ヒーローと黒猫のウィズ (ロック・ハーベリオン)
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プロローグ:Wizard of the black cat

黄昏メアレスのイベントやりながら書いた

やっぱり勢いって大切!


個性…数十年前中国の赤子が光って産まれた事から世界のあちこちで見られる異常現象

それまで空想の世界だった非日常の世界が日常へと変化していった

それとともに個性を使った犯罪が増え、しばらく社会問題となっていた

そんな中かつて誰もが憧れ、夢に見た一つの職業が脚光を浴びていた

悪を葬り正義を貫く『ヒーロー』

これは1人の少年が、いや一人の転生者がヒーローになるまでの話である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、なんでさ…」

 

今日は僕の3歳の誕生日だった

自分に親はいないが、面倒を見てくれている祖父からプレゼントをもらい、テレビを見ていた

そこにはNO.1ヒーローであるオールマイトが映っていた

 

「おや、オールマイトか?魔借(まか)はヒーローになりたいのかい?」

 

「うん!じいちゃん、僕はヒーローになりたい!」

 

そう言って体に力を込めたら手に1枚のカードが現れた

 

「え?」

 

「ほう。このタイミングで個性が目覚めるか。魔借、明日病院に行こうか。なんの個性か調べてもらいに行こうな」

 

この時、僕の耳には祖父の言葉が聞こえていなかった

僕の頭の中にはいくつかのワードが思い浮かんだ

 

個性、オールマイト、超常社会、雄英…

 

そうか、この世界は『僕のヒーローアカデミア』か…

 

そして、自分が出したカード…

このカードには見覚えのあった

 

「黒猫のウィズ…」

 

そして、この日僕は、俺になった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、まじでなんでさ…」

 

深夜、ベッドの上に寝転がりながら2回目のなんでさを言う

 

「なんで俺、ヒロアカの世界にいるの?え、転生?憑依?それにしては俺死んだ記憶無いんだけど。フツーに生活していただけだし。それに個性が黒ウィズって…。確かに最後の記憶は黒ウィズやってた記憶だけどさ…。それが個性になるってどゆことよ…。つーか、個性が目覚めて前世?の記憶が蘇るってなんてテンプレだよ」

 

くそっ、考えてもダメだなこりゃ

まあ、別に前の世界に戻ろうとは思わんし

冴えないサラリーマンだったからな

まあ、ヒロアカの世界だから

 

「ヒーロー、目指してみますか…。あっ、」

 

そう言えば原作知識、途中までしか知らないや

 

「…何とかなるだろ。それよりもこれどうやって使うんだ?」

 

俺は自分が出したカードを見た

魔法使いと黒猫のウィズ…

スマホゲームのクイズRPG

 

「確か、クリスタルの魔力で精霊とつながり、呼び掛けに真名をもって答えることで叡智の扉を開く。その記録をカードに保存して問いかけ(クイズ)に答え、魔法を使用するのがクエス=アリアスの魔法使いが使うカードの魔法…だったけな?…叡智の扉、な…」

 

手元にクリスタルはない

しかし、カードがある以上精霊と契約はしてるはず…

 

「魔力を込めれば…。どうやってだよ…。あー、めんどくせぇ。ゲートオープン解放!…まあ、こんなんで使えるわけ〈ピカー〉うそーん…」

 

某カードゲームの開始宣言を何となくで叫んでみたらカードが光出した

そこで俺は少しづつ焦り出した

ここで魔法が発動したらまずいんじゃね、と

 

「おいおいおいおいおい!!ちょっ、待って、止まって!!流石にまずいって!家の中で魔法はまずいって!」

 

しかし、カードさらに光輝き、宙に浮き、回転し始めた

そして、魔法陣まで現れ始めた

 

「あれ!?これ攻撃魔法とかじゃなくね!?召喚系じゃね!?なんだそれなら…、いやドラゴンとかでたら余計まずくね…?」

 

そしてカードの回転が早くなり、やばいくらい輝いていた

 

「HeyHeyHeyHeyHeyHeyHey!!?ストップ!?待って!ドラゴンとかはまじで勘弁してくれ!人!そう!人型がこい!」

 

そして光が溢れ、何も見えなくなった

 

「うおっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にゃはは、やっと繋がったにゃ」

 

光が晴れ、カードがあった場所にいたのは

 

「く、黒猫の、ウィズ…」

 

「そうにゃ。私が四聖賢の一人、ウィズだにゃ」

 

「…」

 

開いた口が塞がらなかった

まさかまさかの黒ウィズのメインキャラが出てくるなんて

 

「そして、君が私の弟子かにゃ?」

 

 

こうして俺とウィズ、そして精霊達の物語は始まりを迎えた

 



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第1話:これが俺の魔法(個性)



『魔法使いは常に人の奉仕者たれ』


クエス=アリアス 魔法使いの信念


個性が目覚めてから約12年が経った

あれから色々とあった…

いや、ほんとに色々とありすぎた

なんだよ、ほんと

俺、不幸の神様にでも愛されてるのか?

 

「にゃ?ボーとしてどうかしたにゃ、魔借?」

 

「ウィズ…。いや、なんでもない。ただ、」

 

「ただ?」

 

「いろんな、そう、ほんとにいろんなことに巻き込まれたなぁと思ってな」

 

「あぁ…。確かにそうにゃ…。でも、半分程はキミが自ら首を突っ込んで行ったんじゃにゃかったけにゃ…」

 

「それに関しては悪かったが、仕方が無いだろ。体が勝手に動いたんだからよぉ」

 

さてと、そろそろやつが来るな ピンポーン♪

 

「にゃ?もうそんな時間かにゃ?」

 

「ああ、ほら、学校行くぞ」

 

「にゃ!」

 

そう頷いたウィズは俺の肩に飛び乗った

そして、玄関を開けると

 

「まーくん、学校行きましょ♪」

 

「まーくんはやめろといつも言ってるだろ、渡我(とが)

 

渡我被身子(トガヒミコ)

原作では確かヴィラン連合の一員として行動していた女子高生

それがどうしてこんなにも俺と親しく、はたまた登校するのに迎えに来たのかと言うと『幼馴染』だからである

…そう、幼馴染…

いや、実はな俺の通っていた幼稚園にさ、いたんだよ、こいつが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~4歳の頃『幼稚園運動場』~

 

「はぁ」

 

「どうかしたにゃ、魔借?」

 

「いやな、子供のテンションに合わせるのって疲れるなと思ってな」

 

「君も子供にゃ」

 

「精神的には大人だ」

 

個性が目覚めてから一年後、俺は一般の幼稚園に入った

精神が大人なためか幼稚園はとても疲れた

自由時間で全員が運動場に出た時に俺は既に疲れていたので端の方で休もうとした

だが、そこにいたのは…

 

「おーい、トガよぅ? そういえば、お前の個性って何なんだっけ? ちょっと使ってみろよ!」

 

(あ、なんだ?)

 

典型的なガキ大将とその取り巻き数人、そしてどう考えてもいじめを受けている女の子だった

周りの取り巻き達が『俺はこんな個性なんだぜ、スゲー!』と騒いでる中で、個性を全く使わない状態の女の子

まるで無個性は価値などないかのようなヒエラルキーに位置された女子への当たりは色々きつかった

正直見てて不快だった

 

(ちっ、面倒なのがいるな)

 

「止めないのにゃ?」ボソ

 

「止めるさ…。『魔法使いは常に人の奉仕者たれ』、だろ」ボソボソ

 

「にゃはは、それでこそ君にゃ!」ボソ

 

しかし、そんなことをウィズと話しているうちに彼らの内容はエスカレートしていった 

 

「……ったくさー、こうまでされて使わないってことはよー? お前、やっぱり無個性なんじゃねーの?」

 

「ち、ちがうもん……」

 

「お前の両親もついてないよな~、自分の子供が無個性みたいな雑魚なんてよぉ~?」

 

そして、彼らは彼女の逆鱗に触れた

 

「っ!魔借!!」

 

「まずい!『繋げ!秘儀糸(ドゥクトゥルス)!』」

 

俺は咄嗟に魔力の糸(秘儀糸)を使い、女子を自分の方に引っ張った

その時

 

「痛っ」

 

引っ張られた女の子はこちらを向き、手に持っていた鋏で俺の腕を薄く切り裂いた

そこから血が流れる

そして鋏についた血を女の子が舐めると、

 

女の子は俺になった

 

「は?」「にゃにゃ!?魔借が2人!?」

 

俺の姿になった女の子がガキ大将の方を向き、

 

「…これで、まんぞく、ですか?」

 

「…あ、ああ、あああああっ!!?」

 

ガキ大将とその取り巻きは逃げていった

どうやら鋏を持ち出して俺を傷つけた彼女とその個性にビビったらしい

 

「…おい、お前」

 

「…ごめん、なさい。あなたを傷つける、理由なんかなかったのに…」

 

「いや、気にしてねぇからいいけどよ。それ、お前の個性か?」

 

「っ!?」

 

「なるほどな。血を口にしてその血の持ち主に変身する個性か…。どこまで再現できてるんだ?」

 

「えっ?」

 

「姿だけか?個性は?身体能力は?」

 

「いや、きみ、質問しすぎじゃにゃいかにゃ?」

 

「え、いや、あの、え?」

 

「あん?なんだ?」

 

「気持ち悪くないの、私のこと?」

 

「…はあ?なんで?」

 

「なんでって、私は君を傷つけたし、血で変身するんだよ!?なのに、どうして!?」

 

「んなもんこの世界じゃありふれたもんだろ」

 

「確かにそうにゃ。私みたいなのもいるんだからにゃ」

 

「…え?」

 

この時、俺は気づいてなかった

俺は精神が大人だから視野が広い

しかし、子供はそうはいかない

周りからいじめられていた彼女は特にそうだった

 

「先生、あいつです!トガに切られたやつは!」

 

黒猫(こくびょう)くん!大丈、え?」

 

「問題はないですよ、先生。俺が本物の黒猫です。こっちが」

 

「トガ!気味の悪い個性してるんじゃねぇ「『下天ボンバー!』」ギャア!?」

 

「ちょ、黒猫くん!?」

 

ガキ大将に威力の小さい雷が走る

この時、俺は切れていた

ガキ大将の無責任な発言に

 

「おい、元はと言えばてめぇの発言が原因でこうなったんだろが。てめぇにどうこういう資格はないんだよ!個性を持たなきゃ人間じゃねぇのか?てめぇの気に食わない個性を持っていればしりたげるのか!?あァ?ふざけんなよ…!この世界はてめぇの世界じゃねぇんだよ!他人のことを見下してるやつがどうこういうんじゃねぇ!!」

 

「お、お前!先生を呼んできてやったのによ!」

 

「はぁ!余計なお世話だ!」

 

「ふざけんな!!」

 

ガキ大将は先生の静止を振り払い、俺に襲いかかった

しかし、俺は既にカードに魔力を込めていた

 

次の瞬間、ガキ大将が凍りついた

 

「!!?」

 

「安心しろ、死にはしない。凍傷もないように制御した。てめぇには傷をつける価値なんてない…。そこで反省してな…!」

 

 

そう言い残し、俺は先生に怒られながら既に俺の姿から元の姿に戻った女の子と職員室に向かった

 

「キミ、やりすぎだにゃ…」

 

 

 

 

 

 

 

今回の騒動はガキ大将達が原因だったため俺たちは厳重注意で終わった

その日の夜、女の子が親2人に連れられて俺の家に謝りに来た

じいちゃんは俺が気にしないなら既にいいらしく、簡単に相手方を許していた

その時に知った

相手方がお隣さんだったこと

そして、

 

「渡我、被身子です。これからよろしくお願いします…!」

 

(うそーん…)

 

未来を変えてしまったことを…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~現在~

 

そんなこんなで俺と渡我は幼馴染となり、幼稚園だけでなく、小中学校も同じところに通った

お隣ということもあってかとても懐かれた

 

「それじゃあ私は散歩してくるにゃ」

 

ウィズは学校の前に来るといつも1人で散歩に行く

理由としては学校に猫がいるのはどうか、という観点と1度学校内に入れた時に猫好きな奴らにもみくちゃにされたからである

 

「はい、ウィズちゃん。また帰りに♪」

 

「にゃ♪ヒミコもしっかりと勉強するにゃよ」

 

ウィズは渡我に撫でられた後、校舎の塀を伝ってどこかに行った

 

「さあ、まーくん!教室に行きましょう♪」

 

「はぁ、やれやれだぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございます♪」

 

「あ、トガちゃん、おはよう!」

 

渡我が教室の扉を開けて挨拶をすると近場にいたクラスメイトが反応した

 

「うぃーす」

 

ちなみに中学に通って約2年、ずっと渡我と登校、同じクラスだったため、

 

「夫婦が登校したぞー!!」「またか!!」「いやいつものことだろ」「リア充爆発しろ!!」

 

「『下天ボンバー』!!!」

 

「「「「ギャア!?」」」」

 

こうやって学校全体で夫婦認定された…

そして、毎回俺が黙らせている(物理)

 

「おい、今ふざけたこと言ったやつ、後で校舎裏な」

 

「「「「既にお仕置きはくらっただろぉ!?」」」」

 

「だが、断る」

 

はぁ、やれやれだ

俺は自分の机に座り、渡我を見ると

 

「そ、そんな、夫婦なんて///」

 

おい、なんで毎回満更でもない感じなんですかねぇ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで学校が始まり、終わった

え、授業風景?

そんなん写してもつまらんだろ

うちの学校は平和そのものだ

異様にノリがいいことに定評があるがな

現在は帰りのホームルームだ

 

「うっし、ホームルーム始めんぞ」

 

俺らの担任がそんなことを言う

 

「といっても特に連絡はないがな」

 

ガラガラガッシャーン!

 

そしてクラスメイト(俺含め)がズッコケる

 

「ちょっと先生!」

 

「すまんすまん。でもほんとに大した連絡はないんだよ。ああ、志望校の用紙出てないやつは早めに出せよ。まあ、どうせお前らの殆どがどこかのヒーロー科志望だろうけどな」

 

「はい、先生!」

 

担任の話を遮り、1人のクラスメイトが手を挙げた

 

「おうどうした?」

 

「この中で雄英に行く人いるんですか?」

 

「あー、黒猫と渡我だな」

 

「「「おーー!」」」「やっぱりかー」「妥当だねー」「「夫婦共にトップ校か、爆発しろ!」」「『八葉ドーン』!!」「「べギャ!」」「男子が死んだ!」「この人でなし!」「「勝手に殺すな!!」」

 

なんだこれ?

 

 

 

 

 

 

 

あの後、少し騒がしかったが普通にホームルームは終わり、渡我と下校した

途中でウィズと合流したが

 

「んで、今日はどこに行っていたんだ?」

 

「んにゃ?今日は街をふらついていたにゃ。なんかヘドロみたいにゃヴィランをオールマイトが吹っ飛ばしていたにゃ」

 

ん?ヘドロ?

 

「へー、変わったヴィランもいたもんですね」

 

あーれれれ?そのヴィラン知ってる気がするですが?

 

「それとイズクがいたにゃ」

 

「イズク?誰ですか?」

 

「俺の友人だ。大方ヒーローを見に行ったんだろ。ましてやオールマイトがいた現場だ。あのヒーローオタクなら、な」

 

実際は違うはずだがな

原作が始まったか

 

「それより渡我、お前、大丈夫か?」

 

「ん?何のこと?」

 

「成績」

 

「…」メソラシ

 

「おいこら、こっちを見ろ。お前、模試の判定ギリギリだっただろ」

 

「こっ、ここから伸びるから大丈夫です、多分」

 

「おい」

 

「にゃはは、二人とも大変だにゃ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~数ヶ月後~

 

「眠ぃ…」

 

「ほら、まーくん!雄英ですよ!雄英!」

 

耳元で騒ぐな、渡我

ともかく俺たちは雄英に来ていた

入学試験を受けに来たのだ

ちなみに入試にウィズを連れていくわけには行かなかったので今日は召喚してない

 

「わかったから静かにしてくれ。寝不足なんだ」ファ〜

 

「入試前なのにどうして?」

 

「呼び出しくらった…」

 

「誰に?」

 

「誰でもいいだろ。そんなことより行くぞ」

 

「あ、待ってー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は俺のライブへようこそ!エビバディセイヘイ!」

 

「ヨーコソー!!」「「「「………」」」」

 

ボイスヒーロー、プレゼント・マイクの言葉に渡我だけが返す

筆記試験は特に問題なくおわり、俺は実技試験の説明会場に来ていた

隣には渡我が座っている

 

「コールがひとりとはこいつはシビィーー!それじゃあ実技試験の概要をさくっとプレゼンするぜ!!アーユーレディ!?YEAAAH!!!」

 

「イェーーーーイ!」「「「「………」」」」

 

いや、なんでお前は律儀に返すんだよ!

周りを見てみろ!

お前、めちゃくちゃ見られてるからな!

その後、プレゼント・マイクの説明プレゼンは淡々と進んでいった

プレゼント・マイクの話をまとめると、受験生はそれぞれ会場に移動

その会場にはロボットの仮想敵ヴィランが多数配置しており、そのロボットを行動不能にするなり倒すなりすればロボットの種類に応じたポイントが貰える

そのポイントを稼ぐのが俺らの目的

まぁ原作通りというか何というか、想定通りの試験だな

 

「質問よろしいでしょうか!?」

 

1人の男子が手を挙げていた

 

(あ、あれ、飯田じゃね?) 

 

プレゼント・マイクに負けず劣らずデカい男子の声

彼も原作通りならA組の生徒になる、飯田だ

まあ、この時になるまですっかり忘れていたが…

記憶ってのは薄れるものさ

そうなることを危惧して記憶が戻ってからすぐに覚えてる限りノートに書きとったがな

ともかく、飯田が4種類目の仮想敵について質問し、プレゼント・マイクがそれに答える

ついでに出久に指摘していた 

各会場に一体ずついる巨大な仮想敵

そいつは倒しても0ポイントのお邪魔虫

それも覚えてる

まあ、邪魔をするならぶっ潰すだけだ

 

「俺からは以上だ!!最後にリスナーへ我が校"校訓"をプレゼントしよう!」 

 

そんなことをプレゼント・マイクは言い出した

 

「かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った!『真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者』と。

『"Plus Ultra(更に 向こうへ)"』!

それでは皆、良い受難を!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会場は渡我と別の場所だった

というか渡我の個性でどうやって仮想ヴィラン(ロボット)を倒すつもりだ、と考えた

流石に他の受験生から血を奪うわけでは無いだろうし…

まあ、何とかするだろ

とりま、俺は俺で頑張りますか

眠いけど…

 

「『叡智の扉(ゲート)接続(コネクト)魔力供給(セット)』」

 

通常のクエス=アリアスのカード魔法ではなく、俺の個性として目覚めた(魔法)を使うために簡単な詠唱をする

 

そして、『はい、スタートー!』

 

急なスタートの合図ではあったが、俺は走り出した

 

「『憑依召喚(インストール)』!『武装召喚(サモン・ウェポンズ)』!」

 

そう俺が叫んだら、2枚のカードが俺の周りに浮かび、1枚は俺の中に吸い込まれ、もう1枚は車輪のついた機械仕掛けの弓になった

そして、俺は黒い異形の姿になった

 

「ニンゲンメ、ブチコロシテヤルゼー!!」

 

「悪いがお前らに殺される道理はない!『クラッシュウィール』!!」

 

異形の姿になったことで上がった身体能力と弓についていた車輪を回し、破壊力を帯びた弓でロボットを殴った

それをモロにくらったロボットは簡単に破壊された

 

この2つが俺の個性としての力だ

 

憑依召喚(インストール)

精霊の特性を自分に憑依させる魔法

今回は『夢魔装(ダイトメア)』の二つ名を持つラギトの力を憑依させた

そのため、異形の姿(ロストメアの鎧)になれたのだ

他にもあるが今回は言わない

 

もうひとつが『武装召喚(サモン・ウェポンズ)

どこかの正義の味方みたいな能力だが、これは精霊が使っている武器を召喚する魔法だ

召喚といっても擬似召喚である

某正義の味方と違って劣化はしてないが、俺の腕によっては弱体化した物が召喚される

今回は『魔匠輪(ウィールライト)』の二つ名を持つレッジの武器を召喚した

様々な車輪で様々な効果を生む魔匠技術が使われた弓である

これを発動するには魔力が必要だが、それは自身の魔力でやっている

 

そして、

 

「『繋げ!秘儀糸(ドゥクトゥルス)!』」

 

カードを使わない詠唱の魔法、異界『ロクス・ソルス』に唯一残っている魔法、アストルム一門の魔法の詠唱をする

秘儀糸で魔法陣を描き、

 

「『修羅なる下天の暴雷よ、千々の槍以て振り荒べ』!!」

 

詠唱により魔法陣から生まれた複数の雷がこちらに向かってきていたロボットを破壊する

 

どうして俺がアストルムの魔法を使えるか…

それは詠唱したらできたからである

個性が目覚めた後、他作品の魔法を使えないかと試していた時に、なぜか秘儀糸(ドゥクトゥルス)は使えたのだ

当時は秘儀糸と下天ボンバー、八葉ドーンといった威力の低いものしか使えなかった

しかし、今現在では他の魔法も使える

本物の使い手『黄昏(サンセット)』リフィルに教えを受けたからだ

ウィズのように俺が召喚したのでなく、黄昏メアレスのストーリーに俺が異界召喚されて巻き込まれたからだ

その後から黄昏メアレスの場所、『ロクス・ソルス』に関してはそこにある門を経由することで行き来することができるようになり、リフィルに教えてもらうように頼み込んだのだ

 

「はぁ!!」

 

近づいてきたロボットを殴り壊す

その後、

 

「『ブラストウィール』!!」

 

光の矢を放ち、男子を後ろから襲おうとしていたロボットを迎撃する

 

「すまん!助かった!」

 

「気にするな。それより怪我しないように気をつけろよ」

 

「おう!」

 

こうして物理、魔法、魔法(物理)を駆使し自分のポイントを確保しつつ、助けられる受験生を助けていった

そして、

 

ズ…ン、ズーン、ズーン

 

「出たぞー!!!」

 

ついに出てきた、圧倒的脅威(ゼロポイント)

それは会場にあった仮設の建物をなぎ倒しながら大暴れする

それを目のあたりにした受験生は逃げ出した

 

「まあ、そうなるな」

 

…俺を除いて

 

「だからといってヒーローが逃げ出したらいかんだろ。ったく、やりますか」

 

俺はカードを取り出し、多くの魔力を込める

 

「『ロストタイム・フレグランス』!!」

 

ファム・リリーのSSである遅延魔術を使う

複数の時計を模した魔法陣が巨大ロボットの様々な場所を抑え込み、完全に動きを止めた

 

「「「ええぇぇえええ!!?」」」

 

外野がうるさいが無視をする

本来SS、スペシャルスキルは精霊の問いかけに複数回答えないといけない

しかし、俺は魔力を過剰に込めることでその問いかけを省略できるのだ

 

「『ゲイルウィール』!」

 

弓の車輪を変え、回し、風の力を身に宿し、ロボットの顔に向かって飛ぶ

 

「『武装解除(リリース)』!『武装召喚(サモン・ウェポンズ)』!」

 

魔匠弓を消し、新たにパイルバンカーを召喚する

そして、魔匠具としての機能を発動するために一言叫ぶ

 

「『オーバーブースト』!!」

 

召喚したパイルバンカー

それは『戦小鳥(ウォーブリンガー)』の二つ名を持つミリィの武器

破壊力においては右に出るものはない

そこに魔匠具としての機能を発動

パイルバンカーの後部が火を吹き、一気に加速した

 

「『フルティルト』!!」

 

掛け声と共に魔匠杭がロボットの顔面深くに突き刺さり、炸裂した

大型仮想敵は粉々に崩れていく

BOOOOOM!!!という爆音が演習場に鳴り響く

 

「嘘だろ!?」

 

「マジかよ!あれ(仮想敵)倒しやがった!!」

 

 

 

「あいつ、ヤベーって! マジヤベーって!」

 

 

 

 

 

 

 

『試験終了~~~!!』

 

プレゼント・マイクが終了の合図とともに、実技試験は終わりを告げた

俺はそのまま夢魔装(ダイトメア)の身体能力を使い、そのまま着地した

 

「ふう、『魔法解除(リセット)』」

 

その掛け声と共に俺は全ての魔法を解く

試験は終わった

後は結果を待つだけだな

渡我の方はどうなっているだろうか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまり、おじさんの個性で試験受けたのか」

 

「はい♪私自身の個性を使うために他の受験生から血を貰う訳にはいかなかったので」

 

「まあ、そうなるわな」

 

試験の帰り、案の定渡我と帰ることになったのでどうやって実技試験をしたのか聞いた

渡我の個性は『変身』

他者の血を栄養とし、その量で変身時間が決まる

しかし、そこにはもうひとつ秘密があった

栄養したエネルギーを過剰に使用することで変身した他者の個性も使用できるという秘密が

それでも個性は本人の半分ほどの力しかでない

超常を完璧に再現するのは同じ超常でも難しいということだろう

コップ1杯で変身だけなら1日持つ

しかし、個性までも再現しようものならコップ1杯で1時間が限界だ

渡我は今朝おじさん、つまり渡我のお父さんに血を貰い、その個性で実技試験を行ったとのことだった

因みに渡我のお父さんの個性は『吸血鬼』、吸血鬼っぽいことができる個性だ

渡我が血を口にすることで変身するのはそこから来ているのだろう

 

「おじさんの個性はどちらがいえば戦闘向きだからな」

 

「うん、お陰で楽でした♪」

 

「そうか、じゃあ、」

 

「?」

 

「筆記はどうだったんだ、渡我…」

 

「…」メソラシ

 

「おい」

 

「運命は神のみぞ知るんですよ、まーくん」

 

「…お前な」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして1週間後、雄英から合否通知が届いた



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第2話:個性把握テスト

個性把握テストと言いながら前半は全く違う件













~三人称視点~

 

「『ブラストウィール』!!」

 

1人の男が光の矢を放つ

それは怪物に突き刺さり、怪物は消滅した

 

「くそっ、数が多い!」

 

時刻は黄昏

異形の怪物は街の中央にある門を目指す

 

「『ゲイルウィール』!!」

 

異形の怪物の名は『ロストメア』

誰か夢見てそして捨てられた見果てぬ夢の化身

彼らが目指すは現実の世界

この都市、夢と現実の狭間にある都市『ロクス・ソルス』にある門を目指すのだ

 

「『クラッシュウィール』!!」

 

ロストメアが現実に出たら現実の法則が歪む

それを阻止するために彼らはいる

『メアレス』、夢見ざる者達が

 

「ぐっ!?」

 

彼もその1人

魔匠輪(ウィールライト)』レッジ

彼が相対してるのは『多くの友達を作る夢』というロストメア

その特性はロストメアが作り出す分身、『悪夢の欠片』の大量生成

ロストメア自身も悪夢の欠片もそこまで力がないやつではあったがいかんせん数が多く、苦戦していた

 

「『修羅なる下天なりし暴雷よ、千々の槍以て振り荒べ』!!」

 

「っ!」

 

詠唱が聞こえた瞬間、レッジは後退した

そして先程いた場所に複数の雷撃が飛んできた

 

「魔借か!」

 

レッジの傍にウィズを肩に乗せた魔借が来た

 

「苦戦してそうだったからな。手を出させてもらった」

 

「いや、助かった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~魔借視点~

 

数分前、俺は門を潜り、『ロクス・ソルス』に来ていた

この門は本来黄昏の時間帯に現実とこの都市を繋ぐための門だが、前にあった『オルタメア』による事件以降、門に干渉できるようになり、叡智の扉と門を繋ぐことで行き来できるようになったのだ

 

「来て早々悪いが手伝ってくれるかね?」

 

「アフリト翁…。何かあったのかにゃ?」

 

アフリト翁

メアレス達に報奨金を払ったりしているメアレスの統治者的存在

その正体は夢を喰う妖精の化身

 

「実は、少し厄介なロストメアが出おっての。手伝って貰いたい」

 

「はあ、またか。わかった。んで、何処にいけばいい?」

 

魔匠輪(ウィールライト)の方に向かってくれ。ロストメアの能力は悪夢の欠片を大量に生成する力だ」

 

「了解」

 

そういう会話をした後、『ディテクトウィール』を使ってレッジの方に向かった

 

「キミ、あそこにゃ!」

 

「聞いてはいたが数がほんとに多いな。『繋げ秘儀糸(ドゥクトゥルス)』。『修羅なる下天の暴雷よ、千々の槍以て振り荒べ』!!」

 

レッジに迫っていた悪夢の欠片に向かって複数の雷撃を放つ

それは悪夢の欠片を打ち砕いた

 

「魔借か!」

 

「苦戦してそうだったからな。手を出させてもらった」

 

「いや、助かった」

 

「んにしても、数が多すぎだろ。本体は?」

 

徹剣(エッジワース)裂剣(ティアライザー)が向かった」

 

「あの二人なら問題にゃいとは思うけどさっさとこっちを片付けて手伝いに行くにゃ」

 

「了解!」

 

「言われなくてもわかってる!」

 

そう言い合い、俺は刀と銃を召喚し、レッジは弓を構える

 

「全弾持ってけ!!」「『ブラストウィール』!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは『巡る幸い亭』

メアレス行き付けの定食屋である

黄昏時が過ぎ、既にロストメアを退治し終えたメアレス達が集まり、騒いている

 

「はい!野菜たっぷりカレー、お待ちどう♪」

 

「ああ、ありがとう、リピュア。…変なことしてないよな?」

 

「変なことじゃないよー。愛と勇気と希望の魔法だよ」

 

「…大丈夫かにゃ?」

 

「…シチュージンみたいにならないことを祈ろう」

 

俺は『妖精』リピュアが持ってきたカレーを少し警戒しながら食べ始めた

 

「結局、本体はゼラードが仕留めたのか」

 

夢魔装(ダイトメア)』ラギトがそう言った

 

「ああ、数いるだけで大した強さではなかったからな。突っ込んで斬った」

 

「その数が多くて時間がかかってしまいましたけどね…」

 

それに答えたのは『徹剣(エッジワース)』ゼラードと『裂剣(ティアライザー)』コピシュだった

 

「お疲れーっす!」「ふう」

 

「らっしゃーせー」「らっしゃーせー!!」

 

入ってきたのは『戦小鳥(ウォーブリンガー)』ミリィとレッジだった

その2人に挨拶をしたのはこの店の従業員である『黄昏(サンセット)』リフィルとリピュアだ

 

「にゃ?レッジ、遅かったにゃね」

 

ウィズはレッジの方に歩いていく

 

「ああ、多くのメアレスが魔力の補充に来ていたからな。時間がかかった」

 

「私はそれを手伝っていました!」

 

そう言い、ミリィとレッジは席に座る

 

「お疲れ様です、レッジさん」

 

「ああ。裂剣(ティアライザー)、今日はお前が仕留めたんだったな」

 

「正確には俺とコピシュだ」

 

そう言いあいながらメアレス達の会話は進んでいく

 

「それにしてもルリアゲハさんとリフィルさんがいないと大変ですね」

 

そう、ミリィが呟く

堕ち星(ガンダウナー)』ルリアゲハは故郷の国へ帰り、リフィルは…

 

「まさか、黄昏(サンセット)が夢を持つとはな」

 

「彼女は自分から夢を見たことがなかった。そこから夢を見ることは必然だったのであろうよ」

 

「うぉ、アフリト翁、急に出てくるなよ」

 

「どちらにしろ、トップクラスのメアレスが2人もこの都市からいなくなったにゃ。その影響はでかいにゃ」

 

「ウィズさんの言う通りですね。それにしても…」

 

「あー、あれは仕方ないにゃ」

 

「魔借さんは鈍感ですからねー」

 

そう言いながらメアレス達の視線の先は少し離れたとこに座っている魔借とそのそばに立ち、魔借と話をしているリフィルの姿があった

 

「だが、黄昏(サンセット)が何も言わないのも頷ける」

 

「どういうことですか、ラギトさん?」

 

ミリィがラギトに質問する

 

「俺たちと魔法使いは住む世界が違う。文字通りな。それが弊害となっているんだ。…『彼の隣に立つ』。簡単に叶いそうで叶わない夢だな」

 

「…だからといって黄昏(サンセット)は未だ夢を捨ててない」

 

そんなレッジの呟きにアフリト翁が答える

 

「それが更に難儀な事になっているのさ。叶いそうで叶わない夢。諦めきれないのさ、彼女は。お陰でメアレスとしては活動出来なくなっているがね」

 

「はぁー、めんどくせぇ。単純に黄昏(サンセット)の野郎が魔法使いの世界に行けばいいだけだろ」

 

「…お父さん」

 

「まじで理解してないんですか…」

 

「呆れたにゃ」

 

「ちょ、そんな視線を向けるな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんか向こうが騒がしいな」

 

「気にしなくていいでしょ。はいコレ」

 

「あ、頼んでないぞ?」

 

「サービスよ」

 

「…」

 

「何よ?」

 

「いや、リフィルがサービスするなんて珍しいな、と」

 

「…私のこと、どう思っているのよ…」

 

そんな会話をしていたのはメアレス達から少し離れた場所にいたリフィルと魔借だった

魔借はすでにカレーを食べ終え、リフィルからもらったアイスを食べようとしていた

 

「今日はなんで来たの?」

 

「あ?」

 

「あなたが理由なく来る事なんて滅多にないから」

 

「ああ、そういうことな。…絡園を調べに来た」

 

「絡園を?」

 

絡園…

それは嘗て園人が管理していた夢の世界

魂だけが行ける場所であり、膨大な魔力がある場所でもある

そして、その正体は『夢を叶える夢』のロストメア

全てのロストメアの生みの親

 

「でもどうして?」

 

「…先日、俺の世界にロストメアが出た」

 

「えっ?でも、門を」

 

「ああ、門を潜ったという報告は聞いていない。だけど、ロストメアが現れたのは事実だ」

 

黄昏にしか開かない門

しかし、いつしか不安定になったせいか、それとも魔借が門を経由してこの世界に来ているせいか、時折門を潜ったロストメアが現実ではなく異界、魔借の世界に現れたことがあった

