東方吸血王 (龍夜 蓮@不定期投稿)
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序章
駄神との遭遇


龍夜「初めまして、『龍夜 蓮』と言う者です。pixivで活動していますが、こちらにも投稿する事にしました。まだまだ新参者でもの凄い駄文ですが、それでも構わないと言う人はゆっくりしていって下さい!」



「あーあ暇だー」

 

夏の終盤俺はやる事もなく俺は町をぶらついていた。

 

「暇で仕方ねーよ、何か面白い事でも起きないかね~」

 

何て呟いていると上から何かが崩れる音が聞こえた。

 

「いや、なんで鉄骨が上から降ってくるんだァ!!」

 

やべっ逃げないと・・・って体が動かねえ!?

 

あーあ俺の人生ここで終わりか・・・もう少し生きたかったんだけどな・・・

 

そして俺の意識は途絶えた・・・

 

 

 

 

 

 

 

ん・・・?ここ何処だ・・・?真っ白だな・・・

 

てか何で俺ここにいるんだっけ・・・アレ・・・?

 

「アレ?ここ何処だ?」

 

周りを見渡すが、何処もかしこも真っ白だった。

 

『目覚めるのじゃ・・・』

 

「何か聞こえるけど多分幻聴か、もう一回寝よ」

 

『え、あのだから目覚めるのじゃ』

 

「うるせーよ、俺今ここ何処か分かんないから混乱してるの」

 

俺は頭に響いてくる声を無視してもう一回眠ろうと目を閉じたのだが、頭に響いてくる声はしつこくこう言った。

 

『いや、だから目覚めてください!お願いしまーす!!』

 

「っていい加減目覚めろやァ!!何でお主そんなのんびりしてるの?何で普通の人間なら慌てふためいてこの状況整理する筈なのに何で寛いでいるの!?」

 

急に目の前に現れた老人はそんな事を言いながらツッコミを入れ続けた。

 

「あ、ツッコミ終わった?じゃあおやすみなさ・・・」

 

「だから寝るなァ!!お主普通ここは何処ですか?とか聞く場面じゃろうが!!いいからさっさと起きんかい!!」

 

「たっく・・・五月蠅い爺だな」

 

「で?ここは何処ですか~(棒」

 

「・・・ここは転生の間。お主は死んでしまったのじゃ」

 

は?俺が死んだ?ゑ、死んだって?

 

「疑問に思ってるようじゃが、お主はあの時落ちてきた鉄骨に潰され死んでしまったのじゃ。まぁ本当は儂がお主の書類失くしたのが原因なんだけどね(テヘペロ☆」

 

「いや、テヘペロじゃねーよ!て事はあの時落ちてきた鉄骨はアンタのミスで起きたって事じゃねーか!!どう責任とってくれるんだァ!!」

 

まさかあの時落ちてきた鉄骨がこの糞爺のせいだなんて・・・どうせなら好きなあの子に告っとけばよかった・・・

 

「だからお詫びにお主を転生させるのじゃ。ここは転生の間、前世で幸せになれなかった者や今回のように儂のミスで殺してしまった者などに第二の人生を与える場所なのじゃ」

 

「つーか、糞爺。さっきから何で俺が思ってる事分かんの?」

 

「いや、一応儂神様じゃし・・・」

 

は?いやいやありえないだろ、テヘペロなんてふざけて言う神様が何処の世界にいるよ。やっぱり頭が逝ってしまったんだなこの糞爺は・・・

 

「いや、さっきから聞こえてるからね!?儂の頭正常だから!!至って正常だから!!」

 

「分かったから早く話進めてくれ」

 

「酷い・・・」

 

糞爺は目に溜まった涙を拭くと急に真剣な顔になり話しを進めた。

 

「つまりさっきも言ったがお主に転生してほしいのじゃよ」

 

「転生ねぇ~。で、何処の世界に俺は転生するんだ?」

 

「この世界じゃ」

 

爺がそう言って取り出したのはあるゲームのソフトだった。

 

「東方?その世界に転生しろってか?」

 

「そうじゃ。その世界はお主の世界でも人気での~前にミスで殺してしまった二人も喜んでその世界に行ったのじゃ」

 

てか前にミスで殺したって・・・この糞爺ほんとに神様か?ミスで二人同時に殺すなんてよくそんな器用な事ができるな・・・

 

「儂の傷口掘り返さないで・・・と、ともかくお主はこの『東方Project』の世界に転生して貰うぞ」

 

「いいけどよォ・・・その世界って何か戦ったりするのか?」

 

「そうじゃ、『スペルカードルール』と言って人間、妖怪、神が平等に戦える。つまり条件は一緒じゃからどのキャラも無双できる訳ではないのじゃ」

 

「そしてその世界では主要キャラのほとんどが能力を持っておるのじゃ。じゃからお主にも能力を与えようと思うんじゃが、何か欲しい能力はあるか?」

 

欲しい能力か・・・別にその世界で無双したい訳じゃないしなぁ・・・よしこれにするか。

 

「じゃあ『能力を創る程度の能力』で頼む」

 

「能力を創る?それでよいのか?」

 

「いや、今は特に今欲しい能力は無いからな。転生した後で欲しい能力創ればいいかなって思っただけだ」

 

「そうか、じゃあ直ぐに転生させるがよいか?」

 

「ああ、やってくれ」

 

俺がそう言ったと同時に俺の足元が消え・・・ゑ、消えた!?

 

「ボッシュ―トになります♪」

 

「いやふざけんなァァァァァー!!!!」

 

そして俺は奈落の底に落ちて行った。

 

「さーてあ奴が転生した先は・・・あ・・・やってしもうた」

 

 

 

 

 

 

 

「う、うーんここは・・・?」

 

目が覚めると俺はある部屋に居た。結構豪華な部屋だったが、目に悪い赤の配色だった。

 

「てか、何か体が随分と軽い気が・・・」

 

そう言って俺は自分の体を見た、そしてすぐに自身の体の異変に気付く。

 

「え、何これ・・・」

 

黒い西洋の服を身に纏い、背中に虹色の翼を生やした明らかに前世とは違う肉体をした自分がそこにいた。

 

「いや、なんで俺こんな縮んでるの・・・?いやそもそもここ何処!?」

 

そう俺が混乱してると、頭の中にまた声が響いて来た。

 

(あーテステス、聞こえるかの?)

 

(おい、糞爺!!これは一体どう言う事だ。まるで意味が分からんぞ!!)

 

(あー・・・その・・・転生させる時少しミスってしまってのう・・・お主を東方の主要キャラの一人フランドール・スカーレットに憑依転生してしまったのじゃ・・・)

 

「ゑ・・・?」

 

こうして俺の第二の人生は始まった・・・




龍夜「と言う訳でコッチでも投稿する事にしました」

フラン「大丈夫なのか?」

龍夜「まぁ多分大丈夫だよ・・・」

フラン「そうか・・・と言う訳でこんな作品ですが、よかったら次回も見てやって下さい」

龍夜&フラン「「それではまた次回お会いしましょう」」


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悪魔の弟

フラン「ウゾダドンドコドーン!」 レン「大変だな・・・アンタも」 龍夜「と言う訳で本編行っくよー」



前回のあらすじ

 

あ、ありのまま今起こった事を話すぜ・・・俺は謎の空間で神を名乗る糞爺に転生させられ原作キャラに憑依転生してしまった・・・な、何を言ってる分からねーと思うが俺も何をされたのか分からなかった・・・

頭がどうにかなりそうだった・・・転生とか二次創作とかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ、もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ・・・

 

 

(いい加減現実逃避はやめたほうがよいぞ?)

 

「うっさいわ!!誰のせいでこんな事になってると思ってんだ!!」

 

(儂のミスとしてもまさか原作キャラに憑依するとは思ってなかったのじゃ、お主一人では心配じゃから儂はお主のサポートをする事にする)

 

サポートって具体的に何するんだ?

 

(お主が憑依したキャラ、フランドール・スカーレットは原作ではその持っていた能力を危険視されずっと地下に幽閉されていた悲しい過去を持つキャラなんじゃよ。まぁ儂が読む二次創作ではあまりそう言うのは見なかったんじゃがの・・・)

 

いや最後の絶対いらないだろ。

 

(お主のおる世界では丁度紅霧異変が終わって少し日数が経過しとる。それまでは地下に幽閉されておったらしいが今では元の部屋に戻されてここに住む者達とは仲良くやっているようじゃ)

 

「へーそうなのか」

 

なんだ特に心配する事はなかったな、ずっと幽閉されてると聞いた時は少しビビったが仲良くしているなら俺としても嬉しいものだ。転生する時期がこの頃で本当によかった。

 

「それで主要キャラって事は何か能力持っているんだろ?フランの能力って何だ?」

 

そして俺は一番疑問に思っていた事を聞いてみた。幽閉される程危険視されていたのだからさぞかし凄い能力なんだろうな。

 

(フランドール・スカーレットの能力は『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』じゃ)

 

「え・・・ありとあらゆるものを?」

 

(まぁ簡単に説明するならDBのブロリーとほぼ同じ戦闘力&破壊力を持ってるという事じゃ)

 

なにそれ俺この姿で「俺は悪魔だァ・・・」とか言ったりするの?凄い恥ずいんですけど。

 

(そしてさっき言ったサポートじゃが、お主はこの東方のキャラに関しては全くの無知、存在すらも知らないのじゃ。じゃから分からないキャラと遭遇した時お主の脳内で軽く説明する。まぁ用するにぺパマリのものしりと思ってくれればよい)

 

「なるほど、理解した」

 

(それとさっき言った能力は危険じゃからお主が使っても暴走しないようにしておく。そうしないとヤバいからのう)

 

「ああ、サンキュ」

 

さてどうしようか・・・この建物の中を探索してもいいが、館っていう以上とても広そうだし迷いそうだからなぁ・・・

 

「とりあえず、疲れたし寝るか・・・」

 

俺はベットに身を投げ、そのまま眠った。

 

~2時間後~

 

「・・様・・・フラ・・・様」

 

ん・・・誰だ?人が気持ちよく寝てるっていうのに。

 

俺は重い瞼を開けると俺の目の前に銀髪の髪をしたメイドさんが居た。

 

「起きられましたか、フラン様。夕食のお時間です」

 

「え、あぁ有難う・・・」

 

(おい、爺。この綺麗なメイドさんは?)

 

(その綺麗なメイドの名は十六夜 咲夜じゃ。紅魔館の主であるレミリア・スカーレットに仕えるメイド長で、紅魔館に住んでいる唯一の人間じゃ。実質的に紅魔館の一切を取り仕切る立場におり、家事一切をほぼ一手に引き受けておる紅魔館のメイド長でファン達からはPAD長の愛称で親しまれておるぞ)

 

(だから最後のやついらねーだろ)

 

俺は脳内で爺にツッコミを入れつつ目の前のメイド長を見る。綺麗な人だな・・・メイドなんて生きてるなかでも見たことないからなんか新鮮だな・・・

 

「あ、あのフラン様?私の顔に何かついているのですか?」

 

ヤベッ、つい見つめてしまった・・・

 

「い、いや綺麗な顔だったからつい見とれてしまって・・・」

 

「き、綺麗!?」

 

咲夜が驚いたような声をあげ、顔を隠し何か呟きはじめた。

 

(あ、あのフラン様がわ、私の事き、綺麗って・・・う、嬉しいけどなんか頬が熱いしむ、胸が苦しい・・・)

 

「あ、あのー咲夜?だ、大丈夫?」

 

「ッ!だ、大丈夫です。夕食のじゅ、準備ができておりますので一緒に向かいましょう」

 

「う、うん、い、行こうか」

 

(なぁ爺、咲夜がさっき何か呟いていたけど何かあったのか?)

 

(自分の胸に聞け)

 

(???)

 

爺の声が急に低くなった事を疑問に思いながら俺は咲夜に連れられ食堂に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして食堂に入ると本を持った引きこもりのような女の子と俺と同じ位の身長で俺とは違う黒い翼を生やした女の子が既に椅子に座って待っていた。

 

「ご苦労様、咲夜。じゃあ料理を持ってきなさい」

 

「はい、畏まりました。お嬢様」

 

そう咲夜が頷くと咲夜の姿が一瞬で消えてしまった。

 

(なぁ爺。咲夜の能力はなんだ?)

 

(彼女の能力は『時間を操る程度の能力』まぁ簡単に説明するとジョジョのDioと同じという事じゃ)

 

(なるほど、把握)

 

俺は爺の説明に納得し、用意されていた椅子に座った。そして俺はさっき咲夜に料理を持ってくるように命じていた女の子が気になり爺に聞く事にした。

 

(彼女はレミリア・スカーレット。紅魔館の主でもありさっき説明した紅霧異変を起こした人物でもあるのじゃ。一応フランの姉でもありファン達からはおぜう様、うー☆、カリスマ(笑)の愛称で親しまれておる)

 

(だから最後のいらねーから)

 

俺はそうツッコミを入れつつ、別の椅子に座って本をずっと読んでいる女の子の事が気になりまた爺に聞くことにした。

 

(彼女はパチュリー・ノーレッジ。レミリアの友人でもありいつもヴアル図書館に引き籠っている魔女じゃ。ファン達からは紫もやし、むきゅーの愛称で親しまれておる)

 

(・・・もう何も言うまい)

 

俺がそんな感じであきれていると、咲夜が料理を持って戻って来た。皿には豪華な料理が乗っており俺の食欲を刺激した。

 

「それじゃあいただきましょうか」

 

レミリアがそういうとレミリアとパチュリーは料理を黙々と食べ始めた。

 

「いただきま・・・」

 

(ちょっと待つのじゃ!!)

 

俺は用意された料理をフォークで刺し、食べようとすると急に脳内に爺の怒声が響き俺の行動を止めた。

 

(何だよ?俺腹減ってんだから静かに食べさせろよ全く・・・)

 

(いや儂としても言ったほうがいいか悩んだんじゃが一応言っておこうと思っての・・・)

 

そう言うと爺は一呼吸おき衝撃の事実を俺に伝えてきた。

 

(お主が今食べようとしていた料理・・・人間を食糧に加工した物を使っておるのじゃ)

 

(ゑ、これ全部人間だったの・・・か?)

 

(そうじゃ)

 

へーそうなんだー・・・ってそんな事言ってる場合じゃねえ!!ど、どうしようだ、だってこれ料理だけど元は俺と同じ人間だった訳だろ・・・で、できねぇ実質共食いだよ・・・これ。

 

(咲夜に頼んで普通の食材を使った料理を出して貰うのじゃ。これを切り抜ける唯一の手段はそれしかなかろう・・・)

 

(りょ、了解)

 

「咲夜ーちょっと来てくれないかな!」

 

俺がそう言うと一瞬で目の前に咲夜が現れた。

 

「はい何か御用ですか?フラン様?」

 

ど、どうしよう。い、言いずれぇ・・・で、でもここで言わないでいつ言う!!

 

「そ、その今日は普通の食材を使った料理が食べたいなーなんて」

 

「普通の食材?パチュリー様の料理に使っている食材の事ですか?」

 

「そ、そうそれそれ!」

 

「畏まりました」

 

そう言うと咲夜の姿が消えた。

 

俺は密かに安堵していると姉であるレミリアが話しかけてきた。

 

「珍しいわね、フラン。貴方がそんな事を言うなんて」

 

「た、たまにはそういう気分になるんだよ。姉さん」

 

俺がそう返すと、レミリアが急に目尻に涙を浮かべこっちを見ていた。え、俺なんかしたか?

 

「も、もう一度言って」

 

「え、どうした「いいから早く!!」たまにはそういう気分に「それじゃなくて最後の言葉よ!!」えーとね、姉さん?」

 

俺がその言葉を言うとレミリアが自分の座っていた椅子から飛び降り俺の所まで走って来て急に俺を抱きしめてきたった・・・ってえ!?

 

「ど、どうしたの姉さん!?」

 

「やっと、やっとそう呼んでくれたのね!!嬉しいわフラン!!」

 

(おい爺、俺には状況がさっぱり分からないんだが・・・)

 

俺は突然の出来事が理解できず、唯一の頼みの綱である爺に聞いた。

 

(フランとレミリアは原作だと凄く仲が悪くてのぅ・・・この頃はまだレミリアとはぎこちなく姉さんと呼んでおらんかったのじゃろう)

 

そうだったのか・・・。俺は未だに俺の事を抱きしめているレミリアを抱き返した。

 

「大丈夫よもう貴方を幽閉したりなんてしないわ、もうずっと一緒だから・・・」

 

「有難う・・・姉さん」

 

そんな俺達の光景を眺めていたパチュリーは笑ってこう呟いた。

 

(よかったわね・・・レミィ)




龍夜「と言う訳で第二話でした~フランは咲夜にフラグを建て、レミリアとの絆をを取り戻しましたね」

フラン「あの後、咲夜が戻って来た時は大変だったよ・・・急に慌てふためいて「か、カメラにこの光景を残さないと!!」って必死な顔してそう言っていたから・・・」

龍夜「愛されてますねぇ~2828」

フラン「か、からかうなよ///」

フラン「そんな訳で今回もこんな駄文を見てくれた方ありがとう」

龍夜&フラン「「それではまた次回お会いしましょう」」


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紅魔館から逃げるんだよォォー!!

フラン「最近爺の機嫌が悪いんだが、何かあったのか?」 駄神「自分の胸に聞けェ!!」 龍夜「アハハ・・・では本編へどうぞ」



あれ以来俺「フランドール・スカーレット」はここ紅魔館の生活にだいぶ慣れてきた。爺にアドバイスや助言を貰いなんとかやっている。ここには咲夜以外のメイドも働いていると聞き俺は仲良くしたいと思い近づいたのだが、悲鳴をあげながら逃げてしまう事が多々あった。まぁ俺の能力は恐ろしい物だからなぁ・・・と思いつつ俺はほかの妖精メイドと仲良くなれる方法はないかと模索していた所ふと思いついたのが彼女達に自分の料理を振る舞う事だった。これでも俺は転生前はよく家事をやっていたのでその経験を活かしいつも頑張っている妖精メイド達に自分が作ったお菓子を食べて貰う事にした。俺は咲夜の目を盗み厨房でお菓子を一つずつ作り、妖精メイド達の部屋に置き手紙を添えてこっそり部屋から立ち去った。それから妖精メイド達が俺の部屋に来て全員頭を下げてお礼を言ってきたのだ。俺は突然の事に多少驚いたが、「別にいいよ、いつも頑張ってくれてるからそのご褒美だよ」と笑顔で言うとメイド達は顔を赤らめもう一度お礼を言ってきた。それ以降は俺はこの紅魔館の住民と仲良くしている。パチュリーの図書館へ行き、小悪魔の仕事を手伝ってあげたり、いつも不憫な目にあっている美鈴にご飯を作ってあげたりもした。ただ最近悩みはなぜか、あれ以来姉さんがやたらスキンシップ(抱き着いてきたり、キスをしたり)をするようになったり、咲夜が俺の部屋に来てお茶を置いて帰ると思っていたら急に自分の分のカップを持ってきて「一緒にお茶をしませんか?」と誘ってきたりといろいろと疲れているのだ。そして現在・・・

 

 

 

「でやぁ!!」

 

ガキィン!と剣と剣が交わる音が空間内に木霊する。実はあれ以来爺に戦闘訓練を受けているのであった。俺の能力「ありとあらゆるものを破壊する程度の能力」を俺がちゃんと制御出来るようにする為でもある。

 

「どうしたんじゃ!その程度じゃ儂に膝を着かせる事など不可能に近いぞ!」

 

「うっせぇ!そっちこそいい加減沈め!老獪のくせに変に粘るな爺はッ!!」

 

ガキィン、ガキィンと剣が交わる音は止まらず空間内に木霊し続ける。

 

「はぁああああ!!」

 

俺は神速を使い爺の後ろに一瞬で回りこみ、一気に剣を叩きつけた・・・が。

 

爺は分かっていたかのように叩き付けた筈の剣を手で受け止めていた。

 

「儂はこれでも天界では最高位に位置する神・・・たかが吸血鬼如きに負けては神の名折れじゃ。それそろ決めさせて貰うぞ」

 

「クッ!」

 

俺は飛びのいて間合いを取ろうと試みたが、時既に遅し・・・神の最強スペルが待っていた。

 

「終焉『ラグナロク』!!」

 

そして俺の意識はブラックアウトした・・・

 

~1時間後~

 

「イッテェ・・・ハァまた負けかよ」

 

「そう気を落とすでない、始めた頃より筋をよいしなにより戦いに迷いがない。このまま続けていけばいずれは儂にも勝てるじゃろうて」

 

上から目線なのが妙にムカツクなこの糞爺は・・・

 

「あの、さりげなく心で儂の悪口言うのやめてくれない。儂泣いちゃうよ?」

 

泣けばいいと思うよ(棒

 

「そのネタが来るとはさすがに予想外じゃったのう(涙)」

 

爺のマジ泣きを無視して俺は紅魔館に戻り何をするのかを考えた。妖精メイドにお菓子でも振る舞おうか、いや昨日やったばかりだしなぁ・・・パチュリーに魔法でも教えて、いや多分忙しいだろうな・・・やべぇ暇になってしまうな。

 

「なら外に出てみてはどうじゃ?」

 

「は?いやいや俺吸血鬼だよ?外出て太陽浴びた瞬間俺の体灰になるから!?」

 

いや、まぁ確かに外の事気になるしいろんな人とも交流持ちたいけども・・・

 

「・・・お主自分のもう一つの能力忘れたのか?」

 

え、もう一つの能力って・・・あ。

 

「そうじゃ、お主に与えた『能力を創る程度の能力』なら吸血鬼の弱点を無くす事ぐらい容易いじゃろうて」

 

そこに気付くとは・・・お前天才か・・・

 

「逆になぜ今迄気付かなかったんじゃ・・・」

 

「いや、最近いろいろあったから素で忘れてた。サンキュじゃ行って来る」

 

俺は爺が創った空間を出て自分の部屋に戻った。

 

「さーて出掛けるにあたって服も変えるか」

 

~少年服創造中~

 

「よし、この服で行こう」

 

俺が創造した服は前世でも気に入って着ていた赤と黒が混じった上着とジーパンだった。

 

「さて行くのはいいけど、どうしようか・・・」

 

実は爺から聞いた話によると、この紅魔館には強力な結界が張ってあり侵入者や脱走した者が一瞬で分かる現代の科学顔負けの効果を持った結界が張ってあるのだ。

 

「あ、そう言えば確か八雲 紫だっけ?その人が持っていた能力を創れば・・・よし物は試しだ」

 

俺はそう言いながら頭の中でその能力を思い浮かべ言った。

 

「展開!!」

 

そう念じると俺の前にリボンで縛られた、中は一種の亜空間のようになっている多数の目があるスキマが現れた。

 

「やればできるもんだな・・・さて後は身代わりを創っておかないと」

 

俺は即興で思いついたスペカを念じた。

 

「復体『ドッペルゲンガー』」

 

すると俺そっくりの分身が創られた。

 

「よし、俺が帰る迄身代わり頼んだぞ」

 

「はいはい、分かりましたよ。いってらっしゃい我が主」

 

そして俺はスキマに入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっしゃあ!脱出成功!!」

 

俺は湖にスキマを開き、外に出て初めて見る景色に心躍らせた。

 

「さーて出たのはいいが、何処に行こうかな・・・」

 

俺はあまり幻想郷の地理に詳しくないため一瞬悩むが、俺のサポートをしている爺こと駄神を思い出し、呼んだ。

 

(おーい、爺~聞こえるか~)

 

(ああ聞こえておるよ、で何処に行くか悩んでおるんじゃろ?)

 

(ああ、何かオススメの場所でも知ってるのか?)

 

(魔法の森はどうじゃろうか?そこには香霖堂という古道具屋や霧雨魔理沙やアリス・マーガトロイドの家があるからのぅ)

 

(分かった、じゃあ道案内よろしく)

 

(・・・儂をカーナビかなにかと勘違いしておらんか?)

 

(気にするな)

 

そして俺は爺の案内のもと魔法の森へ向かった。




龍夜「と言う訳で次回は魔法の森編ですね」

フラン「やっと外に出られたからな。存分に楽しませて貰うぜ!」

フラン「そんな訳で今回もこんな駄文を見てくれてありがとう」

龍夜&フラン「「それではまた次回お会いしましょう」」


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設定

フラン「今回は俺と爺の設定か」 駄神「あの・・・ずっと言いたかったんじゃが、いつになったら「駄神」の表示は取れるのかのぅ・・・」 龍夜「永久に無い♪」 駄神「チクショーメェ!!」



星屑 極夜(フランドール・スカーレット)   

 

イメージcv - 鳥海浩輔

 

 

 

 

駄神のミスにより死に東方Projectの原作キャラに憑依転生してしまった不運な主人公。東方の事は前世では知らず、遊〇王や〇魂などのアニメしか見ていなかった。前世では親が早くに他界してしまった為一人暮らしでバイトをしながら高校に通っていた。一人暮らしだった為家事などは人並みにでき、お菓子作りが趣味。転生前から結構女子からモテていたのだが、本人が鈍感だった為全く意味がなかった。転生後は駄神に小言や悪口を言いながらも楽しくやっている。

 

種族 吸血鬼、???

 

性別 ♂

 

容姿 TOV(テイルズオブヴェスぺリア)のユーリ・ローウェルを幼くし、瞳の色は赤で髪は金髪。

 

性格 優しい性格だが、家族や友達を傷つける輩には容赦がない。

 

服装 執事服に似た感じの服

 

外出時 ユーリ・ローウェルと同じ服装だが、色は紅

 

身長&体重 前世では身長は178で体重は50、年齢を20歳仕様にすると身長は180で体重は50になる。

 

趣味 お菓子作り、爺を弄って遊ぶ事、アニメ鑑賞

 

能力 「ありとあらゆるものを破壊する程度の能力」原作と同じ。

    

   「境界を操る程度の能力」原作と同じ。

 

   『能力を創る程度の能力』どんな能力でも創る事ができる。

 

   『自身のありとあらゆる弱点を無くす程度の能力』自身の種族の弱点や自身が苦手な事全ての弱点を無くす能力。

 

   『自分の身長と体重を変更する程度の能力』自身の身長と体重を変更する能力。

 

   『(恋愛)フラグを建てる程度の能力』どんな女性にも必ず(恋愛)フラグを建ててしまう体質。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

駄神

 

 

 

 

天界では一応?最高位の神らしい。極夜を殺してしまった張本人でもあり殺してしまった理由がアホ全快かつ本人も反省していない為他の神達は怒り(強制的に)極夜のサポートに就かせた。普段から極夜に弄られていて一見威厳が無いようにも見えるが、戦いになると鬼のような強さで相手をねじ伏せる。普段はニコ動や東方の二次創作に手を出す程のオタク。

 

 

容姿 真っ白な髭を生やし、長髪。爺だが、結構なナイスガイ。

 

性格 真面目な性格だが、ミスをよくしてしまうのでカリスマなどは皆無

 

趣味 東方Project、ニコ動、二次創作

 

能力 『相手に能力を与える程度の能力』自分以外の者に好きな能力を与える能力

 

   『創造を司る程度の能力』様々な物を創造し生み出す。人の命すらも創造でき、神話上で実際に暴れまわった生物も生み出す事ができる。

 

   『世界を超える程度の能力』別世界に行く事ができる。そして指定した世界の『平行世界』にも行く事が可能。

 

   『絆を繋ぐ程度の能力』別世界上で仲良くなった者を呼び出し一時的に戦って貰う能力。人、獣、龍、妖怪etc等々種類は問わない。




龍夜「と言う訳でフランと駄神の設定でした~」

フラン(極夜)「てか、なんで体質がアレなんだ・・・」

龍夜「まぁ・・・上条さんと同じ運命だってことだよw」

フラン(極夜)「不幸だ・・・」


~追記~ 因みに設定は随時更新していくので



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これは普通の魔法使いですか?いいえ、乙女魔理沙です

龍夜「投稿遅れてサーセン」 フラン(極夜)「やっと再開か・・・」



「後どれくらいなんだ?爺」

 

(もう少しと言った所かのぅ)

 

現在俺は魔法の森を飛んでいる。目的地は霧雨魔理沙の家だ。爺の話によれば、魔理沙は東方の作品の中で主人公の相棒でもあり新作の自機に必ず採用される優遇キャラ・・・らしい・・・。そのせいでほかのキャラが採用されないなどいらない愚痴も聞いたがな・・・

 

 

 

(よしここで降りるのじゃ)

 

「え?まだ家らしき物はないぞ?」

 

(ここからは歩いて行くのじゃ。飛んでいるのも少しは飽きたじゃろ?ここからは景色を楽しみながら行くのじゃ)

 

まぁそれもそれでありか。俺はそんな事を思いつつ地面に降り歩き始めた。

 

それにしても茸が多い森だな、こんな所に住んでいるとは・・・。普通の人間なら住まないだろうが、魔理沙が魔法の実験によく使う希少な茸が生えている為ここに居付いているのだろう。ハァ・・・・・・それにしても東方の世界に来てからいろいろ知ったよな・・・・・・俺。正直俺が元居た世界とは全く違うし、霊力やら神力やら気やら何処かのアニメで出てくる主要キャラが技を出す為に必要な力迄あるし、何より俺自身も爺に地獄のような訓練させられて生きているのが不思議な位だ。何処かの時止める吸血鬼より人間辞めてる気がするな。

 

 

 

「爺、後どれ位で着く?」

 

(後少しくらい・・・お、アレじゃ)

 

後どれくらいかと爺に聞こうとしたが、その必要もなかった。

 

「霧雨魔法店・・・ここが魔理沙の家か」

 

俺は扉の前迄行き、ドアをノックした。しかし幾ら待っても家主の魔理沙は出て来なかった。

 

「アレ?居ないのか?」

 

(恐らく博麗神社か、香霖堂にでも行ったのかのぅ。この時間帯に居ないとなると)

 

マジか・・・まぁ留守にしてるのなら素直に別の所に行くとしますかね・・・。

 

そう思い俺はもう一度飛ぼうとしたが・・・何処からか声が聞こえてきた。

 

「どいてくれェー!!」

 

ん?何処からか声が・・・ってま、まさか・・・

 

そう俺が思った時には遅かった。上空から箒とともに魔理沙が落ちてきているのだ。

 

(う、上から来るぞ、気を付け・・・)

 

「いや、遅いから!って・・・・・・ギャアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

~三十分後~

 

 

「いやー悪い悪い。急に箒から落ちちまってな。それにしても久しぶりだなフラン」

 

「・・・いや別に怒ってないからいいけど」

 

あの後俺は何とか復活し魔理沙の家でお茶を頂いている。それにしても、魔法少女なんてテレビの中だけの存在だけだったから何か新鮮だな・・・

 

(魔理沙の場合、魔法少女というより盗賊といったほうが合っている気がするんじゃが・・・)

 

(いや・・・確かにそうだが・・・うん、否定してやりたいが無理だな・・・)

 

「それで何でここに来たんだ?ていうかあの時と違う服みたいだし・・・それにどうやって抜け出したんだ?」

 

「え?え、えーとそ、その」

 

(ど、どうやって誤魔化せばいいんだ・・・)

 

(あ、ありのまま起こ・・・)

 

(いや爺、そのネタ前にもやったし魔理沙絶対知らないだろ)

 

(奇跡も魔法も有るんだよとかは?)

 

(いや、もういいから・・・)

 

と、とりあえず適当に誤魔化すしかない・・・

 

「紅魔館に居ても暇だし、外の事知らなかったから・・・」

 

「そうか、まぁずっとあの地下に居ればな・・・」

 

ホッ・・・・・・なんとか誤魔化せてよかった・・・・・・

 

「そうだ!なぁフラン?久しぶりに弾幕ごっこしないか?」

 

「え?」

 

え、ちょっいやいや無理だろ、主人公の相棒とか呼ばれてるし絶対勝てる訳が・・・・・・

 

「ほらさっさと行こうぜ~」

 

「え、いやちょっまっ。いだだだだだ!自分で歩けるから!?」

 

意見を言う前に俺は魔理沙に襟首を掴まれて強制連行された。不幸だ・・・・・・

 

 

 

この時は太陽が隠れていた為魔理沙に吸血鬼の弱点の事とかは言われはしなかった・・・・・・なんでタイミングよく太陽が雲に隠れたんだろうか・・・・・・

 

 

※それは儂が太陽隠す為に大気を操っていたんじゃ。全く太陽を隠すこっちの身にもなってほしいわい・・・・・・by駄神

 

 

 

 

 

「さぁ!前の時のように派手にやろうじゃないか!」

 

「あ、ああそうだな・・・」

 

ハァ・・・こうなった以上やるしかないか。駄神との修行が俺を強く?したと思うし多分大丈夫・・・だと信じたい。

 

「早速行くぜ!魔符「スターダストレヴァリエ」!」

 

魔理沙は愛用の八卦路を構え、星型の弾幕を大量に放った。

 

「よっ、ほっ、とっ」

 

俺は大量の弾幕を翼を使って飛び、四方へ飛び、避け続ける・・・・・・

 

「やるな!ならお次は彗星「ブレイジングスター」!」

 

そしてまた大量の星型弾幕が放たれ、俺に襲いかかる。しかしフランは両方の拳に妖力と魔力を纏わせ・・・・・・

 

「ドラララララララララララララララララララララララァ!!」

 

フランは向かってくる虹色の星型弾幕を拳で打ち返す、これは俺が独自に編み出した防御術だ。霊力を纏わせ拳をラッシュし続けた。

 

打ち返されたブレイジングスターが魔理沙に向かうが、魔理沙は箒を使って避ける・・・

 

(私の弾幕を拳で打ち返すなんて、そんなのアリかよ!?霊夢の母ちゃんみたいな芸当ができるなんて・・・)

 

魔理沙は驚きと戸惑いが隠せなかった、嘗て先代の博麗の巫女は弾幕を使わない武闘派で拳だけで弾幕やらビームやらを撃ち落としていたらしいが、フランがそんな芸当ができるとは微塵も思っていなかったのだ。

 

「そんな弾幕で俺を落とせると思ったら大間違いだ!!喰らえ、禁弾「スターボウブレイク」!」

 

フランは魔法陣を展開して大量の魔力弾を放つ。放たれた虹色の魔力弾が魔理沙に襲いかかる。魔理沙はとっさに反応ができず何発か被弾してしまった。

 

「グッ!(な、なんだぜ?前の時より威力も弾幕の数も増えてるだと・・・)」

 

魔理沙は内心焦っていた。前に戦った時はただガムシャラに弾幕を放っていただけなのに今目の前に居る少年は冷静に自分の弾幕を避け、適格に対処してきた。

 

「(このままだと負ける。それなら一気に勝負を決めるぜ!)行くぜ!ラストワード『ファイナル~』」

 

魔理沙の八卦路に光が集まり、どんどん大きくなっていく。

 

(ラストワード・・・・・・なら・・・・・・)

 

(爺あの技使うから結界張ってくれや)

 

(え、ちょっ・・・・・・急ずきるわ!!)

 

「『マスタースパーク』!!」

 

そして極太のレーザーが俺に向かって放たれる・・・・・・

 

「我が魔力を糧とし、北神の神の神器よ我に力を貸せ!ラストワード『レーヴァテイン』!!」

 

俺は魔力を両手に収束し、炎の剣・・・神器『レーヴァテイン』を創りだした。

 

「ぶち抜けェェェェェェェェェェェェェェェェ!!」

 

そしてフランはレーヴァテインを巨大化させ、向かってくるマスタースパークにぶつけた。しかも勝負で熱くなっているのか、どんどんパワーが上がっていることにフランは気づいていなかった・・・・・・そしてレーヴァテインはアッサリと魔理沙のラストワードに打ち勝った。レーヴァテインを諸に食らった魔理沙は倒れ、地面に墜ちて行った。地面に激突するかと思われたが・・・・・・

 

「おっと、あ、危なかった」

 

地面に激突する寸前でなんとかフランは魔理沙を受け止めた。あのまま落ちていたら絶対怪我は免れなかっただろう・・・・・・

 

「つーか・・・お、重い」

 

いや、だって今の俺の体凄く小さいんだよ。つまり抱えてるのも精一杯な訳である。

 

「仕方ない、能力創ってなんとかしますか・・・」

 

そしてフランは能力『自分の身長と体重を変更する程度の能力』を創りその能力を使って前世と同じにした。

 

 

~一時間後~

 

 

 

「ん・・・ここは・・・」

 

「あ、目が覚めたか?よかった」

 

あれから一時間後俺は魔理沙の家の台所を借り、いつも妖精メイド達に振る舞っているクッキーを作っていた。

 

え?材料はどうしたって?爺に調達して貰いました。

 

そして出来上がったクッキーを持って魔理沙を寝かせているソファーまで来ると、丁度目が覚めたみたいだった。

 

「さっきは御免。お腹空いただろうしお菓子作ってきたんだけど・・・」

 

「お、お前ふ、フランか・・・?」

 

「あ・・・・・・」

 

やば・・・そう言えば今の俺の姿・・・・・・成長したものになっているのすっかり忘れてた・・・・・・

 

ま、まぁ適当に誤魔化せば問題ないだろ・・・・・・

 

「そうだけど・・・魔理沙にこの姿を見せるのは初めてだっけな。料理する時はあの姿だと不便だからな、まぁいつもこの姿って訳じゃないけど・・・・・・」

 

魔理沙は俺の姿をじっと見つめ、顔を赤くしてボーっとしていた。

 

「だ、大丈夫?魔理沙熱があるんじゃないのか?」

 

「い、いやべ、別に・・・って、ちょ///」

 

俺は魔理沙の声を無視して魔理沙のおでこに自分のおでこをくっ付け熱を測った。

 

「(ち、近くで見るともっとカッコイイ・・・って何を思ってるんだ私は!!///)ほ、本当に大丈夫だから・・・・・・」

 

「まぁそれならいいんだけど・・・・・・」

 

それから暫く俺と魔理沙はお茶をしていたが・・・・・・

 

「なぁフラン、この本読んでくれよ」

 

「いや自分で読めるだろ・・・子供じゃあるまいし・・・・・・」

 

「別に減るもんじゃないしいいだろ~」

 

「分かった、分かったから抱き着くんじゃないよ・・・・・・」

 

「えへへ~・・・じゃあ膝借りるぜ!!」

 

「読みづらいんだが・・・・・・」

 

「香霖によくやってもらった事があってな、久しぶりだぜ~♪」

 

いや・・・話を聞いてくれよ・・・・・・

 

 

「ムニャ・・・ムニャ・・・霊夢ーそれは私の饅頭だー・・・・・・」

 

「夢の中でも食べてるのかよ。まぁ女の子らしくていいか・・・・・・」

 

そして俺は魔理沙をお姫様抱っこして魔理沙の部屋まで行き、ベットに寝かせ頭を撫でた。

 

「じゃあな、俺はもう行くから・・・・・・」

 

俺はそう言って魔理沙の家を出た。

 

 

 

 

 

(さーて次は香霖堂に行くか、爺案内を・・・・・・って爺?)

 

俺はずっと黙っている爺に話しかけた。

 

(甘すぎるわ!!)

 

(は?いや何がだよ?)

 

(さっきから甘いラブコメを堂々と見せつけおって・・・・・・結婚してない儂へのあてつけか!!)

 

(いや別にラブコメなんかしているつもりは・・・・・・)

 

(自分の胸に手を当てて思い出せ・・・・・・(怒))

 

(???)

 

そして俺は疑問に思いながら空に飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙side

 

 

「全く、もう少しくらい居ればいいのに・・・」

 

私はフランが頭を撫でて帰った後目を開けそう呟いた・・・・・・

 

「また・・・来てくれるかな・・・」

 

そう呟いた魔理沙の顔は「普通の魔法使い」としての霧雨魔理沙ではなく、一人の男に恋した乙女その物だった。

 

 

 

 

魔理沙sideEND




龍夜「あれ、おかしいな。金の微糖が凄く甘く感じるな・・・何でだろ」

駄神「儂の飲んでたお茶もじゃ。渋い茶の筈なのになんでこんなに甘いんじゃろ・・・」

フラン(極夜)「・・・(苦笑)。そ、そんな訳で今回もこんな駄文を見てくれて有難う」

フラン(極夜)「それではまた次回お会いしましょう」


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楽園の素敵なロリ巫女!?

龍夜「今回書きすぎた・・・」 フラン(極夜)「六千字って・・・普段の二倍じゃないか・・・」


(後どれ位なんだ・・・って爺?ちゃんと聞いてるか?)

 

(・・・パルパルパルパルパルパルパルパル、妬ましい・・・次々にフラグを建てていくお主が妬ましい・・・)

 

(お願いしまーす!早く戻って来て下さーい!?)

 

なんてやり取りをしながら俺は次なる目的地『香霖堂』に向かっていた。

 

その店には外の世界で『幻想』つまり忘れられた道具を扱っているらしい、店主である『森近霖之助』は

 

その忘れられた道具を自分の能力『道具の名前と用途が判る程度の能力』で鑑定し、使えそうな道具を

 

売り物として売っているらしい。

 

 

 

 

 

「お、多分あの店かな」

 

暫くして俺は『香霖堂』とて書かれた看板がある建物を見つけそこへ降りた。店の周りには道路標識、リヤカー、その他諸々などが放置してあった。

 

これじゃ古道具屋じゃなくてただのゴミ捨て場のような気が・・・

 

俺はそんな事を思いつつ。店のドアを開けた。

 

中に入ると、本を片手に読書をしている眼鏡を掛けた結構な男前のイケメンが座っていた。

 

恐らくこの人が『森近霖之助』だろう。

 

「あのーすいません・・・」

 

「・・・ん?ああいらっしゃい僕は『森近霖之助』ここ『香霖堂』の店主だ。君は?」

 

「俺は『フランドール・スカーレット』と言います」

 

「スカーレット?もしかして君はレミリア穣の弟かい?」

 

「はい?まぁそうですけど・・・姉さんってよくここに来るんですか?」

 

「従者であるメイドを連れてよく僕の店に来るよ、まぁここにいい品物があったらちゃんと買い取ってくれるし唯一無二のお得意様だね」

 

へー、姉さんここによく咲夜と買い物に行っていたのか、全然知らなかった。

 

「それで?今日は何をお求めだい?彼女の弟だしサービスするよ」

 

「あ、はいじゃあ霖之助さんのオススメの品は何かありますか?」

 

「オススメ・・・そうだ、ちょっと待っててくれ」

 

そう言って霖之助は店の奥のほうへ引っ込んだ。暫くするとある商品を持って戻って来た。

 

「これは『iPhone』遠くに居る相手と電話をしたりアプリと言う物をダウンロードして楽しむ道具だよ」

 

え?いやなんで幻想入りしてるの!?結構最近の商品じゃないか!?てっきりガラケーだと思ったんだが・・・

 

「因みにこれって動くんですか?」

 

「それに関しては問題ないよ。この前河童に改造して貰ってここでも使えるようになったんだよ」

 

河童凄いな。河童の科学は世界一ィィィー!!だな正しく。

 

※注意 主人公がなぜこんなにアッサリ信じている理由はもう常識に囚われなくなったからです。決してあの緑髪の巫女のようになった訳ではないので其処の所は心配なく^^;

 

「ハァ・・・でいくら何ですか?」

 

「まぁ別に僕としては使わないから無料(タダ)でもいいんだが・・・」

 

霖之助は何か考え込んでいた。

 

「どうしたんですか?何か悩み事ですか?」

 

「いや別に大した事じゃないんだが、実は最近霊夢がここに来て服の修繕を頼んで行ったんだが、未だに取りに来なくて少し困っているんだよ・・・」

 

そう言えば爺が言ってたっけ、博麗霊夢はよくここを利用して服の修繕をして貰っていると・・・でもなんで取りに来ないんだ?

