とあるバッジの超能力 (ヒイラギ1028)
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1話

すばらしきこのせかいを知らないと難しいかも……。
駄文です。ゴメンなさい。ほんとうにごめんなさい。


今、俺はテレビの画面をずっと凝視していた。

別に好きなテレビ番組という訳ではない。

というか初めてみる番組だった。

 

『去年の大覇星祭では――』

 

大覇星祭……学校が合同で行う大規模な体育祭、だった気がする。

でも、おかしい。大覇星祭なんていうのは、現実にはない。

『とある魔術の禁書目録』という作品に存在した架空の行事だったはずだ。

こんなドッキリ俺に仕掛けても意味はないだろう。

 

次に、俺は鏡に映る自分の顔を見つめた。

俺は高校生で、真っ黒な髪だったはずだ。なのに身長は縮んでいる。

若干年齢も変わっている気がする。中学生程度に見える。

髪の色は、薄い黄色……オレンジだろうか?

これは夢か。気づいたら『とある』の世界にいて容姿も変わってました。

なんてそんな冗談は笑えない。

次に、俺は小さなバッジをテーブルの上に並べていく。

その数はとても多く、30個は軽く超えているだろう。

これは、とあるゲームに出てきた武器だった。

バッジをつければ超能力(サイキック)が使える……というゲームだ。

確か『すばらしきこのせかい』……だったっけ?

 

これが夢じゃなくて、自分が本当にこの世界に来たというんだったら……。

俺は頭を抱えてしまった。

 

「死亡フラグがぎっしりだろ……」

 

非常にまずい。この世界――前の世界でもそうだが――俺はただの一般人だ。

魔術師なんてきたら瞬殺される。どうすればいい?

このバッチがゲームの力を宿しているのなら、まだ希望はある。

駆け引きは苦手だけど、ハッタリなどで誤魔化せるだろう。

いや、まずは原作に関わらなければ大丈夫だろう。

だけれどもしもという事がある……このバッジが効果がないとしたら?

ばったり魔術師とであったりしたら? それに、今は原作の何月何日だ?

既に原作が終わっている可能性は? 

 

「……外に、出てみるか」

 

テーブルの上に並べたバッジを数個掴み取り、俺は外を出る。

どうやらここはアパートらしい。階段を降りながら考える。

今が原作のどこだかがまったく分からない。

科学の超電磁砲なんてアニメもなにも知らない。知っているのは

超電磁砲の事件が禁書目録よりも早かったってことくらいだ。

確か……銀行が爆破された、んだっけか?

 

俺はキョロキョロしながら辺りを探す。

とりあえず今が何月何日かだけは知っておきたい。

どのくらいこの世界にいるのかは知らないが、日付ぐらいは……。

そこで、俺はポケットに手を突っ込んだ。中のバッジがカシャリと揺れながら

四角い物体に手が当たった。疑問に思いながら引っ張ると、携帯だった。

 

「…………」

 

今にして思えば、俺の戸籍やら名前やらはどうなっているんだ?

俺の名前は――――何だっけ?

思い出せない。友達の顔も、家族の顔だって思い出せる。

どんなゲームをやっていたか、どんな本を読んでいたかも覚えてる。

でも、人の名前だけが思い出せない。

 

視界が、滲むのを感じた。どうしよう、泣きそうだ。

感情も年齢に引っ張られているのかもしれない。

目元を擦りながら、俺は前を見る。

 

「……あ、れ?」

 

銀行のシャッターが閉じている。

今は昼頃だ。こんな時間帯に閉まっているわけがない。

日付を見ようと思ったが、パタンと携帯を閉じてポケットに突っ込む。

……まさか、爆発なんて事は……。

ちらりと、再びシャッターへと俺が視線を向けると同時に……

 

 

 

爆発音と共に、シャッターが吹き飛ばされる。

 

 

 

「っ、うぇっ!?」

 

シャッターは粉々となり、破片がとてつもない速度で降り注ぐ。

それは、前方にいた俺にも来るというわけで……

 

「ッ……!」

 

