ププープレーン 〜遍く照らす星の航路〜 (糖分99%)
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プロローグ

東方桃玉魔を読んでいただいた方はお久しぶり、それ以外の方は初めまして。糖分99%です。一応簡単にカービィとアズレンの紹介をしておきましょう。

「星のカービィシリーズ」
1992年より初代星のカービィが発売され、今年も新作が発売された任天堂の一大シリーズ。ピンク色で丸い、一度見たら忘れられない可愛らしいデザイン、とにかく食い意地の張ったキャラ、そして飲み込んだ相手の特徴をコピーするというアクションのバリエーションの多さが人気の理由だろう。
最近、制作元のHAL研究所は歴代シリーズのアイテムやキャラを最新作に登場させ、昔カービィで遊んでいた大人達を呼び戻す快感を覚えた。

「アズールレーン」
2017年秋に日本版がリリースされたスマホゲーム。歴代の艦船の擬人化ゲームという艦これのオマージュを行った中国製のゲームであるため、リリース当初は物議を醸したが、そもそもゲームシステムが別物であること(艦これはシュミレーション、アズレンはシューティングRPG)、ゲームハードが違うこと(艦これはPCメイン、アズレンはスマホメイン)、艦これとは違い海外艦も充実していること、運営がいろんな意味でユーザーの心を掴んだこと(公式ツイッターやキャラクターのパロディセリフは必見)により、今では愛されているゲームである

「作者・糖分99%」体は糖分でできている。甘いものをあげておけば喜ぶ。あと1パーセントは何でできているのだろうか? きっとゲーム愛でできている。


 人は何故争うのか。

 

 争いとは無意味なものではなかろうか。

 

 金の為に争い。

 

 名誉の為に争い。

 

 領土の為に争い。

 

 愛の為に争い。

 

 憎悪の為に争い。

 

 憤怒の為に争い。

 

 争いは人を勝者と敗者に分ける。

 

 勝者は奪い、敗者は奪われる。

 

 それは絶対の真理であり、虚しさだけが募るもの。

 

 桃色の英雄もまた争い続ける。

 

 彼が望むのは美味しい食べ物と穏やかな昼寝の時間。

 

 だが、桃色の英雄は知っていた。

 

 美味しい食べ物も、穏やかな昼寝の時間も、自分一人では虚しいだけだと。

 

 人の笑顔こそが食べ物をより美味しくし、昼寝をより穏やかにするのだと。

 

 人の笑顔こそ、人を何より満たしてくれるのだと。

 

 だから桃色の英雄は今日も闘う。

 

 皆の笑顔の為に。

 

 

⚓︎☆⚓︎☆⚓︎

 

 

 ───4/5 13:07 W●●5° N●8°────

 

 突如として未確認島が浮上。浮上に際し地震、津波等は確認されず。

 推定面積は●●,000㎢。付近を通過する船は航路の変更を通達されたし。

 

 

 ───同日 13:15 同地点────

 

 ロイヤルの艦船が至近距離での画像の撮影に成功。

 砂浜海岸、海岸段丘、リアス海岸広葉樹林帯、平野が確認された。自然環境は温帯〜亜熱帯に酷似。

 また、推定海抜100mの山頂に四つの尖塔とドームを合わせた巨大建造物が確認された。

 

 

 ───同日 13:21 同地点────

 

 ユニオンの空母により未確認島の上空からの空撮に成功。

 森林と平野が広がっており、円柱状の岩石が疎らに突出する特異な地形となっていることを確認。

 以前確認された巨大建造物以外にもいくつかの建造物を確認。

 原生生物数種類を確認。なお画像は不鮮明であり、種類の特定は不可能。

 

 

 ───同日 13:46 ユニオン某所 アズールレーン本部────

 

 セイレーンの関与を否定しきれないとし、アズールレーンによる強行偵察案をユニオンにて可決。

 ロイヤルは未だ採決中。

 

 

 ───同日 14:13 同地点────

 

 ロイヤルにて強行偵察案が可決された。

 これよりアズールレーンは未確認島、コード『P3』の強行偵察を行う。

 人類に栄光あれ。

 

 

⚓︎☆⚓︎☆⚓︎

 

 

 ───同日 13:17 ???────

 

 穏やかな風が吹く。

 その風には微かに潮の香りが含まれており、その匂いにくすぐられ、それは目を覚ました。

 桃色のまん丸ボディ。丸く短い手。赤く短い足。紅の頬。パッチリとした、とぼけたような目。食べ物を自然と求める口。

 数十センチほどの桃色のボール状をした怪生物は目をこすり立ち上がった。

 

 ふと、空を見上げた。

 そして首を───あるのかどうかわからないが────傾げた。

 

 空に浮かぶのは雲。綿菓子みたいな雲。

 

 はて、プププランドの雲はあんな形だっただろうか。

 もっと渦を巻いていた気がする。

 でもある時は今みたいな綿菓子の形だった気もするし、もっと前は星型の雲が流れていた気がする。

 プププランドの雲は気まぐれだ。雲の『普通』の形は時々変わる。

 

 もともと能天気な性分の桃色の生物は、先ほどまで浮かべた疑問をすっかり忘れて隣に置いてあった風呂敷を開ける。

 風呂敷から現れたのは、大きな大きなサンドイッチと溢れんばかりに積み上げられたリンゴ。

 とてもこの小さな生き物が食べきれる量とは思えないが、この桃色の生物は兎角食い意地が張っているのだ。

 

 待ちに待った昼食の時間。

 パッチリとした目はより輝きを増し、一人歓声を上げてサンドイッチを手に取る。

 

 その瞬間、溢れんばかりに積み上げられたリンゴのうち一つがついに溢れ落ちた。

 そしてころころ、ころころと坂を下ってゆく。

 それを見た桃色の生物は大慌てで風呂敷を包み直し、背負って転がるリンゴを追いかけた。

 

 リンゴはまだまだたくさんあるし、周りを見ればリンゴなんてどこにでも生えている。

 でも、他のリンゴを食べたからって、溢れたリンゴは食べられない。

 他のリンゴでは溢れたリンゴの代わりにはならない。

 

 桃色の生物独自の食の美学故に───もしくは底知れぬ食い意地故に────転がるリンゴを追う足を止めない。

 

 やがてリンゴは海岸近くでコツンと何かに当たり、ピタリと止まる。

 桃色の生物はそれに飛びつき、安心したように溜息をつく。

 

 そこでふと、気がついた。

 転がるリンゴを止めてくれたモノを。

 それは桃色の生物よりも少し小さな立方体だった。

 青く透き通り、内部で柔らかな光が灯る、不思議な物体。

 桃色の生物はそれを手にとってみた。

 太陽に透かして見ても、何も見えない。揺すってみても何も鳴らない。舐めてみたけど美味しくない。

 

 誰かに聞いたらわかるのだろうか。

 

 そんなことを考えているうちに、もう一つ変なものを見つけた。

 それは桃色の生物にも何であるか分かった。

 青い立方体と同じくらいの大きさの、円錐状のドリルだった。

 だが、ドリルを回すスイッチらしきものはない。一体どうやって使うのかさっぱりわからないもの。

 

 桃色の生物は迷いに迷い、そして考えるのを諦めて空を見上げ────漸く自らのすぐそばにそそり立つ巨大な物に気がついた。

 高さは2メートル以上。横幅も2メートルほどある鋼鉄の円筒。それが二つくっついている。

 

 何かの機械なのだろうか。

 

 この地が機械化された事件を思い出しながら、桃色の生物はまじまじと鋼鉄の双円筒を眺める。

 

 と、ここで気がついた。

 二つの円筒の間に四角い穴がぽっかり空いていることに。

 そしてその穴、ちょうど拾った立方体がぴったり入りそうではないか。

 

 早速桃色の生物は拾った立方体を掲げ、飛び上がり、立方体を穴にはめ込んだ。

 そして見事はまり込み、立方体はどこかへ消えてゆく。

 

 途端、鋼鉄の双円筒は唸りを上げる。

 僅かに振動しながら、中で何か動かしながら。

 桃色の生物には、まるでそれが孵化しつつある卵のようにも見えた。

 

 が、しばらく待っていたが何も起こらない。ただゴウンゴウンと唸りを上げるだけ。

 だが、実は立方体を入れた瞬間、片方の円筒の上に『0:27:00』というカウントが現れ、減っていっているのだが、桃色の生物にとっては高すぎて気付かずにいた。

 

 カウントに気がつかない桃色の生物は、まだ何か足りないのだろうと思い立ち、鋼鉄の双円筒を眺める。

 すると今度は、円錐状の窪みを見つけた。それも螺旋状の溝がある窪み。

 そう、ちょうど拾ったドリルが差込めそうな窪みが。

 

 迷わず桃色の生物はドリルをその窪みに差し込んだ。

 途端、スイッチのなかったはずのドリルはギュルギュルと回り始め、そして回転を止め、役目を果たし終えたかのようにぽとりと力なく落ちる。

 瞬間、桃色の生物が気がつかぬまま、カウントは『0:00:00』になり、双円筒は高く唸る。

 

 何か、生まれる。

 

 そう予感させるには十分な演出。

 やがて双円筒のうち片方から蒸気が吹き出し、扉のように開いた。

 

 そしてその中には少女がいた。

 

 白く丈の短いワンピースを纏い、青い小さなマントのようなものを羽織っている。髪は紫色で後ろで一つにまとめ、ふんわり柔らかなウェーブがかかっている。瞳は青く、その顔は人懐っこく見える。

 しかし、腰には───桃色の生物は知らないだろうが────小さな魚雷菅とそれに見合った大きさの魚雷が装填されており、さらに手には投槍が握られている。人懐っこい少女には無縁であるはずの戦闘の道具が生まれた時からすでに取り付けられていたのだ。

 

 少女は印象を裏切らない、人懐っこい満面の笑みとともに張り切って誰へというわけでもなく、決まり切った事であるかのように挨拶をし始めた。

 

「初めまして指揮官! 私はJ級駆逐艦のジャベリン! よろしく……ね……?」

 

 そこでようやく、ジャベリンと名乗る少女は異常に気がつく。

 想定ではどこか建物の中で、軍服を着た誰かに迎えられるつもりだったのだろう。

 だが現実は緑豊かな屋外で、潮風を浴びているのだ。

 そして目の前にいるのは軍服を着た誰かではなく、それどころか人間ですらない生物だった。

 

「ぽよ!」

 

 桃色の生物は律儀に挨拶に答えた。

 本人は満面の笑みで、いつも通り最大の好意を乗せて答えたつもりなのだろう。

 しかしジャベリンという少女にとっては、予想外の場所で未確認生物に声をかけられたという事実以外、何物でもなかった。

 

「うひゃああっ!!? なっ、なにこれっ!」

 

 ずざざっとオーバーリアクションで後ずさる少女。しかし後ろにあるのは開きっぱなしの円筒。つまりは行き止まり。見る間に少女の顔は青くなる。

 だが、それはこの円筒から生まれた者の本能というべきなのだろうか。不思議と目の前の桃色の生物への不信感は霧散していった。

 そして、ある一つの言葉が自然と少女の口から零れ落ちる。

 

「えっと……もしかして、あなたが私の指揮官?」

 

 桃色の生物は首を傾げた。

 『シキカン』とはなんなのか、さっぱり見当も付かないからに他ならない。多分自分のことなのだろうが、自分は『シキカン』という名前ではない。

 だから、ちゃんと名乗ることにした。

 

「はぁい! カービィ、カービィ!」




初期艦はジャベリンでした。
ウザい。だがそれがいい。


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出会いの春
橙色の生物


作者「よっしゃー開発ドックで出雲開発するぞー!」

『条件・重桜の戦艦を出撃させ、累計経験値を200万貯める』

作者「(´・ω・*・,°*・*:.」

作者「……いや、やってやる。やってやるさ!」

作者 は 胸 に 決意 を 抱いた


「……カービィ?」

「カービィ!」

「それが指揮官の名前なの?」

「うぃ? ……カービィ!」

「えっと、あってるの……かな?」

 

 桃色の生物───カービィは頭を縦にブンブンと振る。

 怪生物、カービィに向け、ジャベリンはそっと手を伸ばす。

 そして、ぷにっ、と頬のあたりを触ってみる。

 もっちり、すべすべ。そんな感触。到底この世のものとは思えないような極上の触り心地。

 とにかく触ってて飽きない。

 

 カービィが不思議そうな顔をして嫌がらないことをいいことにしばらくぷにぷにと突っついていたが、やがて何処からかくぅー、と可愛らしい音が鳴る

 発生源はジャベリンのお腹。

 無理もない。ジャベリンは“生まれたて”なのだから。

 慌てて手を引っ込め、目を逸らし、顔を赤らめながら言い訳をする。

 

「あー……ジャベリン、お腹が空いたなー、なんて……」

 

 生まれたてとはいえ年頃の女の子として生まれたのだ。当然の反応だ。

 それに対するカービィの反応は。

 

 くるるるぅ。

 

 口の代わりに、ちょっと騒がしいくらいの腹時計が答えた。

 ぽかんと呆気に取られているジャベリンをよそに、カービィは持ってきた風呂敷を開け放つ。

 そして取り出したのは大きなサンドイッチ。レタスやハムやトマトやスクランブルエッグが挟まった、オーソドックスな一品。

 それを丁寧に半分にちぎり、片方をジャベリンに突き出した。

 

「えっと、くれるの?」

「うぃ!」

「あっ、ありがとう!」

 

 半分にされたサンドイッチを受け取り、カービィの横に腰を下ろし、食欲のまま齧り付く。

 

 美味しい。塩胡椒だけで味付けされているのだろうが、それが丁度いいバランスを取っている。素材の味もよく、特にトマトの甘いこと。

 夢中でかぶりつき、その手からサンドイッチが消え、ほぅと溜息をつく。

 

「ありがとう指揮か……カービィ」

「ぽよ!」

 

 見ればカービィはもうすでにサンドイッチを完食しており、積まれたリンゴに手を伸ばし齧っている最中であった。

 そしてそのうちの一個をジャベリンに渡す。

 

「これもくれるの!」

「うい!」

「わぁあ! ありがとう!」

 

 流石に大きなサンドイッチ半分では腹を満たすことはできない。立派なリンゴにも齧り付く。不思議と力も満ちてきた気がする。

 

 だが、そのリンゴに噛り付いているうちに、ジャベリンの胸中に不安が立ち込める。

 

「ここって一体、何処なんだろう……」

 

 ドッグはなく、港もなく、あるのはのどかな大自然。側にいるのは指揮官らしい謎の生物。

 てっきり“生まれて”すぐに戦うと思っていたのだが、これはちょっと予想外すぎた。

 

「私、どうすればいいんだろう……」

 

 そんなジャベリンの悩みとは裏腹に、のどかな時間が過ぎて行く。

 大量に積まれたリンゴはいつのまにかカラになっており、籠のそばでカービィはうつらうつらと船を漕ぎだす。

 ジャベリンもつられて、膝を抱えて船を漕ぎ始めた。

 目を瞑れば、耳に届くのはさわさわと木の葉が揺れる音と潮騒の音。

 

 これはこれで、いいのかも。

 

 そんな事を思い出した最中。

 ガサリ、ガサリ、と何かが草木を掻き分ける音がジャベリンの耳に届いた。それも複数、四方八方から。

 元はと言えばジャベリンは戦う為に“生まれた”もの。敵の気配を感知する能力は常人のそれではない。

 

 体は強張り、思わず魚雷に手をかけるが、陸上では意味のない事を悟りさらに体は強張る。

 ジャベリンは駆逐艦。その強さは回避能力の高さと速度、そして魚雷だ。砲撃能力は決して高くない。その中でもジャベリンは回避能力には自信があるが砲撃能力には駆逐艦の中でも自信がない。そして唯一の武器である魚雷は封じられている状態。

 完全になすすべがない中、遂に草むらからそれは現れた。

 

 カービィと同じサイズの橙色の生物が。

 ただし口は無く、顔は肌色でなんとなく猿を想起させる。

 

「……」

 

 そして無言のまま、じっとこちらを見ている。

 

「あ、あの〜」

「……」

 

 なんとなく危険はないような気がして、焦れったくなったジャベリンは声をかけてみる。

 すると橙色の生物は一目散に出てきた草むらへと戻っていった。

 

 ひとりぽつねんと残されたジャベリンは、「自分の顔って怖いのだろうか」などと顔を意味なく揉んだりしていた。

 が、そうやって油断していた瞬間。

 

『……』

「うひゃあっ!」

 

 わらわらと、周囲の草むらという草むらから全く同じ顔をした橙色の生物が、ジャベリンと眠るカービィを取り囲むように現れた。

 どれもこれも同じ顔でさっぱり見分けがつかない。それに全くの無表情なのが余計に不気味。

 恐怖のあまり、ジャベリンは眠るカービィを抱き上げ強く抱きしめた。なんでもいいから頼るものが欲しい。そういった心理が働いたのだろう。

 そしてその抱きしめた力で「ぐゅ!」という変な声がカービィの口から漏れ、目を覚ました。

 

「あ、あわわわ! じゃ、ジャベリンは食べても美味しくないですよ!」

 

 当のジャベリンは酷く混乱し、口の見当たらない橙色の生物に対して見当違いな事を口走る。

 カービィは何か言いたげな様子を様子をしているが、ジャベリンによってきつく締め上げられてる為声も出せない。

 無言で見つめる橙色の生物達。震えるジャベリン。もがくカービィ。そんなカオスな状態がしばし続く中、遂にこの状況を打破せしめる存在が現れた。

 

「あれー、カービィ、誰それ?」

 

 現れたのはまた同じ顔をした橙色の生物。しかし頭には青いバンダナを被っており、しかも口がないのにもかかわらず流暢に人語を喋る。

 そんな輪をかけて摩訶不思議な生物の登場にさらにジャベリンの混乱は大きくなる。

 

「うひゃあ! 喋ったぁ!?」

「ワドルディの中ではボクだけが喋られるんだよ。ところで君は誰? ここらじゃ見かけないけど? 新入り?」

「え、えっと……J級駆逐艦のジャベリン……です……」

「くちくかん? よくわからないけどよろしく新入りさん。そしてようこそ、しょっちゅう危機に陥るけど基本的には呆れるほど平和なプププランドへ。ボクらはワドルディ。ボクもこの子もあの子も皆んなワドルディ。皆んな個性はあるけど、皆んな同じくワドルディ」

 

 バンダナを被るワドルディと名乗った橙色の生物が自己紹介すると、他の橙色の生物も一斉にうんうんと頷く。

 皆んな同じ名前で区別つくのかとか、個性もあるのに同じ名前でいいのかとか、色んな疑問がジャベリンの中で渦巻くが、ひとまず橙色の生物はひっくるめて『ワドルディ』だと理解する他ないだろう。

 

 どうやら自分は思っていた以上におかしな所に来てしまったらしい。

 

 そう思い至り、遠い目になる中、やっとジャベリンの腕の拘束から逃れることの出来たカービィが何事かをワドルディに話し出す。

 うんうんとしばらく頷いていたワドルディ達は、あるとき合点がいったように声なき歓声を上げた。

 

「なるほど、ジャベリンはあの箱と筒から生まれたんだね」

「ぽよ!」

「……え? あ、えっと、もしかしてメンタルキューブの事?」

 

 しばらく現実逃避していたジャベリンは、自分の名前が呼ばれた事でようやく意識を現実に戻した。

 対して、聞き慣れない単語を聞いたバンダナのワドルディはなんとなくその正体に勘付く。

 

「メンタルキューブって、このヘンな箱の事?」

 

 その言葉に合わせ、トコトコと二体のワドルディがやってくる。

 その頭上に二つの青く透き通った立方体を掲げて。

 

「そう! それ! それをこの『建造ドック』にいれると私たち『艦船』が生まれるの!」

「うぃ! ぽよ!」

「へー、それでカービィは偶然拾ったメンタルキューブを『建造ドック』に放り込んで、ジャベリンが生まれた、と」

 

 納得するワドルディ達。一斉に頷く様は慣れてくると可愛らしくも見えてくる。

 だが、カービィはまだ言い足りないらしい。

 

「ぽぉよ!」

「ん? キューブだけじゃなくてドリルも要る?」

「ぽよ!」

「あ、それは高速建造材だよ。別に無くてもしばらく待てば私たちは生まれるよ?」

「なるほど。じゃあキューブがあればジャベリン達は増えるわけだね?」

「そういう事!」

「でも……不思議だなぁ」

 

 バンダナを被ったワドルディはあるのかわからない首を傾げる。

 

「立方体から機械の力を使って生まれる生き物なんて聞いた事ないよ。ジャベリン達『艦船』って、一体何者なの?」

「……私たちは兵器だよ」

 

 ワドルディの質問にジャベリンは答える。

 カービィと接していた時の無邪気さはどこかへと鳴りを潜め、静かな表情で、淡々と。

 

「『セイレーン』っていう海の怪物から人類を守る為に作られた、どこかの世界の何かの船の記憶を持った、人型の兵器なんです」

 

 だが、次の瞬間には元の無邪気な笑顔に戻る。

 まるでそうあるべきだと何かに命じられるように。

 

「そして! ジャベリンはカービィによって生まれました! だからカービィが指揮官なんです!」

「ぽよ?」

「だからよろしくね、指揮官!」

 

 ギュム、という擬音が相応しいような様子で再びジャベリンはカービィに抱きつく。

 その様子をしばらく見ていたワドルディ達だったが、やがてワドルディ達は一箇所に集まりだし、わにゃわにゃと何か彼らにしかわからない言語で喋り出す。

 一通り喋り終えた後、一斉に納得したように頷き、ジャベリンに向き直った。

 

「……ジャベリン。君達は『セイレーン』っていう怪物に対する兵器なんだよね?」

「はい」

「でもボクらは海の怪物に襲われるなんてことはないし、そもそもそんな海の怪物知らない。君もこのプププランドのことは知らないみたいだ。だから考えられるのは……君達『艦船』を生み出す機械とキューブだけがプププランドにきた可能性。一つはプププランドがその『セイレーン』がいる世界と繋がってしまった可能性。もう一つはプププランドそのものが『セイレーン』のいる世界に来てしまった可能性」

「は、はぁ……」

「うぃ……?」

 

 突然の難しい話にジャベリンもカービィもぽかんとした顔をする。

 だが、ワドルディの話は止まらない。

 

「最初の可能性なら別に何かする必要はない。でも二つ目、三つ目の可能性が当たった場合は、その『セイレーン』がプププランドにやってくるかもしれない。ジャベリンの話だとその『セイレーン』ってのは相当凶暴そうだからね。でもボクらは『セイレーン』がどんなものか知らない。対処法も知らない。だから────」

 

 そこで、キューブを抱えた二体のワドルディが前に出る。

 

「『セイレーン』について知っている君達『艦船』を増やそう、ってことにボクらの間で決まったよ」



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メンタルキューブと強行偵察

「えーこの度は集まってくれてありがとうなのね、マルク、マホロア」
「あれ、なんでボクらが集められたのサ?」
「ウーン、わからないネェ。どうしてだいタランザ? 本編では出番まだダヨネ?」
「……作者から『お"ま"え"ら"の"出番ね"ぇ"がら"ぁ"!』っていわれたのね」
「( ゚д゚)」
「( ◔ ౪ ◔)」
「マルクの睦月顔は冗談抜きで似てるからやめてほしいのね」
「そんなのってないヨォ」
「酷いのサ! 横暴なのサ!」
「『東方桃玉魔』で活躍したからいいだろう』って言ってたのね」
「いやそれデモ……」
「ボクほとんど敵なのサ!」
「……マルクとマホロアはいいのね。敵でも出番は何話にも渡ってあったのね。私なんかデデデ大王との共闘ぐらいしか出番なかったのね。なのに『三大悪マスコットキャラ』で一括りされて一緒に出番を無くされたのね」
「あっ」
「あっ」
「……」
「……元気出すのサ」
「そうだヨォ。一緒に頑張っていこうヨ」
「……私達三人で作品の解説とかをして欲しいって頼まれたのね……初回からやっていくのね……」
「おう。頑張るのサ」
「で、初回は何するノォ?」
「今後の展望なのね。予定ではこの作品は長くても今年中に完結するつもりなのね。そしてカービィ陣営として登場するキャラは40人って言ってたのね」
「かなりの数なのサ!」
「でもアズレンのキャラ総数の比べると十分の一くらいじゃないカナァ? 『あのキャラがいない』『このキャラがいない』って意見が出そうな気がするヨォ?」
「それは織り込み済みらしいのね。40のキャラ全て内容は決まっていて、どういう活躍をさせるのかも決まってるらしいのね。だから申し訳ないけど了承して欲しいって言ってたのね」
「そうなのかぁ」
「とりあえず、『ププープレーン』をよろしくネェ」
「……このコーナーが人気だったら私達が本編に出るかもしれないのね」
「ガタッ」
「ガタッ」




 艦船を増やす。バンダナのワドルディの提案に対し、ジャベリンは特に反応しない。

 と、いうよりも「それが当然だ」と言わんばかりに落ち着いていた。

 

「それでいいと思いますよ? 私一人だと戦えなくはないけど、流石に一人じゃ……」

「そうなの? なんか色々武器持ってるから強そうに見えたんだけど……ほら、その槍とか」

 

 バンダナのワドルディはジャベリンが抱えている投槍を指差す。それに合わせて周りのワドルディも同調するように一斉に頷く。

 対するジャベリンは微妙な表情を浮かべる。

 

「あー……実はこの槍、ほとんど飾りなんです」

「……え?」

「私たち艦船が戦うときに使うのはこの『艦砲』と『魚雷』なんです。空母は『艦載機』を飛ばしたりできますけど……とにかく、艦船が得意なのは格闘じゃなくて遠距離攻撃なんです!」

「えー……じゃあなんで槍なんか持ってるの?」

「それはその……アイデンティティというか……」

 

 微妙な空気がワドルディ達とジャベリンの間で流れる。そんな空気はどこ吹く風とばかりにカービィは欠伸をし、空舞う蝶を目で追う。

 

 そんな空気にいたたまれなくなったのか、無理にジャベリンは声を張り上げ、投槍を振り上げる。

 

「さ、さぁー! そんな事よりも早く建造! 建造です! どうせなら大型や特型を建造しましょう!