それが初めて起こったのは約2年前のこと

現実ではなく異界に行ったロストメアは厄介だった

現実に出る場合は現実の法則が歪むが、魔借の世界に行った場合は通常のロストメアが人擬態級になるほどまでの力の上昇を見せたのだ

そして魔借の世界で大暴れ

すぐにヒーロー達が駆けつけたが、攻撃ができなかった

夢を持っていたからである

それはオールマイトでも例外ではなかった

その場で唯一攻撃ができたのは魔借と魔借に召喚されたラギトだけだった

その後、警察に連れられた魔借は事情を話した

あまりにも突拍子もない話が、事実であったため、このことは上層部、そして一部のヒーローにしか伝えられなかった

また、対応できるのが魔借のみであったため政府は魔借に特別ヒーロー免許を発行した

しばらくはロストメアの被害はなかったが、ある時急に現れたのだ

魔借は後でアフリト翁に確認を取ったが門を潜られた形跡はなかったと言われた

門を潜らずに現実、または異界に出る方法はいくつか考えられるが…

 

「だから絡園なのね」

 

「ああ。もし絡園の魔法陣が誤作動を起こしているだけならいいが、もしこれが誰かの手によるものだとしたら…」

 

「ちょっと待って、もしかして」

 

「ああ、園人が関連している可能性が高い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「実技総合評価出ました」

 

ここは雄英の会議室

そこに複数の教師が集まり、試験結果を見て話し合っていた

 

「この爆豪っつったか?救助ポイント0で二位とはなぁ」

 

「対照的に敵ポイント0で八位。あれに挑んだのは過去にもいたけど…ぶっ飛ばしちゃったのは久しく見てないね」

 

「YEAH!って叫んじゃったしな!」

 

教師各々が各々の評価を下す中で、トガの話題が出た

 

「この子は敵ポイント37、救助ポイント35か」

 

「個性は変身?他人の血を取ることでそいつになる個性か。ヴィラン側にいなくて良かったな」

 

「確かに。ヴィラン側にいたら厄介過ぎる個性よね。それでもヒーロー科に来てるんだからいいじゃない?」

 

「それもそうか。筆記は…、あれ?結構ギリギリ?」

 

「実技がいいから合格かな?」

 

そしてついに魔借の話に入る

 

「それと第一位、敵ポイント51に救助ポイント50、合計101ポイント。100超えたのっていつ以来だ?」

 

「つーか、なんか見たことある個性だな…」

 

「…あ、特免じゃないか!?この子!?」 

 

「「「あ!?」」」

 

「そりゃあ個性の使い方が上手いわけだ。既にヒーローとして活動してるんだから」

 

「筆記はほぼ満点。文句なしの合格だな」

 

「流石、魔法使い。略してさすまほ」

 

「「「略すな!」」」

 

「ったく、わいわいと……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「魔借、お主に手紙じゃぞ」

 

雄英試験から一週間後、ロクス・ソルスに行った三日後の昼に俺は自分の家でじいちゃんに封筒を渡された

絡園ではリフィルと導く夢のロストメア、『ロードメア』、それから精霊として召喚したこちらの味方だった園人、『ネブロ』に手伝ってもらい、色々と調べたが何も見つからなかった

ロードメアには時間がある時に引き続き調べたもらうことにしてもらい、俺は自分の世界に戻ってきたのだ

 

「…雄英からの合否通知か」

 

じいちゃんに渡されたのは雄英からの合否通知だった

 

「早く開けてみるにゃ」

 

ウィズに急かさせ、中を開けると、丸い機械が入っていた

 

『私が投影された!!』

 

「へァ!?」「にゃ!?」

 

びっくりして変な声が出てしまった

そこに現れたのはNO.1ヒーロー、『オールマイト』

何かと交流はあるが、こうして出てくるとは思ってもいなかった

いや、俺が忘れていたと言った方がいいのかもしれない

 

『私が投影されて驚いたのではないかな、黒猫少年?実は今年から私は雄英の教師を務めることになったんだ!』

 

それは覚えていた

自分の後継者を育てるため

そのためにオールマイトは雄英に来た

 

『さて、黒猫少年、試験結果だが…筆記はほぼ満点、実技も敵ポイント51と好成績だ!素晴らしい!』

 

「流石、魔借にゃ♪これで合格だにゃ♪」

 

「まだ映像の続きがあるぞ」

 

「にゃ?」

 

『だがしかし、試験で見ていたのは敵ポイントだけじゃない!救助活動ポイントというものがある!しかも、審査制!!我々雄英が見ていたもう一つの基礎能力!!君の場合、受験者の少年少女を助け、そして……0ポイント敵を倒し、被害を抑えて大勢の受験者を守った。よって救助ポイント50、合計101ポイントだ!!文句なしの第一位での合格だ!!黒猫少年…君は既にプロと何ら変わりない活動をしている。故に、今の君に必要なのは共に切磋琢磨し、助け合う仲間だ!!共に学ぼう!!……雄英(ここ)が君のヒーローアカデミアだ!』

 

「一位かよ…」

 

「流石魔借にゃ。略してさすまかにゃ」

 

「略すな」

 

やれやれ、一位か

何かと面倒事が回ってきそうだな

 

 

 

 

この後、渡我がうちに来て、ギリギリだが合格したと言ってきた

そして、俺と渡我の家合同で俺達の合格パーティーが開かれた

そして、月日は流れ、遂に、

 

 

 

「ウィズ、行くぞー」

 

「にゃ!」

 

雄英の制服を身につけた俺はいつも通りウィズを肩に乗せ、玄関を出ようとした

 

「魔借」

 

「ん?なんだ、じいちゃん?」

 

「頑張ってこい!」

 

「…ああ、行ってくる」

 

じいちゃんに激励され、玄関を開けると

 

「まーくん、一緒に行きましょう♪」

 

「…」

 

「にゃはは、トガは高校になっても変わりないにゃ」

 

はあ、やれやれだぜ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-緑谷side-

 

僕は無個性だった

僕はいじめられ続けた

僕は、ヒーローなんかになれないと言われ続けた

そんな中、彼は、僕の1番の友人は言ってくれた

 

『出久はきっとヒーローになれるよ。なんとなくだけどな。でも、お前が諦めなければ、その夢を捨てなければ、きっとなれる。誰もを助けられるヒーローに…』

 

正直、信じられなかった

彼はすごい個性を持っていたからそんなことが言えるんだと妬んだこともあった

でも、僕は結局諦めなかった

…諦めきれなかった

そんな時に言われたんだ

僕が1番憧れていたヒーローに

 

『君はヒーローになれる』

 

NO.1ヒーロー、オールマイト

僕はそんなヒーローの後継者になった

そして、身の丈に合わない個性を引き継ぎ、僕は雄英に合格した

今ならわかる

彼の言っていたことが…

諦めなくて良かったと言える

彼の言葉が支えになった時もある

そんな彼の名前は…

 

「よう、出久。お前なら雄英(ここ)に来ると思っていたぞ」

 

「魔借!」

 

彼の名前は黒猫魔借

隣町に住む僕の1番の親友だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はウィズを肩に乗せたまま、渡我とクラス分けの紙が貼ってある雄英の入口に向かっていた

 

「魔借、あれ、イズクじゃないかにゃ?」

 

ウィズにそう言われ、見た先にはクラス分けを見ているこの世界の主人公、緑谷出久がいた

彼との出会いは小学生のことまで遡る

隣町にウィズと出かけた時、渡我と同じように出久がいじめられていた

しかも、個性によって

俺はそれを見逃せず、いじめっ子を撃退

それ以来、連絡を取り合っている

時折、遊びに行ったりもしたがな

因みにいじめっ子の中に爆豪はいなかった

ともかく、視線の先にいた出久に俺は声をかけた

 

「よう、出久。お前なら雄英(ここ)に来ると思っていたぞ」

 

「魔借!君も雄英に合格したんだ!」

 

「おう。暫く連絡してなかったからな。お互いの状況を把握しあってなかったからな」

 

「まーくん、私、蚊帳の外ですか?」

 

俺と出久で話している中に渡我が割り込んできた

 

「はいはい。出久、こいつは渡我被身子。俺の幼馴染だ。んで、渡我、前に行ったろ。俺の友人の緑谷出久だ」

 

「渡我被身子でーす!よろしく、イズクくん!」

 

「ここここここちらこそ!みみみ緑谷出久です!」

 

「イズク、緊張しすぎにゃ」

 

まじそれな

ともかく緑谷と渡我が話している中、俺はクラス分けを見る

 

「お、俺たち全員、A組じゃん」

 

「え、本当!?まーくんと一緒のクラス!?」

 

「魔借と一緒かー。うん、一緒に頑張ろう!」

 

「いや、お前ら…。ウィズを撫でながら言っても格好つかないぞ」

 

「こうでもしないと女子と話せない!」

「ウィズちゃんがかわいいのがいけないんです!」

 

「はいはい、ほら行くぞ」

 

ウィズを2人から回収して俺は2人と共に教室に向かう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雄英高校ヒーロー科

それは僅か2クラスしかない

俺は1-Aと書かれている掛札のかかった扉を開けた

 

「机に足をかけるな! 雄英の先輩方や机の制作者方に申し訳ないと思わないか!?」

 

「思わねーよ!てめーどこ中だよ端役が!」

 

「ボ…俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ。」

 

「聡明~? あぁ、めちゃくそエリートなとこじゃねえか。ブッ殺し甲斐がいがありそうだなぁ、ア"ァ?」

 

「ぶっ殺し甲斐?! 君ひどいな?!本当にヒーロー志望?!」

 

「…」「ほうほう」「かっちゃん…」「にゃ…」

 

…ひでぇな

なんかこっから一気にUターンして全力疾走で帰りたくなってきた

つーか出久、今かっちゃんっていった?

てことはあれが爆豪か…

 

「かっちゃんの性格、高校に上がったら多少にマシになるかなって思ったけど、全然そんなことはなかったな…」ボソッ

 

「イズクくん、あの人は昔からそうなんですか?」ボソボソ

 

「僕の知ってるかぎりそうだよ、トガさん」ボソボソ

 

「かんっぜんに不良にゃ」ボソ

 

「後、トガちゃんでいいです」ボソボソ

 

後ろで話している内容を聞く

あれじゃヴィランとそう変わんねぇだろ

ばかじゃね、と思いながらと首を横に振った

そして、教室を改めて見る

 

「あ、」

 

そして知り合いを1人見つけた

 

「よぉ、八百万」

 

「ま、魔借さん!?」

 

八百万(やおよろず)(もも)

一年半前ロストメアに襲われていたのを助けたのが俺と彼女の出会いだ

 

「あなたも雄英に?」

 

「ここにいるんだからわかりきったことだろ」

「ふふっ、そうですね。私の中ではあなたはヒーローとしていますから」

 

「俺、一応まだ15だよ。高校ぐらい行くさ」

 

そんな雑談をしてると

 

「お友達ごっこしたいなら他所でやれ」

 

『『『ッ?!!!』』』

 

クラス全員が急に聞こえた声にびっくりして廊下の方を見る

するとそこには寝袋に収まっている小汚いおっさんがいた

 

「ここは」

 

そしてウィダーを懐から取り出すと

 

「ヒーロー科だぞ」ジュッ!

 

一気に吸い込んだ

いや、なにこれ?

つーか、見たことあるな

誰だっけ?

そしておっさんはするりと寝袋から出ると教室に入ってきた

僕たちはサササッと道を開ける

ちなみに寝袋は引きずっている

あたりに緊張が走る

そして教壇の上に立つと再び口を開いた

 

「ハイ、静かになるまで8秒かかりましたね。時間は有限。君達は合理性に欠けるね」

 

なんか嫌味を言われた気がするが、ここにいる全員、気持ちはたぶん一緒だったはずだ

 

(((誰だ…コイツ)))

 

いや、だってそうだろ?

いつの間にか廊下にいてしかも寝袋に収まっていた

そして飲料材を一気に吸い込んでの登場だぜ?

怪しさ百点満点でしょう?

わかる?

 

 

 

「担任の、相澤消太だ。よろしくね」

 

(((担任かよ…!!)))

 

相澤…

あ、思い出した!

抹消ヒーロー、イレイザーヘッドじゃん!

何回かヒーロー活動中にあったことあるわ

俺が思っていると寝袋から何かを取り出した

それは雄英高校の体操服だった

 

「早速だが、コレ着てグラウンドに出ろ。今から 迅速(じんそく)に、な」

 

え?入学式とかガイダンスは?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『『『個性把握テストォ⁉︎』』』

 

「あぁ」

 

「え?! 入学式はどうなるんですか?!ガイダンスは?!」

 

「そんなものないよ。ヒーローになるなら、そんな悠長な行事に出る時間なんてないしね」

 

「え、でも・・・」

 

「これ以上は合理性に欠けるから切るぞ。雄英は"自由"な校風が売り文句だ。そしてそれは"先生側"もまた然り。つまりはそういうことだよ」

 

さ、流石イレイザー

ほかの先生方と違うことを平然とやってのける

そこにしびれもしないし、憧れもしない

 

「時間は有限だ、とっとと始めるぞ。おい、爆豪」

 

「はい」

 

「お前中学の時ハンドボール投げ何Mメートルだった?」

 

「67」

 

「それは個性なしだな。じゃあ今個性を使って投げてみろ」

 

そう言われると爆豪はソフトボールを持ち、投げると同時に個性を使用する

 

「死ねぇ!!!!」FABOOOOOM!!!!!

 

(((死ね?)))

 

ヒーロー志望としてその掛け声はどうなんだとは思ったが出久の話から聞く限りどうせ直す気ないだろうからスルーしておくことにした

こんなとこにまで意見したらこっちが持たないからな

 

「まず、自分の【最大限】を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」

 

 

【705.2M】

 

 

すると皆が沸いた

 

「なんだこれ! すげー面白そうじゃん!!」

 

「705mってマジかー」

 

「個性思いっきり使えるんだ! さすがヒーロー科!」

 

周りが騒いでる間、俺は原作内容を書きとったノートの内容を思い出していた

 

(そうか、これが)

 

「・・・面白そう、か。なるほど。では、君たちはヒーローになる為の3年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?」

 

『『『えっ!?』』』

 

「よし、決めた。トータル成績で最下位の者は見込み無しと判断して【除籍処分】としよう」

 

『『『ハァアアアアアアアアアアアアアアアア?!!!!』』』

 

(除籍処分ありの個性把握テスト…)

 

 

 

「この国は理不尽にまみれてる。そういう理不尽を、覆していくのがヒーローだ。放課後、マックかケンタッキーで談笑したかったならお生憎。これから三年間、雄英俺達は全力で苦難を君たちに与え続ける。

 

 

ようこそ【雄英高校ヒーロー科】へ。

 

 

Plus Ultraさ。全力で、乗り越えて来い」

 

イレイザーのことだ

やると言ったら必ずやるぞ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第一種目:50m走

 

飯田が3秒04という好タイムを出していた

個性がエンジンだからな

速さはお手の物か

 

「次、黒猫と口田」

 

「うぃす」「…!」

 

ウィズは測定の邪魔にならないようにイレイザーの隣にいる

さてと、やりますか

 

「『叡智の扉(ゲート)接続(コネクト)魔力供給(セット)』。『憑依召喚(インストール)』!『夢魔装(ダイトメア)』!『武装召喚(サモン・ウェポンズ)』!『魔匠輪(ウィールライト)』!『ゲイルウィール』、『繋げ、秘儀糸(ドゥクトゥルス)』!『鉄血鋼身(クルオル・フェッレウス)』!」

 

(魔借、結構本気でやる気にゃ)

 

ラキドの高い身体能力に速度を上げるゲイルウィール、そして身体強化(フィジカル・リーンフォーメント)の魔法

今出せる全力で走る!

 

「じゃ、行くぞ。よーい、スタート!」

 

ゴウっと音がした!

強烈な風が吹く

そして俺は50Mを走り抜けた

 

【2秒23】

 

「はやっ!」

 

「飯田の記録、超えたぞ!」

 

「すごーい!はやーい!」

 

「もっと距離が長ければ、僕も…!」

 

まさかの飯田抜き

ここまでとは俺も思わなかった

 

 

 

 

 

「次、渡我と常闇」

 

渡我か

どうするんだ?

 

「トガならさっきイイダから血を1滴貰っていたにゃ」

 

「なら、エンジンを使うつもりか。この距離なら1滴でも十分だしな」

 

「そうにゃ」

 

(((猫が喋ってる…!?)))

 

あ?

なんか周りの視線が…

 

「よーい、スタート」

 

お、始まった

あー、渡我のやつ、なれない個性だから扱い切れてないな

それでも速いが

 

【3秒96】

 

流石に飯田程の記録は出ないか

 

「むー、もっと早くできたのにー」

 

「1発勝負だ。諦めろ」

 

 

 

二種目目:握力

 

「540キロってアンタゴリラ!?タコか!」

 

「タコってエロいよね……」

 

向こうでは確か、障子だったか?そいつがいい記録を出していた

 

握力かー、どうしよう?

 

このまま(ラギト)でいいか」

 

バキバキバキッ

 

「あ」

 

「にゃにやってるにゃ…」

 

やべ、壊しちまった

 

「イレ、ゴホン、先生、すんません。握力計、壊してしまいました。この場合記録は?」

 

「…測定不可能(無限)で」

 

oh......まじか

 

(((1000まで測れる握力計を壊すって…)))

 

 

 

第三種目:立ち幅跳び

 

これは跳び、というより飛びだな

 

「『武装召喚(サモン・ウェポンズ)』『ソフィ・ハーネット』」

 

召喚したのは箒

『空飛ぶ大魔道』ソフィ・ハーネットの持つ箒だ

俺は箒に跨り、飛んだ

 

「魔法使い…」「完全に魔法使いだな」

 

いや、実際魔法使いだから

ともかく俺は相澤先生に止められるまで飛び続けた

お陰で記録は測定不可能(無限)

因みに渡我は俺の個性で、翼を生やして飛んでいた

あれ、ミカエラの翼だったな

 

 

 

第四種目:反復横跳び

 

ラギトの身体能力でゴリ押ししたので割愛

結果は193回

 

 

 

五種目目:ボール投げ

 

「なあ、聞いていいか?」

 

「ん?なんだ?」

 

順番待ちしていたら話しかけられた

ええっと、誰だっけ?

 

「どちらさま?」

 

「あ、すまん!自己紹介もしてなかったな!俺は切島鋭児郎!個性は硬化だ!」

 

「俺は黒猫魔借。個性は魔法だ。勿論、できないこともあるがな」

 

「魔法…。なあ、お前って『黒猫の魔法使い』か?」

 

「そうだけど」

 

「そうかー…。ええっ!?まじかよ!?」

 

『黒猫の魔法使い』

俺がヒーローとして活動している中で呼ばれている名前だ

ヒーロー名は特に考えていなくてな

ウィズ連れて活動していたらいつの間にかこう呼ばれていた

 

「まさかの同級生かよ!?あれ、でも魔借ってすでにヒーロー免許持ってるんじゃ?」

 

「少し事情があってな。一般のヒーロー免許は持ってないんだよ。だからここに来た」

 

「そうなのか。よし、お互い、頑張ろうぜ!魔借!」

 

「ああ」

 

そして、

 

測定不可能(無限)が出たぞ!」

 

麗日だっけか?

あの個性なら確かにそうなるわな

さて、次は緑谷か

見せてくれよ、主人公…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-緑谷side-

 

まずい…!

皆…一つは大記録を出してるのに…!

もうあとがない…

でも、まだ個性の調節は…

 

「やるしかない…」

 

(そろそろか…) 

 

ボール投げ…

ここでやるしかない

そして僕は腕に個性を使おうととして

 

「えっ?」

 

【46m】

 

発動しなかった

 

「な…今確かに使おうって」

 

「個性を消した」

 

「個性を消した…!あのゴーグル…。そうか!」

 

相澤先生の個性は『視ただけで人の個性を抹消する個性』 

そんな個性のヒーローは一人しかいない…!

 

「抹消ヒーロー、イレイザーヘッド!!」

 

「見たとこ…個性を制御できないんだろ?また『行動不能』になって誰かに助けてもらうつもりだったか?」

 

「そっ、そんなつもりじゃ…」

 

そんなことを言うと相澤先生の首周りにある布で引っ張られる

 

「どういうつもりでも周りはそうせざるをえなくなるって話だ」

 

っ、確かにそうだ

だけど…

 

「昔、暑苦しいヒーローが大災害から1人で千人以上を救い出すという伝説を創った」

 

!?オールマイトのことだ…

 

「同じ蛮勇でも、お前のは一人を助けて木偶の坊になるだけ。緑谷出久、お前の(個性)じゃヒーローにはなれないよ」

 

そう言い切り、相澤先生は視線を外した

 

「個性は戻した。ボール投げは2回だ。とっとと済ませな」

 

相澤先生の言う通りだ

どうする!?

どうすればいい!?

 

『いいか、出久。物事には適材適所ってものがあるんだ。時と場合を見て自分のできることを全力でやる。そのために常に考えないとな。自分が全力で何ができるかを』

 

…昔、魔借が言っていたことが思い浮かんだ

考えろ!

今の自分にできる全力を…!

 

「力の調節はまだできない…。この一投で可能性にかけるのか?オールマイトも言っていたのに?一朝一夕にはいかないって…」ブツブツブツ

 

それなら…!

 

そして、僕はボールを投げようとする

 

「見込み、ゼロ…」

 

先生の言う通りだ

 

「まだ…」ボソッ

 

「!?」

 

これまでの通りじゃヒーローになんてなれやしない!

 

「まだだ…!!」ボソッ

 

僕は人より何倍も頑張らないと…ダメなんだ!

 

「最大限で…最小限に…」ブツブツ

 

だから全力で!

今の僕にできる全力を!

 

「今…!」SMASH!!

 

そしてボールは飛んでいた

 

【705.3m】

 

(力任せの一振りじゃなく、指先にのみ力を集中させたのか…!)

 

「あの痛み、程じゃない!!先生…!まだ…動けます!」

 

「こいつ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-魔借side-

 

「先生…!」

 

なるほどな、調節ができずに反動で体が壊れる個性

だから、最小限の負担で最大限の力を…か

 

「ははっ」

 

なんだよ、出久!

 

「まだ…動けます!」 

 

かっこいいじゃないか!!

 

「イズクくんの指、治さないんですか?」

 

「出久には悪いが、今ここで治すのはダメだ。出久だけ優遇されることになるからな」

 

「まあ、仕方がないにゃ」

 

まあ、それはそれとして

 

「どーいうわけだ!こら!ワケを言え!デクてめぇ!」

 

「『囚われよ、不朽の雀羅に囚われよ』」

 

出久に向かって飛び出し、個性を使おうとした爆豪に拘束魔法を使う

光の糸で拘束されると同時に布が巻き付き、爆豪の個性が消える

 

「ぐっ…。んだ、これ!?」

 

「炭素繊維に特殊合金の鋼線を編み込んだ捕獲武器だ。ったく、何度も個性を使わすなよ…。俺はドライアイなんだ…!」

 

(((個性すごいのにもったいない!)))

 

「ついでに俺の拘束魔法だ。人に個性を振るうだけで傷害罪、犯罪だぞ。高校生にもなるんだからそこんとこわきまえろ」

 

「時間がもったいない。次、黒猫」

 

「うぃす」

 

俺は爆豪にかけた魔法を解除してボールを手に取る

さて、

 

「『武装召喚(サモン・ウェポンズ)』『江戸川コナン』」

 

俺はコナンのキック力増強シューズを召喚する

黒ウィズはいくつかのものとコラボしていたことがある

そのひとつが『名探偵コナン』なのだ

コナンの道具の1つ、キック力増強シューズの威力を最大に設定する

 

「いっけー!!」

 

そして、地面に置いたボールを思いっきり蹴った

 

【4259m】

 

…ひとついいか?

これ、発明した阿笠博士、すご!?

 

「いい記録…」「すごいな…」

 

よし、2回目行くか

と言っても

 

「『我が召喚に応えよ』!」

 

飛行できるやつ呼び出すだけだかな

 

「『召喚(サモン)!超越の金剛龍【インフェルナグ】!』」

 

そして、カードを中心にした魔法陣から現れたのは

 

『GAOOOON!!!』

 

「「「ええええええええええええ!!!??」」」

 

「「「どどどどど、ドラゴン!?」」」

 

白き雷のドラゴン

超越の金剛龍『インフェルナグ』

 

「インフェルナグ、ボールを遠くまで持って行ってくれ!」

 

「Gluu」コックン

 

頷きを確認した俺はインフィルナグにボールを投げた

それを大きな手で掴んだインフェルナグは翼を広げ、大空へと飛び立った

そして、数秒で見えなくなった

 

「黒猫、もういい。あの龍、戻せ」

 

「戻せというのはここにですか?」

 

「…龍自体をだ」

 

「うぃす」

 

俺はイレイザーにそう言われ、召喚(サモン)を解除した

すると空から1枚のカードが俺の元に帰ってきた

もちろんインフェルナグのカードである

 

「で、先生、結果は?」

 

「…測定不可能(無限)でいい」

 

あらら、またか

まあいいか

 

「まーくん!!」

 

「っ、何だよ渡我。大きな声で騒ぐな」

 

「騒ぎたくもなるよ!何あれ!?ドラゴンって!?ドラゴンって!!??もっと他に優しめのあったでしょ!!」

 

「インパクトを求めました。後悔も反省もありませんまる」

 

「反省してよ!周り見てみてよ!!」

 

そう言われ、俺はクラスメイトを見ると

 

「ドラゴンって…」「もうダメだ、おしまいだ…」「あばばばばばば」「ここが終焉か…」

 

軽く地獄絵図だな

流石に巨大なドラゴン(インフェルナグ)はまずかったか…

 

「キミ、やりすぎにゃ」

 

「…はい、すんません」

 

 

 

第六種目:持久走

 

ただ走るのは疲れるため、俺はあるものを召喚した

 

「『武装召喚(サモン・ウェポンズ)』『江戸川コナン』」

 

コナンの使っているターボエンジン付きスケボーである

スケボーによりながら、バイクを創造した八百万と並走しながら走りきった

 

第七種目:長座体前屈

 

測定器に秘儀糸を巻き付けて限界まで伸ばした

結果は【50.7m】

それ以上伸ばそうとしたら秘儀糸の先の方が霧散した

魔力が伝わりきらなくなったからみたいだ

 

 

第八種目:上体起こし

 

これもラギトの身体能力でゴリ押した

【235回】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んじゃパパッと結果発表」

全種目が終わり、話をし出すイレイザー

トータル最下位が除籍処分

トータルは単純に各種目の評点を合計した数

まぁ最下位は出久だろうが…

さて、

 

「ちなみに除籍は嘘な」

 

『『『えっ!?』』』

 

「君らの最大限を引き出す…合理的虚偽」ハッ

 

『『『は―――――!!!??』』』

 

やれやれ、除籍処分にするのは見込みのないやつだけ

ただ単にこの中に見込みゼロがいなかった

それだけだな

 

「あんなの嘘に決まってるじゃない…ちょっと考えればわかりますわ……」

 

いや八百万…

イレイザーはやると言ったら必ずやるやつだぞ

半端な夢を追わせるのは残酷っていうのがイレイザーの考えで、彼なりの優しさ、だからな

 

 

 

 

さて、順位は―――

 

 

 

1位 黒猫 魔借

 

2位 八百万 百

 

3位 轟 焦凍

 

4位 爆豪 勝己

 

5位 飯田 天哉

 

6位 常闇 踏陰

 

7位 渡我 被身子

 

8位 障子 目蔵

 

9位 尾白 猿夫

 

10位 切島 鋭児郎

 

11位 芦戸 三奈

 

12位 麗日 お茶子

 

13位 口田 甲司

 

14位 砂藤 力道

 

15位 蛙吹 梅雨

 

16位 青山 優雅

 

17位 瀬呂 範太

 

18位 上鳴 電気

 

19位 耳郎 響香

 

20位 葉隠 透

 

21位 峰田 実

 

22位 緑谷 出久   

 

 

 

案の定1位だった

狙っていたからいいけど

ともかく、これで入学早々に波乱の個性把握テストが終わった

なので、

 

「出久、手、見せろ。治してやる」

 

「あ、うん」

 

「『咲き誇り思い繋ぐ花』」

 

ツクヨ・オトエヒナのSSを出久に使う

強力な回復魔法により、出久の怪我が治っていった

 

「ありがとう、魔借」

 

「気にすんな。ただ」

 

「うん?」

 

「早めに個性、制御できるようになれ。毎回毎回、治してやれる訳じゃないぞ」

 

「うん…」

 

そして、教室に戻り、カリキュラムなどの書類に目を通す

明日からもっと過酷な試練があるのだろうか…

そんなことを思いながら初日が終了した

 

 

 

-下校時間-

 

俺は渡我に用事があると言って先に帰らせた

『ディテクトウィール』でその人がいる方向に向かって歩き出した

 

「キミ、いたにゃ」

 

「オールマイト!」

 

オレが探していたのはオールマイト

NO.1ヒーロー、平和の象徴と言われた男

 

「ん?黒猫少年?」

 

「久しぶりだな、オールマイト」

 

「HAHAHAHA、そうだね!本当に久しぶりだ。ウィズくんも。君は雄英に来るとは思っていたが、このタイミングで会うとは思っていなかったよ」

 

「あんたが雄英に後継者探しに来ることがなければ会うことはなかっただろうな」

 

「…そうだね」

 

俺は雄英にオールマイトがいる理由を知っている

本人から聞いたのだ

最もその時は俺に後継者にならないか、と聞いてきたがな

勿論、断った

今ですら大変なのに平和の象徴の後継者なんて手に負えなくなるからな

だが、俺はそれよりも深く知っている

 

「いや、少し違うか」

 

「うん?」

 

「後継者の育成のために雄英(ここ)にいるだろ、あんた。出久のために」

 

「なっ!?」「にゃにゃにゃ!?」

 

「なんで君が知っている!?」

 

「あんた、出久から聞いていないのか?俺と出久の関係」

 

「聞いているさ。親しい友人だとね」

 

「そうだ。なら俺が出久が無個性だったことを知っていてもおかしくないだろ」

 

「っ!?」

 

「はっ、そういうことかにゃ!イズクは無個性なのに超パワーの個性が出てきた。おかしいと思っていたにゃ!ストレスか何かで個性の発現が遅れたのかと思っていたけど、オールマイトの個性に似すぎてるにゃ。それにオールマイトの個性は」

 

ウィズが気づいた

そう、そしてその答えは

 

「『ワン・フォー・オール』。力を引き継ぎ、引き継がせる個性」

 

「…私のことをよく知っていて、尚且つ緑谷少年もよく知っている君だからわかったことか…」

 

「ああ。まあ、出久を後継者にしたことは俺は何も言わんよ。俺のかんするとこじゃないからな。…ナイトアイはうるさそうだがな」

 

「…それを言わないでくれ」ズーン

 

「そこまで落ち込むなよ。だがな、ひとつ言いたいことがある」

 

そう、これを言うために俺はオールマイトを探していたのだ

 

「なんだい?」

 

「出久になるべく早く全てを打ち明けろよ。俺、そしてあんたの事情も含めて」

 

「っ、だが、しかし!?」

 

「なにも今すぐって言ってるんじゃない。時期が来たらいずれ話さないといけないだろうからな。ただし時期を間違えるなよ。全てのことがすんだ後では遅いんだからな」

 

「しかし、いいのか?キミの事情まで話してしまって」

 

「そうにゃ」

 

「遅かれ早かれ俺と関わる以上仕方ないだろ。どう考えも巻き込まれるはずだ。特に出久はあんたの後継者なんだからな。事を知らんあいつは、あいつらとは戦うことはできない。やつら(ロストメア)とはな」

 

「…」

 

「オールマイト。これは黒猫魔借としてでなくヒーロー『黒猫の魔法使い』としての忠告だ。後悔してからだと遅いぞ。行くぞ、ウィズ」

 

そして、俺はウィズを連れて帰路についた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…君の言いたいことはわかる。十分に理解もしている…。しかし、私は彼に、緑谷少年に重荷を背負わせたくないんだ。君のことも含めて。それを背負うのは私だけでいい。私の代で終わらせるべきことなんだ。この因縁は。この因果は。例え…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が死んだとしても



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第3話:さぁ、戦闘訓練(戦い)を始めよう

個性把握テストから1日が経過した

今日から普通の授業が始まる

ヒーローを育成するといっても高校生

午前は必修科目の英語、数学などの普通の勉強がある

ここはヒーロー科だが、学生の本分が勉強なのはこの世界でも変わらない

それぞれの担当教科の教師は有名なプロヒーローなのだが…基本は普通

 

「おらエヴィバディヘンズアップ!盛り上がれー!!」

 

プレゼント・マイクの授業は盛り上げようとしても誰も反応してくれない

 

「イエーーイ!!」

 

いや、渡我だけが反応していたが

 

因みに授業中、ウィズは教室の後ろの窓際で寝ていた

 

 

そして、昼休み

殆どのクラスメイトはランチクックの学食に向かうが、俺は教室にいた

 

「ウィズ、飯だぞ。起きろ」

 

「にゃ?ふぁ〜、もうそんな時間にゃ?」

 

「随分寝ていたな。珍しい」

 

「いつもなら散歩でもするんにゃけど流石に雄英の敷地内をうろつくのはにゃ」

 

「それもそうか。ともかく昼飯だ」

 

そう言って俺は自分とウィズの弁当を取り出す

この弁当は朝、自分の机の上に手紙と置いてあった

 

『お弁当、作っておいたわ。お代はアフリト翁に預けてあるお金から頂くわね。 黄昏(サンセット)

 

…確かに高校から学食か弁当になるとは話したが、まさかリフィルから弁当が贈られてくるとは思わなかった

因みにどうやって異界である俺の元に届けたかと言うと、俺が持っているリフィルのカードに干渉し、こちら側の世界に来ることができる魔法をリフィルは作っていたのだ

流石にカードに干渉するので俺の近くにしか出ることができないが、それでも十分にすごいことである

それを使って俺が寝ているうちに弁当を置きに来たのだろう

まあ、それはさておきリフィル特製と思われる弁当を開ける

 

「おぉ…!」「にゃぁ!」

 

結構、いやかなり豪華だった

 

「いただきます」「いただきますにゃ」

 

俺はすぐさま食べ始めた

めちゃくちゃ美味かった

 

「にゃ〜、これはすごいにゃ」

 

ウィズもご満悦のようだ

しかし、

 

「これ、いくらだ?」

 

「にゃ?」

 

「いや、リフィルからはアフリト翁に預けてある金から代引きだとよ。こんだけ豪華だと値段が怖い…」

 

「…」

 

「どうした?」

 

「はぁ、なんでもないにゃ」

(リフィルも素直じゃないにゃ。どうせ、値段は建前で私の分はついでにゃ。まあ、言った手前実際にお金は取ってそうだけどにゃ)

 

「うん?」

 

そして昼休みが終わり、『ヒーロー基礎学』が始まる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わーたーしーがー普通にドアから来た!!」

 

ドアが開き、HAHAHA!とアメコミ風に登場してきた『オールマイト』

待ってましたと言わんばかりに教室内はざわめき、尊敬の眼差しを向けている

まあ、俺はいい歳したおっさんがよくそのキャラを続けられるなと思っていたが…

来ているのは銀時代(シルバーエイジ)のコスチュームらしいが他のコスチュームとの違いがあまりわからん

兎も角この授業、ヒーロー基礎学はヒーローの素地を作る為の様々な訓練を行う課目

単位数も最も多い

そしてオールマイトはBATTLEと書かれたカードを手に取り、

「そして、今日はコレ!!戦闘訓練!!!」

 

「「「おー!!」」」

 

いきなり戦闘訓練か

なんだ、タイマンでもするのか

ここら辺のことはあまり覚えていない

というか、ノートにもあまり書かれていなかったからわからん

 

「そいつに伴って…こちら!」

 

オールマイトが右手を上げると教室の壁がせり出してきた

 

「入学前に送ってもらった『個性届』と『要望』に沿ってあつらえた…戦闘服(コスチューム)!!!」

 

「「「おぉぉぉ!!」」」

 

「着替えたら順次グラウンド-βに集まるんだ!!」

 

「「「はい!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてさて、俺のコスチュームの要望は『いらない』だ

いや、だってもう自分で作ってるし

そっちの方がいいし

なのに…

 

「仕事熱心なのか、ただ単に暇なのか…」

 

「多分、両方にゃ」

 

わざわざ要望を書いていない俺の分まであった

開けてみると

 

「うわぁ…」「えぇ…」

 

the魔法使いなコスチュームが入っていた

長めのローブ、でかいとんがりボウシ、ローブの下に着るものも黒を基調とした様々な飾りがついていた

 

「だせぇし、動きづらいだろこれ」

 

「魔法使いの典型的なイメージってやつだにゃ」

 

俺はコスチュームが入っていたカバンを閉じ、魔法陣を出す

 

「『衣装変化(チェンジ)』」

 

使ったのは服装を変える魔法

登録している服に瞬時に着替えられる

俺とリフィルが共同で開発した魔法だ

魔法陣が俺を潜ると俺は『黒猫の魔法使い』として戦闘服になった

黒を基調としたTシャツに青のジーパン、黒の靴、そして腰に届くか届かないかぐらいの長さの短めの青いローブを着ていた

ローブの背面にはウィズが着ているものと同じ紋様が描かれていた

 

「やっぱ、こっちだな」

 

因みにこの服装には全て魔匠が刻まれている

リフィルとレッジに手伝ってもらい、様々な魔匠を刻んだのだ

防弾、防刃、自動修復、魔力回復の向上など

兎に角思いつく限り刻んだのだ

 

「さて、行くぞ、ウィズ」

 

「にゃ!」

 

俺はいつも通り肩にウィズを乗せ、グラウンドに向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「始めようか有精卵共!!戦闘訓練のお時間だ!!」

 

グラウンドに集まった俺らにオールマイトが声をかける

 

「先生!ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか!?」

 

ごついコスチュームを着た飯田がオールマイトに質問する

 

「いいや!もう2歩先に踏み込む!屋内での()()()()()()さ!(ヴィラン)退治は主に屋外で見られるが、統計で言えば屋内のほうが凶悪敵出現率は高いんだ」

 

確かに(ヴィラン)に関してはそうだろうな

ただ、ロストメアは当てはまらない

ロクス・ソルスでは門を目指すから必然と屋外の戦闘が多くなる

こちらの世界に来たロストメアも暴れるために屋外にいることが多い

お陰で屋外の戦闘のほうに関しては経験豊富なんだよなぁ

 

「監禁・軟禁・裏商売…。このヒーロー飽和社会、真に賢しい敵は屋内(やみ)にひそむ!君たちにはこれから『ヒーロー組』と『敵組』に分かれて2対2の屋内戦を行ってもらう!!」

 

「基礎訓練もなしに?」

 

「その基礎を知る為の実践さ!ただし今度はブッ壊せばオッケーなロボじゃないのがミソだ」

 

「勝敗のシステムはどうなります?」

 

「ブッ飛ばしてもいいんスか」

 

「また相澤先生みたいな除籍とかあるんですか……?」

 

「分かれるとはどのような分かれ方をすればよろしいですか?」

 

「んんんー、聖徳太子ィィ!!」

 

一気に質問するなよ

知りたいことも知れないだろ

ん?オールマイトなんか取り出したな?