グイッ、と俺は腕を振り上げた。

振り上げると同時に、地面から氷柱が出現して破片が氷柱に突き刺さる。

 

「あ、あぶな……」

 

胸に手を当てながら、呼吸を繰り返す。

今のは、《アイスブロウ》と呼ばれるバッジだ。氷柱が敵を貫くという技だが

咄嗟にできてよかった……。

氷柱が消えるのを見ながら、俺は銀行へと視線を向けた。

すると、銀行からは強盗らしき三人が、出てきていた。

 

「…………」

 

これは、絶好のチャンスではないだろうか。

バッチがどの程度通用するか、試してみたい。

だけど、それはつまり原作介入を意味するかもしれない。

だけど、こんな力を我慢とか……できるか?

 

「できないな」

 

首を横に振りながら、俺は駆けた。

足音を響かせながら走ればそれはバレるわけで……

 

「あぁ? んだよ、ガキ」

 

一人の男性が、俺に気づいてその手に炎を宿した。

あれが超能力? 発火能力って言うんだっけか。

ボッ、とその炎が俺に向かって撃ちだされる。

 

「ハッ……! そんなの効くかよ!」

 

空間に、人差し指で軽く円をかく。すると、黒い球体が現れて

その炎を吸い込んでしまった。

 

「なっ……グァッ!?」

 

突然、炎を出した男が何かにどつかれたかのように吹き飛ばされた。

眉をしかめながら状況を把握しようと、俺は周りを見た。

ついさっき男が立っていた場所には、ツインテールの少女が立っている。

いつの間に……? あそこには誰もいなかったはずだ。

 

「おいおい! 何やられてんだよ、馬鹿!」

 

残りの一人が喚きながら、俺と前方にいる少女を睨みつけた。

少女は、腕についた緑色の何かを男に見せている。

ここからではよく見えない。

 

風紀委員(ジャッジメント)ですの! あなた方を、器物破損及び強盗の現行犯で

拘束します!」

 

すると、強盗たちは腹を抱えて笑い始めた。

何かおかしな事があったんだろうか? 自分の状況がわからない馬鹿か?

彼女は突然ここに現れたんだぞ。テレポートするかのように。

 

「どんな奴が来るかと思えば……」

 

「風紀委員も人手不足かァ?」

 

どけよ、と言って強盗は少女へと殴りかかろうとする。

 

「そういう三下の台詞は……」

 

フッ、と彼女の姿が消えた。さっき突然現れたように、存在しないように

彼女は消える。強盗は、声も上げずに沈黙した。

動きがまったく見えなかった。そのまま強盗たちは、一人の少女によって

捕らえられた。

 

 

 

 

 

「…………」

 

ポケットの中のバッジを握りながら、俺は考えた。

この力は十分通用するんじゃないか?

別に、原作に介入してもどうにでも……と、そこで考えた。

第一位や第二位。魔術師、神や天使にも通用するのか?

とりあえず、介入さえしなければ生活は送れる……いや、待て。

この場合学校とかどうなるんだ? 後お金とかもいろいろ問題は山積みだ。

 

「――聞いてますの?」

 

「……ん?」

 

考えを中断し、俺は顔を上げた。

ついさっき風紀委員と名乗った少女が目の前にいた。

 

「ご協力、感謝致します」

 

「……強力?」

 

そんなの、した覚えはまったく覚えはない。

ただバッジの力を試しただけだし、結局俺はなにもできていない。

 

「……そんなの、した覚えない」

 

「気を引いてくれた訳ではありませんの?」

 

少女は首を傾げながらそう言った。

いや、気を引くどころか倒す気まんまんだったんだけれど。

 

「――黒子!」

 

また、少女がこっちへと駆けてきた。

血相を変えているのを見ると、何か問題でもあったんだろうか。

 

「お姉様。どうしたんですの……?」

 

「今の騒ぎの間に、男の子が一人いなくなったって……。

そっちが片付いたなら、探すのを手伝って!」

 

俺は、この少女の事を知っていた。

というか、この風紀委員の子も知っていた気がする。

 

学園都市第三位、『超電磁砲(レールガン)』の異名を持っている少女だ。

つまり、というかこれは『とある科学』の、何処かでの話なのか?

