猫と89式とモブの話(仮題) (ライス・オン・エッグ)
しおりを挟む

目が覚めたら異世界

初投稿です

まだ、原作キャラは登場しません


 (やってしまった)

 

 自分が置かれている状況を理解したとき真っ先にそう思った。

 

 (昨日、深夜まで起きて寝落ちたのが原因か?)

 

 いくら考えたところで現状は変わらない。ことの原因を考える事で現実から目を逸らそうとするも意味がない。今の自分にはただ受け入れることしかできない。

 

 「T■UTAYAで借りたDVDを無くすなんて!うっそだろ、今お金ないのに!」

 

 脳裏に浮かぶのはクラスメイトのモブ男君。紛失したDVDの弁償に5万円が必要だったけど、結局払えなくて親に泣きつくしかなかったモブ男君。親にかなり絞られたのだろう、あの時の彼の顔はまさに抜け殻とでもいったところだった。

 

 (やばいやばいやばい!もし母さんにこのことがばれたら…うちはあんまり余裕ないから無駄遣いはするなって口酸っぱく言われてるのに!)

 

 「ちくしょう、どこに行ったんだ俺のシンフォギアAXZ!…いや、TSUTAYAのだけどさ!まじかーこれ、行かないとダメなやつだよなー」

 

 『行きたくない行きたくない』と心の中で連呼しながらも外出の用意ををする自分。もう割と覚悟完了してたりする。手にはコツコツと貯めた小遣い、そしてまだ少し残っているお年玉合わせて2万3千円。

 

 「昨日まではこれで金持ちだと思ってた自分を殴りたい。足りなかったらどうしよう…」

 

 

 

 『親にばれたくない』そんな内心でT■UTAYAに向かう。いつも当たり前に通っていた自動ドアがとても重く感じた。

 

 「いらっしゃいませー」

 

 どこか気の抜けた店員の声、いつもの店内なのに凄まじい居辛さを感じた。

 

 「あ…えっと、その、DVD…を紛失してしまいまして」

 「分かりました、それでは一度カードを拝見させていただきます」

 「は、はいどうぞ」

 「根本さとしさんですね……えっと、現在根本さんがお借りになっているDVDはありません。ひょっとして以前返却したDVDと間違えているんじゃないですか?」

 「え、いやそんはずは...昨日借りて今朝確かになくなってたんです!」

 「ひょっとして、ご家族の方が返却したんじゃないですか?」

 「それはまあ、ありえますけど…」

 「まあまあ、よかったじゃないですか別にDVDを紛失したわけじゃないみたいで」

 「そうですね…失礼しました」

 

 どこか納得できないが、まあ助かった。でも本当に母さんが返却してくれたのかな?うちはそういうの報告しあうって決めてるから書き置きとかあるはずなんだけどな。

 

 「まあ、考えてもどうにもならないか。母さんが帰ってから聞いてみよう」

 

 

 

 「母さん、今朝俺のDVD返却した?」

 「DVDって…してないわよ別に返却なんて。というか勉強はどうしたのよ春から受験生でしょあんた」

 「いや、昨日で見納めにしようと思ってさ」

 

 予想とは違う返事にとても混乱した。母さんが言ってることが本当なら結局誰があのDVDを返却したんだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――答えはすぐわかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『……近頃、認定特異災害通称<ノイズ>による被害が増加しています。○○区では特に多くの数が確認されて……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「最近多いわね。あんたも気をつけなさい、ちゃんと警戒警報出たらシェルターに避難するのよ」

 「………………えっ、あ、うん。分かったその時はちゃんと避難するよ」

 

 そう、シンフォギアAXZのDVDを返却なんて誰もしてなっかた。だって、この世界にそんなDVDは存在しないんだから。

 

 

 

 

 







目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

父の遺産

まだ出ない原作キャラ


 この世界が自分の知る世界から変わってしまったことに気づいてから一か月。最初こそアニメの世界に来れたと浮かれていたが、調べるにつれてこの世界のヤバさがわかっていった。前の世界との一番の違いはやっぱりノイズだ。アニメでは『バビロニアの宝物庫から出てくる最強の対人兵器』そんな感じの設定の癒し要素だった。アニメで知っているだけだったがこの世界では現実の存在だ。あんな空気の読めるノイズさんなんていない。何より以前ネットで調べたんだが、ノイズが人を炭化させる10秒程度の動画が下手なホラー映画より何倍も怖かった。

