それぞれの想い
きっかけ
いつものバンド練習を終え帰宅する。
疲れた上に、少し汗もかいていたので、机の横のぬいぐるみを一目見てすぐにお風呂へと向かう。
さっぱりして気分も良くなり部屋へ戻ると、ほんの数十分部屋から出ただけなのに、さっきはなかった私のお気に入りの猫のぬいぐるみの横に何か見える。
「遊園地のチケット?5枚も?一体誰よ。」
しかし、その疑問はすぐに解決する。
『たまにはみんなで休め。息抜きに遊びにでも行ってくるといい。 父より』
一番下にあったメモにこう書いてあった。
「いきなりなんなのかしら。」
とはいえ、せっかくの厚意を無下にもできないのでみんなを誘ってみることにした。
翌日、練習の前に声をかけてみる。
「みんな少しいいかしら?」
「どうしたの、ゆきな?」
「次の日曜、みんなで遊園地に遊びに行けないかしら?」
「「「「...えっ?」」」」
4人がきょとんとした様子でこちらを見る。
「あの、湊さん?突然どうしたんですか?」
「えっと、友希那さん。風邪ひいてないですか?」
「友希那さん...?」
「ゆきなから誘うなんて珍しいね!」
「全く失礼ね。昨日父から息抜きに、とチケットを貰ったからどうせならと思っただけよ。それに、無理していこうなんて思ってないわ。」
「アタシはゆきなとなら行きたいけどね!」
リサはいつものように了承してくれる。
「今井さんがそう言うのでしたら私も...」
紗夜も乗ってくれた。
「友希那さん、実は...」
あこは、恐らく燐子とゲームの約束でもしてるのね。
「あこ、燐子や他の人とゲームするのならそれでいいわ。それはあなたたちなりの息抜きでしょう?」
「ごめんなさい!ありがとうございます!」
「せっかく誘って下さったのにすみません...」
「いいのよ二人とも、私もいきなりだったし気にすることないわ。さて、練習を始めましょうか。」
「「「「はい!」」」」
ーーー練習終わりの帰り道。いつもの帰り道をリサと一緒に歩く。
「今日も疲れたー!そういえばさ、チケット二枚余ったじゃん?それ、どうするの?」
「お疲れ様、リサ。今日もよかったわ。チケットは...そうね、明日学校で美竹さんを誘ってみようかと思ってるわ。」
「蘭を?珍しいね~、何かあった?」
「美竹さん、少し前に誕生日だったでしょう?どうせなら誘ってみようと思ったの。」
「あー、そういうことね~。何か変な気でも起こしたのかと思っちゃったけど安心したよ!」
「変な気ってなによ..私にはリサしかいないわよ。」
「嬉しいこと言ってくれるじゃーん!アタシにもゆきなしかいないわよ。...てへ☆」
舌を少しだけ出してこちらを見るリサ。
「もう、さっさと帰るわよ!」
歩く足を速める。
「待ってよー、そんな照れなくていいのに~。」
少しだけ騒がしい帰り道も、たまには悪くないわね。
「ゆきなー、また明日ね!」
「ええ、また明日。」
家へ着きリサと別れる。
部屋へ行き、やる事を全て済ませベッドに横たわる。
美竹さんの事、どう誘おうかしら。そもそも来てくれるかしら...そんな事を考えていたら睡魔が押し寄せてきて、いつの間にか眠りへと落ちていた。
お読み頂きありがとうございます。1日1話とはいかないかもしれませんが、次作以降も読んでいただけると嬉しいです!
SS初心者ですが、これからも頑張って行きたいと思います。
ご感想や、アドバイスなどいただけると励みになります!
