復讐するは『我』にあり (もよぶ)
しおりを挟む

第一話

その日材木座は怒っていた

 

今日の体育の授業のことである、例によって二人組作っての号令とともに皆がばらける、当然相手のいない材木座は同じく相手のいないはずの比企谷と組もうと声をかけようとしたら、こちらが声をかけるよりも早く一目散に戸塚の方へいってしまったのだ。

 

「戸塚殿は組む相手がいるであろうに」

 

当然あぶれてしまった材木座は先生と組むという残念な結末に終わった。

これが一度や二度程度ならまだ我慢も出来たが、ここしばらくはずっとこうである。

 

「我と貴様は今まで地獄を潜り抜けた相棒だったであろう」

机をドンと叩く

 

加えてこの間持って行ったラノベの感想を聞きに行った時のこと、いつものように雪ノ下に散々な評価をされ次に比企谷の番となったわけだが

 

「おまえさーパクリもいいけどもうやめた方がいいんじゃね?おまえ才能無いよ、もう持ってくんな」

 

才能がないのはわかっている、その上でやはり読んでほしいのにこれはあまりにひどい。

 

これに対し雪ノ下が反論する

「比企谷くん、これは奉仕部の活動一つよ?職務怠慢は許さないわ。あと彼はまだ努力が足りないだけよ、確かに文脈や文法、内容は酷い物だけどこれだけ私たちに言われているのに何度も持って来てくれるのよ?才能がないとかは彼が死ぬほど努力した上で判断することであって今の私たちが言うことではないわ、それに私たちはまだ学生、努力する余地はまだまだあるはずよ」

 

「そういうもんかね?つか文脈文法内容って何一ついいところねぇじゃねぇか」

「材木座くん、また持ってきなさい、比企谷くんにちゃんと読ませるから」

「やっぱ俺が読むの前提かよ、今度はもう少し読みやすくしてくれよ」

そう比企谷にめんどくさそうに言われ、材木座は奉仕部を後にする。

 

「雪ノ下殿は辛辣ながらもきちんと意見をくれるのだが、八幡の奴今日のは酷すぎる、大体最近我に対する扱いがぞんざいすぎてないか?」

「それに雪ノ下殿や由比ヶ浜殿では飽きたらず生徒会長殿まではべらしおって」

 

材木座がラノベをもって行った時にはちょうど一色も奉仕部にきており、比企谷にやけにべたべたしたスキンシップをしているところだった。

それを由比ヶ浜が止めようとしてたり雪ノ下がやめなさいと言ったり、傍から見るとどっからどう見てもハーレム物のラノベ主人公だったのだ。

 

「あやつ自分ではボッチは最高だリア充爆発しろとか言ってたくせに」

材木座は怒り心頭だ、

「前の体育の時葉山殿のことを我が運動も出来て頭も良くてモテモテで凄いなと言ったら『あいつは自分のグループを壊したくないだけの卑怯で臆病な奴だ、爆発すればいいのに』とかなんとか言ってたな、僻みかと思い我も同調してそうだ爆発すればいいと言ったのだが、おぬしがその爆発対象になってるではないか」

怒りに任せてバンバンと机を叩く

 

どうにか比企谷に一泡吹かせてやれないかと思い思案する。

「ん?そういえば?」

比企谷が絡まれたりしていた時のことを思い出してみる、普通女性に絡まられると大体はまんざらでもなかったりニヤついたりするものだが、その時の状況は違っていた、本気でどう対処したらいいかわからない困ったような不安げな顔をしているのを思い出したのだ。

それに部室以外でも雪ノ下や由比ヶ浜と出歩くときは必ず比企谷は一緒にいかず少しだけ離れて着いていっているのも思い出す。

 

「ふむ、八幡も所詮我と同じ、女性の扱いに慣れているわけもなし、女子どももああいう態度取っている以上嫌ってるわけでもないのであろうが、八幡はそれに全く対処ができないということか」

とすると奉仕部の面々を焚き付けて今まで以上に比企谷へ接触するように仕向ければどうだろうか?最高の嫌がらせにならないだろうか?

 

材木座は邪悪な笑みを浮かべてにやりとする

「いいこと思いついた、まっていろよ八幡、復讐するは我にあり!我をぞんざいに扱ったことを後悔させてやる」

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二話

材木座は計画の為に一つのラノベを書いた

「あとはこれを八幡がいない隙に雪ノ下殿達に見せれば…」

想定される受け答えの練習を念入りに行う、挙動不審になって話を聞いてもらえない事態になったら計画が台無しになるからだ。

「奉仕部は美人ぞろいな上に雪ノ下殿は怖いから気を付けないとな、これも復讐の為だ」

戸塚に連絡をして比企谷を放課後連れ出してほしいと連絡したところ二つ返事でOKが帰ってきた

 

「これで八幡は今日奉仕部にいくことはあるまい」

にやりと一人笑みを浮かべる

「準備は万端、細工は流々後は結果を御覧じろ!さて!では死地へと赴くとするか!」

コートの裾を翻し材木座は奉仕部へ向かう

 

奉仕部部室~~~~~~

 

「ヒッキー今日はさいちゃんとデートだから奉仕部は休むって」

由比ヶ浜はつまらなそうに雪ノ下に報告する

「そう…そのうち同性愛とかに目覚めたりしないかしら、それが心配ね」

雪ノ下は少しだけ寂しそうに言う

 

「えー先輩今日来ないんですかーじゃあ私何のために来たんですかー」

最近ずっと入り浸ってる一色が不満そうに言う

「そもそもなぜあなたがいるのかしら?生徒会の仕事はどうしたのかしら?」

「それは大丈夫です、自分の分は終わらしたんでー、残りは他の人がやってますが先輩に責任とって手伝ってもらうかとー」

 

とその時扉をノックする音が聞こえる

「どうぞ」

雪ノ下がいつものように言うと扉から例の暑苦しいコートを着た巨体が現れた。

 

「比企谷くんは今日来ないのでまた出直してくれるかしら?」

いきなり出鼻をくじかれる発言、でもここで引き下がったら計画が台無しになる

「そ、そうだったのか、八幡はいないのか、それは知らなんだ」

知らないふりをして書き上げたラノベを取り出す

 

「ま、まあいなくとも依頼は依頼だ、これを読んで感想が欲しい、既にコピーを取ってある」

とコピーしたラノベを3部雪ノ下、由比ヶ浜、一色それぞれの前に置く

「え?あたしも読むの?」

由比ヶ浜は嫌そうな顔をしている

「えーなんで私もなんですかー、私これでも忙しいんですけどー」

一色も嫌そうな声で言う

「生徒会の仕事が終わって暇なのでしょう?ここにいる以上一蓮托生よあなたも奉仕部の活動に参加しなさい」

雪ノ下はここぞとばかり強引に一色を巻き込む

 

「おほん、で、ではこのラノベの説明をさせてもらおうか」

いつもはこんなことを言わないので、三人はすこし驚きながら材木座に注視する、その視線と目を合わせないよう宙を見ながら材木座は説明を続ける

「き、貴殿らはラノベを読んでいて疑問に思ったことはないだろうか?」

 

それに対し雪ノ下が答える

「まず、私が疑問なのはここには女子しかいないのに『貴殿』はおかしくなくて?あと私たちはラノベはあまり読まないからそういうのはやっぱり比企谷くんに…」

 

「い、いいや待て、我が悪かった、貴女、貴女であったな、うむ、それで、我が疑問に思ったラノベのことを簡単に説明するとだハーレムエンドについてなのだ」

 

「ハーレムエンド?」

雪ノ下が首をかしげて言う

 

「あ、それ聞いたことあります、なんか主人公の男一人に対して女の子がたくさんいてみんな俺の嫁だ!って言うやつですよね?木材先輩みたいな気持ちの悪い男子がそういうマンガ読んでたの見たことあります。正直ありえなさすぎて引きました。」

一色が声を張り上げて説明する。

「いろはちゃん、一応中二は先輩なんだから気持ち悪いってのは…」

由比ヶ浜がフォローに回るが一色はいいじゃないですかーと歯牙にもかけない様子

 

「う、うむ、まあ我のことはおいといて、大方一色殿の説明どおりだな、それでそのハーレムエンドでラノベが終わった場合その後の展開というのを想像してみたのだ」

見た目はいいのになんでこんなこというのこの女子はと若干へこみ気味になる

 

「どうなるの?」

由比ヶ浜が問いかける

「うむ、異世界、つまり現代社会と通念も常識も通じ無い舞台であればなんでもよかろうが現代社会と似通った世界でのハーレムエンドはハッピーエンドにはらなず悲劇になるのではと、そう考えたのだ」

 

「つまり男を取り合って女性たちが血みどろの争いをするということかしら?」

雪ノ下が由比ヶ浜と一色を見ながら材木座に問いかける

 