 

 「やっぱりノイズが問題だよなぁ、リディアンとか行ってみたいけどあのあたりノイズの発生数がめっちゃ多いからな」

 

 ちなみに俺の予想通りあのDVDは最初からなかったことになっていた。まあ、当然だけどな。それからツヴァイウィングのコンサートの事件は去年のことで風鳴翼はもう芸能活動を再開してるらしい。たしか原作があの事件から数年後のはずだったからもうすぐなのかな?えっと…1話の時は確か響が15歳だから来年に原作なら同い年か。あれ、まだ原作が始まってないってことは今の響って…

 

 「……どうにかしたいけど俺じゃあ何もできないな」

 

 そもそもどこにいるか知らないし。

 

 「はぁ~アニメの世界だからってなんでも都合よくいくわけないよなぁ。まあ、ともかく今は目の前に集中するか」

 

 さて、今俺は父親の部屋を掃除している。受験勉強は大丈夫なのかって?まあ大丈夫でしょ。まだ4月だし。ちなみにこの掃除をすると小遣いとして1000円が俺の懐に入る。こう言うとまるで父が俺に小遣いを渡して掃除をさせているみたいだがそうではない。この掃除を俺に頼んだのは母さんだ。ぶっちゃけると俺に父親はいない。自衛隊に所属していた父は俺が10才のとき前の世界では災害の救助活動中に、今の世界ではノイズとの交戦中に亡くなった。正直なところ俺は父のことをよく知らない。子供の頃の記憶しかないというのもあるが、それ以上に父がほとんど家に帰らなかったことが大きい。自衛隊の隊員として単身赴任していたため、父と会えるのは月に1度あるかないかだった。……話を戻すと今は父の遺品の整理をしている。まあ、整理といっても大体のものは屋根裏部屋に片付けられている。俺がやることは半物置と化したこの部屋の掃除だ。

 

 「ふう、大方終わったかな?こういう生活感のない部屋って苦手なんだよなぁあんまり長居したくない雰囲気がするんだよな。て、あれ?なんだこれ?」

 

 なんだこれ?初めて見るぞ。見た目は1メートル位の布で包まれた三角形だな。というかこれ見た目以上に重いぞ。なにが入ってるんだ?

 

 「よっと、さてさて中身は一体…………………は?」

 

 

 

 ―――そこには日本人にあまりは馴染みのない物、銃があった。

 

 

 

 お、おおおお落ち着け、落ち着くんだ俺!よく考えたらこれってあれじゃね親父の形見じゃね?前の世界とは違ってこっちではノイズと戦ったらしいし…………いやいやいやそれにしても銃はないだろ!ああいうのって自衛隊のものでしょ形見だって言ったってもらえるわけないじゃん。あれ、じゃあこれなんだよ?

 

 「あーもう!わけわかんねぇ!よし、母さんに聞こうそうしよう。うんそれがいい」

 

 これも知らないとかないよね?だったらマジで怖いんだけど。

 

 「……って、あれ?この銃弾丸が入ってない、のかな?マガジンが入りそうなところ空いてるし。それになんかくすんでるし、しばらく放置されてたのかな?」

 

 あれ、ひょっとしてこれマジで形見?え?死んだ隊員全員分こんなことしてんの?こんな自衛隊がぽんぽんノイズにやられる世界で?破産しそう。

 

 「いや待てよ、ひょっとしたらこれただ重さまで再現してるだけのモデルガンなんじゃ?まあ、そりゃそうか。てか、よく考えたら本物なわけないよな。まったく、驚かせるなよ」

 

 それにしても、こんなの前の世界じゃ見たことないな。これも世界が変わった影響かな?こっちの父さんはモデルガン集める趣味があるとか。

 

 「はぁ、驚いて損した。まあ、本物じゃなくてよかったよかった」

 

 もし本物だったら捕まったちゃうからな。

 

 

 

 

 

 「ああ、それ本物よ」

 「へ?マジで!?」

 「マジよマジ。実は自衛隊の寮にあるあの人の遺品を整理してるときに風鳴えーっと……弦十郎だっけ?そんな感じの名前の人に会ってね。なんでも昔、うちの人の後輩だったらしくてツテであの銃だけ回収したんだってそうよ」

