綺麗になった魔王様 (寅好き)
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プロローグ

サタンの小説さえまだ完成させていないのに、ついつい思い付いてしまったがために書いてしまいました。
しっかりサタンも完成させますのでお許しください。


 数百年前のことであった。

世界を絶望と恐怖に陥れた強大な力を持つ魔王がいた。

 たった一人の魔王のために世界が滅ぼされそうになった時、偉大な武道家『無泰斗』により電子ジャーに封印され、世界には再び平和が戻った。

 しかし、その平和も再び破られようとしていた。

 3人の者達によって……。

 底が見えない、まさに地獄まで続いているのではないかと見紛うほど深く、闇に包まれた崖のしたに3人の者たちがいた。

「ピラフ様見つけましたよ!」

戦闘型のロボットに乗り込んでいる、紫色の忍者服に身を包んでいる犬男が自分の主に報告をいれる。

「よくやったぞ、シュウ!これで世界は私のものだ。フハハハハハ」

この報告に気分をよくした、中華服を着込み、幼児と変わらない程の背丈をする、モンスターのような外見をする主のピラフは高笑いをする。

「やりましたねピラフ様。では飛行船に帰還いたしましょう」

となりにいる紅一点、戦闘服に身を包んだ女性マイがそろそろ帰還しましょうと提案する。

この主人は笑いだすとなかなか止まらないということを熟知していたからだ。

「そうだな。では帰還したらすぐにでも封印を解くぞ!!」

「はい、ピラフ様」

三人は崖を乗り込んでいるロボットで崖を登り飛行船に帰還していった。

 ピラフ達3人の前には、御飯を炊く電子ジャーが置かれている。

ただし、この電子ジャーは普通のものではない。

かなりの厚みをもった重厚なもので、蓋には古くはなっているが『魔王封印』と書かれた札が貼られている。

 その威圧感に少し気後れするピラフであったが、今まで邪魔され続けてきた、世界制服が目の前にまで迫っていると、自分を勇気付け、遂に電子ジャーの封印の札に手をかけ剥がした。

「よし、札は剥がした。では蓋を開くぞ…」

シュウとマイは何も言葉を発することはなく、固唾を飲んで主の行動を見守った。

「開くぞ、開くぞ、本当に開くぞ~」

「早く開いてください」

言うだけで行動に移さない主にシュウとマイが早く開けるように促す。

「う、うむ」

ピラフがその電子ジャーを開ける。

 開かれた電子ジャーの中から白い煙が吹き出し、その煙に大きな影が写し出される。

 辺りの煙が晴れると、そこには、体長二メートルを遥かに越えるであろうほどの体躯を持ち、大きく胸が開いた青いスーツを着込み、白いマントをはためかす男が立っていた。

「魔、魔王様が復活したぞ~。魔王様、私が貴方の封印を解いたものです」

ピラフは怯えながらも魔王に向かって発言する。

「おぉ、貴方が私の封印を解いてくれたのですかぁ、感謝感激ですぅ」

声はかなり渋く、普通に話せばかなりの威圧感があるはずである。

しかしこの魔王は、違った。体をくねらせながら、かなり違和感を持つしゃべり方をしたのだ。

「あ、あの、あなた様はピッコロ大魔王様ですよね?」

かなりの違和感を感じたピラフは尋ねる。

「私ですかぁ、私はダーブラと言いますぅ。確かに昔は魔王と呼ばれてました、恥ずかしい」

赤く上気した顔を両手で覆い恥ずかしがる本大魔王。

「おい、コイツ大丈夫なのか?」

「大魔王ではあるようですから」

「もう話を進めちゃいましょうピラフ様」

ピラフとマイとシュウが後ろを向いてヒソヒソと話し合いをする。

 結論として、変な所には目を瞑り、早く願いを言おうということになった。

「あ、あの、魔王様。早く世界制服をしませんか」

「なんだと!!」

「!!!」

「世界制服だとーーー!!!」

飛行船の中に怒号が走り、それと同時にダーブラを中心として突風が巻き起こる。

「うわ~、飛ばされる~。なんなんだあ?」

物に掴まりながらパニックになる3人。

「はっ、ごめんなさあい。はしたない真似をしちゃって。でもいきなり世界制服なんて悪いことを言い出すから怒れちゃって」

あまりの変わりように茫然とする3人。

 

 しかし、このままでは話は進まないので、意を決してピラフは質問をしてみる。

「えっ、魔王様は昔世界制服をしようとしたと昔話に語り継がれていますが」

「ええ、昔はそうでしたぁ。でもあの電子ジャーの中の暗闇で今までのことを考えていたら、悪いことをしてきたなぁって反省したんですぅ。だから封印が解かれたら、良いことをしよう。愛の大切さや平和の大切さを説こうと思ったんですぅ」

まさかの魔王らしからぬ発言に口を大きく広げて驚きのあまり立ち尽くす3人。

 そんな3人には構わず、ダーブラは歩みよる、人から見れば恐ろしい笑顔で。

「愛と平和の大事さを知らんお前達にはこのダーブラ様がその身に大切さを教え込んでくれるわ!!」

「ギャーーー!!!」

3人の悲鳴が辺りに響き渡った。

ダーブラの説教はその後ネチネチと半日に渡って行われたという。

愛に、平和に目覚めた本暗黒魔界の魔王ダーブラ。

この一筋縄ではいかない世界を導いていけるのか。




次回は時がたってラディッツ襲来編に飛びます。
大好きなピッコロを消してしまったのはかなり悔やまれますが、完全体セルに迫る力を持つダーブラが捨てゴマというのは悲しかったので考えた物語です。
ゲームでも良いダーブラがブウを倒すという話もありましたが。


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対ラディッツ

 元魔王ダーブラが復活してから早くも数年経った。

 地球の平和も脅かされることもなく、地球人は平和な世の中を謳歌していた。

 しかし、この世界には平和という言葉などほぼないと言っても過言ではない。

 そして、実際問題平和な日常が壊されることとなる。たった一人の宇宙からの来訪者により…。

 宇宙からの来訪者戦闘民族サイヤ人の生き残りラディッツ。

わずかな生き残りのサイヤ人の内の一人であり、地球育ちのサイヤ人悟空の兄である。

そのラディッツが悟空を仲間に入れるべく地球にやって来たのだ。

 しかしながら、悟空は残虐なサイヤ人の仲間になることに承諾せず、そのために悟飯を人質にとられることとなった。

 話はその悟飯を取り返すべく、悟空、クリリン、亀仙人がラディッツと戦いを始めたところから始まる。

「コイツ強すぎる…まったく動きが見えない」

「ワシらとは次元が違うのう」

クリリンと亀仙人が苦痛の表情を浮かべて呟く。

「クッソー、悟飯を返せ!!」

悟空もクリリンと亀仙人と同様にボロボロになりながらもラディッツに大声で叫ぶ。

「最後の通告だ。地球人の死体を百人分用意してこい!!そうすれば勘弁してやる。まずはそこの二人を殺してもらうとするか」

「人を殺すですってぇ!」

ラディッツの言葉を文字通りの地獄耳で聞き取る者がいた。

「いけない。私が何とかしてみせるわ!」

聞いていた者はそう言うと、目的地まで数千キロある道のりを一瞬で移動した。

 

「物騒なことが聞こえたけれど何が起こってるの?」

悟空とラディッツの間に突如現れたダーブラは悟空に問いかける。

「どうする悟空」

突如現れた乱入者に戸惑いを見せるクリリン。

それも当然であろう。

巨体で、恐ろしい形相をした男が渋い声でお姉言葉を操っているのだ。

怪しく思わないほうがおかしい。

 しかし、悟空は純粋であり、ダーブラの気から悪いやつではないと判断を下し、説明をしだした。

自分の息子が人質に取られたこと、返して欲しければ、地球人の百人の死体を集めることを。

黙って聞いていたダーブラの顔が青ざめる。

「なんて恐ろしいことをいうの。恐れちゃダメよダーブラ。こんな悪人こそ私がまっとうの道に導いてあげなくちゃ」

そう言うとダーブラはラディッツに歩みよる。

「なんだこのでかいのは」

少しずつ内股で近寄ってくるダーブラに困惑を見せ後退りをするラディッツ。

 しかしラディッツも戦闘民族の端くれだ。と気を入れ直しスカウターを起動させる。

ボンッという音と共に爆発するスカウター。

「ど、ど、ど、どういうことだ!戦闘力

が50万を超えただと…」

呆気にとられるラディッツの眼前にダーブラがたっている。

「私が愛と平和の大切さを教えてあげるわ」

そうビシッとダーブラは宣言すると、愛と平和はどうだこうだと懇切丁寧にまた熱心に説得しだした。

(恐れるな。俺は誇り高き戦闘民族サイヤ人なんだぞ!!)

そう覚悟を決めラディッツはダーブラに襲い掛かった。

豪雨のように降り続ける拳、止めどなく放たれる気功波や気弾、しかし、そんなことをつゆとも気にせずに愛と平和についてウットリとして話続けるダーブラ。

全くびくともせずに、傷すらついていない。

「このバケモンがー!!」

さらに攻撃を激化させるラディッツ。

その時だった。

「人の」

それまで動かなかったダーブラが左足を一歩前に出す。

「話を」

右手を付きだしラディッツの顔面を掴む。

「黙って」

そのままラディッツを持ち上げ

「聞いてよぉ」

降り下ろす。

とてつもない爆音と地響きが収まると、犬神家も真っ青の胸まで埋もれ足だけが天をむくオブジェが作られた。

「イヤァ、はしたないことしちょったわ」

ダーブラは自分の頭をコツンと叩きながらそう言うと。

「こんな状態だけど大丈夫よね。授業は寝ていても頭に入る人もいるし。あれどこまで話したか忘れちゃったわぁ。おバカさんね。キャッ。また最初から話してあげなくちゃ」

そう自分に言い聞かせるように呟くとラディッツを地面から引っこ抜き、目を回した状態のラディッツの耳元でこんこんと愛と平和について囁き始めた。

 そんなことが約10時間続き悟空達が眠り深い眠りに落ちそうになった時に終わった。

「アイトヘイワハダイジデス」

目の焦点は定まらず、死んだ魚の目のように色が失せた瞳をしたラディッツが戦闘民族とは思えない言葉を発していた。

 

となりでダーブラが嬉しそうにウンウンと頷いている。

ダーブラがなんと戦闘民族サイヤ人のラディッツを洗の…ごほん、説得して改心させた。

 

 

 



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結成!愛と平和の使者ダーブラ戦隊!!

