F@te/ball of angelous (金管飴)
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第0話 舞踏会準備

初投稿。ガバガバ設定。ご指摘お待ちしています。


20■■年。 アイドルブームの再来。人々は皆、アイドルに熱狂していた。アイドル達の競争が激しくなる中、ファン同士の争いも激しく、歯止めの効かないものとなっていった。ネット上での口論から始まりフェスでの暴動、中にはアイドルの命を狙った犯行まで。自分達の『信仰』するアイドルをトップアイドルとするための、ファン達の暴走は止まることはなかった。アイドルブームが引き起こしたのはそれだけではない。それは政府の変化である。アイドルブームにより大量の資金を得た各プロダクションの重役達は、その資金力をもって政治に参加。「偶像(アイドル)党」の力は、直接政治を大きく動かせるほどではなかったものの、他の政治家達に圧をかけるには充分であった。そこで、与党、その他の野党は表向きには「過激化するファン達の抑制」として、実際は「偶像党の力を弱める」ため「アイドル保護法」を発令。これによりアイドル達のライブ、ファンとの触れ合いが規制され、暴走も止まりアイドルブームは去る…はずもなかった。ファン達は暴徒と化し総理官邸を襲撃。死者を出すほどの大きな事件となった。これに大きな危機感を覚えた政治家達は「アイドル禁止法」を発令。これによりアイドル達は職を失い、「偶像党」は解体を余儀なくされた。当然暴動や違法ライブなども行われたが政府はこれを制圧。ファン達の暴動、違法ライブはだんだんと影を潜めていくのであった。

 

 

〜side ●●〜

「…いやだ…。アイドルができなくなるなんて…。絶対にいやだ…。」

少女は1人、暗い部屋の中で呟く。楽しかったみんなとのレッスン。熱気に包まれたライブ。そして、1年に1度決まるトップアイドルの称号。「シンデレラガール」に選ばれたこと。 思い出し、涙する。確かにファンの行動に危機感を覚えたことはあったが、それ以上に幸せだった。しかし今は「アイドル禁止法」により無職である。 ファン達から彼女の身を守るため、プロデューサーが用意した隠れ家に1人で住んでいる。

「こんなのいやだ…。なんでこんな目に合わないといけないの…!」

悲痛な声をあげる。その時、

「いたぞ!」

男の声が響いてきた。足音達が近づいてくる。

「ッ!?」

彼女もファンを愛してはいるがどれほど危険なものかは既に体験している。自分のファンでも、他のアイドルのファンであっても結果として彼女を苦しめてきた。そんな過激な連中が、しかも「アイドル禁止法」によりいわばエサを与えられなかったライオンのような状態の彼らが彼女に何をしようとするのか。彼女はただ怯えるしかなかった。

「ここにいたんだね●●ちゃん!」

男の人が近づいてくる。後ろには5人ほど他の人もいる。

「近づかないでッ」

少女は叫ぶ。が、その声は弱々しく震えている。

「いやだなあ。酷いじゃないかファンに向かって。僕たちはただ君のライブを見たいだけなんだよ。だからさ。」

男は引き攣った笑顔のままポケットからスタンガンを取り出す。

「僕たちのモノになってよ」

少女は絶叫する。いやだ。私は。他のアイドルのみんなと、プロデューサーと一緒にいたい。こんなやつらに。こんなやつらに。私の幸せを。奪われたのか。こいつらが他のアイドルを危ない目に合わせたのか。今度は私を監禁する気なのか。いやだいやだいやだいやだ。消えろ消えろ消えろ消えろ。

「消えろォォォォ!!」

 

あたりが光に包まれる。

 

光が収まった後、そこに残ったのは倒れたまま動かない少女の体ただ一つであった。

 

〜side 聖堂協会 監督者〜

「ついに来てしまったのね。この時が。」

クリーム色の長髪の女性が暗い面持ちで出発の準備をする。つい先程だ。日本で、あの聖杯が覚醒したとの報告をうけた。近々聖杯戦争が始まる。私はその聖杯戦争の事後処理、参加者の命の保護などを行わなければならない。私には責任があるのだ。当然だ。だから私はこの役に自ら立候補した。

「待っててね。」

そう言って彼女は日本へと旅立つ。

 

〜side 日本 監督者〜

日本に到着した彼女はまず覚醒した聖杯が確認された場所に向かいこれを保護。結界を張り隠匿。次に使い魔を放ち、聖杯に選ばれたもの。すなわちのちのマスターとなるもの達を探す。こんな魔術とは無縁にみえる街で聖杯戦争についての知識があるものなどほぼいないだろう。聖杯戦争について説明し参加してもらわなければならない。

「それに…。マスター達はこの聖杯が選ぶのだものね。」

まず聖杯戦争を知る者がマスターになることはない。

 

 

コーヒーを飲みながら待っていると、数時間後、使い魔の1匹が帰着。どうやら令呪が宿った者を見つけたらしい。

 

 

 

肩まで伸びたウェーブのかかった髪。白い肌。少しでも触れば崩れてしまいそうな気がする。女性である私から見ても、「美しい」の一言である。画像、動画では見るが、直に接するとやはりオーラがちがう。これがアイドルか。

その少女は怯えていた。無理もない。あんなことがあった後に意味不明な刻印が手に刻まれ、外套を羽織った正体不明の女が隠れ家に押しかけてきたのだ。私はやさしい声色で自己紹介をし、(もちろん偽名だが。)彼女と距離をとりつつ聖杯戦争について小1時間話した。彼女は最初の方は困惑していたが、最後の方になると私の目をみてしっかり聞いていたような気がする。