「いや、その手のラノベ主人公はとてもやさしいのだ、女子たちが争うのを好まない、あとは読んでみてくれ」

材木座はその雪ノ下の視線を逃さなかった

「ではまた明日来る、枚数は少ないからすぐにでも読めると思う」

そう材木座は言いさっさと奉仕部部室から外に出る。

 

「予想通りだったな、やはりというかあの女子どもは八幡に少なからず好意を抱いているようだ」

先ほどの雪ノ下の視線の先を思い出す。

「明日が楽しみだ」

材木座は高笑いをしながら校舎を後にした。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第三話

次の日の放課後、材木座はまた戸塚にお願いして比企谷を連れ出してもらう

二日連続のお誘いに比企谷は浮かれ調子で昼休み様子を見に行ったら明らかにウキウキしているようだった。

 

「その気分も今日までだぞ八幡、今のうちに楽しむがよい!ヌァーハッハッハッハ!」

周囲から奇異の目で見られながら廊下で高笑いをする材木座であった。

 

放課後、奉仕部部室にて

 

「さて、感想を述べてもらおうか」

材木座は雪ノ下に向かって言う

 

「文法とかいろいろあるのだけれど、そもそもこの話は酷すぎないかしら?」

「そうだよ中二、この主人公ありえなさすぎだよ」

「そうですね、雪ノ下先輩と結衣先輩の言うとおりだと思います」

 

かかったな、思った通りだ、材木座は心の中でにやりと笑う

「ふむ、ど、どの辺がであろうか」

 

「こんなにモーションかけてるのになんで主人公はそれに気が付いてあげれらないの?ここまでやったら好きってわかるじゃん」

「そうですよ、それで主人公だって好意持ってる女の子いるのになんでこの主人公告白もせず日和見の態度取り続けてるんです?」

「一番ありえないのは最後ね、みんなの好意に気が付いていたけど結局誰も選ばずみんなの前から姿を消すっていうのが酷すぎるわ」

三人から矢継ぎ早に意見を言われる

 

「きで、いや貴女らがそういうのは当然であるやもしれん、でもこの主人公は優しいのだ、自分から誰かを選んでしまうと角が立つと思ってできないのだよ」

「でも…」

三人はものすごく不満そうだ

「それにだ、肝心なのはハーレムエンドからのスタートではあるが、誰も主人公に対して具体的に好きだと告白してはいない、思わせぶりな態度ばかりで具体的な行動に出ていないであろう?、だから主人公は余計に戸惑ってしまうのだ、本当にこいつらは俺に好意を抱いてるのか、俺がそばにいても良いのかと」

 

「でも…こんなのおかしいですよ」

 

「もし自分から告白して、OKをもらったとしても周りとの関係がおかしくなるのは目に見えている、この場合女子たちも互いに仲良しで主人公もその関係がいいと思っているからな、選ばれなかった女子とわだかまりが出来てしまうであろう、それに実は告白された女子から見たら恋愛対象じゃなかった、友達として好きだったとか言われてしまった場合が一番最悪だな、だから女子たちの関係を壊さないように姿を消すわけだ」

 

「………」

三人とも下を向き黙ってしまった

 

「でもだ、我は一人の男として思うのだが、これを打開する方法があると思うだ」

 

三人ともぱっと顔を上げる

「それで…その方法はどんな方法なのかしら?知っているのなら早く言ってほしいのだけれど」

雪ノ下が急がせるように問いかける

 

「うむ、この場合誰を選んでも自分たちの友人関係、信頼関係には亀裂は生じないと主人公の前で明言することと、自分たちの気持ちをはっきり伝えること、行動で示すことだな、女子からすると男の方から告白してほしいという気持ちがあるのは恋愛に疎い我にもわかるが、こういう場合は特殊すぎる、男から行動したら下手したらそれこそ先日雪ノ下殿が言ったように血みどろの争いになりかねんからな、ちなみにわれわれの言葉ではNice boatと言う」

 

「Nice boat?どうでもいいわ、それよりこういうのは男としてどうなのかしら?これは逃げともとらえられるけど」

「そもそも我には恋愛の実体験がないし無論複数の女子から好意を向けられたことも無いのでな、故にこれは客観的な意見だ、最もソースはアニメとラノベだが」

 

三人とも下を向いて何やら考えているようだ、ここで前に体育の時間比企谷から聞いたとっておきの話をダメ押しで言うことにする

「そういえばモテモテの葉山殿が彼女を作らないのもこういうのが理由ではないのかと八幡が言ってたような気がするな」

 

三人ともはっとした顔になる。

たしかにそうなのかもしれない、思い当たる節が多すぎた、しかも恋愛知らずの材木座ではなく複数の女性から言い寄られている葉山がそれに当てはまるなら、自分たちの想い人にも当てはまるのではと思ってしまうと考えるのは当然の成り行きだろう。

「たしかに…そうかもしれないわね…」

 

そろそろ潮時だ

「ふむ、もうこんな時間か、我は撮りためていたアニメを見なくてはならないのでこれにて失礼する」

そう言い証拠隠滅の為配っていたラノベのコピーを素早く回収し奉仕部を後にする。

後にする直前、三人が固まってなにやら話し込んでいたようだ。

 

外に出て廊下を歩きながら独り言をつぶやく

「クククク、ミッションコンプリート、思惑通りに事が進みそうだ」

材木座はまたしてもにやりとする

「しかしあの三人の誰かがラノベに詳しくなくて良かった、なにしろ有名どころのハーレム系のラノベを切り貼りして無理矢理繋ぎ落ちを付け加えただけだからな」

「あの女子共、八幡と仲良くなりたいようだが我は八幡と魂でつながっておるのだ、我の方が八幡の性格から何から詳しいに決まっておる、我をあんまりなめないことだな!ファーハッハッハハ!」

 

材木座は大声で独り言を言うとゴミ箱にコピーをぶち込みニヤニヤしながら次の日を待ったのだった。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第四話

次の日、ちょうど体育がありまたも準備運動で二人組を作る際、材木座は強引に比企谷、戸塚のペアに割り込むことにした。

「またあぶれてしまったのだ、すまぬが入れてもらえないだろうか」

二日連続で戸塚と遊んだ比企谷はかなり上機嫌だ、二つ返事で了承してくれた

「先日戸塚殿と遊びに行ったようだが部活は大丈夫だったのか?」

白々しく聞いてみる

 

「あー部活か、俺なんかがいなくてもあいつらだけで大丈夫だろ、むしろ俺がいたら逆にあいつらに迷惑かけるぐらいまである」

「左様か、でもひょっとしたらおぬしを必要としてるやもしれんぞ?」

「そうだよ八幡!俺なんかが、なんて言わないでほしいな」

 

戸塚の言葉に目を輝かせる比企谷

「そうか!戸塚が言うなら仕方ないな!」

またも我のことを無視しおって、材木座はちょっと不愉快になるが

「二日ぶりの部活故、何か変わってるかもしれぬぞ?心して行くがよい」

「なんも変わらんだろ」

 

と何ってんだこいつという風にこちらを見る比企谷、その余裕もここまでだからな、周りに見えない様にまたしてもニヤっとする材木座だった。

 

放課後、比企谷のクラスに様子を見に行く材木座

「ヒッキー!部活一緒にいくんだからね!」

そういって比企谷の手を握って引っ張りつつ歩いてる由比ヶ浜を発見した。

「おいやめろよ、はずかしい「あたしは恥ずかしくないからね!」」

そう言って今度は腕に抱き着く

 

「ゆきのんもいろはちゃんもいるから、みんな今日はヒッキーに大事な話があるの、だから絶対つれていかないといけないの!」

「お、おう」

比企谷はその迫力に押されてなされるがままだ、しかも顔がだいぶ赤くなって猛烈に挙動不審になっている

 

「これは面白いことになってきたぞ」

本当ならそのまま奉仕部へ押しかけて一部始終を観察したかったがさすがにそれは無理と判断して今日のところはこれで帰ることにした。

 

次の日、登校すると校門の前が騒がしい、見ると比企谷が左右に雪ノ下と由比ヶ浜を腕をからませて一緒に登校している為、あの美人をはべらせているのは何者だと騒ぎになっているようだった、

あの女子達は予想通りの行動をとったようだ、計画は成功なり!そう思い材木座は白々しく挨拶する

「よい朝でござるな八幡!両腕に花を携えてとはおぬしはなんというスケコマシであろうか!」

満面の笑みで材木座は比企谷に挨拶をする

 

「おまえまで、勘弁してくれよ、こいつら朝に俺の家まで迎えに来やがって、おれは目立ちたくないんだよ、なんでこんなことに…」

「ほう、やはり先日の部活でなんかあったのか?ここで!詳しく!大声で!聞きたいところだな!」

ここぞとばかりに材木座は周りに聞こえるように言う

 

「ばか!やめろ!雪ノ下や由比ヶ浜まで迷惑がかかる」

比企谷の顔は真っ赤で挙動不審になっている

「あら、私たちはいいのよ?私たちの気持ちは昨日言った通り、あとはあなたが選ばないからこうやって行動でしめしてるのよ?」

「そうだよヒッキーあとはヒッキーの一声で決まるんだよ?決まるまでずっとこのまま」

 