 ダーブラの前に、ラディッツ、悟空、クリリン、亀仙人が整列している。

「おい悟空なんで俺たちがこんなことを」

「クリちゃん私語は慎みなさあい!!」

かなり疲れた顔でどうしてこうなったと辟易した感じで悟空に愚痴を溢すクリリンに、ダーブラからの叱責が飛ぶ。

「へいへい」

「クリリン貴様ダーブラ様に対してその無礼許さんぞ!」

クリリンの態度に憤怒するラディッツ。

ラディッツは既にダーブラ信者になっていた。

「いいのよぉラディちゃん。隊長としての私に威厳がないからクリちゃんにもバカにされちゃうのぉ」

ダーブラはそういうとヨヨヨと泣き始める。

「ダーブラ様…。クッ今回だけはダーブラ様に免じて許してやる」

「いいわぁラディちゃん。許すのもまた愛のなせるわざよぉ」

泣き止んだダーブラはラディッツを讃える。

「ダーブラ様」

「ラディちゃん」

二人で抱き合い大声で泣き始めた。

(もう嫌だ)

(おもしれえ)

(早く帰ってえっ〇な本読みたいのお)

二人の茶番のような姿を前にクリリンは疲れた顔で、悟空は楽しそうに、亀仙人はボケッと心の中で呟いていた。

「仕切り直しよぉ。ダーブラ戦隊。整列。番号!!」

ダーブラが番号を問う。

「一」

キレのある声でラディッツが続く。

「えっオラか。二」

戸惑いながらも悟空もそれにならう。

「えー俺もやるのかよ」

文句を垂れ流し番号を言わないクリリン。

その時であった。

「上官の言うことを聞けない悪い子は鉄拳制裁よぉ。歯ぁ食い縛れや!どぅおりゃあぁ!!!」

クリリンの顔面にダーブラの鉄拳が食い込む。

そしてぶっ飛んだ。雲を切り裂きながら。

そして数秒後飛んでいった反対側からクリリンが戻ってきてバウンドした。

「あらぁ少し力入っちゃったわぁ、テヘッ」

舌を出して頭を軽く叩くダーブラ。まさに地獄絵図だ。まあいい、反省するダーブラを他所に悟空と亀仙人はクリリンに駆け寄る。

「ダーブラ、てえへんだ、クリリンがピクピクして死にかけてんぞ!」

「大丈夫かクリリン」

悟空はダーブラにクリリンの状態について述べる。

亀仙人は心配そうにクリリンの頬をペチペチと叩いている。

 

「んもうしょうがないわねぇ。悟空ちゃんクリちゃんに仙豆あげちゃってぇ」

ダーブラが悟空に指示を出す。

「ああ分かった。食えクリリン」

亀仙人が口をおもいっきり開き、悟空が仙豆を押し込む。

ゴクッと呑み込む音がするとクリリンが何もなかったように起き上がった。

「はあ、なんか果てしなく長い道ととんでもなくデカイ鬼のようなおっさんが見えたぞ」

今死にかけて見た光景を述べるクリリン。

「んもう、弱いわねぇ。やっぱり強くなんなくちゃいけないわねぇ」

こうなったのには理由がある。

それはラディッツが改心し、少し経った後のことである。

◇◆◇◆◇◆

 

「ラディッツなにがあった返事をしろ」

 

ラディッツが乗ってきて悟飯を閉じ込めていたポッドから通信が入る。

「ア、アレハ。ベジータトナッパカ」

ラディッツはポッドに向かい通信をし始めた。

「コチララディッツダ」

「おお、ラディッツか。少ししゃべり方は変だが町がいねえな。もうカカロットとかいう奴を見つけて地球を制服したか」

通信先から入る問いかけに対してラディッツは憤怒の表情で怒気を撒き散らしながら怒鳴り散らす。

「チキュウヲセイフクダト。バカヲイウナ。ソンナヒドイコトデキルカ!」

「おい、ラディッツてめえそれは俺に対していってんのか。弱虫ラディッツが言うようになったじゃねえか。クイッで絞めんぞ!!」

通信先の会話相手怒りで我を忘れたように怒鳴り返してきた。

「アアソウダ、モンクガアルナラココマデコイ、クソヤロウガ!」

ラディッツも応戦する。

「てめえ、一年後を楽しみにしてやがれ!」

それだけ通信から声がすると通信は切れた。

ということで一年後にサイヤ人が地球に来襲することが決まってしまったのだ。

地球にとっては災難であるが、ダーブラはラディッツの進化を喜び、また悪人を改心させられると喜び勇んでいた。

◆◇◆◇◆◇

「いい皆ぁ。悪人を改心させるためにはかなりの戦闘力が必要なのよぉ。悪の心が強ければ強いほどにねぇ。そうするとぉ、あなたたちは弱すぎるわぁ。多分戦闘力1キリもないんじゃないかしらぁ」

「1キリ?」

聞いたことがない言葉に皆は疑問符を浮かべ、代表して悟空がダーブラに尋ねる。

「1キリは戦闘力の単位よぉ。まあラディちゃんの仲間が来るまでに最低でも10キリ位の力は欲しいわねぇ、本当だったら1000と言いたいぐらいだけどぉ」

そうダーブラが言うと、マントを投げ捨て

「かかってこいや!!実践で強くなるぞおおぉ!!」

いつものおねぇ言葉は消えドスの効いた声で修行始まりの号砲を鳴らした。

悟空、ラディッツ、クリリン、亀仙人に地獄のような修行の日々が始まる。

注:因みに1キリは戦闘力5万にあたるらしいです。



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愛と平和のダーブラ戦隊出動

 ありがたい感想を頂き再び再開しました。



「みんな~たいへんなことが起こったのよ~」

内股、腕はV字で正に女の子走りで、厳ついオッサン、いや元暗黒魔界の王ダーブラが走ってくる。

しかし、

「いくぞ、クリリン!わしのフルパワーかめはめ波じゃ!」

「全力で受け止めさせてもらいます。武天老師さま!」

亀仙人とクリリンは組み手をし、

「来いカカロット!ダーブラ様の為に俺たちは強くならなくてはならないのだ!」

「ああわかってらあ。だりゃー!」

ラディッツ、悟空も修行をしている。

 それぞれが集中しているために、ダーブラには気づいていなかった。

「み~ん~な~!」

「波ーーー!!」

「やりますね武天老師さま!」

「み~ん~な~!」

「カカロットお前の力はこんなものか!」

「まだまだだ」

何かがキレた音がした…

「俺の話を聞けーー!!オマエラー!」

それまでのおネエ言葉は吹き飛び、本性を表した、魔王が地面を殴った。

 ダーブラの腕が突き刺さった地面を起点として、半径10キロメートルが粉々に消し飛び、大きなクレーターができあがった。

 そしてその場にいた、亀仙人、クリリン、悟空、ラディッツは地面から足だけを天に向けて掲げ、植物のように意識を失っていた。

「あら~私としたことがぁはしたないまねしちょったわぁ。反省反省」

ブリッコポーズを決めながら舌を出して、頭をコツンと叩くダーブラ。

正に悪夢である。

 誰もが意識を失っていたことが幸いであった。

 ついでに言うと、この時ダーブラが作り出したクレーターに比べると、後々サイヤ人が攻めてきて、地球に与えた被害など、笑い話にもならないほどの軽微なものであったという。