 

「君にこんな事を頼むのはお門違いだと思うが、博麗神社に行ってこの巫女服を霊夢に届けてくれないか?もし届けてくれるならこの『iPhone』ともう一つ商品をあげるが・・・どうだい?」

 

「分かりました、その話引き受けましょう」

 

そして店の商品を見て俺が選んだのはニンテンドーDSだ。なぜ幻想入りしているのかというのは突っ込まない方向で。

 

「じゃあこれが巫女服だ。博麗神社はこの先を少し飛べば着くと思うよ」

 

「有難うございます。じゃあまた」

 

「ああ、これからもご贔屓に」

 

そして俺は香霖堂を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっとここが博麗神社か・・・」

 

暫くして俺は目的地『博麗神社』に到着した。

 

東方上では妖怪神社とも言われている。その理由としてはよくここで妖怪達が宴会を開いたり、溜まり場にしているから。そのせいで信仰がほぼ0らしい。

 

(なぁ爺いい加減機嫌直してくれよ・・・)

 

俺はさっきから泣いている爺に話しかけた。ずっと泣かれてたらもしもの非常事態の時大変だからだ。

 

(いいんじゃいいんじゃ・・・どうせ儂なんか一生結婚できないんじゃ・・・リア充なんか消えてしまえ・・・)

 

あ、これ駄目なパターンだわ\(^o^)/。まぁ明日になったら直って・・・いて欲しいですね・・・ハイ・・・

 

爺の問題を後回しにするとして俺は博麗神社の様子を見た。別に変わった所など無いのだが、嫌な予感がしてならなかった。

 

「とりあえず行く「夢想封印!」ゑ?どわァァ!?」

 

俺が足を踏み出した瞬間、突如上空から弾幕の雨が降り注いだ。

 

俺は間一髪の所で避けた。

 

あっぶねぇ・・・誰だいきなり不意打ちとは・・・ゑ?

 

そこにいたのは赤いリボンを頭に着け、紅白の服を纏った小さい女の子が居た。

 

え?まさかあれが博麗霊夢?いやいやさすがに幼いし人違いか・・・

 

「妖怪はこの博麗霊夢が退治する!神霊「夢想封印 瞬」!」

 

「いや、話をって危ねえェ!!」

 

俺は放たれた弾幕を擦れ擦れの所で避ける。

 

ってやっぱりこの子が霊夢なのかよ! ゑ、なんで小さくなってんだ!?

 

「ちょっと待て!俺は別に悪い妖怪じゃない。霖之助さんに頼まれて服を届けに・・・」

 

「霖之助さんが妖怪を信用するわけない!霊符「夢想封印・散」!!」

 

くそっこうなったら弾幕で応戦するしかないか・・・

 

「禁忌「カゴメカゴメ」!」

 

俺は大量の弾幕を霊夢の周りに張り巡らせ、逃げ道を塞いだ。

 

「よし、行け!」

 

俺の声とともに威力を抑えた魔力弾が霊夢に襲いかかった。逃げ道を塞がれていた霊夢は当然避ける事ができず、被弾した。

 

よし!これで「酷い・・・なんでこんな事するの?ウッ・・・うわああああん!!」ってええええええ!?

 

突如として霊夢が泣きだしてしまった。

 

ど、どうすれば・・・飴をあげれば落ち着くか?

 

俺は紅魔館で作った飴を2~3個取り出し霊夢の前に差し出した。

 

「と、取り敢えず飴あげるから泣き止んでくれ・・・」

 

「グスッ・・・有難うお兄ちゃん・・・」

 

そして俺は霊夢をおんぶして神社に向かった。

 

~吸血鬼、ロリ巫女移動中~

 

「さっきは話も聞かず弾幕を撃って御免なさい・・・」

 

「いや、別に気にしてないから大丈夫だよ」

 

俺は現在神社の中の居間で霊夢と話していた。

 

「それでなんで小さくなっているの?」

 

「分からないの・・・最近の記憶が無くて・・・」

 

はて困った・・・記憶が無いとなると手の打ちようがない・・・

 

(爺、どうして霊夢が幼児化してるのか分からないか?)

 

(グスッ・・・多分八雲紫か八意永琳の仕業じゃろうな。竹林の薬師はここを訪れる事は少ないから恐らく八雲紫の仕業じゃろうて)

 

(て事は・・・「境界を操る程度の能力」で霊夢の年齢の境界を弄った・・・って事か・・・)

 

確かに普通なら人間の年齢を変える事などほぼ不可能に近い・・・だが幻想郷の賢者でもある紫なら話は別だ。彼女がどんな理由で霊夢を幼児化させたのかは知らないが・・・一刻も早く元に戻さなくては・・・

 

(取り敢えず永遠亭に行って永琳に見せたほうがよい、お主の能力なら八雲紫を見つける事ができるじゃろうが・・・お主は転生者、もし自分と同じ能力を持っていると知られたら素性を調べられる可能性が高い)

 

(了解。じゃあ道案内は頼んだ)

 

(もう一度言うが、儂カーナビじゃないからね?)

 

(はいはい、分かってますよ)

 

俺は爺との会話を切り、未だに俯いている霊夢に話しかけた。

 

「取り敢えず永遠亭に行こう、永琳さんならどうにかしてくれるかもしれないし、ね?」

 

「でも・・・外出するの・・・怖い」

 

「でも霊夢だってずっとこのままじゃ嫌だろ?」

 

「うん・・・」

 

「なら我慢できるな?」

 

「うん・・・分かったよ・・・お兄ちゃん」

 

そして俺は霊夢をおんぶして飛び立った。

 

 

 

 

~ロリコ「龍夜・・・ちょっとコッチ来い」逃げるんだよ~!!「チッ、逃げやがった」

 

 

 

 

「どうしたのお兄ちゃん?」

 

「大丈夫、なんでもないよ」

 

「?」

 

俺は爺の案内で永遠亭に向かっている。永遠亭の場所は人里から少し離れた竹林の中にあるらしい。

 

道を知らない人が入るとその竹林から一生出れなくなる。もしくは餓死してしまうので入る時は『藤原妹紅』に案内を頼むらしい。

 

「よし、着いた」

 

現在時刻は夕暮れ、暗くなる前に着いて本当によかった。

 

「すいませーん、誰かいませんか?」

 

「はーい、いますけど・・・貴方は?」

 

俺が戸を少し開き大声で言うと奥のほうからウサ耳を生やした女の子が出てきた。

 

「俺はフランドール・スカーレットと言います。紅魔館の主であるレミリア姉さんの弟です、よろしく(ニコッ」

 

「///はっはい、私は鈴仙・優曇華院・イナバと申します。よろしくお願いします」

 

自己紹介兼挨拶を済ませると鈴仙は俺の背中に乗っている霊夢に気付き、聞いてきた。

 

「あの~フランさんの背中に乗っているのって・・・フランさんの妹さんですか?」

 

「いや・・・その・・・実は・・・」

 

~弟様説明中~

 

「えええええええええ!?博麗の巫女なんですか!?」

 

「はい・・・俺が用事を頼まれて行ったら・・・こんな事になってまして・・・」

 

俺はこれまでの経緯を鈴仙に話した。

 

まぁ・・・驚くのも無理ないよなぁ・・・幻想郷最強と呼ばれている霊夢が幼児化してしまっているのだから。

 

「それで永琳さんに見て貰いたいんですが・・・いいですか?」

 

「分かりました、着いて来て下さい」

 

~吸血鬼&ロリ巫女&兎移動中~

 

「師匠、入ります」

 

鈴仙がそう言ってノックすると中から「入りなさい」と声が聞こえ、俺と鈴仙は中に入る。

 

中で待っていたのは、青い赤十字の帽子を被った美人な女性だった。恐らくこの人が『八意永琳』だろう。

 

「そちらの方ね、今日はどんな用で来たのかしら?」

 

「実はかくかくしかじか・・・」

 

「なるほど・・・つまり今貴方の後ろにいる子、博麗の巫女なのね?」

 

「はい・・・なぜか幼児化してしまいまして・・・」

 

「確かにあのスキマなら暇つぶし目的でそういう事をやりかねないわね・・・分かったわ、元に戻る薬を作るから少し待っていてくれるかしら?」

 

「うどんげ、彼にお茶を出してあげなさい」

 

「はい!」

 

「まぁ貴方はゆっくりしてなさいな」

 

「は、はぁわ、分かりました」

 

そして俺は永琳が薬を作っているのは観察しながらお茶を頂く事にした。

 

~薬師作成中~

 

「できたわ・・・これを飲んで寝れば元に戻る筈よ」

 

「有難うございます!ほら霊夢飲んで」

 

「う、うん」

 

霊夢は苦そうな顔をしながらも薬を飲んだ。飲み終わって暫くすると、霊夢はそのまま眠ってしまった。

 

疲れも出てたんだろうな・・・

 

「じゃあ遅いので俺は帰ります。霊夢の事よろしくお願いします」

 

「ええ、任せて。うどんげ見送ってあげなさい」

 

~移動中~

 

「じゃあ俺はこれで・・・」

 

「あ、あの・・・」

 

「ん?何か?」

 

「また・・・来てくれますか・・・?」

 

鈴仙は顔を赤く染め上目遣いをしながらそう聞いてきた。

 

「ああ、また来るよ。今度は鈴仙さんとゆっくり話しがしたいな」

 

「は、はい!楽しみにしてます!!」

 

そして俺は飛び立った。

 

 

 

(ハァ・・・今日はいろいろ疲れたな。爺今日はありが・・・爺?)

 

(またか・・・またなのか・・・お主は一体いくつフラグを建てれば気が済むんじゃ!!)

 

(だから別にフラグなんか・・・)

 

(もういい、儂は寝る!!)

 

そう言って爺は会話を切ってしまった。

 

全く・・・何であんなに怒っているのやら・・・

 

※因みに今のフランは元の身長&体重に戻っています

 

「フ・・・ン・・・フラーン!!」

 

アレ・・・もしかしてこの声って・・・ま、まさか・・・

 

「フラーン!!」

 

「おわっ!?ね、姉さん!?」

 

突如レミリアが猛スピードでフランの元に近づき抱き着いた。

 

「何処行ってたのよ!貴方が抜けだした事を美鈴に聞いて紅魔館の皆で探していたのよ!?心配したんだから・・・」

 

えええええ!?紅魔館総出って・・・まさかメイド妖精達もかよ・・・後でお菓子沢山作らないと・・・

 

って美鈴の能力すっかり忘れてた・・・きっと俺の気を感じてそれを報告したんだろうな・・・分身無事だといいけど・・・

 

「取り敢えず皆を呼んで来るからここにいるのよ?」

 

「分かったよ、姉さん」

 

その後はいろいろと大変だった・・・咲夜、美鈴、パチュリー、小悪魔に抱き着かれ泣かれる始末・・・メイド妖精達も同じく。

 

そして肝心の代役を頼んだ分身はというと・・・

 

「主ィ!いい加減戻って来てくれェ!!このままだと俺が過労で死ぬゥ!!」

 

紅魔館の全ての業務をたった一人で熟していた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢side

 

「んっ・・・ここは・・・」

 

目が覚めると知らない天井だった。

 

確か・・・あ、そうだ薬を飲んだら眠気が襲って来てそのまま寝ちゃったんだった・・・

 

「あら、起きたの?博麗の巫女さん」

 

そう思っていると昨日私を治す薬を作っていた薬師が入って来た。

 

「気分はどう?」

 

「最高にいいわ、今だったら紫を叩き潰せるくらいに」

 

「まぁスキマを叩き潰す前に昨日貴方を治す為に頑張った、フランにお礼を言っておきなさい」

 

え、昨日の男の人・・・フランだったの!?どっかで見た顔だなぁとは思ったけど・・・

 

「彼が言ってたけど料理とかするのに普段の姿だと不便だからあの姿になるそうよ?まぁ今回彼がなぜあの姿でいたのかは知らないけど・・・」

 

「そうだったんだ・・・あっ///」

 

ちょっ、ちょっと待って、そう言えば昨日の私幼児化してたから・・・

 

「昨日の貴女は可愛いかったわよ?泣く子も黙る博麗の巫女が、お兄ちゃん、お兄ちゃんって言いながら甘えている姿は・・・(プッ」

 

「うがあああああああああああ!忘れろォ!!」

 

は、恥ずかしい・・・///あんな事言っちゃうなんて・・・で、でもフランにおんぶされていた時凄く安心して、胸が温かくなって・・・ずっと傍に居てほしいって気持ちになったな・・・///

 

(あらあら、まさか博麗の巫女が恋に堕ちるとはねぇ・・・うどんげも彼に気があるようだし、これから何人にフラグを建てるのか楽しみね♪)

 

フランの知らない所で、また一つフラグが建った・・・

 

 

霊夢sideEND




フラン(極夜)「もう止めて!これ以上フラグが建つと俺が鬱で死ぬから!?」

龍夜「君がッ!泣く迄!フラグを建てさせる事を止めないィ!!」

レン「何やってんだか・・・収拾が着かなくなりそうだからここで締めるか、そんな訳で今回もこんな駄文を見てくれてありがとな」

レン「それではまた次回お会いしましょう」


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フラグを建てるのは本人の自由ですが、ちゃんと回収はしましょう♪

フラン(極夜)「Q:俺に平穏は?」 龍夜「A:そんな物最初からない♪」 フラン(極夜)「・・・orz」 レン「で、では本編をどうぞ・・・」



どうも、フランドール・スカーレットです。

 

え?なんでこんな感じで喋っているかって?目の前の現実から目を背けたいからです。

 

四方に飛び交う様々な弾幕、星型、陰陽玉、その他諸々・・・現在霊夢、魔理沙、姉さん+咲夜達で壮絶な弾幕ごっこが起こっているのだ。

 

「兄さんは私の物よ!魔理沙にもアンタ達にも絶対渡さないわ!!」

 

お得意の博麗式陰陽玉や夢想封印を放ち強気に言う霊夢。

 

「フランは私の物だ!私がフランと結婚して幸せに暮らすんだ!邪魔するなら、親友だろうと容赦はしないぜ!!」

 

霖之助お手製の八卦路を構え、お得意の星型弾幕を出しながら爆弾発言をする魔理沙。

 

「フランは渡さない、あの子は私のたった一人の家族よ!もしフランが欲しいなら私を超えていきなさい!渡す気は更々ないけどね!!」

 

フランを渡さない為に普段あまり見せないカリスマ状態になり、グングニルを放つレミリア。

 

「貴女達のような野蛮な連中にフラン様は渡さない!それにフラン様は私のた、大切な人ですから・・・///(ボソッ」

 

時を止めナイフを逃げられないように配置し放つ瀟洒な従者こと十六夜咲夜。後半のほうで乙女になっていたが、いつも通りなので割愛。

 

「残念ながら貧乏巫女と盗賊にフランは渡す気はないわ、フランは私の恋人よ!!」

 

レミリアが許可してもいないのに勝手に恋人を名乗る七曜の魔女『パチュリー・ノーレッジ』。後ろのほうで「ちょっとパチェ!恋人じゃないのに何言ってるの!」と言うレミリアの言葉を見事にスルーする辺りかなりフランにゾッコンの様子。

 

「フラン様は渡しません!私とパチュリー様の物です!!」

 

そんなパチュリーの使い魔でもある小悪魔こと『こぁ』も主と同じでレミリアの言葉をスルーするあたり主と使い魔揃って似たもの同士である。

 

「フラン様は絶対渡しません!フラン様はいつも不憫な扱いをされている私の為にご飯を作ってくれたり話相手にもなってくれる優しい御方です!今日の私は、阿修羅すら凌駕する存在だッ!!!」

 

自身の能力「気を扱う程度の能力」を使いDBで言う気功波を放つ東方Project上でも不憫な扱いを受けている中国こと『紅美鈴』。フランを渡さないその執念が彼女を某フラッグファイターに変貌させているがそこは突っ込まない方向でオナシャス。

 

そしてこの騒動の原因にもなっているフランはorzの体制になり完全な鬱状態だった。

 

(何でこんな事に・・・)

 

(お主がフラグを無意識に建て続けた結果がこれじゃよ・・・)

 

因みになぜこの様な弾幕ごっこが起こってしまった理由は一時間前のある出来事によるものだった。

 

と言う訳で回想入りまーす!

 

 

 

 

 

~一時間前~

 

 

 

 

 

「んーやっぱり咲夜の淹れた紅茶は美味しいな」

 

現在俺は咲夜の入れた紅茶を飲みながら、優雅な一時を堪能していた。いやー前世だと絶対こんな経験ないから、何かいいねこういうのも。

 

(お主もすっかり慣れてきたのぅ、転生直後はあんなにあたふたしておったのに)

 

(まぁ流石に慣れたよ、幻想郷で一々常識に囚われていたら生きていけないからな)

 

(その2Pカラーの巫女が言うセリフを使うのもデフォになってきたのぅ・・・)

 

(意外と使えるこの名言)

 

そんな感じで爺と話していると、外のほうで何か大声で口論しているのが聞こえた。

 

俺は何事かと思い窓から外を見ると先日会った二人、楽園の素敵なロリ、じゃなくて巫女『博麗霊夢』と普通の魔法使いの『霧雨魔理沙』が外で紅魔館の門番でもあり常識枠の『紅美鈴』と何か話していた。

 

「なんで霊夢と魔理沙が来ているんだ?」

 

(魔理沙が来る理由は代々察しがつくがなぜ霊夢もここにおるんじゃろうな?)

 

「と、取り敢えず気になるから行くか」

 

俺は外に行こうとしていると急に咲夜が現れた。

 

「外に行かれるのでしたら私も付いていきます」

 

「わ、分かったよ。じゃあ日傘お願いな?」

 

「ハイ♪」

 

~PA「切り刻みますよ♪(黒笑)」さ、サーセン・・・

 

「どうしたんだ咲夜?」

 

「何でもありません」

 

そんなこんなで俺は咲夜に日傘を差して貰い、外に出て門の所まで行った。

 

俺が来た事に霊夢と魔理沙は気づいたのかなぜか顔を赤らめていた。風邪でも引いたのかな?

 

そんな風に考えていると前に会った時はロリだったが、今はすっかり元に戻っている霊夢が話しかけて来た。

 

「あ、あのこの前はありがとね、そ、それで今日お礼が言いたくて・・・」

 

「ああ、あの事なら別にいいよ。それで魔理沙は今日は何しに来たの?」

 

そして一緒に居た魔理沙にも話を聞く事にした。

 

「き、今日はそ、その一緒にで、デートでもしないか・・・?」

 

「ゑ?」

 

「「「ッ!?」」」

 

俺は突然の魔理沙の誘いに間抜けな声を上げ、その場に居た三人が一成に驚き魔理沙を睨み付けた。

 

な、何か、今一瞬寒気が・・・

 

「ど、どうしたんだ?この前みたいに弾幕ごっこがしたいんじゃないのか?」

 

「この前見せてくれたあの姿で私と・・・デートしてほしいんだぜ・・・///」

 

え、この前見せたって・・・能力で身長と体重を変化させたあの時のか?

 

「ちょっとどういう事?この前見せた姿って・・・」

 

「どういう事ですか?フラン様」

 

事情を知らない咲夜が魔理沙に問い詰め、美鈴は俺に聞いた。

 

「あーその・・・最近魔法で身長と体重を変化させる事に成功したんだよ。魔理沙に偶々その姿を見せただけで・・・」

 

「「フラン様」」

 

俺がそう誤魔化していると咲夜と美鈴が俺の手を掴み笑顔で言ってきた。

 

「「すぐその姿を見せて下さい♪」」

 

「は、はい・・・」

 

こ、怖ェェ・・・美鈴と咲夜目が血走っていたような・・・と、取り敢えず俺は能力で姿を変える事にした。

 

シャバドゥビタッチヘーンシーン!!

 

シャバドゥビタッチヘーンシーン!!

 

シャバドゥビタッチヘーンシーン!!

 

シャバドゥビタッチヘーンシーン!!

 

トゥエンティープリーズ!!

 

「こんな感じだよ・・・」

 

俺がそう言って見せた姿は前の時と違い前世の年齢と同じ身長&体重ではなく、今度は少し違くして20歳の姿だった。

 

※20歳の時のフランの身長&体重は設定参照でお願いします<m(__)m>

 

「「「「///(か、カッコイイ)」」」」

 

そしてその姿を見た四人は顔を赤らめ俯いてしまった。霊夢と魔理沙は一度見て耐性はついていたが、この前と少し違ったカッコよさにまた胸を打たれたようだった。

そしてその姿を初めて見た美鈴と咲夜は慣れていないのかフランから顔を背け、脳内で妄想に浸り始めた。

 

(ふ、フラン様があんなにカッコよく・・・あ、あの姿でデート、そしてその後部屋であんな事やこんな事を・・・///)

 

(あの姿のフラン様と一緒に食事・・・そしてあの姿でアーンとかやって貰って・・その後は部屋で///だ、駄目ですフラン様シーツが汚れて(言わせねーよ!?))

 

「た、確かにこの姿はいろいろ反則だわ・・・(鼻血)」

 

「全くね・・・(鼻血)」

 

「はぅぅぅ・・・///」

 

そしていつの間にか姉であるレミリアと普段はずっと図書館に引き籠っているパチュリーと小悪魔がなぜかいた。

 

ってかいつ来たんだと言いたくなるほど「私のフランセンサーは世界一ィィィ!」あっそうですか^^;

 

「そ、それより早く行かない「待ちなさい魔理沙!」なんだ霊夢?私とフランの大切なデートを邪魔する気か?」

 

魔理沙が逸早くフランを連れだし、デートに行こうとしていたその一瞬の隙を逃さず、霊夢が魔理沙に異議を唱えた。

 

「兄さんは私とデートするのよ!アンタはいつも通り家で魔法の実験でもしてなさい。さ、行きましょう兄さん♪」

 

え?ちょっ待って、なんでそうなるの?てか俺霊夢の兄じゃないんだけど・・・

 

(先日のあの出来事が原因じゃろうな、まぁそれが分かった所でこの修羅場は今更止まらんが・・・)

 

「待ちなさい、フラン様は私とデートするの。野蛮な巫女と魔法使いは弾幕ごっこでもしてなさい」

 

次に異議を唱えたのは瀟洒なメイド長咲夜。手にナイフを持ち、もしフランに手を出すなら直ぐ殺るといった危ないオーラを醸し出している。

 

「待ちなさい咲夜、メイド長である貴女が仕事をサボる気?ここは間をとって私とフランがデートするべきよ」

 

そして次に異議を唱えたのはレミリアだ。そして普段見せる事の無いカリスマのオーラを纏い、仕事をサボろうとしていた咲夜に殺気を放つ。

 

「レミィ、紅魔館の主といえど職権乱用はいけないわ。ここは間を取って私とこぁがフランとデートするべきよ」

 

そしてパチュリーも異議を唱えその後は美鈴も異議を唱えた、しかし話合いなどで納得しないのがここ(幻想郷)の住民の性分。全員から殺気が溢れ、出てきた言葉は全員一緒だった。

 

「「「「「「「弾幕ごっこよ(だ)(です)(ですわ)!!!!!」」」」」」」

 

そして今の現状に繋がる・・・

 

 

 

 

 

~回想終了~

 

 

 

 

 

「・・・もう嫌だ」

 

(どうするんじゃ、これ一応結界張っておるが・・・いつまで持つか分からんぞ?)

 

現在も様々な弾幕が飛び交っており、駄神が張った結界が壊れるのも時間の問題だった。

 

(こうなったら最終手段だ)

 

(どうするんじゃ?)

 

俺は空に向かって飛び立ち、心の中で思いっきり叫んだ。

 

(逃げるんだよォォォォォー!!)

 

(結局そうなるんかい!!)

 

駄神に突っ込まれながらも俺は紅魔館から逃亡した。

 

 

 

 

 

 

 

~弟様逃亡中~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、これからどうしよう・・・」

 

(お主の事じゃから何も考えてないとは思っておったよ・・・)

 

「うっさい」

 

現在、俺は魔法の森の中を歩いていた。

 

まぁ突然の事だから来た目的なども無くただ歩いているだけである。

 

ハァーどうしよう・・・霖之助さんの所にでも行こうかな・・・

 

そんな感じでこれからどうするかを考えていた時だった。

 

「…ハーイ…シャン…ハーイ!!」

 

ん?何か聞こえたような・・・「ミツケタ!!ハヤクキテ!!」って、え?誰だこの子?

 

(それはアリス・マーガトロイドがいつも連れている上海人形じゃ。それにしても様子がおかしいのぅ・・・)

 

「ハヤクキテ!アリスアブナイ!!」

 

「何だって!?」

 

俺は急いで周囲の気を確認した。そして強い気と今にも死んでしまいそうな程弱った気を感じた。

 

「案内してくれ!」

 

「コッチダヨ!」

 

俺は急いで気の発信源に向かった。

 

 

 

~弟様&上海移動中~

 

 

 

「着いた・・・ってあれは!」

 

そこに居たのは黒い服を着た金髪の女と傷だらけのアリスが倒れていた。

 

そしてその女は持っていた大剣を振りかぶって今にも止めをさそうとそしていた。

 

くそっ、仕方ないか・・・

 

(爺!レーヴァテインを転送してくれ!!)

 

(どうするんじゃ!!このままじゃ間に合わんぞ!!)

 

(能力創って何とかする!だから早くしてくれ!!)

 

(分かった、転送!!)

 

そして俺の手にレーヴァテインが転送され、俺はそれを掴み懐からスペルカードを取出し詠唱した。

 

(幻世『ザ・ワールド』!)

 

俺がそう念じると時が止まった。何故咲夜のスペルカードを使えるのか理由を説明すると俺はよく咲夜や美鈴と軽い模擬戦形式の弾幕ごっこをする事がありその過程で他者のスペルカードをラーニングして得た知識を元に使用者とほぼ同じスペルカードを再現する事ができる。だがラーニングすると言っても当初は他者の技を再現するという事がこれ程大変だとは認識してなかったので習得するまで何度も何度も咲夜の技を体験して何とかここまで物にする事ができた。たが、時を止めたといっても俺は咲夜程長く時を止める事は現時点ではできない、今の段階では持って二十秒が限界だ。

 

俺は時が止まったのを確認すると、アリスの元へ走り容体を確認した。

 

(魔力の消費に妖力のダメージが蓄積されている。このままだと危ない・・・取り敢えずアリスをここから離脱させるしかないか・・・)

 

「復体『ドッペルゲンガー』!」

 

俺は分身を呼び出し、手早く用件を伝える。

 

「分身、アリスを連れて安全な場所まで逃げてくれ」

 

「了解した、でも何処に「ワタシアンナイスル、アリスノイエマデ!!」分かった、主無茶はしないで下さいよ!!」

 

分身はそう言って上海とともにこの場から離脱した。さーて、戦わなくちゃな・・・

 

(そして、全ての時は動き出す・・・)

 

俺がまた念じると、時は動き出し女の振りかぶっていた大剣は地面に叩き付けられる。

 

そして女はアリスが居ない事に気づき、近くに居た俺に殺気が混じった声で話し掛けた。

 

「せっかくあと少しでご飯にありつけると思ったのに・・・よくも邪魔してくれたわね・・・」

 

「おー、怖い怖い・・・」

 

俺はふざけた感じでそう返しつつ、爺に目の前の女について聞く事にした。

 

(爺、この女は?)

 

(こやつは恐らく・・・EXルーミアじゃな)

 

(EX?どういう事だ?)

 

(こやつは本当は大した力も無い東方紅魔鏡の一面ボスなんじゃが、二次創作上で頭に付けてるリボンが外れたり無くなるとこの姿になると言われておるのじゃ。スペルカードルールが設立される前迄は大妖怪クラスの力を持っておりとても恐れられておったのじゃ、しかし博麗の巫女が封印術式を組み込んだリボンを頭に着けた事でなんとか封印する事ができたのじゃ・・・)

 

俺は目の前に居るルーミアの頭を確認する。案の定リボンは外れていた。

 

(で、どうすればいい?)

 

(封印するか、倒すしかなかろう)

 

(了解)

 

「はぁああああ!!」

 

ルーミアは大剣を俺に向けて叩き付けてきた。俺はそれをレーヴァテインで受け止める。ガキィン!と剣と剣がぶつかり火花を起こす。そしてルーミアはその場から飛びのくと手を前に突出し・・・

 

「夜符「ナイトバード」!」

 

左右に円弧状に青色の弾幕をばらまいた。

 

「禁弾「スターボウブレイク」!」

 

俺は魔法陣を展開し、虹色の魔力弾をぶつけ相殺した。

 

「お次はこれよ、闇符「ダークサイドオブザムーン」!」

 

ルーミアの姿が闇に隠れその闇の中から赤弾が拡散し、一瞬だけ姿を現して全方位に黄色弾を放ってきた。

 

「てやァァァァ!!」

 

俺は向かってくる黄色弾をレーヴァテインで弾き落す、そして全て落し終わり闇から出てきたルーミアの一瞬の隙を逃さなかった。

 

「仕込みは既に完了してある、これで終わりだッ!!」

 

「禁閃『スパーク・コンフューズ』!!」

 

レーヴァテインを回転させ刀身の部分にマスタースパークを撃つ(当てる)ことでマスパを拡散させた。

 

拡散したマスタースパークがルーミアに直撃し、爆風が起こる。煙が晴れるとルーミアは倒れており起き上がってくる事は無かった。

 

「ふぅ・・・勝利」

 

ほおっておく訳にも行かないし・・・仕方ない、起きる迄待っていますか・・・

 

 

~三十分後~

 

 

「ん・・・ここは・・・」

 

「目が覚めたか」

 

「お前はッ!!ッ・・・」

 

「ほら、まだ傷が完全に治ってないんだから、動くんじゃないよ。まぁやったのは俺だけど」

 

あれから少ししてルーミアが起きた。俺が居る事に気づき身構えたが、傷が完全に完治している訳が無くまた倒れ込んだ。

 

「ほら、腹減っているならこれ食いな」

 

俺がそう言って出したのはバスケットだった。因みに中にはサンドイッチが入っている、なぜ持っているのかの理由だが、もし抜け出した時の為に軽食用として作っておいたのだ。

 

「いいの・・・?」

 

「ああ、また人襲うならあげないけどな」

 

俺がそう言うとルーミアはバスケットからサンドイッチを出して食べ始めた。次第にルーミアの目尻に涙が溜まっていった。

 

「どうした、味付けとか好みじゃなかったか?」

 

「こんな美味しい物食べた事ない・・・からッ・・・うれ、しくて・・・」

 

「そうか、まだまだあるから沢山食べな」

 

そう言うとルーミアは凄い勢いでサンドイッチを食べ始めた。よほど腹が減っていたんだな・・・

 

 

 

~食事中~

 

 

 

「ご馳走様・・・」

 

「はい、お粗末様」

 

中に入っていたサンドイッチは全部ルーミアがたいらげた。そして残ったバスケットを駄神の空間に転送していると急にルーミアが話掛けてきた。

 

「あの・・・有難う、ご馳走してくれて・・・」

 

「別にいいよ、後さっき襲った子に謝っておきな。それができるならまた美味しい物食べさせてやるから・・・」

 

「分かったわ、さっき襲った子には後で謝っておくわ」

 

「よしよし、偉い偉い」

 

俺はついルーミアの頭を撫ででしまった。

 

「ちょっ、頭を撫でないでよ・・・///」

 

「そうか、ならやめるか?」

 

「もう少し続けて・・・」

 

「ハイハイ」

 

そんな感じで十分程ルーミアの頭を撫で続けた。そして撫でていた手を頭から離すと「あっ・・・」と名残惜しそうな声が聞こえた気がするが気のせいだろう。

 

「じゃあ俺は行くからな」

 

「貴方、名前は?」

 

「俺はフランドール・スカーレット。紅魔館の主であるレミリア姉さんの弟だ」

 

「私はルーミア、人喰い妖怪よ」

 

「そうか、じゃあなルーミア」

 

そして俺はその場から飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

EXルーミアside

 

 

 

 

「結構カッコよかったわね・・・って何言ってるの私は///」

 

フランが去った後、私はさっき撫でられた頭を自分で触ってさっきの事を思い出していた。

 

温かったな・・・そうだ、いい事思いついた。

 

「ふふ、私を堕としたからには責任とって貰わないとね・・・///」

 

そしてルーミアはある計画を建て、それを実行するのだが、それがフランのSAM値をガリガリ削る事になるとはまだ誰も知る由もなかった・・・

 

 

 

 

 

 

EXルーミアsideEND

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(またフラグを建ておって、この天然フラグメーカーが・・・(怒))

 

(は?いや何の事だ?)

 

(いい加減に気づけやァ!!)

 

そんなやり取りをしながら俺は現在アリスの家迄飛んでいた。

 

暫くすると白い洋風の造りの家、アリスの家が見え俺はそこへ降りた。

 

ドアの前に分身がおり、俺が来るのをずっと待っていたようだった。

 

「アリスの容体は?」

 

「ドラクエのべホマを使って完全に回復したから大丈夫かと・・・ただ普段からあまり寝てないのか意識がまだ戻っていません」

 

てか、分身お前べホマ使えたのかよ・・・今度爺に教えて貰うか・・・

 

「そうか、急に呼び出してすまなかったな。後はゆっくり休んでくれ」

 

「はい、それでは」

 

分身の体が粒子になり、俺の中に戻った。

 

家の中に入るとさっき分身と一緒に離脱した上海が俺を見つけ、飛んできた。

 

「ブジデヨカッター」

 

「有難な、それよりアリスは?」

 

「コッチダヨー」

 

 

 

~移動中~

 

 

 

俺はアリスの寝室でアリスの状態を確認していた。魔力の消費と妖力のダメージは分身が直したようだが、普段から余り寝てない事もありとっさに対応できず、襲われてしまったのだろう。

 

「うん・・・単に寝不足のようだな・・・よしあれを作りますか・・・」

 

「上海、ちょっと台所使わせて貰いたいけど・・・いいかな?」

 

「イイヨー」

 

「有難う」

 

 

 

 

 

~弟様調理中~

 

 

 

 

 

 

「ん・・・ここは・・・」

 

俺が料理し終わって部屋に戻って来ると、丁度アリスの意識が戻ったようで目が覚めていた。

 

「大丈夫か?」

 

「ッ誰!?」

 

「上海に頼まれてとっさに君を助けただけさ・・・」

 

「そうなの、上海?」

 

「ソウダヨーアリスブジデヨカッター」

 

上海はそう言ってアリスに抱き着いた、アリスは胸で泣いている上海の頭を撫でながらお礼を言ってきた。

 

「有難う、助けてくれて・・・」

 

「別に偶々あそこに居たからな。それよりほら飲みな」

 

俺がそう言ってアリスに差し出したのはハーブティーだ。

 

「君、普段から余り寝てないだろ・・・容体を確認した時それが分かってね。それ飲んで少し休みな」

 

「・・・分かったわ。そう言えば名前を言ってなかったわね、私はアリス・マーガトロイド。魔法使いよ」

 

「俺はフランドール・スカーレット。紅魔館の主であるレミリア姉さんの弟だ、宜しく」

 

その後、アリスは俺が作ったハーブティーを飲んでそのままグッスリ寝てしまった。

 

その後は、上海が連れてきた蓬莱という人形と少し遊んであげた、そして上海と蓬莱にアリスの優しい所や凄い頑張り屋で家族思いな所などアリスの事を少し教えて貰ったりした。

 

 

「よし、そろそろ行くか・・・」

 

「シャンハーイ、モウイッチャウノー?」

 

「ホーラーイ、モウスコシイテモイイノニー・・・」

 

「うん、でもそろそろ行かないとアリスの体に障ってしまうからな。大丈夫また来るから」

 

俺はそう言って引き止めてくる上海と蓬莱の頭を撫でそう言った。

 

「じゃあな、上海、蓬莱!!」

 

「「マタネー」」

 

そして俺はアリスの家を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリスside

 

 

「ん・・・寝ちゃってたか・・・」

 

「アリス、ダイジョウブー?」

 

「もう大丈夫、すっかり元気になったから」

 

それにしても香霖堂に行こうとしていた時に襲われるなんて・・・完全に油断していた。

 

上海が助けを呼んでくれなかったら今頃私は死んでいただろう。

 

「アリース、フランノコトドウオモッテルノー?」

 

「え?そ、それは・・・///」

 

急に蓬莱がそんな質問をしてきたので私は言葉が出なくなってしまった。

 

どう思っているかって・・・彼は私を助けてくれたし、私の傷を治してくれたし、私の体の事も気ずかってくれて・・・私のピンチを助けてくれた・・・

 

「私だけの王子様よ・・・///」

 

今度、家に招いて今日のお礼をしなくちゃね・・・///

 

「「アリスニハルガキタネー」」

 

そんな感じでまた一つフラグが建った・・・

 

 

 

アリスsideEND

 

 

 

 

 

 

 

 




龍夜「ハァ・・・ハァ・・・疲れた・・・」

レン「こんな字数になるなら分割すればよかったじゃないか・・・」

龍夜「いや、切るタイミングが分からないから纏めたんだよ。それよりフランは?」

フラン(極夜)「また・・・建って・・・しまった・・・orz」

レン「あそこで落ち込んでるぞ」

龍夜「アハハ・・・そんな訳で今回もこんな駄文を見てくれて有難うございます」

龍夜&レン「「それではまた次回お会いしましょう」」






龍夜「まぁ元気だせよ・・・」

フラン(極夜)「お前がまたフラグ建てるような話書くからいけないんだろうがァ!!」

龍夜「グベラァ!!」







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フラグが建たないと言ったな、あれは嘘だ

龍夜「と言う訳でほのぼの?回です」

フラン(極夜)「建ちませんように・・・」

レン「祈っても無意味だと思うんだが・・・」


前回のあらすじ

 

 

 

修羅場が起こったが放置して逃げた▼

 

EXルーミア、アリス・マーガトロイドと知り合いになった▼

 

フランはまた二つフラグを建てた▼

 

上海&蓬莱に懐かれた▼

 

 

 

 

(前にやったあらすじより随分適当な気がするんじゃが・・・)

 

まぁ、いいんじゃないかな?(天の声)

 

そんなこんなでアリスの家を出たフランは現在霧の湖を歩いていた。

 

ここら一帯は妖精が悪戯をして道に迷いやすくなっている所で有名でもある。

 

そして駄神は大事な事に気づき、フランに伝えようと必死に喋りかけていた、なぜ気づかないのか?それは・・・

 

シャカ、シャカ、シャカ、シャカ、シャカ・・・

 

駄神が改造したiPhoneで曲を大音量で聞いていたからである・・・

 

(おい、聞いておるか?ねえ、ちゃんと聞いてんのかと言っておるだろうがァ!!)

 

「ん?ああちゃんと聞いてるよ。これ最近気に入った曲で『KAZE NO KIOKU』って言う東方のアレンジ曲で・・・」

 

(そっちじゃなくてこっちの話じゃ!!お主普段はちゃんとしているくせになんでこういう時だけボケるんじゃ!?)

 

「で、何か重要な話なのか?」

 

(聞けェェェェ!!)

 

そんな日常にもなっている漫才?をしながらも、駄神は話を始めた。

 

(この世界(東方Project)では異変がよく起きる。だからもし起きた時はお主が解決するのじゃ)

 

駄神がそう言うとフランは露骨に嫌そうな顔して言った。

 

「えー、面倒くさいし嫌だよ。大体なんで俺がそんな事しなくちゃいけないし・・・」

 

(・・・正直儂としてもこんな事は言いたくない、しかし少し厄介な事になっておるのじゃよ)

 

そして駄神は一呼吸置き、話始めた。

 

(お主がいろいろな人物と関わってきているせいで、この世界で本来起きる筈のない事が起きそうなんじゃよ・・・)

 

「起きる筈がない出来事?どういう事なんだ?」

 

(それは儂にも分からん。だが、一つだけ気になっておるのじゃ・・・あの時お主が紅魔館を脱出する時に八雲紫の能力を使った際、紫は感づき動く筈じゃ。本来自分しか持っていない能力をほかの誰かが使っていると知れば・・・)

 

「で、でもあの時は偶々気付かれていなかったとか・・・」

 

(紫は優秀な式を従えておる、そういう事はないはずなんじゃがな・・・)

 

俺は急に重くなってしまった空気を誤魔化すかの様に明るい声で喋った。

 

「そ、それより今日は天気もいいし、昼寝でもするかなッ!」

 

俺はそう言って、手頃な草原に寝っころがりそのまま寝た・・・

 

 

 

~二時間後~

 

 

 

「・・・れな・・・大・・・よ・・・ちゃん・・・」

 

「・・・めた・・・惑・・・に・・・・るし・・・」

 

ん・・・?何か話声が・・・「はい、氷ドーン!!」「ギャアアアアアアアアアアアアア!口が、口がァァァァ」

 

突如寝ていたフランの口に大量の氷が突っ込まれ、フランは絶叫しながら飛び起きた。

 

「キャハハハハハハ、やっぱりアタイってば悪戯の天才ね!!」

 

髪は薄めの水色で、ウェーブがかかったセミショートヘアーに青い瞳。背中から生えている羽は六枚で、青か緑の大きなリボンを付けている。服装は白のシャツの上から青いワンピース(スカートの縁に白のぎざぎざ模様)を着用し、首元には赤いリボンが巻かれている女の子がフランのパニクったリアクションを笑いながら悪戯が成功した事に得意気になってドヤ顔をしていた。

 

コイツが犯人か・・・ふふふふふふふ駆逐してやる・・・

 

「ご、御免なさい!私は止めたんですけど・・・「大丈夫・・・ちょっとお灸を据えるだけだから・・・」ゑ?」

 

俺は謝ってきた緑髪の女の子の頭を軽く撫で、駄神に話しかけた。

 

(爺・・・グングニル転送してくれ・・・)

 

(ゑ?な、何をするつもりじゃ・・・?)

 

(大丈夫すぐ終わる・・・時間はかからないから・・・)

 

そして俺の手にグングニルが転送され、俺はそれを掴みゆっくり青髪の女の子に聞いた・・・

 

「なぁ・・・何でこんな事したのかな・・・?」

 

「ふふん、暇つぶしの為よ!」

 

「そうか・・・ならこれからする事には俺は一切責任は負わないからな・・・」

 

俺はグングニルに魔力と妖力を流し込み、やがて紅いオーラがグングニル全体を覆った。

 

「え、ちょっとアンタ一体何を「問答無用!神槍「スピア・ザ・グングニル」!!」キャアアアアアアアアア!!!!」

 

俺が放ったグングニルは青髪の女の子に直撃し、大爆発が起こった・・・

 

 

 

 

☆デデーン☆

 

 

 

~妖精再生中~

 

 

「で?何か言う事は?」

 

「御免なさい御免なさい御免なさい御免なさい・・・」

 

「御免なさい、チルノちゃんが迷惑掛けて・・・」

 

現在俺は目の前の青髪の女の子、チルノの傷を治してなんでこんな事をしたのか理由を尋ねた。どうやら俺が昼寝をしているのを見つけ、暇だったので悪戯をしようと思った・・・らしい・・・全く、いい迷惑だよ・・・

 

「まぁ別に、もう気にしてないからいいよ・・・それより自己紹介がまだだったな、俺はフランドール・スカーレット紅魔館の主であるレミリア姉さんの弟だ」

 

「私は大妖精と言います。ここの近くに住んでいます」

 

「アタイはチルノ!最強の妖精よ!!」

 

チルノはドヤ顔で自信満々に自己紹介をし、大妖精は少し照れながら自己紹介をした。

 

ん?そういえば・・・

 

「なぁチルノ、さっき俺の口の中に入れた氷って・・・」

 

「あれはアタイの力で創ったのよ、アタイは氷精だからね」

 

へー・・・そうだ、いい事思いついた・・・

 

(爺、エクスカリバー転送してくれないか?あ、後○○○用の皿を出してくれ)

 

(別に構わんが、何をするつもりじゃ?)

 

(見てれば分かる)

 

そして俺の手にエクスカリバーが転送されてきた。俺はそれを掴み、

 

「チルノ、お前の能力でこの水を凍らせてくれないか?」

 

俺はパチュリーから教わった魔法を使い、水を生み出し空中に浮かせた。

 

「分かった!えい、凍っちゃえー!!」

 

チルノがそう言って、水を凍らせた。水は一瞬で固まり、氷となる。

 

よし、行きますか!!

