「サーヴァント以前に女として男に負けるのは嫌!」」

 

まぁ、気持ちはわからんでもないが、戸塚の前に性別なんて言葉は無意味だから未来永劫控えてくれる?

そもそも俺の戸塚愛は無償の愛なので、君たちの考えているようなやましい関係はあり得ないのだが…

 

しかし、約1名だけ妙に静かだな…

 

「ん?話は終わったか?」

 

今まで無関心を通してきたちみっ子が呆れ気味に聞いてくる。

 

「アヴェンジャー、貴女はマスターがよりによって男に盗られてもいいとでも言うのかしら!?」

 

ランサーさんが食いかかる。

いや、取るとか取られるとか俺は物かよ…

あっ、そういや部長曰く奉仕部の備品扱いでしたね…

 

「お前は馬鹿か?まず夫の浮気を警戒するより、己の魅力で夫の目を他に行かせないように振る舞うのが良妻という物だろう?ま、正妻はオレで確定だろうから格が違うのも致し方無しか」

 

「んなっ!?」

 

さっきから黙ってると思ったらそんな事考えてたのかよ…

ほんと、最初だけすごい嫌々ですみたいな態度だったのは何だったの?

なんか最近すっごい露骨にアピールしてくるようになったけどそんな好感度上がるイベントあったか?

 

誰が言ったか、女の思考回路は複雑怪奇で訳わからんとは、全く以てその通りである。

元々コミュ障でぼっちの俺には一生わからないのであろうと素直にそう思う。

…しかし、そんな俺にでもわかる事ぐらいある。

 

今の状況がかなりヤバイって事だ。

 

おい!ライダー!流石に宝具はシャレにならんからやめろ!!

 

***

 

あの後、荒ぶるサーヴァント達を諫めてベッドに横になった頃には、2時を回っていた。

その上、また相も変わらずライダーやアサシンが布団に侵入してこようとするのを阻止していたため、全くと言っていい程寝ていない。

オマケに目が覚めたら床で寝ていて、自分のベッドでアーチャーがダイナミックな格好で寝ていた時の驚きはしばらく忘れる事が無いだろう。

 

アイエエエ!?ナンデ!?アーチャーナンデ!?とか、こいつマジで寝相悪いな、とか色々とツッコミたいところではあるのだが、とにかく床で寝てたせいで身体の節々が痛え…

 

その上、新幹線の席こそ戸塚の隣だが、周囲を由比ヶ浜達リア充グループに囲まれて全く当たり障りの無い毒にも薬にもならん話題に侵略されているので正直眠気がヤバイ。

戸部がべーべーうるさいのが唯一の眠気覚ましだ。

やべ、戸部がトイレに行った途端に眠気が…

 

「八幡、凄く眠そうだけど大丈夫?」

 

天使かな?いや戸塚でした。

 

「京都までまだまだだから、少し寝てたら?着いたら起こしてあげるよ」

 

天使でした。

やはり俺は戸塚を愛するしかない事がここに証明されてしまったのである。

そんな事を考えていたのも束の間、前日の無駄な疲労もあり、早々に意識を手放してしまったのであった。

 

***

 

ようやく京都に着く。

まぁ、後半ずっと寝てたからようやくも何も無いのだが。

 

新幹線で寝た事もあり、少し体調は回復したのだが、由比ヶ浜は何故か機嫌悪いし、海老名さんは興奮状態だし訳がわからん…

サーヴァント達もキャスターとアヴェンジャー以外由比ヶ浜と同じ状態だ。

キャスターは相変わらずニッコニコだし、アヴェンジャーは青い顔して『バカな…向こうの方が正妻だっただと…み、認めるものか!?』とか訳わからん事を言っている。

戸部は戸部で「ヒキタニ君マジっべーわ」とか言ってうるせえし、戸塚は少し恥ずかしそうに苦笑いだ。

ほんと、俺が寝てる間に何があったの?

 

「あぁ…あんた、ずっと戸塚の肩に寄りかかって寝てたから海老名がずっと騒いでたわよ」

 

川越だったか?なんか違うな…

川…川…川なんとかさんがぶっきらぼうに教えてくれるのだが…

な…なん………だと?

