三幻神の力をもって異世界へ (無駄高容量ひきさん)
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プロローグ
主人公紹介的ななにか


ネタバレ注意!



天城 神人(アマシロ カミト) 17歳

誕生日 4/30

アマ『シ→4』ロ カ『ミト→3、10→30』

職業 アークプリースト

転生特典 三幻神の力

使ってたデッキ サイバー流

 

家族構成

 

父と母の3人暮らし。本来なら四人兄弟のはずだったのだが、2人目は心臓に、3人目は頭に障害があったため流産した。

その次に妊娠した4番目にしてやっと五体満足の命を授かった。

カミトは既にそのことを知っている。

ちなみにこの設定は本編において一切出てこない。

 

 

死因:

遊戯王のパックを買った帰りにトラックに轢かれて転生した。

 

 

性格:

性格はのほほんとしていて常に肩の力が抜けているため、よく驚く。

世話焼きは『せめて生まれることができなかった兄弟たちにしてやれなかった世話をしてやろう』という心持ちのため。

他人思いであるが、あくまで常識の範囲内。

たらし

 

 

悩み:

最近の悩みは、街の人から無償で物を大量(重さにして約60㎏)に貰ってしまうこと。

口笛を吹いただけで街中の犬猫子供+女性が集ってくること。

転生したことで遊戯王ができなくなったこと。

 

 

見た目:

容姿は、高身長に二枚目の黒髪黒眼であり、殆どの女性は笑顔を向けられると惚れる。

最近では、強さも明るみになってきたため、若い人妻が惚れてしまうこともあるそうな……

アクアと恋人になった今も、告白し当たって砕けた女性が後を絶たない。

ぶっちゃけミツルギ以上。

前世でもかなりモテていたが、全部断っていた。

理由としては、初対面だったのが半分、もう半分は女性の性格がクズだったから。

女の人って怖いね。

 

 

街の皆様からの立ち位置:

パーティーの問題児たちのお目付け役であり、後始末は7割彼がやっている。おかげで最近は顔パス。

最近は、ウィズのお店に迷惑をかけたアクアの尻拭いでよく訪れており、カミトがアクアに注意してからの縁で、数少ない常連になって頻繁に通っている。

 

 

日常:

チートに驕らないように鍛練しているため、既に世界最強クラス(最強ではない)。

趣味は食べ歩きだが、市場を歩くと色々と大変なのであまり満足にできていな。

本人はそんなことは知らずに今日も鍛練している。

 

 

街の評判:

街の評判は『頭のおかしい奴らとモンスターをどうにかしてくれるいい人いけすかないイケメン

『アクセルの街の守護神(比喩無し)』

 

 

転生後の成り行き:

冬将軍戦時、油断し不意を突かれて死にかけ、邪神の力に目覚める。

以降、慢心と油断は無くなった。

同時に、アクアの告白をうけ、恋人になる。

これを耳にした街中の女性という女性が枕を濡らし、男性からはもはや忌避されるレベルで嫌われる。

 

デストロイヤー戦の時、邪神の力に飲み込まれそうになった所を三幻神の分身(以下、三幻神(写し身))により、五分の間邪神の力を制御できる『創世の剣』を託される。

この際、三人にご主人様呼びされることが決定。

以降、度々会いにいっては他愛もない話をしている。

 

ハンス戦後、三幻神(写し身)といつでも話せるように。

しかし、何かと苦労も多いよう。

どうやら、より力をつければ肉体を持てるようになるらしいが……

 

 

今ある能力:

 オシリスの天空竜 スキルの数だけ強くなれるよ

 オベリスクの巨神兵 単純な超パワー

 ラーの翼神竜 元気なほど火力アップ

 

 邪神イレイザー 消☆滅

 邪神ドレッド・ルート 相手の貧弱貧弱ゥ!化

 邪神アバター 対象の能力を自分に上乗せ

 

 その他アークプリーストのスキル数々

なお、スキルポイントにはまだまだ余裕がある模様

 

 

~他の人の印象~

 

アクア   駄女神

カッコ良くて強くて自分たちのことを大切に想ってくれる恋人

……なのだが最近はあまり構ってもらえず嫉妬気味

 

カズマ   ヒキニート

パーティーで唯一の気兼ねなく話せる常識人

糞イケメンリア充

 

めぐみん  頭のおかしい爆裂娘

問題ばかり起こす自分たちを叱り、助けてくれる仲間

マッサージコワイ((( ;゚Д゚)))

 

ダクネス  ドMクルセイダー

自分たちの尻拭いをしてくれる頼もしい仲間

火炙りや電気などキツイことをしてくれるご主人様

 

ルナ    ギルドの受付お姉さん

規格外の強さと容姿、優しい心を持った人

アクアさんの尻拭い関係で割と親しい

 

ウィズ   癒し系リッチー

アクア様を収めてくれる気のいいお客さん

尽くし尽くされの関係になりたい

 

ゆんゆん  純粋なる中二患者

杖を譲ってくれたカッコいいお友達

何故かこのごろドキドキが止まらない

 

バニル   見通す悪魔

討伐されてからの奇妙な縁での知り合い

反りが合わないようで合う




三幻神(写し身)の紹介

ラーの翼神竜
性格 無口で一途
3人のまとめ役。
カミトには甘口デレデレだが、他の輩(特に女性)には辛口。結構自由人であり、束縛が嫌い。

オシリスの天空竜
性格 明朗快活でポジティブ
ムードメーカー。
どんな悪口も悪口と思わないほどのポジティブ(ノー天気)思考。
素直であるが故に思ったことを口に出してしまい、相手の心が弱いとポッキリ折ってしまうことも。ドジっ子。

オベリスクの巨神兵
性格 クールで厳しい
軍人気質。
自他共に厳しいが、どこか憎めないカリスマ性。
プライドが高く、自分の意見は絶対に変えない。

大元の三幻神の写し身。
能力そのものは同じ。
実は全員が健啖家だったりする。


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0話 死者転生

はじめまして、ひきさんです。
いやー、小説書くのって難しいですねぇ。
アクアがヒロインのssってないので書いて見たくなりました。
処女作なので拙い文章ですがよければどうぞ。


「天城 神人さん、ようこそ死後の世界へ。

あなたは先程、不幸にも亡くなってしまいました。」

 

……気づいたら俺、天城 神人(あましろ かみと)は知らない場所にいた。

俺の前には、今まで見たことがない位、美しい人がいた。

…ってか、死後の世界?

………そういや、遊戯王のカード買いに行く途中でトラックに轢かれたんだっけ。

そっか、死んだのか……俺。

 

「私はアクア。水を司る女神です。さて、早速ですがあなたには3つの選択肢があります」

 

アクア様(一応、偉い人らしいので様付け)曰く、

1,生まれ変わって1から人生を歩む。

2,天国的な所でおじいちゃんたちと永遠に世間話

そして3つ目、異世界へ転生して、魔王を討伐する。

これについては、ひとつだけ特典を選べるらしい。

 

「じゃあ、異世界に転生します。特典は…そうですね…遊戯王の三幻神の力って出来ますか?」

 

俺は遊戯王が大好きだ。

いままでパックに英世を何人溶かしたことか……。

青眼の白龍とかも迷ったけど、ビジュアル的に三幻神の方が好きだ。

3つ頼んでるような気もするが大丈夫だろうか?

 

「はい、出来ますよ」

「ありがとうございます!このお礼は必ず!!」

「……」

 

どうしたのだろう?

体調でも悪いのだろうか?

顔を赤く染めて俯いてしまった。

 

「な、何でもないわ。そ、それでは、その魔方陣から動かないでください」

 

そういって、俺の足元が光った。

まぁ女神だし、風邪とか無いのかもしれない。

 

「さぁ勇者よ!あわよくば、数多の候補の中からあなたが魔王を倒すことを願っています。見事、魔王を討伐した暁には天界からの褒美として、あなたの願いを何でも叶えましょう」

 

結局、なんだったのか分からずじまいで俺の意識はフェードアウトしていった。

 

………

……

 

「………い……おい…おい!あんちゃん!!」

「うおわぁ!!」ビックリした!!」

「おい、あんちゃん。どうした?突っ立ったまんまボーッとして?」

「い、いえ。少し考え事をしてただけです」

 

俺より一回り歳を重ねていそうな男に話しかけられた。

荒くれ者っぽいが、声をかけてくれるあたり、悪い人ではなさそうだ。

……あれ?

そういや、何で異世界語分かるの?

まぁ、アクア様がどうにかしてくださったのだろう。

ありがたや、ありがたや。

 

「あんちゃん、見ねぇ顔だが旅でもしてんのかい?」

「まぁ、そんなとこです。これからしばらくはここに居ようと思っています」

「若ぇのに大変だこった……そうだあんちゃん、腕に自信はあるかい?」

「人並み以上には恐らく」

 

特典もあるので、簡単に死んでしまう、なんてことはないだろう。

身体能力は変わっているか分からないが。

 

「それならおめぇ、冒険者になんねぇか?最初は馬小屋だがタダで泊まれるぜ?」

「そうですね、案内してもらえますか?」

「よぅし、着いてきな!」

 

少し歩いたところに大きめの建物があった。

 

「ここが"ギルド"だ。冒険者登録するには1000エリス必要だが金はあるか?」

 

エリスというのはお金の単位だろう。

ポケットを漁ってみるが、出てくるのは埃とカードだけだった。

財布は……そういえばカバンだ。

 

「お恥ずかしながら」

「がっはっは!!気にすんな!また今度、色つけて返してくれりゃあそれでいい!」

「ありがとうございます」

 

本当に感謝しかない。

しっかりと覚えておかねば。

さぁ、行ってこよう。

 

「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」

「冒険者登録をお願いします。」

 

先程貸してもらった1000エリスを出す。

 

「はい、1000エリスちょうど、いただきました。それでは、この紙にご自分のお名前と特徴を書いて頂いて、ここにある水晶に手をかざしてください」

 

アマシロ カミト 黒髪の中肉中背…っと。

こんなものだろう。

そして俺は、水晶に手をかざした。

 

「はい、アマシロ カミトさんですね……って

 うぇええええええぇぇーー!!?!」

 

うわぁ!?

本日2度目のびっくり。

サプライズデーなのか今日は?

 

「何ですかこれ!?全ステータスが平均値を大幅に越えていますよ!?特に魔力、筋力、耐久力は熟練の冒険者の方でもそうそういません!こんな人初めて………」

「マジか」

 

魔力はまぁ…何となく分かる。

神だし。

筋力と耐久力は恐らくオベリスクの力だろう。

やはり少し欲張り過ぎた気もする。

 

「………はっ!そ、そうだカミトさん、職業はどうなさいますか?おすすめは筋力と耐久力を生かしたソードマスターかクルセイダーですよ。他にも魔法を使うアークウィザードや万能職のアークプリーストなどがありますが」

「うーん………」

 

どうしようか。

せっかく異世界に来たので魔法を使ってみたいし。

でも、また死にたくはないし。

そうだなぁ……。

 

「じゃあ、アークプリーストでお願いします。」

 

神っていう位だし、それにアクア様には返しきれないご恩があるので聖職者であるプリーストにするべきだろう。万能職とも言っていたので魔法も使えるだろうしな。

回復系統かもしれないが。

 

「はい、アークプリーストですね。それではアマシロ カミトさん。ようこそギルドへ!ギルド一同、あなたのご活躍を期待しています!」

 

おおぉぉーーーーーッ!!

 

ここまで讃えられるとむず痒くなってくる。

いたたまれなくなり、目線を冒険者カードに落とす。

ふと、あるスキルが目に留まった。

『天空竜化』、『巨神兵化』そして『翼神竜化』というスキルだ。

名前からして三幻神に変身するのだろう。

実験は明日でいいか。

とりあえず、今日はもう疲れたので馬小屋で寝るとしよう。

 

「すいません、馬小屋ってどこにありますか?」

「はい、馬小屋はですね……」

 

その夜、馬糞の匂いでろくに寝れなかったがそれはまた別のお話。

そりゃタダだわ………。




読んでいただきありがとうございます。
皆さんよく10,000文字とか書けますね。素直に尊敬します。
次の投稿がいつになるか分かりませんが、頑張って書いてみたいと思っています。
以上!ひきさんでした!


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序章
1話 救出劇


どうもひきさんです。
よく考えたら0話で戦闘シーン無かったですね。
ほんとにすいませんでした!

それでは、1話 救出劇どうぞ!


どうも、カミトです。

え?デジャヴ感がする?

作者に言ってくれ。

俺は知らん。

 

まー、それはさておいて

転生してから3日。

俺は今、クエストに出掛けている。

内容はジャイアントード5匹の討伐だ。

特典の能力を推し量る、そのための実験だ。

 

まずは、『天空竜化』だ。

俺は赤い鱗に身を包んだ天空を統べるの竜となり、周辺だけ暗雲が立ち込める。

それに、分かる。

この状態だと、スキルの数に応じて強さが変わるらしい。

 

いけー、『超電導波サンダーフォース』

 

Oh…カエルまっくろけ…

 

~ ジャイアントトード 残り1/5匹 ~

 

よし次、『巨神兵化』

青い鎧を纏った巨神兵となり、歩むだけで地鳴りがする。

特筆した能力は無いが、圧倒的なパワーを得られる。

 

くらえー『ゴッドハンドクラッシャー』

 

うへぇ、こりゃR18Gだな。

臓物飛び出てるよ………。

 

~ ジャイアントトード 残り2/5匹 ~

 

最後に『翼神竜化』

機械の様な黄金の翼を背負う太陽神となり、地を天を街を照りつける。

生命力に比例して太陽は爆炎を滾らせる神性を持つ。

 

焼き尽くせー『ゴッドブレイズキャノン』

 

……もはや炭しか残ってねぇ……

 

~ ジャイアントトード 残り3/5匹 ~

 

ふぅ、疲れたー。

変身するとスッゲエつかれるな。

まだ未熟で使い慣れていないこともあるかもしれない。

ともあれ、まだ検証が必要だ。

 

ギャアァーーーー!?

 

悲鳴か!?

俺以外にも人いたのか。

って、それはこの際どうでもいい。

とりあえず行ってみよう。

 

「「あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」」

 

いた!全力疾走してるあそこの二人か!……って、あれ?

あれは、アクア様?

見間違いだろうか?

いや、あの青い髪と服は死後の世界で見た女神様の姿にそっくりだ。

なんかやけにテラテラしてるが………。

まぁいいや、助けてから考えよう。

『天空竜化』して、カエルをまっ○ろくろすけにする。

危ないところだった。

あと少し遅かったら補食されていただろう。

 

~ ジャイアントトード 残り5/5匹 クエスト達成 ~

 

変身を解除して女性に近づく。

カエルがショッキングだったのか泣いている。

巨大カエルが追いかけてくるとか一種のホラーだ。

……見れば見るほどアクア様にしか見えない。

 

「大丈夫ですか?」

「う"っ…う"っ…あ、ありがとね……って」

 

「あ"あ"あ"あ"ぁ"ーー!?」

 

うおわぁ!?

ビックリした!?

つか俺、この世界来てからビックリしてばっかだな。

それにしても、まさか本当にアクア様とは。

無事で良かったと喜ぶべきか、何故ここにいるのかと嘆くべきか………。

 

「あなた!あの時の人!」

「お久しぶりです。アクア様」

「っ!?う、うん。久しぶり。えーと…」

「カミト。アマシロ カミトです」

「そうそう!カミト!!」

「あー、えーと、アクアの知り合いか?」

 

黒髪緑ジャージで俺よりすこし年下っぽい青年が小走りで来た。

……絶対日本人だこいつ。

 

「カズマの1つ前の転生者よ。カズマ、貴方と違って不慮の事故で死んだ人よ」

「うるせー!あーその、お陰で助かりました」

「いえいえ、困ったときはお互い様ですから。えっと、名前を聞いても?」

「俺はカズマ。まぁ、堅苦しいのもなんだし、タメ口でいいか?」

「あぁ、じゃ改めて、カミトだ。宜しくなカズマ、アクア様!」

「カミト…その事についてちょっと…」

 

アクア様に手招きをされる。

やっぱり様付けはマズイのだろうか?

 

「わ、私のことは『アクア』って呼んで。街で女神だってバレると大変だから。あと、タメ口でお願い」

 

アクアが早口でまくし立てる。

顔も赤いので、苦しいのかもしれない。

全力疾走で逃げてたわけだし。

 

「わかった、アクア」

「おーい2人ともー、今日は帰るぞー」

「おーう、さ、行こうぜ!」

「えぇ!」

 

…………

……

 

「はい、こちらがジャイアントトード5匹の討伐報酬と肉の代金です。ご確認下さい」

「はい、間違いないです」

「ありがとうございましたー」

 

ルナさんの所で換金し終えてカズマたちの所へ行く。

カズマも同じクエストを受けていたらしく、俺が横取りしてしまったのだ。

2人は『俺が貰っていい』とは言ってくれたが、なんというか申し訳が無いので3人で分配した。

 

「2人とも、今日は俺の奢りだ!好きなだけ食ってくれ!」

「ありがとカミト!すいませーん!カエルの唐揚げと、シュワシュワを1つ」

「お前はもう少し遠慮しろよ……」

 

おぉ…すごい食いっぷりだ。

何故か心が和んでいく。

なんというか、リスの食事シーンのような。

 

30分程飲み食いした後、カズマがおもむろに話始めた。

 

「カミト、お前はこれからどうする?」

「どう、って?」

「これからソロでやってくのか、誰かとパーティーを組んでやってくのか。どうする?」

「……そうだな、できればパーティーを組んでいきたいな」

 

いくら特典がある!とはいえ、1人では出来ることは限られる。

仲間を助けることも出来なくなる。

 

「そこで提案なんだが、カミト。俺たちとパーティーを組まないか?俺ら2人だけだと、この先不安でさ」

「OKだ、改めてよろしくな、カズマ、アクア!」

 

この2人となら、喜んでパーティーを組める。

年の近い日本人と、可愛い女神様。

頑張れないはずがない!

 

「そいじゃあ、改めて…カンパーイ!!」

 

この後、3人で飲みあかし、俺の報酬の9割が吹き飛んだ。 

 

…………

……

 

????side

 

「どう思う?」

「絶対に……脈あり…羨ましい……!!」

「だな、見ろあの緩みきった顔を」

「うわー、イケメンは緩んだ顔もカッコいいんだねー」

「同感……けど、少しだらしない……」

「はぁ……一刻も早く、『あれ』を完成させねばならんな」

「そうだね、よし休憩終わりッ!やろー!」

「「おー」」




というわけで1話 救出劇
いかがだったでしょうか?
もう気づいてる方もいるかもしれませんが、サブタイは全て遊戯王のカードの名前から来ています。
意見や要望があれば、コメントしてください。
作者が狂喜乱舞します。
(そこ!コメ稼ぎ乙とか言わない!)
というわけで、ひきさんでした!


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2話 戦力補充

どうも、ひきさんです!
やっとめぐみんを出せます……
進展遅くてすいません( ノ;_ _)ノ
よければ、これからもよろしくお願いします!

それでは、2話 戦力補充をどうぞ!


「そういやカミト、お前の職業ってなんなの?」

 

カズマが聞いてきた。

そういえば2人には俺の職業言ってなかったな。

聞かれなかったのもあるが。

 

「俺はアークプリーストだよ」

「えっ!?カミト、あなたアークプリーストだったの!?私と同じじゃない!」

 

えっ、そうだったの?

けど、アクアがアークプリーストなのは何となく分かる。

女神だし。

どっちかと言えば信仰する方より信仰される方だが、聖職者という意味合いでは似合っている。

 

「カズマの職業は?」

 

カズマはそれを聞いたとたん、苦虫を噛み潰したような顔をした。

ヤバイこと聞いちゃった?

実はアヴェンジャーだとか、未来からの監視員とかか?

 

「お、俺は、その……ぼ、冒険者だよ」

「いや、そうじゃなくて職業を――ー」

「カミト。カズマはね、『冒険者』という職業なのよ。冒険者っていうのはね、一言で言うと器用貧乏な職業よ。どのスキルも習得できるけど、スキルポイントが普通より多く必要だったり、通常より効果が低かったりするの。ぶっちゃけ言って最弱職ねー」

 

おぉう、アクアさん毒舌ですねぇ……。

なんかごめんよカズマ。

『自分は最弱職です』なんて、とてもじゃないが口に出せない。

日本人の転生者は俺を含めた皆、俺TUEEEしてるのに対してカズマは俺YOEEEからの再スタートだ。

そりゃあ口篭るわ。

 

「ごめんよカズマ……ごめんよぉ………」

「やめてくれ!慈愛に溢れた聖職者の目で俺を見ないで!」

「あの、すいません。パーティーの募集というのはここでいいですか?」

 

紅い目と、いかにも魔法使いというような格好をした少女が話かけてきた。

眼帯をしているが、目に病気でもあるのだろうか?

あまり触れないでおこう。

 

「あぁ、確かに俺たちだ」

 

そう、俺たちはパーティーの募集をしていた。

カズマ曰く、『カミトがいない時にも対処できなければ背中を守れないから』とのことらしい。

しかし、アクアが、『私がいるんだから上級職でも喉から手が出るほど欲しいはずよ!』と自信満々に語り、加入条件を上級職のみに絞ったため誰もこなかったのだ。

 

「えっと、あなたは?」

「フッフッフッ、よくぞ聞いてくれました……」

 

そう言って少女は立ち上がり、マントをたなびかせながら意気揚々と名乗った。

その紅い宝石のような目は、昂りを体現するかのように爛々と輝いている。

 

「我が名はめぐみん!!紅魔族随一の魔法の使い手にして、最強の攻撃魔法『爆裂魔法』を操りし者!!」

 

……は?

………は?

…………は?

めぐみん?

思わず三度見してしまった。

え、マジの本名だよね?

あだ名で名乗るような場面じゃなかったよね?

なのになんだ?

そんな同級生から付けられたあだ名っぽい名前は?

 

「あまりの強大さ故、魔王に疎まれし力を汝は欲するか?ならば!深淵を覗く覚悟をせよ!!」

 

なんというか、いたたまれない。

痛くて見てられない。

身体は快調なのに、何故か心が痛い。

めぐみん?が一通り話した所でカズマが口を開いた。

 

「…………バカにしてんのか?」

「ち、違うわい!」

 

彼女には悪いが、イタズラかなにかと思われても仕方ない。

『高望みしすぎて誰も来ないでやーんのザマァwww』みたいに煽ってるつもりなら笑えない冗談だな。

 

「紅魔族っていうのはね、生まれつき高い魔法適正を持っていて、そしてみんな変な名前をもっているの」

「高い魔法適正、ってどのくらい?」

「そうね、一族全員がアークウィザードになれるくらいには高いわ」

 

アクア、本日2回目の解説お疲れ様。

というか、なかなかエグいな、紅魔族。

そこの集落を陥落させるの、無理じゃね?

 

「じゃあ、めぐみんだっけ?とりあえず力を見たいからクエストで、その『爆裂魔法』をみせてくれないか?」

 

クエストは先日、俺が横取りしたせいでまだ未達成になっているカズマたちのカエル討伐だ。

百聞は一見にしかず、とも言うし実戦で見た方が早い。

まだ分かるほどの経験も無いが。

 

…………

……

 

「『爆裂魔法』は最強魔法。それ故に詠唱に時間が掛かります。なので、あのカエルの足止めをお願いします」

「よし、わかった」

「よし行くぞ!カズマ!」

 

男勢は周りカエルに走っていく。

捕食されないよう、ある程度の距離を保ちながら時間を稼ぐ。

戦い慣れないので、その『ある程度の距離』が難しい。

そして少しした後、ピリピリとする感覚がした。

 

「準備できました!いつでも撃てます!」

 

めぐみんの詠唱が終わったらしい。

そして、デュエリストの勘が叫んでいる。

『あれはヤバい』と。

俺とカズマの退避が終わった時、足止めしていたカエルの足元は粉砕!!し、肉体は玉砕!!した。

 

「おぉ…」

「これが、魔法か…」

 

残ったのは焼けた土の臭いと、大きなクレーターのみ。

俺たちは初めて見る魔法に心を踊らせていた。

こんな凄い魔法を使えるなんて……。

めぐみんは凄い魔法使いn 『どさっ……』 ……。

へ…?

 

「『爆裂魔法』は消費魔力もまた絶大。要約すると、限界以上の魔力を使ったので身動きひとつ取れません」

 

めぐみんの周りには何匹かカエルが地面から出てきた。

衝撃で冬眠から起きたのか。

仕方ない、撤退しよう。

 

「みんな!逃げるぞーー!!」

「カミトーーーー!助けーーー」

 

パクっ 

 

アクアは食われれてるし、

 

「ヤバいです、食われます、ちょっと助けて―」

 

パクっ

 

めぐみんも食われた。

って、おい!

これじゃ撤退できないじゃん!

 

「カズマはめぐみんを頼む!俺はアクアを助ける!」

「あ、あぁ!わかった!」

 

そうして、規定の数より3、4匹多く討伐して俺たちは帰った。

この時、俺は、アクアとこの世界で始めてあった時のテラテラの正体に気付いてしまった。

……出来ることなら、気付きたくはなかった。

 

…………

……

 

「う"っ、う"っ、あ"、あ"り"がどね"、カミトぉ…」

 

アクアは俺に、めぐみんはカズマに背負われて街へ帰った。

しかし、アクアが強めに抱きついてくるせいで、豊満な胸が背中で『ム乳ッ』と潰されている。

お陰で俺はクエストが終わってもずっと理性と戦闘している。

あぁ、全て遠き理想郷(アヴァロン)はここにあったか……

 

「カエルの中って、ヌルヌルしてますけど意外とぬくいんですね」

 

知りたくなかった。そんな情報。

カエルの中の居心地情報とか誰得にも程がある。

 

「それで、めぐみんのパーティー加入の件だが…」

「俺はいいと思うぞ」

「わ"た"し"も"ぉ…」

「ほらほらアクア、もう泣かない、可愛い顔が台無しだぞ」

「っ!!?!」

 

急に静かになってしまった。

まぁ、泣き止んだならいいか。

あ、それ以上くっ付けれると理性が……。

話題に参加して気を紛らわせなければ。

 

「俺もいいと思うが、爆裂魔法は禁止な。これからは、他の魔法で頑張ってくれ」

「使えません」

 

……今なんと言った?

聞き間違いなら杞憂で済むのだが、済まないことも億分の1くらいの確率ではあるのかもしれないのでもう一度聞いてみる。

 

「他の魔法で頑張ってくれ」

「だから、私は爆裂魔法しか使えません」

「MA☆JIか」

「MA☆JIです」

 

MA⭐JIだったか。

 

「……まぁいいか、俺は変わらず賛成だ」

「「ゑっ!?」」

 

だって、使い道は限られるかもしれないけど、それを補う攻撃力がある。

使った後は、俺たちがフォローすればいい。

ピンポイントではあるが、はまれば圧倒的に強い。

それを鑑みればそこまでのデメリットではない。

むしろ、変に消費して爆裂魔法が撃てない、というパターンはなんとしても避けたい。

 

「ふっ、どうしますか?」

「はぁ…わかったよ…今日からよろしくな!めぐみん!」

 

その後、アクアが背中で寝てしまい、起きた後、寝ぼけて俺を女湯に連れ込もうとして一悶着あった。

次の日の俺の二つ名は『色喰い』だった。




ありがとうございます!ひきさんです!
2話 戦力補充いかがだったでしょうか?
本当はキャベツまで行きたかったのですが、力尽きました。
すいません。

アクアの赤面の理由全く気付かないカミト君ですが、もう少ししたら本格的に恋愛を取り込んでいこうと思います。

それでは、
次回 3話 神罰
 デュエルスタンバイ!


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3話 騎士道精神?

どうも、ひきさんです。
初めてコメントもらいました!
それどころか、ネタまで貰っちゃいました!
ホントにありがとうございます。
これからも、無駄高容量ひきさんをよろしく!

それでは、3話 騎士道精神?どうぞ!


どうも、カミトです。

突然ですが、今、パーティーに入りたい、という騎士のような風貌のダクネスと名乗る?人と話をしています。

 

「この間、ヌルヌルになった2人の少女がいただろう。

いったいどんな激しいプレイをしたんだ」ハァハァ

 

見ての通り少し?残念な人っぽい。

 

「ま、まぁまぁ、とりあえず、今日は遅いので明日ゆっくり話しません?」

 

暗に"お断り"という意味を込めてお開きにする。

 

…………

……

 

「さぁ!どんなに激しいプレイをしたんだ!?」ハァハァ

 

…うん、伝わらなかった。

 

「カミト、この人が昨日、パーティーに入りたいって言ってきた人?」

「あぁ…そうだ…」

 

カズマは耳打ちしてくる。

 

(なぁ、この人ヤバい人じゃね?断っとこうぜ)

(あぁ、そうだな)

 

この人には悪いが断っとこう。

 

「あのー」

「コラコラ、ダクネス。そんなにグイグイいっちゃダメだって」

 

ダクネスの後ろから銀髪の少女?少年?が出てきた。

 

「私はクリス、盗賊だよ」

 

名前からして女だろう。

起伏の少ない体つきだったから分からんかった。

 

「ねぇそこの君、君って冒険者だよね?」

クリスがカズマに話しかけた。

「あ、あぁ、そうだが…」 

「ならさ、盗賊スキルを覚えてみるきはない?報酬はシュワシュワ一杯!」

「安いな!すいませーん、この人にシュワシュワひとつ!」

 

さて、俺は俺のスキルを見てみるか。

 

アマシロ カミト Lv5 スキルポイント:4000

『天空竜化』 取得済

『巨神兵化』 取得済

『翼神竜化』 取得済

『ヒール』 1ポイント

『リザレクション』 2ポイント

『ターンアンデッド』 1ポイント

『セイクリッドターンアンデッド』 2ポイント

『召雷弾』 1ポイント

『ゴッドハンドインパクト』 1ポイント

『ゴッドフェニックス』 1ポイント

 

 

スキルポイント4000!? 

何でも覚え放題じゃん!

まぁ、取れるスキルは全部取っておこう

 残りスキルポイント 3991

っと、カズマたちが帰ってきたな。って、クリスって人泣いてない?

 

「カズマ、何があった」

「実はな……」

「この男は窃盗スキルを覚えたあと、パンツを剥ぎ取って財布をむしりとったのだ!!」ハァハァ

 

うわぁー…

 

「うわぁー…」

「オイコラ!いやまぁ、事実っちゃあ事実だけども!」

「うわぁー…」

 

うわぁー…

 

「うわぁー…」

「カズマ、遂に変態にジョブチェンジしたのね…」

「ちっがーーーう!!」

 

カズマたちがギャーギャー騒いでいると……

 

『緊急!緊急!冒険者各員は正門前に集合してください!!』

 

うおわぁ!?

ビックリした!?

 

「さぁカミト!正門に行くわよ!!」

 

アクアが俺の手を握って走る。

 

「おいおい!一体なんだよ!」

 

…………

……

 

「おいアクア、これはなんだ!?」

「あれ?言ってなかったっけ?キャベツよキャベツ」

 

は?キャベツ?

あのシャキシャキしてるあれ?

某焼肉屋のタレをかけると美味しいあれ?

そんなことで召集とは、収穫祭でもやるのだろうか。

 

「この世界のキャベツはね、収穫時期になると食われてたまるかと言わんばかりに飛び回って、最後は人目につかない所でひっそりと息を引き取るの」

 

この世界のキャベツ、飛ぶの!?

んでもって、人目につかないところで息を引き取るとか猫かよ!?

なんというか、この世界のキャベツ、数奇だなぁ…

っていうか、

 

「アクア、手握りっぱなしだけど…」

「!?ご、ごめん…」

「い、いや…良いけども…」

 

アクアが照れてる…

これが所謂ギャップ萌え!?

 

『皆さーん!

今年のキャベツは出来が良いため、1玉10,000エリスで買い取りまーす!』

 

ウオオオォォォ!!

 

すげぇ熱気だなぁ…

じゃ、俺もいくか!

 

『天空竜化』

 

目一杯息を吸い込み、それを一気に放出するように雄叫びをあげる。

自然界ではただの威嚇行動、だが天を統べる神の咆哮は音を出すだけに留まらず風圧や衝撃をも巻き起こす。

その余波を受け、キャベツと冒険者たちが立ち止まる。

 

「カズマ!何ですかあれ!滅茶苦茶カッコいいです!!」

「あぁ、あれはカミトだ!つか、見惚れてないで早くどかないと俺らまで巻き込まれるぞ!」

 

カズマたちがなんか話しているが関係ない。

高まる戦闘本能が抑えきれない、この力を解放したくて堪らない。

 

『超伝導波サンダーフォース』!!

 

キャベツが消えないよう、かなり手加減して放ったのでボトボトとキャベツたちが痺れて墜ちてく。

しかしそれでも、一部のキャベツは焦げて黒くなってしまった。

 

「なんだありゃあ!?」

「あんなモンスター、見たことも聞いたこともねぇ!」

 

フフフ、驚いてる驚いてる。

落としたキャベツを人型になり、ドンドン拾っていく。

よしっ、次!

 

今度は『翼神竜化』だ!

 

「また見たこともねぇモンスターが出たぞ!」

「皆、ひけぇー!!」

「あれほどの威力、どれだけ気持ちいいか……こっちだぁ!撃ってこぉい!!」ハァハァ

 

囮のフリして当たりにきていやがるッ!!

まったくあのドM騎士は……。

もういいや。

 

『ゴッドフェニックス』!!

 

今度も手加減して、キャベツの息の根を止めるだけにするが、一ヶ所だけ耐えきった所があった。

 

「あぁ…快…感……❤」

 

熱いとか痛いとかではなく快感って出てきたあたり、こいつのドMっぷりは筋金入りだよ、うん。

このウェーブで収穫しきった後、俺は疲れたので先に街へ戻った。

 

…………

……

 

「改めて、名はダクネス。クルセイダーを生業としている。

盾になるのは得意だが、攻撃には期待しないでくれ…

いかんせん、不器用過ぎて攻撃があたらん……

なので!囮や壁代わりとして遠慮なく使ってくれ!!」ハァハァ

 

結局、俺とカズマはダクネスのパーティー入りを断りきれず入れることになった。

と、アクアがホクホク顔で話しだす。

 

「にしても、このパーティーも豪華な面子が揃ってきたじゃない。

アークプリーストの私とカミトに、アークウィザードのめぐみん、クルセイダーのダクネス。5人中4人が上級職なんてなかなか無いわよ!」

「お陰で俺の肩身が狭い……」

 

ドンマイカズマ、今度なにか奢れ。

ともかく、今日は新たな仲間ができたことを喜ぼう。

 

「よし、今夜はダクネスのパーティー入りを祝して乾杯だぁ!」

 

その晩、アクアが酔いつぶれ、俺は一晩中アクアの世話をすることになった。

…アクアの髪ってサラサラなんだな……




どうも、ひきさんです!
カミト君がアクアのことを意識し初めましたねぇ。
これから、どうやってくっ付けていこうか。ニヤニヤ

カミト君のスキルポイントはオベリスクのステータスから取っています。

それでは、
次回 4話 神の怒り
 デュエルスタンバイ!