 

「てやああああああああああああああああ!!」

 

俺はできた氷を空中に投げ、エクスカリバーで切り付けた。

 

俺は何度も何度も、切り付けそして丁度よい具合になった所で落ちてくる氷をかき氷用の皿に上手く入れた。

 

「あの、これって?」

 

「ああ、そろそろおやつの時間帯だと思ってな。かき氷を作ってみたんだよ。大丈夫ちゃんと三人分あるから」

 

俺は爺に会話を戻して、話始めた。

 

(爺、シロップ転送してくれ)

 

(別に構わんが、アーサー王伝説に出てくる剣をなんでかき氷を作る為に使ったんじゃ・・・)

 

(別にいいだろ?そんな事よりかき氷用のシロップ転送してくれ)

 

(ハイハイ・・・)

 

そしてその後は自分の好みのシロップを掛け、食べ始めた。

 

「美味しい!!このブルーハワイって味さいきょーに美味しいわね!」

 

チルノが選んだシロップはブルーハワイだ。理由を聞いた所「同じ色だったから!」と言っていた。随分と単純な子である。

 

「凄く美味しい・・・」

 

大ちゃんが選んだのはレモン味のシロップだ。理由は「どんな味がするのか気になったんです」と言う事らしい。

 

「気に入って貰えてよかったよ・・・イチゴ味も中々に美味しいな・・・」

 

俺が選んだのはイチゴ味のシロップだ。理由は自分が一番好きな味だからだ、それにしてもかき氷なんてほんと久しぶりに食べるな・・・

 

「ん、大ちゃん口回りにシロップついてるぞ」

 

「え?何処「ほらここ」ふぇ!?///」

 

俺はそう言ってシロップを指で取り、そのまま舐めた。うんレモン味も美味しいな・・・

 

「フラン!アタイにもやって~」

 

急にチルノがそんな事を言って、顔を出してきた。全く・・・世話が焼ける・・・

 

そして大ちゃんにやった時と同じようにシロップを指でとって、そのまま舐めた。

 

「///(舐められちゃった・・・はぅぅ///は、恥ずかしい・・・)」

 

「///(い、勢いで言ったけど・・・す、凄く恥ずかしい・・・///)」

 

そして二人は顔を赤らめ、そのまま俯いてしまった。フランはそれを知らず、かき氷を黙々と食べ続けた。

 

 

 

キングクリムゾン!!

 

 

その後はチルノと大ちゃんと軽く話をした。人里に悪戯しにいったら、人里の守護者から頭突きを貰ったり、など主にチルノがメインの失敗談が多くつい笑ってしまった。チルノ自身のその事が触れてほしくなかった為顔を真っ赤にして俯いていた。

 

「そろそろ行くかな・・・」

 

「えーもうちょっと居ても・・・」

 

「チルノちゃん、迷惑かけたら駄目。フランさんにも用事があるんだから」

 

「大丈夫、またここに来るよ・・・そしたらまた遊んでやるから・・・」

 

俺はそう言って、チルノと大ちゃんの頭を撫でた。

 

「じゃあな!」

 

そして俺はその場から飛び去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

チルノ&大妖精side

 

 

 

 

「それにしてもなんで大ちゃん顔が赤かったの?」

 

「ゑ!?そ、そういうチルノちゃんだって顔が赤くなっていたけど!」

 

「そ、それは・・・秘密だァー!!」

 

「話なさーーーーーーーい!!」

 

大声を出し、その場から走り出したチルノを大妖精が追いかける形で鬼ごっこがなぜか始まった。

 

因みに余談だが、その後二人は理由を言いあいどちらも同じ理由だった事が分かり、さらに一騒動が起きたらしい。

 

 

 

 

チルノ&大妖精sideEND

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・これは酷い」

 

現在俺は紅魔館に戻ってきたのだが・・・酷い惨状だった・・・

 

幸い駄神が張った結界は後少しの所で持ちこたらしい、しかしもう少し長引いたらと思うと・・・うん、この話はやめよう・・・

 

「おーい、フィア!ちょっと来てくれないか~」

 

「ハイ、フラン様。何か?」

 

俺はメイド妖精の一人、フィアを呼び用件を伝えた。

 

「咲夜がダウンしちゃったから自室まで運んでくれないか?俺は姉さん達のほうをやっとくから」

 

「ハイ、分かりました!」

 

フィアは咲夜を軽々と担いで、そのまま紅魔館へ入っていった。

 

さて・・・疲れるけど、頑張りますか・・・

 

「禁忌「フォーオブ・アカインド」」

 

自分達を呼び出し、これからの仕事について伝えた。

 

フ「お前達は姉さん達を部屋迄連れて行ってくれ、それが終わったらちゃんとした役割決めて仕事に入るぞ」

 

禁「全く・・・姉さんは・・・」

 

禁2「ハァ・・・面倒くさいけど・・・頑張りますか・・・」

 

禁3「あー鬱だ~」

 

禁4「俺この全ての仕事が終わったら・・・温かいベットで眠るんだ・・・」

 

そんなこんなで俺達は紅魔館の仕事に取り掛かった・・・

 

うん・・・フラグってものが何なのかは知らないけど・・・不用意に建てる物じゃない事がよく分かったよ・・・

 

(そう言いながら今日建てたフラグは合計四つじゃけどな・・・)

 

駄神の呟きは夕焼けの空に消えていくのでした・・・

 

 




龍夜「あー、時間が欲しい!ポケモンX早くプレイしたい!!」

レン「別にプレイするのはいいが、小説のほうも両立させろよ?」

龍夜「了解~」

フラン(極夜)「もうどーにでもなーれ・・・アハハ・・・」

龍夜「自棄になってやっしゃる・・・これはどうしようもないわ^^;」



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それは彼の昔話

龍夜「今回は少しシリアスです」

フラン(極夜)「珍しいな・・・」


俺は爺に殺される前・・・一人暮らしをしていた時、俺はよくある夢を見る事があった・・・

 

それは・・・俺によく似た男が出で来る夢・・・

 

その男は人が生まれるずっと前から、世界を見守ってきた存在だった・・・彼は人間という種族が生まれ繁栄するのをずっと見守っていた。

 

そして彼は地上に降り、人と触れ合いたいと願い、旅をすることにしました。そして彼はある少女と出会いました・・・その少女は妖怪に襲われており、彼は偶々彼女を助けたのです。

彼女は助けてくれた彼に一目ぼれをし、寝床が無かった彼を自分が住んでいた町へ案内し、彼に寝床を提供しました。

彼女は子供の容姿をしていたのだが、彼女の頭脳は大人顔負けなほど凄まじいものだった・・・

そして何年かが経ち、その町である噂が流れていた・・・この地球に隕石が衝突すると・・・彼は何とも思わなかったが、彼女は人々を救う為ある重大な計画に参加していたのだった。

それは・・・月に移り住む・・・と言う物だった・・・。

彼自身はそれに、あまり乗り気ではありませんでした・・・そして彼は嘘を吐き、只一人地上に残ったのです。

彼は死ぬ事はありませんでした・・・彼は決して死ぬことのない悠久を生きていた存在だったからです・・・

そして・・・宇宙船に彼が乗っておらず、彼が地上に残った事を知った彼女は泣きました・・・彼が好きだったから。一緒に来てほしかった・・・なんで・・・なにも言わずに・・・。彼女の叫びは決して彼に届く事はありませんでした。

 

 

彼は旅を続けました・・・彼は旅をする中で様々な人、妖怪、神と関わりました。

 

時には、国を掛けた戦いを見守りその神達と酒を酌み交わしたり、笑いあったり・・・そして妖怪と人間が住める土地を作っている妖怪を手伝う事にしたのです。

そして彼が旅を続ける途中、彼女と再開しました・・・彼女は月に住んでいた人達を裏切り、ある少女と一緒に逃げていました・・・彼は彼女を逃がす為、その者達を相手をし、その者達を滅しました。

彼は彼女達が安心して暮らせるように彼が今手伝っている妖怪に頼み、後に『楽園』と呼ばれる地へ彼女達を住まわせる為でした・・・そして彼はまた会う約束を彼女とし、別れました。

 

そして彼は年月を重ね、人間に虐げられている妖怪を助け、『楽園』と呼ばれる地へ連れていき、その『楽園』は徐々に実現へと向かってゆきました・・・しかし、

 

彼は思いました・・・俺は、愛されているのか?と彼は様々な妖怪、神、人間から慕われていましたが、彼は愛されていないと心の何処かでそれをずっと・・・思っていました・・・。

 

そして、彼は『輪廻転生』の道を選び、記憶を消し人間になる事を決めました・・・彼が手伝っていた妖怪の賢者は・・・それを許さず引き留めようと全力で手を尽くしました、しかし彼の体は消滅し、その世界から完全に消え去りました・・・。

 

そして彼の記憶が消えゆく中で、彼女が叫んだ名は・・・俺の名と全く同じだった。

 

「・・・は・・・人間・・・る・・・俺・・・されて・・・いない・・・・ら・・・お別れだ」

 

「いや・・・行かないで!私を置いて、貴方がいたから『幻想郷』を創る事ができた!貴方を愛する人がいないから私がずっと傍にいる・・・だから・・・行かないで・・・『極夜』!!」

 

俺は時々この夢を見ることがあった・・・だが、日が経つに連れその夢を見る事は無くなり、完全に忘れてしまった。

 

だが、何故か最近またこの夢を見るようになった・・・まるで・・・夢の中で出てきた彼女達とまた出会う予兆のように・・・




龍夜「という訳で今回は少しシリアスでした~」

フラン(極夜)「どういう・・・ことだ・・・」

龍夜「まぁそれは妖々夢で明らかになってくるから、そんな訳で今回もこんな駄文を見てくれて有難うございます」

龍夜&フラン(極夜)「「それではまた次回お会いしましょう」」


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お気に入り200人突破記念 裏話ラジオ

【OP (Ring A Bell) TOVop鐘を鳴らしての英語版】

 

 

 

フラン「どうも、『転生先は・・・妹・・・ゑ、弟様!?』主人公のフランドール・スカーレットこと『星屑 極夜』だ」

 

 

レン「どうも、龍夜がpixivで執筆している小説『東方祖龍録』の主人公『レン・リュウヤ』だ。宜しく頼む」

 

 

龍夜「そして、作者の『龍夜 蓮』です」

 

 

 

 

レン「そんな事より龍夜、今回はどうしてラジオなんて始めたんだ?」

 

龍夜「いや、今回は、『転生先は・・・妹・・・ゑ、弟様!?』のお気に入りの人数が200人を突破したからその記念に裏話をしつつ感想のほうでされていた質問や今後の物語の方針について喋っていこうかなって思ってね」

 

フラン「じゃあ過去の質問から読んでいくぞ、ペンネーム『Nirvana』さん・・・この人は非ログインの方だな『駄神の扱いが酷いww神様未婚かよww

あと「裏ではとんでもない修行とかやっていたりします。」<返信より引用

神様との手合わせ以上にとんでもない…どんな修行だというんだ…。』これに関してだが・・・」

 

龍夜「これに関してですが、フランは様々な異世界人・・・まぁ簡単に言うと、ドラゴンボールの敵キャラや主人公、映画で出てくる敵と戦ったりしていますね。まぁ有体に言うとアニメキャラとの戦いが主な修行ですね、後はフランの中に存在する『狂気』をコントロールする為に自身を狂気に堕としてそれに耐えられるようにしたりと・・・まぁ様々な事をやっていたりします」

 

レン「ドラゴンボールに出てくる主人公達に師事してもらったのか?」

 

フラン「え?ああまぁそうだけど。まぁ大変だったよ・・・悟空さんは修行に関しては真面目に取り組んでくれたけど、食う量が半端なくて作るこっちとしてはいい迷惑だよ・・・ベジータさんはツンデレな感じだったけど修行はちゃんとつけてくれたよ?ただ、俺がブロリーの話題だすと、急に部屋に隅で体育座りして震える程ビビっていたね・・・後は(ry」

 

 

 

※フランの修行話が長いので割愛しました

 

 

 

フラン「って感じだけど・・・ってどうした?」

 

レン「・・・喋るのはいいが、要点だけを話してくれ・・・彼此二時間は経ってるぞ・・・」

 

フラン「御免、御免、じゃあ次の質問。『鳥夢』さんの質問『こ、これは…フランの前世はマジチートの予感…と言うか、またフラグ建てるのか…』これは前日に投稿した話『それは彼の昔話』についてのコメントだな」

 

龍夜「これに関してですが、妖々夢で明らかになってきます。実はなぜ祖龍録のレンがあの時介入したのか、なぜ武器を渡したのか?に関しても分かります」

 

レン「でも妖々夢で俺も軽く出るが、俺であって俺じゃない奴が出るんだよなぁ・・・」

 

龍夜「そして妖々夢後は『転生先は妹・・・ゑ、弟様!?』でやっていますがタイトルを変更しようと思っています。タイトルは『東方吸血王』です」

 

フラン「まぁ俺が何の種族なのかは、レンさんの種族を参考にすれば多分分かると思うよ」

 

龍夜「そして・・・今後、妖々夢以降の話をどうするか少し迷っています。アンケートを取って番外編をやるべきか、日常編をやるべきか、他所とコラボするべきか・・・もし番外編を書くとしたらフラグが建っている霊夢、魔理沙、レミリア、鈴仙、咲夜、小悪魔、パチュリー、美鈴、EXルーミア、大妖精、チルノ、の誰かとのイチャ話をやろうかなぁ・・・と思っていたりします。まぁ自分は文才が無いのでちゃんとしたイチャ話が書けるとは限りませんが・・・」

 

レン「そこは龍夜が頑張らないとな・・・こんな駄文を毎回楽しみにしてくれてる人達が沢山いるんだからな・・・」

 

フラン「そんな訳でこんな作者ですが、これからも宜しくお願いします<m(__)m>」

 

 

 

 

龍夜&レン&フラン「「「それではまた次回お会いしましょう」」」

 

 

 

 

【ED PAGE『エクスペクト』 アニメ『銀魂』エンディングテーマ】

 

 

 

 



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春雪異変~彼の前々世~
来ない春と終わらない冬


龍夜「春雪異変開始です!」 フラン(極夜)「ついに来たか・・・」


それは俺が救えなかった女性を失った時の夢だった・・・

 

彼女の屋敷にある桜と同じ能力を持った彼女・・・『西行寺 幽々子』は自らの命を断ち、妖怪桜『西行妖』を封印した。

 

俺はその時の事を鮮明に覚えている・・・

 

「やめろ・・・何でお前が犠牲にならないといけないんだ!!俺の力を使えばお前が犠牲になる必要なんて何処にもない!だから・・・」

 

だが、幽々子は・・・

 

「確かに貴方の力ならこの木を何とかできる・・・でも貴方に頼ってばかりは嫌なの・・・自分のケジメは自分でつける・・・それが私の決めた事だから・・・」

 

そう言うと幽々子の体は段々薄くなっていく・・・まるで木と同化するかのように・・・

 

「ふざけんじゃねぇ・・・なんでだよ・・・なんで・・・俺を置いて逝ってしまうんだよ・・・」

 

俺は地面に膝を着き、拳を叩きつけた。たとえ○○王の力を持っていても・・・大切な友人すら・・・救えない・・・

 

極夜の瞳から涙がボロボロ零れた・・・すると消えていく幽々子は極夜の手を握り、笑いかけた・・・

 

「大丈夫・・・また会えるから・・・紫にもそう言っておいて。紫、ああ見えて寂しがりだから・・・」

 

幽々子の体はどんどん薄くなり・・・消える直前になり幽々子は一粒涙を零し・・・

 

・・・私と友達になってくれて・・・あり・・・が・・・と・・・う・・・

 

その言葉を最後に幽々子は完全に消滅した。

 

そしてその場に残った・・・極夜の叫び声だけが響いていた・・・

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ・・・ハァハァ・・・またあの夢かよ・・・」

 

俺はまたあの悪夢を見ていた・・・前世でもよく見ていた悪夢だったが、また最近見るようになったのだ・・・

 

そして俺の目からは泣いた後がハッキリ残っていた・・・

 

そして俺は夢の中で俺の姿をした男が言った名前を呟いた。

 

「幽々子・・・」

 

結局俺はその日寝る事ができず、朝まで本を読み気を紛らわした。

 

 

 

 

 

 

 

 

五月

 

少しずつ温かくなってくる季節に近づいている筈なのだが、幻想郷では未だに雪が深々と降り、止む気配がなかった。

 

「それにしても雪が止む気配がないな・・・」

 

窓から降る雪を眺め、俺がそう呟くと爺も同意するように言った。

 

(確かに五月に入っても雪が止む様子すらないとはのぅ・・・これは恐らく・・・)

 

「異変・・・だろうな・・・」

 

薄々感づいてはいたがやはりこれは異変だ。

 

だが、異変を解決する筈の霊夢の姿を最近見ない。何してるんだろうか・・・

 

(こうなったらお主が異変を解決するのじゃ)

 

「まぁそうなるよな・・・はいはい分かりましたよ」

 

俺はいつも通り軽口で爺とやり取りをしていたが、内心はとても焦っていた。

 

嫌な予感がするのだ・・・まるであの夢で見た・・・黒い桜が復活する予兆のように・・・

 

(・・・考えすぎか)

 

勘違いの可能性もある為、俺は考えていた事を忘れ、容姿を20歳に変え、服を創造し、着替えた。

 

「よし、行くか」

 

そして俺は部屋を出た。暫く歩いていると咲夜が歩いているのを見つけた。

 

首にマフラーを巻いている所を見るに何処かに行くようだが・・・

 

「・・・あの物体は何だ?」

 

紫色の玉に白い星がついた何かが咲夜の左右に浮いていた。

 

俺が出歩いているのに気付いたのか、咲夜がこっちにやってきた。

 

「フラン様、お早うございます」

 

「さ、咲夜お、おはよう。そ、その紫色の玉は何なんだ?」

 

俺はそう聞くと、咲夜は少し苦笑して答えた。

 

「パチュリー様が作ってくれた物で、中からナイフが出てくる優れ物なんですよ」

 

それは別にいいが、なんであんな・・・あ・・・

 

(何か心当りでもあるのか?)

 

(そういえば・・・最近姉さんが香霖堂でリ○カルな○はの漫画本読んでいるのをこっそり見かけたんだよ・・・)

 

(・・・あぁそういうことか)

 

さしずめ、それを参考にしてあんなデザインにしたんだろうな・・・名前はマジカル☆さくやちゃんスターとかそういう名前で。主人公が封印する時、リ○カルマジカルとか最初の頃言っていたからな・・・

 

俺は思考を一旦止め、

 

「咲夜、何処か出掛けるのか?」

 

そう聞いた。

 

「お嬢様に少し頼まれ事をされたので・・・」

 

「そう、気を付けて行ってきてくれ」

 

「はい、承知いたしました」

 

軽く言葉を交わし、咲夜はその場から居なくなった。

 

「姉さん・・・異変の解決を咲夜に頼んだんだな・・・」

 

姉さんらしいな・・・だが・・・

 

「俺も行くとしますか・・・」

 

フランはスキマを展開し、その中に消えて行った・・・

 

 

 

 

 

 

 

~博麗神社~

 

楽園の素敵な巫女こと博麗霊夢は炬燵に入り、剥いた蜜柑を口に放り込んだ。

 

普通ここまで長く冬が続いていれば誰でも異変と分かる筈なのだが・・・彼女はその場から動こうとはしない。

 

「よう霊夢、そこで氷の妖精捕まえてきたぜ~」

 

そんな中、彼女の親友である霧雨魔理沙がやってきた。右手には氷の妖精『チルノ』を捕まえている。

 

「何か用?後チルノはこの異変の主犯な訳ないでしょ。ほら大丈夫?」

 

霊夢は捕まっているチルノを魔理沙の手から離させた。

 

「有難う、霊夢!」

 

「はいはい。魔理沙、用はそれだけ?それなら早く帰ってくれない?」

 

魔理沙の顔が一瞬変な物を見る表情になったが、後半の言葉にイラッとしたのか声を張り上げ言った。

 

「見ろよ、春だってのにこの雪景色・・・冬の妖精やら妖怪やら・・・いい加減認めろよ!これは異変だ!!」

 

「そんな訳ないでしょ、今年は春が遅いだけよ」

 

「いいや、絶対これは異変だ!異変解決は博麗の巫女の仕事だろ!?」

 

しかし霊夢は魔理沙の声を聞き流し、入れてあったお茶を啜った。

 

「ああそうかよ!それならこんな異変、私だけで解決してやるよ。後でノコノコ出てきて、「御免なさい、やっぱり異変でした」とか言うなよ!」

 

そう言って魔理沙は箒に跨り、飛んでいった。

 

「じゃあ、アタイも行くね!」

 

そしてチルノもその場から飛び立った。

 

「・・・・・・『星屑 極夜』か・・・・・・」

 

魔理沙とチルノが帰り、一人になった霊夢はそう呟いた。

 

その名前を呟いた理由は一週間前に『八雲 紫』がここに訪れた事が原因だった。

 

 

 

 

 

 

~回想中~

 

 

 

 

 

 

「いつになったら春は来るのかしら・・・」

 

障子の隙間から外を眺め、霊夢はそう呟いた。

 

やっぱり異変よね・・・これは・・・そろそろ動こうかし「こんにちは」面倒な奴が来た・・・

 

そう言って入ってきたのは幻想郷の管理者、賢者『八雲 紫』。一か月前の霊夢がロリ化した異変の主犯だった。

 

「何かしら?この前みたいに私にフルボッコにされたいのかしら?」

 

「あの事に関してはもういいじゃない・・・怒りっぽいと彼氏もできないわよ?」

 

「余計なお世話。そんな事より何の用よ?」

 

紫がここに来る時は大抵厄介事か、頼み事をするのがいつも通りなので霊夢は単刀直入に聞いた。

 

すると紫は表情を暗くし、言葉を紡いだ。

 

「ここ最近・・・誰かと仲良くなった?」

 

「え?ああ兄さ・・・じゃなくてフランと仲良くなったけど、それがどうかしたの?」

 

「・・・そう、じゃあ『星屑 極夜』と言う名前は知っているわよね?」

 

「ああ、紫の友人の事でしょ。それがどうかしたの?」

 

「じゃあ聞くけど・・・貴女は自分の親の事は覚えている?」

 

「母さんと・・・・・・父さ、アレ・・・・・・?父さんなんていたかしら・・・・・・」

 

私には母さんだけの筈なのに・・・何かしら・・・この感じは・・・何も思い出せない・・・ただ、思い出せることと言えば、フランと私の夢に出てくるあの人がよく似ているってだけだし・・・・・・

 

「じゃあもう帰るわね・・・・・・」

 

紫はそう言うとスキマを開き、その中へ消えていった・・・一粒の涙を零して・・・・・・

 

紫が帰った後、霊夢はさっきの紫の質問が頭から離れず、考え込んでしまった。

 

そして同時に嫌な予感が頭を過った。

 

「何かが・・・起きようとしている・・・この上ない大きな事が・・・」

 

霊夢は冷めたお茶を啜り、そう呟いた。

 

その言葉の重大さも知らずに・・・・・・

 

 

 

 

 

???side

 

「そうか・・・で、状況は?」

 

「白夜はまだ西行妖の封印は解いてはいない・・・だが、解放されれば幻想郷は崩壊するだろうよ・・・・・・」

 

たっく・・・どうして家の馬鹿息子共はこんなに迷惑掛けるかねぇ・・・こっちの苦労も考えろってんだ・・・・・・

 

「それよりお前この前、あの駄神が管理している天界へ殴り込みに行ったんだって?トールから聞いたぞ。後、いい加減お前もいい人見つけろよ・・・また見合い断ったらしいな?」

 

って、おいちょっと待て・・・ロキ、何でお前まで知ってるんだ・・・・・・

 

「いや・・・この前リンと一緒に酒飲んだ時、あいつ本人の口から・・・落ち着け、取り敢えずグングニルを下ろせ・・・悪かったよ・・・」

 

仕事量増量確定。あの馬鹿妹め・・・今度の修行の時、〆てやる・・・・・・

 

俺は内心で黒い事を考えながらも、ロキに向き直り頭を搔きながら答えた。

 

「あの馬鹿は自分の使命を捨てて逃げた、だからその罰も含めて極夜を、『フランドール・スカーレット』に憑依させろってあの駄神に命令したんだよ・・・・・・」

 

「それにしてもいきなり殴り込んでこの男を殺せって言うか?普通・・・お前も随分鬼畜だよな・・・・・・」

 

「フンッ・・・別世界の俺より酷かったからな・・・まぁ、あいつが極夜に神器を渡すイレギュラーが発生するとは少し意外だったが・・・・・・」

 

まぁいい・・・この異変が終わったら久しぶりに極夜に会うとするか・・・まぁ、最初は一発殴らないと俺のこの怒りは治まる気はしないがな・・・・・・

 

「運命ぐらい変えてみせな馬鹿息子、それぐらいできなきゃ・・・龍神王『星屑 極夜』の名が廃るぞ」

 

だから・・・頑張れよ・・・極夜・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 




龍夜「そんな訳で今回から妖々夢編です!」

フラン「入るまでが長すぎだ・・・」

龍夜「それに関しては仕方なかったんだよ、ほかのキャラと絡ませなきゃ異変の時いろいろ大変だから・・・」

レン「そんな訳で今回もこんな駄文を見てくれて有難な」

龍夜&レン&フラン「「「それではまた次回お会いしましょう」」」



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迷い込んだ先で……

龍夜「投稿遅れてマジすんませんでしたァァァァァァァァァァ!!」

フラン(極夜)「マジで投稿遅れてスイマセン・・・実は家の龍夜、最近まで体調を崩して寝込んでいた為投稿が遅れていました・・・」

レン「たっく・・・体調管理くらいちゃんとしろよ。それでは本編をどうぞ」


「待てー!」

 

「逃がすかー」

 

「ここからは私達のターンだ!」

 

「ここで朽ち果てろ!!」

 

「くそっ・・・しつこい妖精達だな・・・」

 

異変の原因を探す為、飛んでいたのだが、妖精が大量に湧いており、運悪く出くわしてしまったのだ。

 

後ろからしつこく追ってくる妖精達を気にしながら逃げていたが・・・

 

「ここから先は通さない!」

 

「突撃~」

 

俺の行く手を阻むようにまた妖精が湧いて出てきた。

 

くそっ・・・こんな時に湧きやがって・・・仕方ない・・・

 

「禁弾「スターボウブレイク」!!」

 

俺は魔法陣を展開し、そこから虹色の魔力弾を生成し、

 

「展開!!」

 

そしてスキマを開き、その中へ打った。

 

「さて・・・新スペカのお披露目と行きますか・・・境弾『ディメンジョンブレイク』!!」

 

俺はスキマを妖精達の四方に開く。すると中からさっき打った虹色の魔力弾が妖精達に襲いかかった。

 

突然の攻撃に対応できず、妖精達は被弾し、消滅していく。

 

「ふぅ・・・意外に上手くいったな」

 

(まさか「境界を操る程度の能力」で新スペルを思いつくとはのぅ・・・)

 

「いや、以前から考えてはいたんだよ・・・能力も様は使い方だ」

 

その場にいた妖精達は既に一匹残らず消滅した、また湧いてくるかもしれないと思い周りの気を確かめたが何とか大丈夫なようだ。

 

(それにしても今回の異変の主犯が何処にいるのか分かっておるのか?急ぐ気持ちも分からんでもないが手がかりも情報もないはずじゃろ?)

 

確かに爺の言うとおり今の俺の現状だと爺じゃなくてもそう言うかもしれない。だが、一応手がかりはあるにはあるのだ。

 

「以前俺が悟空さん達に修行をつけて貰った時、悟空さんの元気玉の事を少し思い出したんだよ。元気玉は人間、生物、植物、動物などから気を分けて貰って放つ大技・・・もし季節にも気があるとしたら?」

 

(春の気が集中して集まっている場所を特定し・・・異変の主犯の元に辿りつけると言う訳か・・・)

 

「そういう事だ・・・とりあえず先に進みますよっと・・・」

 

俺はそう言ってその場から移動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「吹雪が強くなってきたな・・・」

 

くそっ・・・視界が霞んで見えねェ・・・

 

(吹雪が治まってきたぞ)

 

確かに爺の言った通り意外に早く吹雪は治まった。だが・・・

 

「いや・・・ここ何処だよ!?」

 

そこにあったのは人が沢山住める程大きな村があった。

 

と、取り敢えず降りて調べるか・・・

 

そして降りて周りを歩いていると・・・

 

「にゃあー」

 

え?ね、猫?・・・。

 

出くわしたのは人ではなく猫だった。そして何故か俺の所へ寄ってきてまた鳴いた。

 

えっと・・・撫でればいいのかな?

 

そして俺は猫の頭を撫でた。猫は気持ちよさそうに目を細め喉を鳴らしている。

 

「・・・可愛い」

 

そして暫く撫でていると・・・

 

「「「「「「「「にゃあ~!」」」」」」」」

 

大量の猫が凄い勢いでこっちにむかってきた。

 

「え、ちょっ・・・ぎゃあああああああ!!!!!」

 

勿論受け止められる筈も無く猫の下敷きになってしまった。

 

(い、生きているか?)

 

「まぁ・・・一応・・・」

 

「こら!その人が苦しそうでしょ、皆早く退きなさい!!」

 

突然その場に怒声が響き、俺の上に乗っていた猫達は渋々降りていった。

 

服に付いた砂を払っているとその子がこちらに寄ってきた。

 

猫耳を生やしたまだ幼い子だ。妖獣の類だろう。

 

「御免なさい、家の子達が迷惑を・・・」

 

「いや、別にいいよ、猫は好きだから。それより聞きたいんだけどここは何処なんだ?」

 

「ここはマヨイガ、ここにいる猫達の住処でもあるんです。私は橙、ここに住む猫達のリーダーでもあり八雲藍様の式神でもあります」

 

まだ幼いがいずれは八雲の名を受け継ぐ式になるのだろうかと極夜は考えたがその思考はすぐに頭から消え去る。

 

(グッ・・・また頭痛が・・・)

 

頭の痛みがより激しくなったのだ。普通の頭痛ならまだしも明らかに普通ではなかった、明らかに自分は過去に幻想郷の管理者である紫と関わっていることは間違いなかった。だがまだはっきりと思い出すことができなかった、思い出そうとすると記憶に靄がかかった様な感覚に何度も襲われる。

 

(後少しなのに・・・どうして思い出すことができないんだ・・・?)

 

覚えているはずなのに思い出すことができない。人間として生きていた頃の記憶と今の肉体に宿った記憶ははっきり残っている。しかし人間になる『前』の記憶だけはどうやっても思い出すことができなかった。

 

(とにかく今はここから出ないとな・・・考えるのは後だ・・・)

 

「なぁ橙・・・ここから出たいんだが・・・出口教えてくれないか?」

 

「別にいいですけど・・・弾幕ごっこしてもらえませんか?」

 

「・・・分かった」

 

そして俺達は飛び、配置に着く。

 

「じゃあ早速私から行きますよ、仙符「鳳凰卵」!!」

 

橙の周りに魔法陣がいくつか出現し、そこから円状に楔弾が放たれる。

 

フランはそれを難なく避ける。

 

「やりますね・・・じゃあ次はこれです。仙符「鳳凰展翅」!!」

 

橙の周りに出現した魔法陣からまた楔弾が放たれる。さっきの「鳳凰卵」と同じ様だが、発射される弾の数がさっきより数倍に増えていた。

 

(くそっ・・・これじゃ避けるのは無理だな、ならば・・・)

 

「相殺させる!禁忌「クランベリートラップ」!!」

 

魔法陣を展開する。するとそこから大量の紅い魔力弾が生成され鳳凰展翅とぶつかり軽い爆発が起こった。

 

「お次はこっちから行くぞ!禁弾「スターボウブレイク」!!」

 

俺は魔法陣を大量に展開し、

 

「展開!そしてそこに撃つ!!」

 

展開したスキマに虹色の魔力弾を大量に撃ち込んだ。

 

スキマを突然展開した事に橙は驚き固まっている。

 

「さーて行きますか・・・境弾『ディメンジョンブレイク』!!」

 

そして四方にスキマが開き、そこから大量の虹色の魔力弾が橙に襲いかかった。

 

当然避ける事はできず、橙に直撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「負けちゃいました・・・」

 

あの後俺は橙の傷を治し、少し座って話していた。

 

橙は俺に負けたのが相当堪えているのか落ち込んでいた。

 

「まぁ誰だって負ける時はあるから気にしないほうがいいさ、俺だって弾幕ごっこを始めた時はずっと負けていたし」

 

「え!?あんなに強いのに・・・」

 

「まぁね・・・(てか爺がヤバい程チートだったし、悟空さん達の強さもぶっ飛んでいたし・・・)」

 

そんな感じで俺は修行の日々を軽く思い出していたが、急いでいる事に気づき・・・

 

「で、どうやって出ればいいんだ?」

 

「それなら、この先に鳥居があるのでそこを潜れば出られますよ」

 

「有難う、じゃあ俺はもう行くから・・・」

 

「あ、あのそういえば名前・・・」

 

「じゃあな~!!」

 

そしてフランは名前を言う事なくマヨイガを後にするのであった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

橙side

 

行っちゃった・・・名前聞きたかったんだけどな・・・

 

そう言えば・・・なんであの人紫様の能力を・・・それにあの人前に藍様に貰った写真に写っていた人に・・・

 

「橙、迎えに来たぞ」

 

「あ、藍様・・・」

 

そうだ藍様なら多分・・・

 

「あの藍様、聞きたい事があるんですが・・・」

 

「どうしたんだ?」

 

橙は懐に仕舞ってあった一枚の写真を取り出した。

 

「藍様が来る前、ここに迷い込んだ人がいるんですが・・・その人が前に藍様に貰ったこの写真の人に・・・」

 

そして橙が写真に写っていた真ん中の男の人を指すと、藍は顔を目を見開き、橙の肩を掴んだ。

 

「その人は何処にッ!?」

 

「えっ・・・ここを出てそんなに時間は経っていませんけど・・・」

 

「すぐにその人を見つけるんだ!!見つけたら私に報告する事、いいね?」

 

「はっ、はい!!」

 

そして私はさっきあの人が出て行った鳥居に向かった。

 

 

橙sideEND

 

 

 

 

藍side

 

生きていた・・・あの人が・・・

 

「紫様、やっぱりあの方は・・・極夜様は生きておりました!!」

 

藍の手に握られた写真には・・・二人の女性、八雲紫とその式である藍・・・

 

そして・・・『星屑 極夜』の姿があった・・・

 

それが何を意味するのか、本当にその写真に写っているのが『星屑 極夜』本人なのか・・・

 

それは誰にも分からない・・・

 

 

藍sideEND




レン「あれ、龍夜は何処だ?」

フラン(極夜)「あそこにいるけど・・・」


龍夜「ハッピーバスデー・・・トゥーユー・・・ディア・・・俺・・・」


フラン(極夜)「なんで落ち込んでいるんだ?」

レン「あー実は龍夜一昨日誕生日だったんだが、誰からも祝って貰えなかったみたいでな(親は素で忘れていたらしい)それに誕生日がけいおん!の平沢唯と被っているせいで偶々開いたツイッターでの唯ちゃんおめでとうに悲しくなってずっとあんな状態なんだよ・・・」

龍夜「・・・今回もこんな駄文を見てくれて有難うございます。それではまた次回お会いしましょう」










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騒霊の三姉妹

龍夜「最近幻想万華鏡の華鳥風月のPVを見て、自分の書いている小説の主人公達に似合う花をネットで花言葉を含めて探してみたのですが・・・悲しい事にレンとフラン(極夜)に合う花が見事にダブりました・・・てか、花言葉のせいで思ったのが自分の書く小説の主人公って重い過去もしくは悲しい過去ばっかり背負っていますね。暫くしたら何かまた新しい小説を書いてみたいものです。前置きが長くなって申し訳ありません、それでは本編をどうぞ」

※調べた花 『彼岸花』 花言葉『情熱、独立、再会、あきらめ、悲しい思い出、想うはあなた一人、また会う日を楽しみに』



「ここに出るのか・・・」

 

マヨイガの鳥居を潜って暫く飛んでいると何とか外に出られたが出た場所は魔法の森だった。

 

そしてフランは周囲の気を確認し、また妖精が湧いてくるかもしれないので注意して辺りの気を探る。

 

すると、ここから少し離れた場所で二つの気が戦っている事が分かった。

 

「この気・・・魔理沙とアリスか」

 

そうだ、アリスなら何か知っているかもしれない・・・

 

そう考え、俺はアリスの家に向かう事にした。

 

 

~弟様移動中~←最近ナレーションするの疲れた・・・

 

 

 

アリスの家に着いたが、そこは戦場と化していた。アリスは沢山の上海人形を操り、レーザー型の弾幕で魔理沙に応戦している。

 

魔理沙は『弾幕はパワー』がモットーだが、アリスの場合は『弾幕はブレイン』と言ったほうがいいだろう、魔理沙もアリスの攻撃を難なく躱すが、疲れてきたのか結局被弾している、

 

すげぇ・・・魔理沙と違ってちゃんと考えて戦っている・・・

 

そして二人の戦いは激しさを増していった・・・

 

 

~三十分後~

 

 

「これで決めるぜ、恋符『マスタースパーク』!!」

 

そして決着はついた。アリスが優勢だったのだが、一瞬の隙を突いた魔理沙お得意のマスタースパークで一気に勝負を決めた。

 

全く・・・相変わらずのパワー馬鹿だな・・・

 

そして俺は座りこんで休んでいる魔理沙の元まで行った。

 

「よっ、相変わらず後先考えずに戦っているみたいだな。あのまま戦っていたら負けていたぞ?」

 

「それが私の戦い方だ、フランこそどうしてこんな所にいるんだ?」

 

「いや、春が未だに来ないからな。異変の主犯を探しているんだよ・・・あぁそうだ、霊夢はどうしたんだ?最近見ないが・・・」

 

そう聞くと魔理沙は表情を暗くし、口籠った。

 

「どうしたんだ?何か言えない事情でもあるのか?」

 

「あいつ、一週間位前からずっと炬燵に籠って出ようとしないんだ・・・異変の事言っても「今年は春が遅いだけで異変じゃない」って言って行く様子すらないし・・・」

 

あの霊夢が異変解決に行かないだと?・・・どうして・・・

 

俺は一瞬疑問に思ったが、魔理沙が手にしている桜の花びらが気になったので聞く事にした。

 

「なぁその桜の花びらは何なんだ?」

 

「これか?アリスの話だと春の一部らしいぜ。これを大量に集めれば、春が訪れるって話だ」

 

手に取ってみると温かった。そして調べてみた結果春の気がある事も分かった。異変の主犯はこれを集めているのか・・・

 

「そういえばアリスを治療しないとな・・・」

 

俺は向こうのほうで倒れているアリスの怪我を治療する事にした。・・・何か最近こんな事ばっかしている気がするな。

 

 

 

~治療中~

 

 

 

「クッキーの味はどうかしら?」

 

「あ、あぁ・・・凄く美味しいよ・・・」

 

「シャンハーイ、コウチャイレテキタヨー」

 

「ホーラーイ、イッショニノモー」

 

「あ、有難う・・・上海、蓬莱」

 

現在俺は意識が戻ったアリスに家の中に招かれ、紅茶とクッキーを頂いている。別にそれはいいんだ・・・ただ・・・

 

「なんで私は入れてくれないんだよー!!」ドンッ!ドンッ!

 

「なぁ・・・なんで魔理沙は入れてあげないんだ?」

 

そう、何故か魔理沙は家の中に入れないのだ。その言葉にアリスは笑顔で、

 

「盗賊を家に入れる気は微塵もないから♪」

 

・・・あぁ、成程・・・魔理沙、御免さすがの俺でもフォローは無理だわ・・・

 

「で、聞きたい事があるんだが・・・」

 

そして俺はさっき魔理沙から貰った桜の花びらを出して、用件を言った。

 

「・・・と言う訳なんだが、異変の犯人の場所分かるか?」

 

「御免なさい・・・さすがに私にも・・・」

 

やっぱり分からないか・・・だが、さっき花びらに宿った春の気から大よその場所は特定できたからいいか・・・

 

「じゃあ、急いでいるから俺はもう行くよ、いい加減この冬を終わらせて花見がしたいしな」

 

「ちょっと待って!」

 

「ん?」

 

俺が部屋から出ようとするとアリスが急に呼び止めてきた。

 

「あ、あの・・・その・・・こ、今度・・・何処か行かない・・・?///」

 

「いいよ、お茶もご馳走してくれたし。埋め合わせしないとな」

 

「(やった!完全勝利!!)じゃあ異変解決頑張って!」

 

「おう!」

 

そして俺はアリスの家を後にし、空へ飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙side

 

 

私はフランが空へ飛び立った後、妄想の海にトリップしているアリスの頭に拳骨を叩き込み、問い詰めた。

 

「何でそんなに顔を赤くしているんだ?風邪でも引いたか?それとも悪い物でも食ったか?」

 

「貴女と違って、私は普通の食材で作った物しか食べないわよ・・・別にー何でもないし~」

 

・・・構掛けて見るか

 

「そりゃあ、浮かれて当然だよなぁ~?何せ大好きなフランとデートの約「何で知ってるのよ!?」やっぱりそういう事か・・・」

 

私がそう言うとアリスは顔を赤く染め、俯いたが直ぐに顔を上げ私の顔をキッと睨み付けてくる。

 

「残念だが、フランは渡す気はないぜ・・・アイツは私だけの物だからな・・・」

 

「あら?いつから魔理沙の物になったのかしら?まぁ、仕方ないわよねぇ~私と違って純情な乙女の魔理沙ちゃんじゃデートした所で何の進展も無く終わるのがオチだしね~」

 

ブチッ!

 

「上等だ、コラ!!いつも家に引き籠ってばっかりの根暗が!!」

 

「上等よ!!いつもいろんな所から物資を奪って生活している盗賊魔法使いが!!」

 

そして魔理沙とアリスの言い争いはどんどんヒートアップしていった・・・そして二人とも散々言って疲れたのか息を切らしてその場に座り込むが直ぐに立ち上がり・・・

 

「やっぱりこれで決着を着けるしかなさそうだな・・・もし私が勝ったらフランとのデート権は私が頂くぜ・・・」

 

「負ける気は更々ないわ・・・折角のデートを貴女に邪魔されてなるものですか!!絶対に勝つ!!」

 

私は香霖お手製の八卦路を構え、アリスは沢山の上海人形を展開する。

 

辺りが鎮まり返る・・・そして、二人ともほぼ同時に動いた。

 

「「絶対に負ける訳には行かない!!勝つのは私だ(よ)!!!!」

 

負けられない乙女達の戦い(弾幕ごっこ)が幕を明けるのであった・・・

 

 

魔理沙sideEND

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(まぁ・・・うん・・・そうなるのは分かっておったから結界張っておいて正解じゃったな・・・なんでこ奴はフラグ建てまくるんじゃろ・・・)

 

「何か言ったか?」

 

(うん、お主は一度爆発するべき、そうすべき(怒))

 

「・・・うん、遠慮しておきます(汗)」

 

何か最近爺の機嫌がマジで悪いです・・・分かってるよ、フラグのせいでこんなに怒っているのは・・・でも、そんな事言ったって・・・どうにもならないからな・・・

 

「それより・・・もう少しで雲を抜けるな・・・」

 

そして雲を抜けるとそこに巨大な門が出現した。その扉は凄く大きく、何よりデカイ・・・そして扉の先から春の気がある場所に一点に集中して集まっているのが分かる。

 

「ここか・・・つーかどうしよう、扉固く閉まってて開く様子が無いんだが・・・」

 

(開け~ゴマ!とか言えば開くんじゃないのか?)