そんなイベントが発生していたのに俺は何故寝ていたのだろうか!?

いや、寝てねぇと発生しないイベントだけども。

これはもう戸塚ルート一直線なんじゃないですかね?

 

いやルートって何だよ…

運命(Fate)が予め決まっているなんてクソ食らえだ。

そんな物が()()であっていい筈が無いと何度己に言い聞かせてきたか数知れない。

この期に及んで、咄嗟とはいえ、まだそんな言葉が内から出てくる自分に心底嫌気が差すのであった。

 

あぁ、そういや川崎だったわ。

 

***

 

清水寺の舞台を見学している時の事。

 

「ハポン…八幡よ!」

 

うわぁ…まためんどくさいのが来やがった…

 

『あ、剣豪将軍デス!』

 

非常Σ式・禁月輪(カオスインフィニティムーンスラッシュ)をお見舞いする?』

 

おい、中二病が感染るから自分の技に変なルビ振るのやめなさい。

しかし、精神年齢が近いせいかこいつらは割と材木座を受け入れてるな…

アーチャーとか露骨に嫌そうな顔してんのに…

アレ?ランサーさんの目が心なしかキラキラしてるような…

 

『何!?剣豪将軍とは聞き捨てならんな!是非とも手合わせ願いたいものだ!』

 

やめてあげてください死んでしまいます。

 

「んだよ、材木座」

 

「ムハハハハ!見損なったぞ八幡!それでも我の片腕か!?」

 

「人違いです。それでは」

 

「ま、待ってくれ!八幡!今見捨てられたら我、泣くぞ!」

 

脅し文句が最高に情けないけど、やはりそこはぼっち。

他のぼっちが嫌がる事を的確に突いてきやがる…

はぁ…めんどくせぇ…

 

「んで?なんなんだよ?」

 

俺が嫌々ながらそう聞くと妙にテンション高い答えが返ってくる。

 

「何、ここは京都でしかも寺だ。ここならば我の小説のネタ集めも捗るのではないかと思い助手の八幡に声を掛けた次第だ」

 

はぁ…なんでこいつは自分のグループからハブられたと素直に言えんのかね?

俺は寺観光は静かにやりたいんだが…

 

「戸塚、いいか?」

 

「うん、材木座君ならボクも歓迎だよ」

 

やはり戸塚の神格を高めてしまうだけだったようだ。

もはや、寺というパワースポットでここまでの神格を発揮する戸塚は現人神として讃え奉られるべきじゃないのか?

そんな事を考えていると…

 

『響、ここの清水寺の舞台はかなり高いでしょ?だから昔から思い切った事をする事を『清水寺の舞台から飛び降りる』って言うんだよ?』

 

キャスターがバーサーカー向けに観光説明というか語源講習をしていた。

それだけならまだいいんだが…

 

『そうなんだ!やってみる!とぉっ!』

 

………マジでやる奴初めて見たわ…

いきなりの事でさすがのキャスターも目を白黒させている。

そこにシビれもしないし、憧れもしないが、さすがバーサーカーさんである。

 

当の本人は飛び降りた後、猛スピードで駆け上がってきたかと思うと俺の前に立って

 

「好きです!私と結婚して下さい!」

 

とかデカイ声で宣う。

ん?デカイ声………?

 

バ、おま、実体化!?

 

「はははは八幡、どどどどういう事だ!わわわ我、聞いてないぞ!?」

 

「は、八幡!?」

 

おい!どうすんだよ!コレ!?

ていうか、他の連中!まずは、次々に飛び降りるのをヤメロ!

 

やべっ!騒ぎを聞き付けた由比ヶ浜とか結婚というキーワードに反応した餓えた狼とかめんどくさい奴らがこちらに向かってきているのが見える。

アレ?川中だったか?川…川…川なんとかさんまでなんか怒ってる雰囲気でこっち向かってきてるんですけど…

 

え?今日ってもしかして俺の命日ですかね?

