BOOMERANG WITCHES (B-506)
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106年越しの大怪異・アラスカ

前書きまで来てしまいましたか。
もはや何も言いません。楽しんで読んでください。

I Wish you luck.


《こちらアラスカコントロール。アクィラ隊、もう一度言ってくれ。》

 

《こちらアクィラ3!何度でも言ってやるよ!あれは、あれはネウロイだ!教科書には消滅したって書いてあったぞ!こっちに向かってくる!》

 

《アラスカコントロールよりアクィラ隊、交戦規定により交戦を許可。昔の情報が正しければ出てもレシプロ機並のスピードのはずだ。撃墜しろ。》

 

《アクィラリーダー了解。理解が追いつかないが、やるしかない。エンゲージ。シーカーオープン、ロックオン。FOX2!FOX2!》

 

 

アラスカ基地所属の327thTFSアクィラ隊の使用機は新型の戦術戦闘機FA-1ファーン。極低温化での実用評価中だったもの。

 主翼は前進翼。前翼と水平尾翼と合わせて「スリーサーフィス」の翼配置を採用している。機首下面に横力ダイレクト・コントロールのための垂直カナードを有する。それに加えて、機体背面中央にも垂直翼を有している。前進翼の主翼には下反角が与えられており、そのため横方向の運動性が高い。単発の3次元スラストベクタリングのエンジン排気ノズルや、多様な操縦翼面と合わせ挑戦的でありながら高い性能を発揮することが期待されている。

現在同型のストライカーユニット(こちらは双発エンジン)も実用評価中で、

アラスカ州ではなく、リベリオン合衆国はワシントンD.C.にて戦闘機動の評価をしている。

 

スペック

 

FA-1戦術戦闘機

 

製造:連盟軍(LNF)工廠

全長:16.45m

全幅:11.56m

全高:4.83m

自重:11,876kg

基準離陸重量:16,662kg

最大離陸重量:24,669kg

エンジン:FNX-5009-K フェニックスMk.IXターボファンエンジン×1基

最大推力:8,221kg(地球大気内・ミリタリー推力)、12,877kg(地球大気内・アフターバーナ使用時)

最大速度:マッハ2.1

巡航速度:マッハ0.8

限界高度:17,700m

武装:

20mmガトリング砲×1

翼下ハードポイント×4

胴体下ハードポイント×3

AAM、ASM、精密誘導爆弾など最大5,800kgを搭載可能

 

WFA-1 ストライカーユニット「ファーン」

 

製造:連盟軍(LNF)工廠

全長:905.662mm(ミリメートル)

全幅(片脚):650.669mm

全高:403mm

自重:68.487kg

基準離陸重量:240.985kg

最大離陸重量:368.445kg

エンジン:MFNX-5009-Lマジック・フェニックスMk.IX魔導エンジン×2

最大推力:8,221kg(地球大気内・ミリタリー推力)

12,877kg(地球大気内・アフターバーナ使用時)

最大速度:マッハ2.1

巡航速度:マッハ0.8

限界高度:17,700m

武装:20mm航空機関砲×1

翼下ハードポイント×4

左右大腿部ハードポイント×2

(AAMのみ搭載可能。)

 

__________________________________________________

 

アクィラリーダー機の翼下ハードポイントから対空ミサイルが2発、射出された。続いて続々とメイルリーダー指揮下の機から対空ミサイルが射出される。

順調に誘導され、近接信管の作動範囲に届くまであと少し。その時、目標後部から赤いレーザーのようなものが放射状に発射された。

《!》

殺到し、まさに獲物を爆ぜさせようとしていた対空ミサイル、そして射線上にいた不運な2機を蒸発させた。

《こちらアクィラリーダー!目標から不明の攻撃あり!アクィラ4とアクィラ6が喰われた!ミサイルもだ!くそったれ!》

《リーダー!後ろだ!チェックシックス!》

《なに?》

いつの間に出現したのだろうか。アクィラリーダーの後方に赤と黒の特徴的なカラーをした異形の姿が。

《ブレイクだ!アクィラリーダー、ブレイク!ポート!》

異形の機首であろう部分から先程と同じような光線が発射された。

瞬時にMAXまで入ったアクィラリーダー機のフェニックスMk.IXエンジンが吠える。

機体を左にロール、操縦桿を思い切り引くとかなり急なレフトターン。

すんでのところでレーザーを躱し、全速で退避。

すると、警告音。

レーダーを見やれば、「無数」の黄色い光点。IFFアンノウン。実際はエネミーだが、ファーンのアビオニクスは100年前を知らない。いや、そもそもレーダー自体が無いに等しかったのだが。

《アクィラリーダーよりアラスカコントロール。撤退の許可を。それと、空軍司令部にホットライン。現在の状況を説明してくれ。4機だけじゃ奴らの養分にもなるか怪しい。幸い奴らは低速だから振り切れるだろう。》

《こちら「AWACSカレイドスコープ」。了解アクィラリーダー。撤退せよ。司令部には無線を繋いである。なお基地には降りずミルキー4から空中給油を受け、南東へ向かえ。アラスカ基地は放棄だ。ロングレンジレーダーに無数のコンタクト。奴ら、オラーシャ側からも来てい──》

《まて、AWACS。アラスカコントロールはどうした。放棄だって?冗談だろう。俺達のホームだぞ。アイツらの荷物も──》

《荷物ならとっくに蒸発しただろうよ!基地と一緒にな!》

《なんだって?》

《交戦中に無線が無かったのを不思議に思わなかったのか?アラスカコントロールから司令部にコールがあった直後に通信が途絶えた。ホットスクランブルしてみればそこには基地が無かったんだ。お前達との無線を繋いでようやく状況が伝わった。ネウロイだって?いなくなったんじゃなかったのか。》

《すまないAWACS。取り乱した。これよりメイル隊はあんたの指揮下に入る。信じようが信じまいが、俺の部下は奴らにやられた。それだけだ。空軍司令部、聞こえるか?こちらはアクィラ隊隊長。状況を説明する。》

《こちらは司令部。ライトゥーム中将だ。たった今リベリオン合衆国ホワイトハウスから緊急通達入電が来た。》

 

《北極に超巨大な異常帯を感知。凄まじい速度で広がっている。》

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【年表】

 

2045年1月28日:連盟軍、再びネウロイと交戦。

同年8月14日:オラーシャ連邦及び北欧諸国が完全に陥落。

同年11月29日:ブリタニア連邦、カールスラント共和国、国土の半分を喪失。

2046年2月3日:ファラウェイランド全土及びリベリオン合衆国北部領土喪失。

同年4月2日:扶桑国、北海道を喪失。中華人民共和国、北部領土陥落。人民解放軍、中部を放棄。民間人と共に南部へ大規模な撤退作戦「春燕作戦」を開始。

同年10月4日:人類連合が赤道軌道を周回する巨大空中空母の開発及び、新型戦術戦闘機、ストライカーユニットの開発を宣言。新型戦術戦闘機の開発番号をFRX-47と指定。

