陽炎型駆逐艦。
かつて、世界の海をかけた、艦隊戦特化型駆逐艦。
一度不知火型に名前を変えたこともあったけれど。
・・・・・・。
それが、今の私たちの名前だ。
もともとの名前は、もう、使えない。
そういう規約っていうのもあったけれど、何よりも、見た目が少し変わってしまった。
あの子は、髪も瞳も青色になったし。
いつも一緒にいた姉妹も、瞳の色が赤くなった。
かくいう私も、今では青い瞳に、髪も色が変わっている。
この姿になったきっかけは、なんだったか。
長女が失踪したことに始まった。
私たちは、ちゃんとした親はいなかった。
施設で保護された、その人数、10数名。
なぜそんなに、といえば、簡単に、父親が犯罪者であった。
それも、性が付くほうの。
ゆえに、私たちは、血のつながりは、半分しかなかった。
だが、それでも、一緒に暮らしている年月は、強い力を持つもので、当然、互いに家族として認識していたのだ。
……。
が、それがいけなかった。
施設、は、文字通り、親のいない子供たちが暮らす場所であった。
かつての平和な日本ならいざ知らず。シーレーンを深海棲艦に乗っ取られて、国力が削られ。
そのうえ、まだ、艦娘という存在がまともにいなかった時代。
人は消耗品のように使われた。
そうしないと、生きていけなかった。そういう理由で親を亡くした。
家族を失った存在は多い。
その中に、10数人、集団で、家族が入ってきたのだ。
もともといた子たちからしたら、いやな存在だっただろう。
自分たちが失ったものを見せつけてくる存在。
少数ならいい。
兄弟姉妹は、少なからずいた。
けれど、この時の私たちは、言った通り、10人を、優に超えていた。
そのうえ、長女と、末っ子で、年齢差が、7はあった。
行ってしまえば、一番上の姉は、末っ子からしたら母親。
そうでなくとも、ほかの妹たちも、私を含め、姉を慕っていたのだ。
簡単に言えば、嫉妬の嵐に襲われた。
当然、職員からの扱いもよくはなかった。
姉妹の世界は、長女を除けば、閉じられたものであった。
何があっても、姉が守ってくれる。と。
しかし、終わりというものは、突然やってくるものであった。
長女が、姿を消した。
本当に突然。
まるで、最初から、そこにはいなかったかのように。
お気に入りだったものから、普段使っていた服まで、何一つそのままに、ふと、姉だけが姿を消した。
当然、私たちは探し回った。
その時ばかりは、いつもクールな二女も、穏やかな三女でさえ、泣きわめきながら。
けれど、職員も、口を閉ざし、姉の行方など、当時の私たちが知る由もありませんでした。
その代わり、私たちは、莫大なお金と、住む家が渡されました。
当然のように、姉妹全員が暮らせる家。
一緒に通える学校。頼れる大人。
……。
ただ、そこにも、やはり、大好きだった姉の姿はありませんでした。
2年経って。
悲しくとも、姉のいない生活に慣れたころ。
次女が、突如言い出したのです。
艦娘になりましょう、と
きっと、私たちの姉さんはそこにいると。
そこからは早かった。
検査を受け、適性を調べた。
結果からいえば、即座に合格できたのは、三人だけであった。
次女、三女、六女。
三人は、すぐに艦娘になれる。
けれど、ほかの姉妹は、また、おいていかれた。
体ができていなかった、というわけではない。
単純に、適性のある艦が、見つかっていなかったのだ。
ゆえに、その艦が来るのを、訓練所で、待って、待って、待ち続けた。
そして。
それから、さらに、4年。
ついに、私たちに、適合艦が見つかった。
そのころには艦娘の活躍で、日本自体はかなり安定し、海外へと足を延ばそう、という話が施設内で広まった頃であった。
ここまでで、6年。
「……姉さん今探しに行きます」
そんな思いを込めて、私たちは、改造に臨んだ。
そう、その時はじめて知ったのです。
艦娘の元の肉体は、艦娘になった時点で固定されてしまうことを
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