世界を笑顔にするために (invisible)
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ハロハピの新人スタッフ
経緯としましては、とあるオフ会でバンドリ小説の話になった時、バンドリ小説で超絶人気のTさんやバンドリや他作品の小説を書いてるKさん、Nさんに「是非やってください」と言われたので出すことになりましたという次第です(笑)
いつかTさんやKさんとコラボなんてできたらなぁ…と想いながら頑張って続けていこうと思いますので応援のほどよろしくお願いします。
「………ダメでしょ」
「そうかしら?あたしはいいと思うんだけど」
「いいじゃんそーくん!やろーよ!」
「そうだよ想太…私もこころの意見に賛成だ」
宮坂 想太(みやさか そうた)は今窮地に立たされている。下手すれば自分の人生に支障をきたすレベルの窮地である。
事の発端は、1時間ほど前に遡る。
ライブで行うことについて、ハロー、ハッピーワールドのメンバー全員で考えていたのだが、ドラムの松原 花音(まつばら かのん)さんとDJのミッシェルの中の人の奥沢 美咲(おくさわ みさき)さんが急遽席を外すことになってしまい、ギターの瀬田 薫(せた かおる)さんとベースの北沢 はぐみ(きたざわ はぐみ)ちゃんとボーカルであり幼馴染でもある弦巻 こころ(つるまき こころ)の3人が、やりたい放題な案を提案してくるのである。
5人のまとめ役である奥沢さんがいない今、3人をまとめる役を任された想太は、現在グロッキー状態だ。
こころの何気ない一言、「想太が女装するのはどうかしら?」のおかげで、2人はそれをやる前提で物事を進めてくる。
「女装は嫌だよ。しかも俺スタッフだからね?支える側だから」
「みんなにあたし達を支える想太の存在を知ってもらいたいのよ!」
「なら他にも方法あるでしょうに!なぜ女装限定!?」
「インパクトよ!」
「そーくん!やろー?」
「いいじゃないか想太、私も男装して君をエスコートしようじゃないか……」
「…薫さんはいつも通りじゃないか」
奥沢さんが3人のことを3バカと呼ぶ理由がなんとなくわかってきた気がするところで、用事を済ませた奥沢さんが帰ってきた。
「…何してるの3人とも」
ホワイトボードに描かれた絵を見て、奥沢さんは今まで何があったのか察した。
「想太くんは女装しないでしょ」
「まだそうとは決まってないわ!」
「面白いもの見たさで考えちゃダメでしょ。まぁ確かにお客さんからしたら面白いかもしれないけど」
「えぇ……」
「衣装変えるか新しい曲やるかでいいんじゃない?」
「美咲がそこまで言うなら仕方ないわ!別の方法を考えるわ!」
ひとまず奥沢さんが戻ってきてくれたおかげで助かった想太は、空気が抜けた浮き輪のように萎んでおり、ヘロヘロになっていた。
「助かりました…」
「いえいえ、想太くんが入ってくれたおかげであたしもやることが少なくなりましたし、このくらいは全然大丈夫です。むしろあたしがお礼する側ですよ」
「想太〜!あたし新しい歌を思いついたわ!」
ホワイトボード前でこころたちがワイワイしてるのを見て、想太と奥沢さんは苦笑いしながら向かう。
「はいはい……録音しながらメモに書くからちょっと待ってよ」
今日も、世界を笑顔にするための計画が少しずつ進行していくのである……。
☺︎ ☺︎ ☺︎ ☺︎ ☺︎
"世界を笑顔に!"という目標を掲げているハロー、ハッピーワールドは、最初こころが駅で楽しいこと探しをしていたところから始まった。
そこで偶然会った花音さんと即興のライブをやり始め、その後薫さんが加入し、はぐみちゃんも入り、最後に奥沢さんが入り、そして想太も同時期に入り、ハロハピのスタッフとして活動することになった。
結成して間もないバンドではあるが、病院や町の小学校や幼稚園でのライブを行なっており、小さな子供達には相当人気のあるバンドである。
この他にもゲリラライブのような形で突然駅でアカペラで歌ったりする時もあるので、大人の人にもやや知られている。
そんなハロハピのボーカルの弦巻こころとは、同じ家で暮らしている。
弦巻家は町では有名な超大金持ちで、家も非常に大きい。そんな家で想太が暮らしているのには理由がある。
想太の母は、弦巻家のサポート役として大量にいる黒服と呼ばれる人たちを治める人で、想太の父は弦巻家専属のコックなのである。
2人は基本弦巻家で仕事をするので自宅に帰る必要がない。なので想太は親と同じように弦巻家で暮らすことになった。
幼い頃からずっと一緒にいるこころは、いつになってもすごい人だなと感心させられる。
『できないことなんて、この世にない』と本当に思ってる人で、実際こころに出来ないことは無いと思う。
…こころのすごいところを話しているとキリがないので、ここで終わりにしよう。
つまり何が言いたいのかというと、弦巻こころは世界を笑顔にするという目標を本当に達成することができる力があるということだ。
「……どうかしらっ!」
「なんとなくわかった。今週中に歌詞とかメロディーをつけるよ」
