Fate/Destroyed Order (防要塞 唯我)
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予告編
Fate/Destroyed Order 予告編
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「人理焼却は既になされた。その偉業はつつがなく進行されている。だが、首謀者にも予期せぬ
人理定礎値:C?
六騎のみの聖杯戦争
英雄の記録
全てを壊し変革するもの
永き旅の朋友
「破壊者は既にこの世界に降り立った。その男の名は仮面ライダーディケイド。本来この世界では創作物としてあるはずの存在である。ディケイドが顕れた以上、この世界も破壊されるだろう。故に、此度の
人理定礎値:C++
二つの幻想大剣・天魔失墜
六騎の狂化仮面騎兵
中華民族の始祖
無限の希望を秘める指輪
「歪められた戦いの中では、本来よりも強力な敵戦力も現れることだろう。――だが、悲観することは無い。」
人理定礎値A-
堕ちた追跡者
頻発する重加速
最大版図に至った皇帝
「それぞれの地には歴史に名を残す英雄のみならず、仮面ライダーが召喚されているからだ。しかし、彼らが召喚された理由はディケイドによって世界が破壊されたからだ。おのれディケイド! それ故に、ディケイド――お前はその責任を取らねばならない」
人理定礎値A?
月の海
変・身・装・置
暴走する「正義の心」
人が生み出した悪魔
「勿論、仮面ライダーも善なるものばかりではない。人類最後のマスター――君に敵対する者もいるだろう。だが、基本的に仮面ライダーは英雄だ。当然、君を阻もうとする仮面ライダーがいるように君に手を貸す仮面ライダーもいる」
人理定礎値:A
地球の記憶
既に倒れた黒幕
さぁ、お前の罪を数えろ
「その仮面ライダー達は主にディケイドの後に生まれた者達だ。中には面識のある者もいるだろう。だがしかし、ディケイドは世界の破壊者である。その事を忘れてはいけない。お前が彼らに協力を望むというのなら、普段の旅と同様に彼らとぶつかり合う必要があるだろう。」
人理定礎値:A++
始まりの
壬生狼
十五英雄との共闘
求道の音楽家
「人類最後のマスターよ、君にそのデメリットを押してまでディケイドと契約する気があるというのなら私は止めない。私は本来の状態から歪められた君の事情も把握している。そのまま突き進みなさい」
人理定礎値:EX
心の叫び
美しきこの世界
王の証
「私は君に警告することしか出来ない。だが、どのような結末であろうと見届けると約束しよう」
人理定礎値:ERROR
三女神同盟対三神同盟
送り込まれた密偵
禁断の果実
第三の千里眼
「それでは、君達の戦いの始まりだ。」
「ディケイドよ、例えどんな幸福な結末を迎えたとしてもお前がいる限り、世界は破壊される。それだけは覚えておいた方が良い」
ここまで読んでくださってありがとうございます。
前書きにもあるようにこちらはエイプリルフール企画になってます。
しかし、実際に書くかも知れません。
ですので、もし興味があったりする方は評価や感想で反応をくださると嬉しいです。
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序章 「炎上汚染都市 冬木」予告
去年のエイプリルフールに投稿させていただいた予告編からはや一年が経とうとしています。
というわけでお知らせも兼ねてこんなものを作らせていただきました。
旅を続ける仮面ライダーディケイドこと門矢士。そんな彼が今回通りすがった世界は「Fate/Grand Order」の世界だった。『仮面ライダー』の存在がテレビの中のヒーローとしてあるこの世界で、その瞳は何を見る!?
「どうやら、今回の俺の役割はあんたのサーヴァントって所らしいな」
「もしかして……あなた門矢士?」
ディケイド、彼の行く先では普通では起こりえないことが起こる。それ故に彼は世界の破壊者と呼ばれる。
「一体何者なの、このサーヴァント……それにこの感じ、契約にカルデアのシステムが介されていない? ということはこのサーヴァントはこの聖杯戦争の七騎のうちの一騎ってことなのかしら……」
「考えるのはあとにした方が良さそうだ。どうやら、お客さんらしいぞ、
彼と、彼を呼び寄せたマスターである藤丸リツカ、そしてマシュ・キリエライトは特異点Fの戦いに否応なく巻き込まれていく。
「どうやら、ようやく役者が揃ったらしいな。とりあえず手合わせと行こうぜ、ライダー」
「ようやくマトモに話が通じるサーヴァントが現れたと思ったらこれか。仕方ない、ちょっと遊ぼう。『変身!』」
【DECADE】
「貴様、まさか……仮面ライダーか?」
「俺のことを知ってるとは、この世界では俺は本当に創作物らしい。だが、お前も相当な偽物だな?」
「ふっ、察しが良いな。だが、貴様も他人の力を借りて戦うタイプだろう? 贋作者同士、力比べと行こう」
「贋作者か、確かに俺もそう言う口なのかもしれないな。だが、生憎と俺は破壊者だ。ちょっとお門違いって話だな」
「それは失礼。オレもかなり壊れていてね。そろそろ始めるとしようか。だが、オレの動きに貴様はついてこれるか?」
「ふっ、お前の方こそ俺について来れるか?」
【KABUTO】
【ATTACK RIDE】
【CLOCK UP】
「リツカ、宝具を使う。いいな?」
「いいよ。やっちゃって、士」
「さて、それじゃあ見せてやる。
【FINAL KAMEN RIDE DE DE DE DECADE】
そして、彼らは汚染された聖杯の守護者と対面する。
「貴様らの旅は終わる。案山子ごっこも辞めにしよう。さらばだ、人類最後のマスター。破壊者を呼んだのが貴様の運の尽きだ」
「違うな。俺たちの旅はまだ始まってすらいない。――」
「Dr.ロマンとか言ったか。それとも、こう呼んだ方が良いか? ▪️▪️▪️▪️」
「……! キミはまさかあの時のことを覚えているのかい、ライダー。いや、バーサーカー」
「あぁ、だいたい分かってるさ、だから俺はここに再び来たのかもしれないな」
いかがだったでしょうか。
予告通り、4月1日より序章の連載を始めていきたいと思ってます。現在鋭意執筆中ですのでお待ちいただけると幸いです。
感想やお気に入り、評価などいただけると嬉しいです。よろしくお願いします!
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序章 炎上汚染都市 冬木
第一話 「Re:Imagination Grand Order」
そのうち高校野球で流れた枠の代理放送的な感じで埋め合わせるので許してください……!
それでは、本編をどうぞ。
「全く、雑魚ばかりだな。直ぐに片付けるとするか」
顔にバーコードのようなマークが刻まれたマゼンタカラーの戦士は、襲いくる
読みあげる声が聞こえたかと思うと五体の骸骨兵は爆発四散し、辺りに骨の残骸が無造作に散らばった。
その様子を見ながら、赤髪の少女―藤丸リツカは感嘆の声を上げる。
「すごい……本当に仮面ライダーはいたんだ!」
彼女は、自分が戦場に足を踏み入れることになったきっかけを思い出す。そう、日本を出たあの時から全ては始まっていたんだと。
日本の大型空港。その空港のラウンジで、一人の少女が電話をかけている。
「あ、もしもし。アタルくん? 今日の夜母さんに会うはずだよね? 悪いんだけどその時に、私の部屋の服、押し入れにしまっておいてもらうように言っといてもらえるかな?」
彼女の名前は藤丸リツカ。16歳で、先日まで高校生として暮らしていた少女である。
「うん、うっかりしてて箱出しっぱにしちゃってさ。一応連絡はしたんだけど電話通じないし、今から私も連絡取れなくなるからお願いしたいんだけど……」
そんな彼女だが、今は高校を休学し、ある特殊な任務のために日本を発とうとしている。
「ありがとう。じゃあ、行ってくるよ。なかなか連絡も取れないと思うけど、なるべくマメに連絡するよ。お兄さん――シンゴさんにもよろしくね」
その任務というのは――
「電話は終わったかい? リツカちゃん」
「茜沢さん。お待たせしちゃってすみません」
その任務というのは、彼女に声を掛けた西洋風の男、ハリー・茜沢・アンダーソンによってもたらされたものである。
国連主導で行われる国際的なプロジェクトであるらしく、人類のためにどうしても必要だと言われ、リツカは高校を休学してまでその国際機関――フィニス・カルデアに向かうことにしたのだった。
「オーケイ、じゃあカルデアに向かうとしようか。言っておくけど、すごく寒いから防寒具はカバンから出しておくことを勧めるよ」
「分かりました!」
リツカは、カルデアがある場所は標高6000mを超える山の中だと聞いていた。もちろん、日本からでたことがないような女子高生にそれがどれほど厳しい環境なのか想像出来る訳もなく。結果としてリツカは現地で寒さに震えることになる。
「リツカちゃん、大丈夫かい?」
「こんくらい、なんてことないです……! 私はヒーローになる女……折れません」
寒さでガチガチと歯を震わせながら言うリツカだが、当然説得力はない。
【――塩基配列 ヒトゲノムと確認。――霊器属性 善性・
ガチガチと震えるリツカの情報をカルデアの入口に備え付けられた機器が解析していく。
「これ、何分くらいかかるんですか?」
「多分もうそろそろだとは思うけど……本当に大丈夫かい?」
「大丈夫ですって!」
【はじめまして。貴方は本日最後の来館者です。 どうぞ善き時間をお過ごしください】
アナウンスが鳴り響き、扉が開く。リツカはもう耐えられないとばかりに建物に飛び込み、そして勢い余って内扉に頭をぶつけた。
「へぶっ!?」
「やっぱり大丈夫じゃないじゃないか……全く、二重扉って説明をする前に飛び出すなんて、なかなかに逞しいね」
【……申し訳ございません。入館手続きにあと180秒必要です。その間、模擬戦闘をお楽しみください】
「へっ?」
「リツカちゃん、君はマスター候補だ。このタイミングで訓練をしておくのも良いんじゃないか? ほら、スコアの記録もしないみたいだしさ」
「何だかよくわからないですが、やってやりますよ!」
そうして、わけも分からないままにリツカは模擬戦闘に突入し、そして……惨敗した。
「聞いてません!!」
「確かに説明が足りなかったかもね……」
「私、指揮とかやったことないんですけど!」
「うん、その辺に関してはこっちの説明不足だ、申し訳ない。そうだ、ちょうど良い機会だし、歩きながら説明しよう。君の仕事は――リツカちゃん?」
茜沢が振り返ると、そこでは藤丸リツカが床で爆睡していた。
「…………やれやれ。とりあえずドクターを呼びに行くかな」
そう言って、彼は羽織っていた上着を彼女にかけ、医務室へと歩み始める。
『よう、バーサーカーとそのマスター。あんたらやりすぎだよ。子供に手をかけようだなんて、ゴールデンじゃないなぁ!』
『ライダー!! 貴様には関係ないねぇ! オレは殺したいから殺す! この世界を破壊してやるのさ!』
その頃、藤丸リツカは夢を見ていた。彼女が頻繁に見る夢で、自分に迫り来る怖い二人組から、ライダーと呼ばれた男が助けてくれる夢である。
『バーサーカー! そのサーヴァントは任せる。 オレはガキをやるからよォ!』
「……ください。……きてください。……起きてください!」
その呼びかけで、リツカの意識は急速に回復する。
「あれ……私なんでこんな所で寝てるんだっけ……」
「フォーウ!!」
ボケっとした顔のリツカに、モフモフの生き物が飛びかかる。
「もうフォウさん、いきなり飛びかかるのは辞めてください」
「フォーウ? キュウ!」
フォウと呼ばれたそのモコモコの生き物はリツカの顔を舐める。
「あはは、くすぐったいよ。でも可愛い。フォウって言うの?」
「フォーウ!!」