「お、おー!」

 

 カラ元気のジャベリンに乗せられ、ワドルディ達も合わせて手をあげる。こうやって場の空気を(若干強引だが)変える才能をジャベリンは持っているのかもしれない。

 空気を変えることに成功したジャベリンは満足げに頷くと、ガチャガチャと建造ドックを弄り始める。

 

「何してるの?」

「あ、建造ドックの設定が『小型』のままだったから『特型』に変えたんです」

「その違いってなんなの?」

「『小型建造』で私みたいな駆逐艦や軽巡洋艦が建造されるんです。『大型建造』で軽巡洋艦や重巡洋艦、戦艦が建造されて、『特型建造』で軽巡洋艦や重巡洋艦、空母や工作艦が建造されるんです。大型と特型はメンタルキューブ二つ必要でちょっとコストは高いけど、それに見合った強い艦船が生まれますよ! 今回は一人いると便利な空母が欲しいな、って」

「へぇー。個人的には戦艦のほうが……あ、でもなんか沈むイメージしかないなぁ」

「いつかは戦艦もいて欲しいですね。じゃあ指揮官! お願いします!」

「うぃ!」

 

 『指揮官』と呼ばれ自分のことだと察したのだろう。元気よく返事をし、ワドルディからメンタルキューブ二つを受け取り、建造ドックに投げ入れる。

 すると建造ドックはゴウンゴウンと唸りを上げ始める。それと同時に『2:15:00』というカウントが減り始める。

 

「これが建造時間です。大型や特型は大体長くて、特に長いものだと五時間以上かかることもあります」

「それでも一人の人を生み出すにしても、一つの兵器を生み出すにしても短い時間だなぁ。……本当にどうなってるんだろ、コレ(建造ドック)

「さらに『高速建造材』があると一瞬で建造が終わりますよ!」

「確か……ドリルだっけ?」

 

 そう呟くと、またワドルディ達は一箇所に集まり、頭を突き合わせてわにゃわにゃと会議を始める。

 やがて一人のワドルディがどこかへと走り去り、しばらくするとまた去っていった方向から戻ってきた。

 その頭上には高速建造材を掲げて。

 

「あ! それですそれ! それが高速建造材です! どこで見つけたんですか?」

「落ちてたらしいよ。地面にぽん、と」

「へ?」

「持ってくることはできなかったけど、道中にもいくつかメンタルキューブが地面に転がってたんだって。……ちょっと前まで無かったのに」

「メンタルキューブとか高速建造材ってそこらへんに転がってるものだったっけ……?」

 

 ワドルディにとってもジャベリンにとっても不可解な事実が次から次へと明らかになる。

 だが残念ながらその真実を明らかにできる情報も手がかりも今は何もない。とにかく今できるのは来るかもしれない(セイレーン)に備えることだけだ。

 

 カービィは高速建造材を受け取り、建造ドックに差し込む。

 するとやはり、スイッチも何もないドリルは勝手に回転し、そして力尽きたかのようにぽとりと落ちる。

 そして開発ドックは蒸気を吹き出し、その蓋を開ける。

 その中から現れたのはまたも少女。黒髪はストレートで腰に届くほど長い。その耳にはヘッドホンを当て、着ているのは袖が余りに余ったパーカーのみ。そして背負っているのはまるで道路の一部のような板。

 ちょっと気だるげな印象を受けるその少女はやっぱりちょっと気だるげな声で決められたように挨拶する。

 

「こんにちわー指揮官。私はロングアイランドー……ぉ?」

 

 そして目の前の光景を見て固まる。

 目に入ったのは紫の髪の駆逐艦、ジャベリン。艦船がいることに疑問はない。

 が、問題はそれ以外全て。目の前に広がるのは港ではなくのどかな自然の中。自分と同じ人型をした指揮官に迎えられると思ったら、目の前にいるのは数十センチほどの数えるのも馬鹿らしいほどの数がいる橙色の球体生物と、間近でこちらを見上げる一体の桃色の球体生物。

 ロングアイランドと名乗る少女は目に見えて青ざめ、ずざざっと後ずさり、開発ドックにへばりつく。

 ジャベリンはその光景を「あー自分もこんな感じだったんだろうなー」と先輩としての若干の優越感……というよりもこの状況に慣れつつある達観から遠い目で眺めていた。

 

 が、状況が全く飲み込めていないロングアイランドはそれどころではない。

 

「私は幽霊さん……私は幽霊さん……だから見えてない……見えてない……はず……」

「はぁい!」

「うひぃ!?」

 

 最大の好意をもってカービィは声をかけたのだろうが、当のロングアイランドは開発ドックの中で丸まりガタガタと震えだした。

 不思議そうにカービィは近寄り、パーカーを引っ張ったりしているが、その度にビクンと大きく震えるだけで全くこちらを見ようとしない。

 埒があかないと思ったジャベリンはカービィに任せるのではなく自分が出る時だと思い立ち、前に出た。

 

「えっと、ロングアイランドちゃん? 私はJ級駆逐艦のジャベリン。この艦隊の最初の艦船だよ! よろしくお願いします!」

 

 ジャベリンの言葉にようやく恐怖以外の反応を示す。そしてそっとジャベリンの方を見た。

 

「艦隊……? ……ここが?」

「そう、艦隊。そしてこの子が指揮官のカービィ」

「はぁい! カービィ、カービィ!」

「えっと、いい子だよ? そして向こうにいるのがワドルディ。……どの子もワドルディだから区別つかないけど。あ、バンダナの子は喋れます!」

「よろしくロングアイランド」

 

 バンダナのワドルディが前に出て挨拶し、後ろのワドルディ達が無言ながらもにっこりと笑う。

 

 正体不明だが無害そうな彼らを見てなんとか落ち着きを取り戻したのだろう。座り込んだままだがようやくこちらをちゃんと向いてくれる。

 

「えっと……あなたが指揮官なんだよね?」

「……はぁい!」

「よ、よろしくねー、指揮官ー」

「うぃ!」

 

 するとカービィは余ったパーカーの袖を掴み、ぴょんぴょんと飛び跳ねる。きっと握手しているつもりなのだろう。

 その愛らしい姿に完全に落ち着きを取り戻したロングアイランドは、ようやくあたりを冷静に見渡し、疑問を口にする。

 

「それにしてもここはどこー? 港はないし、屋根はないし……日差しが辛いー……」

「あ、それはね……」

 

 ロングアイランドにジャベリンとバンダナのワドルディ二人で現状でわかることを推測を交えて説明する。

 すると見る見るうちにロングアイランドの顔は険しくなってゆく。

 

「むー。幽霊さんは難しい話はわからないのー」

「私もサッパリです……」

「ボクらワドルディも頑張って調べてはみるよ」

 

 バンダナのワドルディの言葉に他のワドルディ達もうんうんと頷く。

 見た目は可愛らしいが、その自信ある目を見ればきっと頼りになる……のだろう。

 その様子に何故か目を輝かせたロングアイランドはスッと手をあげる。

 

「任せたー。ところで質問なんだけど……どこか休めるところはないのー?」

「休めるところ?」

「幽霊さんは日差しが苦手なのー!」

「日差しが苦手? ポカポカして気持ちがいいよ?」

「うぃ!」

「幽霊さんは暑いのも寒いのも日差しも無理なのー! 冷暖房完備の個室でゆったりダラダラしたいのー!」

 

 なんて言いながら腕をぱたぱた振って駄々をこねるロングアイランド。

 その様子を見てジャベリンはあの時目を輝かせた理由を悟る。

 

 ロングアイランドという空母はどうやらかなりだらしない性格のようだ。おそらくあの時、「ワドルディ達が頑張ってくれるなら自分はこの面倒事の解決に協力しなくても済む!」なんて考えたのだろう。

 艦船というものは自分含めてかなり『濃い』面々が多いが、ロングアイランドはその中でもとりわけ『濃い』子のようだ。

 前途の多難っぷりを考えると、ジャベリンの顔にも自然と苦笑いが浮かぶ。

 

 

 ────と、その時だった。

 

 ドゴゥ、と何かが炸裂する音が響く。

 その音は低く、くぐもっており、どこか遠いところで響いていると分かる。

 だがその音は……並大抵の大きさではない。

 そしてその音が立て続けに二度、三度と起こる。

 音がするのは海の方。皆弾かれるように海へと顔を向けた。

 

「あっ! あそこ! あそこです!」

 

 最初に気がついたのはジャベリンだった。

 水平線の彼方に見える、巨大な水柱。それが現れた数秒後にまたあの炸裂音が鳴り響く。

 

「なんだろうあれ……大砲……かな?」

「ぽよ?」

「ロングアイランドちゃん! 艦載機! 艦載機飛ばして!」

「わ、わかったよー! いけー!」

 

 ロングアイランドは混乱しているが、ジャベリンの言われるがまま、道路の一部を切り取ったような板を構える。

 するとその板に小さな飛行機がいくつか現れ、低いエンジン音を響かせ大空へと飛び立った。

 

 

⚓︎☆⚓︎☆⚓︎

 

 

 ───同日 14:42 『P3』近海────

 

 『P3』最寄りの港に停泊していた艦船によって急遽本部からの命令により編成された『強行偵察隊』は間もなく偵察対象『P3』の視認範囲へと突入しつつあった。

 

 メンバーは六人。青い髪の少女、軽巡洋艦ヘレナ。猫耳を生やした銀髪のメイド少女の駆逐艦ハムマン。赤い髪の活発そうな印象を受ける軽巡洋艦フェニックス。巨大な飛行甲板をまるでライフルのように持つ空母レンジャー。黒と黄色いカウガールのようなファッションが印象的な空母ホーネット。月桂樹を被り、長い金髪を潮風に流す様が女神のようにも見える空母ヴィクトリアス。

 彼女達は計器を確認しながら目的地が近いことを確認した。

 

「……そろそろですね」

「だなー。それにしても急に浮上した島なんて……宝島みたいでワクワクするな!」

「分かる分かる! にしし、金銀財宝あったらどうしよー! 分け前どうする、どうする?」

「そんなこと言って、セイレーンの巣窟だったらどうするのだ! 調子に乗って近づいてもハムマンは守ってやらないのだ!」

「確かに……急に浮上したってのは気になりますね……やっぱりセイレーン関係でしょうか」

「そうだとしたら島ごと爆撃して吹っ飛ばせばいいのよー」

「……そういう力技はどうかと思うんですけど……あ、SGには反応なしです」

「む、見えてきたのだ!」

 

 ハムマンの指差す先。そこには確かにあるはずのない島があった。

 他の少女達も目的の島を視認し、各々準備を始める。ヘレナはくるくる回るSGレーダーを調整し、ハムマンは魚雷の調子を確認し、フェニックスは双眼鏡で島の様子を確認し、空母達は艦載機の最終チェックを行う。

 

「あー、あるある。あれが報告にあった『四つの尖塔とドームをもつ巨大建造物か。デカいなぁ。共和国で見た孤島の寺院くらい大きいんじゃないの?」

「報告の通りですか……では事前の打ち合わせ通り私とフェニックスさんで『P3』に接近して調査。レンジャーさん、ホーネットさん、ヴィクトリアスさんはここから艦載機による調査、ハムマンさんは三人の周囲の警護をお願いします」

「ハムマンに任せるのだ!」

「ええ、まっかせてよ!」

「攻撃されたら爆撃してもいいでしょう?」

「ダメです」

「ヴィクトリアス……貴女本当に脳筋ね……えっと、何かあったら連絡してくださいね? 有事の際は艦載機で援護しますから」

「なによ、レンジャーも爆撃する気じゃない」

「貴女の見敵爆撃のスタンスとは違いますよ!?」

 

 重要な偵察任務の最中とは思えないほど気楽なムードだが、戦場においてはこの気楽なムードこそが士気を高める。

 張り詰めた空気にずっといれば、いつかは耐えきれなくなり潰れてしまうものなのだ。それは艦船少女であっても同じこと。……いや、兵器として生まれながら人間と同じ感情を持つ彼女らは当然と言える。

 

 最終チェックを終えた彼女らは予定通りの作戦行動を行う。

 

 ───が。

 

 思いっきり頭を殴られたかのような衝撃が彼女らを襲う。なにが起こったのか把握するよりも前に大量の海水が頭上からバケツをひっくり返したように降りかかってくる。

 呆然とする中、再び衝撃が走り、水が振りかかる。

 

 ここでようやく────自分たちが大口径の砲で砲撃されているのだと知った。

 

「本部! 本部! こちら『T隊』の『P』! 14:46、ただ今所属不明の砲により砲撃された! 敵影確認できず!」

「SGに反応なし!? どこから撃ってるの!?」

 

 偵察隊を襲う混乱の最中、対空レーダーを弄っていたハムマンが声を上げる。

 

「……嘘」

「どうしたの!?」

「空……空に何か浮いてるのだ」

「何が? 艦載機?」

「いや……もっと巨大なものが……とにかくとんでもなく大きいのだ」

 

 皆空を見上げる。だが、そこには何も見当たらない。

 だが今なお、砲撃は続く。威力は凄まじく、耳が馬鹿になりそうだ。

 

「どうするヘレナ! 接敵は覚悟していたが、相手の武装の強さは想定外だぞ!」

 

 フェニックスは本部と連絡を取りながら双眼鏡で『P3』を観測するという器用なことをやってのけながら怒鳴る。

 ヘレナは唇を噛み締め、絞り出すように指示を出した。

 

「……撤退。撤退です!」




「あとがきにもでるのね」
「むしろあとがきにやるのが解説として正しい姿じゃないのサ?」
「そうだネェ。それで今回の解説ハ?」
「『T隊のP』ってセリフなのね。これはフェニックスのセリフで、T隊はこの強行偵察隊のコード、Pはフェニックス自身のコードなのね」
「ずいぶん安直な気がするのサ」
「でもまぁ、正規軍ダシ、コード振らずに通信機で本部と会話ってのもおかしいネェ。絶賛戦争中ナノニ」
「そういうことなのね。他にも気軽に質問してくれたら私達が感想欄で答えるのね」
「『Q』がボクらを呼び出すサインなのさ! でも作品に関係ない質問は許してちょーよ!」


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空からの目

アズレンやってて思うこと

πタッチってあるじゃないですか? あれってスマホ画面のある領域をタッチするとπタッチボイスが流れるようになっていて、秘書官の立ち絵はその領域にπが存在するように調整されていたと思っていたんですよ。
でも扶桑はπタッチ領域が若干右寄りな気もしますし、サウスダコタは左寄りな気がします。
そして何より、なぜかサラトガの場合πだけではなく股間タッチでもπタッチボイスが流れるんです。
もしや、数百のキャラごとにπタッチ領域を設定しているのか……? 確かに見事な胸部装甲を持つ方々のπタッチは簡単だったが、ウォースパイトのようなペタンヌ相手だと狙いすまさないとπタッチできなかったような……
もしかしてアズレンのアプリの容量が大きいのって……運営のπへの熱い想いのせい……?




 ───同日 14:50 プププランド上空────

 

「未確認生物六体の撤退を確認したダス」

「僥倖。しかしどうも気づかれたようだな……」

 

 鉄で囲われた広大な室内。その広大な室内の壁一面を覆うスクリーンを眺めていた大柄な紫の鎧を纏い、トゲ付き鉄球を担ぐメイスナイト(しかし得物の名前的に『モーニングスターナイト』もしくは『フレイルナイト』の方が正しい気もする)は一連の経過報告を行い、それに鷲か鷹の頭を持つ白い軍帽を被った人型生物、バル艦長が鷹揚に頷く。

 その周囲には骸骨の仮面のようなものとバイキングの兜を被った者アックスナイト、白い切れ込みのある仮面を被った青い騎士のような者、メタナイトが佇んでいた。

 

「しかし……やっぱり対レーダーステルス積んだ方が良かったんじゃないダスか?」

「確かに。光学ステルスの方が費用かかりますし」

「バカ言うな。ポップスターに対空レーダー積んだ奴がどこにいた? ポップスターで強力な奴といえば大体個の生物……あのピンク玉みたいな奴だろう? だったら光学ステルスの方が効果ある。第一……修繕費が嵩んで無駄な装備はしたくないんだよ」

「ああ……」

「納得……」

 

 バル艦長が切ない顔をする。その表情からいろいろなものを悟った鎧の二人。

 そんな弛緩した雰囲気を正すように、後ろに控えていたメタナイトが口を開く。

 

「無い物をねだっても仕方あるまい。我々がやるべきはあの領海侵犯を犯した一団が何者であるか見極める事だ。ただ、あの武装から考えるに小さな集団ではあるまい。ある程度の規模を持つ団体から送られてきたものである可能性が高い」

「それにしてもあの生物、なんなんでしょうかね?」

「確かに。我々とは似ても似つかぬ生物だったダス。本当にポップスターにいる生き物なんダスか?」

「……いないわけではない。アドレーヌも同じような姿をしていた」

 

 メタナイトの発した人物名に『誰?』という困惑の色を浮かべる鎧二人と心当たりがあったような顔をするバル艦長。

 その表情の変化を見抜いたメタナイトは鎧二人に向き直る。

 

「私も直接見たことはない。だがある時カービィがデデデ大王、ワドルディとともにある惑星を支配していたダークマターを倒す際、協力してもらったカービィの友人だとデデデ大王から聞いている。デデデ大王曰く、そのアドレーヌもあのように体や手足が枝のように細く、頭から毛を生やしているという」

「ワシも聞いたことがありますなぁ。なんでも絵を実体化させるとか?」

「そうなんですか!? ……それって厄介では?」

「あの生物が皆そんな能力を持ってたら厄介ってレベルじゃないダス」

「それはないだろう。彼女が特別なようだ」

 

 目に見えて安堵する鎧二人。

 だが、とメタナイトはその弛緩した雰囲気を一蹴する。

 

「海面を泳ぐのではなく滑るように移動するあの能力……カービィのウォーターのコピーに通じるものがあるが、それより速い。あの小さなものが艦船並みの速度で動くとなると、もし敵対するとハルバードの主砲では当たらない可能性がある」

「かの生物特異の能力ですか……厄介な……」

「水中での肉弾戦は勘弁してほしいダス。重くて沈むダス」

「小型飛行艇を作る必要があるな……さて、カービィはこの異常事態を察知しているのか?」

 

 メタナイトは三人に問うてみるが、答えなぞ自分でも分かりきったこと。

 

「絶対わかってないダス」

「寝てるんじゃないですかね?」

「むしろ何も考えずあの生物と仲良くしてる光景すら浮かぶ……」

「……一応会っておくか。情報のすり合わせと言う意味でも……」

 

 ハルバードは進路を変え、カービィがいるであろう方角へと飛んで行く。

 

 

⚓︎☆⚓︎☆⚓︎

 

 

 ───同日 14:58 プププランド────

 

 しばらく艦載機を飛ばし、何やら探っていたロングアイランド。

 やがて艦載機達はロングアイランドの元に戻り、ふわりと消える。

 

「ど、どうだった?」

 

 ジャベリンの質問にぷるぷると頭を横に振る。

 

「だめだよー、何にも見つからない。でも曳航痕はあったから、何者かが何者かを砲撃したってことはわかったよー」

「そっか……」

「砲撃……かー」

「ぽょ」

 

 ロングアイランドの報告にじっと考え込むワドルディ達とカービィ。

 やがて互いの顔を見合わせ、頷き、ワドルディが口を───どう見ても無いが────開く。

 

「もしその砲撃がプププランド側からなら、あれだけの砲撃能力を持つ施設は二つしかないよ」

「二つ“も”あるって言うべきなんじゃ……」

「わかるー」

「一つはデデデ大王のデデデ城」

「大王? 王様がいるの?」

「いるよ」

「デデデ大王って、変な名前ー。それに自分の名前を城につけてる時点でアブナイ感じー」

「それ本人の前で言っちゃだめだよ? とにかく、あそこならあれくらいの砲撃ができる大砲があるかもしれない」

「あ! もしかしてそのデデデ城ってあれですか!?」

 

 ジャベリンが人差し指を向ける方。そこには四つの尖塔とドームを併せ持つ巨大建築物が高い山の上に建っていた。

 それを見てワドルディは頷く。

 

「そうそれ。あそこは色々兵器が詰まってるからね」

「物騒ですね……」

「まあそれ以上に物騒なのがもう一つの施設。というよりあそこは施設というか────」

 

 そこまで言った時、地面が揺れる。

 ズン、という腹の底に響くような音と共に。その衝撃は体の軽いカービィやワドルディ達がほんの少し跳ねるほどであった。

 

「何!? 何!?」

「何か落ちた気がするー」

 

 混乱の最中、巨大な駆動音が鳴り響き、そして“ソレ”はその巨躯を白日の下に晒した。

 金色の金属光沢を持つボディ。緑色のレンズがはまった目。万力の如き形状の爪。今尚駆動音を響かせる脚。

 それは直立する金のエビかカニのような巨大機械であった。それが二体。自分たちを挟み込むようにして同時に現れたのだ。

 そして威嚇するかのように爪を広げて見せる。

 

「ひゃあああっ!!?」

「あー……もうダメだー……おしまいだー」

「あ、ヘビーロブスター」

「うぃ」

 

 恐怖の色で顔を染め、ロングアイランドに抱きつくジャベリン。

 終わりを悟った故なのか、その場で棒立ちになるロングアイランド。

 大して反応も示さないワドルディ達。

 鋼鉄のエビに対して挨拶するカービィ。

 四者四様の反応を示す中、三つの影が鋼鉄のエビの後ろから現れる。

 

「カービィ、ワドルディ。これは一体どういうことだ?」

「……なんかでた!」

「また球体生物だー」

 

 闖入者に対してなかなか失礼なことを言い放つジャベリンとロングアイランドだが、当の本人達は一切反応しない。話す気があるのはカービィとワドルディだけと言った様子だ。

 

「あ、紹介するよ。この仮面の人がメタナイト。後ろに控えてるのがメイスナイトとアックスナイトだよ。そして、この人が先の砲撃能力をもつ二つの施設のうち一つ、空中戦艦ハルバードの所有者だよ」

「くう……ちゅう……戦艦……」

「SFかなー……?」

「……ワドルディ。どういう関係か教えてくれるかな?」

 

 次々現れる謎生物。刻々と変わる状況。全く聞き慣れない言葉。その全てに翻弄された二人はだんだんと考える力を無くしてゆく。

 一方、ワドルディは今まで起きたことや自分達の推測を全てメタナイトに話してゆく。

 全てを聴き終えたメタナイトは納得したように頷いた。

 

「なるほど……であれば最初の『開発ドック』だけが現れた可能性は限りなく低い」

「それはどうして?」

「我々はつい先ほど、プププランドの領海に侵入した者を威嚇射撃で追い払ったのだが……そこの二人とよく似た姿をしていた」

「それ、もしかしたらアズールレーンかレッドアクシズか、どちらかの陣営の艦隊だと思います!」

「ん? 対セイレーン組織が二つあるのか?」

「あ、いや……理念の違いで人類同士で戦争中なんです」

「……どうして人類共通の敵がいる中人類同士で争っているのかとか、なぜ“生まれたばかり”の貴女がそんな情報を持っているのか、色々興味は尽きないが今は置いておこう……どちらの陣営かはわからないが、あれは正規の軍人としての動きをしていた。だからあの艦隊がプププランド以外に現れた『開発ドック』から生まれた『艦船』というわけではないだろう」

「どうしてそう言い切れるのー?」

「ポップスターに訓練された軍隊を持つ国家は存在しない。というか、プププランド以外に国家と呼べるものは数少ない」

「なんというか……すごく平和なんですね」

「というより未開なんじゃないのー?」

「未開の星がこんな機械作れるわけないじゃないですか!」

「あ、それもそうかー」

 

 逸れてしまった話を戻すべく、メタナイトは一つ咳払いをする。

 

「とにかく、『ポップスターに開発ドックが突然現れた』という説の可能性は低い。よって『ポップスターと人間とセイレーンが戦争をする星とを結ぶ穴ができた』説と『プププランドそのものがその星に移った』という説の信憑性が高い。……侵入者のうち何人かを捕虜にすべきだったか?」

「尋問は嫌です」

「かわいそうダス」

「私も好む訳ではない。騎士の一人として女子供を甚振るのは下衆のする事だ。さて、いずれにせよこの状況を確認する必要がある訳だ」

 

 この言葉には皆が───面倒臭そうではあるがロングアイランドも────頷く。

 皆の肯定を得たメタナイトは故に、と続ける。

 

「我々はプププランドの東西南北、全ての海を調べなくてはならない」



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デストロイモードなんてないし、嗤えばいいというわけでもない


「タイトルで察して欲しいのね」



「ちょ、ちょっと待って!」

 

 ジャベリンが慌ててメタナイトの話を遮る。

 

「さ、流石に駆逐艦一人と空母一人じゃ戦力不足というか……私は回避には自信があるけど火力には自信がないし、ロングアイランドちゃんも艦砲は積めないから砲撃能力はないし……」

 

 ジャベリンの指摘にロングアイランドも後ろでブンブンと首を縦に振って肯定する。

 この指摘にはメタナイトも唸らざるを得なかった。

 

「確かに。空母一隻と駆逐艦一隻の艦隊なぞ聞いたことはない。となると増やすしかないが……そのメンタルキューブとやらを見つけねば話にならんだろう」

「まだそこらへんに転がってるんじゃないかなぁ? ボクらで探しに言ってみようか?」

「そうか? ではたのむぞワドルディ。あとアックスナイト。すまないがハルバードから海図を持ってきてくれ」

「わかりました」

 

 メタナイトの指示でワドルディ達は散り散りになり、アックスナイトもどこかへと消えて行く。

 残されたのはカービィ、メタナイト、メイスナイト、ジャベリンとロングアイランド。

 一気に人の数が減り、静かになったことで気まずい雰囲気が流れる。

 もっとも、カービィだけはそんな空気気にせずジャベリンの足元で眠っているのだが。

 

 堪らずジャベリンはメタナイトに声を張り上げ話しかけて見る。

 

「えっと! メタナイトさんは騎士(ナイト)なんですよね! なのでロイヤル所属だったりするんですか?」

「いや、この星の国とは無関係だと思うが?」

「あっ、ですよねぇ……」

 

 会話が止まった。

 なんというか、非常に話しづらい相手だ。

 やはりメタナイトの中でもジャベリンら艦船は未だ敵か味方か測りかねている為なのだろう。

 

 なんとなく居たたまれなくなったジャベリンは、その足元で寝ているカービィを抱き上げようとする。カービィだけはジャベリンのことを全面的に信じている気がする。というか、腹芸は一切できないだろう。

 が、いつのまにか足元からカービィが消えていることに気がつく。

 見れば、ロングアイランドの長い袖に埋もれ、気持ち良さげに寝ているではないか。

 そしてロングアイランドも眠るカービィに頬ずりしている。

 

「えへへー、すべすべー」

「あっ、ずるいですー!」

「早いもん勝ちだもんねー」

「早く着任したのはジャベリンです! 指揮官を返してください!」

「あー!ダメなのー!」

「ぶぃっ!?」

 

 そのまま始まる綱引き。なお綱はカービィである。

 事の顛末を見ていたメタナイトは「精神年齢は見た目相応なのか?」と冷静に分析するが止める気は無い。主人が動かないためメイスナイトも特に何もしない。

 

 しばし綱引きが行われていたが、やがて基礎体力の差なのか、相性の問題なのか、はたまた別の要因か、軍配はジャベリンに上がる。

 そして綱にされたカービィは目を回している。

 

「むー。ジャベリンは強引なのー!」

「初期艦は私なんです! このまま秘書艦にも着いちゃうんですから!」

「何やってるの二人とも……」

 

 そんなことをやっている間にワドルディ達が戻ってきていた。

 ワドルディは呆れを多分に含んだ声を出すが、心外だと言わんばかりに抗議の声を上げる。

 

「秘書艦の地位は艦船にとって重要なんです!」

「私はどうでもいいけどー指揮官の肌触りは格別なのー!」

「あ、カービィ指揮官認定されたんだ。ま、そんなことどうでもいいか」

「ひどいっ!」

「メンタルキューブ3個と高速建造材2個拾ってきたよ。……なぜか木に引っかかってた」

 

 ワドルディ達は掲げたメンタルキューブと高速建造材を地面に置く。

 そして目を覚ましたカービィはジャベリンの腕から逃れ、メンタルキューブを一つ、建造ドックに投げ入れた。表示される『0:23:00』のカウント。それが減って行く。

 続いて今度は2つのメンタルキューブを同時に投げ入れる。表示されたのは『2:30:00』。

 初めて見る建造の様子をメタナイトは興味深げに眺める。

 

「なるほど、キューブの数によって時間が変わるのか」

「というより、建造される艦船によって変わるんです。キューブの数で建造される艦船はある程度決まってるんですけどね」

「なるほど……では新たな仲間となる者を迎えようではないか」

「うぃ!」

 

 カービィは高速建造材を掲げ、開発ドックに差し込む。そして今まで通りの動作の後、『0:23:00』のカウントが0になる。

 吹き出す蒸気。開く蓋。聞いていたとはいえ、初めて見る光景にメタナイトは若干身構える。

 そして中から出たのは、銀髪の少女。その髪をポニーテールにし、頭からは金属の角状のものを生やしている。着ているのは丈の短いセーラー服。ジャベリンやロングアイランドと比べればまだ水兵らしいと言える。

 その少女はやはり前者二人と同じようにそれが規定であるかのような自己紹介を行う。

 

「綾波……です。『鬼神』とよく言われるのです。よろしくです。……出るところ間違えた……ですか?」

 

 若干無感情に聞こえる声色。しかしながらその声は多分に困惑の色を湛えていた。

 まぁ、青空の下で謎の球体生物が大量にいるのだからそれは当然なのだが。それでも前の二人よりも慌てていないのは綾波という少女の性格故か、それとも同族である艦船が2人もいる故だろうか。

 そんな綾波にカービィはいつも通り笑顔を振りまき挨拶する。

 

「はぁい!」

「……もしかして、指揮官……ですか?」

「はぁい! カービィ!」

「綾波の想像してた指揮官像より……ずっと丸いです。そしてずっとかわいいです。よろしくです」

「ぽよ!」

 

 そしてムニムニとカービィをつつく綾波。

 しばし感触を楽しんでいたが、それにしても、と突然頭をあげる。

 

「この艦隊、絶対普通じゃないのです。何があったですか?」

 

 綾波の質問に対してメタナイトが「もう1人の艦船を建造してからまとめて説明しよう」と受け流す。

 すぐに疑問に対する答えが得られないとわかった綾波はまた視線をカービィへと戻し、つつき回す。

 ちょっとしたぬいぐるみ扱いだが、そこはもとより順応性の高いカービィ。気にせずもう1つの高速建造材を用いて高速建造を行う。

 『2:30:00』のカウントはたちまち0となり、蒸気とともに蓋が開く。

 現れたのは紫の髪の少女。白いドレスのようなワンピースを纏い、背中には翼のように飛行甲板を背負っている。今まで建造された三人の中でも特に幼く見え、腕にはユニコーンのぬいぐるみが抱かれていた。