◇◆◇◆◇◆

「申し訳ありませんでしたダーブラ様。ダーブラ様に気づかなかったとは、俺の不徳のいたす所です。腹を切ってお詫びを」

ラディッツは涙を流しながら土下座をし、顔をあげると、戦闘服を脱ぎ、気を纏わせた腕で腹を貫こうとした。

「ダメよラディちゃん!」

「ぶはーーっ!」

ダーブラの強烈な平手打ちがラディッツの頬を襲う。

 ラディッツはそのまま吹き飛び、数秒後、地球を一周し、地面に見事落ち、めり込んだ。

「命は粗末にしちゃダメよ。って聞いてるのラディちゃん」

「ダーブラダメだこりゃあ。兄ちゃん首の骨が折れてっぞ」

「あわれじゃのお」

「前の俺と一緒だ…」

悟空はブラリと力なく揺れるラディッツの首をツンツンし、亀仙人は手を合わせ冥福を祈り、クリリンは以前のことを思い出し青ざめていた。

「もうサイヤ人は柔ねぇ。悟空ちゃん仙豆あげちゃって」

「おう」

悟空は懐から仙豆を出すと、ラディッツの口に押し込んだ。

折れた筈の喉が、仙豆を飲み込んだ瞬間だった。

白眼を剥いていたラディッツはいきなり飛び起き、復活した。

 戦闘力は数倍になり。

「よかったわぁラディちゃん。もうあんなことしちゃあダメよ」

指を交差してばつを作り、ウィンクするダーブラ。

 亀仙人、クリリンにあまりのおぞましさに、鳥肌総立ち、戦慄が走り、悟空は苦笑いを浮かべるなか、感動したラディッツは咽び泣きながら、頭を地面に擦り付けて、侘びた。

 そんなこんなで時間が経ち、約一時間後ぐらいだった。

「なあ、ダーブラ。おらたちに何を言うつもりだったんだ?」

「そうよ大事なことを忘れてたわ。事件が起きたのよ」

血相を変えてダーブラが叫ぶ。

「なんかあったんか?」

「重大な事件よ。なんでもジンジャータウンで、若い姉弟が拐われたらしいのよぉ。許せないわよねぇ。ここに手がかりが映ってるテープがあるわぁ。みんなで解決するわよぉ」

「はいダーブラ様。しかし、テープを見るにも見るための道具が」

ラディッツの指摘にダーブラはハッとし、首を傾げる。

 ダーブラ、ラディッツ、悟空、亀仙人が考えている、そんな時だった。

「ここから近いのはブルマさんの家ですね。そこで見せてもらえばいいんじゃないですか」

クリリンが明確な答えを告げる。

「さすがクリリンよく気づいたな」

「いや誰でも気づくだろ…」

「たぶんブルマんとこならヤムチャもいるだろうし、アイツもおらたちの仲間にいれっか」

悟空が何気なく言った一言により、ヤムチャの運命も決まってしまった。

「新たな私たちの仲間がふえるのねぇうれしいわぁ。行くぞ野郎ども!!」

ダーブラの掛け声と共に、皆は走り出す。

 目指すは西の都。

 しかし、ここで重大な問題が、ダーブラ、ラディッツ以外は舞空術が使えないのだ。

「はあしょうがないわねぇ」

ダーブラはため息をつくと、天高く気弾を打ち上げる。

 気弾は空高く舞い上がると、花火のように弾ける。

 五分後、辺りにけたたましいプロペラ音が響き、巨大な飛空挺が現れる。

「でっけえな。ありゃあなんだダーブラ」

「私のマブダチのピラフちゃんの飛空挺よぉ。西の都まで連れてってくれるわぁ。みんな乗るわよ」

地上に着き、ハッチが開くと、ピラフ、シュウ、マイ、が降りてきて、ダーブラに頭を下げる。

「お呼びですかダーブラ様」

「もうそんなに畏まらなくてもいいのよぉ。私とあなたのなかじゃない。西の都まで乗っけてってくれるかしら」

「それは喜んで……」

ピラフが顔を上げた瞬間硬直した。

「よっ久しぶりだなピラフ」

「ご、悟空貴様なんでこんなところにー」

「ん。おらもダーブラ戦隊だからよ」

「二人は知り合いだったのぉ?」

軽快に会話のラリーを続ける二人の様子を見て、ダーブラが話かける。

「ああ昔からの知り合いだ。まだわりぃことしてんのか?」

「悪い!?」

ダーブラの纏う気が爆発的に高まる。

「どういうこと悟空ちゃん…」

「いやな。ピラフは昔から――モガモガ」

「何をいってるんだい。僕たちほどの善人はいないよ」

ピラフ、シュウ、マイが三人係りで悟空の口を塞ぎ、必死に取り繕う。

「そうよねぇ。ピラフちゃんたちが悪いことなんてするはずないもんねぇ。よかったわぁ。悪いことしてたら……」

ダーブラの語気が強まる。

「そ、そ、そ、そんなことありませんよ。さあ乗ってください。到着が遅れてしまいますよ」

「そうねぇ。おじゃまするわあ」

胸を撫で下ろしたピラフたちは愛と平和のダーブラ戦隊を乗せて、西の都に向かった。



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到着カプセルコーポレーション

「なあ、ダーブラ早くしてくれよ」

「カカロット、貴様ダーブラ様に向かってなんて口の聞き方を」

「いいのよ、ラディちゃん。私が遅いのがいけないの。いくわよ悟空ちゃん」

ダーブラの気が膨れ上がる。

「スキップ!」

「お、オラの番が……」

「フン、カカロットめ自業自得だ」

Z戦士+ダーブラはピラフの飛空挺の中で和やかにウノを楽しんでいた。

 全く殺伐としたドラゴンボールの世界とはかけ離れた光景で。

 しかし、その和やかさを、一瞬で混沌に落とす言葉を言った者が…

「ピチピチギャルがいないと楽しくないのぉ…」

天下の亀仙人こと武天老師である。

 そして、その言葉に返す者が

「何いっているのよ亀ちゃん。私がいるじゃない」

『……………』

場が静まり返る、あのラディッツでさえも金縛り状態に。

 ゴツイおっさんがガチムチの体をクネクネさせながら、頬を紅潮させている。

「オエッ、俺トイレ行ってくる。悟空後は任せた」

「待つんじゃクリリン!!」

真っ青な顔をしたクリリンが亀仙人の制止を振り切り離脱した。

「どうしたのかしらクリちゃん…」

雰囲気が悪くなる、その時、救いの福音が

「ダーブラ様、カプセルコーポレーションが見えてきました。そろそろ準備を」

艦内に放送が流れる。

助かった!と誰もが思い、安堵の溜め息が誰ともなく吐かれる。

「みんな降りるわよぉ。甲板にいきましょお」

ダーブラに続き、ラディッツ、悟空、亀仙人、少し遅れて帰ってきたクリリンが続く。

 甲板についた皆はそのまま宙に飛び出し、カプセルコーポレーションに降り立った。

「おお、久しぶりだな」

悟空はブルマの家兼会社である巨大な半円状の建物を見上げる。

「ねぇねぇ悟空ちゃん。あれ何?」

ダーブラが悟空の肩をチョンチョンとつつき、何かを指差す。

 指の先にあったものは。

 建物の玄関の隣に何か黒いオーラを放つオブジェが。

「ん~~。ああ、あれはヤムチャじゃねえか。おーいヤムチャー」

黒いオーラを放つオブジェは、暗く沈んで体育座りをするヤムチャであった。

「おお…悟空か。久しぶりだな…」

「何やってんだヤムチャ?」

「ああ…ちょっとブルマに追い出されてな…」

「また浮気でもしたんじゃないですか」

会話にクリリンも加わる。

「羨ましいのお」

と亀仙人。

「汚らわしいわぁ」

とダーブラ。

「フン、屑が」

とラディッツ。

三者三様の意見だが、一致しているのは批判的な意見ということだ。

「無実だ。俺は浮気なんかしていない。雑誌の『金曜日』に『ホームラン王ヤムチャ。夜もホームランや!!』なんて記事を女の子と腕を組んだ写真と一緒に載せられたんだよ。まだ何もしていなかったのに」

「………………」

誰もが汚い物を見るかのように半目でヤムチャを見下ろしている。

「行くわよ悟空ちゃん。汚れちゃうわ」

「ああ、近寄りたくもない」

「変わりませんねヤムチャさん」

「羨ましいのお」

ダーブラ、ラディッツ、クリリン、亀仙人はカプセルコーポレーションに入っていった。

「あ~あ。ヤムチャをダーブラに進めるつもりだったんけど。どうすっかな」

悟空は苦笑いを浮かべて頭を掻いていた。

 前途多難である。

 ところ変わってカプセルコーポレーション内部。

「あら孫君。久しぶりね。どうしたのよ」

「よっブルマ。このテープを見たいんだがよ」

「そう。ついてきて」

ブルマが歩いて行くのに皆がついていく。

「ねえ孫君。あの柄が悪くて見たことない服着ている男と、なんかピンクなオーラを発している不気味なオジサン誰?」

ブルマが並んで歩く悟空に、ラディッツとダーブラに聞こえないように、小声で尋ねる。

 いきなり加わった怪しい二人に疑問を持つのも当然の成り行きだろう。

「ああ、あの変な服着てんのは、オラの兄ちゃんらしい」

「えっっっ!孫君お兄さんいたの?」

「いたみてえだ。オラもさっき知った」

「孫君らしいわ」

朗らかな笑顔で笑う悟空を見て呆れるブルマ。

だが、悟空との付き合いが一番長いブルマはすぐに立て直す。

「じゃああの人は?」

「ウッフン」

ブルマの視線に気づいたダーブラがウィンクをする。

 別の意味でデスウィンクである。

「頭を痛いわ」

頭を抱えるブルマ。

当然といえば当然。

「あいつはダーブラってんだ。詳しくはわからねえ」

「はあもういいわ」

ブルマはさっさと歩いて行ってしまった。

 そんな中でも悟空の頭の中では、ウィンクしたダーブラを見て、レッドリボン軍のブルー将軍に似てっなと考えていた。

「孫君。テープ貸して」

「おう」

悟空からテープを貰いセットするブルマに魔の手が迫る。

「ええのお」

「キャーーー!!」亀仙人がブルマの尻をなで回す。

「ぐぉらー亀ちゃん!女の敵よ!」

怒りのダーブラのビンタが亀仙人に決まる。

 亀仙人は窓を突き破り、お星さまになった。

「結構いい人ね」

亀仙人のおかげで、ブルマの中でのダーブラへの好感度が上がっていた。

 天下の亀仙人はこれを見越してやったのかもしれない。

 さすがである。

で、亀仙人が帰還することもないまま皆でテープを見始めた。

 流れる街角の映像。

 そこに写し出されるのは、肩にかかるくらいの黒髪の長髪の少年と、金髪の少年と同じくらいの髪を持つ少女であった。

「結構カワイイ」

クリリンはポツリと呟く。

「見るところはそこじゃないわよクリちゃん。もうちょっと先よ」

ダーブラの指示を受け、ブルマは早送りする。

「そこよ」

ダーブラの指示で止められた映像には、高齢の老人らしき人物が、少年と少女に話し掛け、一緒に立ち去る映像であった。

「この後、この二人の姉弟は行方不明になったのよ。みんなで探すわよぉ」

「でもこれだけじゃ……」

「確かに手がかりが少な過ぎるのぉ」

クリリンといつの間にか復活して帰ってきていた亀仙人が呟く。

 誰も亀仙人に気づいてはいない。

 さすが天下の亀仙人である。

「あっこの人!」

映像を見ていて、何かを考えていたブルマが声をあげる。

「どうしんだ。急に大きな声出してよ」

「この人多分ドクターゲロよ。前に何かの資料で見たことあるわ」

「ドクターゲロってあのレッドリボン軍の」

悟空とクリリン、亀仙人の頭の中で、あの激闘が思い起こされる。

「みんなは知っているのねぇ」

「ああ。だがどこにいるかまでは」

「少し待っていてくれる。ゲロの住んでいる場所が載っていた資料があったと思うから」

ブルマが出ていく。

「敵は見つかったわね。少し私も準備してくるわ」

ダーブラも部屋を出ていく。

「どうしんだダーブラのやつ?」

「分からんのかカカロット。ダーブラ様は瞑想をして気を高めに行かれたんだ」

「そうなんか」

ラディッツの話を聞き、悟空はただただ感心するのであった。



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新たなる仲間?

本当に亀更新で申し訳ありません。


 ブルマとダーブラが抜けて早2時間程の時間が経過した。

 すでに皆待ちくたびれて、悟空ラディッツは広い部屋なのをいいことに、トレーニングに励み、亀仙人はいかがわしい番組を鼻を伸ばし「ええのお、ええのお」と呟きながら見入り、クリリンは亀仙人に付き合って欠伸をしながらボーッとテレビを見つめていた。

