鬼の一人旅 (波美)
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プロローグ
1話


ああ、これはきっと罰なのだ。

親友を、仲間を、自らの手で作った子供のような彼らを、大切で愛しい存在と交わした約束を破り裏切った愚かな罪人への罰なのだ。

果てしなく続く荒野の中、その身を異形へと変貌させた一人の男が誰に聞かれる事もなく静かに、しかし身を震わせる程の深い慟哭を零した。

 

 

 

* * *

 

 

 

ユグドラシル、というゲームがある。DMMO-RPGという仮想世界で現実にいるが如く遊べる、体験型ゲームのひとつであり最も人気であったものだ。広大な世界、膨大な職業、幾らでも弄れそうな外装…など、プレイヤーの自由度が異様な程広かった。

そう、空想と妄想を膨らませたような魔法だって、神話のような能力と威力を持つ武器だって、人外である容姿と類まれなる力を持つ異形の存在にだってなれる、そんな世界。

 

その世界で俺は人間や森妖精のような人間種でもなく、小鬼や豚鬼のような亜人種でもなく、鬼と呼ばれる異形種を選んでプレイヤーとして在った。その中でも上位種である鬼神である。その存在になるためにレベル上げや特定のレイドボスの撃破や取得アイテムや能力等条件をクリアし…まぁ細かいことはいいか。とにもかくにも、親友である男から誘われるままにこのゲームを始め、ユグドラシルでのプレイヤー名を『鬼神経津主』とする俺はとあるギルドに所属していた。ギルド名は『アインズ・ウール・ゴウン』。

そのギルドはプレイヤーが社会人である事と異形種である事を条件としている。まぁ、異形種の集団な訳だから他プレイヤーからはよく思われていない上によくPKに合う。やってる事が悪役染みてるのも敵視されるひとつだろうけど。それでも上位ランカーとして君臨していた実力者集団だ。俺も42人のその1人であったし、仲間と共に敵を返り討ちにしたり素材集めをしたり武器作成に勤しんだりと様々な事をやってきた。

 

ああ、こんな話は今はいいな。いや、でも"俺"という存在を忘れない為にもこれは重要な事だ。

楽しかった日々、掛け替えの無い仲間、自身の誇る強さと武器……どれもこれも大切なものだ。なのに……掌から零れ落ちる砂のように、ひとつふたつと消えてしまったのは何故だろう。あんなにも大切だと思っていたものが色褪せてしまったのは何故だろう。いつの間にか失っていたものを嘆いて、縋って、取り戻すべく彼の場所から背を向けたことがいけなかったのだろう。結局、俺は全てを失ってしまったのだから。

 

 

仲間を

居場所を

親友を

約束を

……命を

 

 

なのに俺は"俺"としてこの世界に生きて存在している。現実(リアル)でもユグドラシル(ゲーム)でもない全く知らない異世界に。誰もいないこの世界に。

あの日、俺は死んで……そしてこの世界で目覚めた。現実では確かに人間であった俺は、ユグドラシルでは鬼神として在った姿形と能力、装備を以てしてこの世界を生きている。

 




唐突な主人公語り!
種族の鬼についてはオリジナルです。参考は他作品ですが転スラをイメージしてます。
大まかな進化としては小鬼(ゴブリン)<大鬼(オーガ)→鬼人(キジン)→妖鬼≠悪鬼(オニ)→鬼神(キジン)みたいな?適当なのでふわっと流してください……(汗)

死んだ原因や親友、作ったNPCなどについては追々……。


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2話

書ける箇所から書いてるので、結構時系列が飛び飛びになったりします……。


鬱蒼と生い茂った深い森の中ーー当然人の通る道なんてものはなくーー邪魔な小枝を手で払いながら、ざくざくと進む一人の男がいた。

 

「荒野を彷徨って、やっと緑が見えたと思ったら……案外広いなぁ、この森。数日歩いてるのに抜けられん。それに、いい加減獣やモンスター以外の…そう、人間。話せる奴と出逢いたいもんだ。話を聞けば少しは自分の状況ってもんを理解できるだろ」

 