「驚きました。まさかフォウさんがここまで初対面の人に懐くなんて……」
「フォウ? フォフォーウ」
少女がそういうとフォウが、何かを勘づいた様子で、二人の元から離れていった。
「そう言えば……キミは?」
「あぁ、そう言えばまだ自己紹介をしてませんでしたね。わたしの名前は――」
そうしてその後、マシュ・キリエライトと名乗る少女と自己紹介をし合って、後からやってきたレフ・ライノールなる人物との会話の後、リツカはマシュに連れられてリツカは中央管制室での説明会に参加していた。――そして、その中で居眠りを行った結果、この施設の所長に平手打ちをもらい、説明会を追い出され、マシュと戻ってきたフォウと共に自室に案内されていた。
「さて、こちらが先輩の部屋になります。わたしはファーストミッションがあるので、ここで失礼します。あとはフォウさんが見ててくださるそうです」
「フォウフォウ!!」
フォウが任せろ!と言わんばかりに元気よく鳴く。その様子を見て人の言葉を分かっているのではないか、とリツカは感じた。
「頼もしいよ。マシュもここまで案内してくれてありがとうね。ファーストミッション、頑張って!」
「いえ、わたしはただ当然のことをしただけですので。それでは、また機会があれば会いましょうね、先輩」
そう言って、マシュは穏やかに微笑んだ後に去っていった。リツカはそれを見送ると、マシュに渡されたカードキーをかざして自分の部屋の扉を開けた。
「うわぁぁ!? 誰だキミは!? ここはボクのサボり場の空き部屋だぞ! 誰の断りがあって入ってくるんだい!?」
「え、ここが私の部屋って聞いたんですけど、貴方こそ誰ですか!?」
部屋を開けた瞬間に、ポニーテールのゆるふわ系の男の姿がリツカのに入る。もちろんリツカも困惑を隠せない。
「あぁ……荷物が増えてるなと思ったら。キミが最後のマスター候補の藤丸リツカ君だね。はじめまして。ボクは医療部門のトップのロマニ・アーキマン。みんなからはDr.ロマンと呼ばれてるよ。多分呼びやすいしキミもそう呼んでくれて構わないとも。」
「あ、私の荷物。先に来てたんだ」
リツカはDr.ロマンの話を聞くことなく、自分の荷物の内容を確認する。その中身は、仮面ライダーの変身ベルトを初めとした玩具であった。
「いきなり無視はひどくないかい!? って……その荷物は。仮面ライダー……かな?」
「知ってるんですか!?」
リツカの目が輝き、さっきは完全に無視したDr.ロマンの方に食い気味で詰め寄る。
そのあまりの身のこなしの速さにロマンは困惑しながらも返事を返す。
「あぁ……以前日本に旅行に行った時にたまたま見かけてね。ハマっちゃったんだ」
「本当に!? 海外って聞いてたので趣味の話ができる人がいるとは思いませんでした!! 好きな仮面ライダーはなんですか? あと――」
興奮して、テンションの上がってしまったリツカはその後Dr.ロマンを質問攻めにし、彼をタジタジにさせていた。そんな中、レフからの通信があり、ロマニはサボりがバレるとボヤきながら部屋を出ようとする。
その瞬間、館内が揺れたかと思うと警報が鳴り響いた。
「今のは爆発音か!? 一体何が! モニター、管制室を映してくれ!」
「管制室って……マシュ!?」
モニターに映し出された管制室は、炎上していた。それを見るや否や、リツカは部屋を飛び出す。彼女の心がそうしろと告げたのだ。ここで走らないと、憧れのヒーローに笑われてしまう。そう思った彼女は考えるより先に走り出していた。
「リツカちゃん!?」
「ごめんなさいドクター、私マシュを助けに行かないと!」
「あぁ、ちょっと待って!! キミ一人だと危ないしボクも行く!」
Dr.ロマンは、意外と脚力のあるリツカに追いつかれないように全力で走る。そして、管制室に入ったところでようやく追いついた。
「リツカちゃん……走るの早いね……でも、ここの隔壁ももう閉まっちゃうから早く出ないと……!」
「私、マシュを探さないと行けないんで、ドクターは先に避難しててください!」
「リツカちゃん!? 仕方ない、隔壁が閉まる前に対応できる場所に行って後から開けれるようにするしか……」
そう言ってDr.ロマンはやむを得ず部屋から立ち去った。管制室にはリツカが一人取り残され、燃え盛る炎の中でたった一人でマシュを探す。
「フォウ!」
正確にはフォウも着いてきていたので一人と一匹だったが、それでも絶望的な状況には変わりはない。
だが――しばらくしてリツカはマシュを見つけだした。
「マシュ!!」
「あ……れ……先輩、どうしてここに……?」
見つけたマシュの体はボロボロでとても助かるような状況ではなかった。
「しっかり、今助ける!」
しかし、藤丸リツカは諦めない。彼女が憧れた英雄達はみんな、どんな絶望的な状況でも諦めなかったからだ。
「ダメですよ……このままだと先輩まで……」
せめて先輩だけはと思い自らを見捨ててくれと願うマシュと、諦めるという選択肢を持たないリツカ。その二人が至る結末は当然、二人とも死ぬというのが普通である。だが、リツカは諦めなかった。
「私は絶対に諦めない! 私の憧れたヒーロー達はどんなときも最後には立ち上がった。だから、私も折れない!! 手を出してマシュ。絶対助ける!」
そして。その強い意志はマシュと、彼女の中に眠る英霊の心を動かした。警報が鳴り、隔壁が閉鎖され、よく分からないままレイシフトプログラムが起動する中でも諦めなかったリツカの意志に、二人は心動かされたのだ。
そして、手を繋いだままの二人は無事特異点へのレイシフトに成功するのだった。
「……ぱい。……先輩! 起きてください、先輩!!」
「フォウ、フォウフォウフォーウ!」
「あれ……マシュ、フォウ。それにこの街は一体……あ、これは夢か」
藤丸リツカが再び目を覚ますと、そこは燃え盛る街の中であった。起こしてくれた後輩の姿と、その肩に乗るふわふわの生き物以外は見慣れない景色。先程のシチュエーションと被るところもあり、リツカは夢を見ていると錯覚する。
「夢じゃないです。早く起きてください、先輩。現在不明な敵性体との交戦中です! わたしも急なことなのでずっと眠っている先輩をお守りしながら戦える自信はありません!」
徐々にリツカの意識が覚醒していくと、マシュとフォウの他に誰かがいるのが分かる。――いや、誰かではない。あれは人ではなく、人の姿をした化け物だ。それは明瞭としない意識のリツカにも察せられた。骨で出来た人型、スケルトンと呼ばれる類の怪物だ。もちろん、本来の現代日本には存在しないはずのものである。
「……闘わないと。……私が護らないと」
ぼんやりとしたままリツカは立ち上がり、拳を構えて飛び出す。
「先輩!? 危ないです、下がってください!」
「フォウ!? フォウフォウ!」
マシュの静止も聞かず怪物に拳を振りかざすリツカ、その拳は怪物に直撃し、その体を吹き飛ばす……ということは無く。一切のダメージを与えることは無かった。
「痛っ!?」
むしろ拳に衝撃が反射した為に、彼女自身がダメージを受けてしまう。そして、それによって生まれた隙を異形は見逃さなかった。その命を断とうと、手に持った剣のような武器をリツカに振り下ろす。
「先輩!? ダメです、間に合わない……!」
他の怪物と対峙していたマシュが、リツカを守ろうと咄嗟に飛び出すが、どう考えても間に合わなかった。そして、振り下ろされた剣のようなものが、リツカの体を切りつけるかと思われた瞬間、彼女を守るが如く障壁が展開され、刃を弾く。
「一体何がどうなってるの!? 貴方たち、説明してくれるのよね?」
そう言いながらマシュとリツカの背後から現れたのは、カルデアの所長、オルガマリー・アニムスフィアその人であった。
「所長! ご無事だったんですね……っ!?」
マシュが喜びの声を上げたが、オルガマリーの後ろから迫るものを見て顔を青くする。大量のスケルトンが、彼女の行動に反応して、後ろから迫ってきていたのだ。
「大量のスケルトン……どうしてわたしばっかりこんな目にあうのよ! こんな時、レフがいてくれたら……」
自分の置かれた状況を直視することが出来ずに、ヒステリックに叫ぶ彼女。しかし、逼迫した危機的状況が彼女を無理やり現実に引き戻させる。
「……とりあえず今はこの場をやり過ごす方法を考えるしかないわね。キリエライト、酷かもしれないけど手を動かしながら質問に答えなさい。貴女、今デミ・サーヴァントになってるわね?」
「はい。レイシフトの際にわたしの内部に眠る英霊から契約を持ちかけられ、そのおかげで今もわたしはここにいます」
盾で攻撃を受け止め、シールドバッシュにより敵を捌きながらマシュは答える。
「……それで、マスターはそこのバカな一般人ね?」
「はい。わたしが先輩をマスターとして契約させて頂きました。本来なら許可などをとるべきだとは思いますが、有事だったのでやむを得ずこちら側から一方的に契約をさせて頂きました」
「フォウ、フォウフォウ!」
マシュは悪くないとばかりにフォウが声をあげる。しかし、そんな事を言うまでもなく、オルガマリーの瞳にマシュを糾弾する様子は無かった。
「なるほど、状況は分かりました。マシュ、悪いけどもう少し凌いでくれるかしら。この状況を打開するために、新たな
オルガマリーは腹を括った。誰の助けも得られない絶望的な状況が、彼女に指揮官として最適な解――生還の為の一手――を選ばせたのだ。
マシュが押し寄せるスケルトンを押し留める中、オルガマリーはサーヴァントを召喚するために準備を進めていく。――実のところ、彼女の中でこの作戦が上手くいく確率は三割程度と踏んでいた。マスター適性があり、令呪が宿っていることだけが分かっている一般人が、サーヴァントの召喚に成功する可能性が高いとは思えなかったからだ。だがしかし、彼女はこれにかけるしかないと判断した。
「出来たわ! 藤丸、今から渡す紙に書いてある言葉を唱えて!」
「はい!」
故に彼女は全力を尽くし、最速で下準備を整えた。そして、リツカもそれに応えようとする。
「 ――素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。
リツカの呼びかけに、魔力が次第に集まっていく。その様子をオルガマリーは祈るように、マシュは戦いながら横目で、フォウは何を考えているか分からないような表情で見届ける。
「――告げる。汝の身は我が下に我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者。我は常世総ての悪を敷く者。汝三大の言霊を纏う七天。抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!!」
リツカが詠唱を終えると、魔力が爆発的に広がり、彼女が手を掲げた先から人影が見えた。やがて、光が消えると、そこには一人の男が立っていた。
「……ここは、何の世界だ?」
「もしかして……あなた門矢士?」
その瞬間、動揺を隠せないリツカのポケットから一枚のカード――ディケイドのライダーカード――が零れ落ちた。
この瞬間、この世界は
時を同じくして、冬木のとある場所でドルイドの装束の男が一人空を見上げながら呟いた。
「ようやく、
「どうやら、今回の俺の役割はあんたのサーヴァントって所らしいな」
「先輩! あれは、
ここまで読んで下さりありがとうございます。
クロスオーバー物は初めてなのでちゃんとした出来になっているか不安ですが、何とか完成させました。
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召喚まで書くのが非常に難航してしまいました。次回よりようやく本番って感じですので次回もよろしくお願いします!
恐らく、所々ツッコミがあるとは思いますが、序章が終わったタイミングである程度の解説は予定しておりますので、暫くお待ち頂けるとありがたいです。
それでは、改めましてここまで読んでくださってありがとうございました!