「さすが想太ね!楽しみにしてるわ!」
「そーくんすごい!曲ができたらコロッケあげるよ!」
「ありがとうはぐみちゃん。楽しみにしてるよ」
「素晴らしいよ想太…完成したら私の詩も聞いてくれないか…?」
「そうですね。薫さんの詩、聞いてみたいです」
と、こんな感じで今日のミーティングは終わった。
みんなを家に送った後、こころと想太は家に帰り、お互いの部屋に戻った。
「……花音さんからメールだ。『今日は参加できなかったけど、ちゃんと進みましたか?次からは参加します』か。しっかり進みましたよ。と返しておこう」
想太が文字を打ち込んでいるとこころがノックもなしに入ってくる。
「想太!夜ご飯を食べましょう!」
「うわっびっくりした!」
「驚くことでもないでしょう?」
「1人で食堂に行って待ってればよかったのに。どの道黒服さんが一声かけてくるし」
「……想太は約束を忘れたのかしら?」
こころは口をへの字にし、さらにいつもキラキラしている目は、その輝きを失いかけている。
こころが言った約束を忘れたわけはないのだが……。と思ったが、想うだけでは伝わらないと考えた想太は書きかけのメールを早急に仕上げ、確認した後に花音さんに送り、ケータイを机に起き、立ち上がる。
「……ああ、そうだな、行こうか。一緒に」
「うんっ!」
こころの目は光を取り戻し、パァっと笑顔になった後、想太の手を握って走る。
「早く行くわよー!ダッシュダーーッシュ!!」
「はいはい…」
想太は全力で走るこころに連れてかれるかたちで食堂へ向かった。
☺︎ ☺︎ ☺︎ ☺︎ ☺︎
昔こころと交わした約束は、とても簡単で、幼少期の想太は深く考えずに「うん」と言った。
今考えるととんでもないことを言われたし、とんでもないことを了承してしまったとも言える。
約束の内容はとても単純で、『あたしとずっと一緒にいること」である。
小さい頃のありきたりな約束だと思っていたが、その約束は高校一年生になった今でも続いている。
証拠として、目の前にはこころが笑顔で想太の手を握って食堂へと向かっている。
「今日はどんなのがあるのかしらっ!」
「詳しくは聞いてないなぁ」
「想太のお父さんの料理はとても美味しいし、想太と一緒に食べるともーっと美味しいわ!」
「…ありがと」
「どうしたのかしら?顔が赤くなってるわ!」
「追い討ちはやめてくれ…」
食堂に着くと周りには誰もおらず、キッチンでガチャガチャと音が聞こえるだけだった。
縦に長いテーブルの上には2人分の料理が置いてあり、所定の席へ座ると2人は食事を始めた。
大金持ちの食事は豪華である、と言うわけでもなく、いたって普通の料理で、今日はたらこスパゲティにサラダ、そのほかにもスープと決して華やかなものではない。
それでも父が作る料理はとても美味しく、流石コック長と言うだけはある。
「想太!今日はとても楽しかったわ!花音がいなかったのは少し残念だけど、次は花音も一緒に世界を笑顔にするための計画を立てましょうっ」
「そうだな。とりあえず今日はこころの鼻歌を曲に変えられるように試行錯誤しなきゃな」
「楽しみにしてるわ!終わったら一番最初にみせて!」
「もちろん、そうするつもりだよ」
食事が終わるとそれぞれの部屋に戻るのだが、今日はいつもと違った。
「想太くん、ちょっといいかな?」
珍しくこころのお父さんが想太を呼ぶ。
基本的にこころに干渉しないお父さんは、こころに何かある時こうして想太に頼んで色々やってもらっている。
今日も何かやって欲しいことがあるのか、と思いながらお父さんの部屋に行くと、お父さんは椅子に座り険しそうな顔をする。
「……想太くんも座りたまえ」
「は、はい。失礼します」
「そんなにかしこまらなくてもいいよ。今日は想太くんに頼みたいことがあるんだ」
「は、はぁ…」
いつもの様に何かこころにするのだろうかと思っていた想太だったが、こころのお父さんから発せられた言葉は、一瞬疑いを持つほど驚くものだった。
「君はこころの事が好きかい?」
「……え?」
「小さい頃から君はこころと一緒にいた。私もそれはずっと見てきた。今になっても想太くんはこころとずっと一緒にいる。そんな君はこころに対し、特別な感情は持っているかい?と聞いているのだよ」
「いや…確かにそうですけど」
「ど、う、な、ん、だ、い?」
突然何を言ってきているんだ、と思ったが、年頃の男女がずっと一緒にいればこんなことになるのも無理はないのだろうか。
とはいえ、こころに対しそう言った感情を持ったことは特にないし好きではあるが恋愛における"好き"ではないので、想太はありのままを話した。
「よくわかんないですけど、俺はこころに対してそう言った想いは持ったことがないです」
「そうか…想太くんはまだそういうのは早いのか…」
「早い?何がですかね」
「とりあえず、だ。私が君にお願いしたいのはこころの旦那さんになってくれないかということだ」
「何故今突然!?」
衝撃の発言が飛び出してくると、こころのお父さんは立ち上がり、想太の目の前まで歩いてきた。
「もう高校生だし、こころは結婚できる年になりそうじゃないか」