「つまり、このタトゥーみたいなのは令呪っていって、願いを叶えるための戦いの参加権ってこと?」

「ええ。その通りよ。」

「その聖杯戦争ってのに勝ったら、なんでも願いが叶うんだよね。」

私は頷く。

「…。例えば。また皆でアイドルしたい。とかでも?」

「ええ勿論。あなたの願いはなんでも叶えられるわ。」

彼女は数秒沈黙。そして答えを出した。

「わかった。聖杯戦争に参加する。私は、またみんなとアイドルしたい。」

「わかったわ。あなたを1人目のマスターとして正式に承認します。

4月4日になるまでに、この召喚法に則って英霊を召喚しなさい。」

そういって私は英霊召喚の方法について書かれた資料を彼女に手渡す。

「ありがと。そういえば自己紹介がまだだったね。私は北条加蓮。元アイドルだよ。」

知っている。彼女が北条加蓮であることなど。この前まで華やかなステージで舞っていた彼女が、次は戦場で殺しあうと思うと、少し心が痛む。

「(ダメよ。私は監督者。冷酷にこの聖杯戦争を見届け管理する。私は私の罪を贖いにきたのよ。)」

自分に言い聞かせる。監督者など向いていないことはわかっている。だが、これくらいのことはしなくては自らの罪は償えない。やらなくてはならないのだと。

「どうかした?」

彼女が問うてくる。

「い、いえ。なんでもないわ。私は普段は〇〇山の教会にいるわ。なにか分からないことがあったら聞きにきなさい。」

そう言い残して私は外へ出る。外にはまた使い魔が戻ってきている。

 

その後、2人目、3人目…。同じような説明をし同じような質問をされ、同じような参加表明が返ってくる。

「(皆の願いが同じなら戦う理由なんてあるのかしら。彼女達の願いは一致している。この聖杯戦争は成立するの?それに、あの聖杯が選んだ人達よ。願いが異なることなんてあるのかしら。)」

 

 

しかし。しかし。しかし。5人目の候補者の元に訪れた時のことである。

「私の願いはーーーーーーー。」

違った。予想は外れた。アイドルを再びやりたい。という願いをしない者もいた。これで1騎を残し他のサーヴァントを自害させ皆の願いが叶うというハッピーエンドは無くなったわけだ。そもそも、アイドルを再びやりたいという願いでも、ただ単純に元の生活に戻りたいという願うものと、トップアイドルになりたいという願うもの、言葉に表したとき、その願いは同じように見えても、思い描く理想というものは各々違うはずである。やはり争いは避けられないのか。私は悩み、考えながら使い魔の帰着を待った。

 

数日後

 

「これで7人。全員揃ったわね。」

4月2日。参加者が揃った。もうすでに何体かのサーヴァントは召喚されているようだ。もうじき戦闘が始まるだろう。私は。贖う。この聖杯戦争を引き起こした原因として。あの子を危険な目に合わせる罪人として。

 

彼女はコートを翻し、闇へと溶けていった。



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第1話 英霊召喚

続けて書きました。感想、ご意見お待ちしております。


〜side 北条加蓮〜

4月3日の夜。北条加蓮は外套の女性に手渡された紙を見ながら召喚の儀式を行うための準備を行っていた。

「あとは…。『アイドルに関係あるもの』か。」

私は思い出の品。プロデューサーさんに貰った、歴代のシンデレラガール達の写真集を魔法陣に置く。『お前もいつか、この写真集にのれるようなアイドルになるんだぞ。』彼の言葉が脳裏に蘇る。まっててねプロデューサー。絶対に叶えてみせるから。

「これでいいんだよね…。」

目の前の魔法陣と紙を見比べながら間違いがないかチェックする。

見る限りでは間違えているところはなさそうだ。

「よし。これで。」

 

北条加蓮は正直半信半疑であった。普段の彼女ならこのようなオカルトじみた行為はしないだろう。ただ、あの外套の女の目を見ていると、嘘をついているようには思えなかったし、なによりも、アイドルをもう一度やりたかった。藁にもすがる思いでこの儀式をおこなっている。

本当に願いが叶ったのならば。他の皆とレッスンしたり。ライブをしたり。プロデューサーさんと笑いあったり。これ以上素晴らしいことはないだろう。

彼女は。決意した。告げる。決意の言葉を。英霊召喚の言葉を。

 

 

「ーー誓いを此処に。

我は常世総ての善と成る者、

我は常世総ての悪を敷く者。

 

汝三大の言霊を纏う七天、

抑止の輪より来たれ、偶像の守り手よ―――!」

 

 

魔法陣が蒼く光りだす。

 

そして。

 

1人の少女(英霊)が現れた。美しい長い黒髪。マントをたなびかせ蒼く輝く剣を持った、まさに『女騎士』といった風貌だ。

彼女は加蓮の右手の甲を見てから言った。

「サーヴァント。セイバー。ふーん。あなたが私のマスター?まあ、魔術回路的には悪くないかな。体の方はちょっと病弱そうだけど。」

 

「う、うん。よろしくね。」

 

信じられない。説明を受け、理解したつもりで、自分で儀式を執り行ったにもかかわらず。やはり。信じられない。魔法陣から、本当に『英霊』とやらがでてきてしまった。

「これより私の剣はあなたと共にあり、あなたの運命は私と共にある。契約はここに完了した。」

一間置いて、

「私の真名は渋谷凛。貴女と同じ、アイドルだったものだよ。といってもこの世界にいたわけじゃないけどね。貴女達とは別の世界のアイドルだったのだから。」

落ち着いた声色で彼女は話す。何を言っているのかわからないが。別の世界?どういうこと?加蓮が疑問に思ったが

「まあそれはこの聖杯戦争には関係ないけどね。別に説明しなくてもいいでしょ。」

顔にでていたようだ。

「う、うん。ごめんね。」

加蓮はおどおどしながら謝る。

彼女、いや、セイバーは応える。

「いや、別に謝らなくていいって。大丈夫かなこのマスター。貴女は私の使役者なんだから堂々としててよ。」

「わかった。ごめんなさい。」

「だから…。」

セイバーはため息をついてもういいやという顔をし歩きだす。

「外に出ようか。ここら辺の地形把握しておきたいし。私は霊体化して普通の人には見えないようになれるから安心して。」

安心。できないのだが。夜道に元アイドルが出歩くなど。まあこんな時間帯なら人はいないだろうが。

「危ない人が出たら私がなんとかするから大丈夫だよ。」

セイバーは笑った。顔にでていたようだ。

 

 

「私も召喚前の事前情報として貴女達の境遇は知ってるけど。アイドル禁止法ってどういうことか全然わからないね。アイドル達は何もしていない。他の大人達の勝手な都合なのにね。」

