Decade/Grand Order (KBS)
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サーヴァント大戦

ディケイドがまた世界を破壊したので初投稿です。


 私は夢を見た。

 

 地面は重力を忘れて浮き上がり、空は絵の具を幾つも混ぜ合わせたようにぐちゃぐちゃに歪み、まるで世界が終わったかのような光景の中に存在する、例えるなら神殿のような何か。

 

 

 そして、そこに佇む白いバックルのベルトを巻いた、一人の男性。

 

 

 顔は見えないが、何故かその人を私は知っている気がした。

 

 彼はベルトの脇に下がるホルダーからカードのような物を取り出し、空に向けて何か言っているが、距離が遠いので聞こえない。

 …ただ、なんとなくだが。唇の動きからして、最後に彼はこう言ったように思えたのだ。

 

 

 

 『変身』と――――

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 ある町に一つの写真館があった。しかし、そこに住むカメラマンの撮る写真は歪んだ写真ばかりで、いつも店に文句が殺到しては彼は店長の孫娘に怒られる。

 

 そして今日も彼、『門矢 士』は『光 夏海』に説教を喰らっていた。

 

 「いいですか士くん、写真を撮るのは勝手ですけど、士くんのピンボケ写真でお金をせびっちゃダメなんですよ!毎回苦情を聞くのは誰だと思ってるんですか!?」

 

 「客は俺に撮られたがってるが、世界が俺に撮られたがってないんだ、仕方ないだろ」

 

 そう言ってマゼンタカラーの二眼レフのカメラを弄りながら士は備え付けのソファに座りながら足を組みふんぞり返るが、それがまた夏海の癪に触った。

 

 

 「もう!反省しないんなら……秘伝!笑いのツボ!!」

 

 

 瞬間、 士の首筋にある笑いのツボに夏海の親指が素早く叩き込まれ、士は強制的に吹き出した。

 

 「あはははは、夏ミカン、はは、お前っ、ははははは!」

 

 「しばらく笑って反省してください!ふん!」

 

 強制的に笑わされ腹筋を痛ませる士を放って夏海がそのまま部屋を去ろうとしたその時、彼女は盛大にキッチンから飛び出した『平行世界(リ・イマジネーション)の仮面ライダークウガ』こと『小野寺ユウスケ』に正面衝突した。

 

 「きゃあっ!?」

 「うおあぁぁっ!?」

 

 夏海は尻餅をつくが、ユウスケは後ろに居た光写真館の店長であり夏海の祖父『光 栄次郎』に当たり、まるでドミノ倒しのように二人で共に後ろに倒れた。

 

 「いててて…店長、夏海ちゃん、大丈へぶっ」

 

 倒れたまま二人に声をかけるユウスケの顔の上を、栄次郎の腕から離れた一羽の鶏が足場代わりに進んでいく。

 

 「おっとっと、いけな……おわああぁぁっ!?」

 

 立ち上がった栄次郎は、士が現在笑い転げている部屋まで鶏を追いかけるが、捕まえようとした際に足元の紐に引っ掛かり、転びながら鶏をキャッチすると共に、背景ロールの幕が落ち、光を放った。

 

 

 「これは……」

 「新しい世界、ですか……?」

 「しっかし、なんだこの絵?北極か?」

 「南極じゃないかな?」

 

 

 笑いが収まった士、起き上がった夏海とユウスケ、そして捕まえた鶏を抱く栄次郎の一同の視線が集中する。

 この光写真館には士達しか知らない『ある秘密』が存在する。それは、この背景ロールに映し出された絵の世界へと、この写真館は転移するのだ。

 この謎の力でかつて士達は幾つもの『仮面ライダー』の世界を巡って戦い続けてきたのだ。

 

 

 そして、今回映し出された絵には『雪山の中に小さく位置する円形の施設』が映し出されていた。

 

 

 「どんなライダーの世界かはまだわからないが、行くとするか」

 

 

 そして士達は、絵から発生する光に包まれ、世界の垣根を越えた。




まだFateキャラは出ないけどゆるして


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カルデアの世界

ショッカーに拉致されて改造されたので初投稿です。


 「……なさい!起きなさい!ちょっと、聞いてるの!?」

 

 「あぁ……?」

 

 聞いたことの無い怒声を耳にした士は目を開く。

 士の傍らに立っている声の主らしき銀髪の女性は、眉間にシワを寄せ口をへの字に曲げながら士を見下ろしていた。

 

 「誰だあんた――」

 「もう邪魔よ、失せなさい!」

 

 疑問を口にしようとするが、胸ぐらを掴まれ椅子から立たされると、女性とは思えないほどの力で引っ張られ、部屋の扉の外に士は放り出されてしまった。

 

 「……なんだ一体」

 「……追い出されちゃいましたね」

 

 左から聞こえた声に士は顔を向ける。そこにはピンクブロンドの髪と眼鏡が特徴的な十代後半程度の年齢であろう少女が士を見ていた。

 

 「……お前誰だ?」

 「えっ。さっきお会いしましたよね……?」

 「あー……悪いな、少し忘れっぽいんでな」

 

 自分は会った覚えは無いが、相手が『自分が来る前のこの世界での自分』に面識が有る事に気付いた士は、適当に話を合わせる。

 

 「そうでしたか。では改めて自己紹介をさせて頂きます。私は『マシュ・キリエライト』、この『人理継続保障機関カルデア』の局員です」

 「マシュか、よろしく……とりあえずだが、俺はどうしてこのカルデアに居るのか教えてくれるか?」

 

 説明を終え、ペコリと頭を下げ礼儀正しく挨拶するマシュという少女。士は軽く挨拶を交わし、この世界の情報を得る為に次の疑問を口にした。

 

 「了解です。まず先輩は、このカルデアに集められた四十八人のマスター候補の最後の一人……一般枠として連れてこられました。

 そして先程から『オルガマリー・アニムスフィア』所長のミッションについての講義が始まっているのですが……先輩は居眠りしかけでレムレムしていたせいで所長の怒りを買ってしまい、追い出されてしまったようです。これではAチームからは外されてしまいますね」

 

 短く、それでいて詳しく事情を伝えたマシュの説明を聞き、士は心の内で呟く。

 

 (さしずめここは、カルデアの世界……って所か)

 

 「……大体わかった。正直、小難しい講義なんか聞くのも面倒だからな。どこか適当な所で休むとするか」

 「でしたら、先輩の個室へご案内します。そこならゆっくり休めますよ」

 「そうか、なら案内してくれ」

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 士はマシュに案内され、先程の部屋から少し離れた部屋の扉の前へとやってきた。

 

 「こちらの部屋です。先輩の出番はまだ時間がありますから、ごゆっくりどうぞ」

 「あぁ……というか、その『先輩』ってのはなんだ?」

 「あ、すいません。なんというか、私からしたらここに居る人はみんな先輩のようなものですので……」

 「そういうことか、大体わかった」

 「大体わかっていただけましたか。それでは、私はこれで」

 

 マシュは士に一礼すると、スタスタと足早に去っていき、先程の部屋へ戻っていった。

 

 世界を移動した時、士には警察官やバイオリニスト等、その世界に適した役職や立場が与えられる。

 

 (この世界の俺の『役割』はどうやら、あの後輩と他のマスターとやらと一緒に人理とやらを守れば良いらしいな)

 

 そう考えていたその時、士はふと視界の端に小さな動体を見つけた。傍らの観葉植物の鉢に隠れた『それ』を素早く目で追うと、そこにはフワフワとした白い毛と小柄な体躯が特徴的なリスのような生き物がおり、士を見つめていた。

 

 「……なんだコイツ」

 

 変な生き物が居た、と捕まえてマシュにでもつき出そうかと思った士は手を伸ばす。

 

 「フォウッ!!」

 

 「ぐっ!?」

 

 しかしその生き物は怒っているような鳴き声と共に、勢いよく士の手へと噛みついた。

 そして、士の手を噛み千切らんと牙を立てる生き物を、士は苦痛に顔を歪めつつ引き剥がす。生き物は士に引き剥がされると脱兎の如くさっさと廊下に逃げていった。

 

 「痛て……なんだあの変なのは……」

 

 

 痛む手を押さえつつ士が個室に入ろうとしたその時だった。

 

 

 

 

―――――――ドォォォォンッッ!!!

 

 

 

 

 「なっ……!?」

 

 

 カルデア全体に響くような轟音と共に、廊下の向こうから小さな火の粉が士の頬を掠めた。そして、緊急事態を知らせるアナウンスがカルデアに鳴り響く。

 

 「い、一体なんだぁっ!?」

 

 すると何故か士の個室から白衣の男が飛び出し、士には目もくれず慌てた様子で火の手の上がる方へ走り出していった。

 

 「……確か、さっきのマシュとかいうのがあっちの部屋に向かったな……俺も行くとするか」

 

 カルデアの説明や部屋まで案内された恩も一応ある、ということで士も白衣の男を追うように走っていった。

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 士が辿り着くと、火の元である管制室は案の定火の海と化していた。先程の轟音から察するに爆発でも起きたのか、天井や壁も一部崩落し、士が探していたマシュもまた、巨大な瓦礫の下敷きにされていた。

 

 「マシュ!」

 「ぁ……せん、ぱい……?」

 

 士の声で意識を少し取り戻したのか、マシュは血を垂らしながら頭を上げ、生気が消えかけている瞳で士を見上げた。

 

 「マシュ、今どけてやる」

 「……でも、私はもう……」

 「…………」

 

 士の瓦礫をどけようとする手が止まる。本人の言う通り、下半身が瓦礫に潰されるという致命傷を負ってしまっている以上、マシュの生存は絶望的なのは士もわかっていた。

 

 『システム レイシフト 最終段階に移行します。

 西暦 2004年 1月30日 日本 冬木

 ラプラスによる転移保護 成立。

 特異点への因子追加枠 確保。

 アンサモンプログラム セット。

 マスターは最終調整へ入ってください。』

 

 「先輩……早く、逃げないと……」

 「逃げるさ。ただしお前を助けてからな」

 

 士には意味が理解出来ないアナウンスが喧しく鳴り響く中、士はバックル状態の『ディケイドライバー』を取り出し、腰に当てるとバックルからベルト部分が飛び出し士の腰に巻きつく。

 

 「あ……その、ベルト……」

 「少し待ってろ」

 

 士が左腰に出現した『ライドブッカー』を開き、『仮面ライダーディケイド』のカードを取り出そうとしたその瞬間。

 

 『コフィン内マスターのバイタル

 基準値に 達していません。

 レイシフト 定員に 達していません。

 該当マスターを検索中……発見しました。

 適応番号48 門矢 士 を

 マスターとして 再設定 します。

 

 アンサモンプログラム スタート。

 霊子変換を開始 します。』

 

 『レイシフト開始まで あと3』

 

 「…………あの………せん、ぱい」

 

 マシュは痛みを堪え、士の手を握り、声を絞り出す。

 

 『2』

 

 「その、ベルトは………」

 

 夢で見た、世界の終わりのような光景の中に佇む人物が巻いたそのベルトの正体を聞く為に。

 

 『1』

 

 「へんし――」

 

 『全工程 完了。

 ファーストオーダー 実証を 開始 します。』

 

 

 互いに言いかけたその時、マシュと士を光が包んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――しかし、この時誰も気づけなかった現象が一つあった。

 

 

 

 

 

 

 光に包まれる直前、ライドブッカーから一つの光が飛び出し、マシュの身体へと入っていった事を。



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炎上

家族をデストロンに皆殺しにされたので初投稿です。


 ――声が聞こえた。

 

 「マシュ……目を覚ますんだ、マシュ……」

 

 ……だれ、ですか?

 

 「僕の事はどうでもいい……ただ、君に問いたい。君は、この世界を守りたいかい?」

 

 ……守りたい、です。まだ私は、やるべき事が残っている気がしますので。

 

 「……なら、力を貸そう。僕の力を君に全て託す。ただし、そうすれば君の時間はさらに縮まる事になる。それでもいいかい?」

 

 ……お願いします。

 

 「わかった……そうだ、もう1つ、君に伝える事があった」

 

 ……何でしょうか?