同年10月15日:初めてFNX-5009のスピードに匹敵するネウロイが捕捉される。連盟軍は新型機の開発を急ぐ。

 

2047年1月1日:開発番号FRX-47及びWFRX-47の開発が完了。正式名称FR-31/WFR-31「シルフ」。FA-1/WFA-1の後継と期待されたが、高価なため、前線も前線、最前線の一部の兵士、ウィッチ達に配備されるだけとなった。

 

同年1月15日:ネウロイに対抗しうる空軍力の分散を防ぐため、空軍戦力を6箇所に集結。北極を囲む勢力圏内にシルヴァン、ブラウニィ、トロル、サイレーン、ヴァルキア、フェアリイの六つの大型基地が設置される。この中でもフェアリイ基地には全軍の中枢部であり、最も規模が大きい。

これにより戦術飛行隊、統合戦闘航空団の再編成が行われた。フェアリィ以外の各基地に3つずつの統合戦闘航空団、フェアリィには4つ。をそれぞれ結成し、ネウロイに対しての絶対防衛線を形成した。

 

──これは、13人のブーメラン達の軌跡を辿る物語だ。

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次回へ続く。




どうも。私です。
いかがでしたでしょうか。え?スーパーシルフの解説がない?.....次回に使うんですよ言わせないでください。

何はともあれ、面白いと思ってくれた方がいらっしゃれば幸いです。

また次回、お会いしましょう。グッドラック。


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風の妖精とブーメランの乙女達

2話です。
前回はウィッチのウィの字も出てきませんでしたが今回からは出ます。
ストライクやブレイヴの面々は出ても昔話くらいなので多分.....

完全に別の部隊だと思っていただければ嬉しいです。嬉しさのあまり私のスーパー・フェニックスMk.XIが過剰燃焼して破損します。


2047年1月16日リベリオン合衆国オハイオ州クリーヴランド エリー湖を臨むフェアリィ空軍基地地下、統合戦闘航空団区にて。

 

 

「第501統合戦闘航空団の12人の諸君。私が諸君らの実質的な指揮権を持っている、リディア・クーリィ准将だ。全世界から集められた精鋭と聞いている。100年前の501、ストライクウィッチーズのような活躍を期待している。──さて、我が航空団の至上命令を通告する。」

 

 

 

「何があっても、必ず帰還せよ。以上だ。」

 

「敬礼!」

 

12人の右手が同時に上がる。曲芸飛行のような、息ぴったりの空軍式敬礼。

 

ブーメランは放たれた。あとは、無事に戻ることを祈るばかり。

 

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航空団区、501居住区ホールにて。

 

 

「私達のストライカー、どうなのかな。スーパーシルフって、どんな性能なんだろ。」

そう目を輝かせて言ったのは ヴィンセント・ブリューイ中尉。14歳。ガリア共和国出身で、ブーメランウィッチーズ7番機(以降、B-50107もしくはB-7)。パーソナルネームは「ランヴァボン」。

 

「シルフを大幅に改修したストライカーだそうだ。もっとも、シルフィードと違ってもはや原型が残っていないらしいが。」

返したのはウォルター・サシュリン大尉。16歳。ファラウェイランド出身。B-50112(B-12)。パーソナルネーム「オニキス」。

 

「ともかく、使ってみないことには分かりませんね。システム軍団のお墨付きともあれば、さぞかし素晴らしいストライカーなのでしょう。」

と、アナスタシヤ・コヴァレフスカヤ中尉。15歳。オラーシャ連邦出身。B-50106(B-6)。パーソナルネーム「ミンクス」。

 

「では、格納庫に行きましょうか!そろそろ全員分のストライカーの整備が終了していそうですし。」

と、宮井 百々佳大尉。14歳。扶桑国出身。ブーメランウィッチーズ隊長。B-50101(B-1)。パーソナルネーム「雪風」。

 

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501格納庫にて

 

 

格納庫は、戦闘機や攻撃機といったそれと違い、かなり小さい。が、それでも人にとっては大きい。

両方の壁近くに、奥までズラリと並んだ各隊員のストライカー。一番奥の13番機位置にはまだストライカーがないが、他の位置には新品のWFFR-31MRストライカー。と、整備要員や警備兵。

最新鋭機の配備先とあってどちらも慌ただしく動いている。と、ここで宮井大尉の視線が3番機位置にいる人物に注がれる。

「エーコ中尉!整備状況はどうですか?」

「ご覧の通りです、大尉。春燕(チュンヤン)とオニキスがまだかかりそうです。」

そう返したのがシルヴィオ・エーコ中尉。24歳。501航空団整備班班長。ロマーニャ王国・ピエモンテ州出身。

 

「時間はどのくらいかかりますか?」

と宮井大尉。

「そうですね。諸々含めて40分って所でしょうか。」

とエーコ中尉。

「25分でお願いします。」

再び宮井大尉。

「目標は25分。了解。」

エーコ中尉がタブレット端末に情報を入力していく。

 

ふと気が付くと、エーコ中尉と話している間に、部隊の面々、3番機の 王 輝華中尉 以外はそれぞれの番機位置に散らばっていた。

 

「皆さん散らばったようですね。....さてエーコ中尉。ここからは私的な会話です。出来れば1番機位置に行きたいのですが.....」

宮井大尉が言う。

「そんなに改まらなくても大丈夫だよ、隊長さん。さ、行こうか。」

とエーコ中尉が返す。

「あ、は、はい。すいません。ありがとうございます。」

宮井大尉が俯きながら言う。

「なんだって謝るんだ?君は何もしてないだろう?」

不思議そうなエーコ中尉。

「その、他の整備員の方はあまり話してくれないので.....やっぱりウィッチって他の人から見たら触れがたいものなのかなーと.....」

恐る恐る答える宮井大尉。

「んー、別にそうじゃないと思うけどなぁ。君たちは皆年頃の女の子だし、誤解から何かあっちゃマズいってのがあるんだろうね。彼らが保身の為にやってることだ、隊長さんが気にする事はないさ。」

率直に述べたエーコ中尉。

「そうでしたか.....てっきり嫌われているものだと....」

はじめの頃が嘘のように縮こまった宮井大尉。

「嫌いだったら整備なんてしてないよ。で、話したいことは何かな?」

少し笑いながらエーコ中尉。

「あ、すいません。えっと、スーパーシルフのスペックなんですが.....」

と宮井大尉。

「ああ、実際に使うとなれば知っておきたいもんね。これ、貸してあげるから後で皆とも見なよ。」

とエーコ中尉。

「ありがとうございます。では、お借りします。」

と宮井大尉は告げて、目を通し始める。

 