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第二話 「
「もしかして……あなた門矢士?」
そのリツカの呼びかけに対して怪訝そうな表情を浮かべた男だったが、彼女の姿を見て、その表情が固まる。
「お前は……なるほど。そういうことか」
男はそう小さく零す。その内容はリツカには聞こえなかったらしく彼女は聞き返した。
「え、今なんて……」
「だいたい分かった、それだけのことさ。どうやら、今回の俺の役割はあんたのサーヴァントって所らしいな」
「門矢士が……私のサーヴァント!?」
リツカは思わず声を上げる。彼女からすれば、これまで焦がれてきたヒーローが、自分の使い魔となるのはそれだけの反応があっても無理もないことではあったが、その声に反応してスケルトンの群れから一部が彼女たちの方に向かってくる。
「ひぃぃ! 藤丸、何やってるのよ!」
「どうやら……詳しい話はこいつらを倒してからの方が良さそうだ。マスター、準備は良いか?」
「え、私?」
「お前以外に俺のマスターはいないだろう? 戦闘に移るが、良いな?」
「う、うん。 やっちゃって!」
マスターと呼ばれたことに困惑しつつも、藤丸はサーヴァントを名乗る男に戦闘を命じる。
「それじゃあ、軽く蹴散らしてやるか」
そう呟きながら、男は懐からバックルを取り出し腰に当てる。するとベルトが伸び、腰に巻き付けられた。バックル部を引いて中央部を90度傾ける。そして、ベルトに取り付けられているホルダーからカードを取り出し顔の前に掲げる。
「変身!」
その掛け声と共にバックル部分に取り出したカードを挿入。再び中央部を元の位置に戻すことで認識音声が響き、男は一瞬のうちへ「仮面ライダー」へと姿を変えた。
「い、一体何がどうなってるの? このサーヴァントは何者なのよ?」
困惑する所長にリツカは誇らしげに語る。
「彼は、門矢士は仮面ライダー。日本に伝わる正義の味方です!」
ホルダーを剣の形に変形させ、「仮面ライダー」はスケルトンの群れに迫る。そして、近づくや否やそれを横に振りかざしスケルトンを薙ぎ払った。そのまま別のスケルトンにも斬りかかり、次々にそれらを蹴散らしていく。そして一度ホルダーを腰に戻したかと思うと、一言つぶやく。
「全く、雑魚ばかりだな。直ぐに片付けるとするか」
スケルトンをいなしながらそう告げて、ホルダーから一枚のカードを取り出して、ベルトに読み込ませる。
読みあげる声が聞こえたかと思うと五体の骸骨兵は爆発四散し、辺りに骨の残骸が無造作に散らばった。
その様子を見ながら、リツカは感嘆の声を上げる。
「すごい……本当に仮面ライダーはいたんだ!」
「これが……仮面ライダー……」
オルガマリーが呆気にとられる中、戦いを終えたマシュと「仮面ライダー」は2人の元へと戻ってくる。
「先輩、所長、やりましたね。なんとかこの場を凌げました。そちらのサーヴァントの方もありがとうございます。宜しければ名前をお伺いしても?」
戦闘の中で興奮したのか、マシュが早口で話しかけたのに対して、「仮面ライダー」はその変身を解いて彼女の問いに応じる。
「門矢士、仮面ライダーディケイドだ。一応クラスはライダーってことになってる」
「士さん……ですね。改めまして先輩と所長を助けてくれてありがとうございます。貴方がいなければ恐らく我々は全滅してました。あ、申し遅れました。わたしはマシュ・キリエライトと言います」
「マシュ・キリエライトか。覚えておこう。なに、マスターを守るのはサーヴァントの務めってやつなんだろ? 俺もそれをしただけさ」
ぶっきらぼうにそう告げる士に対して、マシュはその人間性を把握したのか、思わず微笑んだ。
一方のリツカとオルガマリーだが、混乱しているオルガマリーを後目に、リツカは先程ポケットからこぼれ落ちた玩具のライダーカードを持って士の元へ駆け寄り、一言。
「とりあえず、サイン貰えませんか?」
「は?」
「へ?」
「えぇ……」
「フォウ……!?」
それは混乱していたオルガマリーを含めその場に居た三人+一匹が全員困惑する発言であった。しかし、リツカは至って大真面目である。憧れのヒーローに会ったのだ。サインのひとつくらい貰っておきたい。そう考えるのは当然の帰結ではあった。
「とりあえずサインは後だ、マスター。事態が解決したらいくらでもしてやる」
妙な空気を破るべく士が口を開いた直後、彼らの前にベージュのフェルト帽を被った男が現れる。
「ディケイド、少女達を救ってヒーロー気取りか?」
「鳴滝。まさかお前までここに来てるとはな」
「士さんのお知り合いですか?」
「あぁ。こいつは鳴滝。俺の行く先々に現れて邪魔をしてくるやつだ」
「おのれディケイド! もっとまともな紹介の仕方は無かったのか!」
鳴滝と呼ばれた男は士へのあたりが厳しいということは会って間もないマシュやオルガマリーにも伝わっていた。一方リツカは、鳴滝の方に近づき頭を下げながらこう告げた。
「とりあえず、サイン貰えませんか?」
「節操なしかお前!」
士の時と同じようにサインを強請るリツカ。耐えきれなくなった士が思わず突っ込むと、そこには割と上機嫌でサインを書いている鳴滝の姿があった。
「お前もノリノリか!」
「サインを求められたら応える、それの何が悪い!」
「お前そんなタイプだったか……?」
柄ではないとは思いながらも思わず突っ込んでしまう士であった。そして、サインのくだりがつつがなく終えた後、神妙な顔持ちで鳴滝は告げる。
「藤丸リツカ。君はディケイドを召喚してしまった。ディケイドは世界の破壊者、それを君は分かっているのかね?」
「もちろん知っています。それでも、仮面ライダーディケイドは私にとってヒーローだから、私は彼を信じます」
「それは、いずれ後悔するかもしれないとしてもかね?」
「はい。そうだったとしてもです」
「どうやら、君の意思は硬いらしいからこれ以上止めることは出来ないな。だが、覚えていて欲しい。ディケイドが現れた時点で世界は破壊され、奴がいる限り世界は破壊され続ける……!」
「知ってますよ。ディケイドは確かに世界の破壊者かもしれない。でも、その破壊はきっと悪じゃない。私はそう信じてます。だって私──」
そこでリツカは一度口を閉じてから鳴滝に微笑みかけながら告げる。
「貴方達のファンですから」
「なっ……」
鳴滝もその返答は予想してなかったのか、一瞬虚をつかれた用に固まってから、被っているフェルト帽の位置を整えながら彼女に語りかける。
「その返答は予想できなかったな。私は行くが、君にまた会いたくなった。──だから教えておこう。ここに君たちの敵の──つまるところ狂ったサーヴァントが近づいてきている。もしその襲撃を乗りこえ、堕ちたサーヴァントを一掃してこの特異点を無事脱出することが出来たのなら…………また会おう。人類最後のマスター、藤丸リツカ」
そう言って鳴滝はどこからともなく現れた時空の歪みのような所へと消えていった。その様子を見届けた士は少し口角を上げる。
「鳴滝のやつ……どうやら相当驚いたらしい」
「彼は一体何者なの……? いえ、そんなことより今重要なのは彼の去り際の言葉ね、私の聞き間違いじゃなければサーヴァントが迫ってるとか言ってなかった!?」
オルガマリーがあたふたし始めた瞬間、どこからともなくナイフが飛んでくる。その存在に気づいたのは士だけだった。
「マシュ! 盾をその女に!」
「えーと、はい!」
「フォウ!?」
士の咄嗟の判断に、マシュは困惑しながらもデミ・サーヴァント化してオルガマリーの前に盾を展開する。その防御は辛うじて間に合い、盾はナイフを弾いた。
「敵襲ですか!?」
「もう来てる!?」
「どうやらそうらしい。敵の姿は見えないが、確実にこの近くにいるはずだ」
マシュとリツカの口から零れた問いに応えたのは既に変身を終えたディケイドだった。その姿を見て四人と一匹は臨戦態勢に入る。
「敵性個体、所在不明との戦闘を回避します。マスターと所長、フォウさんは下がって──」
「待ちなさい」
マシュの言葉を遮ったのはオルガマリー。動揺した際の瞳ではなくどこまでも冷静な魔術師の眼をしていた。
「敵のサーヴァントはおそらくアサシン。暗殺者のクラスよ。私の事を狙ってきたことから見るに、次も戦闘能力が低い私か藤丸をマスターと踏んで攻めてくるはず。だから貴方は私達の防御に専念して」
「は、はい!」
淡々と状況分析を行い指示を出し始める彼女の姿に、マシュは困惑しながらもどこか嬉しそうな表情をしている。
「藤丸もマシュから離れないこと。そして──カドヤとか言ったかしら? 貴方には1人でアサシンと戦ってもらいます。アサシン自体の戦闘能力は高くないのでおそらく貴方の力があれば十分突破できるでしょう。問題はアサシンの持つ気配遮断という隠密行動用のクラススキルだけれども……」
説明中に二本目のナイフが飛んできてマシュが再びそれを弾く。そして、言葉が途切れたタイミングで、リツカが呑気そうに手を挙げてオルガマリーに質問をする。
「あのー、所長? その気配遮断って、自分の居場所を悟られにくくするとかそういう感じの能力ですか?」
「ええ、そうよ。攻撃の瞬間以外は認識が難しいと考えてもらって構わないわ。それがどうかしたの?」
「士さん、それならペガサスフォームで何とかならない?」
「……あぁ、なるほど。だいたい分かった。多分大丈夫だ」
二人の間のやり取りは、他のメンバーにはよく伝わらなかったらしく、皆一様によくわからないと言った顔をしている。
「よく分からないけど、対応策があるってことなのよね? そこは貴方たち2人を信じます」
「フォウフォウ!」
「どうやら組織のお偉い人らしいからな、ここで俺の実力をしっかりと見せておくのも──悪くない」
そう言ってディケイドは腰のホルダーから1枚のカード──体の緑色が特徴的なボウガンを構えた戦士が描かれているもの──を取り出し、ベルトに挿入する。
「変身!」
読み上げ音の後、ディケイドの姿は全く別の仮面ライダ──―緑の戦士と呼ばれる仮面ライダークウガのペガサスフォーム──へと変貌を遂げていた。
そして彼は地面に足をつき、出現したボウガンを構える。
一秒、二秒と緊張のまま膠着する状況。それを破ったのは、三度飛来するナイフだった。
「そこだ!」
「ぐわあぁ!?」
狙撃を放った先から断末魔ともに爆発音がする。
「反応がない。どうやら仕留めきれたようだ」
そう言いながら、士は変身を解く。マシュも、デミ・サーヴァント化を解き、その場にへたりこんだ。
「それにしても、よく俺に攻撃が来るってわかったな?」
士は、あまり驚いたような様子はなく、マシュに尋ねる。
「もしわたしがあちら側だった時のことを考えたんです。二人を守る能力を見せて、そちらに専念している以上、向こう側からしたら先に無防備な士さんを攻撃しようと思うのが当然です」
「お前……今日初めて戦ったとは思えないくらいに飲み込みが良いな」
「そうですかね? お役に立てたのなら嬉しいです」
そう言って無邪気に頬笑みを浮かべるマシュから、士は直視出来ないと言った様子で目をそらす。
「まあ、俺一人でも大丈夫だったが……」
そして照れ隠しのように言ったその言葉は既にマシュには照れ隠しだと気づかれているので、マシュは更に笑顔になっていた。
「あー、そう言えば。お前、なんて言う名前なんだ?」
耐えきれなくなったのか、士は話題を変えるようにオルガマリーに質問を書いする。
「……自己紹介が遅れました。私はオルガマリー・アニムスフィア。人理継続保障機関カルデアの所長をしています。先程の二度の戦いで貴方の実力は分かりました。今回の協力に感謝します。改めましてよろしく。仮面ライダー」
「門矢士だ。さすがに仮面ライダーという呼び方はしっくり来ないから変えてくれ」
「それじゃあ門矢、よろしく。ところで、さっきはありがとう。貴方の判断が無ければ、今頃私はここにいなかったかも知れません」
「よせ。お前がいないと今後マスターが困るかもしれないと思っただけだ。それに、さっきの状況判断は的確だった。ま、俺ほどではないがな」
そう言って不敵に笑う士を見て、リツカとマシュは顔を見合わせ笑う。戦場での異常事態が続いてるとは思えないほど、穏やかな空気が流れていた。
「おうおう、戦場だと言うのに呑気そうじゃねぇか」
突如声をかけられ、一同動揺する。いち早く声の方角に目を向けたリツカが見たものは、フードを被った杖を持つ男であった。
「貴方は一体……?」
「フォウ?」
「オレはキャスター。この聖杯戦争に呼ばれた七騎のうちの一騎だ」
そう自己紹介を終えた彼の様子を見て、マシュは驚きを隠せないと言った表情をする。
「先輩! あれは、
「おうとも、他の奴らは既に呑まれちまったが、オレはまだだ。一人でひっそりと抵抗を続けてるってわけさ」
「……キャスター、我々カルデアと共闘しないかしら。見たところマスターも居ないようですし、目的は一致すると思うのだけれど」
オルガマリーが申し出た提案を聞いて、キャスターはその言葉を待っていたと言わんばかりの表情をする。
「そいつは悪くねえ。だが、オレは素性も知らない奴といきなり共闘するってのはあまり好きじゃなくてね。特にそのライダーからはあまり良くない気配がするからな」
「俺か。相変わらず、随分嫌われたものだな。マスター、こんな奴と共闘する義理はない。こんな事件、俺が一人で片付けてやる」
暗に信用ならないと言われた士は、自嘲気味に笑いながらキャスターを挑発する。その場に緊張した空気が流れる中、キャスターは埒が明かないとばかりに切り出す。
「その言い方──どうやら、ようやく役者が揃ったらしいな。とりあえず手合わせと行こうぜ、ライダー。アンタの判断は実際に戦ってするさ」
挑発を受けて、臨戦態勢に入るキャスター。それを見た士はやれやれとため息をつきながらバックルとカードを取り出す。
「そういう事だマスター。とりあえず、戦闘するが良いな?」
「仕方ないかな……それにしても本当に誤解されやすいんだ……」
「それで共闘の可能性があるというのならやむを得ません。カドヤ、お願い出来るかしら」
「血の気の多い奴はこれだから困る。──まあ、少し遊ぼうか。変身!」
「サーヴァント、キャスター。オレは割と手強いぜ?」
そうして、二騎のサーヴァントの戦いが始まるのだった。
「アンタの手数、どんだけあるんだ?」
「そろそろ終わりにしようか、狂戦士!」
ここまで読んで下さりありがとうございます。
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前回から1ヶ月かかっちゃいました。出来れば2週間に1度くらいのペースで更新したいものですね……
それでは、改めましてここまで読んでくださってありがとうございました!
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第三話 「破壊された聖杯戦争」
ジオウの最終回に合わせてなんとか更新です。
前回読んでくださった方は気づくかもしれませんが次回予告の内容とはかなり差異が出てます。それに合わせて前回の次回予告いじったりもしてます。ごめんなさい……
いやぁ、それにしてもジオウは士がかなり出ててほんとに良かったです。
ところで関西在住なので今日の最終回リアタイ出来ないんですけどどうなってるんですか東映さん!