 

「いや、それは無いだろ・・・」

 

うーん・・・困ったな・・・開かないとなると、俺の弾幕で無理矢理こじ開けるか?いや、さすがにそれは駄目か・・・うーん、どうしたものか・・・

 

 

「そこのお兄ーさん♪」

 

「お困りのようだけど、どうしたの~?」

 

「・・・///」

 

急に声を掛けられ振り返ると、トランペット、キーボード、バイオリンを持ったピンクと赤と黒の帽子を被った、女の子達が居た。

 

「えーと・・・君達は?」

 

「私はリリカ・プリズムリバーだよ、宜しくねb!」

 

赤い帽子を被った子、リリカはサムズアップしながら答えた。

 

「私は次女メルラン・プリズムリバー、宜しくお兄さん♪」

 

ピンクの帽子を被った子、メルランは笑顔で自己紹介してきた。

 

「///・・・」

 

そして最後の黒い帽子を被った子は何故か俺のほうを見ては逸らす見ては逸らすを繰り返していた。

 

「もう!姉さん自己紹介しないとお兄さんがなんて呼んでいいか分からないでしょ!ほらちゃんと自己紹介しないと・・・」

 

メルランに急かされ、その子は目を逸らしながらも自己紹介を始めた。

 

「・・・ルナサ・プリズムリバー、宜しく///」

 

「うん、宜しくな。俺はフランドール・スカーレットだ」

 

俺が笑顔で自己紹介するとルナサはまた俺から顔を逸らす、どうしたんだろ?

 

「それよりこの門の先に行きたいんだけど、どうすれば行けるかな?」

 

「あぁ、それなら簡単よ。門の上を飛んで行けば着く筈」

 

・・・え?それだけ?

 

メルランの言葉に俺は少し唖然としてしまった、なんで俺はそんな事に気付かなかったのか・・・

 

(逆に気づいたらある意味凄いじゃろ・・・ていうか、この門意味が全く・・・)

 

(それ以上いけない)

 

爺とそんなやり取りをしつつ俺は三人のほうへ向き直り、

 

「教えてくれて有難な」

 

「別にいいよ、冥界のお嬢様から花見の時に演奏してくれって頼まれていたけど、連絡着かないし」

 

「そうか・・・、じゃあ俺はもう行くな」

 

「気を付けて行って来てね~♪」

 

「・・・気を付けてね」

 

そして俺は門を超える為、高度を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メルランside

 

お兄さんが行った後、私はさっきから顔を赤くしてお兄さんが向かった先を見つめている姉さんに聞いてみた。

 

「姉さん、お兄さんに惚れたでしょ?」

 

「ッ!?べべべべ別にほほほほほほ惚れてなんかかかかかか・・・///」

 

・・・うん、確定ね。てか姉さん、普段あんなに動揺する事ないし・・・

 

「まぁ確かにカッコよかったよね~、また会いたいな♪」

 

リリカもお兄さんの事気に入ったみたいね・・・てか、あのお兄さん・・・

 

何で・・・神力が宿っているんだろ・・・それに・・・あの人、冥界のお嬢様の屋敷にあった写真の人に似ている・・・

 

「・・・偶然かしらね」

 

しかし、この言葉は偶然でも何でもないのである。だが、それを知る者はこの場には居ない・・・

 

 




龍夜「もう年末だな~と、作者の龍夜です」

レン「最近pixivでマイピクになった作者さんの作品で出番があった、レン・リュウヤです」

フラン(極夜)「最近フラグが建ちまくって少し鬱な、俺こと『星屑 極夜』です」

龍夜「そんな訳で後、二~三話程でタイトルが変わります。因みに極夜の前々世の種族は祖龍録上でも関係がある祖龍『ミラルーツ』が関わってきます」

レン「そう言えば、クリスマスはどう過ごすんだ?」

龍夜「・・・彼女が居ない俺に何て答えろと?(涙)」

フラン(極夜)「何か・・・御免・・・」

龍夜「そんな訳で今回もこんな駄文を見てくれて有難うございます」

龍夜&レン&フラン(極夜)「「「それではまた次回お会いしましょう」」」



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生み出されし存在の宿命

龍夜「今回は閑話で少しずつ記憶が戻ってきた極夜の心境と彼の過去を少し見せようと思います」


俺は高度を上げ門を超えた・・・

 

この先にアイツが・・・幽々子が居る・・・俺の守れなかった女性が・・・

 

それにあの木を、西行妖を復活させては駄目だ・・・あの木にはアイツの呪いが・・・

 

白夜が掛けた呪いが宿っている・・・もし解放されればこの世界は・・・

 

もう俺は絶対に失いたくない・・・誰も・・・

 

いつだったかな・・・俺があの人に生み出されて天界の管理を任されたのは・・・いつだったかな・・・俺達兄弟が戦う事になってしまったのは・・・

 

 

 

 

 

 

※ここからは回想に入ります

 

 

 

 

 

『俺は・・・』

 

「お前を生み出したのは我だ・・・」

 

俺はずっと昔ある人・・・いや龍によって生み出された。生み出した龍は人の姿をしていた。

 

その容姿はとても美しく、真紅と翡翠の瞳は全てを見通すように輝いていた。

 

「お前にこの天界の管理を任せよう・・・しかし名前が無いのは不便だな、それに種族で呼ぶのもアレか・・・よしお主に名を与えよう」

 

『名前などいりませんよ・・・私は貴方によって生み出された道具ですから・・・』

 

「お主・・・余りふざけた事を抜かすな・・・」

 

俺は別に名前なんか必要なかった・・・俺はあの人に生み出されただけの道具だから。けど生み出したあの人は今の言った『道具』という言葉がとても嫌いだった・・・

 

「我は生み出した存在は道具として扱う事は一切ない・・・生み出した者達は我の大事な『家族』そのものだ・・・家族を道具扱いなどするものか・・・」

 

そしてあの人は暫く空を眺めた後、いい名前が思いついたらしく誇らしげに言った・・・

 

「お主の名前は・・・『星屑 極夜』にしよう。我ながらいい名前を考え付いたものだ・・・」

 

『・・・名前の由来、もしくは意味等は有るんですか?』

 

「この世界や・・・様々な世界を見守る存在に・・・極夜に輝く一筋の星のように・・・人々を守り導く存在になってほしい・・・そんな願いを込めてな・・・」

 

人々を・・・導く。極夜に輝く一筋の星のように・・・

 

俺は・・・そんな存在に成れるだろうか・・・

 

考え込んでいるとあの人は頭を優しく撫でてきた。

 

「別に難しく考える必要はない・・・我とてそんな思い荷を背負わせるつもりで名を与えた訳ではないからな・・・」

 

 

 

 

俺には兄弟が居た・・・一人はあの人が独自に修行を就け、そのまま旅立った。

 

最後までずっと俺にくっ付いて離れなかった兄離れできない妹だった・・・

 

そして・・・俺にはもう一人、弟が居た。だがアイツは・・・俺とは違い世界の歴史を修正する裏の存在としてあの人によって生み出された・・・俺の弟でも有り俺と同じく星屑の性を与えられた・・・たった一人の弟・・・『白夜』は。

 

 

 

「兄さん・・・」

 

「ん?どうしたんだ・・・?」

 

「・・・僕はいつまであんな事をしなくちゃいけないの?」

 

ある日、白夜は俺の居る天界に側近も着けずにたった一人で来た。

 

部屋に案内してお茶を入れ少し経ち、白夜は暗い表情で話し始めた・・・

 

「・・・まぁ、俺達は世界を管理する存在だからな。仕方ないさ」

 

「でも・・・だからって、なんで殺しなんかやらなくちゃいけないんだ・・・殺す以外にも道は有る筈なのに・・・」

 

「・・・それが俺達に課せられた宿命なんだ。俺だって世界の歴史が狂ってその世界が崩壊なんて危機に陥ったら、その世界を狂わせた『異端分子(イレギュラー)』を消して正しい歴史にしなくちゃいけない・・・俺だって本当はこんな事やりたくてやっている訳じゃないよ・・・」

 

世界を導く者として当然の事だった・・・だけど、あの頃の俺は自分に課せられた宿命に固執しすぎていた・・・だから俺は・・・白夜の事をちゃんと見ていなかったのかもしれない・・・

 

 

 

 

 

 

だから・・・俺は・・・

 

「僕は兄さんを超え、あの人も超える!!それが僕の生きている証に成るのだから・・・」

 

何も・・・

 

「私は・・・貴方が・・・好・・・き・・・だっ・・・」

 

誰も・・・

 

「・・・私と友達になってくれて・・・あり・・・が・・・と・・・う・・・」

 

「いや・・・行かないで!私を置いて、貴方がいたから『幻想郷』を創る事ができた!貴方を愛する人がいないから私がずっと傍にいる・・・だから・・・行かないで・・・『極夜』!!」

 

誰一人・・・守る事ができなかった・・・

 

だから・・・今度は絶対に誰も失う訳には行かない!!

 

絶対に・・・もうあんな想いをするのは絶対御免だ・・・・・・

 

(どうしたんじゃ?難しい顔をして・・・)

 

「え?いや、なんでもない・・・」

 

(・・・記憶が戻ってきておるな、あの人も随分スパルタじゃのぅ・・・まぁ、儂としては見守る事しかできんがな・・・)

 

儂は内心でそう呟き、これ以降喋るのを止めた・・・

 

 

 

 

 

 




龍夜「いやーやっぱシリアス書くの下手だな俺っと、作者の龍夜 蓮です」

レン「今回は前の閑話と違って凄くシリアスだったな、っとレン・リュウヤだ」

フラン(極夜)「自分の過去が明かされて少し複雑な俺こと『星屑 極夜』です」

龍夜「本当は今回の話を書く予定は無かったのですが、思いついたので書いてみました」

レン「てか、言いたいことがありすぎるから一言で纏めると・・・重いな・・・」

フラン(極夜)「・・・記憶が戻ってきているけど、正直思い出したくない記憶が多くて俺としても困っているんだけどな」

龍夜「そんな訳で次回はクリスマス編です。突発的に思いついた話ですが、よかったら次回も見てくれると自分としては嬉しいです」

レン「そんな訳で今回もこんな駄文を見てくれて有難な」

龍夜&レン&フラン(極夜)「それではまた次回お会いしましょう」」」





龍夜「クリスマス編どうしよう・・・」

アイ「極夜と誰かのイチャネチョでいいんじゃ「やめい!!by極夜」うー☆」


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友人として、賢者として

フラン(極夜)「さて・・・遅れた訳を聞こうか・・・」

龍夜「はい・・・単純に言えば、スランプです・・・書く文に自信を無くして祖龍録のほうを改稿していました・・・」

フラン(極夜)「で?今回投稿した理由は?」

龍夜「はい・・・流石に投稿がこれ以上遅れるのは不味いと自分の中でも薄々思っていたのでない知恵を絞って今回の話を書きました・・・」

フラン(極夜)「今回は許すが、次遅れたら・・・分かっているよな?(ニッコリ」

龍夜「はい・・・次回はなるべく早く投稿するよう善処します・・・」

レン「そ、それではどうぞ・・・・・・」


それは本当に只の偶然だった・・・私はいつも通り寝て、起きて幻想郷の様子を観察していた。私は暇つぶしに霊夢の年齢の境界を弄り霊夢を幼児化させた。あたふたし、家事が上手にできない霊夢を見るのはとても面白かった。

 

 

一週間が過ぎた、私は今日も霊夢を観察している。そろそろ魔理沙やアリス辺りが来る頃合だろうと思っていると神社に向かって来る一つの影があった・・・その人物の容姿を見た瞬間私は目を見開き、大声で叫んだ・・・・・・『極夜!?』と・・・そして彼は突然攻撃してきた霊夢の弾幕を躱し、弾幕で応戦した・・・・・・そして突然泣き出した霊夢を何処からか取り出した飴を霊夢にあげ、霊夢をおぶると神社の中へと入っていった・・・・・・

 

 

そして彼は泣きやんだ霊夢の話を聞くと彼女をおぶり、あの竹林の薬師が居る『永遠亭』まで送った。そこまで見て私はスキマを閉じ、彼の事について考えた・・・・・・彼は何者だ?何故『極夜』と同じ容姿をしている?

私の疑問は尽きなかった・・・考え込んでいると式である藍が心配そうな面持ちで話し掛けてきたが、『大丈夫』と言って誤魔化した・・・・・・

 

そこから彼・・・『フランドール・スカーレット』の日常を観察する事にした。彼の日課は朝早くに起き、館の住民全ての朝食をスペルカードの分身を駆使して作り上げ、館の清掃を行う。その後は館の住民を全員起こし、全員で朝食を摂る。そして食べ終わった後はメイド達に無理をさせたくないのか彼一人で全員分の食器を洗うようだ。しかしメイド長が横で何か彼と抗議しているようだが・・・・・・

 

 

 

「私がやりますからフラン様は部屋でお休みになって下さい!何で最近私より先に起きて朝食を作る所か館の清掃まで一人でやってしまわれるのですか!?」

 

「前に無理して倒れたばっかりなのに何言ってるんだよ!咲夜にばっかり仕事を押し付けて自分はのんびりできる訳ないだろ!だから負担を減らす為に俺が頑張らなくちゃいけないんだよ!咲夜こそ部屋で休んでいてくれよ!!」

 

「その気持ちだけで十分です!だからお休みになって下さい!!」

 

「だが、断る!!」

 

「何で分かってくれないんですか!!」

 

「そっちこそ何で分かってくれないんだよ!!」

 

 

 

 

私は無言でスキマを閉じ、床に拳を叩き付けた。何よ、あれ・・・只の夫婦喧嘩じゃない・・・あんなにイチャイチャと・・・見てるこっちがイラッと来るんだけど・・・・・・。そしてその日はそのままふて寝した。

 

 

そして彼を観察して一か月程経った・・・・・・彼はこの一か月の内に他の次元の者と関わったり、他の次元で開催された大会に出場する為なんと私の能力を使い、他の次元へと飛んでいるのを私は偶然見てしまった・・・・・・そこから私の中である推測が生まれた・・・・・・彼は『星屑 極夜』なのではないか?という推測が・・・・・・勿論自分でも何でこんな推測に至ったか分からない・・・・・・でも彼の生活を観察していると思い出すのだ・・・・・・彼と過ごした日々を・・・・・・彼との思い出を・・・・・・彼を救えなかったあの時を・・・・・・。極夜はあの時自身の式である閻魔とその部下の死神の能力で輪廻転生をした・・・・・・私は極夜が何処へ転生したのかを聞く為、彼岸へ・・・『四季 映姫』の居る所へと向かった・・・・・・

 

 

 

 

 

「残念ですが、貴女といえどこの事を教える訳にはいきません・・・あの人との約束ですから・・・」

 

「お願いだから教えて・・・」

 

「いや、だから・・・「極夜が幻想郷に居るかもしれないのよ!お願いだから教えて!!」・・・え?」

 

私の言葉に驚いた閻魔に私は事の端末を話した。すると、渋い顔をしながらも口を開いた。

 

「貴女が観察していたあの人は・・・フランドール・スカーレットじゃありません。そもそもフランドール・スカーレットは既に黄泉の国にいます」

 

「どういう事なの?」

 

「・・・黄泉の国とは前世で偉大な功績を遺した者のみがそこで暮らす事を許される特別な世界。地獄や天国とは違った所なのです。私はそこの神に少し前「この子を黄泉の国で預かってもいいか?」と聞かれたのです。私は最初は反対しました。ですがその神から聞きました、極夜様が生きていると『フランドール・スカーレット』として龍神王『星屑 極夜』は幻想郷で生きていると知らされました」

 

「本当に・・・生きて・・・」

 

私は涙が止まらなかった・・・あの日から・・・ずっと、ずっと探していた、やっと・・・やっと・・・見つけた。私は嬉しさの余り泣いてしまった・・・・・・

 

「ですが、今の極夜様は・・・ここ(幻想郷)での記憶を失っています。思い出すには何かきっかけを作る必要があります」

 

きっかけ、その言葉を聞いて思い当たる事は一つしかなかった・・・だけど、またあんな事が起きたら・・・

 

私はどうすればいいのか分からなかった・・・・・・

 

私はマヨヒガに戻り、藍にこの事を話した。藍も同じように泣いていたが、思い出す方法を伝えると・・・・・・

 

「私は・・・少しずつでいいから記憶が戻るよう極夜様と会って、話してみるべきだと思います・・・」

 

「そう・・・よね・・・。じゃあ、今度会って話してみるわ・・・」

 

そう・・・これでいいのだ・・・またあんな悲劇は絶対繰り返させはしない・・・だが、私は気づかなかった・・・この会話を影で聞いてる者がいる事に・・・・・・

 

 

 

「残念だけど・・・お前達の思い通りにはさせない・・・兄さんのトラウマは・・・僕が呼び覚ましてやるよ・・・」

 

それが悪夢の始まりだという事を・・・この時は知る由もなかった・・・・・・

 




龍夜「そんな訳で久しぶりの吸血王です。今回は軽く解説も交えて話していきたいと思います」

Q:何で紫は異変前に極夜に会おうとしなかったのか?

龍夜「これのAですが、実は駄神が運命操作をして極夜に接触させないようにしていた為です。悪気があってやった訳ではなくまだこの時点で紫と極夜を接触させてはいけなかったというのが主な理由です」

Q:黄泉の国って何ぞ?

龍夜「これに関してですが、自分が書いている小説『東方祖龍録』で黄泉の神『ハデス』が管理している国です。映姫が説明した通りこの世界は地獄や天国とはまた違った所でこの世界に住んでいる人達は前世で偉大な功績を遺しています」

Q:龍神王って?

龍夜「極夜の種族『龍神王』についてですが、極夜は『祖龍』に生み出された存在でありこの次元世界を見守る存在でした。龍神王として生きていた頃の極夜の能力は『破壊と創造を司る程度の能力』です。何故、彼程の人物が自身が管理している天界から去り、地上を旅していた事に関してですが・・・ネタバレになるのでまた今度」

Q:この世界(東方吸血王)のフランドール・スカーレットについて

龍夜「駄神が『館に住む者達とは仲良くやっている』と言ってましたが、実はあれ半分嘘です。実はこの世界上のフランは紅魔館の住民全員を憎んでいました。殺したいと思う程に。ここから先は次話で語る事にします」

龍夜「そんな訳で今回はここまで。投稿が遅れて申し訳ありません。ここ最近軽いスランプに陥っていたので・・・・・・」

フラン(極夜)「こんな駄作者ですが、これからも宜しくお願いします」

龍夜「そんな訳で今回もこんな駄文を見てくれて有難うございます」

龍夜&フラン(極夜)「それではまた次回お会いしましょう」」


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繋がる記憶

龍夜「また投稿が遅れてしまった・・・・・・」

フラン(極夜)「何やってんだよ・・・・・・」

レン「全く成長しないな・・・・・・」


冥界――――――上空――――――

 

 

「・・・・・・」

 

(極夜・・・おい聞いておるか?・・・・)

 

「・・・・・・」

 

(お主が何を考えているかは大体分かる・・・だが、今は異変を解決する為に動いている身・・・余計な事は余り考えないほうがよいぞ・・・・・・)

 

「分かっているよ・・・・・・だけど・・・・・・いや・・・なんでもない・・・」

 

極夜は今現在、激しい頭痛に襲われていた。・・・・・・なんだ・・・・・・この頭が握りつぶされそうな痛みは・・・・・・それにこの記憶は・・・・・・

 

―――――ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!・・・いいよ、その絶望に満ちた顔・・・さて、このままだと・・・この世界はどうなるかな・・・・・・

 

―――――コロシテヤル・・・コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス・・・・・・例エ弟ダロウトコロス!!!!!!!!

 

―――――兄さんはアテナを失った悲しみから逃げる為にこの世界に来た・・・そしてまた守るべき物を見つけた・・・その守るべき物を全て壊されたら・・・兄さんはどんな表情をしてくれるのかなァ!!!!!!

 

―――――例え、僕を封印しようと・・・僕が掛けた呪いは一生消える事は無い・・・兄さんの罪はどんな事があろうとも消える事は無い・・・それに僕はいずれ蘇る!!その時がこの世界の終焉の時だ・・・・・・・

 

―――――本当にこれで宜しいのですか?・・・これ以外にも道はある筈なのに・・・・・・

 

―――――御免な、映姫・・・だけど、俺はもう疲れた・・・ゆっくり休ませてくれ・・・・・・

 

―――――逝かないで・・・私を置いて逝かないで!!

 

―――――御免な、紫・・・永琳や、輝夜、さとり達に伝えておいてくれ・・・さようならって・・・・・・

 

 

(・・・・い・・・・お・・・・の・・・か。おい、聞いておるのか!)

 

「ッ!?あぁ・・・ちゃんと聞いているよ・・・・・・」

 

駄神の声が極夜を現実に引き戻す。また・・・・・・あの時のように俺は失うのか・・・いや、何も考えるな!今は異変を解決する事だけを考えろ・・・・・・

 

暫く飛ぶと大きい屋敷が見えた・・・そして門の前に一人の少女が倒れている・・・・・・

 

「おいッ!?大丈夫か!!誰がこんな酷いことを・・・・・・」

 

銀髪で背中に二本の刀を背負った少女は酷く衰弱していた・・・このままだとこの子の命が危ない・・・・・・

 

「復体『ドッペルゲンガー』!」

 

『マスター何か・・・・・・って、この子は!?』

 

「詳しい話は後だ、お前はこの子を治療してやってくれ・・・俺と爺はこの先に用事がある・・・・・・」

 

『分かりました・・・無茶だけはしないで下さい・・・・・・』

 

「分かっている・・・・・・」

 

そして極夜は門を飛び越え、中へ侵入した・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃幻想郷では未だに雪が降っていた。そんな中、人里から離れた空の上では様々な色の弾幕が飛び交っていた。

 

「墜ちなさい!霊符「夢想封印」!!」

 

楽園の素敵な巫女『博麗 霊夢』はお得意の夢想封印で後ろから執拗に弾幕を放ってくる妖精達を撃ち落としてゆく。今の彼女の心境はとても穏やかとはとても言い難い。目は腫れ、スペルカードを持った手から血が溢れていた。普段の彼女は異変の主犯の元に行く時はゆったりとして緊張感も持たずに行く事が多々ある。しかし今の彼女はとても焦っていた、彼女はまた飛ぶスピードを上げ一直線に冥界へと向かっていた。

 

 

―――――――――なんで・・・なんで私は、こんな大切な事を忘れていたんだろう・・・早く、早く行かないと・・・あの人が、死んでしまう・・・・・・

 

 

霊夢の目から一粒の涙が零れ落ちた。しかし彼女は直ぐにそれを拭い、また飛ぶスピードを上げた。何故霊夢がこれ程迄に焦り、異変の主犯が居る冥界に向かっているのか。それは約二時間前の事だった。

 

 

 

二時間前――――――――博麗神社――――――――

 

 

「そろそろ魔理沙か咲夜辺りが異変を解決したかしら・・・・・・」

 

賢者『八雲 紫』が去った後、『博麗 霊夢』はその場から動く事はなかった。霊夢はさっき紫から聞いた『星屑 極夜』の名前が頭から離れなかったのだ・・・普段だったら大好きなお茶を啜って煎餅や羊羹を食べ直ぐ嫌な事や気になっている事を忘れるのだが、煎餅は全て食べ切ってしまっており、羊羹もこの前魔理沙に強奪されたので生憎切らしていたのだ。

 

――――――――煎餅も全部食べちゃったし、そろそろ人里に買いに行こうかしら・・・・・・

 

そんな事を考えていると突然スキマが出現し、そこから紫の式である『八雲 藍』が出てきた。普段の彼女は冷静だが今の彼女は普段の様子とは全く違い凄く取り乱していた。そんな藍の様子に流石の霊夢も驚く、何かあったのだろうかと・・・・・・

 

「あの人が・・・極夜様がここに来ていないか!?」

 

「はっ・・・?い、いや・・・・・そんな人来てないけど・・・・・・」

 

「そうか・・・すまない、邪魔したな・・・・・・」

 

そう言って藍はスキマの中へ消えて行った。

 

まただ・・・何でまた、その名前を聞かなくちゃいけないんだろう・・・・・・

 

そう思いながら霊夢は炬燵から出て、縁側へと向かった。外は未だに雪が深々と降っており止む様子は無かった。霊夢は溜息を一つ吐き、その場に座った。そして空を見あげるとこの神社に近づいてくる一つの人影に気付いた。

 

その者は『射命丸 文』文々。新聞という新聞を作っている記者で度々この神社に来る迷惑な客の一人だ。しかし、文の様子は普段とは全く違っていた。いつも営業スマイルを振りまいている彼女の表情はとても暗かった。そして文は霊夢の前に降り霊夢を見据え、口を開いた。

 

「お久しぶりですね、霊夢さん。魔理沙さんと咲夜さんから聞きましたが・・・まだ異変解決に向かってなかったんですね・・・いつもの貴女だったら面倒事は直ぐ片づけてゆっくりすると思っていたんですが・・・・・・」

 

「別に私がどうしようと勝手でしょ。こんな寒い中お仕事ご苦労様って言ってあげたいけど、今は誰の顔も見たくないの・・・とっとと出てって・・・・・・」

 

「・・・霊夢さん、貴女本当に自分の親の事を忘れてしまったんですね」

 

文のその言葉に霊夢の目が鋭くなり、文を睨み付ける。文はそれを無言のまま受け止めていたが、少し経つと懐から一枚の写真を取り出し、霊夢の手に握らせた。

 

「藍さんと紫さんからこの写真を貴女に渡すように言われたので一応渡して置きます。この写真を見て、霊夢さんがどう行動するかは霊夢さん次第です。只、これだけは言って置きます・・・決して現実から目を背けようとしないで前に進んで下さい。では、私はこれで失礼しますね」

 

そう言って文はその場から飛び去った。その場に残された霊夢は渡された写真を見た。そこに写っていたのは幼少の頃の霊夢の姿、そしてその頃の霊夢の頭に手を置いて笑っている霊夢の母親の姿、そして霊夢の母親の隣に立っている男性の顔を見た瞬間、霊夢の頭を激しい頭痛が襲った。そして霊夢の脳裏に様々な光景が蘇る・・・・・・嘗て、彼女が失った大切な記憶が・・・・・・

 

―――――――――お父さん!また新しい技覚えたから戦って!!もし勝ったら今日の夕食豪華にしてほしいな~なんて・・・・・・

 

―――――――――はいはい、分かったよ・・・じゃあ、行くぞ!!

 

―――――――――お父さん・・・一緒に寝ていい・・・・・・?

 

―――――――――霊夢・・・そろそろ一緒に寝ないで一人で寝ろよ・・・・・・

 

―――――――――お父さん、なんで泣いているの?

 

―――――――――いや・・・なんでもないよ・・・・・・

 

―――――――――霊夢、よく聞いて頂戴・・・極夜は・・・貴女のお父さんは・・・もうこの世界に、幻想郷に居ないわ・・・・・・

 

―――――――――嘘よ、お父さんは約束したのよ・・・絶対一人にしないって・・・私と約束・・・した・・・のに・・・・・・

 

―――――――――貴女の記憶を封じさせて貰うわ・・・本当はやりたくないけど・・・ごめんね・・・霊夢・・・・・・

 

 

 

「ハァ・・・ハァ・・・今の記憶は・・・・・・」

 

その記憶の中に幼い頃の自分とよく夢に出てきた男性の姿があった。そうよ・・・なんでおんぶされた時気付かなかったの・・・なんで・・・私は・・・こんな大切な記憶を・・・・・・

 

「お父・・・さん・・・」

 

私の目から涙が溢れた・・・私は渡された写真を抱きしめ、大声で泣いた・・・久しぶりだった。こんな大きな声で泣いたのは、幼少の頃父親に無断で妖怪退治に行って、死にそうになった時以来だった。私はお父さんが死んだと聞いた時、嘘だと思った・・・いや、死んだという現実が受け止めきれなかった。私は死にもの狂いで修行した・・・強くなればお父さんは絶対に帰ってきてくれるという淡い希望を信じて。でもお父さんは帰って来なかった、そして自殺しようとしていた時、紫が私の目の前に現れ私の記憶を封印した・・・そして私の記憶から『星屑 極夜』は完全に消えた。それ以降は私は母親の事しか思い出せず、異変を解決して魔理沙達と宴会で酒を飲み明かし縁側でお茶を啜るそんな日々を送った・・・そして一ヶ月前、紫の暇つぶしで私は幼児化してしまい上手く家事が出来ず年が幼くなったせいなのかは知らないが、出掛けるのが怖くなり神社から出てこれなくなった。そんな時、神社に客が来た金髪の長髪で背中に虹色の翼を生やし赤黒い服を身に纏った一人の男性が。私はその人が誰だか分からなかった・・・そしてその人が妖力を持っていると分かると私は本能的にスペルカードを使い、彼に攻撃した。結果は私の負けだった。幼児化していたせいか、私は相手の攻撃が当たった瞬間つい泣き出してしまった。そんな私をあやして私に飴を握らせ彼は私をおぶった、その時だ私はその人の事をお父さんと呼びそうになった・・・あの時はお父さんがいたらこんな感じで甘えていたのかなという私の気持ちで、彼が私の父親とは微塵も思っていなかったのだ。でも今なら分かる・・・フランが・・・私の父『星屑 極夜』だと言う事が・・・・・・。

 

暫くして私は目尻に溜まった涙を拭い、静かに立ち上がった・・・弱音は吐いていられない・・・それにお父さんはいつも言っていた・・・『大切な人を目の前で失うくらいなら俺は自分の命すら投げ捨ててその人を助ける』と今度は自分がその言葉を実践する時だ。

 

私は蔵へ行きいつも使っているお祓い棒を取り出し、霊力を纏い空へ飛び立った。大切な物を守る為に・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数刻前―――――――――某所―――――――――

 

 

「星砲『スターライトブレイカー』!!」

 

「禁忌『レーヴァテイン』!!」

 

「黄泉『死者の悪戯』!!」

 

襲いかかってくる妖精達をスペルカードでなぎ倒して行く三人の人影・・・その者達はこの次元世界の住民では無い。一人は祖龍一族唯一の生き残りであり祖龍と修羅神の種族両方を合わせ持つ存在『レン・リュウヤ』。もう一人はレンに封印されレンの中に封印された闇に触れ具現化した存在、吸血鬼でもあり最高神ゼウスの部下、狂神王『アイ・スカーレット』。最後の一人は黄泉の国の統率者でもあり最高神ゼウスの補佐でもある、黄泉の神『ハデス』。彼らは普段は余り他の次元へ出向く事は無いが今回はレンとアイの個人的な理由でこの次元世界の幻想郷へと赴いているのだ。それは友人であり共に戦った戦友の『星屑 極夜』に会う為だった。ハデスは興味本位で付いてきただけで極夜の事は詳しくは無い。だが極夜と連絡が取れず、幻想郷から春がある一か所に集まっている事を知り、レン達三人は冥界へと向かっていた。

 

「全く、ゴキブリみたいに湧いて来るんだけど!・・・いい加減やめて欲しいよ。ゼウスお爺ちゃんの任務で徹夜続きだって言うのに・・・・・・」

 

「愚痴言いたくなる気持ちも分かるが、神王になったばかりのアイにはあれ位が丁度いいだろ。俺やハデスのほうがもっとめんどくさい任務やっているんだからな」

 

「そうだよ・・・。ゼウスは君の事を信頼しているからね、それに愚痴を吐くなら酒の席だけにしてくれよ」

 

「はいはい・・・それより、極夜が冥界に居るのは本当なの?お兄様」

 

「あぁ・・・念話しても極夜にも一緒にいる駄神にも連絡がつかない。それに春の気が冥界のある一か所に集まっている。どうにも嫌な予感がしてな・・・・・・」

 

「はぁ・・・せっかくの休日なのにこんな事に巻き込まれるとは。私もついてないな・・・・・・」

 

「すまないな、ハデス。また厄介事に巻き込んでしまって」

 

「慣れているしいつもの事だから気にしてないよ。それより早く向かわないと」

 

「あぁ、そうだな・・・じゃあ飛ばすぞ!しっかり付いて来い!!」

 

「了解~」

 

「了解したよ」

 

 

 

 

極夜・・・絶対にあの力は使うなよ・・・お前があの力を使いこなかったら・・・この世界は『終焉』を迎えてしまうからな・・・・・・




龍夜「今回も解説・・・といきたい所ですが、今回は解説は無しです」

レン「無いのかよ・・・じゃあ一つ質問するが、なんで俺達を出したんだ?」

龍夜「まぁ、一度向こうの世界に関わっているからっていうのが主な理由ですね。別に戦闘に参加させる気はありません。だってこんなバクキャラ達戦わせたら極夜の見せ場が無くなってしまいますしね・・・・・・」

アイ「てか、私の事に関して説明したほうがいいんじゃないかな・・・・・・」

ハデス「いや、そこを説明したら駄目だろ・・・本編じゃ、まだなっていないし・・・・・・」

龍夜「そんな訳で今回はここまで。今回もこんな駄文を見てくれて有難うございます」

龍夜&レン&アイ&ハデス「「「「それではまた次回お会いしましょう」」」」



※活動報告でアンケートを実施しています。よかったら答えて下さると嬉しいです。


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そして僕は居なくなった 前編

龍夜「長くなってしまったので今回は前編と後編に分けました。そして今回は過去編となっております。後、閲覧する上で注意して貰いたいのですがオリジナル展開、原作何処行ったし・・・的な展開が多々あります。それらが駄目な方はブラウザバック推奨です。それでは本編をどうぞ・・・」






『死』・・・それは誰もが『生』を受けた以上一生に一度は訪れる現象だ。死を迎えるとその者の肉体は朽ち果て魂だけの存在と成り彼岸へ逝く。そしてそこで前世で人に尽くしてきた者、動物や自然を大切にしてきた者などの善行を積んだ者の魂は『天国』へと送られる。しかし、誰もが天国に逝けるとは限らない。前世で盗みを働いた者、人を殺した者などは『地獄』へと送られ、前世で犯してしまった罪を新たな肉体に転生した後に行わせない為にそこで様々な事を一から学ぶ・・・そこが『地獄』だ。しかし、例外がある。前世で不幸な死を遂げた者や本来死ぬ筈じゃなかった者は『天国』や『地獄』には逝かず二つの選択肢を選ぶ事ができる。それは『輪廻転生』をし新たな肉体と前世の記憶を持って生きる道を歩むか、『黄泉の国』で暮らすかのどちらかを選ぶ事ができるという訳だ。『黄泉の国』とは前世で偉大な功績を成した者や転生を拒んだ者が住む事を許される特別な世界・・・そこには自身の夢を果たせず死んでしまった歴史上で有名な人物達や人間の世界で伝説と呼ばれ、歴史の裏に葬られた一族も多く暮らしていた。そしてその黄泉の国の中心街から離れた森に建つ一件の家に住んでいる少年が一人・・・少年は机に座り、紙に筆を走らせていた。黒い西洋の服を身に纏い、背中の虹色の翼がとても特徴的で何よりその紅い瞳に長く伸ばした金色の髪が少年の美しさを物語っていた。少年の名は『フランドール・スカーレット』、紅魔館の主『レミリア・スカーレット』の弟だ。彼は訳あってこの世界で生活をしている。彼は前世で偉大な功績を残してはいないが、この世界を統率している神の友人の計らいでこの世界で暮らす事を許されたのだ。その裏で彼が居た世界の閻魔『四季 映姫』とその統率神の激しい口論があった事はここだけの話だが・・・・・・

 

 

 

 

 

「フゥ・・・そろそろ休憩にしようかな・・・」

 

フランは立ち上がり台所へと向かった。台所で友人から貰ったチーズケーキを冷蔵庫から取り出し、皿に乗せ紅茶を入れた。その時、来客者が来た事を知らせる呼び鈴が鳴る、フランは紅茶が入ったポッドを置き玄関へと向かった。フランがドアを開けるとそこにはその友人が居た。

 

「よぉ、フラン。また来たぞ」

 

「また来てくれて嬉しいです、幻水さん。どうぞ、上がって下さい」

 

幻水と呼ばれた黒髪の男性はフランに案内され居間へ向かった。そしてフランは幻水に一言台所へ行ってくると伝え、台所へ戻り、二人分のチーズケーキと紅茶を用意し居間へ戻った。二人は紅茶を啜り、無言でチーズケーキを食べる。暫くして幻水が口を開いた。

 

「それにしても急にお邪魔して悪かったな」

 

「いえ、別に構いません。ただ、手紙を書いていただけですから」

 

「前にお前が話していた恩人へ宛てた手紙か?」

 

そう幻水が聞くとフランは頭を搔きながらバツが悪そうな顔で答える。

 

「はい、ただ・・・手紙を書いた事があんまり無くて・・・。頑張って文を考えているんですが、どうしても暗い内容になってしまうんですよ・・・」

 

「自分が思った事を素直に書くのがいいと思うぞ?俺が手紙を書くとしたら今何処で何をしているとか質問ばっかりな内容の手紙になっちまうだろうけどな」

 

「アハハ・・・分かりました、頑張ってみます」

 

「じゃあ、そろそろお暇するな。これから会議があるんでな」

 

「そうですか・・・水奈さん達に無理しない様に言っておいてくれませんか?」

 

「あぁ、分かった・・・じゃあな」

 

そう言うと幻水は懐に差していた刀で空間を一閃し切り裂き、その中へ消えて行った。フランは残った紅茶を飲んだ後、自室へ戻りまた筆を手に取り書き始める。暫くして大体書き終わると溜息を一つ吐き、テーブルの引き出しから一枚の写真を取り出した。そこには紅魔館の家族全員が写った写真だった、フランはそれを少し眺めた後直ぐにしまい机に突っ伏した。そして小さく呟く・・・・・・

 

「これでよかったんだよな・・・」

 

僕はこの国に来る前、許されざる罪を犯した

 

そして僕は逃げるかのようにこの国へ来た

 

僕は只、罪から目を逸らしこの世界へ逃げて来ただけだ・・・

 

姉さんや皆にした所業から・・・

 

僕は本来なら地獄に逝く筈だった・・・

 

でも、ハデスさんは僕の事情を知っていたのかこの世界で暮らす事を許してくれた

 

姉さん達は今何をしているだろう・・・そしてあの人は、姉さん達と仲良くやれているだろうか

 

「ん・・・少し眠ろうかな・・・」

 

そして暫くして僕の意識は闇へと堕ちて行った・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

フランがこの世に生を受けたのは姉であるレミリアが生まれてから百年程たった後だ。しかしフランは姉であるレミリアとは違い全く戦いの才能が無かった。吸血鬼がまだ絶滅していなかった時代、力が無い者は直ぐに殺されるこの時代で戦いの才能が無い吸血鬼は異例中の異例だった。フランは争いを嫌っていたが大好きな家族を傷つけさせるのがとても嫌だった、そしてフランは家族の見えない所で修行をする事にした。フランの修行は姉のレミリアがしていた物より遥かに危険でハードだった。フランは他の中級妖怪と殺し合いをして自身を鍛えるというとても修行とは呼べない方法で自身を鍛えていたのだ。そしてある時フランは姉のレミリアと同じ能力持ちとなった・・・それが、全ての悪夢の始まりだった。フランが発芽させた能力『ありとあらゆる物を破壊する程度の能力』それは言葉通り妖怪や神すらも恐れる狂気の力だった。その能力でフランは能力を使うと人や物などの中にある『目』を見る事ができる様になった、そして初めてフランがその目を自身の手で隠れるように手で握った・・・たったそれだけで目の前に居た妖怪は肉片が残らない程バラバラにされ辺りに肉片と夥しい程の血が飛び散ったのだ。フランはその力の危険性を理解できず、使い続け吸血鬼の一族を殺しまくった・・・そして最終的に吸血鬼の一族はスカーレット家の者しか居なくなってしまったのだ。フランの父親はフランの能力を恐れた・・・このままだと自分も殺されてしまうと、そして父親はフランと軽い模擬戦と称した殺し合いを行った。結果は父親の負けだった、そして残ったのは無残にも腹を切り裂かれた父親の死体と大量の返り血を浴びたフランだけだった。フランはその場に泣き崩れ、フランは地面に拳を打ち付ける・・・何度も何度も、血が溢れてもフランは地面を殴る事を止める事はなかった。しかしその行動も終わりを迎える、もう一度拳を叩きつけようとした瞬間自分の拳を姉であるレミリアが止めたのだ。

 

 

 

 

「もう止めて!これ以上やったら貴方の手が・・・」

 

「姉・・・さん・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 

 

 

 

 

フランはレミリアに抱き着き大声で泣いた。フランは父親殺す気は全く無かった、だが自分の中の本能が父親を敵と認識し、殺してしまった。レミリアはフランの頭を撫でながらあやし続けた・・・只、それだけしかできなかった。そしてレミリアはフランを地下へ幽閉する事を決心した。だが、永遠に閉じ込める訳じゃない・・・自分達の安全が確保されたらまた昔の生活に戻れるとフランに言った。フランはその言葉を信じた・・・でもそれを信じたフランの選択肢は間違っていたのだ。レミリアは食事の用意をして地下へ運び、部屋の前に置く事を繰り返すだけで二度とその部屋へ足を踏み入れる事は無かった。フランはずっと待ち続けた・・・いつか、姉さんは自分を迎えに来てくれる、また昔みたいに戻れると・・・だが、それは幻想に過ぎなかった。フランの心は段々と荒れて行った、そして次第にフランは地下を抜け出し屋敷を暴れまわる事が多くなった。フランは目に映る動く物全てが憎かった・・・能力を使い様々な物を壊していく内にフランは壊す事に楽しみを覚え、いつしかそれが生きがいとなっていた。だが、フランの暴走は紅魔館の新しい住民レミリアの親友『パチュリー・ノーレッジ』と従者の『十六夜 咲夜』によって終わりを迎える・・・そしてフランはまた地下へ閉じ込められた。強固な結界が張られ、フランはパチュリーの魔法で眠らされた。それから一ヶ月程経ったある日フランはこの部屋へ近づいてくる一つの足音で目を覚ました・・・フランはまたレミリアが食事でも持って来たのだろうかと考えていたが、違った。突如今迄開かなかった扉が開いた、フランは咄嗟にベットの影に隠れ様子を伺う。部屋に入って来たのは一人の女の子だった。パチュリーに似た魔女の服装をし、箒を大事そうに握りしめていた。フランは見知らぬ少女に興味を持ち彼女の元へ歩みを進めた。彼女は部屋の隅に放置されていた棺桶の中を調べている最中のようだった、フランが彼女の服の裾を軽く引っ張る。すると彼女はフランが突然現れた事に驚き、フランから少し距離を置いた。

 

 

 

 

「お、おどかすなよ・・・」

 

「お姉さん・・・誰?」

 

「私は『霧雨 魔理沙』!普通の・・・探検家だ」

 

「お姉さん・・・人間?」

 

「そうだけど・・・お前は?」

 

「僕は・・・『フランドール・スカーレット』。ずっとここに閉じ込められているんだ・・・」

 

フランはそう言って魔理沙から距離を少し取る・・・そして魔法陣を展開し、紅い魔力弾を魔理沙へ向けて放った。

 

「うわっ!?」

 

魔理沙はなんとか回避行動を取った。何とか避ける事に成功したが、反応が遅ければ確実に被弾していただろう。

 

「いきなり何すんだよ!段取りってもんがあるだろ!!」

 

「僕・・・遊び相手が居なくて退屈してたんだ。だから、お姉さんで遊ぶ事にするよ・・・スグ壊レナイデネ♪」

 

「くっ・・・いいぜ、相手になってやる!!」

 

「ヒャハハハハハハハハハハハハハハハ、禁忌『フォーオブ・アカインド』!!」

 

そして魔理沙とフランの弾幕ごっこが始まった。フランと魔理沙は激しい攻防を繰り広げるが、魔理沙は上手く立ち回る事ができなかった。紅魔館に侵入したのは興味本位でここで戦闘になるとは微塵も考えていなかったからだ。魔理沙は、増えたフラン達の弾幕を避けながら紅魔館の大図書館まで来た。しかし、突如明るかった空が紅い霧で染まり始める。突然の事に魔理沙は止まり、フランも分身を解き空を見上げる。

 

「何だ?お前らの仕業か・・・?」

 

「これは・・・アイツが何か始めたのか」

 

「お前、何か知っているのか!?この霧は何なんだ!!」

 

「僕は知らない・・・アイツは、姉さんは自分の事しか考えていない!僕の気持ちなんか知らないで好き勝手にやっているだけだ・・・」

 

「姉さん・・・?」

 

魔理沙がそう呟いた瞬間、フランを巨大な水の膜が覆った。元素魔法『ベリーインベイク』フランは修行の為にここの書物を読み漁っていたので直ぐにこの魔法だと分かった、そしてこんな芸当ができるのは自分を眠らせたあの魔女だという事も・・・・・・

 

「騒がしいと思ったら・・・ネズミが入り込んでいたとはね」

 

「何だお前は!フランに何をした!!」

 

「余所者の貴女に話す事は何もないわ。フラン、其処で大人しくしてなさい・・・レミィから言われているでしょ?今は忙しいの」

 

また姉さんは僕の事を閉じ込めるのか・・・コロシテヤル、アイツヲ絶対二コロシテヤル!!