「材木座、もしかしておまえ…なんか謀ったな?」

「はぁ?パクリばかりのラノベしか書けない我になにができると?」

ちょっと怒り気味に言う

 

「う、それもそうだな、疑ってすまん」

「わかればいいのだよ八幡、しかしハーレム王の八幡をみていると嫉妬に狂いそうになるわい!嫉妬に狂った他の男子から刺されないといいがな!」

「お、おい…あり得るからやめてくれよ…」

挙動不審になる比企谷、材木座はそれを見てさらにニヤニヤしながら

「八幡の『は』はハーレムの『は』だな!ガハハハハ!」

そういって比企谷が猛烈にへこんだ様子を満足げに眺めた後その場を立ち去る

 

すれ違いざまに由比ヶ浜の口からぼそっと

「中二ありがとう」

と聞こえた気がするがそんな知ったことか

我の復讐はまだ始まったばかりだ、女子どもに囲まれて対処しようがなくなっている比企谷八幡をいじり倒してやる

また我をぞんざいに扱おうなら女子どもにあることないこと吹き込んでお仕置きしてもらうの手だな

 

振り返ると一色が先輩と言いながら比企谷に突撃しているのが見える、両腕を抑えられてるのでみぞおちに頭がクリーンヒットしてしまい悶絶しているようだ

「大丈夫!大丈夫!だから!」

そんな声を無視して生徒がどんどんが登校している目の前で3人の女子は比企谷を介抱しようと躍起になっている

 

「ああいうのを羞恥プレイとでもいうのかのう、あやつのヘタレてうろたえている姿を見ると笑いが止まらん、やはり嫁は二次元に限る、三次元なぞ惨事にしかならんからな」

そう材木座は言い自分の教室に向かうのだった。

 

昼休み、またも比企谷の様子を見に行ってみると一色が比企谷のクラスに押しかけている最中のようだった

「せーんぱい!昨日言った通り、お弁当作ってきたんですよ!」

「おい、大声でやめてくれよ…恥ずかしいだろうが」

「何言ってるんですか?先輩がはっきりしないからですよ?」

これは面白い、そう思っているとヤンキー風の長髪の女子が一色に近づいてきた

 

「比企谷が嫌がってんでしょ、あんた比企谷のなんなの?」

「私?先輩の彼女ですよ?まあまだ候補ですけど」

クラスがざわっとなる

「おまっそんなこと人前でっ」

八幡焦ってる、超面白い、材木座は笑いが止まらない

 

「かかか彼女?比企谷ホントに?」

ヤンキーも焦っているようだ、

「い、いや、でも正式ではないし、つか場所かえるぞ、ここでは話しにくい」

そういって比企谷、一色、ヤンキーは屋上へといってしまったようだ。

 

「ふうむ、ヤンキーに絡まれるとは、八幡大丈夫なのだろうか?」

ちょっとやり過ぎて目立ちすぎてしまったようだな、材木座ちょっと反省。

 

「しかしあのヤンキー、少し挙動不審であったな、どういう関係なのだろうか?」

はっと思いつく

「なんだ簡単なことだ、戸塚殿にきけばよかろう」

そして教室を見渡すと戸塚がクラスの人と話をしているのが見えた。

「戸塚殿ーちょっとよろしいかー」

そういうとすぐ来てくれた、やはり八幡と違い戸塚殿は人情に厚いお人だ

「材木座くんどうしたの?」

 

「先ほどたまたまこのクラスの前を通ったのだがその時に八幡が一色殿とヤンキー?みたいな女子と教室を出て行くのが見えたのだよ、どういう関係なのかと思ったのだよ、また八幡が厄介ごとに絡まれていたのではと心配になってな」

 

表向きは友だちを心配する良き友人を演じる材木座だった。

そんな様子を疑うことも無く戸塚は答える

「ヤンキーって川崎さんのことかな?あの人見た目は怖いけどすっごく兄弟思いなんだよ、んで八幡達といろいろあったみたいでさ…」

戸塚は川崎弟が奉仕部に話を持ち込んだ顛末を材木座へ伝える

 

「左様か、そんなことがあったとはな…」

「それでね、ここだけの話、川崎さん八幡のことちょっと意識してるみたい、たまにチラチラと八幡の方みてるときがあるんだ」

 

それなら話は早い、たぶん今日中にでも奉仕部に召集されるやもしれん

 

「川崎殿は自動的に組み込まれそうだな」

「自動的って?なんのこと?」

「いやこちらの話でな、昼休みとはいえ失礼した」

 

今頃屋上ではどんな展開になっているのだろうか、しらないふりをして立ち会うのも手だな、そう思い購買で買ったパンを片手に屋上へ、しかしもう話は終わってたらしく三人で昼食を取ってる姿が見えた。

 

「ふうむ、もう落ち着いてるみたいだな、これは放課後に雪ノ下殿達とのやり取りを見た方が面白そうだ。ちょうど新作のラノベも書いたことだし奉仕部へ顔を出すとするか」

材木座はパンを頬張りつつもと来た道を引き返し放課後まで待つことにした。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第五話

放課後になり部活へと生徒たちが移動をし始めるころ材木座はまたも比企谷のクラスへ様子を見に行ってみると、教室の前で由比ヶ浜がウロウロしているのが見えた。

「中二、ヒッキー知らない?一緒に部活行こうって言ったのにどっかにいっちゃったの」

「し、知らぬな、むしろ我も探しているぐらいなのだが」

「先に部室に行ったわけでもないみたいだしメールしても電話しても出ないの、困ったな」

さては八幡の奴逃げたな?材木座はそう思い

「み、見つけたら部活にいくよう伝えておく」

そういって校内をぶらつくことにした。

 

「しまったな、逃げる可能性を失念していた」

「今日は川崎殿が奉仕部に行くであろう、見つけたら無理にでも連れていかねば奴のヘタレっぷりを観賞できないではないか、これでは面白くない」

 

飲み物でものもうと自販機の方に足を向け歩いていると、自販機の前に金髪のカップルいるのが見えた。

「リア充どもは我の一服の一時すら邪魔をするのか、破裂してしまえばいいのに」

 

そう呟き少し近づいてみるといるのは葉山と三浦だった。

「なにゆえこんなところに二人っきりでいるのだ?部活は?そもそも葉山殿はぞろぞろとトップカースト連中を引き連れているのが当たり前だと思っていたのだが?」

 

材木座はできるだけ近づき身を隠しながら二人の会話を盗み聞きする

 

「ゴメン優美子、今は誰とも付き合うつもりはないんだ」

「そんな…」

 

凄いところに居合わせてしまった。

どうやら葉山へ三浦が告白し振られてしまったようだ。

 

しばし無言の後、踵をかえした葉山がこちらに向かってくるので慌てて材木座はその場を離れ近くのトイレに身を隠す。

 

するとトイレには比企谷がいた

「八幡、おぬしここでなにをしておる?」

 

「材木座、助けてくれ、みんななんかおかしいんだよ。いきなり三人同時に告白されるし、誰を選んでも恨んだりしないとか、ふざけてるのか俺をからかってるのかと思ってたが度が過ぎる、しかも今日は川なんとかさんまで…みんなおかしい、こんなに俺をからかっていったい何のとくがあるって言うんだ…帰ろうと思ったら昇降口に見張りがいるし、どこにもいけないからこうやって隠れてるんだよ」

 

やはり逃げていたか、二度と逃げ出さないように釘を刺しておかねば

材木座はそう思い説得を始める。

「八幡よ、それは違う、彼女らは皆真剣なのであろう、それに向き合わないでどうする?ここで逃げるとおぬしのせいで一人残らず不幸になるがそれでもよいのか?」

 

「でもそんなこと...俺なんかが…」

 

「おぬしのような輩でも必要としてる人はいるのだよ、我や戸塚殿だってそうだ。おぬしの今までの活躍を目にしてきた雪ノ下殿達そうであろう、川崎殿もヌシなにやら恩義があるらしいではないか」

 

材木座はここまで言ってみたがだんだん面倒くさくなってきた。

何しろ相手は校内随一のひねくれものだ。

正攻法ではらちが明かないし、そもそもこんな説得は苦手だ。

 

ふと、先ほど振られた三浦のことを思い出した。

比企谷なら振られて意気消沈している女子を見捨てるだろうか?