 そしてやはり、定型文のような自己紹介を始める。

 

「あ……わたし……ロイヤルネイビー……ユニコーン……指揮官……あのぉ……お兄ちゃんって呼ん……で……も……」

 

 そして辺りの状況を確認し、困惑するまでが1セット。ユニコーンと名乗る少女も群がる球体生物達を見て完全に困惑していた。

 しかしそれでも誰が指揮官であるのか生まれた時の艦船としての本能でわかるのか、じっとカービィの方を見つめていた。

 カービィは当然、自己紹介を始める。

 

「はぁい! カービィ!」

「かー……びぃ?」

「うぃ!」

「えと……おにぃ…………かーくんって呼んでも……いい?」

「うぃ!」

「よろしくね、かーくん」

 

 幼い少女であるからだろうか。目の前の理不尽でファンタジーな存在もあっさりと受け入れるのは子供の順応性を想起させる。

 だが、メタナイトだけはその鋭い観察眼故に気づいていた。ぬいぐるみにしか見えないユニコーンが僅かに動いていることを。

 別にぬいぐるみが動いた程度で動揺したりはしない。元はポップスターの住人。これくらい不思議なことは割と発生する。

 問題はユニコーン自身が自らのぬいぐるみが動くことに気づいているのかどうか。気づいているのだとしたら、ジャベリンやロングアイランドが驚いた不可思議存在である我々も「動くぬいぐるみ」と同じように簡単に受け入れられるのだろう、と。

 建造した艦船は皆個性的だ。そして奇跡的に皆我々に猜疑を抱かない。だがもし仮に猜疑的な反応を示す者が生まれた時どうするべきか。

 その時はユニコーンのような順応性の高く、かつ保護欲を刺激する艦船が架け橋になるのではないか。そうメタナイトは計算していた。

 

「さて、生まれたばかりの2人には早速で悪いが状況説明だ」

 

 メタナイトは2人に対して滔々と今までの事を説明してゆく。

 そして本題、探索の話へと移る。

 

「ここで役割分担だ。君達は恐らく十数から二十数……もしくは三十ノット近くまで速度が出せるのだろう。だが、その速度では探索する範囲に限界がある。故にこの星のマッピングを衛星軌道からハルバードより我々が行う」

「じゃあ私たちがするのは?」

「艦載機で空撮とかー?」

「いや。先にも言ったようにプププランドに近づいた君達と同じ艦船がいた。君達はその後を追い────」

「追撃ですか。綾波、雷撃には自身があるのです」

「戦闘は苦手だけど……頑張る!」

「い、いや、接触し、友好関係を築いてもらいたい。別に我々はアズールレーン、レッドアクシズどちらかに所属して戦争をしたいわけではない」

 

 途端に顔を曇らせる艦船少女たち。やはり“兵器”として生まれただけあってそれ以外には難がある者が多いのだろうか。

 

「……友好関係……対話……綾波、自信がないのです」

「幽霊さんも同じくなのー」

「し、知らない人は苦手……」

「そういうことならジャベリンに任せてください!」

 

 しかしながらジャベリンだけは胸を張ってそう答える。

 たしかに愛想も振りまくことも得意そうだし、適任かもしれない。

 

「そうか。それは頼もしい。ではカービィとワドルディ……ああ、話せるワドルディ一人を連れて追って欲しい。ただ偽装のため逃走した方角に彼らの拠点がない可能性があるが、それでも直進して欲しい。その場合は大陸を見つけ、現地の様子の確認だけでよろしい」

『了解!』

 

 威勢のいい声が青空に響く。任務に関してはしっかりとした応答をするのはやはり職業軍人であるからこそなのだろうか。

 

「さて、不測の事態に巻き込まれた我々としては一分一秒が惜しい。早速準備に取りかかれ!」





「カービィ、かーくん呼ばわりされたのサ」
「ユニコーンがカービィをお兄ちゃんって呼ぶのも変な気がしたからこうしたらしいのね」
「……あと作者がナンカダウンしてるヨォ」
作者「_(:3」z)_」
「……出雲建造にいる重桜戦艦の累計経験値が300万必要とわかってダウンしてるのね」
「ちなみに今は650,000/3,000,000なのサ」
「ウワァ……」
「だからゴールデンウィーク中は出雲建造に集中するため、投稿が空く可能性があるのね」
「来週、再来週中には建造したいって言ってたのサ」
「……」


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初調査と遭遇

「出雲建造のため短めなのね」
「そしてついでに登場キャラの紹介もするのサ」
「カービィはわかってもアズレンキャラはわからない人がいるからネェ」
「あとプププランドの位置を南半球から北半球に変更したのね」

『ジャベリン』

 Sレア駆逐艦。SS内では建造で来たが、本来はラフィー、綾波(中国ではZ23)とともに初期艦。主砲火力は低く、雷撃値もそんなに高くない。そんなジャベリンの強みは回避。素の回避値も高く、確率発動のスキルでさらに上がるため、驚異の生存能力を誇り、演習(アズレンのpvp要素)の相手に出ると大体の指揮官がイラっとする。さらに改造で雷撃値が上がるスキルも取得する。最初に改造が実装された上、公式ツイッターのアイコンにもなっているので優遇されている……かと思いきや初期艦四人組で唯一着替えが無かったりと、隠れ不遇枠。ウザカワキャラは人を選ぶらしい……頑張れジャベリン。負けるなジャベリン。

『ロングアイランド』

 レア空母。建造で登場したが、本来は自動でもらえる。セリフ通りかなりのんびりした性格。……が、イベントでそれどころではないことが判明。っていうか引きニート、干物娘そのもの。寮舎に引きこもり『退役至上』Tシャツ一枚を着てポテチ食って『ジョインジョイントキィ』している。ちなみに改造可能。名前が長いので『長島』とよく呼ばれる。それがさらに派生して『ナガシマスパーランド』とか呼ばれる。長くなってんじゃねぇか。

『綾波』

 初期艦のうち一人。中国版では綾波の代わりにZ23が初期艦。主砲は駆逐艦の中でも弱いのだが、目を見張るべきはその雷撃値。改造すれば駆逐中第3位。しかもスキルで雷撃値が上昇するのだが、その伸び率が半端ではなく、実質1位。雷撃がうまく決まればボスが冗談抜きで吹っ飛ぶ。改造も二番目に実装されたし、着せ替えも大量にあるし、フィギュアも赤城に続いて出たし、初期艦四人組で最も優遇されている。(???「ちくしょう」)

『ユニコーン』

 Sレア軽空母。ゲームの仕様上軽空母となっているが、本来は航空機補修艦。航空機補修艦とは当時性能が良くなくよく壊れていた艦載機の対応策として、英国が『じゃあ艦載機を修理する専用の船作りゃいいじゃん』ということで作られた船。ぶっちゃけ英国面の産物。ゲームではレアな回復スキルがあり、装填値も上がるので高難度海域でもよく使われる……が、それ以上に見た目が性癖を貫くような感じなので数々の『お兄ちゃん』を生み出してきた罪深い艦船少女。なお、史実では朝鮮戦争にも参加しており、敵陣に接近きて砲撃したりしていた。やっぱりデストロイモードあるじゃないか。

『ヘレナ』

 Sレア軽巡洋艦。数少ないデバフスキルを持つ艦船。アズレンの三幻神のサポート担当。今日もどこかで高難度海域に兄貴とウィチタとともに駆り出されている。

『ハムマン』

 レア駆逐艦。獣耳は重桜艦の特徴のはずだが、なぜか獣耳を生やしている。理由は『絵師のシュミ』。正統派ツンデレで、そのため人気がある。どれくらい人気かといえば、赤城、綾波に続いてフィギュアが作られるくらい。生存している間は旗艦へのダメージを抑えるスキルを持っている。ハムマンのスキルで旗艦を守ることを『ハムマンでハムマンする』と言う。

『フェニックス』

 レア軽巡洋艦。だが評価はSSレアに並ぶ。その最大の理由はスキル『真紅の不死鳥』。体力が一定値を割ると一定量(20%くらい)回復するというもの。一回の戦闘で一回しか使えないが、逆を言えば一回戦闘が終わればまた使えると言うことであり、戦闘開始→スキル発動→戦闘終了→次の戦闘開始→以下エンドレスとなる為、とんでもない生存能力を持つ。そしてレア度が低いために消費燃料も少ない。結果3-4などの周回にしばしば駆り出される。所謂艦これのゴーヤポジション。今日もどこかでフェニックスはアズレンのオリョール、3-4や6-4とかを死んだ目で回っている。

『ヴィクトリアス』

 SSレア空母。あのイラストリアスお姉ちゃんの本当の妹(そんなことを言うとユニコーンが泣きそうだが)。おしとやかな姉と違い、『困った時は暴力が一番(意訳)』などと言う脳筋なところがある。一応暴力は好きではないらしい。一応。

『ホーネット』

 Sレア空母。あのエンタープライズの妹。エンタープライズに次ぐ攻撃力の持ち主。初期の頃お世話になりました(作者談)。

『レンジャー』

 ノーマル軽空母。……なのだが、攻撃力を倍加する確率発動スキルを2つ持っており、うまく噛み合えば4倍攻撃となる。そうなれば海域は吹っ飛ぶ。ちなみに改造可能。性能も燃費もいいので時々フェニックスとともに死んだ目で3-4周回している。教師っぽい性格をしている。が、何気ない言葉を聞いて勝手にエロい連想をして赤面したりとかなりムッツリさん。そして趣味は少女漫画。バレンタインにはレンジャー先生と指揮官くん(生徒)の道ならぬ恋が描かれたメモをチョコと一緒にうっかり渡しちゃったりとかなりのポンコツ先生。だがそれがいい。


 ───同日 15:36 プププランド近海────

 

 波の静かな海を四つの影が滑るように移動する。

 泳いでいるわけでも、飛んでいるわけでもない。文字通り海面を『滑って』いるのだ。平らな氷面をスケートでもするかのように、滑らかに。

 そんな人間では到底できないことをやってのけるのは、やはり彼女らがヒトならざるもの────兵器であるからなのだろう。

 

 ……が、それ以上に非常識な機動をしている者がいた。

 

 小さな星を撒き散らしながらふわふわと浮いている星型のソレ。さながら流れ星を可愛らしくイラスト化したようなもの。

 その上に乗るのはカービィとワドルディ。ファンシーな生物がファンシーな乗り物に乗ることにより、周囲の空気が現実離れして見える。

 

 メタナイト曰く『ワープスター』などと呼ばれるものらしい。オーパーツの様なものと言っていたが、駆動音も噴射口もなく浮かび飛行する様は確かに神秘的なオーパーツだ。

 そんな謎物体に乗りながら、カービィとワドルディは四人だけの艦隊についてくる。

 

「翼もないのに飛べるんだね……ゆーちゃんも頑張ったら飛べるかな……?」

 

 幼い少女であるユニコーンはワープスターに興味津々である。

 その好奇心と純情さは子供のソレであり、メタナイトは『兵器として生み出したならば子供っぽさは戦争において邪魔なはず。制作側の意図がわからない。それとも本来は戦争に使われるはずではなかった技術なのだろうか? または個々の性格はどうやっても生まれてしまうものなのか』などと推論を話していた。しかし直後に『推論は推論でしかない。思考を狭めてしまう推論は捨ててしまおう』と首を振っていた。

 

 他の艦船少女達も最初こそは興味津々だったが、だんだんと慣れていった。まぁ、短時間であれだけ異常な経験をすれば、ふわふわ浮く星型物体程度で驚愕する方が難しいのだろうが。

 はっきり言って『もう何が起きてもおかしくはない』という諦めの境地に達していた。

 

「それにしても……」

 

 未だ海の真ん中。陸地すら見えない海上でふと綾波は口を開いた。

 

「私達は一体、どうなるんです……」

 

 ポツリと漏らしたのは不安の吐露。

 無理もない。本来であればアズールレーンかレッドアクシズか、どちらかの陣営に属する筈だったのだ。

 人間というものは何か集団に属することにより大きな安心感を感じる。人間と同じ様な感性をしている艦船少女もまた同じだろう。

 だが、今はどうか? プププランドという軍すらあるのか、いやそれどころか国家なのかすら怪しい場所で、現地のイレギュラーとして生み出されたのだ。プププランドからすれば余所者である。

 つまりは、居場所がないのだ。

 

「そう不安がることはないと思うよ」

 

 答えたのはワドルディだった。

 

「プププランドは来るもの拒まず、だからね」

「そうですか……」

「元はカービィだってプププランドのそとからやって来たんだし」

「え!? そうなんですか!」

 

 声を張り上げたのはジャベリンだったが、皆驚いた様にカービィを凝視している。

 皆の驚いた視線にカービィは何が何だかわからない、と言った風に首を傾げた。

 

「そう。いつだったか、春風とともにやってきたんだよ。ふらりとね」

「プププランドの前には一体どこにいたんだろー?」

「さぁ?」

「……わからないですか?」

「うん。本人もよくわかってない。というより、本人には場所って概念もなさそう。適当にふらふらしていたら『プププランド』って呼ばれている場所にやって来た、そこで歓迎されて家ももらったりしたから、落ち着いてる、って感じ」

「……」

「ぽよ?」

 

 カービィに視線が集まる。

 先ほどと同じ様に驚きもあるのだろうが、同時になんとも言えない脱力感も含まれている気がする。

 

「かーくん……能天気?」

「ぽよ?」

「そんな感じがするのー」

「うぃ?」

「頭の中……お花畑です?」

「ぶぃ!?」

「指揮官の威厳が……」

 

 元より何も考えていなさそうな感じではあったが、どうやら真性の能天気らしい。

 なんとなく察したカービィは肩を落とす。それを見かねてワドルディがフォローをする。

 

「カービィは本気を出したらすごいから」

「それ……『明日から本気出す』と同じです……」

「万能な言い訳なのー」

「ほ、本当にすごいんだよ……?」

 

 しかしそれは不発に終わる。

 少し悲しそうな顔をしているカービィをユニコーンが撫でながら慰め、ジャベリンが励ます。

 ちょっと罪悪感を覚えた綾波とロングアイランドは話を強引に変える。

 

「それで任務は『この星の二大陣営、アズールレーン、レッドアクシズとの友好関係の構築と中立宣言』……ですか」

「でも私達はこの手紙を渡せばいいんだよねー?」

 

 そう言ってロングアイランドが袖口から取り出したのは一枚の書状。

 筆をしたためたのはメタナイトであり、しっかりと封がしてある。

 

「いろんな交渉ごと……小難しい事は全部ここに書いてあるから、ボクらはなるべく向こうと友好的に接してそれを渡して帰ればオーケー」

「本当にそれだけでいいですか?」

「うーん? メタナイトは『あとは向こうから動くから大丈夫』って言ってたからなんとも……」

 

 説明があやふやなのはワドルディ本人も内容を読んでいないからであろう。

 メタナイトは今までの言動から優秀な人物(人であるかはやや疑問符がつくが)である事は確かなのだが、いかんせんその内心を伺い知る事は難しい。常に被っている仮面が更にそれを困難にする。

 

 と、その時。空からの駆動音を確かに捉えた。

 見れば、数機の艦載機が編隊を組んで頭上を飛んでいる。

 

「迎撃するのー?」

「いや、あれが交渉相手のものだったら攻撃するのはまずいような……」

「それもそうかー」

「でも、艦載機があるって事は近いはずです! 急ぎましょう指揮官!」

「うぃ!」

 

 一行は頭上を飛び回る艦載機を無視し、突き進むことを選択する。

 艦載機もただ飛び回るだけで特に何も行動を起こす事はなかった。

 やがて、一行はついに自分達以外の艦船少女と遭遇した。

 

 赤髪の少女、青髪の少女、銀髪猫耳の少女、赤髪の女性、金髪月桂樹の女性。

 この五人はメタナイトからも聞いた、プププランドに接近した艦船少女と思われる少女達の特徴と一致している。

 が、1人特徴と一致しない者がいた。

 黒髪をサイドテールにし、青い軍服に身を包む女性。左頬に傷をもち、瞳にその女性の強さが滲み出ている。

 そして背負うのは三つの砲門を持つ主砲三つ。艦船少女に駆逐艦、空母、軽空母という区分があるのならば、彼女は戦艦だろうか。

 場合によってはこちらを迎え撃つという意思が透けて見える陣形であり、カービィとワドルディという不思議存在を見て若干取り乱したが、それでも彼女らの主砲はこちらを向いている。

 

 その黒髪の女性が口を開いた。

 

「私はアズールレーン所属の戦艦……である。これより先はユニオンの領海。これ以上進むのならば我々は貴方方をここで沈めなくてはならない」

 

 対して、答えたのはワドルディ。

 

「えっと、ボクらはプププランドから来た者。ワドルディだよ」

 

 喋った!? 本当になんなんだ、あの島、などという声が聞こえてくるが、勤めて無視する。

 

「ちょっと前にプププランドに侵入者がいたんだけど……知らないかな?」

「……さて、分かりかねる」

「まぁ、ボクらも一戦交えたくて来たんじゃなくて、その逆。できるなら友好関係を築きたいんだ」

 

 そしてロングアイランドに預けた書状をカービィが受け取り、ワープスターでスイスイと近づき、赤髪の少女に渡す。

 

「はぁい! カービィ!」

「お、おう……カービィ!」

「うぃ!」

 

 そしていつもの自己紹介の後、何事もなくカービィは自陣へと戻る。

 

「それじゃ、ボクらは帰るね?」

「何?……これを渡しに来ただけか?」

「うん。というより、ボクもそこに何が書かれているのかわからないんだよね」

「そうか……まぁ、そうだよな」

 

 黒髪の女性はしばし赤髪の少女から受け取った書状を封がされたまま眺め、やがてこちらを向く。

 

「では、また会うとしよう。今度は友軍として出会う事を望む。言い忘れていたが、私はペンシルベニア級戦艦、ペンシルベニアだ」

 

 名乗った戦艦、ペンシルベニアに驚きの視線が相手側の艦船少女から投げかけるが、当のペンシルベニアは動じない。

 おそらく、元々は名乗る気は無かったのだろう。

 

「それである事をボクらも祈るよ。では」

 

 それだけを言い残し、本当にカービィ達はプププランドへと引き返した。




作者「摩耶、騙して悪いが……君には出雲建造の人柱となってもらう(8ー4周回)」
摩耶「!?」


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ユニオンと歓迎会

「出雲建造とは関係なく、今週はリアルで忙しいのね」
「だから今週1週間、更新できないのサ」
「忘れているわけではないカラ、許してほしいヨォ」
「あといつもの解説なのね」
「反響が良くて解説が本体になりそうなのサ」
「自分達の出番が増えそうだからダンケダンケだヨォ」

『ペンシルベニア』

 レア戦艦。男気溢れる頼れる姉貴分のような方。虫も殺せないらしい指揮官を守ろうとしてくれる。指揮官の一歩前で檄を飛ばしながら引っ張ってくれる性格で、頑張って親愛度100になるとご褒美にキスか忘れられないほど素敵な夜かどちらかを選ばせてくれる。当然レンジャーは「ハレンチな!」とか言いながら赤面してる。なお、私よりも大分後に始めた友人は彼女のスキルを9に上げた模様。……あれ、私の艦隊でレベル9になったのエンプラだけだったような……しかも割と最近……この差は一体……?(無節操に色んな艦のスキルレベルを上げてるからです)

『ルルイエサーバー』

 2017/10/5……とうとう浮上してしまった実在するサーバー。しかしルルイエが浮上しても原作小説のような混乱はなかったことからアズレン世界の住人は大いなるクトゥルフの脳波に耐性があることが判明。サーバー内でのチャット挨拶は『こんいあ』。アズレンを始める時サーバーを選べるのだが、選択欄に『ルルイエサーバー』があることにまず爆笑し、そして選択しようとしたら既に満員であることに涙を流した作者の淡い思い出のサーバー。なお、もしあの時ルルイエサーバーに入れていたら今頃このSSの主人公はカービィではなくクトゥルフだった

謝謝茄子(シェシェチーズゥ)

 日本語に直すと『ありがとナス』。つまり淫夢用語。『真夏の夜の淫夢』が中国に伝わり、現地語に訳され、アズレンとともに逆輸入された。それだけならまだ俗語で済んだが、あろうことかとっても愉快なアズレン運営が公式スタンプに採用した。それ以外にも『射爆了(シャーバオラ)』、『緊急射爆案件』といった隠語もしっかり公式は採用した。意味は察して

『ひよこ』

 ニワトリ(鶏、学名:Gallus gallus domesticus「仮名転写:ガルス・ガルス・ドメスティカス」)の日本における幼鳥の俗称。しかしアズレンにおいては指揮官の最大の敵として立ちはだかる。接続障害において延々と飛び跳ね続ける『無限ひよこ』にやりきれない怒りを抱いた指揮官は数知れず。それ以外にも憎き自爆ボートを操縦していたりとありとあらゆる場面で我々の脅威として艦隊の前に立ちはだかる。にも関わらずアズレンのマスコット面しているからなお腹立たしい。なお若鶏は親鳥と比べ身が柔らかくジューシーで美味。登場するのは総じて羽毛の黄色い幼体だが、かなり大型なので可食部分は親鳥並みにあるだろう。とりにく大好きです。じゅるり。

『重巡三隻編成』

 昔作者が本当にやってた超脳筋戦法。メリットは前衛最高の火力ソースである重巡を三隻入れる事により、ガンガン敵が溶けてゆく事。デメリットは速力がひたすら遅い事、重巡の判定回避力が低いのでガンガン被弾する事。ぶっちゃけデメリットが多い。が、当時の作者は「え? 移動速度遅い方が弾幕避けやすいでしょ?」という東方脳をしていたため何の疑問も持たず使いこなしていた。きっと東方経験者の貴方なら使いこなせる。最近は綾波や夕立の魚雷で敵を吹っ飛ばす快感を覚えたのであまりやってない。


 ───同日 20:35 ユニオン某所────

 

 ユニオンに位置するユニオン軍本部の会議室の一室は紫煙で充満し、中央に置かれた海図が若干霞んで見えるほどであった。

 しかしそんな環境であるというのに煙草の火を消さないのは、ここにいる者たちのストレスの度合いを表していた。

 

 そしてここにいるのは───ユニオン大統領を除く────ユニオンの軍部の最上位に位置する者たち。

 当然その頭脳はその地位に上り詰めただけあって優秀である。変態といってもおかしくはあるまい。

 だが、そんな猛者たちですら、頭を掻き毟りたくなるほどの案件であった。

 それも当然だ。島一つが何の前触れもなく浮上したのだから。

 

「マーシャル参謀総長」

 

 海軍帽を被る壮年の男、アインド・キング艦隊司令長官は陸軍帽を被るジョン・マーシャル陸軍参謀総長に目を向ける。

 その眼光は鋭い。幾多もの戦場を生き延びた者だからこそできる目だ。

 キングの横にはシェスター・ニミッツ太平洋戦域最高司令官が控え、マーシャルの横にはダーレス・マッカーサー南西太平洋戦域最高司令長官が控えていた。

 キングとニミッツは海軍。マーシャルとマッカーサーは陸軍。

 大体の国家において海軍と陸軍の関係というものは良い場合は極めて少ない。

 ユニオン軍もまた同じであった。

 

「『P3』は北太平洋に位置する。我々の管轄として行動しても構わんね?」

 

 その発言に対し、マーシャルはキングを一瞥する。

 

「『完全に』そちらに委ねるのには賛成しかねるな。あそこは東南アジアへの足がかりにもなりうる。貴様のみの管轄にすることは許さん」

「それは『P3』が軍事活用できるようになってからの話だろう? 儂が言っているのは軍事活用できるようにする為の一切の軍事行動についてなのだが?」

「貴様にできるのか?」

 

 マーシャルとキングが睨み合う。対面の席であるために、その中間地点で火花が散っているのを幻視する。

 

 その間、隣のニミッツとマッカーサーは軽く胃を痛めながらアイコンタクトをし、ニミッツは声を上げる。

 

「その『P3』の原住民と思しき者から書状を強行偵察隊に所属していた艦船から受け取っております」

「内容は?」

「読み上げます」

 

 ニミッツは書状を開き、読み上げる。

 『P3』の原住民はどういうわけか英語を知っていたようで、若干ロイヤル訛りがあるが見事な英語であった。

 差出人として書かれているのは『メタナイト卿』という名前であり、爵位のある人物であるようだがファミリーネームや爵位持ちにありがちなミドルネームも書かれていないことから偽名であるという見解がある。

 

 その内容を大まかに要約すると────

 

・プププランドはプププランド島および周辺諸島、および250海里の領海の保持および主権を主張する。

・プププランドはアズールレーン、レッドアクシズどちらにも属するつもりはない。

・プププランドは可能ならば交易を行うことを希望する。ただし、アズールレーン、レッドアクシズの両陣営間で差を設けるつもりはない。

・その際、セイレーンに関する情報の開示も希望する。

・プププランドに対して侵略活動を行うようであれば主権を持つ国家として然るべき対応を行う。

 

────というものであった。

 高圧的と言わざるを得ない文面に、参加する者達の顔は険しくなる。

 

「250海里だと? 正気か?」

「当たり前のように書いてあるが……まさか世界の常識が全く違う異世界から来たとか言うまいな?」

「セイレーンもどこから来たのかわからない、世界の常識が全く違う生物ではありませんか。そこに関しては単なる常識の違いとして受け止めるしかありません」

「だが250海里もの領海を認めるのか? 無理だろ?」

「……対話が必要だな。その際にはプププランドとやらが望む交易とセイレーンの情報を交渉カードにすれば良い」

「待て、待て」

 

 会議室が騒がしくなる中、キングが一旦制する。

 

「セイレーンの情報を渡す気か?」

「何か問題でもあるのか?」

 

 訝しげな目声を出したのはマーシャルだった。

 呑気とも言えるその言い方が癪に触ったのか、キングは激昂する。

 

「問題だ! 問題しかない! どこまでの情報を流すのかは知らんが、アレは機密中の機密だぞ!?」

「だが陣営不明の国家を放置するわけにはいくまい。ある程度の関係を結ぶのは最重要だろう」

「もし第三のレッドアクシズ国家となったらどうする! その情報を元にセイレーンの技術を応用しだしたりすればどうなる! 戦線を三つ……いや四つ持つつもりか!」

 

 会議室はしんと静まりかえる。

 耳が痛くなる静寂。誰もがその重圧に口を開けずにいた。

 

 そしてようやく、その静寂を斬り裂ける存在、マーシャルが口を開いた。

 

「ニミッツ。貴官は強行偵察隊が受けた反撃の内容を知っているな?」

「把握しておりますが」

「確か、『高空より戦艦主砲に匹敵かそれ以上の威力の砲撃を受けた。敵影は目視できなかったが、対空レーダーには正体不明の巨大な浮遊物が映った』。そうだったな?」

「はい」

「つまり相手は文字通りの未確認飛行物体(UFO)を保持しているわけだ。対空レーダーにやっと映り、飛行する、戦艦主砲クラスの砲撃力を持つ兵器を。それがいくつあるのかわからない。それがどんな速さで飛び回るのかわからない。確かに脅威ではあるが……同時に引き込めば相当なリターンがあると思わないかね?」

 

 キングは顔をまだらに染めるが、何も言わない。

 またしばしの静寂が会議室を包んだが、やがてマーシャルは一つ妥協案を出す。

 

「……確かに、セイレーンの情報の漏洩は避けたいところだ。セイレーンに関する情報は漏れても構わない周知の事実のみ。そして……」

 

 マーシャルは瞳と口調に力を込める。

 

「プププランドは我々アズールレーン陣営であるという既成事実を作ってしまおう」

 

 

⚓︎☆⚓︎☆⚓︎

 

 

 ───同日 21:12 プププランド────

 

 もうもうと上がる湯気。漂う香辛料の香ばしき匂い。明かりを反射するみずみずしい果実の数々……

 

 カービィやジャベリン達が帰還すると、出航した砂浜にはいくつもの巨大コンテナが並べられていた。

 用意したのはメタナイトで、『寝る場所がないだろうから、我々メタナイツが保有している客室コンテナを貸し出そう』との事だった。

 天窓付き、冷暖房完備のなかなか快適な部屋で、少々狭いが人独りが生活するには十分な広さもある。

 ロングアイランドは早速ベッドに潜り込んでいた。

 また、カービィもどこかに家を持っているようなのだが、艦船少女達がカービィを指揮官と慕うのを見てか、艦船少女達の寝泊まりするコンテナの近くに移動されていた。

 

 そして今、『キッチンコンテナ』で作られた数々の料理が『ダイニングコンテナ』のダイニングテーブルに並べられていた。

 料理に自信のあるワドルディが作り上げたものらしい。

 意外にもその中にアックスナイトやメイスナイトも混じっていた。料理は水兵の嗜みらしい。

 そうして並べられたのが目の前の料理の数々である。

 

 鳥肉を焼いて塩胡椒で味付けしたシンプルなものや、トマトがそのまま乗っていたりとワイルドなものもあるが、パスタや餃子、クロワッサン、お寿司など、どこかで見た料理も並んでいた。

 無国籍な料理の数々に目を輝かせる艦船少女達。

 

 が、それ以上に目を輝かせていたのが……

 

「ぽよ! ぽよ!」

「し、指揮官!? はしゃぎ過ぎだよぉ!」

「指揮官……もしかして食いしん坊です?」

 

 他ならぬカービィであった。

 

「だめだよカービィ。これ皆んなの歓迎会なんだから」

「うぃ……」

 

 喋るバンダナのワドルディによって窘められると目に見えて落ち込むカービィ。見ているこっちが申し訳なくなるほどだ。

 

「かーくん、ユニコーンはそんなに食べないから、ユニコーンの分、食べても……いいよ?」

「幽霊さんもそんなに食べないのー」

「綾波もそこまで大食いではないのです」

「じゃ、ジャベリンだって!」

「ぽよ!」

 

 そして皆が遠慮するとあっという間に満面の笑顔を咲かす。

 どうやらカービィの幸福は飯の量さえあれば満たされるらしい。

 

「いや、皆んな本当にやめたほうがいいダス」

「え?」

「カービィはカレーで我慢するダス」

 

 横から入ってきたメイスナイトはカービィの前に皿を置く。

 

 その時、テーブルが揺れ、ミシリと音を立てた。

 

 メイスナイトが乱暴に皿を置いたわけではない。むしろガチャガチャと皿が音を立てないよう優しく置いたくらいだ。

 ではなぜ、そんな音が鳴ったのか?