 

 「……君が幼い頃に僕は君の中にやってきた。しかし今、『もう1人』入ってきたようだ」

 

 もう1人……?それは、どういう――

 

 「すまない、時間だ。そろそろ君の肉体も意識を取り戻すだろう。健闘を祈るよ、どうか僕の力を役立ててくれ」

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 「……おい!おい、起きろマシュ!」

 

 「……ぅ…」

 

 士の声がマシュの意識を現実へ引き戻す。ぬかるんだ地面から体を起こし泥を払い落とすと、マシュは周囲を見回し、状況を確認する。

 現在マシュと士の周りには、瓦礫が火の粉を散らしながら燃え続けていた。

 

 「ここは……」

 「なんでも、レイシフトとかいうのをしちまったようだ。さっき通信してきた奴が言ってただけだが」

 「……通信は回復したのですか?」

 「少しだけな。端的に状況を伝えられて切れちまったよ。なんでもここは、2004年の日本らしい」

 「2004年の、日本ですか……?しかし、こんな記録は日本には……」

 

 マシュが知る限り、日本はこのような火の海ではなかった。自分の認識が間違っていたのかと少し不安になったが、落ち着いた声で士は説明する。

 

 「らしいな。確かさっきの奴は、ここを特異点だとか呼んでいた……っていうかお前、その格好はなんだ?」

 「え?」

 

 士に服装を指摘され、マシュは自分の体を見回す。そして、近くに落ちていた割れた鏡を見る限り、そこには明らかにいつもとは違う自分が映っていた。

 

 ピンクブロンドの髪は黒く、紫の瞳も真っ赤に色を変化させ。

 服も白衣から少々露出の多いボディラインが出やすく、黒をベースに黄色と赤のラインが入った物となり。

 さらに左胸には奇妙なマークと腰にも白のベルトが巻かれていた。

 

 「これが……私?」

 

 マシュは自分の身体をペタペタと触る。身体のサイズが変わったわけではないが、何処か力が漲っている感覚が有った。

 

 「俺が意識を取り戻した時には、もうお前その姿になってたぞ」

 「まさか……これが彼が授けてくれた力……?」

 「……彼?」

 

 声だけが聞こえ姿の見えなかった英霊が、マシュの脳内に浮かび上がる。彼が残りの力を自分に託すと言い残し、消滅したのは確かに覚えていた。

 

 「……恐らく、私にこの力をくれた英霊です。しかし、真名どころかクラスも告げずに消滅してしまいました」

 「そうか……だが、その力は多分ソイツとは違う力だろうな」

 

 ほぼ確信に変わっていたマシュの予測を、士は違うと言い切る。

 

 「……違う力、とは?」

 「俺は今のお前の姿に似た姿になる奴を知ってる。恐らく、お前の中にソイツの力が入っちまったのかもな」

 「そうなんですか……では、あの時の彼の力は一体……」

 「……もしかしたら、2つの力が1つに混じってそうなってるのかもな」

 

 マシュの力の原因を探っている中、カルデアからの通信を知らせる電子音が響き、小さな画面が士とマシュの前に現れ、カルデア医療スタッフ『ロマニ・アーキマン』が画面の向こうに姿を現す。

 

 『門矢くん、マシュは目覚めたみたいだね』

 「あぁ」

 『マシュ、今自分がどのような状態なのかは理解できているかい?』

 「はい……今の私は『デミ・サーヴァント』として存在しているのですね」

 『その通り。人間に英霊を融合させ、サーヴァントの力を扱えるようにする……君はどうやら、デミ・サーヴァントとなることで奇跡的に助かったらしい』

 「はい。なんとなく理解は出来ています」

 

 『それなら話は早い。門矢くん、僕らカルデアの使命は歴史を歪める特異点の修正だ。早速マシュと共にその特異点の修正にあたってくれるかい?』

 

 「大体わかった。だが、どうすればこの特異点とやらは修正される?この大火事を消火しろってか?」

 

 茶化すように言い、士は今も傍らで燃え上がる炎と瓦礫を一瞥し、画面に視線を戻す。

 

 『残念だけど違うね。今君たちが居る町には、本来の歴史では観測されない異常な魔力反応が発見されているから、それを断てばいい。だがまずはこの通信を安定させたいから、向かってほしい場所があるんだけど、構わないね?』

 「あぁ。何処だ?」

 『その特異点の何処かに霊脈のターミナルが有るはずだ。だからそこまで――』

 

 しかし、言いかけたところでカルデア側の設備の限界が来たのか、ロマニからの通信は途切れた。

 

 「霊脈がどうこう言っていたな……とにかく行くとするか」

 「そうですね、善は急げです」

 

 

 霊脈地を探す為、特異点を修正する任務を任された士と、英霊から力を託されたマシュは、歩き始める。

 炎上し汚染された都市、冬木での戦いが間もなく幕を開ける。



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第一遭遇者・カルデアの所長

変身コードがセタップから大変身に変わったので初投稿です。


 「先輩先輩、見てくださいこれ」

 「なんだ?」

 

 カルデアとの通信を安定させる為、霊脈地を探すマシュと士。その途中でマシュは歩みを止め、士を呼び止める。士が振り向くと、そこには身長とほぼ同じサイズの盾を持ったマシュが居た。

 

 「……何処にあったそんなの」

 「何か武器になるものが無いかと探して歩いていたら、このベルトから出た光の粒子がこの盾のようになりまして……」

 「……どうやら、早速その盾の使い所らしいな」

 

 士に言われて気がついたのか、剣や槍や弓を持った骸骨兵四体が前後に二体ずつの体勢で二人を取り囲んでいた。

 

 「……意思の疎通は不可能。敵と判断します!」

 「……変身はしなくても充分だな。行くぞ」

 

 マシュは盾を、士はライドブッカーをガンモードへ変形させ、構える。

 

 ≪GI、GAAAAAAAA!!≫

 

 一体の骸骨兵が吼え、それが開戦の合図というように一斉に骸骨兵は襲いかかる。

 

 「やあぁっ!」

 ≪GAAA!≫

 

 マシュは盾と共に槍を持つ骸骨兵へ突撃し、横から襲ってくるもう剣を持つ骸骨兵を蹴飛ばし怯ませると、素早く盾を横薙ぎして叩き壊す。

 

 ≪GIIIIAAAAA!!≫

 「フン……」

 

 何処に声帯が在るのかは不明だが、奇声を発しながら弓を構える骸骨兵は士に向けて矢を放つ。

 士はライドブッカーから発射されるエネルギー弾で的確に矢を撃ち落とし、さらに骸骨兵の肩の関節を撃ち抜くと、トドメに頭を撃ち抜く。

 

 ≪GAAAAAA!≫

 「お前で最後か」

 

 二体目の剣を持つ骸骨兵は本能のままに士に剣を振るうが、後退しながら士は回避し、ライドブッカーをソードモードへと変形させ、まず剣を持つ手を斬り落とす。それでも動きを止めはしない骸骨兵を、士は二つに斬り裂いた。

 

 「……戦闘終了。なんとか、なりましたね」

 「あぁ……しかし、なんだコイツらは?」

 「恐らく、魔術で動かす人形と思われます。これから先も多分襲ってくるでしょうから、細心の注意を払って進むべきです」

 「あぁ。しかしお前、結構強いんだな」

 「いえ、そんな事ありません。戦闘訓練では私はいつも最下位でしたし……多分、私に宿っていた英霊の力だと思います」

 「そうか……」

 

 武器を利用しつつも、基本は己の肉体で戦う姿に、士はマシュの中に入った『もう一人』の人物を突き止めつつあった。

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 一息ついてから再び士とマシュは霊脈地を探す為歩き始める。前からの奇襲に備えられるようにマシュが前を歩き士を先導する形で進んでいると、マシュは唐突に立ち止まる。

 

 「……どうした?」

 「……何か、聞こえませんか?人の声のような……」

 「声だと……?」

 

 マシュと士は目を閉じ、耳を澄ませた。

 よく聞くと、炎が燃え盛る音に混じり、女性の声のようなものが近くから聞こえてくる。

 

 「この声は……どこかで聞いたことがあるような気がするな」

 「……所長の声、のような気がします。とにかく、行ってみましょう!」

 

 マシュと士は感覚で声のする方向へ走る。

 すると本当に、オルガマリーが三体の骸骨兵から逃げ回る姿がマシュと士の目に映った。

 

 「何なの、何なのよコイツら!?なんだって私ばっかりこんな目にあわなくちゃいけないの!?もうイヤ、助けてよレフ!いつだって貴方だけが助けてくれたじゃない!」

 

 今にも泣きそうな顔でオルガマリーは骸骨兵達から逃げ、この場に居ない『レフ・ライノール』へと助けを求める声を上げていた。

 

 「オルガマリー所長!」

 「あ、貴方達!?ああもう、一体何がどうなってるのよぉぉぉっ!」

 「いいから下がってろ。マシュ、ソイツを頼むぞ」

 「了解です!」

 

 オルガマリーをマシュに任せ、士は再びライドブッカーをガンモードにすると、トリガーを押し続けて連射する。『クラインの壺』から無限に供給されるエネルギー弾は尽きること無く、骸骨兵達の体を蜂の巣にする。

 

 「……こんなもんか。おいあんた、無事か?」

 

 塵に還る骸骨兵達から踵を返し、士は後ろを向く。オルガマリーは士とマシュの顔を交互に見ながら、呟くように言った。

 

 「……。………どういう事?」

 「所長……?ああ、私の状況ですね。信じがたい事かもしれませんが、今は――」

 「サーヴァントとの融合、デミ・サーヴァントでしょ。そんなの見ればわかるわよ。問題なのは、それがどうして今になって成功したのかって話よ!

 いえ、それ以上に貴方!私の演説に遅刻した一般人!」

 「なんだ?」

 「「なんだ」じゃないわよ!なんでマスターになってるの!?サーヴァントと契約できるのは一流の魔術師だけ!アンタなんかがマスターになれるハズないじゃない!その子にどんな乱暴を働いて言いなりにしたの!?」

 

 癇癪を起こすオルガマリーに対して、士はやれやれといった感じにため息を吐く。

 

 「誤解にも程があるな。マシュ、面倒だから状況の説明を頼む」

 「了解です。所長、落ち着いて話を聞いてください。その方がお互いの状況管理もしやすいですから」

 「……わかったわよ」

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 「……以上です。私達はレイシフトに巻き込まれ、この冬木に転移してきました。他に転移したマスター適性者はいません。所長がこちらで合流できた唯一の人間です。でも希望が出来ました。所長がいらっしゃるなら、他に転移したマスター適性者も……」

 「……居ないわよ。それはここまでで確認しているわ……認めたくないけど、どうして私と貴方とソイツがレイシフト出来たのかわかったわ」

 

 自分達以外にも仲間が居るのではないかという僅かな希望をオルガマリーは遮り、頭に浮かび上がった結論を口にする。

 

 「生き残った理由に説明がつくのですか?」

 「消去法……いえ、共通項ね。私も貴方もソイツも、『コフィンに入っていなかった』。生身のままのレイシフトは成功率が激減するけどゼロにはならない。一方、コフィンにはブレーカーがあるの。成功率が95%を下回ると電源が落ちるのよ。だから、彼等はレイシフトそのものを行っていない。ここにいるのは私達だけよ」

 「なるほど……流石です所長」

 「落ち着けば賢い奴なんだな」

 「それどういう意味!?普段は落ち着いてないって言いたいワケ!?」

 

 士としては褒めたつもりなのだが、それがオルガマリーの勘に障るのか、再びオルガマリーは士を怒鳴る。しかし、ここは落ち着かなければいけないと判断したのか、咳払いをしてから士に向き直り、口を開く。

 

 「……まあいいでしょう。状況は理解しました。門矢 士。緊急事態ということであなたとキリエライトの契約を認めます。ここからは私の指示に従ってもらいます。……まずはベースキャンプの作成ね。いい?こういう時は霊脈のターミナル、魔力が収束する場所を探すのよ。そこならカルデアとも連絡が取れるから。それで、この街の場合は……」

 「このポイントです、所長。レイポイントは所長の足元にあると報告します」

 

 マシュに指摘され、少し冷や汗を垂らしつつ余裕の表情を見せる。

 

 「うぇっ!?あ…そ、そうね、そうみたい。わかってる、わかってたわよ、そんな事は!」

 「絶対わかってなかっただろ」

 

 捲し立てるようにわかっていたと口にするオルガマリーに、士は容赦なく指摘する。

 

 「わかってたわよ!!……マシュ。貴方の盾を地面に置きなさい。宝具を触媒に召喚サークルを設置するから」

 「……だ、そうです。構いませんか、先輩?」

 「別に良いと思うぞ」

 「……了解しました。それでは、始めます」

 

 マシュが地面に盾を置くと、盾を中心に光が周囲を包み、青く輝く小部屋のような空間が形成された。

 

 「これは……カルデアにあった召喚実験場と同じ……?」

 

 マシュが空間を見渡していると、ロマニからの通信が入り、画面が映る。

 

 『シーキュー、シーキュー。もしもーし!よし、通信が戻ったぞ!二人ともご苦労様、空間固定に成功した。これで通信も安定するし、補給物資だって――』

 

 ロマニが喜びの表情を見せる中、マシュと士を押し退けてオルガマリーは画面の向こうに怒鳴る。

 

 「なんで貴方が仕切ってるのロマニ!レフは?レフはどこ!?レフを出しなさい!」

 『うひゃあぁああ!?しょ、所長、生きてらっしゃったんですか!?あの爆発の中で!?しかも無傷!?どんだけ!?』

 「どういう意味ですかっ!いいからレフはどこ!?どうして医療セクションのトップがそこに居るの!?」

 『……なぜ、と言われても僕も困る。自分でもこんな役目は向いてないと自覚してるし。でも他に人材が居ないんですよ、オルガマリー』

 

 ロマニは死亡したと思われていたオルガマリーの生存に驚きながらも、冷静に現状を伝える。

 

 『現在、生き残ったカルデアの正規スタッフは僕を入れて二十人にも満たない。僕が作戦指揮を任されているのは、僕より上の階級の生存者が居ないためです。レフ教授は、あの管制室でレイシフトの指揮を取っていた。あの爆発の中心に居た以上、生存は絶望的だ』

 「そんな……レフ、が……?いえ、それより、待って、待ちなさい、待ってよね」

 

 レフ・ライノールという信頼に足る人物を失ったショックから、膝から崩れ落ちかけたオルガマリーは踏みとどまり、目を見開きながらロマニに問う。

 

