大空と死の支配者 (ばすけばすけ)
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REBORN

代理戦争終了後、ボンゴレを継ぎ10代目として活躍中。ボンゴレギアはトゥリニセッテの関係上、ボンゴレリングに戻している。ナッツも箱ではなくアニマルリング。

アルコバレーノはユニと晴れを除きツナの護衛役となっている。

原作との相違点として、アリアと炎真の妹が生きている。

ツナの特訓用にてジャンニーニが中心になりユグドラシルを作る。一般家庭用にはスパナや入江正一が調整をしたが、若干数ジャンニーニが作ったIDがそのまま出回ってしまっている。ジャンニーニが作ったものが最後の最後で暴走してしまい・・・

 

オーバーロード

至高の41人の中にツナが入り42人となっている。一般メイドの創造主。最後までモモンガと一緒にツナが残っていた。ナザリック勢転移前からスタート。

 

キャラ紹介

REBORN側

沢田綱吉(プレイヤー名はチェーロ)

高校を卒業し、アメリカの大学に渡り一年で卒業する。勉学運動完璧なチートに成長。超直感の精度が上がり、もはや予知レベル。死ぬ気丸なしで超モードになることができ、機械のアシストなしでXバーナーもでき、夜の炎も習得した。

年齢不詳、身長175、髪型は金色に近くなっており腰まで伸ばしている。女性に対しては優しく人誑しで好意に対しては鈍感だが難聴ではない。

アバター姿は髪型以外は中学二年生時の姿

最終日にユグドラシルにログインしたが、気がついたらまったく違う場所にいた。

 

ユニ

大空のアルコバレーノ。アリアが生きているためγに対しての恋心はない。いま一番気になっているのはツナ。ファミリーが大好きだが、ツナと白蘭の大空三人でいる時が一番幸せ。年齢不詳。

 

白蘭

大空のマーレリング保持者。マーレリングの封印が解かれて正統な保持者となる。未来編みたいに世界征服には興味がない。ツナとユニという同じプレイヤーと分かり合え、一緒にいる時間が楽しくてしょうがない。神出鬼没年齢不詳。

 

10代目守護者

骸、雲雀、クロームは登場させるかも。

 

アルコバレーノ

登場予定未定。マーモンは女の子設定。

 

チェーロについて

種族は神の御子(天使の上位種 外見的な特徴は人間と変わらないが不老不死、他人の時間を操作できる、ツナにのみ与えられた唯一の種族。)

 

装備

リング・オブ・サステナンス、リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン、飛行のネックレス、天空のガントレッド(神器級)、天空のマント(神器級)

後は普通の洋服

 

スキル

<上位物理無効化Ⅴ>

<上位魔法無効化Ⅴ>

 

職業スキル

<全種族魅了>

<精神異常無効>

<自然治癒>

<聖なる炎>

 

種族的なバッドステータスで聖なる炎(死ぬ気の炎)以外の魔法を行使することができない。アイテムを使用してなら可能。

 

オーバーロード側

モモンガ

原作通り。最後までチェーロと一緒にいたため抜けていった仲間に対して最初から理解していた。最終日にチェーロが急用で来れないことを残念に思ってはいたが転移前にメッセージが来ていることに気づく・・・。

 

ナザリック勢

基本原作通り。

一般メイドのチェーロへの忠誠心が半端なく高い



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異世界での出会い

「ここどこーーーー!?」

 

ツナは広い草原に一人佇みながら叫び声をあげた。

暫くは放心状態でいたが、アイテムボックスを確認したり、ステータスを確認したりと慌てだした。

 

「ん?アイテムボックスに知らない手紙が二通?」

 

一通目を開いてみるとユニからで

 

【ツナさん。すいません。こうなる未来は視えていたのですが、そろそろ好きなことをしていただきたかったので内緒にさせていただきました。】

 

二通目は白蘭からで

 

【その世界はゲームのユグドラシルとは違う一つの異世界だよ。ジャンニーニくんの装置が暴走して転移したみたいだね。ツナヨシくんの身体はチェッカーフェイスが責任を持って管理してくれてるから安心していいよ。】

 

二人からの手紙を読み自身の置かれている状況を知ったツナは

 

「異世界!?未来の次は異世界!?確かにいまは獄寺くんと11代目候補達が現場をまわしてくれてるけど、トゥリニセッテ的には大丈夫なの!?だからチェッカーフェイスが身体を管理!?俺の身体本当に大丈夫なの!?」

 

ツナは手紙に向かって一人ツッコミを入れまくっていたが、落ち着いたのか装備品を確認し、白蘭から地図とこの世界のお金、この世界の情勢や常識が書かれた紙が用意されており、それを読むと朝になったら近くの街まで向かうことにした。

 

簡易テントを設置し火を起こすと、焚き火で暖をとるために近くで丸くなる。

 

その光景を遠くから見ていた五人の女性がいた。

 

「おい!こんな場所に子供が一人でいるぞ。」

 

「女の子?男の子?ここからじゃわからない。」

 

「なら近づいて確認してみるべき。」

 

「貴女達ね。やめときなさい。モンスターが出たら助けに行けばいいわ。」

 

「ラキュースの言う通りだ。こんな場所で野営をするくらいだ。自衛くらいはできるんだろう。」

 

ツナが野営に選んだ場所は街道からは外れており、モンスターが出没する森の近くであった。

 

ツナはテントに入り眠っていたが、月の明かりで辺りが照らされるとテントから飛び出した。

すると森の方からゴブリン5体、オーガ4体、トロール3体が森から飛び出しツナに向かって走ってきた。

 

遠くにいた女性五人組の内、忍者の格好をした二人と仮面をした一人が異変を察知し、残りの二人を起こす。

 

「あの数は危険。」

 

「美少女美少年の可能性が高いのに見過ごせない。」

 

「トロールが3体かよ!ありゃ一人じゃ辛いぜ。」

 

「イビルアイ。先行して保護してあげて。」

 

「わかっ・・・なんだあれは?」

 

仮面をした一人がフライの呪文を唱えるが、五人組が見た光景は子供が一瞬で消えたと思ったらゴブリン5体、オーガ4体の胴体に穴が開いて倒れている光景だった。

子供はトロールと向き合い構えると、一瞬で間合いを詰めて一体の頭部を破裂、そのまま二体目、三体目と頭部を破裂させた。

そしてモンスターの死体を一箇所に集めると手をかざして燃やし始め、モンスターの死体が完全に無くなるとこちら側にニコッと笑顔を向けてテントに入っていった。

 

「いまの見えたか?」

 

「俺には無理だ。あれはモンクか?」

 

「あれは美少年。ちょっと美味しく頂いてくる。」

 

「美少女かもしれない。脱がして確認しないといけない。私も行く。」

 

「だからやめなさい二人共。こちらに気づいていたわよね。最後の笑顔は牽制かしら?なんにしてもこの時間に近づくのは余計な警戒心を与えてしまうわ。話すなら朝になってからよ。」

 

ラキュース達五人の眼が覚めるとテントが消えており、子供は立ち去ってしまっていた。

 

 

一番近い街はバハルス帝国の帝都アーウィンタールで通行税を支払い門の中に入った。

手っ取り早く身分証明書を得るため、冒険者登録をしようと組合へと向かう。

 

「すいません。冒険者登録をしたいのですが。」

 

「ではこちらの用紙に必要事項の記入をお願いします。代筆もできますがいかがいたしますか?」

 

「自分で書くので大丈夫ですよ。」

 

ツナは用紙に必要事項の記入を始める。

 

「はい。確認いたしました。チェーロ様ですね。ちょうどこれから新規の冒険者に向けた説明会が行われますが参加されますか?」

 

「お願いします!」

 

チェーロが部屋に入ると杖を持った女の子が一人だけ席についていた。



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元貴族の少女

チェーロのスキル 全種族魅了について

文字通り全種族を魅了することができる。しかし意思の疎通ができないモンスターに対してはとびっきり美味しそうな匂いがするという認識になってしまいモンスターを呼び寄せてしまうことがある。


「今回の新規登録者は2名だけだ。お前達二人を相手に講習会を開いてやることをありがたく思え!」

 

講習会の内容は依頼のランクについて、違約金の発生する流れ、冒険者とは切っても切れない関係にあるモンスターの難度という概念、身分証明となるプレートのランクに対することが説明されて終わった。

 

チェーロは腕を上にあげて背筋を伸ばしていたが、一緒に聞いていた女の子が落胆したような雰囲気をしていたため気になり声をかける。

 

「お疲れ様。体調悪そうだけど大丈夫?」

 

「ありがとう。体調が悪いわけではない。冒険者の夢の無さに驚いただけ。」

 

「まぁ確かに夢がある仕事ではないよね。帝国だと王国より冒険者に対しての依頼も少ないみたいだし。」

 

「そうなの?なら王国にいけばまだましなのかな。私はアルシェ、貴女は?」

 

「チェーロ。アルシェはマジックキャスターだよね?良かったらパーティを組まない?」

 

「チェーロは戦士?パーティを組むかはまだわからないけど一緒の依頼を受けるのは構わない。」

 

「どっちかというとファイターかな?いまから受ける?」

 

チェーロはアルシェと名乗った少女と話ながら受付に行き、カッパーでも受けれる任務を確認する。現在は薬草採取しかなく、お互いの実力確認の為にそれを受注しモンスターも狩ることにした。

 

「この場所ならいまから行けば夕方には帰って来れる。チェーロはすぐに出発できる?」

 

「こっちは大丈夫だよ。アルシェは準備とか大丈夫なの?」

 

「問題ない。」

 

アルシェは杖しか持っていない手ぶらに見えてはいたが、自身と同じように無限の背負い袋を持っているのかもと納得して先を歩くアルシェについて行く。

 

門を抜けて街道を進み森の手前にある薬草が生えている草原に到着した二人は手分けして薬草を探す。

薬草も無事に集まって小腹が空いた為、チェーロはアルシェに休憩にしようと声をかけようとするが、森からゴブリン15体が飛び出してきた。

 

「アルシェ!ひとまず俺の後ろに。前衛は俺がやるからアルシェは隙を見て魔法で攻撃してくれ。」

 

「チェーロ、貴女俺って・・いまはそれどころじゃないけど終わったら質問に答えてもらう。」

 

チェーロがいち早くゴブリンに気づきアルシェを後ろに庇う。アルシェはチェーロを女の子だと思っていたが、俺という発言から男の子だったのかと驚くが戦いに専念することを優先した。

 

チェーロはゆっくりと前へと進んで行く、先頭を走っていた三体が飛びかかってくるが、そのゴブリンの首目掛けて手刀を放つと、空中で胴体と首が離れてそのまま下に落下した。アルシェは一瞬のことで驚くがすぐさまマジックアローを放ち一体を仕留める。チェーロはそのままゆっくり歩き続けて飛びかかってくるゴブリンの首と胴体を離す作業を繰り返していた。もっともアルシェにはその作業を詳しく見ることができなかった為、空中で勝手に引き離されていくようにしか見えなかった。

 

チェーロが倒したのが12体でアルシェは3体のみである。アルシェは申し訳なさから討伐部位の切り取りを進んで行っていた。チェーロはその間に死体の片付けをすると言って処理が終わったものから違う場所に運んでいた。

 

「お疲れ様。ちょっと休もっか?」

 

「チェーロ、貴女は何者なの?しかも女の子だと勘違いしていたけど男の子?」

 

「ん?男だよ?え?女に見えてたの!?」

 

「女の子にしか見えない。フフ 警戒して損した。」

 

アルシェはチェーロが男かもと思った時に下心があり近づいてきたのかと警戒をしたが、面白いくらいの慌てようから杞憂だったと判断し、初めて声を出して笑い声をあげた。笑い終えたアルシェから クゥー という可愛らしいお腹の音が鳴る。

 

「あ・・・」

 

アルシェはお腹を押さえて恥ずかしそうに俯く。

 

「携帯食は持ってきてる?」

 

「ごめんなさい。必要になると思ってなくて持ってきていないの。」

 

「なら分けてあげる。」

 

チェーロは無限の背負い袋から携帯食を取り出してアルシェに手渡す。また無限の水差し(果実水ver)とコップも取り出して果実水を手渡した。

 

「冷たい。そして美味しい。いまのは無限の背負い袋?これは無限の水差しだよね?」

 

「うん。冒険の必需品でしょ。」

 

「そんなことない。この二つのアイテムを買うお金があれば遊んで暮らすこともできる。チェーロはどっかの貴族だったりするの?」

 

「そんなまさか!俺は只の冒険者だよ。アルシェは佇まいがなんか貴族っぽいよね。」

 

「ゔ・・・実はね家は元貴族なの。いまは妹二人と三人で暮らしていて親との縁はたっているんだけどね。妹二人を養うのにどうしてもお金が必要で。それで冒険者になったんだけど・・・冒険者の稼ぎも良くないしなかなか上手くいかない。」

 

チェーロが放つ独特の雰囲気のせいか単純に気があうのかはわからないが、アルシェは初対面の相手にポツリポツリと自身を取り巻く環境について話していく。

チェーロはそれを聞きながら顎に手を当ててなにやら考え込んでいた。

 

「チェーロ。足手まといかもしれないけどパーティを組んで欲しい。魔法の腕には自信がある。戦闘面で役立たずなら夜の相手でもいい。経験はないけど知識はある。」

 

「ちょっとストップ!!アルシェ!夜の相手とか女の子が言わないの!パーティを組むのは俺からもお願いしたいけど、それは戦闘面や知識面から。学校に通ってたってことは色々と詳しいんでしょ。妹二人と一緒に四人で王国に移動しよう。あっちならまだ稼げるはずだから。」

 

「うん。ありがとうチェーロ。」

 

アルシェは実力と人柄も問題なくアイテム類も揃っているチェーロとなんとしてもパーティを組みたいが為に、身体を差し出すとまで言いだすが、チェーロはそれを良しとはせずに魔法と知識面で力を貸して欲しいと握手を求めてきた。アルシェは笑いながら手を握りしめてお礼を言う。

 

また、帝国だと冒険者の役割が低いこともあり稼ぐことができない為、王国に移動することが今後の方針になり、アルシェの妹二人と荷物もあることから馬車の購入が一先ずの目標となった。

 

「チェーロは住む場所あるの?良かったら家に来る?妹達もいて狭いけどチェーロがいるなら安心できる。」

 

「宿を考えていたんだけど、アルシェがいいならお邪魔しようかな。」

 

「大丈夫。なら組合に寄った後に妹達を迎えに神殿に行こう。」




天空のガントレッドについて
攻撃がクリーンヒットした際に与えるダメージが2倍になり、鎧、防御スキルや耐性などの抵抗を受け付けない。

アルシェについて
原作との相違点
フールーダの元を去る際に家族のことを相談し、弟子からの最後の頼みを受け入れたフールーダはアルシェと妹二人を親から引き離す。引き離す際に二度と娘三人に関わらないようにする契約を書面にて結んだ。その契約書面には皇帝までも名前を連ねており、破ったら反逆罪として処罰されることになっている。


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呪い

天空のマントについて
聖なる炎を纏わせることにより触れた相手を石に変えることができる。ガントレッド同様にスキルや耐性などの抵抗を受け付けない。形状変化可能、伸縮自在で全長は10mほどに。炎を纏わせながら布槍術を用いてナザリック侵入者を全て石に変えた過去があるとかないとか。


チェーロとアルシェは冒険者組合に戻り依頼の達成報告とモンスター討伐の報酬をもらった。

あの後、ゴブリン10体、オーガ5体、トロール2体を討伐していたため、討伐報酬が結構な金額になった。

 

報酬を受け取った二人は神殿へと足を運ぶ。

 

少し時間が遡りチェーロ達が薬草採取をしている最中、神殿には帝国四騎士の【重爆】レイナース・ロックブルズが神殿にて治療を受けていた。

 

「また失敗ですか・・・。ハァ いつになったらこの忌々しい呪いから解放されるのでしょう。」

 

四騎士というコネで解呪の魔法が込められていたスクロールを購入することはできたが、それをもってしても解呪に失敗してしまった。

レイナースは肩を落としながら神殿内を歩いていると、ガシャンという音と共に何かが足に当たった衝撃を受けた。

何事かと後ろを振り向くと尻餅をついた女の子と介抱している女の子が泣きそうな顔で様子を伺ってきていた。

 

「大丈夫ですか?」

 

レイナースは溜息をつきながらもしゃがんで二人に話しかける。女の子二人組は目線を合わせて対応してくれたレイナースを良い人だと判断してパッと笑顔になった。

 

「ぶつかってごめんなさい。」

 

「もうすぐお姉ちゃんがむかえにくるじかんだからいそいでたの。」

 

二人は素直に頭を下げてぶつかった理由を説明してきた。説明を聞いて怪我がないならと立ち去ろうとするが、再び足に衝撃を感じて下を見ると

 

「いっちゃやだ。」

 

「お姉ちゃんがくるまであそんでほしい。」

 

とまたも涙目になっている二人が足にしがみついていた。レイナースはなぜ懐かれているのか理解できずに首を傾げた。

 

「なぜ私が一緒に待たないといけないのですか?」

 

「さみしいの。」

 

「ふあんなの。」

 

必死に足にしがみついて見上げてくる二人の頭に手を置いて

 

「お迎えが来るまでですからね。」

 

と優しく微笑みながら頭を撫でる。二人も笑顔になりながら、クーデリカ、ウレイリカと自己紹介をしてきた。

 

「ハァ 私はレイナースです。(なんで私が子守などをしなければならないのですか。二人の姉が来たらどうしてくれましょうか。)」

 

レイナースも名乗りながら心の中では悪態をついていた。

 

三人が待つこと数十分、クーデリカとウレイリカは相変わらず足にしがみついたままだが二人は楽しそうにレイナースにも色々と話しかけていた。

 

すると

 

「あ!お姉ちゃん!」

 

「しらないひとといるよ!」

 

「あれがお姉ちゃんですか。(やっと来ましたか。どちらかはわかりませんが保護者を名乗るならきちんと教育しなさい!!)」

 

「クーデリカ!ウレイ・・・リカ、ヒッ!!」

 

「どうしたのアルシェ?」

 

アルシェは二人の姿を確認するが、二人は誰かの足にしがみついており、視線を上に向けていくと睨んでいるレイナースと目があってしまう。レイナースはアルシェとチェーロに向かって殺気を飛ばしており、殺気を感じとったアルシェは顔を青くして足がガタガタと震えてしまっていた。

 

「お迎えがきたなら行きなさい。(まだマジックキャスターの方が見所があるわね。冒険者のくせに殺気を感じないとかありえないわ。)」

 

「「うん!」」

 

「アルシェはここにいて。」

 

足にしがみついていた二人はレイナースに促されてアルシェの元に駆け寄っていく、入れ替わりにチェーロがレイナースに近づいてきた。

 

「面倒を見てくれていたみたいでありがとうございました。申し訳ありませんが連れが辛そうなんで殺気を抑えていただけると助かります。」

 

「!!(気づいていてあの態度ですか、前言撤回です。これでカッパー?)」

 

「もしかして・・・呪われていますか?ん〜今回のお詫びとお礼を兼ねて、解呪しましょうか?」

 

「な!!これが解けるのですか!?だったら解いてください!嘘だったら容赦しませんよ!」

 

全く殺気を感じていないわけではなく、単純に受け流していただけだと理解したレイナースは驚いて身体が揺れてしまう。その拍子に前髪で隠れていた顔の右半分がチェーロの目に入った。

いつもみたいに気持ち悪がられるだろう、そうした反応をしたら叩っ斬ってしまおうかと槍に手を伸ばすが、帰ってきた反応は解呪の提案であり、思わず胸グラを掴んで脅してしまう。

 

「ここだと目立つから場所を変えましょう。良かったら一緒にご飯でも食べませんか?」

 

「チェーロ。なにを勝手に。」

 

「レイナースさんといっしょにたべる!」

 

「きょうはおおにんずうでたのしいごはんだ!」

 

「二人も懐いてるから・・・ね?俺の我儘だから買い物のお金は俺が出すよ。貴女も構いませんよね?」

 

「それで解いてくれるなら構わない。」

 

チェーロもここで解いたら目立ってしまうことを考えて場所の移動として食事に誘う。殺気がなくなり復活したアルシェが恐る恐る近づいてきてチェーロの小脇を突く。クーデリカとウレイリカはレイナースも一緒に食事をすると聞いて、また足にしがみついていた。アルシェはそんな二人の様子を見て小さく悲鳴をあげて心臓が止まりかける感覚に襲われる。



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呪い②

聖なる炎について
死ぬ気の炎のこと。一般向けに展開した際に死ぬ気の炎から聖なる炎に名称変更した。
大空と夜のみ扱える。



「「「「「ご馳走様でした。」」」」」

 

チェーロ達はアルシェの家で食事を済ました。食事はチェーロが材料を購入しアルシェが調理したもので、一般的な家庭料理だったがレイナースも美味しそうに食べていた為、アルシェの料理の腕が証明された瞬間だった。

 

「さて、チェーロさん。貴方は本当に呪いが解けるのですか?」

 

アルシェがクーデリカとウレイリカが眠そうにしていた為、二人を寝かせるために寝室に移動する。三人がいなくなったタイミングでレイナースは解呪についてもう一度確認する。

 

「このスクロールを使えば解けるはずだよ。」

 

「チェーロ。二人はもう寝た。あっごめんなさい。席を外す。」

 

「いえ構いません。」

 

チェーロがアイテムボックスからスクロールを取り出してレイナースに見せる。すると二人を寝かしつけたアルシェが戻ってきてしまう。アルシェは気を遣って席をはずそうとするが、レイナースがアルシェを呼び止めて立ち会って欲しいとお願いしてきた。

 

チェーロはスクロールを投げてこめられた魔法を発動させる。するとスクロールは燃えてなくなりレイナースの身体が光り輝いた。

 

レイナースは光が消えて慌てて顔に手をやると、いつもの不快な感触が完全に消えていた。それでも信じられず、急いで手鏡で確認する。

 

鏡に映っているのは、元の自分の素顔であった。

 

「~~~~~~~~っ!」

 

声にならない声が出た。それは絶叫であったのかも知れない。自然に涙が溢れでて手で顔を覆い隠す。

 

「良かったら使って。」

 

チェーロはハンカチを取り出してレイナースに手渡す。レイナースは静かに受け取ると涙を拭く、拭いても拭いても涙が溢れでてくる。チェーロとアルシェは静かにその光景を見守っていた。

 

数分後、落ち着いてきたレイナースは顔を赤くしながら

 

「お恥ずかしい所をお見せしました。チェーロさんアルシェさんありがとうございました。」

 

「私は何も・・・」

 

「お礼ならクーデリカとウレイリカに。」

 

「そうですね。あの二人がいなければお二人にもあうことはなかったでしょうから。」

 

レイナースは今までと違い心からの笑顔でチェーロとアルシェに向き合い感謝を伝えた。アルシェは困惑するがチェーロはアルシェの妹がレイナースさんを導いたんだよと伝えるとレイナースも納得した。

 

「お二人は冒険者ですよね?ずっと帝国に?」

 

「いえ、王国に行く予定です。」

 

「馬車が手に入り次第、早急に旅立ちたいかな。帝国は亜人とはいえ奴隷がいて・・・壊したくなってくる。」

 

チェーロはアルシェと神殿に向かう途中で、エルフの奴隷を連れた男とすれ違っており、その男の奴隷に対する扱いに憤りを感じ、それを許している帝国自体に対しても不愉快に感じていた。

王国に移動をすると聞いたレイナースは

 