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スペック

 

 

WFFR-31MRストライカー「スーパーシルフ」

 

製造:連盟軍(LNF)工廠

 

全長:1147.331mm(ミリメートル)

 

全幅(片脚):705.457mm

 

全高:603.884mm

 

自重:74.448kg

 

基準離陸重量:307.224kg

 

最大離陸重量:498.480kg

 

エンジン:MFNX-5010-B/C マジック・フェニックスMk.Xターボジェット魔道エンジン×2

最大推力:10,180kg(ミリタリー推力)×2

13,910kg(アフターバーナー)×2

 

最高速度:マッハ3.0

 

巡航速度:マッハ1.65

 

戦闘機動限界高度:23,300m

 

武装

 

20mm航空機関砲×1(基準装備。変更有り。)

 

主翼下ハードポイント×2

 

大腿部ハードポイント(片脚)×2

 

短距離空対空ミサイルAAM-III

中距離空対空ミサイルAAM-V

長距離空対空ミサイルAAM-VII

超高速空対空ミサイルHAM

 

を装備可能。

 

その他、ヘッドギアバイザに各種可視光・赤外線カメラ、TAISP、赤外線ラインスキャン、コンフォーマル・マルチバンドESMセンサー等の各種光学装備を搭載。これにより特有の魔法が無くともコアの視認や遠方の敵勢力の察知が可能になる。

_________________________

3番機位置にて

 

 

「私のストライカー、まだかかりますか?」

と3番機位置で整備員に話しかけるウィッチ。

 

王 輝華中尉。15歳。中華民国、江西省出身。B-50103(B-3)。パーソナルネーム「春燕(チュンヤン)」。

 

「あと、10分ほどでしょうか。」

と、整備員。

「わかりました。私の春燕、お願いしますね?」

と、王中尉。

「.....」

整備員は何も答えなかったが、帽子を触って頭を下げた。

整備員の中では、エーコ中尉のような人間は珍しい。エーコ中尉はロマーニャ人だということもあるだろうが。別に緘黙なプロ、という訳ではなく、彼らは極力接触を避けるように。命令ではないが、多くの整備員は自らの保身の為に、接触を避けている。

 

他の番機位置では、整備員の話を聞く者、ひたすらストライカーを見つめる者、挙句はストライカーに抱きつく者、これに関してはヴィンセント中尉のみだったが、それぞれがそれぞれの、愛機となるストライカーとの初顔合わせを果たした。

 

_______________________________

全員揃って

 

 

「隊長!早速ストライカー使いたいです!」

と、元気よく手を挙げたテンションが高いままのヴィンセント中尉。

 

「その前に。この資料を確認してください。命を預ける大事な相棒ですから、知っておいて損は無いと思いますよ?」

と宮井大尉。

 

「えー....はやく使いたいのにー。」

ぶー。とクレームをぶつけるヴィンセント中尉。

 

「見終わったら皆で飛べますから。しっかり40ページ読み切ること、です。」

と宮井大尉。

 

「ぶー。」

とヴィンセント中尉。

 

結局資料をしっかり読み込んだブーメランウィッチーズの面々が、再びスーパーシルフと顔を合わせるのは、日が傾いてからになった。

_______________________________

 

スーパーシルフは次回飛ばします。

 




はい。最後まで読んでくださって、ありがとうございます。

重度の雪風ファンならきっと今回の内容は全部理解出来ますよね!(名前に男性形が多いのは察して?)

ちなみに「宮井百々佳」という名前、「深井零」と「宮藤芳佳」を掛け合わせた名前というの、お気付きでしょうか。14歳の少女ということで、「零」は使いたく無かったので。そこで、真逆の「百」ならいいだろうと。

兎にも角にも、次回も読者の方々にお会い出来ることを楽しみにしております。

失礼。途中だが騒がしくなってきたので、これにてペンを置くことにする。

FAF情報軍大佐 アンセル・ロンバート


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目覚める翼

3話!
お待ちかね、皆大好きフェニックスMk.Xが産声を上げます。
最前線で呑気に初飛行ってなんだよ。って思うかも知れませんが、だからどうした。俺には関係ない。
嘘です。防空網は鉄壁なので安心してください。ええ。鉄壁ですとも。
では、本編へ。


格納庫にて。

 

「よーっし!やっと使えるー!」

資料を読む前のテンションが復活したヴィンセント中尉。

「さっきも言ったがもう少し静かにだな。」

とミシェル・ズボルフスキー中尉。

 

ミシェル・ズボルフスキー中尉。16歳。B-50102(B-2)オラーシャ連邦オデッサ出身。パーソナルネーム「カーミラ」。

 

「いいじゃないですか。これからの自分の愛機なんですから。私も楽しみです。」

とアナスタシヤ中尉。

 

「しかしだな.....」

ミハイル中尉。

 

「でも早くしないと日が落ちきってしまいますよ?ミハイル中尉。」

とルドルフ・オットー中尉。

 

ルドルフィーネ・オットー中尉。15歳。B-50104(B-4)カールスラント連邦バイエルン出身。パーソナルネーム「ズーク」。

 

「そうだな。では、行くとしよう。隊長。」

とミシェル中尉。

 

「え?あ、はい!では!行きましょう!」

と宮井大尉。

 

「シルフ〜シルフ〜シ・ル・フー!」

とにかくご機嫌なヴィンセント中尉と

「その変な歌をやめんか。」

その一挙手一投足にツッコミを入れるミシェル中尉。

 

「もしかして実はお2人とも仲が良いのでは?」

と宮井大尉とのすれ違いざまにアナスタシヤ中尉。

 

「え?そうなんですか?ミシェル中尉」

と宮井大尉。

 

「そんなわけがあるか!大体、出会ってからまだ2日だぞ。しかもこんな能天気なガリア人なんかと!」

とミシェル中尉。

「オラーシャ人も大概能天気な人多いじゃん。」

と火に油を注ぐヴィンセント中尉。

「なっ....!そんなことはないぞヴィンセント中尉!アナスタシヤを見ろ!」

とミハイル中尉。

 

丁度その時、アナスタシヤ中尉は6番機位置にいて、20mm機関砲の横にある何か大きなものを手にしていた。

OSV-96又はV-94と呼ばれるそれは、所謂対物ライフル。

B-32対装甲貫通弾を使用すれば、例え遠方の装甲目標でも容易く貫く威力を持つ。

その分、全長も長いし重量も重いのだが──

「痛い!」

鈍い音がした。

「アナスタシヤ!大丈夫か!」

駆け寄るミハイル中尉。

 

顛末はこうだ。

 