「さて、魔術師相手ならこれだな。キャスター、吸血鬼退治は得意か?」
そう言ってディケイドは一枚のカードを取り出し、白いベルトに挿入する。
カードが読み込まれると同時にディケイドの姿が、蝙蝠をかたどったような鎧を身にまとった姿に変わる。キャスターは驚いた様子を見せながら空間に文字のようなものを綴り始める。
「いきなり姿を変えてくるか。ところで質問の答えだが……イエスだ。オレも地元じゃそれなりに名の通った英雄でね。怪物退治はお手の物ってな!」
そう言うやいなや、空間に刻まれた文字のようなものより炎が放たれる。ディケイドは自らの身に降り掛かる火の粉を躱しながらキャスターとの距離を詰めていく。
「させるかよ。そら!」
「くっ!?」
「そこだ、食らってきな」
キャスターが杖をふるうと、ディケイドの足元から火柱が上がる。咄嗟に後ろに跳躍して回避するものの、その瞬間に生まれた隙をキャスターは逃さない。追撃するかのように放たれた火球は、ディケイドの体に直撃した。
「ぐっ……なかなかやるな。なら、遠距離戦はどうだ?」
ディケイドキバは体勢を立て直しつつ一枚のカードをホルダーより取り出し、間髪入れずベルトに挿入する。
再びディケイドの姿が変わるが、先程とは違い大きな変化ではなくその変化は、瞳と鎧の一部が緑色に変わる程度であった。だが、重要なのはその姿の変化ではない。ディケイドキバの手元には新たに緑色の銃が現れていた。有機的なデザインのその銃をみて、キャスターは興味深そうな声を上げる。
「へぇ……銃とは考えたな。だがそれでオレの炎に敵うかな?」
「そいつはやってみてからのお楽しみってやつだろうさ! ハァ!」
二人は同時に構え、攻撃を放ち合う。
キャスターは知らない。
「なっ、水か!」
「ご名答。炎には水、ちょうどいいだろ?」
キャスターが知らなかったのもあってか、放たれた
「なかなかいい攻撃じゃねぇか! だが、そっちが水で来るって言うならこっちは消されないだけの炎を放たせてもらおうか」
キャスターがそう言うと、彼の周りに石が浮かび上がり文字列を刻んでいく。
「不味いわね……あの長さ、相当な力のルーン魔術が来るわよ」
「士さん! でかいのが来るみたい!」
「なら、こっちも行かせてもらおうか」
リツカの言葉を受けてディケイドキバはライドブッカーから黄色のカードを一枚取り出す。
「さあ、大仕掛けだ! 存分に味わってきな!」
「そう簡単に行かせるか!」
キャスターがその身長の3倍はあろうという火球を放つのに合わせて、ディケイドキバもカードを読み込ませる。
音声が読み上げられた直後、辺りが暗闇に染めあげられた。ディケイドキバの足下一帯には水が貼られており、半月が水面に映って揺らいでいる。それはさながら炎上都市に湖ができたようである。
「バッシャー・アクアトルネード、これなら行けるはず……! ってあれ……?」
展開されたアクアフィールドを見ながら思わずみずからの手を握るリツカ。しかしどこか違和感を感じたのか、握ったり解いたりを繰り返している。──その間に、ディケイドキバの持つ
「オレの炎とアンタの水。力比べと行こうじゃねぇか!」
激突する炎と水。サイズが大きいこともあって、ぶつかった時の衝撃も並大抵のものでは無い。
「なんて力なの……これが
「フォウさん、わたし、これからこの戦いについていけるんでしょうか……」
「フォウフォウ……フォーウ!」
「恐らく励ましてくれてるんですね……ありがとうございます」
「フォフォウ!」
その戦いの激しさに
そして、炎と水はお互い一歩も譲ることなく対消滅に至る。
「相打ちか……なかなかやるじゃねぇか! これはますます気が抜けねぇな」
「それはこっちのセリフだ。さて、これならどうだ?」
そう言いながらディケイドキバはノータイムでカードを取り出しベルトに読み込ませる。手馴れてるが故の芸当だ。
再びディケイドの姿が変わり、現れたのは龍の兜を纏った騎兵。すなわち、仮面ライダー龍騎である。
「お次は龍だ。倒せるかな?」
粋だろう? と言わんばかりにそう言い放ちながら連続でカードをスキャンするディケイド龍騎。
「さっきのお返しだ、受け取れ!」
間髪開けず、手に装備された龍の
「何!?」
対するキャスターも少し動揺しながらも炎を放ち対抗する。しかし、短時間で放てる火力には限界があり、ディケイド龍騎の炎を相殺することが出来ずにダメージを受けてしまう。
「どうだ、少しは堪えたんじゃないか?」
「へ、なかなか良い火力だったぜ。炎には炎、なかなか粋なことをするじゃねぇか!」
「伊達に『世界の破壊者』だなんて呼ばれていないんでな。さて、次はこれだ」
そう言って再びカードを取り出しバックルに投げ入れ、片手で閉じる。全く下を見ることなくカードを投げ入れる様は相当な慣れを感じさせるものであり、キャスターもさらに警戒を強め、牽制の炎を放つ。
しかし、放った炎は読み込まれたカードから現れた鎧──オーラアーマーによって弾かれる。その時に生じた煙が晴れると、そこには桃を割ったような顔のライダ──―電王の姿があった。
「せっかくだからこれも使っておくか。こんな時でもないと使うこともないだろう」
「俺、参上ってな」
胸に右親指を当てて膝を曲げながらその手を後ろに伸ばし、左手を真っ直ぐ前に伸ばしてポーズをとるディケイド電王。
「藤丸、あのカードにはどんな力があるの?」
ポーズをとった後も何も起きないことを不思議に思ったのか、オルガマリーはリツカに問う。
「『俺、参上!』ってポーズを決めるだけです。あれ以上は何も無いです……」
「フォウフォ!?」
「マジで。あれだけです」
「えぇ……」
リツカは頭を抱えながら答える。先程まで戦いで熱くなっていた空気は完全に凍りついていた。訳の分からなさにフリーズするマシュ、呆れた表情のフォウ、困惑を隠しきれないオルガマリー。
そして、戦いの相手だったキャスターはと言うと。
「は、なんだそれ! なかなかカッコイイポーズじゃねぇか!」
大爆笑であった。決めポーズが彼のセンスに刺さったのか、気に入ったようである。
「そうか……? それにしても、使い道がないカードだと思ってたが、こういう使い方もあるんだな……」
当のディケイド電王は勉強になったと言わんばかりの様子であった。
「何だか和んじまったが、オレとアンタは敵同士。とりあえず再開と行こうか。今度はオレも、接近戦で行かせてもらおうかねぇ!」
「ふっ、面白い。その接近戦、桃の鬼に通じるかな?」
キャスターは自らの体に向けてルーン魔術を使用し、杖をまるで槍のように構え始める。一方のディケイド電王もソードモードのデンガッシャーを肩にあてて構える。
「アンタの手数、どんだけあるんだ?」
「俺に勝てたら自然とわかる。勝てたらの話だがな!」
「おもしれぇ、やってやる…………と言いたい所なんだがそうも行かなくなったみたいだな」
今にも激突といった様子だったが、キャスターは近づくものの気配を察知し戦闘を中断する。
「この気配……さっきのアサシンと良く似ているな」
「どうやら見つかっちまったらしい。
「少し勝負はお預けらしいな」
「あぁ。オレが片方倒す。アンタらにはもう片方を任せるぜ」
そう言いながら獰猛な目を光らせる
「良いだろう。マシュ、お前もこい!」
「……はい! 行ってきますね、先輩」
「……うん、行ってらっしゃい」
ディケイド電王は物陰に隠れてみているマシュを呼び出し、やって来る敵に備える。
「お嬢ちゃん、アンタはとにかく防御に徹しな。その盾は守るための力だ。あのライダーに降り注ぐ攻撃から守ってやれ。連携が上手く取れたらもっと上手く戦えるはずだぜ?」
「……やってみます!」
そうして、二騎の堕ちた英霊が現れる。
「キャスター……タオス……ソシテスカサハニ……」
「■■■■■■──!!」
片や、青髪でキャスターに似た風貌の槍兵。片や、二メートルを優に超える筋骨隆々の巨人。どちらも黒いオーラを身にまとっており、その表情は伺えなくなっている。
「よう、随分落ちぶれたもんだな。
「ならこっちはこの巨人相手ってわけか。キャスター、なんか知ってることがあるなら話せ。そっちの方が手っ取り早い!」
巨人の攻撃をマシュが受け止める中、ディケイド電王は槍兵の槍を凌ぐキャスターに問う。もちろんその間も敵の攻撃が緩められることは無く、キャスターは槍を杖でいなしながら問いに答えていく。
「そいつはバーサーカー、真名はヘラクレス。一撃一撃が重いが、バーサーカーな上に黒化されてる分技量は劣る。とは言っても、1発で即死レベルだ。気を抜くなよ? あと、宝具のせいで一度受けた攻撃は基本的に無効化されるし、あと──多分六度は蘇生する。アンタの手数なら何とかなるかもしれねぇが、やばそうなら時間を稼いで貰えりゃあこいつの後にオレが何とかしてやるさ」
「だいたいわかった。とりあえず何度か倒すしかないってことだろ!」
マシュの体勢が崩れたのを見たディケイド電王は手に構えたデンガッシャーを用いてバーサーカーの持つ巨大な斧剣を受け止め、弾く。
「そういうこった!」
一方でキャスターも槍兵のくり出した一突きを、華麗に交わしていた。
そして、会話を終えたディケイド電王とキャスターは本格的な戦闘に突入する。
「(マスター、そういう事だから派手に行くが──いいな?)」
「(頭の中に直接!? えーと、とりあえずいいよ、士さん。やっちゃって!)」
「さて、『最初から最後までクライマックス』って奴だ!」
そう言いながらディケイド電王は黄色のカードをバックルの中に投げ込む。
「はぁ!」
デンガッシャーの戦闘が分離し、遠隔操作に切り替わる。ディケイド電王の振りに合わせ跳ぶブレードはバーサーカーの体をズタズタに切り裂いた。
本来の力の持ち主であれば、「俺の必殺技PART2」とでも言いそうなその技により、バーサーカーの命は1つ削られる。
「本来ならこれで終わりなはずだが──」
「■■■■■────!!!!」
「くっ、きゃあ!」
「マシュ!」
「大丈夫です、でも士さんが!」
バーサーカーの体から大量の熱が放出され、1度死んだはずの彼は蘇生する。そして、蘇生しながら斧剣を構えて突撃を開始した。マシュが一撃を受け止めるものの、用意ができていなかった為に弾き飛ばされる。
「ちっ、思ったより早い!」
ディケイド電王は焦りながらカードを取り出し読み込ませる。
バーサーカーが振り下ろした斧剣はディケイド電王に直撃することは無く、彼が新たに手に持った斧──デンガッシャーのアックスモードによって受け止められていた。
「泣けるで! ──って、最早意味すら通ってないじゃねぇか!」
自分でいいながら自分でツッコミを入れる。何よりも関西人らしいことをしているディケイド電王の姿は黄色い顔の斧を持つ戦士に変わっていた。電王アックスフォームである。
先程、リツカがセリフを言うだけだと言ったカードであるが、正確にはそんなことは無い。姿の切り替えも可能なのである。とはいえ、「フォームライド」と言うセリフを言わない姿の変化用のカードがある以上、本当に不必要なカードであることに違いはないのだが。
「まぁいい。直ぐに終わらせてやる!」
再び電王のファイナルアタックライドカードをスキャンし、手に持ったデンガッシャーを上に高く投げる。そして、ジャンプし回転する斧を掴み、バーサーカーに向かって振り下ろす。アックスフォームの必殺技、ダイナミックチョップだ。斧の一撃はバーサーカーを頭から貫き、再びその命のストックを減らすことに成功した。
「そら、まだまだ行くぞ!」
「答えは聞いてない──って、話せないんだから当然だな」
龍のような顔にガンモードのデンガッシャーを構えたディケイド電王──ガンフォームは軽くステップを踏みながらバーサーカーを指さして挑発を行う。無論、フォームチェンジのための行為である。
「体勢を立て直す前にもう一発だ!」
「■■■■■──!」
「っ──させません!」
ステップをしながらカードをスキャンしていたらしく、既にディケイド電王は次の必殺技のモーションに移っている。蘇生を終えたバーサーカーは回避を試みるも、マシュのシールドバッシュにより回避行動に移れない。そして、両手で構えたデンガッシャーと両肩から供給されたエネルギーによる1つの大きな弾丸は、バーサーカーの命をさらに一つ削るのだった。
「キャスターの話ならあと三つって所だが……どうやらまだ蘇りそうだな」
再び蘇生を始めたバーサーカーを見ながら新たなカードを使用するディケイド電王。既に三つの大技を出したというのに、彼の手数にはまだ限界が見えない。
(流石士。……これなら行ける!)
