スナックワールド トレジャラーズ エメラルド (アメデス)
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第1章 悪い夢から醒めて
第1話 夢と現実


ゲーム版「スナックワールド トレジャラーズ」を、マイキャラ視点で描きます。
ゲーム版のネタバレが多いけどオリジナル要素も多いです。CP要素もありあり。
基本的に主人公はピノキオver3.0と一緒にいる予定ですが、それは第4章からになると思います。
さーて今日も遅筆な大冒険の始まりだぁ〜




「ええ、少なくとも……、私はあなたを愛していましたよ、ミノリ。」

 白い体から伸びる影が私を覆うと、彼はそんな風に囁いた。

「だから……、だから、ここでさよならです。」

 こんな形で別れるの、絶対にやだってば。ねえ、聞いてよ。私、まだ……!

「きっと、どこかでまた会えます、だからそれまでは」

 崖から落ちていく感覚と共に、遠くなっていく空が目に映った。

 

□*■*□*■*□*■*□*■*□*■*□*■*□*■*□*■*□

 

「…う、うーん」

 は、と気がつくと私はふわふわのベッドの上にいた。慣れない優しい香りと、窓から吹く暖かい風に包まれて。

 ここはどこだろう。来たことのない場所だ。待てよ、私はここに来たことがない。それは認める、来たことはないだろうけど、私が今まで“来たことがある場所”って、具体的に、一体、どこだ?

 

 頭がぼんやりしていて、今はちょっと思い出せないだけかもしれない。もしかしたらここは、夢の中なだけで、夢の中の私は“思い出せない私”なのかもしれない。そうであってほしい、そうであってくれ、全部全部夢であってくれ。お願いだから。

 ふと視線を感じ、部屋の扉の方に目をやると、金髪の女の子が心配そうにこちらを見つめていた。

「……あの」

 彼女はとても小さい声で私に話しかけてきた。

「……」

 …かと思えば、申し訳なさそうに俯いてしまった。

 

「君が私を助けてくれたの?」

 私は、至極自然な質問を彼女に投げた。投げたつもりだ。だってそうだろう。ふと気がついて、1番最初に目にした人間に、そう聞くのは別にRPG的流れとしては何もおかしくないはずだ。……RPG?

 

「……」

 少女は何も言わずに小さく一度、こくんと頷いた。すると少女は、着ている青色のワンピースのポケットから、何やらスマホを取り出した。

 あ、あのスマホ、私は知ってる。通称「フェアリポン」。妖精が運営しているという会社、「フェアリーエレクトロニクス社」が製造した万能ツール。タッチ1つでなんでも検索できちゃうし、知り合いを撮影して「スナック登録」すれば、いつでも呼び出せちゃう優れものなのよね。…って何だこの説明口調。知ってる事が嬉しくってつい、色々考えちゃったよ。

 そんな事を考えている間に、その金髪の女の子は取り出したスマホの画面をずい、と私の方に向け、画面の再生ボタンをタッチした。その画面にはなんと、どこかの森の中で気絶している私の姿が映し出されていた。画面の中では、金髪のその子が私を見つけて、森を抜けこの街、そして私たちが今居るこの部屋があるこの宿屋まで、彼女が私を連れてくる一部始終すべてが動画として撮影されていたのだった。

 つまり、今見せてもらったこの動画でわかるように、彼女が私をここまで連れて来た…いわば命の恩人、って事なんだろうけど。

「今の動画を見る限り、あなたが私を助けてくれたんだね。お礼言っとく。ありがとう。…だけど。」

 腑に落ちない点が、一つ。

「貴女が撮影してるなら、どうして貴女がこの動画に映ってるの?それとも、別の誰かがこれを撮影したの?」

 一瞬、金髪の子はきょと、としたが、片手を口元に持ってきて、くすくす、と小声で笑うと、再びポケットから何かを取り出す素振りをした。

 何を出す気だろう?と眺めるのも束の間、彼女のポケットから出てきたのは、ズバリ……、自撮り棒だった。

 なーるほど、自撮り棒を使って自撮り……。それなら納得。そして、抜かりないのね、キミ……。

 自撮り棒を見せた後、金髪の少女が私を見て微笑んだが、その微笑み方は、あまい金平糖たちが瓶の中でころころとする様子に少し似ていた。

 