アホの娘由比ヶ浜はなんとか誤魔化せたとしても、あの独神と川西は無理だろ…

 

「すいません、ウチの子が迷惑かけて」

 

もはや打つ手なし、あわやという所でその場を収めたのは、意外にも物陰で実体化したであろうガチユリであった。

 

「この子、おっちょこちょいなんで、片想いの人と見間違えたみたいです。ほら、響行くよ」

 

その一言で周囲でざわざわしていた観衆が散り散りになっていく。

はぁ…助かった。

 

今後もこういった心臓に悪い事は控えて貰いたいものである。

 

無理かな?

無理なんだろうなぁ…あっ、そういや川崎だったわ…

 

確実に来るであろう未来の心労に今から溜息を吐くしかないのであった…

 

そしてそれ故に、人間観察が得意なぼっちともあろうものが、ギャラリーの一人の言葉を聞き逃してしまっていたのであった。

 

「あれは………響様?」




という訳で久しぶりに書きました。

もはやどんどん隠し切れなくなってきていますね。
最後のセリフは一体誰なんでしょうね?(笑)


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片翼のおねえさん 2話

すみません。

またまた久しぶりの執筆です。


凛とした立ち姿…

世界中の誰よりも透き通る声…

 

アタシが間違える筈がねぇ。

こいつは間違いなく翼だ。

 

………翼…なんだが……

 

「なんで話す場所が喫茶店とかじゃなくラーメン屋なんだよ…」

 

そう…アタシを見た翼が急に着いて来いと言うので、着いて行ったんだが、何故か今マリアとかいうピンク髪の女と3人カウンターに横並びでラーメンを啜っている。

 

ラーメンなんてそんな好きだったか?

むしろこういったラーメンやハンバーガーなどのジャンクフードばっか食べてるアタシを体に悪いだのと諌めてた姿しかアタシの記憶にゃねぇんだが…

 

「まぁ、そう言うな奏。あっ、店主、替え玉、バリカタで頼む」

 

そう言ってお前替え玉もう3回目だぞ…

 

「なかなか…ハフッ、いけるわね、私もハリガネ頼むわ」

 

こいつに至っては4回だ…

どんだけ食うんだよこいつら…

 

「奏はもう食べないの?こちらの世界にもあるのは嬉しい誤算だったけど、ここは私のオススメのお店よ?」

 

完全に行き馴れてるじゃねぇか…

いや、まぁ旨いのは旨いんだが…

 

「アタシは帰ったらメシあるんだよ」

 

そう答えると不意に翼が微笑む。

 

「……なんだよ?」

 

「良かった…奏にも帰る場所が見つかったのね?そこはきっと…この世界の私の隣ではないのだろうが…それでも私は嬉しいよ」

 

その笑顔にドキッとしてしまう。

だからアタシは思わず聞いてしまう。

 

「なんでそんな事わかんだよ?」

 

「自慢じゃないが、どの様な時空であれ、料理の出来る私というのは全くもって想像ができない!」

 

「そんな後ろ向きな事自信満々に言うんじゃねぇよ!?」

 

ほんの少し前のドキドキを返してくれ!

こいつ本当にあの翼なのか!?

 

……でも、普段は無理に気を張って変な日本語使ってたり、アタシと喋る時はそれが少し崩れたり…

話せば話す程、翼なんだよなぁ…

ホント、何があったんだよ…

 

「あっ、替え玉頼むわ!ハリガネで!」

 

そんでマリアとかいうこいつはまだ食うのかよ…

延々ずっと食ってるだけじゃねぇか…

 

***

 

「さて…そろそろ本題に入りましょうか」

 

マリアがそう言ってくる。

結局、翼が4回、マリアは6回替え玉した。

 

これ以上は店にいい迷惑なので、近所の公園で話をしようと提案したら2人揃って何故?みたいな顔してやがったので引っ張ってきた。

正直、変わりに変わった翼の姿を見て頭が追い付いて無いんだが、世間知らずなのは相変わらずなのな…

 

「本当はもう1人いるんだけど…」

 

「あぁ、響なら二課で面倒見てると思うぜ」

 