いやこやつはそんなことは絶対にしない。

鉢合わせにするとまた面白い展開があるやもしれん。

 

「まーおぬしの好きなマックスコーヒーでものんで頭を冷やすとよかろう」

「それが今日は売り切れているようなんだ」

比企谷はガックリ肩を落とす。

「それならさっき業者が来て入れていったようだったが」

「本当か!やっぱマッ缶がないと始まらないよな!」

そう言いウキウキで自販機へ向かう比企谷

「嘘に決まっているだろ」

材木座はそう呟きこっそり後をつける

 

比企谷が自販機にいくと座り込んでいる三浦がいた

「ヒキオ?ここでなにやってんの?」

「俺はマッカンを買いに来ただけ…っておいやっぱり売り切れてるじゃねぇか!あいつ嘘つきやがったな!」

「あーし隼人に振られちゃったんだ…」

比企谷のことをガン無視して語りだす三浦

「いや、俺マッ缶買いに来ただけだから、しかも売り切れてた。俺帰る。OK?」

 

「あーし隼人と今までの関係じゃ我慢できなかった。結衣や一年の生徒会長があんたにグイグイ迫ってるのみてさ、あーしもああするべきだと思った」

 

「はぁ」

比企谷は諦めて話を聞いている。

「ヒキオちょっと胸かすし」

 

そう言い三浦は比企谷の胸元に顔をうずめ泣き始める

「あーしにとって隼人は特別だった。でも隼人にとってあーしは特別じゃなかった。これからどうしていけばいいんだろう…」

 

すすり泣く三浦にどうしたらいいか戸惑いながら比企谷は語りかける

「あのな三浦、一つ話をしてやろう、これは俺の友達の友達の話なんだがな」

 

「ヒキオ友達いないし」

 

「失敬な、いるぞ戸塚とか、いやまあいいその友達の友達がな…」

そういうと比企谷は中学の振られた時の話をする

「そして彼はナルが谷という屈辱的なあだ名をつけられ今に至るというわけだ」

 

「なにそれ結局ヒキオのことだし」

 

「あーそのだな、何が言いたいのかと言うと、振られたぐらいで落ち込むなよ、俺でよければいつでも相談に乗るから好きなだけ使え」

 

「ヒキオ…ありがとう」

 

「しかしこうなった以上あいつのグループにはいられないだろ、まあお前ならどこでもやっていけんじゃね?後な、俺そろそろ部活にいかなきゃなんねぇんだ、色々問題があってな、さっきその問題から逃げるなって発破かけられちまったからな」

 

比企谷は三浦の頭を撫でながら話す

「元気出せよ、このままだと俺も部活に行けねぇじゃねぇか、トップカーストの女王様が情けない面してたらしもじもの連中が不安がるだろうが」

 

「ヒキオ…」

三浦の顔が真っ赤になっているのが遠くからでもはっきりとわかった

 

「部活って結衣もいる奉仕部ってやつだっけ」

「ああそうだ、依頼があったら顧問の平塚先生経由で頼んでくれ」

「ふうん、平塚先生が顧問なんだ…」

 

「んじゃあな」

比企谷はそのまま奉仕部へ向かった。

その場に取り残された三浦は比企谷方をしばらく見送っていたが別な方へ向かっていった。

 

「フムウ、思った通りというかなんというか、でもまあ八幡が逃げ出さなくて良かったわい」

「しかし奴が開き直って現状を受け入れてしまうと余計に面白くない」

どうしたもんかと思いつつ材木座は先日書き上げたラノベを取りに一旦教室へ戻るのだった。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第六話

材木座は奉仕部の扉をノックをして部室へ入る

「たのもう」

 

「あら、材木座くんいらっしゃい、またラノベを持ってきたのかしら?」

 

「うむ、今回のはボリュームがあってだな、すぐには読めぬと思うので日を置こうと思うのだが、ところでそちらの方は?」

 

材木座は知らないふりをして比企谷隣に座っている川崎に聞く

因みに反対隣は由比ヶ浜が座ってる。

一色はちょっと離れたところで不満そうな顔をしているようだ。

例によって比企谷は戸惑い隠せないようで腐ってる目がいつも以上に腐っているように見えた。

 

「人のことを聞くのならまず自分から言うのが礼儀じゃないの?」

川崎は材木座を睨み付ける、材木座はそれに負けじと声を張り上げる

「これはしたり、我こそは、剣豪将軍材木座義輝、そこの八幡とは共に地獄のような戦場を潜り抜けてきた相棒であーる!」

腕組みをしてポーズを決める、やっぱり我かっこいい

 

「剣豪?こいつ頭大丈夫なの?」

川崎は若干怯えながら比企谷に隠れるようにして聞く

「ちょっ川崎近いから、あいつはああいう奴だから気にするな、ってか近いって、由比ヶ浜も対抗すんな、近いから!やめてくれ!」

 

川崎との話し合い終わっていたようだ、比企谷も開き直っているわけではなさそうでひと安心した材木座、一人増えて八幡は対処に苦しんでる様子を見てせいぜい我を楽しませろと心のなかでほくそ笑んでると、ガラッといきなり部室の扉が開く。

 

「先生、ノックをと毎回言ってますよね?」

雪ノ下がずかずかと入ってきた平塚先生に向かって言う。

 

「ああすまん、それより雪ノ下、入部希望者だ、さあ遠慮せず入ってこい」

平塚先生がそういうとさっき見た金髪の女子が入ってきた

「あーしも今日から奉仕部の部員だから、よろしくねヒキオ」

 

「何でも比企谷に恩があるとかでどうして手伝いたいということだ。皆仲良くやってくれたまえ」

 

そう言うと平塚先生は仕事がまだあるからと帰っていった。

 

先生が姿を消すなり三浦は比企谷の所へ行き

「ゴメン結衣、ちょっとそこ変わって?」

「う、うんいいよ優美子、ってなんで突然部員に?ヒッキーに恩って?」

「あーしさっきね、隼人に振られたんだ、その時ヒキオが来てくれて…」

と三浦は比企谷の背中に抱きつく

「お、おいやめろよ、みんなみてるだろ!」

「見てないところだったらいい?」

「ちょっと優美子!いくら優美子でもダメだよ!」

「あんた...なんのつもり...?」

川崎は三浦を睨み付け、由比ヶ浜は驚いて三浦を引き剥がそうとするが

「悪いけど譲りたくないし、さっきヒキオ言われたし、いつでも好きなだけ体使っていいって」

 

その発言に皆が絶句

唯一真相を知っている材木座は

「面白すぎる、八幡はアレかナデポ的な才能でも持っておるようだな、しかしこう言うのを修羅場というのであろうか、まあ雪ノ下殿のことだからうまく納めてくれると思うのだが血をみるのはさすがの我も勘弁だな」

そう材木座が思っていると

 

「体なんて言ってないだろ…相談に乗るって意味であって…」

「あんまかわんないっしょ」

そういって比企谷の背中に抱きついて体を離さない三浦

「ちょっとあーしさん、色々当たってるから一旦離れてくれないでしょうか?」

「イヤ」

比企谷の願いもむなしくぴったりとくっついたままだ

「ちょっと優美子はーなーれーてー」

由比ヶ浜は三浦を引き剥がそうと懸命だ

 

比企谷はこの世の終わりのような困った顔しているのを見て材木座はここぞとばかりに言う

「八幡よ!ここにいる女子共はいずれも見麗しい傾国の美女ばかりではないか!やっぱり八幡の『は』はハーレム王の『は』だな!グハハハハ!」

 

「材木座、そういうのはいいから、もうやめてくれ…」

「そうだよ中二!警告の美女ってなんだし!危なくないし!」

 

呆れた雪ノ下が話しかける

「由比ヶ浜さん?警告ではなくて傾国、つまり王様が夢中になりすぎて国が傾くぐらいの美人ってことよ?」

 

「しししってたし!王様が夢中かー、エヘヘじゃあヒッキーが王様だね!」

「もうやめてくれ、王様とかそんなんじゃねぇよ、つか俺にとってはお前ら全員警告の方だよ…」

「ほう、やはりハーレム王ではないか八幡よ、我は嫉妬に狂いそうなんだがいかようにすればよいだろうか?」

ニヤニヤしながら比企谷へ語りかける

それに答えず絶望的な表情をしたあと頭を抱える比企谷。

ヘタレ八幡め、でもこうでなくてはな、と比企谷を見て材木座は心のなかで嘲る。

 

三浦が全く動かないのを見てしびれを切らしたのか雪ノ下が話しかける

「三浦さん、一旦落ち着いてお話ししましょうか?ここにいる皆ある約束事をしているのよ?」

 

「約束事ってなんだし」

三浦はようやく比企谷の背中から顔をあげる

「そう比企谷君に対する約束事、これはあなたにとっても損な話ではないはずよ」

 

そう言って雪ノ下は材木座の方へ向き

「こういう状況だから出直してきてくれるかしら?」

 

こう言われたらハイそうですかといって出ていくしかあるまい、材木座は

「わかり申した。では我はこれにて失礼する。」

本当はもっとここにいたかったが不信がられても困るしな。

 

「おい!材木座!お前やっぱりなんかたくらんでるな!マッカン欲しかったのに売り切れたし代わりになんでこいつがいたんだよ!」

 

比企谷が叫んでいる

「知らぬな、たまたまいたのであろう、マッカンについてはまあ我の勘違いだったなそこは謝罪しよう、スマヌ」

形ばかりの謝罪をする。

 

「そうよ比企谷くん、できの悪いラノベしか書けない材木座くんが何かをたくらむなんて出来るわけないでしょう?」

「そうだよ、中二は中二みたいなことしかできないし!」

「そうですね木材先輩は先輩と違って無能ですもんね」

 

女子三人にこうも言われては比企谷も黙るしかなかった。

この女子共やっぱ見た目だけはいいのに中身は酷い!