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4話 神の怒り

どうも、ひきさんです。
今日は学校の離任式でしたが、ぶっちゃけ先生とかどーでもいいと思う…
教科書読んどきゃよくね?
先生とかは分かんないときに聞くだけにしてさ。
まぁ、それはさておき

4話 神の怒り、どうぞ!


どうも、カミトです。

今日、キャベツの報酬が支払われた。

俺は300万位だった。

懐が暖まったので、結構高い(それぞれ100万くらいする)剣と防具と杖を買っておいた。

名前を付けられるらしかったのでそれぞれ、

 

『天空竜剣』

『巨神兵鎧』

『翼神竜杖』と名付けた。

 

え?名前じゃないって?

いやいや、侮るなかれ。

これら一つ一つに三幻神の力を宿したので、もとの性能と相まって、転生特典と同じぐらいに強くなってしまった。

もうね、負ける気がせんよ。

只でさえ特典3つ貰った様なもんなのに、更に特典と同等の武器なんか手にしたんだからね。

 

「なんでよおぉーー!?」

 

アクアか。どうかしたのだろうか?

 

「アクアー、どうかしたのかー?」

「あっ!聞いてよカミト!」

 

アクアが軽く涙目になっている。

 

「私、どうしてもお金が必要だったからたくさん収穫したのよ!?なのに、報酬が少ししかなかったのよ!?」

「なぁ、アクア」

「どうしたの?カミト」

「そのお金が必要だったことってなんだ?」

 

途端にアクアがそっぽを向く。

 

「えぇーと…その…ツケがありまして…」

 

ツケって…

 

「だ、だって!私、今回の報酬が相当な額になるって踏んで100万近いツケがあるの!」

 

100万って…どんだけ使い込んだんだ……

 

「はぁ……アクア」

 

子供を諭す様な口調で話を始める。

 

「どうしても欲しいもんがあるなら、最初から俺に言ってくれ。ある程度は出してやるから、今回みたいな無断で使い込むことは止めてくれ。とりあえず今回は俺が出すから、な?」

「はぃ、ごめんなさい……」シュン

「分かってくれればそれでいい」

 

俺はアクアの頭を撫でた。

 

「!!?!」///

 

前にも触ったことあるけど、アクアの髪ってやっぱサラサラだなぁー

、なんて思っているとめぐみんたちが来た。

と、アクアがとっさに俺から離れる。

どうやら、めぐみんは杖を、ダクネスは鎧を、カズマは装備一式を新調したらしい。

 

「ん?どうしたのですかアクア?顔が赤いようですが…」

「な、何でもないわよ!えぇ、何にも!!」///

「ホントに大丈夫か?無理そうならクエストも強制しないぞ」

「ホントに大丈夫だから!さ、さーてクエストに行きましょ!」///

 

大丈夫だろうか…?

つっても、どのクエストに行こうか?

 

「クエスト、どうする?」

「雑魚が一杯出てくるヤツにしましょう!新調した杖の威力を試すのです!」

「一撃が重くて気持ちいーもとい、強いヤツにしよう!」ハァハァ

「いいえ、稼ぎのいいクエストにしましょう!ツケを払ったせいで今日のご飯代も無いの!」

 

纏まりがなくて騒がしいことで

 

「あ、ねぇ!これなんてどう?『湖の浄化』!」

 

なるほど、アクアと俺が一緒にやれば簡単に終わるだろう。

めんどくさいのはごめんだ。

 

「よし、それにしよう」

「「えぇー」」

「えぇーじゃありません」

 

わざわざ危険を冒す必要はない。

…………

……

 

と、いうわけで湖に来ています。

俺は今、カズマを冷めた目で睨んでいる。

 

「…さすが、クズマさんだな…」

「おい!誰だクズマなんて不名誉なあだ名着けたやつは!」

「いや、だって…なぁ……」

 

アクアは今、檻に入れられて湖に浸けられている。

アクアが

 

「私は水の女神なんだから、水に触れてるだけで浄化できるのよ!」と、言ったのでカズマが

 

「アクアを檻に入れて、湖に浸けておこう」と、言ったのだ。

流石にこれはないわー(ヾノ・∀・`)

 

「私、紅茶のティーパックの気分なんですけど……」

 

とりあえず、後でカズマをシメておこう。

なんて考えていると、湖に複数の黒い影が浮かんできた。

ってあれ、ワニか!?

 

「ぎゃあーー!カミトォーーー!!なんか出てきたんですけど!!」 

「アクアは浄化に専念してくれ!こいつらは俺が食い止める!!」

「う、うん!気を付けて!」

 

そうしてアクアは、浄化魔法『ピュリフィケーション』を連発する。

さて、オシリスの攻撃は電気だからアクアが感電してしまうし、ラーは攻撃範囲が広すぎる。

…よし!

 

『巨神兵化』!!

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!

俺は青い巨神兵となる。

 

「ハワワワワァァァ…やっぱりアレ、カッコいいです!!」

 

めぐみん、言ってる前に手伝ってくれ……

と思ったが、俺とアクアが湖ごとぶっ飛ばされそうなので止めておいた。

ワニたちが俺に噛みついてくるが神の身体には文字通り歯が立たない。

俺はワニを投げては千切り、千切っては投げのローテーションで殲滅をしている。

カズマが少し引いていたが知ったことではない。

 

(ダクネスとめぐみんは興奮していて気にしていない。アクアは浄化に集中していて気づいていない)

 

 

 30分後……

アクアの浄化が終わったのかワニたちが去っていく。

 

「おーい、アクアー。帰るぞー…ってどうした?」

 

アクアが檻の中で膝を抱えてうずくまっている。

 

「外の世界…恐い…。このまま街に帰る…」

 

そう言って出てこようとしないので、仕方なくそのまま街へ帰る。

道中、カードを見てみると…

 

アマシロ カミト Lv41 4052ポイント

 

『ピュリフィケーション』 1ポイント

『????』 4100ポイント

 

 

…は?Lv41!?ワニ倒しまくった影響か?

て言うか、『????』?何なのだろうか?

まぁ、まだ取得出来ないから考えないでいいか。

 

「女神様!女神様じゃないですか!?」

 

後ろからTHE☆勇者と言うような風貌の青年がでてきた。

バキッ!

おおー、素手で檻壊した。

つーか、女神様ってことはつまり、こいつ『転生者』か。

腰に下げてる剣から魔力を感じる。

多分、アレがあいつの特典だろう。

 

「女神……?そうよ!私は女神よ!!」

 

良かった。いつものノリに戻ったようだ。

 

「……あんた誰?」

「僕ですよミツルギ キョウヤです!

あなた様にこの『魔剣グラム』を貰った!」

 

なーんか、こいついけすかねぇな…

『俺に着いてきゃ万事解決』みたいな雰囲気がね……

 

「あー、ごめん。私かなりの人数送り出してきたから覚えきれないの」

 

哀れなりミ、ミ……ミツカ?

 

「そ、そういえば、何故女神様は檻の中に?」

 

俺たちはミツカに事情を説明した。

 

 

「はああぁぁーー!?女神様を連れ出した!?」

 

まぁ確かに、そうなるよな。

 

「君は一体何をやっているんだ!?」

 

ミツカはカズマの肩を揺さぶる。

 

「い、いや、私はそれなりに楽しくやってるから…」

「アクア様、あなたは女神ですよ!

……ちなみに、今はどこで寝泊まりしているんだい?」

「えっと馬小屋だけどー」

「アクア様をこんな環境に置いてはおけない。さぁ、行きましょう」

 

ミツカが強引にアクアの手を引いていく。

 

「おい、その手を離せ。礼儀知らずにもほどがあるだろう」

 

ダクネスが間に割って入り制止する。

 

「ふむ……クルセイダーか。君はこんな優秀そうな人を馬小屋で寝泊まりさせて、恥ずかしいとは思わないのか!」

 

初対面のくせして言いたい放題だな。

 

「カズマと言ったね?僕と勝負をしよう。負けた方が勝った方の言うことを聞くってことで」

「誰がそんなのー」

「おい」

 

ドスの利いた低い声で呼び掛ける。

 

 

「その喧嘩、俺が買った!」

 

堪忍袋の緒が焼き切れる音がした。

こいつだけは絶対許さん!!

カズマの苦労も知らずに好き放題言いやがって!

 

「い、いいが、大丈夫かい?僕のレベルは37だけど」

 

は?37?俺は41なんだけど?

 

「あぁ、その前にフィールドを変えないか?ここじゃ本気を出せんだろ」

「よしわかった。外の草原でいいかい?」

「Okだ。それとおまえ」

「?」

 

俺は目一杯の殺気を込めて睨みつける。

 

「俺はな、仲間をバカにするやつがこの世で一番嫌いなんだよ!!」

 

…………

……

俺とミツカは草原で向かい合っている。

 

「俺からいかせてもらうぞ」

「本気で来てくれて構わないよ」

「じゃあ…お言葉に甘えさせてもらおうか!」

 

『翼神竜化』!

 

ミツカは唖然としている。

だが、手加減はしない。

 

『ゴッドブレイズキャノン』!!

 

ドゴオオオォォーーン!!

 

最初から本気で攻撃する。

土煙が段々と晴れていく。

ミツカは?

見ると、ミツカは黒焦げで気絶していた。

随分と呆気ねえな。

あ、いっけね!

周りの木も一緒に燃やしちまった!

 

消火のほうが時間かかった。

…………

……

 

「僕の完敗だ…約束は約束だ。何でもいってくれ」

「どうする?」

みんなに聞いてみる。

「ちょっとあんた!壊した檻の修理代払いなさいよ!!

30万よ30万!!」

「あっはい」

 

ミツカは申し訳なさそうに小袋を差し出す。

いやぁ、それにしてもスッキリした。

 

「ねぇ、カミト」

「どうした?アクア」

 

アクアが話し掛けてくる。

 

「カミトが『仲間をバカにするやつが一番嫌い』って言ったとき、少しカッコ良かったわよ///」

「え…?」

 

 

無意識に聞き返す。

 

「何でもないわよ。さぁ、今日は飲みましょう!」

 

…何だったんだ今の……?

俺がカッコ良いって?

何なんだ一体…

 

その晩、またアクアが酔いつぶれてしまい、またアクアに膝枕をすることになった。

それと……

…今日は余り食べ物が喉を通らなかった。




はい、読んでいただきありがとうございました。
カミト君がやっと恋に目覚めさせることができました!

ミツルギの魔剣はカミト君が勝負したのでミツルギが持っています。


それでは、
次回 死霊の誘い
 デュエルスタンバイ
(そういえばミツルギの取り巻きを書くのを忘れてたあ!……まぁ、いいか…)


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5話 死霊の誘い

どうも、ひきさんです。
やっとベルディアが出せます。
1巻の内容をやっと終えられることができます!

それでは、5話 死霊の誘いどうぞ!


『緊急!緊急!冒険者各員は正門前に集まって下さい!!』

 

ん?どうしたのだろう?

俺たちは今日のクエストを選んでいた。

とりあえず行ってみよう。

…面倒ごとの予感……

 

…………

……

 

外に出てみると兜を抱えた首なしの騎士がいた。

あれがデュラハンだろうか?

わーすげー始めて見た。

けどなんだ?デュラハンの肩が小刻みに揺れている。

 

「俺は最近近くに移住してきた魔王幹部の者だが……」

 

魔王幹部だったのかあいつ。

しかし、何か様子がおかしい。

 

「お、俺の城に!毎日新聞欠かさず爆裂魔法を撃ち込んでくる大馬鹿者は!どこのどいつだぁぁーー!!」

 

…うん、一人しかいないね。

 

こんな『始まりの街』で爆裂魔法なんてネタ魔法使うやつは……

 

(おい、めぐみん。どういうことだ)

(し、しょうがないじゃないですか!1日1回、固くて大きいモノに撃ち込まないと気がすまないんですよ)

 

まぁこいつには後で『カミト特製超電撃マッサージ』をやってやろう。

 

「俺が!魔王軍幹部だと知ってやっているのなら!堂々と城に攻めてこい!

その気がないのなら街で震えているがいい!

ねぇ、なんでこんな陰湿な嫌がらせするの?

駆け出ししか居ない街だと思って見逃してやっていたら、毎日毎日ポンポンポンポン撃ち込みに来よって!

頭おかしいんじゃないのかキサマらぁぁぁーー!!!」

 

えらくコミカルな幹部さんだなオイ。

さて、まぁ行くか……

 

「ちょっ!カミト!?」

「お前か!」

「あぁそうだ。いやーお前を誘き出す俺の策にハマってくれてありがたい限りだねぇ」

 

あえて挑発的に話す。

 

「ほう…魔王幹部だと知ってなお、俺を煽るか…

面白い…ここはひとつ、お前を苦しめてやるとしよう」

 

そう言ってベルディアは後ろにいためぐみんに兜を向けた。

…なにをする気だ?

 

「『汝に死の呪いを。貴様は一週間後、死ぬであー

ぐほあぁ!?

 

ま、何かする前に止めとこ。

俺は、ぶっちゃけあまり出番のない『天空竜剣』でベルディアを切りつける。

 

「なに!?魔王様の加護を受けたこの鎧をこうも簡単に切り裂くとは…貴様、一体何者だ!?」

「俺は天城 神人、冒険者だ」

「嘘つくな!爆裂魔法が使えるような奴が、ここまで筋力が高いわけないだろう!」

 

うーん…オシリスの加護付けたせいかな?

大根くらいの手応えで斬れた。

 

「と、とにかくもう爆裂魔法は撃ち込むな!?絶対だぞ!?

それと一つ忠告してやろう、『死の宣告』はしっかり発動したからな、そこの娘はこのままだと死ぬぞ。

解除して欲しくば俺の城の最上階まで来ることだな!」

 

あ、そんなんでいいの?

てっきり、『街の女を全員差し出せ』とか言うのかと。

と、ベルディアは闇に包まれ消えた。

 

「じゃ、ちょっとひとっ飛びしてくる!」

「あっ!ちょっ!カミトーー!?」

 

天空竜となり、ベルディアの城へ向かう。

 

…………

……

 

えーっと、どこだ?

…あっ!あれか!

よーし、『超電導波サンダーフォース』!!

 

ドゴオオオォォーーン!!

 

「うおぉ!?ダリナンダアンタイッタイ!?」

 

なんでオンドゥル語知ってんだよ!?

まぁいいや。

こいつ倒せば呪いとやらも消滅するだろ。

 

「なんだこの神々しいオーラは!?

魔王様が言っていた『神聖な気配』とはこの事だったのか!?」

 

話から考えるに、ベルディアは魔王からその『神聖な気配』の調査でも命じられたのだろう。

最近、移住してきたって言ってたし。

まぁ挨拶代わりに…

 

『召雷弾』!!

 

このスキルは相手を弱体化させる効果がある。

ただ、原作と違い、相手を倒す効果はない。

魔王幹部というぐらいなので、多分、実力は相当なものだろう。

 

「ぎやぁーーーーーーーーーー!!」

 

おー効いてる効いてる。

さぁて……

手加減なしの決闘(デュエル)だ!

俺は人型に戻り、城に開けた風穴から入る。

 

「貴様は街の…!なるほど、辻褄が合った。

貴様……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神の使いだろう?」

「いや?違うよ?」

「…は?マジで?」

「マジで」

 

三幻神の力はあるけど。

 

「そんなわけないだろう!!少なくとも、お前からは神に近しいオーラを感じるぞ!?」

「?そうなの?」

「むぅ……しかし……まぁよい、貴様を倒せばどちらでもよいわ!」

 

まぁ確かに。

 

「では……行くぞ!」

「おっとっと」

 

ベルディアが頭を上へ投げ、剣と剣が打ち合う金属音がする。

 

「貴様……本当に魔法使いか?」

「いや、プリーストだ」

「はぁ!?」

「そこっ!」

 

頭を抱えていた脇の辺りを斬りつける。

同時にベルディアが後ろに下がり、頭をキャッチし、そしてもう一度投げる。

 

「くっ……!力が入らん……」

「休ませねぇよ!」

 

すかさず、『翼神竜杖』で幾つもの魔法を()()()編んでいく。

 

「なっ!」

 

『セイクリッド・クリエイトウォーター』!

 

無数の水柱がベルディアを襲う。

『翼神竜杖』は、使用者の集中力と処理能力を上げ、同時詠唱を可能にする効果がある。

しかし、大量に魔法を使うことになるため、魔力の消費も激しい。

 

「水が…!」

 

水が弱点なのだろう。

いちじるしく動きが鈍る。

 

「これで終わりだ!」

 

素早く懐へ潜り込み、連続で切り裂く。

 

「ぐぁぁぁーーーーーーーー!!」

 

ベルディアが背中をつく。

 

「…貴様、名をカミトと言ったな…」

「あぁ」

「魔王様は強い。気を付けるのだぞ、勇者よ……」

「あぁ、さらばだ、誇り高き騎士『ベルディア』……」

「さぁ、やれ」

「……『ターンアンデッド』」

 

すぅ…と消えていった兜から覗く目は、どこか満足げだった。

………さ、帰るか。

 

…………

……

 

「カミトォォォーーー!!」

「うわっ!ど、どうしたアクア!?」

「エグッ…良かったぁ…心配したんだからねぇ…」

 

アクアが泣いて抱き付いてきた。

 

「ごめんな、心配させて」

「本当にな、アクアが『私も行く』って聞かなかったんだからな」

「そうですよ、ずーっと泣いてて苦労したんですから」

「私たちに言わずに行ってしまうなんて、水臭いじゃないか。もう少し私たちを頼ってくれ」

「…ホントにごめん」

「グスッ…カミト…約束して、もう一人で抱え込まないって」

「あぁ、約束する」

 

あんときは深く考えていなかったけど、コイツらに心配かけたな。

アクア、カズマ、めぐみん、ダクネス。

少しは仲間に頼ることを覚えよう。

 

「そういえば、めぐみん」

「はい?なんですか?」

「ベルディアの城に爆裂魔法撃ち込んだ件、

詳しく聞かせてもらおうか?

「え、えぇと……」

 

ぎやぁーーーーーーーーーーーーー!!!!!

 

次の日、めぐみんは身体中が痺れるからとクエストを遠慮した。

……肌をツヤツヤにして。




ありがとうございます、ひきさんです。
またもや原作改変をしてみましたがいかがでしたでしょうか?
カミト君が独りで全部やってしまったので、サッカーのくだりが無くなってしまった……
すいません。

というわけで、
次回 執念の剣
 デュエルスタンバイ!


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6話 執念の剣

どうも、ひきさんです。
一回、書いたやつ全部ぶっ飛んで書き直してたら滅茶苦茶、時間かかってしまいました。
すいません 〈コノトーリ!

それでは、
6話 執念の剣どうぞ!


どうも、カミトです。

俺たちはベルディア討伐の報酬を受け取りにギルドへ来ていた。

 

「それでは、アマシロ カミトさんとそのパーティーの方には、魔王軍幹部ベルディアの討伐報酬3億エリスが送られます!」

「「「「「おぉーー!!」」」」」

そんなにあるの!?

「きゃーっ!カミトさんカッコいい!」

「流石、俺の見込んだだけはあるぜ!」

「カミトさん奢ってぇー!」

 

誰が奢ってやるか。

 

少し外に出て5人で話し合う。

 

「なぁ、これの割り振り。どうする?」

「割り振り?今回の討伐はカミトが殆どやっただろ?

割り振りもなにもないだろ。」

「そうだな、私たちの取り分など無くて当然だ」

「いや、でもなぁ……」

なんだか目覚めが悪くなりそうだしなぁ……

「そうですよ、私なんて城に爆裂魔法撃ってただけですから」

「……カミトの取り分を多くして割り振ればいいんじゃないかしら?」

「「「「それだ!」」」」

 

アクアが珍しく冴えてる。

話し合った結果、

俺は1億エリス、他の4人は5000万エリスずつの取り分となった。

 

…………

……

 

 それから一週間後

俺はこの一週間の間、高難易度のクエストを片っ端から片付けていた。

理由としては、スキルポイントを貯めて、スキル『????』を習得するためだ。

あれホントになんなのさ。

さて、今日はどうしようか?

 

「カミト、少しいいか?」

「カーミートさん♡ちょっとお話があるんだけど 」

 

アクアとカズマが来た。

 

「どうしたアクア?」

「えーと…そのぉー……」

「こいつ、この一週間ずーっと飲みまくってツケを作ってきたんだと。それでカミトに泣きついたってわけ」

 

ツケ作ってきたって5000万だぞ!?

そう簡単には使いきれない金額のはずだ。

 

「ハァ…アクア、これからはもう少し金遣いを考えてくれ」

「本当にな」

「……分かりました」

「ならよし」

 

そういってアクアの頭を撫でる。

相変わらずサラサラな髪質だ。

 

「あうぅ///」

「このタラシがっ…!」

 

カズマがなんか言ってるが気にしない。

 

「今日は稼ぎのいいクエストに行くか。どれにする?」

「これなんかどうかしら?『雪精』の討伐クエスト!」

 

見たら、雪精という綿のような、ケサラン・パサランのようなモンスターを討伐するクエストらしい。

一匹10万エリスとは…なんか怪しいが……

 

「準備してくるわ!」

 

まぁ、いいか。

俺も準備しよ。

 

…………

……

 

というわけで、やってきました、雪山!

 

「くそっ!待てゴルアァ!!」

 

カズマは雪精を追っかけ回して地道に倒している。

 

「えいっ!これで3匹目ですね」

 

めぐみんも杖で雪精を殴っている。

 

「はあぁぁーー!」

 

ダクネスは…まぁ、お察し。

そしてアクアは……

 

「見て見てカミト!これで4匹目よ!これだけいれば、いつでもキンキンに冷えたシュワシュワを飲めるわ!」

 

虫取り網で雪精を瓶に詰めていた。

 

ア ク ア は 雪 精 を 手 に 入 れ た !

物をキンキンに冷やせる妖精。

暑い日が快適になるぞ!

 

ちなみに俺は腕を『翼神竜化』させて雪精を溶かしている。

よし、12匹目!

 

「爆裂魔法でぶっ飛ばしていいでしょうか?」

「よし!ぶっぱなせ!」

 

アクアとカズマを俺の後ろへ下がらせる。

ダクネスは知らん。

『巨神兵鎧』付けた俺より固いもの……

 

「『エクスプロージョン』!!」

 

 ドゴオオォォーーーン!!

 

「八匹やりました、おまけにレベルも一つ上がりました」

「お疲れ」

 

めぐみんは近くの木の根元に寄りかからせておこう。

 

「む?でたな!」

「なに?」

 

ダクネスが皆に呼び掛ける。

…少し嬉しそうな声をしているのは気のせいだろう。

 

白い鎧と兜を身につけ、腰には一振りの刀を携えている。

それらは地味な色合いながらも、美しい装飾がしてありとても優れた業物であることが分かる。

 

「カミト、カズマ。あなたたちも一度は聞いたことあるんじゃないかしら?

冬の風物詩にして雪精たちの主、冬将軍の到来よ!

「「ふざけんな!!」」

 

シャレ感覚であんな強そうなヤツの名前つけるなよ!

言ってる間に冬将軍は刀を抜いて腰を下げている。

俺も身体強化をして、『天空竜剣』を抜く。

 

「はあっ!!」

 

ギイイィィーーン!

 

俺は冬将軍の懐の辺りからの斬撃を皮切りに何度も剣を振るう。

そして、振るった回数だけ金属が打ち合う音がする。

 

……強いな。

剣の腕だけを見たらベルディアより強いかもしれない。

けど…

 

「弱点丸分かりなんだよぉ!!」

 

見た目からして熱に弱いのは表らかだ。

…これで終わりだ!

 

『翼神竜化』!!

 

俺は黄金の翼を背負った竜となる。

 

「『ゴッドブレイズキャノン』!!」

 

ボオオォォーーーン!!

 

辺りの雪は溶け、地面が見えている。

冬将軍もただではすまなかったらしく、既にフラフラとしており、剣を杖にしてやっと立っている状態だ。

ふぅ、疲れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と安心していた刹那、

 

「グオオォォーーーーーーーー!!!!」

 

冬将軍が今までにない程の速さで俺に斬りかかってきた。

 

「なっ!?」

 

風前の灯が消える時、一層炎が大きくなる

完全に油断していた!

そして、俺は鎧もろとも肩から斬られた。

 

「「「「カミトォーー!」」」」

 

くそ……こんなところで……死ぬのか?

そして俺は意識を手放した……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()

 

急激に頭がクリアになっていく。

それと同時にドス黒い、言うなれば三幻神とは真逆の闇のオーラが流れ込んでくる。

だが、今はそんなことどうでもいい。

目の前の敵を、

 

「こいつを……コロス!!!

「カズマ!あれはなんですか!?」

「分からない!俺も何が何だか……」

「カミト…」

 

…………

……

 

その後のことは、あまり覚えていない。

気づいたら俺たちの馬小屋に俺は寝ていた。

 

「あ……!」

「……アクア?俺は一体……確か冬将軍に斬られたはずじゃ…」

「カミトはね、斬られた後、黒い竜みたいなのになったの」

「……」

 

そのまま話を聞く。

 

「黒い竜になったカミトは、冬将軍に手も足も出させずに倒したの」

 

あの冬将軍に手も足も出させず、か…

それに、黒い竜……

もしかして、三幻神と対になる存在の『邪神』か!?

 

「アクア、俺の冒険者カードは?」

「え、えぇ、はいこれ」

 

…やっぱり。

前まで『????』だったスキルが無くなっており、新たに

『邪神化』というスキルが追加されている。

 

「カミト、あの力はなに!?特典の中にあんなのは入れてないはずよ!!」

「俺も詳しくは分からない…」

「そう…よね……」

 

二人の間に沈黙が流れる。

 

「カミト、約束したわよね。一人で背負いこまないって。なのに…」

「……ごめん」

「私、心配だった…

カズマも、めぐみんも、ダクネスも、街のみんなも、あなたの知り合い全員が心配してた…」

「……」

 

言葉も出ない。

当然だ。

俺に反論する権利なんて、無い。

 

「私、カミトに言わなきゃいけないことがあるの」

 

なんだろう?

パーティーやめろって言われるんだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……私、カミトのことが好き」

 

「…………え?」

「だから、私はカミトのことが好きなの!」

「ア…クア?」

「カッコよくて、強くて、優しいカミトのことが好き!

初めて会ったあの時から!」

 

あの時というのは俺が死んで、この世界に転生したときのことだろう。

前世で告白されたこともあった。

しかし、それとは何か違う。

 

「私、こんな気持ちになったの初めてなの。

カミトのことを考えるだけでドキドキする…」

「アクア……」

 

そうか……アクアも俺と同じ気持ちだったんだな。

俺は涙目になっているアクアの肩を掴んだ。

 

「俺は……俺も、アクアのことが好きだ!

初めて会ったあの時から!」

「カミト……嬉しい…」

 

その後、アクアがギルドで交際を大暴露し、街中で毎日冷やかされることになるが、その冷やかしも一種の幸せとして受け入れることにした。




読んでいただきありがとうございます。
やっっっと、カミト君とアクアをくっ付けられました。
それはそうと、『????』は創造神かと思った?
残念!邪神でした!
邪神化はいわゆる暴走フォームの様なものです。
いずれ、完璧に制御できるようにします!(ネタバレ)

遅くなってすいませんでした。
それでは、
次回 連鎖破壊
 デュエルスタンバイ!


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7話 連鎖破壊

どうも、ひきさんです。
学校で色々あって遅れてしまいました。
ホントにすいませんでした。

2話連続で遅れるとか頭おかしいでしょ私……
ともかく、
7話 連鎖破壊どうぞ!


「マイホームが欲しい!」

 

カズマが高らかに宣言した。

あ、どうも、カミトです。

 

「なぁ、カミトもそう思うだろ?」

 

マイホームか……

確かに、魔王幹部や賞金首の冬将軍を倒したパーティーが馬小屋生活っていうのもおかしな話だ。

そしてなによりもおおぉぉーーーーーー!!!!

部屋が無いのでアクアとイチャつけない!!!!

これは、俺にとっては死活問題だ。

 

「そうだな、確かにマイホームは必要だよなぁ」

 

アクアが顔を赤らめているが放っておく。

 

「というわけで、あらかじめ良さそうなのを見繕ってきた!」

「早っ!?」

 

準備が良いことで。

 

「その物件なんだがな、デカイけど曰く付きらしいんだ。

んでもって……出るんだと…………」

「ほーん、で?いくらだ?」

 

幽霊とかアークプリーストの俺たちには格好の餌でしかないのだ。

 

「その屋敷、結構怖がられてるらしくて浄化さえしてくれれば無料でいいらしい」

 

まじか。

滅茶苦茶楽じゃん。

 

「よし、行ってみるかな」

 

…………

……

 

「……なるほどな。霊の気配がする」

 

けど悪霊とかではない。

どっちかといえば地縛霊の類いだ。

出でよ!最強の地縛神Wiraqocha・Rasca(ウィラコチャ・ラスカ)!!

……はい、やってみたかっただけです。すいません。

 

「さ、早速浄化しましょ」

「いや、こいつは悪さをするような霊じゃなさそうだ。

浄化はしなくていいだろ」

「それでも!イタズラで私のお酒を飲まれたら堪ったもんじゃないわ!見てなさいカミト!『ターン・アン……

「やめなさい」

 

アクアの頭を軽く小突く。

 

「うぅ……カミトがそういうなら……やめる」

 

涙目&上目遣いでこちらを見てくる。

あぁ、可愛いなこんちくしょう!

 

「わかってくれたらそれでいい」ナデナデ

「うん……」///

「お二人さん、惚け話は部屋でやれ。

口からガムシロが出てくる」

 

あ、カズマ忘れてた。

 

…………

……

 

屋敷で住みはじめて2日後

 

『デストロイヤー警報!!デストロイヤー警報!!』

 

早速我が家崩壊の危機が訪れて来ました。

 

おしえて!かーみん!

デストロイヤーとは

・古代帝国が作った巨大なゴーレムである。

・魔法を無効にする強力な結界がはってある。

・外敵を完全に排除しようとする大量の砲台完備。

 

……これがゴーレム?

どー見ても蜘蛛なんだが……

 

「カミト、カズマ!なにやってるの!逃げるわよ!!」

「「嫌だ!!」」

「どうしてこんな時にシンクロしてるの!?デストロイヤーの通り道には何も残らないといわれているの!」

 

「なら尚更、逃げるわけにはいかないな。だって……」

 

「「折角ありつけた優良物件を、簡単に手放してたまるかあぁーーー!!」」

 

…………

……

 

ということで、ギルドに来た。

 

「来ていただきありがとうございます。

ご存じの通り、デストロイヤーが襲来してきました。

どなたかデストロイヤーの結界を破れる方はいらっしゃいませんか?」

 

結界か……いけるかな?

いや、アクアとならいけるな。

……なんだこの自問自答は。

 

「なあ、アクア。デストロイヤーの結界って破れるか?」

「もちろんよ!というか、カミトも多分いけるでしょ?」

「自信無いなー」

「ちょ、ちょっと待ってください!デストロイヤーの結界を破れるんですか!?」

「ああ、アクアとカミトならいけるな」

「そうですね、カミトにいたっては破壊することも可能でしょう」

 

ダクネスとめぐみんが今回初めて口を開いた。

 

オイコラ作者(`Δ´)

〈すんません……

 

……ともかく、アクアと俺が結界を、カズマは全体の指揮を、めぐみんは爆裂魔法でデストロイヤーを破壊する。できれば俺も手伝う。

 

「すいません!遅れました!ウィズ魔道具店店主のウィズです。一応冒険者の資格を持っているのですが……」

 

ウィズとは、俺が一週間ほど高難易度のクエストをやっていたとき知り合った。

正体はリッチーという不死の王らしいが、このアクセルの街で魔道具店を営んでいる。

商売の才能がゼロどころかマイナス

独特の品揃えであることで有名だったりもする。

 

ウオオオォォォーーーー!!

 

「貧乏店主さんだ!」

「貧乏店主さんが来た!」

「勝てる!勝てるぞ!!」

 

貧乏店主さんは止めてやれよ…

 

話を聞くと爆裂魔法も使えるらしく、俺たちと一緒にデストロイヤーの破壊をしてもらうことにした。

 

…………

……

 

「来たぞぉーー!!」

 

あれがデストロイヤーか…

思ってたより()()()な。

なんて思う俺はどうやら感覚が麻痺しているらしい。

だってオベリスクと同じくらいの大きさだよ?

もっと、倍くらいあると思ってたんだもの。

 

「カミトー!アクアー!そろそろ準備してくれー!」

「はいよー」

「分かったわー!」

 

さてと、やるだけやってみるか。

 

「ねぇ、カミト」

「ん、どうしたアクア?」

「少しだけ怖いから…手、握って……」

 

あぁもう!

可愛いなこんちくしょう!

 

「あぁ、これでいいか?」

「うん!」

「よし、いくぞ!」

 

街に被害が及ぶ前に破壊しなければいけないので、出来る限り遠くで結界を破らなければならない。

文字通り、俺の女神様のために!

 

「「『セイクリッド・ブレイクスペル』!!」」

 

しばらく拮抗していたが少しずつヒビが入っていき、最後にはガラスが割れるような音と共に砕け散った。

 

「今だ!!」

魔力にはまだ結構余裕があるな。

まだいける!

俺は『巨神兵化』して、拳に力を込める。

 

「「『エクスプロージョン』!!」」

「『ゴッドハンドクラッシャー』!!」

 

ドゴオオォォーーーン!!

 

2つの大爆発と1つの拳が木偶の坊の足とフロントを粉砕!!した。

 

「よっしゃあぁーー!乗り込めえぇーー!」

「ぶっ壊せえぇーーー!!」

「バラバラにしてやるぜぇ……」

 

いいぜぇ……

冒険者たちがボロボロになったデストロイヤーに群がっていく。

 

「カミト!いけるか!?」

「怪獣モチのロンだ!いくぞー」

「お前は巨神兵だろうが!」

 

ウル○ラダイナマイト!

 

…………

……

 

デストロイヤーのコックピットらしきところでは骨が眠っていた。

こりゃまた随分と清々しく成仏してるな。

……どこからともなくブ○ックのような声が聞こえてくるが無視だ無視。

日記もあったがロクでもないことしか書いてなかったので割愛。

 

…………

……

 

最深部に来た。

あの真っ赤でバカみたいな熱を放っているのが恐らくコアだろう。

 

「これ……どうします?」

 

ホントにどうします?

生身で近づくと即灰になりそうな温度なんだが……

……仕方ないか…

 

「みんな、よく聞いてくれ……もう一度、()()()を使う。今すぐ逃げるんだ。」

「あの力って…冬将軍の時の……!」

「あぁ」

「駄目よ!!あれの危険性はカミトが一番分かってるでしょ!!」

 

もちろん分かっている。

最悪、街を破壊してしまうかもしれない。

けど……

 

「アクア……理解して(わかって)くれ……」

「カミトォ……わかった!必ず、帰ってきてね……」

「あぁ、約束する。さぁ、早く逃げるんだ」

 

ただの驕りかもしれない。

ただの独り善がりかもしれない。

もっと良い方法があるのかもしれない。

それでも……

 

「任せておけ!全責任は俺がとる!」

 

それでも俺は……

 

俺は……仲間を、友人を、恋人を、みんなを守りたい!