「私もパーティに入れてもらえませんか?レイナという名前で冒険者登録していますの。ランクは同じカッパーですわ。馬車なら私物がありますのでそれを使用しましょう。」

 

「いいんですか?」

 

「アルシェさん、チェーロさんもパーティになるならお互いに敬語は無しで行きましょう。私のは貴族時代の癖ですが、アルシェさんは無理をしている気がしますので。」

 

「わかった。正直助かる。」

 

「こちらもレイナースさんがパーティに入ってくれたら嬉しいな。騎士としての仕事は大丈夫なの?」

 

「陛下には置き手紙をして行きます。呪いが解けるまでと約束していますが・・・抵抗されそうですから。」

 

チェーロは食事中にレイナースの立場を聞いて、帝国最強の攻撃力をもつ彼女が加入するのは歓迎だった。アルシェも優秀な前衛が増えることは後衛の立場からしたら否定する必要もなく歓迎した。

しかし、帝国最強の攻撃力をもつ彼女を皇帝が簡単に手放したりしないだろという考えが三人の頭によぎる。

 

「明日の朝一にここに馬車を手配します。そしたらそのまま王国に向かいましょう。」

 

「後回しにしたら感づかれる可能性があるから私も賛成。」

 

「追っ手がくるとしたら残りの三騎士かな?最悪この三人ならなんとかなるでしょ。」



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旅立ち

基本的にレイナースをレイナと表記します。


翌朝、アルシェはクーデリカとウレイリカに対してこれからチェーロ、レイナースと共に王国に向かうことと、レイナースをレイナと呼ぶように説明した。

少しするとレイナが馬車を操縦してチェーロ達を迎えに来た。

 

「おはようございます。荷物はそちらだけですか?」

 

「うん。家具類までは持って行けないから、洋服や食器のみ持って行くことにした。」

 

「レイナお姉ちゃんおはようございます!」

 

「レイナお姉ちゃんもいっしょなんですか?」

 

「クーデリカ、ウレイリカおはよう。そうですよ。一緒に行きましょう。アルシェと馬車に乗ってください。」

 

「「わーい!」」

 

「レイナさん。おはようございます。じゃあ行きましょうか。」

 

チェーロが荷物を馬車に積み込み、アルシェがクーデリカとウレイリカを抱えて馬車へと乗り込んだ。四人が乗り込んだのを確認したレイナは馬車を走らせる。

 

門を出る際の確認ではクーデリカとウレイリカがピクニックと嬉しそうにはしゃいでいたことから怪しまれずに通過することができ馬車は草原を進んで行く。

 

「アルシェ。とりあえず目的地はエ・ランテルでいい?」

 

「大丈夫。でも二人の体力も心配だから随所随所で街か村で休めたら嬉しい。」

 

「それならエ・ランテルに着くまでにいくつか村があったはずですよ。」

 

「今すぐに着かないと行けないわけではないからゆっくり行こう。」

 

チェーロ達三人は馬車を止めて地図を見ながら目的地の確認をしていた。山脈を超えることは除外し、一番近いエ・ランテルに向かうことにした。馬車の中ではクーデリカとウレイリカがはしゃぎ疲れて眠っており、アルシェはそんな二人を見ながら野宿ばかりは避けてあげたいと考えていた。チェーロとレイナも同じ考えを持っており、村などに寄りながらゆっくり進むことにした。

 

「そういえば、レイナさんの装備が違いますが、昨日のはどうしたんですか?」

 

「あれは四騎士に授けられる装備一式になりますので、手紙と一緒に置いて来ましたの。持って来てしまうと追う口実にもなりそうでしたし。」

 

「あれは魔法省管理の魔法が付与されている武器と防具。最悪・・・師が追って来ていたかも。」

 

「それは嫌ですわね。」

 

「アルシェの師・・・フールーダ・パラダインだよね?第6位階魔法が使える逸脱者ね。(第6位階魔法程度なら無効化されるし俺が相手をすればいいかな。)」

 

レイナの装備が昨日は全身鎧の重装備だったのが、今日は急所を守る程度の装備になっていた。昨日着用していたものは四騎士に任命された際に皇帝から授与されたもので貴重なアイテムであり、これを持っていなくなった場合、捜索隊が出される可能性が高いと判断して部屋に置いて来ていた。

 

 

その頃帝国王宮ではレイナースの置き手紙と装備一式が皇帝の元に届けられていた。

 

「ふむ。レイナースは呪いを解き、解いた相手と行動を共にする道を選んだらしい。」

 

「追いかけますか?」

 

「やめておけ。装備一式を置いていったことからレイナースの本気度が伝わるだろ?追うならこちらにあいつの牙がむくぞ。」

 

「あの呪いを解くとは・・・どんなマジックアイテムなのか気になりますな。」

 

「追うなよじい。」

 

アルシェ達が危惧していたことはなく、帝国の皇帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスは手紙を読むと溜息は吐いたが対処不要という指示を出した。



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ナッツのかわり?

他作品の装備とアイテムが登場します。
作者にオリジナルアイテムを考える力がありませんでした。


「レイナさん、アルシェ。装備に関してなんだけど、これを使ってみる気はない?」

 

ある村での休憩中、チェーロは無限の背負い袋から装備品を取り出して二人の前に並べ始める。チェーロが取り出したのは、聖遺物級のアイテムでそれがどんどん並べられていく光景を二人は思わず息を呑んで見つめていることしかできなかった。

 

「レイナさんにはこっち。アルシェはこっちね。どうしたの?やっぱり使い慣れたものの方がいい?」

 

全て並び終えると二人に説明し始めるが、まったく反応のない二人にやっぱりこんなのいらないよねとしまおうと手を伸ばす。

 

「ちょっと待って!驚いていただけ・・・これは伝説級のアイテムだと思うのだけど。」

 

「そうですわね。私が装備していた四騎士用の物よりもはるかに貴重なものだと思いますわ。」

 

「え?こんなの古いだけの骨董品だよ?いまの二人の装備と比べたらいいものになるけど。これから先は命の危険にさらされるかもしれないし、使ってくれたら嬉しいかな。」

 

レイナには【らせつの魔槍】【しんぴのよろい】【炎のイヤリング】【破邪のネックレス】【ほしふるうでわ】【リング・オブ・サステナンス】 、アルシェには【せんこうの杖】【セラフィムのローブ】【雷のイヤリング】【にじのしずく】【ようせいのうでわ】【リング・オブ・サステナンス】【ユグドラシルの魔法教本】、クーデリカとウレイリカには【星のオーラ】と【みがわり玉】を持たせることにしアイテムの説明をする。

 

「蘇生魔法もあるけれど・・・ここにいる四人には死んでほしくないからね。この装備なら長く一緒にいられるでしょ。」

 

「これは・・・力が湧きあがってきますわね。呪いに耐性がつくアイテムもありがとうございます。どうしましょう。いまのは口説いてます?可愛いお顔をしてますけど、やはり男性なのですね。私からは身体を差し出せばよろしいのでしょうか?」

 

「すごい・・・魔力が増えてる。この本は・・・読めない部分が多いけどなんとなくわかる。第四位階以上も夢じゃないかも。レイナ、チェーロの夜の相手は私が先に予約してある。」

 

「ではアルシェさんの次に予約しておきますね。」

 

「違うから!!アルシェも予約とか言わないで!二人は魅力的な女性なんだからそんなこと簡単に言わないの!」

 

同じ部屋にはクーデリカとウレイリカも居て眠っていることもあり、アルシェとレイナはチェーロにお礼を言って床につくことにした。

 

 

翌日、装備品の影響もあり襲撃してくるモンスターを危なげなく倒していく三人。

 

「お姉ちゃんあっちはなあに?」

 

「あれはトブの大森林。奥深くは人類未踏の地。」

 

「だいしんりん?はいっちゃダメなの?」

 

「ダメ。危険なモンスターが多い。」

 

「森の賢王という魔獣がいるという情報は入ってきていますわ。姿などは不明ですね。」

 

「主みたいな魔獣ならこんな街道沿いには来ないと思うけど。!!なにか・・・来る?」

 

レイナが馬車を操縦し、その横にアルシェ、アルシェの膝の上にはクーデリカとウレイリカが座りながら景色を楽しんでいた。するとチェーロが異変を察知して馬車から顔を出して森を凝視すると、アルシェとレイナも戦闘の準備を開始する。暫くするとゴブリン7体にオーガ3体が森の中から飛び出し来た。

 

「私がフライで先行してファイアーボールを放つ。」

 

「ならオーガは私が行きますね。」

 

モンスターを確認したアルシェはフライを唱えて浮かび上がり、レイナが馬車から飛び降りる。そのままモンスターに突撃しようとしていた二人をチェーロは声を出して静止させる。

 

「待つんだ二人とも。まだ・・・あのモンスター達は何かから逃げているんだと思う。」

 

「確かにこちらを見ていませんわね。」

 

「オーガが逃げ出す相手?」

 

モンスターの行動を観察した二人はモンスターの進んでいる方向が違うことに気が付く。しかしオーガが逃げ出すモンスターがこの後森から出てくる可能性を考えていつでも攻撃か逃げれるように準備をする。

 

すると森がざわめきだし、突風が吹いて砂埃が巻き上がるとゴブリン7体が宙を舞っていた。

 

「グギャギャッ!!」

 

ゴブリンの末路を見たオーガが逃げるスピードを上げるが、下半身だけが歩き上半身はその場に崩れ落ちた。下半身も数歩離れたところで力尽きて倒れる。

 

その光景を見ていたチェーロ達は息を潜めて砂埃が晴れるのを待っていた。

 

「いま何をしたのか見えなかった。」

 

「アルシェさんはクーデリカとウレイリカをお願いします。」

 

「二人とも大丈夫だから。」

 

「うん。レイナおねえちゃんありがとう。」

 

「チェーロおにいちゃんもありがとう。」

 

「クーデリカ、ウレイリカ少し我慢してて。」

 

「レイナさん。俺が壁役をやるから様子を見てアルシェ達と逃げて。」

 

レイナがクーデリカを、チェーロがウレイリカを抱え込んで先ほどの光景を見せないようにしていた。しかし前衛である二人は後衛のアルシェより先にモンスターと対峙する可能性があるため二人をアルシェに託す。アルシェは二人を受け取ると馬車の中に飛び込んで毛布を被せてそのまま抱き込んだ。

 

暫くすると砂煙が晴れて、モンスターの姿が露わになる。

 

「ゔっ・・・・チェーロ!!さすがにあれは無理、いますぐ逃げよう。」

 

「そうですわね。私が殿を務めますので、逃げてください。恩人より長く生きるつもりはありませんわ。」

 

「落ち着いて二人とも。大丈夫俺を信じて。」

 

蛇のような鱗に覆われた異常に長い尻尾、白銀の体毛に包まれた体には、奇怪な文字にも似た模様が浮かび上がっている。体は大きく、馬ほどの大きさはあるだろう。しかし体高は低く、横に広い。そんな魔獣の目がチェーロ達を見据えていた。その姿を見たアルシェは胃から食べたものが逆流しそうになるが、なんとか飲み込み涙目で叫ぶ、レイナも覚悟を決めた表情で馬車と魔獣の間で武器を構えた。

 

その魔獣はゆっくりとチェーロ達に向かって歩いてくる。それにあわせてチェーロも二人の制止を無視して前に進む。

 

お互いの声が届く位置まで近づくと

 

「お主からなにやらいい匂いがするでござるな。しかし、食べたいという欲求ではなく親しみを感じるてござるよ。」

 

「なら仲良くなれるかもね。誰かと森で住んでるの?良かったら一緒に旅をしない?」

 

「う・・・む。生まれた時から森に一人で生きてきたのでござる。それがしも森の賢王と呼ばれている故、戦いもせずに仲間になるのはお断りするでござる!それがしに勝てたらいいでござるよ!」

 

チェーロは魔獣の言葉に意思の疎通ができるんだとニコニコと笑い仲間にならないかと勧誘する。魔獣は一瞬戸惑う仕草をするが、プライドからか戦いに勝ったら仲間になると返答した。

 

チェーロはそんな森の賢王をみながら、あの毛皮はナッツみたいにモフモフしてるのかな?ナッツのかわりになる癒し担当を探してたからちょうどいいかも。と考えていた。




下記、アイテムの設定です(登場するゲームとは若干違います)

・らせつの魔槍
攻撃力上昇、敵のガードを無効(自身よりレベルが10以上の上位者には効果なし)

・しんぴのよろい
体力自動回復

・炎のイヤリング
炎属性ダメージ軽減10%

・破邪のネックレス
呪いを無効化

・ほしふるうでわ
素早さを2倍にする

・せんこうの杖
攻撃力上昇、魔力自動回復

・セラフィムのローブ
全属性ダメージ軽減18% 、即死攻撃無効化

・雷のイヤリング
雷属性ダメージ軽減10%

・にじのしずく
MP消費しない率25%

・ようせいのうでわ
守備力+10、最大MP+40

・ユグドラシルの魔法教本
第一〜第六位階級の魔法についてのガイダンス本

・星のオーラ
魔法攻撃無効化

・みがわり玉
一定の攻撃を持ち主のかわりに受ける。規定値がきたら割れてしまう。


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ナッツのかわり?②

森の賢王はその巨体を沈め、ドンッ!と大地を揺らすような勢いで地面を蹴り上げた。巨体な塊となってチェーロに襲いかかるが、チェーロはヒラリと横に飛んで体当たりを回避する。

森の賢王はチェーロに追撃を加える為に鋭い爪の生えた前足を振りかぶり叩きつける。それに対してチェーロはバックステップをして華麗に避けて見せた。

 

「見事でござるよ!しかし避けてばかりでは某には勝てないでござる!」

 

「・・・・(ん〜今まで見た中では一番強いんだけど、反撃したら死んじゃうよね。かといって攻撃を受けても防御の反動で危ないだろうし。いっそ投げ技なら大丈夫かな?)」

 

チェーロはできれば生け捕りにしたいという考えからレベル差に悩んでいた。とりあえず投げてみようとジッと森の賢王の目を見ながらジリジリと間合いを詰めていく。ふと背後にてユラユラと揺れていた尻尾がギュン!と伸びて目の前に迫ってきた。そしてチェーロの身体を貫通して真っ直ぐに伸びていった。

 

「やったでござるか?」

 

「「チェーロ!!」」

 

その光景を見ていたアルシェとレイナは悲鳴を上げるが

 

「なんと!?」

 

「油断大敵。」

 

森の賢王が貫いたのはチェーロが高速で動いたことでできた残像であり、森の賢王が気付いた時にはチェーロが懐に潜り込んで背負い投げをされている最中であった。

轟音と共に砂埃が舞い上がりチェーロと森の賢王の姿を隠す。アルシェとレイナは息を呑んで砂埃が晴れるのを待つ。

 

「勝負あり・・・だよね?」

 

「参ったでござるよ。降参でござる。」

 

「じゃあ約束通りだよね?」

 

「姫の仲間になるでござる。」

 

「いや、姫ではないよ。」

 

砂埃が晴れるとお腹を丸出しにした森の賢王の上にチェーロが座り、片手で首に手をかけている状態だった。さすがの森の賢王も負けを認めて仲間になることを承諾した。

 

「はい。仲間に紹介するから立って。」

 

「かたじけないでござる。しかし姫は強いでござるな!」

 

「ん〜〜まあいいや。アルシェ!レイナさん!お待たせ。」

 

「バカ!!」

 

「アルシェ痛い!!」

 

「チェーロさん はぁ 勝てたから良かったですが・・・それにしてもこの魔獣が森の賢王ですか。」

 

「レイナお姉ちゃんさっきよびすてにしてた。」

 

「またもとにもどってるね。・・・さわってもいい?」

 

「某にでござるか?いいでござるよ。」

 

「「おっきいー。かたーい。」」

 

森の賢王を連れてチェーロが馬車に戻ってくるとアルシェが馬車から飛び出してきてチェーロに抱き着く。そのまま脇腹をつねりはじめた。レイナは安堵の溜め息を吐きながら馬車からクーデリカ、ウレイリカを降ろしてあげる。馬車から降りた二人は森の賢王を見て目を輝かせながら触ってもいいか確認し、恐る恐る身体に触っていた。

 

「姫!!某に名前をつけてほしいでござるよ!」

 

「名前ね。(ナッツって付けるのは嫌だし、こういうの苦手なんだよな。・・・苦手といえば、モモンガさんはもっと苦手だったな。モモンガさんなら、ござ丸・こざ吉・ハム・ハムハム・ハムスケ・・・)ならハムスケは?」

 

「ハムスケでござるか?いい名前でござる!!これからよろしくでござるよ。」

 

「ハムスケ・・・」

 

「まぁなんとも言えない名前ですわね。」

 

「ハムちゃんよろしく!」

 

「ハムちゃんせなかにのせてほしい!」

 

森の賢王はハムスケと命名されて、チェーロとクーデリカ、ウレイリカを背中に乗せて街道を進み始めた。

 

「ハムスケ、この近くに村か町はある?」

 

「村ならこの先にあったでござるよ。」

 

「ならそこで一泊できないか確認してみよう。」

 

「賛成。このままだと野宿になる。」

 

「フフフ すでに二人は眠いみたいですよ。」

 

チェーロに抱えられた二人はハムスケの歩く振動にあわせて頭をコックリコックリとさせており、レイナはそれを笑顔で見ていた。アルシェはフライを唱えてチェーロの元まで飛び、二人を受け取ると馬車の中に寝かせて地図を確認する。

 

ハムスケの案内で馬車は村へと到着した。




ハムスケの名前に悩み遅くなりました。

悩みましたがやっぱりハムスケはハムスケだろうと思いそのままにしました。


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カルネ村

チェーロ達が村に着いた時にはすでに夕方近くになっており、外に出ている村人は見つからなかった。馬車をとめた一行は一番近くにあった家の住人に、旅の冒険者で一晩泊めてほしいので村長に許可を取りたいと伝え村長の家を教えてもらうことに成功した。

村長宅でも魔獣の姿はあるが、はたから見ると女性しかいないということと、少女二人の寝姿を確認すると快く空き家を提供してくれた。

 

「こんな言い方は悪いけど、クーデリカとウレイリカがいて良かったよ。二人がいなければ怪しまれて空き家を提供してもらえないと思うんだよね。」

 

「そうですわね。冒険者なら普通は野営を選択しますから。」

 

「ふふん!私の妹達は天使だから。可愛い二人を見たらみんなメロメロになるのは当然。」

 

三人はハムスケに寝ている二人の護衛を任せて空き家を掃除していた。掃除をしながら今回の旅は宿屋がない村などでは空き家を提供してもらえる場面が多く、要因としてクーデリカとウレイリカという二人の少女の存在が大きかった。チェーロの呟きにレイナも同意し、そのやり取りを聞いていたアルシェはドヤ顔で妹達についての可愛さを語り始めた。

 

 

「ハムスケは・・・・入るのは無理かな。どうする?馬車もきついと思うけど。」

 

「うむ・・・それならば今回は森の中にある住処に帰ろうと思うでござるよ。幸いこの村からなら数分で到着するでござる。」

 

「二人の護衛ありがとう。また明日。」

 

「・・・だとすれば、この村はハムスケさんの縄張りだったりするのかしら?」

 

「はて?拙者は縄張りに侵入してきた敵意あるモンスターは退治していたが、この村まで守っていたつもりはないでござるよ。ではおやすみなさいでござる。」

 

「なるほどね。この村がこの環境なのはそれが影響しているのかな。レイナ、アルシェ、村人を見捨てることにはなるけど、この件はここだけの話にしよう。」

 

「わかった。村人は勝手に移動することもできないから。言っても不安を煽るだけ。」

 

「そうですわね。護衛を頼まれても私達にも目的がありますから。」

 

掃除を終えて馬車から寝ている二人を空き家に移動させた。チェーロは後から着いてきて入口に挟まったハムスケに苦笑いを向けながらどうするのか確認をした。ハムスケも困った表情を浮かべてはいるが、本来の寝床が近い為そこで寝ることにすると残念そうな感じで挟まっていた頭を引き抜く。

ハムスケの発言からこの村はハムスケによる恩恵を受けている事がわかり、この村の警戒心の薄さなどもそのせいかと納得した。想像ではあるがハムスケがモンスターを退治してきたことにより、一度もモンスターによる襲撃がなかったのかもしれない。

三人は一宿の恩はあるが、そこまでの深入れはできないと割り切ってハムスケの件は黙っていることにした。

 

 

「すいませ~~~ん!」

 

三人はお腹もすいたため軽い食事の用意をしようかと準備を進めていたが、唐突に入口が叩かれて若い女性の声が響いた。

 

「はい。なんでしょうか。」

 

「夜遅くにごめんなさい。私向いの家のエンリ・エモットといいます。村長から旅の冒険者様がお泊りになっているとききまして、私の家はその・・薬草とかを扱っていてよかったら買ってもらえないかなと思い・・・すいません。疲れているのにご迷惑ですよね。でも両親から行ってみなさいと言われて・・・。」

 

「いいよ。とりあえず中に入ってもらってもいいかな?」

 

「はい!ありがとうございます!