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お誘いとお願い
それぞれの想い
お誘いとお願い
朝のアラームが鳴る。昨日は考え事をしていたら寝ていたようね。
アラームを止め、まだまだ醒めない頭のままリビングへ向かうと、母が朝食を出してくれる。
朝食を済ませて部屋に戻り、学校へ行く準備をする。
必要なものを全て揃えたあと、2枚のチケットを手に取る。もちろん美竹さんへ渡すための。
準備もでき、そろそろいつもの時間なので家を出る。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
近くにいた母が送り出してくれた。玄関の扉を開けると既にリサが待っていた。
「おはよう、リサ。今日は少し早いのね。」
「お、ゆきな!おはよー!」
「全く、相変わらず元気ね。そんなに朝に強かったかしら?」
「ま、自分のと誰かさんのお弁当も作ってるんでね~♪その時間で元気になっちゃってるってわけ!」
「そ、そういう事なのね..」
「あははっ、ちょっとからかっただけだって~♪ほら、そろそろ行こっ!」
何事もなく手を引いてくるリサ。いつもの事でも、嬉しいものは嬉しい。
「そうね、行きましょうか。」
校門へ着くと少し先に美竹さんの姿が見える。もうこのまま誘ってしまおうかしら。
「リサ、昨日の件、美竹さんに伝えてくるわね。」
「えっ、あ..分かった!それじゃあまたお昼ね!」
「ええ、お昼楽しみにしてるわ。」
最後にぎゅっと強く握られた手が離れる。手が途端に寂しくなるが少しの我慢。
リサと別れて美竹さんの元へ。近づくと、遠くからは確認できなかったが青葉さんも一緒のようだ。
「おはよう、美竹さん、青葉さん。少しいいかしら?」
「湊さん、おはようございます~。」
「あ、おはようございます、湊さん。突然どうしたんですか?」
「この前父に、みんなで息抜きして来いってこのチケットを貰ったのよ。」
「遊園地ですか。」
「ええ、次の日曜にとみんなを誘ったのだけれど、燐子とあこが用事で来られなくて余っちゃったから、一緒に行かないかしら?」
「あたしは別にいいですけど、なんであたしなんですか?」
「この前誕生日だったでしょう?あの時今年出掛けないかと誘っていたし、丁度いいかと思ったのよ。」
「そうだったんですか、せっかくですし行かせてもらいますね。」
「分かったわ、じゃあこれを。日曜は10時ごろに待ち合わせる予定だけど、何かあれば連絡ちょうだいね。」
「わかりました、って2枚?」
「青葉さんも一緒のほうが居やすいんじゃないかしらと思ったのだけれど。」
「湊さん、いいんですかー?」
「ええ、問題ないわよ。」
「ありがとーございます~。」
「それじゃあ失礼するわね。」
「はい、失礼します。これ、ありがとうございます。」
その場を後にして教室へ向かう。
一方そのころ、氷川姉妹は...
今日も日菜と一緒に学校へ向かう。その途中
「おねーちゃん、これ誰と行くのー?」
手元には昨日湊さんから頂いたチケットが。
「湊さんたちと一緒に行くのだけれど、なんで日菜が持って...」
日菜がチケットを持っているのもそうだが、そこじゃない。2枚持っている。
「日菜?なんで2枚も持っているの..?」
「んーとね、この前ここで撮影してさー、最後にスタッフの人からチケット貰ったんだよね~。」
「そうなのね。」
「だから、おねーちゃんについていくね!」
「えっ!?」
もちろん日菜と行くのは嫌じゃない、むしろ連れていきたいくらい。でも湊さんたちもいるし、いきなりでは迷惑が...
「ねー、だめー?」
突然抱きついてきては上目遣いでこちらを見てくる。
「っ...!!」
こ、こんな顔されたら断るなんて無理よ...
「わ、分かったから今は離れてちょうだい!今日話してみるわ。」
目を輝かせる日菜が飛び跳ねる
「わーい!ありがとー!それじゃあここでお別れだね、ばいばーい!」
「はいはい、またあとでね。」
いつもの交差点で日菜と別れる。
全く、無自覚って本当に困るわね...
朝の日菜の事を思い出すと、今日はあまり授業に集中できなかった。
日菜と一緒に行けるといいわね…。
お読み頂きありがとうございます!今回はいかがでしたでしょうか?
毎日投稿出来るわけではなく、初心者ですが、これからもよろしくお願いします。
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楽しみな日
それぞれの想い
楽しみな日
日菜と色々あった日の放課後。練習があるのでスタジオへ向かうと、湊さんと今井さんが既に着いていた。
丁度良かったので日菜の事を話すことにした。
「こんにちは。二人とも早いですね。」
「こんにちは、紗夜。」
「やっほー紗夜!アタシたちもさっき来たところだよ~。」
「あ、あの、一ついいですか?」
「なにかしら?」
「昨日のあの話なんですけど、日菜がどうしても一緒に行きたいと言って聞かないんです。」
「あの、ごめんなさい、チケットはもう..」
「それは大丈夫です。あそこで撮影があったらしく、チケットを頂いたようなので。」
「あら、それなら構わないわ、連れてきても大丈夫よ。リサもいいでしょう?」
「もちろん大丈夫だよ!」
「いきなりですみません、ありがとうございます。」
「紗夜嬉しそうだね!ほんとは最初から連れて行きたかったんじゃないの~?」
「そんなことありません!」
「あはは、照れちゃってかわい~☆」
今井さんはこういう時には鋭いですね...