リツカは内心でそんなことを考える。仮面ライダーの力をよく知る彼女は、現状を見て勝利への確信を抱いていた。しかし、そんな彼女に異変が起きる。
(あれ……おかしいな。なんか眠くなって来たような……)
彼女の意識が遠のき始めたことに気づくものは誰もいない。若い頃の自分が堕ちたものと闘うキャスター、神話の英雄との戦いに精一杯のライダーとシールダー、そして置かれた状況に精神的に限界を迎えつつある上司、誰もが気づかない。──もしかしたら、傍らで彼女を不安げに見つめる白い美しい獣──フォウだけは気づいているのかもしれないが、それを伝えることが出来ない以上、同じことである。
「僕に釣られてみる? ──ってもういい加減飽きてきたな。手早くやるぞ」
青い仮面を見にまとい、うさぎの様な亀のような姿に身を変えたディケイド電王は自らの手を一度叩きパンパンと音を鳴らした後、釣竿のようになったデンガッシャーを構えながらカードを手に取った。
四度、電王のファイナルアタックライドが発動される。報酬されたエネルギーはディケイド電王の足元とデンガッシャーに集中していく。
「マシュ、一瞬でいい! 奴を受け止めろ!」
「はい、やってみます!」
集まる力にこれ以上はさせないと接近するバーサーカー。その前に幼さを残す
「十分だ、そら!」
だが、その時間はディケイド電王にとっては十分足りるものだった。エネルギーが蓄えられたデンガッシャーをバーサーカーの胸に投擲する。
「■■■■■■■──!!」
デンガッシャーは胸に突き刺さり、バーサーカーをその場に拘束する。そして、ディケイド電王は飛び上がると彼の元にキックを放つ。
「はぁぁぁ!!」
キックはバーサーカーの心の臓を貫き、その命の一つを奪う。これで四つ。かなりのハイペースではあったが、それは同時にマシュとディケイドの負担が大きいことを意味し、二人にも疲弊が見え始める。
「■■■■■──!!」
無論、バーサーカーはそんな事情を鑑みることなく止まらない。彼の咆哮が辺りを揺らす。
「ひっ! 聞いた通りしぶといわね……本当に勝てるのかしら……」
「仮面ライダーは負けません、私達が信じる限り」
リツカは眠気により虚ろな目をしつつも、この戦いを見逃してたまるかと目を離さなかった。大地を揺らす咆哮により弱気になったオルガマリーの心配にも一切の躊躇なく断言する。仮面ライダーは負けないと。ヒーローを信じる者がいる限り、最後には必ず勝利を納めるのだと。
「流石にそろそろ面倒になってきたな。もっと大きい一撃を入れてみた方が良いか?」
「そんなものがあるんですか……?」
「まだ俺は本来の実力の半分も発揮していない。サーヴァントやらになったせいでかなり制限されてはいるがな」
「わたしもあまり長くは持ちません……早めに終わる手があるならそれで行きましょう!」
マシュの返答を聞いたディケイドは新たなカードを二枚取り出す。
「決まりだな、変身」
「さて、そろそろ終わりにしようか! 狂戦士!」
「■■■■■■──!!!!!!」
三位一体の戦士、アギトトリニティフォームとなったディケイドの挑発に応じて、バーサーカーはこれまでで最も大きな咆哮を轟かせ、跳躍する。例え堕ちようとも、その誇りまでは失われずと言わんばかりの叫びであった。自らの元に向かってきたバーサーカーを、ディケイドアギトは左腕に構えたストームハルバードで受け止める。
「喰らえ!」
そして、間髪入れずに右手のフレイムセイバーで切りかかり、バーサーカーをひるませることに成功する。
「決めるぞ、マシュ!」
「はい、マシュ・キリエライト──頑張ります!」
ひるんだ隙を見逃すことなく、ディケイドアギトは一枚のカードをスキャンする。
読み込まれると同時にディケイドアギト頭部の
とはいえ、力を蓄えるなどというのをみすみす見逃すバーサーカーでは無い。その隙を何とか突こうと距離を詰めようとする。
「ここは、通さない……!」
しかし、その前には
「よくやったマシュ! 行くぞ!」
そして、チャージが完了し、ディケイドアギトが飛び上がる。両足に蓄えられた力は、両足による飛び蹴りで解き放たれる。
「はぁぁぁ!!!!」
アギトトリニティフォームの必殺技、ライダーシュートである。その力は一度の命の限度を超え、残されたバーサーカーの命全てを刈り取るのだった。
「■■──」
「やった……の?」
全ての命を使い果たした狂戦士──
「やりました……! やりましたよ、士さん!」
「ふっ、なかなか骨が折れる相手だったな。それに、向こうも終わったらしい」
マシュと話しながら、元来の姿に戻るディケイド。そして彼が言った通り、キャスターの戦いもほぼ同時に終わっていた。 無論、キャスターの勝利である。いくら彼がキャスターであり、相手が槍を持っていようとも、堕ちて技量の低下した若き日の自身に負けることは無かった。
「おう、お互いお疲れさん。まさか、あのバーサーカーを倒しちまうとはねぇ……どうやら本気でやり手らしいな、アンタ」
「御託はいい。まだやるってなら相手になってやる」
ディケイドは懐のライドブッカーをソードモードに切り替え、戦闘態勢をとる。マシュもそれに釣られて縦を構え、攻撃に備えた。
「やめとけやめとけ。アンタらは準備出来てるかもしれねぇが、マスターはどうだろうな?」
キャスターの言葉を怪訝に思った二人が後ろを振り向いたその瞬間。岩陰に隠れていたリツカが、意識を失い地面に倒れ伏した。
「っ!? 先輩!?」
「おい、マスター!」
「藤丸!?」
「フォウフォ!?」
三人と一匹が突如起きた事態に驚きに支配される中、キャスターはただ一人冷静に告げる。
「当然だ──ライダー、アンタはただのカルデア式サーヴァントじゃないからな」
だがしかし、その言葉をちゃんと聞いたものは誰一人として居なかった。誰もが昏倒した藤丸リツカを前に混乱していた。
「先輩、しっかりしてください、先輩!!」
「アンタは七騎目だよ、ライダー」
「どこから撃ってるの!?」
ここまで読んで下さりありがとうございます。
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今回はほとんど戦闘シーンですが、ちゃんと切迫感を出せていたでしょうか……あまり慣れていないので心配です。宜しければ忌憚ない感想をお聴かせください。
また、今回設定上はあるとは思われるが使ったことの無い「アギト トリニティ」のフォームライドを使いました。今後もそういうことをするかも知れませんので、その是非についてアンケートに回答いただけると幸いです。
それでは、改めましてここまで読んでくださってありがとうございました!
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第四話 「贋作者対破壊者」
大変遅くなりまして申し訳ありません……
まだこの作品を読んでくれる人、楽しみにしてメッセージをくれた人がいたのでなんとか続けられてます。
それでは本編をどうぞ!
「ここだったら多分安全だ。見張りもしておいてやるからゆっくり休ませてやれ」
突然倒れた藤丸リツカ。唯一のマスターである彼女を置いて特異点攻略を進めることも出来ないため、一行は現地で出会ったサーヴァントであるキャスターの案内で廃ビルに身を隠すことになった。
「キャスター、アナタの好意には感謝します。ですがどうしてそこまで? アナタの目的は結局何なんですか?」
その都合の良い事態を訝しんでオルガマリーがカルデアトップとしての固い口調でキャスターに問いかける。先程サーヴァント同士の戦いを目撃し、生身でその驚異を感じたのもあってか、彼女の手は僅かに震えていた。
「オルガマリー、そう怯える必要はないだろう。乱入で有耶無耶になったが、つまるところ合格ってことで良いんだろ、キャスター」
「ま、そういうことだ。ライダー、疑って悪かったな。アンタ、生きにくいだろ、そんなもん持ってたら」
「まぁ、ずっとこれだからな。流石に慣れる。ところでキャスター。お前──どこまで知ってる?」
見かねた士が間に入り、やり取りを行うがその様子は腹の探り合いにしか見えない。
「先輩を奥で寝かせてきました。──もしかして、お取り込み中でしたか?」
その時、丁度よく奥の部屋にリツカを寝かせてきたマシュが戻ってきた。
「そんなことは無いぜ。ライダー、さっきの質問への答えだが、マスターの嬢ちゃんが起きてからで良いか? オレの持ってる情報をとりあえず一通り教えてやるよ。会った時にも言った通り、オレもこの状況は好ましくねぇからな。何とか解決したいとは思ってるのさ」
そう言って少し口元を緩めるキャスター。彼の目に悪意はなく、ずっと戦い続きだったカルデア一行はここでようやく安心して一息つけるのだった。
「──以上が、これまでの状況の報告よ。なにか質問はあるかしら?」
『特にありません。それにしても、所長が居てくれてほんとに助かりました。ボク以上の権限を持つスタッフは全滅。今後ボクが所長の役割を代行してカルデアを仕切る事になるのか……とか思ってたりしたので』
リツカを目覚めるのを待つ間に、オルガマリーは廃ビルの一角でリツカの持っていた通信機を用いてカルデアと連絡を取っていた。応答したDr.ロマンと話す中でオルガマリーは事態が相当に危ういものであることを再認識する。
「わたしも本来ならアナタがトップだなんて認めたくないわよ! でもアナタしか居ないならしょうがないじゃない。わたしが帰るまでカルデアをなんとか維持してちょうだい。それと、もし万が一わたしに──」
『おっと所長、それ以上はなしですよ。──キミの事だから恐らくかなり無理をしているんだろう。でもそんな弱音を今は吐かないでくれ。どちらにしろ、その特異点をなんとか修復しないと人類に未来はない。だから、どうか無事に帰ってきてくれよ、マリー』
弱音を吐きかけるオルガマリーを静止して、ロマニは彼女を激励する。
「──そうね。幸いサーヴァントの召喚や、協力の取り付けにも成功した。なんとかなる可能性は十分ある。弱音を吐いている場合では無かったわね」
『その意気さ』
「──ロマニ・アーキマン。あなたをカルデアの所長代理として任命します。所長が帰還するまで、どうかカルデアを、人類の砦を守るように」
サーヴァントの闘いで身の危険を身近に感じたからか、はたまたヒーローという概念を知ったからか。どちらにせよ、1日前の彼女からは出ないであろう言葉を聴いたロマニは驚いたように一瞬押し黙り、それを悟られないようにおどけてみせる。
『やれやれ、人使いの荒い所長だなぁ。まあそれはそれとして、確かに拝命しました。どうか無事にお戻り下さい、所長』
とは言え、真剣に発せられた言葉には誠意を見せる。ロマニの声色がそれを物語っていた。
「とりあえずはできる範囲で良いから観測を続けて何かあれば随時報告してちょうだい。それと、マシュと藤丸のバイタルチェックもしておいて。あの二人は特異点攻略の要よ。万が一が起きないように優先的に見ておいて」
『分かりました。とりあえずこちらもまだ収拾が着き切っていないので一度通信を切ります。マシュとリツカちゃん、それと仮面ライダーによろしくお願いします』
「そっちも気をつけて。このわたしが頼んだのだから、完璧にこなすこと」
『はい。それではまた後ほど』
そうして通話が終わる。二人とも聡明であり、お互いの口にしなかったこともある程度推測がついていただろう。だが、そこには言及しない。相手の意地も気遣いも分かった上で口に出さない方が良いと二人は共に判断したのだ。
「所長! 先輩が目を覚ましました!」
通話が終わるや否やというタイミングで、マシュがオルガマリーの元へやってくる。リツカの覚醒を伝える彼女はこれまで見たことの無いような喜びの表情をしており、オルガマリーは彼女の急な成長に驚く。
「そう、分かったわ。すぐに行きます」
「士さんにも声をかけてきますね!」
「ええ。先に行ってるわ」
駆けて言った彼女を見てオルガマリーは独り言を零す。
「わたしも彼女も、一日もしない間に変えられてしまったのかもしれないわね」
その表情は明るく、炎が広がる特異点には似つかわしくないものだった。
「ごめんなさい、心配かけちゃったよね」
「えぇ、全くよ。おかげで足止めを食らっちゃったわ。わたしたちには時間が無いんだから」
「所長、何もそんな言い方をされなくても──」
オルガマリーから発せられた言葉が刺々しかったこともあり、マシュは思わず反駁するが、それを遮るようにオルガマリーは語る。
「マシュ。意見をストレートに言えるようになったのは良い傾向だけど、人の話は最後まで聞くことよ。──だから藤丸、このミスは貴方の頑張りで取り返しなさい。貴方はここにおける唯一のマスター。挽回のチャンスはいくらでもあるわ」
「所長……はい、藤丸リツカ、未熟ながら世界を救うために頑張ります!」
憑き物が落ちたかのように冷静な言葉で鼓舞ができるようになった所長を見てリツカも勢いよく返事を返す。
「だからと言って気負いすぎないように! さっきみたいに少しでも身体が可笑しいなと思ったら直ぐにわたしに報告すること。分かった?」
「い、イエッサー!」
指揮官としての威厳を発揮した所長に対して不自然にかしこまったリツカを見て、そのやり取りを見ていたマシュの口元にも自然と笑みが浮かぶ。
「あー、そろそろ良いか? マスターの嬢ちゃんが目覚めたんだろ?」
「フォウ!?」
「キャスターさん!?」
フォウが驚いた様子で鳴いた方を見るといつの間にかそこにはキャスターが現れていた。
「おいおい、そんなに驚くことねーだろ。ただの霊体化だ。ずっとここにいたさ」
「サーヴァントの霊体化……話には聞いていましたがそこまで気配を消せるのね。これは想定以上だわ」
「だろうな?」
「きゃっ!?」
オルガマリーが驚きの表情を浮かべながら後ろを向くと、そこには士の姿があった。流石のオルガマリーも二度目は想定外であったらしく、驚きのまま尻もちを着いてしまう。
「門矢……アナタってサーヴァントは……!」
「悪い悪い、まさかそこまで驚くとは思ってなかった」
「あー、そろそろ始めていいか?」
状況を見かねたキャスターが話を切り出す様子を見てオルガマリーは顔を赤くしながら立ち上がり、仕切り直しと言わんばかりに咳をした。
「──見苦しい様子でごめんなさい。じゃあ、始めましょうか」
「おう。じゃあまずはお互いの状況確認と行こうぜ。まずは……カルデアだったか? そっちの状況を聞かせてくれ」