一人でいるためか、自然と独り言が多くなる。ほんの少し寂寥感を感じながら、鬱陶しげに白髪をかきあげて木々の隙間から溢れる日差しに目を細める。

 

「もし此処が天国ってやつなら、なんて綺麗な世界なんだろうな。まぁ、心臓動いてるし当然息もできるし、"死"って感じ皆無だけどな。空気も水も汚染されてない、野生の果実だって実ってる……ほんと、楽園ってやつだよなぁ」

 

現実を思い出して、この世界と比較しては感動する毎日だ。夜空も青空も映像や空想なんかではない本物で、最初は1日中眺めてはその変化に興奮していた。

そして思い出したのは、嘗ての仲間であり自然に並々ならぬ思い入れがあった彼の人のこと。

 

「ブループラネットさんが見たら感動と興奮で狂い出しそうだ」

 

くくっ、と笑う男の笑い声が静かな森に響く。しかし、楽しそうな顔から一変、男は苦悶の表情で眩しい空から目を落とし、自分の暗い影を見下ろした。

 

「帰りたい……みんなの…モモンガさんのいるギルドに帰りたい。もう一度、アインズ・ウール・ゴウンに…ナザリック地下大墳墓に帰りたい。………会いたい」

 

しかし、自分はあの時確かに死んだのだ。現実(リアル)で生きてはいないだろうし、ユグドラシル(ゲーム)ギルド(ホーム)に戻る事もできない。仲間にも会えない。約束も果たせない。

その悲しみと苦しみに男は一生苦悩するだろう。そしてそれが自分に与えられた罰なのだとも理解している。

 

「本当に、神様ってやつはクソったれだな、チクショウが」

 

そう吐き捨てると、前だけを見据えてまた歩き始める。

その後は喋ることもなく黙々と歩き進んだからか、体感的にはそれほど時間をかけずにーー実際は更に数日かかっているーー森を抜ける事ができた。そうして、ようやく待ち望んだ村が眼下に見えた。

 

「第一住民発見〜っと……て、ありゃ?」

 

鬼の目は人間の時よりも遠くのものも鮮明に見ることができ、視野も広い。その目で見た光景は、初めて自然以外を見るのに中々に壮絶なものだった。

 

「野盗かモンスターに殺られたのか……こりゃ全滅か?」

 

うっすら登る火の手に、血の海に沈む肢体、壊された家屋に蹂躙の跡が生々しかった。風に乗って煙と血の臭いも漂ってきた。

 

「まぁ、何かしらこの世界を知る手掛かりや情報は調べられるだろ。人がいないってなら食料その他奪っても文句は言われねぇ。逆にラッキーかもな、これ」

 

派手に壊された門から村の中に入る。汚れた地面を歩いて、足元に転がった死体を見て…ふと気がついた。余りにも自然で違和感を感じなかったから気づくのが遅れたが……

 

「こんな状況でも…人が死んでるってのに、恐怖も、悲しみも怒りも湧いてこない?」

 

赤の他人だから?いや、誰であれ人が死んだり殺されたりしたらそれは身近な死として恐れるし、悲しい出来事だと、死者を憐れみ悔やむべきだ。そして、犯人に対しなんて非道な事をと怒りを燃やし断罪されるべきだと誰何する。……そう、現実で生きた人間の自分は、そういった普通の精神を宿していたはずだ。

 

「なんだ、これは……」

 

おかしい、異常だ、普通の精神じゃない。そう思うのに、そんなことはないと頭では理解している。バランスが取れなくなったみたいに、ふらりとよろめく。

ぐるぐると思考が回る中、頭に浮かぶのは…

 

 

ーーこれは食料だ。ああ、美味しそうだ。

ーー殺戮し、蹂躙し、赤で染まったこの光景のなんと美しいことか!