 「へ、へーそうなんだぁ」

 

 マジかぁ、何やったんだよ父さん。しかしなるほど、そりゃ前の世界では見つからない訳だ。あっちにはOTONAとかいないからな。しかしほんとに形見だったとはな。というか意外と身近に原作キャラが居るんだな。びっくりだ。

 

 「あら、こんな時間。翼ちゃんの出る番組が始まっちゃうわ」

 「ほんと好きだよねSAKi…風鳴翼」

 「当り前じゃない、翼ちゃんの歌はなんというかこう…パワーがあるのよ。それに翼ちゃんはねぇ――」

 

 フォニックゲインかな?まあそれはともかく、この世界のに来て一番身近な変化はこれだな。母さんがSAKIMORIのファンになった。まあ、それは別にいいんだけどね。俺もCDとか借りて聞いてるし。最初は慣れるのにスゲー疲れたけど。

 

 「はいはい。じゃ、俺部屋に行ってるから」

 「んー」

 

 

 

 

 

 「ほうほう、こいつは89式5.56mm小銃ていう銃なのか」

 

 部屋で俺は父さんの銃について調べてる。ほら、やっぱり男の子はこういうの好きじゃん。触りたいじゃん。いじりたいじゃん。

 

 「フンフフーン……おっと、いけないつい鼻歌が」

 

 やっぱりね、銃って男のロマンだと思うんだ。て、あれ?なんかこの銃きれいになってる?さっきまではくすんでる感じだったのに。それになんだっけこれ、マガジン?もついてるし。

 

 「あれ?マガジンなんてついてったっけ?外せるかな」

 

 お、外せた。……………なんで中身は入ってるの!?




うわああああああああ!!

原作キャラ出したい!

めっちゃ絡ませたい!

そうだ、ノイズ出そう


次回 それでもノイズは空気を読む


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

それでもノイズは空気を読む

三話です

今回はちょっとシリアス(?)な内容を含みます。

それと、ついに原作キャラが登場します!


やあ、みんな。主人公のサトシだ

 

 なんと!今俺はあのお好み焼き店『ふらわー』に来ている。そう原作で響たちが通っていたあの『ふらわー』だ。やべえ感動してきた。なんで俺がこんなところにいるのかというと実は昨日まで、ゴールデンウイークに毎年やってる親戚の集まりに参加していたんだ。俺も最初は驚いたよ叔父さんの家に行ったら近所にリディアンとかあの大きなライブ会場があるんだから。えっ?親戚の集まりに参加するほど余裕あるのかって?大丈夫大丈夫まだ5月だから。まあ、そんなこんなで今は親戚とも一旦別れてこの街を観光中で、俺はやっと見つけた『ふらわー』でお好み焼きを食ってる訳だ。そこ、ぼっちとか言わない。親戚で年が近いやついないんだ。母さんは近所でやってる風鳴翼の握手会に行ってるし。

 

 「一人の方が楽しいって奴だって世の中にはいるんだぞ全く。それにしてもこのお好み焼き美味いな、おばちゃん。おかわり!」

 「はいよ!いやぁ、いい食いっぷりだねぇ。お兄さんこの辺の人かい?」

 「いいや、観光」

 「なるほど、普段はどこに住んでるんだい?」

 「八王子の方、遠いって程じゃないけど学生が一人で遊びに行くにはちょっと移動費がキツイんだよね」

 

 もちろんノイズの発生数が多いってのも理由だけどこれも観光に来なかった理由だ。往復で4桁は学生にはちょっとお高い。

 

 「そうかいそうかい、じゃあおばさんのおすすめの観光地はやっぱりスカイタワーだね。時間があるなら行っといで」

 「ほうほう、なるほどそれじゃ次はそこに行こうかな」

 

 2期で壊されるし見れるうちに行っとこう。

 

 「それじゃあ、ごちそうさま。はいおばちゃん、お勘定」

 「まいど、楽しんでおいで」

 

 

 いやー、行ってよかったよ『ふらわー』おばちゃんもいい人だったし、お好み焼きも美味しかったし。ノイズが出るかもって思ったけどよく考えたらまだ原作始まってないし。ノイズに出会う確率って通り魔に会う確率より低いはずだから簡単に遭遇する訳ないか。いやまあ、通り魔に出会う確率とか知らないけど。

 

 「よーし、次はスカイタワー行ってみよう。と、その前に母さんに連絡しとこう」

 

 さーて、スマホスマホ。……………あれ?