材木座は改めて思い奉仕部を後にした。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第七話

次の日の体育の授業、二人組の号令とともに珍しく比企谷と組む材木座、しかし比企谷はやけに憔悴しきった顔になっている。

 

「どうした八幡、やけに疲れた顔をしてるではないか?」

「ああ、お前も知っての通り最近部活が大変でな、昨日小町にも言われたよ。家に帰っても小町と顔を会わせても疲れがとれない」

 

ふうむ、ちとやり過ぎてしまったか、反省する材木座

「八幡よ、では気分転換にゲーセンに行くのはどうであろう?我と戸塚殿と三人でな、たしか駅前のゲーセンが改装したとかで週末オープンするはずだ」

 

「済まない材木座、こんな俺のために気分転換まで考えてくれるなんて…お前が友達でいてくれて今日ほど嬉しい日はないよ」

 

比企谷は感動のあまり泣きそうな顔になっている。

今までの八幡ならこんなこと絶対に言わなかったはずだ。

大分弱っているようだが、礼まで言われると素直に嬉しい。

「うむ!週末が楽しみだな!八幡!」

 

少しだけ元気を取り戻した比企谷と無事体育を終わらせてそれぞれの教室に帰る。

 

「うーむ大分やり過ぎてしまったか、しかし八幡にはっきり友達と言われるとは、嬉しい反面ちょっと罪悪感があるな」

 

昼休みにまたも様子を見に行くと案の定由比ヶ浜、川崎、三浦に囲まれてどこかに連行されていくところだった。

 

「声をかけたいが怖くてできぬ、八幡、頑張れ」

とそのまま見送っていたら比企谷と目が合ってしまった。

「材木座!」

物凄く助けてほしそうな顔で名前を呼ばれる。

因みに女子三人からはジャマをするなという視線を浴びる

猛烈に怖かったが目があった上に名前を呼ばれては放置するわけもいくまいと思い話しかける。

 

「あー八幡よ、どこへ行こうというのかね?」

「これからみんなで奉仕部の部室でお昼ごはんなんだ」

由比ヶ浜が代わりに答える。

「ああ、日替わりでみんなが弁当作ってきてくれてるから逃げられねぇ」

比企谷が絶望的な表情で言う

「しかも俺は箸を使ってはいけないらしい」

「…箸を使わないと食えぬではないか?」

「それは…俺は使ってはいけないだけで周りが…」

「ほう、いわゆる『あーん』というやつか?」

そういうと女子全員の顔が真っ赤になる

 

「ほら!ヒキオ行くよ!」

三浦が比企谷の腕をつかみそのまま引っ張っていく、ちなみにもう片方の手は川崎が握っている

 

「貴殿のベストプレイスは我が死守しておくが故、心置きなく昼食を取るがよい」

そういって材木座はその場を逃げるようにはなれる。

 

比企谷がよくベストプレイスと言っていた場所につき購買で買ったパンを頬張る。

「八幡は我と友達だと再認識してくれたし嬉しい限りではあるが、よく考えるとアレだけの美貌を持つ女子に囲まれているうえに手作り弁当だと?しかも全部食わせてもらってるってアレか八幡はガチョウか何かか?フォアグラにされて後で美味しくいただかれてしまうのだろうか?」

 

あ、今うまいこと言ったと自分で自分に感心する材木座

「美味しくいただかれるのか、あの女子共に…ありうるな…あれ?するとこのままいくと八幡は我より先に童貞を捨てるということか?おかしいな、普通にうらやましい状況になってるぞ?」

 

計画が斜め方向にずれてしまったのを感じた材木座はとりあえず比企谷の童貞喪失を阻止する案が無いか考えてみる

「うーむ、修学旅行の時にちらっと見たが八幡は大蛇のような巨根で、見るだけで「らめー壊れちゃうー」と女子共に言わせるぐらい並みの女性には到底受け入れられない凶悪極まりないイチモツだったとかそういうのはどうだろうな」

 

頭に浮かんだ独り言を言ったとたん後ろからガタッと音がしたので振り向いたが誰もいない

誰かに聞かれたらまたあいつ変態なこと言ってると噂されるどころかせっかく友達だと再認識してくれた比企谷にも嫌われるレベルの下品なアイディアだったと反省し

「いやこんなこと言ったら雪ノ下殿や三浦殿にすり潰されてしまうな、八幡にも嫌われてしまう、最も我はリア充どもと違って女子相手に下ネタなぞ言えるわけもないがな」

 

「それにあやつはヘタレだし、手を出せるわけもなかろう、あの女子共も大層な美貌を持っているが中身は残らず残念だから我から見ればあまり羨ましくもないな、やはり二次元こそが至高」

 

パンをムシャムシャと咀嚼しジュースで喉の奥に流し込む。

「そういえば三浦殿は葉山殿のグループだったはずだ、あのグループは葉山殿と三浦殿で持っているように見えたのだが今はどうなっているのだろうか?」

ちょっとだけ興味が湧いたので戸塚に週末の予定伝えるついでに様子を伺いに行くことにした。

 

教室で戸塚を呼び出し葉山達の様子を伺う

「材木座君、さっきからチラチラ葉山君の方を見てどうしたの?」

「うむ、あのグループは三浦殿と由比ヶ浜殿がいたであろう、しかし最近はずっと八幡達のところにいるから今どうなってるのか少しだけ興味があってな」

 

「それなんだけど、最近は戸部くん達ともあまり話さなくなっているみたい、海老名さんも休み時間になるとどっかにいっちゃって葉山君は一人でいることが多くなってるみたい」

「ふうむ、まるで八幡と立場が逆転してるみたいだな」

と、戸塚と話をしていると後ろから

 

「愚腐腐腐腐、このカップリングは珍しい」

「あ、噂をすればだね」

突然背後に現れた海老名に材木座は戦慄する

「ざい×とつ?とつ×ざい?いやこれでは全く萌えない!やはりはち×はや!ヒキタニ君が隼人君にへたれ攻め!これこそ正義!でも最近の状況はざい×はちじゃないのかな?材木座君」

そう言い海老名はニヤっとした笑みを材木座に向ける

「な、なんのことやらさっぱりわからぬが…」

「ヒキタニ君が女性に迫られて醜態を晒しているときに君よく近くで笑って見ているよね?」

 

この女子はどこまで知っているんだろうか?

材木座は不安になる。

 

「みんなヒキタニ君に取られちゃった、彼はやっぱ凄いよ。隼人君も大分変わっちゃったし…」

「変わったとは?葉山殿は学年中の男女の羨望の的であろう」

「ちょっと前まではね…ほらヒキタニ君が雪ノ下さんと結衣を侍らせて初めて登校した日、あの日から決定的にいろんな人と距離を置くようになったみたい」

 

焦る材木座、自分が原因だと知られたらどんな目に会わされるのか、逃げた方がいいのか?いや、トップカーストからは逃げられない!

ぐるぐると頭のなかで思案していると

 

「私知ってるよ、今の状況作ったの材木座君だってこと」

「材木座君どう言うこと?」

戸塚が驚いた顔で材木座を見る

 

ヤバい、背中に嫌な汗が吹き出る

「といっても隼人君から聞いただけなんだけどね」

 

え?何故に?由比ヶ浜殿が話したのだろうか?

 

「隼人君ね放課後一人で教室に残ってたときがあって『ヒキタニ君はいい友人をもって幸せな奴だ、俺にはそんな友人は一人もいない、皆うわべだけだ…本物の友人なんて一人もいない…』ってしわくちゃになった紙?をみて愚痴っててさ、私が何を見てるのって聞いたら『材木座君って知らないかな?彼がヒキタニ君と周囲の人がこのままいったらこんなことになるって警告の為の小説を書いてそれを雪ノ下さんや結衣、いろはに読ませたみたいなんだ、ここまでしてくれる友人を持つ彼が羨ましい、俺にはそこまでしてくれる友人はいない、そもそも友人を持つ資格なんてないのかもしれない』って落ち込んじゃっててね…」

 

んなばかな!アレは丸めてゴミ箱に入れたはず。何故葉山殿が?というか何故アレを雪ノ下殿達に見せたのを知っている?