「やっぱりあの子は!勝手に突っ走って!」

 

マリアがいきなり憤る。

何か怒ってる雰囲気出してるけど、言ってる内容とかどう見てもオカンだよな…

食いしん坊にオカンって…

八幡がよく読んでるラノベ風に言うと属性盛りすぎだろ…まだ色々ありそうだし…

 

「立花が既に行ってるという事は…」

 

「あぁ、カルマノイズについてもある程度聞いてる。ま、あいつの話難解で理解すんの大変だから後で行ってダンナに詳しく説明してくれると助かる」

 

「あぁ、承った」

 

そう答えると、完全に任務の時の翼の顔になる。

あぁ、やっぱこいつは翼なんだな…

 

「んじゃ、アタシは謹慎中だから帰るわ」

 

そう言って2人に別れを告げる。

あまり待たせると小町に悪いしな。

 

「あ…奏!」

 

少し歩いた所で翼に呼び止められる。

アタシが振り返ると…

 

()()()()

 

と、そう言ってくる。

それに対して言葉は返さず、また前に向き直して、手を上げて返事する。

 

「また明日…か…」

 

…わかっている。

わかっているんだ。

 

例えあれが本物の翼でも…いや、本物の翼だからこそ、今は亡き己の半身の代わりになどならないという事は…

そしてそれが()()()()()()()()()()だという事も…

 

結局、小町の作ったアタシが作るより数倍旨い筈の晩メシはほとんど味がわからなかった。

 

ずっと八幡が何か言いたげな眼をしていたが、何も言ってくる事なく、そのままお開きになった。

 

なんだかな…

クソッ、結局一番引き摺ってるのはアタシって事か…

 

***

 

「あ、ハチ君!」

 

なんか見ず知らずの美少女が周囲をまったく気にする事なく手をブンブン振りながら喚いている。

まったく、ハチ君とかいう奴も災難だな。

俺が当人ならそんな呼び方されたら恥ずかしくて二度と家から出たくなくなるレベル。

そういや家といや、昨日の天羽さんは少し様子がおかしかったな…

なんか嫌な事でもあったんかね?

大人になると嫌な事ばっかり増えていくというし、やはり俺は社会に出ず専業主夫として家庭に入るべきだと思いましたまる。

 

「おーい!ハチくーん!」

 

チッ、うっせぇなリア充め!

いい加減ハチ君とやらも返事してやれよ…

さっきからずっと必死に呼び掛けてるじゃねぇか…

 

「ハチ君!!」

 

「おわっ!?」

 

気付くと美少女が目の前にいた…

え?何?ハチ君ってもしかして俺?

いやいやいやいやいや騙されるな比企谷八幡。

俺にこんな美少女の知り合いはいない。

よってこれは人違いか美人局か宗教勧誘のどれかである。

壺は買いません!

 

「ひ…人ちぎゃいでは…?」

 

噛んだ…死にたい…

相変わらず残念過ぎる対人装甲である…

 

「あ、そっか。()()()()ハチ君は私の事知らないんだね」

 

え?何?美人局かと思ったら電波系?

ふぇぇ…関わりたくないよぉ…

こんな何処にでも居て何処にも居ないぼっちよりもその辺のイケメンリア充をターゲットにしてくれませんかねぇ…?

何か今の決め台詞っぽいな…

何処にでも居て何処にも居ない、シュレディンガーのぼっち比企谷八幡です。

 

「もぉ、また考え事してる」

 

いや、だからどう見ても初対面だし、いい加減解放してくれません?

短くも長い俺のぼっち人生の中の知り合いで、美少女なんて小町と天羽さんくらいしかいねぇし。

いや、天羽さんは年上だし少女ってのはちょっと違うけどね?

つまり逆説的に小町こそが天がこの世に遣わした最高の美少女という事になる。

 

「とにかく、積もる話もあるし、どこかゆっくり出来る所でお話しよ?」

 

そう言って、名も名乗らない美少女が上目遣いでそう言ってくる。

…見るからに怪しいしあざといし着いて行く必要皆無だな!よし!