霊体化したセイバーは外を歩いている加蓮に話しかける。

加蓮は俯き暗い顔をする。

「あ、ごめん。あまり触れられたくないか。」

「ううん…。大丈夫。 ところで、どこまでいけばいいの?結構歩いたと思うんだけど。」

加蓮は問いかける。

「本当は街中全部まわってほしいけどまあそれは明日以降でもできるし、じゃああの大きな建物までで今日は一旦家に帰ろうか。」

セイバーが言った大きな建物。国立の〇〇大学。そこそこ有名な大学で、作家などを輩出している。というのを聞いたことがある。

〇〇大学の近くまで歩くと、校門の前に人影があるのに気がついた。こんな時間に誰だろうとじっと見ると、知っている顔であった。

「文香…さん…?なんでこんなところに…」

元アイドル。鷺沢文香。新人でありながら、落ち着いた、清楚な雰囲気で文学少女の彼女はシンデレラガール候補に初年度から入っていた人気新人アイドルである。加蓮も何度かフェスで一緒にライブをしたことがある。

「文香さんなんでこんな時間に…」

加蓮は問いかける。

文香は一呼吸おいて、

「それはお互い様ですよ。加蓮さん。」

かつて、彼女の目にあった輝きは、ない。

 

ガキンッ!!

 

耳が張り裂けそうな金属音。目の前で火花が飛び、夜の静寂と暗黒を切り裂く。

「ッ!?」

「マスター下がってて!」

いつのまにか実体化し目の前で何者かの攻撃を受け止めたセイバーが叫ぶ。加蓮は言われるがまま少し距離をとりセイバーの方をみる。

セイバーは相手の攻撃を受け止めていた剣を振り相手を弾き飛ばす。

「セ、セイバーこれって…」

「うん。サーヴァントとそのマスターだよ。」

 

…?そんな。文香さんも、聖杯戦争に参加していた…!?

 

「まさか加蓮さんも聖杯戦争に参加しているとは思いませんでした…。ええ…。でもここで会ったからには戦闘は避けられませんよね…。」

文香は今までに見せたことのない、どこか諦めたような、暗い表情で言う。

「…。ちょっと待ってよ文香さん!この戦いは願いを叶えるための戦いなんだよね?文香さんもアイドルをもう一度やりたいって願いなんだよね!?なら私達が戦う必要は!」

加蓮がそう言いかけた瞬間、文香のサーヴァントがセイバーを攻撃する。

「貴女に私の願いを言う必要はありません。私はこの聖杯戦争に勝って願いを叶える。それだけです。」

文香はなおも落ち着いた声色で淡々と喋る。

「そんな…」

それに対し加蓮はかなり動揺している。一緒にアイドルとして活動した同僚が、今は殺し合いの敵として目の前にいる。加蓮の精神状態を不安定なものとするには充分な理由だった。

「マスター!あんたがしっかりしてなくてどうするの!?」

セイバーが言う。よく通る、いい声だ。

 

そうだ。

私は決意したはずだ。

聖杯戦争に勝って、文香さんも幸せにしてみせる。

 

加蓮は目を瞑り呼吸を整える。冷たい夜風が加蓮を奮い立たせる。

 

そして

 

右手を突き出し支持をだす。

 

「セイバー!敵のサーヴァントを倒しなさい!」

 

 




material
【クラス】セイバー
【マスター】北条加蓮
【真名】渋谷凛
【性別】女
【属性】秩序・善
【ステータス】筋力C 耐久C 敏捷B 魔力B 幸運A 宝具B
【クラス別スキル】対魔力 C 騎乗 D
【固有スキル】直感 B ? ?
【宝具】???


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第2話 咲き乱れる乙女達

金属と金属が擦れ合う音が響き渡る。敵のサーヴァントの猛攻をセイバーは1歩も引かずすべて剣で弾き返す。

「ランサー…で間違えないね。その敏捷とその旗の攻撃は。」

「私はたち…いえ。そうです。ランサーです。」

黒い衣装に青い宝石が散りばめられた服を身に纏い自分の背丈より大きい旗の様なものをもつその少女は、12〜13歳くらいに見えた。

「(猛攻の割には可愛い声で話すんだなこのサーヴァント。)」

加蓮は思う。

「そういうあなたはセイバーですよね。私の突きを全て見切るなんて素晴らしいですね。」

「ふふっ。褒めてくれてありがと。じゃあお返しに私も頑張らないとね。」

セイバーが話し終わる前に、セイバーが攻撃態勢に移る前に、ランサーはセイバーを薙ぎ払おうとした。セイバーはすぐに反応しそれを受け止める。火花が散る。風が起こる。あの小さな体躯からは考えられないほどの強力な一撃だが、セイバーはそれを剣でしっかりと受け止める。セイバーは旗を地面に向け払いのけ、ランサーの腹に蹴りを入れる。

「つッ!」

ランサーの身体が後ろに吹き飛ぶ。苦悶の表情を浮かべている。

「防御を捨て手数と速さで勝負する。それがあなたの戦い方みたいだね。直感が無ければ初見なら苦戦してたかも。」

セイバーは言う。

「舐めてくれたものですね。あなたの直感が働かない速さで攻撃すればいいことです!マスター。少し負担をかけますが耐えてください!」

ランサーは地面を蹴った。開いていた間合いを一瞬で詰めて攻撃を開始する。先程よりも速い、なおかつ正確な突きがセイバーを襲う。

「っ!なかなかやるね」

先程まで1歩も引かずに受け止めていたセイバーに焦りの色が見える。1歩、2歩、セイバーの足は下がっていく。

「ええ。ええ!絶対的なランサーがここにいるのです!」

突きを繰り出しながら無邪気な笑顔を浮かべるランサー。

そしてついに。 その旗先の刃はセイバーの身体を捉えた。

ザクッ!と音がし、セイバーの脇から血が溢れる。

「セイバー!!」

加蓮は思わず叫ぶ。セイバーは傷口を抑えながら後退する。

「ふふふっ!ここまでのようですねセイバー!その命貰い受けました!」

ランサーが声高に勝利宣言をした。

 

その時

 