 

 「………マジですか。やっちまったよ、あー叔父さんの家に居た時か。とりあえず公衆電話探そう」

 

 はー、ついてないぜまったく。そういえば結局父さんの89式は何の聖遺物なんだろう?歌がトリガーになってるっぽいから多分聖遺物だよな。いろいろ試してみて歌っている間にマガジンを作る能力がある事は分かったけど、それだけなんだよなぁ。まあ、さすがに怖くて試射はできてない、身近にノイズなんていないしな。ただ、シンフォギアとかとは違ってなんか変身するわけじゃないから多分対ノイズ戦はオワタ式になりそう。まあ、そもそも戦う気なんてないけどね。

 

 「お、公衆電話みっけ。………もしもし母さん、サトシだけど。実はスマホ叔父さんの家に忘れちゃったみたいでさ」

 『何やってんのよあんた。ちゃんと取りに行きなさいよ』

 「分かってるって。いつまで観光する?」

 『夕飯は家で食べる予定だから大体16時くらいね。それから、このあたりはノイズがよく出るらしいから気をつけるのよ』

 「大丈夫大丈夫、そう簡単にノイズなんて現れないよ」

 

 まだ原作始まってないし、わざわざフィーネが出すわけないじゃん。

 

 『あんたねぇ…今どこに居るの?』

 「スカイタワーに行く途中。その前に叔父さんの家に寄るけど」

 『そうじゃあ、私も翼ちゃんの握手会が終わったらスカイタワーに行くことにするわ』

 「了解、それじゃね向こうでね」

 

 さて、叔父さんの家に行くか。まったく母さんも心配性だな。確かに原作ではリディアンの周辺ってノイズがめっちゃ出現するけど、それは原作中だからであって……………………あれ?じゃあなんでこの辺りはよく出るなんて言われてるんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥウゥゥゥゥゥゥゥゥゥウゥゥゥゥゥゥゥゥゥウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………正直、そろそろ来ると思ってた。

 

 「て、そんな落ち着いていられるかよ!ど、どこに逃げればいいんだ」

 

 この辺の避難所の位置なんて把握してないぞ!と、とりあえず周りの人に付いて行けばその辺の避難所までたどり着けるかな?えっと、周りに人は…………

 

 「え?…………あれっ!?」

 

 ひょっとして、置いて行かれた!?ちょ、まじかよ。今、スマホも持ってねえぞ。えっと、どこかに看板とかは……ん?向こうにいるチカチカしてるのってもしかして…………ノイズ!

 

 「ヤバ!距離をとらなきゃ。どこかに安全そうな場所は…………」

 「そこの君!こっちだ!避難所まで誘導する」

 「は、はい!」

 

 たすかった!ありがとう、そこのお兄さん。正直マジで今のはヤバいと思った。

 

 「ハッハッ、そこの角を曲がればすぐだ」

 「ぜぇぜぇ、わ、わかりました」

 

 ちくしょう、こちとら体育の成績は上からよりも下からの方が数えやすいんだぞ。もっと手加減してくれ!というかノイズってどの辺りまで来てるんだ?

 

 「」チラッ

 

 

 

 

 そこには炭化した人がいた。きっと俺と同じように逃げ遅れたんだろう、さっきまでは俺と同じようにノイズから逃げていた人だ。でもノイズによって死体も残らないで殺される、普通ではありえないような光景がそこにはあった。

 

 

 

 

 『振り向くんじゃなかった』そう思ってももう遅い。視線を戻していつも以上に高い心拍数を感じながら全力で走った。すぐ後ろまで来てるじゃないか!そうだ、この世界がそんなに甘いわけないって知ってたはずなのに!