 

「ちょっと声を抑えてほしい。チェーロ、別に薬草は必要ないんじゃない?」

 

「奥で寝ている子達がいるんだ。アルシェ、回復アイテムは持っていることに越したことはないよ。」

 

「そうですわね。ポーションでは補えない効用のものもあるかもしれませんし、見ておいて損はないかと思いますわ。」

 

レイナが警戒しながら扉を開けるとエンリと名乗る村娘が籠を持って立っていた。どうやら籠の中身は薬草で冒険者が立ち寄っていると言う話をきき、女性だけということもあり危険ではないと判断した両親から、今後のエンリの成長を促すために押し売りをして来いと言われてきたらしい。とうのエンリはレイナからの怪訝な視線とアルシェの無愛想な対応に涙目になりながら謝っていたが、チェーロが笑顔で対応するとパッと表情を明るくさせてチェーロに手を引かれながら家の中にある椅子へと腰かけた。



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エモット家の決断

エンリがチェーロ達に薬草を見せている頃、エンリの父親は村長宅に訪れていた。

 

「村長!!前々から言っているが、この村も自衛の手段を持つべきだ!!このままじゃモンスターはおろか盗賊相手にも蹂躙されてしまう!!」

 

「お前の言いたいこともわかるが、この村では過去にモンスターに襲われたこともないし、盗賊がこの村を襲うメリットはないじゃろ。なにをそんな焦っておるんじゃ。」

 

「過去は過去、この先もそんな考えで安全に暮らしていける保障はないでしょ!!」

 

「何度言われても儂はこのままでいいという返事しかするつもりはない。この話は終わりじゃ。」

 

「村長!!」

 

エンリの父親の用件は村の防衛についてであったが、村長からしてみれば過去に防衛が必要な事態になることもなかったためこの先も必要ないと提案を却下する。引き下がるエンリの父親を家から追い出すように外に押し出し扉を閉めてしまった。

 

 

「あなたどうだった?」

 

「今回もダメだった。なんでわかってもらえないんだ!!」

 

「ただいま~~」

 

「おかえりなさいエンリ。その様子だと上手くいったみたいね。」

 

「うん!籠の中身全部買ってもらっちゃった!すごくいい人達で三人共女の人なんだけどね。綺麗で優しいの!いつもンフィーと来る冒険者の人は男の人ばかりだし、女性の冒険者って初めて見たからびっくりしちゃった。」

 

「そうか・・・・・。エンリ大事な話がある。すまないがネムを起こして来てくれ。」

 

「?どうしたのお父さん?寝ているネムを起こすなんて、明日じゃダメなの?」

 

「今夜じゃないとダメなんだ。俺と母さんは一度あの冒険者たちの所に行って来る。」

 

「いまは何も聞かずにネムを起こして待っていて頂戴。」

 

エンリがチェーロ達の元から戻ってくると両親が難しい顔をして話しており、話題を変えようとワザと大袈裟に感じたことを話し出す。その話をきいた父親は覚悟を決めた顔で立ち上がり、母親に目を向けると母親も頷いて立ち上がった。エンリに寝ているネムを起こしておくように伝えるとそのままチェーロ達のいる空き家へと向かって行った。

 

「どうしたんだろう。可哀そうだけど起こすしかないのかな。・・・・ネム、ネム。起きて。」

 

「ん~~~~。な~~にお姉ちゃん。」

 

「ごめんね。お父さん達が大事な話があるんだって。抱っこしてあげるから居間に行こ。」

 

「ん。」

 

エンリはネムを起こすと寝ぼけているネムを抱っこして居間へと運び、目が覚めるように白湯を二つ用意し始める。

 

 

「夜分に申し訳ない。先ほど薬草を買っていただいたエンリ・エモットの両親です。少しお話をさせていただくことはできないでしょうか。」

 

「なんのお話でしょうか?・・・・込み入ったお話のようですね。とりあえず中にお入りください。」

 

エンリの両親を最初に対応したレイナは二人から切羽詰まったような雰囲気を感じ取る。一度チェーロとアルシェに確認をするように目を向けると二人もその雰囲気を感じ取ったらしく頷くことで返事を返した。中に入った二人を椅子に座るように促し、その正面に三人も腰かけた。

 

「不躾な質問で申し訳ないのだが、貴女達が連れていた魔獣は森の賢王でお間違いはないでしょうか?」

 

「私達夫婦は一度あったことがあるんです。」

 

「・・・それを知ってどうするつもり?」

 

「アルシェ。杖を下ろして。レイナさんも。」

 

「ん。わかった。」

 

「わかりましたわ。この件はチェーロさんにお任せいたしますわね。」

 

「二人が失礼しました。確かにあの魔獣は森の賢王になるかと思います。」

 

「やはりか・・・。お願いがあります!娘二人を一時預かってはもらえないでしょうか?」

 

「近くのエ・ランテルまで一緒に連れて行ってほしいのよ。あそこに行けば頼れる相手もいるし、もしくは他の仕事でも探すこともできるはずだから。」

 

「なるほど。モンスターの襲撃を危惧しているんですね。お二人はどうするんですか?」

 

「私達は法により村から移動することはできない。」

 

「あの子達だけなら出稼ぎ目的で誤魔化せるはずなのよ。」

 

「どうするチェーロ?」

 

「私達の次の目的地もエ・ランテルですから問題ないといえばないですわね。」

 

「はぁ、わかりました。エ・ランテルまでは同行しましょう。ですが、その先からは責任を持てませんので。」

 

「ありがとう。その先については私達から伝えておく。」

 

「エンリとネムのことをよろしくお願いします。」

 

エンリの両親はチェーロ達が村に来た時に窓からハムスケの姿を目撃しており、以前薬草を収集している時に森で出くわした森の賢王と名乗った魔獣と似ていることに気づいていた。

 

一緒にいる女性達が冒険者だという情報を入手すると、森の賢王が冒険者に使役され、森の縄張りがなくなり今までの恩恵もなくなってしまうことに結論付いていた。

 

その為、村長宅で防衛について直談判するが話を聞いてもらえずに最終手段である娘二人を避難させる計画にうつり、女性三人という娘を預けるには申し分無い条件のチェーロ達に縋る思いで訪ねて来ていた。

 

二人はチェーロ達が頼みを了承すると、安堵の表情を浮かべて立ち上がる。するとチェーロからこの御守りを二つ肌身離さず持っているように渡された。それを受け取った二人は首から提げて会釈をし自宅へと戻って行った。

 

「チェーロ。いまのは?」

 

「渡してもよかったんですの?」

 

「あれは俺の自作のアイテムで一定の条件を満たすと攻撃を無効化することができるんだ。でも俺から10~20㎞以上離れてないと発動しないから使い勝手も悪いんだよね。」

 

チェーロが二人に渡したのは【覚悟の具現化】というアイテムで装備することにより、装備者が生命の危機を感じ、死にたくないと強く願い運命に抗う決意をすると防御魔法が発動するチェーロ自作のアイテムだった。しかし、チェーロから離れていないと発動することもなく、発動条件も曖昧なため今までに渡しているのはナザリックの一般メイド達のみであり、一般メイド達も主に創造主からいただいた装飾品という認識でいた。

 

 

「戻ったぞ。」

 

「おかえりなさい。話って?」

 

「エンリ、ネムも落ち着いて聞いてね。」

 

「・・・うん。」

 

「二人にはこの村を出てエ・ランテルで生活してほしい。エ・ランテルまであの冒険者たちに護衛を頼んできた。」

 

「え!!お父さんちょっと待って、きちんと説明して!いきなりそんなこと言われても訳がわからないよ。」

 

「私たち捨てられちゃうの?」

 

「エンリ落ち着いて。ネムも泣かないの。あなたもきちんと説明しないと二人には伝わらないわよ。」

 

口数が少ない父親からの言葉にエンリは動揺しネムは捨てられてしまうのかと泣いてしまう。そんな三人を母親がフォローしながら父親はポツリポツリと状況を説明し、それをきいたエンリは次第に顔を青くしていった。

 

「そんな・・・お父さんとお母さんはどうするの!?村のみんなは?」

 

「そんなのやだ!!お父さんとお母さんと一緒にいたいよ。ンアァァァアァッァーヤダーー」

 

「私達は村から移動することはできない。それこそ農村の役目を放棄したとして罰せられてしまうだろう。村の人達についてはお前の気にすることではない。」

 

「エンリ、ネムもよく聞いて。私達は二人が大事なの。危ないとわかっている場所にいるよりも安全な場所で幸せに暮らしてほしいのよ。ね?だから私達の我儘を聞いてくれないかしら。冒険者さん達は明日の陽が昇るころには旅立つらしいからそれまでにどうするか決めて荷物を纏めておいて。」

 

「・・・お母さん。うん。ネムと二人で話し合って決まるね。行こうネム。」

 

「ヒック・・・グス。・・うん。」

 

エンリは母親に促されて泣いているネムを抱いて寝室へと向かう。母親も目に涙を浮かべているが父親は歯を食いしばって泣くのを耐えていた。

 

その夜、エンリはネムと話し合い。両親は二人のためになるものを家から集めて持ちやすいように選別し四人共一睡もできずに夜が明けた。

 

 

「おはよう。よく・・・眠れていないわよね。エンリひどい顔よ。」

 

「おはよう。・・・お母さんこそ。」

 

「おはよう。お母さんお父さん。」

 

「おはよう。どうするか決めたか?」

 

「うん。・・・・・・・・・・ネムと一緒にエ・ランテルに行くことにするわ。」

 

「・・お母さん抱っこ。」

 

「フフ ネムは甘えん坊さんね。」

 

「そうか。ならこれを持っていきなさい。」

 

「ありがとうお父さん。でも防衛の面についてはンフィーにも相談してみる。」

 

「バレアレさんか。あの人が進言してくれれば何かがかわるかもな。助かるよ。」

 

「ん・・・お父さんも抱っこ。」

 

「ネムこれが最後になるわけではない。お前の大きくなった姿を見るのが楽しみだよ。」

 

「エンリ。元気でやるのよ。」

 

「お母さんも・・・お父さんをよろしくね。」

 

ネムを含めて四人共これが最後になるかもしれないという思いはあったが、誰一人としてそのことは口に出さずに抱きしめあい会話を続けていた。時間になってしまったため四人は冒険者達のいる空き家へと向かうことにした。

 

「エンリさんとネムちゃんですね。いらっしゃい。」

 

「今日はよろしくお願いいたします。」

 

「よろしくおねがいします!」

 

「こちらこそよろしくね。じゃあお二人は責任を持ってお預かりいたします。」

 

「「娘をよろしくお願いします。」」

 

「二人ともよろしく。ネムと同じくらいの妹を紹介する。」

 

「わたしクーデリカ!」

 

「わたしはウレイリカ!」

 

「「二人合わせてーーーー二人はリカリカ!」」

 

「なにそれ!?そんなの考えてたの?」

 

「「うん!」」

 

「やっぱり私の妹達は天使だった。(やっぱり私の妹達は天使だった。)」

 

「アルシェさん。二人が可愛いのは認めますがそういうのは心に留めておいてください。」

 

「大丈夫。心の中でも思ってる。咄嗟のことに口に出してしまっただけ。」

 

「わぁーーー可愛いポーズ!私はネム!よろしくね!!」

 

その後、ハムスケも合流し各々自己紹介をしたチェーロ達は村を出発した。



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エ・ランテル

「チェーロさんあそこがエ・ランテルの入口になります!!ハムスケさんがそのまま並んでも大丈夫だと思いますよ。」

 

「あそこがエ・ランテルなんだ。行商人と冒険者かな?がたくさん並んでるね。ハムスケお願いできる?」

 

「あそこに並べばいいのでござるな。心得たでござるよ。」

 

「ねえレイナ。エンリはいつになったらチェーロが男だって気づくと思う?というよりも女だと思っているのはずなのになんで顔を赤くしてモジモジしているのかな。」

 

「そうですわね。チェーロさんも隠しているわけではありませんが、私達から伝えないと気付けないのではないのでしょうか。あれは肉欲というよりも憧れと羨望かと。どうしてネムはすぐに気づきましたの?」

 

「ん~~~っとねーー。お姉ちゃんよりお胸がないし、抱っこしてもらった時にお父さんみたいにからだがかたかったの!」

 

「ネムはいがいとするどいしどきょうがあるよ!」

 

「うん!!女はどきょうってかんじで生きてるよね。」

 

カルネ村を出発した一同は一度だけ野宿をし翌日のお昼前にはエ・ランテルの検問に到着していた。検問が見えるとエンリが嬉々としてチェーロに対し報告をしていた。エンリがチェーロに向ける熱い視線にアルシェは疑問に感じていたが似たような視線を浴びてきたレイナがその意味をアルシェに説明すると納得したのか頷く。

 

エンリはチェーロのことをいまだに女性と認識しており、ハムスケの主はチェーロと聞くとエンリのチェーロに対するイメージが優しいだけではなく、とてつもなく強い女性だということで尊敬の眼差しでみるようになっていた。

ネムはカルネ村を出発してすぐにチェーロのことを男性だと認識してはいたが、正直な話男性だろうが女性だろうが私には関係ないかなと達観した様子で姉には伝えずにクーデリカとウレイリカと一緒に遊んでいた。

 

クーデリカとウレイリカは初めてできた貴族ではない平民の友人の行動に最初は驚いていたが、これから生きていくにはこういった強さが必要なのかとネムから色々と教わっていた。二人もただ無邪気に馬車の旅をしていたのではなく自分たちの立場をきちんと理解していた。

 

そんな二人の成長にアルシェは悲しんだが、チェーロやレイナからも説得されて二人の決意を無駄にするのではなくてきちんと守れるようにと魔法の勉強により一層力を入れていた。

 

レイナもそのことに刺激を受け、チェーロやハムスケというわかりやすい絶対的強者に模擬戦を挑むようになっていた。

 

 

 

大人しく入門審査を受ける列の最後尾に並ぶんでいた一行であったが、順番待ちの人々の視線が一気に集中した。周りの人々の反応はハムスケに怯えたり、怯えて暴れている馬を必死に落ち着かせたり、チェーロを筆頭に見目麗しい女性陣に目を奪われて固まってしまったりと大混乱の前触れの様相を呈してきた。

 

 

程なく詰め所から門衛の兵士らしき人間が走り出てきてチェーロ達に話しかけてきた。

 

「あのっ、あなた方は先に処置させて頂きますので、こちらにおいで頂けますか?」

 

「あれ?でもみんな待ってるんでしょ?順番抜かしちゃっていいのかなぁ?」

 

「どうしますかチェーロさん?」

 

「んーー本来ならいけないことだけど、ここはその申し出を受けた方が周りの人達のためかな?皆さんもよろしいでしょうか?」

 

「ひゃい!!」

 

「構わないから行ってくれ!!」

 

「おーーーこれがとっけんかいきゅうのちから!」

 

「ハムスケによるじゃくにくきょうしょく!」

 

「二人とも!この対応ではしゃいではいけませんよ!!」

 

「「はーい」」

 

「レイナ・・・うちの妹たちは落ち込んでも天使。」

 

「アルシェさんにも教育が必要なのかしら・・・。」

 

「ごめんなさい。必要ない。」

 

門衛からの申し出に対しネムが疑問の声をあげてエンリが不安そうにチェーロの服を掴みながら尋ねると、チェーロは笑顔を浮かべながら列の前方に声をかける。その笑顔をみた人達は男女問わず顔を赤くし頷き、馬を宥めるのに必死で見ている余裕のない人達からも懇願に近い叫び声があがった。

その光景をみたクーデリカとウレイリカは目を輝かせながら喜んでいたが、レイナから叱られるとしょんぼりとしながらアルシェのローブを掴んでいた。ローブを掴まれたアルシェは嬉しそうにレイナに報告するが、呆れたレイナに睨まれるとふざけ過ぎたと素直に謝罪した。

 

 

詰め所に到着しチェーロ達は中に入るがハムスケは入れずに外で待機することになる。魔獣の見張りの門衛は喋るハムスケを前に頼むから機嫌を損ねることをしないでくれと中の状況にハラハラし静かに死を覚悟していた。

 

「まず身分証明になるようなものはお持ちですか?」

 

「私達は帝国で活動しているカッパーの冒険者です。今回、活動拠点を王国に移そうかと思い移動してきました。私はチェーロ、こちらの剣士がレイナ、魔法詠唱者がアルシェです。アルシェに左右から抱き着いてるのが 「クーデリカ!」「ウレイリカ!」「「せーの!!二人はリカリカ!」」 アルシェの妹の二人です。そしてこの二人がカルネ村からエ・ランテルでの出稼ぎをするために一緒に来たエンリとネムの姉妹です。」

 

「確かにカッパーのプレートですね。そちらの二人についても何度が見た事がありますので大丈夫です。それであと、あの大きな魔獣はなんなのですか?」

 

「あれはハムスケと言って、トブの大森林森の賢王なんですよ!!チェーロさんが倒して使役しているんです!」

 

「エンリ落ち着いて。チェーロが困ってる。」

 

門衛は見目麗しい女性陣に見惚れていたが、自身の役目を全うしようと頭を振って質問をする。その問いに代表してチェーロが答えていくが、途中でクーデリカとウレイリカは気に入ったのか例のポーズを決めた自己紹介をし始めた。その光景に詰め所が和やかな空気になる。門衛も笑顔を浮かべているが、神妙な顔つきで外の魔獣について確認するとエンリが鼻息を荒くし興奮しながら説明をし門衛も驚愕の表情を浮かべながらチェーロを凝視していた。

それにチェーロが苦笑いを浮かべ、アルシェは同じ女として酷い顔をしているエンリを心配し止めに入った。

 

そのまま問題なく詰め所を通過した一行は、まずは冒険者組合に向いハムスケの魔獣登録をすることにした。



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エンリの決断

「チェーロさん冒険者組合はこちらです。」

 

「ありがとうエンリ。」

 

「いえいえ。チェーロさんのお役に立てるなら嬉しいです。」

 

チェーロ達はまずは安全を確保するためハムスケの使役魔獣登録の関係で冒険者組合によることにしていた。

街行く人々が驚愕に目を見開く姿や腰を抜かす姿を見て、身分をはっきりとさせた方がいいと判断したためである。ハムスケはこれこそ某が偉大な証拠でござるよとドヤ顔をしていた。

 

冒険者組合に到着したがハムスケは入ることができずに外で待機してもらい、受付嬢を一人捕まえて外に連れ出しハムスケを確認してもらう。確認した受付嬢は泣きそうな顔になりながら血相を変えて中に走りこんで行った。

 

そのあとはハムスケの絵を描いてもらっている間に、組合長と名乗る男性に別室に案内されて、使役した時の状況やなぜ王国に来たのかを聞かれたが、チェーロは真実と嘘を交えながら説明した。男も納得はしたのかハムスケの絵が完成するとすぐに解放されて使役魔獣登録も問題なく終了した。

 

「どうしたラケシル?」

 

「あっあっ!!」

 

「落ち着け!!」

 

「はっ!!すまないアインザック。」

 

「それでどうしたんだ一体?あの魔獣の圧にやられたのか?」

 

「いや、確かにあの魔獣もとてつもないんだが・・・あの三人の冒険者がしていた装備がな。あれは間違いなく伝説級な武器と防具で魔法の効果もあるはずなんだ!いまからでも遅くない!売ってもらえないか確認してくる!!」

 

「やめないか!!」

 

冒険者組合長はチェーロ達が立ち去ると偶然遊びに来ていており、隣の部屋で待機していた魔術師組合長の友人の元に顔を出した。すると顔を青くしながら胸を抑えている姿が目に入り慌てて介抱をし始める。すると魔獣の雰囲気にやられたのではなく冒険者三人の装備に気圧されていたことがわかり、密かに密偵をつけるべきかと思案することになった。

 

 

「エンリさん。バレアレさんというのはポーション作成で有名な方ですよね?」

 

「はい!そうですよ。ンフィーレアの祖母のリイジー・バレアレさんは王国随一と言われています!レイナさんは知っていたんですか?」

 

「名前だけなら帝国にも知れ渡っていましたので。」

 

「そう?私は聞いたことないけど。」

 

「アルシェは世間の噂話とかに興味なさそうだよね。」

 

「む。そんなことない。私も噂話くらい知っている。なんならチェーロの身体で試してもいい。」

 

「ンナ!」

 

「身体って!アルシェさんってそういう趣味の方だったんですか!?」

 

「エンリ。この際だから言うけどチェーロはお「着いたよお姉ちゃん!!」と「あ!ハムスケさんここで止まってください!」こ・・・・・」

 

「アルシェさん身体云々については後で話し合いましょう。いまエンリさんに言っても信じませんわ。」

 

「わかった。ここでお別れだからこのままでもいい気がしてきた。」

 

冒険者組合から出た一行は直ぐにバレアレ家へと向かって進んでいた。途中でレイナがバレアレ家についてエンリに確認すると、アルシェが首を傾げたがそれをチェーロが笑いながら指摘するとムスッとした表情でチェーロに馬乗りになると手をワキワキとさせていたが、エンリが悲鳴をあげながら勘違いな発言をしていた。

アルシェがエンリの勘違いを正そうとするがタイミング良く目的地に到着した為、勘違いを正すことはできなかった。

 

目的地には到着したのだが、バレアレ家の扉の前に兵士が数人立っていてピリピリとした雰囲気を醸し出していた。エンリはンフィーレアに話をしないといけないこともあり兵士に話しかけるが

 

「あれ?ここはバレアレ家のお店ですよね?」

 

「そうだが。お前達は何者だ!何の用事でバレアレ家に訪ねて来た?」

 

「え?あの・・その。」

 

「失礼。私達は冒険者です。そしてこちらはカルネ村のエンリ。いつもバレアレ家に薬草を卸しています。今回も薬草を届ける護衛任務の途中なのですが、何かあったのですか?」

 

「む。冒険者か・・・なるほど。カルネ村からの薬草のことは聞いたことがあるな。」

 

怪しまれてしまい咄嗟にチェーロ達が前に出て薬草を卸しに来たとしてこの場を逃れることにした。兵士はそれに納得したのか状況の説明を始める。

 

兵士曰く

今朝方、ポーションを買いに来た冒険者からリイジー・バレアレが死んでいるという通報があり、調べたらナイフかなにかで殺害されていることと、孫のンフィーレア・バレアレくんの行方も未だ掴めていない。部屋には争った跡もあることから何者かに連れ去られたとみている。

ということだった。

 

チェーロ達はお礼を言い茫然とするエンリを連れて宿屋に行くことにした。泊まる宿屋は奮発してこの街まで最高級の場所に目をつけていた。

 

宿屋に着いた後も茫然としていたエンリだが

 

「お姉ちゃん!!しっかりして!!私たちこれからどうしたらいいの?」

 

ネムから頬を一発叩かれて正気へと戻り、涙目になっているネムを抱き締めながら背中を撫でてあげていた。

 

「さて、エンリとネム。俺達が受けた依頼はこの街までの護衛任務だ。」

 

「はい。」

 

「後のことまでは責任を持つことはできない。だから自分達で考えて行動してほしい。」

 

「カルネ村に帰るというのも一つの手だとは思いますし、ここで雇ってもらえる場所を探すのもいいでしょう。」

 

「わかりました。(どうしよう。どうしたらネムと一緒に生きていけるの。私は最悪娼館にでも身売りすればまだ・・・でもネムにまでそんな目にはあってほしくない。考えて、考えるのよエンリ・エモット!)」

 

チェーロ達からの無慈悲ともとれる言葉を聞きながらエンリは思考を巡らせていた。するとある考えが浮かんでチェーロ達に向かって勢いよく頭を下げた。

 

「お願いがあります!どうか私達をこのまま一緒に連れて行ってください!!」

 

「エンリさん。貴女達のおかれている状況で頼るのは私達しかいないのはわかりますが、私達からしたらなんの得にもなりませんよ?」

 

「それに私達は冒険者。モンスターと戦ったりして危険も多い。自衛の手段はあるの?」

 

「食事の準備や身の回りのお世話。それに薬草採取なら役立てるかと。あと・・・アルシェさんが望むなら夜のお世話も致します!」

 

「だ・か・ら!私はノーマル!チェーロは男なの!」

 

「え!?そうだったんですか!?」

 

「はは 騙していたわけではないんだけど、黙っていてごめんね。中々言い出せなくて。」

 

「いえ、ならチェーロさんの夜のお世話を!!」

 

「「それは、間に合ってる/間に合ってるわ。」」

 

「それに食事の準備なら私やチェーロがいれば問題ない。チェーロの夜のお世話は私とレイナで充分やっていける。」

 

「ええそうですわね。」

 

「ちょっと待って二人共。夜のお世話なんてしてもらってないし求めないからね。エンリも夜のお世話は考えから無くそうか。エンリ、さっき二人も言っていたけど冒険者には危険が付きものなんだ。エンリはそんな状況でもネムを守り切れるの?」

 

「何があろうとネムだけは必ず守り抜きます。」

 

「お姉ちゃん・・・そんなのいやだよ!ずっと一緒にいてよ!」

 

「ネム。落ち着いて聞きなさい。私もずっと一緒にいたいわ。でも私はお姉ちゃんだからネムを守る義務があるの。だから危なくなったら私はネムを逃がすために戦うわ。」

 

チェーロからの問いにエンリが答えると、その答えにネムがエンリに泣きながら抱きつく。そんなネムの頭を撫でながらネムに覚悟がこもった声で語りかけていた。

 

「エンリの覚悟はわかった。いいよ。一緒に行こうか?でも冒険者登録はしてもらうよ。いつまでもカルネ村のってのは通用しないから。」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

「ありがとうございます。」

 

「ふぅ チェーロも人が悪い。最初から連れて行く気だったのに覚悟が知りたいから演技をしろだなんて。」

 

「戦いよりも疲れましたわ。でもエンリさんの覚悟は立派なものでした。」

 

「え?演技だったんですか!?じゃあチェーロさんが男性というのも?」

 

「お姉ちゃんそれはほんとうだよ。」

 

「ネムは知ってたの?」

 

「うん。最初に抱っこしてもらった時から。」

 

「もうおわった!?」

 

「リカリカはかいさんします!」

 

「二人もお疲れ様。解散しちゃうの?」

 

「ネムも入れて三人でのポーズをかんがえるの!」

 

「お姉ちゃんは入れてあげられないけどネムならしんさきじゅんをみたしてるの!」

 

「クーデリカちゃん、ウレイリカちゃんこれからもよろしくね。」

 

「「うん。よろしく!」」



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白百合

アニメでアルシェちゃん初登場!!