 そんな日常の一幕を軽々と破壊する一幕が…

 なんの前触れもなく、扉が開かれた。

 開かれた扉からは白い靄のような物が吹き込んでくる。

 悟空たちが息を飲む。

 それほどまでに張り詰めた空気が辺りを支配していたのだ。

 靄が消えた時、そこにはダーブラが立っていた。

「ご、悟空ーーーーー!!!」

突如クリリンが脳内の容量を遥かに超えたものを頭に叩き込まれ爆死する。

 この世のものとも思えないものを見たかのようなおぞましい顔で崩れ落ちる。

「ガハッ…死ぬ前にエッチな本をもう一度見たかった……」

クリリンに続き、亀仙人も天寿をまっとうし、旅立った。

「す、スゲエ……!!」

「さ、さすがです、ダーブラ様!!」

サイヤ人二人はそのさまにうち震えた。

 立っていたダーブラが瞑想の果てに充実し爆発的に上昇した『気』に圧倒されたからでは決してない。

「どう張りきってメイクしたんだけど」

 どぎついメイクを施したダーブラがそこにいたのだ。

 新宿〇丁目を歩けば普通に遭遇するような化〇のようになったダーブラ。

 多分であるが、暗黒魔界の化粧がそうたらしめたのかもしれないが、地球人二人には衝撃が強すぎたのだろう。

「ごめんなさいねぇ、今から愛を説きに行くと思ったらいてもたってもいられなくてぇ、気合いいれちゃったわ。テヘ」

「スッゲエなダーブラ。おら感動したぞ」

「当然だカカロット。これがダーブラ様の本気だ」

純粋無垢なサイヤ人と、ダーブラ信者のサイヤ人はダーブラを誉め続け、ダーブラも顔を明けに染めモジモジしながら喜んだ。

「もう悟空ちゃんもラディちゃんも、お世辞が上手いんだから。キャッ」

ダーブラは恥ずかしさのあまり、手をバタバタさせ、悟空とラディッツをぶっ飛ばした。

「ガッ!!」

「ブホッ!!」

何度目のことだろうか、軽く戦闘力11桁程の力が悟空とラディッツを襲い、二人は瞬く間に壁を貫き、地球を一周し戻ってきた。

「あらあら力の加減を間違っちゃったわ。悟空ちゃん、ラディッツちゃん仙豆を食べるのよぉ」

生死の境をさ迷った二人は再び戦闘力をぐんと上げた。

 ダーブラに何度か生死の境を歩ませられた二人は既に、地球に向かっている二人のサイヤ人の力をこっそりと上回っていたのは、誰も知らなかった。

 後にゲロの秘密基地の位置を見つけ出し、入ってきたブルマもダーブラの顔を見て、卒倒し、意識を失ったのはまた別の話である。

「このおじいちゃんの済んでいる所も分かったし、さあみんな二人の若者を助けに行くわよぉ」

「ちょっと待ってくれダーブラ」

気合いを入れたダーブラに待ったをかける悟空。

「なによ悟空ちゃん」

少し不機嫌そうではあるが、話を聞こうとするダーブラに悟空は少しばつが悪そうに切り出す。

「あのよぉ、言いづらいんだけどよぉ」

「気にせず言ってみなさい悟空ちゃん」

「ああ、さっきダーブラもあったと思うんだがよ、家の外にいたヤムチャもダーブラ戦隊にいれたいと思うんだけどよぉ」

悟空が話したその刹那、怒りの形相でラディッツが悟空の胸ぐらを掴み上げる。

「カカロット!貴様、あんなゴミ虫を我らの高潔なダーブラ戦隊に引き入れようというのか!恥をしれ!!」

ラディッツの怒号が響き渡る。

 しかし、ダーブラは思考の海に潜り言葉を発しない。

「チッ、話にならん。俺があの汚いゴミ虫を消し飛ばしてやる!!」

「待ってラディちゃん!!」

ダーブラが目をカッと開き、ラディッツを制止させる。

「どうなさったのですかダーブラ様。あのような穢らわしいゴミ虫は排除すべきです」

「ダメよラディちゃん。私たちの使命を忘れたの、悪を善に、穢れを清浄に、それを為すのがダーブラ戦隊よ」

「な、なんと美しく慈愛に満ちた御言葉。ラディッツ肝に命じました……」

「分かってくれて嬉しいわ」

嗚咽を漏らしながらむせびなくラディッツの肩をポンポンと叩くダーブラ。

 暑苦しい師弟愛がかいまみえた瞬間である。

「ダーブラさん、あの浮気者の根性叩き直しちゃってください」

「任せといてブルマちゃん」

ブルマとダーブラがガッチリと握手をする。

「ヤバイあんな奴の仲間になったら、女の子と遊べなくなるじゃないか。気を消してずらからないと」

部屋の外から気配を消して中のようすを伺っていたヤムチャが、自分の危機的状況を察知し、『気』を極限まで落とし、立ち去ろうとした。

「命あっての物種だ、イテッ!!なんでこんな所に壁が」

ヤムチャは自分がぶつかったと思われた壁を見上げる。

 みるみるうちにヤムチャの顔が青ざめ、死を悟った。

「こ·ん·に·ち·わ·ヤムちゃん」

にっこりと10人中10人がおぞましいと判定するだろう至高の笑みを称えるダーブラがそこに立っていた。

「貴様の腐りきった性根を叩き直してくれるわああぁぁぁ!!」

「ギャアアァァァァ!!!」

ヤムチャの断末魔が西の都に響き渡った。

 



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愛と正義の公務員

「イーヤーダー!オレは女の子が好きなんだー!!」

飛空挺の轟音より大きな心の叫びが広い天空にこだまする。

 それはピラフの飛空挺の内部での話。

「この子やるわ…あの子以来の強敵ね……」

「まさかダーブラ様が…」

「よく分かるぞ。ヤムチャよ」

鎖で縛られたヤムチャの隣で、ヤムチャを改心させるべく、道徳を説いていたダーブラは息を切らせ激しく肩を上下させながら、呟き、ラディッツはそのダーブラが苦戦している様を驚愕の眼差しで見つめ、亀仙人は感動していた。

 ヤムチャはその鋼のような(女好きの)精神で、ダーブラの拷問のような説得を耐えきったのだ。

「いや、オレが女の子が好きなだけで改心と戦隊入りを拒否している訳じゃないんだ」

ヤムチャは一転真剣な表情に変わり話し出す。

「オレはアルバイトだが野球選手だ。もしアルバイトを辞めてしまったら無一文になっちまう。だから戦隊入りを拒否しているんだ」

そう、ヤムチャが言うことは大きな問題であった。

 ここに集う仲間達は、無職ばかりだった…

 悟空は義父の牛魔王の支援と、自然豊かなパオズ山のお陰で生活はなんとか成り立ってはいるが、無職。

 亀仙人、クリリンは多分海の恩恵で生活はしているがこれまた悟空と同様無職。

 ラディッツは以前は『宇宙の帝王フリーザ不動産』で悪どい地あげをしていたが、ダーブラのお陰で改心し退社し、無職に。

 ということで皆無職ではあるが、なんとか生活はしていた。

 しかし、ヤムチャは居候とはいえ、住んでいるのは都、働かなくては生きてはいけないのだ。

「なあんだ。そんなことだったの」

ダーブラはあっけらかんとした表情で言いきる。

「大丈夫よぉ。給料は出るわぁ。しかも皆公務員になるのよお!!せ·か·い·公務員に」

 皆の時が止まった。

 どこからどう見ても趣味で正義の味方兼おネエをしているダーブラから、給料や、あまつさえ公務員という言葉が出たのだ。驚かないほうがどうかしている。

「それは一体どういうことだ?」

「あれは約半年ほど前かしら―――

◇◆◇◆◇◆

 封印から解かれてからというもの、連日のように、ダーブラは人知れず犯罪を正し、悪人を愛の力と時々愛の鞭で公正させてきた。

 そして、その日も一般人には見えない程の速さで飛行し、見回りをしていた。

 麗らかな日を浴び、和やかな一時が流れる昼下がりの時であった。

 ダーブラの悪人センサーが反応したのだ。

「前方200キロメートル先から、悪人とその悪人に苦しめられている人の気を感じるわあ!急がなくっちゃ」

ダーブラはスピードをあげ、現場に向かう。

 ダーブラのスピードから巻き起こる衝撃波が、建物のガラスを粉々に砕いたり、車が吹き飛ばされ大破したり、女性のスカートが捲れようと、悪を見つけたダーブラにはそれしか目を向けれなくなっているので、事件が起こるたびに、事件以上の被害があったのだが、まあダーブラは知るよしもなかった。

「まあ!」

 ダーブラが現場上空で見たものは今まで見てきた犯罪よりも、格段に酷いものであった。

 大破し、黒い煙をあげるリムジン。

 脇にはアスファルトの地面にまるで生えているかのように鋭角に突き刺さった石柱。

 辺りには軍服を着て銃を持った兵士らしき男達が倒れている。

 残念ながら皆こめかみを何かで突かれ亡くなっている。

 その中心に、二人の男が。

 一人はものが良さそうなオーダーメイドの背広を着ている犬型の人間が。

 そしてその犬を威圧するかのように立つ男は、みつあみの髪、チャイナ服のような服、その服には『KILL YOU』と物騒なことが書かれている。

そして際立つのは体の半分が機械であるということだ。

 二人を見た瞬間ダーブラはどちらが悪人かすぐに分かった。(まあ一目見れば誰でも分かるが)

「ワンちゃんがいじめられてるわぁ。助けなくっちゃあ」

魔王様は少しずれてはいるが、正義感は本物だった。

「やめなさあい。ワンちゃんをいじめらるのは」

二人を分断するかのように中間に降り立つダーブラ。

「空から人が……」

「それは鶴仙流舞空術か!なぜ使える!」

二人は理由は違うが、驚きは同じだった。

「意味分からないことはどうでもいいわぁ。あなたなんでこのワンちゃんをいじめるのよぉ?」

「意味が分からない!まあいい。私は世界一の殺し屋桃白白。この男の命をある者から一億ゼニーで殺してくれと依頼された仕事でな。邪魔をするならお前も死んでもらうぞ」

「こ、こ、殺し屋ですってええぇぇぇええ!!」

ダーブラの怒号が響き渡る。

と同時に大気が、地面が、建物が鳴動する。

 ダーブラの体を中心の空気が陽炎のように揺らめき、衝撃波が巻き起こる。

「なんて、なんて酷いことを。人の命をお金で……人の命をなんだと思っているんだあああぁぁぁ!!いくわよおおぉ愛の鉄拳!」

大木のように鍛え上げられた豪腕がタオパイパイの眼前で止まる。

 しかし、拳の衝撃波が桁外れであり、タオパイパイは吹き飛び、建物を何棟も突き破っていった。

「君はいったい!!」

「私は愛と正義のダーブラよぉ。大丈夫ワンちゃん?」

「ああ大丈夫だ。だが私を守ろうとして皆は……」

「もうちょっと早くついていたらよかったのにぃ。でもあなたは救えてよかったわぁ。じゃあね」

「待ってくれ」

というやり取りの後、ダーブラはワンちゃん、もとい国王に命の恩人としてキングキャッスルに歓迎され、その強さ、正義感に感動した国王に、特命の防衛隊に任命されたのだ。

 この地球を地球人の善人を悪人や宇宙人から護るという特命を受けた公務員にダーブラはなったのだった。

◇◆◇◆◇◆

「ということでぇ。愛と正義のダーブラ戦隊はぁ公務員なのよぉ。命懸けの仕事だからぁ、お給料も高めよぉ」

驚愕の真実と共に、悟空、ラディッツ、亀仙人、クリリン、ヤムチャは『愛と正義のダーブラ戦隊』という名の公務員になったのだった。

おまけ

「まさかダーブラがタオパイパイを倒しちまったとはなあ。オラびっくりしたぞ!」

「天下一武道会で天津飯に倒された後もまだ殺し屋をやっていたとはのお」

しみじみと亀仙人も呟く。

「で、その後タオパイパイはどうしたんだ?」

「あのあとつかまえてぇ、監禁して説得したんだけどぉ……ヤムちゃんみたいに改心しなかったからあ。反省部屋に封印しちゃった。テヘ」

「反省部屋?」

皆が首を傾げる。

「私がぁ封印されて更正したぁ、電子ジャーの中よぉ」

「で、電子ジャーじゃと!!」

亀仙人が驚愕の表情に染まる。

「まさかお主は……魔王ダーブラ!!」

 

 