 

(悩んでいるようだな・・・そんなにアイツの事が憎いなら俺と変われ。こんな流水の壁ぐらい俺は効かねェからな)

 

分かった・・・お前に任せる、でも魔理沙は傷つけないで・・・

 

(何故だ?全てを壊すのがお前の生きがいだろ?なんであのガキを守ろうとする)

 

魔理沙はここに侵入しただけで、アイツとは無関係。只、それだけ・・・

 

(分かったよ・・・じゃあ、お前は安心して見てな)

 

有難う・・・・・・

 

「さて・・・ネズミにはそろそろ退場して貰おうかし『退場すんのはてめェだよ!心符『彼が味わいし孤独』!!』ッ!?アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!?」

 

フランを隔離したパチュリーは魔理沙に攻撃を仕掛けようとしたが、フランは流水の壁を易々と抜けパチュリーを対象にスペルカードを発動した。パチュリーは頭を抱え、地面にのた打ち回る。このスペルカードはフランが体験してきた事を擬似的に体験させる代物だ。故にこれの対象になった者は誰であろうが耐える事はできない・・・

 

『吸血鬼の弱点突けばこの俺を足止めできると思っていたとは随分と甘ェな・・・。さて、じゃあこいつに止めを刺すしますかね』

 

フランは未だにのた打ち回るパチュリーを魔力で創った鎖で拘束する。そして少し距離を取った後、背後に魔法陣を展開した。しかし束縛されているパチュリーの前に魔理沙が立ちふさがった。

 

『何のつもりだ白黒。俺はその糞魔女ぶっ殺さなきゃなんねぇんだよ、そこを退け』

 

「これ以上はやる必要はないだろ。それにお前は誰なんだ?お前フランじゃないんだろ・・・頼む、説明してくれ・・・」

 

『・・・たっく、面倒臭ェが説明してやるよ。俺はフランが創りだした裏の人格だ』

 

「裏の・・・?」

 

『まぁ、簡単に言えばアイツの心の闇その物だ。フランはこの屋敷の地下でずっと幽閉されていてな、幽閉した実の姉を憎んでいるのさ』

 

「何でフランは幽閉されたんだ?」

 

フラン(闇)は少し下を向き俯くが、直ぐに魔理沙のほうへ向き直り話を再開した。

 

『こいつが発芽させた能力はとても危険なもんでな。その姉はその能力を恐れてこいつの事を閉じ込めたんだよ・・・迎えに行くって約束しておきながらな』

 

「・・・その姉は約束を破ったのか?」

 

『さぁな、だがずっと迎えに来ないとなるとそうなんだろうな。それじゃこれからその糞姉をぶっ殺しに行ってくるとしますか、あぁそれとそこの糞魔女は殺すのはやめにしとく・・・実際、こいつはフランの暴走を止めただけで殆ど無関係だしな』

 

フランはそう言うとそのまま図書館から出て行った。残された魔理沙はパチュリーを介抱し治療魔法を掛けた。そして暫くしてパチュリーの意識が戻った

 

「ここ・・・は・・・」

 

「目が覚めたか?私としては敵を回復させるのは不本意じゃなかったんだが、どうしてもお前に聞きださなくちゃならない事が出来たからな。私の気まぐれに感謝しろよ」

 

「フランの事・・・かしら・・・?」

 

「そうだ、何でフランを・・・実の弟であるアイツをなんで姉は閉じ込めた・・・?私はさっきフランの裏の人格から大体の事情は聞いている。誤魔化そうとしたって無駄だぜ」

 

「・・・脅迫されていたのよ」

 

「脅迫だと!?誰がそんな事を・・・」

 

「誰だかは聞かされていないわ・・・私や咲夜がここ(紅魔館)に来る少し前、この紅魔館は一人の男に襲撃されたらしいのよ。その男はあのレミィでも勝てなかった・・・レミィはフランや紅魔館に勤める者達を助ける為にその男に頭を下げたの・・・スカーレットデビルと恐れられて崇められていたあのレミィが。だけど、手を出さない条件にその男が出した条件は・・・フランを幽閉し、その後の一切の干渉を禁ずる・・・だったのよ・・・」

 

その言葉に魔理沙は驚き声が出なかった。あの吸血鬼が傷の一つも付けられず負けるなど、普通ではありえない事だからだ。

 

「レミィは只、フランを守りたかっただけなの・・・どんなに恨まれようと蔑まれようと・・・憎まれようと、たった一人の家族を守りたかっただけなのよ・・・。お願い、フランを止めて頂戴・・・」




龍夜「後書き&解説コーナーは後編でやりたいと思います」

フラン(極夜)「補足とかも後編でやるらしい。まぁ、そんなに時間はかからないと思うから安心してくれ。それではまた」


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そして僕は居なくなった 後編

レン「という訳で後編だ。後、前編を見てない人に注意事項だ、この話は『星屑 極夜』が憑依する前の『東方吸血王』上の『フランドール・スカーレット』の過去話だ。オリジナル展開、原作何処行った・・・な感じが多々あるからそれらが嫌な人はブラウザバック推奨だ」


『星符『スターダスト・メテオ』!』

「紅符『スカーレット・シュート』!」

 

レミリアとフラン両者の弾幕がぶつかり合い、激しい衝撃波が起こる。レミリアはこの展開を予想していなかった。本来ならこの館に乗り込んでくる博麗の巫女と戦い負ける運命だった。本来この異変でフランが関わる筈がないのだ、それにここで負けてしまえばフランに本当の事が知られてしまう事をレミリアは何より恐れていた。

 

『ヒャハハハハハ!どうした、姉さんまだまだ遊び足りないぜェ、俺達の憎しみその身で体験しろやァ!!』

 

「ッ!?」

 

『アハハハハハハハハハハハハハハハハ!!オラァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!』

 

レミリアに向かってフランは右足で蹴りを放つ、レミリアは咄嗟にガードしようと結界を張るがフランはその先を読んでいたかの様に突如張られた防御結界の一番脆い部分に蹴りを放ち砕く。そしてレーヴァテインを作りだし、レミリアの左腕に向かって一閃した。切られた腕から夥しい程の血が流れ出る。

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!・・・くっ、神槍・・・」

 

『おっと、やらせねえよ』

 

フランはレミリアの元まで一瞬で移動し、レミリアの首を掴む。掴んだ腕に力を入れると・・・メキメキと首の骨が嫌な音を立てる、それはレミリアの体力を一瞬で削り取る程の力が籠っていた。

 

「あ・・・ぁぁぁ・・・」

 

『アハハハハハハハハハハハ、いい様だな・・・今まで俺達を閉じ込めてきた恨みだ。ここでテメェを殺してやる「そこまでだ、フラン!」アァン?』

 

「レミリアを放せ、レミリアはお前を守る為に今迄頑張ってきたんだ・・・『頑張ってきただ・・・?今更そんな言い訳が通じるとでも思ってんのか!!』フラン・・・」

 

フランの裏の人格の最大の目的はレミリアを殺すこと、だがそれだけが目的ではない。本当はフランに自由になってほしいだけだった・・・この館の住民は皆フランの事を避け、決して向き合おうとしない。その結果自分という存在が生まれフランを苦しめてしまっている・・・だから自分を生み出した元凶を殺す事がフランの幸せに繋がる、それだけが自分ができる唯一の罪滅ぼしのつもりだ・・・それを今更殺すのはやめろ?ふざけるな・・・

 

『ふざけるな!!部外者が俺達姉弟の家庭事情にズケズケと上り込んでくんじゃねーよ!フランの事を何も知らない癖に・・・知ったような事を言うんじゃねェ!!』

 

「あぁ・・そうさ、確かに私は今初めてフランに会ってアイツがどんな悲しい人生を歩んできたかなんてこれっぽっちも知りもしないさ!だけど・・・血が繋がったたった一人の家族なのに本当の事も知らないままお別れだなんて悲しすぎるだろッ!!」

 

『本当の事・・・だと・・・?』

 

(それって・・・一体・・・?)

 

 

 

 

 

 

 

「レミリアは脅迫されていたんだ・・・パチュリーやあのメイドが来る少し前にこの館は一人の男に襲撃された・・・」

 

え・・・?

 

「その男は尋常じゃない程の強さでレミリアを圧倒したらしい・・・あのレミリアがその男に傷一つも負わせる事もできず敗北する程その男の強さは底無しだった・・・・・・」

 

あの姉さんが負けた・・・?

 

「レミリアはお前やほかの従者達を助ける為にその男に頭を下げた。私の命をやる・・・その代わりにフランやほかの者達の命だけは助けてくれ・・・そう言って土下座までして頼み込んだらしい」

 

「そしてその男は見逃す代わりにある条件を出した・・・それはフラン、お前を幽閉しその後一切の干渉を禁ずる・・・だったんだ・・・」

 

じゃあ・・・姉さんは約束を破った訳じゃなくて・・・僕を守る為に・・・?

 

「だから・・・もうやめろ・・・これ以上やったら本当に死んじまう・・・」

 

あ・・・あぁ・・・

 

『・・・・・・』

 

裏の人格は手に籠めていた力を抜き、レミリアを解放する。レミリアは既に意識が無かった、血を流し過ぎたのが原因だが、蓄積されたダメージが大きかったのもあるだろう・・・・・・

 

(早く、僕と変わってくれ!早くしないと姉さんが・・・姉さんが・・・!!)

 

『分かった・・・』

 

そう言って裏の人格はフランと入れ替わる。フランはレミリアを抱きかかえ、必死に治療魔法を掛ける。

 

「姉さん・・・お願いだ、死なないで・・・姉さんまでいなくなったら・・・僕は・・・僕は・・・」

 

フランはそう呟きながら必死に治療魔法を掛け続ける・・・暫くしてなんとか腕の血が止まった。だが、フランの目から生気が完全に消えていた・・・目から涙が止めどなく流れ決して止まる事は無かった。

 

なんて・・・僕は取り返しのつかない事をしてしまったんだろう・・・姉さんは僕を助ける為にずっと、ずっと頑張っていただけ、それを僕は・・・咲夜やパチュリーや美鈴がその事を話さなかったのも姉さんが口止めしていたんだろう・・・皆、皆僕を守る為に・・・。僕ハ、僕ハ何デコノ世界二生マレテ来タノ?何デココニ居ルノ?ナンデ・・・ナンデ・・・

 

ソウカ・・・最初カラコウスレバヨカッタノカ・・・

 

フランは手に大量の魔力を籠めレーヴァテインを作った。そして作ったレーヴァテインを腹に突き立て、一気に貫く。

 

「グァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

「何やっているんだ!?止めるんだ、フラン!!」

 

魔理沙はフランの手からレーヴァテインを離させようとフランの手を掴むが人間の魔理沙が吸血鬼のフランに力で勝てる訳が無い。フランの腹から夥しい程の血が流れ出ていく・・・

 

僕が居なくなれば・・・姉さん達もきっと幸せに暮らせる・・・だから、僕が消える事が・・・正しい運命なん『ハァ!!』・・・ガハッ!?

 

首に手刀が叩き込まれ、フランの意識は刈り取られる。手刀を叩き込んだのはフランと同じ容姿をした少年・・・だが、フランと違い髪の色は黒く瞳は金色だった。

 

少年はフランが倒れ、レーヴァテインが消えるのを確認するとフランに治癒魔法を掛け始める。魔理沙は突然の事に動揺していたがその少年の魔力がフランと同等の物だと分かる、そして今目の前に居るのが大図書館で会話したフランの裏の人格だと無意識に悟った。

 

「もしかして、裏のフランか?」

 

『あぁ・・・そうだよ。たっく、本当は出てきたくはなかったんだがな・・・』

 

フラン(闇)は治療を終えると、魔理沙に視線を合わせず口を開いた。

 

『後は、俺が何とかしておく・・・もうお前は帰んな』

 

「え・・・でも・・・」

 

『今回の事は俺達が全面的に悪い、それにこれ以上迷惑を掛けるのは嫌なんでな・・・』

 

「分かった、霊夢には私から伝えておくよ・・・もう異変は終わったって」

 

『恩に着るよ』

 

そしてレミリア・スカーレットが引き起こした紅霧異変は本来の歴史とは違った形で幕を閉じた・・・そしてこの日をきっかけに運命の歯車は狂い始める・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どちらを向いても黒い空間が広がるだけ

 

真っ暗で何も見えない

 

暫く歩く、そして見えたのは生まれたばかりの僕を抱く姉さんの姿

 

手を伸ばす・・・でも、その手は決して届かない・・・どれだけ手を伸ばそうがあの日々はもう戻って来ない・・・

 

もう二度とその笑顔を見る事はできない・・・だって・・・

 

僕ガ壊シテシマッタノダカラ・・・・・・

 

僕ハ・・・なんデここ二居ルの・・・?僕ハ・・・僕は・・・

 

 

 

目が覚めると全身から汗を掻いていた・・・周りを見渡すと、幽閉されていた地下ではなく嘗て自分が使っていた部屋だった。机の上には姉さんから貰った熊のぬいぐるみがあった、ベットから降り机の上にあるぬいぐるみに手を伸ばす・・・だが、伸ばした瞬間僕の脳内にある光景がフラッシュバックし、伸ばした手を反射的に引っ込めた。昔、父さんを殺してしまったあの時の光景だ。地面に倒れ、切り裂かれた腹から夥しい血を流して倒れどんどん冷たくなっていく父さん・・・僕の手は父さんの鮮血で真っ赤に染まっていた。

 

 

 

 

 

 

『・・・い・・・大・・・夫・・・の・・・。大丈夫なのか?』

 

「ッ!?あぁ・・・大丈夫だよ」

 

『・・・フラン、なんでレミリアに会おうとしない?』

 

「僕は・・・疫病神だから・・・僕と関わると皆、皆不幸になってしまう・・・。だから、僕はここから出ないほうがいいんだよ・・・」

 

僕はあの日以来、部屋から一歩も出なくなった。姉さん、咲夜、美鈴、パチュリー、小悪魔・・・皆は心配して何度も僕の部屋を訪ねてきた・・・だけど、僕は決して姉さん達を部屋に入れようとはしなかった。僕と関わった人は皆死んでしまうから。僕は・・・疫病神だから・・・

 

『・・・いつまでもそんな調子じゃ、この状況が変わる訳がないだろ。いい加減、レミリア達と会え・・・会って向き合え。このままじゃ、またお前はまた失うぞ・・・父親を殺したあの時の様に・・・』

 

そう言って裏の人格は僕の中に帰って行った・・・会って、向き合う・・・今の僕にそんな勇気がある訳ないじゃないか・・・こんな僕に・・・

 

「何ができるっていうんだよ!!」

 

フランの悲痛な叫びが部屋に木霊する・・・それを部屋の外でこっそり聞いていた咲夜は部屋の前にフランの為に作った夕食を置き静かにその場を後にする。その目からは涙が溢れていた。

 

 

 

 

 

あれから一週間が過ぎた、僕は机の上に積まれていた本を整理している。あの日からこんな作業をずっと続けていた。地下に入って以来片づけるのを忘れた魔導書と小説が山のように積まれ、今にも雪崩を起こしそうだったので今はそれを片づけている所だ。粗方片づけ終わった所で僕は椅子に座り、少し休憩する。そして暫くしてから今度は本の整理している所だ。

 

「『魔導の基礎』これはもう読んだしいいか・・・『吸血鬼の起源』これも読み終わっているし・・・ん?これは・・・」

 

読み終わっている本が大量に出てくる中、一冊だけ見覚えのない本が出てきた。僕は整理するのを止め、その本のタイトルを静かに読む。

 

「『死者が逝く道』・・・こんな本あったけ・・・」

 

僕はそう言いながらその本を開き読み始める。そこに記されていたのは死んでしまった者が死後、どの様な所へ逝く事が記載してあった。善行を積んだ者は『天国』へ、悪行を重ねた者は地獄へ逝くという事が書かれていた。僕はどの道天国へは逝けそうにないな・・・そう思いながら次のページを捲った時僕の手は止まった。そこに載っていたのは『黄泉の国』と呼ばれる世界ついての記述だった。『黄泉の国』それは間違いで死んでしまった者や前世で偉大な功績を成し遂げた者、輪廻転生を望まない者が逝ける世界・・・その記述を見た瞬間僕の中にある一つの考えが浮かぶ、この世界へ逝けば・・・!

 

「黄泉の国の逝き方は・・・あった」

 

そして僕は本に記されてあった通りに事を進めた。黄泉の国へ逝く魔法陣を描く為に必要な物は自身の血を使うだけでそれ以外は何もいらないらしい。僕は自分の手の甲に歯を突き立て一気に噛み千切る。

 

――――ッ!

 

痛みが襲うが僕はそれを堪え、流れ出した自分の血で床に黄泉の国への逝く為に必要な魔法陣を書き始める。そして暫くして床に魔法陣を書き終える。

 

 

魔法陣の中心に立ち、僕は全身から魔力を放出させ詠唱を始める。

 

「我、罪を犯し大罪人・・・許されざる罪を犯した者。もし、我の願いを聞き入れてくれるのなら我を偉業を成し遂げし者達が住まう楽園『黄泉の国』へ我『フランドール・スカーレット』を導きたまえ!!」

 

詠唱が終わるとその部屋を光が包み・・・光が晴れるとそこにはフランの姿は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは・・・?」

 

目を覚ますと知らない天井が広がっていた。突然の事態にフランは戸惑い、冷静に考えを纏める事ができなかったが、取り敢えず部屋を見渡す。置いてある家具は明らかに自分の屋敷の物と同じで豪華な物だった。

 

そうして部屋を見渡していると突然ノックの音が響き、ドアを開けて入って来たのは、黒髪の男性。特徴的なその蒼の瞳・・・フランは一瞬引き込まれそうになるが、なんとか自分の意識を保ち目の前の男を見据える。そしてその男は口を開いた。

 

「目が覚めたようだね、侵入者・・・にしては何か訳有りの様だね。私の執務室に転移してきた所を見る限りあの禁術を使ったみたいだが・・・」

 

「あの・・・貴方は?」

 

「おっと、まだ自己紹介をしていなかったね。私は『ハデス』この世界『黄泉の国』を管理する神でもあり、最高神ゼウスの補佐をしている」

 

「僕は・・・」

 

「言わなくても君の素性は把握している、悪魔の弟『フランドール・スカーレット』だろ?正直君の様な実力者がこんな世界に来るとは私としても未だに信じられないがね・・・」

 

その言葉に僕は何も言えなくなる。姉さん達を危険な目に遭わせない為に僕はここに来た、でもハデスさんは僕の素性を知っていた。この様子だと僕を元居た世界に送り返すつもりなのだろう。

 

ここでも・・・僕は・・・誰にも受け入れて貰えないのかな・・・

 

「まぁ、君の様な子は沢山居るしここに住む事を許可しよう」

 

・・・え?

 

「え、ちょっ・・・そんなに簡単に決めていいんですか!?僕は・・・」

 

「別に君の様な子が一人や二人増えようが構わない。只、この国で暮らす以上ここのルールには従って貰うけどね」

 

こんなにあっさり受け入れて貰えるなんて・・・緊張していた僕が馬鹿みたいだな・・・

 

「まず君にはその肉体を捨てて新しい肉体へと移って貰う、君の能力はこの世界の住民に悪影響を及ぼしかねないからね」

 

「はい・・・分かりました」

 

「住む場所は私の部下が案内をしてくれる。別の肉体へと転生して貰うのはその後だ、幻水!」

 

ハデスが大声で叫ぶと空間が切り裂かれ、一人の男が部屋へ入ってきた。ハデスと同じ黒髪だが、特徴的なのはその金色の瞳だ。それは全てを見透かしてしまう様なオーラを放っていた。

 

「なんだハデス?今、会議中だったんだが・・・」

 

「忙しい所、来て貰ってすまないがその子を案内してやってくれないか?」

 

「たっく・・・また新しい住民か。何でお前はそう簡単に受け入れるんだか・・・おい」

 

「は、はい!」

 

「案内するからとっとと付いて来い!こちとら、あんまり暇じゃないんだよ!!」

 

「わ、分かりました!」

 

こうして僕の新たな生活は始まった。

 

後に僕はこの肉体を捨て、新たな肉体へと転生する事になる。

 

僕は自分が犯した罪から逃げているだけで・・・あの頃と何も変わってなんかいない・・・

 

だから、僕はある誓いを立てた・・・僕の所為で命を無くす人が増えない様に僕自身が強くなると・・・

 

僕はそう心に誓いを立てた・・・

 

『星屑 極夜』さん・・・僕は貴方に辛い事を押し付けてしまった・・・でも、貴方は僕の代わりに姉さんを・・・皆を守ってくれている・・・・・・

 

だから、僕もこの国を守る存在として頑張ります・・・だから、これからも姉さん達の事を守ってあげて下さいね・・・・・・

 

 

 

一人の男によって人生を狂わされ、家族との絆すらも失った一人の吸血鬼・・・彼は自身が犯した罪から逃げ、今もその罪を背負って生きている・・・しかし、彼の心は決して闇に閉ざされてはいない。二度と、あの様な悲劇を繰り返させないと心に誓い、彼は・・・誰も知らない世界で生きている・・・・・・

 




龍夜「という訳で今回は前回予告していた通り、フランの過去話でした。二次創作という事もあり、吸血王上のフランの過去を考えるに当たって一番大変だったのは原作と違うフランを描く上で彼がどんな人生を歩んだか、でした。それでは今回も解説を交えながら話していきたいと思います」

Q:原作のフランと違いすぎない?

龍夜「これに関しては自分の見解も交えて書いているので違くなってしまうのは仕方のない事でした。原作のフランは『気がふれている』『自分から進んで外に出ようとしない』とありますが、ここ(東方吸血王)のフランは最初から気はふれていない何処にでも居る普通の少年でした。しかし、フランの生きていた時代はまだスペルカードルールという非殺傷の戦いはまだ無く、彼は家族を守る為に無謀ともいえる修行法で自身の体を傷つけながら修行をしていました。そして発芽させた能力が後に他の吸血鬼の一族を死に至らしめる『ありとあらゆる物を破壊する程度の能力』です。フランはその能力の危険性を理解しないまま修行時や、スカーレット家と関わりがあった他の吸血鬼の一族との会合やパーティの余興で行われた模擬戦でその能力を使い続け、無意識の内に殺しに快楽を得る様になりました。そして、結果的にフランは原作と同じ感じになった訳です」

Q:何で裏の人格とか出したし・・・

龍夜「幽閉されていたフランの憎しみが具現化した存在があの裏人格という設定です。当初は出す予定はなかったのですが、『東方祖龍録』の『アイ・スカーレット』と似た感じの存在を出したかったというのもあり、出しました」

Q:吸血鬼異変って起こったの?

龍夜「起こってません。そもそも起こす前にフランは父親を含め、スカーレット家と繋がりのあった吸血鬼の一族全員を能力で殺してしまいました。そういう所で原作をぶっ壊す辺り極夜とフランは似ていますね、ハイ・・・」

龍夜「という訳で今回はここまで。投稿ペースが遅くなってしまい本当に申し訳ありません・・・次回はなるべく早く投稿できるよう頑張りたいです・・・」

フラン(極夜)「そんな訳で今回もこんな駄文を見てくれて有難うございます」

龍夜&フラン(極夜)「「それではまた次回お会いしましょう」」


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すれ違う想い

フラン(極夜)「なぁ、いつになったら投稿ペースは安定するんだよ・・・」 龍夜「すまん、俺の文才が上がらない限り安定はしない(泣)」


俺は桜が嫌いだ。春の季節に咲き誇り、春の季節が終わりに近づくと全部散っていく。その散り際を大抵の輩は美しいと言うが俺は永い時を生きてきてそう思った事は一度もない・・・・・・。俺は人が目の前で死ぬのを何回も見てきたからはっきり確信を持って言う事ができる、桜とはまるで人の一生その物だと・・・・・・。人間が神によって限られた命を与えられその短い人生を精一杯生き、死ぬ様はまるで桜の様だと、祖龍様も俺と同じ事を嘗て言っていた。確かに普通の家庭に生まれた者はその生涯を生き抜き死ぬときは安らかに逝くだろう・・・・・・だが、もし家族にも恵まれず友人にも恵まれなかった者が死ぬ時、その散り際はとても儚く、切ない・・・・・・。俺は様々な人や妖怪と触れ合って来て他人の死を嫌という程見てきた・・・・・・目の前で俺を庇って死んだ人間もいれば、直らない不治の病にかかり、死んでいく人間など、生きる事を諦め命を投げ捨てる人間など・・・俺は沢山の『死』を腐る程見てきた。アイツを失って以来俺はもう二度と失わない様に頑張った・・・しかし、俺は幽々子を失った時、自分が背負っていた使命も友人も家族すらも捨てて人間へ転生した。だが何の因果か、俺はまたこの世界へと転生し俺は記憶を取り戻した。運命って奴はとことん俺の精神的障害(トラウマ)を穿り起こしてくる・・・・・・嫌というほどに・・・・・・

 

 

 

俺はそう思いながら眼前の人物と相対していた。その人物は黒く咲き誇った桜を見上げながら薄く笑みを浮かべていた。あの時と服装が違っているが見間違える筈がない・・・俺の友人でもあり、あの時救えなかった女性・・・『西行寺 幽々子』本人がそこに居た。だが、俺はとてつもない違和感を感じていた。明らかに目の前の幽々子から感じられる力は亡霊とは思えない程強大だったからだ。それに幽々子の表情は笑顔そのものだがその感情からは一切の『色』を感じることができない。俺は警戒しながらも軽い微笑を浮かべ、幽々子に声を掛けた。

 

 

 

「久しぶりだな、幽々子・・・・・・」

 

俺がそう声を掛けると桜を眺めていた幽々子は振り返り、俺をじっと見据える。あの頃と何も変わらない筈なのに・・・今俺の目の前に居る幽々子の姿をした『何か』に嫌悪感を抱かずにはいられなかった・・・そんな俺の心情を知る由もない幽々子はあの頃と同じ笑顔を浮かべながら俺に言葉を掛けて来た。

 

「貴方とは初対面だと思うのだけど、何処かで会ったかしら~」

 

「ずっと昔に紫の知り合いとして君の屋敷に招待されたんだよ・・・覚えていないだろうけどね・・・」

 

いつもの様子で微笑を浮かべながら幽々子にそう言った。その言葉に幽々子は頬を赤く染め胸に手を当てながら小さく呟く・・・

 

「そうなの。でもなんだか貴方と話していると胸の奥が温かくなってくるわ・・・とても心地の良い温かさ、何だか凄く懐かしい気分・・・」

 

幽々子の言葉に俺はとてつもない違和感を感じた。確かに目の前の人物は紛れもない、嘗ての俺の友人『西行寺 幽々子』だ。だが、生前の彼女は俺と会って話すとき、冗談で激しいスキンシップや臭いセリフを言う事はあったが胸の内を話す様な軽い性格ではなかった。そしてその一言で俺の感じていた違和感は確かな物となり、嫌な予想は的中する。

 

(やっぱりこの幽々子は・・・)

 

俺は気を解放し、幽々子に向かって大量の気弾を放つ。しかし、幽々子は体に纏っていた霊魂を防御壁の様に張り巡らせ、その攻撃を防ぐ・・・

 

「いきなり攻撃とはマナーがなってないわね~・・・少しぐらい浸らせてくれてもいいじゃない・・・」

 

「やはりお前は俺が知っている『西行寺 幽々子』じゃない。誰だ、お前は・・・本物の幽々子を何処へやった・・・」

 

「あーあ・・・もう少しこの茶番を続けていたかったけど、流石に無理か」

 

幽々子の姿をした『何か』はそう呟くと、体から黒い瘴気が漏れ出しその瘴気は人の形を創っていく・・・そしてその瘴気から一人の男が姿を現した。容姿は短髪でその髪は白く瞳は金色・・・極夜とは似ても似つかない容姿をしている青年を極夜は知っていた。その人物は極夜にとっては忘れたくても忘れることなどできない相手でもあり一番会いたくない存在だったからだ。

 

「久しぶりだね、極夜兄さん」

 

「久しぶり・・・だな・・・白夜」

 

天界と対となる世界・・・『邪神界』の統治神【邪神王】『星屑 白夜』。兄である極夜と同じ時期に【祖龍】『ミラルーツ』によって生み出され、裏の世界の統治を任されその使命を全うしてきた存在だ。だが、白夜は数千年前に極夜によって封印された身・・・ここ(幻想郷)に居る筈がない存在・・・

 

「なんでお前がここにいる・・・お前は俺が・・・」

 

「じゃあ、逆に聞くけどあれだけの年月が経って僕があれくらいの封印、破れないとでも思ったのか?僕はこれでも邪神界の統率神なんだよ。修行は常にしていた・・・兄さんに追い抜かれない為にね」

 

「門の前で倒れていたあの子をやったのもお前の仕業か・・・」

 

「あぁ、あの半人前の出来損ないの剣士か・・・「幽々子様には指一本触れさせない」って言って切りかかってきたから返り討ちにしただけで後は何もしてないよ・・・それに、『西行寺 幽々子』には少し協力してもらっただけさ」

 

「協力だと・・・?」

 

「兄さんに会わせることを条件としてその霊体を貸してもらったのさ。まぁ、記憶が戻った今の兄さんには何の意味もなかったけどね」

 

極夜は倒れている幽々子の霊体に歩み寄り、確認する。白夜の言った通り意識がないだけで特に異常は無かった。だが分からなかった、殺すのが目的なら幽々子の霊体を使って俺を騙す様な真似なんかしなくてもいいはずなのに・・・

 

「なんでまたこんな事をする・・・。そんなに俺が憎いのか?殺したい程に・・・だったら、殺せば「僕だって好きでこんな事をやっている訳じゃない!!」・・・白夜?」

 

「僕は好きで天界の幹部達や兄さんの想い人を殺した訳じゃない・・・でも、駄目なんだ・・・兄さんの様な存在は・・・後に他の次元世界の未来に破滅を招くだけ・・・だから、僕はあの時兄さんを殺そうとした・・・」

 

極夜の言葉を遮り白夜は大声で叫ぶ。目から大粒の涙を流し、肩を掴み静かに震えながら極夜が知らないであろう真実をぽつりぽつりと静かに呟く。極夜の知らない真実を知りながら天界を滅ぼさなくてはならなかった理由・・・それが自分だと知り極夜は動揺を隠せなかった。

 

狂気と同化し、殺戮を繰り返し憎まれてもおかしくない所業を犯したのも全部・・・俺のせいなのか・・・!?

 

(あいつは一体何を知っているんだ・・・?)

 

(儂が出よう)

 

(爺・・・?)

 

(儂はあやつの真意を探る必要がある・・・あやつが誰の命令でこんな事をしでかしたのかを・・・)

 

 

駄神の声が震えているのを直感的に悟った。だが、すぐその理由を察する。駄神は恐れているのだ。たが、そうなってしまうのも無理はない。駄神は神の中でも一番下っ端に過ぎず、他の世界で死んでしまった人間の管理や手違いで殺してしまった人間を転生させるのが主な仕事で荒事が得意という訳ではない。だが、戦闘経験が浅い駄神でも最高神直属の部下であり生と死を司る力を持った白夜を前に恐れを抱かずにはいられなかった。下手に戦いを挑めば死ぬ、なら話し合いの中で白夜の真意を見極めるしかないと・・・駄神がそう言うと同時に極夜の体から光の粒子が溢れだし、その中から一人の老人が姿を現す。顎に立派な髭を蓄え、淡く輝く翡翠の目を持ち・・・腰まで長く伸びた白髪、そして教会に務めている宣教師が着ていそうな黒いローブを纏い佇んでいた。駄神は極夜の魂と融合する形で極夜のサポートをしている。本来、神や天使は実体を持たず魂だけの存在として生み出された、その為下界で活動するには人間の体を創り一時的に実体化をするしか方法がない。もし戦闘になってしまった場合、実体化している体に致命的なダメージが入りその体が機能を停止したら体に入っている魂は一瞬で昇天する。駄神が攻撃されないことを祈りつつ極夜はたった一人で対話を試む駄神を静かに見守ることにした・・・

 

「お前は・・・兄さんに手を貸していた名の無い神か・・・」

 

白夜は現れた駄神を見据え、小さく呟いた。しかし依然表情は変わることはない。駄神を威圧するように目を鋭くし、睨みつける。恐い・・・逃げ出したい、本能がそう囁いてくるが屈するわけには行かなかった。ここで引いてしまえば真実に辿り着けない、そして駄神は祖龍から極秘に頼まれていた任務、『天界を滅するよう命じた人物』を白夜から聞き出す為、その重い口を開き静かに問う。

 

「邪神王・・・お主は誰の命令で天界を滅ぼした?他の神王か?それとも他の次元の者か・・・?」

 

駄神はそう言い白夜に質問をするが、白夜は表情を変えないまま淡々と返した。

 

「・・・それに関しては黙秘権を行使させて貰う。『あの人』の事は話すことはできない」

 

もう対話では白夜の真意を見極めることも和解しあうこともできない・・・極夜はそう感じた。たが今の自分に白夜を倒す術はない。あるのはこの肉体に宿った『ありとあらゆる物を破壊する』力と吸血鬼としての身体能力だけだ、なんとか幽々子だけでも逃がすことができれば・・・!

 

(爺・・・あの様子だと白夜は絶対に真実を語ろうとはしない。戦いの中で俺が直接・・・)

 

「残念だけど、僕は兄さんと戦う為にここに来たんじゃない。兄さんをここにおびき寄せる為に西行妖を利用しただけ。兄さんはもう僕が仕掛けた『罠』に嵌っている」

 

白夜のその言葉と同時に極夜の周りを巨大な結界が包む。何とか壊そうと技を放とうとするが思考にノイズが走り、とてつもない激痛が極夜の体中を駆け巡る。

 

「これは結界ぐ、がぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「や、やめろ!?お主は一体何が目的なんじゃ!?西行妖の封印を解き、幻想郷を滅ぼそうとしていたのではなかったのか!?」

 

「僕の本当の目的は兄さんの記憶を呼び覚ます事だ。兄さんは『龍神王』じゃない・・・嘗て、誰からも愛されず『道具』として生きてきた神王・・・それが兄さんだ・・・」

 

意識が薄れ、様々な記憶が流れ込んでくる・・・それは、最近夢で見た悪夢とは違う、ずっと前に人間として生きていた頃に見た悪夢の一部だ・・・

 

―――――お主は・・・『・・・破・・・王』とし・・・みだした・・・れ・・・しく・・・む

 

―――――何で・・・俺は誰からも相手にされないんだ・・・

 

―――――お前は只の道具だ!愛される必要なんてないんだよ!!

 

―――――実は俺は元人間でね、転生を断ってゼウスに仕えている身だ。前世で誰からも愛されなかったから君の気持ちはよく分かるよ・・・

 

―――――俺はここで・・・死ぬのか・・・結局、俺は何の為に生み出されたんだろうな・・・こんな事なら全部壊シテシマエバヨカッタノカナ・・・

 

―――――お前はここで死なせはしない、俺の戦友の頼みなら禁忌を犯してでもお前を・・・!

 

流れ込んでくる記憶・・・極夜はこの記憶の中心となる男を知っていた、いや忘れていた・・・自分が何者なのか、どうして生み出されたのか、何故『道具』という言葉を祖龍の前で言ったのか・・・だがその記憶全てを思い出した瞬間極夜の意識は暗闇へと沈んでいった。意識が無くなる前に小さく誰かが呟く声が聞こえたが、それが極夜の耳に届くことは無かった。

 

 

 

 

極夜を包んでいた結界が解かれ、辺りに静寂が満ちる。極夜の髪は黒く染まり瞳は紅と蒼の二色に変わっており、虚ろな目で虚空を眺め泣いていた、何に対して泣いているかは分からない。白夜は兄である極夜の過去に何があったのか詳しいことは知らされていない。白夜は悔しそうに拳を握りしめ、自身の頬を力強く殴りつけた。命令された事とはいえ、兄であり目標でもあった人にこんな事はしたくはなかった。だが兄である極夜は他の次元に歪みを引き起こす元凶。兄弟でも殺さなくてはならない。そう分かっていても白夜は未だに納得ができなかった、本当に兄を殺して全ての次元世界は安定するのかと・・・。それでも・・・もう後戻りはできない。白夜は空間を腰に差していた剣で切り裂き、その中へ消えていった。

 

 

泣いている極夜を見た駄神はこの状況で何もできない自分にとても腹が立った。自分は本来神々の中でも下級の存在、ゼウス直属の神王に勝てる勝算も無ければ勝てる自信もない。それでも・・・共に過ごし、孫のように可愛がっていた極夜を守ることができなかった。ただ、その事実が駄神に重く圧し掛かる・・・そして虚空を眺めていた極夜は突然周りを見回し始める。そして小さく呟いた・・・

 

 

「目標対象補足・・・創破神王の名の下に、この世界の修正を開始する」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白玉楼――――――上空――――――

 

 

「!?あれは・・・」

 

「お兄様・・・これって・・・」

 

「これは・・・マズイかもしれないね・・・」

 

上空から様子を伺っていたレン達は極夜の状態に気付いた。極夜が発動させた『終焉』は嘗てレンが終始神として生きていた時に宿していた力の一端。その力は使うものによって様々な形に変えるのだが、もし転生者の様な前世の記憶と知識がある者がその力を使った場合はその者が転生する前に宿していた能力と種属をもう一度自身の体に宿らせるという物になる。だが、強大な力には当然代償もある。だがその代償は・・・とてつもない破壊と殺人の衝動に飲み込まれ、自分以外の周りの物に見境なく攻撃を仕掛けるという恐ろしいものだ。嘗てレンはその力に飲まれ、次元世界の一つを崩壊寸前まで追い込んだこともありその恐ろしさは身を持って知っている。しかし、この様な事態になるのは流石のレンでも予測する事はできなかった。レンの額から嫌な汗が流れる・・・

 

 

 

非常時の為にあの力を渡しておいたが、嫌な予感が的中するとは・・・幸いまだ極夜は動き出してない、あの段階で止めればまだなんとかなる・・・!

 

(最悪、俺が止める必要が・・・って、誰かがここに向かってきている・・・ッ!?この気配・・・まさか、この世界の霊夢か。今あそこに向かわせるわけにはいかないな、最悪の場合命を落としかねない・・・相当弱っているみたいだなしな・・・)

 

「アイ・・・」

 

「了解、この世界の霊夢止めればいいんだよね?」

 

「あぁ、狂気は解放するなよ・・・相当弱っているみたいだしな」

 

「よーし、じゃあ行ってきまーす!!」

 

アイはそう言うと背中の吸血鬼の翼を変化させ狂神王の証である黒が特徴的な堕天使に似た翼に変化させると向かってくる気配の方向へもの凄い速さで飛んで行った。レンはアイの行った方向を一瞥し、西行妖の様子を窺っているハデスへ指示を出す。

 

「ハデスは西行妖の再封印を頼む。俺は極夜を止める」

 

「了解、これで二度目になるがあの木の封印が完全に解けると厄介だけからね。私が使役している霊達に頑張って貰うとしますか」

 

ハデスはそう言うと次元に穴を開け、黄泉の国と繋げる。

 

「黄泉『死者の鎮魂歌(レクイエム)』」

 

ハデスが詠唱すると、黄泉の国に繋げたゲートから大量の霊魂が西行妖に向かっていき、その霊達は西行妖と同化する。そして霊が同化した瞬間、ハデスの体にとてつもない激痛が走るが、ハデスは苦しそうにしながらも笑顔を絶やすことなくレンに声を掛けた。

 

「これで一先ずは大丈夫だが、再封印には時間が必要みたいだ。レン、任せっきりで悪いが彼のことを頼んだよ」

 

「あぁ・・・ちょっくら行ってくる」

 

本来の歴史とは違った形で起こってしまった今回の異変。レンは感じていた・・・次元世界の運命が少しずつ乱れ始めていることに・・・。敷かれていたレールが突然無くなりそれが突然姿を変えて現れる様なそんな感覚、この歪みの原因は分からない・・・だが、今は自分のするべきことをするだけだ。

 

他次元から来た神々は動き出した、願わくばこれ以上被害が出ないことを祈りつつ・・・そして、たった一人の家族を救う為に・・・

 

 




龍夜「今回も軽い解説を入れていきたいと思います」

Q:神王について

龍夜「神王は最高神ゼウスが生み出した、本来の歴史上には存在しない『異端分子(イレギュラー)』な存在です。ゼウスや他の神々は他次元で起きる異常事態にいつ何時介入できるとは限りませんし、解決できるという訳ではありません。そこでゼウスは人間がもっとも恐れている架空の生き物や感情、現象などを自身と同じ存在にして創造し、生み出そうと考えました。それが神王です。そして龍神王を頂点として存在していた彼らは他の神達より強大な力と能力を持ち、ゼウスからの信頼は厚かったのですが、決して生みの親であるゼウスから『名前』を与えられることはなく『役職名』でしか呼ばれませんでした。これが神王の主な説明です」

Q:何故主人公は『星屑 極夜』という名前を与えられたのか?

龍夜「この『星屑 極夜』という名前は主人公と唯一関わりがあったある人物の人間だった頃の名前でした。祖龍が主人公にその名を授けたのはその人物から祖龍は『もし彼があの戦で死んでしまったら、彼の記憶を消して名前を授け、新たな存在として転生させて欲しい』と頼まれたからです。その為、神王の中で唯一極夜と白夜だけ名前を授けられました」

龍夜「という訳で今回はここまで、毎度のことながら投稿ペースが安定せず待たせてしまっている皆様には申し訳ない気持ちで一杯です・・・。ですが、失踪はしないので気長に待って下さると有難いです」

フラン(極夜)「というわけで今回もこんな駄文を見てくれて有難な」

龍夜&フラン(極夜)「「それではまた次回お会いしましょう」」


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狂気の神王と博麗の巫女

明けましておめでとうございます、投稿が遅れて申し訳ありません。今回は霊夢とアイ(東方祖龍録)の戦闘&対話です。会話が多めなのでそれが嫌な人はブラウザバック推奨です。
それでは本編をどうぞ・・・




冥界――――上空―――――

 

霊夢は幽明結界を超え冥界へ突入していた。道中に出てきた妖精や妖怪を容赦なく叩きのめす姿は正に鬼巫女といっても過言ではなかっただろう。しかし体力はもう限界に近かった、だが彼女は飛ぶのをやめない。痛む身体に鞭を打ち、更に飛ぶスピードを上げた。だが突然視界を黒い魔力弾が埋め尽くし、霊夢の体に被弾する。

 

「グッ・・・また、妖精の仕業ッ・・・かしら」

 

「残念、ここは通さないよ」

 

霊夢の前に現れたのは白色の髪をサイドテールにまとめ、ナイトキャップと呼ばれるドアノブカバーに似た独特な帽子を被り、瞳の色は真紅。堕天使によく似た黒い翼を生やし、紅と黒を基調とした服装を着た10歳未満位の少女。行く手に立ち塞がり、少女は霊夢をじっと睨みつけていた。

 

「そこを退け、私は・・・この先に行かなくちゃいけないのよ・・・!」

 

「行った所で貴女に何ができるの?この先で起こっていることを知りもしない貴女が行った所で死ぬだけよ。悪いことは言わないわ、引き返しなさい」

 

「ふざけないで!」

 

霊夢の声が灰色の空に響く。冷静沈着で取り乱すこともなく異変を解決していたいつもの彼女はそこにはいなかった、今の彼女は父親でもあり唯一の肉親である『星屑 極夜』を救うというたった一つの目的だけに囚われている。アイはそんな様子の霊夢を見て、溜息を一つ吐いた。

 

本来『博麗霊夢』には血の繋がった家族はいない。親代わりとして霊夢を育ててきた極夜が大切だということはアイ自身も分かっているつもりだった。

 

だからこそ許せなかった、霊夢の考え全てを否定するつもりはない。だが極夜が助かっても霊夢が死んでしまったら一体どれ程の人が悲しむのかを目の前の少女はまるで分かっていない、それに『博麗霊夢』という人間が死ぬということは『幻想郷』という世界の滅亡を意味するからだ。

 

博麗の巫女は幻想郷という隔離された世界のシステムその物。幻想郷を創り創設したのは八雲紫だが、外界との接触を断つ為に張られた博麗大結界は博麗の巫女しか扱えない代物だ。もし彼女が死に、結界に異常が起きた時一体誰が結界の修復をする?創設者である八雲紫か、それともその式か?確かに八雲紫は結界の『管理』と軽い『修復』はできるものの大規模な『修復』までは行うことができない。大規模な修復は博麗の巫女しかできない重要な務めだからだ。

 

この世界の中心的存在である彼女をこれ以上先に進ませ、命を失わさせる訳にはいかない。私は神王だ、ゼウスに仕え次元世界を守護する存在、情に流されて目の前の彼女を通す訳にはいかない!