アナスタシヤ中尉がOSV-96を持ち上げて、

12.9Kgという重さによろけ、

近くの鉄骨に躓き、

そのまま20mm機関砲の砲身に頭頂部を──

 

「ほらー。だから言ったじゃーん。」

とヴィンセント中尉。

 

「いや、あれは」

とルドルフィーネ中尉。

「能天気と言うより....」

と宮井大尉。

 

「「天然なんじゃ....」」

2人で、同時に。

 

_______________________________

少し経って

 

 

「では、編成を発表しますね。まず私、宮井百々佳率いる雪風隊です。」

 

1番機 B-1 「雪風」 宮井百々佳大尉

2番機 B-2 「カーミラ」 ミシェル・ズボルフスキー中尉

3番機 B-3 「春燕」 王 輝華中尉

4番機 B-4 「ズーク」 ルドルフィーネ・オットー中尉

 

「続いてレジナ・ベネット少尉率いるアプサラス隊。」

「はい。私です。少尉で隊長というのもあれだと思いますが、よろしくお願いします。」

とレジナ少尉

 

レジナ・ベネット少尉。14歳。B-50105。 ロマーニャ王国・シチリア地方出身。パーソナルネーム「アプサラス」

 

1番機 B-5 「アプサラス」 レジナ・ベネット少尉

2番機 B-6 「ミンクス」 アナスタシヤ・コヴァレフスカヤ中尉

3番機 B-7 「ランヴァボン」 ヴィンセント・ブリューイ中尉

4番機 B-8 「ジルウェット」 イザベラ・ガラント中尉

 

 イザベラ・ガラント中尉。16歳。B-50108。リベリオン合衆国ミズーリ州出身。パーソナルネーム「ジルウェット」

 

「最後にセシル・グレイ中尉率いるエリゴス隊です。」

「はい。どうぞよろしくお願いします。」

 

セシル・グレイ中尉。15歳。B-50109。スオムス共和国ヘルシンキ出身。パーソナルネーム「エリゴス」。

 

1番機 B-9 「エリゴス」 セシル・グレイ中尉

2番機 B-10 「ラマッス」 ヘルマン・カーン中尉

3番機 B-11 「ガッターレ」 ヴィットリーナ・ブッツァー少尉

4番機 B-12 「オニキス」 ウォルター・サシュリン大尉

 

ヘルマン・カーン中尉。15歳。リベリオン合衆国バーモント州出身。B-50110。パーソナルネーム「ラマッス」。

 

ヴィットリーナ・ブッツァー少尉。13歳。ロマーニャ王国ロンバルディア州出身。B-50111。パーソナルネーム「ガッターレ」。

 

 

「以上が今回の作戦要員です。なにか質問は?」

と宮井大尉。

「──ありませんね?では、各員。ストライカーを装着し、武装を携帯。プリフライトチェックを行った後、雪風隊から順に発進。一応、「戦術偵察任務」という名目で作戦を発動しました。雪風隊はA4エリア、アプサラス隊はD2エリア、エリゴス隊はF7エリアにおいて戦術偵察任務を開始。作戦時間は空域到達後25分です。なお、現在においてネウロイの出現は確認されていませんが、レーダー、各自固有魔法による警戒は行うこと。各機へ幸運を。解散。」

_______________________________

武装

 

B-1:20mm汎用航空機関砲

HAM高速対空ミサイル

89式小銃

 

B-2:20mm汎用航空機関砲

HAM高速対空ミサイル

PKP ペチェネグ

 

B-3:20mm汎用航空機関砲

HAM高速対空ミサイル

QBU-88 半自動狙撃歩槍

 

B-4:20mm汎用航空機関砲

HAM高速対空ミサイル

HK416D

 

B-5:20mm汎用航空機関砲

HAM高速対空ミサイル

PSG-1

 

B-6:20mm汎用航空機関砲

HAM高速対空ミサイル

OSV-96

 

B-7:20mm汎用航空機関砲

HAM高速対空ミサイル

M249 Minimi

 

B-8:20mm汎用航空機関砲

HAM高速対空ミサイル

M82A2

 

B-9:20mm汎用航空機関砲

HAM高速対空ミサイル

SG556

 

B-10:20mm汎用航空機関砲

HAM高速対空ミサイル

Mk.17 MOD.X

 

B-11:20mm汎用航空機関砲

HAM高速対空ミサイル

AR160

 

B-12:20mm汎用航空機関砲

HAM高速対空ミサイル

C7A1

_______________________________

出撃

 

 

「さて、と。」

私が今いるのは牽引機に引かれたストライカーラックの上。目の前にはメインエレベーター。

そろそろか。と、ストライカーに足を通す。

宮井大尉の頭部から灰色の毛に包まれた獣の耳が、腰部からは同じく灰色の尻尾。使い魔のニホンオオカミが顕現する。同時にストライカーに魔力が流れ、MFNX-5010-B マジック・フェニックスMk.Xエンジンが始動する。甲高い双発のエンジン音が格納庫内で反響して、耳に心地良い。エアインテークが吸気する量を増加させ、魔力の流量も増えるのに呼応して、エンジンの音が高まり、タキシング出力。ラックに固定されているため、動きはしない。

 

「こちらB-1、雪風。宮井大尉です。雪風隊各員へ通達。最終確認。HUDcheck。」

 

「「「Normal.」」」

 

「Magic engine temperature.」

 

「「「80,normal.」」」

 

「Engine thrust」.

 

「「「Engine thrust normal.」」」

 

「よし。大丈夫ですね。司令部へ。メインエレベーターの使用許可を。」

と宮井大尉。

「こちら司令部。パメラ・スノウ少尉です。随分と遅い連絡でしたね、大尉。使用許可は出ています。」

と若干茶化しながらの応答が帰ってきた。

 

パメラ・スノウ少尉。17歳。ブリタニア連邦サウスエンド出身。フェアリィ基地所属第501統合戦闘航空団司令部オペレーター。

 

「こちら雪風、了解。では、行ってきます。」

と宮井大尉。

「幸運を。」

とパメラ少尉。

 

地響きのような音がして、メインエレベーターが始動する。同時にエレベーター通路内の照明が点灯。さらに出口の対爆シャッターが開き、濃いオレンジ色の光が差す。最大20人が乗れるメインエレベーターは、地下から滑走路までおよそ20秒で到着する。

 

夕日の光が目に痛い第5滑走路。ここがブーメランウィッチーズの滑走路だ。エリー湖に突き出した滑走路は、航空機用のそれとしては短い。だが、彼女らには充分すぎる広さだ。

 

再び地響きのような音が鳴り、エレベーターが停止。

管制塔からの指示が入る。

 

B-1.You are cleared for takeoff.