…カンペかよ!?

 

「いいかい!?状況設定は敵がアジトに核兵器を隠していてヒーローはそれを処理しようとしている!!ヒーローは制限時間内に敵を捕まえるか、核兵器を回収する事。敵は制限時間まで核兵器を守るか、ヒーローを捕まえる事」

 

(((設定アメリカンだな!!)))

 

「コンビ及び対戦相手はくじだ!それと22人だから2チームだけ3人の所があるからね!」

 

そしてくじ引きの結果が…

 

Aチーム、緑谷、麗日

 

Bチーム、轟、障子

 

Cチーム、尾白、葉隠

 

Dチーム、爆豪、飯田

 

Eチーム、芦戸、青山

 

Fチーム、口田、砂藤

 

Gチーム、上鳴、耳郎

 

Hチーム、蛙吹、常闇

 

Iチーム、八百万、峰田、俺(黒猫)

 

Jチーム、切島、頼呂、渡我

 

 

このようになった

そして、

 

「最初の対戦相手はこいつらだ!!」

 

主人公(出久)ライバル(爆豪)の対決が始まる

 

「Aチームがヒーロー、Dチームは敵だ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『”頑張れって感じのデク”だ!!』

 

ここは戦闘訓練を行っているビルの地下のモニタールーム

ここで訓練見ることができるのだ

本来は音声は聞こえないのだが、出久の大きな声がオールマイトがつけているイアホンから聞こえた

あいつ…

 

「にゃはは、イズクはドンドン前に進んでるにゃ」

 

「ああ。こりゃあ、油断できんな」

 

そして、訓練は進んでいき、

 

「爆豪少年!!ストップだ!!殺す気か!?」

 

「っ!?」­「にゃ!?」­

 

オールマイトが叫んだ

俺とウィズは画面を見た瞬間、

 

ドオオオオオオオオオオオ

 

強烈な爆破が出久を襲った

 

「…あいつ、わざと外したな」ボソッ

 

出久は無事だった

爆豪がわざと爆破を外したのだ

 

「先生、止めた方がいいって!爆豪あいつ相当クレイジーだぜ!殺しちまうぜ!?」

 

「いや……」

 

切島がオールマイトに訓練中止を訴えるが、オールマイトは止めなかった

 

「爆豪少年、次それを撃ったら強制終了で君らの負けとする。屋内戦において大規模な攻撃は守るべき牙城の損害を招く!ヒーローとしてはもちろん敵としても愚策だ、それは!大幅減点だからな!」

 

先生としては止めるべきだろう

しかし、オールマイトは止めなかった

それは彼らに成長してもらいたから…

止めたくないから…

 

出久は逃げ惑う

爆豪にぼこぼこにされながら…

しかし、

 

「爆豪の方が余裕なくね?」

 

誰かが呟いた

声は聞こえていないため事情は把握できてない

しかし、明らかに爆豪には余裕がなかった

 

「オールマイト!!まずい!!」

 

「っ!?」

 

俺は叫んだ

出久は個性を使い、爆豪は爆破の準備をし始めたからだ

もし、出久の調整できていない力が爆豪に当たればただじゃすまないだろう

 

「双方…中、っ!」

 

しかし、オールマイトは止めなかった

出久はアッパーを放ち、その力はビルを貫いた

その破片を利用し、麗日は飯田に牽制を行い…

 

「ヒーロー…。ヒーローチーム、WIーーーーN!!」

 

核を回収した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ、つっても…、今戦のベストは飯田少年だけどな!!」

 

「なな!?」

 

試合が終わり、講評の時間になった

出久は個性の代償と爆豪から受けた爆破の傷で気絶し、保健室に運ばれていた

 

「何故かわかる人!?」

 

「はい、オールマイト先生」

 

それに答えたのは八百万だった

 

「それは飯田さんが1番状況設定に順応していたからです。爆豪さんの行動は戦闘を見た限り私怨丸出しの独断。そして先程先生も仰っていた通り、屋内での大規模攻撃は愚策。緑谷さんも同様の理由ですね。麗日さんは中盤の気の緩み、そして最後の攻撃が乱暴すぎたこと。ハリボテを核として扱っていたらあんな危険な行為出来ませんわ。相手への対策をこなし、且つ核の争奪をきちんと想定していたからこそ飯田さんは最後対応に遅れた。ヒーローチームの勝ちは訓練だという甘えから生じた反則のようなものですわ」

 

八百万、お前、言い過ぎじゃね?

 

「ま、まあ飯田少年もまた固すぎる節はあったりするわけだが…。まあ、正解だよ、くぅ…!」

(思っていたより言われた!)

 

「常に下学上達!一意専心に挑まなければ、トップヒーローになどなれませんので!」凛っ!!

 

お前はどこのぞの生徒会長か…!

 

兎も角、この後、順調に訓練は進んだ

まあ、轟が瞬殺したのには驚いたが…

それはさておき、俺たちのチームは最後になった

 

「最後の訓練!Jチームがヒーロー、Iチームは敵だ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5分の準備時間

俺は八百万と峰田と作戦を立てていた

 

「峰田、お前の個性なんだ?端的に教えてくれ」

 

「えっと、頭のこれがもぎ取れる。そして俺以外に超くっつく」

 

「それなら」

 

「どうします、魔借さん」

 

創造とモギモギと魔法…

 

「勝利条件は相手の捕獲か、時間経過…。戦闘向きの個性は俺だけ。なら、狙うは後者の条件…」

 

「んで、どうするんだよ!?」

 

「2人にやってもらいたいことがある。八百万には少し負担がかかるが…」

 

「大丈夫です」

 

「よし、まずは…ーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”モニタールーム”

 

「おいおい、まじかよ。そんなんありか!?」

 

上鳴が映像を見て叫ぶ

 

「確かに有効な手だ。私でもこれをやられると対象が難しくなる!」

 

「にゃー、チームがよかったにゃ。ヒーローがどう対処するかがみものにゃ」

 

ウィズはモニタールームにいた

魔借の魔法を解説できるのはウィズしかいないため、魔借が置いていったのだ

 

「えっと、オールマイト。黒猫といた黒猫って何者ですか?」

 

「彼女はウィズ。黒猫少年のサポーターであり、師匠でもある人だ」

 

「猫なのに?」

 

「元は人間にゃ。こっちの姿の方が魔力消費が少なくて済むから猫の姿になっているにゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”ヒーローチームside”

 

「5分経過しました」

 

渡我がそういった

渡我のコスチュームは艦〇れの某夜戦忍者(改2)のような格好だった

違うのは太もものホルスターに小型の注射器が何本かあることだった

 

「よし、なら話し合った通り瀬呂は5階から。俺とトガは1階から侵入するぞ」

 

「おう!」「はい!」

 

瀬呂は個性を使い、ビルを登っていく

その間に切島と渡我は1階から侵入しようとするが、

 

「っ!キリシマくん、気をつけてください!」

 

「うぉ、峰田の個性か」

 

「地面以外にも壁、天井、そこら中にあります。触らないように移動しましょう」

 

「おう」

 

そう、峰田のモギモギボールが1階の通路のそこらじゅうに仕掛けられていたのだ

完全に時間稼ぎのためである

 

『おい、2人とも聞こえるか?』

 

「瀬呂、どうした!?」

 

『核を見つけた!5階だ!』

 

「本当ですか!?確保できそうですか?」

 

『いや、なんか変な化け物がいっぱいいて無理だな』

 

「化け物?」

 

『黒いキバ生えたやつが浮かんでる』

 

「それ、まーくんが召喚した使い魔的なやつですね」

 

『黒猫の個性、万能じゃね?あれ、なんかこっち見て』

 

「っ!?セロくん、逃げてください!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”瀬呂side”

 

「えっ?」

 

『まーくんのそれは感覚を共有しています!もし見つかたのだとしたら』

 

「よぉ、瀬呂」

 

「っ!すまん!見つかった!」

 

瀬呂は5階の部屋の柱の影に隠れていた

部屋の入口の方を見るとそこには魔借がいた

 

「悪いが捕まえさせてもらうぞ」

 

「やべっ」

 

魔借がカードを構えた瞬間、瀬呂は入ってきた窓から飛び出した

自分の個性なら安全に降りられるという確信があったからである

しかし、

 

「『3周年サンクチュアリ』!!」

 

トリエテリスのSSを発動した

瀬呂の周りに魔法陣が出てきて、そこから複数の鎖が飛び出す

 

「げっ!」

 

そして瀬呂に拘束し、空中で固定した

 

「暫くそこにいろ」

 

「ちょっ、このまま放置かよー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

”渡我・切島side”

 

『すまん!捕まった!そっちに加勢できそうにないわ!』

 

「あちゃー、わかりました」

 

「瀬呂、俺たち2人だけで何とかするぜ」

 

『悪ぃな。頼んだ!』

 

瀬呂が魔借に拘束されるまでの間、峰田のモギモギを避けて2人は2階へ続く階段まで来ていた

 

「少し、時間を取られましたね。キリシマくん急ぎましょう!」

 

「ああ!」

 

階段にはモギモギはなかった

だが、

 

ピン「ん?」「え?」

 

切島は階段に設置されていたワイヤーに気づかず、引っかかり、トラップが発動した

そして、辺り一面光に包まれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”敵side”

 

「2階、階段の閃光弾が発動しましたわ」

 

「よし、峰田のモギモギで時間が十分に取れたからな。お陰で2階はトラップ地獄にできた」

 

「ハッハッハ!俺のお陰だ!崇めろ!」

 

「調子に乗るな」ゴン

 

「ぐへっ!」

 

ここは4階のとある部屋

そこには敵チームの3人がいた

 

「瀬呂は既に拘束済み。残りの2人もバルス状態。残り時間もあるにはあるが…」

 

「思惑通りかかってくれましたね」

 

「こんな手に引っかかるものなんだな…」

 

「ふっ、灯台下暗しってな。かからなかった場合の保険もしておいたが、無駄になったな。さて、俺は3階に行ってあいつらの迎撃に出る。八百万、随時あいつらの様子を確認しろ」

 

「了解ですわ!」

 

「峰田は外の壁を降りて、1階へ行け」

 

「おう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”モニタールーム”

 

「これ、完全試合じゃね?」

 

「ヒーローチームがきついね」

 

(作戦の立て方が上手い。流石、黒猫少年だな。それに対応でき、尚且つ応用できる八百万少女もいい。峰田少年はもう少し自主性が欲しいな)

 

「でも、黒猫って確か『黒猫の魔法使い』だろ?ニュースとかくよく見る魔法、使ってないよな?」

 

「にゃはは、これからにゃ。これからにゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”渡我・切島side”

 

「っ、トガ、大丈夫か?」

 

「な、何とか。やっと見えるようになってきました」

 

2人は視力が回復するまで階段にいた

 

「また、トラップがあるかもしれない。慎重に動くぞ」

 

「うん。でもキリシマくん、時間がそろそろやばいと思います」

 

「っ!?どうする!?」

 

「…今ここで、あまり使いたくないんですが、ショートカットしましょう!」

 

そういい、渡我は切島に変身する

訓練が開始する前に、渡我は注射器で切島、瀬呂の血を少しだけ貰っていたのだ

 

「おお、こうやってみるとまんま俺だな。それよりどうするんだ?」

 

「私を打ち上げてください!キリシマくんの個性で天井を破って3階に行きます!」

 

「おしゃっ!!任せろ!!」

 

そう言い、切島は渡我を打ち上げ、渡我は切島の個性『硬化』を使い、そのまま天井をぶち破った

 

「今、引っ張ります!」

 

渡我は今度は瀬呂に変身し、切島を3階へ引っ張りあげた

 

「よし、このまま4階に向かおうぜ!トガ、もう一回できるか?」

 

「エネルギー切れです。セロくんもキリシマくんにも変身出来ません。血が欲しいです」

 

「お、おう。兎に角出来ないんだな。それなら階段を「『慈悲のまにまに、天よ泣け!【下天暴雷槍(フルゴル・クルエントゥス)】!』」ぐはっ!」

 

「キリシマくん!?」

 

2人の元に雷が走り、切島に命中した

 

「ぐっ、大丈夫だ」

 

「おいおい、油断大敵だぜ。ヒーロー共」

 

「黒猫!?」「まーくん…」

 

そこには(黒猫魔借)がいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”魔借side”

 

まさか、2階をぶち破ってくるとはな

トラップ仕掛けるついでに八百万に監視カメラの設置を頼んでよかったぜ

こうして駆けつけられたからな

さて、揺さぶりでもかけるか

 

「さて、お前達にひとつ教えてやる。核はこの階にある」

 

「おいおい、嘘をつくならもっとマシな嘘を「本当にそうか?」

 

「あ、ヤオヨロズちゃん」

 

…渡我は気づいたか

 

「そうさ、八百万の個性は創造。偽物くらい作れるさ」

 

「なら、この階に「あ、5階のが本物だったわ」はぁ!?」

 

「ん?4階だったかなぁ?」

 

「すっとぼけるな!核、どこだよ!?」

 

「敵に教えるやつがどこにいるんだぁ、切島ぁ」

 

「っ!?ぶっ飛ばす!!」

 

「ちょ、キリシマくん!?」

 

やれやれ、簡単に挑発に乗ってきたな

 

「『武装召喚(サモン・ウェポンズ)、【デューク・エイジス】』」ガキーン!

 

切島の拳と俺の召喚した大盾がぶつかる

その隙に俺は詠唱を始める

 

「『刻め雷陣、果てどなく!』」

 

追尾する雷は渡我に向かって走る

 

「トガ!」

 

「っ!はっ!!」

 

渡我は俺に変身し、防御障壁を張り、雷を防ぐ

 

「おい、よそ見していいのか?」

 

「がっ!?」

 

切島が渡我に気を取られているすきをついて大盾で殴りつける

 

「えい!」ピンポーン 「おら!」ピンポーン

 

渡我が放った火球を俺も同じく火球を放ち、相殺する

切島はその間に渡我の隣まで退いた

 

「くそ!」

 

「キリシマくん、無理に突っ込んでもダメです。まーくんは戦い慣れてますから。2人で行きましょう!」

 

「ああ!」

 

お、少し冷静になったか

だけどな

 

「『武装解除(リリース)』。こちらとしても負けるわけにはいかないんだよ。『憑依召喚(インストール)【ラギド】【ミリィ】【ファム・リリー】』!!」

 

3枚のカードが俺の中に吸い込まれる

そして、俺は異形の鎧に身を包んだ

 

「げっ!?テレビで見るやつじゃねぇかよ!?」

 

「鎧に天性の直感、そして時間魔術…」

 

「流石に渡我は知ってるか。だが、対処できるか?」

 

「できるかできないかじゃなくてやるんです!『憑依召喚(インストール)­【エステル・モカ】­』!」

 

俺と渡我の違いは魔力量だ

俺は同時に10枚までなら魔法を使える

しかし、渡我は通常魔法は3枚、魔力消費が大きい『憑依召喚(インストール)』や『武装召喚(サモン・ウェポンズ)』は1枚でしか使えない

同じ個性を使うと言っても魔力量は鍛えなければ増えない

普段から魔法を使っている俺と渡我では明確な違いが出るのだ

 

「キリシマくん!時間稼いでください!最大火力でぶっ飛ばします!」

 

「わかったぜ!トガ!」

 

腕を硬化させ、切島が殴りかかってくる

俺はそれに合わせて殴る

 

「硬っ!?」

 

「どうした切島。お前の力はその程度か」

 

「なめんなぁ!!」

 

切島はさらに硬化を強くし、攻撃を繰り出す

俺は直感を頼りに攻撃をかわし、切島の胸に手をおく

 

「『失われる時間(ロストタイム)』!」

 

そして、ファム・リリーの魔法を発動

切島の時を止めた

 

「ミリィの直感による適切な攻撃、ラギドの身体能力で出せる速さと力。だからこそ、俺はこう言おう『スタープラチナ(オラオララッシュ)』!!」

 

時が止まっている切島にラッシュを仕掛ける

それは直感により、硬化が弱い所を適切に攻撃していた

 

「キリシマくん!」「そして時は動き出す」

 

渡我の叫びと俺の声が出た瞬間、

 

「ごはっ!!」

 

蓄積されたラッシュの衝撃が切島を襲い、ぶっ飛んだ

そして壁に埋まり、気絶した

 

「さて、渡我。お前はどうする?」

 

渡我はこれが答えだ、と言うように

 

「『レジオン・ファンタズム』!!」

 

エステル・モカの使う天元魔法の最大火力を放った

しかし、その爆炎は

 

「はぁ、はぁ、な、なんで…」

 

俺の前で止まっていた

 

「『抗う力』」

 

反抗する夢【レベルメア】の力で爆炎を止めたのだ

 

「いつから、ですが?」

 

「うん?」

 

「いつからその力を…」

 

「始めからさ。5階の奴らはレベルメアの悪夢の欠片だ。お前なら俺を倒すために俺の個性を使ってくると思ったからな。更にラギドを使っている俺に近距離戦闘はしないはず。だからこそ、最初から遠距離攻撃には警戒していたんだよ」

 

そして、俺は爆炎を角度を変えて跳ね返す

それは渡我に当たらず、後ろの壁を破壊した

 

「『レジオン・ファンタズム』。天元魔法の中でも高火力な魔法。俺でさえまともに喰らえばやばい攻撃。だが、その代償は膨大な魔力と体力。渡我、お前もう戦えないだろ」

 

「まだ、まだ終わってません」

 

「いいや、終わりさ。2つの意味でな」

 

そういうと渡我の変身が解除される

 

「嘘、時間…切れ…」

 

そして、

 

『訓練終了ー!!敵チームの勝利!!』

 

オールマイトの声が響き渡った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは講評の時間だ!!」

 

ここは俺たちが戦ったビルの地下にあるモニタールーム

オールマイトの声が響き渡った

 

「まず、敵チーム!ナイス作戦だった!ヒーローチームには何があったかわからなかったんじゃないかな?」

 

俺の魔法で回復させた切島、渡我、瀬呂が頷く

 

「というか作戦自体が何かわかんないですけど?」

 

「それなら立案者の黒猫少年に教えてもらおう!」

 

え、俺ですか?

 

「あー、まずは核の位置だな。瀬呂が見た5階のは八百万が作ったダミーだ。本物は1階にあった」

 

「「「1階!?」」」

 

「まあ、言いたい事はわかる。見つかったらすぐにアウトだからな。だから保険をかけた。俺の魔法で回収できないように障壁を張って置いた。高火力の衝撃を与えれば障壁は壊れるが核も巻き込まれる。そうなればお前達に残された勝ち目は俺たちを倒すしかなくなる。結局はあのトラップ地帯を通るか上の悪夢の欠片を突破して、俺を倒すしかなかったってわけだ。どちらをとっても時間切れになっただろうがな」

 

「なんだよ、その無理ゲー…」

 

「作戦っていうのはな、相手の2手3手先を読んで好きなように動かせず、どのように優位な状態にできるかが鍵なんだよ。今回のは条件があって、尚且つ屋内だからやりやすかったぞ」

 

「まーくん…少しは手加減してください…」

 

そう言いながら渡我達、ヒーローチームは沈んでいた

まあ、

 

「だが、断る。手加減したら訓練の意味がなくなるだろ」

 

「黒猫少年の言う通りだ!訓練というのは失敗してなんぼだからな!そこからどう学ぶかが大切だ!さて、講評の続きだけど黒猫少年はナイス作戦だった!とても良かったぞ!八百万少女は黒猫少年の作戦を自分なりに上手く改良していたね。残念ながら使われなかったが、高得点だ!峰田少年はもっと自分で動けるようにしよう!誰かに言われてからでは遅い場合もあるからね!」

 

「ありがとうございます」「はーい」

 

さて、これで終わりだな

 

「よし、それなら授業を終わろう!緑谷少年以外は大きな怪我もなし!しかし、真摯に取り組んだ!初めての訓練にしちゃ皆上出来だったぜ!」

 

「相澤先生の後でこんな真っ当な授業…。なんか拍子抜けというか…」

 

いや、イレイザーが特殊なだけだからな

これが普通だろ

 

「真っ当な授業もまた私たちの自由さ!それじゃあ私は緑谷少年に講評を聞かせねば!着替えて教室にお戻り!!」

 

そういうとオールマイトはダッシュで帰っていった

…時間切れか

 

「前よりも持続時間が落ちてるにゃ」ボソッ

 

ウィズの言う通りだ

恐らく出久に讓渡したからだろう

 

「あまり言うなよ。あの人も気にしてることだろうからな」ボソッ

 

…原作ノートにはオールマイトの終わりまでしか書かれていなかった

しかも、曖昧に…

これからどうなるか…

取り敢えず、オールマイトはリカバリーガールに怒られるだろうな

出久の件で…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦闘訓練が終わり、放課後

轟に声を掛けられた

俺は突然のことで少し困惑する

 

「黒猫……お前が黒猫の魔法使いだったなんてな。いずれ戦うことがあるだろうが俺は負けない」

 

いや、そう言われてましてもねぇ

教室内にいる生徒も「クラス一番にライバル宣言か!」と盛り上がっている

まあ、ライバルってのはいいだろうが、

 

「言うのはいいが、お前が左側の炎を使わないかぎり俺には勝てんぞ」

 

戦闘訓練で轟を見ていた時、こいつは使う素振りすら見せなかった。

 

戦闘では力の出し惜しみをすると負ける

実践なら尚更だ

(ヴィラン)はずる賢いのだから

 

「変なことにこだわって周りも見えてないガキでいる限り、何回やっても俺には勝てない。絶対にな」

 

そんなことを言うと轟の表情が変わる

誰かを憎んでいるような感情がこっちにも伝わる冷たい威圧感

 

「俺は左側()を使うつもりはねーよ…。右側()でトップになる。お前にも勝つ。悪い、時間取らせたな」

 

轟はそう言って教室を出て行く

 

「なんか凄かったなー轟の奴」

 

「こういうのなんて言うんだっけ…奇々怪々?」

 

「上鳴さん…もしかして鬼気迫ると言いたいのでしょうか?」

 

「おおー!それだ!流石歩く辞書、八百万!」

 

瀬呂は轟に凄みを感じ、八百万は上鳴の言ったことに対して間違いを指摘する

 

それにしても、

 

(…あんたの、本当の気持ちが伝わるのはもうちょい先みたいだな)

 

俺は1年前から変わりだしたNo.2ヒーローを思い浮かべた

 

 



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第4話:悪意の接近

約半年ぶりの投稿!
少しづつ時間を取って書いていきます!
超絶ゆっくりな投稿になるかと思いますが、これからもよろしくお願いします!


「オールマイトの授業ってどんな感じですか!?」

 

それが俺たちが訓練の次の日に受けたマスコミの突撃質問だった

正直、クソうぜぇ…

 

ちなみにマスコミの質問に対する回答は

 

主人公(緑谷出久)の場合

Q「オールマイトの授業はどんな感じです?」

A「え!?あ、すいません。僕、保健室行かなきゃいけなくて…」

 

無限少女(麗日お茶子)の場合

Q「”平和の象徴”が教壇に立っているということで様子など聞かせて!」

A「様子!?えーと、筋骨隆々!!です!」

 

真面目メガネ(飯田天哉)の場合

Q「教師オールマイトについてどう思ってます?」

A「最高峰の教育機関に自分が在籍しているという事実を殊更意識させられますね。威厳や風格はもちろんですが、他にもユーモラスな部分等、我々学生は常にその姿を拝見できる訳ですからトップヒーローとは何を持ってトップヒーローなのかを直に学べるまたとない…」

以下割愛

 

ボンバーマン(爆豪勝己)の場合

Q「オールマイト…あれ!?君、『ヘドロ』の時の!!」

A「やめろ」

 

ヴィランだったかもしれない人(渡我被身子)の場合

Q「平和の象徴の授業はどんな感じですか?」

A「えーと、わりと普通?」

 

マスコミ嫌い(相澤消太)の場合

Q「オール…小汚っ!!なんですかあなた!?」

A「彼は今日は非番です。授業の妨げになるんでお引き取り下さい」(よくこの中でヒーロー(仕事)出来てたな…)

 

とまあ、こんな感じだった

俺?

俺は場合は魔法少女まどかマギカの【佐倉杏子】を『憑依召喚(インストール)』し、その能力である幻覚を使ってやり過ごした

結局、マスコミは雄英バリアーとかいう障壁に阻まれ、敷地内には入れず、何にも情報を得られなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「昨日の戦闘訓練、お疲れ。Vと成績、見させてもらった」

 

ところ変わってHRの時間

教室にイレイザーの声が響き渡る

 

「爆豪、おまえもうガキみたいな真似するな。能力あるんだから」

 

「……わかってる」

 

ま、多少は成長した感じか

それよりも…

 

「で、緑谷はまた腕ブッ壊して一件落着か」

 

イレイザーの威圧感でビクッってなったな、出久

まあ、しゃあないわな

同じことを繰り返してる訳だし

 

「個性の制御…、いつまでも『出来ないから仕方がない』じゃ通せねぇぞ。俺は同じ事言うのが嫌いだ。それされクリアすればやれることは多い。焦れよ、緑谷」

 

「っはい!」

 

「さて、HRの本題だ…。急で悪いが今日は君らに…」

 

殺し合いをしてもらいます…て、イレイザーがボケるわけないか

なんだ?

また、テストか?

 

学級委員長を決めてもらう

 

「「「学校っぽいの来たーー!!!」」」

 

なんだよ、紛らわしい言い方しやがって…

それにしても学級委員長か…

 

「委員長!!やりたいです、それ俺!!」「ウチもやらたいス」「オイラのマニフェストは女子全員膝上30cm!!」「ボクのためにあるヤツ☆」「リーダー!!やるやる!!」「私もー!!」「やらせろ!!」

 

うるせぇな、たくっ

まあ、ヒーロー科で委員長ってのは集団を導くっていうトップヒーローの素地が鍛えられるものだからな

…その事をわかってるやつがこの中に何人いるか…

俺?

俺は立候補しねぇよ

委員長なんてやれるほど暇がないからな

 

「静粛にしたまえ!」

 

ん?なんだ?

 

「多を牽引する、責任重大な仕事だぞ……!『やりたい者』がやれるものではないだろう!!周囲からの信頼あってこそ務まる聖務……!民主主義に則り真のリーダーを皆で決めると言うのなら、これは投票で決めるべき案件!!!」

 

飯田、いいこと言った

でもな

 

「そびえたってんじゃねえか!!何故発案した!?」

 

うん、右手あげて立候補しながら言うセリフじゃないよね

色々と台無しだぜ

 

「日も浅いのに信頼もクソもないわ、飯田ちゃん」

 

「そんなんみんな自分に入れらぁ!」

 

「だからこそここで複数表を獲った者こそが真にふさわしい人間という事にならないか!?どうでしょうか、先生!!」

 

「時間内に決めりゃなんでもいいよ」モゾモゾ

 

投げやりかよ、イレイザー

つーか、寝袋取り出すな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして投票の結果は…

 

「僕、4票ーー!!?」

 

 

うん、なんというか予想通り

因みに俺は飯田に入れた

なんかあいつ学級委員長ぽいから

 

「なんでデクに…!!誰が…!!」

 

「まーおめぇに入るよかわかるけどな!」

 

なんか爆豪がほざいてるけど、いいや

しかし、俺も気になるな

デクに入れたのは誰だ?

 

(爆豪くんにバレたら恐いな…)ヒューヒュー

 

…麗日か、後は…

 

俺は周りを軽く見渡すと、渡我と目が合い…

 

(…ちゃんとデクくんに入れましたよ!)Σd( ・`ω・´)ビシッ!!

 

…なんだよ、そのサムズアップ

まあ、だいたいわかったよ

ともかく…

 

「じゃあ委員長、緑谷、副委員長、八百万だ」

 

そう言いながらイレイザーは締めくくり、日常へと進んで行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間が経ち、昼休憩

俺は相変わらず、教室でリフィルからもらった弁当をウィズと食べていた

それと俺が弁当持ちだと知った渡我も弁当持ち込みになったため、一緒に食べている

 

「それにしても、まーくんは委員長立候補してませんでしたけど、良かったんですか?」

 

「面倒だ。今だって色々と大変なのに…」

 

「にゃはは、まあ、仕方ないにゃー」

 

「あー、ヒーロー活動の方ですか…」

 

「ああ、いつ呼び出しくらうかわからないからな…」

 

そんな雑談をしている時、

 

ウウー!!

 

「にゃ!?」「なんですか!?」「警報…?」

 

校内放送から警報が流れ、緊急放送が始まった

 

『セキュリティ3か突破されました。生徒の皆さんはすみやかに屋外へ避難して下さい』

 

「は?」

 

セキュリティ3?

なんだそれ?

 

「まーくん!?どうしますか!?」

 

「とりあえず、避難するか…。放送でそう言ってるし…」

 

やれやれ、原因はなんだ?

 

「にゃにゃ!?キミ、あれ見るにゃ」

 

俺はウィズにそう言われ、窓の外を見る

 

「は!?マスコミかよ!?」

 

なんで校内にいる?

不法侵入だろこれ!?

 

「あれ、報道陣ですよね…。もしかしなくても…」

 

「十中八九、あのバカ(マスゴミ)どものせいだろうな…。はぁ、はた迷惑な。教室戻ってめしの続きだな」

 

「にゃ」「そうですね…」

 

ったく、迷惑極まりない…

…マスゴミの侵入?

なんか引っかかるような…、っ!?

 

「渡我!教室、戻ってろ!ウィズ、来い!!」

 

「え!?」「にゃにゃ!?」

 

俺は走り出した

なんで、忘れていたんだよ!

マスゴミの侵入!

これはヴィラン連合が雄英の情報を集めるための陽動!

ノートにも書いただろ、俺!

 

「『武装召喚(サモン・ウェポンズ)【レッジ】』!」

 

「キミ、どうしたのにゃ!?」

 

俺の隣を走りながらウィズが聞いてくる

 

「これはヴィラン共の陽動だ!目的は雄英の情報!」

 

「マジかにゃ!?」

 

「ああ、だからこうして急いでる!『ゲイルウィール』!」

 

情報があるのは…職員室!

 

「!キミ!」

 

!?黒いモヤ!?

既に小さくなっているってことは撤退中か!