「行ったか……よし!やりますかね!」

 

『邪神イレイザー』!!

 

……続く……




メッチャ遅れましたね。
重ね重ねホントにすいません。
入学式だの課題だの新入部員の手解きだの……
忙しかったのです……

カミト<言い訳するな!『レボリューション・レザルトバースト』グォレンダァ!
作者<ぎにゃあぁーーー!!

と……とにかく、
次回 戦友の誓い
 デュエルスタンバイ!


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2章
8話 強欲のカケラ 


どうも、ひきさんです。
前回の続きです。
とっとと執筆しませんとね。
もうグォレンダァは食らいたくないですからね。
それはそうと、
8話 強欲のカケラ
 デュエル開始ィィ!!


どうも、カミトです。

現在、デストロイヤーの前にいます。

さてと……やるか。

 

『邪神イレイザー』!!

 

グオオオォォォーーーーー!!

 

オシリスの天空竜と対となる邪神の力。

全てを消し去る能力を持っている。

しかし、その代償は大きい。

俺の意識は段々と闇に飲まれていく。

これは……マジでヤバいな……

もう…………

 

…………

……

 

『…ん……起きた……』

『ヤッホー、目が覚めたかい?』

『やっとか、遅かったな』

 

ここは……?

この人たちは……?

 

『あ~!誰だって顔してる!こっちに来てからずっと一緒だったのに~!』 

 

ずっと一緒?こっちに来てから?

 

『全くだ。何度も共に戦ってきたというのに、こいつ……』

 

何度も戦ってきた?

 

『…貴方をずっと…見ていたのに………』

 

ずっと見ていた?

解らないことだらけだ。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ?ここはどこだ?そして、君たちは何者だ?」

『ここは君の精神世界みたいなとこ…かな!』

『私たちは…そうだな、なんと言うべきか……』

『……貴方に宿る神々の分身………』

 

俺に宿る神々って…三幻神か!?

確かによく見れば面影はある。

 

『私がオシリスの天空竜だよ!改めてよろしくね!』

 

この元気なのがオシリスで……

 

『私はオベリスクの巨神兵だ。一応、始めましてと言っておこう』

 

このクールなのがオベリスクで……

 

『……ラーの翼神竜…』

 

この物静かなのがラーか……

 

「で、結局なんの用か聞いていい?」

『そのことだけど、君、邪神の力を使ったでしょ?』

「あぁ」

『邪神の力は、いわば我々の力の対極にあたるもの』

『……それらが相殺して…力が……暴走しかけた』

「そんなことがあったのか……」

 

邪神は三幻神を抑制するために創られたもの。

プラスとマイナスで俺の体が0に成りかけたわけだ。

 

『君はこのままだと暴走しちゃうよ?』

「もし、暴走したら…どうなる?」

『恐らく、三幻神の力と邪神の力で世界を破壊しつくそうとするだろうな』

 

それは……魔王を倒すために世界ごと破壊したら本末転倒だな。

 

「……どうすればいい?」

『………そのために…ここに呼んだの』

『実はもう対策はしたんだ!』

「え!?」

 

いくらなんでも早すぎない?

 

『ん……』

 

ラーが一振りの剣?のようなものを差し出してきた。

 

「これは?」

『……私たちの……力を込めた剣』

『これを使えば少しの間だけなら邪神どもの力を制御できる』

『名付けるならば…そう!創世の剣!!』

「創世の剣……」

『だが、気を付けろ。制御できると言ってもせいぜい10分が限界だ』

「分かった、ありがとな」

『……それじゃ…行ってらっしゃい………()()

「主様ぁ!?」

『私たちを従えてるのとそんな変わらないから主様、ね♪』

「は、はぁ……」

『そうだな、本体の方からそう伝わったぞ主様♪』

 

本体からってあんたら神様でしょうに。

って言うか……

絵面がヤバくね?

この三人、みんな美少女なのだ。

そんな娘たちに主様と呼ばれる俺。

……どうやら三幻神はとっても暇神(ひまじん)らしい。

 

『おっと、そろそろ時間だ。気を付けてな、主様』

「あ、あぁ、行ってくる!」

 

…………

……

 

邪神イレイザーの力、か……

すげぇ力だな。

けどさぁ……

いい加減、大人しくしやがれ!!

 

ん?

お!?

おお!!

制御できてる!できてるぞ!!

 

……それじゃ。

このデストロイヤー(木偶の坊)をぶっ壊すとするか。

グオオオォォーーー!!

全部、消え失せろォーーー!!

 

…………

……

 

「ふぅ……疲れた」

 

邪神から人に戻り、肺に溜まりに溜まったCO2を吐きだす。

街のほうを見てみたが被害はないようだ。

よかった、もし壊してたら借金ものだったな……

アクア……大丈夫かな……

少し……眠く…なってき……た…………ガクッ

 

…………

……

 

『ね……きて……』

『……ト…カ……ト……カミト……』

『…ぇ起……てよ……』

 

ん……呼ばれてる?

 

「ねぇ起きてよ、カミト!」

「ア……クア?」

「あ……カミ…ト」

「そうだよアクア。カミトだよ」

「う、う、ウワァァーーーン!!カミトォ!カミトォ!!」

「ただいま、アクア」

「ウッ、グスッ、お帰りなさい、カミト!」




どうも、ひきさんです。
週に一回とか言った矢先にこれですよ。

カミト<バカジャネーノ
言わないで!ひきさんのライフはもう0を通り越してマイナスよ!
カミト<知るか、死ね。『バオウ・ザケルガ』!!
それ違う作品!!
ぐほぁ!!

じ、次回 剣の采配
 デュエルスタンバイ!!
ア,チョット!モウカンベンシロクダサイ!


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9話 剣の采配

どうも、ひきさんです。
デュエルリンクスでオベリスク来ないかなと待ってます。
三幻神デッキ作りたいなぁ…
ついでにホルさんも欲しい。
ネームはひきさんにしてありますから、良ければフレンドお願いします!
さて、
9話 剣の采配
 どうぞ!


どうも、カミトです。

今日はデストロイヤーの報酬を貰いにきた。

あれ?

デジャヴー感があるな。

そういや、デジャヴーって初期の方でしか出てこなかったな…

 

「アマシロ カミト。国家転覆罪で逮捕する!」

 

 

 

……は?

国家転覆?

心当たりがまるでない。

 

「あの~すいません、心当たりが無いのですが」

 

何かやらかしたっけ?

何かあっても俺が責任とる!とは言ったけど……

国家転覆ほどの事なんてあったか?

 

「そうです。むしろ一番の功労者ですよ」

 

めぐみんが擁護してくれる。

今はそれがとてもありがたい。

 

「謎の巨大な魔物を召喚した挙げ句、街を破壊しようとしたと報告が入っている」

 

……は?

街を破壊?

巨大な魔物は邪神だとして、街を破壊しようとしたって……

 

「まってくれ!何かの間違いだ!」

 

俺たちは昨日あったこと、巨大な魔物の正体を話した。

 

「「「「えええぇぇえーーーーー!!?!」」」」

 

うぉ、びっくりした。

 

「あのデカイのがカミト!?」

「カミトさん、ついに神の領域に……」

「チートや!チーターやそんなもん!!」

 

そう言えば、こいつらには言ってなかったね。

ここまで驚かれるとは……

そしてそこ!キバ○ウさんはお帰り下さい。

 

「なるほど、理屈は分かった。だが……」

「だが?」

「お前たちの言っていることが真実とも限らん。あとは署でゆっくり聞こう」

 

( ;ω;)ソンナー

 

…………

……

 

所変わってムショで、

 

「これが何か分かるか?」

 

俺の前にはベルのような代物が置かれる。

 

「いえ」

「これは嘘を見抜く魔道具だ。万が一、嘘をつけば音が鳴る」

 

この世界にも、嘘発見器ってあったんだなぁ。

世の中には汗を舐めるだけで嘘を判断できる人もいるけど。

 

「まず最初に、冒険者になる前は何をしていた?」

 

何をって……何だっけ?

俺の生前、何やってたっけ?

確か……

 

「デュエリストをやっていました」

 

シーーーーン

 

「嘘はついていないようだな。デュエリスト…とは何だ?」

「魔物を従え、魔法を使い、相手と決闘をする人のことです」

「うーむ…聞いたことが無いな。出身は?」

「日本というところです」

 

シーーーーン

 

「ニホン、か……またしても聞いたことが無い地名だ」

「あ、あはは……」

 

そりゃあね、異世界だし。

いきなりデュエリストと言われても混乱するだろう。

まぁ、嘘はついてない、嘘は。

それと……

 

「自分は魔王軍ではないですよ」

 

シーーーーーーーーン

 

「あ、あぁはい………って、えぇ!?」

 

いつまでたっても核心が聞かれないのでサラッと言っておこう。

…と、思ったのだがサラッといかなかった。

 

「ま、まぁ分かった。どうやら我々の手違いだったようだ」

「わかってくれたようで何よりです」

 

結構あっさりと返してくれた。

余分なことあんまり言わないで良かったな。

カズマだと調子乗ってボロ出しそうだな、これ。

 

…………

……

 

「いやー良かった良かった」

「災難だったな」

「そうですね、今日はなにか美味しい物を食べに行きましょうか」

「良いわね!なに食べる!?」

 

パーティーの皆が労い(?)の言葉をかけてくれる。

 

「今日はごめんな、迷惑をかけた」

「気にするな。いつもは尻拭いを任せっきりだからな」

「今日は普段のお返しということにしておいて下さい」

「そうだな…って、アクア?」

 

アクアが静かに俯いている。

こう言う時は一番はしゃぐと思ったんだがな。

 

「良かったぁ…ホントに……良かったよぅ……」

「…………」ナデナデ

 

抱きしめながら頭を撫でる。

心配かけてばっかだな、俺。

 

…………

……

 

「…寝ちまったな」

「どうしましょうか?」

「置いてくと可哀想だし、起こすか。先に行って席取っといてくれるか?」

「わかった、任しとけ」

 

寝顔をもう少し堪能したい。

と、いうのもあるが3人に悪いので起こしますか。

肩を揺する。

髪が靡いていい香りがするが、煩悩退散に努める。

 

「うにゅ……カミトォ……」ギュウ

 

寝ぼけているのか抱き付いてくるアクア。

女の子特有の柔らかい体は、俺の理性をタコ殴りにしてくる。

ノックアウトされないように耐え難きを耐える。

せめて、初めての据え膳はロマンチックな物がいい。

煩悩退散だ、煩悩退散!

そろそろ本当に起こさねば。

 

「アクアー、起きろー」

「…んぅ……あと5分……」

「食べに行くんだろ?寝てて良いのか?」

 

一瞬アクアの体がビクッと跳ねた。

 

「さぁカミト!行くわよ!」

「財布は持ったか?」

「えぇ!バッチリよ!」

 

この間僅か1.8秒である。

 

「よし、行くか」

「うん!」

 

この後、滅茶苦茶食べた。

その分高くついたが……

具体的には0が6つ着いたぐらいには……




どうも、ひきさんです。
さーて次回は……

カミト〈遅くなった謝罪は無しかコラ 
ごめんなさいね、許してちょ
カミト〈毎度毎度、懲りねぇな!
    死んで詫びろ!
    『ゴッドフェニックス』!!

イワーーーーーーーーーーク!! 

じ…次回 帳尻合わせ
 デュエルスタンバイ……

   バタッ……


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10話 帳尻合わせ

どうも、ひきさんです。

最近、ゲームに飽きて小説書いてばっかになってます。
その割にクオリティ低いですが……

それはともかく、
10話 帳尻合わせ
 どうぞ!


どうも、カミトです。

今日は街の前の平原に来ています。

どうやら寒くなり、カエルが大量発生しているらしいので、程々に倒してきてほしいとのことだ。

 

ちなみに、アクアは「カエルはいや!!」と言って聞かないのでカズマとめぐみんの三人だ。

ダクネスはなんか実家に用事ができたらしい。

 

「なんとなく、冬にクエストが少ない理由がわかった」

「まったくだ。まぁ、稼げるからいいけどさ」

「……もういっそ、根こそぎやっちまうか?(絶滅させようか?)

「カミト、怒られるから止めてくれ」

 

カズマが「やれるもんならやってみな」ではなく、

「怒られるから止めろ」と言うあたりがね……

 

「……金には困ってないんだがなぁ…………」

「お金はあって困りはしませんよ」

「そうだけど……」

 

懐に余裕のある俺たちがなぜ、カエル狩りをしているのかというと時は少しさかのぼる。

 

……

…………

 

数分前

 

「アマシロ カミトはいるか!!」

「はーい、今でまーす。あ!こないだの人!その件に関してはご迷惑をお掛けしました」

「いえこちらこそ……ではなく!」

「分かってます、どんなご用件です?」

「本当に分かったのか?こほん……草原でモンスターが大量発生した。先の件での容疑は完全に晴れたわけではない。ここまで言えば分かるな……?」

「つまり……そのモンスターたちを駆除しろと?」

「その通りだ。断れば死刑は免れないと思え」

 

そんな殺生な!

こんなくそ寒いなかでモンスター駆除か、

死刑か。

どっちも面倒!

(ぶっちゃけ死刑執行されても死なないと思う)

けどなぁ……

無期懲役だとアクアと会えなくなるし……

そんなことになったら俺、脱走するかも……

アクアと愛の逃避行…………悪くない!!

…………肩身が狭くなりそうだから止めよう。

 

「……モンスターってもしかして…………」

 

ん?めぐみんが顔を青ざめて質問する。

 

「ジャイアント・トードだ。デストロイヤーを討伐したお前たちなら、なんてことはないだろう?」

 

「「カエルはイヤァァーーーー!!!!」」

 

うぉう!?びっくらこいた!!

どうやらアクアとめぐみんが叫んだらしい。

そういや、この二人はカエルに食われたしな……

トラウマになったんだった。

 

「二人とも、無理して来なくてもいい。誰だってトラウマの一つや二つあるもんだし」

「む、無理などしていません!行きますともええ!!」

 

めぐみんは強がりにも見えるものの行くらしい。

 

「アクアはどうしたい?」

「カミトと一緒……だけどカエル……恥ずかしいやっぱり、止めておきたい!」

「そうか、一人で大丈夫か?」

「大丈夫よ!なんたって女神よ私は!」

 

アクアがいつもの調子に戻った。

これなら大丈夫そうだな。

 

……

…………

 

 場所は戻って現在

 

「よーし、そろそろコイツら片付けるから退避しろー」

「分かった、おーい!めぐみーん!」

 

さて、と

 

『天空竜化』!!

 

普通にやると、コイツら消し炭になるから手加減を心掛ける。

 

15%『召雷弾』!!

 

サイズはとびきり大きくしたので、全カエルはバタバタと倒れてく。

この位でやれば、ショック死で止められる。

こないだ見たらレベル93だったからなぁ。

ま、それはともかく

 

「カズマー、めぐみーん!終わったぞー!」

「もうカミト一人でいいんじゃないか……?」

「全くです……私の見せ場がないじゃないですか!」

「それは悪かったな、カエルは俺の肥やしとなったのだ」

「一番レベル高いクセにまだ上げるつもりですか!?」

「レベル10くらい分けてくれないか、いやマジで」

 

そんな感じで談笑していると……

 

ぱくっ

 

「あれ、めぐみんは?」

 

めぐみんが消えた。

そして、先程までめぐみんがいた場所はカエルの頭により占拠されていた。

 

……つまりそういうことだ。

 

「「めぐみーーーん!!!」」

 

『ライトニング』!!

「魔法!?」

「あうっ!?」

「おーい、大丈夫かー?」

 

どこからか魔法が飛んできてカエルを黒焦げにした。

 

「久しぶりね、めぐみん」

 

黒い髪に紅い瞳、少し露出の多い魔法使い風の服装、めぐみんより年上に見える身長と胸部。

ぱっと見は真面目そうに見える娘だ。

そして、恐らく先程の魔法を唱えた人物だ。

 

「…………どちら様ですか?」

「ちょっと!私のこと忘れちゃったの!?」

「あなたのことなんて知りませんよ。誰ですかあなた?」

「冗談よね?私をからかってるだけよね?」

 

どうやらめぐみんの知り合いのようだが本人は知らないと証言している。

…あれ完全に遊んでるよな。

何はともあれお礼を言わねば。

 

「あの……」

「ひゃい!!」

「助けていただいてありがとうございます」

「あ…いえ……私はただ………」

「お礼をしたいんですが…どうでしょう?」

「……い…いや、お礼なんてそんな……」

 

顔を真っ赤にして焦っている。

人見知りのようだ。

こういう人はこちらから提案してやるのがいい。

この娘の場合だと……

 

「魔法使いのかたですよね?」

「あ……はい…」

「お礼として杖なんてどうでしょう?」

「杖…ですか?そんな……」

 

分かってる。

杖は既に持っていることは。

だが…

 

()()()()宿()()()杖なのですが……」

「神の力……?」

 

少し食い付いた。

なんか、行商人の気分。

 

「これなんですけど……」

 

『翼神竜杖』を差し出す。

俺が『ラーの翼神竜』の力を込めた杖。

正直、ベルディアの時以降ほぼ使ってない。

在庫処理とか言ったらそれまでだけど、本業の魔法使いに使ってもらえればこの杖も本望だろう。

 

「使ってみます?」

「いいんですか!?」

「もちろん」

 

嬉しそうだ。

念のため言っておくと、あの杖は神器クラスのポテンシャルがある。

魔法の同時詠唱が可能になるオマケ付き。

 

「では、『ライトニング』!!」

 

カエルを倒した魔法。

さっきはカエルを黒焦げにした位の威力だったが……

 

スガァァーーーン!!

 

「なんだ!?」

「なんですかこれ!?」

「え?……え?」

 

稲妻が落ちた。

3人はさっきのとはまるで別の魔法の様な強化っぷりに困惑している。

着弾点を見るとクレーターができていた。

 

「これが神の力を宿した杖だ」

「凄い……でもこれ…いいんですか?」

「お恥ずかしながら、アークプリーストのくせにあんまり魔法使わないのだよ……」

 

使った記憶があるのが『身体強化』と『クリエイト・ウォーター』だけ。

回復魔法とか完全に肥やしである。

 

「そうですか……えへへ、やった

 

嬉しそうでなにより。

作ろうと思えばいつでも作れるしね。

 

これさえあればお友達作りには困らないわよね……

「そういえば聞き忘れてたけど、君の名前は?」

「…………」///

 

急に固まった。

あれ?

名前聞いただけだよね?

うっかりスリーサイズ聞いたわけじゃないよね?

社会の窓が空いてて、それに気づいたわけじゃないよね?

 

「えっと………大丈夫?」

「……わ…」

「わ?」

「わ…我が名はゆんゆん!めぐみんの永遠のライバルにして上級魔法を操りし者!いずれ紅魔族の長となる者」///

 

この娘も残念な名前だ。

しかし、口上や先程からの言動から紅魔族らしくない。

紅魔族なら、口上の時はノリノリだし、神の力とかは琴線に触れるはずだ。

なのに、この娘は口上を恥ずかしがっていたり、神の力に興味はあったものの興奮した様子は無かった。

紅魔族では珍しく常識人のようだ。

 

「俺はカミト、よければこれからも宜しく」ニコッ

「はい…宜しくお願いします」///

 

俺は手を差し出し、ゆんゆんがその手を両手でしっかりと握りしめる。

真っ赤なのは男の人の手を握るのが初めてだからだろう。

 

「あの…早速なんですが……一つお願いしてもいいですか?」

「おう!どんと来い!」

「ええと……私とお友達になってくらひゃい!!」

 

ヤバい。

アクアとは違う庇護欲にかられる。

俺はこういった娘がタイプなのである。

平たく言えば、尽くされるより尽くすタイプなのだ。

少し噛んでいる辺りがより魅力的だ。

後ろを向いて煩悩退散に努める。

 

「喜んで」

「ホントですか!?」パアァーーー

「ホント、ホント。大真面目」

「ありがとうございます!お父さん、お母さん、里を出て初めてお友達ができたよ!」

 

里を出て初めてって……

もしかして、里でも

『私たちお友達だよね?』って聞いて

『え、あ、うん』って返されてたりとかしてたんじゃ……

余計心配になってきた。

 

「なにイチャイチャしてるんですか?アクアに言いつけますよ?」

「そうだぞ、このクソリア充」

「…二人とも、家帰ったら覚えとけよ」ニコニコ

 

その後、結局アクアに言いつけられたので、二人は『カミト特製電撃マッサージ』をしといた。

アクアは、膝枕&頭ナデナデで大人しくはなった。

根にはもたれたが……

しかし、ゆんゆんはどちらかといえば異性というより子供といった感覚なのであしからず。




おいこらそこ変われ!
カミト〈ざまぁ、この非リア!
(#`皿´)ムッキー!
書くなる上は……フフフフフ…………
カミト〈止めんか!!

次回 悪魔祓い
 デュエルスタンバイ!!


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3章
11話 悪魔祓い


どうも、ひきさんです。

気まぐれでFate/EXTELLAを買ってみました。
腹ペコ王はどうやったらでるのだーーー!?
ストーリーはクリアしたのにペコちゃんだけ使えないというもどかしさ。

それはそうと
11話 悪魔祓い
 どうぞ!


どうも、カミトです。

今日は買い物をしにウィズ魔道具店に来ている。

この店は()()いい。

只々、値段が高い。もしくは、用途が謎。

 

「これは何のポーション?」

「それは、温度が低くなると爆発するポーションですね」

「じゃあこっちは?」

「水に触れると爆発するポーションです」

「……これ」

「人が触れると爆発するポーションです」

「爆発テロでも起こすつもりか!?」

「ち、違うんです!そこの棚は爆発ポーションを取り扱ってるんです!」

 

爆発物を取り扱った棚があるのもどうなんだ?

1つ誤爆したらこの店ぶっ飛ぶじゃないか。

まあ、気を取り直して他の棚も見ていこう。

これは鉱物類の棚かな?

 

「マナタイトに、水晶に……石?ウィズ、これは?」

「そっちは、魔力を込めると周りの音を消す石です。こんな感じで」

 

そう言って、ウィズは石を握りしめる。

5秒程で効果が現れた。

何か話しているようだが何も聞こえない。

しかし、半端ない魔力を感じる。

 

もしや……

 

「いかがですか?お安くしますよ?」

「ウィズ、ちょっと貸してくれ」

「はい、どうぞ」

 

先程、ウィズがやったように試してみる。

しかし、なかなか効果は現れない。

今度はかなり本気で魔力を込めてみる。

すると、ウィズと同じように音が消えた。

 

「……………やっぱり」

「どうしました?」

 

俺の神クラスの魔力をもってしても、1/10ぐらい消費する。

<最近は、邪神化でもここまでは消費しない。練習と制御を重ねた結果、5%消費で変身出来るようになったのだ!ちょっと前の消費税かよ……>

 

これだけ消費するアテが1つある。

それは……

 

「……ウィズ」

「はい、なんでしょう?」

「これさ……」

「……はい」

()()()()()()()()()()使()()()()()()何で?!?」

 

そう、最高にコスパが悪い。

F1で下町とかのレベルじゃない。

リニアでプ○レールの線路走るレベルだ。

 

「その……奇襲なんかに便利かなぁと思って仕入れてみたんですが……」

「便利以前に使えないと思うよ、皆は」

 

相当のアークウィザードでもないと使えない代物だ。

そんな人、この街どころか、世界中を探しても一握りもない。

そもそも、大量の魔力を消費してまで音を消したい場面はそう多くはない。

 

「これ、誰も買わないだろうな……」

「そうですか……」

「この始まりの街じゃ、まともに使えるのも俺やウィズぐらいだろうね」

「…………あの…」

「だから……」

 

 

 

 

 

 

 

「これは俺が持っておくことにする」

 

「……え?」

「これいくら?」

「あの…40万エリスですが……本気ですか!?」

「本気本気、はいこれ」

「は、はい40万エリスちょうど…頂きました」

「あ!そうだ、これ」

「あの…これは?」

「……?1000万エリスだけど?」

「それは分かります!分かりますが、えぇと」

「じゃあな、ウィズ。また来る」

「あ、カミトさん!」

 

後ろでなんか聞こえるが、気に介さず店をでる。

……ちょっとキザすぎたかな?

 

…………

……

 

日が沈み始めた夕方ごろ

 

「ただいまー、おーダクネス!お帰り」

「あぁ、ただいま」

 

家に戻ると、ダクネスが帰ってきていた。

実家に戻っていたからか、鎧は外している。

着ているのはフリフリの多い高そうなドレスだ。

 

「よく分かったわね。別人レベルで衣装が違うのに」

「そ、そこまで違ってはいないだろう!」

「あ、カミト!いいところに来ました!実は……」

「アマシロ カミト!キールのダンジョンで大量のモンスターが確認された。貴様が誘導したのではという話が出たのでな、確認とその処理の依頼をしに来た」

 

デストロイヤー編(9話 剣の采配より)でお世話になったセナさんだ。<メメタァ

というか、まだ疑われてたのか。

あれ以降、音沙汰無かったから完全に潔白を信じてもらえたと思ってたんだがな。

 

「俺はやってません!って言っても信じてもらえないでしょうしね、その依頼、受けますよ」

「そうか、気を付けてな。既にギルドには正式な依頼をしてある。終わったらギルドで報告をするように」

「了解した。首尾よくパパッと終わらせてくる」

 

セナさんが帰っていき。

ちょっと久しぶりのパーティー全集合だ。

しかし、ダクネスの帰りを祝う暇は無いらしい。

 

「で、メンバーはどうする?全員でいったほうが安全ではあると思うが、わざわざそこまでやる必要があるのかどうか……」

「念のため、全員で行こう。モンスターたちを統率している奴がいる可能性もある。それでいいか?」

「もちろんだ!実家ではモンスターと戦うことができなかったのだ。準備は出来ている!」

 

なんの準備かは聞かないでおこう。

俺の杞憂であってほしいものだ。

 

「アクアは?」

「もちろんよ!悪魔やアンデットだったら私が祓ってやるわ!」

 

その生きやよし!

浄化や悪魔祓いなら俺も出来るというのは言わぬが華だろう。

アクア拗ねちゃうし。

 

「めぐみん?」

「大量のモンスター……フフフ、ダンジョンもろともぶっ飛ばしてやりましょう!」

「うん、止めてね」

 

やる気はあるようだが……

万が一、マジでぶっ飛ばしたら『カミト特製電気マッサージ・オルタ』をプレゼントしよう。

2~3時間は帯電してビリビリと痛い奴だ。

 

「カズマはどうする?ぶっちゃけお前が一番心配なんだが 」

「おいコラ!どういう意味だ!?はぁ……キールのダンジョンなら一度行ったことがあるんだ。案内は任せろ!」

「おう!いざってときの搦め手も考えておけよ」

 

カズマがなんとも言えない顔してるが無視無視。

 

「ありがとなみんな、俺の尻拭いに付き合ってくれて」

「なに水臭いこと言ってんだ?お前にばっか良いところを持ってかれちゃ、俺の見せ場がないじゃないか」

「そうだぞ、いつもお前に頼りきりのでは騎士の名折れだ」

「仲間なんですから、遠慮は不要ですよ」

「みんなこう言ってることだし、いまは素直に言葉に甘えましょう、カミト」

「そっか……じゃあとっとと終わらせようか!」

 

「「「「おぉ!」」」」

 

…………

……

 

「着いたぞ。あそこがキールのダンジョンの入り口だ」

「ふむ、確かに怪しい人形みたいなのがいっぱいいるな。何匹か誘き寄せてみるか」

 

『召雷弾・弱』

【説明しよう!これは、威力と効果時間を犠牲に通常時でも使用できるように改良した召雷弾である。通常のスキルなので他の人も習得できるぞ!】

 

人形に着弾した次の瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドーーーーーン!!

 

爆発した。

 

手加減して放った。……つもりだったんだがな。

面影も残さず吹き飛んだ。

残ったのは、()()()()()()()()()と炭化した草だけ。

 

「ちょっとカミト!誘き寄せるんじゃなかったの!?跡形もなくぶっ飛ばしちゃ素も粉もないじゃない!?」

「いや、相当手加減したハズなんだが……」

「なにか!?嫌味か!?手加減しても戦闘力53万ぐらいあるアピールかお前ェ!!」

「落ち着けカズマ、少しおかしい」

「何がだ!?お前の戦闘力か!?」

「スカウターはアテにならん……ってそうじゃなくて、あれは体内で帯電して動きを阻害するスキルだ。あんな爆発は幾らなんでもおかしいんだよ」

「なるほど、つまりあのモンスターが自ら爆発したと」

「だと思う。まったく、リアルメガ○テとは……」

「それで、どうします?見たところ、親玉らしきものはここにいないようです。恐らくは、ダンジョンの最奥にいるのでしょう。ぶっ放して瓦礫の下敷きにしていいですか?」

「やめんか!財宝とか貴重なアイテムとかが埋もれたらどうする」

 

『いくら探索しつくされた、と言っても未開の地がないとは限らない。そーゆーとこに限ってボスやらアイテムやらがあるものだ』

By サトウ カズマ

 

との事だ。

 

「さて、誰がダンジョンに潜るか決めようか」

「私は爆裂魔法が使えないのでパスです。」

「私は構わないぞ。むしろ、カビ臭い場所で…ハァハァ」

「私は入り口で待機して、親玉が逃げてきたところを浄化してやるわ!」

 

結果こうなった。

 

ダンジョン組

・カズマ

・ダクネス

・カミト

 

待機組

・アクア

・めぐみん

 

…………

……

 

「中にも結構いるな、巻き込まれると面倒だしなしっかりと……って、ダクネス?」

 

ダクネスが人形に近づき、そして

 

「せぇい!」

 

 

ドーーーーーン!!

 

起爆した。

 

「ふむ……ここは私に任せろ。私が先行する」

「お、おう……頼んだ!」

 

ダクネスは、カズマのナビゲーションを受けつつ、人形を蹴散らして爆発を受けつつ駆ける。

俺とカズマはその後に着いていく。

時折もれた奴は俺とカズマが処理する。

所々に爆発したような後が見える。

モンスターに反応したのだろう。

 

「フフフ……当たる、当たるぞ!私の剣が当たるぞ!!」

 

ダクネスさんが嬉しそうで何よりです。

 

…………

……

 

かれこれ5分ほど同じ作業を続けていただろうか。

そろそろ飽きてきた。

さっきからドッカンドッカンパラダイスでうるさいし。

いい加減に親玉を出せ!

 

「ふむ、親玉とは我輩のことかな?」

 

声のした先を見てみる。

もう見飽きたような仮面

不適に笑う口

人形と同じような服

あの人形たちを見てきたなら間違えることはありえない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「コスプレ?」

「違うわたわけ!!」

「じゃあなに、紅魔族?」

「あんな頭のおかしい奴らと一緒にするな!!」

「じゃなんなの?あんた誰?」

「知りたいか?そんなに知りたいなら教えてやろう!我が名はバニル!魔王軍幹部にして、全てを見通す大悪魔である!!」

 

名乗りをあげる魔王軍幹部 バニル

全てを見通す大悪魔

ラインナップは十分に豪華である。

悪魔ってことはつまり……

 

『エクソシズム』!!

 

「フハハハ!魔王よりも強いかもしれないバニルさんにそんなもの効かn……グワアアァァーーーーーーー!!?!」

「ふむ……大悪魔ってのも嘘じゃなさそうだな。全然効いてないっぽい」

「いや、めっちゃ効いてるっぽいけど……」

「そうか?」

 

そんじょそこらの悪魔なら祓える。

レベル差はそんなにないハズだ。

なんせ、こないだ見たらLv.98だったしな。

 

「貴様……本当に人間か!?我輩とさしたる差がないような人間なぞ、永きに渡って生きてきた中でも初めてだぞ!?」

「それは恐縮。俺はアマシロ カミト。人間のアークプリーストだ」

「フム、まぁそんなことはどうでもよい!なるほど、人形は外に溢れているか。なら、ダンジョンのモンスターどもは全て倒したようだな」

「そのせいで俺に冤罪が飛んできた。どーしてくれる」

「そうか、それは失礼したな、女神の愛人の小僧。表にいるあの青いのと昨日もお楽しみだったようではないか!」

 

 

へ?

 

 

「カミト、お前……」

「童貞卒業してたのか……爆発しろ!!」

「待て待て待て!!昨日は枕投げしてただけだ!!」

「「「昨日()?」」」

「まだ一回もしてねぇよ!!…ってか、お前まで便乗してんじゃねぇ!!」

「いい悪感情だ!美味であるぞ!」

「うるさい!」

 

こっちは据え膳を理性とあの娘たち(オシリス オベリスク ラー)の呼び掛けで必死に我慢してるんだぞ!?

もう生かして帰さんッ!!

初登場以降まったくご無沙汰だった『創世の剣』と、これまた最近ご無沙汰の『天空竜剣』の二刀流で斬りかかる。

しかし、手応えがどうもおかしい。

まるで、砂利を斬ってるような……

 

「華麗に脱皮!この体は土塊である故、仮面さえ残っていれば体はいくらでも再生できるのだ!」

「……だそうだぞ、カズマ?」

「ムッ……!?」

 

いつの間にかバニルの後ろに回り込んでいたカズマ。

こちらに気を使いすぎて不意を突かれたらしい。

 

「くらええぇぇーーーーーーー!!……あっ

「「「は?」」」

 

岩にコケた。

それはもう盛大にコケた。

空中を舞うぐらい派手にコケた。

カズマは空を翔た。

あれ?グラシュってこっちに来てたっけ?

 

「蒼のカズマのフォーリズムだな……プフッ」

「上手くねぇよ!!」

「まぁまぁ、笑ってやるなカミト……プフッ」

「お前らなぁ!!」

「m9(^Д^)プギャー」

 

お互い様だ。

さっき散々言いやがって。

さて、そろそろ戻ろう          ……プフッ

……あれ?そういやバニルは?どこ行った?

 

「っ!?ダクネス!後ろだ!!」

「なっ!?グアァアあああァアぁーーーーー!!」

「ダクネスーーー!!」

 

やられた。

バニルは仮面が本体。

被った相手を洗脳できるなんて予想できそうなものだ。

油断しすぎた。

 

「気をしっかり持て!ダクネス!」

「フハハハ!支配完了!早速表の忌々しい女を始末してくるとしようか!!」ダッ

「待てっ!ダクネス!」

 

バニルinダクネスが走り出す。

重い鎧を着けているとは思えないほどに速い。

重いのは鎧だ。決して体重が重い訳ではない。………ないったらない。

 

「お前、筋肉重いクセになんでそんなに速いんだ!?」

 

あ、言いやがった。

 

「「お、おまっ!?重いのは鎧だ!鎧が重いと言い直せ!!」なにっ!?何故意識を保っていられるのだ!?何なのだ!?この「麗しい」小娘は!?「まるで騎士の鑑だな」ええぃ!我輩で遊ぶな!」

 

……意外と余裕あるな。

楽しそうだしこのままでいいかな?

 

「我輩はそれでも構わんが、この小娘は苦痛を味わい続けることになるぞ?」

「マジか」

「マジだ」

 

『セイクリッド・エクソシズム』!!