「俺はまだできないですけどね」
「NO、とは言わせたくないのだが、どうかね」
「こころに似て、貴方もぶっ飛んでますよ…ほんと」
ここまで来てしまってはNOなんて口が裂けても言えない。言ってしまったら最後、父も母もこの家に居られず、リストラされて仕事をまた探さなきゃいけなくなってしまう。
父や母に迷惑はかけたくないし、とはいえ自分の未来がほぼ限定されてしまうのもなんだかなぁ、、と思ってしまう。
だが、いい意味で捉えればこころとずっと一緒にいられる。約束を破ることなく、彼女が世界を笑顔にするまでを見届ける事ができる。
そして想太が導き出した答えは、「わかりました」である。
「…うむ、わかった。ではこころに───」
「ちょっと待ってください。それだけは俺の口から言わせてください。あと、時間もください」
「と、いうと?」
「そのことを言うのは俺のさじ加減ということです。言うべきタイミングはすべて俺に任せてくれませんかね。言わない。と言う選択肢は絶対にないわけですし、いいですよね…?」
「確かに、本人の口から言った方がいいね。わかった。タイミングは好きにしていいよ」
「ありがとうございます」
なんとかならない状態になってしまったが、想太はこころに想いの丈を伝えることが決定した。
いつか伝えるこの言葉を、いつ、どうやって言うべきなのかを真剣に考えることになるのは、まだまだ先の話である。
☺︎ ☺︎ ☺︎ ☺︎ ☺︎
自分の部屋に戻ると、こころが想太のベッドで絵本を読んでいた。
「あら想太。パパと何か話してたのかしら?」
「まぁね…色々と」
「どんなことを話したの?」
「え゛」
こころは純粋にお父さんと何を話したのか気になっている。
だが今結婚のことなんて言えないし、他に言い訳が思いつかない。
「えーっと…」
「……あっ、そうだわ!もしかしてハロハピのみんなでお花見するための場所の話をしてたのね!」
「そ、そう!家の庭じゃなんか味気ないから街の公園とかでやってもいいですか?って聞いたんだよ!そうなんだよ!」
「家の庭では前にやったわ!だから次は公園でやりましょうっ!!!」
「そうだな!そうしよう!!!」
こころの唐突すぎる考えのおかげでなんとかなった想太は、珍しく冷や汗をかいている。
「そうだわ!じゃあ明日やりましょう!ハロハピのみんなで楽しくお花見をやるのよ!」
「……まじですか」
「ええ!そうと決まったらみんなに連絡しなきゃ!」
「そ、そうだな。やりますか……」
想太は4人宛にメールを送り、返事を待つ。
すると全員からOKのサインが出たことをこころに報告し、こころが想太の部屋を出たのを確認した後、寝床についた。
今日も明日も、宮坂想太は弦巻こころに振り回されるのである…。
これは、世界を笑顔にする5人の少女の物語と、世界を笑顔にする舞台を作る1人の少年の物語である────
この作品ではあとがきは長ったらしく書かないことにしました。今回のみ長くなりますが、ご容赦ください。
・この作品の投稿時間は朝の5時56分固定です。理由はこころちゃんが大好きだからです。
・この作品の時系列としましては、3月から進んでいく形で行こうと思います。1年経った後は、学年が1つ上がる予定です。その後は永遠に学年は上がらない予定です。
・ゲーム内で行われたイベント(主にハロハピオンリーのイベント)はこの作品でも取り上げようと思います。
・ハロハピ以外にもオリジナル主人公と他のバンドとの絡みは作る予定です。
・感想、批評は随時お待ちしてます。感想は短い言葉でも作者はものすごく喜びます。批評は今後の展開などの参考になります。
次回は明日出します。1話に比べると文字数が少ないですが、2話のような文字数で早いペースで投稿できるよう努力しますのでよろしくお願いします。
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お花見はスペシャルに
タップとフリックの区別がつかなくてミスりました
こころのアイデア(本人は想太の考えだと思ってる)で突如お花見をすることになったハロハピ御一行は、弦巻家から少し離れた大きい公園でレジャーシートを広げていた。
とはいえ、シートを広げているのは想太と奥沢さんだけだが。
「寝る前にメールが来てびっくりしましたよ…」
「申し訳ないです…」
「想太くんが謝ることじゃないですよ。誘ったのはきっとこころですよね」
「いや…いろんな意味で俺が悪いんです」
「……?」
奥沢さんと会話しながらシートを広げている中、こころとはぐみちゃんはキャッチボールをしている。
「行くよー!!こころん!」
「ええ!いつでもいいわ!はぐみ!」
はぐみちゃんが投げる球は速く、普通の人なら取りこぼしそうな球だったがこころは余裕でキャッチする。
「ナイスボールだわはぐみ!次はあたしがいくわよーっ!!」
「オッケーこころん!」
一方薫さんと花音さんは桜の木の下でお話をしている。
実際話しているというよりかは一方的に薫さんの話を花音さんが聞いている、と言ったほうが正しい。
「桜とは実に儚いものだ…。春の間しか綺麗に咲かない…。ああ…儚い!」