シンデレラちゃんだよ。
ジェニファー山本さんは多分次回出て来ます。
話の筋はGOLDやりながら追っていく形になると思いますはい。
3DS版1周しかしてないからうろ覚えだし…。


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第2話 失われた記憶

 部屋でそんな風にしていると、金髪の少女は、小さな声で「下に」と呟いた。

 下?下に何かあるのか?私がベッドの下を覗き込むと、少女は違う違う、とクスクス笑いながら手を拱いた。どうやら私達が今いるここは2階で、下の階に来いということらしい。

 大人しく従って、少女についていき木造の階段を、手すりに捕まりながら下の階に降りると、髪の長いふくよかな女性がこちらに気付き、カウンター越しに「おう」と声を掛けてきた。

 「もう体は大丈夫なのかい?」

 心配した様子で聞かれたので、「もう大丈夫です」と私は返した。

 「そりゃあよかった。あたしの名前は、ジェニファー山本。ここはあたしがやってる宿屋だよ。」

 気さくな雰囲気でジェニファーさんが話してくれた。

 「私は…ミノリです。」

 名乗られたので、私も自分の名前を言った。

 「そうかい!ミノリ、それで、あんたは一体全体どこからどうやって来たんだい?」

 「どこから…どうやって?」

 落ち着いて思い出してみようにも、今起き上がってからの記憶しか思い出せない。自分の名前しかわからない。私はどこから来たんだろう。どうして、ここに来たんだろう。何故、何も思い出せないんだろう。

 「ごめんなさい、何も思い出せないんです。」

 「…こりゃあ驚いた。名前以外何も思い出せないのかい!」

 弱ったなあ、といった風にジェニファーさんは金髪の少女と顔を見合わせた。

 

 「あぁ、そうそう、これはミノリを見つけた時に、着ていた服と、持っていた荷物だよ。」

 ジェニファーさんは、カウンターの下から丁寧に畳まれた深緑色のワンピースと、グリッターグリーンの装飾が施されたフェアリポンを取り出し、私に渡した。

 「こっちのワンピースは”ブリタニアエンチャント”のワンピースだねぇ。”エメラルダウェア”、魔力を引き出してくれるある一種の魔法着に…フェアリポンだけど、データか何か、記憶の手掛かりになるものは、入ってないのかい?」

 エメラルダウェア?私が着ていたのか…。見覚えがない。着ていたというのだから、着ていたのだろう。肝心のフェアリポンの方は…。

 「ダメだ、データ、からっぽ…メールも連絡先も、写真も何も入ってません…。」

 残念。あーあ、一体自分に何があったんだろう?

 「うーん、そうかい、まあそんなこともあるさね。」

 ないよ。普通。

 「そういえば、ジェニファーさん、私がその服を着ていたってことは…。」

 今私が着ている、この服は?

 「ああ、だいぶこっちのワンピースが汚れていたんでね、洗って、破れてた所は修繕させてもらったよ。ミノリが今着てるのは、古着をちょっと手直ししたものさ。返されても困るし、それを着ていきなさいね。」

 「そんなことまで…ありがとうございます。」

 ジェニファーさん、なんて優しいんだ…。ん?着ていきなさいって…私はこれからどこに行けばいいんだろう?