でも想像よりも可愛くなかった感じが。

原作開始前何でクーデリカ達はアニメよりも幼いですよ。


エンリの冒険者登録を済ませると早々に次の街へと移動するために食料などの買い出しを始めるチェーロ達。

行く先々で冒険者からゲスな視線を向けられることもあったが、その都度ハムスケに威嚇をさせて追い払っていた。よほどハムスケが怖いのか遠巻きから眺めているだけで声をかけて来ないのが、どちらにとって良いことであったのかはいうまでもない。

 

「チェーロ、食料はこれくらいあれば足りると思う。この街に用がないならはやく移動をした方がいいかも。」

 

「そうですわね。ここは帝国との国境近くで戦に巻き込まれる可能性も捨てきれませんから。」

 

「なら三日後の朝一にでも出発しよう。次の街に行く前にエンリに武器の使い方も教えたいし。エンリ達もそれでいいね?」

 

「はい!大丈夫です。でもこんなにアイテムをもらってもよかったのですか?武器をもらっても使えるかどうかわからないですし・・・。」

 

「アイテムは気にしないで。武器の使い方は俺やレイナと訓練をしながら練習すればいいよ。」

 

それから二日間、エンリはチェーロからもらった鞭の練習をゴブリン、オークを相手にしていた。一日目は一対一で当てる訓練をし危ない場面がいくつかあったがアルシェによる強化魔法と防具に助けられた。二日目は複数体相手に当てる訓練をした。チェーロとレイナの指導の元、間合いの測り方や足捌きなど、戦闘の基礎を叩き込まれて二日目の午後にはなんとか鞭を扱えるようにはなっていた。

 

そして二日目の夜に事件は起きた。街にスケリトル・ドラゴン二体と未知のアンデットの騎士が襲ってきて、墓地の懲戒任務に当たっていたミスリル級冒険者チーム クラルグラ が対処にあたるが壊滅したという連絡が組合に届けられた。プルトン・アインザックは組合に残っていた冒険者達に指示を出し、衛兵と協力して街の防衛任務に当たらせ宿屋にいる冒険者達にも伝える様にと受付嬢達を走らせた。

 

同じ頃、チェーロ達も街が慌ただしくなったことから異変を察知し、装備を整えていた。

 

「クーデリカ、ウレイリカ、ネムはここで待ってて。ハムスケ、三人の護衛をお願い。」

 

「「わかった。ネムと三人でするポーズをかんがえて待ってる。」」

 

「私もやらなきゃダメなの?」

 

「ほかとはちがうこせいをみせるべき。」

 

「いましかない私たちだけのぶきをつかいこなすの。」

 

「ネム。ちゃんとハムスケさんの言うことを聞いて待っててね。」

 

「二人もいい子にして待ってて。直ぐに帰ってくる。」

 

「エンリさんも気を抜かないでくださいね。チェーロさん、敵の状況によりますが私がエンリさんのフォローに入る形でよろしいでしょうか?」

 

「ん~どんなモンスターが来たかも数もわからないから様子見かな。後は他の冒険者や衛兵もいるだろうから、その人達といてもいいだろうし。」

 

チェーロ、アルシェ、レイナ、エンリは駆け足で門に向かう。その最中でも門からは魔法の音や金属がぶつかり合う音などが聞こえてきていた。

 

門に到着すると複数のゾンビが門を壊そうと押しかけており傷ついた人々が回復魔法をかけられたりとそこら中に横たわっていた。門の外にはゾンビとその奥にスケリトル・ドラゴン二体とアンデットの騎士がこちらの様子を窺うように佇んでいた。怪我がない冒険者や衛兵も戦意を喪失してしまっているのか武器から手を離しており、呆然と門をみていたり膝から崩れ落ちている姿があった。

 

「アルシェとレイナはスケリトル・ドラゴンをお願い。俺はあのデス・ナイトの相手をするよ。エンリは周りのゾンビをお願いしていいかな。何体かスクワイア・ゾンビが混じっているだろうから気を付けて。まずは門の前のゾンビを薙ぎ払う!!」

 

「「了解!」」

 

「チェーロさん。門の前のゾンビは私にやらせてください。」

 

エンリが腰から鞭を外して構えると、タイミングを見計らったかのように門が突破されてゾンビが雪崩れ込んでくる。近くにいた衛兵が襲われようとしていたが、ヒュンッと音が鳴った後に周囲にいたゾンビの頭が吹っ飛んでいた。遅れて到着した冒険者達が見た光景は鞭を振るうたびに何十体ものゾンビが吹き飛んでいく姿だった。

 

エンリが持っている鞭は持ち手は一つだが、途中から四つに枝分かれしており、その一つ一つに魔法の付属効果が施されていた。また命中補正機能もあり鞭の射程距離内で方向があっていればレベル差がない相手ならば必中の効果を持っていた。

鞭を振るうと、一つからは炎が周囲に展開され、また違う場所では電撃が迸り、風の刃が襲い、氷の礫が飛出し、攻撃があたったゾンビの周りにいるゾンビも倒していく。

 

「エンリ ここは任せたよ。門から先へは行かせないで。」

 

「はい!!」

 

「アルシェさん。すぐに援護に行きますわね。」

 

「ム 必要ない。スケリトル・ドラゴンぐらいすぐに倒す。レイナの方こそ一人だと不安なら援護してあげるけど。」

 

「ふふふ 私にも援護は必要ないですわ。重爆と言われていた攻撃力の前には無意味だと証明してあげましょう。能力向上、流水加速。」

 

エンリが切り開いた道を三人が走り抜ける。その行動をみたスケリトル・ドラゴンは翼を広げて突進してきて、デス・ナイトも雄たけびをあげた。

 

レイナは槍を前に出してそのまま全速力で駆け出して一体のスケリトル・ドラゴンに突き刺さるとそのまま後方へと推し進めた。アルシェはフライを唱えて残った一体に向けて気を引くためにライトニングを放った。

 

「やっぱり効かないか。ならチェーロから手取り足取り愛情たっぷりに教わった必殺の一撃で仕留める。まずは足を止める!」

 

アルシェはスケリトル・ドラゴンの爪の攻撃をフライを使用して右に左に避けたり、杖で防御をしたりとマジック・キャスターにしては異様な身体能力の高さを披露していた。

 

「クリスタルランス、サモン・エンジェル・3rd 天使達よ、そのモンスターの動きを止めて!!」

 

アルシェが飛び立とうとしたスケリトル・ドラゴンに水晶の攻撃を放ち気をそらして、その間にアークエンジェル・フレイムを数体召喚して動きの邪魔をさせる。

 

「これで終わり、マキシマイズマジック チェイン・ドラゴン・ライトニング !!」

 

スケリトル・ドラゴンがアルシェから意識を離してアークエンジェル・フレイムに攻撃を加えると、パンッと手を叩いて第7位階の魔法を発動した。

すると龍のごとき白い雷撃がスケリトル・ドラゴンをのみ込むと重なり合っていた骨が一瞬でバラバラになり周辺にいたゾンビ達にも雷撃が襲いかかっていった。

それを見たアルシェは手を上にあげてこう叫ぶ

 

「完 全 勝 利 !!」

 

 

一方、レイナはスケリトル・ドラゴンに休みなく槍での連続攻撃を続けており、一回一回の攻撃で身体を構築している骨が大量に吹き飛んでいた。

 

「つまらないですわ。やっぱりハムスケさんとの模擬戦をしすぎたのかしら。」

 

レイナはこの二日間、エンリに指導している時以外はハムスケと訓練をしており、何度も顔を地面につけるような敗北も味わってきた。その度にチェーロに慰めてもらおうと抱き着いたり色々としてはいたが・・・。本人は自覚していないがハムスケとの訓練によりレベルも上がり装備に見合った動きもできるようになっていたのだ。

 

 

遅れて到着したアインザックとラケシルは事態の確認をしようと、呆然としていた冒険者に声をかけて状況を確認していた。四人の冒険者が飛び出して戦っていると聞いた二人は戦況を確認する為に外壁に上った。他の冒険者や衛兵もその後に続いていた。

 

 

「あのお嬢さんは先日、冒険者に登録したばかりだぞ!!」

 

外壁に上ると鞭を振ってゾンビ数対に立ち向かっているエンリを見つけて叫ぶ、助けに行こうとするがエンリが放っている鞭のスピードと立ち回りをみて練度の高さに唾を飲み込んだ。

 

エンリは最後の一体を仕留めると周囲を確認し門の正面に立ちふさがるように地面に一度鞭を一閃した。それはまるでここから先には通さないというように地面にラインが刻まれていた。

 

 

また、二人が激しい音がした方に顔を向けるとスケリトル・ドラゴンと対峙しているマジックキャスターと槍で攻撃している戦士の攻防が目に入る。

 

「第三位階!!それになんだあの白い雷撃は!!第五位階の龍雷に似ているが・・・なんと!スケリトル・ドラゴンを魔法で倒したのか!!!すごいぞアインザック!」

 

「こっちもすごいぞラケシル!!なんだあの目に見えない連続攻撃は!いま何回攻撃したんだ!」

 

スケリトル・ドラゴンと戦っていた二人に興奮していた二人だが、その中間地点で対峙している二つの陰に気が付くと表情を一遍させる。

 

「あれが報告にあった未知のアンデットか。クラルグラのメンバーをスクワイア・ゾンビにしたらしい。」

 

「なんて禍々しいオーラなんだ。ここにいるだけなのに恐怖で押しつぶされそうだ。あの二人とあそこで対峙しているのはこの間帝国から来た冒険者だよな。助けに行きたいが足が竦んで動かん。」

 

「ハハハ 俺もだラケシル。お互いに年は取りたくないものだな。ここは彼女達にかけるしかない。」

 

 

 

デス・ナイトと対峙しているチェーロは一人で考えを巡らしていた。

 

(三人共無事に倒せたようだね。でも・・・このデス・ナイトは自然発生したものではなくて誰かが召喚したものかな。魅了の効果が効いていないね。でも誰がなんの目的のために召喚したのか・・・監視されているものとみて奥の手は出さない方がいいかな。)

 

一つの結論に至るとアイテムボックスからナイフを二本を取り出して構えだす。元々拳で戦ってきたことから剣よりもナイフの方が間合いを取りやすいと言うこともあり武器を持つときはナイフを多用していた。

 

チェーロは地面を蹴ると瞬時にデス・ナイトの懐に入り込み右のナイフで顔面を一閃する。切られたデス・ナイトは一瞬たじろぐが、そのまま腕を振り上げて大剣をチェーロ目掛けて振り下ろした。振り下ろされてくる大剣をガントレッドで弾くと、その反動でデス・ナイトは後方にバランスを崩した。それを好機とみたチェーロはナイフ二本を胸に刺し付属されている電撃魔法を発動させる。電撃魔法が直撃すると黒く霧のようなものがデス・ナイトの身体から漏れ出す。

すると後方から歓声が鳴り響いた。チェーロとデス・ナイトとの戦いを観戦していた者たちが悪夢が去ったと喜んでいるようだった。

 

次の瞬間、歓声が悲鳴へと変わった。黒い霧がデス・ナイトの身体に戻り立ち上がってきたのである。冒険者達からは「もうお終いだ。」「あれは不死なのか。」「はやく住人に逃げるように指示を。」などの声が囁かれ始めていた。

 

チェーロは立ち上がったデス・ナイトに向かって走り出し、持っていたナイフの一本を顔面に向けて足蹴りする。デス・ナイトは持っていた盾でそれを防いだ。視界を塞ぐことに成功したチェーロはそのまま後方に回り込み首に残りのナイフを差し込み電撃魔法を打ち込む。すると今度こそ黒い霧が身体から出てきたデス・ナイトは砂になって消滅した。

 

外野からの歓声はなく、全員が驚愕に満ちた表情をしていた。見ていた外野からするとチェーロの姿が一瞬で消えて気が付いた時には後方で首にナイフを差し込んで雷撃魔法を打ち込んでいる姿だった。あまりの速さに視認することができなかったのである。

 

 

戦い終わって一息ついていたチェーロの元にアルシェ、レイナ、エンリが駆けつけて、その勢いのまま抱き着いてきた。アルシェが右側から抱き着き、エンリが左側から、チェーロよりも身長が高いレイナは後ろから抱え込むようにしていた。

 

その光景をみた人々はこの四人を【白百合】として呼び始め、その呼び名を気に入ったチェーロ以外から賛成の声が上がりチーム名として登録されることになる。

 

翌日、宿屋に組合からの使者がやってきて、冒険者組合に顔を出してほしいと言う通達があった。



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プレート昇格

冒険者名 白百合について
その美しい姿から花言葉の「清浄」「ピュア」「尊厳」「純潔」「堂々たる美」が由来。また、周りにアンデットの死体が転がっている中での一人一人の綺麗な立ち姿が「死者に捧げる花」の様に見えたとの意見もある。

チェーロが女性と認識されているため抱き合っている姿に百合百合しさを感じているわけではない。この世界に男の子は男の子同士、女性は女性同士でという概念があるのかが不明。


冒険者組合に呼び出されたチェーロ達は冒険者組合に入ると周りから一斉に視線を向けられた。その視線は畏怖の視線も複数あったが英雄をみるような尊敬の眼差しが多かった。チェーロ達に気付いた受付嬢により二階にある応接室まで案内された。

そこには冒険者組合長のプルトン・アインザックと魔術師組合長のテオ・ラケシルがソファーに座っており、四人はその対面に座るように促された。

 

「まずはお礼を言いたい。都市を救ってくれてありがとう。そして、君達四人をオリハルコン級に昇格することが決まった。本当はアデマンタイト級でもと思ったのだが・・・私の力不足だ。すまない。これがオリハルコンのプレートになる。受け取ってくれ。」

 

「ありがとうございます。」

 

「それであのアンデットについて直に戦った者から話を聞きたいのだが、気づいたこととかがあったら教えてほしい。」

 

「それよりも!!スケリトル・ドラゴンを倒したあの魔法についてききたい!!魔法に絶対的な耐性をもつ相手を魔法で倒すなんて!!」

 

「ヒッ!!」

 

「落ち着けラケシル。はぁ すまない。こいつも君達の戦いを見ていて興奮が収まらない様なんだ。もちろんここで聞いた能力については他言はしないと約束しよう。教えてはくれないだろうか。」

 

呼び出しに関してはランクの昇格と未知のアンデットに対する情報共有が目的の様だった。チェーロがデス・ナイトについて話そうとしたが、その前にラケシルが興奮した様子で身を乗り出してきた。

その様子に顔を向けられたアルシェは気持ち悪いという感じで身を捩りチェーロへと助けを求めるように寄りかかっていた。

 

「アルシェ大丈夫?」

 

「ふーー問題ない。少し驚いただけ。倒した魔法は第七位階のチェイン・ドラゴン・ライトニング。スケリトル・ドラゴンは第六位階までの耐性があるだけでそれ以上の位階であれば攻撃が効く。」

 

「なんと!!第七位階!!ぜひ!ぜひ!その魔法を教えてくれ!!」

 

「教えるのは無理。あれは私とチェーロの愛の結晶。」

 

「ではチェーロ殿も使えるのか!!私にもご教授いただきたい!!」

 

「申し訳ありませんが、ラケシル殿では第七位階を扱うに至っていないかと、まずは順を踏むのをお勧めします。」

 

「そんな!!なら「いい加減にしろラケシル!お前の為にこの場を設けたわけではないんだぞ!!」・・・・」

 

「申し訳ない。こいつも悪気があるわけではないんだ。未知のアンデットの件なんだが・・・・」

 

ラケシルが暴走して話が脱線してしまっていたが、アインザックは話を元に戻してアンデットの確認をし始める。チェーロはこの街に縛られることを嫌い召喚モンスターであることは伏せてデス・ナイトの能力について話し始めた。

 

話が終わった一行は余計な話に捕まる前にと足早に組合を後にし宿屋へと戻る。宿屋に戻ると、なにかしらの柵が生まれる前にと急いで出立の準備を開始した。

 

「お姉ちゃん。これはどうする?」

 

「ネム、薬草は必要になるから腰のベルトに巻いていなさい。チェーロさん、いまから出発するんですか?」

 

「そうだね。このままここにいたら戦力としてカウントされて容易に街から離れられなくなると思う。この街の人達に恨みはないけど守らないといけない義務もないからね。」

 

「チェーロ 怖かった。夢に出てきそう。今日は一人では寝れないかもしれないから抱きながら寝てほしい。子供は二人がいい。」

 

「アルシェさん。戯言を言っていないで手を動かしてください。」

 

「お姉ちゃんどうしたの?」

 

「私達もいっしょにねる?」

 

「私の天使達が純粋で優しくて可愛すぎて辛い。うん、今日は一緒に寝よう。」

 

荷物を纏め終えた一行は、馬車に乗りハムスケと門へと向かう。そして難なく門を突破すると、次の街へハムスケを急がした。



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ハムスケとの語り

呼び方について

・チェーロ
アルシェ、レイナ、クーデリカ、ウレイリカ、エンリ、ネム

・アルシェ
チェーロ、レイナ、天使達、エンリ、ネム

・レイナ
チェーロさん、アルシェさん、クーデリカ、ウレイリカ、エンリ、ネム

・エンリ
チェーロさん、アルシェさん、レイナさん、クーデリカちゃん、ウレイリカちゃん、ネム

・ネム
チェーロさん、アルシェさん、レイナさん、クーデリカちゃん、ウレイリカちゃん、お姉ちゃん


エ・ランテルを出立したチェーロ達はハムスケに急いでもらい一日でエ・ぺスペルの宿屋へと到着していた。

 

「ここまでくれば当分は大丈夫かな。ハムスケに感謝しないとね。」

 

「ええ でもまさかオリハルコンまで昇格するとは思いませんでしたわ。」

 

「私なんかがいいんでしょうか。冒険者になったばかりですし、倒したのはゾンビだけですよ。絶対に過大評価ですよこれ。」

 

「心配ない。あの口ぶりからして私達の戦っている姿を見ているはずだから、それを見て判断しているはず。でもアデマンタイトでないのが残念。」

 

部屋を3部屋確保し各自荷物を纏めて馬車から降りる。ちなみにチェーロが一人部屋である。すでに幼子三人は眠そうでうつらうつらしていた。

 

「「お姉ちゃん。寝よーーーーー。」」

 

「可愛い天使達が呼んでいる。チェーロも来る?」

 

「今回は遠慮しておこうかな。姉妹水入らずの機会を邪魔したくないし。ほら、待ってるから早く行ってあげて。」

 

「わかった。じゃあ次回は必ず。二人も喜ぶから。」

 

「チェーロさんお優しいのはわかりますが、アルシェさんは本気ですわよ。ならアルシェさんの次は私とも寝てくださいね。では私もこれで、おやすみなさい。ネムも船を漕いでいますしエンリも行きますわよ。」

 

「待ってくださいレイナさん。ネムは私が運びますよ。チェーロさんもおやすみなさい。」

 

「俺はハムスケの毛繕いをしてあげてから寝ようかな。」

 

「本当でござるか姫!!!嬉しいでござるよ!」

 

アルシェはクーデリカとウレイリカに両脇から抱き着かれて嬉しそうに部屋へと向かって行った。レイナはチェーロの対応に溜息を吐きつつもネムを抱きかかえてエンリと一緒に部屋へと向かう。残されたチェーロは感謝の意味も込めて井戸で水を組むとハムスケの身体を拭き始めた。ハムスケは嬉しそうにチェーロに身を任せていた。

 

「これからどこに向かうのでござるか?」

 

「ん?不安?あの森が恋しいなら戻っても大丈夫だよ。」

 

「不安などないでござるよ。某は姫に忠誠を誓った身でござる故。しかしあの幼子三人に長旅は酷だと思うのでござる。」

 

「そうだね。王都でいい場所があれば一番いいのかなとは考えているけど。最悪、あの森の中に家でも建ててもいいかなとは思っているんだ。そうするとネム達が人間社会から隔絶されちゃうのが難点なんだよね。あとはスレイン法国か竜王国か・・・。」

 

「未知の場所に行くというのもワクワクするでござる。某も姫を見習って番いを見つけて種の存続に努めたいと思うでござるよ。」

 

「番いって・・・。あの三人とはそういう関係ではないよ。エンリにはカルネ村救済という目的があるし、レイナは呪いを解呪したお礼に縛られているだけ。アルシェは妹達と安息の地を探しているからね。俺だけだよ目的もなくフラフラしているのは・・・(俺は人外で歳を取らないし、いつまでも一緒にはいることはできないよ。ユニや白蘭も来るって言っていたけどいつになるのかな。この世界で異分子の俺がどこまで自由に行動してもいいのかもわからないんだよね。)」

 

「姫は難しく考えすぎな気がするでござるよ。雄の本能のままに行動するのも時には必要だと思うでござる。某も含めて、どんなことになろうと姫を責めないでござるよ。」

 

ハムスケがチェーロと二人っきりになる機会がなかったため、ハムスケはこの機会にとチェーロに色々と質問をしていた。ハムスケはチェーロの答えたことに不満げではあったが毛繕いとゆっくり話せたことが嬉しかったのかお礼を言って馬小屋に向かって行った。




ツナはこの世界に対して壁を作っています。
元の世界での自身が背負ってきた役割の重要性から、この世界で好き勝手に動いた場合の与えてしまうであろう影響。人外で不老不死な為、いつかは別れがあること。という点がネックになっています。


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その頃の〇〇では

~エ・ランテル~

 

「おい 聞いたか! 白百合が旅たったらしいぞ。」

 

「まじかーー。俺、アルシェちゃん狙ってたのに!!」

 

「俺はエンリちゃんだ!!あの鞭でシバかれたい。」

 

「変態がいる!俺はもちろんチェーロちゃん!あの一見するとクールな中に見える笑顔が堪らなく可愛いんだ!!できれば踏んでほしい!」

 

 

「あーー男っていやだいやだ。」

 

「フ ブリタだってレイナちゃんにメロメロだっただろ。」

 

「あれは同じ戦士で同性として尊敬していただけよ。貴方達みたいな肉欲をこもった目で見てはいないわ。」

 

 

 

 

 

「良かったのかアインザック。この街の最高戦力だろ。」

 

「冒険者を縛り付けることはできないからな。反感されて喧嘩別れをするよりも、いい印象のまま旅立ってもらって戻ってくる確率にかけたほうがいい。」

 

 

 

 

 

 

「ガジッちゃん大丈夫~?せっかく召喚したモンスターが倒されちゃったけど。」

 

「問題ない。こいつがあればデス・ナイトは一日一体、スケリトル・ドラゴンは二体召喚できるのでな。感謝するぞクレマンティーヌ。一週間後だ。一週間後に死の螺旋を行う!!」

 

「そう?なら期待してるよ。私はその混乱に乗じて逃げるけど悪く思わないでね。」

 

「構わん!なんなら追手の風化聖典の連中も始末してやるわ!」

 