「あ…あははは」
薫さんはこんな調子である。
「奥沢さんも他の人たちと遊んだりしてていいですよ。準備は俺がしますから」
「いや、いいですよ。想太くんには色々助けてもらってますし、……特に3バカ関係で」
「あはは…そうですかね」
少し時間がかかってしまったが準備が終わると、全員シートの上に座り、黒服さんが持って来てくれた料理を食べ始めた。
「すごいいっぱいあるね!あ、はぐみコロッケを持ってきたよ!」
「これは、雑煮じゃないか…!素晴らしい…」
「美味しそうなケーキもある…すごい」
「お、ファミレスにありそうなハンバーグだ…。流石にこういうのはないと思ったけどあるんだ」
「どうやら親父が奮発したようですね。みんなの好みの食べ物が相当あるそうです」
父によれば複数人の女の子たちとお花見という名のデートがあるなら女の子たちの好きなものをなんでも作るしいくらでも用意してやるとのことで、どうやら本気を出しすぎたらしい。
「見て見て想太!ニコニコマークのポテトだわ!」
「ハロハピをモチーフにしたんだろうな。美味しそうだ」
しばらくご飯を食べていると、こころは昨日話したライブのことについて話し始めた。
「そうだわ!今日はみんなでライブをするのよっ!ゲリラライブよ!」
「いいねこころん!はぐみもやりたい!」
「桜が舞う中のライブ……儚い!」
3人がノリ気になると止めることは難しいと判断した花音さんと奥沢さんは、どこでどのようなライブをするかについて話していた。
「ライブをするのはいいよ。けど何もなしにやるのはどうかと思うよ」
「そんなの簡単だわ、お花見を楽しんでる人を笑顔にするのよっ!」
こころがそう言うと、黒服さんが全員分の楽器をレジャーシートの上に設置し、音響関係も準備していた。
「こころん!ミッシェルがいないよ?どうしよう!!」
「問題ないわ!黒服さんがミッシェルも連れてきたって言ってたもの!」
「そっか!ミッシェルも来てくれたんだね!」
奥沢さんはこころたちから少し離れたところでミッシェルの中に入り、その後ゆっくり歩いてきた。
「ミッシェルだ!ミッシェル〜!!!」
はぐみちゃんがミッシェルに飛びつくと、続いてこころや薫さんがミッシェルに近づいてくる。
(うぐっ!突然飛びつかないで…)
「は、はぐみちゃ〜ん、み、ミッシェルびっくりしちゃったよ〜」
「ふっ、ミッシェルじゃないか…君はいつも素敵だね…」
「か、薫さんも素敵だよ〜」
「さぁ、ミッシェルも準備いいかしら?ハロー、ハッピーワールドのゲリラライブを始めるわよ!!」
☺︎ ☺︎ ☺︎ ☺︎ ☺︎
突如始まったハロハピのゲリラライブは、あっという間に人だかりができた。小さな子供から酒に酔った会社員まで、老若男女問わず多くの人がハロハピのライブで盛り上がった。
最初は何も分からなかった人たちも、こころが何曲も歌っているうちに笑顔になって行くのを見ていると、こっちまでも笑顔になってしまう。
「まだまだ行くわよ!!そーーれ!!」
「はぐみもやる!いっけーー!!!」
こころとはぐみちゃんのアクロバティックな動きを見ているお客さんは、皆笑っていた。
「面白いバンドだね。見てて楽しいよ」
「ほんとにね!また今度見たい!」
声援やライブについての感想などが聞こえると、冗談抜きに嬉しくて泣いてしまいそうになる。
そんなこんなでゲリラライブは大成功し、お客さんはみんな笑顔になっていた。
「大盛況だったな。良かった良かった」
「そうね!すーーっごく楽しかったわ!」
「うん!すごく楽しかったね!」
この後薫さんが何かを言うと思っていたが、その薫さんがいない。
「あ…そうか。薫さんはいつものアレか」
想太が言う"いつものアレ"とは、薫さんを囲むファンのことだ。
見た目がカッコいい薫さんは、どこかへ行くたびに女性ファンが周りを囲む。
薫さんはノリノリで王子様をしてるので邪魔するのは申し訳ないのだ。
「相変わらず薫さんはすごいですね。人を惹きつける力ってのがあるんですかね」
「そうだね…カッコいい、もんね」
「ふぅ…なんとかミッシェルから戻ってきました…」
奥沢さんがミッシェルから出てきて、いつもの姿に戻ると、想太は飲み物を渡す。
「あ…いつもありがとうございます」
「お疲れ様です。はい、タオルもどうぞ」
「はぁ〜〜生き返る〜。はぐみやこころに抱きつかれた時はびっくりしましたよ…」
「ははは…。こころもはぐみちゃんもミッシェル大好きですもんね」
「ですね。一体いつになったらあたし=ミッシェルってわかるんでしょうね」
「さぁ、わかりませんな」
結成してから何度かライブをしてきたが、このような突発的なライブは今までしたことがなく、新鮮さがあった。
しかも外でやる、というのがまた新しく、今後の参考になるかもしれない。今日のライブを振り返ると、今後に役立つ点がいくつかあったと思う。
「次はちゃんと計画立ててやりましょうか…」
「そうですね…。そのためにも花音さんと想太くんとあたしの3人で、あの3人をなんとかしましょうか…」
今日も世界を笑顔にするハロー、ハッピーワールド!