 

 

それは(じぶん)の本心であった。

フラフラと立ち上がる鬼の前に、血濡れた剣を片手に下卑た笑みを浮かべる野盗が家屋の隙間から出てきた。男は生き残りがいた事に胡乱気な顔を向け……そして、人外である様相にひっと恐れた悲鳴を漏らした。

 

「ば、バケモノ……っ!」

 

殺さなければ殺される。そんな恐怖からか、血走った目をして男は剣を振りかぶった。

ざしゅ、という音が耳に届く。しかし、振り下ろした剣…手からは何も感触は伝わってこない。代わりに感じたのは胸に迫りくる熱い衝撃。

 

「ガハッ……」

 

男の胸から背中にかけて、赤黒い棒が伸びていた……いや、それは真っ直ぐに伸ばされた腕だ。誰の?そんなもの、目の前の鬼以外にいない。

ずりゅ、と生々しい音を出しながら腕が引き抜かれる。支えを失った肢体はゆっくりと傾き、足元に転がる死体同様に地面に横たわった。

その死に顔に写るのは恐怖と絶望。当然だろう、殺される恐怖に、死への絶望……しかし、同じ状況であったはずの鬼はそんな感情を微塵も感じなかった。殺意を、凶器となる剣を向けられたのにだ。

今しがた殺した男の血が滴る自身の腕を見つめる。そう……殺したのだ、己の手で。

 

「人を殺したってのに、何も感じない……か」

 

むしろ目障りな虫を手で払った、くらいでしかない。鬼と人は違う。種族そのものも、価値観も。

鬼は、恐怖と狂気を振りまき、その心に付け込み墜とす。残虐な性格で殺戮を好むものが多い。そして、人を喰らう化物だ。

血に濡れた腕を先程殺した人間に伸ばす。躊躇いなく引きちぎった肉の塊を貪り食う。食べた事もない筈なのに、美味と感じて愉悦に嗤う。渇きに似た餓えが和らぎ、充足感を得た。

 

「鬼……か。人間としての俺が鬼の体に宿ったのかと思ったが……。これは、鬼として俺がなった…ということか」

 

人間であった頃の記憶を持つ、人間であった思考や感情はもはやただの残滓でしかない…そんな鬼となってしまったのだろう。

 

「はぁ、普通はショックなり受けるはずが…………なぁーんも感じねぇな」

 

口元に付いた血を拭うが、その手も同様に血で汚れているため意味はない。しかし、気にも留めずに鬼は目の前の餌をただ喰らった。

もはや原型を留めていないくらいぐちゃぐちゃに、白い骨が見え隠れする赤い肉の塊と成り果てたそれから興味を失ったように目を離し、ごくりと口内に溜まった血を嚥下すると、ようやく男はその場から歩き出した。

 

「さてさて、武器や魔法はモンスター相手にも使ってきたが、人間相手にはどうかな?」

 

右手には妖刀と呼ばれる村正を、左手には地獄の業火と呼ばれる漆黒の炎を揺らめかせて経津主はニィと残虐に嗤った。今から試す事が面白くて楽しみでたまらないからだ。

 

「さァて、鬼ごっこの始まりだ」

 

楽しませてくれよ?人間。

勝手に決めて勝手に始める遊戯(ゲーム)。鬼は勿論自分で、捕まえるのは野盗(ニンゲン)共だ。

 

 

ーーそうして、村に再び絶叫と断末魔が響き渡り、そしてまた静寂が訪れた。

 

 

 




主人公の鬼としての見た目は大柄な男性で、左側は大きく、右側は小さい朱色の角が生えている。
犬歯は長く、逆虹彩(白目部分が黒色)で瞳孔は紅。腰まである白髪はざんばらで、目元には朱塗りの化粧を施している。
格好は鬼の総大将!みたいなもの(大雑把)


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3話

プロローグまでしか書いてないので当分ここまで。
♪〜俺はこいつ(村正)と〜旅に出る〜♪
\\ゥオオオォォォ〜〜//(怨嗟)


結論から言おう。とてもつまらなかった。遊びにもなりゃしない。

 

なにがって?そりゃもちろん人間共のレベルが、だ。モンスターは出会った種族がゴブリンだったから、低レベルなのはわかる。

だが、この世界について何も知らない状況で武器を持った人間というのは警戒するに値する。ユグドラシルじゃ高レベルの人間種のプレイヤーは五万といたものだ。

だから装備や武器も神器級で揃えて、あまりふっていないMPにも関わらず高位の魔法を使ったのに………。

 