 

「「グワアアァァァーーーーー!!!」」

「これでもダメか」

「いやだから、めっちゃ効いてるじゃないか」

「「いいぞ!もっと!もっとやれカミト!!」止めんか!まったく、貴様の中身は見えづらくて仕方ない。神憑きにでもあったか?神々の気配と黒々とした邪神の気配が見える。それも、1つや2つではない」

「まぁそんなとこ……だっ!」

「フハハハ、甘いわ!」

 

クソッ!

元がダクネスとは思えないほどに速い。

もう既に入り口までの一本道を残すのみとなった。

……ん?

()()()()()()()()

 

「アクア!めぐみん!カズマ!入り口から離れてろ!!」

 

『翼神竜化』!!

『ゴッド・ブレイズ・キャノン』!!!

 

ボォォーーーーーーーン!!!

 

一本道ということは、通路より広範囲な攻撃をすれば回避が出来なくなるということだ。

ただ、少し入り口が崩れてしまった。

……魔王軍幹部のせいにすればいいか。

きっとギルドも許してくれる。

 

「フフフ……フハハハハ!面白い……面白いぞ!」

「ダクネス、何ですかそのカッコいい仮面は?私も欲しいです!」

「おっと、名乗り遅れたな。我輩はバニル!魔王軍幹部にして、全てを見通す大悪魔だ!」

「うわっ!悪魔臭っ!エンガチョ!エンガチョね!」

「はい、切った」

「ありがとカミト♪」

 

切るような縁も無いだろうにエンガチョってどうなんだろうか?

俺はこいつそんなに嫌いじゃないんだがな。

 

「「カミト!もっとだ!もっと激しく!!」いい加減大人しく操られておけ!貴様、カミトといったな。それほどの力、よもやまだあるとは言うまいな?」

「残念ながら、あと5体残ってるよ」

 

その内3体は制限時間付きだけどね。

まぁそれでも丸一日はもつけども。

 

「フハハハハ!良かろう!我輩の負けである!この小娘は解放し、貴様に殺されてやろうではないか!!」

「いいのか?」

「実を言うと魔王軍幹部を辞めたいと思っていたのでな。さぁ遠慮は要らん!サクッと殺ってしまうがいい!!」

 

ダクネスから仮面が剥がれる。

離れたところにダクネスを寝かせておき、残すは仮面のみといった状態である。

大悪魔ってのも大変なんだな。

ウィズも魔王から頼みこまれて仕方なくと言っていた。

幹部もそれなりに面倒らしい。

 

『邪神イレイザー』

 

忌々しいとか言っていたので、神に殺されたのでは屈辱だろう。

せめて、同じ闇で葬ってやりたい。

じぁな、バニル

来世でまた会おう。

 

…………

……

 

「…………」

「…………」

「…………」

「……あの」

 

うん、ウィズの言いたいことは分かる。

確かに『来世でまた会おう』とは考えた。

見通す悪魔のバニルならわかっているとも思っていた。

けどなぁ……

 

「いくらなんでも、再会早くない?」

「フハハハハ!我輩には残機があるのだ!見ろ、仮面に輝くⅡの文字を!」

「そこじゃねぇよ!いやそこも気になるけどさ!」

 

もっとこう、感動的なシチュエーションとか熱くなる展開とかで再会したい。

それこそ、『今度は良い奴に生まれ変われよ』的な。

 

「悪魔はいくら死んでも悪魔なのだ!そうポンポンと改心してたのでは魔界の悪魔がいなくなってしまうではないか」

「いや、そうだけどさ……」

「それと、小僧。貴様は我輩を嫌いでないと考えたな?」

「確かに嫌いじゃないけど……それが?」

「プリーストである貴様が、なぜ我輩を忌み嫌わぬのか。そして、なぜそれを戒めぬのか。エリス教やアクシズ教ではないとすれば、何を敬い崇めているのかが気になってな」

「あ、それは私も気になります!」

「私も前々から気になっていたのだ」

 

そういえばプリーストにはなったものの、神を崇めていることはない。

アクアは可愛い愛人だが、崇めるというのは違う。

エリス教は、悪魔を断じて許さない、というスタイルのためこれも違う。

そもそも、俺自信が神みたいなものなので、神々を皆同格に見てしまうらしい。

はて、どう答えたものか……

 

「自分で新しい教団でも創ろうかな……」

「ほう?」

「はぇ!?」

「は!?」

 

俺が教祖になってね。

三幻神を崇め奉る。

その場合、俺が教祖兼御神体になってしまうが、まぁ細けぇこたぁいいんだよ!

 

「あの……私、入ってもいいですか?」

「魔王軍幹部が、それもアンデットが神を讃えるってどうなの?」

「すいませーん、ってカミトさん!?」

「おー、ゆんゆんじゃないか。めぐみんはいないぞ?」

「いえいえ、ゆんゆんさんはウチの常連さんなんですよ」

「へぇー」

「カミトさんも買い物をしに?」

「いや、俺はウィズと話があってな。それと、俺もここの常連だ」

「へぇーそうなんですね。では、なんの話を?」

「カミトさんが新しい教団を創ろうって話です」

「まだ願望の段階だけどな」

「あ、あの……私もその……入っても大丈夫、ですか?」

「ま、まぁできたらで良いよ、アハハ……」

「そうですか……やった

 

純情過ぎて眩しい……

まさか、冗談がここまで発展するとは……

本格的に考えるべきなんだろうか……

 

 

後日、面白い半分で募集の張り紙を配ってみた所、街中の未婚女性たちがこぞって来たそうな……

中には、いくつか見知った顔もあったようです。




やっと書けた……

書いている間にかれこれ6~8ぐらいは消えましたからね。
精神的にヤバい。

みんな、自分の課題や執筆途中の作品はしっかりと管理しておきましょう!

作者みたいに痛い目みるぞ♪


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12話 決戦の火蓋

どうも、ひきさんです。

こうやって小説を書いていると、読書感想文の1200文字が途端にショボく見えてくる今日この頃。

皆様、暑中お見舞申し上げます。

カミト君たちはどうやらさっぱりしてくるそうです。
温泉……私はカラスなのであんまりですけどね。

ともかく、12話 局所的ハリケーン
 どうぞ!


どうも、カミトです。

今、夢の世界と現世をさまよっています。

馬車の上というのも中々悪くない。

適度に揺れていて……なんというか電車やバスと同じような感覚だ。

それよりは揺れているだろうけど、感覚が鈍くなったのか三半規管が図太くなったのか皮膚が厚くなったのか。

どれもありえるし全部ということもある。

 

微睡みの中で少し回想を挟むとしよう。

 

…………

……

 

「「「「温泉旅行!?」」」」

 

「あぁ、バニル討伐の報酬とは別に、クエストの報酬と冤罪を掛けた謝礼だそうだ」

「ここのとこ大変だったのでいいんじゃないですか?」

「そうだな、特にカミトは色々と大変だっただろう。これを機にゆっくり休むといい」

「その旅行は何人まで大丈夫なんだ?」

「えっと……「4人乗り馬車2台」つまり8人ってことだな。あと3人まで誘えるな」

「ならさ、ウィズやゆんゆんなんかも誘ったらどうだ?」

「そのつもりだったけど……良いか?」

 

みんなも誘いたい友人や知り合いの2~3人はいるだろう。

俺が貰ってきたけど独断で決めるつもりはない。

あくまで『提案』をして許可を得る。

 

 

「問題無いです」

「私も大丈夫よ」

「私もいいぞ。あと、クリスを誘ってもよいだろうか?」

「あぁ、けど俺たちが勝手に決めても、本人に了承得ないと始まらないな。少し聞いてこよう」

 

「温泉ですか?バニルさん、店番頼めますか?」

「あぁ、楽しんでくるがよい。寧ろ行ってこい。貴様がいない方が商いが捗る」

「ひ、ひどいです!」

「と、ともかく、ウィズは来れるんだな。準備しといてくれよ」

「は~い。アッチョットバニルサンヤメテ!

 

うん、何事も準備って大事ダナー。

 

 

「お、おおお、温泉!?あ、あの良いんですか?」

「そんなに畏まらなくても、そっちこそ大丈夫か?そっちの予定を考えないで誘っちゃったけど」

「あ、はい……私は特に予定が無いので」

「O.K。じゃあ準備しておくように。枕とかも忘れるな」

「は、はい。お誘いありがとうございます!」

 

こっちも大丈夫そうだな。

さて、ダクネスの方はどうかなっと。

クリスを誘いに行ったらしいが。

 

「クリスはダメだった。当日は予定があるらしくて来られないそうだ」

「そうか……3人は?誰か誘いたい知り合いとかはいないのか?」

「多すぎて無理ね」

「いないので無理です」

「ロクなのいないから無理だ」

「……今、お前たちの交遊関係がすこぶる不安なんだが」

 

まぁそんなことはこの際どうでもいい。

とにかく7人での旅行になるようだ。

こっちにも温泉があることも驚きだが、それ以上にまた何かしら起こるのではという不安が頭を過る。

うん、忘れておこう、根本から。

電気ショックで海馬を刺激して忘れる。

下手を打つと全部パァになるけど、ほぼ大丈夫だ。

 

バチィン!

 

「なんだ!?」

「嫌な記憶がっ……くっ!静まれ我が目よ……!」

 

ふぅ……よし、俺はカイバーマン。

青眼の白竜の使者である!

 

ではなく、俺は天城 神人。

三幻神の主である。

よしよし、オッケイ。

 

「そういや、アルカンレティアって所に行くらしいぞ、アクア」

「アルカンレティア!?温泉の都にしてアクシズ教団の総本山じゃない」

「「え"」」

「やっぱりですか……もしかしたらとも思っていましたが、やはりアルカンレティアでしたか……」

 

もしや、在庫処理的なのを握らされたのでは?

嫌な予感しかしない。

よし、消しておこう。

 

バチィン!

 

「またか!?」

「電気マッサージは……マッサージは勘弁……」

 

どうやらめぐみんのトラウマを作ってしまったらしい。

ゆんゆんのライトニングで何とも無かったってことは、静電気とかに反応するのかな?

すまんな、悪く思うな。

そもそも、自業自得でもあるし。

 

そして当日

アクセルにおける決戦の火蓋が切られた。

 

「私に決まってるでしょ!ナメクジの分際で何を言ってるのかしら!!」

「ひ、ひどいですアクア様!私だって……」

「あ、あの!私も……その……立候補します!」

「フーッ!フーッ!」

「ムムムム……!」

「ううぅぅぅぅ……」

 

どうしてこうなった。

俺はこんな戦い、望んじゃいない。

前に嫌な予感がしたのはこれだったのか。

女神と死霊の女王と紅魔の魔法使い。

文字で見れば、神話と見間違うほどの顔ぶれで行われる三つ巴の戦い。

それが目の前で起こっている。

 

「アクア、ウィズにゆんゆんまで……一体どうして……」

「諦めろ。神は我々を見放したのだ……受け入れろ」

「「……」」

 

「さぁ、いい加減に決めましょうか……決着を!」

「私が決めて差し上げます!」

「紅魔族の長の娘として、負けません!」

 

「オオォォアァーーーーー!!!」

「ハァァーーーーーーーー!!!」

「やあぁぁーーーーーーー!!!」

 

 

刹那的な駆け引きだった。

下手に手を出せば負ける。

そういう戦いだ。

そして3人は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「ジャン!ケン!ポン!!」」」

 

じゃん拳をしていた。

 

「……なにをやっているのでしょう?」

「言ってやるな」

「神は死んだか……」

「あっちとここにバッチリいるよー」

 

かれこれ10分はやっている。

みんな早く来てしまったらしく、20分以上早く来たのだが、俺たちで最後だった。

 

「ああああああ!!またアイコなの!?いい加減諦めなさい!」

「じゃん拳に10分以上かける必要も無いだろ?()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

そう、長々とやっているじゃん拳は席順を決める為にやっているらしいのだ。

 

「甘いわよカミト。これは貴方を守るためなの。この女狐どもから()()()()()()()()()()()()ためなのよ」

「そりゃ、アクアが隣だと嬉しいけど……それでも、譲ってやっても良いだろうに」

「カミトがそう言うなら……女狐ども!カミトと私の寛大な心に感謝するのね!」

「私たち、女狐ですか……」

「獣人族がどうかしましたか?」

「いや、ゆんゆんは気にしなくていいぞー。そのままのゆんゆんでいてくれ」

 

<ゆんゆんぶれいん内部>

そのままのゆんゆんでいてくれ

そのままのゆんゆんがいい

そのままのゆんゆんが好きだ

 

「///」ボンッ

「どうしましたゆんゆん?顔が紅に染まっていますよ?」

「な、なんでもないわ」///

(カミトさん……もしかして、愛の告白!?)

 

あれがめぐみんがら聞いた『ゆんゆんポンコツモード』か。

可愛らしい。

すごく愛くるしい。

動物的に!

 

「あの…末永く、宜しくお願いします……」

「なにが末永くよ!私のセリフよ!!」

「わ、私も、貰ってくれますか……?」

「……はい?」

 

ギャーキャーワーワー

 

一通り騒いだ後、結局、席順は以下の通りとなった。

 

   俺    ウィズ

前             後

   アクア  ゆんゆん

 

早起きしたのとさっきまでの騒ぎで疲れたな……

 

…………

……

 

そして現在に至る。

馬車の上に乗っているのは、中で寝ようとしても凄く視線を感じるからだ。

寝顔を見るのはいいけど、あの3人からの視線はメドゥーサのそれであった。

まさにゴルゴン三姉妹というわけだ。

 

「カミトさんですよね?魔王軍幹部を討伐してデストロイヤーを破壊した」

「そーだ」

「……そこ、寝心地いいんですか?」

「あぁ、中だと落ち着いて寝られないし、この揺れもまた心地いい」

「おぉ、やっぱ魔王軍幹部を倒した人は違うなーっ!嫁さんも3人も娶ってらっしゃる。モテモテですな」

「まだ嫁さんは1人だよ!ふあぁぁ……」

「おっとすいません、じゃ、ゆっくり寝とってください」

「そうさせてもらう……Zzz

 

お休み……

 

続く




ありがとうございました。
短いかもですけど、次回に続きます。

ゆんゆんとウィズがめっちゃ積極的になってしまった。
ここまでする予定じゃなかったんや。
ただ、書いてると勝手に引っ付いて行くんや。

2人にスポットライトが当たっていましたが、メインはあくまでもアクアです。
そこは変わりません。

次回 猪突猛進
 デュエルスタンバイ!


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13話 局所的ハリケーン

どうも、ひきさんです。

将来の夢は作家兼声優がいいな。
通ってるの、工業高校だけど。
なにするために工業高校選んだっけ?

そんなことより、
13話 局所的ハリケーン
 どうぞ!


どうも、カミトです。

馬車の上で横になって寝てます。

 

「Zzz……」

カミトー!!起きろ!!このヤロッ!!

……起きないな

上等だゴルァ!叩き起こして殺る!!

 

んぅ……ん?

何やら騒がしい。

何かあったか?

 

・寝起きドッキリ

・睡眠爆破

・ナイトレイド

・夜這い

 

この中で最も現実的なのは……

 

「何だ?ナイトレイド?」

「どこの帝具持ちだよ!?」

 

アクアにアカメ……

意外としっくりくるのは何故?

名前がアk まで同じだから?

やってることは真逆だけど。

 

「そんなことより大変だ!馬車が走り鷹鳶に襲われてる!」

「おやすみなさい……」

「おぉい!?寝るなーー!!」

 

 ーー 説明中 Now Loading ーー

 

一旦馬車を止めて7人で話し合う。

出発前にも思ったが、このメンバー、メンツがとてつもなく豪華だ。

女神に、死霊の女王に、紅魔の天才2人に、不動の騎士に、3神の主。

1人忘れてる?気のせいだ。

 

「あれか?走り鷹鳶って?」

「その通りですカミトさん。あれはより硬い物に走っていき、ギリギリで避けるチキンレースというもので求愛をします」

 

えぇ……

あんなダジャレ鳥で俺は起こされたの?

しかもチキンレースって、お前らまだ精肉じゃないだろうが。

 

「しかし変です。どうしてこちらに来るのでしょう?」

「キャラバンに岩以上に硬い物を積んでいる様には見えなかったがな……」

「硬い物、硬い物……」

 

一同、チラッ

気づいた。

そして口にする。

 

「「「「「「「あっ」」」」」」」

 

私の鎧かぁーーーーッ!!!

 

この中で最も硬い物、それは岩でもなく、俺の『天空竜剣』でも、紅魔の2人の杖でもなく、ましてや一応もってきた水晶でもなく、ダクネスのスキルが付与されより硬くなった鎧だった。

永らくご無沙汰の『巨神兵鎧』さんは、今回はご同行しておりません。

いや、変身すると壊れるんだよね。

伸縮自在ってわけじゃないし。

ダクネスみたいに常に着けてる訳でもないし。

というか、ぶっちゃけた話、必要ない。

 

「どうする?ダクネスに集まってるとすると、色々面倒だぞ」

「いっそのこと、ダクネスをあの集団に放り込んでみるとか…………なんて」

「やめてくれ!いや……次々に足蹴にされるのもなかなか……いい!」

「こんな時まで興奮してんじゃねぇ!」

「……」

「ん?どうかしました、カミトさん?」

「……!?アクア!ナイスアイデアだ!流石は俺の恋人だ!!」

「へ?あ、そんな……///」

「「むぅ…」」

「どういうことですか?ドSに目覚めましたか?」

「違うわ!はぁ、いいか、作戦はこうだ」

 

1.カミトがダクネスを運び、群れを誘導

2.ある程度誘導した所で群れの後ろに投げる

3.ウィズの沼魔法で動きを阻害、ダクネスは退避

4.群れが止まっている間に爆裂魔法でぶっ飛ばす

5.倒れためぐみんをゆんゆんとアクアが回収

 

走り鷹鳶は最も硬い物に向かって走っていき、よりギリギリで避ける。

それが求愛になる。

オスは何がなんでもメスにありつくために死に物狂いで走ってくる。

その速さは馬車をも上回るそうだ。

それ程のスピードでは、簡単に停止できるものではない。

振り返るにも時間がかかるはずだ。

範囲外に出さない為に沼魔法で足の動きを制限する。

その間、ダクネスは爆裂魔法

めぐみんは爆裂魔法を撃ち込むという寸法だ。

 

「撃ち漏らした場合に備えて、俺は空で待機してる。どうだ?」

「久しぶりの大量の雑魚……いいでしょう!私の力、とくと見せましょう!」

「了解です!」

「が、がんばります!」

「悪い……私のせいで……」

「気にすんな、それよりお前は巻き込まれないように気を付けろよ」

「俺は?ねぇ、俺は?」

「遠くからタイミングを教えといてー」

「俺の扱い最近ひどくない!?」

 

<ごめんねー 人(-ω-')

ぶっちゃけカミト君とキャラ被るんだよねー。

オリ主には勝てないのだ by作者ことひきさん>

 

カズマは気にしないことにしよう。

作者の声が聞こえた?気にしないことにしよう。

 

さぁ、殲滅戦を始めよう(デストロイ・ゼム・オール)

 

…………

……

 

「よし、準備はいいか?ダクネス」

「あぁ、いつでも問題ない」

「危ないから少し離れてろ」

 

『天空竜化』

 

赤い翼を持つ竜になる。

オシリスの天空竜は天を統べる神。

飛行能力は随一だ。

試したことは無いが、その気になればジェット機以上のスピードが出るだろう。

あくまで見失うことのないように飛ぶようにしなければ。

ダクネスを咥えて飛びはじめる。

 

『飛ばしていくぞ!しっかり掴まってろ!』

「お、おう!ビリビリして……クセになりそうだ……

 

ズドドドドドドドド!!!

 

地鳴りがする。

俺は空を飛んでいるので分からないが、かなりの揺れがしていそうだ。

 

『あんだけのオスの群れ……恋の病とは恐ろしい』

「……お前にだけは言われたくないと思うぞ」

 

失敬な。

恋こそしているが、盲目にはなっていない。

……はずだ!

 

「そろそろだな」

『あぁ、足首に気を付けろよ。着地で捻挫とかしないように』

「注意しておこう」

『そんじゃあいくぞ!1、2の……』

 

後ろに投げるべく振り向き、大きく首をしならせ、着地点を睨み付ける。

コントロールが多少不安なのと、力の入れすぎでめり込ませてしまうのを危惧しながらもしっかりと勢いをつける。

そして……

 

『3!!』

 

首を勢いよく戻しながらダクネスを放り投げる。

思っていたよりも左に行ってしまった。

これから少し練習するべきだろうか?

おっと、悠長に考えてる暇は無かった。

俺も離れなければ。

 

「『ボトムスワンプ』めぐみんさんお願いします!」

「『エクスプロージョン』!!」

 

足を取られている内に大爆発が群れの中心に撃ち込まれる。

上から見ているが、撃ち漏らしは無さそうだ。

それにしても相も変わらず凄まじい威力。

結構離れていても衝撃が伝わる。

 

「はあぁ……最高♥」

「お疲れ、めぐみん」

 

作戦成功だ。

旅路の途中で面倒事に苛まれた。

これ以上面倒がないように祈る。

ん?誰に祈っておくんだ?

とりあえず、幸運の女神エリスに祈っておく。

 

「お疲れさん、カミト」

「カズマか、お疲れか?」

「いいや、お陰様で全くだ。お前が仕事くれないせいでめぐみんに"クズマさん"呼ばわりされたんだぞ!どうしてくれる!」

「ナンノコトカナー」

「こいつ!!」

 

カズマも無事、話を聞く限りめぐみんも無事と。

なら、めぐみんを任せたアクアとゆんゆんも無事だろう。

あとは、

 

「ダクネスー、どこだー?」

 

ダクネスの安否が分からない。

それどころか居場所も分からない。

この辺りだったような気がするんだけどな。

 

「いた!って、ダクネス、大丈夫か?」

 

結論で言えばダクネスは無事ではあった。

しかし、無傷とは言えなかった。

着地に失敗した方がよっぽどマシだっただろう。

 

「カミトか、悪いが出るのを手伝ってくれないか?」

「あ、あぁ……」

 

ダクネスは……

岩に刺さっていた。

それも頭から。

見えているのは肩より下のみ。

投げるのが逸れた先に、ちょうど岩があったようだ。

 

「なんと言うか……すまん」

 

…………

……

 

「全員乗りましたかね?」

「あぁ、カズマそっちは?」

「こっちもいつでも出れるそうだ」

「よし、出してくれ」

「了解しました。ハイヤー!」

 

馬車が出発する。

温泉の前に一汗かいておけたと思うべきか、旅路の面倒が多いと嘆くべきか。

なんにせよ、到着したら、いの一番に温泉に浸かりたい。

 

「汗をかいたお陰で、温泉が楽しみになりましたね」

「そうだな、不幸中の幸いと思っておこう。じゃないとダクネスが不憫だ」

「そういえば、行き先は『アルカンレティア』なんですよね?」

「えぇ、そうよ」

 

アルカンレティア

山の麓にある街であり、山頂には源泉が湧いているので、温泉が有名な街だ。

湯治に来る貴族も少なくないらしく、一説には、魔王軍までもが訪れるという噂もある。

そして……

 

「なんと言ってもアクシズ教団の総本山よ!どう?入信したくなった?」

「いえ、私たちはカミト教に入信しますので」

「むぅ……カミトォ……」

「あはは……まさか冗談がここまで大事になるとは」

 

ボソりと口にした冗談が、あれよあれよとアクセルの街に広まっていき、ついには俺が教祖で三幻神を御神体とした宗教が設立されてしまった。

……女性が非常に多いのは何故?

 

「カミト教は今やアクセルの約1/4の人が入信を望んでいます。ゆくゆくはエリス教とも肩を並べる程に大きくしていきましょうね、カミトさん!」

「先が長そうな目標だな。ま、乗りかかった船だしやれるだけやりはするけど」

「ううぅ……カミト!」

「どうした、アク……!?」

 

       チュ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ!?」

 

目の前に目もつむったアクア。

視界の端にいるゆんゆんとウィズは目を見開いている。

唇に感じる暖かみ。

鼻腔をくすぐるアクアの匂い。

少し離れて赤面すふアクア。

何をしてるかを理解するまでには少し時間が掛かった。

 

「ふふっ……しちゃったね……」

「あ、アアア、アクア様!!?!」

「あ、ああ、あああああ……カミトさん……」

「あ、アクア……今……」

 

キス

してしまった。

二人の前で。

言葉にならない。

語彙力が激減するぐらい恥ずかしい。

 

「恋人はね、嫉妬深いものなのよ、カミト♪」

 

馬車の中で起きたひと悶着。

どうやら、面倒は馬車でも起きるらしい。




メインヒロインの貫禄を見せたアクア。
でも、お二人さんは未だに諦めてないご様子。
はてさて、この先どうなることでしょう。
正直、私自身も分かりません。
いかんせん勢いだけで書いてるので内容がどう転がるか……

なんとなくの次回予告ー!
次回 竜の逆鱗
 デュエルスタンバイ!


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Ⅳ章
14話 竜の逆鱗


どうも、ひきさんです。
もはや私の作品では定番になってますね。
何事にも挨拶は大事ね。
気にくわない所あったら教えてね。
それはともかく、

14話 竜の逆鱗
 どうぞ!


どうも、カミトです。

現在、馬車でアルカンレティアに向かっている。

一夜明けたらすぐに到着らしいので、そろそろ見えてくる

だろう。

昨日の夜営ではモンスターどもの夜襲があったものの、特に被害はなく朝を迎えた。

本当によくモンスターに襲われるな。

ちなみに俺は……

 

「すぅ……Zzz

「カミトさん、よく馬車の上で寝れますね……」

「クエストが長引く時は木の上だったり、岩の上で寝てたりするわよ……」

「猫かなにかですか……」

 

最近、半分寝て半分起きるというのが出来るようになった。

この場合、猫ってよりイルカだな。

アクアと融合してアクア・ネオスに……

アクアと……融合……

って!いかんいかん!

煩悩退散!煩悩退散!

怨霊にも、もののけにも困ってません。

ドーマンセーマン!

……すぅ……Zzz

 

「みなさん、見えてきましたよ。温泉の都アルカンレティアが!」

「んぁ~?おぉ、あそこか」

「煙がたってます!火事ですか!?」

「温泉楽しみですね♪」

「待ってなさい!敬虔なる信者たち!」

 

誰かゆんゆんに構ってあげなさい。

間違えて覚えちゃうぞ?

この娘、かなり純粋で天然だから。

 

…………

……

 

「じゃあまた、今度は酒とつまみでも持ってくるよ」

「おっ!ありがてぇ!それじゃ、今度はご指名を期待してますよ」

 

おっちゃんの馬車から降りて、アルカンレティアの土を踏む。

その瞬間の出来事だ。

 

「お兄さんは観光に来たの!?それとも入信!?懺悔!?」

「お兄さんかっこいいね!私とアクシズ教に籍を置いて!ね!?」

「そこの兄ちゃん!今入信すると食べれる石鹸も着いてくるよ!」

 

女性から言い寄られるわ、男性からはよく分からない石鹸を釣り餌に入信を求めてくるわ。

とにかく揉みくちゃにされる。

ちょっと?その手はどこに向かってるんだい?

横目で見たところ、3人とも捕まってる。

アクアはちやほやされて嬉しそうだが。

 

「ちょっ!ちょっと!?私は入信なんて……」

「いいからいいから。最初だけ、最初だけだからね!」

「離して!カミトさん、助けてくださーい!」

 

ウィズのほうはいろいろ大変そうだ。

なんて執念深い……

そもそも、リッチーなんて入信させて大丈夫だろうか。

まぁ、そろそろタグを増やさないといけなくなるから止めさせるか。

 

「あの、おじさん」

「あ"!!?」

 

この野郎、ガン飛ばしてきやがったぞ!?

ガラ悪っ!!

ここは少し威圧して……

 

「俺の連れに……何か様か?」

「に、入信を勧めてただけだ!」

「入信なら……他をあたってくれよ……な?

「ひいぃ!!」

 

うへぇ!

マーキングしながら逃げやがった。

あの野郎は許さん。

常に足が正座の後みたいに痺れる呪いをかけてやろう。

 

「カミトさん……その、ありがとうございました」

「気にすんな。うちの信者を取られるのは癪だしな」

「あ…………はい!」

「いぃぃーーーやぁぁーーーーーー!!」

「……ゆんゆんだったな」

「ゆんゆんさん……でしたね」

 

目の前を吹き抜けてゆく一迅の黒い風。

まだカズマたちの馬車は着いてないらしいので、ゆんゆんで間違い無い。

 

「はぁ……行くか」

「はい……」

 

その後、ゆんゆんを追っかけてたドワーフとエルフはO☆HA☆NA☆SHIで解決した。

話せば分かってくれるものだね(遠い目)

作者<めちゃくちゃ殺ってるじゃないっすか!?>

うるさい。

 

…………

……

 

なんとかカズマたちと合流し、人波を退けながら宿についた。

 

「いらっしゃいませ」

「これを」

 

貰った券を見せる。

 

「かしこまりました。こちらへどうぞ」

「はい、おーい部屋行くぞー」

 

アクアを除いて皆が皆、屍の如き足取りでついてくる。

俺もうっかり消滅させそうなところだった。

危ない危ない。

窓口の人がまともそうでよかった。

 

「浴場のルールや必要な物などは番台にお申し付け下さい。では、ごゆっくり」

「はーい。……お前ら、大丈夫……なわけないか」

「子供までグルになっているとは……」

「危うく爆裂魔法でぶっ飛ばすところでした……」

「エリス教徒の私は唾を吐きかけられたぞ……ハァハァ」

「アルカンレティア……恐ろしいところですね……」

 

全くもって同感だ。

アクアには悪いが、頭がおかしいと言わざるを得ない。

他教徒に唾吐いてくるほどとは。

ダクネスじゃなかったらブチギレてたな。

 

「まぁその……なんだ、取り敢えず温泉入ろうか」

「そういえば、ここの温泉は混浴があるようですよ。私は行きませんが」

「混浴ですって!?」

「なんて破廉恥な!?」

 

ゾオオオォォ…………ッ!!

何だ!?この邪神に睨まれたカエル見たいな感覚は!?

これが……『恐怖』ッ!!?

 

「俺は入らないぞ。混浴に入ったら老人しかいないのが普通だしな」

「お、俺も、お、男湯に……入ろうかな!!」

「わ、私は……その……恥ずかしいので女湯に……混浴

「私も女湯にします。皆さんと親睦を深めたいので」

「せっかくだし私は混浴に入るわ!だからカミト!一緒に……ね♪」

「「「「「「えっ」」」」」」

「……ね、念のため聞いておくが、拒否すると?」

「入ってくれるまで泣き続ける」

「……分かりました」

「アクア!それはいくらなんでも……」

「そうです!そそそ、そんな破廉恥なこと……」

「あー、あー、キコエナーイ」

 

女神様は混浴をご所望のようだ。

正直、めちゃくちゃ恥ずかしい。

ここのとこ、アクアが非常に積極的だ。

せめて誰も居ないでくれよ……。

 

「……HAHAHA!死ね」

「カズマ、後で電気マッサージしてやるよ」

 

…………

……

 

「いらっしゃいお客さん、ここは初めて?」

「はい、必要なものってありますか?」

 

よかった。

番台さんもまともだ。

気の良いおっちゃんのようでたすかった。

 

「必要なものはな、この石鹸だ!なんとこの石鹸ね!身体の汚れを隅々まで落とすだけじゃくてね!食えるの!この温泉では有料だけど絶対に必要だと思うから!ね!」

「じ、じゃあ……8つ……」

 

こいつもダメだー。

めんどうだから2つ買ったけどこれ、街の入り口で勧められたヤツじゃん!

うわぁー、胡散臭ぇー。

 

「はぁ……じゃあまた後で。カズマは温泉出た後に俺のところに来るように」

「え"っ!?」

「じゃ、かいさーん」

 

カッポーン……

 

「……誰かいるな」

「……誰かいるわね」

「止めようか」

「止めないわ」

「……」

「……」

 

篭に入った衣服。

男の物と思われる服と女の物と思われる服だ。

 

…………

…………

 

「いやだーーーーーー!!」

「なによ!ここでヘタレるのカミト!?」

「誰かいるじゃん!しかも男女二人組じゃん!互いに絶対気まずくなるじゃん!」

「混浴に入ってるんだから承知の上でしょう!さ、行くわよ!」

 

やだ、うちの彼女(かれし)逞しすぎ……。

じゃなくて!

 

「わかった!入るから!服に手を掛けるのはやめろ!」

 

ベルトに手を掛けるアクアを引き剥がし、出来るだけアクアの方を見ずに服を脱いでいく。

混浴に入るのは初めてなので……お手柔らかにお願い‥します。

 

 

…………

……

 

「……」

 

一同黙浴中……

 

気まずい。

すっごく気まずい。

アクアは今頃になって赤面してるし、なんかあっちの二人組は俺をガン見してくるし。

 

「なぁ、あの小僧……」

「えぇ、間違いない、『あれ』ね」

「……どうする?」

「どのみちやるしかないでしょう」

 

なんかこっち見てひそひそ話してるーーー!?

何?『混浴なのに彼女に嫌われてやんのザマァwww』的な話?

どうしよう、すぐさま上がりたい。

しかし、アクアを置いていくわけにもいかない。

見張っていないと何をするか分からない。

 

「アクア、ちょっと……」

「わ、私、髪洗ってくるわね!」

 

さっきも髪を洗っていたような気がする。

なんにせよ、避けられて少しショック。

 

「準備はどうなってる?」

「『あれ』が来たこと以外は問題ないわ」

「先に『あれ』を潰しておくべきか?」

「そうね、『あれ』は確実に私たちの計画の障壁になる」

 

また見てるーーーーーー!?

何?『話しかけても露骨に無視されてやんのwww』的な話?

もう、消えてしまいたい。

それと男の方、湯船に浸からず彼女さんを上から観察とは……うわっ……

 

「おい坊主、おめぇ名前は?」

「は!?はぁカミトですけど……それが何か?」

「いや何でもねぇ、聞いてみただけだ」

 

危ない、危うくドン引いてるのがバレるところだった。

おっさんともお兄さんとも言いがたい見た目の男の人が話しかけてきた。

何故俺の名前を聞いてきたのだろう?

俺とアクアを生け贄に『青眼の白竜(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)』を召喚でもするのだろうか?

そういえばさっきの人、社長と声が似てたな。

 

「ア、アクア!そろそろ上がらないか?」

「そ、そうね!そろそろ上がりましょう」

 

結局、リラックスして湯に浸かることはできなかった。

脱衣場では、男が石鹸と紙をぶん投げていた。

ここまでやるか、アクシズ教。

風呂の後は夜ご飯とマッサージ(やる側)を堪能して布団に埋もれた。

 

…………

……

 

「コギャルが?」

「レストランで?」

「やったら食う!!……じゃなくて!」

 

翌朝、朝風呂に行ったカズマが全員を集めて話をする。

さっきの茶番?説明はいらないよね。

 

「昨日の夜から、街中の温泉がどうもおかしいらしい」

「昨日?昨日は普通だったじゃないか」

「どこも、温泉を閉める頃に見たら温泉がヘドロみたいに濁ってたらしいんだ」

「泥が流れてきたのではないですか?」

「いや、その人が言う限り、紫色だったらしい」

「まるで毒ですね」

 

毒か……。

街中となると原因は源泉か?