 

「あの屋敷で今起きているのは『弾幕ごっこ』なんて生易しいお遊びじゃない、あそこで起きているのは文字通り『殺し合い』なのよ。貴女みたいな餓鬼が行った所で解決できないのがなんで分からないの!?」

 

アイのその言葉に霊夢の表情が凍りつく。ここまで言えばさすがに引き下がってくれるだろうとアイは思っていたが、その一言で引き下がる程目の前の少女は甘くなかった。

 

「それでも私は行く!もう誰も失わない為に、誰も死なせない為に!!」

「この分からず屋が・・・!」

 

大切な人を救い、誰も死なせない。だがそんなに上手く行くほど現実は甘くはない、そんな言葉だけで救えるならどんなにいいものだろうか。

 

極夜の苦労や悲しみをアイは全て知っている。アイにとって極夜はもう一人の兄であり家族だ、下級の神の依頼でレン・リュウヤとアイ・スカーレットは『星屑 極夜』に関わり彼に神器を与え、彼に修行をつけた。

 

アイは別に極夜に対して何の感情も無かった、レンと同じ転生者という存在というだけで彼は何処にでもいる普通の人間と変わらないと・・・。でも彼はレンと同じ辛い過去と業を背負い生きてきた存在だった。その事をゼウスから聞かされアイは思った「なんで彼はそんな事があったのに戦えるのかと・・・」アイには理解できなかった、そんな辛い人生を歩んできたのに何故彼は本当の家族じゃない人たちに・・・紅魔館の住民に対してあんなに世話を焼くことができるのかと。

 

一緒に過ごしていく内にアイは極夜のことを少しづつだが理解していった、極夜はレンと同じだ。

 

もう誰も失いたくない、本当の家族じゃなくても家族として受け入れてくれた人達を死なせたくない。彼は自分が傷ついても蔑まされても大切な人を守る為なら命すらも投げ出そうとする大馬鹿だ。

 

だからこそ死なせたくない。たとえ目の前の彼女に恨まれても、憎まれたとしても極夜の大切な家族を絶対に死なせはしない!!

 

「そんなに行きたいなら私を倒してから行きなさい!そのボロボロな肉体で何処まで戦えるか、試してあげる」

「アンタみたいな餓鬼と遊んでいる暇はないの・・・。押し通らせてもらう!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私を生み出したフランはいつも言っていた。誰も私を愛してくれない、私はいらない子なんだ、私が持っている力は忌むべき力なんだ・・・と。

 

その力が忌むべきものなら狂気という常軌を逸脱した精神状態という異常で愚かな概念から生み出された私は何だろう、存在している事すら罪なのではないだろうか――――

 

地下に閉じ込められ、誰とも会うことを許されなかったフランの憎しみや恨みがきっかけとなり私という存在は生み出された。

私は最初自分がどういう経緯で生まれ、何の為に生み出されたのか分からなかった。私の中にあったものは私を生み出したフランの記憶とこの狂気を操る力だけだった。

別に私は最初はフランを可哀そうだとも思わなかったし、フランがどういう人生を歩もうとどうでもよかった。私には関係のないことだったから。

だけど、フランはある日私の存在に気づき、必死に呼びかけてきた。最初は無視を決め込もうとも考えたが、仕方なく私は彼女の呼びかけに応じた。

フランは私と友達になりたいと言ってきたが、私は断った。狂気という概念から生み出された私と友達になって何が楽しいのかと思ったからだ。

でも彼女は諦めず私と友達になりたいと言い続けた。私も流石に無視するのも限界になり彼女の話相手になることにした。

 

フランは毎日何気ないことをキラキラした顔で嬉しそうに話した。大事にしている人形や好きな絵本の内容などそんな些細なことすらも楽しそうに語った。

 

私はある日フランに問いを一つ投げた。何故そんな笑顔で私に話しかけようとする・・・と。

姉や紅魔館の住民から忌み嫌われ、ずっとこんな牢獄のような部屋で辛い毎日を過ごしているお前がなんでそんな楽しそうな表情で私の様な異常で愚かな存在と会話をする事ができるのかと私は怒気が混じった口調でそう聞いた。

そんな彼女は悲しそうな表情で私にこう言った。「貴女を放っておけなかったから」と・・・

 

その一言がきっかけになり私はこの少女を守りたいと思うようになった。自分でもどうしてこんな考えになったのかは分からなかった。

でも、神王という役職に就いた今なら分かる。傍にいてくれたフランの優しさが・・・私に肉体を与え、私に居場所をくれた私の愛する人が経験してきた辛いことも――――

だからこそ私はこうしてこの世界に存在していられる――――こんな私を愛してくれるかけがえのない人が居るのだから――――

 

 

 

――――――――――

 

 

 

私には本当の家族は居ない―――。だからこそ私にとって父は・・・『星屑 極夜』は全てだった。

 

父に守られてばっかりな自分が許せなかった、だからこそ私は先代の博麗の巫女に頼み込み彼女に修行をつけてもらった。

 

力をつけていく度に父さんは私を褒めてくれた、喜んでくれた。それだけで私は嬉しかった、だが私は力の本当も意味を理解せず修行を続けていた。どれだけ強大な力をその身に宿しても大切な物を守れなければ無意味だとも知らずに。

 

父さんが死んだという報せは私の心に深く突き刺さった。嘘だと信じたかった、冗談だと言って欲しかった。しかし紫は詳細を伝えると大粒の涙を流しながらその場に座り込み泣き出してしまった。

 

――どうして、なんで父さんは死んだのよ!?答えなさいよ・・・どうして答えてくれないのよ・・・紫ぃ・・・

 

――御免なさい・・・あの人を止めることができなくて。本当に御免なさい・・・

 

父が死んだという事実を聞いた時私はそれを素直に受け止めることができなかった。

 

これは夢だ、全て悪い夢なんだ……起きればいつも通り父さんが居て変わらない日常が待っている。

 

そんな私の願いは届く筈もなく・・・起きても何も変わりはしなかった・・・

 

父を失って以降以前より一層修行に打ち込むようになった。

 

強くなれば、私が強くなれば父は帰ってきてくれる。またあの楽しかった日常に戻れる・・・そう信じて・・・

 

けど、現実は甘くなかった・・・そんなことを続けても父が帰ってくる筈もなかった・・・

 

そして自害しようとしていたあの時、私の記憶は紫によって改竄され私の記憶から『星屑 極夜』という存在は消えた。

 

それ以降はいつも通りだった。いつものように魔理沙が来て、妖怪や妖精が訪れるという以前の何気ない日常だけが過ぎて行った。

 

異変が起きればそれを解決し、妖怪達が揉め事を起こせばそれを終息させる。それだけが私の役目だった。

 

でも今の私は違う、今の私は博麗の巫女として異変を解決しようとしているんじゃない。一人の人間として父を・・・『星屑 極夜』を救う為にこの力を使う。

 

それで私の命が失われようとも、私は構わない。それで父を救えるというのなら私は喜んでこの命を差し出そう。

 

それがあの時、父を救えなかった私への罰なのだから・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイは神王になってから日は浅い、しかしアイは目の前の少女に対して手加減などする優しさなど微塵も持ち合わせてはいなかった。自身を生み出したフランドール・スカーレットの技は勿論、自身で編み出した狂気を用いた術など様々な技で相手を翻弄し圧倒し絶望を植え付けて勝利する・・・それがアイの戦闘における流儀だ。そしてアイは当然この状況下で自身がもっとも有利となるこの技を発動させた。

 

――禁忌『フォーオブ・アカインド』

 

その宣言とともにアイの姿は四人に増え、霊夢の退路を断つかのように立ち塞がる。この技はこの世界のフランもよく使っていた技でもありフランの代名詞といってもいい。

 

しかしアイが使っているこの技は本来の物と大きく違っている。この技は実体に限りなく近い分身を生み出す技だが、アイは自身に宿っている狂気の力を神力と混ぜ合わせて生み出したのだ。つまり生身の体を持った自分自身を三人出現させたといっても過言ではない。

 

「「「「じゃあ、早速行かせて貰う」」」」

 

――禁弾『スターボウ・ブレイク』

 

両手を広げると四人となったアイの背後に巨大な陣が出現し、そこから大量の魔力弾が放たれる。降り注ぐ魔力弾に残された僅かな隙間を見つけ、霊夢はその隙間を沿うようにしてギリギリの所で回避する。

 

アイの弾幕を躱し切りスペルカードを懐から出そうするその瞬間、霊夢の体を激痛が襲う。当たり前だ、ここまで休憩することもなく負った傷を治療せずに連続で戦闘を続けていれば体に異常が起きることなど。しかし霊夢もここで引く訳には行かない、懐からスペルカードを取出し詠唱する。

 

――霊符『夢想封印』

 

虹色の霊力弾が霊夢の周りに出現し、アイに向かって一斉に放たれる。霊夢の得意とする技でホーミング性能を備えたこの技は威力は勿論、博麗霊夢が使ってきた技の中で最強とも名高い技だ。

 

しかし霊夢は一瞬で理解する。目の前の少女が今まで戦ってきた猛者達以上に死線を潜り抜けてきた強者だということに・・・

 

アイは佇んだまま、霊夢のほうをじっと見つめていた。避けようとする素振りすら見せない。

 

(何故避けようとしないの!?あのままじゃ・・・)

 

そして霊力弾はアイに全弾命中する。

 

霊夢はさすがにやりすぎたかと不安になった。先に進むためとはいえ全力で放った夢想封印をまともに喰らっては無事では済まないだろう。しかしそんな考えも一瞬で焦りへと変わる。

 

煙が晴れ、姿が露わになる。しかしアイには傷一つ付いていなかった。ここに来るまでに体力と霊力を随分と消費していた霊夢だったが、異変の首謀者との戦闘の事を考え霊力を十分に残し、ここまで来た。だからこそ全力に近い弾幕であの少女に傷一つ付かないというのは明らかにおかしいのだ。

 

アイはフォーオブ・アカインドの分身を全て消し。霊夢に向けて言葉を投げた。

 

「今の一撃で私に傷一つ与えられない今の貴女じゃ、極夜を救う所か貴女が死ぬだけ。これ以上の戦闘は何の意味も持たない。もう一度言うわ、さっさと帰りなさい」

 

その言葉はアイの本心その物、これ以上進んだ所で人間である霊夢に今の極夜を止められる力など無いに等しいだろう。しかし今の霊夢にとってその言葉は自身への侮辱、冷静な判断ができてない彼女の思考を狂わせる言葉にしかならなかった。

 

「黙れッ!私の手で・・・私の手で守らなきゃ・・・駄目なのよッ!!」

 

「自分の手で守る?貴女が死んだら誰がこの世界を守るというの?我が儘ばっかり言うだけで先の事も考えない人間風情が調子に乗らないで!!」

 

「それは・・・」

 

「もう少しでお兄様が極夜を止めて、ハデスが西行妖を完全に封印する。だから貴女は・・・ッ!?」

 

その先を言いかけたアイに弾幕の雨が降り注ぐ。詠唱が無い弾幕・・・アイはこの攻撃がスペルカードの『非殺傷』の攻撃ではなくスペルカードルール設立以前に使われていたものだと察した。しかし、被弾はするもののそれほどのダメージは無い・・・霊夢が苦し紛れに放っただけの攻撃に過ぎないが理解できなかった、傷ついてまで先へ進もうとする霊夢の心情が。

 

「貴女は・・・どうしてそんなにボロボロなのに先へ進もうとするの?このまま行けば死ぬのは分かっている筈なのにどうして・・・」

 

「私はあの人を・・・父さんを救えなかった。例えこの先で私が死のうと父さんが助かるなら私は喜んでこの命を差し出すわ・・・」

 

「そんな事をしたらどれだけの人が悲しむと思っているの?この世界の中心である貴女が死ぬということはこの世界の滅亡に繋がるのよッ!?」

 

「それでも私は構わないわ・・・」

 

霊夢の覚悟は本物だった、そこに嘘も偽りもない。心を読むことができないアイにも霊夢の覚悟が嘘ではないというのは十分分かる。でも、アイにも譲れない想いがある。簡単に引く訳には行かない。

 

「私は神王の一人として貴女をここから先に行かせる訳には行かない。正直、この技を使うのはやめたかったけど・・・」

 

―――狂符『悠久の孤独』

 

アイは手に力を集中させ、黒い球体を作り出し、成長した黒い球体を霊夢に向けて放った。黒い球体は一瞬で霊夢を飲み込み、巨大化した。黒い球体に飲み込まれた霊夢の中に入ってきたのはある少女の記憶だ。

 

暗い部屋・・・牢獄のような地下室。そこまではよかった・・・しかし、景色が変わるとそこは血の池が広がり、死体の山が積み上げられ、その死体の山に座る金髪の少女が居た。

 

(い、嫌・・・ち、血が・・・)

 

その金髪の少女は笑っていた、瞳から大粒の涙を流して。殺してしまったことに対して泣いているのかは分からなかった。しかしそんな霊夢にもこれだけは理解できた。今の自分を埋め尽くすのは『孤独』と『悲しみ』そして無くなることのない『憎しみ』の感情。あの少女の感情が自分に流れ込んでくる・・・自分が自分で無くなる、そんな恐怖が霊夢の心に芽生える。

 

(このままじゃ・・・こうなったらあの技を・・・ッ!?発動できない・・・!?)

 

霊夢はある技を発動させようとしたが、何度やってもそれを発動することができなかった。そう、アイは博麗の巫女が使える最終奥義を封じる為に自ら使う事を禁じていた技を使い、霊夢をあの空間に幽閉した。

 

アイが恐れていた技の名は『夢想天生』。ありとあらゆるものから宙に浮き無敵となる、つまりあらゆる攻撃も能力すらも効かなくなるという反則に近い技だ。

 

博麗の巫女が最強といわれる所以は『夢想天生』を見た人妖が大抵必ず言うセリフだ。だが今代の巫女『博麗霊夢』はそれに頼りすぎた。前代の巫女は博麗の秘宝といわれている陰陽玉、符、針は使わず霊力を拳に纏わせ戦うといった戦闘スタイルが主だった。

 

だが先代の巫女は決して博麗に代々伝わる最終奥義『夢想天生』を生涯一度も使うことはなかった。先代の巫女曰く『あれは一度見抜かれれば誰にでも攻略可能な技だ。最終奥義なんて大層な呼ばれ方をされているが、あれを無敵だと思い込んで使い続ければいつか必ず足元を掬われる』・・・と。

 

『夢想天生』を最強だと信じ込んで慢心し自分が無敵だと錯覚しないように例え危機的状況でも自身の実力で勝つ。だからこそ前代の巫女は最強といわれた。だが今代の巫女は生まれながらに持っていた才能に驕り、鍛練を怠り、技に溺れた。例え攻略不可能な技であろうと技を発動させる前に倒すか、技を発動させる事のできない状況や空間に追い込めば封じることなど容易い。

 

(こんな所で・・・こんな所で倒れる訳には行かな・・・い・・・)

 

そして霊夢の意識は無くなった。幸いだったのはアイがその技を霊夢が気絶したのを確認し、すぐに解いたのもある。あの空間に長時間幽閉された者は廃人となり、後に自殺行為に走る。神王となって以来使うことを禁じていたのも納得できる強力さだ。

 

「解除・・・」

 

アイの言葉とともに黒い球体は消滅し、アイは意識が無くなり動かなくなった霊夢の肉体を背負った。

 

「止める為とはいえ、酷い事しちゃったな・・・」

 

アイは自身が来た方向を振り返る、あの屋敷では今頃レンが極夜を止める為に必死になって戦っているだろう。アイの心情としては今すぐにでもレンの元へ向かい、レンと共に戦いたい。だがアイにはレンから頼まれた大事な仕事がある。この少女をこの異変が終わるまで守るという使命が。

 

「肝心な時に助けに行けない自分が情けないよ、全く」

 

だが、それでもアイは信じている。私を救ってくれたあの人はきっと何とかしてくれる、必ずこの子の大切な人を救ってくれると・・・

 

「頼んだよ・・・お兄様」




龍夜「今回は解説は無しです。それと新年明けましておめでとうございます・・・」

レン「毎度投稿が遅く、駄文しか書けない作者ですが・・・」

アイ「今年もどうぞ、この駄作者こと『龍夜 蓮』の小説を・・・」

フラン(極夜)「宜しくお願いします・・・」

レン「ていうか、なんでこんなに投稿間隔が開いたんだよ・・・」

アイ「理由によってはキュッとしてドカーンだよ・・・?」

龍夜「理由を挙げるとすれば、最近忙しかったというのとスランプに陥っていました・・・」

ハデス「またスランプかい・・・豆腐メンタルすぎやしないかい?こんなんじゃいつか失踪してしまいそうでこちらとしては怖くて夜も眠れないよ」

龍夜「失踪はするつもりは毛頭ありませんが、今年から社会人になるので一時執筆をお休みする時があると思います。その時はお知らせするのでそこの所はご心配なさらず」

レン「という訳で今回もこんな駄文を見てくれて有難な」

龍夜&レン&アイ&ハデス&フラン(極夜)「「「「「それではまた次回お会いしましょう」」」」」


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終始の神と創破の神

長らくお待たせして申し訳ありませんでした、それでは本編をどうぞ。


今の彼に感情という物は存在していなかった。

 

あるのは何かを為そうとする使命感と目の前に広がる景色、自身がいるこの世界、そして心に空いたこの焦燥を埋めたいと考える自分がいた。

 

だからこそ自身が持つべき忌むべき力を解放することも今の彼にとっては造作もないことだった。

 

―――壊れろ

 

その一言で彼が立っていた地面が一瞬で消滅した。本当に一瞬の出来事だった、攻撃の余波(よは)で地面が抉れた訳でも地響(じひび)きを立てて割れた訳でもない・・・文字通り音も無く消滅したのだ。

 

これこそが彼が嘗て創破神王(そうはしんおう)として生きていた頃に宿していた力、『創造(そうぞう)破壊(はかい)を司る程度の能力』

 

この能力の危険性はどの様な存在であろうと文字通り破壊してしまう所にある。『八意永琳(やごころえいりん)』や『蓬莱山輝夜(ほうらいさんかぐや)』、『藤原妹紅(ふじわらのもこう)』といった蓬莱人(ほうらいびと)でもこの能力の前では無力に等しくなる。蓬莱人(ほうらいびと)肉体(からだ)が死んでも魂さえ無事なら何度でも復活することができる。しかし、それは死という概念(がいねん)がなくなった訳ではない・・・(たましい)という概念が()現象(げんしょう)を無かったことにして元の肉体を再構築(リザレクション)しているだけに過ぎないのだ。

 

その魂すらも破壊してしまうこの力に対抗できる者など居る訳がない。彼に対抗できる者は彼と同じ存在か、同等の実力を持った強者だけだろう。

 

駄神(だがみ)の中で逃げるという選択肢が思い浮かぶことはなかった、嘗ての力を宿した彼に勝てる訳がない。かと言って意識が無い幽々子を背負って逃げ切れたとしても状況が良くなる訳でもない。むしろ悪化させるだけだ。

 

今の彼にこの世界で知り合った者達の記憶はない、あるのはゼウスに仕えていた時の記憶のみ。今の彼はこの世界で愛してくれた人達すらも手に掛けてしまうだろう

 

「まーた派手にやらかしてくれたもんだな、師匠としてはその成長ぶりは喜ばしいことだが少しばかりおいたがすぎるぞ・・・極夜(きょくや)

 

だからこそこの絶望的な状況を変えてくれる人物がここに来ることなどこの場の誰しもが予想していないことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レンは駄神の前に降り立ち、彼の姿を一瞥すると意識がない幽々子の霊体まで歩き彼女の霊体を抱え、駄神へと託す。その時駄神が見たレンの表情は普段の穏やかなものではない。

 

普段のレンからは想像もできない程『怒』の感情が滲み出ていた、だがその感情は自分自身に向けた物だった。大事な家族が苦しみ助けを求めているのに何もできない自分の不甲斐なさに腹が立って仕方がなかった。

 

「ここは俺に任せな。この状況であんたら二人を守りながら戦うのは無理だ、今のあいつには俺の声すら届かないだろうしな」

 

「し、しかし・・・儂は・・・」

 

「今はここから逃げ延びることだけを考えろ。安全な所まで逃げて助けを呼ぶんだ、それが今あんたができる最善の手だろ。感情に流されて自分の命すら無駄にする気か!」

 

レンの怒声に駄神はハッとなる。そうだこの事態を他の者に伝えなければと・・・もはやこの異変は自身が知る異変とは違う、自分一人の力で解決できる様な代物ではないと。

 

駄神は幽々子を抱きかかえると、その場から飛び立ち全速力で白玉楼から逃走した。決して振り返らず全速力で逃げた。逃げてる駄神には極夜をレンに任せてしまった罪悪感と一早くこの事態を幻想郷に住む者達に伝えなくてはいけないという考えが頭の中を埋め尽くしていた。

 

レンは逃げる駄神が攻撃されまいと彼に注意を配っていたが、彼が攻撃することはなかった。突然現れたレンに意識が集中していた、まるで親しい親友に久しぶりに会った様な生き別れた家族と再会したかの如く彼はレンをじっと見ていた。

 

彼は表情には出していない。だが彼がレンに対して誰かの面影を重ねていることは察してはいた。心を読む(さと)りの妖怪ではないがレンは他人の心情を読むのが上手い・・・いや、彼に修行をつけていたレンだからこそ分かるのだろう。

 

レンは彼に対して言葉を投げた。修行の合間の休憩に彼と話したあの時の様にいつもの軽口で、変わらない表情で。

 

「それにしてもお前があの戦争の当事者とは知らなかったなー・・・。正直ゼウスから聞くまで半々半疑だった。だけど、今のお前を見て確信が持てた。俺と会うのは初めてかな?『創破神王(そうはしんおう)』」

 

「貴方の力で私が現世に呼び戻されるとはさすがに予想外だったが、一応感謝はしておこう・・・『終始神(しゅうししん)』」

 

「おっと、俺の事もご存じとは光栄だね・・・ってそうだよな、俺の力で呼び戻されたんだから俺の事は知っていて当然か」

 

「ゼウス様から聞いてはいたが、まさか貴方だったとはさすがに驚いた。私の中で眠っている(わっぱ)の記憶を探って知ったが何故私に修行をつけた?」

 

「・・・さぁ、なんでだろうな」

 

レンは自嘲気味(じちょうぎみ)に笑って空を見上げる。なんで彼に対してあそこまで世話を焼いたのか、それはレン自身にも分からなかった。

 

最初は依頼で彼に関わっただけなのにいつの間にか自分は彼に対してあそこまで肩入れをする様になった。修行をつけ、共に暮らした・・・年甲斐もなく口喧嘩をすることもあった。だが、そんな何気ない日常を楽しんでいる自分がいた・・・

 

レンがここまで彼に肩入れするのは自分と同じ道を歩んでほしくないからだ。レンは他人の幸せの為なら自らが不幸になってもいいといつも思っている。それは自分が犯してきた罪への償い、悠久(ゆうきゅう)に消える事のない自身への(ばつ)

 

この世界は嘗て自身がいた幻想郷とは()()なる世界。この世界に住む彼女達は自分が知る彼女達ではない、だとしてももう彼女達の泣き顔を見るのは御免だ。その為なら甘さを捨て非情になってでも今のあいつを止める。それが自分の役目だ。

 

「駄目元で聞くが極夜に肉体(からだ)を返す気は?」

 

「ない、それに私はこの世界を修正しなくてはならない使命がある。貴方の頼みでもこれだけは譲れない」

 

「そうか、だったら・・・」

 

レンは腰に差した刀を抜き放ち、その()(さき)を創破神王へと向けた。今のレンの表情(かお)は紛れもない祖龍一族(そりゅういちぞく)に属していた時の表情(かお)。敵を殲滅(せんめつ)をさせるまで決して手を抜かず、相対する敵への同情も甘さも捨て去った狂戦士(バーサーカー)がそこにいた。

 

「お前をぶった斬って極夜の意識を引きずり出すまでだ」

 

「貴方は身内に対していや、他人に刃を向けることを何より好まない性格のはずだ。この童は貴方にとって家族に等しい存在、本当にできるのか?」

 

「そんな甘い考えでここまで来ると思うか?最悪の事態も予期してここまで来たんだ。今更ここで引き下がれるか」

 

「そうか、なら・・・」

 

創破神王は手に力を集中させ、一本の剣を具現化した。それは北欧神話において【狡猾(こうかつ)なロプトル】によって鍛えられ、女巨人シンモラが保管していると語られている神器の一つ炎剣(えんけん)【レーヴァテイン】

 

それもスペルカードで生み出した(まが)(もの)ではなく、初めてレンが彼と会った時に渡した本物(オリジナル)だ。刀身から神力が宿った炎が()(さか)り、放つオーラは尋常(じんじょう)ではない。

 

「私も貴方と同じ考えで行かせて貰いましょうか」

 

「作った俺が言うのも今更だが、とんでもない神器渡してしまったな・・・」

 

「利用できる物は何でも利用する。それが私の主義なんでね・・・例え他人から貰った力だろうと自分の目的の為なら戸惑い無く使う。貴方だってそうして戦ってきたはずだ」

 

「確かにな、だがこんな馬鹿げた目的の為に他人から貰った力を悪用した事はないからな。そういう点では俺はお前とは違うと自信を持って言えるよ」

 

「その薄汚い口を閉じろ・・・さもなければ、殺す」

 

「汚いのはお前だろ?他人の力を利用してまで目的を果たそうとする馬鹿弟子(ガキ)に今から俺はきつーいお灸を据えようとしているだけだ、殺される気は毛頭ない。それに・・・」

 

そう言葉を切ると、レンの背中から二対(につい)の翼が生える。彼との修行中に見せた祖龍の翼ではなく、本来の『力』を受け入れ行使(こうし)する事ができる様になった力で生やした翼。右翼が黒、左翼が白・・・神話に出てくる天使と堕天使の翼の色に酷似しているが翼の色は彼が持つ二つの力の象徴でもあり嘗て次元世界全てを滅ぼしかけた災厄の力【終始(しゅうし)(つかさど)程度(ていど)能力(のうりょく)】だ。

 

「これから行うのは『殺し合い(ゲーム)』じゃない、『卒業試験(そつぎょうしけん)』だ。お題は俺に膝を付かせる事、師匠越えやってみせな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界とは何か、強さとは何か、愛されるとは何か・・・私は今でもそれが分からない。

星を司り、全ての星座を管理する【星神王(せいしんおう)

狂気を司り、異常とも呼べる概念を管理する【狂神王(きょうしんおう)

時を司り、次元全ての時を管理する【時神王(じしんおう)

生と死を司り、次元世界全ての存在の生の運命と死の運命を管理する【邪神王(じゃしんおう)

 

私以外の神王達は尊敬され崇められ、愛されていた―――

 

じゃあ、何故私は愛されない?私が表の世界以外の力を宿しているから?それとも私がゼウス様以外の命令しか聞かないから?

自分に問いかけてもその答えが返ってくる筈もない、私の中に残るのは自分という存在がなんで生み出されたのかという疑問だけだった。

何故私はゼウス様に生み出されたのだろうか。何故こんな力を俺に授けたのだろうか、なんで私にこの役職を命じたのか。

胸の中にある不安や疑問を忘れようと必死にゼウス様から命じられた仕事をこなす。

 

創造と破壊・・・こんな力があるから私は誰からも認められず、誰からも愛されないのか・・・

答えなどありはしなかった、どんなに頑張っても私は誰からも認められなかった……

 

暗闇の中を私はずっと歩いていた、ある筈のない幸せを探して私はずっと暗い暗い世界で今も彷徨っている―――

こんな辛い思いをする位なら全部壊してしまえばよかったんだ……そうすれば、愛される必要もない、誰からも必要ともされない――

 

誰か私を殺してくれ、私の人生(いのち)を終わりにしてくれ・・・もう生きることすらも辛いんだ。

 

誰か私を・・・俺を楽にしてくれ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いへの意味と理由を見いだせず今も俺は悩んでいる。

何故?とアイにもハデスに何度も質問されたが明確な答えを出す事はできなかった。

先生が幼少期の俺に対して『明確な目的もなく剣を振うのは愚かな人間達の争いと同じだ。目的が無いなら時間を掛けて見つけろ、そうすればお前はもっと高み行ける』と言っていたのを今でも思い出す。

 

しかし今更高みに行った所で何になる?俺にはもう剣を振う理由がない。あるのは次元世界を見守り、他次元で起こる異変を解決するだけ・・・ただそれだけしかない。

 

そんな時に出会ったあの青年は昔の俺と似ていた。何かを守る為に貪欲に力を求めるあの姿勢も、大切な物を守る為に命を投げ捨てようとするあの姿勢も昔の俺その物だった。そんな彼を見て俺は思った『絶対に俺と同じ道を歩ませてはいけない』と・・・

 

それから俺は彼に修行をつけた。剣術、体術、魔術その他にも戦いの極意や心得など自分が持つ技術を彼に叩き込んだ、そんな中で彼は俺に何回か質問をしてきた。『戦いにおいて最も重要な事は何ですか?』その質問に対して俺こう返した『戦いの上で必要になるのは実戦経験だが、それ以上に相対する敵への同情や甘さを捨てる事が最も重要だ』と。

 

この考えは俺の持論に過ぎないが、甘さを捨てきれなかったせいで俺は大切な人を二度も失っている。例え強大な力を持っていようと守れなければ意味がない、眼前に立ち塞がる敵を殺す覚悟で戦いに臨まなければならない。例えそれが家族だろうと友人であろうと、眼前に立ち塞がるのであればそれは敵対した事と同じだ・・・もし俺がアイやハデスに非殺傷なしの戦いを望まれれば俺はそれを拒むこと決してないとはっきり断言できる。

 

だが彼は甘さを捨て切れていない・・・もし俺と敵対することになった時、果たして彼は俺に剣を向けれるだろうか?俺を殺さなければならない状況になった時彼は俺を殺す事ができるだろうか?

 

もしそうなった時は俺は本気で彼と敵対しよう・・・敵対する理由で何であろうと関係ない。強者に対しては常に敬意を払い手を抜かず全力を尽くし、戦いに臨む・・・それが戦う相手に対する最大限の礼儀だ。

 

昔の様に自分を見失っていたあの頃の俺はもういない、今の俺は【祖龍一族(そりゅういちぞく)】の【レン・リュウヤ】でもあり【終始神(しゅうししん)】の【レン・リュウヤ】でもあるのだから。

 

だから俺に膝を付かせてみろ【創破神王(そうはしんおう)】・・・いや、二十代目【龍神王(りゅうしんおう)】『星屑極夜(ほしくずきょくや)』。

 

 

 

 

 

 

 

 

正面から振われた炎剣(レーヴァテイン)から放たれる神器の斬撃、その場から飛び退き回避には成功するが神器の炎が少量だがレンの左肩を掠った。

 

少量掠ったと聞けば被害は最小限に抑えられたと普通は思うがレーヴァテインから放たれるのは神器の炎、神力を宿らせた神の(ほむら)だ。少量とはいえレンの左肩に激痛が走る。

 

(スペルカードで創ったレーヴァテインも厄介だが、やはり本物(オリジナル)の一撃が一番重い・・・少し掠っただけでこの激痛とはな・・・)

 

しかし泣き言など言っていられる暇などない、創破神王は次の攻撃へと移っていた。

 

 

――マスタースパーク

 

 

手に魔力を集束させ、密度を高めた砲撃が放たれる。霧雨魔理沙の代名詞でもあり『弾幕はパワー』の彼女を表現するに相応しい技、彼が魔理沙と一度戦ったことがあることを聞いてはいたが一度見ただけで本人以上の火力をここまで再現するとは思ってはいなかった。

 

「(って感心してる場合じゃないな、防がないとさすがに不味い)神盾『アイギスの加護』!」

 

レンは手に神力を集中させ、巨大な盾を両手に生成しその砲撃を受け止める。

 

その行為を見た創破神王は疑問に思った、『何故防いだ?』と。あの程度の砲撃で態々防御耐性を取るような者は中々いない。幻想郷の人妖ならまだしも目の前にいるのは最高神『ゼウス』の創造主でもあり全ての次元世界を生み出した神だ。そこまで考えて創破神王は確信した『嘗められている』ということに。

 

「何故防いだ?あの程度の攻撃でその技を使う必要もないはずだ。この私を嘗めているのか?」

 

「いやいや、嘗めるなんてそんな無礼な事はしないよ。本来の能力は極力使わないように普段からを心がけているだけで決してお前を嘗めている訳じゃない」

 

他人が聞けば侮辱ともとれる言い方だがレンのこの言葉に嘘も偽りもない。

本来ならレンは緊急の事態でない限りは本来の力を解放したりはしない、レンの能力は他の神が対処できない問題や敵に遭遇した時の為の言わば『最終手段』だ。本当ならこんな何も意味も持たない『殺し合い』で使う能力ではないのだ。

 

「まぁ、最後まで防ぎ続けるのもいいがそうすると永遠に終わりそうにないからな・・・【そろそろ行かせて貰う】」

 

 

 

―――喰符『満たされない空腹』

 

 

 

その瞬間創破神王の体から力が抜け地面に片膝をつく。レンがした行為はただ刀を縦に振っただけで傍から見れば何か特別な事をした様には見えない。だがその行為をした途端一瞬にして創破神王の神力が無くなった。

 

「グッ・・・!?(私の中の神力が・・・!?)」

 

「あぁ、言ってなかったな。俺の刀は只の刀じゃないんだよ・・・妖刀でもあり神刀でもある業物の刀『氷狼(ひょうろう)』。名前位は知っているだろ?」

 

「成程・・・私の神力が一瞬で減ったのはその刀に宿る『氷狼(フェンリル)』のせいか・・・」

 

「ご明察、挨拶代りにお前の神力喰わせて貰ったぞ、ごちそうさん」

 

「全く、悪趣味ですね・・・グッ・・・(神々の黄昏(ラグナロク)を引き起こした北欧の神々を喰らいし魔狼(まろう)・・・その力を宿した刀で挑んでくるとは流石に計算外だ、このままでは・・・)」

 

「余所見してていいのか?こっちの仕込みは既に完了しているぞ」

 

「何を・・・ッ!?」

 

見渡すと辺りには神力で生み出した特殊な光弾が大量に張り巡らされていた。しかし明らかにおかしい、何故今まで気づかなかったのか。そこまで考えて気づいた、あの時態々盾を生成し攻撃を防いだあの行為の本当の意味に。

 

「成程、防いだ盾を露散(ろさん)させると同時に大気中の妖力と混じ合わせて私に気づかれない様にこっそりと仕込んでいた訳か・・・これはまた派手な」

 

「派手なのは大好きなんでな」

 

そう言ってレンは指を鳴らす。その瞬間光弾は一斉に創破神王へと降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とてつもない爆音が冥界の空全体に響き渡る、アイ・スカーレットは屋敷の方向を見ながら一つ溜息を吐いた。普段ならレンがやりすぎてしまわないかとか加減できているかとかの心配をするがどれも違った、もしレンが本気で殺しに行けば一瞬で勝負は付くだろう。だがあえてそれをしない理由・・・それは創破神王に対しての話し合いが目的だった。

 

創破神王はゼウスに生み出された初代の神王達の中で実力はトップ、龍神王には及ばなかったものの当時の天界で彼に勝てる者はいなかった。

だが実力面で勝っていても人望の面では彼は誰にも勝てなかった、その理由は能力の強大性。

 

どんな物だろうと彼の言葉や意志によって破壊され、存在しえない物すらも創造した。当時の神王達からすればこれ程恐ろしい能力はないだろう。

 

だが彼からしたら迷惑極わりないことだ。持っている能力のせいで嫌われ、道具としてその人生を終えた。

 

悲しすぎる・・・その話をゼウスから聞いた時に思った。当時の事を知らないとはいえ自分も道具として扱われる恐怖が嫌というほど分かる。だからこそレンは確信を持っていのかもしれない、創破神王はレンに殺される事を望んでいるということに。

 

生きる意味を失くし、現世に蘇った者の望みは『死』だけだ。だが、レンはあえて挑発し創破神王の敵意を煽った・・・レンは戦いの中で答えを見つけるという結論に至ったということになる。

 

「お兄様も随分と無茶するなぁ・・・まぁ、私が言えた義理じゃないけど」

 

レンを救う為なら死んでもいいと思った時は何度もあった、だけどその度にレンは何度も同じ言葉で自分を叱った。

 

 

―――俺の代わりに自分が死んでいればよかったなんて言わないでくれ・・・もう誰にも死んでほしくないんだよ、俺は・・・

 

 

あの時のレンの表情(かお)を思い出す度に心が痛む。レンに出会う前なら他人の為に死んでもいいなんて考えは絶対にしなかった、だからこそあの時レンを助けられるのなら自分が犠牲になればいいと思った。だけどレンはそれを許さなかった、今となってはあの時の自分の行いに後悔している。この世界の霊夢はあの頃の自分とよく似ていた・・・必死になって止めたのは自分と同じ思いをしてほしくなかったからだ。

 

血が繋がってはいないとはいえ霊夢と極夜は家族だ、もし今の極夜を見れば霊夢を自分を保てなくなるだろう。それだけは絶対に避けなければならなかった・・・だからアイは『あの記憶』を見せてでも霊夢を止めた。もう自分の中で使う事はないと禁じていたあの技を・・・

 

「結局・・・私もお兄様も約束果たせないまま別れちゃった身だけど、それでも・・・今回ばかりは許してくれるかな?」

 

 

――『フラン』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放たれた光弾が命中し、辺りに硝煙(しょうえん)が舞う。しかし今の攻撃で倒せるとはレンも思ってはいない。今の彼にとって自分の攻撃など蚊に刺された物と同じだ・・・それに彼なら今の攻撃を防ぐことなど容易にできるだろう。

 

硝煙が晴れると彼は何事もなくそこに佇んでいた。あれだけの神力を氷狼で喰らったのにも関わらず今の攻撃を全て防ぎきるなど本来なら不可能に近い。となると考えられるのは自身の能力で神力を一時的に増やして防いだのだろう。

 

「あれを防ぐとはな・・・流石に驚いた」

 

「正直ギリギリでしたよ・・・咄嗟に能力を発動していなければ粉々でしたから・・・ね・・・」

 

「あれでギリギリとはね。お前程の実力者なら避けるのも容易だろうに」

 

「他の神王や下級の神程度なら警戒する事もありませんが貴方に対して油断や慢心は命取りだ、例えどんな強大な能力を宿していようと優れた才能を持っていようと戦いにおいてそれは殆ど意味を為さない・・・戦いにおいて一番大事なのはどれだけ相手より『先手』を取れるかどうかですからね」

 

ゲームにおいても現実の戦いにおいても敵より先手を取り、どれだけの致命傷を与えられるかが鍵・・・それはレンも理解はしていた。しかしレンは明らかな疑問を抱いていた。

 

 

【戦いが始まってから創破神王は一度も能力を発動していない】

 

 

終焉の力が暴走する形で黄泉返ったとは言え、創破神王の能力は自分が持つ能力には及ばないにしても幻想郷を破壊することなど容易い筈だ。それにさっき防いだマスタースパークも本気で放ったとは思えない程威力が低かった。

 

(ゼウスから聞いてもしかしたらと予想はしていたが、ここまで死にたがりだとは思わなかったな。戦いの中で答えを見つけると決めたのはいいもののこれだと解決の糸口すら見えてこないぞ・・・)

 

創破神王は今か今かと自身が殺されるのを待ち望んでいる・・・だが、彼を殺した所で全てが解決する訳ではない。今回の異変はあくまで暴走した極夜を止める事が目的だ、殺す為に介入した訳ではない。

 

(こうなったら、駄目元でやってみるしかないな・・・)

 

レンは「フゥ・・・」と一つ息を吐き、氷狼を鞘に納め創破神王に問いを一つ投げた。幽閉された少女と出会った時に同じ問いを、狂気を身に宿し生きる意味を見いだせず苦しんでいた少女に出会った昔を思い出しながら・・・

 

「一つ質問だ、お前はたった一つしかない大事な命を・・・『コイン』を誰かの為に捨てろと言われたらどうする?」

 

――貴方はこの戦いに何を懸ける?

 

「命をコインに例えるとは貴方も物好きだな。ええ、捨てられますよ・・・そんな何の価値も持たないたった一つの『コイン()』なんて」

 

――そうだな・・・懸けられる物なら腐る程持っているが、ここは無難に俺の命でも懸けるとするよ。

 

「人生に二度はない、俺やお前の様に『コンティニュー(輪廻転生)』が許された存在もいれば転生することも輪廻(りんね)()に逝くこともできない存在もいる。お前は他の神王達の気持ちを考えた事があるか?あの戦争で死んでいった仲間の為に何かしてやったのか?」

 

――なんで?なんでそんなにボロボロになってまで戦おうとするの!?