 

「そして隼人君はみんなと距離を置くようになったみたい」

 

何がどうしてこうなったのかはわからぬが誤解されてるようならそれでよし。

材木座はそう思い二人にお願いする

「海老名殿、スマヌがその件は黙っていてもらえぬだろうか?戸塚殿も頼む」

 

「材木座君ってそんなに八幡のこと…凄いや!尊敬するよ、僕なんてなんにもできないからさ」

「何しろ我と八幡は精神の深いところで繋がっているからな!」

「やっぱざい×はち?でもはち×ざいの方がいいかも!」

 

「一人で盛り上がってるとこスマヌが海老名殿はこれからどうするのだ?あのグループは無くなってしまったのだろう?」

 

腐女子が盛り上がっているところにはあまりいたくないので早々に切り上げようと聞いてみる。

 

「うーんじつは私もヒキタニ君は気に入っているんだよね、素の私を受け入れてくれる数少ない男子だし」

「海老名殿がそうしたいなら我に止める権利もなし、好きにすればよかろう。雪ノ下殿達も喜んで迎えてくれると思うぞ?」

海老名に見られているとどうも尻の辺りがむずむずして落ち着かないので逃げの体制にはいる。

「後悔先に立たずというしな!では我はこれで!」

 

自宅へ帰る道中

「八幡を陥れるためだけに作成したパクリラノベがこんな影響を及ぼすとは。もう知らぬ、行き着くとこまでいけばよい!」

そう無理矢理思うことにして家路に急ぐのだった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第八話

週末、比企谷、戸塚とゲーセンに行く日になる、駅で待ち合わせとのことで材木座は張り切って待ち合わせ場所へ向かう

「はっちまーん!」

「材木座!」

二人は長年の親友のように肩を叩き合う

「戸塚殿は遅れるそうだ、しかし久しぶりだのう、こうして三人で出かけるのは」

「それがだな、すまん」

「どうしたのだ?」

「戸塚とメールしてたら見つかった」

「見つかったとは?」

 

ここまで話をしていると

 

「あれーもしかして比企谷か?」

まるで見覚えのない男子数名が立っている

いずれもニヤニヤしており印象が悪い

 

「八幡、こ、この御人はど、どなたかな?」

「こいつら中学の時の同級生だ…」

「中学の…」

 

材木座は比企谷から中学時の話は軽くだが聞いていた。

自分もあまりいい思いではなかったので深く同情したのだったが

 

「比企谷お前もどっかに遊びに行くのか?」

「ああ、悪いがまだ他に連れが来るんでね悪いが付き合っている余裕はない」

「連れってこいつみたいなデブか?」

「ヒキガエルにはお似合いだな」

そう連中は言い大声でゲラゲラ笑う

 

材木座は許せんとは思っていたが気が小さいので下を向くしかできなかった、しかし

「グホゥ!」

突然強い衝撃が材木座を襲い真横に吹っ飛ばされる

 

登場したのは一色いろは

「せんぱーい待ちましたー?」

「来てしまったか…おい一色それより何故材木座を吹っ飛ばした?まずあいつに謝れ」

「えーせんぱいの隣って私って決まってるじゃないですかー、それなのになんか障害物があったんでー排除したんですー」

「決まってないからね?いくらあざとくいってもダメだからね?あいつ俺の友達、友達大事OK?」

「わかりましたー、んじゃあ木材先輩、すみませんでした」

突然の展開についていけない同級生達

 

「棒読みじゃねぇか、しかも名前違うし…グハッ」

「ヒッキー!」

次に登場したのは由比ヶ浜

「由比ヶ浜、しゃべってるところに首に飛び付くな、お前は犬か、苦しい」

「あーヒッキーごめんね、優しくすればよかったね」

「そういう問題じゃないだろ」

 

ようやく正気を取り戻した同級生達

「おい、この子達何よ?」

「同じ部活の仲間だ」

その答えに二人の女子は不満げだ

 

「へーかわいいじゃん、なあこんな奴より俺たちといこうぜ、そっちの方が絶対に楽しいって」

 

「あの、ヒッキーと遊ぶ約束あるので…」

「そうですよ、先輩と遊ぶんです!」

 

「いいからいこうぜ」

一色と由比ヶ浜の手を強引につかみ連れていこうとする

「おい!手を離せ!」

「ヒキガエルの癖にうるせーぞ」

 

その時騒いでいる同級生達の背後から

「私の大切な友達に何をしているのかしら?」

雪ノ下と三浦が現れた

 

「あなたたちその汚い手を放しなさい!」

雪ノ下と三浦が本気で怒っているようだ

「あーしらこれからそこで突っ立てる目が腐った男とそこに転がってるデブと一緒に遊びに行くんだから邪魔すんなし」

三浦も相手を睨み付けている

 

「スッゲー美人じゃん!」

「ヒキガエルにはもったいねぇよ、なあー俺たちと遊ぼうぜ?」

 

由比ヶ浜と一色は解放され今は比企谷の背中に隠れるようにしている

「ヒキガエル…」

そう呟き雪ノ下と三浦は比企谷の方へ進む

「本当にそう呼ばれていたのねヒキガエル君」

そう雪ノ下は言い見せつけるように比企谷と腕を絡める

「ヒキガエルよりヒキオの方が短くて良くない?」

雪ノ下に負けじとと反対側の腕をやはり見せつけるように絡めながら三浦は言う。

 

「一色さん、由比ヶ浜さん、あなた達は昨日たっぷり比企谷くんを堪能したのだから今日は私たちの番よ?」

「そ、悪いけど今日はあーしらがヒキオ独占する番だから、二人はそこに転がってるデブを起こしてやんな」

 

一色と由比ヶ浜は不満そうにブーブー言いつつ転がってる材木座を起こしにいく

 

「二人ともなにか物凄い誤解を生むような発言はやめてくれないか?あと雪ノ下は俺の中学までのあだ名コンプするのやめてれ」

 

「おい!無視すんなよ!」

「あら?まだいたの?お呼びじゃないから帰ってくれないかしら?」

「つかよーそんな男のどこがいいんだ?そいつ比企谷菌とか言われてみんな近寄るのも嫌がってた奴だぜ?」

 

「比企谷菌…大変ね、三浦さん、私たちもその比企谷菌というのに感染してしまってるのではないかしら?だってこんなにドキドキしてしまうんですもの」

雪ノ下はそう言い比企谷の顔に手を添える

「あーしも多分感染してる、もう離れられない」

そう言い三浦は比企谷の首に手を回す

「ちょっと二人ともここ駅前だから、いろんな人が見てるからやめてくれ!」

「あら?見てないところならいいのかしら?じゃあこれから私の部屋で続きをする?三浦さんもどうかしら?」

 

「そういうことじゃねぇよ…もうちょっとモラルのある行動をだな…」

 

「おい!比企谷!お前なんなの?」

同級生達は無視されまくって怒り心頭だ

 

「ハー」

深くため息をつく雪ノ下

「申し訳ないけどあなた達には用はないのよ、帰ってくれるかしら?」

 

「うるせーぞ、ちょっとこっちにこい!」

と同級生の一人が雪ノ下の腕をつかんだとたん合気道で投げ飛ばされる

「女子に暴行を働こうとして返り討ちとは情けないわね」

「くっ」

 

「あんさーあーし中学の時は部活でテニスやっててそこそこ有名だったんだわ」

 

「は?だからなんだよ!」

 

「今でもあっちっこっちの学校に知り合い沢山いてたまに遊びにいくこともあるんだわ、だからあんたらがどこの学校だか知らないけど、あんたらがあーし達になにやったかって話をばらまいたらあんたらを学校にいれなくする事ぐらい楽勝だよ、女子の情報網甘く見んなよ?」

 

「…」

 

「それと私の父は県議会議員なのよ?私たちに狼藉を働いたと父が知ればどうなるでしょうね?千葉にいられなくすることぐらい容易いことだと思うわ」

 

二人とも強烈な視線で相手を睨み付ける

同級生達は怖くなり無言でその場をした

 

「比企谷くん、怖かった」

雪ノ下は比企谷へ抱きつく

「すまん、俺のせいで怖い目に会わせちまった」

「ヒキオ今日はお詫びにいっぱいサービスするし」

「わ、わかったよ…ところで材木座は?」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第九話

少し前前三浦に材木座を起こしにいくように言われた一色と由比ヶ浜

地面に横たわっている材木座を見下ろし

 

「木材先輩、死んだふりしないでください。さっきピンチだったのになんで助けてくれなかったんですかー?」

「そうだよ中二!酷いよ!」

 

二人に責められるが材木座は不敵に笑いながら

「フフフフ、われの死んだふりを見破るとグハッ」

材木座が全部言いきる前に太った腹の上に一色が飛び乗る

「四の五の言わずに起きてくださーい、殴りますよ?」

「わかりもうした。だからどいてくれぬか、苦しい」

 

材木座はよろよろと起き上がる

「んで八幡は?」

 

「ゆきのんと優美子と一緒にいる」

見ると比企谷挟んで右に雪ノ下、左に三浦がいて先ほどの同級生と対峙しているようだ

 

「あの二人なら大丈夫でしょ、ちょっと木材先輩両手を後ろに回してくれます?」

一色が妙なお願いをする

「こうか?」

「そうです、んで結衣先輩、木材先輩の両手首つかんでもらえます?」

 