 「生き残ったのが二十人にも満たない?じゃあマスター適性者は?コフィンはどうなったの!?」

 『……47人、全員が危篤状態です。医療器具も足りません。何人か助けることは出来ても、全員は――』

 「ふざけないで、すぐに凍結保存に移行しなさい!蘇生方法は後回し、生き残らせるのが最優先よ!」

 『ああそうか、コフィンにはその機能がありました!至急手配します!』

 

 通信画面からロマニの姿が消え、バタバタと物音が聞こえてくる中、マシュは驚きながら呟いた。

 

 「……驚きました。本人の承諾無く凍結保存を行うのは犯罪行為です。なのに即座に英断するとは。所長として責任を負うことより、人命を優先したのですね」

 「バカ言わないで!死んでさえいなければ後でいくらでも弁明できるからに決まってるじゃない!」

 

 マシュに八つ当たりするように怒鳴り散らすと、オルガマリーはうつむき、頭を掻きむしりながら呟く。

 

 「大体、47人分の命なんて私に背負えるワケないじゃない……!死なないでよ、頼むから……ああもう、こんな時レフが居てくれたら……!」

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 数分後、再び画面にロマニが映り、状況を報告した。

 カルデアはその機能の八割を失っており、ロマニの判断で残った人材をレイシフトの修理、カルデアスとシバの現状維持に割いており、外部との通信が回復次第補給を要請し、カルデア全体を立て直すという。

 

 『……報告は以上です』

 「結構よ。私がそちらに居ても同じ方針をとったでしょう……はあ。ロマニ・アーキマン。納得いかないけど、私が戻るまでカルデアを任せます。レイシフトの修理を最優先で行いなさい。私達はこちらでこの街……『特異点F』の調査を続けます」

 『うぇっ!?所長、そんな爆心地みたいな現場、怖くないんですか!?チキンのクセに!?』

 「……ほんっとう、一言多いわね貴方は。今すぐ戻りたいのは山々だけど、レイシフトの修理が終わるまでは時間がかかるんでしょう。この街に居るのは低級な怪物だけだとわかったし、デミ・サーヴァント化したマシュと、なんか変な武器を持ってる門矢 士がいれば安全よ。事故というトラブルはどうあれ、与えられた状況で最善を尽くすのがアニムスフィアの誇りです。

 これより、門矢 士、マシュ・キリエライト両名を探索員として、特異点Fの調査を始めます。とはいえ、現場のスタッフが未熟なので、ミッションはこの異常事態の原因、その発見に留めます。解析・排除はカルデア復興後、第二陣を送り込んでからの話になります。貴方もそれで良いわね?」

 「大体わかった。構わないぞ」

 

 士は正直長いのでほとんど聞き流していたのだが頷いた。

 

 『了解です。健闘を祈ります、所長。あと、これからは短時間ですが通信も可能ですよ。緊急事態になったら遠慮なく連絡を』

 「……ふん。SOSを送ったところで、誰も助けてくれないクセに」

 『……所長?』

 

 オルガマリーは小さく愚痴のように呟くが、すぐに目線を戻した。

 

 「なんでもありません。通信を切ります。そちらはそちらの仕事をこなしなさい」

 

 そう言って通信を切るオルガマリーに、マシュは少し不安そうな表情で提案する。

 

 「……よろしいのですか?ここで救助を待つ、という手もありますが……」

 「そういうワケにはいかないのよ……カルデアに戻った後、次のチーム選抜にどれだけ時間がかかるか。人材集めも資金繰りも、一ヶ月じゃきかないわ。その間に協会からどれほど抗議があると思っているの?最悪、今回の不始末の責任としてカルデアは連中に取り上げられるでしょう。そんなことになったら破滅よ。手ぶらでは帰れない。私には連中を黙らせる成果がどうしても必要なの。

 ……悪いけど付き合ってもらうわよ、門矢 士、マシュ。とにかくこの街を探索しましょう。この狂った歴史の原因がどこかにあるはずなんだから」

 

 オルガマリーが一通りの方針を決めたその時。

 

 

 「オ話ハ終ワッタカナ?」

 

 

 「……!?な、何!?」

 

 そこに立っていたのは、人の形をした影。恐らく二人組と思わしき影は、気配も感じさせずに三人の後方に居た。

 

 「この反応……サーヴァント!?」

 「……さっきの奴等よりは強そうだな」

 「さ、下がってください先輩!あの二人は、歴史に残った英雄が現界したサーヴァントなんです、さっきの骸骨兵とは次元が違いすぎます!」

 

 そんなマシュの言葉を聞き流し、士は前に出る。そしてディケイドライバーを腰に巻いた。

 

 「歴史に残る英雄の力を使うって言うのなら、俺も同じだ」

 

 そして、ライドブッカーからカードを取り出す。

 

 

 今、世界の破壊者(ディケイド)の新たな戦いが幕を開ける。




遅くなった上にクッソ長くなったけどゆるして


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破壊者の資格

獣人帝国に腕輪を狙われているので初投稿です。


 「変身」

 

 『KAMEN RIDE: DECADE!』

 

 左右のサイドハンドルを引きバックルを90度回転させ、カードを装填しサイドハンドルを押し込むと、ディケイドライバーを通してカードという形で二次元に封じられたライダーのエネルギーを三次元へと解放し、内部の『トリックスター』と呼ばれる秘石がエネルギーを具現化させる。

 九人のライダーの幻影が士に重なると共に、未知の鉱石『ディヴァインオレ』により構成されたスーツが士の体を包み、頭部に七枚の『ライドプレート』が刺さるように装着されると、モノクロのアーマーにマゼンタカラーが彩飾されていく。

 

 そして、士は『仮面ライダーディケイド』へと変身した。

 

 「さて、片付けるか」

 「……ソウカ。貴様ガ『ディケイド』カ……」

 「面白イ。ソノ首ヲ撥ネ飛バシ、聖杯ヘノ生贄ニシテヤロウ!」

 

 布のようなものを纏った片方の影は口元と思わしき部分を吊り上げほくそ笑み、二人の影は槍や短刀といった各々の得物を構える。ディケイドもまたライドブッカーをソードモードにし、刃を撫でるようになぞり、構えた。

 

 「マシュ、所長を頼むぞ」

 「……は、はい!」

 「な、何なのよこれ……どうなってるの!?」

 

 サーヴァントの襲来と未知の姿へその身を変えた士という、脳を混乱に陥れるのに充分な状況に狼狽えるオルガマリーを後ろに下げ、マシュは地面に設置したままの盾を手に持ち、構える。

 

 先に仕掛けたのは槍を持つ大柄の男の影。繰り出される連続突きをディケイドはライドブッカーのプレート部分を盾にして受け止め、いなし、弾きながら肉薄する。

 

 「ヤルナ、ディケイド……ダガ、マダコレカラダ!」

 「お前に付き合ってる暇は無いんでな。これで終わりだ」

 

 ライドブッカーの刃を槍と拮抗させながら、素早く左手でサイドハンドルを開いてカードを取り出し、落とすように装填し、サイドハンドルを押し込む。 

 

 『ATTACK RIDE:SLASH!』

 

 機械音声と共にカードから解放された次元エネルギーがライドブッカーの刀身を分身させ、槍を影の手から弾き飛ばし、一振りで連続の斬撃を叩き込み、影は断末魔の声を上げながら消滅した。

 

 「さて……」

 

 残るもう一体の影も倒す為、ディケイドは周囲を見渡す。しかし、もう一体は既に消えていた。

 

 「……逃げたか?」

 「逃ゲルモノカ」

 「!そこか!」

 

 呟いた直後後ろから聞こえた声にディケイドは振り向くが、既に何も無く。返答の代わりのように短刀が飛んでくるが、素早くライドブッカーをガンモードに変形させ撃ち落とす。

 

 「闇ニ潜ムハ我等ガ得手……サア、見ツケテミルガイイ……」

 「……大体わかった。マシュ、しっかり盾で守れよ」

 「えっ?」

 

 そう言うとディケイドはトリガーを押しながらその場を中心に一回転。ディケイドの周囲に弾丸がばら撒かれ、マシュは困惑しつつも言われた通りに己とオルガマリーの身を守りきり、近くの瓦礫に身を隠していた影は弾丸を避ける為に空中へ飛び上がった。

 

 「やはりそこか」

 『ATTACK RIDE:BLAST!』

 

 ディケイドは出てくるのを既に理解していたかのように、再びカードを装填し、先程のようにライドブッカーを分身させ、弾丸は自動的に影を追いかけ、連続で影の体を撃ち抜き、消滅させた。

 

 「……こんなもんか」

 

 ライドブッカーをブックモードに戻して元の位置に戻すと、手についた埃を落とすように手を払うと、マシュ達へと近づいていく。

 

 「マシュ、もういいぞ。盾を戻せ」

 「は、はい……」

 

 マシュが盾を地面に戻すと、再び先程の空間が広がる。すると、マシュに守られていたオルガマリーが声を上げた。

 

 「門矢 士……貴方は、何なのよ」

 「……俺は通りすがりの仮面ライダー…まあ、ディケイドだ」

 

 ディケイドが冷静に告げると、背後からパチパチと拍手する音が響いた。

 

 「中々やるじゃねえか、仮にもサーヴァントを一撃とはな」

 「……誰だ」

 

 ディケイドは振り向きながらカードを取り出そうとライドブッカーに手をかけるが、謎の力で取り出そうとしていたカードは弾き飛ばされた。

 

 「おいおい、話くらい聞いてくれてもいいんじゃあねえか?」

 

 そこに立っていたのは、杖を持ち、フードを被った男性だった。彼はフードを外し、青い髪と赤い瞳を露にしながら口を開く。

 

 「オレは『キャスター』。この聖杯戦争に呼ばれたモンだ。敵対する気はねえよ」

 

 



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バトル援軍・新サーヴァント

天と地と人が悪を倒せと俺を呼ぶので初投稿です。


 『聖杯戦争』。

 それは万物の願いを叶える『聖杯』を奪い合う戦い。

 七人のマスターと、彼らと契約した七騎のサーヴァントがその覇権を争い、最後に残った一組のみが、聖杯を手にし、願いを叶える権利が与えられる。

 

 「……まさか、日本で聖杯戦争が行われていたとは……」

 「……気にするのはそこじゃない。どうしてこんな事になってるのかだ。単なるサーヴァント同士の戦いで、こんな事になるか?」

 

 驚くマシュに対して変身を解除した士は冷静に告げる。そして、キャスターの方へと向き直った。

 

 「……ここで何が起きたか、あんたは知ってるんだろ?教えてもらおうか」

 「いいぜ。教えてやるよ」

 

 キャスターは近くの瓦礫に腰を下ろし、士達にも座るように促してから事の顛末を語り始めた。

 

 「まず起きたのは、聖杯戦争のすり替わりだ。街は炎に包まれ、人間は居なくなり、サーヴァントだけが残った。

 そして、次はセイバーの突然の凶暴化だ。アイツ、水を得た魚みたいに暴れ始めて、他のサーヴァント達を襲い始めやがった。そして、オレ以外は皆倒された。残るはオレとセイバーだけ……と思いきや、セイバーに倒されたサーヴァントは何故か座に戻ることなく留まり、暴れ始めた。しかもサーヴァントを優先的に狙ってだ。今のところ残ってるのはオレ一人だけだから、オレだけが狙われるはずだったんだが……少し事情が変わったみてえだな」

 

 キャスターは行儀よく膝に手を置いて瓦礫に座っているマシュを見る。少し考え察したのか、マシュはハッとして口を開いた。

 

 「まさか……さっきのサーヴァント達は、私を狙って……?」

 「多分そうだろうな。オレは魔力を隠してなるべく奴等から遠く離れてたから、突然近くに現れた魔力に惹き付けられたんだろう」

 「……それでは、私は離れた方が……?」

 「バカ言わないで、マシュ。貴方が今離れたら誰が私達を守るのよ」

 「しかし……」

 「まあ、マシュが居なくなったら困るのは事実だ。正直、俺と所長の二人きりなんてたまったもんじゃない」

 

 茶化すように士がわざとらしくため息を吐いて言うと、オルガマリーが声を荒げる。

 

 「はあ!?私の方こそお断りよ!こんな無愛想で不敬な俺様男なんかと一緒なんてね!」

 「何っ……?」

 「……ふふふ……」

 

 とんでもない言い様に流石にカチンと来た士はオルガマリーと互いに睨み合う。まるで漫才のようなその光景は、知らず知らずの内にマシュの顔には笑みが浮かんでいた。

 

 「はっはっは、妙な奴等だなまったく。さて、本題に話を戻すとするか」

 

 ケラケラと笑っていたキャスターは笑顔を消し、地面に杖の先端で適当な町の地図を描きながら言う。

 

 「おおかたあんたらはこの聖杯戦争の異常解決の為に来たんだろ?なら目指すべきはここだ」

 

 そう言いながらキャスターはある点を杖で小突いた。

 

 「ここに、この街の心臓である『大聖杯』がある。あんたらが探せば良いものはそれだ。だが、そう簡単にもいかない。問題はまだまだ多いからな」

 「問題……?」

 「大聖杯にはセイバーの野郎が居座ってやがる。オレ一人じゃ到底勝ち目は無え。せめてランサーで呼ばれてりゃ、一刺しだってのになぁ……」

 

 頭をポリポリと掻きながら、キャスターは残念そうにため息を吐く。

 