源泉に誰かが毒を流し込んだ。

しかし、この街の温泉は浄化されているのでちょっとやそっとの毒ではたちどころに無くなってしまう。

源泉ならなおさらだ。

そんな強い毒をどうやって……

 

「ヘドロ……毒……あーーーーーーっ!!」

「どうしたウィズ?急に立ち上がって」

「魔王軍にいたんですよ!出来そうな人…っていうんでしょうか?その……いたんですよ!」

「ウィズ落ち着け!一つ一つ話してくれ」

 

ウィズ曰く、魔王軍幹部に強力な毒性を持つスライム、デッドリーポイズンスライムの『ハンス』がいると。

スライムなので形は自由に変化し、普通の武器ではダメージを与えることが出来ないそうだ。

更に、毒は非常に危険でハンスの体に触れるとほぼ即死らしい。

さすがにドラ○エ使用のスライムではないらしい。

魔王軍幹部なのだから当然と言えば当然だが。

 

「ウィズ、ほいこれ」

「これは……杖ですか?」

「それ以外に何に見える」

「え、えあ、え……?カミトさん、これは?」

「どんな魔法も詠唱が必要なくなるのと威力1.5倍。調整可能。ただし、消費は2倍」

「えと、貰っていいんですか?お礼は……」

「安物の杖に小細工かけただけだからな。情報料として貰ってくれ。どうせ俺は使わない」

「ありがとうございます!一生大事にしますね!」

 

消費は2倍になってしまうが、ウィズの魔力なら問題ないだろう。

かなり丈夫にしといたから恐らくこの先、一生(数百年)使っても大丈夫だろう。

 

「カミトがウィズに色目使った!絶対使った!!」

「カミトさん……やはり、私なんか……」

「私には無いのですか?ゆんゆんにもウィズにもあげて、私には無いのですか?」

「話は終わってからゆっくりするから。とっとと終わらせようか」

 

宿屋を出ると、街の危機など関係無いと本気で言わんばかの勧誘の嵐であったが、なんとか乗り切り源泉を目指す。

 

…………

……

 

源泉のある山の中。

源泉の管理をしているお爺さんと、ハンスを探して草のなか、土のなか、雲のなか。

しかし、一向に見つからない。

虫よけスプレーやった記憶は無いんだが。

ん?

薬品のような、化学物質のような。

とにかく、自然にはない臭いが鼻につく。

……やむを得ない。

山には悪いが、木を伐らせてもらう。

 

「みんな、伏せてろ」

 

剣を振り抜き、周辺の木を伐採する。

木々は倒れ、半径5mぐらいは視界が開ける。

 

バタバタバタバタバタグチャバタバタバタバッタン!!

 

「ぐぇっ!」

「は?」

 

今確かに、カエルが潰れたような声が聞こえた。

もしかして……

 

「野郎……俺を相手に奇襲とはいい度胸だな!カミトとやら!」

「あら?あなたは風呂場の、彼女さんはどうしたの?もしかして、フラれた?」

「フラれる前に彼女でもねぇよ!」

 

倒れた木々の下から起き上がってくる。

お爺さんじゃなくてよかった。

というか、この臭い。

そしてこの言いぐさ。

なにより、この状況。

そういえば、こいつは湯船に浸かってなかったな。

……少しカマをかけてみるかな。

 

「えい」

「ふぇ?」

 

細工をした短剣で腹を一突き。

即座に抜く。

腹部からは赤黒い液体が。

 

「カミトさん!?」

「いってえぇ!!なにを…しやがる!?」

「まだ痛むのか?」

「たりめぇだ!狂ってやがんのか……てめぇ!!」

「なんで痛いんだ?」

「なんでってそりゃあ……」

「回復と浄化したのに?」

「!!?!」

 

俺は腹を刺した。

そして抜くと同時に回復魔法と浄化魔法をかけた。

普通の人間であれば、クレイ○ーダイヤモンドよろしく、傷口の除菌含めてきれーさっぱり治っている。

当然、そこに痛みは残っていない。

しかし、こいつは痛みが残っていると言った。

つまり……

 

「ハンスさん!あなた、ハンスさんですね!?」

「もう逃げ場はありませんよ、ハンス!」

「観念しろ、ハンス!」

「大人しく倒されなさい、ハンス!」

「探したよ、ハンス!」

「うるせぇーーーーー!!そうさ、俺が魔王軍幹部のハンス様だ!こっちも探したぜ、『龍皇』さんよぉ!!」

「はぇ?」

「はぇ?」

「……」

「……」

 

……。

なに?

『りゅーおー』?

将棋?

それともラスボス?

なんにせよ、すげー中2臭い。

思い当たる節は……

いっぱいあるな。

オシリス、ラー、イレイザー。

どれも竜だ。

厳密には幻神獣と悪魔だけど。

 

「『龍皇』……カッコいいですカミト!!」

「中2臭ぇ……」

「魔王軍ってそんな痛い名前着けるの!プークスクス」

「カミトさん、そんな異名があったんですね!カッコいいですよ!!」

「ありがとうなーゆんゆん」

「ハンスさん、この辺にお爺さんを見ませんでしたか?」

 

ウィズ……なんて胆力。

いや、慣れているからか?

 

「あ、じじい?食った」

「食った……お爺さんを?」

「当たり前だ、俺はスライムだ。食うのが本能だ」

「……ッ!!『』」

「なんだ!?」

 

 

地面が凍り、ハンスの腕が凍った。

無詠唱でここまでの魔法を使えるのは異世界広しと言えどもそうはいない。

その一人、ウィズだ。

 

「ウィズ!!魔王軍に楯突くつもりか!?」

「冒険者が戦闘で命を落とすのは仕方のないことです。彼らだってモンスターの命を奪い、生計を立てているのですから。自らも逆に狩られる覚悟も持つべきです。ですが……ですがお爺さんは関係無いじゃないですか!!」

 

アンデッドたちの王、リッチーの本気。

なんちゃってではあるものの、魔王軍幹部に相応しい力だ。

 

「クソがっ!!死ね!!」

「危なっ!」

 

体の一部を飛ばしてきた。

100%殺気で襲いかかってくる。

殺りkillしかないと言わんばかりに。

 

「アクア、カズマ、ダクネスは向かってくれ!俺、ウィズ、ゆんゆん、めぐみんはハンスをやるぞ!」

「わかったわ!……ねぇ、カミト」

「どうした?」

「帰ったら、このメンバーでおいしい物でも食べましょう」

「アクア……よっし!帰ったら、みんなで焼肉パーティーだ!!」

「「「「「「おおっ!!(はいっ!!)」」」」」」

 

猛毒を持っている以上、カズマやダクネスには危険だ。

ハンスには俺と魔法使いの四人で相手するべきだろう。

アクアにはその間に源泉を見てきてもらい、浄化してもらおう。

 

「させるかよぉ!!」

 

ハンスが巨大化する。

いや、元の姿に戻ったのか。

目に悪そうな色合いだ。

 

「カミトさん、使わせてもらいます!」

 

ウィズが杖を構える。

先ほどとは比べ物にならないほどに巨大な氷塊が液状の毒を凍てつかせていく。

 

「めぐみん!!」

「了解です!『エクスプロージョン』!!」

 

爆裂魔法により、ハンスの凍った部分と本体の一部が消し飛ぶ。

およそ半分程度の大きさにまで小さくなる。

 

「ゆんゆん!!」

「は、はい!『ライトニング』!!」

 

『翼神竜変化』

 

「『ゴッド・ブレイズ・キャノン』!」

 

かなり頑張ったのだろう。

20もの雷が同時に突き刺さっていく。

俺も合わせて炎を浴びせる。

消毒だぜ!!

残りは2割ぐらい。

 

「どうします?続けますか?」

「クソッ……舐めやがって!!」

 

めぐみんが脅す。

ただ、魔力切れにより俺の背中の上からなので全く怖くない。

 

「カミトさん……その、後で私も、おんぶしてもらって……いいですか?」

「終わったらね。さぁハンス、俺たちはお前を逃がすつもりはない…降伏はムダだ、抵抗しろ」

 

冬将軍の時のように油断はしない。

今回は毒なので冗談抜きで死ぬ。

 

「……ふざけるな!!俺が降伏だ?降伏するのはてめぇだ!てめぇら全員、生かして帰さん!!おらぁ!!」

「なにを……!?」

 

また何かを飛ばしてきた。

なんてことはない、簡単に避けられる。

しかし……

 

「ゆんゆん!!」

「なっ……!?」

「わははははは!!まず一人だな!」

 

狙いが甘いと思ったが、違った。

俺を狙ったように見せかけて、ゆんゆんを狙っていた。

とてつもない絶望。

果てしない後悔。

しかし、これらと同時にあることを思い出した。

そうだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺、プリースト(医者)だ。

 

骨さえ残ってれば治せるじゃん。

そもそも、さっきハンスに回復魔法と浄化魔法やったじゃん。

自分の職業忘れるってオイ……。

 

「ゆんゆん、生きてるか?」

「……カ、カミトさん、私は?」

「そういえば言い忘れてたっけ?」

 

あえてハンスにも聞こえるように大声で言う。

 

「俺、アークプリーストなんだ」

「てめぇみてぇなプリーストがいるか!!」

 

ごもっともだ。

俺自身も最近疑問に思ってる。

まぁ万能職だし、いいか。

 

「……」

「さぁきなよ!俺を逃がさないんだろ!?」

「そのつもりだったんだがな、やっぱ止めだ」

「あぁ?なんだ?今更怖じ気づいたのか?」

「逃がさないんじゃない、消す

「……やってみやがれ!」

「」

 

 

あえて無慈悲に、救いは無いと思わせるように威圧的に、神は自分だと思わせるように高圧的に。

創世の剣に、消滅の力をのせ、振り抜く。

 

「ちくしょおおおおおおおぉぉぉぉーーーーー……」

「……じゃあな、社長」

 

消えゆく絶叫は、勝利を報せる鐘となり、アルカンレティアに響き渡った。

 

…………

……

 

その後、俺たちはアクセルの街に戻り、報酬で豪勢に焼肉パーティーをしている。

 

「……はずだったんだがなぁ」

「こっちの肉も美味しいですよ!」

「あっ!俺が育ててた肉が!」

「うむ!確かに旨いな!実家から高い肉を送ってもらった甲斐があった!」

 

めぐみん、カズマ、ダクネスは報酬を使って奮発した肉と、ダクネスの実家から送ってもらった肉、それに買い出しに行った時に貰った野菜に舌鼓を打っている。

ちなみに、俺はと言うと……

 

「あっ、この肉は焼けたわね!はいカミト、あーん」

「んっ……このカルビ旨いな」

「待て待て待て!今、俺の皿から取ったろ!?」

「なんのことかしら?」

「カ、カミトさん!えっと…その……あ、あーん」

「はむっ……タン塩も旨い」

「カミトさん!熱いですからふーふーしますね!ふー、ふー。はい、あーん」

「はぐっ……野菜も新鮮でいい」

「ウィ~~ズゥ~~……?」

「ひいっ!?」

 

3人に囲まれて『はい、あーん』の無限ループだ。

 

『なんか、凄い情けないね!』

 

うおっ!?

びっくりした!……ってあれ?

この声は……?

 

『驚いた?』

 

オシリス!?

夢の中とかの意識の無い時にしか話せないはずだけど……

 

『お前の成長に伴い、私たちの力が上がったのだ。その恩恵として、こうして意識のある時にも会話が出来るようになった』

『…これからは……ずっと、一緒…だよ、主様』

 

オベリスクに、ラーまで。

というか、話さなくても思うだけで通じるんだな。

 

『そこのとこ……調整したの……』

『もう少し強くなれば実体化も出来るかもしれん。さっさと強くなることだな』

 

了解しました。

さてと、考えてる間も『はい、あーん』のループが続いている。

 

「俺は腹一杯だからさ、自分たちの分を食べろよ」

「そう?それじゃあ飲むわよ!」

「お野菜、美味しいです!」

「それじゃあ、私もいただきます」

 

かくして、俺たちの騒がしくも愉快な温泉旅行が幕を閉じた。

あと、三幻神の写身といつでも話せるようになった。

 

『じゃーねー!』




……




やっと……温泉終えられた……。
考えれば考えるほどグダグダと長くなっていき、最終的に8000文字越え……
夏休み終わってるよ?(2018年 9/9現在)
最近はネタが尽きなくて困るという贅沢な悩みが。
ともあれ!

次回 クロスソウル
 デュエルスタンバイ!


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15話 クロスソウル

どうも、ひきさんです。
今回はカミト君の過去編的なヤツです。
なんか違うと思っても忘れて。
頭を空っぽにしてなんとなくで読んで。
批判怖い((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル


どうも、カミトです。

今日は久しぶりにゆっくりできる。

クエストに行く予定もないので、1日中惰眠を貪るのだ!

その前に御祓(みそぎ)をしておこう。

気持ちよく寝るための努力は惜しまない。

 

「はふぅ……やっぱ我が家の風呂が一番落ち着く……」

 

アルカンの温泉も気持ちよかった。

むしろ、うちのものよりも気持ちいいだろう。

しかし、あの時はアクアと混浴だったこともあって落ち着かなかったのだ。

欲はあるが、この先も清いお付き合いをしていきたいので混浴はまたの機会にしよう。

 

「……そういや、あいつら元気かなぁ……?」

 

あいつら、というのはカズマたちのことでも、ギルドの知り合いのことでもない。

俺の前世の友達たちのことだ。

 

あれはいつだったかな……。

あぁそうだ、思い出した。

あれは、雨の降る青空の日のことだったな。

 

…………

……

 

「……なので、ここにオームの法則が適用されるわけだ。V=RIの公式に当てはめる……っと、ここの電圧は12Vになる。質問のある者はいるか?」

「「……」」

「はい」

「えーっと……あぁそうだ。()() ()()()

「質問というか…先生、最後の式なんですが3×4ではなく、3×6で答えは18Vになるんじゃないですか?」

「え、あーそうだな。すまんな天城、助かった」

「いえ」

クラス女子一同(((神人君、カッコいいーー!!)))

 

俺は天城 神人(あましろ かみと)

おおよそ普通の高校1年生だ。

好きなことはカードゲーム。

特に遊戯王。

好きなキャラクターは海馬社長。

嫌いなことは悪口と塩素の臭い。

運動は……まぁ多分普通。

勉強も普通だと思う。

 

俺の通っている高校は県立tピーーーーーーー

 

…………

 

県rピーーーーーーー

 

………………

 

kピーーーーーーー

 

なんだよこれ!?

何故!?なんで俺が学校の名前を言おうとすると自主規制入るの!?ねぇ!?

はぁ……まあいいや。

 

「帰りのホームルームを終わる。今日は掃除無いから用があってもなくてもとっとと行くよーに」

 

放課後、帰りのホームルームが終わり、なにをしようかと考えていると……

 

「ねぇ、神人君」

「ん?どうした、()

「神人君と話がしたいって女の子が来てるよ?」

「分かった、先帰っててくれ」

「僕も少し用事があるから待ってるよ」

「用事って、また企業のお誘いか?」

「うん、今日はauoってところらしいけど……」

「auoってあの携帯会社か?前よりショボいな。前はどっかの財閥の跡継ぎじゃなかったか?」

「そうだったね。けど僕は編集者になりたいからね、お断りするよ」

 

話をしている人物は碧井 藍(あおい らん)

口調や容姿でよく誤解されるが一応言っておく。

男だ。

もう一度言おう、男なのだ。

水泳の時見たらしっかりと()()()()()

150cmにも満たない低身長と、まるでツンデレヒロインのような声、一人称が僕だったりするせいか女子に誤解されるが男なのだ。

ついでに、こいつは頭がとてもいい。

なんか小さい時にフェルマーの最終定理がどうのとか言ってた。

今では、ジャンルを問わず様々な賞や特許を取得している。

天才にしては珍しく性格がマトモである。

 

「神人君、僕と話すより先にやることがあるんじゃない?」

「あぁそうだった。行ってくる」

 

なんだろうか?決闘(デュエル)なら大歓迎だが、ライディングデュエルは勘弁してほしい。自転車漕ぎながらデュエルは辛い。エクゾディアよろしく、カードがまってしまう。

 

「…あ、神人君……」

「君は?」

「あ…ごめんなさい、最部 遊莉(さいべ ゆうり)って言います。はじめまして」

「あぁ、よろしく遊莉さん」

「それで……あの、お話が…………」

「……」

すぅー……私と付き合って下さい!!

 

おお凄い勇気。

ここ教室だぞ?

まだ人も多い。

絶対に他の人に見られたり茶化されたりする。

見たところ気が少し弱いようだ。

ぶっちゃけ守ってあげたい。

……しかし

 

「…………ごめん」

「……!?…なんでか聞いてもいい?」

「俺と遊莉さんは今日初めて話した。遊莉さんは俺のことを噂や遠目で見聞きしてたようだけど。いや責めるつもりはない。責めるつもりはないけど、残念なことに君のことを俺は知らない。互いに理解しあわないまま付き合うのは君に失礼だと思うんだ」

 

お高く止まってるとか見下してるとか言われても仕方ないだろう。

殴られてもおかしくない。

 

「そう、ですか……ははは」

「だから、さ」

「…?」

「君さえ良ければでいいんだが、友達になってくれないか?俺は遊莉さんのことをもっと知りたい」

「いいん、ですか……?」

「勿論。むしろなってほしい」

「……よろしくお願いいたします。神人君」

「あぁよろしく、遊莉さん」

 

なんて言ってるが、ようは俺の我儘。

『ああしたい、こうしたくない』という子供の駄々に過ぎない。

弱みにつけ込んでることに他ならないので精神的に辛い。

 

<そしてこの少女、後にカズマに突き飛ばされ間接的な死因となるのだが、本作品とは関係はない>

 

「お疲れ様」

「藍か、用事は終わったのか」

「うん、そっちも終わったようだね」

「あぁ……」

「何人目なの?」

「今月だけで4人目、トータルで57人目だよ……はぁ」

「改めて聞くと凄い数字だね。フラれた人だけで2クラスぐらい作れるよ」

「もうやめて藍!俺のライフはもう0だ!」

 

藍と談笑(?)をしていると、雨が降ってきた。

空は明るく、太陽も見えているが雨が降っている。

 

「珍しいこともあるもんだな」

「あ!ごめん神人君!僕、洗濯もの干したままだった!先に帰るね!バイバイ!」

「おー、気を付けてなー」

 

いい忘れていたが、藍は1人暮らしなのだ。

賞金なんかで懐に余裕はあるらしいが、家政婦を雇おうとしない。

お陰で家事もできる。

つくづく女より女らしい。

 

「さてと、帰るか」

 

席を立つと、まだ教室に残っている女子が一斉に凝視してくる。

すげぇ気まずい。

居心地悪いので俺もさっさと帰ろう。

傘はあるが濡れるには濡れるのでな、キックエンドダッシュだ。

カードは友達!

 

「なんて……はぁ…自惚れて、た……時期が…はぁ………俺に…も、ありました……ふぅ」

 

流石に無理だ。

よく考えたら普段の片道45分だよ!?

単純に考えても走って20分以上かかるんだよ!?

そんな距離を全力ダッシュ+荷物+制服+傘でなんて、陸上の長距離選手でも無理だ。

 

「はひぃ……少しきゅーけー……」

 

止まってるとダメとか聞いたことがあるので、ゾンビや死刑囚のように体を引き擦るように歩く。

 

「俺はスーパーマサラ人でも、カモメ眉毛のお巡りさんでもないんだぞオイ……」

 

あんな人間やめたことできるか!(時間差のブーメラン)

この湿気が雨なのか汗なのかも分からない。

多分、汗だろう。

走っても濡れる度合いが変わらないと悟り、いつもより気持ち遅めに歩く。

10分ほど歩いたころだろうか。

60~70くらいのおっさんが道端でうずくまっていた。

イメージとしては傘の置かれた捨て猫の猫がおっさんに置き換わったような感じ。

 

「あの、大丈夫ですか?」

「あ…ぁ、すまないが私の鞄から携帯を出してくれないか?うぅ……」

「は、はい。これか、はいどうぞ」

「助かる。……もしもし、私だ。…あぁ、…あぁ、……あぁよろしく頼む……うぅぅ…」

「救急車呼びましょうか?」

「いや、大丈夫だ……君に礼がしたい。名前を教えてはくれないか?」

「はい、ピーーーー高校の天城 神人(あましろ かみと)です。その……貴方は?」

「名乗らずに失礼した。ふぅ……私は加成 義人(かなる よしひと)。これは私の連絡だ、困ったら連絡するといい」

「加成さん………って!もしかしてauoの!?」

「いかにも。auoグループ会長 加成 義人その人である」

「……もしかして、碧井 藍(あおい らん)のスカウトに?」

「彼を知っているのかね……って、元より彼は有名人だったな」

「はい、友人です」

 

凄いぐーぜん。

って言うか、このおっさん滅茶苦茶元気じゃん。

 

「そういえば、なんでうずくまっていたんですか?」

「私も良い年波でな。腰痛が酷くて動けなかったのだ。こうなると立つことはできるが、歩くことはかなわん」

「そうでしたか」

「して、君は私と話してみて何を考えた?」

「……と言うと?」

「自惚れるわけではないが、私もそれなりに世間に名前を知られているだろう。そんなテレビで見た人物の私と実際に会話してみて何を考えたのかを知りたいのだ」

「うーん……予想通りの人物…?」

「ほう、何故かね?」

「テレビで見た姿と実際の性格は多分違うんだろうなと、漠然と。藍を見ていて思ったので」

「ふふ……ははは!!そうだな、はははははっ!?…おぉ腰が……」

「あんな高笑いするからですよ。大丈夫ですか?立てます?」

「重ね重ねすまないな」

 

話していると、控えめのエンジン音とは裏腹に大きな車体の黒塗り高級車が来た。

もしかしなくても、このおっさんの迎えかなにかだろう。

よくこんなお世辞にも広くない道に入ってこれたな。

 

「それではな神人君。礼はいずれ必ず」

「えぇ、期待させてもらいます」

 

そして俺は今度こそ家に帰った。

その日の夜、auoの人が家に来た。

会長さんから、2カ月後に発売予定の最新機種の引換券と推薦状が贈られた。

不味いな、将来が半分決定してしまった。

書くなる上はあのおっさんから会長の座を奪うくらいのことをしなきゃだな。

 

そう心に刻み込んで床につく。

 

…………

……

 

……Zzz

……はっ!?

 

「……あー、寝てたか」

 

ラーのお陰か逆上せはしないものの、首と腰が痛い。

あの時のおっさんのように。

 

『おっさんと……一緒に、しないで……!』

 

すいません。

今度会ったときになんでもするから。

風呂場だと時間が分からんな。

出るか。

 

「カズマ、今なんどきや?」

「ぼったくりならお断りだ。もうすぐ日が沈む頃だよ」

「マジか……」

 

まさかおっさんとの夢で1日過ごすことになるとは。

せめて藍との夢にしてほしいものだ。

……推薦状、もったいないことしたな。

 

「ゆんゆんが探してたぞ。里からのお手紙がーとかって」

「「ゆんゆんが……お手紙!?」」

 

あまりの驚愕にめぐみんと俺は目がテンである。

話があるなら探しに行こう。

 

「悪い少し行ってくる。明日は俺が作るから」

「私も行きます!ゆんゆんに手紙なんて、世界が一巡してもあり得ません」

 

日の沈み行く朱色の街に、俺たち二人は繰り出した。

その行動が、またも面倒事を運んでくるのだった。




カミト「今回、かなり遅れたな。かーなーり!遅れたな!!」

いや、まじスンマセン。
ケリ姫のミクコラボやらにゃんこ大戦争のまどまぎコラボやらDuel Linksの5D.sやらで忙しく……

カミト「しるか!!何回も何回も遅れやがって!こんのくそアマがぁーーー!!『シューティングソニック』!!」

スターダストを……引きたかった……ガクッ

カミト「次回 二者択一
 デュエルスタンバイ!」


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16話 二者択一

どうも、ひきさんです。

お待たせしました。
再始動ひきさんじゃよ!

私の作品も口コミで広がりつつあるようですね~。
前回も沢山の応援を頂きました。
私は基本的にチョロいのでそーゆーコメントがくると調子乗ります。
さぁー書くぞーバリバリ

16話 二者択一
 どうぞ!


どうも、カミトです。

現在、めぐみんと二人でゆんゆんを捜索しています。

俺を探していたとのことだが……。

うーむ、考えても分からないので本人に直接聞くことにしよう。

 

「めぐみん、いたか?」

「いいえ、時間も遅いので宿に帰ったかもしれません」

「それならいいんだがな……」

 

一番心配なのは、俺をいつまでも探し続けることだ。

ゆんゆんは真面目なので、その日の内にしっかりと伝えようとするかもしれない。

友達付き合いも苦手なので、余計に心配だ。

知らないおっさんにホイホイ着いていってしまうかも……

うぅむ、とにかく心配だ。

 

「どうします?街は粗方探したはずですが」

「暗いとは言え上空からも探したからな、もしかしたら本当に宿に帰ったかも」

「はぁ……まったくあの子は……」

 

なにかあってからでは遅い。

魔の手にかかってしまう前に見つけたい。

しかし、そのゆんゆんの行方がわからなければどうにも……

 

「あ、カミトさん!探しましたよ!」

 

……

……

……よし。

 

「めぐみん!いたぞ押さえろ!!」

「神妙にしなさい!!」

「きゃーーー!?何!?何なのーーー!?」

「こちらカミト、対象を捕縛した。オーバー」

「こちらめぐみん、よくやった、オーバー」

「め、めぐみん!?なんで私を縛ってるの!?ちょ、ちょっと!?その縛り方はーーー!!」

 

ミッション達成、これより帰還する。

捕縛対象は厳重に保護せよ。

めぐみんがゆんゆんを亀甲縛りにしているが気にしない。

……しないったらしない。

 

「よし行くぞめぐみん!速きこと神の如く!!」

「サー、イエスサー!!」

 

………………

………

 

屋敷の扉をバタンと開け、同時に飛び込む。

ミッションオールクリアだ。

我が家にゆんゆんを連行し、まずやったこと。

それは……

 

「「すんませんしたぁ!!」」

 

謝罪だ。

とにかく頭を地に擦り付ける。

ジャパニーズDO⭐GE⭐ZAというやつだ。

いや、冷静になろう?

探してた相手がいきなり襲いかかってきて、そのまま縛り上げられて連行、建物に連れ込まれる。

うん、完全に強制性交です。

何やってるんだ俺……

ゆんゆんを魔の手にかからないようにするつもりが、自分で魔の手にかけてるじゃないか。

ヤンデレか?『他の人に盗られるくらいなら自分が……』的なヤンデレなのか?

 

「あ、あの……カミトさん?めぐみん?」

「気が済むまで謝罪なら幾らでもするし、なんでもする。絶交して欲しいなら二度と近づかない」

「そんな!絶交なんてしません!」

「そうか、ありがとう。しかしそれなら、何すれば許してもらえるんだ?なんでも言ってくれ」

「ちょ!?カミト!?」

なんでも……カミトさんと……なんでも……

「ゆ、ゆんゆん?」

 

深淵に呑まれた眼で何かボソボソと言っている。

内容を考えてるだけであってほしい。

ゆんゆん闇堕ち√とか考えたくないしあってほしくない。

どうでもいいけど、闇堕ちって紅魔族の感性に触れそうだ。

闇の炎がうんたらとか、バニッシュメントな眼とか。

 

「ほら、紅茶だ。少しは落ち着くだろう」

「あ、ありがとうございます。……よし決めました!」

「じゃあ、内容を聞かせてくれ」

「はい、私がカミトさんに要求すること……それは!」

「それは……?」

 

生唾を飲む。

この時、俺はこう思っていた。

(真面目なゆんゆんは無理難題や理不尽を吹っ掛けてきたりはしないだろう)、と……

とんでもない。

俺は、とんでもない思い違いをしていたのだった。

 

「それは!カミトさん、私と……」

 

さらにもう一拍、間を置く。

やがて、決心したように、瞳のように、頬を紅く染めて叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「子作りして下さい!!!!」

 

「「「「「ブフーーーーーー!!」」」」」

 

パーティーの5人中5人がダクネスの淹れた紅茶を噴き出した。

オレンジがかった霧は、どこかピンク色にも見える虹を架けた。

 

「ゆ!ゆゆゆゆゆ!」

 

混乱からか上手く言葉が発せず、TASみたいな声を出してしまう。

子作りって、()()子作り?

アッチの子作りですか?

地上最強の花嫁がヤるようなあれですか?

ともかく落ち着け、二進数を数えて落ち着くんだ。

0、1、10、11、100、101、110、111、1000………

……よし。

 

「ゆゆゆゆゆ、ゆんゆん?人のこと言えないけど一回落ち着こう?深呼吸して、な?」

「落ち着いてます!落ち着いた上でお願いします!私と子作りしてください!!」

「あ、あぁぁああぁあぁ………カミトガ…ユンユント、コックリ」

「アクアも落ち着け!それは降霊術だ!」

「ゆんゆんが子作り……そうですか、どうやらこの勝負は私の負けのようですね………成長、したんですね。ゆんゆん」

「そこ!感慨深そうにしんみりしない!」

「またいたいけな女の子をたぶらかしやがって!この鬼畜!」

「お前には言われたくないね!てか、またって何だまたって!!」

「……お前も大変だな」ハァハァ

「鼻息荒くしながら言われても説得力ねぇよ!?」

 

くそ!まともなのは俺だけか!

今度はゆんゆんがレイプ目になってるし。

何でもすると言った手前、やっぱりダメとは言えない。

にしても、ゆんゆんと子作りか……

 

あれ?気のせいかアクアの周りに半透明の狐が見える気がする。

 

嬉しくないわけではない。むしろ嬉しい。

 

あれ?狐の数、増えてない?それにスネちゃまボイスの唇とか浴衣の美少女が浮いてるような気もする。

 

しかし、アクアと交際をしている身なので、初めてくらいはアクアとしたい。

 

あ、狐と唇と浴衣の美少女と赤い腹巻き猫が薄くなってく。

 

けれど、ゆんゆんは勇気を出して言ってくれた。

 

あれ?アクアの動きが止まった。

 

このまま断れば、ゆんゆんの気持ちを踏みにじることになってしまうのでは?

 

やべ、アクアと狐と唇と浴衣の美少女と赤い腹巻き猫と屋敷の人形が親の仇を見る目で睨んできた。

 

ゆんゆんの今後を考えると、やはり子作りをするべきなのだろうか?

 

目の前でこっち睨まないで、怖い。

 

うむ、やはり……

 

「ゆんゆん、こ「ストーーーーーップーー!」」

 

ここでアクアが待ったをかけた。

青い姿の中にある赤く充血した目でゆんゆんを睨む。

目の下に線ができているような気もする。

 

「カミトとの子作りはみとめられない!神はこれを望んでいないわ!!」

「お互いに合意の上なら、神様の介入する余地なんてありません!」

 

アクアの宗教論をゆんゆんのド正論がぶち壊した。

ごめんよアクア。

カズマ、先に行って(大人の階段上)る。

アクアはテーブルクロスを噛んで悔しがる。

そのアクアとゆんゆんを一瞥してめぐみんは指摘した。

 

「温泉に行ってから随分と強引になりましたね。誰に唆されたのです?」

「……え?」

「あなた、普段なら何でもするって言われても遠慮するじゃないですか。それに、アクアが言いがかりを付けてきたときも反論して、いつからそんなに気が強くなったんですか?」

……」

 

確かに妙だ。

ゆんゆん何かにつけて自分を卑下し遠慮するような謙虚な性格だ。

しかし今のゆんゆんは、何というか、()()()()に近い。

なにがなんでも目的を達する(意味深じゃないよ)『漆黒の意思』のような、そんな感じ。

 

「そう……ですね。皆さんには言ったほうがいいかもしれません」

「教えてくれ、ゆんゆん。その原因を」

 

 

始まりは1通の手紙だった。

現紅魔族の長であるゆんゆんの親とは、手紙で定期的にやり取りをしているらしい。

ところが今日、いつもの手紙と一緒にもう一枚、手紙が入っていた。

その内容は要約すると、こうだった。

 

『引っ込み思案な少女、ゆんゆんの前に、最高にカッコよくて強い少し女っタラシな男が現れる。その男と結ばれ、儲けた子供は強く健やかに育ち、神の如き力を以て魔王を打ち倒す』

 

……と。

 

「それで、当てはまる人物が俺だったと」

「なんだか偶然とは思えませんね」

「なぁ、その手紙は今持ってるか?」

「あ、はい。どうぞ」

 

皆一斉に手紙を覗く。

……うん、大方聞いたとおりだ。

ゆんゆんの言っていることに偽りは無い。

アクアとカズマは物凄い形相で手紙とにらめっこしてる。

もう一周回って笑えてくる。

 

「納得してもらえましたか?」

「あぁ、俺からはもうない。じゃあみんな、イってくる」

「まさか仲間と学友に同時に出し抜かれるなんて……」

「は、はは、破廉恥なけしからん!」ハァハァ

 

この2人は聞き流して大丈夫だろう。

さて、子供の名前はどうしようか。

俺はゆんゆんに任せるが紅魔族的ネーミングだった場合のことも踏まえて一応考えておこう。

男の子なら遊支(ゆうし)、女の子ならクロメかな。

 

「あ、あぁぁああぁあぁ……あぅ………」

 

アクアは力なく膝を付き、例の手紙がハラリと落ちた。

 

「裏も書いてあったのですね。えーと、『送料がもったいないので族長の手紙と一緒に送ってもらいました。新作の『ゆんゆんの神・魔界大冒険』はどうですか?感想待ってます。

紅魔族一の作家 あるえ』……ですって」

「………」

「………」

「………」

 

「イヨッッシャラァァアーーーーー!!!」

「「ええぇえぇぇーーーーーーッ!!!」」

 

え!?つまり、どういうこと!?

この手紙は創作物?

偶然の一致だっただけ?

そんな理由で俺とゆんゆんは初めてを捧げようと?

ハハハ、オモシロイジョウダンダナ。

 

「つまりはゆんゆんの勘違い、だったわけですね」

「うぅぅ………」

 

ゆんゆんは顔を真っ赤にして俯く。

………ヤバい、俺もゆんゆん勘違いを真に受けてノリノリ、とまではいかなくても肯定的だったわけだ。

 

「いっそ殺してくれ………」

「その時は私が生き返らせてあげるわよカミト!!」

 

勘違いとわかり上機嫌になったアクアは、俺を逃がしてはくれないようだ。

立ち直り速いな、調子のいいとこも魅力的なのだが。

 

ともかく、この話はお互いのメンタルの為にもうやむやにすることにした。

いたたまれなくなった俺たちを憐れんだのか、カズマとダクネスはそっと肩に手を乗せた。

ちなみに、アクアとめぐみんは死ぬほど笑っていたのでちょっぴり静かにしてもらいました。(黙らせた?人聞きが悪いな)

しかし、謎が謎を呼ぶように、面倒事も面倒を呼びよせるのだった。

 

……作者ふくめて幸が薄いと言わざるを得ない。




時間できたので筆を執ったら筆がスラスラ走る走る。
これだから執筆は辞められないぜ!!
少し止まってた分、いつもよりネタマシマシで書けた気がします。
まぁ、それに比例してキャラがぶれることも多くなるわけですが……

とにかく!
私ことひきさん、ここに完・全・復・活ッ!!!!