おまけといいながら、次回はおまけから話は続きます。
 明日のドラゴンボール神と神が楽しみでしょうがない今です。


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愛と正義で万事解決

長らくお待たせしました。
待っていてくれた人には申し訳ありません。


 亀仙人の表情があからさまに強張る。

「まさかお主が我が師武泰斗様の敵の魔王ダーブラだったとは…わしも老いたものじゃ」

表情は強張ってはいるが、亀仙人は戦うつもりは微塵も無かった。

 それは亀仙人にとっても驚くべき事実であった。

「恨んでないの?」

亀仙人以上に表情はひきつり、いつもと違いダーブラの声には全くと言っていいほど力がなかった。

「最初は殺したいほど恨んどったわ」

ダーブラは唇を噛んだ。

流れ落ちる血液を見ながら、亀仙人は表情を緩め続ける。

「じゃがな今のお主を見て、その恨みも消し飛んだわい。武泰斗様の思いが実を結んだと思えたからの、極悪非道の魔王ダーブラを改心させてしまったとな」

それは亀仙人の本心であった。

自分の偉大な師匠が誰もが成し遂げられないであろう、偉業を成し遂げたことへの誇り。

 そしてもうひとつは、今までダーブラと共に過ごしてきた日々が亀仙人の心を動かしていたのだ。

「ごめんなさい」

「謝るのが早いぞ。これからはお前の贖罪の日々を間近で見せてもらうからの」

「ええ、見ててちょうだい」

亀仙人とダーブラの表情は晴れやかだった。

 数百年の時を隔てて、敵同士の間柄が仲間へと変わったのである。

「ダーブラ様…」

「じっちゃん…」

「老師様…」

 その様子を少し離れた所で、ラディッツは涙を流し、悟空、クリリン、ヤムチャは温かい目で見守っていた。

◇◆◇◆◇◆

温かな雰囲気に包まれていた時だった、

『艦内放送、艦内放送、ダーブラ様、目的地上空に到着しました』

ピラフが目的地に到着したことを告げた。

 ついに行動を起こす時が来たのだ。

「さあ、ダーブラ戦隊の初仕事よぉ。気合い入れて行くわよ!」

「おう!!」

皆はその声を合図に、飛空挺を飛び出した。

 ダーブラとラディッツ以外は舞空術での高速移動はできない。

 しかしながらも、空に浮くだけならばなんとかできていた。

「なあダーブラ、家なんてどこにもねえぞ」

「そうねえ」

辺りを見回しても、あるのは岩山ばかりで、人が住んでいる形跡すら微塵も存在していない。

 しかし、正義に燃えるダーブラはそんな些細なことで諦める男?ではなかった。

「みんなしらみつぶしに探すのよぉ!!」

皆は岩山に降り立ち、バラバラに散らばり探し始めた。

 約5分後

「ダーブラ様、見つけました!!」

辺りにラディッツのやったぞダーブラ様のお役に立てたというような嬉々とした声が響き渡る。

「でかしたわラディちゃん」

「兄ちゃんやったぞ」

皆が集まり、ラディッツは誇らしげに指を指す。

 ラディッツの指し示した所には、岩山が人工的にくり貫かれたような小さな洞穴があり、穴の少し先に分厚い鋼鉄でできた門が何者も入れないという風に立ちふさがっていた。

「少し骨ですが、あの門を吹き飛ばしましょうか?」

「いや待ってラディちゃん。相手は犯罪者かもしれない。でもね、礼を失してはいけないと思うの」

「流石ですダーブラ様!!」

ラディッツは尊敬の眼差しでダーブラを見つめ、それ以外は、ラディッツを暑苦しそうに見ていた。

「行くわよ」

ダーブラは穴に降り立ち、鋼鉄でできた扉の前に歩みよった。

『来んかいワレェ、ワイはどんなことがあってもここは通さんぞ』

とでも言わんばかりに鋼鉄でできた扉が立ちふさがる。

 ダーブラは扉の前に立つが、呼び鈴が見当たらない。

「しょうがないわね」

ダーブラは小さく呟くと、腕を上げた。

 皆は静かにその動静を見守る。

 ダーブラのノックの第一打、ドゴン!

「!!!」

普通ノックはコンコンだろ!という突っ込みすら忘れる程の違和感の塊の音。

『グホッッ』

まるで扉が断末魔をあげたかのようだ。

 ダーブラの拳が厚さ数十センチの鋼鉄の扉を抉り、扉はくの字に折れ曲がる。

ノック第二打、ドスン!

『グホアッ、見事だ!!』

と言わんばかりに鋼鉄の扉は扉としての役目を終え、崩れ落ちた。

 皆は、崩れ落ちた扉に

「よく二発も耐えた。見事だ!」

と心の中で賛辞を送っていた。

 現段階でも、この中でダーブラの二発の打撃に耐えられるものはいないという事実からの、心からの賛辞である。

「やわっちいわねぇ、これじゃあ防犯として心配ねぇ」

ダーブラ相手じゃ何もかも紙だよ!!

皆は心の中で突っ込むのが精一杯だった。

「何事だ!?」

扉が無くなり、現れた機器の並ぶ室内から見るからに高齢な老人が血相を変えて飛び出してきた。

 その老人の服には赤いリボンのようなマークと、そのマークの中にR、Rと入れられた見覚えのある印があった。

 その印が、悟空、クリリン、亀仙人にあのレッドリボン軍との忘れられない抗争の思い出と、その老人がDrゲロだという確信を与えた。

「何者だお前らは!わしのラボに何のようだ!」

「あなたがDrゲロね、拐った姉妹を返してもらうわよぉ!」

ビシッと決めポーズをとるダーブラ。

呆気に取られるゲロ。

嫌な空気が流れる。

「居たぞダーブラ」

二人を無視して、中を捜索していた悟空が若い男女を抱え起こす。

「わしの大事な素材に触れるな!!」

「動くなよじいさん!」

ヤムチャが飛びかかろうとするゲロを取り押さえる。

 史実(原作)とは全くの逆の立場に当たるものである。

「悟空ちゃん二人は大丈夫?」

「ああ、眠ってるみてえだ」

「よかった」

ダーブラはホッと胸を撫で下ろす。

 まさに正義の見方である。

「えっと、亀ちゃん…はダメで、ヤムちゃん…もダメか。じゃあクリちゃん二人を飛空挺に連れていってくれる」

「分かった」

クリリンはまかせろといった感じで、二人を抱えて飛空挺に向かった。

「なぜわしらじゃいけないんじゃ?」

亀仙人がヤムチャも思った疑問も合わせて問う。

「当然じゃない。危ないからよ!」

「何が危ないんじゃ」

「あの娘の貞操よ。私の次くらいに綺麗だったから。二人に任せたら危険だったからよ」

「わしをヤムチャと一緒にするでない!わしはオッパイでパフパフさせてもらうぐらいしかせんわ!!」

胸を張る亀仙人、軽蔑の眼差しを向けるラディッツとダーブラ。

「十分犯罪よ!!」

振るわれた正義の拳が、亀仙人を煩悩と共に空の星へと変えた。



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愛と正義の説得開始

「どうすんだダーブラ?もう目的は済んだんじゃねえのか?」

人造人間に改造されそうになっていた姉弟を助け出すことに成功したため、悟空は次の指示をダーブラに仰いでいた。

「そうねぇ、もう済んだんだけど気になることがあるからすこーし待っててくれるかしら」

ダーブラは部屋の奥に進んでいく。

 ダーブラが見つめる先には大きなカプセルのような見慣れない機器が。

「それに近づくな!!」

ヤムチャに抑え込まれ、それまで静かにしていたゲロが突然顔色を変えて声を上げた。

 その豹変のしようにその場にいる皆も目を見張った。

 何か触れて欲しくないものがあるというのは明白ではあるが、その変わり様は常軌を逸していた。

 しかし、我らがダーブラ様は素知らぬ素振りでそのカプセルに到達した。

「や、やめろ!」

「こ、こら暴れるな」

ゲロの制止も効果を為さずダーブラはカプセルを覗きこんだ。

「こ、これは!」

「ダーブラ様どうかいたしましたか」

「いったいどうしたんじゃ?」

それまでことの成り行きを静かに見守っていたラディッツと亀仙人も声を上げたダーブラに問いかける。

 ダーブラの表情にも変化が訪れていたためである。

「まさかこの子もあなたが改造したのかしら」

ダーブラは強めの口調でゲロに問いかける。

 部屋の中の雰囲気が緊張感に包まれた。

 ダーブラから強い不信感を伴ったオーラがそう足らしめたのだ。

「ち、違う…それはわしが無から造り上げた機械人形じゃ…」

ダーブラの気迫に飲まれそうになりながらもゲロは答えた。

「そうなのね、よかったわ」

口調が穏やかになり部屋の雰囲気もガラリと変わる。

 ゲロだけでなく、悟空、ヤムチャ、ラディッツ、亀仙人も胸を撫で下ろしていた。

「す、素晴らしいわぁ」

ダーブラは嘆息を漏らした。

 何かウットリしたように。

「この子からはほんとうに純粋に清流のように清らかな心根を感じるわ」

「いや機械だろ?」

「黙っていろゴミクズが」

「はいはい」

ヤムチャとラディッツの喧騒はほっておきダーブラは続ける。

「ここまで心の綺麗な子を見たのは初めてだわ。誰も彼も、あっ悟空ちゃんは除外ね。ヤムちゃんや亀ちゃんのように欲望を持っているものよ。でもねこの子にはそれが存在しないの!ヤムちゃんのようにこころが薄汚れていないのよ!」

「俺も最初は純粋だったんだ。生まれ育った環境がそれを許さ―――」

クドクドとゲロを話語りだすヤムチャを無視して、ダーブラが解放されたゲロに歩みよる。

「く、来るな!」

ダーブラが一歩一歩歩みよるごとに、ゲロは本能的に、生命以外のものに危機感を鋭敏に感じとり、おのずと後退りする。

 しかし、そのいたちごっこも直ぐに終結を迎えた。

「!!」

下がり続けるゲロが壁にまで追い詰められたのだ。

ダーブラはウットリとした表情でゲロを壁に押し付けた。

「ご、悟空よ、わしらは外に出ていたほうがいいのではないのか」

「いきなりどうしたんだじっちゃん?」

「いやな、なんか見てはいけない禁忌の世界を見せられそうでな…」

「老師様の言う通りだ悟空。取り返しのつかないものを見ることになるかもしれん!あと戻りができなくなるぞ!!」

「頼むわしを一人にしないでくれーー!!」

亀仙人、悟空、ヤムチャの話声を聞き付けて、ゲロが懇願した。

 必死の形相で懇願するゲロにダーブラは顔を近づける。

「な、なんだと言うんじゃ」

「あなたの知識と技術と本心に感動したわ」

「へ?」

語りかけるダーブラにきの抜けたような声でゲロは呆然とする。

「だ~か~ら~、あなたの技術と知識と本心に魅了されたから仲間になりなさいってことよ」

「お、お待ちくださいダーブラ様!そいつは犯罪者です!高潔な我らの見方にはそぐいません!」

焦りのこもった声でラディッツはダーブラに讒言した。

なぜかゲロもラディッツに続く。

「そうじゃ、わしはわしを認めなかった者に復讐し、断罪するためにあれを作ったんじゃ。けしてお前が魅了されるような心意気などもってはおらん!!」

ゲロはダーブラが正義の心を持ち、なぜだか自分にもそれを感じて勧誘してきたのだと、感じとっていた。

 しかし、自分は自分の欲望にしたがい悪の道、マッドサイエンティストになったことに一種の誇りを抱いていた。

その為に、ダーブラの発言によってそれが汚されたような感じを受け、怒りを覚えたのだった。

「何をいってるのよ。確かにあなたは復讐のためにあの子を作ったのかもしれない。でもね、それは心の表層的な部分よ!本心はそこじゃないの!」

「わしの本心じゃと」

「そうよあなたの本心よ。あなたの本心は確かに人間は嫌っていたかもしれないわ、でもね、地球や自然、動物への愛は持っていたはずよ」

「なぜそんなことが言える!」

ゲロが声を荒らげた。

「あの子がそうだからよ。子は親の鏡、あの子からは、地球や自然、動物に対する深い愛情を感じ取ったわ。そんな子を造り上げたあなたに、それがないはずはないわ」

「いや…それは…あれが失敗作じゃからで……」

ゲロの顔色がみるみる変わっていく。

 ダーブラに押され出していた。

「それは違うわ!!機械に心を持たせるほどの技術をもったあなたが失敗することはないし、そもそもあの子は失敗作なんかじゃないわ!!」

「!!」

項垂れたゲロの耳元でダーブラはこんこんと約三時間に渡りマインドコントロールをするかのごとく説得を続けた。

「そ、そうだったのか…わしは、わしは地球や自然を愛していたのか……」

膝をつき、地面に手をつき呟くように反芻するゲロを温かい笑みでダーブラは見つめている。

 それを疲れた表情ではありながらも驚きの表情で見つめる、悟空、亀仙人、ヤムチャ。

 尊敬の眼差しで見つめるラディッツ。

 飛空挺から帰ってきたが、状況が全く分からないクリリン、と三者三様の表情がそこには存在した。

「あなたはこれからどうするの?」

ダーブラがゲロの肩に手をおき、優しく問いかけた。

「わしの本心に気づかせてくれたダーブラ様に恩返しをさせてほしい。そして怖い目にあわせてしまったあの姉弟に謝罪がしたい…」

涙を流しながら、ゲロはポツリポツリと紡ぐように言葉を絞り出した。

「分かったわ、皆と共に歩みましょ。今までの過ちは私たちと共に贖罪していきましょ」

「はい…ダーブラ様…」

ここに改心したゲロが、ダーブラ戦隊の頭脳として仲間に加わった。




無理くり感満載の今回。
批判は真摯に受け止めます。
どうぞお手柔らかに。
ヤムチャの腹をぶち抜いただけが見せ場だったゲロですが、この物語では重要な役を果たさせることにします。