 「まあいいや。次の問題は、セイバーにやられて汚染されたアーチャーとバーサーカーだ。バーサーカーは迂闊な事が無けりゃ滅多には近付いてこないから、少し遠回りすりゃいいが、アーチャーが少し面倒だ。その名の通り弓兵だから眼が良い。大聖杯に行くなら、最低でもこいつとセイバーを相手しなきゃならねえ」

 「……大体わかった」

 「……り、了解です」

 「…………」

 

 キャスターの話を聞くと、士はいつもの一言で済ませ、マシュは不安そうな顔をしつつも了承し、オルガマリーは目を閉じ、顎に手を当てて少し考えていた。

 

 「……所長?」

 『待ったマシュ。彼女は今、何か打開策を考えているようだ』

 

 考えは纏まったのか、オルガマリーは目を開き、真剣な目付きで士を見つめ、言った。

 

 「門矢 士、こちらも英霊を呼び出すわよ」

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 オルガマリーと士は、地面に置かれたマシュの盾を見下ろしていた。盾は光に包まれており、静かに辺りを照らしていた。

 

 「いい、門矢 士?さっき教えた英霊召喚の方法は?」

 「……この石を三つ、盾の中に放り込む。それだけだろ?」

 「ええ。始めなさい」

 

 言われた通り士は盾に向けて虹色の『聖唱石』を三つ放り込む。すると盾から光が浮かび上がり、回転して広がると、一気に収束し、周囲を強い光が包んだ。

 

 突然だが、『触媒』というものを知っているだろうか。召喚を行う際、英霊となった人物に縁のある物を召喚陣の中へと置けば、それは触媒となり、ランダムに英霊が選択される中で、ほぼ確実にその人物を呼び出す事が出来る。

 

 そして、先程キャスターと出会った時の事を覚えているだろうか。突如現れた彼を士は警戒し、あるカードを使おうとするも彼の魔術により弾かれた。

 

 もしそのカードが『召喚陣として置いてあったマシュの盾』の上に落ちたら。

 それで召喚を行ってしまったら。

 

 呼ばれる英霊はただ一つ。

 

 

 「………あぁ?何だここはぁぁぁ!?」

 

 

 「お前は……」

 「お、鬼のサーヴァント…!?」

 「誰が鬼だコラァ!オレは『イマジン』だっての!」

 

 二本の角に紅い身体。刺々しいその見た目はまさに鬼そのものだが、彼は鬼ではない。

 

 「モモタロス……なぜお前が?」

 

 「こっちが聞きてーよ!」

 

 

 彼の名は『モモタロス』。仮面ライダー電王である『野上良太郎』青年と契約した『イマジン』である。



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超トレーニングの乱入者

戦いの時は今で戦いの時が来たので初投稿です。


 時の列車『デンライナー』。

 『時の砂漠』と呼ばれる異空間を走り、時を越えるこの列車に普段はモモタロスは良太郎やハナ、他のイマジン達と共に乗車している。

 しかし、モモタロスが言うには突然デンライナーが止まってしまったという。

 

 「線路がよ、こう……パッと消えちまったんだよ、前も後ろもな。そんでお手上げだと思ってたら、いきなりここに呼び出されたって訳だ。チクショー、ナオミのコーヒー飲もうとしてたとこなのに良いとこで呼び出しやがってよぉ!つうかあちぃなここ!!」

 

 ……まあそれはそれとして。現在マシュはキャスターと共に修行に励んでいた。

 経緯はこうである――――

 

 「……嬢ちゃん、アンタ宝具を使えねえな?」

 

 「……はい。私は、この盾やこの姿が何の宝具に由来する物なのかも理解できていません。この力をくれた英霊は、すぐに消えてしまいましたから……」

 「……よし、じゃあオレが出せるように鍛えてやるよ。立ちな、宝具を出せるようみっちり鍛えてやるぜ」

 

 ――――というわけで、現在マシュはキャスターの攻撃を受け続けているのだ。魔術により飛んでくる光弾を盾で何度も弾き続けているが、マシュは既に限界に近かった。汗を滝のように流し、ゼイゼイと息を切らし、足を震わせながら、なんとか立ち続けていた。

 

 「オラオラどうした!そんなんじゃ宝具なんざ使えねえぞ!」

 「ハァ…ッ、ハァ…ッ!」

 「そら行くぞ!しっかり防げ!」

 「っ……!ぐぅっ!」

 

 キャスターは少し強めに光弾を放つ。マシュも必死に受け止めるが、デミ・サーヴァントであってもやはり人間。自分を支える体力もほぼ残っておらず、マシュは後ろに倒れかける。

 

 「……おい、やり過ぎじゃないのか」

 

 モモタロスとオルガマリーと共に座りながら眺めていた士は口を開く。流石に止めるべきと思い、ディケイドライバーを巻こうとするが、バックルを持つ手をオルガマリーが掴み、止めた。

 

 「……何すんだ、放せ」

 「やめなさい門矢 士。これはマシュへの試練なの。マシュ自身が乗り越えなきゃいけないのよ」

 「……わかってる。だが――」

 

 「あの子は、今はアンタのサーヴァントよ。もし手を出すなんて真似をしたらどうなるかわかる?きっとあの子は心から強くなりきれず、必ず肝心な時に不安になるわ。マスターのアンタが、あの子の不安を煽るような事をしてどうするのよ」

 

 「………わかった。だが、本当に殺す勢いになったら止めるからな」

 

 真剣な声色と落ち着いた口調でオルガマリーは士を諭す。士は悪態を吐きながらバックルをしまい、再びマシュへと視線を戻す。

 

 「これならどうだ?受け止めきるにゃ宝具を使ってみなァ!」

 「くっ…!」

 

 キャスターは先程の光弾を連続でマシュに向けて放つ。マシュは足元を隆起させる程に力を込め、盾を力一杯支えるが、盾で受け流し、近くの瓦礫に当てるのが精一杯だった。

 

 「……ほう、中々堅いじゃねえか。宝具を使わないまま防ぎきるたぁな」

 「ハァッ…!ハァッ…!まだ、倒れませんっ…!」

 

 しかし、キャスターはさらに出力を上げた光弾を放とうと、杖により多く魔力を込め始める。

 

 

 

 ――――しかし。この時誰もが予想出来なかった事態が発生した。

 

 

 

 

 ―――ズガアアアァァァァンッ!!!

 

 

 

 

 「■■■■■■■■■■――――――ッ!!!!」

 

 

 

 「何!?」

 「えっ!?」

 「何じゃありゃぁぁぁぁぁ!?」

 「ひぃっ!?」

 「あれは…!?」

 

 突如炎と瓦礫をくぐり抜け、巨人のような影がマシュとキャスターの間に割り込んだのだ。

 

 「おいおい、よりによってこのタイミングかよ……!」

 

 そう、このサーヴァントこそがキャスターが警戒していた『バーサーカー』だった。



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ライバル怪盗いらっしゃいませ

青い海原穢す奴と緑の平野を枯らす奴は赤い砂塵を巻き上げて銀のマシンで迎え撃つので初投稿です。


 「クソッ、戦闘の音を聞きつけて来やがったってのか!?」

 「修行は中止だ、離れろ!」

 

 バーサーカーの突然の乱入に驚愕し、キャスターは距離を置くため下がる。

 しかし、眼前の恐怖に捕らわれたマシュは足を動かすことが出来なかった。

 

 「マシュ、逃げなさい!早くっ!!」

 「あ……ぁ……」

 

 既に体力もほとんど限界を迎えているのも相乗し、マシュの足は棒切れにでもなったかのように動かない。

 勿論近くに居る動けない獲物を見逃す訳は無く。バーサーカーは雄叫びのような声を上げながら大剣をマシュに向けて振り下ろした。

 

 「■■■■■■■■――――!!」

 「っ……!」

 

 

 「待てコラァァァッ!!」

 

 

 死を覚悟し目を閉じるマシュだが、怒声と共に金属同士がぶつかり合う音が響き、マシュへの攻撃はギリギリの所で停止する。

 マシュが目を開くと、そこには赤い青竜刀型の武器『モモタロスォード』を手にマシュの前でバーサーカーの攻撃を受け止めているモモタロスの姿があった。

 

 「も、モモタロスさん……!?」

 「いい加減に俺にも戦わせろってんだよ!マシュマロ!お前さっさと逃げろ!どうせそんだけ疲れてんだから戦えねーだろ!」

 「マシュマっ…!?わ、わかりました…!」

 「ナイスタイミングだモモタロス、変身!」

 『KAMEN RIDE: DECADE!』

 

 モモタロスに間違った名前の呼ばれ方をしつつも、マシュはオルガマリーの近くまでフラフラと退く。

 そして士はディケイドへ変身し、モモタロスがバーサーカーの大剣を根性で弾き飛ばすのとほぼ同時に、ライドブッカーでバーサーカーへと切りかかった。

 

 「ハッ!」

 「どおりゃあぁぁぁ!!」

 「■■■■■■■!!!」

 

 互いの武器が確かにバーサーカーの肉体に傷を負わせるが、瞬時に再生するのを見たディケイドは一歩退き、ライドブッカーからカードを三枚取り出す。

 

 「速攻でケリをつける他無いな」

 『KAMEN RIDE:FAIZ!』

 『FORM RIDE:FAIZ AXEL!』

 

 ディケイドは一枚目の『仮面ライダー555』のカードで555の姿になり、さらに二枚目のカードで555のパワーアップ形態である『アクセルフォーム』へとさらに姿を変える。そして、D(ディケイド)555はアクセルフォーム最大の特徴である能力を発動させる為、左手首に備わった『ファイズアクセル』のスイッチを押す。

 

 『START UP

 

 スイッチを押すと同時に十秒のカウントが始まり、D(ディケイド)555以外の世界の動きが減速する。正確には彼自体がが加速しているのだが。

 アクセルフォームは、ブレスレット型のファイズアクセルのスイッチを押すことで、十秒の間だけ自分の速度を通常の一千倍に跳ね上げる能力が存在する。

 そして、三枚目の金色に輝く555のライダークレストが描かれたカードをベルトに装填した。

 

 『FINAL ATTACK RIDE:FA・FA・FA・FAIZ!』

 

 右足に『ファイズポインター』が出現すると、そのままD(ディケイド)555は駆け出し、赤の円錐状の光を五連続でバーサーカーの体へロックオンし、僅か十秒の間で全ての光を潜ってバーサーカーの体へ『アクセルクリムゾンスマッシュ』を叩き込んだ。

 

 『THREE、TWO、ONE…TIME OUT

 

 ファイズアクセルが加速終了を知らせると共にアクセルフォームは解除され、通常の555の姿へと戻る。D(ディケイド)555は崩れゆくバーサーカーの姿がそこにある事を確信し、余裕の態度で後ろを振り向く。

 

 しかし。

 

 「■■■■■■――――ッ!!」

 「馬鹿な……!?」

 「士、避けろぉっ!!」

 

 モモタロスの声も間に合わず、D(ディケイド)555は近くの瓦礫にクレーターを作る勢いで、全く攻撃の効いた様子の無いバーサーカーに吹き飛ばされた。

 

 「ぐ……っ!」

 「先輩っ……!!」

 

 ダメージが多大だったのか、D(ディケイド)555は呻きを上げながら変身が解除されてしまう。マシュはオルガマリーと共に士へ駆け寄った。

 

 「先輩!しっかりしてください先輩!」

 「クソッ…油断した……!」

 「その体じゃ無理よ、止めなさい!」

 

 すぐに再変身しようとする士だが、カードを持つ手をオルガマリーが止めた。サーヴァントの中でも特に攻撃力の高いバーサーカーの一撃が直撃したとあっては、いくらスーツが守ろうと士本人には確実にダメージが通っていた。

 その一方、キャスターと協力しながらモモタロスはバーサーカーと渡り合っていたが、流石に体力自慢のモモタロスにも限界が近づいていた。

 

 「ンニャロォッ!」

 「そらッ!」

 

 モモタロスはバーサーカーの腰を蹴り、そのまま斬りつける。キャスターは頭部目掛けて光弾を放ち、わずかながらバーサーカーの視界を奪った。

 

 「■■■■―――!!」

 「くそったれ、ホントに攻撃効いてんのか!?」

 「諦めんなよ、鬼!効いてなくても、やるしかねーだろ!」

 「だから鬼じゃねえっ!あぁクソッ、なんか良い肉体でもありゃ良いのによ……!」

 

 文句を言いながらバーサーカーの攻撃を弾くモモタロスと、遠隔から光弾を撃ち続けるキャスター。

 モモタロスは憑依できそうな人間を探そうと周囲を見回すが、無論そんな人間は一人しか居ない。一か八か、モモタロスは士へむけて大きく声を上げる。

 

 「おい士!お前の体使っても良いか!!」

 「……あぁ、良いぞ!好きなように使え!」

 

 今自分は動けないが、モモタロスが憑依すれば違うと悟った士は腕を広げ自分の肉体のコントロールを手放し、モモタロスの体は透明になり、士の中へとモモタロスは飛び込むように憑依した。

 士の髪の一部と瞳が赤くなり、髪型は髪を全体的に跳ねさせたオールバックへと変化する。

 

 「いよっしゃあ!こっからは本気だぜぇ!」

 

 モモタロスが入った士はディケイドライバーを外し、その代わりに『デンオウベルト』が腰に現れ、四つの『フォームスイッチ』の内、一番上の赤のスイッチを押し、手に持った『ライダーパス』を『ターミナルバックル』の前へセタッチする。

 

 「変身ッ!」

 

 『SWORD FORM

 

 M(モモタロス)士の体にフリーエネルギーによって生成されるスーツが装着され、さらにモモタロスの赤のオーラアーマーが合体し、そして桃の形を連想させる赤の『電仮面』が変形しながら装備される事で、『仮面ライダー電王 ソードフォーム』へとM(モモタロス)士は変身した。

 腰の左右に出現した『デンガッシャー』を剣状に組み上げると、電王はそのままバーサーカーへ向かっていく。

 

 「行くぜ行くぜ行くぜぇ!!」

 「■■■■■■■――――!!」

 

 電王はバーサーカーの大剣による攻撃を潜り抜け、デンガッシャーでバーサーカーの肉体を切り裂く。しかし、一太刀浴びせた程度ではバーサーカーの回復力ですぐに治された。

 

 「チッ、ならコイツで一気に決めるぜ!」

 『FULL CHARGE

 

 バーサーカーから離れ、ライダーパスをもう一度セタッチすると、音声と共にベルトからデンガッシャーへとエネルギーが伝わり、デンガッシャーの赤く染まった刀身『オーラソード』が勢いよく射出される。

 

 「俺の必殺技……パート2!」

 

 指揮棒のようにデンガッシャーを右から左へ振るうと、射出された刀身がその軌道の通りにバーサーカーの肉体を切り裂き、次は左から右へとデンガッシャーを振るうと、再び同じ軌道でバーサーカーを刀身は切り裂き。

 トドメにデンガッシャーを振り上げ、一気に振り下ろすと、刀身は一気にバーサーカーを両断する――

 

 ハズだった。

 

 ―――ガキンッ!!