あ、最後に1つだけ。
GOD EATER3楽しm〈3連打ァ!! 

次回 レッドアイズ・インサイト
 デュエルスタンバイ!


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17話 レッドアイズ・インサイト

どうも、ひきさんです。

更新再開したは良いものの、家のルーターの工事してなくてデータ通信料が……!
それに、何故かやたらと新ネタが思いつくので新しいのに手を出そうか悶々と悩んだり……!

ま、それはともかく!
前回まではオリジナルストーリーでしたが、今回からはアニメ未放送の内容となっています。
ネタバレを含むのでご注意下さい。

………ブラウザバックは済みました?

それでは!
17話 レッドアイズ・インサイト
 どうぞ!!


どうも、カミトです。

我が家にて、俺はいまアクアの準備の手伝いをしている。

 

先日、ゆんゆんは送られた手紙の誤解から「俺と子作りをしてほしい!!」とみんなの前で叫んでしまった。

一線を越えそうになるも、誤解であったことが発覚。

その原因となった送り主の両親とあるえに一言申しに里帰りするそうだ。

ワープ屋や馬車に頼むのなら安心して送り出せるのだが、優秀であってもそこは駆け出し、金欠なので気軽に利用できないらしい。

お金は出す、と言いはしたのだが遠慮されてしまった。

 

ゆんゆんは()()()()()があったのもあり、話が続かずさっさと出ていってしまった。

お互い、気恥ずかしさから顔を直視できなかった。

さながら初々しいカップルである。

 

「ちょっと、今あの女のことを考えてた気配がしたんですけど」

「そりゃね、ゆんゆんを追いかけるんだ。考えもする」

「むぅ……」

 

頬を膨らませて不機嫌になるが、その顔がまた可愛らしくてこちらは頬が緩む。

すると頬は萎み、俯いて準備を再開した。

 

話を戻そう。

ゆんゆんは徒歩で里帰りするらしい。

心配になった俺たちはゆんゆんを追いかけることにした。

今朝出発したらしいので俺たちも今日中に出発しないと追い付かないかもしれない。

アルカンの時のように、俺がオシリスになって可能な限り早急に合流しなければ。

 

「おーい、こっちは準備できたぞー」

「やっぱりカミトはアクアを手伝ってたんですね。予想通りというか……」

「私も準備ができた。何か手伝うことはあるか?」

「大丈夫だ。もともと俺の我儘だし、それにもう終わる。……アクア、お酒はあっちで買ってあげるから置いてきなさい」

「……はい。よっし!これで終わりね!!」

 

アクアのやたらと多い、具体的には一切れのパンとナイフとランプをカバンに詰め込んだときの2~3倍ぐらいの荷支度が終わった。

ピーーーータの人々もビックリ。

 

家を、ひいては街を後にした俺たちはゆんゆんを追いかけ初めた。

 

………

………………

 

~アクセル郊外~

 

アクア「あ"あ"あ"あ"~~……」

カズマ「あ"あ"あ"あ"~~……」

めぐみん「あ"あ"あ"あ"~~……」

ダクネス「あ"あ"あ"あ"~~ハァハァ」

 

………

………

 

『おい』

 

「「「「あ"あ"あ"あ"~~……(ハァハァ)」」」」

 

綺麗なコーラスが鳴り響く。

 

………

………

 

『おい!』

 

「「「「あひゅう~~」」」」

 

………。

 

こいつら!!

ちゃっかり電気マッサージしてやがる!?

確かに『電気流れてるからマッサージしててもいい』とは言ったけども!!

 

…言ったけども!!

 

『おい!!お前ら探してるんだろうな!?』

 

「らいろーるれるろー、ひっかいはってはしゅよ~」

翻訳:(大丈夫ですよー、しっかり見張ってますよ~)

 

 

「ひんはいするなー、ゆんゆんーどこらー?」

翻訳:(心配するなー、ゆんゆんーどこだー?)

 

「ハァ……ハァ……あっ………ッ!」

翻訳不能

 

ダメだこいつらはやくなんとかしないと。

ロクに探さないなら落とすぞコラ。

…ん?

後ろから、砂の壁が近づいてくる。

砂嵐か?

いや、砂埃と一緒に大量の気配が近づいてくる。

よく見えないが………二足歩行の豚?

飛行艇には乗ってないようだけども。

さながら俺はカーチスかな?

 

『おい、後方に大量の(ポルコ)だ。あれは何だ?』

「「「「フヒィーーン………」」」」

『……フン!』

 

頭に来たので、胴体を縦に波打つようにしならせる。

全員、突然空中に放り出されて混乱している様子。

 

「きゃぁ!って、あれはオークじゃないですーーーガハッ!

「なんだ敵しゅーーーう"っ!

『そう言っただろうが!!』

どわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーー……

 

「あ」

「あ」

「あ」

『……あ』

 

カズマが墜ちた。

 

……。

 

あっ!?

 

『カズマぁぁぁッ!!くっ、誰がこんな酷いことを!』

 

カズマが豚の群れの近くに落ちた。

お前だよっ!!って聞こえたきがするが気のせいだ。

もしくは木の精だ。

って!こんな場合じゃねぇ!!

 

「まずいです!このままだと、カズマがオークにヤり倒されますよ!!」

「カミト!この世界のオークはね!メスしかいないの!!」

『だからか!?猫耳やら犬耳やら狐耳やらエルフ耳やらの混血がおおいのは!』

 

さしずめ、オスは産まれてもすぐ頂かれて腹上死するとかいうオチだろ。

むしろメスしかいなくて、よくあんだけオークの遺伝子残ってるな。

体の9割オークじゃないか。

自分があの立場だったら……と思うと、冷や汗と寒気が止まらない。

 

「カズマー、腹上死(ヤりし)ぬのは男のロマンって言うし、このままハーレムを築いて達者で暮らしなさーい」

「フザケンナー!アッマッテ、アッーーーー!!オタスケー!!」

 

仕方ない。

助けてやろう。

そうだな……

 

「……どうします?」

『助けておこう。流石に可哀想になってきた』

 

降下してみんなを下ろしたのはいいが……どうしよう。

カズマは、こちらに向かって全力疾走している。

死に物狂いとさえ言える。

カズマを乗せて逃げようと思ったが、オークとの距離が近すぎる。

広範囲攻撃だと、めぐみんやアクアを巻き込みかねな……あ。

 

『ダクネス!キャベツだ!キャベツを思い出せ!あれはキャベツだ!』

「キャベツ?…あぁ、わかった。任せろ!!」

 

どうやら意図が伝わったらしい。

今となっては懐かしいものだ。

もう一年近く前になるのか。(リアルで)

まぁ、こういう事だ。

 

『カズマー、ここら一帯焼くから、そのーなんだ、頑張れ!!』

 

『翼神竜化』

『ゴッド・ブレイズ・キャノン』

 

「ちょっ!待て待て待て!!!」

 

太陽神の炎が、地上の悉くを焼く。

 

神の爆炎がオークの肉と精神を焼き尽くし、焼豚にしていく。

かろうじて生き残ったオークも、立ち上がるので精一杯のようだ。

神の炎は消えない。

神自ら消さない限り、引火したら最後、苦しみ悶えて死ぬ。

なんまんだぶ、なんまんだぶ。

 

最早、全滅も時間の問題となった。

 

「ふぅ……って、臭ッ!」

 

オークの焼けた臭いが漂っている。

鼻がもげるとかの次元ではない、兵器や拷問に分類できるレベルで臭い。

もの○け姫の凄惨さを、この身をもって思い知った。

……今更ながら、やり過ぎた。

オークには悪いことをした。

 

そういや、ダクネスの方は?

良かった、無事どころかむしろプラスだ。

ダクネスには、炎からめぐみんとアクアを護ってもらった。

キャベツで伝わる辺り、割りと印象的だったのかも。

 

「くっさ!エンガチョ!エンガチョね!」

「獣の焼けた臭い……」

オーク……ろうそく……酷い臭い……」ハァハァ

 

……うん、無事だね!(虚空を眺めて)

さて、ダクネスよりカズマのほうが心配だ。

一度死んでるわけだし、もう一回生き返るとか出来るのだろうか?

今度アクアに聞いてみよう。

それは置いといて、今はカズマだ。

 

「カズマさーん、転生ハーレム系主人公のカズマさーん、神様()がお呼びですよー」

「どんな呼び掛け方だよ!!つーか、その『ハーレム』は何を指してるのか言ってみろこらああああ!!」

「それは勿論、オー……」

「よぉしそこを動くな!身ぐるみひんむいてやる!!」

 

カズマは無事だったようだ。

良かった良かった。

 

ん?

何か忘れてるような気が……

 

「カミトさん!?それにめぐみん!皆さんまで!?どうしてここに?」

 

……ゆんゆん忘れてた。

当初の目的を忘れてるとは。

ま、とにかくだ、目的の半分は達成だ。

 

「ゆんゆんが心配でくっついて来たんだ!里まで護衛していくつもりだから、止められてもついてく」

「そんな……私のために、いいんですか?」

「オールオッケー!そのために来たんだ」

 

ゆんゆんとの合流はできた。

しかし、嫌な予感がする。

具体的には、また面倒な事が起きそうな。




2018/12/08 大幅に内容を変更しました。

以前の内容のほうがいいという方、すまない。
かなり変えたので、矛盾大量発生警報が発令されています。

とにかく!
 次回 魔の契約

デュエルスタンバイ!


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18話 魔の契約

クロウが好きでBFドラゴン欲しいのに、ラスト1パックまで出てこないという発掘作業……。
あれ、BFドラゴンは恐竜族だった!?
『化石発掘』でサーチできたっけな……。

BF、BFって言っても『バトルフィールド』じゃないからね。
ブラックフェザーだからね。
と、遊戯王を知らない読者にも優しい私だ!

〈読者に優しい作者は、そもそも1ヶ月もサボったりしねぇよ!
〈もっと私たちの出番増やせー!
〈〈そーだそーだー!

ホントごめんなさい……。
あなた方の使いどころ難しいの。

〈なら書くなよ!読者へのゴマすりキャラなんて!

えぇい!傷口に刃をたてるでないわ!

はい18話どうぞー!

〈〈〈待てー!


どうも、カミトです。

 

現在、紅魔の里に向かうべく歩みを進めている。

 

歩くぞ、歩くぞー。

どんどん行くぞー。

 

凸凹道も、ガタガタ橋も無く、あるのは雑草と木ばかり。

分かれ道どころか、そもそも道がない。

 

(まじめにふまじめいーっちょーくせーん♪)

 

……言い出しっぺの俺が言えたことじゃないけど、そろそろ危ないから止めよ?

後ろには猪……ではなく、どっちかといえば雛鳥のように二匹ほど着いてくるのだ。

癒されるわー、いやほんと。

 

「お二人さん?」

「「はい!なんですか先生!」」

「うーわ………カミト、そんなプレイが好みーーー」

「違うから」

「そうなんですかカミトさん!」

「なーんだカミト、そーゆーのが好きなら言ってくれればいいのに~」

「違うから!!」

 

めぐみんめ……。

カミト特製サウナか、カミト特製ツボマッサージか、カミト特製電気マッサージをご馳走してやろう。

うふふふ……ふふふ……。

神の極上マッサージに酔いしれるといいさ。

 

「な、なにかイヤ~な予感がします……。具体的にはマッサージされそうな予感が……」

「うふふふ、ご期待下さいな……」

「ひぃいい~~!!」

 

(お前は先生というよりは、保護者だな)

 

止めて、結構気にしてるから。

アクアと恋人っぽいことあんまり出来てなくて気にしてるから。

コメントで『保護者っぽい』って言われて気にしてるから。

 

俺だってなぁ!

アクアと手を繋いでデートしたり、海水浴しに海行ったり、その……あんなことやこんなことも出来たらいいなって思うんだぞぉ!!

 

うわぁん!!

 

(ほらほら、泣かない泣かないの。)

(……よしよし)

 

……ぐすん。

 

………あれ?

なんで泣いてたっけ?

そもそも何してたっけ?

たしか、フランシスコ・ザビーーー

 

「なぁ、紅魔の里まではあとどのくらいなんだ?」

 

切られた。

 

「そうですね……あと30分くらいでしょうか」

「30分……ねぇねぇ、カミト」

「ん、どうした?」

「そのー、なんと言いますかー、足が疲れたのでもうひとっ飛びして欲しいと言いますかー……ダメ?」

「そうだな……」

 

たしかに、ゆんゆんを含む俺たちは2時間以上は歩いた。

その上、数は少ないとはいえモンスターにも遭遇した。

休憩を挟んだとはいえ、そろそろ限界も近いだろう。

特に、朝から歩きづめのゆんゆんは後衛職ということもあってか息が上がっている。

 

「……うん、みんな歩き疲れただろうしな。もう少しだけ頑張るとしますかね!」

 

『翼神竜化』

 

疲れた筋肉には、マッサージよりも保温のほうが良さそうだと思いラーをチョイス。

……疲労回復肩こり腰痛寝違え関節痛冷え性をまるっと解決できる俺。

老後はマッサージ師だな、こりゃ。

 

「ほらほら、ゆんゆんも遠慮しないで早く乗ってください。発車できませんよ」

「う、うん……カミトさんに……発射…

『おーい、ゆんゆんー?帰ってきてー』

 

とにかく、全員乗ったな。

負担を少なくするために、少しゆっくり飛ぼう。

というか、俺も疲れた。

え、変身してるほうが疲れるって?

あぁ、なんかぶっ倒れてから変身しても疲れなくなったよ。

フシギダネ。

 

「こうかはいまひとつぅ~……」

「私たち、やっぱり相性バツグンねぇ~……」

『その場合、俺がやられちゃうから。というか、俺、神属性だから。全部の相性等倍だから』

「モノが違うだろぉ~……」

 

まぁ、たしかに。

遊戯王じゃあ炎属性が水属性を倒すこともザラだし。

そもそも今は属性相性なんて存在しないし。

 

『人間(?)サウナはいかがですか?』

「快適ですぅ~……」

「あったかぁ~……」

「う~む、少し物足りない気も……」

『これ以上に温度上げると燃えるぞ!?』

 

ただでさえ温度調節が難しいのだ。

上げるだけなら、文字通りどこまでも上げられるんだが……。

ラーは、熱を操るというよりも太陽を操る神。

これでもか~な~り加減しているのだ。

太陽って、表面温度6000℃だよ?

たった1%でやっと60℃まで下がるのだ。

2%に上げただけで120℃だ。

 

(恋はいつでも……サンシャイン…!!)

 

限りなく降り注ぐって意味かな?

 

ユーワッショー!!

恋が太陽()から落ちてくる~♪

 

ん?

なんか人里のようなものが見えてきた。

あれだろうか?

 

『おい、ゆんゆーーー』

「止まれ、そこのワイバーン」

「我ら里守(さとも)りの守護者(ガーディアン)。里に害なす者を誅ずる者」

「退けば見逃そう。立ち去れ」

『……は?』

 

里守り?

……そういえば忘れていたが、紅魔族の大人は皆アークウィザードになれるというエリート一族。

魔王軍からもよく狙われることだろう。

見張りがいてもなんら不思議ではない。

 

「さぁ、去れ」

『いや、俺たちはーーー』

「退かぬか、ならば死ねぃ!」

「我々の糧となるがいい!」

 

あー、やっぱり話聞かない。

本当にめぐみんはノーマルだったのか……。

こんなのばっかりだから、ゆんゆんも友達少ないのか、アブノーマル扱いされて。

 

……さて、どうしよう?

 

ニア ぶち壊し抜ける

   切り抜ける

 

『ゴッドブレイズキャノン』

 

「ふっ……我にそんなものは効かア"ア"ァ"ァ"ーーーーー!!」

「同士ーーーー!クソッ、よくも我が同士を!」

「ただのワイバーンじゃないな……。こいつはたっぷり経験値持ってそうだぜ!!」

 

『天空竜化』

『召雷弾』

 

「ぐおおぉぉーーーーー!!」

「あばばばば、あっ………」

 

あっ!?

もしかして、やり過ぎた!?

あらら、片方失禁してら。

最初のヤツも、すぐに鎮火はしたけど結構な火傷かも。

 

「ぐふっ…き、今日のところは見逃してやろう。おい起きろ!撤退だ!撤退するぞ!」

「ぶくぶくぶく……」

「あ……あつい……やける」

 

電気はともかく、炎はやり過ぎたかも。

すまなかったな、紅魔族の男A。

さて、里守りがいるってことは……。

 

『おい、そろそろ着いたらしいぞ』

「「「「「はにゅううぅ~……」」」」」

『……解除』

 

こいつら、襲撃されてもマッサージを止めない。

なんなら変身しても止めない。

ならどうする?

可哀想だが、取り上げるしかないのだ。

過度な電流や保温は体に良くない。

 

カズマ「ぐほっ」

めぐみん「ふぅ」

アクア「あうっ」

ダクネス「あぁ♥️」

ゆんゆん「おっとと」

 

紅魔族組はなんとなく察していたのか両足でしっかり着地。

ダメ人間組は腰から落ちた。

ダクネス、お前は受け身とれるだろ!

 

転んだメンバーを引っ張り上げながら、転んでないメンバーに問いかける。

 

「ここで、着いた……のか?」

「えぇ、間違いないです」

「先程の声は……ねぇめぐみん」

「恐らくそうでしょう……。はぁ、まだいたのですか」

「どういうことだ?」

「彼らは、『対魔王軍遊撃部隊(レッドアイ・デッドスレイヤー)』という部隊………の名を騙るニート集団です」

「えぇ……」

 

ニート集団かよ。

しかも、「まだ」ってことはめぐみんが里を出る前からいたってことだろ?

大層な名前の割に、実態は自宅警備員って……。

感心して損した。

曰く、「紅魔族はみんなアークウィザードなので、ぶっちゃけ部隊とか組まなくても自分の身は守れる」とのこと。

話が終わると、ゆんゆんとめぐみんは、手続きをしにすこし席を外した。

 

にしても、紅魔の里かぁ……。

さっきみたいなニートばっかじゃなければいいけど、紅魔族はみんな変わってるっていうし……いろいろと心配だ。

アルカンよりはマシだと思いたい。

っと、打ち合わせしていたようなタイミングで2人がもどった。

遠目からでも分かる上機嫌そうな顔と、頭の上で作った◯からして大丈夫だったのだろう。

 

「もどりましたよ。問題無いようです」

「そうか、ありがとうな」

「いえいえ。改めまして、ようこそ『紅魔の里』へ」

「なんだかんだで見るところは結構あるので、少し周りましょうか」

 

 

…………

……

 

「これは御神体とそれを祀る祠です」

「お、おう!御神体…ね……御神体……。なぁ、カズマ……

言うな。あれこそが紛うことなき御神体であるぞ

「いや、あれはーーー」

「御神体だ」( ´,_ゝ`)

 

……忘れていた。

カズマの生前はアレだったことを。

そうだね、カズマたちからすれば()()()()()は神にも等しいのかもね。

()()()()()()()()は。

 

「祠って……これ、冷蔵庫だよな?独り暮らしとかでちょうどいいサイズの」

「そうだな、帰ったらもう一回り大きいのを作ってみるか」

「エネルギーは俺がなんとかしよう。魔力だと不安定だろうしな」

 

…………

……

 

「これは『選ばれし者のみ引き抜くことのできる聖剣』です……って!ちょっ、アクアさん!?」

「ほっ……と、抜けたわよ~」

「へぇー、いい剣だな。装飾も美しいし気に入った」

「カミトさんまで!?」

 

いいな……これ欲しい。

代わりに『天空竜剣』を刺しとこう。

こいつも、ある意味では神剣と言えるし間違いではないだろ。

 

「おおっ!なんだこりゃあ!?」

「どうかしましたか?というか、どちら様です?」

「俺はこの剣の製作者だ。どうしたもこうしたもねぇよ!この剣の切れ味、それに込められてる魔力……俺のモンとは比べ物にならねぇほど桁違いだよ!」

「代用品として寄付しますけど、いかがでしょう?」

「本当か!いやしかし……複雑……」

 

今でこそ力を込めているので本物の聖剣クラスではあるものの、元を辿れば安物のナマクラだ。

そんなもので良ければ、いくらでも力を込めるのだが。

ともかく、俺はなんとしてもこの剣を手に入れたい。

 

「分かった!この紅魔族随一の刀鍛冶の名の元に、その聖剣を託そう。大事にしてくれや」

「はい、ありがとーーー『パキィー……ン』

 

反響が木霊する。

音叉の如く波打つ金属音は、1つの終わりを意味していた。

人がいつか死ぬように、Friend(相棒)にもend(終わり)は訪れるのだ。

まぁ、長ったらしく言ってきたが用はこういうことだ。

 

「「「「折れたーーーー!!?!」」」」」

 

「どういうこと!?なぜ!?ナズェオナクナリニナッタンディス!?」

「落ち着けカミト!ここにアンデッドはいない!」

「そうだ!まだ慌てるような時間じゃないぞカミト!まだ治るだろう!!」

ウゾダドンドコドーーーン!!!

 

結局、金属接着剤でくっ付けて良しとしました。…………グスン

ちなみに折れた原因は、耐久性を試していたアクアがゴッドブローを放ったことだった。




えー突然ですが、この場を借りてご報告いたします。


この度、前々から仲良くさせていただいている『遊霧 粋蓮』さんのご作品、『魔導ナル剣士ノ物語』とコラボさせていただけることになりました!!

実を言うと、コラボの話自体は夏期の時点でも出てきていたのですが、『お互いにコラボできそうな作品、及び設定が無い』ということで半ばお蔵入りになっていました。
しかし、粋蓮さんが『魔導ナル剣士ノ物語ならコラボできるかも』と提案していただいて、再びコラボの話が持ち上がりました。

私自身、まだ1年も活動していない若輩者ですが、「処女作であるこの作品でコラボを出来る」ということにとても感動しております。
また、それと同時に、粋蓮さんの顔に泥を塗ってしまわないか、私のせいでキャラを歪めてしまわないか、というような不安も少なからずあります。

何卒、痛い子を見るような目で見守ってやってください。

そして、今回のコラボを提案していただいた『遊霧 粋蓮』さん。
本当にありがとうございます!!


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19話 予想GUY

どうも、ひきさんです!

たいっ……へん長らくお待たせいたしました、やっとこさ本編再開でございますよ!
間が空きすぎて自分の作品を一から読み直す羞ち……んんっ、もとい事態に成りましたよ、えぇ。

先日、当作品ひいては私の初投稿からはや一年が経ちました。
この一年、とっても大変でした……およよ。
FGOにドはまりしたり、台風で家の屋根吹っ飛んだり、ノロウイルスで死にかけたり、半分失踪したり、新作に手を出しすぎて他をほっポリ出したり……
(えっ、最初はともかく後半は自分のせいだろって?おっしゃる通りです……)
一年目にして他作品とのコラボもさせていただいて、ぶっちゃけバチが当たったんじゃね?と内心思っていたり。
迷走した時は読者様に励ましも貰えました。
その言葉のお陰で、この一年間作品を続けられたのだと、我ながら勝手に解釈しているしだいです。

一周年記念……にしては久しぶりの本編、かつ平常運航だけれども、よろしければ今後も当作品をよろしくお願いいたします!!

それでは、
19話 予想GUY
 どうぞ!


どうも、カミトです。

現在、紅魔の里に来ています。

(この挨拶、なんだかとても久しぶりな気がする?ほぼ毎回やってるはずなんだがな……)

今日は色々と大変な1日だ。

 

説明しよう!

俺は高校生転生者、天城 神人(あましろ かみと)

女神様で恋人のアクアとゆんゆんを追って淫らな豚共の怪しげな取り引き現場(ヒント・カズマ)を目撃した。

取り引きを見るのに夢中になっていた俺は、(事が終わった後に)背後から近付いて来るもう一人の仲間に気付かなかった。

その人物は俺たちの追っていたゆんゆんだと分かり、その後なんやかんやで紅魔の里に着きました。

折角来たからと観光していたら、良さげな剣を譲って貰えることに。

……なったのだが、アクアが耐久テストと称してぶん殴ったら折れたのでアール。

山ちゃ○、ご苦労様です。

現場からは以上です。

 

「や~っと完全にくっついたか……」

 

さっき、罪滅ぼしとしてアクアに金属接着剤での応急処置をやらせた。

やたらと無駄に手先が器用なアクア、見てくれだけはものの数秒で戻った。

心配は無用だとは思うが、一応しっかり乾いて接着するまで数分間見守っていた。

まぁ、見守るといっても、ようは説教&お喋りしながら時間を潰していただけだが。

 

「アクア」

「は、はい……」

「いい?剣は、横からぶん殴ったら、ダメ!わかった?」

「はい、わかりました……」

 

アクアを正座させ、叱っておく。

悪い事をしたらちゃんと叱ってやらないと、将来ロクでもない大人になってしまう。

飴と鞭は大事だって、ばっちゃが言ってた。

 

「しかし、さてどうしたものかね。折ったお詫びに俺の剣を上げた訳だけども……」

「何か問題でも?」

「二刀流できない」

「そこですか!?」

 

そこなのだよ、ゆんゆん。

合体ロボット、変身、巨大キャノン、パイルバンカー、鎌、そして二刀流。

これこそ、全日本男子のロマンである!

カッコよさの重要度は性能にも勝るのだ!

これぞ我ら、Cool Japan!!

 

「うむ、分かるぞカミト。両手に相棒を握り戦地を駆ける、その姿を想像するだけで昂るのが男ってもんだ」

「その通りだ!その通りだ。でもなぁ……今更、折れたから返してとは言えないし。しばらくは『これ』の一刀流だな」

 

二刀の内の一振り、神(美少女)より授かりし『創世の剣』。

しかし、これは言うなれば鍵なのだ。

邪神の力を扱うための鍵。

楔とも言える。

肘とか膝とかに当たると悶絶なんてレベルでは済まない程に硬い代物であるが、それでも形を持つ物だ。

形あるものは、いつか必ず壊れる。

それが生物であれ、物であれ、な。

二刀流には、なるべく負担が1つに集まらないようにする為でもある。

え、そんな大事な物を剣にするなって?

それこそ、ロマンだろ。

 

「カッコよさ云々の点は共感できます。私の爆裂魔法は、カッコよさを追い求めた究極形ですからね!」

「ネタ魔法だもんね……」

「ゆんゆん、いまここでブッパしてもいいんですよ?」

「危ないからやめい」

「あうっ」

 

コツンとめぐみんの頭にチョップする。

小鳥遊さんと同じような声がしたような気もするが、多分気のせいだろう。

似てる所は多いけどね。

眼帯とか、声とか、中二病とか、身長とか、中二病とか、中二病とか。

「天才である私の頭が悪くなったらどうしてくれるんですか!」と叫ぶ声なんて聞こえない。

 

「はぁ……まぁ、ぶっちゃけた話をすれば、カミトは丸腰だろうが変身できるので問題は無いですよね。羨ましいです。私も変身してドラゴンになりたいです。消滅の力を司りたいです」

「一回の変身で爆裂魔法クラスの魔力ぶっ飛ぶけど、大丈夫?」

「……本当に人間なのかお前?」

「それは女神であるこの私が保証するわ!カミトは紛うことなき純粋な人間よ!」

「なおのことタチが悪いわ!」

 

まったく、失礼しちゃうぜ。

ただ別世界の神の力が使えて、恋人が女神様で、友達に幼稚園でフェルマーの最終定理を解ける奴がいて、弟が遺伝子レベルで女の子な男の娘なだけの、いたって平々凡々な人間なのに。

そんな俺を人外扱いなんて。

 

「あ、そうだ、そういえば。ゆんゆん、親御さんに会うとか言ってたなかったっけ?」

「あ、そうでした。うぅ……えとー……そのー……

「ん?」

 

ゆんゆんは顔を赤らめてモジモジしている。

もしかしてだけど、俺たちを家に誘おうとしているのか?

でも恥ずかしくてなかなか言い出せない、って感じ。

こういう引っ込み思案なタイプには、こちらからやりたいことを提案してやるといいのだと思う。

間違ってたら「こいつ何言ってんの?」と俺のメンタルにダメージが入るだけ。

大丈夫だ、問題ない。

 

「あのさ、良ければ一緒に行ってもいいかな?なんて」

「カミトさん……もちろんです!ぜひ!」

 

良かった、当たり。

何とかダメージは回避できたようだ。

良かった良かった。

チラリとアクアの方を向いてみる。

不本意ながら泣かせてしまう予感がしたので、咄嗟に慰めようと本能的に体が動いた。

 

「……」

「珍しいな、アクアがこんな状況で大人しいなんて。てっきり全力で泣いて抗議すると思ったのだが」

「ふっふっふっ……これが正妻の余裕ってヤツよ!」

(((そのうち勝手に自滅するな、これは)))

 

……

…………

 

「うぅ……モジモジ」

「ふぅ……」

「はぁ……」

「はひゅう~……」

「なんか疲れた……」

 

感覚的には魔王軍幹部より疲れたかも。

それほど凄まじい対談でしたよ。

いや、ゆんゆんの親御さんも族長というだけあって(紅魔族の中では)マトモで話の分かる人格者だった。

時折会話に紛れ込んでくる紅魔節に目を瞑れば、普通に娘想いで聡明ないい人だ。

や、それを受け流しきれなかったから疲れたんだけれども。

ゆんゆんが結婚の許しを貰いに帰ったと勘違いして「娘が欲しくば私の屍を越えてゆけ!!」とか言い出す始末。

奥さんの方は「今日は赤飯かしら?」とか呟いてたし。

二人とも違う意味で自重しろ下さい。

ゆんゆんはゆんゆんで満更でもなさそうな表情で赤面してモジモジしていたのも、話が拗れた原因の一つだと思う。

 

「あのジジイ……マジブチコロス……」

「やめんか!」

 

族長を殺したなんて知れたら、それこそ人類の敵認定まった無し。

いわゆるお尋ね者になってしまう。

徒然なるままに生きるには、ちっとばかし面倒になってしまうのだ。

 

「そうですよ。あちらから仕掛けてきたとはいえ、大怪我させてしまいましたからね。それも、最強部族の遊撃部隊に」

「おっさんが言ってた『若者を返り討ちにしたドラゴン』って、絶対お前のことだよな?」

「ハハハ、ナンノコトダカサッパリダ」

「流石は私のカミトね、『龍皇』の名は伊達ではないわ!」

「そういやあったね、そんなの」

 

あの痛い二つ名、いったい誰がこんなん言い出したのやら。

り ゅ う お う とか竜王とかだとスゲー悪そうな感じがするし、逆に龍皇だと光みたいなイメージがする。

これは俺だけでしょうか?

というか、俺のレパートリーは竜だけじゃないんだが。

龍に限定している所から察するに、噂と入ってきた情報のみで付けたのだろう。

 

「……兄さん……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「は?」」」」」

 

兄さん。

その一言は間違いなく、この五人に向けて発せられたものであり、全員一斉に声のする方向へ振り向く。

ほぼ全員が心当たりなどあるはずも無いのにだ。

五つの視線の交点には、美少女がいた。

レースのカーテンのように儚い雰囲気を醸し出している華奢そうな白磁の肌の、白い肌にとてもよく映える艶やかな黒髪の、これまたパッチリと白肌によく映える長い睫毛を携えた黒い瞳の、何故か見覚えのある綺麗で整った顔立ちの、スレンダーで高身長なモデル体型の、十代後半と思わしき美少女がそこにはいた。

 

「兄さん……もしかして、兄さん……なの?」

「え、おま、え、え、お前、えっ、もしかして……」

「━━━━はい」

 

カミトがまるで生き別れた家族と再開したかの様に目に見えて動揺している。

いや、動揺というよりは動転、と言うべきだろう。

何回も聞き返すお爺ちゃんになってる。

対する女性の方は、カミトが「もしかして」の後の言葉を紡ぐより先に応えた。

 

「もしかして、ミカ!?

 

「━━━━━はい」

 

どうやら、感動の再開のようだ。




はい、いかがでしたでしょうか?

実に数ヶ月ぶりの本編、私自身がめっちゃ忘れてる……。
鳥山先生が桃白白忘れる理由が、頭ではなく、心で理解したッ!
個人的に、今回の話ではあんまりネタが組み込めなかったような感触。
「このすば」という以上、やはりネタは満載でナンボだと思うのですよ、私的には。

それはさておくとして……

次回 覚醒の証
 デュエルスタンバイ!


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20話 黒い旋風

どうも、ひきさんです。

使いたいネタが多すぎて消化しきれない、なんていうありがたい悩みが最近の困り事。
パロディしすぎて怒られるくらいにはネタをぶっこんでいきたい今日この頃。
めざせ、逢○万太!
まぁそんな身の程知らずはともかくとして、

20話 黒い旋風
 どうぞ!!


どうも、カミトです。

現在、紅魔の里に来ています。

観光がてら紅魔の里を巡っていた俺たちだったが……

 

「もしかして……ミカ!?

 

「━━━━はい」

 

「ミカ」と呼ばれた、謎のスレンダー系美少女。

一体彼女は何者なのか……!

 

「だ、誰この子?カミトの知り合い?」

「あぁ、こいつは」

「IGAAAAAAAAA!!!!」

 

話始めようとした途端、カズマが謎の奇声を発して暴走し始めた。

ギギギ……と錆び付いた機械の様に顔をこちらに向けると、いつもの残念っぷりが嘘のような身のこなしで加速+ダッシュをし、バグったようなスピードで飛びかかりながら襟を握られた。

その勢いのまま俺は背中から地面に叩きつけられ、首を服ごと前後に揺すられる。

小石が背中に食い込んで痛いんだが。

というか、「IGA」って誰?

まさかの人違い。

 

「誰だあの究極大和撫子系妹みたいな黒髪美人なお方はよぉ!!なんでお前とあんなに親しげなんだ!一人ならず二人も口説き落としやがってこのクソ***の****野郎が!!モトカノか!モトカノなのか!モトカノなんだろう!いつもいつもお前ばっかり!俺はどうすればいい!?答えろ!どうすればいい!答えてみろルドガー!!あふふうるh8tyjwjぬえkdyふkりfty━━━」

(※一部不適切な内容となっているため、自動的に伏せ字に変換されています)

 

駄目だー。

最初の方はまだ聞き取れてたけど、途中から何言ってんのか全っ然わかんねーや、ハハハ。

もっとも、親しげだとか二人もだとかルドガーだとか、そういう断片的な部分しか理解出来てないけども。

首ガックンガックン振り回されてマトモに耳に入ってこないっていうのもある。

言い返したいのは山々なんだが、カズマがそれはもう捲し立てるので口を挟む余地が無い。

……おい待て、誰がルドガーだ。

 

まさかの人違い。

 

「大丈夫、兄さん!?」

「あうあうあうあうあう」グッ!