「ウフ 期待しとく(無理だよガジッちゃん。デス・ナイトくらいなら漆黒聖典のメンバーなら簡単に倒せるはず。風化聖典の目的も私ではなくてこのアイテムだから、混乱に乗じてこのアイテムを装備したこの道具を攫いに来るはず。)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~カルネ村~

 

「くそ!あの村長め!」

 

「あなた、エンリに期待しましょ。バレアレ家のンフィーレアくんはエンリのことが好きみたいだから、ンフィーレアくんがエンリに告白できれば村のこともなんとかなるかもしれないわ。」

 

「俺はあんなナヨナヨした男は認めん!!それに、それではエンリを村のために売ったみたいではないか!」

 

「そうね。エンリがンフィーレアくんに向けている感情は只の友達って感じみたいだし。こればかりは強制できないわね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ナザリック~

 

24時を越えた玉座の間では、モモンガが現状に内心狼狽えていた。

 

 強制ログアウトされなかった上、ゲームでは表示されたアイコンやコンソール類の表示が一切出なくなったのだ。これでは通常のログアウトも出来ない。更にチャットもGMコールも使えない状況に陥り、途方にくれ唸りながら席より立ち上がる。

 

「んんっ?!(一体どういうことだぁぁ!)」

 

「――どうかなさいましたか、モモンガ様?」

 

「セバスよ、ナザリックの外、地表へと出て周辺の状況を確認せよ」

 

「承知いたしました、モモンガ様」

 

 

「アルベドよ。至急、第六階層の闘技場へ、第四、第八を除く各階層守護者へ来るように伝えよ。集合時間は、今から一時間後だ」

 

「畏まりました」



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王都にて

そのまま王都へと到着したチェーロ達一行は宿屋にエンリとハムスケを残して目ぼしい依頼の確認や討伐したモンスターの部位を換金しに冒険者組合に顔を出していた。

 

「良い任務はありませんでしたわね。」

 

「貴族や商人の護衛任務ならあるけど、いまは関わりたくない。私達は女性だけのチームだし貴族に目をつけられる可能性もある。」

 

「そうだね。受けるならハムスケもいるからモンスター討伐や採取系が理想かな。一度宿屋に戻ってからみんなでご飯を食べに出かけようか。(女性だけって・・・うん。スルーしよう。)」

 

「でしたら貴族も来るお店よりも組合が運営しているあちらのお店の方がよろしいですわね。」

 

「ちょっと騒がしいみたいだけど、綺麗そうだから・・・!!!」

 

「どうしたのアルシェ?顔色悪いけど大丈夫?ハムスケも一緒に食べることができたら嬉しいんだけど。口で説明するよりもハムスケと一緒に来て聞いてみようか。」

 

良い依頼は朝一になくなってしまったようで、残っていたのは貴族などの護衛や来た道を戻るような商人の護衛などで、チェーロ達は余計なトラブルになりそうなことには関わりたくないと考えて王都観光と食事をすることにした。王都の冒険者組合は冒険者と貴族達が衝突しないように冒険者達ご用達の飲食店と連結していた。

 

アルシェは妹達でも大丈夫かとチラッと内装を確認し、問題ないと判断するが、奥の一角に座っている集団を見るとビクッと肩を震わせて顔色を悪くしていた。チェーロとレイナはアルシェのタレントに関して聞いており、その変化にも気づいていたが、この場で聞くのはまずいと判断し足早に外へと移動した。

 

「アルシェさん大丈夫ですか?あの奥にいた冒険者達ですわよね。あれは青の薔薇かと・・・アデマンタイト級冒険者達ですわね。」

 

「あれがアデマンタイト級ね。魔法詠唱者らしきマントにマスクの小さい子もいたけどその子かな?・・・・アルシェ歩ける?」

 

「大丈夫。そう、あれが青の薔薇。なら納得。あ!やっぱり歩けない。チェーロお姫様抱っこでお願い!!」

 

「大丈夫そうですわね。俵抱きでよければ私が運びますわよ?」

 

「遠慮する。」

 

「ハハハ それで、なにが納得なの?」

 

「ん・・・。あのマスクの女の子。第五位階魔法の使い手。でもオーラが人間のものではなかった。たぶん亜人だから顔を隠しているんだと思う。あと白い鎧の女の人も第五位階魔法が使えると思う。」

 

「たしか・・・イビルアイと言ったかしら。陛下が興味を示していたと記憶にありますわ。白いのはリーダーのラキュースですわね。そちらは蘇生魔法が使用でき剣の腕も相当な神官戦士だったかと。」

 

「さすがレイナさん詳しいね。亜人の可能性があるんだ。差別とか偏見がないいいチームなのかな。ちょっとお話してみたいなー。でもアルシェの体調も心配だし、違うお店にする?」

 

「私なら大丈夫。いきなりで驚いただけ。いまの私はレベルもあがったし第七位階も使えるから意識していれば問題ない。あとはチェーロが隣にいてくれれば完璧。」

 

「意識してなくても大丈夫にならないといけないのですよ?でも訓練相手には丁度いいかもしれませんわね。」

 

「レベルと経験が追い付いてないのかもね。俺でいいならアルシェやレイナが望む限りは隣にいるよ。」

 

アルシェが見て感じたことを話し始めると、レイナがその情報に補足する形で説明を始める。やはり帝国四騎士ともなると敵対国の主要人物は頭に入っているようで、チェーロは関心したように頷きながら聞いていた。

またイビルアイが亜人の可能性があり、その亜人を仲間にしている青の薔薇とは友好的な関係を築きたいなと好印象を受けたチェーロだが、レイナとアルシェは興味がないらしく経験を積む相手として話を進めていた。

 

 

 

一方、飲食店にいた青の薔薇はというと

 

「おい。あの冒険者、たしかこの前野宿していたやつだったよな。」

 

「ええ。三人で一チームなのかしら。でもあの槍を持った女の人はどこかで見たことがあるような気もするのよね。ねぇイビルアイどこだったかしら?」

 

「私が知るか。だがあの冒険者達が持っていたアイテムは中々のものだぞ。下手したらラキュースの魔剣と同等かそれ以上かもしれん。それにあの魔法詠唱者、私を見て目を見開いて狼狽えていた。なんらかのタレントを使用した可能性が高い。」

 

「それなら接触して聞いてみるしかない。私が身体に聞くのが一番早い。」

 

「私も行く。あの冒険者が男の子である可能性は捨てきれていない。他の二人はティアが相手していい。」

 

「確かめるなら二人一緒でやるべき。」

 

「身体に聞くって・・・はぁ いきなり襲うのはやめなさい。でもイビルアイの秘密に気が付いた可能性があるなら接触した方がよさそうね。ここで食事をしてくれたら嬉しいのだけど。」

 

「あの冒険者からは童貞の匂いがしないんだよなーー。卒業済みか女かのどっちかだとは思うが。卒業済みだった場合、相手はあの二人のどっちかの可能性があるな。」

 

白熱していくガガーランとティア、ティナの会話に対してラキュースは頭を抱えて、イビルアイは無関心を決め込んでいた。




補足
アルシェのタレントはレベルが上がったことにより変化しています


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接触と動き始める人達

チェーロ達三人は宿屋に戻って居残り組と合流する。

そして七人で食事をするために、あの場所へと向かっていた。ハムスタはお店に入れなかったため、近くにある馬小屋で別途食事を用意してもらうことになった。

 

「ハムスケはざんねんだね。」

 

「いっしょにごはんを食べたかった。」

 

「クーデとウレイは優しいね。」

 

ハムスケが残ったことに対して落ち込んでいた二人の頭をアルシェは笑顔で撫でており、チェーロは姉妹仲良くいい光景だと感じていた。しかし、小さく"私の妹は天使私の妹は天使"と呟いていたのを近くにいたレイナには聞こえており溜息を吐かれていた。

 

「お姉ちゃん。王都ってすごいね!!あれがお城だよね!?近くで見てみたいなーー」

 

「ちょっとネム。落ち着いて!手を離しちゃダメだからね。王都だから貴族とかも多いはずよ。・・・お城は、中に入らなければ大丈夫・・・かな?」

 

ネムは王都に来てからそわそわとしており、お城が見えると指をさしながら目をキラキラとさせてエンリに近くに行きたいとねだっていた。エンリはネムの手をギュッと握ってはぐれないようにと周りに貴族はいないか注意を払ったいた。

 

「なら食事の後に散歩がてらみんなで見に行ってみようか?」

 

「大丈夫ですわ。」

 

「私もそれでいい。」

 

「「はーい!!」」

 

「やったーー!!」

 

「いいんですか!?」

 

「大丈夫だよ。お城の周りならいきなり絡んでくる奴らもいないだろうし。でも路地裏や人通りが少ない場所、馬車には注意することが条件かな。」

 

チェーロの発言に驚きを隠せないエンリだが、ネムが嬉しそうにしていることと、自身もお城を近くで見てみたかったためチェーロが出した条件で甘えることにした。

 

 

一行がお店に到着するが、ちょうど食事時ということもあり席がほとんど埋まっていた。

 

「さっき見たときに席を確保しとくべきだった。」

 

「そうですわね。ここまで繁盛するお店だとは予想外でした。」

 

「他のお店を探して「あの~」はい?」

 

「お話中申し訳ございません。あちらのデーブルのお客様が相席でも良かったらとご提案くださってまして。」

 

違うお店を探そうとしたチェーロ達だが、困った顔をした店員が声をかけてきた。その内容は一番奥に陣取っていた青の薔薇の面々が相席を提案してきたということだった。店員も突然の青の薔薇の行動に困惑を隠しきれていない。

 

どうしようか?と大人組が互いの目を見ていると、クゥーと可愛らしい音が聞こえてきた。音の方を向くとクーデリカとウレイリカがお腹を押さえながら恥ずかしそうにしており、それを見たアルシェはグハァと言いながら鼻を押さえて座り込みレイナに頭を叩かれていた。チェーロは二人の頭を撫でながら、お言葉に甘えさせていただきますと青の薔薇からの提案を受けることにした。

 

「レイナ痛い。なんで叩くの?」

 

「あなたがバカな行動をしているからですわ。二人が可愛いのは認めますが時と場所を考えなさい。」

 

「ハハハ ・・・お姉ちゃんはあんな行動しないでね?」

 

「大丈夫よネム。アルシェさんは妹さんが絡むと可笑しな行動をしますけどなにかあるんですか?」

 

「んー帝国にいた時にはこんな余裕がなかったみたいだから、その反動じゃないかな?俺も全部は知らないけど結構苦労したみたいだよ。」

 

「「おねえちゃん達はやく行こーーー」」

 

「それもこれもチェーロと出会ってから変わった。感謝してる。・・・ここが天国か。」

 

クーデリカとウレイリカに腕を組まれてはやくと言われながら進むアルシェを先頭に青の薔薇がいるテーブルに進むチェーロ達、青の薔薇の面々、特にラキュースはそのやり取りを笑顔で見ておりチェーロ達が近づくと

 

「いきなり相席の提案なんかしてごめんなさいね。不審がられても嫌だから軽く自己紹介をさせてもらいますね。私達は青の薔薇っていう冒険者で私はラキュース、こっちのごついのガガーラン、そっちのちっこい仮面がイビルアイで、そのイビルアイの左右に座っているのがティアとティナよ。よろしくね。」

 

「アダマンタイト級の青の薔薇の皆さんですよね?今回は相席のご提案ありがとうございます。私達はオリハルコン級冒険者で白百合といいます。私はチェーロ、こちらの片目が隠れているのがレイナ、杖を持っているのがアルシェ、アルシェの腕に抱きついてのがクーデリカとウレイリカ、そっちにいるのがエンリと、エンリに抱き着いてのがネムです。」

 

ラキュースが笑顔を崩さずにメンバーの紹介をし始めたため、チェーロも笑顔でメンバーの紹介をし始める。お互いに笑顔で握手をすると席に座り注文をお願いした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王城にて

「ガゼフよ。万全な状態ではなく申し訳ないが頼んだぞ。」

 

「は!!必ずや襲撃に遭っている村々を救ってみせます。」

 

一人の戦士が死地へと出発し

 

 

 

「クライム。申し訳ないのだけれど、急いでラキュースを呼んできてもらってもいいかしら?」

 

「かしこまりました。ラナー様。」

 

稀代の策士が黒い笑みを浮かべ

 

 

 

王都某所にて

 

「はぁはぁ このまま逃げ切れれば。」

 

 

「逃すな!!大事な商品だ!逃したら俺達がタダじゃ済まないぞ!」

 

 

王都の闇から逃げ出す女性の姿があった。




ラキュースと話す際のチェーロの一人称が私になっていますが、こちらは現実世界での癖と考えてください。
身内内では俺ですが、ボスになってからは仕事中や緊張感や警戒心を出すときには私と言っています。


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訪れる混沌

「チェーロに一つ聞きたいことがある。」

 

「ずばりチェーロは男の子?女の子?」

 

「ちょっと二人とも、いきなり失礼でしょ!!」

 

食事を終えてお茶を飲んでいたチェーロ達にティアとティナが質問を投げかけてきた。どうやらずっと気になっていたようではあるが、食事の邪魔をするつもりはなかったらしく食べ終わるまで待ってくれてはいたようだ。

 

「ん?・・・・ん~~~どっちだろうね。秘密にしとこっかな。」

 

「つまり身体にきいて確かめろということと理解した。」

 

「今日は3P、チェーロの幸せ者め。」

 

チェーロは素直に答えても碌な事にはならないという超直感の警報に従いとびっきりの笑顔で答えをはぐらかした。

 

「それは許さない。」

 

「さすがに・・・許容できませんわね。」

 

「私もダメだと思います!」

 

「三人とも落ち着いて。。大丈夫だから。ね?」

 

「ティアとティナもそれくらいにしなさい。まったくもう・・・ごめんなさいね。でもいくつかききたいことがあるのは確かなの。よかったら同じ冒険者としての交流として一人につき一つずつ質問し合わない?」

 

「無理な質問には答えませんよ?」

 

チェーロの笑顔を正面から見たティアとティナは興奮して、鼻息荒く身を乗り出してチェーロに跳びかかろうとしていたが、アルシェが杖をレイナが槍をエンリが鞭を構えてそれを阻止せんと立ち上がっていた。チェーロはそんな三人に対して苦笑いを浮かべながらも大丈夫だと手で制し、ラキュースも二人を制しながら謝罪はしたが、自身も目をキラキラとさせて交流の為にもっとお話しましょうと提案をしてきた。

 

「「はい!!」」

 

「どうしたのクーデリカちゃん、ウレイリカちゃん?」

 

「「どうしたらガガーランさんみたいに、そんなに大きくなれますか?」」

 

「お!俺みたいになりたいのか?見る目があるじゃないか!!そうだなー。まずは筋トレと肉を沢山食べて、童貞を沢山食べる事だな。ガッハッハ!」

 

元気よく手を挙げたクーデリカとウレイリカはガガーランの足元に駆けていき、その巨体を見上げて質問を投げかけた。その問いに一同は唖然としていたが、ガガーランは嬉しそうに破顔して二人を持ち上げながらその質問に答える。その後、その場は混沌に支配された。

 

「ブッハァァーーーーーーッ」

 

「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーアルシェさん!!大変です!アルシェさんが白目を剥いて痙攣してます!!」

 

「ッチ 汚い・・・・。マントと仮面が・・・・・」

 

「ちょっとガガーラン!!子供になんてことを教えるのよ!!」

 

「そうだそうだ。鬼ボスもっと言え。そしてまずはお姉さんと良い事をしてからと付け加えるべき。美幼女の初物は渡さない。なんなら全員と8Pでも私は可能。」

 

「羨ましい。・・・チェーロはショタだよね?ね?」

 

「お姉ちゃん。童貞ってなに?」

 

「ネムはまだ知らなくてもいいことですわ。クーデリカとウレイリカもさっきのことは忘れなさい。特にそこの忍者からは離れましょうか。」

 

「ティア!!ティナも余計に混乱するから今は我慢して!!」

 

そのやり取りを見ていたアルシェは成長した姿を想像したのか飲みかけていた水を盛大に吹き出してひっくり返り。

目の前に座っていたイビルアイに噴出された水が盛大にかかり、ワナワナと震え。

横に座っていたエンリはアルシェを心配し介抱しだす。

ラキュースがガガーランに注意をするが、それにティアが便乗しガガーランからクーデリカとウレイリカを回収しようと動き出すが、それよりも速くレイナが二人とネムを回収しティアから見えないよう背中に隠す。

ティナがドサクサに紛れてチェーロに抱き着こうとするが、ラキュースに猫のように首根っこを掴まれていた。

 

「イビルアイさん大丈夫ですか?アルシェがすいません。」

 

「いや、気にするな。あれは・・・こっちの発言も悪い。」

 

「よければマントと仮面を綺麗に洗濯しますけど。」

 

チェーロはその混沌の中、イビルアイの傍まで移動し、ハンカチを差し出しながら頭を下げる。イビルアイもわざとではないとわかっているため謝罪とハンカチを受け取り濡れている部分を拭きだした。

チェーロは笑顔を絶やさずにマントと仮面を預かりますと口にするが、その発言をきいた他の青の薔薇のメンバー全員の視線がチェーロに突き刺さった。




連載まではいかないけど思いついた小話

・刀使ノ巫女とのクロスオーバー
※場面場面

「ふんふふっふ~ん♪」

燕結芽はある人物を探しながら広い屋敷を歩き回っていた。

「どこかなどこかな~~♪今日は外出予定は無いって言ってたし、屋敷にはいるはずなんだよね~~。あっ!!」

色々な部屋の扉を開けては閉め開けては閉めを繰り返していた結芽だが、目的の人物が外で談笑している姿を見つけた。

「よっと!!」

窓を開くと縁に足をかけて勢いよく目的の人物の真上まで跳躍した。愛刀を抜刀し重力に逆らわずに振り落すが、

「あぁ~~~~また防がれた!!ツナおにーさん。そのマント禁止!!」

「おはよう結芽。このマントも俺の武器の一つだから、それに今回は避けてたりしたらユニが危なかったからね。」

「おはようございます。結芽ちゃん。体調はもう良いのですか?」

「あ!ユニおねーさんに白い人だ!うん。もう大丈夫だよ。いまはリハビリにツナおにーさんに遊んでもらっているの!」

「そっちのγくんは怒り沸騰みたいだよ。」

「おいボンゴレ!!姫に傷ができていたらどうするつもりだったんだ!!」

「ちょっとγ落ち着いて。だからテーブル全体を覆えるようにマントを出したんだから。結芽逃げるよ!」

「うわっ!!逃げろ~~~。γのおじちゃんが怒った~アハハ。」

ツナが一世のマントで結芽の攻撃を防いだ。いつもなら結芽が満足するまでガントレットで弾くか受け止めるかするのだが、大空組でお茶会をしている最中だったようでユニに配慮した形をとっていた。
ユニは元気になった結芽を見て嬉しそうに笑い。白蘭も名前を呼んでくれないことに肩を落とすが、ニコニコと笑ってはいた。しかしユニの護衛としていたγは許せないらしくツナと結芽に向かって怒鳴りはじめる。
ツナは結芽の手を取って逃げるよと言い、結芽も嬉しそうにγとの鬼ゴッコを開始した。


~~~~~~~~~~~


「おもしろうそ~~~う♪私もまぜて~~~♪アハハハハハハハハハ♪」

「来たの?いいよ。今日も噛み殺してあげる。」

「どきなさい燕結芽。あの鳥はぼくの獲物ですよ。」

「骸おにーさんも恭弥おにーさんも二人だけでずるいよ~。私とも遊んでよね!!!」


~~~~~~~~~~


「ヴォオオオオオオオオオオオオィイイイイイイイイイイイイ  遊びに来てやったぞーー。」

「あ!!サメの人だ!ちょっと遊んでくる~~」


~~~~~~~~~~~~~


「結芽ちゃんちょっと来て・・・・はい アーン」

「お菓子!!ハムッ」

「結芽ちゃんベリーキュートです。」

「ちょっとツンツンしないでよ~~」

「こっちにあるケーキも美味しいよ。」

「食べる!!!・・・・・撫でるな~~~~。」


~~~~~~~~~~~~~


結芽には幸せになってほしいという願望を募らせて救済するなら、やっぱり山本の時の白蘭かな~という想像を。
でも余計な男性キャラを出して恋愛描写なんていれたくないですし、もしも書くならツナ女体化の他のキャラは必要以上に絡まないようにかなーー。
とりあずは他のを完結まで書いてからのお話ですかね。


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接触

「その必要はない。《クリーン/清潔》」

 

「戦闘系だけじゃなくて生活に役立つ魔法も所得しているんですね。ちなみに第何位階まで使用できるんですか?」

 

「ちょっと待って!チェーロさん、その質問にはお答えすることはできません。」

 

「フフ そうですよね。じゃあ質問タイムはここまでにしときましょう。行くよレイナ、エンリ・・・アルシェは、まだ回復しなさそうだね。」

 

エンリはネムと手を繋いで、レイナはクーデリカとウレイリカの手を握り入口へと向かう。チェーロは気絶しているアルシェをお姫様抱っこをして入口へと向かおうとするが、何かを思い出したように立ち止まり、イビルアイに耳打ちした。

 

「アンデットってことは仲間も知っているみたいですね。なら安心です。」

 

「お前!!」

 

「では蒼の薔薇のみなさん。また今度お会いしましょう。」

 

耳打ちされたイビルアイはチェーロに掴みかかろうとするが、チェーロはヒラリと躱してすぐにお店の外へと移動した。

 

「どうしたイビルアイ?」

 

「ここでは話せん。あいつを追いたいが・・・くそ!宿に移動するぞ。」

 

「「私達は尾行してくる。明後日の朝までには帰ってくる。」」

 

「やめなさい。とりあえず全員で宿に戻るわよ。イビルアイが言われたことも気になるし、追わないってことは敵対行動をしそうってわけじゃないんでしょ。」

 

「ああ、それなら有無を言わずに向こうから攻撃してくるはずだ。」

 

ティアとティナはチェーロ達の後を追いたそうにしていたが、ラキュースの指示もあり全員で宿へと移動する。

 

「それで、何を言われたの?」

 

「私のことをアンデットだと見抜いていた。」

 

「は!?そりゃあ、つまりあれか!討伐するぞってことか?」

 

「いや、お前たちも私がアンデットだと知って行動していると判断したようで、なら安心ですねって言っていたから、討伐をする気はないんだろう。」

 

「つまりチェーロさん達も亜人との共存に理解を示しているのかしら!!それならばぜひまたお話したいわ!」

 

「ならいますぐにでも宿に突撃するべき。」

 

「イビルアイの仮面の下も気になっていたからチェーロの裸と交換条件にすればいい。」

 

「だがよラキュース。イビルアイがアンデットだって気づいたってのは誰かのタレントが原因なんだろ?」

 

「それなら最初に動揺していたアルシェという小娘のタレントだろう。あの動揺はアンデットだって気づいたことによるものだ。」

 

「そうね。それなら納得いくわ。アンデット系を探知するタレントかしら。」

 

「アイテムの効果を無効化するものかもしれん。探知系ならこの指輪で対策をしているしな。いままでの似た様なタレント持ちでもこの指輪の効果を破ったものはいない。」

 

「アイテムの無効化なら今度の作戦に力をかしてほしい。」

 

「そのままチームで仲良くなってムフフな展開希望。」

 

「ん~たしかにいたら便利だが、戦闘面では役に立ちそうもないぞ。どう高く見積もっても第三位階までしか使えないだろう。それよりもレイナという剣士なんだがよ。あいつ帝国の四騎士で見た事があるような気がするんだよ。あの重爆に似ていないか。」