 その答えは置かれたカレーを見れば一目瞭然である。

 盛られた皿の直径は一体どこから持ってきたのかというほどの大皿。盛られたカレーの高さはなんと数十センチ。高く盛り付けるコック達の技術が冴え渡るが、そんな事誰も考えていない。

 ただ痴呆のように、口をあんぐりと開けて、新緑の香りの代わりに香辛料の香りを漂わせながら聳え立つ山を見上げることしかできない。

 

「……なに、これ?」

「カレーダス」

「それくらいわかるです」

「この量はー……えぇー」

「ちょっと多い……よ?」

「……あとでわかるよ」

 

 皆がぽかんとした表情でその山を眺める中、メタナイトが着席し、声を上げる。

 その状況に気づいてはいるのだろうが、おそらく何を言っても無駄だろうと諦めたのだろう。構わず続ける。

 

「今日は皆、生まれたばかり、かつ状況が全くわからない中、ご苦労だった。我々は新しい仲間であるジャベリン、ロングアイランド、綾波、ユニコーンを歓迎しよう。皆の者、杯を持て!」

 

 メタナイトはグラスを持ち上げる。メタナイツや同席しているワドルディ達、カービィもグラスを持ち上げる。

 艦船少女達は戸惑いながらもそれに倣う。

 全員がグラスを持ったのを確認し、メタナイトは声を上げた。

 

「では、新しい仲間との出会いを祝して……乾杯!」

『乾杯!』

 

 乾杯の音頭がとられる。皆がそれに呼応する。

 あるものはグラスの酒やジュースを煽り、あるものは並べられた料理に手を伸ばす。

 

 そんな中、それは起きた。

 

 おもむろに飛び上がったカービィは、ひとっ飛びで山……いや大盛りという言葉すら生易しいカレーの頂にたどり着く。

 そして口を開き、重力に任せてその頂に齧り付く。

 

 そのまま、カレーの山は消えて言った。

 比喩ではない。文字通り消えたのだ。

 カービィがカレーの山を崩したわけでもない。消えたのだ。

 

 近くで見ていた艦船少女達は何が起きたのかを知っていた。

 

 落下と同じ速度で、カレーの山を上から食べていたのだ。

 

 綺麗になった大皿の上に、口の端にカレーのルーやご飯粒をつけながら着地するカービィ。皿に乗るのは如何なものかとは思うが、誰もそんなことは気にしない。

 そして次の瞬間にはフォークで自分の取り皿にスパゲディをよそい始めた。

 

 その光景を四人は忘れることはないだろう。

 

 その歓迎会は夜遅くまで続いた。

 歓迎会の終わり頃には初めと全く同じペースで食べ続けるカービィに、何か悟ったような顔で微笑む四人の姿があったという。




摩耶「もうこれで許して……(摩耶ドロップ)」
作者「ゆ"る"ざん"!(てつを)」
摩耶「!?」


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建造材試作品

おまたせぇ!



 ───4/6 7:00 プププランド港(仮)────

 

 ふと、目が覚めた。

 

 目が覚めた場所は真っ暗で、天窓から漏れる微かな光しか差し込まない。

 

 果たして自分は何処にいるんだったか……。

 

 しばしベッドの上で延々と光が漏れる天窓を眺めていたが、やがて昨日のことを思い出した。

 自然が豊かな……というより自然しかないプププランドなる島で建造され、まんまるピンクの生物、カービィが指揮官となり、メタナイトという仮面の騎士の指示の下、何らかの書状を渡しに行った。

 そしてそのあと、大勢での歓迎会のあと、疲れてお開きになったのだったか。

 

 身を起こした少女、ジャベリンは教えてもらった通りにスイッチを押す。するとガラガラという音とともに天窓の厚手のカーテンが引かれ、薄手のカーテン越しに朝の光が入ってくる。天窓しかないのはこの部屋がもとはコンテナであり、並べる時に不都合なため、横に窓をつけることはできなかったらしい。出入り口も壁の梯子を登った先にある。

 

 用意された寝間着を脱ぎ、いつもの服装に着替える。鏡で髪を整え、今日も可愛らしく決まったのを確認すると、梯子を上って外に出る。

 朝日が眩く輝くが、まだ四月初旬の朝。少し肌寒く、ブルリと震える。

 見渡せばジャベリンが出てきたものと同じようなコンテナが他にも三つ並んでいる。そしてその側にいつの間にか移動している白く小さなドーム状の建物が立っている。

 きっとまだみんな眠っているのだろう。明かりは付いていない。

 

 コンテナから飛び降り、砂浜に着地する。

 

「んぅ〜! ……はぁ」

 

 伸びをすれば背骨がポキポキと鳴る。心地良い。

 

「それにしても……何もないなぁ」

 

 周りを見渡してみるが、のどかな海岸が広がるばかりで、人工物は遥か彼方に聳えるドーム状の建物(曰く、デデデ城というらしい)があるのみ。

 このプププランドにはたくさんの住人がいるそうだが、果たしてどうやって生きているのだろう? 狩りとかしているのだろうか?

 

 そんなことを思っていると、海岸にある唯一の桟橋に何か影があることに気がついた。

 そっと近づいてみる。何となくその正体に感づいていた。

 桟橋は思いの外しっかりした作りで、ギシギシと軋んだ音を立てない。

 

 影の背後まで近づいたジャベリンはいたずらっ気を発揮して飛びついた。

 

「おはようございます、指揮官!」

「ぶぃっ!?」

 

 大いに驚いた影は飛び上がり、そのまま海にダイブしてしまう。

 

「ああっ!? し、指揮官! ごめんなさい!」

「ぷぃー」

 

 海に落ちた影はすぐに起き上がり、ふわふわと元いた桟橋に戻ってくる。

 その影の正体はカービィ。その手には大きな釣竿が握られている。水浸しになったカービィはプルプルと体を振って水気を取る。ツルツルした肌をもつカービィの体表はあっという間に乾いてゆく。

 

「はぁい!」

 

 そして何事もなかったかのように挨拶した。

 

「ごめんなさい指揮官。まさかあんなに驚くなんて……」

「ぽよ!」

 

 なんて事ないよ。そういうかのように笑顔で顔を横に振る。

 そしてついさっきしていたように、釣竿を海面に垂らす。

 思いの外釣れているようで、バケツには何匹か、大小問わず泳いでいた。

 

「指揮官、釣り好きなんですか?」

「ぽよ?」

「あ……もしかして魚を食べるのが好きだから釣ってるの?」

「うぃ!」

「あはは……やっぱり」

 

 昨日の衝撃的な食いっぷりを思い出す。

 アレを思い出せば、なんとなくカービィの趣味嗜好はわかってくる。

 

 多分この魚が朝ごはんになるんだろうなー、なんて思いながら釣りをするカービィを眺めていた。

 

 過ぎてゆくのどかな時間。さざ波の音のみが二人の空間に流れる。

 自分は戦争のための兵器として生まれた。

 生まれてすぐ戦場に行くものだと思っていた。

 でも、今流れる時間はそれとは全く逆。平和そのもの。

 確かに不思議な土地ではあるが、ここでの生活も悪くない───

 

「ぽよ!」

「かかった!」

 

 釣竿がしなる。カービィが強く引く。ジャベリンも釣竿を掴んで引く。

 だが、思ったほどの抵抗はなく、あっさりと釣り上げられた。あまりに簡単過ぎてジャベリンは強かに尻餅をついたほどだ。

 お尻をさすりながら、釣れたものを見る。

 釣れたのは……メンタルキューブだった。

 

 ────ここでの生活は悪くないが、この不思議現象に慣れるのにはかなり時間がかかりそうだ。

 

 

⚓︎☆⚓︎☆⚓︎

 

 

 ───同日 8:29 プププランド ダイニングコンテナ────

 

 艦隊のメンバー、ジャベリンとロングアイランド、綾波、ユニコーンと、指揮官のカービィ、メタナイトが集うダイニングコンテナ。

 朝食はやっぱりというべきか、カービィが今朝釣り上げた魚だった。

 

 すこしユニコーンが遅れたが皆朝食を食べ終え、皿はすでにメタナイツのメンバーが片付けていった。

 代わりにダイニングテーブルに乗せられているのは……メンタルキューブ四つと高速建造材二つ。

 ほとんどはメタナイトが持ってきたものだが、メンタルキューブのうち一つはカービィが釣り上げたものだ。

 

「さて、これが今朝見回りに出たメタナイツが見つけたメンタルキューブ。そしてこの高速建造材は使い終わったモノの構造解析を行い、独自で量産したものだ」

「高速建造材って……作れるですか?」

「単なる機械だったからな。ただ、メンタルキューブはどうしようもできなかった」

「それでも1日で量産するなんてー、普通はできないよー?」

「おっと、説明が足りなかった。量産品の試作品だ。まだ数はそこまでない。今回はこの試作品のテストをしようと思ってな。いつかはメンタルキューブも作ってみたいものだが……謎は深まるな」

 

 メタナイトが目を移したのはカービィが釣り上げたメンタルキューブ。

 プププランドにあちこち転がっているのは確認できたが、まさか海底にも転がっているとは想像してもいなかった。

 ただ、何と無くではあるが推測はできる。

 

「たしか……船の記憶を持つんだったか?」

「うん……いろんなところに行った記憶があるよ? イラストお姉ちゃんと一緒に戦ったことも覚えてるよ?」

「そうか……となると、君たち艦船の元となるメンタルキューブが海から見つかるのは自然なのかもしれないな……」

「よくわかんないです。生まれたばかりである程度は知識を持ってますけど、そこまでは……」

「ふむ……」

 

 しばし沈黙が降りるが、それも僅かな時間。すぐにメタナイトは立ち上がり、メンタルキューブを持つ。

 

「いずれにせよ、これを使って戦力を増強せねばならないのは確定だ。建造ドックに向かうぞ」

 

 

⚓︎☆⚓︎☆⚓︎

 

 

 海岸近くに置かれた開発ドックはコンテナ内に運び込まれていた。しかし運び込んでどうするわけでもなく、ただ室内に移動しただけといったところか。

 

 いつものようにカービィがメンタルキューブを四つ詰め込む。

 表示されたのは『1:50:00』と『5:50:00』。早速試作の高速建造材をねじ込む。

 試作の高速建造材はオリジナルと全く同じように動き、全く同じように力尽きたように落ちる。

 そして、『1:50:00』の表示が消える。

 蒸気が吹き出て、蓋が開く。

 出てきたのは褐色の肌をもつ少女。髪は白っぽく、長い。胸にはチューブトップを着、髪を割ってツノが生えているように見える。その目は青と黄色のオッドアイで、背中に背負うのは巨大な鉄製の四本指マニュピレータ。

 すこしボソッとした声で少女は設定されたような自己紹介をし始めた。

 

「はい? ……指揮官、私はインディアナポリス。ニックネームはインディよ……?」

 

 そしてやはり、目の前に並ぶ怪生物に目を白黒させる。

 だが、どこか雰囲気が綾波と似ているのもあってか、特に大きな反応をせず頭を振る。

 

「うん……あなたが指揮官……なんだよね?」

「はぁい! カービィ!」

「よろしく、指揮官」

 

 そしてやはり、カービィを指揮官として認識する。

 艦船少女には誰が指揮官か判別する機能でもあるのだろうか?

 とにかく、試作の高速建造材はうまく作動するようだ。

 続いて高速建造材をねじ込み、作動させる。

 そして出てきたのは金髪の女性。被るのは白い帽子に艦橋らしきものが付いたもの。身にまとうのはユニオンジャックをあしらった青いドレス。背負うのは四つの巨大な主砲。

 気品を漂わせる女性は、優雅に、そして形式張った挨拶をする。

 

「あなたは指揮官様ですか?ご機嫌麗しゅうございます。ロイヤルネイビーの栄光ーーフッド、勝利とともに参上致します。……えっと、貴方様が指揮官様……ですよね?」

「うぃ! カービィ」

「よろしくお願いしますわ、指揮官様」

 

 その優雅さは己の自負だと言わんばかりに、謎の球体生物が存在する空間に特に動揺することなく、カービィに問いかける。

 当然、カービィはいつも通りの挨拶を返す。

 

「さて、この状況に驚いた……のだよな?」

「うん……おどろいた」

「驚きましたわ。まさか私達の指揮官様が人間ではなかっただなんて」

「……ああ、まぁ驚いたのも無理はない……取り敢えず今の状況を説明し────」

「────おおい! そこにいるのかメタナイト!」

 

 突然、外から大きなだみ声が響く。

 同時にガンガンガンとコンテナを叩く音が響く。

 突然の事態に皆が凍りつき、声の主を知っているカービィとメタナイトは互いに顔を見合わせる。

 だが、誰かが動くよりも前に、声の主がコンテナのドアを蹴り開けた。

 

 現れたのは、赤いカーディガン、特徴的な腹巻、赤いニット帽を被った、青く巨大なペンギンだった。




「それじゃあいつもの解説だヨォ」
「なんか出番減ってる気がするのね」
「気のせいなのサ」

「フッド」

 SSレア巡洋戦艦。このSS初のSSレアキャラ。いい声。CVは大塚明夫田中敦子。通常立ち絵は非常に優雅、かつ慎ましやかだが、水着スキン実装によりかなり着痩せするタイプであることが判明した。なお、耐久力は全艦最高の7000台。今日もロイヤル艦隊の旗艦として相手主力を吹き飛ばしている。なお、本日5/10にアーバンクロービー(だったっけ?)が実装されたのだが、公式ツイッターにおける紹介画像において、彼女に『あっ、フッドおばさんこんにちは』などと言われている。お姉さんだルォ!?

「インディアナポリス」

 Sレア重巡洋艦なんですけど、その可愛さはSSレア、いいやSSSSSSレア級なんですよぉ! 見た目はSSでの表現の通り、私と同じ白っぽい髪と角を生やしていて、オッドアイで褐色っ娘。ちょっとエッチなチューブトップで惜しげも無く南半球を晒しているんです! ちなみに姉である私とあまり似てないのは事実で改造されすぎて見た目が全く変わってしまったことを表しているらしいんです! でも可愛いことには変わらないの! 性能は防御よりの盾重巡なんですけど、副砲も詰まるので意外と攻撃力はあるんですよ! きゃあ、インディちゃんったら万能! でもでもでも! 可愛さの前では性能なんてなーんにも問題ないですよね! はぁー、インディちゃん可愛い〜


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激安の殿堂

「タイトルふざけすぎなのね」
「今回特に解説することもないから作者がふざけきったのサ」
「自重しないスタイルだヨォ」
「あれ? 特に解説ないということは我々の出番もないのね……」
「あっ」
「あっ」



「ペンギンだ!」

「ペンギンさん……」

「ペンギンだねー」

「ペンギンです」

「……ええ」

「……あらあら」

 

 このプププランドで一夜を過ごした艦船少女達は喋る巨大ペンギンごときでは動じない。というより、桃色や橙色、青色の球体生物というわけわからない生物ではなく、自分も知っている生物によく似た形状の生物がいることに若干の安心すら覚えている。

 が、新参二人組はそうはいかない。確かに二人とも感情を素直に吐露しないタイプではあるが、インディアナポリスは目を白黒させているし、フッドは若干落ち着きがなくなってきている。

 

 が、巨大ペンギンはそんなこと気にしない。

 

「メタナイト! 一体全体、これはどういうことだ!?」

「陛下。申し訳ないが一体?」

「どうもこうもない! なんなのだこれは!」

 

 陛下と呼ばれたペンギンはずい、とメタナイトの目前に手の中にあるものを突きつけた。

 それは紛れもなくメンタルキューブであった。

 

「これはどこで?」

「城の至る所にあるぞ! 邪魔で邪魔で仕方ない! ワドルディ達に掃除させたが、処分しようにも燃えないし、かといって粉々にしようとしても砕けないし、なんなのだこれは!」

「……なんというべきか。取り敢えずソレは我々が預かりましょう」

「それならいいんだが……またおかしなことが起こっているんだろう? そうだろう?」

 

 ペンギン陛下はメタナイトをキッと睨みつける。

 メタナイトはしばし考えたのち、今までのあらまし全てを話す。

 話したことは“今まで起きたこと全て”であり、このペンギン陛下が信頼に足る人物であるとメタナイトが見なしたが故だろう。

 もしくはインディアナポリスとフッドに聞かせる目的もあったのかもしれない。

 

 全てを聴き終えたペンギン陛下は先ほどのやかましさが嘘のように静かになる。

 そしてポツリと呟いた。

 

「そうか。しかし思い出すな」

「陛下?」

「プププランドにオーパーツが散らばる時は大体大きな異変の前兆なんだよ」

「……確かに」

「で、そこの艦船といったか?」

 

 ペンギン陛下は徐に艦船少女達をギロリと睨む。

 

「俺様の名前を知っているか?」

「い、いえ……」

「ならば教えてやろう。俺様の名はデデデ大王である。このプププランドの大王だ」

 

 ペンギン陛下、デデデ大王は胸を張り威厳を持って名乗る。

 しかし巨大ペンギンといえども身長はジャベリンと同じくらいかそれ以下。その体はまん丸に太っており、なんとも滑稽に見える。

 そのデデデ大王なる人物の口上に戸惑う中、唯一動けた者がいた。

 それはフッド。

 優雅な動きで跪き、華麗に一礼してみせる。

 

「御尊名、ありがとうございます。私はロイヤルネイビー所属のフッド、と申します」

 

 流石はロイヤルネイビーの栄光。その応答は完璧であり、美しい。

 これにはデデデ大王もまんざらではない様子で有るか無しかの鼻を高くする。

 

「うむ、うむ。素晴らしい。それで他の奴らは?」

 

 ちらりと他の艦船少女達に目を向ける。意味するところは大方察することができる。

 

「え、えっと、ジャベリンです!」

「ユニコーン……だよ」

「ロングアイランドなのー」

「……インディアナポリス」

「綾波、です」

「ふん、まぁいい」

 

 自己紹介を受けたデデデ大王は取り敢えずは了解した、とでも言うかのような尊大な態度で頷く。

艦船少女達はカービィやワドルディ、メタナイトとは全く違う態度に困惑したように互いの目を合わせる。

 

「さて、メタナイト。その様子だとある程度の調査は終わったんだろう?」

「ええ。海図は既に書き終わりました。セイレーンなるものは水棲生物らしいので、もし一戦を交えるようなことがあれば主な戦場は海上になるかと」

「わかった。なら俺様もある程度は協力しよう。“プププランドの大王”としてな。さて、その海図とやらを見せてくれ」

 

 やけに『大王』の部分を強調するデデデ大王はメタナイトを手招きする。どうやら連れ出して話を聞くらしい。しばしメタナイトは迷うが、そう簡単には断れないのだろう。諦めたようにデデデ大王に着いて行く。

 

「すまないが少々席を外させてもらう。あと、何か欲しいものがあればメタナイツに言いつけてくれ。我々が持っているもので、不都合がなければ融通を利かすよう話を通してある」

「それはあの……アックスナイトとかメイスナイトとかですか?」

「そうだ。あとワドルディにも聞いてみるといい。むしろ彼らの方が色々なものを持っているだろう。では、失礼する」

 

 マントを翻し、メタナイトはデデデ大王とともに外に出る。

 そしてしばし遅れて彼らと入れ替わるように、話にあったアックスナイトとメイスナイト、そしてバンダナのワドルディが室内に入ってくる。

 

「えー、色々気になるところがあると思うし、十分に説明できないのは申し訳ないダス」

「ただ、こちらも手探りでやっているので我慢して欲しいとしか……」

「いえ、構いませんわ。確かにここは『普通』ではありませんが……指揮官様を見るに、なんだか暖かそうな場所だと確信できますわ」

「ぽよ?」

「私も……構わない」

「そうかー。そう言ってくれると嬉しいよ」

 

 そう言ってニコニコとした顔でワドルディは頷く。

 それでは、とアックスナイトが口を開く。

 

「先ほどメタナイト様がおっしゃった通り、何か欲しいものがあれば我々が融通を利かします。流石に身一つで何も娯楽もなく生きていくのは辛いですし」

「やっぱり話がわかるねー!」

「メタナイト……いいやつ、です」

「では何か希望があれば」

 

 途端、ニマッ、という感じでロングアイランドが笑う。

 同時に綾波もその目を輝かせる。

 

「それじゃー、ゲームが欲しいなー」

「同じく、です」

「げ、ゲーム?」

 

 途端に焦り出すアックスナイトとメイスナイト。

 ちょっと待って、と二人は隅に移動し、コソコソと話し始める。

 

「ゲームってアレダスか? 機械化された時持ち込まれたあの……」

「いや、それ以前にゲーム機自体はあったけど、あれほど進んだのはあの時以来だな。プププランドじゃアレが量産されて一般的になったけど……」

「ウチにあったダスか?」

「……たしかスージー殿からのお詫びの品にいくつかあった気がする。スニーキングするゲームとか、巨大モンスターを狩るゲームとか、配管工の親父が飛び跳ねるゲームとか、筋肉質の男達が拳法で殴り合うゲームとか」

「……それでいいんダスかね?」

「……それしかないだろ」

 

 やがてこちらに向き直り、咳払いとともにアックスナイトが答える。

 

「えー、希望のものがあるかわからないけど、なんとかします」

「やったー!」

「有能、です」

「えっと、他には?」

 

 次に手を挙げたのはジャベリンだった。

 

「じゃあ、可愛い服がいいな!」

「服ダスか? サイズ的にうちにはないダス」

 

 そしてメイスナイトはチラとワドルディに視線を送る。

 察したワドルディは胸を張って答える。

 

「ボクらワドルディならきっと作れるよ! だからしばらく待っててね!」

「はい! ちょっと希望があるのであとで聞いてください!」

「了解! 他は?」

「では……」

 

 次にそっとフッドが手を挙げた。

 

「ティーセットと茶葉をいただければ、と」

「メタナイト様が時々飲んでましたね。あとで聞いてみます」

「ありがとうございます」

「ユニコーン殿とインディアナポリスはどうダス?」

 

 話を振られた二人は顔を見合わせ、ふるふると首を横に振る。

 

「ちょっと考えつかない……」

「ま、また後でで……いい?」

「わかったダス。それじゃあ今日のところは解散ダス。散歩でもして見るといいダス。プププランドの空気は美味しいダスよ」

 

 

⚓︎☆⚓︎☆⚓︎

 

 

───同日 15:20 デデデ城会議室────

 

 

 広大、かつ豪華絢爛な会議室に置かれた巨大な円卓にはたった二人の人物が席についていた。

 一人は仮面の騎士、メタナイト。もう一人はプププランドの大王、デデデ大王。

 その円卓の上に置かれているのはデデデ大王の持つ全戦力が記された資料。つい先ほどまでメタナイトはそれを読んでいた。

 

「……ふむ、やはりプププランドの海岸線に沿って詰所を置き、原始的に目視による警戒網しか張れないか。飛行砲台カブーラは小回りが効くが、巡航速度は遅く、プププランド全域をカバーするのは難しいな」

「やっぱりハルバードに頼るしかないな。あとは侵略された時に残った機械がどれだけ使えるか……」

 

 二人揃って首をひねる。

 と、その時、一人の人物が部屋に入ってきた。その手には丸められた紙が握られている。

 メタナイツの下っ端だ。おそらく海図の複製が終わったのだろう。

 メタナイトはそれを受け取り、メタナイツの一員を帰し、それを円卓に広げる。

 

「さて、これが我々が作り上げた海図だ」

「ほう、どれどれ?」

 

 その海図は見事な出来であり、急造にしては細かい海岸線まで描かれていた。

 しかし、その海図を見た途端、デデデ大王の顔が固まった。

 

「……」

「陛下?」

「……あ、いや、なんでもない。さて、その詰所を置く場所を考えるか」



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カービィと優雅で上品でBritish-sideな日々

出雲 建造完了

作者「私はマウンテンゴリラではないので遅めです」
摩耶「これで解放される!」
作者「この後はローンを建造する予定です。ゆっくりやっていくので完成は7月中旬あたりでしょうか? ゆっくり8-4で経験値を貯める予定です」
摩耶「!?」(←出雲建造のため推定180回沈められた)
作者「経験値稼ぎメンバーはオイゲン、シュペー、カールスルーエです」
オイゲン「!?」(←出雲建造のためたった一人で180回出撃した)
飛龍「摩耶とオイゲンが私と同じ目をしている……」


 ───4/7 15:10 プププランド某所────

 

 ある日の昼下がり。プププランドは今日もまた快晴。四月初旬はまだまだ寒さが残るはずだが、柔らかな日差しが寒さをどこかへと追いやっていた。

 この過ごしやすい環境は眠気を誘う。

 柔らかな日差しは身を優しく包み込む。

 昼食後しばらく経っていることもあり、眠気はより強くなる。

 

 そんな中、その眠気のままに木陰で眠っていたカービィは目を覚ます。

 大量の昼食を胃の腑に納めた後、吸い込まれるように今の今まで眠っていたカービィは昼寝に満足して起き上がる。

 そして丸い体を精一杯伸ばして伸びをし、キョロキョロと辺りを見回す。

 

 おそらくはまた食べるものでも探しているのだろう。

 呆れ返るほど食い意地が張っているカービィは、やがて一つの人影を見つけ出した。

 

 白いハット、青いドレス。流れる金髪。

 間違いなくフッドであった。

 彼女は手提げ鞄と小さなショルダーバッグを持ち、小高い丘に登っていた。

 

 はたして、こんなところで彼女は何をやっているのだろうか?