 

「あー、今日はアレがアレなんでまた後日に…」

 

「そんな事言わずにこっちこっち」

 

そう言って美少女に首根っこ掴まれて連行される。

ちょっ、力強っ!?

こんな柔っこい見た目の何処にこんなパワーが搭載されてんだよ!?

てか、おまわりさん、今まさに一般市民が拉致られそうになってるんで助けてくれません!?

 

「チッ、リア充爆発しろ」じゃねぇよ…

それはいつもの俺のセリフだっつうの…

 

そうして、立花響とようやく名乗った少女に一日中、文字通り振り回されるのであった。

無駄に元気だし、距離近いし、いい匂いだしで今日一日で一週間分の体力と気力を根こそぎ持っていかれた気がする…

 

てか結局、要件も何も聞かず終いなんだが、一体何がしたかったんだ?

 

***

 

都内某所

 

「翼…もしかしてこれは…」

 

「あぁ、マリア。その通りみたいだな…」

 

 

 

 

「完全に迷った…」




仕事に忙殺されてまして、中々更新出来ず申し訳ない。

この調子で後最低7人…ごくり…な感じなんですが、ちょくちょく時間見つけて書いていきますので、気長にお待ち頂ければ幸いです。


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番外 "愛"が生まれた日

393誕生日記念。

みくるーとの延長的な何かです。
番外の番外ってもう訳わかんねぇな…

みくるーとでは初の八幡視点です。


「八幡、聞いてるの?」

 

目の前の少女に責められる。

 

小日向未来。

 

いつの間にやら、数年の腐れ縁で知り合いの中では立花と並び古い方から数えた方が早い奴になってしまったのだが、つい最近、その関係性が変化し、恋人という間柄になった。

自他共にこいつと付き合う事だけは絶対に無いと思っていたので、人生何があるかわからないものである。

 

「悪い、聞いてなかったわ」

 

俺にしては素直な返事だが、こいつ相手に下手な嘘吐く方が絶対バレるし、後が怖いので、正直に答えるが吉なのだ。

 

「もぉ…八幡は。今度の私の誕生日、響達とクリスの家でお泊まり会になったからって……もう、嫌そうな顔しないの」

 

いや、周り全員女子で女子の家でお泊まり会ってぼっちに求めていいレベルじゃねぇだろ…

 

「もうぼっちじゃないんだから、いいんじゃない?」

 

いや良くねぇよ…

そんな簡単に変わるなら最初からぼっちやってねぇっつうの。

という訳で…

 

「残念だが俺はふさ…」

 

「私が浮気しちゃってもいいの?」

 

………それは困る。

いや、普通に考えると女子しかいないのに浮気ってどういう事?なんだが、こいつの場合、元ガチユリだけに十分過ぎる程の説得力なのだ…

 

「響にクリスに調ちゃんに切歌ちゃん…うふふ、選り取り見取りだなぁ…」

 

「はぁ…仕方なくだぞ…」

 

「うん、ありがとね、八幡」

 

やっぱり鎌かけてやがったか…

ホント、最近こういう強引な手が増えてきてるので困った恋人なのだ…

 

***

 

小日向の誕生日当日。

 

他の連中は雪音の家に現地集合らしいのだが、俺と小日向は別の場所で待ち合わせしてから行く事になっている。

というのも…

 

「ホレ…その……誕生日おめでとう」

 

小日向にプレゼントを渡す為だ。

ちなみに渡したのは、本人の強い希望で指輪だ。

S.O.N.G.の給料があるので、買えなくはないのだが、学生が贈るプレゼントとしては高額なので、最初は別の物と言ったんだが最終的に押し切られた形だ。

 

「八幡…ありがとう!」

 

受け取った小日向はそれを何の躊躇いもなく左手の薬指に嵌める。

 

「次は()()を頂戴ね?」

 

「バ…しょ…しょういうにょはせめて学校卒業してからだな…」

 

噛み噛みである。

まぁ…こいつには今さらだし、問題無いだろう。

 

「うふふ、でもこれが私の正直な気持ち」

 

……まったく…

今から尻に敷かれるのが目に見えているので、お先真っ暗である。

結婚は人生の墓場とは良く言った物だ。

 

……そういや、家に居候してるネコキチも誰か貰ってあげてくれませんかねぇ…

あの人もうすぐアラフォーなんだけど…

 

っと、そろそろ立花達と合流する時間か…

 

「こひ…」

 

「名字禁止」

 

はい、すみません。

でもこっちの方が言い慣れてるんだから勘弁してくれません?