 

「『ブラストウィール』!」

 

俺は数発、光の矢を放つが、既のところでモヤか消え、壁にぶつかる

 

「くそ!やられた!」

 

「逃がしたしまったにゃ…」

 

不味いな、このままだと次は襲撃だ…

 

「ん?君は…」

 

「セメントス!」

 

俺の後ろから雄英の教師のヒーローであるセメントスが歩いてくる

 

「黒猫くんか。どうした、こんなところで。避難警報が出てるぞ」

 

「セメントス!ヴィランだ!ヴィランが雄英にいた!」

 

「な!?」

 

「私も証人にゃ。既に撤退寸前だったから、顔とかは見れなかったけど、黒い霧みたいなのがあったにゃ」

 

「そうなると…。わかった。この件は他の先生方にも伝えておく」

 

「そうしてくれ」

 

くそ、何とかなるといいが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、マスコミは警察の手で撤退した

その後、教室で他の委員決めをする予定だったんだが…

 

「委員長はやっぱり飯田くんが良いと…思います!」

 

出久、急にどうした?

なんかあったのか?

 

「あんな風にかっこよく人をまとめられるんだ。僕は…飯田くんがやるのが正しいと思うよ」

 

「あ!いいんじゃね!飯田、食堂で超活躍してたし!緑谷でも別にいいけどさ!」

 

「非常口の標識みてぇになってたよな」

 

食堂?

非常口?

…なんのこっちゃ

 

まあ、ともかく

 

「委員長の指名なら仕方あるまい!!」

 

飯田が委員長になった

それはいいとして…

 

(次の襲撃の件…警戒しとかないとな…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、

 

 

 

「ただのマスコミが()()()()()できる?そそのかした者がいるね。邪な物が入り込んだようだし…。宣戦布告の腹積もりか…」

 

 

 

悪意は、

 

 

 

「ハハハ、見たか?あの混乱っぷり。傑作だよな。自分の高校にマスコミが入っただけであのザマだぜ。この具合じゃあ、もっと面白いことになりそうだと思わないか?」

 

 

 

ついそこまで

 

 

 

「なあ、どうなると思う?

平和の象徴(オールマイト)(ヴィラン)に殺されたら

 

 

 

 

 

迫っていた…



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第5話:途方もない悪意

短めだけど投稿
ブランクがあるせいかあまり上手く書けない…
まあ、普段から上手って訳でも無いけど…


あのマスコミ事件から数日後、

あれ以来マスコミは来なくなった

そして、今日の午後にはヒーロー基礎学がある

本来はオールマイトが教壇に立つはずだが、そこにはイレイザーがいた

 

「今日のヒーロー基礎学だが、俺とオールマイト、そしてもう1人の3人体制で見ることになった」

 

(キミ、これって…)

 

(ああ、外れれば良いと思ってたがな…。確定だな…)

 

「ハーイ!何をするんですか!?」

 

瀬呂の質問にイレイザーは答える

 

「災害水難なんでもござれ、人命救助訓練(レスキューくんれん)だ!」

 

「レスキュー…。今回も大変そうだな」

 

「ねー!」

 

「バカおめー、これこそヒーローの本分だぜ!!鳴るぜ!腕が!!」

 

「水難なら私の独壇場ケロケロ」

 

おい、イレイザーが話し中だぞ

そんな雑談してると、

 

「おい、まだ途中」ギロ

 

ほら、睨まれた

 

「今回コスチュームの着用は各自の判断で構わない。中には活動を限定するコスチュームもあるだろうからな。訓練場は少し離れた場所にあるからバスに乗っていく。以上、準備開始」

 

そう言われ、俺たちは準備を始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バスの席順でスムーズに行くように番号順に2列に並ぼう!」

 

「飯田、フルスロットルにゃ…」

 

まあ、くそ真面目の飯田だからな

因みにバスは飯田と思っているタイプと違っていて掛け声の意味がなかった

 

バスに乗り、移動していく中で俺たちは雑談を始める

 

「私、思ったことを何でも言っちゃうの、緑谷ちゃん」

 

「あ、はい。蛙吹さん!」「梅雨ちゃんと呼んで」

 

蛙吹が出久に話しかける

その内容を聞いた時、俺も少し驚いた

 

あなたの個性、オールマイトに似てる

 

「!!」

 

驚いた

数回見ただけでそこに気づくか…

蛙吹梅雨…恐ろしい子…

まあ、似ているんじゃなくて、同じ個性なんだけどな

 

「そそそそそうかな!?いやでも僕はそのえー」

 

おいおい…

出久、誤魔化し下手かよ

 

「待てよ、梅雨ちゃん。オールマイトはケガしねぇぞ。似て非なるアレだぜ」

 

ナイス!切島!

これで上手く誤魔化せたな!

出久が調節出来ていないから誤魔化せたことだな

 

「しかし増強型のシンプルな個性はいいな!派手でできる事が多い。俺の『硬化』は対人じゃ強ぇけどいかんせん地味なんだよなー」

 

地味ねぇー

どんな個性も使いようだと思うがな

 

「僕はすごくかっこいいと思うよ。プロにも十分通用する個性だよ」

 

「プロなー。しかしやっぱヒーローも人気商売みてぇなところあるぜ!?」

 

人気商売か…

そんなふうに思ってる奴らが多いからヒーロー殺しみたいなのが出てくるんだろうな

まったく、やれやれだぜ

 

「派手で強えっつったらやっぱ轟と爆豪、後、黒猫だな」

 

「爆豪ちゃんはキレてばっかだかれ人気出なさそ」

 

「んだとコラ!出すわ!!」「ホラ」

 

あの爆豪をからかう

やっぱ蛙吹梅雨、恐ろしい子…

 

「もう着くぞ。いい加減にしとけよ…」

 

「「「ハイ!!」」」

 

結局、イレイザーに怒られ、俺達の雑談は終わった

 

(ウィズ、着いたらお前はみんなといろ。俺はイレイザーと迎撃に出る )

 

(わかったにゃ。元に戻ってもいいかにゃ?)

 

(ああ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バス移動が終わり、到着したのは遊園地のような訓練所だった

様々な災害を再現したアトラクションのような場所

 

「すっげーーー!!USJかよ!!?」

 

「俺ら救助訓練に来たんだよな?」

 

切島はテンションが上がっている

しかし、まじで遊園地ぽいな

 

「水難事故、土砂災害、火事……etcエトセトラ。あらゆる事故や災害を想定し、作られた……

ウソの災害や事故ルーム(U・S・J)!!』」

 

ええー…

……マジでUSJかよ

 

「これ著作権とか大丈夫なんでしょうか?」

 

「知らんにゃ」

 

そして名前を言いながら出てきたの災害救助で目覚しい活躍をしている紳士的なヒーロー、スペースヒーロー「13号」だった

 

「13号、オールマイトは?ここで待ち合わせのはずだが…」

 

「先輩、それが……通勤時に制限ギリギリまで活動してしまったみたいで、仮眠室で休んでいます」

 

「不合理の極みだなオイ」(まあ、念の為の警戒態勢…)

 

「仕方ない、始めるか」

 

「えー始める前にお小言を一つ二つ…三つ…四つ…」

 

…そこまで増えたらお小言じゃなくね?

 

「皆さんご存知だとは思いますが、僕の個性はブラックホール、どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます」

 

「その個性でどんな災害からも人を救い上げるんですよね!」

 

出久が多少の解説を入れる

流石、ヒーローオタク

麗日に至っては残像が見えるレベルで頷いている

お前、13号のファンだったのかよ…

 

そして、次の話をする瞬間、13号の雰囲気が変わった

 

「ええ…しかし、簡単に人を殺せる力です。皆の中にもそう言う個性がいるでしょう?」

 

実際そう言う個性はA組には多いと思う

爆破、氷結、粉砕、感電、溶解、俺の魔法も、充分に人を殺せる威力は出せるし、そういった武器もある

だからこそ、ロストメア以外の相手にはセーフティをかけているが…

 

「超人社会は個性の使用を資格制にし、厳しく規制することで一件成り立っているようには見えます。しかし、一歩間違えれば容易に人を殺せるいきすぎた個性を個々が持っていることを忘れないで下さい。相澤先生の体力テストで、自身の力が秘めている可能性を知り、オールマイトの対人戦闘で、それを人に向ける危うさを体験したかと思います。この授業では…心機一転!人命の為に個性をどう活用するかを学んでいきましょう!君たちの力は人を傷つける為にあるのではない…救ける為にあるのだと心得て帰ってくださいな」

 

「流石、プロヒーローは言うことが違うにゃ。言葉の重みが違うにゃ」

 

ウィズが言うことに俺も同感である

いくら俺も活動しているとはいえ、場数は雄英教師の方が踏んでいるからな

 

「以上!ご清聴ありがとうございました!」

 

13号はペコリ、とお辞儀をして言った

俺たちは惜しみ無い拍手が送った

 

「そんじゃあ、まずは…。っ!?」

 

イレイザーが何かに気づいたようにUSJの中央広場にある噴水付近に目を向ける

そこには黒い霧状のモヤ突然出現し、少しづつ大きくなり広がっていた

そして、そのモヤから大勢の人間が出てくる

 

「一塊になって動くな! 13号、生徒を守れ!!」

 

「何だアリャ!?また入試ん時みたいなもう始まってんぞパターン?」

 

「そうだったらどれだけ良かっただろうな……」

 

「………………え?」

 

切島が気の抜けた事を言い、それに返すと出久が疑惑を孕んだ声を俺に向ける

 

「動くなあれは、(ヴィラン)だ!! 」

 

悪意は突如、やって来た…

そして、

 

「『憑依召』、っ!?」「キミ!?」「まーくん!?」

 

俺はすぐさま黒いモヤに包まれ、

 

「クソッタレ!」

 

燃え盛る街に飛ばされた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奇しくも命を救える訓練時間に僕らの前に現れた

 

「警戒戦力である黒猫の魔法使いは飛ばしました。後は、13号にイレイザーヘッドですか…。先日頂いた教師側のカリキュラムではオールマイトがここにいるはずなのですが…」

 

「黒いモヤ…。黒猫が言っていたのはお前か…。やはり先日のはクソ共の仕業だったか…!」

 

プロが何と戦っているのか

何と向き合っているのか

 

「どこだよ、せっかくこんなに大衆引き連れてきたのにさ…。オールマイト……平和の象徴がいないなんて

子供を殺せば来るのかな?

 

それは、途方もない悪意だった



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第6話:反抗、そしてヒーローは遅れてやってくる

「くそ!完全にやられた!『憑依召喚(インストール)【ラギド】』」

 

USJに突如として現れた(ヴィラン)連合

俺はイレイザーと同じように迎撃に出ようとしたが、

 

「俺のことを警戒しての措置だろ、これ!まさか、初手で飛ばされるとは思わなかったわ!」

 

そして、飛ばされたのはUSJ内の火災ゾーン

熱で体力を奪うつもりか…!

 

「ヒャハハハー!来たぜ、来たぜ!」「コロス…」「気ィつけろよ、そいつ黒猫の魔法使いだぜ」

 

「おいおい、多すぎじゃねぇ…?」

 

周りに現れたのはチンピラ風情のヴィラン共だった

但し、数が尋常じゃなかったが…

 

「どんだけ俺を警戒してるんだよ…。まあ、兎に角ぶっ飛ばして進むか…。そこどけや!!クソ野郎ども!」

 

「「「やってみろや!!」」」

 

「『修羅なる下天の暴雷よ、千々の槍以て振り荒べ』!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渡我side

 

「アレは(ヴィラン)だ。やはり先日のはクソ共の仕業だったか」

 

「敵!?バカだろ!?ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホすぎるぞ!」

 

正面の広場に現れたのは圧倒的な悪意でした

しかも、警戒をしてか、まーくんを速攻で退場させる対応まで…

 

「ウィズちゃん、まーくんは…」

 

「USJにはいるにゃ。ただ、敵に囲まれているからこっちに来るのは遅れそうにゃ」

 

なら、ひとまずは安心ですね

めちゃくちゃ遠くに飛ばされたりしたら、困るとこでした

まあ、まーくんなら心配はいらないでしょうけど…

問題は私たちですね…

 

「先生、侵入者用センサーは?」

 

「もちろんありますが…!」

 

「現れたのはここだけか学園全体か…。なんにせよセンサーが反応しねぇなら向こうにそういうことができる個性(ヤツ)がいるってことだな。校舎と離れた隔離空間、そこに少人数(クラス)が入る時間割…。バカだが、アホじゃねぇ…。これは何らかの目的があって用意周到に画策された奇襲だ」

 

トドロキくんが冷静に分析をする

流石、クラストップクラスの実力者ですね…

 

「13号、避難開始!学校に電話試せ!センサー対策も頭にある敵だ!電波系の個性が妨害している可能性もある!上鳴、おまえの個性で連絡試せ!」

 

「っス!」

 

相沢先生はそう指示を出すと敵の方へ突っ込んでいこうとする

 

「先生は!?1人で戦うんですか!?あの数じゃいくら個性を消すといっても!!イレイザーヘッドの戦闘スタイルは敵の個性を消してからの捕縛だ。正面戦闘は…」

 

イズクくんが先生の心配をする

イズクくんが言っていることな確かならあの数を1人で相手するのは…

 

「一芸だけじゃヒーローは務まらん」

 

それはヒーローとしての、先生としての重い言葉だった

 

「13号!任せたぞ!」

 

そういい、先生は飛び出していった

そこを敵は攻撃しようとする

 

「射撃隊!行くぞ!」

 

「情報じゃ13号とオールマイトだけじゃなかったのか!?ありゃ誰だ!」

 

「知らねぇ!!が、一人で正面から突っ込んで来るとは・・・・」

 

「「「大まぬけ!!」」」

 

しかし、射撃系の個性を発動しようとするが、先生によって個性は消されているため発動しない

そのことに呆けている敵の隙を先生は見逃さず装備している包帯を二人に巻き付け頭同士をぶつける

 

「ばか野郎!!あいつは見ただけで個性を消すっつぅイレイザーヘッドだ!」

 

「消すぅ~~~~~!?へっへっへ、お俺らみてぇな異形型も消してくれるのか?」

 

四本腕の個性を持つ敵が先生を狙うがそれよりも前に先生のパンチが敵に入った

 

「それは無理だ。発動系や変化形に限る。が、お前らみたいなやつらのうまみは統計的に近接格闘で発揮されることが多い」

 

殴り飛ばした敵の脚に包帯を巻きつけ、後ろから来る敵の個性を身を低くして回避するとそのままぶつけた

 

「だからその辺の対策はしている!」

 

「肉弾戦でも強く…、その上ゴーグルで目線を隠されていては”誰を消しているか“わからない。集団戦においてそのせいで連携が後れを取るな…。なるほど。嫌だな、プロヒーロー。()()()()じゃ歯が立たない」

 

「すごいですね…」「うん…!」

 

「にゃるほどにゃ。多対一こそイレイザーヘッドの得意分野だったんだにゃ」

 

「渡我くん!緑谷くん!分析してる場合じゃない!早く避難を!」

 

イイダくんに声をかけられ、13号先生の引率で避難しようとするが出口に黒い敵が立ちふさがる

それはまーくんを飛ばした、ワープの個性の敵だった

 

「させませんよ」

 

「「「!!」」」

 

(しまった!一瞬まばたきの隙に…!黒猫を飛ばした1番厄介そうな奴を!)

 

「初めまして。我々は敵連合。僭越ながら…、この度はヒーローの巣窟雄英高校に入らせていただいたのは、平和の象徴、オールマイトに息絶えていただきたいと思ってのことです。本来ならばオールマイトがいるハズ…。何か変更があったのでしょうか?まぁ…、それは関係なく…」

 

13号先生は警戒して人差し指の蓋を開けいつでも個性を発動できるようにする

私もすぐさま対応できるように変身の準備をする

 

「私の役目はこれ―――」

 

しかし、敵が何かを言おうとした途端、バクゴウくんとキリシマくんが攻撃を仕掛けました

 

「その前に俺たちにやられることは考えてなかったのか!?」

 

「危ない危ない…。そう…、生徒と言えど優秀な金の卵」

 

でも、全くの無傷でした

 

「ダメだどきなさい、二人とも!」

 

「全員逃げるにゃ!!」

 

13号先生が注意し、ウィズちゃんが叫んだ途端、敵の黒い靄を私たちを覆うように広げた

 

「散らして、嬲り殺す」

 

次の瞬間、私は暴風雨の中にいました

 

「え?え、え?」

 

急に違う場所に出たので混乱してしまいましたが、すぐにそれは治りました

その理由は…

 

「へー、可愛い子が来たねー」

 

「っ!?」

 

敵が声をかけて来たからです

 

「まあ、恨みはないけど死んでもら、ベギャ!」

 

次の瞬間、黒い影にその人はぶっ飛ばされてました

 

「渡我、大丈夫か!?」『間一髪ってとこか!?』

 

「トコヤミくん!ダークシャドウちゃん!」

 

『ちゃん!?』

 

現れたのはクラスメイトのトコヤミくんでした

 

「無事で良かったです。他のみんなは?」

 

「ここには俺とお前、あと口田だ。他は見ていない。恐らく他の所だ」

 

トコヤミくんの後ろを見ると、コウダくんがいました

あまり喋らないから気づきませんでした

 

「それなら「いたぞ!こっちだ!」…敵を倒しながら安全を確保しましょう!」

 

「了解した!」『暴れるぜ!!』「…!」コクン

 

そして、私たちは動き始めた!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウィズside

 

私は八百万、耳郎、上鳴と一緒に山岳ゾーンに飛ばされたにゃ

 

「うぅわ!」

 

上鳴がギリギリで異形型の敵の攻撃を避ける

そう、私たちは囲まれていた

 

「コエー!マジ!!今見えた!三途見えたマジ!何なんだよこいつらは!どうなってんだよ!?」

 

「そういうの後にしよ」

 

「今はこの数をどう切り抜けるかですわ」

 

…思ったより余裕ないかにゃ?

兎に角この人数は仕方ないにゃ

やるしかないかにゃ…

 

「私がでるにゃ」

 

「ウィズさん!?」「え!?猫!?」

 

「しかし、ウィズさん!あなたが出るということは黒猫さんに負担が…」

 

「許可は出てるにゃ!だから、大丈夫にゃ」

 

「え?どゆことよ?」

 

「ウィズさん…。頼みます!」

 

「任せろにゃ!『我が名を今ここに示す』!【四聖賢 ウィズ】!」

 

呪文を詠唱して、私は猫から本来の人間の姿に戻る

 

「「ええー!?」」

 

耳郎と上鳴が驚きの声を上げるが無視して、攻撃をする

 

「Answer!」ピンポーン!

 

カードに魔力を込め、炎で、氷で、雷で、様々な攻撃で敵を撃退していく

 

「おい!あれ、魔法使いだろ!なんでここにいる!?」

 

「知るか!?」

 

「いや、魔法使いは男だ!あいつは別のやつだ!」

 

「雑談なんて余裕だねー!『我が召喚に応えよ、召喚(サモン)!【召魔の王者 エンシェント・マロマル】』」

 

私の相棒、マロマルを最強の姿、エンシェントマロマルで召喚する

 

「言っておくけど、私は魔借と違って容赦はしないよ。全員気絶してもらう!」

 

『マロ!』

 

そう言って私はさらに魔法を放ち、マロマルは炎を纏った拳で敵を倒していく

 

「ウィズさん!」

 

八百万の声が聞こえた

そちらを見ると、八百万と耳郎はシートを被っていて、上鳴が放電しようとしていた

 

「自分で防ぐから大丈夫!上鳴!やっちゃって!」

 

「これなら俺は…」

 

カードに魔力を込め、防護障壁を貼る

 

「くそ強え!!」

 

「「「ぐああ!!」」」

 

障壁は私に対する放電を完璧に防ぎ、敵を一掃した

 

「ふう、終わりかな」

 

「そうですわね。さて、他の方々が心配…。合流を急ぎましょう」

 

「うェ〜〜〜い」

 

「というか、八百万…。服が…」

 

「うわ、超パンクに…」

 

「また、創りますわ」

 

ふう、これで何とかなっ『マロ!!』っ!?

 

マロマルの声を聞いて後ろを振り向いた

そこには、

 

「くそ!バレた!」

 

地面から敵が出てきた

 

「マロマル!『ロイヤルフラッシュ・マロマル』!」

 

『マロー!!』

 

「ごはっ!!」

 

マロマルのSS、『ロイヤルフラッシュ・マロマル』を放ち、最後の敵を倒す

 

「地面に潜る個性かな。それで放電を避けていたんだね」

 

「…危なかったですわ」

 

「主にあれが…」

 

そう言った耳郎の視線の先には、

 

「うェ〜〜〜い」

 

アホになった上鳴がいた

確かに彼を人質に取れば、簡単に私たちを対処できただろう

まあ、未然に防げたからいいけどね

 

「ありがとう、マロマル」

 

私はマロマルにお礼をいい、帰して、猫に戻った

 

「中央の広場に行くにゃ。きっとみんなそこに集まるはずにゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒猫side

 

「本当に数を揃えただけかよ。雑魚ばっかじゃねえか」

 

俺が飛ばされた火災ゾーンには数多の敵が横たわっていた

すべて俺が倒した敵達だった

 

「これならまだ一般的なロストメアの方が強いぞ…」

 

完全に数だけ揃えた有象無象…

恐らく目的は時間稼ぎなんだろうが、誤算だったな

こいつら、弱すぎなのと、統率が取れてないことが相まって簡単に殲滅できた

 

「うおぉ!」

 

「ん?尾白!?」

 

そんなことを考えていると上から、尾白が降ってきた

 

「よっと、大丈夫か?」

 

「あ、ああ、ありがとう、黒猫」

 

「気にすんな」

 

俺は尾白を受け止め、下ろす

そして、尾白は周りを見て驚いた

 

「こいつら、全員黒猫が?」

 

「ああ、チンピラ風情の敵だったから弱かったぞ。尾白はどうしてここに?」

 

尾白は俺が飛ばされた後のことを話してくれた

 

「恐らく、各個撃破が目的だな。俺の場合は、中央に近づけされないための時間稼ぎだろうが…。よし、行くぞ、尾白」

 

「行くってどこへ?」

 

「中央広場だ。イレイザー1人に負担はかけられない。お前はまだ、残っているクラスメイトの救出を最優先に動け」

 

「わ、わかったけど、チンピラ風情なら俺らでも倒せるんじゃないか?」

 

「チンピラ風情ならな…。相手はオールマイトを殺しに来た連中だ。何かしらの切り札があるかもしれない。オールマイトを殺せる力なんて生徒で対処ができるはずがない」

 

「た、確かに…」

 

「急ぐぞ。正直嫌な予感がする…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

緑谷side

 

黒いモヤの敵のワープで移動させられ、水難ゾーンに飛ばされた僕、峰田くん、蛙吹さん

僕の作戦で2人の協力により、危機をなんとか乗り切った

 

「あれで全員だったのは運が良かった…。すごいバクチをしてしまっていた…。普通は念のため何人かは水中に伏せておくべきだもの。冷静に努めようとしていけど、冷静じゃなかった…。危ないぞ、もっと慎重に…」

 

「緑谷ちゃん。やめて、怖い」

 

ブツブツと呟く僕を蛙吹さんが止める

僕は個性を使った反動で内側から爆ぜたように怪我をした指を肘に付けていたサポーターで覆う

とりあえず助けを呼ぶのが最優先

このまま水辺に沿って中央広場を避けて出口に向かうのが最善

広間には相澤先生が敵を大勢引きつけてくれている

敵は多すぎるが、制圧するつもりだ

教師でありプロのヒーロー

生徒を守る為に無理をして飛び込んだ

けど、ここで邪魔になることは考えてはいけない

隙を見て、少しでも先生の負担を減らせれば……

 

 

 

 

 

 

 

 

初戦闘にして初勝利

しかし、これが勘違いだったことをすぐに痛感させられる

自分達の力が敵に通用したんだと錯覚してしまった

 

(ヴィラン)

 

プロの世界

 

彼らはまだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

――――何も見えちゃいなかった

 

 

 

 

 

「対平和の象徴。改人――――"脳無"」

 

 

脳無と呼ばれている脳みそが剥き出しの大男に相澤先生は押さえつけられていた

人間の腕をまるで小枝でも折るかのようにへし折っていた

抹消の個性で身体の一部でも見れば相手の個性を消せる

だが、それでも力が緩むことはない

つまり……元々の身体能力がオールマイト並みに高いってことだ

 

「個性を消せる…。素敵だけどなんてことはないね。圧倒的な力の前では、つまりただの無個性だもの」

 

脳無は相澤先生の頭を無造作に掴み、コンクリートの地面に叩きつけ、小さなクレーターができる

 

「死柄木 弔」

 

「黒霧、13号はやったのか?」

 

黒いモヤ、黒霧がワープし、広場に来て現状を報告する

 

「行動不能には出来たものの、散らし損ねた生徒がおりまして…一名、逃げられました」

 

「は?はーー、はあーーーー」

 

黒霧の失態にイラつきながら、ガリガリと首元を両手で掻いていく

 

「黒霧、おまえ…。お前がワープゲートじゃなかったら粉々にしてたよ…。さすがに何十人ものプロ相手じゃ敵わない。ゲームオーバーだ。あーあ…。今回はゲームオーバーだ。帰ろっか」

 

誰が行ったかは分からないけど救援が来ることがわかって、僕達は安心するが…

 

「ねぇ、緑谷ちゃん、気味が悪いわ」

 

「うん、僕もそう思う」

 

気味が悪い……

これだけのことをしといて、あっさりと引き下がる

目的のオールマイトも殺せずに帰ってしまったら雄英の危機意識が上がるだけなのに…

 

「けども…その前に平和の象徴としての矜持を少しでも、へし折って帰ろう!」

 

そして、蛙吹さんに死柄木と呼ばれた男が近づき、掌で顔を触ろうとした

名称は不明だが、触れるだけで相手を粉々にしてしまう個性

僕の頭に嫌なイメージが浮かぶ。蛙吹さんが塵となってしまうイメージが…

 

しかし、

 

「………本っ当かっこいいぜ、イレイザーヘッド」

 

相澤先生の抹消で個性を消したため、死柄木の個性は発動しなかった

最後の力を振り絞り、生徒を守る

それが教師として…ヒーローとしての使命

だが、それも圧倒的な力の前では無意味だった

ゴッ!と脳無に頭を叩きつけられる相澤先生

意識を失い、見て個性を消すことはできない

 

(ヤバいヤバいヤバい!!)

 

先ほど自分達が相対したチンピラの敵とは明らかに違う

動けるのは僕達、3人しかいない

とにかく今は蛙吹さん、峰田くん、先生を救けて連れて逃げなければならない

 

「手っ…放せぇ!!」

 

電子レンジで卵が爆発しないイメージで個性を発動する

大振りで拳を振るうが当たれば倒せるかもしれない

ワン・フォー・オールの調整はまだ0か100のどちらかしか出来ない

それでも腕一本の犠牲でこのヤバい敵を倒せるのなら十分だ!

 

「脳無」「SMASSH(スマッシュ)!」

 

風圧が発生するほどの威力

前は発動するとボロボロになっていた腕が個性を使用したのに折れていない

こんな時に力の調整が成功し、上手く拳が当たったのだ

 

やった……と思うのも束の間

 

「え……」

 

いつの間にか脳無と言われている異形型の個性のような大男が僕の目の前に立っていた

どうやら死柄木の命令で動き、彼のガードする為に壁になったのだ

速すぎるスピード、ワン・フォー・オールの100%を受けても平然としている耐久力

 

(そんな…)

 

蛙吹さんの言っていたことを思い返す

殺せる算段が整っているから連中はこんな無茶をしている

この大男がオールマイト殺しの、切り札

 

「良い動きするなあ…。スマッシュってオールマイトのフォロワーかい?まぁ…いいや。君」

 

脳無が僕の腕を掴む

並大抵の力では振りほどけない腕力

蛙吹さんも舌を伸ばし、僕を助けようするが、間に合わない

死柄木は掌を峰田くんと蛙吹さんに近づける

泣きながら峰田くんもモギモギで抵抗しようするが遅い

 

 

まさに絶体絶命

死が迫ってきている

成す術なんてない

 

死ぬ……!

 

僕が死を恐怖した時…

 

 

 

 

 

ドカッシャーン!!!

 

 

 

 

 

 

 

扉が吹き飛ぶ音と聞き覚えのある声が上から聞こえた

 

「ごめんよ生徒達よ。……遅くなってしまった。怖い思いをさせてしまったね。全く己に腹が立つ…!後輩らがどれだけ頑張ったか!!でも、だからこそ言わせて欲しい!――――もう大丈夫!私が来た!!」

 

平和の象徴(オールマイト)が怒りの形相でやってきた

 

 

 



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第7話:Plus Ultra!!

平和の象徴とは存在するだけで犯罪の抑止力となる

 

「嫌な予感がしてね…。校長の長い、いや、ありがたいお話を振り切りやって来たよ。来る途中で飯田少年とすれ違って…、何が起きているかあらまし聞いた。もう大丈夫だ」

 

平和の象徴だからこそ、常に胸を張り、常にかっこよく、常に恐れず、常に人々を安心させなくてはならない

 

だからこそオールマイト(平和の象徴)はこう言うのだ

 

「私が来た!」

 

「「「オーーーールマイトーーーー!!!」」」

 

「...待ってたよ、ヒーロー。社会のゴミめ」

 

 

「あれが…!生で見るの初めてだぜ…!迫力すげぇ…」

 

「バカヤロウ、尻ごみすんなよ。アレを殺って俺たちが…」

 

そんなことを敵が言っているうちに、オールマイトは階段を一瞬で降り、それと同時に階段のすぐそばにいたヤツらを瞬殺した

殺してはいないが、あの一瞬で無力化したのだ

 

(…相澤くん、すまない…。腕に…顔も…!)

 

オールマイトは敵の方向へ向き直る

そこには緑谷と蛙吹、峰田、死柄木、そして脳無がいた

死柄木は蛙吹の顔に手を置きかけ、緑谷の腕は脳無に掴まれていた

オールマイトの拳に力が入る

そしてオールマイトは敵を睨みつける

その眼光はまるで子を傷付けられ激怒した獅子のようだった

 

 

そして気付いた時には緑谷と蛙吹と峰田の回収し、相澤先生のところまで移動していた

 

「え!?え!?あれ!?速ぇ…!?」

 

「皆!入口へ!相澤くんを頼んだ。意識がない!早く!」

 

(オールマイト…!)

 

緑谷は心配そうにオールマイトのことを見た

彼は知っているのだ、オールマイトの秘密を…。

 

「ああああ....。だめだ...、ごめんなさい......。お父さん.........」

 

死柄木は臆病そうに身体を震わせながら床に落ちた手の形をした装飾品を拾う

先程までの様子が嘘のような言動を取っている為とても不気味だ

 

「さすがに速いや。......けれど思った程じゃない。やはり本当だったのかな...」

 

手の装飾品を顔に装着する直前にこちらを向いていることがわかる

死柄木は口の端を吊り上げ、不気味な笑みを浮かべる

それはまるでオールマイトをあざ笑うかのようだった

 

「弱ってるって話.........」

 

死柄木がそう呟くと呼応するかのように脳無が死柄木の前に立つ

 

「オールマイト!だめですあの脳みそ敵‼︎ワン…っ!僕の腕が折れない程度の力だけど、ビクともしなかった!きっとあいつ…」

 

「緑谷少年‼︎大丈夫!」

 

心配する緑谷にオールマイトは安心させるようにする

これ以上生徒を傷付けない為にも

そしてオールマイトは死柄木に向かって走り出し、両腕を胸の前でクロスさせる

 

CAROLINA(カロライナ)…」

 

「脳無」

 

SMASH(スマッシュ)! 」

 

オールマイトのクロスチョップは死柄木ではなく、庇った脳無に命中した

だが、脳無に攻撃が効いている様子は無かった

そして脳無はオールマイトを捕まえようと両腕を振りかぶる

 

「マジで全っ然…効いていないな!!」

 

オールマイトは脳無の攻撃を避けながら的確に拳を命中させる胴体、頭あらゆる箇所に攻撃を加えても効いている様子は無い

 

「効かないのは"ショック吸収"だからさ。脳無にダメージを与えたいなら、ゆっくり肉をえぐったり、切ったりするのが効果的だね......。やらせてくれるかどうかは別として」

 

「わざわざサンキュー、そういうことなら!!やりやすい!」

 

オールマイトは物理攻撃が無意味なら別の方法でダメージを与える為、脳無の背後に周りこみバックドロップを仕掛けた

そして、オールマイトと脳無が戦っている場所で爆発が起きた

だが、あくまでコレはオールマイトのバックドロップによって起きた爆発だ

これがオールマイトがどれだけ実力を持っているかわかる

 

1-A生徒達はオールマイトが来てくれたことにより、絶望から一転希望に満ち溢れていた

 

「すげぇ!ヤツらオールマイトを舐めすぎだぜ!!」

 

「あ!デクくんだ‼︎」

 

だが、緑谷出久は知っているのだ

 

(知っているんだ。通学中は毎日リアルタイムのヒーローニュースを見ているんだ。USJにオールマイトがいないって話の時に13号先生がひっそりと立てた3本指はきっと活動限界のことだ。きっと使いすぎたとかの話だ)

 

「やれええ!金的を狙ええーーっ!」

 

「私たちの考え過ぎだったかしら…。凄いわ…」

 

彼だけが知っているオールマイトの秘密(ピンチ)

 

「ッ〜〜〜〜〜〜!そういう感じか…!!」

 

オールマイトは脳無をコンクリートの地面に突き立て、動きを封じようとしたが、ワープゲートの個性をもつ黒霧が援護し、脳無の上半身がオールマイトの真下から出現し、オールマイトの脇腹に指を深く突き刺していた

脳無はオールマイトとほぼ同等のパワーを持ち、簡単に拘束を解くことができない

 

「コンクリに深くつき立てて、動きを封じる気だったか?それじゃ、封じれないぜ?脳無はおまえ並みのパワーになってるんだから。いいね、黒霧。期せずしてチャンス到来だ」

 

「君ら初犯でコレは…!…っ覚悟しろよ!!」(なんというパワー!そこは弱いんだやめてくれ!)

 

更に黒霧が自慢気に話を続ける

 

「私の中に血や臓物が溢れるので嫌なのですが…、あなた程の者なら喜んで受け入れる。目にも止まらぬ速度のあなたを拘束するのが脳無の役目、そしてあなたの身体が半端に留まった状態でゲートを閉じ、引きちぎるのが私の役目」

 

それを聞いた瞬間、緑谷は行動を始めた

 

「蛙ス…っ…ユちゃん!」

 

「頑張ってくれるのね、なぁに緑谷ちゃん」

 

「相澤先生担ぐの代わって…!!」

 

「うん…けど何で…?」

 

それは緑谷だからこその行動…

考えるよりも先に体が動いたゆえの行動… 

 

(教えてもらいたいことが 、まだ! 山程あるんだ!!)