「ランサー!すぐにその場から離れなさい!」

文香の声が響いたと思うと、轟音とともにコンクリートを突き破り、10mはゆうにこえる緑色の巨大なものが姿を現した。

「な、な、なんですかこれはぁ!?」

危機一髪ミンチになるのを逃れたランサーは驚きを隠せない。

「植物のツタ…。のように見えますが…。」

文香は言う。

たしかに。言われてみれば植物のツタのようだ。あの巨大さとまるで意思をもって動きまわっているように見えること以外は。

「不意打ち。失敗しちゃった♪」

そう言って笑いながらツタのようなものの根元から現れたのは濃黄色のショートヘア。極彩色の衣装を身につけ、茨が身体に巻きついている少女であった。単純に、巨大な生物に対しての恐怖感と、彼女の得体の知れないオーラによる恐怖。加蓮にはセイバーのように敏感に魔力を察知することはできないが、こいつと関わったらダメだということは本能的に理解した。

「サーヴァントッ!クラスはまだわからないけど、構ってたらまずいのだけはわかる!マスター!こいつとはまともにやりあっても勝てない!一旦引こう!」

声を荒げるセイバー。

「ちょ。逃げるんですかセイバ」

「ランサー。私達も引きましょう。」

ランサーの声を遮り文香は言う。その声は少し震えている。

2人のマスターとそのサーヴァントは反対方向へ逃げ出す。

茨のサーヴァントは笑顔を顔に貼り付けながらその姿を見送る。

「マスター、めんどくさいから街ごと魔植物(この子)で呑み込んでいい?いいよね?それで終わりだよー!」

「おい☆それ本気でいってんのか冗談なのかわからないぞ☆」

物陰から出てきた茨のサーヴァントのマスターは言う。

「?」

茨のサーヴァントは不思議そうな顔でマスターを見る。

「おい☆黙るんじゃねー☆いや、まじでやめろよ?はぁと達の標的はあくまでサーヴァントだけ。関係ない人を巻き込むんじゃない☆いくら狂戦士(バーサーカー)だからって喋れてるんだから知性はあるよな☆な?やろうとしたら令呪で止めるからな☆」

「…。はーい。まあまだ始まったばかりだもんね♪特にあの小さなクールなランサー!壊しがいがあるなあ」

バーサーカーは再び貼り付けたような笑顔になる。

「いやいや怖いよ☆狂化ってこんなんなんだー キャラ崩壊ってレベルじゃねーな☆仮にも元アイドルなのに☆さて、家帰ってビール飲んで寝るか☆魔力ってのは使うの疲れるなー☆」

 

 

〜side セイバー陣営〜

加蓮達は巨大な植物なようなものが地面にかえっていくのを遠くから見ていた。

「な、なんだったのよいまの…。まともじゃない…。あれもあなた達と同じサーヴァントなの?」

加蓮は尋ねる。

「うん。確かにサーヴァントだった。あの殺意と破壊力。多分バーサーカーだと思う。アサシンやキャスターが出る場面じゃない。まだライダーって可能性はあるけど。あの異常な感じは狂化を付与されてるからだと思う。」

「バーサーカー…。」

加蓮は神妙な面持ちで先程自分達がいた方を見る。

「…。あのサーヴァントのマスターも、元アイドルなのかな…」

「…。どうであれ、私達は勝ち進めばいい。そうでしょ?マスター。」

そうだ。決意したのだ。今更後悔しても仕方がない。皆を幸せにするんだ。

「そうだね。ごめんねセイバー。弱気になっちゃって。」

「だから謝らなくていいって…。」

そう言うとセイバーは傷口を抑えながら座り込む。

「あっ。ごめんセイバー!怪我してるのすっかり忘れてた!どうしよう。家に歩いて帰れる?家につけば私が手当てできるから!」

加蓮は慌てて言うが、セイバーは笑ってかえす。

「いや、私もランサーにしてやられたの忘れてたしね。この傷はあと数分で治癒されるから大丈夫だよ。」

そう言ってセイバーは傷口を見せる。確かに、傷口はかなり小さくなってきているようだ。サーヴァントは自然治癒能力を持っているらしい。

「さっきの戦いでほかの参加者達に目をつけられてたらいけないし、はやく家に帰ろうか。マスター。」

 

その後何事もなく帰路につき、加蓮達の聖杯戦争は2日目を迎えるのであった…。

 




material
【クラス】ランサー
【マスター】鷺沢文香
【真名】クールな私です!もうわかりますよね?
【性別】女
【属性】中立・善
【ステータス】筋力C 耐久D 敏捷A 魔力C 幸運D 宝具B
【クラス別スキル】対魔力 C
【固有スキル】戦闘続行 B 能力増強(苺) A 魔力放出(闇)E
【宝具】???


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第3話 協力

〜side ???〜

「うふ。うふふふふふ。そうですか。もう3騎も。うふふ。これは有利に事が運んでますねぇ。」

佐久間まゆ。読者モデルだったが、突然アイドルになった少女。穏やかな表情と引き込まれるような歌声で一世を風靡したアイドル。だが、ファンの対立が深まっていくと、彼女は引退を宣言。その後は姿をくらましていた。

「ええ。そうですね。マスター。ところでこのドーナツ、食べてもよろしいでしょうか?」

紫色のリサイタルドレスのような衣装を身にまとう彼女のサーヴァント。先日の3陣営の戦闘を影から見届けた者がまゆがおやつとして用意していたドーナツに手を伸ばしながら言った。

「いやもう食べる気まんまんじゃないですか。まあ構いませんけど…。今夜も索敵お願いしますね。情報が多いものが戦いを制しますからね。」

まゆはドーナツを頬張るサーヴァントに話しかけながら、自分もドーナツに手を伸ばすのであった。

 

〜side セイバー〜

暖かな春の日差しが部屋に差し込む。北条加蓮は約9時間の睡眠の後目覚める。昨日の時点では気づかなかったが、魔力の使用により身体にかなり負担がかかっていたようだ。

「おはよう。マスター。」

セイバーは椅子に座っていた。脇の傷はすっかり元どおりになっている。

「ん。おはよ。」

加蓮は起き上がり、一階へ。冷蔵庫を開け、朝食を作る。1週間に一度、プロデューサーさんが食材をもってきてくれているがそれもいつまでもつかわからない。お互い無職なのだから。一応政府からの資金援助を受けることもできるらしいのだが、無闇に公の場に姿をさらすのは危険だという理由でほとんどのアイドルは貯金を崩しひっそりと生活しているようだ。