「こうかな?どうしたのいろはちゃん?」

「いえ、さっきといまの現状の腹いせですよ」

そういうと一色は材木座の腹を軽く殴る

「ちょっと一色殿!なにをしてるでごじゃるか!」

 

「さっき助けてくれなかったのと、先輩を雪ノ下先輩と三浦先輩にとられてる腹いせですよ。さすがに本気ではやりません」

ポスッポスッと殴るというか叩くような感じだから痛くはないが非常に恥ずかしい

「あーゆきのんがーヒッキーの顔に手を当ててる!」

由比ヶ浜はそういい材木座の手首を無意識のうちにひねる

「イデデデデ、由比ヶ浜殿そっちには曲がらぬ!!」

「今度は三浦先輩が首に手を回してますね」

そう言うと一色も無意識のうちにこぶしに力が入る

 

「グハァ!一色殿!痛い!痛いでゴザル」

「なんかゆきのんが優美子と三人でいかがわしいことしないかって言ってる!」

「マジですか?ちょっと木材先輩動かないでくださいね?」

「痛い痛い!ちょっと二人とも!やめるでごじゃる!」

「あーすみません、でもーこんなにかわいい女の子に痛め付けられるなんてご褒美ですよ?」

「我はそんな趣味は無いのだが…なんかあっちは片付いたようだ、もう解放していただけないでしょうか?」

 

「仕方ないですねー」

一色は残念そうに材木座から離れる。

 

遅れてきた戸塚と合流し皆でゲーセンに向かう。

なぜ女子達がここにいるのかと言うと比企谷がウキウキで戸塚とメールをしていた際に後ろから覗きこんでた一色にばらされたからだったようだ。

川崎と海老名は用事があってこれないとのことだった。

 

ゲーセン内では先ほどあんなことがあったからか比企谷は雪ノ下と三浦に気を使いなるべく一緒にいるようにしているようだ。

「これではせっかく三人で遊ぼうといったのに意味がなくなった気がするのだが」

 

しかし比企谷の顔は自然な笑顔が浮かんでいる

「多少は女子へ警戒が少なくなったのかのう?」

戸塚も比企谷のそばにいるのだがそれだけでは無いようだ。

「思わぬトラブルで仲がより進展か、本当にどっかにありそうな話だな」

 

そう思い一人で感心していると

「あのー木材先輩、つまんないんですけどー、こんなかわいい子を放置するなんてあり得なくないですか?結衣先輩もそう思いますよねー?」

一色が不満そうに言ってきた

「そ、そんなことないよいろはちゃん、あたしいろはちゃんと遊べて楽しいよ!」

由比ヶ浜がフォローする。

 

「我に期待されても困るので二人で遊ぶか八幡のところにいけばよかろう」

そう言ってトイレにいくふりをしてその場を離れる

「結局何だかんだで八幡の気分転換にはなったようだな」

 

比企谷のほうを見ると女子に囲まれてはいるが落ち着いているようだ。

「フム、なんかまた我だけ疎外感を味わう結果になってしまったな」

もう帰ろうかと思っていたら

「材木座、戸塚と三人で一緒にプリクラとろうぜ」

比企谷から誘いがあった。

「八幡、嬉しいが女子共は大丈夫なのか?」

「ああ、なんか不満そうだったが元々俺たち三人で来る予定だっただろ、気にする必要はない」

 

「八幡がそういうなら断るわけにもいかぬな!」

そう言うと材木座は比企谷と戸塚と三人でプリクラを撮った。

この後カラオケに言って比企谷と材木座は女子が引くぐらい一緒にアニソンを熱唱したりして楽しい一日を過ごしたのだった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十話

週明け、今度こそ新作ラノベを読んでもらおうと奉仕部の扉を叩く、例によって雪ノ下のどうぞの声が聞こえたので扉を開けるがなんか雰囲気がおかしい。

あとまた新しく人が増えている。

 

「あのーまたラノベを持ってきたのですが?」

「材木座くん、それよりはあなたに聞きたいことがあるの、そこに座りなさい」

 

雪ノ下に言われ今さらなんだろう?なんか文句言われることしたのだろうか?

そう思い周りを見渡すと海老名だけが目を輝かせており、他の女子はそわそわしてたり下を向いてたりしている。

因みに比企谷はいつも以上に目が腐っていて放心している。

 

「材木座くん、こちらは相模さん、文化祭の実行委員長をしていた人よ」

 

あーあの八幡一人が泥を被らざる得ない状況を作った元凶か?

なんでこやつがここにいるんだ?

 

「相模さんとは色々あったのだけれど先ほど仲直りしたの」

 

なるほど、土下座でもして謝ったんだろうか?でもなんで今更?

材木座が疑問に思っていると

 

「その、相模さんが言うところによると…」

「雪ノ下さん、うち言わせて?」

相模が言葉を遮る

「比企谷がここにいる女子達と仲良がいいのは知ってるし、皆友達以上の関係になりたがってるってのも聞いてる、実はうちも…」

 

改めて考えると凄いな、八幡は本当にハーレム王にでもなっちゃうのかと材木座が思っていると。

 

「その、友達以上の関係になるとやっぱあっちのほうのことも考えないといけないわけで…」

あっち?なんのことだ?

材木座はよくわからぬという顔をしていると

「あっちって言うのは…付き合ってる人同士がするアレのことで…」

アレ?あっち?首を捻っていると

「材木座くん、これ以上はセクハラになるわよ」

 

雪ノ下から睨み付けられる

「本当になんのことかまるでわからぬ、なにか我がしでかしてしまったのなら謝罪するが」

「そういうことではなくて…」

ちっとも要領を得ない

 

すると相模が

「この間うちが自販機いったらあんたがブツブツ言いながら一人で飯食ってるのが見えて、気持ち悪いから素通りしようとしたんだ、そしたら比企谷の名前を呟いてたから後ろからこっそり聞いてたら…」

 

材木座はハッとなる、まさか八幡のイチモツの話か?

「その…比企谷のあそこが凄いって…大蛇みたいで壊れるぐらい大きくてとか…並みの女性には無理とか呟いてて」

「いや、それは、それより八幡!違う!違うのだ!」

材木座は比企谷の方を向いて叫ぶ

「いや、いいんだ、裏切られるのは慣れている」

比企谷は諦めた顔で宙を見つめている。

 

「違うのだ!我は八幡が羨ましくて、つい嫉妬してちょっと思っただけだ!こんなに美女ばかり周りに侍らせているのだ!多少の嫉妬ぐらい多目に見てくれてもよいではないか!本気でこんなデタラメを広めようとするわけなかろう!我と八幡は友達じゃないか!なあ!」

せっかく比企谷との仲が良好になったのにこれでは前より険悪になる、そう思い比企谷の体にすがり付き必死で説得する。

 

「そ、そうか、そうだな、俺にも覚えがあるし、疑って悪かった。あとすがり付くな」

その甲斐あってか信じてくれたようだ。

しかし問題は女子共である、若干一名はち×ざいだとか言って興奮してる人を除き皆比企谷を見ている。

聞きたいことは一つだろう、これは材木座に予想がついた。

始めに口を開いたのは雪ノ下だった。

「それで材木座くん、その…嘘なのよね?だと実際の比企谷くんの大きさは…」

「そ、そんなの知らぬ!大体男子同士で股間を見せあったり大きさを比べあったりはせぬわ!だから標準より上だとか下だとかなぞ分かるわけがなかろう!」

若干一名が大きく落胆しているのが見えるがしらぬ

「そんなのは二次元の特殊分野の話だ!知りたければ自分の目で確かめればよかろう!」

とここまで言ってしまい材木座はしまったと思う。

 

案の定女子達の目付きが怪しく光っている。

「おい…材木座…」

比企谷の首が機械のようにギギギとこちらに向く

「あ、スマヌ、これは失言だった。すまん八幡!つい口が滑った!悪気はなかったんだ!」

 

そう言ったが

「材木座くん、私たちは将来為に確認することができたから帰ってくれるかしら?」

雪ノ下からやけに優しく言われる

「あーしも確認しないと」

「ヒッキーちょっと早いけどいいよね?」

「うちも比企谷のこと…だから…」

 

「あ、あの皆さん?ここは学校ですのでそこをお忘れなく…」

材木座の注意もむなしく追い出される

最後に比企谷の何もかも諦めた顔が印象的だった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

最終話

次の日、材木座が登校すると校門のところに人だかりが出来てる、覗いてみると、比企谷が先日の女子全員を連れて登校していた。

なんか吹っ切れた顔をしている。

 

「八幡…昨日はその、すまなかった」

「いいんだ、材木座、逃げていた俺も悪かったんだ」

やけに爽やかに返事されて驚く

 