 

首を揺すられているためか声が出せず、代わりにグッ!とサムズアップをして安否を知らせる。

ガックンガックンされても脳震盪ぐらいがせいぜいだ。

でぇじょうぶだ、蘇生魔法で生きけぇれる。

デスルーラしたほうが身体も治るし時間短縮にもなるしで良いのでは!?

え、タイムアタックはしてない?

あっそう。

 

「これは出会いの無い男子たちの分!」

 

一つ、非道な悪事(イチャイチャ)を憎み。

 

「これは露骨に女性から嫌われてる作者の分!」

 

二つ、不思議な事件(リア充イベント)を追って。

 

「そしてこれは━━━━」

 

カズマは拳を上に大きく振りかぶって、天に掲げる。

まるで、この有り様を天に見せつけるかのように。

拳が日輪と重なる瞬間、焔の如き怒りを滾らせカズマの中に潜む爆発的なエネルギーが究極の破壊をもたらす。

 

「いつもお前らのイチャイチャに付き合わされてる俺の分だぁぁぁぁぁ!!」

 

三つ、未来の科学(2ちゃんのスレ)で捜査。

これぞ、S(素敵な)P(プレゼントだよ)D(ド畜生が)に代々伝わりし対リア充専用決戦必殺奥義。

異世界の英雄殺しの秘奥義を対リア充用に改造・改変し、対リア充専用決戦必殺奥義にまで姿を変えた技。

今死ね、すぐ死ね、骨まで砕けろの三連撃をもってあらゆる甘々なムードを破壊する『リアジュウシスベシ流三連殺』。

またの名をリア充爆発拳。

相手は死ぬ。

 

「って、死ぬか!」

 

何となく口出しと抵抗をしてはいけない雰囲気だったので大人しく聞いていれば、やれ出会いが無いだの露骨に嫌われてるだのイチャイチャに付き合わされてるだの好き勝手言いやがって。

てか、ほとんど作者の私怨ではないか。

ここにリアルの話を持ち込むなよ。

というか、それ以前に、だ。

 

「なに勘違いしてるんだ?」

「ひょ?」

 

そもそも、根本的な所から勘違いしているようだ。

地に横たわったままでは格好がつかないがしかたない。

あえてこの場にいる全員に聞こえるように大きめの声をだした。

取り敢えず、カズマも含めた全員が聞く耳を持ったようだ。

俺に馬乗りしている状態のまま、カズマは声を荒げて吠える。

唾も一緒に飛んでくる、バッチィ。

 

「ほう勘違いとな。お前の!何が!勘違いだと!言うのかね!」

「いやさ」

 

顔についた唾を拭いながら、一言置く。

ふぅと一息付いて、件の人物をチラリと見る。

あちらも視線に気付いたのか、こちらと目を合わせて何かあるのかと小首を傾げる。

うぅむ……。

確かに、勘違いするのも分かるよ。

初対面の人には大抵間違えられるし、未だに信じてない人もいるくらいだし。

いつだったか、女性向けファッション雑誌のモデルにスカウトされたこともあったな。

数多のモデルを見てきて目が肥えているはずのスカウト、いわば「人を見るプロ」ですら見抜けなかったということになるだろう。

自慢じゃないけど、俺も初対面だったら絶対に間違える自信がある。

少なくとも、俺は今まで間違えなかった人を知らない。

出産に立ち会った医者や助産師の人ぐらいかな?

でも、俺は知っている。

()()()()()と。

知っている自分だからこそ、勘違いを正してやらねばなるまい。

それが知っている側の義務だと思う。

 

「いやさ」

 

「「「「ごくり……」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こいつ、男だぞ?」

 

「「「「は?」」」」

 

俺とミカを除く全員が、狐に摘ままれたようにポケー……っとして硬直している。

見開かれた眼には、「こいつ何言ってんの?」「え、マジで男なの?」「嘘だっ!!」「ウゾダドンドコドーン!!」といった様々な感情がない交ぜになって瞳に凝縮されていた。

ミカは目の前のにいる人全員が呆けているのを見かねてか、それともまたこれ言うのかよという面倒臭さかは本人のみぞ知る所だが、はぁ……と嘆息する。

本人の口からでないと、ただでさえ消え入りそうな信用性がいよいよもって消え去ってしまう。

合掌をするような形で手を合わせ、申し訳なさと謝罪の意をなんとか伝える努力をする。

合掌の裏から口パクで『ごめん』と言って、少し頭を下げるジェスチャーをする。

はぁ……とまたもや溜め息をしたものの、どうやら誤解なく伝わったようだ。

渋々といった様子ではあるが、ミカは事情を知らない皆の方を向きなおし、少し投げやりな感じを滲ませながら言った。

 

「皆さん、僕は男です」

「マジ?」

「マジ」

「男?」

「男」

「man?」

「man」

「ホントのホントに男?リボンズナイト的なやつではなく?」

「体も頭も男です。なんなら調べます?」

「よろこ……んんっ、犯罪臭がするのでいいです」

 

まだ半信半疑といったところかな。

贔屓目かもしれないが、下手な女優なんかよりよっぽど魅力的な見た目をしているだろう、スカウトが間違えるくらいだし。

何より実物がそれを物語っている。

なんて考えていると、ミカはあたかも先程までの投げやりチックな雰囲気など最初から無かったかのように、慇懃な素振りを見せていた。

そして、「改めまして」と一言置いてから三度向きなおす。

 

天城 神人(あましろ かみと)の弟の天城(あましろ) 三加叉(みかさ)と申します。兄がいつもお世話になっています」

 

三つ指を体の前で交差させ、上品な所作で粛々とお辞儀をする。

その姿たるや、文句のつけどころが見当たらない、正に完璧な大和撫子の模範と言えるだろう。

いや、男だから撫子ではないのだが。

驚いたのはそこではなく、その口から発せられた言葉。

とんでもカミングアウトからずっと見開きっぱなしの目が、また一段と見開かれる。

見開きすぎてアメコミばりに目玉が飛び出てきそうな気さえする。

動揺しすぎて言語を忘却しそうにもなった(1人既に忘却済み)が、なんとか言葉の防衛に成功した。

早速、防衛に成功した言葉を使って一つの疑問をぶつけてみる。

 

「お、弟さん!?カミトさんに!?」

「カミトって兄弟いたの!?初耳なんですけど!?」

「いや、ちょこちょこ漏らしてたと思うぞ?具体的にはキャラ紹介とか前回とかで」

「きゃらしょうかい?何ですかそれ?」

「あー、気にするようなことじゃない、忘れて」

 

みんなが目をパチパチしているのは、さっき目を見開きすぎたからだろう。

そうに違いない。

決して、兄弟関係が信じられないからジー……っと顔を見比べているとかではないと思いたい願いたい。

ウチの両親曰く、「なんとなーく雰囲気は似てるような気がするけどやっぱあんまり似てない」らしい。

要は「あんまり似てない」ということだ。

参考までに言っておくが、ウチの両親は喧嘩こそすれ、離婚話がでる前に必ずどっちかが折れる。

比率的には父が9、母が1。

お陰様で現在(少なくとも俺が生きていた時)まで特に大事に至ることなく、昨年の5月16日にめでたく結婚20周年を迎えることができたらしい。

 

「うーん……なんとなーく雰囲気は似てるような気がするけどやっぱあんまり似てないわね……本当に同じ親?」

「去年で結婚20周年を迎えました」

「お、おめでとう?」

 

こっちに来てから随分と経つ訳だが、両親や友人たちは元気でやっているだろうか?

俺としてはあまり実感がわかないが、あちらでは俺は死んだ扱いになっているのだろう。

事実としてトラックに轢かれ確かに死んだのだから当然と言えば当然だが、今まさにこうして生きているのも紛れもない事実。

どこか他人事のように、自分とは無関係だと勝手に思ってしまう自分がいる。

あちらの家族や友人たちは、悲しんだのかなぁ……?

……ええい、やめやめ!

今は、弟との感動の再開を喜ぶべきだろう。

 

「そうだ、ミカ」

「はい?」

「なんでお前がここに?」

 

アクアとカズマ以外には「なんで紅魔の里にいるんだ?」という質問に聞こえるが、それ以外にも暗に「なんでこの世界にいるんだ?」という意味も含んでいる。

もう一つの意味を理解したのか、一瞬ハッと戸惑いながらも平静を装って聞き返す。

 

「兄さんこそ、なぜここに?」

「人探しついでに観光。手紙の差出人と少しO☆HA☆NA☆SHIしようと思ってな」

「み、見つかるといいですね……。えと、僕は依頼でここに来たんです。といっても、マントを買ってくるだけのお使いですが」

「多分だけど依頼主紅魔族だよな。魔法使えるんだから自分で行けばいいものを……。って、依頼?」

 

依頼、というワードが引っ掛かった。

真っ先に浮かんだもので間違いはないだろうが、万が一ということもあり得る。

……いや、この世界で「依頼される」ということはつまりそういうことだろう、ソースは俺。

暗殺や盗みなら話は別だが、このような所謂「お使い」を依頼されるとしたら、十中八九そういうことだろう。

一応、ミカの口から聞くけど。

 

「僕、王都で『冒険者』をやっているんです」

「やっぱり、お前もか」

 

予想的中、やっぱりというかなんというか、兄弟揃って冒険者であった。

俺の知っている限り、ミカの運動能力は瞬発力こそあれど体力はミジンコ並みだ。

階段を下から上に昇るだけで呼吸が乱れるくらいには体力がなかったはず。

そこはやはり「特典」の成すところなのだろうか。

 

「お前もってことは、兄さんも?」

「そうゆうこと。ホレ」

「わっ、わっととと、っと」

 

懐から冒険者カードを取り出し、それをミカに投げ渡した。

最初のキャッチを失敗したが、ワタワタしながらもなんとかキャッチ、見てるこっちまでホッとした。

別に落としても困ることはないのだが、投げ渡した俺が悪いんだし。

 

「ええと……職業はアークプリーストなんですね、分かるような分からないような。レベルは……」

 

次の瞬間、ミカの顔がまるで凍りついたように青ざめて固まった。

次第に動き出したらかと思うと、今度は唖然とした表情でカードを二度見三度見し、絶句した。

未だに信じられないといった様子で目を瞑って深呼吸、精神を落ち着かせて今一度カードに視線を落とす。

そしてやっぱりというか、ワナワナと震える。

この動きをかれこれ21回繰り返した。

最後には最後の希望と言わんばかりに、半泣きになりつつもこちらを見てきた。

 

「に、兄さん……最後に確認した時のレベルはいくつだった……?」

「レベル?いくつだったか……あんまり確認してないしなぁ……。たしか最後に見た時は、98くらいだったかな?」

「( ゚д゚)ポカーン」

 

なんでノゾミガタタレターって顔してるのだろう。

転生した時の特典があれば、適当なクエスト(賞金首の危険モンスター討伐)をこなしてればこのくらいは普通にいくものだと思うんだが。

ここにいる以上お前も特典を貰ってるだろうに、何をそんなに驚いてる?

みんなもそんな呆れたような同情するような表情しないで!

これじゃ俺がイジメたみたいじゃないか!

 

「……にーさん、これ」

 

そういって、ミカは俺の冒険者カードを差し出した。

上から重ねられている手は、何かが表記されているところを指差しているようだ。

ミカに歩み寄ってカードを良く見てみる。

 

「レベルのとこ差してる?」

「……」コクコク

「えぇと何々……レベル99?

「……」コクコクコクコク

 

ミカが壊れたオモチャのように首を激しく上下に振り乱し、青ざめた顔をスイングしていた。

というか、俺のレベル99なのね。

ひとつしかレベル上がってないし、やっぱりレベルが上がるほど上がりずらくなっていくのかな?

この世界の最高レベルがいくつなのかは分からないけど、もう少し頑張って上げてみようかな。

はいそこ、「うわ、私の仲間強すぎ」みたいな表情しない!

 

「そ、そういえば」

 

めぐみんが重いアトモスフェアを払拭しようと、話題を切り上げて次の話題を持ち出す。

 

「カミトの弟さん。えぇと、ミカサさんでしたっけ?」

「は、はい!」

「あなたも、兄のカミトと同じように変身することができるのですか?」

 

あ、それは俺も気になる。

ミカが特典として何を授かったのか、どんな物なのか。

武器や防具であれば神聖な雰囲気というか、どこか厳かな気配を感じられるのだが、今のところそのような感じはしない。

単に俺の見た物が特別だった可能性もあるが、変身するものだとか隠蔽するものだとかの可能性もある。

まぁなんにせよ、ミカが何を選んだのか興味がある。

答える前に、少しミカに耳打ちしておく。

 

「俺は特典で三幻神の力を貰った」ヒソヒソ

「はい、カードを見たときに察しました」ヒソヒソ

 

どうやら問題なさそうだ。

一応、話しておかないと面倒なことになるかもしれない。

そう思っての行動だったが、杞憂で済んだようだ。

 

「はい、僕も兄さんと同じように変身できます。一種類だけですけど……」

 

少し意外だった。

昔からやたらと「いのちだいじに」な選択をするタイプの性格だったので、最強の鎧とか即座に傷を回復する鞘とか絶対殺す槍とか選ぶものだと思ってた。

 

「へぇー……なぁ、見せてもらうことってできるか?」

「いいですよ。では、いきますよ!」

 

全員一斉に口を閉じ、辺りを静寂が統べる。

ミカは目を軽く瞑り、ゆっくりと力を高めてゆく。

顔に当たっていた風がいつの間にか背中から吹き抜け、強い力に呼び寄せられるように一点に集う。

背筋が凍りつくような重々しい圧は、どこか邪神と通ずるものが感じられる。

すると血色の良い肌に、段々と紫色の痣が浮かび上がってきた。

痣は紫色の輝きを増していき、遂には辺り一帯を覆い尽くすほど強い輝きを放つ。

その瞬間、まるで死んだかのように全身から血の気が引いていくような気がした。

光が収まり目を開けることができた。

それと同時に、俺は紫色の痣に見覚えがあったのであわてて()()()()()()()()()

そこには先ほどまで正午の輝きを放っていた太陽はなく、暗雲が立ち込めており、その暗い空の中には()()()()()()()()()()()()()()()()

まさかと思い、少しずつ視線を下げていく。

漆黒の躰の中に紫色の線を走らせ、天空に見える絵の面影が見える姿をしており、その絵のモデルとなった物とは比べ物にならないほど巨大な出で立ちをしている。

俺はこれを知っている。

俺たち兄弟がまだ幼い頃、画面の中で猛威を奮い主人公たちを絶望に陥れた、三幻神とは異なる神。

そう……

 

「地縛神……」

 

古の時代に竜と争った邪神、『地縛神』だった。




衝撃の新事実、カミト君の弟は弟だった!!
イメージする時は女っぽい男と考えるよりも、スレンダーな女の人が男の特徴をもったほうが近いかも。
骨格とホニャホニャ以外は基本的に女にしか見えませんから!

それと特典は『地縛神』ということにしました。
どの神かは次回までのお楽しみということで。
ヒントは紫。

それでは、
次回 サティスファクション
 俺たちの満足は、これからだ!!







……もとい
次回 醒めない悪夢
 デュエルスタンバイ!


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21話 醒めない悪夢

どうも、ひきさんです。

ミカ君ちゃんが何に変身するのか、予想できましたか?
それでは答え合わせです。
これまでヒントとして『紫色』そして『いのちだいじに』と言ってきました。
フフフ、誰だか分かりましたかね?
それでは、

21話 醒めない悪夢
 どうぞ!


どうも、カミトです。

現在、紅魔の里に来ているのだが、そこで弟のミカと再開。

例によって特典を授かっていたのでそれを見せてもらうことに。

俺と同じ、変身するタイプの特典のようである。

禍々しい気配を感じて視線をやった先には……

 

「地縛神……」

 

視線の先に在ったのは、幼い頃に画面の中で猛威を奮っていた古の邪神、『地縛神』だった。

空はつい先ほどまで快晴だったというのにも関わらず見渡す限り黒雲が敷き詰められ、それなのに輪郭をくっきりと把握できるほど明るいのは、天に紫色に怪しい光を放ちつつ浮かび上がった絵のせいだろう。

絵は視界に入りきらないほどに巨大で、かくいう俺も、絵とは言うものの何の絵かは見て取ることができない。

更に言えば、前世で見ていなかったらそもそも絵とすら分からなかっただろう。

 

ふと、天を仰いでいた視線を少しだけ下げてみた。

 

「あ~……そうか、そうだよね。『いのちだいじに』なお前は変身するタイプの特典なんかより、もっとこう、鎧とか盾みたいな身を守るようなやつを選ぶと思ってたけど……()()()()ってことか」

 

問題

相手プレイヤーに直接攻撃ができ、魔法・罠・モンスターカードの効果を受けず、自分ターン時に相手の魔法・罠・モンスターカードの効果の発動を無効にし、攻撃力がフィールド上で最も攻撃力の高いモンスターの攻撃力+100のモンスターがいたとします。

このターンでなんとかしなければ、自分は直接攻撃されて確実に負けてしまうという状況。

貴方ならどう切り抜けますか?

 

そもそもそんな状況にさせない、直接攻撃で削り切る、バーンループ、デッキ切れ、エクゾディアとかで特殊勝利、ワンターンキルゥ……などなど十人十色とまではいかなくても七色ぐらいには出てくるだろう。

俺?

俺だったら……そうだな、サイバーダーク・エッジで直接攻撃するかな。

恐らくではあるが、ミカだったらこう答えるだろう。

 

「そもそも攻撃(バトルフェイズ)させない、って」

 

下げた視線の先には、いつぞやのデストロイヤーと肩を並べ得る巨体を有した(しゃち)が、紫炎に包まれた暗く明るい空に在った。

個人的に印象深い姿に、生前のトラウマと()()ことを思い出した。

生前、ミカも(俺が無理矢理引きずり込んだのが切っ掛けで)遊戯王を嗜んでいた。

いつでも手加減無しなタイプで、「ロマンデッキ?キャラデッキ?何それ美味しいの?」といった感じでガチデッキしか作らないような奴だった。

しかし弟よ。

大会ならともかく、兄弟同士とか身内だけとかのエンジョイデュエルで幾らなんでもさ……

 

 

「『地縛神ChacuChallhua』……」

 

 

『チャルアイーター』は無いだろう!?

モリンフェンデッキでどう勝てと!?

うっ!と、トラウマが……ッ!

 

「カミト!あのドデカい魚はなんですか!?あれが弟さんですか!?」

「あぁ、多分な。俺もにわかには信じられないけど」

「……お前がそれ言うか?」

 

ここまで長々と話していても、変身から名乗りまで律儀に待ってくれる敵怪人のように大人しい。

過去には名乗ってる途中で攻撃してくるトキメキラーさんもいたけど、最終的には仲間になったのでノーカンノーカン。

敵味方を判断するだけの理性やお約束を守る堪え性が存在している。

まぁ変身してほしいと言われて快諾していたからほぼ確信していたが、やっぱりというか暴走はしないらしい。

それが分かっただけでもだいぶ心強い。

 

「さてと。おーいミカー!」

 

大きく手を振りつつ、大声でミカを呼んでみる。

しかし、首?頭?を向けはすれど返事が返ってくることはなかった。

言葉は理解できるけど喋ることはできないようだ。

かくいう俺も、変身している状態で喋ることはできない。

今までの『 』は聴覚神経に弱い電気信号を送りこんで、さも声がしているように錯覚させているだけ、会話というよりは念話に近い。

この方法は電気が扱えることを前提としているので、経験の貧富に関わらず電気を扱う魔法でもない限りはミカにはできない。

 

と、急に視界が真っ白になった。

一瞬、何が起きたのか分からなかったが、どうやらミカが変身を解除したようだ。

元の明るさに慣れるべく目を何度もパチパチしている内に、真っ白だった世界が徐々に色付いてきた。

空は青く澄み渡っていて、不気味に浮かんでいた絵は既に虚空と化していた。

上を向いていると足音が近づいてきた、ミカだ。

 

「はぁ、はぁ……ふうぅ……はい、何ですか兄さん?」

「いや、そんなことよりお前大丈夫か!?」

「はぁ……もちろん、ですよ……仮にも……はぁ、冒険者ですよ?……ふぅ」

また一人……要注意ね……早めに潰さなきゃ……ブツブツ

 

そう思うなら、せめて途切れ途切れな文をくっ付けてから喋ってくれ。

息は絶え絶えで膝に手を当てて肩を上下させていながら言われてもまるで説得力がない。

具体例を挙げるとするなら、「行けたら行く」と同じくらいには。

そしてアクア、物騒な事を口走るのは止めてね。

というか、要注意ってどう言うこと?

また一人ってことは他にもいるってこと?

これはまた今度聞き出しておく必要がありそうだ。

そんな中、一人額の汗を拭っているミカを尻目に、カズマがゆっくり近づいてコソコソと耳打ちしてきた。

 

「……なぁカミト。アイツ、本当に男なんだろうな?」

「ん?あぁ、兄としてそれだけは約束する。ミカは男だ、一緒に風呂に入ってた俺が言うんだから間違いない」

「ならさ……」

 

そう前置きすると、カズマはふいっと視線を反らした。

視線の先には、地面に座り込んで何処からか取り出した飲み物でゴッキュゴッキュと喉を潤しているミカの姿があった。

む、あの容器、見覚えが……あっ!

あれは!?生前ミカが愛飲していた『お茶の渋み(地域限定特産茶葉使用)』!

香りと口当たりは最高に良いのに、ワンテンポ遅れてやってくる渋みと苦みが相応の覚悟が必要なほど強烈と悪名高い『お茶の渋み(地域限定特産茶葉使用)』ではないか!!

はい、どう考えても茶葉の使いすぎです、本当にありがとうございました。

 

「ならさ!何で!あんなに色っぽいんだよ!!」

 

カズマの力説(と顔芸)を受けて、改めてミカを見てみる。

茹で上がったように頬を紅潮させ、薄桃色の唇の狭間からは熱っぽい吐息を漏らし、きめ細やかな柔肌はうっすらと汗ばんで、動きやすそうな軽装の薄い布地は汗を吸って肌が透けている。

言われて初めて……否、訂正。

蓋をしていただけで、心の奥底ではとっくに気付いていたのだろう。

改めて言葉にされたことで初めて自覚しただけで。

十数年間、一つ屋根の下で寝食を共にしてきたが一度も考えたことなどなかった。

近すぎて視界に入らなかったということだろう。

灯台もと暗し……とは少し違うか。

ふつふつと胸の奥から沸き上がってくる言葉を、俺はありのままに吐き出した。

 

「いや、流石にないわー」

 

カズマに侮蔑の意を含めた視線を向ける。

今鏡は持ち合わせていないが、多分目付き以外は真顔だろう。

いくら女っぽい、色っぽいといっても限度がある。

男として植え付けられている俺からすれば、ミカはどこからどう見ても男だ。

それが弟ともなれば、殊更男にしか見えない。

女らしいとは言っても、それはあくまで()()()だけ。

「完全に女に見える」というのはあり得ない話だ。

まぁ、カズマみたいな性的少数派の特殊な人であれば話は別だけど……少なくとも俺は男としてしか見れない。

そもそもとして、「弟を女性として見ろ」というのが無理な話なのだ。

 

「そんな事に共感を求めること自体が間違いだ。カスマとかクズマとか変態とか言われても俺には弁護できかねるぞ」

「えらい直球だなオイ!てか俺がおかしいの!?ねぇ、俺がおかしいの!?」

「…………。いや、男性を女性扱いするのは流石に失礼だぞ、カズマ!」

「今考えたよな!「自分もそう思ってたけど騎士として失礼だから」って思ったよな!!」

「そ、そんな訳あるか!第一、そんな事は騎士であるなし以前の問題だ!」

「カズマ、私は━━━」

「(^U^)つバチバチ」

「……ソーデスヨー、カミトヤダクネスノイッテルコトガタダシイデスヨー」

「あっテメッカミト!電気バチバチさせて脅迫とかきたねぇぞ!」

「ナンノコトヤラ……」

「コイツッ!!」

 

うん、平 等 な 多数決の結果、カズマはやはり少数派ということが確定した。

え、公職選挙法?公職というわけでもないし、異世界だから問題ないよネ!

もしあったとしても、そこはダクネスの権力でちょちょいとしてもらって……。

神の論理に隙は無かった(隙パナかった)

作者のイタズラが入り込んだが気にするな!

 

「大丈夫だカズマ、世界は広いんだ、いつかきっとそんなお前でも好きになってくれる人がいてくれないと良いね!」

「やったー……って、騙されるか!」

「ちっ……言質取っておいて何かと揺すろうと思ってたのに……騙されてはくれないか」

「当たり前だ!まったく、危うく別の世界線に引っ張られて素直に喜んじゃう所だったぜ……」

「ワガママだなあ、かずたくんは」

「誰がかずたくんだ!」

 

ふぅ、カズマを弄り倒したお陰で鬱憤が晴らせた気がする。

心なしか世界が綺麗だ。

 

「なに?お前は俺に恨みでもあるの?」

「……いいかカズマ!よく聞いておけ!!」

 

俺はカズマの肩に掴みかかり、食い気味に力説する。

これは俺が一方的に思ってるだけかもしれないが、カズマとは少なからず『YU-JYO』が築けていると俺は思っている。

今の弄りも、親しい間柄だからこそ成立していると。

だから、さ、身勝手かもしれないが、やっぱりお前はこのパーティーに必要なんだよ、カズマ。

俺、知ってるんだぞ?大雑把な制御しかできない俺の代わりに、裏で細かい所を片付けてくれてるの。

完全にオーバーキルな攻撃をブッ放つ俺やめぐみんの後処理をしてくれてるの。

数字上だけで見れば最弱凡骨クソ雑魚ナメクジ以下のゴミカスでも、功績の方に目を向ければ枚挙に暇がない。

それだけは俺が保証する、と。

 

「本当に大した奴だよ、お前は」

 

むしろ、最弱職である『冒険者』なのに、上級職ばかりのこのパーティーで不可欠な役割があるということ自体が異常……いや、偉業なのだ。

聞いた話しでは、『冒険者』がそれなりのパーティーにいても、基本的に荷物持ちか数合わせが精々で「居ないと困る」ことはまずあり得ないそうな。

『上級職パーティーで不可欠な役割を担う最弱職』、レッテルとしては充分すぎる。

もはや、何かの物語の主人公の様だ。

 

「……いやいやいや!いい話風に閉めてんじゃねぇよ!?最初はマトモな事言ってんのに後半ボロクソじゃねぇか!何だよ『最弱凡骨クソ雑魚ナメクジ以下』って!!」

「最後に『ゴミカス』も付いてただろう!!」

「そこじゃねぇよ!悪化してどうする!!」

「下げてから上げるのは話しの基本だろ?」

「下げすぎなんだよ!下がりすぎて上がりきらんわスカタン野郎!!」

 

そんな言い合いをしている内に、日はむこうの山に沈み始めてきた。

ミカはクエストでここに来ていたのを思い出し、再開を惜しみつつも一足先に里を発っていった。

光源の少ない、それも見知らぬ土地でさ迷うことは避けたい。

今夜の寝場所も考えておかないとな。

ここは地元民に聞くのが一番手っ取り早いだろう。

 

「ゆんゆん、ここに宿屋は━━━って、ゆんゆん?」

私なんて……まともな戦闘シーンがない私なんて……ブツブツ

「おーい、帰ってこーい」

「……ハッ!は、はい!呼びました!?」

「うん、この里に宿屋はあるか聞こうと思ったんだけど……どったの?」

「い、いやー……何でも無いですよー……ハハハ。そうですねー……宿屋……」

「その前に私の実家に寄ってもいいですか?折角なので、顔を見にいくついでにパーティーを紹介しておこうかと」

「うーん……まぁ大丈夫だろう、ちょっと寄っていくか。なんならめぐみんとゆんゆんは実家で寝るか?」

「元よりそのつもりです。というか、全員ゆんゆんの実家に止めてもらえばいいじゃありませんか」

 

俺も最初訪ねた時はそう考えてたけど、少し難しい。

というのも、問題はゆんゆんのお父さんにある。

 

「大丈夫なの?あのおじさん、カミトの顔を見た途端に上級魔法乱射してたわよね?」

「その後すぐに魔力切れでぶっ倒れてたけどな」

 

屋内がちょっとした地獄絵図になってたな。

この場合は修羅場か?

天井は凍りついているのに床では火が燃え盛っているし、小型の台風みたいな暴風雨(砂利つき)ときどき雷が巻き起こるし、最終的には炸裂魔法を詠唱しようとする始末。

魔力切れ起こしてなかったら、あの家ふっ飛んでたぞ。

 

「お前らはともかく、次に俺の顔見たら間違いなくまるごとふっ飛ばすぞ、あの人」

「すみません……ウチの父が本当にすみません」

「でも、カミトって木の上でも寝れるんでしたよね?」

「あー、あったなそんな設て……」

「アルカンレティアの時は馬車の上で寝てた、し……な……」

「あっ……。ねぇ、めぐみん、まさかとは思うけど……」

 

おいおい、まさか……ね。

からかい上手なめぐみんのことだ、これも何かの冗談だろ、冗談なんだろう?

その眩しい笑顔はからかうのが面白いからだよね?

その紅く輝いてるカッコいいお目々も楽しいから光ってるんだよね?

決して、「憂さ晴らしできるから」みたいな理由じゃないよね?

ひょっとして、今までの特製電気マッサージが不満だったのか?

そうだとしたら謝るから、もっと上手くなるから。

だから……な、頼むよ。

めぐみんだって本当は仲間思いの優しい子だって、俺信じてる。

 

あ な た は 外 で 寝 て く だ さ い

 

嘘だと言ってよめぐみん。




選ばれたのは「シャチ」でした。

能力解説的な何か
『地縛神ChacuChallhua』
攻撃と防御の2モードを搭載したお魚。
攻撃モードでは、ダメージが体の芯に直接届く攻撃ができる。
防御モードでは、相手の攻撃の一切を封じつつ徐々に命を削っていく。
共通効果として、相手からの攻撃を霧のようにすり抜けることができる、ただし無効化する訳ではないので仲間に流れていく可能性あり。

設定としてはこんな感じでしょうか。
何事も、設定を考えるのが一番面白いと思う今日この頃。
そして結局、設定だけのお蔵入りするまでがいつものスタイル。

次回 ガーディアンの力
 デュエルスタンバイ!


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22話 ガーディアンの力

どうも、ひきさんです。

最近、何の揺り戻しかツキが廻ってきました。
具体的には某FG○でえっちゃんと沖タと不夜キャスが来訪いたしまして……。
時たま後ろから殺気を感じる今日この頃、皆様いかがお過ごしでしたでしょうか?
私は買い物以外で外出しないひきこもりライフを満喫しました。

ま、そんな自分語りはおいといて
22話 ガーディアンの力
 どうぞ!!


あ な たは 外 で 寝 て 下 さ い

 

 めぐみんは、無慈悲にも俺にそう告げた。

 親の仇を打ち倒し拷問できるとわかったかのように、整った顔を作画崩壊がなんぼのもんじゃいと言わんばかりに歪め、口の端を吊り上げて嗤っていた。

 

 あじゃどうも、カミトです。

 ありのまま今起こったことを三行で話すぜ? 

 暗くなってきたので、

 どこで寝ようか話していたら、

「オメーの席ねぇから!」と言われた。

 あ、ミカにお茶の渋み貰っとけばよかった。

 

 作者<ちょっとー、三行ってゆー設定はいずこへ? 

 

 うっさい! 

 リアルで「更新マダー」って言われてるのにやるやる詐欺してる〆切ブレイカーは黙ってろ! 

 ま、あのゴミはさておきだ。

 

「めぐみんさんや、外なの? 俺だけ? 野宿? out door? マジ? マージ・マジ・マジーロ?」

「やめい」

「マジもマジ、大真面目です。拷問で脅迫してくるような人と同じ屋根の下で寝れますか?」

「いや、あっちでいつも寝てるじゃん!?」

「「「『『『え``!?』』』」」」

「カミトさん……そんな、めぐみんと……」

「うふふふ……めぐみん、今夜は一緒に寝ましょう? 女の子同士、()()()話しあいましょう?」

 

 カズマとダクネスとめぐみんは俺を見ておぞましい物を見るような目で絶句。

 ゆんゆんは放っておいたら世界の全てを憎む幽鬼になりそうな感じで放心している。

 アクアはアクアでめぐみんの肩に手を置いて同衾のお誘いをしているが、いつもは清みきっている宝石のような瞳が、その奥底から決して浅くはない濁りが湧き出ている。

 というか、何気にあの娘(三幻神の化身)たちもドン引いてたのが心にくる。

 リアルダイレクトアタックはご勘弁。

 

「あ、アクア? 誤解です! 誤解ですから! カミトと寝たことなんて一度たりともありませんから! だから笑顔で拳を握りしめないで下さい!! 尋常じゃない魔力込めて拳を振り上げないで下さい!! 怖い! 怖いです!!」

「悪魔滅ぶべし……色魔滅すべし……淫魔殺すべし……!!」

 

 ヤバイ! 

 アクアのヤツ、目が本気だ! 

 このままだとマジでヤバイ! 

 語彙力とか考えてる場合じゃねぇ! 

 

「おいアクア! 落ち着け! ストップ! ステイ! ハウス! 静まりたまえ!!」

「フー! フー!」

 

 アクアを後ろから羽交い締めにする。

 髪からいい香りがするだとか体が柔らかいだとかうなじが綺麗だとかは頭にない。

 ……ないったらないのだ。

 

「ふんっ……カミトの慈悲深さに感謝するのだな、人げあいたぁ! 

 

 アクアの言葉を遮って頭に強めのチョップ。

 頭を抱えてその場に崩れ落ちる。

 手はそのままに振り返り、抗議の目には涙が浮かんでいる。

 

「痛かった! 今のすっごく痛かった! 女神の頭を叩くなんて責任問題よ! 取って~! 責任取って~!」

「いくらなんでもやり過ぎだ。ほら見ろ、めぐみんが借りてきた猫状態になっちゃったじゃん!」

「だって! それは、めぐみんと寝たってカミトが言ったから」

「言葉の綾だ。()()()()()()()寝たって意味だよ」

 

 俺は最初からそのつもりだったが、どうやら皆には伝わっていなかったようで、ここに居合わせた一同目を丸くしていた。

 

「てっきりお前が二股に目覚めたのかと」

「てっきりお前がこっち側(ロリコン)に入学したのかと」

「てっきりカミトが……って、誰がロリですか!」

「ぐえっ! お前の方が力強い死ぬ死ぬ死ぬ! !」

 

 言いたい放題だなこいつら。

 ダクネスだけじゃなく「二股じゃね?」とか思ったお前ら、ちょっと夜の遠州灘の沖合いに集合な。

 カズマ、医者目指してた友達がいたんだが、紹介してやろうか? 

 めぐみんは……ごめん、なんか色々ととばっちり受けたみたいで。

 でも、外で寝ろとか言われたしおあいこだよネ! 

 

 作者<ネタ欲しさに新しい性癖を開拓したのかと

 

 お前は黙っとれ! 

『庶○サンプル』のコミックス堂々とレジ通して変な目で見られてた癖に! 

 いや、レジ通さないと犯罪だけども、あの表紙を見せるのはどうなの? 