朝食を作り終わり、2人分のご飯と味噌汁を食卓にならべる。

「(食費倍か…。)」

加蓮は少し気を落とす。

「おいしいよ。マスター。英霊になったら食事は必須じゃないんだけど、やっぱり何か食べないと始まらないよね。」

セイバーは屈託の無い笑顔でそう言った。喜んでもらえてるしいいか。加蓮はそう思った。

何分間かたわいのない会話をした後、セイバーは真面目な顔になりこちらを見る。

「で、昨日の茨のサーヴァントのことなんだけど、まともに1対1でやりあったところで勝ち目は無い。でも 他のマスターもそう思っているはず。ここは他のマスターと同盟を結んで、まずあの茨のサーヴァントを倒すのが得策だと私は思う。茨のサーヴァントを直接見たランサーと、あと1陣営くらい欲しいかな。」

同盟。確かにあのサーヴァントを倒すには協力しかないように思える。

「じゃあ今夜は同盟を結んでくれる陣営探しだね」

そう言って2人は食事を済まし、夜に備えるのであった。

 

〜夜〜

加蓮達が街を探索しはじめ小1時間。爆音を鳴らしながら1台のバイクが道を走り抜けた。

「マスター。意外にはやく見つかったよ。他のサーヴァント。」

セイバーがバイクを目で追いながら言う。

あちらのサーヴァントも気づいたのか、進行方向を変え、こちらへ向かってくる。

バイクを停め、運転していた女性が話しかけてきた。

「へぇ。セイバーか。こちとらまだ召喚されて1日しかたっていないが、いきなり3騎士に出会うとか、ツいてるな。」

黒いズボン、上半身にはサラシを巻き、赤いマントを羽織っている。

テレビでみたことのある特攻隊長。といった感じだろうか。

「みりゃわかると思うが。アタシはライダー。悪りぃが索敵だけで終わるようなクラスじゃねえ。ほら、剣を構えろよセイバー。」

ライダーは拳を突き出し挑発する。

「ちょっとライダーさん。少し話をしてからでも…。」

後ろに乗っていた少女。恐らくマスターであろう少女が止めに入る。

「北条加蓮ちゃん…だよね?あなたがセイバーのマスター?」

落ち着いた、安心する声で話しかけてきた少女。

「初めまして。私は高森藍子。〇〇プロダクションに3ヶ月前にスカウトされた新人アイドルだった者です。」

高森藍子。少し耳に挟んだことはある。3人でユニットを組んで活動していた、新人アイドル。やはり。3人目のマスターもアイドルであった。

「藍子ちゃん。よろしくね。」

挨拶をした後、すぐに茨のサーヴァントのことを話し、同盟を持ちかける。

 

 

「ハァ?同盟だァ?何甘いこと抜かしてんだこいつら?そんなの受けるわけないだろ?な?マスター。」

加蓮は少し考えた様子を見せる

「…。私も昨日、あの巨大なツタのようなものは見ました。ええ。確かに、同盟を結んだ方が終盤まで生き残れる可能性は高いかもしれませんね。」

藍子は頷きながらそう言った。

「オイオイまじかよ。マスターがそう言うなら仕方ねぇが少しでも変な動きしたら速攻で首飛ばすからなセイバー!?」

「ええ。そうですね。ルールはちゃんと決めておきましょう。」

藍子は紙を取り出しながら言う。

そこへ、ライダーと出会ったとき、あらかじめ作っておいた同盟に関する内容のメールに位置を指定して呼び出した文香とランサーが来た。

「もう1陣営。見つけたのですね加蓮さん。メールを貰った後ランサーと話し合いましたが確かに私も同盟を結ぶことが最善の策だと思います。」

文香達も同盟に参加してくれるようだ。

「もうランサーと会っていたんですね…。加蓮ちゃん。同盟はこの3陣営で組むんですか?」

藍子の問いかけに加蓮は頷く。

「それでは改めて、ルールを決めましょうか。この同盟の目的は、茨のサーヴァントの撃破。茨のサーヴァントへの攻撃を最優先して、目的を達成するまでは同盟内での戦闘はおこなってはならない。こんな感じでどうでしょうか?」

藍子は紙に文字を書きながら提案した。

「私はそれで構いません。」

「私もそれで大丈夫だよ。」

2人とも賛同する。

「それでは、ここに同盟は結ばれました。短い間でしょうがよろしくお願いしますね。これ、私のメアドです。登録お願いします。」

そういって手渡された紙には丁寧な文字で藍子のメアドと、同盟のルールが書かれていた。

「おう。じゃあマスター。その茨のサーヴァントとやらを探しにいこうぜ。まだ走りたりねぇ。」

「うん。じゃあ行きましょうか。」

そう言ったライダー達は再びバイクを走らせていってしまった。

 

「…。私達も、探しましょうか。」

加蓮は頷くと、2人はそれぞれ違う方向へ、茨のサーヴァントを探しに向かうのであった。




material
【クラス】ライダー
【マスター】高森藍子
【真名】???
【性別】女
【属性】混沌・中庸
【ステータス】筋力B 耐久B 敏捷D 魔力D 幸運C 宝具B
【クラス別スキル】対魔力 D 騎乗 B
【固有スキル】カリスマC ? ?
【宝具】???


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第4話 救済を

〜side ライダー陣営〜

「チッ…。今日も駄目かぁ?」

バイクを走らせながらライダーは愚痴を吐く。同盟を結んでから3日。あれからというもの、少しも動きが無い。

「茨のサーヴァントはあれだけ大きな動きをしてしまっているのでむやみやたらに動けないのでしょうね。」

「茨のサーヴァントどころか他のサーヴァントもいないしよ。つまんねぇな。」

ライダーはいささか不満そうだ。

「ふふっ。ライダーは早く戦いたくてたまらないんですね。」

そう言った藍子はふと地面を見た。

「ッ!?ライダー!このまままっすぐいっては駄目です!逆方向へ逃げて!」

指示を受けたライダーはすぐに旋回しようとした。

だが、遅かった。

地面が盛り上がり、ツタのようなものがライダー達をバイクもろとも空中へ弾き飛ばす。

「マスター!アタシに掴まれ!」

ライダーは藍子を抱き抱えて空中でバイクに再度騎乗。地面に着地し、すぐに今来た方向へバイクを飛ばす。

藍子は加蓮達に連絡をするために携帯を取り出したが、通知が2件。他の2人も同じように攻撃を受けたようだ。ツタの追跡が終わった後に、連絡をとりあい3陣営は向かっていた方向とは逆方向に位置する公園に一度集合ということになった。