 

 「んだとぉっ……お、俺の必殺技が……!?」

 

 バーサーカーにはほとんどダメージは通っておらず、最後の一撃は刀身が弾き返されてしまった。

 次はこちらの番とでも言うように、バーサーカーは大剣を連続で振るい、電王を追い詰めようとする。

 

 「■■■■■■■■■■―――――ッ!!」

 「うぉ、てめっ、ちょ、待てコラッ!」

 

 士の肉体が万全であれば大したことは無かったかもしれないが、ダメージを受けた肉体に遠慮したのか、モモタロスは反撃が出来ないまま、近くの瓦礫まで追い込まれてしまう。

 

 「や、ヤベェッ……!」

 「■■■■■■■■!!!」

 「おいコラ、デカブツ!オレを忘れてんじゃねえっ!」

 

 キャスターも何とか援護に回り光弾を放つが、バーサーカーの肉体にはかすり傷一つも付きはしなかった。

 

 「何っ…!?コイツ、まさか――」

 

 先程の攻撃が一切通用しなくなった事からキャスターは一つの結論に辿り着く。もしこれが本当だとすれば、自分達はとんだ悪手を打っていた事になると、キャスターは確信した。

 

 

 しかし、その時。

 

 

 「その通り。このサーヴァントに連続の攻撃はいけないのさ。何しろすぐに肉体が対処しちゃうみたいだからね。だから……」

 『FINAL ATTACK RIDE:DI・DI・DI・DIEND!』

 

 

 どこからともなく声が響き、突如現れた青緑色の光のカードの渦が、バーサーカーの心臓をロックオンする。そして、光線がバーサーカーの胸を貫き、バーサーカーは消滅した。

 

 「こんな風に一撃で決めなきゃいけないのさ」

 「この攻撃……まさか」

 

 デンオウベルトを外して変身を解除し、モモタロスが体から出た士は、声の主が近づいてきている事を察知する。おおよそわかっているが。

 

 「やぁ士。ナマコは食べられるようになったかい?」

 

 変身を解除し、そこにはニヒルな笑みを浮かべる青年、『海東 大樹』が立っていた。



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ノーブルファンタズム

姉を殺された上に脳以外の部分をサイボーグにされたので初投稿です。


 「海東……」

 「やはり君もこの世界に来てたんだね、似合ってるよその服と髪型。ところで、珍しく一人旅かい士?」

 「……生憎だが夏ミカンもユウスケも、この世界に来た時に別れたみたいだからな。今はそこの後輩と、うるさい所長とイマジンと、場数を踏んでそうな英霊とここを探索中だ」

 「ふむ……」

 

 事情を聞き、頷きながら順番に士の後ろに居る三人の顔を海東は見る。そして最終的に、マシュへと視線を合わせた。

 

 「ねえ君、名前は?」

 「えっ、あ、マシュ・キリエライトです……」

 「ふーん……士は今、彼女に夢中なんだね。嫉妬しちゃうな~」

 

 海東のマシュへの視線が品定めをするような目に変わる。若干の恐怖を覚えたマシュは少し後退った。

 

 「妙な事を言うな。それより、何しに来た?」

 「もちろん、この世界のお宝を頂く為に決まってるじゃないか。僕が何をしているか忘れたかい?」

 

 海東 大樹は、世界を股に掛ける怪盗である。彼は時には非人道的なものも使い、様々な手段でその世界の『お宝』を盗み出し、士の邪魔をすることも多々あった。

 

 「……それよりも士、何か悩んでるみたいだね。手伝ってあげるよ」

 「……何?」

 『KAMEN RIDE』

 「変身」

 『DIEND!』

 

 海東はライダーカードを見せるように左手に持ち、銃型の変身装置『ディエンドライバー』を右手に持つと、ライダーカードを装填し、銃身を前に押し出す。士のディケイドライバーと同様に、音声と共にカードに封印されたエネルギーが実体化の待機状態に入る。

 そしてディエンドライバーを真上に掲げ、掛け声と共に引き金を引くと空へとライダーの紋章が発射され、紋章は13枚のライドプレートへと変化し、赤、青、緑の幻影が海東に重なると、ディケイドと同じくディヴァインオレで構成されたスーツが海東を包む。

 そして、浮かんでいたライドプレートが頭へ刺さると、モノクロのスーツはシアンカラーに彩飾されていった。

 

 「海東、お前まさか――」

 『ATTACK RIDE:BLAST!』

 

 『仮面ライダーディエンド』へと変身した海東は、無言でマシュへと銃口を向け、カードを装填する。そして引き金を引くと、士が使うものと同様に銃口が分身し、マシュへと一気に迫った。

 

 「っ、あぁぁっ!」

 

 マシュは盾を構え、何とか踏ん張ろうとするが、先程自分を恐怖で動けなくしたバーサーカーを一撃で撃破したような者が相手だと体が怖じ気付いたのか、力なく吹き飛ばされた。

 

 「チッ、味方のフリしやがった敵って訳か!」

 「邪魔しないでおくれよ」

 『KAMEN RIDE:RIO-TROOPER!』

 

 キャスターは杖を持ち、ディエンドへと向かっていこうとするが、ディエンドライバーの持つライダーカードに描かれたライダーを召喚する能力で呼び出されたライダー兵隊、ライオトルーパーズに囲まれてしまう。

 

 「盗っ人野郎、てめえ勝手におっ始めてんじゃねーぞ!」

 「君も邪魔だよモモタロス、彼と遊んでなよ」

 『KAMEN RIDE:SASWORD!』

 「ケッ、またソイツか!今度はブチのめしてやるぜぇ!」

 

 サソリを象った紫の仮面ライダー、サソードを召喚すると、このライダーと以前戦った記憶があるモモタロスは武器を構えて突撃する。

 

 「さて……士、行くよ?」

 「……あぁ、来いよ海東」

 『FINAL ATTACK RIDE:DI・DI・DI・DIEND!』

 

 ディエンドは必殺技のカードを装填し、銃口を士へと向ける。光のカードがライオトルーパーズとサソードを回収しながら士の胸をロックオンする。

 しかし、まるで待っているかのように士は動こうとしない。

 

 「おい士!何してやがんださっさと逃げろ!」

 「ボーッと突っ立ってるな、死ぬぞ!」

 「門矢 士!逃げなさい、早く!」

 

 モモタロス、キャスター、オルガマリーが必死に声を上げるが、士は一歩も動かなかった。

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 先程の人物に吹き飛ばされ、私は気を失いかけているのだろう、意識や視界がハッキリとしていない。

 

 ≪……マシュ……マシュ!≫

 

 誰かが私を呼ぶ。しかし、その声を私は聞いたことが無い。誰かの必死の呼び掛けも無下にしてしまうようで申し訳ないが、私は重い瞼を閉じた。

 

 ≪マシュ……俺はここにいる、目を開けてくれ≫

 

 まだ、謎の声は聞こえる。軽くなった瞼を開くと、そこは炎上している冬木ではなく、真っ白な景色が辺りに広がる奇妙な空間。

 さらに、まだ奇妙なものはある。今、私の前に立っている一人の男性と思わしき人物。彼の体は全身が黒く、大きな真っ赤な目、今の私と同じマークが左胸にあり、彼の頭や胸の辺りや手首足首などに刻まれている黄色と赤のライン、そして白いベルト。

 ただ、彼の大きな目は見えるが、顔の全体像だけが霞がかって見えない。

 

 ≪よかった、ようやく俺に気付いてくれたか≫

 ≪貴方は、誰ですか……?≫

 

 私に力をくれたあの英霊とも違うこの人物に、私は疑問点が幾つも湧いてくる。何故私を知っているのか、何故この場所に彼と共に居るのかと、挙げ出せばキリがないが。

 

 ≪俺は―面―イ――ブラ――、君に力を与えた英霊の一人だ≫

 

 ノイズがかかったように一部が聞こえなかったが、彼が私に力を与えたとはどういう事だろうか。確か、私に宿った英霊は一人の筈では……?

 

 ≪……時間がないな。このままでは士くんがやられてしまう≫

 ≪えっ……先輩が、危ないんですか?≫

 ≪ああ。だから俺は君をここに呼び出した。これから言うことをよく聞いてくれ≫

 

 私は頷く。 先輩に危機が迫っているというのなら、私は放っておく事など出来ない。

 

 

 ≪君に力の使い方を教える。時間がないから手短に話すことになるが――≫

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 そして、士達へと視点は戻る。

 

 ディエンドは引き金を引き、士へとエネルギー波を発射した。士は仲間の必死の呼び掛けも無視し、動きはしない。このままでは確実に士はバーサーカーと同じように消し飛ばされるだろう。しかし、間に合わない。

 

 絶望しかけたその時だった。

 

 

 「あああぁぁああぁぁぁ―――っ!!」

 

 

 なんとマシュが士の前に飛び込み、盾を地面へ突き立て、構えたのだ。

 

 「……ようやく来たか、マシュ」

 

 さらに、その盾から魔法陣のようなものが展開され、エネルギー波から完全に士とマシュを守った。

 

 「……ようやく使えたみてえだな、宝具を」

 

 キャスターは弟子の成長を喜ぶ師のようにニヤリと笑うが、これだけでは終わらなかった。

 

 「先輩を傷付ける者は……誰であろうと許しません!!」

 

 マシュは盾から手を離し、腹部の前で握り拳を合わせる。すると、ベルトが光を放ちながら赤い部分が回転し、マシュにエネルギーを供給していく。

 マシュは再び盾を持つと同時に飛び上がり、マシュのエネルギーが伝わり燃え上がる盾をディエンドに向け構える。

 

 「たぁぁあああぁ―――っ!!」

 

 そのまま重力に従いディエンドへと急降下し、盾を使ったタックルはディエンドを大きく後退させる。

 しかし、まだ終わらない。マシュは再び盾を地面に突き立て、今度はそれを踏み台にしてより高く飛び上がる。

 

 「でやぁああぁぁぁ―――っ!!!」

 

 燃える右足を前に突き出し放ったキックは、ディエンドを吹き飛ばし、大ダメージを与える。

 

 「これは、まずいな……一旦退かせてもらうよ」

 『ATTACK RIDE:INVISIBLE!