 

「…………ん?」

 

彼女らの向いている方向とは逆……小さな男の子がいる。

探しているのはあの子、だろうか。

 

「探してるのは、あれか?」

 

指差した方向に、少女二人は振り返った。

振り返ると同時に、ガラの悪い男が近づいているのが視界に入った。

 

 

それは、強盗の生き残りだった。

男の子の腕を無理やり引っ張り、どこかに連れて行こうとしているようだった。

人質にでもする気か?

その時、黒髪の少女が駆けていった。

男の子を強盗から奪った彼女は、強盗に顔を蹴られて地面へと倒れこむ。

強盗はそれを放置したまま、車に乗ると走らせる。

 

「流石に、見過ごせない」

 

ポケットの中で握るバッチは、ゲームの中でも俺がしょっちゅう使っていた武器だ。

使い方は、頭の中に自然と入ってくる。

逃げる強盗へと急いで放とうとして、気づいた。

逃げるなら方向は逆だろう。何でこっちに向かって走ってくるんだよ。

まぁ、的がでかくなる分当てやすいだろう。

 

「黒子っ!」

 

名前を呼ばれた少女――黒子――はびくりと肩を震わせた。

 

「こっからは私の個人的な喧嘩だから。

悪いけど、手出させてもらうわよ」

 

怒りを表すように、彼女の前髪から火花が散った。

彼女は道路のど真ん中に歩むと、こちらにくる車へと向き合った。

俺は、彼女と少し距離を取りながらも隣に立つ。

 

「ちょっとだけ、俺にもやらせろ」

 

超電磁砲は、ちらりと俺の方を見ると前へと視線を戻した。

 

「いいけど……足引っ張んじゃないわよ」

 

……正直、引っ張るかもしれない。

不安なところだけど、こんな出しゃばったんだ。最後まできっちりやらせてもらおう。

 

俺は手を前へと突き出し、エネルギーを貯める。

これは、一撃の威力は最強だが一回の戦闘で一回切りというデメリットがある。

最大限まで貯めてやらせてもらおう。

少女は、小さなメダルのような物を取り出して突き出した。

それはバチバチと電気を纏い始める。

 

エネルギーを最大まで高めると、俺はそれを一気に放出する。

それは、少女も同じだったらしくほぼ同時に放つ。

レーザーと超電磁砲は、あっさりと車を貫いていった。

 




使用バッジ
・アングイス(レーザー)
・ぎゅんぎゅんオクトパス(炎を吸い込んだあれ)
・アイスブロワ(氷柱)


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2話

すばらしきせかいを知らない人のために。

バッジを装備すると、サイキックと呼ばれる超能力が使えるようになります。

はい。そんだけです。


「……はぁ」

 

手を降ろしながら、俺は息を吐いた。

車は大破し、乗っていた男は投げ出された。

地面に叩きつけられたせいか、男は気絶していた。

これで終わりだろう。連れ出されていく男を見ながら俺は考えた。

 

 

 

確実に勝てる戦いにだけ参加しよう。

第一位だとか、聖人とか天使とか、勝てそうにない奴らには

絶対に挑まないようにしよう。勝てると確信がある原作の話にだけ介入しよう。

それだったら大丈夫だろう。

 

「では、支部までご同行お願いしますわ」

 

「……え?」

 

考えがまとまりさぁ帰ろう、とした所で黒子と呼ばれた少女が近寄ってきた。

いや、俺なにも悪いことした覚えないんだけど?

というかいい事じゃないのか?