「拍子抜け……。やっぱりただの野盗か。村を壊滅させたからそこそこ実力あるのかもと警戒して損した。はぁ、MPの回復は時間経過しか手がないのに、結構消費するやつ使っちまった」

 

様々な殺され方をした骸の山の上に腰掛け、経津主は大きな溜息を吐いた。心なしか自身の愛刀の村正も相手の弱さに不満を訴えているように見える。

 

「ま、野盗を〈支配(ドミネート)〉して情報は聞き出せたし、多少役にはたったか」

 

聞き出した事と村の様子を見ての推察になるが、やはり此処はユグドラシルではないようだった。モンスターもいるしアイテムや魔法も使えるからもしかして…なんて淡い期待を抱いていたが、そんなもの簡単に打ち壊された。

 

「リ・エスティーゼ王国だとかバハルス帝国だとか、そんな国はユグドラシルには存在してないし、貨幣も違う。何故か知らないがユグドラシルの魔法が一般的に使用されてるから何かしら関係してるのかもしれんが……」

 

平行世界、というSFによくある設定もあるが……ユグドラシルはそもそもゲームだ。ゲームの平行世界ってなんだ。ゲームの中に入りこんだとかの方がまだ納得できる。

まぁ、無難に異世界……というやつだろうな。まるで物語のようだ。

 

「さぁて、これからどうするかねぇ〜」

 

知りたい情報は手に入った。武器や魔法の確認もできた。食料と衣服、貨幣も野盗から奪い取って手に入れた。

しかし、これからの目的は未定……いや、内心はもう決まっていた。

 

見て回ろうと思うのだ。この世界を。

ユグドラシルにどこか似た、懐かしい世界。

この世界にしかないもの、あの世界と似ているもの、そんなものを見比べてみたい。

自分の中にある思い出を忘れないように。

 

「帰る方法を探すってのもアリだが……あったとしても無理だろうなぁ。現実じゃ俺は死んでるし。戻った所で死体だ」

 

戻れないならば、帰れないならば、せめで思い出を胸にこの世界を生きてき行きたい。罪を背負いながら、いつ来るかもしれない死ぬその時(おわり)まで。

 

「あ、でも鬼の姿のままじゃあPK…討伐されるな。う〜ん、幻術ずっとかけ続けるのは効率悪いし、なんか良いアイテムあったかな………」

 

しかし、旅に出る前に一番重要な問題がひとつ。先程野盗が悲鳴を上げたように、今の自分は人間ではなく鬼だ。こんな見た目で出歩くなんて不可能だ。ヘルムを被って誤魔化そうにも、そもそも角が邪魔で無理だ。

アイテムボックスの中を思い出しながら漁っていると、ふとある仮面の事を思い出す。

 

「いや嫉妬マスク(これ)じゃなくて……あった!」

 

あまり良い思い出のない仮面は戻して、目的の物を取り出した。それは鬼を象った仮面で、鬼種族のみが装着できる『鬼封じの仮面』だ。

これを装備するとレベルは変わらないが種族スキルが一部使えなくなる上にステータスが著しく減り、外見も鬼の特徴ーー角や逆虹彩の瞳、鋭い爪などーーが無くなり人間とほぼ同じ見た目になれる。幻術や指輪を装着せずとも異業種であることを誤魔化せるアイテムなのだが、如何せんデメリットの方が大きい。

ユグドラシルでは鬼しか装備できない鬼封じとかどんなアイデンティティ損失アイテムだと馬鹿にしたものだが、一応保管しておいてよかった。

 

「これで見た目の問題は解決できるし、この世界のレベルはどうやら低いみたいだから、逆にこらくらい弱体化した方が合わせやすいだろ」

 

この仮面は別に顔に装着せずとも装備として扱えばその効力を発揮する。さすがに鬼の仮面を付けて出歩いたら鬼から人に化けたのに怖がられたり疑われそうだ。

 