「所長、ここはわたしが説明します」
「いいでしょう。キリエライト、アナタに任せます。説明後に足りない情報はわたしの方から補足しましょう」
そして、マシュによるカルデアの状況報告が行われた。カルデアの目的、発生したトラブル、特異点突入後から現在までの経緯。それと一行のプロフィール。それらの情報を一通りキャスターに伝える。
「なるほどねぇ、『特異点』ときたか。ま、そっちの事情は理解した。オレもその解決に力を貸してやるよ。という訳でそこのマスターと仮契約と行きたい訳なんだが、さっきの様子を見るにそんな簡単に仮契約して良いものか悩みどころだよな」
「そう言えばキャスター、藤丸が倒れた原因についてアナタ何か心当たりがあるようだったけど、知っていることがあるのなら教えて貰えないかしら」
オルガマリーはキャスターが、リツカが倒れる直前に、マスターの状態が悪くなっていることを言い当てていたことを思い出し、彼に問いかける。
「そうだな、それにはこの聖杯戦争の異常性について説明するところから始めないといけない。ちょっと長くなるか良いか?」
「構わない、聞かせて欲しい。私も私の身体に何が起きてるか気になるし、それにこんな地獄のような光景が出来てしまった理由を知らないといけないと思う」
リツカの決意を秘めたような目を見て、キャスターも感じいる所があったのか、姿勢を正して話を始める。
「じゃあ、この狂った聖杯戦争の話を始めるぜ。──その前に、オレの名前はクー・フーリン。かつては“クランの猛犬”なんて呼ばれたが、今は
そして、真名を明かしたキャスターことクー・フーリンは語り始める。本来の歴史から遥かに歪んだ聖杯戦争の記録を。
「──ってな感じで、マスターは全員どこかに消え、オレ以外のサーヴァントは全滅し、さっき見たような、最早英霊としての誇りすら失った姿になっちまったわけだ。オレはその事態を解決するためにこうして動いてたんだが、さすがに多勢に無勢でね。アンタらが来てくれて助かったってのが正直なところだ」
「なるほど、状況はだいたい把握しました。少し質問があるのだけど、良いかしら?」
「いいぜ、と言いたいところだがその質問は聞くまでもないな。アンタが聞きたいのは、
オルガマリーの質問にキャスターは予想通りという様子で話を続ける。まるでその質問が来ることが分かっており、聞かれるのを待っていたと言わんばかりの様子で。
「ええ、話が早くて助かります。一体どういうことなの? 本来聖杯戦争は七騎で行うものでしょう? エクストラクラスが召喚されたという話もなかった以上、元々この聖杯戦争は六騎しかサーヴァントが存在しなかったということにならないかしら?」
「アンタの察しの通りさ。この聖杯戦争にはライダーが存在しなかった。もちろん代わりの
「なるほど、そういう事か。大体わかった」
キャスターの含みのある言い方に、これまで口を挟むことの無かった士が事態を把握したと言わんばかりの口ぶりで告げる。その発言はリツカの目を輝かせていたのだが、それは彼女がただ仮面ライダーが好きだからである。
「ああ、そうだ。アンタは七騎目だよ、ライダー」
キャスターが告げた言葉でリツカを除く全員が事態を把握したという様子で考え込む仕草を始める。聖杯戦争に対する知識が薄い上に士の発言で、上の空状態だったリツカだけが全く自体を呑み込めていなかった。
「……なるほど、そういう事ね! だから藤丸はさっき倒れることになった、確かにそういう状態なら納得が行く……」
「詰まるところさっきの召喚はカルデア式ではなかった……だからこそ士さんが召喚されたのですね。納得しました」
「フォウ、フォウフォウ!」
「え、ちょっと待って。これもしかして私だけ分かってない感じ? フォウ君すら分かってるのに私だけが分かってない感じだよね?」
「どうやらそうらしいな、嬢ちゃん。まあ簡単に言うとだ、そこのライダーはアンタらカルデアのシステムじゃなくて
「あ──、なるほどそういう事ね? わかった、私分かった」
明らかに分かっていないだろうが、恥ずかしさからそれが言えないのか、リツカはわざとらしくごまかしにかかる。それは誰の目から見ても明らかで、隠すのが下手という次元ではなかった。
「まあ、詰まるところ、キミと門矢の契約は直接結ばれているから、カルデア式と違って短時間に魔力を使いすぎると、身体に送り込む魔力が間に合わなくなるってことよ。令呪から通じてるパスのおかげで魔力自体はカルデアから供給できるけど、カルデア式よりも魔力を流すのに手間がかかるってことね」
それを察して、気を遣ったオルガマリーが(彼女なりに)分かりやすく説明を行ったが、残念ながらリツカには理解が追いつかなかった。墓穴を掘ることを恐れ始めた彼女は最早コクコクと頷くだけの機械になってしまっている。
「で、結局オレは仮契約出来るのかね? 所長さん、アンタシステムに詳しいみたいだし、判断頼むわ」
「結論から言うと問題ありません。アナタとの仮契約はカルデア式で結べば特に藤丸に負担が行くことも無く、魔力供給もある程度は行えるでしょう」
「お、ラッキー。それじゃ早速頼むぜ、リツカ」
「あ、うん。──所長、仮契約ってのをやれば良いんですか?」
「そう言えばまだ、アナタはちゃんとした契約を落ち着いてした経験すらなかったわね。手順は教えてあげるからその通りにやりなさい」
「じゃあ、仮契約の傍ら、ここに残ってる敵対勢力についてオレが分かってる情報を教えるか。ま、バーサーカーほど細かく知ってる訳でもないんだがな、無いよりはマシだろうさ」
所長の手解きを受け、リツカは無事キャスターであるクー・フーリンと仮契約を結ぶことに成功した。そして、情報交換に加えて、充分な休息と言えるかは怪しいが、行動を再会できる程度に回復を行えたので、時は急げという事で一行は廃ビルを後にしていた。
「キャスターさん、さっきの話では残りの敵対サーヴァントは二騎、アーチャーとセイバーとの事でしたが、基本的には持ち場を動かないんでしたよね?」
「ああ。セイバーは大聖杯に陣取ってやがるし、アーチャーはセイバーの守護者気取りで常に傍らに控えてやがる。こんな事態になってからヤツらが動いた所は見たことがない」
「ならこのまま大聖杯に向かって進めば良いってことね。サーヴァントの奇襲がないのならじっくり作戦が立てられて助かるわ」
キャスターの言葉を信用する一行のメンバーは、周囲に敵性反応がないか位の警戒はしていたものの、少し和やかで気の抜けた雰囲気で街を進んでいた。
「──何か来る! そこの店に隠れろ!」
「士さん……?」
そんな中一番後ろを歩いていた士が何かに気づいたかのように叫び、退避を勧める。
「急げ! ……間に合えよ!」
「フォウフォウ!」
フォウの呼び掛けもあり、慌ててリツカとオルガマリーを庇いながら壊れた店舗に向かうマシュとキャスター。迫り来る大きな一撃に備えて士はカードを同時に三枚出し、順に読み込ませていく。
士の姿がディケイドの姿に変化した後、ヘラクレスオオカブトに良く似た剣を持つ仮面ライダーの姿に変わる。運命と戦い勝利したライダー、仮面ライダー
「何とか間に合ったか……だが、さすがにこの直撃を受ける訳には行かない」
リツカ達が店内に入ったことを確認した後、追加でカードを1枚取り出し使用するディケイドブレイド。
読み上げる音が鳴り響いた後、止まっていた剣がその動きを再開し、ディケイドブレイドの体に触れると同時に爆ぜた。
「くっ、やはり使っておいて正解だったな……」
爆風が晴れると、そこには銀色に硬化したディケイドブレイドの姿があった。しかし、その姿は直ぐにディケイド本来の物へと戻っていく。そして思わず膝を着いたディケイドにリツカは思わず声をかける。
「士さん!」
「来るんじゃない……! 相手は俺たちの場所を正確に把握しているらしい」
何とか体制を建て直し変身したまま店内に転がり込むディケイド。その様子には明らかな動揺が見られた。
「アーチャーだな……アイツ、あんな
「あの攻撃、どこから撃ってるの!? 全く見えなかったわよ?」
「
「とにかく対策を考えましょう……! 先輩、何か案はありませんか?」
マシュは期待に満ちた目でリツカを見る。突如話を振られたリツカは混乱しながらも考え始めた。
「え、私? そうだな……士さん、タイム使ったのなら相手の大体の場所はわかった?」
「タイム? 藤丸、一体それは何なの?」
「タイムって言うのはさっき士さんが使ったカードの1枚で、周囲の時を一時的に操る効果があるんです。相手の攻撃が一時的に止まったのもあれのおかげです。結構負担のかかる技だから乱用は出来ないと思うんだけど……」
「確かに、やつの場所はだいたい把握したが……さすがに方角が限界だな」
「そっか……ならどうしよう──」
彼らが作戦を練っていると周囲で爆発音が起きた。アーチャーが再び攻撃を再開したのだ。それと時を同じくして、廃店舗にスケルトンが侵入してくる。
「……どうやら、のんびり話してる時間はないみたいだな!」
キャスターが炎を放ち、侵入してきたスケルトンを撃破するが、既にスケルトンが周囲を埋めつくしていた。
「マスター、どうする?」
「悩んでる時間はなさそうだね……士さん、アーチャーにタイマンで勝てる自信はある?」
「もちろんだ……と言いたいところだが、魔力の都合もあるから絶対とは言えないな」
ディケイドはスケルトンをライドブッカーで切り裂いたあと手を払いながらそう述べる。
「藤丸、門矢。魔力がどうしても必要なら令呪を使いなさい。それがあればさっきの戦闘以上に魔力を使っても倒れる心配はないわ」
「それなら、何とかしてやる!」
「士さん……よし、皆私にここを突破するアイデアがある! 理由を説明する時間が無いから、今から言う通りに動いて欲しい!」
士の返事を聞いて、リツカは腹を括った。マスターとして、この場の英霊たちを指揮し、勝利に導くのだと決意をしたのである。
「よし、行くよ! 皆手筈通りにお願い!」
「はい、頑張ります!」
「任せな!」
合図とともに一斉に店を飛び出し展開する。マシュが盾を構え、その傍らにリツカが立ち、礼装で彼女をサポートする。キャスターとオルガマリーは魔術を用いて周囲のスケルトンを自陣に近づけないようにしていた。ディケイドは、再び
「見つけた! 放つぞ!」
ディケイドクウガがアーチャーを目視し、攻撃を放った瞬間、アーチャー側からも一撃がこちらに向けて放たれていた。
「攻撃、確認しました! 持ちこたえてみせます……!」
その攻撃が放たれたのをマシュは正面から見据える。隣に立つリツカを、後ろで自分たちを守ってくれるオルガマリーやキャスターを守るために。
そして、攻撃が迫り、マシュの盾に至る瞬間。一瞬だが、光の壁が現れる。
「絶対に止めてみせます! やぁぁ!」
その光の壁で放たれた剣の威力は減衰し、マシュの踏ん張りもあって爆発を含め、盾で受け止めきることが出来た。
そして爆風の後、その場にはディケイドクウガを除く全員が健在であった。
「マシュ、良くやったわ! 今のは……宝具の片鱗ね」
「わたしが……宝具を?」
「凄いよマシュ! 今の光の壁、かっこよかったよ!」
「大したもんだぜ、嬢ちゃん。さて、後はライダーが上手くやってくれるかだな」
時は少し遡り、店舗の中に戻る。
「結論から言って、大事なのは士さんがアーチャーを見つけて、その場から離れられる前にアーチャーの元にたどり着くことだと思うんだ」
「そんなことが出来るなら今すぐにでもやってるわよ、と言いたいところだけど。何か考えがあるみたいね。言ってみて」
「はい。アーチャーを見つけることはさっきのペガサスフォームでどうにかなると思うんだ。問題はその後。こっちがアーチャーを見つけるってことは、あっちにも見つけられる可能性が高い。だから、攻撃が一発確実に来ることになる。それをマシュに何とか受け止めてもらわないといけない。で、マシュに受けてもらうならスケルトンはキャスターと所長に対応してもらわないといけないんだ。マシュが守りに集中出来るように」
リツカは思いついた作戦を語り始める。無論、素人の考えた戦法だ。本来なら通用しないはずである。だが、こちらには
「なるほどな。でもよ、リツカ。結局のところアーチャーの元まで辿り着く方法がねぇじゃねぇか」
「士さんには高速移動系の力もあるはずなんだ。アーチャーの攻撃の爆風が拡がってる間にそのカードを使用して、二発目が放たれる前に向こうまで行ってもらう、それなら何とかならないかな?」
「……どうやら悩んでる間は無さそうね。いいでしょう、その作戦で行くことにしましょう。門矢、アナタも構わないわね?」
「ああ、マスター。今度は倒れるなよ?」
「もちろん! じゃあ──合図で出発しよう!」
そして、現在。高地から射撃していたアーチャーの目の前には、銀色のボディに赤色の「Φ」を象ったような顔と、開いたような胸元のコアが印象的な仮面ライダーが居た。10秒間のみマッハ51にも達するスピードを発揮出来る仮面ライダーファイズアクセルフォーム、の姿を取ったディケイドである。ディケイドファイズがアーチャーの前に姿を現すと、【TIME OUT】という電子音が流れ、ディケイドの姿へと戻る。その姿を見た、アーチャーは何かに気づいたように言葉をかける。
「どんな手段を使ったのかと思ったが、貴様、まさか……
「俺のことを知ってるとは、この世界では俺は本当に創作物らしい。だが、お前も相当な偽物だな?」
ディケイドは相手の口ぶりや、動作を見て何かを察したらしく挑発を行う。一方、挑発を受けたアーチャーもタダでは終わらない。ニヒルに笑いながら言葉を返す。
「ふっ、察しが良いな。貴様も贋作使いか、面白い。 贋作者同士、力比べと行こう」
「贋作者か、確かに俺もそう言う口なのかもしれないな。だが、生憎と俺は破壊者だ。ちょっとお門違いって話だな」
「それは失礼。オレもかなり壊れていてね。そろそろ始めるとしようか。だが、オレの動きに貴様はついてこれるか?」
「ふっ、お前の方こそ俺に着いて来れるか?」
かくして、戦いの火蓋は切って落とされる。手始めにカードを二枚取り出したディケイド。その二枚にはメタリックな赤色に水色の瞳が特徴的なライダーの姿が描かれている。
「くっ、そのライダーは!」
使用したカードを見て顔を歪めるアーチャー、その瞬間、ディケイドはディケイドカブトへと姿を変え、そしてその姿を一瞬にして消す。
「動きが追えない……ぐっ、だが!