 「そうそう、王様がミノリのことを呼んでいたよ。多分、どこから来たのかとか、根掘り葉掘り聞かれると思うけど、わからないならわからないって、正直に言って大丈夫だからね。」

 えっ、王様?そりゃ、そうか、急に国に部外者が来たら、スパイか何かの使者かと思うのが普通だよね。

 「ありがとうございます。行ってきます。」

 「おう、気を付けるんだよ。まあ、お城まではここから北に一本道だから大丈夫だと思うよ。」

 道まで教えてくれてしまった。どうしてこんなにジェニファーさん、親切なの?

 金髪の女の子も手を振って見送ってくれた。

 

 さて、お城に行かなくちゃ。




ゲーム本編では服のくだり無いですけどアレンジです。
ジェニファーさんもこんなに喋らない。
あと、主人公を見つけたのはゲーム本編では王国兵士で、導入も王様からですが、
この作品は「エメラルド」なので、多少差が出ると思います。メインヒロインはピノですしお寿司!
シンデレラに見つけてもらった事になってるし、導入は…(もう分かっちゃっただろうか)

そして、果たしてこのまま、ミノリはお城に直行できるのでしょうか?


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第3話 その機械、飴細工につき

 迷った。

 北へ一本道と言いながら、どうやら南に来ていたらしい。ここは、どこだ。

 自分が方向音痴だという事を忘れていた。名前以外忘れてるから当然か。情けないよ…。

 おろおろと迷っていると、後ろの方から「どけどけぇー!!!」と大声が聞こえた。

 

 「だからぁ〜!!俺じゃねえんだよ〜!!信じてくれよぉ〜!!これは元々俺の財布だ〜!!」

 人を見かけで判断するのは良くないが、いかにも小悪党、盗人、というような見てくれをした、目つきの悪いおじさんが、猛スピードで駆けてきた。

 「しらばっくれるな!財布を盗んだのはお前だろ〜!!」

 黄色いバンダナをした、トンがった白い髪の少年がその盗人を追いかけていた。他にも女の子や大柄な男の人、そして謎のタケノコモンスターなど、お祭りか?パーティか。とりあえずそういった一行が、盗人と大チェイサーゲームを繰り広げながら、交差点を突っ切っていた。

 

 「子どものはしゃぐ声は、聞いてるだけで元気になるわねぇ」

 と、横目におばあさんが歩いていった。

 子ども?今の少年、子どもというには少し大きすぎる気もするが…。人は見かけによらないし、おばあさんにとっては小学生も大学生も同じ「子ども」なのかもしれない。それはともかく。

 

 「お城は一体、どこなの…?」

 とぼとぼと歩いていると、大きなお店が見えた。”WEAPON”と大きい文字で看板が掲げられていた。武器屋だ。お城の場所聞いてみようかな。そう思い、店に入る事にした。

 店内はしんとしていた。電気も消えていて静寂に包まれていた。扉は開いていたのに、どうしたのだろう?

 「すみません、誰かいますか?」

 返事はない。

 カウンターの奥に目をやった時、は、と私は息を呑んだ。

 白い体をした背の高い人形が、時が止まったようにじっと佇んでいた。

 飴細工のような艶やかな体をしていたので、私はみいってしまった。頭部や腕に刻まれた繊細な一本のライン、顔であろうと思わしき液晶も、私にとって、あまりにも美しく”儚い”ものだった。

 

 「お客さんか?」

 背後からそう声がして、我に帰った。現実に引き戻されたような感覚だった。

 「すまねえな、今そいつの調整中でよ、店は準備中なんだ。」

 武器屋の店主らしい、白いひげを蓄えたおじいさん…(と言ったら怒りそう)が申し訳なさそうに言った。

 そいつとは、私が今じっと見ていた人形のことだった。調整中…?動くのか?