 

〜side セイバーランサーライダー同盟〜

公園についた3陣営は、茨のサーヴァント攻略に向け作戦を練っていた。

「ここ3日間動きは一切無かったのに急に茨のサーヴァントは私達を攻撃した。さらに恐らくこちらからは視認できない距離に本体はいたでしょう。茨のサーヴァントの魔力はどのサーヴァントも感知できていないようでしたので。」

文香は続ける。

「茨のサーヴァントがそのような、遠くを見通せる能力があれば、最初からそうしていたはずです。わざわざ探しまわられて見つかるリスクを負う必要はない。すぐに攻撃をする方がよっぽどいいでしょう。ですがそのようなことは起こらなかった。」

「今日になって、茨のサーヴァントはなんらかの形で私達を感知できるようになった…。ということですか?」

藍子は口を開く。

「ええ。もともと茨のサーヴァントにそのようなスキルが無かったのなら、恐らくそれは我々と同じ、同盟を結んだ結果でしょう。我々を監視できる能力を持ったサーヴァントがあちら側についたと考えられます。あくまで推測ですが…。」

「今攻撃がこないってことは今は監視されてないんだよね。」

加蓮が口を開く。

「ええ。恐らく。茨のサーヴァントが陣取っている付近のみ監視の目が行き届いているのでしょう。」

つまり茨のサーヴァントに近づいてもこちらが気付く前に茨のサーヴァントがこちらを攻撃できる。ということだ。絶望的な状況に全員口を閉ざしてしまう。

「そうなったら相手の攻撃が始まる前に突っ込んじまえばいいんじゃねぇか?このまま何もしないのが一番マズイと思うぜ。せっかく敵を見つけたんだ。次いつでてくるかもわからねぇぞ?」

ライダーはベンチに足を組み座っている。

「…。そうですね。今のところ攻略法はそれしか考えつかないですね…。強引ではありますが…。どうでしょうか。」

反対するものは誰1人としていない。強行突破。それが彼女らが導き出した答えだった。

「ただ突っ込むだけではまたさきほどのようになるでしょう。私に考えがあります。まずーーー。」

 

〜side ライダー陣営〜

「へっあの女。大人しそうな顔して結構思い切ったことするじゃねぇか。アタシ達の身の心配はないみたいだな!」

バイクを走らせながらライダーは言う。

「ライダー。言葉には気をつけなさい。適した者が適した仕事をする。当然のことです。」

藍子達の仕事。それは一足先に敵の本拠地に、茨のサーヴァントの陣地に突入。そして他の2陣営に突入指示。その後茨のサーヴァントを撹乱し他の2陣営への注意をそらすことだ。バイクでの突破力は他の2陣営には無い特徴であるため適任ではあるが、前情報無しに敵の本拠地に突っ込むのはあまりに危険。最悪2陣営以上に囲まれることになる。

 

「おっとそろそろくるぜ!」

コンクリートが盛り上がり、ツタが飛び出す。ライダーはそれらをかわし時には踏み台にしただ突き進む。

20秒ほど走り続けていると

「ッ!そろそろだぜマスター。前方に膨大な魔力を検知した!しっかり掴まってろ!」

ライダー達は速度を緩めることなく茨のサーヴァントのもとへバイクを走らせた。

 

〜side セイバーランサー陣営〜

「…。はい。わかりました。…。加蓮さん。茨のサーヴァントの場所は街のはずれのスーパー跡地。急ぎましょう。」

藍子達から連絡を受けた2陣営はライダー達のタイヤ痕を頼りに進む。

数分歩いた後、タイヤ痕が消える。その代わりに、粉々になったコンクリートが道を示す。セイバー達がそこを通ってもツタが飛び出す気配はない。恐らくライダーが交戦しているためこちらに気が向かない、もしくは攻撃している余裕がないのであろう。作戦通りだ。そう思ったのもつかの間。

「!?膨大な魔力量を検知!マスター!前!」

セイバーの声で加蓮は下がっていた目線を上へ上げる。

「な…。なんなのあれ…!」

加蓮達の目に映ったのは80mはあるであろう食中植物の姿をした怪物だった。

 

〜side ライダー陣営数分前〜

「アンタが茨のサーヴァントか!やっと会えたぜ!サーヴァントは…。一騎しかいねぇみたいだな!」

バイクをとばしながらライダーは周囲を確認、その後虚空から鉄パイプを取り出し一直線に茨のサーヴァントに殴りかかる。

「来たね。ライダー!」

茨のサーヴァントはふりさげられた鉄パイプを腕で受け止める。カン!と金属音がし、鉄パイプは90度折れ曲がった。

ライダーはそのまま茨のサーヴァントの背後へ走り抜ける。

「オイオイ一応魔力的な強化はしてあるんだけどな。相当な筋力だぜありゃ。」

ライダーは茨のサーヴァントの背後で旋回。もう一度鉄パイプを取り出し殴りかかる。

「何度やっても同じことだよ。ライダー。」

茨のサーヴァントは再び鉄パイプを受け止め、今度はバイクに蹴りをいれる。バイクは横へ大きく吹き飛ばされる。

そこへ藍子のもとに1人の女性が歩いてきた。

「おっ☆藍子ちゃんじゃん☆はぁとのこと、覚えてる?」

「忘れるわけないじゃないですか…。佐藤心先輩。」

微妙な顔つきで藍子は茨のサーヴァントのマスター。佐藤心を見る。

「オイ☆なんだその顔は☆喜べよ☆悲しいだろ☆あとシュガーハートって言えよ☆」

心は突っ込みを入れ、続ける。

「さて☆このままお話に付き合うのは藍子ちゃん達の思うつぼだよね☆3対1は避けたい!全力で!てか魔力使いすぎで長期戦はマジ辛いぞ☆バーサーカー!宝具の解放を許可する!力の差を見せてやれ☆」

心は呼びかける。

「いいけどマスター魔力不足で倒れないでよ!」

バーサーカーは魔力を貯めながら言葉を紡ぐ。

 

「その花弁は全てのものに救済を与える天使の如し。我が身を糧とし喰らい尽くせ。

祝福の熾花(ミカエルアンゲロニア)!』」

 