 

「私も誰かに似ているとは思ってはいたけど、さすがに帝国四騎士はないと思うのよ。重爆って四騎士でも最大の攻撃力を誇るって話でしょ。皇帝が手放さないと思うのよね。」

 

「それもそうか。ん?」

 

蒼の薔薇の面々がチェーロ達のことを話し合っていると部屋の扉がノックされた。

 

「お!童貞じゃないか!宿に訪ねに来たってことは俺に喰われに来たってことでいいんだよな。安心しろよ。すぐに終わる。」

 

「いえ違います。ラナー様がラキュース様にお城に来てほしいと言うことを伝えに参りました。今回はドレスではなくていいそうです。私は宿の外で待っておりますので、準備が出来ましたらお声をかけてください。」

 

「ラナーが?なにかしら。ちょっと行ってくるわね。」

 

「「私達もチェーロ達が泊まっている宿を探してくる。」」

 

「俺は・・・ちょっと飲み直してくるかな。イビルアイも来るか?」

 

「私は・・・ティナ達の方に着いていこうかと思う。」

 

「「「「え!?」」」」

 

「イビルアイがデレた?」

 

「まさかの発情期?」

 

「違う!ただあいつが言っていた安心の意味が気になるだけだ。」

 

「まあイビルアイも一緒ならいいかしら。くれぐれも騒ぎになるようなことはしないようにね。じゃあ私はラナーにあってくるから。」

 

いつもなら興味を示さないイビルアイが着いてくることに他のメンバーは驚くがラキュースからしたらストッパー役がいることに安心したのか、笑顔で城に向かって行った。

 

 

〜〜〜〜〜〜白百合side〜〜〜〜〜〜

 

「お待たせハムスケ。結局入れなくてごめんね。」

 

「某の偉大なる姿ならしょうがないのでござるよ。アルシェ殿はどうしたのでござるか?」

 

「ずっと一人だと寂しいだろうし、入れるお店を探しておくよ。ちょっと色々あってね。」

 

「・・・・ハムスケさん。ウレイリカとクーデリカをお願いします。二人ともちゃんと掴まっているんですよ?」

 

「「はーい!」」

 

「心得たでござるよ。」

 

「ネムはどうする?」

 

「私は歩こうかな。」

 

「チェーロさんちょっと失礼。・・・アルシェさん。起きているのはわかっていますわ。いますぐに起きないとあの忍者の前に投げ捨てますわよ。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ン・・・・・・・あれは夢?そしてこれが噂のお持ち帰り、まさかの送り狼・・・・レイナ痛い!!わかった!自分で歩く!!」

 

馬車置き場で食事をしていたハムスケとも合流し宿へと戻る一行。ハムスケは抱きかかえられているアルシェを心配そうに見ていたが、レイナが違和感を感じてアルシェだけに聞こえるように耳元でなにかを囁く。するとアルシェが少し身動ぎをしたかと思うとゆっくりと目を開きチェーロの首に腕を回して顔を近づけていくが、途中でレイナから頭を叩かれて涙目になりながら自分で歩き出した。

 

「「お姉ちゃん大丈夫?」」

 

「大丈夫。でもレイナは酷い。少しは優しくしてほしい。」

 

「さっきのはアルシェさんが悪いかと。私もされてみたいな。」

 

「お姉ちゃんなら頼んだらしてくれてると思うよ。」

 

「確かにエンリならまだ・・・やっぱり全体的に華奢な方がいいのでしょうか。そしたら私も・・・・」

 

「ム?」

 

「キャァッ!」

 

「っと!大丈夫ですか?」

 

アルシェがレイナに抗議をしながらチェーロからは少し離れて女四人で固まって会話を続けていた、ハムスケの上からは姉を心配している妹たち二人の姿もあり、チェーロはその平和な光景に癒されながら超直感の赴くままにハムスケの横に移動する。すると横道から飛び出してきた女性がハムスケの毛に衝突してきた。チェーロは女性が地面に倒れこむ前に抱き寄せて身体を支える。

 

「ありがとうございます。ごめんなさい。急いでいるのこれで失礼します。・・・いッ。」

 

「足首を捻ったみたいですね。ハムスケ、この人も背中に乗せてあげて、目的地まで連れてってあげよう。」

 

「ウム。某は乗り物ではないのでござるが・・姫の頼みであるならば致し方ない。」

 

「いえ、私は・・・・」

 

「落ちないようにちゃんとつかんだほうがいいよ。」

 

「からだぜんたいでかかえこむのがコツなのです。」

 

女性は先を急ごうとしたが、足首を捻挫してしまったらしくチェーロから有無を言わさずにハムスケの上に乗せられて、クーデリカとウレイリカからハムスケの乗り方を教わっていた。

 

「見つけたぞ!!おい!!ちょっと待てや!!コラ!」

 

「その女を勝手に連れてかれては困るんだよ!!」

 

「痛い目にあいたくなければ大人しく言うことを聞くんだな!」

 

「俺たちを!!誰だと思ってやがる!!ヒッなんでこんな街中にこんな魔獣がいるんだよ!」

 

「五月蠅い喚くな。お前たちは大人しく引っ込んでいろ。お姉さん方、失礼いたしました。そちらの女性はうちの従業員でしてね。職場から逃げ出したんですよ。これから大事な仕事があるんでこちらに引き渡していただくことはできませんかね?」

 

「助けてくださいっ! 捕まったら私は、殺されてしまいますっ!」

 

「ツアレは黙っていろ!!」

 

「お姉さん方は冒険者ですよね。こちらとしては大貴族の方からも支援をしていただいているお店になりまして、下手なことには関わらない方がいいかと思いますが。小さい御嬢さんもおりますし、この意味わかってもらえますかね。」

 

すると同じ横道から数人の男達が飛び出してきてチェーロ達を囲みだす。最初は五月蠅く喚いていたがハムスケのことが視界に入ると怯えたように萎縮し始めた。一人身嗜みがきちんとした黒服の男のみが平然としながら話しかけてきた。

 

元々、警戒をしていたアルシェ達ではあったが、小さいクーデリカとウレイリカ、ネムを見ながら小さい御嬢さんという発言を聞いた瞬間に各々の武器に手をかけていた。またエンリはネムをハムスケに乗せることにより危険にも対応できるように行動していた。

 

「はぁ 殺されると聞いて、はい、そうですか。とは言えないかな。初対面とはいえ、そんな泣きながら助けを求められたらね。皆、いい?」

 

「私は大丈夫。それよりもさっきの発言は許さない。」

 

「私はチェーロさんの決めたことに口を出す気はありませんわ。」

 

「私も大丈夫です。このままツアレさんを引き渡したら後悔しちゃいそうですし。」

 

「某に刃向うとはいい度胸なのでござる。身の程を思い知るがいいでござるよ!」

 

「「ハムスケ GO!!」」

 

「そうですか。今は退きますが・・後悔のないようにお過ごしください。」

 

チェーロは溜息を吐きながらもツアレを守ることに決めて、それをアルシェやレイナ、エンリは了承した。すると黒服の男は一言だけ言葉を残して薄気味悪い笑みを浮かべながら来た道を引き返していった。

 

「ありがとうございます。それと巻き込んでしまいごめんなさい。」

 

「とりあえず話は宿屋に帰ってから聞こうかな。四人はそのままハムスケの上に、ハムスケは付けられていないか確認して。三人も周りには警戒してね。」



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王都の闇①

~~~side???~~~

 

「俺達八本指に逆らった奴がいるというのは本当か?」

 

「わたしの所にくる予定だったツアレちゃんがバカたちのせいで逃げ出しちゃってね。それを冒険者が保護しちゃったみたいなのよ。もちろんバカたちは処分したわよ。」

 

「つまり俺達警備部門にその冒険者を始末してほしいということか?冒険者風情にわざわざ六腕全員でという指定をしてきた意味はなんだ?俺達をバカにでもしているのか!!」

 

「その冒険者達は生け捕りにしてほしいのよ。白百合っていう女の子だけのチームなんだけどね。綺麗所が集まっているの。幼子もいるから色んな趣向の集客が見込めると思うのよね。集めた情報によると本来はアデマンタイトのプレートを渡される予定だったらしいのよ。メンバーは使役魔獣を入れて四人と一匹、幼子が三人。本当にアダマンタイト級なら全員での方が確実じゃないかしら?」

 

「アダマンタイト級の冒険者か・・まあいい。そのかわり依頼料は弾んでもらうぞ。今夜宿屋を襲撃するが、お前は問題にならないように貴族に根回し手でもしておけ。」

 

「それは任せて。じゃあお願いね。くれぐれも白百合ちゃん達は殺さないでちょうだいね。」

 

 

~~~side out~~~

 

 

周囲を警戒しながら宿屋に戻ってきた白百合は助けたツアレという女性から話を聞いていた。

 

「つまりツアレさんは貴族に攫われて、その後に娼館で働かされていたということですね。」

 

「はい。」

 

「はぁ 帝国では粛清があったおかげで無能な貴族は減りましたが、やはり王国は貴族が腐っていますか。どうしますかチェーロさん。あの男の態度からして娼館のバックにいる貴族が黙っていないかと思います。このまま王都にいるよりかは他国に移るか、エ・ランテルに戻るという手もありますが。」

 

「いやエ・ランテルに戻っても一緒だろうね。それに・・・・動くなら今夜かな。他にもお客さんが来るみたいだしこのまま王都で活動しよう。」

 

「私のせいでごめんなさい。」

 

「気にしないで大丈夫だよ。あの場で見捨てることはできないし、ツアレさんが悪いわけではないですから。」

 

アルシェとエンリはクーデリカとウレイリカ、ネムにツアレの話を聞かせるべきではないということと護衛も必要だろうという判断をして別の部屋にいた。チェーロは話を聞きながら顔を怒りの表情に変えており、その瞳にはオレンジ色の炎が渦巻いていた。

 

「他にもお客さんですか?もしかして私関連でしょうか?」

 

「レイナ関連ではないから大丈夫。どちらかというと俺のお客さんになるのかな~。ちょっと悪ふざけがすぎたみたい。ハハハ。でも敵にはならないだろうから安心して。」

 

「なら良いのですが。それでどうしますか?今夜だとすると宿屋で戦うと制限されますし、広い場所に移動しますか?」

 

「いや、移動はやめておこう。宿屋にいたままの方が対応しやすい。俺とアルシェが外に出て対処をするから、レイナとエンリはツアレさんと三人の護衛をお願いしたいかな。アルシェは室内だと使える魔法も制限されちゃうしね。レイナにこれを渡しておくね。念のため身に付けておいて。」

 

「ありがとうございます。それならエンリも外の方が良い気がしますが。いえ、今回は対人戦ですし、まだエンリには荷が重いということですかね。対人戦に関してはアルシェも危ないような気がしますが・・・あの子ならチェーロさんがご褒美とかなんとか言えば割り切りそうですわね。」

 

「ツアレさんもそれでいいですよね?とりあえず、今夜中にケリをつけたいと思いますので安心してください。ご褒美って・・・もしかしてレイナもほしいの?」

 

「今夜中に解決ってあなた方はいったい?」

 

「只の冒険者ですよ。ツアレさんもレイナと一緒にあの子たちと一緒にいてあげてください。」

 

「ご褒美ですか・・・欲をいうならば私にもお姫様抱っこを、いえ!なんでもありません。」

 

「そう?なにかあったら遠慮しないで言ってね。仲間なんだから。」

 

ツアレは目の前で行われている貴族に立ち向かい返り討ちにする気満々の会話に驚いているが、その疑問を口に出してもチェーロからは笑いながら冒険者という答えしか返って来ずに、巻き込んでしまったことを後悔していたが、チェーロという女性の表情を見ていると安心する気持ちにもなり、貴族の妾時代や、地方都市にいた時の娼館時代からくる男性に対しての恐怖心などが和らいでいた。



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王都の闇②

「ここが例の冒険者達が泊まっている宿屋だな。」

 

「はい。宿屋の責任者と一帯の警備の人間は買収済みです。また周りにも人を配置していますので、自由に暴れてください。」

 

「ふん 騒ぎになるほどの実力が相手にあればいいがな。いくぞ。」

 

六腕の面々は宿屋に向かいながら下っ端に状況を確認していた。念のため、根回しを頼んだのはいいが相手は格下の冒険者だという意識があり、襲撃をするにもかかわらず堂々と宿屋の正面から突入しようとしていた。

 

「ム 来たみたいでござるぞ。」

 

「遅い 眠い 夜中に襲撃はチェーロ以外お断り。」

 

「本気で正面から来るなんて。でも宿屋と警備の人間にもちゃんと根回しをしているところを見ると一筋縄ではいかない相手みたいだね。トップの人間が優秀なのかな?」

 

「まさかお出迎えをしてくれるとはな。」

 

六腕が宿屋に到着すると宿屋の入り口にてチェーロとアルシェ、ハムスケが待機していた。

 

「俺たち八本指に手を出したことを後悔しろ。おい!俺は真ん中の奴を相手にする。デイバーノックとエドストレームは魔法詠唱者、ペシュリアンとマルムヴィストは魔獣を相手にしろ。魔獣は構わないが魔法詠唱者は殺すなよ。」

 

 

 

 

~~~アルシェside~~~

 

 

「私の相手はお前たち二人?なら役不足。さっさと終わらせて天使達の寝顔を鑑賞する。」

 

「ふざけたことを、ただの魔法詠唱者如きがこの不死王様を侮辱するか。井の中の蛙とは良く言ったものよ。エドストレーム!!手出しは無用!格の違いというものを教えてやるわ!」

 

「相手の力量もわからないなんて貴女馬鹿ね。私は楽だからいいけど。」

 

「くらえ!《ファイヤーボール/火球》」

 

「《ファイヤーボール/火球》。」

 

「いつまで続くか見物だな。《ファイヤーボール/火球》」

 

「もしかしてそれだけ?《ファイヤーボール/火球》」

 

「エルダーリッチと魔力を競い合うなんて愚かね。」

 

アルシェは怠そうにしながらも後ろの宿屋に被害がでないように避けずに魔法を相殺することにしていた。その怠そうな姿を見て、デイバーノックとエドストレームは早々に魔力不足を起こしたのだろうとほくそ笑んでいた。

 

 

~~~ハムスケside~~~

 

 

「某の相手はお主達でござるか。」

 

「油断はしない。いくぞ!空間斬!」

 

「キエエエエエエェエエエエ」

 

ペシュリアンとマルムヴィストは目の前にいる魔獣から強者の気配を感じ取り、油断などせずに鞘から抜き放つ一閃で、三メートル先の目標を両断する魔技、”空間斬”を放ち、致死の猛毒が塗られたレイピアを自身が出せる最速のスピードにて放っていた。

 

 

~~~チェーロside~~~

 

 

「安心しな。殺しはしない。抵抗するなら痛い目にはあってもらうがな。」

 

「ん~~自分の力に絶対の自信があるのかな?でもその余裕は命取りだね。久しぶりに胸糞悪いし見たところモンクみたいだから、俺も素手で相手をしてあげるよ。」

 

「ほぅ、女らしく爪で引っ掻く程度なら……存在する事を許容してやったんだがな。一人くらい五体満足じゃなくてもいいだろう。ふん―――ッ!」

 

一気に踏み込み、チェーロへ拳をぶち込む、チェーロも拳を突き出しており、拳と拳が派手にぶつかり周辺に風圧を発生させた。

 

「ッ!!」(やるじぇねえか。)

 

拳に痺れを感じたゼロは一旦後ろに跳躍し、ここで殺しておいた方が賢明と判断し、更にギアを上げ全身に刻まれた《呪文印/スペルタトゥー》を解放する。

 

《足の豹/パンサー》

《背中の隼/ファルコン》

《腕の犀/ライノセラス》

 

強化されたスピードとパワーで右腕を振り抜いて胴体へと叩き込んだ。すると轟音を轟かせて辺りは砂煙が舞い二人の姿を隠す。

 

 

「あらあら、殺すなって言われていたのに。あれじゃ助からないわね。お仲間が心配?」

 

「フハハ よそ見をするとは愚かなり《ファイヤーボール/火球》《ファイヤーボール/火球》《ファイヤーボール/火球》」

 

「もう飽きた。それにチェーロなら無事。あんな肉ダルマにやられたりなんかしない。《トリプレットマジック/魔法三重化》《ファイヤーボール/火球》」

 

 

「えい!でござる。これは珍しい武器でござるな。」

 

「俺の!俺の腕が〜〜。」

 

「マルムヴィスト!くそ、離しやがれ!」

 

「離していいのでござるか?なら二人まとめて死ぬでござるよ。《武技/斬撃》。レイナ殿との特訓の成果でござる。」

 

アルシェは眉を寄せながら口元を押さえてチェーロの方に意識を向けていた。それを仲間を心配してと判断されたが、アルシェの内心は“煙たくしやがってあの肉ダルマ野郎”である。火球しか使用してこないくせに口が良くまわる相手にイライラしていた為、ストレスゲージが破裂寸前だった。

ハムスケは尻尾で空間斬を絡め取ると、刺突を放つために近づいていていたマルムヴィストの腕を爪で引っ掻いて切り離していた。ペシュリアンが剣を後ろに引くタイミングで剣を離して、バランスを崩した後にマルムヴィスト諸共二人まとめて切り裂いていた。

 

 

「あがああああああああぁぁぁ お前!何をした!?」

 

砂煙が晴れると腕を掴まれ、後ろにねじり回されているゼロの姿があった。

 

「よっと。」ッゴキ

 

「グァ!お前!舐めた真似をしやがって!いま仕留めなかったことを後悔させてやる。サキュロント!そろそろ終わってるだろ!」

 

「そういえば一人足りないでござるな。」

 

「大丈夫だよ。ハムスケ、そろそろ飛んでくるから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「助太刀するぞ!」

 

「助けに来た。チェーロは安心して私の胸に飛び込んできていい。」

 

「こいつらは八本指の六腕。すでに二人死んでるから四腕。一人足りない?」

 

「チッ またウザいのが来た。」

 

「青の薔薇!?時間稼ぎをしていたというの?」

 

「何人増えようが人質を取れればこっちのもんだ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドッカーーーーーーン

 

 

 

「サキュロントの野郎。待たせやがって。お前や青の薔薇もこれで終わりだ!!」

 

「なにをした!?」

 

ヒュルルルルルル〜〜〜〜〜〜ドスン

 

「な!!サキュロント?」

 

「親方 空からおっさんが!死んでる。」

 

「切傷に火傷、致命傷は胸に刺さってる氷の粒。」

 

「チェーロさーーん。こちらは終わりましたわ。」

 

「チェーロさんすいません。宿を壊してしまいましたー。」

 

「作戦は失敗か。」

 

「何が失敗なの?」

 

「幼子を人質にするつもりだったのさ。せめてお前だけは殺してやる。《クリエイト・アンデッド/不死者創造》。」

 

「ちょっとデイバーノック!いくらなんでも二人の死体を使うのは。」

 

「構わんだろう。六腕に弱者は不要!」

 

「人質?そう、このクズ野郎どもがぁあ!わ わた 私の天使達を人質にして恐怖を与えるなど、ゴミである身の程を知れぇえええ!《サモン・エンジェル・7th/第7位階天使召喚》威光の主天使!善なる極撃を放て!《マキシマイズマジック/魔法最強化》《チェイン・ドラゴン・ライトニング/連鎖する龍雷》全員まとめて消し炭になれーーー!!!」

 

「ちょ!!アルシェ!?あからさまなオーバーキル!レイナ、エンリ、ハムスケ奥に移動して!!クソ!間に合わない!!」

 

「第7位階魔法だと!?」

 

「む!チェーロ積極的。・・・この感触は!」

 

「死の間近になって精力が増量した?お姉さんそういうの嫌いではない。」

 

チェーロは念の為にレイナに戦えない組の護衛を頼んでいたが、案の定六腕の一人が幼組を人質にしようと忍び込んでおり、レイナとエンリに返り討ちにされていた。

しかし、それをきいたアルシェは、度重なるストレスから我慢の限界に達してしまい、目立たないように倒すという当初の計画を忘れて第7位階魔法を放ってしまう。

周りにも被害が出ると判断したチェーロは、急いで青の薔薇の三人を抱き寄せるとマントで余波を防ぐことにした。



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目撃者は語る

~~~~~某国の諜報員~~~~~

 

 

 

あれは確かに最上級天使様のお姿でした。

 

私がそのお姿をみたのは初めてでしたがあの神々しいお姿は間違いようがありません。あの方が降臨された場所では八本指の六腕が悪さをしていたという情報が入っております。

 

あの方は聖なる光を放った後はすぐに消えてしまいましたが、その場所は跡形もなく吹き飛んでおりました。なぜ、王国如きに降臨されたのかという疑問は残っておりますが、私の役目は急いで国に戻り、神官長様達にこのことを報告することです・・・・・最上級天使様の目的が王国の膿を根絶やしにすることであれば漆黒聖典に出向いてもらうことになる可能性も・・・。

怖いのは陽光聖典のニグン隊長ですね。いま例の作戦で王国内におりますし、この情報が耳に入れば嬉々として王都まで飛んでくることでしょう。さすがに任務を放棄してということはないと思いますが・・・。

 

 

 

 

 

~~~~~ラナー~~~~~

 

 

 

 

 

ふふふふふふふふふふふふふふ まさか六腕が全滅だなんて、しかもゼロは生捕り。

白百合の情報は入っていたけど、まさかあんな天使を召喚するなんて、ここまでの能力があるとは思っていませんでした。ラキュースにそれとなく気にするように声をかけてはおいたけど、王都に来た初日にこんな形になるなんて・・・。いま王都は天使が降臨したとお祭り騒ぎ、この流れで民衆を誘導して八本指には退場してもらうべきね。

 

さぁ 私とクライムの為にいまできることをしましょう。

 

まず白百合と交流を持ちたいわ。青の薔薇との共同作戦ということにしてラキュースに連れてきてもらいましょう。

 

 

 

 

 

~~~~~ラキュース~~~~~

 

 

 

 

 

ラナーに呼ばれて、城に行った私は八本指の新しい情報とチェーロさん達白百合のことをラナーから聞いた。

 

エ・ランテルからの情報によると、エンリさんは冒険者登録をしてすぐにスクワイアゾンビを含むゾンビの大群を撃退、アルシェさんとレイナさんは単独でスケリトル・ドラゴンの討伐、そしてチェーロさんは新種のアンデットの討伐。新種のアンデットの部分やアルシェさんの第七位階の魔法に興奮してしまって、つい長話をしちゃったけどさすがにイビルアイ達は宿屋に帰ってるわよね?

 

宿屋に帰っている途中に天使が現れたのとすさまじい衝撃と爆音、なにかが起こっていると判断して、その方角に向かうと、チェーロさんに抱きしめられているイビルアイ達三人とアルシェさんが天使を従えながら奇声をあげている場面だった。

 

話をきくと天使の攻撃と電撃によって黒焦げになっている場所にいたのは六腕の二人、見たところ跡形もなく吹き飛んでしまっているみたいだけれど・・・・。

 

でも、チェーロさんの機転により六腕のゼロは生け捕りにすることができたので、ラナーに報告したら八本指の殲滅作戦が決定されたのよ。

 

その作戦では白百合と青の薔薇が協力をして行動することになりラナーに王城に呼ばれたのだけれど・・・大丈夫かしら。チェーロさんがあれから不気味なのよね。アルシェさんは別の意味で怖いのだけれど。

 

それにしてもあのマント格好よかったわね。今度真似してみようかしら。



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親睦を深めよう?