 

 カードを一枚装填し、ディエンドは透明化してさっさと逃げていった。

 ぜぇぜぇと息を切らしていたマシュは、士の方へ振り向く。

 

 「やりましたよ、先輩……私、宝具を出せました……」

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 「……結構痛かったなぁ」

 

 海東は変身を解除し、近くの瓦礫へと隠れていた。先程のタックルやキックのダメージは予想以上だったのか、体を撫でて呻く。

 

 「全く……悪者役も楽じゃないね。士が困ってたからやってあげたけど」

 

 愚痴をこぼしながら、海東は燃える街へ消えていった。



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ツンツン不器用の破壊者

ゴルゴムを許す気は毛頭無いので初投稿です。


 「やったわね、マシュ。おめでとう」

 「スゲーじゃねーかマシュマロ、お前強えんだな!」

 「やるじゃねえか嬢ちゃん、よくやったな」

 「はい、ありがとうございます――」

 

 マシュが宝具を使えるようになった事に対して、皆が祝福の言葉を送る中、照れつつもマシュは頭を下げる。しかしそこで体力が完全に尽きたのか、マシュは倒れた。

 

 「うおおおい!しっかりしろマシュマロ!」

 「マシュ!」

 「だ、大丈夫です……少し休めば、また動けます……」

 

 幸いモモタロスとオルガマリーが急いで受け止めたが、マシュは苦笑いを浮かべ、平気そうに笑いかける。

 しかし、何か違和感を感じたキャスターは士の方に顔を向け、言った。

 

 「……あの嬢ちゃん、凄かったぜ。褒めてやらねーのか?」

 

 しかし当の士は、周囲を胸に下げているピンクのカメラで撮りながら、興味無さげに言った。

 

 「……別に。サーヴァントは宝具が使えて当たり前なんだろ?なら当たり前の事が出来るようになっただけだろ」

 

 「ちょっと……何よその言い草は?」

 

 しかし、士の言い分が癪に障ったオルガマリーはマシュから離れ、睨みを利かせながら士の前に立つ。

 

 「仮にもアンタのサーヴァントが身を挺して護ってくれたっていうのに、マスターのアンタは感謝やお礼の一つも無いわけ!?そんなサーヴァントとの信頼関係も築けないような奴、マスター失格よ!」

 「……別に、あの程度なら俺だけで充分だ。寧ろあそこで宝具を使えてなかったら俺が犬死にする所だったんだが」

 「何ですって……!」

 「この際はっきり言ってやる。お前らは邪魔なんだよ、俺はこの先一人で行く。ついてくるなよ」

 

 そう吐き捨てるように言い放つと、士はさっさと大聖杯があると言われた洞窟へと向かっていった。

 

 「お、おい……言い過ぎだぜ士!」

 

 ピリピリとした空気から逃げるように、モモタロスもマシュをオルガマリーに任せ、士を追いかけ走る。その様子を見ていたキャスターは無言で佇んでいた。

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 やがて士とモモタロスが見えなくなると、疲労困憊の状態のマシュは盾を支えに立ち上がった。

 

 「マシュ、まだ無理をしては駄目よ。第一、あんなマスターの為に戦うことなんてないわ。貴方が傷付いても平気でいる最低のマスターなのよ?」

 

 オルガマリーは肩を貸してマシュを支えながら言うが、マシュは苦し紛れのような笑みを浮かべてオルガマリーから離れる。

 

 「……所長、私は大丈夫です。先輩の事なら、それなりにわからせていただきましたので。さぁ、行きましょう!早く先輩に追いつかないと!」

 

 そう言いながら走り去っていくマシュに、オルガマリーは開いた口が塞がらなかった。

 

 「ど……どういうことなの……?なんで、あんな事言ったマスターを信頼できるわけ……?」

 『あー、あー……所長、ちょっと良いですか?』

 

 オルガマリーが呆気に取られながら呟いていると、ロマニからの通信が入り、画面が映る。

 

 「な、何よ……?」

 『そのですね……一応僕も医療スタッフなので、士くんやマシュのバイタルチェックや健康状態の管理は今も欠かさず行っているんですけど……先程の士くんの発言というか暴言はですね、その時のバイタル的に多分……照れ隠しかと』

 「……………はぁ?」

 

 オルガマリーは素っ頓狂な声を上げた。

 

 そして思った。

 

 「アイツ……めんどくさっ!!」

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 一方その頃、士はついてくるモモタロスに目もくれず洞窟内部をずかずかと突き進んでいた。

 

 「おい士、聞けよコラッ!」

 「…………」

 「……聞けってんだよコンニャロー!!」

 「ああもうやかましい……何だ」

 「最初から反応しろよ、ったく……お前よぉ、なんでマシュマロのこと避けてんだ?」

 

 モモタロスが疑問を投げかけると士は足を止め、前を見ながら呟くように言った。

 

 

 「……ああするしか無かったとはいえ、マシュに宝具を覚えさせる方法が強引過ぎた。あそこで俺がさっさとバーサーカーを片付けていれば、もう少し安全に覚えられた筈だ……別に、負い目を感じてる訳じゃないからな。覚えておけ」

 

 

 そう言うと士はまた歩みを進める。モモタロスは少しその場に立ち尽くしたが、小さく笑うとまた士を追いかけた。

 

 ―――その光景を見ている者の存在も知らず。

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 「―――下らん友情ごっこは終わりだな。さっさと消えてもらおうか」

 

 影の弓兵はそう言いながら黒き弓に矢を番える。『千里眼』の力で遥か遠くの目標へと狙いを定め、弦を引く。

 

 ―――しかし、それを邪魔する者が二人。

 

 「そうはさせないよ」

 「邪魔すんな、良いとこなんだからよ」

 

 「何ッ……!」

 

 銃弾と光弾が弓兵へほぼ同時に放たれる。飛び退き回避した弓兵は、洞窟の中に広がるこの空洞の天井近くに現れた者を見上げる。

 

 「やぁ、王様を守る忠実な騎士様。お城のお宝を頂きに来たよ」

 「残るはテメーとセイバーの二騎だけだ。覚悟しな」

 

 そこに居たのは蒼い怪盗と青い術者。彼らは合流し、別のルートからこの空洞へと辿り着いたのだ。

 

 「馬鹿な……!入り口はライダーが守っていたハズ、どうやって……」

 「無論、倒させてもらったよ。こう見えて僕は手段は選ばないのでね」

 「一対二ってのは少し流儀に反するが、この際言ってもいられねえ。何しろオレ達も必死なんでな」

 

 余裕の笑みを浮かべながら二人は飛び降り、着地する。杖と銃を構え、弓兵と一触即発の空気が空洞を満たす中、士とモモタロスもまた合流した。

 

 「……海東!」

 「ありゃ、盗っ人野郎にマジシャン野郎じゃねーか!どうやって先回りしやがった!?」

 「っ……!おのれ、ディケイドまで合流したか……」

 

 士とモモタロスに気を取られた弓兵の隙を二人は見逃さず、素早くそれぞれの弾を撃ち、爆煙を発生させて目眩ましをしてから、士達の横へと並び立った。

 

 「やるぜ、鬼。女にばっか任せてオレ達男がサボってちゃしょうがねえ!」

 「おうっ!ここからは俺達のクライマックスだぜぇ!!」

 

 「行くよ士。たまにはレディの道を切り開こうじゃないか」

 「……あぁ」

 

 士はディケイドライバーを巻き、モモタロスはモモタロスォードを構える。

 

 

 男達の戦いが、始まろうとしていた。



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2つの弾、1つの矢

俺達が望むものは平和なので初投稿です。


 「変身!」

 

 『KAMEN RIDE:DECADE!』

 

 士はディケイドに変身すると、ディエンドと共に銃弾を撃ち牽制しながら、先へ進もうと駆け出す。

 

 「士、ここは僕が引き受けてあげるよ。君は早く先に行きたまえ。君もだモモタロス」

 

 「……頼む。行くぞモモタロス」

 

 「わぁったよ、任せるぜ盗っ人野郎!」

 

 『KAMEN RIDE:KABUTO!』

 

 その場をディエンドに任せ、ディケイドはモモタロスを掴みあげると二枚のカードを取り出し、まずは『仮面ライダーカブト』の姿へ変身すると、もう一枚を装填する。

 

 『ATTACK RIDE:CLOCK UP!』

 

 カブトの持つ加速能力『クロックアップ』を発動し、モモタロスを連れてその場を離れる。

 

 

 しかしその時、既に手は打たれていた。

 

 

 いつの間にか放たれていた赤く輝く魔弾がクロックアップに追い付き、ディケイドの右腕へと命中したのだ。

 

 「ぐあっ……!」

 

 「うおあぁぁっ!?」

 

 クロックアップが解除され、ディケイドはその場に倒れ、モモタロスは投げ出された。

 何故クロックアップした状態のディケイドに攻撃が命中したのか、理由は簡単である。ただ単に移動方向を予測して撃ったのだ。

 

 「どれ程恐ろしい能力を使ってくるかと思ったが……速いだけか。ならば、大したことはないな」

 

 「ば、馬鹿な……クロックアップが追い付かれるだと……!?」

 

 「雑談の余裕はあるのかね?」

 

 空気を切る音がディケイドの耳に入る。音の方を向くと、先程の魔弾が軌道を変え、こちらに迫ってきていた。

 

 「ちっ……もうその手は喰うか!」

 

 ディケイドは魔弾を弾こうとライドブッカーを構える。

 

 しかしその時、アーチャーが密かにほくそ笑んでいたのには誰も気付かなかった。

 

 魔弾はディケイドの目前に迫ったその時、唐突に大爆発を起こし、爆煙が辺りを包む。

 

 「士ぁぁぁっ!!」

 

 「おいおい、嘘だろ……!」

 

 キャスターは焦り、モモタロスは叫ぶ。返事は無く、ディケイドが居た場所には爆煙が静かに舞っていた。

 

 「心配は要らない。よく見たまえ」

 「あぁ……?」

 

 ドサリと音を立てて爆煙から人影が倒れるが、よく見るとそれはディケイドではなく、ディエンドが呼び出していた『仮面ライダーガイ』だった。ガイをカードに戻すと、ディエンドは晴れた爆煙の中に居るディケイドへと近付いた。

 

 「海東、お前……」

 「どうしたのさ士、平和な世界ばかり回ってきたせいで身体が鈍ったんじゃないか?」

 「……うるさい」

 「そう拗ねないでよ。早く行きたまえ」

 「……わかっている」

 『KAMEN RIDE:KUUGA

 『FORM RIDE:KUUGA DRAGON!』

 

 ディケイドはスピードに優れた『仮面ライダークウガ ドラゴンフォーム』へ変身すると、強化されたジャンプ力で一気に洞窟を飛び上がり、出口へ向かった。

 

 「チッ、逃がすわけには……!」

 

 ディケイドを追撃しようと弓を構えるアーチャーへと、銃弾が迫る。アーチャーは素早く剣を投影し、銃弾を弾いた。

 

 「無視するなよ、君の相手は僕だ。悪いけど、僕は今大事なお宝()に傷を付けられて怒っている。手加減はしないぞ」

 

 怒気を孕んだ声でアーチャーを威圧するディエンド。キャスターとモモタロスは武器を携え、横で構える。

 

 

 「……そういや、俺なんで一人で変身出来ねーんだ?………まあいいや、行くぜ行くぜ行くぜぇ!!」

 

 

 ふとモモタロスの脳裏に浮かんだ疑問は、燃え上がる闘争心に消えていった。




(遅れてしまい)本当に申し訳ない

これも全て体調不良と新パルテナの鏡といぬやしきって奴等の仕業なんだ(責任転嫁)

(これからは投稿ペースを戻そうと思うので)すいません許してください!何でもしますから!


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召喚 ホッパー・ブラザーズ

時代をゼロから始めて伝説を塗り替えるので初投稿です。


 「鬼、弓を使えねぇように押さえろ!」

 「任せろぉっ!」

 

 魔力をチャージする為に集中しようとするキャスターの指示を受け、近付けば剣を抜かざるを得ない状況に追い込めると素早く判断したモモタロスは一気にアーチャーへ向かって走る。

 

 「接近戦なら彼等も得意分野だろう」

 『KAMEN RIDE:KICK HOPPER!』

 『KAMEN RIDE:PUNCH HOPPER!』

 

 ディエンドは射撃でモモタロスの進行を援護しつつ、『仮面ライダーキックホッパー』と『仮面ライダーパンチホッパー』を呼び出す。二人のライダーは俯いた状態からアーチャーへと顔を向けるが、ため息を吐きながら再び俯き、愚痴をこぼすように呟く。

 

 「いいよなアイツ(モモタロス)は……どんな奴からも信頼されて……それに比べて俺達は……」

 「酷いよな、世の中は……アイツみたいな奴は失敗しても許されるのに、俺達はちょっとの失敗でこのザマだもんな……」

 

 「……僕としたことが盲点だった。彼等が扱いにくいのを忘れていたよ。まあ仕方ないよね」

 「ふざけんなバカヤローッ!!」

 「余所見をしていて良いのかね?」

 「あっ」

 

 自分達の過去の経験からネガティブな発言を繰り返すホッパー達を見て、今頃に彼等の性格を思い出し勝手に納得しているディエンドに対し、アーチャーの『干将』と『莫耶』と呼ばれる白黒の夫婦刀と必死に斬り合っていたモモタロスは声を荒げる。

 無論その隙をアーチャーは見逃す訳が無く、ディケイドに対して放った、黒の洋弓に武器をつがえ、射出し爆破させる『壊れた幻想(ブロークンファンタズム)』をモモタロスに至近距離で放った。

 

 「ぎゃああああぁぁぁぁ!?」

 「わぁすごい吹き飛び方」

 

 割りと大惨事なのだが、モモタロスはいわゆるギャグ漫画のように吹き飛び、洞窟の壁に上半身が埋まりながら突き刺さった。

 

 「……この程度か。ディケイドを逃しはしたが、案外その取り巻きは大したことは無さそうだな」

 

 余裕綽々とアーチャーは皮肉を言いながら弓に武器をつがえ、ホッパー達の方へと向ける。

 しかしアーチャーの皮肉を聞いたその時、キックホッパーがピクリと反応する。キックホッパーはアーチャーに顔を向け、言った。

 

 

 「今……俺達を嗤ったな?」

 「アイツは良いよな、兄貴……誰かに必要とされてる……誰かの光になれるんだ……汚してやろうよ、光なんて……!」

 

 

 キックホッパーの言葉にパンチホッパーも続き、二人はゆらりと顔を上げ、アーチャーを見る。

 次の瞬間、二人はほぼ同時にアーチャーへ迫ろうと走り始めた。アーチャーは再び壊れた幻想(ブロークンファンタズム)を放つが、着弾よりも早く二人は行動する。

 