「ッ!まずい!マスター掴まれ!」

ライダーは藍子の手を引きバイクを発進させる。

地面が揺れ、落ちる。そして、その怪物は姿を現す。天使とは程遠い、この世の終わりを知らせる悪魔の花が夜闇に咲き誇る。牙の生えた紫色の花弁が6枚。普通の花ならおしべ、めしべがある場所にはただ暗闇が広がるのみ。全てを無に帰すバーサーカーの宝具がその全貌を現す。そして、救済を、破壊を開始する。

ツタを地面に叩きつける。大地を崩し、揺らす。

ライダーはバイクを走らせ回避を試みるが地面が揺れ思うようにコントロールが効かない。無防備になったバイクに割られた地面の破片が突き刺さる。

バイクによる移動が不可能になった2人にツタが襲いかかる。この速度のツタは回避不能。まず助からないだろう。

「…。もうこのバイクは無理だ。マスター。アンタだけでも逃げろ。頭だけは守れよ。またアイドルやりたいんだろ。」

そう言ってライダーは藍子をまだバーサーカーの宝具の影響を受けていないところまで投げる。藍子は地面に叩きつけられ転がっていく。

 

体中が痛むが意識はある。顔をあげる。曇っていく視界。ライダーは安心した表情でこちらを見ている。

 

「(ああ。私の夢、ここで終わるんだ。3ヶ月前。デビューが決まって、嬉しかった。真っ先におばあちゃんに伝えに行った。でも…。もうその時おばあちゃんは…。おばあちゃんの最期に、私の輝く姿。見せたかったな…。)」

 

視界が、落ちる。




material
【クラス】バーサーカー
【マスター】佐藤心
【真名】相葉夕美
【性別】女
【属性】混沌・中立
【ステータス】筋力B 耐久C 敏捷C 魔力C 幸運D 宝具A+
【クラス別スキル】狂化 C
【固有スキル】植物会話 E:植物と意思疎通を図れるスキル。 植物が多くある舞台では植物は起き偵察として優秀であるが、バーサーカーとして召喚された夕美はマスター以外の話を聞こうとはしないのでほとんど使われない。
怪力D:本来魔物、魔獣しか持てないスキルだが、バーサーカーとして召喚されたときにはアルウラネの属性を付与されているため所持できている。
使い魔(魔植物)C:植物の怪物を使役できる。キャスターとして召喚された時には歩行型、飛行型など様々な魔植物を使役できるがバーサーカーとして召喚された時には単純な動きのみ可能なものしか使役できない。
【宝具】『祝福の熾花(ミカエルアンゲロニア)
ランク:EX
種別:対城宝具
レンジ:1~90
最大捕捉:300人
地面から80mを超える巨大な魔植物を召喚する。この間バーサーカーとこの魔植物は一体化する。攻撃方法はツタの叩きつけと飲み込むことのみであるが、ツタによる攻撃は大地を砕き、この魔植物に飲まれたものは暗黒空間へ引きずりこまれ、出てくることは不可能になる。ただし一度根を張った場所からは消滅するまで動くことはできない。
消滅するには周りのものがすべて無くなる、魔力供給が切れる、バーサーカー本体の消滅という条件のいずれかが必要である。


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第5話 流星

「我が旗は我が同胞を守る聖なる旗!『私と貴女の誓いの旗(オンリーマイフラッグ)』!」

 

ライダーを押しつぶそうとしたツタの下に旗が突き立てられ、旗の上に円形の魔力障壁が生成される。衝撃と轟音が響き渡った。が、その障壁はツタによる攻撃をしっかりとうけとめている。

 

「ライダー!今のうちにあなたのマスターを回収して安全な場所へ!」

ライダーが押し潰されようとした数秒前、ランサーはツタの下に潜り込み宝具を展開したのだ。

「あ、ああ!感謝する!」

ライダーはその場を離脱。藍子を抱えバーサーカーのレンジ外へ。

そこへ文香とセイバーが駆けつける。

 

「すまねぇ。勝てなかった…。」

ライダーは藍子を丁寧に地面に下ろしセイバー達を見る。

「ええ。でもまだ負けてはいません。3騎の力を合わせれば勝てるはずです。その為に助けたのですからきちんと仕事はしていただきますよライダー。私の作戦に従っていただきますよ。」

「ああ。勿論だ。」

文香から説明を受けたライダーは立ち上がりバーサーカーの方を見る。

「ああわかった。任せてくれ。」

 

「私もそろそろいくよ。ランサーが辛そうだしね。マスター。ちょっと負担かけるけど耐えてね。」

セイバーは加蓮が頷いたのを片目に剣を抜き、その刀身に蒼い炎を宿す。魔力放出。魔力によるジェット噴射。

 

セイバーが駆ける。

ツタとの距離を一気に詰め、炎を纏った剣はツタを焼き切った。本体から切りはなされたツタは黒い砂のようなものになり消える。

「おつかれランサー。」

セイバーは剣を構え直す。

「遅いです。まあいいです。あとでマスターに褒めてもらうので。それよりあれ、みてください。」

地面から抜いた旗先で空中をさす。セイバーに切断されたツタはみるみるうちに元の形に戻っていっているようだ。

「自己復元能力…。とんだ化け物だねあのサーヴァント。いや、使い魔、と言ったほうがいいか。」

セイバーは遥か上、星の下に咲き誇る花弁を見る。

「ええ。このツタの魔物、サーヴァントの魔力のタイプとは違う。本体はあの花の上にいますね。それを倒さない限りこの怪物はいくら切っても燃やしても元に戻るだけでしょう。」

「悔しいけど警戒状態の中私達の敏捷、突破力じゃあ頂上まではたどり着けそうも無い。危険を承知でライダーを助けた甲斐があったね。」

「ああ、アタシに任せてくれ。絶対に作戦は成功させる。」

2騎の元へ駆けつけたバイクを再召喚したライダーがセイバー達と顔を見合わせた後、爆音をたてながらツタの怪物へ向かって行く。

 

バーサーカーは近づいてくるライダーを確認した。

自由自在に操れる魔植物のツタをライダーに向け振るう。

しかし、蒼白い炎がぼんやりと見えた後、ライダーは潰されずこの魔植物の中心。すなわち幹に向かってくる。

ツタをライダーに振るい続ける。魔植物はいくらでも修復可能だが本体である自身が叩かれては魔植物も消える。ここに到達させてはいけない。単純だが、強力な攻撃。並のサーヴァントでは受け止めることすら難しい。