 「見ねえ顔だな?」

 店主のおじさんは、黙ってる私に訝しげにといただした。

 「わ、私この国に来たばかりで…ミノリと言います。お城に行く途中でした。」

 返答がしどろもどろになってしまった。その人形を見つけてから少し気が動転していた。そもそも、何故動転したのかはわからないが…。

 「お城はここを出て北の方角だぜ、お嬢ちゃん、それよりもお城に行くより前に武器屋に何か用があったのかな?」

 「あ、あ、ありがとうございます。」

 何かここにいてはいけないような気がして、急いで武器屋を飛び出そうとした。

 「おう待て、そう急ぐな。俺はカルボナーラ。もし王様に何か頼まれごとだったら、うちの武器をごひいきにな!」

 「は…、はい。」

 爽やかな笑顔で、私はカルボナーラさんに見送られたのだった。

 

さて、お城に急がなくちゃ…。




やっぱ寄り道したよね。ロミジュリの店やコンビニには行きません。多分。


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第4話 石化する兵士

 「申し訳ないけど、今は2人だけにしておいてくれないかな…あぁ!ジュリエット…!」

 「ごめんなさい…今は2人だけの時間なの…おぉ…ロミオぉ…!」

 見つめ合うロミオとジュリエット。変なところに迷い込んでしまったらしい。あ、私、お邪魔虫ですね。ごめんなさーい。私は黙ってその服屋を後にした。

 

 お城に行くのは一本道のはずなんだけど…、服屋を見かけて入った所中は異次元空間だった。異次元?超次元の間違いかも。

 小高い丘を越えて、北の方に目をやるとお城の屋根が見えた。あった。お城だ。やっとお城に行ける…。

 

 「お待ちしておりました。ささ、こちらへ。」

 王宮の兵士が大きな門を開けてくれて、謁見の間に通される。うー、緊張するなぁ…。

 

 「来たわね〜」

 そう声がすると、絶世の美女と呼ぶにふさわしい女性が、こちらを見つめていた。わ、わ、なんて綺麗な人なんだろう?長くてウェービーな小豆色の髪、翡翠色の薔薇の髪飾り、大きな紫色の瞳、完璧なプロポーション。桃のような甘い香りがする。…もしかしてこの人が王様?王様っていうより、女王様?

 「ホッホ。来たの」

 …その女性の横に小さく王座に座っている、白いふわふわのヒゲをしたおじさんが喋った。王冠を被っている。おっとこれは早とちり。多分、こっちのおじさんが王様なんだろうな。マントも羽織っているし、いかにも、王様だった。王様にしては、困り顔で、ちょっと情けない顔をしていた。

 

 「シンデレラくんが見つけた謎の人物とは、お前で間違いないな?」

 は、はい。と返す。シンデレラ?あの金髪の女の子の名前か。

 「ふむ、悪い病気も持って居なさそうじゃし…もう具合は良いのだな?」

 おかげさまで。

 「して、名前はなんという?どこから来たのじゃ?」

 「ミノリと申します。どこから来たかは…、わかりません。記憶を失ってしまって、何も思い出せないのです。」

 「ミノリ、ふむ、良い名じゃが…なんと…。名以外何も覚えてないと申すか…。」

 困惑する王様と横で聞いていた護衛の王宮兵士たち。そうだよね。私自身、全然実感が湧かないよ。

 

 「まあ…記憶がないなら、記憶がないなりに頑張るしかないのう。」

 …う、うん。そうだよね。現にこうやって生きてるわけだし…。

 「お前のようなどこから来たかわからない、どこのものかわからない奴は何か物を頼むのに丁度良いしの!」

 えっ…?頼むって、一体何を…?

 「メローラ、お前はどう思う?」

 メローラ、と呼ばれたさっきの絶世の美女は、王様の顔をみた。メローラ…王様の娘さんなのかな?ってことは、この国のお姫様?

 「パパ〜〜ねえ〜、私、”パープルアイ”が欲しい〜」

 猫撫で声でメローラ姫はそう言った。…って私の話は!?