 

「……何でだよ、悪い事をした覚えはない」

 

「ただの事情聴取ですから、すぐに終わりますよ?」

 

頭にお花畑のようなアクセサリーをつけた女の子が近寄ってきた。

 

「……それだったら、別に構わない」

 

てっきり手錠でもかけられるかと思ってヒヤヒヤしていた。

そしたら何が何でも逃げたけれども。

俺は頷きながら、三人の少女についていく事にした。

 

 

 

 

 

「えーっとですね……次は、お名前を教えてください」

 

「…………」

 

風紀委員の支部、第一七七支部について最後に聞かれたのは名前だった。

お花畑の少女――初春飾利――に聞かれ、俺は冷や汗が流れるのを感じた。

状況などを聞かれて、見たまま聞いたまま答えたが……。

やばいな、自分の名前なんて知らない。

多分、俺の事を書庫で調べるんだろう。それは困る。

 

「さ――桜庭」

 

咄嗟に、というか勝手に口を動かしていた。

 

「――桜庭、音操」

 

初春は、カタカタとコンピューターで検索してエンターキーをおした。

 

「えっと……柵川中学の転入生で、夏休みあけに三年生として

入るそうです。つい最近外から来たみたいですねー。

身体検査を受けた結果、level3の電撃使いだそうです」

 

「……え?」

 

何故か、俺と御坂が同時に声を上げた。

何事かと白井と初春がこちらを振り返る。

何で俺の事が載っているんだ? 俺が来たのは今から数時間程度前だぞ。

 

「あ、えっと……能力とか、反映されるの早いんだな」

 

「身体検査を受けたら、すぐに情報をまとめますからねー」

 

まぁ、俺は疑問というか、不審な声をあげたけれど、どうして御坂も

声をあげたんだ? 視線を御坂に向けると、僅かに眉をしかめているのが見えた。

 

「……お姉様? どうかしましたの?」

 

「……えっ? あ、いや。何でもないわよ」

 

そう言って、御坂は微笑んだ。

 

「なぁ。そろそろ帰ってもいいか?」

 

「あ、はい。ご協力ありがとうございました」

 

やっとか……と思いながらも俺は立ち上がった。

軽く頭を下げて、俺は支部を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

バタンと、扉が閉じた方向を御坂美琴はジッと見つめていた。

アイツの能力は、電撃なんかじゃない。

車を貫いたレーザーらしき物は、どちらかと言えば《原子崩し》に近い。

それに……と、御坂はあの事件を振り返った。

あの時、彼はシャッターの破片を氷柱で防いだ。

炎を黒い球体が吸い込んだ……そんなのが、電撃使いにできるわけがない。

 

「調べる必要があるわね……」

 

顎に手を当てながら、ポツリと小さく呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「~♪」

 

ヘッドホンに手をあてて、曲を聞きながら俺は道を歩いていた。

事情聴取から数日がたち、今は二十四日。

何故か、銀行のカードに大量のお金が振り込まれていた。

使うのは怖かったから特に使わずに食料だけ買わせてもらった。

にしても、ヘッドホン選びや買い物にえらく時間がかかってしまった。

もう午後八時頃だ。十字路に通りかかったところで、俺はある事に気づいた。

 

「……誰も、いない?」

 

まだこんな時間帯だ。そんな、誰もいないなんてことは有り得ない。

……魔術の原作はところどころ覚えているけれど、日付までは覚えていない。

予想だが、これは人払いの魔術が……?

 

「僕は、人払いの刻印を刻んだと思ったんだけどね……」

 

突然、目の前に現れたのは赤髪の男。

バーコードの刺青。その手に、カードのような物を持っていた。

 

「……ンだよ、人払いの刻印ってのは? 魔法使いか何かかよ」

 

「なにもしらない一般人か……いや、上条当麻のような奴かな?」

 

ステイル=マグヌス。確か、炎の巨人みたいな奴を操っていた奴だ。

こんなの、原作であったか? アニメではどうだった?

 

「人払い、上条、当麻……?」

 

確か、上条当麻と神裂火織が戦った事があった筈だ。

その戦闘を邪魔させないように人払いをしていたんだっけ?

だったら、この先で戦っている?

 

「さてと」

 

俺のほうへと、歩みを進ませながらステイルは近づいてくる。

 

「ここで死ぬか、記憶を消されて日常に戻るか……君はどっちがいい?」

 

選択肢は、くれるらしい。上条当麻の時は殺そうとしてたよな?