 

「Roger.」

 

エンジン出力が上昇。ラックのセーフティが解放され、足元に巨大な魔法陣が出現し、身体が宙に浮く。ホワイトノイズのような高音がさらに甲高くなり、身体が前に進む。

 

altitude restriction canceled. Return to your mission. Good luck.

 

高度制限を解除。貴機の幸運を祈る。

 

扶桑人の彼女の脳内で、ブリタニア語が扶桑語に変換される。

 

続けてB-2、離陸を許可する。という意味のブリタニア語が聞こえてきた。カーミラ、ミシェル中尉がどんどん加速していき、滑走路面から大きく離れる。

 

「こちらB-2、カーミラ。雪風、宮井大尉聞こえるか?」

「こちらB-1、雪風。宮井大尉です。感度良好。」

無線の感度チェックだ。

 

「B-3が上がる。セクター04で合流ということにしよう。」

と、ミシェル中尉。

 

「了解です。B-3、B-4。聞こえますか?こちらB-1──」

「こちらB-3。聞こえてますよ。セクター04ですね?」

「こちらB-4。ズーク。こちらも聞こえてます。もうすぐ上がるので先にセクター04へどうぞ。」

 

聞こえていたようだ。

 

「....ミハイル中尉?無線チャンネル間違えてません?」

「そんなことはない。元からオープンチャンネルのつもりだ。」

「じゃあなんで雪風と指定して」

「言葉の綾だ、隊長。早く行くぞ。」

 

あ、逃げた。

 

2番機、カーミラが増速していく。

追いかけるように雪風。少し遅れて春燕、最後にズーク。

 

「ミ、ミシェル中尉!どこ行くんですか!」

と宮井大尉。

「セクター04に決まっているだろう!」

とミシェル中尉。

「もう通り過ぎてますよぉ!」

必死で追いかける宮井大尉。

 

ピタッ。突然目の前のミシェル中尉が停止。そう、突然。

 

「突然止まってどうしたんですか!というか、避けてください!」

 

ほぼスーパークルーズ状態のスピードから減速しても、間に合わない。

ぶつかる──

目をつぶったが、衝撃が来ない。

というか、目の前にいたはずのミシェル中尉がいない。

振り向けばそこには、追いついたー!と王中尉とルドルフィーネ中尉。

後ろにいないとなれば、どこだ?

 

ヘッドバイザからHUDを展開。レーダーマップを見やれば、エリアK8へ向かう友軍機マーク。表記は.....B-2だ。

 

「....ミシェル中尉?そっち、K8エリアですよ?」

「ゑ。」

素っ頓狂な返事。

「ですから、そっちはK8エリア──」

「HAHAHAHAHAHA!知っていた!知っていたとも!あまりにもいいストライカーだと思ってな!ついつい飛びすぎてしまった!HAHAHAHAHAHA!」

 

レーダーの光点が増速。アフターバーナーを使用したのであろう、急速にこちらに近づく。

 

「....先に行ってますよ。行きましょう、王中尉、ルドルフィーネ中尉。」

「わかりました。」

「了解です。」

と、3人。

 

「ま、待ってくれ。なあ、同じ隊の仲間じゃないか。」

「私達は巡航速度で行くので、ミシェル中尉なら追いつけますよ。では。──あ、そうだ。今後、勝手な行動が過ぎるようであれば、少尉に降格させるのでそのつもりで。」

と宮井大尉。

 

なんというか、真面目がすぎて空回っている気がするな。

そんな風に考えていると、A4エリアまで1km圏内。一応、Dゾーン(安全ではない)なので、レーダーをスーパーサーチモードへ。彼女の固有魔法は広範囲走査ではなく、未来予知だ。なのでレーダーに頼り切りになる。

 

「現在空域に敵性反応無し。カーミラ、間もなく合流します。A4に到着し次第、戦術偵察任務を──」

警告音。

ロングレンジレーダーに感あり。ボギー、機数5。

「3-4-0よりボギー。機数は5。」

と春燕から報告。

「ネウロイ....だろうな。」

とズーク。

「雪風隊はこれを迎撃します。以降、通常無線は封鎖。カーミラ、ミシェル中尉。司令部へ連絡を。急ぎ合流してください。」

「了解した。司令部へ。こちらB-2、カーミラ。ミシェル中尉だ。雪風隊はこれより交戦に入る。無線は封鎖。以上だ。」

「こちら司令部。了解B-2。」

「通信終わり。」

 

_______________________________

次回交戦。




え?セシル中尉の出身地はアイルランドだからブリタニアだって?
だってスオムス出身の人欲しいじゃないですかー。
そんな事言ったら2人くらいフライトオフィサの方の名前使ってますよー?

え?セカンダリが弱すぎないかって?
原作でMP40使ってましたよね?

ともあれ読んでいただいてありがとうございます。
スーパーシルフ可愛いよスーパーシルフ。
12人分の銃器考えるのめんどくs.....大変だなぁ。それっぽいのあったら教えてください。

では、また。


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FIRST FIGHT(前編)

初陣じゃー!であえー!であえー!
はい。4話でち。
速度的にはファーンvsスーパーシルフ。武装的には超強化したモルガンvs普通の戦闘機。
さてさてさてさて。どうなることやら。
では、どうぞ。


初陣

 

 

 

「B-1より各機へ。シークエンスB4。敵機迎撃可能距離に侵入。HAM準備。マスターアームオン。ガンセーフティ解放。ブーメラン各機、エンゲージ。」

「ラジャー。マスターアーム、オン。ガンセーフティ解放。エンゲージ。」

「了解。マスターアーム、オン。ガンセーフティ解放。エンゲージ。」

「ウィルコ。マスターアーム、オン。ガンセーフティ解放。エンゲージ。」

 

それぞれの視界に緑色の枠と緑色の文字が表示される。

 

HAM READY.