 

「……未来、そろそろ行くか」

 

「うん」

 

名前で呼ぶだけでニッコニコである。

こいつ、そんなチョロくは無い筈なんだがなぁ…

 

***

 

雪音の家に着き、目ざとく小日向の左手の薬指に気付いた雪音や月読がギャーギャー騒いでいたが、一段落してようやく晩飯を食おうという事になった。

 

「…おい」

 

「はい、お醤油」

 

「ん…サンキュ」

 

「ねぇ…」

 

「おう」

 

そう言ってドレッシングを渡す。

………ん?何か妙に静かだな…

こいつら、そんなに黙って飯食える奴らだっけ?

 

「熟年夫婦デスか!?」

 

「そう!それ、私も思った!」

 

と思ったら、急に暁と立花が騒ぎだす。

………?どういう事だ?

婚約はさっきしたけど、結婚はしてないよ?

 

「長年連れ添ったみたいな阿吽の呼吸…これが…」

 

「チクショウ…敵わない訳だ…」

 

今度は月読とマリアさんが呟く。

当の小日向は顔真っ赤だしなんなの?この空気…

 

「雪音、何故小日向と比企谷は言葉も交わさずお互いの事がわかってるんだ?」

 

「アタシが聞きてぇよ!!チクショウ」

 

あ、そういう事か…

素でやってたわ。

小町もアラサーも特に何も言わんし、お互いこのやり取りに慣れ過ぎてるからなぁ…

 

…で、この空気どうすんの?

 

「そ、それじゃあケーキ食べよっか?」

 

立花が切り込む。

よし、さすが立花だ。

良くも、悪くも空気を変える達人である。

 

「そ、そうだね。私、取ってくるね」

 

「あぁ!未来は主賓なんだから座ってて!待ってて!ちょぉっと行ってくるから!」

 

立花ェ………

今のは居たたまれない空気だったから席外したい感じだったぞ…

またおかしな空気になるから言わないけどね?

相変わらず、褒めたと思ったらすぐこれである。

 

***

 

微妙な空気の中、ケーキも食べ終わり、パーティーも一段落し、各々談笑したりテレビを見たりしている。

……今さらだが、これ、俺泊まる必要なくね?

どうする?帰るか?

 

………と思ったら、我が彼女が手招きしている。

 

「八幡、ちょっと抜け出そっか」

 

え?お前から誘ってくんの?

どういう事?

 

訳もわからぬまま、念入りに神獣鏡で気配を消した小日向に連れられた先は…

 

「………」

 

「………だめ?」

 

恋人達御用達のお城だった…

 

こいつ…おかしいと思ったが、この為だけにお泊まり会やら何やら裏で手を回して企画させやがったな?

目的は俺が泊まりがけで外出する事だけだったのだろう。

証拠は何も無いが、どちらかを問われるとこいつはやる奴である。

いや、俺も興味が無いかと言われると嘘になるがさすがにこれは心の準備が………

 

「八幡から指輪貰った時から我慢できなくて…」

 

いや、お前それ最初からというかプレゼント要求した時からじゃねぇか…

つまり、推定どころか確実にクロである。

 

「未来!ハチ君!何処行ったの!?」

 

「ぜってぇ見つけるぞ!」

 

「やらいでか!デス!」

 

やべ、あいつら来やがった。

お前らご近所様に迷惑だからもう少し静かに行動しろよ…

 

それから、俺達を捜索する装者達から逃げたりやら、唯一見つかったマリアさんを小日向が有無を言わさず瞬殺したりやら何やら色々あったのだが、結果がどうなったかは諸兄のご想像にお任せする。

おかげで寝不足なんだよ…




という訳で393誕生日回でした。


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