 「メローラよ…もうこの者への興味が薄れてしまったというのか。」

 「ん?パパ〜とにかく私、”パープルアイ”が欲しいの〜!姫としての風格とか、威厳のためにも、ねっねっ?パパならわかるでしょ〜?」

 はあ、パープルアイ…、それにしても「欲しい」って言ってるメローラ姫、ちょっとかわいいな…じゃなくて。

 

 「王様ーー!!」

 と、突然男性の、大きな声が王宮に響く。

 「その声は、クルトン兵士長!戻ったのか!」

 クルトンと呼ばれた男性が走り込んで来た。

 「王様!メデューサが…!」

 「ついに倒されたのじゃな!?」

 と、王様が聞くや否や、クルトンは見る見るうちに足元から石へと変わっていき、果ては全身が石になってしまった。

 

 「こ…これは?」

 あまりの恐ろしい出来事に、私は王様に聞かでは居られなかった。

 「う、うーむ…」

 「ねえねえ〜パパ〜”パープルアイ”が欲しいの〜」

 石になっても”パープルアイ”がどうというメローラ姫…実は血も涙も無いのだろうか…?それはそれで…。

 

 「実は、「邪悪神殿」ヘビーテンプラーの奥地に「メデューサ」という怪物がいてな、このように、メデューサの目を見たものは、石に変えられてしまうのじゃ」

 へ、へーえ。

 「その「メデューサ」が持つ目玉が、「パープルアイ」と言って、今女性に大人気のマストアイテム…」

 「”パープルアイ”が欲しいの〜」

 「…というわけじゃ、ミノリ!初の依頼は、メデューサ討伐、そしてパープルアイの獲得じゃ!頼んだぞ!」

 

 え、え、ええええ〜〜〜!!!???

 

 「もちろんタダでとは言わん。褒美はたっぷりつかわそう。」

 タダでなくとも、それって命の危険が…。えーい、ままよ!どうせ、ここでじっとして居ても、何にもならないし!私は、はい!と強く返事をした。

 「その意気じゃ、ミノリ」

 

 「ただ…突然メデューサの元へ行っても石にされて終わりじゃ。レクチャーをつけてもらう教官に連絡をしておいた。城から出て、フェアリポンに地図を送っておいた。表示されている場所に行くといい。」

 王様が勝手にスナライン登録されていて、地図が送られていた。スナライン…離れた人とフェアリポンで連絡が取れる便利なアプリだ。

 これなら多分迷わないでいける…はず。

 

 それじゃあ、その地図の場所に行ってみるか。




結局ロミジュリの所寄っちゃった。
やっとパープルアイの話まで来れたよ〜。


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第5話 午後零時の魔法

 私は本当のところ、地図が読めないらしい。今まで読めているつもりだったけれど、気がつくといつも目的地と違う場所にいる。つまり、四文字熟語で言うと、方向音痴?迷って辿り着いたここは、コンビニだった。

 「おぉ!!さすがはチャップさんでゴワス!!」

 コンビニ店内で騒ぐ一行の声がする。あれはさっき(第3話)、泥棒と追いかけっこしていた一行か。何をしているんだろう?

 「一発くじ、まさかのA賞、クリスタルソード当たっちゃったよ!早速デカ化してみるね!」

 そう行って黄色いバンダナをした、逆立った白い髪の少年が、ジャラのクリスタルソードをフェアリポンにかざした。

 「フォース オブ マ〜ジック♪ブリタニア、エンチャント♪”クリスタルソード”!」

 クリスタルソードが読み込まれると、フェアリポンからどこか懐かしげなメロディが流れ、さっきまでキーホルダーサイズだった剣が、人が斬れるほどの大きさに”デカ化”した。