 

「シーカーオープン。」

「シーカーオープン。」

「シーカー、オープン。」

「シーカーオープン。ロックオン!」

 

「ロックオン。レディ。FOX2!」

 

「FOX2。」

 

「「FOX2!」」

 

各機のストライカーの主翼(というよりは尾翼)から対空ミサイルが発射される。

同時に4機がそれぞれ散開し、ドッグファイトを始める。

 

「よし、そのまま......ビンゴ!」

B-3のミサイルが敵の1機に命中。弾性限界を超えたミサイルの速度と爆圧がネウロイの黒い装甲を吹き飛ばす。

 

「って、ありゃ?コアがないな。背面タイプだったか。」

B-3、増速。ノズルから吐き出される色が、橙色から水色に変わる。戦闘上昇。と、ネウロイからの反撃。赤いビームが多数、いや無数にB-3へ襲いかかる。

 

「うわっち、っとと、危ない危ない。」

さながら障害物競走。B-3はビームの林をすり抜け、ネウロイの直上で同航戦。

 

「よし、そこがコアね。」

B-3が20mm汎用航空機関砲を構える。砲身が回転を始め、発射炎の少し後に、射撃音。

唸るような銃声が1秒半。これでざっと150発撃った計算だ。

 

「見つけた。」

再び砲身が回転。すぐに銃声が響く。今度は0.5秒。およそ50発。

半数がコアに着弾し、爆散。本体も輝く破片と化した。

 

「B-3、1機撃墜。支援が欲しいところはありますか?」

通常無線ではない、スーパーリンクによる通信。

 

「B-1、雪風よりB-3。援護要請。挟まれちゃいました。」

「B-3了解。すぐに向かいます。」

 

 

 

さて困った。

意気揚々と迎撃しに行ったはいいものの、挟まれた。ミサイルは当たったが、再生速度が速い。

中型1機、速度はこちらより少し遅い。

大型の方は、火力は高いが中型よりは遅い。

レースなら勝てるだろう。だがこれはドッグファイトだ。しかも相手は言うなればレーザー砲のハリネズミ。

一方向から、しかも小型ならまだしも相手は大型。さらに2機同時と来た。私だって、2つのことを同時に予知出来るわけではない。

勿論、未来予知を持ってるからには当たらないという自信があるが、「もしも」を考えなければいけない。こういう時、展開したこともないへっぽこシールドが頼りない。こんな事になるなら扶桑にいる頃からシールドの練習をしておくんだった。

「雪風」が聞いて呆れるな。とんだ貧乏くじだ。

 

正面に大型。後方には中型。まだ距離に余裕はある。丁度HAMに余りがあるので、王中尉の負担でも減らそうか。

 

目標正面。

「ロックオン。」

コアまでは届かないだろう。だが。

「FOX2。」

発射されたミサイルは、迎撃のレーザーが来る前に弾着するはずだ。その為の超高速対空ミサイル。

 

そして宮井大尉は発射と同時に上昇。中型が喰いついた。

上手く分断出来たはずだ。

 

「B-3へ。大型を引き剥がしました。装甲は吹っ飛ばしたので、あとよろしくです。」

「了解!」

これで共同撃墜、1。やったね。

 

さて、集中。後方800m。機数は、1。こちらが優速で、しかし武装は圧倒的劣勢。コアの位置、不明。弾薬は余りある。

 

つまりは、だ。

 

撃って撃って撃ちまくれ!

 

バンク角マイナス45度。機首(この場合は上体)を下げて、スライスバック。縦に180度回転しつつ増速して、ヘッドオン。

双方が音速を超えているので、800mという距離はあっという間だ。

 

READY GUN.

 

中型ネウロイ、強いていえばSR-71高高度偵察機に似ている。の鼻先に照準を合わせ、トリガーを引く。さらにそこから地面に対して垂直になり、上昇しながら、素早く後方宙返り。そのまま銃口を下に向け、鼻先から縦に切るように薙ぎ払う。これでは流石に足りないので、反転して追撃。

 

「もらった!」

 

最大速で突っ込み、レーザー、あるいはビームを躱すため不規則な機動を繰り返しながら、断続的な射撃。唸る銃声が短く、連続して響く。後部中央に着弾した初発から、どんどんネウロイの黒い装甲を削っていく。計10秒は撃ったかという時に目標ネウロイが爆散。お決まりの破片になって太陽光を反射していった。

 

「B-1、1機撃墜。各機状況報告。」

「B-2、交戦中。うわっ、とにかく!おっと、私1人でなんとかなる。」

「B-3、交戦中。子機がいっぱい出てきて厳しいでーす!」

「B-4、丁度撃墜しました。B-2の援護に向かいます。」

「了解B-4。B-3の援護は私が。」

 

_________________________

時間は少し巻き戻り

 

 

「中型1機.....いや、2機ですか。」

レーダーには1機しか映らない。だが近づいて見れば分かる。同じ型のネウロイが重なって、と言うよりはくっついて飛んでいる。

すると、突然上下に分離。左右に同時ブレイク。そのまま交差を繰り返し接近してくる。

 

「速い。」

となればこちらも増速。ノズルから出る色が変わる。1度すれ違ってから追撃すればいい。目の前を埋め尽くすレーザーの海を越えながら。

 

瞬間、交差。どうせ左右に別かれて挟み込むつもりだろう。と考えて、偏向ノズルを活かした空中を滑るような急速ターン。すぐさまスロットルをMAX。予想は的中。番は別れて、左右から鳴き声を上げつつ向かってくる。

 

HAM READY.

 

ヘッドアップディスプレイの視界の左右両端ギリギリに緑の四角い枠が2つ。そして同時に赤色に変わる。

 

ロックオン。

 

「FOX2。」

 

2発のミサイルが大腿部ハードポイントから分離、白い尾を引きながら敵機、2機のネウロイに迫る。

 

炸裂。

 

敵機は2機とも胴体の1/3を吹き飛ばされ、飛行が安定していない。チャンスだ。

どうやらコアは尾部にあり、覆っている装甲も厚くはない。2機の速度が落ちている今のうち、だ。

 

2機の間をもう1度すり抜け、後ろに着く。まずは右から。

 

GUN READY.

 

「どこにコアがあろうと私にはお見通しです。」

ルビーのような両目が輝く。

 

FIRE.

 

分間3000発の20mm口径機関砲弾がB-4の右舷前方のネウロイを襲う。あっという間に胴体と尾部が別れを告げ、ただ落下するだけになったコア付き尾部を機関砲弾が引き裂いていく。

 

1機撃墜。残り、1機。

 

光り輝く破片が散る中、左舷にいる筈のもう1機に首を巡らす。どうやらまだフラフラと飛んでいる。このチャンスを逃して何がエースか。鳥のように翻り、増速。あっという間に取り付き、機関砲弾の雨を降らす。

コアが割れ、一瞬後に黒色が爆散。HUD越しの景色に、更なる彩が加わる。

すると丁度良く1番機、雪風より入電。

 

「B-1、1機撃墜。各機状況報告。」

「B-2、交戦中。うわっ、とにかく!おっと、私1人でなんとかなる。」

「B-3、交戦中。子機がいっぱい出てきて厳しいでーす!」

 

B-2が少し危なっかしい。ならば。

「B-4、丁度撃墜しました。B-2の援護に向かいます。」

そう告げる。

 

「了解B-4。B-3の援護は私が。」

 

 

__________________________________________________

短めですが、今回ここまで。許して。




ご拝読ありがとうございます。
すでにお気に入り2件頂いており、嬉しい限りです。評価までつけて頂いちゃって。ありがとうございます(必死のダブルクルビット土下座)。

え?ところでミサイル小さくないかって?
魔法をこめれば威力も大きいってリトヴャク中尉が教えてくれたんダナ。少なくとも、フリーガーハマーの1発でキノコ雲が出来るくらいには。ジャムの高速ミサイルも真っ青の威力。いや、あっちは大気摩擦で弾頭が真っ赤だけど。やめてリトヴャク中尉!402ndとTAB-14が吹き飛んじゃう!