「こんにちはー!友希那さんたちはもう来てたんですね!」
「こ、こんにちは。」
話がひと段落したところで宇田川さんと白金さんが到着する。
「こんにちは。みんな揃ったみたいだし、少し早いけれど今日も始めるわよ。」
日菜も行けるようになって、気持ちよく演奏出来たからか、今日はいい音が出せた気がするわ。
みなさんと別れて家へ向かう。早く日菜に報告したいからか、自然と早足になっていた。
家に入ると、日菜がリビングから声を掛けてくれる。
「あ、おねーちゃん!おかえりー!」
「ただいま、日菜。少し話があるのだけれどいいかしら?」
「うん、いいけど?」
「朝遊園地に一緒に行きたいって言ってたでしょう?湊さんたちに話したら来てもいいそうよ。」
「ほんと!?やったー!」
目を輝かせていて本当に嬉しそうだ。きっと、こういう時にるんってしてるって言うのね。
「それじゃあ先に部屋に戻るわね」
「うん!あ、今日もおねーちゃんのとこで寝るね!」
「はいはい、分かったわよ。でも大人しくしててよね?」
「大丈夫!今日はちゃんと寝るから!」
「それ、何回も聞いてるわよ。」
「えへへ〜、そうだっけ〜?」
どうせいつもの事だし、と諦めて部屋に戻る。
ギターの手入れをしながら夕飯を待とうかしら。
一方その頃…
湊さんから貰ったチケットを見る。
「モカ」
「どうしたのー?らん?」
「これ、断れずに貰っちゃったけどどうしよう。」
「どうしようって、普通に行けばいいんじゃないのー?」
「ま、まぁそうなんだけど…」
「遊園地行くだけでしょ?」
「なんか一緒に居づらくない!?あの湊さんたちと遊園地だよ?」
「そうかもしれないけど、あたしはらんと行けるならなんでも良いけどね〜。」
「そ、そういう話じゃなくて!」
「いちいち可愛いなぁ〜。変に考えるよりは、いつも通りでいいんじゃない?」
「そんなんでいいのかな…」
「もー、ただ遊ぶだけなのに考えすぎ〜。せっかくなんだから楽しもうよ〜。」
「うん。分かった。あんまり考えてると湊さん達にに失礼だよね。」
「そうそう、最初からそれでいいの〜。」
ピロリン♪携帯が鳴る。
「ん、なんだろ。湊さん?」
「えー、あたしがいるのに浮気ー?」
「ち、違うし!明後日の予定だって!」
「なるほど〜、それで予定は?」
「朝の9時に待ち合わせで、日菜さんも来ることになったけど大丈夫かどうか、だって。」
「日菜先輩?あたしは大丈夫だよー。」
「あたしも問題ないから、大丈夫って返信するね。」
「うん。おっけー。」
「あと、いつまであたしの家にいるの?明日は休みとはいえ、もうかなり遅いよ。」
「らんパパに言ったら泊まっていいよだってー。」
いつぞやの時のようにメール画面を見せてくる。
「はぁ!?ちょっとそんな勝手に言われても!」
「…らんは嫌なの?」
このパターンはもうどうする事も出来ない。
「っ…ずるい。」
案の定押し負けて泊める事になった。
とはいえ心のどこかで嬉しがっている自分がいた。それと、6人の遊園地がちょっと楽しみになったかな。
お読み頂きありがとうございました!まだまだ続くと思いますので、是非お待ちいただけると嬉しいです。
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始まり
それぞれの想い
始まり
夜は元気なモカを相手をしてとても疲れた。若干痕残ってるし...!