 

「 オールマイトォ‼︎ 」

 

緑谷の目の前にワープゲートが出現するまるで見計らっていたかのように、そして黒霧はあざ笑う

 

 

「浅はか」と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、彼は笑う

 

 

 

 

 

 

 

「 どっけ‼︎ 邪魔だ‼︎ デク!!! 」

 

BOOOOOM!!

 

 

 

ヒーローらしからぬ素敵(凶)な笑顔で

 

笑顔?を浮かべながら爆豪勝己は黒霧を抑えつける

そして、脳無の半身が凍りつく

 

「てめぇらがオールマイト殺しを実行する役とだけ聞いた」

 

 

 

そこには2つの個性の力を持つ相変わらずクールな性格をした轟が脳無の半身を凍らせたのだ

 

そして、

 

「『慈悲のまにまに、天よ泣け!【下天暴雷槍(フルゴル・クルエントゥス)】』」

 

巨大な雷が死柄木に襲いかかる

しかし、距離があったため、死柄木に回避されられた

 

そこを切島が殴りかかるが死柄木は最低限の動きで回避した

 

「くっそ!いいとこねぇ!」

 

「スカしてんじゃねぇぞモヤモブが!!」

 

「平和の象徴はてめぇらが如きに殺られねぇよ」

 

「警戒して俺を飛ばした割には恐ろしくギリギリだな、(ヴィラン)共…!」

 

助けに来てくれた4人

否、ヒーローの卵が3人とほぼヒーローが1人来てくれたことにより緑谷は感激する

 

「かっちゃん…みんな…!」

 

オールマイトを助ける為、敵に借りを返す為、友の為とそれぞれの思惑は違うが、ここに強力な個性持ちが集まったのだ

 

「2人共!運ぶのを手伝うぞ!」

 

「お、尾白!お前も来てくれたのか…!」

 

「ナイスなタイミングね、助かるわ」

 

尾白も黒猫に着いて来ており、途中で合流した爆豪たちと来たのだ

性格にちょっと難があるメンバーであると同時に、このクラスでこれ以上に頼もしいメンバーはいない

尾白は自分の個性と戦闘スタイルの関係上、戦闘に参加しても自身は足手まといになってしまうと判断し、自分に出来ることを

怪我人の避難を手伝うことを優先することにしたのだ

 

そんな中でオールマイトは氷結によって動きが鈍くなった脳無の拘束から逃れる

 

「このウッカリヤローめ!モヤ状のワープゲートになれる箇所は限られている。そのモヤゲートで実体部分を覆っていたんだろ!全身モヤの物理無効人生なら『危ない』っつー発送は出ねぇもんなぁ!!」

 

「ぬぅっ…」

 

「おっと、動くな!怪しい動きをしたと俺が判断したらすぐに爆破する!!」

 

「ヒーローらしからぬ言動…」

 

切島が先ほどの発言にツッコミを入れるが、爆豪には無視される

というか、完全に黒霧しか見ていなかった

 

「攻略された上に全員ほぼ無傷...。すごいなぁ、最近の子供は...。恥ずかしくなってくるぜ.....!脳無、爆発小僧をやっつけろ、出入り口の確保だ」

 

すると、先程まで停止していた脳無が動き出す

凍りついた半身がバキバキと音を立てながら崩れていく

そして、脳無の右半身は粉々に砕けた

 

「体が割れているのに…、動いてる…!?」

 

「 皆下がれ!!なんだ!?ショック吸収の個性じゃないのか!?」

 

そして、脳無の右半身に骨格、筋肉、皮膚と次々に再生されていった

 

「別にそれだけとは言ってないだろう。こいつにはもう一つの個性【超再生】が備わっている。脳無はお前(オールマイト)の100%にも耐えられるように改造された超高性能サンドバック人間さ」

 

刹那、風が巻き起こった

周りにある木々はその風により激しく揺れ、そこには爆豪がいた場所に殴った体勢をした脳無がいた

しかし、そこには爆豪の姿はなく、

 

「『武器召喚(サモン・ウェポンズ)【デューク・エイジス】』」

 

大盾を持った黒猫がいた

 

「危ねぇな。【ラギド】じゃなかったらぶっ飛んでたぞ…」

 

オールマイトも反応していたが、黒猫も同じように反応していたのだ

爆豪を秘儀糸で動かし、盾で脳無の拳を受け止めたのだ

ダメージはゼロだが、盾は思いっきり凹んでいた

 

そして、黒猫が爆豪を庇っていなかったらどうなるかその場の全員が理解する

 

死柄木は若干不機嫌そうだが、勝ち誇ったかのように堂々とオールマイトに向けて喋りだす

 

「俺はなオールマイト、怒っているんだ。同じ暴力がヒーローと敵でカテゴライズされ善し悪しが決まる世の中に、何が平和の象徴!!所詮、抑圧のための暴力装置だ、お前は。暴力は暴力しか生まないのだとお前を殺すことで世に知らしめるのさ!」

 

死柄木はもっともな事を言い出す

ここで心に隙が生まれてしまうとこの言葉に付け込まれ、敵の美学に酔いしれてしまうだろう

 

 

感動的な台詞だ。

だが、無意味だ

 

 

「めちゃくちゃだな。そう言う思想犯の眼は静かに燃ゆるもの、自分が楽しみたいだけだろ、嘘つきめ」

 

「バレるの早…」

 

(死柄木)の言葉には一切の意味などない

ただあるのは自分がゲーム感覚で楽しみたいだけの愉悦感だけである

そして、敵のふざけた言葉に刺激された"6人"が戦闘体勢に入る 

 

「3対6だ」

 

「モヤの弱点はかっちゃんが暴いた!」

 

「とんでもねぇ奴らだが、俺らでオールマイトのサポートをすりゃ…撃退出来る‼︎」

 

しかし、

 

「ダメだ!君たち逃げなさい!」

 

それはオールマイトの意地だった

ヒーローとしての、平和の象徴としての…

子供を巻き込まないための…

 

「……さっきのは俺がサポート入らなきゃやばかったでしょう」

 

「オールマイト、それに時間だってないはずじゃ…」

 

「それはそれだ、轟少年!ありがとな!しかし大丈夫!!プロの本気を見ていなさい!」

 

死柄木はチャンスだと思った

オールマイト程ではないが子供たちも厄介な存在になる

特に最近名を馳せている黒猫の魔法使いは…

だから、ここで殺す…

 

「脳無、黒霧やれ。俺は子供をあしらう。さて.........クリアして帰ろう!」

 

(確かに時間はもうほとんどない…!力の衰えは思ったよりも早い!しかし、やらねばなるまい!なぜなら私は…)

 

「黒猫少年、もしもの時は「わかってる!だから、オールマイト!!」

 

「おい来てる、やるっきゃねぇ!」

 

「『雷陣刻、っ!?」

 

平和の象徴なのだから!!

 

その瞬間、そこにいた全員が圧倒的な意志に怯んだ

 

そして、オールマイトと脳無の拳がぶつかり合った瞬間、強力な突風が生まれる

お互いの拳の衝撃でこの突風が作り出されているのだ

 

「"ショック吸収"って...さっき自分で言ってたじゃんか」

 

そして、オールマイトと脳無のラッシュが始まる

この場にいる黒猫以外の全員には2人の拳は捉えることができない

そして衝撃による風も荒くなる

しかし、オールマイトのラッシュのスピード、手数が徐々に脳無のラッシュを上回っていく

 

「"無効"ではなく"吸収"ならば!!限度があるんじゃないか!?私対策!?私の100%を耐えるなら!!さらに上からねじ伏せよう!!」

 

「流石というか、なんというか…」

 

黒猫は若干呆れていたが、他の彼らはオールマイトが血を吐きながら拳を振るうのに戦慄していた

 

(血を吐きながら…!全力で…!ただめっやたらに撃ち込んでいるんじゃない!1発1発が全部!100%以上の…!)

 

オールマイトのラッシュにより、脳無の体勢が崩れる

そしてすかさずタックル、アッパー、浮かんだ瞬間腕を掴み地面に叩きつける

 

「ヒーローとは常にピンチをぶち壊していくもの!(ヴィラン)よ、こんな言葉を知っているか⁉︎」

 

そして、彼は右手を上に突き出し自身の全パワーを集中させるようにして目の前にいる(ヴィラン)に腰が入った拳を叩き込む

 

 

 

「さらに向こうへ!

Plus Ultra!!! 」

 

 

 

脳無はUSJの天井を突き破り、雲を抜け、ついには見えなくなってしまった

 

「…漫画かよ。ショック吸収を無い事にしちまった。究極の脳筋だぜ」

 

「デタラメな力だ・・・再生も間に合わねぇ程のラッシュってことか・・・。」

 

「敵が星みたいに飛んでいったな…」

 

爆豪と轟は実感した

これがトップ、これがプロの世界、そしてこれがオールマイトの力なのだと

 

「やはり、衰えた。全盛期なら5発も撃てば充分だったろうに、300発以上も撃ってしまった…」

 

(前から思っていたけどチートじゃねぇか…)

 

黒猫は心の中で全盛期のオールマイトにツッコミをいれる

 

「さてと敵、お互い早めに決着つけたいね」 

 

「衰えた?嘘だろ…完全に気圧されたよ。よくも俺の脳無を…!チートが…!全っ然弱ってないじゃないか!あいつ…、俺に嘘を教えたのか!?」

 

(あいつ?協力者がいるのか?)

 

オールマイトは死柄木が呟いた言葉を聞き逃さなかった

しかし、

「どうした?来ないのかな!?クリアとかなんとか言っていたが…出来るものならしてみろよ」

 

「うぅうぉおおぉおおぉおおぉお…!!」

 

「さすがオールマイト、俺たちの出る幕じゃねぇみたいだな」

 

「緑谷!ここは退いた方がいいぜもう、却って人質にされたらヤベェし…」

 

(……違う!あれは…虚勢だ…!)

オールマイトの周りに煙のようなものが出てきている

緑谷だからこそ分かるそれは、

 

(土煙にまぎれてるけど…変身する時の蒸気みたいなものが出ている!!)

 

オールマイトの活動限界(タイムリミット)を知らせるものだった

 

(もう動けんぞ…。脳無とやらが強過ぎた!ぶっちゃけもう一歩でも動けば力むのも維持できん!トゥルーフォームに戻ってしまう!)

 

「さぁ、どうした!?」(あと少し…!迷え!あと少しでも時間を稼ぐことができれば…!)

 

「脳無さえいれば!奴なら!何も感じず立ち向かえるのに…!」

 

「死柄木弔…、撤退しましょう。確かにオールマイトは脳無に受けたダメージが確実に現れている。しかし、まだ黒猫の魔法使いがいます。正直な話分が悪いです。それに、」

 

黒霧の言葉は途中で遮られた

それは足元に銃弾が飛んできたからである

 

「来たか!!」

 

「ごめんよ皆。遅くなったね。すぐ動ける者をかき集めて来た」

 

「1ーA、クラス委員長、飯田天哉!!ただいま戻りました!!!」

 

「あーあ、来ちゃったな…。ゲームオーバーだ。帰って出直すか、黒霧」

 

そんなことを言っている間に死柄木を銃弾が襲う

 

「ぐっ!!」「死柄木弔!!!」

 

「この距離で捕獲可能なやつは、」

 

黒霧が死柄木を包み込みワープしようとするが

 

「これは(引っ張られる…!)」

 

「僕だ…!!」

 

13号のブラックホールで引っ張られていた

しかし、

 

「今回は失敗だったけど…今度は殺すぞ。平和の象徴、オールマイト」

 

敵は撤退して行った

しかし、

 

「置き土産です」

 

撤退と同時に黒霧がある1人の人間を出した

 

「目覚めなさい、全てを破壊する夢よ」

 

「っ!?まさか!?」

 

黒猫はすぐに分かった

だからこそ、やばいと思った

 

「ヒャハハハハハ!!ハカイ、ハカイだ、全てを破壊する!!!!」

 

それは叶えられることも無く、ただの捨てられた夢だった



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第8話:全てを破壊する夢(ブレイクメア)

就活中のため、執筆がまた遅れてしまいました。
黒ウィズはイベントが多いし、手が回らないや
時間が欲しいよー(切実)(´・ω・`)


死柄木side

 

「ってえ…」

 

結局、俺たちは黒霧のワープで拠点にしているBARに撤退した

もう少してゲームクリアだったのにも関わらず…

 

「両腕両脚撃たれた…。完敗だ…。脳無もやられた。手下共は瞬殺だった。子供も強かった…」

 

グチグチと結果を言う

だが、そんなことよりも心に刺さったのは、

 

「平和の象徴は健在だった…!」

 

だからこそ、自身が尊敬する人に聞く

 

「話が違うぞ、先生…」

 

『違わないよ』

 

その声はモニターから聞こえた

 

『ただ見通しが甘かったね』

 

『うむ…。なめすぎたな。(ヴィラン)連合なんちうチープな団体名で良かったわい』

 

そして、モニターからは先生の治療を担当している博士の声も聞こえた

 

『ところで、ワシと先生の共作、脳無は?回収してないのかい?』

 

「吹き飛ばされました。正確な位置座標を把握出来なければいくらワープといえ探せないのです。そのような時間は取れなかった」

 

黒霧が答える

全く、イラつく

この結果全てにイラつく…!

 

『せっかくオールマイト並のパワーにしたのに…。まあ、仕方ないか…。残念』

 

「パワー…。そうだ…。一人、オールマイトに近い力を持つ子供がいたな…。脳無のショック吸収は超えられてなかったけど…」

 

『…へえ』

 

「それよりも黒猫の魔法使いだ…!あいつさえいなければ引かなくても良かった…!オールマイトを殺せたかもしれない…。魔法使いがっ…!」

 

そんな俺の気持ちを知ってか先生が話を続ける

 

『悔やんでも仕方がない!今回だって決して無駄ではなかったハズだ。精鋭を集めよう!じっくりと時間をかけて!我々は自由には動けない!だから、君のような”シンボル”が必要なんだ。死柄木弔!!次こそ君という恐怖を世に知らしめろ!』

 

ああ、そうだな、先生

俺がやるんだ…

この世に恐怖を…

 

「それとは別に予定通り撤退に置いてきたみたいだね?」

 

そして、今まで全く聞こえなかった声がカウンターの奥から聞こえた

それに対し、黒霧が答える

 

「ええ、使っていいとのことでしたのでありがたく…。しかし、脳無とは違い、あのようなものだと我々まで被害を被るのでは?」

 

「そこは仕方がないと思ってくれ。所詮僕は3流魔法使いだからね。まあ、混乱を産む意味としてはいいんじゃないかな。最も最近は見張りが厳しくて新しいの連れてこれないんだけどねぇ。そこだけどうにかしないとね…」

 

こいつはよく分からねぇ

先生が急に連れてきたからな

だが、利用されるくらいなら利用してやるよ…

 

「兎に角、あの夢は黒猫の魔法使いに倒されるだろうね。やれやれ、メアレスでもないのに本当に厄介な存在だよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒猫side

 

「セメントス!!」

 

そいつが出てきた瞬間、俺は叫んだ

 

「っ!」

 

次の瞬間、俺の叫びに答えたセメントスが個性で地面のセメントを操り、壁を作った

 

「ヒャッハァァァァ!!!」

 

しかし、それは目の前の男に破壊された

叫んだだけで周りのものを破壊し、地面まで亀裂を入れた

 

「全員、下がれ!!特級だ!!」

 

「なっ!?」

 

「校長!」

 

「全員、生徒の避難を優先してくれ!」

 

俺はその言葉を聞く前に飛び出す

 

「はぁぁ!!」

 

俺は【ラギド】の力を今出せるだけだし、殴りにかかるが、

 

「ハカイィ!!」

 

オーラを纏った拳で返される

 

「ぎっ!?」

 

それは異形の装甲を打ち破り、俺の腕を傷つけた

 

「っ、なんでお前が敵連合といる!?ロストメア!!」

 

「ハカイ、全てをハカイ!!」

 

「コイツ…!?まさか、自我が…」

 

「ヒィィィハァァァァ!!」

 

再び、絶叫

その時に起こる破壊の衝撃波で俺は飛ばされる

 

「まーくん!」「行っちゃだめにゃ!」

 

広場にクラスメイトが集まってくる

そして、俺が怪我をしているのを見てか渡我が近くに来ようとするが、それはウィズが止めた

俺にみんなが視線を向けている間に既にオールマイトは避難していた

 

「全員、ここから出るんだ!!」

 

「しかし、校長先生!」

 

「早く!僕達では、絶対あれには勝てない!」

 

周りがそんなことを言っている間も俺は魔法を放ちながら、突っ込んで行った

しかし、魔法も鎧も容赦なく、破壊されていった

 

「ぐはっ!容赦ねぇな…」

 

「ハカイだ、全てを、破壊する!!!」

 

「全てを破壊する夢、ブレイクメアってとこか。『汝、無情のさだめ、非情の因果より逃れることあたわず』!」

 

複数の追撃する雷を放つが、順番に破壊される

 

「もういい。俺も攻撃する」

 

「っ!?いけない、轟くん!!」

 

先生方の静止を振り切って、轟は個性をブレイクメアに使おうとしたが、

 

「がっ!?なんだよ、これ!?頭が、割れるようにいてぇ…!」

 

「攻撃をしようとしてはダメだ!あれはそういうやつなんだ!」

 

ロストメアの特性、夢を持つ者は戦うことができない

それに阻まれ、轟はその場に膝をついた

 

「ぐっ!はぁはぁ、」

 

魔法も破壊され、傷だらけになり、血も滴ってきた

それでも、俺は諦めない

こいつはここで倒さなくてはならない

でなければ、周りがめちゃくちゃになってしまう…

 

ともかく、

 

「やっと突破口を見つけた…。ウィズ!」

 

「にゃ!?」

 

「ミリィを呼べ!!」

 

「わかったにゃ!」

 

ウィズはそう答えると人の姿になり、1枚のカードを取り出した

 

「『我が召喚に応えよ!召喚(サモン)!【戦鳥裂帛 ウォーブリンガー=ミリィ】!』」

 

そして、現れたのは片手にお菓子を持ち、さらに口にくわえた状態のミリィだった

 

「え、ええ、どういう状況ですか!?」

 

突如、呼ばれたせいで多少混乱していたミリィだが、

 

「ミリィ!!フルバーストの準備!!ウィズはサポート!!」

 

「っ!うすうす!」「わかってるよ!」

 

俺の状況を見てすぐさま正気になり、パイルバンカーを構えた

そして、ウィズに召喚されたフルバースト用の装備を装着していった

 

「『八十葉をなして、天霧らせ!!地より逆撃つ雷霆樹!!』」

 

俺はブレイクメアの周りに幾重もの雷の柱を立て、ミリィの所まで下がった

 

「時間が無いから要件だけ言う。俺の言うタイミングでフルバーストを放ってくれ。ウィズも魔法を」

 

「そ、それはいいんですけど、魔借さん、大丈夫なんですか?」

 

「大丈夫だ。いいか、ミリィ!お前が突破口だ。頼んだぞ!」

 

「…うすうす!!」

 

「ウィズ、もしもの時は頼む」

 

「大丈夫、わかってるから」

 

2人の言葉を聞いた俺はブレイクメアが包まれた雷の方に向く

そして、憑依召喚(インストール)に使っている【ラギト】のカードを取り出す

 

「力を貸してもらうぞ、ラギト。『我が呼び声に答えし異界の精霊よ。その力を我が元へ!全て変える力となれ!完全憑依召喚(フルインストール)!!【血火咆哮 ダイトメア=ラギト】!!』」

 

俺は自身の切り札を使った

完全憑依召喚(フルインストール)

通常の憑依召喚(インストール)とは違い、精霊の力を100%以上引き出す魔法

魔力消費がとてつもなく、体にも相当の負担がかかるが、膨大な力を引き出すことができる

デメリットとしては完全憑依召喚(フルインストール)に使用したカードは魔法を解除した後、24時間、使用不可能になるという事だ

そしてもう1つ、精霊の力が強すぎるため、俺に干渉してくるのだ

下手すると俺の自我が飲み込まれる可能性があるため、普段は使用をしないようにしている

しかし、今回は仕方がない

完全憑依召喚(フルインストール)を使わないと勝てない

 

「『行くぞ』」

 

その影響で俺とラギトの声が合わさって聞こえるようにもなる

しかし、そんなことを気にしている場合では無い

 

「ヒィィィハァァァァ!!」

 

三度、ブレイクメアの絶叫

奴を囲っていた雷の結界が破壊された

 

「『ミリィ!!』」

 

その瞬間、俺は走り出し、ミリィに声をかけた

 

「『オールウェポンズ・フルドライブ!!』」

 

「くらえぇ!!」

 

そして、数多のミサイルと弾丸、魔法がブレイクメアに向かっていった

しかし、

 

「ヒィィィハァァァァ!!」

 

それは破壊の障壁で防がれた

 

「『それを待っていた!!』」

 

俺はミサイルなどの爆煙に突っ込み、ブレイクメアの懐に入った

破壊の障壁は厄介だ

最大の攻撃法でありながら、防御にも使える

しかし、魔法を防がれているのを観察して欠点を見つけたのだ

一度破壊の効果を使った場所の障壁は再展開するまで破壊の力は無くなるのだ

そこで俺はミリィのフルバーストを広範囲攻撃を利用したのだ

障壁の殆どを意味なくした瞬間に突っ込み、懐に入り込む

結果としては上手くいった

後は、最大火力を打っ放す!!

 

「『シヴァリング・エンド!!』」

 

それはラギトのSSの名を関する一撃

自身の受けたダメージを加算して相手に攻撃を喰らわせる技

それは紫色の魔力の奔流となって放たれた

 

「『ウォォォォォ!!』」

 

そして、

 

「は、はか…い……」

 

ブレイクメアはそれに飲み込まれ、消え去った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『はぁ、はぁ、『魔法解除(リセット)』。つ、疲れた…」

 

「お疲れ様です」「お疲れにゃ」

 

やっぱり、完全憑依召喚(フルインストール)は体への負担が大きいな

ものすごく疲れる

それに今回はボコボコにされたからな

傷が痛てぇ…

 

「あの、そろそろ事情を聞きたいんですけど?」

 

「ああ、すまんな、ミリィ。実は「ちょっと待ってくれ、黒猫くん」…校長」

 

ミリィに事情を話そうとしたらネズミなのか熊なのかよく分からない生物代表である根津校長が来た

 

「警察が到着した所さ。事情聴取を取りたいそうだから着いてきてくれるかな?それと治療も。そちらのお嬢さんも一緒に」

 

「…わかった。ミリィ、すまんが着いてきてくれ」

 

「わかりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三人称視点

 

「18、19、20…。指を負傷した彼と全身を怪我をした魔法使いを除いて…ほぼ全員無事か…」

 

USJ事件で利用された敵の引き取りに警察が来た

その警察をひきいていたのは今、生徒の安否を確かめた塚内直正という刑事だった

ほぼ全員無事…

この言葉を聞いて生徒が少しづつ話し出した

 

「尾白くん…、今度は燃えてたんだってね。強かったんだね」

 

「いや、俺の場合は黒猫が既に敵を倒してたからさ…。葉隠さんはどこいたんだ?」

 

「土砂のどこ!轟くん、クソ強くてびっくりしちゃった」

 

「…(凍らすとこだった、危ねえ)」

 

周りの影響を省みない轟であった 

 

「僕がいたとこはね…どこだと思う?☆」

 

「そうか、やはり皆のとこもチンピラ同然だったか」

 

「ガキだとナメられてんだ」 

 

「どこだと思う!?☆」

 

「どこ?」

 

皆に無視されても問い続ける青山に、蛙吹が聞くが、

 

「秘密さ!!」キラッ

 

全く答えになっていなかった

 

「とりあえず生徒らは教室へ戻ってもらおう。すぐ事情聴取ってわけにもいかんだろ」

 

「警部さん、相澤先生と黒猫ちゃんは…」

 

相澤を心配した蛙吹が塚内に聞いた

先程まで相澤を運んでいたのは彼女だったため、余計に心配だったのだ

 

『両腕粉砕骨折、顔面骨折…。幸い脳系の損傷は見受けられません。ただ…眼窩低骨が粉々になってまして、眼に何かしらの後遺症が残る可能性もあります』

 

「だそうだ」

 

「ケロ…」

 

塚内の持つ携帯から聞こえた結果に蛙吹は心配そうな声を出し、峰田は泣きかけていた

 

「13号の方は背中から上腕にかけての裂傷が酷いが、命に別状はなし。オールマイトも同じく命に別状なし。彼に関してはリカバリーガールの治癒で充分処置可能とのことで保健室へ。緑谷くんは比較的軽傷だったから同じく保健室とのことだ」

 

「まーくん…」「黒猫さんは…!?」

 

渡我と八百万が黒猫のことを心配し、塚内に聞く

 

「黒猫、魔法使いか。彼も保健室で間に合うそうだ。さっき運ばれたよ。そうだ、私も保健室の方に用事がある。三茶!後、頼んだぞ」

 

「了解」

 

「セキュリティの大幅強化が必要だね」

 

「ワープなんで個性、ただでさえものすごく希少なのに。よりにもよって敵側にいるなんてね…」

 

先生方は今後の対策について話し合っていた

ヒーローとしての視点から意見を出し合っていた

 

「塚内警部!約400m先の雑木林で敵と思われる人物を確保したとの連絡が!」

 

「様子は?」

 

「外傷はなし!無抵抗でおとなしいのですが…、呼びかけにも一切応じず、口がきけないのではと…」

 

捕らえられたのは脳無であった

オールマイトにぶっ飛ばされてなお無傷

対オールマイトと言える凄さがわかるものだ

 

「校長先生、念の為、校内を隅まで見たいのですが」

 

「ああ、もちろん!一部じゃとやかく言われているが、権限は警察の方が上さ!捜査は君たちの分野!よろしく頼むよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

保健室side

 

「今回は事情が事情なだけに小言も言えないね」

 

保健室にはベッドに横たわり、包帯だらけのオールマイトと椅子に座り、指を治療して貰っている緑谷、そして治療をするリカバリーガールがいた

 

「多分だが…、私、また活動限界早まったかな…一時間くらいはまだ欲しいが…」

 

「オールマイト…」

 

「まー、仕方ないさ!こういう事もある!」

 

オールマイトの活動限界

ワン・フォー・オールを緑谷に讓渡した事で、彼には残り香しか残っていない

今はそれを消費して活動しているのだ

しかし、無理をすれば急激に減っていく

それは平和の象徴のカウントダウンとも言えるのだ

 

「失礼します」

 

「ま、魔借!?」

 

そして、そこに入ってきたのはボロボロになった黒猫だった

しかし、そこにはトゥルーホームのオールマイトの姿がある

緑谷はオールマイトの秘密が知られたかと思い、声を上げたが、

 

「出久、オールマイトのことなら知ってるから安心しろ。リカバリーガール、すいませんが治療をお願いします。体力がギリギリなので個性使わず…」

 

「全く世話が焼けるねぇ」

 

彼の傍にはミリィもウィズもいなかった

ミリィはロクス・ソルスに帰し、ウィズも連れて行ってもらい、事情を説明するようにしてもらったのだ

 

「魔借、あの」

 

「オールマイトのことか?黙っていてすまなかったな。俺も色々とあって知ってるんだよ。お前が後継であることもな」

 

「黒猫少年…。他のクラスメイトに私のことは」

 

「バレてないだろ。全員俺に目がいっていたからな。分かったらきっと声をかけてくるだろ。その時はあんた自身で何とかしてくれ」

 

「失礼します。…オールマイト、久しぶり!」

 

そんな話をしているところに、塚内が入ってきた

 

「塚内くん!!君もこっちに来ていたのか!」

 

「オールマイト…!え、いいんですか!?姿が…」

 

「ああ!大丈夫さ!何故って!?彼は最も仲良しの警察、塚内直正くんだからさ!」

 

「ハハッ、何だ、その紹介」

 

そう、塚内はオールマイトの旧友

故にオールマイトの秘密を知る数少ない人物なのだ

そして、

 

「塚内さん、お久しぶりです」

 

「ああ、黒猫くん。怪我大丈夫かい?」

 

「ええ、見た目ほど重症ではないので」

 

「充分重症だよ!」

 

リカバリーガールに怒られながら、治療される黒猫にも声をかける

塚内はロストメアの秘密を知る1人なのだ

故に、こちらの世界に来たロストメアの情報は彼から黒猫に流れることが多く、よく話をする間柄であるのだ

 

「早速で悪いが、オールマイトと黒猫くん。敵について詳しく…」

 

「待った、待ってくれ、それより…」

 

オールマイトは塚内の質問に待ったをかけ、問いかけた

 

「生徒は皆、無事か!?相澤…イレイザーヘッドと13号は!!」

 

「…生徒はそこの彼と黒猫くん以外で軽症数名。教師2人はとりあえず命に別状無しだ。3人のヒーローが身を挺していなければ、生徒らも無事じゃあいられなかったろうな」

 

「そうか…しかし、一つ違うぜ、塚内くん。生徒らもまた戦い、身を挺した!!こんなにも早く実践を経験し、生き残り、大人の世界を、恐怖を知った1年生など今まであっただろうか!?

(ヴィラン)も馬鹿なことをした!!1-A(このクラス)は強いヒーローになるぞ!!

 

そう言ってオールマイトは緑谷にサムズアップをした

 

「私はそう、確信しているよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第9話:黄昏メアレス

黒猫side

 

USJでの騒動が終わった次の日、騒動の後処理の関係で雄英高校は臨時休校となった

ニュースでは襲撃の件が報道されていて、やはり危険な事件だったことを実感させられる

そんな中俺は朝早くに自分の怪我を治し、イレイザーの治療をするために雄英に来ていた

 

「包帯だらけだな、相澤先生」

 

「ミイラみたいにゃ…」

 

「うるせぇ。ばあさんが大袈裟なだけだ。明日には復帰する」

 

「その怪我でか…」

 

「そのためにお前がここに来たんだろ。早く頼む」

 

「はいはい、『咲き誇り思い繋ぐ花』」

 

個性把握テストの時に出久に使った回復のSSをイレイザーに放つ

 

「これで怪我は大丈夫だろ。ただ、後遺症はどうしようもない。まあ、普通に治すよりは後遺症がないと思うがな」

 

「すまん、助かった」

 

そしてイレイザーを治療して雄英を出ようとしたら、切島がどうせ休校で暇だし、みんなで集まって昨日の話をしようと電話で提案してきた

おそらく、ブレイクメアのことが聞きたいんだろうな

 

「どうするにゃ?」

 

「行くさ。あいつらは関わってしまったからな。話しておかないといけない」

 

「そうかにゃ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は八百万の家でやるとのことで、俺が向かうとクラス全員がメンバーが集まっていた

驚いたことに爆豪までいた

 

そして俺らは八百万の家の前についたのだが、

 

「でっけー、これほんとに家かよ」

 

「まさに御屋敷って感じで素敵ね」

 

その大きさに圧倒される瀬呂と素直な感想を述べている蛙吹、みんな二人の意見に納得していた

そうこうしていると門が開いて中から私服姿の八百万が出てきた

 

「みなさん!ようこそいらっしゃいましたわ!さあ上がってくださいな!」

 

八百万さんがテンション高めで案内してくれる

普段だとなかなか見れない姿だな

 

「こうしてお友だちを自宅に招待するなんて初めてでして……。でも夢でしたの!」

 

歩きながら八百万が語る

ぴょんぴょんと少し跳ねながら歩く姿はなんとも可愛らしい

たしかに彼女のストイックな性格は他を寄せ付けないところがあるかもしれない

しかし、自己主張の塊みたいな俺らのクラスメイトにはそんなことはお構い無しだったようで、いまではすっかり友達も増えたってわけだな

 

そうして俺らは使用人の数や通された部屋の広さ、出されたお茶と茶菓子の味など様々なことに驚きながらも、昨日のことを振り返って話をしていた

思い思いに昨日の戦闘のことを語っていくクラスメイト

全員がほんとに大変だったらしい

合流できなかった人の話を聞けてよかったな

 

そして話題はあの話にとうとう移った

 

「ねぇ、まーくん。そろそろ教えてください。まーくんが戦っていたやつのことを…」

 

「…お前らも聞きたいか?」

 

渡我に言われて、周りを見るが全員がうなづいていた

 

「いいか、今から話す内容は世間一般には出てない極秘事項だ。警察もヒーローも一部のやつしか知らない。他のやつに話してはいけないことだ。それでも知りたいんだな?」

 

さらに忠告をするが、全員が俺を黙って見ていた

 

「はあ、いいだろう。話してやるよ。まず、大前提に俺の個性の話をしよう」

 

「黒猫の個性?」

 

俺は頷き、カードを1枚取り出した

 

「俺の個性は『魔法』。カードに魔力を込めて、色々な魔法を使う個性。なら、カードはなんなのか。これはな、異界の精霊と契約の証だ」

 

「異界の精霊?」

 

「そうだ。異界、異世界にいる存在の力がこいつには込められている」

 

「…それがあいつとなんの関係がある」

 

「そう、慌てるなよ、轟。いいか、異界と契約している俺は時に異界の事件に巻き込まれることがある。そうだ、俺は異世界に行ったことがある」

 

「「「はぁ!!??」」」

 

「まあ、驚くのも無理がない。普通に考えてありえないからな。その異界のひとつに『夢と現実の狭間の世界』が存在する。そしてその世界には夢を持たないやつしか戦えない化け物がいる」

 

「ちょっと待って、魔借。まさか、」

 

「そのまさかさ、出久。あいつがその化け物、『ロストメア』だ。別世界からの化け物だ」

 

「でも、おかしいでしょ!いくら魔借が異世界に行けるからってこっちの世界にその、ロストメアが来るなんて」

 

「それは俺もよくわかってない。推測はできるがな」

 

「推測ですか?」

 

「ああ、それを言うにはあの異界の話をしないといけないな。話そう。俺が巻き込まれ、体験した、あの異界での出来事、【黄昏メアレス】の話全てを…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この始まりは約6年前

8歳のころ、俺は存在しているのに魔法が使えないカードをみていた

 

「なんで使えないんだろな、これ」

 

「さあにゃ?契約できていないんじゃないかにゃ?」

 

「ならなんで、カードがあるのよ?」

 

「知らないにゃ…」

 

そうやってウィズと話をしている時に、そのカードが急に光出した

 

「はあ!?」「にゃにゃにゃ!?」

 

光に包まれた俺とウィズが立っていた場所は見たことも無い都市の通りだった

 

「…何がどうなってんだ?」

 

「き、キミ!体が!」

 

「あ?うん?あれ?大きくなってね?」

 

そして俺の体は今くらい、高校生くらいの大きさになっていた

服もそれに合わせて大きくなっていた

そのことも気にしながら、俺とウィズは周りを見渡した

高い建物に煙突が並び、煙を吐き出している

現代でもとても見えない様相だった

 

「異界、か?」

 

「おそらくそうにゃ。あのカードのせいかにゃ?」

 

そんなことを話していると、突然、背後で絹をさくような悲鳴が響き、周囲の人々が一斉に慌てふためいた

振り向くと、黒い異形の化け物が馬車を跳ね飛ばしながら街路を駆け抜けて来た

 

「キミ!」

 

俺はカードを取り出し、魔力を込めた

 

「ちょ、そこの人!危ない!逃げて!」

 

「いや、待って、ルリアゲハ。あれは、魔力!?」

 

誰かが声をかけてきたが、気にしてる余裕はない

 

「『デトネーションヴォルテックス』!」

 

インフェルナグのSS、巨大な雷の魔法を放ち、化け物に命中させた

咄嗟に放ったため、威力が充分に発揮できず、化け物を仕留めることが出来なかった

そして、化け物は悲鳴をあげ、方向転換し、逃げていった

 

「ちっ、逃がした…」(それにしても、あの化け物どこかで見たことがあるような気が…)

 

カードをしまいながら、そんなことを考えていると、

 

「あ、ありがとうございます、『メアレス』の方」

 

逃げていた市民の人がお礼を言ってきた

 

「いえ、そんな大層なことじゃ「あなたのような『メアレス』は知らない。今の…魔法ね?」

 

急に声をかけられた

 

「にゃ?」

 

ウィズと共に声がした方を向くと、そこには険しい表情をした少女が変わった衣装の女性とともに、歩み寄ってきた

 

「魔法と言われれば、魔法だが…」(こいつらもどこかで見た覚えが…)

 

少女の確信に満ちた問いに答えた

すると、彼女はすっと目を細め、さらに問うた

 

「なら聞くわ。どうしてあなた、魔法が使えるの?」

 

「…はあ?」

 

俺の曖昧な返しに彼女はさらに問い詰める

 

「答えて。あなた、何故魔法が使えるの?『メアレス』…、それとも『ロストメア』?」

 

「落ち着きなさいな、リフィル。世の中広いんだし、あなた以外の魔道士がいるってこともあるでしょ?」

 

リフィルと呼ばれた少女は、じろり、と、その鋭い視線を傍らの女性に向けた

 

「…勝手に人の素性をしゃべらないで、ルリアゲハ」

 

「しゃべるといえば、その猫ちゃん、さっきしゃべってたわよね?キミ、って」

 

「う」「おい、ウィズ」

 

「とまあ、色々と気になる2人だけど、急がないとロストメアに逃げられちゃうわよ」

 

「…そうね」

 

リフィルの瞳が俺を捉えた

 

「…なんだよ」

 

「ついてきなさい。話はそのあとで聞く」

 

「…命令かよ」

 

「いいの、リフィル?ロストメアとの戦いに巻き込んじゃうわよ」

 

「すでにあれと戦っていがら、けろりとしている」

 

「そういえば、そうね。なら、問題ないか」

 

「おい、こら。勝手に話を進めるな」

 

「なら、どうするの?」

 

「キミ、状況を把握するのにもついていったほうがいいと思うけどにゃ」

 

「あら、そっちの猫ちゃんは利口ね」

 

「はぁ、仕方が無いか。こちらとしても色々と聞きたいことがあるしな」

 

「その前に、せめて、あの化け物が何者かくらいは先に教えておいて欲しいにゃ」

 

ウィズがそう言い、リフィルがすらすらと答える

 

「あれは『ロストメア』。かつて、誰かが抱いて捨てた、『見果てぬ夢』の、その化身」

 

「夢、だと?」(ちょっと待て、心当たりがあるぞ)

 

「そ、夢。夜に見る方じゃなくて、叶える方のね」

 

「誰もが夢を叶えられる訳じゃない。諦めて、捨て去ることもある。それが、ああなる。見果てぬ夢が、ロストメアに」

 

ロストメア…見果てぬ夢…

まさか、

 

「奴らは、夢と現実の狭間にあるこの都市を通って、現実に出ようとする。ロストメアが現実に出るということは、その見果てぬ夢が実現することを意味する」

 

「夢が自分で自分を叶えるなんて無茶が通ると、周囲にどんな影響が出るかわからないのよね。下手したら、夢と現実の境が無くなって、何もかも混沌に呑まれてしまいかねないの」

 

「なら、あんた達はそれを防ぐために戦っていると?」

 

「そう。私達だけが、ロストメアと戦える。『メアレス』--『夢見ざる者』だけが」

 

メアレス…夢見ざる者…

そうか、ここは『黄昏メアレス』の世界か!