「こんなに皆俺のことを思ってくれて俺は幸福者だということ気がつかされたよ」

そう言いニコッと笑う比企谷の目は前ほどは腐ってはいなかった。

「八幡、まさか…お主…あのあと学校で…」

「いや、雪ノ下のとこに場所を移してな、さすがに皆初めてだったし、人数多いし相手するのも手探りで大変だったがなんとかなった。でもやった以上全員分責任取らなきゃって思った」

 

全員とだと?あの後?絶倫過ぎるだろ!絶句する材木座

 

「それでも皆誰を選んでもいいと言ってくれる。俺は本物の幸福者だ、全部材木座のお陰だ。ありがとう」

「あ、ああそうか、よかったな八幡」

「おう!そうだ!昨日持ってきたラノベ今日絶対持ってこいよ!遅くまで起きてたんでちょっと眠いけどちゃんと読んで感想言ってやるからな!」

「わ、わかった、必ず持っていく」

なんということだ、嫌がらせのために始めた計画が暴走して奴をハーレム王にしてしまった。

 

「復讐のつもりだったのにおかしげな方向へ行ってしまったな。なんか奴から出るリア充オーラーが半端ないんだが…まあ結果的に奴との絆は深まったしもうぞんざいな扱いをされることもあるまい」

 

その後、材木座は比企谷と親友のように付き合いつつ受験期間へと突入する。

比企谷達は同じ大学へ進むようで女子達と勉強会をよく開いていているようだった。

材木座と戸塚は別々の大学へ進学を希望していたため受験勉強期間中は余り顔を会わせることはなかったがたまに遊びにいってたりはしていた。

 

ある日材木座が自販機にいくと葉山が誰かを待っているのか一人で立っていた。

 

「やあ材木座くん」

「葉山殿か、この様なところで誰かと待ち合わせであるか?」

「相変わらずその話し方なんだね、君は変な方向でぶれないな」

ちょっと恥ずかしくなる材木座

「君を待っていたんだよ」

 

「我を?何故に?」

学校屈指のイケメンがカースト底辺の我に何の用だろうか?

疑問に思っていると

 

「比企谷くんは元気でやってるかい?」

「ああ、毎日美女を侍らし青春しつつ受験勉強に励んでいるようだが」

「そっか、君は比企谷くん達と同じ大学には行かないのかい?」

「我にはやりたいことがあるのでな、まあ別な大学になったからと言って我々の友情にヒビが入ることはあり得んし、進学したら住むところを近場にする予定でな、だからいつでも会いに行ける」

 

「友達か…俺には無縁の言葉だな」

葉山は寂しそうに言う

「実は材木座くんの小説を勝手に読ませてもらったことに対してまだお詫びをしてなかったと思ってね」

 

小説と聞いて前に海老名から聞いたこと思い出す。

「その件は海老名殿から聞いておるし、過ぎたことだから別にかまわん、しかし何故に我が捨てたものをわざわざ拾うようなことを?」

 

「君が大声で独り言を言っていたからさ、思惑通りにとか三人の女子とか聞こえてね、比企谷くんの名前も言ってたから初めは君が雪ノ下さん達に悪さしようとしてるのかと思っていたからね」

 

まあ実際問題比企谷に悪さをしようとしてたわけだが。

 

「まず証拠をと思って捨てたものを回収したのさ、問題があったら君につき出すためにね、そしたら雪ノ下さん結衣といろはのあの行動だ、拾ったときに軽くしか目を通して無かったからちゃんと読んだのさ、そしたら内容が比企谷くんと雪ノ下さん達の関係そのままだったから驚いてね、君はアレを読ませてあの三人を説得したのだろう?」

 

「あ、ああその通りであるが…」

なんだろう、なんか物凄く好意的に解釈されている。

というか下手に転んだら葉山から糾弾されていたわけか、今更ながら冷や汗が出てきた。

 

「君は比企谷くんからあまり良く扱われてなかったみたいだけどそれでも魂で繋がってると信じて彼と彼の周囲の人の関係を憂いて小説まで書くなんて」

 

「ま、まあ我と八幡はいわゆる相棒であるからな」

 

「俺にも今まで仲がいい奴は沢山いたけど、そこまで信じてやってくれる奴はいなかった、俺もやろうとは思わなかった。きっと俺のやり方が間違っていたんだろうと思ってさ、自分を見直すいいきっかけになったよ、みんなとも距離をおくようにしたしね」

 

「何故皆と距離をおくようなことを?」

「ああ、女の子達は比企谷くん方にいっちゃったしね、戸部達もむしろ俺がいることで逆にあいつらに迷惑をかけていたみたいだったし、今ではボッチって奴だよ」

 

俺がいることで迷惑?アレ?なんか聞いたことあるぞこの台詞

「体育の時彼が似たようなことを言ってたと思う。彼の場合謙虚になりすぎてたみたいだけど俺の場合は傲慢になりすぎてたんだろうね」

 

「それと俺が優美子振ったとき、比企谷くんを慰めに行かせたのも君だろ?」

「なぜそこまで知っているのだ?あのときトイレには我と八幡以外誰もいなかったはずだが」

 

「君は声が大きい、もう少し小さな声でしゃべるべきだと思うよ」

というかアレは八幡をおちょくる材料にするために…いやいやこれは言うべきではないだろう

 

「君がどういうつもりだったかは知らない、でも結果的に優美子もすぐ元気になったしね、姫菜も結衣も今まで見たこと無いような笑顔でいることが多くなってたし、やっぱり彼には敵わなかった。俺はグループを維持することしか考えてなかったから…」

 

「でも葉山殿はイケメンであるし女子からも人気がすごいではないか、わざわざボッチになる必要もないではないか」

 

「本当は好きな人がいたんだけどその人の心は俺の手の届かないところにいっちゃってね、その人以外誰とも付き合うつもりは無かったしさ、自信をなくしてね、人間関係も一度リセットしようと思って実は進学先を誰にも教えてない」

 

そういえば自分のクラスの女子も葉山と同じ大学へ行きたいからどこにいくか教えてくれって聞き回ってたな、結局分からなかったみたいだが

 

「大学は遠くところを選んだんだ、ここだけの話場所は…」

「ずいぶんと遠いな、確かにこれでは仮に知られたりしても気軽に会いに行ける距離ではないな」

 

「誰にも言わないでくれよ、あとこれは話に付き合ってくれたお礼だ」

そう言ってマックスコーヒーを手渡す、材木座が顔をしかめると

「人生は苦い、だからコーヒーぐらいは甘いぐらいでちょうどいいだったかな?」

「確かに奴はそのようなふざけたことを言ってたな」

 

「もう気軽に飲めるような所ではないだろうし、多分俺のこれからの人生は苦くなりそうなんでね」

 

葉山は一気に飲み干すと

「じゃあね、材木座くん、比企谷くんと…雪ノ下さんを頼んだよ…」

そう言って葉山は校舎に姿を消した。

 

葉山殿は好きな人がいたとか言ってたがまさか?

そういえばたまに廊下で比企谷と会うときがあるが横にはほぼ雪ノ下がいたことに気がついた。

 

「とうとう選んだのだろうか、このままズルズルと全員と関係を続けるのかと思っていたが」

マックスコーヒーを飲みながら思う

 

「それにしても奇しくも葉山殿と八幡、光と影の立場は逆転してしまったようだな、しかしながら根っこの部分では彼らは似た者同士だったのかもしれぬ、八幡は人間関係を進展せず現状維持を貫こうとしてたし、葉山殿も話を聞く限りではそのような感じだったようだしな」

 

「もしかすると違う出会い方をしたら奴等は親友になれていたのかもな」

材木座は空になったマックスコーヒーの缶を見つめこれから彼らはどうなるのだろうと柄にもなく考える

 

その時携帯にメールが来る、相手は比企谷だ

「ふん、息抜きにカラオケに行こうだと?このリア充め、爆発すればいいのに」

律儀にOKのメールを返して空き缶をゴミ箱へ放り込む

 

「まあ奴ら二人とも今の境遇に納得しておるのだ、我が気に病む必要も無し、真実は墓まで持っていくとするかのう!、しかし八幡の奴、我に内緒で選ぶとは、なにがしか言ってやらぬと気が収まらん、でも雪ノ下殿も同時に相手にすることになるな、勝てる未来が見えない」

 

また携帯がなり場所と時間が書かれたメールが届く

「まあよかろう!また八幡とアニソンを一緒に熱唱するか!雪ノ下殿とデュエットなぞ絶対にさせんからな!首を洗って待っておれ!」

 

そういえば我の復讐はいつからおかしくなってしまったんだろう?

復讐するは我にありなんて言った覚えもあるが、ぶっちゃけ誤用だしな、それにたしかこの続きがあったような…スマホで調べて吹き出す、我のやったことは葉山殿から見ると正にこれか、神とやらが見ているのなら八幡、葉山殿両者にそれ相応の報いを与えたということであろう、どのみち我に復讐なんて柄じゃなかったってことであろうな。

今更ながらどうでもいいことを思いつつ材木座は皆が待つ待ち合わせ場所へ向かうのだった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。