次はどこの世界を笑顔にするのだろうか。
今回のイベント、美咲ちゃん(特訓前)が可愛い
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怪盗と豪華客船
オリジナル展開+かなり端折ってます。ご了承ください
"そうだわ!船に乗りましょう!"
次の練習日を決めるために集まったはずだが、こころの一言でナイトクルーズに行くことになった。
もちろん最初は奥沢さんも花音さんも驚いていたが、仕方ないか…と半分諦めモードに入ったのでみんなで行くことになった。
各々の準備があったため3時間後、弦巻家では想太とこころが正装に着替えていた。
こころは赤いドレスを、想太は黒のタキシードを着てリムジンに乗り込んだ。
「なんで俺はタキシードなんだ?別に私服でもいいだろう」
「パパが着てくれ。って言ってたのよ!」
「なるほど…。こころはこころで赤いドレスか。船に乗るときはいつも着てないか?それ」
「いつもこれを着るって決めてるのっ!」
「そうだったのか。いつにも増して綺麗だな」
「ありがとう!」
リムジンが止まり、最初に薫さんをリムジンの中へ案内し、その後はぐみちゃんと花音さんを迎えに行った後、最後に奥沢さんを案内すると、リムジンは船まで走り始めた。
「すごいね…」
「車の中にいる感じしませんよねこれ。今でも乗ると緊張するんですよ。なんか怖くて」
「その気持ち、なんとなくわかります」
花音さんと奥沢さんと想太の3人はいつも通りにしているが、こころやはぐみちゃん、薫さんはいつもよりはしゃいでいた。
2人に関しては普段見慣れないものを見ているからだが、こころはこれから起こることを考えているためはしゃいでいる。
「お嬢様、そろそろ港に到着致します。ご準備を」
「ええ、わかったわ!」
それからしばらくしないうちに港に到着し、全員が車から降りると目の前には巨大な客船が停泊していた。
「相変わらず大きいなぁ」
「想太くんも乗ったことあるの?」
「まぁ1、2回ですけどありますよ。こころの付き添いとかで」
皆が客船の入り口に乗り込んだあと、最後に薫さんが入ろうとすると、黒服がそれを止めた。
「おや?どうしたんだい?」
「実は・・で、・・・をしていただきたくて」
「なるほど。余興ということか…。実に儚いね。わかった、華麗に演じきってみせよう」
☺︎ ☺︎ ☺︎ ☺︎ ☺︎
船内に入ると外装よりも数倍煌びやかな装飾が数多くあり、特にシャンデリアは家にあるものよりも大きい。
エントランスではこころとはぐみちゃんがそわそわとしており、奥沢さんと想太がそれを止める。
「あ…あはは」
花音さんが苦笑いしていると、黒服さんが花音さんの元へやってきた。
「松原様にぴったりのお召し物を用意いたしました。是非着ていただきたいのですが…」
「ふぇ?」
黒服さんがそう言うと花音さんをどこかへと連れて行ってしまう。
「あれ、そういや薫さんもいないし…って、あれ、花音さんもどっか行った?」
「さっきまでいませんでした?」
「ねぇこころん!はぐみ、甲板行きたい!」
「えぇ!行きましょう!行くわよー!はぐみ!」
「おぉー!!」
こころとはぐみちゃんが走ろうとした時だった。
想太たちがいたエントランスの電気が消え、なにも見えなくなってしまったのである。
何度か船に乗ってきたがもちろんこんなことは初めてである。
「えええぇ!?急に暗くなっちゃったよ!」
「停電、ですかね」
「だと思いますよ…。大きい船だから予備電源くらいあると思いますし、すぐ直るんじゃないですかね」
奥沢さんの言う通り、停電はすぐ直り、エントランスの電気がついた、のだが………
「豪華客船『スマイル号』へようこそ!素敵な夜だね!可愛いお嬢さん達と素敵な王子様!」
「んんっ?誰だこの人」
「私の知り合いではないわ!」
「もちろん俺の知り合いでもないぞ」
「私の名は怪盗ハロハッピー!今夜はステキなお姫様をさらわせてもらうよ!」
怪盗ハロハッピーと名乗る人は高らかに笑い、脇に1人の女性を抱えている。
「ふぇぇ…」
「花音さん!?」
「何する気だよ怪盗さん」