「腰に付けるか……いや、頭の横に付けよう。ふふん、ちょっとカッコよくないか」

 

耳の上辺りで紐を結び、側頭部のちょうどいい所で調整して……仮面の能力を発動させる。魔法で水を集めて水面に映ったのを確認すれば、ちゃんと角も無くなって、瞳は変わらずに紅だったが普通の虹彩だった。爪も人間と変わらない。

 

「よしよし、上手くいったな。装備も落として〜……うん、これならある程度の耐性や弱点もカバーできるし、この武具はダメージ減少、こっちは筋力増強……。あと、武器はやっぱりこれ!村正だけは外せないよな〜」

 

鬼の総大将!って感じの希少金属やドラゴン素材で出来た最上武具や耐性付与の大盤振る舞いの着流しや羽織りをとっぱらって、だいぶランクの低い赤い着流しに黒い羽織り、胴や手足の武具のみという軽装に変える。

今装備しているのも耐久性や付与された効果は十分であるし、一人旅程度ならこれくらいでちょうどいいだろう。なにより愛刀であり相(愛)棒である妖刀:村正(こいつ)がいれば問題ない。

まぁ、こいつ抜くと自動発動型の〈鬼気〉が溢れ出て、抵抗できないと動きが鈍ったり最悪恐慌状態になるが………うん、あまり対人で使わない方がいいな。

 

「腰にさしてるだけでも物々しいというか禍々しいな……。普段はこっち使おう」

 

あ、なんか村正がショック受けたみたいに震えてるけど…スマン、モンスター相手ならちゃんと使うから。

 

もう一本の刀は「十の型:炎鬼」。鍛冶師の職業を使って作り上げた俺の作品の中では最高傑作とも言えるひと振りだ。建の使っていた「建御雷八式」にも劣らない代物だ。

これを背負い、あとは……属性変換のできる「五の型:神羅」も便利だから村正と反対側の腰にさしておこう。

 

ちょっと武器多いか……?本当は槍とか斧とかも使いたいんだが……自重しよう。どうせすぐ取り出せるし。

 

「ただ放浪するってのも味気ないし……そうだ!死獣天朱雀さんから地図の作り方を教わったし、世界地図に挑戦してみようかな。ぷにっと萌えさんも情報は大事だと言っていたから、ただの地図じゃなくそこに棲んでる種族や強さのランク付け、規模なんかも後付できるようにしよう。あとは、なんか趣味……あ、せっかくだからこっちでは鍛冶師の職業をメインにしてみようか。この世界の素材でオリジナルの武器を作ってみたい!建に負けないやつ!ふっふっふ、やる気出てきだぞぉ〜」

 

ぶつぶつと独り言を呟いたが、目標は定まった。

 

「よしっ、行くか」

 

 

 

ーーーこうして、一人の鬼の果てのない旅路が幕を開けたのだった。

 




さらっと出ましたが、建こと武人建御雷が主人公の親友です。彼に誘われてユグドラシルを始めたっていう設定。
以下、主人公が使うオリジナル武器

妖刀:村正…神器級アイテム。テキストには"数多の妖怪を斬り殺した末に怨念が溜まり妖刀と化し、手にした者を次々と呪い殺した"と載っており、持ち主以外が触れると恐慌や発狂などの状態異常にさせる他、殺された妖怪や元持ち主の怨恨が木霊する……らしい。
スキル等で耐性があっても、自身や相手にバフやデバフが付こうとも必ず攻撃がヒットする補助がある。

十の型:炎鬼…自身の製作した神器級アイテム。身の丈程もある大太刀で、黒炎を纏う。攻撃範囲の広い刀で、刀の軌跡や衝撃波に纏っている黒炎を付与して地獄の業火を味合わせる事ができる。

五の型:神羅…自身の作製した神器級アイテム。長さは村正と変わらないが、こちらは両刃。柄に孔が空いており、そこに元素魔法を結晶化させた珠を装着させる。込められた元素魔法(五大元素)の属性に合わせた攻撃が可能になる。

これも適当なのでふわっと流してください………(汗)


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間幕
罪と罰


繰り返し見るこれは、悪夢であり、己の罪だ。


 