 まぁ、そんな内輪ネタはいいんだ。

 なんであの野郎、今回はやたらでしゃばってくるんだか。

 あんな面白くもないトークしてさ。

 

「ということです。カミトはお外です」

「め、めぐみん、流石に外っていうのはちょっと……」

「なら貴方の家で寝るんですか? ()()家で?」

「そ、それは……」

 

 ゆんゆんは奮闘したものの、紅魔族が生み出した天才にあえなく撃沈。

 しかし、まだ膝をおることはなく、その目は未だ死んではいなかった。

 

「なら、宿屋でどう?」

「? ……この里に宿屋なんてありましたっけ?」

 

 ここは紅魔の里。

 魔王軍が度々襲撃してくる、争い第一線だ。

 加えて、少しばかり他の街からは離れている地域。

 宿屋は無い、よしんばあっても知られていない。

 

「ゆんゆん、俺は外で寝る。なに、馬車の上よか寝心地はいいだろうさ」

「でも……」

「そりゃあ、俺もちゃんとした布団で寝たい。でもま、こうなった以上仕方ないし、日頃の行いが悪かったってことだ。寝れない訳じゃないし、なるようになるさ」

「でも……」

「めんどくさい娘ですね。本人がいいと言っているのですから、それでいいではありませんか」

「うん、その通りだけども。その元凶になったお前が言うな」

 

 特に代案が出なかったので、今日は野宿だ。

 都会の空と違う形で、ここの空は明るい。

 こう見えて俺は星座にはそれなりに知識がある。

 こうやってマジマジと空を眺めていると、全く知らない表情をした星空が浮かんでいる。

 見覚えのある星座が、何一つ存在しない。

 一度だけイギリスの空で星座を見たが、日本で見れる星座とはまったく違ったものだった。

 その感覚に近い。

 改めて、自分が今いるのは日本ではないと実感させられる。

 さて、今日は色々とあったので眠い。

 

 それでは、お休みなさい……

 

 …………

 ……

 ……

 

 うむ、新しい朝が来た。

 希望の朝……とは少しいいがたい。

 首やら腰やら至るところが痛い痛い。

 木の上で寝るのも一度や二度じゃないけど、いかんせん枝がちょうどいい具合に曲がってる木が無くて。

 関係ないけど、俺は寝相がいいらしいので落ちることはない。

 流石にモンスターに襲われた時はびっくりして落ちたけど、俺自身が原因じゃないしノーカウントってことで。

 

「お、いたいた。カミトー、起きてるかー?」

「カズマか? みんなは?」

「お前を探してるよ。アクアはまだ寝てるけどな」

「そっか、アクアはどっちで寝てるんだ?」

「ゆんゆんの方だ。よくもまぁ人ん家でヨダレたらして寝れるよな」

 

 百聞は一見に如かずとは言うけれど、口頭だけでどんな状態かありありと浮かぶ。

 ひとえにカズマの説明がうまいのか……いや、単純にいつもの光景だから想像がつくだけか。

 起こしにいくと大抵、枕がヨダレでびしょびしょの洪水警報発令地域になっている。

 流石は水の女神様。

 

「あ、カミトさん。おはようございます」

「おはよう、カミト」

「おはようございます、カミト。よく寝られましたか?」

「うん、おはよう。お陰様で全身筋肉痛ですよ♪」

 

 これには俺も思わずにっこり。

 ところで、なんでみんな青ざめて震えてるの? 

 どうした? 笑えよめぐみん。

 

「あ、そうだ。悪いけどアクアを起こしてきてくれないか? ゆんゆんの方で寝てるとなると俺は入れないからさ」

「サー、イエス、サー……」

 

 いやー、持つべきものは信頼しあえる仲間だね。

 誘導尋問? 圧政? 恐怖政治? なんのことかなー? 

 え、たまに叛逆されるだろって? 

 あれは叛逆じゃなくてただの討論だから。

 

「そうだ、ここら辺に川ってないか?」

「川?」

「アクアが来るまでに顔を洗っておこうかと思って、水道とかでもいい」

「……水の魔法使えばよくね?」

「あぁ!」

 

 ポン! と掌を叩く。

 確かにその通りだよな。

 まったく、回復魔法の件といい今回といい、俺にはどうもアーク・プリーストの自覚が薄いようだ。

 今回に至ってはスキルの存在自体まで忘れてた、他の人が聞いたら確実にキレるだろうから口にはしないでおくけど。

 今、なんとなくめぐみんの気持ちがわかったような気がする。

 

『クリエイト・ウォーター』

 

 ━━ぱしゃぱしゃごしごしぺちぺち

 

「ふぅ、サッパリした。えぇと……」

「カミトさん、これ……どうぞ」

「お、ありがとゆんゆん」

 

 ポケットの中をゴソゴソしていると、ゆんゆんから手拭いを渡された。

 顔を拭くものが欲しかったので助かる。

 こんなに気が使えるのにボッチなのか……それだけ紅魔族の中では珍しいのだろうか? 

 よく里なんて作れたな。

 

「これ洗って返すから、ちょっと待って」

「い、いえいえ! そんなにしなくても大丈夫ですから! そのまま返してもらって結構ですよ!」

「顔の汚れが浮かんだ水を拭いたのとか、イヤだろ?」

「いえいえそんなこと! むしろ大好物です!」

 

 テンパり過ぎておかしな事を口走っている。

 大好物って、食べ物じゃないんだから。

 それとも、ゆんゆんにはハンカチを食べる奇癖でもあるのだろうか? 

 そうだとすればボッチなのもいたって納得はできるが……

 流石にそれは無いと思いたい願いたい。

 ……疑うわけじゃないけど、一応聞いてみるか、疑うわけじゃないけど。

 

「なぁゆんゆん、一つ聞きた━━」

「魔王軍だ――――――!!!!」

「なに、魔王軍!?」

「魔王軍だって!?」

 

 見張りと思わしき人の叫びを聞きつけ、辺りが騒がしくなってきた。

 魔王軍の襲撃、本気で潰そうとしてきたよう……なのだが。

 しかし、住民たちに忙しさは見受けられず、非常事態とは思えないほど焦りがない。

 非常事態というより、何かのイベントでもあるかのような感じだ。

 何故だ? 

 近くを歩いていたご老人に話を聞いてみる。

 

「あの、すいません。魔王軍が襲ってきた……んですよね?」

「ん? あぁ、旅の人ですか。よければ見ていきます?」

「「「「()()()()……?」」」」

 

 …………

 ……

 ……

 

 場所は変わって里の郊外。

 見渡す限り、いかにも悪人面した連中がぞろぞろと来た。

 その先頭には蛇のような下半身をした女性が立っている。

 あれがラミアというやつか、初めて見た。

 爬虫類族に分類されるのか、それとも悪魔族か、あるいは異常に懐の広い戦士族か……多分爬虫類族だとは思うけどさ。

 ま、それは一旦おいといて……

 

「ライトオブセイバー!!」

「ライトオブセイバー!!」

「ライトオブセイバー!!」

「ルルァイトォ! オブゥ! セイブヮアアアアア!!」

「グギャアアー!」

 

 数人の紅魔族は光を纏った手刀でバッタバッタと薙ぎ払っていく。

 この人たちはライトオブセイバー以外の魔法を知らんのだろうか? 

 ……カッコいいからってだけだな、多分。

 しかし、パッと見はふざけてるようにしか見えなくても、そこは流石紅魔族といった感じ。

 無双系って実際に見るとやられる側に同情してきて、最早、魔王軍の皆さんが可哀想になってくるレベル(おまいう)。

 

「あれ、ここに来たときに襲ってきたニート集団ですよ」

「あぁあの……なんていったっけ?」

対魔王軍遊撃部隊(レッドアイ・デッドスレイヤー)ですね。こーゆー時しか働きませんし、任せておいていいでしょう」

「……ですってよ、カズマさんや」

「こっち見んな! 何か!? 俺もあいつらと同類とでも言いたいのか!?」

「え“っ!?」

「よぅし貴様らそこになおれ、一人づつその考えを叩き直してやる!」

 

 なんて雑談している間にも、対魔王軍遊撃部隊(レッドアイ・デッドスレイヤー)の皆さんが本業通り魔王軍を斬り倒していく。

 絶えず血飛沫が噴き出している様は字面以上にエグい。

 文字だけだからR15ですんでるけど、これが映像作品だったら……変わらないか、今時は。

 進撃○巨人の実写映画よりはいろんな意味でマシな絵面だろうし。

 

「えぇい引け! 撤退だ!!」

 

 1/3ほどの兵士を失ったあたりで、例のラミアが撤退を命じる。

 全体的に統率は執れているが、やはりというか一部は命令を無視して突撃していく。

 しかし、その甲斐空しく首をはねられその場に倒れこみ動かなくなった。

 一方の下手人たちは深追いする事なく、無謀にも向かってくる者だけに刃を向けている。

 アクシズ教の魔王絶対殺すマンな姿勢とは違い、あくまで防衛のようだ。

 ……完全に過剰防衛だけど。

 

「最近多いんですよね、魔王軍」

「猪に田畑荒らされるぐらいの頻度で来てるの!?」

「いえいえ、流石にそこまでじゃありません。せいぜい猿が里に降りてくる程度ですよ」

「大して変わらねぇよ!?」

 

 場所によっては後者の方が多い所もある。

 いや、このくそったれな世界に、元の世界のものさしで考えていいものか……。

 もしかしたら、魔法の力を感じ取ってあんまり降りてこないのかも。

 このあたりには「一撃ウサギ」なんていう猛獣も生息しているらしいし、強く生きてほしいものだ。

 

「これで終わりだと思うなよ!!」

 

 話を聞く限り、これ一回や二回じゃないよね?




……うん、言わなくてもわかる。
今回、冗長が多いんですよね?
徒然なるままに筆を走らせてたらこんなんになりました、後悔はしていない。
作者が介入するのってどうなんでしょう?
ギャグだからいいよネ!

そんなこんなで次回予告ゥー!
次回 パワーボンド
 デュエルスタンバイ!


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番外編
幕間 其ノ剣ハ、神ニスラ届キウル ~前編~


コラボ回
遊霧 粋蓮様より 『魔導ナル剣士ノ物語』

※注意!
この話は『魔導ナル剣士ノ物語』とのコラボ回です。
読んでイメージが崩れる恐れがありますのでご了承下さい。


どうも、カミトです。

現在、アクアとデート……という名の買い出しに、商店街にいます。

いや訂正、商店街にいた。

 

「少し休むか」

 

商店街を抜けて、少し裏に入った道。

荷物を置いてベンチに腰を掛ける。

同時に、ふぅとため息を吐き出す。

 

結果的に言えば、大漁であった。

お店の今後が心配になるレベルで。

 

肉、魚、野菜のほか、果物、キノコ、調味料、お惣菜、スッポン、マムシ……などなど。

お裾分けしても消費しきれるかどうか……中には、お裾分けしずらいブツもあるし……。

スッポンとかマムシとか、明らかに確信犯だろ。

 

「はぁ、楽しいには楽しいけど、デート的な楽しさじゃないよな。デートってもっとこう、服とかアクセサリーとか買ったりするような……」

「そう?私は楽しいわよ。みんなが私を崇めてくれて」

 

既婚の奥様方から『あらあら、女神様の祝福があるといいわね~』という話をかれこれ91回は聞いた。

ちなみに、会った人数は7人。

一人あたり平均21回聞いた計算になる。

というかアクア、多分それは崇めてるんじゃなくて祝ってるんだと思うぞ。

あなた祝福する側でしょ、女神なんだから。

 

「カミトとアクアじゃないか。その荷物は……あー…」

「ダクネスか。まぁ、多分お察しの通りだよ」

 

苦笑いで俺の足元を見る。

ダクネスは大量の荷物を見て察した様子だ。

ホントにどうしようか、特にマムシとスッポン。

 

「断ったんだけどなぁ……押し負けて、つい」

「それだけ慕われているということだ。胸をはっていればいい」

「だからこそ余計に断りづらいんだ。はぁ……」

 

再びため息を吐いて、頭を垂れる。

申し訳ない、そう思うほかにない。

万が一、彼らが破産すると俺が原因になるわけで……。

『サービスのしすぎで破産した』なんて目も当てられない。

 

「彼らも商いを営んでいる身だ。その辺りは弁えているだろう」

「……この肉、300エリス」

 

肉屋で買った肉を見せる。

誰が見ても高そうな、程よく霜の乗った肉だ。

ラードもしっかり処理してあり、おおよそ気軽に手は出せない代物だ。

 

「どうせ、100gあたり300エリスというオチだろう?」

 

多分、そのぐらいはするだろう。

現代風に言って『A5ランク』にすら相当する程だ。

だれだってそー思う、俺だってそー思う。

しかし、事実は小説より奇であった。

 

「問題ででん!『1kgあたり150エリスの肉を2kg買いました。さて、お代はいくらでしょう?』参加者のアクアさん、お答え下さい」

「えーっと……わかった!300エリスね!」

「大正解!つまりはそういうことだよ。はぁ……」

「……お前も大変だな」

 

わかって頂けてなにより。

基本面倒を起こす側なのにそれを解決して感謝されるって、これなんてマッチポンプ?

貰える物は貰っておくにも限度があるだろうに。

……考えれば考えるほど、俺の詐欺師疑惑が確信に近づいていく。

今度は冤罪でも何でもないので、訴えられたら確実に敗訴する。

 

 

 

ふと、あちらから男女二人が歩いてきた。

歳は同じくらいかな?

キョロキョロしているので観光客かとも思ったが、こんな裏道に入ってくるあたり捜し物か何かだろうか?

 

あ、目があった。

 

すると、男のほうが近づいてきて話かけてきた。

 

「あんたら、この街の人か?」

「ああ。そっちは捜し物かなにか?」

「人を捜しているんだ。けど俺たち、この街に来たのは初めてで、おまけに文字も分からないんだ。よければ手を貸してくれないか?」

 

人捜しかぁ……。

俺であれば、この街の知人もそれなり多いし、屋外に限るが上から捜すこともできる。

見つけられるかはともかく、しらみ潰しにくらいにはなるだろう。

 

「俺は大丈夫だが……どうする?」

「私は手を貸そう。人手が多いにこしたことはない」

「わ、私は……」

 

アクアは答えあぐねている。

当然だ。

デートの途中で人捜しなんて、水を差すことに他ならない。

分かる、すごく分かる。

どんな答えであれ、俺はアクアを尊重しよう。

無論、呼び掛けぐらいはするけど。

 

「……や、やる!やったろうじゃない!」

「俺が言うのも何だが、いいのか?」

 

気合いの入った返事に面食らう。

思わず聞き返してしまった。

……ぶっちゃけ、アクアはごねて嫌がると思ってた。

そして慰めてる内に寝る未来まで予想していた。

女神様らしく迷える子羊には手を差しのべるんだなぁ、と惚れ直した。

と、当の女神様は不適に笑みを浮かべて手招きしている。

 

「アクア、ホントにいいのか?」

「これは私の女神様っぷりで信者を増やす一攫千金チャンスよ。やったねカミト、信者が増えるよ」

「やめなさい」

 

しかし、理由はともかくそのいきやよし!

曲がりなりにも、人助けはいいことだ。

 

「その人の見た目の特徴とかは?」

「……そういえば聞いてないな」

 

……。

 

「じゃあ、その人の名前は?」

「……わからない」

 

……。

……。

 

「ご住所は?」

「……」フイッ

 

……。

……。

……。

 

「森で木葉見つけさせるとかクライアントだ!?」

「クライアント?」

 

ダクネスが不思議そうに首を傾げる。

彼らが個人的に探していると思ってるらしい。

 

特徴を()()()()()ということ、街に来たのは初めてということ、それ以前にその人を一切知らないということ。

これらからして、クライアントがいるはずだ。

以上をダクネスとアクアに懇切丁寧説明する。

 

「ふむ……しかし、何故話さないのだ?秘匿するにしても、これでは捜しようもないではないか」

「さてね。なにせクライアントっつっても、相手が天の声じゃなぁ……」

 

も少し教えたれよ天の声。

無茶ブリにも限度があるだろ。

現に、ここのブラック企業所属の派遣社員共が困ってるんだが。

お導きどころか迷宮入りだわこんなん。

 

「よくもまぁ天の声だけで、知らない場所で知らない人捜しなんてわざわざやろうと思ったな。めぼしい理由でもあった?」

「理由というか……『毎朝必ず(こむら)返りする天罰が下る』とか言われて仕方なくというか……」

 

腓返りって、またやることがショボい。

ウチの女神様もこないだ似たようなこと言ってたな。

カズマの時にはポテチ食ってたとも聞く。

三幻神(本体)も、あの娘たちに『主様』呼びをさせたりしてたような……こっちは後で止めさせたけども。

天界には暇神(ひまじん)しかいないのか。

 

「「私(エリス様)は暇じゃない!!」」

 

心のボケへの的確なツッコミご苦労様です。

千年眼でもあるの?

手札見えちゃうの?

ま、それはともかくとして、だ。

 

「じゃあむしろ、その天の声から何のお告げを授かったのさ?」

「それがなぁ……この街に、()()()()()()()がいるから戦ってこい、ってさ。いるわけないだろ、そんな人。おとぎ話やメルヘンじゃあないんだから」

「……あーうん、確かにな……うん……

 

ソーダネ。

イルワケナイヨネ。

ソンザイシナイヨネ。

メルヘンジャアナインデスカラネ。

 

……。

……。

……。

 

 

うわぁー……言いづらい。

どうしよう。

その人、絶対俺だよ。

心当たり有りすぎて申し訳ない。

一思いに『ごめんなさい、それは自分です』と言えたらどれだけ楽だろうか。

俺の後ろメーター(後ろめたい度合いを表すメーター)がぐんぐん上昇中だ。

 

話は変わるが、視界の端でアクアが顎に手をやってうんうんと熟考している。

あ、閃いたっぽい。

キュピーン!という効果音の付いた電球が見えるよう。

 

「ねぇ、その『神を従える人間』ってカミトじゃない?」

「カミト……って」

 

男がこちらへ振り向く。

先ほどとは一変して、突き刺すような鋭い視線で俺を見据える。

 

「そこのあんたか?」

 

あらまやっぱり気付かれた。

黙っていたの、不味かったかなぁ……。

これって証拠隠匿に当てはまるのかな?

黙秘権は適用されます?

 

「まぁ……恐らくそうだな。心当たりはある」

 

反論も沢山だが。

ばつが悪くなって目を反らす。

すると、男は腰を低くして腰元の刀を抜き放つ。

漆黒の刀身に一輪の桜が彫ってある美しい業物だ。

 

 

……ん? あれ? 刀? この世界で?

しかも、よく見ると服装も少し現代風だ。

仮に転生者だとしても、文字が分からないのは不自然だ。

日本人が集う集落かなにかがあるとも考えにくい。

いったい、何者だろうか?

 

あるいは……

と、1つの仮説が過る。

 

(……だろうな)

(でもでも、どうやって?あの人、フツーの人間だよね?)

(……少なくとも、()()()……じゃ、なさそう)

 

目的は戦いで間違いないだろう。

この際、天の声もなにも関係はない。

戦って、その後に色々聞けばいいか。

 

創世の剣を抜き、俺も構える。

あちらは構え方からして、一目で剣術を修めていると分かる。

それほどに洗練された構え方だ。

対して俺の構えは、右足を前に出して剣を右胸の前で構える、レイピアでよく見るような構え方。

死にたくも死なせたくもないので、速攻重視の構えをとる。

 

「……俺は空凪 蓮(からなぎ れん)。あんたは?」

天城 神人(あましろ かみと)だ。これでも一応聖職者をやっている」

「神と呼ばれる聖職者、ねぇ……」

「ははは、それを言われると耳が痛い」

 

それから数秒がたった。

だれが言うでもなく、視線を合図に睨み合う。

そして体を前傾姿勢にして踏み込み「「待て待て待て待て待て!!」」

 

「「……?」」

 

外野からタイムがかかった。

ダクネスと男と一緒にいた女性が慌てて制止に入る。

 

「二人とも場所を考えろ!!」

「こんな裏道じゃなくて、もっと広い場所でやって!! 被害出るから!」

「「ごもっともです……」」

 

返す言葉もない、全くの正論だ。

ぐうの音も出ないとはこの事か。

 

「じゃあどこでやる?外の草原とか?」

「そうだな……2秒間、目を瞑ってくれるか」

「……?まぁ、わかった」

 

とりあえず、指示に従って目を瞑る。

相手のホームグラウンドかも、とも思ったが、仮になにかあってもその時はその時だ。

どうにかなるなる!

 

「無窮へと誘おう」

 

…………

……

 

「もういいぞ」

「はぇー……」

 

視界に広がるのは、未使用のキャンバスだった。

御影石のような感触の、しかし真っ白な床。

日も月も星もない、だが明るい宙。

文字通り、なにも無い……いや、なにも()()()()()()()世界。

 

「ここら一帯()()()()()()()()のか……」

「ご明察。ここは次元の狭間、無窮の大地だ。故に変化も時間の流れもない。あっちで時間が経ってても1~2分の誤差くらいだろうな」

「なんてご都合主義な……」

 

ここまで決闘(デュエル)に適している場所もなかなか無い。

 

ともあれ、ここなら周囲の被害を考えずに戦える。

普段なら出来ない、周りの地形に被害を及ぼす程の広範囲雷撃もブッパなせる。

温度調整のきかなくなる自爆&自己蘇生の不死鳥戦法も使えるのだ!

 

「ルールはどうする?終わりぐらいは決めといたほうがいいんじゃないか?」

「そうだな……どっちかが気絶するまで、でどうだ?」

「了解。他は……まぁいっか」

 

「ふぅ……」

「……………」

 

互いに構え、睨み合う。

阿吽の後、蓮が踏み出した。

ヤベッ!

予想より速い!

間に合うか……!

 

「はあ!」

「あぐっ……!重っ、たいな……」

 

疾風迅雷の一撃、そういう他にない。

防御には成功したが、咄嗟だったので力が入りづらいったらありゃしない。

鍔競り合いに持ち込むも体勢が悪く、圧されるばかりだ。

こちらも負けじと身体強化をかけ、徐々に圧し返していき、拮抗する。

 

「っ……!」

「ぐぬぬ…………はあああああ!!」

「このっ……おらぁ!

 

手元ばかり気にしていたところに蹴りを食らった。

足を引いていない分軽くはあるものの、前のめりになったところに入ったので深く刺さる。

 

腹部をおさえ、よろけたことで更なる追撃を許してしまう。

刀だけではない、身体全て使う息つく間もない猛攻の雨あられ。

それでいて立ち回りも上手く、時折反撃を仕掛けるも防御ないし回避されてしまう。

一朝一夕で長年の努力を上回るほどの才能は、俺には無いらしい。

 

「ええい、ファイアー!(ただの火炎放射)」

「うおっ!魔法もできたのか……」

「魔法……んーまぁ、そんなとこ」

 

原理は違っても、やってることは魔法とたいして変わらないし、勘違いしてるなら魔法ってことでいいや。

別名、口から火を吐く宴会芸ともいう。

 

ボオオオオオオケホッゲホゲッホゲフッ!!むせた……」

「……隙あり!」

「ゲッフゥ!」

 

またもや腹に蹴りをくらう。

今度は、さきほどより重く深い一撃だったため、意識がとびかけた。

 

(死なせたらマズイと思って出し惜しんでたけど、この強さ……死にはしないな。じゃあそろそろ……)

 

『天空竜化』

 

何もない世界に突如、雷雲が立ち込める。

天空より轟く雷鳴と咆哮。

冥界を思わせる暗雲の中、迸る一条の赤い竜。

古代エジプトの民は、この竜を神と崇め、こう呼んだ。

 

『オシリスの天空竜』と。

 

 

 

『さぁ、第2ラウンドだ』 




皆様、お待たせ致しました!
コラボ回 前編でございます。

カミト〈おい、今回も投稿が大幅に遅れたな。コラボ回なのに。コ ラ ボ 回 なのに!!

作者〈申し訳ございませんんんんん!!新作案が大量に思い付いたり、ソシャゲの年末年始イベントやったり、課題やったり、リンクスでオベリスクでたりで……。

カミト〈皆さん、こいつは1ヶ月以上前から書き始めてるのに書き直しやら新作やらで結局二分割とか……粋蓮さんと読者さんに訪問土下座して詫びろ!

作者〈ヤメテ!!顔も住所も知らない人に訪問されて、あまつさえ土下座されても迷惑でしかないから!!


……というわけで、後編に続きます。
一応、匿名で他の作品も執筆してはいるので気づいたらコメントで言っても大丈夫です。(違っても自己責任でお願いします。)

遅れたことについては、本当に申し訳ございません。
再発防止に努めたい……。


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幕間 其ノ剣ハ、神ニスラ届キウル ~後編~

コラボ回 後編でございます。



カミトに一条の光が差す。

光は何もない世界を照らしながら徐々に輝きを増していき、ついには蓮を飲み込んだ。

白光が視神経を伝って脳に焼き付く。

反射的に目を瞑って顔を背けるも、焼き付いた白は依然として残っている。

20~30秒ほど経ったころ、次第に瞼の裏が暗くなってきたので、目をパチクリと慣らしながら少しずつ開けていく。

雲が浮かばない筈の無窮だが、何故かとても暗い。

最初は目が眩んだからと思っていたが、目元の不快感が和らいでも一向に暗いままだ。

疑問に思い、空を見上げる。

見上げた視線の先には、少なくともこの世界にはあるはずのない()()が唸り声を発していた。

 

『さぁ、第2ラウンドだ』

 

天空を統べる神が、雷鳴と共に降臨する。

双貌を持った竜が、無窮の空を駆け巡る。

 

赤く染まった身体は、雷雲の中を何度も往復していながらなお果てが見えないほど長い。

上下2つの口を携えており、さらにその上には晴天のように青く輝く宝珠があしらわれている。

大気からは張りつめた緊張感だけでなく、産毛を波打たせる静電気が伝わってくる。

 

『その剣を見極めよう。己を知らぬ蟷螂の斧か、あるいは神に届きうる至極の剣か』

「……空凪流の真髄、心行くまでご覧に入れよう!」

 

見下すカミト、見上げる蓮。

さながら、ドラゴン退治にやって来た勇者のよう。

もっとも、どちらが悪でどちらが善、という関係ではないのだが。

ぷるぷる、ぼく、わるいオシリスじゃないよ。

いや、どらちかといえばゴッドイーターだろうか?

『ラー』というアラガミが存在するそうな。

ま、それはさておき。

 

互いの視線が交差する時、二人の頭は全く同じ事を考えた。

 

((あぁ……俺、今ものすごく恥ずかしいこと言ったな))

 

覆水盆に返らずというやつだ。

 

…………

……

 

場を無窮に移し、既に2時間が経過した。

 

どちらもあと一歩のところで決定打が決まらず、戦況は滞っていた。

両者がじわじわと消耗していくばかり、近年稀に見る泥試合が続いていた。

 

『ゴッド・ハンド・クラッシャー』!!

 

カミトは『オベリスクの巨神兵』となり、拳を振るっていた。

消耗すればするほど、ラーやオシリスの力は衰えていく。

このような状況下ならば、破壊力の変わらないただ1つのオベリスクこそ最適解となる。

無論、これ以外にも最適解に足る活躍ができる場所はあるが。

 

「はっ!……はぁ、はぁ…………ふぅ」

 

蓮もすんでのところで回避し、呼吸を整える。

手数で劣っている中、感情に身を任せるのは愚策だ。

愚直に打ち合っていた時とは比べ物にならないほど張り積めた緊張の中、『最低限の~』だとか『最大限の~』とか考える余裕は無い。

その場の思いつきで動くほかにない。

それでも、なおも攻防は激しさを増し続ける。

文字通り規格外の攻防。

2つの台風の目は、()()()と言う。

まだ足りない、と。

友達とまだ遊んでいたいと駄々をこねる、二人の幼児がいた。

故にこそ。

切り札を斬る。

 

「ふぅ…………」

 

刀を納め、目を瞑り、頭を冷やす。

ふと、いつだか聞いた師匠の言葉を思い出す。

……嘘、何を言っていたかさっぱり思い出せない。

まあ、なんとかなるだろう。

敵を前にして剣を納めた。

これには二種類の意図で取られる。

『降参』か『戦法』か。

しかし、少なくとも降参ではないと、瞑ったはずの眼光が語っている。

であれば自分もそれに応えようと、残り少ない魔力を雷に換える。

もし剣を納めるのが戦法であり、得物が刀であれば、まず思い付くのは居合切りだ。

ならば、心を乱せば隙が出来るのでは?

 

『超伝導波サンダーフォース』!!

 

 

 

「…………ふっ!」

『ッ!?』

 

蓮の姿が突如として視界から外れる。

見失う、という一対一ではおおよそあり得ない事態に、急ぎ思考を巡らせる。

自分の思考には頼らず、自分の勘だけを頼りにした。

結果、物理的にあり得ないはずの未来を予想した。

 

(電撃ごとブッた斬るつもりか!?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……と、思っていた時期が私にもありました。

 

『電撃を斬る』と言ったな?

あれは嘘だ。

いやまぁ、普通に考えればさ、電気なんてモン斬ったら感電するに決まってるじゃん。

そもそも斬れないし。

例え斬れたとして、放電やらスパークやら起きて危ないし。

 

単純なことだった。

超スピードかワープかなにかで上空に回避した、それだけ。

 

原理も気にはなるけど……今それどころじゃない!

頭から自然落下しながらも、未だ目は閉じたまま、居合の構えを保ったままだ。

空中だからと迂闊に手を出せば、それこそ手痛いカウンターを貰うことは目に見えてる。

どうする?

 

……打開策はある。

が、魔力はギリギリ。

というか、打開策といっても、必ず打開できるとも限らない。

いままで感じたことが無いほど身体はダルいし、目の焦点も定まらない。

こちらに来てから忘れかけていた()という感覚が、再び歩みよるような気さえした。

 

けど、

 

 

 

 

いやだ……

 

俺は……

 

 

『負けたくないイイイィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!』

 

「なんーーーがっ!?」

 

自然落下をしていた蓮だが、強烈な衝撃によって体勢を崩し、何が起きたかも分からないまま風上を向く。

 

絶叫に応える様に、闇は辺りを飲み込んでいく。

止めどなく闇が広がる中、仄かな輪郭として見えてきたのは黒い球体だった。

否、それは既に球体ではなく、蠢きながら形の変わり続けるナニカだった。

黒いナニカは形を変えていき、人間のような形を形成していく。

依然として真っ黒だが、どこか見覚えのあるような顔の造りをしていた。

まるで、()()()()()()()()()2()()()()()()()()……。

 

 

『邪神アバター』

三邪神の一柱にして、最大の奥の手。

オリジナルをも上回る、究極の偽物。

最も優れた能力を持つ者を上回る力を持つ邪神。

対象に制限は無い。

例え、蓮であれ、アクアであれ、ダクネスであれ、めぐみんであれ、カズマであれ、ゆんゆんであれ、ウィズであれ、ベルディアであれ、デストロイヤーであれ、バニルであれ。

例え、()()であったとしても。

 

人の『修行』や『鍛練』といった努力を踏みにじる、最悪の禁止カード。

 

 

『正真正銘、最大最悪の奥の手だ。全てを模倣しそして超える、禁止カード』

「……ああ、最悪だ。そっちがその気なら、こっちも出し惜しみ無しだ」

 

蓮は軽く息を吐くと、

 

 

 

「魔源、解放」

 

 

 

己の全魔力を解放した。たとえ、カミトも強くなるとしても。たとえ、“アイツ”に怒られるとしても。

 

「あと少し、付き合ってもらうぞ」

『それはこっちの台詞だ』

 

全身に萌葱色の粒子を纏い、髪を軽く逆立たせた蓮は、“今”を楽しむ為に静かに構える。

対称的に、カミトは肩の力を抜いて剣先を地に向けていた。

次の瞬間、空間に衝撃が走った。

少し遅れて、音叉の様な金属音が波打つ。

それはカミトと蓮の剣がぶつかりあったモノだった。

 

 

出し惜しみをなくした二人の戦いは激しさを増していく。

規模や派手さこそ先程より劣るものの、その質は先程の比ではない。

埒が明かないと感じたのか、カミトは剣を引き後ろに飛び下がった。

そして、地面に着くと同時に残像を残して視界から消える。

背中、うなじ、脚、肩、胸、頭、腹、脇……その身を切り落とさんと吹き荒ぶ剣舞。

対する蓮は漆黒の刀と萌葱色の魔力を実体化させて鎖へ、槍へ、爪へ、壁へ、剣へと何度も形を変えてカミトの攻撃を防ぎ、攻める。

何十も、何百回打ち込んでも衰えない二人の戦いは、徐々に加速すらしていく

カミトはさながらベアリングの様に、打ち込めば打ち込むほどキレや速さに磨きが掛かっていく。

今の蓮を表すのなら、「千変万化」が最適だろう。

相手に慣れを与えぬよう、常に最適化し続ける。

 

だが、この戦いの終わりがやって来た。

 

『……ははっ、燃費、悪すぎだ……バカ野郎…』

 

ドサッ……。

 

「……ははっ、ここまでか……」

 

ドサッ……。

 

二人はお互いに魔力切れを起こし、倒れ込んだ。

二人が最後に見た無窮の空は、どこまでも無垢な虚空だった。

 

~ アクセルの街 裏道 ~

 

女(神)三人寄れば姦しいと言うように、残された女子組は漢同士の戦いなどいず知らず、話に花を咲かせてキャッキャウフフしていた。

 

「それでね、その時の蓮ったら冷たく「おいこら、初対面の人に俺の悪印象を植え付けるんじゃねぇよ」あ、おかえりー」

「お帰り、早かったわね?」

「どちらが勝ったのだ?」

 

「「こいつ」」

 

同時に、互いを指差した。

仲がよろしいことで。

そして、これまた仲良く、驚いた様子で同時に顔を見合わせる。

 

「最後に立ってたのはお前だろ!?」

「お前が出し惜しみしなきゃ勝ってたからお前だ!!」

「立ってた奴の勝ちって言ったのはお前の方だろうが!?」

「ガス欠で勝ったなんて納得できるか!!」

「デッキ切れも歴とした戦略だ!!」

「そういう問題じゃねぇよ!?」

 

唐突に言い合いを始める二人。

しかも、互いに「お前の勝ち」だと言って譲らない。

呆気にとられてポカーンとしている3人。

 

(まるで、すぐ熱くなる子供だな……)

(自分の負けを主張するって、一体どんな状況!?)

(なんかよく分からないケド、ようは互角ってこと?)

 

全力を出し切ったのが嘘のように言い合いは続き、最終的に、じゃんけんによる厳正な審査の結果「引き分け」で可決したらしい。

 

全300戦

カミト:100勝100敗100引き分け

 蓮 :100勝100敗100引き分け




こんにちは、ひきさんです。 

遊霧 粋蓮様とのコラボ回、いかがでしたでしょうか?

書きたいことが多すぎてなかなか纏まらず、結局ぐだくだとこんなに間が空いてしまいました。
これからも亀かもしれませんが、更新を続けていきたいと思っております。
また、Fate二次創作や、ONE PIECEの再開なども考えておりますので、ご期待いただければ幸いです。

それでは、
次回 天使の施し
 デュエルスタンバイ!


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