「こんな銃火器、近接武器出して!」

「こんな展開、こんなキャラとかあったらいいよね!」
等々、色々なご意見ご感想お待ちしております。


尚中の人が冷戦期の早期警戒機並に大忙しなので次回投稿は地球にジャムが攻めて来るまで無いかも知れません。

首をバンシーⅣの全幅並に長くしてお待ちください。


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FIRST FIGHT(後編)

待たせたな(かっこいい声)
お久しぶりです。私です。なにやら色々(501JFW3期オペレーション・サウスウィンドとか いらん子中隊リブートとか音楽隊ウィッチーズとか)ありまして、遅れてしまいました。
渋谷いのりちゃん可愛いな?



B-1とB-3

 

 

「B-1よりB-3、春燕無事ですか?」

と無線越しにB-1。

「被弾はしてないけど、子機がいっぱい出てきてるね!」

とB-3。

「了解。私が子機を担当するので、B-3は本体をお願いします。」

とB-1。

「了解!」

と、正面遠く下方に見えるズーム上昇を始めたB-3。ストライカーの翼がヴェイパーを引いている。

数機の子機が引っ付いていたが、あっという間にB-3が平らげたようだ。

 

「エンゲージ。」

再び交戦を宣言。正面に見える黒い粒の集まりに突撃する。

同時に20mm機関砲を背中に回しておいた89式小銃に持ち替える。

 

89式小銃。型こそかなり古く、2024年までに扶桑陸軍からそのほとんどの姿を消した本銃だが、技術の革新が多くあった1980年代製とあって未だに本国では人気が絶えない。

信頼性もそこそこ高く、超音速の世界にも耐えうる剛性を持っている。マガジン装弾数は30+1。使用口径は5.56×45mm弾。実包は扶桑国豊和重工製のコルトコピー、連盟軍に配属されてからは連盟軍工廠製のものを使用している。

拡張性は皆無だが、出来ないわけではない。

宮井大尉は現在の扶桑国軍制式採用銃、なんというか、ベルギガ王国の某社のライフルのコピー感が否めないが、それよりもこちらの方が手に馴染むとの事で、連盟軍に配属される時に陸軍倉庫から拝借してきた。

 

 

正方形の黒い塊が大挙を成してこちらに向かってきている。

「邪魔です。」

セレクターをセーフティからセミオートへ。

子気味のいい小太鼓を叩くような音の単発連射。30回トリガーを引いたところで素早くマグチェンジ。保有しているマガジンは6個。敵機は既に落とされた数も含めておよそ48機。撃ち尽くせば機関砲があるので、そこは気にしていないが。

なによりコアのない子機の癖に連携してくるのが煩わしい。いや、母機がいるから連携してくるのは当たり前か。

そんな思考をしながら引き金を引いていく。

 

重ねて言うが私の固有魔法は未来予知だ。外すわけがない。

 

1つ、また1つと、黒い正六面体が霧散していく。

 

結局、大尉は89式の弾倉を1つと半分程残して子機を平らげてしまった。

 

「.....ふぅ。さてと、次、ですね。」

未だ紅の閃光が迸る上空を見上げ、呟いた。

 

__________________________________________________

B-3vs大型

 

「きゃあああああああ!」

ファラウェイランドの底抜けに青い空に、甲高い悲鳴が響き、続けて赤い閃光が無数に閃く。

ネウロイの黒と赤の巨体と比べて小さすぎるその影は、細かな回避運動を繰り返しながらダイブ。高度をおよそ1500m下げた辺りで急速上昇。ネウロイとすれ違い、上空で反転。

「ああああああああああああああああ!」

そのまま叫びながら20mm機関砲を乱射。魔法力がこもった20mm機関砲弾が、春燕の固有魔法によって炸裂弾になってネウロイの装甲を大きく削っていく。

 

カチン バシュー

 

変な音と煙と共に突然機関砲の射撃が止まる。オーバーヒートだ。高速で飛びながらなら銃身を冷却出来るが、低速飛行中は空冷は期待出来ない。赤熱した銃身がそれを物語る。

 

「あ゙あ゙っ!?やっべぇ!!」

言葉遣いが大変汚らしゅうございますわよ。

 

「こういう時はー.....あれでもないこれでもない....」

ゴソゴソとポケットを漁る春燕。ド○○○んかな?

 

「あった!これで!」

彼女が両手に持っているのは、一見粘土のように見えるもの。そう、プラスチック爆弾。所謂C4である。舐めるとピリッと甘いが有毒。燃やしてもじっくり燃焼して爆発しないスグレモノ。

 

おもむろに二つを一つにまとめて、そのまま急降下。

ぶつかる50mほど上空で、全力で投げつける。着弾(?)した瞬間に信号を送り起爆。すかさずQBU-88で追撃。

7.62×51mm弾が着弾する度にネウロイの巨体が悲鳴と共に揺れる。

 

しかし、まだコアが現れない。

 

すると、下方から連続した射撃音。雪風だ。

 

特徴的な、甲高い遠雷のようなエンジンの音。それが急速に上昇してくる。

 

あっという間に春燕の目の前まで来ると、静止。こちらを見つめてくる。そして

「行きますよ春燕。墜として帰りましょう。」

「ウィルコ。お腹空いた!」

会話の終了とともに左右にブレイク。一瞬前までいた場所を、太いレーザーが切り裂いていく。

 

100年以上前に、カールスラント空軍のヴェーラ・メルダース大佐(当時中尉)が編み出したロッテ戦術は、ジェットストライカーを運用している今でも有効だ。

特にウィッチにおいては。

 

「機関砲の冷却は?」

「ごめん!まだ!」

「了解。私がやります。」

「任せた!」

言うと同時に春燕は飛び出す。空になった弾倉を外し、次を叩き込む。大型に突っ込みつつ3連射、注意を春燕自身に向ける。

すると雪風が増速。クレーターのようになった大型の背面の直上に並行飛行すると、機関砲を向ける。

 

FIRE_

 

射撃とともにHUDに一々表示される文字が若干鬱陶しい気がする。

 

分間レート3000、大口径20mm、着発徹甲榴弾装填の航空機間砲が、面白いように大型の黒い装甲を削っていく。

その間にも無数の光線が襲ってくるが気にも留めず、楽々と回避する。

 

コア、露出。

およそ10秒間の投射で、機関砲は赤熱。白い水蒸気が上がっている。

すかさず89式小銃に持ち替え、トリガーを3回引く。

命中。制御を失った黒い図体は、5秒ほどふらつきながら飛行したあと爆散した。

 

《こちら第501統合戦闘航空団1番機。B-1 雪風。戦闘行動終了。損害無し。敵機の残存数、0。mission complete。RTB。ETA1947。オーバー。》




まず......この世界にNATOはありません!はい!そういう事にしておいて!そして.....89式小銃に30連マグがついてます!!夢ですね!某特殊部隊ゲームの89式も20連マグですが、増やして欲しい(切実)

あと

サイレントウィッチーズ〜スオムスいらん子中隊RE:BOOT!〜

はNOW ON SALE!!!

