樋口楓は愛が重い (kame@)
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樋口楓は愛が重い
「美兎ちゃん」
初めは同い年で接点があった。ただそれだけの関係。
「美兎ちゃん」
良く話すようになってからは一緒にご飯とかもいったよね。
「美兎ちゃん」
でもあなたはどんどん人気になって、色んな人と話したり、色んなところに行って、だんだん私に構ってくれなくなった。
「美兎ちゃん!」
私にはあなたしかいないのにね。
「ねぇ、美兎ちゃん?なぁーんでスルーすんの?」
「……楓ちゃん、もうやめてくださいよこんなこと、今ならまだ私、笑って済ませますよ?」
「んー、やぁーだっ!そしたら美兎ちゃんまたどっかいっちゃうじゃん!」
「楓ちゃん…」
私は美兎ちゃんを軟禁した。美兎ちゃんは前みたいに笑ってくれなくなったけど、どこかにいなくなるよりはずっといいと思ったから。
「すんすん…美兎ちゃんの匂い、落ち着く…」
美兎ちゃんは私より身長が低いから、抱きしめるとちょうど頭の匂いが嗅げる。私はいつからかこれが大好きになっていた。美兎ちゃんをたくさん感じられて安心できるのだ。
「ねえ美兎ちゃん、私、もっと美兎ちゃんと深いところで繋がりたい」
「…楓ちゃん?それってもしかしてそういうアレだったりします?」
「これな、まあ普通のカッターなんやけど、これでお互い手のひら切ってさ、手を繋いで血をドロドロに混ぜ合わせるの、美兎ちゃんと私の命の源が混ざりあってさ、それってすっごく興奮しない?」
「ごめんなさい全然違いました。痛そうなのはちょっと…」
「美兎ちゃんが何想像したか知らないけどさ、美兎ちゃんに拒否権なんてないんよ?ゆーて手のひらだし多分そんな痛くないって、ほら」
すぱっ、新品のカッターはいとも容易く私の手を切り裂いた。
「ぅぐっ…ほら、痛くなーい…」
「うわっ、ほんとに切ったんですか?というか楓ちゃんちょっと泣いてるじゃないですか、やっぱり痛いんじゃないですか、やめときましょうよ」
「もー美兎ちゃんうるさい!ここでやめたら私がただ痛い思いしただけじゃん!ほら手貸して!切るから!」
美兎ちゃんは色々理由をつけて逃れようとしていましたが、最後は押し切りました。切ってみると一瞬でしたが、意外だったのは美兎ちゃんが血に強かったことです。ムカデ人間?とかいうのの影響なのかな?
「こ、恋人繋ぎで傷口を合わせて、包帯で固定するね、最低でも明日の朝まではこのままだから」
「そうですか…じゃあもう寝ますか?」
「うん、電気消すね」
手は固定されてるからほとんど動かせないけど、ギュッギュッて握ると傷口から血が溢れるのを感じる、痛いけど美兎ちゃんと共有してるって考えるとそれすらも愛おしくなるから不思議だ。
「その、いままで恥ずかしくて言えなかったけど、大好きだよ、美兎ちゃん」
「…………ぁ……」
美兎ちゃんは何か言いたそうにしていたが、結局何も言わなかった。しかし私には、何が言いたかったのかわかった気がした。
ごめんね、美兎ちゃん。
これからも一緒だよ。
かえみと増えろ、最初540文字で投稿しようとしたら最低1000文字って言われたので急遽増やしました。
4/20 違和感ある部分を直しました
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