「なに、彼女に乱暴なことはしないさ。そうだな…まずはカジノで待つ。さらば!」
怪盗は煙玉を使って視界を悪くしたあと、姿を消した。
花音さんがさらわれてしまったのだが、どうもしっくり来ない。
「つい本気で焦りかけたが、これってもしかして」
「もしかしなくても…だと思いますよ」
「奥沢さん…」
2人は既に気づいていた。怪盗ハロハッピーが誰なのかを。
ただ、それをここで言うのは野暮だと思い、こころたちの後を追うことにした。
☺︎ ☺︎ ☺︎ ☺︎ ☺︎
「…大丈夫ですか?」
「はぁ…はぁ…はぐみもこころも速すぎる…。ぜー、ぜぇ…」
「とりあえず水です。ゆっくり飲んでください」
「ありがとうございます…はー、生き返る」
相当全力で走ったのか、奥沢さんは息を荒げて座り込んでいる。
「相変わらず広いなぁここのカジノは」
「カジノって、あたし達みたいな人たちがいていいんですか?確かダメだったような」
「大丈夫ですよ。ここで使われるコインはすべておもちゃのコインです。だから自分たちでも遊べます」
「そうだったんですか…。けど、怪盗は来てないですね」
「ですね。なんかあったんですかね」
想太がこころとはぐみちゃんの方を見ていると、2人は息を合わせて「怪盗さん!花音を返しなさい!」とビシッと指をさして言う。
すると怪盗は華麗にやってくると思いきや普通に歩いてきた。
「待たせたね」
「あ、きた」
怪盗がポーズを構え、話を続ける。
「悪いが君たちの想いに応えることはできないよ。このまま返すのはつまらない。だからここで勝負をしようと思う」
「カジノで勝負ですか…こりゃまた洒落た感じですね」
「勝負!?いいよ!ソフトボールでいい!?」
「………」
まるで話を聞いていないはぐみちゃんに、流石の怪盗も返す言葉が見つからなかったのか、少し沈黙が続く。
「…そうだね。せっかくのカジノだ。ルーレットでもやろうか」
「ルーレット?どうすれば勝ちなの?」
「なに、難しいことはない。赤か黒のどちらかを選んで、ボールが落ちた方が勝ちさ」
「ふーん、なら簡単だね!」
はぐみちゃんは一切の迷いなく、言葉を続ける。
「勝利の炎は赤だから、赤!」
ビシッ!とルーレットの台を指差し、はぐみちゃんは真剣な表情を見せる。
あまりに単純だが、それもはぐみちゃんの意思なのだから、後から言うのも野暮だ。
想太ははぐみちゃんの想いに反対することなくそのまま続けようとする。
「待ってはぐみ、はぐみの選んだ色で花音さんが戻ってくるか来ないかが決まるんだよ?もっと慎重に考えた方がいいんじゃない?」
「まぁまぁ…いいじゃないですか…」
「…むう」
想太の介入でようやく諦めた奥沢さんを見た怪盗は、またしてもポーズを決める。
「決まったかね。なら私は黒にしよう。ディーラー、ルーレットを回してくれ」
「はい」
いつのまにかディーラーになっていた黒服さんはルーレットを回した。
「ふふ……」
「どっちだ…?」
ようやくルーレットの台が止まった。
ボールが入っていた色は……。
「……黒、だね」
「え、嘘…」
「私の勝ちだ。と、言うわけでまだお姫様は返せないね」
「ちょっと待った怪盗さん」
「おや…?」
去ろうとする怪盗を想太は止める。
「カジノって広いんですよ。ここにあるのはルーレットだけじゃない。わかります?」
「はははっ、面白い事を言うじゃないか王子様!」
「んなぁっ!?」
「そうだな……ポーカーで勝負だ。俺が勝ったら花音さんは返してもらおうか」
「ふふふ…わかった。じゃあ始めようか」
想太はタキシードの上着を脱ぎ、ワイシャツの腕をまくったあと、体を動かす。
「よっしゃー、やったるぜ」
果たして、想太は花音さんを取り戻すことはできるのか……。
「そういえば、想太はポーカーはすーっごく強かったわ!」
「そうなの!?はぐみポーカーは難しいからわかんないや」
「ハロハピ唯一の良心的存在の想太くんが負ければ勝てる気がしない…」
今回のイベントのこころが10連で出てきてくれたおかげで30連分の余裕ができたけど、ペルソナコラボで溶けそうな気がしてきた…。ハロハピ2章まで貯めたい…!