 

 興味を抱いたカービィはトテトテと彼女に走り寄る。

 カービィが追いついた時には、すでに彼女は丘の上に登り切っていた。

 

「あら指揮官様。御機嫌よう。どうされました?」

「ぽよ?」

 

 カービィはフッドが持っていた手提げ鞄を突く。表面は固く、驚くほど平らだ。

 

「あら、気になりますか?」

「うい」

「ふふふ、では少々お待ちください」

 

 フッドはその手提げ鞄を地面に起き、開く。

 すると中には色々なパーツが入っていた。

 それを取り出したり、組み上げたりしているうち……驚くことに、手提げ鞄は小さなテーブルと二つのベンチに早変わりした。

 

「キャンプ用品なんですって。不用品なのでどうか、とメタナイトさんからいただきました」

「ぷよー」

 

 感心している(多分)顔でキャンプ用品だというテーブルセットを眺めるカービィ。

 その間にも、フッドはショルダーバッグの中を探り出す。

 そしてカチャンと澄んだ音がテーブルから鳴る。

 角度的に見ることができなかったカービィはベンチに乗り、覗いてみる。

 そこには可愛らしいティーセットが一式置かれていた。

 

 フッドは手際よく作業を続ける。

 二つのティーカップにティーパックを入れ、魔法瓶からティーポットに熱湯を注ぐ。その後しばしティーポットに手を当て温度を見ていたらしいフッドは、ある時一つ頷くとティーカップにお湯を注ぎ入れた。

 

「ちょっと待ってくださいね」

「ぽよ!」

「おっと、もう一つ追加みたいですね」

 

 フッドはスッと目をそらす。フッドの目を追いカービィを目を動かす。

 そこには、青いバンダナを被ったワドルディがこちらを見上げていた。

 

「カービィにフッド? 何してるの?」

「午後のお茶会ですよ。どうです、ワドルディさんも一緒にいかが?」

「わーい!」

 

 ひょい、とカービィの隣に座るワドルディ。フッドはそれを笑顔で見守りながらもう一つティーカップを用意する。

 しばらく経っていい香りがし始めた頃、色が刻一刻と変わって行くお湯を眺めていたフッドがそっとこちらにティーカップを渡す。

 

「はい、今が一番美味しい時ですわ。お砂糖とミルクもお好みでどうぞ」

 

 とん、とミルクが入っている水筒と砂糖が入っている瓶もテーブルの上に置かれる。

 カービィはたっぷりと砂糖とミルクを入れ、ワドルディはミルクを少々、フッドは砂糖をほんの少しだけ入れ、一口飲む。

 普段のカービィなら何も考えず一口で飲むのだろうが、フッドの様子を見てなんとなく察したカービィは少しだけ口に含む。

 

 甘い。そりゃそうだ、あれだけ砂糖を入れたのだから。

 ただ、香りは損なわれていない。口の中で優しく広がるなんとも言えない香りがあった。

 が、残念ながらカービィは絶妙なテイスティングを行える舌を持っていない。

 「なんだかよくわからないけど美味しい」その程度の認識だ。

 

 一息ついたフッドはそのまま丘の上からの景色を眺め、ため息をつく。

 

「いいですわね……雄大な自然に囲まれたこの大地。その景色を楽しみながら紅茶を飲める幸せというのは……」

「プププランドの名産みたいなものだね」

「ぽよ!」

「あ、でもちょっとした街もあるよ」

「そうなんですか。それはいつか行って見たいものですわね……」

 

 そして紅茶をひと啜り。

 しばらく穏やかな時間が流れていたが、やがてフッドが口を開いた。

 

「そうですわ。せっかくだから一つ提案をしようかしら?」

「提案?」

「ぽよ?」

「そう。このプププランドを守る為にこんな兵器を思いついたんだけど」

「へぇ! どんなの?」

 

 フッドはメモ帳を取り出し、そこに何かサラサラと書き込んで行く。

 出来上がったのは見事な絵。先ほどの短時間で書き上げたとは思えないほど詳細。

 しかし詳細であるからこそ、その兵器の絵はどこかおかしかった。

 

「あの……なにこれ?」

「『水上パンジャンドラム』ですわ」

 

 それはミシンのボビンにロケットの噴射力によってを回転させ、ボビン状の物体の軸に詰め込まれた爆弾で爆破するという代物。そのボビンには水に浮くための浮き輪と水を掻くための櫂が付いていた。

 

 なんなのだろうか、この珍妙な兵器は。

 ご丁寧に推定直系まで書かれているが、もし大きければ目標に到達する前に撃たれて自爆するだろうし、小さかったらその推進力は一体どれだけになるだろうか?

 というより、無理やり鉄の塊を浮き輪で浮かせている時点で、進もうとすれば相当な抵抗が生まれるだろう。どれだけ高速で回転させても、その速度は高が知れている。

 

「……これはちょっと無理じゃないかなー?」

「そうですか? 一度実験されてみては?」

「……実験する前に結果がわかる……」

「いえいえ。何事もチャレンジが大切なのです。ロイヤルもそうやって発展してきたのですから!……あ、チャレンジといえばもう一つ。こちらは自信はないんですけど……」

 

 この珍兵器には自信があったらしい。

 

 そんなツッコミは心の奥底にしまい、フッドが遠慮がちに取り出したものをカービィとワドルディは覗き込む。

 それは焼き菓子、スコーンだった。

 

「試しに作ってみたんですけど……どうでしょうか? 私、料理は得意ではなくて……」

「美味しそうだけどね?」

「うぃ」

「味見はしてみたんですけど……他の人の意見も聞きたくて」

「わかった! じゃあ一つもらうね!」

「ぽぉよ!」

 

 カービィとワドルディはそれぞれ一切れずつスコーンを口に含む。

 が、途端にワドルディの顔が無表情になる。カービィの顔は変わらない。

 

「……いかがですか?」

 

 ワドルディの表情に不安になったのだろう。ちょっと小さな声で尋ねてみる。

 ワドルディは紅茶を飲み、答えた。

 

「……砂糖入れた?」

「入れた……と思うんですが……」

「少ない気がするなぁ。砂糖の甘みがさっぱり」

「……あらら」

 

 肩を落とし、しょんぼりとした顔になるフッド。

 ワドルディは隣でなおスコーンを食べ続けるカービィに聞いてみる。

 

「カービィはどう?」

「ぽよ?」

 

 が、カービィは何が何だかわかっていない様子。

 

 いや、このスコーンがあまり甘くないことはわかっているのだろう。だが、普段食べ物どころか毒物や無機物や普通食べるものではないものをなんのためらいもなく胃の腑に納めるカービィにとってはそんなこと些細な問題であった。

 

「はぁ……料理の腕はどうにもなりませんわ」

「……いつか料理の上手いワドルディを紹介するよ」

「……お願いしますわ」

 

 完璧な淑女に見えたフッド。

 しかし、彼女にも意外な弱点はあったのだ。

 だがそれが妙に親しみを感じさせてくれ、フッドの魅力を引き立てているかのようだった。




「パンジャンドラム」

 紅茶ガンギマリの英国人が作り上げたノルマンディー攻略の為に生み出した英国面の結晶。本家パンジャンドラムは車輪をジェットで回して大地を駆ける。しかし制御なんか聞かないのでねずみ花火みたいなことになる。そもそも砂浜で車輪って……。ちなみに開発者はネヴィル・シュート。本業は小説家である

「なんかフッドが英国面の人みたいになってるのね」
「あと料理できないキャラになってるのサ」
「艦これの比叡みたいな酷さではないので大丈夫だヨォ。ちょっと首かしげる程度のお味だヨォ」
「英国人はあまり食には関心がないらしいのね。焼きすぎたりそもそも味付けをしなかったりしちゃうらしいのね」
「でもティータイムは忘れないのサ。紅茶のお供も忘れないのサ」
「ぶっちゃけ料理できるのはベルファスト達メイド隊だけな気がするヨォ」


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カービィと干物な日々

「やっぱりいつもの日常回なのね」
「日常回はプププランドらしいほのぼのした感じを強調してゆくのサ!」
出雲「ふむ、日常か……いいものだな」
「出雲!? 何故ここにいるノォ!?」
出雲「いや、せっかく建造したから出て欲しいと……」
「バランス崩れるからかえるのね!(本音・出番を食われたくない)」
「そうなのサ! 余計なお世話なのサ!(本音・出番を食われたくな(ry)」
「こっちはいい感じで回ってきたところなんだヨォ!(本音・出番を食(ry)」
出雲「いや、これは命令…」
「……(無言のマホロア版ドラゴストーム)」
出雲「え、ちょ、熱っ! あっつ! 炎は! 炎はダメだぁっあっつぅ!!」



 ───4/8 20:08 プププランド某所────

 

 日が沈み、すっかり夜の帳が下りた頃。

 夕飯も食べ終え、カービィは眠い目をこすりつつ砂浜を歩く。

 

 夜釣りもいいが、今日は寝てしまおう。そう考え、カービィは海岸近くに移設した自らの家に向かう。

 

 と、その時。ふとある人物と出会った。

 アックスナイトとメイスナイトだ。えっちらおっちらと何かを運んでいる。

 気になったカービィはその後ろをテコテコとついて行く。

 

 二人が向かう先。そこはロングアイランドの部屋だった。

 荷物にくくりつけられた紐を使って慎重にコンテナの上に引き上げ、コンテナ上部にある入り口を叩く。

 カービィもコンテナの上にホバリングして乗り、荷物の上に着地する。

 

「あ、コラ! それは繊細な機械だから乗っちゃだめダス!」

「早く降りて降りて!」

「ぽよ?」

 

 よくわからないが二人が慌て始めたので、カービィは素直に言われ通りに荷物から降りる。

 

 すると、出入り口からひょっこりと顔をのぞかせるものがいた。

 ここに寝泊まりするロングアイランドではなく、綾波であった。

 

「待ってた、です」

「それじゃあそっちに降ろしますよ」

「了解、です。受け止めるです」

 

 綾波は中へ戻り、アックスナイトとメイスナイトは荷物を中へ紐を巧みに使って入れる。そして自らもコンテナの中へと入る。

 

 中で何が行われるのか気になったカービィも、ひょいと中に入ってみる。

 すると中にはさっき顔だけ覗かせた綾波とロングアイランドが歓喜の表情で運び込まれた荷物に群がっていた。

 が、その格好はいつもと違う。

 ロングアイランドが着ているのは白地に『退役至上』と書かれたTシャツ一枚。綾波が着ているのはやはり白地に『やや波』と書かれたTシャツ一枚。下は履いているのかは確認できず、際どい。目のやり場に困る格好である。

 しかしそんな下心を持ってないどころか理解していないカービィは、なんだかいつもと格好が違うなぁ、程度にしか思っていないのだが。

 アックスナイトやメイスナイトは下心を抱かないわけではないが、そもそも種族が違うので何とも思っていない。

 

 ロングアイランドと綾波は異様に素早い手さばきで荷解きしてゆく。

 現れたのはディスプレイ二つ。謎の箱が複数。謎のリモコン数種類が複数。謎のCD‐ROMのような何かが複数。

 そしてそれをやはり凄まじい速度で組み立てて行く。

 やがて完成したらしく、二人が歓喜の声を上げるが、カービィには何のこっちゃさっぱりわからない。

 

「ふふー! これでゲームができるのー!」

「ゲーム三昧、です」

 

 どうやらこれがあの時欲しいと言っていた『ゲーム』らしい。

 

 カービィがまじまじと見ていると、ようやく二人はカービィの存在に気がついたらしい。

 

「あれー? 指揮官? 来るって言ってたっけー?」

「ゲームやりに来た、ですか?」

「ういうい」

 

 カービィは頭を横にプルプルと振る。

 とはいえ、『ゲーム』が何なのか気になるといえば気になる。

 興味深げな視線に気がついたのだろう。綾波が屈んでカービィを覗き込む。

 その際胸元が際どいことになっているのだが、残念ながらそれはカービィの心を揺らす光景ではない。

 

「指揮官も一緒にやるですか?」

「うい!」

 

 

⚓︎☆⚓︎☆⚓︎

 

 

 プププランドみたいに緑が広がる風景。

 その風景の中、ただ一人たたずむ赤いおっさん。

 ボタンを押すと『プーン』と跳ね、別のボタンを押すとテクテクと歩きだす。

 よくわからないが、ボタンを押すと画面の中の赤いおっさんが動くのだ。

 やがて、画面右端から歩くキノコみたいなものがやって来る。

 すると画面の中のおっさんはウロウロし始め(実際には操作するカービィがあたふたしてボタンをめちゃくちゃに押しているだけである)、やがて歩くキノコに当たる。

 すると何故だか物悲しい音楽とともにおっさんが落ちて行く。

 

「あららー、また失敗なのー」

「これでゲームオーバー……3回目です」

「カービィにゲームは向いてないダス」

「そもそも操作を理解してないんじゃ?」

 

 この光景を何度も繰り返していて、カービィにはゲームの面白さがさっぱりわからない。

 一度ロングアイランドがお手本を見せてくれたが、その通りにちっとも動かない。

 カービィは『ゲームは自分には向かないらしい』と割り切り、リモコン(ロングアイランドや綾波はコントローラーと呼んでいた)をロングアイランドに返した。

 受け取ったロングアイランドはちょっと残念そうな顔をしていた。

 

「うーん、指揮官も干物に染めようかなーなーんて思ってたけどー、無理かー」

「う?」

 

 仕方ない、とばかりにロングアイランドは機械をいじり始める。

 

 やがて、一つの画面が表示される。どうも大量のキャラクターが登場するゲームのようだ。

 

「ガンガン乱闘する、です」

「せっかくだからー、アックスナイトとメイスナイトもどうー?」

「え、私らですか?」

「あー、じゃあ少しだけやるダス」

 

 次に二人が誘ったのは後ろで見ていたアックスナイトとメイスナイト。

 二人にロングアイランドがリモコンを配り、その間に綾波が色々操作してゆく。

 

「綾波はこの指揮官に似たキャラクターを使うのです」

 

 そしていつの間にか大量のキャラクターの顔が表示させる画面が写っており、綾波は一足先にキャラクターを選んでいた。

 操作キャラクターだろうか?

 

「あっ、ずるいー! じゃあ私は大王に似たキャラでー。あ、メタナイトに似たキャラもあるよー?」

「あ、恐れ多いので……この青い髪の剣持ちで」

「じゃあ緑の帽子の剣持ちにするダス」

「決まったねー。フィールドはー?」

「ランダム、です。その方が面白い、です」

 

 綾波が何かボタンを押す。

 途端、野太い声が何か叫び、途端にキャラクターが動き始める。

 

「おわっ! 何ダス何ダス!?」

「なんか動きがもっさりしてるぞ!?」

「ふふふー、私達の方が慣れてるみたいだねー」

「『鬼神』の恐ろしさ、味わうのです」

 

 何やら盛り上がっている中、カービィはそばに転がっていた顔つきのクッションを抱いて眠り始めた。

 

 

⚓︎☆⚓︎☆⚓︎

 

 

「アックスナイトのキャラ、一撃が重すぎ、です!」

「しかも全然吹っ飛ばないダス!」

「それを言ったらロングアイランドの陛下似のキャラも全然飛ばないだろう!」

「あのジャンプは反則、です」

「なんでよー、緑帽子の飛び道具も面倒じゃないー」

「チマチマ削るのはなんかずるい」

 

 気づけば皆ゲームに熱中し、やんややんやと互いのキャラに難癖をつけていた。

 難癖というよりかはそのキャラの強みと言いかえられるのだろう。

 だが、その中で満場一致で『ずるい』とされたキャラ……いや行為があった。

 

「綾波のカービィ似のキャラの自爆はどう考えても反則ダス!」

「残機が有利になった途端飲み込んでもろとも落ちるのは酷すぎるよー!」

「ふふん。勝つためには『鬼神』は手段を選ばないのです」

「ずるい。流石鬼神ずるい」

 

 言い合っているようにしか見えないが、これで四人は楽しんでいるのだ。

 なお、盛り上がっている中カービィはやはり眠っている。

 

 と、その時。何者かがコンテナ内に気配もなく忍び込んだ。

 普段なら訓練されたアックスナイトもメイスナイトも気がつくのだろうが、熱中しすぎて気づかない。

 やがて、闖入者は四人の後ろに立つ。

 

「……楽しんでいるようだな」

 

 ビクン! と四人の肩が震える。

 ゆっくり後ろを振り返ると、そこにはメタナイトがいた。

 仮面をいつものように被っているため、表情はわからない。だが……何やら『怒気』らしきものが立ち込めているように見える。

 

「め、メタナイト様……」

「ど、どうされたダス?」

「……私は騎士たるもの弛んではならないと思ってはいるが、それは娯楽すらも禁じている、というわけではない。でなくば、いつかはパンクしてしまうだろう。だから公私のメリハリをつけてこそ、一流の騎士だと思っている。娯楽はそのためにも必要だと」

 

 そしてメタナイトは懐中時計を取り出す。表示時間は『11:23』。当然夜だ。

 その時間を見てアックスナイトとメイスナイトはかすれた悲鳴を漏らす。

 そして────

 

「だが、娯楽に溺れ、消灯前集会に出席しないとはどういう事かッ! そこに直れアックスナイトッ! メイスナイトッ! 今すぐ喝を入れてくれるッ!」

『ひぇえっ!!』

 

 ────爆発するメタナイトの怒り。

 その怒りの矛先が向けられるアックスナイトとメイスナイトどころか、ロングアイランドも綾波も悲鳴をあげる。

 

 やがてアックスナイトとメイスナイトはメタナイトに連行される。

 後に残されたロングアイランドと綾波は抱き合いガタガタと震えていた。

 

 なお、その間カービィは眠っていた。

 

 翌朝、カービィが目覚めると、いつの間にかロングアイランドと綾波にがっちりホールドされた状態にされていた。

 まるで状況が飲み込めないカービィは、ぽよぽよ言いながら、二人が起きるまでもがいていたという。





「日常回はこれくらいなのね」
「ユニコーンとインディアナポリスは?」
「それはまた別の機会を用意してるって言ってたヨォ」
「あ、もしかして今回みたいなペアなのサ?」
「そうらしいのね」
「ふふふー! インディちゃん! お姉ちゃんが行くから待っててねー!」
「ちょ、あんたの出番はまだなのさ!」
「ええ! でもでも! インディちゃんと離れ離れは嫌ぁ! もう待ちきれないっ!」
「ちょっ、ダメだヨォ!」
「ええい、『操りの秘術』なのね!」
「ナイスだヨォタランザ!」
「くう、この程度の術が、インディちゃんの愛に勝るものですか! アッセイ!(ブチィ)」
「ああ! 術を力づくで破ったのね!」
「っていうか別ゲーなのサ!?」
通りすがりの一般スパルタクス「おお、同志の気配が、憎き圧政者へ立ち向かう反逆者の気配がする! さあ我が同志よ、共に反逆を! アッセイ!」
「そんでもって変なの呼び出しちゃったのサ!?」
通りすがりの一般マスター「すみませーん、そっちにうちのスパルタクスがにげちゃってー」
「インディちゃん! インディちゃん!」
「アッセイ! アッセイ!」
「ああもうめちゃくちゃだヨォ!」
見ていた出雲(炎上中)「なんなのだ、これは!? 一体、どうすれば良いのだ!?」


この後どうにかなった(ヤケクソ)


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初陣 1


「短めなのね」
「ちょっと忙しかったのね」
出雲(炎上中)「全く、だらしない作者だ」
「あんたまだ燃えてるよかヨォ!」
出雲(炎上中)「消して(懇願)」
『ヤダ』
出雲(炎上中)「(´・ω・`)」



 ───4/9 13:10 プププランド港(仮)────

 

 誰もが平和な日々を過ごしていた。

 誰もが平穏な日々を過ごしていた。

 それが当然であるかのように、意味もなく。

 

 だが、予期された“その時”は遂にやってきた。

 

 桟橋で釣り糸を垂らすカービィ。

 ジャベリンも同じように釣り糸を垂らしている。

 だが、二人バケツの中身は全く違う。カービィのバケツは満杯なのに対して、ジャベリンのバケツには一匹も魚が入っていない。

 

「むー、なんで私は釣れないのよぅ……」

「ぽよ!」

 

 言っているそばからカービィの竿がしなり始める。

 グイグイと引いているうち、パシャン、という水音と共になかなかの大きさの魚が釣れる。

 慣れているカービィは釣り糸を外すとバケツに入れ、釣り糸を垂らす。

 ちなみにカービィはとても小さな疑似餌(ルアー)を使っての釣り。ジャベリンは釣り餌をつけての釣り。難易度は疑似餌を使う方が高い。そして隣には匂いもある餌を使っての釣りを行うジャベリンがいるのだ。普通に考えるならジャベリンの方が有利だ。

 にも関わらず、カービィは次から次へと魚を釣り上げてゆく。

 

「う〜、どうして上手くならないんだろう……」

「う?」

 

 キョトンとするカービィ。多分何もわかってはいないのだろう。

 

 と、その時。何か落ちる音と共に桟橋が揺れた。

 慌てて振り返れば、そこにはメタナイトが翼を広げた状態で立っていた。おそらくかなりの勢いで桟橋に着地したのだろう。先の揺れは着地の衝撃に違いない。

 

「カービィ、ジャベリン。すぐに司令塔コンテナに来てくれ。緊急事態だ」

「ぽよ!」

「ええっ!? き、緊急事態、ですか?」

「そうだ」

 

 メタナイトの肯定にはある種の覚悟が込められていた。

 

「いつか来るとは思っていたが、思いの外早かったな。……確証はないがな」

「あの、何かが来たんですか?」

「ああ、来た。プププランドの領海付近にな。恐らくこのままいけば領海に侵入するだろう。相手は小型の艦船のようなものを引き連れた、海上を滑るように移動する人型だ。艦船少女という線もあるが……」

 

 メタナイトが仮面の奥からこちらを見た気がした。

 まるで、最終確認をするかのように。

 

「しかしその艤装は黒く、生物的……今まで見た艦船少女のどれとも似ても似つかない。……恐らくこれが我々の恐れた『セイレーン』なのだろう」

 

 

⚓︎☆⚓︎☆⚓︎

 

 

 艦船少女は生まれながらの兵士である。その事実を再確認させられる見事な集合の早さにメタナイトは満足げな視線を送る。

 集合したのは司令塔コンテナ。壁一面にディスプレイが置かれ、執務机と海図が置かれた質素なもの。

 そこに(本人はしっかり理解しているのかは不明だが)指揮官であるカービィが座り、横に秘書官としてのジャベリン、進行役としてのメタナイトが立つ。

 海図に置かれたコマをカービィがいじって遊ぶ中、ディスプレイの電源が入り、スピーカーから音が流れる。

 

『あー、あー、マイクテストマイクテスト。聞こえるダスか?』

「問題ない。続けてくれ」

『了解ダス』

 

 続いて画面は切り替わり、かなり高空から写した写真がディスプレイに表示された。

 このディスプレイは上空のハルバートから無線で接続されており、現在はメタナイトの指示に従って動かしている。このコンテナ内にサーバーや電源を持ち込むと室内が埋まり、かといってコンピュータの質を落とすと司令塔としての役割を果たせないが為にハルバード頼りとなっているのだ。

 

 映し出されたのはいくつかの黒い船。どこか生物的雰囲気を醸し出している。

 そしてその中心に立つ、人型の生物。髪は白く、艤装は黒く、生物的。周りの船とよく似ている。

 

「さて、これが件の領海侵入者だ。恐らくこれが『セイレーン』だと思うのだが?」

「間違いないですね」

 

 断言したのはフッド。それに追従するように皆が頷く。

 

「そうか。やはりか……このまま進路を変えずに本土へ向かっている以上、手をこまねいて見ているわけにはいかない。これから接触を図る。最悪の場合そのまま交戦だ」

「だからこれから本当の意味で初陣となります! その為の編成ですけど……」

 

 ジャベリンはメモ帳を開く。編成を考えたのはジャベリンだ。メタナイトよりも艦船の能力(スペック)は把握している。だからこそ任されているのだ。

 

「人数が少ないので全員出撃。旗艦はフッドさんです。その左舷にロングアイランドさん、右舷にユニコーンちゃんです」

「わかりました。勝利をつかんで見せましょう、指揮官」

「ゆ、ユニコーン、頑張る……」

「私もほどほどにー」

「ぽよ!」

 

 言われたことを理解しているわけではないだろうが、カービィも勢いでなんとなく返事をする。

 

「そして前衛先頭がインディアナポリスちゃん、次に綾波ちゃん、殿が私です」

「わかった……防御には自信がある……」

「魚雷を叩き込んでやる、です」

 

 意気揚々と戦意を高める前衛組。

 士気は高いに越したことはない。メタナイトは初陣ということもあり心配してはいたが、どうやら杞憂であったことに安堵し、口を開く。

 

「高い戦意を評価しよう。しかし、戦わずに済むならばそれに越したことはない。深追いは禁物だ」

『了解!』

「そしてついて行くのは……カービィのみだ。本当は私も行きたいが……もし連中が陽動であり、伏兵がいるならばそれに対処する人員がいなくてはならない。その為、私は残らねばならない。よって……」

 

 メタナイトはカービィに一つの機械を渡す。手のひらサイズの小さな機械だった。

 

「通信機だ。スピーカー付きのな。有事の際は私が指示を出す。それでは……」

 

 メタナイトはとん、と海図を叩き、短く、そして明快な命令を下した。

 

「出撃だ」

 

 

⚓︎☆⚓︎☆⚓︎

 

 

 海は静かだ。凪の状態であり、スムーズに予定地点へと近づきつつある。

 しかし、それが妙に気持ち悪かった。

 まるで、何か大きなものが手招きしているかのようで。

 そういった不安は容易く伝播する。誰もが口を閉ざし、海を進んでいた。

 だが。

 

「ぽよ! ぽよ!」

 

 カービィだけはあいも変わらず陽気であった。

 不安に押しつぶされないのは、海面をワープスターで飛行するカービィのおかげでもあるのだろう。

 

「かーくん、不安じゃないの?」

「ぽよ?」

 

 動くぬいぐるみ、ユーちゃんを強く抱きしめるユニコーンは側を飛ぶカービィに話しかける。

 だが、カービィは首をかしげるのみ。一切緊張感を持っていない。

 

「かーくん、強いんだね……ユニコーンもそうなりたいな」

「ぽぉよ!」

「……なれるの?」

「ぽよ!」

「……がんばる」

 

 カービィは人の言葉を喋らない。

 だが、そのフィジカルな言語と表情によってなんとなく言いたいことがわかる気もする。わかる時はまるで心が繋がっているかのようにカービィの言いたいことがわかるのだ。

 ユニコーンもきっと“そう”なのだろう。

 

「……きたよ」

 

 だが、インディアナポリスの一言で和やかであった空気は搔き消える。

 インディアナポリスの睨む先。そこには画像で見た黒い船団がこちらに向かってきていた。その船団は皆一様に武装しており、恐らくは駆逐クラスから軽巡洋艦クラスだと思われた。

 まだ砲撃はしていないが、砲門はこちらに向けられている。

 

 そして、それは現れた。

 

「……ふふ、なるほど、なるほど。未確認浮上島には既に資格ある者が存在していたか、ふふ、ふふ」

 

 現れたのはサイドテールの少女。人外的な黄色い瞳は愉悦の色を湛え、黒い艤装に座るようにしている。腰掛ける艤装は黒く、大きく、側面から伸びる三対六門の砲門がこちらを向いている。

 

 ここまでくれば、もはや間違えようもない。彼女こそ『セイレーン』だった。





『セイレーン』

 艦これの深海棲艦みたいなやつ。が、タチの悪さは比ではない。なんとアズレン世界の人口の九割を殺している。現在は反攻作戦によりある程度退けた新しいが、どうやって退けたんだ……。ところで、水棲生物らしいセイレーンはどうやって九割の人類を殺したのだろうか? 沿岸から攻めたらアメリカ(ユニオン)はともかく、ドイツ(鉄血)、日本(重桜)、イギリス(ロイヤル)は面積的に滅亡しそうなのだが。内陸がほとんどの中国は逆に栄華を極めそうなのだが。核弾頭で内陸を攻めたのならば、あたりは死の大地となり、反抗しても再興は無理そう。……となると、セイレーンは陸上でも活動できる……?