 『『RIDER JUMP(RIDER JUMP)』』

 

 腰に装着したバッタ型の機械『ホッパーゼクター』の後ろ足である『ゼクターレバー』を持ち上げ、音声と共に二人のジャンプ力が更に強化されると二人は飛び上がり、回避。

 そしてゼクターレバーを戻すと、キックホッパーは左足に、パンチホッパーは右腕へと『タキオン粒子』がチャージされ、必殺の一撃をアーチャーへと放つ。

 

 『『RIDER KICK(RIDER PUNCH)』』

 

 アーチャーは弓を身代わりに投げつけるが、ライダーキックは20t、ライダーパンチは19tの威力を誇る。弓程度では耐えられるハズも無く、あっけなく弓は砕け散った。

 

 「外したか……」

 「次は当ててやる……」

 

 着地した二人は目前のアーチャーにキックとパンチのコンビネーションで攻撃を仕掛けた。アーチャーも再び干将と莫耶を投影し、干将でキックを、莫耶でパンチを受け止めながら、ジリジリと後退していく。

 

 「終わりだ……」

 「喰らえ……!」

 

 遂にはアーチャーは壁際まで追い込まれ、 二人はトドメの一撃を放とうと拳と足を構える。生身のアーチャーにとってはライダースーツを纏った二人の一撃をまともに喰らえば間違いなく命取りになる。しかし干将と莫耶で弾くことも、回避する事も不可能に近いこの状況は、完全にアーチャーにとっては詰みだった。

 

――――――が、しかし。

 

 

 『FINAL ATTACK RIDE:DI・DI・DI・DIEND!』

 

 

 「俺達の出番は……ここで終わりか……」

 「やっぱり俺達は……光を掴めないんだね、兄貴……」

 

 アーチャーの目の前に居たライダー達はカードの形に戻り、その代わりに目の前に展開されたカードの渦の中へと吸い込まれていった。

 

 「これで終わりさ」

 

 仮面の下でディエンドはニヤリと笑みを浮かべ、引き金を引く。ディエンドの必殺技『ディメンションシュート』がアーチャーに迫り、爆煙が辺りを舞った。

 

 「……さて、士を追うとしようか」

 

 ディエンドは後ろを向き、出口へと歩みを進める。

 

――――アーチャーが倒れたかどうか確認もせず。

 

 

 「バカ野郎、避けろっ!」

 

 

 キャスターが声を荒げるのよりも速く、爆煙の中から赤の魔弾が飛び出し、ディエンドへと向かっていく。キャスターの声でディエンドはようやく気が付き、カードを取り出すも、もう遅い。

 

 『ATTACK RIDE――』

 「遅い」

 

 なんとかカードを装填し終わるも、その場で壊れた幻想(ブロークンファンタズム)が発動し、ディエンドは爆煙に消えた。

 爆煙から傷ひとつ無く現れたアーチャーはキャスターへと弓を向ける。

 

 「……てめえ、どうやって」

 「隠し玉というものは、使うべき状況の為にとっておく物だろう?私にとってはそれが今だった、という事だ」

 

 これでもキャスターは、あのバーサーカーをも一撃で屠ったディエンドの必殺技の威力を信頼していた。

 ただ、ディエンドの必殺技はアーチャーの『防御手段』に対して相性が最悪だったのだ。

 

 『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』と呼ばれるその宝具は、七枚の花弁の一枚一枚が城壁程の硬度を誇る防御宝具。そして何より、その宝具には投擲武器及び飛び道具に対し無敵の概念を持っていた。引き金を引く一瞬の隙を突いて、アーチャーはこの宝具を投影し展開。こうしてディエンドの必殺技を防いだのだ。

 

 「……残るはお前だけだ。ディケイドも今頃セイバーに斬り裂かれているだろう」

 

 アーチャーは干将と莫耶を投影するとキャスターに近付いていく。それでもキャスターは魔力のチャージを止めはしない。

 

 「……捕まえたぜぇぇ……!!」

 

 「何っ……!?」

 

 過度のダメージを受け、砂のような状態に戻っていたモモタロスが地面から飛び出し、後ろからアーチャーを羽交い締めにしたからである。

 モモタロスはそのまま後ろへアーチャーを投げ飛ばすが、空中で一回転してからアーチャーは無事に着地する。しかし、既にモモタロスォードを構えたモモタロスがアーチャーの懐に飛び込み、切り上げる形でモモタロスォードを振るう。

 

 「どりゃああぁぁぁっ!!」

 「くっ……!」

 

 素早く振るわれた剣撃よりもさらに速く、干将と莫耶でアーチャーは受け止める。しかしモモタロスは攻撃の手を緩めず、何度でもアーチャーに斬りかかる。

 

 「おらおらおらおらぁぁぁぁ!!」

 「……チッ、コイツは分が悪いかっ……!」

 

 本来ならばセイバーであるモモタロスの攻撃はアーチャーには効きにくいが、小さな一撃を何度も、そして素早く繰り返されては限界があった。

 そして、まだ予想外の事は起きた。

 

 『ATTACK RIDE:BLAST!』

 「なっ……!?」

 「そこだあああぁぁぁぁっ!!」

 

 背後から連続で銃弾が撃ち込まれ、さらに隙が出来たアーチャーの身体へとモモタロスォードの一撃が刻まれる。

 

 「ば、バカな……!何故、貴様が……」

 「いやぁ、まさかあんなお宝を隠し持っていたとは予想外だったよ。だけど、緊急用のお宝を持ってるのは僕も同じでね」

 

 生きていたディエンドをよろめきながら見るアーチャーに、ディエンドは『ILLUSION』と書かれたカードを見せた。ディエンドは攻撃を受ける直前に『ILLUSION』の効果で自分の分身を生み、それを身代わりにして隠れていたのだ。

 

 「ぐっ……ここまで、か……」

 「ああそうだ、コイツで終わりだぜ」

 

 魔力のチャージが完了したキャスターはアーチャーへと杖を向け、唱えた。

 

 

 

 「とっておきをくれてやる――焼き尽くせ木々の巨人。『灼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)』!!」

 

 

 

 その瞬間、無数の細木の枝で構成され、その身に火炎を纏う巨人がキャスターの前から出現する。巨人はアーチャーを掴み上げ、胸に付いた檻の扉を開き、アーチャーをその中へ放り込んだ。 そして、燃え盛る火炎は満身創痍のアーチャーをジワジワと消滅させていく。

 

 

 

 「……フッ……あの日も、こんな風だったな……俺は、一人でこうして―――」

 

 

 

 アーチャーの脳裏に、生前の記憶がフラッシュバックし、自嘲気味な笑みと共にアーチャーは呟く。しかし、その呟きを最後まで言う事は叶わず、アーチャーの霊基は消滅した。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 「……終わったな」

 「あぁ。それじゃ、早速士の援護に行きたい所だけど……」

 「けど、何だ?」

 「ここからは遠いからね。なるべく速く走るにしても間に合わないかもしれない。そこで一つ、速く着ける画期的な方法を考えたんだけど……」

 「勿体ぶんなよ、早く教えろ盗っ人野郎!」

 「OK、少し待ってくれ」

 『KAMEN RIDE:G4!』

 

 ディエンドは二枚カードを取り出し、まずは『仮面ライダーG4』を呼び出し、さらにもう一枚カードを装填する。

 

 『ATTACK RIDE:GIGANT!』

 

 そして、四つのミサイルが装填されたランチャー『ギガント』が出現し、G4はギガントの発射準備を整える。

 

 「……お、おい。いい加減どうやって行くのか教えろっての!」

 「こうするのさ」

 

 ディエンドは何処からか持ってきたロープをモモタロスの腰に巻き、ギガントに装填されたミサイルの一発にそれを結ぶ。

 

 「おい!まさか、速く行く方法って……!」

 

 「勿論、君をミサイルと一緒に飛ばすに決まってるじゃないか。ほら、走るより速いだろう?」

 

 「ふざけんな!!んな事したら無事じゃ済まねーっての!」

 「何を言うのさ、君だからこそ任せているんだよ。常人には耐えられなくても、君なら多分どうにかなるだろうし」

 「んな無茶振り出来るわけねーだろ―――」

 「発射!」

 

 「うっぎゃああああぁぁぁぁぁ!!!」

 

 結果的にモモタロスの了承は得ず、強引にディエンドはギガントを発射させ、モモタロスはミサイルと共に猛スピードで飛んでいった。




ごめんね地獄兄弟、カブトのキャラでは断トツで大好きだからゆるして、エミヤさんもごめんね

少しの間とはいえランキングに載せていただき、お気に入りや評価ありがとうございます。

これからも完結目指して頑張ろうと思います。


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聖剣 闇のセイバー

魂が目覚めるので初投稿です。


 そして、時は少しだけ遡る。

 道中の敵をその辺りに落ちていたパイプを変化させて作った『ドラゴンロッド』で蹴散らし、D(ディケイド)クウガは遂に大聖杯へと辿り着いた。

 

 「……これが、大聖杯とやらか」

 

 今も燃え盛っている炎よりも明るく、大聖杯は静かに周囲を照らしていた。D(ディケイド)クウガはクウガのFAR(FINAL ATTACK RIDE)のカードを取り出そうとライドブッカーに手を掛ける。

 

 しかしその瞬間、D(ディケイド)クウガは何処か違和感を覚えた。

 

 大聖杯は確かに目の前にある。だが、何かが違う。

 

 次の瞬間、ロマニから通信が入った。

 

 

 『士くん、上だっ!!』

 

 

 「!」

 

 言われた通りに上空へと目を向けると、こちらへ剣を振ろ降ろす黒い影をディケイドは見た。

 D(クウガ)は素早く取り出すカードを変更し、装填する。

 

 『FORM RIDE:KUUGA TITAN!』

 

 『仮面ライダークウガ タイタンフォーム』へと変身し、ドラゴンロッドを『タイタンソード』へと変化させると、互いの剣が交差する。

 

 「ほう……今の一撃を受け止めるとは、やるな。悪魔よ」

 「……お前がセイバーか」

 「如何にも」

 

 セイバーは不敵な笑みを浮かべて一旦後退し、再び黒く染まっている剣を構える。D(ディケイド)クウガもタイタンソードを構え、次の攻撃を警戒する。

 

 「……お前の目的は何だ。何故この大聖杯を守る?」

 「答えるつもりは無い。私はお前を倒す。そう言われたのでな」

 「……誰にだ?」

 「……鳴滝、と言ったか」

 「またアイツか」

 

 呆れるD(ディケイド)クウガの脳裏に、ほくそ笑みを浮かべる眼鏡にブラウンのコートが印象的な中年の男性の姿が浮かぶ。

 ディケイドをつけ狙い、幾度もディケイドの旅の邪魔をしてくる謎の人物『鳴滝』。経歴や目的は一切不明であり、ただひたすらディケイドの邪魔をする彼は、どうやらこの世界にも来ていたようだった。

 

 「……奴は私にこう言った。『ディケイドはこの世界を破壊する悪魔。見つけ次第に倒し、消し去らなければいけない』とな」

 「……全く、アイツは何が目的なんだよ」

 「雑談は終わりだ、行くぞ」

 

 セイバーは地面を強く蹴り、D(クウガ)へ剣を振るう。D(ディケイド)クウガはタイタンソードで辛くも受け止め、ギリギリと互いの刃が鍔迫り合う。

 

 「チッ……(セイバー)には(ブレイド)だ!」

 『KAMEN RIDE:BLADE!』

 

 辛うじてライドブッカーから『仮面ライダーブレイド』のカードを取り出し、装填すると、カード型のエネルギーフィールド『オリハルコンエレメント』がベルトから放出され、セイバーを弾き飛ばす。D(ディケイド)クウガはその中を通り抜け、仮面ライダーブレイドの姿へと変身し、セイバーへと向かっていく。

 

 「……面白い。貴様の手は見た。ならばこちらも少しだけ手の内を明かしてやろう」

 「何―――」

 「ハッ!」

 

 セイバーは剣を腰の横に携え、剣先を後ろに構える。次の瞬間、セイバーの姿はD(ディケイド)ブレイドの視界から消失し、D(ディケイド)ブレイドの体に強い衝撃が走り、D(ディケイド)ブレイドは大きく後方へ吹き飛ばされた。

 

 「ぐはっ……!」

 「……どうだ?中々効くだろう」

 『士くん、大丈夫かい!?』

 

 セイバーは先程までD(ディケイド)ブレイドが立っていた位置に立ち、士の生命反応が揺らいだのを見たロマニが通信を入れる。D(ディケイド)ブレイドはソードモードにしたライドブッカーを杖にして立ち上がり、再びセイバーを見据え、構える。

 

 「……心配するな、ロマニ。あんたはカルデアを支えてろ」

 「ほう、まだ立ち上がれるか。並みのサーヴァントや魔術師では二度と立てない一撃ではあったのだが」

 「俺は仮面ライダーだ。嘗めるなよ……」

 「……果たして、いつまでその強がりが持つかな?」

 「っ……」

 

 セイバーはそう言いつつD(ディケイド)ブレイドの右腕へ視線を移す。。D(ディケイド)ブレイドの右腕からは鋭い痛みが走る。先程のアーチャーとの戦いで負った怪我が余計に開き、スーツの内から血が垂れていたのだ。