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愛と正義で青春だ

 見事に仲間入りしたゲロが神妙な面持ちで悟空に歩みよる。

 ダーブラはゲロを信用しており、笑顔で見ているが、まだ信用してはいない亀仙人やクリリン、ヤムチャなどは気が気でならない様子である。

「ん、なんだ?」

悟空の目の前に来たゲロに対し、悟空はふんわりと問いかける。

 悟空は通常運行である。

「すまなかった」

「!!」

皆が目を見張る行動をゲロがとる。

 頭を直角に下げ、深々と頭を下げたのだ。

「いったいどうしたんだ?」

「孫悟空、お前には謝っておきたかったのだ」

依然としてゲロは頭を下げたまま話続ける。

 悟空はそんなゲロを見て、困ったような表情で頭をかいている。

「おらはおめえにはなんにもされたことはねえぞ」

「確かにレッドリボン軍に属していたとはいえ、お前とは直接関係したことはなかった。しかし、私はレッドリボン軍が潰え、私の欲望を叶えることが出来なくなったために、孫悟空、お前を逆恨みし、あまつさえお前を殺すためにあらゆる手を講じていたのだ」

ゲロの独白は続く。

「その一端が、先ほどダーブラ様が見たあのカプセルの―――なっ!!!」

ゲロが頭を上げ、視線を横に移した直後、驚きの声をあげ、まるで時間が止まったかのように、ゲロの動きがピタッと止まる。

ゲロの視線の先では、笑顔のダーブラがカプセルを力付くで開いていたのだ。

「お、お止めくださいダーブラ様。そやつは地球を滅ぼしかねません!!」

悟空への謝罪を急遽切り上げ、ダーブラに待ったをかける。

「なに言ってるのよゲロちゃん。この子がそんなことするはずないじゃない。こんなに心根の正直な子がねぇ」

「それはそやつに内蔵された―――遅かったか…」

カプセルの抉りとられた蓋の部分を持ちながらクネクネと話すダーブラを見て、ゲロは絶望に満ちた表情で崩れ落ちた。

 カプセルからは白い煙のようなものが吹き出し、そしてカプセルの端に手をかけ、中の人造人間が起動を始めた。

 白い煙の中から現れた男は見上げるような大男であり、見事なモヒカン、鎧のような緑のジャケットを着込み、ジャケットの下には黒いタイツを着こむという、異様な様相である。

「俺は……」

「うん、綺麗な目をしてるわあ」

ダーブラは手を組んでピョンピョンとジャンプを繰り返し喜んでいる。

「ねえゲロちゃん、この子の名前はなんていうのかしら?」

ダーブラがゲロに尋ねるが「おしまいだ」と地面に腕をつき、ガタガタと震えている。

「もおゲロちゃんは」

ゲロの姿を見て深くため息をつくと、ダーブラは男に尋ねる。

「おはよう。あなたの名前は?」

「俺は16号だ…」

「16号かぁ。可愛くないわねぇ。いい名前はないかしらぁ」

ダーブラは首をかしげて考え始めた。

 16号はダーブラから回りに視線を一週させる。

「この男はデータなし。しかし、かなりの戦闘力だ。あの男もデータなし。だがあの男はたいして強くない」

「貴様、どうやら死にたいようだな」

見下されたと判断したラディッツが戦闘体勢に入る。

「ダメよラディちゃん、この子は仲間になるんだから、先輩らしくしなきゃ」

「はは、ダーブラ様。貴様命拾いしたな、ダーブラ様に感謝するんだな」

ラディッツのことなど意に介さず16号は続ける。

「あの老人は97%の確率で武天老師と判断できる。あの禿げ頭は――」

「俺は禿げじゃない。剃ってるんだ!」

段々突っ込み役が定着してきたクリリンが瞬時に反応し突っ込みを入れるが、華麗にスルーして続ける。

「クリリンと判断。

あの噛ませ顔の男はヤムチャと判断」

「俺は噛ませじゃねえ!!」

悪意はないが、辺りの雰囲気をぶっ壊しながら16号は突き進む。

「あの男は―――!!!」

16は視線を釘付けにされたようにある人物を凝視し、動きを止めた。

「おらがどうかしたんか?」

「孫悟空!!殺す!!」

言うや否や16号は腕を振り上げて悟空に襲いかかる。

 しかし、その動きのあまりの速さに誰もついてはいけない、襲われた悟空さえも16号の動きは全く見えていなかった。

「死ね孫悟空!!」

空を切り裂きながら降り下ろされた豪腕は、悟空まで残り数センチという所で止まっていた。

「いきなりダメじゃない16号ちゃん。悟空ちゃんはこれからあなたの仲間になるのよぉ」

頬に手を当て困ったような顔をしながらダーブラは諭すように話しかけていた。

 悟空も今になって漸く気づいたように目をぱちくりさせて驚いている。

 当然であるが、ラディッツ、亀仙人、クリリン、ヤムチャも声を失い、驚愕に顔を染めていた。

「放せ俺は孫悟空を殺さねばならん!それが俺の存在理由なんだ!!」

16号はダーブラの腕を振り払おうともがくがダーブラはびくともしない。

まあダーブラ様だから当然のことではあるが。

「ねえゲロちゃん、これどういうことぉ?」

「16号には孫悟空を殺すように、わしの憎しみを全てインプットしているのでそのような行動をとったのです…」

「解除できないのぉ?」

「はい…一端起動してしまったらもう……」

眉間にしわを寄せて苦しげにゲロは話す。

「困ったわねぇ」

ダーブラは依然としてガッチリと16号の腕を捕らえたまま考え出す。

 16号もなんとかして振りほどこうとするが、全く効果はなかった。

 ダーブラは考えつづけ、16号は抵抗を続け、二、三分後のことだった。

「いいことを考えついたわあ!!」

「本当ですかダーブラ様」

ラディッツが一番に声を上げる。

「ええこれ以上はない作戦よ」

「それはいったい?」

「皆は知っているかしら。仲が良くない二人がどうすれば仲良くなれるか」

ダーブラは仲間を見回す。

ラディッツは首を振り、亀仙人やヤムチャも同じく首を振る。

しかし、クリリンがまさかといった表情で身を硬直させている。

「クリちゃんは分かったようねぇ」

ダーブラは愉快そうに口元を緩めると、宣言した。

「夕日が落ちる川辺でガチで殴りあいをすれば友情という名の絆が芽生えるわあ!!」

ダーブラは満面のドヤ顔である。

 尊敬しきったラディッツ以外の皆は、戦闘大好きの悟空も含めて血の気の引いた顔をしていた。

 16号VS悟空のガチでの殴りあいが今始まる。



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愛と正義で憎しみを晴らせ

「ガハッ!」

一つの断末魔が広大な大地に木霊して、再度幾つもの岩山が吹き飛ばされた悟空によって、粉砕された。

「クリちゃん…何度目かしら?」

「これで五度目だよ…悟空…」

クリリンは唇を噛みしめ苦しそうな表情を浮かべて呟いた。

「そう…じゃあヤムちゃん仙豆を頼める?」

「任せとけ」

ヤムチャは仙豆を壺から一摘まみすると悟空が吹き飛んだ所に向かった。

 今何が起こっているかというと、悟空と16号の因縁の戦い(16号の一方的な)が起こっていたのだ。

 しかしながら力の差は歴然であり、もはや戦いとは呼べる代物ではなく、16号の一方的な暴力に変わっていた。

 だが驚くべきことに、悟空は死んではいなかった。

 5度ほど死にかけはしていたがだ。

 なぜか?

 それは今までの経緯がそれを雄弁に語ってくれる。

「悟空ちゃんったら~」

「グハッ!」

「もうヤダー!」

「ウギャー!!」

そう、今までダーブラの照れ隠しやらなんやらで、幾度となく、容赦ないダーブラの打撃を受けており、悟空の防御力(耐久力)はもはや戦闘力ではかれる範疇を遥かに超えていたのだ。

「ダーブラ様…」

ヤムチャが向かう背中をながめていたダーブラに声が掛けられる。

眉間にしわをよせ、険しい顔をしたラディッツだった。

「貴方の言いたいことは分かるわ。凄いわねサイヤ人って。死にそうになるたびに悟空ちゃんの戦闘力が数倍にはねあがっているわね」

「はい。しかし……」

ラディッツの険しい表情は変わらない。

 ラディッツは弟の成長を喜びながらも、内心悔しくてしょうがなかったのだ。

 だが、ダーブラもそれは容易に看破していた。

「大丈夫安心なさい。ラディちゃんも悟空ちゃんと同じように強くしてあげるから」

「だ、ダーブラ様」

暑苦しく信頼しあう師匠は笑顔を浮かべ、弟子は師匠にすがって涙を流していた。

(暑苦しいのう…)

そのさまを亀仙人は遠巻きに見ていた。

「なあダーブラ。そろそろ止めてくれねえか。これじゃあ悟空があまりにも不憫だ」

一方的な暴力へと変わっていた、悟空と16号の戦いを見かねたクリリンがダーブラに直訴する。

「そうね。そろそろ止めたほうがいいわね」

「お待ちください。ダーブラ様」

白いマントをはためかせてダーブラが飛び立とうとした時だった。ダーブラはゲロによって呼び止められた。

「私の憎しみが生み出した結果なので言いづらいのですが。まだ16号の憎しみは晴れてはおりません」

「そんなこと言ったって、悟空が可哀想だ。戦いとは呼べない代物だぞ!」

クリリンの怒声が響く。

親友を思いやってのクリリンの本心であった。

「……」

その心の叫びは、ゲロの心にも深く響き、反論することは愚か、口を開くことさえできなくしていた。

「わかっているわゲロちゃん。私が甘かったわ。汗を流して戦えば仲よくなると思っていた私が。でも大丈夫。もう一つ私にはいい案があるの。彼の心を揺り動かすね。皆集まって」

ダーブラは集まった仲間に概要を話、皆が納得したのを見て満足し、皆を伴い16号のもとへ向かった。

――――

「どう16号ちゃん。悟空ちゃんへの恨みは晴れた?」

ダーブラは16号の憎しみは晴れてはいないことを承知の上で問いかける。

 話の起点が必要だからだ。

「いや、まだだ……やはり悟空を殺さねば……」

(やはりか)

皆も予想通りの答えだった。

だが皆の希望は潰えてはいなかった。

 まだダーブラの作戦があったからだ。

「16号ちゃん。今はその憎しみを抑えてもらえないかしら」

「無理だ」

「貴方の大事な自然や動物に関わることでも?」

「!?」

16号の動きが止まった、明らかに動揺したさまで。

「どう言うことだ!」

16号の語気が強くなるのを聞き、ダーブラは作戦が上手く行き始めたことを肌で感じ、密かに笑みを浮かべた。

 それは、ダーブラだけでなく、皆も同じであった。

「後1ヶ月後に、ラディちゃんのブラック企業に勤める、DQNの友達がこの地球にやって来るの。その子たちの目的がこの地球なのよぉ!」

「な、なんだと!!」

(行ける!)