 

「そうだな……」

 

ポケットの中のバッジを弄びながら、俺は考えるフリをする。

ステイルは炎剣を使っていたよな。炎の巨人を中心とした戦い方をするはずだ。

だけど、ここらにはルーンはない。つまり炎剣の戦いになるはずだ。

分析を終えた俺は、口を開いた。

 

「テメェをぶちのめして、人払いをした理由を聞かせてもらう!」

 

そう言い放ち、俺は近くにあった車を吹き飛ばす。

車は速度を上げながらステイルへと突き進む。

ステイルは炎を宿した腕をひと振りして車を燃やし尽くした。

 

「――Fortis931(我が名が最強である理由をここに証明する!」

 

直後、炎剣の爆発が俺を包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――呆気ない」

 

煙を見つめながら、ステイルは小さく呟いた。

てっきり上条当麻の知り合いかと思ったが……彼のような、打ち消す能力は

持っていなかったらしい。

 

踵を返そうとした時、突如音が鳴り響いた。

ギャリリリリリと、音は近づいてくる。

煙を見つめて目を凝らすと、鎖が煙を切り裂いて一直線に伸びる。

 

「なっ……!?」

 

彼の車を動かす力から見ると、《念動使い》の筈だ。

いや、鎖を飛ばしてきたのか?

鎖を避けるために横に体を動かすと、地面が一瞬光ったのにステイルは気づいた。

直後、氷柱が鼻先を通って突きあがる。

 

「グッ……!」

 

無理な体制のまま、ステイルは後方へと下がる。

それを追うように氷柱が三連続で尽き上がる。

 

「――うおおお!」

 

煙から飛び出して、彼は駆け込んできた。

ステイルは、走ってくる男を見ながら数日前の出来事を思い出した。

 

「(これは、上条当麻に殴られた時の――)」

 

振り上げた拳がステイルの顎を直撃し、そのまま衝撃が上にかかる。

 

「おらぁッ!!」

 

ステイルはその体を数秒浮かせたあと、地面へと崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

 

肩で息を整えながら、俺は脱力した。

炎剣が当たった直後に回復バッジを使ってよかった……。

一瞬体が弾け飛んだかと思ったけどセーフだった。

 

今は全てのバッチがリブート(リロード)状態だ。

これが全部回復してから、上条当麻が戦っている場所に――

 

「――命に別状は無いようですね……」

 

「……は?」

 

ステイルの傍にしゃがみこみながら、手を触れて脈を測っている女性がいた。

……まったく、気配を感じなかった。

 

「……人払いの理由はお前か」

 

構えを取りながら、俺は女性を睨みつける。

今俺の頭の中では、逃げることしか考えていなかった。

彼女は神裂火織……世界に二十人といない《聖人》だ。

身体能力は一般人を凌駕する。勝てるわけがない。

 

「……えぇ。人払いは彼――ステイル――に刻んでもらいました」

 

ポケットに手を突っ込み、バッジを手に取る。

神裂火織は立ち上がると、馬鹿でかい刀を構えた。

 

「……貴方も上条当麻の仲間ですか?」

 

「ハッ、誰だよ。ソイツは……」

 

会話を伸ばそうとしながら、俺は考える。

本気で逃げても、逃げ切る自信が俺にはない。

本気で戦っても、勝つという自信が俺にはない。

上条当麻は、生かされたんだよな。禁書目録の足枷として……。

 

「――禁書目録」

 

ピクリ、と彼女の表情が動いた。

考えろ。考えるというのは人間の最大の武器だ。

俺には《原作》という知識がある。上条当麻のような、《口先の魔術師》みたいに

敵を説得して仲間にするなんていう事はできない。

だけど、《原作》という知識を使えば、一時的に助かるかもしれない。

 

「上条当麻に止めを刺さなかったのは、彼女の足枷になるから……」

 

「……どこまで、知っているんですか?」

 

険しい表情で神裂火織は俺を睨みつけてくる。

一字一句でも間違えるな……

 

「さぁ……どこまで、だろうな。ただ、彼女のタイムリミットが近づいているのは知ってる」

 

クソ……そこまで詳しく覚えてない。

インデックスのタイムリミットはいつだった?