ゆらり、と水の中を漂うように、霞がかった視界を見渡すように、俺はそこにいた。これが夢である事は理解している。何度も何度も、数える事も止めた程繰り返し見た悪夢(ゆめ)だからだ。それでも俺はこれを見なければならない。それはこれが己の罪であり、己への罰だからだ。

 

 

 

目の前に立つのは、俺がこのゲームをやるきっかけであり、後のギルドに所属する事になった親友……プレイヤー名を『武人建御雷』という。

その彼が、ギルドを…ゲームを辞めると言って背を向けて去っていく。俺はあいつに手を伸ばす。

 

ーー行かないでくれ、という悲哀に。

ーーどうしてだ、という憤怒に。

 

長年連れ添った友の言葉に、初めて感じる悲しみと怒り、苦しみを感じた。そうだ、あいつと喧嘩なんてしたのは生まれて初めてだった。言い争う事はあってもそれは単なるじゃれあいのひとつで。ここまで意見が分かれる事も、拒絶される事も初めてで。そのことに戸惑いと恐怖を感じていた。

 

その場に立ち竦む事しかできない俺を案じる優しい彼…我らがギルドマスターもまた、仲間が去っていくのを声には出さずとも悲しみ、嘆いていた。

だから、俺はそんな彼とひとつの約束をした。

 

「建と仲直りして、必ずギルド『アインズ・ウール・ゴウン』……ナザリック地下大墳墓に帰ってくる」

 

必ず戻ってくる。あの馬鹿(建)を殴ってでも説得…言いたい事があるから、それを伝えて、それから謝って仲直りして。そしてまた、モモンガさんや皆と一緒にギルドで笑い合いたいのだと告げた。

 

「約束……ですよ。このナザリックで、待っていますから」

 

これが、ひとつ目の約束。

 

そして、自分が仲間の協力を得て作った我が子のようなNPCにも、AIというのは分かっていたが声をかけずにはいられなかった。それはきっと、必ず此処に帰ってくるのだという決意の証。

 

「必ず戻ってくるから、待っていてほしい。それまでの間、優しすぎるギルマス…モモンガさんが悲しまないように、頼んだぞ」

 

これが、ふたつ目の約束。

NPCに対して、なんて言葉をかけたものだ。笑ってしまうが、不思議と目の前の息子は然と命を賜ったというような目をしていた。……俺の勝手な想像だが。

彼らの設定を少しだけ変えて、大切な息子と娘の事をモモンガさんに託すと俺はあの世界から去った。

 

 

そして……ああ、そうだ。あの日。メールで呼び出したあいつに会うために有給をとってまで向かった先で、俺は………。

 

俺は…………死んだのだ。

死んだのだ、事故で。

 

下級階級の者がが不運に巻き込まれて死ぬなんてのはあの世界じゃよくあることだ。そうだとも、上流階級の者に殺されるなど、運が無かったと嘆くしかないのだ。

 

でも……でも、ここで死んでしまったら建と仲直りができない。言いたい事、たくさんあるのに。きっと、不器用ながら書き上げたこの手紙だけじゃ語れない。

それに、ギルドに…ナザリックにも帰れない。おかえりなさい、と自分を出迎えてくれるギルドマスターのモモンガさんにも会えない。ただいま、と自分を待つNPC達に声をかけることもできない。

 

俺には果たさなきゃならない約束があるのに。守らなければならない約束があるのに。

ああ、ああ……俺は、約束を守れずに死ぬのか。彼らを裏切ってしまうのか。ああ、なんということだろう。なんて……なんて、罪深い。

生きたい。彼らにもう一度会いたい。ごめんなさいと謝りたい。

 

 

それが、俺の願いだ。きっともう二度と叶わない願い。罪の代償、課せられた罰。

そうして俺は、また何度でもこれを見続けるのだ。




そんな、夢を見た。

唐突かつ短いオリ主の語り。そして転移というか転生みたいな感じで異世界に降り立つと。


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白鬼の剣士

次回からオリ主の珍道中が始まります。目次というか、こんな話を原作キャラと絡めながら書いていきたいな……なんていう願望。
捏造と妄想と救済メインです。


白鬼の剣士、と呼ばれる男がいる。

 