皆が16号の表情の変化を読み取り、確かな手応えを感じた。

 そして、ここぞとばかりにダーブラが更に深く斬り込む。

「その子たちはかなりつよくてね、16号ちゃん貴方も協力してくれないと勝てないぐらいの相手なのよぉ。貴方が協力してくれないと、地球上の自然が、動物の命が失われることになっちゃうのよぉ!」

16号への効果は抜群だった。

 16号の中では悟空への憎しみ以上に自然や動物への愛情のほうが強かったのだ。

 そう、これこそダーブラが16号の性質を上手く利用した、共通の強大な敵に対して共に戦うことによって仲よくなろう作戦であった。

「分かった…手を貸そう……」

一応ここで16号が加入した。

◆◇◆◇◆◇

こぼれ話

 ただここで皆が難色を示した部分があった。

それは「1ヶ月後にくるサイヤ人は本当に16号の強敵に成りうるか」であった。

すでに悟空と16号の戦いを見て、その強さが桁違いであることが分かったため起こった疑問である。

 下手すると次にくるサイヤ人でさえも噛ませになってしまうのではないか?と思うのも当然である。

 考えたくはないが、来襲するサイヤ人が16号と戦っただけで一発KOだったり、心を折られて

「もうおしまいだ……」

などとなったらこちらの作戦がもうおしまいになってしまう。

 だがここでダーブラが断言した。

「ラディちゃんから聞いたけど大丈夫よぉ。なんたって今度来る子の一人は戦闘力4000キリでもう一人はなんと18000キリらしいのよぉ!!」

あまり戦闘力というものにピンとこないクリリン、亀仙人、ヤムチャであったが、ダーブラが凄そうに断言するので納得したのであった。

◆◇◆◇◆◇

さらにここで戦闘力講座

ダーブラがいっている暗黒魔界での戦闘力『キリ』とこの世界の戦闘力では大きな違いがあった。

この世界では戦闘力には単位がないが、暗黒魔界ではこの世界で5万に対応する戦闘力が1キリとなる(注:1キリ=5万というのはVジャンプ調べ。戦闘力超公式版では1キリ=100万らしく、私もそのほうがしっくりきて、理論も正しいと思うが、この物語の構成上1キリ=5万とさせてもらいます)

つまり、ラディッツはナッパ4000、ベジータ18000といったのを、ダーブラはナッパ4000キリ(戦闘力で言えば2億)ベジータ18000キリ(戦闘力で言えば9億)と勘違いした結果により、ダーブラはナッパとベジータを強敵と思いこんだのである。

まあ、9億あったとしても16号には歯が立たないのだが、16号は気を持っていないため、ダーブラの目測が少し外れたことになる。



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愛と正義で修行中

ただ一言チートです。
全ての修行がチートレベルのものです…


 二人のサイヤ人が地球に来襲するまでに残り2日となっていた。

 ダーブラ戦隊はまさに壮絶な修行に身を置いていた。

「行くぞ兄ちゃん!」

「来いカカロット!!」

 轟音が大地を揺らし、拳と拳とが触れ合うだけで、衝撃波が吹き荒れ、大地に小惑星が落ちたかのようなクレーターが作り上げられていた。

 悟空は16号に何度もお花畑を見せられ、サイヤ人のチート的な特性(死の縁から蘇ることで戦闘力が数倍にはねあがる)で大幅に戦闘力を上げていた。

 それを見たラディッツはプライドをかなぐり捨て、悟空に何度も死の縁に追い込まれるような実践的な修行をしてくれるように頼み、実現した修行であった。

 ラディッツと悟空の間には超えられない程の力の差がついていた。

 しかし、この数週間でラディッツは、悟空が16号にされたように五度ほど死の縁に立たされたことで、悟空と同等程度の力を身につけ、今や互角に拳を交え、兄弟で切磋琢磨していた。

 そこから約二キロほど離れた地点では、ダーブラと亀仙人、ヤムチャ、クリリンがドクターゲロ、そしてブルマの父ブリーフ博士立ち会いのもと、修行をしていた。

「いくわよぉ~みんなぁ~、準備はいいかしらぁ~」

遥か上空から間の抜けた声で確かめの質問をダーブラがしている。

 その表情は、柔和で、とても修行をしているようには、思えないものである。

「こちらは大丈夫じゃ。ブリーフよそちらはどうじゃ?」

「こちらもOKだよー」

ゲロとブリーフは共に視線を交わし、頷きあった。

 ゲロと16号を仲間にし、ダーブラはカプセルコーポレーションに帰還した後に、ゲロをブリーフ博士に会わせていた。

 最初は、非人道的改な研究者であったゲロに、難色を示し、心を開かなかったブリーフ博士ではあったが、改心した様子を日々見ていくなかで、ゲロを認めていった。

 お互いが世界でも屈指の研究者であったために、最終的に意気投合し、今や悟空たちとは違い、知識面でゲロとブリーフ博士は共に技術を高めあっていた。

 二人の逸材がであったことで、世界の技術は飛躍的に進歩していた。

「わしらも準備は万端じゃ!」

亀仙人がヤムチャとクリリンに視線を送り、確認した後に答える。

 亀仙人とヤムチャ、クリリンは、見慣れない大型の機械を背負っている。

 それこそが、地球人の壁を遥かに超えるための、重要な一ピースであり、またゲロとブリーフが共に作り上げた、最高傑作であった。

「わかったわぁ~。いくわよぉ~」

ダーブラは皆の声を聞くと、腕を天高く突き上げ、エネルギー弾を作り上げる。

 ただし、それは間の抜けた声とは正反対の緊迫したものである。

 直径は約100メートルにも迫るもので、膨大なエネルギーの塊のために、辺りがかげろうがたつかのように、揺らめいている。

 ダーブラにとってはほんの僅かの、微々たる『気』ではあるが、地球は愚か、太陽さえも破壊できるんじゃね?というほどの力の集約である。

「みんなぁ~、私の愛を受け止めてねぇ~。ふんだらあっっ!!」

ダーブラはエネルギー弾を降り下ろした。

 ゆっくりと、ゆっくりとエネルギー弾は降りていく。

 雲を散り散りにし、大気を揺るがしながら。

「皆、心を一つに受けてめるんじゃ!!」

「はい、老師様!!」

亀仙人の声を受け、ヤムチャ、クリリンも巨大なエネルギー弾に、赤いぼたんのようなものがついた手袋をはめた手を向ける。

 三人の表情には一片の緩みも、恐怖さえもない。

 目の前にとてつもないエネルギー弾が迫っていてもだ。

 三人をエネルギー弾が押し潰そうとした正にその時だった。

 巨大なエネルギー弾が少しずつ、少しずつ、萎み始める。

 ゆっくりと、ゆっくりとだが、萎み、ついにはエネルギー弾は消滅した。

「気を緩めるな!ここからが本番じゃ!」

ゲロの叱咤の声が飛び、ブリーフが何かのぼたんを押すと同時に、亀仙人、ヤムチャ、クリリンの体に莫大なエネルギーが流れ込んだ。

 三人は苦悶の表情を浮かべ、亀仙人、クリリンは膝をつき、ヤムチャは倒れ悶えなどしていたが、数分の後に、そのエネルギーは体に馴染み。

 亀仙人、クリリン、ヤムチャはとてつもない飛躍を成し遂げた。

 これはどういうことかというと、ゲロは以前から相手の『気』を吸収し、自分の戦闘力を上げる装置を発明していた。

ただ、それには一つ欠点があった。

 体を機械化しなくてはならないという。

 ゲロはそれを生身の人間に施すことはできなかった。

 しかし、そこにブリーフとブルマという二人が揃い、外付けの機械に一端『気』を貯め、次にその『気』を人間に与え、力を上げるという装置を作り出したのである。

 サイヤ人とは違い、地球人には限界があるために考案された戦闘力アップの方法である。

「みんなぁやったわね」

上空から降り立ったダーブラが皆に労いの言葉をかける。

「死んだ御飯が見えたわい」

「綺麗なお花畑を見ましたよ」

「死ぬかと思った…」

三人ともそうは言うが、成し遂げたという満足感が顔に現れていた。

「ゲロちゃんも、ブリーフちゃんもありがとね」

「いえ、わしもダーブラ戦隊の参謀という大役を任せられた身、その上そのような温かい御言葉、恐悦至極にございます」

「わしもこの研究は楽しめたからそれで満足だよ」

言葉に違いはあれど、研究者二人にもまた別の満足感が漂っていた。

「じゃあ、みんな集合よ!」

ダーブラ声を上げた瞬間、離れた所で修行していた悟空やラディッツも含め、皆が集まる。

「みんなはこの一ヶ月で力をつけたわぁ。でもね、明後日来るラディちゃんの友達は遥かに強いわ。無理せずに戦いましょ。それじゃあ明日は休息日にまわして、明後日の朝八時にまたここに集合よ!」

「おう(はい)!」

ダーブラ以外の面々は大幅な戦闘力を成し遂げた。

迫り来るサイヤ人の野望を阻み、改心させることはできるのか?



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地球の危機?サイヤ人来襲!