神裂が襲った時点で一週間は切っていた筈だ。

 

「――彼女を助ける方法。俺がしってるのはそこまで」

 

「インデックスを……助ける、だって……?」

 

頭を抱えながら、ステイルは立ち上がった。

俺は結構本気で殴ったんだけど……よくこの短時間で起きたな。

 

「あぁ。脳の仕組みについては、お前達よりは俺達のほうが詳しいって事だ」

 

「……口車に乗せられるなよ……神裂……」

 

カードを構えながら、ステイルはそう言った。

 

やばいな。正直、ステイルに勝ったのは不意をついたからと言っていい。

俺を念動使いと思わせてからの奇襲が成功したからだ。

だけど、こうも警戒されて二人だと、俺は死ぬ。

 

「――話だけ聞きましょう」

 

「か、神裂!?」

 

刀をおろしながら、神裂はそう言った。

 

「えっと……言って、いいか?」

 

神裂は頷き、ステイルは忌々しげにカードをしまった。

原作の事を思い出しながら俺は一気にまくし立てる。

 

「大体、完全記憶能力者がこの世界で禁書目録だけだと思ってるのか。

そういう人が世界にいるからそういう名称があるんだよ。

完全記憶能力者はさ、確かにどんな記憶だって忘れることはない。

だけどさ、それでどうこうなる訳ないんだよ。人にはもともと百ウン十年の記憶が可能なんだ」

 

「……その記憶の大半、十万三千冊で圧迫されているんだぞ。

だから彼女は一年ごとに記憶を消すしかない」

 

「そこ。そこが問題なんだ」

 

指で俺はステイルを指出した。

 

「禁書目録の記憶を全部消した時、彼女は言葉も歩き方も全部忘れたか?」

 

神裂とステイルは顔を見合わせた。

禁書目録が記憶を失ったとき、ステイル達から逃げ出したんじゃないか?

 

「人間の記憶っていうのは一つだけじゃないんだ。言葉や知識を司る部分とか。

運動の慣れを司る部分とか――思い出を司る部分とか。

その十万三千冊は、言葉や知識を司る部分で記憶されているんだよ。

だから思い出を司る部分を消したって、何の意味もない」

 

「……貴方の言った事は分かりました。ですが、それがどうして彼女を救うのですか?」

 

「危険な十万三千冊が、野放しにされてるとでも思っているのか?

絶対に裏切らないように、何かしら細工している……頭に」

 

ここで俺は口を閉じた。もう、俺の言える事は何もない。

バッチのリブート時間も稼ぎまくった。

これなら、ギリギリ逃げる事もできるだろう。

 

「上条当麻のあの手なら、彼女の鎖も断ち切れると思う」

 

でも、と俺はそのまま告げた。

 

「でも、それは上条当麻の力が必要だし、禁書目録の鎖も探さないといけない」

 

上条当麻は昏睡状態に陥っている筈だ。

原作を崩さないように介入するのって案外むずい。

 

「タイムリミットギリギリまで、ハッピーエンドが訪れるのを願うか。

さっさと諦めて、次の主人公が訪れるのかを待つか!

それとも――」

 

俺は後方へと下がり、遠くに狙いを定めた。

 

「お前達で決めろ」

 

バッジの力を使って、俺はその場から消えた。

 




一気に飛んでごめんなさい!
話が変でごめんなさい!
駄文でごめんなさい!

本日のバッジ

・サイコキネシス (車吹き飛ばし)
・まぼろしブレンド (炎剣の回復時)
・アイスブロウ (氷柱)
・アイスアッパー (氷柱三連続)
・エレカジワイヤー (鎖)
・ムラサメ (アッパー)
・トップギア (最後の消えたとき)

ゲームの装備制限がないからね! うん!


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