 

「他の神王?自分の為にしか動くことのできない道具共の為に何かしてやる道理があると本当に思っているんですか?死んで当然ですよ・・・あんな奴ら・・・」

 

――俺はこんな方法でしかお前を救う術を知らない。だが分かって欲しい、確かに世界は理不尽だ、運命は非常だ。だが生きていれば、歩き続けていれば必ず手を差し伸べてくれる奴は現れる。だからもうこんな事はやめよう・・・もういいんだ、そんな意地を張らなくても・・・俺がずっと傍に居るから・・・

 

「確かにお前以外の神王は救う価値が無い奴が多かったかもしれない、だが他の神王を否定するということはお前が兄の様に慕っていたアイツまで否定する事になるんだぞ、それを分かって言ってるのか!?」

 

「それは・・・」

 

「生きる意味を見い出せず苦しんでいるのは知っている・・・だが、死んだ所で何になる?そんなことをして本当にアイツが喜ぶとでも思っているのか?」

 

嘗て救った少女も持っていた能力と常軌を逸脱した精神状態である狂気に苦しみ『壊す』事でしか自分を保てなかった。創破神王も同じだ、道具として扱われ誰からも認めて貰えず、死に場所を求めて戦いに身を投じていた。

 

当時の天界の事情をレンは詳しくは知らない、部下でもあり信頼していたゼウスが生み出した神王達に対して何故その様な酷い仕打ちをしていたのかすらさえ。

 

「なら私にどうしろと言うんですか・・・私には何もない、慕ってくれる部下も愛してくれる人も・・・私には最初から何もない、名前も存在意義も・・・」

 

「・・・存在意義か、それなら俺のほうが無いな」

 

「え・・・?」

 

「俺はな、一族に仕える前は孤児だったんだよ。行く充も無く、愛してくれる人も、叱ってくれる人すらいなかった。何処で生まれたのか、自分が何者なのかすら分からなかった・・・今のお前と一緒だな」

 

自分の種族も名前も知らなかったレンにとって他人から『嫌われる』ことや『憎まれる』ことはあっても『愛される』ことは無かった。

 

後に先生と呼び慕う師と出会うあの時までは・・・

 

「だからこそ記憶を取り戻した時、どんなに嫌われようと誰かを幸せにできるなら自分は一生『不幸(ふこう)』でいいと思えるようになった。他人から見れば俺の生き方は『異質(いしつ)』だし『(くる)っている』と言われても仕方のない事かもしれない・・・だけど、それでいいんだ。俺は消す事のできない『(つみ)』と『(ごう)』を背負って生きているからな」

 

(この人は私と同じ・・・いや、それ以上に辛い事を経験していたのか。それを経験した上で自分の幸せすらも捨ててまで他人の為に動けるというのか・・・)

 

目の前の男は自分が尊敬していた人以上に先を見据え、自分以外の誰かの為に動けると言い放った。

 

その言葉だけで信じるというのはすぐにはできないだろう、だがその男の言葉に嘘も偽りもない。彼の言葉は確実に自分の心に響いていた。遥か昔に兄の様に慕っていたあの人が語っていた理想とは違うが目の前の男は揺るがない信念と強さを持っている。

 

(これが現在(いま)の自分の・・・『星屑極夜(ほしくずきょくや)』が追い求める理想か)

 

創破神王は持っていた炎剣(レーヴァテイン)を消し、空を見上げた。灰色の空・・・光が差し込まないこの空の下で嘗て自分は戦っていた。他の神王が死に逝く中、一人で敵を切り伏せて行った。味方がいなくても、自分の力だけで何とかなると・・・そう思っていた。

 

だがそれは傲慢だった、自分一人では何もできなかった。一人の力では何も成し得ることなどできなかった・・・自身の死が近づく中で愚かな自分の行いを悔いながら無意識にそう思った。

 

やっと自由になれる、やっと解放される・・・あの時まではそう思っていた。だが自分は生き返った、名前を与えられ、あの人と同じ役目を与えられて。

 

家族を知り、愛されることを知った・・・誰かを好きになり、誰かを愛するということを知った・・・。前世では手に入らなかった物が全部手に入れることができた。そしてそれら全てを失った後に天界を抜け、旅に出た。

 

人間を知り、妖を知り、領地の為に下らない争いを続ける神達を知った。それと同時に自分と同じように迫害され誰からも受け入られない妖や半妖がいるということも知った。

 

(旅をして得た物は多いと感じていたが・・・意外にも少なかったらしい・・・)

 

口元に薄い笑みを浮かべ創破神王は覚悟を決めた・・・起こりえない形で起こった歪みを終わらせる為に。

 

「・・・貴方の覚悟は嫌という程分かりました。その上で頼みたいことがあります」

 

―――私を殺して下さい

 

創破神王が告げたその言葉にレンは目を見開く。驚きの感情より先に怒りの感情がレンの心を満たした。

 

しかしその感情も一瞬で消え去る、創破神王が言った言葉の意味を理解してしまったからだ。本来起こる筈のなかった歪みを正す為に創破神王は【『星屑極夜』を殺さずに自分の魂だけを消滅させろ】と言っているのだ。

 

本来起こりえない歴史を修正しこの世界の『歪み』を修正することはできるがそれは同時に昔の彼を今ここで殺さなくてはいけないということになる。

 

「お前は・・・それでいいのか?」

 

「私は終焉の力によって現世に呼び戻された記憶の残像でしかありません。居てはならない存在です・・・それに私を含めた他の神王達もあの戦で皆死に絶えてしまっている以上私だけが生き返るなんて不公平にも程があるでしょう?それに・・・もう未練は無くなりました」

 

そこで創破神王は一度言葉を切り、西行妖のほうへ視線を向ける。黒々と咲き誇っていた桜は既に封印され枯れた巨木のみがそこにあった。

 

異変の根源である西行妖が咲くことはもうない、ハデスが施した封印はそこらの陰陽師が施す様な生半可な術式ではない。ハデスが統括している黄泉の国に住む霊達を媒体として封印をする為ハデス以外の者では絶対に解くことができないからだ。

 

「私は『道具』として『力』と『役目』を与えられて生み出されただけの過去の遺物に過ぎません。だが現在の私は『星屑極夜』という『名』と龍神王としての『力』を与えられた・・・本当になりたかった物になることができた以上別に死ぬことに後悔はありません。それに、貴方に現在の自分を託してみたくなったんです」

 

「・・・分かった」

 

だがこれでいいのかとレンは思っていた。今ここで昔の・・・ゼウスに仕えていた頃の彼を殺して本当に解決するのか?と・・・もっと別の方法もあるはずだ、誰も死なずに誰も悲しまずに済む結末が・・・

 

「なぁ、やっぱり他の方法を・・・」

 

「まだそんな事を言っているのか!貴方は『星屑極夜』追い求める『理想』だ、その貴方がこの程度のことでうろたえてどうする!!」

 

――俺はあいつに俺と同じ道を歩ませない為に修行をつけただけで決して俺を目標にしてほしかった訳じゃないんだけどな・・・

 

レンは自嘲気味に笑いながら術式を創破神王の足元に展開させる。解放した本来の能力でこの異変を終わらせる為に・・・

 

――始まりは終わりへと続き、終わりは新たな始まりへと続く・・・

 

――命は巡る、巡り巡ってまた新たな命となる・・・それ即ち世界の成り立ち・・・

 

――輪廻の輪によって決められた運命(さだめ)に従い、彷徨(さまよ)える魂に永久(とわ)の安らぎと祝福を・・・

 

――始終(しゅうし)『始まりへの序章』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創破神王の魂を浄化し終えたレンは安堵し、その場に座り込んだ。過去の・・・それも自分が知らない神と戦う事ができてレンはとても満足していた。こんな事態じゃなければお互いの全力を出し切った最高の戦いができていただろう。

 

だがそんな気分に浸っていられる暇もない。今回起きた異変をこの世界の霊夢達に話さなければならないからだ。本来の歴史通りに事が進んでいればレン達が介入する必要はなかったのだが、ここまでズレが生じた以上『星屑極夜』がこの世界のフランの肉体に憑依転生していた事も含めて全て話さなければならないだろう。

 

 

 

――問題が山積みで頭が痛くなってくるな。特にレミリア達への対応が一番疲れそうだ・・・

 

 

ハデスとは連絡を取り合うことが多いため黄泉国の現状をレンは常に把握している。この世界のフランが禁術を使ってまで黄泉国に逝った理由も含めて全て知っている以上この世界のレミリアとは直接話を付けなければならない。

 

この世界がこれからどうなるかは分からない・・・ただ一つだけ分かるとすれば今回の様な事がまた起きてもおかしくないということだ。

 

「まだ序章(はじまり)に過ぎない・・・ってことかね・・・」

 

                          

 

                          ―――――To be continued?

 




龍夜「という訳で第一章完結です。いやーここまで長かった・・・いやほんと本気で・・・」

レン「いや、長いっていうか遅いから。一話投稿するのにどんだけ時間掛けてんだよ・・・」

龍夜「仕事が忙しくて中々時間が取れなくてね・・・時間の合間を見て修正しながら書いていたらこの有様。死にたくなりました」

フラン(極夜)「それにしても今回の章で俺の過去について明かされた訳だけど次章はどんな話にするんだ?」

龍夜「その事については座談会を投稿する予定だからその時にしようと思っています」

アイ「という訳で今回はここまで。待たせてしまって御免なさい、次回はそこまで掛からないと思うので安心して下さい」

龍夜&レン&極夜&アイ「「「「それではまた次回お会いしましょう」」」」


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終章
在り方と存在意義(改)


龍夜「長らくお待たせしてしまい本当に申し訳ありませんでしたァ!!」

フラン(極夜)「で?こんなに投稿期間が空いたのは何でなんだ?」

龍夜「仕事や年末の準備、その他etc・・・」

フラン(極夜)「・・・お疲れさん、という訳で長らく待たせてしまったが本編のほうをどうぞ」



自分が何者なのか、どうして生み出されたのか。龍神王という役職を与えられ天界を管

理していたあの頃の自分は何回も自分に自問自答を繰り返しては出る筈のない問いに悩んでいた。

 

自分がやっていることは本当に正しいのかそうでないのかと自分のやっている事に疑問に思ったこともある。神王として自分が為すべき使命、それが全て正しいのかと聞かれれば今の自分ならはっきりと『全部が正しいとは限らない』と答えるだろう。あの時白夜の言葉にちゃんと耳を傾けていればこんな事にならずに済んだのかもしれない。

 

旅をしていた時もそうだった。守る為に殺しを正当化した事は何度もあった、救う為に

わざと汚れ役を演じた事もあった。今となってはあの時の自分の行動は仲間を救えなかった自分に対する『罪』から目を背けようとしていただけの愚かな行為に過ぎない。

 

 

人間として生きていた時もそうだった。父親と母親が死んだ時自分は何とも思わなかった、『悲しい』とも感じなければ『寂しい』とも思わなかった。『死』という現象を当たり前の事だとしか感じなかった。自分でもなんで平気でいられるか分からなかった、あの時は神王としての記憶も紫達と過ごした記憶も忘れていたから『死』を身近な物としか感じなかったのかもしれない。

だがそれは言い訳に過ぎない、俺は逃げ続けていた。人間に転生したのも自分が犯してきた『罪』から逃げようとしただけ。

 

異変は終わった。レンさんが昔の俺を止めてくれたお陰でなんとか大事にならずに済んだ、だが俺は未だに現実に戻ることを拒んでいる。

 

怖いのだ、今まで一緒に過ごしてきた家族に拒絶されるのが。

 

そもそも俺が本当になりたかった物は何だったんだろう?

 

道具として生きた自分(創破神王)』?

 

名を与えられ、生きた自分(龍神王)』?

 

人間として生きた自分(星屑極夜)』?

 

分からない・・・ナニモワカラナイ・・・

 

もう嫌だ・・・誰か殺してくれ・・・誰か俺を・・・

 

コロシテ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

長らく続いていた冬は終わり、幻想郷に春の季節が到来した。

だが当事者や異変の概要を知る者達にとってはまだ今回の異変は終わってはいなかった。解決に向かった『星屑極夜』は未だに意識が戻らず昏睡状態が続いている。

 

アイ・スカーレットとの戦闘で意識不明となった博麗霊夢も道中の戦闘で受けた傷が治らず絶対安静の状態が続いていた。

 

今回の異変の主犯と極夜の過去、そしてこの世界の『フランドール・スカーレット』に憑依転生していた事実を唯一知るレン達は永遠亭の一室で今回の異変の真実をこの場に集まった者達に話した。

 

「・・・これがお前達が知りたかった事だ」

 

レンが告げた真実・・・それはこの場に集まった当事者達の心に深く突き刺さった、中でも八雲紫を含めた彼を昔から知っている古参の妖怪達への精神的なダメージは大きかった。

 

賢者である八雲紫は誰よりも『星屑極夜』を理解し、尊敬し、愛していたつもりだった。だが彼が心の奥に秘めた想いを・・・彼が体験してきた過去を知らなかった。誰よりも近くで見てきた筈なのにどうしてあの時極夜を止める事が出来なかったのか、どうして彼を救えなかったかと後悔ばかりしてきた。

 

こうして再び彼と出会うことができた・・・再会することができた、だが彼の意識は戻らない。心臓は動いている、呼吸はしている、だが彼は死んでいるかの様に眠っている。そんな彼の姿を見る度に自分の無力さに腹が立つ。何が大妖怪だ、何が妖怪の賢者だ、肝心な時に自分は何もしてあげられない、極夜の意識が目覚めるのを待つ事しかできない。

 

「それで貴方がこの世界に介入した本当の理由は何ですか?結界に干渉されずに極夜様と接触していたということは今回の事態が起こるということを以前から予測していたからではないのですか?」

 

紫の従者である八雲藍の言葉はもっともだった、だが今回はレンでも予測できない事だった。『歪み』というものはどの世界でも付き物だ、決して歴史通りに事が進むとは限らない。その歪みを修正するかどうかはレンとゼウスの判断によって決められる、そしてその世界に大きな影響を及ぼさない歪みの場合直接的な介入は行わず『傍観』という処置が下される。

 

しかし今回の様に本来の歴史通りに事が進まないどころかその世界の崩壊に匹敵する歪みが起きた場合介入せざるを得ない。レン達が介入したことで結果的にだが今回は何とかなったが、一度起こった歪みはそう簡単には戻りはしない。今回起こった『歪み』をきっかけにこの世界で本来の歴史では起こりえない事態がまた起こってもおかしくないからだ。

 

「私達がこの世界に来たのは個人的な用事で彼・・・『星屑極夜』に会いにきただけさ。こんな事態になるなんて私もレンも予測してはいなかったよ」

 

「個人的な理由?どういうことですか?」

 

「そのことについては黙秘権を行使させてもらうよ、僕はただレンについてきただけで詳しい事情は聞いていないからね」

 

「・・・分かりました、深くは聞きません」

 

「助かる・・・それと本来ならこの件に深入りするのはやめにする所だけど今回ばかりは私達も黙って見過ごす訳には行かない。暫くはこの世界に滞在させて貰うが、いいかい?」

 

「構いませんわ。本来なら私達がなんとかしなくてはならないことですが、極夜が居ない現在・・・もしもの時の為に戦力が多いに越したことはないですもの」

 

レンは二人の会話を聞き流しながら横目で紅魔館の面々の様子をじっと観察していた。当主であるレミリアは帽子を深く被り表情は見えないが、どんな表情をしているかは容易に想像できた。他の面々はレンの話をまだ受け入れられずに俯いていた。だがレンに同情の気持ちも無ければ慰めの気持ちも無かった。

 

極夜の件は完全にレン達に落ち度があったがフランの件に関して極夜は無関係・・・いや被害者といってもいいだろう。無関係な彼に全ての責任を背負わせるのはお門違いだ、むしろ彼は赤の他人だったレミリア達に心配を掛けさせまいとレミリア達の前ではずっと『フランドール・スカーレット』を演じていた。肉体に宿った『記憶』を頼りに彼女達の前では決して笑顔を崩そうとしなかった。

 

それがどれ程までに辛いことだったかは嫌という程レンは分かっていた。『嘘』をつき続けてもいずれはばれるということも分かってはいる。だが彼は優しすぎる・・・それが今回の『歪み』を引き起こす要因になったともいえるだろう。

 

(苦しんでいる時に何もできない自分が嫌になる・・・)

 

レンは溜息を一つ吐き、誰にも気づかれない様に部屋を出た。今は誰とも話したくなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

縁側に座り懐から煙草を取出し、火をつける。暫く吸っていなかったせいで少し咳き込むが気にせず吸い始める。

 

思えばこの世界に来るのもいつぶりだろうか・・・この世界を去り元の役目に戻った後、様々な世界を回った。しかし心の中にはあの日からぽっかりと大きな穴が空いたままだった。霊夢達の記憶を消し、自分が居た記録を全て抹消したあの行為が間違っていたのかそうでないのかなんて現在でも分からない。一つ心残りがあるとすれば『さよなら』の一言も言わずに去ってしまったこと位だが。

 

「結局神も神王も・・・居ても居なくても何にも変わらない。ただ管理して傍観して都合の悪い時に介入するだけ・・・」

 

嘗ての自分を否定する訳でもないが全部が正しかったと言う訳でもない。何が『善』で何が『悪』なんて誰にも分かる筈もない・・・神は時と場合によってその善悪すらも否定する。人間の愚かな行為にも、同族の神が起こしたことにも。

 

極夜が神王として生きていた時に抱えていた悩みは今自分が抱えるそれと同じだ。だからこそあいつは今も自問自答を繰り返している、出る筈の無い答えを探して彷徨い歩いている。結局今の自分にできるのは待つことだけ、自分の家族を・・・弟子を信じて待つことしかできない。

 

(つくづく嫌になる、自分の在り方に・・・自分の存在意義に)

 

「お兄様・・・ここに居たの」

 

後ろから聞きなれた声が聞こえ、振り向くとアイが居た。この世界の霊夢と戦ったと聞いたが能力を使ったことは極夜と戦っている時に気づいてはいた。しかしまさか気絶させてでも霊夢を止めるとはレンも予想できなかった。

 

アイがどんな想いで霊夢を止めたのかは分からない、しかし極夜の為に神王の力を使ったというのは分かってはいた。そのことを咎めるつもりもなければ叱るつもりもなかった、もしあの歪みが原因でこの世界の中心たる彼女が死んでしまえば『崩壊』へと繋がることは火を見るより明らか・・・アイも望んでやったことではない。

 

「もう傷はいいのか?」

 

「かすり傷程度たがら心配しなくても大丈夫だよ。それに私の強さは知っているでしょ?」

 

「まぁ、そうだが・・・」

 

「隣いいかな?」

 

無言で頷く。一緒に居ることは多いが、お互いの都合が合わない事が多い為基本二人きりで話すことは少ない。神王の仕事を詳しくは知らない、アイは仕事の話を自分の前で話すことはない。心配させまいと気を遣っているのか、言えない理由でもあるのかは分からないがアイの性格故仕方のないことなのかもしれない。

 

夜風が二人の頬を撫でる、静寂が辺りを包み月明かりだけが二人を照らしていた。暫くの間二人は口を開かず黙っていたが最初にその静寂を破ったのはアイだった。

 

「こんな事を言うのも何だけど、最初に出会った相手が極夜だったら間違いなく惚れていたと思う」

 

「どうしてそう思うんだ?昔の俺と似ているからか?」

 

アイは首を横に振り、こう返した。

 

「お兄様と似ているとかじゃなくて、昔の私そっくりな所にかな・・・フランを守る為に誰とも関わらず生きていたあの頃の私に・・・」

 

「そりゃ最初は極夜のことは何とも思ってなかったよ?でも、極夜と過ごしていく内にだんだんほうっておけなくなったりする事が何度もあった・・・まるで目を離したら私達の前から居なくなっちゃう気がして・・・凄く怖かった」

 

 

―――だから極夜の笑顔だけは無くさせたくないって思ったんだ、心の底から・・・

 

 

アイの言葉はレン自身へ向けた言葉でもあった、現在のレンは昔程笑う事が少なくなった。だが極夜と過ごす内にレンは笑う様になっていた、嘗て失った少女と過ごしていたあの頃の様に。アイは二人の笑顔が好きだ、辛い過去を経験し同じ道を歩んできた二人には幸せになって欲しいと心の底から願っている。例えこの先どんな過酷な運命が待ち受けていようと二人の為なら自分の命を犠牲にしてもいいと思っている。

『歪み』が原因で同族の神達と一死交える状況があってもおかしくはない、極夜の身内も含めてだ。だからこそアイも覚悟しているのだ、同族を・・・仲間を殺す覚悟を。

 

(今はただ時が経つのを待つしかない・・・極夜が選択し、戻って来るその日まで)

 

状況は一変して変わらないがレンの覚悟は決まっていた。そこに神としての使命や目的はなかった、ただ現在を生きる者としての覚悟を決めた。守る為にその手を血で染める事を・・・

 

 

 

 

 

 

 

 




龍夜「仕事がこんなに忙しくなるとは予想してなかったよ・・・」

フラン(極夜)「それにしたって投稿に時間掛かりすぎだろ!?もう少し頑張れよ・・・」

龍夜「社会人になった現在となっては時間ができた時は大抵別の用事を優先してしまうからどうしても執筆のほうに手が回らないんだよね・・・」

フラン(極夜)「時間が限られている以上投稿が遅れるのは致し方なしということか」

龍夜「そういう訳で次回の投稿もいつになるかは分かりませんが時間の合間を見てちょくちょく書いていくので気長に待って下さると有難いです」

フラン(極夜)「それじゃ、また次回な」


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巫女と終始神(改)

レン「それで今回遅れた言い訳は?」

龍夜「現実が辛くて全然進まなくて・・・来年には吸血王終わらせるから堪忍してくだぁさい(涙)」

アイ「という訳で遅れてしまって本当に御免なさい、という訳で本編をどうぞ」


あれから二月程経った、相変わらず状況は芳しくないがレンは他勢力の実力者達と話し合いを進めていた。歪みが起きない様に正史の歴史の通りに異変が起きる様にする為レンは動いていた。ハデスは冥界で封印式の維持、アイは紅魔館メンバーの動向を監視している。取りあえず目立った変化は起きてないものの現状維持の状況が続く。極夜の意識は戻らないが歪みの進行を遅らせる為事に従事する三人だった。

 

そんなある日アイとハデスに呼び出された、大事な用があるとの事でレンは一旦仕事を中断し永遠亭へと向かった。無人の病室へ入ると二人は既にいた。レンに気付くと既に二人は怒ったかのような、呆れたかのような視線で椅子に座るように促す。

 

何か怒らせることでもしたっけ?と考えつつ椅子に座るレン。暫く無言の状態が続いたがレンは呼び出した理由を二人から聞く為に口を開いた。

 

「取り敢えずさ、いい加減睨むのやめて呼び出した理由話してくれないか?」

 

レン自身暗い雰囲気での会話は望んでいなかった為そう言ったつもりだったのだが、その言葉でアイは「はぁ」と重い溜息を一つ吐くと、レンに対して苦言を呈した。

 

「あのさ、お兄様私言ったよね?辛い事背負い込まないでくれって何かあったら頼ってほしいって。どうしてまた抱え込もうとするの?」

 

「・・・ハデスから聞いたのか」

 

「少しだけね、流石に全部は話していないよ。君の立場の事もあるし何より私達も覚悟を決めないといけない問題だからね・・・」

 

「それで呼び出した理由はそれを聞きたかったからか?」

 

「それもあるけど・・・それ以外にも聞きたかった事があるの」

 

アイは一呼吸置き、核心を突く様な表情でレンに問いかける。

 

「お兄様、永遠亭で顔合わせして以来霊夢に会いに行こうとしないのは何でなの?」

 

「・・・世界が違うとは言え、未だに会うのず気まずいって理由じゃ駄目か?「駄目、というかお兄様がそんな理由で会いに行きたくないとか絶対ないでしょ?」やっぱり駄目か・・・まぁ、俺自身何処かで見切りを付けて会いには行きたかったんだけどな」

 

視線を反らし頭を掻きながらバツが悪そうな顔でレンは話し始めた。

 

「まぁ・・・その、あんな別れ方しちゃった身だし?それに別の世界とはいえ同じ姿をした少女に昔の様に接するっていうのも・・・」

 

「あーっもう!肝心な所でうじうじうじ・・・神社に居候していた時期もあったのになんでそんな卑屈な考え方しかできないの!?」

 

「いや、居候していたって言うが一日寝る場所提供して貰っただけなんだけど「口答えしない!」はい、すいません・・・」

 

(肝心な所で言い返せないのがレンの弱みだね、立場的には私達の上司なのによくもまぁあそこまでズバズバ言えるものだよ・・・)

 

『まぁ、永く過ごしてきた家族だからこそここまで親身になって考えてくれている。出会った当初から比べればアイも随分と丸くなったな』と思いながらハデスは口元に笑みを浮かべその光景を暫くの間眺めていた。

 

 

 

 

 

「というわけできちんと霊夢と話す事、それができない限り暫くの間口聞いてあげないんだからね」

 

「分かったよ・・・後で博麗神社に「今から行くの」え、いや今日はまだ仕事が・・・「行くの!」はい、分かりました・・・」

 

とまぁ、こんな調子で約二時間の説教が終わり博麗神社に行く事が強制的に決まってしまった。立場的にはレンのほうが上なのに肝心な所で強気になれないのはアイに対して未だに甘いのが原因なのだろう、まぁ考えていても本人の前では絶対口にできない事なのだが。

 

「じゃあ、行ってくるから後の仕事頼むな」

 

「あぁ、気をつけて」

 

「すぐ帰ってきても駄目だからね、みっっちり話してきてよ」

 

「はいはい、分かってるよ。それとアイ」

 

――ありがとな

 

「・・・お礼はいいから、早く行ってあげなよ。時間無くなるよ?」

 

「そうだな、それじゃ改めて行ってきます」

 

 

――――――

 

 

「本当によかったのかい?いつもの君なら無理を言ってもレンに付いて行くと思ったんだが・・・」

 

レンがいなくなった後、ハデスさっきの事についてアイに問うた。別の世界とはいえ霊夢に対して負い目があったレンの背中を押すなんて事は今まではなかった。だからこそハデスは個人的に気になったのだ。

 

 

「お兄様はどうあっても自分の幸せを取ろうとしない、何があっても他者の幸せの為に自分を犠牲にする。今回もそう・・・極夜を危ない目に遭わせた事に強い責任を感じている。霊夢に会うのを躊躇っていたのもそれが原因じゃないかって思ってさ」

 

「私達は罪を背負い業を背負い生きている身だ、だけどレンは背負うべきでない罪まで自分で背負ってしまう・・・それは彼にも言えていると思うけどね」

 

レンと極夜、生まれも生き方もその不器用さも全てが似ている二人の神。数奇な運命で出会った彼らはが数えきれない年月を生き世界を見てきた。だからこそ本当の意味で彼らを救える者はいない、これからもこの先もその様な人物は現れないだろう。他の者が経験した事のない地獄を見てきたのだから・・・

 

少し間を置きアイは言葉を続けた。

 

「私はお兄様の為に何かしてあげたかった。その結果私は神王として傍でお兄様の苦しみも悲しみも一緒に背負って生きたいと思った・・・まぁ、内緒で神王になっちゃったから後でこっぴどく怒られたけど私はこの選択を後悔してはいない。生き方は自由に決めたかったからね」

 

「自由か・・・まぁ、選択するのは個人の自由だし別に今更私から何も言う気はないが本当にその選択で合っていたのかい?君が望むならあの世界に残ってフランの家族になってあげる事もできたと思うがね。レンの支えになろうとして自分の人生を棒に振るなんて傍から見れば愚かでしかないよ」

 

「私は『狂気』なんていう普通の人間社会では『異端』と呼ばれる物から生まれた、『フランドール・スカーレット』の狂気が生み出した存在でしかなかった。そんな私に存在意義をくれたのはお兄様だけ・・・愚かなのは否定しないよ。『レン・リュウヤ』に依存する事でしか生きる意味を見いだせない愚かで可哀そうな吸血鬼だもの」

 

悲しそうな表情でアイは語り続ける。

 

「可哀そうな私は暗闇で誰かが手を差し伸べてくれるのを只待っていただけ『フランを守る』なんて理由を盾にして誰からも受け入れられない現実から逃げていただけの臆病者でしかなかった。縋る物が無くなれば私は壊れてしまう、私を知る存在が居なくなれば本当の意味で孤独になってしまう・・・だから私は極夜を救いたかったんだと思うんだ。私と似ていたから・・・」

 

「だから私は愚か者でいいの、道化と呼ばれてもいい。私を知る存在が幸せに生きてくれればただそれだけで、それ以上は望まない。例えそれが当人が望まない結末だったとしても・・・ね」

 

彼女は受け入れてくれた少女を裏切り、『レン・リュウヤ』を守る影として神王になった。その罪は決して消える事はない。彼女もまたレンや極夜同様、『消せない罪』を背負う存在。終わる事のない『永遠』を享受し例え他者から嫌われようとも大切な物を守る為に力を振るう。果たされない約束を・・・少女の笑顔を胸に抱いて現在を生きる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ついに来てしまった』と内心ビクビクしながら鳥居の前まで来ていた。しかし、ここで突っ立っていても何も変わらないので仕方なく鳥居を潜り境内の前まで向かう。変わらない姿、変わらない容姿でそこに少女は居た。

 

霊夢はレンに気付かず、只黙々と掃き掃除を行っていたが近づいてくる足音に気付き顔を上げた。これが初対面という訳ではない、霊夢が意識を取り戻した後に顔合わせとアイが迷惑をかけた事も含めて謝りに行った時レンは霊夢と少しだけだが会話をしていた。しかしあの時はお互いぎこちなく何を話していいか分からなかった為多少強引にレンが会話を切り、それ以降は会話をする事は無くなってしまった。

 

アイがこうして背中を押してくれた以上、何かしら進展を得なければと思っていたレンだったが、『き、気まずい・・・何話せばいいんだろうか・・・』と前回と同じ心境だった。しかしこのままじゃ駄目だと自分を叱咤し口を開いた。

 

「傷の調子はどうだ?まぁ、全戦全勝で異変解決している君に聞くのも無粋だとは思うが・・・」

 

「もうすっかり完治しているのでお構いなく、それで今日は何の用で来たんですか?」

 

「いや最近はここの生活にも慣れてきたがここには一回も来た事がなかったから一度くらいは顔を出しておこうかなとね」

 

「物好きですね、忙しかったんじゃないんですか?」

 

「アイやハデスが仕事を代わってくれれてな、暇になったんだよ」

 

(まぁ、本当は強引に行かされただけなんだけどな)

 

「そういえばレンさんに聞いておきたい事があったんですよ」

 

「俺に?」

 

「父さん・・・いや、『星屑極夜』と過ごした時の話を聞きたいんです」

 

悲しげな表情で頼んでくる彼女にレンは心が痛んだがその願いを聞き入れ極夜との修行中の出来事を彼女に話し始めた。

 

 

―――――――

 

 

「・・・とまぁ、こんな所かな。神力、魔力、気といった力のコントロールなりなんなりいろいろあいつに叩きこんだ。文句も言わず最期まで全力なのは凄かったな、大艇の奴ならすぐに逃げ出すものなんだがね」

 

「やっぱり凄いですね・・・ていうか実戦向きばかりなのはどうしてなんですか?『スペルカードルール』もありますし実戦で戦う事なんて幻想郷では本当に極稀ですよ?」

 

「この世界の住民ならそれが普通なのかもしれないが俺達は違う。常に殺し合いの中で生きている様な物だからな・・・非殺傷前提のトレーニングは『慢心』しか生まない。死と隣り合わせだからこそ実戦形式でトレーニングする必要がある」

 

「殺し合いの中で『非殺傷』なんて生易しいものはない。この世界ではパワーバランスを保つ為に『掟』を作って妖怪達を縛っているんだろうけど、外じゃ掟なんて存在しないからな・・・常に『弱肉強食』が当たり前だ」

 

その言葉に霊夢は何も言えずに黙ってしまう。この世界では当たり前だった『掟』は外では・・・極夜が生きていた世界にはない。常に死と隣り合わせの毎日、どれだけ辛く苦しいのか実戦経験が少ない彼女でも分かる。この世界の『(ルール)』が作られたのは当初『八雲紫』の理想だった『人と妖が共存する世界』を目指した結果生まれたものだった。当然反対の意見を示す者も多く居た、それが原因で戦にも発展した事もあった。そしていつも中心で戦っていたのは彼女の育ての親でもある極夜だった。

 

博麗の巫女である彼女は歴代の巫女の中でも『鬼才』と恐れられる程強い、だがそれは今の『掟』の上での戦いだからこそだ。自分に傷を負わせた少女に『甘ちゃん』と言われ弱さを指摘された今では周りからいくら評価されても持て囃されても素直に喜ぶ事もできない。それ程今の『博麗霊夢』の心は『アイ・スカーレット』に叩きつぶされた敗北感で埋め尽くされていた。

 

「だが、この世界はとてもいい所だと思うよ」

 

そう言ってレンは立ち上がり空を見上げる。

 

「『掟』で縛られているとはいえ人里の人間達は何不自由なく暮らせているし余程の事がない限り大きな事件も起きない・・・とてもいい所だ。あいつと賢者がこの世界を今までずっと守ってきたのがよく伝わってくる」

 

「俺達はどうあっても望んだ結末に導く事なんてできない。何かしらの『犠牲』と『代償』を払ってきた。今までもそしてこれからも・・・」

 

神としての在り方、存在意義・・・それらを背負う目の前の人物にただただ霊夢は圧倒されていた。そして同時にどうしてそこまで強いのかが気になった。

 

「・・・どうすればレンさんの様に強くなれますか?」

 

「俺は君が思う程強くないよ。君が俺を強いと思うのならそれは大きな勘違いだ」

 

「でも貴方は父さんに修行をッ「修行を付けていたのは個人的に頼まれたからだ、そうでなければここまで肩入れはしてはいない」じゃあどうして・・・」

 

「じゃあ逆に聞くが君の言う強者とは誰を指す?」

 

「父さん・・・『星屑極夜』です」

 

「成程ね、まぁ確かに極夜はこの世界でも屈指の実力者だ。そういう意味ではあいつは強者の部類に入るだろう。だがあいつは俺同様強くない」

 

「本当の強者は例えどんな状況でも『甘さ』を捨て非情になれる存在・・・さっき出した問いに対しての俺の答えはこうだ」

 

「甘さを捨てる・・・」

 

理解できなかった、頭では理解しえない回答だった。だが何故かその答えを否定する事が今の自分にはできなかった。この異変で出会った三人の存在意義を否定してしまいそうな気がしたからだ。

 

「俺の事を周りは強者の部類に入れるがそれは違う・・・俺は決して強くない。どれだけ力を持っていてもどれだけ強かろうと、守れなければ意味がない」

 

「守れない自分に苛立ったよ、殺したい程に。だが自分は世界に縛られている・・・だから死んで楽にもなれない。世界が・・・それを許そうとはしない」

 

「だからこうして俺は現在(いま)を生き世界を見て回っている、それで誰かを救える訳じゃないが今はこうする事でしか生きられない・・・そうする事でしか俺は何故自分が生きているのかの『存在意義』すら見い出せないんだよ」

 

 

―――これでもまだ、俺が強いと思うか?




龍夜「という訳で今回も遅れてしまって本当にすいませんでした、駄作者こと『龍夜 蓮』です」

レン「吸血王の投稿を去年と同じ日にしてるんじゃねぇよと『レン・リュウヤ』です」

アイ「社会人になってから余り休めなくなっているのは分かるけど時間見つけて書きなさいよと『アイ・スカーレット』だよ」

レン「それで今回の話は俺と霊夢の話だった訳だが、入れる意味あったか?カットして本題入ったほうがよかった気もするんだが」

龍夜「まぁ、それでもよかったんだけど次話の話と時系列がごっちゃになりそうだったから一応書いたのよ。当初はカットして進める予定だったけど『あれ、これだと流石に話の流れ的に不味くないか?』って思ったからね」

レン「それでいつになったら吸血王終わるんだよ、前々から思っていたけどお前思いつきだけで作って後の事考えてないって計画性無いにも程があるぞ・・・」

龍夜「後二、三話で終わる予定だから・・・(震え声)ていうか今更だけどやっぱり小説書くの向いてないね自分。特に戦闘シーン有りの物語とか俺にはハードル高すぎたって思うよ・・・」

アイ「だからって私とお兄様の祖龍録も無かった事にしないでよ。最初から書き直してでもきちんと掘り下げて完結させなさい」

龍夜「はい・・・忙しいけどなんとか頑張ります・・・」

レン「という訳で今回はここまでです。投稿ペースが安定しない駄作者ですが、どうか来年も宜しくお願いします」


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終わりを止める為に

レン「投稿できたのはいいがよりによって年明けってお前・・・」

龍夜「計画性のない自分でほんとすいません・・・」


 

灰色の空の下で魂魄妖夢は鍛錬に励んでいた。邪神王の攻撃を受け重傷を負っていたが傷はすっかり良くなり屋敷の業務もこなせる程回復していた。

 

短く鋭い音と共に刃が空を裂く。それを何度も繰り返していく、居る筈のない敵に向かって一心不乱に振り続ける。祖父の教えを守り日々の鍛練に勤しんでいた彼女の心はとても沈んでいた。主である『西行寺幽々子』の事や主の知り合いだった『星屑極夜』の事、そして自分が相対した男の正体。

 

話を聞けば聞くほど雲の上の様な存在だということを思い知らされた。焦りと苛立ちがより一層高まる、次に相対した時に自分は勝つ事ができるのか、主を守り切れるのかと・・・

何かに集中しないと不安で押しつぶされそうだった。自分の実力が劣っていると分かっているからこそ焦りが消えようとしないのだ。

 

(こんなんじゃ、こんな半端な強さじゃ、また負ける。もうあんな無様な負け方ッ、だけはッ・・・絶対にしたくない!)

 

妖夢の剣技は素人から見れば強いと感じるだろうが、上級者から見ればただ教わった剣技を繰り返し練習しているだけに過ぎない。死地を潜ってきたレンや嘗ての極夜は剣の師から耳が痛くなる程ある事言われてきた。それは『状況に応じて型を変えろ』だった、常に殺し合いの中で生きていた二人にとって見れば『スペルカードルール』における非殺傷の戦いはただの甘えに過ぎない。その世界における掟に従って戦うのは当然だが掟を無視した殺し合いを仕掛けてくる輩もいる。特に小、中級の妖怪達はルール外の戦いを仕掛けてくる事が多い為本格的に『スペルカードルール』が制定されるまでは極夜は霊夢に妖怪退治の仕事をさせなかった。

妖夢も同様にルール制定前は師である妖忌に基本的な剣術を教わり後は独学のみ、死地の中で生きてきた神王相手に手も足も出せずに敗北するのも当然だった。

 

「実戦を積んでない彼女じゃ、流石にあれ以上修行しても伸びるのは難しいと思うが・・・」

 

妖夢の修行風景を眺めていたハデスは小さく呟き、湯呑の茶を啜る。封印式が機能していかの監視を含めレンから妖夢の修行を手伝ってやってほしいと個人的に頼まれた為現在ハデスは冥界に滞在していた。西行寺幽々子が本調子じゃない現在ハデスが実質冥界の霊達の統括を行っている。黄泉国程悪霊化した霊もいない為管理は概ね順調に進んでいた。

 

ハデスの心境はとてもいいと言えるものではなかった、状況が一向に良くならないというのもあるが先日のレンとの一件でより事態が悪化しているという事を思い知らされたのだから。

 

――レンも不器用な物だよ・・・あんな理由で妖夢の修行を私に頼むとはね・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハデス、悪いが妖夢に修行付けてやってくれないか?」

 

アイと別れた後レンは話を終えたハデスを呼び止め、開口一番にそう言った。突然の事だった為すぐに言葉が出てこなかったが何とか口を開きハデスはレンに疑問を投げた。

 

「どうして私なんだい?剣の腕なら君のほうが上だろう、これから西行妖の封印式がちゃんと機能しているかの監視も行わなくてはいけないというのに・・・平行してやるのも流石に無理があると思うんだが」

 

レン自身何か考えがあって自分にこんなん無理難題を押し付けてきたのだろうがハデスは理解できなかった。確かにハデスはレンが創った妖神刀の一つを管理している為剣技を多少かじった事はあるがレンより実力は劣る。それにしたってアイのほうが自分より適任だろうとハデスは思った。

 

そんなハデスの疑問にレンは苦笑いを浮かべながら答えた。

 

「すまないな、だけどこんな状況だしお前しか適任者がいなかったんだよ」

 

「・・・一応、理由を聞こうか。どうして私なんだい?」

 

「俺は妖夢の師になる資格はない」

 

その言葉の意味が理解できなかったが、少し考えてハデスは思い出した。レンは以前居た別世界の幻想郷で妖夢の師として剣を教えていた事を、そして幻想郷を去る前に自分を知る者達全員の記憶を消している事を・・・。負い目を感じているのだろう、自分が知っている彼女達ではないにしろ当時の記憶を保有しているレンにとって彼女達と関わる事自体避けたいはずだった。

 

「・・・分かった、引き受けるよ。それで君はこれからどうするんだい?」

 

「天界に戻ってゼウスに現状報告、後『眼』の能力で過去の歴史を詳しく調べておくつもりだ」

 

「過去の歴史?確かにこの世界の歴史はレンが居た幻想郷と多少違うがどうして今更・・・」

 

「正直今回の『歪み』の原因が極夜だけだとは思ってない、別の要因も関係していると俺は考えている」

 

「別の要因?この世界において過去に『歪み』が発生した事例はなかったはずだ、調べるだけ無駄だと思うんだが」

 

「じゃあこの世界の『フランドール・スカーレット』が過去に『歪み』にも等しい改変をしていたらどうする?」

 

ハデスはそこで思い出した、『フランドール・スカーレット』はスペルカードルール制定のきっかけともなる『吸血鬼異変』の首謀者であるスカーレット郷を彼が幼少期の頃に殺害しているということを。

 

レンは溜息を一つ吐き、言葉を続けた。

 

「本来『歪み』というのは本来起きる歴史が何者かの介入で起きなくなったり全く違う形で起こるといったケースが多い、本来だったらこの世界は既に消えて無くなっている筈だったんだが極夜が行った『改変』が原因で歴史その物が変わってしまったんだ」

 

――まず一つは極夜が月の民になる前の『八意永琳』と出会った事

 

――二つ目は諏訪大戦の中心ともなる『八坂神奈子』『洩矢諏訪子』に関わった事

 

「そして、本来法界に封じられる筈だった『聖白蓮』を助けてしまった事だ」

 

「なっ!?歴史の中間点ともなる出来事を彼は変えているというのか!?」

 

『聖白蓮』、彼女は本来の歴史なら法界に封じられこの世界でも後の異変で復活する筈の僧侶。この世界においての歴史の中間点ともなる出来事を極夜は過去に解決してしまっていた。レンが嘗て滞在した幻想郷では既に異変は解決された後だった為当人も詳しくは知らないがどの世界の幻想郷においてもこの異変は重要な歴史の一つだった。

 

「まぁ、これだけならただの『改変』程度で済んだんだがな。歪みの原因ともなる異変が起きたのは極夜が転生の儀を行って二月程経った後の事だった、本来通りなら『吸血鬼異変』が起こりスペルカードルールが予定通り制定される筈だったが肝心の異変その物が起きなかった・・・」

 

『スカーレット郷の死亡』・・・幻想郷の勢力勢の中でも屈指の実力を誇り恐れられていた強者だった彼が死んだことによりスペルカードルール制定のきっかけともなる『吸血鬼異変』は起こらなかった。この時点で大きな『歪み』がこの世界に発生してしまっていたことになる。

 

「し、しかしそれでは邪神王が『星屑極夜』を狙った理由は分からない・・・歪みの原因が彼じゃないのは明白な上、証拠だってない筈だ」

 

「まだ分からないか?確かに極夜は『歪み』の根本的な原因じゃない。だが『歪み』の原因ともなる人物の肉体に憑依しているじゃないか・・・」

 

 

――この世界の『フランドール・スカーレット』に・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(まさか私の取った最善ともとれる策がこの世界の歪みを肥大化させていたとはね・・・滑稽な物だよ・・・)

 

歪みの原因ともなるきっかけは様々だ、形は違えどすぐに気づけた筈だったのに自分でも気が付かない内にこの世界の歪みを進行させていたことをレンとの会話で気づかされた。神として犯してはいけない失態だった、もっと早くに気づいていればこんな事にはならずに済んだかもしれない。

 

――もうレンに辛い想いをさせたくなかったのに、どうして過ちを繰り返してしまうんだろうな・・・私は・・・

 

今回の異変で誰よりも傷ついているレンに自分は何もしてやれてない。私はいつも無力だ、人間として生きていた時も黄泉神として生きている現在も・・・

 

前の幻想郷でレンは誰よりも霊夢達と別れたくなかったに違いない、しかしレンの決断が揺らげばあの幻想郷は歪みの影響で消滅していた。『レン・リュウヤ』を知る者達の記憶を消し在るべき歴史へと戻す・・・ほかに選択肢がなかった以上あの方法でしか霊夢達を救う事ができなかった。

 

レンはめったな事では感情を表には出そうとしない。世界によって生み出され、世界の意志で『生』を強要させられた最初の神として弱気な姿を見せたくないと常日頃から思っているのだろう、故にレンは決して他者に対して弱さを見せようとはしない。だがレンが抱える闇は誰よりも深く誰よりも辛い。彼が世界に対して向けているのは慈悲や慈愛などではない同じ歴史ばかり繰り返す人間達に対する『呆れ』だ。記憶が戻ったレンは監視の為旅をしていた時と同様に今も世界を回っている。

 

しかし聞く報告はいつも『人は変わらない、繰り返してばかりだ』という言葉だけだった。生み出した世界が、人という生き物が過ちを繰り返す様を見る度にレンの顔から笑顔が消えていった。嘗て霊夢達に向けていた感情も笑顔も、レンは家族であるアイや私以外に向けなくなってしまった。

 

歪みの影響でこの世界は崩れ始めている、その原因の一端ともなった『創破神王』・・・彼の処遇を決める時は少なくともすぐに来る。それがこの世界の霊夢達が望まない結末だったとしても笑って終れる未来ではないのは容易に想像できた。だがやるしかなかった、私は黄泉国の統率神でもあり終始神の部下。レンが愛した世界を・・・愛した少女達を守らなくてはならない。

 

ハデスは立ち上がり、未だに鍛錬を続けている妖夢の元へ歩いていく、足音に気づくと妖夢は白楼剣を振る手を止め息を吐き出し額の汗を拭った。

 

「そろそろ本格的な修行に入るよ、レンからみっちり鍛えてくれと頼まれているのでね」

 

「は、はぁ・・・でもハデス様は剣は振った事はあるんですか?」

 

「触り程度だけどやった事はあるし、大体が実戦での剣技だから妖夢よりは経験は豊富だと自負しているつもりさ。それに・・・」

 

言葉を切りハデスは手に力を集中させた、すると一本の刀が握られる。白の刀身に蒼の柄のそれは明らかに普通の刀とは違うオーラを放っていた。その刀は『魂狼』妖神刀の一つでもありハデスが管理を任されているレンが創った妖神刀の一つだ。

 

「白楼剣や楼観剣を扱う君でも妖神刀の使い手とは一戦交えた事はないだろう?妖夢にとってもいい経験になる筈さ」

 

「分かりました、お手合わせお願いします!」

 

この子に剣を教えるのが私の役目でもありレンの願いだ・・・なら、私は今できる精一杯を妖夢にぶつけたい。現在の私ができる事なんてそれぐらいだ、だがそれでいい。

 

(これがレンの為になるなら、レンの笑顔を守れるというのなら私はこの刃を振おう。それが私の贖罪だ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は無煙塚、そこに佇む二人は穏やかともいえない表情で向き合っていた。極夜に似た面影を持つがその髪は白・・・同じ神王でありながら『死』を司る神王である邪神王【星屑白夜】。そして全ての世界の創造主であり『始祖』と『終焉』を司る神【レン・リュウヤ】いまにも戦いが始まりそうだったがレンは内心落ち着いていた

 

目の前の存在が決してこの世界の害となる存在だと無意識に分かったからなのかもしれないがそれ以上に彼の家族だからだろうか。

 

「何か用があって僕を呼び出したんでしょ・・・早く用件を言ったらどうですか?」

 

「まぁ、すぐに用件言ってもいいんだがまず一つ確認したい。助言した協力者はまだお前の中に居るのか?」

 

「・・・・・・」

 

「沈黙は肯定と受け取るぞ。お陰でこちらの手間も省けそうだ」

 

そのレンの言葉に白夜は顔を険しくさせるがレンは構わずこう続けた。

 

「今回の件、俺達でけじめをつける。お前は黙ってこの世界から立ち去れ」

 

「一度天界を捨て、ゼウス様を裏切った貴方にそんな指図をされて黙って立ち去るとでも思っているんですか?」

 

「天界を捨てた?まぁ、お前には俺が嘗てした行いはそう見えたんだろう。だが天界を抜け好き勝手引っ掻き回して『歪み』の進行を早めたお前にそんな事を言われる筋合いは無い・・・それに」

 

空を見上げ諦めた様な表情でレンは口を開いた。

 

「もう俺達三人で抑えるには限界まで来ちまっているんだよ・・・」

 

空は他者に見れば何の変化もないと思うかもしれないが、レンにはその進行具合が見えている。巨大な亀裂が入りそれは日に日に広がり浸食してくる。嘗ていた世界と同じ形で世界はゆっくり壊れていく、この世界の人間や妖達が異常に気付かず普通の生活を今も送っている・・・『終り』が近づいていることも知らずに。

 

「ガキ一人の我が儘でこの世界壊されるなら俺達だけでいい」

 

そう言った瞬間レンの首元に刃が付きつけられる、抜刀するにしてはやけに早いと感心していたがすぐに合点がいった。自分が懐に差していた相棒が奪われていることに。

 

「この刀なら貴方を殺せる・・・貴方が創った『氷狼』なら」

 

「その刀の本当の名も知らずに俺を殺すとは片腹痛いな・・・妖神刀は『管理』の為の刀だ。その状態の氷狼で俺を切っても殺せやしない。それに」

 

突きつけられている刀身を素手で掴む、すると次の瞬間氷狼は懐の鞘に収まっていた。白夜の驚いた表情を気にも留めずレンは掴んだ時にできた手の傷の再生が終わるのを見届けて再度口を開く。

 

「極夜に辛い役目を背負わす事になっても俺はこの世界を救う、神じゃなく現在を生きる一人の人間としてな」

 




同時投稿される二つ目の話に載せているので今回の話は後書きコーナーは無しです


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試練の序章

龍夜「サブタイ悩んだけど取り敢えずこんな感じでいいかな?」

レン「まぁ、別にいいがこの『序章』が終わりにほんとになるのはいつになるのやら・・・」

龍夜「そ、それでは本編をどうぞ・・・」


広がる光景は誰が見ても地獄と比喩するに相応しいものだった。

 

無数の屍が横たわるそこは嘗て戦があった場所だろうか、しかし自身の記憶にこの光景は無い。横たわる屍の殆どは魔物だった、たが違ったのは何者かに切り付けられたかの如く胴体に大きな斬り込みがあるということだけ。

 

疑問に思いながら歩き出す。暫く歩くと人の気配を感じ、極夜は足を止めた。映った光景は本来ならあり得ない物だったからだ。

屍の山に子供が居た、傍らに大振りの刀を携え一心不乱に死肉を口に運ぶ。その姿は常人が見れば恐怖、または吐き気すら覚える程強烈な物だった。だがその子供は自分がよく知る人物にそっくりだった、修行を付けてくれたあの人に。

 

――レンさん・・・なのか・・・?