見えない敵からの攻撃を受け続けるアーチャー。だが、彼には磨き続けてきた
「そこだ!」
「ちっ!」
高速で動いていた反動からか、攻撃を受けた際の衝撃も大きい。ディケイドカブトの変身が解除され、ディケイドの姿へと戻る。
「まさかあれを見切るとは。言うだけのことはあるようだ」
「戦闘は能力だけではない、オレがそれを教えてやろう」
「あいにくと口うるさい奴は間に合ってるんでな。さて、両手剣には両手剣……とは少し違うが、まあ良いだろう」
ディケイドは次のカードを取り出し、再び姿を変える。
紫の炎に包まれ妖を討つ鬼の姿──仮面ライダー響鬼──へと転じると手を払い、即座にもう一枚のカードを取り出す。
「とりあえずこの炎を喰らっていけ!」
現れた二本のバチ──音撃棒 烈火──を振りかざし、炎をアーチャーに放つ。無論、その威力は高いとは言え、双刀で軽く払われる。その間に距離を詰めたディケイド響鬼は音撃棒をアーチャーに振りかざす。
双刀とバチの撃ち合いが暫く続くが状況は打開しない。
「さすがに強いな、これならどうだ!」
撃ち合いの反動を利用して後ろに引いたディケイド響鬼が、すかさず一枚のカードを取り出す。──だが、いや、だからこそディケイドは気づかない。その隙にアーチャーが一本の矢を番えて放っていたことを。
「ぐっ、さすがに手強いか」
読み上げ音と共にディケイド響鬼の口元から紫の炎がアーチャーに放たれ、直撃し、彼を怯ませる。
「よし、トドメだ」
アーチャーが仰け反ったのを確認したディケイドは状況が優勢だと思い、黄色のカードを取り出した。──油断からか、彼は気づかない。背後から迫る一撃に。
「喰らいつけ、
「何!? ぐはっ!」
背後からの一撃を受けたディケイド響鬼は、呻き声とともに倒れ再びディケイドの姿に戻る。アーチャーの放つ追尾性の一撃に確実に不意を疲れた形である。
「油断したな、仮面ライダー。貴様にこの世界は救えない。あくまで貴様は虚構なのだから」
「くっ……何だと?」
「もし違うのだと言うのなら証明してみろ! この世界にだってヒーローがいると、世界を救えるとな」
アーチャーはまるで挑発をするかの如くディケイドに言葉を浴びせる。それはまるで、ディケイドに勝利してほしいと願っているようですらあった。
「仮面ライダーは倒れない。俺は数多の世界を巡りそれを見てきた! この世界に虚構しかないというのなら、俺が示してやる。何時だって、ヒーローは遅れてやってきて世界を救うってことをな!」
その言葉は、ディケイドに火をつける。かなりのダメージを負ったはずの彼は、直ぐに立ち上がり、懐より液晶の着いた端末を取り出す。
「リツカ、聞こえるか? 宝具を使う、良いな?」
『ずっと聞こえてた。いいよ、やっちゃって。
その言葉が念話で送られた直後、ディケイドの身体に大量のエネルギーが流れ込む。詰まるところ。令呪が使用された証拠である。
「どうやら、マスターからも俺は期待されているらしい。なら、せっかくだから見せてやる! 歩くライダー図鑑ってやつをな! 行くぞ、
「馬鹿な……何だそのデザインは!?」
「ロード・カルデアス。そう名付けなさい」
ここまで読んで下さりありがとうございます。
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第五話 「
ディケイドが宝具の許可をリツカに尋ねた時、カルデア一行は相も変わらずスケルトンに加えて新たにやってきた竜牙兵の軍勢に囲まれ、それらと継戦状態にあった。
「士さん、宝具を使うらしいです。とりあえず令呪は使いましたが、もし私が倒れたら所長、フォローお願いします」
「そう……わかったわ。それにしても宝具を使う状況ってことは事態は芳しくないのかしら」
「アーチャーとライダーは少しタイプが似通ってるからな、決め手を欠いてるんじゃねぇか」
戦闘においては素人同然のリツカ以外は手を動かしながら会話をする。マシュがリツカとオルガマリー、そしてフォウを庇い、その間にオルガマリーが魔術を用いてスケルトンや竜牙兵を一体ずつ仕留めていく。彼女たちの背後についてクーフーリンが一面を完全に受け持っている状態だ。
「先輩、士さんの宝具というのはそんなに強力なものなんですか?」
「私にもよく分からないんだ、士さんの宝具になりそうなものに心当たりが何個かあって。確かさっき聞いた話だと、宝具っていうのは──英霊が生前に用いた武器や逸話が形をとったものなんですよね?」
リツカは移動中に所長などから教わった知識を改めて整理し、確認を行う。合間の時間がもったいないということで、リツカは移動中などに必要な知識を強制的に教わっていた。
「そうよ、宝具は英霊を象徴するもの、見たらその英霊の真名が分かるクラスのアイテム。そして、戦況を一変させられる力を持つものだと言えるわ。これまでわたしたちが辛うじて生き延びられてきたのは、黒化した英霊たちが宝具を十全に使えなかったからね。あのバーサーカーの不死身さは宝具だったかもしれないけれど、攻撃系の宝具じゃなかったから……」
「攻撃系の宝具は正しく一撃必殺の力を持つとわたしはこれまで教わってきました。そして防御系の宝具はそれらを防ぐことができるとも。シールダーのわたしの宝具はどうやら防御系みたいですが、まだ正確に分からないというのが正直なところです。所で、キャスターさんも宝具はあるんですよね?」
「おう、もちろんだ。だが、使うべきところは見極めるタチでね。今はまだ時期じゃねぇ。お嬢ちゃんたちには悪いが、もう少し踏ん張ろうぜ。お互いな」
「フォウフォウ! フォフォフォフォウ!」
一切悪いと思っていないような表情で、キャスターは話す。とはいえ、彼がほとんどの敵を相手している以上、この場の誰も彼に強く言うことは出来ない。フォウが一人抗議と言わんばかりに強く吠えるが、無論聞き入れられることはない。
「ふむふむ、皆の話を総合して考えると既に士さんは宝具を使ってる気かするんだよね…… それこそ仮面ライダーに変身する力こそが宝具と言うことも出来ると思うんです」
「確かにそうね。彼は戦闘するために常に宝具を発動している、常時発動型の宝具を持っているのかもしれない。ですが、ライダークラスは大体の場合複数の宝具を持ちます。わざわざ門矢が宝具を使うと言った以上、これまでのものとは別の宝具を使うというのが正しいのではないかしら?」
「それなら、候補は2つに絞れますね。1つはケータッチ。もう1つは、ファイナルフォームライド。このどちらかになるかと」
「どっちも強そうな響きですね。それぞれどんな力があるんですか?」
リツカが述べた2つの宝具候補を聞いて、ひたすら攻撃を受け止めていたマシュの瞳が輝く。好奇心旺盛なマシュは知らない、なおかつ強そうな響きを含んだ言葉に関心を抱いたのだろう。
「まず、ファイナルフォームライドは、他のライダーを武器などに変形させて強力な攻撃を放つものだよ。巨大な剣や弓などに変形したライダーで大技を放つ感じだね。そして、ケータッチは──ディケイドをパワーアップさせて、言わば
「歩くライダー図鑑……? 藤丸、何を言ってるの?」
「フォウフォ?」
ディケイドが取り出したタッチ型の端末。それを使用した瞬間、彼の姿が変わる。
そして、その姿を見たアーチャーは困惑を隠せない様子でわなわなと震えながら声を上げる。
「馬鹿な……何だそのデザインは!?」
「ふっ、変わってると思うか? ──俺も、そう思う」
「そのようなデザインを認められるか! その姿は……その姿は……さすがに許せない。オレは、そのような物を仮面ライダーとは認めない!」
アーチャーは、激怒していた。正義の味方に憧れ、とうとう守護者に至るまでとなった彼は、「仮面ライダー」に関してある種憧憬に近いものを持っていた。虚構の存在であれど、その存在は確実に子供たちの希望としてあったからだ。ある程度の年齢になって以降はテレビで見ることなども無くなっては居たが、彼の中では1つの英雄像として仮面ライダーが存在していた。だが、今彼の目の前にいる「仮面ライダー」はどうだ。胸元に仮面ライダーが描かれたカードを9枚並べている。
──言ってしまえば、ダサい。カッコよくないのだ。彼としては
「お前が認められるかどうかは関係ないさ。さぁ、決着と行こうか!」
ディケイドは、ライトブッカーをソードモードに変形させ、その刃に手を添わせた後、アーチャーに突進を仕掛ける。気が動転しているのか行動が遅たアーチャーはれ、ディケイドが振るうライドブッカーを辛うじて受け止めることしか出来ない。
「くっ、貴様には負けん! 貴様だけは、オレがここで倒す。
「どうやら大技らしいな。こっちも惜しみなく行かせてもらおうか」
打ち合いの衝撃を利用して再度距離をとった両者は大技の用意を行う。アーチャーは使い慣れた
読み上げ音が鳴り響くと共に、ディケイドの隣に
そして、黄色のカードを取りだし、ベルトの左サイドに移したドライバーにカードを読み込ませる。
「受けてもらおう、
アーチャーは絞った弓から極大火力の剣を放つ。一方ディケイドは並び立った装甲響鬼とシンクロして彼の必殺技である「音撃刃 鬼神覚声」を放つ。
2つの斬撃と1つの剣が激突し、その威力が相殺される。舞い散った爆風がお互いの視界を奪う中、2つの声が響く。
「
爆風が晴れると、これまで構えていた双剣を
「ぐっ……やってくれるな」
「トドメだ」
大きなダメージを受け、地に伏せたアーチャーにもディケイドは手を緩めない。すぐさま新たなライダーシンボルをタップし、次の仮面ライダーを呼び出す。
現れたのは、
ディケイドとカブトは高く飛び上がり、ライダーキックの構えに移行する。それを見たアーチャーは、避けることが叶わないことを悟り、敗北を確信したかのように穏やかな表情を浮かべる。
「ハイパー……キック!」
ディケイドによる技の掛け声の後、蹴りが放たれる。その一撃はアーチャーに直撃、彼の霊核を完全に破壊する。
「オレの──敗北だな」
消滅しかけるアーチャー。その表情は、憑き物が落ちたようであった。
「アーチャー、ひとつ聞かせろ。
「ほう……貴様覚えているのか。オレは知らないが、どうやらセイバーの言っていた通りらしいな。知りたいのなら大空洞にいけ。大聖杯の前で女王がお待ちだ」
ディケイドとアーチャーは意味深な会話を行う。お互いの腹を探るような会話であったが、本人達の間では上手く伝わっているようである。
「……面倒なことになりそうだ。とにかくそのセイバーって奴に会うしかないか」
「そうすることをオススメしよう。さて、貴様の存在がこの事件にどのような影響を与えるのかは分からんが、仮に貴様が仮面ライダーだと言うのなら、世界の一つくらい救って見せろ」
「あくまで俺は通りすがりだ。──だがまあ、そう言われたら仕方ない。救ってやるよ、この世界を」
「ふっ、口が悪い奴だ……」