「ほら、モカ起きて。そろそろ行くよ。」
「んー...もうちょっとぉ~...」
「だめ。」
さすがに遅れると思い布団をとりあげると
「~~~っ!!!」
昨日あのまま寝たせいで、下着しか身に着けていない上に少しはだけている。
「いやー、らんのえっちー。」
「は、早く起きないのがいけないんでしょ!シャワー浴びてさっさといくよ!」
「一緒に入る?」
「なっ、馬鹿なこと言ってないで早くして!」
「はいはい、分かりましたよー。」
朝の準備でこれじゃあ持たないっての...なんて思いながら、ささっと準備を済ませて二人で家を出る。
ーーー約束の日になった。朝待ち合わせをしたリサと紗夜と日菜と一緒に目的地へ向かう。
しかし、実際当日になってみると、なぜ遊園地なのかと思うところもある。遊園地なんて小さい頃リサと行ったきり。
正直どうしていればいいのか分からない。色々考えながらぼーっとしていると
「ゆきな?どうしたの黙っちゃって?」
「湊さん、体調が悪いのなら無理は良くないですよ?」
「ゆきなちゃん、大丈夫??」
「いえ、大丈夫。少し眠かっただけよ。」
大した事でもないので適当に返事をしたら
「じゃあ目覚めのキス!」
などと言いながら頬に...
「ちょ、ちょっとリサ!人前で何してるのよ!」
「ただの眠気覚ましだよー☆」
こういうのは二人だけの時に、と言っているのに...
「リサちー大胆だね!あたしもおねーちゃんに目覚めの...!」
「だめよ。」
飛びかかった日菜は紗夜に完全に抑えられていた。
「うっ...なんでー...」
「なんでも。」
全く、こんな調子でやっていくと思うと、考えるだけで疲れるわ...
30分後、美竹さんたちと待ち合わせした所に着くと二人はすでに待っていた。
「おはよう。二人とも先に着いていたのね。」
「あ、みなさんお揃いなんですね、おはようございます。」
「おはよーございます。」
それぞれ挨拶を交わす。
そのまま全員で入場するが、リサと日菜と青葉さんは楽しそうに3人で進んでいってしまった。
「本当に元気ね。」
「そうですね。」
「ですね。」
取り残された私達3人はこういう所には慣れておらず、ただ立ちすくんでいた。
「あの、ここにいても邪魔でしょうし、移動します?」
「そうね。」
「と言ってもどこに行きましょうか?私は初めてで詳しくないのですが。」
「...」
「...」
紗夜の声に誰も反応出来ない。こういう時リサが居てくれれば…
「リサたちを探しに行くのはどうかしら。」
「あたしはいいですけど。」
「私たちだけでは何も進まないですし、それでいいんじゃないでしょうか。」
「それじゃあ行きましょうか。」
と歩き始めようといったところで叫び声が聞こえる。見上げると、少し先にものすごいスピードで走りゆくジェットコースターにあの3人らしき姿が見えた。
「ねぇ、あれに乗ってる人、見えるかしら?」
「なんとか見えました。日菜たちですね。」
「遊び始めるの早くないですか?」
「でも、運よく見つけられて、探す手間は省けたし良いんじゃないかしら。」
「それもそうですね。あとは、モカたちの乗ってるものの乗り場ってどこか分かりますか?」
「知らないわ。」
「分かりません。」
二人の声が重なる。
「ですよね。あたしも知らないです。とりあえず、入る時もらった地図でも見ましょうか。」
...美竹さんに出してもらった地図を頼りに進み、何とかたどり着いたけれど
「こんなに時間かけてしまったら、もう移動してるんじゃないかしら...」
「たしかにそうですね..」
「日菜に電話して来てもらいましょうか?」
「最初からそれでよかったかもしれないですね。」
「それもそうね。」
紗夜が電話をかける。
「日菜、あなたたちがさっき乗っていた乗り物の入り口付近にいるのだけれど、こっちに来れるかしら?」
「ええ、分かったわ。待ってるわね。」
「ここで待っていていいのかしら?」
「大丈夫みたいです。そんなに遠くまで行っていないからすぐ来ると言っていました。」
「あ、もう来たみたいですよ。日菜さんがすごい叫んでます。」
「おねーーちゃーーん!!こっちだよーー!!!」
人の間をすり抜けダッシュでこっちへ向かってくる。
「恥ずかしいから叫ばないでちょうだい...」
「おねーちゃんが呼んだんだよ?」
「大声出してなんて言ってないわよ!」
「えー、そうだっけ??」
相変わらず仲がよさそうね。
「日菜先輩早すぎですよ~。」
「ヒナって紗夜の事になるとすーぐ飛んでっちゃうよね~。」
後ろから二人もやってくる。
「全員揃ったみたいね。さて、いきましょうか。」
ようやく始まったと言える一日。今日は本当に疲れそうね。
お読み頂きありがとうございました!まだまだ続くと思いますので、是非お待ちいただけると嬉しいです。
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