 エイジ762年11月3日、まるで隕石のように、大気圏突入と同時に、火を纏い、二つの宇宙ポッドが地球に舞い降りた。

 街のど真ん中に突き刺さった宇宙ポッドを取り巻くように、人々が集まっている。

 そんな中、丸い大きな方の宇宙ポッドの扉が開く。

取り巻く人々に緊張が走る。

 隕石の落下と考えていたのだが、それは違い、宇宙人がやって来たのだと、気づいたからだ。

 人々が騒ぎ立てる中、ガタイがよく、頭が禿げ上がった、奇妙な服を着た年の頃50歳前後の男が宇宙ポッドから這い出てくる。

「やっと地球に着いたか。体がなまっちまったぜ」

男は不適な笑みを浮かべ、首や、肩の関節を音をならしてほぐしている。

「ナッパ何をやっている!さっさと行くぞ!」

ナッパと呼ばれた男が振り向くと、髪が逆立った小柄な男があからさまに不機嫌そうな表情で、イラついたように声を上げた。

「待ってくれよベジータ。少しウォーミングアップさせてくれよ」

「好きにしろ」

「へへ、ありがとよ」

ナッパは上機嫌で、ポッドで出来上がったクレーターから飛び上がり、人々が逃げ惑う中に舞い降りた。

「ウォーミングアップに、このごちゃごちゃした街を綺麗にしてやるぜ!」

ナッパは腰を据え、左手を右腕に添え、人差し指と中指を地面と平行にした。

「消し飛べ!」

おぞましい笑みを浮かべ、二本の指が天を指し示そうとした、その刹那。

「ダメよそんなことしちゃあ」

「ウガアッッ!!」

ナッパの断末魔と、木の枝が折れるような音が鳴った後に、二本の指が、あり得ない、天とは真逆のほうに折れ曲がっていた。

「お、俺の指がああぁぁああぁ!!」

「あらあら」

うずくまり、痛みに耐え兼ね叫び声をあげるナッパを、どうしたことかしらといった表情で眺める、我らがダーブラ様。

 街の崩壊と多数の失うはずだった人命を救出した瞬間だった。

「貴様何者だ!!」

ナッパのことを気にする素振りすら見せず、ベジータは声を上げた。

「私は正義と愛の使者ダーブラよ」

ビシッとポーズを決め、ダーブラは宣言した。

「テメエ、よくも俺の指を!ぶっ殺してやる!!」

怒りで我を忘れたナッパが、荒れ狂う牛の如く、ポーズを決めてご満悦のダーブラに襲い掛かった。

 ナッパの丸太のような豪腕が唸りを上げて、ダーブラに襲い掛かる。

 しかし、

「イヤあねぇ、こんなところで暴れちゃあダメよ。場所を変えましょ」

ナッパの攻撃をヒラリとかわし、ナッパにウィンクを送ると同時に、ダーブラは埃を払うかのように、ナッパの胸を軽く押した。

「グハアッ!」

ナッパの戦闘服は砕け、ナッパは遥か彼方に吹き飛んだ。

「ナッパ!貴様今何をした!」

ベジータにはダーブラがとった一連の行動が全く見えていなかったのだ。

 これこそが、戦闘力の大きすぎる程の差であった。

「偉そうに吠えてないで、貴方も飛んでけぇ」

「いつの間に貴様!ガハッ!!」

ベジータが懐に入り込んでいた、ダーブラに気づいたその時には、今まで味わったことのないぐらいの恐ろしい打撃(ダーブラにとっては突っついたぐらい)を受け、意識と共に、体もナッパが吹き飛んだ方向と同じ方向に吹き飛んでいた。

「ふぅ、行ったわね。じゃあ連絡しなくちゃ」

ダーブラは懐から、ブリーフ博士に作って貰ったピンク色のスカウターを取り出すと、装着し、連絡をとりはじめた。

「みんなあ、あと一秒ぐらいでそちらに着くと思うわぁ。二人はかなり気を押さえているみたいだから、ゴミみたいな戦闘力だって油断しちゃあダメよぉ。それとぉ、私がいくまで、二人をこらしめてあげなさあい。くれぐれも殺しちゃあダメよぉ」

「分かりましたダーブラ様」

「分かったぞ」

スカウターから、少し強張った感じのラディッツといつもと変わらない悟空の声が聞こえると、ダーブラは朗らかな笑みを浮かべ、通信を終了した。

「やっぱりラディちゃんは少し緊張しているみたいね。でもみんななら大丈夫。私も準備しなくっちゃ」

ダーブラは懐からカプセルを取り出すと、ボタンを押し、そこに放り投げた。

◇◆◇◆◇◆

「皆の者油断するなよ」

作戦参謀のゲロが発言すると同時に、二つの物体が、地面に突き刺さっていた。

「ナイスコントロールじゃのぉ」

「死んでるんじゃないですかねえ?」

亀仙人はダーブラの正確無比なコントロールに驚き、クリリンはダーブラにやられた、二人のサイヤ人の安否を、敵ながら心配していた。

「それにしても、小さい気だな。一体いくつあるんだ?」

「バカ者、油断をするな!ダーブラ様が言っておられただろ。奴等はお前たちと同じように気を押さえているんだ。まあいい。押さえている現時点の力は測ってやろう」

軽口を叩く、ヤムチャを軽く叱責した後に、ゲロは改良したスカウターで計測を始めた。

「なになに、大きい男が0、08キリ(4000)小さい男が0、36キリ(18000)か。お前たちよりは気を押さえる技術は劣ってはいるが、完全に気を押さえてはいるな」

「本当だな。0、08とか0、36じゃあダーブラの話に聞く、暗黒魔界の赤ちゃんにすら勝てやしないからな」

ヤムチャはダーブラに話してもらった暗黒魔界の話を思い出しながら、ウンウンと頷いていた。

「なあゲロ。おらたちはいつまで待ちゃあいいんだ?早く戦いてえぞ」

悟空は依然として、地面に突き刺さったままピクリともしないサイヤ人の二人を見て、準備運動をしながら実質的にそこの司令塔であるゲロに尋ねた。

「落ち着け孫悟空。こちらを焦らしているのやもしれん。奴等のペースに乗せられたら負けだ。奴等が起き上がるまで待つんじゃ」

ゲロの指示を受け、しぶしぶ悟空は納得し、そこに腰をおろした。

 二人のサイヤ人が意識を取り戻すまで、それから約一時間かかったのだった。



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ヤムチャVSサイバイマン 悲劇は再度訪れる

 ベジータとナッパが荒野に咲く奇妙な植物と化して約一時間が経った。

「いったい何があったんだ」

まずベジータが意識を取り戻し、土中から頭を出し、土埃を払いながら回りを見回す。

「チッ、地球の原住民の雑魚どもに囲まれていやがる。ナッパ起きろ。ラディッツのクソヤロウを制裁する前に、この雑魚どもを皆殺しにするぞ!」

辺りにベジータの怒号が飛ぶ。

相当苛立っているのがよくわかる。

「つつつ、おっベジータ。俺たちはどうしていたんだ?」

「知るか!」

起き上がったナッパはまだ状況がいまいち飲み込めていないらしく、辺りをキョロキョロと見回す。

「へっベジータの言ってた原住民ってのはコイツらか」

ナッパは徐にスカウターのボタンを押す。

 スカウターは無機質な機械音をたてて動き出した。

「まずあのスケベそうな爺は139、あの噛ませ顔の男は177、あのチビ禿げは206、山吹色は500、あのデカイ男はマジかよ、0かよ」

「おいクリリン俺たちはバカにされていないか」

「ええヤムチャさん、もろにバカにされてましたね」

ナッパの発した言葉にヤムチャとクリリンの闘志が燃え上がった。

 確実にナッパは死亡フラグを立てていた。

 まあそれもしょうがない話である。

 広い宇宙の中でも戦闘民族サイヤ人にかなう者は一握りほどしか存在しない。

 そのため、ベジータ、ナッパはほとんどの生物を見下していたのだ。

「雑魚ばかりか。こんな雑魚を相手にしていられるか。ナッパサイバイマンを出せ」

「ああ。へへへ、丁度六粒あるぜ。爺、噛ませ、チビ禿げ、山吹色、デカブツ、後ろに隠れている爺。丁度いいぜ」

ナッパは地面を掘り返し、

「なかなか土も良いじゃねえか。高値で売れるぜ」

とポツリと嬉しそうに溢すと種のような物を植え出した。

 まさにその姿は、農民そのものであった。

 すると、一瞬の間もおかず、土がむくむくと膨らみ、奇妙な緑色の生物が飛び出してきた。

「ケケケケケ」

「キシャーー」

「ウゲッ気持ちわりー」

「可愛い娘ちゃんが出てくると、チッとばかし期待してたんじゃがな」

「武天老師様、それはありませんって」

「じっちゃん変わらねえな」

「……」

クリリン、亀仙人、ヤムチャ、悟空が和やかに話をしている。

まるで緊張感がない。

それもしょうがないことである。

すでに悟空達は気で相手の力を計れるまでになっており、サイバイマンは敵ではないと考えていたからだ。

「なめやがって、やれサイバイマン!やつらをぶっ殺せ!」

「キシャーー!!」

ナッパの指示と同時にサイバイマン六体が一斉に襲いかかる。

六体のサイバイマンは地を蹴り、疾風の如く迫っていた。

「チッ雑魚が、狼牙風々拳」

ヤムチャが腰を下ろし、構えをとり、拳を繰り出した。

「ハイハイオーー」

未だに足元はお留守ではあるが、その雷鳴が鳴り響くかのような轟音が、ヤムチャが拳を振り抜く度に放たれる。

 サイバイマンとは距離が空いていたはずが、その拳の衝撃波のみで、サイバイマンは頭が砕けたり、上半身と下半身が放されたりといったように、簡単に粉砕していった。

「フン、ぶっ殺されたくなかったら、さっさと消えるんだな!」

ヤムチャはドヤ顔で決め台詞を放っていた。

 今まで見たことがないほどのヤムチャのドヤ顔に皆は苦笑いを浮かべるしかなかった。

「やれやれ、敵じゃなかったぜ」

「ヤムチャ後ろだ!」

ヤムチャは気を抜き、気の関知を怠っていた。

 戦場では一瞬でも気を抜いてはいけないという鉄則を怠ったのだ。

 それも、今までさらさら活躍の場がなかったヤムチャが、大活躍をしたのだから、慢心してもしょうがなくはないのだが。

「チッ離れやがれ!」

下半身が千切れたサイバイマンと、腹に穴が開き緑色の血を流したサイバイマンが、ヤムチャの死角となる背中にへばりついて離れない。

「それでいいんだ」

ふんぞり返ったベジータが偉そうにいい放つ。

皆はどこかヤムチャに似たところをベジータに見いだしていた。

「キシャーーーー!!」

サイバイマンが激しく発光しだした。

「ヤムチャさーーーん」

「棒読みだなクリリン」

「まあそうだろ」

サイバイマンは爆発した。

土煙が巻き起こり、辺りにはサイバイマンの欠片やら、土やら、石やらが落ち、音を立てている。

 土煙がおさまった時には、クレーターの中でぼろ切れのようになったヤムチャの姿が。

「クックックック、まず一匹目か、お前らそのゴミクズをかたずけておけ!!」

ベジータが顎で指示を送る。

「なあクリリン、あいつら気を感じることできねえんじゃねえか」

「多分な。そういう方面にはたけてないんだろ」

未だに喉かに話す悟空とクリリン。

まるでヤムチャのことは気にもしていないようだ。

すると、亀仙人が横たわるヤムチャに近より話かけた。

「そろそろ起きんかヤムチャ。皆お前さんが無傷なのをわかっておるぞ」

「バレてたか。少し皆を心配させたかったんだがな」

ヤムチャはスクッと立ち上がると埃を叩き、残念そうな顔をした。

「あんなちっぽけな気での爆発じゃあそよ風程度にしか感じなかったんじゃないかヤムチャ」

「まあな」

悟空達が笑いあっている一方で。

ベジータとナッパは。

「おいマジかよ。どうなってんだよベジータ」

「知るか俺に聞くな!嘗めやがって次はナッパお前が奴等を地獄に送ってやれ!!」

「ああ、任せておけ」

ベジータとナッパは依然として強気ではあるが、僅かながら違和感を感じ始めていた。



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