 

 「あそこだ!あの扉まで行けば安全だ」

 「あ、ありがとうございます」

 

 

 

 

 シェルターの扉が閉じる音を聞きながら俺は呼吸を整えていた。この中にいれば安全だ、さすがにノイズもシェルターの中には入ってこないだろう。

 

 ――そう思っていた

 

 

 

 

 ここでノイズの位相差障壁について確認しよう。ノイズはこの能力によって自分が存在する比率を操ることができる。具体的には存在比を下げることで人類からの攻撃を減衰または無効化したり、逆に存在比を上げることで人間に触れて相手を炭化させるなどのことができる。ここで注目するべきは存在比を下げた時の物理的干渉の無効化だこれを簡単に言うと『ノイズはシェルターの壁もすり抜けることができる』ということになる。

 

 

 

 

 あ、あれ?待てよ、そういえばノイズって壁くらいすり抜けられなかったっけ?どうしてここにいる人は皆、平気な顔をしてるんだ?ノイズは壁のすぐ外に居るんだぞ。

 

 「おいどうした、大丈夫か?顔が真っ青だぞ。安心しろ奴らもこの壁は越えられないさ」

 「そ、そうですか……。いえちょっと、急に走って疲れただけです」

 「そうか、ゆっくり呼吸を落ち着けるといい。なに、すぐ外に出ても問題なくなるさ」

 

 そ、そうだ確かによく考えたらアニメでもシェルターの中に入って人を襲うシーンなんてなかったじゃないか。きっとこの人が言うみたいにノイズはこの扉を越えられないんだ。そうに違いない。だから一旦落ち着こう。

 

 

 

 …………心臓が今まで聞いたことがないくらいうるさいな。

 

 …………おかしいな、なんで俺の手、こんなに震えてるんだ?

 

 …………少し息苦しいな…なんだろう、うまく呼吸できない。

 

 大丈夫なはずだ。ここ避難所だろ、きっと大丈夫。

 

 「お、おい。体調が悪いなら奥の方で休むといいぞ」

 「……はい、そうさせてもらいます」

 「ああ、それがi」

 「え?」

 

 

 この人は俺をこのシェルターまで連れてきておまけに気遣ってくれた。いい人だったのだろう急な警報で混乱してた俺に声をかけてくれたし避難所まで誘導もしてくれた。きっとこのあたりに住んでいてノイズからの避難にも慣れていたのだろう。

 

 

 ――そんな彼が今、目の前で死んだ。跡形もなく一瞬で炭化した。

 

 

 「あ…あぁ、うわああああああああ!!なんだこれ、なんなんだよこれ!」

 

 逃げなきゃ、奥に行けばまだ安全なはず。そうだ、ノイズは人を炭化させたら自分も炭化して消える。奥に行けば周りの人を盾にすればいいい。急がないとこのままだと逃げ遅れちゃう、走らなきゃ!

 

 前の人を押しのけてどんどん奥に進んでいく。後ろからは断続的に悲鳴が聞こえてくる。ノイズにやられたか目の前で炭化したところを見たかのどちらかだろう。このままノイズが減ってくれればいいんだけど。シェルターの外からはどこかで聞いたことのある歌声と歌が聞こえる。きっと風鳴翼が来たのだろう。『近所に居たんだからもっと早くこれなかったのかよ!』と心の中で思いながらも、同時に『もうなんでもいいから早く終わってくれ』という感情でいっぱいだった。

 

 「ちくしょう、なんで俺がこんな目に合わなきゃいけないんだ!俺が何をしたっていうんだ!」

 

 誰もかれも自分が生き残ることに精一杯だった俺も誰かも押しのけたし同時に押しのけられた。これだけもみくちゃになっていたから姿勢を崩したのか、それとも誰かに足をかけられたのか俺はその場で倒れた。

 

 結果から言えばそれがよかった。

 

 ノイズたちもかなり数を減らされていてもう数えるほどしか残っていなかった。最後に一矢報いるつもりなのかわからないが、奴らは体を紐状にして攻撃を仕掛けた。運悪く転んで地面に転がりながら逃げる人たちに踏みつぶされていた俺は運よくこの攻撃を回避できた。ただ、それ以外の逃げ惑う人はそんなうまく回避なんてできなかった訳で…………

 

 肉体的にも精神的にも参ってしまった俺は自分に降り積もる炭素の軽さを感じながら意識を手放した。目が覚めたらこの地獄から救われてることを願って――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 多分この世界の人たちって直接ノイズを見たって人は少ないと思います。大体やられるので、なので『シェルターの壁は越えられない』と”思いこんでる”という設定になっています。

 ちなみに、本家を考察すると多分地下深くまでシェルターは伸びていて、ノイズの索敵範囲外に隠れているのだと思います。

 そして原作キャラで初登場はふらわーのおばちゃんでした。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。