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怪盗と豪華客船②
今回のイベントストーリーいまだに見てない。見なきゃ
「ルールはどうします?特にカードのチェンジの回数とか」
「そうだね…2回までにしようか」
ディーラーがカードをシャッフルし、1枚ずつ怪盗と想太に配る。
カードの柄がミッシェルなのは何故なのだろうか気になったが、今はそれを気にしてる場合ではない。
想太は配られたカードを見て、表情を変える。
(……初手7が2枚Jが2枚って、普通に強くないか?)
想太はすでにツーペアだったが、それは想太だけではなかった。
(おや?5が2枚とQが2枚。すでにツーペアじゃないか)
怪盗もツーペアだった。だが、このまま勝負に持ち込めばカードの強さ的に怪盗が勝ってしまう。
それを知らない想太だが、怪盗の表情を見てある結論に至った。
(あの余裕の表情、いつもあの人はあんな感じだが、いくらなんでも余裕がありすぎる。もしかしなくても、強い手が来たのか?なら俺は一か八か賭けるしかないな)
想太は手札にある余計なカードを置き、山札にあるカードを一枚めくる。
想太の手に渡ったのは、ダイヤのJだった。
(フルハウスか!これは勝ちかもしれんぞ!このままステイして、怪盗の動きを見ようか)
「ふふ、随分と表情を変えたね。何かいい手が来たのかな?」
「まぁそうですね。結構いい手だと思ってます」
「なら私は、3枚チェンジしようかな」
「……?」
想太は怪盗が捨てたカードを見て唖然とする。
怪盗が捨てたのは、5が2枚とAが1枚。すでにペアが揃っているカードを捨てたのだ。
「君が一か八かを賭けるのなら、私も賭けなければ公平ではない。それに、かのシェイクスピアもこう言っている。『慢心は最大の敵である』と……」
「……まさか、ね」
悪い予感というのはどうも的中してしまうもので、怪盗が引いた3枚のカードには、おそらく怪盗に有利であるカードが入ってたらしく、満足げにこちらを見る。
「賭けは私の勝ちのようだね…」
「……なんですか、ロイヤルストレートフラッシュでも来たんですか?」
「さぁ…?」
「お互いカードの交換はないようなので、オープンしましょうか。それでは想太様から」
「7とJのフルハウスだ。なかなかだろう」
「……では怪盗ハロハッピー様、どうぞ」
「運命とは実に残酷なものだ。すまないね王子様」
怪盗のカードは、Qが4枚のフォーカードだった。
ペアの強さ的に、フルハウスはフォーカードに勝てない。つまり、想太の負けである。
「すごい確率だな。さすが怪盗、というべきなのか?」
「怪盗は運すら味方につける、つまり、そういうことさ」
「そりゃ強いですよ。負けました」
☺︎ ☺︎ ☺︎ ☺︎ ☺︎
「すごかったわ!想太!」
「ああ、ありがとうこころ」
「そう落ち込むこともないわ!まだ怪盗さんはあたしたちを待っているのよ!」
こころが見せてくれた紙には、『この船で一番儚いものが手に入る場所で待つ』と達筆な字で書かれていた。
「儚いもの…?ギフトショップか?」
「そうよ!」
「じゃあいこっ!そーくん!ダーッシュ!」
そう言ってはぐみちゃんとこころは再び全速力で駆け抜けて行く。
「…どうしてわかったんです?こころもすぐわかったんですよね。………なんとなくですけど、こころと想太くんは似てますよね」
「似てるというより、似せてるんですよ。俺がこころに」
奥沢さんはきょとんとしながらこちらを見る。
たしかによくわからない言い回しだった。
「なんといいますか、自分はこころに追いつこうとしてるんですよ。一緒にいるために」
「想太くんはこころのことが大好きなんですね…」
「まぁ……そうですね。ずっと一緒にしましたし」
「…今すごく恥ずかしいこと言ってましたね」
奥沢さんは顔を真っ赤にする。先ほどまでこちらを見ていたが、この後しばらく想太を見ることはなかった。
「さて…着いたけど、怪盗はいるのか?」
「迷わずここに来れるとは流石だね」
すでに怪盗はギフトショップに着いていたらしいが、花音さんは相変わらずその場にいない。
この様子だと、また何か勝負をすると思うが…。
「ここのギフトショップで私が気に入りそうなものを選んでくれないか?」
「すごいアバウトだなぁ」
「流石に難しい気が…」
「私が欲しいのは儚いものさ。……わかるだろう?」
「そりゃまぁ、あなたですからねぇ…」
「たしかに、けど儚いものってなんだろう」
奥沢さんと想太が悩んでいると、はぐみちゃんが走ってこちらにやってくる。
「そーくん!みーくん!これはどう!?」
「これは、靴下?」
「うん!すっごく可愛いし、走りやすそう!」
「たしかに可愛いけど…それなら隣の…」
と、想太が靴下の隣にあるものに触れようとすると、別方向から手が現れ、想太はその手に触れる形になる。
「「このスノードームなんかいいと思う(わ)!」」
「って、こころ!?」
「あら想太、あたしと同じこと考えてたのね!」
「あ、ああ…そうだな」
想太は触れていた手をズボンのポケットにしまい、顔を真っ赤にする。
先ほど奥沢さんに言われた言葉を思い出してしまうと、今まで普通に見てたのに直視できない。
『想太くんはこころのことが大好きなんですね…』
他意はないのだろうが、ぐさりと刺さる言葉だった。
(そうではあるけど、そうではない。なんというか、すごい複雑な感じだなぁ。俺、このまま一生このもどかしさを感じながら過ごしてくのか!?)