 

 『士くん、無理は止すんだ!下手をしたら右腕が使い物にならなくなってしまう!』

 「……平気だ。腕一本無くなってもまだ戦える」

 「……その心意気は認めてやろう、『ディケイド』。お前は中々の戦士だ。その闘志を讃え、我が聖剣の一撃で葬ってやる」

 

 セイバーは剣を腰に構え、 魔力を集中させる。セイバーの体内から産み出される膨大な魔力は剣から溢れ、漆黒の魔力はより多く、強力に放出されていく。

 

 

 「『卑王鉄槌』、極光は反転する―――」

 

 

 詠唱を口にするセイバー、ライドブッカーを構えるD(ディケイド)ブレイド、固唾を飲んで見るロマニ。

 もしこのまま宝具を放たれれば、士は間違いなく負ける。士が負ければ、マスター候補は居なくなり、カルデアは絶望に叩き落とされるだろう。

 しかし、ここで時間は『ある作戦』が行われた後に当てはまる。

 

 

 「光を呑め……!『約束された――(エクスカリ―――)

 

 

 「ぎゃあああああああああああ!!!!」

 

 

 悲鳴が周囲に響きながら、D(ディケイド)ブレイドとセイバーの間に見覚えのある赤いイマジンが落ちる。そして悲鳴と共に飛んできた何かが飛来するような音が、セイバーの前に落ち、爆煙が舞い上がる。

 

 「……モモタロス!」

 「へ、へへ……俺、参上……」

 『ナイスタイミングだ、えーっと……モモタロスくん!』

 

 そう、今の時間は前回のモモタロスをギガントのミサイルに括り付けて発射してディケイドの元へ送るという作戦の行われた時間だったのだ。

 結果的にモモタロスは危機に瀕していたディケイドを救い、セイバーの邪魔をする事に成功した。立案者のディエンドも今頃ほくそ笑んでいるだろう。

 

 「おのれ、空からの奇襲とは卑怯な……」

 「俺だって飛びたくて飛んできた訳じゃねえっ!」

 

 溜まりに溜まった魔力を放出する事無く、文句のように言葉を口にする爆煙から飛び出すセイバーと、それにツッコミを入れるモモタロス。しかし本当に飛びたくて飛んできた訳ではないのだ。

 

 「どうでもよい、今一度消えるがいい……」

 「……モモタロス、俺に入れ!」

 「おうっ!」

 

 セイバーは再び魔力を溜め始める。モモタロスはD(ディケイド)ブレイドに提案されるままに憑依した。

 

 「俺、参上!」

 

 右手の親指で自分を指差し、体を少し捻り開いた両手の内左手を前に出し、右手を後ろで横に構えるお決まりの決めポーズと決め台詞を言い、D(ディケイド)ブレイド(INモモタロス)はライドブッカーを手に取る。

 

 ≪いいなモモタロス、俺の指示には従えよ!≫

 「しゃーねーな、わーったよ!っつーか右手が(いて)ぇ!」



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剣・英霊セイバーズ

俺達のベルトのCSMが決まったので初投稿です。


 「行くぜ行くぜ行くぜぇぇぇ!!」

 

 セイバーが発射する魔力の弾丸をライドブッカーで弾き、切り裂きながらD(ディケイド)ブレイド(INモモタロス)は突き進む。

 無駄と判断したのかセイバーも剣を構え、ジェット機のように足から魔力を放出して加速し、D(ディケイド)ブレイドに肉薄した。

 

 「ぬぉらぁぁっ……!!」

 「くっ……!」

 

 金属が衝突する音が響き渡り、互いの剣が鍔迫り合う。

 根性で押し切ろうとするD(ディケイド)ブレイドと、魔力によるブーストで押し返そうとするセイバー。

 D(ディケイド)ブレイドが押し切ろうとすれば魔力の放出量を増やし、D(ディケイド)ブレイドはそれより強く押し切ろうとする。そしてまたセイバーは魔力の放出量を増やす。

 時間にして僅か十数秒の出来事だが、いたちごっこのように続く前に、両者はバックステップで距離を取る。僅かに互いを睨み合ってから、先にD(ディケイド)ブレイドが仕掛けた。

 

 「喰らえこんにゃろぉぉぉっ!!」

 

 縦に振り下ろされた最初の一撃を、セイバーは剣を横向きに受け止める。しかしそれでもD(ディケイド)ブレイドは止まらず、乱打するように素早く斬撃を叩き込み、セイバーのガードを崩そうとする。

 しかし、セイバーも攻撃を的確に防御し、掠り傷すら負うことは無い。

 

 「……無駄だ。貴様の攻撃は単調過ぎる。言ってしまえば剣術ではなく、単なる子供の喧嘩と同義だ」

 「んだとぉ~~っ……!?」

 

 セイバーの告げた言葉に、士に取り憑くモモタロスの切れやすい堪忍袋の尾がぶちりと盛大な音を立て、切れた。

 

 「上等だこの野郎!だったらテメーの言う子供の喧嘩がどんだけ(つえ)ぇか思い知りやがれコラァァッ!!」

 

 怒りで我を忘れたモモタロスは、ライドブッカーを縦横無尽に振り回すように何度もセイバーの剣へと叩き付ける。そんな彼に呆れながら、セイバーは先程と同じく正確に攻撃を弾いていく。

 

 

 「……この程度か、つまらん。もう少し楽しめると思ったのだが―――」

 

 

 言いかけたセイバーの語尾は、頬を掠めた剣先が空を突くと共に途切れた。

 

 「なッ……!?」

 「チッ、外した!」

 

 セイバーは驚愕の声を漏らすと同時に、D(ディケイド)ブレイドは惜しい所で避けられた事の不満に舌打ちする。

 しかし、セイバーに僅かな隙が出来たのを、体内の士は見逃さなかった。

 

 ≪今だモモタロス!『SLASH』のカードを使え!≫

 「すらっしゅ?コイツか!」

 

 士の指示を受けたモモタロスはライドブッカーを開き、クラインの壺から『SLASH』のカードを引き出し、ディケイドライバーに装填する。

 

 『ATTACK RIDE:SLASH!』

 

 カメンライドが解除され、剣の姿からディケイドの姿に戻ると、ディケイドはディメンションエネルギーを一点に集中させ、刀身を分身させながらセイバーの鎧を突いた。

 

 「ぐぁああぁぁっ!!」

 

 胴体の鎧が粉々に砕け、セイバーは遥か後方へ吹き飛び、壁に叩き付けられた。

 

 「どうでぇ、見たか!戦いってのは技術とかじゃなくてその場のノリなんだよ!」

 

 ディケイドはハンッと鼻を鳴らして胸を張る。しかし、士は何か引っ掛かる違和感を覚えていた。

 

 ≪……おいモモタロス、お前いつの間にそこまで速くなった?≫

 「あぁ?俺は別に何にも変わってねーぞ?お前がノロいだけじゃねーのか?」

 ≪……お前に聞いたのが間違いだった≫

 「んだとコラァ!?」

 

 他人から見れば一人で見えない何かと会話し、喧嘩をしている風に見えるが、セイバーはその光景が可笑しいのか、それとも別の意図があるのか、薄ら笑いを浮かべながら立ち上がる。

 

 「お前の実力……見くびっていたようだ。やるな、小鬼」

 「鬼じゃねえっ!」

 

 モモタロスの怒号も無視し、セイバーは腰を落とし、剣を構える。

 

 

 「その力に敬意を表し、私の最大の一撃をくれてやる」

 

 

 そう告げると、セイバーの剣から漆黒の魔力が溢れ、その場で台風が作られたかのように風が巻き起こり、やがては一つに収束していく。

 

 ≪モモタロス、アレを喰らったら不味い!離れろ!≫

 

 士とモモタロスは本能的に危険を察知し、少しでも距離を取る為に身体を走らせる。

 

 しかし、セイバーの魔力は既に満ちていた。

 

 

 「逃がさん」

 

 

 

 「約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)!!」

 

 

 

 激流の如く放たれた、闇の魔力がディケイドを襲った。



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後輩マシュ、参上!

俺には夢は無いけど夢を守ることは出来るので初投稿です。


 死の奔流が、背後より迫る。このまま走っても間違いなく逃げられないと、モモタロスは悟った。

 ただし、自分の行動次第で士だけなら逃がす事も可能という事も、モモタロスは悟っていた。

 僅かな刹那、モモタロスは口を開く。

 

 「……おい士、今から俺の言うことよく聞けよ」

 ≪なんだ!?そんな事より今は――≫

 「いいから聞きやがれ。いいか?このままじゃ俺達二人ともやられてお仕舞いだ。だけどよ、お前だけなら逃がせるかもしれねえ」

 ≪……お前、何をする気だ≫

 「俺が盾になってやるよ。その隙に行きやがれ」

 ≪待てっ、モモタロス――≫

 

 士の制止も聞かず、モモタロスはディケイドの肉体から飛び出し、大の字に身体を拡げ、その場に仁王立ちする。

 地を砕き、モモタロスに迫るセイバーの宝具。ディケイドはライドブッカーを開き、現状を打破する為の切り札を探す。しかし、そんなものは無い。どう足掻いても、今のディケイドにはモモタロスを救い、自分も助かる為のカードは揃っていなかった。

 

 

 (駄目なのか……!今の俺には、力が足りないのかっ……!)

 

 

 士の心に不満や怒り等が混ざった感情が渦巻く。悔しながらも、今はモモタロスが救おうとしてくれるこの命を優先しなければならない事は、士にも分かっている。

 無力感を噛み締めながら、ディケイドはモモタロスに背を向け、走り出そうとした。

 

 しかしその時、黒い閃光の如き『何か』が、ディケイドを飛び越え、モモタロスの前に着地した。

 

 

 「――仮想宝具 疑似展開/人理の礎(ロードカルデアス)!!」

 

 

 次の瞬間、前方に巨大な魔力障壁が出現する。それはセイバーの宝具を受け止め、膨大な魔力を別方向に受け流し、ディケイド達を護った。

 

 「お前は……」

 

 障壁が消え、宝具同士がぶつかり合う衝撃で産まれた土煙が薄くなると、ディケイドは障壁を発生させた盾を携える者の顔を見つめる。そんな事が出来る人物は、一人だけしかいない。

 

 「先輩、モモタロスさん、ご無事ですか?」

 「マシュマロォ!」

 「マシュ……」

 

 ディケイドの思った通り、二人を護った人物は、つい先程宝具を使いこなせるようになった少女、マシュ・キリエライトだった。

 

 「ほう……私の宝具を防ぐとはな」

 「あれが……セイバー、ですね」

 

 土煙の中からセイバーが姿を現す。その表情には感心と、僅かな焦燥が見え隠れしているようにも見えた。

 

 「……そうか。その盾を以て私の宝具を防いだか。ならば納得だな…最後の最後で、手が緩んでしまったか……」

 

 マシュの盾を凝視し、何かを理解したセイバーは何処か安心したような笑みを浮かべ、地面に突き刺した剣に寄りかかりながら膝をついた。既にセイバーの魔力は、限界を迎えていたのだ。

 

 「フッ……私も最早、限界か…結局、どう運命が変わろうと私一人では同じ末路を迎えるという事か……やれ」

 

 剣を杖にしながら、身体をふらつかせつつもセイバーは立ち上がる。その様子を、マシュは何処か寂しそうな表情を浮かべ、沈黙していた。

 ディケイドはセイバーの意思を汲み取ったのか、『ケータッチ』と呼ばれるスマートフォンに酷似した端末を取り出し、画面に刻まれた九人のライダーの紋章を順番に押していく。

 

『KUUGA!AGITO!RYUKI!FAIZ!BLADE!HIBIKI!KABUTO!DEN-O!KIVA!』

 

 『FINAL KAMEN RIDE:DECADE!』

 

 全て押し終えた後、ディケイドの紋章を押し、ディケイドライバーのバックルを取り外し、ベルトの右サイドに移動させ、代わりにケータッチをバックル部に装着させると、ディケイドの身体は変化していく。

 緑の複眼はピンクに変わり、額にディケイドのカードが装着され、さらに右肩から左肩にかけて一直線に九人のライダーカードが現れ、ディケイドは『コンプリートフォーム』へとパワーアップした。

 

 「……やるぞ、マシュ」

 「……了解、しました!」

 

 

 『FINAL ATTACK RIDE:DE DE DE DECADE!』

 

 

 FAR(FINAL ATTACK RIDE)のカードを移動させたバックルへ装填し、出現したカード型のエネルギーと共にディケイドは飛び上がる。それと同時に、マシュは盾を地面に固定し、その盾を踏み台にしてディケイドと同じ位置まで飛び上がった。

 

 「ハアァアアァァ―――ッ!!」

 「シールダー、キィィィック!!」

 

 ディケイドはエネルギーをくぐり抜けながら、マシュは足に炎を纏わせ、同時に必殺のキックをセイバーへと叩き込む。セイバーは吹き飛びはしなかったものの、後ろへよろめきながら告げる。

 

 

 

 「気を付けるといい……『グランドオーダー』は…聖杯を巡る戦いはまだ、始まったばかりだ…破壊者よ…お前が、何処まで力を尽くせるか、見物だな……」

 

 

 

 そう告げると、セイバーの身体からは魔力の光が漏れ、溢れた魔力はその場で爆発を起こし、セイバーの姿は消えた。



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