だが、ライダーの魔力反応が消えない。ツタの攻撃全てが他の2騎によって防がれている。炎による草の性質を利用された攻撃と、ランサーの受け流し。その2つがライダーへの攻撃を押しとどめる。

 

ライダーは速度を最大にし、魔力でバイクを強化する。そして、ほほ垂直に立っている幹にタイヤを合わせるようにしてジャンプ。そのまま幹を駆け上がる。重力に逆らって、バイクは高速で頂上を目指す。

 

バーサーカーはライダーが幹を登ってくるのを感じとる。もうこうなっては他の2騎に構っている暇はない。自分の幹にツタを叩きつける。

が、魔力だけを頼りにしているため狙いが定まらない。ライダーはさらに近づいてくる。

 

そして

 

ライダーが宙を舞う。幹を登りきり、バーサーカーと魔植物の上をとる。

「見えたぜ!バーサーカー!これで終わりだ!」

ライダーはバイクから飛び、バーサーカー本体めがけて鉄パイプでなぐりかかる。

 

「…。」

 

バーサーカーめがけ飛んでくるライダーの行く手に、闇が広がる。

魔植物の花弁。空中で大きく進行方向を変えられないライダーの目前に大きく開かれた底なしの口。バーサーカーはニヤリと笑う。これでここに到達できる敵はいない。勝ちを確信する。

 

しかし

 

「行け!セイバー!」

ライダーが号令をかけた。

 

セイバー?ここまで辿り着ける突破力は備えていないはず。それにツタや幹を登っている感覚もない。ブラフだ。薄い意識の中バーサーカーはライダーを飲み込もうとする。

 

「バーサーカー!後ろ!」

心の大声が暗闇に響き渡る。

 

「覚悟して!バーサーカー! これが私の全力の一撃!」

 

背後から爆音、蒼い光。そして、膨大な魔力量を持った何かが花弁とは逆方向から向かってくる。

 

一気に魔力放出することによる飛翔。強引に自分を一気に吹き飛ばす荒技。サーヴァントにはもちろん、膨大な魔力を必要とするこの動きにはマスターへの負担も計り知れない。危険な作戦だが、戦況をひっくり返すことのできる奥の手。

 

「これで終わりだ!」

 

蒼い光がバーサーカーを背後から貫く。 夜闇に輝く流星のように。

 

空に光がともる。

 

燃える。身体が崩れ落ちる感覚。

 

「もう…。終わっちゃうんだ…。」

 

悲しげな表情を見せ、バーサーカーが消滅した。

 

主人を失った魔植物も崩れ落ちる。

ライダーは減速したセイバーを受け止め空中のバイクへ再騎乗。

地面へバランスを保ちながら着地。

加蓮達と、目覚めた藍子が駆け寄る。

 

「ライダー!自分の身を捨てて私だけ助けるなんてこと、もうしないでください!私だけ生き残っても意味がない。2人で願いを叶えようって言ったじゃないですか!」

藍子が涙目でライダーに言う。

「チッ… すまなかったなマスター。これからは気をつけるぜ。」

面倒臭そうに、いや、恥ずかしそうにライダーは答えた。

 

「セイバー。お疲れ様…。 っ…。」

加蓮が倒れかけるのをセイバーが受け止める。魔力放出の負担は相当大きかったようだ。

「うん。マスターもお疲れ様。」

セイバーも相当ダメージが蓄積されているはずだがそのそぶりを見せず加蓮を支える。

 

「さて。あとは。」

文香は残った心の方を見る。心は視線がこちらにむくのに気づきギクっとする。

「ちょっと待てよ☆悪かった。悪かったから痛いのだけはやめてくれよ☆」

この状況でなおその口調なのか…。と文香は溜息をつきながら質問する。

「聞きたいことが1つあります。それを答えてくれればすぐに返して差し上げます。貴女の協力者を答えてください。今ここにはいないのでしょう?」

「も…もし答えなかったら?」

 

間が空く。

 

「わ、わかったよ答える 答えるから! 協力っていってもこの監視用のお札をキャスターから貰っただけ、姿も見てない!」

不思議な紋章が描かれた札を見せる。

 

「やはりキャスターですか…。厄介な能力ですね。」

文香は顎に手を当て考える。

 

「これでもうはぁとは帰るぞ☆ 言っとくけどはぁとはまたアイドルやりたかっただけだからな☆あわよくばプロデューサーと…なんて考えてないんだからな☆」

 

 

藍子は平常運転のまま暗闇へと走りぬけていく心を見送る。最後まで騒がしい人…だけど、楽しい人だ。少し微笑んでから立ち上がる。

 

 

藍子は息をゆっくり吐いた。

 

「さて、私達の同盟もここで終わりですね。次会った時は私が勝ち抜きますから」

 

宣戦布告。欲望や力に溺れたものではなく、かつて、トップアイドルをライバル達と競っていた時を思い出させるようなそんな爽やかさを感じるものであった。

 

 

 

〜side ???〜

「そうですか。バーサーカーが消滅したのですね。では、私達もそろそろ直接動き出しましょうか。よいですね?キャスター?」

 

「りょーかーい」

 

キャスター陣営が影で動き出す。

 

 

 




material
【クラス】ランサー
【マスター】鷺沢文香
【真名】橘 ありす
【性別】女
【属性】中立・善
【ステータス】筋力C 耐久D 敏捷A 魔力C 幸運D 宝具B
【クラス別スキル】対魔力 C
【固有スキル】戦闘続行 B 能力増強(苺) A 魔力放出(闇)E
【宝具】『私と貴女の誓いの旗(オンリーマイフラッグ)
ランク:E〜A+++
種別:対人宝具
レンジ:1
最大捕捉:-
旗をつきたて魔力の壁を生成する。壁の強度はマスターの魔力量には依存せず、マスターとの信頼関係、絆によって変化する。マスターとの仲が悪ければ通常攻撃さえ防ぎきれないが、お互い信頼しあっていれば対界宝具ですら防ぎきる。旗を掲げ同胞を守るその姿はまるで神の啓示を聞き戦い抜いた聖女のようである。


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