なんで、忘れてたんだよ!

普段から秘技糸とか使ってるのに!

つーか、ここでは使わないほうがいいな

目の前に、本来の使い手のリフィルがいるし…

あー、くそ!

何年も前だから、もう黄昏メアレスのストーリーの記憶がない!

このあとの展開どうなったけ?

 

「そろそろ、いいかしら。最低限の情報は渡したけど?」

 

「あ、ああ」

 

「なら、行きましょうか、お二人さん。ロストメア退治にね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『憑依召喚(インストール)、【ザハール】!』」

 

俺たちは、逃げるロストメアを追って、家屋の屋根を飛び石代わりにして跳躍していく

俺は足りない身体能力を補うために、ザハールを憑依召喚(インストール)する

するとオレの体に、蒼色の鎧が身に付く

 

「邪魔だ!」

 

時折、ロストメアに似た小さな化け物、『悪夢の欠片』が行く手を阻むが、俺たちの相手にはならなかった

 

「悪夢の欠片くらいならどうとでもなるのね、魔法使いさん!それにしても、その姿、夢魔装(ダイトメア)にそっくりね。それも魔法?」

 

屋根の上を並走しながら微笑むルリアゲハに、俺は答えた

 

「そうだ、これは俺が使う魔法の一つだ。それよりも『悪夢の欠片』ってんだ?」

 

「さっきから出てきている奴らのこと。ロストメアの分身とでも思って」

 

「つまりは前座よ。欠片をいくら倒しても、本体を叩かなければ意味がない!」

 

リフィルの言葉を受け、前方に逃げるロストメアを見る

 

「ロストメアは必ず、この都市の中心にある門を目指す」

 

「あのでかいのかにゃ」

 

壮麗な意匠の門が、遠くに見える

この都市のどんな建物よりも大きく重厚で、圧倒的な存在感を放つ、石造りの門だった

 

「あの門が現実との出入り口。あそこを通ることで、見果てぬ夢は現実と化す!」

 

「昼と夜、現実と夢の混じり合う黄昏時だけね!つまり、今飛び込まれると不味いわけ!」

 

「なるほどな!」

 

「無論、許す気はない!落とせッ、ルリアゲハ!」

 

「ちょうどそうする1秒前よ!」

 

答えた瞬間、ルリアゲハの右手がかすんだ

響く銃声、弾ける銃火…

撃った、と遅れて気づくほどの早打ちだった

そして、ちょうどロストメアが屋根を踏み台にした瞬間、その背面に銃弾が直撃

体制を大きく崩させ、屋根へと叩き落とした

 

「『繋げ、秘儀糸(ドゥクトゥルス)』!」

 

続けて、叫ぶリフィルの足元に魔法陣が生じた

そこから数条の光り輝く糸が現れ、指に巻き付く

リフィルがそれを掴んで引くと、魔法陣から、骸骨めいた人形が、ずず、と引きづり出された

 

「なんにゃ!?あれは!?」

 

ウィズは思わず、ぞっとなった

現れた人形から、凄まじい濃密な魔力の鼓動を感じたからである

 

「『修羅なる下天の暴雷よ、千々の槍以て振り荒べ』!」

 

リフィルが素早く糸を操るのに呼応し、人形の指が複雑怪奇な印を結ぶ

すると、人形の眼前に無数の小さな魔印が浮かび、その全てが迅雷の槍となって迸った

 

「あれがリフィルの魔法の詠唱か!」

 

放たれた無数の雷の槍はロストメアを完璧に捉えた

 

『ガァァァァァ!!』

 

千々の雷火に撃たれたロストメアが悶え、苦しんでいる間に、俺たちは距離を詰めた

もはや逃げられぬと悟ったか、ロストメアはこちらを向いて起き上がり、低い唸りを発した

 

「そうよ、ロストメア。私たちを破らずして、お前が門を潜る未来はない」

 

聞くもおぞましい咆哮を放つロストメアに対して、リフィルは眉一つ動かすことなく、糸を構えた

俺もカードを取り出して構えた

 

「そんな叫びに意味はない。夢見ざるメアレスは、夢を潰すことを躊躇わない!見果てぬ夢なら、らしく潰れろ!」

 

そういい、リフィルは更に魔法を放つ

俺もそれに連携し、通常の魔法を放っていく

 

『ガァァァ!!!』

 

それをギリギリで回避しながら接近してくるロストメア

しかし、それは悪手だ

 

「オラッ!!」

 

龍の鎧、身体能力を得ている今の俺に対し、接近すれば殴り飛ばされるのは通りである

俺の蹴りをまともに受け、屋根に叩きつけられながら、飛ばされるロストメア

その隙を逃すメアレスはこの場にいない

 

「数打ちゃ当たるの理屈で攻める!」

 

腰だめに構えた銃に左手を添えるルリアゲハ

直後、その銃口から火の五月雨を噴いた

狙いは定まらぬが、回避も難しい、怒涛の連射

2発が敵に直撃し、起き上がろうとしていたロストメアの動きを食い止めた

ほんの少しの遅滞

俺たちが魔法を放つには、充分な一瞬だった

 

「『アークティック・ジェレイション』!」

 

「『馳せ来れ、咆哮遥けき地雷』!」

 

俺は氷と闇の10連撃を、リフィルは地を走る雷を放ち、ロストメアを撃ち抜いた

 

『ゴァァァァァォォォォォ』

 

ロストメアは長く尾を引く痛ましい悲鳴を上げながら、ぐずぐずと崩壊していく

 

「終わったか…。魔法解除(リセット)

 

俺は魔法を解除し、鎧をとく

 

「手こずらせてくれた分、実入りは良さそうね」

 

崩れゆくロストメアから淡い光がこぼれ、リフィルの魔法陣に吸い込まれていく

 

「あれは魔力にゃ。ロストメアは魔力を秘めているにゃ…?」

 

ウィズが首を傾げていると、ルリアゲハが称賛の声を送ってきた

 

「一丁上がり。なかなかやるじゃない、猫ちゃん連れの魔法使い。それに、本当に平気なのね」

 

「どういう意味だ?」

 

眉をひそめる俺に、リフィルがじろりと視線を向けた

 

「夢を持つものはロストメアとは戦えない。夢を潰すことに、心が耐えられないから」

 

「不思議に思うだろうけど、そうなのよ。奴らの声は、夢見る人間の敵意を削いでしまうの」

 

「夢を見ない者だけが、躊躇い無く夢を潰せる。あなたもそうなの?魔法使い」

 

「お生憎、夢はある人間でね。なりたいものがあるものでな」

 

そう言うと、リフィルは眉をひそめた

 

「夢を持っていながらロストメアで戦えた…ということ?そんなはずは…。…いや、ああも魔法を使いこなす時点で、ありえないなんて言っても仕方が無いか」

 

「まあ、それが俺の個性だしな」

 

「個性?」

 

「それよりも、君も魔法を使っていたけどにゃ?」

 

そう、ウィズが言うと、リフィルは自身が出した人形をみる

 

「私が魔法を使えるわけじゃない。使えるのは、この人形の方」

 

どこか悄然として告げてから、リフィルは、ひたり、と俺を見据えた

 

「人が魔力を失い、魔道が廃れ、長い時が経った。ここはそんな世界よ、魔法使い」

 

 

 

 

 




やっと、黒猫視点でのメアレスを書くことができました!
何話かに分けて1~4、全てを書こうと思っています
頑張りますので、よろしくお願いします!


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第10話:夢見ざる者たち(メアレス)

日が沈み、夜になった

あちこちの街灯が自動的に点灯し、真昼のような明るさで通りを照らし出す

しかし、リフィルたちが案内してくれたのは、街灯などない路地裏だった

 

「こことは違う世界から来た……?」

 

「タブロイド紙にも載りそうにない与太ね」

 

「まあ、そうなるよな。どちらにしろ、色々と情報が知りたい。この都市についてもな」

 

「この都市のことも知らないなんてね。となると、やっぱり、あの人と話すのがいいかしら」

 

ふたりは見るからに半信半疑ながらも、情報を持っている最適な人物を紹介してくれるそうなのだが、

 

「本当にこっちにゃ?いかにも怪しい連中がたむろしてそうな場所にゃ」

 

「うーん、言い返しようもない。実際、誰より怪しいっちゃ怪しい人だからねぇ」

 

ロウソク入りのランタンを手に路地裏を進みつつ、ルリアゲハは苦笑した

 

「さてさて……このへんに来れば、だいたい会えるはずなんだけど。アフリト翁!聞こえていて?」

 

「もちろんさ。ご活躍だね、ご両人。それと、黒猫の魔法使い殿も」

 

低い笑い声が響いたかと思うと、路地裏の物陰から、奇妙な風体の男が現れた

翁と呼ばれるには年若く見えるが、その口調や物腰には、底知れぬ老練の風情がある

まるで気配を感じさせなかったことといい、こちらをすでに知っていることといい、どうやら、ただ者ではなさそうだ

 

「そういう人なの。アフリト翁。メアレスについて、1番詳しい人よ。この魔法使いさんについて、何か知らない?よその世界から来たって言うんだけど」

 

「なら、そうなのだろうよ」

 

「んなら適当な……。こちとら、色々と疑いがかかってる身なんだが…」

 

「適当で言っておるわけではないさ。失われた魔法を使い、夢を持ちながらにしてロストメアと渡り合う……。この世界とは違う理、異なる法則の下に生まれた身であるなら、納得がゆかぬこともあるまい」

 

「……信じがたくはあるけど、確かにそうね。猫がしゃべるなんて、この世界ではありえないし」

 

「いや、俺の世界でも喋る猫は珍し…くもないか…」

 

俺は異形型の個性の人々を思い返す

猫に限らず、犬、馬、トカゲなど様々な奴らが脳裏に浮かんでいった

 

「問題は、元の世界に帰る方法がわからない、ってことにゃ」

 

「ふうむ。ならば、帰る方法が見つかるまで、都市のため、メアレスにご助力願えぬかな。メアレスとともにロストメアと戦ってくれるなら、おまえさんたちの生活費はわしがまかなおう」

 

にこにこ、と言うには不気味な微笑

リフィルと俺は、いぶかしげに眉をひそめた

 

「ずいぶん買うのね、アフリト翁」

 

「てめぇ、何を企んでやがる…」

 

「なに、魔法の使い手は貴重きわまる。おまえさんのようにな。是が非でも、確保しておきたいところだよ」

 

そう答えるアフリト翁に対して、俺は視線を強くする

しかし、この世界で生活するのにも色々と問題がある

だが、それを解決する唯一の手段が目の前にある

 

「…仕方が無いか。アフリト翁、あんたの口車に乗ってやるよ。その代わり、生活費とかはケチるなよ」

 

「分かっておるよ。これは言わば、ビジネスであるからな。それよりも魔法使い、そちらの名前は?」

 

「そう言えば、私達も聞いてなかったわね。改めて、私はルリアゲハよ。よろしくね!」

 

「…リフィルよ」

 

「魔借、黒猫魔借だ。こっちは師匠のウィズ」

 

「改めて、よろしくにゃ」

 

「さてと、そういうことなら、あたしたちと組まない、魔借?これも何かの縁ってことで」

 

「ちょっと、ルリアゲハ」

 

「いいじゃない。戦力が増えれば、勝算も増える。それに、取り分が減らないときた」

 

「取り分?どういうことだ?」

 

俺の疑問にアフリト翁が答える

 

「ロストメアを倒した者には報奨金が出るのさ」

 

「それと、連中の魔力を奪う権利もね。あいつら、どうも身体が魔力でできてるみたいなのよ」

 

「なるほどにゃ。メアレスは、対ロストメアの傭兵兼狩人ってところなんだにゃ」

 

「さっきの奴はリフィルだけがロストメアの魔力を手に入れていたようだったが……?」

 

「私が魔力を、ルリアゲハが報奨金を受け取る。その契約で、私たちはコンビをやってる」

 

「そのせいで、リフィルはいっつも極貧生活なの。報奨金の一部ぐらい、あげてもいいんだけどねぇ」

 

「前から言ってるでしょ。それはフェアじゃないって」

 

「この都市では、魔力とて金になる。そう溜め込まず、もっと換金してもよいのではないかね?」

 

「魔法を使うには魔力がいる。備蓄は、多ければ多いほどいい」

 

「あ、そうだ。魔法使いさんの場合はどうなの? やっぱり、魔力の補充が必要かしら?」

 

「俺の場合、魔力を消費しても、時間経過で自動回復する。最も、外部から受け取って強制的に回復するという手も無くはないけどな」

 

「……便利なものね。魔力を失っていない世界の魔道士というのは」

 

ぽつりとつぶやき、リフィルは、軽く吐息した

 

「いや、俺の世界の魔道士は俺しかいないぞ。最も、魔法に近いものを使う奴らであふれかえっているがな」

 

「…どういうこと?」

 

「俺の世界には『個性』という力を個人個人が持って生まれる。言わば、一人一人の固有魔法だ。でも、魔法とは違う。実際、俺の魔法も個性によるものだしな。他の世界との精霊と契約し、その力に魔力を込め、魔法を放つ。それが俺の個性だ。まさか、俺の魔力が、他の世界での魔力と同等のものだとは思っても見なかったけどな」

 

「…まあ、いいわ。実力が確かなのはわかったし……。その個性とやらも参考になるかもしれない。決まりね」

 

「じゃ、とりあえず、あたしたちが住んでる借家に、ご招待するとしましょうか!」

 

そう言って、俺達はアフリト翁と別れ、ルリアゲハに案内され、道を進んでいった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アンサー!」ピンポーン

 

カードに魔力を込め、炎球を放つ

それは目の前にいる悪夢の欠片を蹴散らした

道中、何度か遭遇したことで、リフィルたちは表情に緊迫の色を宿していた

 

「悪夢のかけらがいるってことは、この近くにロストメアがいる……ってことにゃ?」

 

「そのとおり。飲み込みが早いわね、ウィズちゃん」

 

その時、剣戟の響きが聞こえた

 

「戦闘中か?」

 

路地裏を疾走すること暫し、やがて、俺たちは戦いの場に遭遇した

そこでは男と少女のふたり連れが、ロストメアと対峙している

 

「コピシュ!ブロードソードとカットラスだ!」

 

「アイアイ!」

 

大量の剣を背負った少女が片手剣と都単曲刀を投げ、男の双手が、それらを鮮やかにつかみ取る

 

「はあッ!!」

 

異形の腕を単曲刀で受け流しざま踏み込み、真っ向一閃、片手剣で強烈な斬り下げを見舞う

さらに肉薄し、両の剣をロストメアに深々と突き立てるや、それを踏み台に跳び上がった

 

「クレイモアッ!ダブルだッ!」

 

「アイアイ!!」

 

背から独りでに鞘走る2振りの大剣を、少女は小石のように軽々と投じてみせた

男は宙で大剣2振りを受け取り、そのまま落下

ロストメアの頭上から全体重を乗せて貫く!

 

「とっくり味わえッ!!」

 

串刺しにされたロストメアが、痛ましい絶叫を上げた

 

「『徹剣(エッジワース)』ゼラードに、『剣倉(アーセナル)』コピシュ……」

 

戦闘している2人の名前をルリアゲハが言う

名前からして、男がゼラード、少女がコピシュなのだろう

 

「先にロストメアを見つけて、交戦していたというところね」

 

ゼラードの果敢な剣撃を受けてなお、ロストメアは動きを止めず、反撃を繰り出す

流れるような動作でそれをかわし、後退しつつ、ゼラードは不敵な笑みを浮かべた

 

「あきれた野郎だ。もっとご馳走してほしいってのか? ええ?」

 

「あんまり奮発しちゃだめですよ、お父さん。後で研がなきゃいけないんですから。」

 

「わかってる。そろそろシメのデザートだ!」

 

4本の剣を突き刺されたロストメアは、怒りに猛り、ゼラードに向かっていく

 

「まあ、見過ごすわけにもいかないか!」

 

俺はカードに魔力を込めながら、ロストメアに向かって駆け出した

 

「あっ、ちょっと!」

 

「『神槍龍牙爆炎衝』!」

 

ゼラードがロストメアの攻撃を回避した直後、イグニスのSSを放つ

巨大な炎の槍が現れ、炸裂

ロストメアを吹き飛ばした

 

「あ?なんだ?横取りしようってのか!?」

 

「はぁ?横取り?」

 

「お父さん、前!」

 

ロストメアがゼラードに迫っていた

 

「いい加減、食い足りろッ!イルウーン!」

 

「アイアイ!」

 

切っ先が平たく広がった剣を受け取っての一撃

弧月もかくやという鮮鋭なる斬閃が、敵を断つ

それが致命傷となったのか、ロストメアは痛ましい声を発しながら溶け消えていった

 

「お疲れさまでした、お父さん!魔力、こっちで回収しときますね」

 

「ああ、任せた。で、」

 

ゼラードは、不機嫌そうに俺の方を見た

 

「『黄昏(サンセット)』に『堕ち星(ガンダウナー)』。そいつぁ、いったいどこのどいつだ?」

 

「悪いわね、『徹剣(エッジワース)』。この子、まだこの世界の常識を知らないの」

 

「ああ?なんだそりゃ?」

 

コピシュがロストメアの魔力を吸収し、剣を回収するのを待ってから、ルリアゲハが俺とウィズの素性を説明してくれた

 

「はー……別の世界から来た、なんて……。そんなこともあるんですねぇ……」

 

「正直、信じる気にゃなれんが……、そいつが事情を知らなかった、ってことは納得しとくよ」

 

「どういうことだ?」

 

「原則、倒したロストメアの魔力と報奨金は、とどめを刺した者が得ることになってる。だから、同業者が先に戦ってて、かつ勝てそうなら、手出ししないのが暗黙の了解なのよね」

 

「なるほどな。つまりは、余計なお節介だった訳だ」

 

「申し訳ないことをしたにゃ。私の弟子が…」

 

「おい…」

 

「いえいえ、どうぞお気になさらず……。というか、猫さん、ホントにしゃべるんですねえ……」

 

興味津々という様子でウィズを眺めるコピシュ

 

「お前もメアレスなのか?」

 

そう俺が尋ねると、コピシュはうなずき、はきはき答えた

 

「はい。ロストメアから手に入れた魔力で、剣を運んだり、投げたりしてるんです」

 

「コピシュは魔力の扱いがう上手ぇのさ」

 

「加えて言えば、彼女はまだ夢らしい夢を持たぬ。ゆえにメアレスの条件を満たしているのさ」

 

「うぉ!」「どっから出たよ、アフリト翁……」

 

「ゼラードの方は、剣以外はからっきしでな。女房に逃げられたのが、夢をなくした原因だ」

 

「えー、女房に逃げられたとかマジかよ…」

 

「ちょ、引くなよ!アフリト翁!さらっと言うかね、そういうことを!」

 

「言われたくなきゃ、いい加減、貸した金を返してくれんかね」

 

「こンの、ジジむせぇ性悪野郎……」

 

「さらに借金まであるのかにゃ…」

 

「まあまあ、いいじゃないですか、お父さん。さっきの報奨金で、お釣りが来ますよ」

 

コピシュは俺とウィズに向き直り、ぴょこん、と深く頭を下げた

 

「改めまして、どうもありがとうございました。ほら、お父さんも」

 

「あー、助かった。まぁ、手ェ借りなくてもなんとかなったんだが」

 

「もー、なにすねてるんですか」

 

「まあ、こちらも事情を知らなかったとはいえ、余計なことをした。すまんな」

 

そんなことを言っていると、リフィルが、じっとこちらを見つめているのに気づいた

 

「なんだよ…」

 

見つめ返すと、少女はわずかに眉をひそめる

 

「魔法を使って誰かを助ける……ということに、ためらいがないのね。あなたは。それが、あなたの世界の魔道士、と言うよりも個性を持つものの流儀……ということ?」

 

「一部はな。誰もが力を持てる世界だ。強大すぎる力を持てば、悪の道に行くものも出てくる。そういうものを止め、誰かを助けるものも現れる。俺の世界では彼らをヒーローというんだよ。最も、職業だがな」

 

「ヒーロー…ね…」

 

「最も、ウィズのいる魔法が廃れていない世界には困っている人を助ける魔道士ギルドってのがあるみたいだけどな」

 

「ウィズの世界?」

 

「にゃ。私は魔借と契約してる精霊の1人にゃ。普段からこうして魔借と一緒にいるけど、呼ばれてない時は自分の世界で過ごしているにゃ」

 

「魔道士ギルド……。そうか。魔力が失われていない世界なら、そういうものもあるのね……」

 

複雑な表情でつぶやき、きびすを返すリフィル

その姿に、俺は気になっていたことを思い出す

魔道の廃れたこの世界で、どうしてリフィルは、いや、彼女の人形は魔法を使えるのか

彼女はどうして、夢見ざる者となったのか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陰深き、路地の奥

その闇のなかに、ふと半月が咲いた

 

「撒かれた種が、まずひとつ……。実験は成功と見てよさそうね」

 

闇と一体化するように、じっとしていた少女が、ニィ、と唇を歪めたのだった

雲の衣をまとって朧にかすむ月を見上げ、少女は満足げなつぶやきをこぼす

 

「なら、いよいよ本番といきましょうか……」

 

振り向く少女の、視線の先で、1体のロストメアが、ぎぃ、と鳴いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この都市に来て、数日

リフィル、ルリアゲハとの何度かの共闘を経て、ロストメア相手の戦いにも慣れてきた

最も、元の世界だと(ヴィラン)とは戦えないため、戦闘経験は呼び出した精霊との訓練しかやったことがなかったが…

そんなある日、君はルリアゲハに誘われ、昼食を共にすることとなった

多くの市民や馬車の交通を潜り抜け、おいしそうなにおいがする方へ歩いていく

 

「今日はメアレスの仕事はないのかにゃ?」

 

「毎日毎日ロストメアとやり合ってたら、疲れちゃうからね。今日はオフってトコ。リフィルも連れて市内観光……と思ったんだけど。あの子、どこに行っちゃったのかしら」

 

「まあ、用事があったんだろ。それにしても、メアレスのいい所は休みが自由なところだな。自営業みたいなもんだし」

 

「悪いところは?」

 

「収入がロストメアだよりなとこ」

 

「まあ、そればかりは仕方ないわよねぇ。それがメアレスだし」

 

「でもな、メアレスの強さによっては全く収入を得れないやつとかいるんじゃないか?」

 

「まあ、そこん所は同行者が減るってことで」

 

「ちゃっかりしてるにゃ…」

 

そんな話をしながら、俺はルリアゲハについていき、行きつけの定食屋とやらに案内された

その中に足を踏み入れると、

 

「らっしゃーせー」

 

リフィルが、淡々と注文を取りに来た

 

「……………………いや。あのちょっと。なにやってんの、リフィルさん」

 

「バイトよ」

 

…メアレスの強さ=収入の良さという訳ではないんだな、と思った瞬間であった

 

「そこまでお金に困ってるんだったら、さすがにちょっとは融通するわよ!?」

 

「じゃなくて、この店、安いし早いし、その上、おいしいでしょ?だから、その調理技術を体得するために、こうして弟子入りしているのよ」

 

「……さようで」

 

なんと言っていいやらわからないという顔をするルリアゲハの後ろから、大柄な体躯の男、ゼラードが店に入ってくる

 

「あー、ハラ減った。メシ、メシ……」

 

「らっしゃーせー」

 

「……待て。いったい……何が、起こっている……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

せっかくなので、ゼラード、コピシュと同じ卓につき、適当に注文を頼んだ

 

「リフィルさん、お料理が趣味なんですか?」

 

「趣味っていうか……、ロストメア退治の報奨金、全部あたしがもらってるからねぇ……。それで、生活費を切り詰めに切り詰めた結果、安い食材で料理を作るのにハマっちゃって……」

 

「…大丈夫なのか、それ」

 

「しかし、切り詰めるって言ってもよ、それじゃいつか金も底をつくんじゃねえのか?」

 

「アフリト翁に頼んで、魔力の一部を換金してるの。ぎりぎり食べていけるくらいの量だけどね」

 

「魔力はなるべく売りたくないの。はい、ローストマトンのカレー和えとボイルドライス、お待ちどう」

 

リフィルが料理を運んでくる

ゼラードは、置かれた皿にナイフを伸ばしながら、あきれたようにリフィルを見上げた

 

「おまえさんねぇ……。夢を持たねぇって言っても、そこまでストイックじゃなくてもいいだろうよ」

 

「お父さん、ナイフで直接お肉食べない!」

 

「苦手なんだよ……フォークとか」

 

「自分の子供に怒られる時点でダメじゃね?」

 

「フォークが嫌いってどういうことにゃ?」

 

そうウィズが尋ねると、ゼラードは苦笑した

 

「生まれてこの方、剣術一筋でな。剣の類なら、なんでも扱えるんだが……」

 

「剣以外は、ぜんぶダメなんです」

 

「……そこまで言う?」

 

「剣だけのダメ親父ってことにゃ?」

 

「そうです」

 

「ごはぁッ!」

 

「…………」

 

ウィズとコピシュに責められ、悶絶しているゼラードを、リフィルが無言で見つめた。

その視線に気づいたゼラードは、すねたように唇を尖らせた

 

「なんだよ、黄昏の。魔術バカのおまえさんだって似たようなもんだろ」

 

「……そうね。似てるわ。確かに」

 

リフィルが真剣な声音で答えた

それに対し、ゼラードは怪訝げに眉を寄せた

 

「すみませーん!おー、みんないるいるいる!」

 

そこに、見知らぬ少女が元気よく割って入った

 

「ミリィ?何かあったの?」

 

「いやそれが、めっちゃでかいロストメアが出てまして!ラギトさんが食い止めてんです!でも、ひとりじゃ無理だったんで、あたしがみなさんを呼びに来たんですよ!」

 

「なるほど。この子も〈メアレス〉なんだにゃ」

 

「はいはいそうですええええ猫しゃべったー!?」

 

仰天するミリィをよそに、メアレスたちが食事を置いて立ち上がる

 

「人が食ってる最中に来るたぁ、気の利かねえロストメアだぜ」

 

「行くぞ、ルリアゲハ、魔法使い!」

 

「バイトは?」「今日はオフじゃなかったにゃ?」

 

「相手の方から来るなら別!店長も私の事情は知っている!『戦小鳥(ウォーブリンガー)』、案内を!」

 

異名で呼ばれたミリィは、あわててこくこくうなずいた

 

「うすうす! こっちっす!」

 

 

 

 

 

 

 

 

都市を貫く川にかかった、巨大な橋

ミリィの案内で、俺たちはその中央を目指す

案の定、悪夢の欠片が道を阻んだが、

 

「とぅあっ!せいっ!!」

 

ミリィは軽快な動きで欠片どもを翻弄し、手にした巨大な杭打機を叩き込んで、着実に仕留めていった

 

「やるな…」

 

俺がその鮮やかな手並みを称賛すると、ミリィは走りながら照れ笑いする

 

「やー、あたし、これしか能がないんすよー。夢はファッションデザイナー!だったんすけど、芸術のセンス?みたいのがぜんぜんなくって。なのに、なんでかこういう才能はあったもんで、傭兵とかやってるうちに、流れ流れてこの都市へ。とまあ、そんな感じでメアレスやってんです。夢がない奴、大歓迎!って話だったんで」

 

「…数奇な人生を送ってんな、あんた」

 

あはは、と笑うミリィの姿に、俺は複雑な思いを抱いた

メアレス、夢見ざる者

夢を持たぬがゆえに、ロストメアを叩き潰せる戦士たち

あまりに突飛な話だったから、そういうものだと言われて、そういうものかと納得してい

だが、考えてみれば、夢を持たぬ者というのは、こういうことなのだ

望んだ未来を、描いた希望を、心の底から欲した願いを、手に入れ損なって…

だからと言って、新たに別の夢を見るなんて、そんな器用なこともできぬまま痛みを抱えて、生きていく

リフィルやルリアゲハも、ミリィのように夢破れ、それでメアレスとして戦っているのだろうか

そんな自分をいかなる夢も見ることなく生き、戦う道を受け入れているのだろうか……

 

(なんで、こんなことすら忘れていたんだろうな、俺は。そして、未だ全てを思い出せないでいる…)

 

「いたわ!確かに大きい……!」

 

リフィルの声が、俺を我に返らせた

 

(考えるのは後だ。どうせ、思い出せなくても話は進んでいく。迷うのは止めだ。俺は俺の成すべき事をやる!)