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初陣 2

出雲(炎上中)「前話に出てきたセイレーンだが……」
「こいついつも燃えてるのね」
出雲(炎上中)「消して」
「いやなのサ」
「いやだヨォ」
出雲(炎上中)「(´・ω・`)」
出雲(炎上中)「話を戻して、出てきたセイレーンはイベントに出てきた重巡クラスのセイレーン、ナビゲーターだと思ってもらえれば良い」
「なんでナビゲーターなのサ?」
「いきなり空母や戦艦はおかしいから駆逐か巡洋艦にするつもりだったのね」
「で、なんでナビゲーターナンダイ?」
「見た目の描写がやりやすいからなのね」
「ハ?」


『ユニコーンとロングアイランドは下がれ! 有効射程内に入るな! 前衛艦隊は前進! 軽空母二人を守れ! フッドはセイレーンへ直接砲撃を!』

 

 無線越しでも戦士として卓越した感覚が殺意を感じ取ったのだろう。耳に嵌めた無線機からメタナイトの指示が飛ぶ。

 組み直される陣形。ユニコーンとロングアイランドは艦載機を準備しながら後退し、防御に自信のあるインディアナポリスが前に立ち、ジャベリンが背後から援護する。

 雷撃能力に長けるも、耐久に不安のある綾波は温存するかのように二人の間に隠れている。

 

 フッドの主砲の砲撃音が開戦の法螺貝となり、セイレーン側の船舶から砲撃が飛ぶ。

 フッドの放った砲撃はセイレーンに命中。遅れて扇状に広がる『特殊弾幕』は船舶に直撃し、何隻か沈める。

 途端、後ろへ下がりながら艦載機の準備をしていたユニコーンとロングアイランドの艤装が激しく唸りを上げる。どうやら艦載機の準備速度が格段に上がったようだ。

 戦闘の様子をモニタリングしているメタナイトは、これこそ前以て聞いていた艦船少女たちの持つ特異な能力であると確信する。

 

 艦船少女達はそれぞれがなんらかの能力を持つ。

 曰く、メンタルキューブに残された『カンレキ』によって具象化されるものであるらしく、未だわかっていないことが多い。

 そして、フッドが持つ特異な能力は『グロリー・オブ・ロイヤル』と呼ばれるもの。主砲発射時に確率で発動し、先の特殊弾幕と主力の稼働速度を上げるというもの。

 特殊弾幕の威力もさることながら、主力への支援も大きい。

 

 だが、フッドの主砲と特殊弾幕を受けたセイレーンは傷つきながらも健在であった。

 

 ワープスターにのるカービィは前へでて、メタナイトからもらった袋にあるものを取り出そうとする。

 だが、それはその袋を渡した本人であるメタナイトによって止められた。

 

『待て、焦るな。この一戦は我々の圧倒的勝利で終わるだろう。ならばこの際、彼女達の実践における能力を見ておかなくてはなるまい』

「ぽよ……」

『大丈夫だ、カービィ。危なくなった時に出れば良い。辛いだろうが彼女達の能力を正しく把握することもこの先戦い抜くために必要なのだ』

 

 渋々といった様子で不安げな表情のままカービィはワープスターの高度を上げる。

 その間にも前衛は砲撃にさらされており、細かいながらも傷が付いてゆく。

 だが、同時に二人の能力が発動する。

 インディアナポリスの周囲で回転する半透明の2枚の盾。

 微かな微光を灯すジャベリンの瞳。

 盾を生み出したインディアナポリスの能力は『パンドラボックス』。回転する2枚の盾を出現させる能力であり、防御に秀でたインディアナポリスらしい能力であった。

 ジャベリンの能力は『ジャベリン突撃』。ぱっと見わかりにくい能力だが、見るものが見れば目に見えて被弾数が減ったのがわかるだろう。その能力は射線予想能力の向上。自らに迫る弾丸を最小限の動きで避けてゆく。

 

 複数発動する優秀な防御系能力。

 しかし、敵艦船の数は多い。

 数こそ最初より減ってはいるが、駆逐クラスが10、軽巡洋艦クラスが6、そしてセイレーンが一体未だに残っている。

 手数では敵が圧倒しており、回転盾はついにその砲撃に耐えきれず崩壊する。

 

 だが、その瞬間に『パンドラボックス』のもう一つの効果が発動する。

 

 回転盾が割れた瞬間、敵艦船の砲塔が歪み、船体が凹む。損傷が激しかった艦船はそのまま耐えきれず沈没する。

 これがインディアナポリスの能力『パンドラボックス』の効果。盾が崩壊した瞬間に広範囲にわたって損傷を与える能力。『災禍の詰まった箱(パンドラボックス)』の名に違わぬ力。

 

 遅れて発艦する艦載機達。

 ロングアイランドの能力『スクランブル』により通常よりも多くの艦載機が空を覆い、ユニコーンの能力『支援空母』によって前衛三人の傷が癒えてゆく。

 

 落とされる爆弾。装甲を爆砕する雷撃。

 艦載機が戻る頃には、あれほどいた敵艦隊は壊滅し、数える程しか残っていない。

 守られていたセイレーンも今や容易く接近できる状態。

 

 そのタイミングを見計らい、沈黙していた綾波が前に出る。装備した魚雷に微光を灯らせて。

 綾波の能力は『鬼神』。魚雷の威力を極限にまで高める能力。

 勢いよく発射された魚雷は半壊した敵艦隊、そして無防備なセイレーンを捉え、巨大な水柱を立てる。

 

 敵艦隊全滅。セイレーンも満身創痍の状態。

 しかしながら……セイレーンは笑っていた。

 

「ふふ、ふふふ……見たこともない生物……人間が生み出したのかしら? それとも……ふふ、いい報告ができそうだわ……」

 

 満身創痍だというのに気味悪く笑うセイレーン。

 そして、その歪んだ砲塔が輝きだした。

 

「っ! 来ます!」

 

 ジャベリンは警告を発する。

 だが、回避行動を取るよりも砲弾が発射される方が早かった。

 セイレーンの技術によって作られた砲弾が、斉射によって雨あられと降り注ぐ。

 被弾は確実。

 

 だが、ジャベリン達の回避行動よりも、セイレーンの斉射よりも、早かった者がいた。

 

 持ち込んだ袋から鏡を取り出し、一口で飲み込む。

 光に包まれながら姿を変え、ジャベリン達の目の前に立つ。

 驚きの声を無視して、出現した杖を掲げる。

 

 そして現れる、虹色に輝く薄膜。

 

 雨あられと降り注ぐ砲弾はその薄膜に受け止められ、そのベクトルを180°反転させて突き進む。

 セイレーンの斉射はいともあっさり受け止められた。

 当のセイレーンはすでに姿を消しており、跳ね返った弾丸も躱していたようだった。

 

 いや。そんなことはもはやどうでも良い。

 そんなことよりも重要なのは。

 

「指揮官……その姿は……?」

「ぽよ?」

 

 斉射を受け止めた者、カービィの姿は大きく変わっていた。

 赤と青のピエロ帽を被り、杖を持った可笑しな姿。

 だが、少なくともその杖は飾りでないことをこの場にいる誰もが知っている。

 

『……君達に特異な能力があるように』

 

 カービィの変化に艦船少女達が目を白黒させる中、何が起きているのか把握しているメタナイトが無線越しに口を開く。

 

『カービィにも特異な能力がある。それは食べたものの性質を読み取り、身体に反映させる能力。『コピー能力』だ』

 

 

⚓︎☆⚓︎☆⚓︎

 

 

 海原に立つ少女がいた。

 生まれた時からそこにいて、なぜ生まれたのかもわからない。

 とにかくどこか、『艦隊』に所属しなくてはという衝動が身体を駆け巡る。

 だから、彼女も『艦隊』を探すために今日も彷徨う。

 

 だが、その時。

 

 確かに感じた。

 

 『艦隊を探さねば』という本能以外の本能を刺激するものを。

 

「いた……インディちゃん。そこにいるのね!」

 

 少女はただ本能のまま海原を一直線に駆け出した。




(あっ……展開が読めたのね)
(もう次に誰が来るのか予想できたのサ)
出雲(炎上中)「誰か火を消して」
「やだヨォ」
出雲(炎上中)「(´・ω・`)」


『フッドさんの疑惑』

 実はアークロイヤルと同じロリコンという疑惑がある。シグニットに渡した水着とサンタコスはフッドが渡したものなのだが、どれも駆逐艦にあるまじき胸部装甲を強調するもの……なんかアークロイヤルも同じようなことをしていたような?……エリザベス女王陛下、ロイヤルヤバいです。と思ったら妹のウォースパイトも大概な格好をしていた
 ……と、ここまでは男性的思考による妄想。女性的思考をすればフッドの行動はそこまでおかしくはない。男性がオシャレをする理由は異性のためとされる事が多いが、女性の場合は自分の為にオシャレをする。また女性は男性と違い協調を是とする傾向が強く、流行り物に敏感な理由は『皆と同じでありたい』という思考によるものだとされる。そしてフッドの着せ替えは普段のフォーマルで露出のない服装と比べ、その胸部装甲を惜しげもなく強調するもの。おそらくフッドの中では『フォーマルな場ではフォーマルに。普段着や女性的儀式(ケッコン)の場では女性的魅力を前面に押し出すべき』というオシャレに関する美学でもあるのだろう。とすると、シグニットに胸部装甲を強調する水着やサンタコスを贈ったことも納得できる。……なぜ水着のサイズが小さいのかは説明できないが

『空母ガン積み編成』

 空母を3隻編成すること。作者のお気に入り。作者の場合は大体エンプラを旗艦にし、左右に赤賀を並べる形に収まっている。そこに高雄、夕立、綾波改でしばしば魚雷パーティを開催している。ボスは吹き飛ぶ。強みは航空攻撃による弾消しを大量に使えること。言わば東方のボムである。あとは戦艦よりも燃費が良いことだろうか。なので周回では燃費的に戦艦ガン積み編成よりも優れている。……が、空母に自爆ボートを撃退する手段は航空攻撃以外になく、それが当たるかどうかも運次第。そして耐久も戦艦に比べ低いので雑魚散らしに運用しているとあっという間に撃破されてしまう。世の中うまくはできていない。

『戦艦ガン積み編成』

 戦艦を3隻編成すること。作者のロイヤル編成がこれ(フッド、クイーンエリザベス、ウォースパイト)。強みは高火力の主砲をバンバンぶっ放せること。自爆ボートも副砲で自力撃破できてしまうこと。なので雑魚散らしに有用である。……が、唯一の問題点は燃費。雑魚散らしに戦艦ガン積み編成を使うと燃料があっという間に溶ける。世の中うまくはできていない。

『ロイヤル編成』

 現在最強とされる編成。その戦犯立役者はSレア戦艦クイーンエリザベス。スキル『女王号令』は編成されたロイヤル艦全ての火力、装填、回避を最大15%アップするぶっ壊れ性能。そこに大体高耐久のフッドが旗艦を務め、残りの主力枠にウォースパイトやイラストリアス、ユニコーン、デュークオブヨークなどが入る。いずれ開発艦のモナークも入るようになるだろう。前衛にはほぼ必ずと言って良いほどベルファストが入り、そこに通称『涙ジュノー』と呼ばれる『真珠湾の涙』を装備したジュノーや回避特化のジャベリンやシグニット改などが入るなど、前衛は生存特化の相手指揮官をイラつかせる編成となる。ちなみに時々単艦でも優秀なエンタープライズやクリーブランド、エルドリッジなどユニオン艦がしれっと入ることもあり、彼女らのことを名誉ロイヤルなどと呼ぶこともある。


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ユニオンのヤベー奴 ⚓︎

出雲(炎上中)「更新がここまで遅れた理由を聞こう」
作者「タワーディフェンスゲームを始めてハマって、その後アズレンのミニ海域イベントを無視して神通掘ってました」
出雲(炎上中)「アズレンSS作者として、神通掘りに精を出すのは結構。私は許そう。だが……こいつらが許すかな?」
「『操りの秘術』で動きを止め!」
「『マルク砲』で吹き飛ばし!」
「『ブラックホール』で没シュート!」
作者「グワーッ! サヨナラ!」

悪は滅びた

追伸:ギャグ絵描くの楽しい



───同日 16:45 プププランド司令塔コンテナ────

 

 セイレーンの撃退後、戦いを終えた艦船少女達は司令塔コンテナに再集結していた。

 メタナイトからかけられるのは労いの言葉。

 

 だが、艦船少女達が本当に聞きたいのはそれではないだろう。

 

「あの、一ついいですか?」

「どうしたジャベリン」

「あの……指揮官のあの姿は……」

 

 視線は終始、指揮官たるカービィに注がれていた。

 無理もない。あの時、突如として姿が変わったのだから。そしてその後起きた『砲弾が跳ね返る』現象。艦船少女は能力どころか存在すら解明されていない部分はあるが、それでもカービィと比べればはるかに現実的。

 魔法、呪術、超能力。艦船少女達の脳裏に浮かんだのは自らよりもよりオカルティックな言葉。

 

 全員の視線がすでに元の姿に戻ったカービィに集まる中、メタナイトはさも当然であるかのように答える。

 

「言わなかったか? コピー能力だ。食べたものの性質を自らの身体に反映させる、汎用性の高い能力だ。もっとも、コピーにはある程度の『型』があるようだがね。ライターを飲み込んだ時も、火を噴く怪物を飲み込んだ時も同じ姿になったからな」

「いや、そういう事じゃなくて」

「なんだ、説明を求めていたわけではないのか?」

「確かにそうですけど、でも……」

 

 なんといえばいいのかわからず、モジモジとするジャベリン。

 見れば他の艦船少女も悩ましげな顔をしており、それに気がついたメタナイトは何を言いたいか察しがついた。

 

「ああ、なるほど。君たちの世界ではこういった『魔法』とか『超能力』とか『オーパーツ』とかはあり得ざるものとして扱われているわけだな」

「……そんなところです」

「ならば認識を改めるといい。このプププランドには魔術師も超能力者も無数のオーパーツもモンスターも存在する、君たちからすれば空想的(ファンタジーな)世界だ」

 

 そうメタナイトは断言するが、そう断言されたところで一体どうすれば良いというのか。

 確かに艦船少女は少女として生まれるだけあって、そういうものにある種の憧れもあるだろう。だが、果たしてモンスターもいるらしい世界を受け入れられるのだろうか。

 

 言葉と文化の壁はいつでも高い存在として、異なる者同士の間を分け隔ててしまう。

しかしそれでも『世界の法則の壁』では分け隔てられることはなく、それどころか言葉と文化の壁で阻まれる者を全てを内包する囲いであり、その中にいる我々はいわば全員同志と言えた。

 だがこの場合、世界の法則までもが違う。言葉は通じるが、今のところまともに会話できるのはメタナイトと一人のワドルディとデデデ大王のみ。デデデ大王は王という身分からおそらく城から出てこないだろうから、実質二人だ。

 残りの住人であるカービィと無数のワドルディ達とは一切会話ができない。こちらの意思を伝えられても、向こうの言いたいことがわからない。カービィの場合は喃語を話す幼児のようで、ボディランゲージや表情でわからないこともないのだが。

 

 はたして、理解できないものを信用できるのだろうか。理解できない存在であるメタナイトとカービィは、信用しても良いのだろうか。この問いが艦船少女達の間で渦巻いていた。

 

 いいや、できるはずがない。理解できないものへの恐怖は、人が等しく持つ感情であり、信用というものを抱かせるのを許さない。

 

 ……と、ここまでは人間としての心理だ。

 しかしながら、彼女らは人間と同じ精神構造をしていながら、同時に兵器であった。

 生物と無生物の融合。そんな無茶な存在であるがゆえに、その精神は建造時の定型文じみた自己紹介に代表されるように、ある程度の歪みを生じていた。

 ヒトであらんとしながら、ヘイキとしての存在意義に引っ張られる精神。

 その精神が導き出した答えは。

 

「……でも、指揮官は指揮官、なんですよね?」

「ぽよ?」

「なら、問題ないよねー」

「指揮官が指揮官であることに変わりはない、です。……綾波は指揮官もこの世界も受け入れる、です」

「ユニコーンも、かーくんを受け入れる……」

「出自、生まれは個人の価値を評価する基準たり得ません。私は指揮官様に着いて行く所存です」

「私も……同じく……」

 

 この普通ならあり得ない世界を受け入れる、という答え。

 

 人は何かを信じる。そして信じたものに固執し、それを覆される事実があったとしても、天動説と地動説の論争のように、容易くは受け入れられないのだ。

 だが、兵器は聖剣でもないのだから使う人を選ばない。使う者に馴染み、受け入れる。

 だから、兵器でもある彼女達は容易くこの世界を受け入れた。

 それは人としては少し不自然な思考回路。

 

 そしてメタナイトはなぜ受け入れる、受け入れないの話になっているのか、理解できないでいた。

 これが異世界の者同士の『超えられない理解の壁』なのだろうか。

 

 そんな中、カービィは───この中で最も異種族と接してきたカービィは────無表情で座りながら、彼女達に引っ掛かるような違和感を覚えていた。

 

 

⚓︎☆⚓︎☆⚓︎

 

 

 空が赤みを帯び始めた時。

 カービィは今朝釣りをしていた桟橋に座り、饅頭を食べていた。

 肉まんに似たナニカであるらしく、香ばしい匂いが潮風に吹かれてゆく。

 今頃軽食を食べているのは、出撃でおやつを食べ損ねたからだろう。みれば桟橋には大皿が置いてあり、びっちり着いた油や水分から、元は大皿いっぱいに饅頭が乗せてあったのだろう。それが今や数個しか残っていない。

 

 戦場となった海を眺め、無言で足を揺らしながら饅頭を食べ続けるカービィ。

 すると後ろからコツコツという靴音が聞こえてきた。

 振り返れば、そこにいたのは珍しい客────インディアナポリスがいた。

 

「指揮官……隣……いい?」

「ぽよ!」

 

 カービィは桟橋の端に寄り、インディアナポリスは開いたところに遠慮がちに腰を下ろす。

 そしてすかさず、カービィはその手を突きつけた。

 手に握られているのはさらに残っていた饅頭だった。

 

「……いいの?」

「うぃ!」

「……ありがとう」

 

 インディアナポリスはほんの少し齧る。皮は薄めのようで、すぐに具が見えた。二口、三口と齧ったインディアナポリスは美味しい、と思わずもらし、それを聞いたカービィはにぱっと笑う。

 

 その後しばらく桟橋で無言のまま饅頭を食べていた二人だが、やがてインディアナポリスが口を開いた。

 

「今日会ったセイレーン……強かった」

「むぃ」

「そして……私と同じ、重巡だった」

「むぅ?」

「本当に強かった。強い重巡だった。……私の装甲もどんどん削られてた。……最後の砲撃を、指揮官が弾いてくれなかったらどうなってたか……」

「ぽよ!」

 

 カービィがどこまで話を理解しているのかわからないが、それでもしっかりと真摯に話を聞いているのは確かであった。

 カービィは話を聞いてくれるが、何も言わないが為に、普段無口なインディアナポリスは話を遮られることはなかった。

 何も言わずに聞いてくれる人。それがどれだけ彼女にとってありがたいか。

 

 そして、インディアナポリスは自然と胸の内を吐露してゆく。

 

「私は防御型重巡。最優秀になろう(MVPを取ろう)とは思わない。でも……防御型重巡なのだから、誰かを守りたい。……そう思うの……」

 

 これがインディアナポリスの『望み』なのだろう。

 兵器として、艦船少女として生まれた彼女の望み。

 そんな思いの吐露にカービィは。

 

「……ぽよ!」

 

 もう一つ、饅頭を差し出した。

 

「え……指揮官、夕ご飯もあるからもういらないよ……」

「む〜……ぽよ!」

「包み紙?……後で食べて、ってこと?」

「ぽよ!」

「……ありがとう」

 

 カービィは言葉を発さない。

 だが、あまりに難しい単語でない限り、ある程度人の言葉を理解する。

 だから先の話も理解してないわけではないだろう。

 だからこれが……カービィなりの励ましなんだと、なんとなくわかった。

 

 包み紙に包まれた饅頭をインディアナポリスは受け取る。

 その間にもカービィは饅頭を食べ続ける。

 ほんの少し、インディアナポリスが笑みを浮かべる。

 

 その時。

 

『総員集合! 総員集合! 何者かが単騎でこちらに高速で向かっている! なんなのだ、なんなのだこの速さは!』

 

 それはメタナイトのスピーカー越しの声。

 彼らしくない酷く慌てたもの。

 

 一体何事か。それを理解するよりも前に、ソレは聞こえてきた。

 

「イィイインディィイイイちゃぁぁああああん!!!」

 

 何かを叫ぶ少女の声。発生源は海の彼方。

 みれば、何やらすさまじい高さの水柱がこちらへ向かってきているではないか。

 みるみるうちに、それは近づき、やがて肉眼で確認できるほどまで近づく。

 その正体は───

 

「イィィィイイイイインディイイイイちゃぁぁぁぁあああああん!!!」

「お……姉ちゃん!?」

「ポートランドお姉ちゃんが迎えにきたよぉおおおおおお!!!」

 

 ────白っぽい髪をサイドテールにし、アホ毛を伸ばした少女。青いセーラー服を着てはいるが、胸元は大きくはだけており、黒いインナーに包まれた豊かな双丘を惜しげもなく晒していた。

 その顔は、なるほど、美少女だろう。……ヨダレを垂らしながら恍惚とした表情さえ浮かべていなければ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 その狂乱ぶりに、能天気なカービィすら、何か嫌な予感を覚えた。





『ポートランド』

 おまたせ。レア重巡洋艦。例の姉、ポネキ、ユニオンのヤベー奴、クレイジーサイコシスコン。インディアナポリスの姉なのだが、とにかくシスコン。どれくらいかといえば、インディアナポリスの薄い本(もしくはブックカバー)を持ち、瞳に常時ハートを浮かべている立ち絵、ポートランド級の図鑑報酬にポネキ手製のインディちゃんタペストリー×3、無数にあるセリフのうち、インディアナポリスに言及しないのは手紙を受け取った時のセリフのみで、他はケッコンボイスだろうとインディアナポリスがらみ。極め付けはインディアナポリスと一緒に出撃させると自身の火力などが上昇するスキル『妹サイコー!』という具合。アズレン屈指のネタキャラ
 とはいえ、クレイジーサイコシスコンなどと言われながらも実はサイコ(攻撃的)な部分はないと言える。またレズビアンでもない。つまりは妹を劣情のまま襲うこともないし、妹に近づく者に攻撃するわけでもなく、寧ろ共にインディちゃんを愛でる同志として引き込もうとする。いわばインディ教宣教師であり、ちゃんと良識を持った態度な上、指揮官にも恋愛感情をしっかり抱くことから、指揮官達からかなり好印象を受けている。
 さらに、屈指のネタキャラでありながら、ポートランド改は最優良重巡としても名高い。アズレンはしばしば持っているスキルによって評価が分かれがちだが、ポートランドは改造しても新たにユニークスキルや強いスキルを得るわけでもない。にも関わらず最優良と呼ばれるのはステータスが純粋にバランス良く高いためである。重巡の割に回避も高め、体力も多く、更には副砲重巡なので火力値や装備補正以上の火力を出せるなどなど、レア度詐欺ここに極まれりといったステータスをしている。ぶっちゃけ『妹サイコー!』を発動させる必要すらない。(ポネキ涙目)。それもそのはず、アメリカには数百の艦船がある中、ポートランドはバトルスター累計数4位タイのバリバリの武功艦である。建造ではすぐに出てくれると思うので、出てきたら優先して育ててあげよう。


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例の姉


作者「神通掘れて嬉しい」
「……こいつ、脅威度判定を安全海域にする前に引き当てやがったのね」
「っていうか赤城も加賀も夕立も摩耶も100週程度で引き当ててる気がするのサ」
「ずるいのね!」
「でもその代わり、某ゲームで☆6ユニットが被ったり三笠を結局引けなかったりとガチャ運は散々だヨォ」
「ガチャ運と引き換えになってるのサ……」
作者「ミカ(サ)ァ!」
「オルガネタは別でやってほしいのね」



 海上を水柱をあげつつ爆走する者。

 奇声をあげながらこちらに接近する者。

 纏う覇気……もしくは狂気は尋常なものではなく。

 そんな存在がこちらに向かってくる。

 いいや、こちらではない。インディアナポリスだ。インディアナポリスに向かって、一直線にやってくる。

 

 カービィはそれに気がついた。

 故に、行動した。

 おそらくそれは、インディアナポリスを守るための行動なのだろう。

 桟橋に掛けておいた釣竿を掴む。

 そして、近づく者の足を釣竿の先で引っ掛けた。

 

「……あ」

 

 一体どんな速度をもってすればそんなことが可能なのだろう。

 バランスを崩した少女は錐揉み回転しながらカービィとインディアナポリスの頭上を飛んだ。

 

 そして、はるか後方の砂浜に文字通り突き刺さった。

 

 そのまましん、と静かになる少女。

 インディアナポリスは慌てて駆け寄り、その少女を引き抜いた。

 

「お姉ちゃん、大丈夫!?」

「ふへへ……お姉ちゃん、インディちゃんの気配を感じて……やってきたよ……」

「しっかりして、お姉ちゃん!」

「ふふふ……インディちゃんの腕の中で眠るなら……我が人生に一片の悔い……無し……」

「お姉ちゃん!?」

 

 その後、砂浜に突き刺さった衝撃で混乱していただけで、特に外傷はないことが判明した。

 

 

⚓︎☆⚓︎☆⚓︎

 

 

「……で、結局接近してきたのはインディアナポリスの姉だと?」

 

 ダイニングコンテナにて、メタナイトが腕を組み、呆れたように確認を取る。

 その視線の先にあるのはインディアナポリスと、彼女にべったりくっついている艦船少女、ポートランド。

 文字通りべったりとくっついており、それに対してインディアナポリスはまるで慣れているかのように凪のような態度を取っている。

 そんな光景を冷めた目で見ながら、メタナイトは二人に問い詰める。

 

「しかし……姉と言われても、インディアナポリスはここの建造ドックで生まれたが、ポートランドなる艦船少女を建造した覚えはないぞ?」

「だとしても私はインディちゃんのお姉ちゃんであることは変わらないんです!」

「……お姉ちゃんは、お姉ちゃんだから……」

「……すまん、理解できない」

「おそらくはメンタルキューブによるものでは?」

 

 要領をえない答えに頭を抱えるメタナイトに助け舟を出したのは、フッドだった。

 

「それは?」

「私たちを生み出すメンタルキューブには『カンレキ』なる記憶が込められているのです。私たちが生まれたてでもある程度の知識、知能を持つのはそのためです」

「では、その『カンレキ』とは?」

「……私たちも漠然と覚えているといった形で曖昧なのですが……言うなれば『どこか異世界の戦時下の船の記憶』でしょうか?」

「……つまり、この二人の場合、異世界にて彼女らは姉妹艦であった、と?」

「かもしれません。この場にユニオンの子がいればもう少し詳しくわかるのかもしれませんが……」

「私だよー。でもー、あまり接点ないからわかんないよー」

「そうか……」

 

 その間にもポートランドはインディアナポリスに頬ずりをしており、見ていて少しインディアナポリスが気の毒に見えてくる。

 当の本人は気にしてはいないようだが。

 

「えー、ではポートランド」

「ん? なんですか?」

「インディアナポリスはこの艦隊に所属している。そして見た所君も艦船少女のようだ。そこで提案なのだが────」

「はい! この艦隊に入隊します!」

「…………そうか」

 

 メタナイトが言い終わるよりも早く、ポートランドは宣言する。

 その勢いにメタナイトは力なく頷くことしかできない。

 しかしそんなこと無視してポートランドはカービィの方を向く。

 

「よろしく、指揮官さん!」

「ぽよ!」

「……ん? カービィ、ポートランドに自分が指揮官だと伝えたか?」

「ぽょ?」

「では、誰かポートランドに教えたか?」

 

 返ってきたのは否定の返事。

 一体いつカービィが指揮官であることを知ったのか。

 その疑問を悟ったのか、再びフッドが口を開く。

 

「それは艦船少女としての本能では?」

「そうなのか?」

「ええ。私たちはなんとなく、誰が指揮官であるのか察知できますから」

「……そういえば建造した時はまずはいつもカービィの方を向いて挨拶していたな。……ふむ、説明されても不思議なことには変わらんな」

「私たちも私たち自身についてわからないことが多いですので」

「ふむ。……そういえば、そもそもポートランドは一体どこからきたんだ? まさか、すでにどこかに所属しているとかはないよな?」

「あ、それはないですよ。ずっと海上をウロウロしてたので!」

「……うろうろ?」

「艦船少女は自然発生することがよくあるようです」

「……それもメンタルキューブの謎かね?」

「そういったところです」

 

 そのまま黙り込む二人。

 誰も口を開くことはなく、ポートランドがインディアナポリスを愛でる声とカービィの腹の音のみがやけに大きく聞こえる。

 こんな雰囲気ではまずいと思ったのか、ジャベリンが手を振り上げる。

 

「さ! 早く夕飯にしましょう! ねぇ指揮官!」

「うぃ! うぃ!」

「……それもそうだな。ああ、あと言い忘れていたが、この後は久々に建造をしよう。メンタルキューブを新たに手に入れてな……」

 

 

⚓︎☆⚓︎☆⚓︎

 

 

 夕食を終えた一同は建造ドックに集合した。

 そこにはすでに何人かのワドルディがたむろしており、いくつかのメンタルキューブをつついて遊んでいるようだった。

 

「うわぁ、指揮官みたいな球体生物がいっぱい……」

「いらっしゃい。あれ、見ない顔だね? こんな子建造したっけ?」

「ちょっと色々あってな」

 

 メタナイトはバンダナのワドルディに事のあらましと艦船少女の自然発生について伝えた。メタナイトはメンタルキューブについての謎がより深まったと唸ったが、それを聞いたワドルディは「難しいことはいいや」と初っ端から思考を放棄していた。