アルシェのタレントは進化しています。


「さぁ早くチェーロを渡すべき。」

 

「そうはさせません!貴女達みたいな人をチェーロさんに近づけることはできません!」

 

「キシャーーーーー!!!!!」

 

「アルシェさんは少し落ち着いてください。まるで獣の様ですわよ。まったく、あれから落ち着いたと思ったのですけど。」

 

「鬼リーダーは二人っきりでナニをしているのか。私もチェーロなら男の娘でも問題ない。」

 

「ティアさんはそれをチェーロさんの前では言わないでくださいね。」

 

「男だというのはいいけど童貞ではないのが悔しいな。お前らの誰かが初物の相手をしたのか?」

 

「「「・・・・・・・・」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いい加減にしなさい!!まったく!チェーロさんすいません。でも性別に関しては言ってくれてもいいかと思うんですよ。どうして隠していたんですか?」

 

「ははは 隠していたわけではないんですけど。性別が分かったところであの二人には意味がないかなって思ったのが大きいですね。あとは油断も誘えますから。アルシェ、エンリとレイナもちょっといいかな?」

 

白百合は泊まっていた宿屋が使い物にならなくなった結果、ラキュースからの提案で蒼の薔薇が泊まっている宿屋に泊ることになった。ラキュースはチェーロから事情を確認するために別の空いている部屋にて話し合いをしていた。また、部屋数の関係で蒼の薔薇で1部屋、白百合(ハムスケ含む)で1部屋になってしまいチェーロの取り合いが発生していた。ここまでのやり取りは蒼の薔薇の部屋で行われており、ネムとクーデリカ、ウレイリカ、ツアレはハムスケ護衛の元、部屋で寝てしまっていた。

 

「おう!それで二人だけで何を話してたんだ?」

 

「「ナニをしていたのかを聞くよりも、私もチェーロのナニをあれこれしたい。」」

 

「ああああアアァァァ チェイン・ドラゴン・ライトニン「はい。ストップ!」ムギュッ!」

 

「おい そこの色欲狂いの二人。これ以上、俺の仲間の心を乱すな。」

 

「ひゃわッ!!」

 

ラキュースとチェーロが話し合いを終えて部屋に入ってくるとティナとティアが目を輝かせながらチェーロにジリジリと近づいてきた。チェーロは第七位階を放とうとしているアルシェの口を塞ぐように胸に抱き寄せて詠唱を中止させながら、笑顔で殺気を放ち二人を威圧するが、別方向から変な声が聞こえて、全員の目が声の発生源へと移動する。

 

「どうしたのイビルアイ?」

 

「そういえばやけに静かだったな。もしかしてお前・・・・」

 

「「さすがちょろイン!!」」

 

「な なにを言っているんだお前たちは!!わ 私が自分よりも弱い相手に欲情するなど・・・・」

 

「弱い・・・」

 

「ムームムムムーーームームーム!!!!」

 

「チェーロさんいい加減アルシェさんを離して差し上げた方がよろしいかと・・・。エンリも鞭を仕舞いなさい。」

 

「あ!ごめんね。苦しくない?」

 

「ふぅ 大丈夫。むしろご褒美。今日はあのまま寝てもよかった。でもあのアンデットと忍者は許さない。」

 

「それです!!アルシェさんはどうしてイビルアイのことをアンデットと判断したのですか?そしてチェーロさんがイビルアイに言った意味!詳しく教えてください!」

 

イビルアイは指をモジモジとさせながらいつもよりも高くなった声でガガーラン達が言ったことを否定していたが、分かり易すぎる言動をラキュースとガガーランは微笑ましく見ていたが、アルシェの口からアンデットという言葉がでると場の空気が一転した。

 

「ん~お話するのは構わないのですが、こちらとしては切り札を明かすことにもなりますので、イビルアイさんにお願いが・・・・仮面を取ってはくれませんか?」

 

「それは!!」

 

「ラキュース それくらいなら構わん。すでに正体がばれているのであれば仮面で隠す必要はないからな。」

 

「なるほど・・・吸血鬼ですか。しかもそれなりの力のある。でも・・・・可愛いですね。」

 

「きゃ きゃわいいなどと。わ 私は250年は生きているんだぞ。そんなことを言われても。」

 

「「チェーロはちっこいのが好き!キタコレ!なら私達にもチャンスはある!」」

 

「そうなんですか!?」

 

「聞き捨てなりませんね。」

 

「ぱっと出のロリババアにちっこい担当は渡さない。」

 

「誰がロリババアだ!第七位階が使えるからって戦いの年季が違うんだ。口のきき方には気をつけろよ。」

 

「ああ!はいはい また話が脱線してる!アルシェのタレントは他人が第何位階まで行使することがわかるんです。種族によって色が違って見えるらしくて、イビルアイさんのは違って見えたのが答えですよ。ちなみにアイテムでの阻害は通用しません。それと俺が言った意味は亜人や他種族だからって差別したり批判をするつもりはないって意味ですよ。最初は不当な扱いを受けているようなら保護しようかと思っていたので。」

 

「素晴らしいです!!私も亜人族の方々を不当に扱うのは許せないんです!それにしてもアルシェさんのタレントは凶悪ですね。私達にとってはイビルアイの強さは切り札も兼ねていますので対処ができないのには困りました。タレントを持っているのはアルシェさんだけなのですか?あとチェーロさんの持っているマントを見せてもらえませんか?」

 

「ラキュースさんアルシェの件は話すと約束しましたが、これ以上の検索は無用でお願いします。マントは構いませんが、普通のマントですよ?」

 

チェーロからの要望でイビルアイが仮面を外すと、チェーロはその姿から吸血鬼と断定して一瞬目を伏せるが、そのまま顔を覗き込みように近づくと目を見ながら可愛いと褒める。

急に褒められたイビルアイは顔を赤くしながら否定をするが、ティアとティナのちっこい子好きの発言から、エンリとレイナが反応し、アルシェはイビルアイをロリババアと呼んで牽制した。当のイビルアイはロリババア発言にはイラッとしたのか口元を引き攣らせながらアルシェに対して殺気を送るが、チェーロが手を叩きながら早口で説明を開始した。

 

それを聞いたラキュースはチェーロに迫りながら鼻息を荒くして自論を語り、あわよくば他の情報を聞き出そうとしていた。




ゼロはチェーロに石化された後、クライムに引き渡されてラナー王女のもと厳重な管理下にあります。


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宿屋での一夜

「・・・なんで!?」

 

「スゥスゥ」

 

目覚めたチェーロの横では女性が規則正しく寝息を立てていた。

 

チェーロは部屋で話し合った後のことを思い出す。

 

 

 

 

 

「俺は一人で違う宿屋か部屋を借りようと思うんだ。護衛はハムスケがいるし、違う部屋とはいえ青の薔薇もいるんだから戦力的には大丈夫だと思うし、流石に一緒に寝るのは・・・ね。」

 

「私は気にしない。むしろ一緒に寝たい。」

 

「私も大丈夫ですわ。」

 

「はい!アルシェさんの反対側を予約していいですか!?」

 

「あら?なら私は上で。」

 

「だから!三人とはまだそんな関係になりたくないんだって!しかもウレイリカ達だっているんだよ!?子供と同じ部屋ですることじゃないでしょ。」

 

残りのベットが一つしかないのを確認すると、他で寝るために部屋から出ようとするが、アルシェ達は同じベッドで構わないからと期待する眼差しを向けてきていた。

チェーロは珍しく動揺してしまい普段なら言わないことを言い残して部屋から出て行った。

 

「~~~♪」

 

「アルシェさんとレイナさんはどうしてそんなに嬉しそうなんですか?」

 

エンリは鼻歌を歌うアルシェと笑顔のレイナを見て首を傾げていた。

 

「チェーロは【まだ】と言った。つまりは私たちをそういう対象として意識している証拠。いままでなら単純に拒否するか無抵抗だった。ちょっと進展。」

 

「それに、子供達がいるからと言っていたでしょ。つまりいなければ我慢できなくて手を出す可能性があるともとれますわ。」

 

「・・・・そういうことなんですね。私は単純に拒否られたのかと思っちゃいました。」

 

「ふっ私達はエンリよりも付き合いが長いから。」

 

「気にすることはありませんわ。」

 

「(姫はまだまだ青いでござるな。)」

 

アルシェとレイナはチェーロが口走った言葉の意味に気が付いており、旅の間にチェーロの考えが進展していることに嬉しがっていた。

 

 

 

「部屋を飛び出してきたのはいいけど。これからどこに行こうかな。」

 

チェーロは部屋を飛び出して誰もいない待合室にて佇んでいた。すると両脇の陰から二つの塊が飛び出してきた。

 

「やっと一人になった。」

 

「大丈夫。私たちの身体の準備はできてる。」

 

「はぁ 今日は厄日か。でも、闇渡り・・その技はやっかいだ。他にはどんな忍術を使えるのかな?」

 

「私達の忍術を知っている?もっと知りたい?いやん なら身体を隅々まで調べていい。」

 

「なら私はチェーロを隅々まで調べる。大丈夫。お姉さんに任せていれば痛くしない。痛くしてほしいならその趣向でも問題ない。専用の道具もある。」

 

「言葉が通じない!?あー!王都に来てから調子が狂う。いっそ全てを消し炭に・・・。

 

「「調子が悪いならベッドに行こう。」」

 

「お前達!!こんなところにいたのか!今日は交代で見張りをする約束だったはずだぞ。はやく持ち場に戻れ!」

 

飛び出してきたのは忍術を使用したティナとティアで、チェーロは一人になるタイミングを見計らっていたかのような登場に警戒心を露わにした。他の忍術を聞き出そうとするが、二人の返答は斜め上をいき会話が噛み合わず、チェーロは頭を抱えながらストレスを感じていた。

そんなチェーロの行動を体調不良と判断した二人は密室まで誘導しようとするが、イビルアイが登場して二人の首根っこを掴んで放り投げる。

 

「邪魔が入った。でも仕事ならしょうがない。」

 

「イビルアイも二人っきりだからってチェーロを襲わないように。」

 

「だれが襲うか!!さっさと行け!」

 

ティナとティアは猫のようにシュタッと着地すると残念そうに持ち場へと戻って行った。

 

「ハハハ ありがとうございます。イビルアイさん。助かりました。」

 

「か 勘違いするなよ。お前を助けたのではなくあいつらがサボっていたから注意をしただけだ。」

 

二人が見えなくなるとイビルアイもチェーロの対面に座る。チェーロはお礼を言いながら、他愛無い会話をしていたが、ふと考え込むような仕草をし

 

「感謝している部分は他にもあるんです。異種族と人間が仲良くしているのを見れたことで、ちょっと希望が持てたというか・・・・イビルアイさん・・・良かったら俺と一緒に旅をしませんか?」

 

「ひゃ!ひゃにお い い 言って。」

 

「今すぐでなくてもいいんです。イビルアイさんに寿命はありませんよね?一人になってしまった時に俺のことを少しでも考えてくれれば。」

 

「しょ しょんなことを 言われても・・・うぁわわわわわああああああぁぁぁぁぁぁぁっぁぁ。」

 

自分の種族のこともばれてもいいかなと思いながらイビルアイに未来の提案をする。イビルアイは突然の告白に動揺してしまい、叫びながらどこかに走り去っていってしまった。

 

あ~~早まったかな。でもいいか。そろそろアルシェ達にも本当のことを話さないといけないかな。ここで青の薔薇の人達と会えたのは良かった。

 

残されたチェーロは一人呟きながら誰もいなくなった空間にてポツリと呟く。その呟きを掻き消すように足音が響き渡った。

 

「あら チェーロさん。お休みにはならないのですか?」

 

「ああ ラキュースさん。ええさすがに女性だけの空間で寝るのには抵抗がありますので、違う部屋か宿屋でも探そうかと。」

 

「そうなんですね。フフ そういえば、さっきイビルアイが奇声をあげながら走っているのをみたのですが、何か知っていますか?」

 

「ああ それは俺のせいかもしれないですね。すいません。というか敬語じゃなくて大丈夫ですよ。俺の方が年下ですし、冒険者としての階級も下ですから。」

 

「ん~~階級は今回の件ですぐ同じになりそうですが・・・・。そうね。なら敬語はなしでいかせてもらうわ。それでイビルアイになにをしたの?」

 

ラキュースの姿を確認したチェーロは笑顔でラキュースに応対する。そんなチェーロにラキュースも笑顔で接していたが、イビルアイの奇行がチェーロの仕業ということを確認すると怒気を込めた様な雰囲気に変わった。

 

「うちのチームに入らないか勧誘しただけですよ。」

 

「そう はぁ 引き抜きはやめてほしいのだけれど、イビルアイが望むのならしょうがないわね。その時はあの子の事をよろしくね。確かに生きている時間は私達よりも長いのだけれど、色々と心配だから。」

 

「えぇ でも断られると思いますけどね。いまの雰囲気が気に入っているみたいですし。」

 

チェーロからの言葉を聞いたラキュースは苦笑いを浮かべて溜息を吐くが、笑顔に変わってチェーロに頭を下げた。しかし、チェーロからしたらイビルアイはいまのパーティを気に入っているため誘いには乗ってこないだろうという確信があった。

その後も二人は他愛もない会話を続けていた。

 

「お客様。本来は提供していないお部屋が一つだけありますが、そちらでもよろしければご案内可能でございます。ただ、田舎から出てきた従業員の泊り込み用になりますのでベッドしかありませんが。」

 

「本当ですか!?助かります!ありがとうございます!」

 

「良かったわね。一応場所だけは確認したいから一緒に着いて行くわ。」

 

「こちらになります。」

 

ずっと待合室にいるチェーロを見かねた宿屋の主人が誰も使用していない従業員用の一室なら提供できると提案してきたため、チェーロとラキュースはその部屋に移動することにした。

 

「あら ベッドしかないけど従業員用とは思えないくらい綺麗ね。」

 

「そうですね。じゃあラキュースさん。ありがとうございました。また明日よろしくお願いします。」

 

「ちょ ちょっと待って!せっかくだからまたあのマントを見せてもらえないかしら。」

 

「マントですか?そんなに気に入ったんですね。でも譲ることはできませんからね。」

 

そう言ってチェーロはラキュースを部屋に招き入れてドアを閉めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど。あの後、ラキュースさんがマントを羽織りながら厨二全開なことをしだして結局二人とも寝てしまったのか。」

 

「スゥスゥ 漆黒の ムニャムニャ 右手が疼く 」

 

ッバン!!

 

「チェーロ、朝。」

 

「「突撃!!」」

 

「待ちなさい色ボケ忍者!!」

 

勢い良く開かれたドアからアルシェ、ティア、ティナ、レイナが雪崩れ込んできた。



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超直感は欺けない

「落ち着けってお前ら。ラキュースが鎧を装備できてるってことは最後まではしていないってことだろ。いまから姫さんとこに行くんだからそんなに殺気だってたらまずいだろ。」

 

「最後までしていないだけで、チェーロのナニをあの胸や手と口で堪能した可能性は捨てきれない。」

 

「あからさまな事後の現場だった。何もなかったとは言わせない。」

 

「・・・(あの時逃げなければ私がラキュースの代わりに)」

 

「だから!!何もしてないしなかったわよ!!」

 

 

 

チェーロチェーロチェーロチェーロ。青の薔薇は抹殺青の薔薇は抹殺青の薔薇は抹殺。

 

「私達はチェーロさんのことを信じてはいますが、次回からは全員が同じ部屋でということを提案いたしますわ。」

 

「・・・・・・もうそれでいいよ。アルシェ、ごめんね。これからはみんなと一緒の部屋で寝るから、そっちには行かないでほしいかな。」

 

「ツアレおねーちゃん。いまからお城に行くんでしょ?」

 

「私達お姫様?」

 

「お城・・・貴族・・・この子達だけでも守らないと。」

 

「ネム。絶対に勝手に走り回ったらダメだからね。絶対だからね。」

 

「お姉ちゃん心配しすぎだよー。」

 

「今回は某も着いて行っていいでござるとはー。ツアレ殿、リカリカ殿とネム殿の護衛は某の役目故、大丈夫でござるよ。」

 

青の薔薇と白百合は歩きながら城へと向かっていたが、話題は朝の一幕にあり、チェーロとラキュースが一夜を共にしていたことが問題になっていた。

 

ラキュースは無垢なる白雪を装備して身の潔白を証明していたが、性に対する知識ではティナとティアに敵うわけもなく、声を荒げて反論をしていた。

 

逆にチェーロの方はレイナを筆頭に疑いは早々に晴れていたが、アルシェが夜の炎を発現させてもおかしくない様子に、危機感を感じていた。

 

 

そうした中、城へと到着しクライム案内のもとラナーが待つ部屋へと案内された。

 

「わぁ ありがとうラキュース。白百合の皆さんを連れて来てくださったんですね!チェーロ様は噂通りお美しいです!」

 

「ちょっ!ラナー!まずは自己紹介を!」

 

「コホン はじめまして白百合の皆様、私はラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフ。この国の第三王女をさせていただいています。ラナーとお呼びください。」

 

部屋に入ると目を輝かせながらラナー王女がチェーロに駆け寄り手を握りながら激しく振り回すが、アルシェの様子をチラッと確認したラキュースが慌てて引き剥がして自己紹介を促した。

そんな光景を青の薔薇とクライムは苦笑いではあるもののしょうがないという感じでみていた。チェーロはその笑顔に胡散臭さを感じ、また超直感も警報を鳴らしていた。

 

「アルシェ様は第七位階を使用できるんですよね?フルーダー様のお弟子さんは凄いです!レイナース様は槍での攻撃が凄いとか重爆の名は伊達ではないんですね!」

 

「レイナースだと?」

 

「やっぱり帝国四騎士の重爆だったのかよ。」

 

「それにフルーダーの弟子とはな。ならあいつも第七位階を使えるのか?聞いたことはないが。」

 

「ラナー王女。私の名前はレイナースではなくレイナですよ。」

 

「私もフルーダーの弟子ではなくチェーロの弟子。チェーロに会うまでは第三位位階までしか使用できなかった。」

 

「あら?そうでしたの?ごめんなさい。でもそれならチェーロ様も第七位階を使用できるということですよね?すごいです!!」

 

「ハハハ そんなことはないですよ。それよりも俺達をここに集めた理由を聞いてもいいでしょうか。それとも素のやりとりをお望みであればクライムくんも含めた全員であなたも素顔を見せてお話でもしましょうか?

 

「・・・・・・そうですね。大変失礼いたしました。皆さんどうぞお座りになってください。」

 

ラナーは無邪気な笑顔でレイナとアルシェの過去の事を話し始め、その言葉に青の薔薇とクライムは警戒態勢に入るが、次の標的をチェーロへと変えて笑顔を浮かべながら近づくが、話の途中で小声でチェーロから言われた言葉に少し考える素振りを見せると全員を席に座るように促した。



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拠点

ラナー王女との話し合いが終わったチェーロ達は青の薔薇をなんとか引き剥がして白百合のみで商業ギルドに来ていた。ハムスケは中に入ることができないため、チェーロとアルシェ・エンリの三人が建物の中に入り、レイナは幼い組とツアレの護衛としてハムスケと待機していた。

 

「チェーロ。なんでまた商業ギルドに?」

 

「ちょっと長くなりそうな予感といつまでも宿屋よりかは拠点を持つのもいいかなって。」

 

「家ですか?え?王都に住むことにしたんですか?」

 

「それについてはここでは話せないから後でみんなに説明するね。」

 

受付で条件と予算の話をしながら超直感で倉庫区にある一軒家を購入する。このお金はゼロを引き渡した際にラナー王女から報酬として手渡された一部から使用していた。

 

購入した家に着いた白百合は家の掃除を開始し、その中でもチェーロは各部屋の四隅に紙を貼っていく。

 

「チェーロお兄さんこれはな~に?」

 

「チェーロお兄ちゃんの字きたな~~い。これじゃあ読めないよ?」

 

「クーデリカとウレイリカ達を悪い人達から守るためのおまじないだよ。これは意味のある字ではなくて模様みたいなものだから読めなくて大丈夫なんだ。はい!ここは終わったから次に行くよ。手伝ってくれる?」

 

「「いいよ!」」

 

「グハッ」

 

途中でチェーロの貼った紙に興味を持ったクーデリカとウレイリカがチェーロの服を引っ張りながら疑問をぶつけてくる。そんな二人に対して笑顔を向けながら説明をして他の部屋に貼る手伝いをお願いした。また、三人が戯れている姿をみたアルシェが天に召されかけてエンリに介抱されていた。

 

「はい。みんなお疲れ様。気になっているかと思うから説明するね。まず家を購入したのは、今回の八本指の問題は時間がかかると思ったのと、安全面を考慮すると専用の拠点を用意した方がいいと思ったんだ。で、俺が貼っていた紙は悪意がある人間は立ち入れないようにする一種の結界の効果があるんだ。」

 

「そんなすごいアイテムがあるんですね。」

 

「確かに宿屋に泊まって今朝みたいなことになるよりかはいいのですが・・・。それにしても悪意ですか・・・判断基準が難しいですね。」

 

「悪い人達を入れさせないってことではないんですか?」

 

「エンリそれは違う。何を持っての悪意なのかにもよる。例えば私にとって青の薔薇は悪意の塊の分類だけど、チェーロにとっては違うはず、あれは行き過ぎた好意からくる行動だと思う。あの双子忍者は・・・性欲だけではなく好意だと、たぶん・・・きっと・・・そう信じたい。」

 

チェーロからの説明に対してレイナとアルシェは引っかかることがあるのか考え始めるが、エンリやツアレからしたら悪い人を入れさせないすごいアイテムという認識だった。

 

「そうだね。アイテムも万能ではないから、常に警戒していろとは言わないけど気を抜きすぎないことが大事かな。こんな風に「「チェーロ!!」」ね。はぁ・・・・」

 

「ここが私達の愛の巣?口では嫌がっててもやることは大胆。夜の方も期待できる。」

 

「大丈夫。お風呂は済ませてきた。もしかして汗臭いのが好き?問題ない、すぐに汗臭くなる。」

 

チェーロがアイテムに頼りすぎないように説明をしていると部屋の隅から双子忍者が飛びついてきた。その光景と発言を聞いたアルシェは手のひらから雷撃を生み出し、レイナは武技を発動し、エンリは幼い組とツアレを奥に避難させていた。



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その頃の〇〇~2~

チェーロは家が無事な間に(多少、壁と床に焦げ目がついて、一階は2DKになっていたが、全ての部屋の見通しがよくなるという事態にはなったが)双子忍者を石に変え、青の薔薇に事情を説明し明日の昼間には石化を解除する約束をして、アルシェは妹達とレイナはツアレ、エンリはネムと同じ部屋で就寝した。チェーロのみ一階でハムスケと一緒(ハムスケは自身がいても狭くない状況に喜んでいた)の部屋(空間)である。

 

翌日の朝、チェーロが目を覚ますと右側にはネムを抱いたエンリ、左側にはレイナとツアレ、上には妹二人を抱いたアルシェが眠っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・これは・・・・祭りか・・・?」

 

遠隔視の鏡《ミラー・オブ・リモート・ビューイング》を操作していたモモンガは何かを見つけたのか、手元の動きが止まる。

 

「いえ、これは違います。」

 

そばに仕えていたセバスが軽く険しい顔をして否定する。そこにはなんの力も持たなそうな村人が剣を持った騎士達に殺され、蹂躙されている。まさに『虐殺』という言葉がお似合いの景色が映っていた。モモンガはそれに気づき不快感のこもった舌打ちをし、そしてまたもセバスが口を開く。アルベドはニコニコとそのモモンガを見つめていた。

 

「如何なさいますか?」

 

「見捨てる。利益がないからな。」

 

そう発言したモモンガの目の前ではいま森から帰ってきたばかりの夫婦が騎士に剣を突き立てられている光景であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少し遡り

 

「ふぅ 今日と明日の分はこれくらで構わないな。今日は森が騒がしい・・はやく村に戻るとしよう。」

 

「そうね。なんか胸騒ぎがするわ。エンリやネムになにもないといいんだけど・・・。」

 

エンリの両親は森で薬草を採取していたが、嫌な感じがして急いで村へと戻る。村へと戻ると

 

「嫌だ~~~~~~!」

 

「ぎゃぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「皆殺しだぜ~~!」

 

「ヒャッハー!」

 

騎士の格好をした男達に村人が殺されている光景が目に入ってきた。

 

「逃げるぞ!!」

 

「あぐっ」

 

夫は妻の手を取り急いで来た道を戻るように森の中に駆け込もうとするが、騎士の動きの方が速く剣を背中に振り下ろしていた。背中を斬られた夫は妻だけでも逃がそうと騎士にタックルするが、その行動を嘲笑うかのように騎士は避けて妻の背中も切り裂いた。

 

「あなた!きゃあっ」

 

「クッ!」

 

「お~お 仲の良いこって それなら二人まとめて逝かせてやるよ!」

 

倒れた二人だが、お互いに手を伸ばし掌を握りこむ。その姿を見た騎士は仲間を呼んでタイミングを合わせて背中に剣を突き立てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っああ゛?」

 

「なんだこりゃあ?おい!手の空いている奴らを集めろ!!」

 

「・・・・どう・なっているんだ。」

 

「これは・・・あの冒険者に・もらった・・」

 

剣が二人に到達する前に橙の炎が二人を守るかのように包み込んで剣を弾き返していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれは!!」

 

ガチャン!!