智ビューはいいぞ!!!!あとエルマさん可愛い!!!

ではでは皆さん、次回もレッツ、ロッテメルダースオリジナル!!


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帰路

いらん子2巻発売されましたね。エルマさんとハッキネンさんに声が。ハッキエルが捗る。エルマさんかわいい!!!!


「まさか慣熟訓練が実戦になるとは思わなかったね。皆は大丈夫かな。」

「ログには交戦開始の報告はありません。ほかの隊はとっくに帰路についてることでしょうね。」

「そっかー。戦闘は私達だけか。ついてるんだかついてないんだか。」

春燕とそんな会話を挟みフェアリィを目指す。

すると

「ズークより各機、12時方向よりアンノウン。IFF応答無し。無線にも応答が無い。警戒を。20秒後に交差する。」

「雪風了解。ブーメラン-リーダーより各機、残存兵装をチェック。報告せよ。」

「カーミラより雪風。残存兵装は機関砲及びPKP。機関砲残弾約700。PKPは300発あります。」

「春燕より雪風。残存兵装は機関砲と狙撃歩槍のみ。機関砲残弾およそ500。88は40発しかないや。」

「ズークより雪風。残存兵装は機関砲だけだ。残弾も少ない。150ちょっとだ。」

「了解。敵性航空機の場合、私とカーミラが迎撃します。2人は私達の後ろへ。....来ますよ。」

 

視界に黒点が現れ、急速に大きくなる。果たして敵か、それ以外か。

答えは

「.....YF-23?」

4人の横を通り過ぎて行った機体は、かつてノースランド・グラマーとボーニングが開発したステルス試作戦闘機YF-23の1号機、ブラックウィドウⅡそのものだった。

「誰か、あの機体のコックピット内か、もしくはなにか所属の識別が可能なものを見ましたか?」

「私には真っ黒な機体に見えたが。そもそもアレは試作機だろう。F-22に負けて、ストライカー共々リベリオン空軍博物館に展示されてるはずだ。」

「強行偵察.....と言っても私達がいまさっきやっつけた方面だったよねぇ?実は巣でもあったとか!」

「そんなものがあったら我々はとっくに地面に落ちてると思いますよ。」

「フムン。とりあえず司令部に報告だな。急いで帰ろう。」

 

「警告!レーダー照射を受けています!6時の方向!」

「レーダー照射だと!?」

「私達がネウロイに見えてるのかな」

「さっきのYF-23が反転!こちらに向かってきています!」

 

《こちらは連盟空軍所属第501統合戦闘航空団1番機。貴機の所属と目的、そしてレーダー照射の理由について説明願う。繰り返す。こちらは連盟空軍所属第501統合戦闘航空団1番機。貴機の所属と目的、そしてレーダー照射の理由について説明願う。》

雪風が問う。

 

「呼びかけましたが、先程と変わらず無線に応答無し。IFFにも応答ありません。司令部にも問い合わせてみますが....」

《こちらB-1。司令部応答願う。》

《こちら司令部。エーコ中尉だよ。またネウロイかい?》

《エーコ中尉。中枢コンピュータに問い合わせて、我が空軍がYF-23もしくはそれと類似した形状の航空機を運用してるかどうか調べてください。》

《YF-23だって?どうしたってそんなものを》

《簡潔に説明します。現在私達はYF-23らしき戦闘機からレーダー照射を受けています。無線、IFF共に応答無し。1度すれ違った後反転し、追いかけてきています。》

《どういうことだ....?待ってくれ。今中枢コンピュータに問い合わせている。フムウ、そんな機体は登録されてないけど.....。》

《B-1了解。では、敵です。准将に交戦許可を。》

《待ってくれ大尉。リベリオン空軍機かもしれん。》

《時間がありません。速度2.9。こちらより速い。部下を守る義務があります。》

《....了解した。司令部よりB-1以下4名、交戦を許可。グッドラック。》

《ありがとうございます。オーバー。》

 

「ブーメラン-リーダーより各機、空対空戦闘用意。目標、敵性航空機。FCSチェック。交戦を許可する。」

「了解。」

「了解だ。」

「了解!」

4機がそれぞれ反転。各々の攻撃を開始する。

「こちら雪風、ロックオンされた。回避する。」

同時に追尾警報。ミサイルが向かってくる。

雪風はこれを回避。アタック。

機関砲が唸り、敵機へ吸い込まれるように飛んでいき、躱される。凄まじい機動だ。あれでは中のパイロットが死んでしまう。

交差。反転しリアタック。完全に後ろを取った。そう確信した。

「さあ、フィニッシュです。」

引き金を引き、砲弾が発射され、敵機に着弾する。

 

そして、敵機が急減速、180度反転し

 

こちらに向かって落ちてくる。

 

「隊長!避けろ!」

 

爆散。

 

50メートルもなかった。破片が殺到し、バイザーを砕き、百々佳の額を裂く。ストライカーに直撃した破片が左エンジンを脱落させる。両エンジン停止。落ちる。落ちる。

高度計がデタラメな数字を刻んで、ヘルメットとバックパックに搭載された戦略コンピュータは5台のうち3台が完全に沈黙。残り2台はそれぞれがそれぞれの計算結果を打ち出している。中枢コンピュータがこれをシャットアウト。人力に切り替える。

右足に魔法力を込めると、タービンブレードが微かに回転し始める。エンジン再起動。

少しして、身体の錐揉み回転が止まる。上体を起こし、ホバリングに移行する。

右目の視界が赤い。血糊がこびりつき瞼が上手く開閉しない。

「隊長!」

この声は誰だ?春燕か、ズークか、カーミラか?左肩を誰かに担がれている。シールドがあるため目は開けるが、どこかぼんやりと霞んでいて気持ち悪い。

と、何かが視界を塞ぐ。霞んでいるが、見覚えのある顔だ。力が抜けていく。

 

深く、意識の水底へと




新年度が始まりました。皆様体調にお気をつけて、これからも推しは推せる時に推していってください。まだまだ続きます。
戦闘妖精雪風とストライクウィッチーズをよろしく。


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