 

「わからないものをわからないまま使うなんてよくあるでしょ? スターロッドみたいに」

「それはそうだがな……」

「だったらメンタルキューブは艦船少女の素体。それだけでいいんじゃない? さ、早く建造建造」

 

 そう言ってテキパキと建造の準備を始めるワドルディ達。

 能天気さにメタナイトは呆れるが、そもそもプププランドは能天気な住人がほとんどであったことを思い出し、処置なしと頭を振る。そもそもどうして昔自分はプププランドを襲撃したのか、忘れていたようだ。

 ある種の諦めの感情を抱いたメタナイトは無言でワドルディ達の準備を見守る。

 やがて、準備が完了する。

 

「さ、カービィ。後はよろしく」

「うぃ!」

 

 元気の良い挨拶とともに、カービィはメンタルキューブを四つ、放り込む。

 表示されたのは『1:00:00』と『2:05:00』。

 カービィは続けて流れ作業のように高速建造材を差し込む。

 作動した高速建造材は役目を果たし、『1:00:00』の数字がゼロになる。

 建造ドックが開き、現れたのは儚げな少女。纏うのは黒いゴシックな衣装。『耳』のある黒いフード。周囲に人魂と、巨大な連装砲を浮遊させている。

 

「あなただったのね? 指揮官。私、エレバス────遥か遠い暗黒の世界から、あなたの呼び声を聞いて……」

 

 そして、ピタリと動きを止める。幾度となく見た光景だ。

 

「……まさか、暗黒の世界から魔界へ来るとは思わなかったわ」

「たしかに魔物はいるが、そこまで魔境というわけではないぞ」

「そうなの、指揮官?」

「うぃ!」

 

 そして真っ先にカービィを指揮官と呼ぶ。やはりフッドの指揮官を探知する能力というものは本当にあるらしい。

 

「人魂を浮遊させる君が一番魔的ではあるが……まぁいい。説明はもう一人を迎えてからだ」

「ぽよ!」

 

 カービィは飛び上がり、高速建造材をねじ込む。

 現れたのは白い軍服の女性。しかしながらその胸ははち切れんばかりに大きく、きつそうに見えた。黒髪を白いリボンでポニーテールにし、刀を抱え、垂れた犬耳を生やしている。

 

「そなたが指揮官か? 拙者は高雄、微力ながら力を尽くす所存……だ、が……まさか人外とは思わなかったぞ」

「うむ。ではある程度状況を説明しよう」

 

 二人にざっくり現在の状況を説明する。

 然りやはりというべきか、彼女らは何も疑問を呈することもなく、ただ指揮官たるカービィを受け入れることを決めた。

 

「指揮官がたとえ人外であろうとも、私は指揮官に従い、敵に死を与えるのみよ」

「同じく。拙者は指揮官殿の刃であり、ただその御心のままに振るわれるのみだ」

「そうか。では編成について諸々は明日協議しよう。今日はもう遅い。……コンテナを新たに三つ用意せねばな」

 

 メタナイトのその言葉に続いた、カービィの返事をきっかけとして、建造ドックに集まった艦船少女達は自らの部屋に戻って行く。

 新たに加わった3人の艦船少女にも即日コンテナが用意され、寝床に困ることはなかった。

 

 ただ、ポートランドは与えられた自室ではなくインディアナポリスの部屋で寝泊まりしたいと言いだし、他の面々をげんなりさせたのはまた別のお話。

 それを除けば、非常に穏やかな夜であった。

 

 ───4/10 8:35 プププランド────

 

 夜の静寂さが嘘のように、その日は慌ただしかった。

 それは、領海に“ソレ”が現れたから。

 

 確認された艦船少女、十二人。確認された大型輸送船、五隻。

 その船団は『アズールレーン』の紋章を掲げていた。





『エレバス』

 Sレア砲艦。セリフの通りちょっと厨二っぽい。だがそれがいい。砲艦の特徴としては低燃費かつ高火力でスキルの特殊弾幕が強力だが軽装甲かつ低耐久で打たれ弱いというピーキーな性能を持つ。特殊弾幕の形状上旗艦にしたいが、打たれ弱さが災いしてちゃんと対策をしていないとあっという間に大破してしまう。ぶっちゃけ運用には愛が必要。ちなみにスキル発動時のセリフは『いっぺん、死んでみる?』元ネタはお察し。なお、妹のテラーと違ってぺったんこであr「いっぺん、死んでみる?」うわなにするやめr

『高雄』

 SSレア重巡洋艦。雷撃型重巡と呼ばれるが、砲撃火力も高い、まさに攻撃特化重巡。しかも一部の攻撃特化重巡と違い中装甲なのでそこそこ打たれ強い。……回避は低いので過信してはダメだが。保有スキルにより、確率は低いが砲撃ダメージと雷撃ダメージが実質2倍となる。が、そんなことはどうでもいい。目を引くのは見事すぎる胸部装甲である。あとパンスト越しのパンツ。妹の愛宕も同じような胸部装甲持ちである。……そういえば艦これも戦艦少女も高雄と愛宕は凄まじい胸部装甲を持ってたような……? 高雄と愛宕は豊乳にしなくてはならないという取り決めでもあるのだろうか?


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蒼との接触

そろそろ重桜イベントが始まりますね。
長門(多分)が実装と聞いたので、キューブを210個集めて万全の体制を整えました。

さぁ、迎えるぞ……!


 司令塔コンテナに集結する艦船少女達。

 すでにメタナイトは海図やディスプレイの電源を立ち上げ、ハルバードより上空から監視している部下達から逐一送られてくる情報に目を通していた。

 カービィも定位置に座っていたが、食後で眠いのかうつらうつらしている。

 

「メタナイト殿。詳しい状況説明を求める」

「大型輸送船五隻、艦船少女と思われる者が十二人。領海内に侵入し、こちらに向かってきている」

「輸送船……ということは、何かを運んできている、ということでしょうか?」

「偵察ならー、任せろー」

「ユニコーンも艦載機、飛ばせるよ?」

「……いや、やめておこう。なにを運んでいるのかも知りたいが、問題は彼らの戦力だ」

 

 メタナイトはディスプレイを操作し、画像を表示する。

 そこには件の輸送船と艦船少女達の姿が映し出されていた。

 映し出された艦船少女達の姿に、プププランド所属の艦船少女達は息を飲む。

 

「カンレキ云々の話でもしかしたら正体がつかめるかと思ったが……正解のようだ。彼女らがどのような艦船なのか教えてくれるか?」

 

 十二人の艦船少女について、知っている者が次々に情報を提供し、やがて全員の艦種、名前、ある程度の能力が判明する。

 

 レンジャー、ホーネット、ペンシルベニア、ヘレナ、は以前も見た艦船少女だ。

 しかし、他の八人はメタナイトらにとって新顔であった。

 

 赤い髪をまとめた、鞭を持つ女性。どこか攻撃性が透けて見える彼女は重巡洋艦ウィチタ。印象通り攻撃的能力を持つ艦船少女。

 黒く露出度の高い服を着て、白い髪をツインテールにした少女は駆逐艦ヴァンパイア。まるで吸血鬼のような生存性を持つ。

 薄い金髪をまとめ、ホワイトプリムを被ったメイド服の少女はシェフィールド。艦隊を保護する能力を持つ。

 少しロールした金髪に王冠を被る少女は戦艦クイーン・エリザベス。ロイヤル所属艦隊の能力を大幅にあげる能力を持つ。

 やはり金髪に、下半身の露出度の高い、大剣持ちの少女は戦艦ウォースパイト。高い砲撃能力を持ち、能力も攻撃性のものらしい。

 赤い髪から尖った耳が突き出す妖しい笑みの女性は戦艦デューク・オブ・ヨーク。やはりこちらも高い砲撃能力を持つという。

 白いケープ、赤いスカート、黒タイツと特徴的かつ上品な少女は軽巡洋艦エイジャックス。高火力な軽巡洋艦である上に、改造も受けているらしい。

 癖のある非常に長い白い髪をツインテールにし、黒いうさぎの耳のようなアクセサリーをつける少女は駆逐艦ラフィー。高火力かつ攻撃的能力を持つ上、エイジャックスと同じく改造を受けているらしい。

 

 ────これは本気の艦隊だ。

 

 ポツリと高雄が呟いた。

 誰もがその言葉に納得し、正面からぶつかればまず間違いなく敗北すると確信する。

 メタナイトはそれを肯定する。

 だが、メタナイトにはある確信があった。

 

「ここを見てくれ」

 

 メタナイトが指したのは輸送船。

 

「大量の資材やコンテナが積まれている。おそらくは満載の状態だろう」

「なるほど、つまりは……プププランドを襲撃し、資源略奪のために来た、という最悪の想定はないということですね?」

「その通りだフッド殿。そして中に何らかの兵器が積まれているということもないだろう。わざわざ戦闘能力もなく装甲も薄い輸送船で接近したのは敵意がないことをこちらや向こうの国民にアピールするためだろうからな。ここで連中を攻撃すれば、それをチクチクと突かれるのは目に見えている。向こうの世論もこちらをよくは思わないだろう」

「なんでですか? 確かに輸送船は武装してないですけど、周りは完全武装した艦船少女で囲まれているじゃないですか!」

 

 声をあげたのはジャベリン。

 なるほど、正論だ。迫るアズールレーン陣営は間違いなく武装している。

 しかし、そう言えるのはジャベリンが純粋だからこそ、だ。

 

「ああ、そうだろう。確かに武装している。だがもし私が彼らの立場であれば、攻撃されたならば『無防備な輸送船を襲った』とプププランドを貶める報道をするだろう」

「そんな! どう見ても武装して……」

「ああ、武装はしている。だが輸送船は全く武装していない。機銃一つすら見当たらない。周囲の武装した艦船少女たちは単なる護衛とでも説明すれば、攻撃した我々は非武装の輸送船を襲う賊として扱われるだろう。可能性は低いが、もし連中が本心ではこちらを武力で圧倒しに来たとしても、我々は先手を譲らねばならない」

「そんなぁ……」

 

 ジャベリンが悔しそうに顔を歪める。他の面々も苦虫を噛み潰したような顔だ。カービィだけは気持ち良さげに寝ている。

 しかしいつまでもそうしているわけにはいかない。刻一刻と彼らは近づいているのだから。

 

「ワドルディ、陛下を呼んできてくれ。至急でな」

「りょーかい」

「さて……覚悟を決めるぞ、諸君」

 

 

⚓︎☆⚓︎☆⚓︎

 

 

 プププランドの砂浜に大型輸送船が五隻並ぶ様は壮観であり、高い建造物があまりないプププランドではより目立って見えた。

 そのなかでも一隻はかなり特殊な輸送船のようで、平べったい空母のように見え、載せているのはなんと一つの建造物のように見えた。そんなものが砂浜に乗り上げているのだ。

 

「重量物運搬船だな。しかもRORO方式。ビーチングできるタイプか。若干小型のようだが」

「なんですか、それ?」

「あの特に巨大な輸送船だ。他の輸送船はランプウェイで貨物を出し入れする普通のタイプのようだな」

 

 他の四隻の輸送船から運ばれてくるのは大量の木箱。何やらカービィが興味を示しているあたり、食料品でも入っているのだろう。

 やがて重量物運搬船に載せられた建造物が曳家の要領で降ろされ、砂浜を移動する。

 移動場所に適していると判断された砂浜近くの平田にはすでに重機が稼働しており、地面を掘り、コンクリートを流し、急ピッチで整地を始めていた。

 

 そして貨物線の一つから、二人の艦船少女、ラフィーとデューク・オブ・ヨークに守られるようにしてある人物がメタナイトとデデデ大王の元にやってくる。

 その人物は陸軍帽にサングラスをかけた人物で、ついさっきまでパイプをふかしていたために愛煙家と思われた。

 

 その人物はデデデ大王の前で立ち止まる。

 両者しばし無言。その後、観念したようにその人物が口を開いた。

 

「私はダーレス・マッカーサー南太平洋戦域最高司令長官だ」

「俺はデデデ大王。このプププランドを収める大王だ」

「おお、大王陛下がわざわざお越しとはありがたい」

「で、何の用だマッカーサー?」

「以前、メタナイト、という者の名義で書状をこちらに送りましたでしょう? その返事を返しに馳せ参じました」

「メタナイトとは私だ。それで、その返事がこの────プププランド泊地鎮守府舎の建造、及び必要物資の輸送かね?」

「然り。我々アズールレーンは君たちのところにも建造ドックが存在していることを察した。そして君たちがセイレーンを我々と同じように敵視していることを知った。であれば、我々アズールレーンは君たちと()()()()()()()()。そのための支援だとも」

「なるほど、それはありがたいな。しかし我々は()()()()()()?」

「問題ないとも。ただ言っておくが、()()()()()()()()からな」

 

 マッカーサーとメタナイトの視線が交錯する。確実に互いの思惑を掴みとらんとする目だ。

 しかし互いに異種族。しかもメタナイトは仮面をかぶっている。そう簡単には感情を読み取れない。

 

 読心を諦めたマッカーサーは更に続ける。

 

「あと、鎮守府以外にも学園と購買部がある。そこにはこちらから人員を割いておいた。また、『演習プログラム』への参加も許可が下りたので、興味があれば参加していただければと思う」

「なるほどな。実戦経験が積めるのか」

「そうだ。あと、時々購買部などには物資を運ぶため()()()()()()()()()()だろう。その時はよろしく頼む」

「……了解した」

「では、私は少々忙しい身でして。陛下には申し訳ないがこれから本国に帰らせてもらいます」

「うむ。わかった」

「ところでこの工事はいつまでかかるのですか?」

「4日ほどか? それまで陸軍の土木係はここに留まらせてもらう。あっと、寝食についてはお構いなく。こちらでしっかり用意している」

「それはありがたいな」

「では、()()()()()()()()()()()()()()

 

 そういうと、元いた輸送船へと帰って行く。

 やがてマッカーサーを乗せた輸送船ともう一隻の通常の輸送船が、艦船少女六人を連れて帰って行く。

 残りは留まり、工事を続けたり、残った艦船少女は海上で警戒任務をこなしていたり、優雅に紅茶を飲んでいたりしていた。そのお茶会にカービィがちゃっかり混じっているのはメタナイトの幻覚だと信じたい。

 

 残された二人は、疲れたような声を吐き出す。

 

「メタナイトよ。面倒なことになったな」

「ですね。思いのほか思い切った行動に出てきました」

「確かにアズールレーン陣営は何も言ってない。だが、レッドアクシズ側からすればこれは……」

「向こう側についた。そう思われても仕方ありません」

「なにせ、アズールレーン側が建物まで建て、物資も送り、さらには相当な地位の人物が挨拶に来る。これでアズールレーン側についていないとは思えまい」

「本当、まさかここまで早く行動してくるとは……レッドアクシズ側との接触を急ぐべきだったか。ほぼ同時に接触していれば、互いに牽制しあい、ここまで踏み込まれることは……」

「……もう遅いか? レッドアクシズ側との接触は」

「……遅いといえば遅いですが、接触しないわけにはいかないでしょう。このまま接触しなければ、レッドアクシズ側にこちらが確実にアズールレーン側についたと思われてしまいます」

「だな……さて、俺は城に戻るぞ」

「かしこまりました、陛下」

「全く、カービィは呑気なものだな」

 

 デデデ大王の視線の先には、仲間の艦船少女のみならず、アズールレーン陣営の艦船少女達と混じってはしゃぐカービィの姿があった。

 

「はぁ。アイツの能天気さにどれだけ苦労したか。まだスターロッドの件は忘れていないぞ。一体どれだけ俺が気を揉んでアレを盗み出したと思ってるんだ……」

「もう過ぎたことでしょう」

「そうなんだがな……はぁ」

 

 これ見よがしに大きな溜息をついたデデデ大王は、槍を持った大勢の兵隊ワドルディを引き連れ、自らの居城へと帰っていった。

 

 気を揉んでいるのは自分もなんだがな、と残されたメタナイトは胸の内で独りごちる。

 ダーレス・マッカーサーは寝食は向こうで用意ができているとは言ってはいたが、本当に何もしないわけにもいくまい。せめて今晩は歓迎会と称して接待をする必要があるだろう。

 

 その旨を上空に待機させてあるハルバード内のクルーに伝え終えると、メタナイトは人知れず溜息をついた。

 

 

⚓︎☆⚓︎☆⚓︎

 

 

「全く、なんなんだあの怪物達は。あんなものが存在するなど信じられん」

 

 ダーレス・マッカーサーは愛用のパイプを吹かしながら、輸送船内に用意された自室で愚痴をこぼしていた。

 

「丸くて小さい生物がいるとは聞いていたが、住人全てがそんな形だとは思わなかったぞ。もう少しまともなのがいると思えばペンギンだし……なんなんだあの島は。魔境か?」

 

 特にマッカーサーを身震いさせたのは、口のない、無表情な橙色の生物。

 非常に数多くおり、あの『プププランド』と彼らが自称する『P3』の主な住人と思われるのだが、アレらが無表情でこちらを凝視する様は訳も分からぬ理不尽な恐怖を覚えた。

 一体一体は確かに可愛らしいかも知れないが、無表情なアレが大量に並んで一斉にこちらを見つめる光景に愛らしさを抱くはずがない。

 

「しかし……あの島の文明レベルはどうなってるんだ? 兵士が持つのは銃ではなくて素朴な槍。まるで未開の地だが……向こうの艦船少女が住居として使っているのは真新しいコンテナ。あのメタナイトは輸送船について知識があるように見えた……はぁ、なんと報告すればいいんだ……」

 

 ダーレス・マッカーサーは人知れず大きな溜息をついた。




 解説多スギィ!

『ラフィー』

 Sレア駆逐艦。初期艦の一人。登場したのは改造済みのラフィーだが、本来は髪をまとめる兎耳は白く、格好も淡い色のラフな格好をしている。なお、初期艦の中で最も真っ平ら。改造しても変わらない。無念。でもやっぱりそれがいい。長らく改造が無かったため、不遇枠とされていたが、ついに改造が実装。箱を開けてみれば軽巡並の火力を叩き出し魚雷をポンポン吐き出す駆逐艦のようなナニカへと変貌していた。そうなった元凶は主砲補正脅威の165%と時間経過確率で発動する装填200%アップ。どう見てもブッ壊れスキルです本当にありがとうございました。なお、元々正月の着せ替えもあったこともあり、改造が実装されたことにより、未だ着せ替えのないジャベリンがZ23と同じ不遇枠になってしまった。がんばれジャベリン。まけるなジャベリン。

『エイジャックス』

 レア軽巡洋艦。改造が実装されてはいるが、衣装にそこまで大きな差はない。典型的なドS女王様ブヒィイイ!改造前の評価はそこまで高くはないが、改造することにより軽巡洋艦最高クラスの火力を叩き出せる。改造により得られるスキルは『大物狩り』。重巡や戦艦に対してのダメージが上昇するスキルである。ドSでありながら確かにある愛情に惹かれ、子豚ちゃん化する指揮官が続出した罪深い艦船の一人である。その結果かなり初期にキャラストーリーが実装された。なお、そのキャラストーリーで艦船少女は人間とは体の構造が違うことが判明。作者的には人間と仮面ライダー1号2号くらいの差かな、なんて想像している。

『シェフィールド』

 Sレア軽巡洋艦。エディンバラの妹で、ベルファストの姉……だったはず。スキルは仲間の守護に特化しており、火力はSレア軽巡の平均止まり。毒舌メイドそのものであり、指揮官をうっかり害虫と間違えて撃っちゃったりする。……作者はお迎えできていない。

『クイーン・エリザベス』

 Sレア戦艦。略してQE。ロイヤル艦隊を最強たらしめるA級戦犯立役者。そのスキルはロイヤル艦隊のほぼ全てのステータスを最大15%上昇させる『女王号令』。チートすぎやしませんか女王陛下。なおこの効果は本人にも及ぶため、常時スキルのないSSレア戦艦並の火力を叩き出す。やっぱり言い逃れのできないチートである。なお、容姿は例のあの人が反応しかけるほど非常に幼い。そして典型的なツンデレ。プリンツ・オイゲンに『そのツンデレは、金髪まな板のテンプレートなのかしら?』などと言われてしまう始末。ちなみに『愛』セリフは必聴。

『ウォースパイト』

 SSレア戦艦。QEの妹らしいが、彼女のことは陛下と呼び距離を置いているように見える。容姿はやはり幼いが、姉と違いバカでかい大剣を持っている。スキルは『絶対命中のオールドレディ』で時間経過確定で最も遠い敵に必ずクリティカルダメージを与える砲弾を放つ。海域では自爆ボートにタゲが吸われて外れるのはお約束。ただし演習では相手主力は動かないので、ガンガンダメージを稼ぐことができる。ちなみにキャラデザはスカートを履いていない。理由は、史実にて旧型艦ながらもなんとか作戦を成功してみせたウォースパイトに対し、アンドリュー・ブラウニン・カニンガム中将がウォースパイト艦長パッカー大佐に『作戦完了。オールドレディもスカートを上げればまだまだ走れるものだな』と通信したという逸話があり、そこからウォースパイト本人が『スカートを上げれば走れる』→『スカートを脱げばもっと速く走れる』と考えた結果だと思われる。思考回路が完全にフォースの英国面に堕ちている

『デューク・オブ・ヨーク』

 SSレア戦艦。略してDoY。同型艦のプリンス・オブ・ウェールズ(略してPoW)とは仲が悪い模様。スキルは命中した敵の移動速度を下げる特殊弾幕を放つ『血煙の協奏曲』と説明の面倒な優秀なデバフ『滅亡の悲嘆調』。かなり優秀な艦な上、陣営を選ばず編成できる優良艦。作者はお迎えできなかった(涙)。セリフはどれも硬く、持って回ったような言い回しで、ぶっちゃけ厨二っぽい台詞が多いが、どこぞのにくすべさんと違って寮舎でもダラけた姿を見せないため指揮官達からは厨二キャラというよりも高カリスマキャラとして受け入れられている。

『ヴァンパイア』

 くぎゅうううううううう! くぎゅうううううううう! くぎゅうううううううう! くぎゅうううううううう! くぎゅううううううう!くぎゅうううううううう! くぎゅうううううううう! くぎゅうううううううう! くぎゅううううううう! くぎゅううううううう! くぎゅうううううううう! くぎゅうううううううう! くぎゅうううううううう! くぎゅううううううう! くぎゅううううううう!くぎゅうううううううう! くぎゅうううううううう! くぎゅうううううううう! くぎゅううううううう! くぎゅううううううう! くぎゅううううううう! くぎゅううううううう! くぎゅううううううう! くぎゅうううううううう! くぎゅうううううううう!


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物欲センサー ⚓︎

お詫びと訂正

 前話後書きの解説の『ヴァンパイア』の項目において、不適切な表現があったこと若の場にお詫び申し上げ、ここに修正版を上げさせていただきます。
「わざとらしいのね」
「絶対わざとなのサ」
「絶対反省してないヨォ」
出雲(炎上中)「こいつまた同じようなことやるぞ」

『ヴァンパイア』

 Sレア駆逐艦。中の人は御察しの通りです。そういえば某グランブルーなファンタジーでも中の人は吸血鬼役を演じてたような……? 非常に際どい格好のため、艦これの島風ポジションになるのではと思われたが、実装当時は限定建造で所持者が少なく、まだ声が実装されていなかったので島風ポジションになり損ねた不遇枠。性能は雷撃より。そして耐久はブリを除いて最低。しかし、『吸血鬼の口づけ』という、『時間経過確定で特殊魚雷を放ち、与ダメージに応じて自らの耐久を回復する』というスキルにより、手動における生存性はフェニックスに並ぶ。ちなみに着せ替え衣装を二つ持ち、どれ持ちの塊らしきものが浮かんでいるが、これはおそらく小説『オーバーロード』のサディストレズビアンネクロフィリアナツメウナギロリビッチ吸血鬼のシャルティア・ブラッドフォールンのスキル『血の貯蔵庫(ブラッドプール)』のオマージュだろう。

追記

潜水艦6/14実装ってまじすか……


【挿絵表示】




───4/11 13:40 プププランド港────

 

 昼食を食べ終わり、皆が食後の休憩を楽しむ中、カービィはいつもの桟橋で釣りをしていた。

 

 別にカービィはいつもいつも釣りをしているわけではない。今いる場所が水場に近くて釣りがしたい時に、気分で釣りをする。

 

 しかし、今回は違う。

 今回は隣で唸るジャベリンの誘いだ。

 一度一緒に釣りをして全然釣れなかった時以降、妙に対抗心を燃やしているらしい。

 今回はハルバードの料理担当から鶏そぼろをもらい、撒き餌にして釣りをしていた。

 が、未だジャベリンのバケツは空。カービィのバケツは魚がみっちり詰まっている。

 しかも撒き餌のそぼろの粒が大きく、濃い味付けで匂いも強かったためか、どの魚も普段より大きい。

 

「むぅー、なんで釣れないのかなぁ……」

「心を乱しすぎだ。指揮官殿のように精神を研ぎ澄ませるのだ」

 

 そう語るのは高雄。

 そう語る高雄のバケツは空である。

 

 ……と思いきや高雄が釣った魚は片っ端からワドルディが持って行っている。

 時間は昼過ぎ。当然艦船少女達は昼食を済ませたばかりである。なので釣った魚を食べる気は無い。そのため近くに住んでいるワドルディに分けているのだ。今から昼食をとるワドルディだっているだろう。

 ちなみにカービィはこの後釣った魚を食べる気である。大量に昼食を取った後であるのにもかかわらず。それを知っているワドルディはカービィのバケツにある魚を持っていこうとはしない。

 

 閑話休題。釣った魚の総数としてはトップはカービィ、次点で高雄だろう。未だゼロのジャベリンは当然最下位である。

 

 一体何がいけないのか。『精神を研ぎ澄ませる』って一体どうやるのか。悶々とジャベリンが考え始めた時。

 

「かーくん、……あの、メタナイトさんが呼んでるよ?」

「ぽよ?」

 

 カービィ達の背後からユニコーンが遠慮がちに声をかけた。

 カービィは頷くと釣り具を桟橋に適当に起き、何より釣った魚の入ったバケツを大事そうに抱え、ユニコーンの後をついて行く。

 ジャベリンも慌ててそれに続き、高雄は二人が放り出した釣り具を一人テキパキと片付けていた。

 

 ユニコーンが向かったのは、現在アズールレーンが建設している暫定プププランド海軍基地予定地……から少々離れたところ。

 そこには本部庁舎や寮舎よりも小さな建物。すでに発電機やろ過システムが稼働しており、今艦船少女達が住むコンテナと同じようにインフラは整っているようだった。

 その前に立つメタナイトとメイスナイト。さらにバンダナの子を含めた無数に群がるワドルディ達。そして三人の見慣れない艦船少女がいた。

 

 一人は灰色っぽい髪を二つにまとめ、肩に垂らした眼鏡をかけた女性。赤と黒の軍服らしきものを纏い、教師的雰囲気を放つ。

 もう一人は黒い着物の黒髪の少女で、艶やかな黒髪を切りそろえており、その頭からはつぎはぎのある兎耳が生えている。

 もう一人は緑色の髪の少女で、頭からは猫の耳が生えている。服はワンピースと思われるが、丈は短く、袖は必要以上に長い。

 

 高雄はそのうち黒髪の少女と緑の髪の少女の名前を知っていた。

 

「不知火と明石か? なぜここに?」

「ぽよ?」

「あれ、高雄さん、あの二人を知っているんですか?」

「あ、いや、艦としての記憶だ。直接の面識はないが……あの二人は駆逐艦の不知火と工作艦の明石のはずだ。もう一人は知らないが……おそらく鉄血の艦だろう」

 

 などと言いつつ、高雄はいつも腰に下げている重桜刀に手をかける。

 刀よりも主砲や魚雷で攻撃したほうがいいんじゃないか、とジャベリンは思うが、自分も投槍を振り回していたりするので何も言わないことにした。

 向こうも近づくこちらに気づいたのだろう。メイスナイトが急かすように手招きした。

 

「ユニコーンちゃん、おつかいありがとうダス。お礼のクッキーダス」

「あ、ありがとう。メイスナイトさん」

「ぽよ!」

「……カービィのはないダス」

「ぽょ……」

「……かーくん、半分……いる?」

「ぽよ!」

「……一体どっちが上司なんダスかねぇ」

 

 そんなやりとりを目の端に収めつつ、メタナイトは咳払いをする。

 