 

橋の中央を見ると、ひとりの少年が、家ほどもあろうかというロストメアの進撃を食い止めていた

 

「はぁあぁあああぁあぁぁああッ!」

 

彼は影めいた禍々しい魔力を全身にまとい、正面から敵とぶつかり合っていた

煙突ほどもある拳を強烈に打ち返したところで、凛然たる美貌がこちらを向く

 

「来たか。悪いが、力を貸してくれ。このロストメア、ずいぶんと手に余る」

 

「最強のメアレスと名高い『夢魔装(ダイトメア)』が、泣き言か」

 

「最強云々の方は前から返上を検討しているんだが、申請先がわからなくてな」

 

リフィルの皮肉に、ラギトは鷹揚な笑みを返した

 

「さておき、ひとつ共闘と洒落込みたい。報酬は、とどめを刺した者の総取りということで、どうだ?」

 

「首を落とした者勝ちね」

 

「面白いじゃない」

 

「あたしはぜんぜんオッケっす!」

 

「妨害はアリか?」

 

「お父さん!」

 

「まあ、俺には余り関係ないけどな」

 

全員が了承するのを見て、ラギトは静かに敵へと向き直った

 

「噂の魔法使いもいるなら、心強い。これ以上の被害が出る前に、ここで叩く!!」

 

「その噂がどんなものか、気になるけどな!『憑依召喚(インストール)【アーサー・キャメロット】』、『武装召喚(サモン・ウェポンズ)【アーサー・キャメロット】』」

 

俺は黄金に輝く鎧と剣を手にし、ロストメアに切りかかる

 

「くらえ!」

 

しかし、それはロストメアの外殻を傷つけるだけだった

 

「硬い!」

 

「クレイモア!」「アイアイ!」

 

俺が切りかかったのを見て、ゼラードもコピシュから剣を受け取り、切りかかるが意味をなさない

 

「相性が悪すぎるだろ、これ!」

 

「お父さん!魔借さん!」

 

「っ!」「っぶね!」

 

近づいた俺とゼラードを潰そうとロストメアが動いた

俺たちはそれを避け、そして、そのできた隙を、

 

「横槍を叩き込ませてもらう!」「くらうっス!」

 

ラギトとミリィが攻撃する

しかし、その攻撃もロストメアを後ろに動かすだけで、まともなダメージはなかった

ロストメアは2人に対して触手を振るう

 

「させないっての!」「『修羅なる下天の暴雷よ、千々の槍以て振り荒べ』!」

 

しかし、それはルリアゲハの弾丸と、リフィルの魔法で迎撃される

リフィルの魔法の一部がロストメアに直撃し、ロストメアは低く唸り、動きを鈍くした

 

「『武装召喚(サモン・ウェポンズ)【ルフ・ファルネーゼ】』!」

 

俺はその隙に、体ほどある巨大な弓を呼び出し、魔力を込めた

 

「『ネビュラエクスキューション』!!」

 

そして、巨大な雷の矢を3発放ち、それはロストメアを捉えた

それにより、ロストメアは初めてまともなダメージがあったかのように悶えたが、動きを止めず、暴れ回った

 

「外殻が硬すぎる……。斬った張ったは通じないか!」

 

「銃もダメね。でも、リフィルと魔借の攻撃は、通っているように見えない!?」

 

「物理的な攻撃には強くても、魔法には耐性がないのかも!」

 

「なら、攻撃はふたりに任せよう。俺たちは援護を!」

 

「ラジャーっす! かき回すのは十八番なんで!」

 

「癪は癪だが、倒せねえよりはな!」

 

「任せるわよ、魔道士のおふたりさん!」

 

「わかった!」

 

「『魔法解除(リセット)』。魔法ならこっちだな。『憑依召喚(インストール)【エステル・モカ】』」

 

メアレスたちが一斉攻撃を開始する

俺とリフィルの詠唱の時間を稼ぐために

代わる代わる攻撃し、注意を引くゼラードたち

即席とは思えぬ連携でロストメアを翻弄する

 

(いいチームワークだな。互いの実力を信頼し合っていなければ、こうも背中を預け合うことはできないだろうに。基本的には商売敵とはいえ、共通の敵と戦う者同士だからか、彼らにしかわからない絆というものが、あるのかもしれないな)

 

「おい!早くしろ!魔法使いッ!」

 

「わかってる!『天元魔導をここに示す!』」

 

「『目覚めよ神雷!空の静寂打ち砕き、』」

 

最大の魔術の詠唱に入る俺たち

その挙動を察したか、ロストメアが長い触手を伸ばす

 

「しゃらくせえッ!バスタード、二刀ッ!」

 

「アイアイ!」

 

両手に長剣を携え、割って入るゼラード

馳せる刃風が、無数の触手をなますに刻む

不意に、その動きが鈍った

 

「う!?」

 

瞬間の隙

薙ぎ払われた触手がゼラードを直撃

ゼラードは木端のように跳ね飛ばされ、石造りの橋の上を激しく横転する

 

「お父さん!」

 

「平気だッ……!リフィル、魔借!やっちまえっ!!」

 

 

ゼラードの声を背に受けて、君とリフィルは、ほとんど同時に魔法を放った

 

「『レジオン・ファンタズム』!」「『あえかな夢を千切り裂け!』」

 

特大の炎球と全てを滅せんとする雷の槍がロストメアを貫いた

そして、ロストメアは消滅し、それを確認したメアレスたちは安堵の息を吐いた

 

「はぁ~、勝ったぁ~……。やー、魔法使いさん、いい腕してんですね!」

 

「まったくだ。助かったよ、魔法使い。改めてあいさつをさせてくれ。ラギトという」

 

ラギトの全身にまとっていた魔力が、肌に沁みこむようにして消えていく

 

「魔借だ。こっちはウィズ。それにしても、その魔力は…」

 

俺の表情からそうと察したのか、ラギトは軽く苦笑した

 

「気づいているようだが、ロストメアだ。手違いで同居を許してしまってな。家賃代わりに、力を使わせてもらっている」

 

「よく言うわ。完全に飼いならしてるじゃない。並みの精神力じゃ意識を食い尽くされてるとこよ」

 

「図太いのが取柄でね。細かいことを気にしなければ、誰でもできる」

 

「身体に棲みつかれるってのは、〝細かいこと〟レベルじゃないと思うんですけどねえ……」

 

わいわいと盛り上がるミリィたちをよそに、俺とリフィルはゼラードのもとへ向かった

ようやっと身を起こしたゼラードを、コピシュが心配そうに支えている

俺はカードを取り出し、ゼラードに声をかける

 

「大丈夫か、ゼラード。今、治癒魔法を使う。『キュア・ノーザンライツ』」

 

「……らしくないわね、徹剣(エッジワース)。あなたが剣を使って遅れを取るなんて」

 

「メシ食ったばっかで運動したもんだから、ちょいと脇腹が痛くなっちまったのさ」

 

軽口を叩くゼラードに、リフィルは嘆息した

 

「……まったく。いちおう礼を「なあ、黄昏(サンセット)」……何かしら」

 

「いつか言ってたな。おまえさん、魔道士の家柄に生まれて、ずっと魔法ばっか習ってきたってよ」

 

リフィルは、怪訝げに眉をひそめた

 

「……そんな私が、剣ばかり習ってきたあなたと似ている、と?」

 

「ま、な」

 

「似ているから、なんだっていうの」

 

「ひとつの技だけ磨いてると、こういう不器用な人間になっちまうぞ、って話さ。だから、まあ、いいと思うぜ。バイトすんのも。なんなら、そのまま料理人になったってな。メアレスなんてなァ、別に好きでやってるもんじゃない。〝そうなっちまった〟ってだけのこった。別の夢を持てそうなら、その方がいいってもんさ。なぁ?」

 

「そうやって、同業者を減らそうって魂胆?」

 

「ま、それもある。もういいぜ、魔法使い。傷は治ったからよ」

 

「ああ」

 

「あいにく、夢は見ない。それに、そういう心配なら不要よ。私、フォークもナイフも、スプーンだって使えるもの」

 

「そういう話じゃねえっつうの」

 

「フッ」「フフッ」

 

口を”ヘ”の字にするゼラードの隣で、俺とコピシュは、くすくすと笑いあっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「〝種〟の反応が消えた……。ふふ。リフィルがやってくれたみたいね」

 

何を照らすこともない闇のなか、少女がうそ笑む

 

「アストルムの『秘儀糸』も張りきった。あとは障害を取り除くだけ……」

 

つと、凍える瞳を真横に向けて、少女は期待に笑みを濃くした

 

「さあ、出番よ。せっかくだから、ことのついでにメアレスを1人、排除してもらおうかしら。見限られた夢として……、復讐を果たしなさい。あなたを捨てた本人に……」

 



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第10.5話:閑話メアレス

これは黄昏メアレスの閑話です
読み飛ばしても、特に話の流れが分からなくなるということはないのであしからず!


【SUNSET】

 

「私たちの出会い?」

 

「そうにゃ。2人はどうやってであったにゃ?」

 

ロストメア退治の帰り、ウィズがルリアゲハにリフィルとの出会いを聞いていた

 

「あー、あれは1年前のことなんだけど」

 

「ちょっと、ルリアゲハ」

 

「いいじゃない、リフィル。別に減るもんじゃないし」

 

「1年前?そんな最近なのか?」

 

「そうよ。私がリフィルに声をかけたのよねぇ」

 

ーーーーー

 

 

 

1年前

都市の中央に築かれた、巨大にして荘厳なる門

その上に、ひとりの少女が立っている

 

「…………」

 

時は黄昏

眼下、黄金色に照らし出された街並みでは、人々が忙しなく行き交っている

 

「そうやってばかりいるから、黄昏(サンセット)なんて呼ばれるのよ」

 

不意に後ろからかかった声に、リフィルは目線だけを振り向かせた

 

堕ち星(ガンダウナー)、ルリアゲハ……。だったかしら?」

 

「あら。覚えておいてくれた?」

 

「寸前で獲物を横取りされれば、嫌でも」

 

「まだ、ここの作法がよくわかってなかったの。悪いことしちゃったと思ってるわ」

 

両手を合わせて頭を下げる、という動作で謝辞を示してから、ルリアゲハはリフィルの隣に並んだ

 

「いつもこうしてロストメアを探してるの?」

 

「奴らはこの時間帯にしか門を潜れない。必然、黄昏時ほど妙な動きが見えやすくなる」

 

「なーる。逢魔が刻、ってわけ」

 

「……逢魔が刻?」

 

魔という言葉に、リフィルは思わず反応した

 

「大禍時……転じて逢魔が刻ってね。あたしの故郷じゃ、この時刻をそう呼ぶのよ。だんだん薄暗くなって、影が濃くなる時間。怪しの者が現れ、活動を始める時刻……。誰そ彼とも言うわ。暗さが人の見わけをつかなくさせる。魔がまぎれこんでも気づかないくらいに……」

 

「なるほど、言い得て妙ね」

 

リフィルはスッと目を細め、眼下の通りを指差した

 

「それは、ああいうモノと遭遇しても気づかない、ということを言うのね。きっと」

 

小さな何かが、家から長く伸びる影の連なりに溶け込んで、そろそろと門に向かっている

 

「ロストメア……!」

 

「『繋げ、秘儀糸(ドゥクトゥルス)』!」

 

リフィルは即座に魔法陣から人形を現し、門を飛び降りた

人形に抱かれ、鮮やかに着地

人々の驚く顔を振り切って、見つけた敵へとひた走る

ふと、横からの風が頬を叩く

見ると、ルリアゲハが真横を並走しながら、にやりと笑みを送ってきていた

 

「ねぇ、黄昏(サンセット)!手を組まない!?手を!?あたしとあなたが手を組んで、いっしょに戦う!そうしたら勝率も上がるってものでしょ?」

 

「報酬の分配は!?」

 

「あたし、魔力はいらないから! 報奨金さえもらえたら、魔力はそっくりあなたにあげる!」

 

「ふぅん、意外と悪い話じゃないわね!」

 

「おっ、好感触?」

 

「ただし、ひとつ条件があるわ!」

 

ふたりは、同時に立ち止まった

通りの向こうに影に隠れて移動していたロストメアが、ぎょっと立ちすくんでいる

 

「あなたの実力、まだ、測りきったわけじゃない」

 

「それはこちらも同じこと!」

 

ふたりは、同時に得物を構える

 

「それじゃあひとつ、見せ合いっこといきましょうか!」

 

雷撃と銃声が見果てぬ夢へと宙を馳せる…

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「そしてここからリフィルの節約生活が始まったのよねぇ」

 

「だから、余計なことを言うな、ルリアゲハ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《黄昏メアレス》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【GUNDOWNER】

 

「はっ!」

 

腰だめに構えた拳銃から六連射

それは見事に命中し、弾丸の直撃を受けたロストメアが倒れ、溶け崩れてゆく

 

「『魔法解除(リセット)』。流石だな」

 

そう、俺はルリアゲハに声をかけた

リフィルは敵の魔力の回収に向かっている

 

「すごい銃さばきだにゃ。いったいどうやったら、あんな連射できるにゃ?」

 

「ファニング、っていう技法よ。引き金を引いたまま、左手で撃鉄を何度も叩くの」

 

「いったいどうしてそんな技を身に着けるに至ったんだ?」

 

「あたし、もともと武家の姫なの。だから、この手の武芸はたしなみみたいなものでね」

 

「はぁ!?」「お姫さまにゃ!?」

 

「あれ、言ってなかった?」

 

「初耳だ!」「言われてたら絶対に忘れないにゃ!」

 

「ああ、でも、今は違うのよ。国を出奔したから、もうお姫さまでもなんでもないの」

 

「出奔?それまた、どうして?」

 

そう聞くと、ルリアゲハは苦笑を浮かべた

 

「実は、国がピンチになっちゃって。これはもう戦うしかない、って覚悟を決めたんだけど、あたしが戦の準備をしてる一方で、妹が、平和的・政治的な解決方法を模索していたの。そうしたら家臣たちが、あたし派と妹派で割れて、その隙を敵国に突かれそうになってねぇ……。だから、あたしが国を出たのよ。内乱を未然に防ぎ、妹の交渉を成功に導くために……ってね」

 

「おいおい…。どっかのテレビ番組かよ…」

 

「ルリアゲハは、それでよかったにゃ?」

 

「そうねえ……」

 

遠くを見つめて、ルリアゲハは小さく笑った

 

「実を言うと、あたし、驚いたのよ。国を守り、民を守る。それがあたしの夢で、だからあたしはとことん武芸を磨いてきた。でも、冷静に考えたら、間違いだった。妹の考えの方が、正しかったのよ。産業が発達した今の時代、より性能のいい兵器をより多くそろえた方が勝つ……。あたしはそれに気づかず、力で乗り切ろうとしたけど……妹は理知と策とで戦いを回避しようとした。だからね。これからのことを考えれば、あの子に任せた方がいいって、そう素直に思えたのよ」

 

ウィズが、わずかに目を細めた

 

「そのまま残って妹さんに協力しても、結局、内乱が起こるように敵が手を打ってくる、と考えたにゃ?」

 

「流石、ウィズちゃん。そのとおりよ」

 

それでルリアゲハは国を出奔し、流れた果てにこの都市に来た、ということらしい……

 

「メアレスとなったのも、”国を守り民を守る”という夢を失ったからにゃ?」

 

「失った、とは思ってないわよ。夢見ざる者(メアレス)ではあってもね。あたしの夢は、預けてきたの。あの子に……あの子なら、きっとうまく叶えてくれるって信じて、ね。その分あたしはここで戦う。万が一にもロストメアが現実に出て、国に害をなさないように。だから、今の自分を悲観しちゃいないわ。夢はなくても、楽しくやれてる。頼れる相棒たちと一緒にね」

 

そう言った、ルリアゲハはぱちり、と鮮やかなウィンクを飛ばした

 

「あんたは…強いんだな…、ルリアゲハ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《黄昏メアレス》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【黄昏のエネルギー】

 

通りを歩いている最中、ふとリフィルが、道端の少年の手から紙束を受け取った

少年に硬貨を投げてから、ざっと紙束に目を通し、柳眉をひそめる

 

「『事件の真相は、ロストメアの仕業に見せかけた犯行だった』……か。世も末ね」

 

「ま、この都市ならではの事件って感じよね」

 

「この世界にも新聞はあるのか」

 

「ん?そちらにもあるの、新聞?」

 

「まあ、な。少し、疑問に思っていたんだが、この世界の基本的なエネルギーってなんだ?」

 

俺の疑問にルリアゲハが答える

 

「今は蒸気機関が主流ね。この新聞もそれを利用した印刷機を使っているんだったわね」

 

「となると中世くらいの時代か?」

 

「いや、魔法の道具とかもあるみたいだから、一概にこっちの世界が進んでいるとは言えないにゃ」

 

「どういうこと?」

 

「俺の世界で蒸気機関が主流だったのは確か400年くらい前か。今だと殆ど電気だしな」

 

「電気?雷ってこと?どうやって使ってるのよ、それ」

 

「リフィルみたいに魔法とか?」

 

「それよりもにゃ。新聞があるってことは、ひょっとして本もあるのかにゃ?」

 

「え?ええ。大衆小説あんてものがあるくらいだし、色んな本があると思うけど?」

 

君の肩の上では、ウィズがヒゲを震わせていた

 

「おお……おおお……!まさか、異界の本が手に入るなんて…!キミ!今すぐ買ってくるにゃ!!」

 

「…落ち着けよ。異界の資料の現物が手に入るなんて滅多にないことだから興奮するのはわかるけどよ」

 

忘れてた

猫になろうが、精霊になろうが、ウィズはクエス=アリアス筆頭魔道士『四聖賢』のひとり

そのウィズが、クエス=アリアスの魔道士魂を燃やしていた

 

「……どうしちゃったの、ウィズちゃん。なんか、すんごく燃えてるっぽいけど」

 

「本を読むのが好きなのかしらね。猫なのに」

 

その後、燃えているウィズを連れ、本を買いに行ったが、常に持ち運びができず、元の世界に持って帰れる可能性が低いことが発覚し、早々にしょぼくれたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《黄昏メアレス》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【EDGEWORTH & ARSENAL】

 

「そういえば、コピシュ」

 

「はい、なんですか?」

 

すっかり馴染みとなったリフィルの働く定食屋で、俺はコピシュに話しかけた

 

「お前、ゼラードに剣を投げてるだろ。あんな重いものどうやって投げてるんだ?」

 

「あれはリフィルさんから教えてもらった念動を使ってるんですよ。ロストメアから得た魔力を利用してます」

 

「リフィルから?あいつ、教えられるの?」

 

「対価さえ、払えば教えてくれますよ」

 

そう言ってコピシュはリフィルから学んだ時のことを話した

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

それは半年前のこと、

 

「ブロードソード!カットラス!」

 

「アイアイ!」

 

コピシュが投じた剣を、ゼラードが宙で受け取る

 

「成功っと!どうよ、黄昏(サンセット)。コピシュの魔力の扱いはなかなかのもんだろ」

 

リフィルは、大きなパンをほおばりながらうなずいた

 

「ふぃっふぁい、ふぁいしふぁももめ。ふぇも、もうひょっふぉふゅうふゅうふぉー」

 

「……そのパン、授業料なんだからさぁ。授業終わってから食ってくんねえかなぁ……」

 

ゴックン「まだコントロールにムラがあるわね。糸を端から端までピンと伸ばすようなイメージを持ちなさい」

 

「何事もなかったかのように言いやがる……」

 

「でも、魔力の使い方を学んでどうするの?この子もロストメアと戦わせる気?」

 

「まだ前にゃ出せねぇよ。けど、俺に剣を飛ばしてくれるくらいなら、いいかと思ってな」

 

「お父さんは剣さえあれば無敵ですけど、剣がなかったらなんにもできないですから!」

 

「おまえも笑顔で言うよねぇ……」

 

「ねぇ、リフィルさん。練習を続けてたら、私もいつか魔法を使えるようになりますか?」

 

「無理ね。魔法は技術であると同時に学問よ。発動にあたっては相応の知識が必要となるわ。仮にその知識があったとしても、師から”コツ”を教わらない限り、使えないとも言われている」

 

「さすがに”コツ”までは教えてくれねぇってか?」

 

「私も知らないのよ。魔法の技は、とうに失われてしまっているんだから」

 

「あ、そっか。それであの人形を使ってる、って話でしたもんね。わかりました。じゃあ、単純に魔力を使うだけでどこまで便利にできるか、がんばってみます!」

 

「そうすりゃ、戦い以外にも食ってく手段ができるかもしれねえしな」

 

「あなたとは違ってね」

 

「うるせぇやい」

 

「でも実際、念動の初歩はほとんど押さえたから、ゆくゆくは湯を沸かすくらいできるかもしれない」

 

「って、剣飛ばすより湯を沸かす方が難しいのかよ」

 

「あなた、手でお湯を沸かせる?」

 

「できるわけねえだろ!」

 

「そういうことよ。念動自体は、魔力を使う技術としては最も簡単なものにあたるの」

 

「わかるようなわかんねぇような…」

 

「とにかく、今は念動の精度を高めるのに集中。そうして魔力を制御する感覚を肌で覚えなさい」

 

「はい、先生!」

 

「明日からはレッスン2に入るわ。難しさは2倍。授業料も2倍よ」

 

「はい、先生!」

 

「ちょっと先生!?おい、それレッスンいくつまであるんだ!?」

 

「………。究極的には108くらいね」

 

「嘘つけ!!それ単にパンいっぱいほしくて言ってんだろ!!」

 

「そうだとも!!」

 

「屈しねぇ女だなおめぇは!!」

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「って、言う感じです」

 

「リフィルぇ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《黄昏メアレス》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【見果てぬ夢とは】

 

「はいよ。ロストメア退治の報奨金だ。受け取りな」

 

今日倒したロストメアの報奨金をアフリト翁からルリアゲハが受け取る

 

「ひのふの……っと。あら、まあまあね♪リフィル、今日何かおごったげよっか」

 

「だから、そういうのフェアじゃないって、」

 

「…」

 

「……おや? 黒猫の魔法使い殿は、何やら不思議そうな顔をしているようじゃないか」

 

 

「アフリト翁、なんで、あんたがロストメア退治の報奨金を払うことになっている?あんたに何のメリットがあるんだ?」

 

俺はずっと思っていた疑問をアフリト翁にぶつけた

 

「まぁな。といって、わしが私財を投じておるわけじゃあない。そもそもこの都市は”外”の各国から援助を大いに受けて成り立っておる。メアレスへの報奨金も、そこから出ておるというわけだ。わしはただの窓口よ」

 

「窓口、ねぇ…」

 

「外の国々としちゃ、ロストメアが現実に出てくるなんて願い下げなわけよね。だから、この都市を築き、ロストメア進出を防ぐ砦の役割を持たせた……とは聞いているけど」

 

「実際にロストメアが現実に出たら、いったいどうなってしまうのにゃ?」

 

「見果てぬ夢が現実化すると同時に、あるべき摂理に異変が生じると言われておる」

 

「異変?」

 

「”物がまっすぐ落ちなくなる”とか、”海が塩辛くなくなる”とか……」

 

「”雨がやまなくなる”、”魚が空を泳ぐ”、”石がしゃべりだす”なんてこともあったそうね」

 

「なんじゃそりゃ……」「むちゃくちゃにゃ……」

 

「大抵は局所的かつ一時的な現象だけど、影響が残っちゃうところもあるらしいの」

 

「『逆巻く滝』なんかが有名ね。滝の水が下から上に登るって、それだけなんだけど」

 

「…観光名所になりそうだな」

 

「観光名所ができるくらいで済めば御の字だが、実際には何が起こるやらわからんのでな。最悪の事態を防ぐためにも、各国はメアレスへの援助を惜しまぬというわけだ」

 

「世の理が乱れちゃうだけじゃなく、危険な夢が実現しちゃってもマズいしね」

 

「危険な夢? どういうのにゃ?」

 

「いちばん危なかったのだと、んー……。『志半ばで死んだ帝王の夢』かしら」

 

「あれは大変だったな。なにせ、夢が『世界征服』だ」

 

「oh......。そいつはやべぇな…」

 

「万が一にも実現させるわけにはいかないって、メアレスが総動員されたわね」

 

「おかげで、機に乗じた小さなロストメアが何体か現実に出てしまってな。それはそれで、後処理に苦労したらしい」

 

「…ちょっと待てよ。『志半ばで死んだ帝王』の『世界征服の夢』……。それが現実に出たとしても、その帝王がいない以上、夢は叶わないんじゃないのか?」

 

「ところが、そうならんのが、ロストメアの厄介なところでな。夢を抱いた者が生きていようがいるまいが、現実に出れば、その夢は叶う。先ほどの件で言うなら、ロストメアが現実に出た瞬間、」

 

「死んだはずの帝王が今ある世界を支配している、というふうに世界自体が変わってしまうわね」

 

「帝王が生き返るってことにゃ?」

 

「本人が生き返るわけじゃない。夢の副産物として、新たに出現するのよ。『帝王本人としか思えない人間』がね」

 

「なんじゃそりゃ……」「むちゃくちゃにゃ……」

 

2度目の言葉に、アフリトが笑う

 

「そう。むちゃくちゃよ。だから、この都市にはメアレスが必要なのだ。メアレス同様、ロストメアと戦える、おまえさんたちもな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《黄昏メアレス》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【都市への疑問】

 

すっかり行きつけになった定食屋で、俺はメアレスたちと昼食を取っていた

 

「魔借さんも、すっかりこの都市に慣れたって感じすかねー?」

 

「俺たちも、猫がしゃべるってのにゃずいぶん慣れた気がするぜ」

 

「……気になってたんだけどにゃ」

 

「なんですか、ウィズさん?」

 

 

「『この都市』『この都市』って言ってるけど、名前とかないのかにゃ?」

 

「「「……」」」

 

なぜか、一瞬、沈黙が降りた

 

「えーっと……あったような、なかったような……あるともないとも言えない的な……?」

 

「そりゃ、あるに決まってんだろ。なぁ、コピシュ。なんかこう……あったよな?」

 

「おい現地人」

 

「先生!先生ー!!」

 

「ライス・プディング、お待ちどう」

 

リフィルが、ミルクで煮て甘く味つけしたライスをテーブルに並べていく

 

「で、都市の名前、なんだっけ? リフィル」

 

「『ロクス・ソルス』よ。孤高の地というような意味ね」

 

「おう、そうだそうだ、それだよそれそれ。いや、わかっちゃいたんだ。腹まで出てきたんだがな」

 

「それ、ほとんど出てきてないです、お父さん」

 

「この都市に住んでいると、なかなかよそを意識することはないからな。都市の名は忘れがちになる」

 

「4択で出されたら、たぶんわかるんですけど~」

 

「そういうもんかにゃあ……。じゃ、ひょっとして、あの門にもちゃんとした名前があったりするかにゃ?」

 

 

「「「……」」」「おい、だから現地人!」

 

再びの沈黙…

 

「あるやもしれぬ、ないやもしれぬ。それを決めるはおぬし自身の心やもしれぬ……」

 

「なんだっけなー。なんかあったんだよなー。腸のあたりまで来てんだけど。『ナンカ・アッタナ』とかなー」

 

「ティーチャー!ティーチャー!!」

 

「ベリータルト、お待ちどう」

 

「頼んでねぇぞ!?」

 

「お手つきしたでしょ。だからよ」

 

「なんですと!?何ルールですかそれ!?」

 

「この店の伝統的な遊戯だそうよ」

 

「初耳ですよ!?けっこー来てますけども!」

 

「で、門の名前は?リフィル」

 

「『デュオ・ニトル』よ。ふたつの光という意味ね」

 

「あ?そんなんだっけ?」

 

「…………」

 

「そっと料理を積んでいくなよ!!くっそ、いくらだこれ……!」

 

「ひぃいいいい、このシステム懐に厳しいぃ……!!」

 

「ふたつの光の交わる刻限、遠回しに黄昏を指しているわけだな」

 

トワイ(ふたつの)ライト()と同じってことね」

 

「お会計はこちらよ」

 

「えっ、ちょ、今ので抜けれんの!?」

 

「さあ、猫。次の問題を」

 

「4択!せめて4択でお願いします!せめてせめて!!」

 

「俺もうしゃべんねぇからな!あとぜんぶコピシュが答えるからな!!」

 

「というかリフィルさん、ウィズさんのこと、”猫”って呼んでるんですねぇ……」

 

喧噪の中、ウィズはあきれたようにつぶやいた

 

「……なんでこんなことになっちゃったにゃ?」

 

「さぁな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《黄昏メアレス》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【WARBRINGER】

 

オフの日、都市をうろついていた俺とウィズは、服屋から出てくるミリィとばったり出くわした

 

「あ、どもっす。魔借さんとウィズさん!」

 

「よう、ミリィ。ショピングか?」

 

そう聞くと、ミリィは照れたように笑った

 

「いやぁ……見てただけです。あたし、私服のセンスが死ぬほどない、ってよく言われるんで……」

 

「でも、その服はいいと思うけどにゃ」

 

「これ、昔の学校の制服なんですよ。無難なもんで、ついつい着回しちゃってて……」

 

話しながら軽くぶらつき、オープンカフェに入って飲み物を頼んだ

テーブルに向かい合い、ちらりと話を振ってみる

 

「ファッションデザイナーの夢に未練はないか、ですか?」

 

「ああ」

 

あまりにもセンスがなかったから諦めた、と、以前彼女は言ったが……

 

「いや、ホントなかったんですよ。これがもうホントにマジで。あたし、孤児だったんで。昼の学校に行くのに、夜、工場で働いて学費を稼いでたんですけど……。ずっと着たきりスズメだったから、いろんな服を見てはあこがれて、いいなぁ、って思ってて……。そのうち、いつか自分で服をデザインする仕事に就きたい、ってなったんです」

 

「立派な夢にゃ」

 

「そうだな。いい夢だ」

 

「えへへ、ありがとうございます。でも、服飾をちゃんと学ぶには、ちょっとお金が足りなくって……。そしたらですね、街で服飾デザインコンテストが開かれることになったんですよ。ここで優勝したら夢を叶えられる!そう思って、空いてる時間で応募デザインを考えて……。で、出したんですけど……」

 

「だめだったにゃ?」

 

「まー、普通に落ちまして」

 

「そうか、残念だったな」

 

そう言うと、ミリィは、うーん、と複雑そうな表情になった

 

「落ちたってだけだったら、また挑戦しようかって気にもなったと思うんですけど……。ただ、その日、工場に暴漢が来ましてねぇ……。なんかいろいろ危なそうな人だったんですよ。銃とか持ってて。いろいろわめいてて」

 

「危なそうっていうか、危ない人にゃ! 大丈夫だったにゃ?」

 

「あ、はい。サクッと取り押さえましたんで」

 

「……はぁ(にゃ)?」

 

「格闘技ー、とか、武術ー、とか、やってたわけじゃなかったんですけど。どうもあたし、戦いのセンスっていうか、間の取り方みたいのが抜群にうまいらしくて。なんか、サクッとやっつけちゃえたんですよ」

 

「なら、良かったにゃ」

 

「やー、それが……。『暴漢を取り押さえた英雄少女!』って新聞に乗ったんですけど……。『これが英雄少女のデザインだ!』って、超ダメだった応募作も載せられちゃったんです」

 

「それは…なんとも…」

 

「んで、『あまりにひどい』『本当に服か?』と、新聞に載るなり街中で笑いものになる始末……」

 

「そ、それは……なんというか、不憫にゃ……」

 

「いや、もう……街中の人に『これはひどい』って言われりゃ、そりゃあきらめもつきますよ。逆にあたしの戦闘の才能に目をつけた人が現れて、しばらく修業したりなんだったりして……。いろいろやっているうちに、流れ流れてこの都市に来ちゃった、って感じですね。はい」

 

「…本当に波乱な人生を歩んでるな」

 

そう言うと、ミリィはあわてて、ぶんぶんと手を振った

 

「ああ、お気になさらず!そりゃあたしも当時はヘコみましたけど、今は平気ですんで!夢を叶えられなかったのは残念ですけど、いちおうこうして手に職あるわけで、ええ……」

 

その瞬間、路地の向こうで悲鳴が聞こえた

 

「ロストメアか?」

 

そう思って振り向くと、一台の馬車が通りを爆走してくるのが見えた

 

「ば、馬車強盗だぁーっ!!」

 

ミリィが、ぐいとコーヒーを飲み干した

杭打機を手に、勇ましく立ち上がる。

 

「行くのか?」

 

そう聞くと、彼女は、ニカッと白い歯を見せて笑った

 

「ロストメア相手じゃなくても、こういうの、あたし、ほっとけないんで!」

 

お代をテーブルに放り投げ、疾風の速度で馬車に突撃していく

 

「…まるでヒーローだな」

 

「キミ」

 

「わかってるよ、俺も行くさ!」

 

 

俺もお代をテーブルに置き、ミリィを追いかけた

夢破れた少女の背中は、それでも、確かな誇りに満ちていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《黄昏メアレス》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【DIGHTMARE】

 

黄昏時、都市の中央に築かれた門から、大量の荷物を載せた馬車がぞろぞろと現れる

 

「あれは、現実の側から来た馬車なのかにゃ?」

 

「お察しの通りさ、黒猫殿」

 

小さく笑いながら、ラギトが歩み寄ってくる

 

「あの門は黄昏時だけ通行可能になる。だからこの時刻になると、外からの隊商が雁首そろえてやってくる」

 

「積荷は何なんだ?」

 

「いろいろあるが、いちばんは食糧だ。ここは、外からの供給にすべてを頼っているからな。あとは、人だな。外に居づらくなった人間が、新天地を求めてよく来る」

 

「随分詳しいじゃないか。ラギト、あんたもそうなのか?」

 

「いや。俺はこの都市の生まれだ。両親はそのたぐいだったが。ゼラードなんかとは比べ物にならないろくでなしでな。俺を金儲けの道具にしようとしていた。たまらず早々に家出して、路地裏暮らしを始めた」

 

「あんたも随分な人生を歩んでるな…」

 

「それで、『最強のメアレス』になったにゃ?」

 

「いや。その頃は、『最強のメアレスコンビ』だった」

 

「コンビ?」

 

「ああ。腕っぷしお認め合った親友がいたんだ。アフリト翁に誘われて、ふたりでメアレスになった。向かうところ敵なし、というやつさ。ロストメアをガンガン倒して、どんどん金を貯めていった。そのうち、相方が言い出したんだ。どうせなら、これを元手に外で一旗揚げようぜ、と。この都市で生まれ育った俺たちにとって、外はあこがれだった。いつか外に。そうしたらどうするか、なんて話で夜通し盛り上がったものさ」

 

しかし、語るラギトの瞳が、不意に鋭く細められ、限りない痛みの色を宿した

 

「……知らなかったんだ。それを”夢”と呼ぶのだとは」

 

「…なるほどな」

 

夢見ざる者、メアレス

夢を持たぬがゆえにこそ、ロストメアと戦える者たち

そのメアレスが、夢を抱いた

それが意味するところは、つまり……

 

ラギトは、想いを封じるように瞑目した

 

「ロストメアとの戦いで、俺たちは敗れた。なんでもないはずの相手に、手も足も出せずに。そいつはそのまま俺たちを飲み込もうとしてきた。大方、寂しがり屋の見た夢だったんだろう」

 

見果てぬ夢

その内容次第で、ロストメアが特殊な能力を持つことがある

その話は、俺もリフィルから聞いていた

 

「俺もあいつも半ば融合されかかった。このまま食われるのだと、俺は諦めた。……あいつは違った。残された力を振り絞って……俺をロストメアから引きはがし……刺し違えた。土壇場で、捨てたんだ。夢を。俺のために。最初に夢を語ったのはあいつだったのにな……」

 

「なら、あんたが身にまとう力は、」

 

「そのときの名残だ。ロストメアの一部が、身体に融合したままになった。おかげで、外には行けなくなった。こいつの夢を叶えてしまいかねない」

 