 「スッゲー!かっこいいー!」

 「ちょっとチャップ!店内でデカ化したら危ないでしょうがっ!」

 「ブヒ〜〜!」

 賑やかな人達だ。チャップと呼ばれた男の子は、えへへと笑いながら、クリスタルソードを元の大きさに戻した。

 「だって〜、ついカッコいいなあって…あれ?君も一発くじを引きに?」

 こちらに気付き、一行の視線が私の方へ向く。

 「一発くじ…?」

 少し俯きがちになってしまったが、言葉を自然に返せただろうか。

 「今オレらが引いてたやつ!いくつか券が余ってるからキミにもあげるよ!」

 明るさがまぶしい人だ。

 「あ…、ありがとう。」

 「ただ、A賞はチャップが今引いちゃったからもう無いぞい。」

 タケノコモンスターが喋った。

 「まあ、今引かなくても、次のが入荷された時に引けばいいかもね。」

 黒いハート型の髪留めに、2つのおさげをした女の子が付け加えた。

 「次の一発くじはダークワンドでゴワスか。」

 わいわいと盛り上がっているチャップ一行。私は商品をひとしきり見た後、コンビニを出た。

 

 フェアリポンが鳴った。王様からのスナラインだ。

 「ミノリ!無事に辿り着けたかね…ってどうやらコンビニの近くにいるようじゃな」

 「そんなことまで分かるの?」

 驚いて王様に聞くと、どうやらフェアリポンにGPSが搭載されているらしい。つまるところ国家の犬か。言うなればフェアリポンはその犬の首輪…なんてね。

 「コンビニはクエストに役立つ商品が取り揃えてある。行っておいて損はないじゃろう。だが、今行くべきはあっちじゃ。しばらくまっすぐ歩くと、宿屋が見えるじゃろう。そこの交差点を左に曲がるのじゃ。」

 贅沢な事にも、王様による道順ナビゲートが始まってしまった。よっぽど酷い方向音痴だと思ったらしい。申し訳ないけれども、それに従って進む事にした。王様も意外に暇なのかな?

 「決して暇ではないぞ、階段を上がったら右手にBarが見えるじゃろうが、そちらには行かず西の方へ進むんじゃ。そっちではない。逆じゃ。」

 王様優しいなぁ。

 「そのまままっすぐ歩くと、左手の方に靴のような看板をかけた家が見えるはずじゃ。そこに行って欲しい。」

 「王様、見えました。」

 王様の指示通りにその家に入ると、なんと中には、私を見つけてくれた、さっき(第1話)の金髪の女の子…シンデレラが居た。

 「レクチャーをつけてくれる教官って…?」

 シンデレラを見て、まさかとは思ったが。

 「おお、無事に着いたな。実はシンデレラくんは、王宮直属の兵士訓練隊長なのじゃ。その昔、エリート特殊部隊「ガラスの靴」で大隊長まで上り詰めた、豪傑であるぞ!」

 「ええっ…?」

 私は困惑した。目の前にいるシンデレラも、困惑している様子だった。いや、彼女はいつも困惑した様子だけれども。

 「…ふんっ!!」

 俄かに、シンデレラは懐から指揮棒を取り出すと、天高くそれを掲げた。するとどうだろう。瞬く間にシンデレラの服は迷彩の軍服に変わり、目つきは鋭く、頭には赤のハチマキが巻かれ、ストレートだった金髪は荒々しいウェービィに早変わり。

 「ミノリよ!王様から話は聞いている!」

 先ほどからは思いつかないような、男性らしい野太い声が私に語りかけた。

 「今日からは隊長のオレが、お前をみっちりシゴいてやる!」

 えっ…えええー!!!??王様!これ、どういう事ですか!?スナラインの画面を見ようとしたが、シンデレラ”隊長”にそれを制止される。

 「よそ見をするな!返事は!」

 隊長に返事を求められる。

 「は、はい?」

 「イエッサー!!!だ!!!」

 「い、い、イエッサー…」

 「声が小さいぞ!!!」

 「イエッサー!!!」

 「うるさいぞーー!!!」

 ど、どうすりゃいいんだ…!?

 

 今日から隊長と2人、特訓の日々が始まった。



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