「……えー、カービィを呼んだのは他でもない。今後我々の支援をしてくれる新しい仲間を紹介するためだ」

「他の子達には紹介しなくてもいいんですか?」

「おいおいしよう。というより、皆自由すぎて集合できないんだ……夕食の時は否が応でも集まるし、その時にもう一度改めて紹介するとしよう」

「大変ですね……」

「ぽよ?」

「指揮官は能天気ですね……」

「うぅ?」

 

 ユニコーンと一緒にクッキーを頬張る何も考えていないような顔のカービィを見て、若干羨ましげな雰囲気を見せるメタナイト。

 しかしながら何も考えていないからこそ今までの功績はあったのだと思うと……なんとも言えなくなる。

 

 メタナイトはそんな甘ったれた考えを払拭し、三人の紹介を始める。

 

「この艦船少女がケルン。学園の講師役として来ていただいた」

「よろしくお願いいたします、指揮官」

 

 ケルンと紹介された女性はすっと頭を下げる。背筋は通っており、『できる女』という表現が最も似合っているように見えた。

 

「この艦船少女が不知火。購買部担当だ」

「よろしゅうお願い申し上げます。どうぞよしなに……」

 

 黒髪の艦船少女は纏う雰囲気や喋り方といい、テンションが高い方ではないようだ。というより、落ち着いている。

 

「そしてこの艦船少女がアズールレーンとの交易担当、明石だ」

「よろしくにゃ〜。ガンガン買ってにゃ〜」

 

 最後の猫耳の艦船少女は妙な口癖があるようだった。なんとも自由そうな雰囲気といい、強かさといい、より猫らしい。

 

「えっと、つまり……?」

「これで我々プププランドの暫定プププランド海軍をより一層強化し、他国との貿易ができるようになった、というところか。……現状アズールレーン所属国とだけだがな」

 

 なるほど、たしかに学園があれば戦術を学べるし、購買部や交易で物資や装備を購入することもできるだろう。

 以前のセイレーン遭遇戦でセイレーンを仕留め損ね、苦渋を舐めたジャベリンは目を輝かせる。

 だが、高雄はあることに気がついていた。

 

「だが、プププランド貨幣など存在したか? 交易や購買など可能なのか?」

「あ、そういえば……お金とか見たことないです」

「ああ、そうだ。プププランドに貨幣はない。プププランドの大部分を占めるワドルディ達は損得感情なしで協力しあって生きている。畑はみんなのもので、みんなで世話をし、みんなで分け合う。料理が得意なものは店を開いて食材をもらう代わりに料理を出す。ものづくりが得意なワドルディは寝食の世話を他のワドルディにしてもらいながら巨大な機械を作る。ある意味物々交換経済が成り立っているのがプププランドだ」

「え」

「ではどうやって交易や購買部を利用するのだ? 貨幣はないのだろう?」

「そこで、明石に提案があるにゃ」

 

 と、横から会話に入って来たのは明石。

 

「金銀財宝、宝石とかをこっちで査定するにゃ。査定金額に応じた金額で交易やぬいぬいの購買部を利用すればいいにゃ」

「ガンガン査定するのです……そしてお金を落とすのです……」

「と、言うことだ。鉱石等は鉱脈近くに住むワドルディに頼めば貰えるだろう。ワドルディはそこまで装身に興味はないからな」

「……なんか綾波ちゃんとロングアイランドちゃんがやってたゲームに似てます。『おいでよ! けものの森』だったかな?」

「とりあえず、問題はないと言うことか」

「そうだ。で、早速換金し、あるものを買った」

 

 その言葉を合図に、まるで待っていたかのように綾波がフォークリフトを操縦し、あるものを持ってくる。

 綾波にそんな技術があったのかと驚くが、それ以上に目を引くのが金ピカに輝く箱。

 『装備箱T4』。ありとあらゆる装備が入っている、艦船少女にとっては必需品とも言えるものだ。

 それがフォークリフト一杯に積んである。一段9個。それが8段重なっており、総数は72個か。

 

「私には理解できない話だが、艤装をつけただけの艦船少女では力を十分に発揮できないらしい。メンタルキューブで形作られるのは『カンレキ』とその艦船の『ガワ』だけ。艦船少女用の『装備』を艤装に入力してようやく本来の力を発揮できるそうだ。……あのセイレーンの戦いの際、フッドの主砲の見た目の割には威力がないなと思ったが、そういうことだったらしい」

「うふふ……大量注文、まいどありです」

「うにゃあ。ホクホクだにゃ」

 

 ニヤニヤと笑う不知火と明石。それを見てケルンは若干呆れ顔である。

 薄々と感づいてはいたが、どうやらなかなかの守銭奴のようだ。

 

「さらに謎なことに、箱の中に何が入っているのかわからないらしい」

「建造ドックと一緒だにゃ。建造の際メンタルキューブ内の『カンレキ』からランダムに選ばれて艦船少女が建造されるように、装備箱も装備の記憶からランダムに形作られるのにゃ」

「いい装備が出なかったら、また買うのです……」

「……だそうだ」

「うわぁ……」

「阿漕な商売にしか見えないが……」

「これはどこの泊地でも同じだにゃ」

「平等です」

 

 そしてニヤニヤ笑う二人。

 が、しかし、しばらく後に二人の笑顔は凍りつくことになる。

 

 

⚓︎☆⚓︎☆⚓︎

 

 

 『127㎜連装両用砲MK12T3』!

 『155㎜三連装砲T3』!

 『203㎜SKC連装砲T3』!

 『380㎜SKC連装砲T3』!

 『113㎜連装高角砲T3』!

 『152㎜三連装砲T3』!

 『四連装磁力魚雷T3』!

 『バラクーダT3』!

 『ヘルキャットT3』!

 『彗星T3』!

 

 これだけで終わらない、煌びやかに光り輝く装備達。

 装備箱T4からは低確率でこのような『金装備』と呼ばれる金色に輝く装備が出るという。

 そう、たしかに低確率でしかでなかった。ほとんどは『紫装備』といわれる金装備と比べて若干性能の落ちる装備しか出なかった。

 

 ───カービィが箱を開け始めるまでは────

 

 カービィが開ける箱開ける箱、ほぼ全てが輝く金装備。

 無邪気に笑うカービィ。

 目を輝かせるジャベリン、綾波、高雄、ユニコーン。

 あっけにとられた顔をする明石と不知火。

 

 のちにメタナイトはこう後述した。

 

「求めるものは飢える。強欲なものは一生その欲が満たされることはない……欲張りは幸せになれませんよ、という、典型的な節制さを説く言葉だな。物欲センサーなんて呼ばれたりもする。逆に無欲なものは幸せになれる、なんて言われる。……では、カービィはどうか? カービィには食欲と睡眠欲以外、欲望という欲望が非常に薄い。おそらくそれは、ワドルディ達よりも遥かに、だ。……もう言いたいことはわかるだろう。カービィに物欲センサーは無力だ」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 





『ケルン』

 ノーマル軽巡洋艦。鉄血所属で性能はノーマルの域を出ない残念な子。スキルレベルを上げる学園においていつも出会える。……これぐらいしか語れることがないんだ……ケルンがヨメ艦の指揮官、不甲斐ない私を許してくれ……
 あ、メガネっ娘は至高だと思います(唐突)

『不知火』

 ノーマル駆逐艦。重桜所属の駆逐艦。改造も実装されている。……のだが、性能面でも顔芸ネタでも姉の陽炎が目立っており、やっぱり語れることが少ない。しかも声優未実装……不知火ヨメ艦の指揮官、不甲斐ない私を許してくれ……

『明石』

 SSレア工作艦。他に工作艦はSレアのヴェスタルしかいない。そしてアズレンをやったことならわかる通り、入手方法がひたすら面倒臭い。しかし希少な回復スキルと弾薬追加スキルを持っているので、9章以降の高難度海域の雑魚散らし艦隊にはほぼ必須といってもいいほど。作者も明石には本当に助けられた。
 なお、ショップでいつも見ることができる。資本主義の猫


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8日目に来たる者

もうタイトルでお察し

さて、2週間ぶりの更新です。何をしていたかって? イベント周回もありますが、遅れた最たる理由は初日に120連建造回して江風は4人来たのに長門はゼロ。一時的ににくすべガチ勢の精神状態に陥ってました。
でもその後ポイント集めながら回した結果、150連目位で長門建造できました。これで長門赤賀神通夕立綾波の重桜水雷艦隊が完成しそうです。やったぜ。お陰で作者の精神状態はにくすべエンジョイ勢になりました。たーのしー。

でも14日に潜水艦実装……見える……沼が見えるぞ……


───4/12 15:32 プププランド港────

 

 代わり映えのない、恐ろしく平和な日々。

 この日も日は燦々と輝き、暖かな日差しをプププランドの大地に届ける。

 この風景を見たカービィは、絶好のお昼寝日和だと判断し、惰眠に勤しむことだろう。

 

 が、今日は違う。

 今日カービィがいるのは、新しい寮舎だった。

 

「ぽよ! ぽよ!」

「指揮官! 待ってくださーい!」

 

 できたてで自分の姿が薄っすら映るほど綺麗な床をはしゃいだ様子で走り抜けるカービィ。それを追うジャベリン。

 その後ろには大量の機器を乗せた台車を押す綾波とロングアイランド、いつものぬいぐるみを抱くユニコーン、まるで二人一組のようにセットになっているインディアナポリスとポートランド、バンダナを含めた数人のワドルディ、そしてメタナイトが歩いていた。

 そんな彼らは明石の案内の下、建設されたばかりの新しい寮舎を引っ越しと合わせて見に来たのだ。

 

「本当にカービィが指揮官なのかにゃ? 子供にしか見えないにゃ」

「間違いない、です。私達にはわかるです」

「そうだよ? かーくんはユニコーンたちの指揮官だよ?」

「にゃー。艦船少女特有の指揮官に関する嗅覚かにゃあ。……ところで綾波とロングアイランド、その大荷物は一体何にゃ?」

「CD‐ROMやDVD、ディスプレイやゲーム機器なのー」

「……二人ともゲームはほどほどににゃ」

 

 明石が呆れたような声を出したあたりで、カービィを抱えたジャベリンが戻ってくる。どうやら捕獲に成功したようだ。

 腕の中にいるカービィは満足げな顔をしている。

 

「それじゃあ指揮官も落ち着いたことだし、ざっくり説明するにゃ。ここはもうご存知の通り寮舎だにゃ。一人一人に個室が与えられるにゃ。電気は発電機から、水は川の水や雨水や井戸水を濾過したものを引いてるにゃ。ガスはないにゃ。炊事洗濯掃除冷暖房風呂はオール電化だにゃ。ぬいぬいの購買部とケルンの学園は寮舎一階にできるにゃ。ちなみに明石の交易窓口は本部庁舎一階に作られる予定だにゃ。あとは共用の休養スペースがいくつかあるにゃ。あと指揮官の部屋は本部庁舎の司令室に併設される予定だにゃ」

 

 スラスラと立て板に水を流すように滞りなく説明してのける明石。

 が、真面目に聞いているのはこのうち一体何人だろうか? メタナイトはちゃんと話を聞いているようだが、他の面々は新しい寮舎に目を輝かせている。

 

「個人スペースは二階からー?」

「そうにゃ」

「じゃあ私は二階の階段に近いとこがいいなー」

「なら綾波はその隣にするのです」

「じゃあ私はインディちゃんと同じ部屋!」

「ダメにゃ」

「そんなぁ!」

「えと、その、ユニコーンは……みんなと隣あえるところがいいな……」

「みんな言いたい放題いうなぁ」

「ほんとだにゃ」

 

 わあわあと廊下は騒がしくなり、家具の設置などを行なっていた作業員(と言っても工作活動を得意とするユニオンの兵士たちなのだが)が何事かと手を休めて顔をのぞかせたりしていた。

 女性三人寄って姦しいと書くように、その騒がしさは止まることを知らない。

 そろそろ止めるべきか。そうメタナイトが考えたその時。

 

 外からより騒がしいサイレンの音が響き渡った。

 

 混乱する艦船少女達。キョロキョロ辺りを見回すワドルディ達。

 そんな中、先ほどまで作業をしていた者達は瞬時にその顔を兵士のものに変え、慌ただしくどこかへ駆けて行く。

 そして、サイレンはこう続く。

 

『仮建造ドックにて鉄血の艦船少女を確認。速やかに無力化せよ』

 

 

⚓︎☆⚓︎☆⚓︎

 

 

 建造ドックは後に本部庁舎に運び込まれる予定であったが、未だ本部庁舎の準備が終わっていないために、コンテナ内に入ったままであった。

 そしてそのコンテナの周囲をカーボン製の盾と機銃を構えた兵士達が取り囲み、護衛のため残っていたアズールレーン所属の艦船少女達もそれに混じり、主砲を向けている。

 その先にいるのは、コンテナの壁に身を預け、気怠げに両腕をあげる女性だった。

 赤と黒の体のラインを強調するような服。高雄に負けないほど盛り上がった胸。金属片のようなものでツーサイドアップにした銀髪。そしていくつもの銃口を突きつけられながらも妖しく余裕ある笑み。

 魅力的な女性だが、その艤装は異形そのもの。まるで船の船首をもとに作り上げた、双頭の龍のようであった。

 

「誰だ、あれは?」

「おそらく鉄血のプリンツ・オイゲンかと」

 

 メタナイトの発した疑問は、すでに集まっていたフッドが答える。

 その側には高雄もおり、無表情でプリンツ・オイゲンを凝視している。

 

「鉄血……こちらから行く前に来てしまったか……」

 

 メタナイトの脳裏に「レッドアクシズとの友好は絶望的」の文字が浮かび上がる。

 だが、その瞬間「え?」という声が上がる。

 それは誰か1人が発したものではない。

 この場にいる、プププランド泊地所属の艦船少女全員が声をあげた。

 

「……なんだ? どうしたんだ?」

「いや、多分アレは……レッドアクシズから来た使者ということはないと思いますよ?」

「然り。というよりアレは……」

 

 瞬間、どよめきが起こる。見れば、渦中のプリンツ・オイゲンが手を上げたまま、こちらに向かってくるではないか。

 視線の先にいるのは、カービィ。

 静止の声など無視し、遠慮なく歩みを進める。

 銃口が触れそうになるまで近づいてようやく足を止めると、プリンツ・オイゲンはその艶やかな唇を動かした。

 

「ふぅん……あんたが指揮官? ずいぶん丸っこいのね? 私はプリンツ・オイゲン。期待してるわ」

「ぽよ? ……カービィ!」

 

 蠱惑的な声とともに、カービィに話しかけた。

 プリンツ・オイゲンが迷いなくカービィを指揮官と言ったことで、メタナイトにある確信が生まれる。

 それと同時に、疑問も。

 

「もしや……建造ドックから生まれたのか?」

「ま、そんなところね、仮面の騎士サマ」

「しかし……誰も建造をした覚えはないんだがな……」

 

 そう、この反応は建造ドックから生まれた艦船少女達の反応とよく似ている。

 しかしながら、直近で建造ドックで建造を行なった覚えはない。

 

 しかし、その疑問にすぐに答える者がいた。

 

「時折あること」

「何? ……貴殿は、確か……」

「ラフィー。見つけたのは私。もしかしてと思ったけど、一応警報ボタン押しておいた」

「どうやら私が生まれて早々『歓迎』を受けたのはあなたのせいみたいね」

「つまりは、メンタルキューブを入れずとも勝手に建造されることがある、と?」

「本当に希だけど」

「ふぅむ……」

 

 はっきり言って素性は知れない。

 もしかしたら本当にレッドアクシズからの密偵という可能性もある。

 だが、だとしても……プリンツ・オイゲンを無下に扱うことはできない。

 それすなわち、鉄血への友好の道を断つことになる。

 

 そんな悩みなどつゆ知らず、カービィはプリンツ・オイゲンの足元により、その生物的な艤装をまじまじと眺めている。

 それを笑みを浮かべながら眺めるプリンツ・オイゲンの表情から真意を探ることは難しい。

 これ以上考えても仕方ないと判断したメタナイトは考えるのを止め、プリンツ・オイゲンに向き直る。

 

「私はメタナイト。指揮官はカービィだが……まぁ、いい。補佐のメタナイトだ。よろしく頼む」

「ええ、よろしく」

 

 そしてまた口角を上げ、笑う。

 その様子を見て周囲の兵士、アズールレーン所属の艦船少女達は緊張を解き、散会する。

 

 だが、その時を狙いすましたかのように、再び警報が鳴り響いた。

 

 その内容は耳を疑うものであった。

 

『総員、戦闘準備! 南方よりセイレーンの艦隊を観測した!』




出雲(炎上中)「本当久しぶりな気がするな」
「そして2週間開けても燃えてるのね」
出雲(炎上中)「消して」
「いやなのサ」
出雲(炎上中)「(´・ω・`)」
「なんかこの炎上ネタも定着しつつあるネェ」
「さすが炎上芸人(物理)なのね」
「出雲のネタ化が止まらないヨォ」
出雲(炎上中)「ミョウガは絶許」

プリンツ・オイゲン

 SSレア重巡洋艦。8日目の女。ログインボーナスで8日目に貰える。性能は耐久に全振りしたようなステータスで、耐久値は6500。……ちなみに高雄は4000超え、ポネキで5000超え。主力である空母は防御寄りのイラストリアスで6000と少々。その耐久値の高さがどれだけやばいかがお分かりだろうか?ただし反面火力はかなり貧弱で、ダメージ効率は駆逐主砲程度などと揶揄されるほど。プリンツ・オイゲンが真価を発揮するのは持久戦であり、高難度海域の雑魚散らしなどに使ってあげよう。性格はダウナーで気まま。プライドの高い猫と言えばいいのだろうか?そして何よりプリンツ・オイゲンといえば右おっぱいのほくろである。エロい。着せ替えも必見。エロい。とにかくエロい。


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斥候隊 1

あれ、もうそろそろ20話?

……まだでかいイベント1つも終えてないんですけど? でかいイベント5つは起こす予定なんですけど? 今年中に終わんのこれ?



「……厄日ね。着任早々襲撃なんて……この艦隊の日常茶飯事かしら?」

「そんなことはない……筈だ。なにせこのプププランドは艦隊を持って日が浅い」

「ぷぷぷ……らんど……? まぁいいわ。敵が来たなら迎え撃つ。それだけよ」

「それはそうなんだが……しかし……」

 

 セイレーンはなぜ、今になってやって来たのか?

 白昼堂々攻め込むとは、正気の沙汰とは思えない。

 単なる偶然? 余裕? どれも違う気がする。

 

 セイレーンの思惑を掴みかね、惑うメタナイト。

 しかし結局、やることは変わらない。

 

「……ポートランド、インディアナポリス、ジャベリン、エレバス、ユニコーンで第一艦隊。高雄、プリンツ・オイゲン、綾波、ロングアイランド、フッドで第二艦隊を組んでくれ。……懸念すべきは主力不足だが、仕方ない」

「了解です!」

 

 迫る外敵を撃滅すべく、艦船少女達はその艤装を展開する。

 カービィの無欲によって装備だけは充実している。以前のように決め手が足りないなどということにはならない筈だ。

 プリンツ・オイゲンにも余った装備を装着し、生まれて直後で悪いが艦隊を組んでもらう。

 

 そしてアズールレーン側もすでに臨戦態勢を整えていた。

 デューク・オブ・ヨークを旗艦とし、クイーン・エリザベス、ウォースパイトがその左右を固め、シェフィールド、ラフィー、エイジャックスがその前に立つ。

 本来であればラフィーの代わりにヴァンパイアがいるのだが、彼女は南方の仕事があるために初日に本国に帰っていた。クイーン・エリザベスの特殊能力の恩恵に預かることはできないが、単騎性能は高いのでなんとかなるだろう。

 はっきり言って無駄が多く主力に穴があるこちらの編成の方が不安が多い。

 しかしそれでも一定の戦果を上げねばならない。メタナイトはそう考えている。

 自国を自力で守れないと判断された国はどのような運命が待つのか。それを考えれば、やるしかない。

 

「カービィ」

「ぽよ?」

「我々も出る」

「うぃ!」

 

 即座にワープスターを呼び出し、飛び乗る様はやはり幾度となくプププランドを救った英雄と言うべきか。

 

「ワドルディ、メタナイツに伝言を。ハルバードによる支援砲撃は最終手段だ。あまり手の内を見せるべきではない」

「りょーかい」

 

 後詰めの準備も完了。あとは出撃するだけだ。

 艦船少女達は戦う者として、兵器としての使命のまま、海原へと飛び出した。

 

 

⚓︎☆⚓︎☆⚓︎

 

 

「……すでに気づいたか?」

「そうねぇ。艦載機達が攻撃を受けてるわぁ」

 

 腕を組み、無表情ではるか水平線を睨むのは銀髪に金の瞳を持つ女性。黒い機械的な眼帯を装着し、背負うのは黒い蟹の爪のような艤装。その爪1つ1つが砲塔になっている。

 その問いかけに答えたのは、やはり銀髪、金の瞳の女性。しかしその表情は余裕に満ちた笑みを湛えており、艤装は黒と黄色の触手を持つイソギンチャクのようであった。

 先のカニ型艤装を装着する者が戦艦級セイレーン、スマッシャーI型。イソギンチャク型艤装を装着する者が航空母艦級セイレーン、コンダクターI型である。

 旗艦の役割を担っていると思われるコンダクターはほかのセイレーンに命令を下す。

 

「そうか。では各員規定通り陣形を取れ。それぞれに預けた量産艦艇は予め組んだ陣形を保たせるが、後は臨機応変に各自の指示で動かせ」

 

「了解」

 

 その指示に従うのは、以前プププランドの艦隊と一当たりした重巡洋艦級セイレーン、ナビゲーターI型。やはりオウムガイ型艤装を座るようにして装着している。以前と同じ個体かはわからない。

 他には軽巡洋艦型セイレーン、チェイサーI型。コバンザメ型艤装を見にまとい、怪しげな笑みを常に浮かべている。

 最後に駆逐艦型セイレーン、スカベンジャーI型。サカタザメ型艤装を装着している少女の姿をしており、それが2名、駆逐艦型量産機を引き連れていた。

 

「今回我々の目的は情報収集。……まぁ、いつものことだな。何より重要なのは我々の“記憶”。スペアボディに記憶は移送されるのでここで死んでも問題ない」

「あら、あら、いつものことね。大方テスターの命なの?」

「いや、今回はオブザーバーからだ」

「ふぅん? 珍しいんじゃなくて? だいたいこういうのはテスターに一任してるでしょう?」

「それだけ彼の地は特異というわけだ」

「……アレは突如浮上した。……オブザーバーが興味を持つのも道理」

「そういう事だ。……そろそろ視認域か? ではお喋りはここまでだ。各員“良い記憶”を残すように」

 

 指示の通り陣形を組み、やがて艦船少女達と交戦し始める。

 スマッシャーはひとまず支援砲撃に徹し、コンダクターからもたらされる情報をもとに戦況を分析していた。

 

 アズールレーン陣営と思われる艦隊はやはり強い。クイーン・エリザベスの特殊能力の恩恵がやはり大きい。

 しかしそれは既知の事実。なにせそういう風に創造したのだから。

 そして浮上した島に所属する艦隊の強さも予測の範囲を出ない。カタログスペック通りだ。

 もちろん、カタログスペックのステータスだろうと、戦略次第では想定以上の被害が出ることもあるが……そういうこともなかった。

 

 ハズレ。その三文字がスマッシャーの脳裏に浮かぶ。

 いずれにせよ、自分たちのやることは変わらない。戦闘データを取り、死んで、スペアボディに記憶を移し、記録する。これだけだ。

 いつもと変わらないといえば変わらない任務。故に緊張感などない。

 緊張感がないからか、ふとコンダクターが口を開く。

 

「そういえばぁ、また海の明度が下がったって知ってるぅ?」

「……ああ、知っている。ここに来た当初はここまでではなかったんだがな」

 

 コンダクターの口から出て来たのは、セイレーンの間でも問題となっている現象。

 それは『海が暗くなっている』ことだ。

 そしてその原因は確定されていないが、すでに信憑性の高い推測は立っている。

 

「人間に内乱をさせすぎたか」

「そうねぇ。火薬と鉄塊を海に投げ込み、油を垂れ流す……クリーンとは言い難い戦争だからねぇ。場所によっては息苦しいところもあるしぃ」

「そろそろ『間引き』の時か?」

「かもねぇ」

 

 雑談の内容は人間側の首脳陣が聞けば顔を青くするどころでは済まないようなレベルの悍ましいもの。

 しかしセイレーンはそんな残虐な話を、まるで今月の定例のイベントについて語るかのような気楽さで話す。

 

 やがて、自分たちのところまで砲弾が飛来する。そろそろ時間のようだ。

 

「さて、そろそろ我々の番だ」

「そうねぇ。それじゃ……んぅ?」

 

 艦載機を新たに発艦させたコンダクターが訝しげな声を上げる。

 そして、ニンマリと笑ってみせた。

 この顔をするのは、非常に興味深いものを見つけた時であるということをスマッシャーは知っている。

 

「どうしたコンダクター」

「いやぁ、いいもの見たわぁ。これがナビゲーターの言ってたずんぐりピンクね。仮面のもついて来ているけど」

「ふむ……」

 

 スマッシャーは眼帯をいじり、倍率を上げる。

 拡大された視界に映るのは、1つの流星。

 

 星型の物体に乗る、桃色の球体生物。

 それが、こちらに向かって来ていた。

 

「ほう、あれか。あれがナビゲーターの言っていた……」

「どうするのぉ?」

「決まっていることだ。いつものようにデータを取る」

 

 スマッシャーは無表情で答える。

 しかし、その声には隠しきれない喜悦があった。




出雲(炎上中)「今回は新しい艦船少女がいないな」
「だからセイレーンの紹介をするヨォ」
「前出て来たナビゲーターの説明もしておけばよかったのね」
「後悔先に立たずなのサ」

スカベンジャー

 駆逐艦型のセイレーン。そういや鋼の桜イベントに出て来たっけ? ハード周回しかしていないせいで見ていない気がする。セイレーンはマップ上をプレイヤーの艦隊のように動き、プレイヤーの艦隊に接触し交戦しようとする。故にそんな彼女らの通称は『動く“見ゆ”』、略して『うごみゆ』。報酬が美味しいので高レベル指揮官は率先してセイレーンを狩りに行く姿がよく見られる。まぁ人類の敵なので間違っちゃあいない。魔神柱と同じ匂いがする。ちなみにスカベンジャーは幼女。困った時はアークロイヤル。なお、スカベンジャーは死肉を食べる生物の総称で、ハイエナとかハゲワシとかウジもこれに当たる。ちょっと可哀想な名前。

チェイサー

 軽巡型のセイレーン。本SSでは艤装をコバンザメとしているが、これは独自設定で、SDキャラを見た限りかなり分かりにくい。クロスする青弾に加え、精密な自機狙いマシンガンに泣かされた指揮官の数は数知れず。セイレーン最強うごみゆとか言われる。

ナビゲーター

 重巡型のセイレーン。以前登場時は艤装の表現をぼかしたが、後でじっくり見て見たらオウムガイ型であることに気がついた。クロスする青弾はチェイサーと同じで、スリーウェイ貫通弾×3→休止→スリーウェイ貫通弾×2→扇状通常弾→休止→以下ループという攻撃ルーチンを取る。前衛の高雄が削れて痛い。

コンダクター

 空母型セイレーン。艤装は多分イソギンチャク。チェイサー並みに確証がないのでSS独自設定だとしてください。砲撃はそこまでだが、妙に耐久の高い自機狙い弾を連射してくる艦載機が厄介。……しかし赤賀を編成すると、攻撃速度バフの関係で敵艦載機発艦と空母のチャージ完了タイミングが被るため、発艦して早々に自軍の戦闘機や爆撃機に撃墜される姿をよく見る。ちなみにSDキャラがふとましいことで有名女の子なんだぞ

スマッシャー

 戦艦型セイレーン。艤装はタカアシガニっぽい。とりあえず蟹で間違い無いだろう。作者の好きなタイプの艤装。画面を横断する、進行方向に対して横に並んだ5つの巨大通常弾を放ちながら、範囲は狭いが数が多くばらける主砲攻撃を前衛に飛ばし、赤賀の攻撃速度バフでも間に合わないタイミングで主力に貫通弾砲撃をかましてくる地味にうざいうごみゆ。ちなみにSDキャラなので分かりにくいが、着用しているのは白いハイレグ。セイレーンの中で作者の一番好きなキャラである。視点がスマッシャーなのはそういうこと。


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