何時頃その名が広まったのかも、その男が一体何者なのかも、そもそも存在するのかどうかも不確かな存在。にも関わらず、ここ数十年の間に伝説さながらに語られてきた名だ。

 

白髪であることから老人であるとも言われ、

巌のような巨体の凛々しい姿から青年であると言われ、

血のように紅い瞳から化物だとも言われ、

鬼の面を側頭部にひっかけていることから本性は鬼であるとも言われ、

 

青年とも老人とも果ては人外とも言われ、その全貌は全く掴めない。

 

………いや、ひとつだけ正解が紛れている。彼の人は正しく鬼…人ならざるものである。真実が明かされることはないだろうが。

何故こんなにも白鬼の剣士の話が出回っているのか……それは偏に彼の御仁が成し遂げたと言われる偉業が、人伝に伝わり口の端に上り語られてきたからだ。

 

曰く、王国と帝国の合戦時には一兵士として鬼神もかくやと言わんばかりに大立ち回りし、帝国兵を圧倒したとか。

曰く、幾百とも幾千とも言われる魔物の軍団をたった一人で切り伏せ、街を救ったとか。

曰く、カッツェ平原で生まれた未知の騎士アンデットを倒し、ワーカーや冒険者を窮地から救ったとか。

曰く、アダマンタイト級冒険者ですら倒すのが難しい魔物…ギガントバジリスクやドラゴンを倒したとか。

曰く、………。

 

中には流石に作り話じゃ…噂を助長させるために盛られただの言われるものもあるが、それでも尚人々の口に上る彼の人の偉業は正しく勇者や英雄と呼ばれるに相応しいものであった。

当の本人は何故ここまで話に尾鰭所か背鰭や胸鰭までつくような事態になってしまったのかと、検討もつかず頭を抱えているが。

 

そんな男の知らない所で、後に有名となる彼の友人や親しい者達は、またひとつ彼の行いを語る。

 

「彼ほど剣の腕前に長けた武人を、私は知らない。一度でいいから白星を勝ち取りたいものだが、中々……」

ーー今や王国戦士長として名を馳せる男は苦笑いを零す。

 

「ガゼフもそうだが、さらにその先のあの男を倒す為、俺は剣を振るい続けるだけさ」

ーー彼から貰い受けた刀を腰に、再戦を望む剣士は諦める事なく剣を磨く。

 

「彼は正しく英雄…いいえ、勇者よ。本人はただの旅人だなんて言ってるけどね」

ーー英雄の残した武器を手にする白雪の乙女は、可笑しそうに笑いながら彼を讃えた。

 

「あの人は私を地獄から救ってくれました。たった一人の家族にも出会わせてくれて……本当に、感謝してもしきれないくらいです」

ーー今の明るさからは想像もできない暗い影を背負っていた少女は、あの日出会えた幸運に感謝した。

 

「あの人は、何だかんだ言って困ってる人を見捨てられない。強くて、優しい人。あの人に救われて、私も妹達も今を笑って生きている」

ーー1度は手放した夢を再び歩きながら、彼への恩を返す為に少女は今日も師の元で魔法の勉学に励む。

 

「頭は最高の漢さ!この俺が言うんだから間違いねぇ。ザリュースの奴は師であり架け橋として部族を救ってくれた御人……て言ってたかな?まぁ、要するに強ぇ御人だ!ガハハッ」

ーー力こそ全てだと語る蜥蜴の異業種は、惚れた雌の事を語るが如く彼の事を熱く語った。

 

「彼は……そうだね、孤独な鬼…かな。殉教者のように罪を背負い、償いながら時間に流されるように生きる……憐れな鬼だ。いつの日か、彼が許される日が来る事を祈ってるよ」

ーー彼の友人である白銀の龍は、目を伏せてそう静かに語った。

 

 

 

これは、そんな男の五十余年にも及ぶ長い長い旅路の中の、ほんの一端の話である。




「どうしてこうなった」


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