 

そう呟いた瞬間周りの情景は変わっていく、次に映ったのは瓦礫のみが広がる場所。恐らく他の次元世界なのだろうか、そう思い辺りを見渡す。探していた人はすぐに見つかった。瓦礫の山に座り虚ろな瞳で涙を流し続けるレンの姿が嘗ての自分と重なる、その光景にいたたまれない気持ちになった。涙を拭い傍らに置いてあったローブを纏いレンは歩き出た。

 

 

そして次の情景になった時驚きで言葉を失った。最初に見た横たわる屍の中にレンは死んでいた。ゆっくりとした足取りで近づき様子を窺う、完全に息を引き取っていた。

 

『死体になった俺を見るのそろそろやめてくれないか?いい加減恥ずかしいんだが・・・』

 

「なんでここに居るのか問いただしたい所ですけど、分かりましたよ・・・レンさん」

 

背後からかけられた声に呆れが混じった表情で返す、自分の師でもあるその男がそこに居た。屍の山はいつの間にか消え、ただ荒野が広がるだけ。極夜は立ち上がりレンの居るほうへ視線を戻した。

 

『この記憶が誰の物なのか、直接見たお前なら理解しているんじゃないか?ま、言わなくても俺が話した事だから分かるとは思うが・・・』

 

「そうですね・・・さしずめ【レンさんの記憶の一部】って所ですかね。なんでこんな物見せられたかは分からないですけど」

『正解・・・だけどなんで分からないって決めつける?ここまで見たなら自分が何者なのか位は察してもいいんじゃないか?』

 

「自分はしがない神王です。それだけでもありそれ以上の何者でもない」

 

そう自分はそれだけの存在だ、その筈なのだ。だがそんな自分の心情を見透かすかの様にレンは言葉を続けた。

 

『昔俺が今の役目を辞め、人になった時ゼウスは終始神の役目を引き継げる者を探した・・・だが当時の神達じゃよくて【始祖】か【終焉】のどちらか一つしか宿すことしかできなかった。だから俺の血を使って新たな神を創りだした』

 

そして背けていた真実は残酷にも彼に突き刺さる。

 

『それがお前だよ、【創破神王】いや二代目【終始神】』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイ・・・君が考えた案にしては正直強引にも程があるよ、あれじゃ押し入り強盗じゃないか」

 

「狂気の霧で永遠亭の兎達を一時的に狂気の幻覚に落として混乱している中こっそり侵入して連れてきただけなのに押し入り強盗は酷くない?」

 

「・・・まぁ、やり方はどうであれなんとか無煙塚全体に結界は張り終えたよ。後は二人次第だね」

 

歪みの進行が止まらない上、これ以上抑えておけば他の次元世界にも影響が出てしまう。レンが下した最終手段は極夜に自身の力を与え、『終始の力』を与え同じ役目を継いで貰うというもの。

無茶苦茶にも程がある案だったが、レンの血を使い生み出された極夜は十分にその力を行使できるだけの『力』がある。その儀式の為この無煙塚に封印されている人に転生する前の極夜の『肉体』にこの世界のフランドールの肉体をリンクさせた。極夜の意識に干渉する方法がこれしかなかったというのが主な理由だがレンの力を継ぐ以上避けては通れない試練がある。

 

「私が受けた神王になる試練は狂狼に認められるっていう単純なやつだったけど今回はあれとはレベルが違う、正直無茶にも程があるよ・・・」

 

「だがどの道ここで彼が試練を拒否すればレンは彼を殺さなくてはいけなくなる・・・受ける以外に選択肢はないと思うよ」

 

「分かっていても・・・割り切れないの」

 

「アイッ!」

 

「ッ!?」

 

上空から降り注ぐ弾幕の雨、ハデスの声に反応したアイは咄嗟にその場を飛び退き回避する。だがこれで終わらなかった、巨大な斬撃がハデスの真正面から襲い掛かってくる。

 

「くっ、黄泉『魂盾』!」

 

無煙塚を彷徨う霊を一時的呼び寄せ巨大な防壁を創り防ぐが、あっさりとその防御は破られる。ハデスは魂狼を抜き斬撃を受け止める、油断していたとはいえ霊で創った防御壁を破る事ができるなんて芸当は彼女しかできない。

 

「妖夢・・・不意打ちとは感心しないね」

 

愛刀である『楼観剣』と、『白楼剣』操る剣士『魂魄妖夢』をハデスは見据える。正直油断をしていたというのもあるがここまで見事な奇襲を掛けられるとは予想外だった。

 

「ハデス様が仰っていた事を実践しただけですよ、言ってたじゃありませんか『不意打ちでも相手に一撃くらわせる事ができれば儲けもの』と」

 

「修行中の自分の発言を撤回したくなったのはこれが初めてだよ、全く・・・」

 

「貴女、私がいることも忘れていない?邪魔する以上私も「貴女の相手は私よ」成程貴女が来るのか・・・てっきり霊夢が来ると思ってたんだけどな」

 

上空に佇むのは最初の奇襲を仕掛けた人物をアイはよく知っていた。自分のオリジナルである『フランドール・スカーレット』の実姉『レミリア・スカーレット』。で見下すかの如くアイを睨みつけていた。

 

「博麗の巫女ならスキマ妖怪の術で夢の中だ、たがら私が代わりに家族を取り戻しにきた」

 

「愚かにも程があるね、私達のやっている事を邪魔するっていう事はこの世界の終焉を受け入れる事と同じよ。こんな事してほんとに極夜がそれを望むとでも思うの?」

 

「私はやってきた事は全部無意味だった事も知っている・・・そのせいで私はフランを死なせてしまった。だからこそ私の知る優しい『フラン』として接してくれた彼を私は死なせる訳にはいかない、例えそれが彼の望みでなくても」

 

この展開は予想はしていたがこの二人が私達の前に立ち塞がるとは思わなかった、だがこのまま通せばそれこそ二人の話に水を差しかねなかった。

 

(アイ、解放していいよ)

 

(お兄様から後で何か言われると思うから私嫌なんだけど・・・)

 

(だけどここで彼女達を通す訳にはいかない、多少無理をしてでも時間稼ぎに徹するしかない)

 

(仕方ないか・・・気絶させるためだけ狂狼を使いたくはなかったんだけどね)

 

アイは手に集中させ、相棒の狂狼を具現化させると鞘から引き抜く。アイの背丈に見合わない長い刀だが手馴れている彼女にとっては些細な事だ。

 

「妖夢、そしてレミリア・スカーレット。君たちはまだ妖神刀の本質を完全に理解し切れてはいない」

 

「修行中に見せた魂狼の特性や技を知り尽くしている私に対する脅しですか?そんなはったりを言っても無駄です」

 

「あくまでそれは『表』の顔に過ぎない、この刀に認められ『真名』を知った者こそ本当の意味でこの刀の力を使う事ができる」

「私達二人はそれを知る数少ない使い手・・・正直こんな格下に使う事になるとは思わなかったけど、やるからには全力で『潰す』」

 

アイとハデスは眼前に対峙する二人をよく知っている、いや知りすぎている。一人は自分が戦いを教えた少女、ただ純粋に『守る』力を欲しハデスから師事を受けた、もう一人はこの世界のフランとってただ一人の家族であり自分が嘗ていた世界で姉であった吸血鬼。情を捨てて挑むには辛い相手だ、だがそれでも二人は背負った役目ともう一人の家族の為にその力を解放させる。

 

「解放『魂牙転輪狼』!」

 

「解放『狂牙紅闇狼』!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺が終始神に?」

 

「俺が役目を放棄する訳じゃない、一緒に背負う形になるがお前は消えずに済む。消滅するのは歪みの原因・・・この世界のフランの肉体だけだ」

 

正直言葉が出なかった、レンが提案した方法は現実味があり確実性もある。この方法が上手く行けば進行が進んだ『歪み』を消す事もできるし自分は消えなくても済むだがこの試練をクリアし役目を受け入れるという事はこの世界を・・・

 

「捨てる事になるんですか・・・この世界を」

 

「・・・・・・」

 

「確かにレンさんの言っている方法ならこの世界の『歪み』を取り除くことも俺を救う事もできるでしょう。でもそれは霊夢達の前から・・・幻想郷から去らなければならない。そうですよね?」

 

「まぁ、そうだな・・・だが俺がここにいるのはお前に選択を強いる為だ。このまま俺に殺されるか、俺と同じ役目を背負い永遠を生きるか。二つに一つだ」

「どう答えればいいのか分かりません・・・現実実が湧かないんですよ、俺がレンさんの役目を背負うなんて・・・」

 

「正直俺はこのまま死んでもいいです・・・俺はそれだけの事をやってきたんですから・・・」

 

「この世界を守る為に生きるのかこの世界を道連れに消滅する事を望むのか」

 

霊夢や魔理沙・・・紅魔館の面々や紫達、確かに俺がここで受け入れなければ俺の家族や友人達は消えてしまうだろう。ただ自分にはレンの役目を背負うには荷が重すぎる・・・自分はレンの様にはなれない。

 

「俺は貴方の様に全て背負うなんて事はできない、絶対また逃げ出すと思います」

 

「この選択はお前を生かす為でもあるがその為にこの世界の奴ら敵に回すって言ってるのと同じ様なもんだ。だがそんな『逃げ出すかもしれない奴』を家族として救いたいのは神としてのではなく俺個人の私情だ、正直許されるもんじゃない」

 

「もう一度聞く・・・この試練受けるか、受けないか」

 

「俺は、弱いです・・・レンさんが思う程強くないんですよ」

 

―――それでも・・・自分を救いたいと言ってくれた・・・・

 

「また逃げ出すかもしれないし、弱音を吐くことだってあると思います・・・」

 

―――また一緒に居たいと言ってくれた・・・

 

「そんな俺でいいなら受けさせて下さい・・・霊夢達を救いたいんです・・・」

 

俺のその言葉に目の前の人物は嘗て孤独だった少女(アイ)を救った時に向けたのと同じ笑顔を浮かべこう返してくれた。

 

「恨まれる事になったとしても救うさ。それが俺がここにいる意味なんだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで試練の内容はレンさんと戦う・・・という事でいいんですか?」

 

「まぁ、それでもよかったんだが戦うのは俺じゃない」

 

「戦うのは・・・」

 

レンがその言葉を言い終える前に試練の相手は目の前に現れた、だがそれは極夜が想像もしていなかった相手だった。肩と腋の露出した赤い巫女服を身に纏い後頭部に結ばれた模様と縫い目入りの特徴的な大きな赤いリボン・・・それは極夜が一番よく知る存在。

 

「私よ・・・父さん」

 

家族でありこの世界を守護する博麗の巫女・・・『博麗霊夢』だった。

 




龍夜「年明けちゃいましたが、なんとか生存報告という意味で投稿できてよかったと心底安心しております」

レン「安心しておりますで済むと思っているお前のその考えが凄いわ」

アイ「確かに今年体調崩す事多かったけど去年と同じなのはどうなの?」

ハデス「まぁ、それよりなんとか投稿できてよかったと思おうじゃないか」

極夜「そう思わないと正直いろいろ辛いですからね・・・」

龍夜「まぁ、そんな訳でこんなギリギリの投稿になってしまいましたが来年はなるべく早く投稿するので安心して下さい(正直早くといってもどれぐらいの時期になるかは分からない)」

レン「それじゃまた次回お会いしましょう」


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狂気の権化と黄泉の支配者

はい、という訳で二十三話です。またこんなに投稿が遅れてしまい本当に申し訳ありませんでした。遅ればせながら投稿させていただきます。


 世界とは残酷だ、例えそれが一瞬の邂逅とはいえ三人の神達にとって嘗て居た世界で同じ場所で同じ姿をした者達と言葉を交わすだけでこれほどまでに辛い筈だ。なのに神として生み出され世界に対する役目を背負った身である以上その意に反する

者がいるならば対峙をしなければいけない。

 

―――吸血鬼の少女の狂気から生み出され、違う道を歩まんが為に幸せを捨てた者

 

―――人として生きていた時から霊魂達を鎮め未練を断ち切り続け、その才を認められ神になった者

 

―――世界そのものに生み出され全ての世界を創り統治し、人に憧れ、人を憎み、人を愛し、人となり、人として生きた自分を憎みながらも本来の役目に戻り永劫の時を生きる者

 

 ただ彼らは抗う事しかできない、この世界を守る為に同じ姿をした彼女達を守らんが為に世界の『歪み』その物と・・・その為に彼女達から憎まれようと、ただその剣を振い続ける。その先に待つ結果が望まぬ物でも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人の獲物がぶつかり火花が散る、ただ普段妖力で生成した槍を使うレミリアは今は自前の槍で眼前の神王と殺りあっていた。生前の父親から渡された代物だ、そのまま使えばすぐに先が折れ使い物にならないが親友の魔女がかけた軽減の魔法がその槍の寿命を僅かながらに伸ばしていた。

 

 お互いに押し切れないと悟り、一度飛び退く。お互いの攻め手はあくまで自前の獲物だけ『弾幕ごっこ (スペルカードルール)』などというお遊びではない。お互い強者として殺す相手としてその隙を探らないといけない。だが、レミリアの内心は先ほどの奇襲をかけた時とは違い弱気な思考が頭を埋め尽くしていた。

 

(正直、実戦での戦いなんていつ以来か分からない。体の震えを誤魔化す為に狂化の魔法をかけているだけで一歩間違えればその事に気づかれてしまう)

 

 レミリアは神王であるアイと同じ土俵に立つ為態々狂化の魔法を自分でかけた。だがこれは気休め程度、正直これであの化け物に勝とうなど思ってない。だから動きを止める、その事だけに集中する、そうでなければ一瞬で喉元にあの刀の切っ先が飛んでくる。

 

(何も考るな、ただ動きを止める事だけに重点を置け!)

 

 一瞬で距離を詰める、狙いは刀の柄。弾き飛ばせば勝てると確信し柄に向けて槍を振った。キイィンと音が響きアイの手から妖神刀が離れ、遠くに弾き飛ばされる。

 

「ッ!」

 

 今しかチャンスはないと考え一気に槍を利き手である左に持ち替え、アイの心臓に突き刺す。狙い通りにいった・・・がすぐに心臓から獲物を引き抜き間合いを取った。この程度でやられる程目の前の少女は甘くない。

 

「痛いなぁ~もう、手加減しているとはいえ心臓に直で槍突き刺すって流石に趣味悪いよ全く・・・」

「普通なら即死なのにそれで死なない貴女を見ていると神とは何なのかと自問自答したくなるけどね・・・」

 

 頬に付いた返り血を手で拭うアイ、神王であり吸血鬼という二面性を持つ彼女は神王の中でもかなりの強者だ。だがそれ以上に自分より弱い相手には決して本気にはならない、妖神刀の真名を解放したのも只の脅しでしかないのだ。そうこれはあくまでレンと極夜の試練を終わらせる為の時間稼ぎ、だがそれ以上に自分の脳内を侵食するかの如く狂気の感情が自身の中で蠢いていた。

 

(殺しちゃ駄目と分かっていても私の中にある本来の狂気が・・・フランが殺せ殺せって煩く囁いてくるんだよね)

 

無視してもいいがこれ以上長引かせると二人の試練に邪魔者が入る、それならば・・・

 

(いっその事任せてみようかな、狂狼も真名も解放したしそこまで被害は出ないでしょ)

 

 

 

(止まった?それにしては、何かがおかし・・・)

 

 レミリアが感じた違和感、さっきまで自身が浴びていた殺気が急に無くなったがそう考えた瞬間さっき弾き飛ばした筈の獲物が自身の腕を貫いた。

 

「ッ!?何が」

「アハハハハハハハ!ナニガ起コッタカモワカラナイナンテ、鈍イオ姉様。オカエリ、『狂牙紅闇狼(相棒)』不意打チゴ苦労様、イイ仕事ダッタヨ」

 

 アイの手にはさっきレミリアが弾き飛ばした刀が握られ、そして傍らには黒の体毛で覆われ紅い瞳の狼が彼女を守る様に寄り添っていた。

 

『何を言ってるんだか、契約している身で俺を働かせるな。主の命で力を貸しているだけでまだお前を認めた訳ではない』

「ソレヨリ刀二モドッテ。サッキノデ大体ウォーミングアップハ終ワッタシ、ココカラハ私ガ遊ブ番ダカラ!」

『人使い、いや狼使いが荒い契約者だな・・・これなら主のほうがまだマシだ』

 

そう呟くと狼の姿が粒子となり刀に吸収される。

 

「貴女・・・一体何を?」

「相棒ニチョットシタ奇襲ヲシテ貰ッタダケ、別ニ可笑シイ事ジャナイヨ。ソレヨリモットアソボウヨ・・・オタガイ満足スルマデサ!」

 

 再び切りかかる、だがレミリアがそれをギリギリで受け止める。お互いの獲物が火花を散らし金属音だけがその場に響き渡る。

 

(本当に私と同じ吸血鬼だったのかと疑いたくなる、そこらの大妖怪や神の比じゃない・・・!)

 

 見た目は自分と変わらない少女だが、底が見えない化け物と表現するに相応しい威圧感。自分の弟が狂気に染まった時に似た物はあるが全くの別物だ。

 

 槍を握っていた左手を離し、腹部に拳を叩き込む。だがまるで効いてないようにニヤリと口の口角を上げると左腕を掴まれ地面に叩きつけられた。叩きつけられたレミリアの視界一杯にアイの顔が迫っていた。今レミリアの感情を支配しているのは圧倒的な力の差と『恐怖』の感情。

 

―――怖い

 

 拳が襲い掛かる、それを受け止めようと身構えたがアイの拳は胴体ではなくレミリアの脚部に強烈な一撃が叩き込まれる。右足が折れるのを感じレミリアは顔を歪めた。折れていないほうの足を狙らい彼女は再度振りかぶり拳を落とした。だが、それは何もない地面を捕える事となる。

 

「成程・・・ソノ姿ニナレルノスッカリ忘レテイタヨ」

 

 空を飛ぶ一匹の蝙蝠を睨みつけながら呟いた。嘗て自分の姉が得意としていた戦いに置ける緊急離脱方。だが逃げる為にやったという訳ではないというのはアイも分かっていた。

 蝙蝠の変身が解かれレミリアが姿を現した。呼吸は荒く、折れていないほうの足でなんとか立ってはいたがもう虫の息も同然だ。

 

 アイは心の底から怒っていた。弱かったからではない、自分に良いようにされる嘗ての姉の姿が滑稽で仕方なかったからという訳でもない。

 

レミリアの眼だ。

 

 まるで自分がこの世で一番不幸だと言わんばかりの濁った眼、その眼に映っているのは眼前に立ち塞がる自分を捉えていない。まるで幻影を追っている様だった、その瞬間アイは理解してしまった極夜に対してレミリアがどんな感情を向けていたのか。

 

 理解してしまえば自分が取る行動も早かった。フランの狂気を奥底に閉じ込め狂化を解除し刀も消した。レミリアは呆気にとられた表情で見ていたがアイにとってはどうでもよかった。

 

そう・・・もうどうでもいい、興味もない・・・

 

視線を外そうとしたがレミリアの怒号がそれを許さなかった。

 

「待ちなさい!まだ・・・私は、戦える・・・!」

「目の前の敵も見えていない相手と戦って何が面白いの?ふざけるのもいい加減にしてくれるかな」

「眼前に立ち塞がる私も見ないで居ない家族の影を追いかけて、求めて・・・悲しくないの?私だったら恥ずかしくて表も歩けないよ」

 

 姉だった彼女と戦いたかった。例え別人であろうと平行世界での存在であろうと少しでも自分の姿を見てくれるなら敵としてでもよかった。

 だが彼女は何処も見ていない、居ない家族の影を極夜に重ねているだけの哀れな存在、自分の『』が死んだ事も認められず駄々をこねている子供。これだけ痛めつけられればもうレミリアには極夜と彼女の試練を邪魔するだけの力も気力も残っていないだろう。

 

視線を外した、レミリアが何かを言っているがアイはもう聞こうとも思わなかった。

 

(あの二人なら私をちゃんと見てくれたんだけど、高望みしすぎた私も大概馬鹿だった訳か・・・)

 

 もう居ない筈の二人の吸血鬼(家族)を思い浮かべ、彼女は小さく息を吐く。その視線の先で終わろうとしている戦いを羨ましそうに見ながら。

「ハァ・・・ハァ・・・」

「君は私を侮りすぎたね、実戦経験はレンやアイ程積んではいないが・・・『慣れてないとは言っていない』あの修行の時も言った筈だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハデスは四つん這いで這いつくばり荒い呼吸を繰り返す彼女の姿を見て。解放した魂狼こと『魂牙天輪狼(そうがてんりんろう)』・・・その能力で妖夢の半霊を喰らった。修行の段階で妖夢の弱点を知ったハデスは天輪狼の能力が一番彼女に刺さると思ってはいた。

 

 だが少しの期間とはいえ教えを説いた弟子である彼女の前で悪役を演じ叩き潰すのは些か後味が悪かった。ハデスはレンやアイの様に悪役を演じられる程器用ではない。現に妖夢の攻撃に対しては反撃をせずただ受け身を取り、時には攻撃を相殺する為に天輪狼を振うだけに留めていた。レンが見たら私情を挟んでいるのを見抜かれ二時間説教コース確定だがハデスなりに善処した結果が現在の状況だ。

 

「なんで・・・ハデス様は・・・こんな事を・・・」

「神として行動したまでに過ぎないよ、確かに君たちからしたら家族を・・・仲間を奪おうとする『悪人』に見えるかもしれない」

「だが私達からすれば『歪み』を促進させこの世界が壊れていく原因を作る君達が『悪』だ。私情を挟んで彼を・・・『星屑極夜』をこのままにはできない」

「でもそれでも、幽々子様の・・・大切な人を・・・殺させる・・・訳にはッ!」

「あー・・・何を勘違いしているかは知らないが、別に殺す為に彼をここまで運んだ訳ではないよ?」

 

 その言葉に妖夢は鳩が鉄砲を喰らったかの如く固まった、何も分かっていない彼女にハデスは頭を掻きながら言葉を続けた。

 

「彼が現在受けている『試練(テスト)』を受けて貰っている、彼が力を受け継ぎレンの代役に相応しいかどうかの・・・ね」

「だから妖夢が考えている様な事ではないよ。まぁ、言わなかった私にも非があるが話を聞いてくれる様な精神状態じゃなかったから抑える為に強引に拘束して話を聞いて貰ったという訳だ」

「じゃあ・・・私のした事は・・・」

「無駄・・・という訳ではないが早とちりだったね。鍛錬の際に『冷静に物事を見て状況把握する』という事を常に口煩く言っていたのに肝心な所で頭からその教えが抜け落ちるなんて師として少し悲しいよ」

「まぁ、そういう訳でそろそろ君の半霊を戻しておくよ。すまなかったね」

 

 

そう言うとハデスは天輪狼が喰らったであろう半霊を妖夢へ戻し、天輪狼を消した。

 

 

「もう動けるかい?」

「あ、はい。大丈夫です・・・ちゃんと動けます。すいませんでした、話も聞かず刀を向けてしまって」

「私としても賢者や紅魔館の関係者と交渉を進めようとも思ったんだが、歪みの進行が予想以上に早くて強行な手段を取らざるを得なかった。改めて謝罪させてもらうよ」

「あの結界の中で戦っているのは極夜様と・・・博麗の巫女ですか?」

「あぁ、そうだよ」

「殺し合いではないんですよね・・・」

「まぁ、最悪レンが止めるよ。私達としてもそんな結末は望まない」

 

(こっちは終わった。『試練』の監視役は頼んだよ、レン)

 

 

 

 

―――to be continued

 

 

 




後書き

という訳で第二十三話でした。また投稿がこんなに遅くなってしまい本当に申し訳ありません、時間を見て書いてはいるのですが仕事が忙しい上に書いて消しての繰り返しでこんなに遅くなってしまいました。吸血王のほうですが後二話かそこらで完結となります。思いつきで始めた長編でもあり見切り発車で始めたこの作品ですが完結できるまで失踪はしないつもりです(不定期投稿なので次に投稿できるのがいつかは分かりませんが)。
そんな訳で今年の投稿はこれで終わりです、皆様よいお年を!


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試練

 

博麗霊夢は強い、だがそれは表面上だけだ。それは修行をつけている自分自身がよく分かっている。課せられた修行を必死にこなしていく姿を見てレン顔を曇らせていた。

試練相手として彼女が名乗りを上げ困惑したものの最後の相手として極夜が乗り越えるべき過去として彼女はうってつけの相手だった為レンは渋々許可した。だがこの試練が終わればそれは極夜と霊夢の・・・家族としての関係が終わる事だ。このままでいいのかと思慮はしたが良案が思いつかないままただ時間だけが過ぎていく。

 

(一つだけある、極夜と霊夢を引き離さない方法は・・・だがそれは霊夢に一つの選択を強いる事になる。それだけはしたくない)

 

 あくまでその選択肢があるというだけで最終的に選ぶのは霊夢だ、だがレンは近くで彼女を見てきたから分かってしまうのだ。彼女の弱さや精神的障害を・・・自分が知る彼女ではないと分かっているがだからといってこの案は禁じ手だ。神としてやってはいけない事だ。

 

 頭をすっきりさせる為に湯呑の入れてあった水に口をつける。ゆっくり喉に流し込んでいると模造刀を肩に担ぎ息を切らせた霊夢が戻ってきた。レンの隣に腰を掛け同じく水に口をつける霊夢を横目に見つつレンはまた思考の海に沈む。

 

(いっそ能力を使って極夜がいたという記録だけをこの世界から消して・・・いやフランの肉体でいた時のほうが長いから今更歪みが無くなる訳ない。だったら極夜の知り合いの記憶だけを消す、というのも駄目だ。この手段で解決できるという確信が持てないし・・・ああッ、糞!肝心な時に頭が回らないな俺は!!)

 

「あの・・・」

 

(自分の立場を考えれば時には強硬な手段を取らなければいけないということは重々承知している。だけど俺の血から生み出され、利用され苦しみ続けた極夜を救う為には・・・)

 

思考の海に沈んでいた俺の頬に温かい手の感触が伝わる。顔を上げると自分を心配そうに見つめる少女がそこにいた。

 

「たとえどんな結末になろうとどんな道を歩むことになるとしても大丈夫です。だから、そんな顔しないでください。レンさんが笑ってくれないと私も笑えませんから・・・だからレンさんの考えを私に教えて下さい」

 

霊夢は自分の考えを見通しているかの様な表情だった。その表情に昔の自分の師の面影を見た気がした。自由気ままで何も知らなかった自分を最期の時まで振り回し続けたあの人に。

 

――この娘に・・・この世界の中心であり『自由』の象徴でもある素敵な巫女を信じよう、絶対に何があってもこの娘なら乗り越えてくれるはずだ・・・

 

 

 

 

 

レンは修行時の彼女との会話を思い出し口元に笑みが浮かべた。よくもまぁ、自分の提案を迷うことなく受け入れたものだと。だが同時に世界が違えど歩んだ過去は違えど『博麗霊夢』という少女の根底は変わらないと改めて安心もした。

 

二人の刃が混じり激突する様を眺めながら彼は隣で観戦する為に具現化した相棒に喋りかける。

 

『自分が提案しておいて今更だけどよくあの提案を受け入れたよな、正直少しは迷うと思ったんだがなぁ・・・氷狼(ひょうろう)

 

――何を今更・・・彼女と嘗て関わった貴方なら理解した上であの提案をしたのでは?

 

『関わった事があるといっても違う世界でだぞ?俺が知る彼女も虚な俺と違って強い信念を背負って生きてきたんだ。それにこの世界の彼女も選択した運命を背負う意志と強さがちゃんとある・・・俺と違ってな』

 

――それはわかっていますが・・・一つ大事な事を忘れてませんか?

 

『ん、何をだ?』

 

――この試練の勝利条件・・・極夜様は把握済みなんですか?

 

『あ・・・』

 

――最悪、主が止めて下さいね、後極夜様に半殺しにされる覚悟もしておいて下さい

 

『半殺しだけで済めばいいんだが、それだけじゃすまないだろうな・・・』

 

遠い目をして二人の試練を眺めるのを再開した仕える主君のやらかしに相棒の『氷狼』は堪らず深い溜息を吐き同時に極夜と霊夢に対して心の中で謝罪をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛び掛かってくる霊夢の一閃を躱し、極夜は攻撃を叩き込んだ。だが彼女も負けじと自分の得物である刀で防ぐ、火花が飛び散り金属音が辺り一帯に響く。

レンの指導により実践レベルまで引き上げられたが、それでも極夜を相手にするなら無謀としかいいようがない・・・それでも霊夢は極夜の動きについて行っている。

 

(たった短期間の間だけでここまで強く、いや違うこれは・・・)

 

極夜が感じた違和感、そして自分の動きにピッタリついてくるこの感覚。そして一つの結論に思い至った。

 

(まさか、勘だけで俺の動きを・・・!?)

 

霊夢の勘はそれこそ他人の心を読んでいるかの如く鋭いものだということは極夜も理解はしていた。

だが、まさかここまで成長させているとは予想はしていなかった。

 

歴代の中でも『天才』であり『最強』・・・前代の巫女ですら霊夢の才能には遠く及ばず、そして霊夢の限界を引き出すことはできなかった。病で亡くなり、その役を自分が引き継いだがそれでも霊夢の才能を開花させるには至らない。

 

それをたやすくやってのけたのは自分が尊敬し、この試練のきっかけを作ったであろう彼だということはすぐに分かった。

 

(本当に期待を裏切らないな・・・なら俺もッ!)

 

持っていた得物を振り切るとそれは衝撃波となり霊夢に向かって放たれる。霊夢はあせらず横に飛んで回避するが極夜は素早く背後に回り蹴りを叩き込んだ。

 

霊夢の体が地面に叩きつけられ、苦悶の表情を浮かべる。すかさず追撃しようと刀を振り下ろしたが腰にある鞘で刀身を受け止め見事に防がれた。これ以上の追撃は悪手だと悟り極夜は距離をとる。

 

『腕上げたな・・・昔は俺との修行に対しても本気を出さなかったのに』

『それは昔の話よ。さすがにこの試練の為に準備はしてきたわ・・・これでも博麗の巫女だから』

『成程な、その心構えは称賛の一言に尽きる。だけどまだ試練は終わらない・・・そうだろ?』

『そうね、それにこれで終わらせるには勿体ないしね・・・』

『『全力で押し通る!』』

 

 

試練の果てに何があるのかどんな結末が待っているかなどの葛藤は既に無かった。ただ全力で戦う、その思考のみで埋め尽くされていた。血は繋がっていなくとも楽しそうに刀を振るう二人はとても似ていた。

 

――楽しい・・・ただただ楽しい。こんな気持ちになったのは久しぶりだ

 

この戦いがこの世界から歪みを取り除く為に必要なものであり自身の運命を決める大事な一戦、頭では理解してはいるが刃を交わす度に眼前の強者を倒したいという願望が沸き上がる。

 

――レンさんやアイと違って自分は平和主義者だと思っていたけど結局俺もあの二人と同類って事か・・・

 

だがそれも悪くない、一度認めてしまえばこの戦いの前の不安など消し飛ばしてくれるだけの活力が沸いてきた。

 

未来(さき)の事は考えない、ただ現在(いま)を楽しんでやると・・・

 

 

『楽しそうに戦うのはいいんだが、あの二人試練の事絶対忘れているだろ・・・』

 

(だがやはり極夜のほうが一枚上か、極夜のほうは全然息切れの様子はないが明らかに霊夢のほうは疲労の色が見えてきている)

 

極夜と霊夢の戦いはさらに激しさを増した、攻める防ぐという単純な繰り返しだが二人とも勢いと鋭さが増していく。

 

この空間内で致命傷を負ったところで現実の肉体に何ら影響はないが魂を元の肉体に戻したとき何かしら悪影響を及す。どの場面で止めればいいか完全にタイミングを計りかねていたが少なくともそろそろ止めないと最悪の事態になりかねない。

 

『氷狼、戻ってくれ。そろそろ試練を止める』

『御意、お気をつけて』

 

氷狼の体が粒子となり刀の中に戻った事を確認し鞘から引き抜く。妖神刀は表向きは顔は管理の刀だが実力を認められた者のみがその真名を知りその形態を行使できる。

 

『解放、【氷牙双終狼 (ひょうがそうついろう)】』

 

レンの瞳の色を彷彿させる深い蒼に変化し刀から冷気が溢れ出す。レンの纏うオーラも氷狼と同じものに変化していた。

 

『束縛【氷結の棘】』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

激しい刀の打ち合いは激しさを増していきさらに昂ぶりを加速させる。永遠とも思える一瞬の間切り結ぶ二人。二人の刀が踏み込み止めの一撃を加えんと振り下ろすその瞬間。氷でできた巨大な棘が地面を突き破り這い出一瞬で二人の足に絡みついた。

 

最後の一撃を放とうとしていた二人はバランスを崩しその場に倒れた。

 

静寂の中二人の息遣いだけがその場に響く。

 

極夜は大の字に寝転がったまま灰色の空を眺め、息を整えると足に絡みついた棘を刀で取り除き身を起こすと霊夢の傍まで歩いて行き霊夢の隣に座り込んだ。

 

『試練、終了みたいだな・・・』

『そうね・・・結果を見る限り、引き分けかしら?』

『さあな、まぁレンさんの事だしそこまで厳しい判定はしないと思うぞ。あの人凄く甘いから』

『それに関しては同感』

 

お互い出せる物は出し切った。もう何もない、後はレンの言葉を待つだけだ。極夜は霊夢の足元の棘を取り除くと無言で手を差し伸べる。霊夢は差し出されたその手を無言で掴み起き上がり極夜の肩を借りながら二人はレンの元へ歩き出す。

 

レンの元に着くと試練前はいなかったギャラリーが二人ほど増えている事に極夜は気づく、それは極夜にもなじみのある二人だった。

 

『お兄様、あれだけ試練前に勝利条件提示してって私言ったよね?なんでこういう時に限って忘れちゃうの?馬鹿なの?』

『いや、その・・・素で忘れてました。はい・・・』

『忘れてたで済まないでしょ今回のやらかし。氷狼が伝えたから大事にはならなかったけどちゃんと反省しなさい!』

『はい、おっしゃる通りです・・・』

 

狂神王(きょうしんおう)【アイ・スカーレット】がレンをその場に正座させ鬼の形相で説教しているという見慣れない光景に極夜は勿論霊夢も唖然としてしまった。その場に立ち尽くしているとハデスが二人の接近に気づき極夜達を出迎えた。

 

『二人ともお疲れ様。それにしても試練を忘れて戦いに熱中したと聞いてさすがの私も焦ったよ、まぁレンが止めたから結果オーライかな』

『いや、それはいいんですけどなんでアイがレンさんに対して説教しているんですか?状況が読めないんですが・・・』

『あー・・・まぁ、うん余り気にしなくていいよ。レンがドジを踏んだだけだからね』

 

そのドジが何なのかは分からなかったがあまり触れない方がいいだろうと思い二人は思考の奥にその考えを追いやった。

 

説教が終ったのかレンとアイがこちらに歩いてきた。

 

『ハデス、相手してもらって悪かったな。こっちの話も終わった』

『そうかい、それで早く結果を伝えてあげたらどうだい?二人も気になっているみたいだからね』

 

つい身を固くしてしまう、この試練の結果が重要という事二人とも理解している。だからこそ結果を聞くのがとても怖い。

 

だがレンの次の言葉は二人が予想していなかった回答だった。

 

『二人とも合格だ』

『え・・・?いや二人とも合格ってどういう事ですか?合格者は一人だけのはずじゃあ・・・』

『別に合格者が〈一人だけ〉なんて言った覚えはないぞ。それにこの試練の勝利条件は至って簡単、【納得するだけの力を示せ】ってだけだからな。二人は見事これを成し遂げた別におかしなところはないだろ?』

『で、でも私が合格なのはどうしてですか?この試練は父さんが【終始神】であるレンさんの代役を務めるに足りるかを見極める為のものだったはずじゃあ・・・』

『当初の予定ではそうだったんだが、あれからいろいろ考えた。確かにこの試練で極夜が勝利条件を満たしたとしても本当に二人が望む結末になるのかなと思ってな・・・』

 

レンは視線を二人から外し空を見上げる。暫くして二人に視線を戻すとレンは予想外の提案をしてきた。

 

 

 

 

 

 

 

『というわけで霊夢!神になって世界・・・守ってみないか?』

『『・・・はぁ!?』』

 

 

 

                                             To Bo Continued...

 

 

 

 




後書きコーナー

龍夜「後書き始まってこんな事言うのもなんですが・・・投稿遅れて本当に申し訳ありませんでした!!」

極夜「まぁ、いいけど今回は何があったんだ?」

龍夜「いや、本当は早めに投稿しようとせっせと下書き書いては繰り返しのいつもの作業をしていたんですが実は数か月前位に大事件がおきまして・・・」

アイ「事件って?」

龍夜「作業用として使っていたPCが原因不明のエラーを起こしてお亡くなりになられました・・・」

レン「えぇ・・・それでデータは?」

龍夜「なんとかバックアップは取ってあったのでゲーム用として使っていたPCで復元はできたんですが物凄くモチベが下がってしまいこんな時期に投稿という事に・・・」

ハデス「まぁ、今回は多めに見るけど次は頑張りなよ?」

龍夜「はい・・・というわけで物凄く遅い投稿となってしまいましたが今回もこんな拙い小説を見て下さり有難うございました!」

龍夜&レン&アイ&ハデス&極夜「「「「「それではよいお年を!!」」」」」


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