「そ、そうですね!こころも想太くんもいい線行ってると思います!けど別のやつも探しませんか!?」
何かを察した奥沢さんは話をぶった切り、こころと想太を離そうとする。
それで納得してくれたこころははぐみちゃんと別の店に入り、他の商品を探し始めた。
「…ありがとうございます。死ぬかと思った」
「想太くんにしてはすごく考えてましたね。色々思うことはあるかもしれませんけど、とりあえず花音さんを助けることを優先に考えましょう」
「はい…」
ようやく我に帰った想太は奥沢さんと共に儚いものを探す。
しかし、怪盗にとっての儚いものとはどんなものかが分からず、結局何も選べず終わってしまった。
一方はぐみちゃんとこころは満足した顔でこちらに戻ってきて、2人が選んだものを見せる。
「お面…それも、部族がつけてそうなやつか」
「それでいいかい?」
「ええ!あたしはいいと思ったし、怪盗さんもきっと気に入るわ!」
「ふむ。たしかに悪くは無いが、勝負は次に持ち越させてもらおうかな」
「まーだあるんですか…。次はどこです?」
「そうだね。シアターにてお姫様を取り戻してごらん」
「はいはい…次はシアターへ行こうか」
想太がシアターへ向かおうとすると、こころとはぐみちゃんは買ったお面で遊んでいた。
「あたしはいいと思ったんだけど、怪盗さんは気に入らなかったようね!」
「はぐみもこころんの買ったお面好きだよ!」
「次はシアターね!行くわよはぐみ!!」
「オー!!」
2人が話している間も奥沢さんとシアターへ向かって歩いていたのだが、走り始めた2人には勝てず、すぐに追い抜かれてしまった。
「結局走ることになりましたね…」
「はぁ、はぁ、想太くんは体力ありますね…あたしはもう無理です…。疲れました」
「普通の女の子ならそれが当たり前のことですよ。2人がすごいだけです。自分は男だからそこそこ体力あるだけですよ。それに、ずっとこころと一緒にいましたし、いやでも体力がつきますよ」
シアターの後ろの方で話していると、舞台の上のカーテンが開き、2人の影が見える。
「やぁ、随分と早かったね。君達の大切なお姫様はこの通り無事さ」
「花音さん!大丈夫ですか!?」
「う、うん。大丈夫だよ想太くん…」
怪盗とはいえ、流石に何か危害を加えるような人ではないと信じていたので、確認も含め花音さんに聞いてみたが、どうやら大丈夫そうである。
花音さんは椅子に縛られてるわけでもなく、普通に座っていた。
「次はどんな勝負ですか?ここでやれるものってある気がしないんですが」
「ここはさまざまな舞台でいろんな演者がたくさんの役を演じている。だからここでは今目の前にいる麗しいお姫様に告白の演技をしてもらいたい」
「今までのどの勝負より難易度が高い!」
「そしてそれを演じるのは……君だ」
怪盗が指差した先にいた人は、奥沢さんだった。
たしかに奥沢さんはまだ勝負を行なっていない。とはいえ女の子が女の子に告白するのはいかがなものか。演技とはいえ、ものすごく恥ずかしいだろう。
「断固お断りします」
…それが当たり前の答えだ。普通なら誰だってやらない。
それでもこころとはぐみちゃんは奥沢さんを止める。
「みーくんがやらないと、かのちゃん先輩が助けられないよー?」
「お願い美咲、花音のために告白してほしいわ!」
「…私からもお願い、美咲ちゃん」
奥沢さんは困った顔をして想太の方を見る。どうやら助けを求めている。
「……こればっかりは難しいかと…」
「想太くんもダメですか」
「とりあえずやるだけやってみたらどうですかね。一応全員何かしらをやる感じっぽいですし」
「………」
奥沢さんはため息をつきながら壇上へ登っていく。
怪盗は奥沢さんの後ろへ歩き出し、さながら映画監督のように舞台袖の方から二人のやりとりを見るつもりである。
「それでは、演じてもらおうか」
はたして、奥沢さんの演技で花音さんは戻ってくるのだろうか。
次で終わる予定です。
この後はGWの話とかやろうかな…
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