「それでもう一度、メアレスに?」

 

「ああ。幸い、この力は戦いには役立つ」

 

ラギトは笑った

若さに似合わぬ、どこか錆びついた笑いだった

 

「最初は……夢を失った以上、もはや戦う意味もないかとは思った。だが……この命は、友に救われた命だ。そう考えると、無駄にするのは忍びなくてな。この都市から出られぬ身なら、せめてこの都市の人々を守るために戦い続ける……。それでようやく、あいつに顔向けができる。そんな気がする」

 

そう言って、ラギトはきびすを返した

黄昏の門に背を向けるようにして

 

「最強なんて呼び名に意味はない。俺は、都市を守れればそれでいい。だから他のメアレスとの共闘もいとわない。あんたともよろしくやって行きたいもんだ。都市を守る力は、多いほどいい。死ぬなよ、魔法使い」

 

「…ああ」

 

去りゆく背中には、限りない悼みと、そして、同じだけの覚悟がにじんでいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《黄昏メアレス》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第11話:閉ざされた夢の復讐

「……いいかしら、魔法使い。訊きたいことがあるんだけど」

 

「ん?なんだ?」

 

オフの日の、穏やかな昼下がり

リフィルが、突然、俺の部屋を訪ねてきた

 

「で、何が聞きたい。話せる範囲で話してやるぞ」

 

そう、俺が言うとリフィルはわずかにためらいの顔を見せ、意を決したように、こちらをひたりと見つめ、問うてきた

 

「……魔道士でいるのって、どんな気分なの? あなたのいた世界では……」

 

「魔道士、か。まあ、俺の世界は魔道士は俺しか居ないけどな。まあ、ウィズの世界のことを話すか。ウィズの世界はクエス=アリアスって言ってな。そこでは魔道士ギルドが結成され、日夜、魔法の研究と実践を重ねて、多くの魔道士がさらなる高みを目指している。そして、魔法を扱うのに必要な叡智の扉を開き、精霊からの問いかけに答えるための精神修養と格物到知に努めている。そして、『魔法使いは人々の奉仕者たれ』の精神のもと、人々の依頼を受け、困りごとの解決に勤しんでいる。最もこれはウィズの世界だけの話じゃない。前も話したが、俺の世界は個性っていう固有魔法みたいなのが、溢れかえっている。その力は使うやつによって、正義にも悪にもなる。俺の力はウィズの世界の力と同じだ。なぜか、な。だからこそ俺は魔道士として、力を持つものとして、正しくありたい。誰かを助ける『魔法使い(ヒーロー)』でありたいんだ」

 

俺の語るクエス=アリアスの魔道士像を、そして、俺自身の魔道士像をリフィルは、じっと黙して聞いていた

俺が語り終えたところで、彼女はひとつ、重々しく吐息し、複雑な表情のまま目を伏せた

 

「……そう。それがウィズの世界の魔道士の姿と、あなたの描く魔道士の姿なのね」

 

「リフィルは、リフィルの人形は、どうして魔法を使えるんだ?」

 

 

俺はそんな彼女の姿に思わず、これまでずっと気になっていた疑問をぶつける

答えづらい質問かと思ったが、リフィルは、特に嫌がるぞぶりもなく、話し始めた

 

「私の家、アストルム一門は、古の時代から数多の魔道を修めてきた。戦うための魔法、身を守る魔法、傷を癒す魔法。呪いの類や、精神に干渉する魔法までも。でも、人々が魔力を失い、魔道が廃れ尽くした今、一門の人間でさえ、魔法を扱えなくなった……。その未来を祖先は予知していた。だから死後、己の骸を改造させて人形型の魔道書とした」

 

「まだ魔法を使えた時代の魔道士……。その骸を魔道書にしたから、魔法が使えるわけにゃ」

 

「そうよ。もっとも、魔力の補充はいるけどね」

 

「そこまでして魔法を使わなくても、この世界には便利な機械がたくさんあるにゃ」

 

「魔道は一門のすべてだったのよ。捨て去ることなどできない。けれど、もはや魔道再興は叶わない……。だからせめて魔法があるという事実を残そうとした。人形を操り魔法を使い続けることで、魔法の存在を”保存”し続ける。それが、一門の務め……」

 

「なら、リフィルも…」

 

「リフィルとは『代替物(リフィル)』……。『器を再び満たすもの』……。私は、人形に魔法を使わせる部品に過ぎない。ずっと、そういうものとして生きてきた。だから、私には、自分自身の夢がない。自ら望んだ、夢なんてものは……。別に、それで構わないのだと思っていた。でもあなたを、本物の魔道士を見ていると…なんの夢も持たずに生きることに……人としてなんの意味があるんだろう、って」

 

「リフィル…」

 

瞳に深い苦悩の色を乗せ、リフィルは静かに頭を振った

 

「私、どうして……。今さら、こんな話……。本当に今まで、気にもならなかったことなのに……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

快活なざわめきに満ちた雑踏が、目の前に広がっている

いつもなら気に留めないような、当たり前の風景

今はそれが、別のもののように見える

うかつに踏み込むことをためらわせる、うねり狂える荒波のように…

 

「ホントに……見たんだな?コピシュ。その……お母さん」

 

「うん……。まちがいなかった……と、思うんですけど……」

 

「いや……疑うわけじゃねぇんだが」

 

(……いるかな。あいつ。こんな都市に……。……何を考えてるんだ?え?徹剣(エッジワース)よぉ……。探して……どうするんだ?また、いっしょに、なんて……できるのか?そんなこと…)

 

 

 

 

 

 

『私……もう耐えられないの……。夫が、いつ死んで帰ってくるかもわからないなんて……!』

 

『剣は、人を斬る武器だ。それを手にして戦う以上、剣士にとって、死は覚悟すべき宿命なんだ』

 

『あの子まで剣を教えて……っ!あなたは、あの子まで……あの子まで、剣しか知らない怪物にする気なの!?』

 

『こんな時代だ。身を守れた方がいいじゃないか。コピシュだって、あんな楽しそうに、剣を……。』

 

『もう、耐えられない……。耐えられないのよ……』

 

『わからない。本当にわからないんだ。教えてくれ。何がいけなかったんだ。何がそんなに君を……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(剣以外で……、初めてできた大切なもの……。それを守る……。それが俺の夢だった……。だが消えた。だからメアレスになったんだ。なのに……どうして、俺は……今さら……)

 

「っ!お父さん……あそこ!」

 

「……!」

 

息を呑む

我知らず

そうすることしかできなかった

小さな指の示す先、雑踏の奥から、何気ない風情で現れる、ひとりの女性

立ち尽くすこちらの姿に気づいて…

彼女もまた、その眼を驚きに見開いていた

 

「コピシュ…あなた……」

 

「おまえ……。どうして…ここに……」

 

「ゼラード……。私……。私……、もう一度、あなたと…」

 

「…!!お父さん!そいつ、違うッ!!」

 

 

 

 

 

ザスッ!!

 

 

 

 

 

灼熱

腹に、炎のような熱と衝撃が爆ぜる

ゼラードは、ただ茫然と見つめている

妻の手を

紅に染まった、その指先を

 

「ロスト……メア……」

 

「まさか…おまえ…俺の……捨てた……」

 

「お父さんッ!!」

 

瞬間、ゼラードはカッと眼を見開き、喉も裂けよと叫びを上げた

 

「ファルシオン!スティレットッ!」

 

「ア、アイアイッ!」

 

条件反射

コピシュが即応

飛来する曲刀と短剣

受け取る

一閃

妻の姿をした者へ

容赦なく

 

「ハハハハハハハハハッ!」

 

異形の顕現、異形の哄笑

苛烈の刃をするりと逃れ、にたりと口を歪ませる

 

「コピシュっ……!誰でもいいっ!メアレスどもを、呼んでこいッ!!」

 

「でも…お父さん!!」

 

「いいからッ!行けェッ!」

 

父の咆哮

娘は、震えながらうなずいた

 

「わ、わかりました……。無茶しちゃだめですよ!絶対ですよ!お父さん!!」

 

急いで走り去るコピシュに、敵の目が向く

それをさえぎるべく、ゼラードは立ちふさがる

 

「恨んでんのは、俺の方だろ……。えぇ?お望みどおり、相手をしてやるよ……」

 

手にした剣が、異様なまでに重く、冷たい

湧き上がる不安、恐怖、絶望、後悔…

そのすべてを噛み殺し、ゼラードは吼えた

 

「俺には剣しかねぇ…。だがな、

 

 

 

剣なら負けねえっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リフィルさん! 魔借さんっ!!」

 

「コピシュ?」「どうした?」

 

「お父さんを…。お父さんを……助けてぇっ……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあッ!!」

 

 

剣を振る

これまでどおりに、培ったすべてを出し切っていく

斬りつける

夢の絶叫

痛ましさが胸を衝く

夢を潰す痛みに身体が震える…

押し殺す

敵の反撃

異形の刃

短剣の鍔元で受け止め、曲刀で斬り返す

翻る剣光を敵の牙が噛み止めた

刃を折られる

いつもなら代わりを頼むところ

今はない

ただ独り…

それでいい

守らねば

撃ち合うたびに、心が冴える

意識という意識が揺るぎなく研ぎ澄まされてゆく

剣のごとくに…

色すらも抜け落ちたような静寂

無我なる地平

ただ剣を振るい敵と戦うためだけの極地へと、到る

踏み込む

娘の名すら、今は忘れた

そうでなければ守れない

剣に、剣にならねば

 

「わ…私は……」

 

前進

一閃

連なる刃

見切り、受け止め、断ち割り、前へ

 

「私は、おまえの夢だぞ!おまえが、かつて!真に夢見た未来なのだぞ!!なのに、!!」

 

前進

一閃

交わる刃

いなし、受け切り、刺し貫き、前へ

 

「結局は、剣か!剣に頼るか!夢すら持てない剣のままか!!ならば…剣に死ねぇッ!!」

 

牙が来る

無数

そんなわけがない

よく見ろ

せいぜい22

ならば凌げる

凌げ、剣で!

 

「おぉぉぉおおおおおおぁあああああああッ!!」

 

斬る裂く叩く断つ割る破る流す折る壊す貫く潰す、打つ薙ぐ刻む突く蹴る弾く躱す削ぐ崩す擲つ砕く

 

凌いだ果てに、なお前へ

 

至近距離

妻の顔をした怪物が驚愕に震える

 

これまでの人生においてまったく最高の、どんな敵をも切り伏せうる一刀を、

 

前へ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゼラードッ!!」

 

戦場に辿り着いた俺たちは、見た

恐怖の表情を顔に張りつけて凍りついた、女性型のロストメアと…

その前に倒れ伏した、ひとりの男を…

動かない

ぴくりとも、その手に剣を握ったまま…

力という力を使い果たしたかのように

リフィルの瞳が、俺の瞳が、それを映して、

 

「貴様ぁっ!!」「てめぇっ!!」

 

激昂の叫びが、宙を割った

 

「『修羅なる下天の暴雷よ、千々の槍以て振り荒べ』!!」

 

「『武装召喚(サモン・ウェポンズ)!【ハヅキ・ユメガタリ】!』」

 

リフィルは数多の雷を最大威力で放ち、俺は刀を呼び出し、斬りかかった

 

「ははははははぁ!!」

 

しかし、リフィルの魔法は避けられた

 

「もらった!!」

 

だが、俺はその隙をついて、居合切りをする

 

「無駄だ」「なっ!?」

 

刀はロストメアをすり抜けた

 

「死ねぇ!!」

 

「くっ!」

 

ロストメアは数多の牙を俺に差し向ける

カードを取り出して障壁を張り、ガードした

 

「『慈悲のまにまに、天よ泣け!【下天暴雷槍(フルゴル・クルエントゥス)】』!!」

 

ロストメアが俺に集中してる間に、リフィルが詠唱

しかし、魔法は刀と同じようにロストメアをすり抜けた

 

「クソっ!」

 

「リフィル!」「リフィルさん!」「魔法使い!」

 

そうこうしているうちに、メアレスが集まってきた

 

「ラギト!俺がロストメアを引きつける!その隙に、ゼラードを下げろ!」

 

「わかった!」

 

俺は再び、ロストメアに向かって接近

今度は初めから迎撃しようとしたのか、牙を俺に向けてきた

 

「させないっての!」

 

それをルリアゲハが撃ち落とす

そして、ロストメアの眼前に俺が出る

 

「ゼロ距離ならどうだっ!」

 

俺はカードを持っていた手をロストメアにぶつける

次の瞬間、俺の目の前を爆炎が包んだ

しかし、炎が晴れた瞬間、ロストメアは散った体を集め、再生した

 

「ちっ!」

 

「ゼラードは下げた!俺を参戦する!」

 

「全員で攻撃しろ!」

「ああ!」

 

「了解!」

 

「うすうす!」

 

そして、駆けつけたメアレスたちによる一斉攻撃が、ロストメアに殺到する

だが、不意にロストメアの全身が霧散し、攻撃のすべてが宙を裂くに終わった

散じたロストメアの身体は、再び集合、もとの姿を取り戻す

 

「こいつ……霧になる!?」

 

「さっきまでの攻撃は霧状態になって避けていたのか!」

 

「ふ、はは、ははははははは!そうだ!私にはこれがあったじゃないか!!あの人に授かった力!剣など、恐れる必要もなかったのだ!!」

 

徹剣(エッジワース)がやられるわけだ……!リフィル、魔法使い!何か手はないか!」

 

「俺がやつを固定する!リフィル!その隙に!」

 

「わかっている!」

 

リフィルが詠唱を始める

俺は1枚のカードを取り出し、魔力を込める

 

「『ロストタイム・フレグランス』!!」

 

「ぎゃあああああ!!??」

 

突如、現れた球の魔法陣にロストメアは囚われ、帯電した

動きや能力を封じ、ダメージを与える雷時空間魔法…

それがファム・リリーのレジェンドSSである

 

「リフィル!」

 

「言われるまでも……う!?」

 

魔法を放としたリフィルの動きが、一瞬止まる

そこへロストメアが魔法陣を抜け、猛然たる体当たりをした

 

「ぅあっ……!」

 

「リフィルッ!」

 

リフィルは軽々と吹き飛ばされ、石畳の上を激しく転がった

ぐったりと、力なく倒れ伏す少女の瞳には、しかし、絶えざる熱火が烔々と輝いている

 

「なめるな……!!」

 

血を吐くような叫びに、背後の人形が応えた

滑らかに印を結び、即座に術を成す

打たれながら練り上げていた魔法

ロストメアの足元に膨大な魔力を秘めた魔法陣が描かれる

 

「な、なんだ!これは!」

 

それはロストメアを縛り上げ、動きを完全に封じた

霧になることもできないようだ

 

「『武装解除(リリース)!』『武装召喚(サモン・ウェポンズ)【ルフ・ファルネーゼ】【アルティメットまどか】【キナリ・ミクリヤ】!』『合成(ユニゾン)!』」

 

俺はそれを見た瞬間、3つの弓を呼び出し、ひとつに掛け合わせた

 

「【エレメント・ホープ・アロー】!!」

 

「潰せぇっ!魔法使いっ!!」

 

少女の声の後押しを背に受けて、俺は弓を解き放った

 

「消え失せろ!ロストメア!!」

 

放たれた光り輝く矢はロストメアに命中し、

 

「あ、ああ、ああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

ロストメアは全身から光を出して、消滅した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロストメアが消滅したことを確認し、倒れたゼラードの方を振り向くと、アフリトの姿があった

 

「アフリトさん……!お父さんは、」

 

「大丈夫だ。息はある!」

 

「なんだと? その傷でか……!?」

 

ラギトは致命傷ともいえる傷を受けながらも生きているゼラードに驚いていた

 

黄昏(サンセット)、癒しの術は使えるか!」

 

「……ええ!」

 

「俺もやろう!」

 

アフリトが手早くゼラードに止血を施すなか、俺とリフィルは回復の魔法をかけ続けた

 

「お父さん……お父さん……!」

 

「傷が深すぎる…。今の俺の魔法じゃ直しきれん…」

 

「応急処置はした。病院へはわしが運ぼう」

 

「わ、私も行きます!行かせてください!」

 

アフリトがゼラードを担ぎ上げる

その様を見ながら、ラギトが頭を振った

 

「……霧に変じるロストメアとはな。徹剣(エッジワース)は運がなかった……」

 

「……違う。コピシュから聞いたわ。ゼラードは不意打ちで深手を負ったと…」

 

「馬鹿な。彼ほどの剣士なら、不意を打たれたところで、むざむざやられるはず、」

 

「夢を持つものは、ロストメアとは戦えない…」

 

リフィルの言葉に、その場の誰もが息を呑んだ

 

「兆候はあった。気づくのが遅れた。彼は……夢をもたらす”毒”に蝕まれていた」

 

「そういえば、前の戦いでも突然動きが……」

 

言いかけ、ミリィはハッとリフィルを見やった

少女は、きつく拳を握っている

 

「……”毒”って言ったわね。リフィル。それってまさか、単に夢を見たんじゃなく、」

 

「そう。何者かによって、流し込まれたということよ。彼も……。そして、私も」

 

「精神干渉魔術…か」

 

「ええ、魔法使いの言う通り。精神への直接的な干渉……。この術は……!!」

 

少女の唇から、煮えたぎるような怒りの声がこぼれた

そのとき、都市が、揺れた

 



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第12話:黄昏mareless

都市全体に、激震が走った

同時に、石畳の上に蜘蛛の巣めいた禍々しい形状の糸が無数に走り、魔力の輝きを放つ

そして、その”糸”から、ぼこり、ぼこりと悪夢の欠片が現れ始めた

 

「なんですか、これ!?どうなってんすかぁ!?」

 

「これは……魔法陣!都市全体に張り巡らされて、土地そのものから魔力を吸い上げている!」

 

「おい、この魔力の集まる先は、」

 

俺の言葉を受け、険しい瞳でリフィルは彼方を見やった

その先、中央の門に、”糸”が絡みついている

 

「都市中の魔力を……門に集めるつもりか!この魔法、やはり──!」

 

「これ、魔法だっていうの!?でも、魔法なんて、あなたたち以外に、いったいどこの誰が……!?」

 

「ロストメアと考えるしかあるまい。この悪夢の欠片どもはさしずめ足止めか」

 

「リフィル、魔法使い。君たちは門に向かえ。雑兵どもは、俺たちで引き受ける」

 

「敵が魔法を使うってんじゃ、魔道士じゃないと勝てないかもしんないですもんね!」

 

リフィルは、ちらりとコピシュを見やった

少女は父を抱えたアフリトの傍に付き添い、固く唇を結んでいる

その姿を眼に焼きつけるようにして、リフィルは、強くうなずいた

 

「わかった。アフリト翁、コピシュとゼラードを、頼む!」

 

「ラギト、ミリィ!そっちは頼んだ!行くぞ、ウィズ!」

 

「にゃ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悪夢の欠片を他のメアレスたちに任せ、俺たちは中央の門へと急ぐ

 

「人の都市で、好き勝手してんじゃねーぜ!」

 

「夢のある連中は、とっとと逃げな! 悪夢にうなされても知らないよ!」

 

戦場と化した街を駆け、ようやく俺たちは、中央門に辿り着いた

そこに、ひとりの少女が立っていた

膨大な魔力を、その身にたたえて…

 

「あら……来てしまったのね、リフィル。まあまあ、お供まで引き連れちゃって」

 

くすくす笑う少女に、リフィルの鋭い声が飛ぶ

 

「貴様、何者だ。どうして、魔法を……我がアストルム家一門の秘儀を使える!?」

 

「にゃ!? アストルム家のって、それじゃあ、」

 

「この”糸”は『秘技糸』か!」

 

少女は、うっすらと微笑んだ

 

「どうしてか…。あなたならわかるのではなくて?」

 

「……ロストメアか。おまえは……我が一門がとうに捨て去った、見果てぬ夢の残骸なのか!!」

 

「そう」

 

リフィルの政党を讃えるように、少女はそっと胸に手を当てる

 

「『世界に再び魔道文化を花開かせる』……その夢が、私。あなたたちは諦めた。古の人形を操り、魔法の存在を残すことだけに目的を絞った……。だから、私ががんばるの!この都市から現実の世界にはばたいて、世界に魔法を復活させる!」

 

「なら、この魔力は、」

 

「ただ門をくぐって夢を叶えても、持っている魔力が少ないと、あまりいい夢にならないの。叶える夢は大きくないと……ね」

 

「外に出る夢は魔力によって大きさが変わるのか…」

 

微笑みながら、夢が空へと舞い上がる

慈愛に満ちた言葉だけを残して

 

「夢を見なさい、リフィル。あなたは何もしなくていい。私が、あなたたちの夢見た世界を叶えてあげる!」

 

夢が、ぐんぐんと空に昇っていく

門の上、魔力の集う先へと向かって

 

「……どうする、リフィル?」

 

「無論、追う」

 

「だろうな」

 

屹然と門の上を見つめながら、リフィルは言った

瞳に、固い決意の色がきらめいている

 

「奴には、確かめなければならないことがある……!」

 

「そうか。まあ、俺も奴には一言言いたいしな。同じ魔法の使い手として、あの夢を放っておくわけにはいかない」

 

そう言うと、リフィルは振り向いて、意外なほど素直にうなずいてくる

 

「そうね。ありがとう、魔借」

 

傍で聞いていたルリアゲハが、驚きの顔をした

こうも自然にお礼を言うなんて、とばかりに

 

「おそらくこの戦い……。あなたの存在が鍵になる」

 

吹っ切れたような、道を閉ざす霧を意志の炎で焼き尽くしたような確固たる面差し

 

「力を……貸して。ゼラードと、コピシュのためにも!」

 

「ああ、いいぜ。誰かを助けるのは魔道士として、ヒーローとして、当たり前だからな!」

 

そう、うなずきながら俺もまた、悠然とそびえ立つ門の上へと視線を馳せた

 

「行くぞ!魔法使い!」

 

「ああ!」

 

そう言い合い、リフィルは人形を、俺は風の魔法を駆使して、門の上へと上がっていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現実へと通じる巨大な門の、その上で、夢の少女は、現れた俺たちを前にして、あどけなく不思議そうに首をかしげた

 

「なぜ来たの?リフィル。私は、あなたの一門にとって、きわめて有益な存在よ?」

 

「『修羅なる下天の暴雷よ、千々の槍以て振り荒べ』!」

 

少女の言葉を無視し、リフィルは詠唱を紡ぐが、

 

「……ぐっ!」

 

魔法を放とうとする瞬間、苦しげに顔を歪め、束ねた魔力を霧散させてしまった

 

「やはり……そうか!貴様……毒を!ロストメアに……仕込んでいたなッ……!!」

 

「さすがに気づいた?そう。あなたたちが倒したロストメアに、魔法の毒を呑ませておいたの。”夢を見たくなる”という毒を、ね」

 

「ロストメアを倒した者の心に”夢見る意志”を植えつける。精神干渉系の呪詛魔法……」

 

「じゃ、ゼラードがロストメアにやられたのは、この前の敵にとどめを刺していたから……!?」

 

「メアレスという障害を封じるために……。他の夢さえ利用したのか!貴様は!!」

 

「正確には、”あなたを封じるために”よ。リフィル。だから魔法しか通じないロストメアを育てた。あのメアレスを片付けたのは、ただのついで」

 

「ゼラードを襲ったのは……私に毒を盛るための、その行きがけの駄賃でしかなかったというのか!」

 

「そうよ。同じ魔法の使い手であるあなたは、私を叶えるのに、とても邪魔なのだもの。それにね……、私、あなたにも夢を見てほしかったのよ」

 

「なんだと……?」

 

「だって、夢を見るって、とてもすばらしいことなんですもの。夢を抱いて生きるのは、人にとって当然のこと。夢見ることこそ人の性。生きていることの証。夢見ることなく生きるなんて、とてもとても悲しいこと。素直に夢を願いなさい。私の毒を”2度も”受けては、もう夢を潰せないのだから」

 

「だったら……

 

毒を受けたのが”1度”までなら!まだ、戦えるはずね!

 

強い意志の光を瞳に宿し、リフィルが糸を繰る

併せて俺も隣に並び、カードを取り出した

ふたりの魔道士、ふたつの魔法

放たれた魔力を、ロストメアもまた瞬時に組み上げた術で防ぐ

 

「魔法……!?バカな!どうして……」

 

驚愕にさまよう瞳が、君の姿を映し出す

 

「どうした?ロストメア?随分と驚いているようだが?」

 

「何者だ!?もはやこの世界のどこにだって、魔法を使える者などいるはずがないのに!!」

 

「いるそうよ。よその世界にならね」

 

「異世界からの来訪者だと……!?よもや…。そうか、貴様、リフィルの代わりに夢を潰したか!」

 

「ご名答。魔法以外通じないロストメアをな」

 

「だから私が毒を受けたのも、1度だけ。そして、異界の魔法使いは、夢があろうとなかろうと、ロストメアと戦える!」

 

「馬鹿な…。そんな…でたらめな!!」

 

「でたらめでなにが悪い。無理、無茶、無謀を押し通すのが魔法だろうが!!」

 

激しく動揺するロストメアを前に、リフィルは苛烈に糸を構え、俺はカードに魔力を込める

 

「行くぞ!ルリアゲハ、魔法使い!人の心を道具にする夢など、ここで砕くッ!!」

 

リフィルのその言葉と共に俺は魔法を放つ

カードに魔力を込めるウィズ式の魔法を

 

「ちっ!」

 

それを障壁で防ぐ ロストメア

そこを、

 

「落ちなさい!」

 

ルリアゲハが銃を連射

 

「洒落臭い!」

 

しかし、それはロストメアが放った黒炎に読み込まえた

そして、黒炎はそのまま俺たちの方へと向かってきた

 

「『【光華月鏡(パルマルーキス)】』!」

 

それをリフィルが障壁で防御

次の瞬間、魔法を放った

 

「ぐっ、なぜだ、リフィル!夢を持たぬおまえが、どうしてそうもあがく!戦うッ!」

 

烈風荒ぶ門の上、鮮やかに魔法を放ちながら、リフィルは静かな口調で問いに答える

 

「夢を見ない者は、生きているとは言えない……。そうじゃないかと、私も疑った。でも……、そうであるなら、この胸にたぎる炎の説明がつかない!

 

「炎だと!?」

 

「おまえがゼラードにしたことを考えろ!!どうやら、夢を持たない人間であっても、怒りを覚えはするらしい!!」

 

電撃が走り、紫電が踊る

互いに魔法を撃ち合いながら、ロストメアが愕然たる叫びを上げる

 

「怒り!?そんな…。家族でも恋人でも、仲間ですらない者を失った程度で!!」

 

「確かに仲間ではなかった。でも、それでも、この都市に生きる、同じメアレスだった!!その心を利用したおまえへの怒りがある!」

 

言い合う2人の間に俺が割り込み、ロストメアに魔法を放つ

 

「俺から言わせれば、”夢を以って生きるのが当然”なんて、そんな傲慢、反吐が出る!!」

 

「っ!?なんだと!?」

 

俺の続きの言葉をリフィルが紡ぐ

 

「夢があろうがなかろうが……!怒りもすれば、泣きもする!それを無視して、夢見ることを押しつける!そんな夢など、唾棄して潰す!!」

 

「夢ってのは見せるものじゃない!自らの意思で見るものだろうがっ!!」

 

「貴様は、貴様らは、夢のひとつも持たぬくせに、夢を持っているくせに、人の夢を折り砕くつもりか!!」

 

「「そうであって、悪いかッ!!」」

 

「くっ……!」

 

気魄とともに雷撃がほとばしる

ロストメアは後退し、防御の術を練り上げた。

 

「ウーリット・メー・アールドル・イニミーキティアエ!」

 

ロストメアの放つ魔法陣がリフィルの雷撃を防いだ

瞬間、ふたつの影が宙に踊った!

 

「させないってんですよ!!」「横槍を叩き込ませてもらう!」

 

門を駆け上ってきたミリィとラギトが、少女の浮かべた魔法陣を猛然と砕き破る!

 

「おのれッ!夢見ざる者どもがッ!!」

 

「血反吐を吐いて潰れろッ、凶夢ッ!!」

 

リフィルと人形が、共に素早く印を結んだ

 

「ムーギーテ・レオーニーネ!ディスペルガ・エト・プルウィアエ・ルトゥムクエッ!」

 

リフィルの眼前に形成された巨大な魔法陣から、膨大な量の雷の渦束が放たれ、夢を撃つ!

 

「ぬぁあぁああぁああああっ!!」

 

ロストメアは咄嗟に防御魔法を展開

すさまじい量の魔力を集積、雷を受け止めた。

なおも雷の渦束を放ち続ける少女の唇から、苛烈きわまる咆哮がほとばしる

 

「陥とせ!!魔法使いッ!!」

 

「ああ!!」

 

その声に応え、俺は走った

共に戦った日々が培った、阿吽の呼吸

彼女が”この瞬間”を狙っていると、そう悟り、待っていたのだ

 

「ウィズ!行くぞ!」

 

門を蹴り、人形の肩を踏み台に跳躍

その瞬間に、魔法を発動する

 

「『我が呼び声に答えし異界の精霊よ。その力を我が元へ!全て変える力となれ!完全憑依召喚(フルインストール)!!【叡智の賢者 ウィズ】!!』」

 

俺は完全憑依召喚(フルインストール)を発動し、ウィズと一体化する

そして、ロストメアの頭上で、数多のカードを構える

精霊の呼びかけに答え、叡智の扉を開放

解き放つ、異界の魔法を!

 

「なんだ……それは!?貴様、私の、私の知らない魔法を使うなぁっ!!」

 

「『知らないようなら、ご披露するさ!これが【四聖賢】直伝、クエス=アリアスの魔法だ!』」

 

そして、炎、氷、雷、光、闇、数多の魔法が放たれ、

 

「う、あ、ああぁぁああぁああああーーーーっ!!」

 

門の一帯は光に包まれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜が訪れた

あの騒乱が嘘のように、静かに寝静まる街

その一画の路地裏に、夢見ざる者たちが集っていた

 

「そうか。魔法使いは、去ったかい」

 

「気がついたら、消えていたわ。目が醒めた後の、夢みたいに」

 

「ひょっとしたら、本当に夢だったのかもしれないわね」

 

「え?ロストメアだったってことですか?」

 

「そういう見果てぬ夢じゃなくて。空想とか、幻想とか……、そういう夢」

 

「ここは、夢と現実の狭間にある都市だ。そういうものが現れても、おかしくはなかろうさ」

 

「アフリト翁がいちばんそれっぽいんすけど。いつの間にかいたりいなかったりするし」

 

「今回は、その神出鬼没の働きに助けられたな」

 

「ゼラードには金を貸したままでな。死なれてしまってはわしが困るのさ」

 

「あ、まだ返してなかったんだ……」

 

リフィルが、じっとアフリトを見つめた

 

「……ふたりの様子はどう? アフリト翁……」

 

「ゼラードは魔法使いの魔法のおかげもあってか、一命を取り止めた。まだ意識は戻っておらぬが、いずれ目を覚ますだろう。コピシュはゼラードについておる。剣しかない男が、甲斐甲斐しい娘を持ったものだ」

 

「よかったぁ。一安心すね!」

 

「いや……。とも限らない。あれほどの深手だ」

 

「医者も、生きているのが不思議を通り越して、息があるのがおかしいと言っていた」

 

「果たして再び剣士として立てるかどうか……」

 

「そうなると、コピシュの身の上が心配ね」

 

「私が預かる」

 

「え?」

 

「仮にゼラードが再起できたとしても、しばらくは戦える身体じゃない。その間、私がコピシュを預かる」

 

「コピシュがメアレスとして戦うことを望んだら、どうするね?」

 

「ひとりで戦わせるわけにはいかない。いい、ルリアゲハ?」

 

ルリアゲハは、艶やかに片目をつむった

 

「あたしは賛成よ、リフィル。報奨金はあの子と折半にするわ」

 

「それだけじゃ、フェアじゃないわね。魔力も半分はコピシュに渡す」

 

「ほう。良いのかね、黄昏(サンセット)?」

 

「コピシュと共に戦えば、それだけロストメアを倒しやすくもなる。損にはならないわ」

 

「ほ、そうかそうか」

 

「……何か言いたげね」

 

「言葉には、秘めてこその価値というものもある」

 

「秘めたまま、腐らせなければの話ね」

 

つぶやくように言って、リフィルは、星の瞬く夜空を見上げた

空には、数多の星がきらめいている

だが、そのすべてが、夢を抱いているわけではあるまい

人も同じだ

夢を持たないことが、すなわちきらめきのないことを意味するわけではない

 

 

 

(夢がなくても、生きてはいける。怒りもすれば、泣きもする……。そうは思える。でも、まだ、はっきりそうだとわかっているとは言えない。知らなければならない……そんな気がする。”生きる”というのが、どういうことなのか……。私なりの……その、答えを……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…は!?」「にゃ!?」

 

俺が目覚めるとそこは見慣れた俺の部屋だった

 

「戻ってきたのか?」

 

「にゃ…。そうみたいにゃ。キミ、みるにゃ。時間が全く進んでいないにゃ」

 

「…夢、だったのか…」

 

「いや、そうでも無いみたいだにゃ」

 

そう言って、ウィズは最初に見ていた使えないカードを俺に見せてきた

 

「…【ピュアメア】のカード」

 

「これが契約状態になっているってことは」

 

「あっちでの出来事が進んでいるということか…。これはまた、巻き込まれるな」

 

「どうするにゃ?」

 

「決まってるだろ。助けに行くさ」

 

「にゃはは!それでこそ、キミにゃ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが6年前に起こった事だ」

 

「「「…」」」

 

出久達は俺の話を聞いて、黙ってしまった

一部、端折って話したが、無理もない

メアレス、そしてロストメア

その強大さを、強さを、力を知ってそのままでいられるわけがない

この世界にそれだけ大きな、影響を与えかねないのだから

 

「ケロ…。メアレスとロストメアについてはわかったわ。でも、黒猫ちゃん。どうして、ロストメアがこの世界に現れるようになったの?」

 

そう、蛙吹が聞いてきた

 

「にゃ。今の話はメアレスとロストメアについてだにゃ。そして、次に話す話はこの世界とメアレスの世界を繋ぐ原因になった話にゃ」

 

「つまり、今から話すことがなかったら、ロストメアはこちらに現れなかったということですか?」

 

「その通りだ、八百万。次の話しは5年前。あの出来事から1年後の話だ」

 

そして、俺は話を続けた

 

 

 

あの、大きな事件の全ての切っ掛けとなった話を…



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