最後に憎まれ口を叩いてアーチャーは消失する。それを見届けてから、ディケイドはようやく変身を解除した。油断をするとアーチャーが最後の一撃を放つかもしれないと考えていたからである。事実、アーチャーの性格等を鑑みるとその見立てはあながち間違いではない。変身を解いた士はため息をつきつつ念話でリツカに連絡を取る。
「最後まで油断ならない奴だったな。……おい、マスター。勝ったぞ、今からそっちに戻る」
『士さんなら勝ってくれると信じてた。こっちもだいたい片付いたからさっきの店で合流しよう』
「当たり前だろ、じゃあ今から戻る。待ってろ」
念話を切り、士は元の場所へとゆっくりと戻り始める。
「──状況は今報告した通り。我々はこれから最後のサーヴァントであるセイバーの元へ向かいます」
『状況は理解しました。こちらもカルデア内生存スタッフの協力によって何とか体勢が立て直せてきました。お戻りをお待ちしています』
士が廃店舗に戻ると、店の外でオルガマリーが誰かと通信をしていた。
「オルガマリー。戻ったが……その通信相手は?」
「あぁ、彼はカルデアの医療部門のトップ、ロマニ・アーキマンよ。Dr.ロマンと呼ばれているわ」
「ドクターだと?」
『初めまして、仮面ライダー。紹介に預かったロマニ・アーキマンだ。本来ならちゃんと挨拶をするべきなんだろうけど、今現場のスタッフに呼ばれてね。申し訳ないが今はこれで失礼するよ。それでは所長、あとは手筈通りにやっておきます。そちらにご武運があることを祈ってますよ』
士が話しかけた途端、内部のスタッフに呼ばれたからという理由で通信を切ったロマン。その様子を見て士は彼を訝しむ。
「切れたらしいな……それにしてもあの声……まさかな」
「門矢?」
「いや、何でもない。マスターは店の中か?」
「ええ、あなたの事を待ってるわ。早く行ってあげて」
士は無言で頷き、廃店舗に入る。その中には目を輝かせたマシュが待ち構えていた。
「あの、士さん! 士さんの宝具についてお教え頂けますか!」
「マシュ……急にどうしたんだ?」
「先輩から士さんの宝具の話を聞きまして。どうやらとてもカッコよさそうなのでお話を聞かせて貰えたらと!」
「マスター……どうなってる?」
「ごめんね士さん。さっきの令呪の時に士さんの宝具の話をしたらマシュが飛びついちゃって。あ、所で宝具って何を使ったの?」
「なるほどな。使ったのはこれだ、
そう言って懐からケータッチを取りだし周りに見せる士。マシュ、フォウ、リツカの2人と1匹がそれを物珍しそうに眺める。
「フォウフォウ!!」
「これが本物かぁ……やっぱり質感が良いよね」
「これが……
「おいマスター、なんか変な教え方してないか?」
「いや、だって事実そうじゃない、あれは言葉の通りだよ!」
3人と1匹がわちゃわちゃ団欒していると、辺りを偵察していたキャスターが帰ってきた。
「おう、元気そうじゃねぇか。で、アーチャーはどうだったんだよ。どうせマスターのことも考えると少し休憩が必要だろうからその間に話を聞かせろよ」
「士さんの話、わたしも興味があります! 主にその宝具をどう使って戦ったのかが!」
「フォウフォウフォウ!」
「やれやれ、まあじゃあ話してやるよ。アーチャーはな──」
「いよいよ大空洞ね。話によるとここに大聖杯があるらしいけど……」
「なんだ、所長さんは大聖杯見たことないのかよ。ありゃあ最初見た時には驚くぜ。特に魔術師はな」
二時間ほどの休憩を挟み、一行はとうとう最後のサーヴァントであるセイバーがいる大空洞に足を運んでいた。
「作戦についてですが、打ち合わせ通りですよね。正直、わたしはまだ不安なのですが……」
「マシュ・キリエライト。この作戦が成功するかどうかはあなたにかかってるわ。キャスターの情報から推測するに、セイバーの真名はアーサー王。その聖剣を受け止められるとしたら──あなたの盾だけよ」
「マシュなら大丈夫。これまで私を守ってくれた貴女の盾、信じてるから」
「先輩……でもやっぱり怖いんです。もし上手くいかなかったらって考えるとどうしても足がすくんでしまうんです……」
「仕方ないわね、ならわたしから1つ。よく聞きなさい、マシュ。あのね、──」
「これが大聖杯か。想像以上に大きいな」
途中現れた竜牙兵を倒しつつ大空洞の奥にたどり着いた一行。大聖杯を見かけた士はとりあえず首からかけたカメラで写真を撮る。現状、現像する手段はないが、彼にとって最早それはクセになっている行為である。
「うそ、極東の僻地にこんなものがあるなんて……アインツベルン、想像以上に厄介な物を用意してたのね……」
「あれ、あそこにいるのは、もしかしてセイバーのサーヴァント?」
リツカが指差した先に居たのは剣を両手で携え直立して大聖杯の前に立つ女性であった。
「……ほう、珍しいサーヴァントが二騎もいるな」
「お前が、セイバーか」
「ふっ、久しいな、
セイバーはディケイドを見て、何かを知ってるかのごとく語り始める。
「アーチャーが言ってた通りだな、セイバー。以前と姿が変わっているがイメチェンか?」
「貴様も記憶を持っているとは想定外だ。だが、そちらの方が面白い。それと、その少女と一緒にいるというのもまた興味深いな。運命とはほんとに残酷だ」
「セイバー、お前何を知ってる?」
「さあな。私に勝てたら教えてやらんことも無い」
「なるほどな、それなら始めようか。変身!」
「その姿……やはりな。貴様らの旅は終わる。案山子ごっこも辞めにしよう。さらばだ、人類最後のマスター。破壊者を呼んだのが貴様の運の尽きだ」
「違うな。俺たちの旅はまだ始まってすらいない。旅は始める瞬間がいちばん難しいんだ。だからこそ、俺たちはお前を倒し、この困難な旅を始める」
「面白い。私を倒せるなら倒してみるが良い!」
そう述べ、話は終わりだと言わんばかりに携えた剣を構えるセイバー。その瞬間、後ろから巨大な木の手が伸びる。
「唸れ、炎の巨人!」
その腕がセイバーを掴んだと思った瞬間、腕の中から黒い魔力が放たれ、木の腕が爆発四散する。
「キャスターか。何か仕掛けてくるとは思っていたが、やはり予想通りだったな」
「さすがにそれは想定内か……なら、こいつはどうだ!」
更に続けてセイバーの足元から極大のルーン魔術が放たれる。
「あまりに脆い!」
だが、再び魔力放出にかき消される。
「なら、これならどうだ」
ディケイドがカードを2枚連続で読み込み、3人に分身した後それぞれがディケイドスラッシュを放つ。本来なら予測不能なはずの連続斬撃であるが、セイバーの前ではその力も無力であった。
「少しはやるようだが……張合いの無い!」
セイバーが剣に魔力を込め何度か振るうことにより全ての斬撃が相殺されてしまった。
「もう良いか。すぐに楽にしてやろう」
剣をこれ以上交える必要がないと判断したのか、セイバーは剣を下ろし、魔力を貯め始める。
「卑王鉄槌、極光は反転する。光を呑め!
そして、貯めさせまいと妨害に走ったサーヴァント達が行動を起こす前に魔力を貯め終え、一撃を放つ。それは、反転した星の聖剣。異星の侵略者すら砕くことが可能な勝利の剣。それを防げるものは、この場にはただ一つしかなかった。
「お願い、わたしに守る力を!」
黒い光を前にして一歩も引くことなく、仲間を守らんと前に出るマシュ。そして彼女はここに来る途中オルガマリーから言われた言葉を思い出す。
『仕方ないわね、ならわたしから1つ。よく聞きなさい、マシュ。あのね、宝具が起動しないのはあなたのせいじゃないわ。カルデアが無茶な実験をしてあなたをデミ・サーヴァントにしたせいよ。本来なら不完全な融合だったのが、今となっては一応機能はしているものの、真名が思い出せない力だけの状態になっているの。だから、わたしから貴方に贈り物として、宝具の名前をあげるわ。真名が解放出来ないのなら、擬似展開でも良い。とにかく力をあなたのものにしなさい。名前はそうね──ロード・カルデアス。そう名付けなさい。カルデアを守りたいというあなたの気持ちならきっと使えるわ。マシュ、お願いね』
「わたしは、先輩の、所長の、皆さんの思いに答えます! 真名・偽装登録。宝具展開!
マシュが叫ぶと、先程は淡くしか現れなかった光の壁が一面を覆うように現れ、聖剣から放たれた黒き光を受け止める。
「耐えて……見せます!」
そして、
「ほう……あれを受け止めきるとは。さすがの盾の性能だ」
「隙だらけだぜ、騎士王! 今度こそ奥の手だ、焼き尽くせ木々の巨人。
キャスターの宣言に伴って、5mを越す巨人が現れ、聖剣の反動に呑まれるセイバーを内部に取り込み自らの身を炎で包む。リツカたちが想定していた作戦であった。一度聖剣を打たせ、生じた隙につけ込みキャスターの宝具で灼き尽くす。手筈通りに進んでいたが、無論セイバーがその程度で終わるわけはない。
「くっ、上手くやったつもりか! だがまだ甘い!
隙を無理やり超えて、聖剣の一撃で
「セイバー、その全てが規格外! こんな相手に、我々は勝てるの?」
最初に心が折れかけたのはオルガマリーであった。圧倒的なパワーのセイバーを見たせいで絶望に心が支配されかけていた。
「オルガマリー、また宝具を使うが構わないか!? さっきとは別のものだ!」
そんな彼女のメンタルを折らせなかったのは、ディケイドであった。彼は想定を上回るセイバーの実力にも焦ることなく戦闘をしていた。
「門矢、それで勝てるの?」
「少なくとも今よりはな!」
「なら許可します。藤丸、令呪でバックアップ!」
「分かりました! 士、受け取って!!」
「助かった、マスター。おい、海東! いるんだろ? 手を貸せ!」
令呪によるバックアップを受けたディケイドは虚空に向かって叫ぶ。すると、誰もいなかったはずの場所から、マゼンタカラーのディケイドとは対象的なシアンカラーの銃を構えたライダーが現れる。――仮面ライダーディエンドである。
「まさか君から声を掛けてくれるなんてね、士。正直な話、少し気味が悪いけれど、君から頼まれるというのは珍しい。それに免じて今回だけは助けてあげるとしようか!」
「これが……ファイナルフォームライド!?」
「それとも、こう呼んだ方が良いか? ▪️▪️▪️▪️」
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今回はコンプリートフォームのお披露目並びにセイバーとの決戦手前まで来ました。恐らく次の話で序章は終わり。少しの幕間と種明かしフェイズに入ることになると思います。黒王の難易度が爆上がりしてますが、これは次章以降の話へのフラグということで。
あと、一つだけ。リツカから士への呼称が安定しないのは仕様です。
それでは、次回は恐らく6月になるとは思いますが、そちらでまたお会いしましょう。
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