 

モモンガとセバス、アルベドが音のした方を向くと、控えていた一般メイドのシクスス、フォアイル、リュミエールが涙を流して持っていたお盆を落としていた。

 

「貴方達!モモンガ様の御前ですよ。お盆を片付けてこの部屋から出ていきなさい!」

 

「いや アルベド待てシクススだったな。あの者たちが身に着けているお守りに心当たりがあるのだろう?」

 

「は・・・い。あ・・・れは、私・・・たちメイドの・・創造主で・・・ある・・・チェーロ様・・・がお造りになり・・・私達に・・・与えて・・・くださったお守りと同じものです。」

 

「・・・ぁぁ・・チェーロ様が・・この世界に・・・。」

 

「グス」

 

「やはりか。(あの炎は見たことがある。確かにチェーロさんが造るアイテムにはあの炎が宿ることが多い。)アルベド!セバス!あの二人はチェーロさんのことを知っている可能性がある。保護をしにいくぞ!アルベドは完全武装でついて来い。ただし、ギンヌンガガプの所持は認めない。セバスはそのまま一緒について来い。一目で人とわかるものが一緒にいた方がいいだろう。」

 

「「承知いたしました。」」

 

一般メイドの話をきいたモモンガは仲間の手がかりを得るために村へと向かうことを決めて、交渉がしやすいようにセバスを一緒に連れていくことにした。



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アインズ・ウール・ゴウン

「《グラスプ・ハート/心臓掌握》」

 

「「フンッ!」」

 

モモンガは《ゲート/転移門》を使用して現地へと到着すると、すぐさま得意な魔法を使用する。アルベドとセバスも有無を言わさずに周りにいた騎士達の頭を吹き飛ばしていた。

 

「うむ。二人は・・・・気絶しているか。ちょうどいい。セバスよ。この二人のことを頼んだ。私とアルベドはこれから残りを対処しに行く。中位アンデット創造《死の騎士》。死の騎士よ!!武装した騎士達を皆殺しにしろ!(えーーー盾が守るべきもの置いて行くなよ・・・。)。着いて来いアルベド。」

 

「はい。モモンガ様!」

 

「お待ちください。無礼を承知で提案いたします。アンデットというのは隠した方がよろしいかと。」

 

「無礼よセバス!愛しい御方の姿を隠せというの?アンデットだからなに?歯向かうならこの二人以外は皆殺しにすればいいのよ。」

 

「うむ。アルベドの言うこともわかるが、今回はチェーロさんのことを確認したいからな。(皆殺しってアルベド、助けに来た意味がないじゃないか。まだこの二人だけとは限らないんだぞ。)」

 

モモンガはセバスからの提案を受けてむき出しになっていた骨の部分を隠し、何のイベントだったか、クリスマスだったか、バレンタインだったかで配布された嫉妬マスクを顔につける。そしてゆっくりと騒ぎ声がする方向へと飛び立っていった。

 

残されたセバスはポーションを取り出して気を失っている二人へと振りかける。

 

「ふぅ これで一安心でしょう。」

 

傷が回復するのを見届けたセバスは安心するように息を吐き、近づいてくるものがいないか周囲を警戒する。広場からの叫び声が止むと

 

「う・・・・」

 

「気が付きましたか?」

 

「あなたは・・・・・・・・・ハ!おい!大丈夫か!しっかりしろ!」

 

「・・・あ・・よかった。生きてるのね。」

 

「ちょうどお二人が襲われている時に、我が主が通りかかり賊を撃退、そして治癒のポーションにてお二人を治療させていただきました。いまは残りの賊の討伐をしている最中になりますので、安全が確認されるまでは安静にしていてください。」

 

「「ありがとうございます。」」

 

 

 

 

 

 

「デス・ナイト。そこまでだ。」

 

モモンガは広場にて騎士を虐殺していたデスナイトを見て脅威になる存在はいないと確認すると、デスナイトの動きを停止させた。

 

「投降すれば命は保障しよう。まだ戦いたいと――」

 

生き残った四人の騎士達は即座に剣を投げ出して黙って跪き、頭をたれる。その光景を見たアルベドは機嫌良く鼻を鳴らした。

 

「諸君には生きて帰ってもらう。そして諸君の上――飼い主に伝えろ、二度とこの村を襲うことは許さんとな。行け!」

 

顎でしゃくると騎士達は一斉に走り出す。一秒でもこんな場所から離れたい、そんな必死さが透けて見えた。

 

まとめられていた村民に話しかけると村長らしい人間にお礼を言われて、対価に情報を収集したモモンガはセバスからのメッセージで夫婦が目を覚まして家まで戻ったという報告を受け取り、夫婦の家まで向かう。

 

夫婦の家に入ると助けたことについてのお礼を言われて、名を尋ねられるが、

 

「我が名は(チェーロさん以外のプレイヤーもいることを考えると攻略サイトに対策が載っていたモモンガは危険だな。チェーロさんの弱点は純粋なプレイヤーの操作スキルだから問題ないんだろうけど。)・・・我こそがナザリック大地下墳墓が主、アインズ・ウール・ゴウンだ。」




7月に入って色んな企業が動き出したせいか予想よりも忙しく。

各一話更新するのがやっとかと思います。


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エ・ランテルへ

エモット家でチェーロの情報を得ていたアインズは、騎士団が来たという報告を受けて村の広場で待ち構えていた。

 

 

「私はリ・エスティーゼ王国、王国戦士長ガゼフ・ストロノーフ。この近隣を荒らし回っている帝国の騎士たちを討伐するため、王のご命令を受け、村々を回っている者である。」

 

「王国戦士長…!?」

 

王国戦士長の話を聞き、村長が驚きの声をあげる。王国戦士長は身なりから彼を村長と判断した様子で、彼に話し掛ける。

 

「この村の村長だな?帝国の騎士達がこの村を襲ったはずだが、横にいる人達は一体誰なんだ?教えてもらいたい。」

 

「この方は・・・」

 

「それには及びません。初めまして王国戦士長殿、私はアインズ・ウール・ゴウン、この村が襲われておりましたので、助けに来たマジックキャスターで、こちらの剣士と執事は私の護衛のアルベドとセバスです。」

 

「何…!?そうか…」

 

王国戦士長は慌てた様子で馬から降りて頭を下げる。

 

「この村を救っていただき、感謝の言葉もない。」

 

王国戦士長が礼を述べた後、王国軍騎士の一人が王国戦士長に近づいく。

 

「周囲には人影はありません。」

 

「わかった。ゴウン殿!すまないが貴殿が対処した際の情報を教えてはくれないだろうか。」

 

「えぇ構いませんよ。」

 

アインズは村長に説明したのと同じように旅の途中に村が襲われており助けに入ったことを戦士長にも説明した。戦士長からはお礼をしたいので王都まで同行を頼まれたが、アインズはそれを断る。

 

「アインズ殿、私達はエ・ランテルにて一泊し補給をしてから王都へと戻るつもりです。王都に来ることがありましたら声をかけてください。またお会いできるのを楽しみにしております。行くぞ!!」

 

 

 

 

 

 

アインズ達がカルネ村で騎士達の相手をしている頃

 

「それは本当かーー!!!!!」

 

「はい!本国に残してきた家族からの伝書鳩でも確認することができました。」

 

「リ・エスティーゼで大天使様が降臨されただとお!!光の主神が召喚した可能性があるということかあーーーーー!!こうしてはおれん!!いまからリ・エスティーゼに向かうぞ!我らの主神をお迎えにあがる!!」

 

「しかし!ガゼフ・ストロノーフの件は・・・それに食糧も残り少なくなっております。」

 

「そんなことは捨て置け!我ら陽光聖典が光の主神をお迎えに上がらずどうする!きっといま王国にいるのはこの時のためだったのだ!エ・ランテルにて急ぎ食糧の補給を行い最短距離にて王都まで突き進むぞ!」

 

「「「「「はい!隊長!」」」」」

 

ガゼフ・ストロノーフの抹殺を命じられていた陽光聖典は迅速な動きてその場を離れてエ・ランテルへと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

「ウヒャハハハハハハハハハハ 明日だ!明日 死の螺旋を行う!召喚したデス・ナイトは7体、スケリトル・ドラゴンは14体、それに無数のスケルトンとゾンビ!準備は整ったぞ!」

 

「はい。デス・ナイトに盗賊を襲わせてスクワイア・ゾンビも一定数確保しております。白百合も王都にて目撃されておりますので問題はないかと。」

 

「そうか!いまこそ我らの悲願を達成するのだ!クレマンティーヌよ!お主には世話になったな。この混乱に乗じて行くのであろう?」

 

「あら~~~もしかして寂しくなっちゃったの~?でもゴメンね~~。がじっちゃんがも~~~~う少し若ければね~~~。」カジっちゃん

 

「ぬかしおる!」

 

 

 

 

 

 

『死を撒く剣団』のアジトに一体のモンスターが襲撃を仕掛けてきていた

 

「うわあああああああああああああああああああああああああああ!」

 

「ブレインさんどうしたんですか?」

 

ブレインと呼ばれた男は叫びながら全速力で部屋の奥まで進んでいった。呆気にとられた残された男達が最後に見たものは黒い塊であった。

 

 

 

「はぁ はぁ はぁ なんだったんだ。あれは・・・・・逃げ・・きれたんだよな・・・・。ふぅーーーー。俺はいままでなにを・・・・こんなんじゃストロノーフになんざ・・・・・いやあれは人間が太刀打ちできる相手じゃない。逃げて正解なんだ。あいつだって逃げていたはずだ。・・・・きっとそうだ。ここから一番近い街は・・・・エ・ランテルか。とりあえずそこまで行って食糧の調達でもするか。」

 

抜け道から急いで飛び出してそのまま駆けていた男は草原に辿り着くと倒れこみながら自分に言い聞かせるようにブツブツと喋りだすが、満足したのか街へと向かっていった。



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漆黒①

ナザリックまで戻ったモモンガは守護者達を集めて名をアインズ・ウール・ゴウンと改名したことを告げる。

 

そしてナーベラル・ガンマとルプスレギナ・ベータを連れてラ・ランテルにて冒険者登録、ユリ・アルファにはカルネ村との協力関係と帝国兵から生み出したデス・ナイトの管理、アウラにはトブの大森林の調査と意思の通じるモンスターには従属が死を選ばせることを命じた。

 

モモンガはモモン、ナーベラルはナーベ、ルプスレギナはルプーと名乗りラ・ランテルの冒険者組合を目指していた。

 

「ア・・・モモン様。あれが冒険者組合の建物になります。私が先頭にたちウジ虫共を根絶やししてきます。」

 

「様をつけるな。それから、敬語も止めろ。」

 

「そうっすよナーちゃん。モモンさんと呼ばないとダメっす。さん はい!」

 

「モモンさ-------ん。」

 

「ナハハハ! さとんの間が空きすぎっすよ。ナーちゃん面白すぎっす。」

 

モモンはナーベとルプーの会話を聞きながらナーベラルには時間が必要かと頭を抱えそうになるがとりあえずは様子を見ることにした。

 

受付で欠伸をかみ殺しながら事務仕事をしていた受付嬢に、冒険者への登録をしたいと告げると小部屋へと案内され講習が行われた。そして彼女の口からあふれ出る説明の濁流。違約金の発生する流れ、冒険者とは切っても切れない関係にあるモンスターの難度という概念、身分証明となるプレートのランクに対する説明が行われた。

 

「それでは、こちらが登録したての冒険者に与えられるカッパーのプレートになります。」

 

登録が終わった三人は宿屋へと向かい個室を取り部屋へと向かおうとするが、それを邪魔するかのようにスッと足が突き出された。

 

(成る程ね。)

 

モモンは新人に対する洗礼かなにかだろうと考えてその足を・・・・・男ごと吹き飛ばした。男は壁に穴をあけて外まで吹き飛ばされていた。

 

「「は・・・・・?」」

 

「大方、新人への洗礼と実力の見極めといったところだろうが、こんなことをしなくても相手の力量くらいは測れるように鍛えておくことだ。行くぞ。ナーベ、ルプー。」

 

放心している仲間であろう二人に忠告をすると二人を引き連れて部屋へと入って行った。

 

 

 

 

 

その夜、エ・ランテル西部地区共同墓地。そこに配備されている衛兵たちは目の前の出来事が信じられなかった。まるで悪夢だ。

 

「なんなんだ、この数・・・」

 

「百とか二百とかじゃ済まないぞ・・・。万は・・・いるのか・・・それにスケルトン・ドラゴンにあの時のアンデットの騎士までいやがる。」

 

地面どころかはるか後方までを埋め尽くすアンデッドの群れ。それが異臭を漂わせながら、門目掛けて雲霞のごとく押し寄せてくる。その中には以前にもいたスケルトン・ドラゴンとデス・ナイトの姿も確認することができた。

 

衛兵たちは急いで関係各所への伝達に周り、話をきいた冒険者組合長のプルトン・アインザックと魔術師組合長のテオ・ラケシルは急いで組合員を宿屋へと走らせて冒険者たちを共同墓地に向かわせた。

 

騒ぎを聞きつけたガゼフ・ストロノーフ率いる兵士達も基地へと向かい、門を破壊しようとしているゾンビやスケルトンに攻撃を加え始める。

 

「戦士長!このままでは門は破られます!」

 

「戦士長殿!!」

 

「おぉ アインザック殿。丁度いい所に、冒険者の何人かを住人の避難誘導に回してはもらえないだろうか。この数のアンデットだ。このままではこの門は決壊する。」

 

「すでにカッパーの冒険者に命じて住人を広場に集めております。アンデットがここにのみ集中しているのかはわかりませんので斥候部隊を編成して逃げる方向を見極めております。」

 

「さすがだな。」

 

アインザックは白百合が旅立った後に同様のモンスターが現れた場合の対処を考えており、街を捨ててでも住人を一人でも多く逃がすための案を街の有力者達との協議をして進めていた。その行動の速さにガゼフ達は驚いていたが

 

「うわぁあああああ!」

 

絶叫する衛兵たちの方を見ると背後には四メートルを越えるアンデッドが迫っていた。ガゼフが駆け出そうとした時、驚くべき光景が目の前に広がった。漆黒の戦士が突如として現れて槍を投げる姿勢で剣を構えたのだ。次の瞬間、戦士は剣を信じられない速度をもって投擲する。そして、たった一撃で倒してしまった。

 

「門を開けろ。」

 

「ば、馬鹿を言うな!向こうにはアンデッドの大群がいるんだぞ!」

 

「それが?この私、モモンに何か関係があるのかね?」

 

圧倒的な自信に溢れた漆黒の戦士の姿に、衛兵たちは誰もが威圧され口ごもった。

 

「まぁ、門を開けたくないと言うならそれでもいい。勝手に行かせてもらおう。」

 

戦士は飛ぶように門を飛び越えるとそれに続いて美女二人は文字通りに飛びながら門を飛び越えていった。

 

「アインザック殿、あの御人は?いや、今はいい。我らも続くぞ!この機を逃すな。」

 

門の前のアンデットの数が減っているのを確認したガゼフは自身の部隊を率いて門から飛び出していく。

 

「俺達も続くぞ!囲まれないように最低でも5人チームとなって行動しろ!接近戦に自信のないやつは塔の上から援護を頼む!」

 

アインザック達冒険者もその後に続いた。

 

モモンはアンデッドの大群を蹴散らしながらデス・ナイトの方へと進んでいく。ナーベにはスケルトン・ドラゴンの対処を命じており、ルプーには最低でも戦士長と組合長の二人は死なないように注意をしながらゾンビとスケルトンの相手を命じていた。

 

モモンが周りのアンデットを蹴散らすと新たに2体のデス・ナイトがゾンビを引き連れて登場した。つまり3体のデス・ナイトと対峙することになる。

また、ガゼフの方にも1体のデス・ナイトが現れていた。

 

「くっ!」

 

ガゼフは自らの装備が万全の状態であればと焦っていた。なんとか拮抗を保てているものの、いまの装備では強固な盾を切り崩すための威力が出せずにいた。

 

閃光が煌き、別の閃光が弾く。両者の剣に宿った魔力がぶつかり、かすかな放電を放つ。甲高い金属音が途切れることなく続いた。この拮抗は2体目のデス・ナイトが現れてガゼフに襲い掛かったことで破られるかと思われたが、デス・ナイトに横から天使がタックルを食らわせて体制を崩し、その一瞬のスキをついて後方からの剣を防ぎ距離をとることに成功した。

 

「なにをしているか!ガゼフ・ストロノーフ!!」

 

「お前たちのその姿は!法国の!?なぜ法国の者が私を助ける?」

 

「なぜ?なぜだと貴様!これだから王国の奴らは腐っているのだ!我ら法国は人類の守り手である!王国やら法国やらと理由をつけてこの光景から目を背けることなどありえん!お前たち、天使を召喚の後、後方へ回れ!神が王国に降臨し我らをこの地へと導きになられた!我らが日々研鑽してきたのはこの為にあったのだ!誰一人死ぬことは許さん!これを乗り越えた先に神が待っているぞ!」

 

ガゼフの窮地を救ったのはニグン・グリッド・ルーインが率いる陽光聖典の部隊であり、ガゼフは信じられないというような表情を浮かべていたが、ニグンからの言葉を聞き獰猛な笑みを浮かべるとニグンの隣に立ち剣を構えなおした。

 

「俺はお前たちのことを誤解していたようだ。」

 

「ふん 貴様と仲良くするつもりはない。」

 

「盛り上がってるっすね~~。《ヒール/大治癒》。戦士長には死なれたら困るんすよ。」

 

「これは・・・助かった。」

 

「貴様は・・・昼間にあの戦士と一緒にいた神官だな。まさか第6位階魔法の使い手とは。」

 

「戦士じゃなくてモモンさんすよ。モモンさん。覚えていてほしいっす。」

 

「あのモンスターを3体同時に相手にしているから只者ではないとは思うが。いまは目の前に集中だな。」

 

突如として現れた神官がガゼフに回復魔法を唱え、遠くで戦っている戦士を宣伝するかのように言いその場から離れていった。




長いので区切ります。


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漆黒②

時は少し遡り

 

 

「くそ!俺を追ってきたのか?いや違う・・・生きている人間を感知してこの街に来たんだ。俺のせいじゃない。・・・・あれは・・・ストロノーフか?・・・・・・・・・・・なんで・・・・・なんでだよ!なんでお前はあのアンデットに立ち迎えれるんだよ!どこで差がついちまったんだろうな。」

 

ブレイン・アングラウスは物陰からアンデットと人間との戦いを見ており、その中に好敵手でもあるガゼフ・ストロノーフの姿を見つける。逃げ出して今も隠れて震えている自身との違いを見せつけられ、悲観にくれていたが、二体目のアンデットの騎士が現れ、天使が窮地を救う場面を目撃すると

 

「はは 魔法詠唱者と僧侶まで全線に出て戦っているのかよ。それに比べて戦士でもある俺ときたら・・・・・・・くそ!法国の奴ら・・・・格好いいじゃねえか!!」

 

ニグン・グリッド・ルーインの主張を聞いたブレインは覚悟を決めたそうな表情を受かべると自身の愛刀を一撫ですると自身の頬を鞘で思いっ切り打っ叩いた。

 

 

 

 

 

ガゼフとニグンは二体のデス・ナイトと向き合っていたが

 

「ガゼフ・ストロノーフよ。あの二体を相手にどれくらい時間稼ぎができる?」

 

「ん?そうだな。もって1~2分ってところだろう。」

 

「そうか・・・ならば我が国に伝わる秘宝を使用し最高位天使を召喚する!詠唱中は他の魔法の使用ができん!1分だ!1分間私にあのアンデットを近づけされるな!」

 

「はは この状況を打破できるのであればそれくらいのことはしてみせよう。行くぞ!」

 

ニグンは懐から魔封じの水晶を取り出して使用する準備を始める。それを見たガゼフは、能力向上を唱えてデス・ナイトへと突撃した。

 

二体のデス・ナイトを相手に立ち回るガゼフではあったが、徐々に身体に傷をつけ始める。焦りの表情を浮かべてはいるが瞳は諦めてはおらず、ニグンの方へ行かせまいと倒れることはなかった。

 

「はぁ はぁ ッチ やはり二体は辛いか。だが!ここから先へは行かせはせんぞ!!」

 

吠えるガゼフに一瞬で近づいた二体はそれぞれ時間差で上と横から剣を振りぬいてきた。流水加速にて上からの攻撃を避けることには成功したが、度重なる武技の使用による疲労により足を取られてしまい横からの攻撃の対応をするのは絶望的に見えた。ガゼフは迫りくる剣を見ながら横目でニグンの方を見ると水晶が砕けて天使が召喚されていた。それを確認したガゼフは安堵の笑みを浮かべながら役割は果たしたという風に覚悟を決めた。

 

「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

しかし横合いからその剣を受け止めて弾き飛ばし、もう一体も弾き飛ばした人物を見て、驚愕に目を見開いた。

 

「ストロノーフ!!お前にできて俺にできないことはない!」

 

「お前・・・ブレイン・アングラウスか!」

 

「威光の主天使よ!《ホーリー・スマイト/善なる極撃》を放て!!この場にいるアンデット共を浄化するのだ!」

 

ニグンが召喚された天使に命じると二体のデス・ナイトと近くにいたアンデットは消滅し、その他のアンデットの対応にも向かわせようよ周りを見ると、3体のデス・ナイトは戦っていた戦士に倒されており、遠くても魔法詠唱者がスケルトン・ドラゴンを倒している所であった。

 

「今宵、この場にこれだけの強者がいたことに感謝しなければな。」




途中で切ります。

③にて死の螺旋は完結させます。


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